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1994-06-07 第129回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会平成六年六月一日(水曜日)委員会に おいて、設置することに決した。 六月六日  本分科員委員長指名で、次のとおり選任さ  れた。      伊藤 公介君    島村 宜伸君      村田敬次郎君    谷津 義男君      山田  宏君    山本  拓君      伊東 秀子君 六月六日  山本拓君が委員長指名で、主査選任され  た。 ————————————————————— 平成六年六月七日(火曜日)     午前九時一分開議  出席分科員   主 査 山本  拓君       伊藤 公介君    小此木八郎君       島村 宜伸君    村田敬次郎君       谷津 義男君    青木 宏之君       野田 佳彦君    山田  宏君       吉田 公一君    伊東 秀子君    兼務 池田 隆一君 兼務 石橋 大吉君    兼務 大畠 章宏君 兼務 土肥 隆一君    兼務 和田 貞夫君 兼務 大口 善徳君    兼務 若松 謙維君 兼務 中島 章夫君    兼務 寺前  巖君  出席国務大臣         文 部 大 臣 赤松 良子君         自 治 大 臣 石井  一君  出席政府委員         文部大臣官房長 吉田  茂君         文部省生涯学習         局長      岡村  豊君         文部省初等中等         教育局長    野崎  弘君         文部省教育助成         局長      井上 孝美君         文部省高等教育         局長      遠山 敦子君         文部省高等教育         局私学部長   泊  龍雄君         文部省体育局長 奥田與志清君         文化庁次長   林田 英樹君         自治省行政局長 吉田 弘正君         自治省行政局選         挙部長     佐野 徹治君         自治省財政局長 湯浅 利夫君  分科員外出席者         環境庁自然保護         局計画課長   菊地 邦雄君         大蔵省主計局主         計官      木村 幸俊君         大蔵省主計局主         計官      田村 義雄君         厚生省児童家庭         局母子衛生課長 三觜 文雄君         建設省道路局国         道第二課長   脇  雅史君         地方行政委員会         調査室長    前川 尚美君         文教委員会調査         室長      長谷川善一君         予算委員会調査         室長      堀口 一郎君     ————————————— 分科員の異動 六月七日  辞任         補欠選任   島村 宜伸君     小此木八郎君   山田  宏君     野田 佳彦君   伊東 秀子君     秋葉 忠利君 同日  辞任         補欠選任   小此木八郎君     島村 宜伸君   野田 佳彦君     青木 宏之君   秋葉 忠利君     伊東 秀子君 同日  辞任         補欠選任   青木 宏之君     松沢 成文君 同日  辞任         補欠選任   松沢 成文君     吉田 公一君 同日  辞任         補欠選任   吉田 公一君     山田 宏君 同日  第一分科員石橋大吉君、若松謙維君中島章夫  君、第二分科員大口善徳君、第六分科員寺前巖  君、第七分科員大畠章宏君、土肥隆一君、第八  分科員池田隆一君及び和田貞夫君が本分科兼務  となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成六年度一般会計予算  平成六年度特別会計予算  平成六年度政府関係機関予算  (文部省及び自治省所管)      ————◇—————
  2. 山本拓

    山本主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  私が本分科会主査を務めることとなりました山本拓でございます。よろしく御協力のほどをお願いいたします。  本分科会は、文部省及び自治省所管について審査を行うこととなっております。  なお、各省所管事項説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。  平成六年度一般会計予算平成六年度特別会計予算及び平成六年度政府関係機関予算自治省所管について、政府から説明を聴取いたします。石井自治大臣
  3. 石井一

    石井国務大臣 平成六年度の自治省関係歳入歳出予算につきまして、概要を御説明申し上げます。  一般会計につきましては、歳入は三千百万円、歳出は十二兆八千二百七十億百万円を計上いたしております。  歳出予算額は、前年度の予算額十四兆六百四十六億二千三百万円と比較し、一兆二千三百七十六億二千二百万円の減額となっております。  また、この歳出予算額組織別の額を申し上げますと、自治本省は十二兆八千七十六億九千九百万円、消防庁は百九十三億二百万円となっております。  以下、主要な事項につきましては、委員各位のお許しを得まして、説明を省略させていただきたいと存じます。  よろしくお願い申し上げます。
  4. 山本拓

    山本主査 この際、お諮りいたします。  ただいま自治大臣から申し出がありました自治省所管関係予算概要につきましては、その詳細は説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 山本拓

    山本主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————   〔石井国務大臣説明を省略した部分〕  以下、この歳出予算額のうち、主な事項につきまして、内容の御説明を申し上げます。  最初に、自治本省につきまして、御説明を申し上げます。  まず、地方交付税交付金財源の繰入れに必要な経費でありますが、十二兆七千五百七十七億五千二百万円を計上いたしております。  これは、平成六年度の所得税法人税及び酒税の収入見込額のそれぞれ百分の三十二に相当する金額消費税消費譲与税に係るものを除く。)の収入見込額の百分の二十四に相当する金額並びにたばこ税収入見込額の百分の二十五に相当する金額合算額十三兆六千百八十二億八千万円から平成四年度の地方交付税に相当する金額を超えて繰り入れられた額一兆三百六十五億二千八百万円を控除した額に平成六年度における加算額千七百六十億円を加算した額を交付税及び譲与税配付金特別会計へ繰り入れるためのものであります。  次に、国有提供施設等所在市町村助成交付金に必要な経費でありますが、二百十五億五千万円を計上いたしております。  これは、いわゆる基地交付金でありまして、米軍及び自衛隊が使用する国有提供施設等の所在する都及び市町村に対し、助成交付金交付するためのものであります。  次に、施設等所在市町村調整交付金に必要な経費でありますが、五十六億円を計上いたしております。  これは、特定防衛施設が所在することに伴い税財政上特別の影響を受ける施設等所在市町村に対し、調整交付金交付するためのものであります。  次に、新産業都市等建設事業債調整分利子補給に必要な経費として、二十億四千六百万円を計上いたしております。  これは、新産業都市工業整備特別地域等建設整備の促進を図るため、建設事業債特別調整分について利子補給金交付するためのものであります。  次に、公営地下高速鉄道事業助成に必要な経費でありますが、五十五億五千二百万円を計上いたしております。  これは、昭和四十七年度から昭和五十七年度までの間において発行された公営地下高速鉄道事業債支払利子に相当するものとして発行を認めた企業債利子の一部について、地方公共団体助成金交付するためのものであります。  次に、公営企業金融公庫補給金に必要な経費でありますが、六十一億九千二百万円を計上いたしております。  これは、公営企業金融公庫上水道事業下水道事業工業用水道事業交通事業市場事業電気事業及びガス事業に対する貸付利率の引下げに関連し、同公庫に対し補給金交付するためのものであります。  次に、広域市町村圏等整備推進に必要な経費でありますが、三億八千九百万円を計上いたしております。  これは、広域市町村圏等において、田園都市構想推進を図るための地方公共団体に対する田園都市構想推進事業助成交付金交付に必要な経費であります。  次に、明るい選挙推進に必要な経費でありますが、二十三億八千百万円を計上いたしております。  これは、選挙人政治常識向上を図り、明るい選挙推進するために、都道府県に対し交付する等必要な経費であります。  以上が自治本省についてであります。  次に、消防庁について、御説明申し上げます。  消防防災施設等整備に必要な経費として、百六十七億一千百万円を計上いたしております。  これは、市町村消防力充実強化を図るとともに複雑多様化する各種災害に備えるため、消防ポンプ自動車防災行政無線、ヘリコプター、高規格救急自動車消防団拠点施設防火水そう、耐震性貯水そうなどの諸施設等地域実情に応じて重点的に整備するために必要な経費であります。  第二に、特別会計予算につきまして、御説明を申し上げます。  自治省関係特別会計といたしましては、交付税及び譲与税配付金特別会計があり、交付税及び譲与税配付金勘定交通安全対策特別交付金勘定があります。  まず、交付税及び譲与税配付金勘定歳入予定額は、二十一兆八千三百十三億四千四百万円、歳出予定額は、二十一兆四千四百二十五億四千四百万円となっております。  歳入は、「交付税及び譲与税配付金特別会計法」に基づく一般会計からの受入れ見込額消費税収入見込額の五分の一に相当する額、地方道路税収入見込額石油ガス税収入見込額の二分の一に相当する額、航空機燃料税収入見込額の十三分の二に相当する額、自動車重量税収入見込額の四分の一に相当する額、特別とん税の収入見込額等を計上いたしております。  歳出は、地方交付税交付金地方譲与税譲与金及び借入金の償還財源等国債整理基金特別会計への繰入れ等に必要な経費であります。  次に、交通安全対策特別交付金勘定歳入予定額は、九百八十二億九千九百万円、歳出予定額は、九百三億四千二百万円となっております。  歳入は、交通反則者納金収入見込額等を計上いたしております。  歳出は、交通安全対策特別交付金等に必要な経費であります。  以上、平成六年度の自治省関係一般会計及び特別会計予算概要を御説明申し上げました。     —————————————
  6. 山本拓

