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1994-11-17 第131回国会 衆議院 世界貿易機関設立協定等に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成六年十一月十七日(木曜日)     午前九時開議 出席委員   委員長 佐藤 孝行君    理事 越智 伊平君 理事 川崎 二郎君    理事 田中 直紀君 理事 中川 昭一君    理事 小平 忠正君 理事 畑 英次郎君    理事 日笠 勝之君 理事 伊藤  茂君    理事 辻  一彦君       逢沢 一郎君    赤城 徳彦君       片岡 武司君    岸本 光造君       久間 章生君    栗原 博久君       小杉  隆君    斉藤斗志二君       塩崎 恭久君    七条  明君       根本  匠君    福田 康夫君       二田 孝治君    松岡 利勝君       松下 忠洋君    御法川英文君       井奥 貞雄君    遠藤 乙彦君       大石 正光君    川島  實君       木幡 弘道君    古賀 正浩君       坂本 剛二君    鮫島 宗明君       田名部匡省君    千葉 国男君       仲村 正治君    平田 米男君       松田 岩夫君    保岡 興治君       山本  拓君    吉田  治君       秋葉 忠利君    池田 隆一君       金田 誠一君    永井 哲男君       鉢呂 吉雄君    濱田 健一君       横光 克彦君    錦織  淳君       前原 誠司君    松本 善明君       山原健二郎君    吉井 英勝君       遠藤 利明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  村山 富市君         法 務 大 臣 前田 勲男君         外 務 大 臣 河野 洋平君         大 蔵 大 臣 武村 正義君         文 部 大 臣 与謝野 馨君         厚 生 大 臣 井出 正一君         農林水産大臣 大河原太一郎君         通商産業大臣  橋本龍太郎君         運 輸 大 臣 亀井 静香君         郵 政 大 臣 大出  俊君         労 働 大 臣 浜本 万三君         建 設 大 臣 野坂 浩賢君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     野中 広務君         国 務 大 臣         (内閣官房長官五十嵐広三君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 山口 鶴男君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      小里 貞利君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 玉沢徳一郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      高村 正彦君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      田中眞紀子君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 宮下 創平君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 小澤  潔君  出席政府委員         内閣法制局長官 大出 峻郎君         総務庁行政管理         局長      陶山  皓君         防衛庁参事官  熊谷冨士雄君         防衛庁参事官  江間 清二君         防衛庁人事局長 萩  次郎君         防衛施設庁労務         部長      涌田作次郎君         経済企画庁調整         局長      吉川  淳君         経済企画庁総合         計画局長    土志田征一君         科学技術庁原子         力局長     岡崎 俊雄君         国土庁地方振興         局長      松本 英昭君         外務大臣官房外         務参事官    谷内正太郎君         外務省総合外交         政策局長事務代         理       山崎隆一郎君         外務省アジア局         長       川島  裕君         外務省経済局長 原口 幸市君         外務省条約局長 折田 正樹君         大蔵省主計局次         長       中島 義雄君         大蔵省関税局長 鏡味 徳房君         文部大臣官房総         務審議官    雨宮  忠君         文部省高等教育         局長      吉田  茂君         文部省学術国際         局長      岡村  豊君         文化庁次長   林田 英樹君         厚生大臣官房総         務審議官    太田 義武君         厚生省健康政策         局長      寺松  尚君         厚生省生活衛生         局長      小林 秀資君         厚生省老人保健         福祉局長    阿部 正俊君         農林水産大臣官         房長      高橋 政行君         農林水産省経済         局長      東  久雄君         農林水産省構造         改善局長    入澤  肇君         農林水産省農蚕         園芸局長    日出 英輔君         農林水産省食品         流通局長    鈴木 久司君         食糧庁長官   上野 博史君         通商産業大臣官         房審議官    中野 正孝君         通商産業省通商         政策局長    坂本 吉弘君         通商産業省環境         立地局長    齊藤 眞人君         通商産業省生活         産業局長    江崎  格君         特許庁長官   高島  章君         特許庁特許技監 油木  肇君         特許庁総務部長 森本  修君         郵政大臣官房長 木村  強君         郵政大臣官房審         議官      品川 萬里君         労働大臣官房長 伊藤 庄平君         労働省職業安定         局長      征矢 紀臣君         建設大臣官房長 伴   襄君         建設省都市局長 近藤 茂夫君         建設省河川局長 豊田 高司君         建設省住宅局長 梅野捷一郎君         自治省財政局長 遠藤 安彦君  委員外出席者         外務委員会調査         室長      野村 忠清君         大蔵委員会調査         室長      中川 浩扶君         文教委員会調査         室長      長谷川善一君         農林水産委員会         調査室長    黒木 敏郎君         商工委員会調査         室長      石黒 正大君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月十六日  辞任         補欠選任   海江田万里君     遠藤 利明君 同月十七日  辞任         補欠選任   塩崎 恭久君     根本  匠君   今津  寛君     保岡 興治君   大石 正光君     川島  實君   秋葉 忠利君     金田 誠一君   和田 貞夫君     池田 隆一君   藤田 スミ君     山原健二郎君 同日  辞任         補欠選任   根本  匠君     塩崎 恭久君   川島  實君     大石 正光君   保岡 興治君     今津  寛君   池田 隆一君     和田 貞夫君   金田 誠一君     濱田 健一君   山原健二郎君     吉井 英勝君 同日  辞任         補欠選任   濱田 健一君     秋葉 忠利君     ――――――――――――― 十一月九日  ガットウルグアイ・ラウンド協定承認反対  に関する請願岩佐恵美紹介)(第一五九号  )  同(穀田恵二紹介)(第一六〇号)  同(佐々木陸海紹介)(第一六一号)  同(志位和夫紹介)(第一六二号)  同(寺前巖紹介)(第一六三号)  同(中島武敏紹介)(第一六四号)  同(東中光雄紹介)(第一六五号)  同(不破哲三紹介)(第一六六号)  同(藤田スミ紹介)(第一六七号)  同(古堅実吉紹介)(第一六八号)  同(正森成二君紹介)(第一六九号)  同(松本善明紹介)(第一七〇号)  同(矢島恒夫紹介)(第一七一号)  同(山原健二郎紹介)(第一七二号)  同(吉井英勝紹介)(第一七三号)  同(佐々木陸海紹介)(第二一四号)  同(東中光雄紹介)(第二一五号)  同(正森成二君紹介)(第二一六号)  同(松本善明紹介)(第二一七号)  同(矢島恒夫紹介)(第二一八号)  同(吉井英勝紹介)(第二一九号)  同(不破哲三紹介)(第二五二号)  同(岩佐恵美紹介)(第三〇〇号)  同(佐々木陸海紹介)(第三〇一号)  同(志位和夫紹介)(第三〇二号)  同(寺前巖紹介)(第三〇三号)  同(中島武敏紹介)(第三〇四号)  同(東中光雄紹介)(第三〇五号)  同(不破哲三紹介)(第三〇六号)  同(藤田スミ紹介)(第三〇七号)  同(正森成二君紹介)(第三〇八号)  同(松本善明紹介)(第三〇九号)  同(矢島恒夫紹介)(第三一〇号)  同(山原健二郎紹介)(第三一一号)  同(吉井英勝紹介)(第三一二号)  ガットウルグアイ・ラウンド合意国会承認  反対に関する請願坂上富男紹介)(第二一  三号)  同外三件(坂上富男紹介)(第二七一号)  同(坂上富男紹介)(第三一三号)  食糧自給安定的確保食糧管理制度廃止反  対等に関する請願不破哲三紹介)(第二六  七号) 同月十五日  ガットウルグアイ・ラウンド合意国会承認  反対に関する請願外一件(坂上富男紹介)(  第三四四号)  ガット合意承認反対に関する請願松本善明  君紹介)(第三六四号)  ガット農業合意協定承認反対に関する請願  (畠山健治郎紹介)(第三六五号)  ガットウルグアイ・ラウンド協定承認反対  に関する請願古堅実吉紹介)(第三六六号  )  同(松本善明紹介)(第三六七号)  同(藤田スミ紹介)(第四一二号)  同(寺前巖紹介)(第四四〇号)  同(岩佐恵美紹介)(第四六七号)  同(穀田恵二紹介)(第四六八号)  同(佐々木陸海紹介)(第四六九号)  同(志位和夫紹介)(第四七〇号)  同(寺前巖紹介)(第四七一号)  同(中島武敏紹介)(第四七二号)  同(東中光雄紹介)(第四七三号)  同(不破哲三紹介)(第四七四号)  同(藤田スミ紹介)(第四七五号)  同(古堅実吉紹介)(第四七六号)  同(正森成二君紹介)(第四七七号)  同(松本善明紹介)(第四七八号)  同(矢島恒夫紹介)(第四七九号)  同(山原健二郎紹介)(第四八〇号)  同(吉井英勝紹介)(第四八一号)  同(坂上富男紹介)(第五二六号)  同(寺前巖紹介)(第五二七号) ガット合意国会承認反対に関する請願岡崎 宏美紹介)(第三六八号)  同(穀田恵二紹介)(第三六九号)  同(寺前巖紹介)(第三七〇号)  同(松本善明紹介)(第三七一号)  同(岡崎宏美紹介)(第四四一号)  同(吉井英勝紹介)(第四四二号)  同(岡崎宏美紹介)(第四八二号)  同(岡崎宏美紹介)(第五二八号)  同(東中光雄紹介)(第五二九号) 食糧管理制度農業政策改善等に関する請願  (畠山健治郎紹介)(第三九六号) 食糧自給率向上日本農業発展に関する請  願(岡崎宏美紹介)(第三九九号)  同(穀田恵二紹介)(第四〇〇号)  同(寺前巖紹介)(第四〇一号)  同(藤田スミ紹介)(第四〇二号)  同(松本善明紹介)(第四〇三号)  同(岡崎宏美紹介)(第四五一号)  同(吉井英勝紹介)(第四五二号)  同(岡崎宏美紹介)(第五一八号)  同(岡崎宏美紹介)(第五三八号)  同(東中光雄紹介)(第五三九号)  ガット農業合意承認反対に関する請願古堅  実吉紹介)(第四一一号)  時代に即応した新しい食管法の制定に関する請  願(東家嘉幸紹介)(第四二七号)  米の輸入自由化反対国民主食を守る政策に  関する請願矢島恒夫紹介)(第四二八号)  米の輸入自由化反対国民主食を守る政策へ  の抜本的転換に関する請願穀田恵二紹介)  (第四二九号)  同(吉井英勝紹介)(第四三〇号)  米の輸入自由化反対等に関する請願山原健二  郎君紹介)(第四四九号)  米の輸入自由化反対国民主食を守る政策へ  の抜本的転換に関する請願藤田スミ紹介)  (第五〇二号)  ガット協定承認反対に関する請願寺前巖君  紹介)(第五二五号) 同月十七日  ガットウルグアイ・ラウンド協定承認反対  に関する請願穀田恵二紹介)(第五五七号  )  同(濱田健一紹介)(第五五八号)  同(藤田スミ紹介)(第五五九号)  同(矢島恒夫紹介)(第五六〇号)  同(吉井英勝紹介)(第五六一号)  同(中島武敏紹介)(第七三八号)  同(藤田スミ紹介)(第七三九号)  同(矢島恒夫紹介)(第七四〇号)  同(吉井英勝紹介)(第七四一号)  同(矢島恒夫紹介)(第八〇八号)  ガット合意国会承認反対に関する請願岡崎  宏美紹介)(第五六二号)  同(東中光雄紹介)(第五六三号)  同(岡崎宏美紹介)(第六〇二号)  同(岡崎宏美紹介)(第六六七号)  食糧自給率向上日本農業発展に関する請  願(岡崎宏美紹介)(第五九〇号)  同(東中光雄紹介)(第五九一号)  同(岡崎宏美紹介)(第六〇九号)  同(岡崎宏美紹介)(第六六八号)  食糧自給安定的確保食糧管理制度廃止反  対等に関する請願穀田恵二紹介)(第五九  二号)  同(藤田スミ紹介)(第七四二号)  食糧管理制度廃止反対等に関する請願吉井英  勝君紹介)(第七三七号)  ガット農業合意承認反対に関する請願矢島  恒夫紹介)(第七四三号)  同(志位和夫紹介)(第八〇九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  世界貿易機関を設立するマラケシュ協定締結  について承認を求めるの件(条約第一号)  著作権法及び万国著作権条約実施に伴う著作  権法特例に関する法律の一部を改正する法律  案(内閣提出第一一号)  加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を  改正する法律案内閣提出第二一号)  繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団  法の一部を改正する法律案内閣提出第一三号  )  農産物価格安定法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一四号)  特許法等の一部を改正する法律案内閣提出第  一五号)  関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出第一六号)  主要食糧需給及び価格の安定に関する法律案  (内閣提出第一七号)      ――――◇―――――
  2. 佐藤孝行

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  世界貿易機関を設立するマラケシュ協定締結について承認を求めるの件、著作権法及び万国著作権条約実施に伴う著作権法特例に関する法律の一部を改正する法律案加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を改正する法律案繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団法の一部を改正する法律案農産物価格安定法の一部を改正する法律案特許法等の一部を改正する法律案関税定率法等の一部を改正する法律案及び主要食糧需給及び価格の安定に関する法律案の各案件を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中直紀君。
  3. 田中直紀

    田中(直)委員 私は、自由民主党の外交部会長を務めております田中でございます。  きょうは、さきに趣旨説明のございましたウルグアイ・ラウンド合意に基づきますWTO設立協定及び関連法案につきまして御質問をいたします。私は、福島県選出の議員として、しっかりと質問をさせていただきたいと思います。  総理、APEC御出席御苦労さまでした。首脳会議におきまして、経済成長の基礎は多角的貿易体制にあるということで、この世界貿易機関につきましても来年の一月一日を目標としてその成立を図るということで、世界努力と協力を呼びかけられたところでございます。  この法案審議に当たりまして、まず、政府の基本的な姿勢をお伺いいたしたいと思います。
  4. 村山富市

    村山内閣総理大臣 この特別委員会でも御審議をいただいて御承認をお願いいたしておりまするWTO協定は、世界の、今お話にもございましたような多角的貿易自由化を促進をして、世界経済全体がお互いに協力し合った形で発展を目指そう、こういう意味で極めて大きな意義を持っておると私は思いまするし、とりわけ貿易立国である我が国にとりましては、大きな成果をもたらすものだというふうに確信をいたしております。  具体的に申し上げますと、例えば、関税引き下げ等の物の市場アクセス改善による経済的利益、さらには、サービス貿易知的所有権等、これまでガット体制のもとで貿易ルールの存在しなかった新たな分野における規律の設定、あるいはまた、紛争解決手続強化による一方的措置発動抑制等我が国にとりまして極めて重要な利益をもたらすものであるというふうに確信をいたしておりますから、速やかに御承認方をお願い申し上げたい、こういう気持ちであります。
  5. 田中直紀

    田中(直)委員 我が国は、資源のない国として貿易立国の道を歩んでまいりました。本協定につきましては、農業、農民には大変な不安と苦痛を与えるものであるわけでございますけれども、いよいよこの協定国会承認をして受諾をするということになるわけでありますが、全体として世界貿易の拡大ということの中で我が国発展をしていくということでございますけれども、具体的に、今総理からいろいろと我が国にとっての具体的な利益、こういう話がございました。  この協定を結びますと、世界で十年間で二千三百五十億ドルの所得の増大がある、あるいは貿易が十年間で世界の二割の増大がある、こういうふうに言われておりますけれども、我が国にとっては、私の福島県も農業県でございますが、大変な地域の不安のもとで、全体のいわゆる我が国にとっての具体的な利益というものがまだまだ国民にあるいは多くの方々に理解をされていないのではなかろうかと思っておりますし、当委員会でしっかりと審議を進めていきたいと思いますが、政府として、貿易立国におきまして具体的にどういう利益をもたらすか、総理にお伺いいたしたいと思います。
  6. 村山富市

    村山内閣総理大臣 今お話を申し上げましたように、こうしたWTO協定、これからWTO多角的貿易自由化に果たしていく役割等々、これからまた御審議をいただくわけでありますけれども、とりわけ貿易立国としての日本の国に対しては極めて大きな関連意義があるということは先ほども申し上げたとおりであります。  具体的にどういう利益があるかということについて、これは先ほどもちょっと触れて申し上げましたけれども、例えば関税引き下げ等の物の市場アクセス改善による経済的な利益は大変大きいものがあると思いまするし、同時にまた、サービス貿易あるいは知的所有権等、これまでガット体制のもとで貿易ルールの存在しなかった新たな分野における規律が設定されたというようなことにつきましても大きく展望が開けてくると存じますし、さらにまた、紛争解決手続強化といったような一方的措置発動抑制、例えば二国間で一方的に発動されるといったようなことも、こうした協定のもとに改善をされていくというようなことから考えてまいりましても、我が国にとりましては、これから一番必要とする貿易自由化を求める我が国の立場からすれば大きな利益があるのではないかというふうに私は考えております。
  7. 田中直紀

    田中(直)委員 総理からお話を伺いましたけれども、七年半の歳月を経て合意をした内容でございますし、百二十五の国・地域交渉が行われました。アメリカクリントン大統領は、この協定によりましてアメリカに大変な雇用の造出が図れるんだというようなことを声明をいたしておるところでありますし、我が国は、貿易立国ということの道を歩んでまいりましたけれども、一次産業の問題が大変深刻でありますし、それから今円高という中にあって大変な黒字国ということの状況であります。  そういう意味で、並行してそういう対策のもとにこの協定が発足すれば、我が国の、日本の進路はどうなるんだというようなことをしっかりと政府の中で煮詰めていただきたい。多くの分野で垣根が外されるわけでございますので、ぜひ進めていただきたいと思っております。これが成立をいたしますと、貿易体制、大変な多くの国々がございますし、中国、ロシアが参画をするということになれば、国連に匹敵するような機関になるわけでございますから、我が国としてこの機関に対して役割を担っていかなければいけない、こういうふうに思いますので、御努力をいただきたいと思います。  通産大臣にお伺いいたしたいと思いますけれども、この協定をめぐって、農業団体農業繊維産業等は、今大変な輸出産業が巨額の黒字を稼いでおるんだということで、日本がそれで市場開放を求められて大変苦しんでおる、こういうような批判をし、農業工業の犠牲になっておるのではなかろうか、こういう声も聞かれるわけでございます。  一方、輸出産業からしますと、大変規制で保護された産業があるということで、輸入がふえない、円高になるんだ、大変な企業にとってはリストラを迫られておる、こういうジレンマの中にあるということでございますし、工業農業が大変そういう意味ではぎくしゃくした議論を展開して今日に至っておるのではなかろうかと思いますが、通産大臣として、産業政策上どういうふうにお考えか、伺いたいと思います。
  8. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員がお述べになりましたような議論ウルグアイ・ラウンドの発足当時から、表に出たりあるいは消えたりということを繰り返しておりまして、私もそうした声を耳にしたことはもちろんございます。  ただ、農業分野につきましては、従来から各種の貿易制限措置あるいは輸出補助金などが存在をする、そして、必ずしも多角的貿易体制規律が十分に及んでいない、これは我が国だけのことではございません。そうした認識があったことから、ウルグアイ・ラウンドの一分野として交渉が開始されたものと承知をいたしております。そして、この農業分野につきましては、各国がそれぞれに困難な事情を抱えつつ、精力的な交渉が行われました結果として国際的なルールが確立をし、多角的貿易体制の中に取り込まれたもの、そのように私は理解をいたしております。  いずれにいたしましても、ウルグアイ・ラウンド交渉成果全体を見ました場合、関税の大幅な引き下げ、あるいは知的財産権、サービス貿易についての新しいルールの確定など、多角的貿易体制というものによって立つ我が国経済にとっては大きな利益をもたらすものになっていくであろう、そう期待をいたしておるところでございます。
  9. 田中直紀

    田中(直)委員 産業間のいろいろな意見の交換もあろうかと思いますが、我が国は今大変過渡期に来ておるところであろうかと思いますし、産業の空洞化ということで我が国の製造業が一部海外に移転する。しかし、その後は、やはり付加価値の高いものを製造していくということになれば、部品あるいは半製品が入ってくるということになりますと黒字も減少していく傾向にあるのではなかろうか、そういうことでありますし、付加価値の高い産業構造を目指していただきたい、こういうふうに思っております。  農業の問題でございますけれども、来年から、御存じのとおり、ミニマムアクセスということで年々四十万トンから八十万トン、福島県一県で生産しておる米の量というようなものが輸入される、こういう大変深刻な事態になります。  農林大臣及び大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、さきに、ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策大綱ということで六兆百億円の対策をお決めいただいたわけでございます。農業の皆さん方から聞きますと、数字は確かに非常にそういう意味では期待できる数字である、こういうことでありますが、とかく農民の身になってみると、その予算が自分たちに本当に有効な形で来るという実感が農業予算にはなかなかないんだ、こういうようなことも言われる方が大変多いわけでございます。  そういう意味で、この決定に従って、農林大臣にはしっかりと農業の声を聞いていただいて、実効ある政策を立てていただきたい。また、大蔵大臣はきらりと光る農業予算をつくっていただきたいと期待をするわけでございますが、両大臣に御所見を伺いたいと思います。
  10. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 このたびのガットウルグアイ・ラウンド農業合意に基づきます国内対策につきましては、農業に対する合意の受け入れに関しての厳しい悪影響を防止いたしまして、進んで二十一世紀に向けての農業の展望を切り開く、新しい農業構造をつくり上げるという視点で、国内対策に各種施策を盛り込んだところでございます。  それぞれの事業、一々申し上げませんが、経営感覚にすぐれた効率的、安定的な担い手を育成して、その方々が農業生産の大宗を占めるような農業構造をつくり上げたい。あるいは、その方々が前向きに取り組むためには、過去の負債なり土地改良負担金等についての軽減措置を講ずる。あるいは、その方々に対して農地の流動化を集積する。あるいは、基盤となる生産性向上のための基盤整備事業、これを重点かつ加速的に行う。あるいは、共同利用施設等、付加価値を高め、生産性を向上する施設についても重点かつ加速的に振興する。あるいは、一番問題の農業後継者の確保について、新規就農者確保のための新しい施策を講ずる等々を盛り込んでおり、さらには、影響が懸念される中山間地帯に対する施策を集中的に行う、さような内容を盛り込んでおるところでございまして、具体的には毎年度の予算において実現されるわけでございますが、要は、これを受けとめていただく農家の皆さんがこの施策についての十分な理解を持っていただいて、積極的に受けとめて立ち上がっていただく、これが大事でございますので、我々としても施策については十分なる理解を求めるような努力をいたしたい、さように考えております。
  11. 武村正義

    ○武村国務大臣 今回のウルグアイ・ラウンド対策につきましては、平成十二年までの六年間を対象にしまして、六兆百億円の対策費を政府・与党で合意をいたしております。  量、質の両面から見ましても、目下の厳しい財政状況の中ではかなりの重点的な配慮のスケールであると思っておりますし、今農林大臣御答弁ございましたように、質の面からも、新しい農業の推進、規模の拡大や、そういう新しい農業を厳しい情勢の中でしっかり担っていこうという方々を激励する、そんなことが基本になっていると思っております。  なお、毎年度の予算化は、それぞれ予算編成過程の中で真剣に検討をし、適切に対処をしていきたいというふうに考えております。
  12. 田中直紀

    田中(直)委員 この予算につきましては、実りある予算にしていただきたいと思いますし、六兆百億円の農業対策につきましては、既存の農業予算の別枠として御検討いただき、実施していただきたい、こういうふうに思っておりますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。  河野外務大臣にお伺いをいたしたいと思います。  昨年の十二月に農業交渉の大詰めを迎えまして、受け入れを各党で検討をいたしました。自由民主党は当時野党でございまして、時の内閣の取り扱いにつきまして、大変そういう意味ではいろいろ疑問を挟んだところもございます。その中で、我が党は当時反対をいたしておりました。先般、党声明として賛成、国際信義を守る、こういうことで賛成に立ち至ったわけでありますけれども、この審議を通じてそれぞれの議員が納得をしてこれを進めていかなければいけない、こういうふうに私も思っておりますし、自由民主党の総裁としてその辺の経緯を御説明をいただきたいと思います。
  13. 河野洋平

    ○河野国務大臣 議員もよく御承知のとおり、このウルグアイ・ラウンド交渉は、七年を超える長い年月大変厳しい交渉が続けられたわけでございます。その交渉の中で、かなりの年月自由民主党政権下で行われたわけでございまして、それぞれ担当する大臣あるいは関係者は、大変厳しい交渉に臨んで懸命な努力をなさってこられたわけでございます。しかしながら、昨年暮れに至って、ドゥニ調停案を受け入れるという判断が細川政権下でなされました。当時野党でございました我が党は、そのドゥニ調停案につきまして農村、農民が受ける不安、そういうものを重く受けとめまして、こういうことで果たしていいかという意味から声明を出したところでございます。  しかしながら、マラケシュにおきまして署名が行われて今日に至ったわけでございますが、我が党といたしましては、この問題が多数国間の条約である、さらには新しい村山政権下におきましても外交は継続をするという基本的な方針をとるということになりまして、我が党としては、農村、農民が持つ不安を解消するだけの農業対策がとられるかどうかという点に大きな関心を寄せてきたところでございますが、議員も御承知のとおり、過日この問題が政府・与党真剣な議論の末、農村、農業、農民に対する対策がとられて、その対策を確認をして、我が党としては、本WTO協定というものは賛成すべきものであるという党声明を改めて出したところでございます。  議員から御指摘もございましたように、世界的な多角的自由貿易体制というものを補強する意味でも、さらに進める意味でも、この協定はぜひ我が国としても受け入れて、そして進んでいかなければならないという判断に立ち至っているわけでございまして、ぜひ議員各位の御理解と御協力をお願いをしたいというのが現在の立場でございます。
  14. 田中直紀

    田中(直)委員 本協定につきましては、長年の懸案の状況でございますし、各内閣で継続して検討をしてきた内容だと思います。とかくこの政権におきまして、前の政権の後始末だというような表現で臨まれておるようなことも新聞紙上で見受けられるわけでありますけれども、それぞれの内閣で真剣に検討をしてきたという内容でありますし、村山政権におきましても、十二分な審議を通じて、そしてまた全体としてこの協定というものの必要性、あるいはしっかりとした農業対策を打つことによって各議員議員がこの法案について真剣に納得をしていく、こういう姿勢で臨むことが必要ではなかろうかと思いますし、現にこの委員会の中で真剣な審議が行われ、そしてまた与野党を通じて審議促進に協力をしていただければ、こういうふうに私個人は思っておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  せっかくの機会でございますが、時間もそんなにございませんが、APECに総理初め御出席でございました。APECのことにつきましても一、二伺いたいと思います。  来年は我が国が議長国となってAPECの主催をする、こういうことが決定をされたところでございます。その中で、確かにこのWTO協定はこれは世界の自由貿易でございます。そういう中にあって、保護主義あるいは地域主義というものと一歩距離を置いて、アジア・太平洋地域の十八カ国がそういう意味で開かれた地域主義、まあEUのブロックもありますし、また北米のブロックもできてきておりますけれども、この太平洋のアジアとそしてまた周辺諸国のAPECというのは大変意義深いものではなかろうかと思うわけであります。  時代は既に、いわゆるアジアの国とそれからそのほかの地域の国のかけ橋ということで大変御努力をされたというふうに思いますけれども、アジアの国は人口で四割、あるいはGNPで五割でございますし、大変な経済の活性化された地域でありますから、そういう意味でこれから来年に向けて、世間で言われておりますような、アメリカに気を使い過ぎるのではなかろうかとか、もう少し日本が指導力を持ったらどうかとか、あるいはもっと明確なメッセージを発信したらどうか、こういうようないろいろなことが言われておるわけでありますが、それを払拭するように、村山総理が先頭に立って来年の主催国として取り組んでいただきたいとぜひ思うわけでございますけれども、御所見をよろしくお願いいたします。
  15. 村山富市

    村山内閣総理大臣 今委員からお話がございましたように、APECはアジア・太平洋地域十八カ国が加盟して会議を開いているわけでありますが、この十八カ国の中には先進国もあれば発展途上国もある。多様な要素を持っておる国々が一堂に会して、それぞれの持っておる力をあるいはその特徴をお互いに出し合って、そして手を差し伸べ合って、協力した体制の中でアジア・太平洋地域全体が発展するような取り組みをしていこうではないか、こういう意味では、私は大変意義のある会合だというふうに感じてまいりました。  これは、アジア・太平洋地域だけが地域として固まる、EUはEUで固まる、こういうような性格のものではなくて、これはやはりWTOがこれから発足をする、それを全体として補完をしながら世界全体が開かれたものになっていくような、そういう方向を志向するものだというふうに考えておりますから、大変意義の深いものだというふうに私は確信をしてまいりました。  来年は大阪で開くことに十八カ国全部同意をしていただきまして、開くことになるわけでありますが、アメリカで昨年開かれ、ことしインドネシアで開かれて、それぞれの内容のある成果を上げたと思いまするけれども、いよいよこれから具体的に、どういう分野をどういう範囲でどういうふうに進めていくかというようなことがこれからの課題になるというふうに私は思います。それだけに、来年大阪で開くAPECというものは極めて意義深いものにしなければならぬというふうに思っておりますので、そういうことを十分自覚をしながら、これまでの経過を踏まえて、さらに発展する基盤を大阪のAPECでつくっていきたいという決意でこれから取り組んでいくつもりであります。皆さん方の御協力をお願い申し上げたいと思います。
  16. 田中直紀

    田中(直)委員 ではあと一間だけにさせていただきますが、APECに関しまして、やはりアジアの国々は確かに先進国もそしてまた発展途上国もあるわけでありますが、対等な関係というものも出てきておるわけでありますし、また前進のためのパートナーあるいは開発協力、こういういろいろな形での協力体制が必要ではなかろうかと思いますし、ぜひ、この公約をされました地域の解決に向けてのアクションプログラムにつきまして、しっかりとその国々との関係を密にしていただいて確立をしていただきたい、実行していただきたい。そして、WTO協定の中でも、やはりアジアの事情を一番わかる国としてWTOに臨んでいただきたい、こういうふうに思いますし、アクションプログラムにつきまして外務大臣からお話を伺って、質問を終わらせていただきます。
  17. 河野洋平

    ○河野国務大臣 非公式首脳会議で大きな政治的なビジョンを打ち出されたわけでございますが、そうしたビジョンに向かって歩を進めるためには具体的なさまざまな問題を乗り越えていかなければならないと思います。今、議員御指摘のように、具体的な問題を一つずつ解決をするために、我々も努力をしたいと思っております。ぜひ委員各位の御理解と御協力をお願いしたいと思います。
  18. 田中直紀

    田中(直)委員 どうもありがとうございました。同僚の赤城議員が農業関係を質問いたしますので、かわります。
  19. 佐藤孝行

    佐藤委員長 この際、赤城徳彦君から関連質疑の申し出があります。田中直紀君の持ち時間の範囲内でこれを許します。赤城徳彦君。
  20. 赤城徳彦

    ○赤城委員 自由民主党の赤城徳彦でございます。田中議員に引き続きまして、特に農業問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  先ほど議論の中にも出ておりましたが、このWTO協定、これは全体として大変意義の大きいものだ、物の貿易だけではなくサービス貿易、知的所有権また紛争解決問題、そういったものを規定する、大変意義が大きいということでございますが、事農業分野に関しては、これはやはり問題が残るんではないかなと私は思うわけであります。それは、このガットからWTOという流れの中で、自由貿易というこの流れの中で農業をとらえようとした、そこにどうしても限界があるんではないか。  これはもう言うまでもないことですけれども、農業というのは天候や土地の条件に左右されます。したがって、同じ条件で競争するというわけにはいきません。それから、公益的機能、水源涵養機能とか土砂崩壊防止機能とかいう機能は、これは輸出入にはなじまないものであります。また、国民の食糧を供給するというこの機能、これは、少なくともこの基礎的食糧は国内で自給をしなければならない。だから、私どもは国会で決議をし、基礎的食糧は国内で自給をします、こう言ってきたわけであります。これらの特殊性については、このガットの協議の場でも何度も主張をしてきた。しかしながら、今回のこの合意案では、これが十分に受け入れられなかったんではないか。  ミニマムアクセスで四十万トンから八十万トンと、こう言います。これは、先ほど田中議員の、福島県一県分に当たるという、それほど大きなもので、八十万トンといえば新潟県一県分に当たる。これは決してミニマムではないわけでありますし、問題はそこから先、七年目以降どうなるかということを、これは去年は白紙でありますという話を伺っていた。ところが、実は白紙ではなくて、追加的で受け入れ可能な譲歩をさらにするか、つまり、例えば枠をもっと拡大をするか、さもなければ関税化に移行するという、こういうことが実は決まっておったということで大変な問題になったわけであります。  そこで、我が党としては、昨年に党の声明を出して、この調停案については大変問題がありますということを主張したわけでありますし、我が党が政権に返ったときにも改めて、これは十月二十五日に、「とりわけ、農業協定には多くの疑問や問題点があることは否めません。」こうはっきりと申し上げているわけであります。このことは、国内対策を幾らやったからといって、あるいは自民党が与党になったから、外交は継続だからといっても、このWTO協定の中にある農業分野の問題点というのははっきり我々認識していかなければいけないと思いますけれども、外務大臣、いかがでしょうか。
  21. 河野洋平

    ○河野国務大臣 赤城議員御指摘の問題は、我々もともに憂いを共有するところでございます。ミニマムアクセスの受け入れという問題を初めとする農業分野に対する影響というものをどう考えるか、さらには消費者が安全性の高い、あるいは安全性が確認できる食糧というものをきちんと手に入れることが果たして引き続きできるのかというような点には、我々も問題視しなければならない部分があるというふうに考えてきたところでございます。
  22. 赤城徳彦

    ○赤城委員 実は私、六月の三日、農水の委員会でこのことについて質問させていただきまして、当時自民党は野党で、そのときの農水大臣は加藤六月先生でございました。で、私は、この協定にはこういう問題がありますということを申し上げて、これは何とか再交渉するなり、一部修正とか留保できませんか、こうお尋ねしましたら、いや、これはシングルアンダーテーキングといって一括処理です、一括して承認するかしないかなんです、こういうことでありましたので、それではもしこれを承認しなかったらどういうことになりますか、こうお尋ねしましたら、承認されないということを想像したくない、これは身のものよだつ思いがするというふうに当時の農水大臣が言われた。  これは、このWTO協定がもし承認されなかったら、我が国WTOという貿易機関に入らないという、これは大変なことになるということを一番よく認識されているのが当時与党であった方々でありまして、これはもう与党か野党がではなくて、みんなで責任を持って対応していかなければならない課題でございます。いやしくも政争の具になるとか駆け引きの道具になるということはあってはいけない。これは改めて申し上げさせていただきたいと思います。  そういう課題でございますから、我が党は、これは政権に返り咲いたときにも、この問題があるという、農業分野に問題があるということは認識しながらも、全体としてこれを推進していくという、そういう決定をしたんだ、私はそう理解させていただいております。  そこで、大変な国内対策やいろいろな対応をお考えいただいておりますけれども、実はこの農業分野の問題点というのはそれほど簡単なものではないんだと思うのです。  一つ披露させていただきたいのですが、先ごろある新聞の論説に、立正大学の森島教授、この方は非常に農業に対して造詣の深い方でございますが、この森島教授が寄稿されているものがございまして、関税化が猶予される今後六年間にどれだけ体質を強化して二〇〇一年からの関税化に耐えられるかというのが課題であるという。これは、普通ですと特例措置の延長ということもあるのですけれども、これは受け入れられなければ関税化に移行しますから、もうこの方は関税化になるという前提で議論を進めているのですね。  で、先へ進めさせていただきますと、高い関税はやがて引き下げられる、国内コストも十分の一に下げなければこれは競争できないけれども、そんなことはあり得ない、日本の米はやがて破局を迎えるだろう、日本の米の存続を求め、体質の強化を図るなら、輸入自由化を事実上拒否するしかないんだ、ここまで、この農業について造詣の深い専門家がここまで言われる。そのくらい、今はミニマムだと思っているけれども、その先どういう事態が来るかということは深刻に受けとめなければいけないと思うのです。  そこで、ガットそしてWTOと今回来たさあ、その先どうなるかということを、もう既にレールは敷かれている、基本的に貿易を自由化しましょう、関税に移行しましょう、しかし例外として米についてはこうこうしましたというふうな、その延長線上で次のことを考えたのでは、まさにこの教授が言うような破局を迎えるのではないかと私は心配をいたします。  それは、最初に申し上げましたように、農業についての特殊性とかいろんな幅広い議論をもっともっとしなければいけない。そのためには、今ある交渉の場ではなくて、もっといろんな機関が、例えばFAOがこれから人口の爆発と食糧難がどうなるかということに警鐘を鳴らしておりますし、環境問題についても各国の関心が非常に高まっております。そういういろんな世界の各機関と連携をして、このWTOという自由貿易という枠の中だけでない交渉の場というものを、ぜひこれ外務大臣、提唱していただきたい。そのことがこれから先の交渉に大きく影響すると思いますが、いかがでしょうか。
  23. 河野洋平

