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1994-05-25 第129回国会 参議院 国際問題に関する調査会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成六年五月二十五日(水曜日)    午後一時開会     —————————————   出席者は左のとおり。     会 長         沢田 一精君     理 事                 大木  浩君                 大島 慶久君                 松前 達郎君                 猪木 寛至君                 荒木 清寛君                 上田耕一郎君     委 員                 上野 公成君                 岡野  裕君                 下稲葉耕吉君                 林田悠紀夫君                 宮澤  弘君                 志苫  裕君                 谷畑  孝君                 深田  肇君                 細谷 昭雄君                 山口 哲夫君                 山田 健一君                 井上 哲夫君                 中西 珠子君                 島袋 宗康君    事務局側        第一特別調査室        長        下田 和夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際問題に関する調査  (派遣委員報告)  (「アジア太平洋地域の平和と繁栄に向けて」  等について)     —————————————
  2. 沢田一精

    会長沢田一精君) ただいまから国際問題に関する調査会を開会いたします。  国際問題に関する調査を議題といたします。  まず、先般行いました委員派遣につきまして、派遣委員報告を聴取いたします。  なお、御発言は御着席のままで結構と存じます。大木浩君。
  3. 大木浩

    大木浩君 国際問題に関する調査会派遣委員報告を行います。  本調査会沢田会長大島理事松前理事荒木理事上田理事宮澤委員山田委員島袋委員及び私、大木の九名は、去る三月十四日から十六日の三日間にわたり、国際交流海外技術協力自衛隊現状等に関する実情調査のため、広島県、福岡県及び熊本県に派遣されました。  以下、その調査概要について、日程に沿って御報告いたします。  第一日目は、広島県において、留学生向け宿舎の不足を解消するとともに、地域国際交流拠点とする目的で、県、東広島市、県住宅供給公社の三者が協力して建設したサンスクエア東広島を、次いで、平成九年度に開所予定国際協力事業団広島国際センター予定地を、さらに、広島市内から東広島市西条に統合移転を進めている広島大学キャンバスを、また、今年の十月広島県で開催される第十二回アジア競技大会メーンスタジアム広島ビッグアーチをそれぞれ視察いたしました。  その後、広島大学本部において、同大学の学長を初め大学関係者から、同大学の進めている国際交流及び留学生状況についての説明を聴取し、意見交換を行いました。  引き続き、広島県庁に赴いて、アジア大会開催などを通じて世界に開かれた地域づくりを進めている広島県の取り組み方及びその諸施策について、県当局から説明を聴取し、意見交換を行いました。同県では、国際化推進プラン二十一を策定し、この計画に基づき、西暦二〇〇〇年を目標に、県民国際意識の高揚や国際性に富んだ人材育成、さらには、国際協力親善交流促進交流拠点整備等事業を進めているということであります。  二日目には、福岡県において、国際協力事業団九州国際センターの諸施設を視察するとともに、同センターの所長を初め関係者から、その事業概況等説明を聴取し、意見交換を行いました。また、外国人研修員日本語の教育実習を受けている状況等も視察し、彼ら研修員と懇談いたしました。  次いで、トランジスタの生産では世界一を誇るアポロ工業本社工場を視察し、その事業概要等についての説明を聴取いたしました。同社では、昭和六十年以降の円高の進行で、国内生産では採算が難しくなってきたことなどから、タイ工場を建設し、徐々に生産部門をシフトしているということでありました。  三日目には、熊本県において、まず、小型自動二輪車の生産中心とする本田技研工業熊本製作所を視察し、その事業概要等についての説明を聴取いたしました。同製作所も、アポロ社と同様、近年の円高不況貿易摩擦への対応策一つとして、将来自動二輪車の大消費地発展することが予想される中国へ生産拠点をシフトしているということでありました。  その後、熊本県庁において、世界に開かれた地域社会形成実現に取り組んでいる県の諸施策等について、県当局から概況説明を聴取し、意見交換を行いました。同県では、国際化のための総合指針を策定しておりますが、この指針は、県民国際感覚をはぐくむ環境づくり米国モンタナ州を初めとする姉妹交流推進国際化施策推進のための基盤整備等、県の行政全般にわたり、国際化についての基本的な考え方と方向性を示したものであります。  県の主な施策としては、姉妹提携交流の一層の充実、国際交流活動への支援、保健医療における国際協力推進青年海外協力隊への参加の促進などが挙げられます。  次いで、九州七県及び沖縄県から成る広大な地域を管轄する陸上自衛隊西部方面総監部に赴き、管内地域における警備・防衛業務や雲仙・普賢岳等災害救援に対処する西部方面隊派遣活動等について、概況説明を聴取するとともに、意見交換を行いました。  最後に、東海大学宇宙情報センターを訪れ、地球観測衛星通信衛星等から送られてくる各種データ解析処理について、大学当局から具体的にスライドを用いての説明を聴取いたしました。同センターにおける解析処理は、地球砂漠化森林減少、阿蘇山の噴火調査など地球環境観測に役立つばかりでなく、各国の軍事施設存在に関する情報の収集も可能ということであります。  今回の派遣では、「二十一世紀に向けた日本責務」として、国際社会の中で、我が国はどのような役割と責任を果たすべきか、そのためには国内体制をいかに整備すべきかという視点に立って調査を行いました。  幸いにも、関係自治体を初め、訪問先関係各位の並み並みならぬ御協力と御好意により、それぞれの地域における国の機関及び自治体国際化に向けた取り組み施策大学民間企業外国人留学生技術研修員受け入れ等を通じての国際化への対応、さらには、最近の自衛隊活動状況等について有意義な実情調査ができました。  ここに、御協力いただいた各界各位に対し深く感謝申し上げます。  以上が、今回の調査概要報告でありますが、詳細につきましては、別途、文書による報告書を提出いたしましたので、それを本日の会議録末尾に掲載していただけるようお取り計らい願いたいと存じます。  以上でございます。
  4. 沢田一精

    会長沢田一精君) 以上で派遣委員報告は終了いたしました。  ただいま御報告がありました派遣委員から、別途、報告書が提出されておりますので、これを本日の会議録末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 沢田一精

    会長沢田一精君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  6. 沢田一精

    会長沢田一精君) 引き続き、国際問題に関する調査を進めてまいります。  本調査会は、第百二十四回国会において設置されまして以来、三年間にわたるテーマとして「二十一世紀に向けた日本責務」を設定し、調査を進めてまいりましたが、三年間の調査期間最終年を迎えるに当たり、具体的な問題を選定し、調査を深める段階に至っておると存じます。  そこで、理事の間で協議を続けました結果、理事懇談会におきまして、既に委員各位にお配りしてございます「アジア太平洋地域の平和と繁栄に向けて」を具体的な問題とすることで合意いたしました。  本日は、このような経緯を踏まえ、委員皆様から「アジア太平洋地域の平和と繁栄に向けて」のもとで具体的に調査を進めるべき事項について御意見を伺うことといたしました。また、二年目の中間報告作成する時期も近づいておりますので、この問題につきましても御意見、御提言をお述べいただいて結構でございます。  さて、本日の議事の進め方でございますが、理事会協議いたしました結果、まず最初に、それぞれの会派から一人ずつ「アジア太平洋地域の平和と繁栄に向けて」などについて一人十分以内で御意見をお述べいただきます。次に、意見表明が一巡しました後、午後四時ごろまで自由討議方式によりまして自由に委員皆様方に御意見を述べていただき、相互に論議を深めていただく形で進めることにいたしたいと存じます。  それでは、各会派一人ずつ順次御意見をお述べ願います。
  7. 上野公成

    上野公成君 それでは、自由民主党を代表いたしまして意見を述べさせていただきます。  今会長からお話がありましたとおり、理事懇談会で「アジア太平洋地域の平和と繁栄に向けて」というテーマが設定されたわけでございますけれども、私も賛成をいたしたいと思います。  東西の冷戦構造の崩壊以後、もう早くも五年近くが過ぎてきたわけでございますけれども、この間にアジアにおきましてもカンボジアを初めとするインドシナ情勢安定化方向にきてまいりました。  一方で、朝鮮半島では依然として平和を脅かしかねないような問題が存在するわけでございますけれども、アジアは大変いろいろな問題を抱えているわけでございます。日本の将来にとってグローバルな観点から申し上げましても、それからアジア太平洋地域の平和と繁栄ということは大変重要な命題であるというふうに思います。そして、項目として六項目が挙げられているわけでございますけれども、日本の貢献と責務というのはどういうものかということも考えてみますと、やはり抽象的ないろんなことはあろうかとも思いますけれども、具体的なことの積み重ねてこの信頼関係をつくっていくということが重要じゃないかと思うわけでございまして、特に、私といたしましては、三番目の「政府開発援助あり方」と、それから四番目の「国際交流人的交流を通じた信頼醸成」、こういったことを重点的に取り上げていただけたら大変幸いだというふうに思っております。  そして、この政府開発援助でございますけれども、ODAというふうに言っておるわけでございますけれども、これはたしか飯田先生お話の中にも日本ODAが果たしてきた役割大変評価をされておるということがおっしゃられておったわけでございますけれども、同時にODAについてはいろいろな問題もあるんじゃないかということは指摘をされてきておるところでございまして、この項目に書いてありますように、ODAを量的に増大をしそして質的にも向上していく、また環境でありますとか教育だとか人口問題、こういった分野にも広めていくということが大変重要な問題だと思っておるわけであります。そして、これからの重点的に調査とか審議を進めていくことに関しまして、ちょっと私なりの意見があるわけでございます。  この二年間、いろんな方々からお話を伺ってきたわけでございますけれども、今まで大学先生でありますとか、元官僚の方とか、あるいは研究所の方々現場で本当に細かい苦労をされたという方よりは、比較的、大局的に研究をされ、あるいは情報を仕入れられた方の御意見が多かったわけでございますけれども、しかし、私もデンマークに毎年のように行っているわけでございますけれども、やはりちょっと行くということだけではなかなかその国の事情というのも十分にはわかりかねるわけでございますので、もう少し現地で三年なり四年なり本当に苦労をしてきた方々意見というようなものを、これは個人的な経験でありますので偏っているかもしれませんけれども、何人かのそういう方々意見というものをこういう会議で聴取するということが大変意義があるんではないかというふうに思っております。  私が知る範囲でも、これはJICA等から専門家がインドネシアやあるいはフィリピンや、いろんな国に行っているわけでございますけれども、一生懸命やってきた人にも、なかなか一生懸命やったけれども向こうの政府にもあるいは日本側の方にも取り入れてもらえなかった、非常に無念な感じを持って帰ってきた方を私も何人か知っておりますので、どうかそういう専門家現場での生の声というようなものもぜひ聞いていただけたらいいんじゃないかと思っております。  そこで、このODAにつきましては、本院で平成元年国際開発協力に関する決議というのを行っておりまして、ODAがこれだけ日本世界一の巨額に達しているわけでございますけれども、かなり成果を上げているのに基本法がないのはおかしいと。これはいろんな点で合意が見られなかったわけでございますけれども、先日も我が党の山本富雄幹事長が、ODA基本法を制定すべきだというようなことを本会議での代表質問を通じてしたわけでございますけれども、この際、せっかくの機会でございますので、こういったことも本調査会におきましてもそのための議論を進めるということが必要なことではないかというふうに思うわけでございます。  さらに、四番目の「国際交流人的交流を通じた信頼醸成」という項目でございますけれども、やはり人と人の触れ合いによりましてこの信頼関係というのができるということは言うまでもないわけでございますけれども、こういった点につきましても、日本留学生がたくさん来ているわけでございますから、そういう人たちの声、あるいは実際に国際交流に非常に長い間やってこられた方々意見も、先ほどODAに関して申し上げたことと同じでございますけれども、もう少し、本当に一生懸命こういったことに携わられている方々意見もぜひ聴取していただけたらと思っている次第でございます。  そして、人的交流ということで申し上げますと、日米でも議員連盟がありますしいろんな議員連盟があるわけでございますけれども、ASEANの方でも議員との交流もないわけではありませんけれども、やはりこういう調査会を通じてそういうアジア太平洋地域との議員相互交流ということも、これは大変成果が上がることにつながるんではないかということでございまして、そういったことも具体的にこの調査会としても取り上げていただいたら幸いであります。  以上でございますけれども、できるだけ具体的にその現場の声をなるべく聞くということが重要だということを申し上げまして、私の意見を述べさせていただきます。ありがとうございます。
  8. 山田健一