    山本主査 以上をもちまして自治省所管につきましての説明は終わりました。     —————————————
  7. 山本拓

    山本主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましては、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。谷津義男君。
  8. 谷津義男

    谷津分科員 大臣、私は大臣に対する質問はありませんから、どうぞ私の質問時間中はお引き取り願っておって結構でございます。  まず、予算が非常におくれているということで地方自治体に与えている影響が大きいと思うのですが、その辺はどういうふうな状況になっておりますか、御説明いただきたいと思います。
  9. 湯浅利夫

    湯浅政府委員 各自治体におきましては、御案内のとおり、年度内、三月三十一日までにほとんどの地方団体は翌年度の予算を議決いたしまして、それに基づいて執行しているわけでございます。  それで、昨年の二月に成立いたしました国の第三次補正予算の割り当てを受けまして、これがほとんど繰り越しになっているというような関係もございまして、当面はその繰り越された予算執行ということに各団体とも全力を挙げているというのが実情ではないかと思います。  また、地方交付税につきましては、暫定予算に四月分の概算交付、それから暫定予算補正におきましては六月分の概算交付の分も暫定予算の中に盛り込んでいただきましたので、これをルールに従いまして概算交付をするということによりまして、各自治体資金繰り等につきましても今のところ支障なくやっているのではないかというふうに考えております。  ただ、新規事業につきましては、やはり予算の成立が行われませんと実施ができない、箇所づけが行われないというようなこともございまして、そういう点につきましては、早期に予算が成立してくれることを各団体も望んでいる、こういう状況でございます。
  10. 谷津義男

    谷津分科員 実は、新規の件でありますけれども、特に雪国等は早く工事をしなければならぬという状況がありまして、予算が決まらないためにその執行ができない。しかも、地方自治体はみんなもうおのおのの予算は議決をしているわけでありまして、それに対する国の補助金が来ないとか、いろいろな問題が起こっております。そのために、事前に許可を得て、あるいは予算が来るであろうという前提のもとに予算執行しなければならないというようなものがあるというふうに聞いておるのですが、その辺のところはどのように対処しておりますか。
  11. 湯浅利夫

    湯浅政府委員 国の補助事業新規事業ということになりますと、やはり正式の箇所づけ決定と申しますか、補助金決定ということがございませんと予算執行というものはなかなか難しいというふうに考えるわけでございます。したがいまして、当面は、暫定予算で計上されております公共事業等予算はほとんど継続事業にこの分が充てられているというふうに聞いておりますけれども、やはり新規の分につきましては、予算が成立するということが前提になって動き出すというふうに考えざるを得ないわけでございます。
  12. 谷津義男

    谷津分科員 それでは、今議会に地方自治法の一部改正提案をされておりますが、その辺につきましてまずお聞きをいたしたいと思います。  広域連合という新しい構想のもとにこれを設置していきたいということでありますが、この考え方をまずお聞かせをいただきたいと思います。
  13. 吉田弘正

    吉田(弘)政府委員 今回地方自治法の一部改正を御提案申し上げまして、広域連合制度、そして中核市制度創設についてお願いをしているところでございます。いずれも今後の地方分権推進するための一つ方策として位置づけているものでございます。  言うまでもなく行政事務というのは、できるだけ住民の身近なところで、総合的な行政主体である地方公共団体の手によって行われるということが必要であると考えております。これまでもさまざまな方法で地方分権推進を図ってまいってきたわけでございますが、今回のこの法律改正は、最近多様化しております行政需要に的確に対応する方策を講ずるとともに、国等からの権限移譲ができるような体制を整備するということでこの広域連合制度創設を企図しているものでございます。  また、中核市につきましては、指定都市以外の比較的規模の大きいところの事務権限強化を図っていきたいということで、いずれにいたしましても、両方とも第二十三次の地方制度調査会の答申を得まして、それに基づいて御提案を申し上げているところでございます。  広域連合によりまして、いろいろと広域行政が的確に進んでまいるということを期待しているものでございます。
  14. 谷津義男

    谷津分科員 かつて自治省は、府県合併法案というのですか、前にやったことがありますね。ところが、一つもそういうふうなものは成功しなかったという過去の経緯があるのです。それを私は思い起こしまして、この連合構想というものとそのときと状況は大分違うわけでありますけれども、果たしていかがなものかというふうな危惧を持つものでありますけれども、その辺についてはどのように考えておりますか。
  15. 吉田弘正

    吉田(弘)政府委員 今回の広域連合は、府県合併というものを意図してお願いしているわけではございませんで、市町村区域あるいは県の区域を超えて行われるような広域行政需要に的確に対応できるような仕組みをつくってまいりたいということで、まず枠組みづくりをこの法律でつくりまして、あとどういう事務を共同処理するかということは、これは各地方団体の置かれている状況もさまざまでございましょうし、そういう中からこの制度を活用して広域行政を進めていただきたいというふうに思っているものでございます。
  16. 谷津義男

    谷津分科員 地方自治体の一部事務組合という、この連合構想小型化と言ってはなんですけれども、そういうものが既にあります。こういうものとの整合性という問題もありますけれども、その辺のところはどういうふうになっておりますか。
  17. 吉田弘正

    吉田(弘)政府委員 一部事務組合との整合性関係でございますが、今お話がございましたように、広域行政機構といたしまして典型的なものとして一部事務組合制度があるわけでございますが、これよりも今回提案いたしまする広域連合は、もう少しこの広域連合体の方に自主性自律性強化をするということと、あわせてそこが直接国から権限移譲ができるような仕組みをつくりたいというものでございます。  もともとこれにつきましては、現在の一部事務組合制度については、地方制度調査会等でもいろいろその問題点限界指摘をされたわけでございます。例えば、国や県から直接に権限移譲が受けられないということが一つ、それから、その所掌事務を変更しようとしてもみずからイニシアチブを持ってこれを変更することができないということ、さらには、広域にわたる計画というものは、これは任意的につくれますが、それが構成団体に対して、それを拘束するとかいうような実効性に欠けるうらみがあるというような点が指摘をされておりました。  こういうことを踏まえまして、今回のこの広域連合制度は、一部事務組合のそういった限界を乗り越えようということで、国や県から直接に権限の委任が受けられるというようなこと、さらには、規約の変更について広域連合側から構成団体に要請をすることができるというようなこと、さらには、広域計画を作成して、それに従って各構成団体仕事をし、さらに勧告もできるというようなことでございます。そういうことで新たな仕組みを考えておりますので、かなり一部事務組合と違った格好で活用がされるのではないかというふうに考えております。
  18. 谷津義男