    ○河野国務大臣 農業問題については、多くの国が問題意識を持っておられると思います。議員御指摘のとおり、ウルグアイ・ラウンド交渉の最終段階までこの問題について強く主張をしてきた国の一つが我が国でございますが、私の聞いておりますところでも、我が国の強い主張によって、ウルグアイ・ラウンド交渉の最終段階では環境保護あるいは食糧安保、こういった視点が文言としても取り入れられているというふうなことになっております。さらに我が国としては、今後ともWTOを初めとする国際機関において、この問題については主張を続けていかなければならないというふうに思います。  私自身の経験でも、私は実は、カイロにおきます人口会議におきましても、人口問題を考える視点として食糧問題さらには環境問題にも視野を広げて考える必要があるということを演説の中で申し上げたことがございます。また、今回のAPECの非公式首脳会議におきましても、この問題については村山総理から強く主張をされたところでございますし、こうした主張について各国も、考えを共有するという国があったというふうに聞いておりますから、議員御指摘のとおり、これからさまざまな場面で」うした問題の重要性を主張していかなければならないというふうに考えております。
  24. 赤城徳彦

    ○赤城委員 ぜひこれは、もう六年間あっという間でございますので、各国と連携を深めながら、この我が国の主張というか、これは我が国の主張ではなくて農業を大事に考える、あるいは食糧で、人間にとって不可欠な食糧というものを考えたときに世界共通の課題であると思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。  それから、ここのところいろいろ新聞をにぎわわせておりますが、米がいろいろ問題を引き起こしておりまして、昨年の緊急輸入、二百五十万トンからの輸入をしたが、九十万トン近く余っている、これの処理のために大変なお金がかかるのではないかということが言われております。  それから、ことしは豊作で作況が一〇九、生産量にしますと千百九十四万二千トン、これに緊急輸入米の売れ残っている分、それからミニマムアクセス四十万トンを受け入れなければならない、総供給量で千三百万トンを超える。これに対して米の需要量、消費量の方は米離れが進んで減退をしているということで、およそれ百九十二万トンぐらいではないか、こう見込まれています。  そうすると、他用途利用米とかいろいろなものを合わせて差し引き考えてみましても、三百万トン近い余剰が来年の秋には出るのではないかというふうな報道がされておりますけれども、いずれにしましても、緊急輸入米の売れ残りをどうやって処理をするか、えさ用や加工用やいろいろなものに回していかなきゃならない。それから、ことし豊作になったので来年は減反をどうするか。やはり二年間固定で安定的にやりますとは言っていますけれども、天候に左右されるのが農業でありますから、なかなかそうはいかないのではないかという事情がある。  そういう事情がある中で、来年四十万トン入れる。これは協定上義務となっておりますから四十万トン入れるのです、こういう説明ですけれども、常識的に考えると、これほど国内で余っている、しかも余っている事情は、去年二百五十万トン入れたその残りが余っているので、去年もうミニマムアクセス分は前倒しで全部入れましたと言ってもいいぐらい入れているわけでありますから、それでもなお四十万トン入れるということになると、これはもう処理し切れなくなって、ことしの夏ごろはもうタイ米が各御家庭でカビが生えて捨てちゃったとか、そういうことにもなりかねない。  私は、このことを例えば、これは義務であります、こういうことになると思うのですが、しかし常識論として、日本が四十万トン入れることが大きなむだになる。世界では食糧難の国もある。そういう食糧を奪うことにもなるのだということを、これは率直に世界の国に訴えて、もう前に輸入したのですから、来年のミニマムアクセスについては免除させてほしいということを率直に言われてはいかがかと思いますが、どうでしょう。
  25. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 赤城委員はよくミニマムアクセスについての性格は御案内の上の御質問だと思うわけでございまして、ミニマムアクセスにつきましては、輸入機会を与える、ただし国家貿易であるから義務となっておるわけでございまして、これは輸入国の都合で過剰であるとかその他によってなかなかこの国際協定について変更を求めることは難しい。これはもう申し上げなければ相ならぬというふうに思うわけでございます。  それで、ミニマムアクセス自体の、全体が大幅な緩和基調の中でそのミニマムアクセスの取り扱いをどうするかという問題につきましては、まあ備蓄の運営なり新しい加工用途の拡大等、国内需給を十分に配慮いたしまして、国産米の需給関係に影響を及ぼさないような配慮が必要である、さように思っております。これは相手次第でございますけれども、その場合には、緊急輸入米は一方では息の長い処理をする、棚上げる、やむを得ないということとともに、援助等についての方策も積極的に検討をしてまいりたい、さように思っておるところでございます。
  26. 赤城徳彦

    ○赤城委員 なかなか、米という基礎的な食糧を国が管理して、国同士の約束ですから、これはどうしても入れなきゃならないという事情は私もよくわかりますのであればなおのこと、今大臣言われたように、この処理をどうするかということは重々御配慮いただきたいと思います。  今農家では、こんなに減反強化なんという話が言われている中で、また四十万トンではさらに強化されるのではないか、幾ら閣議了解、閣議で決めてあっても、その心配はどこへ行っても聞かれますので、これは国内の生産に影響を及ぼさないようにぜひお願いをいたしたいと思います。  それから、いわゆる新しい食管法のことで伺いたいと思いますが、これは非常に大きな改革になると思います。今までと違って自主流通米が中心の世界になる、政府米の役割は備蓄とかそれから今の輸入のものに限定される。しかもその備蓄分、それはどこから買い上げるかというと、減反協力農家から買い上げてもらう、そのことによって減反を、生産調整を推進していこう、こういうことになりますので、いかに生産調整に協力していただくかということが大事になってまいります。  そこで、法律の五十九条二項にあります生産者米価、これをどういうふうに決めるかというのが、非常に今までとこれは違った性格を持ってくるのではないかと思います。ここに書いてございますように、自主流通米価格の動向を反映させる。ですから、自主流通米の価格が上がるというときには減反協力農家からの買い上げ価格も上がる。問題は、需給が緩和して価格が下がっているときに一緒になって買い上げ価格も下がってしまったのでは、何だ、減反に協力したけれども損じちゃったということになって協力してもらえませんから、需給が緩和したときにも一定の価格を保証する、下支えをするということがなければ、これは減反に協力してもらえないのではないかと思うのです。  そこで、この条文の後段にあります、生産条件を参酌して、米穀の再生産を確保することを旨としてとあるのがまさにその意味であると思います。この生産条件というところには書いてございませんけれども、その中心となるのは生産費だ、また、再生産を確保するには所得をきちっと見てやらなければいけないという、そういうことであると理解します。  それからもう一つ、米穀の需給動向を反映しとあります。これは普通の行政価格の場合は、需給は緩和しました、価格を下げます、こうなるのです、普通は。ところが今度は、減反に参加してもらう農家から買い上げるわけですから、需給が緩和したときこそしっかりと価格を見て、減反に協力していただくように価格をむしろ上げる方向にこの文言というのは読まなければいけないのではないかと私は思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
  27. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 ただいまの、生産調整実施者から買い上げる政府価格についてのお話がございまして、十二分の御理解のもとの御質問でございますが、ただ、生産調整、需給均衡を図る、全体需給を調整する、その場合に、その価格が生産刺激的であってはいけないということが一つでございます。  したがいまして、この点については、生産調整の的確な実施につきましては、何と申しますか、我々が今度の生産調整では、生産者なり地域の自主性を十分に尊重する、あるいは今お話がたびたび出ました政府の買い入れ、あるいは生産調整の助成金、あるいは多様な方法による生産調整の方式を考えるというようなことで確保するのが主眼でございまして、政府価格を殊さらに引き上げるという点については、御意見もございましょうが、かえって需給調整のための生産調整をすると生産刺激的になるという問題もございまして、その点については慎重な配慮が必要ではないかというふうに考えております。
  28. 赤城徳彦

    ○赤城委員 私は殊さらに上げろ、こういうことを言っているわけではありませんで、きちっと減反に協力していただくためにはどういう価格が適正かということで、通常は価格を上げますと生産を刺激するということになりますが、今度の場合は価格を上げますと減反に参加する農家がふえるということでありますので、そこら辺の事情もぜひ考えていただきたいと思うのです。  もう一点、今までと違って、今までは地域方式で地域の平均生産費よりいい農家を対象にして価格を決めておりましたけれども、今度は生産条件がよくて大規模でやろうという農家は減反には参加しないだろう、むしろ条件不利なところが減反に参加する。この価格を算定するときの要素をとるに当たっては、そういう減反に参加するような農家を対象にとるべきだ。今までのような地域方式とは違うと思いますけれども、その点はどうでしょうか。
  29. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 政府買い入れ価格につきましての基本的な考え方は新食管法において示されているとおりでございますが、具体的な算定方式につきましては、これは今後の問題でございます。したがいまして、今おっしゃいましたように、生産調整の実施に参加する方々が比較的経営規模が小さい農家の方々であろうというのは一つの設例でございますけれども、それらについても十分実態を把握しまして算定をしなければ相ならぬ、さように思っております。  ただ、今の地域方式は、これは新農政、これから目指します新農政でも、担い手というものの育成、これは農業構造改善の一つの目標ですが、それを具体的に各地域におろしまして、生産費が平均よりも低い農家、逆に言えば生産性が高い農家、そういう農家の生産費を基礎にするという点でございまして、これは一つの農政の方向にマッチした算定方式であると思いますけれども、今度については新しい、何と申しますか、買い入れ米価の決定についての法文も示されましたので、算定方式等については検討いたしまして、米価審議会等の意見を聞きまして、法施行時までに結論を出したい、さように思っておりますが、なお各方面の御意見等もちょうだいしながら進めたい、さように思っております。
  30. 赤城徳彦

    ○赤城委員 これは、具体的な算定方式は今後の課題だと思いますけれども、今申し上げましたように、根本的に政府米の性格がそもそも変わっているということは、ぜひこれから考えていかなければならない問題だと思いますので、この点もよろしくお願いしたいと思います。  さて、先ほどの話に戻りますけれども、WTO協定受け入れ、大変な困難を伴いながらこれは我々責任を持ってやっていかなければいけない課題でございます。特に農業協定の部分について大きな影響が心配をされる、これは単に農業、農村だけではない大きな影響が心配されるわけですけれども、このことについて与党三党、真剣に議論をして、各大臣、本当に総理初め関係大臣御尽力いただいて、地方財政措置を含め七兆を超える、七兆二千百億円という国内対策を決めていただきました。これについては、関係各位大変御尽力いただいたことを改めて敬意を表したいと思います。  さて、この対策につきましては、例えば国産食糧の安定供給のための基盤整備でありますとか個別の品目の対策でありますとか、それから負債整理対策、中山間対策、総合的で充実した内容になっておると私ども自負をいたしております。しかし、残念ながらこの対策について、ばらまきであるとか後ろ向きであるとか、各方面からそういう声が聞かれるのは大変残念でございまして、特にこのことについて御尽力いただいた大蔵大臣、大臣のおひざ元から、あるいは財政審からそんな声が聞かれる。私は、大臣のお気持ちを考えると、そういう批判というのは不本意ではないかなと思うわけでございます。  それから、この対策の中で、特に基盤整備のものについて、公共事業について三兆五千五百億円つけていただきました。事業費でございますけれども、大変大きな、これから推進をしていかなければならないという予算をつけていかなければならないわけであります。一方で、財政審の方で、基盤整備は抑制すべきCランクだということになっておりますけれども、これでは相矛盾するわけでございます。これは見直すべきではないかな。特に農道とか集落排水とかいった事業につきましては、これは生活に関連する、地域の生活に密着した事業でございますので、そういったものについてどう考えるのか。  聞くところによりますと、もう今度の予算に向けて大蔵省の方で厳しくこういう予算を切り込むという、既存の予算には影響を与えないと言いつつ、伸び率の方をぐっと圧縮して何とか抑制していこうというふうな話も聞かれますけれども、これは大蔵大臣として、この国内対策をお決めいただいた大臣としてどういうふうにお考えでしょうか。
  31. 武村正義

    ○武村国務大臣 赤城委員のおっしゃるとおり、今回のウルグアイ・ラウンド対策につきましては、政府・与党ともに、大変短い時間でございましたが、必死に合意を図りながら、いわば日本農業にとっては一つの国難といいますか、大変厳しい事態に直面をしているわけでありますが、この事態を乗り越えて、厳しい情勢の中で新しい日本農政の道を開いていこうという共通の認識のもとに大綱もおまとめをいただきました。  大変、おっしゃったように幅広く、各般の施策にまで気配りをした大綱でございましたし、その大綱に基づいて六兆百億円、地方財政を入れると七兆二千百億円の六年間の事業予算につきましても、政府・与党で合意を見たところでございます。何となく、六兆円というこのスケールからいうと、ばらまきだという批判を受けているのは大変残念であります。中身をきちっとごらんいただければ、一本の大きな柱が通っている。それはやはり新しい農業、この厳しい事態に直面する中で新しい農業の展望を開いていくということが骨格になっているはずでございます。  圃場整備につきましても、やはり規模の拡大といいますか、高生産性の基盤整備事業ということを基本に置いて三兆五千億の予算も絞っているわけでございますし、債務対策とか土地改良の過去の負担金の軽減という、一見後ろ向きの予算のようでありますが、これなんかも農林省の方で御腐心をいただいて、やはり担い手の出てくる新しい前向きの地域の負担金の軽減というふうなとらえ方をしておりますように、全体としてきちっとそこは前向きという、新しい農業の展開ということで線が入っていることをぜひ御認識を賜りたいと思うわけであります。  大蔵省みずからこれですっきり合意をしたわけですから、省内にはブーブー言っている声は一つもありません。中で、決まるまではいろんなやりとりがありましたが、これ、六年間の事業として、国・地方でもありますが、大蔵省も毎年の予算編成過程の中できちっと適切な対応をしていかなければいけないという思いであります。  Aランク、Bランク、Cランクについては、御承知のように昨年の財政審議会の考え方として提起をされた問題でございます。確かに幅広い公共事業を幾つかに分けまして、これは今度はちょっと農業だけじゃありませんが、公共事業全体でございますが、今後さらに充実を図っていくべき分野、やや抑えてもいい分野、こういうふうな性格づけをして、一定の考え方を政府に示していただきました。これは審議会の答申でございまして、これが即政府の確固としたプランになっているわけではありません。でも、政府としては一つの立派な考えだということで参考にさせていただこうということで、去年の予算編成では対応をさせていただきました。  この考え方、ことし御破算にするつもりはありませんが、しかし、これは大変ひとくくりな考え方でございまして、農業につきまして農業全体がどうこうではなしに、例えばおっしゃったような農業集落排水についてはむしろAランクの扱い、生活環境の扱いをすべきだということをはっきり書いておりますように、圃場整備だって、今回の六兆円に入りました大きな高生産の圃場整備は恐らく前向きに、CではなしにAかBか知りませんが、むしろ拡大をしていくべきだということに、あの答申を見る限りはなると私は思っておりまして、十把一からげに、何か農業そのものを軽視するような考え方をとってはいけないというふうに思っております。
  32. 赤城徳彦

    ○赤城委員 これは最後に総理にお願いしますが、この国内対策は、農業分野、農家のためだけではなくて、いろいろな各省のものを全部含めて地域対策をどうやっていくかという課題でもあります。このことは緊急農業農村対策にも書かれておりますので、各省をぜひ指揮をして、村山内閣挙げてこの地域対策に万全を期していただきたいとお願いしまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  33. 佐藤孝行

    佐藤委員長 次に、辻一彦君。
  34. 辻一彦

    ○辻委員 まず第一に、APECとWTOの批准をめぐる状況について一、二伺いたいと思います。  アメリカの中間選挙後の結果とそれからこのAPECの首脳会議を経て、さらにけさあたりの報道ではEUが各国対応をやるというような、これらの三点の状況を踏まえて、我が国としてこのWTO批准についてどういう認識をしておるのか、このことをまず伺いたいと思います。
  35. 河野洋平

    ○河野国務大臣 WTO協定を来年一月一日から発足させたい、あるいは発足させるべきだという点については、多くの国々がそう考えているというふうに感ぜられます。これは、G7におきましてもあるいはAPECの閣僚会議におきましてもそうした意見が述べられ、そうした認識を共有するための議論が重ねられました。  一方、議員御指摘のように、アメリカの中間選挙の結果は、大統領が所属をいたします民主党にとっては大変厳しい、つまり、何といいますか、野党側がアメリカ国民の支持を受けるという状況になりました。このアメリカの状況につきましては、APECにおきまして村山総理からクリントン大統領に、私からもクリストファー国務長官に、また橋本大臣からカンター、クリストファー両大臣に対しまして、それぞれアメリカの状況はどうだということをこもごも聞いたところでございますが、アメリカ側の返事は一貫して、上下両院十二月一日までに議了するというこれまでの方針に変わりはないということを述べておられました。  我々といたしましても、大統領以下アメリカの首脳のこうした御発言を伺いまして、我が国としても欧米各国の状況を十分視野に入れながら、ぜひこのWTO協定を当初の予定どおり来年一月一日からスタートすることができるように我々としても努力をしなければならぬ、こう今考えているところでございます。
  36. 辻一彦

    ○辻委員 総理に伺いますが、農業サイドから見ると、ウルグアイ・ラウンド農業合意は農産物の輸出国中心に偏っている、こう見ざるを得ない。食糧安全保障や環境問題とか、こういうものに対して重視をされていないという不満があります。したがって、農産物の輸出国であるアメリカやEUに先立って批准することはない、突出する必要はない、こういう気持ちが我々にも非常に強いのですが、これについてどうお考えか、お伺いします。
  37. 村山富市

    村山内閣総理大臣 お話がございましたように、農業問題というのは、これは輸出国と輸入国とでは大分立場が違いますから、必ずしも意見の一致が見られない面がたくさんあると思うのです。そういうものをひっくるめてこのウルグアイ・ラウンドでは合意をされているわけでありますから、したがって、そういう国の違いというものも十分踏まえた上で、各国の動向を見きわめながら日本としては対応していきたいというふうに思っております。  しかし、来年の一月一日から発足をするというこの協定については、やはりきちっと守る必要があるというように思いますから、ぜひともこの国会で成立を図って承認をいただきたいというように思いますけれども、その手続等につきましては、やはり各国の状況も十分にらみながら対応していく必要があるということは、本会議でも御答弁を申し上げたとおりであります。
  38. 辻一彦

    ○辻委員 今度のAPECにおいて、政府の方はあらかじめ、貿易の自由化自体は非常に大事なことである、しかし、各国に今お話しのようにそれぞれ難しい問題もある、我が国ではやはり農業、米の問題が非常に難しいのだから、これ以上の自由化には農業を除外すべきである、こういうような申し入れをしたというように聞いておりますが、そういう問題を含めて、首脳会談においてこういう問題が総理の方から発言あるいはやりとりがあったとすればお伺いをいたしたい。
  39. 村山富市

    村山内閣総理大臣 APECで、首脳会議で宣言案が採択をされておりまして、二〇二〇年という一つの目標が設定されております。しかし、これは大まかに政治的な意思の表明をしたというものでありまして、先ほども御答弁申し上げましたように、どの分野をどの範囲でどういうふうに進めていくかというようなことにつきましては、これからそれぞれの閣僚レベルやらあるいは事務担当レベルで具体的な話を進めていかなければならぬというふうに思いますけれども、これは単に日本だけではなくて、ほかの国からも、農業問題、とりわけ先ほども御意見がありましたように人口、環境問題等々と関連をして、こうした特殊な問題についてはやはり十分留意をしながら議論をしていくべきではないか、こういう意見を私は申し上げておきました。  ある国からは、農業問題については専門的な分野を設定をして、そして専門家が集まって議論をするというような場をつくったらどうか、こういう意見さえあったぐらいですから、私も、その意見には賛成をして、積極的に参加する意思があるということも申し上げておきましたけれども、そういう意味で、農業問題、食糧問題、人口問題というのは、環境問題も含めて特異な分野なのだということをはっきりお互いに理解して意識づけるように申し上げておきましたから、その点についてはそういうこれからの扱いはしていかなければならぬものだ、また、機会あるごとにそういう主張を述べなければならぬというふうに私は認識をいたしております。
  40. 辻一彦

    ○辻委員 その考え方を、また来年は大阪でAPECが開かれるわけですから、ぜひひとつ貫いてしっかりやっていただきたいと思います。  そこで、APECの問題でいろいろ伺いたいことがありますが、あとの点もありますから割愛しますが、最後に、来年は大阪で開かれるということになりますね。そうしますと、また中国、台湾の問題が出てくると思うのですね。私は長い間、日中友好に昭和三十年ごろからずっとかかわってきて、中国の台湾に対する関係が極めて敏感であるということを体でずっと理解してまいりました。そういう点で、中国は一つという日中共同声明、これを踏まえて、そして台湾問題に対処すべきである、したがって、来年大阪で開かれるAPECには、台湾の参加があるとすれば経済閣僚に限るべきである、こういうような認識をきちっと持つべきであると思いますが、いかがですか。
  41. 村山富市

    村山内閣総理大臣 これはAPECで、江沢民主席との会合を私はやってまいりましたけれども、その席でも、日中共同声明は守ります、二つの中国というのは認めないということは明確に申し上げてありまして、特に来年大阪で開かれるAPECの会合につきましては、昨年のシアトルとそれからことしのインドネシアにおける会合と同じ中身のものでやるつもりでありますから、そういうふうに御理解をしておいてほしいということは申し上げておりますから、それ以下でもそれ以上でもない形でもってやりたいということははっきり申し上げております。
  42. 辻一彦

    ○辻委員 次に、私は米の問題について、農業問題の中枢であります、中心でありますから、二、三伺っておきます。  今回のこの新食糧法、正確に言えば主要食糧需給価格の安定に関する法律案でありますが、この新法の法案の内容は、食管制度における規制の緩和、米の流通を、流れを自主流通米を中心にやる、こういう点と、それから備蓄、生産調整というのを初めて法律の中に明確にうたい込んだという点等々、価格を、政府の買い入れ価格は再生産を可能とする価格で買い入れるなど、非常に大事な問題を規定しております。これは、具体的に運用されるのは、これからの省令や政令あるいは通達等々でさらに具体化をすると思うのですが、そのときに、我々与党三党で約五十時間、プロジェクトを組んでこの問題について国内対策含めて論議をしてきたわけでありますから、与党三党合意で得られた内容というもの、そういうものを十分に大事にして、省政令、通達等で後退をすることのないようにいたしていただきたいと思いますが、その点をちょっと確認したいと思うのですが、いかがですか。
  43. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 辻委員お話のとおりでございまして、相当な短期間の中で、やはりこの臨時国会で御審議をいただくために、与党の中で大変な御議論をちょうだいしたことは十二分に承知しておるところでございます。  その際に、骨格としての法律に盛り切れない部分等についても、それを政令なり省令あるいは運用通達等に譲るものがございましたが、それらについての御意見も十二分に承知しておるつもりでございまして、今後法律成立いたしましたら、政省令等につきまして的確にこれを盛り込むようにいたしたい、さように思っております。
  44. 辻一彦

    ○辻委員 新法の中身の論議は、これは同僚議員がまた後で集中的に論議をすると思いますから、それはひとつ私は譲って、備蓄と過剰米の処理と生産調整の三点について少しお伺いしたいと思います。  まず、備蓄の問題ですが、社会党は長年にわたって百五十万トンから二百万トンをどうあっても備蓄をすべきであるということを随分と主張してまいりました。もし、昨年ああいう大凶作の中でも二百万トン、いや百五十万トンの米が備蓄してあったならば、ああいう混乱はなかったと思うのですね。それは世界じゅうから凶作で米を非常に無理をして集めました。これは努力は多としますが、米をかき集めたわけですね。そして、ことしは豊作だから、あれだけ無理して集めたけれども、来年はもう結構ですと、これでは、送った方の国からいうと非常に不信感を持つ懸念があるし、さらに、日本への輸出を当て込んで、期待をして、かなり作付をふやしているところも恐らくあると思うのですね。こういうところにとっては、これから輸出の圧力がさらに高まる懸念もある。無理をして集めましたが、結果としては九十八万トン、約百万トンの米が、輸入米が過剰になった。その結果は、これはまた今後の減反の強化にも響きかねない。  こういう問題を考えると、これは私は、すべての米をめぐる混乱の原因は備蓄政策を欠いたところにまずある、この点の反省から出発すべきであると思いますが、そこらはどうお考えですか。
  45. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 辻委員御指摘のとおりでございまして、備蓄問題については、農政上も過去にいろいろ議論がございました。  まあ、在庫でございますので、通常在庫と申しますか、回転的な在庫の方が備蓄コストというか在庫コストが安いというような経済的な視点と、そうではない、不作もある、したがって、ゆとりのある需給を確保するためにその在庫を積み増しておけ、そういう論議がしばしばあったわけでございますが、どちらかといえばその前者の方の運営が行われたということでございまして、昨年の異常な不作に伴いまして、やはりゆとりのある需給関係、これを確保しなければいけないということで、本年並びに明年度の生産調整面積を六十七万六千から六十万ヘクタールに減額をいたしまして、八米穀年度末に百二十万トンの在庫を予定したというわけでございます。  新制度においては、この備蓄を全体需給の調整の一つの大きなかなめとしておりまして、これについては、その需給調整のための各般のかなめとしての役割を演じさせるというわけでございます。大体百五十万程度を基準といたしまして、さらに豊作等その他によって幅を持たせるという、そういう考え方でこれを運営したいということでございます。  なお、備蓄米については、当然でございますけれども、政府米とあわせた主食なり加工用あるいは援助等々について適切に運用してまいりたい、さように考えておりまして、ひとつ備蓄についての一段、二段の政策強化が今回図られているというふうに認識しております。
  46. 辻一彦

    ○辻委員 総理にお伺いしますが、のど元を過ぎると熱さを忘れるということわざがありますが、去年のときにはこの備蓄の問題は国民的な一つの世論にずっと盛り上がっていっておったと思う。しかし、ことしは、幸いなことでありますが、指数を見ると豊作ということになりますから、そうなりますと、また大事な備蓄の考え方が薄れる懸念があると思いますが、これは私は、今農林大臣もお話しのように、いかなることがあっても百五十万トンを確保する、幅を持って二百万トンを目指して、ここらの備蓄のしっかりした考え方を、こういう豊作ぎみのときにおいても持つべきである、こう思いますが、いかがですか。
  47. 村山富市

    村山内閣総理大臣 平成五年産米の不作に伴って米が不足をする、緊急輸入をする、こういう事態が起こって、若干国民の暮らしの中にも混乱が起きたような現象もありましたけれども、そうした経験も踏まえながら、これは、先ほど来意見がありますように、自然を相手にやるわけですから、気象の変化によっては豊作もあれば凶作もあるというようなことで、必ずしも需給関係が常に安定できない要素があるというようなことから考えれば、どういう状況になろうとも、やはり安全な食糧を安定的に供給できるように確保していくということは、ある意味では、単に農村だけではなくて、国民全体の暮らしをどう保障していくかという意味からすれば大きな国の責任でもあると思いますから、そういうことにも備えて、やはり備蓄というものはきちっとこのまま持っていくものだし、確保していくものだというふうに私は考えております。
  48. 辻一彦

    ○辻委員 緊急輸入米が九十八万トン残ったのですね、約百万トン。これはやむを得ない面もありますが、また見通しについてのかなりな誤りもあったと見なければいかぬのですが、大体、去年の十二月に、我々はやむなくガット、米の部分自由化を、苦渋の選択をしたわけでありますが、そのときに、三回の国会決議をほごにしたことについて、政府も政治家も何ら責任が明らかにされていなかった。社会党の村沢政務次官は、ひとり辞任をいたしました。私も、当時社会党の農林水産部会長としてけじめをつけさせていただくということで、辞任をさせていただきました。百万トンの見通し等が狂えば、民間なら引責辞任ということにそれぞれなりかねないのですが、こういう問題についての責任のけじめをどういうように考えていらっしゃるのか、ひとつお伺いしたいと思います。
  49. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 御指摘の緊急輸入米については、結果として現在九十八万トンでございますか、残ったわけでございます。これについては、辻委員もその事情を御案内のとおりでございまして、昨年の作況指数七四の大不作、約二百五十万トンの需給上の数量の不足。これに対しては、過去四分の一世紀以上、主食用の米を輸入しておらなかったということで、そのために輸入先国、小麦と違って国際貿易商品ではなかなか面が薄いわけでございますので、輸入先国を手当てする、あるいは荷役とか港湾施設とか、いろいろな面等についての大変な手当てをいたしまして、数量は確保したわけでございます。  国としては、やはり需給上必要な数量はちゃんと用意してあるぞということが、それは食管制度の上の責任でございますから、その責任を果たさしていただいた。ただし、御指摘のように、本年に参ります際の過程で、御案内のとおり、国産米に対する消費者の嗜好、あるいは猛暑による米の消費減退が輸入米に対して特にアクセレレートして加わったとか、それから、本年の豊作で、六年産米の出回りが大変早く、十分だったというような点がございまして、結果として九十八万トン残ったことはまことに遺憾であるというふうに思うわけでございます。  それで、残ったものでございますので、これは国内米の需給に影響を与えないように、息長くこれを処理していかなくちゃ相ならぬということでございまして、ただいま、低価格を志向する業務用米とか、あるいは加工用米等々、各般の検討をし、最後には飼料用にもこれを向けるというようなことで、先般は、においとかその他の点で食用に伏せないものについて一部飼料用として処理したということでございまして、それなりの適切な処理の努力をしていただきたいことも御理解願いたいと思うわけでございます。
  50. 辻一彦

    ○辻委員 あの米が足りないときに、政府の方が世界を走り回って非常に努力をされた、その労は多と私もします。しかし、現実にこれだけ残っているというのもまた事実でありますから、国内産米に影響を与えない適切な処理が大変大事だと思います。あの当時、世界じゅうを回って随分御苦労されたのですから、今度も海外援助にこの緊急輸入米の余った分を最大限生かすように、世界じゅうを走り回ってこの道をひとつ開拓してほしいと思うのです。これは要望しておきます。  そこで、生産調整ですが、約百万トン緊急輸入米が余ってくる、ことしは豊作、それから、来年からまた、先ほどお話があったように四十万トンのミニマムアクセス米が入ってくる、こういう状況の中で、減反の問題がまたちらちら出ております。  実は、詳しいお話はできませんが、私は、去年の十月に、旧連立与党の米減反緩和のプロジェクトの座長として、随分論議をして、復円をしなくちゃいけない、減反緩和をしなきゃいけない、一年ではとてもみんなやる気にならない、だから三年はどんなことがあってもやりなさい、こう言ったのですね。政府の方は、二年間、ことしと来年は七万六千ヘクタールの減反緩和をやる、そしてなお、営農の安定のために三年もこれを継続する努力をする、実質は三年もやりますということを、農林省は我々のプロジェクトの中で明言をしておるのですね、文字では二年となっていますが。しかるに、今のような事情はありますが、これは来年また減反というのだったら、全く農政不信というものの最たるものに私はなると思うのです。  これは私の経験ですが、子供のときに米と繭をつくっていまして、百貫以上繭をとった相当な農業をやっておりましたが、繭の最盛期になると寝るところを追い出されて蚕に占領されたという、そういう時代があったのですが、そのときに、繭の生産が多くなると桑を引き抜けと言う。補助金を出す。桑を引き抜くと、今度は足りなくなったら桑を植えると言う。だから、最後には、政府、農林省の言うことと反対のことをやっているとちょうどいい。桑を植えると言うときには桑を抜いて、桑を引けと言うときには桑を植えたらちょうどいいという、こういう猫の目農政の最たるものが当時あったのですが、私は、三年努力する、二年は少なくも肯定する、こう言って、来年、二年目にもう変えてしまったのでは、典型的な猫の目農政として不信を買うことになりかねぬ、こう思いますが、これらについてどうお考えですか。
  51. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 最近における大幅な需給緩和状況から、生産調整面積の取り扱いについて一つの問題が出ておることは御指摘のとおりでございます。  昨年の作況指数七四、平成八年度米穀年度末に百三十万トンを造成する。そのために六十万七千ヘクタールから六十万ヘクタールにいたすということでございますが、その際は、稲作経営の安定という視点から、御承知のとおり、二年継続ということにいたしたわけでございますが、異常な作況指数一〇九という豊作でございます。したがって、今日の見通しにおきましては、緊急輸入米等はもう別枠、棚上げでございますが、国産米としても、ただいま始まっております平成七年度米穀年度末、来年の十月末には百五十万トンで、来年がまた、平成七年産米が、平年作でございますと、八年末が二百万トン以上になるというような見通しは持たれるわけでございます。  したがいまして、そういたしますと、今日のは新管理制度に移行する前に既に自主流通米が流通の大宗をなしておりますので、この自主流通米の売れ残りとか価格の低落とか、そういう問題が出てまいって、自主流通米の流通環境と申しますか、価格環境は大変厳しい状況になりつつあることは間違いございません。この点については、単なる政府側の在庫の問題だけではなくて、稲作農家の手取り問題にも大変響くわけでございます。したがって、これをいかにするかは、先ほど委員の御指摘のような二年間の約束、稲作経営の安定という点を十分理解しながら、ただいま生産者団体と十分な話し合いをいたしたいということで進めておるところでございます。
  52. 辻一彦

    ○辻委員 この問題はいろいろ論議をしたいのですが、全体が限られておりますから、また、あと皆さんが論議をされると思いますからそれに譲りたいと思いますが、私は、今の経緯からして二年は少なくも何としても努力をして確保する、そして、ひとつこれ以上の農政不信を招かないようにしていただきたい、こう心から希望しておきます。  それから、国内対策についてでありますが、先ほどお話がありましたが、財政のなかなか容易でない中で六兆百億、地財措置を含めれば、一兆二千億、七兆二千百億の努力政府としてぎりぎりのところであった、その点で私たちも評価をいたしたいと思います。またその中で、総理の指示で、自治省の方で一兆二千億の地財措置も特に講じられたという点も前進であったと思いますが、こういうことを、これについていろいろな各方面からPRが、逆のPR、後ろ向きであるとか、ばらまきであるとか、便宜的であるとか、こういうような批判があって、非常に私は遺憾に思っております。  規模はやはり一ヘクタールぐらいに拡大をするとか、耕地をですね、それからまた、まともに努力をしている農家が、北海道のようにもう乳牛は二十頭でやっている、北海道は四十頭になって数千万の借財を専業農家はそれぞれ全部持っている、これに対する金利や負担等の軽減を図るとか、こういうことは私は決して後ろ向きではない、これからの農業の体質を強化をし、やる気のある農家を支える大事な道であると思うのです。  そういう批判がありますが、総理、せっかく御努力をいただいたのでありますが、この批判等をどういうように理解していらっしゃるか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  53. 村山富市

    村山内閣総理大臣 これは先ほども大蔵大臣からも答弁もございましたし、また田中直紀議員やら赤城議員からは、ウルグアイ・ラウンド合意をした後の日本農業が一体どういう問題を抱えてどうなっていくのか、大変造詣の深いいろいろな御意見も拝聴させていただきました。  私は、そういう意味で、これからだんだんいや応なしに国際的には自由化が進んでいく、その自由化に対応して、日本農業の体質をどう強化しながら生産基盤を拡大をして、そうしたものに耐え得るような農業の体質をつくっていくかということも一つの課題であると思いますし、同時にまた、そうしたものをつくっていくためには、今御指摘もございましたように、規模を拡大することによって大きな借金も抱えてきておる、その借金をしょったまま、そんなこともなかなか困難な条件がある。  したがって、それに対してどのような対策を講ずるかとか、あるいは規模の拡大のできないような中山間地域等におけるあり方についてどういう施策を講じていくのか、こういったような問題も抱えておりますから、そうした全体を包んで、私は、やはり日本農業のこれからあるべき状況というものを想定しながら必要な施策を講じていくという意味からすれば、決してはらまきではなくて必要な予算であるというふうに思いまするし、とりわけ農業というものは単に生産農民だけの問題ではなくて国民全体の問題だという受けとめ方をすれば、私は、やはり国民の皆さんからも御理解と御了解をいただけるものだというふうに考えておりますから、ばらまきだというような批判は、私は妥当性を欠くというふうに考えております。
  54. 辻一彦

    ○辻委員 先ほど質問もありましたが、あえて私ももう一点触れたいのですが、それは今度の国内対策で、農業基盤整備は三兆五千五百億を、一番重要であるという認識のもとに総事業費が決められている。ところが、去年の財政審のランクづけは、さっきのお話のとおりCランクになっている。国内対策で一番重要だという認識、位置づけをしながらなおランクづけはCクラスというのは、いかにも私は矛盾があると思うのです。だからさっき、個々にはAもあるんだ、Cもあるんだというお話でありますが、文言上これをAクラスというように変えることが性格上難しいような問題であれば、Aクラスで扱うと、これはひとつ確認をしていただきたいと思いますが、大蔵大臣、いかがですか。
  55. 武村正義