    山田健一君 私の方からも少し意見等を申し上げさせていただきたいと思います。  ただいまの会長提案に対して基本的に賛成ということで、私も同様でございます。  「アジア太平洋地域の平和と繁栄に向けて」というテーマを設定しながらいよいよ二年目の中間報告、そして三年目に入っていく、いわゆる報告書作成に向けてこの時期に具体的なこういう課題の設定をして取り組んでいくということについては、私も賛成であります。  ここに具体的に今検討すべき項目ということで六点ありますが、ただいま御指摘がありましたように、私も基本的にはODAの問題なり人的交流の問題、ここら辺が大きなテーマになるんではないかなという気がいたします。  ここに六項目挙げでありますが、これを大別しますと、最初の「アジア太平洋地域の平和と安定」、こういうことで、とりわけこの地域安全保障枠組みをどうこれから構築していくのか。これは一つの大きなやっぱり課題になるだろうと思っております。それと二、三、これはやっぱり関連をすると思っております。「アジア太平洋地域経済発展への寄与」と「政府開発援助あり方」、これは関連づけてここで一つ項目としてやれるんではないかなと。それからもう一つは、「国際交流人的交流を通じた信頼醸成」、と同時に人材育成をどう図っていくのか、こういうことになるんだろう、このように思っております。そして同時に、「国際的な責務を果たすに当たっての留意」、これはやはり何といってもアジア太平洋多様性ということを踏まえれば、いろんな格差や不均衡が存在をしておるという現実をしっかり認識した上でやはり相互理解をし、そして信頼協力あり方というものをどうこれから探っていくのかというのが一つの大きな課題だというふうに思っております。  同時に、先般来いろいろ政治的な問題にもなっておりますように、とりわけ日本がどういう役割を果たしていくかということを考えた場合、その留意点として、一つ太平洋戦争をめぐる歴史的な認識のあり方、この問題はきちっとやっぱり明確にしていかなければいけないんではないかなというふうに思っております。  そして、こういうことを踏まえながら、具体的なテーマ検討をしていきながら、もちろん最終報告書作成ということになるんだろうと思いますが、それぞれこの調査会のメンバーからも出される具体的な提案意見等について必要なものは、中間報告なりでまとめられたものについては何も最終報告を待たずに、具体的にこれから来年度の予算等についても反映できるものはしっかり取り組んでいく、こういうことは私はあってもいいんではないかなと、このように考えております。  そこで、まず最初に申し上げました「アジア太平洋地域の平和と安定」、とりわけ安全保障枠組みということに関連をいたすわけでありますが、従来、安全保障枠組み冷戦構造の中でアジア太平洋、特徴的に言えるのは、日米米韓、そして米フィリピン、そして米タイ、こういうような、言ってみれば二国間協定中心で組み立てられてきたというところに大きな特徴があったんだろうと思っております。  今や冷戦が終わり、確かに経済発展も目覚ましいものがあるが、同時にいろんな不安定要素を抱えておるという状況の中で、これから共存していかなければいけないし、いわゆる軍事バランスの論理ではなくて、信頼醸成をどうつくり上げていくのか。確かに、グローバル化というものが進んでいる中で、一国で平和を守っていくということにはなかなか困難が伴うということで、新しい安全保障枠組みということになってまいりますと、どうしても多国間のいわゆる協議あり方、しかも軍事問題に限らず幅広く人権環境、そして難民等の問題を含めて、そういったものを視野に入れた信頼醸成取り組みというものがこれから必要になってくる、こういうふうに考えております。  特に、去年のASEAN外相会議で一応決定をされましたASEAN地域フォーラム閣僚レベルで構成をされるということで、ことしの夏にまたこれは開催をされるということで準備が進められておるようでありますが、いわゆる公式の多国間協議ということになってまいりますし、これの果たしていく役割というものも非常に大きな役割があるだろうと思って私は注目をいたしております。経済的にもAPEC十七カ国のネットワーク、さらにはこの以前の外交安全保障調査会等でも提起をされましたアジア太平洋議員フォーラムというようなことも提案として具体的になされているわけです。  そういった問題提起等々を踏まえながら、やはりこの地域で多角的かつ重層的なネットワーク構築ということが求められるし、その中で日本がどう役割を果たしていくのか、こういう観点を大事にしながら、これからのこの枠組み構築については議論を進めていくべきではないかと、このように思っております。  それから、二番目の「アジア太平洋地域経済発展への寄与」と我が国ODAあり方、これもやはり大きなテーマだと思っておりますし、一定の日本が今日まで果たしてきた役割というものも評価をしなければならぬだろうし、先ほどお話がありましたように、そのことが逆に環境破壊なり人権抑圧、いわゆる開発独裁というようなものまで引き起こしてきたという現実があることも否定できないというふうに思っておりまして、ODAのいわゆる量的な拡大と同時に質的な改善が求められているということはもう言うまでもないわけであります。特に、本調査会でも谷畑委員からも指摘があったように、とりわけNGOとの連携自主性を尊重しながらも、やはりそういったところでの連携を強化していくということも大事な視点ではないかなと思っております。  そこで、ODA実施体制整備あるいは拡充、こういうことが重要になってくるわけですが、今政府としてODA大綱、これによって一つ指針が示されているわけですが、何といっても、今やもう世界でも有数の援助国この日本で、いわゆる政府開発援助に当たって基本理念目的や原則、こういうものをきちっと明記をして、そしてODAのいわゆる原資も国民の税金から行っているわけですから、国会への報告等を含む国会の関与のあり方、こういうものを明確にしたやはり基本法立法化に向けて具体的な、私はこの場で、この調査会検討を始めてもいいんではないか、こういう気がいたしております。  特に、参議院のこの調査会の今日までの経過を見ましても、既に参議院の本会議国際開発協力に関する決議、これはもう全会一致でやっているわけでありますし、昨年は四会派によってODA基本法案というものが提出をされて、残念ながら総選挙がありまして審議未了ということになっているわけですが、私は、やっぱりこういった参議院の、とりわけ以前は外交安保調査会、今は国際問題に関する調査会、ここのやっぱり議論経過、あるいは事実というものを踏まえて、場合によっては集中審議等をやりながら立法化へのいわゆる作業を進めていくべきではないかなと、こういう気がいたしております。  そして三点目に、先ほどお話がありましたが、国際文化交流なり人的交流、こういうものを通じて信頼醸成、そしてまた人材育成を図っていこう、こういうことで大きなテーマとして据えられておりますし、このことはやはり今のODAあり方とも対照的に、やはりややもすれば経済重視、お金を中心日本は行動するというような、そういう批判に対する我が国としての評価を改めていくという意味からも、極めてこれから大事な分野だというふうに思っております。  具体的には当調査会でも先生方のいろんな御意見等を踏まえて、とりわけ留学生の問題について私は大変興味を持って聞かせていただきました。  留学生受け入れ十万人計画、これは単なる数量的な目標だけに終わらせてはならないということで、平野先生あたりからも、国立大学における留学生定員化促進、あるいは具体的な留学生受け入れに当たっての体制をどう整備していくのかという提案等々、大変傾聴すべき私は意見だったと思います。  実際に、今回もこの調査会派遣をいただいて実情調査をさせていただく機会に私も恵まれまして、特に広島大学等で大変熱心に取り組んでおられる状況をつぶさに拝見いたしまして、やはりこの問題の重要性というものを改めて認識いたしました。特に留学生の場合は学位の取得、こういうことで大変苦労しているわけですが、これを何とか短縮化する、そのためのカリキュラムの体系を効率化していくというようなことで取り組みがなされているわけでありまして、大変感心をいたしておるわけであります。  とりわけ留学生の中でもどうも優秀な留学生は欧米に流れていく、アジア諸国から。それは、いわゆる奨学金制度がしっかりしておる。それに比べて日本の場合は奨学金制度が非常に不備である。したがって、いい学生がなかなか日本に来てくれないんだというような悩みも含めてお伺いをすることができまして、大変有意義な私は調査だったと思っております。  ややもすれば国際化に向けてのいろんな情報人材、これが東京一極集中じゃないけれども、やっぱり集中しから。その中で地方なり自治体の皆さんが一生懸命努力をしながら、地方の国際化、あるいはそれぞれの地域で持ったノウハウを生かしながら、協力あり方なり留学生の積極的な受け入れ、こういうこと、あるいは大学のそういった使命。そしてまた、広島の場合もそうですが、JICAのいわゆる積み上げられたノウハウをどううまく活用していくのかというような連携等々についていい勉強をさせていただいたし、そういうことを含めた人材育成に我々としてどう日本としてかかわっていくのか、そのすそ野をしっかり広げていかなければいけないということを今痛感いたしておるところでありまして、こういうものをやっぱり踏まえて、我が国としてなすべきことは早急にやっぱり取り組んでいくべき必要があろうと、こう今感じております。  したがって、今三点について私申し上げましたが、やはり何といいましてもODAあり方、そしてまた三番目の交流を通じた人材育成なり信頼醸成、この辺にポイントを絞ってこれからも論議を進めていっていただければ私はいいんではないかな、ありがたいなと、こういう気がいたしております。  以上、大体今日までの経過と私の感想を含めて申し上げさせていただきました。
  9. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 会長から提案されました「アジア太平洋地域の平和と繁栄に向けて」というテーマに基づきまして調査を深めることに賛成いたします。  「アジア太平洋地域の平和と繁栄に向けて」という大枠のもとでは、平和と安定、経済発展への寄与日本ODAあり方国際交流人的交流など問題が並んでいますが、私は、世界各国、そして実際にアジア太平洋地域を歩いた見聞に基づきまして、問題の解決には何よりも具体的な行動と実行が大事だと思います。  また、「二十一世紀に向けた日本責務」としては、我が国は、世界の厚生省あるいは環境庁的な役割を果たすことを目指して、環境問題やあるいは人口増加と、飢餓、難民問題、またエイズの問題などの解決に向けて先頭に立つべきだと考えておりますが、これらの問題についてODAの活用を中心として、よりよい多角的な支援が行えるような問題を中心調査を進めることができたらよいと思います。  まず、アジア太平洋地域の平和と安定の枠組みづくりの問題ですが、私はスポーツの分野世界人たちとのつき合いが大変幅広くあるわけですが、なかなか政治では越えられない壁、スポーツ交流や芸能あるいは芸術などの交流を高めることで人と人の友情が生まれてくる、また育つ。そういうことを高めていくことによって平和的な国際交流を盛んにすれば、人の往来が生まれ、また触れ合いの中からお互いの偏見やこだわりをなくしていくことができるんではないか、無用な摩擦の種を取り除き平和と安定がもたらされるのではないでしょうか。  何よりも大切なことは、かつて江戸時代の日本のように、庶民が外国の出来事を知らされない、正しい判断をする情報を手に入れられないということです。今、北朝鮮の核兵器開発問題が大変騒がれているわけですが、北朝鮮の人たちも、まさにその情報が正確に伝えられず、知らされていないんではないでしょうか。我々も北朝鮮の実態がよくわかりませんし、テレビやまた新聞報道で必要以上に危機感をあおられているような気がいたします。いずれにしろ、制裁措置より話し合いでの解決が望まれるということは言うまでもありません。  私は、かつてプロレスの恩師であった力道山先生が実は北朝鮮の出身であったということで、新聞で報道されないような情報を幾つか手にすることができました。力道山さんはまさに北朝鮮の偶像的英雄というか何冊も本が出ているということを聞いておりますが、スポーツ交流を通じて世界平和というか我々はそのテーマ世界を歩いてきましたが、本当に人との交流がもっと高まればいろんなそういう先ほど申し上げた偏見やこだわりが取れるんではないかと思います。  そしてまた、今、ユーゴに象徴されるように民族や宗教を原因とする紛争が各地で起きております。紛争や民族の対立の背景を考えますと、まず、そこに食糧がなかったりあるいは飲む水がない、病気を治す手だてすらないという全くどうしようもない貧しさ、また燃料となる木を切り過ぎたり住まいや衛生状態がお話にならないような状況で、そこには環境の破壊の姿が背後に見えてくるような気がいたします。  また、開発途上国での物すごい勢いでの人口増加、これは貧しさとの関係が深くあるんではないかと思います。人口の爆発的な増加は砂漠化地球温暖化に影響しています。貧困や紛争による難民や避難民がふえる一方で、私がアフリカで体験したことですが、一つの村ですべての人たちが不幸にもエイズに感染しているという現場を見たことがあります。  我が国世界に対して最大の貢献をしているODAは、このような環境破壊の防止、人口問題の緩和、難民に対する対策、エイズなどの予防対策に最も重点が置かれてよいと思います。このような問題をこの調査会でもっと深く取り組むことができましたら大変意義深いものだと思います。そのために、ODA現場の第一線で活躍している人たちの話を聞くとか、東南アジアODAによる事業現場を見ることが大切だと思います。  さらに、私は、かねてから水問題に取り組んで水の浄化について勉強したり、東南アジア、ブラジルなどで熱帯雨林の伐採の問題について取り組んできましたが、この面ではまだまだバイオの技術を用いるというかそういうものが認識として薄い。水の浄化法にしてもなかなかODA事業に取り上げられないというのが現状です。熱帯雨林の伐採の問題にしても、いわゆる間伐材の利用などについて大変新しい技術が日本の中で生まれていますが、この辺の普及ももっともっと積極的に応援していきたいと思っております。  先ほどのエイズ問題についても、エイズ防止キャンペーンが大変盛んに今行われておりますが、エイズがどれだけ大変であるのか、またどうしたらエイズが予防できるかという具体的な話がなかなか伝わっていきません。例えば、コンドームが配付されても、それを風船で遊んでしまうとかあるいは先を切ってしまうとか、大変笑い話にならないようなことがあります。  このように考えると、環境、人口、エイズなどの問題に対してODAをより一層重点を置いて行う場合は、民間が持っている技術やノウハウを今以上にうまく活用していくことが大事だと思います。日本が誇る公害防止技術を初めとし、相手国に対する技術の移転が大切だと思います。さらに、人口問題やエイズ防止については、問題の大事さがより多くの人たちのレベルにまで行き渡るように教育宣伝活動がキーポイントになってくると思います。そこで、大変きめの細かい援助を行うには我が国ODAを担当している人員はもっと計画的にふやさなければならないと思います。  このようなことから、日本ODAに本腰を入れて頑張っていることを示す意味からも、この調査会が先頭に立って援助基本法をまとめていくことができれば、調査会も意味のある仕事をなし遂げたことになり、大変すばらしいことと思います。  以上、私の意見の表明といたします。
  10. 荒木清寛

