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1994-02-09 第129回国会 参議院 産業・資源エネルギーに関する調査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成六年二月九日(水曜日)    午前十時一分開会     ―――――――――――――    委員氏名     会 長         櫻井 規順君     理 事         尾辻 秀久君     理 事         吉川 芳男君     理 事         藁科 滿治君     理 事         山下 栄一君     理 事         小島 慶三君     理 事         長谷川 清君     理 事         立木  洋君                 合馬  敬君                 岡  利定君                 佐藤 静雄君                 関根 則之君                 楢崎 泰昌君                 南野知惠子君                 星野 朋市君                 吉村剛太郎君                 瀬谷 英行君                 堀  利和君                 前畑 幸子君                 松本 英一君                 森  暢子君                 中川 嘉美君                 河本 英典君                 小林  正君                 萩野 浩基君     ―――――――――――――   委員異動  一月三十一日     辞任         補欠選任      星野 朋市君     永田 良雄君  二月八日     辞任         補欠選任      小島 慶三君     笹野 貞子君  二月九日     辞任         補欠選任      永田 良雄君     星野 朋市君      河本 英典君     小島 慶三君      笹野 貞子君     乾  晴美君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     会 長         櫻井 規順君     理 事                 尾辻 秀久君                 吉川 芳男君                 藁科 滿治君                 長谷川 清君                 山下 栄一君                 立木  洋君     委 員                  合馬  敬君                 岡  利定君                 佐藤 静雄君                 関根 則之君                 楢崎 泰昌君                 南野知惠子君                 吉村剛太郎君                 瀬谷 英行君                 堀  利和君                 前畑 幸子君                 森  暢子君                 乾  晴美君                 小島 慶三君                 小林  正君                 萩野 浩基君                 星野 朋市君                 中川 嘉美君    事務局側        第三特別調査室        長        堀籠 秀昌君    参考人        スタンフォード        大学教授        スタンフォード        日本センター理        事長       今井 賢一君        上智大学法学部        教授       花見  忠君        日本放送協会解        説委員      小宮山洋子君        横浜国立大学長  太田 時男君        東京工業大学原        子炉工学研究所        長        藤家 洋一君        新エネルギー・        産業技術総合開        発機構理事    木田橋 勉君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○産業資源エネルギーに関する調査  (二十一世紀へ向けての企業行動あり方に関  する件)  (エネルギー供給の課題と対策に関する件) ○委員派遣承認要求に関する件     ―――――――――――――
  2. 櫻井規順

    会長櫻井規順君) ただいまから産業資源エネルギーに関する調査会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る一月三十一日、星野朋市君が委員辞任され、その補欠として永田良雄君が選任されました。  また、昨八日、小島慶三君が委員辞任され、その補欠として笹野貞子君が選任されました。  また、本日、笹野貞子君、永田良雄君及び河本英典君が委員辞任され、その補欠として乾晴美君、星野朋市君及び小島慶三君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 櫻井規順

    会長櫻井規順君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  産業資源エネルギーに関する調査のため、本日の調査会に、スタンフォード大学教授スタンフォード日本センター理事長今井賢一君、上智大学法学部教授花見忠君日本放送協会解説委員小宮山洋子君、横浜国立大学長太田時男君、東京工業大学原子炉工学研究所長藤家洋一君、新エネルギー産業技術総合開発機構理事木田橋勉君を参考人として出席を求め、その意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 櫻井規順

    会長櫻井規順君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  5. 櫻井規順

    会長櫻井規順君) 産業資源エネルギーに関する調査を議題とし、二十一世紀へ向けての企業行動あり方に関する件について、参考人から御意見を聴取いたします。  午前は、スタンフォード大学教授スタンフォード日本センター理事長今井賢一君、上智大学法学部教授花見忠君日本放送協会解説委員小宮山洋子君に御出席をいただいております。  この際、参考人皆様一言ごあいさつをさせていただきます。  本日は、御多忙中のところ本調査会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  参考人皆様から、二十一世紀へ向けての企業行動あり方に関しまして忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の調査参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いをいたします。  議事の進め方といたしましては、初めに、企業社会的責任について今井賢一君から、次に、企業従業員について花見忠君から、次に、企業消費者問題について小宮山洋子君からそれぞれ二十分以内で御意見をお述べいただいた後、一時間三十分程度委員質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。  本日は、あらかじめ質疑者等を定めないで、委員の方々に自由に御質疑を行っていただきたいと思いますので、質疑を希望される方は挙手をし、私の指名を待って質疑をお願いいたします。  なお、意見の陳述、質疑及び答弁とも御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず今井参考人からお願いいたします。
  6. 今井賢一

    参考人今井賢一君) 御紹介いただきました今井でございます。  御要望でありますので、二十一世紀へ向けての企業行動あり方という点に関連いたしまして、私の役割分担企業社会的責任についてどういうふうに考えるかということでございますので、日ごろ考えていることをこの機会に申し上げさせていただきたいというふうに考える次第であります。  それで、既にお手元に五点ばかり私の申し上げたい論点を項目としてレジュメの形でお配りしてあると思いますので、この五点につきまして簡単に論点を申し上げてみたいと思います。  まず第一点は、いわゆる企業社会的責任という問題は既に一九七〇年代に大きく取り上げられまして、私もそのころいろいろな形で論文を書いたりあるいは議論をした経験があるわけでありますが、最近なぜ企業社会的責任ということが再度問題になっているのか。言葉をかえて言いますと、一九七〇年代の企業社会的責任の問題と現在の一九九〇年代の企業社会的責任の問題はどこが違うのかということについて、最初に第一の論点として申し上げてみたいと思います。  一九七〇年代の企業社会的責任と申しますのは、申すまでもなく、いわゆる公害問題を契機にいたしまして、企業が反社会的、いわゆる社会的な倫理あるいは社会的な常識に反する行動をとる、そういうことに対する批判が起こりました。それに対して、利潤を追求する企業である私企業に対してどういうルールを設定したらいいのか、独禁法はどうあるべきなのか、あるいは公害規制法はどうあるべきなのか、そういう形での議論であったと思います。
  7. 櫻井規順

    会長櫻井規順君) 今井参考人、よろしかったら着席でも結構でございます。
  8. 今井賢一

    参考人今井賢一君) 商売柄立っている方がやりやすいものですから。  それで、ところがその問題は恐らく大体片づいたといいますか、片づいたと言うと語弊があるかもしれませんけれども、一九七〇年代の企業社会的責任というのは一段落しているわけであります。一九九〇年代に入りまして、企業社会的責任という言葉はそのままは使われませんが、企業社会的貢献、逆の立場からいうと企業社会にどう貢献すべきかということにつきまして、より広い立場から企業社会的責任に対する要請が強まっているわけであります。  それはなぜかということなんですが、一言で言いますと、私の理解では、それは企業活動というのが場所的に広がってきた、つまり企業グローバル活動するようになってきました。当然日本企業世界の中で活動しているわけでありますので、その中で日本企業責任はどうあるべきなのか、あるいは貢献はどうあるべきなのか、そういう場所的な広がりの問題であります。  それからもう一つは、時間的な視野、時間的な長さの問題でありまして、公害問題ももちろん長期的にかかわる問題ではありますが、御承知地球環境問題に見られますように、時間的な視野が非常に長くなりまして、未来永劫、地球環境問題に対してどのように企業は考えていくべきなのか、そういう問題であります。  地球環境問題に対しましていろいろな学者意見はあるわけでありますが、それを三世代に分けて考えるという意見が割合強いわけであります。第一世代というのは、やっぱりまさに公害問題のように、企業が直接地域社会の中などに影響を及ぼす問題。それから第二世代の問題というのは、それがグローバル規模での問題になりました。それから第三世代の問題というのは、まさに我々の子孫に対して数百年後あるいは数千年後にどういう影響を及ぼすかという哲学的な問題までも含めた問題になってきたわけであります。  そういう意味で、企業社会的責任問題というのは、場所的な広がり、時間的な視野拡大の中で一九九〇年代に問われているわけだというふうに私は理解いたします。したがいまして、きょう二十一世紀へ向けての企業行動あり方という形で社会的責任問題が提起されているのは、非常に適切な問題提起なのではないかというふうに考えます。それが第一点のコメントであります。  第二は、そこには「二十一世紀型企業の特質」と書きました。場所的な広がりの中であるいは時間的な視野拡大の中で二十一世紀型の企業が生まれてきて、そして企業行動が行われるわけでありますが、それに関連して企業社会的責任をどう考えたらいいかということであります。  時間もありませんので私の意見を端的に申しますが一企業というものをどうとらえるかということにつきまして、私は、現代かなり規模の大きくなった企業というものは、技術、テクノロジー、要するに技術を開発し発展させ、そしてそれを社会に使っていく、そういうことに非常に重要な役割を持っている主体であるというふうに考えます。もちろん、かつてのように個人が発明をしたり、個人技術にかかわるわけでありますけれども、しかし、現代の非常に複雑になった技術システムを害のないように管理し、逆に言えば人類のために役立てていく、そういうことができるのは、かなり研究者を抱えかなりのそういう技術の蓄積を持った企業だけてあります。そういう意味で、技術を開発し発展させ、それを社会問題解決に役立てていく、そういう主体としての企業というものを対象としてこの問題を論じなければならないというふうに私は考えます。  そういう企業が当然のことながら、先ほど申しましたようにグローバル活動し出した、つまり情報通信技術を活用して世界的な規模活動をしているわけであります。また、そういう企業技術の使い方あるいは技術発展のさせ方というのは後世にまで影響を及ぼすような重要な力を持っているし、また影響程度も大きいわけであります。  その際、そういう次元で見たときの企業社会的責任なりあるいは社会に対する貢献というのはどういうことなのかと申しますと、それは常識的な言葉で言いますと、結局は地球環境問題に何らかの形で貢献していく、あるいはその問題を徐々に解決し得るような方向にコントリビュートしていく、こういうことになるわけであります。  技術というのは、改めて申すまでもなく、ある一時点で固定しているわけでありません。絶えず進化し発展していくわけでありますので、いわゆる地球環境問題を解決すべく進化させ、新しい技術を開発し、かつ人間が取り扱いやすいように、そういうふうに進化していくということがまず第一に企業責任であります。  それから第二は、先ほど申しましたように、それを空間的に広げていくわけでありまして、世界じゅうにそういう技術の成果をディフューズしていく、普及させていくということが責任の第二になります。  つまり、先進国の問題だけではなく、発展途上国を含めて地球環境問題というものが存在するわけでありますので、それをどういうふうに解決するか、これはそう簡単にソリューションがある問題ではありません。あらゆるところで今その議論が行われているわけでありますが、私の理解では、基本的には技術なり情報なりを世界の中に伝播し普及させていき移転させていく、そういうメカニズムをつくることがまず基本であるというふうに考えます。  そういう意味合いからいいますと、最近アメリカで御承知のようにスーパーハイウェー構想、クリントン、ゴアが情報ネットワーク世界に張りめぐらすという構想を出しているわけであります。あのことの持っている意義は、単純なる情報技術の適用ではありませんで、やはり深く地球環境問題を解決していくには世界じゅう人々情報的につながって、そして情報とともに技術地域に移転していくということが大事なわけであります。  御承知のように、インターネットは世界じゅうに十億人ぐらいの人間がもうすぐつながる状況になっているわけでありますが、それは単に情報がつながるだけではなくて、そういうことを使いこなすということは技術も同時に移転していくわけであります。そういう広がりの中で問題解決を進めていく、そして技術社会が何らかの形で進化していく、エボリューションしていく、そういうことに積極的な役割を持つのが二十一世紀型企業社会的な責任なのではないかというのが第二点で申し上げたい点であります。  しかしながら、以上申し上げた点はやや少し大きな話でありますので、日本企業に即して問題をさらに申し上げてみたいと思います。それが第三点、第四点、第五点の話であります。  つまり、今我々といいますか日本産業界あるいは日本立場として必要なことは、こういう地球環境問題を大きく広くグローバルな空間的な広がりの中で、そして長い時間的な視野の中で考えると同時に、そういう視点を入れて今何をなすべきなのかというふうに考える。よく言われている言葉で言えば、大きく考え小さく行動するというか、あるいはシンク・グローバル・アクト・ローカル、要するにグローバルに考えてどういうふうに問題解決のために今第一歩を踏み出すか、そういう視点が必要だと思いますので、私、その点につきまして、第三点としてグローバル化雇用の問題というのを取り上げてみたいと思う次第であります。  なぜ雇用がということなんでありますが、今申しましたように、企業社会的責任というのを、地球環境問題を解決するとか、あるいはグローバルの中で日本企業役割を持つというのは当然でありますが、結局それを進めていくのは人であります。人的資源でありますし、またそれぞれの企業というものは、やはり人々雇用しながら、雇用機会を与えながら、そして今申しました役割を果たしていかなきゃならないわけでありますので、雇用問題を同時に含めて考えなければならないわけであります。  それに対して、今非常に深刻な問題を世界じゅうが抱えているわけであります。先日もOECDでこの問題に関する閣僚会議での議論がありまして、私もそこへ日本から意見を言ってくれということで呼ばれたわけでありますが、非常にヨーロッパは深刻であります。一言で言いますと、今まで試みられてきたあらゆる方策、経済学的な考え方は単純に言うとすべて失敗した。一つケインズ型の、今日本でもその問題が議論されておりますけれども、需要拡大する。要するに需要が不足していれば需要拡大する、そういうやり方についてはヨーロッパはこの十年来やってきたのでありますが、これは完全にどうやってもうまくいかなかったわけであります。  それで、そのケインズに批判的であります学者世界ではいろんな議論がありまして、もう一遍古典派的な、ケインズの前に返って、賃金を安くすれば雇用がふえるんじゃないかというのがもう一つの古典派的な考え方であります。アメリカはそのやり方をとりまして、最近は雇用機会がふえているというんですが、これはまた非常に低賃金あるいは最低賃金以下の雇用がどんどんふえているという形で雇用はふえているのでありますが、しかし私どもが望ましいと考える雇用形態ではないわけであります。  ヨーロッパ福祉社会をとってきまして、いろいろな形で北欧諸国はやってきたわけでありますが、それは御承知のように、どんどん財政支出がふえるということでこれも成功しない。どうも日本失業率が低くうまくいっているので日本はどうかということなのでありますが、御承知のように、日本にも潜在失業あるいは企業内失業というのを抱えているということなので、この問題についてこれからどう考えるかということは非常に深刻な問題であります。  私の意見を言わせていただきますと、ここではやはり「日本型システム可能性」という副題をつけましたように、日本システムというのは中小企業も含め、それから企業の中でいろいろな形で仕事をつくって、そしてなるべく雇用を確保してくるように努力をしてきた。その点について限界があるわけでありますが、私はやはりアメリカ流天才ホームレスだけが存在し得るような、天才ホームレス世界というような市場経済市場メカニズム至上主義ではなくて、やはり日本的なシステムというものの持っている社会的な貢献、大げさに言いますと、それが世界の中でどの程度貢献するかということは非常に大事な点でありまして、私のきょうの論点に戻って一言で言いますと、それは技術をいろんな層に移転していくということであります。  アメリカは非常に最近技術発展し、日米再逆転、アメリカ企業日本企業にまた逆転したという形で新聞でも取り上げておりますが、それは一部の企業でありまして、日本のようにどんな小さな企業にまでハイテク技術を浸透させていく、社会の隅々に至るまで技術を移転していくというシステムではないわけであります。そういう意味も含めて日本型システム可能性というのを追求することは、前半に申しました二十一世紀型企業へのグローバル貢献の中で非常に重要な役割を持つ。ただそれがどうできるかは大いに議論のあるところでありますし、また皆様方の御意見も後ほど承りたいというふうに思います。  それに関連しまして、時間もなくなりましたので簡単に申しますが、四番目に生活システムの形成と企業ということで、改めて企業とは何かということが問われている時代だというふうに思います。  企業社会的責任ということは、暗黙のうちに大企業責任になり、あるいはかなり中堅規模とかちゃんとエスタブリッジュトした企業責任という問題として考えられていると思うのであります。御承知のように、最近ではノンプロフィット企業というものが非常に大きな役割をどこの国でも持っているわけでありますし、またボランティアというものも非常に大事な役割を持っている。ボランティア企業かどうかは問題でありますけれども、しかし、企業というものを広い意味でとれば何らかの形で業を企てるということでありますから、例えば、医療のために看護婦さんたちのボランティアを組織してそして社会貢献するということも企業役割なんではないか。  そういう意味で言いますと、利潤追求型の伝統的な企業に加えて、直接利潤対象にしないようなノンプロフィット企業、例えば学術団体をサポートするような企業、それからボランティアも含めてそういうものの集合体として、今申しましたような雇用をつくり新しい生活システムをつくっていく、そういう役割を持ってきているのではないか。そういうふうに問題を立てませんと、前半に申しました地球環境問題企業がこれから大きな責任を果たしていくことはできないのではないかというふうに考えます。  それから第五点は、企業消費者政府関係であります。ここには新たなアライアンス、新たな連合といいますか新たな連携が必要であるというふうにまとめたわけでありますけれども、企業消費者政府というものを対立した主体として考えるのではなくて、向きを変えてそれぞれがお互いに役割を必要とし合う時代に来ているのではないだろうか。企業というのは、先ほど申しましたように技術社会の中に役立てていく主体であり、また人的な資源をどういうふうに生かすかという主体であります。  それからもう一つは、消費者というのを単なる受け身に考えるというのは、これは時間がありませんからちょっと発展させる時間がないのでありますけれども、消費者というのも消費に関する資本を持っている主体である。つまり、一昨年ノーベル賞をもらったゲーリー・ベッカーというシカゴ大学教授は、ヨンサンプションキャピタル、消費資本という概念を強く提供しているのでありますが、それはどういうことかといいますと、要するに消費者というのは単に、私も消費者でありますが、受け身行動をするんじゃなくていろいろなノウハウを持っているわけであります。どういうふうにパソコンを使うかとか、あるいはどういうふうに料理をするかとか、そういう種類のノウハウを蓄積しながら、知識、学習経験ノウハウを蓄積しながら行動しているわけでありまして、そういう消費者企業が対向していく、そういういい消費者を育てた企業が利益が上がるわけであります。  政府役割というのは、一言で言いますと、そういう中でそういう社会と活発に相互作用を行う制度をつくっていくことである。最近、規制緩和ということが非常に言われているんですが、ああいうことが一回限りの問題として議論されるんじゃなくて、社会は常に変化し動いていくわけでありますし、企業消費者関係も変わっていくわけであります。そういう状況の中でどういうふうにそういう情報を受けとめながら新しい政府あり方規制あり方規制は撤廃するだけが能じゃなくて、例えばきょうの問題で言えば公害であるとか、あるいは地球環境問題に対する枠組みの設定だとか、そういう役割があるわけでありますから、そういう社会の動きと相互作用を持ちながら対応していく主体として、申し上げたい点は、企業消費者政府というものが向きを変えで新しい連携を、アライアンスをつくる、そういうことが社会的責任の問題のエッセンスにつながるんではないか。  時間も過ぎましたので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  9. 櫻井規順