    ○武村国務大臣 ひとつ御理解いただきたいのは、このABCというのは、決して逃げるために言っているんじゃありませんが、財政審議会から貴重な答申としていただいた考え方であります。政府はこれを非常に大事な参考にさせていただいてきたということであります。  今後も参考にはさせていただきたいと思っておりますが、ただ、このABCの分け方も非常に大ぐくりといいますか、大まかにくくっておりまして、生活環境、国土保全、産業基盤と、こう分けておりまして、ABCという表現がよかったかどうか、何となく重要性をこれで表現してしまっているような感じがありまして、よく読みますと、Cの産業基盤におきましても、重点的かつ抑制ぎみでと書いてあるのですけれども、重点的かつ抑制ぎみの扱いがCという意味でありますが、それもさらに読んでいきますと、我が国経済の成長に必要な分野には適切な配慮をしながらと書いておりまして、今回の高生産性農業、今御指摘の基盤整備、この六兆円余で扱っております新しい基盤整備事業は、まさにここで言うCの中におきます適切な配慮をしなきゃいけない例外に入る、私はそういうふうに認識をさせていただきます。結果としてCではない、この三兆五千億はAランクの扱いをさせていただいたというふうにごらんいただいてもいいというふうに思っております。
  56. 辻一彦

    ○辻委員 Cではない、結果的にはAクラスに扱う、こういうように確認しておきます。  それで、中山間地対策についてさらにお伺いしたいと思いましたが、時間が迫っておりますので、まとめてひとつ伺いたいと思うのですが、中山間地対策は、非常に私、前進をしたのではないかと思います。社会党も中山間地対策には随分今まで、議員立法等を出して力を入れてまいりましたが、前進を喜んでおりますが、そこで、具体的な点でひとつ、一、二だけ伺いたいのですが、これは自治大臣にお伺いします。  山村では、自治体もいろいろ今知恵を絞っております。北陸のある池田という寒村、山村では、山に行く人が、年がいって、いない、だから緑の十字舘という館をつくって、敷地つきで家を十軒建てて、そして全国に十世帯を公募したところ、十倍ぐらいの応募者があって、今十世帯が中に入って、山へ入っていてもらうのですね。一定年数をここで働いてもらえば、住みついてもらえば、その家は無料に近い形で払い下げる、それまでは一月一万円の家賃でやってもらう、このようにして、非常に山村の中でも苦しい中で努力をしております。こういうことに対して、今度の中山間地対策あるいは地財措置、大きな、この手当てがなされるべきであると思います。それがどうかということ。  それからもう一つは、耕作放棄が今非常に山村で進んでおりますが、こういうものに対して、耕作放棄地を維持管理をする、こういう点から第三セクターをつくって、役場であるとか農協であるとか森林組合が一緒になって、オペレーターを入れていろいろ取り組んでいるという。第三セクターですからほかのこともやりますが、そういうことに対する第三セクター等の芽が今全国の各地に、山村に特に芽生えております。これらに対する支援というものがいわゆる今度の中山間地対策、特に自治省のこういう地財措置で、農林省、自治省、十三省庁に及んでおりますが、一緒になってぜひやってもらいたいと思いますが、これについてお伺いしたいと思います。
  57. 野中広務

    ○野中国務大臣 お答えいたします。  委員から御指摘ございましたように、非常に深刻な過疎を迎えておる地域やあるいは農山村の地域におきましては、地域の過疎化が急速に進んでいき高齢化が進んでいくという状態の中で、地域の後継者対策あるいは若者定住ということを真剣にお考えになりまして、関係の市町におきまして公営住宅等の建設をされまして、そこに若者の定着をしようという努力が行われておるところでございます。  私ども自治省といたしましても、それに対しまして単独事業で取り組んでおるところでございますし、また、過疎地域におきましては、この若者定住のための住宅建設に対しましては過疎債を入れてまいりましたし、国土庁で昨年から地域整備の集落再編事業を行うことにされまして、国庫補助も入ることになりましたので、この地方負担につきまして、過疎債あるいは一般単独債でこれをお助けをするようにしてまいったわけでございます。  また、本年度におきましても、農山漁村対策の一環といたしまして、過疎地域のみならず、中山間地につきましても、特定地域における定住促進住宅の建設に対しまして、一般単独事業によります財政支援を行ってきておるところでございます。  なお、委員が今御指摘になりました、いわゆる定住住宅として公営住宅をやるということは、公営住宅そのものが家賃収入制度というのが基本原則になっておりますだけに、今後なお建設省あるいは国土庁と一緒に検討させていただきたいと存ずる次第であります。  一方、それぞれ民間企業が参入しにくい、いわゆる劣悪な条件のところの第三セクターのあり方についてでございますけれども、現在、委員が御指摘になりましたように、自治省といたしましても、過疎地域の市町村における地場産業の事業収入、あるいは観光、レクリエーションの事業等に対しまして、第三セクターに対する出資につきまして、過疎債の手当てをいたしておりますとか、あるいは振興山村におきまして、森林の健全化のための、保全していく施策に対しましての、第三セクターに対しまして、その市町村の出資に対して、経費につきましては、特別交付税で措置をいたしておるところでございます。また、森林の管理に対しましての第三セクターへの出資や、あるいは立ち上がりの経費等につきましても、あわせて特別交付税で措置をいたしておるところでございます。  これらの措置を通じまして、それぞれ地域の活性化のための努力をしてまいりたいと思っておるわけでございますが、今御指摘のありました、耕作を放棄した土地の管理、あるいは所得確保等を第三セクターで行うということにつきましては、農政審等の指摘事項、勧告事項等もございますので、あわせてこれから検討の課題とさせていただきたいと存じます。
  58. 辻一彦

    ○辻委員 時間超過して恐縮です。安全問題等を残しておりますが、また同僚の質問でひとつ補っていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  59. 佐藤孝行

    佐藤委員長 これで辻一彦君の質疑は終了いたしました。  次に、前原誠司君。
  60. 前原誠司

    ○前原委員 新党さきがけを代表いたしまして、総理に御質問させていただきたいと思います。  まず、今回日本WTOに参画をするということは、資源に乏しい、そしてまた食糧自給率も低い、また、貿易立国として成り立ってきた日本にとっては、これはむしろ率先をして加盟をすべきものだというふうに認識をしております。  ただ、このWTO、簡単に、どういうふうに変わるのかというふうなことを考えていきたいわけでありますが、要は、関税引き下げる、また、ローカルコンテンツなどの、いわゆるその地域での部品調達というようなものの制限というものもやめる、あるいは輸出入規制というものを撤廃をするということで、より自由な、力関係の反映をする貿易というものが主体的になるというふうに私は理解をしております。  そうした場合に、比較優位の産業と、比較劣位といいますか、いわゆる国際競争力で日本が勝てるような産業と、あるいは負けてしまうような産業と、そういうふうな個別の問題とともに、じゃ全体としてどうなるのかというふうなことをしっかりと見きわめないといけない。むしろ、今の議論というのは、特に比較劣位であります農業あるいは繊維、そういう問題に我々の議論が集中をしていて、マクロとしてどうなるのかという議論が余りにも欠けているというふうな気がしております。  例えば、私がある工場の社長といたしました場合に、自分はこのWTOに関しては余り関係がないだろうというふうに思っていた場合に、より自由な競争がなされて、しかしそういう、為替などの影響によって円高がどんどんどんどん進んでいって、そして気がついてみれば、自分の産業も比較劣位であった、いわゆる競争力がなかったのだというふうになった場合においては、これは国の責任として今から、全体としてどういうふうに変わるから、個々の企業主の皆さんにはこういう対策をとってくださいよと言わないと、やはり政府としては私は責任感に欠けるというふうに思っております。  したがいまして、総理にお伺いしたいのは、このWTO日本が加盟をすることによって、マクロ経済としてどうなっていくのか、輸出はふえるのか、あるいはまたインバランスというものは是正されるのかどうか、あるいはそれに従いますけれども為替というものはどういうふうに変わっていくのかという点について、マクロの質問をぜひさせていただきたいと思います。
  61. 村山富市

    村山内閣総理大臣 今御意見の中にもございましたように、多角的に貿易が自由化される、あるいは関税引き下げられる、あるいはまた、それぞれの国の持つ輸出入の規制が緩和をされていくということになりますと、先ほど来御議論がありますような、我が国にとっては深刻な農業問題を抱えておるといったようなことは、それぞれの国にはあり得るのではないかと思います。  しかし、ウルグアイ・ラウンド協定された、この総体的な、マクロ的な観点から考えますと、それだけやはり貿易が拡大されるし、経済も拡大されていくということになると私は思いますから、とりわけ日本のような、資源もない、貿易立国を主体とした国の立場からすれば、それだけ拡大された世界の自由化の中で、日本がどういうふうに伸びて、日本経済をプラスさせていくかという意味から申し上げますと、私は大きなプラスがあるのではないか、また、プラスがあり得るような経済政策というものをこれからも考えていかなければならぬというふうに思っておりますから、これは私はある意味では肯定的に受けとめて、そして発展がされるように、そのことを通じてまた世界経済発展ができるように取り組んでいくことが大事ではないかというふうに受けとめております。
  62. 前原誠司

    ○前原委員 基本的な認識は私も総理と御一緒でございますが、私が御質問したかったのは、要は、総体として、例えば輸出ドライブがもっともっとかかるということになれば、例えばアメリカ日本の関係にいたしますならば、やはり先ほど申し上げましたように、ローカルコンテンツというふうなものはなかなか発動しにくくなる、あるいは後ほど関連質問させていただきますが、三〇一条という制裁措置というものも限定をされてくるというふうなことになった場合に、じゃ、どこによって日本の輸出拡大、あるいは貿易のインバランスというものを是正をしていくかというふうなことを考えた場合に、唯一とり得る選択肢というのは、やはりこれは為替というふうなことになってくるというふうに私は思っております。  そういたしますと、どんどんどんどん貿易のインバランスが拡大をする。そうすると、それの相殺をさせるためには為替というものを操作して、あるいは自然に動いて円高がますます進んでいく。今、九十六円、九十七円、そういう程度でありますけれども、ひょっとすれば八十円とかあるいは七十円とか、そういうふうなことになってきた場合に、WTO自体はいい、しかし、そういうところまでは予測をしていませんでしたということでは、私は政府の責任としてはそれでは不十分であるというふうに思っております。  この質問をさせていただく前に、私は、通産省並びに経済企画庁に、このWTOというふうなものに日本が加盟をした際に、シミュレーションをやっているのかどうかというふうな質問をいたしました。貿易がどういうふうに拡大をする、あるいは円がどのようになるというふうな、しかし、そういうふうなシミュレーションというのをやっておられないというふうなことでありまして、まあ私が質問した時点ではシミュレーションされていない。やはりそれは、私は、WTOの精神はいいけれども、結果そうなりました、そして、その結果円高になって、いわゆる産業の空洞化がますます進んでいった。じゃ、そのときになって政府はどういう責任をとるのかというふうなことを考えた場合に、今からそれは対策を講じておかなければいけない問題じゃないかと思うんですね。私は、やはりそれの有効策というのは規制緩和だろうと思うんです。  今申し上げたように、じゃ円高に逆にさせない、そういうふうな政策措置をとった場合に、比較優位の産業がどんどんどんどん輸出ドライブをかけていく。そうすると、日本も内需拡大をして、輸入というものをある程度拡大をするというふうなものになった場合には、日本がとり得る選択肢、大きな選択肢というのは規制緩和だろうと思います。そして、海外からの投資を受け入れる、そして産業の空洞化というものを防いでいく、そういうことだろうと思うんですね。  ですから、私は、このWTO日本が加盟するに当たって、精神はいい、しかしその対策はどうするのかと言われた場合に、総理としてはやはり規制緩和というものも、具体的に期限を決めてそしてどの程度やっていくのかということをきっちりやはり国民の皆さんに示していただくべきだろうというふうに思いますが、その点のお心づもりというか御決意をお聞かせ願いたいと思います。
  63. 村山富市

    村山内閣総理大臣 規制緩和につきましては、たびたび申し上げておりますように、年度内に五カ年計画を設定をして、そして計画的に進めていくということを今決めているわけですね。そして、そういう取り組みをしてもらっておるところであります。  為替というのはいろいろな要因があって変動していくわけでありますから、こうすれば為替が安定するとか均衡のとれた形でもって落ちつくとかいうようなことにはなかなかなりにくい背景がありますから、簡単には言えないと思います。  しかし、いずれにいたしましても、今委員から御指摘がありましたように、WTOが発足をして自由化された場合に、日本がそれに対応して国内産業を守っていく、あるいは日本経済を安定的に発展させていくというために必要な対策というものはやはり十分考えておく必要があるし、立てていく必要があるということにつきましてはよく御理解ができることだと思いますから、御意見のとおり私どもはこれからも心がけていかなければならぬ課題だというふうに認識をさせていただきたいと思います。
  64. 前原誠司

    ○前原委員 要望でございますが、ぜひWTO日本が入った場合にどういうふうな状況になり得るのかということを、いろいろな規制緩和の取り組み状況を踏まえたシミュレーションを政府としてつくっていただきたいということを要望させていただきます。  次に、先ほど申し上げましたように、このWTOというのはいわゆる多国間主義という精神にのっとっていると思うわけでありますが、いわゆるアメリカの通商法三〇一条、あるいはクリントン政権が発足して復活いたしましたスーパー三〇一条というふうなものは、もちろんWTOが含めていない分野についてそれが発動するということは、それは国内法的には許されるというふうなことになると思うわけでありますが、しかし精神としては、これからどんどんそういうWTOの包括する範囲を拡大をしていって、そして二国間協議でなくて多国間でやっていこうというふうな取り決めをしているときに、スーパー三〇一条を復活させるとか、あるいは一部では今度パネル、WTOのパネルというふうなことはいわゆる手続を短くする。三〇一条の手続が一年半、そしてこれはパネルだと一年ぐらい。半年ぐらい短縮されて、それでクロ裁定をされると、それのお墨つきをもらって三〇一条を発動するというふうな声も聞かれているわけでありますが、私は、これはちょっとアメリカとしてはWTOの精神に反するのではないかと思うのでありますが、総理のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  65. 河野洋平

    ○河野国務大臣 私からちょっと御答弁をさせていただきたいと思います。  議員御指摘のとおり、確かにWTOの精神から考えますと問題があるというふうに私どもも一般的に考えております。ただ他方、WTOにおきましては、WTO協定の対象事項についてWTO紛争解決手続を経ることなく一方的措置をとることは禁止をする、こう言っているわけで、要はその対象事項というところがございます。  三〇一条がもしその対象事項でない部分についての準備である、対応であるというふうに考えるとするならば、その三〇一条があること自体が違法がということになりますと、そこにはまたそれなりの言い分もあるというふうに考えなければならないと思います。  もしアメリカWTO協定の加盟国に対し、同協定の対象事項に関してスーパー三〇一条などに基づき一方的措置をとるという場合にはWTO協定違反になるということは、私はもうそれはそのとおりだというふうに思うわけでございまして、いずれにせよ、今後スーパー三〇一条などによって我が国の利害が害されるようなことがある場合には、WTO紛争解決手続の利用を含め、適切に対応しなければならないというふうに考えております。
  66. 前原誠司

    ○前原委員 とにもかくにも、やはり日本という国は、最初に申し上げましたが、資源も乏しい、そして貿易立国で成り立ってきたという国でありますので、やはりWTOの恩恵を最大限にこうむっていくという積極的な発想によって、今WTOの包括分野に入っていない分野においても日本が率先して取り組んでいくというふうな姿勢で、WTOをみずから進めていくという気概で、そういう設立の組織についても人を派遣をしたり、あるいは資金的なものも必要だと思いますし、そういった積極的な取り組みをされますことを最後に要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  67. 佐藤孝行

    佐藤委員長 前原君の質疑は終了いたしました。  次に、田名部匡省君。
  68. 田名部匡省

    ○田名部委員 総理、そして外務大臣、通産大臣、APEC御苦労さまでした。  先にこの問題をちょっとお伺いしますが、途上国は二〇二〇年、先進国は二〇一〇年、貿易・投資自由化の目標年次を定めて閉会になったわけでありますけれども、私は、来年大阪で第三回が開催されるのが決まっておりますが、来年、この決定に基づいて日本が開催国としてどういうことを議論しようとしておるのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  69. 河野洋平

    ○河野国務大臣 今回のAPECにおきましては、非公式首脳会談におきまして、非常に高い次元から政治的な方向性を示す宣言が出されたわけでございます。この政治的な指針とも言うべき方向性を示された宣言について、これをいかに具体化していくかということにつきましては、その分野でありますとか範囲でありますとか手順でございますとか、そういったことは今後閣僚レベルあるいは事務レベルにおいてその具体的な方策について検討すべしという指示が首脳から発せられたわけでございますから、こうした点について一つ一つ具体的な範囲でございますとか方法等について議論をしなければならないと思います。  一方、大阪におきまして来年行われるAPECの会議、それ自体が一体何をメーンテーマとして行うかということについては、もちろん今申し上げた今回の非公式首脳会議が発せられた宣言を具体化し、実行するための諸問題についての作業と同時に、APEC加盟各国の意見も十分伺って、これから準備を進めなければならないというふうに思います。
  70. 田名部匡省

    ○田名部委員 新聞、テレビを通じてのみ我々は理解しておるわけでありますが、マスコミは期待外れの日本とか何か批判の記事ばかりで、内容を私わかりませんが、いずれにしても、終了したときに総理の記者会見、それからクリントン大統領の記者会見を拝見しまして、あのクリントンさんの記者会見というものは、もうまことにこれは大成功で、アメリカにとっていかにプラスか、これはもうはかり知れない。しかも、米国人はより繁栄した世界に向かっていくんだと、これで。自動車産業も雇用が安定して、NAFTAもありWTOもあり、あるいはこのAPEC、これを通じてまあ本当にアメリカのためにやったのかなと思うくらい、あの記者会見を聞いておると私は感じました。  一方、衛星放送なんか見ておりますと、まあとにかくアメリカと中国の首脳同士の会談というものばっかり取り上げるし、何となく日本はアジアヘ行って肩身の狭い思いをされているんじゃないかなという実は感じすら持ったのは、私だけではないと思うんですけれども、いずれにしても、この中で農業問題にも総理は触れておりました。閣議でもお話しになったし、マハティールさんですか、お会いになったときも、そういうことを、困難があるということを申し上げたということのようでありますが、どうも私は、このやりとりを見ておって感じますのは、まあ貿易の自由は賛成だが、農業問題についてはどうもやっぱり賛成しかねる、条件にもよるんでしょうけれども。これを見ておりますと、果たして最後までこれ頑張り通せるのかな、農業問題で。物はどんどんアジアに売るが、アジアの方はどっちかというと農産物が非常に多いわけでして、これは買いませんということを言い切れるかということを実は感じましたね、あの会談の内容を見ておって。  総理にお尋ねしますが、これを見ていると、どうもウルグアイ・ラウンドの始まりと同じような印象を、実は私は受けておるんです。貿易の恩恵は受ける、自由貿易日本が受けた恩恵は大きい、こう言いつつも、あのころはみんな、我々だって資源がない、今総理おっしゃったように。何で生きていくかというと、やっぱり貿易なんですよ。そう思いつつも、三度も国会で決議をされ、いろんなことをやって、建前と本音が全く違った。この場で議論すらできなかったんですよ、あのころ。ということは、今何かウルグアイ・ラウンドの七年前のスタートのときと同じような方向でこれは進んでいくのではないかと思うんですが、どうですか、その辺は。
  71. 村山富市

    村山内閣総理大臣 このウルグアイ・ラウンド合意を受け入れる以前と受け入れた後とでは、これはもうお互いの取り組む体制が違ってきているわけですから、したがって私は、どのような状況になろうとも、ウルグアイ・ラウンド合意したことについては、日本はやっぱりきちっと守る必要がある、守らなきゃならぬというふうに思いますね。  しかし、APECで議論をされてまいりまして、これから多角的に貿易の自由化をしていこう、あるいは投資の自由化も図っていこう、こういうことにつきましては、全面的にすべて無条件というんではなくて、そういう宣言の中で盛り込まれたものは、大まかな政治的方向をお互いに確認をしていこうということになっているわけです。  したがって、この個々の問題について、どういう分野でどういう進め方をしていくかとかいうようなことにつきましては、先ほど外務大臣からもお話がございましたように、これから準備をして、お互いに討議をしながら取り組んでいかなきゃならぬ課題でありますから、したがって、今日本が抱えている農業問題というのは、それなりの事情というものも踏まえた上で、私は扱っていかなきゃならぬ課題であるし、どういう場になろうともその方針はやっぱり貫いて、これから取り組んでいかなきゃならぬ問題であるというふうに考えておりますから、そのように御理解をいただきたいと思うんです。
  72. 田名部匡省

    ○田名部委員 まあウルグアイ・ラウンドで受け入れた程度のことはおやりになるんだろうと思います。これ以下でもそれ以上でもないと思っておられると思います。まあ、これ以上議論しても何ですから先へ進みます。  今回のこの法案を拝見して、私の感想から実は申し上げたいと思いますが、私はいま少し、私はもともと国内はより自由化にした方がいいという考えを持っておったものですから、一歩前進はしていると思いますが、もうちょっとやってよかったんじゃないのかな。それは、そうすることによって、新農政というものをつくらせていただいたんですが、これにもっと近づける、近づくことができる。これ、中途半端にやりますと、なかなか新農政が進まない要素を抱えておるというふうに実は感じているんです。ですから私は、今もっとチャンスだったな、この機会を逃すとなかなかまた、これはいろいろ抵抗もあるし、交通整理もできないという感じを実は持っておるわけです。  特に、企業的な感覚で農業に取り組むべきだというのは、私の強い気持ちをあの新農政の中に入れさせていただいたんです。そのことは、結果的には日本農業がよくなる。まあどんぶり勘定で、もうかったか損したかわからぬ農業をやっているようでは、若い人たちは意欲的にもうこれはやっていくはずがない。それで、他産業並みの収入も得られるというのがあの骨子だったわけですが、小農切り捨てかといって私は随分怒られました。小農は切り捨てるんではないんです。規模拡大する者、あるいは中山間地等の放棄地があればそれを買い取って、森林に造成して管理をその地域にしてもらうとか、あるいはもう委託をする。趣味程度の農業、兼業農家、これをだんだん区別していきませんと、これ全部一緒になって議論しておるものですから、これは前へ進まぬのですよ。だから、そういうことをやって、規模の大きい人たちがより自由に米が売れるという体制に近づいてほしかったんです。  かつて私は、フロリアード、花のオリンピックといいますか、オランダに参りました。オランダのあの花の市場へ行ってみたら、だれそれの花ですというのが出てくるんですよ。そうすると、それで入札がぽんと入る。物すごく高いんです。もうブランド品になっちゃっているんです。農業も一生懸命努力しているんですから、いいものはもうブランドとして販売できるぐらいの努力をすると、これみんな競争になっていきますよ。  だから、そういうことを考えると、生産をした人たちが売れる。もう今は農産物、私の地元でも、奥さん方が生産したものを自分で値段をつけて、名前を書いて、住所書いて、電話番号づけて売っていますよ。それは都会の人たちが皆買っていって、これはいいというと直接注文するようになっちゃっているんです。そういう時代があるんで、これは一挙にできないことは私もわかります。わかりますけれども、もうちょっとその方向を目指してほしかったということと、そのために、やっぱり政府の関与する部分というのはなるたけ少なくした方がいい。あるいはこの規制も、したがって緩和して、政府の責任と農家自身の責任というものを、もうちょっとはっきりした方がいいと思うんですね。  その辺が、まあ幾らかいろんな面で努力の跡は見られますが、ちょっと足りなかったかなという感じを持つことと、まあ国家貿易も、私はヒルズ通商代表と四回交渉をやりましたが、国家貿易がけしからぬ、こう言って、こればっかり責められた。ですから、いつかは国家貿易というのは、これ守り切れるのかどうか、そのために国内の整備というのは必要だということになるわけですけれども、そういうことも将来やっぱり考えながらやっていくというのも入れておかなきゃいかぬ。  先ほどもどなたかから意見がありましたが、より多くの議論をここで深めて、例えば、当時私、ミニマムアクセスのときに、関税化した方がいいのかどうかというのを自分でも随分迷ったのですよ。高い関税をやれば、最終的には八十万トンなんて入ってくるかどうかわからぬ。一部農産品にはありますよね、乳製品等は三〇%、六年後でも高い関税を張って、それでもいいから輸入したいという人は、これはもうやむを得ないわけですけれども。しかしまあ、これだけ国産米に、非常に国民が外米は嫌だという志向が多いことを考えると、どっちがよかったかというのは私もよくわかりません。わかりませんが、議論できる状況になかったのです、当時は。ですから、この機会に、これからいろんなことをやはり議論して、農民もよく理解してもらうということではないでしょうか。どうですか、農林大臣。
  73. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 新農政を手がけられました田名部委員の御所見を十二分にちょうだいいたしました。  我々の考えも、新農政が目標とするその経営感覚にすぐれた安定的、効率的な経営体は、まさに新農政が想定した規模の経営内容でございます。それに対して、強力なウルグアイ・ラウンド対策としての各種施策を講ずることによって新しい農業構造をつくるということでございまして、この点では全く見解が一致しておるというふうに私は思います。  なお、規制緩和の問題等についてはいろいろな御意見もございますが、今回の新食糧法案と申しますか、これについても端的に一つをとりますれば、従来は全量が政府管理米で、政府が売り渡し義務を生産者に課して、そして流通規制をする。今回は、その売り渡し義務を廃止して民間流通の自主流通米とする。しかも、消費者に対する安定的、計画的な流通のために、計画流通制度を設けて一定のパイプを設ける、そのパイプの担い手についても、指定だとか許可とかというような行政介入的なものではなく、一定要件を満たした者を、資格者に対する登録というようなことで非常に緩和しておるわけでございまして、特に生産者、稲作農家でやる気のある農家の創意工夫という点については、計画流通制度に乗るかどうかもオプションで決められるわけでございまして、ただ、米全体がどう流れているかというようなことで、御案内のとおりその報告をしていただくという程度でございまして、相当思い切った規制緩和、大変な規制緩和というふうに私は思っております。
  74. 田名部匡省

    ○田名部委員 国が全量を管理しておったときから見れば相当の進歩だというのは、私もよくわかります。ただ、これから向かう方向というものを考えたときにいいのかどうかということを申し上げておるので、特に米の価格、農家の安定、そういうことを考えますと、規模を拡大して価格を下げる、そうして内外価格差も縮小する、こういうことは求められておるわけですけれども、ただ米だけで高い安いということをやっても、なかなかこれはもう無理があります。それは四割、五割下がっても、アメリカ、タイと競争できるような農業でないことは私も百も承知だ。しかし、国民のコンセンサスを得て、そうしておけばどんな時代になっても、私はその程度の差があっても国民は協力してくれる、そのかわり農家も最大限の努力をしていただきたいということを申し上げてきました。  そこで、米だけに視点を置くのでなくて、農業資材の流通のあり方、それから手数料、これはしばしば私が草川先生に質問を受けて、全農はけしからぬ、こう言って、幾らか手を入れましたけれども、何といっても、この手数料というものは値段なのか何なのか。この手数料の中には研修費だとか何とかといって、あのころ百億も持っていたわけですから、そういうことはやはり排除していく、そうすることによって農家が負担が楽になってくる。  今、不満はやはり農家、生産者が多いのです、漁業でも何でも。消費者はどうかというと、いや高い高いと言って、これもまた非常に文句が多いのです。生産者と消費者が文句あって、一体どうするんだろう。そうすると、流通とかその辺のところしかないのですよ、もうあとやり方は。ですから、そういうことで、この手数料のやり方というのは農家や農協にも非常に不満が多いということを考え、あるいは農機具の利用をどうするか。  一昨日、いわゆる生研機構をちょっと見せてもらってきました。これは、出資して企業と一緒になってすばらしい農機具、五つもう出ている。これはもう白菜なんか全部自動で、腰を曲げなくてもいいように、これはできたばかりですけれども、やはりああいうことがどんどんどんどん進んでいく。しかし、高いですよ、大型のコンバインなんていうのは二千万円もしますから。それを農家に持たしたのじゃ、農業経営は成り立たぬ。だから、機械のリース会社とかなんとかというものを農協、農家の若い人たちに支援してつくらせて、そこに持たせてやっていくという、これは結果的には米価にも、生産者にも消費者にも影響が出てくるわけですね。  それから、最近並行輸入というのがはやっておりまして、農協を相当リストラしておかないと、何人か組んで直接農業でも何でもアメリカやどっかへ頼んだら買えるわけですから、そういうことを考えておくと、農協もぼやっとしていられないのです。ですから、農協も本当にそういう面に力を入れていく。  それから信用事業、共済事業、こういうものを検討していかなきゃならぬ。あの貯金量だって六十兆もあるのでしょう。金融の自由化で利ざやが縮小して、そして余り借りる人がないものですから、これは重荷になっちゃっているのです、農協がいろいろな、殊にあのバブルの成長期に株や何や手を出しておかしくなった農協、いっぱいある。ですから、そういうこと等をやっておりますと、農家の重荷になっていくわけです、これ。  ですから、こういうことを考えると何としても、先ほど申し上げたようなことで、米価というものは米だけで下がるものではない。全体でやはり農家の方々の生産を安定させながらやっていくというふうにメスを入れてほしい。そうしませんと、農家は減るわ、農協の組合員はふえるわ。  これは総理も聞いてほしいのですけれども、今度また営林署の統廃合をやります。これは物すごい抵抗するのですよ、皆さんの仲間の人たちが。まあ行政改革ですから今度は余りおやりにならぬでしょうけれども、これとてやらなければ、私は米の検査員についてもそう思うのですよ、今すぐ首切るわけでないので。商工団体の方には経営指導員というのがおるのです。農家も企業的な感覚と言うならば、この人たちをその道に使ったらどうか、検査は私は廃止しなさいと言ったのですから。そうしたら、いや、全国一律に品質を保証しなきゃならぬ。それじゃ、魚や野菜は市場で値段がついて売れている、米も市場の価格で決まる時代に、何で検査するんだという議論等もありました、きょうは議論しませんが。  いずれにしても、まだまだ農業には問題が多いので、その辺のことを御議論してきちっとしたものにしてあげる、結果的には農家も生産者も喜ぶという方向に行くべきだ、こう私は思います。どうですか。
  75. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 農政の体験に即した具体的なお話でございます。  一つの例としてお話がございましたように、消費者の最終の支払い価格と生産者の出荷価格、その差額が近年ますます広がっておる、生産者の手取り価格は減り、流通、加工の経費が増高しておるというような問題が国民経済計算等からも明らかでございまして、やはりその辺の問題として、具体的には、お話があったようなその農協系統組織の効率化の問題、手数料問題等でございます。  で、特に私は、今度のやはり米の流通過程における強い弾力化によって競争原理が働きまして、それらは事米等についてもその合理化が進むのではあるまいかというふうにも思っておりますし、今日の農業情勢から系統組織も事業二段階、組織二段階にならざるを得ないという点になっておりまして、それが単なるスローガンだけではなくて、具体的な形で実現されていくということが大変望ましいというふうに思っておるところでございます。
  76. 田名部匡省

    ○田名部委員 農家の農業離れというのは私は起きてくると思います。お金を持った人は現金を持っていって、機械でも肥料でも何でも安く買うんですよ。そうすると、お金のない人は農協へ行ってツケで買ってくる。金利は高い。だから豊かでない人はいよいよおかしくなっていく仕組みになってきますから、そうなるとやっぱり人間知恵を出してくる。さっき言ったように、共同で仕入れをしようとかなんとかといって農協を頼らなくなってくるというおそれがあるから、農協よ、しっかりしてね、生産者のために一生懸命になってあげなさいということを言っているわけです。ガソリンスタンドの経営だとかなんとか、それは民間の方がもう寝ないで徹夜で売っている店があるときにですよ。だから、そういうことも含めて農家の負担にならぬようにしてほしいということだけ申し上げておきたいと思います。  さて総理、私が政治を志してからこれはもう二十八年になりました。まあこれほど政策が変わる政権というのは、実は初めてなんですよ、これは言いたくないんですけれども。まあ日米安保、自衛隊合憲、原発容認、国旗・国歌、PKO、消費税、そして、いよいよこれはまあ最後の、恐らくこれは最後じゃないでしょうか、常任理事国もあります、米の自由化。これだけ国の基本が変わると、党の公約あるいは政治の理念、哲学というのは一体どこへ置けばいいんだろうかな、こう思わざるを得ない。こういうことは、結果として政治不信につながらなければいいがなという気持ちを持っております。  そこで、閣僚の中で、この米の自由化に前回の選挙で反対された方、ちょっと挙手願えますか。――お一人ですか。自由化反対ですね。どうして反対だったのが賛成になったのか。――いやいや、それで結構ですから、調印したから賛成なら賛成で。玉沢大臣どうですか。どうですか、どうして反対だったのが賛成になったか。
  77. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 御質問でございますので、お答えをしたいと思いますが、まずもって八年間の交渉が行われました。その中におきまして、できるだけ日本農業を守るという観点から、自由化せずにこの協定が結ばれるということが一番よかったと思います。しかしながら、その交渉の中におきまして、我が国農業を守りながらも、なおかつ世界のこのウルグアイ・ラウンドの成功に向けて努力をする、こういう中におきまして、前内閣が交渉に当たったわけであります。交渉の内容等につきまして、またそのやり方等につきましては、大変私はいろいろな点で問題があった、こういうふうに思うわけであります。これは私は、言うならば、いろんな面からいいますならば不備な点もあった、こう思います。  しかし、我が国世界の国々との交渉の中におきましてこれを承認をした、受けた、こういうことになった場合におきまして、これをこの次の内閣で拒否をする、こういうことはなかなかできない。そういう観点から、非常に不満ではありますけれども、この結果を受けまして、一部の自由化、そういう観点からいたしますと、それに対する対策を講じて、予算等も措置を講じてこれを承認するということはやむを得ない、こういうような判断に立ったわけであります。  以上です。
  78. 田名部匡省

    ○田名部委員 私も一年九カ月、これ、交渉に当たった者として、当時、政府でいろんなことがありました。まあ政府のときのことを申し上げることは失礼でありますからやめますけれども。  総理総理先ほど来、この資源のない日本にとってはこれは非常に大事だというお考えを述べられておりましたが、みんなそうだったんですよ。だから、その考えがあのときから前へ出ておればこんな議論になっていかなかったし、今この方向が少し変わった方向に進んでおったと思うんですね。  まあ首をひねっておりますから、今から申し上げますけれども、野坂建設大臣は、当時、こういうことを申されておるんですね。農業は消費者負担農政から財政負担農政へ、価格政策から所得政策へ移行しなければなりません云々といって、この中山間地のことを言っておられる。この中山間地は厳しかったですよ。やれ、やれといって、所得補償、ヨーロッパはデカップリングといって私は随分あなたに責められた。閣僚になったらこれをやるのかなと思ったら、全然どこへ行ったか、影も形もなくなったんですが、これはどこへ行ったんですか。
  79. 野坂浩賢

    ○野坂国務大臣 お答えをいたします。  決していじめたわけではありませんし、私はそういうふうに思っておって、時の農林水産大臣であった田名部さんに厳しく迫った、農業は命産業であると。したがって、他の産業と同じように所得を得るように、そういう措置をとるのが政治の基本ではないか、こういう立場で先生に随分と、失礼なことは言った覚えはありませんけれども、強く提言を申し上げたことは事実であります。  私は、特に中山間地帯対策というものについてはデカップリングを主張したことは事実であります。これは財政から所得へというのは、いわゆる外国との競争の場合に、我々としては高い値段で売る、あるいは買うということはなかなか容易ではない、したがって、農業はいわゆる予算とか財政政策ではなしに所得政策を考えていかなきゃならぬ、で、所得の場合ということになれば、必然的にデカップリングというものも浮かび上がってくると。  そのときに、先生は大臣席からこう言われました。わかるけれども、なかなか日本農民にはなじまないところがある、十分検討する必要があるんではないか、こういうお話をちょうだいいたしまして、私も席に座ったわけでありますけれども、今度の法律案の中で具体的に出ていないではないか。当時は法律の中で所得を入れるとか入れないとかということで、あなたと私は激しい論争をしたことをよく覚えております。したがって、今度はないじゃないかという御指摘ではありましょうが、そういう農政審議会の中でも、十分論議して、引き続きこの問題については検討を進めてきて、農業の振興に与えるというふうに書いてありますので、そういう点については了承しておる、こういうのが現状でございます。
  80. 田名部匡省

    ○田名部委員 この米のミニマムアクセス、農業ウルグアイ・ラウンド問題というのは、私は、交渉事ですから激しくやるべきだといって頑張り通したつもりですよ。それはつらかった。最後に私は、どう決まるかわからぬとここで答弁したんですよ。百十何カ国も相手に日本の案だけが通るとは思っておりません、しかし、ダンケルの案だけは何としても阻止する、こう言って頑張ってきたんだ。それは当時の政府の方針でも、私どもの考えが理解されてきたんですね。  ですから、細川政権が決めたからって、細川政権のときには、もう相当我々の間で詰まった話、まだ詰まらぬ話というものはありながら、ずっと来た。それは、当時は政府の責任ですから、それはいいとは言えません。いいとは言えませんが、経過としては、自民党がずっと長い間これをやってきた、その延長線上で全く別な方向に行ったというふうには私は理解してないんです。  さっき、これは外交の継続性ですから、これも、玉沢さんの、不備な点があった、こういうお話ですが、当時の細川内閣の中に武村官房長官もいたんだ。五十嵐建設大臣もおったんですね。だから、よく、不備な点があれば十分閣議で決めていただいて、何も、これから決めるんですから、国会承認を得るのは。反対であれば、これ否決すればいいんですよ。調印したといったって、アメリカなんか大統領が決めて帰ったって議会が反対するのはいっぱいあるんですから。だから、そうでないでしょう。だから、そこが僕は、建前と本音を余りにも使い分けてきた結果、今日こういう事態になっているというふうに理解しておるんです。  どうぞ、いいものは責任持って進める、しかし、農家だけは泣かせない、こういう私は約束してまいりましたから、そこのところをきちっとやればということでこれは行ったんじゃないでしょうか、みんな。そういうふうに私は理解しております。  そこで、時間が、こんなことをやっているとあれですから前へ進みますが、このWTOについて、総理は前回の予算委員会で保利さんに答弁しましたね。アメリカ、EUの進行状態ですか、決定される状況も見ながらやっていくというふうにお答えになった。これは間違いないでしょうね。  また、さきがけの鳩山さんも、基本的には批准しなければならない、批准は政治的判断であり、日本だけが先行してやらないという認識は、これは政府・与党首脳会議でも出ておって、日本だけが先行してはかを見るようなことをしてはならない、これは大体政府でもそういう認識だ、こうおっしゃっておるんで、これは基本的な考え方ですか。
  81. 村山富市

