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1994-10-21 第131回国会 衆議院 厚生委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成六年十月二十一日(金曜日)     午前九時五分開議 出席委員   委員長 岩垂寿喜男君    理事 衛藤 晟一君 理事 木村 義雄君    理事 鈴木 俊一君 理事 戸井田三郎君    理事 井上 喜一君 理事 石田 祝稔君    理事 山本 孝史君 理事 網岡  雄君       荒井 広幸君    岸田 文雄君       岸本 光造君    熊代 昭彦君       近藤 鉄雄君    志賀  節君       塩崎 恭久君    住  博司君       田中 直紀君   田野瀬良太郎君       高橋 辰夫君    竹内 黎一君       長勢 甚遠君    根本  匠君       藤本 孝雄君    堀之内久男君       松下 忠洋君    山口 俊一君       青山 二三君    井奥 貞雄君       岩浅 嘉仁君    小沢 辰男君       岡田 克也君    野呂 昭彦君       福島  豊君    桝屋 敬悟君       矢上 雅義君    柳田  稔君       吉田  治君    米田 建三君       金田 誠一君    五島 正規君       土肥 隆一君    森井 忠良君       三原 朝彦君    岩佐 恵美君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 井出 正一君  出席政府委員         厚生大臣官房長 山口 剛彦君         厚生大臣官房総         務審議官    太田 義武君         厚生省社会・援         護局長     佐野 利昭君         厚生省老人保健         福祉局長    阿部 正俊君         厚生省児童家庭         局長      佐々木典夫君         厚生省保険局長 岡光 序治君         厚生省年金局長 近藤純五郎君         社会保険庁運営         部長      横田 吉男君  委員外出席者         経済企画庁調整         局調整課長   野村  誠君         大蔵大臣官房調         査企画課長   坂  篤郎君         大蔵省主計局共         済課長     松川 忠晴君         文部省高等教育         局学生課長   北村 幸久君         労働省職業安定         局高齢障害者         対策部企画課長 太田 俊明君         建設省住宅局住         宅建設課長   那珂  正君         厚生委員会調査         室長      市川  喬君     ――――――――――――― 委員の異動 十月二十一日  辞任         補欠選任   小野 晋也君     松下 忠洋君   近藤 鉄雄君     志賀  節君   塩崎 恭久君     田中 直紀君   根本  匠君     岸田 文雄君   堀之内久男君     岸本 光造君   塚田 延充君     吉田  治君 同日  辞任         補欠選任   岸田 文雄君     根本  匠君   岸本 光造君    田野瀬良太郎君   志賀  節君     近藤 鉄雄君   田中 直紀君     塩崎 恭久君   松下 忠洋君     小野 晋也君   吉田  治君     塚田 延充君 同日  辞任         補欠選任   田野瀬良太郎君    堀之内久男君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国民年金法等の一部を改正する法律案内閣提  出、第百二十九回国会閣法第二六号)      ――――◇―――――
  2. 岩垂寿喜男

    岩垂委員長 これより会議を開きます。  第百二十九回国会内閣提出国民年金法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。熊代昭彦君。
  3. 熊代昭彦

    熊代委員 岡山一区選出の熊代昭彦でございます。国民年金法等の一部を改正する法律案につきまして質問をさせていただきます。  今回の年金改正は、御承知のように、現在の年金世代年金充実をする、そして、将来の年金、現在の若者方々年金を安定させる、老後生活の柱としての年金を安定したものとして確保するというために、歴史的な大きな改正であるというふうに私は思うわけでございますけれども、最初に、これにつきまして厚生大臣御所感をお伺いいたしたいと思います。
  4. 井出正一

    井出国務大臣 公的年金制度は、長期にわたる国民老後生活基本的部分を確実に支えていくことが強く要請されておりまして、将来にわたり長期的に安定した制度を確立していくことが課題であります。  今回の改正案は、今後人口の急速な高齢化等が見込まれる中で、活力ある長寿社会の実現に向けて、高齢者雇用を促進していくとともに、年金制度もこれと連携のとれた仕組みとすること、また、将来の現役世代負担が過重なものとならないよう給付負担バランスを図ることという観点から、制度全般にわたり必要な見直しを行うものであります。  このように、今回の改正は、二十一世紀の超高齢社会にふさわしい制度とするため不可欠なものでありますとともに、六十歳代前半年金見直しネット所得スライド制導入等の内容を含む画期的なものでございます。年金制度の安定のために大きな意味を持つ改正考えております。
  5. 熊代昭彦

    熊代委員 大臣もただいまおっしゃいましたように、大変に大きな改正であると思います。人口が急速に高齢化する中で、生まれてくる子供の数は非常に減っている、超高齢社会を迎えるというような状況の中で、今保険料を払っていても自分の年金は将来本当にもらえるのだろうかというようなつぶやきが若者の間に聞かれるような昨今でございます。  私も初めての選挙を戦わせていただきまして、厳しい状況ではあるけれども、しっかりとした改正をやっていけば、良薬口に苦いという面もあるかもしれないけれども、しっかりとした改正をやっていけば、これは絶対心配ないんだ。特に私は、私ごとで恐縮でございますが、年金熊代、こう銘打たせていただきまして、年金熊代福祉熊代ということで選挙を戦わせていただきました。私が当選すれば年金は絶対に大丈夫だ、しかし、万一私が落選したら年金は危ないかもしれないと申し上げておりました。  しかし、これは冗談三分で本気七分というようなつもりでやってきたわけでございますが、私ばかりではなくて、この改正に携わられました厚生大臣初め事務当局方々、そして前連立政権方々も、この中身について本当に御苦労いただいたと思います。それから、新しい我々の政権につきましても、本当にこれにかかわった方々は、歴史的な重大な年金確保のために大きな働きをされたのではないかというふうに思っているわけでございます。そういう意味で、現在の厚生委員先生方が万一落選されるようなことがありますと、本当に年金は危ないというような気もいたすわけでございます。  一つ一つ中身に触れることは、既に周知の事実が多いわけでございますので省略させていただきますが、重点的なことについて少しお伺いいたしたいと思います。  議論の本論に入る前に、この中身について、超高齢化社会雇用状況に合わせて思い切った改正をするということでございます。これは、ある意味では厳しく見えるわけでございますけれども、それとともに、例えば、女性に対しまして育児休業をとるという場合に保険料免除する、そういう中身も含まれておりまして、これは実は非常に大きな中身ではないかと思います。  それで、事務当局にお伺いいたしたいのですけれども、この保険料免除、平均的には大体一月に幾らぐらいになるのでございましょう。
  6. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 何の免除料ですか。ちょっと……(熊代委員健康保険料と、あと厚生年金保険料」と呼ぶ)ちょっとお待ちください。申しわけございません。
  7. 熊代昭彦

    熊代委員 詳しい数字は後ほどお伺いしたいと思いますが、平均月額二万円ちょっとになるはずでございます。そういう大きな改正もあるということでございまして、極めて前向きな改正も繰り込んでいただいているわけでございます。  そういう基本的な認識の上に立ちまして、しかし、この時点におきまして、改正でございますから一挙にすべての改正をやることはできないということでございますので、一歩一歩前進していくという意味で、現時点での改正中身を確認するとともに、将来まだ検討するべき事項ということもあわせてお伺いしたいと思います。  一つは、改正そのもの関係ございませんが、年金経済運営関係についてでございますけれども、将来の年金が大丈夫か。制度的には大丈夫な工夫がこの中に含まれているわけでございますけれども、しかし、経済が例えば破綻した場合に、経済運営が破綻した場合に年金だけが大丈夫、福祉だけが大丈夫ということはないわけでございまして、これはしっかりした経済運営を私どもはやっていかなければならないということでございますしっかりとした経済運営をすることが年金財政前提条件であります。  それで、現在景気にやや明るさが見えてきたものの、やはりまだまだ中小企業設備投資は出てこないとか、経済について大変不安がございます。一ドルは百円を割ってしまった。円が強くなり過ぎまして、購買力平価ですと百二十数円、百二十円ちょっとと言われておりますけれども、それと大きく乖離してきたということがございます。  それで、年金との関係でやや不安に思うことは、大蔵省というのは問題でございましょうけれども大蔵省中心政府経済対策というのは、公共事業について大いに増していく、公共事業をふやす、しかし、その他の経費は年々厳しく絞っていくということでございまして、ことしも経常経費は一〇%の削減というようなことでございます。  しかし、公共投資優先というのは、一つはこれは需要創出効果が高い。モデルでいえば一・四倍の需要創出効果があるというようなことでございます。乗数一・四だ。一般的な経費はそうではない、一ちょっとだろうというようなことでございました。それからもう一つは、公共事業は将来に資産を残すというようなことでございましょうけれどもモデル自身が、例えば土地買収に大変時間がかかる、そういうようなことも含まれていないわけですね。余りにここにばかり金が集中されますと、大変手間取ってくる。公共事業も大切でありますけれども公共事業のほかにも、科学技術の振興であるとか教育であるとか福祉充実であるとか、非常に重要な面があると思います。これらも立派に消費創出に役立つ。  現在、一番の問題は、ISバランスが崩れたと言っておりますけれども投資と貯蓄のバランスでございます。投資が少ないということでございますけれども、十分に消費がないところで投資をする人は、これは正常の判断をしないわけでございますから、やはり投資を導き出してくるためには十分な消費がなければならない。  高齢化社会を迎えまして福祉大変金がかかるという試算がございますが、これは将来の問題でございまして、現在は消費が十分ないわけですね。将来と現在を混同してはいけないのではないかというふうに思います。専門家は非常に勉強されるので、優秀な専門家は本当に勉強されますので、余りに勉強されて将来のことを現在のことにしてしまうということが、我が国経済我が国自身にとってはそれほど問題ではありませんが、世界にとって非常に問題である。我が国にとりましても、円が高くなり過ぎたということで、極めて大きな問題、産業空洞化が出てきたということでございます。  そういうことで、ここは少し固定観念を見直さなければ本当の景気回復はないのではないかというような気がいたすわけでございますが、経済企画庁さんのこの点についての御見解をお伺いいたしたいと思います。
  8. 野村誠

    野村説明員 経済企画庁調整課長でございます。  今先生指摘のとおり、政府としては、我が国経済景気回復を一日も早く達成するとともに、中長期的にも内需中心安定成長路線に戻すことが、財政観点のみならず国内均衡、対外不均衡、いずれの点からも極めて重要と考えております。  このため、これまでさまざまな内需拡大策をとってきております。その中には、公共投資のみならず大規模な所得減税、この六、七月に実施されました所得減税、さらには住宅投資民間設備投資促進策といった政策も含まれております。現在景気にやや明るい兆しか見え始めておりますのも、やはり消費が今のところは回復してきているということが重要でございます。  今後とも、平成六年度予算の円滑かつ着実な執行等を進めることによりまして、先生指摘のとおり、内需中心とした持続的成長確保に努めてまいるということが大事だと思っております。
  9. 熊代昭彦

    熊代委員 経済運営そのものにつきましては経企庁が統括しておられると思いますが、大蔵省さんの方も、予算財政政策という面で、あるいは税制政策という面で、非常に大きく景気動向につきまして責任を持っておられるというふうに思うわけでございますけれども税制改革が一応の決着を見まして、今法案が審議されているところでございますので、この税制改革決着後の、大蔵省さんプロパーの、景気回復に向けてどのようなシナリオ考えておられるか。円高下産業空洞化が非常に心配されている、そういう状況の中でどのようなシナリオ考えておられるか、お伺いできたらお伺いしたいと思います。
  10. 坂篤郎

    坂説明員 大蔵省調査企画課長の坂でございます。  先生の御質問、大変広範にわたっておりまして何か難しいのでございますが、まず最近の景気の現状と申しますか、それにつきましては、今経企庁野村課長からもお答えになりましたけれども、最近、個人消費が若干持ち直しの動きが広がりつつあるようだ。それから、例えばIIP、鉱工業生産指数などを見ましても、生産の方も若干ここのところ持ち直しをしている。それから、企業マインドと申しましょうか、業況感と申しましょうか、そういったものもこれはかなりはっきり改善をしつつあるといったことで、いろいろなところを見ますと明るさが大分一時に比べると広がってきておる、そういうことで、全体としまして、緩やかに景気回復方向に向かいつつあるということではなかろうかと思っております。  ただ、他方先生指摘のように、最近の為替相場動向等につきましては若干懸念すべき要因も見られるということでございます。  政府といたしましては、このような景気回復への動きが始まっておりますので、これをより確かなものとして、我が国経済を本格的な回復軌道に乗せるということを目指しておりまして、そのために六年度予算の着実な執行でございますとか、その他、今後とも適切な経済運営に努めてまいりたいというふうに考えているわけでございます。  今後でございますけれども、ただいま申し上げましたように、若干景気回復方向に向かっているということでございますし、住宅投資でございますとか、あるいは累次の経済対策効果政府投資景気の下支えをしているという中で、また今先生指摘のように、所得減税につきましても来年度も続けるということが決まっているわけでございますが、所得減税効果もございまして、個人消費回復がより確かなものになってくるのではないかというふうに見ているわけでございます。  まさに先生指摘のとおり、個人消費回復しできますと、生産面にもよりよい影響を与え、さらに企業収益も最近若干改善の兆しか出ているようでございますが、改善をしてくるということになりますと、設備投資、この設備投資は今も一部の産業では動意が見られますが、全体としてはやや減少ぎみでございます。この設備投資にもいずれ動意が出てくるのではなかろうかというふうに見込んでおりまして、我が国経済は本格的な回復軌道に移行していくのではなかろうか。全体として、今までの景気対策あるいは減税といったことも全部組み合わせまして、だんだんよくなってくるのではなかろうかというふうに見ているところでございます。
  11. 熊代昭彦

    熊代委員 大体回復軌道に乗ってきたということでございますけれども、現実問題としてはまだまだ大変に心配であろうというふうに思います。  重ねてお伺いして申しわけございませんが、一ドル百円を切った状況で、我が国産業はこのままずっと続いて耐えられるだろうかどうだろうかということでございます。これは経企庁さん、大蔵省さん、それぞれ公式の見解ということではないと思いますけれども、感想として一日だけお伺いできれば幸いでございます。
  12. 野村誠

    野村説明員 経済企画庁でございますのでやや理屈っぽくなるかもしれませんが、為替レートは、中長期的には各国物価上昇率経済成長率といった、いわゆるファンダメンタルズと呼ばれている経済要因を反映して決定されるわけでございますけれども、時期によりましては内外の金利差に基づく資本取引動向であるとか経常収支動向だとか、あるいはさまざまな市場の思惑といったもので影響を受けることがあると思います。現在の動きもかなりこういったファンダメンタルズと離れた部分で動かされている部分が多いと思っておりますので、そもそもこの百円を割った水準が続くものなのかどうか、これも一概に言えないものと思っております。  いずれにいたしましても、為替動きというのが国内経済に対する影響は、これはいろいろ深刻でございますので、十分注意してやってまいりたいと思っております。
  13. 坂篤郎

    坂説明員 先生指摘のように、一時百円台になっていたのですが、またこのところ百円台を割りまして九十七円とか八円とか、それくらいになっているわけでございます。  円高と申しますのは、輸出入両面から経済影響を与えるのだというふうに思っておりますけれども、したがいまして、いずれにいたしましても輸入品が安くなるといったことで景気に、経済にいい影響も片っ方であるわけでございます。他方輸出企業の円建ての手取りが減少する、あるいは手取りを減少させないためには例えばドルベースでいうと値上げをしなければいけないということがございますので、売れ行きが鈍る可能性があるということで、企業収益を圧迫するということがございます。そういう意味で、せっかく今緩やかながら回復に向かっている景気動向影響を与える可能性があるのはおっしゃるとおりでございまして、私どももそのような懸念は若干有しているところでございます。  ただ、幸いと申しますか、先ほど御説明いたしましたように、我が国経済は緩やかに今回復を続けておりまして、私どもとしてはそういった動きを、先ほども御説明いたしましたように、より確実なものにしていくような努力を続けていきたいというふうに考えているわけでございます。
  14. 熊代昭彦

    熊代委員 経済運営をしっかりしていただければ、年金制度は将来にわたって今度の改革で大丈夫な礎石が敷かれるというふうに思います。私自身といたしましては、やはり一ドルを購買力平価に近い百二十円前後に押し戻すというような思い切った需要喚起対策が必要であると思います。  そういうことも考えていただきまして、経済がまた幸いにして回復しまして景気過熱ぎみになるというようなときには、思い切った行財政改革で支出を減らしても、そこから必要ならば消費税を上げるというようなことでも、立派に経済運営できるわけでございますので、そういう観点からしっかりした経済運営をしていただきまして、年金の安定にも資していただきたいというふうに思うわけでございます。  次に、年金支給開始年齢につきまして、一、二のことをお伺いいたしたいと思います。  我が国定年は、これは企業ごと定年でございまして、実際に働く年齢とは違いますけれども、六十歳に今近づきつつある。しかし、我が国よりもはるかに雇用状況の悪いヨーロッパ各国、アメリカは大体六十五ぐらいであるということでございまして、これにつきまして二〇〇一年から一三年までかけて六十五歳にするという案が盛り込まれておりまして、これは非常に卓見であると思うのです。  なぜ卓見であるかと申し上げますと、年金は、掛金に応じまして、貢献に応じまして、そして世代間扶養を加えまして支給されるものではありますけれども、それとともに、退職後の所得を補うというものでございますので、ある意味で、その年齢が来れば退職していただくということですね。フル年金が出ますと退職していただく、こういうシステムでございます。年金制度が六十であれば、六十を超えて雇用を続けていこうという企業はまずあらわれないということでございまして、これはやはり定年を延ばす、何らかの意味で、再雇用も含めて延ばしていくというためには、年金支給開始年齢そのものが上がってこなければいけないのだといういわば逆の発想があると思うのです。  鶏が先か、卵が先かという話がございますが、現在ちょっと雇用情勢が悪くなっておりますので、どうも年金支給開始年齢定年と乖離するのじゃないか、そういう心配が非常に大きくなっておりまして、今回も別個の給付が入れられておりますけれども、六十歳から六十五歳ないしは六十一歳の間に入れられておりますけれども、我々は非常な不確定情報下に行動しておるわけでございますから、スペースシャトルを打ち上げるような正確な計算で物事をやっているわけではございませんので、みずからの利益のためにと思って考えることがかえってみずからの利益にならないということもあるわけですね。みずからの団体利益のためというふうに思っていることもみずからの団体利益にならないということもありまして、私自身はこの例はそれに非常に近い例だというふうに思います。  人口構成からいいまして、若者の数がこれから著しく減ってくる。二十歳に達する人の数をはかりますと、年々五万とか七万とか減ってくるわけですね。そういう意味で、若年労働力が非常に減るという中で、もし制度的制約さえなければ定年というのはどんどんどんどん上がっていくんじゃないかというふうに思います。それには年金がやっぱり先取りして目標を定めていかなければならないということでございます。目標を定めればそれに応じていく。  一番困るのは、私はやっぱり経営者の方だなと思いますね。経営者の方は、ある年齢で高い給料の人にやめていただいて、それで若い人を雇った方が有利であるということでございますが、経営団体の方はそれでもやる、労働力状況から見てやらざるを得ない、それから保険料負担から見てもやらざるを得ないという二重のことでやると言っておられますので、労働組合を代表される方々にもぜひよろしくお考え願いたいと思いますけれども、そういう半面があると思います。  私自身は、ですから、まず人口の構造の移り変わりに従いまして年金支給年齢を動かす計画を立てる、今回の改正が非常にいい線をいっていると思いまして、さらにこれを延ばすとか、二〇一三年になりましてもさらに延ばすというのはかえってマイナスになるんじゃないか、労働者のためのマイナスになるんじゃないか、そういうような考えを持っているわけでございますが、この点に関しまして労働省さんのお考えをお伺いしたいと思います。
  15. 太田俊明

    太田説明員 先生指摘のように、年金支給開始年齢の引き上げが先か、あるいは定年制の延長が先かというような御意見もございますけれども、私どもの、まず労働省としての高齢者雇用についての考え方を述べさせていただきたいと思いますけれども、まず一つは、御案内のとおり、今後の労働力人口の見通しを見てみますと、二十一世紀初頭には労働力人口の四人に一人が高齢者となる、そういう超高齢社会が到来するわけでございます。他方で、我が国におきましては、特徴的なことは、高齢者就業意欲が極めて高いということがあるわけでございます。こういった二つの状況に対応しまして、今後我が国経済社会の活力を維持していくためには、二十一世紀初頭までに、希望すれば六十五歳まで現役として働ける社会、こういった社会の実現に向けて積極的に取り組んでいるところでございます。  なお、この場合に、高齢者の場合には六十歳を超えますと、健康など個人差が相当広がってまいりますので、また一方で就業ニーズも多様化するということから、高齢者企業内における六十五歳までの雇用確保につきましては、一律に六十五歳までの定年延長によることは必ずしも適当ではないということでございまして、定年延長のほかに勤務延長とか再雇用といった多様な形態によりまして六十五歳までの継続雇用を促進しているところでございます。
  16. 熊代昭彦

    熊代委員 基本を六十五歳まで働ける社会をつくる、これは既に欧米諸国で実現しているわけでございますので、これはできると思います。六十歳から六十五歳まで元気に働いて社会に貢献して、年金よりもはるかによい給料を取れる、そういう社会をつくり上げる、それは人口構成からいっても可能であるということが基本でございます。  しかし、いずれにしましても、ただいまお答えがありましたようにいろいろな細かい配慮、個人個人の特殊事情において細かい配慮はしなければならないということでございますし、将来に対する不安というのは理屈だけでは割り切れないところでございますので、六十歳から六十一歳ないし六十五歳の間に別個の給付をするということは、ある意味でこの時点ではやむを得ないというふうに思いますが、そういう私の申し上げたような議論の背景もあるということを御理解いただきたいと思います。  今回の改正で、保険料卒はピーク時におきましてもとりあえず二九・六%、三〇%を切る水準になるということでございまして、この支給開始年齢の引き上げを行わなければ三四・八%になるということでございますので、大幅な改善でございます。この時点におきます改善といたしましては極めて大きな成果であるというふうに評価をいたしたいと思いますが、しかし、常識から考えればまだまだ、二九・六%ですから、本人の負担というのは一四・八%、健康保険料を入れますと、二〇%ぐらいにいくということでございますから、常識から考えると、ちょっとまだ高いなというようなそういう気持ちはあると思います。  しかし、御承知のように、年金は五年に一度再計算をやっておりまして、一歩一歩進んでいくわけでございますので、この時点では非常に大きな成果だと思いますが、最終的な姿としまして、もし可能であれば幾つかのウルトラCとも言えるような施策がありまして、もし可能であれば二〇%以内に抑えるというようなことも、そうすると本人は一〇%以内になりますので、そういうようなことが、今後五年、五年を繰り返していく中でできれば大変よいなというふうに思います。  今回の改正を、これでもうすべてうまくいったんだというのじゃなくて、一つの大きな前進としまして今後もいろいろ考えていただきたいというふうに思うわけでございますが、例えば、基礎年金の補助金を二〇〇一年から十七年とか長い期間をかけて三分の一から二分の一にするというような御意見もあるやに聞いております。これは次期再計算期の課題としましては十分検討に値する、財源問題は十二分に考えないといけないと思うのですが、財源問題を徹底的に考えまして、ならば十分検討に値することではないだろうかというふうに思います。  それから、超高齢化社会をすばらしい長寿社会にするというためには、六十五歳を超えたらだれでも社会から支えられるんだ、そういう考え方じゃなくて、六十五歳を超えても社会を支えていらっしゃる方は幾らでもいらっしゃるわけでございますので、そういう元気で社会を支える側に回っていただくという人の比率をどんどんふやしていく、健康対策も含めまして、そういうことが非常に重要であるというふうに思うわけでございますが、年金だけは、前々回の改正によりまして、六十五歳を超えると保険料はもう払わないということになっておりまして、完全に年金世代になるということになっておりますので、その点は非常に改善ではあったわけでございますけれども、将来の人口構成考えますと、非常にいいサラリーを取っていらっしゃる方は、やっぱり支える側にも回っていただくというようなことも検討に値することではないだろうかというふうに思います。  それから、支給開始年齢定年制関係でございますけれども、これにつきましても、先ほど申し上げましたように、本当に大部分の人が間違いなく六十五歳まで働けるようなシステムがはっきり目に見えてきたならば、別個の給付というようなものも再検討するに値するのじゃないだろうかというようなことも考えております。  いろいろありますけれども、今回の大きな改正を高く評価するとともに、これは、さらなる改革に対しての一里塚でもあるということを私は思うわけでございますが、この点に関しての大臣御所感をお伺いしたいと思います。
  17. 井出正一

    井出国務大臣 厚生省の先輩である先生から今回のこの改正案の趣旨や必要性をるるむしろ御説明いただいて大変ありがたく思っております。  おっしゃるとおり、よりよい年金制度を常に求めていかなければならぬと思っております。その意味で、一里塚であるという認識も私も同感であります。
  18. 熊代昭彦

    熊代委員 大臣どうもありがとうございました。ぜひ一里塚としてさらに前向きに進んでいただきたいと思います。  次に、年金を支える若い世代の問題といたしまして、高齢者対策といたしましてはゴールドプランができまして、さらに新ゴールドプランも今非常に積極的に御検討いただいているようでございますが、若い世代、特にこれから生まれてくる子供の世代、そして幼児などにつきましてエンゼルプランが検討されております。これにつきまして、いろいろ私ども事務当局の案もあるいは連立与党の案も勉強させていただいているわけでございますけれども中身としましてなかなかすばらしいアイデアが盛り込まれている原案が今検討されているところでございますけれども一つだけ、財源的に非常に無理があるというようなことで、事務当局主導の案ではどうしても出せないというようなものがあると思います。  それは児童手当の抜本的な改正でございまして、数年前の改正中身充実されましたけれども、財源的な観点からやはり三歳で打ち切らざるを得ないということになっております。私は、かなり大胆なことではございますが、一人三万円、十八歳まで児童手当を支給しなければこの少子化現象はとどめられないというふうに言っております。これはざっと計算しますと八兆円ぐらいのプラスが必要なんでございますけれども、今一般歳出というのは四十一、二兆でございますから、その五分の一ぐらいが必要なんだということでございます。しかし、本当に日本の国の将来はこれでなければもたないということがかなり確実だと考えられれば、八兆円ぐらいの予算は大したことはない、消費税にすれば三%ぐらいですね。こういう大切なことなら消費税で支えようではないか、そういう国民のコンセンサスもとれるんじゃないかというふうに思います。とれるというのは大変に僭越な言葉で、国民のコンセンサスもいただけるのではないかというふうに思います。そしてまた、働く女性の方々の保育所対策、非常に機能的にやる、いろんな需要に応じられるようにする、これは既に計画に盛り込まれておると思いますが、これも大変大切なことであると思います。  それから、統計資料を見ますと、やはり大学生になったときに大変金がかかるんじゃないか。東京に、特にいい大学に、東京に出しまして毎月仕送りをしなければならない。これは三人欲しいと思っていたけれども、もうとても三人じゃもたない、二人に制限してしまおう、あるいは一人じゃないとうちは無理だというようなことで、欲しい子供の数を限定してしまうというようなことがございまして、先進諸国では大学生になれば奨学金ですべての自分の教育費を賄うことができる、若干のアルバイトをするかもしれませんが。そういう状況になっております。  そういうことでございまして、奨学金も現在がなり限定的に出されております。年々拡大はしていただいておりますけれども、思い切った拡大をしていかなければならないというふうに思います。今の三、四倍ぐらい出して、もう大学生になったら奨学金だけでやれるんだ、そういう認識が社会一般に広がる必要があるんじゃないかというふうに思うわけでございまして、最初に、エンゼルプランにつきまして、この奨学金問題につきまして文部省さんの御見解をお伺いしたいと思います。
  19. 北村幸久

    ○北村説明員 国の奨学事業でございますけれども、日本育英会を通じて実施いたしているところでございますが、国家社会に有為な人材の育成に資する、それから教育の機会均等に寄与する重要な教育施策と考えております。その拡充に逐年努めてきたわけでございますが、先生指摘のように、現状は先生の御提案のとおりというところにはいっておりません。しかし、その充実につきましては、平成六年度予算におきまして、近年の大学院生の数の急増、そのようなことを踏まえまして、大学院生の貸与人員について、博士課程一千五百人、修士課程二千人、合計三千五百人の増員を図りました。また、大学学部・短大の貸与人員につきましても四千二百四十五人といった増員を図ったところでございます。  なお、平成七年度予算概算要求におきましては、学生生活費の上昇等を勘案いたしまして、高校におきましては月額一千円、大学・大学院につきましては月額三千円の貸与額の増額を図るということにいたしています。また、大学院博士課程で奨学金をさらに必要といたします。部の学生に対しましては、三万円の増額貸与を行うための経費を要求いたしております。  さらに、貸与人員につきましては、大学院博士課程二千五百人、修士課程三千人、合計五千五百人の増員、大学の学部・短大でございますが、四千百四十五人などの増員の経費の要求をいたしております。  今後とも、財政事情等、大変厳しい中ではございますが、育英奨学事業について、授業料等の修学費や家計の経済事情等を考慮いたしまして、修学援助を必要といたします学生生徒の実態に応じまして制度充実に努めていきたいと考えております。
  20. 熊代昭彦

    熊代委員 奨学金についても着々と拡大はしていただいておりますけれども、申し上げましたように、思い切った三倍、四倍というような飛躍をぜひ今後の課題としまして検討していただきたいと思います。  エンゼルプランにつきまして、先ほど児童手当のことを申し上げましたが、児童手当につきましても、かかる大きな構想につきましては御感想をいただけるだけというふうに思いますが、それとともに、一つ一つの小さい中身でございましても非常に人の琴線に触れるようなことがございまして、例えば現在、保育所に子供を預けられまして働いておられるというような方々で、特にもう勤めをあきらめるというのは、お子さんが病気になられたときですね。病気になられたときにだれも面倒見てくれる人がいないということで、本当に使命感を感じて働いているんだけれども、これはもうやめざるを得ない。特に看護婦さんとか保母さんとか、勤務のローテーションがはっきりしているというような人は、人に頼むわけにもいきませんし、これで職場からリタイアされるというようなケースがございます。  そういうときに子供を安心して任せられる、病児保育と一般的に言われておりますが、病後児保育とか、あるいは新しい名前で検討されているというふうにも伺っておりますけれども、これは金銭的にはそれほど大きなものではございませんけれども、実に配慮の行き届いた中身であると思います。そういうことについてエンゼルプランでお取り上げいただけるのかどうか、児童手当の件とあわせてお伺いいたしたいと思います。
  21. 佐々木典夫

    ○佐々木政府委員 エンゼルプラン、ただいま検討を急いでいるところでございますが、先生の方から多くの示唆をちょうだいしました。  お話のございました児童手当の問題、それから保育の問題、いずれも今エンゼルプランの検討過程で大きな課題でございます。子育て支援策の核の一つでございまして、それぞれ、先ほど文部省さんからお話のございました奨学制度等も含めて、一つは子育てに関する経済負担の軽減方策というふうなことで、いろいろな角度から御意見も賜りながら積極的な検討をしたいと存じます。  それから、保育対策につきましては、まさに仕事と子育ての両立支援というものが大きな柱でございますが、低年齢児を中心としました保育需要というものはなお大変強いものがございますので、基礎的にそこの拡充を図りながら、さらに今お話のございました病児保育といったようなもの等につきましても、多様な需要に対応できるようなきめ細かな方策につきましてこの際積極的な検討を加え、エンゼルプランの中にもぜひ織り込んでいければいいなというふうに今思っておるところでございます。  いずれにいたしましても、いろいろ今御示唆をちょうだいしましたが、御質問は、ひとつしっかりしたエンゼルプランをつくれという御激励と受けとめさせていただきまして、私どもとしましては、関係省庁とも連携をとりながら、できるだけ早くその内容を詰めてまいりたいと思っております。
  22. 熊代昭彦

    熊代委員 病児保育につきましても前向きに積極的に取り組んでいただけるというふうな理解で受けとめさせていただきたいと思います。  児童手当、そのほか、エンゼルプランは今申し上げたことに尽きないわけでございまして、子供を健やかに産み、育てる環境づくりというのは本当に広い、あらゆることを考えなければならないことでございますので、ぜひゴールドプランに負けないすばらしい計画をつくっていただきまして、高齢化社会をしっかり支える若い世代をしっかり育てる計画にしていただきたいと思います。  次に、少し具体的なことをお伺い申し上げたいと思います。  今回の改正案には盛り込まれておりませんが、近い将来の検討課題としてお伺いいたしたいわけでございますが、それは、第三号被保険者、サラリーマンの奥さんが典型的な例でございますが、国民年金の基礎年金の加入者でございます第三号被保険者の国民年金基金の適用問題でございます。国民年金基金の現在の制度につきまして初めに御説明願いたいと思いますが、加入者の実態とかあるいはどういう税制上の優遇措置があるのか、それから男女別にはどのような加入者になっているのか、実態につきましてお伺いいたしたいと思います。     〔委員長退席、戸井田委員長代理着席〕
  23. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 先ほどは失礼いたしました。  育児休業関係で、厚生年金保険料とか健康保険の保険料がどの程度軽減されているのかということでございますが、育児休業の期間におきます保険料免除につきましては、先ほどエンゼルプランのお話もございましたけれども年金制度においても少子化対策というのは大変重要なものでございまして、育児支援というのを年金制度においても環境づくりに一役を買おう、こういう趣旨で今回の改正案の中に盛り込ませていただいたわけでございます。  その金額でございますけれども、標準的な女性の平均の年金、標準月額が二十万五千円でございまして、これによって本人の保険料負担ということは厚生年金が一万六千九百円、それから政府管掌健康保険では八千四百円でございまして、二万五千三百円の免除ということに相なるわけでございます。  先ほど御質問がございました国民年金基金の関係でございますが、これは前回の年金法の改正で創設されたものでございまして、自営業者の上乗せの年金制度として発足をいたしたわけでございますけれども、これは公的年金として位置づけられているわけでございます。掛金につきましては、社会保険料控除があるわけでございまして、一人につきまして月額六万八千円を限度とする税制上の優遇措置が置かれているわけでございます。現在国民年金基金に加入されている方は、平成五年度末でございますけれども、約六十六万人でございまして、そのうち女性は約三十万人と見込まれております。
  24. 熊代昭彦

    熊代委員 厚生年金、健康保険の保険料につきまして、育児休業とそれから今御回答いただきましたが、二万五千三百円ですか、大変に大きな額、月々でございますので大変に大きな額だと思いますので、ぜひ早急に実現していただきたい。  我々が実現すべきことでございますが、早急に法律案を通して実現いたしたいというふうに考えているわけでございますけれども、第三号被保険者につきまして、国民年金基金の被保険者にできないだろうか。女性の年金権を確保したわけですけれども、さらにもう少し、今度六万二千円から六万五千円に思い切った引き上げをしていただきますが、しかし、さらにもう少しその上乗せを欲しい、保険料をさらに払ってもと、そういう女性の方がいらっしゃいまして、サラリーマンの配偶者の方々でもたくさんいらっしゃるはずでございまして、月々六万八千円の所得控除もあるということでございますから、若干働いておられて収入があるというような方は非常に大きな特典だと思います。  昨日、大蔵省に出席要求を出しまして、しかし、事前に説明にこられまして、大蔵省財政的な観点からすれば特にそれは問題がない、適用するには、ということがございましたので、お忙しいので出席要求を取り下げましたけれども、事柄は、厚生省の年金保険体系のプロパーの問題であろうというようなことでございますので、第三号被保険者に国民年金基金加入を拡大して、女性の年金権の拡大、女性の年金権の実質化のためにぜひそのような改正を行っていただきたいと思いますが、これについての御所感をお願いいたします。
  25. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 先ほど申し上げましたように、国民年金基金は自営業者の関係の上乗せの年金ということで創設されたものでございまして、被用者年金におきましては、被用者の妻でございます第三号被保険者も含みました世帯全体、そういう世帯用ということで水準を設定しているわけでございまして、これ以上にプラスアルファの年金を出すことについて、しかも、それについて税制上の配慮をするということについては、なかなかバランス上難しいのかなという感じをいたしているわけでございます。  さらに、よく言われておりますのは、サラリーマンの妻は基礎年金保険料を直接には納付されてないわけでございまして、被用者保険全体の中でプールされて納付されているというふうな事情もございまして、自分の土台になる保険料については納付しないでその上の保険料を納めて税制上の控除を受ける、これについてはなかなか感情的に納得できないようなものもあるわけでございまして、したがいまして、先生せっかくの御指摘でございますけれども、そういう年金制度上の体系からするとなかなか難しいのかな、こういうふうに思っております。
  26. 熊代昭彦

    熊代委員 保険料につきましては、第三号被保険者も年金を受け取るときには頭数として計算をされまして、厚生年金保険料、プールされた積立金からお金を出していますので、感情的にはともかく、現実問題としては、夫ないしは、夫だけではないでしょうけれども、厚生年金のプールから保険料を具体的に払っているところでございます。  それから、年金の姿といいますけれども、これは追加した保険料を払っていくわけでございますので、所得控除上は若干あるかもしれませんが、大蔵省はそこは余り言いませんでしたので、それにしましても、女性が、例えば別れた場合、離婚した場合ですね、あるいはひとりになった場合につきましての女性の年金権といったら大きなことがございまして、自己負担の上に成り立つものでございます。かなりの保険料を払ってするものでございまして、人によっては全然所得控除の恩典もないという人もあると思いますが、それでも公的年金を信頼してやりたいということがある場合には、今回の改正では問題になりませんけれども、次回の改正あるいは近い将来の改正ではぜひ前向きに御検討をお願いしたいと思います。     〔戸井田委員長代理退席、委員長着席〕  いろいろ申し上げましたけれども、時間が迫ってまいりましたので、今回の改正は、いずれにいたしましても、冒頭に大臣にお答えいただきましたように、非常に大きな改正であるということでございます。そして、老齢基礎年金を六万五千円に上げるあるいは厚生年金を平均二万円近く引き上げるというようなことでございまして、被保険者、年金受給者の方々改正を大変待っておられるというようなこともございます。いろいろな問題もございましょうが、これを我々の責任といたしまして速やかに討議して、前向きに進めてまいりたいというふうに私自身も決意を固めているわけでございますが、先生方にもよろしくお願い申し上げます。  最後に、厚生大臣の今後の年金制度運営に当たっての御決意をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  27. 井出正一

    井出国務大臣 年金制度は、冒頭申し上げましたように、国民老後生活所得を支えるものとして極めて重要な役割を果たしてきております。特に、国民の長寿化が進み、老後の期間が長くなっていることから、年金の果たすべき役割はますます大切なものとなっているわけでございます。  また、年金制度は、現役世代が高齢世代を支える世代間扶養により成り立っているものであり、国民連帯の制度であると思うわけであります。このような大事な年金制度を、急速に人口の高齢化が進む中で、将来にわたり長期的に安定した制度として確立していくことが何よりも重要だと考えます。その意味で、今回の改正は二十一世紀の超高齢社会にふさわしい制度とするため不可欠なものでございまして、また、今先生お述べになられましたように、今月分から五年ぶりの年金額の実質的な引き上げも予定しているところでございます。一日も早い法案の成立をぜひお願いしたいわけであります。  ありがとうございました。
  28. 熊代昭彦

    熊代委員 ありがとうございました。終わります。
  29. 岩垂寿喜男

  30. 山口俊一

    山口(俊)委員 それでは、引き続きまして年金問題について質問をさせていただきたいと思います。  今回の法改正によりましていろいろな議論が沸き起こっておるわけでありますが、国会に提案をされてから、さきの国会は継続というふうなことで結構時間の経過がありましたので余計そういうふうな議論もあったのかな、そんな感じもするわけでありますけれども、ただお願いをしておきたいのは、御存じのとおり老齢福祉年金の支給は十一月というふうなことであって、厚生年金国民年金は十二月、まさにタイムリミットぎりぎりの、ある意味で綱渡り的な質疑を今やっておるわけであります。そういった意味で私どもも、きょうこれ、かなりハードなスケジュールでありますが、一生懸命相努めておるわけですから、政府におかれましても、大臣におかれましても、一日も早い成立を目指して、我々にお願いをするというだけではなくして、どうか一生懸命頑張っていただきたい。数多くの年金受給者にそれこそ落胆を与えないように、御努力をお願いをいたしたいと思う次第でございます。  いろいろな議論があるのですけれども、例えば昨日の公聴会で、ある公述人の方などは、しきりに、今回いわゆる給付年齢が上がるというふうなことで、相当雇用問題とリンクをしてお話をなさっておられた方もおいでになるわけであります。ただ、果たして年金というのがそこまで、いわゆる雇用の補完的なものだろうか、年金とは果たして何なのだろうかというふうな気持ちもいたしたわけであります。実際、本来的には雇用の問題というのは労働政策に属するものであろうというふうに実は私思っておりますので、いわば、何から何まで年金に頼るというふうなのでは年金がそれこそ迷惑をするのじゃないか、そんな感じもいたしまして、あえて申し上げるわけであります。  いずれにしても、年金財政の現状、あるいは二十一世紀のそれこそ超高齢社会、あるいは世代間のいわゆる公平性、世界の趨勢等々から考えてみましても、今回の給付年齢の引き上げといいますか、これはおおむね妥当かな。ただ、もっと労働へのインセンティブを、働くということへのインセンティブを高めるような配慮も、次の課題としてぜひともお願いをいたしておきたいと思う次第でございます。  雇用問題につきましては労働政策が本来やるべきであると申し上げましたけれども、ただ、雇用状況が大変厳しいというのもこれは事実であります。御存じかもわかりませんが、先般の総務庁の調査を拝見いたしました。男性の高齢層のいわゆる離職総数、これは過去最高の二十七万人に達したというふうなお話でありました。うち、再就職をできた人はたったの三三・三%の九万人にとどまった。しかも深刻なのは、実はバブル時の、いわゆるバブルの景気のときには四割から五割以上の方が再就職をしておった。ところが今やこういう状況であって、まさに雇用環境の悪化というのは明らかなわけであります。  それだけに、今回の改正に伴ってやはり厚生省としても、そうした労働環境をもう少しよくしていく、六十代前半方々の、いわゆる高齢者層のためのいろいろな努力というものもしていかなければいけない。それがなければ今回の改正も、なかなか皆さん方が温かく迎えてくれるような改正にならないというふうな気もいたしますので、そこら辺の御努力も是が非でも期待をさせていただきたいと思う次第であります。  今回、私は、基礎年金の国庫負担について特にお伺いをいたしたいと思っておったわけでありますが、御案内のとおり、基礎年金の財源につきましては、いろいろな議論といいますか、以前からあった議論でありますけれども、いわゆる保険料による社会保険方式とでも言うのですか、それといわゆる税財源、税金による税方式、この二つの大きな考え方があるわけでありますけれども、この両方式について厚生省としてはどのようにお考えになっているか、まずお伺いをいたしたいと思います。
  31. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 社会保険方式と税方式ということで大別されるわけでございますが、社会保険方式は、社会保険という仕組みを基盤にいたしまして、一定期間にわたりまして保険料を拠出する、これに応じまして年金給付を出すという仕組みであるわけでございまして、当然のことながら、拠出と給付の結びつきというのが非常に明確であるわけでございます。保険料拠出についての加入者の合意というものは得やすいという特徴があるわけでございますし、自分のところの、自前の財源がございますので、長期的な収支計算に基づく財政運営ができるわけでございます。ただ、問題点といたしましては、保険料拠出が十分でない場合無年金や低年金が出る、こういうふうな問題があるわけでございます。  税法式は、当然のことながら税金で賄うということでございますので、一定の年齢に達すれば一律の給付が出る、こういうふうな制度であろうと思うわけでございますが、この場合には国民に普遍的に一律の給付が行い得るわけでございまして、一般に社会保険方式に比べますと所得再配分効果が高いと言われているわけでございます。ただ、問題点といたしまして、負担給付関係が間接的でございますので、一律の定額の給付にならざるを得ないわけでございまして、こういう方式をとった国の例を見ましても一般的に年金額の水準は低くなる。我が国でも老齢福祉年金が低いというのもそういう税金に頼った年金であるからということも言えようかと思うわけでございますし、税金で賄うわけでございますので、これはいろいろな政策と競合するわけでございます。もちろん社会保障の中でも競合いたしますし、教育とか公共事業とか、こういう問題とも競合するわけでございますので、長期的に見れば非常に不安定な財源ということが言えるのではないかというふうに考えているわけでございます。  私どもといたしましては、社会保険方式というものが、先ほど申し上げましたように、保険料と、拠出と給付が直接結びついているわけでございまして、給付負担バランスがとりやすい、こういう社会保険方式のメリットということが考えられますし、高齢化に伴いまして国民負担が上昇する、こういう面におきましても、受益と負担関係がより明確な社会保障負担の方が国民に受け入れられやすいのではないか、こういうふうなことで既に国民の間にかなり定着しているというふうにも考えているわけでございまして、私どもの方は、社会保険方式を維持すべきではないのかな、こういうふうに今考えているわけでございます。
  32. 山口俊一

