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上西和郎君 長年の間、
年金問題に取り組んできた者として、きょうのような発言できる場をお与えいただいたことに、まず御礼を申し上げたいと思います。
私は、今次
国会に出されている
国民年金法の
改正については、二十一世紀を見据えた大変な労作であり、厚生省当局はもちろんのこと、本日お見えの諸
委員先生方の御努力を多とし、必ずしも全面的に満足してはおりませんけれども、この
法案に
賛成という立場で、以下、現在積み残されている
問題について、今まで御発言なさった
方々との重複を避けながら若干の
問題点の指摘をしたい、このように考える次第です。
まず第一は、累積剰余積立金が本年三月末で百兆円を超えている事実が余り表に出ていないのであります。
厚生年金は創立以来毎年単年度黒字、
国民年金の方も
基礎年金を入れましてからはずっと黒字であります。したがって、累計で百兆円を超えている。ところが、被
保険者への貸し付けといったような、言うならば自主的な運用はほとんどなされておりません。
今回、政府案の中に百万円の教育資金の貸し付けがありますが、漏れ承るところでは、三年前、一番
最初この案をつくったときは三百万円で計画なさったと我々は聞いております。なぜ三百万円にいかないのか。百万円といえば、自宅から通学する短大生の入学時にかかる金です。四年制なら三百万円くらいかかるのじゃないでしょうか。そうした意味合いで、教育資金だけに限定しても資金が足りない。いわんや、このほか医療の介護とかあるいは子女の結婚とか、いわゆる中小企業のサラリーマンにとって緊急に金が要る場合のことをお考えになるならば、もうちょっと貸し付けの理由目的を広げ、枠も拡大をする。百兆円あるのですから、この際、せめて三兆円や五兆円はこの被
保険者への貸し付けに回す、こういうことについてぜひ御検討いただけないか、このことをまず第一点に申し上げます。
第二点は、
現行給付上の
問題点を三つほど挙げてみたいと思うのです。
その第一は、戦時中、陸海軍の軍人として働いた、言うならば兵役
期間の取り扱いであります。
赤紙一枚で日本のため、お国のため、当時で言うならば天皇陛下のためと引っ張り出された
方々が、戦後、国家公務員、これは旧三公社を含みます、及び地方公務員として働いた
方々は
年金が通算されるのです。ただし、最高四十年という限度はございますが、なります。もちろん、軍人恩給の単独権を持っている方は別ですよ。三年とか五年とか、兵役
期間を中途半端に持っている
方々は、公務員共済に入った
方々はつなぐのです。
ところが民間、だから農林
年金も私学共済もそうですが、
厚生年金、
国民年金は、極端に言えば一日も一月もつながらないのです。難儀をしただけ損。日本国家のために身命をささげて頑張った
方々が、生き長らえて帰ってきた就職先のために
年金で不当な取り扱いを受けている。大体、今の満七十歳以上の
方々で健全な男子はほとんど皆持っているのです。このことに目をつぶったままの
年金制度の
改正はいただけない。このことについて御一考をぜひと
お願いいたします。
二つ目は、小さなことでありますが、遺族
厚生年金の
給付基準について少しく申し上げます。
遺族年金の受給者が夫、両親、祖父母、すなわち奥さんが亡くなった、あるいは子供や孫が独身で亡くなった場合のことですが、被
保険者が死亡した時点で現に五十五歳以上になっている方に限って六十歳から
給付開始なんであります。これを、
共済年金、まあ国家公務員、地方公務員、私学、農林、四つともでありますが、この
共済年金の方はどうなっているかと申しますと、被
保険者、
加入者が死亡した時点で、年齢の制限を設けず、現に夫であり、両親、祖父母である受給権者は六十歳になれば全員受給されるのであります。こうした大きな矛盾、不公平をなぜ放置されたのでしょうか。
しかも、もっと突っ込んで言いますと、
共済年金の場合、例えば御両親が御健在でお父さんがもらっている、たまたまお父さんが先に亡くなったら、お母さんがそのままこの
遺族年金をもらえるのです。これを転給といいます。同位権者があった場合、転がす、