    荒木清寛君 公明党・国民会議荒木清寛でございます。  私も会長の御提案テーマにつきましては賛同いたします。「二十一世紀に向けた日本責務」、そういうテーマのもと、二年間調査をしてまいりました。冷戦崩壊後の歴史的な転換期を迎えておりますけれども、二十一世紀世界経済の牽引車と期待されているのがアジア太平洋地域でございまして、この中で日本がそのアジアの平和と安定を構築するためにどう国際的な役割を果たしていくのか、そういうことを検討することは大変時宜にかなっているというふうに考えるからでございます。  具体的な調査項目につきましても、本日配付の会長ペーパーの案に基本的には賛同させていただきます。  私なりに四点にわたりまして調査事項につきまして提言をさせていただきます。  まず第一に、基本理念といいますか、アジア太平洋地域において日本が国際的な責務を果たすに当たってどういった基本的な考え方を持つべきか、基本的な理念を持つべきか、これを検討すべきであると考えます。  アジア太平洋地域が二十一世紀世界の成長センターであるからこの地域と密接な関係を持っていくんだ、あるいはブロック経済構想のようなものを構想する、そういうことを前面に出すのは適切ではない、そう考えます。  日本は言うまでもありませんが、二十一世紀には経済的には成熟をし、また恐らくは世界一の超高齢化社会を迎えるわけでございますけれども、このような日本アジアの一員として、その中で心から信頼されるパートナーとしての位置づけを確保していかなければいけない、そういった一つの理念を基本に国際的な責務を果たすべきではないか、そういうことを検討すべきだと考えます。  二番目に、アジアの中における相互依存関係の促進による信頼醸成、さらには安全保障枠組みづくりということを調査すべきであると考えます。  アジア太平洋地域におきまして、欧州におけるCSCEのような信頼醸成の仕組みをどのように構築していくか等検討を進めるべきだと考えます。  既に、アジアにおきましても、ASEAN拡大外相会議枠組みなどによりまして多角的な政治、安全保障の対話のネットワークが試みられてはおりますけれども、これをさらにすそ野の広いものにいたしまして、国民的な広がりを持った、そういった信頼醸成あるいは相互信頼のシステムを築いていく、そういうことも大切だと思います。  調査会におきましても、参考人からはEC諸国において行われております国際的な大学の連合組織をつくりまして若者が交流をするエラスムス計画という紹介もありました。あるいは産業界と大学の国境を越えた研修ネットワークというコメット計画というお話もございましたけれども、こういった計画を参考にしまして、いわばそういったもののアジア太平洋版を築くことができないのか、それについて我が国がリード役を担うことができないのか、そういった研究、調査も必要かと思います。  あるいは、これは後から申します国際交流にも関係をいたしますけれども、せっかく日本に国連大学というものができているわけでございますけれども、これと日本とのかかわりが余り積極的ではないという指摘もあるわけでございます。私は、国連大学を活用いたしましてこれと日本大学とのネットワークをつくる、あるいは日本大学と途上国の大学とのネットワークをつくる、あるいは環境問題等の解決のために途上国の人材をここに招請をして勉強をしていただく、そういったこともアジアにおける信頼醸成の一万法、あるいは国際交流一つあり方として考えたらどうかと思っております。  さらには、冷戦後の安全保障におきまして、国連の果たす役割は大変大きなものがございますけれども、その根幹が国連のさまざまな平和活動であります。アジア太平洋地域における国連平和活動の訓練センターの創設、運営につきまして、我が国が主導的に取り組むことができないのか検討できたらよいかと思います。  さらには、紛争の背景には多くの場合貧困あるいは環境の悪化等の要因があるわけでございまして、こういう紛争の要因といいますか、原因を除去するためにODAを活用できないのか、そういう検討もする必要があるんではないでしょうか。  第三に、政府開発援助あり方について、これはぜひ力を入れて調査をしたいと思います。  今後の国際経済は、世界市場のもとで大競争の時代となると予測をされております。参考人からもありましたけれども、日本の黒字削減のために、市場を提供しながら相手の市場も使うという双方向の拡大過程への円滑な切りかえにつきまして実効性ある具体策を検討する必要があるかと思います。  我が国ODAあり方につきましては、参考人からは経済インフラに対する援助が本当に相手国の国民の経済、福祉に役立っているのか、十分考えることが大切であると指摘がございました。さらには、要請主義の建前があるけれども、相手が気づかない必要性まで考えながら援助をしていく、そういう姿勢があってもよいという意見もございました。  さらには、日本ODA予算の特質は、行政経費が少ないことからいわゆる箱物といいますか、プロジェクト物が多くなるという傾向にある。行政経費の増額、専門家の養成という視点を持つことが大切であるといった示唆に富むそれぞれの指摘があったわけでございまして、これを参考に今後ODAあり方につきまして調査を進めることを提案させていただきます。  先ほどお二人の委員先生から援助基本法の御提言がございましたけれども、私も大賛成でございます。  この調査会の前身に当たる第一期の外交・総合安全保障調査会におきましては熱心な取り組みがなされまして、この調査会報告に基づき、平成元年には本院で国際開発協力に関する決議というものがなされております。その後、政府でも平成四年には政府開発援助大綱というものを閣議決定いたしまして、ODA実施の方針としております。  外交・総合安保調査会報告、本院の決議政府の大綱、この三者につきましては、基本的な理念あるいは基本原則につきまして大きな相違はないとは考えます。とはいうものの、世界最大規模の我が国ODAにつきまして、その理念と基本原則を明らかにし、国会がどのようにこれに関与し、あるいは援助実施体制の充実をどのように図っていくのか、こういったことにつきまして基本法存在しないというのでは国民の真の理解と支援というものは得がたいものと考えます。  ぜひとも、せっかく先生方から御提案があるわけでございますので、各会派の一致が得られる援助基本法の骨格を我が調査会議論の中から生み出していきたいと考えております。  第四に、最後に、国際文化交流、国際文化協力推進につきまして調査をすべきであると考えます。  国際文化交流は、我が国の望まれる国際貢献の方法の一つであるという認識を基本にしまして、国際文化交流実施体制をどのように拡充していくのか検討していきたいと思っております。  特に、国際文化交流の中核的な実施機関として国際交流基金がありますけれども、しかしながらイギリスのブリティッシュカウンシルあるいはドイツのゲーテ・インスティチュートと比較をしましても、その組織の規模には大きな開きがあるわけでございます。そういう意味では、予算、人員、在外機関の拡充をどのように図っていくべきであるのか。あわせまして、現在のさまざまな我が国の姿を知ってもらうためには、事業の内容、多様化にどのような工夫を凝らしていったらいいのか考えていけたらよいと考えます。  以上四点にわたりまして提案をさせていただきました。ありがとうございます。
  11. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 日本共産党の上田です。  会長提案に基本的に賛成しながら、以下三点について意見を述べさせていただきます。  一、アジア太平洋地域における平和と安定について。  本調査会は、これまでに外務省、防衛庁、学者、研究者の方々に参考人として出席していただき、意見を聴取してきました。その際はとんと共通して述べられた、冷戦が終わったという現在の国際情勢認識は必ずしも正確ではありません。というのは、戦後のアメリカの冷戦戦略には二重性があったからです。  その一つは、米ソ冷戦、ソ連封じ込め戦略で、これは確かにソ連の崩壊で終わりました。もう一つは、アメリカの制度が生き長らえて繁栄するための国際環境づくりとされ、トルーマン時代の文書、米国の国家安全保障に関する目的計画、NSC68には、たとえソ連の脅威が存在しなくとも我々が多分追求するであろう政策と書かれていました。  後者の戦略はソ連が崩壊しても終わるどころか逆に拡大され、現にクリントン政権は昨年九月に公表したその新しい世界戦略を拡張戦略と名づけているほどです。我々の最優先の目標は、市場を基礎とした民主主義諸国の世界共同体を拡大し、強化することでなければならない。九三年九月二十七日、国連演説。  我々は、ソ連崩壊後アメリカが唯一の覇権主義大国として新たな冷戦戦略を展開している事態を重視しており、アジア太平洋地域の平和と安全の問題、日本課題を考察する際も、アメリカのアジア戦略とその中での日米軍事同盟の役割の分析、調査こそ極めて重要な位置を占めると見ています。  クリントン政権は、昨年九月一日に新しい防衛計画案、アメリカの戦略構造の徹底見直し、いわゆるボトムアップレビューを発表しました。その中では、新たな脅威として四つ、すなわち、一、核兵器その他の大量破壊兵器によってもたらされる危険、二、地域的危険、三、民主主義及び改革に対する危険、四、経済的危険を挙げています。  この二月に発表された米国防報告も、我々は以上四つの脅威に対処する米国の戦略と防衛計画を策定したと述べて、ほぼ同時に発生する二つの大規模地域紛争に勝利するのに十分な戦力を配置しなければならないとしています。  アジア情勢にとって重大なことは、この二つの地域紛争のシナリオの一つに、イラクによるクウエートとサウジアラビアヘの侵略とともに、北朝鮮による南朝鮮への侵略が想定されたことです。そして、国防報告は、北東アジアでは南朝鮮に米陸軍一個師団と米空軍一個戦闘航空団を配備し、日本には沖縄に海兵隊の駐留継続、本土は空母インディペンデンスと強襲揚陸艦ベローウッド、その支援艦船の母港とし、空軍は本土と沖縄に一個戦闘航空団を保持するとしています。  今、アメリカが北朝鮮の核開発疑惑に関する制裁の必要を強調し、朝鮮半島有事の際の自衛隊協力をも求め、羽田政権がこれにこたえる有事立法の準備や集団的自衛権の必要を言い始めている背景には、この米アジア戦略があるのです。小沢一郎氏を会長とする日本戦略研究センター編「世界に生きる安全保障」には、日本が北朝鮮からミサイル攻撃された場合のミサイル反撃や、韓国が要請するなら自衛隊の韓国派遣もちゅうちょすべきではあるまいとする論文まで掲載されています。  こうした情勢にある以上、アジア太平洋地域の平和と繁栄を考える上で、日本国民は日米軍事同盟について改めて考え直す課題に迫られています。  九〇年のアメリカの国家安全保障戦略が、今後のアメリカの軍事力行使の対象としてソ連ではなく第三世界を予測していたように、日米軍事同盟も従来のソ連対象からアジア、中東、アフリカなどの第三世界を対象として再編成されつつあります。  クリントン政権発足直後、当時のパウエル統合参謀本部議長が軍隊の役割、使命及び機能に関する報告書指摘したように、日米軍事同盟は、一、アジア太平洋地域の米軍の前方展開戦略のかなめ石、二、アジア大陸に対する海軍、空軍、陸軍の基地提供、三、アジア各地の地域的緊急事態への対処、四、米国本土配備よりも支出の少ない安価な駐留経費の基地として、米軍の前方展開の最も重要なかなめ石となっています。それは、日本自衛隊を巻き込む危険性を大きくしており、日本の防衛とは無関係のものです。  米議会調査局の報告書が、北朝鮮の核開発疑惑に関連した軍事的措置の際、選択肢Hとして核丘ハ器の採用まで想定していることを見ても、今日、北朝鮮の核開発疑惑に絡む米軍の軍事行動との関連日米軍事同盟がアジア太平洋地域の平和と安全に敵対する存在となっていることは極めて明白です。  四月二十二日に合意された連立与党の確認事項には、安保条約を、アジア太平洋の平和と安全のために不可欠とあります。これは現実を全く無視した安保美化論です。唯一の被爆国として日本のとる道は、核兵器の使用禁止と廃絶、軍事同盟の破棄を目指して非核、非同盟の道を歩むことであり、それこそがアジア太平洋地域の危険な情勢を変革して、その平和と繁栄のために貢献できる道であると確信しています。  二、政府開発援助あり方について。  年間一兆七千億円、世界第一位に上る日本ODA一つの特徴は、アメリカの世界戦略への協力、大企業の海外進出促進、徹底した秘密主義に彩られていることです。しかし、ODAの本来の目的は開発途上国の飢餓と貧困、ますます広がる経済格差、環境破壊などを克服し、開発途上国の住民の生活や福祉を守り、経済的自立のための自助努力を支援することにあります。  日本共産党は、最近発表した「新・日本経済への提言」で、日本ODAについて、一、アメリカの世界戦略を補完するODA政策をやめる、二、経済協力を大企業の海外進出支援の手段とする政策を改めて発展途上国での大企業の無秩序な活動を規制する、三、経済的自立に役立つ経済協力と人類進歩を目指すもの(NGO等)への協力を重点課題にする、四、経済・技術協力計画の予算の国会審議、承認など民主的公開の制度を確立するという改善を提案しました。  参議院では、本調査会の前身の外交・総合安全保障調査会時代の八九年六月、全会派一致でODAに関して七項目の内容の決議を採択し、本会議でも確認されたことがあります。この決議を生かして、本調査会検討の上、経済協力基本法を制定することを提案したい。また、東南アジアの一国を選んで、ODAの実施状況、問題点、先方の要望などを実地で調べ、ODAの改善に資するための視察、調査をも提案したいと思います。  三、地球環境の保全について。  長年懸案となっている環境アセスメント法の制定を強く主張したい。同時に、地球環境を守るために環境影響を厳しく審査し、必要な場合には差しとめや計画変更を行うことができる内容を持つ国際環境アセスメント条約の締結も検討すべきです。  地球環境問題で日本が大きなかかわりを持っている一つに熱帯雨林の問題があります。一年間に日本国土の四五%に当たる十七万平方キロメートルも熱帯林が地球上から消滅していますが、日本は熱帯広葉樹丸太の輸入量の半分、製材で一割を占め、熱帯材輸入全体で四割近くに達しており、日本の責任は大きいものがあるからです。  去る一月に国際熱帯木材協定、ITTAの改定交渉がまとまり、国際熱帯木材機関、ITTO理事会が一九九〇年に決めた二〇〇〇年目標が具体化されました。九五年二月に発効する新協定には、二〇〇〇年までに持続可能な経営が行われている熱帯林から切り出された木材だけを貿易対象にするという画期的な条項があります。  そこで、日本として、熱帯林の保全、再生のためには、一、熱帯林の再生、回復の保証のない商社などによる伐採の禁止、二、建設用のコンクリートパネルとして大量に使い捨てられている浪費の改善などを実施して、過度の熱帯材輸入をやめさせる仕事にとりかからなければなりません。そのためにはまず公共工事で、既に多くの自治体で始まっている熱帯材の使用削減を徹底し、国の公共工事での熱帯林使用の大幅規制に踏み出すことが緊急の課題となっていることを指摘したいと思います。  以上です。
  12. 島袋宗康