    会長櫻井規順君) どうもありがとうございました。  次に、花見参考人からお願いいたします。
  10. 花見忠

    参考人花見忠君) 上智大学の花見でございます。  私は、商売は今井さんと同じだと思いますが、座ってやらせていただきます。  きょう、私ども三人をお呼びいただきましたこの調査会の大きなテーマは、企業社会における役割というようなことで、私は企業従業員関係という割り当てでございます。  それで、日本企業社会における立場、外国の場合、外国といっても主として西欧と比べた場合に、株主との関係消費者を含めて取引先との関係というようなことで企業従業員関係を考えますと、日本企業というのは比較的従業員との関係においては点数がいいのではないか、従業員を大切にしてきたというふうに一般に言われております。そのことの意味を、従業員といっても大きく分けると日本の場合二種類ありまして、一方に対しては非常に点数がいい、他方に対しては非常に悪いのではないか。そこに非常に問題があるので、二十一世紀ということを考えた場合に、やっぱり現在の状況、つまり伝統的な日本雇用構造あるいは労働市場の構造というものを考えた上で将来どういうふうに企業は対応すべきかということを私は考えていく必要があると思います。  そういう意味で現状の再確認みたいなこと、皆様もう既に御承知のことでございますが、ごく簡単に一ページ目の方は確認の意味で申し上げておきたいと思います。  ちょっと変な図を二つ描いでございますが、言うまでもなく上の方は日本、下の方は一般の産業社会、これはこういう描き方をしますと、いずれにしても大変単純化してしまいますので細かいことを言うといろんな留保をつけなければなりませんが、多少極端に誇張を含めて日本とほかの産業社会を比べるとこういうふうになるのではないか。  ここで一番大切なことは、今申しましたように日本従業員というのは二種類ある。あるいは従業員というよりは、もう少し広く日本企業雇用あるいは実際に使用している、指揮命令をして使っている労働力というのは二種類に分かれまして、そこに描きましたように上の三角、これはいわゆる正規雇用と言われるもので、三角の下の幾つかの四角、矩形ですが、これは非正規雇用というふうに分けられるわけであります。この図で大切なのは労働者というところ、三角の底辺と臨時社員以下との間の線が、ちょっとこれ印刷でよくおわかりにならないかと思いますが、濃い線を引いでございます。この濃い線は他の産業社会の場合、管理層と労働者の線に相当するわけでありまして、他の産業社会における管理層と労働者の間の区別と日本の場合には正規の従業員とそうでない者との区別が対応する。日本の場合には、むしろ管理層と労働者の間は点線を引いでございますが、つまりこの区別はそれほど重要ではないというのが私の考えでございます。  そこで問題は、このような正規従業員と非正規従業員、その非正規従業員というのはそこに書きましたように一般的な臨時社員、それからアルバイト学生というような者を含めた非正規の雇用、それから日本の非常に重要な特質として社外労働者の地位、関連会社から派遣をされる労働者が非常に重要であります。そして最近はさらにそれにさまざまの形の派遣労働者というものが増大をしてきております。いわばこの二つの層、労働者の種類は労働市場が画然と違っておりまして、言うまでもなく伝統的には新規学卒の優良な労働力が正規雇用として上の三角のところに位置づけられ、それ以外の学校教育で比較的成功しなかった種類の労働力が矩形のところに位置づけられるというのが伝統的な日本の労働市場の構造であろうと思います。これは御承知のように、この十数年次第に大きく変化をして、必ずしもこういうふうに画然と区別しがたいような状況というのが出てきております。  それからもう一つは、下の矩形がだんだん大きくなってきているという状況でございます。そしてこの区別、画然たる区別というものも若干あいまいになりつつあるのが現状であります。そして上の三角のところの採用の仕方も次第に変化をしてきておりまして、いわゆる引き抜きその他転職というのが上の正規の労働市場にも次第にふえてきているということで少しずつ変化をしてきておりますが、依然として基本的に他の産業社会と比べるとこういう特質を持っている。  そこでこの区別、もう一つ重要なのは採用という線を矢印で描いでございますが、ここが他の産業社会の場合には採用で幾つか線を引いでございます。これの意味は、つまり正規の労働力というのは、基本的には今申しましたように例外がたくさんあるわけですが、日本では新規学卒でまず底辺の仕事から始めてだんだん配転を通じながら昇進をしていって、理論的には管理層にまで上昇をする可能性のある労働者、そういう形の配転、昇進が大変大切、いわゆる内部労働市場の役割が非常に重要である。そこで人材育成、キャリア形成が行われるわけで、キャリア形成というものにおける企業の比重が大変重いというのが日本の正規の労働者の場合であります。  それに対してここで非常に重要なことは、私は法律屋でございますが、企業従業員関係を法律的にとらえますと、これは言うまでもなくいわゆる雇用契約ですが、雇用契約の対象となっている労務の提供というふうに日本民法では表現をされているその労務の提供の概念が、日本の正規の労働者の場合と他の産業社会の労働者の場合と決定的に違う。ジョブの概念と申しますか、仕事の概念が全く違うわけでありまして、下の三角にたくさん採用の線を引いておきましたのは、他の産業社会では特定の仕事、一つのジョブに対してある人が雇われる。特定のジョブがベイカントで人を求めるという形で、ある仕事をやるために人が採用されるということが大変重要でありまして、それが日本の正規雇用とは違うわけで、日本の下の矩形の方はかなり他の産業社会の採用の仕方と似てくるわけであります。したがって、ヨーロッパでも管理層の場合あるいは企業の種類によって若干内部昇進が行われるような形の雇用形態をとっている場合がありますが、日本の場合にはほぼ、少なくとも中小以上の企業の場合には内部昇進が中心でキャリア形成が行われる、こういう形になっております。  今まで申し上げたことは、いわば復習というか確認でございますが、他の産業社会と比べてこういった特質があるわけで、日本の労働市場、雇用構造はこういう特質を持っております。  そこで、そういう意味での日本雇用のプラス面とマイナス面を若干検討した上で、そのプラス面とマイナス面から今後のことを若干申し上げたいと思っております。  二枚目の紙に移りますが、このプラス面、これも従来非常に強調されてきたところでありまして、改めて申し上げる必要はないかと思います。  言うまでもなく、いわゆる終身雇用制という言葉が使われてまいりました。非常に誤解のある言葉で余り使いたくありませんが、いずれにしろ、今申し上げたような正規雇用における雇用というのは当然長期雇用を前提にいたしまして、したがってこれは雇用保障というプラス面。今、今井先生のお話にもありましたように、ほとんどすべてのヨーロッパ諸国で今日数%から一〇%、統計上の失業者が定着をしてしまっておりまして、国によっては実際三〇%ぐらいだというふうに言われている国もあるくらいであります。  日本の場合には統計的な失業率が非常に低いのみならず、企業が抱えている潜在的な失業を含めても到底ヨーロッパとは比較にならないというような意味で、日本式の雇用というのは一つの重要なプラス面として雇用保障ということがあることは紛れもないわけです。そういう意味で、ヨーロッパのような社会あるいは北米を含めて主要な産業社会で今日、社会保障、失業保険が果たしている役割日本企業が相当程度果たしているということは疑いがないところであります。  そういうことは、いわゆる終身雇用議論の中で言い尽くされているところでありますが、それ以外に私は、正規雇用に関する限り日本雇用システムというのは教育を通じてかなり機会の平等を保障しているわけで、簡単に言えば、よくできる子供というのは出身階層のいかんにかかわらず、多かれ少なかれかなりいい教育を受けることによって安定した雇用保障と労働条件のいい雇用機会に恵まれる可能性が保障されている。  これは言うまでもなく、教育の機会均等という点で果たしてどうなのかということは相当問題があって、実は調査によればそんなに完全な平等の機会が保障されているわけではありませんが、にもかかわらず、少なくともヨーロッパのような社会と比べればかなり正規雇用雇用システム、新規学卒者を採用するという雇用システムを通じて、これはもう相対的な問題でありますが、日本の場合にはかなり機会の平等が相当程度保障されているというふうに考えられるかと思います。  それから、雇用が保障されるいわゆる終身雇用制のもとでの雇用保障と、キャリア形成、熟練形成及び職業人としての労働力の形成が企業によって行われるわけでありまして、その結果、企業との一体感、企業意識、忠誠心が強いというようなことで、これが日本のこれまでの産業効率のよさにつながってきたということも改めて申し上げる必要はありません。  それから勤労意欲、特に企業に対する責任感というのは私は大変重要だと思うわけであります。つまり、他の産業社会のように特定の仕事に対して雇用が行われている場合には、その仕事についてはエキスパートであり、十分な能力を持ち、十分な資格を持ち、責任を持っているとしても、企業全体の企業行動に対する責任感、気配り、配慮というような点では日本の労働力がすぐれている。幾つかの定期の配転を通じて幾つかの仕事を経験しながら企業全体に対するパースペクティブと申しますか、配慮ができるような種類の労働力、そのことは同時にそこに書きました最後の点、技術革新への対応という点、これも一九七〇年代から日本企業技術革新に非常にすぐれた効果を発揮したのはこういった雇用構造、つまり特定の仕事に採用するのではないので、ハイテクの導入の結果なくなった従来の古いタイプの仕事についていた人たちを解雇する必要がないわけで、通常の再訓練、配転の過程、プロセスの中で処理をすることができる、そういう特質を持っている。以上がプラス面であります。  マイナス面はどういうことかということでありますが、これももう指摘をされているとおり、個の喪失とか創造性の欠如、つまり今申し上げたように、企業人間形成をし、企業の生産ビジネスにとって都合のいいような形で訓練をされるわけであります。したがって私ども教育に携わる者としては大変、言うことは若干自分自身に石が返ってくるようなことでありますが、日本の教育そのものが企業のこういった雇用の仕方に対応して、日本の場合、学校はほとんど公立を含めてやっぱり学校そのものもビジネスでありますので、企業のニーズにこたえた労働力を生産せざるを得ないわけであります。その結果、日本の教育を含めて日本人の個の喪失とか創造性の欠如というのは、今申し上げたような雇用形態かなり関係があるだろうというふうに考えられるわけであります。  そして、そういう企業の一体感とか企業意識とか忠誠心、勤労意欲というプラス面のいわば裏の逆のサイドでは私生活の犠牲、長時間労働、これも労働時間の問題。私、この数年、中央労働基準審議会を預からせていただいておりまして、政府が法律を変えて労働時間を規制しないと労働時間がちっとも短くならないという、私は法律学者として、どこの国も法律で時間短縮なんかやった国はないわけでありますが、そういうことをやらざるを得ないという非常におかしなことになっております。これも日本雇用形態、これはそれ以外に日本の長時間労働の原因はさまざまなものがあるわけでありますが、やっぱり一つ雇用構造と関係がある、企業従業員関係関係があると思います。  最後に、マイナスの最も重要なものは正規雇用以外の人々の不平等扱いでございます。何らかの形で、先ほど申し上げましたように、学校歓育で何とかうまく適応をした労働力はかなり良好な雇用機会に恵まれるわけでありますが、それ以外の人たちは雇用保障が全くない、ほとんどない、そして同じ仕事をしても労働条件が著しく劣るような、先ほどの三角の下にくっついております矩形のところに労働力が置かれております。このパーセンテージ、労働経済学者は三〇%ぐらいとか三分の一しかこの三角の中に入らないというふうに言っております。この正確な数字、非常に議論は残るわけでありますが、いずれにしろ相当部分が良好な雇用機会に恵まれないわけであります。  大変重要なことは、この矩形の部分には主として教育における、これは多分差別用語になるのか、いわゆる落ちこぼれとそれから女子及び外国人労働者、それから、幸いにして日本には非常に数が少ないわけですが、マイノリティーの人々、こういった層が集中的にここに雇用されると、そういう形になっていることは大変重要な日本雇用構造の問題点、私の考えでは非常に大きな問題点であろうかと思います。  つまり、三角に関する限りプラス面の方が恐らく大きいだろう。しかし三角外のところが非常に大きな問題であって、そしてこの十数年、女子の社会的な進出ということに加えて、外国人労働者の漸増というところからこの問題が今後恐らく非常に重要な問題になってくるであろう。もう既になりつつあるわけでありますが、そしてそのことは日本社会のこれまでの閉鎖的な構造、生産効率、企業効率という点で大変プラス面を発揮した日本雇用構造の今後の非常に大きな問題点、いわばマイナス面であろうかと思います。  つまり、企業効率、生産効率から福祉の方に向かって比重を変えようという、現在日本社会で考えられている政策からいって非常に大きな問題はこういった不平等の問題なのではないか。そういう意味で、つまり効率、経済の問題からいわば平等といったような理念の問題、あるいは福祉といったような方に日本社会をシフトさせていくという点から考えると、これまでの日本企業従業員関係というのは企業効率の方に大変比重が置かれてきたわけでありまして、福祉とか平等といったような理念的な問題についての企業の配慮というのが著しく欠けてきたのではないか。  これを変えていく変え方、一つは、きょうは藁科さんおいでになりまして非常に言いにくいのですが、やっぱり日本以外の産業社会では労働組合の果たしてきた役割というのが大変大きいわけであります。日本の労働組合は残念ながらこの点で、今申し上げたような雇用構造、それは組合の大部分が正規の労働者しか組織していない。例外はたくさんここでもありますけれども、基本的にそういう労働組合のあり方はこれまでの日本産業構造を根本的に変える力を持ってこなかった。今後の変化で労働組合の役割というものが大変重要になってくるということが一つでございます。  それから二番目は、企業の国際化あるいは日本経済の国際化、それに伴う日本社会の国際化、外国人労働者が事実上違法外国人労働者を含めて恐らくふえてくるということ。私、この前こちらにお邪魔をしたときに外国人労働者問題で意見を申し上げましたけれども、私はオープンにして受け入れるということには反対でございますが、にもかかわらず、非熟練労働力を含めた外国人労働者が漸増をし日本に次第に定着をする可能性があるわけであります。これは日本社会の国際化、日本ビジネスの国際化と並行して起きてくるわけであります。これまでのような、三角のところは、要するに教育において良好な成績を修めた男子の労働力という構造を基本的に変えていく必要があるだろうし、事実上国際化によって変わっていくだろうというふうに考えられるわけであります。  それと同時に、既に前回の出入国管理に関する法律の改正に伴って、国際ビジネスの関係においては日本は、これは日本のジャーナリズムにかなり誤解がありますが、主要先進国と比べてもほとんど引けをとらないくらい専門職に関する限りかなりオープンな外国人の受け入れができるような法制度になっているわけであります。そういう点で、ビジネスの国際化とともに次第に外国人労働力が上の三角の方に少しずつふえてきてトップのところに昇進をしていく可能性はあるわけでございます。  日本経済のグローバル化の中で、海外に進出をした日本企業は、これぜひ申し上げたかったわけですが、きょうはちょっと申し上げる時間がございませんが、特にアメリカにおいて性差別、人種差別で日本企業が問題を起こしております。その中で、これまでのような日本雇用あり方というものに対して国際企業は非常に大きな反省をし、グローバル化のために努めて努力をしております。例えば、人事考課制度の客観化というようなことで非常な努力をしている企業はたくさんございます。そういう中で、恐らく外国人労働力もこの三角の中に入っていって昇進の可能性を持つように日本企業が変化をしていく。  それから最後に、これは議員の方にぜひ理解をしていただきたいことは、日本雇用機会均等法が性差別だけしか取り扱っていないということが非常に大きな問題で、その結果、大変女子の保護と平等の理念の混乱がございます。均等法の主要なところが努力義務ということで弱いということだけではなくて、性差別だけに頭がいっているものですから、女子の保護ということとくっつけてしか問題が考えられないわけであります。他の産業国では雇用平等の問題というのは、実はマイノリティー、人種差別との関係において問題が発展をしていっているわけであります。そういう意味で法律が非常に日本では弱いわけであります。  そういう三つの点、労働組合、法の役割、それから国際化というような点から今後の企業従業員関係というのは変化をするだろうし、恐らく国の政策としてはそういう変化を促進するような形で考えていく必要があろうというふうに申し上げます。  時間が超過いたしまして申しわけございませんでした。以上でございます。
  11. 櫻井規順

    会長櫻井規順君) ありがとうございました。  次に、小宮山参考人からお願いいたします。
  12. 小宮山洋子

    参考人小宮山洋子君) それでは、私は消費者のサイドから、一応、今、消費経済を勉強しておりますので、幾つか感じている点をお話ししたいと思います。  最初に、「消費者重視、消費者に顔を向けた企業に」と書きましたが、これは当然のことですけれども、生活者重視、消費者重視と言葉は躍っているんですけれども、実際に何が本当に消費者のためなのだろうかと。消費者を重視する企業というのは、一番最後の消費者教育のところでも申し上げたいと思いますけれども、賢い消費者はやはりよい製品を選ぶわけですから、二十一世紀を生きていく企業としては、消費者の意向を重視した企業になっていくということが生きていくための必然の条件だというふうに思っております。  具体的には三つの点をお話ししたいと思っています。  一つは、まもなく制定されることにやっとなりました製造物責任法。これもなるべく消費者が実際に使いやすいように法律をつくっていくということは第一ですけれども、法律をつくるというのはそこがゴールではなくてスタートラインでありまして、それをいかに使いやすく企業のサイドが情報提供を含めて協力をしていくかということと、そのほかの製造物責任だけでは済まない部分がありますので、そういう製造物責任にかかわる企業の協力の問題。それから環境に優しいとかいろいろ言われますけれども、実際につくるだけではなくて廃棄するところまで含めてそういう商品をつくっていくという必要性。もう一つは、やはり最初にも申し上げましたように、賢い消費者といいますか価値観をしっかり持った消費者を育てていくために、これも企業がその育成についても大いに協力をしていくべきだ。この三つの点についてお話をしたいと思っております。まず、製造物責任法も、ついこの間の十二月に国民生活審議会がようやく十八年余りの審議の結果、製造物責任制度を中心に総合的な消費者の被害を防止、救済する施策を具体化すべきだと、やっと法律制定の方向の答申を出しまして、今、法案をこれから作成して通常国会に提出され、九五年度の早い時期からの施行を目指すという段階にやっとなってきております。これについて幾つか本当に消費者サイドに立ったものになるようにという視点からお話をしたいと思います。  とにかく安全な商品が提供されるということが消費者にとっては第一の当然保障されるべき権利だと思うんですけれども、その部分が、日本ではまだ製造物責任というのが確立していず、これはアメリカを初めEC各国、オーストラリア、アジアでもフィリピン、韓国などは既に法律をつくっておりまして、日本企業も輸出品につきましてはその責任を持っているのに、同じ商品を買った日本消費者が保障されないという非常におかしな制度になっていたわけですね。  それで、製造物責任がこれまでに大きな問題になった例えば食品の森永砒素ミルクとかカネミ油症、医薬品のサリドマイド、スモンなどは長い時間をかけますとある程度現在の法律でも補償される、救済されるということがあったわけですけれども、御存じのように、身の回りのふだん日常で生活している中で製品の欠陥で例えば火事が起きたとか、自転車に乗っていて突然ハンドルが折れでけがをしたとか、あるいはガス湯沸かし器の不完全燃焼で一酸化炭素中毒になったというようなときに、今のメーカーに過失があったことまで消費者のサイドが、被害者が証明しなきゃいけないということでは、ほとんどの場合が泣き寝入りになっていたわけです。  それが今回、製造物責任法ができますと、過失を証明しなくてもよくなったという部分では負担が消費者にとって軽くなったわけですけれども、欠陥があったという証明は相変わらず消費者のサイドがしないといけないわけですね。これはECとかアメリカなどでもそうなっているのでやむを得ない点ではあるんですけれども、これだけハイテク化された製品で、しかもどのように製造したかという資料を全部企業が持っていてそれを出さないとなりますと、欠陥があったということを消費者が証明するというのは非常に難しいわけです。ですから、消費者が証明するということは世界の趨勢でもありますし、やむを得ないけれども、証明をしやすいように原因を究明する機関をきちんとつくるということが一つは必要だというふうに思うんですね。  しかも、欠陥がどこにあったか、それでなるべく、なるべくといいましょうか、企業に非常に負担が軽いような方向で製造物責任法が恐らくできるのではないかと言われているわけですけれども、消費者が手にしたときではなくて、出荷をした時期、製品を流通に置いた時点で欠陥があるかどうかということが今度認定の一つの条件に恐らくなります。そうしますと、例えば買ったものの流通に置いた時点で欠陥があったかどうかを証明するというのは非常に消費者にとってはやりにくい。  欠陥の証明をするために、今、原因究明機関をつくるというのが一つ消費者が実際にこの法律を使えるための方法だというふうに申し上げましたが、原因究明機関につきましてメーカーのサイドは、今あるメーカーのいろいろな相談の機能とか消費者に対応しているものを業界ごとにネットワーク化していってそういう原因究明の手助けにすればいいんじゃないかというふうな話をしておりまして、これももちろんこちらの方もやってくれればいいわけなんですけれども、消費者のサイドとしては、これまでの経緯からして、メーカーが全部原因を究明していって都合のいいような形になってしまったら消費者のための原因究明にはならないのではないかということで、できれば国民生活センターとか、都道府県、市町村の消費生活センターなど申立な機関でやってほしいという要望を消費者サイドはしております。  ただ、消費生活センターも、全国におよそ千八百人の消費生活相談員というのがいるんですけれども、専門知識はほとんど持っておりません。ですから、これまで製品の苦情処理テストをしたというのも、全体の消費生活センターの三分の一に当たります九十八カ所でしか九二年度はそういうテストすらしていないということがあるんですね。  ですから、今の方向としては、メーカーがつくるものとこういう国民生活センター、消費生活センターのような公共のものと二本立てでいこうという形になっていますが、中立の機関に対してもできればメーカーの方からある程度技術者とかノウハウを提供するというようなことで、こちらの中立の機関の方にもメーカーがかなり力を注いで機能できるようにやっていってもらうということができるといいのではないかということが一点ございます。  それからもう一つは、やはり情報を今、企業がほとんど握っているわけですから、その情報消費者がどれだけ手に入れられるようになるかという情報の公開の問題があると思います。  これについては、アメリカではちょっと行き過ぎた製造物責任制度になっていて企業の負担が大きいというのが今回も製造物責任をなかなかつくれない理由の一つだったんですが、これは弁護士の数が多いとか、裁判の仕組みが違うとか、また別の原因があると私は考えておりますけれども、そのアメリカでは情報公開についてディスカバリーというかなり強力な情報の開示制度があるんですね。ですから、このとおりを日本に入れるというのはなじまないと思うんですけれども、こういう考え方もある程度取り入れて、企業情報をもちろんみずから公開すればそれにこしたことはないんですけれども、そういう方向に持っていかないとやはり幾ら法律をつくっても。  企業の側の製品についてのテスト結果ですとか販売戦略とか事故情報など、こういう問題になっている製品についての詳しい内容を消費者が得ることができるようになっているのがアメリカのディスカバリーの制度でして、これは製造者と消費者情報格差を縮小するため訴訟手続の一部としてアメリカでは取り入れられているんですね。これはかなり強くて、あらゆる資料の提出が義務づけられていますし立入調査なども認められているということがありまして、日本にこのとおりはなじみにくいと思うんですけれども、今、日本でも情報公開法の制定の話なども出ていると聞いておりますので、日本でどのような開示の制度がふさわしいのかということを見きわめた上で、製造物責任だけではなくて、本当に消費者、生活者が重視される社会になっていくためにもこれを考えていく必要があるのではないかなというふうに思っております。  今回の製造物責任の制定ということにつきましては、今、規制緩和が非常に言われておりまして、その中で消費者を本当は保護するための社会規制についても最小限にとどめるということになっていると思うんですけれども、そちらの方を最小限にとどめるためにも、やはり安全とか安心とかいう意味消費者が安心できるということについてでは、製造物責任法が実際にいい形で制定され運用されていくということが社会規制を最小限にしていくための必要条件だというふうに思っております。ですから、そういう意味では、ぜひ消費者が実際に使いやすいし保護されるものにしてほしいと思っております。  もう一つ、製造物責任については経済改革についての平岩リポートの中でも触れておりますけれども、製造物責任法の早期制定を含む総合的な消費者被害の防止、救済が必要というふうに言っているとおり、この法律の制定だけではなくてそのほかにも、やはり特に小さな被害を受けた場合などは一々こういう製造物責任法で裁判をというのも難しいわけですから、これまでも例えば製品安全協会の認定のSGマークとか、あるいは医薬品の副作用被害救済制度とかいろいろな被害の救済の制度があるわけなんですね。ただ、この制度を知らない人が多かったり、そういうマークのついていない商品が非常に多かったり、そのマークがついていたとしましても審査が非公開ですとか賠償の金額が十分でないというような幾つかのやはり今のままでは足りない部分がありますので、そういう周辺のそれぞれの製品についての部分についても被害を救済できるような制度を一層充実していってほしいなというふうに思っております。  この製造物責任法ができるということに当たりまして、これまでも食品とか化粧品などについては消費者への窓口とか、そういう小さな被害の相談、対応ということを各社やっていましたけれども、今回、製薬、薬も入ってくるということで、製薬会社でも窓口を新設したりいろいろな方法を考えているというふうに聞いておりますので、そちらの方面も各業界で充実していってもらうといいのではないかなというふうに思っております。  それが最初の製造物責任法にかかわる部分です。  次に、「環境に配慮した商品を」。これも昨年の環境サミットを初めいろいろな世界の流れの中で、消費者重視と並んで環境に優しいとか、やはり言葉の方はかなり躍っておりますけれども、実際にどういうことをしていくかということをこれから真剣に取り組んでもらわないといけないのではないか。また、消費者サイドとしては、そういうことに取り組んでいる企業の製品をしっかり購入するとか、やはりそれぞれの役割があるんじゃないかと思っております。  環境に配慮した商品をどう見きわめるかというのは非常に難しいんですが、これは日本生協連がエコロジカル・ガイドラインというのをつくっておりまして、これは一つの例ですけれども。例えば資源の面から資源枯渇を回避するというのが一つのポイントで、それにはエネルギー消費量、水の消費量、それから各種の資源消費量などを含んでいる。それから二番目は、環境汚染を低減する、低くする。これはCO2とかNOx、あるいはBOD、CODなどのそういう有害物質をチェックしていく。それから三番目は、ごみ処理の負荷をなるべく少なくする。固形の廃棄物は、今、非常に環境問題にとって大きな問題ですからその発生量を低くする。その三つのポイントから、この製品はエコロジカルのガイドラインでどういう位置づけになるかということをチェックするようなことを考えたりしております。  一つの例で申し上げますと、例えばリターナブル瓶がありますね、繰り返し使うビール瓶のような。あれはつくる場合にエネルギー消費量や大気汚染というような部分については非常に負荷が大きい。ですからポイントは低いんですけれども、あれは大体平均すると二十四回使い回しをしておりますので、今度、ごみ処理という意味からいきますと非常に負荷は小さくなるというようなことがある。例えば東京などの都市部では非常にこみ問題深刻ですから、ビール瓶などのリターナブル瓶の場合は、つくるのには非常にコストがかかりますし、それから廃棄する場合にはその負荷も大きいんですけれども、繰り返し使うというような要素を入れていきますと、それは環境にとって優しいということになる。  それからペットボトルの場合は、清涼飲料水などの入っているあの軽い瓶ですけれども、あれはごみの負荷ポイントは瓶などに比べれば非常に少ない。つぶしてしまえばいいわけですから。ただ、あれは一回ずつ使い捨てということで、都市などごみ問題が深刻なところではかえってビール瓶のようなリターナブル瓶をたくさん使うことを考えた方がいいのではないか。その場合に、輸送にまたコストがかかりますので、なるべく近いところでつくって輸送コストを下げながらそういうものを使うとか、それぞれ地域とかその置かれた状況によって負荷のポイントを考えていけばいいのではないかというようなことがあります。  それからもう一つ、リサイクル、リュースという書き方をしましたけれども、リサイクルは御存じのように再生して処理をする。それからリユース。やはり実際に使うところまで結びついていきませんと、なかなかリサイクル、リサイクルと言っても実際にいくのは難しいのではないか。  今、牛乳パックとかトレーの回収などは進んでおりますけれども、なかなかそれ以上に包装容器のごみというのは出ているわけですね。それをどういうシステムでやっていけばいいかということなんですけれども、現在はメーカーや自治体などが例えば古紙ですとかいろいろな瓶などを回収しましても、なかなかコストの方がかかるのでうまくリュースまで結びついていない。今、幾ら分別収集をしても、分別収集したものが生かされていないで、ただ埋め立てられている。  そのあたりをうまくシステム化していかないといけないのではないかということで、もう一枚ここに資料をつけましたけれども、例えばドイツの場合はデュアル・システムというのをつくっておりまして、事業者が製品を製造販売するときにマーク料という形でここのデュアル・システム社というところにお金を払っている。それを消費者が使いまして回収される。それで、その回収・処理業者あるいは自治体に対してそのデュアル・システム社というそこのこのシステムをうまくするためにつくられた会社から分別収集を委託し、その委託料、お金を払うわけです。お金を払われていますから、それを今度は再生原料を使用するところへ無料で引き渡す。そうすると、これはうまく回っていって再生使用までやっていくことができるという、これはドイツの一つシステムです。  あとフランスでも似たような、これは固有名詞なんですけれども、エコ・アンバラージュ・システムというのがありまして、これは製造だけではなくて輸入にもかかっているんですけれども、やはりライセンス使用料というのをそこの会社に払います。そうするとその会社が、ずっと使われた後、それを回収する地方自治体に対して金銭的、技術的な支援をする。それで、今度はそれを有価で買い取るというようなことをしまして、ですからそこはコストがかからずにやはりリサイクル業者や再生業者の方へ回っていくという、システムになっているということなんですね。  この二つのシステムともすべての包装廃棄物がこの対象になっています。輸送の場合の段ボールですとか、それから製品を包むための、水ですとか歯磨きとかそういうのは筒、外装がないと製品にならないわけですけれども、そういう外装あるいはその製品を入れた外箱などすべてのもので、このマーク料、ライセンス使用料というのは廃棄物の容量と重量によってかかるようになっています。  ですから、これから日本の中でも、事業者がみずから回収するとか、デポジット、預かり金方式をとる、あるいはデュアル・システムという、これは並行システムとも言われていますけれども、もう一つの仕組みをつくる、そういう中からうまくとって、やはりつくるだけではなくて廃棄のところまで責任を持ったやり方をしていってもらう必要があるのではないかというふうに思っております。  それから、ちょっと駆け足になりますけれども、最後の企業消費者教育の部分なんですけれども、今、新しい学習指導要領の中で、小学校、中学校、高校で家庭科が男女共修で必修になったりした生活者としてもっと教育を小さいころからという中に、一つの柱として消費者教育というのがございます。ただ、これは消費者被害に遭わないというような消極的な意味だけではなくて、やはり消費者というのは一人の市民でありますから、その一人の市民が生きていく上でどういう価値観で物事、物やいろいろな事柄を選んでいくかという、ある意味人間教育というところまで本来は広げてやりたいということなんですね。ただ、日本ではまだこの歴史が浅いものですから、教材についても教え方についてもまだ確立していません。  ですから、ここへも大いに企業から持っている人材とかノウハウを提供してもらいますと、最初に申し上げましたように、賢い消費者がいい商品を選んでいけば、それはいい企業が育成されてその企業が生きていく、どんどん大きくなっていくということにつながっていくということだと思います。  消費者教育につきましては、ほとんどどうやっていいかわからないという状態なので、それを何とか支援しようということで一九九〇年に消費者教育支援センターというものが、これは経済企画庁と文部省が設立を許可いたしまして、あと企業もここに数多く参加しています。現在百十八法人が、それこそもう食品から自動車、精密機械、スーパー、銀行などいろいろなところが協力をする形で、今、消費者教育普及のための教材の開発ですとか、あるいは指導をする先生を養成するための講座ですとか、こういう消費者教育についての情報のネットワーク化などの事業をしております。  ですから、こういうところへも大いに企業は力をかしてほしいというふうに思っておりますし、それから例えば企業の中で、消費者関連専門家会議、ACAPと呼ばれておりますけれども、そういうところで企業が提供する学校における消費者教育資料作成ガイドラインなどというのをつくっておりまして、こういうことに基づいて各企業がいろいろ消費者教育の資料を提供していこうということをやっています。  これはもちろん当然のことながら、自分のところのコマーシャルに使っちゃいけないとか、内容や表現方法に配慮するとか、必ず第三者の協力を求めてそういう会議などを経て資料を作成するというようなのをつくっておりますし、それをもとにして家電製品協会が家電製品についてのチェックリストなどをつくっているんですね。こういうようなものも簡単な消費者教育の一つですし、例えば今、教材が不足している消費者教育を実際にやっている家庭科の先生なんかに聞きますと、例えば電気製品やいろいろな家電製品なんかを買いますとパンフレットがついてまいりますね。ああいう説明書一つでも、つくり方を変えてくれるとそれがもう即教材になりますということがあります。  それから、実際にこの消費者教育支援センターなどへ企業が人材を派遣して、そこの企業のいろいろ技術的なことを知っている人が学校に出向いて消費者教育をする先生にいろいろなことを教える、あるいは直接子供たちに教えるということも少しずつは行われ始めておりますので、こういう方面にもぜひ企業は力を注いでほしいなと、そういうふうに思っております。  もしお許しをいただければ、これはこの後少し回して見ていただくとよろしいかど思います。  それから、この支援センターについてはパンフレットが何部かございますので、もしもよろしければこの小さい方はおとりいただいて、こちらはお戻しいただければありがたいと思います。  以上です。
  13. 櫻井規順