給付を転じていくのです。
厚生年金は、仮にお父さんがもらっていて、お父さんがお亡くなりになった後は、お母さんが御健在でもこれは打ち切りなんです。こうしたところを是正も修正もなさらないということは、本当に私は不満であります。こうした点について、諸先生方の突っ込んだ御検討をぜひ
お願いしたいと思うのであります。
それから三つ目に、繰り上げ減額
制度がございます。
繰り上げ減額
制度は、
共済年金の場合は
給付開始年齢から最高十年、例えば六十としますと五十歳から、退職をしておればいわゆる退職
共済年金をもらえるのであります。ところが
厚生年金は、満六十歳になり今の特例
支給を受けるまでは、船員とか鉱山労働者の五十五歳は別として、原則として男女を問わず六十歳からしかもらえない。例えば、五十九歳で企業が倒産した、ほうり出された、再就職先もない、ここで幾らかでも
厚生年金をもらえればと思っても、それは全然だめなんであります。
共済年金の減額率は一歳につき四%です。例えば五十八で八%引く。それで
年金をもらえたらこんなうれしいことはないというのは、民間労働者の切なる希望であります。
繰り上げ減額
制度は
国民年金にもございます。四二%も五歳で引くのですから、
カット率は大変なものです。今回も、三五%くらいでどうかということが一部に出ておりますけれども、とてもじゃないが、
共済年金に比べて雲泥の差がある。ぜひ諸先生方が、
共済年金並みの一歳につき四%、ざっくばらんに言って五十五歳から
給付開始、将来六十五歳になったらやっぱり共済と同じように十年早くからもらえるといったようなことを創設していただきたい。
以上三点、現
給付上の
問題として申し上げておきます。
次は、今次の法
改定について、三つほど
問題点といいますか、これを指摘したいと思うのです。
第一は、六十五歳
給付を余りにも安易にお考えじゃないでしょうか。
確かに、先ほど来お話があるように、六十過ぎても働きたいという意欲を持っている方はたくさんいらっしゃいます。逆にしかし、六十から先はこの職場は危険だ、危ないといって働けない職場も結構あるのです。私はもともと電力の出身ですから電力の例で申し上げますと、山の中に立っている送電鉄塔、あのてっぺんは、どんなに天気晴朗な日でも何メートルか揺れているのです。あの上で作業をすることは五十五歳を超えると全く危険です。探せば、こうした危険な、高所とか高圧とか高熱とか、いろいろな職場はまだまだあるのじゃないでしょうか。
昭和六十一年度に
年金統合法を施行されたとき、少なくとも船員と金、銀、銅、炭鉱、こうした鉱山労働者には五十五歳
給付の道を政府はお残しになりました。今回はそれが全然ないのです。
ぜひ業態や職種によって、これはもう六十でやめていただこう、
年金生活に入っていただこう、こうしたことをおやりになりませんと、ざっくばらんに言って、泥棒に追いつけないお巡りさんが出てくるのじゃなかろうか。こういうことを懸念をいたしますので、六十五歳に一気に上げていくということについてやはりもっと緩和策を設けるべきではないか、このように考える次第です。
二つ目は、
在職老齢年金です。
今回、二十四万が三十四万になるわけですから、確かに現状よりかはよくなります。ただ、私の前の方が御指摘のように、実際三十四万になるけれども、逆に今よりかは悪くなる例などが出てきます。六十歳を超えてなぜ三十四万円で抑えるのか、私は素朴な疑問を抱かざるを得ません。
私自身、六十二です。同期生会を開きますと、まだまだ大
学生を抱えている仲間がいっぱいおります。六十過ぎたからといって、急激に
生活ダウンは不可能なんです。なぜ、ここを五十万くらいで
調整することをお考えにならないのか。逆に言えば、
厚生年金基金と、企業が退職金などを運用して退職
年金を別に出したりしますと、三十四万円を上回る
年金が、現に一部上場、二部上場の中では出てきているのです。だから、三十四万円ぽっちで抑えられるなら、働くよりか
年金もらった方がましということにもなりかねません。六十過ぎてからの勤労意欲を高める意味でも、ぜひこの
調整の枠を、三十四万よりか五十万、
現行の二十四万の倍くらいに設けて高年齢の
方々の勤労意欲を高める、