    谷津分科員 国の権限移譲ができるという全く画期的なことになるわけであります。しかし一方では、県があり、市町村があり、またそこにも国の権限移譲が行われる、そういうふうな形になりますと、屋上屋を重ねていく心配があるわけであります。そうなると、一部事務組合というのは、ほとんどそういうことで機能が、今まででもそういう権限移譲はできなかっただけに、これはむしろ発展的に解消して、広域連合というのができたならばそこへ入っていってやった方が後で問題が起きないのではなかろうかというふうに私は思うのですが、そういうふうな点についてはどのようにお考えでしょうか。
  19. 吉田弘正

    吉田(弘)政府委員 広域連合と一部事務組合制度は、今御説明しましたように、それぞれ制度内容が若干違っております。  現在は広域連合制度はないわけでございますので、一部事務組合制度というのが主として設置をされまして、これによって広域行政が進められているわけでございます。  例えば広域市町村圏のいろいろな施策をやる場合に、その広域行政機構主体としては、一部事務組合制度あるいは協議会制度ということで現在は行われているわけでございますが、今後、この広域連合制度創設されました暁には、特に広域市町村のいろいろな広域圏行政施策推進するについては、この広域連合というものを活用していただくということが非常にいいのではないか。それをまた期待をしているわけでございますので、既存の一部事務組合からこれに改組をしていくということも考えられるのではないかなというふうに思っております。
  20. 谷津義男

    谷津分科員 広域連合をつくるその基礎に、先ほどの説明の中にもありましたけれども、経済圏生活圏というのですか、そういうものの問題、あるいは交通網の問題、いろいろそういった有機的なものがつながり合っている中で広域連合というのを形成していくのがいいだろう。当然のこととして県を超えた経済圏というのがありますから、そういった面も進めていくということで、非常に大事なことであろうというふうに私も考えておりますから、一部の危惧を持ちながら、これはやるべきだというふうに考えてはいるわけであります。  しかし、市町村におきまして、住民サービスだとか、あるいは福祉の問題だとか、医療圏の問題だとか、いろいろそういうものもございまして、経済圏もさることながら、市町村が大半の住民に直結する仕事をしていることも御案内のとおりです。  そういうことになってまいりますと、この広域連合が形成された場合、これとの整合性の問題、例えば、町村を離れた事業といいますか、広域連合の中でやる事業というのを各町村がそれなりの負担をもってやるような法案になっておりますけれども、こういう面については、かなりの強力な指導性と、それから話し合いによって、いろいろなものを設置するあるいは建物をつくるとか事業を行うとかということをやる機関というものが非常に重要なポイントになってくると思うのです。そうなりますと、市町村があって、広域連合があって、それで県があって、国があるというような形で、どうも中二階がそこにできてきて、非常にやりづらくなるのじゃなかろうか。  要するに、分権の受け皿だというようなお話が今ありましたが、これは中核都市も同じだろうと思うのですけれども、そういうことになりますと、広域連合と県、広域連合市町村、こういうふうな流れの中で、もし広域連合事業を実施していくということになれば、県は広域連合に対してどういうふうになるのか、それから広域連合市町村に対してどうなるのか。しかも、広域連合には権限移譲がなされるということでありますから、県と広域連合との権限移譲の仕分けもしなければならぬ。こういうふうな問題があって、私は複雑になりやしないかという一部の疑念を持つのですけれども、その辺のところの整合性はどういうふうに図っていくのですか。
  21. 吉田弘正

    吉田(弘)政府委員 確かに、御指摘のような意味で、ふくそうするのではないかという御懸念もないではないかと思います。  しかし一方、現在の県、市町村というそれぞれの段階での行政のあり方で、市町村は基礎的な地方公共団体として住民に身近な行政をやる、県は広域的な見地からいろいろな行政を進めるということでございますが、やはり市町村行政あるいは県の行政にいたしましても、単独市町村でやるよりは、広域的な需要に対して広域的な数カ町村一緒になってこの事業をやった方が効率的になるというものもございましょう。県を超えて広域的にやるという種類の事業も今後出てまいると思います。あるいは県と市町村一緒になって事務をやっていくというようなケースもいろいろ考えられると思います。  そういうものの広域行政を的確に運用していくという意味で、この制度を、広域連合制度というものをつくりましたので、そこは、この広域連合体がすべての行政をやるということではございませんで、特定事務についてやるということでございますので、しかもそれは各構成団体協議によりまして規約を定めてやるということになりますので、県、市町村それぞれ単独でやる行政と、それから、あわせて広域的な行政をこの広域連合でやるということによって、いろいろな住民サービス向上が期待できるというふうに思っている次第でございます。
  22. 谷津義男

    谷津分科員 国の権限移譲の受け皿というふうに私も認識をしたわけですが、もう一つ突っ込んで話をさせてもらいますと、要するに、町村では権限移譲をするといってもなかなか受け切れない、県ならばやりいいけれどもということで、より密度の高い仕事ができる。しかも町村の枠を超えた、県まではいかないけれども、そういう枠の中でやりやすいようにする、そこに権限移譲するということになりますと、私はこれは町村合併を誘発していくものに何か作用していくんじゃないかと思うのですが、その辺のところにもねらいがあるのですか。
  23. 吉田弘正

    吉田(弘)政府委員 町村合併との関係お話でございますが、市町村合併につきましては、これまた今後これを円滑に進めていくべきだという議論があることは承知をしております。現に幾つかの団体でも合併の動きがあるというようなこともあるわけでございます。  今回のこの広域連合制度というものは、町村合併を促進するという見地からこれをつくったものではございませんで、さっきから申し上げておりますように、広域的な行政需要に的確に対応し、しかもそこに国や県から権限移譲ができる受け皿をつくるというようなことでございます。そういうものをやりながら、実際その運用をしながら、将来合併をしたいということが出れば、結果としてそういうこともあり得るかと思いますが、意図的に合併を促進しようということで広域連合制度創設したということではございません。
  24. 谷津義男

    谷津分科員 結果としてそうなったということは十分にあり得ると思うのです。  この広域連合事業ができるということですね。そうすると、当然そこには予算事業費というものがあるわけでありますが、これは各町村が持ち寄ると言ってはなんですが、そういう形で支出するような法案になっております。  それもいろいろ条件があって、人口比とか何かいろいろなそういうものもあってやるわけでありますけれども、そういうふうになっていますと、これは完全に、事業をやる面については現在自治体がやっておるのと全く同じような作業もしていかなければならぬということになるわけであります。自分の町村ではやらないものでも、よその町村がやるものであっても、広域連合の中でそれをやるということになればみんな負担をしていくということに当然なろうかと思うのですが、そういう解釈で間違いないんですか。
  25. 吉田弘正

    吉田(弘)政府委員 広域連合が実際事務の共同処理をするということになりますと、当然それの裏づけとなる予算が必要になるわけでございます。  この予算につきましては、法律にも規定をしておりますが、構成団体からの分賦金によるのが主になるわけでございますが、さらに、その事業によりましては、建設事業等をこの広域連合がやる場合には地方債を発行することもできますし、それから、分担金、手数料というようなものを徴収するということも可能になるわけでございます。  そういう中で、これをどういうふうにやっていくかということは、特に分賦金につきましては、各構成団体がよく協議してこれを決めていくということになっているわけでございます。
  26. 谷津義男