    山口(俊)委員 次の質問でお伺いしようと思った答えが出たのではないかなと。まあ、どう考えるか、両方式のメリット、デメリット、おっしゃるとおりであろうと思いますね。おっしゃるとおりであって、社会保険方式というのはいわゆる目的税的な側面が非常に強い。権利性とか、受益と負担関係というのが明確になってくるというふうなメリットがあるわけでありまして、私としては、今後とも社会保険方式を基本的に維持していくというふうなことが大事であろうかと考えております。  それから、今の日本国民といいますか国民の皆さん方のお気持ちを考えると、やはり取られた税金が何に使われるかわからぬ、政治に対する不信感というのが非常に強いと思うのですね。それだけに、やはり我が国としてはとるべき方法だろうというふうなそんな気がいたすわけであります。二十一世紀福祉ビジョンの中にも明確に「社会保険料負担中心考え方」というふうにあるわけでありますし、今も御答弁の中で、その方式でやっていきたいというふうなお答えがございましたので、それでよろしいかと思うわけであります。  今、国庫負担の引き上げということが結構これまた議論になってきております。御案内のとおり、現状は、基礎年金の国庫負担卒は三分の一というふうなことであります。それを二分の一に引き上げたらどうだ、あるいは三分の二にするべきだ、将来は全部国庫負担で賄うべきだというふうなお話があるわけでありますが、その中で、特に今議論になっておるように思われます、二分の一に引き上げた場合あるいは三分の二に引き上げた場合の将来的に必要となる国庫負担額、これは大体どのぐらいになるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  33. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 現在、先生指摘のように基礎年金の国庫負担率は三分の一であるわけでございまして、現行制度平成六年度の金額は総額で三兆九千億になってございます。  それで、仮に基礎年金の国庫負担率を二分の一に引き上げたとした場合には、国庫負担の額は、二〇〇〇年には現在より三・八兆円多い七・七兆円になるわけでございまして、二〇二五年度には現在よりも八・二兆円増加いたしまして十二兆一千億円に達するということでございまして、これは名目額ではなくて、六年度価格でこの額がふえるということでございます。  それで、さらに三分の二に引き上げるといたした場合には、その国庫負担の額は、二〇〇〇年度には現在より六・三兆円増加いたしまして十兆二千億円になるわけでございまして、二〇二五年度には現在より十二兆一千億円増加いたしまして十六兆円に達する見込みでございます。
  34. 山口俊一

    山口(俊)委員 かなり膨大な金額になってくるわけでありますが、よりわかりやすく話を進めるためにも、じゃその国庫負担額について、今のところよく言われておりますのが、消費税。よく言われておりますね。今回五%に上げるというふうなことでありますが、このいわゆる消費税を財源として充てる場合には消費税の税率というのはどうなってくるのか、お教えをいただきたいと思います。
  35. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 先ほど申し上げました三兆九千億円からどれほどふえるかということを土台にいたしまして、消費税、これは国の分ということで、平成六年度ベースの消費税の純増分の一%当たりは一兆三千億円ということでございますので、これで割り算をさせていただきますと、二分の一に引き上げを行った場合でございますが、二〇〇〇年度には二・九%増、それから、二〇二五年度には六・三%の引き上げが必要になるわけでございます。  これを三分の二に引き上げたという場合の国庫負担の増加分を消費税で賄いますと、二〇〇〇年度には四・八%の引き上げ、それから、二〇二五年度には今より九・三%の引き上げが必要になるということでございます。
  36. 山口俊一

    山口(俊)委員 これは、現行三%の上積みという意味ですね、五%ではなくて。
  37. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 土台はどちらかちょっと何とも言いかねるわけでございますけれども、今の消費税以外に機械的に計算いたしますと、現在の国の分で割り算いたしますとそういう率に引き上げる必要がある。プラスアルファでございます。
  38. 山口俊一

    山口(俊)委員 わかりました。  こういうことをお聞きしたのも、実は今回、税制改革、これも国会に提案をされておりますが、今回五%に上げるというふうなことでありまして、今回上げることに対する批判、反発も相当強い中で、今からもし消費税年金の国庫負担を頼るとする場合、それだけ上げていかざるを得ない。これを、今あるいは比較的近い将来、果たして国民の皆さん方にお願いができるかどうか私は大変疑問であろう、今回上げただけに非常に難しい話になってくるんじゃないか、そう思うわけなので申し上げたわけであります。  同時に、二十一世紀のビジョンの「要旨」を拝見しましても、今回、「社会保障の財源構造の在り方」についてかなり詳しくお話が出ておるわけであります。これを見ますと、いわく目的税については、目的税という考え方ですけれども、目的税については、とりあえず財源の確保はできるが、絶えず税負担増を図る必要がある。当然そうした福祉あるいは年金の需要というのは高まってくるわけですから、常に、五%にしますよ、いや七%にしますよ、そういうふうな税負担増を図る必要が出てくるのではないかというふうな御指摘であります。  さらに、間接税の増収の措置が講ぜられる場合、その一定程度を充当する、これが「検討に値する。」というふうな書き方を福祉ビジョンに明言をしておるわけでありまして、これはもう言いたいことは明らかであります。目的税というんじゃなくして、今ある間接税、これが上がる段階においてその一定枠を回したいというふうなことであろうと私は理解をいたしておるわけでありますが、それだけに、今回国庫負担を上げたらどうか、もっと割合を高めたらどうかというふうなお話があるわけでありますが、これはもう慎重を要することではないかと考えております。  当初に申し上げました、基本的に年金につきましては税方式よりも社会保険方式、これを基本に踏まえたいというふうな御答弁がございました。そのとおりであろうと思います。そうした考え方と同時に、今申し上げました、財源のはっきりした見通しがないがままに国庫負担率を軽々に引き上げるべきじゃないんじゃないかと私は考えておりますけれども、厚生省とすればいかがですか。
  39. 井出正一

    井出国務大臣 お答えをいたします。  基礎年金の国庫負担の問題につきましては、今回の改正に当たりましてもさまざまな御議論のあったことは承知しておりますし、年金審議会の意見書にも「基礎年金の国庫負担については、将来の保険料負担の水準を念頭に置き、国庫負担率の引上げについて検討すべきである。なお、この問題については、社会保険方式における国庫負担の在り方や、今後年金給付が増大していく中で財源の確保をどうするかなど中長期的課題として十分検討すべきである。」こうされております。  したがいまして、実施を急ぐべき今回の改正事項とは別個の問題として検討すべきものと考えまして、この改正案が取りまとめられたわけでございます。したがいまして、政府としては今回国庫負担率を引き上げることは考えておらないわけであります。
  40. 山口俊一

    山口(俊)委員 まさにごもっともなお話でありました。ただ、今からそれこそ超高齢化社会に突入していく。しかも、今の年金保険料に関しては逆進性をよく言われるわけですね。この逆進性の緩和だとか、あるいはまた世代間の不公平というのが大変強まってくるのではないか。今回の改正におきましても、恐らくこのままかなりの年限がたちますと、それこそ今の中高年の方と若い方、これは、いわゆる自分が出した保険料といただける年金との差が大変大きくなってくるというふうなおそれもあるわけであります。  そうしたいろいろなことを考えた場合には、私も、将来的な国庫負担の率を考えざるを得ないのではないか、そのように思っておりますけれども、ただやはり、メリット、デメリット等々さらに検討をし、同時に、一九九九年ですかね、今度再計算の時期が参ります。そうした大きな節目もある。同時に、やはり年金というだけじゃなくて、いわゆる高齢化社会の中で、介護、いわゆる福祉だとかあるいは医療だとか、そうした全体の中で、私は年金の財源はどうすべきかを考えるべきじゃないかと思っておりますので、そこら辺をきちんとやった上で十分な議論を尽くしてからやるべきであろう、そう考えておりますので、意見として申し上げさせていただきたいと思います。  続きまして、今財源のお話を申し上げました。よく言われますように、今からどんどん福祉関係あるいは年金、医療関係の財源需要というのは高まってくるだろう、大きくなってくるだろうというふうに思うわけでありますが、特にその中でも高齢化対策の根幹というのですか、一番大事なのは介護じゃないか、今からそういうふうに思うわけでありますが、いわゆる介護保険について、いろいろな話題に上っております。ある本を読んでおりますと、厚生省も一九九七年から導入したいと言っておるというふうなことを書いておりました。ですから、ちょっと話は横道にそれるかもわかりませんけれども、介護保険の導入に関する検討状況、これをお伺いをし、さらに導入するおつもりがあるのかどうか、お聞かせをいただきたいと思います。
  41. 井出正一

    井出国務大臣 高齢者介護問題は、今委員指摘のとおり、今日国民的な課題であり、したがいまして、本年四月、新たな介護システムの構築に向け、厚生省内に高齢者介護対策本部を設置いたしました。さらに七月からは、学識経験者による高齢者介護・自立支援システム研究会を開催し、介護問題をめぐる基本的な論点や考え方について整理、検討を行っていただいているところであります。年内にはその取りまとめをしていただくよう予定しております。  介護保険についてもその選択肢の一つであると考えておりますが、まだ具体的なところまでは煮詰まっておりません。いずれにいたしましても、国民だれもが身近に必要な介護サービスをスムーズに手に入れられるようなシステムづくりに向け、幅広い観点から議論を進めていく必要があると考えるものであります。
  42. 山口俊一

    山口(俊)委員 もう少し積極的なお話もいただけるかなと思っておりましたけれども、検討段階というふうなことですが、ただ、御案内のとおり、この公的介護保険というのは老後の安心感を生み出すわけですね。結果として、いわば年金への過大な期待というのが少しはトーンダウンしてくるのじゃないか。ですから、年金考えた場合でも、やはり公的介護保険というのは非常に大事じゃないかなというふうな思いがいたします。  老後の不安を年金に頼り、あるいはそうした不安から消費をせずどんどんお金をためるというふうなことがあるのじゃないか。ですから、そうしたことの解消にもなりますし、介護の充実によって実は医療費も軽減をしてくるのではないか、そんな思いもいたすわけでありますので、是が非とも積極的に取り組んでいただきたいと思っております。  先般も、新聞報道を見ておりますと、年金保険料で介護施設をつくろうというふうな記事が出ておりました。先ほど申しましたように、高齢化社会の中では、やはり年金と介護というのは当然リンクをしてくるであろうというふうに思うわけでありまして、大変方向性としたらいいのじゃないか。厚生年金会館を建てるよりは私は介護施設をやった方がいいのじゃないかと思っておりますので、その方向で是が非とも強力に推し進めていただきたいとお願いをいたしておきます。  引き続きまして、今度のJRの共済年金の標準報酬の凍結解除についてお伺いをいたしておきたいと思いますが、大蔵省の方、お見えですか。  御承知のとおり、日本鉄道共済年金につきましては、その財政状況考えて、年金額の実員的な改善意味する標準報酬の再評価、これが前回の改正の折に繰り延べをされてしまっておる。また、今回の改正で行われるはずの再評価も、先ほど申し上げましたように一九九九年、次期再計事まで繰り延べというふうになっておるわけでありまして、こうした凍結措置というのは年金受給者にとって大変厳しいものになってきておるわけであります。しかも、JRのOBの皆さん方にとりましては、もう長期にわたってどうなるのだろうかというふうな不安でいっぱいであります。  同時に、年金のいわゆる一元化という作業も果たして進んでおるのかどうか、なかなか表にあらわれてこないというふうな現状もあるわけでありますので、そこら辺についてお考えをお伺いいたしたいと思います。
  43. 松川忠晴

    ○松川説明員 鉄道共済年金の問題でございますが、鉄道共済年金につきましては、いわゆる制度間調整事業によりまして、他の年金制度から年間合計九百七十億円の財政支援を受けまして年金給付を維持するという状況にございます。  ただいま委員から御指摘のございました再評価の繰り延べ措置は、このような厳しい財政状況のもと、拠出側の制度の理解を得るという観点から、いわゆる自助努力を示すというものでございまして、そのための必要かつやむを得ない措置として実施されているところのものでございます。  もとより、こうした年金給付の抑制措置は、年金受給者の側にとりましては、委員指摘のとおり厳しいものとして受けとめられているということも事実でございますが、他面におきましては、拠出側の理解を得まして財政支援を受けることによりまして、鉄道共済の年金給付の継続的な支給を確保していくということを当面の最優先の課題としなければならないという状況にあることも事実でございます。  現に、このような厳しい財政事情にかんがみまして、年金受給者だけではございませんで、鉄道共済の現役の組合員の方々の掛金は九・五四五%と、改正前の厚生年金保険の被保険者の掛金率七・二五%に比べまして相当高い掛金の負担を余儀なくされているようなわけでございます。また、日本国有鉄道清算事業団やJR各社も、特別負担という形で年金給付を支えている状況にございます。  このように、さまざまな主体がさまざまの努力をするということの組み合わせの中で、鉄道共済年金給付がぎりぎりのところにおいて支えられているということ、そして、そういった状況のもとでの再評価の次回の財政再計算時までの実施の繰り延べの措置であるということも御理解いただきたいと存じております。  いずれにしましても、このような制度間の給付負担の差の問題は、究極的には公的年金制度の一元化に際して解決されるべきものであると考えてはおりますけれども、先ほど来申し上げておりますように、年金給付の維持を図るという当面の重要課題に直面をいたしまして、再評価の取り扱いといたしましては、各公的年金制度の代表者等から構成されております公的年金制度の一元化に関する懇談会の御了解もいただきました上、平成元年分につきましては再評価の繰り延べ措置について解除する一方、平成六年分の再評価については実施を繰り延べするという扱いにさせていただいたところでございます。
  44. 山口俊一

    山口(俊)委員 お話のとおりであろう。ただ、JRの、国鉄のOBの皆さん方も、それは理屈はわかっておるのですね。だけれども、もう余りに凍結が続いてきた、今回また先送りになった、そういう不安感も相当強くなってきております。忘れられておるのじゃないかというふうなお気持ちもあるのではないかと思うわけでありますので、是が非とも早く一元化への道筋をつけていただきたいな、そんなふうに思うわけであります。  そうした中に、先般、実は読売新聞にかなり大きく「JR、JT、NTT共済 厚生年金に統合方針 大蔵省固める」というふうな記事が出ました。これは言うまでもなく、公的年金の一元化に関していわばレールを敷いたというふうな記事でありますけれども、これに関して、私が聞いた範囲では、いや、そうじゃないのだというふうなお話も聞いておりまして、これについて大蔵省の方の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  45. 松川忠晴

    ○松川説明員 ただいま委員指摘の新聞報道は、去る十月四日の読売新聞の朝刊におきまして、いわゆる「JR、JT、NTT共済 厚生年金に統合方針 大蔵省固める」との見出しで報道された記事のことを指しておられるものと了解いたしておりますが、鉄道共済の問題も含めましたいわゆる公的年金の一元化問題につきましては、いろいろな方面の方々からさまざまな御提言や意見が出されていることは御案内のとおりでございまして、そうした動きをフォローすべく私どもといたしましても研究を続けさせていただいてはおりますけれども大蔵省といたしまして、ただいま御指摘のありましたような、報道されているような方針を固めだというような事実はございません。  しかしながら、いずれにしましても旧三公社共済組合の問題につきましては、公的年金制度一元化に関する議論の一環といたしまして、現在公的年金制度の一元化に関する懇談会におきまして御検討いただいているところでございまして、同懇談会での検討の結果も踏まえまして、適切に対応してまいりたいと考えております。
  46. 山口俊一

    山口(俊)委員 ただいま検討というふうなお話でございました。方向性としたらこれはだれしもが納得する方向じゃないかな、実は私はあの記事を見てそう思ったものですから、これはいいなと思って聞こうと思いましたら、いや、大蔵省は知りませんと。いろいろと内部事情等々おありになるのであろうと推測をいたしますが、どうか一日も早い一元化を目指してレールを敷いていっていただきたい。  それで、今検討というお話がありましたけれども、この公的年金の一元化について、これはもう「平成七年を目途に」と閣議決定しておることでもあるわけですけれども、この中でJR共済等についても検討されておられる。今検討検討というお話ですけれども、検討の中身について、多少わかっておればお聞かせをいただきたいと思います。
  47. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 先ほど大蔵省の共済課長からお話がございましたように、鉄道共済組合の財政状況というのは大変厳しい状況にあるわけでございまして、独立して財政運営というのは非常に困難な状況にあるわけでございまして、何らかの形で支援というのが必要になってきているわけでございます。  ただ一方では、これまで独立して運営してきた経緯もございますので、やはり支援する方から見ますれば、できる限りの自助努力をお願いするというのが原則になっているわけでございます。しかし、また一方では、公的年金制度全体の長期的安定を図るという観点からは、産業構造の変化とか、個別の制度では対応できないこういう著しい格差につきましては公的年金制度全体で支え合っていく必要があるのではないか、こういうふうなコンセンサスがあろうかと思うわけでございます。  先ほどお話がございました公的年金制度の一元化に関する懇談会、これは本年二月から設置されているわけでございまして、これまで五回審議をお願いしているわけでございます。来年度ということになりますと非常に時間が短くなってきたわけでございまして、これまではまだ、今までの制度の概要でございますとか、いろいろフリートーキングをする、こういうふうな段階でございまして、残された日にちは少ないわけでございますけれども、鉄道共済年金の将来の姿をどのようにしていくかというのは、この懇談会に課せられた当面の最大の課題でございますので、精力的に審議を行いまして、この審議の結果を踏まえまして私どもとして対応する必要がある、こういうふうに考えているわけでございまして、現段階でどこどこまでいっているということまでは話せる段階まで来ていないというのが実情でございます。
  48. 山口俊一

    山口(俊)委員 もう平成七年は目の前なんですけれども、なかなかね。実はこの間、ある地元の集会でそうした一元化の話を皆さんに申し上げたところ、一人が手を挙げまして、サラリーマンの方のようですが、いや、一元化はいい、しかし我々の負担がふえるのは困るというふうな話もしておられました。これはなかなか難しいなというふうな気もするわけでありますけれども、是が非とも一日も早く軌道に乗せていただきたい、お願いをいたしておきます。  これはまだまだいろいろ用意しておったのですが、時間が迫ってまいりました。あと一、二点に絞ってお伺いをいたしたいと思いますが、一つは、障害年金改善についてであります。  五年に一度の年金制度改正において、障害者に対する措置などにおいてもかなりきめ細かな措置が必要であると考えておりますけれども、今回の改正において障害年金については具体的にどのような改善がなされるのか、これは大変障害者の間でも話題になっております。大変な問題になっております。お聞かせをいただきたいと思います。
  49. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 今回の年金改正は五年に一回の制度見直しでございますので、障害年金改善につきましても、国民の皆様からの要望も踏まえまして、できるだけきめ細かな配慮を行うことにいたしたわけでございます。  一つは、二十歳前の障害に係ります障害基礎年金につきましては所得制限の制度があるわけでございまして、現行の制度では一定の所得がございますと全面的な支給停止になるわけでございますが、今回はもう少しその額より高い所得をいただいている方でも、障害者就業意欲を促進する、こういう面も踏まえまして、多少高い所得水準にある方につきましては一部支給停止という二段階の所得制限制度を導入いたしたわけでございます。  それから、二点目といたしましては、三年以上障害等級に該当しない場合には年金が失権してしまう、こういう扱いになっているわけでございますけれども、再び障害が悪化した場合には年金が支給できるように改めたいというふうに考えているわけでございます。  それから、三点目といたしましては、十年前の改正、六十一年の四月前に障害となりまして、当時の支給要件には該当しないために、制度に加入してなおかつ保険料もお支払いになっていたにもかかわらず年金が支給されなかった、いわゆる制度の谷間の無年金者などの方でございますけれども、この方々につきましては、現在の支給要件に該当した場合には障害基礎年金を支給する、こういうふうな改善措置を盛り込んでいるわけでございます。
  50. 山口俊一

    山口(俊)委員 今回の改正でいわゆる谷間の皆様方が相当救済されるというふうに理解をいたしておりますが、まだまだもう少し広げてもいいのではないかなという部分もあるわけでありまして、とりあえず今回の改正で了とはいたしますけれども、是が非とも、さらに取り残された皆さん方にはいわゆる福祉面からの配慮等々で十分やっていただきたいとお願いをいたしておきます。  もう時間もなくなりましたので、最後に一点だけお伺いをいたしておきたいのです。  つい先般、社会保険庁の調査が出まして、これを見ますと、実は老齢になっても公的年金がもらえないおそれのある方が何と数百万人にも達するというふうなことであります。それによりますと、保険料支払いの免除を受けておる方、これが約二百六十万、そしてまた滞納者が約二百六十万、未加入の方が約百九十万、いわゆる主婦の方で手続の不備等で約四十万、これだけの方々年金をもらえないというふうなことになる可能性が非常に高いわけであります。もしそうなりますと、来るべき超高齢化社会の中で、それこそ生活保護とかあるいは各種の老人福祉政策の中で過大な負担も予想されるわけでありまして、まさにゆゆしき事態ではなかろうか、年金財政から考えても、まさに年金の基本を揺るがすことにもなりかねないというふうに考えるわけであります。  ですから、そうした考えに立って、今申し上げた未加入者あるいは滞納者等々に対する対策について、大臣はどのようにお考えになっておられて、どのような覚悟でお進めになられるのか、お伺いいたしたいと思います。
  51. 横田吉男

    ○横田政府委員 御指摘のように、平成四年の調査によりますと、本来国民年金の一号被保険者に入るべき方で未加入の方が約百九十万人というふうに推計されておりまして、そのほかにも滞納おるいは免除の方も相当数おられるのは事実でございます。私ども、こうした方々に対しまして、できる限り加入を促進していく、将来の無年金の解消を図っていくということが最大の課題であると考えております。  そのための方策といたしましては、一つは、やはり若い方に未加入者の割合が高いという実態にかんがみまして、特に二十歳に到達した時点で漏れなく加入していただくというのが重要ではないかということで、住民基本台帳等を活用して二十歳到達者等を中心に対象者を把握いたしまして、これらの者に対する文書、電話あるいは戸別訪問等によりまして届け出の勧奨を徹底してまいりたいというふうに考えております。  また、未加入者の中で七割ぐらいの方が国民健康保険の方には加入しているというような実態もございますので、国民健康保険との連携を強化いたしまして、届け出書の一体化を図る等、届け出漏れ等を防止してまいりたいと考えております。  それから、PR等を徹底するということと、基本的には各年金制度に共通いたします年金基礎番号を導入いたしまして、的確な対象者の把握、加入対策を進めてまいりたいというふうに考えております。
  52. 山口俊一

    山口(俊)委員 もう時間が参りました。大臣から決意のほどもお伺いしたかったのですけれども、結構でございます。  今もお話がありました。やはりこれは年金の根幹を揺るがしていく可能性がありますので、背番号制度とか、あるいは加入とか納付のときの事務の簡素化とか、いろいろ考えていただきたい。先ほど、今回の改正は一里塚というふうなお話もございました。状況の変化に応じて不断の改革をしていくというふうな性格のものであろうかと思いますので、今後とも是が非とも超高齢化社会に向かって大いなる御努力を期待して、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  53. 岩垂寿喜男

    岩垂委員長 岩浅嘉仁君。
  54. 岩浅嘉仁

    ○岩浅委員 改革の岩浅嘉仁でございます。山口先輩に続き、同じ徳島県が続きますが、よろしくお願いを申し上げたいと思います。  昨日の公聴会でも申し上げたのですが、もう御承知のとおり我が国は超高齢化社会、さらに少子化社会、そしてその財源はどうするんだ、まさにトリレンマ状態に陥った状況であります。その中で、そういう膠着状態を一つずつ解きほぐしていく、解決をしていくという意味でも、今回の年金法の改正というのは非常に大きな意味のあるものだと思いますし、成立のおくれは国民生活に大きな影響を与える、私どももそういう認識で取り組んでおるところでございます。  そして、このような状態を日本がどういうふうに解決していくかということは、世界の各国も注目しておるのではないかと認識いたしておりますが、まず年金につきまして、日本はもう長い高齢化のトンネルに入ったわけでありますけれども、まず支えて、次いで支えられる、こういう基本的な認識が国民にどれだけ徹底できるか、こういうことが大きな要素になろうと思います。  そういう中で、私は、厚生年金の受給開始年齢の引き上げは、給付水準を維持しながら後世代の負担を考慮した結果であり、やむを得ない措置であろうと思いますし、また昨日の公聴会でも高山公述人が述べられたように、ネットスライド制の導入も同様の観点から評価できるわけでありますが、本日は、大まかに二つの点に絞って御質問申し上げたいと思います。  第一点は、支給開始年齢を六十五歳に引き上げることに際し、やはり雇用年金をリンクして検討すべき点にあるということであります。第二点は、国民負担については、これまで以上に水平的、垂直的な公平感、公平さが要求される、こういうことでございます。  まず最初に、年金雇用対策についてでありますが、今回の改正の成否というのは、六十歳前半の雇用対策をいかに確保するか、これにかかっておると考えております。法定年齢を六十五歳に引き上げたとしても、果たして企業政府の期待にこたえられるのかどうか。  昨日も申し上げたわけでありますが、西ドイツとか、旧西ドイツですね、アメリカなんかも、法定年齢を引き上げても雇用の拡大につなかったという報告はありません。その中で、労働省が六十五歳までの雇用をするようにという努力義務を課しましたが、その効果は甚だ疑問でありますし、むしろ巷間流布されておりますように、産業空洞化が懸念される中で、中長期的に労働力過剰という事態も想定されるわけでございます。高齢者を取り巻く環境というものは極めて厳しいものがありますが、私は、昨日の公聴会で山崎公述人が述べられたメリット制の導入が必要ではないかと思います。  さらに、中高年齢者に対して、再就職に関する十分な情報の提供、意識改革のためのカウンセリング、さらには新たな能力開発を行う、こういうきめの細かな施策を展開して、再就職支援サービス産業の育成あるいは振興、こういうものも考えていく必要があろうと思いますが、政府として具体的な雇用誘導策、こういうものについてお示しをいただきたいと思います。
  55. 太田俊明

    太田説明員 先生ただいま御指摘いただきました産業空洞化の問題でございますとか、あるいは中長期的な労働力過剰の見通しにつきましては、これは景気動向でございますとかあるいは経済成長率の推移、さらには産業構造の変化によって異なってくるものと考えておりますけれども、いずれにいたしましても、今御指摘いただきましたように、我が国におきましては急速な高齢化が進展しているわけでございまして、二十一世紀には、働く人の四人に一人が五十五歳以上の高齢者となることが見込まれておるわけでございますし、また一方で、こういう高齢者方々就業意欲、ニーズも大変高いということを考えますと、今後我が国経済社会の活力を維持していくためには、二十一世紀初頭までに、希望すれば六十五歳まで現役として働ける社会を実現していくことが極めて重要となっているわけでございます。  このため、私ども、今お話もございました、さきの通常国会改正されました改正年齢雇用安定法に基づきまして、六十歳定年制を基盤とする企業における六十五歳までの継続雇用の推進、あるいは高齢者の方の再就職の促進、シルバー人材センターの充実等によります多様な形態による雇用就業の促進、さらには高齢期の雇用就業に対する援助に重点を置いて施策を推進していくところでございます。  今も御指摘ございましたように、きめ細かな施策をさまざま講じまして、高齢者の就業ニーズに応じた多様な形態によりまして、六十五歳までの雇用機会を確保するための施策を積極的に講じてまいりたいと考えております。
  56. 岩浅嘉仁

    ○岩浅委員 民間企業では、かつての五十五歳定年制のときのままの人事とか労務管理方式を今でもとっておる企業がたくさんあるということも聞いております。そういう中で、やはりこれを本当にやるのであれば、行政の強い指導、単なる努力義務でなしに、かなり思い切った誘導策というものが必要であろうと私は思いますし、また、失業のおそれなく退社をする、すなわち在職中に退社後の再就職、トラバーユの事前準備ができるようなシステム、こういうものを、ある意味での先行投資だと思いますが、こういうものも真剣に行政側が考えていかないと、本当にまさにこれは絵にかいたもち、理念だけの社会現象が起こってくるのではないか、私はこういう危惧をいたしております。  先ほどもお話がございましたように、日本人というのは世界に冠たる抜群の就労意欲を持っておる国民性でありますから、今後この年金改正と同時に、私は、深刻な問題が起きてくると思っております。その点で、なお一層のお取り組みをお願い申し上げておきたいと思います。  それから、国民年金の問題についてでありますが、御承知のとおり、国民皆保険の基盤でございますけれども公的年金制度の土台であります。この国民年金は、八六年の改正以降、二十に達した国民は五十九歳まですべてこの制度に加入することになったわけでありますが、近年、未加入者あるいは保険料滞納者の急増により、これは先ほど山口先生からも若干質問がありましたが、国民年金制度空洞化、形骸化が深刻化いたしております。  社会保険庁の最近の調査では、国民年金に加入すべき第一号該当者で百九十三万人の未加入者が存在し、滞納者も二百六十万人に達する、こういうことでございます。その他にも、保険料免除者二百六十万、第三号未加入者が四十三万人存在しておりますが、このような状態は、年金財政の厳しい状況から考えても深刻なものがございます。  また、現在でも、いわゆる無年金者の存在が問題になっていますが、この未加入、滞納の増加は、将来的には無年金者や低額年金者を数百万単位で生み出すことにつながってくる。負担なければ給付なしということで片がつくならばともかく、国民年金制度は、憲法第二十五条第二項の理念に基づいて、国民の共同連帯によって、国民生活の維持向上を図ることを目的とするものであり、無年金者の存在を看過してしまっては責任ある高齢化社会対策とは言えないわけでございます。  また、世代間の助け合いというシステムをとっている年金制度考えますと、みずから将来の受給権を放棄することになる未加入者、滞納者というのは、現時点でも老後世代を支えるという社会的責任を果たしていない、そういうことも言えると思うわけでございます。  現に、給料から源泉徴収されていますいわゆるサラリーマン層との公平感を失するものでありますし、さらに、この年金の未加入者、滞納者の存在が他者への負担を増加しておる、負担増になっておる、こういうことも指摘をされておりますが、厚生大臣に、大まかでございますけれども、この国民年金の現状についてどのように認識をされておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  57. 井出正一

    井出国務大臣 先生おっしゃるとおり、国民年金制度のもとにおいて、少なからぬ未加入者、滞納者が存在し、このまま放置すれば将来の無年金の原因となるわけでございますし、また、現に支えなくてはならぬ責務を果たしていないとも言えるわけでございますから、大変重要な問題だと認識しております。老後生活の保障という公的年金制度の趣旨にかんがみ、その解消に向けて努力してまいらなくてはならぬ、まいるつもりであります。
  58. 岩浅嘉仁

    ○岩浅委員 もういろいろ議論が出ておりますけれども、この国民年金の未加入者、滞納者の原因は、御承知のとおり、一つ保険料が定額で応能負担になっていないこと、さらに保険料の徴収の強制力、実体の強制力がないという現行制度そのものに欠陥があるという指摘もなされているわけでありますが、これを突き詰めてまいりますと、社会保険方式か税方式がという大問題に行き着くわけで、これは後段述べるといたしまして、現在の制度の基本的なフレームワークの中で原因を考えますと、まず、先ほども議論がございましたが、制度に対する国民の理解度が低いということが挙げられると思います。  言いかえますと、行政の広報不足でございます。被用者の配偶者で手続上の不備から未加入者となっている第三号該当者が四十三万人も存在することが何よりの証左であろうと思います。社会保険庁の調査でも、未加入者のうち四割が国民年金制度が原則強制加入であるということを知らなかったことが明らかになっておりますが、ちなみに、今回の改正で第三号被保険者の特例届け出が平成七年四月から平成九年三月までの間認められることになる、これは高く評価できるものであります。ぜひとも広報等を徹底し、四十三万人をゼロにしていただきたいと思います。  この制度につきまして、特に将来に対する不安が若い世代に広がっております。このことが未加入者、滞納の一因になっていることは否定できないのですが、実感として、自分たちが老後世代になるころには、現役世代負担に耐え切れなくなり、年金制度そのものが崩壊するのではないか、あるいは満足のいく給付がなされるのであろうかという不安があります。  今回の年金改正も、特に厚生年金改正の主眼もまさに後世代の負担の急激な増大を回避するためのものであるわけですから、国民の理解が深まるための努力がなされなければならないと考えておりますが、具体的に当局としてどのような施策をお考えでございましょうか。  そして、昨年十月の年金審議会の意見書で、国民各層の理解を得るためにディスクローズの徹底と中立公平な立場からの調査その他の権限を有する第三者機関の設置が提言されておりますが、この点についても厚生省のお考えを伺っておきたいと思います。
  59. 横田吉男

    ○横田政府委員 先生指摘のとおり、未加入者、未納者等が多数存在いたします。その背景といたしましては、年金の将来に対する国民の不安あるいは老後生活における年金制度の重要性についての理解の不足があるのではないかと私ども考えておりまして、この点につきましては、社会保険庁もあらゆる手段を駆使して広報等に努めてまいりたいと考えております。  特に、未加入者に若い方が多いということもございますので、学校教育とも連携いたしまして、高校生、中学生を対象といたしましたパンフレット等をつくる等年金教育の推進、あるいは年金週間を設けましてさまざまな行事を通じてPRを進める、テレビスポット等の活用も含めまして、広報活動の強化に従来より一層努めてまいりたいと考えております。  そのほか、未加入者、未納者というものをできるだけ縮小していくということが重要であると存じます。この点につきましては、やはり二十歳到達時点でできるだけ加入していただくということで、各市町村の住民基本台帳等を活用いたしまして適用すべき者を把握いたしまして、これらの者に一人一人、文書、電話、戸別訪問等を含めまして、届け出勧奨を一つは徹底してまいりたいと思っております。もう一つは、やはり国民健康保険との連携を詰めまして、届け出書の一体化等を図っていくというふうに考えております。そのほか、基本的には、各制度に共通いたします年金基礎番号等を導入いたしまして、届け出漏れ等の把握を的確に行うようなシステムをつくってまいりたいというふうに考えております。
  60. 岩浅嘉仁

    ○岩浅委員 今、国民健康保険との連動性ということをおっしゃいましたが、参考までに、国民健康保険の加入率とか徴収率、加入率ですか、それと国民年金の現状をちょっと数字で教えていただけますか。――じゃ、それは後で結構ですから。
  61. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 先ほどの第三者機関につきまして、私の方からお答えをさせていただきたいと存じます。  年金審議会の関係で第三者機関の設置を提言されている背景でございますけれども一つには、既に財政が行き詰まった制度が出てきたわけでございまして、制度関係者だけに任じていていいのか、第三者機関というのが必要なのではないか、こういうのが一つでございます。それから、年金財政について非常に専門的な問題が多いわけでございますので、的確な情報というのが少ないのではないのか、この二つが背景になって、第三者機関を置いたらどうか、こういうふうな意見が出てきているわけでございます。  その一つの、長期的な公的年金制度の安定という点につきましては、現在、先ほど話がございましたように、JRの共済組合が大変困難な状態になっているわけでございまして、制度間の調整事業というのを行っておりますし、現在また一元化の問題もやるということで、各制度財政計画のあり方などもこの中で議論するというテーマになっているわけでございます。  それから、もう一点の情報の公開の関係でございますが、国民年金とか厚生年金関係は詳細な財政再計算の報告書も出ておりますし、種々の方法によりまして制度改正の内容あるいは制度の実施状況、こういったものほかなり情報公開をしてきているわけでございます。  その第三者機関的な機能を今現在果たしておりますのが社会保障制度審議会の数理部会というものでございまして、ここが各制度の担当者を呼びましてヒアリングをする、こういうふうなことを通じまして、現在幾つかの制度に分かれているわけでございましていろいろのデータの出し方とか違っていたわけでございますけれども、この数理部会によってかなり調整をされてきておりまして、現在はかなり厚生年金に近い形で共済組合の資料というのも出てくる、こういう統一化の方向に向かっている、こういう段階でございます。  第三者機関を直ちにつくるのは非常に難しいわけでございますけれども、実質的には各年金制度国民に対しまして年金制度の現状とか将来の見通しといったものについて的確な情報を提供する、こういう目的はかなり達成されてきているのではないのか、こういうふうに現状認識をしているわけでございます。
  62. 横田吉男

    ○横田政府委員 国民年金国民健康保険の被保険者の資格でございますが、国民年金のいわゆる第一号被保険者の加入数は、四年度におきまして一千八百万でございます。それに対しまして、国民健康保険の方は三千八百万弱ということでございまして、大きく違いがございますが、これは国民健康保険の方は年齢制限が特にございませんが、国民年金の方は二十歳から五十九歳までというような違いがあるものでございます。  それから検認率でございますけれども国民年金の方は八五・七%ということでございます。これは当該年度の徴収率でございますけれども、一年過ぎてから徴収するものもございまして、こういった過年度分を含めますと、私ども、約九〇%くらいになるのではないかというふうに考えております。これに対しまして、国民健康保険の方の保険料の収納率は九三・九%ということで、若干国民健康保険の方が高くなっておりますが、この点につきましては、私ども国民年金保険料の収納につきましても一層努力を重ねまして向上を図ってまいりたいというふうに考えております。
  63. 岩浅嘉仁

    ○岩浅委員 先ほどの答弁の第三者機関について、やるのか、やる方向なのかどうかというのがはっきりしないような御答弁だったと思います。まあ際路があるんだろうと思いますが、そういう面でもう一度、厚生省としては基本的な方向はどう認識しておるのかということ。  それともう一つ、今の国民健康保険と一緒にリンクした徴収体制の問題ですが、具体的にどういう形でやるというふうな作業、イメージ、そういうものがありましたらちょっとお示しいただきたいと思います。
  64. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 先ほど御説明いたしましたが、第三者機関をつくるというのは行政改革の折、非常に難しいわけでございまして、数年前からこの問題というのは出てきておりまして、この問題について厚生省は積極的に動いたわけでございますけれども、残念ながら第三者機関というのはっくれなかったということでございます。ただ、実質的には先ほど申し上げました社会保障制度審議会の年金数理部会というものがかなりその第三者機関的な、権限はございませんけれども、実質的にはそういうふうな機能を果たしつつあるわけでございまして、もし将来第三者機関ができるという場合には、その数理部会なるものがその基盤になるのではないのかな、こういうふうに思っているわけでございます。
  65. 横田吉男

    ○横田政府委員 国民年金国民健康保険の一体化でございますけれども、私ども今進めたいと考えておりますのは、一つは転入、転出等のいろいろな届け出がございますが、その際、国民健康保険と国民年金の届け出用紙を一体化いたしまして、片っ方だけ届け出て、片っ方が抜けることのないようにしたいということでございます。それから、できれば窓口につきましても、国民健康保険と国民年金を一緒にしていただきたいというふうに考えております。  それから、収納の方でございますけれども、これは国民年金保険料の方は最終的には国に収納されますが、国民健康保険の方はそれぞれの市町村がやっておりまして、その支払いの一体化というのは実は口で言うほど簡単ではございませんが、こういった点につきましても、納付書を一緒に送っているようなところもございますので、できる限り効率的にできないかどうか、その方法を検討しているところでございます。
  66. 岩浅嘉仁

    ○岩浅委員 先ほど話が出ました検認率の問題なんですが、第一線の地方自治体、末端の地方自治体なんかの御意見を伺いますと、この検認率が未加入者の加入促進を阻害しておるという側面がある。先ほど八五・七%の検認率というお話がございましたが、もちろん市町村あるいは社会保険事務所の第一線の方々が御苦労されておるわけでありますけれども、この検認率という、事業実績を評価する上での一つの指標そのものが国民年金の未加入者を減らすことのネックになっておる。  つまり、未加入者を年金制度に加入させてもその者が保険料を滞納するということになると、いわゆる検認率の低下につながってくるわけです。そして、各市町村に対する厚生省の指導でこの検認率が極めて大きな意味を持っておる。自治体に対するいわゆる一つの、まあいい子だというふうな、もう少しじゃないかという勤務評定みたいなものになっておりまして、そういうところから、厚生省ににらまれたくない、こういうことで実際こういう問題が起こっておるというふうに私は聞いております。それで市町村は、将来保険料を滞納する可能性があると思われる未加入者には積極的に加入を進めにくいという現実が横たわっておると思いますが、これについて厚生省の御見解を伺いたいと思います。
  67. 横田吉男

    ○横田政府委員 国民年金保険料の収納率につきましては、ここ数年を見ますと市町村の非常な努力もございまして、昭和六十一年には八二・五%でございましたものが、平成四年には八五・七%ということで上昇してきております。  その一方におきまして、未加入対策ということで、各市町村におきましては、住民基本台帳等を活用いたしまして一つ一つ適用すべき者を把握し、これに対して文書、電話、戸別訪問等も含めて未加入対策を進めております。これもそれなりの効果を上げてきているということでございまして、先生おっしゃいますように私どもとして必ずしも、検認率が一つの事務費交付金の基準になっているという点もございますので、それがネックになって未加入対策を妨げているというふうには考えておりませんけれども、今後、未加入対策というものをさらに一層進めていただくために私どもといたしまして現在考えておりますのは、この事務費交付金の基準につきまして、そういった各市町村で未加入対策を進めている努力をその中に反映させ得るような基準に改善していきたいということで今検討しているところでございます。
  68. 岩浅嘉仁

    ○岩浅委員 努力を反映させるような基準を考えていく、どういうふうに考えるわけでございますか。そういうことは可能でございますか。
  69. 横田吉男

    ○横田政府委員 現在の事務費交付金の基準といたしましては検認率を大きな基準としていることは事実でございます。これを未加入対策ということで、加入した者につきましては一定期間そういった検認率の対象から例えば除外するというようなことによりまして、保険料を納めてもらえそうもない方を加入させるということに対して逆インセンティブが働くのは少なくともなくなるような仕組みにしたいと考えております。また、そういった努力をすればするほど事務費交付金の方にも反映されるというような仕組みは可能ではないかというふうに考えております。
  70. 岩浅嘉仁

    ○岩浅委員 先日の岡田先生質問で、全国で一万六千六百名の方々が携わっておられるということなんですが、本音と建前が私は今の御答弁にはあろうと思うのです。実際に、末端の市町村では厚生省ににらまれたくないということで窮余の策としてこういうことは現実にあるそうです。だから、その努力を厚生省が把握してとおっしゃいましても、やはり末端の市町村の現場の第一線の方々の意見というものを十分にしんしゃくするというふうな、公式的には言えませんよね、上下関係ですから。しかし、そこをどれだけ厚生省が把握をしてやるか、理解をしてやるか、こういうふうな側面が私はあろうと思うのです。  積立金の還元融資、これについて人口二十万人以上の都市については検認率が八〇%以上、その他の市では八五%以上、町村は九三%以上と聞いておりますけれども、市だけで結構ですが、この基準を満たす市の比率は、全国で今六百六十三市があると思いますが、どのぐらいになっておりますか。
  71. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 この基準となります検認率を下回っている市でございますけれども、下回っているのが二六・四%でございまして、それの逆数の七四%程度は上回っている、こういう状況でございます。
  72. 岩浅嘉仁