    島袋宗康君 二院クラブの島袋宗康でございます。  会長から御提案のあった「アジア太平洋地域の平和と繁栄に向けて」というテーマ調査を進めることに賛成をいたしたいと思います。  アジア太平洋地域の一員である我が国にとって、アジア太平洋地域の諸国と手を携えて地域の平和と安全確保に努めること、そして国民生活安定、地域間の人的、文化的な交流が活発化することは今日の状況下において極めて大切なことであると思うからであります。  今まで多くの参考人の先生方からお話を伺いましたが、その中で次のような御意見が深く印象に残っております。  その第一は、日本国際社会におけるみずからの存在価値は何なのか、ほかの国に認められるような価値とは何なのかを考えていく必要があると思う、脅威は相手方の不信感、敵対感を減らす努力によっても減少することができるというような意見でございました。また、アジア中心に二十一世紀日本責務を考えると、アジアの中の日本と言えるかは今、日本が真剣に考えるべき問題であると思います。日本アジア太平洋地域における国際的な責務を果たすに当たりまして、アジア太平洋の諸国から心から信頼されるパートナーとなるような努力を払うことが一番大事であるんではなかろうかと思っております。こういった面について感慨深く承っておりました。  私は、今次大戦で唯一の地上戦に巻き込まれて多大な被害をこうむり、また戦後も米軍の政権下にあった沖縄県出身の議員として、アジア太平洋地域の平和と安定のために日本の果たすべき役割の大切さを身にしみて感じております。同時に、太平洋戦争に至る戦前の日本の行為が今もなおアジア太平洋地域の人々に傷跡を残していることを深く肝に銘じ、日本国民の誠意を何らかの形てあらわすことに努め、日本アジア太平洋地域の一員としてともに手を携えていくことができるようにしていくべきだと思っております。  「アジア太平洋地域の平和と繁栄に向けて」というテーマのもとで具体的に調査を進める事柄が幾つか挙げられますが、私は、アジア太平洋地域の平和と安定のために日本の姿が明らかになる形でどのような寄与ができるかという問題意識から、地方、民間を主体とする国際文化交流の活発化、日本の顔が見えるODAの進め方、平和と安定への寄与を主眼に調査を進めるべきだと考えております。  その第一は、地方自治体や民間団体を主体とする国際文化交流をより一層活発化させることであろうかと思います。そのためには、地方自治体の主体性を尊重し、広い意味での地方分権を推し進めることが大事だと考えております。  例えば、沖縄県にある国際協力事業団の沖縄国際センターでは技術研修貝を受け入れていますが、東南アジア、南米、アフリカなどの途上国から来た研修貝にとって沖縄はとても好評のようであります。これはある本に出てくる沖縄国際センターの所長さんの話でありますけれども、研修員に居心地のよい理由を尋ねた。それは、地元の市民の方々が積極的に催し物や祭りに研修員を招待してくれる。すなわち、地域協力がよそに比べて非常に大きいということが挙げられているようであります。研修員が招待されたり参加したりする機会も二、三日に一回程度は必ずあるようであります。八王子の同センターなどの年数回という比較からいたしますと、沖縄がどんなに多いかということが裏づけられていると思います。  沖縄は、中国や東南アジアと隣接しているという地理的な特色はもとより、琉球王朝の時代、アジア諸国との交流、交易を積み重ねてきた歴史があります。また、沖縄県では、戦前戦後を通じての移民の歴史を積極的に活用し、現在世界の二十三カ国に百二十三名の民間大使を置き、盛んに地域外交を展開しております。  このような歴史や地理的特性をもっと活用し、センターの運営について沖縄県の考え方をより一層反映させてもらうことができれば、地域の特性を生かした国際交流が今以上に展開できるのではないかというふうに考えております。  このような地理的、歴史的な特性は、沖縄に限らずいずれの地方自治体もそれぞれ豊かなものがあるとは思いますけれども、参考人の平野先生も話しておられましたが、自治省などによる地方の国際交流活動推進、支援は、地方の活力や民間の意欲をより活性化させる方向で進められるべきであると思います。  さらに、民間団体の自律的な国際交流活動推進するためには、組織的、財政的な基盤の確立が大事だと思います。そのためにも、小口であっても多数の人々の善意が生かされるように個人からの少額の寄附に対する免税措置や、対象団体の範囲の拡大など国際交流に係る減税措置の拡充を初めとして、民間団体の基盤の確立に配慮した施策推進を図ることに向けて調査を深められるべきだと思います。  第二に、日本の顔が見えるODAの進め方についてであります。  日本ODA世界最大規模となり、アジア諸国経済発展にも相応な役割を果たしていると思います。しかし、日本ODAによる事業計画どおりの成果を上げなかった、環境の破壊につなかったという反省すべき点が少なからずあるようであります。そのような意味からも、ODAあり方現場の経験者などから聞いて調査を深め、できれば新しい型の社会資本整備などを盛り込んだ援助基本法の骨格でもまとめることができたらと思っております。  特に申し上げたいことは、先ほどの沖縄国際センターの技術協力のように、専門家青年海外協力隊派遣とか技術研修貝の受け入れのような、人と人とのつながりが持て、日本の顔、姿が明らかとなる人づくり援助、教育援助に対してODAをより一層重点的に配分すべきことであろうかと思います。  最後に、沖縄県は在日米軍の七五%が集中する基地の島でありますけれども、アジアの平和と安定に向けた政治、安全保障、対話の枠組みづくりが推進され、基地の返還が進むことは、県民挙げて切望しているところであります。この視点から、アジアの平和と安定の問題についても何らかの調査を進めることができたらいいなというふうに思っております。  以上でございます。
  13. 沢田一精

    会長沢田一精君) 六名の皆様方、御意見の開陳、ありがとうございました。  引き続きまして、各委員から御意見をお述べいただきたいと思います。発言順序等は特に定めませんので、自由に御発言をいただいて結構でございます。  御発言を希望されます方は、挙手を願いまして、私の指名を待ってお述べいただきたいと思います。  なお、先ほどから申し上げますように、御発言は御着席のままで結構でございます。  それでは、御発言を希望される方は私から指名をいたしますので挙手をお願いいたします。
  14. 大島慶久

    大島慶久君 沢田会長から御提案がありましたテーマを具体的にどんな方向調査を深めていくのか、ただいまいろんな先生方の御意見を伺いました。アジア太平洋地域の平和と安定、そしてODAあり方国際文化交流による信頼感醸成を軸に調査を進めていこう、こんなふうに聞き取らしていただきましたけれども、私もおおむね同感でございます。  そこで私は、アジア太平洋地域の平和と安定をどのように確保していくのか、そういう問題と、ODAの中で、環境、人口問題、あるいは麻薬だとかエイズに対する対策、そういった問題をより一層重点を置いて進めていくべきではないか、こんなことを思いまして、少々御意見を申し上げるわけでございます。  第一に、アジア太平洋地域の平和と安定が確保されなくては、これは経済的な繁栄あるいは豊かな暮らしも到底達成できないということは当然であります。アジア太平洋地域には冷戦の遺物とも言われております分断国家が残っておりますし、朝鮮半島の問題では、最近、北朝鮮の核兵器開発疑惑というようなことで大変緊張が高まっていることも事実でございます。いわゆる領土問題に関しましても、我が国固有の領土であります北方領土問題はもとよりでございますけれども、中国や東南アジア諸国の間でも南沙諸島などをめぐりいろんなそれぞれの国家間の動きがあると、こんなふうにも私たちはお聞きをいたしております。  過日、参考人としてお招きをいたしました西廣先生からも、アジア太平洋地域では全欧安保会議、CSCEのような仕組みが力を発揮するとは思えない。実際の安定を提供するもう一つの別の枠組みが要るのではないかと思う。そのためには紛争の未然防止機能、あるいは抑止機能を持った国際的な集団的安全保障枠組みに多くの国々が参加をしていくことが最も大切ではないか。こんなようなお話を伺った記憶がございますが、大変示唆に富む御意見だったかと思います。  このようなことから、民族的にも宗教的にもあるいは歴史的にも極めて多様なものが、私たちの住んでおりますこのアジア太平洋地域においては、平和と安定の枠組み構築していくために、東南アジア諸国連合、ASEANのもとでの政策対話フォーラムなどを中心に地道な努力を積み重ねていく必要があるのではないかと思うわけであります。  第二点目といたしまして、アジア太平洋地域経済社会の発展寄与するという観点から、我が国政府開発援助ODAの量的な拡大、あるいは質的な改善はもとよりでありますけれども、NGOや地方自治体との連携など、ODAの充実に向けて活発な意見が出ております。私はこれに加えまして、地球環境、人口問題、そしてエイズ、麻薬問題などへの対処のためのODAをより一層充実していくことが極めて大切ではないかと、こんなことを申し上げたいわけでございます。  アジア太平洋地域では、環境や人口について困難な問題を多く抱えております。すなわち東南アジアの熱帯雨林の伐採、あるいは工業化に伴う公害問題など、地球環境の保全をめぐる問題がたくさんございます。また、人口問題は二十一世紀に向けた国際的な重要課題でもあります。アジア太平洋地域は、世界の総人口の六〇%程度を占め、人口大国が幾つもあるわけであります。さらに、医療、社会福祉分野を私は専門としていろいろ勉強させていただいておりますけれども、東南アジアなどにおけるエイズの蔓延、あるいは黄金の三角地帯に象徴される深刻をきわめる麻薬だとか薬物の乱用問題も見過ごすことのできない重要な課題であると思います。  特に、開発途上国全体のデータでありますけれども、五歳未満で死亡する子供たちが、実に一年間に千三百万人にも達している。これは驚くべき数値でございますけれども、しかもこのうち二百五十万人は、ポリオなどワクチンの予防接種により事前にそういう手が打たれるとすれば、当然幼い命を失わなくても済む。こういう病気が原因で亡くなっているということが非常に大きく最近クローズアップされてきております。  このような悲惨な状況を解決するためには、開発途上国におけるワクチンの自給体制を確立して、すべての子供が予防接種を受けられるよう支援していくことが本当に大切であります。九〇年の子供のための世界サミットを契機に、ユニセフやWHOによる子供ワクチン構想、いわゆるCVIが設立をされておりますけれども、かっては天然痘の根絶というような、予防接種によって大きな効果を上げたことを思い起こしますと、アジア太平洋地域から今度は当面ポリオを根絶する。こういう精神でワクチンの接種体制の確立に、我が国は本当にこれは大きく寄与できるそれだけの医療技術というものを持っておりますし、大いに力を込めてやっていくべきではないのかな、こんなことも思うわけでございます。  このような医療分野協力に見られるように、人類社会の生存基盤を脅かしかねない問題に対応するために、ODAを重点的に活用していく必要があると思います。  この調査会におきましても、環境、人口、あるいは難民、エイズなどの問題に対処するため、ODAをどのように重点的に活用していくか、より深く検討を深め、何らかの具体的な考え方をまとめていくことができたら本当にすばらしいことではないのかな、こんなことを思いまして、私なりに今意見を申し述べさせていただいたような次第でございます。
  15. 谷畑孝