    谷津分科員 そうなってまいりますと、そこで事業ができるとなれば、今までの一部事務組合みたいな幾人かの者が兼務をしながら町村のものをやるというわけにはいかぬでしょう。そうなれば、ちゃんとした事務所を設け、そこに職員を配置し、しかも長たる者はこれは選挙で選ぶというようなことまでも書いてあるわけでありますけれども、そういったものを見ると、この事業をやる面においてはまさに自治体と全く同じようなものになってくるというふうに思うわけでありますけれども、その辺のところはどういうふうに考えておられますか。
  27. 吉田弘正

    吉田(弘)政府委員 広域連合事業をやる場合に、市町村との性格の差といいますか、そういうことかと存じますが、これは、規約によりましてお互いが、構成団体協議をしてどういう事務事業を共同してやるかということを決めるわけでございます。それで、中には非常に権限の強い広域連合もありましょうし、比較的弱い広域連合もあろうかと思います。これはどういう事務を共同処理するかということによっても違ってくるかと思います。  そういうことで、また長につきましては、今おっしゃいましたように直接公選という規定も設けてございますが、間接選挙でやる道も規約で選べる。間接選挙か直接公選かどっちかができるというようなことでございまして、多くの場合、これは発足して構成団体がどうお考えになるかによるわけですが、間接選挙のケースが多いのではなかろうかというふうに思います。  いずれにいたしましても、そういうようなところで予算を決めてこれを実施していくわけでありまして、その中で適切な運用がなされるというふうに考えている次第でございます。
  28. 谷津義男

    谷津分科員 公選制となれば当然選挙法の枠の中に入ってくるだろうというふうに思います。仮に間接選挙ということになりましても、地方議会の議長を選ぶにもそういう面があるわけでありますけれども、これまたいろいろなことで事業が、しかも権限移譲をすることができる、それを受けることができるわけですから、かなりの権限を持った長になるということが言えると思うのですけれども、この辺のところは、間接選挙にしろ直接公選にしろどっちにしましても、町村の枠を超えた、事業によっては大きな権限を持った組織であり長であるわけでありますから、この辺のところはよほどしっかりとした中でやらなければならぬ。当然私は、間接選挙にしましても公選法の枠内に入ってくるのではなかろうかと思うのですが、その辺のところはどういうふうに考えていますか。
  29. 吉田弘正

    吉田(弘)政府委員 先ほど申しましたように、長や議会の選挙につきましては、間接選挙あるいは直接公選いずれかの道を、規約で定めることによってどちらかを選択することができるということでございます。  選挙の方法は、直接公選をやった場合には、規約でどういうことにするかということを決めるわけでございますが、恐らく公職選挙法の例によってこれをやるということになりますと、公職選挙法の規定が適用されるということになろうかと思います。間接選挙の場合は、選挙人が非常に限定されるわけですので、公選法の規定が直接に適用されるということはちょっと想定しにくいかと思います。
  30. 谷津義男

    谷津分科員 最後に一つ聞いておきたいのですけれども、要するに、権限移譲のこれは受け皿という位置づけだけははっきりしてきたわけです。しかも、中核都市構想もこれまた権限移譲の受け皿と私は認識しているわけであります。中核都市ということになると三十万以上の人口のところということですから、それには達しないで、なおかつ経済圏とかあるいは交通あるいは生活圏というものが一つの、そこの構成をされている場所を、中核都市とは別な考えでここを指定することによって、いわゆる権限移譲の受け皿をつくっていく。先ほど申し上げましたように、町村ではなかなか権限移譲といってもこれは受け切れないものがあるために、そういうものをつくって事業実施ということになるというふうに今までの説明で私は認識をしたわけなんです。  そこで、もう一度お尋ねしますけれども、この場合は、権限移譲が直接移ってくるということになると、この中核都市の場合は国からの直接のいろいろな事業ができるということはありますね。ところが、この場合は、これは県を通してやっていくということになろうかと思うのですね、権限移譲を受けたにしても。県がまたがった場合、例えば私のところは、栃木県と群馬県というのは、両毛広域圏と言いまして、もう何十年とこういった組織をつくりながらやってきているわけですが、これがぴたり当てはまるのですよね、正直申しましてこの連合構想は。  そうなると、県が二つにまたがる、本来からいくと、拠点都市の指定もどうなのかということで再三にわたりましてお願いもし、また、何とか指定をしていただきたいということでお願いをしたわけですが、県にまたがっているためになかなかこれが難しかった。しかし今度の件は、県をまたがるのがむしろよしとするという感じを私は受けるのですけれども、最後にその辺のところをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  31. 吉田弘正

    吉田(弘)政府委員 今回、中核市制度を片一方ではお願いしております。これは、特に中核市の方で、指定都市に準じるような比較的規模能力の大きいところについて、本来なら県がやっているような事務をその中核市ができるようにしようということで権限強化を図っていく。あわせて広域連合の方については、的確な広域行政運営ができ、さらには国や県から直接ここに権限移譲できるような仕組みをして地方分権推進していこうというものでございます。  そういう中で、これは当該県の中で幾つかの市町村が集まって広域連合をつくるケースあるいはそこに県が一緒に入ってやるケース、さらには県を超えて市町村同士でやる、あるいは県同士でやる、そこにまた県が入る、県と市町村一緒になってやるというようなケース、さまざまなことが考えられると思います。まさに、これからの地域地域の置かれた状況によりまして、この制度が県を超えたものについても活用される場合もあり得るというふうに考えているものでございます。
  32. 谷津義男

    谷津分科員 今のことでもう一つ聞いておきたいのは、広域連合事業をやるについては、県の相談あるいは許可といいましょうか、当然その整合性を図らなければならないのはわかります。ところが、広域圏連合が県を超えて広域連合を形成した場合に、県同士の意見が違ってしまって広域連合が何かやろうと言ってもなかなかできない。本当に広域連合としてはやりたいということはあるのですよ。  端的なことを申し上げますと、群馬でも私どもの方は一番外れ、それから栃木の方も一番外れの方で、そこに一つ経済圏があるのですね。約八十万の人口がありまして、工業出荷高も七兆円ぐらい。言うならば特別市といいますか、それになるくらいの一つの構成をしているにもかかわらず、県が違うがためになかなかこれが難しくてでき得ないという状況にある。  それでは広域連合でこういうことをやりますよということになったときに、県がこれはちょっといかぬというような状況が生まれた場合に、こういう面はどういうふうに判断をしてくれるのですか、その辺のところを。
  33. 吉田弘正

    吉田(弘)政府委員 確かに、県を超えて市町村広域連合をつくるというケース、両県の意向がどうかというようなこともあるわけでございますが、そういうような広域連合ができましたといたしまして、県の施策との整合性ということが大事になってくることは御指摘のとおりだろうと思います。  そこで、広域連合制度につきましては協議会制度というものができるような格好にしておりまして、そこで、国の関係地方行政機関の長でありますとかあるいは都道府県知事その他公共的団体の代表者あるいは学識経験者等のうちから広域連合の長が委員を任命して協議会をつくるということができるようになっています。そういう協議会の場などでもいろいろ意見の調整を図っていただければ円滑な事業推進ができるのではないかというふうに思っております。
  34. 谷津義男