    村山内閣総理大臣 これは本会議でも答弁をいたしましたし、またこの委員会でも先ほどお答え申し上げましたけれども、ウルグアイ・ラウンド合意したことについては、これはもうやはり約束事でありますし、日本も受けて帰っているわけですから、したがって、WTOが来年の一月一日から発効できるように、日本もやはりその責任は果たさなきゃいかぬというふうには思っておりますから、ぜひこの国会で成立をさしていただきたいという気持ちは率直にお願いを申し上げておきたいと思うんです。  ただ、アメリカやらヨーロッパやら、そういう国々が同調して出発ができるような状況にならなければ、これは協定した意味がなくなっていくわけでありますから、したがいまして、そういう国々の状況も見ながら、日本が何も早く率先して出す必要は私はないと思いますから、状況も見ながら、手続についてはそういう配慮もして行いたいということを申し上げたところであります。
  82. 田名部匡省

    ○田名部委員 どうも私はそこのところが、日本はどうするかという問題なんですよ。アメリカがやったらおれらも行こうとか、アメリカが仮にこれ反対してつぶれるかどうかというのは、これは我々の責任でも何でもないんですよ。これはだめになるだけの話であって、どうもそこが何となく、アメリカ見たりなんとかといってやられる。それなら何も、これ二日に提案になって今日まで何にもしないできたんですよ。一月一日でいいというなら何も、ゆっくりやってもいい話になってしまうんで、ですから、そうでなくて、日本日本としての主体性を持って決めるというならよく理解できるんですけれども、どうも、そうなのかなと思うと、いやいや、アメリカがやればというようなことをおっしゃるから、一体果たしてどうかなと、こう思うのですよ。
  83. 村山富市

    村山内閣総理大臣 これは批准をすることについてはこれは約束事ですから、きちっとやはり責任を果たさなきゃならぬ。ですから、このWTO承認については、ぜひこの国会で成立をしていただくように御協力をお願い申し上げたい、こう申し上げておるわけですよ。それは、考えは間違いないのです。  ただ、これはやはり国際的に同調するものがなければ、日本だけが決めたからといって決まっていくわけじゃないんですから、したがって、そういうこともやはり十分配慮しながら、取り扱いについてはやっていく必要があるんではないか、こういうことを申し上げているわけです。
  84. 田名部匡省

    ○田名部委員 外国では批准している国はあるんですよ。そうですね。だから、国会で承認をといって、協定はまあそっちを見ながらと。それはだれもそう思いませんよ。国会で承認したら、もう日本はあれだなと判断するんですよ、こっちはそう思ってなくても。だから国会承認が、これはもう一番大事なところなんです、どこでも。だから、それを先にやってもらって、そしてアメリカやEUがやったら私たちもというところが私はどうも理解ができない、こう言っているわけです。まあいいですよ、これ。  外務大臣、どうですか。
  85. 河野洋平

    ○河野国務大臣 欧米諸国の審議状況などは、我々逐一情報を得ているわけでございまして、現在でもアメリカ及びヨーロッパの主要国の審議は、我々が聞いております範囲、順調に進んでおります。  アメリカは、先ほどもちょっと申し上げましたが、中町選挙の結果などを踏まえて若干不透明なところがあるのではないかと心配をいたしましたけれども、アメリカの首脳は自信を持って自分たちはこのWTOの問題は処理をするということを言っているわけでございまして、私どもは現在のところ、この臨時国会会期中に本件については国会の御承認をいただいて、そして、何といっても明年一月一日からスタートをさせようというわけでございますから、これはもう御審議をいただき、承認をしていただいて、欧米諸国とともに手続を済ませ、一月一日スタートを待つという態勢が最も適当だ、こう考えているわけでございます。  現時点では、欧米の審議状況はそれぞれ誠意を持って進められているというふうに私どもは見ておりまして、この問題についてどうこうしなければならないという状況ではないように私どもは思っておりますが、立法府の中で、自分たちはもちろん承認をするけれども、手続については欧米諸国の足並み、欧米の主要国との足並みもまた十分考えに入れて手続をしたらどうか、こういう御意見もございますので、そうしたことまで含めてやろうというのであって、これはいずれにしても、今年内にそれらの手続が全部終わって一月一日からスタートをするということが各国首脳の間で、繰り返しさまざまな会合で確認をされているわけでございますので、ぜひひとつその点は御了承をいただきたいと思います。
  86. 田名部匡省

    ○田名部委員 総理WTOというのは、これは一括して受諾しなきゃならぬのですね。この規定から米だけを切り離すというわけにはいかぬものですから、だから、米は反対とかなんとか言ってみたって、あなたがおっしゃるように、自由貿易の恩恵を受けてきた。宮澤総理、そこで渡辺外務大臣と二人でしきりに答弁したんですよ。そうしたら閣内不統一だといって今度は怒られましてね、あなた方の党から。だから、こんなこと知っていて反対していたというんだと、つまみ食いをしようとしたのかという気持ちを私どもは持ちたくなるんですよ。だから、さっきこちらの方からやじも飛んだが、こんなことは国会議員として、つまみ食いができないとすればどうするかという判断の中ですから、余り余計なことを言われない方がいいのでないかと私は思いますがね。  大河原大臣、ことしの一月七日に参議院で、自民党は当時の畑農林水産大臣に対して問責決議を送った。大河原大臣も賛成しましたね。これは随分きつい問責決議ですよ。三度の本院の決議等に反し、結果として国会を著しく軽視し、農民を初め国民全体を欺いた責任は極めて大きい。輸入国にとって不公平な結果に終わり、米の実質関税化を初め重要基幹農作物の総自由化を招いた。これにより食糧の安全保障を放棄し、我が国国民の生命を他国に牛耳られることとなって、国益を大きく損なったことは農政史上かつて見ない大失態だ。こういう決議文でした。また河野大臣も、先ほど答弁にありましたが、党声明を出された。まあそれはお立場があったからそういうことだったろうと思うんですが、今みたいに一括処理だとかなんとかと考えれば、それは言いたい気持ちはわかるけれども、なかなかやれた代物でもないということはわかるわけですね。  その皆さんが反対して、今度はこれを法案、これは外交は継続だというので法案を出してこられているんですね。まさに「農民をはじめ国民全体を欺いた責任は極めて重大である。」ということを今皆さんがおやりになろうとしているわけですから、まあいずれにしてもこの問題というものは、いつまでも後に残してやるといったぐいのものでもないし、今後こういうことが起きてくれば、今までのお互い与野党問わずとった行動というものは、二度と同じ轍を踏まないということで私はこれは前進していくんだろうと思います。  そこで総理、もう一つあるんですよ。六月二十三日の生産者大会で、思い出しましたか。自民党の山本総合農政調査会長、三度の国会決議をした国会議員が批准を反対しないはずがない、我が党は断固反対する、こう言っているんです。その後はあなたでしたよ、社会党代表で。ウルグアイ・ラウンドの後の国内対策はシーリングの外に別枠を設けてやるべきだと。その後、六日後に総理になっちゃったんです。で、私だけは、まことに申しわけありませんでしたと謝ったんですよ、あそこで、ウルグアイ・ラウンドのことで。いやまあ、やじられたなんというものじゃない。しかし、これは不満があるからといって、それじゃガットを脱退するかというと、できないんですよ。そのことを私は、なぜそういうことをやったかということをあのとき説明しました。これは御記憶ありますね。  まあこれ、質問しようと思ったが、外交の継続性だと言うからもう聞きませんが、何であれだけのことが反対になったのか。それからあの問責決議の後に、十カ月たっていますが、この間に何か大きな変化があった、日本にとっては大変なメリットが出てきたので賛成だ、これはないんですね、外交の継続性だけで。どうですか、これ。
  87. 村山富市

    村山内閣総理大臣 今御指摘がありました日比谷における集会、よく記憶しております。  私は、ウルグアイ・ラウンドのこの合意を受け入れることについて、もう与野党問わず大きな問題として皆さんが心配して議論された、これはそうだと思いますね。社会党も、これは二晩かけて徹夜で衆参両院議員が集まって真剣な議論をしたわけですよ。その議論の結果、これは今もお話がございましたように、単に農業だけが切り離されて処理をされるのならそれが一番いい、これは国会決議もあることですから、何とかその国会決議は生かされぬものかといって皆さんが心配して、要求もし、努力もされたんですよ。  しかし、全体の動向の中では、これはこれだけ切り離して可決するものではないということもそれは十分承知していることでありますし、同時にまた、今さっきあなたからもお話がありましたように、関税を受け入れるかあるいはミニマムアクセスにするか、この選択もやはりあったと思いますが、しかし私は、やはり完全に関税化されるよりもミニマムアクセスを受け入れて、この六年間のうちに国内の対策を万全を期すということの方がある意味ではよかったんではないかというふうに今思っていますけれども、そういう政府努力成果というものも私はそれなりに評価してもいいんではないかと思うんですね。しかも、私どもは当時は連立政権にも入っておりましたから、単に農業問題だけではなくて貿易全体、日本経済全体の立場に立った場合に、これは政府が決断をして受け入れた、やむを得ないというので、苦渋の選択をして私ども受け入れることにしたわけですよ。  同時に、それだけにこれからの農業をどうしていくかという問題についてはやはり真剣に考えなければいかぬ。これは当時の細川内閣もわざわざ閣議で了解して一定の方向を決めたわけです。そのことも受け入れて、私どもは、これから日本農業対策をしっかりやらなければいかぬという決意を固めて、同意をするということにしたわけでありますね。  できれば別枠にして、そしてしっかり農業政策を講じていくということが必要だということでいろいろ議論もしてまいりましたけれども、先ほどお話がございましたように、この六兆百億円、自治省の一兆何がしを加えれば七兆になるわけですけれども、そういう予算も大枠として決めていただいて、別枠にはならなかったけれども、それなりの成果は上げて実現ができるということも私どもは期待をして了解をした、こういう経過でありますから、御理解を賜りたいというふうに思います。
  88. 田名部匡省

    ○田名部委員 別枠かどうかというのは後でやりますが、これは別枠でないと、本当はあの大演説と似つかわしくない内容なんですよ。まあこれは後にしましょう。  そこで、米の特例措置について七年目以降一体どうなるか、それは六年目に交渉することになっております。これはどうですか、決裂すると前のやつに戻るのか、今のままになるのか。これは農林大臣。外務大臣ですか、これは、決裂すれば。
  89. 原口幸市

    ○原口政府委員 もとに戻りませんで、そのままということでございます。
  90. 田名部匡省

    ○田名部委員 これはどうですか。この間説明を受けたんですが、七年目以降は白紙だ、事務方はそう、私どもに外務省も農林省もお答えになりまして、いささか議論になりました。これは白紙ですか。
  91. 東久雄

    ○東政府委員 関税化の特例措置の七年目以降の取り扱いにつきましては、先生御承知のとおり、六年目の交渉で決められるということでございまして、七年目以降も米に関する特例措置を継続するか否かというのは、その時点における諸種のことを考えまして、特例措置の継続を行うということであれば代償等の問題がございますが、そういうことを含めまして、そこで総合的に検討するということで、そういう意味では、いろいろな条件はあると思いますけれども、白紙だというふうにお考えいただいていいと思います。
  92. 田名部匡省

    ○田名部委員 白紙だと。どうも私はそう思わないのですよね。さっき農林大臣何かお答えにならなかったですかね、だれかの質問に。これは全く白紙だと。
  93. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 それは、我が国関税化をとるかあるいは特例措置を引き続いてとるかという意味で白紙でございまして、その方針の決定は、今も事務方が申し上げましたように、そのときの農業事情その他、代償措置、追加的かつ相手方が容認できるような条件等について関係国との協議ということに相なっておりますが、それらを見ましてその時点で決めるべきものであるというふうに思っております。
  94. 田名部匡省

    ○田名部委員 私は、これは決裂ということはないのだろうと思うのですね。このままいくか、先ほど言った関税化の方が得かどうかという議論は、これからやらなければいかぬですよ、ここで。しかし、常識的にはこれは継続していきましょうとなると、受け入れ可能な譲許を与えるということになって、その限りでは、白紙と言われてもどうもそうかなと。厳密に言えばそういう答えも出るだろうけれども、だめになることもあり得るということならば、関税化も認める、もう変えるというのなら白紙と言われてもわかりますけれども、まだそこまでの結論が出ていないで、ここに書いてあるとおりだとすれば、私は白紙と言うことはおかしい、こう思うのです。  それから、外務大臣、WTO協定と一九九四年のガットとの関係、これは資料をもらったのですけれども、なかなかわかりませんね、素人には難しくて。  そこで、ガットに加盟している国とWTOに加盟する国の関係がどうなるのか。それからアメリカが、WTOが発足すると、その後にすぐ現行ガット体制から脱退という方針が伝えられているが、これがどうかということと、そうやった場合にどういう影響が出るかということをちょっとお知らせいただきたい。
  95. 河野洋平

    ○河野国務大臣 アメリカはしきりに、直ちにという話をしております。これには、アメリカにはアメリカの思惑があるんだろうと思います。いろいろな説明をして、そうやることが早くガット体制からWTO体制にみんなを変えるというインパクトもあるんだという説明もございました。そういう点もあるという説明もございましたけれども、それは少し、余り乱暴過ぎないかという議論も我が方もしてみたことがございます。アメリカにはアメリカのいろいろ思惑があるわけでございますが、私どもとしては、できるだけスムーズにこのWTO体制に全体が入っていくということが一番望ましいということを考えているわけでございます。
  96. 田名部匡省

    ○田名部委員 アメリカが脱退するということになると、どうでしょう、アメリカと関係なくなる国が出てきますよね。アメリカWTO、ほかはガットに入っていますと。そうすると、未解決の貿易紛争というのを今やっているのがありますよ。これはもうだめになるのですね。そう理解していいですか。アメリカは、今言うとおり、自分は抜けて、後をついてくるんだという考えだと思うのです。日本は両方に入っているということになるわけですね。なかなかこれは、負担金がどうだとか、附属書一、今度は二、三が、新しく通産関係とかいろいろ入ってまいりますが、そういうことで、アメリカ対よその国は一体どうなるんですか。
  97. 原口幸市

    ○原口政府委員 お答え申し上げます。  仮に、ある締約国が、WTO協定発効後、現行のガットから脱退する場合におきましても、現在係争中の紛争案件に適用されている手続が当該締約国の脱退により不当に中断されることのないように、解決案についても現在議論されているところでございまして、いずれにいたしましても、ガットからWTOへの移行過程において、各国の間の権利義務の義務関係が不安定にならないように、我が国としても適当に対処してまいりたいと思っております。
  98. 田名部匡省

    ○田名部委員 時間になりましたから、あとは午後にお願いします。
  99. 佐藤孝行

    佐藤委員長 これで田名部君の午前中の質疑は終了いたしました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十六分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  100. 佐藤孝行

    佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。田名部匡省君。
  101. 田名部匡省

    ○田名部委員 私たちが一番関心を持っておるのは国内対策なんです。これは受け入れるときの条件として国内対策をしっかりやるということでありますので、幾つか質問させていただきます。  先般、ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策として六兆百億円の対策費が決定されたわけであります。これは当然従来の農林水産省の予算の別枠として上積みをされるのかな、こう思っておりましたが、まあ総理、しばしば国会の答弁を聞いておりますと、従来の農林水産予算に支障を来さないよう配慮することとされている。答弁がどうもいま一つ明確でないような気がしてならぬわけですね。これは大蔵大臣にもお伺いしますので、まず総理の考え方、あなたはこれ答弁しておりますのでね。  そこで、当然、ウルグアイ・ラウンド関連対策については、農林水産省所管の通常予算、二兆八千億あるわけですが、この別枠として措置されていると理解していいかどうかということ。
  102. 武村正義

    ○武村国務大臣 先ほど、午前中、総理もお答えいただきましたが、今回の対策はウルグアイ・ラウンド合意に対応する六カ年の新しい事業であるという認識でございます。なお、従来の農林水産予算に対しては支障を来さないように配慮していくという考えに立っております。  シーリングのときから議論はございまして、別枠という表現は、いわばシーリングの別枠という意味議論が始まったわけでございますが、一つ認めればいろいろな分野で、福祉関係もそうでございました。新ゴールドプラン、あるいは新幹線等々、いろいろありまして、これは別枠という考え方はとらないということで、いずれにしましても予算編成の中で検討をし、適切な対処をさせていただく、こういう姿勢であります。
  103. 田名部匡省

    ○田名部委員 そこの、一つ認めればということ、それはまあそのとおりでしょう。しかし、これは特殊な事情によるんですね、ウルグアイ・ラウンドという。しかも六年で対策を、国際競争に耐え得る農業というものをやろうというのですから、これは一般の考え方と一緒にしていいんでしょうかね。  で、言葉というのは、まあ役所の人たちは頭いいからいろいろ知恵を出して答弁資料を書くのだろうと思うのですが、従来の農林水産予算に支障を来さないようにと。この従来というのを取ると、まことに立派な文なんですよ。農林水産予算に支障を来さないようにやる。従来のというのが入ると、今までの予算のという意味に非常に受け取りやすいんですよ、これ。従来と言うと、古いやつですよという意味にね。だから私は、どうもそんな気持ちがにじんでおるのかな。これはわかりません、これからの予算編成を見なきゃわからぬわけですから。  ただ、今回の六兆百億のうち  自治大臣の方は一兆二千億、これはまあ別途ね。これはウルグアイ・ラウンド対策なのかどうかわかりませんが、関連のあるものにも使えるでしょう。しかし、この六兆百億のうち農業農村整備事業が三兆五千五百億と、対策費の半分以上を占めておるわけです。それだけに、これは基盤整備をして、規模拡大をしてということですから、これはまあ結構なことだと思います。これによって農業生産基盤整備が飛躍的に、六年間で国際競争に耐え得るようにするというのですから、規模拡大も進むであろう、私はこう理解しておるのです。  ところがこの基盤整備は、昨年の財政審では、先ほども報告がありましたが、Cランクになっておるのですね。私どもは、これは随分ウルグアイニ・ラウンドのことがあるからということで反対したのですが、財政審がそうだと言う。  で、さっきもいろんな人に答弁しておるのですが、大蔵大臣、勝手に、いや、これはまあBぐらいですか、Cではないみたいな答弁されておりました。そういう気持ちというものをにじませておったのです。しかし、私ども予算の折衝のときに、事務方はこのCというものを忠実に守るのですよ。前回何ほど交渉やったか。大蔵大臣はそうでないと言っても、事務方は、このCランクというものがある限りは、これはなかなか譲りませんよ。ですから私は申し上げるので、どうぞその辺のところ、もう一遍お答えいただけますか。
  104. 武村正義

    ○武村国務大臣 今回のウルグアイ・ラウンド対策では、農業の体質強化を推進する立場から、農業生産基盤整備一般についてではなく、高生産性農業の育成に資する農業基盤整備などを重点的かつ加速的に推進をしていこうという考え方であります。  一方、御指摘の昨年の財政審の報告は、農業生産基盤事業一般を産業基盤整備型という公共事業の一つのタイプとしてまとめた上で、公共事業全体の中では、このような産業基盤整備については今後は重点的かつ抑制ぎみに扱うべきと、こういう答申、報告でございました。  先ほどお答えいたしましたように、まだこの説明がございますが、必要が特にある場合を除きと書いてもおりますし、真に必要な事業については重点化をこの産業基盤整備の中でも図っていくべしという考え方が、この表現にはにじみ出ているわけでございまして、そういう意味では、今回の六兆百億円の対策費でまとめた中の、今御指摘のような高生産性農業、大きなスケールの基盤整備事業などについては、これはまさにそういう扱いだと、この事業に関してはそういう意味では決してCではないと、結果的にAになるかBになるか、これはそういう評価がいただけることになってもいいんだと、こういう決断で事務当局ともども考えておるところであります。
  105. 田名部匡省

    ○田名部委員 まあ結果を見させていただきますけれども、しかし、財政審は財政面からこれを言っているのですよ。ウルグアイ・ラウンドに関係あったからこれはこうしようとかなんとかじゃないのです。財政審というのは財政の面からだけ言っているだけであって、そこのところはひとつきちっと予算はやってください。  それから、近年農業、農村が厳しいというのは、もう国会議員といわず農家も皆言う。ところが、国全体の予算に占める農林水産省所管の予算というものは、昭和四十六年、一四・三だったのが、それが平成六年にはたったの六・八なのですよ。それから、予算の伸び率についても、昭和六十年から平成二年、これは連続六年間マイナスの伸び率なのです。言うことは厳しいが、やることは道なのですね、これ。  ですから、いずれにしても、若い農業後継者に誇りを持って農業をやらせようというのですから、きちっとやることにはだれも反対しません。連合とこの間御意見を聞く機会がありまして、我々だって農家の立場に立ってこういう案をつくったというものを持ってきましたが、まことに心強く感じましたよ、私が言っていることをそのまま大体書いてあるのですから、今までやってきたことを。  ですから、いずれにしても、世界の人口は一年に一億ふえる。環境の問題もある。早晩、これは食糧の危機が来ますよ。食糧が不足になったら、戦が始まりますから。ほかのものと違うのですから。生まれたら亡くなるまで三度三度食べるものですから。そういうことを考えると、いずれにしても不測の事態というものを想定しながらこの予算というものはしっかりやっていかなきゃいかぬというふうに私は考えます。  もう時間がありませんから、大分あるのですけれども、ちょっと総理、どうですか、そう思いますか。
  106. 村山富市

    村山内閣総理大臣 今お話がございましたように、これはもう、人口はどんどんふえていく、それに比例して耕地は逆に減っていく、こういう世界全体の動向から考えますと、この人口と食糧という問題はやはりこれから大変大きな課題になるというふうに思いますし、それだけに、国内の主要な食糧の自給度を高めていくということは大変必要なことだというように思いますから、先ほど来申し上げておりますように、この問題は、単に生産農民だけの問題ではなくて、国民的な課題として、この日本農業をどうするかという視点から取り組んでいく必要がある問題だというふうに私は認識をいたしております。
  107. 田名部匡省

    ○田名部委員 自治大臣、市町村の財政状況というものは、これは平成五年度の緊急経済対策、これを実施して、非常にやはり苦しいのですよ、市町村、自治体の方が。ウルグアイ・ラウンド関連対策を進めるといっても、これは自治体も負担があるわけですから、自治省の地方財政措置というものがどうしても求められるということになります。どうですか、これについて。
  108. 野中広務

    ○野中国務大臣 当然のごとく、先生おっしゃるように、この事業を進めていきます場合には、公共事業部門につきましては農業農村対策事業、あるいは非公共におきましても構造改善事業等、それぞれ従来の地方負担の割合で、一定負担が地方に参るものと考えております。それぞれ、平成七年度を含めまして、地方財政計画の中で地方負担に支障が生じないようにやってまいりたいと存じております。
  109. 田名部匡省

    ○田名部委員 大蔵大臣、この予算で、これは事業費ベースですから、六年後に国際競争力がこれでつく、こういうふうにお考えになっておりますか。
  110. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 お話しのとおりでございまして、我々としては、具体的に申し上げれば、新政策で示した経営体、これが農業生産の、米について一言えば六割ぐらいを占める、あるいはコストは、地域によってそれぞれ違いますけれども、五割ないし六割の削減をいたす、そういうような実現を目指してこの事業を進めるわけでございまして、そういう意味では、国際競争力に対して対応できるものだというように考えております。
  111. 田名部匡省

    ○田名部委員 米の内外価格差、これの目標というのは一体どの辺までが限度か、この辺の目標があったらまたお答えいただきたい。
  112. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 内外価格差の問題につきましては、田名部委員十二分に御案内のとおりでございまして、我が国農業の規模な力地価なりあるいは労賃水準等を見ますと、なかなかに厳しい点があるわけでございます。したがいまして、今度の政策、ただいまも申し上げましたような政策によって、あとう限りコストの低減を図り、内外価格差の解消に努める、その姿勢が、むしろその農業サイドの努力、これが大事だというふうに思っておるところでございます。
  113. 田名部匡省

    ○田名部委員 私は、この政府の大綱決定だけで、どうやってこれを六年間担保するのか。その心配は、日本経済というものはこれからどうなるかわかりません。財政が非常に厳しい状態になったときに、この六兆百億というものは担保されるという保証はないのですね。だからさっきからうるさく言っているので、ここのところは大蔵大臣、もう一たん決めたらやはりその六年後までの達成を目指してやってください。どうですか。
  114. 武村正義

    ○武村国務大臣 日本農政を転換していく大変大事な六年間の予算だと思っておりまして、財政状況、御指摘のとおり極めて厳しい中でありますが、重点を絞りながら、一つの柱を立てながらこうした規模の事業費をまとめていただいたわけでございますから、大蔵省としては全力を尽くしてこの事業が予算化されて執行されるように努力をしてまいります。
  115. 田名部匡省

    ○田名部委員 先般、連合の政策担当の方々の御意見を伺う機会がありました。もう従来と全然発想が違って、農家の立場というものを十分やはり考えておるのですよ。しかし一方では、納税者、消費者、そういう立場からも意見を出しておられました。これについても、今回のこの関連対策というものを見たときに、新しい食料・農業・農村政策、この実現を基本にして何をすべきかということを提言しておりました。あるいは、そういうことが検討されてこの金額あるいは総額をどうするかということではなくて、先にこの金額ありきという感じを受けるという指摘をいたしておりました。私どももそう思うのですね。何かもう三兆五千億が、これは大体六兆円ぐらいでおさめるところかなと思ったら、ぴたっと六兆行ってしまった。ですから、そんな感じですよ。  やはり何をどうやってというのは余り  私は大分前に、一兆円は必要ですよと、農業者の大会へ行って、別枠予算の大会に出てこいと言われて行ったときに、対策は一兆円必要ですよと。ちょうどこれは六兆円になってしまった。まあ先に金額を出した私にもそれは責任があるかもしれぬけれども、いずれにしてもそんな感じを持っておるということを申し上げておきたいと思いますが、今までは農家の立場の話ばかりしてまいりました。これは一般の国民にどういう利益を与えるか、何かあったらお答えいただきたいと思います。
  116. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 新しい今度の国内対策におきましては、大きな目標としては、やはり産業としての農業の確立、それから先ほどお話がございましたような食糧の安定的な供給、特に自給率の低下傾向に歯どめをかけるという点、それから消費者に対して良質、安全な、新鮮なものを、合理的な価格でこれを提供する、それから都市住民にとっても大変大事な農山村、活力ある農山村をつくる、これを政策目標として掲げておるわけでございます。したがいまして、全体として、このたびの事業の成果によってその目標が達成されることによって、全国民的な利益にもかなうものであるというふうに考えております。
  117. 田名部匡省

    ○田名部委員 大臣、これはもう前から言っていることであって、六兆百億の利益はどういう影響を受けるかということは、これは前々から今申し上げたことはやってきて、私も何回も同じ答弁をしてきた。だから、本当はこの対策をやることによってどういう利益を一般の国民が受けるかということを一遍考えておいていただきたい。  それと、きのうも地元の町村長が来ました。農林省からも来てもらって話を聞いた。まあとにかくわからないのですね。前回、五十六年の一部改正のときも、これは一年かけたんです。これは二カ月ですから、今回。末端へ行くと大混乱。それは町村長もあれだけ聞いて、まあ何とかわかったかなというんですから、一般の農民はこれはわからぬのですよ。これを実施するとなると非常に混乱が起きる。徹底して農民の理解を求めていくという作業もやってください。  それから政府米ですが、審議会の意見を聞いて、自主流通米の価格の動向、それからその他の米穀の需要と供給の動向を反映させるほか、生産条件及び物価その他の経済事情を参酌してと、これは前から徹夜して大臣と私は一生懸命やった、この部分ですよ、どういう計算方式でやるか。かつては、米審の意見を尊重し、米価は据え置くものとするという案をっくりましたね、二人で。どこから見たってつながりはないんだ。  だから、そういうことで私が言いたいのは、今の地域方式を改めるんだろうと思う。どう改めても、米価が上がれば農民は安心する、下がれば怒るということですから、なかなか決め手というものはないのですね。それじゃ一俵供出したところもちゃんと計算に入れるかといったら、これは膨大な高い米になる。切ればそこから下がまた不満が出てくるということで、なかなかこれは難しいのですが、このことを見ると、どうしても、自主流通の部分は市場で決める、残ったのはやはり政府でやる。  また徹夜で毎年これからおやりになるのはやめたらどうかと私は言っているのです。もう米審で決めさせる。米審へ持っていくと、周辺対策がいっぱいあるものですから、私たちに米価だけ決めさせて、そんなものはそっちの方でおやりになるというのはおかしいじゃないですかと言って随分やって、私はこれを改革します、こう言ったのですが、その後どうですか。大臣のところで検討していますか。
  118. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 従来の食管制度のもとにおきましては、政府買い入れ価格については、お話しのように米価審議会の意見を聞いて決める、生所方式で決める。それについて各般の論議があり、政治的ないろいろな御主張もあったというわけでございますが、このたびは、今度は法文上も明らかなように、政府米の価格の決定についても、流通の主流をなします民間流通としての自主流通米、それの需給事情と価格動向、これを基本として、なお生産コストその他の生産条件、物価あるいは経済事情、そういうものを参酌して再生産を確保するように決めるということで、ずばり従来の食管法の生産者価格の決定とは異なった考え方をとっておるわけです。  市場流通の方のやつを政府価格にも反映させ、それによって米価全体の価格体系を維持しながら、あるいは市場の需給なり品質評価、それに応じて稲作生産も誘導する、そういう考えで決めておりますので、それにかなった算定方式をこれから検討いたしたい、さように思っています。
  119. 田名部匡省

    ○田名部委員 大分まだ質問事項が残っておりますが、もう途中でこれはやめざるを得ないと思います。  そこで、この政策というものは農家がやるんですよ。我々じゃないのです。その農家の人たちがどうやって意欲を持ってやろうとする気持ちになるか、ここは大事ですよね。そういうことを考えると、土地を集積して規模拡大していく、まあお金はかかりますよ。負担金はまた幾ら安くしたといったって、前にやっているやつをまたやるとなるとさらに借金がかさむ。ということになると、この間の一定の米価水準というものは、ある程度目標を持っておかなきゃならぬのではないか。要するに、もうけの中から返していくわけですから、そこのところを全く無視して米価を上げ下げすると、今度はこっちに影響が出てきますからね、農家に。そのところを私は心配しておるのです。生産意欲はわいてきませんし、使わなければ六兆百億は何にもならぬですからね。  そういうことを考えることと、私もあちこち見るのですけれども、町長さんなんかが先頭になったり農協がやったりしてやっておりますけれども、これはやはりそういう人たちが関与してやらぬと、農家が一人で十町歩へ二十町歩まとめてやれといったって、これはなかなかできない。それから、やるについても、私は出世払いさせたらどうか。金を出すというのはえらい抵抗があるんですよ。だれかがまとめてくれて、そこで農業が始まって、もうけの中から返していくということなら、この間聞いたら農家の方、それならまあ一番いいな、こう言っておりました。どうぞそういうことも検討してみていただきたい、こう思います。  次に、計画流通米以外の米についてでありますが、これも今度は過料十万円ですよね、届け出しない者は。なかなか守るかなという気があります。今までだって、現行法でも政府に売り渡さなければ三百万の罰金ですよね、懲役二年以下。ところがこれ、やったことはないんですよ。裁判やると勝てないし、大潟村なんかもうどうにもできなかった。あるいは川崎事件、これも何回も食糧庁長官、しっかりやれと言ったってできなかったんですね。そういうことを考えると、この過料というものはどうだろうか、農家個々に。一方ではいろいろな規制を受ける、受ける中でやらなきゃ十万円取るぞ、こういうふうになるとどうですか、これは。
  120. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 今度の計画流通制度は、事々しく申し上げるのは恐縮でございますが、従来の食管制度のもとにおいては、食管法の三条の規定によりまして、生産者は原則として政府に売り渡し義務を負う、例外として、政府が直接売り買いしないが、一定の単線的なルートで販売する自主流通米、その制度でございまして、生産者は政府に対する売り渡し義務を持っておったわけでございますが、このたびはその三条は廃止をいたします。したがって、計画流通米は消費者に必要な数量の安定、計画的な流通のために、食管法の一条の需給の安定、供給の安定を受けて制度としてつくられるわけでございますが、その制度に乗るかどうかは、これは生産者の選択でございます。  ただ、計画流通と計画流通外を合わせた全体の流通量はやはり需給調整上必要なので、したがって、生産者の方にその計画外に乗ることについての届け出だけを願うということでございまして、これは計画全体の流通秩序維持のための、一種の秩序維持のためのもので、それに対する違反は行政罰でございまして刑罰ではない、そういう考えでございます。
  121. 田名部匡省

    ○田名部委員 一生懸命やるようになった農家に余りそういうことは私はなじまないと思う、国の言うとおりやっておるんですから。これからの問題だって、需給調整、例えばミニマムアクセスの分はしませんよと。ところが前の方を見ると、余ったときは調整するとなるとわからぬのですよ。こっちはそのままですよと言ったって、こっちで減らせば、お金に色がついていないと同じで米にも色はついていないのですから。そう言いつつも農家の皆さんも戸惑っているのです。価格が今度は下がると困ると。しかし、そう言ったって、約束は次々にほごにされて、おもしろくないという気分も持っておるというのが現状ですよ。  ですから、日本は足りないときは輸入するが、余ったときは売れないというのでみんなが苦しんでいるんだ。何かひとつこれは輸入、これは外務省も問題あって、なかなか難しい問題なんだ。しかし、中国、韓国、アジアのどこかと一緒になって、余ったときはお互いに、これは売れば問題があるから、貸す、助けてあげる、しかし、こっちが困ったときは貸してくれということで、備蓄の範囲内でそういうことを考えれば、多少つくったって今度は問題なくなるわけです。  だから、余りつくれの減らせのということではなくて、何とか農家が一定の生産ができる体制というものを、これはどういう方法がいいのか、外務省から言わすとなかなか貸し借りというのは難しい面もあるんだろうと思うのですが、何かやはり知恵を出して、お互いに食糧不足になれば足りなくなったところは貸してやる、冷害もあれば何もあるわけですから、どこの国も。そういう仕組みというものをつくれないかなという気がしてならぬわけです。  時間のようですからこれで終わりますけれども、大分残しました。あとまた機会があればぜひお伺いしたいことがありますので、きょうはこれで終わりますけれども、どうぞ、私も一年九カ月、農家だけは絶対泣かせぬ、こう言って話をしてきました。しっかり引き継いで守っていただきたい、よろしくお願いして終わります。  ありがとうございました。
  122. 佐藤孝行

    佐藤委員長 この際、千葉国男君から関連質疑の申し出があります。田名部君の持ち時間の範囲内でこれを許します。千葉国男君。
  123. 千葉国男

    ○千葉委員 米どころ宮城選出の千葉国男でございます。改革の皆様のお許しをいただきまして、WTO批准の問題、それから新食糧法について、またウルグアイ・ラウンド農業合意に伴う関連対策について、総理並びに各大臣に質問させていただきたいと思います。  村山総理、APECの旅、大変御苦労さまでございました。新聞報道によりますと、首脳会議は、経済成長の基礎は開放的な多角的貿易体制であることで認識が一致した、また、それを具体化するには、WTO世界貿易機関を九五年一月に成功のうちに発足させるよう努力と協力を呼びかけた、こういうふうに伝えられております。  ところで、アメリカでは中間選挙がありまして、共和党大勝利ということで政局が大きく動いているわけでありますけれども、既にアメリカの受諾手続状況につきましては、下院では十一月の二十九日、上院では十二月一日、本会議で採決の予定である、このように言われているわけですが、総理が今回苦しい立場に立たされたクリントン大統領と直接日米首脳会談をされた感触として、その辺どのように総理としてクリントン大統領の決意といいますかそういうものをお受けとめなのか、お願いしたいと思います。
  124. 村山富市

    村山内閣総理大臣 クリントン大統領とお会いをしまして、中間選挙が終わった後の状況についても若干お話を承りました。その中で、特にウルグアイ・ラウンド合意に基づく実施法案につきましては、今月の末に議会で審議をされ成立することができると考えている、こういうお話を承ってきました。
  125. 千葉国男