    ○岩浅委員 地域的な特色とか、何か特徴みたいなのがございますか、その比率で。
  73. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 特に地域的な特色というのはないと思いますけれども人口別の市で見ますと、二十万から百万以下のところ、これが三四・二%が基準を満たしていないということですから、三分の一が満たしていない、こういう状況にございまして、市町村全体でも二五・二%ということでございますから、市とそれから町村でもそんなに差がないという形にはなってございます。
  74. 岩浅嘉仁

    ○岩浅委員 はい、わかりました。  それから、徴収体制の強化についてでありますけれども、第一線の方々保険料の徴収に御苦労をされておるのですけれども、人員についても当然限界がありますし、また現在でも保険料収入に対する事務取扱費、すなわち徴収コストは一〇%に達しております。平成三年度で国民年金保険料収入が約一兆四千五百五億円、これに対して事務取扱費が約一千四百四十億円、一〇%という、これは一昨日の委員会でもお示しをいただいたと思いますが、アメリカではこのコストが○・八%でありますから、極めて高い数字でございます。我が国も今後はコストパフォーマンスを考え制度が必要ではないかと思っておりますが、御所見を賜りたい。  さらに、厚生省では未加入者対策を初め、保険料徴収体制強化のために基礎年金番号の導入を検討されておりますけれども、具体的にはどのようなイメージを持てばいいのかということと、また導入までのスケジュールについてお聞かせをいただきたい。  これに関連して、この基礎年金番号につきましては去る六月の本会議でも当時の大内厚生大臣から積極的な御答弁がなされたわけでありますけれども、新しい厚生大臣としてどうお考えになっておるのか、お尋ねしたいと思います。  それと、これに関連して、年金一元化でよく言われておりますが、各組合等が、年金の主導権は厚生省にゆだねられるとかあるいは職員が削減されるとか、いわゆる既得権の上に立ってなかなか難しい問題があると伺っております。さらに、各制度ごと、八制度が、各省庁が別々に管理をいたしておりますから、情報交換すらしていなかったというのが今日までの現状と聞いておりますけれども、この問題について、年金番号と一元化について、やはり厚生大臣が強いリーダーシップをとる時期がもう目前に来ておると私は思いますけれども厚生大臣としての御決意のほどをお伺いいたしたいと思います。
  75. 横田吉男

    ○横田政府委員 最初の国民年金の徴収コストの点についてでございますが、よく国民年金の徴収コストが高いのではないかというふうに言われるわけでございますけれども、これは国民年金は被用者保険と違いまして、被用者保険の方は事業所を通じて適用、徴収等を行っているということでございますが、国民年金の方は加入者一人一人からいただいているというようなことで、どうしてもその点、被用者保険の徴収とは違った面が出てくることは事実ではないかと思います。  この点は諸外国の例を見ましても、アメリカの例を引かれましたけれども、例えばフランス等は自営業者等を対象とした年金について見ますと、やはりそういったコストは高くなっております。それからもう一つは、我が国国民年金制度の特色といたしまして、一号被保険者だけではなくて第三号被保険者あるいは二号被保険者等たくさんの被保険者を抱えておりまして、徴収だけでなくて適用、給付、相談等あわせて行っているという点もまた、違っている点でございます。そういったことで保険料、一号被保険者の保険料収入対比との関係だけで徴収コストの多寡を議論するのは必ずしも適切ではないのではないかというふうに考えております。  ただ、コストにつきましてもできるだけ今後効率化を図っていかなくてはいけないと考えておりまして、この点につきましても、先生の御指摘を踏まえまして一層の努力をしてまいりたいと思っております。  それから、基礎年金番号につきましては大臣の方からお答えいたします。
  76. 岩浅嘉仁

    ○岩浅委員 お二人からでも結構ですよ。
  77. 横田吉男

    ○横田政府委員 昭和六十年に全国民を対象とします基礎年金制度が導入されたわけでございますけれども、各制度がそれぞれ被保険者については管理するということで、制度ごとに現在は番号が振られているわけでございます。今日、生涯を通じまして一つの職場でずっと勤める例が少なくなってまいりまして、複数の職場をかわっていくというのが一般的になってきておりますが、そうしますと、ばらばらの番号がついていたということではこれはなかなか統一したデータの管理ができないということになります。そういった意味でいろいろな不都合が生じておりますし、また適用漏れ、加入漏れというものも把握しにくいというような状況がございます。  こういった状況に対しまして、各年金制度に共通する一人一番号というものを設定いたしまして、それをキーとして、どの制度を移動されましても簡単に検索ができる、生涯を通じて年金関係のデータが一貫して記録、管理できるというようなメリットがございます。それから、現在三号被保険者等の届け出漏れ等も指摘されているわけでありますが、制度を移動した場合のそうした届け出漏れ等に対しましても、保険者としても把握し、こちらからも積極的に届け出の監視をお願いすることが可能になるというようなメリットがございます。  それから、各年金制度間の複数年金を受ける資格がある場合には調整の制度等がございますが、現在は各制度、他の制度になりますと非常にわかりにくいということで、過払い等の状況が出てくる場合もございますが、こういった基礎年金番号ができますと、そういった制度間を通じた調整も可能になるということでございます。  また、将来におきましては、一定の年齢に参りましたら過去の記録等をあらかじめ加入者の方に送付いたしまして、こちらの記録と加入者の考えておられる経歴が異なるかどうかというようなチェックもしていただけるようなサービスの向上というのも可能になってこようかと思います。  こういったことで、私どもとしては、加入促進あるいは被保険者のサービスの向上といった観点からこの基礎年金番号の導入をできるだけ早くしたいということで、現在、六年度からそのシステムの開発に着手しているところでございます。
  78. 井出正一

    井出国務大臣 重複するところもあるかと思いますが、基礎年金番号の導入により各公的年金制度間での情報交換が行われますし、制度間の記録を一元的に把握することが可能になります。このことはまた、制度の一元化にも、今懇談会で検討されているわけですが、寄与するはずであります。これにより、国民年金の届け出漏れの防止とか、あるいは的確な年金相談や迅速な年金裁定、さらに年金見込み額を通知するなどの新しい行政サービスへの対応も可能になると考えられます。  今年度から準備に入っておりますが、平成八年度の導入を目指しているところであります。関係省庁の御理解を得て早期に導入できるよう、鋭意取り組んでまいるつもりであります。
  79. 岩浅嘉仁

    ○岩浅委員 平成八年度からの導入を目指すということで、御期待を申し上げたいと思います。  あと二点ほどなんですが、公的年金制度に不安がつきまとっております。特に我々のような若い世代でございますと、まだ将来のことですし、自分が掛けたものを自分が老齢化したときに果たしてきちっと国が対応してくれるんだろうかという素朴な疑問を若い世代は持っておるのですが、それにつけ込むと言っては失礼なんですが、そういつ不安な心理を利用しまして、民間の私的年金の契約高がふえております。  公的年金制度に頼るのではなく御自分のことは御自分でというセールストークで、この商品がもえておるわけですが、これは個人個人がやることですから、保障を上積みするのは結構なことだと思うのですけれども、そういう中で、特に私的年金というのは金利機能が不安定であり、物価上昇に対する抵抗力がない。それに比べて、公的年金は物価スライド制の仕組みがあり、すぐれておるということを説明してもなかなか理解してくれないという側面があろうと思うのです。  当然のことながら、公的年金においては保険料の掛金総額と年金給付総額を比べると、後世代ほど両者の差がなくなることが想定されますけれども、少なくとも逆転することは将来的にないのか。一部では、昭和三十九年生まれ以降の世代では逆転するという計算もなされておるのですが、もしそれが事実ならば、年金制度がもう既に社会保険方式をとることが不可能な域に入るということになりますから、こういう素朴な不安、疑問に対してどう認識されておりますか。
  80. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 先ほど先生が御指摘になりましたように、公的年金制度は目減りをしない年金を出すべきだ、こういうことでございまして、これによって非常に長い老後の期間を保障する、こういう重要な機能があるというふうに思っているわけでございますけれども、納めた保険料と自分がもらう年金というのは損か得かという議論が横行するのは非常に残念であるわけでございます。残念ながら、公的年金制度の意義というのは若いときにはなかなか理解してくれない、こういうふうなことがあろうかと思うわけでございます。  これから大変急激な高齢化社会を迎えますので、今までは、自分が払っておられました年金保険料、それに利子をつけたものとそれから自分がもらう年金というのは、もらう年金の方がはるかに多かったわけでございます。しかし、これから、例えば私どもの計算では、現在二十になっていらっしゃる方、これが自分が納めた保険料の元利合計とそれから給付を比較いたしますと、これは本人が納めた保険料ということで計算いたしますと二・二倍。それから保険料全体、事業主負担をどうとらえるかというのは非常に難しい問題があるわけですけれども、それはちょうど半分ずつということでございますので、保険料全体の元利合計と給付を比較すると一・一倍という程度でございまして、少なくとも自分が納めた保険料を割るようなことはないし、普通でありますと、事業主、本人合わせた両方のものに対しましても、割るということは少ないのではないかというふうに思っているわけでございます。  ただ、この計算の根拠といたしましては、標準報酬の上昇率は四%で、それから物価の上昇は二%、運用利回りは五・五%ということで、デフレ経済が続きますと公的年金というのは比較的損な役回りになるわけでございますが、二十年前のオイルショックのようなことになりますと、二十何%給付費がふえまして利子の方は六、七%、こういうことでございますから、これは年金制度の方が有利になる。こういうふうなことで、経済変動の動きによりましてかなり影響を受けるかと思いますけれども、少なくとも、自分が納めた保険料の元利合計より給付を受けるものが少なくなるということは、国庫負担も入っているわけでございますし、そんなことはないというふうに思っているわけでございます。
  81. 岩浅嘉仁

    ○岩浅委員 経済変動と国庫負担というお話が出ました。最後になるのですけれども、これはもう何回も、どの議員さんもお尋ねになっておることなんですが、国庫負担の問題につきましては、この委員会室でなしにどこか違う部屋で協議がされておるのじゃないかと思いますが、公式的に、日本はクロヨンという問題がございまして、スウェーデンのような方式をとりますとかえって負担の水平的不公平を拡大することになると思うのですが、国庫負担率について二分の一まで引き上げることを検討すべきと私は考えます。  そして、その財源には目的税化した消費税を充てることが個人的には好ましいと思います。消費税の逆進性を指摘することもできるのですが、少なくとも定額の保険料負担の逆進性よりはるかにベターでございますし、国庫負担率とその財源について、改めて厚生大臣に御所見を伺いたいと思います。
  82. 井出正一

    井出国務大臣 基礎年金の国庫負担の問題については、今回の改正に当たってさまざまな御議論がありましたし、現在もあることを承知しておりますが、実施を急ぐべき今回の改正事項とは別個の問題として検討すべきものとされ、この改正案が提出されておるところでございます。  今委員御提起になられましたこの問題につきましては、今後も年金給付費の急激な増大に伴い、現行制度のままでも急増していく国庫負担の財源をどう確保していくかといった問題、さらに、社会保険方式のもとで税と社会保険料バランスをどうとっていくかといった問題などが論議されなければならないと思います。  したがって、国庫負担のあり方については、中長期的課題として幅広い観点から国民的な論議が必要であると考えておりまして、その財源等について今ここで考え方を申し上げる段階ではない、こう思います。
  83. 岩浅嘉仁

    ○岩浅委員 ある雑誌で、井出厚生大臣はかってひいおばあさんとおばあさんですか、お二人の寝たきりのお年寄りを抱えた体験があるということを私は拝見いたしまして、そういう体験をぜひ厚生行政に生かしてほしいのですが、人に優しい内閣の、人に優しい厚生大臣でございますけれども、私は、人に優しい政治というのは、胎児から墓場まですべてのライフステージで公的資金で安心、安全、安定といいますか、そういうものを提供することだと思うのですけれども、当然、優しいということには厳しいという側面がありますね。村山さんもおっしゃっておるのです。ある程度の優しさなら演技でできます。ある程度の優しさなら、私は演技でできると思いますけれども、真の優しさというのは厳しさとワンセットだと思います。ですから、本当に真の優しさを追求するなら、苦しくても厳しく対価を求めなければいけない、そういう側面が出てくると思うのです。  そういう面も踏まえて、最後に、人に優しい政治の内閣の厚生大臣として、こういう基本的なお考えをどう認識されておるのかお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  84. 井出正一

    井出国務大臣 今委員指摘の優しさについての考え方も、あるいはまた望ましい福祉のあり方についての考え方につきましても、いろんな御意見が実はあるわけでございまして、特に、負担と公的に給付されるこのバランスを、どの程度のランクというか水準で国民の皆様方が、かなりの、まあ大部分と言っていいくらいのところの皆さんが合意をしてくださるかという点を見出していくのが、我々政治に携わる者の一つの責務じゃないかな、こんなふうに考えておるところであります。  お答えになったかならないかは、ちょっと私自身も不満でありますが、以上であります。
  85. 岩浅嘉仁

    ○岩浅委員 なっておりませんが、結構でございます。  終わります。
  86. 岩垂寿喜男

    岩垂委員長 午後零時四十五分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十一分休憩      ――――◇―――――     午後零時五十分開議
  87. 岩垂寿喜男

    岩垂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。石田祝稔君。
  88. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 まず初めに、井出大臣に御就任のお祝いを申し上げたいと思います。  考えましたら、大臣とは旧の連立与党のときに政策幹事会等でよくお会いをいたしまして、真剣に日本の将来のことを考えまして、いろいろと討議をしたことも今懐かしく思い出されます。その当時、結局我々が提出した法案をこういう形で、与野党ということでまた質問をさせていただくのも変な感じもいたしますけれども、やはり大事な点もございますので、ダブるところがあるかもしれませんが、いろいろとお聞かせをいただきたいと思います。  まず、この年金の法案について大臣のお考えをお聞かせをいただきたいと思いますが、この年金法案は、内容を簡単に分けますと、大事な順番にこの特徴を言うと、どういう順番になりますでしょうか。
  89. 井出正一

    井出国務大臣 高齢化社会がもう大変なスピードでやってまいります。それにきちっと対応しなくちゃならぬ制度を今のうちから整えておくという意味で、まあ順番、正しいかどうかわかりませんが、そのためにやはり支給年齢の六十歳から六十五歳までの段階的な繰り上げといいましょうか、そのこと、これはもちろん六十歳代前半の皆さんの雇用の促進ということを同時に進めていかなくちゃならぬことは当然でありますが、それがまず第一であろうと思います。それからやはり、保険料そのものもそれに必要な意味合いでこれまた引き上げていくということも必要であろうかと思います。  さらに、例えばネット所得スライドとか、あるいはボーナス保険料の導入ということ等々やはり安定した年金制度を将来にわたってきちっとしていく、こういう意味合いの改正だと考えております。
  90. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 どうも残念ながら大臣は、今の御答弁を聞きますと、どういうことが重要で、なおかつ内容がどういうことなのかというのがちょっと頭に入っておられないんじゃないかという気がして残念でなりません。これだけ大事な法案を所管大臣として委員会で審議するときに、どういうものがどういう順番でプライオリティーはどうなんだ、こういうこと、それとあと内容は何なんだと、これぐらいはびしっと答えていただかないと我々は審議をさしていただく側として質問するかいがございませんので、ぜひそのことは肝に銘じていただきたいと思うんです。  それで私は、大臣の所信表明をこの前お聞きをいたしましたが、この中で年金制度に触れられているところがございまして、四行触れられております。この中で、この年金の法案に対して中身がどういう中身かということを書いているところが一行の半分ぐらいありますけれども、「今月から年金額の改善を行うこと等を内容」としている、こういうことでございます。この「改善を行う」というのは、ある意味では財政再計算で五年に一度行わなくてはならないことですが、先ほど大臣も、一番大事なのは六十五歳に順次支給開始年齢を繰り下げていく、これが一番のポイントじゃないか、こういうことで、私が大事な順番は何ですかとお聞きしたときに一番最初に出てまいりましたので、大臣の御認識だと思うのですが、どうもこの所信には「年金額の改善を行う」、これしか書かれておりませんが、そうすると、所信と大臣の今言われたことと違うのじゃないでしょうか。
  91. 井出正一

    井出国務大臣 今回の年金法案は既にさきの通常国会に提出されたものであったため、大臣所信では、年金法案の早期成立を図るようお願いしたところであります。  公的年金制度は、長期にわたる国民老後生活基本的部分を確実に支えていくことが強く要請されておりまして、将来にわたり長期的に安定した制度を確立していくことが課題であることは先ほど申し上げたとおりであります。その意味で今回の改正案は、今後人口の急速な高齢化等が見込まれる中で、活力ある長寿社会の実現に向けて高齢者雇用を推進していくとともに、年金制度もこれと連携のとれた仕組みとすること、将来の現役世代負担が過重なものとならないよう、給付負担バランスを図るという観点から制度全般にわたり必要な見直しを行うものであります。  このように今回の改正は、二十一世紀の超高齢化社会にふさわしい制度とするため不可欠なものだ、こう考えております。
  92. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 もう少しはっきりお答えいただきたいのですが、この所信は大臣がみずからお書きになったのですか。それとも大臣、一応書いていただいて自分で手を入れたとか、これは大臣の所信ということで私たちは聞いております。ですけれども年金法案に対する意識がどうも違うのじゃないかと思うのですね。  私たちは、年金額の改善ということも財政再計算で非常に大事だ、こういうことで、老齢福祉年金の受給日にもおくれまいと、こういうことで与党から御提案のあった日程についてはもう今までそのとおり、言われたとおりに日程を熱心にこなしてきております。その意味で、私たちも年金額の改善というのは大事だということはわかっておりますけれども、本当に大事な部分はそれとは別にあるのじゃないか。ですから、大臣も六十五歳支給繰り延べということが一番のポイントだと、こうおっしゃった割には、この一番大切な所信ですね、所信ですから、私は一回しか大臣はおやりにならないと思うのですけれども、その中で余りにも内容が違うじゃないか。  ですから、これは本当に大臣がお書きになったのか、大臣が見られて、御自分のお考えをちゃんとこれで結構だ、こういうようにやられたのか、そこのところが少しはっきりしません。ですから、いま一度明確にお答えをいただきたいと思うのです。
  93. 井出正一

    井出国務大臣 御指摘をいただいた点につきましては、いささかじくじたるものがございます。実は、事務当局に用意してもらったのを私なりに目を通し、手を入れだというのが実情であります。
  94. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 率直におっしゃっていただきましたので、もうこれ以上は申し上げません。  それで、法案についてはよく大臣のお考えもわかりましたけれども年金制度自体についてどういうふうな認識を持っていらっしゃるのか、非常に茫漠とした質問で恐縮ですけれども、現在の年金制度についてどういうふうな御認識を持っていらっしゃるのか、お伺いをしたいと思います。
  95. 井出正一

    井出国務大臣 我が国公的年金制度は、国民皆年全体制のもと、老後生活に欠くことのできない重要な柱として、国民の理解と支援のもとに充実発展してきたものであります。このような公的年金制度は、世代間扶養の仕組みに基づき、国民の生活水準の向上や賃金の上昇に合わせた年金額の改善や物価上昇に応じたスライドを行い、老後の生活を生涯にわたり確実に支える役割を果たしており、国民老後生活に欠くことのできないものだと認識しております。
  96. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 年金制度については、私も同様の認識を持っておりますけれども、非常に大事な老後生活を支える柱である、こういうことでありますけれども、それで、この年金制度の望ましい姿というのでしょうか、望ましい年金の姿というのは大臣はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  97. 井出正一

    井出国務大臣 実は、我が国年金制度につきまして、数日前でしょうか、もう二週間ぐらい前になりましょうか、中国の李さんという国務院御一行もお見えになりました。大変すばらしい制度だと、中国は大変な国でありますが、いずれそういうことを検討していかなくてはならぬ、こんな評価もいただいたところであります。  年金制度国民老後生活を生涯にわたり支えていくものでございまして、確実にこのような役割を二十一世紀の本格的高齢社会において果たしていかなくてはならぬわけであります。このような年金制度は世代と世代の支え合いによりまして成り立っているものでございますから、国民の協力と連帯のもとに円滑に運営されていかなければならないわけでございます。また、年金制度を今後とも維持、発展させていくためには、給付負担バランス確保し、将来の現役世代負担を過重なものとしないことが重要であろうかと思います。  このような観点に立って、年金制度を人生八十年時代にふさわしく長期的に安定した制度として確立していくことが何よりも重要だと思います。
  98. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 ありがとうございました。  それで、この後に局長を初めもう少し詳しくお聞きをしたいと思っておりますが、年金制度はやはり今後とも、いろいろな財源、また基礎年金部分について全額税方式ということを言われている政党もございますし、またいろいろなお考えがあるかと思いますけれども、少なくとも年金制度は安定的に維持していかなくてはならない、そういうお答えでございました。これはまさしくそのとおりで、この後安定的に維持していくためにどうすればいいかということで若干後でもお聞きをしたいと思っておりますが、ある意味で言えば、今回の改正を法案として成立をしても、やはりこれは万全だということはいろいろな意味でとても言えないだろうと思います。  ですから、大臣のお考えとして今回の改正大臣の立場としては最善のものとして提案をされていると思いますが、これが、今後の修正問題は別にいたしまして、大臣の立場で、今現在この改正案がそのまま通ったとしてもどういう問題が残っているのか、今後の課題としてどういう課題が残っているのか、これはどういう御認識でありましょうか。
  99. 井出正一

    井出国務大臣 午前中も熊代先生の御質問に一里塚というあれがございまして、私もそう考えると申し上げた次第でございますが、我が国人口は今後急速な高齢化を経験するわけでございまして、年金制度もこれに対応すべく財政再計算期ごとに適切な見直しを行っていく必要があると考えております。  今回の改正がなされた後残された問題といたしましては、一元化への対応あるいは第三号被保険者の保険料負担やパートタイム労働者への厚生年金の適用、さらに国際通算協定の締結等の事項につきましては、年金審議会の意見書でも触れられておるところでございますが、今後の課題だと思いますし、今いろいろ御議論のありました基礎年金の国庫負担の問題も中長期的な課題だと考えております。
  100. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 大臣の答弁で最後に国庫負担の問題もお触れになりましたけれども、私は個々の問題はいろいろとその時代時代に合わせて年金に要求されるものも若干違ってくるだろうと思いますし、その意味でいろいろな個別の問題というのはどうしてもそのときどきに出てこざるを得ないと思います。ですけれども、私が思うには、一番大事なのは、年金制度が将来的にも安心できる、未来永劫にわたって自分のライフサイクルの中で間違いなく有効だ、こういうある意味で言えば制度に対する信頼感、これを高めていくことこそが一番重要じゃないか。いろいろな個別の問題はあると思いますけれども年金制度自体を国民全体が守っていこう、年金制度は我々にとって大事だ、こういうふうな意識、そういう条件になっていかなければならない、私はそう思います。  ですから、これからお聞きしたいのは、この年金制度を維持させていくためには、安定的に発展させていくためには何をなすべきか、こういう観点で若干お伺いをしたいと思います。  せんだって公的年金の加入状況等調査というのをされたというふうにお伺いをしておりますけれども、この結果について簡単に御説明をお願いします。
  101. 横田吉男

    ○横田政府委員 平成四年に公的年金加入状況等調査というのを実施いたしておりますけれども、この結果によりますと、国民年金の一号被保険者に加入すべき人で未加入の方が約百九十万人というふうに推計されております。都市別には、人口二十万以上の市に約六割、年齢階級別に見ますと、二十歳代が五〇%というような状況になっております。そのほかに三号の被保険者の方で未加入、届け出が漏れている方が四十万人程度、その他の未加入者が百十万人程度というような結果になっております。
  102. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 今お聞きのとおり、第一号で未加入者の方が百九十万いらっしゃる、そしてその他の未加入者で百十万、ですから合わせて約三百万人の人が漏れている、こういうふうなお答えでございましたが、これはある意味では年金空洞化につながりかねないわけですね。  今簡単にこの結果の御説明がありましたけれども大臣お聞きになって、年金制度、三百万人も払っていない人がいる。これは免除申請者はたしか入っていないと思いますので、実際免除申請者を入れれば四百万人ぐらいになるのでしょうか、そういう数字だろうと思います。ですから、実際年金を払っている人の加入者が今全部で幾らですか、六千五百万、約六千六百万いる中で四百万人近い人が払っていない、こういう制度なわけですね、現実には。このことについて大臣、御感想はどうでしょうか。
  103. 井出正一

    井出国務大臣 このような大量の未加入者をそのまま放置すればこれらの方々が将来無年金になりかねないわけでございますし、また今担っていただかなくてはならない拠出の方の責任も果たしていただいておらないわけでございますから、これは大変大きな問題でございまして、国民一人一人の年金受給権を確保するとともに制度を健全に運営していくためには、これをいかに減少させるかということが最大の課題であると認識しております。
  104. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 それで、運営部長にちょっとお聞きしたいのですが、現状はこういうことで未加入者が三百万、免除者も入れれば相当な数になる、こういうことですけれども、具体的にこういう空洞化を避けるための対策を今までどういうふうに講じてこられたのか、ちょっとお聞かせいただけますか。
  105. 横田吉男

    ○横田政府委員 未加入者をいかに縮小していくかというのは、大臣が御答弁申し上げましたとおり私どもの最大の課題であるということで取り組んでおります。  そのための方策は多々ございますが、主要な点について申し上げますと、一つは、先ほど申し上げましたように未加入者の大半が二十歳代であるという状況がございますので、私どもといたしましては、まず二十歳の時点でできる限り加入していただくということが重要ではないかと思っております。こうした考えに立ちまして、市町村の住民基本台帳等を活用いたしまして、これはなかなか正確な把握は難しいわけでありますけれども、被保険者になっていただくべき方のリストを作成し、この方たちに、届け出を待っているのではなくて、役所の方から文書あるいは電話、戸別訪問等も含めまして一つ一つ届け出の勧奨を行ってきております。これをさらに徹底していくというのが一つでございます。  二つ目は、未加入者の方のうちの七〇%程度が国民健康保険の方には入っておられるという事実がございますので、私どもといたしましては、国民健康保険と届け出書を一体化することによりまして、国民年金だけの届け出が漏れることのないよう対策を講じてまいりたいと思っております。  もう一つは、やはり未加入者が存在する背景には、年金の将来に対する不安でございますとか、制度に対する理解の不足というのがあると思いますので、これはあらゆる機会を通じまして、また若いときから学校教育等の場も通じまして、できるだけ年金に対する理解を深めていただくようなPR作戦を続けてまいりたいと思っております。  ただ、基本的には未加入対策をより根本的に解決する必要があると思っておりまして、そのためには各年金制度に共通する番号、年金番号を設定いたしまして、それによって情報交換を容易にし、届け出漏れあるいは加入漏れがないようにしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  106. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 この公的年金加入状況等調査というのは今まで余りやられたようなことは聞いておりませんが、今回行われて初めてでしょうか、正確に何人の方が未加入である、こういうことがわかったのじゃないかと思いますが、これは私の思いついたアイデアですけれども、今、若い人というのは大体高校を卒業して車の免許を取るのですね。ですから、これは関係機関と話し合っていただいて、免許を取るときには国民年金に加入していなければ取らせないとか、こういうことはできないでしょうか。  確かに、車を運転していたら事故に遭う確率もある。そうすると、二十過ぎておれば、これは事故に遭ったときに障害を受けても国民年金は出ない、十八歳から二十まではもちろん出るわけですけれども。このあたり、運転免許の取得に際して、そこのあたりも確認をするとか何らかのいろいろな、今までの役所の発想でそれは警察庁の管轄だとかそういうことを言わないで、非常に大事な問題ですから、そういうことも考えられてもいいのじゃないかと思うのですけれども、その点どうでしょう。
  107. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 先生のような提案は前々から、きのう公述人で出ておられました山崎教授の方からもお聞きしたわけでございまして、私も二年ほど前お聞きいたしまして、同感というふうに思いました。しかし真っ向から警察庁にただしてもこれはなかなかわからないなということだったので、まず非公式に打診をしてみたわけでございますけれども、やはり免許証を取るときにこれほどの過重な義務づけをするというのはなかなか理由づけはできない。ただ、障害年金を受けるケースがドライバーの方は多いわけでございますので、教習所なんかでそういう年金のPRをしてもいい、こういうふうな御回答がございましたけれども、免許証を取るに当たりましてこれだけの義務づけをするというのは、理屈では一つの提案だと思いますけれども、実行しようと思えばなかなか難しい、こういう実情でございます。
  108. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 それは、だけれども局長がそんなこと言っていたら困るのですよ。年金に責任を持つ人がなかなか難しいですと言ったら、その局の人はだれもやりませんよ。実際、免許を取るときは何十万かお金をかけるわけですよ。そして取ったら、私たちは中古車に乗っていても、そういう若い人は何百万もする三ナンバーに乗っているのですよ、だれが出しているかはもちろんわかりませんけれども。  ですからそこのところも、今まで一生懸命やってこられて啓蒙に努められても三百万人入っていないのですから、今までの延長線上でやったらこれはふえないと思いますよ、ですから、あらゆる可能性考えてぜひこれは柔軟にやっていただかないと、この年金制度、ますます空洞化していくのじゃないか、こういうふうに私は思います。局長、もう一回御答弁をお願いします。
  109. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 先生の御趣旨はよくわかるわけでございますけれども、免許を取ることによりましてそれだけの義務を訳せるかどうかというかなり法律論の問題もあろうかと思います。御趣旨よくわかりますし、私も本当にこういうのができれば非常に画期的なことでもありますので、さらに我々としましても十分研究させていただきまして、警察庁とも協議をいたしたいというふうに考えております。
  110. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 これはもうぜひ、あらゆる方法を考え空洞化を防止をしてもらいたいと思います。  それで、これはどうしてこういうことになるかといいますと、現在の国民年金というのは約千八百万人近い人が加入をしているわけですけれども、これはある意味でいえば強制力はないわけですね。未加入だといって年金のお金をもらいに行っても、払わなければもうどうしようもない。いわゆる税ではないということで、ある意味での強制力はない。ですからそこのところも今後考えていくべきではないだろうか。ですから、これは遠い将来の話になるかもしれませんけれども、ある意味では全額税方式にすればこれは徴収漏れとかそういうことも一切ないわけですね。徴収の手間も省ける。いろいろないい意味もあるわけですから、いろいろな形で空洞化をぜひ防ぐようにお願いをしたいと思います。  それで、ちょっと基本的なことを幾つかお伺いをしたいのですが、午前中も、年金だけの問題ではない、経済とか財政見通しも大事だ、こういうふうな御質問がありましたけれども、これで私ちょっと基本的なことをお伺いをしたいのですが、この調査室からいただきました参考資料の中の六十七ページに、例えば「厚生年金財政見通し」というのがあります。  これはもう基本的なことですから、特にきのう、こういうことを聞きますよということは言っておりませんけれども、大前提として書かれていることでちょっとお伺いをしたいのですが、この年金財政の見通しでこういうふうに書かれているんですね。標準報酬上昇率が四%、消費物価上昇率が二%、それから運用利回りが五・五%、年金改定率はネット所得の上昇率、こういうふうに出ておりますけれども、例えば標準報酬上昇率が四・○%、これは今後ともこういう姿でやっていくのか、それともこれだけ賃金が間違いなく毎年上がっていくというふうにお考えのもとでやられているのでしょうか。
  111. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 財政再計算に当たりまして一番重要な要素といいますか、年金以外の重要な要素といたしまして、賃金のアップ、それから物価の上昇率、それから年金の運用利回り、この三点が、たくさんほかにも指標はあるわけでございますけれども先生指摘になった三点というのが非常に大きく影響いたします。  したがいまして、この数字をどういうふうに設定するかという点につきましては、私どもいろいろなデータを集めまして、どこが一番標準的かな、こういうふうなことでやっているわけでございまして、先生指摘になりました賃金のアップ、標準報酬の上昇率でございますけれども、これは一人当たりの雇用所得の伸び率、それから一人当たりの労働生産性の上昇率の過去の実績、あるいは経済審議会の二〇一〇年委員会におきます経済の長期見通し、こういったものを総合的に勘案させていただいたわけでございまして、四%という設定をさせていただいたわけでございますが、これは五年ごと見直しの際には当然見直しをされるべき性格のものでございまして、今の時点で考えられる一番標準的な線というのが四%、それから将来の見通しということで設定させていただいたわけでございます。
  112. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 先日、賃金がどうなったかという報告が新聞に出ておりまして、何か賃金収入が初めてマイナスになったというふうなことが出ておりました。そのこととか考えたら、本当にこれは四・○%という計算で、数字はこれは四・○と置けばそうなりますし、仮定の数字として置けばこれは年金財政の見通しというのはそのとおり出ると思うのですけれども、ここのところで私は、標準報酬上昇率四・○もちょっと高いんじゃないかという気が実はします。  それと、運用利回りの五・五%、これは本当に五・五で回せるような時代が来るんですか。今幾らで回っているんですか、運用利回りというのは。
  113. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 現在、積立金は資金運用部にお預けをいたしまして運用いたしているわけでございまして、現在の利率は四・五%でございます。ただ、これは七年物でお預けいたしますので、過去の高いときの利率でございますので、ただいま現在がちょうど五・五%程度でございまして、しかしこれから、その後の財投への預け入れの利子に下がっておりますので、これから少し下がるというふうに考えております。  利率は経済的な要素で非常に変わりますので、先ほどの賃金の上昇とかあるいは物価の上昇、これとかなり相関関係があるわけでございまして、賃金とか物価で給付費の方がふえていく、それから積立金の方は運用利率でふえていく、収入の方でございますが。その辺の相関関係がどうなるかというのが重要な要素でございまして、絶対値そのものというより、物価と利子率の間差額といいますか、今五・五%と二%で三・五%でございますが、これは今でもこういう数字で動いております。  したがいまして、常にこの辺は財政再計算のたびに真剣にこの見直しをしなきゃいかぬと思いますけれども、現在のところ、我々が想定した数字と現在の状況で見ますと、相関関係としては維持されているということでございますので、このままいけばそれほど大きな狂いはないんではないか、こういうふうに思っております。
  114. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 私は、別にこれにかわる数字を正直申し上げて持ち合わせているわけではありませんが、この数字だけ見ますと、数字だけが先にあって、それに合わせてこの財政見通しの何百兆という数が出てきているような気がします。ですからここのところは、現在、物価上昇率がすごく低いわけです。それとの、運用利回りとの差というのは、この五・五と二・○の間でも相関関係ではほぼ同じだろう、こういうふうな御答弁でありますけれども、特に私が心配するのは、運用利回りが五・五というのは、これはもうなかなかこういう時代は来ないだろう。ですから、そういう大前提で計算されているとやはり大きな間違いを起こすじゃないか。今は余り大きくなくても、この財政見通しというのは、ここに出ています数字を見ても、今から七十年先の数字が出ているわけです。ですから、今小さくても将来大きな乖離が出てくる、こういう可能性がありますので、ぜひこれは精査をしていただきたい。  ですから、見直しのたびというように五年に一遍じゃなくて、ある意味ではこの部分は間断なく見直していく、こういうこともぜひお願いをしたいというふうに思います。  それで、年金制度の維持のために何をするのか、こういうことでずっとお聞きをしておりますけれども、私は大臣の御質問のときにも申し上げましたが、年金制度のある意味で言えば信頼感というのでしょうか、年金に長ければ四十年間、二十の方はこれから六十歳まで掛けるわけです。ですから、そこに信頼感がなければ四十年も長い間掛け続けることはとてもできない。ですから、そういう意味で、私は、国民年金等の未加入者もお気持ちをいろいろと聞いてみれば、年金というのは大丈夫かな、これに四十年間も掛けて本当にもらえるのか、こういうこともあろうかと思います。  それとともに、やはり自分の負担がどんどんどんどんふえていくじゃないか。最終的に二九・六%、こういう数字が出ているわけですけれども、そういうところまでいったときに、実際、自分が払っていけるんだろうかとか、いろいろなことがあろうかと思いますが、その意味で、この国庫負担についても私は、今三分の一だから三分の一でそのままでいいんだ、こういうふうには決して思っておりません。  ここのところで年金局長、簡単に、現在と二〇二五年のときの姿、午前中にもちょっとお伺いをしましたけれども、二〇二五年、現在の三分の一の国庫負担と二分の一の国庫負担ではどういうふうに違うのか、ちょっとお聞かせいただけますか。
  115. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 基礎年金の国庫負担の額でございますが、現在、三分の一で三兆九千億円でございます。それがそのまま二〇二五年になりますと八兆一千億円ということに相なるわけでございまして、これが二分の一にいたしまして二〇二五年になりますと十二兆一千億円、こういう数字に相なるわけでございます。これは現在、六年度価格での価格でございますので、名目は年金額が上がればその分だけ上がっていく、こういうことに相なるわけでございます。
  116. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 午前中の、私と同趣旨の質問に対する年金局長の答弁を聞いておりましたら、こういうふうに言っていたのですよ。二分の一にした場合どうなるか、現在の三兆九千億の国庫負担が十二兆一千億になる、こういうふうにお答えになりました。これはまさにそのとおりなんですけれども、実はもうちょっと丁寧におっしゃっていただくと、現在の三分の一のまま推移していっても八兆一千億かかるわけですね。ですから、三・九兆から十二兆一千億ということではなくて、二〇二五年の本当の姿を正しく言っていただくと、現在のままいくと八兆一千億だけれども、二分の一の国庫負担にすると十二兆一千億ですよ。ぜひこれはこういうふうな形で言っていただかないと誤解を招く。私は聞いておりまして、これはちょっと答弁をずらしてお話ししているのかな、正直そういう気がいたしました。ですから、二〇二五年の姿は国庫負担を二分の一にすると現在よりも四兆円その時点でふえる、こういうことだろうと思います。  それと、消費税の話もそのときに若干あったと思いますけれども、これは消費税の納税収ということで一%が一・三兆円だ、こういう前提でお話しになりました。これは、消費税の地方譲与税の分とか地方交付税の分とかそういうものを全部取り除いて、その上で言われている数字ですね。ですから、ある意味で言えば、基礎年金の国庫負担分というのは地方は関係ないわけですから、譲与税とか地方交付税の分を除いて純計で考えた方がもっと姿がわかりやすいんじゃないか。ですから、これは特会に直入させるとか、いろんな形をとらなくてはならないかと思いますけれども、例えば四兆円の差というのはそういうふうに直入を考えた場合はどういうパーセントになりますか。
  117. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 地方税も全部含めて消費税は二兆四千億円でございますので、それを四兆円で割り算しますと、一・六%程度だと思います。
  118. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 どうもありがとうございました。  関連で同僚議員が質問しますので、交代いたします。
  119. 岩垂寿喜男

    岩垂委員長 桝屋敬悟君。
  120. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 引き続き質問をさせていただきます。改革の桝屋敬悟でございます。よろしくお願いをいたします。  最初に、基礎年金の国庫負担関係をいたします財源問題でございますが、お話をさせていただきたいと思います。  私どもが旧連立与党時代、年金改革プロジェクトチームを組んで検討を進めてまいったものが今回の政府案でございます。大変に私ども悩みながら、この委員会の席に今参加をいたしております。  昨年十二月、取りまとめを行いました段階では、大事なことですけれども福祉ビジョンの策定をする、福祉ビジョンをつくるということを前提といたしまして、そして税制改革もやるということを念頭に置きながら私たちプロジェクトチームでの結論は、いろいろ議論はございましたけれども、結論的には給付負担のあり方や財源をどのように確保するかという議論も踏まえて、連立与党として直ちに検討に着手する、こういう整理をせざるを得なかった経緯がございます。  残念ながら、その後政権が交代をいたしました。村山内閣におきまして、再度この税制改革が検討されたわけでございます。先ごろ、九月でございますか、与党の税制改革大綱が閣議にも報告をされ、了解されたという話を伺っておりますが、特に、私どもといたしましては、福祉ビジョンの姿が非常にあいまいといいますか、見えないということで、大変中途半端な感をいたしております。  そこで、大臣にまずお伺いをしたいわけでございますが、今まで委員会、今回の委員会で、大臣の方から、新ゴールドプラン等についてはその足がかりをつけることができた、このようにお話はございましたが、事年金に関しまして、私ども旧連立与党の税制改革プロジェクトチームで随分悩んだ末、早急に検討するということで別途の問題として整理をせざるを得なかった、そういう環境が私どもにはあったわけでございますが、その後内閣がかわりまして、政権がかわって、税制改革を検討された。この今政府・与党がお考えになっている税制改革大綱、この中で大臣年金の国庫負担を改めて論議する、そういう環境が整ったというふうにお考えになっているのかどうか、その点、まず大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  121. 井出正一

    井出国務大臣 年金の国庫負担のあり方については、先ほど局長の方から御答弁申し上げましたように極めて巨額の財源を要する問題でもありますことから、その財源確保をどうするかという問題はもとより、社会保険方式のもとにおける費用負担のあり方や、今後の社会保障政策の中でこれをどう位置づけるのかといった点について、総合的かつ国民的な議論が必要であると考えております。  したがいまして、この問題については、関係審議会や国会のこの審議を含め、国民各層、各方面でさまざまな御議論が行われてきており、今回のこの法案の改正とは別個に、重大な問題としてこれからも慎重に検討をしていかなければならないものと考えております。
  122. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 大臣、私、お話を聞いていてよくわからなかったのですけれども、もう一度お尋ねしますが、私どもは、旧連立与党時代、大変に悩みながらプロジェクトで取り組んでまいりました。その姿は見ていただいたと思いますが、その後内閣がかわって、検討されて税制改革大綱をお出しになったわけです。新しい税制改革大綱をお出しになった。  それは当然、年金の国庫負担であるとかゴールドプランであるとか、いろいろな問題があるわけでございまして、そういう問題を踏まえてその財源を検討しなければいけない。その環境は変わったんじゃないんですか。変わっていないんですか。やはり同じような悩みを抱いておる、こういう状況でございますか。もう一度お願いいたします。
  123. 井出正一

    井出国務大臣 九月の税制改革におきましては、高齢化社会に関しまして、高齢者の介護あるいはエンゼルプランに関係するような子育ての面で配慮をしていただいたところでありますが、この年金法は、先生が与党時代、大変に御苦労を重ねましたあの時点で法案として国会へ提出しておるものでございまして、私ども厚生省といたしましては、その提出した時点の考え方ております。
  124. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 この問題ばかりやってもしょうがないんですが、今の問題に関連しまして、この委員会でも何度がお言葉が出ておりますが、福祉ビジョンをできるだけ早くというお話が何度か出ております。今のような問題にも絡むわけでございますが、今回は恐らくどこまで議論できるかですが、年金の国庫負担、さらには新ゴールドプラン、エンゼルプラン、そんなものをひっくるめた福祉ビジョンについて、一体いつまでに、どういうふうにおつくりになるのか。やはりここまで非常に重要な時期に、できるだけ早くという言葉は、私はまず明確にしていただかないと、国民に説明できないんじゃないか、このように思うわけでございます。  大臣のお立場というのは、非常に今お悩みになっているというのはよくわかるんですが、具体的に福祉ビジョンについてどういうふうに今後策定をされるのか、具体的なお話をお伺いしたいと思います。
  125. 井出正一