    会長櫻井規順君) どうもありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  14. 関根則之

    関根則之君 三人の先生からいろいろお教えをいただきまして、ありがとうございました。  今井先生にまずちょっとお尋ねをしたいんですけれども、今、何かもうリストラじゃなくてリエンジニアリングだというような話がございましたね。そういう中で、大変革命的な手法なんだという評価と、それから逆に、あれは必ずしもそうじゃないよと、もう日本企業なんかがとっくに昔からやっているやつの見直しといいますか、そういう程度じゃないかという話もありますけれども、日本は大変専門性というのがなくて、職務の範囲なんかも非常に広くとって、余り細分化されていない。結局、ある意味では多重構造みたいなものが日本企業にはあるんじゃないか。そういうものが能率を全体として上げているんじゃないかというような気がするんですが、その辺について先生のお考えがありましたらお聞かせをいただければありがたいと思います。  それから次に、花見先生にお尋ねをしたいんですが、正規雇用以外の人々に対する雇用面での不平等というものがこれから大きな問題になってくる。既に大きな問題なんでしょうが、私も大変同感なんです。しかし、その中で労働組合の役割というものが、必ずしもそういう労働者をうまくつかまえ切れなかったということが今までも言えるし、これから労働組合に対する期待というものが大きいのではないかというお話があったように思います。日本のような風土といいますか、今までの実績、既に現在でも正規労働者についての組合加入率自身が非常に低くなっている、そういう状況の中で、これからそういった正規雇用以外の労働者に対する労働組合の果たす役割、確かに期待は大きいんでしょうけれども、実際問題としてどこまで組合にやれるんだろうか。その辺の見通しについての先生のお考えをお聞かせいただければありがたいと思います。  それから、小宮山先生にお尋ねしたいんですが、ドイツのデュアル・システムとかフランスのエコ・アンバラージュの制度というお話を承って、確かにこれは大変な制度ではないかと思いますけれども、例えば費用の面で製造事業者が相当負担をさせられているかと思います。そういった負担面とか実際のシステムが果たしてうまく機能しているのかどうか、現状と、日本へこれを持ってきたときにどうなんだろうか、その辺のお考えをお聞かせいただければありがたいと思います。以上です。
  15. 今井賢一

    参考人今井賢一君) リエンジニアリングの評価につきまして三点お答えいたします。  まず第一点は、関根委員御指摘のように、これはもう既に日本でやっていたことなんではないか、セブンイレブンとか花王とか。おっしゃるとおりで、あの本は非常にアメリカでもよく売れていますし、翻訳をされた日本の本も売れているんですが、翻訳をした野中郁次郎君というのは私のかつての同僚でありまして、彼に、何であんなくだらない本を翻訳したんだと言ったら、いや、君の言うようにナッシングニューだと言うので、別にあそこに新しいことはないんであります。  ただ、私もネットワーク組織論というのを書きまして、書いたことは同じなんです。もう五、六年前に私が書いたこととあそこで書いているエッセンスは同じなんですけれども、しかしなぜあれがアメリカで重要だったかということは非常にこれは日本でも考えるべきことであって、というのは、あそこに書いてあるように、分業に対する考え方アメリカは変わったんですね。  つまり、アメリカは御承知のように職務給で、仕事を分けてやって、これを磨く職種は賃金幾らということだったんですけれども、そうじゃなくて、一人ずつに分業させて一組で、一つの例えはこれをつくるのには五、六人で分業させる。それで一人ずつ評価するということになりましたから、職務給の体系ではなくなるということですから労働のインセンティブも日本のように高まりましたし、そしてそれをコンピューターベースになるようなシステムにつくったということで、したがってコストは三分の一になるとか二分の一になるというような事例が発生したわけで、私はアメリカにとってはあれは画期的なことだったと思います、もしあのままああいうことだと。ただ、あれは組合のないところで成功しているのであって、全般にあれが波及するかどうか、ちょっと話は飛びますけれども問題で、第二点は、ですからアメリカでの評価と日本での評価は違うんではないか。  第三点は、御指摘のように、日本的な、専門性を特に決めないで、ある集団でやるとか、あるいは一緒にいろんなことをわっとやるというようなやり方がどう変わるのかということでありますが、やはりそれが今の日本のリストラクチャリングの課題でありまして、私の言葉で言えばこれはネットワーク分業ということなんですが、要するに専門を持ちながら分業をしながら、しかしそれが例えばアメリカのようにそれぞれ全く別々の個室に入った分業ではなくて、情報を共有しながら分業しているというシステムにどういうふうに変わっていくか。それをアメリカはコンピューターで情報を共有しているわけですね。Eメールでお互いに何をやっているか連絡し合う。ところが、日本はそういうシステムではありませんで、お互いに顔を突き合わせながら情報を共有しているわけです。  これはどっちがいいかということになるとかなり議論になるところですが、しかし今リエンジニアリングから学ぶべきことは、やはりホワイトカラーの生産性をどう上げるか、そしてその情報の共有の仕方はもう少し情報技術を使ってもいいんではないか。毎日飲み屋に行って相談しなければ情報が共有をできないような今までやってきたやり方というのは、やはり今リエンジニアリングで転換するだろうし、本社のスリム化も行われるだろう、そういう評価なのではないだろうか。  お答えはそういうことでございます。
  16. 花見忠

    参考人花見忠君) これは一番難しい御質問で、労組の役割は今後どうなるかということでございますが、私申し上げたのは、今までの日本の労働組合を全体として見ると、正規雇用の労働者の利益の擁護、推進という機能を果たしてきたことは否定すべくもないと思います。  これは、ですから労働組合のイデオロギーあるいは建前と現実の役割というのはかなりギャップがあったわけですが、しかしそれは労働組合の責任かというと必ずしもそうではなくて、やっぱり先ほど申し上げたような日本雇用構造を前提にして、もし従業員の利益を守るとなれば企業別組合でああいう行動パターンをとらざるを得ない。それを克服するために、例えば一番わかりやすいのは春闘というようなかなり創造性を発揮した方法で正規雇用以外の人の利益を守るために日本の労働組合は努力してきたという面も他方あろうかと思います。  ただし、平等ということから言いますと、実は日本の労働組合だけではなくてどこの国でも労働組合というのは基本的に非常に保守的な役割を従来果たしてきて、やっぱり女性とマイノリティーの利益を必ずしも擁護しない、基本的に伝統的にそうだったわけでありまして、アメリカなんかの労働組合は非常にその点が急速に変わってきたわけです。  これは恐らく労働組合の努力、理念をどのように受け入れてその理念のためにどのように努力するかという組合運動の一つあり方で、今後日本の労働組合もそういう方向にコントリビュートする可能性というのを全く否定しませんが、他方もう一つの問題は、御指摘のように組織率が下がってきておりまして、これも日本だけの問題ではなくアメリカはもっとひどいわけです。そうして、特に先ほど申し上げたような三角以外の矩形のところが非常に数として大きくなる、あるいは産業の中で重要性を持ってくるというのが今後の見通したとすれば、こういった人たち、つまり女性とか非正規の雇用のところの人たちというのは伝統的に労働組合になじまない非常に組織しにくい分野でありました。そういった人たちを労働組合がどのように組織していくかというのが相当難しい問題であります。  ただ、労働組合がどの程度そういった役割を果たせるのか。どこの国を見ても非常に難しい問題があるわけですが、もう一つの問題は、労働組合以外にそういった労働組合を組織していない人の声、利害を反映するような組織というものが考えられると、恐らくこれは従業員代表制だろうと思います。労働組合と別、あるいはオーバーラップしてもいいんですけれども、現場の従業員のボイスをどのように吸い上げるかということ。これはつまり、制度としての従業員代表制と、それから現実に企業の中でそういう声を吸収する、これは企業ごとにおやりになる場合、それから全体として国の政策としてやるという二つのやり方があるかと思います。見通しとしては甚だこうなるだろうということは言えませんけれども、そういう問題があると。
  17. 小宮山洋子

    参考人小宮山洋子君) 私もこのとおりが日本に導入できるとは全く考えておりませんが、やはりこういう考え方もある程度参考にして考えていくほど今の日本のごみの問題などというのは深刻なのではないかというふうに思っております。  これが成果が上がっているかどうかということにつきましては、この法律がスタートしましたのが両方とも九三年の一月ですので、まだ成果がどれだけとはかれるあれではないと思いますが、これは法律でも義務づけられたシステムで、事業者が包装廃棄物の回収、リサイクルについてもっとコストと役割責任を踏み込んで果たしていくという法律になっているわけですね。ですから、もちろんそういうコスト面で負担をすると同時に、そうなりますと事業者の方でも当然包装を一層簡素化する工夫をしていきますので、実際にドイツなどではこの法律が施行されて以降包装が減っているということもありますので、そういう効果もあるのではないかというふうに思います。  コストは、企業が負担する部分と製品コストにある程度はね返らせて消費者が負担する部分と両方あると思いますので、そういう意味では消費者の方の意識としても、やはりそういうごみの問題を含めて環境に配慮した製品を手に入れるためにはある程度お金を負担する、コスト負担を消費者の側もしていくという、そういうコンセンサスづくりというのも必要だというふうに思います。  もう一点は、今、企業のサイドばかりお話ししましたけれども、消費者のサイドもやはりごみの問題などについては当然果たしていかなければいけない責任があるわけなので、企業のサイドも消費者のサイドもごみを幾ら出してもその負担が同じというのでは不公平ではないかという考え方があるわけです。だから、それだけ多く包装して廃棄物も出した企業はやはりお金をたくさん払うし、消費者のサイドでいつでも、たくさんごみを出せばある程度以上は有料化するということを今、市町村などでやっているところもありまして、そういうことをしなければ減らないというのも問題なんですが、実際に出雲市などでは三分の一ごみが減った。  あそこでは例の岩國さんがやっていらっしゃるわけですけれども、ある程度以上お金を取るというところはいろいろやっているんですけれども、出雲市の場合は、年の初めに一定量のごみ袋を渡してしまって、それが余ったら市が買い上げる。そこまでやりますと、買い上げても実際にこみ処理に使うコストの三分の一で買い上げられる。そのことによって市全体のごみの量が三分の一に減ったというようなこともありますので、このコストの負担ということと出さないことの両方、意識と実際に払うことと、それから企業消費者と、いろんなサイドから考えていく一つの材料として、こういうことももし可能なら考えるぐらいやはり事態というのは深刻なんじゃないかなと思うわけなんです。
  18. 藁科滿治

    藁科滿治君 貴重なお話を承りましてありがとうございました。数点質問をさせていただきます。  まず第一に、今井先生と花見先生、御両人に共通する質問をさせていただきます。  国の基本政策と企業行動関係について戦後の経過を振り返りますと、国の基本政策は輸出拡大あるいは経済立国、こういうことでやってまいりましたが、企業行動もこれに対応する形で成長第一、輸出拡大、こういうことで進んでまいりました。その結果、経済大国という大きな資産をつくりましたが、一方で生活小国という大変な問題点も残したわけで、八七年でしたか、前川リポートを契機にしまして我が国の基本政策は、それ以降、産業優先から人間優先という方向に軌道修正をいたしました。昨年からの生活大国五カ年計画、こういう流れもそれを引き継いだものというふうに我々は考えております。  そこで問題は、軌道修正のデッサンは大変立派なんですけれども、実践過程は必ずしもよくない。率直に言って非常に遅いというふうに私は判断しているわけでございまして、その原因、背景はどこにあるんだろうか。きょうのお話でも幾つか解明されておりますけれども、私が特に御質問したいのは、これから時間をかければこの問題は容易に解決するというふうに楽観的にお考えになっているんでしょうか。それとも、もともと企業というのは生産供給の主体者で、これはなかなか大変だよというふうに悲観的にお考えになっているんでしょうか。これが第一の質問でございます。  それから第二の質問は今井先生に申し上げたいんですが、雇用システムのお話がございました。  確かにおっしゃるように、日本雇用システムは総括的に雇用を確保するという意味で大変大きな長所を持っていると思います。しかし問題は、最近特に労働市場の構造が急速に変化しております。女性の進出という問題と、特に高齢化の問題。既に女性の雇用率は全体の中で三八・四%を占めている。それから五十五歳以上の高齢者の雇用率は一五・九ということで、この二つの要素で既に五割を超えている。こういうことからいいますと、雇用の総括的なシステムはしっかりしているけれども、活用システムという面では制度的にも運用面でも大変問題があるというふうに私は思うわけでございますが、そこらについてどのようにお考えになっておりましょうか。  それから花見先生には、いろんな雇用システムの二面性というお話もございました。私は、ここで特に絞って企業の教育のあり方という面から質問をさせていただきます。  お話にもありましたように、日本の場合には、就職のときの判断基準が仕事ではなくて企業を優先する企業重視、こういう判断で会社に入ってくる方が多いわけでございます。その意味では、私ども体験があるんですが、従業員の仕事に対する満足感というのは案外低いんです。そういうことからいいますと、今までの日本の教育の一括、一斉という画一的な方向よりも、これからはむしろ創造力、個性、開発力、こういうものに比重を置きかえた教育システムの再構築がぜひ必要ではないかというふうに私は思います。  たしか、昨年のクリントン政権が誕生した直後にアメリカの労働長官が、日本の教育システム視野に入れながら、アメリカもこれから教育システムを強化、整備するんだ、こういうことをおっしゃっておりましたが、私は日本の教育システムはいいところばかりではなくて、先ほども触れたように、むしろ構造の内容に対応するように質の変化を追求していく時期に来ているんじゃないか、このように考えますので、お考えがあれば伺いたいというふうに思っております。  それから最後に、小宮山先生に伺いますが、最近、消費の動向、意識が変わってきたということが言われております。かつては新商品とか流行ファッションというのは女性、若者から動いていく、こういうことが言れれたわけですが、昨今ではそういう女性、若者も非常に慎重な消費の姿勢に変わってきている。等身大の消費なんということが言われている。これは最近の不況とかバブルの体験とか、こういう短期的な判断からそういう姿勢をとっておられるのか、あるいはもっと根本的な消費意識の革命というのか、そういうような改革の面からこういう姿勢をとっておられるのか。小宮山先生あたりはどういうふうに認識されておられましょうか。  以上、質問させていただきます。
  19. 今井賢一

    参考人今井賢一君) 非常に重要な問題をいただきましてありがとうございました。さしあたりお答えできることを述べさせていただきます。  まず第一点の、国の政策、それから人間優先とかそういう新しい政策目標のデザインは結構だけれども実践過程はという問題、私はこれは基本問題だと思います。  というのは、世界的にもグローバル企業、例えばアメリカ企業は、インテルであるとかマイクロソフトというような会社は今、非常に世界的にもうかっているわけでありますが、彼ら、あるいは学者も最近そういうふうに言っているんですが、もう完全雇用はあきらめたということを平気で言うような時代になってきた。私は、企業がその国の人間優先なりあるいは雇用の確保、あるいは生活大国ということにどういうふうに貢献するかということと、それから企業がこれだけグローバルになって、世界の何十億人のマーケットを相手にできるようになったという時代で大きなギャップが存在しているというふうに考えまして、これをどう解決していくかは大げさに言えば資本主義のこれからの根本問題であります。  ただ、それに対して、私は日本の場合にはそれほど悲観的になっていないわけでありまして、というのは、今、いろいろ失業問題、要するに雇用企業から吐き出していくというような問題が発生すると思いますけれども、生活大国の考え方にありますように、日本の生産システム生活システムとをどういうふうに両立させるかということが根本課題であり、これが今の内需拡大それからこれからの経済政策での目標でもあろうかと思います。したがいまして、生活システムの方にどういうふうに産業をつくり、そしてそこでどういうふうに雇用を確保していくかということでありまして、そのために規制撤廃もいろいろな形で主張され実行されようとしているわけであります。  それで、それが時間をかければできるのかという御質問、あるいは悲観か楽観がということなんですけれども、私はやっぱり多少批判的なのは、規制の撤廃というのは、本当に規制は撤廃されずに少しずつ残っていくわけでありまして、その辺はなるべく早く事実上不必要な部分がなくなりませんと生活システムにかかわるビジネスが進まないわけですね。  現に、例えば規制撤廃でCATVが、CATVの事業というのは日本はもうアメリカに比べて五分の一ぐらいの普及率で、あれがどうなるかというのはかなり重要なことだと思うんですが、あれも規制は撤廃されたんですけれども、電柱一本一本に許可が要るんだそうですね。撤廃したんだけれども、事業はスピードを持ってやらないと形成されないわけなのでありまして、そういう意味規制撤廃をもう少し本格的に進めれば、例えば情報インフラができるとともに、在宅医療ができる、生涯教育ができるというような形での生活システムにかかわる産業ができて、雇用ができて、そして生産システム生活システムとが両立するような形で日本の経済は再度活性化し得るんではないか、私はそういうふうに考えております。  そこの点は、楽観ということではありませんけれども、今の変革の中でそこに何らかの新しい芽を見つけ、それを育てていかない限り日本の経済は成り立たないし、また国際的にも、内需拡大それから貿易収支の問題、そういうことにこたえられないんじゃないかというふうに考えている次第であります。  それから第二の、雇用システムでどういうふうに人間を活用していくか。確かにどういうふうに活用していくかということなんでありますが、一言で言いますと、これから経済が成熟していくに当たってサービスというものが非常に多層にがつ多重に必要になってくるんじゃないか。情報社会といいますが、情報の場合も情報プラスサービスが必要なんで、それはただ単に情報があるだけじゃなくて、私に必要な情報、あるいはそれにきめ細かな配慮をした情報が必要なんで、いろいろな形でサービスというものが必要になってきて、これが成熟化社会で住みやすい社会ということになるわけであります。特にそういう場合には女性に向いた仕事であります。ところが、このごろの学生の志望を見てもサービスというのは嫌がるんですね。サービスというのは何となく水商売だという意識があるらしくて行きたくないというようなことを言うんです。私は、これからの成熟社会というのは物はほとんど要らなくなるわけでありまして、ほとんどがサービス社会、実質上は情報とかサービスの社会になるので、そういうところできめ細かな社会のニーズ、消費者のニーズにこたえていくことが人材活用になってくるんではないだろうかというふうに思います。  最後に私は、やはりこれだけ日本が、例えば仮に一ドル百円とか百十円という経済を世界の中で考えてみますと、日本の所得というのはもう大変な所得。つまり、アジアの諸国に比べては十数倍、ほかのところに比べては百倍ということでありますから、それがもう終身で安全で年々昇給していって、そしてだれもが平等に十万ドルの所得を得るなんということはあり得ないわけであります。それぞれの能力、好み、それから生活スタイル、人生観に応じて所得を得るということ、そういう雇用形態を考えるべきなんじゃないかというのが私の意見であります。  以上であります。
  20. 花見忠

    参考人花見忠君) 最初の問題、国の基本政策ということですが、私は、やっぱり生活大国、先ほども申し上げたんですけれども、理念として日本はそちらの方向に向かっていくということは言うまでもないわけであります。  欧米の社会と比べて一体日本の問題点は何なのかということを考えてみますと、たまたま昨年の秋二カ月近くヨーロッパで生活をしてますますそういう感じを持ったんですが、日本企業が我々の生活の豊かさのためにどの点でプラスでどの点でマイナスかというと、先ほど申し上げたように、雇用についてはほかの国に比べてやっぱりかなり及第点だろう。問題は労働条件で、賃金もそこそこいい。問題はやっぱり労働時間、つまり余裕のある豊かな生活という点からいうと非常に問題だと。それからもう一つヨーロッパで生活してみて非常に深刻に感ずるのはやっぱり住宅の問題でありまして、そういうところが日本の貧しさの最大の問題。ですから、ゆとりとそれから住宅ですね。  そうなってくると、私はどうも企業のできることというのは割合に限界があって、住宅、土地の問題はやっぱり企業だけの努力ではなくて、これは国として取り組むべき問題、その中で企業の果たす役割というのはもちろんありますが。  そうすると、残る問題というのは時間の問題。これは、先ほど申し上げたように中基審で随分いろんな議論をしてきたわけです。それから生活大国五カ年計画の議論のときも労働小委員会で議論をしたわけですが、千八百時間というような国の政策目標を掲げて企業もあるいは労働組合も含めて努力をしていただくというような政策、あるいは基準法を改正してある程度少しずつ段階的に労働時間を短くしていくというやり方、つまり国のイニシアチブでやるやり方というのはやっぱり限界があるし、王道ではないだろう。先ほど申し上げたように、どこの国でも法律でそういうことをやった国は実はないわけであります。  そうなると、やっぱり企業従業員あるいは労働組合の努力に期待せざるを得ない。しかし、にもかかわらず実は時短の法改正の中で私どもいろんな議論をした結果、一昨年時間短縮促進法という法律を通したわけです。それはそのことと関係があるんですが、やっぱり当事者が努力をしていただく環境づくりみたいなことがむしろ法律で強制するよりは重要だろう。そのことは、大変言いにくいんですが、私は非常にペシミスティックでありまして、日本人の生活のゆとりのなさというのは、今申し上げたような要素よりはどうも最終的に国民性の方にいっちゃうんじゃないかという感じが非常に強くて、国の政策でこれを変えるというのはやっぱり相当、百年計画でやらないとできないのではないかというふうに感じております。  それから、二番目の企業内教育の問題ですが、日本雇用構造あるいは企業従業員関係ということで先ほど申し上げたその結果、非常に効率はいいけれども、その場その場の効率ということに企業の中の教育というのはなりやすいわけです。それにプラスしてもう一つは、他の産業社会と比べて日本企業内教育、そのプラス面でもあるしマイナス面でもあるんですが、仕事の概念そのものが非常にあいまいである。それから、企業内の人間関係とか組織あるいは企業外とのつながりというような非常に人間的な関係が効率ということにつながっているのが日本の仕事のやり方でありまして、その結果、配置、昇進の基準そのものも大変主観的になりやすい面を持っております。  OJTを中心にした日本企業内教育というのはそういう非常に普遍的でない教育になりがちなわけです。そうすると、やっぱり普遍的な能力、つまりおっしゃるような個性を重視した創造性とかそういう教育とはなかなか日本企業企業内教育というのは結びつきにくい面を持っているのですが、それは、日本企業あり方が先ほど申し上げたように国際化の中で変わっていくことによって徐々に変わっていく可能性があるということです。  もう一つ、にもかかわらず企業の中でできることというのはやっぱり限界があるわけで、恐らく教育の質を変えていくという点では、例えばアメリカの場合で言えばファウンデーションですね。企業がそういう人間の創造にコントリビュートしている一つの重要な場面というのはやっぱりファウンデーションでありまして、我々もフォード・ファウンデーションとかロックフェラー・ファウンデーションの恩恵を受けていろんな勉強をさせていただいているわけで、そういう基礎的な創造性を発揮するための企業貢献の仕方、日本が足りない面はそういうところにあるんじゃないか、それだけ申し上げておきます。
  21. 小宮山洋子

    参考人小宮山洋子君) やはり新製品などに消費者が飛びつかなくなったというその消費の仕方の変化というのは、単にバブルの後の一時的なものというよりは、これは意識改革どまで言っていいかどうかわかりませんけれども、これからどんどんその方向に進んでいくのだというふうに私は思っております。というのは、一つは物がある程度満ち足りたせいもありますけれども、豊かさを問い直しているという点と、もう一つは個性化が進んでいるという、二つの点からやはり進んでいくんじゃないかなと思うんですね。  その豊かさの問い直しの面からいきますと、今いろんな世論調査をしましても、物質的豊かさよりももっと精神的な豊かさの方にかなりウエートがかかってきています。そういう中で、たくさん物をつくって売るという大量生産大量消費への反省から、普通よりも長持ちをするちょっとベターなものを数少なく買うという選択が一つあるんじゃないかと思うんですね。  それと、やはりかなり個性化してきていますから、流行を追うというのはみんながそれを使うあるいはみんながそれを着るからというところだったのが、違う季節に違う格好をするとか個性的なものをあれした方がいいというような、そういう個性化をしているということがあると思います。  そういう意味で、消費者はいろいろ用途に応じてうまく使い分けを始めているんじゃないかと思うんですね。例えば、スーパーと専門店を使い分けるとか、あるいは花一つをとってみましても、今でも贈答用のもの、プレゼントするものにはとても高いものが一方では売れます。それに対して、あとちょっと食卓を飾るカジュアルフラワーは、もうスーパーで野菜を買うのと一緒に一束三百円、四百円のものをかごに入れて買っていく。時に応じて同じ商品に対してもお金の使い方を変えているとか、考えて用途に応じて選ぶようになっているんだと思うんです。ですから、企業の方もなるべく選択肢を用意して、情報をきちんとアピールしていくということがやはり今の消費者に対しては必要なのかなというふうに思います。
  22. 長谷川清

