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1994-11-24 第131回国会 衆議院 世界貿易機関設立協定等に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成六年十一月二十四日(木曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 佐藤 孝行君    理事 越智 伊平君 理事 川崎 二郎君    理事 田中 直紀君 理事 中川 昭一君    理事 小平 忠正君 理事 畑 英次郎君    理事 日笠 勝之君 理事 伊藤  茂君    理事 辻  一彦君       逢沢 一郎君    赤城 徳彦君       片岡 武司君    金田 英行君       岸本 光造君    久間 章生君       栗原 博久君    小杉  隆君       塩崎 恭久君    七条  明君       福田 康夫君    二田 孝治君       松下 忠洋君    御法川英文君       井奥 貞雄君    石田 美栄君       今津  寛君    遠藤 乙彦君       大石 正光君    川島  實君       木幡 弘道君    古賀 正浩君       坂本 剛二君    鮫島 宗明君       田名部匡省君    千葉 国男君       仲村 正治君    平田 米男君       松田 岩夫君    山本  拓君       吉田  治君    秋葉 忠利君       佐々木秀典君    永井 哲男君       鉢呂 吉雄君    横光 克彦君       和田 貞夫君    錦織  淳君       前原 誠司君    藤田 スミ君       松本 善明君    遠藤 利明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 河野 洋平君         文 部 大 臣 与謝野 馨君         厚 生 大 臣 井出 正一君         農林水産大臣 大河原太一郎君         通商産業大臣  橋本龍太郎君         労 働 大 臣 浜本 万三君         国 務 大 臣        (経済企画庁長         官)      高村 正彦君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 宮下 創平君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     小粥 正巳君         公正取引委員会         事務局経済部長 塩田 薫範君         公正取引委員会         事務局取引部長 大熊まさよ君         経済企画庁調整         局長      吉川  淳君         経済企画庁物価         局長      谷  弘一君         経済企画庁総合         計画局長    土志田征一君         経済企画庁調査         局長      大来 洋一君         環境庁長官官房         長       大西 孝夫君         環境庁企画調整         局長      石坂 匡身君         環境庁大気保全         局長      大澤  進君         外務政務次官  柳沢 伯夫君         外務大臣官房外         務参事官    谷内正太郎君         外務省総合外交         政策局長    柳井 俊二君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    高野幸二郎君         外務省総合外交         政策局軍備管         理・科学審議官 林   暘君         外務省アジア局         長       川島  裕君         外務省北米局長 時野谷 敦君         外務省経済局長 原口 幸市君         外務省経済協力         局長      平林  博君         外務省条約局長 折田 正樹君         大蔵政務次官  萩山 教嚴君         大蔵省関税局長 鏡味 徳房君         大蔵省証券局長 日高 壮平君         大蔵省銀行局長 西村 吉正君         大蔵省国際金融         局長      加藤 隆俊君         文部省高等教育         局長      吉田  茂君         文化庁次長   林田 英樹君         厚生省生活衛生         局長      小林 秀資君         農林水産大臣官         房長      高橋 政行君         農林水産省経済         局長      東  久雄君         農林水産省構造         改善局長    入澤  肇君         農林水産省農蚕         園芸局長    日出 英輔君         農林水産省畜産         局長      高木 勇樹君         食糧庁長官   上野 博史君         通商産業省通商         政策局長    坂本 吉弘君         通商産業省産業         政策局長    堤  富男君         通商産業省環境         立地局長    齊藤 眞人君         通商産業省機械         情報産業局長  渡辺  修君         特許庁長官   高島  章君         特許庁特許技監 油木  肇君         特許庁総務部長 森本  修君         中小企業庁長官 中田 哲雄君         中小企業庁次長 鈴木 孝男君         労働省職業安定         局長      征矢 紀臣君  委員外出席者         外務委員会調査         室長      野村 忠清君         大蔵委員会調査         室長      中川 浩扶君         文教委員会調査         室長      長谷川善一君         農林水産委員会         調査室長    黒木 敏郎君         商工委員会調査         室長      石黒 正大君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月二十四日  辞任        補欠選任   松岡 利勝君    金田 英行君   大石 正光君    川島  實君   吉田  治君    石田 美栄君   鉢呂 吉雄君    佐々木秀典君 同日  辞任        補欠選任   金田 英行君    松岡 利勝君   石田 美栄君    吉田  治君   川島  實君    大石 正光君   佐々木秀典君    鉢呂 吉雄君     ――――――――――――― 十一月二十四日  ガットウルグアイ・ラウンド協定承認反対  に関する請願岩佐恵美紹介)(第一二六八  号)  同(穀田恵二紹介)(第一二六九号)  同(不破哲三紹介)(第一二七〇号)  同(岩佐恵美紹介)(第一三二三号)  同(古堅実吉紹介)(第一三二四号)  同(不破哲三紹介)(第一四九〇号)  同(古堅実吉紹介)(第一四九一号)  同(山原健二郎紹介)(第一四九二号)  同(岩佐恵美紹介)(第一六二三号)  同(佐々木陸海紹介)(第一六二四号)  同(志位和夫紹介)(第一六二五号)  同(嶋崎譲紹介)(第一六二六号)  同(中島武敏紹介)(第一六二七号)  同(藤田スミ紹介)(第六二八号)  同(古堅実吉紹介)(第一六二九号)  同(松本善明紹介)(第一六三〇号)  同(矢島恒夫紹介)(第一六三一号)  同(山原健二郎紹介)(第一六三二号)  同(吉井英勝紹介)(第一六三三号)  ガット合意国会承認反対に関する請願岡崎  宏美紹介)(第一三四三号)  同(岡崎宏美紹介)(第一四九三号)  食糧自給率の向上、日本農業の発展に関する請  願(岡崎宏美紹介)(第一三四四号)  同(岡崎宏美紹介)(第一四九四号)  ガット農業合意国会承認反対等に関する請願  外七件(山元勉紹介)(第一四八九号)  食糧管理制度改革等に関する請願逢沢一郎君  紹介)(第一六二二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十一月二十四日  ガット農業合意批准反対に関する陳情書外五十  四件  (第一九三号)  米の輸入自由化阻止及び日本食糧農業の堅  持に関する陳情書外二十八件  (第一九四号)  ガット農業合意国会批准反対及び農業振興施  策の確立に関する陳情書外十七件  (第一九五号)  食糧自給食管対策水田農業確立に関する陳  情書外十件  (第一九六号)  ガットウルグアイ・ラウンド農業合意の受け  入れに伴う農林業施策の拡充・強化に関する陳  情書外一件  (第一九七号)  米・乳製品等ガット農業合意国会批准反対  及び日本農業の再建に関する陳情書外十四件  (第一九八号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  世界貿易機関を設立するマラケシュ協定締結  について承認を求めるの件(条約第一号)  著作権法及び万国著作権条約実施に伴う著作  権法特例に関する法律の一部を改正する法律  案(内閣提出第一一号)  加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を  改正する法律案内閣提出第一二号)  繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団  法の一部を改正する法律案内閣提出第一三号  )  農産物価格安定法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一四号)  特許法等の一部を改正する法律案内閣提出第  一五号)  関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出第一六号)  主要食糧需給及び価格の安定に関する法律案  (内閣提出第一七号)      ――――◇―――――
  2. 佐藤孝行

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  世界貿易機関を設立するマラケシュ協定締結について承認を求めるの件、著作権法及び万国著作権条約実施に伴う著作権法特例に関する法律の一部を改正する法律案加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を改正する法律案繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団法の一部を改正する法律案農産物価格安定法の一部を改正する法律案特許法等の一部を改正する法律案関税定率法等の一部を改正する法律案及び主要食糧需給及び価格の安定に関する法律案の各案件を一括して議題といたします。  本日は、外務大臣通商産業大臣及び文部大臣を中心とする集中審議を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小杉隆君。
  3. 小杉隆

    小杉委員 小杉でございます。きょうは、時間が制約されておりますので、私は、主として貿易環境知的所有権、さらには経済制裁、その三点に絞って質問をしたいと思います。  このWTOの協議につきましては、七年有半に及ぶ長期間、しかも先進国途上国、大変な利害を乗り越えて合意に達した。それに至る各歴代政府並びに交渉担当者の御労苦に、私は大いな敬意を表したいと思います。  ただ、この協定の中で今後の大きな一つ議論の対象となるのが、環境貿易との調和という問題であろうと思います。  具体的な例を申し上げますが、一九九〇年、アメリカは、メキシコの漁民が大量のキハダマグロを捕獲する際にイルカを混獲してしまう、こういうことを理由としてメキシコキハダマグロ輸入を禁止する、こういう措置をとったんですね。これに対してメキシコは、これはガット違反じゃないかということで提訴をしたんです。そしてガットの方は、これはガット違反であるという裁定を下したわけであります。  そこで、現在幾つかの環境保護のための条約があるわけですね。一つは絶滅のおそれのある野生生物を保護するワシントン条約、それからフロンガスを規制するモントリオール議定書、それから有害廃棄物を制限するバーゼル条約の三条約であります。ガット自由貿易ということをうたっているわけですが、その中でも特に、自由貿易であるけれども、例えば自分の国の住民が輸入した農産物の中に有害物質が含まれていればそれを拒否することができる、こういうふうに、自国内のことについてはそういう例外的に貿易制限をするということが認められているわけです。  ただ、ここで問題になるのは、ガット加盟国であって国際条約に入っていない、そういうワシントン条約とかモントリオール議定書バーゼル条約の非締約国であるという場合に、これはガットとしては、ガットに入っている者がそういう不当な扱いを受けた場合にはこれは最恵国待遇に反する、こういうことになるわけですね。こういう場合にはどういう措置をとるんでしょうか。ちょっと専門的になるんであれかな。
  4. 坂本吉弘

    坂本(吉)政府委員 ただいま委員指摘ケースでございますが、例えばワシントン条約におきましては、この条約加盟国からの輸入は禁止できるんですけれども、非加盟国からのものは、条約上はできるけれどもガットのただいまの二十条に照らして考えますと、この点は貿易制限はできないということに相なります。したがいまして、例えば貿易制限を受けた国から提訴が行われましてパネルが設置されますと、ただいまのガットのもとでは、この貿易制限は正当化されないということになるわけでございます。
  5. 小杉隆

    小杉委員 そこが私は、最近環境問題に対する意識が非常に高まってきたことと、環境問題は自分の国の中だけの問題ではなくて、国際的な関連といいますか、非常にグローバルになってきているわけでありますから、従来のガット判断だけで十分律し切れるかどうかというのは非常に問題だと思うのです。今後、貿易政策環境政策というものをどうやって調和させていくか、これは非常に大きなこれからの課題だと思うんですね。  これについて、通産大臣環境問題にも非常に関心持っておられるんですが、通商政策環境政策調和という点についての基本的な考え方を聞かしていただきたいと思うのです。
  6. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これはもう委員が既に御承知でありますけれども、さきのマラケシュ会合におきまして、貿易環境に関する決定が採択された中で、WTOにおきまして貿易環境に関する委員会が設立をされることになっております。このテーマは、環境問題に関する世界的な関心の高まりの中での議論でありまして、貿易の分野におきましては、ウルグアイ・ラウンド後の重要課題一つとして、WTOだけではなく、OECDでも検討の進められている内容であります。我々としては、この両面に、調和に対して十分な配慮をしながら、積極的にその議論に参画していきたいと考えております。  ただ、そこで一つどもが考えなければなりません点は、その貿易環境議論をいたします際に、先進国途上国環境基準の差というものが競争力の格差を生むという議論組み立て方の中で、ややもすると保護主義的な議論に陥りがちな面がございます。これは、確かに理論的には、守るべき環境基準が違えば当該基準遵守という点においてのコストの差が出るということはあり得るわけでありますけれども、実際果たしてそれが国際競争上、先進国に対して不利益を与えるほど大きなものになるかというならば、これは少々の間がございます。率直に申し上げて、私は必ずしもそうしたケースばかりではないと思います。  これが、低い環境基準というものが国際競争力に有利に働くという議論、これも保護主義を正当化しかねないものでありまして、我々としては、環境貿易という点で議論をいたしますときに、この点には特にやはり注意をしていく必要がある、そのような気持ちでおるところであります。
  7. 小杉隆

    小杉委員 今お話がありましたように、こうした問題は今後多発すると思うんですね。  例えば今ドイツでは、包装材についても、外国から輸入をする場合に包装材にいろいろリサイクルのことを義務づけているわけですね。そういうものをやってないところから輸入はもうしない、こういうようなことを言い出しておりますし、また、北欧諸国はガソリンに対して課税をする環境税というようなことをやっておりまして、今後、環境問題がグローバルになればなるほど、そういう今までの概念では律し切れない問題がいっぱい頻発してくると思うのですね。  そこで、一応WTOの中に環境貿易に関する委員会というものが設置されることになったという、今大臣のおっしゃったとおりであります。これについては私も、一昨年の十一月でしたか、私が総裁をやっている世界議員連盟、GLOBE、これは橋本大臣メンバーですけれども、この代表のヨーロッパとアメリカ議員とともにジュネーブを訪れまして、国連特使のアガ・カーン氏の調停によって、インドとかブラジルエジプトジンバブエガット交渉担当者と面談をしまして、今後、こういう環境貿易との関係を論議するための委員会を創設すべきだということを強く迫ったのですが、そのとき途上国側は頑として、時期尚早である、こういうことで反対を受けたのです。最終的には、ことしの四月のマラケシュ閣僚会議で設置が決まったということですが、議論はこれからだと思うのですね。  そこで、私はこれからの、環境貿易に関する、このWTOの中に設置される委員会、これの構成メンバーというのは非常に大事だと思うのです。今までガット関係者は、貿易専門家は非常に多いのですけれども環境に関しては必ずしも専門家ばかりではない。したがって、私は、やはり日本政府としても、今後この委員会にどんどん人を送っていく場合に、やはり環境専門家も大いに出していくべきだ。環境庁長官としては、そういうことに対してどういう気持ちでしょうか。
  8. 宮下創平

    宮下国務大臣 今御指摘のように、貿易環境の問題というのは大変密接な関係がございまして、リオのアジェンダ21でも相互支援的といいますか、ミューチュアルサポーティブということを言っておりますね。  そういう意味で、貿易政策環境政策を両立させるといいますか、統合させるといいますか、そういうことはそれぞれの政策の主体性においてきちっとした調整を要すべきものだと思います。それにはやはり、環境行政というのはそうした専門家人材確保が重要でございますから、私どもとしても、このWTOの中の貿易環境に関する委員会には相当な関心と熱意を示してこれから議論に参画していきたい、かように思っております。
  9. 小杉隆

    小杉委員 さらにこれに関連して、NGO関与についても伺いたいと思います。  先ごろ、日本海にロシアの海軍の潜水艦核廃棄物を投棄した問題が国際的に非常に大きな問題になりました。これの発端をつくったのがいわゆるグリーンピースであります。このように、最近、環境問題に関するNGOの役割というのは非常に大きくなってきております。この前のブラジルでの地球サミットにおきましても、つい先ごろのカイロにおける人口会議におきましても、NGOの参加というのが非常に多くなってきているわけですけれども、このWTOで今後、こういう国際的な貿易環境に関連しての紛争が多発した場合に、環境NGOなどの民間のそういう専門知識環境知識を大いに活用すべきだという意見が強くなっております。  ところが、一方において、余り民間団体が直接国際機関で口を挟むべきではなくて、各国政府を通じて意見を反映させていくべきだというような意見もあります。しかし、私は、環境NGOのそういった国際的な活動がどんどんふえていく、しかも政府ではいろいろと力の限界もある、そういうことから考えますと、NGO関与についてもう少し積極的に考えていいんじゃないかと思いますが、外務大臣並びに環境庁長官お話を伺いたいと思います。
  10. 河野洋平

    河野国務大臣 小委員会でさまざまな団体であるとか個人であるとかの意見を聞く、あるいは意見を聞く必要があるという場合があると思いますね。そういうときにその小委員会においては、WTO協定上、小委員会はいかなる個人または団体に対しても情報及び技術上の助言の提供を要請できる、こういうことになっているようであります。  これは、小委員会判断によって必要に応じてNGO意見も聞くことができる、こういうふうに我々理解をしているところでありまして、委員指摘のとおり、まさに必要に応じて、政府ではなかなか情報収集が十分でないというようなことがあれば、その都度、小委員会判断によって個人または団体意見を聞くということは適切であろうと思います。
  11. 宮下創平

    宮下国務大臣 環境問題とNGOとの関係は、世界的に見ますと委員指摘のとおりでございまして、我が国の場合は非常にNGOの規模も小さいし、数も少ないと思うのですね。しかし、国際的に見ると非常に大きな広がりを見せつつありまして、今委員指摘のように、リオでは二万四千人集まった、それからカイロ人口会議でも相当の数のNGOプレ会議をやるというようなことで、影響力を与えていることは事実です。私どもも、国内政策としてNGOを健全に育てていく、そしてその意見環境政策に反映していくことは、国民一人一人が環境問題に関心を持つために大変必要なことだとは思っております。  しかし、今委員の御指摘なのは、WTOの中の貿易環境に関する委員会にその意見を反映するなりなんなり組み込んだらどうかというようにも受け取られますが、これは国際社会の機構の運営の問題でございますから、実質的に健全なNGO意見であれば、専門家派遣等を通じて、やはりそれはある程度政府レベルで私は反映できるんじゃないかなという率直な個人的な感じを持ちました。いずれにいたしましても、そういうことが非常に重要なことであることは間違いございません。
  12. 小杉隆

    小杉委員 これからWTOの中にそうした委員会ができるときにNGOの意向というものを反映させるという面では、両大臣とも認められたわけです。その仕組みについては若干議論があると思いますが、いずれにしても、私は、これからの国内政治においてもあるいは国際政治においても、こういった健全なNGO意見というものはどうやって取り入れていくかという工夫を大いにやっていくべきだと思っております。WTO委員会の中にも恐らく小委員会とか部会とかいろいろな組織もできると思いますから、直接本会議に出るとかそういうことじゃなくて、どういう形にせよ参画できる、意見が反映できるというシステムをつくるということで努力を願いたいと思います。  それでは次に、何といいますか、エコダンピング、ちょっと聞きなれない言葉ですけれどもエコダンピングエコ保護主義について、特にこれは、先ほど大臣から触れられたように、どうしても環境貿易問題で一番頭の痛いのは先進国対途上国の対立なんですね。先進国に言わせますと、開発途上国は非常に環境基準が甘い、そして環境保全のためのコストを払っていない、そういうところで国際的な価格競争力をどんどん持って、どんどんダンピングみたいな形で輸出をするじゃないか、こういうことでありますね。それから、途上国から言わせますと、さっき通産大臣が懸念をされたように、先進国はとかく環境に名をかりた偽装された貿易制限というものをやりがちである。要するに、エコ保護主義、エコプロテクショニズムというようなことを言っているわけですけれども。  そうすると結局、私もこの間ジュネーブインドとかブラジルエジプトジンバブエ政府代表と会ったときにも、非常に抵抗するわけですね。そこで三時間にわたって激論を交わしたのですが、とかく途上国の方はそういうことですべて先進国責任論をぶつけてくるわけです。もしそういう環境問題をやるというならば、先進国責任として資金を出せ、あるいは技術をよこせ、こういうことですね。それから先進国の方では、このエコダンピングに対して貿易制限とか輸入課徴金を課そう、両方にそういう傾向が出てくると思うのですね。こういう姿勢について通産大臣、どう考え、また日本としてどうすべきか、お考えがあったら伺いたいと思います。
  13. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 たまたま先般のAPEC、インドネシアの総会の際に、インドネシアの経済界の方々にお話を申し上げる機会がありました。私は、今委員環境問題から議論をされましたが、実は先進国がよく取り上げます偽装された保護主義に転化しやすいテーマとして、労働の問題がございます。低賃金労働あるいは婦女子の労働といったとらえ方の問題がございます。そして、それはそれなりに理のあるところではありますが、同時に、それを強調することは途上国の産業をつぶしてしまう危険性のあるテーマでもあります。  ちょうど私は、ジャカルタでインドネシアの経済人の方々にお話をいたします際に、昭和四十年代前半、日本が公害に非常に苦しみ、これを解決するために四十年代の半ばにわざわざ環境庁というその先端の役所をつくってこれに取り組んだ。二十年たった後に、これを費用対効果の面で分析をした。そして、非生産的経費でありながら経済成長にマイナスを起こさなかったのみならず、むしろ新たな産業の育成、創造というものにもこれはつながった。そして、それを翌年の環境白書でなお追跡調査をし、企業行動にこれがどう反映したかを分析した。我々は、かつて非常に苦しんだその体験を、いわばマイナスの情報として各国に提供する用意がある。そして、それを解決するためにどのような努力を払い、それがどういう結果を生んだかということについても情報提供の用意がある。我々は、日本がかつて繰り返した失敗をこの地球上において他の民族が繰り返すことを決して好まないという趣旨のお話を申し上げました。非常に素直に聞いていただき、そうした面からの協力というものに期待する声をいただきました。たまたまこれはジャカルタの経験でありますが、他の地域でも私は同じような体験をいたしております。  日本は、むしろ積極的に意思疎通を途上国との間に図りながら、これは資金ももちろん必要でありましょう、しかし資金だけではなく、技術協力を含め、あるいは制度を含め、かつてのお互いの経験の中から学んでいただくための失敗の情報も含めて提供していくことにより、こうした問題の解決に相当な役割を果たし得る、そのように考えております。
  14. 小杉隆

    小杉委員 途上国における環境対策へのインセンティブをさらに高めていくということが必要だと思いますが、環境庁長官として今後どうされるおつもりでしょうか。
  15. 宮下創平

    宮下国務大臣 まず第一に、我が国のたどった歴史を振り返りながら、今通産大臣のおっしゃられたように、この我が国の経験を、開発途上国等に経験や技術を与えていくということが必要でございますが、しかし一義的には、その開発途上国における環境基準をきちっと定め、それを中央政府なり地方政府なりまた事業主体なりが守ることができるようにならなければなりません。  そのためには、日本としてなし得ることは、そういう環境基準の設定やその実行等について、技術者を派遣するなりいろいろセンターをつくるなりノウハウを与えるなり、それは精力的にやはりやった方がいいと思います。現に、中国とかインドネシアとかタイあたりには環境センターを、これはODAの予算の範囲内でやっておりますけれども、同時に環境庁として特に力を入れておるのは、人材の派遣、それから研修生を受け入れたりする、あるいは機材を供与する等のセット的な技術援助をやっておるわけでございまして、こうした点等々を通じて大いにひとつ環境の啓蒙に努めていきたい、こう思っております。
  16. 小杉隆

    小杉委員 まだ指摘したい点はいっぱいあるんですが、時間の制約がありますので、また別の委員会でやりたいと思いますけれども、いずれにしても、環境貿易という新しい視点からのアプローチを、これは通産省も環境庁も、もちろん外務省も挙げてひとつ取り組んでいただきたいと思います。  それで次に、知的所有権問題に移りますが、今マルチメディア社会の到来ということがやかましく言われております。世界全体がソフト化、情報化しておりますし、ゴア副大統領の情報スーパーハイウエーとかGII構想とか、日本でも二〇一〇年までに今度マルチメディア化によって百二十三兆円の新しい産業、そして二百四十三万人の雇用が生まれる、こういうことでやっております。  残念ながら、このマルチメディアの世界では日本世界の十八番目でございまして、アメリカをトップとして、シンガポールにも抜かれているというような現状であります。私は、やはりもっともっと画期的に日本がマルチメディアの構築に全力を挙げなきゃいけないと思いますが、ただ一点懸念をしておりますのは、どうもマルチメディアについての知的所有権というものが、確かに今度のWTOではその対象として取り上げられはしましたけれども、それをどうやって実施していくのか、それが非常に不明確であります。  今やコンピューターやネットワークの上でやりとりされているソフトウェア、これはどんどん国際貿易の非常に大きな主役になりつつあります。ところが、ソフトウエアというものはもうほとんどディジタル化されておりまして、コピーしても全然劣化しない。ビデオテープなんかですと、コピーすると劣化してしまうからわかるのですけれども、そういうことですからなかなか、違法のコピーだとかソフトウエアの無断使用なんというのはもっともっと厳しく取り締まらなきゃいけませんし、必ずしもこういうコンピューターソフトとかデータベースというのは目に見える形で水際でチェックができない。コンピューターに詳しい人の話によりますと、もう情報ネットワークにアクセスして、機械の上だけでソフトウエア、データベースを売り買いできる、こういう状態になっているわけですね。  そういうマルチメディア社会の到来とともに、このような目に見えない取引というか貿易というか、こういうもの、その著作権の侵害ということがこれから物すごく起こってくると思うのですが、協定の中ではこうした問題はどのように扱われているのか、これを外務大臣に伺いたいのと、それから通産大臣に伺いたいのは、これからはソフトウエアやデータベースの産業界にとっては死活問題になりかねませんので、通産省はこうしたマルチメディア時代における著作権の問題について、あるいは産業界の死活問題ということについてどういう認識を持っておられるのか。そして文部大臣には、特にこれは文化庁の方でやっておられると思いますけれども、これからの著作権保護の立場からマルチメディア問題にどう対処していかれようとしているか、三大臣から伺いたいと思います。
  17. 原口幸市

    ○原口政府委員 事実関係でございますので、事務当局からお答えさせていただきます。  TRIPs協定の十条におきまして、コンピュータープログラム及びデータベースは、一九七一年のベルヌ条約の第一条から二十一条まで及び附属書の規定に従って、書籍、楽曲等の著作物と同様に保護されることになっております。また、同協定の十一条におきまして、コンピュータープログラムにつきましては、その原作品または複製物を公衆に商業的に貸与することを許諾しまたは禁止する権利、すなわち貸与権をその著作者に与えることが加盟国に義務づけられていると承知しております。
  18. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 問題意識は委員と全く同じにいたしております。  そこで現在、産業構造審議会におきまして、知的財産権の適正な保護に関する法制度及び技術的対応策を含めて、情報化の推進に向けての諸課題について総合的な検討をいたしているさなかでございます。今後、この検討を踏まえながら、通産省としても所要の対策を講じてまいりたいと存じます。
  19. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 問題は三つございまして、一つは、先生が懸念されているように、現行の著作権法で保護されている権利、これが知らず知らずのうちに利用される、その結果、著作権を持っている方に十分なかっ適切な保護がなされないという運用上の問題、これをどうしていくか。それからもう一つは、マルチメディア時代に新しく著作権法の対象となるような権利が生まれる可能性もあるという問題。それからもう一つの問題は、これは日本一国では解決できない問題で、やはり国際的な場である種の共通のルールというものが必要になる可能性がある、こういう三つの問題意識を持っております。  日本国内では、著作権審議会の中にマルチメディア小委員会というものをつくりましてこれらの検討を進めているところでございまして、この検討は、現行著作権法の運用に関する件に関しても問題意識を持っておりますし、また、将来著作権法を改正しなければならないというようなこともやはり視野に入れて物を考えていかなければならない。また、国際的な問題については、WIPO等の適正な国際機関を通じてやはり共通の土俵というものを構築していくということが日本の立場であろう、そのように思っております。
  20. 小杉隆

    小杉委員 時間の制約がありますのでこれで終わりますが、いずれにしても、私がきょう取り上げた問題はまだまだ今後詰めなければならない問題点ばかりでございまして、どうぞ関係各省でもひとつ真剣に取り組んでいただきたいということを要望して、質問を終わります。  ありがとうございました。
  21. 佐藤孝行

