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井奥委員 それでは、時間がもう約半分過ぎたわけでありますから、次に移りたいと思います。
次は、
子育て支援でございます。
一九九三年の
出生率というのは、これは
合計特殊出生率と言いますが、過去最低を記録いたしましたのは御高承のとおりであります。
女性の
社会進出により
晩婚化が広がっているために、国家の発展の源は人材にある、これはもうだれもが御
認識をいただいていることでありますが、また企業に
出生有給休暇制度等の出産を促進する対策、例えば企業においては健全な赤字部門が必要なために、日本は、今まで、健全な赤字部門の育成を急がなければならない。
例えば企業におきましては研究開発とか企画室などを設けて、これから将来に対する新商品の開発やいろいろなことを、今はその
負担は大きくても、しかし将来それが企業全体につながっていく、朴益につながっていくのだ、そういう産業の発展につながっていくのだという、今この部門が存続することによって、赤字だけれ
ども必要なのだという、こういった健全な赤字部門と私
どもは言っておりますが、これは必要だというふうに思っております。
今まで
ゴールドプランについてお
伺いをしてきましたけれ
ども、
ゴールドプランというのは、やはり八〇年代から
高齢化社会に向かってお
年寄りの問題はどうあるのかというのは、これは十年以上の
議論をしてきたがゆえにいろいろな
ゴールドプランあるいは新
ゴールドプラン、こういった形でお
年寄りに対するものは、まだ完備はしておりませんけれ
ども、こういったものについてはそれ
なりに、
年金とか
医療とかというのは世界のトップクラスになっているわけでありまして、あとは
介護、
子育ての問題ということであります。
介護の問題、
子育ての問題を除いてはか
なりの勢いで進展をしていて、私は大変ありがたいことだというふうに思っておりますけれ
ども、
厚生省の九三年の
人口動態統計というのによりますと、
女性一人が生涯に出産をする
合計特殊出生率というのは一・四六人と過去最低になったというのは冒頭に申し上げました。
人口がふえも減りもしない
合計特殊出生率は二・一人、いわゆる人がふえもしない減りもしないという、亡くなっても二・一人という
出生率を
確保すれば、これは
人口は減らないということであります。
ちなみに申し上げますと、ことし私も一月の十五日には成人式に出たわけでありますが、二百五万人の方々が、若人が二十として巣立っていかれました。しかし、昨年一年の出生数というのは百十八万八千人でありまして、その中で亡くなられるというのは一・五%ぐらい。育児のときに、乳児期にやはりよく――日本は
医療が発達をしておりますから、諸外国に比べてもうこれは世界一だそうであります、死亡率が少ないということは。しかし、そういった中でも亡くなっていかれるのが約一・五%ぐらいではないのかなということでありますから、これは失礼な話でありますが、約百十八万人としましても、十九年後に、いわゆる成人式を迎えられるという方が八十六万人くらいに減ってしまう、こういう計算に、雑駁でありますがなるわけであります。
この
出生率は下降線をずっとたどっているわけでありまして、戦後過去最高であったのが一九四九年の二百七十万人、これの約二分の一以下になってきているということであります。この最大の原因というのは、結婚をしない
女性、未婚の増加、結婚はしたくないという
女性はそれほど多くないわけでございますけれ
ども、より正確には
晩婚化というのが原因ではないか、このように私は考えるわけであります。
女性の平均の結婚年齢というのは、昭和四十年というのは二十四・五歳、昨年が二十六・一歳ということで、これはまあ四十年に比べてはまだそれはそんなに高齢になっていないじゃないか、
晩婚化になっていないじゃないかと言われるかもわかりませんけれ
ども、やはりこの背景というものは
女性の
社会進出とか、就職の機会がふえたということが一点と、高学歴化で所得も上昇して、経済的要因で結婚する理由が大変薄れてきたということもあろうと思います。また、都市部においては、コンビニエンスとかレストラン、そういった経済の
サービス化で独身者でも暮らしやすい、このこともあろうと思います。
しかし、一方では、日本ではこれまで結婚すると、家事、育児は
女性がすべきだといった通念が強くありまして、結婚は自由だけれ
ども、とりわけ出産後の育児の
負担が大きくて、仕事と両立というのは、
女性の結婚、出産というものは、これは何となくためらっておられるような傾向にあるのではないかなというふうに私は考える一人であります。
独身
生活のために環境が整っている大都市での
合計特殊出生率というのは、東京では一・一〇人、大阪では一・三一人、京都では一・三二人、神奈川では一・三五人である、こういうふうに伺っております。それに、まして核
家族化で、家督の継承とか老後の世話をする習慣が薄れてきていることも、子供を持つ意欲というものが減衰をしてきているというのではないだろうかというふうに思っております。
私は、ある経済学者の
先生とちょっとおつき合いをさせていただいているわけでありますが、子供を経済学的に見るというのは、これはちょっといかがなものかと私は思いましたけれ
