○横尾和伸君 公明党の横尾和伸でございます。
このたびは
水道水源の
水質問題に焦点が当てられて、
水道水源特別措置法案が
環境庁から今回出ているわけですけれ
ども、厚生省からは
水道原水
水質保全事業促進法、これは略称なんですけれ
どもなかなか長い、略してもまだ長いという法律でございまして、提出されました。名前が長いことについては不満ですけれ
ども、中身については大変喜ばしいことだと思っております。
なぜうれしいかといいますと、約百年の
日本の
水道の歴史、近代
水道ですけれ
ども、この中でずっと
水道水源の
水質問題というのは
水道業界という一業界の製品に対する原料、原料がいいか悪いかというような
位置づけでこれまで来ました。
最近といいますか、昭和に入ってからですと昭和二十年代、三十年代に
水道水源の
保全のための法律づくり、活発な
動きがあったものの成立はしなかった、実現はしなかった。そんな中で、昭和五十二年六月に
水道法が
改正されましたけれ
ども、やはりそこでも
水道水源の
保全について、これは一業界の問題ではないということで提案されようとしたんですけれ
ども、これも実は
関係各省との合意ができずに、
項目だけ今残っております
水道法の四十三条に
水源の
汚濁防止のための要請を
水道事業者が
関係省庁あるいは知事に対して行うことができると。要請ができるというだけで、行ったからどうなるということがないものですから、要請ができるという規定だけができてそれで現在に至っておりますけれ
ども、昭和五十二年以来一度もそれが発動されたことがない、こういうものでございます。精神だけはあるけれ
ども、中身は伴っていないということから発動されなかったという面が強いのではないかと思います。
そういう観点から、一業界の限られた製品の原料であるという
位置づけであったんですが、近年に至って特に
普及率が九五%という国民皆
水道時代、
水道があって当たり前という時代になって、当たり前という裏には代替の手段を持たない。
水道がだめになったら、じゃ昔使っていた
井戸をというその手段さえもなくしてしまっている。例外として少しはあります。それはボトルウオーターを買うとか、あるいは家庭用の
浄水器を買って、飲用のみですけれ
どもそれでしのぐというのがありますけれ
ども、これは極めて特殊で、しかも少量であります。そういう
意味で代替の手段を持たなくなってきた。
また、
水源水質が悪化、あるいは悪化というよりも最近の昭和四十年代、五十年代の悪化が改善されない状態が続くという中で
水道事業者としての努力が行われ、しかしながら
技術的な対応にも限界がある、限界が見えてきたという中で今回の問題が起こってきたんだろうと思います。
また、さらにそれにつけ加えて、国民の
生活の質の向上、
生活者重視という観点が与党のみならず与野党そろってその視点を重視するという傾向、また社会的にもそういった傾向が強められている。こんなことから、一業界の原料であったのに対してこれから国民のための、国民みんなの問題としてとらえるべき法的な根拠が与えられるということで、私はそういう
意味で、昨年成立した
環境基本法がまたさらにその土台になりますけれ
ども、大変意義深いものであろうと思います。
そういう点では大変結構なんですけれ
ども、もう
一つそれと裏腹の問題として、これは二つの
法案で共通していることは
水道事業者の責務が出てきた。これはそれぞれ水系
指定の内容が違いますけれ
ども、特別な
地域を
指定する要件として、厚生省案でも
水道事業者が要請をする、それから今回のこの
環境庁案についても
都道府県知事が内閣総理大臣に対して申し出をするわけですけれ
ども、その申し出の根拠になるのが地元での
水道事業者の要請ということで、要請から実質的に始まる。
ということは、言いかえれば今まで
水道事業者は前の
水道法、先ほど冒頭に申し上げました
水道法だけですと要請をするだけで、後は手段がないので先が見えているのでそれを発動しないということもあったわけですけれ
ども、今回この二
法案が成立しますと、要請をしないことは悪につながるということが明確になります。そういう
意味で、ここは
環境庁の場ですけれ
ども、厚生省の