    長谷川清君 きょうは本当にありがとうございます。私は新緑風会でございます。まだ十分になじんでおりませんで、ちまたで若い人はこれを新緑風の会とかそういう呼び方をする人もいるぐらいでございまして、正式には新緑風会でございます。  時間の関係もございまして、後にもずっと有力な質問者がおりますから、できるだけ手短に私も質問をそれぞれの方に一点ずつお聞きしたいと思いますが、お答えの方も簡単で結構でございます。  最初に小宮山先生の方に。先ほどPL法の問題について数点にわたりまして非常に細かく、今国会でぜひ成立を目指せという応援をいただいたような感じで、私はこの点で、このテーブルはエネルギー調査会というエネルギーというものを特に専門にしておりますだけに、一点だけ申し上げたい。  エネルギーはこのPL法から見ますると除外でございます。なぜかなれば、エネルギーはこれは生産即消費である。したがって、民法の八十五条におきましてこれは物ではない、いわゆる有機物扱いではなくて無機物扱いになっております。それがもとになりまして電気事業法が制定をされてと、すべての仕組みがそうなっておりますのでございますから、例えばこういう電気がついている、あるいは故障や何かが起こる、あるいは配線に漏電が起こる、そういう場合のケーブル線については、これはケーブルをつくったメーカーが対象に入りますといったような区分が大前提になります。そういう点はエネルギー調査会委員の一人として、影響力の強いNHKの解説委員をされている方でございますだけに、そのことについてひとつぜひ、それはもうわかっているよと、こういうことの御理解といいましょうか、そういう御認識を賜りたい。そしてまた、これはこれから審議をしていく問題でもございますので。  なぜそういうことを言うかといいますと、意見によりましてはヨーロッパ型のPLがいい。ヨーロッパ型においてはエネルギーもこの対象に入っている、だから日本も入れるべきだ、こういう議論が一方にありますだけに、それはやはり社会の仕組みが違うのと法律の背景が違うという点がございます。日本としてPL法を制定していく場合、しかも第一ラウンドでここから徐々にさらによくしていこう、こういうプロセスを考えますと、そういうことのめり張りをきちっとしておくべきではないかと委員の一人として考えておりますが、非常に具体的な問題でありますだけにその辺ひとつお考えをお聞きしておきたい。  それから、花見先生に一点お伺いしたいんですが、結論の方からいきますと、今のこの雇用関係日本型のいわゆる終身雇用という名前か長期契約という名前かは別として、その結果がいろんな日本的な固有の制度をいっぱい持っています。例えば退職金制度であるとかあるいは年に二回の賞与を支給するとか。あるいは賃金の体系にいたしましても、普通の経済ベースからいきますと収益が落ちれば賃金は落ちる、収益が上がれば賃金は上がる。いわゆるこれはある程度フロートしていく性質を持っておりますが、日本の場合には定期昇給制度というものもあって、それでも足りないからベースアップということで高い賃金を要求し、そして交渉し決定する、こういうことがございます。いろんな面においてこれはすべて日本的な固有の要素、体質といいましょうか、そういう結果が、賃金は非常に高い、高賃金、それは名目の賃金である。しかし生活はというとそれに比して落ちてきている、こういう結果を生んでしまっていると思うんです。この問題を解決するには非常に大きな、枝葉の問題よりはむしろ経済システムの全体の改革をしなければこれらの解決ができない。大幅の賃上げ賃上げでいきますと、一体どこまで行き着けばいいのか。つまり、金の流れと生活というものがうまくリンクしていない。  こういう関係をやはり改善をしていくためには、先生が提起されましたいわゆる正規群と非正規群という一つの大きなテーマがあります。そこに組織化されていないという問題もありますが、その面においては割と資本系列別があるいは業種別に関連事業の関係までを含めた組織化というものはできているが、その先の孫請的なところにまだ組織化ができていない。こういったような問題は今も難しい問題ではあるが、そういう認識で進めてはおりますけれども、前段のそういう賃金の仕組みや金の流れというものが、これは何かいい知恵がそこにあるかどうかという点についてお伺いをしておきたい。これはやはり私の結論からいきますと、経済システムの改革なくしてはこのプロセスというものは改革できないのではないか、こういう気がするわけであります。  今井先生には、雇用という問題について。  今、失業率は二・九。ついこの間までは二・八でした。その前が二・七。もうすぐこれは三にいきそうな気配にある。失業率が高まってきますると、雇用がそれに対する解決としては三次産業の吸引力、三次産業に回っていく。ところが、その肝心な三次産業が円高によってプラスの面とマイナスの面を持っておりますから吸引力は弱まってしまっている。もう一つはやはり新規事業の開発ということだと思いますが、これは今取り組んでおりますが時間がかかる。こういったようなそれぞれに決め手を欠いておる。  それで、さっき先生が御指摘のように、苦しいながらもこうやって雇用の保障とおっしゃいましたが、今やその雇用の保障は今回の不況によりまして崩れつつあるのではないか。そして、どんどんこの苦しさの余り吐き出してまいります、需要と供給のそういう関係において。当座の問題としては、政府の方では一応失業した人に対する職のあっせんであるとか再開発に対する支援であるとかいろいろなことはやっているんですけれども、一番心配なのは雇用。諸外国から見ると、選択の自由のある国における雇用失業というものはそれほど数字が示すほど深刻ではありませんけれども、日本の場合には一人一人非常に深刻な、しかもそれが高齢者にかぶっている。こういう状況で、当面何かしらここにうまい知恵が、今やっております施策以外にこういうところが抜けているよという点がもしございましたら、ぽつりで結構ですから何か教えていただきたい。  以上でございます。
  23. 櫻井規順

    会長櫻井規順君) コンパクトに答弁をお願いしたいと思います。
  24. 今井賢一

    参考人今井賢一君) 今、メモが参りまして、答弁は簡潔にということでありますので、簡潔にお答えいたします。  おっしゃるとおりでありますが、私の意見は新社会資本、つまりこれから社会資本のために三百六十兆とかそういうお金が使われるわけでありますが、それが物的なものだけじゃなくて、私が先ほど申しましたように、やっぱりそこにはいろいろなソフトとかサービスが必要なわけなんですね。そこに雇用機会がある。これはもうアジアがこれだけ発展していって、アジアの大規模なプロジェクトは足して三十兆にしかならないわけなんですね。ところが向こうにはいろんな雇用機会ができつつある。日本も何百兆円使う中でそこに雇用機会ができないはずはないんで、私はそこが少し、そう言ってはあれですが、ハード偏重になり過ぎているんではないだろうかというのが今恐らく抜けている論点じゃないかということで、簡単ですが私のお答えとします。
  25. 花見忠

    参考人花見忠君) 私は、何か難しい問題を聞かれて簡潔に答えると言われると困っちゃうんですが、御質問は、要するに雇用構造は経済システムが変わらなきゃ変わらないんじゃないかということで、それは簡潔に答えればおっしゃるとおり、そのとおりだということです。  確かにそうですが、つまりいわゆる終身雇用日本の長期雇用というのは日本産業の明治以降、あるいは特に戦後のあり方から出てきているんですから、それは経済システムが変わらないと変わらないというのはおっしゃるとおりなんですが、ただ他方、これは雇用構造が変わってくるのは恐らく労働力の質的な変化ですね。  例えば婦人の就業、どなたが御指摘になりましたように、ふえてくるというような問題ですね。それから、教育、学歴の高度化というようなこと。それに応じて生活に対する考え方、労働者の欲求というものが非常に生活のあり方を含めて変わってきているわけで、そういう面からやっぱり流動的な雇用が事実ふえてきているわけでありまして、安定した雇用よりはむしろ自由を尊重するような労働力のニーズの変化というものがあるということも考えていかなければならないのではないか、それだけ申し上げておきます。
  26. 小宮山洋子

    参考人小宮山洋子君) PLの範囲ですけれども、おっしゃるように、私も別にEC型でなきゃいけないとか、どこみたいでなきゃいけないというのではなくて、日本型でいいというふうに思っています。  それで、これもおっしゃるように、やはり段階的にやってみてまた進めていけばいいと思うんですが、ただし日本的というと概してまあまあいいじゃないかとかなれ合い的になりまして、そうするとどうしても力の強い企業の方に偏ったものになるということだけは、何とかそうでないように、やはり消費者の側を守るものにしていかないと。日本的という中身によると思います。
  27. 山下栄一

    山下栄一君 簡潔に御質問させていただきます。  最初に、小富山先生にお伺いしたいと思います。先ほど消費者教育支援センターの活動内容を細かい点にわたって説明されたんですけれども、教員研修とか出張講座とか、それから教材づくり、ビデオその他の教育方法のいろいろ具体的な方法を提示していくということ、企業の支援ということも大事だと思うわけでございます。特に若い人の被害が今頻発しているわけでございまして、そういう意味では中学生、高校生に対する消費者教育が非常に重要であると思うわけです。ただ、こういう中学生、高校生に対する消費者教育というのは一方的な形で教えても、ビデオを見せても、またお話を聞いてもなかなか入らないという、そういうことがあると思うんです。  そういう意味で私は、もっと具体的に子供たちが、生徒たちが本当に自分の問題としてとらえるためにも、考えておりますのは、例えば相談員資格というのがございますね。こういう資格を高校段階である程度取れるとか、それからまた教える家庭科の教員の先生そのものが相談員資格を目指すとか、そういう資格を持って教えるとか、こういうこと。また国民生活センターにいろんな全国の具体的な被害情報のデータベースがございますね。それをそのまま生きた情報を子供たちが感じられるようなデータベースの活用を、学校段階とかまた消費者教育支援センターできちっと手に入れることができるとか、それを学校へ還元するとか、こういうようなことをやっていかないと生の教育になっていかないんじゃないかなということを思うわけでございまして、この辺のお考えをお聞きしたいと思います。  それと、今井先生と花見先生には、企業の個性、創造性ということを二十一世紀企業あり方として言われているわけでございますけれども、先ほど藁科先生も少し触れられました。私は、採用段階の採用方法、採用基準、これを抜本的に見直すこと、言われて久しいわけでございますが、なかなか直らない。相変わらず画一的な指定校制度とか学校歴を重視するということが全然直らない原因は一体どこにあるのかということでございます。この点を直さない限り、やっぱり個性、創造性ということを言ってもなかなか変革できないのじゃないかなと思います。  そういう意味で、欠けている原因として終身雇用制とか年功序列制とか、この辺にも原因があるのかなということを思うわけでございますが、画一的な採用方法をどうすれば直るのか。もっとお金をかけて時間をかけて、企業の方が目を見張るような見直しを、また採用方法を提示していくということをしない限り、世の中そのものも、教育のあり方そのものも変革できないのではないかなということを感じているわけでございますが、この辺についてのお考えをお聞きしたいと思います。
  28. 今井賢一

    参考人今井賢一君) 今の採用基準の点でありますが、私も長い間国立大学におりまして、その問題をいろいろ考えてきたわけであります。私、今アメリカの大学に関係しているから言うわけじゃありませんけれども、私はやっぱりアメリカのように若いうちに何段階かかけてあるところへ半年入ってみる、あるところへ二、三年いてみる。その間に自分のキャリアパスといいますか、将来の方向を見出していく。そして、その間にまた大学院へ行って勉強したり、その方が健全だと思うんですね。  日本はやはり一発勝負で、大学を卒業したときにどこかの有力会社に入れるというのは昔の藩に奉仕するような感じでありまして、そこで勝負が決まるというのは異常なことだったわけでありますから、私はやっぱりそれは徐々に変わりつつあるし、また企業の方もそういうふうに変えていかなければ、これだけ技術が変わっているんですから、いい人間は採れなくなるんではないか。そういう意味で両方大いに努力して、今変わりつつある方向をさらに変化させていくことが大事だというふうに思います。
  29. 花見忠

    参考人花見忠君) 全く今井先生がおっしゃったこと、同感だと思います。  ただ、私は、企業がそういった採用基準を変えるということが大変大事だと思いますが、その変えるというのはなかなか難しいので、先ほど申し上げたような日本企業の労働力に対する評価基準が変わらない限りなかなか変わらないだろう。採用はその一環にすぎないわけでありまして、入り口のところだけは、例えば平等という点で言えば、雇用平等法で基準を客観化して客観的な基準の採用しか認めないという法的なアプローチもあり得ますけれども、やっぱり基本的にはそういった企業の中における労働力評価のあり方が変わらないとなかなか変わらないという感じでおります。
  30. 小宮山洋子

    参考人小宮山洋子君) 今おっしゃいましたような相談員の資格をというところまで学校教育でやるべきかどうかはちょっと私はわかりませんけれども、おっしゃるように、やはり一方的に何かを見せて、これをしちゃいけない、あれをこうした方がいいというのではなくて、いかに生徒たちがきちんと自分で考えられるような形で消費者教育を展開するかということに今みんな現場では苦労しております。  例えば、クレジットカードの多重債務などには高校生あたりから教育していかないといけないわけですけれども、それも以前はそういうものを使っちゃいけないという教育をしていたそうなんですね。だけれども、これだけたくさん情報がある中で、使うなと言うより、賢く使うにはどうしたらいいかと。自分で、新卒でお給料が幾らであって、例えばCDコンポを買う場合に現金で買うのとクレジットで買うのはどうか。今の収入だったらどれぐらいまでならできるかとか、その先結婚する予定があるのでこれ以上は無理だとか、自分が設計をして、実際町に出てそれで契約書までつくってみるというような教育をしている先生がいたり、そういうような実践例をまたデータベースにしていろいろ引けるようにするというようなこともしていますので、おっしゃるようにそういう生きた教育をしていくためのさまざまな工夫は必要だというふうに思います。
  31. 立木洋

    立木洋君 どうもありがとうございました。  端的に一問ずつお伺いしたいと思うんですが、今井参考人に、産業空洞化と企業社会的な責任をどう考えるかという問題なんです。  御承知のように、八六年から今年までずっと海外に対する投資額というのはふえているんです。バブルがはじけてああいうふうになった後でもやはり水準を保っている。海外での生産台数の比率というのは自動車業界やなんかでも非常なものになっていますし、松下電器で四〇%、本田技研で五〇%なんというふうな数字まで取りざたされるようになってきているんです。これでは国内での失業者はふえますし、それからさらには生産のあり方等々の問題についてもやっぱり大きな問題に今後なっていくんじゃないかと思うんですが、この問題をどうお考えになるかということです。  それから、花見参考人にお尋ねしたいのは、先ほど問題になりました雇用問題に関する国の関与のあり方なんですが、この点については確かになかなか難しいというふうなお話がありましたけれども、先ほどおっしゃった正規の雇用と非正規の雇用というのは、もう日本における雇用問題の非常に重要な問題だろうと私も思うんです、御指摘がありましたように。  この問題で見てみますと、やっぱり実質賃金が今低下しておりますし、マイナスになったということがあり、失業率もふえております。しかし、一方を見ると大きな企業における内部留保というのはこの五年間に六〇%ふえているんですね。そういうふうな状態を見るならば、いろいろな関与のあり方があると思うんですが、今、時短の問題というのは大きな問題になってきましたけれども、時短の問題でも猶予の緩和を大幅に認めるというようなことが最近出てきております。不況になってもやっぱり時短をやるのを大幅に緩和する。そういうふうなことも出てきますから、だから関与のあり方について私は問題があるんではないかというふうな気がするんで、そこらあたりの点についてどのようにお考えになっているかということをお聞きしたいんです。  それから、小宮山参考人には、今問題になっております規制緩和の問題なんですが、これを消費者のサイドからどうお考えになるかということなんです。  先ほどおっしゃった製造物責任法、これが被害者の立証負担が極めて軽減されるという方向に行くということについては私も同じ考えなんですが、これはこれとして実現されても、今問題になっている企業社会的な規制の問題ですね、これどうしてもやっぱり一定程度必要じゃないだろうか。例えば、食料品の製造日の表示なんかはやらなくてもいいみたいなことなんかも問題になったりしてきています。いろいろ問題があるわけですけれども、やっぱり社会的な規制というのは、消費者サイドから見るならば一定限度とうしても必要な内容として私考えられなければならない問題だろうと。事件が起こってからではなくて、それを事前に防止するという見地からも重要な点ではないかと思うんですが、その点についてのお考えをお聞きしたいと思います。
  32. 今井賢一

    参考人今井賢一君) 簡潔にお答えします。  産業空洞化の問題につきましては、私は今までの中小企業政策というのをその方向に総動員し、集約するということが大事だと。私も中小企業政策審議会の委員を長いことやってきているんですが、まさにいろいろな政策はとられているわけでありますが、やはりそれを今の空洞化の問題に振り向ける。そうしてその内容は、要するにアジア諸国と日本中小企業との間のすみ分け、分業をとうするかということであります。  日本でつくっている機械はまさにもうアジアでつくっているものとは違いまして、ほとんど情報処理機械に近いハイレベルのものになるわけでありますので、そういう方向にさらに進めるように融資をするなり助成をするなりして、そしてまたニューファクトリーのように非常にきれいな工場をつくる。そういう方向にあらゆる努力をして、私は日本の、特に東京周辺にある中小企業が空洞化にならないように最大限の努力をする。しかし、すみ分けが起こるのはこれは今の状況では当然であります。  それからもう一つは、例えば自動車で、まさに自動車の需要が停滞すれば中小下請企業は仕事がなくなってくるわけでありますが、これはかって重厚長大、造船なんかでみんな起こったことなんですね。ところが、ああいう企業がなぜ立ち直ったか、ああいう企業がなぜ今収益がいいかというと、先ほど小宮山さんのお話にあるように、ごみ処理とかそういうところに能力を向けていったわけなんで、そこの転換能力ということも図っていかなければいけないんで、やはり一言で言えばそういう意味での本格的な産業構造の転換が必要なんだということであります。
  33. 花見忠

    参考人花見忠君) 労働時間の問題で、国の関与のあり方という御質問でございます。  御指摘がありましたように、四十時間の原則を実現する過程の中で、産業別、規模別に非常に細かい区分けをして少しずつ時短を進めていこうという政策を労働省はとっておりまして、これは言うまでもなく、一挙に四十時間を法律で罰則つきで強制するということになれば、企業が成り立たないというところからああいうやり方をやらざるを得ないわけであります。  先ほど申し上げましたように、そういう政策で時短を少しずつ進めていくという前提に立ちますと、やっぱり消費者、取引先のニーズ、企業環境、業界の中の横並び意識というようなことを配慮しながら少しずつ時間短縮を実現していくという政策をとらざるを得ないわけで、先ほど御指摘いたしました時間短縮促進法を制定していただいたわけであります。そういう点からいくと、先ほど申し上げた国民性を含めて、国の政策の実現というのは非常に難しい面があるだろうということです。
  34. 小宮山洋子

    参考人小宮山洋子君) 規制緩和のことですけれども、これはやはり再三申し上げますように、そういう総合的な消費者被害の救済をきちんとするということと、もう一つ、自己責任原則と言われておりますけれども、自己責任を果たすためにはやはり情報がないとだめですから、それがあった上でやはり社会規制は必要最小限のものを残してというふうになっていると思うんです。  その最小限をどう考えるかなんですけれども、おっしゃいました製造年月日と賞味期限の問題ですが、あれ一つにしましても、これは消費者サイドの問題でもあるんです。新しいものほどいいという価値観になって、まだ使えるものが大量廃棄されるというようなそういうおかしな現象が起こっている。その部分がどこまでが本当に必要なものなのかという点。  それから、あと食品の衛生とか安全につきましても、今ある法律は戦後のまだ冷蔵庫がない時代のものがあるわけですね。ですから、こういうのはやはり不必要な部分もあると思いますので、社会的に最低限必要だというものも、今あるものをやはり洗い直してみて本当に必要なものを残していくということにしませんと、社会規制だから全部と言っていますと、今まだずっと昔のものを引きずっているものもありますし、現在に合ったものにやはり変えていく必要はあるんじゃないかというふうに思っております。
  35. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 時間も余りありませんので簡単に今井先生にお尋ねいたします。  先ほどから先生いろいろ御説明がありまして、企業社会的責任ということで、主に公害、環境に対する責任という面の御説明が重点だったような感じがしておりますが、当然情報産業からサービス産業いろいろあるわけでございます。メーカー以外のそういう企業社会的責任というものについても当然お考えをいろいろお持ちだろうと思いますが、そういう面の御説明を一つ。  それと、これはちょっときょうの観点からは違ってくるわけですが、企業のリストラ、その辺を先生もいろいろと御指導されておると思いますが、民間企業のそういう合理化努力というものよりも、実は行政の合理化というのが今重要な課題だと。行革でいろいろやっておりますが、なかなか行政自体がそういう面での意識が非常に薄いんではないか、こう感じるわけですが、先生の立場、民間企業をいろいろと指導されておる研究されておる立場から、行政改革、行政の合理化というものにお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。今の質問、花見先生もお考えがあればあわせてお聞かせいただきたいと思います。  小宮山先生の方は、PL法についていろいろお話ありましたが、これがどんな法律になってくるか、実は私イメージとしてまだわかないんです。製造品というのはもう膨大な数がありますし、各分野がありますが、それの責任をどういうシステムで受けていくのか。外国の例がいろいろあろうと思いますが、日本的にはどういう、例えば今の財団法人の消費者教育支援センター、それから家電製品協会ですか、いろいろありますが、各業界でそういうものをつくっていくのかというような点。もう一つは、今度は企業側が、例えば経理だったら監査役を置きますね。ああいう形のものが、今度は企業側もやっぱりひとつ脱皮していかなければいけない面があろうかと思いますが、そういう点についてのアイデアがあればお聞かせいただきたいと思います。  以上です。
  36. 今井賢一

    参考人今井賢一君) 企業社会的責任という場合に、申しおくれましたけれども、やっぱり法律的な責任と、それから企業が自主的に責任をとる、企業社会システムの中に埋め込まれているものですから、そういう意味での社会的責任とありまして、狭い意味でのことを多少中心に申し上げたようであります。これからの大きな問題は、御指摘のように広い意味、法律的な責任以外の企業社会的貢献、むしろ貢献的な問題で、それにつきましては最後に申し上げましたように、私はやはりいい商品を提供し、いい消費者を育てていった企業市場経済の中で生き残る、そういうことを自覚して企業行動するということなんじゃないか。  私、その際に一番大事なのは、きょうの議論にありませんけれども、私はジャーナリズムのあり方だと思います。小富山さんを前にして恐縮ですが、ジャーナリズムがかなり責任をしょっているというふうに私は理解しております。  それからもう一つ、行政の合理化の話でありますが、これは繰り返し申しましたように、規制は撤廃されたんだけれども細かなことが物すごくありまして、私もリストラクチャリングでいろいろ御指摘のように調べたりしたんですけれども、企業のホワイトカラーが何をやっているかというと、その六十何%の時間は郵政省に行ったり通産省に行ったり、大きなノートを持って許可を得てということに使っている。やっぱりそれは大いに直さなきゃいかぬし、私も大学におりましたから、専らそのために時間を使っておりましたのでよく存じております。
  37. 花見忠

    参考人花見忠君) 行政の問題は、私は確かに、規制が強いとかいうようなことにあらわれるような官僚主導の日本社会あり方ということに問題があるかと思います。時間短縮に関連して申し上げたのとはある程度共通ですが、やっぱり日本消費者は行政に対しても企業に対しても非常にわがままでありまして、クロネコヤマトの広告じゃありませんけれどもわがまま宅急便みたいなことになっております。消費者にとって日本は非常に天国みたいな社会で、欧米で生活してみると、そういう意味日本消費者の期待ということに企業も行政も少しこたえ過ぎている面があるので、一般に言われていることとちょっと反対の面で我々考え直す必要があるんじゃないか、それだけ申し上げます。
  38. 小宮山洋子

    参考人小宮山洋子君) PL法につきましては、おっしゃいましたように、予防とか防止については教育でいろいろな面でやっていく必要があるでしょうし、被害を受けた場合の救済としては、やはり先ほどからるる申し上げたように、その法律自体を消費者が使いやすいようにつくっていくということと、そういう法律で裁判以外の救済の仕組みをつくっていくということがともに必要なのではないかというふうに思いますけれども。
  39. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 自民党の楢崎泰昌でございます。  時間が大分超過したようですから、簡潔にお伺いをしたいと思いますけれども、一つは、企業あり方という観点からは利潤追求というのがやはり基本であるというぐあいに思います。しかし、それに対して今井先生からボランティアという言葉をお使いになりました。要するに企業の側面として、現在地域であるとか環境であるとか、そういうものについてのかかわり合いがどうしてもなければ企業として成立しない時代に突入をし始めているというぐあいに考えております。  そこで質問は、小宮山先生にお願いをしたいんですけれども、環境に配慮した商品をということでお話をいただきました。実は、ごみ処理問題は今ボランティアに任されたような感じになってきで、国の規制というのは十分に届いていない。もちろん企業あるいは消費者の側面で解決すべき問題も随分あるんだと思いますけれども、例えば古紙、新聞紙ですね、これは非常に回収率が高くて、五二%が再生紙として使われているものがある。しかし、実は現状では、地方公共団体が補助金を出して回収しろ回収しろと言ったことの結果として、回収された古紙が余っちゃって焼かれているというようなこともございます。そういう意味ではやはり国というんでしょうか、企業責任というものを十分この社会の中で生かしていかなきゃいかぬというぐあいに思うんです。  先ほど御説明のあった中で、ドイツのデュアル・システム、フランスのエコ・アンバラージュのシステムについて、日本ではなかなかこれは難しいなというお言葉がございました。その辺についての御感想をもう少し、どこが難しいんでしょうか、どこに限界があるんでしょうか。日本ではどうしてこのような企業責任をそのまま環境問題、要するに先ほど今井先生おっしゃったボランティアの側面、例えば地域貢献とかいろんなほかの側面もありますが、しかし環境問題についてやはり企業が果たしていかなければならない側面というものがあるんじゃないかと思います。それについての御感想をもう少し詳しくお願いします。
  40. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 今の問題にちょっと関連して、過剰包装対策について小富山参考人にお願いしたいんですけれども、確かに我々、例えば贈り物をもらったって、包装紙をとって箱があって、その中へ入っている菓子をまた紙でくるんでいる、こういうのがあるんですね。だけど、我々箱や紙は食えないんだから、中身だけでいいと言ったって、中身だけ買うわけにはいかない、消費者立場として。そういう過剰包装対策というものを一体具体的にどうしたらいいかということ、その点についてお答え願います。
  41. 小宮山洋子