    谷畑孝君 「アジア太平洋地域の平和と繁栄に向けて」というテーマで、各党の貴重な意見をお聞きいたしまして、その中で、私もそれに賛同する立場の中で少し発言をしてみたいと思うんです。  私も、PKOの法案につきましては、特別委員会に所属をし、日本の国際貢献のあり方ということについて非常に大きな機会をいただきましたし、そういうことを通じてカンボジアも視察をさせていただきましたし、またこの間、スタディーツアーということで、とりわけNGOの皆さんが中心になっての中で、ネパールなりあるいはバングラデシュ等を含めて、アジア各地を実はスタディーツアーで回ってまいりました。  その中で感じたことは、やはり日本のNGOの活動は非常に献身的で、しかもその国の中でその国の自立的な発展に貢献をするという立場で頑張っている姿を見てきたわけであります。その中で、特にアジアにおいては、NGOが大体到達していく道なんですけれども、初めは助産婦さんというものを通じたり、あるいは子供の命だとかそういうことに入っていくんですけれども、結局は文字が読めない、書けない、こういう識字という問題。学校は、義務教育はあるんだけれども、ほとんど行かない。もちろん、今お話がございましたように貧困という問題が一番根底にあるんですけれども、そこで、アジア太平洋において日本との交流を含めてやっていくに当たっては、この識字という問題は避けることがやっぱりできないんじゃないか、このことが非常に大事な点ではないだろうか。NGOの皆さんも、そういうことの中で結局識字に対する働きかけが変化をしてきたというこの事実があらゆる国から見ても私は非常に大事ではないかと。  そこで、私の提案でございますけれども、NGOがすそ野をもっと日本の中においても大きく広くしていくためには、日本の社会システムをそれに対して支援をしていくというシステムにしていかないと、なかなかただ単なるボランティアだけではすそ野が広がらない。と申しますのは、そこにNGOで行っておりましたら、一年二年行っていますと、日本に帰ってきてももう職場には帰ってこれない。だからそういうことではなくて、今日、日本の企業もいわゆる企業市民社会ということを言われて、企業が社会貢献をしなきゃならぬということでありますから、ぜひひとつ企業も、何年か勤めた人々に対しては、一年NGOで参加することを認めるとか、あるいは帰ってきたらまた現場復帰を認めるとか、そういう日本の社会の中でそれを支えていくようなものが必要じゃないかということが、私の言いたいことの一つなんですね。  それから、二つ目は、私の友人が、今市町村で国際交流課というのを初めて自治体がつくりました。そうしたら、国際交流課というのはつくったんだけれども、一体何をしたらいいんだろうというのが正直な話あろうかと思うんです。そういう意味では、これからはやっぱり行政システムにおいてもそれぞれ国際交流課というのができると思います。その国際交流課に役立つような私どものこの調査会、さまざまの問題提起が行われるものを、そういう国政全体についてひとつ調べていったらどうだろう、そういうことを思います。  最後に、大島委員の方からもありましたように、ポリオなどの根絶に向けてということがございました。私も、ぜひひとつ、ワクチン自給体制の確立、支援、こういうこともこの調査会の中で、またそういう立場の中でされていくことも非常に大事じゃないか、そういうことを思います。  時間の制限がありますから、もうこれぐらいにしておきたいと思います。
  16. 志苫裕

    志苫裕君 各会派の皆さんからお話を伺いまして、非常に共通項も多いし、大体先が見えてきたかなという感じが私も随分いたしました。  したがって、重複を避けましてちょっと今まで話題にならなかった部分を一つ申し上げておきます。このまとめに「国際的な責務を果たすに当たっての留意」というくだりがありますけれども、これに関して一つだけ申し上げますと、我が国アジア太平洋各国に信頼されるパートナーとして、同時にまた未来志向の友好協力関係をつくっていくには、やっぱり過去を清算しておかぬといかぬ。たまたま一九九五年がちょうど戦争が終わって五十年になりまして、本会議や予算委員会等でもいろいろやっておりますが、そういう意味で、両院が一致して戦争の謝罪と不戦の決議のようなものであるとか、あるいは戦後処理としては従軍慰安婦問題等もいろいろと出ておりますが、そういった責任の所在などもやっぱりけじめをつけておきませんと、アジアの人々にとって日本という、僕らがアジアを見る目とアジア人たち日本を見る目は、背負っている歴史が違いますだけにやっぱり一定のけじめをつけておく必要がある。  それから、教科書問題などもよく問題になりますけれども、今、ODAの話がかりましたが、私は、たまたまODAの問題で、一番最初の小委員長を務めた関係がありまして、やっぱり政府主導でいろいろやっておられますから、国民の理解といいますか、そういう点にどうしても希薄な点がある。ですから、子供のときから国際社会の一員なのだ、人々はすべて同じなのだということ等も含めまして、国際人といいますか、国際協力あり方といいますか、そういうさまざまなテーマを、例えば副読本でも何でもいいですから、そういうものをつくって、子供のときからそういう国際社会の一員としての日本人をつくるといいますか、そういうものがやっぱりこの際いろんな意味で大事なのではないか。ですから、教育分野に、人間の形成といいますか、国際人をつくるという分野にもう少し力を入れるというあたりを少し着目したらどうか。  それから、歴史の問題などは日本だけで済むものじゃありませんでして、アジア諸国との共同研究などで共通の認識を持てる歴史というようなものを共有していくという仕事などが要るのではないかということを若干付言したいと思います。  それから、アジアの平和と安定のところでいろいろ出ました。出ましたが、やっぱりいろんな原因があるんですが、ここからできるだけ核というものはなくしていく。通常兵器、こんなことを言っては悪いんですが、貧乏な国ほど何か武器を買いたがる、そういう状況、それはそれなりの社会的背景があるからそうなるんですが、それをどうやって防いでいくか、あるいは低レベルのものにしていくか、廃止をしていくかというところに着目をしないと、なかなか平和あるいは安定が約束をされない。  そういう意味で、非核の朝鮮半島政策とか、あるいは我が国に非核三原則というような国是がありますが、少なくとも非核三原則などは今政府の国際約束で確立をされていますが、これも法制化をすることの方が人々の信頼を得る道筋になるのではないか。  同じように、武器の問題もそうですが、日本政府提案をして、アジアは軍備拡大の傾向にあるものですから、武器移転に関する国連軍備登録制度というようなのが今一定の成果を上げておりますが、登録もいいんですけれども、さらに一歩進んでいきまして、規制制度とでもいいますか、そういうところまでもう一歩、歩を進める、そういう提言をする方がいいのではないかというふうに思っております。  それから、核不拡散条約、NPT、今朝鮮半島問題でいろいろありますけれども、これもどうも政府の考え方を聞いていますと、僕らとは少し違うんでして、やっぱり被爆を体験した我が国からすれば、核軍縮というスタンスで、無期限延長というんじゃなくて核兵器の全面廃棄に向けたそういうプログラムというものをもう少し核保有国に強く求める、そういうスタンスをとるべきだろうと思っております。  ODA基本法の問題につきましては、与野党を問わず基本法の制定というところはもうほぼ一致しておりまして、去年の六月にも四会派が出しましたときは、当時政権を担当しておりました自民党さんの方で少しまだ検討する余地が残っておるというので、あれ提案者側と自民党でさらに細かいことを詰めていこうという段階で国会が衆議院解散になったんですが、それ以降のいろんな変化を踏まえて、つくろうという方向が一致しましたから、これはぜひ具体的な問題点があれば詰めて、ODAの対象分野をプロジェクト中心からさまざまな社会現象に向けていこうといういろいろなお話がありましたけれども、全部書き込めるかどうかは別にしまして、国会の関与というものが希薄になっているところに最大の欠点があると私は思うんですね。  国会の関与が希薄でありますから、やっぱり国民にもなかなか理解が及ばないということになりますので、最低限、今まで問題になりましたのは実施官庁、実施機関の統合ということと国会の関与の二点に難点があったのですけれども、それらを何とか詰めるものは詰めて、少なくともこれの立法化に向けて、本調査会は立法の勧告もできるわけでありますし——立法そのものはできるのかな、調査会では。発議権はありましたか。ないでしたかね。勧告できるわけです。その勧告を受けて議長さんが取り扱えばまたできることですから、ぜひそういうところまで、沢田会長の方でまた理事の皆さんと相談なさって、ひとつ日の目を見るようにしませんか。これだけは提起したいと思います。
  17. 細谷昭雄