    井出国務大臣 今般の税制改革に当たって、与党における御論議の結果、先ほども申し上げましたように、少子・高齢社会に向けて、当面緊急を要する施策について一定の福祉財源措置が講じられたところであります。また、今回の税制改革におきましては、社会保障等に要する費用の財源の確保等の関連で、消費税卒についての見直し規定が置かれることになっております。  したがいまして、その検討過程において、過日地方自治体から策定していただいた老人保健福祉計画をもとにゴールドプランをさらに見直しまして、新ゴールドプランの骨子を今お示ししてあるところでございますが、それあるいはエンゼルプランを今詰めておるところでございます。これをできるだけ早くとしか、まだこの段階では申し上げられませんが、早くその詰めを行うとともに、これ以外に年金や医療等の自然増の推計もしていかなくちゃなりません。そういった将来の社会保障の具体的な姿を明らかにしてまいりたいと思いますが、先生この春政府から出されました福祉ビジョンにかわってまた何とかビジョンという形で出すことは、私ども考えておりません。
  126. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 大臣、どういうことでしょうか。私ども福祉ビジョンの検討を旧連立与党時代もやりましたけれども、大内前大臣ですか、がある程度の骨子をつくられて、旧連立与党でも相当検討したわけでございますが、大体ああしたもので、今後その福祉ビジョンをもう一回今の政府でお考えになるという、こういうことですか。ちょっとお答えの趣旨がよくわからなかったんですが、お願いいたします。
  127. 井出正一

    井出国務大臣 大内厚生大臣時代に御提出しましたこの福祉ビジョンの目指す方向は、現内閣のもとにある今の厚生省も全く同様であります。ただ、その役といいましょうか、その間推進してまいりましたゴールドプランをさらに拡充したり、新たに子育ての関係のエンゼルプランを一層内容を詰めてこれに加えるといいましょうか、この福祉ビジョンをさらに充実したものにしていこう、こういう姿勢でございます。
  128. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 どうも私の頭が悪いのか、大臣のお答えの趣旨がよく理解できないのですが、大臣、もう一度お伺いいたします。  どういうふうにお聞きしたらどのようにお答えいただくのか大変悩むわけでございますが、先ほどの最初の大臣の御答弁で新ゴールドプランという言葉が出ました。それからエンゼルプランという言葉が出ました。それは喫緊の課題だ、このようにおっしゃいましたね。そうしますと、こうした喫緊の課題になる中長期的な計画、それからさらに年金の国庫負担年金の財源等も含めた幅広い社会保障全体の、年金、医療、福祉の全体の社会をどう考えていくかという計画もあろうと思うのですが、それを福祉ビジョンと言うならばもう一回明確にお答えいただきたいのですが、新ゴールドプランとエンゼルプランを大体いつを目標におやりになるのか。そして、それも含む大きな福祉ビジョンはどういう形で国民にお示しになるのか、そのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  129. 井出正一

    井出国務大臣 新ゴールドプラン、それからエンゼルプランは、これはもうできるだけ早く、もう地方自治体は策定計画にのっとって今年度から事業を始めておるわけでございますから、これはもうできるだけ早く、しかも財源も伴うことでございますから、そちらにも配慮しつつ関係省庁と詰めていかなければならぬと思っております。  そして、先ほど申し上げましたように、年金、医療等の自然増、あるいは御質疑いかんによってはいろいろな国庫負担の問題にも関係してくるかもしれませんが、そういった自然増の推計もこれは当然あわせて行わなくてはなりません。したがいまして、今度の税制改革の中に設けられました見直し条項あるいはそのための検討期間が設けられておりますから、ぎりぎりそこまでにはきちっとしたものを提示しなければならぬ、こう考えております。
  130. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 大臣、もう少し本当に国民にわかりやすい言葉でお答えをいただきたいと思うのです。これはお願いをしたいと思うのですが、もう一度お伺いしますと、今の大臣のお言葉はこのように理解してよろしいですか。  新ゴールドプラン、エンゼルプランについては早急にということは、先ほど地方自治体も非常に心配しておる、こういうお言葉までいただいたわけですから十分その辺のことは理解をしていただいていると思うのですが、そういう意味では、今年度中、平成七年度の予算をつくるときまでに何とかするんだ、こういうこと。それからもう一つの、大きな福祉ビジョンについては次の検討期間まで、ということは、つまり税制改革大綱で示された平成八年九月三十日、これをゴールとして福祉ビジョンの検討にかかるんだ、こういうことでございますか。確認をお願いいたします。
  131. 井出正一

    井出国務大臣 いわゆる二十一世紀福祉ビジョンの社会保障の給付負担の将来推計は、将来の社会保障の全体的な姿が論議できるよう、一定の仮定を置いて試算したものでございます。したがいまして、今後、個々の具体的な施策とその所要経費については、具体的に新ゴールドプランの策定等を通じて検討し、確定していくべきものと考えております。  先ほど先生おっしゃった、ではこの七年度の予算の編成過程で新ゴールドプランとエンゼルプランをきちっと示すのか、こういうお尋ねでございましたが、これは大変財源も要することでございますから、もちろん大蔵当局初め関係省庁に御協力をいただきながらその方向で努力はいたしますが、ではこの七年度中に全部きちっとした形でスタートができるよ、こういうことまできょうのこの時点ではちょっとまだ断定的には申し上げられませんが、そういう方向で努力をしていきたいと思っております。
  132. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 今の問題についてはもう少し確認をさせていただきたいのですが、大臣、恐らく御理解をいただいていると思います。特に新ゴールドプランにつきましては、新ゴールドプランという言葉であたかも何か新しいプランができるように思われるかもしれませんが、私は、実はそうではないのだろうというふうに思っております。  実は、この淵源は平成元年度、ゴールドプランというものを厚生行政が初めて中長期的な計画を路線として、戦略としてお立てになった。もうそこから始まっているわけでございまして、元年度、消費税が導入された、そして今まで進んできたわけでございまして、当初、大変に地方、県、市町村では混乱をいたしました。ゴールドプランという数字がどんと出まして、しかも十年というスパンで出たわけですから、今までの厚生行政にはなかった試み、それだけに、将来の高齢社会に対応しなければならない、こういうことであったわけでございますが、その後法改正、八法改正をして市町村の責任を明確にして、そしてなおかつ老人保健福祉計画をつくりなさい、このように義務を課して、そして平成五年には老人保健福祉計画ができた。  実は、市町村あるいは県が老人保健福祉計画をつくった、その集大成が実は新ゴールドプランでございまして、これは県なり市町村にとりましては、今の大臣のお話では大変に皆さん心配をされると思うのです。できるだけ頑張っていくよなんていうような、そういう認識でこの平成七年度の予算に取り組んでいただきますと、各県は、あるいは市町村は大変にお悩みになると思うのですね。  だから、本当にこの新ゴールドプランというのは、ある意味では国がつくりなさいと言って、しかも大臣がその基準まで、参酌すべき指針まで示してでき上がってきたもの、それを、実は平成七年度というときを考えますと、国から言われて、法で定められた老人保健福祉計画を県がつくった、市町村もつくった、そしていよいよこれからスタートだ。それで今年度は、平成六年度もありました、七年度、これだけ施設整備をしなければならない、こういう量が出るわけでございまして、その明確な今後の流れが、ゴールドプランがスタートした、計画的な事業がスタートした。そして、もう既にこれは動き出しているわけですから、その予算を明確に計画として、単年度予算ではないですよ、今後の流れとして示していかないということは、これは許されないことだろうと私たち与党時代もそう思っておりました。腹を決める以外にない、こういう思いでおりました。  ぜひ大臣には、この平成七年度予算を編成されるその姿勢として、単に七年度の予算をつくり上げればいいんだということではなくして、今後少なくとも新ゴールドプランを確保するだけのものをこの予算で、予算までに勝負する、こういう御決意をお聞かせいただきたい。もう一回お願いいたします。
  133. 井出正一

    井出国務大臣 委員おっしゃるとおり、各市町村ももうその気になってスタートしておるわけでございますから、これをだめよとかできないよと言うわけには到底いかないことは重々承知しております。これから暮れの本格予算編成に向かって全力を尽くすつもりでおります。
  134. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 それでは、ちょっと角度を変えてお話をお伺いしたいのですが、先ほどお話をいたしました政府・与党の税制改革大綱、この中でもう一点、どうしても私は今の問題との関連でお話を申し上げたいわけです。  平成九年度、消費税率のアップと同時に臨時給付金を出そうと。こういうものが、私も大蔵省からこういうぺーパーをいただきました。この中を見ますと、臨時給付金を平成九年度に出す、こういう内容が載っております。今すぐのことではございませんが、この臨時給付金、その目的、それから対象者、総額が、財源が幾らぐらいになるのか、ちょっとお話を、これはどちらでも結構ですが、お願いします。
  135. 佐野利昭

    ○佐野(利)政府委員 お答えいたします。  先生も御承知のように、臨時給付金は今回の税制改革における消費税の税率引き上げに伴いまして、本当に手を差し伸べなければいけないような人々に対する激変緩和措置として、臨時特例的な措置として導入を図るということで、政府・与党において決定を見ているところでございます。  その対象者は、老齢福祉年金、特別障害者手当あるいは生活保護などの受給者、あるいは社会福祉施設の入所者だとか低所得の在宅寝たきり老人などを対象として、平成九年度だけ行うということでございまして、所要額は事務費も含めて総額で五百億というふうに聞いております。
  136. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 内容は大体わかりました。  これは平成元年度の消費税導入のときも私たちの党も賛成をした経緯がございますから、必要性といいますか、その辺はわからないわけではないのですが、大臣、こういう福祉的な措置、税制改革に絡めての福祉的な措置についての大臣の御認識をお伺いしたいと思います。
  137. 井出正一

    井出国務大臣 ただいま局長の方から御説明申し上げましたように、臨時給付金は、今回の税制改革における消費税の税率引き上げに伴い、真に手を差し伸べるべき方々への激変緩和のための臨時特例措置として、今委員おっしゃったように、この前の消費税導入時と同様に実施することが与党において決定されたものであります。したがいまして、政府といたしましてもこのような与党の決定を踏まえ、必要な準備を進めていきたいと考えておるところであります。  以上です。
  138. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 マスコミ等からもこの給付金についてはかなり厳しい御批判が出ております。  先ほど対象者につきましては、年金受給者、福祉年金の受給者でありますとか生保世帯あるいは施設入所者、さらには寝たきり老人等というお話がございました。確かに激変緩和という問題点はあろうと思うのですが、私は元年度の消費税導入のときとこの平成九年になるのですか九年度ですか、大変に時代の状況は違う、このように思っているわけでございます。  消費税というのは一定の定着を見ておるということ、さらには福祉的措置と言いながら、今も言われましたように、対象者、年金でありますとか生保というのは、いずれもその給付額については当然ながら消費税が上がれば基準額もアップする、その措置はとられるわけでして、一年間に単年度ベースで、単年度だけ例えば一万円であるとか三万円であるとか、こういう支給をして本当に果たして福祉の拡充になるのかという議論があるわけでございます。言えばばらまき福祉ではないか、こういう声が出るわけですが、私はばらまき福祉とまでは言いませんが、政府におけるプライオリティーの問題だろう、優先順位の問題だ。  少なくとも大臣は、この給付金、激変緩和で必要なものだというお話は今ございましたが、閣議でこういう話が出たときに、今大臣の立場では、とんでもない話だ、こんなことをやるよりももっと先にやらなければいけない課題がたくさんあるのではないか、そこまで今政府財政状況はゆとりはないんだ、あるいは喫緊に取り組まなければいけないそうしたものがある。むしろ、総理もおっしゃっていました、税制改革に対する低所得対策はまさに歳出の方で福祉充実する中で対応していきたい、こういう話もございました。してみれば、やはり厚生大臣として、こういう給付金、しかも平成九年の給付金、こういうものを担保するよりも、もっと私はやるべきものがあるんじゃないかというふうに思います。  もう一遍確認ですが、これは総額、今話ございましたかね。今報告ありましたですかね。総額、財源的にはどのぐらいでございますか。
  139. 佐野利昭

    ○佐野(利)政府委員 平成九年度の額といたしましては、事務費を含めて約五百億というふうに聞いております。
  140. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 ありがとうございます。  大臣、聞かれましたか。五百億でございます。この五百億の財源を今の時点で例えば平成九年度に向かって担保するというような、しかも臨時の福祉措置、その措置が果たして有効かどうかという福祉措置をするよりも、私は大臣として閣議で叫んでいただきたいのは、そんなことよりももっとやらなきゃいかぬことがある、厚生省としては五百億の財源があればぜひこっちへ回してほしい、こういう姿勢があってしかるべきではなかったか、このように思うわけでございます。  そうした観点からちょっとお伺いをいたしますが、先ほどから出ております平成七年度の当初予算へ向かっての作業でございますが、その前に平成六年度のゴールドプラン関係の施設整備、この予算と、実際に県から、あるいは地方から上がってきておる必要額といいますか協議額、それに対する内示の状況、そして平成七年度、場合によっては平成八年度もあるかもしれませんが、どれぐらい必要な財源が、二カ年事業等にしたことによってどういう必要な額があるのか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  141. 阿部正俊

    ○阿部政府委員 六年度予算執行につきまして、かなり幅広いものでございますので余り時間をとってもどうかと思いますので、先生多分一番御心配なされておるようなケース、特に特別養護老人ホームの整備なんかの状況を申し上げます。  私どもは、平成六年度予算におきまして、特別養護老人ホーム、大体予定としては一万床分の、一万人分といいましょうか、整備費を用意したわけでございます。約七百億余でございますが、これに対しまして、都道府県を通じまして要望、協議があった額を全部総計いたしますと九百四十数億ということで、二百億余のいわば差が出たという状況でございました。  この原因というものは、先生先ほど御指摘ございましたとおり、市町村がそれぞれ新しく老人保健福祉計画をおつくりになりましたので、そういう意味で一生懸命やろうというふうな、何というのでしょうか、前倒し的にやろうというふうな傾向が一つあったのではないかということ。それからもう一つは、これは実質的にかなり大きな要素なんでございますが、平成五年度予算で補正予算で二度補正がございまして、数百億分がいわば六年度に送り込まれたといいましょうか、五年度に着工して実態は六年度で措置しますということで、五年度で既に手がけた分が数百億ございまして、そんなこんなで、以上のような形で二百億余の差が出てしまった、こういうことでございました。  私ども、これにどう対応するのか、率直に申しまして大変苦慮したわけでございますけれども、一部の事業を採択し、一部の事業を採択しないというわけにはいかないだろうということで、一つの判断といたしまして、六年度単年度事業として計画されたものを二カ年事業にしてほしいということで、六年度分は約二〇%、七年度分想定として八〇%ということですべての事業を採択した、こんなふうな形になっておるわけでございます。  先生心配のとおり、七年度、これが引き続いてさらに押せ押せになるというようなことがあっては大変困るわけでございますので、私どもとしては県あるいは市町村と十分意思疎通を図りながら、ゴールドプラン関係施設の整備に支障のないように、年末の予算編成に向けまして関係省庁と鋭意協議してまいりたい。何とかやはり支障がないように円滑に、ニューゴールドプラン、先の問題もさることながらといいましょうか、今円滑に動いているものでございますので、そのフォローはちゃんとしていかなきゃいかぬというふうなスタンスで臨みたいというふうに考えております。
  142. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 どうも数字が出るとますます話が見えなくなるのですが、局長とうですかね、今の説明で七百億余、これが予算。協議額が九百四十余。そうしますと、内示が私いただいている資料では七百ぐらいでございまして、六年度分として二百四十億ぐらい翌年度へ持ち起さなければいけない、実はそれ以外に、七年度も入れますとさらに二百七十億ぐらいある、合わせて五百億くらい予算確保しなければならない、こういう話を聞いておりますが、もう一回確認をさせてください。
  143. 阿部正俊

    ○阿部政府委員 今までの継続といいましょうか、その分だけで五百億余り必要になってくるだろう、それに、新しく七年度から着工する仕事として、どれだけ県から協議があるかということと合わせて七年度で対応しなければいかぬ、こんなふうになろうかと思います。つまり、六年度からの継続分を消化するということで大体五百億余りが必要になってくる、こういうことは先生の御指摘のとおりでございます。
  144. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 局長、そうしますと、概算要求の姿、合わせまして八百億ちょっとですか、その辺の絡み、関係で、平成七年度予算は大丈夫だ、十分確保できておる、こういうことなのかどうなのか、その観点でお答えをいただきたいと思います。
  145. 阿部正俊

    ○阿部政府委員 七年度予算につきましては、施設整備費は社会福祉施設整備費として全体で要求しておりますので、特養が幾らというふうになっておりませんのであれですけれども、率直に申しまして、五百億余りでもう既に六年度からの継続分で充当せざるを得ないというふうな状況でございますので、現在概算要求として出しております分でほかの施設整備も含めて全部カバーできるというのはかなり難しいのではないかというのが、私どもの現在の考えといいましょうか、判断でございます。したがって、何らかの措置はさらに考えなければいけない、こういうふうに思っております。
  146. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 大臣、お聞きのとおり、要するに、厚生省を取り巻く予算あるいは将来の財源、大変に厳しい状況があるわけでございます。なおかつ、先ほど申し上げたように、厚生省として国民にあるいは地方に、ゴールドプランが進み始めたということで、どうしても将来にわたって責任を負っている部分もあるということでいきますと、厳しい財源とともに、私、どんなことがあっても話はないと思いますが、今のときに大臣だけはやりたくないな、こう思うわけでございます。その御苦労は大変わかるわけですが、逆に言いますと、先ほどの臨時給付金ですか、こうした問題との絡みもあるのですけれども、やはり厚生大臣として、極めて腹を決めていただく必要があるのではないかという気がいたします。  今回の臨時給付金につきましては元年度と同じだという話もございましたけれども、やはり村山政権として国民の前に、今これだけ福祉のプランを考えると、ビジョンを考えると財源が足らないんだ、そのことを正直に言われて、そして、そのための対策で税制改革はこうするんだという堂々とした議論をするときが来ているだろうと思うのですね。そういう意味では、臨時給付金あたりで、何か今までの、特に総理あたりそうかもしれませんが、今まで引っ張ってきた議論をこの給付金でごまかすような、こんな話を国民にしていただくのはもう真っ平だ、このように私たち思うわけでございます。  先ほど平成七年度の施設整備を考えましたら、五百億足らない。五百億の財源が担保できるのだったら、まずその回すべきところはどこなのか、そういう議論を大臣としてやはり閣議でしっかりおっしゃっていただきたい。大変な責任を負う大臣でございますから、その辺の御決意をお伺いしたいと思います。
  147. 井出正一

    井出国務大臣 厚生省は、例えば今年度の予算、十三兆六千億という大変な額をちょうだいしておるのですが、そのうちの約九二%でしょうか、十二兆七千億ぐらいは医療とか年金とかあるいは社会保障費といった、法律に義務づけられた国庫負担金が占めておるものですから、これがほうっておいてもだんだん自然増があるわけですから、新しい事業をするということを考えた場合、大変厳しい状況にあることは十分承知をしておるつもりでございます。  そんな中で今度の、今御指摘の五百億の臨時給付金の件でございますが、いろいろな議論があることは承知しておりますし、先生がおっしゃるような意味に使えたらなと私も思わないわけではございませんが、これは与党の担当者の皆さん方が慎重に御論議をしてくださって得た結論でございますから、それなりに尊重しなければなりません。また、これから消費税三%を五%に引き上げるという点につきまして、国民の皆さんにあらゆる面から理解をしていただくような努力も当然しなければなりませんし、するつもりでありますけれども、やはりこれは導入のときもそうですが、引き上げのときにも、正直のところそう簡単にいくとも思えないわけでございます。そんな点を配慮されて、与党の担当者の皆さん方がこういう措置をとられたのじゃないかな、こういうふうに私は理解しておるところであります。
  148. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 もうこの問題ばかりで年金に全然入れないわけでございますが、もう一回、大臣、最終確認でございますが、今のような給付金、それは政府・与党で、与党の御意見もあるというのはわかりましたけれども、私は、非常に中途半端なやり方だなという気がいたします。  それで、それも何もかも、結局のところビジョンが明確にならない以上、今や年金の財源にしたって、ゴールドプランにしたって、エンゼルプランにしたって手がつかないわけでございます。やはり税制改革の前提となる福祉のビジョンを明確につくる、この努力を、先ほど努力するとお話がございましたが、最終確認でもう一回確認をしたいのですけれども大臣、まず新ゴールドプラン、それからエンゼルプランは今年度中に、当初予算を目途くらいに努力をする、何とか目鼻をつける。それから新しい福祉ビジョンについては、これは大変残念なのですけれども平成八年九月三十日ぐらいまでにおやりになる。こういうふうに私理解していいですか。どうでしょうか。     〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕
  149. 井出正一

    井出国務大臣 新ゴールドプラン、それからエンゼルプランにつきましては、少なくとも七年度からスタートだけはできるようなところまでぜひ持っていかなければならぬと思っております。  それから、もちろんそれらを中心に、年金とかあるいは医療の今後の自然増等々を算出したり推計したりしながら、新しい福祉プランとは申し上げませんが、この春出された福祉ビジョンをさらに拡充するような形で、できるだけこれも早くしたいと思います。  しかし、一番遅い時点で、今おっしゃった見直し規定の中にあります平成八年九月末ですか、こういうことがありますからぎりぎりそこまでですが、それよりも早くにもちろん方向としては打ち出したい、こう考えております。
  150. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 新ゴールドプラン、それからエンゼルプラン、これはぜひ今の御決意でとりあえずはお取り組みいただきたい。  それから、新福祉ビジョンにつきましては、平成八年九月などというとこれはまた政権がかわるかもしれませんし、本当に大臣、今の政権、自分のときに早急に結論を出す、こういう御決意がいただきたい、こういうふうに思うわけです。  もう一点、先ほどお話しした平成七年度の特養等の施設整備につきまして、ことし恐らく協議額は予算以上のものが出てきたと思うのです。それを何とか拾ったというのが今回の姿でございますが、これは来年もやっていただけますか。これは、来年上がってくる協議額というのは、地方が老人保健福祉計画に基づいて上げてくるものですから、これはもう受けざるを得ないわけでございますが、来年度、協議が上がってきたものは受けていただけますか。どうでしょうか。
  151. 阿部正俊

    ○阿部政府委員 先ほどお話し申し上げましたように、継続分だけで相当な額に上りますので、まだ七年度予算案につきましてはこれからの話でございますので、今の時点でどうというのはなかなか言えないわけでございますけれども、私どもとしては、地方自治体等と十分意思疎通を図りながらも、ゴールドプランの円滑な推進ということに支障が出ないように最大限努力を重ねていきたい、こんなふうに思っております。
  152. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 局長、ぜひそういう御姿勢でお願いをしたいと思います。地方から大変に懸念の声が出ております。よろしくお願いしたいと思います。  ほとんど時間がなくなりましたのですが、やっと年金の話に入りたいと思います。時間がなくなりましたので、年金、一点確認をしておきたいと思います。  私ども旧連立与党の年金改革プロジェクトの中で実は十分検討できなかった部分が一点ございまして、これが例の雇用継続給付との併給調整の問題でございます。この部分にいまだに大変懸念を持っているわけでございますが、雇用継続給付とそれから年金、これは併給調整をするというふう」に今の政府案では最終的になっておりますが、この基本的な考え方をもう一度おっしゃっていただきたいと思います。
  153. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 ことしの通常国会で、雇用保険法の改正によりまして高年齢雇用継続給付というものができたわけでございまして、これは六十歳までの賃金に比べまして一五%以上賃金が下がった方、この方につきまして新しい賃金の最大二五%の高年齢雇用継続給付を出す、こういう仕組みができたわけでございます。  これと年金との調整をどうするかということで、先生に入っていただきました年金改正プロジェクトチームにおきましても、終わった後これが決まったものですから、そのプロジェクトチームの段階ではできなかったわけでございますけれども、その後でもいろいろ先生にも御相談に上がったというふうに御記憶いたしておりますけれども、どうするかということで労働省あるいは大蔵省ともいろいろ折衝がございました。  しかし、私どもといたしましては、やはり高年齢になられて同じような、賃金にかわるような給付が出る、あるいは失業給付にかわるような給付が出る、こういうことでございましたので、社会保障としての給付というのが二重というのはどうかなと。それから、在職老齢年金関係でも賃金と調整いたしておりますので、この在職老齢年金と賃金の調整に準じて調整をさせていただく、こういうことにして現在法案を提出させていただいているわけでございまして、九年の四月から実施ということでございます。
  154. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 では、確認をさせていただきたいのですが、この雇用継続給付との併給調整をしなかった場合の、私どもは三〇%以内、二九・六%の保険料ということをゴールにずっと検討したわけでございますが、そうした観点からいきますと、併給調整をしなかった場合の影響、パーセントで結構でございます。それからもう一点は、在職老齢年金の例の二〇%カット、これを撤廃した場合の影響額、影響のパーセントですね。さらには、在職老齢年金の調整で、合計額、例の二十万のところで調整をするというところがございますが、これを二十二万まで引き上げるというような微調整をしますとどのぐらいの影響になるのか、最後に確認をさせていただきたいと思います。
  155. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 いろいろの財政影響関係でございますけれども……(桝屋委員「今の政府案で結構です」と呼ぶ)はい。組み合わせますといろいろ結果が変わりますので、その前提の上で、個別にその項目だけ変わったという前提で申し上げたいと思います。  最初にございました高年齢雇用継続給付の受給調整をやめるということにいたしますと、最終保険料率で○・二%アップするというものでございます。それから、在職老齢年金の受給者の二割カットをやめる、これは永久にやめるということになりますと、最終保険料率は○・四%程度アップいたします。それから、在職老齢年金を併給する基準としまして二十万が決まっておりますが、これを仮に二十二万に上げたという場合でございますと、最終保険料率は○・二%程度上昇いたしますので、全部合わせますと○・八程度になろうかと存じます。
  156. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 ありがとうございました。私どもとしては、前回の検討の三〇%の枠というもの、これはぜひ必要なことだなというふうに考えております。  あとの質問は次のメンバーに引き継ぎたいと思います。ありがとうございました。
  157. 鈴木俊一

    ○鈴木(俊)委員長代理 福島豊君。
  158. 福島豊

    ○福島委員 改革の福島豊でございます。本日は御質問の時間をいただきまして、本当にありがとうございます。私は、極めて基本的な事柄に関して何点がお聞きしたいというふうに思っております。  我が国は、二十一世紀に向かって世界にも例のないスピードで高齢化を遂げつつあります。社会の人口構造の変化が起こるわけでございますけれども、その人口構造の変化の中で、賦課方式により世代間の所得分配の一つのメカニズムとなっている年金保険制度も変化せざるを得ない、そのように私は思います。  具体的には、二十歳から五十九歳の人口は、平成二年度には五六・一%であったものが、平成三十七年度には四八%に減少いたします。また、六十五歳以上人口は、一二・一%であったものが二五・八%へと倍憎いたします。これに伴って老齢年金受給者に対する厚生年金被保険者の割合は、平成二年度には六・五人で一人であったものが、二人で一人へと大きく変化することが予測されているわけであります。このような大きな変化の中で、国民一人一人が安心して老後を迎えられるためにはどのような制度がいいのか、また勤労世代にとって働きがいのある制度はどのような制度なのかということを真剣に判断していかなければならないというふうに思います。  この大きな変化の中で将来ともに安定した年金保険制度運営していくための改革には、基本的には次の四つの選択肢しかないと思います。一つは、保険料を引き上げるということでございます。二点目は、年金水準を引き下げるということでございます。三点目は、支給開始年齢を引き上げるということでございます。四点目は、国庫負担を引き上げるということでございます。大ざっぱに言いますと、この四つしかあり得ない。  今回の改正におきましては、将来の被保険者世代の過重な負担を避ける、すなわち将来にわたって高齢化率が最も高くなった時点においても保険料卒が三〇%を超えないようにするという、いわゆる上限を設けて保険料率を引き上げる、これが第一番目の選択肢に対しての答えてあります。  また、年金水準に関しては、ネットスライド制を導入することによって今後の過大な伸びを抑制する、これが第二番目の年金水準に関しての答えてあります。  三番目の支給開始年齢を引き上げるということに関しては、六十五歳へと段階的に支給開始年齢を引き上げ、六十歳代前半は別個の支給、すなわち報酬比例部分の支給とするという答えを出しております。ただ、四番目の国庫負担を引き上げるということに関しては答えはありません。  これが今回の年金改正の基本的な柱であろうと私は思っておりますけれども、この点につきまして、この認識でいいかどうか御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  159. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 先生の御指摘のとおりだと思います。
  160. 福島豊

    ○福島委員 この基本的な認識のもとに、何点がお聞きしたいと思います。  まず、保険料率の上限を三〇%としたことでございます。何事も出発点となる合意点がなければ物事は進まないわけですが、昨日の公聴会におきましても、この三〇%をどう考えるのかとお聞きしましたところ、いやいや昔は二〇%が限度だというふうに言っていた時代もあった、三〇%という数字には、なかなか根拠はあるようでないというような御意見があったかと思います。  この三〇%の淵源というのは、第二次行革審のときに提言されました、高齢化のピーク時だったとしても国民負担率を五〇%以下に抑えようという考え方が基本にあるのではないかというふうに思います。しかし、その五〇%以下に抑えるということを踏まえても、なぜ三〇%ということを上限とすべきなのか、その点に関して私は明確な論理といいますか、考え方というのが必要ではないかというふうに思います。その点についての政府の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  161. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 今回の年金法の改正によりまして年金保険料負担卒につきましては、後代の保険料負担というのが過重なものにならないようにというのを第一義といたしまして、現行の二倍程度にとどめまして三〇%の大台に届かないように、こういうふうなことにいたしたわけでございまして、現役世代年金世代とのバランスでございますとか、将来の現役世代年金世代の公平性などの観点から、将来にわたります給付負担のあり方を総合的に検討したわけでございまして、国民的な合意が得られるようなものにしていく必要があると考えたわけでございます。  それで、厚生年金の最終保険料率の三〇%ということでございますけれども、私ども、この改正を行うに当たりまして有識者調査を行ったわけでございまして、厚生年金保険料負担の限界についてどうですかという御質問をいたしたわけでございます。いろいろ数は分かれたわけでございますけれども、一応三〇%、本人は一五%程度までというのが一番多かったわけでございます。それから、私どもが常に参考にさせていただいておりますドイツの年金制度でございますけれども、ドイツ連邦も高齢化がかなり進んでおりまして、保険料負担を二十一世紀初頭に三〇%近い水準に抑える、こういう合意がなされたやにお聞きしているわけでございます。  それから、先ほども申し上げましたけれども、現行の二倍程度ということで、さらに三〇%という大台、これを超えれば歯どめがなくなるのではないか、こういうふうな危機感もあるわけでございまして、何とかこれより下に持っていきたい、こういうのが私どもの願望であったわけでございまして、そういうことをいろいろ総合的に勘案いたしまして三〇%以内にとどめたい、こういうのが私どもの強い意思決定になっているわけでございます。
  162. 福島豊

    ○福島委員 極めて総合的な判断を下されたということはよくわかりました。  次に、年金水準の改革ということに関しましては、ネット所得スライドが導入されたということは、勤労者の所得に対して比較的高い水準にある年金を適正な水準にするという、その点におきましては大きく評価すべき点であるというふうに私は感じております。  残る二つの選択肢について引き続きお聞きしたいと思います。  支給年齢の引き上げについては後ほどに回しまして、国庫負担の引き上げということについて私はお聞きしたいと思います。  今回の改革は、先ほど四つの選択肢があった、その中で三つを選択して一つは選択しなかったんだということを言いました。この保険料率三〇%という、今大変な決意でそれに臨まれたということをおっしゃられましたが、もう一点、その改革に当たって大きな出発点といいますか、になったのは国庫負担を引き上げないということであったのではないかと思うのでございますけれども、この点について御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  163. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 国庫負担の問題につきましては、年金審議会以来大変な議論がございましたし、旧連立与党の年金改革プロジェクトチームでも大変な御議論をいただいたわけでございまして、私どもも、政府部内でもいろいろな観点から検討したわけでございますけれども、これは残念ながら私ども厚生省の枠を超えたようなところもあるわけでございます。  国庫負担、非常に莫大な額でございますし、たとえその財源が確保できたといたしましても他の財源とのバランスをどうするのか、こういったような問題もございまして、やはりこの問題は国民的な論議のもとに中長期的に検討せざるを得ないということで、今回の改正案の最大の眼目は世代間のバランスを図る。したがいまして、国庫負担の問題とは同じ世代における保険料負担するか税で負担するかという問題でございますけれども、今度の改正案の眼目は、異なる世代問でのバランスを図る、具体的には、先ほど三〇%と申し上げましたけれども、後代の負担を過重なものにしないように、こういうふうなのが第一の視点にあったかと思うわけでございます。このためにいろいろな改革も行わせていただいた、こういうことが言えるのではないかというふうに思っております。
  164. 福島豊

    ○福島委員 先ほどドイツの年金改革を参考にして、三〇%という数字の一つの理由はそこから出てきているというお話がございました。旧西ドイツの年金改革では、高齢化社会の進行の中で年金負担というのはどうしても増加してくる、その負担の増加をどう担うのかということで、まず一つ支給年齢の引き上げ、また年金水準の抑制という、受給者、年金を受け取る側の負担ということでまず一つは担おう。二点目は保険料卒の引き上げということで、被保険者の負担でそれを賄おう。ただ、三つ目の要素として国庫負担の引き上げという形で国も負担を分かち合おう。すなわち受給者、被保険者、国と、この三つがともども負担を分かち合おうという形で解決したというふうに伺っております。  今回の改革は、今申し上げましたように受給者、被保険者の負担、突き詰めて言うと受給者と被保険者の負担で今回の改革はなし遂げられた、そういう形になっていると思うのですけれども、ドイツを参考にしたということであれば、なぜこの最後の視点が欠落したのか、これは大変財源の問題であるとかいろいろな問題、大きな問題がございますけれども、私はそのように感じざるを得ない。  国の負担といいましても、大だんなの国がいてお金を出してくれるというわけでは決してないわけでして、それは国民が税を納めるということによって賄えるということも確かでございます。しかし、保険料国民所得の中のどこにかかるかといいますと、これは家計所得の中の賃金所得というところにかかるわけですね。賃金所得というのは家計所得の中の六〇%にしかすぎない。残り四〇%は財産所得であるとか移転所得であるとかという部分になるわけですね。  保険料とそれから国庫負担の割合を見直すということはどういうことかというと、結局この所得、家計所得の中で賃金所得にばかり負担をかけずに、それ以外のところにもこの年金の増大する負担というものを担ってもらおうという考え方に私はなるのだろうと思います。また、年金保険料も逆進性とかということも当然あるわけでございますね。そういう観点から考えたときに、この国庫の負担というものを今回取り上げなかったわけでございますけれども、それが果たして適当であったのかどうなのかということについて御見解をお聞きしたいというふうに思います。     〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕
  165. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 この問題は非常に大きな問題でございまして、私ごときがいい答弁できないわけでございますけれども、非常に巨額な金が動くわけでございます。それで、そのために保険料は恐らく減りはしないで、ふえるのが鈍化するということだろうと思います。したがいまして、保険料負担を軽減することによって租税負担をどういう形でふやすかということになろうかと思うわけでございますけれども、この財源をどうするのかというのは、当然いろいろ議論があろうかと思います。  したがいまして、保険料負担するか租税で負担するかという問題は、一に、先生が御指摘のような形の賃金で雇用者が負担するのかあるいは消費負担するのか、こういうふうな問題になろうかと思うわけです。恐らく、所得税という形で賄うということであれば、やはりまた同じような結果になろうかと思うわけでございますし、その場合には財政再分配効果がどうなるのか、こういったような視点もいろいろあるわけでございます。  私どもは、けさほども申し上げましたけれども、基本的には社会保険方式はやはり維持すべきである、こういうふうな視点を持っているわけでございまして、この面から考えますと、国庫負担というのをどこまで引き上げるのが妥当かというのは、これはまさに財源との関連だけというふうに考えているわけでございます。保険料負担すれば余り再分配効果がないとかいう御指摘もございますけれども年金給付との結びつきによりましてそれは再分配効果というのもあるわけでございまして、なかなか、国庫負担を入れなかったのがよかったかどうかということについては、これは功罪半ばするということで、非常に大きな割には効果としましてはそれほど大きなものなのかな、こういう感じが私個人はいたしているわけでございます。
  166. 福島豊

    ○福島委員 財源の問題ということをどう総合的に考えるのかということなのかなとは思います。  ちょっと話が戻るようでございますけれども、なぜ三分の一なのかなということをふと考えまして、三分の一というのはそんなに拘泥しなければいかぬことなのかどうなのか、むしろ、財源ということを大きな枠の中で考えていって、それでいいよ、大丈夫だということであれば動かしても差し支えがないと言いましょうか、そういうようなたぐいの数字なのかどうなのか、性格づけの問題でございますけれども、三分の一の由来を含めて御説明をいただければと思うのです。
  167. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 今の基礎年金の国庫負担は、昭和六十年改正によりまして基礎年金ができたときに決まったわけでございますけれども、この前身は当然のことながら国民年金であったわけでございまして、国民年金の国庫負担率が三分の一であったというのを踏襲したということでございます。  それで、国民年金の国庫負担というのはどうやって三分の一になったのかという由来を調べてみますと、その当時もう既に被用者保険というのがあったわけでございまして、厚生年金、それから共済年金があったわけでございますけれども、そのときの被用者年金の国庫負担率が一五%ないし二〇%ぐらいだったようでございます。  国民年金の層は、事業主負担がない、それから低所得者も比較的多かった、こういう事情を加味いたしまして三三%に持ってきた、こういうふうに聞いているわけでございまして、国庫負担率が理論的にどうあるべきかとかなんとかいうのは恐らくないんだろうと思いますが、やはり過去の歴史を背負って決まってきたということは言えるのではないのかなと思っております。
  168. 福島豊

    ○福島委員 今後、財源の問題も含めて大きな枠の中でもう一度とらえ直してみる、まさに中長期的な課題であるということは、私もそのような感覚はあるわけでございますけれども、しかし、ぜひ前向きに検討していただきたい、そのように要望しておきたいと思います。  最後に、最後の選択肢であるところの支給開始年齢の引き上げについてでございます。  二十一世紀の高齢化の進行の中で労働者人口というのは減っていく。その変化の中で、六十五歳まで現役で働こうという社会をつくるのはまさに我々が進むべき正しい道である、そのように思います。しかし、高齢者雇用促進といっても、ただ単に長く働けということであってはならないと私は思います。その高齢者の特性に応じた雇用形態、また高齢者の就労可能性を拡大するような生涯教育も必要であります。そしてまた、そういうものを通じて、真に働きがいのある高齢者雇用を促進していかなければならない、そのように思っております。  労働省におきましても、今回の改正とリンクしまして、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の改正がなされたところでありますけれども、しかし、日本の経済の今後の展望というものが甚だ不透明な中、果たして支給開始年齢の引き上げに応じた高齢者雇用、また働きがいのある雇用が促進されるのかどうか、これはだれもが本当に不安に思っているところではないかと思います。  きょうは労働省の方においでいただいていると思いますので、この点につきまして、経済空洞化であるとか経済の構造変化ということが言われている中、二十一世紀高齢者雇用は一体どうなるのかということにつきまして御答弁をいただきたいと思います。
  169. 太田俊明

    太田説明員 先生指摘のように、我が国におきましては、急速な高齢化が進展したわけでございまして、これから二十一世紀初頭を見てみますと、二〇〇〇年には五十五歳以上の高齢者労働力人口の二三・一%、二〇一〇年には二七・○%と、四人に一人以上という超高齢社会が到来することが見込まれているわけでございます。他方で、全体としての労働力人口は、若年者を中心に、二十一世紀に入りますと減少に転ずることが見込まれているわけでございまして、高齢者方々の持てる知識と技能の活用を図ることが必要となってくるわけでございます。  労働省といたしましては、こういった状況のもとで、我が国経済社会の活力を維持していくために、二十一世紀初頭までに、希望すれば六十五歳まで現役として働けるような社会の実現に努めていくこととしております。  具体的には、先ほども指摘がございました、さきの通常国会改正していただきました改正年齢雇用安定法に基づきまして、まず第一には、六十歳定年を基盤とする企業における六十五歳までの継続雇用の推進、第二には、高齢者の再就職の促進でございますとかあるいは臨時的かつ短期的な就業機会を提供するためのシルバー人材センターの充実など、ニーズを踏まえた多様な形態による雇用就業の促進、さらには、もう少し準備が必要でございますので、在職中から職業生活の設計のための助言などの高齢期の雇用就業に対する援助など、こういった点に重点を置いて施策を推進していくこととしております。  また、これとあわせて、改正雇用保険法によります高年齢雇用継続給付制度の実施によりまして、高齢者方々雇用継続を援助、促進することとしております。
  170. 福島豊

    ○福島委員 若干通告しておりました質問と違いますが、今、社会経済の変化が大きくある中ですので、労働省考えられましたさまざまな施策が実際にどのような効果を持つのか、果たして本当に雇用が促進されるのかどうかということに関しまして、これはフォローアップを定期的にすべきであるし、そして、その結果によって、その施策が十分に機能していないかもしれないということがあれば、的確に、時を経ずして見直すことが必要ではないかと私は思うわけでございますけれども、その中期的な展望におきまして労働省がどのように対応されるのか、御見解をお聞きしたいと思います。
  171. 太田俊明

    太田説明員 高齢者雇用対策の施策の効果でございますけれども、今、私どもの一番の柱は、定年を六十歳までお願いしたいということで、今回の改正法でも、平成十年からは六十歳定年化を義務化するということで、さらに強めたわけでございます。その引き上げ指導の効果について見てみますと、平成六年一月現在六十歳定年制をとる企業は八四・一%でございます。予定している企業まで含めますと約九五%に達しているわけでございまして、ここ数年見てみますと、六十歳定年制は着実に定着しつつあるわけでございます。  また、この結果といたしまして、昭和六十一年以降、年齢計と五十五歳から五十九歳の高年齢者の完全失業卒の格差、これは傾向として縮まっておりまして、近年ではこれが逆転してきまして、年齢計よりも五十五歳から五十九歳の高齢者の方の完全失業率が低くなっている。こういうことで、現在のところ六十歳定年制を柱としました施策の実効は上がっているのではないかと考えております。  御指摘のように、これからますます高齢化社会が進むわけでございますし、また産業空洞化等も言われているわけでございまして、こういった点につきましては、十分その見通しを踏まえて、かつ、これからやはり六十歳を超えますとニーズもいろいろ多様化してまいりますので、いろいろな形態による雇用就業の促進によりまして、とにかく六十五歳まで何とかみんなが、希望を持つ人が働けるような社会、こういう社会をこれからつくっていくことが今後は大きな課題になっていくと思うわけでございます。
  172. 福島豊

    ○福島委員 ぜひ強力な取り組みをお願いしたいと思います。  続きまして、六十歳代前半年金のことにまた戻ります。  ILOの第百六十二号勧告、高齢労働者に関する勧告におきましては、その中で引退への準備及び移行についてのセクションがありますが、引退は可能な限り任意でなければならない、また年金支給年齢をより弾力的なものにすることの二点が強調されております。このような勧告がなされた時代というのも若干違うわけでございますけれども、この年金支給年齢をより弾力的なものにするということは、働きたくても働けない人がいるという観点において、このような勧告は非常に妥当性があると私は思います。  今回の改正におきましては、働くことが著しく困難な障害者、これは三級以上の障害者ということになろうかと思います、また四十五年以上の長期加入者に対しては、特別支給の年金が支給されることになっておりますけれども、今回の改正で、この勧告のように本当に六十歳代前半において弾力的な、個々人のケース、ケースによって異なる状況に応じた対応が本当にできるのかどうか、この点についての政府の御見解をお聞きしたいと思います。
  173. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 私ども、このILOの第百六十二号勧告の、引退は可能な限り任意というのは必ずしもちょっと意味がわからないところがあるわけでございますけれども、類推して解釈してお答えを申し上げたいと存じます。  今回の六十歳前半の別個の給付というものにつきましては、いろいろ議論はそれまでにあったわけでございますけれども、就労から年金生活への円滑な移行を図る期間という位置づけで、年金と賃金と相まって生活をしていただく、これに当然のことながら自助努力というのも加わるかとも思いますけれども、こういうふうなことでこの六十歳代前半を位置づけまして、労働省の方で先ほど御答弁がありましたように、高齢者雇用促進というのを官民が一体になって促進をしていく、こういうふうなことで、この施策の位置づけをしたわけでございます。  国際比較で言えば、OECDの加盟国二十四カ国中、支給開始年齢六十五歳になっていますのが二十一カ国あるわけでございます。別個の給付は六十歳から六十四歳まで、これは全員の方に保障されるということでございますので、各国の六十歳代前半層の方の給付としては最も手厚いものではないのかなというふうな認識と、それから、定額基礎年金部分がございまして、この部分の、減額になりますけれども減額支給という道も開く、こういうふうなことでございますので、かなり、六十歳代前半の方の生活がいろいろな弾力的な対応がしやすいような形にしたというふうに我々考えているわけでございます。
  174. 福島豊