    佐藤委員長 次に、逢沢一郎君。
  22. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 逢沢でございます。  十一時までの時間という制限がございますので、橋本通産大臣、また通産省、特許庁、そして柳沢外務政務次官がおいででございますので、絞らせていただきまして質問を申し上げたいと思います。  まず、橋本大臣、就任以来五カ月間、本当に連日御苦労さまでございます。特にこの間、日米フレームワーク協議の最後の詰め、一番大事な時期もございまして、たしか九月の末には三日か四日の間に日本とワシントンの間を一往復、三往復もされたということで、大変御苦労いただいたわけであります。また、APECの関係では、大阪で中小企業問題担当大臣会議、ボゴールでの会議、まさに東奔西走の毎日を過ごしておられるわけであります。  大臣は、かつて大蔵大臣も歴任をされておられます。そのときには通貨外交、国際金融問題に大変なリーダーシップを発揮をされ、今日では通産大臣として日本の通商貿易問題の責任者として奮聞いただいておるわけでありますが、その大臣にまずお伺いしたいのは、世界で何といっても一番大きな経済力を持つアメリカ、そのアメリカは、率直に申し上げれば我が国日本に対してももちろん大きな影響力を持つ国でありますけれども大臣がその長い三十年を超える政治家として、このアメリカという国をどう認識なさっておられるか、あるいはその上に立って、あるべき日米関係というのをどのように考えておられるか、それをお伺いしたいと思うのですが、その前にちょっと私自身の問題意識を申し上げさせていただきたいのです。  もちろん、アメリカという国は大変大きな、そして多様な国であります。犯罪の問題とかホームレスがどうとか教育の荒廃とか、いろいろな問題は抱えておりますけれども、しかし、総体としては、私はやはり、民主主義の理念のもとに大変信頼に足りる国家である、そういう思いを強くいたしておりますが、私なりに表現をさせていただくと、その信頼の源泉は何かということを考えたときに、それは民主主義のもとで信頼される国に足る必要なソフトをやはり備えているのがアメリカじゃないかな、基本的にはそういうふうに考えています。政策決定や市場参入へのルールがやはり公平で明確で開かれている、そういうことも理由の一つに挙げていいのではないかと思いますし、したがって、アメリカという国自体が自浄能力を備えている、決して大きな間違いは犯さないし、外から見ていて予測可能な範囲の中でアウトプットが出てくる、基本的には、私はそういう国であるというふうに認識をいたしております。  ただ同時に、ここのところ、ちょっとそのアメリカも、最近言うこと、やることがおかしいな、率直に言ってそのことも感じるわけでありますが、例えば、大臣が御苦労いただいた日米フレームワーク協議の最後の段階、自動車と自動車部品の問題、ガバメントリーチの範囲を超えるということは多分向こう側もわかっていないことはないんだろうと思いますけれども、大変無理な数値目標を強引に主張をする。  あるいは、ガットウルグアイ・ラウンドの精神というのは、多国間で公平なルールを決めよう、何か問題があったときにはマルチの場でそれを解決していこう、そのことはアメリカも基本的にはそれはそうだと言うわけでありますけれども、片や制裁をちらつかせながらの二国間交渉というのも、手放そうとしないというよりはむしろそれを前面に押し出してくる。明らかにそこは、やはりダブルスタンダードだなというふうなことも感じるわけであります。  就任以来五カ月間、そういったアメリカ通産大臣は対峙をされてこられた、あるいはよりよい関係を築こうと努力をしてこられたわけでありますが、基本的に、日米は世界貿易の四〇%以上を持っている、やはり日米主導で新しいWTOの時代を築いていくべきだ、そういう意味で、日米ということを非常に強く認識をなさっておられるのか、それとも、もちろん日米というのは大事だけれども、数ある幾つかの大切な二国間関係一つなんだといったような認識の方をむしろ強くお持ちであるのか、そのことがまず一点目。  そして二点目に、日本にとってよりよい日米関係アメリカにとってもよりよい日米関係、そして世界にとってもいい日米関係をつくるために、アメリカ大臣は率直に何を期待されるか、そして、日本はどうあらなければならないのか、大変大きな質問で恐縮でございますけれども、まず最初にお伺いをいたしたいと思います。
  23. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 非常に大きな視点からの御質問でありますので、正確なお答えができるかどうか自信がありません。しかし、私自身、こうして振り返ってみまして、アメリカに対する考え方というものは随分大きくこの三十年の間に動いてきたような気がいたします。  ちょうど私が社会人になりました昭和三十五年というのは、繊維問題が深刻になりまして、初めての経済摩擦としての日米綿製品問題というものが深刻化した年でありました。そして、私はその綿紡績の会社に入りまして、いきなりその渦中にほうり込まれたわけです。しかし、その当時、我々の先輩方には、敗戦、独立というプロセスの中で、アメリカ日本に対して保護者的な立場を必ずとってくれる、そして最終的には日本に理解を示してくれる、そういう期待感は非常に強かったように思います。また、私は、当時のアメリカにはそれだけの余力があったような気がいたします。  しかし、その関係は次第次第に変質をしてきている。我が国の経済力が強まるにつれ、保護者的な色彩というものは減じてきた。そして、対等な競争相手としての位置づけが、日米関係というものを重要視しながらもアメリカの中にふえていった。日本でも当然ふえてきたわけでありますが、その速度に、私は、相当なギャップがあったような気がします。そして、今アメリカにとりまして日米関係というものは、当然のことながら重要な一つのファクターでありますけれども、経済的な側面においては、むしろ競争相手としての位置づけの方が大きくなったのではなかろうか。そして、さまざまな協力関係の中で、経済的な不均衡ということに今アメリカ側の関心は傾き過ぎているのではなかろうか、そのような思いが率直に私にはいたします。  日本側がようやくその保護者的な感じに甘える構造を捨てたのは、それほど前のことではないように思います。そして今、逆に、期待される役割を果たすということに日本自身がその方向を向けながら、世界経済の中で、なおかつそれに対応し切れていない状況というものが率直にあります。そうしたものを解消する努力というものをどう考えていけばよいのかというのが課題でありましょう。  そうなりますと、やはりいろいろな意味で、状況認識を正確にした上で、正しい処方せんを双方が採用することは欠くことができません。その場合に、やはり我が国の経常収支の黒字というものの意味のある縮小というものに努力する姿というものは、まず何よりも優先するのではなかろうかと思います。そして、それはやはりISバランスを踏まえたマクロ的な対応というものは基本として必要でありましょう。また、現実に起きておりますそれぞれの問題につきましては、冷静な摩擦処理の観点からの新たな紛争解決のメカニズムというものを何とか模索しなければならないと思います。  そして私は、今後におきましても、こうした摩擦というものは新たに発生する分野はあると思います。それだけに、WTOでありますとかあるいはOECDあるいはAPECなどの国際的な枠組みの中でどれだけのことができるか、これもひとつ考えていく必要がありますし、日米両国間における新たな紛争処理メカニズムというものを模索する努力も必要であると思います。  しかし、こうしたことを踏まえた上で、なおかつ私は、日米関係というものは、我が国にとりまして他国に対する関係を超える大きなウエートを持つものでありますし、今後もあり続けると思います。また、そうあってほしいと願っております。それは経済的な問題だけではなく、地球環境問題あるいはエイズに象徴されるような、こうした大きなテーマに対する取り組みについて我々は協力しなければならないことをまだまだたくさん持っておりますし、これからも出てくるでありましょう。  そして、アジア・太平洋地域というものを考えますとき、日本にとりましてアメリカというものは何よりもやはり大切な友人関係を保ち続けるべき相手であり、全世界的に見てもその視点は変わらない。基本は、私は、日米関係というものは他より抜きん出た重みを持つもの、そのように考えております。
  24. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 ありがとうございました。  WTOを成功させるためにも、よりよい日米関係の維持あるいは発展ということは大変大事なことであろうかと思います。より一層の御活躍をお願いをいたしておきたいと思います。  さて、特許法の改正のことについてお伺いをいたしたいと思いますが、大きな関心としては、よく取りざたがされます例のサブマリン特許の問題、そして米国の先発明主義の問題、時間の関係でこの二つのポイントに絞らせていただきたいと思うわけであります。  かねて問題になっている、いわゆるサブマリンのことでありますが、産業界の方に聞いてみますと、一番代表的な例、有名な事件として、レメルソン・ケース、事件とあえて呼ぶ方もおられるようでありますが、その名前が自動車業界からも、あるいは家電の御関係の皆様からも出てくるわけでありますが、ちょっと調べてみると、このレメルソンのケースは、出願日が一九五四年の十二月二十四日でありますから、たまたま私も一九五四年生まれでありまして、私が生まれた半年後ぐらいに出願がなされている。そして、権利を取得したのが一九九二年の九月一日でありますから、おととしのことなんですね。実に潜伐期間が三十八年という長きに及んでおる、こういうことであります。理由はどういうことなのかなということで伺ってみますと、出願以降、たび重ねて修正をする、あるいは分割等を繰り返し、審査がおくれる、あるいは、こういううがった言い方は恐縮かと思いますけれども、審査をおくらせている、外から見るとそういう評価もできなくはないというふうなことであります。  同様なケースが幾つか報告がされているわけでありますが、今回の合意マラケシュ合意あるいは日米間の合意で、アメリカ側も、早期公開制度を導入をする、出願後十八カ月たては公開をする、そして権利期間は出願から二十年ということを約束をしたわけでありますけれども、果たしてこの約束で、今レメルソンのケースを挙げさせていただいたわけでありますが、こういった問題がすべて解決をされるかどうかについては、日本の産業界あるいは諸外国でもちょっと疑問が残るかなという懸念もあるようでありますが、もう心配ないんだということなのかどうか、率直なところをお聞かせをいただきたいというふうに思います。
  25. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今代表的なケースを挙げて御説明をいただきました御質問でありますが、今委員からもお話がありましたように、今回、包括協議における日米間の合意で、アメリカ側は、出願から十八カ月後の公開制度の導入と、出願から二十年間の特許期間の改定を行うということを約束をし、立法措置も行われております。  これで確かに出願内容が早くわかるということと同時に、審査が遅延しましても、特許期間がいたずらに長期化をすることはなくなる。その意味からは確かに、事実上サブマリン特許問題というものは理論的には完全に解消されることになると思います。これは本当に、日本だけではなく世界じゅうの産業界が非常に苦しんできた話でありますから、これが解決されるのは非常に意味のあることです。  ただ、問題はやはり、アメリカは依然として、諸国がとっております先願主義に反しまして先発明主義というものを譲っておりません。こうした点についてはこれからもまだ問題が残るという気持ちは、我々は現実に持っております。
  26. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 実は、困っているのは日本を初め諸外国の企業だけではなくて、アメリカ国内の企業もいわば往生じておるという現実があったようでありますが、特に、企業間同士ならば特許をお互いに使用し合う、そういう相対関係でまあまあ常識的な、良識的な権利主張の範囲ということのようでありますが、個人の発明家、アメリカ個人を大切にするという建国以来の精神といいますか、そういうものに裏打ちをされている側面があるやに伺っておりますが、個人の立場になると、言葉を選ばずに言うとすれば、失うものが何もない、そういう感じになって、相当法外な話になりがちだ。  それはアメリカ国内での問題でもあるというふうなことも伺っておりますが、引き続き所管大臣として、この問題が現実的に解決をされ、権利の保護というのは非常に大事なことでありますけれども、一方、発明をされたあるいは開発されたその技術世界の産業の発展の役に立つという側面も大変重要でございますので、より一層の御努力をお願いをいたしておきたいというふうに思います。  そこで、少し特許の関係の細かい話になろうかと思います。お役所の方からお答えいただいても結構かと思うわけでありますが、調べてみますと、平成三年に全世界で特許、実用新案の出願件数は実に百二十五万件に上る、大変な数ですね。どの国が一番多いかというと、大変立派なことに我が国日本でありまして、四十万件を上回る。全体に占める割合も四割弱。大生家電六社の平均が、年平均一万件もの出願をしているということでありますから、これは大変な数だな、そういうことになります。  ところで、技術貿易の実態がどうなっているかを調べてみますと、結論からいうと、アメリカのどうやらひとり勝ちの実態がある。アメリカは、輸出二百二億ドルに対して輸入が五十億ドル、プラス百七十二億ドルという数字でありますが、日本は輸出三十一に対して輸入七十二、マイナス四十一億ドル。  伺いますと、まあ刈り取りはこれからになるので大変楽しみがあるのですという御説明もあるにはありますけれども、一方四十万件を上回る、毎年毎年出てくる。率直に言えば、まさに玉石混交なのですよ。まあ玉の方が多ければこれは大変結構なことでありますが、相当そうでもないものも多いようだ。数打てはということなのかなというふうにも思わせていただいているわけでありますけれども、大変たくさん出てくるということは、事務処理上も大変な御苦労がおありになるだろう。その辺の実務上の対応はどうなっているのか。あるいは、今は技術貿易は先ほど申し上げたような数字の実態になっておりますけれども、将来の展望はどういうところに置かれておるか、お答えをいただきたいと思います。
  27. 高島章

    ○高島政府委員 委員指摘ございましたように、出願件数が我が国がずば抜けて大きいというのはそのとおりでございまして、特に最近の技術革新が非常に進展をしております中で、いかにしてこういった知的生産活動の成果物に対しまして迅速かつ的確に保護を図るかということが、実は工業所有権行政の最大の課題であることはもう言うまでもないわけでございます。  今御指摘ございましたように、いかにしてこの大きなる出願に対して的確に処理をしていくかということでございますが、一つは、何と申し上げましても、やはり審査官を増員していくということでございます。それから、かつてのように紙で処理するのではなくて、ペーパーレス計画、コンピューターを使いましたペーパーレス計画で事務の合理化を図ること、さらには、特許庁の中の人間だけでなくて、いろいろな先行の技術調査を外部に委託をいたしまして庁内の処理を早める、合理化するというようなことを幅広く総合的に行ってきております。  過去、これは昭和六十三年に三年一月、平均出願処理にかかっておりましたものが、現在の審査処理期間は約二年四カ月というところまで落ちてきておりまして、こういう政策の成果だと我々は考えておるわけでございます。  それから、さっきございました今後の技術貿易の見通してございますが、これは簡単に今数字的に見通しを立てることは非常に困難でございますけれども、我が国の特許そのものの内容がだんだんと技術成果として濃くなってまいりまして、先ほど御指摘ございましたように、企業と企業との間のクロスライセンスという格好で内容は進展しつつあります。クロスライセンスということになりますと、具体的に金額ということで上がってまいりませんけれども、しかし、実際上は日米の間で非常に技術貿易に関して均衡の方向に向かっていると我々は考えている次第でございます。
  28. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 時間も押し迫ってまいりましたので、特許関係でもう一つだけお伺いをいたしたいと思うのですが、産業界の方々とお話をいたしますと、確かに特許法の一部改正がかなり頻繁に行われてまいりまして、そのたびごとに、率直に言うとなかなか対応も大変なのですよ、こういう声があります。具体的には、コンピューターソフトの組みかえということが一番、費用も含めて負担が大きかった、こういうことですが、今回の改正でもって一応の大枠が整ったというふうに理解をしていいのか、あるいはこれから始まるWTO世界、あるいはこれはまあずっと続きます日米協議の世界で、さらに根本的な部分や応用動作の部分も引き続き相当程度手直しか行われるというふうなことになるのかどうか、確認のためにお伺いをしたいと思います。
  29. 高島章

    ○高島政府委員 御指摘のとおり、特許制度は、この十年間で三回法律改正を行ってきたところでございまして、しかしながら、それぞれ技術開発成果等をいかに適切に保護を図るかというところに重点を持ってきたわけでございます。  それで、現在御審議いただいておりますこの改正によりまして、権利を適切に保護すること、あるいは国際的な調和のための制度づくりということはもうほぼこれで主要部分は完成したものと考えておりまして、たび重なる改正もいわば今回をもちまして一通りでき上がりというぐあいに私どもは考えているわけでございます。  それから、当然のことでございますが、制度改正に当たりましては、これまでも幅広い関係者から成ります審議会で審議を行うほか、制度のユーザーたる産業界と事実上の意見交換を何回も行ってきておりますし、また、制度の変更で今御指摘、御懸念ございましたように関係者に混乱が起こることがないように、その新しい制度の周知徹底につきましては万全を期してまいりたいと思います。いろいろ関係団体等も幅広く協力をいただきまして、こういった新しい制度の円滑な導入がうまく図られますように努力してまいる所存でございます。
  30. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 ありがとうございました。  それでは、柳沢政務次官、わざわざ大変ありがとうございます。最後に、政務次官に御質問をさせていただきたいわけでありますけれども、六年越し、七年越しの議論がようやくまとまって、ウルグアイ・ラウンドマラケシュ合意に達したわけでありますが、それに基づいていよいよWTOが設立をされる、そのことが決まりました。  ところで、どうもマスコミの表現をかりるとすれば、顔の見えない日本というふうな表現がよく聞かれるわけでありますが、世界のGNPの、恐らくドルで換算すれば一五%を相当程度上回るということになっていると思える日本が、このWTOの設立、あるいは仏つくって魂入れずではいかぬわけでありますから、それが十分機能を果たすようにする、そのことは日本の国益にもかなうわけでありますが、そのことのために日本が一体どんな役割を果たすべきか。  顔の見えない日本なんというのはマスコミが言うことで、余り意に介せず自然体でいけばいいんだ、むしろそういうお気持ち、お考えか。あるいは、大きな世界の流れは軍事から経済、通商だ、そのことを認識するときに、ある種の戦略的な意図を持ってWTOをこういう形で成功させる、そういう意図を日本の国は持つべきだ、そしてそれがあるならば、どう行動するか、その辺のことを外務省はどのように、あるいは政務次官御自身はどのように認識、お考えをなさっておられるのか。  具体的には、来年の秋になりますか、大阪でAPECの首脳会議も開かれる。これをどういう形で成功をさせるというシナリオを描かれるのか。かって、いろいろ申し上げるようでありますが、町人国家論なんというのが言われた時代がございます。名を捨てても実をとっていけばいいではないか、そういう理解も一部にはあったわけでありますが、今の世界、これからの日本を考えれば、そういう議論にくみすることは当然私はできないというふうに思いますが、そんなことも背景にする中で、お考えをお聞かせをいただきたいと思います。
  31. 柳沢伯夫

    ○柳沢政府委員 広範な角度からの御質問でございますが、時間の制約もありますので、私の考えているところを端的に申し上げたい、このように思います。  WTOにつきましては、第二次大戦そのものが経済のブロック化ということを背景にして発生したということがありますが、その反省の上に立って、貿易をできるだけ関税を低めて、ブロック化ではない方向で多角的に自由化していこうという方向でガットがスタートしたことは御案内のとおりでございます。  しかし、そのそもそもガットの発足に当たって非常に不幸なことに、当初考えられたような完全な形でできなかったというのがガットの歴史であったわけであります。これをより完成された、整備された形でスタートをさせようというのが今度のWTOである、このように位置づけることができようかと思うのです。  ガットも、確かに共同行動というような規定に基づきまして事務局も持ったりしておりましたので、現象的に見ますと、ガットWTOに変化して何が変わるんだろうかというように、若干普通の人からすると見えにくいところが確かにあるわけでありますけれども、その法的な性格というのはもう非常に飛躍して改善をされている、進歩しておる、こういうのが実態であろう、このように思います。  そういうことで、WTOは、これから多角的な自由貿易体制のまさに中核の機関として大いにその存在の重みというものを発揮していくだろうと思うのですが、その中で日本がどういう立場をとっていくかということは、これはもう逢沢先生今つとに御指摘のように、我が国というのは貿易立国でありますから、したがって、この多角的自由貿易体制の中核的存在としてのWTOというのは、我が国自身にとっても、また世界の経済成長にとっても非常に大事なものである、こういうことであります。  WTOのスタートというかウルグアイ・ラウンドの交渉に当たっては、ともすれば我が国は、農業における困難ということを背景にして、そこのところだけが非常にクローズアップされてしまったのでありますが、顧みてこのWTOのカバレッジ、例えば今御指摘になられたような知的所有権あるいはサービス貿易、こういうようなものに対して我が国の政府がどれほど広範な努力をしてきたかということは、これは今になって徐々に明らかになってきている、こういうことだろうと思うのです。  これからどうするかということでありますが、今言ったような位置づけから見ますと、これはもう我が国としては本腰を入れて、何というか、力強い展開あるいは発展のために力をいたしていかなければならない、このように考えています。  顔が見えないとかというようなお話がよくあるわけですけれども、今言ったいきさつからいっても、サービス貿易あるいは知的所有権の問題について我が国の交渉団が非常に努力をしたということで、実は、わかる人からすると非常に顔がむしろ見えておったのが実情だと言ってよろしかろうと思います。  それから、最後にAPECのお話がございましたけれども、APECは、実は交渉というか参画しているある国の大臣等の口から、こういうコンセプトが言われたことがあります。  それは、APECというのは三段重ねのウェディングケーキなんだ。一番下は、情報の交換あるいは人材育成、こういうようなものが一番の基礎を形づくる、その上に基準・認証であるとかあるいは投資の自由化だとかというものがある、最後に貿易の自由化が乗っかっているんだ、こういうことなんですね。我々は、このいずれもが大事だと思っております。しかし、一番下のもの、第一段階の点あるいは第二段階の点、こういったものの完成の上に最後の貿易の自由化が乗っかっているというふうな観念、これは非常にわかりがいい観念であると思っております。  そういうようなことで、我が国としては、今言ったようなことで、基礎固めから徐々に上に上がって、そして、このAPECもまた多角的自由貿易体制の開かれた地域組織としてこれから発展を期していきたい、このように考えているということを申し上げておきたい、このように思います。
  32. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 ありがとうございました。時間が参りましたので、質問を終わります。
  33. 佐藤孝行

    佐藤委員長 次に、秋葉忠利君。
  34. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 まず冒頭に、これは半分お願いなんですけれども河野外務大臣、副総理という立場でお願いをしておきたいのです。  特に、昨日問題になりました農業問題についての国内対策予算ですけれども、これが枠内なのか枠外なのか、枠内なのか外なのかというところで、いろいろと少々ニュアンスの違った答弁が出てきたというふうに認識をいたしております。これは非常に大きな問題ですし、それから大蔵当局にしてみればやはり重大な問題である。それぞれ立場があり、そして慎重な検討が必要であるということは十分わかります。しかしながら、同時にこの問題について、いわば境界線がはっきりしないということでかなり不安感を国民全体に与えている、特に農業関係者に与えているということも事実だというふうに思います。  きょう、もちろんこの場で、枠内なのか枠外なのか、すっきりとした答えを出してほしいと言っても、それは無理な話だと思います。このWTO特別委員会の最終日、総括の質疑がありますけれども、その場ででも総理からきちんとした内閣としての政府統一見解、それを出していただくことによってこの不安感を一掃していただければというふうにお願いをしたいのですけれども、まず冒頭、このことについて一言お願いしたいと思います。
  35. 河野洋平

    河野国務大臣 ウルグアイ・ラウンド交渉の結果、日本農業に与える影響は極めて大きい、こういう認識のもとに、この対策のために新しい事業、新しい対策を立てていかなければならない、こういう認識は非常にはっきりした認識として持っております。  その新しい事業、ウルグアイ・ラウンド対策の新しい事業というものに対して政府がどう取り組むかということを、政府・与党一体となって財政事情等も踏まえて大変厳しい議論をいたしたわけでございまして、そのときにまとめました政府側の考え方というものがございます。秋葉議員確かにそうした御指摘のとおりの事情もあろうかと思います。今のお話は総理にもお伝えをいたしまして、内閣として適切な対応をとりたいと思います。
  36. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 ありがとうございました。よろしくお願いいたします。  きょう伺いたい幾つかの点ですけれども、実は非常に膨大な協定内容ですし、書類からいいましても厚さが一メートルもあるというような状況でございます。とてもその内容全体を読むだけの時間がありません。もともと原文は英語の部分があるわけですが、英語で全体を説もうと思っても、私自身全部を読むだけの時間がとてもありませんでした。縮刷版の方もとても読めないというのが現実です。そういった状況で審議をしているわけで、審議の時間が十分なのかという疑問がいろいろな議員から出されておりますけれども、私もそのような危惧を持っているわけです。  それともう一つ、これが非常に気になるところなのですが、やはりこれだけ重要な問題、日本の進路に非常に大きくかかわる問題という中で、国民参加の議論になっていない。内容がかなり専門的ですし、貿易の問題、すべての人がこの問題を理解して議論するということは不可能かもしれませんけれども、まだまだそういった点で重要な点が抜けているのではないか、そういった気がいたします。  そういったことも含めて、実は、それは今やらなければ後で機会がなくなるという話ではありませんので、ともかくWTOの枠組みあるいは哲学といったようなものが国民全体に理解をされ、そして、建設的な方向に国民の総意で新たな修正が必要ならば行われるということが大事だと思うのですが、そういった意味も含めて、ひとつ議論を始められればという気持ちで幾つか質問したいと思います。  私の頭の中にあるのは、実は先ほどから、私が生まれたときとか社会に出たときとかいうようなお話がありますが、私が小学校五年のときに、これはよく覚えているのですが、社会科の時間で、これからの日本の将来というようなことを確かに習った覚えがあります。そのときに私たちが習ったのは、日本の将来というのは加工貿易なのだ、資源が少ないから外国から原料を買ってきて、それをきちんとしたすばらしいものにつくって、それを輸出しなくちゃいけない。そのことは、恐らく私だけではなくて、当時の子供たち全体に対して非常によく浸透していたのだと思います。その理解があったからこそ、それ以後の日本全体としての経済成長が非常にうまくいった、そういう気がいたします。  WTOというのはいわば一つの節目ですから、この時点において、何かこれからの世界が向かっていく方向について、日本は加工貿易で生きていくんだというほど単純な回答にはならないとは思いますけれども、ある程度のコンセンサスが必要ではないか。みんながてんでんばらばらに八方を向いていて、それでこれから非常に難しい問題を解決できるとはとても思えないのです。  そういった意味で非常に重要になってくると思うのが、WTOとの関係で特に伺いたいわけですけれども、これからの世界はどういう方向に動いていくのか、特に世界の経済はどうなるのか、貿易はどうなるのか、その非常に大きな未来図といいますか、そういったところがやはり大事だと思いますし、そういった点について議論をしながら、ある程度幅があることは当然だと思いますが、何らかのコンセンサスといいますか、そういったものができることが大事ではないかというふうに思います。  済みません、非常に大きな、大ぶろしきと言うとちょっと語弊がありますが、幅の広い質問で恐縮なんですが、例えば近未来、二、三年先とか、あるいは十年先、五十年先、一体どういうことを我々は目指せばいいのか、あるいはどういうふうになっていくんだろうか。そういったところで外務大臣とそれから通産大臣、やはり日本にとっては外交、そして産業と貿易、非常に大事ですので、これを伺いたいと思うのですが、特に日本の役割、非常に変わっている世界の中で、例えば国連中心主義なんということも言われていますけれども、それとは別としても、WTOの中でどういった役割を果たしていくのかといったあたりで、まず大きな絵が描けるのであれば、そういったところをまず伺いたいと思います。
  37. 河野洋平

    河野国務大臣 我々は、国際社会の中で正しい相互依存関係をしっかりと認識をして生きていくということが大事だろうと思います。秋葉議員がおっしゃるように、かつては加工貿易ということを言っていた時代もありますけれども、今や物の貿易だけではない、知的所有権等、目に見える、形のあるものでないものを日本が生み出していくということが大きな問題になっていると思います。  そうしたことを考えますと、我が国にとって極めて重要なのは、教育であったり研究開発であったりということがあると思います。しかし、それらはその背景に、やはり日本人の持つ文化といいますか、そうしたものが必要になってくるのだろうと思います。  いずれにしても、国際社会の中でともに生きるという基本的な認識がなければいけないということを私は考えておるわけでございます。
  38. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、今回のWTO協定というものについて、非常に大きな転換期に非常にすばらしい協定が生まれた、そのような受けとめ方をいたしました。なぜなら、今日までの場合、ガットの体制において物の貿易についてはルールがあったわけでありますけれども、今回、知的財産権あるいはサービスまでカバーして二十一世紀に向けての今後の国際経済活動の総合的な基本原則がこれで生まれた、そのように受けとめるからであります。  しかも、この時期にと申し上げるのはもう一つ大きな理由がありまして、今我々としては、非常に地域のブロック主義あるいは保護主義というものに対する警戒感を強めております。強める理由になります問題点は、もう委員もよく御承知のとおりであります。  そしてさらに、旧社会主義国あるいは発展途上国が今次々に市場経済に移行しつつあります。既に移行を宣言されておりますけれども、まだ移行は十分には行われていない。この市場経済への移行の受け皿という意味でも、私はWTOは大きな役割を果たすと考えておりまして、これはまさに歴史的な意義を有すると考えてもよろしいでありましょう。ちょうど私も加工貿易で生きる日本というのを教わった世代でありますが、その意味で我々もまた変わらなければなりません。  その中で私は、企業の海外進出というものも積極的にとらえておりますが、同時に、その結果として我が国が空洞化することは避けなければなりませんし、これは産構審の御意見の中で出てまいりました情報・通信あるいは生活文化、医療・福祉といった十二分野に向けて、我々は全体をシフトしていくことをこれから考えていかなければなりませんが、先ほど委員が提起をされました問題の中で、私は、二つのこれから我々が留意しなければならない大きな問題点を挙げてみたいと思います。  一つは、この大きく変化する世界の中で、各地域に新たな資金需要が生まれつつあります。しかし、それに対して資金を提供するメカニズムがこれで十分であるのかどうか、新たな資金創出をどのような格好で行っていくのか、それはどのような形で拠出され、将来返済をされるのか、あるいは返済されない資金になるのかといった、資金の目から見る問題が一つであります。  もう一つの問題として、私はエネルギーがあると思います。  先般終了いたしましたAPECの総会におきまして、日本はAPECの地域におきますエネルギー需給の見通しについての見解を公表し、これは了承されました。この中で提起をされております問題点は、例えばこのアジア・太平洋地域において今後非常に急速な経済発展が見込まれるわけでありますが、それとともに、並行してエネルギーの消費量は拡大をいたします。ところが、その中に占める石炭のウエートが高いということから、このままでいきますと、経済成長とともに全地球的な環境破壊の原因をつくりかねない要素を持っております。この中でいかにして省エネルギー、さらにはエネルギー源を転換するか等々の対策について、我々は国際的な協力をしていかなければなりません。  こうした視点を持ちますと、私は、今予測することは非常に困難でありますけれども、こうした問題を機敏にとらえて我々が処方せんをつくっていきます中で将来への道は開けていく、そのように考えておる次第であります。
  39. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 ありがとうございました。  もう一つ、あえて五十年後というところで、これは農業のところで出てまいりましたので、きょうは余り農業の面は割愛して質問したいと思っていたのですけれども、五十年先には例えば世界人口が百億を超える、これは悲観的な方の予測ですが、そういった予測もございます。そうすると当然食糧との問題、そして食糧の問題が出てくればこれは環境との問題も密接にかかわってくるということで、食糧問題、これをどうするかということも非常に重要な問題だと思いますけれども、この食糧の問題についても、ただ単にWTOの枠組みの中だけではなくて、より幅広い枠組みを設定する必要があるのではないか、こういった問題提起は既に何人もの議員の方がされておりますので、改めてここでは申し上げません。  第一点として出されました資金需要、創出、そしてその需要にこたえるためのメカニズムというところに関連して伺いたいのですけれども、実はWTOを考えるときに常に出てくる問題の一つとして貿易黒字の問題があります。  短絡的に言ってしまうと、日本は経常黒字が多くてけしからぬ、それはさまざまな貿易上の障壁が原因になっているんだ、だからWTOのような、ある意味で今までの人類の知恵をすべてここに盛り込んでしまったようなメカニズムができれば、それで経常黒字も解消されて日米間の貿易摩擦もなくなるんだと、まあそこまで極端に言っている人はいませんけれども、単純に考えるとそういったようなシナリオさえあらわれてきてもいいような宣伝のされ方がされているというふうに思います。  しかしながら、経済学的に、これはもちろんいろいろな説があるわけですけれども一つの立場、かなり古典的な立場をとれば、経常黒字の問題というのは、実は貿易の障壁の問題、関税の問題ではなくて、これはマクロ経済政策の問題である。既に一九八五年には、例えばシュルツ国務長官がプリンストン大学の講演の中でこういった趣旨のことを述べているわけですけれども、この問題について、逆のことを言えば、WTOができても日米貿易摩擦が解消されるとは限らない、あるいは解消されないという極論を主張することも可能だと思います。最低限、やはりWTOと同時にこういったマクロ経済政策調整ということが必要になってくる。  今通産大臣がおっしゃった資金創出の問題、まさにその中の一つの重要な問題だと思うのですけれども、今後、WTOをスムーズに運用するためにも、このマクロ経済政策との調整ということ、これをだれがどのようにやるのか。もちろん、非常に複雑な問題ですから、唯一正しい答えがあるというわけではないと思いますけれども、一般論としてどのようにお考えになっているのか、そのあたりをお聞かせいただければと思います。
  40. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは、私も的確なお答えができるかどうか十分自信がありません。ただ、当面私どもは、WTO日本の経常収支黒字の解消の問題、縮小の問題と頭の中で実は分けております。なぜなら、委員が御指摘になりましたように、WTOができた、だから日本の経常収支の黒字が意味ある縮小にそのまま進んでいくという状況は必ずしも想定できないからであります。  そして、やはりこの経常収支の黒字の意味ある縮小というものについては、一つは税制であり、もう一つは公共投資というものになろうと思います。そして、所得税減税についての御審議は既に本院でいただいたわけでありますし、公共投資基本計画の見直しも内閣として決定をし、これによって国内における公共投資を拡大するとともに、それが内需の拡大を呼び起こし、ひいては経常収支の黒字の意味ある縮小につながることを我々としては一方期待をいたしております。  しかし同時に、世界経済の面で、私は先般のEUとの定期閣僚会議の席でも議論を継続しておったわけでありますけれども日本の経常収支の黒字というものを世界経済の中でニューマネーとして意味のある使い方はできないものなのか、その視点は必要ではないのか。日本の経常収支の黒字を私は正当化するつもりはありません。当然のことながら、我々は意味のある縮小に努めなければなりませんが、同時に、サミット構成国の他のすべてが資金の受け手に回っている状況というのはやはり問題がある。先進諸国の貯蓄を伸ばす努力というものは当然ながら一方でしてもらわなければならない、その中において、世界経済全体の中において必要とされる資金の、先進国が受け手に回る状態を脱してもらうこと、これはやはりどうしても必要なことだと思っております。  ただ、この意見は私は大蔵大臣の当時からよく議論いたしましたが、大変国際的には評判の悪い意見でありまして、なかなか同意が得られません。しかし、私は、今新たな資金需要が次々に生まれてきております中で、こうした視点は依然として欠くことのできないもの、そのように考えております。
  41. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 ありがとうございました。私も、橋本通産大臣の御説にかなり賛成の部分がございますので、もう一度大蔵大臣になっていただいてその辺をやっていただくのがいいかもしれません。  それはともかくとして、もう一つやはりWTOに関連して非常に重要な問題は、アジアという地域の問題だと思います。アジア経済圏と呼ぶかどうかは別として、やはりアジアの経済、アジアの地域をどのように考えるか、そして、その中で日本がどういった役割を果たしていくのかといった観点からWTOを考えることも大事だと思います。  これについて二点伺いたいと思うのですけれども一つはEAECの問題でございます。マハティール首相が提唱をしておりますし、日本抜きでも出発するんだなんという発言さえ出てきております。EAECに参加すべきだという日本国内意見もかなり出てきているように認識をしておりますので、EAEC、WTOとの関連においてこれからどういうふうに考えていられるのか、それをまず一点伺いたいと思います。  それからもう一つは、中国と台湾、それぞれWTOに加盟をするということで動いておりますけれども、それぞれに複雑な問題もありますし、だれが支持をしてだれが支持をしない、あるいは途上国として入るのかどうかといったような問題もございます。それから、広島のアジア大会でも問題になりましたように、中国と台湾との間の微妙な問題もございます。そういった中で、日本としては、中国、台湾のWTO加盟についてどのような態度をとっていくのか。これは簡単で結構ですから、お願いをしたいと思います。
  42. 河野洋平

    河野国務大臣 前段の方は私がお答えを申し上げたいと思います。  WTOという百二十を超える国と地域が参加をする本当に世界的な貿易のルールを決めるというこの問題がいよいよ明年からスタートをしようというこの場面で、実は、APECの参加諸国、本年の議長国でございましたインドネシアから、二〇一〇年、二〇二〇年という、二十一世紀に向けて自由化の宣言をしようという御提案がありましたときに、私どもとしては、まだWTOの発足もしないうちからこういう提案はいかがなものかと思ったり、また、この提案が、アジアの、しかも発展途上国のリーダーからなされたということにも実は最初やや驚きもありました。  しかし、考えてみると、アジアの国々は、貿易と投資を促進させ、あるいはその自由化の目標に進んできたことがこのアジア・太平洋地域の極めて目覚ましい成長につながっているということをよく理解をしておって、さらに自分たちは自由化に向けて進んでいくべきだと、こういう気持ちが非常に強くおありなのだというふうに考えて、この提案はまことにいい提案であるというふうに考えたわけでございます。  そこで、お尋ねのEAECという構想がございますが、一つ我々として考えなければなりませんことは、EAECという構想が一体何を本当に目指しているものなのかということについて、まだもう一つAPECのメンバーの中で理解できない、あるいは十分納得のいかない国があるということでございます。  私は、このEAECという構想が多くの国々に理解をされ、しかも祝福されてスタートをするということであればこれは大変結構なことではないかと思います反面、一方で、EAEC構想がせっかくのアジア・太平洋の仲間たちの中に亀裂をつくってしまうというようなことになることは適当でないのではないかという心配、疑念というものがあるというのならば、これに対してしっかりと説明をする、そしてそういう懸念を持っている国に対して理解を求める努力というものをEAECの構想を考えている人たちにやってほしいということが、我々からの主張としてEAEC構想を考えている方々に向けて発せられているわけでございます。  私どもは、もちろんEAEC構想の中に加えられるであろう国々と、もちろん我々も仲のいい関係にあり、何か会議があればともにテーブルを囲んで話し合ういい仲間でございますから、こうしたことについて我々がまゆをしかめるという立場ではございません。ただし、そのことがアジア・太平洋地域の中に、先ほど申し上げたように亀裂を生ずるようなことになってはいけないのではないかという懸念を持っているというのが現在の立場でございます。
  43. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私どもは、中国、台湾、そのいずれにつきましてもガットに入っていただくことを基本的に期待をいたしております。  これは、何といいましてもこの中国の膨大な国力というものを考え、この経済というものを考えますときに、やはり国際ルールの中で行動していただける状態というのは我々としても願わしいことであります。ただ、また台湾につきましては、既に非常にすぐれた経済力を持っておられるという意味でも、当然のことながらガット対象国として受け入れるにふさわしい状況になりつつあります。しかし、それぞれに実は問題を抱えておられて、いまだに交渉が妥結できる状況にはありません。  我々は、中国、そしてまた地域としてのチャイニーズ・タイペイ、既にAPECの中でも一つの地位を持っておるわけでありますから、それぞれが入れる状態をおつくりをいただくために格段の努力をしていただきたいと願っておりますし、我々もまたそれに十分対応していくだけの努力は払っていかなければならない、そのように思っております。
  44. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 ありがとうございました。  本当にまだたくさん伺いたいことがあるのですが、少し分野を変えまして、検疫とそれから衛生の問題について伺いたいと思います。  このWTOの中で一つ非常に大きく変わる分野が、まさにこの検疫それから衛生の問題であるわけですけれども、次のような懸念がございます。  WLOの枠組みの中では、世界の共通基準としてコーデックス基準がとられる。しかし、それに対しては例外規定というのがあって、各国ともその科学的根拠が、これは少し言いかえますと、科学的根拠があればそれ以上に厳しい基準を各国が設けることはできるというような規定になっていると思います。しかしながら、そういうことになりますと、例えば、政府としてあくまでも常に国民の側に立っているとこんなことは当たり前なんですけれども、しばしばそうではないという解釈も出てまいりますので、その乖離があるということを前提に伺いたいのです。  例えば、消費者の側で何かが危険であるということを感じている、政府が必ずしもその見解をとらないような場合に、消費者の側でまず政府に対して、例えば仮に農業の残留基準ということにしてもいいと思いますけれども、これは危険ではないかと、それで、危険であるということを科学的に証明しないと政府が動かない。彼に動いたとしても、今度は政府がそれを世界の諸国に対して、WTOの参加国に対して、これは本当にだめなんだ、厳しい基準でないとだめなんだという、毒性を証明しなくてはいけないという立場になってしまう。いわば今までの安全性の基準を考える考え方、それは、例えば生産者あるいは会社、工場と言ってもいいんでしょうけれども、そちらの側で安全であるということを証明するというのが大前提だったと思いますけれども、それを覆すような正反対の方向にその安全についての大前提が移ってしまうのではないか、方向が百八十度変わってしまうのではないか、こういった危惧が表明されております。  これについて、厚生省として、いや、そうではないんだということを明確に述べていただきたいと思いますし、これからもそういったその安全性の基準についての考え方はいささかも変える気はないし、これまで以上に国民の健康あるいは生命といった観点から厳しいことを考えるんだということを言っていただければ大変ありがたいんですけれども、いかがでしょうか。
  45. 井出正一