    参考人小宮山洋子君) 急いでお答えをしないといけないようですけれども、ドイツとかフランスのようなシステムが私は個人的にはできればいいなというふうには思っているんです。ただ、先ほどの労働時間の話じゃありませんけれども、日本の場合はお互いの良識を信じてやり合っていきましょうよ、法律でやるのは余りふさわしくないというのがいろいろな面でございますよね。だからそういう意味で、日本でドイツやフランスのように法制化をしてこういう形でやりなさいと義務づけるというのはやはりなじまないのかなというふうに思わざるを得ないんですけれども、できることなら私個人としてはこのようなことまで踏み込んでできるようになるといいなというふうには思っております。  それから過剰包装につきましては、随分消費者の意識も企業の意識も変わってきまして、今かなりそういう贈り物などの外装としての包装というのは過剰でなくしているわけです。先ほど申し上げました例えば飲料水ですとか歯磨き粉とか包装が流通に必要なものを今度はどれだけ簡素化していって、また繰り返し使えるようにするかというところまで大分意識は進んできていると思うんですね。  ですから、見た目をよくするための包装というのはかなり今減ってきていて、スーパーなどでもいろいろ、例えばそれとはちょっと違うかもしれませんけれども、ビニールの袋を使わない人にはスタンプを押して何かメリットが返るようにするとか、そういう包装を使わない工夫というのが今消費者のサイド、企業のサイド、両方からいろいろになされてはきていると思いますが、まだまだともに意識とそれから仕組みとを変えていかないと、目に見えたように進むというところまではまだいっていないのかなと、そんな感じがしております。
  42. 櫻井規順

    会長櫻井規順君) まだ御質疑もあろうかと存じますが、予定した時間が参りましたので、以上で午前の参考人に対する質疑を終了させていただきます。  参考人皆様一言御礼申し上げます。  参考人皆様には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見につきましては、今後の調査参考にさせていただきたいと存じます。本調査会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)  午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十九分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十二分開会
  43. 櫻井規順

    会長櫻井規順君) ただいまから産業資源エネルギーに関する調査会を再開いたします。  産業資源エネルギーに関する調査を議題とし、エネルギー供給の課題と対策に関する件について、参考人から御意見を聴取いたします。  午後は、横浜国立大学長太田時男君、東京工業大学原子炉工学研究所長藤家洋一君、新エネルギー産業技術総合開発機構理事木田橋勉君に御出席をいただいております。  この際、参考人皆様一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本調査会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  参考人皆様から、エネルギー供給の課題と対策に関しまして忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の調査参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いをいたします。  議事の進め方といたしましては、初めに、二十一世紀に向けたエネルギー技術あり方について太田時男君から、次に、二十一世紀に向けた原子力開発利用のあり方について藤家洋一君から、次に、新エネルギー等の実用化に向けた施策の現状と課題について木田橋勉君からそれぞれ二十分以内で御意見をお述べいただいた後、一時間三十分程度委員質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。  なお、意見の陳述は着席のままで結構でございます。  それでは、まず太田参考人からお願いいたします。
  44. 太田時男

    参考人太田時男君) 太田でございます。本日、私から二十一世紀に向けたエネルギー技術あり方というテーマで忌憚のない意見を述べさせていただきたいと思います。  最初に、現在のエネルギーの大宗を占めます化石燃料と原子力、これがいかに強い制限を受けているかというテーマにつきまして、エール大学で理論経済学の教授をしておりますノルドハウスという有名な教授がおりますが、その方の論文を参照しながら意見を述べたいと思います。  ノルドハウスさんは、あるいは御存じの先生方いらっしゃるかもしれませんが、クリントン政権の有力なブレーンでございまして、非常に活発にいろんな研究を発表されておられますが、一昨年の十二月に全米科学財団から出ておりますサイエンスという雑誌に非常にリゴラスな手がたい論文を発表されました。数式を使ったコンピューターワークでございますけれども、その論文の中で、化石燃料の燃焼に伴うGHGといいますが、グリーンハウスガス、つまり炭酸ガスが主でございますけれども、炭酸ガスの放出とその累積効果による地球温暖化、それに伴う被害につきまして非常にリゴラスな論文を出しています。  彼の結果をお手元の資料で、図が三つ並んでいるのがございますが、これについて簡単に説明させていただきたいと思います。  一番上の図は、大変小さくて申しわけありませんが、フィギュアの三・五というのがございますけれども、一番上は、何も対策しなくて、しかも気候の変化が何もないという脱産業、脱工業社会の場合でございますが、タイムと書いた横軸、これは紀元何年、紀元何年という任意のスケールでとっておりますが、そうしますとだんだん収入がふえていく。縦軸はグローバルな実収入でございまして、それがだんだんふえていくのにもかかわらず、その次はグリーンハウスエフェクト、ガスがたまってだんだん気温が上るのをその対処を避けて、それで時々刻々に対処をした場合の実収入でございます。上から三番目が、日ごろ何もしないで、いざ海面が上がって臨海工業都市が水没するとかあるいは砂漠化が進む、現在砂漠化は一年に五万平方キロメートル、四国と九州を合わせた面積ぐらい砂漠化が進んでおりますが、そういうことを被害が起きてから対処したときのグローバルな実収入の上昇。それから、一番下が対策なしでいた場合の気候変化でございます。気候変化のダメージが大変大きいということを示しているものです。  これは定性的な研究ですが、それを数式に乗せましてノルドハウスが計算したのが真ん中の図で、大体紀元二千何年ぐらいに何度Cぐらい上がるかというのがございます。一番上が何も制御しなかった場合。それで、クリントン政権としてノルドハウスが推進しようとしているのは、最適政策といいまして、上から二番目の四角のマークがついているものでございますが、ほとんど気温の上昇を抑えるまでには至らない程度のものです。余り経済成長を阻害しないという主張で行ったものでございます。それから、一定の量のCO2を放出して定常化してしまう、どんどん余計に放出しないで一定の量に抑えてしまう、放出を抑えてしまう。しかし、それは地球の引力がありますから、地表面でだんだん累積するわけですが、それが上から三番目。一番下がもう全くCO2を出さないようにして定常化したときの温度の上昇です。全くCO2の放出をとめてしまっても現在のたまっているCO2がございますから、今後もしばらくの間は気温が上昇し続けます。大体二〇五〇年ぐらいになりますと、二度C上がりますと、これは計算いたしますと海水の膨張と両極地方の氷の融雪によって海水が一・五メーターないし二メーター、計算の仕方がいろいろございますが、それくらい上昇いたします。  臨海都市が水没したり砂漠化が起こって、それで例えば食糧の生産が追っつかなくなったりというようなことを保障するために幾らお金がかかるかという計算もしておりまして、それが一番下の図でございまして、その地球全体としての支出が、もう何もしなくて現在のままに放置した場合には二〇五〇年ぐらいに五兆ドル以上の支出が必要であるという計算結果が出ております。これは何もしない場合で、五兆ドルといいますとアメリカ一国の一年間のGNPに匹敵するような額ではないかと記憶しております。  そういうことでございまして、現在化石燃料の使用というものに対しては環境面で一つ大きな制約がある、この制約をどうするかというのはすぐれて政治の問題、政策の問題であるというふうに考えられます。  もう一つ化石燃料について主張しなければいけないことは、資源の枯渇がございまして、一九五六年にフーバート・モデルという有名なモデルをフーバートが発表いたしました。それによりますと、毎年二%ずつ増産しました石油も紀元二〇二〇年には最大生産量になりまして、二〇六〇年ごろにほとんど枯渇するというモデルがございます。そういうモデルがその後も検討されて大体正しいのではないかと言われております。  原子力の方は、CO2はほとんど問題にするほど出しませんが、原子炉の寿命はほぼ三十年と考えてよろしいので、今後廃炉が急激にふえてまいりますとその処理に伴う放射性廃棄物の処理、これが非常に大きな問題になろうかと思います。また、石油資源と同じように石油が枯渇するやや前に現在の軽水炉方式で行っておる原子力のウランの資源は枯渇することになります。  こういうことで、じゃ何を技術としてこれからディベロップしたらいいかということでございます。大変幸いなことには、私過去において東京大学、慶応大学、それから外国の大学等でいろいろ講義しました講義のノートを英文にしまして、オックスフォードのパーガモン・プレスより今年の春の終わりごろ出すことになりました。  詳しいことはともかくといたしまして、概略をお話しさせていただきたいと思うんですが、自然界にはいろんな現象がございまして、例えば簡単な例ですと、太陽光をレンズで集光するというような場合には、レンズへ入る前の太陽光というのは、これは仕事をするといいましても物に吸われて熱になるぐらいでございますけれども、それを集光して焦点で考えますと非常に高い温度になる。これを専門家はエントロピーが小さくなった、つまり何も作業をしないのに仕事が自然に生成したと申します。そういうエントロピーの小さくなる現象というのは自然界に幾つもあるわけです。例えば太陽電池などもそうですし、膜による海水から淡水をとるというような現象でもそうでございます。  そういうものがたくさんあるんですが、そういうものを見つけ出して複合したシステムによってエネルギーをつくり出していくというプリンシプルが第一に考えられなければいけないし、第二には超電導のように、現象を利用するときにエントロピーが非常に小さい、ミニマムであるというような現象を幾つも探し出して、それを積極的に使っていくというようなことでございます。  現在トレードレベルにありますもの、あるいはその途上にありますような技術で既に皆さん御存じの機器でございますが、お手元の「これからのエネルギー機器(民生中心)」というところに並べておきましたが、私はこれらのここにざっと書いてあります七つの技術、これは今私が申し上げましたような指導原理に基づいて開発されたものでございまして、大変重要視すべき機器だと思います。  まず第一はガス冷房。これは何を主張したいかと申しますと、夏、冷房が必要でございますが、これはほとんど電力で賄っておりますが、そのために電力の日本全国のキャパシティーが非常に窮屈な状況になります。余裕率と申しますが、日本全体の発電能力が全部稼働いたしましても九〇%。例えば、高校野球を冷房をつけて見るというようなことが全国一斉に行われますと余裕率が非常に小さくなります。  しかし、その一方で同じエネルギー源であります都市ガスあるいはプロパンガスというものは全く使われていないわけで、そういうシステムの間の連係というものが、全く独立で、現在欠けている。これは大変おかしな話であって、自由エネルギーと専門的な言葉になりますが、自由エネルギーというものがあれば必ず冷房が可能でありまして、ガスにはケミカルな、化学的な自由エネルギーというようなものが豊富に含まれておりますので、もっと抜本的な技術開発によってガス冷房を普及すべきであるというのが第一点。  それから第二点は、家庭レベルの冷暖房はソーラーパネルでこれをヒートポンプと組み合わせてハイテクによって行うべきである。第三点が、やはりソーラーパネルをヒートパイプ、前はヒートポンプと書いてありますが、今度はヒートパイプと組み合わせて使ったらどうか。こういう組み合わせによるハイテクの応用というのはまだ行われておりませんが、家庭の冷暖房はなるべく電力を使わないでやりたいものである、電力はなるべく産業界へ回したいということです。  それから四番目が太陽電池。これは後からもございます。これはやはり日本アメリカ、ドイツあるいはヨーロッパの諸国で行われておりますけれども、民間の、つまり個々の家庭で生産されました太陽電池による電力を電力会社へ売却するというときのいろんな税制面の補助あるいは投資に対する補助、あるいは所得税からその投資、自分のうちで例えば太陽電池の発電所をつくった場合にその費用を所得税から控除していただくというような助成策が私はお願いすべきことではないかと思います。  先ほど申し上げましたように、ほっておいたら二〇五〇年までに五兆ドルぐらいのグローバルな損害が生ずるということに比べれば、我が先進国日本としてはそういうことで少しでも役に立てるということではないかと思っております。  それからもう一つ、これは私しかまだあっちこっちでお話ししていないことだと思いますけれども、現在太陽電池による家庭発電が進まない理由の一つは、冷蔵庫でもそれから掃除機でも、ともかく冷暖房でも何でも百ボルト、東京では五十サイクル、大阪地方では六十サイクルという一定の規格で動くような機器しか開発されていないわけです。  ところが、太陽電池で発電される電力の質といいますのは非常に電圧が低くて直流でございます。交流ではなくて直流でございます。ですから、電力の質を変えて交流にして百ボルトに上げなきゃいけない。そうでなければ電力会社へも売却できないということになってくる。ですから、例えば発想を転換しまして、冷蔵庫でも掃除機でも冷暖房の機械でも低圧の直流で動くような機器、こういうものがあっていいわけです。そうすればそういう必要はなくなる。この開発が全くないというのはやはり見直すべきである。  それから五番目が、自動車燃料の多様化、これは皆さんの方がよく御存じかもしれません。それから、六番目がピークシェービング、つまり、余剰のときの電力を家庭レベルでも蓄えて、電力がたくさんのときにその蓄えたものをあてがうという技術。これも現実には一部の企業で研究が行われておりますけれども、まだまだだと思います。それから、ヒートパイプの調理器への利用、これは非常に有効に調理器に熱を使うということであります。  それから、もう一つの紙にございますのはちょっと先を見越したものですが、やはりトレードレベルにあるエネルギー技術で焦眉の急を要するもの。つまり、一番大切なことは省エネルギーだと思いますけれども、例えばコンピューターとかオートメーション、ロボットなどいろいろございますけれども、これらは確実に仕事をするということを重点に設計されているものですから省エネルギーという観点が非常に薄いんです。大型コンピューターなどは、コンピューターが計算している電力というのはほんの二、三%で、あとは全部熱になっているというような調子。それから、例えば自動車のオートメーションのロボットによる作業でも十二分過ぎるようなエネルギーを使っている。もっと省エネルギーできる余裕がいろいろあるということです。それから、石炭というのは大変豊富ですから、これからクリーンな燃料を製造する。  それから四番目が、太陽光によって電気をおこすだけではなくて、直接水を分解する。そして水を分解した水素をエネルギーとして使う。  それから五番目は、既に我が国におきましては先進的に開発されましたが、天然ガスの油田というのは大きなところでLNGのシステムをつくりまして、それでタンカーをそこから持ってくるようになっておりますが、大きなガス田というのはだんだん少なくなっておりますので、小さいところからも寄せ集めて持ってこれるように一つ一つのタンカーに液化機を積んだらどうかということ。  それから六番目は、我が国の通産省でWENET計画といたしまして自然エネルギーの輸入計画がございます。カナダからでございますが、同様にヨーロッパもカナダから自然エネルギーの輸入という思想がございまして現在検討されております。これは非常に注目すべきシステムだと思います。つまり、水力発電で電気をおこして、水を分解して水素にして、水素をLNGのかわりに持ってこようということでございます。  そのほか七、八、九、十といろいろございますが、ともかく現在トレードレベルで既に芽生えているような幾つかの技術を今後ますます盛大に持っていくことが、私は大変急を要する問題ではないかと思います。  最後でございますけれども、学長として一言申し上げれば、大学の高等教育あるいは義務教育におけるエネルギーの教育というものをもう少し体系的に力を入れていかなければならないのではないかと思っております。以上でございます。
  45. 櫻井規順

    会長櫻井規順君) ありがどうこざいました。  次に、藤家参考人からお願いいたします。
  46. 藤家洋一

    参考人藤家洋一君) 藤家でございます。  原子力は今、転換期を迎えていると私は考えております。と申しますのは、原子力開発がスタートしてからちょうど半世紀を経ました。と同時に、今二十世紀の最後の十年の半ばに差しかかって、二十一世紀以降の人類社会と原子力はどうかかわっていくかということを考えるべき時期に来ていると思います。そういうところで、きょうお招きいただきましたことは、大変私の光栄とするところでございます。  今申し上げましたような観点に立って、原子力をもう一度認識するところからきょうのお話を始めさせていただきたいと思っております。  先生方がこれまで原子力をごらんになるときに、先ほど太田先生がおっしゃったような軽水炉による原子力発電を中心として原子力をごらんになってきたかと思っておりますが、これから私が申し上げますことは、むしろ二十一世紀以降の人類文明を根幹において支える総合科学技術として原子力はどういう役割を持つのか、そういう観点からお話しし、かつまた現在抱えている課題との接点もその観点でお話ししてみたいと考えております。  まず、総合科学技術というもので原子力をこれから位置づけていこうと思いますと、これまで平和利用といいながらも原子力を利用という観点からとらえてきたことが一つの事実として存在しております。ところが、現状のエネルギー、環境、さらに人口というトリレンマの中にあって、これを利用の観点だけでとらえることに既に限界を生じてきていることは当然でありまして、将来へ向けて人類社会及び自然環境との調和を考えながら原子力開発を進めていくことが重要であろうということがまず最初に申し上げるべきことかと考えております。  次に、原子力の大きな特徴でございますが、これの関連する世界は、我々が見えない非常に小さな世界でございます。ミクロの世界、原子核の本当に小さな世界これが実際にエネルギーとして自然界で姿をあらわしているところは星の中でございまして、宇宙という非常に大きな天体とがこの原子力が含む両極端としてそこにございます。そういった意味でこの原子力を考えますときに、それは超先端的な社会から、同時に巨大化技術と言われる世界までを内包しながらこの議論をしていかなければいけないという特徴を持っております。  さらに、このようなフィールドに対する研究開発は非常に優秀な人材をたくさん必要といたします。同時に多くの開発資金が必要なのはもう先生方御承知のとおりであります。さらに加えて、長い期間をこの開発に要していることも特徴であります。したがって、この原子力の特徴として優秀な人材、多額の開発資金、長期の開発期間、これが一つの宿命として我々は考えておく必要がございます。  ただ、これを人類社会とのかかわりで考えていこうとしますと、こういった観点から長期展望は明確にする必要はございますが、同時にその時代の政治、経済、社会、これがどういう状況にあるかという状況認識をちゃんといたしまして当面する課題を摘出し、開発の柔軟性の中で現実的な方策を模索していく必要がございます。長期展望の中でこれを具体的な現実方策に変えていく必要があります。ともすればこういった議論が現実の状況の中で余りにも欠けてきたということは私どもも一つの反省とするところであって、長期展望の中に現実的な方策を考えていくということが重要であろうかと思います。  当然のことながら原子力は、考えようによっては石油文明にかわるだけの大きな広がりを持つ、いわば原子力文明としての存在をこれから求めていくところでありますから、それだけの大きな付加価値がございます。同時に、御承知のように潜在的危険性も相当含んでいるものでございますから、そういった観点から十分な検討が要るであろうと考えられます。  長期展望についてお話し申し上げます。  これまで原子力は、ともすればエネルギー開発という観点からとらえられておりましたが、原子力を考えますときは、先ほど申し上げましたように、エネルギー、物質、さらに巨大システムと、この三つの用語をキーワードとしていつもとらえておく必要があります。中でも、当然のことでございますが、エネルギーとしての原子力の位置づけはその中でも十分重要なところでございます。  今まで申し上げてきた枠組みの中で今の原子力をとらえますと、人類が持っているエネルギー源というのは太陽を中心とした、これは自然の原子力と私は申しております。太陽はまさに先ほど申し上げた宇宙のエネルギー源の地球に最も影響を持つものでございまして、自然の原子力である太陽と、それから核分裂、核融合といった人工の原子力とこの二つしかない。その前者について先ほど太田先生がいろんなお話をなされましたが、いずれにしましてもこの太陽をどう利用するか、あるいは人工の原子力をどうこれから開発していくか、この二つしか展望がないということを御理解いただきたいと思います。  利用から調和へという考え方で原子力のエネルギー開発をとらえましたときに、これから考えるべき原子力開発は整合性を持ったものでなければならないということが申し上げられるかと思います。その辺はお配りしました資料の後ろから四枚目をお開きいただければと思います。  これは何が整合性のある原子力がと申しますと、エネルギーが十分そこから取り出せる、しかも質のよいエネルギーが取り出せなければならない。軽水炉型の原子力発電でできる範囲というのは、当然のことながらそこには制約がございまして、先ほどの太田先生のお話にもありますが、エネルギーの汎用性と高効率利用といったものはこれからますます重要度を増してくるであろう。  それからもう一つは、長期にわたる資源の確保でございます。これだけの大きな開発をやるからには、恐らく人類がこれまで求めてきた使い切れないあるいは使い果てぬエネルギー源をそこから本当に確保できるのかといった問題であります。  それから同時に、環境との調和という観点から見ますと、これは廃棄物を外に出さない。原子力で申しますこの廃棄物の多くが放射性のものであるということを考えますと、この放射性物質を消滅処理するということを将来の整合性のある原子力開発の中でどうしてもとらえておく必要がございます。  さらに、当然のことでございますが、安全の確保であります。この四つが同時に達成できるような原子力システムを開発したときに、我々は究極の目標に達したということが言えようかと思います。  これに対するアプローチは既に始まっております。その点、まず最初にエネルギー資源としての利用あるいはその汎用性の話でございますが、先ほどの図の次のページ、後ろから三枚目でございますが、今のエネルギー資源はどれぐらいあるだろうかということであります。  先ほど軽水炉だけに頼ると資源の枯渇が早い時期にというお話がございました。私ここで申し上げますのは、一つは増殖をして十分核分裂のエネルギー資源を使うことでありますし、さらに、人類は将来恐らく地上を離れて海の中にその資源を求めて開発を続けていくであろう。海はまさに資源の宝庫でございます。そこでウラン資源を利用いたしますと、現在使用しております地球のエネルギーを単位といたしましたら、理想的にいってざっと百万年程度エネルギー資源が確保できるということでありまして、これは人類の文明史の長さから見て無限と考えても決しておかしくない話であろうかと思っております。  これに至りますには、必ずプルトニウム技術の確立という言葉が必要であります。昨年末以来いろんな形でプルトニウムは悪い、アンチテーゼの側面でとらえられてまいりましたけれども、これは非常にすぐれたエネルギー源でございます。原子力開発という言葉を口にしたときに、このプルトニウム技術の確立という言葉が村として出るくらい重要でございます。しかも、日本は既に数トンのプルトニウムをこれまで問題なく使ってきたという技術開発の実績も持っております。将来を展望いたしましたときに、この問題を抜きにしては将来展望が描きにくいというのは事実であります。  さらに、放射性物質を消滅する、放射能の消滅という言葉、これは特にプルトニウムと関連して出てくるアクチノイド、超ウラン元素の放射能をどうつぶすかあるいは核分裂生成物の放射能をどうつぶすかという観点でとらえておりまして、これはプルトニウム技術の確立と同一路線上にあります。  こうなってまいりますと、これを任せるに足る原子炉というのは高速中性子を使った高速増殖炉にならざるを得ません。幸いなことに、日本は原子力委員会が昭和三十年代にできまして、原子力を総体としてとらえてきております。これは決してエネルギー問題だけを扱っているわけでありませんで、原子力を総体としてとらえておりますから、長いスパンにわたってこの原子力問題を取り上げられる。現在も御承知のように、原子力の長期計画の改定中でございます。五年ごとに新しい見識を入れながら原子力長期計画を変えていくというところがございまして、近々のうちにその結果が公表されると思っております。私も第四分科会の座長を務めながら、やはり将来にわたってこういった問題をどうするかということについては幾つかの考えを披歴しているところでございます。  原子力を総合科学技術として人類社会に定着しようとしますと、原子力の持っているサイエンスとしての役割、さらにエネルギーに直接関連しない技術としての役割がこれからますます重要になりますし、これまでもかなりの部分これは役に立ってきているところであります。放射線の有効利用といったような言葉でございますが、そこに書いてございますように幾つかの、特に医療だとかバイオテクノロジー、こういった世界へ原子力が十分応用可能性を持つことは、既に先生方も脳腫瘍に原子炉を使ったりあるいはがんの治療に大型の加速器を使おうとしていることから御承知のことだろうと思います。ますますこういったところを伸ばしていき、福祉社会への貢献ということが考えられるところでございます。  さらに、原子力は総合科学技術として非常に広い分野を持っておりますから、これだけの広い分野を育て上げますときには、他の科学技術の分野との関係を常に密接に持っていく必要があります。それがここでは三点、総合科学技術としての発展ということで書いてございまして、一つは他の分野のすぐれた技術を原子力に取り込むことがワンステップであります。これは初期の段階で随分やりました。それからもう一つは、付加価値の高い原子力分野、その中で科学技術を伸ばしていく。それから同時に、今医療の話を例として申しましたが、そういった他の分野に広げていく。こういったことがうまく調和してできたときに恐らく原子力という言葉が消えていくんだろうと思います。原子力であるのとそうでないのと区別がなくなって、いわゆる人類社会を支える総合科学技術としての位置づけになっていくんだろうと思います。  そういった観点に立ちながらも、現状いろいろ当面する課題がございます。それについてお話し申し上げておきます。  一つは、先ほど申しましたように、日本の原子力開発を考える出発点は何と申しましても原子力基本法であります。既に三十余年の歴史はたっておりますけれども、この原子力基本法が持っている哲学とその内容において、これからもますますこの観点は重要になってくると思っております。しかも、それを基本にしながら先ほど申し上げた原子力委員会、さらに安全を見る原子力安全委員会、こういったものが原子力全体を、総体を見るということで、非常に順調に日本の原子力開発が進んできたと考えております。これは特筆すべき特徴として申し上げておく必要があるかと思います。  エネルギー開発は、先ほどから何度も申しておりますように、軽水炉がまさに既に日本の電力の三〇%を賄うだけのところに成長してきました。この間安全については見事な実績を持っていることは御承知のとおりでございます。これからまだ軽水炉の時代がある程度続くだろうと思います。それに向けてはなお一層の軽水炉技術の確立をしていかなければいけない。受動的な安全性だとかあるいは固有の安全性とか、そういった自然が持っている特徴を使った安全というものを考えていく必要があって、そこから十分安全でかつ意味のある軽水炉型の原子力発電が日本に存在するだろうと思います。  先ほど申し上げました高速増殖炉開発、これは先ほど整合性のある原子力開発と申したそれへ向けてのアプローチ線上に存在する技術開発として御認識いただきたいところでありまして、ここではプルトニウムをつくることと放射性物質の消滅を図ることがこれからの大きな二つのテーマとして存在しているところであります。  日本はこれについても着実に努力を重ねておりまして、「常陽」がもう既に昭和四十七年から見事に実績を重ねてきておりますし、「もんじゅ」はことしの四月に臨界になる予定でありまして、これがまさに高速増殖炉の世界一つの中心、センター・オブ・エクセレンスとしてこれから活躍してくるところがあるかと思っております。さらに、今長期計画の中で検討しております実証炉についての開発が二十一世紀の初めぐらいからスタートして、だんだんとこういった整合性に向けての原子力が現実化していくところであろうかと思います。  プルトニウム問題、大変いろんな問題を含んでおりますが、原子力が抱える政治との接点で一番今問題とされているのがこのプルトニウム問題でございます。世界政治の観点からいうと核不拡散の観点からこれを考えていかなきゃいけない。日本は平和利用に限ってという観点からここまで技術大国になり、原子力についても先進国となったところでありますから、平和という観点からぜひとも世界に向けて主張を強くする必要があろうかと思っております。と同時に、国際協力、国際貢献という形で技術立国としての日本がこの原子力について世界貢献できるところかと思います。  それからもう一つプルトニウム、アメリカを初めこの問題で少し今停滞しているところは、まさにこれはごみ処理の問題と同じようにお考えいただければいいんで、ごみの使い捨て路線では解決しない。いろいろ問題はございますけれども、当然のことながら、これについてはちゃんとした物の言い方をしてこの問題を解決しながら原子力開発を進めていく必要がございます。  原子力の多目的利用、放射線の利用でございますが、いろんな使い方がございます。きょうは詳しく申しませんが、この辺についてもこれからいろんな提言がなされると思っております。  次に、二十一世紀地域コミュニティー形成と原子力、これは、まさにこれまでは原子力が地方に原子力の立地点を求めてその必要性と安全性ということで一つの合意形成をやってきたんですが、これからの時代はやはり地域コミュニティーをつくる上で原子力がどれだけ意味を持つのか、そういった観点、言い方をかえますれば原子力が地方を見た時代から地方が原子力を見る時代への転換が今起こりつつあるんだろうと理解しております。  さらに、六番に参りまして不安のない原子力、これはもう言わすと知れた安全問題でございます。これは、技術的な安全問題に関してはこれまでの実績が示すところでございますが、社会的合意形成に至るプロセスが必ずしもまだ明確でございません。この辺についてはまさにこれから重要な問題が出てくるだろうと。原子力はもう既にこの半世紀を経て実績を中心に安全問題を話す時期が来ているんだろうと私は認識しております。  それから最後に、これからの原子力が果たす一つの方向は、自然環境との調和という観点から地球環境問題への貢献でございます。エネルギーの南北問題、それから砂漠の緑化、極地開発、海洋開発、炭酸ガス問題にどうチャレンジしていくか。この辺に関しましては政策との絡みが非常に強うございまして、最後にお願いと申しますか私申し上げたいのは、今再び政治が原子力を直視する時期を迎えているということが申し上げられるかと思います。  どうもありがとうございました。
  47. 櫻井規順