    ○福島委員 各国と比較しまして、今回の改正では、六十代前半の対応というのは日本は手厚いということでございますが、昨日の公聴会でもございましたけれども、報酬比例の部分になる。ですから、低賃金の労働者の方、また女性の場合には支給というのは非常に少なくなるのじゃないか、そのような御指摘もございました。ですから、平均値ではない部分というのが恐らく非常に大切なのではないか。その平均値ではない部分にどのように弾力的に対応するのか、そういうふうな視点を私は重視していただきたいと思います。  私は医者をしておりましたので実感として感じますが、人間六十ともなりますといろいろとあちらこちら悪いところが出てくるわけでございます。一生懸命働いてきて、だんだんだんだん体も傷んでくる。確かに老化というのは個人差がありますから、元気な人は本当に元気いっぱいなのですけれども、しかし元気でない人がいるということも事実でございます。  今年度の国民衛生の動向でございますけれども、例えば受療率、お医者さんにかかる率でございますけれども、四十五歳から五十四歳、これは十歳刻みのデータですから細かいことはわかりませんけれども、四十五歳から五十四歳では十万人対六千六百二十人という数字になっております。これが五十五歳から六十四歳、十歳上がりますとどうなるかといいますと一万百九十六人、そこでこれは五四%ばっと増加するわけです。また、これは退職したので時間ができて医者にかかりやすくなるという場合もしばしばあろうかと思うのですが、しかし体のぐあいも悪くなるという傾向も確かにあるのじゃないかと思うのです。  また、通院する方の数も、例えば高血圧の場合でしたら、四十五歳から五十四歳では千人対六十一・二人であったものが五十五歳から六十四歳、もう一つ年齢が上がりますと千人対百三十九・七人と倍憎いたします。糖尿病も十五・六人が三十三・七人と倍増する。肝炎・肝硬変も八・四人が十六・一人と大体倍増する。狭心症・心筋梗塞に至っては七・〇人から二十・五人へと三倍にふえる。  時間がありませんのでもうやめますが、死亡卒もふえるわけです。この別個の支給、特例の場合には、要するに働けないという場合には支給しようという話になるわけです。ただ、私が思うのは、働ける人、働けない人というふうに二つに截然と分かれるかというと、そうではなくて、その真ん中の部分がある。働かない方がいい、無理して働いて寿命を縮める、そういう人も中にはやはりおるわけでございまして、そういうことを考えますと、今回の改正の中で法案に盛り込まれた三級以上ということでございますけれども、しかし本質は働けないほど障害があるわけですね。そういうことだけで本当にいいのだろうかという思いが率直にいたします。この点についての御見解をお聞きしたいと思います。
  175. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 今回の六十歳代前半は報酬比例、別個の給付を出すことにいたしたわけでございますけれども、これは段階的に、十九年かけまして六十五歳まで持っていくということでございますが、先生指摘の障害等級に該当される方につきましては、これは六十五歳前からでも出しましょう、こういうふうな例外規定を置いているわけでございます。  この障害等級三級というのは比較的軽い障害でございまして、国民年金の方からは、これは一切障害年金は出ないという層でございます。肉体的労働は制限は受けますけれども、例えば軽い家事とか事務等はできる、こういう人たちもこの三級以上に該当するケースもあるわけでございまして、こういう三級障害に該当するというのが、年金制度としてはこれが一応働けない人たちだ、こういう器官の州とかいろいろあろうと思いますけれども、客観的にある程度とらえられて、若い人とのバランスが一応とれているというのがこの三級障害なのではないかな、こういうことで例外措置に踏み切ったわけでございまして、三級障害というのがやはり年金制度として、働ける、働けないという基準としては最も妥当な基準ではないのかな。  そこの中では、先ほど申し上げましたように、軽い家事とか事務等はできますけれども、肉体労働はできない、こういう人たちもケースによっては障害年金を出しておりますので、そういうものについては同じような扱いになろうかと思うわけでございます。
  176. 福島豊

    ○福島委員 以上で質疑は終わりますが、二十一世紀に向かっての大きな変化の中、本当にだれもが将来安心して任せられるそういう年金づくりのために今後とも努力していただきたいことをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  177. 岩垂寿喜男

    岩垂委員長 山本孝史君。
  178. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 改革の山本孝史でございます。  通告をしております質問と順番が入れかわります。質問する前に一つ、きょうの大臣の答弁を聞いておりまして、ぜひ聞いておかなければいけないと思いますので、お聞きをいたします。準備をしていただかなくてもふだんお考えのことを言っていただければ結構なのですが、いわゆる福祉ビジョンということが常にきょう言われてきております。大内厚生大臣のときに、私的諮問機関として福祉ビジョンをお出しになりました。厚生省がいわばおつくりになった福祉ビジョンというふうに思いますが、井出先生、それをお読みになって御感想をまずお聞かせをください。
  179. 井出正一

    井出国務大臣 一つには、大変な高齢化の時代が来るなという認識をしましたことと、それからそれに対応していろいろなデータを駆使していいビジョンができたな、こういう方向へ持っていきたいな、こう感じました。
  180. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 データを駆使して福祉ビジョンがつくられているとはちょっと実は思えない、こういう方向に持っていきたいというふうに書いてあることはあるけれども、なかなかビジョンらしいビジョンになっていないというふうに実は僕は思っているのですね、厚生省がおつくりになった福祉ビジョンは。将来像が、厚生省がおつくりになったあの福祉ビジョンの中ではなかなか見えてこない、数字の部分としては余り入っていないのかなというふうに実は私は思っております。  重ねてお伺いをいたしたいのですが、旧連立与党の中で我々税制改革に絡む中、税制改革協議会の中に福祉委員会を設けて、最初は社会党の皆さんも入りながらこの三十二回の会合で、福祉委員会の報告書をおつくりをさせていただきました。大臣はその報告書をお読みいただいているでしょうか。お読みいただいているとすれば、そちらの方に対する御感想もお願いをいたします。
  181. 井出正一

    井出国務大臣 実は、私も当初はお仲間でありましたし、最後まとめ上がったときにはちょっと距離を置く立場にあったのですが、いただきましたし、あと私どもの、社会党との閣外政策会議でしたか、あそこへもおいでいただいて御説明をいただきました。かなり途中まで一緒に仲間としてやっておったものですから、違和感みたいなものは全く感じませんでしたし、いいのをおまとめくださったな、こう思いました。
  182. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 違和感を感じないというお言葉をいただいて、大変意を強くするところなのですけれども、私たちも、きょう議論になっています、いわゆる国庫負担の問題については随分、さきの改革の同僚議員が発言しておりますように苦渋をいたしました。最終的に、中長期的課題として検討していくという文言で決めさせていただいたわけですけれども福祉ビジョンの策定というのは随分やはり時間がかかるだろうとは思います。  御答弁の中でも、この税制改革法案に書かれている、八年九月末日を目途に福祉ビジョンをつくっていきたいというふうに、私も大臣の答弁をお伺いしてそういうふうに理解をしているのですけれども、確かに時間はかかりますけれども国民各層に二十一世紀の日本はこうなるよ、少なくとも国としては最低レベルの福祉水準はこの辺には設定をしたい、そのために負担もこれぐらいかかるよというような内容の盛り込みがやはり要るのではないか。国民の議論を巻き起こすための前提としての条件提示といいましょうか、こういう内容になっているよという説明材料がやはり要るのだろうと思うのですね。  今回は、年金法の改正案を審議をさせていただいていますけれども、やはりこれは介護の問題とも極めて密接に絡みますし、労働の六十歳代の雇用確保という問題にも当然絡みます。そういう意味でも、我が日本をこういう方向に引っ張っていこうとしているのだよという厚生省としてのお立場もありましょうけれども大臣としての、一議員としてのお考えもあろうかと思うのですね。  そこで、重ねての質問で恐縮ですが、政府福祉ビジョンもお読みいただいた、私たちの旧連立与党側の福祉ビジョンも御説明を聞いていただいた、大臣自身として二十一世紀の日本の福祉ビジョンというものをどんなふうにお考えでいらっしゃいましょうか。何を中心に、どういうことを基本にしてこの福祉ビジョンというのを考えていかなければいけないというふうにお思いでしょうか。雑駁な質問で恐縮ですが、御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  183. 井出正一

    井出国務大臣 いや大変、雑駁というより基本的な難しい質問なのでございますが、やはりこの日本に生きとし生けるものが、生きていてよかったな、そしてそう感じて、しかも安心して、長寿社会になった社会において生を全うできるような体制をつくっていくことじゃないかな、こう思います。
  184. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 ありがとうございます。  何度も繰り返すようですけれども、ぜひビジョンの提示を早くしていただきたい。我々もつくりました。かなり苦労もしましたし、苦しい決断もさせていただいてつくりました。  それで、国庫負担の問題に移らせていただきたいのですけれども、どうしてもこの問題に触れざるを得ないわけですね。申し上げたように、旧連立与党側の審議の中では、中長期的課題として検討していこうということになりました。  この議論をするときに、考え方が二つあるように思うのですね。大体のところは、財源問題から話が説き起こされてきて、財源がありません、財源がありませんという話になってくる。先ほどの近藤局長のお話も、厚生省の枠を超えている問題ですというふうにおっしゃいました。しかしながら、世代間のバランスを図るとか、あるいは無年金者問題のことも考え合わせる、国民間の財の再分配の効果もあるとか、いろいろ言われていますけれども、そういうことを考えていくならば、三分の一の根拠も少し薄いように思いますが、二分の一の根拠も、そういう意味ではなぜ二分の一かというところはなかなか話は難しいのだろうと思う。しかし、国庫負担卒を上げていこうということは一つ考え方としてあるというふうに思うんですね。  国庫負担を上げていかなければいけないというか、上げていく方がいいんだということで、そのためにこれだけの財源が必要だから、ぜひいいことなのでこれだけの財源を皆さんで負担してくださいという説明の仕方が一つにはあると思う、もしいいとすれば。ところが、今の議論は大体、財源がありませんから、二分の一負担率引き上げの話はないですよというような話にどうもなっていくという気がするんです。  そこで、お尋ねなんですが、その二分の一という数値は別にしても、国庫負担は引き上げていった方がいいというふうにお考えなのか、引き上げる必要はないというふうにお考えなのか、そこの御答弁をお願いしたいんですが、よろしくお願いします。
  185. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 まさに、それは私どもがすべきであるとかすべきでないとか、こういうことではないわけですね。現時点でどうあるかというのは言えるわけでございますけれども、将来どうすべきかどうかということについては、私どもまだ白紙の状態でございまして、これはやはり国民的な論議が必要であろう、こういうふうに思っております。
  186. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 白紙の状態であるということで、国民的議論が必要である。まあそれは我々政治家の方の仕事になってくるのかなというふうには思いますが、厚生省は厚生省のお考えがあるわけですね、重ねてお伺いしたいのですが。
  187. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 年金局長の立場から、年金に財源をやるのに要らないというのはもちろんないわけでございますけれども、私ども国家公務員でございますし、厚生省の役人でございまして、やはり年金だけで動いているわけではないわけでございまして、医療もあり、福祉もあり、いろいろな分野もございますし、当然厚生省外にも重要な施策をやっているところがございます。  巨額な財源でございますから、そこのどこにプライオリティーを置くかということについては、これはかなり広い国民的な論議が必要だということでございまして、私どもとしましては、巨額な財源が同じ枠の中で、枠といいますか、同じ財源の中でどちらを優先するかということでありますと、これは年金に集中いたしますと、ほかの財源というのははっきり言ってなくなってしまう、非常に大きな額でほかのとちょっとスケールが違うわけでございますので、その辺もやはり年金局長の立場としても考えざるを得ないというふうに思っているわけでございます。
  188. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 そこで、ひとつ確認というか、あるいはお教えをいただきたいんですけれども、ことしの九月十二日の日経新聞にこういうお話が出ています。数字が載っておりますので、この数字が正しいのかどうかという確認あるいは御意見をお伺いしたいのです。  この日経新聞の記事によりますと、「現在六十歳代半ばの高齢者は平均して五千六百三十二万円の年金を生涯で受け取るのに、保険料は千百九十八万円の支払いで済んでいる。」これは「(九〇年度価格、以下同じ)」と書いてありますが、したがって、「受給額は保険料の四・七倍にも達する。これに対し、二十歳代半ばの人は、四千四百二十一万円の年金を受け取るために、四千六十三万円の保険料を払う必要がある。保険料に対する受給額は一・〇九倍にすぎない。」という形で書いてあります。六十歳から六十五歳に支給が繰り下げになることもあります。それから、いろいろとその他の計算が動いているのでしょう。  きょうの岩浅議員の質問にも、二十歳代の人は本人保険料の元利合計の二・二倍を受け取ることができるだろう、ただし、これは本人保険料ですから、保険料は折半ですから、保険料全体の元利合計で見ると一・一倍を受け取ることになるのだろうというお話をきょうも午前中いただいたわけですね。  ということでいうと、世代間のバランスをとるというお話で、後世の人の負担を少なくする、その意味年金法の改正案があるわけですけれども、こういうふうに考えると、随分やはり世代間のアンバランスがあるのではないかと思うわけですね。  このアンバランスを少し減らしていくというか、もう少し期待できる年金額の受け取りを保険料に対して考えるならば、やはり国庫負担率の引き上げという問題に行き当たってくると思うのです。確かにお金ですから、右のポケットから保険料、左のポケットから税金ということで、払っている部分は同じなのかもしれないけれども、国庫負担率の引き上げというのは、ある意味でいけば低所得者の人にとっては第二の減税効果があるだろうというふうにも言われていますし、先ほどから御指摘があるように、何百万人でしたか、三百万でしたか、二百九十万人が入っていないというような状況がありますね。そういう無年金者のことも考えれば、これは基礎年金の国庫負担卒を上げていくという議論につながっていく話なのかなというふうに思うわけですね。  そういう意味でも、繰り返しになりますが、この日経新聞の数字は正しいのかどうか、ちょっと見たときにびっくりするようなアンバランスを感じますので、ここのところを教えていただきたいと思います。もう一度国庫負担の引き上げというものについて、この話も含めて、重ねてお伺いします。
  189. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 日経新聞に載りましたのは三和総研の数字だと思います。このもの自体については、私どもまだ異論はあるわけでございますが、先生の世代間のバランスという観点から申し上げますと、やはり既に高齢になられた方と若い方、これの保険料給付とのバランスの問題でいきますと、どの試算をいたしましても、高齢者の方がよくて、若い人の方がまあ損をする、こういうふうな形になっているわけでございます。  ただ、国庫負担をふやせばこれが解消するということにはならぬわけでございまして、国庫負担というのは、同世代の人が保険料負担するか税金で負担するかという問題でございますので、国庫負担をふやせば保険料は助かりますけれども、やはり税金の形で負担するわけですから、その辺は中の若干の動きはあると思いますけれども、世代間のバランスには何ら貢献はしない、こういうふうに思います。  ただ、その金を全く積み立てておく、使わないで積み立てておく、こういうふうなもし極端なやり方をすれば、それは将来のために使うのだということにすれば、それはそういう効果があろうかと思いますけれども、使ってしまうのであれば、それは意味がないといいますか、そういう世代間のバランスを是正するという効果はないというふうに思っております。
  190. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 つまり、自分が払った保険料を自分が受け取るわけではありませんから、基本的にはそういう考えになるのですけれども、実際に雇用されていれば企業側が半分は払ってくれているとはいえ、自分の払ったというか、払い込みをした保険料と将来受け取る金額が随分近づいてくるという話になると、これは入らぬ方がええやないか、自分で個人年金を積み立てた方がよっぽどええわいという話になって、ますます年金空洞化していくことになりはしないのかという懸念をするわけですね。そのためにも少しやはり国庫負担を入れて保険料率を下げる、おっしゃっているように、税金と保険料の話は一緒なんだけれども、お金に色がついているわけじゃありませんけれども、そういう考え方もあるのではないかということでの御質問なのですけれども、どうですか。
  191. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 確かに所得がなくて、お金がないから払えないという方もいらっしゃると思います。ただ、私どもが調査いたしまして、加入者と未加入者の所得の分布を見ますと、必ずしもその払ってない方が貧乏人で、払っている人が金持ちだということではないわけでございまして、分布としては余り変わらない。払いたくないから払わない、やはりこういう方が多いわけでございます。  現在一万一千百円の国民年金の金額でございますけれども、将来はそれの倍、今の価額にいたしましても倍近くになるわけでございまして、国庫負担を入れましても、二分の一とかある程度の、十分の十だったらもちろん違いますけれども、ある程度の国庫負担増をしましてもそれを賄うまでにはいかないわけでございまして、上がった分を全部下げるというわけにはいかないわけでございます。例えば、これから一万五千円になって、今一万一千円で払わない方が一万五千円になって払うかどうか、この辺はまた疑問な点もあるわけでございまして、国庫負担を上げたからこの空洞化対策がなくなるというものではないというふうに考えております。  我々は、やはり基礎年金番号をつくるとか、いろいろな機会を通じます広報活動とか、こういうことを通じて地道に総合的な施策をせざるを得ないのではないか、こういうふうに考えているわけでございます。
  192. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 国庫負担の話については、随分我々も検討して、難しいという話にはなったわけですので、これからもさらに検討が必要であろうというふうには思います。  さっきの数字ですけれども、例えばモデルとして、今二十半ばの人が保険料を払って、幾ら払えば幾ら期待ができるのかというあたりの数字を教えていただけますか。
  193. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 先ほどの試算ではなくて、私どもの今度の財政再計算に基づく試算で申し上げたいと思います。  現在二十、昭和四十九年生まれの方でございますと、これは六年度価額で表示をさせていただいておりまして、標準報酬の上昇率は四%、それから消費者物価の上昇率は二%、運用利率が五・五%、こういう財政再計算を前提に計算させていただいておりますが、保険料の元利合計が二千六百四十万円でございます。これに事業主負担が加わりますと、五千二百八十万円になるわけでございます。一方、老齢給付、あるいは障害給付になる確率もございますし、奥さんが遺族給付をもらう確率がある、これも全部なべて平均して給付ということで計算いたしますと、五千八百十万円ということでございまして、本人の保険料に対しまして二・二倍、それから本人と事業主負担の合計の保険料に対しまして一・一倍、こういうふうな試算をいたしております。
  194. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 わかりました。ありがとうございます。  時間がいろいろありますので、次に進ませていただきます。  今度の年金改正案の中に、かなり所要の改善を入れていただきました。私も、この国会へ出てきて最初に質問させていただいたのは、いわゆる児童扶養手当あるいは遺族基礎年金の十八歳支給の打ち切りですね。十八の誕生日が来ると打ち切りになるというので、十五年にわたっていろいろな団体が要望をさせていただいて、今回改正の中で十八歳年度末まで、すなわち高校卒業までこういう年金、手当が支給されるという状況になったわけです。そういう所要の改善もありますけれども、依然としてこの制度の谷間に残されている、今回の改正でもまだ救い切れない部分が幾つか残っています。  一つが障害無年金者の問題ですね。来週の月曜日に地方公聴会に参ります。公述人でその方たちが来られてお話をされるような予定も聞いております。私もお願いをしておりますけれども、この障害無年金の方たちというのが今何人ぐらいおられるのでしょうか。厚生省の方で数はつかんでおられますか。     〔委員長退席、石田(祝)委員長代理着席〕
  195. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 はっきり申し上げて、つかんでおりません。障害者年金を受給していない方の人数につきましては、年金を受給していない方を把握すること自体が非常に難しいということと、それから、障害者の方で年金を受けていない方につきましても、障害の程度が年金制度で定めるよりも軽い場合もあるのではないか、こういうことで難しいわけでございます。  ただ、私ども正確に把握するというのは恐らく無理だろうと思っておりますけれども、一定の前提を置きまして試算はいたしております。まさに達観して得た数字でございますのであるいは狂うかもわからぬ、本当に実態調査をすると狂うかもわかりませんが、大胆に推計いたしますと十万人強程度ではないのかな、こういうふうな感じでございます。これもまさに、我々それほどの自信を持った数字ではございませんけれども、大胆に言ってその程度なのかなというふうに思っております。
  196. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 十万人強というお話ですが、いろいろなケース、今回の改正の中でまた救われるケースも出てきておりますけれども、例えば学生さんが任意加入でよろしかったときに、今は強制加入になっていますけれども、任意加入でよかったときに障害を受けられて、そのまま障害無年金者になっておられる。任意加入で入っていなかった方が悪いんだという話になるのでしょうけれども、普適任意と言われるとどっちでもええぞということになる。どっちでもいいよと言われれば、それならやめておこうかというようなことにもなる。特に学生ですから、保険料負担もあったというふうに思うわけですね。そういう意味で、任意で入れるときに未加入だったのだから本人が悪いという話に制度上はなるのでしょうけれども、そこのところ、何とか救いようがないものなのかというふうに思うわけですね。  年金制度の中で今回は盛り込みできませんでしたけれども、将来の次の再計算のときに考えていくとか、あるいは何かほかの手だてがないものなのか、そのあたりいかがでございますか。
  197. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 今までと同じ答弁にならざるを得ないので恐縮でございますけれども、社会保険方式をとっておる制度でございますので、加入してない方を同じように扱うということになりますと加入する人がいなくなる、こういうふうな事情があるわけでございまして、年金制度として対応いたしますことは制度の基本にかかわることでございますので、御指摘のような大変お気の毒なケースもあろうかと存じますけれども、次期改正においても非常に難しいのではないかな、こういうふうに思うわけでございます。  障害者に対します福祉の問題、これは非常に重要な問題でございますので、各般の分野におきます障害者施策の中で取り組んでいく課題ではないのかな、こういうふうに思っている次第でございます。
  198. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 次期改正でも無理である、障害者対策でカバーしていこうという御答弁がなというふうには思いますけれども、この場合は制度があって入らなかったということですけれども、同じようなケースとして、例えば中国から帰ってこられる残留婦人の皆さんあるいは孤児の皆さんの場合は、日中の国交の問題もあって、入ったくても入れなかった状況があるわけですね。  昨年来たくさん帰国なさるようになって、この厚生委員会でも審議をさせていただいて、帰国を促進するための法律をつくらせていただいた経過もあります。私も関係者からお話を聞きますと、帰国促進法ができたことで大変にありがたいというお声がありますけれども、もう一つ、この無年金の問題が残っているわけですね。ぜひ対応をしてもらえないのだろうかという声が出ていますけれども、この人たちについてはどうでしょうか。
  199. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 やはり同じような問題はあろうかと思います。ただ、違いますのは、障害者の場合、これは一日でも加入すれば二十五年分の年金を払うわけでございまして、まさに過去の期間が一日か二日の方も間々あるわけでございますし、一月とか二月という方もいらっしゃるわけでございまして、その方について後から追納して払う、こういうやり方というのは一度もやったことはないわけでございます。  ただ、老齢年金につきましては、これは入れなかったとか入らなかったとか、そういう過去の期間があるわけでございまして、個々に加入した、拠出した期間に比例して払う。しかも、老齢というのは、事故というのはいずれもっと後に来る、こういうことで障害とは明確に違うような要素もあるわけでございます。  社会保険を基本といたします年金制度で対応するというのは、この老齢年金でさえ大変、私どもとしては非常に苦しい選択になろうかと思いますし、その辺は私どもとして、残留邦人につきまして措置を講ずるということについては、年金制度としてはやはり問題があろうか。ただ、障害年金ほどは、技術的な方法があるかどうかといいますれば、それは今までもかつてやったこともございますし、その方法は残っているということでございますけれども、この辺の問題はこの制度の根幹にかかわる問題でございますので、この問題も慎重に検討すべき問題だというふうに考えております。
  200. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 慎重に検討しなければいけない部分もありますけれども、もともと国の制度のといいますか、国交がなくて帰れなくて、ようやく帰ってきたけれども、そこのところが認めてもらえないという状況がありますね。沖縄は返還に当たっては特例措置を認めました。そういう意味で、人数も少ないからというのはなかなか語弊がありますけれども、強い希望が出ていますので、この問題にも、今回もし与野党が話ができればぜひとも修正をしていきたいというふうにも実は個人的に思っております。  もう一つ、実はこの制度の谷間でいきますと、在日外国人の無年金の問題がやはり残るのですよね。在日外国人無年金者というのは数がたくさんおられますから、なかなかここも難しい問題がありますね。国籍条項が廃止されて加入が認められているということがあっても、そこに至るまでに入れなかった期間が長いということがあるわけですけれども、今でも多くの自治体で、在日外国人の無年金の中の、特に障害者の方については特別に何か手当を出していこうではないかという動きが随分あります。  関西、私は大阪ですけれども、大阪ですと、ほとんどの自治体が命そういう形で二万円前後の手当を出していたりします。そういう意味で、特にお困りの状況に着目をして、もちろん各自治体とも年金制度を補完するものではない、福祉の立場でやっていくんだというふうにおっしゃっておられますけれども、きょうもし更生課の方がおられれば、この障害者対策の中でもあるいは年金の問題の絡みの中でも、この在日外国人の、まずは障害者の方について、何らかの手厚い施策が国として、自治体に任せておくだけではなくて国としてできないものかというふうに思うわけですね。  もしデータをお持ちでしたら、どのくらい今自治体がこの問題に取り組みをしておられるということを把握しておられるか、そして国としての考え方がありましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  201. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 障害者の方で年金を受給されていない方に対しまして、自治体で独自の策といたしまして手当を支給している事例があることは承知いたしておりまして、私ども昨年、都道府県を通じまして調査を行っております。  この結果を申し上げますと、年金を受給していない者に限って支給している自治体は五十四市区町村でございます。手当額が非常に低くて年金の受給の有無にかかわらず支給している自治体というのは、このほかに五十三市区町村がございます。それで、先ほどの五十四市区町村におきましては、手当額はおおむね月額二万円から三万円出されております。一市町村当たりの受給対象者の人員は大体十名程度、こんな状況というふうに私ども把握をいたしております。
  202. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 両方合わせて百ぐらいの自治体ということになりますか。数としてはまだ、三千三百もあればということでしょうけれども、対象者が少ないこともあって、多いところの自治体が先行してこういう手当を出していっているんだと思うのですね。福祉動きを見ていると、自治体が先行して、それを国が追いかけていくというケースがこれまでにも幾つかあったように思いますけれども、この問題についてもぜひ各自治体の取り組みを研究をしていただいて、国としての施策として、やっている自治体に住んでいればいいということではなくて、国として、日本のどこに住んでいても同じような手当が受けられるような形にぜひ持っていっていただきたいというふうに思います。  最後に一つだけ、年金番号のことについてお伺いをしておきたいと思います。  これも岩浅議員の質問に対して、平成八年の導入で今鋭意システム設計中であるという話でございます。未加入者の把握もできるし、あるいは滞納している人への督促、あるいは事務が軽減をしていく、いろいろなことがこの年金番号が動き始めることで期待ができるというふうに思います。窓口に行けば、年金番号一つ見せるだけで、自分がこれまでに払った保険料が幾らで、老齢年金としてどのくらい受給することができるんだというような数字もコンピューターをたたいていただければその場ですぐに見せていただけるというようなこともありまして、大変にサービスとして極めて有効に利用ができるものだというふうに思います。ぜひできるだけ早急にシステムが動き始めるように対応をしていただきたいというふうに思うわけです。  一つだけお伺いをしておきたいのですけれども、数字が違っていたらごめんなさい。たしか管理費として千四百四十億円ぐらい、年金の徴収のためといいますか、集めるためにいろいろとかかっている経費がありますか。そういうものがあって、今幾らかかかっていますね。それで、このシステムが動き始めればどのぐらいの経費削減が見込めるものなのか。すなわち、このシステムは金食い虫であるのか、あるいは経費節減になるのか。僕はコンピューター化されることで人が減っていくのではないかという期待もするわけですけれども、そんなあたり、このシステムが動き始めればどういうふうに変わっていくかという話はさっき聞きましたけれども経費的な面であるいは人的な面でこの年金番号が動き始めることでどの程度効果を期待しておられるのかをお伺いをいたしたいと思います。
  203. 横田吉男

    ○横田政府委員 現在の国民年金事業に要している事務費でございますが、これが都道府県それから市町村合計いたしまして、先生指摘の千四百四十億円、これは平成四年度の数字でございます。このほかに、厚生年金保険関係で一千百億円ぐらいの事務費がかかっているという状況にございます。  年金番号を導入した場合にどうなるかということでございますが、これは現在未加入対策等を進める場合に、実は市町村におきまして適用対象者の把握というのが大変難渋いたしております。いろいろなリストからそれらしき人を抽出してまいりまして、いろいろなデータを突き合わせながら、二号被保険者でもない、三号被保険者でもない、一号であろうというような見当をつけまして、文書等による勧誘を行っているわけでありますが、かなりの部分がやはり違っているというふうなことで返ってくることもございます。こういったものが正確に把握できるということで、そういう面で事務的にも効率化が図られるというふうに私ども考えておりますが、これがどの程度の効果になるか、まだシステム在開発している途中でございまして、正確なところを持っていない状況でございます。  予算といたしましては、六年度からシステムの開発に着手いたしておりまして、平成六年度で六億円ほど、七年度要求におきましては三十一億円ほど要求いたしております。  この開発が終わった場合、切りかえ作業というのがあるわけでありますけれども、その切りかえ作業にある程度の費用がかかると思いますが、まだ正確なところは算出いたしておりません。それができた後はランニングコストということになるかと思います。
  204. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 ランニングコスト、幾らぐらいと見込んでおられますか。
  205. 横田吉男

    ○横田政府委員 正確なところはまだ算出しておりませんけれども、システムの運転経費ということになりますので、そう巨額にはならないというふうに考えております。
  206. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 やはり行政改革ということが言われておりますね。納税者番号の問題もありました。今住民基本台帳にも番号制を入れております。  確かに、プライバシーの問題ですとかいろいろ危惧する声はありますけれども、この辺も国民に、これできちんと年金も皆さん入るようになるのだよ、滞納している、あるいは未納している人たち、不公平感もこれでなくなりますよという意味でも、ランニングコスト余りかからないというお話、巨額ではないということですから、そういう意味でも効用をぜひ説いていただいて、それで大いに利用されるように、そういうシステムにしていただきたい。それで人員が減る、あるいは事務量が大幅に削減されるというところの行政改革にぜひつなげていただきたいというふうに思います。  残りの時間は同僚の矢上議員が質問します。よろしくお願いします。  ありがとうございました。
  207. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員長代理 矢上雅義君。
  208. 矢上雅義

    ○矢上委員 改革の矢上雅義でございます。  いろいろ年金の問題について質問を用意しておりましたが、時間が残り少ないもので、ちょっと順番を変えさせていただきます。  今回の年金改正につきまして、公的年金受給権者二千八百万人以上、多くの国民が早期の成立を願っておるわけでございますが、その反面、六十五歳という支給開始年齢引き上げについては賛否両論、まだ渦巻いております。そしてまた、ここ数日の議論にもありますように、国庫負担の引き上げ要求、そしてまたその財源問題をどうするか、いろいろ問題がございますが、私個人としましては、今回の年金改正について、障害者に対する配慮、遺族年金関係の配慮等されておられます、また二十年後、三十年後を見越した改正として大いに評価するものでございますが、まず大臣なり局長の決意のほどをもう少し、何といいますか、どうも力強さが感じられないものですから、本当にやりたいのか、まずその辺のことをお聞きしたいと思います。
  209. 井出正一

    井出国務大臣 本当にやりたいです。
  210. 矢上雅義

    ○矢上委員 大臣から今本当にやりたいというお気持ちの表明がございました。  ただ、現実の問題、ここでよく議論されるように、国庫負担の問題、これは私が与党の時代、この一年間余り、厚生省の方にレクチャーを受けるたびに、つい最近も、国庫負担の三分の一は絶対に崩せない、これを崩すと国家財政の破綻、また厚生省の予算の硬直化を余計ひどくするから絶対譲れないということをお聞きしておりました。そのおかげで、私はうのみにしたせいもありますけれども、陳情団の方がいっぱい来られて、ぜひ二分の一なり三分の二に国庫負担を引き上げてほしい、そういう要望を受けまして、私はこう丁寧に、国家財政の破綻、また厚生省の介護面、保育面の弾力性をなくすからどうかこらえてくれないか、私自身の力ではどうしようもない出来事なんだということで説得して帰しておりました。  ところが、この二、三日、厚生省、また関係者の、政府関係、与党関係の間から漏れてくることは、社会保険方式の中で国庫負担金の位置づけ、なぜ三分の一なのか。また、自民党さん、社会党さんが、一部の方だけでしょうけれども、二分の一、三分の二という引き上げが出てくる、それに対して厚生省の皆さん方の御見解というか御見識というのですか、まあ人のすることだからどっちに転ぶかわからぬわな、そういうことを聞いたとき、私も苦笑いしておりました。まあ率直な意見だな、人のすることだから先のことはわからぬと。  ただ、先ほど局長の答弁で、国庫負担金の三分の一の、原則三分の一の位置づけ、それを先ほどの答弁の中で、まあ過去から来たものだから理屈はそんなにありませんわな、そういうふうにも聞こえました。確かに与党の一員として、行政の根幹、行政の継続性というものが国民利益になるならばということで、言いたいことも我慢して今まで国会議員をやってきておりましたが、一つしかない口から二つも三つも言葉が出てまいります。  そうなりますと、ただ単に厚生省の職員の皆様方が裏で言っていたことというとらえ方ではなくて、大きくとらえるなら国会に対する侮辱とも思えますが、その辺の、侮辱じゃないという、誤解を解いていただくためにも、今局長の言葉で結構でございますから、社会保険方式、これは歴史のあるものでございますから、どういう趣旨で、しかも国庫負担金の位置づけ、主たるものなのか従たるものなのか、そして社会保険方式の中における国庫負担の位置づけがそうであれば、三分の一はどうなのか、そしてまた引き上げるとして二分の一というのはどうなのか、その辺の御説明を簡潔にぜひ明快にしていただきたいと思います。  それをしていただかなければ、私どもは、まあ自民党さんは二分の一に政治生命をかける、私どもは三分の一にかつてかけてきた、そして社会党さんは三分の二に政治生命をかけておられるわけですよね、結果的に全額ですけれども。その辺のことをあいまいにされるままこの審議を続けられるとすれば、それは国会議員を使い捨てと思っておられるということにもつながりますよ。明快にその辺をお答えください。
  211. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 大変難しい御質問でございまして、なかなか明快な答弁が難しいわけでございます。  私ども、裏も表もないわけでございまして、先ほど私が申し上げたことと重なるわけでございますけれども、現在の国庫の状況で、国庫負担の引き上げ、非常に巨額なものでございますから、すぐに行うというのはやはり現実的ではないのではないかな、こういうふうに思っております。  それから、厚生省の全体の施策の中でどこの分野を優先すべきか、こういう問題が当然あるわけでございまして、巨額な年金の国庫負担国民的な論議もなく同じシェアの中に入り込んでくるということになりますと、これはほかの施策というのはほとんどかすんでしまう、こういうふうな問題があろうかと思います。  しかし、厚生省の枠を超えましても、これは当然税制の問題ですから厚生省の枠を超えますけれども、農業に金を入れるのか公共事業に金を入れるのかいろいろあろうと思うわけでございまして、その辺はやはり保険料負担すべきものにとってかわるだけのそれなりの理屈が要るのではないかなと思っているわけでございまして、三分の一というのがいいかげんな数字だというわけではございませんで、やはり歴史的な重みを持っている率だというふうに考えているわけでございまして、国民年金創設以来三分の一というのが守られていっているわけでございまして、その点では、私どもは絶対これがこれしかないということは到底言えるわけでもございませんし、社会保険方式の中では三分の一というのはやはり従たる位置づけになっていることは当然のことでございます。
  212. 矢上雅義

    ○矢上委員 歴史に基づく重みがあるとおっしゃいましたが、政治というものは、シナリオをつくっていくのが政治と行政でございますから、政治がシナリオをつくり、行政がそれを動かす。そこで、この一年間の少ない知識の中で自分なりに趣旨というものを考えてみました。どうせ聞いても答えが出ないと思ったものですから。  社会保険方式、これは自立と連帯を基本にして、社会連帯というのですか、一生懸命自分の力で稼ぐ、そして自分の力で稼いたお金の中で少しずつみんなで出し合って老後の不安を取り除く、そういう自己の責任と自覚に基づくというものが社会保険方式の中心でございますから、やはり国民の努力が主体になる。しかし、国民の努力だけに任せておけばなかなか財政の安定というものが思うようにいきませんから、国家が加勢をする。つまり、国家がわきから、サイドから支援をするというものが、結局、社会保障、社会保険の中での国家の役割であるとすると、国民の努力が主となり国家の支援が従となる。そうすると、単純明快に割ると、数学の世界で言うと、三分の二が国民負担であり、三分の一が国家の負担かな、それが原則であり、そこからスタートすると私は思っております。  ただ、今、自民党さんあたりからも出ております二分の一をめどにという、一部の方ですけれども二分の一をめどにという考え方もございますが、それも一理あると思います。それの理由づけとしましては、産業空洞化、価格破壊の進行による賃金の低迷、これは押しとどめることのできない流れでございますから、賃金から標準報酬を主体とした社会保険方式ではおのずと破綻してしまう可能性がある。その中で、何らかの税というものでのバックアップを考えて、しかも国民が主体であるということを考えれば、二分の一という説もまああながち無理はないかなと最近私も思っております。  この辺に対して、長期的に、中長期的にそういう国庫負担見直しをするということは、国会議員一同共通した理念として持っておりますが、先ほどとダブってしまうかもしれませんが、もし二分の一にするとした場合、二分の一引き上げを前提とした場合、増税しないままで今のままの予算の枠内で実現しようとすると、厚生省予算の中でのどの枠を削ると国民が喜んでくれそうだなというお考えはございますか、先ほどはないということでございましたが。この国庫負担の引き上げという問題は、転んでもタイムスケジュールにのってくる問題でございましょうから、長期展望として、増税しないで済む場合、また、増税して負担を引き上げるとすればいつごろか、例えば平成九年度前後の消費税アップに連係するのか、もしくは平成十一年、十六年の財政再計算のときに考えていきたいのか、また、仮に増税したとしても、すべて国庫負担引き上げに回すつもりはなく、厚生省の予算の柔軟性を取り戻すために使いたいのか、この三点についてちょっとお聞きしたいと思っております。  先ほどの答弁とダブりますけれども、まず一番目に、増税しないで国庫負担を将来引き上げようとすると、厚生省の予算の中でやりくりできる余裕があるかないかについて改めてお答えください。
  213. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 私は、検証したわけではございませんけれども、私の今までの経験から申し上げますと、これはないというふうに思います。
  214. 矢上雅義

    ○矢上委員 それでは大臣にお聞きしますけれども、中長期的な課題として国庫負担金の引き上げを検討するとすれば、個人的にはどの程度か、どの付近かな。平成九年、平成十一年、平成十六年、いろいろな基準がございますが、できれば、感想で結構でございますから。
  215. 井出正一

    井出国務大臣 今度の税制改革の中で高齢化あるいは少子化対策にある程度の配慮をしていただいたのでございますが、これだけだと十分でないことは再三申し上げているところでございますが、その検討過程で私どもがこれから早急に煮詰めようとしております新ゴールドプランあるいはエンゼルプラン、さらに医療費とかいろいろな、あるいは年金も入れていいですね。自然増もございますから、そちちのあれを、次の検討過程の間にしっかりしたあれをつかんで、見直し規定が設けられておりますから、その時期にその数字を考えていただくということですから、さらに国庫負担となりますと、それにまた巨額なあれが加わりますから、これは税制改革そのものにも大変大きな影響を来すはずであります。  したがいまして、中長期的という場合は、私、個人的には、少なくとも今度の平成九年から行われる税制改革以降の検討課題だと考えております。
  216. 矢上雅義

    ○矢上委員 大臣におかれましては率直な御意見ありがとうございます。大変答えにくい御意見かとも思いますが、本当にこの問題、いろいろな問題を含んでおります。慎重に取り扱っていかなければ、期待感だけ抱かせて最終的にはがけの上から下に落とす、そういうことでございます。がけの上から下に落として済めばいいのですけれども、この国庫負担金の問題というのはいずれまた再浮上してくる問題でございますから、関係の皆様方の言葉というものは慎重に取り扱われませんと、きょうもこれだけの多くの傍聴の方が来ておられます。そして、国会議員五百名以上の政治生命もかかっておるわけですから、慎重に取り扱っていただき、やるべきところはやる、その辺の決意で頑張っていただきたいと思います。  手短ではございますが、質問を終わらせていただきます。
  217. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員長代理 柳田稔君。
  218. 柳田稔

    ○柳田委員 今回の年金改正に当たりまして、我々としてはベターだなという感じで提出をさせていただきました。やっと国会審議に入っだということは、思い返しますと感慨無量の感がいたします。一般質問でも大分大臣にかみついておったわけでありますが、我々としては全力を挙げて福祉年金の支給に間に合うよう努力をしたいということをまず冒頭申し上げておきたいと思います。ただ、我々も今申し上げましたように、ベターだと思っておりますので、いろいろ議論を通じながら修正すべき点は修正をし、よりよいものにしていきたい、そういう気持ちも持っておりますので、鋭意議論を重ねながらいいものをつくっていければいい、そういうふうにも思っております。  そこで、いろいろと質問を用意したわけでありますけれども、できるだけ減らしまして質問をしたいと思いますので、前もって言っていたのと順番が違うかもわかりませんが、よろしくお願いしたいと思います。  まずは、国民的合意を形成するためにどんな努力をしてきたかということで質問させていただきたいのでありますが、平成元年ですか、六十から六十五歳への段階的引き上げの提案も一回されました。あのときは国民の合意を得ることができなかった。その大きな理由は、時期がまだ早いのではないかとか、高齢者雇用が必ずしも十分にいっていないのではないかという理由で見送られました。今回、いろいろな改正案を盛り込むことによって、ここまでやってきたわけでありますが、国民サイドから見ますと、やはり早く多くもらいたいという気持ちは当然あるわけでありまして、今回の改正、まあ余りいいとは思わないけれども仕方がないかなというのが国民サイドの率直な感想なのではないかなと思うのですね。  そういう気持ちを、やはりこういう改正をすることが日本の将来にとっては年金制度を安定化させるためには必要なんだということを、大分厚生省もPRをしてきたと思うのでありますが、国民的合意を形成するためにどんな努力をしてこられたか、まずお伺いをしたいと思います。
  219. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 先ほど来お話がございますように、年金制度というのは大変国民に浸透してきておるわけでございまして、非常に重要な役割を果たしているわけでございまして、それだけに非常に関心が高い。ことになっているわけでございます。制度改正に当たりましても、年金制度の現状、それから課題等につきまして広く国民に情報を提供したい、それから御意見も幅広くいただきたい、こういうことで、国民の合意形成というものに私どもなりに努めてきたわけでございます。  具体的に申し上げますと、昨年の三月に、初めての試みであったわけでございますけれども、新しい人口推計に基づきまして年金財政の暫定試算をまとめたわけでございまして、これを審議会に報告をするとともに、公表をいたしたわけでございます。  それから、同じころ、国民各界各層の有識者二千名の方を対象にいたしまして、年金改革につきまして調査を実施いたしたわけでございます。  それから年金週間というものを数年前からつくりまして、これは十一月の六日から十二日でございますけれども、これを中心にブロック会議を開きまして、八ブロックで各代表者にも参加いただきまして、年金改正に関するシンポジウムを開催いたしたわけでございます。  昨年の暮れには、厚生大臣みずから参加していただきまして、石川県の金沢市で国民各層から成るフォーラムを開催いたしたわけでございまして、柳田先生自身にもこの法案の合意形成に向けまして、大変いろいろな面で御配慮いただいたことを感謝いたしている次第でございます。  このような幅広い国民的論議を行うように努力いたしてきたわけでございます。
  220. 柳田稔