生活安定を図る、こういうことについて御一考を煩わしいと思うのであります。
三つ目は、
雇用保険との
給付調整です。
雇用保険は、御
承知のとおり事業主と労働者本人が掛けてきた長年の蓄積による、言うならば
失業給付というのは権利であります。これは私の前の方がいみじくもおっしゃいましたが、正直申し上げて、田舎に行ったり中小零細企業に行くと、うちは退職金少ないけれども、国の方の退職金、こう
失業給付のことを言うわけですが、あれがあるから辛抱してくれ。これが偽らない中小企業の実情じゃないでしょうか。それを、ことしの三月時点でいえば、最高で
給付期間三百日、日額九千四十円、二百七十一万二千円をもらう間は一円も
厚生年金を出さないなどというのは、冷酷非情と言って過言ではないと思います。
私は、本当を言えば完全併給、現在のように併給を続けてほしいと思いますが、事ここに至っている以上、せめて五年間の移行措置を設けて、一年目は九〇%、二年目は八〇%と一〇%ずつ
厚生年金をダウンをし、五年後に五〇%
給付をする、そしてこれで将来にわたっていく。
雇用保険の
失業給付と
厚生年金の
併給調整について、もっともっと情のある、温かみのある弾力的運用をやっていただけないか、このことをあわせて
お願いを申し上げたいと思います。
最後に、こうした矛盾点が積み残されたまま、なぜ
年金法
改定の
審議が始まったのか、素朴な疑問をつけ加えながら、労働者
災害補償保険の
給付との
調整問題について申し上げます。
厚生年金並びに
国民年金加入の民間労働者が業務上災害に遭ったとき、当然のことながら、労働者
災害補償保険法の適用を受けます。その場合、どういうことになるか。大きな
障害が残ったり、不幸にして命を落とした場合、労働者
災害補償保険の
障害補償
年金あるいは遺族補償
年金が出る場合、
厚生年金と
国民年金の
加入者は、
国民年金の
障害年金あるいは
遺族年金、さらには
厚生年金の
障害年金、
遺族年金が全額出されて、労災保険の方が七八%から八八%くらいまで
カットをされるのです。
一方、三公社、今で言うJR,NTT,JT、さらに農林
年金、私学
年金の
方々は同じ民間労働者です。この
方々が同じような事故に遭えば、彼らはどうなるか。労働者
災害補償保険の方が満額出るのです。そうして、
共済年金の方が最高三割くらい
カットをされるのです。どちらが労働者に有利か。私のお隣に連合の代表の方もおいでですが、事故発生の直近の三カ月間の
賃金、給与、さらにはボーナスまで含めて
給付されるのは労災保険です。断じて有利です。
それなのに、
厚生年金、
国民年金加入者は、労災の方を
カットして、
加入期間全
期間の平均で
計算をされる厚年や国年の方をもらうというこの矛盾、このことは労働者の個々の幸せにとっても許すことができないと思うのです。かつ、公的
年金制度の
財政事情からいっても、そういったことにお詳しい戸井田
団長がおいででありますが、
年金財政全体としてもそれは道なんですね。
厚生年金、
国民年金を
カットされた方が
年金制度は助かるわけでしょう。こうしたことが全く議論もされていなければ、厚生省が触れようともしない。私はここに大きな不満を表明せざるを得ないのであります。
もう一遍申し上げます。事故、業務上災害に遭ったときに、なぜ厚年、
国民年金加入の民間労働者はこうした不利益、不公平な取り扱いを受けなければならないのか。そうして、三公社、私学、農林
年金の
共済年金の
方々は有利な取り扱いを受けている。このことを私はやっぱり厳しく指摘をすると同時に、
厚生年金、
国民年金加入の民間労働者全体に、今申し上げた旧三公社の
方々、さらに私学、農林
年金の
方々と同じように労働者
災害補償保険の適用を優先させる、このことをぜひ実現をしていただきたい。もっと突っ込んで言うならば、労働者
災害補償保険の目的からいって、労働者が業務上災害、公務災害に遭ったときは労働者
災害補償保険の適用を最優先するのが当たり前じゃないでしょうか。
このことについて私は声を大にして訴え、以上、いろいろと話を申し上げましたけれども、以上の点を申し上げ、本
法案に不満ながら
賛成する立場での
意見を終わらせていただきます。ありがとうございました。(
拍手)