    ○千葉委員 どうか総理におかれましては、その見通しに誤りのないよう対応をお願いしたいと思います。  次に、外務大臣にお伺いしたいと思います。  一昨日の十五日に、欧州裁判所でかねて懸案でありました判決が出た、こういうふうに承っておりますが、WTO協定につきましては、EU全体が署名をするあるいはまた各国が署名する、このように分かれているわけですが、今回それぞれ署名を行う、こういうことが決まったようでございます。  そう考えましたときに、既にドイツ、イギリスは国内手続が終了しておりまして、あと一番影響力のあるフランス、それからイタリア等も今審議中である。こう考えましたときに、今後手続のおくれておりますフランスとかイタリアの場合はどういうふうな状況になっていくのか、その見通しについて教えていただきたいと思います。
  126. 河野洋平

    ○河野国務大臣 ドイツ、イギリスについては、議員お話しのとおりでございます。フランスにつきましては、十一月末ごろに国会に協定を提出をいたしまして、秋の国会会期中、すなわち十月二日から十二月二十日までが秋の国会と聞いておりますが、審議が終わる予定である、こういう情報を得ております。イタリーにつきましては、上院は通過し、現在下院で審議中だ、十一月末までには議会の承認が得られる見込みだ、こういう報告を得ております。  その他、ヨーロッパの国はいずれも現在審議中の国が多うございまして、いずれも年内に審議を終えるべく審議が進んでいるというふうに聞いております。
  127. 千葉国男

    ○千葉委員 このWTOの批准につきましては、何といってもアメリカ、それからEUの影響というのは多いと思いますし、先ほど来確認されておりますように、日本のあり方についてしっかり対応をしていきたい、こうお願いしたいと思います。  それから、二〇〇〇年以降の貿易ルールを決める新たな交渉イシューということでは、環境問題が大きなテーマとなる、このように指摘されております。WTO世界貿易機関の訳語であると言われていますが、たまたま私はっとローマ字を見ましたら、このWというのはウオーターのことかな、それからTはツリーで木のことかな、Oはオゾンで、何かそういう水と木と酸素、こういうことをあらわしているようなふうに、ぱっと見たときに思いつきましたが、これからの貿易も非常に大事ですけれども、環境あっての貿易である、こう考えたときに、やはり世界貿易機関は環境問題なしにはもう話れない段階に入っていると思います。  そういう意味で、ラウンドの中であるいは会議の中で、これまで環境問題がどのような経過を経て語られてきているのか、教えていただきたいと思います。
  128. 河野洋平

    ○河野国務大臣 環境問題は、ウルグアイ・ラウンドにおいてはいわゆる正式の交渉対象とはなっておりませんけれども、貿易と環境に対する強い関心というものがございました。したがいまして、世界貿易機関、すなわちWTOでございますが、設立協定の前文におきまして環境への言及がなされておりまして、また、本年四月のマラケシュ閣僚会合におきまして、WTOの一般理事会の第一回の会合におきまして、貿易と環境に関する委員会を設立することが決定されております。また、ウルグアイ・ラウンド交渉の結果作成されましたWTO協定のうち、農業に関する協定、補助金及び相殺措置に関する協定、技術的障害に関する協定などに、貿易と環境に関連した規定がございます。  なお、次のラウンドについて国際的な話し合いはまだ始まってはおりませんが、環境と貿易の問題は、ウルグアイ・ラウンド後の重要課題の一つとしてWTOやOECDなどで検討が進められる予定でございまして、我が国としてもこれに積極的に参加をする所存でございます。
  129. 千葉国男

    ○千葉委員 ぜひそういう姿勢で取り組んでいただきたい、こう思います。  次に、新食糧法案主要食糧需給及び価格の安定に関する法律案について、農水大臣にお伺いを幾つかしたいと思います。  本案は、一つには、ガットウルグアイ・ラウンド農業合意を受け入れる、これに伴って関連の規定を整備する、こういう面があると思うのです。もう一面は、昨年来の大凶作で、またこの昭和の初めの食管法の実態というのが要するに現実から大きくかけ離れた制度になってきた、そういうことで、追い詰められた形で見直さざるを得ない、こういうふうな二つの契機があって今回この新しい法案が提出されたと思っているわけですが、その間、農政審議会におきまして、食管制度の見直し、そういうものが行われ、検討がされてまいりました。各方面いろいろな動きがありましたが、特に最終段階になって、与党三党との調整の結果、この現在提出されている法案が固まってきたのではないか、こういうふうに言われているわけですね。率直に印象を申し上げまして、農政審の答申から大分後退したんじゃないか、こういうふうに思っております。  例えば、今、規制緩和、非常に叫ばれている時代ですが、生産者や一般の国民の期待から、この規制緩和という面でも今回ちょっとやはり問題点が残っている。例えば一次集荷業者、これと生産調整、その指導を集荷業者がやる。結果的にそこで人間関係が強くなっていきますから、当然この一次集荷への新規参入の道が困難になってくる、こういう状況が実は生まれています。  あるいはまた、大騒ぎをしたあのやみ米騒動があって、不正規流通米をどうするか、こういう問題がありますが、今回はそれを容認をするという形に一方ではなっていて、それから計画外の出荷については届け出義務を負わせた。それにもし違反した場合は十万円以下の過料を科す、こういうふうになっておりまして、どうもこの間の事情が何となくわかりにくくなっているような気がいたします。  どういう理由でこういうふうに後退をしていったのか、農政審の報告から見るとそうなっているんですが、その辺の間のわかりやすい事情をぜひ大臣からお願いしたいと思います。
  130. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 基本的に申し上げますと、農政審議会の答申は、いわば若干抽象的に一つの米の管理システムについての、それぞれの部門についての意見といいますか、提案がなされておったわけでございまして、具体的な法律制度として固めたのが今度の法案でございます。したがいまして、その点についての印象と申しますか、そういう点についての受け取り方の違いがあるのではあるまいかというふうに思っております、一つはですね。  それから、千葉委員が御指摘になりました生産調整の問題につきましては、従来からもさようでございましたけれども、やはり生産調整は、このたびも生産者、地域、この意向をできるだけ尊重するという過程で生産調整の配分が行われるわけでございますが、その場合には、一種の登録出荷業者も、やはり米が何ぼっくれるか、それを何ぼ出荷として契約を結ぶかということで、生産調整とは表裏した関係にあるわけでございまして、これは何も農協でなければできないということではなくて、現在も、商系の取扱量は全体の五%にすぎませんが、商系の取扱業者もそのようにやっておるわけです。したがいまして、新規参入につきましても、法律にも書いてございますように、登録については、一定の資格要件があればこれは自動的にその資格が得られるということでございまして、その点では御懸念のことはないのではあるまいかというふうに思っております。  それから、先ほども田名部委員からも御質問ございましたが、計画外流通でございますが、これは従来の食管法によって、委員よく御案内のとおり、もう国に対して生産者が売り渡し義務をがっちりかけられてルートも特定されるということではなくて、計画流通米制度に乗るかどうか自体が生産者の選択になっておるわけでございます。ただ、計画外流通米として流す場合においても、全体需給を把握する観点もございますし、そういう視点から、やはり需給の安定という点から、その点は計画外流通に回す生産者からもある意味では御協力を願わなくちゃならない、そういう秩序維持と申しますか、そういうことでやっておりまして、後退というふうには私どもは考えておりません。
  131. 千葉国男

    ○千葉委員 今大臣から、後退ではない、それは印象論ではないか、こういうお話がありましたが、結局何といいますか、今回見ますと、これだけ長い歴史を経ているわけですから、どうしても一挙に大きな変化をもたらすことが困難ではないか、こういうことから、中を取り持ったような暫定的な案にどうしてもならざるを得ないのではないか。  ですから、私は、申しわけありませんけれども、この法律のもとで果たして六年後まできちっともって、本当に今後も食糧の安定供給ができるのかどうか、実は大変心配をしているわけなんですが、その辺大臣、国民の皆さんにはっきりと腹構えを、間違いなくちゃんと安定供給させる、このように言っていただきたいと思います。
  132. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 新食糧法案におきましては、従来の食管制度を廃止する、ただし価格需給の調整を行って供給の安定を図るというのが基本でございますが、政策手法を変えまして、従来は政府が全量管理を建前として、それで今も繰り返し申し上げておりますような生産者の政府への売り渡し義務、これを担保として流通規制をやっていたのを、民間流通である自主流通米にいたすということで、これが今の米経済の実態に合うということを前提として、しかも安定流通、価格の安定形成等に配慮してつくり上げたものでございます。したがって、現在の米経済の実態、今後の動向について十二分に把握いたしまして制度を組み立てたつもりでございますので、単に六年とか時限的なものとは考えておらないところでございます。
  133. 千葉国男

    ○千葉委員 今、六年に限ったことではない、こういうふうにお話がございましたが、私は、今回のこの生産調整の問題を含めまして流れを見たときに、生産調整が本当に円滑にいくのかどうかということが非常に決め手になってくるのじゃないか、こういうふうに思っております。一説には、手挙げ方式であるとか、あるいは全体の調整をとりながら個人の意向を尊重する。全体調整をとるといって、また個人を尊重する、これは非常に難しいわけでございまして、どういうふうなことを一体それでやろうとしているのか。国とか町あるいは農協、農協以外の一次集荷者がいろいろ協力をしていただく体制になると思うんですけれども、実施する場合の大変な苦労に対して、具体的にこういうふうにやるんだというようなものがありましたら教えていただきたいと思います。
  134. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 生産調整につきましては、過去に鳥もう二十年以上やってまいりました。いろいろの問題がございましたが、国の需給の見通しなり需給計画に基づいてその総生産量なりあるいは要調整量を決めまして、それを各県なり市町村ということでお願いをして、そして現場で生産者団体なりあるいは集荷業者等々、関係者が一丸となってそれをやってまいったわけでございます。その際は、従来は一種のペナルティー的な措置もございまして、生産調整の非協力者にはその分を次の年の面積にペナルティーとして追加するとかいろいろな問題があったわけでございますが、そういうような強制的な措置は今回はとらないということでございまして、あくまでも生産者なりあるいはその地域の皆さんとの話し合いを尊重しながら進める。  今もその点がややなまくらではないかというようなお話もありますけれども、それで建前といたしますが、一方では、十分御案内のとおり、今度の制度では政府買い入れを実施者からいたしますし、特別な助成金も用意をいたす。それから、生産調整の手法で転作、何か作物をつくらなければいけないというようなそういうような点ではなくて、むしろ湿田とかいろいろ条件がある場合には水を張って休んでもらう、水田段階の生産調整というような手法も取り入れて、弾力的な対応が生産者からやっていただけるような手法も工夫しなければ相ならぬというふうに思っております。
  135. 千葉国男

    ○千葉委員 今大臣から、ペナルティーはしない、また地域との話し合いをする、こういうふうなことでございましたが、何といいますか、そういう減反調整が少なくて済むような段階ならば、そういう話し合いも、意向も尊重できると思いますけれども、既に昨年の大凶作からことしは大豊作になっておりまして、生産調整を考えたら、大臣、心のうちは目の前が真っ暗な状態になっているんじゃないかと私は実は思っているわけなんですね。  ですから、七米穀年度末の持ち越し在庫量、見通しについて確認をちょっとしてみたいと思いますが、先ほど来出た輸入米がまだたっぷり残っておりますし、それから当然年度末に最初から備蓄予定にした在庫量が六十六万トンある、それからこの米不足の中で米消費が逆に減ってしまったという経過もありまして、それも三十万トンぐらいあるんじゃないか、こういうふうに言われておりまして、それにミニマムアクセス四十万トンが入ってくる、こういうふうにそれぞれ計算をしていきますと、大体、もうみんな含めてしまうと来年度末だけで三百万トンぐらいになるような私の計算なんですが、それについてちょっとお願いします。
  136. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 全体の需給等から、ただいまの委員御指摘の点についてお答え申し上げますと、まず緊急輸入米につきましては、これは大変残念、遺憾でございますが、別途の息の長い処理をしなければならない。したがって、需給関係を考える場合にはあくまでも国産米でやっていかなければならないという点が第一点でございます。  お話のとおり、いわゆる在庫保有、備蓄につきましては、昨年の大凶作がございまして、二年間で百三十万トン、したがって今の米穀年度、来年の十月末では六十数万トンを予定し、さらに八年の米穀年度末では百三十万トンということを予定しておったわけですが、作況指数で一〇九というような豊作によりまして、ほぼ来年の十月末に百五十万トンぐらいに達するのではあるまいかという点がございます。  したがいまして、その点を前提として、その在庫が自主流通米の供給あるいは販売環境について大変なマイナス要因に働くのではあるまいかということで、この点について、やはりそのための一つの生産調整の目標についての考え方を検討しなければ相ならぬということと、一方では、きょう午前中いろいろお話が出ましたように、やはり稲作経営の安定という視点から二年間据え置きだというような農家の意向、この点についてどういうふうな調整をいたすか、今生産者団体と話し合っておるというところでございます。
  137. 千葉国男

    ○千葉委員 ですから、八年度でやっと百三十万トン在庫できるかなというときに、もう来年で既に三百万トンクラスのお米があるという状況になってくるわけですから、計算的にはですね。  その中でぜひ確認をしておきたい点は、今回のこの農業合意の受け入れに対して、平成五年十二月七日の閣議了解といたしまして、米のミニマムアクセスの導入に伴う転作の拡大は行わない、こういうふうに約束をしていただいているんですが、現実に豊作にもうなっていますし、それから消費の量は減退していますし、転作面積を拡大しない限り実際にお米が余ってしまう、こういうことになってくるわけですが、すると、これがミニマムアクセスのお米でこれは普通のお米と、米にいろいろ、外国米ですからつければつけられますけれども、そのために、そっちはやりませんよといって言葉だけになる。本当にそういうことが守っていただけるのかどうか、どのような手段でこの決定を守るのか、もう一度御確認をお願いします。
  138. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 転作面積の積算につきましては、これは御案内のとおりでございまして、需給のギャップ、その分をどうするかということでございますが、これは積算上明らかでございまして、豊凶あるいは消費の減退、それに伴う通常の転作面積の増減は過去にもしばしば行ってきたところでございますが、ミニマムアクセスに伴う上乗せ的な転作面積の増加、これははっきり積算上も出るわけでございますから、したがって、その点は昨年の農業合意受け入れの際の政府の方針を守るのは当然であるというふうに思っております。
  139. 千葉国男

    ○千葉委員 ウルグアイ・ラウンド農業交渉を含め世界の流れを見ますと、国内の農業保護は削減の方向にやはり進んでいると思うのです。これから貿易の自由化もますます攻勢が強くなってくる。  こうなってきますと、国内的にお米は余っている、米価は低下していく傾向にある、こういうふうにしますと、政府米価について需給の動向を反映させるほか、米穀の再生産を確保する、こういうふうに表裏一体の表現になっているんですが、生産者からいえば再生産できることをぜひお願いしたい、こう思いますし、一般的な経済原則からいけば、これだけお米も多くなってきているわけですから、どうしても価格が下がる、安い方向へ行く。こう考えたときに、この問題を本当にどうクリアしていくのかというのは大変な私は問題だろうと思っております。具体的には米審にお願いをするというようなことも聞いておりますが、政府米価についての基本的な考え方、今までいろいろないきさつがあるのですが、総理、いかがでしょうか。
  140. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 お許しを得まして、私から先に御答弁申し上げます。  生産調整の実施者から買い入れることになります政府米につきましては、米価体系のやはり整合性ということから、基本的に、自主流通米の需給動向なりあるいは市場評価、それを反映した価格を基本とする。なお、参酌事項として生産コストを含む生産条件等に配慮して、その再生産の確保をするということでございまして、その基本に基づいた新しい算定方式をこれから検討いたさなければ相ならぬというふうに思っておるところでございます。
  141. 千葉国男

    ○千葉委員 今大臣の方から新しい算定方式ということが言われましたけれども、農家の生産費や所得を確保するために各国でもいろいろ研究開発されているわけですけれども、将来において、例えばアメリカ実施している不足払い制度みたいなものを考えざるを得ない状況になってくるのじゃないか、こういうふうなこともいろいろ意見が出ているわけなんですが、それについてどういうお考えを持っているか。  また、生産調整をする場合に、この生産調整の奨励金、一番大事なのはその水準がどのくらいなのか、こういうことになってくると思いますが、今までは村の論理で、みんなでお話し合いをして何となく無言の圧力の中で決まっていくという、こういうやり方が長い風土の中にあったかと思いますが、これからは生産調整に参加する生産者というのはやはり経済的メリットがきちっとある、こういうことがあって納得して参加していただく。そういう意味で、選択に値するだけの助成の水準というものも考えていかなければいけないのじゃないか。こういうことについて、どのように基準を考えていらっしゃるか。
  142. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 お答え申し上げますが、前段の価格政策について、所得補償的なものに転換することが必要ではあるまいかという御議論でございますが、これは相当慎重な検討を要するわけでございまして、一種の需給事情により決まった価格あるいは一定の幅でこれを保証するということから進んで、所得補てん的なものに進みますので、やはり消費者に価格政策を通じてある程度負担していただいたものを、財政がこれを負担するというような困難な問題も持っておるところでございまして、今後の問題としてはなお慎重な検討を要するのではあるまいかというふうに思っております。なお、大変この点についてはお答えにならないのですが、助成金の問題ですね。委員御指摘の生産調整の助成金の水準等については、生産調整の実効が上がるような水準は何としても確保いたさなければ相ならぬという程度の、まことに抽象的でございますが、そういう考えでございます。
  143. 千葉国男

    ○千葉委員 話はちょっと変わるのですが、農産物検査法についてちょっとお願いしたいと思います。  今回の考え方に立ちますと、米麦の生産者は今まで、売り渡す場合、その売り渡す前に国の検査を受ける、こういうふうに定められているわけですが、今回の規定によりますと、国は全量管理を前提とするのはやめたんだ。ですから、今まで国が責任を持って品質を管理してきたわけですけれども、こう考えたときに、これからは全量管理の時代じゃないんだから、民間の自主流通主体になる考え方に立ては、品質に対する責任も、国が負わなくても民間で負っでいいのではないか、こういう思い切った転換も今考えるときではないか、こう思っております。  今日まで国の検査をしてきた役割はそれなりにあると思いますけれども、今日のように情報が発達して、消費者が賢く自由に選択できる時代になってきたわけですから、生産者は買いたたかれないように自由に販売先を開拓していくとかいろいろやって、この問題に大きく転換を図るべきである、こう思っておりますが、いかがでしょうか。
  144. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 従来の農産物検査につきましては、公正かつ円滑な取引ということから、国による農産物検査が行われたわけでございます。これについては実は、やや長くなりますが、戦前からの検査制度は、かつては産地の自主検査だったのを、消費地側からその点についての、必ずしもそれに対する信頼がなかった。したがって、都道府県営検査の時代もありまして、最後は食管制度等の、戦時中の食管制度によって、やはり検査官の仕事とは、検査ともう一つ、国が買い入れるものですから検収業務と両方兼ねてやってきた、役割を演じたわけでございますが、そういうことで今日の検査制度が、国の検査があるわけでございます。  消費者の側は、特に産地品種銘柄とか品質等について敏感になっておる、またその点についての期待も大きいわけでございますから、果たして民間自主検査によって、その辺の本来の検査に対する要請なり消費者の要請が満たされるかどうかという点については、なお慎重な検討を要するのではあるまいかと現段階では思っております。
  145. 千葉国男

    ○千葉委員 今、歴史的な経過等も踏まえたお話がございましたけれども、私はやはり、品質については民間が責任を持つ、そういう検査体制に思い切って改めるべきである、このようにお願いを申し上げたいと思います。  それで、現在食糧庁が一万一千人ですか、それでそういう食糧事務所の方々が五千人ぐらい、こう言われているわけですけれども、要するに新しい時代に対応した、そういう仕事をまた開発をしていけばいいと思うのですね。もう何かリストラなんだからやめさせる、みんな人生がかかっているわけですから、そういうことはいけないわけですから、例えばこれからのことを考えますと、世界の人口が将来八十億になる、そういうようなことを言われているわけですが、その中で今回のように、日本世界の国々から、日常的にもあるいは大変なときに、いろいろとそういう輸入の問題でお世話になっているわけですから、この世界農業現場がどういう状況なのか、そういう情報システムの整備を急ぐとか、いろいろ国内の中でもそういう新しいものを見つけてそういう転換を図っていかないと、どうしても過去の体制にしがみついてなかなか新しいことができない、それでは前進はできないのじゃないか、こういうふうに思います。  あともう一つ、今一番消費者が求めていらっしゃるのは、やはり食の安全性ということだと思います。今年度の輸入米騒ぎに見られるように、その中でその体制が果たして十分であったのか、こういうふうに考えたときに、十分とは言えない状況ではなかったかと思います。そういう意味で、食糧庁も供給サイドに立つ側として安全性の確保にもっと積極的に取り組むべきである、こう思っておりますが、初めに農水大臣、それから厚生大臣の方からもぜひお願いをしたいと思います。
  146. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 御指摘のような点はまことにしかるべきだと思うわけでございまして、ちなみに、昨年から本年にかけて輸入いたしました緊急輸入につきましては、これは四分の一世紀も主食用の米を輸入したことがなかったものですから、非常にその安全性については我々としても配慮したわけでございまして、まず輸出先国への船積み前に輸出業者としての安全検査をして、こちらへ参りまして農林省が、厚生省の指定検査機関、これに対して検査をし、さらに厚生省が所要に応じてのダブルチェックをするという、トリプルチェックと申しますか三段階のチェックをいたしまして、その安全性についての努力をした。まあ当然のことかと思いますけれども、いたしました。  したがいまして、ミニマムアクセス米等についても、今後その点についての十分な、農林省としても供給者サイド、委員のお言葉をかりれば供給者サイドとしての安全性についての責任を持たなくてはならぬ、さように思っております。
  147. 井出正一

    ○井出国務大臣 お答えいたします。  今回の緊急輸入米に対する安全対策につきましては、今農林大臣御答弁くださいましたが、厚生省といたしましても、農林省と連携をとりながら万全の対策を進めたつもりであります。幸い、どの国からの輸入米につきましても、検査の結果はすべて、基準を上回るものはなかったというわけでございます。  いずれにいたしましても、このたびのWTO協定農業協定締結により、今後、米のミニマムアクセス等、農産物の輸入制限の緩和措置がとられてまいるわけでございます。米などの農産物を含む食品の安全性確保は、国民の健康を守る上で極めて重要であると考えております。  このため、検疫所の食品衛生監視員の増員、これも実はここ六、七年の間に三倍近くの増員を見てはおるのですが、さらに厳しい定員枠の中でふやしていかなくてはならぬとは考えております。及び、高度な検査を実施する検査センターを横浜及び神戸検疫所に設けるなど、従来からも輸入食品の監視体制の充実整備に努めてまいりましたが、国内で流通する米などについても、保健所の食品衛生監視員による収去検査で対応してまいりました。昨年の実績は、特に地方公共団体にも御協力をいただいたわけでございますが、食品衛生監視員数は昨年七千三百六十三名、収去試験検体数は五十五万六千件を数えておるわけでございます。  そんな意味で、今後とも地方自治体とも連携をとりながら、米初め食料品の安全確保に努めてまいりたい、万全を期してまいりたいと考えております。
  148. 千葉国男

    ○千葉委員 今、食の安全性について両大臣からお話をいただきましたが、今後も油断することなく、この安全性についてはしっかりと強化をしていただきたい、こうお願いしたいと思います。  次に、関連対策について御質問させていただきたいと思います。  御承知のように、昨年十二月、細川内閣の時代にぎりぎりの苦渋の選択をした、こういうことでこのガットウルグアイ・ラウンド合意を受け入れたわけでありまして、これは昨日のことのように記憶に新しいところでございます。世界の中の日本として、資源が少ない我が国貿易で今日の発展をから取ってまいりました。そういう意味では、この自由貿易の原則を外すわけにいかない。しかし、これを、合意を受け入れれば、我が国農業、農村に与える影響は深刻だ、こういう中でのぎりぎりの選択であったわけです。  当時、社会党も連立与党の中にありまして、大変な党内論議をお互いにさせていただいたわけでありますが、そのとき、受け入れのときの委員長としての心境、いまだにまだ生々しく残っているかと思いますが、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。
  149. 村山富市

    村山内閣総理大臣 今、委員からお話もございましたが、お話を承りながら当時のことを思い起こしておるわけでありますけれども、これは国会、衆参両院を通じて何度か決議もいたしておりますから、この交渉の中で、一般のものとは違って、農業というのはやはり自然を対象にして生産をするものですから、計画的に確実に物がつくれるというものではございませんので、例外として扱えないものかという意味で私どもは要求をしてまいりましたし、当時の生産農民の強い声もございましたから、何とかそういう方途は講じられぬものかといって努力をしてまいりましたけれども、最終的には関税化がミニマムアクセスに転換をされて、若干この日本の要求については配慮をされたのではないかというようなこともございまするし、同時に、今お話もございましたように、単に農業だけではなくていろいろな問題点、多角的な貿易の自由化ということが我が国にもたらす利益というものも判断をすれば、これだけでもって全部を否定してしまうということはできないのではないか、何よりも国民の期待にこたえる連立政権の役割もある、こういうことから、私どもは最終的に政府の決定したことを受け入れるというので同意をいたしたわけでございます。  それだけに、この受け入れ後の農業に対して、あるいは農村に対して、あるいは食糧問題に対してどういう取り組みをしていくかということは大変大きなやはり責任があるということから、党の本部の中に対策本部もこしらえて、私が委員長として本部長になって、政府と一体となってこれからの農業政策を推し進めて、本当に農村も安定をするし、国民も安心をする、こういう農業をつくっていきたいものだという決意で取り組んでいきたい、こういうふうに考えておりました。
  150. 千葉国男

    ○千葉委員 今総理から、当時を振り返っての、重大な決意をしてこの合意を受け入れたときの心境を聞かせていただきました。そのときに一番の条件は、万全を期す、国内対策を本当にやって、これだけ影響を受ける方々にこたえていくんだ、こういう決意で、今もそういうお話がありました。私たちも、旧連立の時代に緊急農業農村対策プロジェクトチームをつくりまして、数十回にわたって、どうやったら本当にこの対策ができるのか、こういうことをずっと勉強させていただきました。  そして今、政権が交代をして総理がそのまま政府の緊急農業農村対策本部長、こういうことでよろしいわけですね。それで関係大臣の方々が副本部長、本部員、こういうことで認識しておりますが、大変お忙しい総理とは思いますけれども、総理就任以来、この対策本部は一体どのくらい招集されて会議をされたのでしょうか。
  151. 村山富市

    村山内閣総理大臣 これは正確にお答えする必要があるかと思いますから、記録をたどって御報告をしたいと思いますけれども、緊急農業農村対策本部の会合につきましては、一現在の連立政権が発足をしてから四回開いております。いや、四回でなくて三回ですね。第四回目は、これは引き継いておりますから、四回目は八月の二十三日、五回目は十月の四日、六回目は十月の二十五日と、三回にわたって開催してまいりました。  このうち第四回には、八月に取りまとめられました農政審議会報告について、それぞれ報告を受けて審議をする。第五回目には、そうした報告も踏まえながら大綱の骨子について論議を行ってまいりました。関係閣僚に対しましては、それぞれの立場から国内対策に、取りまとめに向けて尽力をしていただくように私の方からも強く要請をして現在に至っておる、こういう経過でございます。
  152. 千葉国男

    ○千葉委員 今、就任後三回開催をしていただいたと聞きまして、それぞれ農政審報告を聞いたり、いろいろやっていただいたと思うのですが、総理に対して率直に申し上げたいことは、政策転換ということもいろいろ言われてきた関係もありまして、自衛隊は合憲だ、こういう打ち出しもありました。君が代・日の丸、いいじゃないか、そういう展開もありました。  そういう展開からいえば、農業に対しても抜本的な新しい指示があったのではないか、こういうふうに期待しているわけなんですが、例えば今回の緊急対策の中では、要するに各省庁の壁を破って、そしてお互いに知恵を出して新しいものを出すんだとか、具体的なそういう中身についてどのような指示を出していただいたのですか。
  153. 村山富市

    村山内閣総理大臣 先ほど来私が申し上げておりますように、農業対策というのは、単に生産農民だけの問題ではなくて、どういう事態になろうとも、国民の暮らしにとって一番大事な食糧ですから、安定的に安全な食糧が供給できるような体制を保障していくという意味では、それは国の大きな責任があるわけでありますから、そういう取り組みをする必要がある。そのためには、単に農林省だけではなくて、関係する各省が力を合わせて総合的な立場からどうやって取り組んでいくかということも検討する必要があるということから、私は閣僚懇談会等でそういうことについても閣僚に要請をいたしておるところでございます。  特に、例えば中山間地域の対策なんかにつきましては、これはもう農業だけではなかなかやはり自立が難しいわけですから、しかし中山間地域が果たしている役割というのは、単に食糧を生産するというだけではなくて、水の問題から環境の問題からいろいろな公益的な役割も果たしているわけですから、そういう村落の町、づくりというものをどう進めていくかというのは、これは単なる農業政策だけの問題ではない。したがって、自治省も含め、関係省庁が力を合わせて総合的な対策を講ずることによって裏づけられていくのではないか、こういう考え方で私は各閣僚にも要請をいたしてきておる経過がございますから、そのことについても御報告を申し上げておきたいと思います。
  154. 千葉国男

    ○千葉委員 今総理の力強い決意を聞かせていただいたのですが、実際そのように言っていただいて、しっかり各省庁が具体的にそういう知恵を出し合って相当頑張ってつくり上げたというのが、残念ながら今、次の質問で私中山間地をお話ししようと思って、総理が先にお話ししてしまったわけなんですが、要するに、そういうことについて本当にやったのか。各省庁全部一緒に勉強させて聞いてみました、現場の事務方の人たちに。だけれども、確かに今総理はそういうふうに全部連携とってやるようにとおっしゃっていますけれども、現場はなかなか縦割りが強くて、本当に知恵を出し合ってこういう、こっちも出して、こっちも出してこうなったという話は、今回各省庁、時間の関係でできるかどうかわかりませんが、全部みんな勉強させていただきましたけれども、本当にその辺のところが、やはりこれだけ大変な思いをして受け入れたんだ、そして対策も万全を期す、こう約束をしたわけですから、そして総理が本部長になって対策本部をつくった、ところがそれでも、総理は一生懸命それは言いましたと言いながら、現実はなかなかそういうふうに体制はまだいっていない、これが率直に私が各省と勉強した結果ですよ。  ですから、やはりそういう問題についてもっときちっとなるようなシステムというものをつくっていかなければならないんじゃないか。こういう話になるとは全然思っていなかったわけなんですが、ぜひそういう新しいシステムをつくっていく中でやっていただく、こういうことをぜひお願いをしたいと思います。  私は、農業の問題、さまざまな問題がたくさんありますけれども、今、日本の食糧をどうするんだ、これはやはりつくる人がいなければできないわけですから、一番大事なのはやはり担い手の育成である。ところが、農村の現場というのは、高齢化社会は大変進んでおりますし、非常に後継者はいない、百軒に一人、こんなのが現実になっているわけです。  農水省としても力を入れて、青年農業者育成確保資金等をつくって農業青年がふえるようにやっている。現在、新規就農は大体五千人ぐらいだ。だけれども、今後の新農政の展開と比べたならば、毎年一万人以上の、二倍、三倍のそういう新規就農者ができるような体制をつくっていかなければいけない。そうすると、そういうふうに新しくやる気になって、じゃ、やってみようかなという人たちに対して、やはりそういうインセンティブを与えるような施策というのはもっとできなくてはいけないと思っているのですが、今の育成金の体制では、全然そういう意味では弱いと思うのですね。  私は、そういう意味でこれは提案なんですが、思い切って農業農業青年育成の育英金制度みた。いなのを設けて、それで、今の育英金制度は、例えば学生時代に奨学金をいただいて、そして社会人になる、ある方は学校の先生になる、そうすると、十五年間学校の現場へ戻ってやった場合はその育英資金は免除される、そういうものがあります。ですから、農業の中で勉強して、そして本当に農業を十五年なら十五年きちっとやったときはその奨学金を免除してあげるとか、そういう形でもっと若い人たちがあるいは新しい人たちができるようなそういう援護体制というのをしくべきではないか、こう思いますが、まず農水大臣からお願いします。
  155. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 お話のとおり、新規就農者の確保は、今回の国内対策においても重点的なものとして、新しい新規就農の資金制度を設けたい、さように考えておるところは先生御案内のとおりでございますが、その場合に、育英資金あるいはその貸し付け免除等の問題につきましては、委員御案内のとおり、特定の産業に従事する者に対する免除とか育英資金とかという点については、国の債権の、貸し付けの管理等からいっていろいろな問題があるように聞いております。したがいまして、これについて実際的にどういう形でその目的を達成する方式があるのかどうかということについては、検討を当然いたさなければならない、さように思っております。
  156. 千葉国男

    ○千葉委員 今大臣からお話がありましたが、私が農水省、大蔵省とこういろいろ聞いてみると、どうしても大蔵省の壁が厚いということだそうです。要するに、学校の先生とかお医者さんというのは公益性が強い、だからそういう免除制も入る、だけれども、産業従事者になるような人にやるというのはおかしいじゃないかということでなかなか壁が厚い、こういうふうに言われているわけですが、今国にとって食糧の安定供給が大事だというのであれば、それはお医者さん、学校の先生も大事ですけれども、一番大事な、食べて初めて学ぶのだし、食べて初めて病気になるのですから、それのもとをつくっているのですから、その人たち、その人を大事にしなかったらばどうにもならないのじゃないか、こう思いますが、大蔵大臣、いかがでしょう。
  157. 武村正義

    ○武村国務大臣 何かと財政的に難しいときは大蔵大臣が、大蔵省が悪者になってしまいがちでありますが、これも、お話を伺っていると、その一つなのかもしれません。でも、いろいろ議論を事務当局もいたしておりまして、農林省と真剣に協議中でございます。  一つは、例えば看護婦さんとか学校の先生、就労をされるときには国家試験というものを終えてそういう職につかれるという、こういう形は確かに特別な扱いになっているようです。じゃ、農業はどうか、私的な営利活動じゃないか。大変大事な、今一番、国を挙げて新しい担い手を激励していこうというときでありますから、本当は学校の先生や看護婦さんの方が希望が多いのじゃないか、こっちは希望が少ないからこちらの方にむしろ力点を置いた方がいいという主張もあるかもしれません。しかし、やはり農業は新しい経営の中で、一種の自由な経済活動の中で頑張っていただくということになりますと、教員や看護婦の場合ともやはり違うということから、今日までの常識で考えると、それはまあ無利子貸し付けが精いっぱいですね、こういう議論が事務当局間で交わされているところであります。  大蔵省は何でも金がないからだめと一方的に言っているわけじゃなしに、従来の法律体系とかいろいろな横並びの関係でそういう議論が進んでいるという状況であります。
  158. 千葉国男

    ○千葉委員 ぜひ、さらに弾力的な運用ができるようにお願いをしたいと思います。  中山間地対策についてお願いしたいと思います。  私は、この夏、衆議院の欧米各国農業調査団の一員として、フランスの山岳農業を視察をさせていただきました。そこで実際にグリーン・ツーリズムの先端として民宿経営をしている方々にもお会いしてきたわけなんですが、大変印象に残ったことは、このフランスのグリーン・ツーリズムは、一九七〇年代から二十年がかりで今のような民宿経営ができるようになって、それで一年間で大体二百人ぐらいのお客さんが来て、ちょっと空を見上げれば山脈があって、それで馬に乗り、そして絵をかき、プールがある。もう本当に、何というか、ああいうところだったら本当に行ってみたいなという、そういう経営が行われているわけなんです。  そういうときに、今回のこの中山間対策で農水省から出てきたのは、都市交流の拠点を整備するということで、まあ東京、大阪とかの中心にふるさとプラザをつくって、そして地域産品とかそういう情報活動をしよう、こういうことなんですが、それはそれでいいと思いますが、せっかく田舎へ行こう、そういうところへ行こうと思って行ったら、ふるさとが何にも新しくなっていない、何だということになってくるんじゃないか。そういう意味で、やはり日本版のグリーン・ツーリズムをつくるために本格的に農水省としても頑張らなければいけないんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  159. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 お答えいたします。  お話しのとおりでございまして、グリーン・ツーリズムにつきましては、やはり長期滞在型の余暇活動と申しますか、そのためには、やはりそれに関係する指導の人材も必要でございますし、受け入れの施設等についてもその整備をしなくてはならない。いろいろ、今もフランスの例のお話ございましたけれども、交流施設も必要だし、あるいは体験農場等も必要だというようなことで、やはり整備が必要でございます。  これについては、農業構造改善事業等でもその事業の選択種目の一つとしてこれらを大幅に今後取り上げたいというふうに考えておりまして、受け入れ施設の整備と人材の養成、あるいはやはり生活環境の整備という点も、今の御指摘もございましたが、整えていかなければ相ならぬということで、町の、都市の方々の余暇活動とそれに伴う地域の農家の皆さんの収入機会の増大という点で、大きな意味を持っておるものとして進めていきたいというふうに思っております。
  160. 千葉国男

    ○千葉委員 これからの中山間地対策というのは、いわゆる農業として生産政策としてやっていくというよりは、やはり農林業の体制ももちろんあるんですけれども、もっと地域政策として、村をどうしていくのかとか集落をどう大切にするんだ、こういう感覚で考えていくべきではないか、こう思っております。  そういう意味で、例えば今各地に芸術村ができたり、文化村、スポーツ村等ができておりますけれども、国土庁の考え方として、かなり最近そういうものを積極的に取り上げられている、こういうふうに聞いておりますが、いかがでしょうか。
  161. 小澤潔