    ○柳田委員 大変努力をされてきたということは私も敬意を表したいと思います。  今回の改正一つのポイントとして、六十歳代前半年金のあり方ということで、別個の給付というものが入っております。平成元年の、時の自民党政権時代の案ではこの別個の給付というのはなかったわけでありますが、やはり雇用状況とか今の状況考えた場合には、別個の給付を入れる方がいいだろうという判断を我々しまして、入れたわけでありますけれども、この別個の給付ということにつきまして、二つほどちょっとお伺いをしたいと思うのです。  この六十歳代前半に別個の給付が導入されるわけでありますけれども、例えば御本人が六十歳から六十五歳の間で仕事をしておりました。ところが、年も六十過ぎていますから、病気にもかかりやすいし、また最近骨がもろくなったということも出てきておりますので、けがもしやすいだろう、そういったときに、働き手は病院に入院しないといけない、それも回復も大分かかりますね。若い世代と違いまして、一月とか二月入るということも十分考えられるだろう。そうしますと、普通よりは支出はふえますね。ところが、収入の方は今申し上げた別個の給付しか入ってこない。大変所得が少なくなって家庭生活上大変なことになるんではないかな、そう思うのでありますが、この点についていろいろと言われておりますが、どういうふうにお考えでございましょうか。
  221. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 先生の御指摘のとおり、六十歳前半につきましては別個の給付というものを導入いたしまして、これから十九年かけて段階的に六十五歳に引き上げていく、別個の給付というのはずっと出続ける、こういうふうなシステムにしたわけでございますが、そのなくなっていく定額部分につきまして、例外的に、既にもう四十五年も厚生年金に加入されている、あるいは障害の三級以上に該当する、こういう方につきましては、やはり特例措置を講じなければならぬだろう、こういうことで、先生指摘のような例外措置を置いたわけでございます。  先生の御指摘のようなケース、どういうふうに判断するかというのは非常に難しいわけでございますけれども年金制度といいますか厚生年金制度におきまして、働けない、したがってこの人に年金を出す、こういう世界は障害の三級以上だ、これは若い人がそうなっているわけでございまして、老人だけ余計に出せということは恐らく世代間のバランスとしてもよくないだろう、こう思うわけでございます。  しからばその三級というのはどんなものかということでございますけれども、いろいろな疾病によりまして、軽い作業はできるけれども肉体的な労働はできないとか、こういうふうないろいろな認定基準がございまして、その認定基準に合います場合には、かなり弾力的に病気で入院されている方も対象にしている。ただ、全員が対象になるわけではございませんで、そうなると、もともとこういう制度意味ないわけでございます。やはり働けないのが妥当な人である、こういうふうな認定ができたときに三級障害が出るわけでございまして、高齢者がそういう同じような状態になりますれば、六十歳、あるいはなったときが六十一歳であれば、六十一歳から定額部分も含めて支給をする、こういうふうなシステムになっているわけでございまして、先生の御指摘のような事例がすべてこれに該当するかどうかは、これはその認定基準に合うかどうかということになろうかと思います。  ただ、これも大分、二〇〇一年から始まる制度でございますので、それまでにいろいろな事例も考えた上で弾力的な執行というものもいろいろこれから検討していかなければいかぬのかな、しかし、当然若い人とのバランスがあるわけでございますし、客観的な基準というものがないとこの制度そのものが崩壊するということでございますので、そこはやはり慎重に検討しなければいかぬというふうに考えているわけでございます。
  222. 柳田稔

    ○柳田委員 若い世代ですと、こういう病気とかけがになって入院してもまた職場復帰ができますね。ところが、やはり六十歳代前半で一月も二月も休みますと、本当に職場に復帰できるのかな、そうすると、けがをした入院期間も大変だけれども、またその後も大変だなというのが多分この年金改正に当たっての不安だろうと私は思うのですね。  そういうことで、近藤さんは検討しなきゃならぬというお答えであったわけでありますが、この不安というのは解消してあげた方がいいのかなと。ただ、おっしゃったように、どう解消するのか時間がかかる問題だというのも私はよくわかるのでありますが、解消するぞ、我々も全力をもって検討するぞという何かがあるとまた皆さんの不安というのが若干落ちつくのかな、そうも思っておるのです。  もう一つそういうふうな例があるかと思うのですが、これは御本人がけがとか病気になったことでしたけれども、例えば、奥様が倒れられて寝たきりになってしまった。ところが、病院に入れようにも病院がない、施設に入れようにも施設もない、しょうがないから自分で面倒を見ざるを得ない。働く御本人は非常に健康で働く意欲満々なんですが、奥さんを一人家に置いて仕事につくことは難しい、こういうことも多分多々あるのではないか。そういう不安をお持ちの方々も多いというふうに聞いておるのでありますが、この点についてはいかがでございましょうか。     〔石田(祝)委員長代理退席、委員長着席〕
  223. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 先生の御指摘のケースというのは、寝たきりになった家族の方を介護するために、そのときに生活費の保障をしてあげたらどうか、こういうことだろうと思うわけでございまして、そういう事例まで年金制度で対応するのかなというのが私どもの率直な感じでございまして、厚生省は、現在問題になっておりますけれども、ゴールドプランという形でホームヘルパーとかデイサービスとかいろいろな介護対策を進めようということをしているわけでございまして、お金があるならそちらに重点的に行うべきではないのかな、こんなような感じを持っているわけでございます。  ただ、家族介護そのものの問題というのは、これは年金制度ということでなくて社会的にもいろいろ考えなきゃならない問題でございまして、私どもの介護関係のチームにおきましても、そういう問題はこれから不安を除くためにもやはり全力を挙げて検討すべき課題ではないのかな、こういうふうに考えておりまして、六十歳前半の者の別個の給付の例外措置でこそこそと救うというふうな形でないのではないのかな、こんなような感じを持っております。
  224. 柳田稔

    ○柳田委員 この介護の問題は、おっしゃるとおりに私も年金でどうのこうのするのは難しいだろうとは思います。しかし、国民サイドに立ちますと、今局長くしくもゴールドプランとおっしゃいましたけれども、今ゴールドプランを進めておりますけれども、本当に不十分なんですね。ですから、周りを見まして、本当に倒れたときに病院にも入れられない、施設にも入れられない、下手に施設に入れると莫大な金がかかって別個の給付では足りないというのが現実ですね。その現実の中でこの年金改正がされるわけですよ。我々同僚からも新ゴールドプランを早くつくれ、早くつくれと言っておるのでありますが、今段階ないのですね。今あるのはゴールドプランだけなんです。  その現実を見据えますと、本当に不安だとおっしゃる、そういう不安をお持ちの方が多い中で、この年金改正を通さなければならないという使命感を持っているのでありますが、やはりこの辺の不安は取り除いていただかなきゃならないのかな、さように思うのです。つまり、この介護については、私は新ゴールドプランをもうことしからでも発足させるくらいの気持ちでやっておかないと、この年金についての不安は取り除けませんよということがこちらには言えるかと思うのですね。  ところが、さっき言った方の病気、けが、これはこの新ゴールドプランでもちょっと救えないのですね。そうすると大変だがなと。よく最近テレビを見ていますと、骨粗鬆症ですか、大分話題になっていまして、私もできるだけ小魚を食べようとしておるのですが、うちの知っているところで、あれで倒れて足を骨折しまして二月、三月入院していたのですよ。そうすると本当にかわいそうだなと思って、この辺はどうにかしなければいかぬなと。  今局長が答弁されましたように、二〇〇一年からのことであります、期間はありますから何とか検討しますとおっしゃることもよくわかるのでありますが、それだけでは多分我々国民の不安というのは取り除けないだろうと多分大臣局長もお思いになると思うのですね。さあ、どうにかして取り除きたい、そしてこの不安をひしゃげたいと思うのですが、大臣どうでしょうか。
  225. 井出正一

    井出国務大臣 大変難しい御質問をちょうだいしまして、ちょっと立つまでに時間がかかりました。  介護というのがこれから大変な課題に、もう既になっていると申し上げてもいいのですが、なるはずでございまして、その意味でも省内に検討委員会も設置してその対策のあり方等々も研究をしておりますから、そんな検討の中で今柳田委員お示しくださったような問題につきましてもいい知恵を見出していきたい、こう思いますし、また柳田委員初め諸先生方からもいいお知恵をおかりできたら、こう思うのであります。
  226. 柳田稔

    ○柳田委員 いい知恵をということであったので、一応考えてまいりました。  先ほど局長の答弁の中で、特別措置ということで例外措置がございますね、四十五年以上と三級以上の障害者、そこに厚生大臣の定める者というものを加えまして、じゃ、この中身は一体大臣がどう定めるんだという問題が今度はありますね。それは、これをつけ加えておきまして、内容については、先ほど局長が答弁になったようにできるだけ早くいろいろな審議会を開いたりとかいろいろなところをつくったりとかして、大臣の定める者というのをこの審議を通じながらつくっていきますよ、検討しますじゃなくて、こういうものを条文でつくりました、入れました、こういう審議とか何かをしながら必ずやりますというものを国民の方にお示しされると、多分不安は半分ぐらいかどうかわかりませんけれども、大分落ちつかれるのではないのかなと。  ただ検討しますというだけでは不安は募るばかりですから、ひとつその辺も思い切って――中身を詰めるとは僕は言っていないのです、今すぐには。時間がかかる問題だから、時間をかけてどうぞおやりください、二〇〇一年以降の問題ですからね。ただ、本当にやる意思を法律の中にこういうことで定めることによって、国民の方は、本当にやっていただけるんだ、そういう安心感をお持ちになるのではないかと私は思うのでありますが、どうでしょうか。大臣でも局長でも、アイデアを出してくれと言われましたから大臣でも結構ですが。
  227. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 私が先ほど検討すると申し上げましたのは、三級障害というのはかなり弾力的な運用をなされているわけでございますし、規定そのものもかなり弾力的な規定にもう現になっているわけでございます。その辺の運用をどうするのか、こういう問題だろうと思っておりますし、若い人の障害とそれから先生指摘の高齢になってからの障害か障害に近い状態というのはいろいろ形態は遣おうかと思いますので、その辺をこれから詰めていく、こういうことでございます。
  228. 柳田稔

    ○柳田委員 ということは、三級以上の障害という範囲は今定かでありません。大変広がるときも場合もありますというふうに受け取っていいのですか。例えば、先ほどの例じゃないのですが、歩いていて足を折ってしまった、骨がもろいもので完治するのに三カ月かかります、その間、別個の給付の十万円で生活しろ。これは三級に入るような運用になるのですか。
  229. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 私も、その三級障害の認定というのは、実務に疎いものですからどの程度になるかちょっと私も今確答はできませんけれども、これはやはり医学的な、働けない、こういうふうな認定を受けるということでございますから、それは三カ月でなるのか、その辺は私どもちょっと今確答はできませんが、これからいろいろな事例を見てやっていくことになろうかと思うわけでございます。
  230. 柳田稔

    ○柳田委員 おっしゃるとおりなのです。これからいろいろな事例を見ながら進めなければならないのですが、だから言ったのは、それで結構なんです。ただ、本当にやるぞという意思を示すために、法案の中にその結果やりますよという、大臣の定める者というのをつけ加えておったならば安心感も違うのじゃないのかな、年金財政考えてみても、受ける方は六十五からか、嫌だけれどもまあしょうがないなということにもつながるのではないのかなという感じがいたしておりますので、大臣の方も、こういうアイデアを出しましたので、もう数日しかありませんが、よく御検討をして、お知らせ願えればと思います。  あとは労働省に対して全部質問をいたしたいと思います。大臣、どうぞちょっとトイレでも行かれるのでしたらこの機会に行ってくだされば結構かと思います。どうぞたばこもお吸いになってください。  次に、高齢者雇用について労働省にお伺いをしたいと思います。  現段階で六十歳代前半雇用というのは正直申し上げまして不安ですね。今六十歳代前半の人も不安、これから六十歳代になろうという人も不安、さらに二十一世紀、二〇〇一年から年金の支給がおくれるわけですね、六十二、六十三と順番に。そうすると、さらに不安というものが多分あるのだろうと思うのです。この高齢者雇用の見通しについて労働省はどう考えておるのか。また、二十一世紀初頭の姿について教えていただきたいと思います。
  231. 太田俊明

    太田説明員 御質問高齢者雇用の見通してございますけれども、マクロ的な労働力人口の見通してございますけれども、五十五歳以上の高齢者が占める割合でございますけれども、二〇〇〇年には労働力人口の二三・〇%でございます。また、団塊の世代が高齢期に差しかかります二十一世紀初頭、二〇一〇年には労働力人口の二七・○%でございまして、二十一世紀初頭には労働力人口の四人に一人が高齢者となる超高齢化社会が到来することが見込まれているわけでございます。  こういった急速な高齢化の進展に対応しまして、また高齢者方々の就業に対するニーズも大変強いという状況も踏まえ、今後我が国経済社会の活力を維持していくためには、二十一世紀初頭までに、希望すれば六十五歳まで現役として働ける社会をつくっていくこと、これが極めて重要な課題ではないかと考えております。
  232. 柳田稔

    ○柳田委員 今お答えいただきましたように、五十五歳から六十五歳の人口を言っていただいたのですよね。大変な数ですね。今から比べると本当にすごい数の人が五十五から六十五歳の労働力人口になるんだなと、今さらながらびっくりしております。  次に、定年についてお尋ねをしたいのでありますが、現在定年が六十歳以上の企業の割合は七六・六%ですね。それで、六十歳以上への改定決定、予定を含めますと大体力〇・二%、まあほぼ六十歳定年をクリアしておるのかなという感じがしないわけではありません。しかし、今御答弁いただきましたように、二〇一〇年には五十五から六十五歳の人口が二七%。としますと、六十歳定年というはっきりしたものを引いてもらわないと大変不安に思うかと思うのでありますが、まずは労働省としては、現段階で六十歳定年制は定着したと考えていらっしゃるのかどうか。そしてさらに、六十五歳までの雇用の促進はどのように考えていらっしゃるのか。さらに、六十五歳定年制はあり得ないのかあり得るのか、教えていただきたいと思います。
  233. 太田俊明

    太田説明員 まず、六十歳の定年制状況でございますけれども、最新の平成六年の数字で申し上げますと、六十歳以上定年制企業の割合が約八四%、予定、決定を含めますと約九五%でございます。こういう状況でございますので、私どもとしましては、ほぼ六十歳定年制は定着しつつあるのではないかと考えておるところでございます。  こういう状況も踏まえまして、さきの通常国会で高年齢雇用安定法を改正していただきまして、定年制を定める場合には六十歳までという定年の義務化をやっていただきまして、施行は平成十年でございますけれども、六十歳定年制をさらに強力に指導を行ってまいりたいと考えております。  また次に、六十五歳までの雇用確保の問題でございますけれども、この点につきましては、高齢者が長年にわたって蓄積してきました技能とか経験があるわけでございまして、こういったものを活用して企業内における六十五歳までの継続雇用を進めていくことが大変重要ではないかと考えておりまして、この点につきましてもさきの通常国会改正されました高年齢雇用安定法で、企業に対する労働大臣の指示あるいは勧告等も定めていただいたところでございまして、そういう規定をもとに、さらに企業内における六十五歳までの継続雇用を進めてまいりたいと考えております。  さらに、六十歳を超えた場合でございますけれども高齢者の場合、やはり六十歳を超えますと、健康など個人差が大変拡大してまいりますし、また就業ニーズも多様化してくるという状況もあるわけでございまして、高齢者企業内における六十五歳までの雇用確保につきましては、少なくとも現段階におきましては一律に六十五歳までの定年延長によるということは必ずしも適当ではなく、定年延長のほかに勤務延長あるいは再雇用といった多様な形態によりまして継続雇用を促進していくことが必要ではないかと考えております。
  234. 柳田稔

    ○柳田委員 最近景気が悪くて、労働省さんが幾ら言っても将来みんな六十五まで本当に働けるのかな、そういう気持ちが強いかと思うのですけれども、多分、労働省さんもそういうふうな感じは受け取っていらっしゃるのではないかと思うのですが、将来的には六十五歳まで、希望する人は働けないといけない、全員が働いていかなければならない。となりますと、その不安を払拭するために、六十五歳まで希望する人は全員働けますよというふうに持っていくために、具体的にはどんなことを今お考えになっておりますか。
  235. 太田俊明

    太田説明員 先生指摘のように、大変高齢化が急速に進展しておりますし、その中で働きたいという方も大変ふえているわけでございまして、二十一世紀初頭までに、希望すれば六十五歳まで現役として働ける社会、これを実現していくことが今一番の課題でございます。このため、先ほどもちょっと申し上げましたけれども労働省としましては、改正甘同年齢雇用安定法に基づきまして施策を講じております。  まず第一には、一つは、六十歳定年制を基盤とする企業における六十五歳までの継続雇用の推進でございます。それから、第二の柱としましては、きめ細かな職業紹介の実施による高齢者方々の再就職の促進、あるいは臨時的かつ短期的な就業機会、こういうものを希望する方につきましては、シルバー人材センターの充実など多様な形態による雇用就業の促進に努めております。さらに第三には、もう少し在職中から、早い段階からみずからの高齢期に向けた準備も必要であるということで、在職中の中高年齢者に対する職業生活の設計のための助言など高齢期の雇用就業に対する援助、こういった点につきまして重点を置いて施策を推進しておるところでございますし、これからもこういう形で推進していきたいと考えております。  また、これとあわせまして、改正雇用保険法によります高年齢雇用継続給付制度、こういう制度の実施によりまして高齢者方々雇用継続を援助、促進することとしているところでございまして、こういった施策によりまして今後とも高齢者雇用の推進に全力で取り組んでまいりたいと考えております。
  236. 柳田稔

    ○柳田委員 今のいろいろな具体的な中身についてはお聞かせを願いました。  じゃ、別の角度から質問いたしますけれども、五十五歳定年から六十歳定年へ大変長い時間がかかったのではないかと私は記憶しておるのですね、五十五から六十歳までの定年制の移行は。今度、この厚生年金改正は、二〇〇一年から二〇一三年、この間に六十五歳まで引き上げちゃうんですが、今、労働省さんがおっしゃったことで、本当に先ほど申し上げたように、働く希望を持っていらっしゃる方は六十五歳までこのピッチで、年金受給が三年おきに上がりますから、このピッチに間に合うかどうか、自信のほどをちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  237. 太田俊明

    太田説明員 支給開始年齢高齢者雇用対策との関係ということであると思いますけれども、まず、私ども高齢者雇用対策の考え方を申し上げます。  先ほど申し上げましたけれども一つは、二十一世紀初頭には労働力人口の四人に一人が高齢者となる超高齢社会が到来するということ、それからもう一方では、我が国においては、六割近くの者が少なくとも六十五歳まで働くことを希望するなど極めて就業意欲が高い、こういう特徴もあるわけでございまして、こういった状況に対応しまして、我が国経済社会の活力を維持していくために二十一世紀初頭までに、希望すれば六十五歳まで現役として働ける社会の実現に向けて積極的に取り組んでいるところでございます。  具体的な施策は、先ほど申し上げました改正の高年齢雇用安定法に基づくもの、雇用保険法に基づくもの、こういったものがあるわけでございますけれども、私どもとしましては、六十五歳まで現役として働ける社会、こういうものを目指して全力で取り組んでまいりたいと考えているところでございます。  いずれにいたしましても、本格的な高齢化社会のもとで高齢者方々が安心して生活を送れるようにするためには、雇用政策年金政策との連携を十分図りながら今後とも高齢者雇用の促進を図っていくことが大変重要であると考えております。
  238. 柳田稔

    ○柳田委員 年金支給年齢引き上げのペースにおくれないように、労働省としても全力を挙げて頑張っていただきたいことを申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  239. 岩垂寿喜男

    岩垂委員長 土肥隆一君。
  240. 土肥隆一

    ○土肥委員 相当長い時間をかけて、我々は今回の年金法の改正、大改正と言われておりますけれども、審議をしてまいりました。私は、この審議をずっと聞いておりまして、何か年金をやっているのですけれども、今の労働省の答弁も聞いておりますと、雇用年金で老後の生活を支えていくというのですが、どうしてこうも日本人は働け働け、六十超えて、六十五超えてもまだ働け、私に言わせれば死ぬまで働けというふうに聞こえてならないわけであります。  それほど働かないと生きていけないような年金額なのか、あるいはそれほど働かないと何かローンなど借金がたまって、それを返していかなきゃいけないのか、それとも労働省がおっしゃるように何か労働力として活用しようとしていらっしゃるのか、いろいろ勘ぐってもみたくなるわけであります。こうした非常に労働が好きな民族なのかな、もう少し、六十歳を超えましたら多様な生活を国民に提供して、それは国民の選択に十分任せて、それぞれの生き方を選択していく、それぞれの老後を送っていく、個性ある老後を送っていく、こういう世の中にならぬものだろうかというふうに思うわけであります。  そういうことを考えながら、実はこの九月十日に、NHKの土曜日の「くらしの経済」という番組がございますが、それを見ておりまして、それは年金の特集でございました。つまり、老後をどう設計するか、退職後の暮らしをどう設計するかということを描いていたわけであります。私、漠然と見ておりまして、はっと気がつきまして、そのメッセージがこうなっていました。要するに、年金フル年金をもらっても、結局老後の生活をやっていくためには約二千万円足りない。二千万円ですよ。  これは何だと思って、慌てて私はNHKに電話しましたら、実はここに、生命保険文化センター、私はここの財団法人を支援しているわけじゃございませんけれども、これからとったというのですね、「ライフプラン・ガイドブック」というのがありまして、「“人生八十年型生活設計”のすすめ」こう書いてあるのです。これは宣伝するわけじゃございませんが、議員の皆さんもあるいは厚生省の皆さんも、一冊百九十円でございますから、お買い求めになるとなかなかおもしろい分析がしてあるのです。  いろいろ、例えば子供を学校にやる、あるいは家を建てる、子供が結婚する、その都度の費用が出ておりますけれども、「老後の生活資金の準備」というところを見ますと、こういうふうになっております。夫が六十歳、妻が五十七歳で定年に入るわけです。平均余命を夫は二十年、妻は二十七年と計算いたしまして、まあいろいろな中身は申し上げませんけれども、総額で、夫が死に妻も死んでいくまでに八千三百六十六万円かかる、こうなっております。これが要するに総費用でございます。ところが、公的年金はどれくらい出るかといいますと総額六千四百三十七万円、その差一千九百二十九万円、約二千万円不足するんだというわけです。  この数字は、決してこの保険会社、生命保険会社が生命保険をセール人するために出した数字じゃなくて、きちんとした、例えば総務庁の平成四年度の家計調査年報から引いてありまして、全世帯の世帯主六十歳の平均一カ月の消費支出というものに基づいて出したものでございます。二千万円足りないんですね。  もちろん、これは平均的な世帯主でございまして、それぞれいろいろな、さまざまな生活形態があるわけでありますが、恐らくほとんどのサラリーマン、そして厚生省でいつも年金の数理計算ばかりしていらっしゃる方も、恐らくこれに近い生活をしていらっしゃるんじゃないかというふうに思うわけであります。その上に、病気になればどうしよう、介護や看護の問題が起きたらどうしよう、要するに、さまざまな心配事がたくさんあって、結果的に、何とかしなければならないというので、日本人は働く、働け働けということに尽きてくるんじゃないかなというふうに思うわけです。  そうしますと、例えば、私はボランティア活動などをもっと活発にしなければいけないと思って、またそういうこともやってまいりましたけれども、こういうふうにして二千万円足りない。こうなると、ボランティアなんてやっている暇がないんですね。できるだけ元気なうちは働いて、そしてこの二千万円を埋めなければいけない、こういうメッセージがこのライフプランから聞こえてくるわけですが、この公的年金の総額であるとか、あるいは総務庁の家計調査などを見て、これは何かぜいたく過ぎるケースであるのかどうか、その辺の感想を年金局長、お聞きいたしたいと思います。
  241. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 このケースを見させていただきますと、二人で月二十八万円の生活をされるということでございますから、恐らく平均的な家庭であるなというふうな感じがいたしているわけでございます。  御承知のとおり、年金制度は、長い老後を生活保障する制度でございますけれども老後生活の全部を賄うというものではないわけでございます。ただ、かなりの長い期間をまじめにこつこつ勤め上げますと、老後はそれだけでも大体つましい生活は送れるということでございますけれども、決してぜいたくができるような金額には大部分の人はならないわけでございまして、現在の年金の水準は、現役男子の平均標準報酬の六八%、それから可処分所得の八〇%ぐらいに達しているわけでございまして、現役の労働者に比較しますと、かなり高い水準にはなっているんだと思いますけれども、しかし、絶対額がそれでぜいたくできるというほどにはなっていないわけでございまして、私ども、総体的に考えれば妥当な水準ではないのかな、こんなような感じを持っているわけでございます。  したがいまして、もし二千万円足りないとなりますれば、これはやはりある程度は自助努力で埋めていただかなければいかぬ、こういうふうに思っている次第でございます。
  242. 土肥隆一

    ○土肥委員 平均的サラリーマンの実像だろうというふうにおっしゃって、しかしぜいたくはできない。私は、これを見て、ぜいたくをしているとはちっとも思わないわけです。  もう一つつけ加えますと、自営業者などの場合は結局基礎年金だけでございますから、自営業の夫婦の場合は総計で四千三百五十八万円足りない。この厚生年金などとの差を挙げますと、その倍くらいになるわけです。  今、じゃ、年金というのはどういうものか。老後の生活の何割ぐらいを支えるのか。今数字をおっしゃいましたけれども、六八%であるとかというふうにおっしゃいました。案外この辺ははっきりと知らされていない面がございまして、あるいは国民がそれを積極的に知ろうとしないという面があるわけでありまして、それで、例えば介護や看護の問題も全く自分の手元にない、そういうサービスがやってこない、あるいは福祉施設に入ろうと思っても、なかなかそれは入れないようだということで、どういうふうにして自分の老後を守ろうかということを考えるときに、当面お金で守ろうというのは当然の考えだと思うのであります。  じゃ、二千万円あるいは自営業者四千万円、これをどうやってためるのかということになるわけでありまして、私は長年福祉をやっておりますけれども、これからの福祉というのは、行政サービスとしての措置の範囲内で受けるサービスもございましょう。しかしながら、もう膨大な福祉ニーズが、そしてまた多様な福祉ニーズが生まれてまいります今日では、やはりそれは自分のお金を使って福祉を手に入れるという部分がかなりふえてくるわけであります、もちろん、措置施設でも費用徴収というのがございますし、あるいはホームヘルパーを送ってもらっても、基本的な部分では費用徴収というものがあるわけでございます。  そういう年金だけで追っかけると、結局二千万円足りない、あとは自助努力だということをはっきりとおっしゃっていただきたい、このように思うんです。そうしないと国民は、じゃ、足りない二千万円をお金でためるのか、それともあるいは福祉と言われる分野で自分はどういうサービスが得られるのかということも考えられぬでしょうし、何しろ日本の、日本人の貯蓄率というのは大変なものでございまして、厚生省から出していただきました統計によりますと、六十歳から六十四歳の方が一番お金をためていらっしゃるんですね。この統計によりますと、二千四百万円以上ためていらっしゃる。そうすると、結局二千万円は貯蓄で用意していらっしゃるのかな、こういうふうにも私は思ってみたりいたします。これは総務庁の統計局が出した貯蓄動向調査の平成四年の報告でございます。  それから民間の生保、損保のいろんな、特に生保の場合の個人年金がございますけれども、この同じセンターから資料をいただきましたが、大体、全世帯の二七%が個人年金に加入していらっしゃる。生保文化センターの一番近い数字でいきますと、一千二百八十六万件、そして七十七兆三千七百八十二億円、これが今個人年金をかけていらっしゃる額でございます。すさまじいいわば自己防衛といいましょうか、国民の自己防衛の実態が見えてくるわけです。郵政省の関係でいえば、年金保険の掛金が出ておりますけれども、郵貯は、年金と保険が一緒になりまして統合されたわけでありますけれども、それだけでも五十六兆四千六百八十四億円の額が、平成二年度ですけれども出ておりました。  私は、年金を論じながら、一体これはどういう世相をあらわすんだろうか、どういう世の中なんだろうということを思うわけであります。国民は、将来の老後の不安を感じてせっせと貯金に励み、個人年金にいそしんでいる。そうすると、私の感想でございますけれども、やや皮肉っぽく申しますと、公的年金というのは、六十歳以降の国民の生活が不安に満ちている、しかしそのうちの大体三分の二ぐらいは年金で見ましょう、しかし、この世相というものは、あるいは世の中の経済状態というのはよくもなったり悪くもなったりするから、そしてまた自由競争の社会ですから、雇用を六十歳で確保しろ、六十五歳まで確保しろといったって、それはなかなか無理よ、それで、心身ともに疲れた人は引退かパートで補いなさい、そうした中で、必要生活費の三分の二程度は公的年金で見ましょうよ、残りは自己責任でやりなさい。  私は、こういうふうに考えますと、やはり年金とそれから福祉がリンクしない限り、日本の国民というのはとにかく貯蓄に励んで、とにかく老後をお金でカバーしようとする。せめてできるのはお金だけだというふうな世相に見えて仕方がないのであります。  さあ、そうした中で厚生省は、今まで公的年金が大体老後の生活費の三分の二程度で、そして平均的サラリーマンでも二千万は足りないといったような、そういうPRを今までなさったことがあるのでしょうか。
  243. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 老後生活の必要性というのは、まさに個々人で大変異なろうかと思うわけでございますし、その能力によって使う金というのも当然変わってくるのだと思います。  最低生活はかなり上回っている水準の生活をされている場合には、年金プラス自分の実力といいますか、今までのように貯金とか個人年金とか、こういうものがあればかなり高い生活をするでしょうし、そうでなければかなりつましい生活をする、こういうふうなことになろうかと思うわけでございまして、年金額がその中でふえていけばまた生活水準も上がる、こんなような循環になっているのではないかなというふうに考えているわけでございまして、老後生活に必要と感じる額を基準にいたしまして公的年金の水準を決めるというのは適切ではないというふうに考えているわけでございまして、公的年金は言うまでもなく現役世代負担で賄われでいるわけでございますので、その収入とのバランスというのは非常に考えなければいけないポイントだというふうに考えているわけでございます。  したがいまして、老後を豊かな生活にしたい、こういう選択をしたいという方は、やはりある程度の準備というのは当然必要になってくるのではないかなというふうに思っております。
  244. 土肥隆一

    ○土肥委員 ですから、それを何か国民の皆さんは、どうも老後は不安だけれども公的年金もなくなるんじゃないかというふうなことを若い人たちも言うというふうなことでございまして、それから、掛けた分が全部返ってくるのかというふうな、そういう損得論もあるわけでございまして、やはりこれは私は、情報公開なんということを言わなくても、率直に公的年金が描いている老後の生活像というものを厚生省がはっきりおっしゃって、そしてこれ以上は無理ですよと言わないと、要するに、自助努力にいたしましても個人個人が走ってしまうということでございまして、そういうふうなPRをちゃんとやるべきだというふうに思います。  時間がございませんので、最後に――もうちょっとありますね。それではもう少し聞かせていただきます。  したがいまして、自分たちが引退するころにはもう年金はつかないんじゃないかというふうなことを、損得論が出てまいりますが、それは一体どういうところから出ていると局長はお考えでしょうか。
  245. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 よく私ども聞きますのは、やはり大変な高齢社会になりまして、自分たちの負担というのが非常に重くなってくる、それで将来その負担に耐えられるであろうか、こういうふうな不安感というのが大きな要素ではないかというふうに考えているわけでございまして、やはり年金制度を永続するためには世代間のバランス、これは非常に重要な要素であると思うわけでございますし、特に高齢化が急速な勢いで進む、こういう社会においてはその世代間のバランス、これを図ることが一番肝要な点であろうというふうに思っております。
  246. 土肥隆一

    ○土肥委員 ですから、高齢化社会が急速に進んで、四人に一人がお年寄りで、若い人に大変な負担がくる、子供の数が少ない。要するに、出入りがバランスがとれなくなって、結局年金制度はつぶれてしまうのではないかというふうなことなど、結局、私は、きちっとした情報が何か的確に伝わっていないと。ですから、企業などでも、就職した若手のサラリーマンの皆さんにはすぐに、人生設計と言わなくても、年金あるいは老後の暮らしなどについて早々に企業の中でも勉強させてもらうような、教育をするような、そういう部分が必要ではないかというふうに思っております。  さて、厚生年金における拠出と給付関係でございますけれども、公的年金はなくなってしまうというようなことはないということは理解できるわけでありますけれども、しかし、だんだん倍率といいましょうか、保険料給付の倍率が下がってまいりまして、そして限りなく一に近づいていくわけです。今五十五歳の人、一九三九年生まれですと六・六倍の給付を受けます、保険料に比べて。ところが、今二十の人は二・二倍、こういうふうに厚生省の統計を持っておりますが、限りなくこれは一に近づいていくわけです。  つまり、掛けた分だけは返ってくるだろうということでありますが、今回の改定で見ますと、保険料率を五年ごとに二・五%上げていくというわけです。ピーク時、二九・五%まで上げますよ、以後四十年は横ばいですと。どうも私はその数字を見ておりますと、この保険、公的年金財政的に行き詰まったら保険料を上げる、あるいは給付をおくらせる、あるいは極端な場合には減額もするというふうに聞こえてならないわけですね。  どうでしょうか。そんな公的年金の経営、運営であるならばだれでもできるわけでありまして、一体この二九・五%というのはどういう根拠で、そしてなぜ早期に引き上げなければならないのか、あるいは当初二十五年だけの経済成長が見込めて、その後の四十年はもうそれ以上年金保険料を上げないわけでありますから、成長はとまってしまうというようなふうにも見えるのですけれども、その辺の御説明をいただきたいと思います。
  247. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 先ほど来申し上げておりますけれども、最終保険料率を三〇%を超えない、こういうふうなことでこの改正案を取りまとめたわけでございまして、安定的な財政運営を行いますためには、人口の高齢化による進展に伴いまして適切に保険料を段階的に引き上げる必要があるわけでございまして、前回の改正のときには二・二%のアップでお願いをしたわけでございまして、今回は二・五%で上げさせていただいているわけでございます。  なぜに今二・二を二・五に上げたかということでございますけれども、二・二のペースで上げる場合と二・五で上げるベースですと、最終保険料卒に直しまして二%程度差が出てくるわけでございます。したがいまして二九・五と、まあ最終的には二九・六ということでございますけれども、三〇%以内におさめるためにはやはり上げ幅を見直しまして急速に上げていく必要がある、こういうふうに考えたわけでございまして、今すぐ必要な最終保険料率に近い数字に引き上げますと、当然のことながらこの二九・六というのはがたっと下がってくる、こういうふうな関係にあるわけでございます。早目に上げれば、その積み立てられた利子によって次の保険料を軽減できる、こういう関係にあるわけでございまして、決して二〇二〇年になりますと経済がとまる、こういうことを想定しているわけではございません。
  248. 土肥隆一

    ○土肥委員 早目に上げてということは、今のうちに、今まだ経済が、まだまだ高齢化率も低いうちに上げて、ため込んでおこうという考えですね。そうですね。わかりました。相当な見通しでやっていらっしゃるんだと思いますので、この部分については私は異論がございますけれども、一応受けとめておきたいというふうに思います。  さて、この公的年金はいつも積み立ての度合いについて論議がされるわけです。もう既に我が国の公的年金というのは積立方式から限りなく賦課方式に近づいているというふうに認識するわけでございまして、もう一・〇なんという時代になりましたら当然そうなるだろうと思うのですが、一体この給付支出の何年分を見積もったら、積み立てたら年金財政が安定するのか。今日百兆円を超える額があるというわけですが、一体これはどういう理論的な根拠を持った数字なのか、あるいは何年分を積み立てたらいいとお考えなのか、教えていただきたいと思います。
  249. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 先ほど申し上げましたように、積立金は、それが積み上がりますとその利子収入によりまして将来の年金保険料率を下げる効果があるわけでございまして、現在では、平成七年の見込みでは給付費に対しまして五・七年分の積み立て度合いになってきているわけでございまして、私ども財政計算をするときには、高齢化ということが進んでおりますので、毎年の収支計算でマイナスは出さない、こういうふうなことで、しかも二・五%という同じ率で五年ごとに上げていく、こんなようなことで財政見通しをつくるわけでございます。  そういうことで、先ほどの三〇%を上回らない、こういうふうなことで、二・五%ずつ上げていきますと、結果といたしまして二〇二五年に三・一倍の積み立て度合いになるわけでございまして、定常状態に成熟化が進みまして高齢化というのもピークを割るというときには、やはり二カ月ぐらいの程度の積立金をもって保険料の、何といいますか軽減と、経済変動によってどうにもにっちもさっちもいかないような事態に備えて、それの予備の金だというふうなことで運営していくのではないのかな、こういうふうな感じを持っているわけでございまして、これも理論的に出てくるというものではございません。
  250. 土肥隆一

    ○土肥委員 そうすると、今は七年分だけれども、最終的には二カ月分ぐらいの準備金で転がしていくという時代が二〇二五年ごろに来るということですね。
  251. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 二〇二五年は結果的に、先ほど申し上げましたが、三・一年分でございまして、これは参考推定でございますけれども、非常に先の二〇六〇年ぐらいになりますと、二年分程度ということになるわけでございます。(土肥委員「二年分程度ですね」と呼ぶ)はい。
  252. 土肥隆一

    ○土肥委員 ありがとうございました。  もう大臣、最後でございますが、私は、年金だけで追っかけていたら二千万円足りないということですから、これを、国民の皆さんにもっと豊かな生活、現役世代でもそうですが、老後ももう少しゆとりのある生活をしてもらおうと思えば、やっぱり福祉的な部分でカバーしないと、そしてそれが目に見えてくるようにならないと、お金だけの話じゃないと思うのですね。  そういう意味で、今回年金法の改正をやっておりますが、同時に新ゴールドプランなど出ておりますが、どっちを先にするかというようなことは非常に難しい話ですけれども、両々相まって初めて国民の生活が安定するということで、私は福祉がもっともっと充実されることを願ってやまないわけでありますが、その辺のところを大臣の所信、お考えをお聞きいたします。
  253. 井出正一

    井出国務大臣 先生のおっしゃること、私も同感であります。  したがいまして、この新ゴールドプランの目指すところも、年金は、今御論議いただいておるようないろいろな難しい問題、これから解決していかなくてはならぬ問題ももちろんありますが、年金、医療は日本の福祉の中では介護等の分野に比べればかなり世界的にも高い段階に来ております。したがいまして、今後は、もちろんそちらも大事にしながら進めていかなくてはなりませんが、特に介護を中心とした福祉の方へより力を注いでいく必要がある、こう考えております。
  254. 土肥隆一

    ○土肥委員 ありがとうございました。終わります。
  255. 岩垂寿喜男

    岩垂委員長 五島正規君。
  256. 五島正規

    ○五島委員 社会党の五島でございます。  まず大臣にお伺いしたいと思うわけでございますが、高齢社会の問題というのはこれまで高齢福祉の問題ということを中心にしていろいろと厚生行政の中で議論されてきたわけでございますが、実は高齢社会の問題というのは福祉行政あるいは厚生省行政の問題だけで論じられる内容ではないというふうに考えるわけでございます。  と申しますのは、確かに六十五歳以上人口が全人口の四分の一を占めるという状態になることは間違いないわけでございますが、その六十五歳の人の健康度等々というものは年々変わってくるわけでございまして、二十年前と現在とではいわゆる前期高齢者と言われる方々の健康度というのは随分変わってまいりました。  また一方、こういうふうに人口の四分の一を高齢者が占めるという状態になってきますと、これまで日本が整備してまいりました社会資本整備というものがこのままでいいかどうかというふうな問題もございます。また、産業のあり方や就労のあり方、そういうふうなものをどのように変えていくか、そうした総合的な日本の構造改革のようなものがこの高齢社会というものは必要になってくるというふうに考えるわけでございます。  かつてゴールドプランをおつくりになったときは閣議了承という形でその問題について行われたわけでございますが、これからの急激な高齢社会が本格的に迫ってくるという状態の中では、それぞれ労働行政においてはどうするのか、産業行政においてはどうするのか、あるいは輸送なんかにおいてはどうするのか、あるいはリタイアされた方々の生きがい教育といったようなものにおいてはどうするのか、そういうふうなものがそれぞれの行政の中において生かされてくる、あるいは新たに検討される。それも短期ではなく十五年、二十年のタイムスパンでもってどのような高齢社会を日本はつくっていくのか、そういう大がかりなプランが各省庁にまたがってつくられる必要があるのではないか。年金の問題もその中において検討しなければいけない重要な一つではないかと考えるわけでございますが、まずそのあたりについて大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  257. 井出正一

    井出国務大臣 確かに先生のおっしゃるとおり、大変な、また欧米の先進諸国も今まで経験したことのないようなスピードで高齢化社会が到来してくるわけでございますから、まさに厚生省だけで、あるいはこの前のゴールドプランのときは三省合意でしたけれども、というよりは、もう内閣を挙げてというか、あるいは国を挙げて取り組まなくてはならぬ問題だと考えております。
  258. 五島正規

    ○五島委員 そこで、きょうは労働省及び建設省の方にもおいでをいただいていると思うのですが、この年金問題につきましても、年金給付を基本的に六十五歳に持っていく、言いかえれば、就労の形態を六十五歳ぐらいまで元気であるから働いていただきたいということが基本であるだろうと思います。  そうだといたしますと、現在の高齢者雇用の実態というのはようやく六十歳定年が実現しつつあるという実態でございますし、一方、高齢者の再就職というのは極めて厳しいという状況もあるわけでございます。労働省の方として、この高齢者の就労というものについて、長期的にどのようにしようとしておられるのか。そこのところが明確でないと、年金と就労とのギャップの中で、国民が不安を持つことはやはり当然だろうと思います。  あわせまして、高齢時代になってまいりまして非常にコストがかかってくる問題としては、やはり住宅の問題と介護の問題だろうというふうに考えます。  介護の問題につきましては、これから当委員会においても議論していかなければならない問題でございますが、これまで在宅で高齢者方々がお過ごしいただくのについて、厚生行政の中においては、例えばケアハウスを十万戸つくっていくといったようなプランがございましたが、そういう形では追いつかないだろう。そういう意味で、建設省の方には、今後、いわゆる高齢者住宅というものをどのような考えでどのぐらいの勢いでおつくりになる計画があるのか、お示しをいただきたいと思います。
  259. 太田俊明