    ○井出国務大臣 お答えいたします。  食品の安全に関する国際基準、コーデックス規格がございますが、これはFAOまたWHOの合同委員会で決められるわけでございますが、ここで消費者の健康の保護を目的として作成されてできているものでございまして、我が国としましても、この国際基準によって国民の健康は確保できるものと考えております。  しかも、今先生御指摘のように、この協定には、米や例えばリンゴみたいな、日本人にとっては摂取量の多い等、食習慣の相違といった科学的な正当な理由がある場合におきましては、国際基準よりも厳しい基準を採用し得るという規定が盛り込まれておりまして、現行の残留農薬基準の中では、国際基準より厳しい基準を我が国で用意しているのは約二割強ございますが、これは食品衛生調査会における我が国の食物摂取量等を踏まえた科学的検討に基づき設定されたものでございますから、厚生省としてはこの基準を緩和するつもりはございません。  したがいまして、国民の食品の安全確保を図っていく上でこの協定締結は支障はないと考えておりますし、今後とも国民の健康確保を第一に考えてまいるつもりであります。
  46. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 もう少し具体的なところを伺いたいと思うのですけれども、現在我が国で基準のある、残留基準値の定めがある農業の数が大体百ぐらいというふうに理解しております。世界的には全部で七百種類ぐらい使われている。ということになりますと、日本では基準のない農業に関してはフリーパスで入ってきてしまってもとめようがないということだと思いますけれども、私の理解では、今後こういったものについても、それぞれ必要と思われるものに関しては基準を日本でも定めていく、新たな基準を定めていくという方向だというふうに理解しております。  その基準の定め方について、改めてもう一度確認をしておきたいのですけれども、この基準を定めるに当たって、WTOのこのコーデックスの基準というものが採用されると否とにかかわらず、日本政府としては、これまで以上厳しいということは仮にないにしても、これまでと最低限同じような厳しさで新たな農業についての基準あるいは残留基準値を定めていく、個々の農業について定めていく、あるいは食品の衛生等についても基準づくりにおいても今までの方針を堅持していくというふうにはっきりと確認をしていただければ大変安心する人が多いと思うのですけれども、その確認をぜひお願いしたいと思います。
  47. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 お答えいたします。  残留農薬の基準のつくり方のことでございますけれども、従来でも国際基準というものを参考にしつつ、日本のいわゆる例えば特殊性、お米をたくさん食べる、リンゴをたくさんとるというような状況を判断してこれまでも決めてきておりまして、今回のこの条約の批准によって従来の決め方を変えるというようなことは、現在考えておりません。
  48. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 つまり、これまでの基準の決め方は十分科学的な根拠があるものであって、科学的根拠があるものを、協定があるからといってその科学性について新たな立場をとるつもりはないということだというふうに理解をいたします。  厚生大臣もぜひ御確認をお願いしたいと思います。
  49. 井出正一

    ○井出国務大臣 ただいま担当局長が申し上げましたとおりでございますし、また、先生御指摘のとおり、厚生省としてはそれをきちっと守っていくつもりであります。
  50. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 ありがとうございました。  最後に、もう一点、時間がなくなりましたので伺いたいのですが、実はWTO、これが仮にできても、そのことによって世界貿易のルールというものが不動のものになって、これから何世紀も動かないものとして定まってしまうというわけではないと思います。農業の問題を考えても、さまざまな問題があるということは十分認識されているところですから、このWTOをこれからどのように運用していくのか、あるいは、これから先WTOの内容を変更しなくてはならないような状況というのは当然生まれるわけですけれども、そういったことを考えた際に、日本としてそのWTOの運用あるいは将来についての展望を、WTOの組織の中といいますかそういったところで、具体的にそういった場に参加をして積極的に関与していくことが大事ではないかと思うのですけれども、その際、やはり事務局長の立場というのは非常に重要だと思います。  それで、今回日本WTOの事務局長には立候補しないようですけれども、それはそれとしていろいろと事情があると思いますけれども、今後の、いわば事務局レベルで、あるいは具体的な運用に際して、どのような手段で積極的にWTOの運用に参加をしていくつもりなのか、その辺の基本方針を伺わせていただきたいと思います。
  51. 河野洋平

    河野国務大臣 御指摘のとおり、今回WTOが発足いたしますと、事務局長人事というものが出てくると予想されます。それで、事務局長大事につきましては、現在、我が国といたしましては隣国韓国の金喆寿氏を支持するという旨公にしているところでございますが、なぜ我が国が事務局長に候補者を擁立しないのか、こういう御指摘も時々伺うわけでございます。  もちろん、WTOの事務局長は極めて重要なポストでございますから、我が国も大きな関心を持っていることは事実でございますが、今回につきましてはいち早く韓国から、国際的にも十分な経験を有する金氏を事務局長に擁立したい、ついては支持してもらいたいという御要請がございまして、いろいろな角度から総合的に検討した結果、今回は金氏を支持しようという判断に立ったわけでございます。  しかしながら、今御指摘のように、WTOにおきましてさまざまなレベルに我が国として人材を送り込むということには大きな関心を持っておりまして、今後とも、それぞれの場面で我々としては我が方の主張を述べたい、こう考えております。
  52. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 ありがとうございました。  時間が参りましたので、これで私の質問を終わらせていただきます。
  53. 佐藤孝行

    佐藤委員長 次に、前原誠司君。
  54. 前原誠司

    ○前原委員 新党さきがけを代表いたしまして、御質問をさせていただきたいと思います。  私の地元でございます京都は、織物産業が非常に、まだまだ基幹の産業でございまして、きょうは農林大臣には、集中審議外ということでございますが関連でございますので、まことに恐縮でございますが御列席をいただきまして、お答えを賜れればというふうに思います。  京都の西陣あるいは室町、山陰の方に行きましては丹後ちりめんというふうな産業でございますが、和装が低迷をしているという構造的な問題もございますけれども、一番大きな問題になっているのは、生糸の一元輸入管理というふうなことで国際価格から非常に高い値段で生糸を買わなければいけないというところが、やはり一番大きなポイントになっていると考えております。  養蚕農家を守るというふうな名目ございますけれども、養蚕業の農家の戸数の推移というものを見てまいりますと、一九七五年二十四万八千戸あった農家数が、一九九三年、昨年には二万七千戸、十分の一になっているというふうなことで、保護をしてきたにもかかわらずこれだけ激減をしている。そして結局、守るというふうなことで一元管理をしたために織物業界というものも衰退をする、あるいは海外に生産拠点というものが移るというふうなことで、共倒れの状態にあるというふうなことでございますが、この一元管理政策というものは、私は、こういう結果を見ておりますと失敗ではなかったのかというふうに思っているわけでございますが、まず大臣からその全体の評価についてお伺いしたいと思います。
  55. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 お答え申し上げますが、前段の農家戸数の激減の問題、確かに数字としてはそのとおりでございますが、副業的な養蚕経営がだんだんに、環境の厳しさもございましたし、担い手の老齢化その他から減ってきておる。今日残っているのは、中山間地帯を中心として、やはり養蚕が経営を支えることが非常に大きな部分を占めておるということで残っていることでございまして、私どもは余り、率直に申し上げますと、戸数よりも担っている養蚕農家が相当な生産性を持って耐え得るような、これが生糸価格にも響くし、また、ひいては絹業の皆さん、最終の実需者である大事な絹業の皆さんに対してもプラスになるんだというふうに思っております。  それから、一元問題についての評価でございますが、私どもは運用してきた立場からいって、繭や生糸の価格安定、振れやすい生糸価格、生糸価格は商品特性からいって大変変動しやすい、その安定を通じてやはり絹業の皆さんにもその役割があったというふうに思うわけでございます。  それで、今委員指摘の京都の絹業の皆さん、大変厳しい情勢にあるということも十二分に承知しておりますが、一つは生糸の一元管理をいたしましたが、逆に二次製品、絹の二次製品等がフリーでございまして、その辺から非常に輸入の方が増大し、殊に最近の円高等が加わって影響を及ぼしておるということでございまして、自由な原料糸の手当てがなかなかにできないという、輸入先国あるいは品質、価格等において絹業家の皆さんがなかなかその点についての自由な、何と申しますか、経営活動を制約している点はやはりあったことは否めませんけれども、全体として一元輸入だけでいろいろな問題を御指摘いただくのは多少残念だと思っております。
  56. 前原誠司

    ○前原委員 一元輸入だけが原因でないということは私もそのとおりだと思いますけれども、しかし、大きな要因ではなかったかというふうなことでは積極的にやはりお認めをいただいて、今後の、やはりより活性化していくということでお考えをいただければと思います。  今回のいわゆる関税化によりまして、要は、買う立場からすると三種類の買い方ができるのかなとは思っております。一つは、事業団から買うという今までのやり方、それからもう一つは、関税諸掛かりを含めたものに手数料四百円それから調整金七百五十円を足したもの、それからもう一つは、いわゆる関税諸掛かりというものに関税相当量、ここが六年間で徐々に減っていくわけでございますけれども、そうなった場合に、一番価格として高いのは事業団から買う場合ということになるわけでございまして、今までは事業団からしか買えなかったのが、そういう残り二つの方法である程度自由に買えるというふうなことになった場合に、果たして事業団から買う人がいるのかどうか。  事業団の買い付けというふうなものがどういう位置づけになるのかというところで非常に私は疑問を持っておりまして、事業団から買う人がいなかったら、事業団が買ってもそれは在庫として残るというふうなことだけで、結局蚕糖類事業団というふうなものの形骸化にもつながってくるし、また、事業団そのものもそうでございますけれども、いわゆる在庫調整あるいは不足をしたときの緊急措置的なものに大分役割というものが縮小してしまうんではないかと思いますけれども大臣の御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  57. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 今度の御提案を申し上げております繭糸価格安定法並びに蚕糖事業団法におきましては、このたびの農業合意によりまして、生糸、繭は関税化をされるわけでございます。  関税化をされますが、国内生糸価格等の安定から、事業団が瞬間タッチ方式で売買を行い、関税相当量を徴収するわけでございます。したがって、何人も、事業団以外でも、実需者の皆さんを含めまして、海外からの生糸の輸入は自由でございますが、関税相当量を払って、そして輸入していただくということでございます。その場合に、関税相当量につきましては、今回の制度で絹業の安定、絹業の需給上必要な数量等についてはその関税相当量差益、これを大幅に軽減いたしまして実需者の手に入るようにいたすということでございます。  それで、それによって実需者の皆さんというものはどこの国から、中国もあるしブラジルもある、そのどの糸を引いてくるか、あるいは品質が自分の織る場合にどれがいいかとか、あるいは価格はどうだという点については自由な選択はできるというわけでございまして、絹業者の皆さんが一番関心があるのはその差額水準でございますけれども、これについてはその経営の安定ということから関税相当量のいわば大幅な減額ということを現在考えておるわけでございます。
  58. 前原誠司

    ○前原委員 農水省の事務当局に確認をさせていただきたいんです。  今大臣が御答弁をいただいた関税相当量というものももちろん選択肢の一つとしてあるわけでございますけれども、それより低い価格で買うことができる、つまり関税諸掛かりをプラスして手数料それから調整金というものになると、関税相当量を払うよりもより安い値段で買えるということになるんじゃないかと思うんですが、その点についてちょっとお答えいただけますか。
  59. 日出英輔

    ○日出政府委員 先生御案内のとおり、ガットウルグアイ・ラウンドでアクセス数量を保証してやらなければいかぬということでございますが、この計算はほかのものも同じでございますが、八六年-八八年の平均輸入量をもって計算をするわけでございます。当時、日本の数字は約一万三千三百俵、俵で言うとあれでございますが、ただいまの輸入量が約三万俵近うございます。したがって、ガットの規定上は、実は現行のアクセス数量を保証すれば、それ以上のものは関税相当量をそのままとれる仕組みになっているわけでございますが、そういたしますと、八六年-八八年の平均の数字から現在までの輸入の増加ということを全く見ないことになります。裏返して言いますと、実需者が非常に不安を感じる、あるいは事業上の支障を生ずるということでございます。  そこで、先ほど大臣が申し上げましたように、法律上の形式からしますと、本当は八六年-八八年のアクセス数量だけでいいわけでございますが、実需者の輸入ということで、需給上必要な数字、三万俵までの数字につきましては、今の関税相当量そのまま、例えば七年度でございますと八千円でございますが、そういう数字ではなくて、関税額の七・五%とそれから低い調整金、それから、これから額が通産省その他と相談をして決まってまいりますが、手数料等を加えたもの、これは大変そういう意味でいいますれば、八千円に比べますと随分低い水準になりますが、そういう形で実需者の方は需給上必要な数字が手元に入る、こういうことでございます。
  60. 前原誠司

    ○前原委員 今の答弁を伺っていましても、買う側からすればやっぱり安いものを買いたいというふうなことで、なかなか事業団から買うというふうなことは少なくなってくるというふうに思います。そうなった場合に、例えば今答弁いただいた手数料、今四百円という手数料でありますけれども、そういうものが果たして四百円という額が本当に必要なのかどうかということもこれから検討していただかなければいけませんし、また調整金という七百五十円というものも、やはりガットの精神、また今度のWTO、加盟する精神から考えると、そういう障壁というものは、障壁になるわけでありますから、そういうものは低い方がいいというふうに思うわけであります。  そこら辺はぜひ要望をさせていただきますけれども、現行の四百円手数料そして調整金七百五十円というふうなものを下げて、できるだけ安く買えるような形に通産省と協議をしていただいて、そういう低い額にしていただくように要望をさせていただきたいと思います。
  61. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 お話の手数料プラス売買差額の問題、これは四百円プラス七百五十円というのは、これは現在の養蚕、製糸、流通あるいは絹業の皆さん、四者協議で決まった水準でございまして、今度の新しい制度の発足に伴ってこれをいかなる水準にするかという点については問題でございますが、今委員も御指摘のように、絹業者も大変だ、それについて、手数料なり売買差益水準については十分に配慮しろという点についてはそのとおりだと思います。  それで、当然事業団等も効率化、合理化に努めて、この四百円という手数料の問題についても検討、努力しなきゃいけないし、まあそういう意味では、やはりこれは、シルク産業と申しますか、蚕糸業界全体が合意に達するような水準をにらみながら、制度としても、法律では、この徴収の仕方については通産大臣農林水産大臣が協議するということにもなっておりまして、両省十分に話し合って決めたいというふうに思っております。
  62. 前原誠司

    ○前原委員 ぜひよろしくお願いいたします。  じゃ、次に、外務大臣お越しいただいておりますので、話を変えさせていただきます。  先般のAPECに御出席をされまして、今回のこのWTOの特別委員会でも、WTOとAPECの整合性についてもいろいろ御質問があったところであります。答弁を伺っておりますと、開かれた地域主義というふうなことで、閉鎖的なものではないのでWTOとの整合性については問題がないというふうな御答弁かと思います。私もそうAPECというものを望んでおります。  先ほど秋葉委員も御質問された件について、私も少しちょっと突っ込んだ形で御質問したいわけでありますが、では、先ほど、EAECというふうなものが目指すものは不明確である、またEAECというものが太平洋諸国というものを分断をするというふうな懸念があるというふうなことをおっしゃいました。  大臣も御多忙でございますので読まれたかどうかわかりませんが、マハティール首相と大前研一さんが書かれた本がございまして、あれを読んでおりますと、EAECというものも、別にEUあるいはNAFTAというものに対抗する閉じたブロックにするものではない、いわゆるイースト・エイジア・エコノミック・コーカスという、コーカスというものはわいわい議論をする場であって、そういう経済の塊ではないというふうなことをその本の中でも語られているところであります。  したがいまして、APECというものはそれなりのまた意義がある。しかしながら、アジアの中でも、ARFとはまた別にいろんな議論というふうなものをやる必要性もあるんではないかと思うんですね。そういった意味で、私は、EAECは運用次第では決して亀裂にならないし、また、経済問題が主流になると思いますから、その中の一番のビッグパワーである日本というものが逆にイニシアチブをとってハンドリングをしていけば、決してそういうものにはならないというふうに私は思っているところであります。したがいまして、むしろ、日本が積極的に関与をする中で、EAECというものを開かれたものにしていく努力というものを日本がみずから率先して行うべきではないかというふうに思います。  しかしながら、今はそういうふうな話ではございませんで、逆に、まあおどし半分かもしれませんが、マハティールさんなんかは、日本抜きでEAEC出発しても構わないんだというふうなことがこのごろちらほらと話になっているわけでございますが、もし仮に、現実可能性という問題点も含めて、日本を抜きでEAECを出発させるというふうな事態になったときにどうするのか、また、先ほど申し上げましたように、開かれたものにしていくなら別に日本が入ってもいいし、また主導権を握らなきゃ逆にいけないんじゃないかという私の意見に対しては、外務大臣、どのように思われるか、御意見を聞かせていただきたいと思います。
  63. 河野洋平

    河野国務大臣 今前原議員お話しになったように、EAECについてはさまざまな解釈をそれぞれの人がしているわけで、どれが正しいEAECの本音というか、正しいものなのかということは、まだ余りよくわからないと、とりわけアメリカなどは言っているわけです。  我々もEAEC構想について、一体これは何を目指すものなのか、どういうふうにこれが運営されていくものなのかということを、もっと広くAPECの加盟国に説明をされたらいいのではないか、別にこれはないしょでやる性質のものでは全くありませんし、十分に説明をされたらどうかということを申し上げているわけで、EAEC構想をそれぞれの国に説明をする努力もしておられるようです。  その説明の中で、コーカスとはいうものの、事務局を置いてどういう運営をするかというような、割合としっかりとした構想を説明をされた時期もあったり、その説明によって、いや、これはわいわいがやがややるものではなくて、かなり事務局までしっかりつくってやるというものであるならば、これはちょっとこれまでの説明と違うのではないかなどという議論、懸念がまた出たりして、まだそのEAEC構想について、定説といいますか、こういうものなんだということが、正確な説明が十分行き渡ってないというところに問題があると思うのです。  APECの仲間というものは、その仲間の中でまたグループをつくって、何かを意図的に、あるいは目的を持ってやらなければならないというものではない、おっしゃるように開かれたものなのですから。それをまたグループをつくって自分たちへ意見を集約して、何かこう自分たちの主張を通そうというような、そういう性格のものではもともとAPECというものはないのだろうというふうに我々は考えておりますが、しかし、やはりそういう懸念を持つ国がある以上は、その懸念を払拭する説明が必要ではないか。そういう説明をした上で、先ほども申し上げましたが、みんなから、祝福されてと言うと少し表現がおかしゅうございますけれども、みんながそれは結構ではないかという合意のもとでスタートをすることが一番将来ともにいいのではないか、こういうことを申し上げているわけです。  日本を排除してスタートをする云々ということを報道で一部拝見をしたことがございますが、私は全くそういうことがあるというふうに考えておりません。そうしたことを想定して、どうするかなどということを議論をしたり考えたりということを全くしておりません。
  64. 前原誠司

    ○前原委員 時間が参りましたので終わらせていただきますけれども、多分今外務大臣おっしゃったように、EAECというのはまだ実体がわかっていない、何かその概念ばかりが先走りをしているということでございますが、日本が顔の見えない外交と言われるのは、言われたものについて乗るというふうな今まで対応が非常に多かったと思います。逆に、そのEAECというものを、乗るか乗らないかというふうな議論よりも、じゃ、それがどういうものであるべきなのかという議論日本からアメリカなりあるいはアジアの国々と行うような主体性をぜひ持っていただいて、アジアの中での、変な意味でないリーダーシップといいますか、またそれが回り回って日本の国益につながるような対応を外務大臣としてもぜひ主体的に行っていただきたいということを御要望申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  65. 佐藤孝行

    佐藤委員長 前原君の質疑は終了しました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  66. 佐藤孝行

    佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。平田米男君。
  67. 平田米男

    ○平田委員 各大臣また委員の方々、連日大変御苦労さまでございます。  ウルグアイ・ラウンドの妥結によりまして今後の世界経済にもたらす効果といたしまして、OECDは、昨年の十一月、二〇〇二年の時点で世界のGDPが二千七百四十億ドルふえると予測をしております。またガット事務局は、ことしの四月に、市場アクセスの成果が実施されることにより、二〇〇五年までに世界の所得が年間二千三百五十億ドル押し上げられると試算をしております。  また、先ごろは、自由化によって競争条件が整備されることや、経済規模の拡大効果などを勘案すると、サービス貿易の市場開放効果を加味せず、少な目に見ても年間五千百億ドルと、予測値を上方修正をしているわけでございます、もう既に周知のとおりかと思いますが。我が国につきましては、OECDは四百二十億ドルのGDPの増加になる、また、ガットは二百七十億ドルの所得増と予測をいたしているわけであります。  OECDとガットの予測値は発表されているわけでございますけれども、我が国については、我が国といたしましては、このウルグアイ・ラウンドの妥結、WTOの設立によってどのような経済効果があるのかということについては予測をしていない、こういうふうに伺っているわけでございます。  そういう前提でお伺いをするわけでございますが、まずこのOECD、ガットのそれぞれの予測値についての評価、これについて外務大臣通産大臣、また経済企画庁長官にお伺いをしたいと思います。
  68. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員が御指摘になりましたような数字がそれぞれから公表されておるところでありますが、私どもは、ウルグアイ・ラウンド合意、これが実施されることによりまして、世界的な関税の引き下げを初めとした貿易自由化と貿易ルールの強化の実現というものが、貿易障壁の低減を通じて世界全体に所得増加をもたらすという点では同様の見方を持っております。  そして、それぞれの試算にはそれぞれの考え方があるわけでありますけれども世界の所得、貿易を拡大するという観点におきましては、我々試算をいたしておりませんから数字は別といたしまして、同様の見解を有しているところでありまして、これらの分析を今評価いたしております。
  69. 河野洋平

    河野国務大臣 いずれにいたしましても、世界貿易が一方的措置あるいは二国間主義、地域主義、こういったことになるということは決して好ましいことではないわけでございまして、こうしたWTOが設立をされて共通のルールで世界貿易が拡大をしていくという点は、何よりも高く評価をしなければならないところだと思います。
  70. 平田米男

    ○平田委員 何か手違いで経企庁長官が来ておいでにならないという話なんですが、すぐ連絡をしていただいてお越しをいただきたいというふうに思います。  まあこのWTOの問題は農業に絡んだ話が多いわけでございますけれども日本の経済というのは、農業も重要でございますが、その占める比率というのは、こう申し上げてはなんですが、GDPにおける比率というのはそう大きくはない。そこで、他の産業にどういう影響があるのか、こういうことが非常に関心を持たれるのが当然かと思うんですが、なかなかその農業の話にかき消されまして、他産業に対する影響というものが余り論議されないということは、私は若干不思議な感じがいたしております。  担当者に伺いますと、予測がなぜできないのか、モデルがありませんとか、ガットも数字が二つもあってなかなかそう頼りになる数字じゃありませんよ、こういうお話なわけでございますけれども、じゃあ、もう一つ端的にお伺いいたしますと、このWTOの設立によって日本の経常黒字あるいは貿易黒字というものが減るのかふえるのか、このあたりについての予測はどのようにお考えなんでしょうか。
  71. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私どもは、このガット体制からWTO体制に移行いたしますについては、市場経済のシステムというものを世界的な規模でより一層機能させる、そのための基盤の整備が行われる、また同時に、地域におけるブロック主義あるいは保護主義に傾きそうな気配というものへの抑制効果をもたらす、さらに、ちょうど今劇的に進行しつつあります旧社会主義諸国あるいは発展途上国が市場経済へ移行する際の受け皿を整備する、こうした効果は当然のことながら予測の中に入るものと思っております。そして、こうした点からもウルグアイ・ラウンド合意というものを評価したいと考えております。  ただ、今委員が御指摘になりましたような角度からとなりますと、世界経済そのものが拡大傾向をたどる中で、当然のことながら日本貿易というものは輸出、輸入ともに増加をすることが見込まれるわけでありますけれども、果たして、それではそれが差分として貿易収支の黒字についてどうなるかということになりますと、それぞれの時点における内外の経済情勢はもちろんのことでありますけれども、為替レートの動向等、あるいは現在比較的落ちついておりますけれども、例えば原油価格のおとり、こうしたもの等が必ず大きく影響してくるといったことから、確定的な予測は困難だと考えております。
  72. 河野洋平

    河野国務大臣 今通産大臣御答弁申し上げたとおりだと思います。このことと、つまりルールを確立をするということと日米関係におきますインバランスというものとは必ずしもそのままつながるものではないと思います。ただ、関税の引き下げその他によってさらに一段と日本国内の規制緩和へのモメンタムがふえてくるということがあれば、それはそれだけの効果は期待できるというふうには思います。
  73. 平田米男

    ○平田委員 まあ確定的予測はできないという話でございました。ただ、先ほど申し上げましたように、このWTOの成立によって影響を受けるのは農業の従事者だけではなく、他の多くの国民が影響を受けるわけでございます。そのときに、確定的予測ができないということで政府の見解を明らかにしないということになりますと、企業人とか国民というのは、このWTOによってどう私たちの生活環境あるいは事業の環境が変わっていくのかということを自分で考えなければいけない。政府さえも予測ができないということに対して個人で予測をしなさいというのは、これまた酷な話でございます。  私は、そういう観点からすると、今の確定的予測ができないから予測をしないというのは、行政を預かられる政府といたしましてはどういうことなのかな、こういう疑問を持たざるを得ないわけでございます。  それで農水大臣にお伺いするのですが、このWTOの成立によりまして日本農業はどういう影響を受けると、これは予測ができているのでしょうか。
  74. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 お答え申し上げますが、御案内のとおり、WTO農業協定はオール関税化、米だけ例外を認められてオール関税化という国境措置、それから国内支持水準については基準年次から比べて二〇%の実施期間の削減、それから輸出補助金については金額で三六%、数量で二一%削減、そういう農業協定でございます。  これに対する日本農業の影響につきましては、やはり当面は関税相当量を、内外価格差を前提とした関税相当量、これを張りまして、品目によりましては国家貿易関与するということで当面は直接的な激しい影響はないだろう。ただし、中長期に見ますと、やはり国際市場の影響が国内市場に対してもたらされるということもございますし、また先ほど前段で申し上げました国内支持価格水準については実施期間中の削減等の制約も出てくる、価格政策の運用についていろいろな制約も加わるということでなかなか厳しい情勢でございますので、今日それに対応する措置としての新しい農業構造を実現するための国内対策を講じようとするものでございますが、先生、段々の先ほどの御質問のように、定性的にはそういうことでございますが、定量的にはなかなか申し上げにくい。  全体としては、我が国が農産物大輸出国であり、あるいは輸出国であればその面の発展成長の契機になりますけれども、御案内のとおり大純輸入国でございますので、むしろ悪影響を防止するという点に重点があるわけでございます。
  75. 平田米男

    ○平田委員 まさに農水大臣日本農業は厳しい状況になるという予測、まあ定量的にはできないとおっしゃいましたが、そういう予測をされておいでになるわけですね。他の産業については予測ができない、農業についてだけは厳しい予測ができる。  重ねてお伺いしますが、六兆百億円の対策でございますが、定量的に予測はできないというお話をされましたが、この六兆百億円を積まれた根拠というのはあるのでしょうか。
  76. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 お答え申し上げますが、それぞれの事業について積み上げを行っております。  一口に言えば、生産性の高い効率的な経営、この担い手をできるだけ急速に育成して、それによって国内農業生産の大部分を担うような農業構造をつくる。そのためには、基盤をつくるための基盤整備、あるいは農地の流動化のための施策、さらには前向きに取り組もうとする者の従来の負債の負担の軽減とか、さらにはそういう担い手の後継者を確保するための新規就農者の確保とか、それぞれ事業を積み上げまして六兆百億の事業費を算出したわけでございます。
  77. 平田米男

    ○平田委員 よくわからないのですが、積み上げられた根拠はよくわかりませんですが、年間の農業の生産額というのは幾らでございますか。
  78. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 お答え申し上げます。  昨年の米の不作等であれでございますが、大体この数年は十一兆円でございます。
  79. 平田米男

    ○平田委員 この六兆百億円が従前の別枠なのか別枠でないのかというのがここでも議論されておるわけでございますけれども、別枠だとして考えましても、一年間の生産額の半分以上を積み上げられているわけでございますね。四百数十兆円の国内生産額のうちの十一兆円分についてこれだけの対策をとられている。農業については大変手厚いと申し上げると、農業に従事をしておいでになる皆さんから御批判を受けるかもしれませんけれども、他産業の方から見ると、なかなかやっていただいているのかなという意見もあるかもしれません。  それはそれといたしまして、他の産業、これは輸出競争力のある産業もあるかと思いますが、そうではない産業も極めて多い、こう言われているわけでありますけれども、そういう産業に対して、農業については厳しい環境になりますよと予測をし、対策をとりながら、他の産業については予測ができません、確定的な予測ができないから黒字か赤字か、経常収支もよくわかりません、こういう御答弁で、私は、国家を預かっていただいている立場として、国民の期待におこたえになっているとはちょっと言いにくいのかなと思うのですね。  難しいのはよくわかります。それは、ガットも数字が倍ぐらい違っているわけであります。しかし、少なくとも、定量的に言えないにしても定性的には、農業はまさに定性的とおっしゃいましたが、この産業はなかなか大変ですよとか、だからこういう対策をやるべきだと思いますとか、この産業はまあまあ逆に発展できますよ、こういうようなやはり予測というものを国民に私は示すべきではないのか。定量的な予測をしてくださいということではなくて、そういう趣旨での予測というものをお考えになるお気持ちはないでしょうか、そしてまた、対策をきちっと立てられるお考えはないでしょうか。
  80. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今WTOそのものによる黒字の見合いというところから御議論をいただきましたので、確かにそういった独自の試算をいたしておらないということをお答えを申し上げたわけであります。  ただ、今委員が御指摘のような角度からでありましたならば、多少御答弁を申し上げたいと思いますのは、例えば繊維産業でありますとか、皮革業でありますとか、我が国の産業で競争力の弱いと想定される産業につきましては、このウルグアイ・ラウンド交渉の中自体におきまして、例えば関税交渉の中で税率の論議をする、あるいは猶予期間を設ける等、さまざまな手当てを行ってまいりました。そして、その影響というものを最小限度に食いとめるための措置は、この協定そのものの中で一つは担保されておりますということを申し上げたいと存じます。  それと同時に、今日非常に大きな問題として出てきておりますのは、このWTOの問題とは別個の問題でありますが、このところの急速な円高の中で、我が国の産業の空洞化というものが深刻に検討をされております。そして、第二次世界大戦後、今日までの日本の産業の歴史を調べてみますときに、常に時代をリードしてくる産業というものがございました。そして、その主役はしばしば交代をいたしてまいりました。  そうした中で、産構審の基本問題小委員会がリポートをしていただきましたものは、これはWTOと絡めたわけではありませんけれども、今後の日本というものを考えました場合、活力と創造性にあふれ、国際的に調和のとれた産業構造の形成に向けて十二の分野を指摘されております。例えば住宅関連あるいは医療・福祉関連あるいは情報・通信関連、今世紀末から来世紀に向けて我々が育成を図るべき事業というものがそこにはっきりと打ち出されております。  同時に、先月一カ月間をかけまして、特に中小企業における為替の変動による影響というものを調査をいたしました。そして、その中から我々は非常に積極的な中小企業の経営者の方々のイメージというものを受けとめさせていただいておるわけでありますが、当然のことながら、この円高の中で非常に大きな影響を受けておられます。その影響を受けとめ、より付加価値の高い商品開発に向けての努力を志向される方、あるいは今日まで輸出中心で事業を展開してこられた方々で国内への新たな展開を求められる方、さらに、現在の主たる業務の安泰なうちにと申し上げてはいけないのかもしれませんけれども、安泰なうちに新たな分野への展開を求められる方、非常に積極的な姿というものをそこには読み取ることができると思います。  私どもとしては、次年度の政策決定に向けて、こうしたいわば前に進もうという方々に対していかにその構想段階から手をおかしすることができるか、こうしたことを工夫していきたいと考えておりまして、我々は今、このWTOの発効によって与える効果という視点ではございませんが、今後に対する方向というものは今申し上げたような中で組み立てつつあるわけであります。
  81. 平田米男