    谷津分科員 地方分権との絡みでこういった受け皿がつくられていくということはまことに結構なことであるというふうに私は考えます。  そこで地方分権でありますが、この大綱についてのあれをことしいっぱいに政府としてはつくっていきたいというふうな、新聞には十一月というふうに載っておりましたけれども、そういう方向で進んでいきたいという考え方であります。  そこでちょっとお聞きしたいのは、今規制緩和ということで国を挙げてこれに努力しているわけでありますが、地方の規制緩和といいましょうか、これも大事であろうというふうに考えるわけであります。地方には地方独自の許認可というものが条例等によって行われておるわけでありますが、この辺のところはどんな進みぐあいでありますか、お聞かせいただきたいと思います。
  35. 吉田弘正

    吉田(弘)政府委員 規制緩和は、国・地方を挙げてこれを推進すべきことであろうと思います。  地方のいろいろの行政、かなりの多くの部分は国の行政と連動している部門、要素が多うございまして、法律、政令等によりまして規制がされて、県なり市町村がそれに従ってやっているというのがかなり多いわけでございますから、県なり市町村の独自の事務で規制が設けられているというものもあるわけでございます。これらについても今後の行政を進める上でやはり規制緩和をしていく必要があるという認識を持っておりまして、そういう方向で県や市町村も取り組んでいただいているというふうにも思っておりますが、また機会をとらえまして助言、指導もしてまいりたいというふうに思っております。
  36. 谷津義男

    谷津分科員 地方には地方独特の性格もありまして、国とは違った規制もあり、あるいは許認可があるということでありまして、それがまた、一方ではその地域のキャラクターにもなっていることも事実であります。ですから、そういう面と、国がやろうとしている規制緩和、これはもちろん整合性を図っていかなければならないわけでありますけれども、一つ一つの地方の規制については歴史があり、地域事情があり、そしてまた住民の要望等があって、国よりはるかに小回りのきく形の中でそれが行われているであろうというふうに考えるわけであります。  ですから、そういう面を一律的に地方に指導するのではなくて、地方の実情に合わした、いわゆる自治体実情に合わして、いろいろと緩和すべきもの、あるいは残すべきもの、あるいはまたそれ以上につくらなければならないもの、こういうものがあろうかと思うのです。そういうことでありますから、国からこうせい、ああせいというのはどうかというふうに私は考えるのです。そこには地方の自主性というものをしっかりと尊重しながら進める必要があると思いますが、その辺のところをしっかりとお聞かせをいただきたいと思います。
  37. 吉田弘正

    吉田(弘)政府委員 まさに御指摘のとおり、地方団体自主性自律性ということは地方自治の上で大変重要なことであるというふうに思っております。それぞれの地域によりまして、さまざまな事情があるというふうなことでございます。規制緩和という意味でも、一律的ということでなくて、それぞれの地方団体それぞれが地域実情に照らして、今後の行政を効率的に、しかも住民サービスを的確にやっていくという見地から、さまざまの問題をみずからの問題として検討して見直しをしていただくということが大変重要であるというふうに思っております。
  38. 谷津義男

    谷津分科員 昨日、日経新聞に載っておったのですが、「住民交え監視委」ということであります。この件につきましては、自治体の「リストラ計画住民の代表とともに作成し、推進状況住民に監視させる。」というふうなことが載っておりまして、監視委員会を設置するのだというようなことで、自治省はこれを進めていく方針であるというふうに載っておったわけでありますが、これは事実でしょうか、自治省のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  39. 吉田弘正

    吉田(弘)政府委員 今後の地方公共団体行政改革のあり方でございます。  自治省として今後どう臨むかというようなことかと思いますが、各地方公共団体におきましては、既に五十年代から行政改革ということは真剣に取り組んできておりまして、特に六十年代に入りまして、行政改革大綱というものを各地方団体はつくっております。全都道府県あるいは指定都市は全部これをつくっておりますし、市町村のほとんどはこれをつくっておるというようなことで、そういう中で事務事業の見直しでありますとか、組織、機構の簡素合理化、さらには定数、給与の適正化というようなことで、さまざまの問題に取り組んできたわけでございます。  ところで、最近になりまして、やはり地方分権という声がいろいろ出てまいりました。その中で、地方団体にいろいろな事務権限移譲した場合、これが効率的に的確に真に住民サービスができるような格好で処理することが必要であるということが盛んに言われておるわけであります。そういう中で、特に、地方分権が進みますと地方団体の責任が非常に大きくなってくるということで、そういうことで住民参加をいただきながら、地方は自分たちの問題としてこの地方行革に取り組んでもらうということが大変重要になるのではないかという認識を私ども持っております。  そこで、今後は地方団体等におかれましても、そういう新たな発想のもとに、例えば今後の行革計画を策定する場合に住民に参加をしてもらうというようなこととか、あるいはそういう計画をつくりまして、その進行管理をフォローするという意味で、これも住民の方々にもこの進行管理の状況をよく見てもらうというようなこととか、あるいは外郭団体の整理統合も進めていくというような、いわば新しい行政のリストラということも自分自身の問題として取り組んでもらうということが必要ではないかというふうに思っております。  そこで、自治省といたしましても、こういうことの問題意識を持ちつつ、今後、地方のリストラを進めるに当たってどうしていったらいいかというようなこと、今申し上げたような視点があるわけでございますが、私どもプロジェクトチームを設置いたしまして検討をしているところでございます。そういう中で、今後、各地方団体もみずからの問題として新しい視点から行政改革に取り組んでいただきたいというふうに思っている次第でございます。
  40. 谷津義男

    谷津分科員 確かに住民の監視体制というのは、私も反対はしないわけであります。しかし、一方においては議会があり、あるいは今まででもそういった監視体制といいますか、監査委員会といいますか、そういうものを含めてやる。新聞にもこの監視体制の中にはOBが多いからなかなかできないのだというようなことが書いてありましたが、それも一つの理由かもしれません。  ただ問題は、地方議会の人たちから考えると、そういうのを住民参加でやるのは、何かおれたちがやっていないからかと思われる面もなきにしもあらずでありますし、また、これに対しましてはいろいろな機関があるのですね、そういった面もありますから、その辺はよほどきちっとした形の中でしなければならない。  しかも、監視委員会を仮につくるとすれば、その委員を長くやっていたのではなれ合いになってしまうのでだめでして、しょっちゅうかえる、再選を認めないというような形でやっていかないといけない。しかも、OBなんかは入れないとか、何か条件をつけると差別をするようでありますけれども、そういう過去の反省にのっとってやる必要があるだろうと考えるわけであります。これは質問ではありませんが、その辺のところを十分やれば、結局監視委員会をつくったって同じ結果になりかねない。また、一方では住民の直接請求もいろいろ今回のことで出てきているわけですから、そういうものも十分に活用しながらやる必要があると思うのです。  そこで、自治体のリストラの計画をきちっとやらなければいかぬだろうということは、私もそのとおりであると思います。また、かつては地方公務員の方が国家公務員より賃金なんかもかなり高くて、ラスパイレスが高いということもありましたが、最近は自治省等の御指導によりまして大分そういう問題で特筆するものがなくなってまいりまして、よい方向に向かっておるということであります。一方、新聞等によりますと、第三セクターなんかももう一回統廃合等も含めて見直さなければならぬということもあります。私もこの辺のところはよくわかります。  しかし、第三セクター方式というのは、いろいろな事業をやるために一時雨上がりのキノコのようにできたことも事実です。最近は、例えば鉄道等で廃線になったところを第三セクターによって経営をしている面もありまして、こういうところは単に経営が非常に難しいからということでリストラの対象にでき得ない面もあるのです。なぜならば、経営がだめになって廃線にしたものを引き継いでいるわけですから、当然最初から大変なことは想像される中で第三セクター方式でかなり多くの部分がこれをやっておるということもあります。  ですから、この辺のリストラを図っていくのは必要でありますけれども、一方では、そういうのが初めからわかっていながらやっている面もなきにしもあらずでありまして、非常に過疎的なところ、経営的には初めから非常に難しいところをやるだけに、その辺のところの整合性を図るということも大事な要素でありますから、こういう面は国の方も何らかの形で特別な計らいというか、権限移譲というか、何か一つ構想を考えて地方自治体との整合性を図っていく必要があると思うのです。そうなってくると、当然資金面、予算ということで一番嫌な話につながるわけでありますけれども、この辺のところはどういうふうにお考えでしょうか。
  41. 吉田弘正