    ○小澤国務大臣 お答えをさせていただきます。  もう千葉先生御指摘のとおりでございます。各省庁と相提携しながら鋭意検討をしてまいる決意であります。  実は、千葉先生、私は戦後農業でして、今でもやっておりますが、もうとにかく百姓のつらいことは人一倍よく存じております。そんな関係で、地方議会から、そして法の改正のできるのは国政である、農民の味方としても国へ行ってひとつぜひ農民の汗を知ってもらいたい、こういったことで国政に農民代表として参画をさせていただいたわけです。もうおやじさんが、かつての悪代官から、百姓は生かさず殺さずである、こういったことをよく言い聞かされておりますので、身にしみております。  現在でも田畑をやっておりますが、特に、私は東京ですが、中山間地域、奥多摩町とかそしてまた檜原へ行きますと、もうこんな山なんです。そこで農作業をやっておる。また、実際に中山間地域にも私も視察に行っております。もう十分意向を聞いておりますので、先生御指摘のように、ひとつ私も万全を期して、国土庁としても前向きの姿勢で、先生のそのお気持ちを体して一生懸命頑張ってまいり、もう本当に味方としてやってまいりたいと思っておりますので、よろしくお願いをいたします。  せっかくの機会ですから、ちょっと具体的に……(千葉委員「いや、もう時間ないですから、また、気持ちだけで」と呼ぶ)そうですか。じゃ、もうそれで十分わかったと思います。
  162. 千葉国男

    ○千葉委員 長官から、本当に真心こもる力強いお話をいただいて、ありがとうございます。  まあ、そうした芸術、文化、スポーツ等の地域振興を図るためにも、各地における事業対策というのが非常に大事になってくるわけですが、今回、農林省関連対策予算として六兆百億、地方単独施策ということで農山村対策のために今後六年間で一兆二千億の措置をしていただいたわけですが、自治大臣、この内容についてちょっと御説明をしていただきたいと思います。
  163. 野中広務

    ○野中国務大臣 先ほど村山総理からも御答弁ございましたように、今回のガットウルグアイ・ラウンド農業合意に基づきまして、総理から、国の施策とあわせまして、地方においてもこの深刻な状況を何とかお手伝いをする方法がないかということで、私ども自治省といたしましても、地方単独施策を拡充をすることによって今在の農村農業経営の少しでも一助になりたい、このようにして今回お願いをしたところでございます。  その一つは、農山漁村ふるさと事業でございまして、これを創設することにお願いをしておるわけでございます。  これは、今申し上げましたように、今回の農業合意に伴いまして著しい影響を受け、また人口が委員御指摘のように減少をし、高齢化が進み、そして後継者が少ない、そういう農山村地域の活性化を図るために、農業あるいは林業等の施策を初め、自主的そしてかつ主体的な地域づくりを推進をするソフト事業として、今回地方交付税で措置しようとするところでございます。  いま一つは、従来からやってまいりました農山漁村対策を拡充をいたしまして、農業集落排水緊急整備事業を推進しますとか、あるいは農道の整備等を推進をしようとすることであります。  第三は、ことしの異常渇水等に見られますように、森林の保全がいかに大切であるかを私どもは大きな教訓としたところでございますが、そういう山村対策を拡充をいたしまして、特に森林を保全する。そういう保全する上で、市町村等が公有化する方法を考えたり、あるいは林道の整備等を推進をしようとするわけでございます。  これらの対策に基づきます措置は、平成七年度から平成十二年度までの六年間におきまして、地方財政計画に基づきまして実施をする地方単独事業でございまして、このソフト、ハード両面にわたります事業を約一兆二千億で行ってまいりたいと思うわけでございます。具体的な内容につきましては、年末の地方財政計画で入れてまいりたいと存じております。
  164. 千葉国男

    ○千葉委員 時間がなくなってまいりましたので、お願いにとどめたいと思いますが、今回のこのふるさと事業と、昭和六十三年から始められているふるさと創生一億円事業、まあ今までも続けられているということですけれども、その内容を考えたときに、前の事業と今回の事業について、性格づけをどうするんだとか、あるいはまたどういう関係になっているのか、そういうことについても具体的に御指示を願って、有効にこれが発展につながるように使っていただくようにお願いをしたいと思います。  通産大臣にお願いしたいと思います。  多様な就業機会を確保するということで、農山村へ工業等の導入を促進する、こういうふうに述べられているんですが、簡単にお願いを申し上げます。
  165. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 通産省といたしましては、従来から例えば低利融資制度や税制上の優遇措置などによりまして、工業などが農村地域に導入されやすい条件づくりを努めてまいりました。そして、これによる雇用機会の確保、あるいはこれらの地域における情報化に資する措置などを講じてまいりました。先般取りまとめられましたウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策大綱を踏まえながら、こうした方向にさらに努力してまいりたい、そのように考えております。
  166. 千葉国男

    ○千葉委員 農村の生活環境整備、これは非常に大事になっております。財政審におきましても、農業集落排水はAランクだ、こう位置づけられているわけなんですが、特に農村の下水道につきまして、建設省、農水省、厚生省、それぞれありまして、建設省は公共下水道である、農水省は農業集落排水だ、厚生省は合併処理場だ、こういうことでいろいろ各省力を入れていただいていることはありがたいことなんですが、結果的に事業地区が入り組んで、地域によっては下水管と汚水管がばらばらになる、そういうことで摩擦が起きている、こういうふうなことが地元から寄せられております。今後、一生懸命やっていただくことが大事なわけなんですけれども、そういう建設上の調整をやはりしっかりやっていただくことが大事なんじゃないか、こう思っておりますが、建設大臣、お願い申し上げます。
  167. 野坂浩賢

    ○野坂国務大臣 千葉先生にお答えをしますが、先ほど地域ではそれぞればらばらの動きをしておるんではないかという御指摘がありまして、総理が各関係省庁は連携をとって効率と経済性を持って進めておるということでございました。  その方針に基づきまして、今先生から御指摘のありました農林水産省の場合は集落排水、私の方は公共下水道、合併排水事業は厚生省、こういうことになっておりますので、それぞればらばらにならないように、各都道府県下の市町村の地形あるいは人口の集積状況その他の、地域にふさわしい汚水の処理ということを十分検討いたしまして、効率と経済性を考え、特に各地方自治体、県庁に向かって、この点については重複しないように十分対応してほしいということを三省とも申し合わせて作業を進めておりますので、御了承いただきたいと思います。
  168. 千葉国男

    ○千葉委員 ぜひ三省の協力体制を強化していただきまして、この対策が十分進むようにお願いしたいと思います。  建設省の対策の中で、安全で快適な生活環境の整備というところで、自然災害対策についての推進をする、こういうことが言われているわけなんですが、たまたま私宮城県ですが、この九月二十二日集中豪雨がありまして、また被害が出たわけでございます。台風二十四号、二十六号相前後しまして、三百億ぐらいの被害になっておるわけですが、そのたびごとに私たち地元の議員は現場に駆けつけて、視察をしたり、皆さんに元気出してくださいといろいろやっているわけなんですが、ずっとこう見できますと、いつも水が出る地域は同じである、いつもやられるところは同じだ。それで、我々行くと、何度言ったら直るんだといつも怒られるわけです。  ですから、そういう意味で、水害とか何かについての水害マップ等については、ちゃんと、県に行ってあるんだろうと言うと、あると言うんですよ。ところが、みんなに知っているのかと言うと、余り知らないと。ですから、そういう水害マップ等を公開すべきではないか。あるいは、ここはいつも水上がりますよというところについてはもうわかっているわけですから、もう少しスピードアップして対策を、いろいろなところを平等にやるのも大事なんですけれども、いつもやられるところを少し早目にやっていただくということを対策をしていただきたいな、このように思いますが、いかがでしょうか。
  169. 野坂浩賢

    ○野坂国務大臣 お答えをいたします。  先生御指摘のとおりでございまして、そういうところが約三千二百町村ございますが、そのうち約八割は十年に一度はそういうことに見舞われております。しかし、先生の御指摘のように、例えば御出身地の名取ですね、名取というようなところはよく始終浸水するということがありましたので、御質問があろうと思いまして、こういうのをつくってみました。全部こういうことにいたしておりまして、この浸水は完全にそういうことのないように対応する、そして、それ以上に厳しいときには、どこに避難したら一番安全であるということを全国のそういうところについては指示をいたしまして、各公民館長のところまでは徹底をしておるつもりでございますので、よろしく御了承いただきたいと思います。
  170. 千葉国男

    ○千葉委員 今後ろから何か、話し合いがついた上でやっているんじゃないかみたいな話がありましたが、決してそういうことはありませんので、私たちとしては、きちっとやっていただきたい、こういうことをお願いしているわけでございます。  それから、厚生大臣にお願いしたいんですが、中山間地、僻地における医療の充実ということが非常に叫ばれておりまして、厚生省としても一生懸命頑張って、いろいろなローテーションを組んでいるということですが、結果的にお医者さんが足りないために計画倒れになっている、こういうことが現場で指摘されております。  また、ゴールドプランがあるわけなんですが、そのゴールドプランの推進についても、特に田舎の場合、高齢化が進んでおりまして、最近では特別養護老人ホームというのがどうしても福祉の施策の核になっておりまして、一つの養護老人ホームができると、今まで地域から離れていた人が地元へ帰る。そうすると、もう既に三十人ぐらいが空席待ちである、こういう感じで、本当にこの特別養護老人ホームが待たれているわけなんですが、何か今回ちょっといろいろ話を聞いていますと、最初の予算が一万床の予算だったけれども、実際は地域が、町村が、それ来たということで、ありがたいというのでどんどん計画を進めて、その要望が出てきたら二万床になった。それで、現実にはなかなかできにくい。こういうことで、何か特別聞いた話なんですが、真空切りというのがあるんだそうですが、何か昔の赤胴鈴之助を思い出すような話ですが、二割、八割の問題についてのことを明確に担保としてお話をしていただきたいと思います。
  171. 井出正一

    ○井出国務大臣 お答えいたします。  まず最初、僻地における医療の確保の件の御質問でございますが、平成三年から七年度まで実は第七次へき地保健医療計画が今進められておりまして、この計画に基づき、僻地中核病院の整備、僻地診療所の整備、医師のローテーションシステム等による僻地勤務医師等の確保など、各種の施策を行っておるところでございます。  確かに、医師不足はまだ解消されておらないこと、先生の御指摘のとおりでありますが、今後とも僻地医療対策に必要な施策については予算執行上も最優先で採択するなど、特段の配慮に努めていきたい、こう考えております。  また、この七次へき地保健医療計画は平成七年度で終了するわけでございますから、実は今年度、農山村地域を含む全国の無医地区等の実態調査を今しております。この調査結果とともに二十一世紀に向けた総合的な僻地保健医療対策について現在検討委員会において検討を行っていただいており、その結論を踏まえて僻地医療対策のより一層の充実に努めてまいりたい、こんなふうに考えておるところでございます。  二番目の御質問でございますが、確かに農山村地域におきましては高齢化、過疎化が進んでいるところが多く、高齢者に対する保健福祉サービスの提供体制の整備が急務となっております。  厚生省といたしましては、これらの地域におきましても整備が円滑に進むよう、例えばゴールドプランに基づいて、特別養護老人ホームは一般的には定員五十人以上という規模を設定しておるのでございますが、過疎でもございますし、小規模町村でもございますから、定員を三十人以上でも結構だというような点、あるいは小規模デイサービスセンターなども、一般的には一日当たりの利用人員を十五人程度と決めておるのでございますが、これも八人程度で結構だと、こんなように柔軟に対処することによって、できるだけこういったものが受け入れやすいような方策を考えておりますし、また過疎地域等におきましては、生活不安のある方に対する住居や地域住民との交流の場とともに、給食とか入浴とかあるいは生活指導等のデイサービスを一体として提供する高齢者生活福祉センターの整備を促進しているところでございます。  これも年々進んでまいりまして、昨年度は高齢者生活福祉センターは百三十二カ所、三十人以上の小規模特別養護老人ホームは百五カ所、八人でもいいという小規模デイサービスセンターは百三十四カ所、ことしから創設をいたしました小規模ケアハウス、これは通常三十人なんですが、十五人でもいい、特別養護老人ホーム等に併設するものでございますが、これが十カ所、今実績としてございます。  今後とも、地域の実情に応じた取り組みが進むよう、ゴールドプランの推進に当たってできるだけの配慮を行ってまいりたいと考えておるところであります。  最後の真空切りでございますか、今年度二割しか補助金がつかないで、みんな来年度回し八割じゃないか、来年度は大丈夫だろうな、こういう御質問でございますが、ほかの委員会でも同様の御質問をちょうだいしました。  そこでもお答えしたのでございますが、本年度の特養の整備につきましては、都道府県から厚生省に対する国庫補助の協議額が予想額を大幅に上回ったことは事実でございます。これは、老人保健福祉計画を策定していただいて、これに基づく需要が本年度顕在化したことと、さらに景気対策もこれありまして、五年度の再三にわたる補正予算で緊急に行うこととした特別養護老人ホームの整備の継続分の経費の確保が必要になったということによるものでございます。  そこで、今年度の採択に当たりましては、なかなか苦慮したのでございますが、協議のあった事業が各自治体が策定した計画に基づくものでございましたから、すべての事業を採択することとし、新規の特別養護老人ホームにつきましては、したがいまして大変数があったもので二〇%、八〇%は翌年度送りという二カ年継続事業として採択したものでございます。  したがいまして、平成七年度におきましては、この六年度からの継続事業分については優先的に補助採択を行うこととしたいと思っております。七年度においてすべて措置するのかという御質問だと思いますが、まだ予算編成はこれからでございますから、当然に優先的に補助採択を行うことというお答えにさせていただきたいと思います。
  172. 千葉国男

    ○千葉委員 文部大臣にお伺いしたいと思います。  農業、農村にかかわる文部省の主な施策として、農業従事者等の人材の育成が非常に大事だ、こういうことで、小中の学校教育を通じて、農業に魅力を感じ意欲と能力を有する人材を育てていこう、こういうことをやっているのですが、これまで行われてきた子供さんたちのふるさと交流等を見ますと、どうも「帯に短し、たすきに長し」みたいで余りに短い、あるいは里子方式になると今度は二年も三年もかかって、今度は家族の負担が大変だ、こういうことがあるわけですが、そういう中で、各県に一ないし二校学習研究推進校を決めてやる、こういうようなものも考えているようなので、そういうところではカリキュラムの中に、一年間の中で二週間なり三週間なりをきちっと時間をとって、このふるさと交流ができるようなそういう教育方針をとってはどうか、こう思っておりますが、まずよろしくお願いします。
  173. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 今回の全般的な農業に対する対策の中で文部省の担当しておりますのは人材育成という面でございますが、先生の御質問の御趣旨は、農業の重要性について学校教育でどのように教えているのか、こういうことであろうと思いますが、学校教育においては、農業我が国の重要な産業であるとの認識のもとに、小中高等学校を通じて社会科を中心に、農業に対する関心と理解を得させるよう指導することといたしております。  例えば、小学校第五学年では、我が国農業の特色や国民の食糧確保の上で農産物の生産が大切であることを理解させるようにすることとしております。また、中学校の地理的分野においては、産業地域についての学習の中において、地域の地理的諸条件と関連づけて農業の様子などについて理解させることといたしております。また、学校行事やいわゆるゆとりの時間の活動において、子供たちが勤労のとうとさや働くことの喜びなどを知ることができるよう、農産物の栽培など勤労体験学習を推進をしております。  今後とも、農業我が国の重要な産業として国民生活に果たす役割について適切な教育が行われるよう努めてまいりたい、そのように考えております。
  174. 千葉国男

    ○千葉委員 郵政大臣、お願いしたいと思います。  情報通信による中山間地域の振興促進、こういうことを考えていただいているわけですが、具体的に全言えることをお願いをしたいと思います。
  175. 大出俊

    大出国務大臣 具体的にと今御質問でございまして……(千葉委員「短く」と呼ぶ)時間がかからぬように申し上げたいと思いますが、これから急速に光ファイバー網が計画に基づいて伸びていく形になりますし、衛星通信網も同様でございますし、また、最近は急速なCATV、有線テレビの申請が出てきています。  既に大分県などでは、来年から段階的に始めるのですが、さっきお話しの、これは五年かかっておりましてすぐにはできませんけれども、医療過疎という地域、専門のお医者さんが少ないわけでありますから、そういうところで写真を撮ったものを伝送するシステムをつくりまして、遠隔医療診断、来年から始めるんですよ。県の医師会長さんとも県知事さんとも議会の皆さんともこの間お話もしておりますけれども、これが成功いたしますと、いろいろな活用が、さっきのお話にも関連しますが、できます。ぜひひとつ頑張りたいと思っております。  また、今学校のお話もございましたし、就職のお話もございますが、山形県の朝日町は来年からテレワークセンターというのをつくりまして、就職機会の均等、田舎、遠隔の地におられても、ここにこういう仕事がある、雪が降りますから、したがってこういう形でやってもらうということで、行政の側は懸命に進めて、来年から着手する。  さらに、具体的に宮城県でいいますというと、鳴子町に移動通信用の鉄塔施設の整備事業というのがございまして、これは一億四千二百三十六万ぐらい規模としてはかかるのでありますけれども、郵政省が三分の一補助をいたしまして、つまり四千七百四十五万三千円補助をいたしまして、四千七百万を超えるのでありますが、これをやりますと、移動通信用鉄塔でございますから、今急速にふえている携帯電話、これが相当な規模で使えるようになってまいりまして、そういう意味では活性化の一助になるだろう。  また、気仙沼市で民放テレビの難視聴解消という意味での事業がございまして、五千百七十万かかっておりますが、このうちの千二百九十万を郵政が支出をいたしまして、この種のことが方々にございますけれども、地域の活性化を中山間地域を含めまして一生懸命進めてまいりたい、こう思っております。  簡単でございますが……。
  176. 千葉国男

    ○千葉委員 今各省庁に対しまして、それぞれ中山間地対策に対して誠意を持ってこたえていただきたい、こういうことを具体的にお願いを申し上げた次第でございます。  今回のガット・ウルグアイ合意を受けて、本当に国として、総理として万全を期す、こういうことで本当に苦渋の選択をしてスタートしていただいたわけですので、どうかそれにこたえる、やはり政治の信頼は真心でこたえていく、こういう政治の姿勢をぜひしっかりやっていただきたい、お願いを申し上げまして、終わりにさせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  177. 佐藤孝行

    佐藤委員長 この際、松田岩夫君から関連質疑の申し出があります。田名部匡省君の持ち時間の範囲内でこれを許します。松田岩夫君。
  178. 松田岩夫

    ○松田委員 改革の皆さんの御了解を得まして、松田岩夫でございますが、御質問を継続させていただきます。  ガットは、言うまでもありませんが、一九二九年の大恐慌、その後を受けて一九三〇年代、世界各国が報復関税の引き上げ戦争を始め、世界貿易が大幅に縮小し、世界経済が大幅に停滞した。そういう中であの戦火を迎え、そして戦後、まさに人類の英知として戦後の経済をどう立て直すか、そういう中から生まれたのが皆さん御案内のとおりこのガットと、そして国際通貨基金と世界銀行、こういうわけであります。  そして、以来八回交渉が続けられてまいりました。最初の五回は、まさに関税引き下げのみでございました。六回目からは名前がつきまして、ケネディ・ラウンド。六回目は、まさに大幅な関税引き下げ交渉でございました。そして七回目、名誉にも東京ラウンドという名前をいただいておるわけでありますが、この関税以外に、物の貿易分野ではありますが、しかし、非関税障壁というものを対象にして再び大がかりな交渉が行われた。  そして、今回ウルグアイ・ラウンド。今度は、まさに物の貿易ばかりではない、新しい分野としてサービスや知的所有権といった範囲も含められ、そしてまた、いろいろ各国によって違っていた貿易上のいろいろなルール、それを少しでも整合化しようという努力がなされ、そしてまた、お互いに紛争が起こったときの紛争解決の手続をしっかりさせようということで、まさに八六年九月から七年間かかって、しかも、今回は世界の百二十五の国と地域が参加をした。  ちょっと調べてみますと、さっき言ったケネディ・ラウンドではたかだか四十六カ国、もちろん国がその後ふえましたことも大きいわけでありますが、そして東京ラウンドでは九十九カ国、今度はほぼ主要な国が全部参加するという形で営々七年、世界の国々がそれぞれ痛みを伴う、もちろんです、交渉事でありますから、いいところもあれば悪いところもある、だからこそ交渉が成り立つ。そういう中でこの交渉がようやく妥結を見て、今ここにあるわけでございます。  こんなことを思いますと、私はこれまで、今閣僚をやっておられる皆さんもそうでありますが、これまで七年間、閣僚としてこの問題に営々携わってこられた皆さん、きょうは関係各省の皆さんも大勢おられますが、全省挙げて七年間、いや日本ばかりじゃありません、まさに世界じゅうの百二十五カ国ないし地域のすべての方々が関係してこれを築き上げてきたわけであります。  私は正直、そんなことを思いますと、まさに人類の英知といいますか、知恵といいますか、こういう努力が積み重なればこそ今日の平和があり、その平和のもとでまさに落ちついた経済活動がなされ得る環境ができてきておるのだなと、しみじみそんなことを思わさせていただくにつけても、現在閣僚である皆さん方の御労苦に心から敬意を表するわけであります。  さて、ちょっと前置きが長くなりましたが、そうした感懐を踏まえながら、どうですか、総理。今回のこのウルグアイ・ラウンド、私は、それなりに範囲も広くなった、奥行きも深くなった、実によくやってくれた、私は正直それが素直な印象であり、本当によくぞ人類挙げて偉大な成果を生んでくれたな、心からそう思う一人であります。  総理、まずこのウルグアイ・ラウンドについての総括的な評価、総理のも言葉でお聞きしたいと思います。     〔委員長退席、中川(昭)委員長代理着席〕
  179. 村山富市

    村山内閣総理大臣 今松田議員から感慨を込めたお話がございましたが、ウルグアイ・ラウンド交渉は、単に工業用製品だけの関税引き下げではなくて、農業分野を初め、新たな分野である知的所有権や金融、運輸などのサービス貿易分野を含み、最終的には百二十五の国や地域が参加をして、今お話もございましたように一九八六年九月から約七年以上もかけてようやくこの包括的な話し合いが成立をした、ある意味では歴史的な一大交渉であったというように私は考えています。  このような交渉の決着は、多角的自由貿易体制の維持強化、国際経済秩序に対する信頼の確保、こういった観点から極めて重要なことでございまして、貿易立国である我が国にとりましても、全体として極めて意義の深いものであったという認識を持っております。
  180. 松田岩夫

    ○松田委員 自民党は、この間いろいろな意見がありました。私は、過去のことは問いません。党総裁として現在外務大臣、外務大臣の見解はいかがでありますか、きょう現在で結構でございます。
  181. 河野洋平

    ○河野国務大臣 私の記憶が正しければ、たしか倉成外務大臣当時からであったかと思いますが、まさに議員お尋ねのように、営々としてこの交渉に携わってこられた幾多の先輩の気持ちを我々は忘れてはならないと思います。ウルグアイ・ラウンドという名前もたしか倉成大臣の命名であったという話もたしか聞いたことがございますが、恐らくスタートの時点ではこれほど包括的な、そして、しかも百二十を超える国と地域が参加をした、言ってみれば、国連に次ぐ国際社会の最も多くの国々を含む協議が成立をした。そして、あとそれぞれの国に持ち帰ってそれぞれの国の国会における批准承認を待つという今の段階でございますから、私ども、先輩の御苦心、御苦労というものを肝に銘じてこの審議に臨まなくてはならない。  ともすれば、もちろん我が国にとって農業問題という極めて厳しい状況もございますけれども、しかし、トータルに考えれば、これは我が国の将来にとって極めて画期的なものであるはずでございますし、それはまさに我が国だけではない、国際社会にとって、世界貿易をさらに一段と発展させるためにも越えなければならない大きな場面に我々はいるというふうに考えているわけでございます。
  182. 松田岩夫

    ○松田委員 余分なことかもしれませんが、ついでにもう一言。  こうしたことが可能であったのはなぜだろうか。これまでのガット交渉を振り返ってみますと、やはり私は、アメリカという国が自由貿易を大事だと考え、それなりに力強くリーダーシップをとってきてくれたからではないかなと思うのです。今そのアメリカがいろいろな意味で悩んでおります。  総理、今こそ我が日本アメリカとともに、いや、アメリカよりももっと、自由な開かれた世界があることによって最も大きな利益を受けている我が国が、今こそ力強いリーダーシップを持って、このでき上がったウルグアイ・ラウンドWTO協定はもちろんのこと、これからさらに未来に向かって一層強いリーダーシップを発揮していくべきときに我が国はあり、そのリーダーの先頭は、あなた、総理大臣ですよ。そういうお気持ちでこれから頑張っていただきたいということをあらかじめ申し上げまして、具体的な点について御質問を進めてまいりたいと存じます。  まず最初に三つほど、今度のウルグアイ・ラウンド成果について具体的にお聞きしていきたいと思います。  一つは、言うまでもありません、このガット・ウルグアイの交渉において大変頑張っていただいた紛争処理手続の抜本的な改正、新しい制度の確立に関してであります。  一方的な制度として最も有名なのは、言うまでもありません、我が友邦アメリカ合衆国が持っておる例の通商法三〇一条であります。さらにそれに輪をかけたのが、スーパー三〇一条であるわけであります。これは、皆さん御存じのように、勝手にアメリカが自分の判断で、これは不当な貿易制限だと言って決める、そして調べる、そして、おい、それ直せと言う、直さなかったらまた一方的に対抗措置を講じてくる、こういう仕組みなわけでございます。ある意味で言えば、検察官と裁判官とを両方兼ねている、全く二重に一方的な制度であるわけであります。  この制度、あの半導体で我々してやられたわけで、よく覚えております。どうでしょう、これ。通産大臣、今後はこれはどうなるのですか。こんなことはもう起こりませんか。
  183. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 委員はむしろ専門家でおられますので、この紙に基づいた答え方を申し上げますよりも、先日ジャカルタでカンター通商代表と私自身が議論したそのままを申し上げたいと存じます。  私は、もともとこの三〇一条という法律を、アメリカの国内法でありますけれども、我々としては認める意思はないということを本年九月三十日から十月一日の朝にかけての議論の際にも繰り返し主張し、同時に、この三〇一条あるいはスーパー三〇一条をアメリカ発動すれば、その後の交渉は我々としては対応は難しくなりますよということを繰り返して申し上げました。しかし、自動車の補修部品についてアメリカは三〇一条を発動いたしました。  今回、そのもとで議論の継続を求められましたので、私は、三〇一条のもとで交渉する意思はない、ただ、政府の関与という範囲において包括協議の対象ではある、それは認めるけれども、三〇一条を前提とする限り、私はその議論に応ずる意思はないと改めて申してまいりました。  同時に、ウルグアイ・ラウンド実施法案関連し、アメリカの国内法において、精神において反するものありということも、是正を求めると同時に申しましたが、彼らとしては国内法優先という原則を変えておりません。  ですから、その意味では、理論的には、私は、WTOがスタートをいたしました場合、この協定の対象事項について紛争が生じました場合には、この世界貿易機関の紛争処理解決手続を経ることなく一方的措置をとることは禁止されているということから、抑制されると信じております。しかし、万一制裁的なルールが一方的に発動されました場合には、我々は国際的なルールにのっとって解決を求めるという点については変わりません。
  184. 松田岩夫

    ○松田委員 今大臣おっしゃったとおり、私も、この通商法三〇一条というのは、いかにもアメリカ的といえばアメリカ的ですが、失礼千万な制度だ。まあ、それはもちろん向こうの国がやっていることですから、そう言うのは内政干渉かとも思いますが、しかし、今度のウルグアイ・ラウンド交渉経緯等を踏まえてみますと、私は、少なくともこの三〇一条というものは明らかに不愉快な制度である。まあ、このWTO協定そのものに抵触するから違反だとは申しませんが、一方的に措置をとれば別ですよ。その規定そのものが違法だとは申しませんが、しかし、どうですか、外務大臣、これ。  まさに日米というのは本当に大事な間柄で、世界の自由な貿易をお互い一緒になってつくっていかなければならぬ間柄です。だったら、こういう規定を置いておくことはやめろと言ってあげるのが筋だ。今、交渉のたびに、いやこれは、三〇一条でおまえは言ってきているつもりかもしらぬが、うちはそんなつもりで交渉をやっているわけではありませんよというようなことをわざわざ言いながら交渉せざるを得ないという、こんな姿というのはおかしい、明らかに向こうがおかしいと私は思うわけでございます。  そういう意味で、どうですか、外務大臣、積極的にひとつ、こういうものは廃止するように大統領に、まあ向こうは議会と行政府というのはまた日本と制度が違いましてなかなか難しいわけですが、それでも力強く大統領に働きかけていただきたい、アメリカ政府に働きかけていただきたいと私は思うのですが、どんなお感じですか、外務大臣。
  185. 河野洋平

    ○河野国務大臣 議員御指摘のとおり、日本アメリカとは、それぞれ国内におきます議会と政府との関係はいささか違っております。一方、アメリカ経済が一時低迷をしておりましたし、それから、貿易のインバランスということで、議会は大変強く政府にこのインバランスの解消について迫った部分もございます。また、その他、貿易面で議会が非常に強いイニシアチブをとっていろいろと提案を繰り返すというようなことがあって、政府としては一時随分とそれについて国際的な環境の中で慎重な立場をとられたという場面があったというふうに私は思っておりますが、しかし、現在は議員がおっしゃるような状況になっております。  これについて、我が方は、少なくともWTOをこれからスタートをさせようというこの場面で、私どもは、その精神において、議員がおっしゃるように、そのことが、そういう国内法があることそれ自体をとやかく言うつもりはないけれども、その精神において、WTOをこれからスタートをさせようというときには、いささか考え方が違うのではないかという気持ちを私どもは持っております。  ただ、アメリカアメリカの国内法の問題でございますから、我々が国内法にまで踏み込んでとやかく言うということが果たして適当かどうかという問題もございますが、私ども、アメリカとは常に接触をして議論をすることが多いわけでございまして、こういう問題は国際的に見てアメリカがやるべきものではないのではないかという我々の気持ちは伝えたことも過去にございました。
  186. 松田岩夫

    ○松田委員 アメリカという国は、いろいろ特色がありますから簡単ではないと思いますけれども、しかし、最近思えば、数値目標を求めてみたり、あるいは減税規模を言ってみたり、減税の実施時期まで言ってみたり、ある意味で言えば、常識的に考えれば、おい、そんなことは我々に任せてくれよというようなことをしょっちゅうおっしゃってこられる間柄なわけでございます。ですから、そういう意味では御遠慮は要らないのではないか。堂々とひとつ強く廃止を求めて訴えていただきたい。  そのことはその程度にいたしますが、次にダンピングの問題。これも、正直、我が国アメリカやヨーロッパからアンチダンピング法の乱用で悩まされ続けてきた国でございます。今回の交渉においても、ぜひこのアンチダンピングの仕組みをしっかり合理的なものにしようということで大変御努力がなされました。そのことには心から敬意を表するわけでありますが、これまで例えば十年間、外務省からいただいた資料ですと、例えばアメリカ発動した件数五十七件、調査開始で五十七件、ダンピング税賦課件数で四十四件。これは明らかに私は乱用だと思う。  そういう意味で、今度のこの交渉結果から見て、このダンピングの点でも、こうした乱用と思われるような使い方、それによって大変な迷惑を日本産業は受けてきたわけですが、多少は改善されたと言っていいのか、どんな点が改善されたのか、国民の皆さんの前で明確にしておいていただきたい。どちらの大臣がよろしいか。通産大臣ですか。
  187. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員が述べられました数字と私の手元にある数字が多少異なっております。というのは、アメリカ及びEUが過去十年間に発動いたしました……(松田委員「これは、今のはアメリカだけですから」と呼ぶ)アメリカだけですか。アメリカの場合にもそうでありますが、アメリカにつきましては、昭和五十八年から平成四年までの十年間に約二百件、またEUにつきましては同じ期間内で約九十件のダンピング防止税を課しておると聞いております。  今回のダンピング防止協定は、ダンピングの防止措置を適用いたします際の要件及び手続を、現行のものに比べまして一層精緻なものにいたしております。その結果、ダンピング防止措置を適用するに当たって、透明性及び予見可能性は確実に向上すると思われます。  これは、具体的な改善点として申し上げることでありますけれども、例えば、ダンピング防止のための調査はいかなる場合でもその開始後「十八箇月を超えてはならない。」あるいは「暫定措置は、調査の開始の日から六十日が経過するまでは、とってはならない。」といったことで、従来時々ありました、期間を超えていつまでも引っ張られるとか、いきなり暫定措置が課せられるとか、こうしたものについての歯どめはかけられました。言いかえれば、手続におけるタイムリミットが設定されております。あるいは、不十分な調査に基づいて暫定措置をとられることも抑制されるであろうと考えられます。  なお、迂回防止措置につきましても、WTOのもとに置かれますダンピング防止措置に関する委員会で今後検討が進められることになっておりまして、これらについてもなお議論を尽くしてまいりたいと考えております。
  188. 松田岩夫

    ○松田委員 もう一つ、日本がよくやらされてきたといいますか、輸出自主規制というものですが、本当は輸入国の方で正式の手続をとって手を打つべきでありますが、アメリカ、ヨーロッパは日本に対して、君の国から出ている輸出で影響を受けている、君の方でぜひ輸出を自主規制してくれと。やむを得ず日本はそれを受けて、多くの品目で輸出自主規制というものをやってまいりました。現在もなおやっているものがありますが、今度の交渉でこういった輸出自主規制、まあ灰色措置と言っておるわけでありますが、これは禁止されたと理解してよろしいですか、大臣。
  189. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今回のウルグアイ・ラウンド交渉におきまして合意されたセーフガート協定では、委員が今お話しになりましたように、産業保護的な効果を有する輸出自主規制などいわゆる灰色措置、原則としてWTO発効後四年以内に撤廃となっております。委員が御指摘のように、日本は過去何回かさまざまな分野でこうした措置をとってまいったわけでありますけれども、残された措置につきましても、セーフガード協定にのっとって適切に今後対応していきたいと思います。
  190. 松田岩夫

    ○松田委員 今三つほど例示的に取り上げてみました、一方的な措置である通商法三〇一条、あるいは次いでアンチタンビング、そして今の輸出自主規制。ともに、我が国アメリカやヨーロッパからいろいろ悩まされ続けてきた事柄であります。今回のウルグアイ・ラウンド交渉成果として、一〇〇%とは申しませんが、それなりに我が国の主張が取り入れられ、いや、我が国ばかりじゃありません。我が国よりももっとおくれて今発展途上にある国々がそれぞれ悩み続けてきたわけでありますが、そうした問題が解決されたほんの三つの例示を、解決された、少し解決された、いや大幅に解決された、評価は分かれましょうが、それなりに解決されたという例示を申し上げたわけであります。お聞きしたわけでありますが、ぜひひとつ、ほかにもたくさんの成果があったわけであります。せっかく批准をするのであれば、こうした成果が十分生きるように、それぞれ御担当の大臣におかれてはしかと運用に当たっていただきたいということを申し添えまして、次の質問に移ります。  さて、これまでのガットは、言うまでもありません、戦後先ほど申したようなことででき上がったわけでありますけれども、あのときはITOをつくろうと。今WTOと言うわけでありますが、Wはワールド、Iはインターナショナル。当時はインターナショナルということでITOをつくろうということでございましたが、御案内のようにアメリカの議会が、これは国の主権を侵すものだということで反対をいたしまして、できませんでした。  その結果、今あるガットの組織は、実際上ワークしておりますけれども、事実上の機関として存在しておる。それがこのたび、このウルグアイ・ラウンドでしっかりとした正式の機関としてWTOが発足することになった、していただいたわけであります、この協定によって。WTOはそういう意味でまさに、戦後三つつくろうとしたことが今ようやく実ったとも言えるわけであります。さっき言ったIMF、そして世界銀行、そしてWTOと。  いよいよこの三つが力を合わせて世界経済の繁栄と安定のためにぜひ頑張っていただきたいと思うわけでありますが、とりわけ、貿易立国であります日本にとりましては、WTOというのはとても大事な大事な新しい機関だと思うわけであります。  私は、このWTOの事務局長に、世界で最も大きな貿易国、貿易で最も大きな役割を果たし、世界に先駆けて自由な体制をつくるのに最も先進的でなければならぬ国として事務局長に立候補するのは当然の責務ではないか、私は実はそう考えた一人でありますが、御立候補をなさっておられない。一体どういうわけでございますか。これは、総理か外務大臣からお聞きしたい。
  191. 河野洋平

    ○河野国務大臣 確かに、WTOという組織に対して我々は重大な関心を有しております。そうしたことからいえば、我々が候補者を擁立をして事務局長のポストに積極的にかかわっていくということが正しい判断であったかもしれません。  しかし一方、隣国韓国がいち早く金喆寿氏を候補者として擁立をして、我が国にも候補者として支持をしてほしいという旨の申し入れがございました。この申し入れに対しまして、我が方としては慎重に検討した結果「この際は金喆寿氏を候補者として支持しようという判断をしたわけでございます。  これは、一つは、国際的なさまざまな関係なども考慮に入れて、今日は金喆寿氏の支持ということで努力をいたしているところでございます。
  192. 松田岩夫