    ○平田委員 外務大臣外務大臣は副総理というお立場で、実はきょうは総理に来ていただければ総理にお尋ねしたいわけでありますけれども、今随分長い時間で通産大臣から懇切丁寧な御説明をいただきました。  しかし、私が伺っているのはそういうことではなくて、産業の空洞化は今の円高を前提にしてもう始まっているわけです。それに対する対応はそれなりにお考えいただいているということも、私も承知をしております。これは、今の現内閣というよりも前の内閣で考えているという部分が多いわけでありますけれども、しかし、今私がお伺いしているのは、その現状の円高、また空洞化の懸念の中で、さらにWTOが入ってくることによってどういう心配が起きるのか、あるいはまた逆に言えばいいことが起きるのか、これについて明らかにすべきなのではないでしょうかという御質問でございまして、空洞化の問題についてはやっておいでになるという御説明では、大変懇切丁寧ではありましたけれども、私自身は納得しがたいわけでございます。  先ほども僕は貿易黒字のお話もいたしました。これから貿易は拡大します、こういう話です。拡大するというのは、輸入も輸出も比例的に拡大するのだったらば、現在あるのはまさに経常収支の黒字なわけですから、この黒字も拡大をするであろう、こう予測するのが素直なとり方なのではないかと思うのです。そういう心配があるのではないか。そうしたら、ますます円高になってしまうのではないか。今でも、空洞化を懸念して厳しい環境の中で事業をやっておいでになる方々にとって、WTOが果たして福音になるのかあるいは悪魔になるのか、それさえわからない。このわからない状態で皆さん対応してくださいと言うのは、いかにも私は冷たいのではないのかな。確定的な予測ができないにしても、定性的な予測をやるお考えはありませんか、こういうふうにお伺いをしておりまして、今なされていないわけですから、これからやられるおつもりなのかそうでないのかだけ端的にお答えをいただけると大変ありがたいと思います。
  82. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 大変申しわけありませんが、その試算をされるかされないか、これは経済企画庁長官がお答えになるべき話だろうと思います。  ただ、黒字の問題について、今委員このWTOに関連してお述べになりましたけれども、私は、WTOそのものと今の経常収支の黒字の問題とを直接に結びつけるよりも、むしろ経常収支黒字につきましては、我々はISバランスから考えましても、減税の効果、また公共投資の効果というものによって意味のある縮小を図る方が先行すべきであろうと考えておりますし、現内閣はその方向で既に方向を定めておるわけであります。  また、各分野におけるそれぞれの業種ごとの将来性、これは確かに委員の御指摘になるような問題点はあるかもしれません。しかし、少なくとも国内経済、国際経済の両面から考えまして、私は、この貿易あるいは投資の自由化というものが加速されること、そして障壁が低くなること、これは長期的に見て日本経済にマイナスを生ずるものではないと考えております。  さらに、例えば来年の七月に製造物責任法が実施に移るわけでありますが、この時点までに、例えば通産省の場合でありますと、電気製品等を中心にして相当部分が自己認証に移ってまいります。こうした規制緩和の方向の中でも新たな展開は生まれてくるわけでありまして、この影響を一概に私は、定性的、定量的と言われますが、なかなか数字ではとらえにくいものではなかろうか、そのように感じる次第であります。
  83. 河野洋平

    河野国務大臣 ただいま通産大臣申し上げましたように、経常収支の黒字というものは、むしろ我々はマクロ経済政策によって問題の解決に向けて進んでいくべき課題ではないか、こう考えているわけでございます。WTO協定の枠組みの中で我々が行動するということは、即黒字幅を縮めるということのためにこれを行うというふうには我々は考えておりません。  さらに、しかしながら、我々WTOについて考えてみますと、この協定によって我々が得るであろう利益、それは物以外のサービスにかかわる新たなルールづくり、あるいは一方的措置に対する対抗措置、こういった新しいルールが、貿易立国とまで言う我が国の産業構造、そうした体質にプラスになる、トータルに考えてプラスになるということは、議員も恐らくお認めいただけると思います。  問題は、そうした中で、このことによって、何といいますか、被害を受けるといいますか、痛みをこうむるであろう部分についてどう考えておるか、こういうことだろうと思います。  これは、先ほど農水大臣からも御答弁を申し上げましたように、農林水産業のように、新しい制度が導入されたことによって直ちに転向ができる、構造の大転換ができるということのない産業でございますだけに、我々とすれば、でき得る限りの対応をとらなければならぬ、こう思っているわけでございまして、その他さまざまな産業、さまざまな立場の方々がこのことによって少なからぬ影響を受けるということが仮にあったといたしますれば、それぞれのお立場における努力あるいは新しい発想というものをもって対応しなければならないのではないか、こう思います。
  84. 平田米男

    ○平田委員 大臣がおっしゃるとおり、WTO、私は賛成でございまして、これによって日本経済がますます発展するだろうと、まさに定性的に予測をしているわけでございます。私の質問の趣旨もよくわかっていただいておられまして、全体はいい方向に向かうにしても、産業の中では逆の方向性があるかもしれない、それもそうだと御理解をいただきました。それはそれぞれの産業の努力で、こういうお話でございましたが、私は、基本的には自助でなければいけないので、そこも賛成でございます。  しかし、ほかの産業に従事している者からしますと、農業に対してはこれだけ大きな声でされているのに、我々はどうなっちゃうんだろうか、政府も予測を示してくれない、どうも対策ができないから予測もしないのかしら、こううがった見方さえ出てくるのではないか。  私は、この際一遍落ちついて、WTO、これはもう通すべきは当然だ、そしてこれによって日本の経済がいかに発展するか、そのうち大変なところは何なのか、こういうのをもう少し、それぞれの産業の状況の中まで入り込んで検討をした上で、それなりの見解なり、あるいは対策の検討というものをされるのがしかるべきではないか、こう思うんです。これまで努力をされておられないという趣旨で私は申し上げているわけではなくて、これはどの内閣になったとしても、どちらが与野党になったとしても、これはやるべきことなんではないのか。  もう経済国連、世界経済の国連ができるんだ、こういうような大変インパクトを与える、しかも、物だけではない、サービス等も含めた新たな枠組みができるということですから。まあ日本は計画経済じゃありませんから、市場経済なんで、細かいところまで言う必要はない。しかし、全くの市場経済で全部国民に任すということであったならば、今のこの肥大化した政府責任からいったら、やはりちょっと私は、十分国民の期待にこたえてない、こう思いますので、ぜひ前向きに検討していただいて、私は、通産大臣もいろいろお考えかとは思いますが、やはり日本は商工業があって初めて立っている国なわけでございまして、そこの一番肝心な部分が立ち行くように考えていますよ、こういうふうに示すこと自体が私は政治責任なんじゃないか、そういう観点で今お伺いをしているわけでございまして、今できてないということを責めるだけでは何も物事は始まるわけじゃありませんので、その辺の御検討をぜひお願いをしたい、こう思うわけでございますが、もう一度御答弁をいただければ幸いでございます。
  85. 河野洋平

    河野国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、WTO協定の批准承認をお願いするに当たってそういうことがあるかというふうに私ども議員のお尋ねを聞いたものですから、これまでのような御答弁を申し上げたというふうに御理解をいただきたい。  しかし、政府とすれば、いずれにしても国内におきますさまざまな経済活動について細心の注意を払い、目配りをし、その最大の自助努力にもかかわらずどうしてもうまくいかないという部分があれば、それについてその原因を取り除くために何ができるかということをいつもこれまで考えてきたわけでございまして、そのこととWTO協定のこととを分けてといいますか、一緒でなく考えている。これはもう通産行政というのはいつも、このたびのこういうことがあるからそういうことを考えるというのではなくて、これまでもずっと考えてきたわけで、これから先もそういうことになるだろうと思います。
  86. 平田米男

    ○平田委員 どうも私の質問の趣旨がわかっていただいてないのかなというふうに思いますが、農業については、WTOをやることによって厳しい状況になりますよと予測をされたわけです。他の産業については、定量的にできないとおっしゃったのはわかりますが、定性的にも何らの予測もおっしゃっていない。そのおっしゃっていないことについてどうなんでしょうかと申し上げておるわけで、何もWTOと切り離して常に考えられるのは当たり前の話で、私はそんな当たり前のことを今申し上げているわけではありません。  なぜ農業のことだけをお考えになり、予測になるのかという、そういう感じを他産業の人から見ると思うわけですよ。予測ができないということではなくて、予測をすべきなのではないか。何も問題ありませんよと言うのは、それはそれでいいわけです。だけれども、よくも悪くもどっちなのかわかりません、何も言いません、これでは、じゃ、国民は、このWTOというのは我々は一体どう見ていったらいいのかわからないまま前に進まざるを得ない。農業の方だけは厳しいですよ、だからきちっとした手当て、六兆百億円します、こういうメッセージは国からはっきり伝わってきている。しかし、他の産業については何のメッセージも伝わってこない、これは私はいかがなものかと思っておるわけであります。  これだけお伺いしても返事がないということになれば、他産業は自力で予測もし考えもしなければいけないということでお伺いするしかないと思いますけれども、もう一度、くどいようですが再度お伺いをします。
  87. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先ほど、長い答弁と言われましたので答弁を控えておりましたが、もう一度申し上げさせていただきます。  私どもは、現在、既に産構審の報告を受け、今世紀から来世紀に向けての新たな産業分野の展開をどうすべきかも検討をいたしておるわけでありますし、また、この為替水準の変動の中で、その円高影響を特に非常にきつく受けております輸出に関連する中小企業の分野に対する実態の調査も行い、その上で来年度の方向というものを、新たな分野展開に向けて創造的な仕事ができるための方向を模索する、それに対しての支援措置を組むといった方向で準備をいたしつつあります。  また、ウルグアイ・ラウンド交渉のプロセスにおいて、既に競争力が非常に心配をされております、例示で私は先ほど繊維と皮革製品と申し上げました、こうした分野に対しては、できるだけその被害が僅少に食いとめられるような交渉もいたしてまいりました。そして、そういう方向での努力は、これから先もいたします。
  88. 平田米男

    ○平田委員 経常収支の黒字の問題はマクロ経済の問題だ、そういうふうに言われても、なかなか国民は納得しにくいんですよね、経済の専門家じゃありませんので。現に、減税をやった、あるいは公共事業をやった、しかし円高の恐怖というのは国民の中から消えていないわけでございまして、皆さん任せておいてください、安心してくださいと言われても、それぞれの事業者あるいは従業員の方々もそういう不安の中で日々暮らしているということをぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。  時間もありませんので質問を先にしたいと思いますが、今のような御答弁ですと、何となく国民の印象からすると、農業については手厚い配慮ですね、十分かどうかわからないけれども、していただいているようではあるけれども、他の産業の者にとっては何か割り切れない気持ちがあることを最後に申し上げて、次の質問に移りたいと思います。  先ほど通産大臣から産業の空洞化のお話がございました。まず、産業の空洞化ということをどのようにとらえておいでになるのか。経済企画庁、来ておいでになりますか。では、まず経済企画庁からお答えいただけますか。
  89. 大来洋一

    ○大来政府委員 産業の空洞化でございますが、最近の円高と申しますのは、やはりこれ、ファンダメンタルズから乖離した急激なものでございますので、これを背景といたしましてアジア地域等から製品類の輸入が大幅に増加しております。同時に、製造業の海外直接投資も九三年度にはアジア地域を中心に増加をしております。こうした輸入の増加、それから日本の製造業が国内にではなく海外に投資をする、こうした現象のもとで厳しい対応を迫られる企業というものが出てきておるわけでございまして、日本経済が空洞化するのではないかという懸念も高まっているというふうに認識をしているところでございます。
  90. 平田米男

    ○平田委員 通産省も同様の認識でよろしいのでしょうか。
  91. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先ほど来繰り返して申し上げておりますように、私は円高を本当に懸念をいたしております。そこはどうぞお間違えないようにお願いをいたしたい。  そこで、我々、これを見ておりまして非常に気になりますのは、昨年初来、急激な円高が出てき たわけでありますけれども、こうしたことを背景として、九三年度には前年度比一〇・七%増、百十一億ドルという海外直接投資額に上っておりますし、九四年度においてもその傾向は続いております。  こうした海外投資が増大する、一方で国内の設備投資がなかなか低迷して伸びてこないという原因の中には、まさに御指摘のように、この経常収支の大幅な不均衡を背景とした行き過ぎた円高の進展、同時に内外価格差の存在、国内の既存産業が成熟化したこと、さらに新しい業を起こす意欲の減退など、我が国の産業の閉塞感、こうした構造的な要因があると考えられております。  また、こうした状況が継続した場合に、将来に問題があることは間違いがありません。特に、我々としては、これから先を考えますとき、例えばAPECの域内の経済発展等を考えますと、私は海外進出する企業の趨勢というものは、なかなかこれから、それでは頭を打つかと言えば打たないだろう、その趨勢は続くであろうと思います。それだけに新たな業を起こしていくことが必要であろう。そして、先ほど来申し上げてきておりますような新たな分野への展開を含めて、新規の事業をいかに育て上げるか、既存の産業の事業革新にいかに支援をするかといったことを我々はしていかなければならない、そのように考えております。
  92. 平田米男

    ○平田委員 産業の空洞化が懸念されている、それは急激な円高が主たる原因である、製品の輸入が増える、また製造業の海外移転といいますか、直接投資がどんどん行われておる、こういうお話でございまして、今通産大臣からは、その対策までお話をいただいたわけでございますが、新産業を起こす、当然新産業を起こすためには規制の緩和もしなければいけないということも前提でお話をなされたんだろうというふうに思って伺ったわけでございます。  今、空洞化というふうに言われたときには、産業の空洞化に、さらに金融の空洞化ということも言われているわけでございますが、これも含めて、大蔵省、金融の空洞化についてはどのような認識をしておいでになりますか。
  93. 日高壮平

    ○日高政府委員 金融・資本市場の空洞化ということが最近いろいろな現象をとらえて議論されていることは十分承知をいたしております。ただ、一口に空洞化という議論がなされる場合でも、それぞれの現象によってよくそれを分析をし、その原因を把握しなければ、それに対する対応策がなかなか決めかねるというのが実情でなかろうかというふうに思います。  例えば、一つの現象として、空洞化現象として言われておりますものの中に、東証の外国株の取引が減っている、あるいは東京証券取引所における外国企業の上場数が減っている、あるいは同じ東証関連では、特に中国の企業が東京を通り越してニューヨークで上場しているではないか、そういう御議論がございます。  こういった問題については、基本的には、いわゆるバブルがはじけて我が国におけるいわば証券市場全体が閉塞状態になっておる、そういう状況のもとでそのビジネスチャンスが減ってきているというのが基本的な背景としてあると思いますけれども、しかし、そうは言いながら、我が国におけるその上場のための維持費用が高いとか、あるいは新しい外国の企業が入ってくるための基準が厳し過ぎるのではないか、そういう御議論があることも事実でございますので、現在この問題については東京証券取引所とも御相談をしながら、その改善について検討を進めております。今のところ、来年一月から何とかその方向で実施できないかということで勉強しているところでございます。  他方で、もう一つの現象として、ロンドン市場における日本株の取引が非常に膨らんできている、これが空洞化現象の一因ではないかという御議論もございますけれども、この点についてはまだまだ私どもよくその把握が完全にし切れていないところがございますが、一応私どもが現在まで調べた限りでは、ロンドンにおける取引は、すべてというか、九割以上がリスク負担を回避するために東京の市場につながっているということで、必ずしもこれをもって一概に空洞化と言えない面もあるだろう。この点はもう少しよく調べてみなければならないと思っておりますけれども。  いずれにしても、御議論がございました空洞化というものは、本来東京で行われるべき取引が行われないで外国で行われるようになるということが起これは、それはゆゆしきことであろうと思いますので、私どもとしては、それぞれの現象に即していろいろ実態分析をしながら、必要があれば対応策を講じてまいりたいというふうに考えております。
  94. 平田米男

    ○平田委員 今検討中だということでございますが、有価証券取引税をやめれば株の取引が活発になるという意見もあるようでございますが、私は、そんなに簡単に済むものならすぐなくせばいいと思っておりますが、そんな簡単なことではないのではないか、こういうふうに思います。今後検討をして早期に対策を練る、こういうお話でございますが、ぜひ、一日も早く結論を出していただいて十分なる対応をしていただきたい、こういうふうに思うわけであります。  産業の空洞化の議論をするときは、どうしてもやはり円高というものが、我々、何とかしなくちゃいけないんじゃないか、こういうふうに思うわけでありますけれども、その円高の問題の中で一つ言われているのは、直接投資の問題があると言われております。  対日貿易黒字削減に関しまして、アメリカ議会技術評価局がことしの十月に発表した多国籍企業に関する研究報告でこういうことを言っておるわけですね。日米貿易の不均衡を是正するには米国企業の対日直接投資を大幅にふやす必要がある、こう結論づけております。  報告によりますと、日米貿易は、一九八三年から九二年の平均で七〇%以上が親会社と子会社による関連企業取引である。日本企業とその関連子会社との貿易はさらにその九三%を占める。このうち、販売子会社への製品供給、生産子会社への部品供給など、日本からの輸出は輸入の、九二年には二倍、八七年には六倍だったそうでございます。一方で、アメリカ企業と在日子会社との貿易は、アメリカ側の輸出超過ではあるけれども、この貿易量は全体の五%にしかすぎない。この結果、関連日本企業間取引の不均衡が結局日米貿易の不均衡の大きな原因となって、不均衡とほぼ同じ増減の傾向を持っているんだということを言っているわけであります。  確かに、日本側の対米直接投資はアメリカ側に対して三倍である、こう言われているわけでございまして、アメリカとヨーロッパの間はほぼ均衡している。日本アメリカとの間は三対一で、大変な差がある。これは指摘されるとおりなわけでありますが、これが直ちに円高に結びついているかどうかという結論は置いておくとしましても、相互に、やはり直接投資をお互いにやり合うということは、私はぜひとも必要なのではないか。なぜこの三倍もの差がついてしまっているのか、この原因はやはり究明をしてみる必要があるのではないかというふうに思うわけでありますが、通産大臣、このあたりの原因についてはどのようにお考えでございましょうか。
  95. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員から御指摘がありました投資バランスにつきまして、今私の手元にありますフローの数字で見てみますと、実は、日本からの対米投資に比べましてアメリカからの対日投資、けた一つ違う数字がございます。そして、確かにこれは非常な不均衡と言えると思います。  私は必ずしも、この直接投資の内外不均衡というものが、特に日米間におきましての黒字問題に大きな影響があるかどうかとなりますと、これはいろいろな見方ができると思います。しかし、いずれにしても、日本に対して直接投資を呼び込んでいく努力というものは当然のことながら進めなければならない、これは私は御指摘のとおりだと思います。  そこで、その状況を調べてみますと、投資バランスだけでいきますと、確かに九三年度における日本からの対米投資額百四十七億ドル、アメリカからの日本に対する直接投資額は九億ドル、極めて不均衡であります。その理由というものを調べてみますと、一つは不動産が高い、高価格である。あるいは各種の規制などが存在をするために、外国企業が日本における事業展開についてコスト高になるという要因があると言われております。  今日までも、外資系企業を対象とする税制上の支援措置でありますとか低利融資など、各種の対外直接投資促進施策というものを一生懸命努力をしてきたわけでありますが、本年度から特にこうした問題について一層積極的な努力をする、そうした方向を打ち出してまいりました。  さらに本年七月、総理を議長といたしまして、対日投資会議を設置いたしました。この席上で、我が国の市場を魅力あるものとするために、外国企業から意見を求め、要望を聴取いたしたところでありまして、こうした努力を続けながら、さらに我が国の市場の高コスト構造というものを解消するために、規制緩和というものへ積極的に取り組んでいくことなどを通じて対内直接投資の促進のための環境整備に努めたい、御指摘を素直にちょうだいし、そのような方向を考えております。
  96. 平田米男

    ○平田委員 通産省自身が、日本の土地が高い、これが直接投資の大きな障害になっているというふうにお認めになられることは、私は大変有意義だと思うんですね。バブルの崩壊で地価は下がって、もう土地問題は終わりなんだ、こういうふうに一部の人が言われている部分がありますけれども、しかし、国民一般からも、また地方で事業をやっていて、大きく拡大あるいは都市へ進出しようと思っている国内企業者も、そして海外の大会社も、やはり日本は土地が高過ぎて進出ができない、一般国民は住宅を十分に取得することができない、こういうことになっていることは事実なわけでございまして、私は、本来土地問題は国土庁の所管、あるいは建設、大蔵もその責任の一端を担っておいでになるかと思うわけでありますが、通産省としても、やはり土地問題というものを正面からきちっととらえていくということが私はぜひ必要だと思っております。  そういう意味で、先ほど大臣から明確におっしやったということは、今後もそれをターゲットにして、通産省としての対応というのは直接できないことかもしれませんけれども、しかし内閣一体になって対応していただきたい、これはお願いをしておきたいと思います。  もう一点通産省にお願いしたいのは、産構審が立派な答申を出していただいております。私はそれなりに評価をしておるわけでありますけれども、産構審を見ても、どうも土地コストあるいは地価の高い問題についての明確なるやはり対応というものが弱いような気がいたしております。日本の場合は、産業ということを考えて、とりわけこれから新産業をどう起こしていくかということを考えたときに、この高い地価コストというのをどう克服していくのかという問題を解決しないと、他のあらゆる手を打ったとしても、私は十分な効果は出てこないのではないか、このように思うわけでございまして、これもぜひそういう視点で今後も取り組んでいただきたいとお願いを申し上げておきたいと思います。  時間がありませんので先へ進みたいと思いますが、新産業を起こすということの中で、規制緩和を進めなければいけない、こういうことでどの内閣もこう言ってきたわけでございます。与野党を通して同じ方向を向いているわけでありますけれども、今村山内閣は、五年の間に規制緩和推進計画を立ててやっていく、こういうお話でございますが、私はなぜ五年なのかな、もう二十一世紀まで六年なわけでございまして、それだけ余裕があるのかしら。  例えば、二〇〇〇年になりますと、日本世界一の高齢化の国になります。スウェーデンを追い越して高齢化率世界一なわけです。すなわち、二〇〇〇年というのは日本にとっては大変高い高い山、世界一高い山を経験する、こういう状態になるわけでございまして、規制緩和というのはもっと急がなければいけないのではないか。  そういう意味で、私は、五年という根拠というのは恐らくないんだろう、恐らく区切りがいいという程度で設けられているのではないかと思いますが、私はもっと規制緩和はスピードアップすべきだ、このように思うわけでございますけれども、本来これは総務庁に聞くべきことなのかもしれませんが、しかし、まさに産業の責任を持っておいでになるのはやはり通産大臣でいらっしゃるので、ぜひ通産大臣にお答えをいただければと思いますが。
  97. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、その規制緩和というものについて、いろいろな議論がありますけれども、目的、その内容等によって非常に急いで行わなければならないもの、また急いで行えるもの、十分時間をかけて議論をすべきもの、さまざまなものがあると思います。そして、細川内閣のときに平岩研究会に諮問をされたものが、五年という数字が出、答申がなされていたことも御承知のとおりでありますし、あの答申は、大変失礼でありますが、暴力団対策法まで規制緩和の対象に挙げておられまして、私どもとしては腰を抜かすような思いでこれを拝見をいたしました。しかし、経済的な規制というものは原則としてやめていけというその指摘は、私は非常に正しかったと思っております。  それだけに、私どもとしてはこうしたさまざまな政府規制というものを、そのすべてを対象にしながら積極的かつ計画的にその緩和に取り組む、その姿勢は必要であると考えておりますし、十分意味のある成果を残すためには五年という時間は必要であろう、そう判断をいたして規制緩和推進計画を策定すると決めたと思っております。  ですから、当然のことながら、例えば通産省所管、先ほど私は製造物責任法に関連して家電製品を例示に挙げたわけでありますけれども、この五年という計画期限の中にありましても、できる分野また急ぐべき分野は早急に前倒しして実施をしていくということは当然でありますし、その姿勢は我々は忘れないつもりでおります。
  98. 平田米男

    ○平田委員 各省、大体規制緩和となると横並びでやるわけですね。なかなか出してこない、行政改革にしても同じような対応をとっているという新聞報道が出ているくらいでございますが、私は、通産省が率先して、五年ということなら五年でも結構でございますけれども、通産省だけはもう三年でやる、このぐらいの意気込みを持っていただいてやっていただきたいな、こういうふうに思います。  やはり通産省が日本の経済を今まで引っ張ってきたという自負がおありになるだろうと思いますので、これから新しい産業構造を変えていかなければいけないわけでございまして、そのためには、他省庁と横並びではなくて率先してやる、こういう姿勢をぜひ示していただきたい。先ほどの大臣のお言葉の中にそれがにじみ出ていたのではないか、こう思うわけでございます。  それで、規制緩和に関連して懸賞金つき定期預金についてお伺いをしたいと思いますが、これは大蔵省と公正取引委員会、来ておいでになるかと思いますが、城南信用金庫が最高五万円の懸賞金つきスーパー定期を発売をいたしましたところ、大蔵省あるいは全国信用金庫協会が自粛を求めた、こういう報道があるわけであります。その経過の御説明をいただきたいと思います。
  99. 西村吉正

    ○西村政府委員 まず、今回の城南信用金庫の懸賞金つき定期預金につきまして大蔵省として自粛を求めたという事実はございませんことを、またこれからもそのような予定はないことをお断りしてお答えをさせていただきます。  私どもとしては、この問題はこの問題として、もう少し広く、規制緩和と申しますか、金利の自由化の問題を考えてみたいということで、先日見解を申し上げたところでございます。  十月の十七日に、長い間かかりましたが、預金金利の自由化が完了いたしました。で、各金融機関におきましては、金利の自由化を積極的に受けとめまして、創意工夫をこれまで以上に発揮して多様な金融商品の提供を行い、金利の自由化の成果を広く預金者に還元することが期待されているところでございます。  ただ、その場合に、いろいろな方々の声を聞きますと、一方において、金融機関間の競争が一層促進されることは、いろいろな手段を使っても望ましいことだという考え方もあれば、他方、金融機関間の競争というものは金利その他本来の金融サービスを中心に行われることが基本であるというお考えもあるとお見受けいたします。  そこで、金利自由化後における預金の商品性や金融機関間の競争のあり方につきまして、利用者とかあるいは競争政策の精通者等を含めました有識者の御意見を聞く場を設けることとし、金融機関の創意工夫を生かしつつ適切な競争の促進を図り、金融自由化の円滑な推進に努めたい、このように考えている次第でございます。
  100. 平田米男

    ○平田委員 そういう大蔵省の態度が、何かやろうと思う人たちを頭からぼんとたたくことになるわけですよ。  それは今おっしゃったように、理路整然と、一度検討しなければならないという御説明はございました。しかし、本来自由にするというのがあるべき姿なのであって、何かやると、それは問題がどうか一遍検討してみますと、こういうふうに一々言われておったならば、やる気のある人もやる気をなくしてしまうわけです。それで何が規制緩和なんだとだれでも思うわけでございまして、これは何も自粛を求めると言っているわけではありませんとおっしゃっていますが、まさに自粛を求めたのと同じ効果を、知恵を絞って頑張ろうとしている人たちにしたのと同じなわけでありまして、私は、根本的に大蔵省は反省してもらわなくちゃいけないと思うのですよ。  私は、何も懸賞金つきだけのことを言っているわけじゃありません。すべての規制というのをもう一遍逆に考えなくちゃだめですよ。  今までのお役人は、こう申し上げるとなんですが、予算をとり人をふやし規制をふやすと、これは成績がよかったわけでありますね。しかしこれからは、いかに予算を節約をするか、いかに人員を減らしていくか、いかに規制をなくしていくかというところに官僚の力を発揮してもらわなくちゃいけないのに、従前と同じようなやり方でやっておるというのは、これは大蔵省らしくないなと、時代を担おうとしておいでになる大蔵省――らしいのですが、らしくないと私は言いたいのですよ、本当は。  ですから、副総理、どうですか。こういうのはもうやめたらどうでしょう。こんな懇談会をやられるということ自体が無言の圧力です。ぜひ、規制緩和を推進するという立場ならば、このような法律で許されるようなことを一々言わない、こういうふうに明言をしていただきたいと思うわけであります。
  101. 河野洋平

    河野国務大臣 規制を緩和しなければならないという政府の方針を正しく理解をして、適切な措置をとっていただきたいと大蔵省に申し上げたいと思います。
  102. 平田米男

    ○平田委員 公正取引委員会もおいでになっておりますが、公正取引委員会は今どのようなこの問題についての対応をしておいでになりますか。また、このような問題について今後ほどのような基本的な方針で臨まれるおつもりなのか、お述べをいただきたいと思います。
  103. 小粥正巳

    ○小粥政府委員 お答え申し上げます。  ただいまお尋ねの城南信用金庫の懸賞金つき定期預金、この問題につきましては、まず私ども公正取引委員会の見地から申しますと、不当景品類及び不当表示防止法という法律がございますけれども、その観点からは、その限度内のものとなっております。したがいまして、いわゆる景品表示法の観点からは特に問題がない、こういうふうに考えております。  そこで、一般論でございますけれども、法令の範囲内でどのような販売促進活動を行うか、これは、金融業に限らずどの産業においても当然でございますけれども、それぞれの、個々の事業者の自主的な判断によるものであることは当然でございます。したがいまして、その業界における事業者団体がそのような自主的な判断を抑えるように働きかけるということでありますと、これは独占禁止法の観点から申しまして基本的に好ましいものではないと考えております。  さて、本件でございますけれども、先ほど大蔵省の方から経緯についての御説明がありましたけれども、私どもは現在、全国信用金庫協会から伝えられるような自粛要請ないし自主ルールの内容等につきまして私どもとして実態把握のためのヒアリングを行っている、こういう状況でございます。現在ヒアリングを進めている段階でありますけれども、その結果、実態を十分に把握した上で独占禁止法の観点から適切に対処してまいりたい、そういうふうに考えております。
  104. 平田米男

    ○平田委員 ぜひ厳正な対応をしていただきたいと思います。今、もう公取が頑張っていただくことが、日本国民にとっては大変有意義なことではないかというふうに思うわけであります。  大蔵政務次官、おいでになっておられますが、先ほど副総理があのように言っていただきましたけれども、どうですか、これはもうここではっきりと自由化に、やります、このようにお答えをいただけますでしょうか。お答えいただけるのなら答弁いただいて結構でございますが。
  105. 萩山教嚴

    ○萩山政府委員 役不足で申しわけございませんけれども。  金融の分野におきます規制緩和は、競争の促進により国民の金融に対するニーズの多様化、そしてまた高度化に対応して経済の効率化、発展に寄与するものであるということは、平田先生御存じのはずであります。大蔵省としては、預金金利の自由化とか金融制度改革の実施など、金融の分野の規制の根幹部分の規制緩和を積極的に進めているところであります。これからも推進してまいるところであります。  金利自由化後における預金の商品性のあり方について、ただいま銀行局長からもお答えがありましたが、有識者の意見を聞く等、あるいはまた金融機関の創意工夫を生かして適切な競争の促進を図りたいという意向を持っておるわけであります。金融の自由化の円滑な推進に資するということが重大なことではなかろうかなと思っております。  答弁、余り満足でございませんかもしれませんが、ひとつ御勘弁のほどをよろしくお願いいたします。
  106. 平田米男

    ○平田委員 副総理が明確に御答弁いただきましたので、それが内閣としての恐らく結論になるだろう、こういうことを判断をいたしまして次に移りたいと思いますが、規制緩和に関連してといいますか、公共料金の値上げの問題についてお伺いをしたいと思うわけでありますけれども、経済企画庁おいでになっておるかと思いますが、五月の二十日に七つの公共料金につきまして凍結宣言をいたしまして、年内引き上げ実施を見送ったわけでございます。その後、高速道路料金の引き上げにつきましては九月の二十日に認可が行われました。来年四月から引き上げるということでございます。  その結果どういうことになったかといいますと、第二東名・名神の大部分が暫定供用になる、こういう予定になっているわけでございます。確かに料金の引き上げは先延ばしになりましたし、圧縮をされました。しかし、暫定供用ですから、御承知のとおり計画は六車でございます。六車を四車やる、真ん中やるという話ですから、そうすると、あと残りの工事どうするかというと、改めて両側をまたやらなければいけないということになります。用地の買収は一遍にやるというお話のようでございますけれども、工事を二回にやるということは、工事費というのは相当高くなる。私は、五割増しぐらいになるんじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。  そういたしますと、国民には、表面的には値上げは抑えましたよ、こういうふうに言えますけれ ども、しかし、長い目で見たら、国民の負担というものを重くする、このような結果になってしまったのではないかと思うわけであります。  私は、公共料金の値上げの問題、今まで何か問題があるとすぐ、圧縮をするとか先延ばしをするという形で、何となく国民にサービスをしたような雰囲気を与えていたわけでありますけれども、私は、それはおかしいんじゃないかと。今言われているのは、まさに、根本的に公共料金を見直す、あるいはリストラ、リエンジニアリング等々をもうしっかり実施をして、抜本的な制度まで改革した上で、公共料金どうするのか、こういう発想がなければ、国民のためには本当は何にもならない。これを我々はよく自覚をしなければならない。  そういう意味で、経済企画庁にお伺いしたいのは、経済企画庁としては、この公共料金の引き上げについて、まあ見直しをしたりあるいは先延ばしをするというようなことについて、そういうような私が申し上げたような考えがあるのかないのか。また、今回の高速道路料金の引き上げの問題については、どういう原則で容認されたのか。このあたり、明確にお答えいただけますでしょうか。
  107. 谷弘一