    吉田(弘)政府委員 外郭団体といいますか第三セクターについては、そもそもその設置の由来は個別の第三セクターによってさまざまだろうと思います。今御指摘がありました鉄道のようなものもございましょうし、その他第三セクターというのは数多くあるわけでございます。それぞれ地域によりまして、また時代時代によって、その必要性に応じてこれがつくられてきたということがあるわけでございます。  そういう中で、そうは言いつつもどんどん組織といいますか、こういう第三セクターの数だけがふえていくということになりますと、これまた効率という面からいって問題がないわけでもないということで、そこら辺を一つ一つ吟味をしていただいて、一律にどうこうということじゃなくて、当初発足したときには十分な需要があったけれども、今では時代の変遷とともにその必要性が薄れてきているというようなものは廃止統合するとかというようなこともありましょうし、そういう見地から時代に即応した観点で見直しをしていっていただくということも必要なのではないかなと思います。必要なものについては存続をしながら、それがうまく円滑に活動できるような方策は講じていく必要があると思っております。
  42. 谷津義男

    谷津分科員 最近、地方自治体におきましても、いろいろな事業が多くなったり、そのためにいろいろセクションをふやさなければならぬという面もありますし、いろいろ多様化している住民ニーズに対応するために職員の数もふえてきていると考えておりますし、またその話も聞いておるわけであります。  かつて八四年から五、六年だったですか、自治省地方自治体に対しましてその辺のリストラ問題も含めて強烈な指導をしまして、定数なんかもぐっと減ってきたという結果がございます。あれは八四年から八七、八年まで、五年間くらい私はやったというふうな記憶があるのですけれども、現在、地方公務員の数はその時分から見てどんなふうにふえてきているのでしょうか。その辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
  43. 吉田弘正

    吉田(弘)政府委員 地方公務員の定数の関係でございますが、一時期、昭和五十九年ころから六十三年くらいにかけましては総数でも減っておりますし、また一般行政部門だけで見ますと、五十七年から六十三年くらいについては対前年比でみんな減少という格好できていたわけでございます。しかし、その後は、平成元年以降は、総数でも一般行政部門でも対前年比で増加に転じているということがございます。特に、近年ではその増加が少し大きくなってきているということもございます。  そういうことで、この問題は、三千三百あります地方団体でございますので、さまざまな行政需要もありましょうけれども、ほっておきますとどんどん定数がふえていく傾向もあるわけでございます。  各地方団体はそれぞれこの定数管理については御努力をいただいていると思いますが、新しい行政需要に対して、例えば高齢化時代を迎えての福祉の充実あるいは単独施策を積極的にやるということで、その部面での需要が多くて職員も必要だということは十分理解できるわけでございますが、一方では、それ以外の部門で節減できるところは節減をする、スクラップ・アンド・ビルドに徹していただいて、ふえるところはふえる、減らせるところはできるだけ減らしていくというようなことで、全体としての定数管理が必要ではないかと思います。  また、事務事業の見直しあるいは機械化、OA化の話、あるいは民間への委託ということも考えながら全体としての定数管理をしていく必要があると思います。定数管理モデルもございますし、また、各団体で類似団体との比較もしながらこれをきちんとやっていただくということが重要であるというふうに思っている次第でございます。
  44. 谷津義男

    谷津分科員 要するに、総合的な地方行革、そういうことをやらなければならぬということはよくわかるわけであります。  そこでお聞きしたいのですけれども、地方分権ということあるいは規制緩和ということになりまして、かなり国家公務員も減らすことができるというふうに思います。そうなってくると権限が地方に移ってくる。町村というのはなかなか難しいだろうと思うから、中核都市だとか、あるいは先ほどから議論している広域連合という形のものにもなってくるであろうということは私はわかるのですけれども、権限移譲されていくということになりますと、かなりまた人の面も考えなければならない。  あるいはまた、一方では自主的な財源ということで、この前の予算委員会でも私はその点について、地方消費税ということでも質問をさせてもらったわけでありますけれども、こういういろいろな兼ね合いが出てくると思うのです。  そこで、これはどのぐらい権限移譲するかによって変わるわけでありますけれども、少なくとも国家公務員はかなり減らすことができるということだけは予測をできますが、それはそういうふうに理解していいですか。
  45. 吉田弘正

    吉田(弘)政府委員 これは私の方からお答えするのがいいかどうか、国家公務員のことになりますと、それぞれの所管省庁もございますので。  ただ、一般論で申し上げれば、地方団体への権限移譲地方分権が進みまして、現在国がやっている事務というものが地方に移管をされていくということになりますなら、その事務が地方に移管されるわけでございますから、そういう意味での職員、それに従事している職員が要らなくなるというようなことはあり得るというふうに思っております。
  46. 谷津義男

    谷津分科員 そこで、要らなくなったということはちょっと言葉が過ぎるかもしれませんけれども、それがそっくり地方に人間まで移譲していかれて、それを地方が受け入れなければならぬという事態が起きかねないと私は危惧をするのです。今、県におきましてもかなりみんな優秀な職員がおりまして、そう国家公務員と見劣りするとは私は思っていないのです。町村になってくるといろいろあろうかと思いますが、県あたりはそんなに差はないだろうというふうに思うのです。  そういう面を考えて、もし国家公務員の方が権限移譲によって浮いてくるものをそのままそっくり、各省庁によっていろいろなことがあるだろうと思いますけれども、さあ県なり中核都市なりで、あるいは場合によっては広域連合なりで受け取ってくださいよというようなことがあることも十分に考えられるし、私は絶対あると思うのだけれども、その辺のところですが、今度は自治省の立場からどういうふうに考えるのか聞かせていただきたいと思います。
  47. 吉田弘正

    吉田(弘)政府委員 これは国・地方を通ずる非常に大きな話でございますので、なかなか自治省の立場だけでお答えしにくい面があるわけでございますが、地方分権推進につきましては、国・地方の役割分担を考えながら、今後どうしていくかということについても、政府の中でこの地方分権大綱というものをつくっていこうということになっております。その後は、これを受けてできるだけ早く基本的な地方分権推進のための法律の制定も目指したいというふうにしておるわけでございますが、そういう中で、具体的にどういうぐあいの事務権限が国から地方に移譲されるかというようなことによって違ってくるのだろうと思います。  さっきも申しましたように、そういう現在やっている事務が地方に移譲されますと、それに従事している国家公務員の数は減るという要素は当然あると思います。一方、地方はそれを受けるということになりますと、それに従事する職員も必要になってくるということでございますが、国・地方全体を通じてやはり行政が簡素効率化をして、これも規制緩和その他の問題はあると思いますが、簡素効率化を目指しながら行政の効率性を確保し、また住民へのサービスを確保するという見地からこの地方公務員、国家公務員の数も考えていかなければならないというふうに思っております。
  48. 谷津義男