    会長櫻井規順君) どうもありがとうございました。  次に、木田橋参考人からお願いいたします。
  48. 木田橋勉

    参考人木田橋勉君) 新エネルギー産業技術総合開発機構の木田橋でございます。  日ごろは、私どもの業務に対しまして御理解、御支援を賜り、まことにありがとうございます。また、私ども新エネルギー産業技術総合開発機構、略してNEDOと称しておりますけれども、本日は、そのNEDOが進めております新エネルギー技術開発の現状と実用化の見通しにつきまして意見を述べる機会を与えていただき、まことにありがとうございます。  NEDOは、二度にわたります石油危機の後、我が国のエネルギー供給構造の脆弱性を克服すべく制定されました石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律に基づき、昭和五十五年十月に新エネルギー開発の中核的推進母体として設立された機関でございます。  最近の情勢を見ますと、一昨年の地球サミットに見られますように、地球規模での環境問題の重要性はますます高まっております。各国ともにその解決を目指した取り組みを強化しているところでございます。我が国としても、経済成長、エネルギー需給、環境のバランスのとれた発展を図るべく、環境保全効果の高い新エネルギー・省エネルギー技術の開発、導入の推進が、エネルギーセキュリティーの確保の観点とともに従来以上に強く求められているところであります。  また、新エネルギーの導入レベルは、現在のところ残念ながら総エネルギー供給の一・三%程度という低いレベルにとどまっているところでありますが、後ほど申し上げますように、これまでの技術開発の成果により、基本技術としてはほぼ実用レベルに達した技術が出現をしてきているところであります。今後は、技術開発の一層の推進とともにこうした技術導入の推進が求められているところであります。さらに、環境問題はもとよりエネルギーの供給確保についても地球レベルで考えていくべきことは言うまでもありません。特に、経済成長の著しいアジア地域に位置する我が国としては、国際的観点に立って新エネルギー・省エネルギー技術の開発、導入に取り組むことが重要となっています。  こうした背景のもと、昨年三月にはエネルギー需給構造高度化のための関係法律の整備に関する法律が成立し、NEDOの新たな業務として、国内における新エネルギー技術の導入促進業務、省エネルギー技術の開発、導入促進業務、海外における新エネルギー技術及び省エネルギー技術の導入促進に資する実証業務が追加されました。すなわち、NEDOは、新エネルギー技術及び省エネルギー技術について開発から導入に至るまで総合的な推進役を果たしていくことが求められております。  また、技術開発面では、平成五年度に通産省工業技術院において、従来のサンシャイン計画、ムーンライト計画及び地球環境技術研究開発を一本化したニューサンシャイン計画が発足され、新エネルギー・省エネルギー技術、環境技術についての総合的な推進体制が整備されたところであります。さらに、昨年十二月には、通商産業大臣の諮問機関であります総合エネルギー調査会の石油代替エネルギー部会において、各所エネルギー個別の導入促進シナリオの確立、制度的環境整備等を内容とする新エネルギーに係る施策の基本的方向についての中間報告がまとめられております。  こうした状況の中で、NEDOとしても、NEDOの果たすべき役割の重要性を深く認識し、民間企業の創意と工夫を活用しながら、これまで以上に重点的、効率的に新エネルギー等の技術開発及び導入の促進を図っていく所存であります。  新エネルギー技術として技術的にも相当の成果を上げ、できるだけ早期の導入が期待されております太陽光発電技術、燃料電池発電技術、石炭液化・ガス化発電等の石炭利用技術、地熱発電技術等を中心に新エネルギー技術開発の現状及び課題等について述べさせていただきます。  まず太陽光発電技術でございますが、太陽光発電は、クリーンな自然手不ルギーであるとともに無尽蔵なエネルギー源であるため、地球規模での環境・エネルギー問題の解決に資するばかりでなく、システムが単純で安全性が高く、小規模システムでも構築可能なため、住宅、学校等の電気の需要地に設置できるという長所を有しております。その反面、日照に左右されるため出力が不安定であり、また希薄な太陽エネルギーを利用するため広い設置面積を必要とする短所もあります。  このような太陽光発電の特徴を踏まえ、NEDOでは、太陽光発電システムの性能向上とコスト低減を目的として技術開発を実施するとともに、こうした技術の利用を図るための導入普及に取り組んでまいりました。具体的には、技術開発の面では、十センチ角の多結晶シリコン太陽電池において世界最高水準である変換効率一七二一%を実現するとともに、電力供給系統への連系などのシステム実証研究を行ってきております。また、導入普及の面では、実際の利用現場での実証研究を行うフィールドテスト事業として、地方自治体等と協力して学校、公民館などの公共施設に対して、平成四年度には十一カ所、二百三十五キロワットの、平成五年度には十九カ所、四百八十一キロワットの試験的導入を行っております。  このような技術開発の成果により、従来の電卓などの民生部門、山小屋などの独立分散電源といった限定的利用分野から、電力系統と接続し、夜間は系続から電気を受け、昼間の発電量が余るときは逆に送り返すといった系統連系逆潮流ありの太陽光発電システムが構築可能となっております。また、電気事業法政省令改正、系統連系ガイドライン等の新エネルギー導入のための制度的環境整備も進んでまいりました。こうしたことにより、戸建て住宅などに民間レベルでの試験的導入が開始され、特に住宅メーカーからの太陽光発電住宅の試行的販売も開始されております。  しかしながら、そのコストの高さが最大の問題となっております。このため、今後は太陽電池セルのコストダウンを初め、太陽電池と屋根等を一体化する二とによりコスト低下をねらった建材一体型太陽電池モジュール製造技術などのコスト引き下げのための技術開発を一層推進するとともに、積極的に需要を創出し、これが生産規模拡大とコストダウンを促し、次の需要を誘発するといった良循環への誘導を図る必要があります。  このため、通産省において住宅用太陽光発電システム普及促進プロジェクトの来年度からの導入を検討中と伺っておりますが、私どもとしても太陽光発電の自律的発展を目指した着実な導入普及の活動を開始する起爆剤としてぜひとも必要なものと考えております。  また、現在の技術水準は戸建て住宅、公共施設などに導入可能なレベルに達してはいるものの、今後住宅などへの本格的な普及を初め、公共用、産業用へと多様な分野への利用拡大、さらには発電用としての利用を可能としていくための超高効率太陽電池など次世代に向けた技術開発を推進する必要があると考えております。  また、アジア諸国を初めとする発展途上国における無電化地域の電化の方策として太陽光発電は一つの有効な技術と考えられますが、私どもとしてもタイ、ネパール等との共同で、村落電化、水ポンプ等の太陽光発電システムの利用実証研究を実施しているところであります。  太陽エネルギーを熱として利用するソーラーシステムには、民生用と産業用があります。民生用は、サンシャイン計画による研究開発を通じて実用化され、かなり普及しておりますが、産業用は、高度な熱管理を必要とする産業工程へソーラーシステムを直接応用する技術が未確立てあるため、これらの研究の必要性があり、技術開発を進めております。  次に、燃料電池発電技術は、電気と熱の併給が可能で、エネルギー利用の効率向上に役立ち、クリーンで環境面でのメリットも多く、技術的にも早期の実用化が見込まれる有望な技術であります。燃料電池の研究開発は、電解質の種類によって区分される燐酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型、固体高分子型の四タイプについて行っております。  燐酸型燃料電池は、第一世代として早くから実用化が期待されてきたもので、発電効率が四〇%程度、熱の利用とあわせた総合効率が八〇%程度を見込めるものであります。NEDOでは、主として都市近郊の需要地に隣接して設置する分散型発電設備として千キロワットの設備を、またホテル、病院等を対象とした需要地設置型電源及び熱源として二百キロワットの設備を既に開発し、現在はこれらの成果を受けて分散型発電設備として五千キロワットの設備を、また需要地設置型設備として一千キロワット設備の実証試験に向けて鋭意開発中でございます。燐酸型燃料電池については、平成五年十二月末現在、研究開発等の目的で設置され、既に運転している設備の合計容量は約一万八千キロワットにも及んでおります。また、これらの設備の運転研究に参加している機関は、NEDOを中心に電力・ガス各社などのユーザーが主体となっております。  今後は、耐久性とコスト低下を図ることにより、既存の発電設備に十分競合し得る電気と熱を同時に供給し得る分散型電源あるいは需要地設置型電源として普及が期待できるものと考えております。  次に、第二世代の燃料電池と言われております溶融炭酸塩型燃料電池は、火力発電所の代替電源として位置づけられております。これまでの要素技術の研究を踏まえ、現在一千キロワットのパイロットプラントの建設に向けた研究開発に着手した段階であります。  固体電解質型燃料電池は火力発電所の代替電源や需要地設置型として、また固体高分子型燃料電池は自動車用の電源や民生用として期待されていますが、いまだ要素技術の研究開発という状況であります。  以上、申し上げました燐酸型を除く燃料電池については、その導入普及になお一層の技術開発と時間を要するものと考えております。  次に、石油依存度を低減させ、エネルギーセキュリティーの確保を図る上で欠かせない石炭利用に関する技術開発について述べることといたします。  石炭は、石油、天然ガスなどの他のエネルギー資源に比して埋蔵量が豊富で、また主要な産炭地がアメリカ、カナダ、オーストラリア、中国などに広く分散しているという特徴があります。その反面、固体であるがゆえのハンドリングの悪さ、硫黄などの環境汚染物質が多く含まれているなどの短所もあわせて持っております。しかし、新たな技術開発を行い、それを用いることにより石炭の利便性を高めたり、環境対策の一層の向上を進めることにより、クリーンで有益なエネルギー源とすることができると考えております。  このためNEDOでは、環境に調和した石炭利用技術としましてクリーンコールテクノロジーの技術開発を精力的に進めております。現在この技術開発の重点として、歴青炭液化技術開発、石炭ガス化複合発電技術、石炭利用水素製造技術の三つのプロジェクトに取り組んでおります。  まず歴青炭液化技術でございますが、歴青炭液化技術の開発では、世界的に広範かつ大量に賦存している亜歴青炭から歴青炭までの幅広い種類の石炭を経済的に液化することを目標にしております。NEDOでは、独自に開発したNEDOL法という新しい歴青炭液化プロセスを研究しております。このプロセスは、反応条件が温和で信頼性の高いプロセスであり、液化油収率が高く、軽中質油留分の多い液化油が得られるなどの特徴を持っております。  石炭液化油は、現在石油製品が使用されているほとんどすべての分野で利用が可能であり、また、石油の軽質油留分と混合する形で既存の石油と同一のルートで市場に導入することが可能と考えております。コスト的には現在の石油価格との比較ではいま一歩という段階でありますが、将来石油需給が逼迫することは避けられないと予想されることを勘案しますと、早期に石炭液化技術の確立を図っておくことが重要であります。  また、石炭ガス化複合発電技術の開発では、平成三年度より石炭処理量で一日当たり二百トン、発電規模で二万五千キロワット級のパイロットプラントによる運転研究を実施しております。  次に、石炭利用水素製造技術の開発では、石炭からクリーンで利用範囲の広い水素を製造することを目的に、石炭処理量で一日当たり二十トンのパイロットプラントを用いて平成三年度から運転研究を実施してきました。本年一月二十五日には一千時間の連続運転に成功し、その長期信頼性が確認され、実用化のめどをつけることができました。  なお、今後世界的な石炭需要の増大が予想される中で、発展途上国においても環境対策に十分配慮して石炭利用を拡大していく必要があります。NEDOとしても、中国、インドネシア、フィリピン等に対して脱硫設備等我が国の有するクリーンコールテクノロジーの普及基盤を整備していくためのモデル事業を本年度より開始したところであります。  次に、クリーンな国産エネルギーとしてその開発が期待されている地熱発電に関する技術開発の現状について説明させていただきます。  我が国では、現在までに二十七万キロワット程度の地熱発電設備が稼働しておりますが、さらに平成九年度までに二十八万キロワット程度が新たに運転を開始する予定になっております。しかしながら、一般的には地熱資源の開発は容易ではなく、リスクが高いものであります。すなわち、地熱探査技術が十分に確立しているとは言いがたく、資源量の把握が正確にできないという探査リスク、期待どおりの蒸気が得られないといった掘削リスク、さらには運転開始後の生産井及び還元井の減衰等のリスクがあります。  このためNEDOでは、地熱資源を発見し、賦存状況を把握する上での不確実性を低くし、その開発リスクを軽減するために地熱開発促進調査を進めるとともに、地下の複雑な割れ目から成る地熱貯留層を精度よく探し出すための技術開発、また、既に開発されている浅部地熱資源の下部に賦存が期待される深部地熱資源の探査、掘削、生産技術の開発に取り組んでおります。  一方、現在は利用されていない二百度C以下の中高温の熱水や、蒸気も熱水も伴わない高温岩体と呼ばれる地熱資源を有効に利用するための新しい地熱発電技術の開発を行っております。その一つが熱水利用バイナリーサイクル発電技術の実証であります。これは井戸を掘削してもそのままでは噴出しない熱水を、ダウンホールポンプと呼ばれる井戸内に据えつけたポンプでくみ上げ、熱水の持つエネルギーにより発電しようというものでございます。現在一万キロワット級の実験プラントによる実証に向けた研究を行っているところであります。また、高温岩体資源を利用した発電システムを開発するための要素研究も進めております。  最後に、今まで述べました以外の新エネルギー技術及び省エネルギー技術開発について御説明させていただきます。  まず風力発電技術でございますが、我が国においては、これまでの調査結果から風況の良好な地点も幾つか確認されておりますが、全体的には山岳地帯が多いため風況が安定せず、必ずしも恵まれた条件下にあるとは言えません。また、多数の風車をまとめて設置できる広い土地がないなどの制約もあることから、その導入はさほど容易ではないというのが実感です。しかしながら、貴重な自然エネルギーでありますので、我が国の風土に合った風力発電の技術開発を着実に進めていく必要があると考えております。  現在NEDOでは、平成三年度から国土の狭い我が国に適合した大型機、これは五百キロワット級のものでございますが、の技術開発に取り組んでおります。また、風力発電に適した立地点を探し出すため全国的規模で風況調査を実施してきており、昨年八月にはこれまでの調査に基づき全国風況マップを作成し公表しました。風力発電の導入を考える方々に有効に活用していただきたいと考えております。  次に、広域エネルギー利用ネットワークシステム技術、エコ・エネルギー都市システムと略称しておりますが、日本の全一次エネルギー供給量のうち約六割は有効に利用されずにエネルギー損失となり、主に熱エネルギーの形態で放出されております。また、熱余剰の発生と熱需要が地理的、時間的に一致しないという問題もあります。この研究開発では、このようにエネルギー形態の中で大きなウエートを占める熱エネルギーに焦点を絞りまして、その徹底有効利用とともに余剰と需要のマッチングを図ることによりエネルギー・環境制約の緩和を図ろうとするものであります。  具体的には、工業地帯等における産業分野から排出される廃熱で、その産業分野では利用価値の薄い中低温の廃熱を高効率で回収して需要地である都市部へ低損失で輸送し、民生分野等の需要形態に応じて熱の供給を行うネットワークシステムを構築するのに必要な技術を確立することが本研究開発の目的であります。  また、本年度より開始したプロジェクトとして水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術開発、通称WENETがあります。これは先ほど太田先生が言及されましたものでございますが、水素は燃焼させた場合に発生するものが水のみであり、地球環境に影響を及ぼす二酸化炭素、硫黄酸化物等を発生させない物質であり、今後注目すべきものであります。本研究は二〇二〇年までの約三十年間にわたる長期プロジェクトであり、水力発電、太陽光発電等の再生可能エネルギーをこれらの入手が容易な国において自然環境を破壊しない程度の開発を行って余剰分で水素を製造し、これを輸送が容易な形態に変換してエネルギー消費国に運びエネルギーとして使用するものであります。  さらに、廃棄物発電が未利用エネルギーの有効利用及びこみ処理問題から近年注目されております。廃棄物発電は、一般廃棄物において既に三十六万キロワット程度の発電設備容量がありますが、発電効率は最高でも一五%程度にとどまっております。これは、焼却炉内において高温では伝熱管が腐食しやすいために、蒸気温度が三百度C以下に抑えられているためです。このためNEDOでは、平成三年度より耐腐食性にすぐれた伝熱管を開発する等により蒸気温度を高め発電効率の大幅な向上を図る技術開発を進め、今後、導入発電量の増加を図ってまいりたいと考えております。  今までは新エネルギー及び省エネルギー技術開発の現状と課題について述べさせていただきましたが、これら新エネルギーの導入促進のための主要な施策について簡単に述べさせていただきます。  NEDOでは、現在実施中の新エネルギー開発の中で太陽光発電、燐酸型燃料電池が実用化段階に近いものと見込まれることから、平成四年度からこれらを対象とした新エネルギー発電フィールドテスト事業を行っております。本事業は、太陽光発電、燃料電池発電を実際にエンドユーザーである各種施設に試験的に導入し、実際の負荷のもとでの運転データ等を収集、分析して本格的導入普及に有用な資料としてとりまとめるものであり、太陽電池及び燃料電池合わせて四年度には二十六カ所、二千三十五キロワット、五年度には二十二カ所、千百八十一キロワットの試験的導入を行っております。  また、新たに平成五年度から大規模コージェネレーション、廃熱のカスケード利用等を活用した地域内のエネルギー有効利用システムの構築を促進するため、環境調和型エネルギーコミュニティー事業を開始しております。本事業は、地域の特性に応じて熱の利用を低温域から高温域にわたる各段階において、発電用途も含めむだなく組み合わせることにより、地域エネルギーの有効利用システムを整備、促進するための助成制度であります。  以上、新エネルギー等の技術開発の現状と実用化の見通しについて述べてまいりましたが、改めて、このような発言の機会をいただきましたことに御礼申し上げるとともに、本日御出席の先生方におかれましても、今後ともNEDOの業務に対し格段の御理解と御支援を賜りますようお願い申し上げまして、終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  49. 櫻井規順

    会長櫻井規順君) どうもありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  自由な質疑形式をとっておりますので、質疑を希望される方は挙手をし、私の指名を待って御質疑をお願いいたします。  なお、質疑及び答弁とも御発言は着席のままで結構でございます。
  50. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 自由民主党の楢崎泰昌でございます。  きょうは三先生ともお忙しいところ貴重なお話をちょうだいいたしまして、最初に御礼を申し上げたいと思います。  太田先生に最初にお伺いを申し上げたいと思いますが、実は冒頭お話をなされました地球温暖化の問題です。これは先年地球環境会議を開かれまして、あそこのパネルでこの話が出て、それに対応するために世界各国とも協力をしなきゃいかぬということで、それを受け我が国政府では地球温暖化防止計画と、そして通産省では電力事業についてエネルギーの転換を含めて行動計画をつくったという経緯があるわけでございます。それの一番基本になる、先ほど御説明になりました百年後には地球温度が三・五度上がってそして海面が何メーターか上がるということにつきまして、世界の気象学者が寄り集まってそうだということになったというんですが、実はその話が、世界的にそうなんだと思いますけれども、国民にも十分流布していないわけですね。  また御説明を聞きますと、多分そういうことになるんじゃないか、科学的根拠が発表になってないというようなことがありまして、そういう御説は御説かもしれないけれども、真に私どもの身近に迫ってきている問題がなということについて非常に危惧を、危惧というんですか、不安を持っているわけです。したがいまして、先ほどノルドハウスさんのお話がございましたけれども、どの程度これは科学的に確認をされ、そして科学者の間で定説となり、そしてまた世界の人類に対してきちんとした説明がなされているのかということを最初にお伺いしたいと思うんです。  次に二点目として、エネルギーの転換ということがこれから必要になってくるんだと思いますが、先ほど二〇六〇年になると枯渇してくるというようなお話がございましたが、このお話は恐らく藤家先生のお話にあった高速増殖炉のお話がちょっと抜けているんじゃないかというぐあいに思いますが、そこら辺についてどういうぐあいにお考えになっているのかお伺いしたいと思います。  それから、恐れ入りますが藤家先生にお伺いしたいのは、一つはやはり高速増殖炉の問題でございます。確かにこれが将来ともポイントになってくるというぐあいに思いますが、現実の問題としては社会的にあるいは政治的に核拡散ということでさんざんたたかれて、世界各国の開発のテンポはどうも緩んでいるような感じがあります。日本国だけが突出しているんじゃないかとも言われています。そこらのことを含めてさらに高速増殖炉の将来性、世界各国がなぜ増殖炉をとめているかということについてお話を賜ればありがたいと思います。  最後に木田橋先生にお伺いを申し上げたいと思うんですけれども、エネルギー源の転換に際して新エネルギーというのがどの程度の位置にあるのかということが問題でして、実は通産省の電力供給計画における電源のところにおきましても大きな地位を占め得ないでいるわけです。  ですから、恐らく太陽エネルギーといっても量的に無限だ、無尽蔵だと先ほどおっしゃいましたけれども、実は立地条件からすると大変難しいと思いますし、それから問題はやっぱりコストだと思います。今、一番計画が進んでいる太陽光でもどれくらいコストがかかっているんでしょうか、そこら辺のことをお伺いできればありがたいというぐあいに思います。
  51. 太田時男

    参考人太田時男君) お答え申し上げたいと思います。  最初のGHG効果といいますか、グリーンハウスエフェクトの話でございますけれども、この話が出てまいりましてからもう十年以上たちます。最初のころは、今楢崎先生から御質問のように、本当にグリーンハウスエフェクトというのがあるんだろうか、十分に科学的な証明がなくて言葉が先行しているんじゃないかという疑問が確かにありました。  それは御承知かと思いますが、熱力学にルシャトリエ・ブラウンの定理というのがありまして、何か現象が起こったときに、それに抵抗して逆の方向へ向かわせるような自然現象が必ずあるわけです。これは化学の大原則でございまして、例えば地球の温暖化で温度が上がりますと、風が強くなったり雨が多くなったりしてそれを下げるような効果があるわけです。それを差し引いてもなお温度が上がるかどうかという議論がありまして、これは我が国では実証したという大規模な実験はございませんけれども、欧米ではそれ以来、随分慎重な実験を繰り返しておりまして、CH4、メタンガスとかあるいはフロン、そういうものは二酸化炭素よりも十数倍の大きな温暖化効果がございます。これは科学的には疑うことができない状況でございまして、実は私も科学技術会議で当初は、本当にあるんですか、証明されるんですかという質問をしたことを覚えておりますけれども、それはもう現在は確実でございます。  それをどの程度国民に説明しているかということになりますと、これは遺憾ながら切実な問題ではない。例えば、ことしの夏が寒かったね、来年の夏は暖かいかもしれないよというように時間の差し迫った問題ではないものですから、温度が上がったり下がったりしながらずっと統計をとっていきますとやはり上がっているということでございまして、最近の百年間では〇・五度C上がっているという統計がございます。これはもう疑うことのできない問題でございまして、地球に引力がなければ排出したものは地球の外へ逃げていきますからそれは構いませんけれども、地球に引力があるものですから水素イオン以外はみんな大気中にとどまりまして、温室効果というのはもう着実に地球の気温を上げていくと思います。急な話ではございません。ただ、私どもも反省しなきゃいけないのは、そういうのが一般国民に対して重要な問題であるという説明が、また努力が余りなされてないということがあるかもしれないと思います。  それから、第二の御質問の資源の問題でございますけれども、確かに高速増殖炉の話を抜かしました。それから海水中のウランの話も私は考慮に入れておりません。それはちゃんとした科学的な理由がございまして、まず海水中のウランの話ですが、海水中には確かにウランがございます。金もございます。いろんな元素が溶けているのが海でございまして、それから特定の元素をとればそれはエントロピーを非常に小さくしなけりゃいけないという科学的には膨大なエネルギーが必要なんです。海水を何万トンきれいにすれば、ある狭いところを通して膜で分離すればどれくらいのウランがとれるという試算もございます。そういう膜の物質も盛んに計算されております。しかし、そういうことになりますと、まだ見つかっていない石油資源を根掘り葉掘りして探すということの価格とどちらが高くなるか、あるいは太陽エネルギーを積極的に使うということの価格とどうかというような問題とバランスしますので、これは私は考慮に入れませんでした。  それから、高速増殖炉につきましては非常に高い技術がございまして、私は科学技術に信頼をしたいと思っておりますけれども、ただ、現在の軽水炉も含めまして未成熟の技術がまだ残っております。高速増殖炉につきましては、専門的に申しますとナトリウムとかカリウムとかそういうようなメタルを冷却材にして使う、非常にこれもまだ人類未踏の技術でありまして、今の軽水炉は二十年前に比べますと確かに安全性が上がりまして信頼できるものになっております。これはもう本当に技術の成果だと思って感謝しておりますけれども、高速増殖炉につきましてはまだ将来を評価できるというレベルにはないと思います。そういうことでこれも考慮に入れませんでした。  ですから、人類がエネルギーを使って経済成長をやるときには、やはりそういうハイテクというのは欠かせないのではないかと思いますけれども、それをイージーに評価すべきではないというのが私の考えでございます。
  52. 藤家洋一