    ○谷(弘)政府委員 平田先生御質問の、今、公共料金のうちの凍結にかかった部分のことだと思いますが、この七事業につきましては、五月の二十日に公共料金の凍結という措置が決まりまして、その後七月に入りまして、末でございますが、事業の総点検という、料金をつくっておりますコストあるいは制度、そういうようなものにさかのぼりまして、各事業体に自主的な点検をお願いいたしまして、その結果を踏まえまして、今後とも公共料金につきまして、実施時期及び改定幅についても、安易な引き上げは厳に慎むというようなことで極力調整をしつつ改定等あるいは検討を進めている、こういうことでございまして、特に高棟道路につきましては、今後ともその料金の全国プール制の問題、この中での建設をどう進めていくかという基本的な問題について、今後建設省等で検討をきちっとしていくというふうな形で進んでいると承知しております。
  108. 平田米男

    ○平田委員 ほとんど答弁になっていない感じなんですが、副総理、今申し上げたとおりでございまして、公共料金、それは上げないにこしたことはないんです。私も、先延ばしにし圧縮したのはいいと思います。  しかしその結果、工事費がふえてしまって、しかも暫定供用ですから、なかなか交通量もそんなに多く収容できないわけですから、そういう結果をもたらしたというのは、そこの部分は消えてしまっておるわけですよ。そこ全部、トータルで国民の利益になっているのかなっていないかという観点で公共料金の問題考えるべきであって、引き上げを抑えるためには、リストラ、リエンジニアリング等々、抜本的な改革をやるべし、こう思うわけでございますが、御意見いかがでございましょうか。
  109. 河野洋平

    河野国務大臣 本年、前内閣が公共料金の一括凍結という決定をなされたわけでございます。これは、さまざまな公共料金の値上げが一時期に集中したということもあって、そのことが国民生活に大きな影響を与えるという配慮から、恐らく一括、当分の間凍結という御判断をなさったものと私は思っておりますが、いずれにしても、そのことが合理性があったかどうか。そしてまた、凍結をする場面において、一体どういう意味を持った凍結であるかということが、もう一つ明確でなかったのではないかという感じを私は持っているわけです。  いずれにしても、これら公共料金につきましては、きちっとした内容が点検をされて、おっしゃるように、国民の負担というものがどういう形になるのか、それが受益者負担という原則もございましょう、さまざまな視点からこれを点検をして、そして考えられるべきものと思います。  今委員指摘の暫定供用がいいかどうか、暫定供用によって工事費が相当多大なものになるのではないかという御指摘は、これは担当者が事実をもって判断をしなければならないと思いますが、私は、やはり公共料金の引き上げという点については、合理性とそれから利用者あるいは国民の納得が得られるということが何より必要だと考えております。そうした点、十分事務当局は考慮の上、判断の上決定をしたものと認識をいたしております。
  110. 平田米男

    ○平田委員 リストラ、リエンジニアリングをやる必要がないかということについては御答弁がありませんでした。お答えになりますか。
  111. 河野洋平

    河野国務大臣 それはもうリストラ、リエンジニアリング、当然考えるべきことであって、これらはそれぞれの公団なりその他真剣に考えて対応しているというふうに考えます。
  112. 平田米男

    ○平田委員 経企庁長官、入られたそうでございますが、何か手違いで御連絡行ってなかったそうでございますけれども。  今、リエンジニアリング、リストラやらなければいけないとおっしゃいました。しかし、今回果たしてそれをやっているのかどうか。これから永久有料制ということを考えて、そういう制度に切りかえられれば、またできる。しかし、発注の仕方とか、細切れ発注なんかやると高くなっちゃうわけですよ。二十キロ延長で工事を発注するなんということはもうないです。非常に細切れでやっている。そういうようなことは全然改善されてませんですよ。  だから、リエンジニアリング、リストラをやっているというふうには私は思えないわけでありまして、せっかく経企庁長官おいでになりましたので、高速道路料金の値上げについて今伺っているところでございますが、あとまだ七つのうち六つ残っておりまして、それについては徹底したリストラ、リエンジニアリングをやられるおつもりなのかどうか、この点だけお答えいただけますでしょうか。
  113. 高村正彦

    ○高村国務大臣 民間は本当に血のにじむようなリストラをやっているわけでありますから、公の部門が、あるいは公共料金関係事業体がぬくぬくとしていいわけないわけでありますから、先生がおっしゃった趣旨を体して十分できるように、経済企画庁としても監督主管官庁に御相談してまいりたい、こういうふうに考えております。
  114. 平田米男

    ○平田委員 ぜひしっかりやっていただきたい、こう思います。  時間がありませんので先に進みますが、アメリカ経済が不況の中から復活をした要因は、新興企業が伸びて、大企業のリストラを支えたことであると言われております。空洞化が懸念をされ、また、日本の産業構造の転換が求められている今日におきまして、日本においても新興企業を伸ばすことは極めて重要である、これは先ほどから各大臣もお述べいただいているわけでございます。しかし、中小企業庁の調査でも、一九八〇年代に入りまして、新規開業が減少する一方、廃業がふえる傾向にある、九一年までの三年間では大企業まで含めた全企業数が戦後初めて減少をした、このようになっております。  これの一番大きな問題は、地価が余りにも高くて新規開業の障壁になっている、こういう問題がございます。また、ベンチャー企業の開業を促す融資制度、投資制度がない、現実にない、こういう御意見がございます。現に、ベンチャー企業を起こした人たちは、公の資金等々を活用したのではなくて、結局自分の人脈で友人知人からお金を融通してもらってようやく起こしてきた。今無担保で借りられるのは国民金融公庫の数百万円しかない。お金を貸してくださいと言うと、土地がありますかと。土地がない者は新規事業を起こせない、こういう状態になっているわけであります。  先ほど通産大臣は、新産業を起こさなければならない、規制緩和はそのためにやるんだとおっしゃいましたが、同時にそれをサポートする投資制度、融資制度というのをしっかり充実しないと、それは単に言葉だけで終わってしまう、このように思うわけでございます。  ぜひこの点、制度をどう改めていくお考えなのか。とりわけ、投資というのはリスク資金なわけでございまして、日本の株式制度というのは安全資金になっちゃっているわけです。もうちょっと本来の投資制度というものを復活させないとだめなのではないか。こういう観点も含めて、通産大臣または大蔵省、お答えいただければ、時間がありませんので、短時間によろしくお願いいたします。
  115. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 現在までやっていることはそれでは割愛いたします。  そして具体的に、来年度、私どもは、シーズ研究に対する助成を含む技術改善費補助金の拡充、それからベンチャーエンタープライズセンターへの債務保証基金の積み増し、さらに投資損失準備金制度の創設及び欠損金の繰越期間の延長などの要求を今行っているところであります。そして、こうした施策を含めまして、有機的な連携を図ることにより一層効果的な新事業支援というものを行っていきたいと考えております。  しかし同時に、やはり新規の事業の円滑かつ継続的な発展のためには、そのほかにも現在まで実施している政府関係機関における支援策があるわけでありますが、やはり何といいましても民間資金の円滑な供給が不可欠であることは間違いありません。通産省といたしましては、民間資金の円滑な供給というものを促進し、特に立ち上がり時における資金需要にこたえるために、資本市場の利用者である企業のニーズを踏まえながら、店頭公開市場を初めとする資本市場の改善に向けて関係当局に対しての働きかけを現にいたしておりますし、これからも強めていきたいと思います。御支援をお願いをいたします。
  116. 西村吉正

    ○西村政府委員 御指摘の点につきまして、政府関係金融機関という観点からお答えを申し上げたいと思います。  国民金融公庫におきましては、企業に長期に継続して雇用されている従業員の方々などが独立開業を行うのに必要な資金を融資するために、貸付限度額等を優遇した特別貸し付けを行っております。また、中小企業金融公庫におきましても、中小企業者がみずから開発した先端技術等を企業化するために必要な資金を融資するための特別貸し付けを行っているところでございます。さらに、本年の二月、企業家精神に富み、将来成長の可能性がある中小企業の新事業展開を支援するため、中小企業金融公庫に新事業育成貸付制度を創設したところでございます。  以上のようなことで、このような分野についても配慮をしておるところでございます。
  117. 平田米男

    ○平田委員 全然配慮されていないのですよ。大体事業をやるのに今数百万円でできますか。ラーメン屋さん一つやるのに数百万円じゃ足りないのですよ。それを新規技術でもって何か製造業をやろうと思ったら、数億円あるいはそれ以上のお金が必要なわけです。それをすぐ貸してくれますか、今。ないですよ、そんな制度は。そういう制度を早くつくらないと、新産業をつくるつくると言ったって、これはもうかけ声だけで政府は何の支援もしていないと言われるのが落ちでございます。それはもう十分各大臣おわかりのことと思いますから、しっかりそれはやっていただきたい、通産大臣。大蔵省もしっかりやっていただきたい。  もう時間がありませんので、あと残り、外務省の質問はちょっときょうはもうできないということで、最後、労働省とそれから文部省にお伺いしたいと思いますが、今、働く方々は不安に駆られております、もう賃下げがあるんじゃないか、いや解雇があるんじゃないかと。若い学生はことしはもう就職ができない、こういうことで悲鳴の声が聞こえているわけでございまして、景気は何か底を打ったと、いやもう平成不況は去年の十月で終わったというふうに言われておるようでございますが、実際、実感はそうではない。ますます産業の空洞化、歯どめがかからないのではないか、前途は非常に暗いという感じを国民が持っております。ですから私は、先ほどからWTOでどうなるんだという話もしつこくお伺いをしたわけでございます。  ところで、農水大臣、この六兆百億円の対策で農業の雇用はどれだけ伸びますか。
  118. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 農業の雇用が流通加工とか付加価値部門の活発化によって出る可能性はございますけれども、全体としての雇用効果、雇用を特に推進するという考えはございません。
  119. 平田米男

    ○平田委員 農業もこういう状況にあるわけでございまして、今新産業の話も申し上げました。労働省だけあるいは文部省だけで十分対応ができるとは私は思っておりませんが、それぞれいろいろな報告書とか等々出ておることも十分承知をいたしておりますけれども、まず文部大臣にお伺いするのですが、ことしは相当厳しいですね。来年の三月はことしの三月よりも就職できる人は一〇ポイント、短大の場合は三〇ポイントも下がるのじゃないか、こう予測をされております。この現状、また次の年、大体どういう予測をしておいでになるのか、またそれに対する対策、どのようにお考えなのか、お聞かせいただけますでしょうか。  時間がありませんので、労働大臣もあわせてお伺いをしておきますが、このような今の雇用不安の中でどのような対策を緊急にとろうとしておいでになるのか、また、今の新産業を起こすとか、あるいはミスマッチの問題ですね、こういう問題をどう解消していくおつもりなのか、あわせて御答弁いただけますでしょうか。
  120. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 先生御指摘のように、十月にとりました統計では、大卒者で就職が決まっております者は七割強でございまして、また短大卒の方は四二、三%ということで、例年になく低いわけでございます。新卒者に対する有効求人倍数も大変例年に比べて低い、こういう傾向が続いております。  基本的には、やはりバブル以降の不況からの脱出がおくれているということもございますし、また、先生が先ほどから質問されております空洞化現象というものも進んでおりますし、また、企業家のあるいは経営者のマインドも非常に萎縮した状況が続いておりまして、そういう中で、いかに新卒者の雇用機会を確保していくかということは、これはもう御本人にとりましても、長年その方を育ててこられた保護者の方にとりましても、また私ども文部省にとりましても大変重大な課題でございます。  私どもとしては、まず第一には、企業団体、日経連、経団連、日本商工会議所、中小企業団体連合会等々、私自身回りまして、そういうことのお願いもしてまいりましたし、また、大学関係者を集めまして就職問題懇談会を開きまして、就職指導の徹底もお願いをしております。  しかしながら、そういうことだけでは解決できないわけでございまして、やはりこういう先生の御質問のようなものを通じまして世論を喚起し、経営者側が、短期の経済サイクルだけで採用人員を決めるということではなくて、やはり長い経済サイクルの中で雇用人員を決めていくというように、少し物事の考え方を変えていただきたいと思いますし、また学生の方も、中堅企業あるいは中小企業等で大変いい職場もあるわけでございますから、自分の適性に合った、自分の希望にかなったそういう場所を広い視野に立って探していただきたいということも考えておりますし、その中で特に女子の新卒者に対する扱いを企業側も十分、また十二分に御配慮をいただきたいと考えております。  いずれにしても、毎年の話でございますので、平成七年度の概算要求では就職指導に関する予算、定員を要求しておりますので、文部省としても、こういう就職指導に関しましては一段と文部行政の中で重点を置いてまいりたいと考えております。
  121. 浜本万三

    ○浜本国務大臣 委員の質問は、雇用不安に対する認識と対策ということだったと思います。  労働省におきましては、二〇〇〇年ごろまでの産業、雇用の姿や、これに基づく政策の方向性につきまして、雇用政策研究会というのを開いていただきまして、本年の六月に中期ビジョンを取りまとめていただきました。それによりますと、規制緩和などの構造改革等が行われることを前提にいたしました場合に、製造業においてはある程度雇用需要は減少するということが見込まれておりますが、一方では、サービス業や情報・通信分野、住宅、医療・福祉分野などで大幅に需要が拡大するであろう、雇用が拡大するであろう、こういう分析をしていただいておるわけでございます。そうなれば労働力の需給関係はほぼ均衡するであろうという見通しを立てております。  しかし、産業構造の変化が進みますので、当然労働の移動が予想されるわけでございます。その場合には、社会的痛みをできるだけ少なくするために、失業のないような労働移動を考慮しなければならないと思っております。その対策を今一生懸命立てております。
  122. 平田米男

    ○平田委員 時間になりましたので、終わります。  ありがとうございました。
  123. 佐藤孝行

    佐藤委員長 次に、古賀正浩君。
  124. 古賀正浩

    ○古賀(正)委員 関係閣僚の皆様方、連日御苦労さまでございます。  今、当節時世としてはやるものは、貿易自由化、国際化、そういったたぐいのことでございまして、このWTOも大変大きな課題ということになっておるわけであります。そういうことからいたしますと、国際信義上はできるだけ早く了知をして、そして国会は承認をすべきではないか、こういう話もあるわけでございますが、ただ、こうして連日ここで答弁、論議を聞いておりますと、必ずしもなかなかそういうわけにはいかないなという思いがいたします。やはり一番大きな問題は、農業食糧などが大きな問題でございますが、きょうは総理あるいは大蔵大臣ども御出席ではございませんから、そういう問題はこの次に、御社席のときにとっておきまして、きょうはその他の問題について御質問をさせていただきたいと思っておるところでございます。  何と申しましても、予告編だけいたしますと、貿易自由化、比較生産性ということになりますと、日本食糧の生産性とかなんかでは大変問題があるわけでございます。加えて、先般来いろいろな論議があっておりましたように、長期的な地球上の人間の食糧需給ということに対してはかなり先行き暗いというみたいなものもある。こういうときにこれでやっていって大丈夫かね、こういう話があります。いや、それは六兆百億円がありますという話もございますが、本当にそれで大丈夫かということについては、議論を聞くほどどうも確信が持てないというみたいなこともあるわけでございます。  話がかわりますが、一昨日、中国の残留孤児が日本に調査で訪ねてこられました。それを見て本当に涙を禁じ得ないわけでありますが、敗戦後、日本の国家の庇護もないあのときに苦労して、五十年間苦労した方々であります。その御苦労を見ながら、また春を求めることができないということもあるわけでございますが、事食糧というのは普通の工業製品などと違って、うっかり間違いますと、いや間違うた、これはしもうた、ごめんなさいということでは済まない。やはり人間の、日本人の命にかかわるものでありますから、その辺をきちっとやはりやらなきゃいかぬということがございます。  そういった意味では、今後もうちょっときちっと整理したところでいろいろな論議もさせていただきたい、こう思っておるところでございます。政治責任ならば、議員をやめたり落選をしたりすれば済むわけでありますけれども、事一億二千万人の国民の食糧ということになりますと、やはり八つ裂きになってもやむを得ない、そのようなこともあるわけでございますから、この点についてはよりどっこい慎重に議論をすべきではないか、こう考えておるところでございます。  そこで私は、この八年間の長かったガットウルグアイ・ラウンドのいろいろな経過をかいま見ておりまして改めて思ったことは、やはりガットの事務局長、最後に調整案を出します、例えば最後でありますとサザーランドという方がおられました。その前にはドゥニという調整事務局長がおられました。そういう方たちの役割の大きさ、力の大きさみたいなものがあったわけであります。  もうちょっと何とかならぬかということで、何とか会って話をしたり陳情したりしたいということがございましたけれども、実際はなかなか行っても会えない。また、会ってもなかなかまともな話ができない。こういうことで、長期的に見ながら、もうちょっと日本として態勢のつくり方がなかったのかね、こういう思いも片やするわけであります。そのあたりには一つ、げすの知恵は後から出るということをいいますけれども、後海のほぞをかんだような思いが確かになかったといえばうそになるということがあるわけでございます。  そこで、そういう経験に照らしまして、今回WTOの新しい設立問題というのが年明けということに予想されておるわけでございますが、そのときに既にもう三人ぐらいの方がその事務局長に、できる事務局の、WTOの事務局長に就任したい、こういう運動があったやに新聞では報じられております。一人はルジェロ・イタリア元貿易相、それから二人目にサリナス・メキシコ大統領、三番目に金、これはお隣の韓国でありますが、韓国商工部・資源部長官ということでございまして、我が国は、先ほど秋葉先生の御質疑に対しまして河野外務大臣は、金長官をできるだけ支援をするという姿勢をとっておったということもお伺いしております。  そこで私は、一つ疑問に思いますのは、そういうことならば日本からこういう事務局長候補を出す、そして推進するということをもっとやったらいいのじゃないか、こんな思いがするわけであります。今外務大臣おられませんが、後ほどこれ質問の通告もしてございますから、これについてもう一回お答えをいただきたいという思いがするわけでございます。  それと関連をいたしまして、実はこれだけ国際化の時代が広がってまいりますと、日本も今後国際機関で働く日本人の役割も非常に大きいのじゃないかという気がいたします。そのときの日本人がどのぐらいおられるのかということを外務省あたりで聞きますと、いや実はいろいろなあれからしますと、例えば世界貿易量に比べますと、日本の事務局の職員比率というのは余り多くはないということもあるわけでございますし、また、国際機関の分担金比率などのシェアで見ましても、どうも日本人は余り多くないではないか、こういううらみがあるような気がするわけでございます。  もちろん、日本人は言葉の障害みたいなものもあるわけでございますから、そういうことになりますと、なかなかハンディということですんなりいくわけにはいかないかもしらぬ。しかし、我が国の方針として、やはりこういうときには国際公務員みたいなものをもうちょっと出したらどうか。出すためのいろいろな障害があるならば、その障害を何か政策的に打ち破ってやるみたいな努力もしたらどうか。こんなふうな思いがするわけでございます。  これも、外務大臣おられませんけれども、あるいは外務省のお役人の方でも――よろしゅうございますか、大臣。済みません、どうも。意地悪したみたいで恐縮でございます。
  125. 河野洋平

    河野国務大臣 ちょっと半分しか質問を聞いていなかったものですから、もう一回お願いできますか。
  126. 古賀正浩

    ○古賀(正)委員 そうですか。一つは、WTOの、今度、来年の一月組織されたときに事務局ができますね。事務局の事務局長に立候補した人が三人いるそうです。韓国からの、きょう、さっき秋葉先生から御質問がございました金さんというのもそうですね。それについて、日本からもうちょっと出す努力をしたらいいんじゃないかという素朴な国民の疑問があると思います。それに対してどうかというお答えを一つ。  それともう一つ、これだけ国際社会が広がってまいりまして、国際機関の活動が活発になってまいりますと、日本の役割も非常に大きい。そうなると、日本の国家公務員みたいな人をもうちょっと起用していいんじゃないか。そのためにいろいろな障害があれば、政府としても何かその障害を打ち破る努力をするような方法はないんだろうか。その二点についてお答えいただきたいということでございます。
  127. 河野洋平

    河野国務大臣 ちょっと中座をしておりまして、申しわけありませんでした。  確かに、先ほども御質問をいただきましたが、WTOの事務局長については、このWTOという組織が自由貿易の新しいルールを定めるための中核的な役割を果たすというものだけに、大きな関心を持たなければならないと思いますし、また私どもは持っております。  事務局長大事についても私ども関心を持っておりましたが、韓国が、先ほど申し上げました金喆寿という有能な、国際的に名の通った方を候補者として決定をして、我が国に支持の要請がございました。金喆寿さんは、ガットの中でアンチダンピング委員会の、一時ですが議長を務めるなどして、非常にそうした経験も豊富な方であるというふうに私ども承知をしておりまして、こうした方が我々の、そういう言い方はどうかと思いますが、アジアの国々の中から手を挙げられるということであれば、もちろん他の二人の候補者も、極めてこれは国際的に名の通った有名な方々、我が国としても関係のある方ではありますけれども、韓国のこの候補者を支持することが適当であろう。もしそこで日本もまた手を挙げるということになれば、恐らく共倒れということにもなりましょうし、ここは韓国の候補者を支持するということが適当ではないか、こう考えた次第でございます。  もちろん、今議員も御指摘のように、まだ三人の候補者がそれぞれ手を挙げているわけで、どこに落ちつくかということは、予測はまだする段階ではございませんが、我が国としてはこの際金氏を支持したい、こう決めたわけでございます。  それから、確かに、国際機関の中で日本人の活躍の場をもう少し積極的にサポートしてはどうか、こういうお尋ねであろうと思いますが、私も全くそう思います。  ニューヨークの国連の事務局の中でも、たしか私の記憶に間違いかなければ九十人程度の日本人が働いているわけですが、これはそういう計算の仕方がいいかどうかわかりませんが、日本の拠出額に比べれば九十人という人の数は極めて少ないのではないかという指摘もございますし、また一方、ガットの事務局の中では、日本人は恐らく一人か二人がこれまで働いていたというふうに聞いておりまして、こうした点も、もっと積極的にこうしたことに関心を持つべきであるというふうに思います。  ただ、一般的に申しますと、こうした国際機関は給料が非常に安いとか労働条件が余りよくないという説もございまして、なかなかそれを積極的に望むという方がそう多いというふうにも実は聞いておりません、公務員の中で。  しかし、そうしたことなども考えながら、サポートできる部分はサポートして、支援をして、大いに国際機関の中で日本人が活躍をするということが本来望ましいのではないかというふうにも考えております。
  128. 古賀正浩

    ○古賀(正)委員 私も、聞くところによりますと、ガット事務局には日本人は一人しかいなかったということを聞きます。人数が多ければ日本の主張が入れられるようになるかどうかとは全然別問題でございますし、また国際機関の公平性からしますと下手なことはしない方がいいというふうな気もしますが、さはさりながら、まだいろいろな周辺情報とか、いろいろな何かあることもあるんじゃないかというような気持ちも、率直にないわけではないわけでございます。ひとついろいろとまた御検討いただきたいと思います。  それで私は、自民党当時、外交調査会の席で同じような発言をしたことがございます。そのとき、何か話によりますと、例えばインドとか、ああいう中東あたりのかなり金持ちの人たちがいて、先進国に留学をしているような国からは、その卒業生というのは、卒業資格を持った人というのは、案外そういう国連組織に行くんだ。というのは、日本だとそういう学歴を持っていると国連なんか行かなくてもほかのところにあるけれども、そういうところの人たちというのは、大学を出たり学士号を取ったりしますと、そういうところしかないから、結局そういうところに行くんだという話も聞いたことがあります。  そういった意味からしますと、日本の大学卒業生、特に外国の大学卒業生がいろいろな比較をしてやっぱり国連に行こうと思うぐらいの条件をもうちょっと備えたらいいんじゃないかというようなことも考えるんですね。これだったら、国連よりやっぱりどこか商社とか、日本の何か海外支店とかに行った方がいいぞなんて思われるのではなくて、やっぱり国連のそういう事務局に行ったらいいんじゃないかと思えるような、そういういろいろな処遇なり資格みたいなものをもうちょっと検討して整理して考えていただいたらいいんじゃないかという気がいたします。  これは初めての提案でございますから、これは宿題として、またいろいろと御検討を賜れば幸いでございます。ひとつよろしくお願いを申し上げます。  それから、通産大臣お見えでございますが、今度の特許法の改正ということがございまして、これがまた通常は国民一般にはなかなかわかりにくいところがあるものですから、みんなの評価、意義というのは必ずしも十分じゃないみたいな気がいたします。しかし、今世界がこれだけ密接になって、これだけ技術移転が大事な段階に、企業のそういう努力によっていろいろ制度を調和させながらやることができるというのは大変な大きなことだと思うんです。このことによって技術が移転をして、どこかしかるべきところでその技術の花が開くということは、今後地球人類の文明あるいは発展に大変大きな効果があると私は高く評価をしておる次第でございます。  ただこのとき、もちろんこれは、制度的調和があるということは、国際的な制度間の動きというのは我が国産業界にもいろんなメリットがあると思うんですけれども、例えば日本アメリカでは例のいろんな幾つかの大きな食い違いがございます。そういったことに照らしながら、アメリカの今回の踏ん切りがどのような我が国にメリットがあるのか、これについて通産大臣ひとつ御解説をいただきたいと思います。
  129. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 かつて当省の政務次官をされました委員に到底解説を申し上げるほどの力はございません。ただ、私も答弁をお許しいただきまして光栄であります。  今委員から御指摘がありましたけれども、今回のTRIPs合意、日米合意というものを踏まえた特許法改正と申しますものの中には、確かに委員が御指摘のとおりに大きなメリットが出てまいります。日本として今回この協定上の義務を果たすと同時に、御審議をいただきます特許法の中には、特許につきまして、付与後の異議制度への移行でありますとか、外国語、つまり英語でありますけれども、英語出願を認めるといったことを行うことにいたしまして、これは経済活動のグローバル化の中で特許制度の国際化に大きく資するものと我々は考えております。  同時に、日米合意におけるアメリカ側の措置、具体的には特許期間の適正化と早期公開制度の導入を求めたわけでありますが、この結果として、時に何十年もの間市場では十分に知られ、また既に利用されているような技術がある日突然特許が成立して、その日から十七年間特許が存続するというような、いわゆるサブマリン特許という問題が完全に解消することになります。これは日本だけではなくて、世界じゅうの産業界が長年苦しんできた問題を解決することでありまして、私どもは大変大きな意義のあるものと考えております。  先ほど手元の資料を見ておりますと、ここに幾つかサブマリン特許に係る実例をもらいましたものの中でも、もらいました中の一番長いもので三十八年、そのほかにも二十八年、二十年、二十一年といったような事例が並んでおりまして、こうしたものが突然浮上してくるのでは、それは特許制度自体が本当に問題を生じてしまう。今回これがなくなるということは、非常に大きなことであると考えております。
  130. 古賀正浩

    ○古賀(正)委員 確かに、従来の十七年のサブマリン特許というのは、片や企業に不測の損害を与えるという意味では、こういうことはやっちゃいけないんですね。そういったことが今度はきちっと織り込まれる危険として計算上できることになったということ、私はこの意義は非常に大きいと思うんです。そういう意味では、アメリカも存続期間が特許登録から十七年とされていることにはやはりかなり中でも抵抗があるんじゃないかという気もするんですね。  そういう意味からいたしますと、サブマリン特許として挙げられるものはどのようなものがあるのか、この点に関して、アメリカのこの特許法改正、法改正の動向はどんなふうになっているのかということをお話をいただきたいと思います。
  131. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今申し上げましたポイントにつきましては、それぞれ、アメリカでは既に上下両院に法律として提案をされておりまして、審議が行われると私どもは承知をいたしております。ですから、これが議会においての承認を得れば、これらの点については完全に解決をすると思われます。  また、既存のサブマリン特許の実例につきましては、特許庁長官の方から御説明をさせていただきます。
  132. 高島章

    ○高島政府委員 サブマリンの例示でございますが、今大臣が申し上げましたように、主要なものとして四つあるわけでございます。  一つは、レメルソンという人の開発いたしました、製品の傷の検査のため、電子画像を自動的に解析する方法、装置でございます。これは先ほど既に御指摘があった点でございますが、一九五四年に出願されましたのが、何と特許になりましたのが一九九二年、三十八年間潜伏をしていたというものでございまして、この技術は、日本の自動車業界等々が今まで当然のこととして使ってきたものでございますが、それに関しまして、突如として浮上してまいりました、潜水艦として浮上してきましたために、それに対する損害賠償等、非常に問題を起こしたものでございます。  それから、もう一つ長い例示を申し上げますと、グールドという人のレーザーに関する特許がございますが、これも半導体の製造装置ということで、日本の電機メーカー等は当然のように使ってきたものでございますけれども、これも何と一九五九年に出願いたしましたものが、特許になりましたのが一九八七年、二十八年後に初めて浮上いたしまして、したがいまして、その関係企業と非常にトラブルを起こしているというものでございます。  代表的なものを二件、御説明申し上げました。
  133. 古賀正浩

    ○古賀(正)委員 特許制度の調和の観点ということからいたしますと、アメリカ日本では、非常に大きな点は、先発明主義ともう一つ先出願主義とをどう調和させるかというところに大きな問題があったわけであります。これは両国ともなかなか譲れる話ではないというような気もするわけでありますが、これについてどのような取り組みかということについて、お答えできる限りがあればお答えをいただきたい。
  134. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 確かに、御指摘のように、世界の特許制度を考えます場合に、これから先、その調和のために残された最大の課題は、アメリカのみが先進国の中では維持しております先発明主義であると思います。そのほかにも、フィリピン等幾つかの国で先発明主義をとっておりますものはありますけれども、主要国の中では、これはアメリカだけでございます。  一時期、WIPOの特許調和条約交渉の中で、アメリカも先願主義に切りかえの空気があるいは見えたのかと我々は期待をした時期がございました。また最近、先願主義への移行には大変消極的な姿勢を示す状況になっておりまして、欧州初め各国と連絡をとりながら、あらゆる場所を通じてアメリカ側に先発明主義の是正を粘り強く我々は求めていきたい、今そのように考えております。
  135. 古賀正浩

    ○古賀(正)委員 アメリカとSIIの相談をしておりましたときに、アメリカは、我が国の一層の審査処理短縮が必要だということを非常に強く主張をいたしました。当時、アメリカは十七ないし十八カ月でその結論を出しておったわけでありますが、日本は何と二十八カ月ということであって、これじゃなかなかうまくいかないということを言われておったことがございます。それがその後、我が国の理解と努力によりまして今かなり改善をすることができたわけであります。関係者の御努力を大変多とするものでありますが、今後、来年度までに審査処理期間を二十四カ月にしたいと、SII合意の実現可能性並びに来年度以降の審査短縮に向けてのいろいろな要望も出ておるわけでございます。  これは通産大臣、お答えしにくいかと思いますが、どういう決意……(橋本国務大臣「長官からでいいですか」と呼ぶ)そうですね。じゃ結構です。ひとつお願いします。
  136. 高島章

    ○高島政府委員 従来から、いかにして特許を早く、しかも的確に与えるかということが私ども行政の最も大事な点であるということは御指摘をいただいているとおりでございますが、そのためには、まず審査官等を増員しますこと、さらにはペーパーレス計画を推進すること、さらには先行技術調査を外注化する寺といったいろいろな各般の施策を総合的に行いまして、過去、審査の処理期間平均三年を超えておりましたものが、平成五年末時点では二年四カ月まで短縮をしてきたわけでございます。  御指摘ございましたSIIにおきます審査期間の約束は、平成七年末に二十四月にしようということでございますが、その目的を達成するために今全力を傾けておりまして、私どもとしては必ずやこの公約が果たせるように努力しているところでございます。     〔委員長退席、田中(直)委員長代理着席〕
  137. 古賀正浩

    ○古賀(正)委員 ありがとうございます。この知的財産権、特に特許法に関しましては、アメリカと大体こういう調和ができてきた。世界じゅうにこのような形を広げていけば、かなり円滑な制度の運用が可能になってくると思うわけであります。  そうなりますと、そういう制度にやはり魂を入れるということが必要だということがあるわけでございます。現在、日本は、タイ国の特許庁にJICAがコンピューターを援助をするという話がありまして、そのためのJICAの研修生百人を訓練をするというみたいなことも計画になっておるそうであります。細かいことはわかりませんけれども、やはりこういうことをやるということは、日本に非常に好意も持つ、そういったスタッフがそろうということは非常に結構なことだと思います。こういうことを今後としどし研修生あるいは人材の育成は進めていただきたいと思います。これは、どういたしましょうか、事務局、高島さん、お答えいただけますか。
  138. 高島章

    ○高島政府委員 アジア諸国、発展途上国へのいろいろな意味の協力の点でございますが、今回のTRIPs合意に伴いまして、いろいろと途上国での制度面での整備あるいは運用面での改善が必要になってくるわけでございますから、先進国の積極的な協力が極めて重要だと私ども深く認識をしているわけでございます。  当省におきます途上国への知的所有権制度の整備、特許審査技術の向上を支援するために、従来から、まず第一に、特許庁におきまして、途上国への審査ノウハウとか特許情報の提供を行っております。さらには、世界知的所有権機関の途上国協力のためのジャパン・ファンドというのを設立いたしまして、このファンドのお金で途上国協力もしているわけでございます。さらには、先ほど御指摘ございましたが、JICA、国際協力事業団その他の各種機関を活用いたしました人材の育成、専門家の派遣事業等行っておりまして、現在力を入れているところでございます。また、先般のAPECにおきましても、この分野での協力につきまして大きく展開していくということで、大臣の方からもお話をしていただいているところでございます。
  139. 古賀正浩