    ○細谷昭雄君 私も沢田会長提起されました問題は非常に時宜を得たものだというふうに思っております。  百二十五回の国会が終わってからの平成四年十二月からの、これはもう三年越しですか、いろんな方々、十四名の参考人の学者その他の方々、そのほかに外務省とか防衛庁、そういう当局の皆さん方、いろんなお話を聞きました。私自身は大変出不精な関係で、目からうろこが落ちるというふうな大変いろんな啓発をされた、こんなふうに思っておりまして感謝をしておりますし、理事会の皆さん方やいろんな事務局の皆さん方がこうした衆議院にはない参議院独自のこの調査会をこれまでずっと発展させてきたということに対して心から敬意を表したいと思うわけです。  そこで、私は、若干の意見と、それからちょっと提起、お願いをしたい、こういうふうに思っております。  私自身は秋田の出身でございまして、近年、一番近くて遠い国であったアジアの国々、特に隣の韓国とかそれから中国とかですね、北朝鮮も含めまして、こういった国々は五十年間、本当に近くて遠い国であったわけです。しかし最近は、隣の新潟なんかは大変頻繁なようですけれども、秋田でも空港を利用しましてチャーターをしまして月に二、三回は韓国に行くとかロシアに行くとか、そういう交流が非常に進んできておるわけです。したがって、人的な交流は進んでおるんですが、経済交流というのはこれからだと思うんです。  ところで、この前、三月二十三日に五十嵐参考人がお話しされました点で特に日本海の我々も含めまして大変乱今後に重要だと思いましたのは、かつて我々、よく言われる、そこが問題になっているんですけれども、いわゆる太平洋戦争なり十五年戦争なりの発端になった、いわゆる侵略かどうかという問題に極めて深い関係があると思うんですが、いわゆる経済的な問題なんですわ。アジアのブロック経済なのか、そのアジア経済圏をめぐってのそれぞれの資本主義国家の争いということは歴史的な一つの事実だったと思うのですね。同じようなことが今後アジア経済的ないろんな発展なり、ないしは開発なりというのをめぐりまして、またぞろそういう問題が起きてこないとは限らない。  五十嵐さんが言っておるのは、こんなことを言っておるんですね。これは事務局でまとめていただいたわけですが、「当面は世界経済がブロック化しないような自由貿易体制を保持する役割を果たしていかなければならないし、欧米諸国とアジア諸国との経済的な問題での仲介役になれるような立場をとるべきと思う。」という提起がございます。私は大変重要な提起だと思うのですね。当面はブロック経済ということはもうこれは問題があるというふうに五十嵐さんは提起はしておりますけれども、やがて来るであろうアメリカなりヨーロッパなり、ないしはロシアがそういう経済力がいつつくかわかりませんけれども、当然そういうこれからの国々でありますので、その経済の問題と絡んで、またぞろいろんな点で問題が出てくるということはやっぱり避けなくちゃいけない。  その場合に、日本が果たす役割はそういう点で何があるのか。この点は十分に今後やっぱり追求すべき点じゃないのか。その点での我々が果たすべき仲介の役割というのは具体的には何なのか。この点をぜひひとつ今後も追求していただきたいというふうに思っております。  次に提案の問題ですが、大変時宜を得たこのアジア太平洋地域繁栄についてということだと私は思っておるんです。  それは、この六月十三日から御案内のとおりIPUのアジア太平洋会議が開かれまして、小宮山団長を初め超党派で東京で開かれる会議に出席するというふうになっておるんです。そこで、今その日本代表団の間でアジア太平洋地域グリーン食糧推進活動宣言案というのが現在検討されておるやに聞いております。それでこの内容は、要するにアジア太平洋地域というのは大変人口が多くて、しかも今後食糧の問題、それから緑の問題、環境の問題、こういうことでいろんな問題に遭遇するだろう。したがって、アジア太平洋地域グリーン推進委員会というのを設置をし、日本が主要な役割を果たしていこうと、こういう宣言なんです。この宣言を現在検討されておるやに聞いておりますが、これは日本代表団だけが宣言で具体的に推進するというわけにいかないと思うのですね。  本調査会、特にきょう会長が示されたテーマには極めて緊急かつ適切な対応が迫られておると思うのです。したがって、本調査会先ほどもちょっと出ましたが、いろんな方々から話がありましたが、具体的に理事会でこのIPUの宣言を支援するための具体的な活動ができないのかどうか。国会決議もあるでしょうし、そして委員会の設置となりますと、聞くところによりますとかなりの多額の費用負担が日本にあるそうです。具体的に来年度予算にそれを盛らなくちゃいけないという問題もあろうかと思いますので、どうか沢田会長のお計らいによりまして、理事会でぜひひとつこの支援方を取り上げていただきたいということが一つです。六月十三日ということはもう間近でありますので、連携をとりながらお願いしたいというのが第一です。  第二の提案は、志苫さんからも今お話がありました。先日の永野発言をめぐりまして、衆参の本会議におきましてそれぞれ私の方の党の村山委員長そして浜本議員会長、それぞれ不戦の決議について提案がありました。  これは私はやっぱり、個人個人の意見はそれはもういろいろあっても、あってもいいというよりも、あるかもしれません。永野さん自身が個人でそのような考えがあるというのはこれはもうあり得るわけですが、しかし、アジアの国々でやっぱり問題になっているのは、政府なりそれから国会なり、そういう日本を代表するという立場の人間が言うと問題になるということだと思うんです。したがって、一閣僚がやめたからということで、はい、わかりましたということにはならないと思うんです。  私は、そういう意味では本調査会がやっぱり具体的に、今国会、もう二十九日まであとわずかしかありませんけれども、志苫さんの今のお話もありましたし、他の方々も言及されましたから、やっぱり不戦の決議という決議も含めまして、アジアの国々、太平洋地域の国々の日本に対する誤解といいますか疑心暗鬼といいますか、そういうことを払拭する意味でもきちっとした対応、これが何があるのか、決議も含めましてこれまた理事会で十二分に検討を加えていただきたいと、こんなふうに思っております。ぜひひとつお取り上げ願いたい。  この二つを具体的にお願いを申し上げたいと思っております。  以上です。
  18. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 私も比較的長くこの調査会にお世話になっている一人なんですが、ざっくばらんに御意見を申し上げたいと思います。間違っている点がございましたら、またいろいろ御指摘いただければいいと思うんですが。  調査会の制度ができて、果たしてどの程度この調査会自身が国政に役立っているだろうかというふうなことをいつも考えるわけでございます。三年間の一応の期間でいろいろ調査し、ある程度の結論をまとめて提言として出しているわけでございます。いろいろ参考人なりなんなりおいでいただいて立派な御意見を承るというのも大変結構なことでございます。しかし、それも大事ですが、それだけで調査会は終わるわけじゃないんであって、調査会としてはやはり何か国民のために、日本のために、世界のために具体的にお役に立つようなことを活動しなければ、どこかその辺の講演会なりなんなりと変わらぬようなことになる、それじゃいかぬと思うんです。  そういうふうなことでいろいろ考えてみますと、先ほどたまたま志苫先生からお話ございましたが、私、駆け出しのころ志苫先生委員会で大変しごかれまして、隣の上田先生の御指導をいただいたり、あるいは矢田部先生の御指導をいただいたりしましたが、とにかくあのころODAの問題いろんな角度から取り上げてみて、ODA基本法みたいなものができないか、もう六年ぐらい前になりましょうか、そういうふうな議論をしたわけでございます。  さっきたまたまお話がございましたように、与野党でどうしても話ができなかったのは、援助行政の一元化の問題とそれから援助計画国会における事前の審査といいますか検討といいますか、この二つなんですよね。あとのところは大体歩み寄ったわけなんです。そしてそういうふうな結果、最初調査会決議にしようかということもあったんですが、いろいろ大きな構想等もございまして、参議院決議というところまで格上げいたしまして決議されました。ODAについての院の決議というのは衆議院にはございません、参議院だけです。そういうようなところまでいったわけでございます。  もう二年になりますかね、政府ODA大綱というのを出しました。いろいろ点検いたしてみますと、参議院決議の書き写しみたいなんです。ただ違うのは、その後問題として起きましたのは環境問題が出ているものですから、環境問題等々取り入れているという点が我々の決議に比べて目新しいところですが、あとはまあ大体似たような問題なんですね。ですから、基本法の問題につきましては先ほど話がございましたので私は触れませんが、やはりそういうふうな問題が法律をつくるというときでは与野党の一つのポイントになるんじゃないだろうかということが、それは今でもいたします。  それはそういうことでございますが、要するに、具体的にこの調査会の結論というふうなものが国政の場に反映されるということを一つのポイントにして、どういうふうなテーマがいいだろうかということになろうと思うんです。そうだとすれば、やはり与野党が歩み寄ってそして調査会決議ということまで高められるような、それは相当な努力が、理事さん方は大変だろうと思いますが、そういうふうなことが、そういうふうなテーマが私はなじむんじゃないだろうかと思うんです。  上田先生には個人的には大変御指導いただいておりますけれども、それは政党の立場では、会派の立場ではこれはもうとても相入れないあれがあるわけでございまして、それを尊重しながらやっているわけなんですけれどもね。ですから、そういうふうな例えば政治的ないろいろな問題だとか安全保障なんかの問題では具体的に歩み寄るといってもなかなか無理だろうと思うんですよね。ですから、そういうふうなテーマが果たしてここでなじむかどうかというのは、ほかのところでやってもらってもいいと思うんですが、やはり与野党超党派で歩み寄るようなテーマがあるとするならば果たしてどういうふうなものなのかと、そしてあるとすればそういうふうなものを取り上げて、そして調査会としてのきちっとした結論なりなんなりにして、そして具体的に国政に反映してもらう。国政に反映してもらうというのは、それは国の政策として取り上げてもらうということもあれば、先ほどからいろいろODAの問題等で出ましたけれども、予算化してもらうとかいうふうな形でこの調査会が見届けるというぐらいのことじゃなかろうかと思うんです。  例えば麻薬問題等も話が出ましたが、御承知のとおり、あれは平成二年からですか、国連で特別総会がございまして麻薬撲滅十カ年計画というのが今進行中でございます。そういうふうな意向を受けまして政府もいろいろやっておりますし、私どももODAの中の一環として及ばずながら努力いたしておるわけでございますが、国連の中のUNDCPの下部組織というのがアジア地域にできて、そしてそのセンタータイに置かれるようになった。これは全くそういうふうな形の一環であって、どっちかというと日本ODA丸抱えみたいな形でそういうふうなのが予算化される。最初八十万ドルしかなかったそういうふうな関係の予算が今たしか五百万ドルになっているはずです、ことしの予算は。  何かそういうふうなことで、一つ一つでもいいですから、あるいは環境の問題でも大変ですし、あるいは食糧の安全の問題でもそうですし、何か各会派を通じて超党派で具体的に取り上げられるようなもの、それは大ぶろしき広げて大きな問題でなくても結構だと思うんですけれども、何かそういうふうな形で調査会というものを運営していただかなければ、いろいろ意見は聞きましたと、そして各党の意見はこうでしたと両論併記みたいで済ましてしまうようなことだと、それは調査会そのものを私は否定するあれじゃないんですけれども、もっともっと有効な調査会のやり方があるんじゃないかなというふうな感じがいたします。  そういうふうな点からいいますと、こういうふうなテーマが出ているわけですが、例えばこういうふうな大前提のもとで政府開発援助あり方なんというのを取り上げますと、これはアジア地域だけじゃないんですよ。これは全世界の問題ですよね。特にそれは、例えばOECDあたりともいろいろ絡んできますし、それはアジア地域に対するODAというのは日本の大体何%でしたかな、今。ちょっとど忘れしましたが、半分いっていますかね。六割がその程度でしょうかね。というふうなことだし、それからもっと、NGOの問題にいたしましてもあるいは協力隊の問題にいたしましても、いろいろございまして、そういうふうな角度からのアプローチもあろうかなというふうな感じがいたしますから、そういうふうな意見も踏まえて、ひとつ会長さん、理事さんの方で御検討していただければありがたいなと、このように思います。
  19. 松前達郎

    松前達郎君 ただいま下稲葉議員の御意見ございましたが、かって私もエネルギーの調査会を担当したことがありますけれども、この中でもやはり政党次元でいろいろ議論すると食い違いがあり過ぎて全然まとまらないことがあったわけです、これは原子力発電の問題。ですから、議論しても結論というか、ある程度の結論導入ができないわけですからこれは避けたわけですね、意識的に。それ以外の問題について取り扱った、こういう経験があるわけでございます。ですから、今の御意見のようにODAならODA、しかもODAの中のどういう部分というのを絞って議論をしながら提言をしていくというのも大変重要なことだろうと思います。  そして、きょう二つほど私、一つ意見一つ提案ということになるんですが、実はさっき志苫さんがちょっとおっしゃった、これは割と重要なことだと思うんですね。というのは、我が国アジアにおける先進国としてやるべき責務というもの、これを考える。確かに平和と経済発展地域社会における安定というものは考えなきゃいけないわけですけれども、その前にどうしてもやはりきちっとしておかなきゃならないことがあるんじゃないかということなんです。これは全く同じ意見なんです。  最近、二、三日前にドイツでワイツゼッカー大統領が二期終わって引退するというので新しい大統領選挙が行われた。そういうことが最近起こっているわけですが、そのワイツゼッカー大統領がかつて、一九八五年、ドイツ敗戦四十周年で議会で述べた言葉というのを私今ここに持ってきているんですが、罪の有無とかあるいは老若を問わず、我々全員が過去を引き受けなければならないんだと。そしてまた同時に、問題は過去を克服することではなくて、まして過去を変えてみたり起こらなかったことにするわけにもいかない、しかし過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目になってしまうんではないか、非人間的な行為を心に刻もうとしない者はまたそうした危険に再び陥りやすい。こういう大演説をやっているんですね。これは政治家としては私は大胆な反省を行ったんではないか、こういうふうに思います。来年はちょうど五十周年、日本の場合ですと終戦五十周年に当たるわけですが、これをやはり我々きちっとしながら今後の新しいアジアの平和と安定に貢献する必要があろう。  これは教科書問題もその中の一つとして象徴的なわけでありますけれども、国や民族の罪責については、やはり威信やメンツというものがこれはどうしてもあるかもしれません、表面化したくないという気持ちもあると思います。しかし、このワイツゼッカーが行った演説というのは私はそういう意味からいうと非常に高く世界評価をされた演説だ、こういうふうに思っております。戦争というのは我々の心に非常に暗い歴史を残しておるわけでありますが、この教訓を我々はまず自分の方で学んでいくということですね。人に対することも必要ですが、自分に対することも必要だ。こういうふうなことをやはり謙虚に我々は反省しながら心のリフレッシュをしていかなきゃならない、こういうふうに思っております。  アジアの平和と繁栄という問題に対する我々の行動、我が国の行動というのはそこから始まるべきだろうと私は考えているわけです。この問題については国会議員の一員でもあります我々としましても、国会決議その地やるチャンスもあるわけですから、何らかのアクションを起こして、自己評価、自己反省といいますか、こういうものも十分にしながら、相手の立場になって、どうとらえているかということを我々が十分頭に置いて今後努力を続けるべきだ、こういうふうに思っております。これが一つ。これは感想に近いものであります。  そこで、先ほどからODAの話が大分出ております。ODAというのは象徴的な日本の貢献ということになろうと思うんですが、教育問題、これは私自身もこのODAにかかわって教育の援助というものを実際にやってまいりました。国はタイ国なんですが、そこのキング・モンクット工科大学大学づくりというものを、これはJICAと一緒にやったわけですが、そのときにも感じたんですが、どんがらをつくる、いわゆるハードの部分はお金で済んでしまう。確かに建物は建てられますけれども、問題はその中でどんな教育を展開するかというのが一つ。  それから、もう一つは、その教育を担当すべき人材をどういうふうにつくり上げていくか。これは専門的な技術教育ですからそれなりのやり方があるわけですが、こういったソフトの部分、これをやはり今後我々は考えていくべきだろうと思うんですね。国の自立的な経済を支援する、その発展寄与するというのはやはり人材だと私は思っております。非常に目立たないんですけれども、長い目で見るとこれが一番重要な基本的な問題だろう。国づくりの中核となる人材、これをどうやってその国の考え方で育成していくか、それにどれだけ我々が援助できるだろうか、こういうことだろうと私は思います。  ODAの分類の中にもいろいろあるわけですが、二国間援助の中でグラントの分、これが技術開発の援助の分ということになっていると思います。教育分野での援助、これは技術的な面、いわゆる高等教育の中の技術の面ももちろん必要なんですが、最近私のところへ来ているのは、例えばベトナムあたり、さっき読み書きの問題がございましたけれども、こういった問題もぜひとも何らかの力をかしてくれという申し出が随分来ているんですね。これは日本で言うと初等中等教育に当たろうと思います。しかし、教育内容までそこに関与してしまえばその国の自主的な点を非常に阻害する可能性があるのでこれは難しい点かもしれませんが、これこそハードの面である程度お手伝いができるんじゃなかろうか。そしてまた同時に、教育システムについてのノウハウが欲しいとか、こういったものも具体的にもう既に申し入れが来ているわけでありますから、こういった面、いわゆる教育援助という面をやはりODAの中でも考えていかなきゃならないだろうと思っております。  道路をつくったりダムをつくったり空港をつくったり病院のどんがらをつくったり機材を援助するというのは、これはハードの面としてはお金さえあればできることなんです。ただそれをどういうふうに使っていくかという面が非常に重要なことですね。道路とかそういう施設については一遍投入してもこれは十年か二十年たったらもうなくなってしまうんだけれども、人材というのはそうじゃないですね。やはり十年二十年続けていけばそれなりの積み重ねによってその国の自立の道への大きな力になっていくだろうと思いますから、そういう面でぜひとも教育援助というものについても考えていかなければならないだろう。  外務委員会等でも随分私そういう話もしたんですけれども、なかなか速効性がないものですから、目に見えないというそれだけで片づけられてしまう、今までそういう経験がございます。しかし、これはドイツもそうだし、各国ともその辺は非常に重点的な施策として援助をしているわけなので、我々としてもこういう面を今後考えながら調査も進めていかなければならぬだろう、こういうふうに私は思っております。  いろいろとありますけれども、ひとつ教育の面、私自身も関与してきたものですから、その点を申し上げておきたいと思います。  以上です。
  20. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 この調査会で一番の新参者ですから、間違った意見を述べたら御指摘いただきたいと思うんです。  先ほど下稲葉議員お話しされた問題、実は私もこの調査会役割というのは一体何だろうかということをよく考えるんです。この前に国民生活調査会に所属していたことがあるんです。そのときにいろいろな地域調査したり、各党の意見交換をしてきちっとまとまったものも随分あったと思うんですけれども、残念ながらそれが予算に反映されない。それから法律にもならない。どうしてかなというふうに思ったことがあります。各党意見が一致しているのであればせめて議員立法ででも出せなかったんだろうかなとも思ったことがありますので、この調査会も、先ほどお話が出ておりますように、統一した意見があればぜひ会長のお力、理事の皆さんのお力によってそれが具体的にやっぱり政治に反映できるようなことをお考えいただきたいなと、まず第一にそのことをお願いしておきたいと思います。  それから、先ほど志苫議員お話がありましたが、それに関連すると思うんですけれども、二つほどお話ししてみたい、意見を述べてみたいと思います。  一つは、アジア太平洋地域における軍縮、それから武器の移転問題です。もう一つは、ODAの問題です。  実は、先般たまたま機会がありまして、フィリピンで行われましたアジア太平洋の平和と軍縮、共生のための国際会議というのがありまして、それに初めて出席してみました。出席した国々の人たちはそれなりに軍縮なり平和の問題については随分一生懸命にいろいろなことを考え、運動もしているというふうに受け取ったんですけれども、しかし、いろいろと調査をしてみますと、例えば軍縮問題をとらえてみますと、アジア発展途上国というのは非常に軍拡の方向に向かっているわけですね。ところが、その武器が一体どこから入ってきているのかなと思ったら、同じアジアにおける大国の軍縮によって放出される武器を購入している。アジアの中でそういう武器の移転がどんどん行われているということは非常に矛盾をしているのではないか。それで、日本側から少なくともこのアジア太平洋地域においては武器の移転を禁止するようなことをやっぱりお互いに考える必要があるのではないか。皆さん出席者はそのとおりだというふうに意見の一致は見るんですけれども、さて国家間になった場合にはどうかといえば、なかなかこれは大変な問題でないかなというふうに思いました。  これは、政府間だけで果たしてこういう問題というのは実現できるんだろうか、もう少しやはり各国の議員の中で真剣にこういう問題を話し合う機会というものがないのかなということも実は会議に出て感じてきたわけでありまして、そういうことを果たしてこれからできないものなんだろうか。もしできるとすれば、私はやっぱりアジア太平洋地域における平和問題に一歩踏み込んで貢献することができるんでないだろうかなというふうに考えました。  それから、もう一つODAの問題ですけれども、その会議に出席しているときにフィリピンの港湾の拡張問題がたまたま新聞に載っておりました。外務省、大使館の意見も聞きましたが、非常に一生懸命にやっておりました。とにかく物理的な衝突だけは何としても避けなければいけないということで、フィリピン政府を非常に一生懸命に説得して、そして期限が来ているんだけれどもそれを少しは延ばしてでも平和裏にこの問題を解決しよう、そういうことで大変努力されている姿を見てきました。  ただ、果たしてそれじゃ、日本側で出しているODAの港湾の拡張工事というものが、フィリピン政府からは確かに心配ない、必ず住民とのトラブルというものは解決できるんだからということで日本政府にお願いをしてODAになったんでしょうけれども、本当にその地域住民が望んでいる援助だったんだろうかなということを考えるときに、先輩の議員の皆さん方からもお話がありましたけれども、政府間だけでこういう問題を進めて果たして大丈夫なんだろうかというようにも思いました。  それぞれの国の事情もあるでしょうけれども、それぞれの国の各政党の代表の議員の皆さん方の意見なんかも聞いて、本当に国民の皆さんが喜んでいただけるような形での援助というものをやっぱり我々は考えていく必要があるんでないのかなというようなことも実はたまたまそういう現場にぶつかって感じたわけでございまして、先ほどODAの問題については随分皆さん共通した意見も出ているようにお聞きしたものですから、できればやっぱり意見の統一を図って、何らかの形でこれを日本の政治の上に具体的に反映できるような方策というものをぜひひとつ御検討いただければありがたい、こんなふうに思います。  以上です。
  21. 中西珠子