水道担当の方も来ていただいておりますのでぜひここでお願いしておきたいのは、
水道事業者の責務というのは、そういう
意味では国民または
水道の
利用者ですけれ
ども、
利用者の声を正確に聞いて、それを聞きっ放しにしないで要請というところに反映させなければいけないという大変重要な役割、責務を負うことになりますので、その中での
関係者の力のバランスがとれるであろうということで、私はそういう点でも大変結構なことだと思います。
また、別な面でうれしいと思うのは、行政の対応が大変迅速であった、その点についても驚嘆と称賛に値するものと思います。一面では、マスコミの皆さん、また
関係の皆さんには、待ち望んだという気持ちからいらいらしたときがあったかと思いまして、そういう
意味では反対に長くかかり過ぎたという声もあろうかと思うんですけれ
ども、ただやはり、これだけのものをこれだけの
関係者が多い中でまとめ上げたということ自体、もう少し時間を置いて流れの中で見た場合には、実質一年で対応されたということはすごいことだと思っております。
昨年二月に
水道界から専門家の懇談会の意見として問題提起がされて、そのとき若干唐突さがあったとの声がありましたけれ
ども、約半年間の成熟期間を置いて、半年後には厚生省、
環境庁ともに新しい
法案をつくって対応するという方針を確認されております。九月には、
長官御就任直後でございますけれ
ども、
環境庁では当時の中公審、中央公害
対策審議会に諮問をされて、十二月に答申という早わざというか、離れわざをやってのけたわけでございます。さらに一月には、厚生、
環境両省庁からそれぞれ
事業促進法、
規制法という形で
法案が作成されて今回の提出に至った、これもまれに見る早わざだと思います。
私は、行政官をやっていた経験もありまして、そういう観点からすると本当に考えられないような、
事業促進法については
割合早く進むという面はありますけれ
ども、特に
規制法についてこんなに早くまとめられたというのは、
環境庁のみならず、もちろん
環境庁の御努力があったからだと思いますけれ
ども、
関係省庁の今までにない協力
関係があったからだと思っております。そんなことで、
環境庁、厚生省、建設省、農水省、通産省、自治省、まだいろいろあると思いますけれ
ども、こういった
関係機関や
関係の皆様に心より敬意を表したい、こう思う次第でございます。
今回の
水道水源法案、長いのでとりあえずこう言っておきますけれ
ども、これは大変新しい視点で、今までの
規制とは別に、
特定の有機物と塩素との反応によって初めて人体に影響のある
物質ができるという観点に立った新しい分野に大きく踏み込んだ法律だと思います。そういった
意味で
大変評価すべきものだと思います。ただ、特別
措置法とありますように、他の
施策と相まって十分な効果が発揮できると。これだけでという、これそのものは今までにない、法体系の中にもない新しいものですのでいいのですけれ
ども、やはりこの法律の前提になるところが大事であって、それが一緒になったときに初めて今回の目的が達成されるのではないかと思うわけでございます。
この点に関して、中央
環境審議会の答申で十
項目にまとめております。
項目だけちょっと読み上げますと、浄水場での
対策、これは高度浄水をということだと思いますが、それから
有害物質による
水質汚濁の
防止、農薬による
水質汚濁の
防止、
地下水汚染の
防止、カビ臭の
発生防止、カルキ臭の
発生防止、事故時の
措置、
開発行為に伴う影響の軽減、
水質保全のための上下流の協力と調整、
水質測定における
関係者の連携の確保。これは本来お答えしていただこうと思ったんですが、時間を節約するために私の方から紹介させていただきました。
そういった問題は、これは
環境庁のみならず、
関係省庁が多いんですけれ
ども、
環境庁が音頭をとって努力されるべきものと思います。ただ、その点は御信頼申し上げるしかないんですが、一点だけ申し上げたいことがございます。
それは
環境基準の当てはめについてでございます。ちょっとくどいようですけれ
ども、
環境基準、これは新しい
環境基本法の中でも主要な柱として
位置づけられております。
環境基本法の十六条には、「政府は、大気の
汚染、
水質の
汚濁、
土壌の