    ○古賀(正)委員 私は、まだいろいろ質問をしたいことがたくさんございます。  最初、この冒頭に申し上げた農業関係食糧関係、これがほとんど質疑をせず、整理をしないままに残っておるところでございますが、これは総理あるいは大蔵大臣がお見えのときに一緒にやらせていただきたい、こういうことで本日の質疑は、時間を二十数分残しますけれども、これで終わりにさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
  140. 田中直紀

    ○田中(直)委員長代理 ちょっと待ってください。ちょっととめて。     〔速記中止〕
  141. 田中直紀

    ○田中(直)委員長代理 では再開いたします。古賀君。
  142. 古賀正浩

    ○古賀(正)委員 農林大臣、大変失礼をいたしました。まだ時間がございますので、少し農政関係について御質問をさせていただきたいと思います。  まず、今度農業調整案を受け入れまして、これは細川内閣のときの、我々のことでやったわけでございますから、それを引き継いでいただくのが自社村山内閣ということに相なるわけでございます。これは三度にわたる国会決議に反する、こういうことをやりながら、結局ミニマムアクセスを中心とするその調整案を受け入れるということになるわけでございます。  そういうことになりますと、やはり日本農業は将来どうなるのか。やはり若い人とか、何とかしていこうという人たちがかなり希望を持っておる。そういう人たちに、希望を持って何かやれるように我々もしっかりやりますよ、そしてまた、そのために国民の合意も得る努力をしますよ、こういうことを言っておるわけでございますが、どうも今、この法案が閣議決定される直前に決まりました六兆百億というものの中身については、ひとつこなれ方が足りないと申しますか、余りきちっと大事をとった、大事をとったというか詰めた形になっていないのではないか、こういう思いがどうしてもつきまとうわけでございます。  特に、私の田舎でも、例えばいろいろな農民の会合とかなんかへ行きますと、自民党の方が、そういう意味で、いやこれはあれだけれども、六兆百億、また三光何がし、こういうものがあってもうどしどしやるんですということを言ってくれますけれども、しかし、それについて本当に農家が納得した表情をしているのかねということになりますと、どうもそういうわけにいかないという気がしてなりません。そして、もしこれで本当に国の政策が失敗すれば、これはやはり農政不信はもう大変なことになるんじゃないか、こういう思いもあるわけでございます。したがって、このあたりをもうちょっと議論を、総理及び大蔵大臣がおられるところで詰めたい、こんなふうな思いがいたしておったところでございます。  それは、例えば四年前の牛かんの自由化ということがございました。牛肉については関税がある、その関税は三百億ないし五百億ぐらいある、それを原資にして牛肉の自由化の影響を最小限にするようにやろう、こういうことを約束したわけですね。そして、まあそれで畜産農家も納得したということがございました。また、ミカン農家は、当時一千億ちょっとであったと思いますが、そういうものを提供しまして、そして園転、樹種転換とかなんかをいたしまして、まあ何とか自由化の影響を最小限にしよう、そういう施策を国はとったわけでございます。  ところが、実際それをやってみますと、いろんな不運も重なったわけでありますが、特に牛肉の場合には、例の子牛の価格が非常に下がったといったようなことがございました。そして実際それが、酪農家とかなんかの所得が非常にうまく上がらなかったということがございました。また、ミカン農家は、一番当時困っておったのは原料ミカンの対策であります。原料ミカンの対策というのはもうほとんどうまくいかなかったみたいなことがございました。そこで、園芸連とか農協団体は、こういうことを何とかしてくれという話を非常に強く持ち出してきておったわけでございますが、実際はそういうことについてはもう措置済みであるみたいなことで、新しい政策にはなかなかならぬで終わったということがありました。  つまり、自由化はともかくやむを得ない、だからそれについては国が思い切った対策をやる、それだからそこはひとつ理解をしてほしい、こういう気持ち農業団体も納得しておったはずでありましたけれども、実際は、そういうことになりますとなかなか対策はぴたっといっていない。何とかしてほしいと言っても、いや、それはもう措置済みではないかという話になるみたいなことで、結局泣くに泣けないみたいな状態で、結局農政不信というみたいなことにつながっていったのじゃないか。だから、今度の米の市場開放問題について相当の思い切った政策をやり、農家に、将来の農業に納得をしてもらうような政策を実現していくためには、やはりまずは牛肉・オレンジについての対策の見直しからやるみたいなことが必要じゃなかったのか、こういう思いがするわけであります。  これが農林省でどのような公式の検討になっているかわかりません。いや、そんなのとてもできませんよという話ではないかと思いますが、ただ、私は、本当に米についての、米の市場開放についてのちゃんとした施策をやるためにはそういった対策がどうしてもやはり要るんじゃないか、それをやってこそ初めて農政不信を解消して、そして一緒になって何かやっていこうよ、こういう気持ち農業団体、農民あるいは政府が一緒になってやることができるんじゃないか、こういう思いがするわけであります。  話が大変大きな抽象的な話でありますが、また、このこと自体の質問通告もしておりません。よければお答えをいただきたいと思います。
  143. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 お答え申し上げます。  このたびの自由化に関連しては、明確な日本農業に対する展望を持ってそれに対する各施策を集中的に行い、農家の方々に対して積極的な取り組みを行うような姿勢、体制をつくるべきだという点については御指摘のとおりでございまして、私どもは、古賀委員、事業について必ずしも明瞭ではないとおっしゃっておりましたが、時間さえ与えていただければ、それぞれの事業についてどういうねらいでどういう積み上げをしてやっていくかについては申し上げても一向差し支えないわけでございます。  その点についてはとにかくといたしまして、牛肉の自由化なりあるいはオレンジの自由化の際の対策、これが非常に不徹底であって、それが後刻いろいろな不安をもたらし、これが今回の対策にも及ぶであろうというようなお話でございますが、御案内のとおり、牛肉の自由化については、関税収入、一千億以上の関税収入を牛肉対策に使うということで現に措置されておるわけでございます。  それで、制度の基幹は、御案内のとおり、肉用子牛基金の補給金制度、それから肉用牛の肥育農家に対する一種の所得補てん的な制度でございますが、そういうものを基幹としてやっておるし、また大家畜の経営安定のために、特に負債整理等に重心を置いた施策もそれぞれ行っておるところでございます。  ただ、自由化されて、輸入牛肉価格が、当初の七〇%が六〇%、現在五〇%に関税が自由化の際の約束によって引き下げられておる、それら過程において、特に内外価格差が大きい輸入牛肉が入ってきた点において、乳用牛関係の牛肉等々、いわば低位な価格国内の牛肉が大変輸入牛肉との競合によって影響を受けておることは確かでございます。  ただ、全体を見ますと、このような厳しい中でも、輸入量は増加しておりますけれども国内生産量も大体その水準を維持しております。したがって、客観的に見ますと、今までの輸入割り当て制度のもとにおいて国民の牛肉に対する強い需要をやや抑制的に、抑えていた、それが自由化によって一挙に流通量がふえたという点があるかと思います。  したがって、この点については、今日の肉用牛生産農家、それぞれ繁殖もあるいは肥育についても大変努力をしていただいておりますし、今度は新たな自由化、関税化ではございませんけれども、これにつきましては、今度の対策においても、このてこ入れのための各種の対策を、今度新たに自由化される十品目と同様な、それに劣らない対策を行いたい、さように思っておりますし、ミカンについても例の、一番厳しい影響を受けておるのは、生果そのものよりもオレンジのオレンジ果汁、一年おくれて自由化されたオレンジ果汁によって影響し、それが加工用のミカンに対して厳しい影響を与えておる。  したがって、これについては、本来の生果、生食用のミカンについても、その状況に応じて加工用に回し得る特別対策を今度の果樹、国内対策にも取り上げるとか、あるいは園地転換をさらにするとか、優良系統というか、需要の強い高い品種系統に転換するとか、それぞれ施策を行おうとしておるところでございまして、私は、見直しという強いお言葉がございましたけれども、それぞれの施策を強化することによって、新しい対策に踏み込む場合における、過去の自由化のマイナス要因が後を引かぬような措置はとっておるつもりでございます。
  144. 古賀正浩

    ○古賀(正)委員 ありがとうございました。ひとつよろしく精力的な御検討をお願い申し上げます。  実は、余談でございますが、村山総理は、社会党と私ども新生党が同じ与党を組んでおったときに、同じ果樹振興議員連盟を組織しておりまして、会長、副会長の副会長で村山先生に入っていただいたことがございます。原料果樹の基金対策などはひとつ村山先生も大いにやろう、こういうことをおっしゃっていただいたことがございますので、総理になられれば、我々がすぐ、あのときこう言ったじゃないかなんというのも難しいかとは思いますけれども、少なくとも果樹の産地大分県としては、大変御熱意も御理解もある方でございますから、しっかりまたお願いをしたい、こう思っておるところでございます。  それから、ちょっと話がずれますけれども、今度新食糧法、新食糧法というのは、今度のあれを地元の農業団体とかいろいろなところと話をしていますと、いろいろな論議になる点がございます。それは何かといいますと、かつて、昭和四十年代の初めに千四百万トンくらいの米の過剰生産が出まして、相当の米を政府が抱え込みました。そのとき、これで一体食管制度はもつのか、これは生産調整やる前でございますが、みたいなことがございまして、これだったら食管制度はこれだけ重い負担ができないのじゃないかというようなこともございまして、新聞論調とか財界とかもやはり食管はもう廃止すべきではないかみたいな底流もあったような気がするわけであります。その当時、私の記憶によれば、社会党は、食管制度も維持すべきだ、しかしそれも、維持といってもいろいろな何かもありますから、根底、根幹みたいなものはやはり維持すべきだということを言っておった記憶が我々はあるわけです。  そういたしますと、もう私も随分昔のことで忘れましたけれども、今回の新食糧法は、食管制度の根幹に照らしてみると、どこぐらいが入っているのか、あるいは根幹と言われておるので何が入っていないのか、それを整理して、大臣、恐縮でございますが、お答えいただきたいと思います。
  145. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 食管制度の根幹と言う場合には、過去にいろいろな言われ方がございました。昭和三十六年ころに食管制度の改革が問題になりましたとき、食管法第一条の、国民食糧と、国民経済の安定を図るために、国が食糧を管理して需給及び価格調整をする、それが食管の根幹だというような言われ方をされたときがございましたが、ざっと申し上げれば、生産者にとっては再生産が確保され、消費者にとっては安定的な供給が行われる、それが制度のやはり根幹だと思います。  それで、これは現行食管制度もさようでございますが、このたび法案として私どもが提案しておりますのは、その現行食管制度と政策の理念とか手法で違ってまいっております。従来の現行食管制度は、全量を政府が管理する建前で、そしてその需給調整を行う。このたびは、民間の今日の米流通の実態を踏まえて、民間流通である自主流通米、これを流通の主体として、それを計画的、安定的に消費者に供給をするという制度でございまして、政府関与は備蓄制度による政府米の運用とそれから輸入管理としてのミニマムアクセス、これによって達成いたすというのが一番大きな差だと思います。
  146. 古賀正浩

    ○古賀(正)委員 時間がございませんので、もう質疑というより、一方的な私の話のあれで終わるかと思いますが、御勘弁をいただきたいと思います。  私は、食管制度というのはいろいろ功罪があります。やっぱり、食管制度があるがゆえに、それにあぐらをかく人もいる。うまく流通の改善、あるいは業界の改善も促進しないこともございます。しかし、それによって初めて国民の食糧の安定的供給が確保されるという一面もあるわけでございますから、そういうことも、余り欠陥だけをあげつらって、だから食管は要らないんだという結論を急ぐべきではないんじゃないかという気がしておるわけでございます。  さらに加えて、昨年の七八の不況に伴いまして、緊急輸入をやる。緊急輸入が、また輸入し過ぎて余るみたいなことがございます。これは、制度の運用上、非常に問題があったというふうに思いますが、それは予測しがたいこともいろいろあるし、こういう事態がめったにないことでありましたから、それはそれで、いつも、あるときの経験に照らしてどうだったかということとは少し区別もせにゃいかぬかなという気持ちも、正直しないでもございません。そういう意味では、食管制度も、やっぱり去年みたいなことがあったから、だからもう即廃止していいんだみたいなことに持っていっていいのかというのは、私は、まだまだもうちょっとそういう単細胞の議論ではない議論が要るんじゃないか、こんな気がするわけであります。そういう面から見ると、現在の新食糧法というのはどうかみたいなことはもうちょっと時間をかけていいんじゃないかな、こんな思いがいたします。  ただ、そうなりますと、古賀正浩も、何かしらぬけれども、食管制度をがりがり守ることばっかりだなみたいなこともあるかもしれません。しかし、さはさりながら、やはり、血を流して食管制度を改めるべきだ、もっといい改善に持っていくべきだということになれば、敢然として取り組む姿勢ももちろんある、私はそういう立場で意見を申し上げておる、こういうことでございます。  それから、食管制度というのは、しょせんは、去年ああいう目になりましたけれども、もし、あのとき食管制度がなければどういうことになったのかといえば、かつて昭和四十七、八年の千里ニュータウンのトイレットペーパー騒ぎとか、かなり社会不安が生じたあのときのことがやはりあったというふうに考えておかなければならないのじゃないか、こんな気もいたします。やっぱり火事がないから消防車は要らぬというわけにいかないので、一たん何かあれば消防車は出動できる、そういう準備を整えておくことが地域社会の安心、地域生活の安心ということになるわけでございますから、そういった要素を抜きにして早急に結論に持っていくわけにもいかぬのじゃないか、こういう思いがいたしておるところでございます。  時間がもう、ほぼ満杯になりました。途中で少しそごを来して失礼をいたしましたけれども、私の質問は、あったらお答えをいただいて、終わります。
  147. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 いろいろと委員の御提言については聞かしていただきましたが、ただ、例の去年の米問題の関係その他から、異常な事態というものに対する食管の役割、それは認めております。 異常な事態におけるその効果は否定するものではございません。ただ、今日の現実の食管制度と実態との乖離、これは甚だしいものがございまして、機能を失っているのではあるまいか、そういう判断に立ちまして、あなたが御指摘になりました点については今回の改正においても、異常事態が生じた場合には、今回の改正法案の八十条以下にも明確に書いておりますように、それぞれ緊急、応急の措置、従来の非常に厳しい配給制度まで立ち返れるというような手当てもしておりまして、そういう点では、我々も今の御指摘の点については十分に配慮しておるつもりであることをつけ加えさせていただきます。
  148. 古賀正浩

    ○古賀(正)委員 終わります。
  149. 田中直紀

    ○田中(直)委員長代理 遠藤乙彦君。
  150. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 このウルグアイ・ラウンドでございますが、七年有余の時間をかけて大変粘り強い交渉のもとに妥結を見たわけでございまして、私は、まずは関係者の御努力に心から敬意を表したいと思っております。  私は、この冷戦終結後の世界にあって、二十一世紀の国際秩序をどうつくるか、さまざまな課題があるわけでございますけれども、特に差し迫った重要な二つの課題があると認識をしております。  一つは、地域紛争の抑止、特に核拡散と絡んだ場合、大変深刻な課題でございまして、ぜひともこれを抑止していく体制づくりが必要であると考えております。  もう一つは、世界経済のルールづくりでございまして、世界経済、大変、何といいますか、現在停滞基調にありますけれども、さまざまな国が、それぞれのまた目的のもとに厳しい競争も繰り広げておりまして、世界経済の調和的な発展をもたらすための国際的なルールづくりというものも大変重大な課題でございます。まさにこのWTO協定は、この二つ目の課題の中核となるものでございまして、大変重要な、画期的な内容を持つ、歴史的な成果であると私は評価をいたしております。  特に、我が国の場合、御承知のとおり、加工貿易貿易立国でございまして、戦後日本の豊かな経済発展ができたのも、まさにこの自由貿易体制の環境があったことが、大きな力があったわけでありますから、ぜひとも、我が国にとり死活的重要性を持つ課題自由貿易体制の維持発展というものについては、今まで以上に我が国としては力を入れて、リーダーシップを発揮していく必要があると考えておるわけでございます。  そういった点から見まして、このWTO協定、現在批准に向けての議論をいたしておりますが、ぜひとも早期批准、そしてこの発効を目指して我が国が率先垂範すべきである、そのように考えております。そういった、私自身の基本的態度に立った上で、以下質問を進めたいと思っております。  まず、総論的な話でございますけれどもウルグアイ・ラウンド妥結の意義ということで御意見をお聞きしたいと思います。  このウルグアイ・ラウンドが妥結して以来、いろいろな論調が見られます。一般的に見られるのは、欧米を中心とした保護主義、地域主義の傾向が高まりを見せている今、もしウルグアイ・ラウンドが失敗に終わっていたなら、このような傾向に拍車をかけていたであろうが、妥結によって一応の歯どめができた、こういったいわゆる消極的なプラス面を指摘している点では、ほほ最大公約数と言っていいのではないかと思っております。  ただ他方、さらにそれより踏み込んでどう評価するかとなると、やはり悲観論と楽観論、分かれているかと思うわけでございます。  例えば、楽観論としては、すべての貿易分野にガット・ルールを適用することにより、国際貿易を大きく拡大して、すべての国がその受益国となるとか、あるいは紛争解決ルールの強化により、二国間での一方的措置が禁止され、輸出自主規制等の灰色措置が廃止されるため、日米経済摩擦問題もガット・ルールにより規律される、こういった楽観論がある一方、他方、悲観論としては、ガットが目指す自由貿易は、世界経済を活性化する反面、競争力のない産業で雇用危機を生むとか、あるいは保護主義自由貿易原則に反する地域主義に対する十分な規制が担保されていないとか、あるいは紛争解決にしても自主規制にしても、新ルールを遵守するとの加盟各国の強固な意思がない限り形骸化するおそれがある、こういった悲観論も見られるわけでございます。  こういった点にも関連しまして、政府としては、現在の時点におきまして、ウルグアイ・ラウンド妥結の意義をどのようにとらえているのか、改めてお伺いをしたいと思います。
  151. 河野洋平

    河野国務大臣 WTO協定締結は、今議員お話しになりましたように、百二十カ国を超える世界貿易を担う国々が集まって、大変長い時間をかけて議論をした来合意をした、こういうことでございます。  その結果は、まさに新しい貿易のルール、これは物ばかりではなくて、サービスに関するものまで含めて新たなルールづくりがなされた。さらには、一方的措置、その他に対抗するためのさまざまなルールもこれによって確立をされる、こうしたことによって世界貿易の規模というものは拡大をされていくという、こういう考え方は我が国にとって極めて重要だ、こう考えているわけでございます。  しかしながら、その一方で、これまた議員が御指摘になりましたように、このことですべての問題が解決されるかどうかということになりますと、それはそこまで言うのはやや楽観的であるかもしれません。しかしながら、百二十カ国を超える、まあ言ってみれば国際社会のあらましの国が参加をして、議論の来合意をしたという事実は極めて重いわけでございまして、恐らく貿易についてこのルールが国際社会を当分の間支えていくに違いない、そう考えております。  他方、環境問題でありますとか食糧問題でございますとか、そうした、何といいますか非貿易関心事項については引き続き議論をしていくということになっておりまして、この分野についての議論もまた重要になってくるであろう、こんなふうに思っております。
  152. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 さて、この評価に関連しまして、今度は我が国としてどう、具体的にメリット、デメリットという点からお聞きをしたいわけですけれども、特に今回のラウンドにおいて、我が国として何を譲り、何を得て、結果として我が国にとってどうだったか、いわばバランスシートを、我が国にとってのウルグアイ・ラウンド妥結によるメリット、デメリットという比較の点から評価をお聞きしたいと思います。
  153. 河野洋平

    河野国務大臣 多くの国々が集まって一つ合意をつくり出すためにはさまざまな知恵、さまざまな議論が必要であったに違いありません。大きな知恵は、これは一括して決めよう、こういうのはまさに大きな知恵であったと思います。シングルアンダーテーキング方式というものについて、我が国は米という大きな、米の輸入という大きな重い課題を背負うということになりました。日本農業の置かれている状況を考えますれば、こうしたことは、農村、農業に従事する方々にとっては大きな不安であり、懸念であることはもうどなたも異議のないところであろうと思います。  こうした問題に対しまして、政府としては農業という一つの産業の構造を変える、あるいはこれを改めていくということについて支援をするという考え方を持っております。  その他知的な分野、サービスの分野におきましても新しいルールのもとで進むわけでございますから、これはいろいろとまだ不安もございましょう。いろいろ問題もあろうかと思いますけれども、とにかく一括して新しいルールのもとで貿易を進めていくという状況の中でトータルに考えて、我が国にとって、いやそれは世界全体にとって前向きにとらえていくべきである、こんなふうに考えております。
  154. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 WTO協定の発効条件と、主要国の批准状況、発効の見通しについてお伺いをしたいと思います。  先般、村山総理の委員会審議の中の御答弁の中では、批准は国会ではぜひ早期に承認をいただきたいが、批准手続については主要国の動向を見て慎重に進めるといった趣旨の御答弁があったかと思います。  一応十二月八日に実施会合が予定をされておりますけれども、他方、米国それからEUの動向については、米国の場合には中間選挙のため十二月初旬にこの採決を延期をしたわけでございます。また、EUとしては加盟国と欧州委員会との間で、同委員会が物以外の貿易に関する交渉権限を有するか否かについて欧州裁判所で争ったわけでございますけれども、その判決が今月十五日に出まして、各加盟国協定の批准手続を行うこととなったと理解をしております。  そこで、現在の米国及びEUの動向はどうなっているかということ、それからまた、ようやくWTO協定及び国内法案の審査が始まった我が国の情勢もあわせて考えた場合、十二月八日の実施会合で来年一月一日の協定発効を決定できるかどうか、そこら辺について政府の分析を伺いたいと思います。
  155. 河野洋平

    河野国務大臣 アメリカ、欧州、それぞれの審議状況等を我々は視野に入れて、国会における御審議のお願いをいたしておるわけでございます。  そこで、欧州におきましては、今まさにお話がございましたように、裁判所の決定を受けまして、これは欧州各国が一つずつそれぞれ審議をして批准、承認の決定をしていただかなければならないことになりましたが、これも我々が聞いております範囲では、各国ともにそれぞれ審議が進んでおります。  私どもが一番関心を持っておりましたのはアメリカでございまして、御指摘のように中間選挙という事態がございまして、しかもその中間選挙の結果は、共和党が過半数を占める、つまり大統領の党でない方が過半数を占めるという状況になったことから、このアメリカの審議がどういうぐあいになっていくかということには大きな関心を持っていたところでございます。  これはまだ報道でございまして、十分な御答弁にならないかと思いますが、きょう、けさほどの報道を聞きますと、クリントン大統領と共和党の上院院内総務のドール氏との間に合意ができた。これはクリントン大統領がドール氏とともどもに記者会見を行っておりまして、協定採決についての了解が成立したということをお二人こもごも語っている場面がけさのテレビでも映し出されておるわけでございます。  それによりますと、ドール共和党上院院内総務は、全共和党上院議員に対しまして、十二月一日の採決において賛成すべきとの書簡を発出するということを言っておられます。我々といたしましては、上下両院ともに、これによりまして十二月一日までにWTOについての合意は審議を終了するであろう、こんなふうに考えているところでございます。  議員お話しになりました十二月八日のジュネーブにおきます会議におきまして、したがいまして、欧米諸国はいずれも、恐らく明年一月一日発足という提案についての合意をすべくお集まりになるに違いない。我が国といたしましても、この八日の会議には、ぜひ国内合意、了承を得て参加をしたいものと念願をいたしております。
  156. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 今副総理から、特に米国の見通しについて恐らく大丈夫だろうという感触が述べられたわけで、非常に好ましいことだと私は思うわけでございますが、ただ米国の場合、なかなか見通しどおりいかない点もあるわけでございます。それは、もう副総理が一番よく御承知だと思います。  特にアメリカは以前、国際貿易機関、ITOのためのハバナ憲章、この批准を目指した際に、国際機関による米国の主権、特に通商権限の侵害を懸念した議会を説得できず、ITOを流産させた前科があるわけでございます。  また、現在の議会内にも同じような懸念があることは、まあ想像にかたくないわけでございまして、また議会の外では、前大統領候補のロス・ペローさんですね、あるいは市民運動家の人たちが、主権侵害を理由に、ラウンド合意WTO設立にかなり強く反対しているということも報道されております。特に、さきの中間選挙の結果、上下両院とも共和党が過半数を制する逆転現象が起こりまして、その最大の原因が、民主党のクリントン大統領の批判だったということも伝えられております。  こういった状況の米議会が、果たしてクリントン大統領に本当に協力をして、予定どおりウルグアイ・ラウンド実施法案を成立させるのかどうか、一抹のまだ疑問といいますか懸念があるわけでございます。その上、フォーリー議長が落選をされてしまいました。まあ日本にとっても非常に理解のある方でありましたが、落選をされまして、WTOの来年一月一日設置に向けて早期に実施法案を成立させるだけのインセンティブを持っているかどうかも疑問な点があるわけでございます。  したがいまして、クリントン大統領の議会対策のいかんによっては、WTOがITOと同じ運命をたどらないという保証はないわけでございまして、この点、米国の批准について政府としてどのような見通しをさらに持っているか、重ねてお伺いしたいと思います。
  157. 河野洋平

    河野国務大臣 御案内のとおり上下両院の審議というものを見ていかなければならないわけでございますが、下院におきましては、十一月十六日付、ウルグアイ・ラウンド実施法案の議会通過に協力するという下院指導部発クリントン大統領あての書簡というものがございます。この書簡は、今御指摘になりましたフォーレー下院議長、これは民主党でございますが、その他、ゲパート民主党院内総務あるいはマイケル共和党院内総務、ギングリッチ共和党院内総務、民主党、共和党両党の指導的立場に立つ方々がそれぞれ大統領あてにウルグアイ・ラウンド実施法案の議会通過に協力する旨の書簡を送っておられる。これが、私どもが下院は大丈夫ではないかという判断をする一つの材料でございます。  さらに上院につきましては、先ほど申し上げましたように、ドール共和党上院院内総務の全共和党上院議員に対しての、採決において賛成すべきとの書簡というものが我々にとって知り得るデータでございます。これらはまた、なぜドール氏がそういう採決について了解をしたかということについてはそれなりの根拠があるというふうに聞いておりますので、下院、上院ともに、共和党の指導的役割を果たす方々のそうした意思に基づいて合意ができるものという見通しを持っております。
  158. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 先般の委員会審議の際に、総理の発言として、批准手続については主要国の動向を見ながら慎重に進めるというふうに発言をされたと理解をしておりますが、これはこう解釈していいかどうか、我が国が批准するについては少なくとも米国の批准が前提条件である、このように解釈していいものかどうか、この辺につきましてお考えを聞きたいと思います。
  159. 河野洋平

    河野国務大臣 WTO協定というものは、やはりアメリカ及びヨーロッパの、世界貿易の中に大きな役割を占める国々が参加をすることによって本来の意味といいますか、本来のという言い方は適当でないかもしれません、大きな意味を持つという認識に立つとすれば、それは欧米諸国の審議の進み状況といいますか、このWTO協定に対する姿勢というものを視野に入れるということは必要なことだと思います。ただ、今委員が御指摘のように、アメリカの態度があくまで前提だと言われるほど決定的なふうには実は思っておりません。  いずれにしても、世界各国の、このWTO協定の批准に向かって努力をしておられる多くの国々の状況というものを、そういうものに全く目をつぶって日本だけ国会で何としてもというのではなくて、全体に目配りをしながら、皆様にも御説明を申し上げ、御了解をいただく、そういうことを総理はおっしゃっておられるのだと思います。
  160. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 批准手続のニュアンスについては、今の副総理の御答弁でよくわかりました。  米国の批准については、副総理御答弁のように恐らく大丈夫だろうと楽観的期待を込めて私も思うわけでございますが、この米国の批准が、これは確実であり、WTO設立が保証できるとしても、さらに各国がウルグアイ・ラウンド合意を着実に守る、そういう決意、意志がなければ、これまた合意が何の意味もなくなるわけでございまして、とりわけこのアメリカの態度が注目をされるわけです。  特に、米国議会で行われているウルグアイ・ラウンド実施法案の審査状況を見ますと、先行きに大きな不安を与える要素もあるわけでございます。特に議会が、例えばアンチダンピング法の強化、それからスーパー三〇一条の恒久化、また三〇一条の適用対象拡大等、ラウンド合意を事実上骨抜きにするような保護主義条項を実施法案に盛り込もうとしているわけでございまして、これに対しては、我が国を初め二十一カ国が、七月の中旬でしたか、共同で批判の書簡を米国政府に送ったという経緯があることを承知しております。  こういったことが立法化されれば、たとえWTOが発足をして新たなガット・ルールが適用されるようになっても、既にガット・ルールは空洞化されたものと言わざるを得なくなるわけでございます。また、他の国も米国を見習ってそれぞれ勝手な解釈で国内法の整備に取り組めば、WTO自体が弱体化するおそれがあるわけでございます。  そこで、お聞きしたいのは、この七月中旬に出した書簡にかかわる事実関係、それから米国政府の反応はどうだったのか、またこの米国議会における保護主義的動向について、政府として把握している情報並びに見解を御説明いただきたいと思います。
  161. 原口幸市

    ○原口政府委員 今先生御指摘のとおり、七月の中旬に日本ジュネーブにおきまして、我が国と問題意識を共有している二十一カ国・地域と共同で、ダンピング防止措置等に関しウルグアイ・ラウンド合意と整合的な国内法整備を行うように米国に申し入れた事実がございます。これに対しまして、在ジュネーブの米国通商代表部の大使は八月下旬に我が方の在ジュネーブの大使あてに書簡を出してまいりまして、その書簡の中では、二十一カ国・地域が出した書簡そのものは本国に確実にお届けいたしました、本国において妥当な考慮が払われることを保証いたしますという内容でございました。  そして、御存じのように、その後アメリカ合意実施法案を米国議会に提出しているわけでございまして、私ども実施法案の中身を十分検討したわけでございますが、もちろん御指摘のように、スーパー二〇一条の恒久化とか、ダンピングの問題で迂回の規定があるとかいうことはございますけれども、そしてそういう規定があること自体必ずしも我々はうれしいことではないのでございますが、そのこと自体をもってWTO取り決めそのものに直に違反するというふうには我々考えておりません。
  162. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 確かに協定に反するかどうかは別として、精神の上では好ましくないものでございますので、やはりきちっと牽制をしていくということは大事だと思いますので、今後とも外交努力としてこういう保護主義的な動きにはぜひ牽制球をしっかり投げ込むということをお願いをしたいと思っております。  そこで、次にWTO事務局人事のこと、これは随分何人の方も聞いておられますので重複になるかもしれませんが、大変重要な点だと私思いますので、重ねてお聞きをしたいわけでございます。  その前提として、戦後の日本外交、長い間、もう既に五十年たつわけでございますが、この間の日本外交の基本姿勢を一言で言ってみれば、受動的適応という言葉が当たるんではないかと思いますね。敗戦国であり、極東の小国であったそういった国が、必死になって再建をし、また国際社会にカムバックし、また先進国にキャッチアップしようという中で、やはり基本的なスタンスとしては、そういう国際情勢というものをあくまで環境の変化、与件としてとらえて、それにどうやって適応するか、極めて受動的適応の外交をしてきたと思うわけでございます。  しかし、近年になりまして、我が国としても経済大国の地位を確立し、それにふさわしい国際貢献、能動的貢献をしようということは言われるようになったわけでございますが、いわばそういうこれからの二十一世紀に向けての我が国の外交のあり方は、私の言葉で言えば創造的参画ということでないかと思うわけでございます。言葉は、表現は別として、恐らくどなたもそういうことには賛成をされるかと思います。  そういった意味で、特に大事なポイントといいますかホシといいますか、国際機関の人事、特に職員に、日本人職員をしかるべき比率でやはりプレゼンスを確保するということが大変重要なポイントであると私は考えております。そういった意味で、このWTOという我が国に最も密接に関連をした国際機関に対して事務局長の候補を出さなかったということは非常に残念なことでございまして、この事務局長の問題。  それからもう一つ、本部の誘致の問題ですね。せっかく新しい機構ができるわけですから、本部についても今までのジュネーブということだけじゃなくて、例えば、関西新空港ができたわけですから大阪であってもよかったわけですし、そういう事務局長それから本部誘致といった点で、実現するかどうかは別として、やはり姿勢だけでも示す、アピールするということはぜひ必要だったのではないか。やはり姿勢において腰が引けていたのではないかということを思うわけでございまして、この点につきまして副総理の御見解をちょっとお聞きしたいと思います。
  163. 河野洋平