    ○中西珠子君 本調査会会長が御提案なさいました「具体的な問題」という項目が挙げられておりますけれども、大体においてこれは全部賛成でございますが、特に三番目の「政府開発援助あり方」について、それから「国際交流人的交流を通じた信頼醸成」について、それから「国際的な責務を果たすための人材養成」について、こういったものはぜひこの調査会でやっていただきたいと考えたわけでございます。    〔会長退席、理事大木浩君着席〕  各会派の代表の方々の御意見開陳を拝聴いたしましたが、それぞれの方が日本ODAあり方についてやはりODA基本法案というものをつくることをこの調査会検討したらどうかという御意見を表明していらっしゃいましたが、私自身も長い間ODAの問題と取り組んでまいりました一人といたしまして、ぜひこの調査会ODA基本法案を議題として取り上げていただいて、そして各会派賛成のできるようなODA基本法案というものをつくれたら本当にうれしいことだと考えます。  御承知かとも思いますけれども、一九八七年の五月に公明党・国民会議ODA基本法案国際開発協力基本法案を参議院に提出いたしまして、そしてそのころこの調査会の前身である外交・総合安全保障調査会に国際経済・社会小委員会というものができまして、そしてODAあり方集中的に調査審議するということになりました。この御審議のたたき台にでもしていただければと考えまして提出いたしましたのが公明党・国民会議国際開発協力基本法案であったわけでございますが、ここでいろいろ御審議をいただきまして、また八九年三月にはODA基本法案の試案と題して社会党さんも大変立派なものをお出しになりまして、またこれをもとにして八九年六月に衆議院の方に提案されたわけでございます。    〔理事大木浩君退席、会長着席〕  その後、一九八九年の秋になりまして当時の四野党でやろうということになり、共同作業をずっと続けてまいりまして、昨年の六月に当時の四野党、それから二院クラブ、無所属の議員方々と御一緒に共同のものを提案したわけでございます。  ただいまODA大綱などというものもできておりまして、私どもが中間発表したものをそっくり取り上げていただいたというふうないきさつもございますし、今冬会派の中でいろいろな御意見の違いというものは余りないのではないか。何らかの形でやはり、世界一に量的にはなりましたけれども、質的にはもっともっと向上を、改善を図らねばならない、もっと効率的な実施というものを確保しなければならないというお考えは、また国民の理解と支持を得ることが必要だというお考えは大体同じではないかと思います。国際開発協力の理念と目的、また実施上の諸原則とか、それから先ほど志苫議員から御指摘がございましたけれども、国会の関与の仕方、これは世界じゅうのODAをやっているドナーカントリーの中で国会日本ほど関与していないところはちょっとないという珍しいケースでもございますし、それから、とにかく国民の理解と協力を得るためには情報の提供も必要ですし、開発教育とか広報宣伝、そういったものも必要ですし、また途上国に対するそういう広報活動も必要でございます。  また、一番重要なのはODAに挺身する人材育成、これをどのようにやっていくかというふうなこともあわせてODA基本法案の中でやはり法制化していった方がよろしいのではないかと私は考えておりますので、ぜひこの調査会ODA問題を取り上げていただきたいと考えるわけでございます。  それから、人物交流の問題でございますが、これは先ほど同僚の荒木理事から申し上げましたけれども、確かにアジア地域のいろんな大学ネットワークづくりをやったり、また産業界とタイアップして、そして大学それから産業界の人々との間で教育訓練をやっていく、研究もやっていくというふうなことも大変大事なので私も大賛成でございます。  今、日本に国連大学ができておりまして、これも日本が誘致したものがやっと建物ができて、そして新しい建物に移って活動を開始したばかりでございますが、今、国連大学の新しいビルの後ろに研修と訓練のための別の建物が東京都の手によって建築中でございます。これが来年は国連大学に提供されるわけでございますけれども、たまたま最近、国連大学の学長や学長補佐の人に会う機会がございまして、いろいろお話をしておりますうちに、その研修訓練棟を使ってぜひ日本環境問題における経験、公害対策における知識とか技術の蓄積、こういったものを開発途上国の人たちに教えていただきたい、そして日本環境問題に携わってきた方々大学の教授はもちろんでございますが、その他いろんな分野環境問題に携わってきた方々からいろいろの教育訓練を途上国の人たちに受けさせたい、また、日本の国内の大学や途上国の大学ネットワークづくりをやって共同研究、そして共同研修、そういったものをぜひ今度できます。その研修訓練棟を使ってやっていきたい、こういう希望の表明がありました。  ぜひこの国連大学、せっかく日本に誘致して、そして立派な施設、それは研修棟はないんですけれども、立派な会議場とか、それから新しいいろんな電子機器も備えておりますし、そういったビル、それから今度できます研修棟、そういうものを利用して、そして現実に近いところから活用をしていくということを考えてはどうかと思ったわけでございますが、皆様方の御賛同を得てこういったことが実現すればと考えております。
  22. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ODA基本法問題について各党派がずっとほぼ一致する方向が出ていまして大変うれしく思っているんですが、平成元年のときには志苫委員長、次いで矢田部小委員長のもとで、今の中西さんも理事で、下稲葉さん、私、志苫さん、当時苦労したみんないるんですけれども、一番苦労されたのは当時与党の下稲葉さんなんですよね。大変御苦労なさったと思うんですが、幸い調査報告書に七項目の合意が生まれて、それから本会議では決議が行われたんですね。  改めて引っ張り出して読んでみますと、本会議決議では「本院は、国際開発協力に対する関与を強めることとし、このためこれに関し審議する場が必要である。」と、そういうことまで決議したんですね。で、政府は、当時の国務大臣三塚さんが「本院により示されました一つ方向として承ります」ということを言われているんですけれども、どうも決議のしっ放しで、そのままになっているので、やっぱりこの機会に実際にこの決議報告に基づいて進めていきたいと思うんですね。  僕の記憶では、下稲葉さんが外務省にこの問題でいろいろ意見を聞いてきたら、外務省が絶対ノーと言ったのが一元化問題と国会審議と、立法化も入っていたかな、そのくらい外務省は当初かたい態度だったんですね、たしかあのとき理事懇談会でもお話しになったと思うんですけれども。  国会決議に入っていないけれども、調査報告書の方には第七項目目に「本院は、国際開発協力基本理念と基本的事項等を明確にするための立法化について、さらに検討を続けること。」となっているんですね。これ、原案は立法化するとなっていたんですが、与党の方でいろいろもめて、立法化検討というところでようやく合意ができたという経過があるんですけれども、しかし立法化検討ということまで合意してあるので、ぜひこの機会に、それこそ議員立法で進めることをやっていきたいし、四野党案についても私どもも基本的には支持できる内容だというふうに思っているんですけれども、どれをたたき台にするということより、かなり方向が出ていますので、実際立法化方向にきょうの審議をひとつ機会にしてぜひみんなで踏み切りたいというふうに思うんです。  それから、私、先ほどの発言の中で一つ提案をさせていただいたのは、東南アジアの一国を選んで視察調査したらどうか、一国というのは、考えたのは、東南アジアの諸国を横で見るんじゃなくて、どこか一つの国を選んで縦で調べてみたらどうかと。つまり、その国に対して日本がずっと行ってきたODAについて歴史的に総括的に調査をして、調査報告書、それから改善点があったら勧告もこの調査会としてつくって提出すると。  この間、毎日新聞に毎日の記者が東南アジア諸国を回ってODAをかなり調べたと。日本は宣伝が下手だと思ったとかいろいろ書いてありましたけれども、新聞記者などもそういう努力をしているわけだし、いろいろ日本ODAが全体としてはかなりの役割を演じたにもかかわらず、やっぱり実際にいろいろ合わない点が生まれているとの指摘がいろいろあるわけですね。  例えば、余りにハイテクのすばらしい装置なものでその後使いこなせないでほこりをかぶっているとか、いろんな報道もあるわけなんで、だから、調査するということがもしここで決まれば、集まっていきなり行くというんじゃなくて、ある国を選んで、準備もして、その国にどういうODAの円借款で、あるいは等々々といろんなものが行われているか、それで問題点ほどういうことかなども前もって準備していけば、その一国で向こうの意見をずっと聞けばかなり総括的な、縦線でというか、その国における歴史的な結果が得られるだろうし、それは恐らく東南アジア全体に対して共通の教訓があるんじゃないかというふうに思うんですね。  だから、これは予算の関係もありますし、この国際問題調査会には三年に一度の予算配分だと聞いていますけれども、その点も改善が必要だという意見も前からありますけれども、ぜひこの際、立法化の問題と、それから東南アジアのどこかの国に対するよく準備した調査を行ったらどうかというふうに考えたわけです。  なお、もう一つ、皆さんの御意見の中でアジア太平洋地域における平和と安全の枠組みづくりのお話がありましたので、ちょっと一言意見を述べたいんですが、予算委員会でも普遍的安全保障か集団的安全保障がでいろいろ議論があるようですけれども、やっぱり言葉それから概念を少しきちんとしないと混乱が生まれると思うんですよ。これは外務省にも責任があるんだけれども、外務省の文書では、例えば日米安保条約という軍事同盟についても集団的安全保障という言い方を使っている文書があるんですね。しかし、集団的安全保障と軍事同盟というのは非常に質が違って、仮想敵国を持っているのが軍事同盟で、仮想敵国がなくて関係諸国もすべてが参加するものが集団的安全保障というのが国際法理論の上でほぼ確定されているのに、それがごちゃまぜになっているんですね。国連はそういう仮想敵国を持たない集団的安全保障の機構として国連憲章でつくられようとしたわけで、それに五十一条にサンフランシスコ会議で米州機構をつくる関係から集団的自衛権ということで軍事同盟が入ってきたんですね。本来違うわけですよ。  そういう点で言うと、アジアにおける安全保障枠組みも、本当にアジアに関係するすべての国が加盟する地域的な安全保障に関する取り決めだったら集団的安全保障になるけれども、今アメリカは盛んに北朝鮮のことを警戒しているんだけれども、何らかの仮想敵国を想定したような軍事同盟的色彩を持っている安全保障枠組みというのがつくられると、これは集団的安全保障じゃないんですわ。  だから、アジア枠組みづくりのことを考える上でも、今いろいろ議論になっている平和と安全に関する機構についての考え方、実態、その国際法上の役割、性質、これはきちんと区別して議論していかないと、またもや軍事同盟と集団的安全保障がごちゃまぜになってくるという危険があります。私は、ですからその点で、アジアにおける最大の軍事同盟で最も危険な役割を果たさせられつつある日米軍事同盟を、本格的な集団的安全保障体制づくりのためにはなくす必要があるんだということを述べたわけです。
  23. 大木浩