    谷津分科員 国家公務員が地方分権によって減ることはわかる。それによって、今度はそれがそっくり地方に、そっくりということはあり得ないとは思いますけれども、仮に移っていくということになると、地方・国合わせての公務員のトータルでは何ら変わりはない、ただそれが移っただけじゃないかということになったら、何のための行革なんやということにもなるし、何のための地方分権なんだということにもなります。それは地方分権地方分権の意義は大きくあることはわかりますけれども、人から考えるとそういう問題も起こってくる。ですから、地方の行革と国の行革というのは、当然これは別々じゃなくて一体でなければならぬというふうに考えるわけであります。  しかし、今議論をされている中では、地方と国との関係というのは、そういう今みたいな話で地方分権を行われたことも含めて、行革はどうあるべきか、この権限移譲によって流れがどういうふうになっていくのか、あるいは人というのがどういうふうになるのか、こういうものの協議というのをしっかりやらなければいかぬだろうと思うのです。  ですから、地方分権の大綱をつくられる場合に、この辺のところは大きな要素になるのではなかろうかと私は思うのです。その辺のところは、自治省としてしっかりと踏まえて議論をし、大綱をつくっていくべきだろうというふうに考えるのですが、自治省の考え方をもう一つ聞かせていただきたいと思います。
  49. 吉田弘正

    吉田(弘)政府委員 国・地方を通じた行政改革、そしてやはり行政そのものの簡素効率化ということが大変重要だろうと思います。  今委員御指摘のありましたように、単に国から地方へ権限が移って、それに伴って総定数が余り変わらないというようなことでどうかというお話もございました。  国と地方の関係でいいますと、権限移譲のほかに、国の行政上の地方に対する関与ということもいろいろございます。認可、許可といったものから届け出、それから実質上の関与ということ、あるいは補助金の申請を通じてのいろいろな問題ということもございましょう。そういう中で、それがきちっと責任分担がはっきりしてまいりますと、その種の国と地方のさまざまな仕事が減ってくるということからいって、その面での公務員が減少するということはあり得ることだろうと思います。  いずれにしろ、もっと大きな問題として、本当に行政の守備範囲としてどこまでやるか、そのやり方をどうするかという見地から、国・地方を通じてこの問題を検討していかなければならないというふうに思っております。
  50. 谷津義男

    谷津分科員 公共料金の引き上げ実施見送り措置の問題について最後にお尋ねをいたしたいと思います。  昨日、政府の統一見解ということが出されました。これは、民間ということに対する若林委員の質問に対しての統一見解が出されたわけでありますが、これは自治体においてもかなりの影響を受けていることは御案内のとおりです。東京都の地下鉄とか、仙台等もありました。あるいは、ほかの自治体で経営している交通機関等もあります。そういうようなものが凍結をされるということでありますけれども、これについては事前に自治省の方には相談があったのでしょうか、まずその辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
  51. 湯浅利夫

    湯浅政府委員 公共料金の問題につきましては、最近の経済情勢のもとで、一方では所得税住民税の減税をやって、景気対策をやっている反面でいろいろな公共料金の引き上げがなされる、そういう批判も非常に大きかったわけでございまして、そういう中で閣議了解という形で決められたものでございます。私ども、事務的な御相談というよりも、やはりこれは政治的な決断という形で決めていただいたというふうに理解しているものでございます。
  52. 谷津義男

    谷津分科員 確かに政治判断だと私は思います。これをやったことに私は反対いたしません。結構だというふうに思っています。  ただ問題は、東京の地下鉄なんかは、これは運輸審議会に申請を出しておりまして、その結論も何もないままにぱっと政治判断でやるということは、審議会の存在すら私はおかしくするのではなかろうかなという感じを持っているだけに、この辺のところが非常に危惧されるわけでありますが、その辺はどのように考えておりますか。
  53. 湯浅利夫

    湯浅政府委員 地方の公共料金はほとんどのものが議会の議決を得て決定するということでございますので、通常の公共料金の場合とはやや性格が違うものだと思います。そういう意味で、一般論で申し上げますと、議会の議決を得たものについては、国からの許認可というものは地方の意思を十分尊重してやっていただきたいというのが基本的な考え方ではないかと思うわけでございます。  そういう点で御指摘の東京都の交通料金につきまして、申請がなされ、現在運輸省で検討していただいているところでございますので、議会の議決という重みのあるものを踏まえて慎重に検討していただいているのではないかというふうに考えているところでございます。
  54. 谷津義男

    谷津分科員 ですから、議会で決定して申請を出したものなんですね。こういうものが国の政治判断によってだめだということになりますれば、これは地方自治体に対しまして国が圧力をかけたというふうに見られても仕方がない面もあるわけでありまして、自主性自主性と言いながら一方  ではそういうふうなものがある。しかし、やったことは私は間違っていないと思うのですよ。いいと思っているのですけれども、その辺のところをきちっと踏まえてやっていかなければならない。ましてや、仙台市なんかは上げると言っているのでしょう。ということで、必ずしも国の方針に従わないという面も出てきているというふうに聞いておるわけであります。  ですから、そういう面からいいますと、いま少しこの辺は協議をして納得をさせてそれでやるという必要があるだろうと思うのですが、急を要したということであればそれまでですけれども、あのときも予算委員会が開かれている途中に官房長官が出ていってばっと発表するというやり方をとったわけでありますけれども、この辺のところに問題がありはしないか。ましてや地方自治体の問題を考えると、自治省もこの辺については何かコメントがあってもよかったのではなかろうか。  新聞等によれば、大蔵はどうもなれ合いであんなことを言ったとか、企画庁も言ったとかといいますが、とにかく自治省はあのとき何のコメントもしておらなかっただけに、地方自治体は何か吹っ切れないものがあったのではなかろうかなというふうに思うのですが、その辺は局長はどういうふうにお考えですか。
  55. 湯浅利夫

    湯浅政府委員 公共料金を改定するということは地方団体にとって大変な仕事でございまして、この改定に当たりましては何年も前から周到な準備をしながら、住民の皆さん方の御理解をいただきながら進めていくというのが実情でございます。そういう意味からいきますと、議会の議決まで得られたものについて認可という段階で再検討ということになることは、これは地方団体にとっては大変なことだと思います。  しかし、そうはいいますけれども、全体の経済の流れということから見まして、地方団体協力なくしては今の日本の経済運営というものは実質的にできないわけでございますので、そういう面も踏まえてこの決断がなされたのだというふうに考えているわけでございます。
  56. 谷津義男

    谷津分科員 時間が参りましたのでこれで終わりますけれども、地方分権等大事な、しかも大きな課題をしょって立つのが自治省でございますから、大臣を初め皆様方もしっかりとその辺のところを踏まえて、ひとつよろしく御指導のほどをお願い申し上げまして質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。     〔主査退席、伊東主査代理着席〕
  57. 伊東秀子