    河野国務大臣 国際機関の事務局長については、我々も御指摘のとおり関心を有しております。今、日本人が国際機関の事務局長をやっておりますのは、WHOがそうでございます。あるいはUNHCRの緒方さんなども挙げられると思いますが、こうした機関におきまして大変積極的、活発に活動をしていただいているという実例もございます。  他方、今回のWTOにつきましては、事務所の問題、事務局長の問題、二つを御指摘になりましたが、事務所をどこにするかということについては、御承知のとおりジュネーブとドイツのボンが誘致に名のりを上げたわけでございます。誘致に名のりを上げたというよりは、ボンは非常に強く名のりを上げたわけですが、結果的に、さまざまな判断からガットの本部がございますジュネーブに、言ってみればその事務所を使ってそこで引き続き仕事をする、こういうことになった。これは財政的な理由もあったかと思いますし、その他さまざまな角度での検討の結果、事務局はジュネーブに置くということになりました。  他方、事務局長大事につきましては、御承知のとおり今三人の候補者が名のりを上げておられます。これはいずれも極めて有力な方々、イタリーのルッジェロさんでありますとか、メキシコの大統領経験者なども含めて、三人の方が有力な候補者としておられるわけでございます。  我が方もこの事務局長大事には関心を持っておりましたけれども、先ほども御説明申し上げましたように、いわばいち早く韓国から金喆寿氏という経験も豊富な方が名のりを上げられる、韓国政府も非常に強く金氏のWTO事務局長就任に積極的な行動をとられるということがございまして、我が方としても、余りこれが地域的に競争になるということは好ましいことではないと思いますけれども、しかし率直に申し上げて、アジアの地区から、特に韓国と日本と両方が手を挙げるというようなことがあれば、これはなかなか成功の確率もそう高くないであろう、さらには日韓両国の関係ども考えまして、この際は日本は金氏を支持するということが適切であろうという判断をしたわけでございます。  しかし、その際に我が国は、WTOのさまざまなレベルにおいて我々は関心を持っておりますと言うこともあわせて考えております。ただ、ガットの事務局がその後このWTOの事務局とどういうふうにつながっていくかということなども考えながら、我が国としての関心を有するという意思はそれぞれ伝えてまいりましたし、これからも伝えていきたいと思っております。
  164. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 この事務局長大事につきましては、今の御説明、一応理解はいたしましたが、この事務局長については時期おくれという感がありますけれども、他方、事務局次長、これは三人、三つポストがあるというふうに理解をしております。この件につきましては、柳沢外務政務次官ジュネーブ訪問中の九月一日、記者との懇談で、日本としても立候補者を出したいという意向を表明したと伝えられております。政府部内でこの事務局次長立候補者に関する検討が行われているならば、どういった資格、能力を有する人を候補者に立てるのか、また、勝算はあるのか、そこら辺について、できる限り詳しくお聞きしたいと思います。
  165. 原口幸市

    ○原口政府委員 先生御指摘のとおり、現在、ガットの事務局には次長が三人おります。米国とインドメキシコからそれぞれ出ておりますが、いずれもその任期の終了するのが再来年の六月までということになっておりますので、現時点ではまだ新次長の人事問題というのは表面化していないという状況でございます。  さはさりながら、先ほど大臣からも御説明いたしましたけれども、我が方としても、特に次長ということを特定する必要はないと思いますが、幹部ポストについて日本からしかるべき人物を送るということは、今後WTOの活動に日本が貢献していく上で非常に重要だと思っておりまして、積極的に今後も考えていきたいと考えております。
  166. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 さらに、この事務次長以外にも、職員もぜひこれから我が国として送り込んでいく必要があると考えております。現在、ガットには日本人職員は一人というふうに伺っておりますが、ガット自体の職員数は今どれだけなのか、それから新しくできるWTOの職員総数はどれだけなのか、教えていただきたいと思います。
  167. 原口幸市

    ○原口政府委員 ガットの現在の職員数は、一般職も含めて四百五十名ぐらいだと承知しております。  WTOの人数が今後どれだけふえるかにつきましては、現在、関係各国の間で検討中という状況でございます。少なくとも、ふえていくことは間違いございませんが、どれだけふやすかということについてはまだ結論が出ていない状況でございます。
  168. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 ガットの職員が四百五十、日本人職員が一人ということでございまして、これが国際化を標榜する我が国の実態であるということは、ひとつ我々もしっかりと認識をしておく必要があるかと思うわけでございます。  先ほどから申し上げておりますように、やはり我が国の国際貢献といっても、ここ数年来、物、金じゃなくて人だという議論をしてきました。PKOの点でも随分こういった角度からの議論がなされたわけで、一定の進展が見られたわけでございますけれども、やはりそういった国際機関にあるいは国際的に貢献する分野に我が国の人材が行って、公正、公平な態度でしっかり活躍するということは、何よりも我が国のイメージを改善し、国際的なこれからの評価を高めるわけでございますから、ぜひともこれを我が国外交の最重要課題一つとしてこれから取り組んでいただきたいと思うわけでございます。  確かに国際機関職員の送り込みにはいろいろ問題があることは承知をしております。特に、待遇の点で、現在我が国の給与水準と随分もう差ができておるとか、あるいは語学、生活慣習の面等々あり、また帰国してからの処遇の問題等々、こういった問題が障壁となって、国際機関における我が国のプレゼンスが低いということがあるわけですけれども、ただ、状況はやはりかなり変わってきているかと私は思っております。特に、語学力、それから外国でのこういった生活経験等については、既に膨大な海外子女の層がもうできておりまして、大変有能な人たちが育っておるわけでございまして、ぜひこういう層に着目をして、またこういった人々に十分な訓練の機会を与え、チャンスを与えて大いに活用することが大事ではないかと考えるわけです。  とともに、この処遇の点は、これはいろいろ問題があるかもしれませんが、やはり国内給与と、外の、国際機関の格差についてはある程度政府として面倒を見るとか、処遇についてもいろいろ考慮するとか、いろいろ方法は考えられるわけでございまして、ぜひともそういうシステムをぴしっとつくっていくということが大事かと思います。  こういったものは、予算的には恐らく非常に少ないコストで、しかも非常に大きな効果が出るものですから、私としては、この問題をぜひ今後有識者に集まってもらってしっかりと検討をして、今後の方針あるいは政策をしっかりつくっていく。また、日米協議での数値目標は、これは私は反対ですが、こういった国際機関職員の我が国の増加については、これはぜひ数値目標でもつくって着実にこれを増強していくということが必要なんではないかと思っております。  なお、外務省の予算要求でも、外交実施体制の強化ということはいつも予算要求の重点項目に入っておりますけれども、また、我々も超党派としてこういった定員増等には全面的な支援をしてきているわけでございますが、さらに、この国際機関職員の日本人職員の増加という点につきましても、ぜひそういう重点施策としてこれから確立をして強力に推進をしていただきたい、そのような要望をまず申し上げたいと思っておりまして、ぜひこれにつきまして副総理の御決意をお聞きしたいと思います。
  169. 河野洋平

    河野国務大臣 御意見はまことにごもっともだと思います。国際機関の職員というものがいずれの国にも偏ってはならぬと、恐らく公正中立を求められるという点から、国が大きなサポートをするということに問題があるかもしれません。そうした点を十分注意深く調べながら、しかし我が国が、御指摘のように、海外子女を初めとして有能な人材がこうした国際機関への勤務を望んでおられるという状況があるならば、我々としてそれは大いに歓迎すべきことだというふうに思います。従来も、これまで、国際機関で働く日本人の数をもっとふやしたいということは、国連を初めとして我々も指摘してきたところでございまして、御指摘の趣旨をできる限り生かすよう努力をしたいと思います。
  170. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 続いて、サービス貿易協定の部分につきまして御質問をしたいと思います。  今回のラウンドは、過去七回のラウンドと異なりまして、物の貿易のほかに、サービスの貿易にまでガット・ルールの適用を拡大したことが大変重要な意義の一つになるわけでございます。今サービス産業は、多くの先進国におきまして国内総生産の約六割前後を占めるというふうに理解されるわけです。また、就業人口からいっても六割前後がサービス産業に従事しているという実態を見ますと、このサービス産業が先進国の経済を構成する重要な要素となっているわけでございます。また、こうした傾向は、程度の差こそあれ、先進国のみならず、発展途上国も含めたグローバルな傾向となりつつあると言っても過言ではないと思うわけでございます。  そういった意味で、これまで野放し状態にあったサービス貿易最恵国待遇とか内国民待遇といったガット原則が適用されたことは、ウルグアイ・ラウンドの最も大きな成果の一つと考えるわけでございますが、まず、この協定に対する政府の評価をお伺いをしたいと思います。
  171. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員がまさにお述べいただきましたように、従来のガット体制からウルグアイ・ラウンド合意というものが生まれてきたその最大のやはり成果の一つ、それは、物だけではなく、知的財産権を初めサービスの分野にまで足を伸ばした、非常に全地球的な協定が生まれたということであろうと思います。これは、結果として、各国の貿易障壁を減少させる大きな役割を果たすでありましょうし、世界経済全体に大きな役割を果たしてくれるもの、我々もそのように考えております。     〔田中(直)委員長代理退席、委員長着席〕
  172. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 このサービス協定一つお伺いしたいんですが、やはり自由化ということは全般にこのガットの精神としてあるわけでございますけれども、物の貿易の自由化ということは、例えば関税がゼロの状態が一番理想なわけであって、これは非常に理解しやすいわけなんですが、このサービス貿易における自由化の理念、概念といったものはどのように定義されているのか。これにつきましてお伺いをしたいと思います。
  173. 原口幸市

    ○原口政府委員 大きく分けて三つあると思います。一つ最恵国待遇を与えるということですね、二番目は内国民待遇、三番目は、協定上は「市場アクセス」という表現になっておりますが、実際には数量制限的な規制を廃止すると、そういうような三つから大体そのサービス貿易における自由化は成っていると了解しております。
  174. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 今自由化の概念、御説明があったのですが、物の場合であれば関税ゼロが最も理想的な状態と確かに言えるわけですけれども、サービスの場合、やはりいろいろな国内規制があって、果たしてその規制を全面的になくすのが理想的状態がというと決してそうではないわけでございまして、恐らく、物の貿易とは違って自由化の概念、理念というものは非常に難しい面があるのだろうと思いまして、その点につきましてもう少し突っ込んだ御説明をいただければ幸いです。
  175. 原口幸市

    ○原口政府委員 先生御指摘のとおり、いろいろサービス面における規制というものは、国内的にもっともな理由に基づいて規制が行われておりますので、単純にすべて内国民待遇であればよしとか、最恵国待遇であればよしということではございません。確かにそのとおりでございます。そして、これはまさに初めて導入された一般協定でございますので、交渉している我々も、いわば試行錯誤でやってきて第一歩がやっと踏み出したという状況でございますので、自由化の概念そのものもまだまだいろいろと精緻化していかない面は多々あると思います。  ただ、先ほどちょっと申し上げましたけれども、市場アクセスとか、それから内国民待遇におきましても、そういうわけで一般原則として市場アクセスとか内国民待遇を認めるということではなくて、各国が自分国内の状況を振り返ってみて自分でできると思うものを、条件を付して市場アクセスを外国に出す、オファーする、それから内国民待遇を行う、そういうようなことをするというのが今度のサービス協定の仕組みになっております。  それから、先ほどその市場アクセスの件で申し上げましたけれども、市場アクセスについても、数量制限とか需給調整、それから外資制限、それから業務拠点の形態の制限、こういった特定の制限は、これはいろいろな観点、どの観点から見ても是認されないので、こういうものは自由化する以上は必ずやめてください、こういうふうな規定になっているというふうに理解しております。
  176. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 このサービス協定、大変重要な協定だと私は思うわけなんですが、ただ、この中をよく読んでみますと、一言で言って例外が非常に多い。羊頭狗肉じゃないかという印象を持つわけでございまして、物の貿易を規律した一九九四年のガットを初めとする諸協定と比べて、例外規定が非常に多いということに驚くわけです。  まず、この市場アクセスと内国民待遇のもとでの自由化義務は、すべての分野にかかわる一般的義務ではなくて、各国が約束を行う意図を有する分野のみに限定される義務となっているわけです。しかも、それぞれの国の実情にかんがみ留保することにより、規制が維持できることになっておりまして、最恵国待遇義務については、協定発効後原則として十年間は、各国が他の加盟国に対して異なる取り扱いを継続する権利を、対象となる分野及び措置を明示して、例外として認めることが許容されております。  我が国は例外申請をしておりませんが、この規定に基づいて、米国やEU諸国は多くの例外を設けております。また、免許要件のように、内外無差別かつ質的な規制は国内規制と定義をされておりまして、規制の運用が、合理性、客観性、公平性等を担保されていなければならず、これに反するような国内規制は撤廃されるべきであるとしながらも、その適用範囲は当該国が約束を行った分野に限られている。非常に例外範囲が広くとられているわけであります。  こういった幅広い例外規定はガット原則そのものを崩すんじゃないかという危惧が持たれるわけでございまして、政府としてはこのような例外規定をどのように見ているか、また、将来的には、全廃とはいかないまでも、やはりだんだん削減していく必要があると思っておりますが、そういった見通しがあるのかどうか、見解をお伺いをしたいと思います。
  177. 原口幸市

    ○原口政府委員 先生御指摘のとおり、今回御審議いただいているサービス協定、決して一〇〇%完全なものではないわけでございまして、いろいろと問題があることは事実でございますが、先ほども指摘しましたとおり、まさに今まで全くルールがなかったところに新しいルールを導入する、そのためにはいろいろと現実との妥協、各国が受け入れやすいような妥協を図った上でできてきた、それが現在の協定でございます。  したがいまして、御指摘のとおり、最恵国待遇につきましても、一般義務ではありますが、特定の分野についてはその義務の免除を登録することができるようになっておりますし、市場アクセスとか内国民待遇については、各国が交渉した結果、自分がやれると判断した分野についてだけ条件を付してオファーする、こういう形になっているわけでございます。  しかし、御指摘のとおり、例えば最恵国待遇につきましても、その免除義務は十年間だけは原則として維持できますが、その後は変えなきゃいかぬし、それから、さらに今後とも自由化交渉ということは予定されておりますので、日本といたしましては、今後のそうした機会をとらえまして、運用の側面からあるいは交渉の中で、このサービス協定の内容を一層充実したものにしていくべく努力したいと考えております。
  178. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 この最恵国待遇の免除措置として、米国の場合には、外国人及び外国法人に対して燃料輸送用パイプライン敷設権の取得禁止など十項目、それから欧州共同体は、音響・映像作品の域内での配給について作品の共同制作にかかわる政府協定締結国以外の国に対する内国民待遇供与義務の免除など二十八項目を掲げております。そのほか五十九カ国が何らかの免除措置を掲げておるわけでございますけれども、これらの免除措置によって我が国のサービス産業の競争力に対する影響はどのようなものになるのか、これは大変幅広い所管になりますが、例えば通産省としてどう見ておられるか、お伺いをしたいと思います。
  179. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 詳細につきましては、必要がありましたら事務当局からの補足をお許しいただきたいと思いますが、例えば今委員が触れられましたようなオーディオ・ビジュアル、これに関連する分野は、協定の最終段階におきまして非常な激しい交渉があったものと聞いております。当時残念ながら我々は野党でありましたから詳細を知るすべはなかったわけでありますが、当然のことながら、こうした留保のつきましたものは、何らかの影響を私は国内産業に与えると思います。  しかし、逆に申しますと、そうした留保がついた状況の中でありましても、サービス分野におけるこれだけの合意が成立をしたことは、今まである意味では各国がみずからの主権のもとに勝手な制約が加えられてきた、そこに留保条件つきながらも一つのルールが確立をしたということでありまして、これは私は、我が国に対してマイナスの影響としてこれをとらえるよりも、むしろそれだけの留保条件はありながら、今までよりも状態が透明度を増し、しかも積極的に行動し得るシェアは広がった、そうとらえる方が正しいのではなかろうか。少なくとも私はそう前向きに受けとめてこれを実行してまいりたい、そのように考えております。
  180. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 このサービス協定の場合には、今通産大臣も言われたように、今後詰めるべき問題は多々ある、ただ非常に重要なステップであるという認識でございまして、私も基本的には同じような理解を持っております。ただ、これを本当に今後改善していくためには、今後の運用、これは大変重要なものになると思いますので、ぜひともこの協定が本当に効果があるものとなるよう、特に我が国として最大限の努力をまたその運用面においてしていくべきであろうと考えます。ぜひその点につきまして、政府のこれからの努力を期待をしたいと思っております。  そこで、次に、紛争解決の問題に移りたいと思います。  このWTO協定の中で、特に紛争解決メカニズム、大変大きな改善があった、少なくとも文言上は大変大きな改善があったと私は受けとめておるわけでございます。これまでの紛争解決メカニズムの場合には、御承知のとおり、二国間で貿易紛争が生じた場合、二国間で協議をして、妥当な期間内に解決に至らなければその問題をパネルに付託することができ、パネル報告は全会一致により採択されるというものだったわけです。したがって、協議を申し込まれた国だけが反対するだけでもパネル報告は不採択となったということがあります。また、厳格な期限が設定されていなかったために紛争解決に時間がかかり過ぎるという問題点もありまして、このパネルで行われる多国間での紛争解決手段よりも、どうしてもガット違反的な措置がとられがねない二国間での紛争解決に持ち込まれるケースが多かったわけであります。  この新しい紛争解決メカニズムでは、紛争解決の各段階におきまして厳格な期限が設定をされておりますし、また、パネル報告が全会一致の反対でない限り採択される、いわゆるネガティブコンセンサス方式が採用されたわけでございます。また、明示的に、この紛争解決メカニズムに基づかない一方的な制裁措置は禁止をされております。  こういった条文上の表現から見ますと、このようなメカニズムの変更により、WTOは、ガットに比べまして多国間の枠組みによる絶大な紛争解決力を備えるようになったというふうに思えるわけでございますが、実際にそう考えでいいのかどうか。政府としての見解、評価をお聞きしたいと思います。
  181. 原口幸市

    ○原口政府委員 今先生御指摘のとおり、今度の紛争解決手続は、従来の解決手続から比べますと非常な改善点があるわけでございます。  例えば、パネルの報告をとりましても、今までは全員が合意しない限り採択されなかった。したがって、被告の立場にある国が反対するということはしばしばありまして、採択されないケースもあったわけでございますが、今回は一カ国でも賛成すれば採択されてしまうということになるわけで、非常に自動性というものが出てきたし、それから期限も設定されておりますし、それから上級審といいますか、パネルの報告の法的側面について不満がある場合にはさらに上級審に提訴することも可能になっておりますし、また措置につきましても、クロスリクリエーションといいまして、物の分野で問題になっているのに対してサービスの分野で対応することも可能と、いろいろな改善点があるわけでございます。そこで、我々としては、確かに大変な改善が期待できるだろうと思っております。  他方、法治国家である日本でも法律に違反して犯罪が行われるわけでございますので、完全に一切なくなるかといえばそういうことは多分ないと思いますが、あとは、我々WTOメンバーになった国がいかにこれを実効あらしめるように大事に育てていくかというところにかかっているのではないかと考えております。
  182. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 次に、この紛争解決メカニズムによって米国の一方的措置をどこまで抑えられるかという問題でございますが、この紛争解決に係る規則及び手続に関する了解では、WTOの紛争解決メカニズムに基づかない一方的な制裁措置の禁止が明記をされております。  それにもかかわらず米国政府は、例えば、通商法三〇一条の運用が制限されることはない、特に日本の系列取引など目に見えない貿易障壁の除去にWTOのルールは無力であるといった発言をしております。また、競争政策や投資、環境問題など、WTOがカバーしていない分野はWTOの範囲外である、あるいは金融サービスなどウルグアイ・ラウンド合意できなかった分野は対象外と考えておりまして、金融市場の開放度に合わせて二段階の最恵国待遇を設けるとの主張も行っておることは御承知と思います。  米国がWTOの紛争解決メカニズムの中で三〇一条を発動することには問題がない以上、国内法として三〇一条を持つこと自体はWTO協定違反とは言えないと思います。  そこで、政府としては米国の今のような主張をどのように受けとめておるのか、また、新しい紛争解決メカニズムにより、米国の一方的措置をどこまで封じ込めることができるのかどうか、御所見を伺いたいと思います。
  183. 原口幸市

    ○原口政府委員 昨日の本委員会でも似たような御質問がございましたけれども、カンター代表は一月たしか十何日かの下院の歳入委員会で、三〇一条というものはガットの対象のものについてはガットの手続でやることになるんだ、それから、WTOになれば範囲がそれだけ広がるので、それだけガットの手続に基づいてやるケースはふえるだろうということを言っております。それはアメリカの議会に対して言っているわけでございますので、アメリカは確かに、国内的には三〇一条ということをいっても、実際に外に対してはWTOの新しい紛争手続で物を処理するということになるんではないかというふうに我々は考えております。  万一アメリカが一方的に、本来アメリカWTOメンバーになれば一方的措置をとれないわけでございます。それを約束して入るわけでございますから、とれないわけでございますが、それにもかかわらず万一、一方的措置をとった場合には、それでその結果として我が国のWTO上の権利が侵害される場合には、日本としては当然定められた紛争解決手続で対抗するということになると思います。
  184. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 我が国の従来のパターンからいきますと、どうしても紛争があった場合、二国間で話し合って解決したいと、示談方式を好む傾向があったかと思いますけれども、やはり今後このWTOが発足した以上は、米国との協議の段階で三〇一条による一方的制裁に屈しないで、あくまで二国間で、短期間、六十日という期限が決められておりますけれども、解決できない問題はWTOの場にきちっと持ち込むというやはり姿勢が大事ではないかと思います。  WTO設立の暁には、我が国は経済摩擦解消のために明確にこういったWTOを活用する、問題があって、六十日たって解決しない場合にはきちっとWTOに持ち込むという方針なのかどうか、この場で明確に態度を表明いただければと思っております。
  185. 河野洋平

    河野国務大臣 WTO協定実施に移すことの大きな意味は、一方的措置であるとか二国間関係による解決でありますとか、あるいは地域主義とか、そういったものを排して、世界共通のルールの上で世界貿易を拡大しようというのがその大きな目的でございますから、この目的に向かって我々は進むと。したがって、WTO協定締結後の、実施後の我が国の姿勢はそういう姿勢だということをはっきり申し上げていいと思います。
  186. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 この紛争解決メカニズムをさらに実効あらしめるためには、特にこの貿易に係る紛争を多国間の枠組みの中で解決するというルールを徹底していくためには、何よりも各加盟国の自覚、姿勢が大事であることは言うまでもありませんが、同時に、この二国間協議はWTOの精神にのっとって進められているかどうか、それを常にチェック、監視するシステムが要るんではないかと思うわけでございまして、その点、ぜひこのWTOがそういう二国間協議の進行をきちっと監視する体制、能力を備えることが必要だと思うわけでございます。  その点、協定上こういった手当てがなされているのかどうか、また、やろうとすれば可能なのかどうか、この点につきましてお伺いをしたいと思います。
  187. 原口幸市

    ○原口政府委員 WTOは、国際貿易に関する非常に多岐にわたる機能を持っておる国際機関でございまして、二国間の貿易上の問題につきましては紛争解決機関に付することができることは先ほど申し上げましたけれども、その他頻繁に開催される各種の理事会とか委員会の会合で議論することも可能でございます。  それから、WTO貿易政策検討機関というのがございます。附属書の三になっておりますが、あの制度に基づいてできる機関でございますが、そこで各加盟国貿易政策及び貿易慣行の全般についての定期的な検討が行われることになっておりまして、そういう場を利用することもあるいは可能かと考えております。
  188. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 続いて、この紛争解決パネルの問題、ちょっと細かい問題になりますので外務省にお聞きをしたいと思いますが、この紛争解決了解の第六条で紛争解決パネルの設置が規定をされております。ここでは、パネル設置要請ができるのはあくまで協議の申し立て国に限られているわけでして、しかもこのパネル設置を要請するか否かは申し立て国の自由裁量にゆだねられているという規定ぶりになっております。  こういった規定ぶりに不備がないかどうかという点なんですけれども、例えばこういったケースを考えています。  ある貿易分野について、米国から我が国に対して協議申請があって協議が始まった。米国は三〇一条をちらつかせながら我が国と交渉して、我が国はそれに抵抗して六十日が過ぎても解決に至らないという状況があったといたします。ただ、米国の場合にはやっぱりどうしても力による解決を得意としておりますので、米国の戦術として、例えばパネル設置要請を行う権利を行使しないで、引き続き三〇一条を背景として我が国の譲歩を求めるために二国間協議を続ける道を選択する、こういう方針をとったとします。  その場合に、申し立てを受けた側の我が国としてはパネル設置を要請する権利はないわけでございますから、WTOの場に解決をゆだねるすべは日本としてはないわけでございますね。これはやっぱり新しい紛争を解決するルールが日米経済協議のような特殊な協議に当てはまらないのではないかというケースが想定をされるわけでございまして、やはりそういった点を考えますと、この紛争解決の規定ぶりに若干の不備があるのではないかという懸念を持っておりますけれども、この点につきまして外務省の見解をお聞きしたいと思います。
  189. 原口幸市

    ○原口政府委員 協定条文上の解釈は先生の解釈のとおりでございます。これを不備というかどうかは別問題だと思いますが、要するに、WTOの紛争解決手続はWTO加盟国の利害の侵害を回復するための手続でございますので、今のようなケースですと、日本の側からパネルをつくれ、つくるべきであるといって主張する権利はございません。  他方、そういう場合に、日本が毅然たる態度をとり続けて、万一アメリカ側が一方的な措置をとる場合には、必ず日本としてはWTOの紛争解決手続に基づいて処理いたしますよという立場をとることによって、ある程度そういう異常な対応ということを牽制することは可能になると思います。
  190. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 続いて、このWTOが発足をした暁には、もちろんWTOの規定自体は過去の紛争には適用されないわけですけれども、過去の紛争で決着をして現在続いている措置で、規定に反するとは言わないまでも、ガットの精神に反するような措置がいろいろあるわけでございまして、そういった問題については、やはりこの際きちっとけじめをつけて、一回この措置を断ち切って新たに協議を進めるということも、この紛争解決メカニズムの精神からいって好ましいのではないかという気がするわけです。  それも、我が国としてとっている措置、また諸外国が我が国に対してとっている措置もあるわけでございまして、例えば我が国のとっている措置としては、米国に対する自動車輸出規制とかそれから日米半導体協定に基づく我が国の措置、こういった措置は今後廃止するのかどうか、WTO発足の暁には廃止するのかどうか、その上で協議を開始するかどうか、あるいはまた対日輸入制限国に対する新しい手続に基づく協議申し立て、それからWTO提訴をするかどうか、こういった点につきまして政府の考え方をお聞きしたいと思います。
  191. 坂本吉弘

    坂本(吉)政府委員 ただいま委員指摘のように、いわゆる灰色措置と言われますガットあるいはWTOのルール以外の措置につきましては、御指摘のとおり次第にこれを廃止していくべきものと存じます。  ただいま御指摘のうち、アメリカ向けの乗用車の輸出規制につきましては、長年続いたものでございますけれども、本年三月をもって廃止いたしました。また、現在私どもの方でいわゆる輸出自主規制ということで続けておりますものも、その大部分、本年末で廃止を予定いたしております。ただ、新しいセーフガード協定におきましても、今後四年間のうちにこれらを段階的に撤廃すべきものということで、一つEC向けの自動車のモニタリングという問題がございますけれども、これはそれまでの間、一九九九年までの間、各国は一つの灰色措置を継続できるということで、これはECとしても存続したいというようなことを言っておるわけでございます。  さらに、日米半導体協定につきましては、これ自身が直ちにガットの規定に反するというものではございませんけれども、これも、九六年と存じますが、一応期限が来ることになっております。この協定につきましては、一応ガットである程度のパネルを設置して議論が行われた結果、今日の姿になっておるものでございます。しかし、その運用においてもしWTOの趣旨に反するようなものがあるとすれば、おいおいこれについても取り組んでいかなきゃならない、こんなふうに考えておるところでございます。
  192. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 特に、このWTO協定と日米協議の関係についてさらにお聞きをしたいわけなんですが、この紛争解決了解は、WTO協定発効後に開始された紛争解決協議を対象としておるわけでございまして、WTO協定発効前に開始された協議は対象としていないということになっております。そのため、WTO協定発効前から行われている日米経済協議に新しい紛争解決ルールを適用することはできないと考えられるわけでございますが、他方、先月上旬に大方の合意に達しました日米経済協議が積み残した自動車・自動車部品分野の協議、これは一度打ち切って、WTO協定発効後に新しいルールに基づいて再度協議を開始すべきではないかという考えもあるかと思います。  特に、橋本通産大臣、今月十日ですか、カンター通商代表との会談で、自動車・自動車部品分野協議の再開を合意をされたわけですけれども、このWTO協定発効を目前に控えた今、日米協議に対して、そろそろWTOの新ルールに基づいた、前提とした対応へと切りかえる必要があるんではないかと考えるわけでございますけれども、この点につきまして御見解を伺いたいと思います。
  193. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私がカンター並びにブラウン、アメリカの両代表者に対して、それぞれ別個でありますけれども、この協議の再開について出しました条件をまず申し上げたいと思います。  ボランタリープランというものがございます、自動車につきまして、御承知のとおり。これは、そもそも各企業の自主的なものであり、政府責任の及ぶ範囲外である。したがって、包括協議の対象外であることはもちろんのこと、政府間協議の対象ではない。部品購入問題について政府間で議論すべきことは、日米の業界間協議や個別商談会などを通じて民間セクターの協力関係を加速させるなど、そうした措置など環境整備に関するものであること。なお、そのボランタリープランは、我が国の自動車企業が自主的かつ競争法に整合的に作成するものであり、米国の業界と相談、議論をする性格のものではないことは当然、これが第一点であります。  また、並行しておりましたディーラーシップの問題についても、同じような理由から、輸入革を取り扱う将来のディーラー数を議論するのではなく、輸入車を取り扱うディーラーシップの発掘プログラムという形で日本の考え方を提示している、それをベースとして議論を進めること。  また、米国国内法である三〇一条というものは、日本側はWTOに整合的でないものと考えている。したがって、補修部品の問題は三〇一条のもとではなく、包括協議のもとで協議をするべきものであること、これが私がアメリカ側に提示をした交渉再開の要件でありました。  まあ、アメリカ側の対応が分かれておりまして、これはあなた方の方にボールがあるんだから、どうぞと言ってお別れをしまして、彼らがこの条件で交渉を再開する気があるのかないのか、これはアメリカ側からの連絡待ちという形になっておるわけでございます。その連絡を待ちました上で、その中身を見まして協議再開の環境が整ったかどうかを判断する、そのような姿勢で私は臨んでまいりたいと思っております。  現在のところ、補修部品につきまして三〇一条の調査の開始ということを決定されただけでありますから、具体的な影響を生じているわけではありませんが、もし一方的な措置が講じられますならば、当然のことながらWTOの紛争処理メカニズムの活用を含めて、我が国としてはあらゆる対抗措置をとる権利を留保しているということも、その姿勢を変えておるつもりはございません。
  194. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 いろいろ議論はありますが、できる限りこの新しいWTO協定の精神に沿った協議に日米間で今後切りかえていくということに、ぜひこれから御努力をいただきたいと思っております。  続いて、労働大臣にお聞きをしたいと思います。  先ほどからも、産業空洞化の問題、議論をされておりました。通産大臣からも詳細なお答えがあったものと理解をしておりますが、端的にこの産業空洞化、特に雇用との関係が最も心配をされるところでございます。  そこで、労働大臣にお聞きしたいことは、この産業空洞化の現状、動向、これの雇用に対する影響ですね、及びそれに対する対策、どのように考えておられるか、お答えをいただきたいと思います。
  195. 浜本万三

    ○浜本国務大臣 お答えをいたします。  今後の国際化の進展、技術革新、規制緩和等により、大きな構造変化が見込まれております。西暦二〇〇〇年ごろまでの産業、雇用の姿や、それに基づく政策の方向性につきまして、労働省といたしましては、学識経験者から成ります雇用政策研究会に検討を依頼いたしました。そして、ことしの六月に「中期雇用ビジョン」というのができまして、お示しをいただいたわけでございます。  それによりますと、規制緩和などの構造改革等が行われることを前提にいたしました場合、今後二〇〇〇年に向けて、製造業においては生産拠点の海外移転や生産性の向上により、ある程度雇用が減少するものと見込まれております。一方、サービス業や情報・通信、住宅、医療・福祉の分野では大幅な雇用需要の増加が見込まれております。  ただ、このような産業構造の変化のもとで、産業間の労働移動を余儀なくされるケースが多くなってくると存じます。今後は、こうした労働移動に伴う社会的痛みをできるだけ小さくするために、俗に言う失業なき労働移動ということを支援してまいりたいと思うわけです。特に今後この点に重点を置いた政策を展開していきたいと思います。
  196. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 先ほども定性的と定量的という議論があったわけでございますが、今の御回答は大変定性的な御説明でございました。それはそれとして理解をするわけなんですが、ただ私は、この雇用問題はそんな、そんなと言っては失礼なんですけれども、定性的な議論をして済む段階ではないのではないか、もっと深刻な、差し迫った危機が、雇用問題があるのではないかという、そういう認識を持っておるわけでございます。  ことしの三月もアメリカのデトロイトにおきまして雇用サミットが初めて開かれたわけでございますけれども世界全体として継続的に失業率が高まる、ずっと一貫して高まってきておりまして、これからの世界全体、日本も例外なく雇用問題が大変深刻な課題であることはもう明らかでございます。  特に我が国の場合、今までは高度成長を続けてきました。確かに日本の失業率が国際的に見て著しく低いことは事実でありまして、従来一、二%、現在でも三%であって、これは国際的には大変低い数字でございますけれども、なぜ日本が低いかという議論はいろいろあって、例えば日本の雇用慣行、終身雇用制とか、あるいは何というのですか、年功序列賃金とか、企業別労働組合の存在みたいなものがあって、労使ともに雇用の確保に意を用いているということは非常に大きな要素がと思いますが、それ以上に、やはり日本の戦後の経済成長が非常に著しくダイナミックなものであった、非常に高い成長率があったということがその一番の前提にあってこういう雇用慣行を維持し得たのだろうと私は思っておりまして、決して雇用慣行だけで今後ともこれが続くとはむしろ考えられないという認識に立つべきではないかと思います。  特に第一次石油ショック直前までは、実質平均で一〇%台の成長をしました。それから石油ショックが回復後四、五%台の成長をしてきたわけでございまして、この範囲であれば日本的な雇用慣行で十分対応できた、高い、ほとんど完全雇用に近い状況が維持できたわけですけれども、バブル経済崩壊後、実質ゼロ成長になっているわけですね。しかも、今後景気が回復するとしても、せいぜい一、二%台の成長率しか見込めないというのが一般的な見方でございまして、これはこういう基本的な条件が大きく変わったわけですから、当然ですが、これは雇用に急速な大きな影響をもたらすことは明らかであると思います。  特に、失業圧力を考えてみますと、まずそもそも労働人口自体は着実にふえていきます。それに加えて生産性も上がっていくわけですね。さらに、それに加えて円高とか、あるいは国際競争にさらされる、よって、輸入品によって雇用機会が失われるという面がある。さらに、今申し上げましたいわゆる空洞化ですね、生産拠点が海外に移転する、こういった要素を加えますと、それに加えて成長率が非常に低いということを前提としますと、これは今まで戦後日本が経験しなかったような非常に危機的な失業率になるんじゃないかというふうに私は大変危惧を持っているわけでございまして、そういった点からもぜひ定量的な予測といいますか、シナリオでいいんです、決してそのとおりになるということじゃなくて、こういう場合、この程度のときにはこうするといったような幾つかのシナリオを定量的に想定をして対策をするという考え方がぜひとも必要ではないかと私は考えておるわけです。  そういった意味で、もう一度お伺いをしたいんですが、今度は定量的に、当面、例えば今後数年、二〇〇〇年ぐらいまでの間にいろんな日本の経済を取り巻く経済状況を勘案したときに、失業率の動向がどうなりそうなのか、あるいはまた逆の言い方として、完全雇用を維持していくためには何%程度の経済成長が必要なのか、こういった点につきまして労働大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  197. 浜本万三