ども、おもしろいいわゆる
比較で話をされたのでちょっと申し上げますと、経済学的にその
先生がおっしゃると、今の親にとっては、子供というのは将来
自分の
生活を
期待できる投資財、
自分の
生活の面倒を将来見てもらえるとかなんとかという
期待できる投資財ではなくて、かわいがる対象とか、趣味とか嗜好品のような消費財と言ってはこれは大変な語弊があるわけでありますが、それに変わってきているのではないかな。もう親が猫かわいがりをする、一人だからもっとかわいがる。だから、
自分たちは
福祉という形で、年をとっていってもそれは国が見てくれるのだ、
地方が見てくれるのだ、こういうことのためにもう子供は一人でいいのだよ、こういったふうな形になってきているのではないかな、経済学的に見たらこういうふうに思うよということを言われたので、私は当たらずとも遠からずだというふうに思っております。
今度のケースで、
厚生省は、九二年の試算では、九〇年代後半から増加に転じて、二〇二一年には一・八〇人、そして横ばいになるのではないかな、そういう統計も私はお聞きをしたわけであります。しかし、また違った統計では、二〇一一年には一・三〇に落ちる、こういった統計も逆にはあるそうでありまして、私は、
厚生省あるいはそれぞれの推計を見ますと、
一つ目は、結婚した夫婦がかつてつくる子供の数というのは、過去二十年で二・二人前後でありますから、結婚をした夫婦は大体二・二人の子供を産んでもらっているわけであります。しかし、最近の
出生率低下の原因が、私は、
晩婚化にあるのではないかなというふうに考える一人であります。
そして、二点目でありますけれ
ども、
晩婚化が頭打ちになると
出生率は増加する、これは当然であります。早く結婚すれば、それだけ早く子供が生まれてくるわけであります。いずれにしても、将来
人口が減少するという事情は変わっていかない。それは、国力の衰退、それから日本経済の収縮に私はつながっていくものだというふうに思います。
京都大学の高坂
先生なんかよく言っておられて、あの
先生の書かれた本の中でも、「文明が衰亡するとき」という本の中でありますが、イタリアの都市国家ベネチアの国力が衰えていったときに独身者が急増したということが記されているのです。適齢期の中の男性で結婚しない者は、十七
世紀には六〇%と上昇して、経済が発展をとめ、
生活水準を維持したいという気持ちから、子供とか子孫をふやしたくないという気持ちが、それぞれが合致をしたというふうにあります。
私は、日本民族は、今出産とか育児という、先行投資と言えば大変
言葉が悪うございますが、やはりこのことを怠る、サボる、これをサボって大人という、償却済みと言えば申しわけないのですが、今日まで豊かな国をつくってくださった、あるいは
自分たちも豊かな国を、豊かさを享受しているという、大人という償却済みの資産だけで最後の繁栄を楽しんでいる、こういうことであってはならないというふうに危惧をいたしておるわけであります。
もとより、子供を産むかどうかは個人の自由であって、若い
女性が子供を産まない、これはけしからぬと言うことは筋違いであって
自分勝手でありますから、そんなことは申し上げることはありませんが、
出生率を上げていくというのは、子供は家の宝あるいは
社会の宝、あるいは私有財産ではなくて公共の財産、本当に国の宝ということを見て
社会的な資金
負担で出生を後押しをする必要が私はある、このように思うわけであります。
夫婦のうち、男女どちらかに二年間の出産休暇を与えて、その間は企業と
政府で給料の
負担、これは一〇〇%というのは、スウェーデンでも八五%が国、そして企業が一五%、こういうことになっておりますから、これは一〇〇%保障するということにつきましては大変なことでありますし、また企業は、復帰後、
子育てが終わって、そして企業に復帰をされたときにはもとのポストを用意していく、これは急激な、いろいろな
社会というものの経済の進歩が早いわけでありますから、それについていけるかどうかは別の問題でありますけれ
ども、実際こうした考えに基づいて育児休暇法を一九七二年にスウェーデンは制定をいたしたわけでありましてへ七〇年代に一・七人になった
出生率が八〇年代後半には二・一四人になったということのこれは事例があるわけであります。
しかし、民営化による保育所の
拡充も重要であり、それから育児休業法のヨーロッパ並みの実現は容易なことではないということはよく私も承知をいたしておりまして、資金
負担が重くなることで企業の反発というのはこれは大変なことであろうと私は思います。北欧型の重税国家に近づく公算も大きくなるわけであります。
しかし、確実に私は今言えることは、今効果的なあらゆる諸策を講じなければ
人口は必ず減っていくのであります。ですから、二〇六〇年までには日本人が二分の一、六千万人になっていても不思議ではない、私はこのような危機感を持っているわけでありまして、十七
世紀のベネチアのこの衰亡、二十一
世紀の日本の可能性は非常に大きい、私はこのように思いますので、そこで現在の
子育てについて、そのマクロ的なこと、そして身近な問題についての
施策をどういうふうに講じておられるのか、
厚生省に
エンゼルプランプレリュードを含めてお
伺いを申し上げたいと思います。