    大木浩君 いろいろと御意見がございましたけれども、昨年八月に細川政権ができました、それからまた最近羽田政権ができたということでございまして、この両政権とも外交ないしは安全保障についてはおおむね自民党以来の、前政権以来の基本的なものは継ぐんだと、細かい点は別といたしまして、そういうお話をしておられますし、きょう、上田先生お話は別といたしまして、ほかの連立与党の先生方お話というのは、この問題については、安全保障とかそれから全般的な外交姿勢ということについてはそれほど大きな差はないと思います。  ただ、たまたま上田先生がおっしゃったように、共産党としては従来からの日米安保条約あるいは現在の米軍のアジアにおけるプレゼンスというものについて、むしろネガティブな評価をしておられるように私は受け取っておるわけです。しかし、今先生自身もおっしゃったように、現在のところ国際的な集団安全保障体制というものは十分にできておりませんから、過渡的には日米安保体制というものを、少なくとも従来の自民党政府あるいは現在の羽田政権もそうだと思いますが、おおむねこれを認めておるということでありますし、アジア各国もそれぞれ限られた経済力の中である程度軍事力を持っておる、こういう状況でございますから、私は、にわかに今の日米安保体制というものを崩す、あるいはアメリカのアジアにおけるプレゼンスというものを全くネガティブなものだと見ることについては、いささか同意はできないという感じであります。  しかし、これは基本的な問題でありまして、これ以上ここでは議論をするつもりはございませんが、少なくとも私個人としては、あるいは自民党の大多数の人はそういう考えを持っておるんじゃないかということを申し上げておきたいと思います。  と同時に、日本も現在、先般来のカンボジアにおけるPKO活動等々、自衛隊というものをある程度そういった国際的な仕事に関与させるということについても、これもやはり私は現在の状況では一つの政策として妥当な選択ではないかというふうに考えておりますということだけを申し上げておきたいと思います。  それから、二番目にODAの問題ですが、これは私も実は自分でかなり外務省の役人のとき以来ODAに関与しておりますから、ずっとODAの歴史というものを振り返ってみますと確かにいろいろと試行錯誤もございましたし、何せODAというものは日本のどの役所にとっても新しい経験だったわけであります。たまたまODAというのが一つ外交政策の大きな要素ということからも外務省がかなり中心になってやってきましたから、外務省にとっても非常に新しい経験だったということで、当然そこには試行錯誤があり、また結果としていろいろな過ちもあったと思いますけれども、ODAというか開発途上国に対する経済協力、援助というものはやはり相手があることでありまして、一つは相手の政権というものがある、相手の行政組織というものがある、それから相手の社会的ないろんな慣行というものがあるということを考えますと、なかなかやっぱり全く日本と同じ物差していいの悪いのと言っても、それはできないという面もあると私は思います。  ですから、その点は割り引きして考えなきゃいかぬし、いろいろと間違いもあったけれども、まあまあ最近の十年二十年といった歴史というものは、少なくとも私はアジアにおきましてはそれなりの成果を上げてきたのではないかというふうに考えます。  ですから、これからは基本的には、やっぱりそれだけの積極的な効果があったという前提で、しかしまだまだ足らざるところはどういうところがあるんだということを考えるべきではないかというふうに考えております。例えば、NGOの役割というのは非常に大きいし、今後ますますそれは拡大していってもいいわけですけれども、しかしNGOだけで相手国に対する経済援助というものを全部見るというわけにもなかなかいかないでしょう。ですから、NGOをさらに質的にもあるいはできれば量的にも強化するということについては全く賛成でありますけれども、同時に政府ベースのODAというものもさらに改善をしながら続けていくということが必要ではないかというふうに考えております。  それから、多くの先生方から経済協力基本法云々の話が出ました。これも各政党が基本的に一致しておるならば、それを一つ基本法にまとめ上げるということもいいと私は思うんですけれども、一体どういうふうに基本法を使うかと。先ほど国会の関与をもっとしっかりと明記しろというようなお話もございました。それはそれでいいんだと思うんです。  ただ、関与といいましても、例えば個々の経済協力案件についてあらかじめ始める前からいいの悪いのと、こういうところまで関与するというのは、相手国との外交政策をスムーズにやる上においてかなり問題があるんじゃないかということがあるので、私は事後的にはしっかりと審査をする必要もあるし、あるいは決算委員会的な事後のいろいろな検討というものもする必要があるしというようなことは思いますけれども、ですからどういうふうに使うか。単に、抽象的にいろいろなお経的なものを並べただけじゃ余り意味がないんじゃないかという感じがするわけでございます。ですから、これはそういった面も含めて、本当にその基本法をつくることによって現実にこういうことがきちっとよくなるんだというようなことがあるなら、これはまあいいですけれども、ただ何かお経をつくって、結局外交的にはもっと機動的に経済協力をやりたいんだけれどもできない、時間がかかるというようなことではかえってまずいんじゃないかという感じがするわけでございます。  それから、第三に、きょうは余り皆さんの御議論の中にこういったことは出てこなかったんですが、アジア地域における各国の経済発展あるいは日本との経済関係あるいは貿易とか投資とか、そういった経済関係一般でありますけれども、これはアジア諸国もいわゆる経済的なテークオフをしまして、だんだんに強い経済力を持つということでございまして、これからのアジア諸国日本との経済関係というのは、一方においてもちろん近隣諸国として、また友好国として協力関係もありますけれども、同時に競合関係もあるわけであります。ですから、どうやって平和的な競争というものが維持できるか、これは相当難しい問題だと思います。そういう点につきましては、やっぱりきょうのテーマアジア安全保障とそれから繁栄という言葉も入っていますから、これは日本アジア諸国がそれぞれ経済的に共存共栄できるためにはどういうことが必要かということもいろいろと議論をしなきゃならぬというふうに考えております。  それから、これは多少個別的な問題になるんですけれども、非常に重大な問題として、例えば最近のアジア諸国日本との間で一つ難民問題がございます。これはもうここのところ数日、大分テレビの方でもいろいろと問題が取り上げられておるわけでございますけれども、やはり人の動きというものをどういうふうにとらえるかということをよく考えておかないと、例えばここ二、三年ちょっと下火になっておりますけれども、外国人労働者問題というのも、最近はちょっと日本側の景気が悪いものですから、むしろ余り使えないという方の問題がありますけれども、一時はとにかく外国人の労働者を欲しいというのがむしろ企業側の意向であった。しかし、現実に入ってきた後の、何と申しますか態勢というのができ上がっていなくていろいろの問題を起こしたということもありますし、それからいろいろと外国人が入ってこられるのに伴ってのネガティブな問題というのも実はないではない。例えば麻薬の問題とか、いろいろ犯罪の問題もありますし、そういった問題について私は、労働者ばかりじゃありませんけれども、外国人が入ってこられることについての問題というのは、日本側の態勢をよほどきちっと整えておかないと、結局、言葉では友好だ友好だということでどうぞおいでくださいと言っても、結果的に問題が生ずるという考えを持っております。  したがって、これにつきましては、先ほど言いました国と国との間の経済関係、あるいはもっと文化関係、社会関係全般ももちろんありますし、そのまた一部としての外国人の入国問題というのをよほど気をつけて扱わないと、これが一つまた問題点になるんではないかというようなことだけ、問題だけ指摘いたしまして、きょうは私の発言を終わりたいと思います。
  24. 沢田一精

    会長沢田一精君) 他に御発言もないようでございますから、意見の交換はこの程度で終わりたいと思います。  委員各位には貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。  会長といたしましては、本日の御論議を踏まえ、各理事とも御相談の上、今後対応してまいりたいと存じております。  なお、これは必ずしも会長としての筆書ではございませんけれども、御意見のありました点に関連いたしまして若干申し上げたいと思います。  上田先生からODA現場調査したらどうかと、あるいはそのほかの先生方から議員交流、あるいは議員フォーラム、お互いに理解を深めることが大変大事であると、全くそのとおりだと思います。ただ、残念ながら院としてなかなか旅費の配分がございません。議長、副議長、議運の委員長にもう随分前から、私、国際問題調査会の特殊性から、せめて三年に一遍ではなしに、もう少し重点的に旅費等の配分をお願いしたい、重要な問題ができた場合は行けるようにしてもらいたいという申し入れをいたしてまいっております。ただ、なかなか諸般の事情で御承知のように実現いたしておりません。  どうぞひとつ、各党の理事委員先生方、そういう趣旨で側面的に御協力、御援助をお願いしたい、こう思います。  二番目に、ODA基本法の制定の問題は、今大木先生がらもお話がございましたが、今後理事間で協議をお願いいたしたいと思います。  ただ、さっき下稲葉先生の御発言の中にもございましたが、そういった基本的な理念の問題も必要だろうけれども、具体的にすぐ実現可能な提言、提案をすることも必要ではないかというお話があったようでございます。  さっき大島先生からアジアの子供たちの死亡率を低下させるためにポリオのワクチンの生産あるいは投与を組織的にやったらどうかと、これはそう難しい問題では私は技術的にないと思っております。わずかな予算で、しかも短期間でやれる、私の知識ではです。南米各国、ポリオは根絶をいたしました。これはわずか二、三年の間にアメリカの援助で根絶することができたと聞いております。したがいまして、アジアにおける先進国であります我が国、子どもの権利条約も批准をいたすわけでございますので、ぜひひとつ具体的にこれは予算化を願いまして、そしてその道の専門家は国内にたくさんいらっしゃるようでございますから、ぜひひとつ御協力を得て、子供たちの命を守るという運動を具体的に進めていきたいな、こう思っております。  それから、事業団で人材育成等を積極的にやっております。さっき島袋先生から沖縄の事業団の設備の拡充、事業の拡大を言われましたが、これだけ日本が人員削減、大企業もそうでございますが、専門家を含めましてリストラを実施いたしております。しかも高齢化がどんどん進んでまいりますから、私は、ぜひひとつ組織的に、シルバー人口と申しますか、優秀な技術を持った一定年齢以上のシルバー層の活用を、この技術移転、あるいは人材育成の面に活用すべきであるという持論を持っておるわけでございます。  私は、お年寄りが身につけられました優秀な技術を途上国の優秀な人々に移転をするということに生きがいを感じていただくような、そういう施設、あるいは組織をぜひひとつ提言をいたしたいな、こう考えております。  それから、もう一つ、前の自民党内閣でもそうでしたし、今の内閣でも言っておりますが、新社会資本整備という構想が打ち出されております。これはいろんな意味があるわけでございますが、やはり国内だけの狭い視野ではなしに、アジアを見据えた私は新しい投資というものがぜひひとつ国策として必要ではないかなと。  さっき細谷先生が秋田の御出身という立場でおっしゃっておりましたが、いろんな意味合いもございますが、環境問題との関連で、シベリアに無尽蔵と言われております天然ガスの導入を我が国としてぜひひとつ積極的に進めるべきではないだろうか。そのことがクリーンエネルギーにつながりますし、また限界があります石油資源の保全という意味もあろうと思いますし、近隣諸国との経済的な協力という意味からしても、私は、樺太、北海道、本州を貫く大規模なパイプラインを敷設いたしまして、そして双方が共存共栄できるような体制、しかも環境保全に役立つというようなことが二十一世紀に向けての新社会資本整備であるというふうに考えております。  最近は、シベリアだけではなしに、中国におきましても相当規模の天然ガスの資源の開発が進められようとしておるようでございますから、あるいは朝鮮半島を通りまして九州へ持ってくるということも可能だと思います。そういう国家的なプロジェクトをぜひひとつ現政府においても積極的に進める、国民に大きな夢を与えるという施策の展開も私は必要ではないかなという気がいたしております。  若干私見にわたりまして恐縮でございましたが、そういうことを感じながら先生方の御意見を拝聴いたしたところでございます。  今申し上げましたように、今後の対応につきましては、各理事さん方と十分協議をして進めてまいりたいと考えております。  以上でございます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十分散会      —————・—————