    参考人藤家洋一君) ここで太田先生に反論するのはきょうの目的ではございませんが、私は、今の原子力のお話を、きょうは夢の創出と可能性への挑戦というところに一つの焦点を絞って、恐らく二十一世紀以降の人類文明を根幹において支える総合科学技術としてこれから伸びていくものだという位置づけでお話しいたしました。  したがって、経済性の観点からの議論というのは少なくともきょうは申しませんでしたが、軽水炉については、恐らく大多数の方が日本型の原子力発電がもう既に成熟期を迎えているということに対しては御異存がないだろうと思います。これがまだ開発途上であるという認識は私どもは持っておりません。よりよいという観点からはいろいろございます。それは自動車にしてもいまだにいろんなよりよいものを求めているという観点からいえば当然のことでございまして、人知が許す限りどんどんそういうものは改善していくべきところにあるかと思いますが、技術そのものとしての成熟期を迎えていることは、これはもう間違いない事実だと理解しております。  高速増殖炉は、確かにナトリウムを使うあるいはプルトニウムを燃料に使う新しい領域でございます。だから、これが技術開発の対象として存在しているわけであります。これを克服していくことがどれだけ重要なことかあるいは難しいことかそれぞれに理解しております。ただ、こういった問題が現実のところへ、社会の目に触れます前にかなり長い期間にわたる地道な研究開発があって初めて皆さんの前にこういうものが姿をあらわしているんだということをぜひ御理解いただきたいと思います。  プルトニウム問題が少し議論されますと、あたかもその日にプルトニウムの問題が起こったように言われますが、日本がプルトニウムの技術開発に着手したのは一九五〇年代でございます。既に三十有余年の歴史を地道な開発努力をして今の段階を迎えておりまして、先ほど申しましたように、既に四トンを超すプルトニウムを我々の手で操作してきたことは事実であります。また、現在の原子力発電所の電気は三分の一がこのプルトニウムによってできております。こういう事実は客観的事実としてぜひ御理解いただきたいところであります。  それで、この高速増殖炉技術が成熟しているかということに対しては、決して成熟しているとは申しておりません。日本でも一つ二十年近く運転しましたし、まだこれから次のを運転しようと思っております。何も私はすぐこれを実用化しようという感覚はございませんで、まさに人類文明を支える基盤となる技術として成長させたいということであります。恐らく今できます「もんじゅ」は軽水炉に比べれば数倍の価値がある、これは経済性の観点からそう言われております。ところが今、次のステップとして考えております実証第一号は軽水型の原子力発電の一・五倍の経済性だと言われております。これは同時に付加価値を軽水炉より持っておりますから、その辺をこれからどう評価するかにもよってくると思います。  私どもはこの高速増殖炉の実用化時期を二〇三〇年だととらえております。そこへ向けてどうこれからチャレンジしていくか。二〇三〇年というと、我々が技術の継承性というものを通じて見込む恐らく一番長いタイムスパンだと思っております。その辺に向けてこれからチャレンジをしていくだろうと思うんです。  これから楢崎先生の御質問にお答えしたいと思いますが、一昨年の十二月二日はエンリコ・フェルミが初めてシカゴ大学に原子炉をつくってから半世紀たった日でございました。世界がその記念大会をシカゴでやりました。そこでアメリカヨーロッパ日本、ロシア、俗に言う先進四極でございますが、この代表がそれぞれ話をいたしました。日本からは御承知の原子力委員長代理の大山先生が話されました。この四極の代表がすべて二十一世紀においては高速増殖炉の存在なしにはだめであろう、そういう見解を表明したことは事実でございます。  それで、高速増殖炉開発の今の状況、おっしゃるところは大半事実でございます。しかし、これは役割分担という観点から私はとらえております。研究開発の環境条件のいいアメリカが最初に走りました。これが御承知のように経済性を中心に少し環境が悪くなって、次はヨーロッパの中でフランスが先行いたしました。フランスがスーパーフェニックスを通してかなり貢献をしたわけでございますが、そのフランスも今の状況で少し停滞している感じがございます。今、ちょうど日本が研究環境という意味では一番恵まれている状況にありますから、三番目のトップバッターとして日本責任先頭を果たすべき時期が来ていると思います。  したがいまして、このような高速増殖炉開発は核利用開発とは程度においてかなり違いがございますけれども、世界が協力しながら動いているんだと、これは明らかに二十一世紀以降の文明の基礎を支えるという観点からの開発努力であることをぜひお認めいただきたいところであります。  それから、なぜ今それほど活発でないかはまさにエネルギーの需給関係の緩みでございます。今急いでこれをやらなきゃいけない客観条件ではなくて、エネルギー問題は近未来は非常にゆったりした展望がありますけれども、将来に対しては先ほどお話があったように非常に苦しくなるであろう。エネルギー、環境、人口のトリレンマに悩まされる時期が近づいておりますから、そこへ向けて努力をしておくということが重要かと思います。  高速増殖炉の開発もこれまで随分日本では順調にやってまいりました。これはひとえにやはり日本の一般の人たちの理解があってここまで来られたんだと思っておりますし、私は、そういう理解を得ながらこれからもやはり広い観点からこれを進めていくものと理解しております。
  53. 木田橋勉

    参考人木田橋勉君) 御質問が二つあったわけでございますけれども、最初の方の位置づけといいますか、全体に占めるウエートというような点についてまずお話ししたいと思います。  新エネルギーエネルギー供給の全体の中で、現実的には先ほど私がお話し申し上げましたが、現在一・三%程度のウエートでございます。ただ、この中身はどちらかというと実際我々が開発している新エネルギー、太陽等がまだそれほど入っていない、まだそのウエートはその中でも小さいというようなことがございますが、我々の目標といたしましては、平成二年に作成されました政府の石油代替エネルギーの供給目標というのがございまして、これでは二〇〇〇年に三%程度にまでこれを持ち上げるという目標がございます。現在、我々はこの目標に向かって進んでおるわけでございますが、現実には次の質問でありますコストに関連いたしましてなかなか難しい点もあるということでございます。  現在、そのコストにつきましては、我々が技術開発を大いに進めてきた成果もございまして、サンシャイン計画のスタートした当時はワット当たり二万円程度ありましたモジュール、パネルの値段でございますが、二万円が現在は六百円程度まで、約三十分の一程度まで低下してきております。  それで、こういう値段をベースにいたしまして発電コストを、いろんな仮定がありますけれども試算してみますと、キロワットアワー当たり百二十円というような値段が出てまいります。現実には一般の家庭で電力会社から購入している電気というのは二十円から三十円の間でございますので、まだまだ競争するのにはちょっと高過ぎるということがございまして、我々としましてもこの値段を何とか低下させて一般に使っていただきたいと思うわけでございます。  その方策としましては、一つは、やはり技術開発をさらに進めることによって、例えば先ほど私が申し上げましたように、屋根材として太陽電池が使えるというような建材一体型のものを開発するとかいうような技術開発によるコストの低下。もう一つは、やはり現在値段が高いということでなかなか扱っていただけない、需要がないものですからメーカーもそれほど本気になってつくらないというようなことでますます高いというような悪循環に陥っているわけでございますが、これを初期の需要を創出するということによっていい方向に、まあ初期の需要をつくることによってメーカーも本格的につくりだす、そういうことによってコストが下がるというような良循環の方へ何とか持っていきたい。こういう技術開発と助成措置の両面でこのコスト低下を実現していく。  我々の目標といたしましては、二〇〇〇年で設備の費用として今ワット当たり六百円というものを二百六十円ないし三百二十円程度まで下げる。そうしますと、発電コストは現在家庭で購入されておるキロワットアワー当たり大体二十円ないし三十円に下げられるんではなかろうかということで、今後ともこの二つの面での努力を進めていきたい、こう考えております。
  54. 森暢子

    ○森暢子君 森でございます。  藤家先生の資料の中に「人類とエネルギーのかかわり」という絵がありまして、これを見ておりまして、やはり人間が生きていく上にエネルギーというのは大変大切だと、その変遷がよくわかるように描いてございました。  私どもは今エネルギーの恩恵を受けて、日本は特に便利に快適に過ごしていると思いますし、午前中にもお話がありましたが、情報社会、このいろいろな情報を伝えるのも今やエネルギーということになりますと、エネルギーというのは大変大切だということがわかっできます。しかし、このエネルギーをどのように人間が安全に確保していくかということになりますと、いろいろと国民の意見が分かれているんではないかと思います。  その中で、午前中にもありましたが、消費者教育というのを学校教育に求められるというのがありまして、学校というところはいろんなものが全部求められるんですね。濫費者教育、環境教育、今やエイズ教育、エイズの最高のワクチンは教育だと言われておりまして、エイズ教育、求職は来る、交通指導はある、もういっぱい求められてくるわけですね。その中で、学校だけにそういうことを頼らないでぜひ社会的にも家庭の中にもそういうものを持っていかなきゃいけないんではないかということも感じておりました。  きょうも、この中に教育の分野があるんです。例えば大田先生の場合も「新エネルギーについての教育」ということで、「義務教育、高等教育へ「地球環境とエネルギー」の取り入れ」というふうなことでございますね。ここではどういう視点から教育の中へ入れていくかということですね。それから藤家先生の中にも、「未来への夢の創出と展望を拓く(若者に夢を)」、こういうキャッチフレーズです。じゃ、この若者に夢というのを教育の中ではどんな夢を描かせるかということがお二人ちょっと違うんではないかと思いますが、一番困るのは学校現場なんです。じゃ、学校現場は何をそこへ持っていくかということなんですね。  そこで、もしよろしかったら学校教育の中で次の未来を担う子供たちに何をどういうふうに伝えていくかということをお話しいただけたらというのが一つであります。教育の問題です。  それから、藤家先生の科学技術者としてのお話はよくわかっておりますし、日本はすばらしいそういう技術の開発はなさっていると思うんですが、一番国民の立場で心配なのが廃棄物です。毎日毎日出ている廃棄物を将来どうするのかということが大変単純な疑問ではないかと思うんですが、安全とかそれから廃棄物の処理、そういうことをどのようにお考えになっているかということです。  そして、今現在動いているのが四十四基というふうに先生の資料には出ておりますが、その廃炉がこれから出てまいりますね。それをどのように安全に処理していくのかということをしっかりお聞かせいただくと国民も大変安心するんですが、今もう不安いっぱいなんです。  その不安がどこに出てくるかといいますと、藤家先生の原稿ですが、原子力が地方に立地を求めた時代から「地方が原子力を見る時代」へ果たしていくのかというのが不安です。原子力が地方に立地を求めたときにじゃ何をしてきたか。これはいろいろと生々しいお話があります。原子力を持ってくるために地方の人を呼んで温泉へ連れていってどうとかこうとかという話もいろいろあるわけですね、現実にあるんです。それが、地方が原子力を見る、これは大変難しいんではないかというふうに思うわけです。この辺どのように今お考えになっているかということです。  それから、木田橋先生の御意見は私どもは賛成です。やっぱり原子力だけにエネルギーを頼る時代はもうこれから世界的にも後退していくんではないかと思うんです。まあ先生には悪いんですけれども、技術的には大変立派な研究をなさっていると思うんです。そうしますと、じゃどういうエネルギーが要るかということですね。そうしますと、木田橋先生がおっしゃった太陽エネルギーほか石炭とか地熱とか風力とか、そういう方向で技術の開発をして、そして政府もそれにある程度の助成措置をしていって技術を開発していくのがこれからの方向ではないかなというふうに思っているんです。  私もあるメーカーを視察いたしました。太陽光発電所のメーカーです。一軒の住宅がちゃんとつくってありまして、そこの南に面した屋根に太陽光のソーラーシステムが張ってあります。そこですべてその一軒の家の電力をつくっているんだということなんです。幾らお金がかかりますかと聞きましたら、私どもが住む一軒の住宅の屋根にいっぱい張ったら五百万かかると言うんです。これはちょっと高くて、やりたいなと思っても五百万をプラスして住宅費にかけるといったら大変なんですね。それを思いますと、これはまだまだこれから前途があるなというふうに思っております。  質問にならないかもわかりませんが、御感想などをお聞かせいただければと思います。
  55. 太田時男

    参考人太田時男君) 教育の問題は、私どもの考えでは最も大切な問題の一つではないかと思います。これからの人類の文明を担っていくのは今の子供たちですから、その子供たちに非常にしっかりした環境教育、エネルギー教育あるいはエイズ等の社会問題の教育を行っていくというのは、恐らく私ども大人の一番大切な責任ではないかと思います。  具体的に先生の御質問にございます地球環境の取り入れをどういうふうにやるかというテーマでございますが、実は「時事教養」という薄い雑誌がございまして、一九九三年の第九号、第六百九十号という古い歴史を持った薄い本でございますが、この中で私は冒頭に具体的にいろんなことを提案しておりますので、事務局へ置いていきますので後でごらんいただければと思います。  そのほかに、例えば今でも中学教育でやっておりますレンズとか反射鏡とか膜とか植物の働きというものがございますが、これらはいずれも、難しい言葉を使って申しわけありませんが、エントロピーを小さくする仕事、人間が手を加えて仕事をしないでも自然現象が仕事をするような現象をみんな勉強するわけです。それは単に現象の説明で終わらないで、それが将来の人間エネルギーの営みに非常に重要な役割を果たすんだということを先生がつけ加えて説明していただくというのが焦眉の急ではないかと思っております。  どうぞ皆さん、教育に非常に御関心をいただき積極的に行政に生かしていただきたいというふうにお願い申し上げたいと思っております。
  56. 藤家洋一

    参考人藤家洋一君) 先生よく御承知のように、日本の原子力開発は安全を旨としてという言葉が原子力基本法の中に明記されてございまして、これを忠実に実行しながら現在の日本型の原子力発電が構築されてきたものだと私は理解しております。  私も原子力安全委員会の中にあります原子炉安全専門審査会の会長として、そういった原子炉の安全の審査に二十年携わってまいりました。いろんな心の動きはともかく、結果的には十分役割が果たせたかと思っているところでございます。  そういった観点から、廃棄物処理、廃炉についても当然のことながらそれだけの開発研究はやってきているつもりでございまして、廃炉については既に御存じかと思いますが、原研のJPDRという初めて日本で電気をともした原子炉を解体することによって廃炉の技術を克服しようというところが一つ出てまいりました。  これから幾つか廃炉問題が出てくることは当然でありますが、軽水炉の寿命をどう見るかということについてはいろいろな見方がございます。御承知のように、今蒸気発生器の取りかえまできています。これで圧力容器の取りかえまでいきますと、人間で申しますと心臓手術ができるということと同じになりますから、その段階で寿命をどう考えるかといったらまた別の考え方がございまして、今の経済的な観点から見ている耐用年数十六年とは当然違ったものになります。  それはともかく、いずれにしてもそういった廃炉がございます。その放射性物質についてどう扱うか、低レベルのものをどう扱うのか、高レベルのものをどう扱うのか。特に高レベルについては、現実的な対応問題としてはガラス固化という今までの地球の歴史の中で一番安定的な形態にしてこれを処理しようと考えているわけです。  私がきょう申し上げましたのは、むしろそういった放射能の消滅という観点からこれをこれからとらえ直してみるべきである、廃棄物の出ない原子力システムを考えていく。ただ、そう申しましても、現実的にすべて廃棄物が出ないような解があるとは私は思っておりません。それほど楽観的でもございませんが、そういう開発の方向へ今動きつつあることは御理解いただきたいと思います。  それから、地方が原子力を見る時代と申しますのは、私は、今までの原子力発電が地方に行ったのはやはり人間環境との関係においては必ずしもうまくいっているとは思わない。むしろ地域コミュニティーをつくる上で、原子力発電に限らず、きょう申し上げた科学あるいは技術として地方コミュニティーをつくる上でどういう役割を持つか。この一つの典型的な例が今の福井県のアトムポリス構想でございます。これについては私も少し関与しておりますし、恐らくこれから茨城県、青森県、やはり地方が原子力を見る時代という観点からの議論が進んでいくだろうと思っています。  青森に環境科学技術研究所というのが設立されたのは御承知のとおりでございまして、そういったもので原子力をきょう申し上げた総合科学技術の観点から見ていこう、何も原子力発電だけに焦点を置かないで物を考えていこうという方向が定着してくるんではないかと思っております。
  57. 木田橋勉

    参考人木田橋勉君) 森先生には新エネルギーにつきまして大変御理解をいただきましてありがとうございます。  住宅用の太陽電池、五百万円程度。というお話でございますが、これはもちろん実際に設置する太陽電池の大きさによって値段は当然変わってくるわけでございますが、通常我々の家庭で使う電気用としては三キロワット程度の設備があれば十分賄えると言われております。もしこの三キロワット程度のもので五百万ということですと、我々が今考えているよりもむしろ安いんではなかろうかというような感じでございます。  現在、住宅メーカー等が市販しようとしておるのは、三キロワットでの話ですが大体六百万円前後程度を考えておるようでございまして、おっしゃいますように、このままではなかなか普及はしない。現実にはやはりこの三分の二ぐらいの補助が要るんではなかろうかというふうに考えております。
  58. 長谷川清

    長谷川清君 きょうは本当にありがとうございます。  木田橋先生と太田先生には新エネルギーという点について同じ質問をいたしたいし、藤家先生にはプルトニウムの、高速炉の次世代エネルギーをお伺いしたいと思うわけです。  この新エネルギー、私は今お話をずっと聞いておりまして、電源には大きく分けると二種類ありまして、人間の体で言うと動脈に値するのは、言うならば今の原子力とか水力とかそして火力であるとかLNGであるとか、原子力は一基でもって百十万キロ発電する、こういうハードな大きな容量を擁する電源。そして、今新エネルギーで言われております部分は、太陽光であるとか風力、波力、地熱といったものは容量が小そうございますね、いろんな意味でこれは静脈に値すると。  私は、いわゆる電源の多様な選択肢、その長短がいろいろありますから、電源別に見たベストミックスということ、静脈的ないわゆる容量刑ベストミックス、そういうものの選択肢がたくさんあればあるほどベストミックスの価値は高まる。こういう視点からいわゆる新エネルギーの研究開発が非常に重要である、こういう位置づけだと先ほどからのお話を承ったわけです。  でございますから、森さんが先ほどちょっと心配されていたように、太陽熱や波力や地熱、そういうクリーンと言われる新エネルギーはこのハードな部分に取ってかわる、これができたらこっちの原子力がなくなるとか、こういう議論は現実的でなくなりますから、そういう点においては取ってかわるエネルギーではない。したがって、プルトニウムのような、高速炉のような次世代エネルギーというものが何十年、何百年のスパンにおいて取ってかわるという関係にあるということを、大筋私は先ほどのお話で感じるのでございます。  そういう感じ方は間違っているかどうかを木田橋先生と太田先生に。いや、それは間違っていないよ、あるいはここが間違っているということがあればその点を教えていただきたい。  それと、藤家先生と太田先生の、先ほど何かプルトニウム、高速炉に関する見解が違っているということでありましたが、私はよく考えてみると違っていないのではないかな、こういう聞き方をいたしました。  太田先生が言われたことは、「もんじゅ」や高速炉、プルトニウムという課題はまだ今のところ私は計算に入れていない、こういう言い方をしたのではないか。藤家先生も、その前提になりますのはやっぱり次世代の夢をという意味エネルギーでございますから、まず基礎研究が必要であり、実用化のための研究が必要であり、資金も必要であり、しかも国際社会における認知といいますか、そういうものが今のIAEAのような機構でこれが賄い得るかどうか。賄うと言ってはおかしいですが、管理をできるかどうか。あるいはこれを進めていく過程の中で、アメリカはいわゆる資源国でありますから、国民は膨大な資金を投入してこれを開発しなきゃならぬという事情下にない。フランスを初めとするヨーロッパはどちらかといいますと資金難でやりたくても本当はできない、いろんな事情を抱えていると思います。  したがいまして、このエネルギーはもう本当にインターナショナルで、人類の問題でありますだけに、先ほど藤家先生がおっしゃっていたいわゆる三番バッターというんでしょうか、こういう問題を今研究や資金の問題や技術力やいろんなことの条件を備えている日本が地球全体の中で、各国の中で三番バッターとしてこれをつないでいく。一たびこの研究を途絶えさせますともとのもくあみになってしまいます。ですから、継続的な蓄積がないとこれが達成しないという代物であるだけに、そういう視点に立って言えば恐らく太田先生はそれを否定しているのではないというふうにも私は聞き取ったのでございます。  現在だけを見れば、それはイエスノーという計算に入れられるか入れられないかと言えば計算には入れられないという点において共通しているし、未来のということになればそれは研究に値する、そこまでは言い切っておりませんが、その辺のところ。私の見解、受けとめが間違っているかどうか、それをひとつ藤家さんとそれから太田さんにも一言で結構でございますからお伺いしておきたい、こう思います。
  59. 太田時男

    参考人太田時男君) どうもおっしゃるとおりでございまして、非常によく御理解だと思います。  私どもの専門的な言葉で言いますと集中型と分散型という言葉を使っておりまして、エネルギーというのは末端利用を考えてエネルギー源を検討すると。例えば、先日打ち上げましたロケット、これは水素ですから水素エネルギーということを考えたらロケットをまず考える、それから製鉄でございますね、製鉄ならばまず石炭を考える、それから原子力ならば、まずは産業用の今先生がおっしゃいましたような集中型の大電力需要を考える、家庭ならば太陽熱を考えましょう、太陽発電を考えましょうというのが最もエフェクティブなエネルギーシステムという概念でございまして、それは私どももかねて強く主張をしているところでございます。  全くおっしゃるとおりでございまして、ただ私は、非常に学問的に客観的に先ほど申しましたので、高速増殖炉につきましては専門家ではございませんですし断定的なことは全く言える立場ではございませんので、それを評価の中へ入れて発言するということを控えたわけでございます。
  60. 藤家洋一

    参考人藤家洋一君) 完全に御理解いただいて、もう何も申し上げることはありません。どうもありがとうございました。  ただ、これからの日本の開発は研究環境の条件がいいというのは、世界の科学者日本に呼んで一緒にやるということを含んでいることと、それから若者に夢というのは、理工系離れあるいは何とか離れという言葉があるが、次代の若者がやはり夢を持ってもう一度ここへ参加してもらうということは何にも増して重要だと考えている、そういう意味で若者に夢をと申し上げました。
  61. 木田橋勉

    参考人木田橋勉君) 全く先生のおっしゃるとおりでございます。  いろんな選択肢を持つ、いろんなエネルギー源を持つということはやはり日本エネルギーの安定供給という面で大変大きな力でございまして、そのためにも我々としてはもうちょっと早く実力をつけたいと頑張っておるところでございます。
  62. 山下栄一

    山下栄一君 最初に木田橋先生にお伺いしますけれども、新エネルギーの問題、先ほどから出てまいりまして、その実用化に向けての取り組みなんですが、例えばアメリカとかEC諸国に比べまして実用化のテンポが少しおくれておるのではないかなということを感じておるわけでございます。  具体的には、全エネルギー供給に占める新エネルギーの割合がただいま一・三%、二〇〇〇年で三%ですか、ということで認識しているわけでございますけれども、一つは先ほどもお話ございましたコストの問題があるわけでございます。需要促進のために、もちろん国の助成措置も必要だと思いますけれども、規制緩和、この観点がやはり必要なのではないかと。アメリカの場合なんかは、カーター政権のときでしょうか、PURPA法ですか、例えば、税の優遇措置だけじゃなくて、発電事業者に電力供給の送電線を利用させることとか、それから公益電力会社の供給を自由にさせるとか、売電価格も配慮するとか、そういう規制緩和の措置が非常に思い切ってされたわけでございますが、この観点がないとコストダウンというのは図れないのではないかなと、このように考えるわけです。この辺一つネックになっているのではないかなと思うのですが、この点につきましてお考えをお聞きしたいと思います。  それから太田先生の方に、新エネルギーの開発の方ですけれども、基礎研究の部門で、全体的にも基礎研究が非常に貧弱であると言われておるわけでございます。先生担当の水素エネルギーの方に当たると思いますけれども、研究者の育成とか研究所の体制ですね、これの予算の面とか、何となく未来の重要なエネルギー開発のための体制が非常にまだまだ弱い面があるんじゃないかというふうに感じるわけでございますが、この辺の感想をお聞きしたいと思います。  それから、藤家先生にお聞きしたいことは原発の防災体制でございます。先生も直接この御担当ということをお聞きしておりますけれども、地震等による地域の防災計画、福井県なんかそうでございますけれども、これがどれくらいできておるのか、本格的なものができておらないようにお聞きしているわけでございますが、その辺について現状どうなっておるのかということ。  また、先月末に仙台の地裁で女川原発訴訟、電力会社側の情報開示が不十分であるというような判決があったわけでございますが、この情報開示の視点につきましてお考えをお聞きしたい。  以上でございます。
  63. 太田時男