    ○松田委員 金喆寿氏が立候補を韓国としていち早く表明をされたのでということでありますが、なぜいち早く日本がしなかったのかという答弁にはなっておりません。  しかし、正直、今そういうことで進展しておるということでございますので、今回はこれ以上のことを申し上げませんが、しかし、私は、そろそろ日本の国もこのWTOといった大事な機関の事務局長を積極的に引き受けさせていただいて、しっかりとその責任を分担していくという考え方を持つべきときに来ておるなということを心の底から思っておることだけ強く、総理、お伝えしておきます。ぜひそんな気持ちで頑張っていただきたいと思うわけです。  さて、今度の交渉で新しい分野となりましたサービス、知的所有権。新しい分野ですので、その中で知的所有権の問題について若干御質問申し上げたいと思います。  経済活動がグローバル化し、また、まさにハイテク化が進む中で、特許権とか商標権とか、こういった工業所有権あるいはまた著作権といった、これらまとめて知的所有権、この制度の未整備な国があるために、まさに我が国もその影響を受けておるわけでありますが、こういった権利を侵害した物品が横行したり、あるいはまた逆に、日本はそうではないと思いますが、先進国の中には、逆にこの特許権侵害を理由に、正しい物品、しっかり法律を守っておると思われるような物品の輸入まで抑えるといったような、知的所有権をめぐります貿易上の問題が今や多発し始めておるわけであります。  こういった事態を受け、まさに経済の一層のハイテク化、グローバル化が進む中で世界経済が健全に進んでいきますためには、明らかにこの知的所有権について、全世界それぞれの国、特に後進国が痛みを伴うわけでありますが、一緒になって守っていってこそ一層の経済発展があることは明らかでありますから、今回のウルグアイ・ラウンド貿易関連いたしました知的所有権の権利の保護について合意ができたということは、私は、大変な成果であり、高く評価し、敬意を表したいと思うわけであります。  その関連で、今の認識は一致しておりますね、わざわざ御返事をいただかなくてもよろしいですね、そういう感じで受けとめておられると思いますが、そういう中で二点ほどお聞きしたいと思います。  一つは、言うまでもありません、この規定、この知的所有権の保護ということは、正当なことではありますが、しかし発展途上国から見ますと、まだまだ未整備でなれていない、できていないということもありまして、ある意味で大変な痛みを伴う制度なわけでございます。そういう意味で私は、日本として、まさに知的所有権の先進国として、せっかくできたこのWTO協定が有効に働いていただく意味でも、ぜひ知的所有権制度の未整備な国、途上国に多いわけでありますが、そういうところに対しまする積極的な、国際的な協力といったものを日本は率先して行っていくべきではないかというふうに思うわけです。現在既にそういった努力が一部なされておりますが、ぜひさらに一層強力に推し進めていただけたらと思います。  工業所有権について通産大臣から、著作権について文部大臣から、どんな取り組みをされていかれるのか、お聞きしたいと思います。     〔中川(昭)委員長代理退席、委員長着席〕
  193. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今回のTRIPsの合意に伴いまして、委員御指摘のように、発展途上国におきましては、法制上の整備の問題、さらには運用の改善、人材の育成等各般の協力が必要になるところが出てまいります。  通産省は、既に従来から、途上国の知的所有権制度の整備あるいは特許審査技術の向上を支援するためのプログラムを持ってまいりました。特許庁におきましては、途上国への審査ノウハウあるいは特許情報の提供を行う、また、世界知的所有権機関の途上国協力のためにジャパン・ファンドを設けて、ここにおきます専門家の派遣あるいは研修生の受け入れ、さらにラウンドテーブルの設置等、そして、国際協力事業団その他の各種機関を活用いたしました人材育成、専門家派遣の事業等、既に実行してきておるわけであります。  先般の大阪におけるAPECの中小企業大臣会合、また、今回総理にお供をいたしましたジャカルタのAPECの総会におきましても、これらの点に対する協力は非常に要請が強く、従来以上に日本努力してほしいという要望のあった点の一つでありました。我々としては、今後ともに最大限の努力を展開していくつもりです。
  194. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 WTO関連で、著作権法の改正を当委員会にお願いをしているわけでございますが、先生の御質問は、著作物が国境を越えて利用される、そういうところの未整備に対してどういう対応をしているのか、こういう御質問でございますが、やはり、著作権が国際的にも適切に保護されるためには、各国において著作権制度が整備充実される、こういう必要があると思います。  しかしながら、特にアジア地域については、必ずしも著作権制度は十分に整備されていないことが指摘をされておりまして、アジアの一員である我が国としては、率先してこうした状況の改善に努めることが求められていると考えております。このため、昨年度から、アジア地域著作権制度普及促進事業を行っておりまして、同事業は、いわゆるWIPO、世界知的所有権機関の開発協力プログラムに対して毎年継続的に拠出金を出しておりまして、そのプログラムの充実に協力する、こういうことでございます。  ちなみに、例を申しますと、平成六年では、著作権・著作隣接権セミナーというのも行っておりますし、アジア諸国に専門家も派遣をしておりますし、また、アジア諸国からの日本への研修生の受け入れ、こういうことも行っておりまして、我が国としては、著作権の国際的保護の確立という大きな課題を達成すべく、今後とも積極的に国際場裏において協力をしてまいりたいと思っております。
  195. 松田岩夫

    ○松田委員 ぜひ、知的所有権のまだ未整備な地域に対する手厚い、それこそ温かい協力を力強く推し進めいただくことをお願いしておきます。  今回のこの知的所有権の交渉を通じて、例えば特許権といった工業所有権の分野でも、国際的なハーモナイゼーションが大変進みました。結構なことだと思うわけでありますが、その成果から見てみますと、大変目立つのが、主要国の中でアメリカの国だけが維持しております先発明主義というものであります。我々の国は先願主義ということでございまして、最初に出願した人が、全く新しい発明であればまさに特許権がいただけるというわけでありますが、アメリカは先発明主義、こういうわけでありますから、さあ出願はした、大丈夫だろうと思っておったら、何が何が、後から出てきた人が、いや、あなたよりも先に発明をしておったということを言うと、そちらに権利がとられてしまう。まさに主要国の中ではアメリカだけが、我々と違った、世界のほとんどの国がとっておるこの先願主義と違った制度を持っておるわけであります。  そういう意味で、私はぜひ、アメリカの国がいつまでもこんな違った制度を持っておることは、一層ハイテク化が進み、一層グローバル化が進む中で、まことに不都合きわまりないことだと思うわけであります。これもまた、先ほどの話じゃありませんが、それは内政干渉だということかもしれません。しかし、グローバル化していくとかあるいは地球が一つになっていくということは、お互い不都合なことは、先ほども申しましたけれども、通商法三〇一条も同じであります、しっかりと主張していくということが大事だ。  そういう意味で、こちらの方はもう交渉していただいているのかと思うのでありますが、今後一層、この特許分野の国際調和を図っていく上で、私はアメリカに対してこの先発明主義の是正、先願主義への転換というものを強く求めていくべきではないかと思うわけでありますが。これは通産大臣かと思いますが……。
  196. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 昨年の秋、我々が野党でありました時期、アメリカが態度を変更して先願主義に変わるのではないかという情報がいっとき流れ、私どもは非常に前途に明るいものを見た感じをした時期がありました。  ところが、本年のたしか一月であったかと思いますが、現政権ブラウン商務長官が、アメリカとしては依然として、当分の間先発明主義を続けるというような意思を明らかにされたと聞き、非常に残念に思ったことを、今委員の御質問を聞きながら振り返っております。そして、まさに私は、残されましたこの世界における最大の問題は、アメリカを初め、御近所内ですとフィリピンがたしか先発明主義をとっておったと思いますが、ごく少数の国が採用している先発明主義を直していくことと思います。  これまで、世界知的所有権機関におきまして特許調和条約交渉が進められている中で、依然としてアメリカが消極的であることは委員御指摘のとおりでありますが、我々としては、欧州その他各国と連携をしながら、これを変えさせる努力を全力を尽くして行っていきたいと考えております。  なお、今回御審議をいただきます特許法の中におきましても、従来この先発明主義のおかげで一番問題となりましたサブマリン特許等につきましては、相当程度と申し上げてよいかと思いますが、手当てができるようにはなっております。
  197. 松田岩夫

    ○松田委員 一層ひとつお互いに、この点についてはアメリカに強く当たっていくべきだということを確認させていただいて、次の質問に参ります。  今度のウルグアイ・ラウンドを通じて、この交渉の結果、我が日本の国も多くの痛みを伴う分野を当然のことながら持ちました。多くの同僚議員から既に農業問題を初めとして多くの質疑が、多くの質疑といいますか、これまでのわずかな質問時間の間では、比較的多くの時間が農業問題に費やされております。本当に大きな痛みを伴うことになりました。この痛みを、逆に他方で日本が得るところがあるわけでありますから、その得るところがあることを多としながら、国民的な課題として痛みの伴うところはみんなで助けて解決していく、これが政治だろうと思います。  そういう意味で、ぜひ農業我が国におけるあり方、その本当の意味で互角の国際競争力をつけていくことができるのかどうか。実はこの点については、私は、日本農業については、いろいろ条件が違い過ぎるので、極めて悲観的な見方を持つ。持つのであれば、逆に産業として普通の産業並みに国際競争力をつけていただくという、そういう努力も一方で大変していかねばなりませんが、しかし、そうしたからといって、米国の農業あるいはその他の本当に好条件に恵まれた農業と比べて、互角にはとてもなれないというふうに思う。  私としては、農業に対する政策について、単に産業政策的見地だけではない新しい考え方を打ち立ててしっかりとやる必要があると思うわけでありますが、きょうは、その点についてはまだ次回しっかりと御質疑させていただく機会を得たいと思うわけでありますが、とりあえずもう一つ大きな分野として、今、これは第一次産業ではありませんが、製造業の分野で、繊維産業であります。  御案内のように、繊維製品の我が国への輸入は大変な勢いでふえておりまして、とりわけ隣国の中国からは大変な輸入の伸びであります。もちろんそれぞれ得意なものをつくり合って、そしてお互い融通し合って生きていく、これが自由貿易といえば自由貿易でありますが、しかし、また同時に、農業とは違った意味で、急激な変化のために計画的な構造転換がうまくいかないとか、あるいは事業転換をしようと思っても急激に来るこのあらしの中でただ戸惑っておられるというのが今の繊維産業の姿ではないかな。  であればこそ、歴代政府、繊維産業に対して特別に注意を払い、特別の対策をいろいろ講じてきたことも事実であります。しかし、現状を見ますと、不況、そしてその後に続く円高、そして今度のまたウルグアイ・ラウンドによる関税引き下げと、打ち続くあらしの中で、我が繊維産業、大変な状況ではないかなと思います。大変な状況だと私は思っております。  そういう意味で、今度のウルグアイ・ラウンド交渉関連でまず一つ御質問したいのは、MFA、多国間繊維取り決め、今度の交渉では、十年後にはガットの一般原則といいますか、それに統合されるということに相なったわけであります。正直言って私にとっても実はこれ極めて難しい問題でありますが、一体どうしたらいいのか。MFAを、まだこれルールもできていないわけであります。一体政府はMFAを発動する気があるのかどうか、一体ルールはいつでき上がるのか、そんなことをお聞きせざるを得ない心境になっておるわけであります。どうでしょう、通産大臣
  198. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 カレンダーを三十年ほど返してみますと、大変皮肉なことだなと今思いましたのは、私は当時綿紡績の社員でありまして、通産省の繊維担当部局に書類を届けるのに、玄関をくぐるたびに深呼吸をいたしておりました。委員はそのころ通産省におられたわけでありまして、当時、我々として非常に怖いお役所であったと改めて今思い出しております。しかし、その繊維が非常に大きく状況を変えて、今委員お話しになるような厳しい情勢にあっておることは承知をいたしております。  そして、今日までにも、実は自民党政権の時代にも、自民党政権が倒れまして我々が野党の時期にも、通産省に私はセーフガードの発動を何回かお願いをした経験を持っております。そして、本年五月十七日に繊維産業審議会の通商問題小委員会がセーフガード措置の取り扱いについての提言をまとめていただきましたので、これを参考にして、もう本当に近い間にルールを策定するべく作業を行っております。恐らく、そう長い時間を要さずにそのルールは策定できると思います。  発動条件の可否ということになりますと、これは具体的にルールが作成されました後、個別の案件ごとにルールに基づいて検討することになるわけでありますが、我々は権利として持つものを行使することを恐れるというつもりはございません。権利として持つものを行使することを恐れるつもりはありません。
  199. 松田岩夫

    ○松田委員 何かちょっと明確でないのでございますが、今御検討の最中と、早い御判断をお願いしておきます。みんな待っております。  しかし、このMFAを発動されましても、実態、繊維産業をしっかりと支えてあげませんと、単に輸入を少し調整するという程度のことだけではもはや日本の繊維産業は立ち行かない、そういう状態になっておる。ざっと三百万人今従事しておると言われるわけでありますが、厳しい見方をする人は、いずれ半分程度になるのではないかとか、そんなことをおっしゃる方もおられる。まことに厳しい状況だと思います。  そういう意味で、これまでもいろいろな対策を講じておるわけですが、今までの政策の継続線上では問題はどうも解決しそうにないぞ、新しい、思い切った発想を何とかこの繊維対策にも導入しないといけないのではないか、一次産業における米問題、二次産業における繊維問題、みんなで同じようにしっかりと考えてあげないといけないのではないか、私はそう思うわけでありますが、聡明な通産大臣、七年度からはばらっと変わった、創意に満ちた繊維産業対策が出てくることを期待して、どうでしょう、いいお話はありませんか。
  200. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 通産省においてその方のベテランであられた委員からいい知恵をと求められましても、そこに書類を届けていた私からは、そんないい知恵はなかなか出てきません。  ただ、冗談は抜きにしまして、私は、このMFAの準備が整うということは日本の繊維産業が一つ戦う武器を、堂々と戦う武器を一つ持つことになる、この点は大きく変わっていくと考えております。そして、先ほど私は、もうその作業の終盤に差しかかっておりますだけに大変微妙な言い回しを申しましたが、このルールができましてから具体的にどう対応していくかということはこの後の話とさせていただきたい、そういう意味で微妙な言い回しをいたしました。しかし、新しい武器を持つということは事実であります。  そして、その上に、今までも努力を積み重ねてこられました繊維工業審議会あるいは産業構造審議会が新繊維ビジョンをまとめてこられた、その中に我々としての将来性を見出すわけでありまして、従来から我が国の繊維産業の弱点とされていた部分をカバーしていくことを我々は考えていきたい、そう思っております。
  201. 松田岩夫

    ○松田委員 時間がだんだん参っておりますので、繊維対策について一つ一つ細かくお聞きするのを次の機会に譲りまして、次に、私は、今度のウルグアイ・ラウンド締結を契機に、一層水際では今までよりもはるかに自由になっていくわけであります。  問題は国内だ。国内が、多くの規制の中で新規産業を始めようとしてもだめだとか、あるいはそのことが、水際では自由にしたのだが中へ入ってみるといろいろ不都合で、実際には輸入を自由にしたことになっていない、あるいは開かれた市場になっていないということに相なるわけでありまして、今度のウルグアイ・ラウンドのまさに締結を契機に、このWTO協定の理念を一層発展させる意味でも、私は、国内における規制緩和といったものは、今、前政権もその前の政権も、現政権もこれを政策の大きな柱として進めておられます。しかし、実際に口ほどには中身が出てこない、このこともまたよく聞くわけであります。  WTO協定批准を契機に、一層水際の自由化とともに国内における自由で開かれた社会をつくり上げていく。そのことがまさに、今こうして大きな円高の中で、内外価格差、円高の割にはちっとも、つまり、円の価値が国際的には上がったという割には国民はそれぞれの生活の場では本当の豊かさを実感できないでいる、そんなこともまた耳にたこができるほど聞かさせていただくきょうこのごろであります。こうして勇気を持ってWTO協定を批准し、窓をどんどん広げていくわけであります。そういう意味で、一層この機会に規制緩和に力強く対処していただきたい。  私は、村山さんになられてから口ばかりでちっとも中身が進んでいないんじゃないかということをよく聞くのですよ。そうかどうか。どうですか、総理、しっかりやっていただけますか。何を一体、ここでひとつ具体的に、いや、こんなわかりやすいのがありますよと、こうしますよ、ここはこんなに自由になりましたよ、だから、ほら見てごらん、こんなに安くなりましたよと、外国の製品も、ほら、こんなに入ってきていますよと、ちょっと具体的なケースを挙げて、あるいはそういうものが今ないというのなら、そういうものがこういう分野で出てきますよということを含めて、固い決意を述べていただきたいのです、総理大臣に。  総務庁長官ですか。総務庁長官ぐらいでできますか、これ。――いやいや、私は全省に関係しているから総理大臣と言ったのです。
  202. 佐藤孝行

    佐藤委員長 順次当てますから。
  203. 山口鶴男

    ○山口国務大臣 お答えいたします。  松田委員御指摘のように、現在の数々の規制が内外価格差の要因となっているということは、そういう御指摘は確かに当たっている部分があると存じます。  したがいまして、政府といたしましては、村山内閣になりましてから、七月の閣議におきまして二百七十九項目、具体的に言えば住宅・土地、それから輸入促進・市場アクセスさらに流通、金融・為替、これらの問題に対して規制緩和を決定いたしたことは、委員御存じのとおりだろうと存じます。  これで十分であるとは、私思っておりません。村山内閣も、規制緩和については積極的に進めると総理みずからが何回も明らかにしているとおりでありますので、具体的には、この十一月に各閣僚が参加いたしております行政改革推進本部の全体会議を開催をいたしまして、そうして現在各業界から規制緩和に対する要望を承っております。  そのほかに、この際アメリカあるいはヨーロッパの財界の方もおいでをいただきまして内外からの御意見も承る、そういう機会もつくりたいと思っております。そうして、今、各業界の方々をお願いいたしまして規制緩和検討委員会のメンバーを調整中でございまして、近くメンバーも確定すると思います。  これらの方々の御意見も参考にしつつ、今年度内に、明年の三月末までに五年間の規制緩和推進計画、これを策定をいたしまして、そうして内外の要望に応じた、また委員御指摘のような、今回のウルグアイ・ラウンド合意に基づいて、こういった時代の要請にこたえた規制緩和、これを実施をいたしたいと考えておる次第でございます。
  204. 村山富市

    村山内閣総理大臣 今総務庁長官から答弁がございましたけれども、計画として推進しておる段取りは申し上げたとおりであります。  ただ、お話もございましたように、これはやはり内閣全体として取り組んでいく必要があるというので、私は閣僚懇談会でたびたび各閣僚にも要請をいたしておりまするし、年度内に必ずこの五カ年計画をつくってそして確実に推進をしていくということについては、もうたびたび確認も求めておりますから、そういう決意で進めていきたいというふうに思います。  私はどちらかというと訥弁の方でありまして、議員ほど雄弁ではありませんから、口てはかり言っておってやることやらぬじゃないか、こういうお話でございますけれども、できないことはできるだけ言わないようにしているつもりですから、どうぞよろしくお願いいたします。
  205. 松田岩夫

    ○松田委員 何をおっしゃったのかな、今は。今何を言いたかったの。よくわかりませんでした、今。まあ、時間がありませんからいいですが、私は訥弁だから、何だって、よく意味がわかりませんでしたが、訥弁だ、雄弁だということと何の関係もありませんよ。そんなことで、こんな大事な規制緩和の問題を、ふまじめですよ、今の答弁は。そうでしょう。一体総理たるもの、何ですか。規制緩和についてかたい決意を述べてくださいよ、はっきりと。それだけで結構です。
  206. 村山富市

    村山内閣総理大臣 いやいや、決意は述べましたけれども、口ばかりでやることやってないじゃないか、こういうお話でございましたから、それに対してお答えをしたのです。(松田委員「私が言っているんじゃないんです、皆さんが言っているんです」と呼ぶ)いや、あなたの口から聞いたから、私はそう言ったんですよ。だけれども、それは、悪ければ取り消しますけれども、今御指摘のありました規制緩和については、内閣を挙げて取り組む決意には変わりはございませんから、そのことははっきり申し上げておきます。
  207. 松田岩夫

    ○松田委員 今の言葉のとおりにしてください。ですから、さっき申しましたように、わかりやすい例を挙げてくださいと言いましたけれども、一言もおっしゃってくださらない。こんなに規制緩和ができましたよ、あるいはこれからこういうことをやってこんなふうになりますよと、国民に易しく、わかりやすい説明をしてくださいと申し上げたんです。一言もなかったから、だから言葉だけじゃないですかと、また改めて申し上げて次の質問に移ります。真剣に御対応を願いたいと思います。日本の国にとって今とても大事な政策なんです、規制緩和は。これはもうみんな一致しているんですから、勇気を持って進めてください。  さて、次の問題でありますが、総理、APEC御苦労さんでございました。何人かの同僚が既に御質問いたしましたが、若干別の観点から御質問させていただきとう存じます。  二〇一〇年先進国、二〇二〇年発展途上国、貿易・投資をそれまでに自由化しよう、言い方はいろいろあるんでしょうが、大ざっぱに言えばそういうことでございましたね。  今、こうしてきょうから始まって、ウルグアイ・ラウンドWTO協定締結をしようと。まさにこれから各国が批准して、お互い痛みを伴った、関税引き下げだ、自由化だ、これをこれからやる、まだこれから議論して、いいんなら承認して、そして批准していこう、そういうことですよ。  そんなやさきに、突如、APECとはいえ、これ世界のまあ国内総生産で言えば約半分ですか、この地域でいきなりまた二〇一〇年、二〇二〇年と貿易・投資の自由化というので、実は私びっくりいたしまして、これからせっかくみんなの英知でつくり上げてきたこのWTO協定をしっかり確実に百二十五カ国全部が批准して、そして実施していく、そのために今国内でできる痛みをいかにしてとやっている最中なんですよ。これからですよね。  ですから、私、こういう話も結構なんですよ。この話、否定しているわけじゃないんです。しかし、今我々が気をつけるべきことは、しっかり意識すべきことは、まず各国が、特にAPECの中の発展途上国の皆さん、大事な国々ばかりです。このウルグアイ・ラウンド締結によって、私どもは農業問題を初め大変な痛みを伴いました。この発展途上国の方々、大変な痛みをそれぞれ持っているんですよ。まずこれを着実に自分のものにしていく、ウルグアイ・ラウンド交渉の結果を確実に実施していくということが、まず我々が一生懸命心してあげなきゃいかぬことだというふうに私は思うんです。  そうだとすると、先ほど工業所有権のところで申しましたけれども、痛みを伴うそれぞれの国に対して、何らかの形で援助が必要なら、このウルグアイ・ラウンドの結果を着実に実施していただくためにも、いろいろ協力していってあげるというようなことがまず先決なんですね。これは決めちゃったんです。そして、これから批准してもらう、そのこともお話し合いなさいましたね、みんなでやっていこうと。私は、そのことがまず第一にしっかり確保されなければなりませんよ、その点はどうですか、総理総理が首脳会談に行かれたんで、首脳会談の関連で。
  208. 村山富市

    村山内閣総理大臣 今委員言われたとおりでありまして、ウルグアイ・ラウンド合意した事項は、それぞれの国がやはり忠実に守っていただく、実践していただくということが一番大事だ。その前提に立って、先般のAPECの会合の中でも、これは太平洋・アジア地域で加盟している十八カ国ございますけれども、先進国もあれば発展途上国もある。それぞれ多様な国柄を持っているわけです。そういうものがお互いに持っている力を出し合って、そして持っている特徴点もお互いに提供し合って、そして協力し合い支え合ってともに発展していこうではないか、こういう枠組みでつくられておるのがAPECですね。  したがって、私は、ガットで、ウルグアイ・ラウンド合意された事項を補完しながら、さらに内容的に強めていく、こういう役割をAPECが持っているんではないかというふうに考えておりますから、そういう方向でこれからもさらに進めていく必要があるのではないかというふうに考えています。
  209. 松田岩夫

    ○松田委員 総理おっしゃるように、ぜひ日本の国としては、このAPEC加盟諸国が円滑にウルグアイ・ラウンド交渉の結果を実施していけるように、温かい協力を進めていっていただきたいと思うのです。  新聞で見たんですが、閣僚会議で橋本通産大臣も同様なことをおっしゃっていたのかなと思うのですが、統合アプローチなどという、なかなかおもしろい言葉だなと思わさせていただいたんですが、通産大臣が閣僚会議でおっしゃっておられた意味というのはどんなことでしょう。今私が申したようなことを踏まえて、温かい支援をしていこう、こういうことでしょうか、通産大臣
  210. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 二点について申し上げたいと思います。  まず第一点は、委員が今まさにお使いいただきました統合アプローチという考え方でありまして、これは、結局、私どもが比較的優先して取り組まなければならない課題として、例えば基準・認証の整合性でありますとか、あるいは知的所有権保護制度の整備など、むしろ貿易とか投資の制度の整備、調和を進める、こうした部分がまず必要であろうと考えております。  その場合に、こうした考え方に合意をするだけではなくて、これに実技を備える、言いかえれば、実施体制を整えるために、検査体制あるいは審査体制の整備などに必要な人的、技術的な協力をパッケージとして組み上げて提供していく、こうした考え方が必要ではなかろうかということを申しました。そして、これは大変喜んでいただき、協力が求められる分野でございます。  もう一つは、それぞれの国のやはり土台を支えるすそ野産業としての中小企業、その中小企業の育成のノウハウ、日本はおかげさまで中小企業庁という独立した外局を持ち、中小企業対策を一元的に運用しております。各国はそうした制度をまだとっておりません。こうしたものに対するノウハウの提供もございます。  さらに、九月に行われましたAEM-MITIの会合で、ASEANの通商代表たちに私から申し上げましたことは、投資保険の活用、貿易保険の活用ですね。それと同時に、信用保証の仕組みというものを各国がこれからつくっていかれようとする場合、投資保険制度を持っていない国がたくさんあります。こうしたものに対するシステム、ノウハウの提供、さらには信用保証といった道、こうしたものの協力も我々は惜しまないということを申し上げております。
  211. 松田岩夫

    ○松田委員 APECの中で、日本がどんな役割を果たしていけるか。アメリカが一方にあり、ASEAN諸国がそれぞれ自信を持ち、それぞれいろいろな意見を表明されておられます。そういう中で、日本がAPECの中でしっかりとしたリーダーシップを確保しながら、そして地域全体の発展、ひいては世界の繁栄のために頑張っていくという意味で、私は、このウルグアイ・ラウンドの結果がこの十八地域内、十八、日本を除けば十七ですか、そういった中でしっかりと定着していくように、お互い助けるべき相手には手を温かく差し伸べていく、そんなことを強く思うものですから、ぜひそういった方向で一層頑張っていっていただきたい。  次に、このAPECでの貿易・投資の自由化の促進、非常にいいことです。ウルグアイ・ラウンド成果を踏まえ、さらにそれを乗り越えて、もっともっと自由な貿易や投資環境をつくっていこう、まことにいいことでありますが、いろいろ問題、気をつけたいことがあるわけであります。  一つは、言うまでもありません。これは外務大臣も総理もおっしゃっておられると思うんですが、完全に私は域外に開かれたものでなければいけないと思うわけです。そういう意味でちょっと気にかかるんですけれども、APECの賢人会議というのがありますね。あの賢人会議の方々の提案、あれは別にAPECそのものじゃないわけなんであれですが、貿易の自由化を進めるに当たって域内と域外で差を認めるようなことをにおわせる表現が入っている、私は非常に気にかかるわけでございます。  我が国というのは、言うまでもありませんけれども、これまで一貫して自由、無差別、多角的貿易体制、まさにガットの精神そのものでありますが、その維持強化ということに強くコミットしてきておるわけであります。私は、この考え方は変えるべきではないし、また正しい行き方である、APECにおいても、貿易や投資を自由化していくに当たって、当然域外にひとしくその成果を均てんさせていくべきであると心から信ずる者の一人なんですが、総理、これは非常に大事な点なんです。  これからAPECの中でこの貿易・投資の自由化の話がますます具体的になっていくわけでありますが、その際、総理、どんな意味でも絶対に排他的な貿易ブロックなどはっくるつもりはない、完全に域外にも開かれたAPECとしてやっていくと、はっきりそう理解させていただいていいですね。断言していただけますか。大事な点なんです。世界の国々が非常に注意をして、ヨーロッパの国もそうです、アフリカの地域の国々もそうです、非常に心配をして見ております。
  212. 村山富市

    村山内閣総理大臣 今委員御指摘がございましたように、例えばEUがありますね。それからNAFTAがある。と同時に、今度はAPECがある。こういうふうにその地域ごとにブロックをつくってそれが対立し合うというような形になったんでは、これはWTO役割というのは果たせなくなるわけですから、したがって、そういうものではなくて、あくまでもアジア・太平洋地域のAPECは緩やかな仕組みとしてアジア・太平洋地域内におけるお互いの発展のために協力し合う、そして平和と安定を期していくということはもちろんでありますけれども、それはその地域で固まるというんではなくて、それがすなわち世界に開かれて、世界全体がやっぱり共通してそういう状況になっていくようなそういう役割を果たしていこうではないかということは、お互いに確認し合っていることでありますから、そのとおりに私は考えています。  それから同時に、先ほどちょっと答弁の中で十八カ国と申し上げましたけれども、十八の国と地域というふうに訂正をさせていただきます。済みません。
  213. 松田岩夫

    ○松田委員 私も、そういえば軽率に使いました。ごめんなさい。  今の点、とても大事なんですよね。  さらに、そのことに関連して、まだまだこれからの問題ですのであれですが、つまり、APECというものを一つの自由貿易地域みたいにしていこうかなという思いの強い国といいますか、地域といいますか、いやそうじゃない、APECというのは、あくまでもお互い協力をし合う、中小企業の問題だとか、基準・認証の問題だとか、いろいろお話通産大臣からもありましたが、お互い助け合っていく、そういう緩やかな協議体だと、協力のための協議体だと、当初の発足はそんなことであったわけでございます。  日本やオーストラリアが非常に積極的になられましてできた、私は、アジア・太平洋地域におけるすばらしいこれはステップであったと高く評価する者の一人なんですが、だんだんこの貿易・投資の自由化、二〇一〇年、二〇二〇年というのが出てから、それ以来、前からこの賢人会議の提言などでも出てきているわけでございますが、何かその地域を、緩やかかかたいかはいろいろ差はあるにしても、一つの自由貿易地域のようなものにしていこうという考え方も出てきておる。  これは将来どうしていくのか。もしそういうふうにしていくとするならば、それこそ今私が強調した、総理もそのとおりだとおっしゃった点がまことに大事でありまして、ということでございます。将来このAPECをどんなふうにしていくのかということは、きょうの当面の、議論するにはちと早過ぎるかとも思いますが、しかし、将来どうしていくか、お互い、まさに日本が中心になって考えていかなければいかぬことですから、私は、いずれまた議論をする機会を持ちたい、お尋ねする機会を持ちたいと思うわけであります。  さて、次にでございますが、もう一つ驚いたことは、総理、普通はこういう自由化を進めようという話は、当然のことながら先進国から出てくるわけであります。アメリカが今まで多かったわけですね。アメリカがまずイニシアチブをとられて、そして自由化、各種の自由化交渉が始まってきた。今度は、これは文字どおりインドネシアのスハルト大統領が御提言なさったんですね。そうですよね。  これは、行かれる前の国会質疑等でも総理からはそんな話は何もありませんでしたし、外務大臣からもそんな二〇一〇年、二〇二〇年にこうするよなんというような話は一切、それはまあ外交交渉でもあるんですから、事前にはそんな話はないのかもしれませんが、しかし、それにしても、一切そんな雰囲気はなかったわけですので、これはインドネシアのスハルトさんが御提言なさったんですか。ちょっとそこを確認さしていただきますが、これはスハルト大統領の完全なイニシアチブで始まったことでございますか。
  214. 河野洋平

    ○河野国務大臣 本年の議長国インドネシアのリーダーとして、スハルト大統領がイニシアチブをおとりになったというふうに聞いております。
  215. 松田岩夫

    ○松田委員 そういう意味では、議長国であったということもあるのかもしれませんが、日本の国の経済と比べますれば、まだまだいろいろ、何といいますか、解決すべき課題を抱えておられるインドネシア経済であります。その大統領がこうして御褒言なさった、私はその壮大な提案に、そういう意味では心から敬意を表したいと思うわけでありますが、そう思えば思うほど、総理、そこにおられて一体総理は何をしておられたんですか。何もなさらなかったんですか。どういうことだったんですか。日本の顔がさっぱり見えないと、これまた言われたんでございますが、これは総理ですよ。そこには外務大臣、いたんですか。総理総理に聞いているんですけれども……。
  216. 河野洋平

    ○河野国務大臣 ちょっと先に一言、お許しをいただいて私から首脳会談に至るまでの経過がございますので、御説明をさせていただきたいと思います。  私は、議員がまさにおっしゃったように、この問題をインドネシアが提案をしたというところに非常に意味があると思うのです。それはもう、つまり先進国は二〇一〇年、発展途上国は二〇二〇年だと、そこに十年差をつけたということは、まさに発展途上国にとっては自由化というものは厳しいものであるわけですね。その厳しいものであることを承知の上で、その発展途上国であるインドネシアがこういう提案を、あえて自由化に向かって大きな提案をしたということに、非常に意味があると私は思います。  そこで、まず閣僚会議の段階で通産大臣と私ともどもに、大きな自由化に向かっての方向を打ち出すためには、やはり発展途上国の方々と先進国との間にいろいろなまだまだ、おっしゃる言葉をかりれば解決しなければならない問題をより多くお持ちでしょう、そこで我々日本としては開発についての協力をできるだけいたしましょうということを申し上げた。  これは一般論として、国際的な今の環境をずっと見てみますと、どちらかというと先進国がやや援助疲れという感じがございます。つまり、開発についての協力をしましょうという声はひところよりやや小さくなってきている。そういう中で、我々はAPECの仲間に対して、開発について大いに我々も協力をいたします、ただその協力については、発展途上国同士の協力というのもいいでしょう、それから先進国同士が協力をして発展途上国に対する支援をするというやり方もある。つまり、いろいろなやり方を組み合わせて、いずれにしてもAPEC加盟国がみんなで自由化という大きな方向に向かって歩けるようなことをやろうではありませんか、我々そういうことを提案をしたいということをこもごも申し上げたわけでございます。  加盟国の中からは、日本がイニシアチブをとる開発への協力、我々は前進へのパートナーというものを提案をしたわけですが、これに対する期待は非常に大きかったというふうに閣僚会議で我々は感じました。この点は総理にも申し上げ、非公式首脳会議の席でも総理からこの点については言及をされたということと聞いております。
  217. 村山富市

    村山内閣総理大臣 首脳会議というのは、十八カ国・地域の代表が一堂に会して、そしてスハルト大統領が議長となって、そして司会をしてこの会議を進めるわけです。これは限られた時間ですから、発言を一回しかしなかった代表もありますし、二回した者もあるし、私は三回発言をさせてもらいましたけれども、その三回の最後の発言は、来年は大阪でやるものですから、大阪でやるということについて提案がございまして、賛成した国もございましたから、それに対してそのお礼を申し上げて、そして私の決意を申し上げたというのが一回ですから、会議に対する発言というのは二回ですね。  その中で、特に私の方から申し上げましたのは、貿易・投資の促進、自由化と並んで開発の側面における協力が重要である、こういう観点を強調したわけです。特に、各メンバーの特徴をできるだけ組み合わせて、と申しますのは、先ほど申し上げましたように、先進国もあれば発展途上国もあるわけですから、それぞれやはり特徴を出し合って、そして発展途上国は発展途上国でどういう協力ができるのか、それから発展途上国と先進国とはどういう協力ができるのか、こういういろいろな組み合わせの中でお互いに協力ができるような、そういう体制をつくって進めていこうではないかということを提案申し上げました。  同時に、そういうことをするためには、特に中小企業の育成やあるいは人材の育成や、あるいは特にこれからはエネルギー、安全保障といったようなものも重要なものになってまいりますし、環境の保護ということもゆるがせにできない。したがって、開発と環境といったような問題については、特にやはり重視をしてこれからお互いに知恵を出し合っていく必要があるのではないかというようなことについて意見を述べさせていただきました。
  218. 松田岩夫

    ○松田委員 よくわかりました。  確かに、スハルト大統領、発展途上国の立場から言われればこそ意味があったという考え方もできます。また同時に、今総理がおっしゃったように、せっかく生まれ出たその気持ちをしっかりと大きなものに育て上げてあげる、それにはやはり開発のための協力を強力に進めないとうまくいかないと思います。  そういう意味で、これから本当にAPECもまた新しい段階に入ってくる、それが来年の大阪の首脳会議と。いよいよそういう意味では、総理総理のリーダーシップ、これが問われるわけです。今後の問題ですので、これから大いに詰めていただき、しかし、ちょっと気にかかったことがあるのですよ、総理。記者会見といいますかテレビを見ていまして、事務当局がまたいろいろ検討してなんということをすぐ言われる。総理みずからの問題でやってくださいね、これ。これは大事なことです。とても大きなことですよ、これ。そうですよね。
  219. 村山富市