汚染及び騒音に係る
環境上の
条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び
生活環境を
保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする。」と、こうなっておりまして、その内容は、
一つは健康
項目、これは全
公共用水域に一律に適用されますし、それからもう
一つは
生活環境項目、これは類型を定めて基準値を設定し、具体的な水域に類型の基準値を適用する。それによっていわゆる類型
指定、当てはめを行うということで効力を発揮するわけですけれ
ども、これが
公共用水域の
水質保全の目標値になって、その目標に向かってあらゆるといいますか多数の
施策が行われる。例えば
水質汚濁防止法もそうですし、また
下水道法の目的の一部にも、
公共用水域の
水質の
保全ということが挙がっているわけでございます。
時間の節約の
関係で一人でしゃべっておりますけれ
ども、もう少し御辛抱いただきたいと思います。
そこで、
水質保全の法体系というのはかなりある
意味ではしっかりしていると思います。旧
水質保全法が昭和四十年代の前半まで続いておりまして、それの反省として、つまり旧
水質保全法は
指定水系制をとって、ここが危ないよという
指定の水系を決めて、そこをねらい撃ちする。しかし、それだけではどうもうまくいかないということで、
環境基準を含む公害
対策基本法をつくってその目標を
全国に及ぶようにして、
水質汚濁防止法で網をかけるということが前提になっております。
今回のものも実はそのことが前提になって、もしそれをなくすのだったら後退なんですけれ
ども、そういった
全国の網を土台がしっかりしたところに、
水質汚濁防止法、
環境基本法という土台があって、その上で
特定の
地域に
指定水域として的を絞る、そこにスポット
対策といいますか、そこに焦点を当てていくというところに特色があるんだと思います。
そういう
意味では、大変今回のものはそういう
位置づけの中ではすばらしいものだと思うんですが、それだけに土台となる
環境基準の問題をしっかりしておかないと効果がない、あるいは薄れてしまうということがあり得るわけです。実はその土台の部分に、私は大筋においてほぼ問題はない、全く問題はないというぐらいの
認識をしておりますが、一部にただちょっとしたきしみがある。
そのきしみといいますのは、
一つ例を挙げますと、
水質に係る
環境基準、特に当てはめ部分、
生活環境項目ですけれ
ども、
全国の
状況をくまなく調べたわけではないんですけれ
ども、ちょっと目についたものだけを拾い上げてみますと、例えば阿武隈川では、これは全域ではありませんけれ
どもB類型が当てはめられていて、しかも過去三カ年を見ますと
環境基準は達成されている。しかしながら、浄水場では異臭味問題が起きている。また、有名な淀川では、これもB類型で過去三カ年ずっと
環境基準は満たされております。しかしながら、御存じのとおり、千何百万人もの異臭味被害の人たちが出ている。また、九州の遠賀川ではB類型が同じように当てはめられておりまして、これも
環境基準は過去三カ年達成しております。ですから、
環境基準という物差しで見ますと全く問題がないということになっておりますけれ
ども、やはり異臭味問題が
発生して六十万人もの被害人口を出している、こういう
実態がございます。
異臭味にはいろんな要素がありまして、言うまでもありませんけれ
ども植物性プランクトンの異常増殖というのが主ですけれ
ども、実はそれだけではなくて、有機性
汚濁の進行や、またその有機性
汚濁と塩素との反応によってわけのわからない未知の
物質ができるということもございます。そういう中で、特に冬場でもまずいとか臭いとか下水臭とかがありまして、必ずしもプランクトンだけが問題ではない。さらに、
現状では河口ぜきが多くなって、ダムとか湖ではないけれ
ども河口ぜきで水が滞留するというような問題もございます。
こういった問題も踏まえて
お尋ねしたいんですけれ
ども、まず
生活環境項目ですけれ
ども、
環境基準の類型
指定の
指定状況とその達成
状況を
全国一本の数字で結構でございますが、お答えいただきたいと思います。