    ○浜本国務大臣 今先生から御指摘のことも十分考えられるわけなんでございますが、経済成長率と失業者数の関係について一般的に論ずることは非常に困難であるというふうに思っております。  ちなみに、本年六月に雇用政策研究会が取りまとめました「中期雇用ビジョン」では、規制緩和などの構造改革や社会資本の整備等が行われることを前提とした場合、二〇〇〇年の労働力需給は総体としてほぼ均衡がとれる、こういう形での一定の定量的な示唆はいただいておるわけでございますが、それを今申し上げましてもなかなか問題があるのではないかというふうに思っております。  ただ、率直に申し上げまして、この提言によりますと、三%程度でほぼ均衡するんではないか、こういうふうに申されておるわけでございます。
  198. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 今労働大臣の方から、これはまだ正式なものではないというふうに理解をしますが、三%程度の成長があればほぼ雇用が、失業者をふやさずに済むという一つの御回答がありました。この点は評価をしたいと思っております。  今度は、じゃこの現実の日本経済はどうなるのかという点ですが、これは今度は経済企画庁長官にお聞きをしたいわけでございますが、日本の経済構造が大きく今変わってきておりまして、国内的、国際的にも従来型のパターンの成長というのは期待できないわけでございまして、これからの日本の成長率、特に中期的な成長見通しはどうなるかということは、もうだれ一人もこれは大変強い関心を持って見ているわけでございまして、ぜひともこの点につきまして、中期の経済成長率見通しにつきまして、これはもちろん公式なものじゃなくていいわけなんですが、経済企画庁として、検討段階のものであっても結構なんですが、ぜひお示しいただければと思っております。
  199. 高村正彦

    ○高村国務大臣 現行経済計画では、平成四年度一から平成八年度でありますけれども、三・五%ということを見込んだわけであります。ただ、先生御指摘のように、平成四年も平成五年も、そして今年度前半もそれにかけ離れた低い成長率であることは事実でございます。  今景気が回復の方向に向かいつつある、こういうことでありますから、適切な経済運営をして、せめて残りの期間ぐらいはその見込みどおりの成長をさせたい、こう考えているわけでありますが、先生の御質問はむしろ二〇〇〇年にかけてどうかということかとも思いますけれども、現在政府として、二〇〇〇年までの責任ある数字をはじいておりません。
  200. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 確かに、大変不確実性の高い状況でございますので、定量的なことを責任持って言うことは難しいことはよく理解をできるわけでございます。  ただ、先ほど定性と定量と随分議論がありましたけれども政策、特に経済政策の場合には定量的な視点がないとほとんど意味をなさないと私は思っておりまして、特に当面の日本経済の問題を考えますと、ぜひこういった定量的な点、これは必ずしも、それが外れたからといって後で別に追及するわけではないわけですから、いろんな条件を変えながら、シナリオとしてケースA、ケースB、ケースCとか、そういったものをしっかりと持って、この場合にはこういう対応をするという政策的な対応を示しておくことが、やはり国民に対しても責任ある政府の態度じゃないかと思うわけでございまして、ぜひともそういう方向で今後検討をするようお願いをしたいと思っております。  そこで、現在のこの「生活大国五か年計画」、大分前提が狂ってしまいまして、ほとんど計画としての意味をなさなくなってしまったわけでございますが、これは確かにバブルの生成と崩壊という、ほとんどの人が外れたわけですから経企庁だけを責めるわけにはいきませんけれども、やはりこういった大きな構造変化があったわけでございますから、やはりこの生活大国計画は、これを本当に見直して新たな計画を、現実的な計画をつくることが今後の経済運営の上からも、また景気対策の一環としても重要ではないかと思うわけでございまして、この点、新たな経済計画をつくる用意があるかどうか、あるいはこの作業をしているかどうか、この点につきまして経企庁長官のお答えをいただきたいと思います。
  201. 高村正彦

    ○高村国務大臣 確かに、バブルの崩壊等によって現在の経済計画をつくったときと経済の姿が変わってきてしまっているという点はあるわけであります。そういうことで、政府の中にも経済計画を見直すべきだという有力な意見もあるわけであります。  私といたしましても、検討すべき課題である、こういうふうに思っておりますが、今経済審議会の中で四つの委員会を設けて、そしてその検討結果が、三つについてことしじゅうに、年明け早々に一つについて出る、こういう状況でありますので、その結果を見て私としても判断して、見直すかどうかについての総理の指示を仰ぎたい、こういうふうに考えております。
  202. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 私としては、ぜひ新たな計画作成に向けてひとつ御尽力いただきたいということをこの場で要望をしておきたいと思います。  ちょっと時間も限られてきましたので、最後に通産大臣にまたお聞きをしたいと思うんですが、非常に日本経済を取り巻く内外の環境、大きく変わりました。国内的にも成熟化が言われ、今までのリーディングインダストリーが構造不況業種に転換をしてくる、将来の展望もなくなっているという面もあるわけですし、また国際的にも、今まで日本が先端を切っておりましたが、多くのアジアの諸国が逆に日本に追いつくために激しい競争を展開をしておる、こういった我が国を取り巻く内外の経済環境、大きく変化をしてきております。  そこで、これからの我が国としての国際分業のあり方、さらに、それに対応する産業政策をどう考えていくか。特に、国際的な分業のあり方、通商政策とそれから産業政策もほぼ表裏一体と私は思っておりまして、ぜひそれを一体化した戦略が必要ではないかと強く私は思っておるわけでございます。  従来、戦後の我が国の場合は、産業政策、非常に成功したと国際的に評価をされております。端的に言って恐らく、こういういわゆるキャッチアップ型の経済体制ですね、我が国がいわばその創始者ということになるわけでございますし、それこそ産業政策としては特に生産性基準というもの、それから所得弾力性基準といいますか、生産性がどんどん高まる、技術革新がどんどん高まる分野、さらに世界市場における需要が伸びる分野、こういった基準から産業を特定をして、それを政府としても支援をしていった、官民挙げて努力したということが、いわばキャッチアップ型の日本のやり方を成功させた要因であると端的に思っておりますけれども、今こういったことをほかの国が、特にアジアの諸国がみんなこれを学びつつあって、特に技術の革新とその移転が非常に速いスピードで起こるようになってきたこともあって、国際分業のあり方が非常に難しくなってきたと思うわけでございます。  我が国の場合にも、キャッチアップ型からパイオニア型への転換ということがよく言われておりますが、こういった内外の経済環境の大きな変化を踏まえて、我が国としての今後の国際分業のあり方あるいは通商政策と産業政策をどのように考えていくのか、基本的な点で恐縮ですが、通産大臣の御見解をお願い申し上げます。
  203. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 どういうふうに申し上げれば一番いいのか、大変難しいお尋ねでありますけれども、例えば日本とアジアを中心とした諸外国というものを一つとらえてみまして、ここでその国際分業というものを考えてみたといたします。  これは、我が国経済の効率化、また国際的に調和のとれた産業構造の転換に資するという点とともに、アジアの諸国にとりましても、経済成長に対する寄与などを通じて世界経済の拡大均衡の実現に資するものということになろうと思います。 また同時に、こうした分業化を進めなければ、世界経済の拡大均衡に悪影響を及ぼすだけではなく、今度は途上国との間に摩擦を発生させる、そして日本が孤立しかねない、そんなおそれさえ出てくると思います。  ですから、こうしたことを考えましたとき、これは通産省としての立場からでありますけれども、活力を持ち、創造性にあふれた我が国の経済社会というものを構築していこうとするならば、やはり内需の拡大というものをまず一つの視点に置き、規制緩和の推進あるいは内外価格差の是正、産業構造の高度化、よく言われる言葉ばかりでありますけれども、これをその三つとも、いわば三位一体のような形で組み合わせて進めていくことが何よりも肝要ではなかろうかと思われます。  そして、そういう中で、日本がどうした分野にこれからの産業を誘導していくかということになりますと、一つはやはり知識技術集約的な分野へ特化を図っていくこと、同時に国民生活をより豊かなものにしていく分野に特化していくこと、こうした二つの方向が挙げられるかと思います。  これは一つの例で申し上げますなら、産構審答申の中に挙げております十二分野のうち、知識あるいは技術集約的な分野として、情報・通信といった分野が挙げられるかと思います。また、国民生活をより豊かなものにしていくという視点で育成していくべき分野として、住宅関連あるいは医療・社会福祉関連といった分野が挙げられるかもしれません。  いずれにいたしましても、我々は、やはり分業というものを進めていきます中で、一方では知識技術集約的な分野への特化を図ること、同時に国民生活をより豊かな方向に導いていくための分野に誘導をしていく必要性があろうか、そのように考えております。
  204. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 時間がないので余り議論できないのですが、私の個人意見として、大変技術革新が起こり、また特に移転が非常にすごいスピードで起こっておりまして、特に、アジア諸国の学習能力は従来よりはるかに高いということが特に問題を非常に複雑にしているのじゃないかと思っております。私自身としては、よく言われている雁行的な分業ですね、ガンがちょうど順序よく少しずれて飛んでいくように、急速に技術革新が起こり、また移転が起こる状況では、そういう雁行形態の分業を国際的にうまく配置をしていくことが一つのかぎになるのだろうというふうに考えておりまして、そのためには、ある程度産業政策も、国内的な産業政策だけじゃなくて、国際的な枠組みで産業政策を考えるといった視点も大変大事じゃないかと思っておりまして、APEC等の場でそういう問題提起をぜひやっていただければと思っておるわけでございます。  最後に一つだけ、そういう長期的な、二十一世紀を目指しての我が国の経済戦略、大変重要でございますが、とともに、当面のこの円高不況、中小企業大変厳しい今苦痛を強いられておりまして、こういった短期的な救済策も大変重要なわけでございます。従来の不況に加えまして、今の円高あるいは産業空洞化によるしわ寄せが今厳しく中小企業に来ておるわけでございまして、特に抜本的な解決策にはなりませんけれども、債務負担の軽減等のそういった施策をさらに追加的にとる必要があると私は強く訴えたいと思っておりまして、この点につきましてぜひ通産大臣の御決意をお述べいただければと思っております。
  205. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 去る九月時点におきまして通産省が実施した調査を見てみますとき、過去一年間に親企業からの受注がなくなった、あるいは減少したと回答された下請企業が七七%を占めております。そのうちの二七%は、その理由として、親企業が海外に展開したことを挙げております。  こうしたことを考えますとき、委員の御指摘は私は真剣に受けとめ、同時に、この調査の中からも出てまいりました、より積極的に新たな分野に展開する、あるいは新しい製品を開発しようという意欲を大切にし、できる限りの努力をしてまいりたい、そのように考えておりますので、委員各位のお力添えをもぜひよろしくお願いをいたします。
  206. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 時間ですので、以上で終わります。
  207. 佐藤孝行

    佐藤委員長 遠藤君の質疑は終了いたしました。  次に、藤田スミさん。
  208. 藤田スミ

    藤田委員 農業協定に関連してお伺いいたします。  今回のWTO協定批准国会に当たって、自民、社会両党は、十分な国内対策がなければWTO協定批准はできないとしてきたわけですが、ところが今回の六兆百億円の国内対策がまとまるや、農業合意に伴う影響を最小限度に食いとめるとともに、農業の将来展望を切り開き、二十一世紀に向けた農業構造の早期実現に邁進するとして、その批准受け入れを決めたわけであります。  そこでお伺いいたしますが、影響を最小限に食いとめるとしているわけですが、国内対策をすれば影響は出ない、そういうふうに言い切れますか、大臣
  209. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 御案内のとおり、今回のウルグアイ・ラウンド農業交渉の過程におきましては、我々は、米はもちろんのこと重要な農産物については、農産物貿易の特殊性を強調して、これに対する例外措置を求めてきたわけでございますが、交渉の最終の段階において、米に対する特例措置を除きましては関税化をしたわけでございます。  この関税化につきましても、その段階で、極力影響を回避しなければ相ならぬということで、御案内のとおり、その内外価格差を前提とした相当高い関税相当量を設定したわけでございます。特に乳製品とかあるいは生糸、麦等々につきましては、国家貿易がこれに介入してその影響を回避する、そういう措置をとったところでございますが、中長期的に見ますと、やはり国際市場の影響は国内農産物市場にも影響を及ぼしてくる。特に為替相場の変動等によって影響を受けるものもございましょう。また、国内支持水準についても、基準年次から二〇%の削減というような農業協定の内容になっております。これについては、実は基準年次からの二〇%は既に我が国は達成しておるという点で、我々はこれについては懸念をいたしませんが、やはり価格政策の運用についていろいろな制約面もあるかと思うわけでございます。  こういうことでございますので、まず当面の影響、これは食いとめられた。ただし、今申し上げましたように、中長期の観点から見ますと、やはりしっかりした農業構造のもとにおいてその農業生産の大宗が行われる、国際競争力を強化するということによって、長期展望のもとにその影響を回避しなければならないということで、今回の国内対策を実施することにしたところでございます。
  210. 藤田スミ

    藤田委員 なるべく、時間が限られておりますので短くお願いいたします。  大変長い御丁寧な御答弁をいただきましたけれども大臣は、決して影響はないとはおっしゃっておりません。また、私は言えるはずがないと思うのです。今回の国内対策をとったとしても、正確に言いますと、今回の国内対策によって、日本農業により深刻な影響が出てくるわけであります。  その問題に入る前に、私は、これまでの政府国内対策導入時の発言について振り返ってみたいと思います。  皆さんも御記憶に新しいと思いますけれども、牛肉・オレンジの自由化のときに、日本共産党は、政府国内対策をとったとしても畜産農家を壊滅に追い込むものだとして反対をいたしました。これに対して政府はどういう対応をしたかというと、当時の農林水産省京谷畜産局長は、私が質問したのに対して、輸入枠撤廃後の国境措置国内対策で懸念が縮小ないし払拭されると述べたわけでありますけれども、その点は、確認だけです、間違いありませんね。
  211. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 私も、過去の速記録を読みまして、そのような発言があったことは承知しております。
  212. 藤田スミ

    藤田委員 しかし、牛肉・オレンジの自由化による影響は、国内対策で懸念が縮小ないし払拭されるなどというようなものではなく、まさにすさまじいものでありました。  私は、きょうここに、この「牛肉輸入自由化の影響と今後の課題」、農林中金の総合研究所が出しておりますレポートを持っておりますけれども、これを見ましたら、七八年には四十万二千戸あった肉牛飼養農家は、八八年から自由化三年目の九三年までの五年間で六万一千戸も減少し、それまでの離農を入れると、自由化後の九三年には七八年のちょうど半分の十九万九千戸にまで減少している、こういうことが示されています。  さらに、枝肉市況の牛肉輸入自由化による下落によって、乳雄牛の肥育経営では、一頭当たりの利益は、輸入自由化初年度である九一年から四万一千円の赤字に転落し、九二年にはさらに赤字幅が増大し、農家所得も大幅に低下して、九二年の所得では、百頭規模であっても家族労働報酬は一年間で三十万円、一カ月ではわずかに二万五千円という水準に落ち込んでおります。私は、もうその数字が信じられなくて何度も読み返し読み返しして、こんなに深刻なことになっているのかと改めて思いましたけれども、さらに和牛の肥育農家にも影響が拡大しています。酪農家にしましても、輸入自由化による子牛価格の暴落で深刻な打撃を与えていることは言うまでもありません。  そしてレポートは、牛肉自由化の評価を行っておりまして、こう言っているのです。「大多数の小規模農家を中心に肉牛等畜産経営からの脱落・離農が急速に進んだ」「一方で、規模拡大が進み、しかも輸入品との競争上ゴールのない規模拡大にともなう経営リスクや環境問題が内在」化していると評価をしているわけであります。私は、稚内など、ことしも参りましたけれども、もう数年したらこれで村が消える、何人もの人からそういう訴えを受けました。  ミカンについてもそうです。国内対策の中心になった五百四十億円を費やした園地再編整備対策について、日園連の役員から、ミカン農業再生の切り札になり得なかったと言わざる得ない、果汁の自由化でこんなに早く深刻な影響が出るとは予想できなかった、そういう声が出されているわけであります。結局、農産物輸入自由化は、例えて言えば大型台風のようなものでありまして、その対策として多少トタンの屋根を補強するような国内措置をとったとしても、とてもかなうものではありません。  それは、自民党の牛肉・オレンジ輸入自由化日米交渉の当時の責任者の一人であった江藤隆美議員が、昨年の十月五日の衆議院予算委員会で、「私は抜かったと思うことがある。」江藤さん、そうおっしゃるのです。「私は抜かったと思うことがある。それは、牛肉・オレンジの自由化、十年やった。外務大臣も一緒にやってきた。今にして思うと、関税化というものがいかに怖いものであるかということを今つくづく私は反省をする。」江藤さんはそういうふうにおっしゃって、結局ここでも十分裏づけをされているわけであります。  大臣、こういうふうな歴史的な経緯を踏まえても、国内対策で自由化の影響を回避できるというふうにお考えなんでしょうか。
  213. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 お答え申し上げます。  先ほどるる経緯を述べ、時間がないというおしかりをちょうだいいたしましたが、関税化の場合においても、今回の関税化は、その内外価格差を前提とした高い関税率と申しますか、関税相当額を設定しておりまして、急速な急激な短期間の実施期間中の影響は避けられる、それが前提で関税化にやむを得ず踏み切ったということでございます。  しかも、中長期から見れば影響があるということで、何と申しますか、がっちりした農業構造を確立して、それによって中長期的展望に立った見通しを立て、その関税化の影響を、そして新しい農業の展望を切り開く、そういう措置をとったわけでございまして、牛肉の自由化、オレンジの自由化等については、肉用子牛の価格補給金制度なり、あるいは肥育農家の経営安定措置等をとりましたが、そういう総合的な展望を持って行わなかったうらみがあることは否定できませんけれども、このたびはそのような経験にかんがみまして、関税化そのものの、あるいはそれに対応する中長期の農業構造の確立という措置をとったところでございます。
  214. 藤田スミ

    藤田委員 結局は、圧倒的多数を占めるこの零細中小農民に対して、逆にそれは切り捨てるという性格を多分に、多分にというよりも、そういう性格を持つものなんです。非常に大きな期待を、その六兆百億という額面でいうと持たせるわけです。大したもんだという受けとめ方もあるわけですけれども、しかし実際に本質的に言えば、大臣がいみじくもおっしゃったように、そういうがっちりとした農業構造で展望を切り開くということで、零細中小農民の切り捨てを進めるということになるわけであります。  金額面でも、六兆百億といいますが、この中には、使われるかどうかわからない融資事業七千七百億円が入っております。それを除いたあとは、事業費ベースですから、この中には農民負担だとか地方自治体負担だとかも含まれています。実際の国の負担分は、だから単純に計算すると半分の二兆六千二百億円、それも六年分ですから、単年度に直すと四千三百六十七億円、与党がどんなふうにおっしゃろうと、しかも大蔵省の主計局次長も、スクラップアンドビルドが基本であることに変わりはないというふうに言っているわけであります。  既存の予算が削減されるとすれば、国内対策はもう文字どおり雲散霧消してしまうわけでありますが、現に二十一日の当委員会でも、総理は、今までの農林予算に六兆百億円を上乗せするのではなくというふうに答えられましたし、また大蔵大臣も、別枠とは言えないと答えておられるわけです。私は、こんないいかげんな国内対策予算はないというふうに思うわけですが、この点はいかがですか。
  215. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 お言葉でございますが、前段の零細経営を切り捨てという言葉でございますけれども、私どもはやはり前向きの、あるいは経営感覚のすぐれた経営体を育成する、これは二年前の新政策でも明らかにしたところでございまして、そのような経営体をつくり上げることによって農業構造の改善を進めたい、さようでございまして、零細農家切り捨てではなくて、結果において、その方々は他に部門を求めていただく。非常に二頭経営、三頭経営では、和牛の場合でもなかなかその持続的な安定成長は困難であるというようなことから、それぞれの経営目標を定めてやっていただくということでございます。  さて、今の予算のお話でございますが、この前も私もお答え申し上げておるのでございますけれども、今回の六兆百億の予算は、この対策のための六年間の新しい事業であります。これを六年間で実施いたす、この事業を実施いたすということが政府・与党の決定でございます。したがって、六年間の事業でございますから、一年一年の事業分については、どれを加速させるかとか、どの点を事業の柱に、どういう経費をつけるかは、毎年の予算編成で決められるわけでございます。  なお、従来予算の農林関係予算に悪影響を及ぼすことがないようにということでございまして、まさにこの新しい事業は必ずやる、しかし、その事業を行うためにその財源を従来予算の殊さらな削減とか抑制、そういうことによって達成することは避けなければならないという点を明確にしたところでございまして、我々としてはそれによる財源措置の確保に努めたい、さように思っています。
  216. 藤田スミ

    藤田委員 大臣は実質的な別枠扱いに大変こだわる姿勢を強調されるわけでありますけれども、首相も大蔵大臣も既存予算への厳しい査定を示唆する答弁をされているわけでありますから、私がこれにもしこだわったら、その総理との食い違いを大いに言いたいわけでありますが、きょうはその肝心の方もいらっしゃいませんので、それは本当に大きな食い違いがあるんだということだけ申し上げておきますが、大臣は、今大変なことをおっしゃいました。  新政策に示された十ヘクタールから二十ヘクタールもの大規模農家を中心とした農業生産体制に集中した対策を一気に推し進めようとする、それで展望を開いていくんだというふうにおっしゃっているわけです。結局、牛肉・オレンジの輸入自由化のときと同じように、競争にとても勝てない中小零細農家の離農はどんどん進んでいくことになります。  他に部門を求めていただく、大臣は今そういう御発言をされましたが、結局そうなると、国内で売られている米の九二%が五ヘクタール未満の稲作農家がつくっているこの現実ですね、この現実を前にして大臣はそういうふうにおっしゃるわけですね。
  217. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 お答え申し上げますが、新政策の示す経営展望では、組織経営体と申しまして、単に個別経営なりだけではなくて、農業生産法人あるいはその集落単位の兼業の農家、あるいは高齢農家、零細農家等について、作業の受委託とか全面受委託ということで組織体をつくって、それによって生産性を高めるわけでございます。それは地域の合意によってやるわけでございまして、おっしゃるような切り捨てというようなことは考えておりません。
  218. 藤田スミ

    藤田委員 私は、新政策議論のときにこういう議論を随分いたしました。作業の受委託なんというようなものじゃとてもない、実態はそういうふうに絵にかいたようにならないわけです。結局切り捨てられる。酪農だって畜産農業だって、結局中小零細農家は切り捨てられて、そしてそれこそ作業の受委託というよりか失業した状態で、北海道でもたくさんおりますよ。全く無責任な答弁と言わなければなりません。そして、そのことが今回の国内対策の性格を実によく物語っていると考えるわけであります。  次に、減反の問題についてお伺いいたします。  今回のマラケシュ協定受け入れによって、米のミニマムアクセスの輸入は、先ほどからも御説明ありましたが、日本の米の生産量の四%から八%、数量にすれば約四十万トンから八十万トン、生産面積からすると八万ヘクタールから十六万ヘクタール、最終年には現在の減反面積の二七%に及ぶ大規模な米の輸入がなされるわけであります。  これに対して、昨年の閣議了解事項では、「米のミニマム・アクセス導入に伴う転作の強化は行わない」としているわけでありますが、これは、ミニマムアクセスによって米の国内需給が大幅に崩れたとしても転作の強化は行わないということを含むのですね。その点はいかがですか。
  219. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 お話しのとおりでございまして、国内需給関係、すなわち豊凶等に基づく需給関係あるいは消費の動向、そういうものを見ての転作の上乗せ、これは従来過去二十年以上の生産調整においても行われたところでございますが、ミニマムアクセスの数量、これを理由とした供給増を理由とした転作面積の増加は行わないということでございます。
  220. 藤田スミ

    藤田委員 ミニマムアクセス米については内外無差別が原則ですね。ですから、仮に二百万トンの備蓄として、日本で生産された米のうちの二〇%が備蓄に回されるとすれば、ミニマムアクセス米についても備蓄に回せる量はそれを大きく超えることはできないはずであります。また、農政審報告では、「原則として、主食用及び加工用に売却する。」というふうに言っておりますが、それは違いはないですか。
  221. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 御質問の趣旨がよく、私申しわけないのですが受け取りにくいのですが、まあミニマムアクセス米も、お話しのようにガット三条の内外無差別原則がございますから、殊さらにそれを、国内産米と異なった、えさにするとか、あるいは備蓄でくぎづけにするとかいうことは許されないわけでございますが、やはり需給調整の一環としての備蓄制度の中にはそれを織り込んでいく、そして、全体の国内需給関係調整のとれた形で持っていくということは考えておるわけでございます。
  222. 藤田スミ

    藤田委員 私はこれは、そんな大臣がおっしゃるように甘い話にはならないというふうに思うのです。  大臣が今おっしゃったように、そういうふうに国内産とのバランス、内外無差別の原則に基づいてミニマムアクセス米も一定数量の備蓄というふうに限定されるならば、そういうふうになるならば、最低でも八割に当たるミニマムアクセス米が、つまり主食用ないし加工用に参入していく、備蓄をどけたあとの分は参入していくということになるわけであります。その数量は最大で六十四万トンですか、そういうことになるわけでありますから、他方、それに伴う減反の強化は行わないとすると、国内需給は大幅に崩れて、自主流通米価格を大きく引き下げることになりはしませんか。
  223. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 お答え申し上げますが、今藤田委員が御指摘の、ミニマムアクセスとして受け入れた輸入米について、八割は流通に回し二割を備蓄に回すなんという原則は一切ございません。これは、そのときの情勢によって、備蓄に積むか、あるいは主食用なり加工用に出すということでございます。
  224. 藤田スミ

    藤田委員 そのときの情勢にはよるけれども大臣がお認めになった内外無差別の原則ということに基づいて処理をしていくということになれば、結局はミニマムアクセス米を備蓄に回すというその量というのも、国内産が備蓄に回される量との率では無差別の原則というふうになっていくのではないかということを申し上げているわけです。そうすると、ミニマムアクセス米が大きく市場に流れていって、自主流通米の価格を大きく引き下げることになりはしないかということを言っているわけであります。
  225. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 繰り返して申し上げて恐縮でございますが、内外無差別原則といっても、それは何も一定の比率を必ず確保する、備蓄米の市場流通について、というふうなことはございません。国内産米も備蓄に回っておる、ミニマムアクセス米も備蓄として充当されることもある、そういうことでございまして、一定割合とかその他についての拘束はないものと思っております。
  226. 藤田スミ

    藤田委員 でも、もしミニマムアクセス米を政府が抱え込むというような状態が出てくれば、これはアメリカなどからの、つまり輸入をしているアメリカなどから、輸入米を市場から遮断しているということでWTO提訴する圧力、提訴するぞ、そういう圧力がかかってくるでしょう。また、大蔵省の方からは、米の保管経費がかかるからと放出の圧力がかかってくるでしょう。だから、百歩譲って、農水省が、そういう圧力があったとしても、ミニマムアクセス米を抱え込んでいくということになっていったとしても、そういうふうにしていったとしても、自主流通米市場にとってはそれらの輸入米の大きな在庫が、これはそこにたくさんの在庫がある以上価格引き下げの要因に働くことは、これは米に限らず、あらゆる市場で価格が形成される際の共通する現象じゃありませんか。
  227. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 お答え申し上げます。  備蓄については、しばしば申し上げているように、過去の不作等の経緯から見て、百五十万トンを基準として一定の幅を持って運営するということでございまして、備蓄米の大宗は国内産米でございます。したがって、備蓄という在庫自体が需給関係に対する一つの圧力になるというのは一般でございまして、ミニマムアクセスだけがそのようなものではないというふうに思っております。
  228. 藤田スミ

    藤田委員 大臣、そういうことになると、ミニマムアクセス米というのはどこへ行くのですか。主食用ないしは加工用に参入してくるということになるわけでしょう。しかも、ほとんど丸ごと四十万トンから八十万トン市場に参入してくるということになれば、それはそれとして自主流通米の価格を、国内需給が大幅に崩されて下がってくるということになりはしませんかということを言っているわけです。
  229. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 備蓄というこの在庫、これについての運営は、市場における自主流通米その他の価格形成を見ながら計画的に市場に対して、これは国産米も同様でございまして、同じような考え方で出すわけでございます。したがって、ミニマムアクセス米だけを殊さら取り上げてということについては我々は考えてないわけでございます。
  230. 藤田スミ

    藤田委員 大臣の口から、ミニマムアクセス米があるから、だから自主流通米価格の引き下げに大きく作用するというふうに言わせる方が無理だと私も思いますよ。そんなこと、大臣の口から言ったら物すごく大きな矛盾になりますからね。でも、私は今の大臣の御発言を聞いていても、やはりそういう自主流通米価格の引き下げに大きく作用するものなのだというふうに聞き取らざるを得ませんし、また、実際にはそういうことになると思います。  自主流通米価格の低下がもちろん中小零細農民の離農を加速度的に推進することは、先ほど見た牛肉の自由化による深刻な影響を見ても明らかであります。しかも、それは畜産とは比較にならないぐらい、国土の荒廃や農村地域社会の崩壊に直接結びつくものであります。そして、それは政府がどんなに国内対策を行ったとしても防ぎ切れるものではありません。  今まさに、北海道は、規模拡大をすれば難儀を乗り越えられる、そういうことで、政府からむちたたかれるように、果てしない輸入肉との競争上のゴールのない規模拡大をしながらみずからの経営困難を乗り越えようとする、しかし、そのために経営上のリスク、また環境上のリスクをしょって、もうやっていられないという状態があるわけでありますけれども、しかし、米にもそれが拡大する。こういうふうな悪夢を防ぐ最大の対策は、私は、やっぱり協定の批准を行わないことだ、そういうふうに考えるわけであります。  最後に、農水大臣外務大臣の御見解を求めて私の質問を終わります。
  231. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 藤田委員の御主張なり御見解と、私どもは見解を異にするものでございます。
  232. 河野洋平

    河野国務大臣 議員からいろいろと農業問題について御指摘がございました。私どもも、かねてからこのウルグアイ・ラウンドの交渉が日本農業に影響を与えるということについて懸念を持っているということは、我々も申し上げているところでございます。したがって、その懸念を払拭するために、政府・与党は真剣な討議をして、その対策をつくり上げているわけでございます。  他方、本協定は、繰り返し申し上げることで恐縮でございますが、世界貿易を拡大する、あるいは世界貿易の公正なルールをつくる、新たなルールをつくる、そういう観点に基づきまして、長い間、百二十を超える国と地域が話し合って合意をしたものでございます。  私どもとしては、この協定を御承認をいただきまして明年一月一日からスタートすることが、我が国にとってもトータルに考えて大きな利益があるものと確信をし、皆様方に御承認をお願いをしているところでございます。
  233. 藤田スミ

    藤田委員 これで終わりますが、多くの国民は、やっぱり食べたい日本のお米、ことしの緊急輸入自由米を前にしてその思いを一層強くいたしました。私は、政治というのは、そういう国民の願いにこたえていく、それが政治だと思うのです。もし自国の国民の願いにこたえられないようなものを押しつけられるとすれば、それは主権の侵害と言わなければならないわけです。私は、主権侵害を絶対に許さない、米を守るために、協定を再協議し、この協定は受け入れてはならないということを申し上げて、質問を終わります。  ありがとうございました。
  234. 佐藤孝行

    佐藤委員長 藤田さんの質疑はこれで終了いたしました。  次回は、明二十五日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十四分散会