    太田説明員 先生指摘のように、急速な高齢化の進展に対応しまして、これからの我が国経済社会の活力を維持していくために、また高齢者方々のニーズというものも踏まえまして、私どもとしましては、二十一世紀初頭までに、希望すれば現役として働けるような社会、こういう社会をつくっていくことが極めて重要ではないかと考えております。  このために、労働省としましては、改正されました高年齢雇用安定法に基づきまして、六十歳定年制を基盤とする企業における六十五歳までの継続雇用の推進、あるいはニーズも多様化しておりますので、多様な形態による雇用就業の促進、さらには早い段階からの準備ということで、在職中の中高年齢者に対する職業生活の設計のための助言等高齢期の雇用就業に対する援助、こういった点に重点を置いて今後、施策を推進していくこととしております。  また、これとあわせて、改正雇用保険法によります高年齢雇用継続給付制度の実施、こういうことを通じまして高齢者雇用継続を援助、促進することとしております。  先生指摘のとおり、高齢者雇用失業情勢は大変厳しい状況があるわけでございますけれども、私ども、こういう施策を通じまして、二十一世紀初頭までに、希望すれば六十五歳まで現役として働ける社会、これを実現するために全力で取り組んでまいりたいと考えております。
  260. 那珂正

    ○那珂説明員 建設省におきましては、住宅政策の一環といたしまして、公営住宅、公団住宅等の公共賃貸住宅を活用いたしまして、高齢者方々に優先的に入居のあっせんをする等の措置を講じまして、高齢者方々の入居の安定をまず第一に考えているところでございます。  特に、福祉政策と連携しつつ、高齢者方々の居住の安定を図るため、高齢者の生活に配慮いたしました設計、設備、仕様の公営住宅等の公共賃貸住宅を供給いたしまして、あわせて、ライフサポート・アドバイザーと申しておりますが生活援助員による日常の安否の確認、緊急時の連絡、あるいは日常の生活相談等のサービスの提供を行うシルバーハウジング・プロジェクトを強力に実施しているところでございます。この制度により、平成六年三月末までに約四千四百戸の事業計画が策定されまして、四十五団地、約一千戸が管理開始されているところでございます。  今後とも、福祉政策との連携を図りつつ当プロジェクトの推進に努めてまいりたいと存じます。
  261. 五島正規

    ○五島委員 労働省の方も建設省の方も、高齢社会が到来する中において何をしなければいけないかという問題意識はおありなんだなということはわかったわけでございますが、今のお話を聞いてどれだけの国民が、では二十一世紀初頭までには六十五歳まで働ける、そういう間違いない雇用政策が実現するというふうに信頼をするか、これは与党の立場として甚だ寂しい限りではございますが、それが実態だと思うわけです。  そういう意味において、やはり綿密な具体的プログラムを持った雇用政策の樹立をぜひ労働省にはお願いしておきたいというふうに思いますし、また、建設省の方に対しても、単に公営住宅といったような住宅だけでなくて、いわゆる民間の住宅の中においても高齢時代になって住んでいけるような住宅建設に向けた積極的な政策誘導をしていただきたい。  とりわけ、非常に人口の都市への集中化が進んできた中で高齢化を迎える方々が多うございます。徘遊性の痴呆症の問題を考えた場合に、現在都会でリタイアされた方々が、ではそこから生まれ故郷の地方へ拡散していって老後を過ごすということは、想定はできたとしても、現実にはそういうことをしていった場合には徘遊性痴呆症の患者が大変ふえるだろうという心配も多くの指摘があるところでございまして、そうなりますと、大都市等々において本当に高齢者の住宅問題をどのような形でつくっていけるのかということについて、真剣に具体的な御検討をお願いしたいというふうに思います。本日は、時間の関係がございますので、この点については要望ということで終わらせていただきます。  そういう状況の中において、高齢時代の生計の極めて重要な部分を占めます年金問題を審議をしているわけでございますが、この年金問題につきまして、基礎年金という部分とそれから報酬比例の部分と二つに分かれているわけでございます。これはいずれも公的年金でございますから、いわゆる報酬比例の部分につきましても、いわゆる職域年金につきましても上限が決められているために、結果として支払う年金料も上限が設けられているという形態がございます。しかし、そこの部分については、一定の積み立てた額によって年金額が保障されるというふうに形の上ではなっているわけでございます。そのことによって基礎年金がナショナルミニマム部分、そうでないところが年金の経理に応じた形で運営される部分というふうに割り切った議論があるわけでございますが、この点につきまして、二つの疑問が生まれてまいります。  基礎年金部分がナショナルミニマムの部分として存在するとするならば、このナショナルミニマムとして存在するこういう基礎年金部分というものに所得に応じた応能負担の原則が働いていないということはなぜであるのかということが一点でございます。  もう一点、いわゆる基礎部分以外の報酬比例の部分につきまして、確かに支払いが多かった人がより多くの年金料を受け取れる、その点については比例しているように見えるわけでございますが、先ほど来多くの同僚議員が指摘しておりますように、現在の年金というのは、現在の現役が我々の先輩を支えるというシステムで運営されているわけでございまして、決して現在我々が掛けている年金料を我々が受け取るというシステムではない。そうだとしますと、現在我々が掛けている年金に対してどれだけの比率でもってその年金が返ってくるのかということが定数的に保障されていないということであれば、実は、本当はこれはいわゆる報酬比例ということは言えないのではないか。  この二点、年金の基本的な点について疑問に思うわけでございますが、いかがでございましょうか。
  262. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 基礎年金関係で、なぜ定額負担になっているのかということでございます。  これは国民年金の流れをくむわけでございまして、自営業者、農民の方が大変入られているわけでございまして、その他いろいろな職種の方がいらっしゃるわけでございます。この方々所得把握さえもかなり難しい面もあるわけでございまして、また、所得税を払っている方というのも二割から三割しかいないしというふうなこともございまして、定額の拠出で定額の給付という形になっているわけでございます。どうしても納められない人については、これは免除の措置を講じているということでございます。  それから、報酬比例の関係で、世代間扶養給付負担という関係が保障されていないではないかということでございます。  確かに報酬比例部分につきましても世代間扶養考え方をとっているわけでございますが、ただ、もらえる年金額の計算に当たりましては、過去の貢献を反映させるということになってございますので、過去に報酬が高くて保険料も高いという方につきましては、これは年金額に反映するという形で計算する、その結果、全体については世代間扶養運営されている、こういうふうな関係になっていると考えております。
  263. 五島正規

    ○五島委員 私は、正直言ってそれでは納得をされないと思うのですね。ナショナルミニマムとして設定されている部分について、応能負担の原則が働いていない。  それについては、例えば国民年金の加入者の場合に、大きな企業経営者が払う年金料、あるいは非常に零細なお店、あるいは農業、高知なんかは二反、三反の農家がたくさんあるわけですが、農業の方々が御負担になる年金料も同一である。そういうふうなシステムの中においてこの国民年金というものが運営され、そしてそれがナショナルミニマムだということになりますと、これはどう考えても、税で運営されるよりもはるかに逆進性があるという指摘をせざるを得ないわけでございます。  そういうことがあるからではないかと思うわけですが、厚生省の方でお出しいただきました資料を見させていただきましても、例えば国民年金につきましては、現在、平成七年度のベースで一万一千七百円の月額の保険料である。これが平成二十七年、二〇一五年になると二万一千七百円になる。一方、いわゆる拠出金として基礎年金を納めているサラリーマンの場合、平成七年度で九千六百五十円である。ところが、平成二十七年、二〇一五年には二万九百四十四円である、こういうふうになっています。  ところが、先ほど来近藤局長がよく例をお示しになっております平成三十七年、すなわち二〇二五年、ピークの、最も頂点になると考えられる時期でございますが、この二〇一五年から二〇二五年の十年間というのは、国民年金は全部二万一千七百円で、それ以後ずっと上げないという前提で試算をしておられる。ところが拠出金につきましては、二〇一五年で本人の保険料、国費を除きました月額の負担が二万九百四十四円であったのが、二〇二五年には二万二千六百十七円、国民年金よりも上回っていく、あと二〇六〇年までずっと上がっていく。これはもちろん平成六年度の価格ベースで計算しておりますが、そういうふうになっている。  なぜ国民年金だけは二〇一五年でもって年金料のアップというものはとめてしまう、そして、それに対する基礎年金への拠出金額だけはずっとふえていくというふうな方向考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
  264. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 国民年金関係でございますけれども、二〇一五年から二万一千七百円で、二〇二五年になりましても二万一千七百円ということでございますが、これは厚生年金で言っております二九・六という最終保険料率に相当するような金額に当たるわけでございまして、この後は、もちろんこれは名目の、名目ではございませんで現在の価格でございますけれども、この金額どこれの利子によって、あとはほかに大きな変動要因がなければこれで定常状態になる、こういうふうなことになっているわけでございます。  それから、保険料の相当額ということで厚生年金が基礎年金の方にお支払いする額というのはどんどん上がっているではないか、こういう御指摘でございますけれども、これは三分の二相当額は一人頭の金額になりますので、この金額は、基礎年金にお支払いする金額は厚生年金の場合も国民年金の場合も同額であるわけでございまして、二万一千七百円しか保険料は徴収いたしませんが、それの積立金の利子収入をプラスいたしまして、二〇二五年、二万二千六百十七円をお支払いする、こういう形になっておりますので、この関係は厚生年金国民年金も差はない、一人頭の額という点では差がないということに相なっておるわけでございます。
  265. 五島正規

    ○五島委員 それでは、二〇二五年のときの国民年金負担額は二万一千七百円、間違いないですね。そのときの基礎年金の拠出、これの労働者の頭数で割った、要するに一人当たりの負担額、これは労使でしょうが、負担額が二万二千六百十七円ですね。  一方、二〇一五年の段階では、国民年金はやはり二万一千七百円。ところが、そのときの厚生年金に加入しておられる方の一人当たりの負担は二万九百四十四円ですね。これは数字は間違いないですね、おたくが出されたものですから。ということは、一人当たりの負担が二千円弱この間にふえることは間違いないわけでしょう。
  266. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 先生が御指摘されている数字は間違いございませんが、これと同額を国民年金の被保険者は基礎年金として支出しているわけでございます。頭割りの額としては同額ということでございまして、足りない部分につきましては過去の積立金の利子収入を使っているということで、余ればもちろん積立金に回っている、こういう関係になっているわけでございます。
  267. 五島正規

    ○五島委員 だから、その基礎年金が本当にナショナルミニマムかと言っているわけでございます。厚生年金の加入者、これは自分の親というよりも世代としての問題ですから、現役労働者が減ってきて、そしてOBの、かつての勤労者の数がふえてくれば、今おっしゃったように厚生年金負担者は過去勤労者であった人の基礎年金を支える、そして国民年金の加入者は過去の国民年金の加入者であった人を支えるという形で一人頭で計算してやっていくというような形では、これは現役労働者の数が減っできますと極めてそういう現役の労働者負担が集中してくるということになるのは当然でございます。そういうふうな矛盾をどのような形で解消するかということが、やはり年金改革の中で一つ考えられないといけない問題だろうと思います。  ある学者は、所得税はかなり累進的だ、課税最低限がある、ところが社会保険料は逆進的だ、なぜかというと、料率一本で課税最低限がなくしかも標準報酬に上限があり、ある一定まで達すると頭打ちになってしまうというふうな指摘がございまして、現実に、負担が三〇%になったときに所得の違いによって社会保険料負担がどう変わってくるかという数字を出して示しています。そうなりますと、所得税の累進性までが消えてしまう、トータルな負担の中に消えてしまうというふうなことまで数字として出ているわけでございまして、現在の年金負担というものは、そういう意味において極めて逆進性がある。  しかも、厚生年金の中だけをとってみても、例えば月収総額で比べた場合に、標準月収方式でございますから年収と比較した場合は必ずしも一致しない。例えば、今回ボーナス一%を費用徴収することになったわけでございますが、ボーナスが年間六カ月出る企業と三カ月出る企業、これは保険料は同一でございます。厚生年金の中においてすら標準月額が一緒であれば同じだ。さらに生涯賃金として退職金の問題まで考えていくとすると、非常にこの格差というものは逆進的に強うございます。こういうふうなものをどのように解消するかという観点がこの年金改正の中において議論がされないといけないというふうに実は考えるわけでございます。  何を言いたいかといえば、これを解消していく唯一の方法は、やはり税の部分でもって賄っていく、その税の部分をふやしていくということによってナショナルミニマムの部分についてはきちっとしていくという方法しかないのではないか、その辺は負担の問題としてそう考えるわけでございますが、いかがですか。
  268. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 年金保険料関係でございますけれども、確かに定額と拠出ということでありますと逆進性があるということは、拠出だけの面で見れば当然あるわけでございますけれども国民年金の場合には免除の方法もございますし、それから厚生年金の場合には、これは所得比例という形になっているわけでございますけれども、その中には定額の部分あるいは基礎年金があるわけでございまして、やはり給付負担とを結びつけて公平かどうかというのを、逆進的かどうかということを考えなければいかぬのかなというふうに思うわけでございますし、租税でやるということになりますと、それに充てるべき租税の財源の性格によりましてこれの逆進性がとかなんとかいうのは決まってくるというものでございまして、恐らく、所得税を財源にするということであれば確かに先生がおっしゃるようなことになろうかと思うわけでございますけれども、その他の財源をどうやって持ってくるか、どういう種類のものによるかということになりますと、結果としてはどうなるかは検証してみなければわからない、こういうふうなことではないのかなというふうに思っております。
  269. 五島正規

    ○五島委員 大変反論したいところでございますが、時間がございませんので、これで終わります。
  270. 岩垂寿喜男

    岩垂委員長 網岡雄君。
  271. 網岡雄

    ○網岡委員 まず最初に御質問申し上げたいわけでございますが、今日本の年金問題を考えますときに、極めて深刻な状況が進行しつつあるわけでございます。それは、今、国の最大の福祉関係におきます課題になっておるところと共通した問題でございますけれども、一方におきましては高齢化が進んでおる、同時に、やがて社会を担う中心的な役割を果たしていただく子供さんが極端に出生率が落ちている、こういう同時進行の形に進行しつつあるわけでございます。  ちなみに、老齢化の一つの目盛りを資料によって調べますと、老年化指数というのがございますが、これは高齢化の一つの指標にもなることでございます。これは、分母に年少人口十五歳以下、そして老年人口は六十五歳以上、こういうことで計算をいたしました指数が一つの目盛りになっているわけでございますが、一九九〇年は六六・三、しかし、これが二〇〇〇年の段階になりますと一一六・〇、そして二〇二五年の段階になりますと、実に驚くことに一七七・四、こういうことになっているわけでございまして、この現象は、もう分母の年少人口が極端に減少していくことによる結果としてあらわれており、分子の老年人口が加速度的にふえている、こういうことの状況でございます。  そして一方、少子化の問題につきましては、合計特殊出生卒でいきますと、一九九一年は一・五三、それから一九九三年は一・四六、こういうことになっておりまして、国連の記述によりますと、合計特殊出生率が二・一を下回った場合にはその国の人口が減少していくという一つの分水嶺になっているわけでございますが、このことから見ますと、我が国人口というのは非常に危険な状態に入りまして、昨年の段階で、一・四六ということで、その分水嶺の二・一をはるかに下回っているという状況でございます。そして、この傾向は九四年も九五年も九六年もこういうことで進んでいくわけでございまして、結論的に申し上げますならば、冒頭申し上げました老年化指数が二〇二五年の段階で一七七・四、そして去年の合計特殊出生卒でいけば一・四六で、さらにこれを下回っていることは間違いない、こういう人口状況に入っておるわけでございます。  この状況を見ましたらもう結論ははっきりしているわけでございますが、年金に手を出す人口はどんどんふえていくけれども、やがて職について現役になっていただく人たちはどんどん減っていく傾向にある、こういうことでございますから、年金財政の将来を展望いたしましたときには、まさにこれは人口問題と同時に年金会計にとっても極めて厳しい状況が進行することは間違いがないところでございます。  したがって、まず第一点にお尋ねを申し上げたい点でございますが、しかし、さりとはいえ、年金の一番基本の部分となります基礎年金というものにつきましては、これはやはり国の責任においてちゃんとやっていかなければならない責任があるわけでございます。そうなりますと、先ほどの人口傾向からいきまして、やはりそれと、年金の支出といいますか、いろんな基準とか程度がどんどん上がっていく傾向にございますから、年金による支出というものは当然上がっていく。  そうすると、結局、両者を考えてみましたときに、基礎年金部分というものほかなり思い切って国が責任を持っていくという、もともとそういう性格のものなんですから、それをやはりきちっとやっていく体制というものを、ここでもう将来を見通して厚生省が近い将来においてどうするかということを、これは本当に腹をくくっていかないと、このままずるずるといって、気がついて何とかするというような問題ではないわけでございますから、この点についてまず厚生省としてどういう見通しをお持ちになっているのか。そして、国の守備範囲と言われる基礎年金部分について、国庫負担率の問題については現在三分の一ではございますが、そういう時点の見通しは、そんなに遠くないわけでございますから、そのことを見通しながら一体国庫負担のあり方というものについてどういう見通しと考えを持っているのか、まずその点をお示しをいただきたいと思うわけでございます。
  272. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 基礎年金の国庫負担率の問題につきましては、これはずっと前から議論をされてきておりますし、本委員会におきましてもかなりの先生方から御質問あるいは御指摘があったわけでございます。  この問題は大変な大きな問題であるわけでございまして、国庫負担で基礎年金を賄うか、あるいは保険料で賄うか、こういう問題でございまして、金額が非常に、兆のオーダーの金額になるわけでございますから、将来保険料で本当に賄っていけるのか、こういう問題というのは確かにあるということは否定しがたい問題だと思っています。ただ、そうかといって、巨額な税をいただけるかという見通しというのははっきり言って全く立たない、こういうふうなのが今の現状だと思っておりますし、私どもは今の段階で現状認識としましては、国庫負担の引き上げを前提にして制度を仕組むというのは危険かな、はっきり申し上げてそれを前提にして、当てにして保険料を設定する、これは危険を冒すおそれが非常に大きい、こういうふうに思っておるわけでございまして、これはないものとしてある程度用意をいたしまして、大きな国民的な論議の末にそういう方向になればこれはまたその場で考えをまとめなきゃいかぬというふうなことで、余り答えにもならないお答えしかできないわけでございますけれども、現段階では見通しがないということで、今後の検討課題ということであるわけでございまして、それもかなり行政上というよりは政治問題ではなかろうかな、こういうふうに認識いたしているわけでございます。
  273. 網岡雄

    ○網岡委員 政府としての苦しい御答弁のところはわかるわけでございますが、しかし待ったなしで事態は迫ってくるわけでございます。それは避けて通れないわけです。  もう一方、私どもが頭の中に入れていかなければなりませんことは、深刻な年金空洞化というものがこれはまだ進んでいるわけですね。厚生省自身の調査によりましても、国民年金なんかでいけば百九十万が未加入だ、こういうふうに言われているわけでございますが、自治労の調査によりますとこれは三百万と言われておるわけでございまして、この数字からいきますと、私は、やはりかなり年金空洞化というものは深刻な状態に入る。それから、前段のことも含めまして、やはり年金の状態というのは非常に深刻な問題である。  したがって、保険料をいたずらに上げていけば、それに比例して空洞化がまた進む、こういうことになるわけでございますから、やはり基礎年金部分に国の責任がはっきり国民の目に見えるように出す、支出をするということになったときに、初めてこれは年金に対する国民の信頼というものが出てくるわけでございますから、空洞化がやはり抜けたり解消する方向に、いい方向に向かったり、そういうことになるわけでございますし、保険料を納める現役組にしますと、このままの状況でいけば三〇%近くと言われているのですが、計算によっては三五%を超えるとも言われておるようでございますが、そういう負担は、これは現実にやってきたとしたら、それこそもう納める人はおらない、少なくなるということは目に見えてわかっているわけでございまして、この辺のところについては、やはり国ができるだけ早い時期にこの年金の基礎年金部分についての国の持つべき責任の問題は定量的にはっきりする時期が来ているというふうに私は思うわけでございますが、これらの点についてもう一度重ねてお尋ねを申し上げます。
  274. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 先ほどの答弁と重なるわけでございますけれども、先ほどは国庫負担保険料関係を申し上げたわけでございまして、保険料が減るというより、ふえるのが鈍化するということだと思いますけれども保険料の上昇が鈍化するということでございますけれども、それをどう評価するかという問題はかなりいろいろな人によって変わってくるのではないかというのが一つございます。  それから、その財源を確保するのが一つの大きな点だと思います。  それから、その財源をもし確保した場合でも、本当に年金に充てるのがいいのか、ほかの介護なり育児対策に充てたらいいのか。今の国の支出を見ますと、一人頭では子供に充てるのよりは老人に充てる方が何倍も多いわけでございまして、さらにそういう傾向を強めるのか、こういうふうな問題もあろうかと思うわけでございまして、社会保障の中での位置づけ、それから全体での位置づけ、これはやはり、かなり国民的論議、年金だけの視点、私が年金局長なのにけしからぬということになろうかと思いますけれども年金オンリーの立場だけでこの税負担の問題を考えるというのは早計がな、それだけで国庫負担の引き上げが期待できるほど現実は甘くないのではないかな、こういうふうな現実認識を私どもは持っているわけでございます。  決して先生のお考えを否定するわけでもございませんし、そういう方向があることは事実でございますし、そういうお考え方が立派な考え方であることも理解はいたしているわけでございますけれども、一方の考え方もあるわけでございまして、私どもの現実認識はどちらかといえば、そちらの方にあるというふうにお考えいただきたいと存じます。
  275. 網岡雄

    ○網岡委員 この問題はこれで最後にいたしますが、今局長が言われましたが、年金だけが福祉のすべてではないということはそのとおりでもあります。しかし、逆にいえば、年金というのは老後における支え、もうこれ以上の支えのものはないのですよ。具体的に月々きちっと決まって来るというのは、これはもう非常にありがたいものですよ。  だから、そういうことを考えますと、これは高齢化社会に向かっていく場合の一つの重要な政策でございますから、ぜひひとつ、私はこの程度にとどめておきますけれども、やはり省としては、こういう客観的な条件ということをきちっと踏まえながら、私どもにもわかるような、そして同時に国民にもわかるような、そういう対策と案というものを早急に示していただきたいと思いますし、特に、一番大事な基礎年金については、人に優しい政治を標傍する我が連立内閣としては、ぜひひとつ目に見えるような、そういうものを早急に立てるように検討していただきたいということを激励を込めて申し上げておきたいというふうに思います。  それでは、二つ目の問題についてお尋ねをいたしますけれども、遺族厚生年金というのがございますが、遺族厚生年金給付基準の不公平があるわけでございますが、その点について具体的にお尋ねをいたしますのでお答えをいただきたいと思います。  受給権者が大それから両親、祖父母の場合、共済年金に比べて著しく不利になっている状況がございます。具体的に申し上げますと、被保険者が死亡した時点で既に五十五歳以上になっている者に限って、六十歳になったら支給するというのが遺族厚生年金の支給基準でございます。これは厚生年金における遺族厚生年金の支給基準でございます。ところが、これに対して、年齢制限が一切なし、そして全員六十歳になったら支給するというのが遺族共済年金の支給基準でございます。  もうこれでおわかりだと思いますが、これは非常に大きな格差があるわけでございます。つまり、遺族厚生年金の場合は、死亡したりした場合には、その両親とか祖父母とか夫といったようなところが五十五歳以上になっていない場合は、六十歳になっても支給ができない、こういうことになっているのに対して、共済年金年齢の制限はない、こういうことでございますから、極めてこれは大きな格差が実はあるのでございます。  共済年金は、昔と違いまして官ばかりではない、農林共済年金もあるのだということは言えますけれども、しかし、その主要の部分はかつての公社であったりというところでございまして、やはり年金の問題を一つ考えても、こういう格差が存在するということは、官に厚く民に薄い、こういう感じを率直に感じざるを得ないのでございます。  したがって、これはぜひひとつ、今すぐというふうに私は申し上げませんけれども、こういう差があるということ、格差があるということは、年金の公平性ということからいって大きな信頼を失うわけでございます。こういうものがあるから年金空洞化も進むのですよ。だから、こういうことをなくして信頼を得させるためにも、ぜひひとつ、これはできるだけ早い時期に是正をするということをやってもらいたいと思いますが、そのお考えはどうでしょうか。
  276. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 厚生年金と共済年金は非常に沿革が違いまして、厚生年金は一般の民間企業のサラリーマンを対象にいたしておりますし、共済年金は公務員とか公企体、こういったもので一定の、ちょっと特殊なものを対象にしている、こういうものであるわけでございまして、かつてはかなりの給付の格差もあったわけでございます。これはいわゆる官民格差ということで、共済年金が厚生年金の方に歩み寄るというふうな形で、今の段階ではほぼ是正されてきたわけでございます。ただ、現在でも、先生が御指摘のような事例がまだ若干残っているわけでございます。  それで、先生の御指摘のような事例でちょっと申し上げますと、遺族年金でございますから、夫とか、それから父母とか祖父母、こういう人たちは、若ければ自分で生活ができるという可能性が非常に大きいわけでございます。五十五歳以上になってから生計の中心者が亡くなられたというときに遺族年金は出しましょう、こういうことになっているわけでございまして、共済年金はその縛りがないということでございますから、私どもとしては、私どもの厚生年金の仕組みの方が正しいのではないか、こういうふうに思っているわけでございます。  今、公的年金の一元化の問題にも取り組んできているわけでございますけれども、こういう給付の問題というものも、やはり不合理なものは合理的なものの方に合わせていくべきじゃないか、こういうふうに思っておりますので、こういった不合理なもの、あるいは事務的に分かれているためにうまくいかないもの、在職老齢年金の問題、こういったような問題もございますので、すぐにはどうかわかりませんけれども、私どもとしては、その方向に向けて努力をしてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  277. 網岡雄

    ○網岡委員 御答弁で大体方向としては理解をいたします。しかし、高いところから低いところに合わせるのではなくて、そこはやはり温情ある処置も含めて、しかし、まあ金もありますからね、その辺は総合的に判断をしながら、やはり大事なことは年金に対する信頼性を得るということで、格差があることは努めてこれはなくするような方向で努力をしていただきたい、こう思います。  それから、二つ目です。  二つ目は、労災保険との併給調整についてのことでございますが、これは民間労働者が業務上の災害に遭った場合、労働者災害補償保険の適用を受けるのが最優先でございます。そのことは同法の目的からいっても当然のことでございまして、ここで案文はありますが読みません。しかるに、厚生年金及び国民年金加入者は、厚生年金国民年金の障害年金や遺族年金給付が優先して、労働者災害補償保険の障害補償年金や遺族補償年金が減額調整の上で併給されていくのでございます。つまり、これは簡単に申し上げますと、厚生年金の場合には厚生年金の貯金箱から給付をする、こういうことでございますから、結局、勤めたときから事故を起こしたときの直近の給料までの全加重平均で計算をされるわけでございます。ところが、労災保険の場合は事故を起こしたときの直近の三カ月、九十日ですね、たしか。それで計算をされるわけですから、積算基礎となる給料は高いのですよ。  そこだけ指摘をしておいて、次の質問に移りますが、一方、三公社の職員や私学、農林年金の共済年金の加入者は、業務上の災害のおった場合は労災保険の方が全額支給、つまり直近のところの給料で計算をされて全額支給を受ける。そして共済年金の方は減額調整の上併給される。これは年金者も得をしますが、同時に共済年金という貯金箱も減額率が減るわけですから、共済年金財政からいくと非常にこれは有利な状況になってくる。ところが、同じ掛金を納めていく厚生年金の場合は、厚生年金で計算をして、調整をする方は労災保険でやる、こういうことでございますから、これはもらう方も低いし、それから厚生年金の貯金箱も余計削られる、こういうことになるわけでございます。  これはもう年金制度からいっても一つの矛盾がございますし、受け取る場合、端的に言って、電信柱に登っていって、一方はNTTの公社で、一方は中部電力の職員だったということで、同じ高さのところで作業をしておってどんと落ちた。全く同じで落ちるということは難しいかもわかりませんが、仮定として同じ傷を負ったとしたら、この計算でいくともらう金額が、同じ事故をやりながら違うわけですよ。こんな不公平なことはないのです。  もう条文は読み上げませんが、労災保険法第一条の規定によりますと、業務上の災害をやった場合はまずその補償というものは労務災害の保険によって補償せよということを明確に規定されているのですよ。この法律に基づいて処理をするというのがやはり原則であると思うのです。したがって、このやり方というのはだれが考えても矛盾があるところでございますから、これは速やかに検討をしていただいて、早い時期に調整をしていただきたいということを考えているわけでございますが、どうでしょうか。
  278. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 労災と年金の場合には、損害賠償の部分と生活保障の部分が重複するということで調整を行ってきているわけでございますけれども、確かに厚生年金と労災の場合には、厚生年金の方が出て労災の方が引っ込む、こういう形になっているわけでございます。これは事務的な問題というのもあるというふうに聞いておりますけれども考え方といたしまして、労災の方は事業主負担だけである、それから厚生年金の方は事業主のほかに本人も出している、本人の出している方を支給すべきである、こういうふうな整理のもとに今のような結論になっているわけでございます。これはなかなか事務上の問題もあり、過去の経緯もございまして、是正するのは非常に難しい問題だというふうに考えているわけでございます。  損得の議論というのはいつでもあるわけでございまして、今回の改正法案におきましては、失業給付、それから高年齢雇用継続給付という労働省の所管されている方からお金が出て、今度は厚生年金の方がおりる、下がるという、こういうふうな関係もあるわけでございまして、御指摘の点、いろいろよく、御趣旨はわかるわけでございますけれども、今後の検討課題にさせていただきたいというふうに考えております。
  279. 網岡雄

    ○網岡委員 一応の御答弁をいただきましたが、あと五分ということでございますので、くどいことは申し上げませんが、これはやはりこういうことは、さっき電信柱に登っていたことの例を挙げましたが、受け取る金額が違うようなことは絶対に直さなければいかぬですよ。したがって、ぜひひとつこれは検討をして、早く是正をするようにしていただきたい。  そして、もう一点だけやりますけれども、今度は累積余剰積立金の運用についてでございます。  これにもやはり格差があって、共済年金の場合はそのおのおのが所有する累積剰余積立金はほぼ完全に自主運用をやっています。大臣、これは聞いておってくださいよ。一方、厚生年金国民年金の累積積立金は、これはくどいことを言いませんが、平成六年の段階で約百兆円、これのほとんどは大蔵省の貯金箱に入って、全部財政投融資ということで使われているというのが実情でございます。わずかに厚生年金の場合では住宅融資が行われているということにすぎないわけでございまして、この運用のあり方は共済年金の自主運用と比較をいたしますともう問題になりません。したがって、原資も百兆円を超えるというところまでたくさん貯金を持っておるわけですから、やはり厚生年金の被保険者に対する、自主運用をする形の中でいろいろな貸付制度をつくって、便宜に応ずるということを思い切ってやっていただきたい。  一例を挙げますと、厚生年金を二十年かけた人、国民年金を二十五年以上かけた人、これらについては最高金額で五百万円程度の貸し付けをする。年数は二十年、二十五年とずっと勤めておるわけですから、未払いなし、ちゃんとあるんだから。そして国民年金は最高金額三百万円ということで、貸し付けの目的というところでは、子女の進学、これは大学に行くときは大変金がかかるんですよ、最近は。三百万円というと大きいと思いますが、かかるのです。子女の結婚、そして医療の介護というところに使うときは、こういう措置をして便宜を図る、こういうことをやることは私は大事なことだというふうに思うわけでございます。どうぞひとつ、そういう点を十分考えられて御答弁をいただきたい。  そして、厚生大臣、四つ質問をいたしました。答弁をお聞きになっていただいたと思いますが、それぞれ問題点を出しましたが、厚生大臣として決意をお聞きをいたしまして、質問を終わります。
  280. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 厚生年金国民年金の積立金は約百兆円になっているわけでございますけれども、大部分財政投融資に協力する。ただ、最近では自主運用事業というのが非常に大きくなっておりまして、さらに特別地方債とかいろいろ還元融資の枠が非常に商うなってございまして、それを全部足しますと、最近では八割から九割はそういう年金関係に使わせてもらっている、こういうふうな状況に相なっているわけでございます。  それから、被保険者への直接の融資という関係では、今までは住宅融資だけだったわけでございますけれども、本年度、この法案にも入ってございますけれども国民公庫の方から指定の教育費につきまして、額は小そうございますが、厚生年金で百万円、国民年金で五十万円、これは限度でございますが、この中で学生の国民年金保険料もお貸しできる、こういうシステムがこの法律が通り次第できることになっております。  さらに、私ども、来年の要求として重点的に要求しておりますのは、在宅ケア対応住宅、これは住宅資金の中で、非常に高齢者で障害を持っていても暮らしやすい住宅の三十代、四十代、五十代からつくっていく、それについての利子を非常に低くする、こういうことでそういう住宅をつくりたい、こういうのを要求いたしておりまして、この辺の充実についても努めてまいりたいというふうに考えております。
  281. 井出正一

    井出国務大臣 大変具体的なお話とまた御提言、勉強になりました。  特にNTTと中部電力の電信柱ですか、その例は大変私にはよくわかったような気もしますが、一方、いろいろな経緯が局長の答弁にもあるようで、なかなか難しさもあるようです。先生の御提案いただいた中から何か取り入れられるものがあるかどうか、また省の方で検討してみたいと思いますし、今後の公的年金制度の一本化の中でもきちっと検討されなければならぬ問題もあろうかと考えております。ありがとうございました。
  282. 網岡雄

    ○網岡委員 終わります。
  283. 岩垂寿喜男

    岩垂委員長 三原朝彦君。
  284. 三原朝彦

    ○三原委員 網岡先生の専門的な、なおかつ微に入り細をうがったような質問の後でアバウトな質問もやりにくいのですけれども、きのうは年金専門家先生方がいらっしゃって、そこで公聴会が開かれました。  私も短い時間ですが質問に立ったわけですが、そこにいらっしゃった先生方も、今度の改正に関しては一様に評価をしていただいて、もちろんそれはパーフェクトじゃないのでしょうけれども、まあ今までよりももっとよいといいますか、年金をさらに安定、充実し、なおかつ高齢化社会を迎えるに当たっても、ぎりぎりの線で支える側と支えられる側との理解のもとにやるには、これはさらに新たなる前進への一歩だということだったのでありまして、私どもも、その点に賛意を表する側としてありがたいお言葉をいただいたなと思っていたわけであります。  年金というのは、年金に頼らないでやっていく人も、少ないパーセンテージですが、世の中にはあるでしょう。ずっと前、私が何か雑誌を読んでいましたら、社会福祉大国のスウェーデンのビョルン・ボルグというテニスの選手は、取られることが余り多過ぎる、税金にしても年金にしても何にしても、取られるものが多過ぎる、私は、自分の面倒は自分自身で見ますから、もう国を出ていきますと言って、あの人ならテニスで一年間で五億、十億はもうけるのでしょう、ですから、人に面倒をかけないかわりに、私も面倒は見なくていいでしょうと言って出ていったという話が書いてありました。  それは極端な例ですから、そんな人が日本に何百万人もいるわけじゃないでしょうけれども、そういう例がたとえ日本にあったとしても、そういうことまでも心配する向きはないのでしょう。しかしながら、逆に、支える側が余りにもつらい思いをし、なおかつ、今度は自分たちが支えられる側になったときに、二十年、三十年先のことを心配しなければいけないようなわけでも、それもまた困ります。  特に、僕らのような団塊の世代に生まれた人間は、こうやって、戦後生まれで、おかげさまで今、年金をもらっている受給者の方々に生み育てていただいて今日この生活があるわけで、支えることに何ら不満も感じないし、やっと恩返しもできるかと自負の念も持つわけですが、半面、少子社会というのが後から来ていまして、僕らがもらうころになると本当に心配する。それに対する準備ということでもあり、今回の改正でもあると一〇〇%私は信じているわけであります。  それにつけても、今度の改正の中で、開始年齢を六十歳から六十五歳に移行しなければならないとか、在職老齢年金関係の問題、雇用保険との調整の関係とか、大きく分けますと、そういう三つの問題があるのでしょうけれども、本来なら私も、余裕があれば、最初は年金二割カットしないで、そのまま上げてもいいじゃないか、そんな気もするのです。  先ほどの質問でもどなたかしていらっしゃいました。それをやるとどれだけ浮くのでしょうねなどということを聞いて、みみっちい質問かなと思ったのですが、しかし、先のことを考える我々とするとそうもいかない。厚生省の人たちが知恵を絞って、少しずつでも削った中で、将来にわたってそのことがまた長く年金を安定するもとでもあるのでしょうが、今言った、ちょっと二割削ったとしてどのくらい、浮くと言うと語弊がありますが、余裕を持たせることができるのでしょうかね。
  285. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 在職老齢年金の二割カットの話かと存じますが、在職老齢年金の二割カットをやめますと、〇・四%最終保険料率が上昇するということになります。     〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕
  286. 三原朝彦

    ○三原委員 払う側が○・四%浮くというわけです。それでも今働いている人が何千万人いるのでしょう。それから考えると、莫大な保険料になることは確かなんです。ですから、我々としては、あるいは払う側というか支える側としては、少しでも安く上げられれば上げたいし、もらう側からすると二割カットされるのはまことによろしくない。連合さんあたりでも、でき得べくんばという、どうせやるならもっと遅くやってくれというような感じで言われるわけですし、とは思いますけれども、その点では長く安定した年金にするための一つの施策であるなら、私は、やはりここはお互いに理解し合ってやらざるを得ぬのじゃないか、そんな気もするわけであります。  年金をするのは、実は自分が働けなくなって、みまかるまでのその間、何とか今まで自分が働いてきたことのためたもので、他人様に迷惑をかけないで、つつましいながらもみずからの生活を楽しんでいこうということであるわけですけれども、先ほどどなたでしたか、土肥先生でしたか、貯金の話からいろいろ説き明かしていって議論もしておられましたけれども、土肥先生のお話をちょっとお伺いしていたら、大体平均二千万くらい持っているんだということをおっしゃったようですが、しかし動産不動産を入れると、今年金を受給しておられる人たちは、どのくらいの資産というのですか、動産不動産をお持ちと政府は把握しておられますか。
  287. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 これはちょっと古い統計でございまして、全国の消費実態調査ということでございますが、六十歳の退職時の平均的な夫婦が保有いたします動産について見ますと、貯蓄について見ますと、夫が六十五歳以上それから妻が六十歳以上の二人世帯は、平均で、平成元年の調査ですが、千六百十二万円の貯蓄をお持ちだそうでございます。さらに、不動産につきましては、六十歳から六十九歳の世帯主を抱える世帯において、平均六千三百七十五万円、七十歳以上の世帯主を有します世帯におきましては、平均八千二百十六万円の宅地資産及び住宅資産を保有している、こういう調査結果があります。
  288. 三原朝彦

    ○三原委員 今示された数字を見て裕福と見るのか、いや、そうでもない、粒々辛苦をして四十年間働いた人の資産としてはそうでもないと見るのか、その見方によってなかなか難しい場面があるのでしょうけれども、しかし、既に動産不動産をそれだけお持ちの方が、まだまだ働いておるのですが、今度は働きながら年金ももらわれる。そうしたら一応三十四万までなる。それから先は、自分で働いて、給料がもっと、多い人はもらえますけれども年金はもうちょっと我慢してくださいね、こういうふうになる。私はそれはまあまあ納得できる線だと思うのですけれども大臣はどう思われますか。大体、今のような資産と動産とあって三十四万、夫婦で、六十から六十五以上の人がもらうとする、それは少ないと思われますか、多いと思われますか。印象はどうですか。
  289. 井出正一

    井出国務大臣 私個人としては、大体田舎の生活が頭に描かれますから、それほどぜいたくするつもりもありませんし、それだけあれば十分だと思っております。
  290. 三原朝彦

    ○三原委員 私も実は、例えば在職老齢年金の三十四万以上の人は、年金はちょっと我慢してくださいというのは、私、今考えて、東京ではちょっとよく知りませんよ、僕は東京の人間じゃないからね。私のふるさとの福岡あたりだと、家があって、貯金がこれくらいある、それでそのくらいのレベルの、働けるとするならば、ましてや年金も入れて三十万近くになるとするならば、私は、まあ子供たちもみんなでき上がっていますし、夫婦二人でのんびりと過ごすには十分な状況じゃないかな、そんな気もするわけであります。  それから考えると、逆にその二割カットの二十万というところは、今与野党問でのいろいろな折衝の項目になっているかとも思いますが、この年金と賃金との併給は、できるならもうちょっと上げるような感じでやることが、安定した生活をする上でも、日ごろ手に入れるお金としてもいいのかなとも僕は思うのですけれども、そこのところはちょっと私も、これから先二〇〇〇年に入る、それからまた二千二、三十年、僕らが一番ピークの、一番年金受給者が多くなるころのことを考えてみたら、そうそう余り拡大、ふやしていくという併給の場面も、どんどん差し上げたいのはこれはやぶさかではないのですけれども、そうもなかなか簡単にいかないのかなと、今皆さんの意見を聞きながら、ディスカッションしながら私自身は思ったりしておるわけであります。  ところで、普通の生活をする上だったら、今のような動産を持ち、不動産を持ち、一定の年金をもらっていいのでしょうけれども、さて、それが病気をする。そうなりますと新たな問題が起こってくるわけで、もちろん七十歳以上ですと老人医療、北九州あたりでは六十五歳から七十歳までは市がまた面倒を見るという形になっていますけれども、その間は何か手だてがあるのか。それとも自分の貯金しておる貯金を崩してやるような生活になるのだろうか。そこのところのイメージはどうお考えでしょうか。
  291. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 六十歳から六十四歳の間に病気でということだと思いますけれども、これは病気の性格によって変わるかと思いますけれども、今回の別個の給付の例外という形で、障害三級以上に該当する、これは病気の方も、例えばがんで非常に長く入院している、もうかなり悪くなった、こういうふうなケースの場合には障害年金が出るケースもあるそうでございます。いろいろなケースで積み上げて基準ができていますので、そうたやすく動くものではないようでございますけれども、そういった例外措置の適用対象というのもあり得るのかなというのが一点でございます。それがもし受けられなければ、先生がおっしゃるように、やはり自助努力ということになるのかな、こういうふうに思っております。  病気の方は、恐らく退職者医療とかそちらの対象にはなるのではないかなというふうに思います。
  292. 三原朝彦

    ○三原委員 私はちょうどその中間のところの人がいつも、一種の犠牲と言うと語弊がありますけれども、光が当たりにくいような感じのところが起こるのじゃないかな。いつも何か、こう制度があると、制度制度の谷間みたいなところがありまして、そこのところが私の心配をするところですけれども、それに対してやはりこれから、もしトラブルがあって、ちょうど病気と認められた、働きにくいから部分年金をもらいますという、もらえればいいですけれども、そうでないぎりぎりのところがまた起きてくるのではないか。そういうときにやはりどうすべきか、どうすればいいのかというようなことは、これから先、改革が起こるときに、やはり考えていっていただきたいなと私は思うわけであります。  厚生省からもらった資料を見ていましたら、税金による基礎年金方式をやっている国がいろいろありまして、それはオーストラリアとかニュージーランドとかカナダとか、そういうところで基礎年金が税方式だということを書いてありましたけれども、そういうところでの、余りにもちょっとこれは参考になるかどうかわかりませんが、こういう国では、厚生省からもらった資料によると、大体日本円にして六、七万円ですね、基礎年金部分でもらうのが。しかし、もちろんそれでは幾ら物価の安い国といっても生活できないんだと思うのですが、では何かそれ以外のところで、やはり向こうでもこっちで言う厚生年金みたいなこととか、あとは個人年金、自分でやっているのかとか、いろいろそういう生活パターンみたいなことはおわかりですか。ちょっとおわかりだったら、類型みたいなものがあれば。
  293. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 先生にお渡しいたしましたケースでは、夫婦で、オーストラリアでは六万二千円少々、それからニュージーランドでは七万三千円少々、カナダの数字では六万円少々ということでございますが、これらは税によって基礎年金のやり方をしているところでございまして、したがって、一定の年齢に到達すれば居住要件だけで定額の年金が出るということで、比較的低いことになっているわけでございますが、現役の賃金に対します割合で示しますと、オーストラリアでは三六・六%程度、それからニュージーランドでは現役で非常に低いせいか五五・二%と非常に高い水準になっております。カナダでは全体の賃金が高いと思いますが二八・九、こういうふうなことになっているわけでございまして、恐らくニュージーランドはこれでかなり生活できるような水準かもわかりませんし、カナダでは到底これでは生活できない、こんなような状況しかわかりませんで、詳しいことは私どもも把握いたしておりません。
  294. 三原朝彦