    参考人太田時男君) 研究費の問題というのは、私自身のお話をいたしますと、水素エネルギーの研究を世界で最も早く始めたわけですが、そのときいち早く対応していただきましたのが実は文部省ではございませんで通産省のサンシャインでございまして、非常に助かりました。文部省の科学研究費ですと、長く続きまして二年、三年で、平等にという趣旨で、それで切られてしまいますので、やっと成果が上がりかけたところで切られて大変困るわけですが、サンシャイン計画のプロジェクトに参加しまして非常に助かった記憶がございます。  ですから、私の参考資料のところの四番目に書いてございます研究成果の価値判断の再検討というところがございますけれども、資源問題、エネルギー問題あるいはエイズの問題、環境の問題というようなグローバルな問題につきましては、特にそういう研究費を配慮していただきたいなという強い希望がございます。  しかし、文部省の大学におりまして、なかなか例えば通産や科学技術庁の研究費をもらえるような立場の人は非常に少ないんです。私なんか大変幸運だったと思っておりますけれども、そういう研究システムといいますか、各省庁で特徴的に使うというんではなくて、協調して重点的な研究費というものを何かどこか別の大きな機関で統合して考えていただけたらいいんではないかと思います。  それから、エネルギー問題というのはすぐれてグローバルな問題で、私、そういう意味で英語の本を書きまして、ブラジル、アメリカ、トルコ、ドイツというふうなところでことしの春以後講義をして回る計画をしておりますが、国内だけでいろいろ研究やりましても、教育やりましてもなかなかグローバルな成果というのは上げにくいわけで、そういう意味で、日本は国力に応じてもう少し海外でエネルギーの研究指導や教育というものにも力を尽くしていくべきだと思っております。
  64. 藤家洋一

    参考人藤家洋一君) 今、防災計画についてのお尋ねでございますが、本来、原子力の安全はそういった防災対策が必要でない程度に安全を高めることがまず最初に大きな目的でございます。しかし、日本のことわざにありますように、転ばぬ先のつえという観点からこの防災ということを考えております。しかも、これは特殊ではございませんで、中央防災計画の中にこれが入ってくることは御存じのとおりであります。  これについては、私もその防災の委員会の末端に入っておりますけれども、これが十分か十分でないかという議論はなかなか難しいところでございまして、今必要なところから話を進めまして、こういうものは日々更新していくものでございますから、そういう観点の努力はしているところでございます。  それから情報開示についてでございますが、世の中、当然のことながら情報を公開する方に動いていることは私ども十分理解しております。特に国レベルが関与することについては、情報というのは原則的に公開という線で動いております。ただ、民間企業にとってこれをどう位置づけるか、義務づけるかについては、私この席で十分お話するほどのバックグラウンド持っておりません。申しわけありません。
  65. 木田橋勉

    参考人木田橋勉君) まず技術開発でございますけれども、新エネルギー技術開発につきましては、ごく概略的に申しますと、この分野では日本アメリカが中心的な役割を果たしておる。特に燃料電池、太陽電池の研究分野では日本はトップレベルにあると考えられます。大型風力ではアメリカ等が導入量は多いんでございますけれども、この機械のうちのかなりの部分は日本のメーカーがつくっておる。あるいはアメリカで行われております地熱発電等についても、タービン発電機等は日本から供給されておるということで、技術開発の面で日本がおくれているということはなく、むしろトップレベルにあると考えております。  それから、もう一つの点の規制の緩和でございますけれども、新エネルギーの基本的な技術が確立しつつあることに伴いまして、新エネルギーの一般普及に向けた制度的な環境も今整備されつつございます。最近では新エネルギーにつきましての施設設置にかかわる規制緩和というものを行いまして、これは電気事業法の関係政省令の改正、あるいはガイドラインと称されるものの整備が行われてきております。  また、一昨年の四月からでございますけれども、これら新エネルギータイプの分散電源についての電力会社の余剰電力購入という制度もスタートしておりますので、こういうように新エネルギー導入のための制度の環境整備は進みつつあると判断されると思います。この傾向が続けば特に新エネルギー導入についての阻害要因となることはないんではなかろうかと考えております。
  66. 立木洋

    立木洋君 詳しい御説明ありがとうございました。  ぜひこの機会にお伺いしておきたいと思ったことがあったんです。藤家参考人は原子力安全委員会の原子炉安全審査の会長をなさっておるということで、今まで私この場で何回かお尋ねしたんだけれども、なかなか明確な答弁をいただけなかったので、きょうははっきりとお答えいただければ大変ありがたいと思うんです。  実は先日の新聞で、シビアアクシデントの問題について、電力業界がそれについての対策の骨子を発表したと、まとめたというのが二月一日に行われたという報道を見たんです。私、これ非常に注目しました。というのは、この問題を私何回か国会の中でこれまで質問してきたんです。一九八八年の国際原子力機関の安全諮問委員会でこの問題について、チェルノブイリだとかスリーマイル島だとかのああいうアクシデントの問題についてシンポジウムが開催されたんですね。そして、そこでこの問題については、つまりそういう過酷な事故が起こるということを前提にしていわゆる安全の対策は講じるべきだという勧告がなされたわけです。  それを聞いて私はすぐ国会でそれを取り上げまして、この問題について日本としてはどう考えるんですかと聞いたら、日本ではそういうふうな過酷事故が起こることはありません、だからそういう対策は不必要ですというのが答弁だったんですよ。これは私はおかしいんじゃないかというふうに思いました。そしたら案の定、一九九二年五月でしたか、原子力安全委員会から関係省庁と電力関係者の方にこの問題についてはよく検討するようにという勧告ですか、通知がなされたというふうな話を聞いて、そのときも資源エネルギー庁の方にお尋ねしたんですが、これはどういう考えで出されたんですかと言って聞いたんですが、なかなか明確な回答がなかったんです。  それで、ああいう国際的な原子力機関における安全対策の問題でのシンポジウムがなされて、六年間の経過はたちましたけれども、今日の時点でそういうシビアアクシデントの問題についてやっぱり対策を検討する必要があるというふうになったということは、私はいいことじゃないかというふうに思っているんです。  ですから、その間に安全に対する方針が変わったのか、あるいは考え方が何か変わったのかどうかというあたり、さっき何か私の気持ちの動きについてはちょっと別としてというふうなことをちらっと森さんの質問に対してお答えになったようなところがあったんですけれども、つまり、より完全なものにしていくためには、国際的なそういう科学的な教訓を導き出して、より一層安全なものにしていく努力というのは常にこれは必要になってくるんだろうと思いますけれども、そういう審査会の会長さんをなさっている立場からこの問題をどういうふうにお考えになっているのかということをお聞きしたいということが一点です。  それから太田参考人につきましては、先ほどのお話の中で、放射性廃棄物の処理の問題、これはやっぱり非常に大きな問題になってくるし、そういう問題もあるんだというふうなことについてもお話がありました。  また、先生のお書きになった論文を読ませてもらっているんですが、先生の論文を見てみると、原発はCO2を全く排出しないなんというふうなことが言われているけれども、これは全く事実に反するということが論文に書かれて、その論拠も挙げられているわけですね。そして、これについての対策としてはやっぱり必要な施設までやらなければだめなんだというふうなことになってくると、経済性の問題なんかも問題になりかねないということなんかの指摘もありました。  だから、そういう点で原子力、原発の利用の問題について、これは人類がつくり出した英知ですから、将来それを正確な形で利用していくというのは、それはもちろんそうあるべきだと私は思っています。しかし、そのためにはやっぱり越えなければならないハードルがまだあるんじゃないか、そういうふうなことを感じて、当面の原子力の利用と将来的な展望について、エネルギー源としての原子力の問題についてどのようにお考えになっているのかということをお尋ねしたいんです。  それから三つ目の点としては、木田橋先生にですが、先ほど新エネルギーの幾つかの点を説明されました。経済性の問題からコストの問題からさまざまなことをお話しになったんですが、端的に言って、御自身としては、近い展望としてはどういうものが総合的に判断して実用可能なエネルギー源と考えられるのか。あるいは順位をつけていただいても結構ですが、何かそういうふうなお考えがあればお示しいただければ幸いだと。よろしくお願いします。
  67. 太田時男

    参考人太田時男君) 実は今、立木先生が言われました私の論文は、電気学会誌に発表した論文でございまして、この論文につきましては、学会で発表して、厳しい討論を経た末に論文にしたものでございます。  原子力発電のシステムとしてそれではどうしてCO2が出るのかというと、それは二つありまして、一つは施設をつくるときの石油エネルギーの問題、これは私の論文には触れておりません。もう一つは、原子力の排水によって温度が上がると、海水中に溶けているCO2が温度が高くなった場合の許容量以上の差を排出するというものでありまして、それは詳しい計算をやっております。  結果としてはどうかといいますと、石油を一〇〇としますと、天然ガスが六〇、それから原子力は一〇%ぐらいでございますが、上がることは上がるということです。同じワット時に対しましては石油の約一〇%ということでございます。  それから、将来のエネルギー源として原子力をおまえはどう考えているのかという質問でございますが、私は基本的には、学術的な観点から最も必要なことは、省エネルギー、つまりエネルギーシステムをきちっと構築して、発電所をつくるよりも、まず現在の発電容量の中でシステム的な省エネルギーを考えるべきであるという基本的な思想を持っております。例えば、先ほどNEDOの方から発表になられましたピークシェービングのためのシステム、電池というようなものも私はこれは一般家庭のレベルまでに下げるようなことを考えていったらどうかと。  とにかく石油にしろ、石炭にしろ、天然ガスにしろ、原子力にしろどんどん物を消費していけば必ず廃棄物が出まずし、それから、どんどんそういうシステム拡大していきますとそれに伴う矛盾は必ず起きますから、まだまだ私は省エネルギーという面で努力をすべきことがあると思います。  電力会社も発電所をつくることはかり考えないで、例えば、現在ある電力を有効に使うために余剰電力の貯蔵設備をもう少し拡充したらどうかという非常に強い希望を持っております。揚水発電ぐらいしか実質的なものはないんですけれども、これを例えば沖縄でやられているように、海水の貯蔵、ポンピングダムというようなものをもっと普及すべきではないだろうか。なぜ発電所だけたくさんつくることを考えるのだろうかというのが率直な疑問なんです。  以上です。
  68. 藤家洋一

    参考人藤家洋一君) 先ほど私、心の動きと申しましたのは、十分な安全の審査をやった後ちゃんと動いてくれよという、子供を世の中に送り出すような意味での心の動きと申しました。非常に情緒的なところでありますので。  それから、シビアアクシデントを前提にすべきかどうかということで申しますと、今の日本の原子力は当然のことながら十分なる安全性を確保したものについてのみ建設、運転を許可しております。したがって、これを確率論的立場からリスクという概念でとらえようとしますと、これはゼロのない世界でございますから、確率が幾ら小さな数字であったとしてもゼロがございません。必ずある値が出てまいります。私どもそれを十のマイナス六乗とか十のマイナス七乗とか、そういったおよそ日常生活からかけ離れたところで、これは気象庁の天気の予報ですとゼロと一〇〇が平気で出てくるんですけれども、我々は十のマイナス六乗、七乗を議論対象にしております。  したがって、リスクは非常に小さいんですが、やはり世界的な一つのそういう動きの中で日本も、先ほど何度か申しました転ばぬ先のつえということで見直してみるということは、それはそれなりに意味のあることだと思っております。ただ、これを行政の中に取り込むとか取り入れるとかといった問題とは今直接の関係はございません。  それとこのシビアアクシデントの問題は、安全専門審査会とは違いまして原子力安全委員会の中の話でございますけれども、審査会直接のマターではございません。
  69. 木田橋勉

    参考人木田橋勉君) 新エネルギーで近い将来でどういう夢が描けるかという御質問でございますけれども、全くこれは個人的な考えでございますけれども、太陽電池、それと燃料電池、それからもう一つ、石炭をガス化しましてそれに基づいて複合発電する、この三つあたりがやはり比較的近い段階で有望ではなかろうかと考えております。  太陽電池は、先ほどから議論が出ておりますように、各家庭の屋根に設置するということで、これは非常にいいことには、夏の一番電力系統でピークが出るときにこの太陽電池も一番出力が大きくなるというような、ピークカット、ピークシェービングの機能を持っている。御自分の家で使う電気の全部ではないとしても、例えば三分の一、半分でも自分のところで発電するということができたら、これは全体のエネルギー問題あるいは環境問題からも大変いいことじゃないかと思います。  それからもう一つ、燃料電池は熱と電気と両方供給することができ非常に高い効率が得られるということで、やはりこれは大いにこれから導入普及という点で力を入れていかなければならないものと考えております。これは各家庭にというわけにはいかないものでございますけれども、こういうビル等、コージェネレーションの電源としては最適なものではないかと考えております。  それから、石炭をガス化して複合発電ということにしますと従来の火力発電に比べまして大変高い効率が得られる。そういうことによりまして、石炭は環境問題的には他のエネルギー源から見ると多少不利な条件にあるわけでございますけれども、そういう不利な点もカバーできるんじゃなかろうか、こういうふうに考えております。
  70. 岡利定

    ○岡利定君 太田先生にお教えいただきたいんですが、先ほど先生おっしゃいましたが、何といいましょうか、エネルギーをつくり出すよりも、省エネ的といいますか、あるいは効率的なエネルギーの利用というのが大変重要な課題だというふうに私も思います。  そこで、先生の資料で「これからのエネルギー機器(民生中心)」というのをずらっと書いていただいておりまして、それぞれについてこういうものだというふうなことを先ほど簡単にお話しいただきましたが、この辺のところが、一番身近な問題として大変必要になってくるんじゃないんだろうかなと。  そこで、これからということなんですけれども、現実の日本技術レベルというものを見ているときに、研究開発状況がどういう状況にあるのか。それから、一部現行というようなものなんかも入っておりますけれども、実用化の見通しといいましょうか、そしてそれをまた実現していくために必要な推進施策というようなものについて先生のお考えがあればお教えいただきたいと思います。
  71. 太田時男

    参考人太田時男君) 今、岡先生から御質疑いただきましたが、ここに述べましたのは、私は非常に緊急を要するもので、しかもコマーシャルレベルになり得ると考えているものでございまして、省エネルギーということで、繰り返すことでもございますが、例えば夏暑いときに冷房をどんどんつけまして日本全国の発電容量の九〇%を超すようなことがある。それは大変だ、発電所をつくらなきゃ困るじゃないかと言う。ところが都市ガス、LPGなどは全然使われていない。同じエネルギーでありながらお互いに協力関係がないために矛盾が起きている。だから私はまずそういうことを、非常に身近なことからガス冷房というのを提案している。  これはもちろんほかのガス会社でも一生懸命やっておられますが、もう一つ抜本的な技術開発がないんですね。悪い言葉ですが、昔からあるようなものをいじっているだけである。これじゃ抜本的にならない。それで私、三年ほど前でございましたか日本ガス協会のエンジニアに集まっていただきまして、物理学的、科学的に考えられるあらゆる冷房の方式を、非常に基本的なことをレクチャーしたことがございます。私もこれは本当に必要だと思いました。  それで、その後進んでいるかということですが、まだ製品になっておりませんけれども、本気になってやればできるんではないかというふうに思います。これは我が国だけの問題かもしれませんけれども。こういうようなことがここに書いてあることの中に幾つかあると思います。  先生おっしゃいましたように、それじゃどうしたらこれをもっと有効に進められるか。これは大学ではなかなかこういう応用的な問題はできない。では企業でおやりなさいというと、企業は現在は不況でなかなか研究費をこういうところへ割けないという非常に矛盾したことがございまして、何とかならないかなというのが私の考えです。太陽電池は別ですけれども、NEDOさんのようなところでこういうテーマはなじまないですね、余りにも商業的なものですから。今苦慮しているところでございまして、何かお知恵がございましたら。私も本当にこういうことを一生懸命やりたいと思っておりますから。
  72. 岡利定

    ○岡利定君 ありがとうございました。
  73. 長谷川清

    長谷川清君 太田先生に、先ほどのお答えの中に変電所や発電所をなぜ好きこのんでつくるんだというお話がありましたが、私は省エネルギーということについては、すべての出発点であり、共通してみんなこれを国民的に社会全体がやらなきゃいけない大前提のテーマだと、その点については同感なんです。  一方、現実を見ますると、関東ベースだけで見ましても、この不況であるにもかかわらず大体一千七百万キロワットぐらい、いわゆる神奈川県全域の需要の分ぐらいがふえちゃっているという実態が一方にありますね。  もう一つは、同じ需要でありましても、できるだけ夜間電力を利用すること、それからピークをなだらかに抑えることができましたら、たとえ瞬間風速でも、ピークが高くなればなるほど、そのときだけは停電よというわけにいかないから、ここのために設備が必要になる。今はもう大体いつも毎年ピークがはね上がりますから、電力会社が電力会社から電気を買って供給しているという状況ですから、客観的に見ますると、やはり好きこのんで発電所をつくっているのではなくして、基本的にはですね。そして、電気事業法では供給の義務だけはしょわせている。  こういう状況からいきますと、やっぱりこれは国民的課題として、まずベースにあります省エネルギーということを徹底し、これが地球環境にも優しい心につながるし、そういう意味でこれをやらなきゃいけないんですけれども、やはり人間の欲望というのはこういうものか、なと思うぐらいに、そういうテーマになってくると思います。  ですから、これだけが供給側の責任とかというものではないんではないか、こう思いますので、ここで何も大先生に向かって考えを変えてくださいなどとは申しませんけれども、私はそのように客観的には思うわけです。意見です。
  74. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 私、福島の出身で、原子力発電と大体二十三年共存共生をしてまいりました。  地域の住民の感情としては、恐ろしいとか不安だと思ったことはそうありません。しかし、地球の環境あるいは温暖化、そういうことを考えますと、究極のエネルギーとしてはやはり核融合あるいは太陽の利用、それしかないのかなというふうに思いますが、それまでに至る間の高速増殖炉、あるいはそれまでに至る間のプルサーマル、それはやはり日本としては研究をし実現を図っていかなきゃいかぬと。プルサーマルは余り効率的ではないと思いますけれども、プルトニウムの本格的利用に至るまで、やはり現在も現存の炉で燃えているはずでございますから、これを利用して高速増殖炉の時代につなげるという考え方が私は必要かというふうに思っております。  そこでお尋ねしたいのは、高速増殖炉あるいはプルサーマルの最初の計画期間が少し後送りになっております。プルサーマルなんかすぐにできると思うんでございますが、これもちょっとおくれておるような気配でございます。その原因あるいは見通し、それについて太田先生と藤家先生にお伺いをしたい、こう思っております。  それと、私の持論でございますが、食糧とエネルギーというのは、もちろん人類の生存にとって不可欠の問題でございまするし、一世紀ぐらいのスパンというものを考えれば、すぐに大きな問題を引き起こすことになってくるわけでございます。  そこで、先ほど教育の問題がございましたけれども、食糧とエネルギーについては小学校の正式な教科に取り入れて、人間にとって食糧なりエネルギーは大切なもの、しかも有限なもの、それをどういうふうに我々は利用していくべきか、そういうことを徹底的にやはり教え込まなきゃいかぬというふうに私は思っておるわけでございます。その点について三人の先生の御意見を少しずつお聞かせいただければ幸いでございます。  以上でございます。
  75. 太田時男

    参考人太田時男君) まず核融合、高速増殖炉の話でございますが、高速増殖炉につきましては、その方の専門の先生が参考人として御出席でございますし、私は、人間の知恵というものに頼って人類の将来というものは開けていくという基本は変えられないと思いますが、やっぱりそうでなければいけないと思います。  核融合につきましては、私はたくさん意見がございますが、核融合が提案されましたのは、インドのブハブハという大物理学者でございますが、提案してからもう四十年、五十年たちますが、まだなかなか見通しが立たない。これ立ちましても、エネルギー変換の問題とかいろいろややこしい問題がございまして、核融合炉の壁の問題とかいろいろございまして、これが人間エネルギー源として寄与するようになるのはずっと先のことではないかと思います。  ただ、常温核融合という名前でジャーナリズムをにぎわした現象がございますが、この現象自身をもう少し謙虚に科学的な面から検討していくべきではないかという考えを持っております。
  76. 藤家洋一

    参考人藤家洋一君) 核融合に関しましては太田先生とほとんど同感でございます。これをまだエネルギー源として想定するには時期尚早かと思っております。ただ、開発については十分なる開発を続ける必要があるかと思います。  今先生がおっしゃっているプルサーマル、それから高速増殖炉のおくれ等でございますが、これはもう既にきょうもお話し申し上げましたが、技術開発はずっと続けております。そういった混合酸化物燃料をつくりまして、既に美浜一号炉、敦賀一号炉に入れてテストをしたことは御承知のとおりでありますし、その後の検査もやっているところでございます。  このプルサーマルあるいはATRにおける使用といいますのは、日本の原子力政策の中で、やはり平和利用をモットーとするという観点から、余ったプルトニウムを貯蔵しないという観点でこういった利用を考えようとしております。私どもの見込みでは、今の軽水炉においては、今の原子炉とほとんど特性を同じにして使おうとしますと、全体の三分の一ぐらいにこのMOXを入れるということになります。  それから今、青森県の大間で計画しておりますATRの実証炉は、全炉心このMOXを入れてということでありまして、恐らく近い将来そういう状況が出てくるかと思いますが、いずれにしましても日本の原子力開発は非常に慎重でございます。何も急いでということではございませんで、日本の国民の支持を得ながらということから、慎重に対応していく。「もんじゅ」の臨界もそういった意味で少し慎重にやってきたことは御承知のとおりでございます。  いずれにしましても、着実にということが大原則でございますので、このおくれの理由を特定の原因に持ち込むことは、ちょっと私も今よくわかっておりません。
  77. 木田橋勉

    参考人木田橋勉君) エネルギーについて、二十一世紀を担っていただく小学生、中学生あるいは高校生に十分認識していただくというのは、先生のおっしゃるとおり大変重要なことと我々も考えております。  それで、現在我々できる範囲のことをやっておるわけでございますけれども、小学校、中学校、高校の教育の関係者に対しまして、エネルギーの教育用ガイドブックを作成する、あるいは教育用のビデオを作成するということで、これをこういう学校に配付しております。  また小学生、中学生向けでは、新エネルギー等についての関心、興味を引き起こすということのために、太陽電池の工作コンクールというのを年一回開催しておりまして、たくさんの学校、学生さんに参加していただいております。  現在はこういう程度でございますけれども、おっしゃるとおり、小学生、中学生あるいは高校生等について、エネルギー問題を十分知っていただくということは大変重要なことと考えております。
  78. 南野知惠子

    南野知惠子君 お三人の先生から大変難しい問題をわかりやすく御説明いただきました。まだまだ勉強が及ばない点もございますが、きょうは藤家先生が大変夢を運んでいただけそうな気がいたしますので、そこで二点ほど絞りましてお話をお伺いしたいと思うのでございます。  原子力とそれから医療との関係につきまして、先ほどがんの問題だとか脳腫瘍の問題で御説明ございましたけれども、二十一世紀、二十二世紀に向けてこういうものがこういうスパンでできそうなんだというようなことがございましたらお教えいただきたいことが一点。  それから、三ページの下の方に砂漠の緑化ということがございますが、これは何か大きな夢をもたらしていただけそうでございますので、どのような形で実現化するのか、現実の方向に持っていがれるのか、何かございましたら教えていただきたいなと思っております。
  79. 藤家洋一

    参考人藤家洋一君) 一つは、医療にどう原子力が利用できるか。これは放射線の利用という観点から、放射線と原子核との間のいろんな反応を考えてまいりました。  古く、佐藤栄作さんが首相をしておられたころに、医療用原子炉ということで、東大の畑中先生を中心に実際に原子炉を使ってこの医療をやりました。この流れはございまして、原研、東海村でやったり、あるいは武蔵工業大学の炉を使ってやったりしております。  ただ、この辺はまだ医学と原子力のいわゆる融合が十分でございませんで、これからさらに医学から見た原子力という見方が重要になってくるだろうと思います。これは地域医療にまでつながっていく問題かと思っております。それがまさに地域コミュニティー形成にどう原子力が寄与できるかという一つの点かと思っております。  放射線の利用ということから申しますと、原子炉でなくても大丈夫でありまして、放射線医学研究所ではシンクロトロンを使ってこれを医療に使いたいということであります。これもそろそろ動くかと思いますので、これが動きますと、そこで取り上げられたいろんなテーマはその後発展して、いろんな日本の場所で実際に医療用に使われていくんだろうと思っております。原子力がどこまで貢献できるか、それはむしろ医者の立場からよく見ていただきたいということであります。  それよりも何よりも、もっともとへ戻っていただきますと、病院ではアイソトープを相当使っております。これはまさに原子力の医療への利用の出発点でございました。そういうことで御理解いただければと思っております。  それから、日本の国際貢献の中に、開発途上国という言葉を使うのが適当かどうかわかりませんけれども、こういった国々がこれから二十一世紀にどういう形で成長していくのか、これについての関心は十分持っておく必要があります。そこで、エネルギーを供給することによっていろんな環境改善ができることは事実でございます。その非常にトピカルな問題としてこの砂漠の緑化というのを取り上げました。  日本でもそういう動きが一つはございまして、小型の高速炉、三十年ぐらい何もしないでも動く高速炉を持っていって、そこから出てくるエネルギーでかんがいをやって緑化をしていこう、そういうような動きがございます。これは一例でございますけれども、地球環境に対するこれから原子力の貢献というのは十分考えておく必要があろうかと思っております。
  80. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございました。
  81. 櫻井規順

    会長櫻井規順君) まだ御質疑もあろうかと存じますが、予定した時間が参りましたので、以上で参考人に対する質疑を終了いたします。  参考人皆様一言御礼申し上げます。  参考人皆様には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見につきましては、今後の調査参考にさせていただきたいと存じます。本調査会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  なお、本日、参考人から御提出いただきました参考資料のうち、発言内容把握のため必要と思われるものにつきましては、本日の会議録の末尾に掲載させていただきたいと存じますので、御了承願いたいと存じます。     ―――――――――――――
  82. 櫻井規順

    会長櫻井規順君) 委員派遣承認要求に関する件についてお諮りいたします。  産業資源エネルギーに関する調査のため、委員派遣を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし。」と呼ぶ者あり〕
  83. 櫻井規順

    会長櫻井規順君) 御異議ないと認めます。  つきましては、派遣委員、派遣地、派遣期間等の決定は、これを会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  84. 櫻井規順

    会長櫻井規順君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時一分散会      ―――――・―――――