    村山内閣総理大臣 私は、この首脳会議に出ておりまして、これまでは比較的、昨年のアメリカにおける首脳会議、それから今回のこのインドネシアにおける首脳会議とを見ておりまして、言うならば、今お話もございましたように、加盟しておるアジア・太平洋地域をどのように組み合わせをして、そしてお互いに力を出し合い、知恵を出し合ってともに発展できるような基盤をつくっていくか。そんな意味では、まあまあ総括的な、緩やかな話し合いの討議で済んだと思うのですね。  しかし、これからは具体的に、どういう範囲でどういう分野をどのように進めていくかというやはり青写真をつくっていかなければならぬというような役割が課せられてくるのではないかというふうに思いますから、そういう意味ではこれからが大変だな、こういう気持ちもいたしました。したがって、そうしたことに十分こたえ得るような決意を固めて準備もし、取り組む必要があるというふうに認識をいたしました。
  220. 松田岩夫

    ○松田委員 そのお気持ちでぜひ頑張っていただきたいと思います。  さらに、話をちょっと広げ過ぎるかもしれませんが、せっかくインドネシアのスハルトさんがそう言われて、全世界経済の規模でいえば約半分を占めるこのAPECで貿易と投資の自由化を進めていこうというモメンタムといいますか、そんな気持ちがぐっと出てきたというのであれば、ウルグアイ・ラウンド、これは八回目のガット交渉でありますが、この前の交渉から見れば約十五年ですか、東京ラウンドから見れば。次なる大きな目標に向かって世界全体を再びまたといいますか、今度は九たびということになりますか、自由な開かれた世界経済、いよいよ世界経済の面で一体になっていくという努力を我々はしていかなければならぬわけであります。  そういう意味でいいますと、半分の国が、世界経済規模の半分の地域がやっていく、しかもそれを、先ほど私も確認しましたように、外に開かれた、域外に開かれたものに仕上げていくのだというようなことが本当にできていくのであれば、総理、私は思うのですよ、これはすごい力だ、すごいエネルギーだと。そのエネルギーをもっと膨らませて、まさにWTOのもとでの第一回の新しいラウンドという発想もここからまた生まれ出てこないかな、そんなことを、僕はそういう大きい話が好きなものですから思うわけですが、これは具体的にどうしてくださいとまではまだ私も全然煮詰まっているわけではありません。しかし、こういうことは、まさにそういう一つのモメンタムといいますか、一つのエネルギーが大きく出てきたときに初めてみんなでまとまって大きな交渉が始まるわけであります。  また次なる大きな交渉に向かって、何らかの時期を選んで、そのときにはもう、私は思うのです、日本はその旗振り役でなければならぬ、そんなふうに思うわけですが、そんな意味で、どうでしょう、これをWTOの後の第一回目の世界的な規模でのラウンドとして育て上げていくといったような気持ちは、どんな感想を持ってお聞きになられましたか、総理
  221. 村山富市

    村山内閣総理大臣 お話を聞いていますと、もうずっと開けて、展望が明るくなるような気持ちがいたします。  もう確かに、ある意味では、国境も経済ではなくなっていますし、お互いに地域で争い合うような時代でもないし、もう全世界が地球規模でお互いに力を出し合い、知恵を出し合って、人類の幸せのために、経済発展のために、あるいは平和と安定のためにどうしなきゃならぬかというような時代に私はなっていると思うのです。  そういう意味で、このAPECが、そうした地域だけの問題だけではなくて、先ほど来申し上げておりますように、全世界に開かれたものにしていくという、やはり展望を持って私は取り組んでいく必要があると思いまするし、あるいはWTOもそういう位置づけで、やはり日本政府としても積極的に貢献をし、協力していく必要がある、役割を果たしていく必要があるということを強く感じさせられました。
  222. 松田岩夫

    ○松田委員 ぜひ、今後どういうふうに進展していくかあれでございますが、APECのとりあえず当面の、今回首脳会議合意されました中身を実のあるものにしていく努力を我々はしていかなきゃならぬ。そういう意味で、来年の大阪での首脳会議まで一年、長いようで短いです、これは。しかも、与えられた課題は、今私が申しましたような、奇想天外に聞かれた方もあるかもしれませんが、しかし、そういった大きな展望までも踏まえて、どんなものにしていくのか、しっかりと考えていく必要があると思うわけであります。そういう意味で、ぜひ頑張っていただきたいと思います。  そのAPECとの関連でもう一点。ちょっとこれは質問通告していないかもしれませんが、非常に大事な問題と私が思います。ああ、質疑時間が終了いたしましたか、中国のガット加盟問題ということでありますが、質問時間が切れましたので次回にまたさせていただきますが、簡単に言えば、これだけの大きな規模の国の中国、ガットにぜひ入っていただきたい、そして一緒に行っていただきたいと思うと同時に、中国は今いろいろ条件をつけておられます。できるだけみんなとハーモナイスされた形の中で大きくひとつ包み込みたいが、しかしまた、余り例外ばかりあってというんじゃまずい。中国をどううまくガットあるいはこのWTOの中に友として迎え入れていくか、非常に大事な問題であります。そのことだけ指摘して、時間が参りましたので、私の質問を終わらさせていただきます。  ありがとうございました。
  223. 佐藤孝行

    佐藤委員長 次に、遠藤利明君。
  224. 遠藤利明

    遠藤(利)委員 民主新党クラブの遠藤利明です。  きょうは、十分間という短い時間でありますので、農業に対する基本的な問題を改めてお伺いしたい、そして、後日、具体的な内容についてまたお伺いをしたいと思っております。  先ほど松田委員質問の中に、農業は特殊なものがある、そんな話がありました。私も農村の中で育ちましたのでその思いは大変強くしておりますし、県会議員時代に、産業として成り立つ農業をどうだ、そんなことをよく申し上げたのですが、しかし、現実に世界各国の農業を見てみますと、やはりなかなか日本世界農業を同じ枠の中で考えるというのは難しい。そういうことを踏まえたときに、では農村、農業を捨てていいのか、もう一つは、食糧というものを日本としてどうするのか、そういうことに結論としては行き着くのではないだろうか。そんな意味で、私は、どうしてもやはり食糧というのは大事なものであるし、国家にとって必須の条件ではないかな、そんな思いを強くしているわけであります。  そこで、ちょっと観点を変えまして総理にお伺いをしたいわけでありますが、日本の外交、下手だ下手だとよく言われます。主張がないとかあるいは顔が見えないとかよく言われるわけでありますが、APECで、あるいはサミットでいろいろ皆さんが努力をされて、それなりの成果を上げられている割には、大変残念ながら評価がいまいち高くない。日本人の性格もあるいはあるのではないかと思いますが、しかし同時に、そうしたときに、外交というのは、やはり何を言いましても国益と国益をかけて争うけんかのようなものであるわけでしょうから、ある場合には激しくぶつかり合う、そうしたときに、自分の国の切り札といいますか持ち味を持っていなければ、どうしても主張すべきものが主張できない、そんな感じがしているわけであります。  人間にとりまして衣食住というのが基本だということから考えれば、国家というのは、存在の意義というのは、衣に相当するものがやはりエネルギーかな、食はもちろん食糧でありますし、住は防衛ではないかなと。そんな意味で、衣食住、国にとりましての必須の条件、これが外交のあるいは切り札になるのではないだろうかと。そんな意味で、私は、エネルギー、食糧、防衛がそんな意味を占めるのではないかなと思っておりますが、まず総理の御見解をお伺いしたいと思います。
  225. 村山富市

    村山内閣総理大臣 御質問の趣旨が、外交において確保すべき目的というものは何かというようなことであるとすれば、私は、いずれの国におきましても、外交における目的というのは、国益の確保についてどう考えるか、あるいは国家間の相互依存関係が深まっている今日、外交を進めるに当たって大事なことは何かというようなことを考えてみなければならぬと思うのです。  具体的に申し上げますると、例えば多角的自由貿易体制のもとでの世界経済のインフレのない持続的成長の確保のためには何をすべきかとか、あるいはまた我が国の安全の確保、地域紛争の平和的解決、不拡散体制の強化並びに国際社会における軍縮の一層の促進についてどういうふうに進めたらいいのかとか、あるいはまた開発途上国や市場経済への移行努力を続ける諸国に対する支援をどうしたらいいのかとか、先ほど議論もありますような問題も含めて私は真剣に考えていく必要があると思いまするし、同時に、地球規模の環境問題とか人口問題とか、あるいは麻薬、エイズの問題とか、今いろいろ問題が出ていますけれども、そういう問題についてどのような取り組みをしていくのかといったようなことが、これからやはり外交上の大きな課題になるのではないかというふうに認識をいたしております。
  226. 遠藤利明

    遠藤(利)委員 国際社会の中でいろいろな意味で協調社会をつくっていく、そういうこれからの求められる外交の姿勢、私も当然そうあるべきと思っておりますが、しかし、そうした中で、やはり現実のサミットでありあるいはAPECであり、そういう協調姿勢を求めるとともに国益をどうやって守っていくか、そういうこともまた、ある面では当然必要な部分ではないかなと思うわけであります。  そうした中で、きょうは特に食糧だけ限定して申し上げたいと思うのですが、エネルギーは、残念ながら日本は資源が少ない、一次エネルギーの輸入依存度は今八三・四%ぐらいというふうなことでもありますし、防衛につきましても残念ながら、自給という言葉は変ですが、自給体制にはないということではないかと思うのです。そうしますと、もう一つ食糧、切り札が少ないわけでありますが、せめて食糧だけは何とかできないだろうか、自助努力によって私は可能ではないかと思うのです。もちろん、一段のコストダウンとかいろいろなことは考えなければならないかと思いますが、しかし、最近のマスコミの論調あるいはいろいろな大都市の皆さんの声などを聞いておりますと、もう農業は必要ないじゃないか、安いものをほかの国から買ってくればいいのじゃないか、ましてやこういうガットウルグアイ・ラウンド等の国際協調社会の中であるいは自由貿易体制の中で、国内の農業はもう衰退してもいいのじゃないか、場合によっては石炭産業のように安楽死でもいいのじゃないか、そんな極端な議論さえも出てきておるのではないかなと案じているところであります。  しかし、これからの食糧が安心して供給をしてもらえるのかどうか、あるいは人口の増に食糧の生産が追いつけるのか、そういうことを考えていきますと、果たして国際分業論という物の考え方でいいのかどうか、やはり日本としてそういう必須の条件である食糧というものを常に生産し、維持していく、こんな努力が必要ではないかなと私は思っているわけであります。  そこで、総理に改めてもう一度お伺いしたいのですが、国際分業論的な物の考え、そして食糧安保論的な物の考え、この二つがあるわけでありますが、私は、やはり食糧は自給すべきだ、こんな見解を持っておりますが、総理の御見解をお伺いしたいと思います。
  227. 村山富市

    村山内閣総理大臣 先ほど議論がございますように、できるだけ多角的な貿易自由化で門戸を開放して、そしてどこの国とも貿易ができるような、そういう国際的な環境をつくっていくということも、私は、お互いに協調し合って発展をしていくという意味からすれば大事なことだと思いますね。  しかし、今委員からお話がございましたように、食糧というのは国民生活にとって欠かせないものなのです。これは、いっどういう事態が起こるかわからない状況の中で、輸入食糧だけに頼っておっていいのかということは、当然これはやっぱり不安になるわけでありますから、したがって、どういう状態になろうとも安全な食糧を安定的に供給できるように賄っていく、保障していくというのは、ある意味では国の責任でもあると私は思いますから、食糧だけは分業論ではなくて、やっぱり自給度を高めて、そして国内で充足できるような、そういう確保の方向というものをしっかり考えていく必要があるというふうに私は思うのです。  ただ、農業というのは、輸出を前提にしてやっている国もあれば、国内自給だけを考えてやっている国もある。日本の国の場合には、どちらかというと輸出ではなくて、国内の自給を賄っていくという意味でつくられている農業が主体ですから、したがって、これだけ国際貿易の自由化が進む中で、大変厳しい問題もありますけれども、しかし、そういう問題も含めながら、可能な限り自給度を高めていく努力は必要ではないかというふうに私は考えています。
  228. 遠藤利明

    遠藤(利)委員 時間がありませんので、最後に農林大臣、簡単にひとつお伺いしたいのですが、そんな中で、各国ともまだ自給率向上のためにいろいろな努力をされておる。しかし、日本の国の中、私たちもそうですが、自給率を上げよう上げようと言いながら、現実は自給率がどんどん下がってきて、四六%とか、あるいは穀物では二九%、いろいろなことを今言われております。  そうした中で、農政審の中の報告書がありますが、何か中身が見えない。そこで、新たな農業基本法のようなものをつくって、具体的に数値目標といいますか、例えば日米包括経済協議の中でアクションプログラムというのがありましたが、具外的な、こういう形で何年度にはこれだけの自給率の達成をいたします、そんな形の農業基本法なりあるいはそういう目標値をつくれないかどうか。ぜひつくっていただきたい。  最後に農林大臣の御所見をいただいて、当面終わりたいと思います。
  229. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 二点、お答えいたします。  食糧に関する農業基本法の問題でございますが、先般の農政審議会においても、その制定、改廃の要否を含めて至急検討するという提案がありまして、今度の新政策、新しい農業合意に伴います国内対策におきましても、新たな基本法の制定に向かって検討を始める、その場合においては、現行の基本法に欠けている点は食糧の問題が一つ大きな問題でございますので、検討に値する上思うわけでございます。  それからもう一つは、自給率の問題ですが、これは需要と供給ですな、分母が需要で。その需要については、食物の選択、組み合わせは国民の嗜好に、今日の自由国家においては、我が国もさようでございます。それからまた、供給については作物の選択と組み合わせ、これは生産者の主体的なものになっております。したがって、がっちり自給率をどうするかというような点についてはなかなか難しい問題があるというふうに、傘として、先進国には一切ございません、結果においての自給率はございますけれども。これから、これまで自給率を上げるというようなことは残念ながらないわけでございます。
  230. 遠藤利明

    遠藤(利)委員 ありがとうございました。
  231. 佐藤孝行

    佐藤委員長 次に、松本善明君。
  232. 松本善明

    松本(善)委員 総理に伺いますが、マラケシュで調印をされましたこの協定は、日本農業を守り、日本国民に安定的に安全な食糧を供給するということを初めといたしまして、国民生活に非常に深刻な影響を与える極めて重大な案件であります。  ここに政府から提出された資料だけ並べてもこれだけあります。協定が発効しますと日本も従うことになるという発がん物質なども含まれる食品添加物などの基準、食糧の安全性にかかわる国際基準、これはやっと英文をきょう提出するということになったのですけれども、訳は出さないという。それもこれぐらいはあります。大変な膨大なものであります。  一昨日開かれました第三十二回消費者大会では、ガット合意協定の危険性が大議論になりまして、米の輸入自由化反対とともに、WTO協定の国会批准は国民に開かれた慎重で徹底的な議論をしてほしいということが決議されたのですよ。この協定が発効しますと、関税が大幅に引き下げられることによって、大企業は多少もうかるところもあるかもしれませんが、円高に苦しむ中小企業は重大な影響を受ける。あらゆる面から本当に慎重な審議が必要だと思います。  まず、農業から入りますが、この問題は単に農家の問題だけではなくて、現在、将来にわたる全国民の食糧の問題であります。平たく言えば、日本人がどんなときでも安心して食べていけるかどうかという問題であります。昨年のような米不足がもっと大規模に起こったときに、一番困るのは農業をやっていない消費者なのです。だから、国民に安全な食糧を安定的に供給することが政府の極めて重要な責任になり、国民の食糧の問題は、その自給の問題にせよ、安全性の問題にせよ、外国に譲ることのできない国の主権の問題であります。だから、全会一致の三度にわたる衆参両院の決議で、「食糧自給力の向上を図り、国民食糧を安定的に供給することは、将に国政上の基本的且つ緊急の課題」として、「国民生活の安全保障体制として食糧自給力の強化」、安全保障ですよ、米の輸入自由化の要求は認められない、こう決議しているわけです。  さらに、だからこそ、この間の総選挙では、すべての議員が政党公約としては米の輸入自由化反対を公約したのです。先ほども、今でも反対だと閣僚で手を挙げられた方があります。それを今村山内閣はやろうとしている、これに反することを、私はそう思います。  先ほどはやはりこの問題が聞かれて、総理は、社会党は苦渋の決断で態度を変更したということを述べられました。しかし、社会党が決めたからといって、態度を変更したからといって、国会の決議は変わらないのですよ。この国会の決議は、国権最高機関の決議です。これを否定するということは、国民主権の否定であります。私は、総理に、この米の輸入の自由化ということが国会決議に明白に反しているではないか。その点、総理は何と考えているのかということをまずお聞きしたいと思います。
  233. 村山富市

    村山内閣総理大臣 ウルグアイ・ラウンド交渉の中で、何とか米を主体にしたこの農業問題は別枠で話をできるようにすべきではないか、何としても国会決議はやっぱり守るべきだ、こういう立場で私どもも頑張りましたし、恐らく政府もそういう立場で頑張っていただいたと私は思っております。  しかし、このガットは単に米、食糧だけの問題ではなくて、先ほどお話がありますような、そういういろいろな工業製品の品目やら、あるいは知的所有権やら等々各般にわたる話し合いをして、そして国際的に協調できるような貿易自由化をしていこうではないか、こういう話し合いをしているわけでありますから、日本の国が米だけで一切反対だ、こういう立場をとり続ければ、これは貿易立国である日本にとっては大変大きなやっぱり打撃を受けることになるので、私は、ぎりぎりまで頑張ったのだけれどもミニマムアクセスを受け入れざるを得なかった。こういう現実の事態については理解はされなければならぬものだというふうに私は思っておりますから、苦渋の選択をして、やむを得ない、こういう決断をしたわけでございます。そういう点につきましては、十分皆さん方にも御理解を賜りたいというふうに私は思います。
  234. 松本善明

    松本(善)委員 国会決議に違反をしてもやむを得ないという御答弁と承りました。  自民党は、当時の声明でもはっきりと明白に、国会決議に明らかに反する、そう言っているのですよ。総理も聞いていてください。自民党も、あなたの与党の自民党もはっきり声明でそう言っているのですよ。この国会決議に違反をしているという問題については、河野外務大臣、何と考えますか。
  235. 河野洋平

    ○河野国務大臣 御指摘のとおり、国会は三度にわたって決議をいたしました。その決議に基づいて、かつて自民党政権は懸命な努力をして、国会決議に反しないように努力をしてきたところでございます。しかしながら、自由民主党が政権の座をおりまして、その後政権につかれた方々も懸命の努力をなさったと思います。  しかし、国際的な趨勢あるいは国際的な協議の中で、懸命の努力にもかかわらず、ミニマムアクセスという特例まで設けるというところまでは行ったけれども、完全に国会決議どおりというわけにはいかなかった。しかし、今総理からもお話があったように、そのことが結果として、トータルに考えて、日本の行くべき道の一つの選択というふうにお考えになったに違いない。これを合意をされた。  そして、私どもは、今議員が御指摘のとおり、その合意について、農業問題についてはこれは我々は納得できない、これでは恐らく農業、農村に大きな打撃を与えることになるであろうということを我々は大変心配をしたわけでございますが、今回、農業農村対策についてでき得る限り政府・与党が一致して真剣な対策を協議してその対策を決めだということを踏まえて、今回皆様方にWTO協定についての御賛成をお願いをしている、こういうことでございます。
  236. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣も国会決議どおりでない、違反であるということを認められたということであろうと思います。  国内対策の問題に言及をされましたけれども、その問題に関してお聞きする前に、大河原農水大臣にお聞きしておこうと思うのです。  あなたは、参議院でも、ここにもおいでになりますが、畑元農林水産大臣に対する問責決議案の発議者として、農業合意が三度にわたる国会決議に違反し、米の実質関税化を初め重要基幹農産物の総自由化を招いた、これにより食糧の安全保障を放棄し、我が国国民の生命を他国に牛耳られることとなり、農業のみならず農村、国土の荒廃をもたらすおそれを生ぜしめ、国益を大きく損なったことは我が国農政史上かつて例を見ない大失態で、我が国稲作農業に致命的な打撃を与えと、その根本的な責任を追及をしております。あなた、この認識は間違っていたのですか。
  237. 大河原太一郎

    ○大河原国務大臣 松本委員の党の立場からこの種の質問をしばしば、もう二度三度ちょうだいしております。  ウルグアイ・ラウンドの十二月の実質合意につきましては、その妥結の過程その他について、政府努力なり結果についてはいろいろ問題があった、それに対する農民の気持ちを代弁して私どもはこれに対する問責を行ったわけでございます。ただし、一方においては、外交関係の継続性とか、あるいは国際社会における我が国の責任ある地位と国際公約、この問題について重く受けとめなければ相ならぬというふうに感じておったところでございます。外交は継続、内政は改革と。  村山連立内閣が発足いたしまして、そのもとにおいては国際公約を守る、そのためのWTO協定の設立、これについては我々としても万全の努力をいたさなければならない、今河野総裁が、自民党総裁、外務大臣がおっしゃったように、国内対策は我々としては十分な対策が講ぜられたということをもって、皆様方にWTO協定承認関連法案成立をお願いしておるところでございます。
  238. 松本善明

    松本(善)委員 党の立場でと言いますが、国会決議の立場で聞いているのです。二回目でありますけれども、あなたが実際に現職の農水大臣だから、この問題は極めて重大なんですよ。あなたは国内対策をやるんだと言うけれども、そのときの趣旨説明では、我が国農政史上、取り返しのつかない大失策だと言っているのですよ、大失態だと。国家国民を裏切り、農民を奈落の底に突き落としたとまで激しい言葉が並んでいますよ。  今あなたが言われました国内対策というのも、すべての農民が対象ではなくて、十ヘクタールから二十ヘクタールの規模拡大農家を育成するという新政策に沿ったものであります。結局、国内対策の対象にならない中小零細農民は切り捨てられるのですよ。規模を大きくする農家もそれでやっていけるかどうかも深刻な不安があるし、北海道ではその規模の農家で自殺したり離農したりということが起こっていること、御存じのとおりです。最大の国内対策は輸入の自由化をしないということなんです。  私は、総理にお聞きしたいのは、現職の農水大臣が取り返しのつかないと言っていることを総理はやろうとしているのですよ。とんでもないことなんだ。そういう問題だからこそ、総理は選挙公報で「コメの輸入自由化については、断固阻止していきます。」と言ったのですよ。今あなたのやっていることは、輸入自由化の推進ですよ。一月一日発足のためにやってくれと、無理な日程を押しつけようとしているのですよ。これが断固阻止というあなたの公約の中に入りますか。あなたの選挙民に、大分の選挙民に約束をした、この公約の範囲にあなたが今やっていることは入るんですか。はっきりお答えいただきたい。
  239. 村山富市

    村山内閣総理大臣 先ほど来お答えを申し上げておりますように、まだ交渉の段階でございますから、私どもは、農業だけは別枠で扱うべきではないか、そして切り離すべきだ、あくまでも関税やら自由化を受け入れるべきではないという農民の声を代弁し、国民の声を代弁して私どもは叫んできたのです。  しかし、交渉の経過の中で、先ほどお話がございましたように、関税化ではなくてミニマムアクセスで、六年間の調整案が出て、この調整案はのまざるを得ないというような客観的主体的条件というものがやはりあって判断をしてきたのであって、安易にしたのではなくて、そういう努力の経過も踏まえた上でやむを得ないなという判断をしたのであって、これは私はやはり政策的な判断として、国民の皆さんもある程度全体がわかっていただければ御理解をいただけるのではないかというふうに考えています。
  240. 松本善明

    松本(善)委員 国会の外では絶対通用しないですよ。これはあなたもやむを得ないと言うと、公約違反をやってもやむを得ないということにとれますよ。先ほど来、国会決議に違反をしても、公約に反してもやむを得ない、そんな理屈は絶対通らないです。  米の輸入の自由化で、日本農業はもう壊滅的な打撃を受けることは明らかです。一方、アメリカはどうかといいますと、日本からの輸入を国内法で厳しく規制をするという身勝手さであります。例えば、牛肉・オレンジの輸入の自由化で日本の畜産農家は大打撃を受けました。ところが、一方アメリカでは、日本からの和牛の輸入について事実上輸入を厳しく規制している。そのために、日本からの和牛の密輸が摘発をされているということが最近報道されています。  これは、アメリカ貿易を自由化をすると言いながら、その実この協定アメリカと多国籍企業の利益のためであるということを端的に証明していると私は思います。だから、クリントン大統領が、この協定アメリカは毎年一千億ドルから二千億ドル、日本円にして十兆から二十兆円の利益アメリカにもたらすと言ったのですよ。アメリカ経済覇権主義です。これについてはクリントン大統領はある大学で、アメリカ国民利益を優先するということが世界の繁栄のためだとも、公然と経済覇権主義を言っている。あなたはこういうことをクリントン大統領が言っていることについて怒りを感じませんか。総理に聞きたいと思います。
  241. 村山富市

    村山内閣総理大臣 クリントン大統領アメリカの大統領としてどういう発言をしようと、それは大統領の見識であって、それは、例えば日本の国とアメリカの国と協定をしているとか、あるいはガットで決められたことをお互いに侵し合ったとかいうようなことがあれば、それなりにやはり交渉の道もありまするし、紛争処理の道もあるわけですから、そういうルールに従って片をつければいいのであって、一々大統領が発言したことに対して、こっちがどう思うかどう思うかといって言うべき筋合いのものではないと私は思います。
  242. 松本善明

    松本(善)委員 それは、アメリカの考え方の基礎にそれがあるからあなたに聞いたのです。あなたの言われる具体的なことをこれから聞きましょう。  今アメリカ国会で審議をしているのは、この協定そのものではないのです。アメリカ政府協定を解釈をして実施をする実施法案であります。その法案の百二条には、ウルグアイ・ラウンド協定のどの規定もアメリカ合衆国の法律に反するものは効力を持たないと明記をしてあります。  この問題については、きのう外務省条約局から、この協定アメリカ国会に提出をしたときのアメリカ政府の声明なるものをもらいました。これは、きのうまで出ないまだきょうも出てません、翻訳は。その分だけでも翻訳して出したらどうだと言ったが、これも出さない。それは、意訳ですけれども、私どもが翻訳をして、要旨をわかりやすく言いますならば、実施法は、このアメリカ実施法ですよ、協定の義務を履行するものだ、協定に反する法律は修正や新法をつくる、それは議会で個々に立法化されるのだ、現行法には変更を必要とするものはない、まあ言うならば、協定の義務を履行するという政府の態度は表明をされています。  ところが、やはりアメリカ合衆国の法律に反するものは効力を持たないという、百二条ははっきりしているのですよ。これは何を意味しているか。議会が法律を変えるまではアメリカ国内法が優先するということなんです。ある意味では、アメリカ議会が協定と国内法が矛盾するかどうかという問題が起きたときに、アメリカ議会が決めるわけですから、事実上協定の解釈権も留保しているということなんです。先ほど、同僚議員二人もスーパー三〇一条について質問をされました。この問題も、これはスーパー三〇一条は生きているわけですよ。これは反しないというのがアメリカ政府の見解です。これについて問題が起こっても、アメリカ議会が変えない限りは変わらないのですよ。これはもう徹底したアメリカ中心ですよ、経済覇権主義です。これを私は外務大臣に聞きたいと思う。あなた、そう思いませんか、これは。どうぞ御答弁ください。
  243. 河野洋平

    ○河野国務大臣 アメリカ日本とは法律の立て方が違うわけでございまして、アメリカ実施法でやるのはおかしいという御指摘でございますが、これはアメリカの制度の問題であって、アメリカは、上下両院、この法律をきちっと通して、そしてWTOに参加をしてくるということにいささかの疑いもないというふうに私どもは見ております。いつ成立するかということを言っているのではなくて、実施法でも問題はないというふうに私どもは見ております。  今議員がおっしゃいました、このWTOと三〇一条の関係について申し上げれば、WTOがカバーする部分、WTOに記載されている部分については、もしそうした、アメリカが三〇一条をもって日本との間に問題を起こせば、我々は、それがWTOがカバーしている部分であれば、WTOにのっとってきちんと問題を処理することができる、そう考えております。
  244. 松本善明

    松本(善)委員 そういうことを言っているから甘いのだと私は思うのです。  カンター通商代表は議会の証言で、アメリカの市場から締め出される危険を冒してまでアメリカWTOに提訴する国があろうか、こう言って開き直っているのですよ。これは議会の証言ですよ。こういうことが言われているわけですよ。  それはなぜか。外務大臣首を振っておられるけれども、紛争が起こっても、アメリカ議会の法律改正を待つまではアメリカは絶対それはだめだということになるのですよ。貿易というのはそんな悠長なものじゃないでしょう。だから、そんな長くかかるなら話をつけようといって、アメリカの圧力に屈するのですよ。だから、カンター発言のようなことが出てきますし、カンター通商代表は、ウルグアイ・ラウンド合意によっても通商法三〇一条は十分効力があり、一層効果的になるだろう、ここまで言っているのですよ。  このアメリカ政府声明で、WTO協定を尊重しているように言っておりましても、こういうカンター発言が出るような仕組みがあるのですよ。この協定の仕組みを使って日米貿易摩擦を有利にしようという。先ほど来、私たちと立場の違う議員が二人も三〇一条の問題について問題にされているのはそこなんですよ。  あなた、これでも経済覇権主義だと思いませんか。これは総理に聞きましょう、ちゃんと解明したのだから。何と思います。あなたはさっきは、具体的にこの協定との関係で起こったら解決するのだと。実際にはそういう問題なんですよ。そういうことは考えていませんでしたか。
  245. 村山富市

    村山内閣総理大臣 カンターがアメリカの議会でどういう証言をしようと、WTOで決められたルールはきちっとあるわけですから、したがって、仮に二国間でいろいろ問題が起こって、それに抵触するようなことがあれば、そのルールに基づいて処理をするというのは当然のことだと私は思います。
  246. 松本善明

    松本(善)委員 そういうやり方が貿易上では実際通用しないから、カンター発言のようなことが出ているのだということを言っているのです。クリントン大統領は、悪いガットは認めない、アメリカ利益にならないような協定は認めないとはっきり言っているのですよ。私は、それについて総理大臣が、それはアメリカのことだと言うのは、全く本当に日本総理大臣として一体どうなんだということを思います。  これをいつまでもやっているわけにいきませんので、ところでこの協定の性格は、予算委員会で河野外務大臣お認めになりましたけれども、協定の文言を確定するというものだし、来年一月一日発効というのも国際的な義務ではありません。国権の最高機関である国会が、来年一月一日発足に拘束されずに、国会決議や各党の公約、国の将来を考えて、あらゆる角度から慎重に審議をするのは当然だと思います。  この協定の批准は、まだ現在段階二十七カ国だというのが外務省の報告であります。米国もヨーロッパ連合もこれからでありますが、今私がお話ししましたアメリカ協定実施法案を提出したときの政府声明の中にはこういう文章があります。欧州共同体、日本、カナダ、メキシコ及びその他の重要な先進諸国、発展途上諸国が、同時にWTO協定とその附属書の十六の多国間協定の義務を負うことに同意しない限り、政府は、これはアメリカ政府ですよ、政府は、それらの協定の受け入れをアメリカに誓約させる意図はないと書いてあります。  これも大変なアメリカ中心の経済覇権主義ですが、これは、日本が批准しない限りアメリカも参加をしない、結局WTOは発足しないということです。だって、これはそのとおりにアメリカ政府の声明に書いてあるのだ。違いますか。日本が批准をしなかった場合にWTOは発足しますか。発足できないでしょう。あなたはどう思いますか。外務大臣に聞きましょう。
  247. 河野洋平

    ○河野国務大臣 WTOが発足するのは、主要国が参加をするということが最も効果的であるというふうに思います。したがって、日本というものを特定するものではありませんが、国際社会の中で、多くの主要な国々が、それぞれいろいろな国内事情を持ちながらも、やはり明年一月一日にはスタートをさせようということを繰り返し相談をし合って、その目標に向かってそれぞれが誠実に努力をしているというのが現在の姿でございます。  アメリカにおきましても、つい数日前に村山総理クリントン大統領と直接話し合って、クリントン大統領の口から、自分たちは十一月末に下院、十二月一日には上院がそれぞれこの問題を審議を終えるという今状況だということを聞いているわけでございます。私どもも、明年一月一日、WTOの設立ができますように、これは国際社会の多くの国々の願いであり、目標でございます。  我々は既にこの協定には署名をしているわけでございますから、この明年一月一日のスタートに向かって皆様方の御理解をいただきたい、こう思っているところでございます。
  248. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣は、私が読み上げました政府声明については、何もお答えにならなかった。(河野国務大臣「アメリカの」と呼ぶ)そうです。それは、このWTOが主要国の批准なしに発足するかどうかという問題についてアメリカ政府が述べているからですよ。結局、それについてお答えにならなかったということは、それは否定できないということだと思います。  日本が批准しなければ、私は絶対に世界貿易機構は発足できないと思います。先走りすることもないし、それから、国会での審議を無理に短縮をして一月一日に間に合わせる必要もないと思います。世界貿易に占める日本の比率は一五%で、アメリカと比べれば十村八でしょう。日本を除いて世界貿易は私はないと思います。しかも、先ほど来言っていますように、また皆さん論じられましたように、日本人が食糧危機に食べられなくなるかどうかという重大な日本の主権にかかわることであります。他国に遠慮をすることなく、堂々と日本の立場を主張すべきだ。  アメリカもヨーロッパ連合も、自国の利益を守るという点では徹底していますよ。アメリカ交渉でも海運分野を全く自由化していない。ECは映像、音楽について自由化を拒否して、フランスは文化侵略とまで言った。何で日本はそんなに弱腰なんだ。十分な審議をして国民合意を得ない限り、絶対に批准すべきではないと思います。  この協定を批准しない場合、旧ガット貿易をするということになりますけれども、日本は、旧ガット貿易をしながら日本国民利益を敢然と守るという自主的な態度をとって再交渉をすべきだと思います。条約を作成しても批准前に修正された条約は、例えば新海洋法条約、千九百七十四年の海上人命安全条約、商品の名称・分類についての統一システム条約などがあることは外務省も認めております。再交渉というのは国際政治で認められていることであります。  国会議員各位が公約に忠実であり、国会決議を尊重する態度をとるならば、国会でこの協定承認されないはずであります。そういう事態になれば、いやでも再交渉をせざるを得ません。  私どもは、国際貿易の公正な発展のために、次の三つの基本方向の貿易ルールの確立が必要だと考えております。  一つは、貿易の自由を広げることは望ましいことではあるが、途上国の意思に反してこれを押しつけるものであってはならない、二つ目は、発達した諸国の間でも、無制限の自由貿易ではなく、一定の限られた分野では一定の保護措置をとる権限を認めるべきだ、三番目、多国籍企業の利潤第一主義の活動を許さない、この三つであります。  我が党は、WTO協定の批准に断固反対をいたしまして、今述べた基本方向に沿って再交渉する、これを強く要求をするものであります。御答弁があればお答えいただきたい。
  249. 河野洋平

    ○河野国務大臣 WTOという多角的自由貿易体制を進めていくことは、繰り返し申し上げておりますが、我が国にとって極めて重要なことだと私どもは思っております。しかしながら、そのために農業分野で極めて困難な状況に陥る方が出るということもまた我々は心配をして、先ほど来申し上げておりますように、政府・与党一体となって真剣な討議の結果、対策をとってきたという事実がございます。その対策をとったということを踏まえて、今回、WTO協定を国会でぜひ成立をしていただきたいということもまた申し上げているところでございます。  先ほど委員お話を伺っておりますと、もう日本WTOのこの考え方をとるべきでない、これからもうこういう考え方はやめてしまえとおっしゃっているようにも聞こえますが、私は、そういうことでは我が国はやっていけないだろうというふうに思います。  また、何も一月一日からスタートをさせることもないではないかというような意味のこともおっしゃいますが、このWTO協定をスタートをさせることによって、先ほど委員が御心配になっておられたように、さまざまな貿易上のトラブルを解決するルールというものもこれによって新しくできるわけでございますし、あるいは物以外の問題についても貿易上のルールができるというメリットがあるということもまた考えていただかなければならないと思います。  百二十五の国と地域によって協議が成立をして、我が国もまたこれに既に署名をしているわけでございます。我が国としては、先ほど来繰り返しになりますが、明年一月のスタートに向けて、誠実に国際社会の中における約束を守るという努力をすることが大事ではないかと私としては考えております。
  250. 松本善明

    松本(善)委員 時間がなくなりましたので、最後でありますが、私どもは、貿易の自由を広げることは当然だということ、先ほど言ったとおりであります。ただ、日本国民農業のみならず食っていけるかどうかという重大な主権に関する問題は絶対譲歩すべきではない、だから再交渉すべきだ、その権利は国際法上も認められていることなんだ、そういう立場をとるべきだということを主張しておるのであります。政府のとっている態度はもう極めて遺憾だということを申し上げて、質問を終わります。
  251. 佐藤孝行

    佐藤委員長 本日の質疑は、以上で終了いたしました。  次回は、来る二十一日月曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十七分散会