    ○三原委員 実はこういう年金、税の年金で六万円とか七万円とかもらっている国があってということだったが、日本の感覚からすると、これだけもらったって夫婦では食費ぐらいで終わることなんでしょう。しかし、ニュージーランドあたりだと、これは収入の五割五分を占めるのだったら、ぜいたくしなければ結構生活できるような形でもあるのですね。もちろん国によって生活水準も違うし、生活パターンも違うし、また年金の類型も違うでしょうけれども我が国としてはやはり、あるレベルまでのところは国が結構面倒見ましょう、それから先は、元気なときに世代間扶助で助けておいて、今度自分が年をとったら助けてもらう側になるという、そういうことがやはり一応適合するんでしょうね。  ところで、ニュージーランドあたりでこれだけもらうと、もう税による基礎年金方式だけで生活できるのかと思いますけれども、やはり日本的な年金方式、国が基礎部分を見たり、それとあとは年金保険でやるというミックス型とか、国はほとんど見ないけれども自分でやってちょうだいというような感じのところとか、そういうところがあると思うのですけれども、つまり、それぞれの長短所があるかとも思いますけれども、そこのところをちょっと説明していただけませんか。
  295. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 オーストラリアとかニュージーランドにおきましては、公的な基礎年金だけということでございまして、その他は企業年金とか退職金、こういったもので生活をされているということでございまして、カナダの場合には、基礎年金のほかに、所得がないあるいは所得が少額の者に対しましてはミーンズテストを行いまして、一種の生活保護的な支給があるわけでございまして、そのほかにも公的な所得比例の年金とか職域年金というのもあるそうでございますが、カナダはどちらかといえばイギリスに近いような方式をとっているのではないのかなという感じがいたしておりますし、オーストラリアとかニュージーランドは公的な基礎年金だけで、あとは自助努力でやってほしい、こんなようなことになっているのではなかろうかなと思っております。
  296. 三原朝彦

    ○三原委員 つまり、私が思うのは、企業、特に大企業あたりに勤められている人は、やはりシステムもちゃんと会社の方がやってくれて、そしてまた安定した給料で、年金の場面とか社会保険料とかちゃんとやっていますけれども、そうでないところの範疇に入るような人たちのことを考えると、なかなかそう理想的なことばかり言えない。  ですから、今も私は、ニュージーランドあたりのを見てみて、同じことを繰り返し言いますけれども、生活水準や生活パターンが違いますから一概に言えないけれども、そういう指導もしてもらえるようなちゃんとしたシステムがある企業、大きな企業、しっかりした企業あたりでないところの部分の人たちのことを考えてみると、最終的には、もちろん個人の商店の人は国民年金に入ったりしていますけれども、そういうところの充実というのをさらにやらなきゃいけないのかなと思っています。  もちろん国民年金基金というその上のものもあるのは十分知っていますけれども、なかなかやはり、アリとキリギリスじゃありませんけれども、若いときから、反面では人間というのは、やった方がいいよとこう言ってもやれない。自分で国民年金基金に入っている人が今どのくらいあるか知りませんが、私は自分で実験のつもりで試しに二口かな、入っているのですけれども、なかなかそう簡単にはいかない。  そういう面から見ると、指針とか結論とかいうのを、私はどうしていいのかわかりませんけれども、よりあまねく、年とったときに安定したことをやれるようにするのを、もっと政府の指針みたいなものを、強圧的じゃないのですよね、よりよいサービスみたいな感じての指針あたりをやることは、他の国を見てみても、五割五分ぐらいちゃんともらえるような形になれば、これはかなり安心だと僕は思うのですよね。そこまでいくのはもちろん国民合意の形成によるのでしょうけれども、そんなことを考えたりしておるわけです。  ともかく私たち団塊の世代、今から我々がもらうときに、うつむきかげんに身を細くして、何だかもらうのを済みませんというような感じでもらわなければいけないようになると、楢山節考の話じゃないけれども、そこここにうば捨て山ができるような感じになってもみずからみじめでもありますし、そんなことがないようにするためにこそ個々の見直しかあるのであり、またこれから先の五年後に向けての見直しもあると思うのです。ですから、私は、今回、六十歳から六十五歳にということに関しても、もうむべなるかな、やむを得ない。そのためには、この厚生委員会の場で議論をやっていますけれども、何とかその人たちが健康で働けるような、そういうことを同時にやはりやるべきだ。  二〇〇一年から、例えばそれを始めていくならいくで、必ずこれから先あと六年の間に、まあやっと定年は六十までというのがほとんどのところの企業がなってきましたけれども、それをこれから先あと六年で努力してできるものかどうか。それは厳しいですけれども、何とか六十五までの定年に持っていける。まあ僕らがあと二十年近く、十八年で六十五になりますからね。そのときには六十五まで働いて僕らの世代も年金を安心して、そして後ろめたい気持ちを持たずにもらえるような、そんなことをお互いに知恵を出して考えていかなければいけないし、それこそがお互いの世代間の信頼と公平の意識に基づいた扶助のシステムになると思う次第であります。  そのためにも、私は、我が党から今、井出大臣を出しておるわけですから、一緒になってこの改正にも努力したいと思いますし、頑張っていきたいと思っておるようなわけであります。  最後の質問になりますが、きのうの公聴会で丸尾先生にお聞きした点でありますけれども年金番号をすることによってより明確になるでしょうし、加入している人と加入してない人とか、未払いの人だとか、いろいろなことがより事務的にやりやすくなるでしょうと言ったら、丸尾先生もそのとおりだというお答えをいただきましたけれども、やはり年金というのは若いときであればこそいろいろな意味で、家庭を持たずにいる人ほど余裕があって支えてもらいたいとこちらも思うぐらいですから、そういう知らずに入らなかった人がいてみたり、知っていてもそういうのは若いときは関係ないというような感じの人がたくさんいるようですけれども、そういう面では、みんなが年金に入るような形にするためにもこの年金番号の施行というのは一つの助けになると思いますので、私は、全くこれは瑣末な要請かもわかりませんけれども、この点でも必ず実施していただきたいと思う次第であります。  私の質問はもうこれで終わりますけれども、でき得べくんば、十一月の十一日には老齢福祉年金の期日が来ておるという状況でもあります。その事務的なことからいうと、何とかより早くこれを衆議院を通して参議院に送らないとという状況でもあるようでありますので、みんながお互いに協力し合って、その点で円滑に、妥協するところを見つけてスムーズな年金の法案の通過を心から祈念して、質問にかえさせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  297. 井出正一

    井出国務大臣 三原委員、最後に国民年金の基礎年金番号を早くやれという御質問をいただいたわけでございますが、今鋭意取り組んでおりまして、来年はシステム開発、もうことしから研究に入っておりますが、平成八年度末にはきちっとした形でお出ししたい、こういう状況であります。  それから、年金の今回の改正につきまして、その重要性を御指摘いただきまして、ありがとうごさいました。特に、十一月十一日には、もう支給の日が近づいておるわけでございますが、そんなこともこれあって、きょうは一日十時間という大変長いスケジュールを委員長以下委員先生方にお願いしているところもありまして、これまたお礼を申し上げながら、一日も早い法案の成立を改めてお願いする次第であります。ありがとうございました。
  298. 鈴木俊一

    ○鈴木(俊)委員長代理 岩佐恵美君。
  299. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 先日の審議でも言いましたけれども、引退と年金支給のリンクは社会保障の原則です。諸外国では、午前中の審議でも出ていましたけれども、六十三歳から六十五歳支給が当たり前、そう言われていますけれども定年と退職は継続をしています。ヨーロッパでは、年金の繰り上げ受給や失業手当などによって、労働者は実際には六十五歳よりはるか以前に引退生活に入っています。定年制のあるのは日本だけです。六十歳で強制的に退職を迫られるにもかかわらず、年金の完全支給が六十五歳となる、こういうことについて諸外国では、このことが理解できない、そういう発言があると言われています。  現在の不況下の雇用調整では、高齢者がねらい撃ちをされています。支給開始年齢の引き上げ、これは労働者にとっては本当に大きな犠牲が負わされることになりますし、きのうも、この間の審議でも、そして公聴会のときも申し上げましたけれども、まさに私は労働者の生存権にかかわる重大な問題であるというふうに思います。再度、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  300. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 二十一世紀の活力ある長寿社会、これを築いていくためには、雇用年金の連携を図りたい、私ども労働省と連携をとって雇用政策年金制度の連携を図る、こういうふうなことで今まで環境づくりに努めてきたわけでございまして、高齢者雇用の現状を見ますと、既に定年が六十歳以上の企業というのが予定も含めますと九割以上になってきているわけでございまして、六十歳定年というのはほぼ定着してきているわけでございますし、その後の勤務延長の制度でございますとか再雇用制度、これも七割、高齢者雇用というのはかなり普及しているというふうに考えているわけでございます。  ただ、いろいろな先生の方から御指摘がございますように、今の雇用情勢といいますのは確かに悪い情勢にあるわけでございますけれども、私どもが予定させていただいておりますのは、六十五歳になりますのは二〇一三年という十九年先の話でございますので、二〇〇一年から始まりまして十二年をかけまして六十五歳に段階的に引き上げていく、こういうものでございまして、さらに若年労働者が減ってまいりまして、日本の社会を活力ある社会にするためには、やはり働く意欲と能力のある高齢者につきましては働いていただく、こういうふうな形で来るべき超高齢化社会を乗り切っていく必要がある、こういうふうに考えているわけでございます。
  301. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 これは公聴会でもあるいは質疑の中でもいろいろと一番心配をされている問題なのですね。つまり、六十歳でもうこれ以上働けませんという労働者はいるのですね。本当に過酷な条件の中で働いている労働者、もうこれ以上働けない、だから六十歳でやめたい、だけれども部分年金では暮らしていけない、そういう人の生活をどうしていくのか、休息の権利をどうするのかという問題。  それからさらに、先の話だということですけれども、現在でも六十歳定年制の前に肩たたきでやめさせられる。企業にとって有用な人は、あなたはどうぞいらしてください、六十五歳まで働いてください、あるいは六十五歳以上でも働いてくださいと言われるかもしれないけれども企業にとって有用でないという人は切り捨てられていくわけです。  そういう点から、今度の六十歳の受給年齢を六十五歳に引き上げるという問題、今までなぜなかなかできなかったのか、そういうことを本当に真剣に考えていく必要がある。厚生省は大丈夫です、大丈夫ですと言うのですけれども労働省と相談して何とかしますと言っても、それが現状で何とかなるということがだれも確約できるわけではありませんし、また別に法律的にどうこうするということでもないわけです。  また、逆に言えば定年制を法律で決めている国はないのですね。働きたいと思えば働けるし、働きたくなければやめることができるし、例えばアメリカなどは、年齢による差別も、雇用差別は禁止されている。要するに、何歳でやめなければいけないということはないわけですね。  そういう国もあるわけですから、このような、本当に労働者の権利にかかわるようなそういう改悪はすべきではない、これが私の主張でございます。それに対して大臣のお考えがあれば伺っておきたいと思います。
  302. 井出正一

    井出国務大臣 これからいよいよ欧米も経験したことのない超高齢社会がやってくるわけでございますから、これにきちっと機能できる年金制度を今から安定的なものにしておかなくてはならぬという一つの問題と、それから、高齢化ではありますが、お元気な高齢者がこれからどんどんふえてくるはずですし、またふやさなくてはならぬ、そういう面での対策もまたしていかなければならぬと思います。しかし、そういう中で、やはり介護を必要とするようなお年寄りももちろん発生するわけでございますから、それはまた介護の面で十分な対策を講じていかなくてはならぬ、こう思っております。
  303. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 日本の場合は四十五年掛けると一応六十歳から年金を受けられる。ところが、外国の場合には三十五年掛ければ年金が受けられる。そういうような状況で、掛けるというか働けば受けられるとか、非常に条件が違うのですね。ですから、私は、かなり、日本の年金制度の改悪というのは、諸外国からいっても大変冷たい、厳しいものであるということを指摘をしておきたいと思います。  次に、保険料の引き上げの問題です。  今回の改定で、保険料はまず一六・五%引き上げ、九六年十月からは一七・三五%に引き上げるだけでなく、ボーナス分からも徴収することになっています。また、自営業者、学生などが加入する国民年金保険料も、九五年四月から一万一千七百円とし、毎年五百円引き上げる、将来二万円程度にまで引き上がるわけです。  月収三十万円で年収五百万円のサラリーマンの場合、九六年には毎月の負担増が四千二百円、年間で五万一千円となり、ボーナスの保険料を加えると五万八千円になります。年金保険料だけで年間三十二万六千円の負担となります。将来的にはこういう皆さんが三〇%近くまで負担が上がるということになるわけですけれども、こういう労働者にとって負担の増というのは大変な問題です。  病院給食有料化による負担増だとか、消費税アップだとか、あるいは公共料金の引き上げとか、本当に今こういう年収五百万円というと、子供がいる世代でしょうし、そういう子供さんにかかるお金も大変でしょうし、本当にそういう意味では国民生活が大変になると思います。そうした国民の痛みを大臣がどうお考えになっておられるか、お伺いしたいと思います。
  304. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 今回の改正におきまして保険料率を上げる、しかも今まで二・二%の上げ幅でありましたものを二・五%五年ごとに上げていくということにいたしましたのは、最終保険料率が上がらないようにというふうなことでございまして、今まで先生が御指摘のように六十五歳問題に全く手をつけない、六十歳からずっと出すということになりますと、今の現役の労働者負担というのはさらにふえるということでございまして、今の段階で保険料は上げないで将来になって上げるというわけにもいきません。  そういう面で考えますと、世代間の公平というのを考えますと、現在の現役世代というのもある程度の負担を甘受してもらわざるを得ない。将来の現役世代というのはもっと重い負担をするわけでございますし、給付の水準を高くすれば高くするほどその負担というのは重くなるわけでございますので、そのバランスをいかにとるかというのが非常に大事だというふうに考えているわけでございます。
  305. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 国庫負担を二分の一にすると厚生年金保険料は三、四%下がる、国民年金は七千円下がる、そういう試算もあります。今でも高い保険料をさらに引き上げるとなると、今申し上げたように国民負担は耐えがたいものになります。  今度の改正というのは、六十歳を六十五歳にするとか、あるいは保険料をうんと上げるとか、本当にもう保険に入っている人、そういう人たちに負担をかぶせる、そのことで何とか乗り切ろうという、こういう考え方だと思うのです。  そこのところを国庫負担を二分の一にする、そういうことによってかなり条件が変わってくるわけです。その点について大臣のお考えを伺いたいと思います。
  306. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 負担の問題でございますけれども、国庫負担負担するか保険料負担するかというのは、これまでこの委員会でもさまざまな議論があったわけでございます。先生今おっしゃられました保険に入っていらっしゃる方だけから保険料を上げるということで、これは当たり前のことでございますけれども、もう既に六千九百万人をカバーする年金制度でございまして、税金という形で取りますればその残った方というのは老人と子供だけでございます。  だから先生の言い方をそのまま申し上げれば、老人と子供からもっと取り上げて現役の労働者負担を減らす、こういうふうな主張だというふうに解釈できるわけでございまして、年金制度年金制度としてやはり自助努力でかなりの部分をやっていくべきではなかろうか、こういうふうに思っているわけでございます。
  307. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 前に病院給食のときにも議論になりましたけれども、要するに国のお金の使い方の問題だと思うんです。例えば公共投資に六百三十兆円、十年間、毎年毎年六十三兆円ですね。そういうものをどう考えるかということだってあると思うのです。あるいは私どもが言っているように、もっとメスを入れるべきところはあるわけです、大きく財源で言えば。  だから国のお金を年金のところにちゃんと使うべくやっていけばこれだけ下げられるじゃないかということがあるわけで、そういうことについて政治的にどういうふうに判断をされるのかということを伺ったわけですけれども、答弁がないので、厚生省のお答えを伺っていても仕方がないので、次にいきたいと思います。  きのう公述人の丸尾先生から指摘をされましたけれども、厚生年金の標準報酬の再評価卒の設定方法の変更によって、昭和六十三年度から平成五年度までのネット所得割合の変化、これは○・九九となり、従来方式による再評価が、一・一七が一・一六へと一%引き下げられました。可処分所得スライドになって国民にどのような影響が出るのか、非常にわかりづらいんですね。私もよく聞かれるんです。今までの標準報酬方式で計算したら二〇二五年には一体幾らになるのか、今度可処分方式でやったら幾らになるのか、その差はどのぐらいなのかということを教えてほしい。  ところが、この計算が、何度厚生省に伺っても出ないんですね。何か一五%という、その差は一五%であるだろうなどという数字も何かひとり歩きしているわけですけれども、根拠がないものですから、そこのところを、どの程度の開きになるのか、そういう計算をお示しをいただきたい。
  308. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 可処分スライド方式を導入いたしましたのは、今まで生の賃金のアップによりましてスライドをしてきたわけでございますけれども、この中には説とか保険料が非常にふえていく、こういうことになりますと、現役の手取り収入は減るにもかかわらず、生の賃金のスライドで伸びます受給者の年金の方は上がっていく、こういうふうになるわけでございまして、これを世代間のバランスを図ろうということで是正したいということで、今回の改正をいたしたわけでございます。  それで、この効果はどれほどあるのかということでございますけれども財政効果といたしましては、最終保険料率のベースで二%でございます。したがって、このやり方をやめれば、二%最終保険料率がさらにふえる、こんな関係になるわけでございます。  それから、可処分所得スライドを私どもがやる、年金審議会の方で検討をする、こういう段階で、可処分所得というのは今の家計調査のベースですと八四%程度でございます。したがって、今まで一〇〇でやっていたものを八四でやるのではないか、こういう誤解を招いた節があるわけでございまして、そうではございませんで、これからの可処分所得動向で修正をするということでございますので、今回の例で申し上げますれば、生の賃金は一七%ふえたわけでございますけれども、可処分所得は九九%になったわけでございまして、一七%に、一・一七に○・九九を掛けて一・一六ということで、一六%の伸びになった、こういうことになるわけでございます。  以上でございます。
  309. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 だから、そうなると、今の計算の仕方と可処分所得で将来ずっと下がっていくだろうというそういうやり方とどのぐらい差があるんですかということを端的に聞きたいんです。可処分所得にどうして変えたのかとか、そういうことを伺っているわけじゃないんですね。質問は端的に伺っているんですけれども
  310. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 可処分所得でこれからどういうふうな推移をたどるかというのは、はっきり申し上げて、税がどう動くのか、社会保険料がどう動くのか。年金の方は一応想定を置きまして計算はある程度できるわけでございますけれども、税の関係は全く私どもわからないわけでございます。それから、年金以外の医療保険とか雇用保険とかいろいろあるわけでございますけれども、そんな長期の見通しというのもないわけでございます。  したがいまして、その面について確たることは言えないわけでございますけれども、私どもがこの財政再計算で使っておりますのは、年金保険料がふえていく、ほかの説とか社会保険料というのは固定する、こういう方式に基づいて計算をいたしているわけでございまして、それで計算いたしますと、現在の六八%の水準が六四%程度になる、こういうふうに推定をいたしております。
  311. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そうすると、大分大幅な水準の引き下げになるわけですね。  私は、厚生省が今回も法改正に当たってこういう数枚の再計算の表を出してきているわけですけれども、それだけで、税がどう変わるか、社会保険料がどう変わるか、そういうものによって計算は変わってくるのは当たり前だと思うんですね。いろいろなシミュレーションをやったらいいんじゃないですか。それを示して、それでどうなのかというようなことをもっと親切に私はやっていいと思うんですね。それがされていないというのは、本当に問題だと思うんですけれども
  312. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 財政再計算というのは、改正法案によりまして非常に精密な財政見通しを作成するものでございまして、これに用います経済的な要素等の諸前提につきましては、長期的に見ましても、最も標準的なケースを設定して行うわけでございます。したがいまして、この諸前提を変更したり、個別事項につきまして財政再計算を行うことは極めて膨大な作業を伴うことでございまして、なかなか難しい問題であることを御理解を願いたいと思うわけでございますし、いろいろなケースを示しますと、中には当然極端なケースも出てくるわけでございまして、背景を知らない人がそれを見ますとどういうことになるんだろう、こういうふうな誤解を招くおそれも重々あるわけでございます。  日本みたいにマスコミが発達いたしますと、一つの情報が駆けめぐりますと年金制度というのはすぐ崩壊するのではないか、こういうふうなこともよく言われているわけでございまして、私どもは、関係者の方々に理解を得るためには、きょうもかなりの数値を申し上げたと思いますし、これまでも私どもができる範囲のものは全部出してきたつもりでございますので、こういうことで、必要なものについては当然明らかにいたしたいというふうに考えているわけでございます。     〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕
  313. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 きのう公述人の丸尾先生からの指摘のあったその数字ですよね。これだって出てないわけですよね。  だから、専門家の人だってこういう数字が出てないじゃないかという指摘がある。今私は、いろいろな計算があって大変だというよりも、何か後者の、数字がひとり歩きする、誤解を与えるじゃないか、こういうことでどうも出てないような気がして仕方がないんですね。そういうことはおかしいと思うんですね。誤解を与えたら、それは誤解に対してちゃんと説明していけばいいじゃないですか。だからといって数字を出さないと、今回ほどなかなか数字が出ないというのは本当にないと関係者が言っていますので、そういう中での審議というのは、私は本当におかしいというふうに思っております。  時間も限られていますので次に行きますけれども、積立金の運用の問題です。  一九九四年の厚生年金積立金の見込み額、これは百十一兆五百七十三億円に及んでいます。二〇六〇年の厚生年金の積立金、これは千二十兆円になります。自主運用資金も二十二兆四千三百億円となっているわけですけれども、この自主運用資金は、八六年から九〇年までは二千三百三十二億円の黒字でありましたけれども、九一年から九二年、いわゆるバブルがはじけて赤字となっていますけれども、九三年の累積額、これについて幾らになっているか、お示しいただきたいと思います。
  314. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 まだ最終的に固まったわけではございませんが、私どもが所管しております年金福祉事業団から聞いておりますところによりますと、平成五年度末で約千二百億円の累積赤字になっております。
  315. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 千二百七億円の赤字ですね。(近藤(純)政府委員「正確には」と呼ぶ)この赤字ですけれども、一体責任をだれがとるのだろうか。私もこの間お話伺って、非常に無責任なマネーゲームじゃないの、これ。厚生年金の加入者にこういうものが転嫁をされてくるというふうになったら、これは大変だと思うのですね。  九五年度は運用資金を三兆五千億円ふやす、うち一兆円を特別会計から直接借り入れる。また、国内、海外の投資顧問会社を委託先として新たに加えることを厚生省は要求しているわけですね。投資顧問会社というのは、高い利回りをねらう余り、株などで危険な運用に手を染める可能性があるというふうに言われています。強制加入の年金にこういうやり方というのはそぐわないのじゃないかと思いますけれども、その点いかがでしょうか。
  316. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 自主運用事業につきましては、これまで財政投融資、資金運用部の方にお預けをいたしまして、その中で運用をするという形で運用されてきたわけでございますけれども、一般的に考えますと、株式あるいは債券等の活用によります市場運用の方が高い利率を生むというのが一般的に言われているわけでございます。  ただ、この数年のバブル経済の崩壊によりまして、株も下がり、それから利率も下がりと、こういうダブルパンチを食らったような状態で現在の状況に至ったわけでございますけれども、長期的に見ますれば、これは当然のことながら日本経済というのはまだ潜在的成長力を持っているというふうに思われるわけでございますので、運用環境がよろしきを得れば、当然のことながらこの赤字は回復できるというふうに考えているわけでございますし、さらには、この年金資金は、今の形態は年金福祉事業団が財政投融資の方から借りまして運用しているという形をとっておりますので、年金の特会本体とは直接かかわりはない形になっているわけでございます。  しかし、この形で運用いたしますれば非常に窮屈な運用の仕方になろうかと思いますので、これを改めまして、機会に応じまして投資ができ、売買ができる、こういうふうな形態に改めたいというふうに考えているわけでございます。  投資顧問会社の関係につきましても、これは確かにそういうふうな会社もあるかもわかりませんけれども、大部分の会社は真っ当なものでございまして、私どもは全面的に全部の会社を採用するというわけではございませんで、その中でちゃんとした会社を選びまして、そこで専門的なところでやっていただく、こういうことを考えているわけでございまして、非常に長期的な観点からこの資金運用を行うということを御理解を願いたいと存じます。
  317. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 現在は資金の運用先として株式への運用というのは三〇%となっていますけれども、九二年の株式活性化対策によって一部資金の運用制限が撤廃をされました。株式への資金運用を拡大をする、そういう方向になっているわけです。  年金積立金というのは、被保険者、国民の財産です。運用が国民の目の届かないところで行われて損を出している。今度もこの資料、なかなかお示しをいただけなかったわけですけれども、本当にこういう目が届かないところで行われているという上に、日本の株式の配当利回りは異常に低いのですね。長期保有に向いていないと言われております。株価も非常に不安定です。年金の運用先としては全く適していないというふうに思います。  低迷する株価を支えるために国民の長期の貯蓄性資金である年金積立金を株式市場につき込むということは、年金の効率的な運用どころか、不良債権を抱え込んだ大銀行の救済、そういうことになるんじゃないですか。だからこそ今度バブルがはじけてこういう赤字を出すというふうな実態にもなっているんだと思うのですね。  ですから、公的年金資金をこういう使い方をすべきじゃない。投資顧問会社というと、何か百五十社ぐらいだというふうに伺っておりますけれども、そういう使い方はすべきじゃないというふうに思います。再度そのことを伺っておきたいと思います。
  318. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 私どもは、効率的な運用ということで投資顧問会社の採用をすべきである、こういうことでお願いをいたしているわけでございますけれども、これはなかなか大蔵省の方で認めていただけない、こういう段階でございますけれども投資顧問会社というのはその投資の世界においてはやはりエキスパートでございまして、そういうノウハウを使うということは、こういう市場運用をするという世界においてはやはり大事だというふうに考えているわけでございます。  それと株の関係でございますけれども、現在この資金運用の関係では、五割が安全資産といいますか、債券、国債等の安全資産、それから三割が株式、そういった上限が設けられているわけでございまして、株式も三〇%全部投入しているというわけではございませんで、そこは年金資金としての節度を備えて運用をいたしているわけでございます。
  319. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 年金の公的性格の節度を持たれているということですけれども、私はその辺は全く納得がいきませんし、こういうことはやめるべきだという意見を持っております。そのことを申し上げて、次に移りたいと思います。  年金空洞化の問題ですが、国民年金と言われながら、年金への未加入者、未納者が多数に上っている。このことについては当委員会でも随分議論があったところです。実質保険料を納入している人数を明示しているものとして基礎年金の拠出金算定対象者数がありますけれども、これは平成四年度、何人分拠出をしていたでしょうか。
  320. 横田吉男

    ○横田政府委員 約千三百万人でございます。
  321. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 同年の第一号被保険者の人数というのは千八百十五万人ですから、実質保険料を納入してない人数というのは五百十五万人となります。未加入者の百九十三万人をプラスすると七百万人を超える人数が未加入者であったり、未納であったり、免除されているということになります。言いかえれば、約二千万人の国民年金対象者のうち七百万人が保険料を支払っていない。このままでは将来多くの無年金が発生することになると思いますけれども、その点いかがでしょうか。
  322. 横田吉男

    ○横田政府委員 先生指摘の数字の中には保険料の納付免除者、この方が約二百七十万人、それから一号被保険者に入るべき方で未加入の方が百九十万人、その他という数字になるわけでございます。  例えば、免除者でございますと、国庫負担当分三分の一の年金額が将来もらえるということでございまして、無年金ということではないわけであります。また、十年間の期間におきまして、後から所得ができましたときに追納ができるということでございます。  それから、未納者の方でございますが、この方につきましても、四十年間ずっと未納というのは少ないわけでありまして、この方が直ちに無年金になるということでもないというふうに考えております。  それから、未加入の百九十万人につきましては、これは入らないままでおられますと確かに無年金につながっていくということでございますので、現在、この百九十万人をできるだけ縮小するということで、私ども、あらゆる手段を講じております。また、未納の方につきましても、できるだけ納付しやすいような工夫を種々講じて対策を進めているところでございます。  こうしたことによりまして、私ども国民年金事業の適正な運営に努力してまいりたいと考えております。
  323. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 午前中も議論がありましたけれども、私は、政府国民年金の未加入者、未納者対策が非常に不十分だというふうに思っております。無年金者だけじゃなくて、今も非常に低い年金の方たちを生み出していく、そういう危険もあるわけですね。村上清氏は、保険料が一律定額で負担能力に応じていない、それから保険料が事実上強制徴収できない国民年金、これは公的年金の基本原則を欠くものである、そもそも基礎年金を導入している大部分の国が保険方式ではなく税方式をとっている、そういう指摘もありますけれども、とにかく一定額の年金国民のだれもが無条件に受けられる、そういう最低保障年金が私は必要だというふうに思いますけれども、その辺、いかがでしょうか。
  324. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 基礎年金を全国民一律の同額にしてすべての者に無条件に出すということでございますれば、これは全額税方式ということに恐らく御提案だと思うわけでございますけれども、これは財源の問題というのはいろいろ御議論があるのは別にいたしましても、私どもといたしましては、やっぱり保険料の拠出と給付というのが見合っている社会保険方式の方が我が国にとっては、定着もいたしておりますし、公平な仕組みではないのかな、こういうふうにも考えておりますし、年金水準の関係でございますけれども負担給付関係が間接的でございますので、たくさんの財源があればかなりの水準も確保できるわけでございますけれども、これからの高齢社会考えますと、今の全額国庫負担で今の基礎年金の水準を確保するというのはかなり至難なことではないのかなというふうに考えておりますし、税金が財源でございますので、景気変動によりましても変わってくるわけでございまして、長期的な安定性にも欠けるのではないかと。  それから、一番大事なといいますか、現実的な問題といたしまして、現在長らく保険を掛けてきた方がいらっしゃるわけでございます。この方々が後で負担してくれる人たちがいなくなるわけでございますから、負担をしていただく人がいないということは、保険料もないということは、この人たちの支払いがなくなる。こうなりますと、全部今まで納めてきた人も納めてない人もほとんど同額の年金しか出ないというのは極めて不公平ではないのかな、こういうふうに思っている次第でございます。
  325. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 最後の部分については、それはやり方でどうにでもなると思いますし、いずれにしてもこの経済大国日本と言われるところで最低保障年金もないというのは、お金の使い道の問題ですけれども、大変重大な問題であるというふうに考えます。  次に、女性の年金権の問題について伺いたいと思います。  女性の地位委員会などの国連の文書で日本の男女の賃金格差が取り上げられ、先進国の中で最低と指摘をされています。雇用機会均等法はありますけれども、実効性がありません。新卒女子学生の就職差別は大きな社会問題になっておりますし、昇進昇格差別も深刻です。この結果、女性の賃金は男性の六割にも満たず、年金制度を見ても女性の老後保障は貧しい限りです。配偶者の存在によってようやく細々と老後の生活が成り立つという現実というのは、女性の地位の低さ、年金制度の矛盾を示しているというふうに思います。早急な賃金差別の解消、女性の地位向上、これが求められていると思います。  きのうの公聴会でも論議されたところですけれども、個別の給付というのは報酬比例部分になるため、賃金の低い労働者、特に女性にとっては非常に低い年金になります。四十年加入の男性で平均十万円、女性はこの六割ですから六万円になります。さらに、勤続年数が短いため、その半分程度にしかならない、きのうも公述人の方がこういうことを指摘をしておられました。到底生活できる年金ではありません。不当な差別の結果、女性だけがこのようなダブルパンチを受ける、そういうことになるわけで、男女共同参画推進本部のメンバーである大臣としてどのようにお考えか、伺いたいと思います。
  326. 井出正一

    井出国務大臣 先生指摘のとおり、女性については、勤務期間が短いことや賃金が低いことなどのため、年金額が男性に比べ低い状況にあることは事実だと思います。今後まさに男女同様の勤務形態となっていくよう努力しなくてはなりませんし、そうなっていけば年金額の格差は縮小していくものと考えております。
  327. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 三号被保険者ですけれども、配偶者の事情で一号になったり三号になったり、さらに中高年離婚の場合は所得もなくて、一号被保険者として保険料負担が必要になります。この場合に、常用雇用労働者になれない場合は基礎年金のみの生活になってしまって、貧困そのものという老後になってしまいます。婚姻期間に応じた夫の報酬比例部分の妻への分割など検討される必要があるのじゃないか、こういう指摘もあります。また、年金保障の単位を現在の世帯単位から個人単位に見直していく必要があるのじゃないか、こういう考え方もあるわけですけれども、そういう問題についてどうお考えでしょうか。
  328. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 離婚した場合に年金を分割する、こういう御主張でございますが、これは社会の制度によって影響を受けるというふうに考えるわけでございますけれども我が国におきましては、夫婦の婚姻期間中に取得をされました財産についても半分は妻のものだ、こういう考え方がまだ社会的に定着しているとは言いがたいのではないか、こういうことであるわけでございまして、婚姻期間中に取得されました財産につきましては、民法上、離婚の際に財産分与権の請求が認められるわけでございまして、これは個々のケースによって判断されるというふうに承知しているわけでございます。年金制度で、婚姻期間中の報酬に基づく、報酬に基礎を置きます給付を離婚時に分割するという扱いはかなり難しいなというわけでございまして、やはりこの問題は現実的には離婚時の財産分与という形で、当事者間で解決すべき問題ではないのかなというふうに思うわけでございます。  それから、年金制度について個人単位化すべきでないか、こういう御主張でございます。もともと国民年金におきましては、既に個人単位化いたしているわけでございまして、厚生年金におきましても、一階部分につきましては個人単位化をいたしているわけでございまして、ただ、給付水準につきましては世帯単位で設定する、こういうふうにかなり個人単位化は進んできているわけでございます。  したがいまして、第三号の被保険者の方から保険料を徴収しないという問題も含まれているかと存じますけれども、日本の医療保険の制度におきましても外国の制度におきましても、夫の拠出に基づきまして妻自身年金権が出るというのは、年金あるいは給付が出るというのは、それほど珍しい例でもないわけでございまして、決して社会保険の仕組みとして不合理なものではないというふうに考えている次第でございます。
  329. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 これは女性の地位向上の問題ともあわせた問題ですので、もっと真剣に考えていかなければいけない問題だろうというふうに思っております。  三号被保険者の問題で、今千二百十万人のうち四十三万人が無届け者となっています。放置すれば無年金者になります。今回九五年の四月から二年間、最高九年間さかのぼって加入を認める特例措置が講じられるわけですけれども、高齢の場合に、既にその資格要件を欠いている場合もあります。さらに、今後も起こり続ける問題でもあると思います。抜本的な検討が必要だと思いますけれども、この点いかがでしょうか。
  330. 横田吉男

    ○横田政府委員 第三号被保険者につきましては、配偶者が転職した場合等におきまして届け出が必要となるわけでございますが、自分が保険料を納めてないということもありまして、つい届け出を忘れてしまうというようなケースもございます。こういったケースの方が、先生指摘のありましたように約四十万人ほどいるというふうに見られるわけであります。こういった方のために今回特例届け出の制度が設けられるということでございますので、私ども、法案が成立した後におきましては、届け出の必要につきまして、テレビ、新聞等あらゆる方法を通じて広報を強化したいと考えております。  また、厚生年金保険の加入の適用事業所に対しましては、従業員、その配偶者について周知を図ってまいりたいというふうに考えております。  また、健康保険の被扶養者情報等も活用いたしまして、届け出漏れ者を保険者としてもできるだけ的確に把握し、速やかな届け出を勧奨するよう指導したいと思っております。  また、より根本的な解決といたしましては、各制度に共通する基礎年金番号を導入いたしまして、こういったケースについて的確な届け出勧奨ができるようなシステムにしてまいりたいというふうに考えております。
  331. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 障害年金の問題ですが、現在の障害年金の額は、障害者が自立して生活していくには大変低いわけです。障害基礎年金の額を、生活保護の生活扶助基本生計費に障害加算、介護加算とか、重度障害者家族介護料とか重度障害者他人介護料、こういうものを加えた額にすべきだと思いますけれども、その点いかがでしょうか。
  332. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 生活保護は、御承知のとおり、対象者の収入でございますとか資産その他の生活実態につきまして細かく調査をしてお世話をするということになるわけでございまして、かなり綿密なケースワークという手続があるわけでございます。  一方、年金制度におきましては、極めて多数の者を対象にいたしまして、機械で額を計算いたしまして大量な給付を行う仕組みでございまして、生活保護のような一人一人のニーズに応じた給付というのを認定して給付をするということはなかなか難しいのかなということを考えておりますし、さらに、これも財源の問題であるわけでございまして、そうでなくても非常に苦しい財源の中に、さらに財源要請を加えるというのはなかなか難しい問題であるというふうに考えているわけでございます。
  333. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 障害者の本当に切実な要求があります。財源問題、財源問題と切り捨てないで、ぜひ検討をしていっていただきたいというふうに思います。  遺族年金の問題について伺いますが、遺族年金の妻の生計維持関係基準、これを六百万円から八百五十万円にしたわけですけれども、この根拠は何だったのでしょうか。
  334. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 今回改正におきまして、遺族年金の生計維持要件を今までの六百万円から八百五十万円に引き上げたわけでございます。この八百五十万円の根拠の数字でございますが、平成三年度の厚生年金の標準報酬月額の上位一〇%に当たる者の平均年収が八百三万円だったわけでございますが、これをもとに六年度まで延ばしたというものをもとに八百五十万を設定したわけでございまして、かなり高い年収の層というふうに理解しております。
  335. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 結果的には八年間六百万円のまま据え置かれたわけですね。わずかの金額の違いのために遺族年金が受給できなかった、そういう遺族が私のところに手紙をよこして、何件かあるのですけれども改善を要求してきていました。本来、毎年引き上げるべきだったと思います。この間、他の年金額は物価スライドなどで二三%上昇しているわけです。ですから、今度の八百五十万円の引き上げ、こういう運用に当たっては、本当に弾力的に行ってほしいというような要望があるわけですけれども、その点はいかがでしょうか。
  336. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 かなり低い水準でございますれば賃金とか物価の水準に大きな影響を受けるわけでございますけれども、かなり高い所得水準になってございますので、これはやはり賃金動向を勘案しながら、財政再計算の際に検討すべき課題であるというふうに考えております。
  337. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 雇用保険の失業給付年金の併給の問題ですが、二年後から停止をする。このことについて労働者の間では、長期間にわたって別々の制度保険料を掛け続けてきた、失業保険を受け取っている間老齢年金が支払われない、そういうことによってたちまち二百七十万円の給付がふいになる、これでは、私も本会議質問でも言いましたけれども、国家的詐欺行為じゃないかというような憤激があります。  社会保障としての老齢年金、これは受ける資格があれば無条件に受給者に支給される、これが当然だと思います。しかも、退職した翌年というのは、在職最後の年の所得に基づいて税金だとかあるいは社会保険料が請求されるのですね。だから、物すごく大変なわけですね。こういう労働者に冷たい制度はつくるべきでない、この併給を停止するということはやめるべきだということでございます。
  338. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 現在、厚生年金雇用保険の失業給付というのは併給されているわけでございまして、これについては大分前から批判があったわけでございます。厚生省と労働省が独立しているからやらないのではないのか、こういうふうな陰口もあったというように聞いているわけでございます。  厚生年金は、職業生活から引退して、引退したから所得がなくなって出るというのが本来の老齢年金の趣旨であるわけでございます。一方、失業給付の方は、就業意欲と能力があってまだ働きたい、しかしまだ職場がないという方に出るわけでございまして、所得保障の目的としては相反する、不合理なものであるということが言えるわけでございます。  この二つの給付が併給されますと、高い給料の人ですと、大体、厚生年金が二十万少々、それから失業保険の方は三十万近く出る。こういうふうになりますと、約五十万円の月収がございまして、これが十カ月も出ますと後は働きたくなくなる、こういうふうなことで、非常に就業意欲を阻害する要因になってきたわけでございますし、同じ時期の離職期間に対しまして所得保障が二つ出るというのは、社会保障としては過剰ではなかろうか、こういう趣旨で併給調整をするということにいたしたわけでございます。  ただ、すぐ、直ちにということでは、それを考えていた、当てにしていた方々の当てをとってしまうというふうなことでございますので、八年の四月から実施ということで御提案を申し上げているわけでございます。
  339. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 高い人で二十万と三十万で五十万近くなるとか、そういう話もあるかもしれませんけれども、しかし実際はそういう例というのはそんなにあるわけじゃないですね。そして、何よりもとにかく六十歳まで一生懸命働いた。それで、やれやれ、ほっとする。退職金がうんと出るかと思ったら、出なかった。まさに退職金も十分ない中で、全言ったように、説とか保険料とかそういうものががばっとかかってくるわけですから、私は別々に掛けたんだ、何でそれを取り上げるんだというのが現場の本当に切実な声なんですね。そこのところはしっかりと受けとめていくべきだというふうに思います。そのことを申し上げておきたいと思います。  それで、もう時間も来ましたけれども、現在の国民年金の平均受給額というのは三万七千円にしかすぎないのです。三万円台が四百十九万人、二万円台が二百二万人、合わせて二万円台、三万円台というのが六九%、六百二十一万人に及ぶわけですね。そういう今の年金でも、到底暮らしていけない、こういう年金制度なんですね。これを本当に何とかしなければいけないのに、今度の改正で何か魅力のないようなそういうものになっていくとなると、掛金ばかり上がって、どうも自分でもらう分、受ける分は少ない。公的年金としてどうなんだ。  最初の質問のときに申し上げましたけれども、六十歳から六十五歳にまだ法案が通っていないのに、そのことを見越して私的年金にお入りください、つなぎ年金ですというようなのが出回り、厚生省の答弁も、私的年金というのをぜひ活用してもらいたいんだという答弁もあるわけですけれども、そうじゃなくて、やはり本当に魅力のある公的年金、そういうものを確立していくべきだと私は思います。  最後に、もう時間もありませんので、大臣の御回答をいただきたいというふうに思います。お考えをいただきたいというふうに思います。
  340. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 確かに国民年金年金額の分布表を見ていただきますと、かなり低いのになっているのは事実だと思います。ただ、この中には五年年金でございますとか十年年金、こういった経過的な年金が非常に多いということと、かなり、六万円以上もらえる方でも、早くもらいたいというふうなことで減額年金をいただく、現在でも五割近くの方が減額年金をいただくという状態になっているわけでございまして、累積でいきますと七割以上の方が減額年金をもらっているということで、これについての御理解というのは、年々減額年金をいただく人は少なくなってきておりますので、やはり六十五歳からきちっとした年金の額をもらって、長い老後をそれによって生計を立てていただくように私どもとしてこれから啓蒙活動に励みたいというふうに思っている次第でございます。
  341. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 大臣、答弁されますか。
  342. 井出正一

    井出国務大臣 今回の改正は、二十一世紀の超高齢社会にふさわしい制度とするために私どもは不可欠と考えております。  先生が先ほど改悪、改悪と盛んにおっしゃられましたが、先日、EUのフリン雇用・社会保障問題担当委員長さんですか、その方と会談する機会があったのですが、EUにおいても高齢化とか少子化で大変難しい問題を抱えておると、こんなお話をした中で、今回御審議いただいておる法案の御説明をいたしましたら、大変評価してくださったことを申し添えさせていただきます。
  343. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 まだまだ聞きたいことがたくさん残っておりますけれども、きょうはこれで終わりたいと思います。
  344. 岩垂寿喜男

    岩垂委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時三十八分散会