    伊東主査代理 これにて谷津義男君の質疑は終了いたしました。  次に、野田佳彦君。
  58. 野田佳彦

    野田(佳)分科員 おはようございます。日本新党の野田佳彦でございます。  まずは、本年三月に六年越しの懸案でございました政治改革法が幾多の困難を乗り越えて成立をしました。その過程において自治大臣におかれましては、政治改革特別委員長としてリーダーシップを振るわれました。その御功績、高く評価をしたいと思います。  ただ残念ながら、最近は死に体と化した中選挙区制でもう一度総選挙をやろうとするような動きが見え隠れしております。一度死んだと思われた五五年体制が蘇生をするチャンスを虎視たんたんとねらっている状況だと思っています。今ちょうど区割りの検討が行われておりますけれども、速やかに、慎重に検討がなされて、早く法案の審議ができればというふうに願っております。  こうした大規模な政治の改革の必要性はもちろんでありますけれども、選挙のあり方あるいは選挙行政のあり方というのは、常に見直し、改善をする不断の努力が必要だと思っています。  とりわけ最近気になりますのは、各級レベルの選挙においてことごとく投票率が低下傾向にございます。その最大の原因は、政治に対する無関心層がふえてきたという点だろうと思いますが、せっかく投票しようとする意欲があっても、それを阻害されている人たちも少なからずいるのではないのかな。きょうはそうした視点から質問をしたいと思っています。  こうした言葉があるのかどうかわかりませんが、ハンディキャップト・ポーターといいましょうか、こういう人たちがいると思っています。どういうハンディかというと、一つには時間的ハンディを負っている、日曜日のあの投票時間帯になかなか忙しくて投票できない人たち。そして空間的なハンディを負っている人たち、日本に在住を今していない。そして三点目は、まさに身体的にハンディを負っている人たちです。こうした流れで質問をさせていただきたいというふうに思っております。  ちょうど日本の選挙制度の骨格ができたのはほぼ四十数年前だと思っていますが、このころにはこれほど日本の人口が流動化をするという想定はなされていなかっただろうと思っています。したがいまして、日曜日のあの投票時間帯ではどうしても投票ができない人たち、ちょうど出張をしている、レジャーに出ている、旅行に出かけているという人たちがたくさんいらっしゃると思っています。こうした人口の流動化に対する対応として、投票時間の延長あるいは投票日二日制等の検討の必要があろうかと思いますが、こういう御検討がなされているかどうか、まずはお聞きをしたいと思います。
  59. 佐野徹治

    ○佐野(徹)政府委員 投票日の問題でございますけれども、現行公職選挙法では投票日は一日とされております。ただし、その投票日の当日に用務等によりまして投票ができない人たちに対しましては不在者投票制度がございます。現在でも不在者投票制度が積極的に活用されているところでございます。  今お話しの、二日制にするとか投票時間を延長するとか、こういう問題につきましては、選挙管理執行上の観点から、いろいろ慎重に検討を要する問題があるのではないかと思っております。  例えば投票箱の保管の問題をどうするかとか、それから御案内のとおり、投票に際しましては立会人制度等を設けておりますけれども、この立会人の確保をどうするかとか、こういったいろいろな問題がございます。選挙管理執行上適切に行われるのかどうか、また現実に可能な点があるのかどうか、そういう問題等もございますので、いろいろな角度から慎重に検討を要する問題ではなかろうかというように考えておるところでございます。
  60. 野田佳彦

    野田(佳)分科員 今不在者投票制度お話がございましたけれども、確かに不在者投票を有効に活用するということが一つの方法だと思いますが、最近よく見てみますと、いろいろな選挙で不在者投票の数はふえたけれども、結果的には投票率は低かったということがあります。  その一つの原因かどうかはわかりませんが、不在者投票をうまくビジネスに使っている人たちがかなり今出てきている。到底投票に行かないような人たちを投票所に運んでいる。特に暴力団も絡んだ動きがあって、地域によっては一方、二万単位でそういう票を動かして、県会議員クラスだったらすぐにでも当選できるような動きもあるようでございますので、その辺はよく、注意深く見守っていただきたいと思います。  次に、国際化への対応ということでございます。これは、在外選挙制度にかかわる問題であります。  昭和五十九年に政府案が在外選挙法として提出をされましたが、このときは実質審議がないままに廃案となりました。また再び在外選挙を要望する人たちの声が強まってまいりまして、本年の三月でしたか、政治改革特別委員会で初めて海外で公聴会を開かれておりました。こうした流れを踏まえて質問をさせていただきたいと思います。  在外選挙の必要性というのは多くの方が認めているところだと思いますし、これは多くの諸外国で取り入れられている制度であります。先進国においてこの制度がないというのは、日本とイタリアぐらいだと思いますし、アジアにおいても、ミャンマーであるとかマレーシアであるとかインドネシアとかでこの制度を採用しています。  今、おおむね六十八万人ほどの方が海外に居住をされていらっしゃるはずでありますが、その中では、例えばPKOの最前線で汗をかいている皆さん、やはり思うところがあって、その間に選挙があれば一票を投じたいという気持ちがあるかもしれません。あるいは、まさに貿易立国日本を支える最前線の海外で働いているビジネスマンの方、日米包括協議に物を申したいという方もいらっしゃるかもしれません。残念ながら、今こうした声を反映できない形になっております。  そこで、在外選挙制度実現に向けて、今の国の取り組みというのはどういう段階なのか、まずはお尋ねをしたいと思います。
  61. 佐野徹治

    ○佐野(徹)政府委員 経緯を若干申し上げますと、昭和五十九年にいわゆる在外選挙法案政府提案をいたした経緯がございます。このときには国会で審議なされることなく廃案となった、そういう経緯がございます。  その後、これは先般でございますけれども、衆議院の政治改革調査特別委員会におきまして、海外在住邦人に対する公聴会の開催を含めました国外調査が実施をされ、その結果等も踏まえまして、私ども自治省それから外務省等関係省庁が、この特別委員会の方から呼ばれましていろいろなお話をした経緯もございます。これを受けまして、外務省におきましては、在外公館で投票を行うことといたしました場合に投票が困難となります日本人、邦人数の把握など、在外選挙の実施に関しましていろいろな調査を行っているというように承知をしております。  自治省といたしましては、こうした調査結果もお聞きをいたしました上で、外務省を初めといたします関係省庁と、在外選挙の実施に向けてのいろいろな法律的な問題だとか技術的な問題等について協議を進めてまいりたいと考えておるところでございます。
  62. 野田佳彦

    野田(佳)分科員 そこで、在外選挙の対象者をどういう形で決めるかだと思うのです。以前の政府案は、一定の期間の在住者、そして帰国の意思のある者を前提にしていたと思いますけれども、そこで、対象者として短期滞在者や海外永住者をどうするかという問題が出てくると思います。  先般の公聴会に参加をした方にお聞きしましたところ、とりわけ海外永住者ほど投票権を行使したいという要望が非常に強かったと承っております。この点についてお伺いをしたいと思います。
  63. 佐野徹治

    ○佐野(徹)政府委員 先ほどお話を申し上げました昭和五十九年に政府提案をいたしましたときには、在外投票ができる者は、引き続いて三カ月以上外国の一つの領事館の管轄区域に住所を有しておる選挙人で、将来国内に住所を定める意思を有する者というように限定をいたしておりまして、帰国の意思を有していない永住者につきましては対象とされていなかったところでございますけれども、今後、在外選挙制度の検討に当たりましては、これらの点も含めまして、関係省庁とも協議の上、総合的に検討すべきものと考えておるところでございます。
  64. 野田佳彦

    野田(佳)分科員 次に、投票方法の問題でありますが、大ざっぱに分けると、在外公館に赴いて投票をするというやり方と郵便投票を活用するというやり方だと思います。在外選挙制度を取り入れている国も、大体、主にこういう二つの方法をとっているか、それを多分ミックスしているかだろうと思うのです。  前回の政府案では、在外公館で投票をするという形だったと思いますが、今、海外の在住者六十八万のうち在外公館が存在するところに住んでいらっしゃる方はおおむね五〇%から六〇%であると聞いております。どちらの形態をとるにしろ一長一短あるだろう。郵便投票の場合は、海外の郵便事情等も勘案しなければいけない。  そこで、投票方法は、在外公館を活用する方法と郵便投票ではどちらが本当に効果があるのか、自治省の方の御見解をお伺いしたいと思います。
  65. 佐野徹治

    ○佐野(徹)政府委員 前回提出いたしました法案は、在外公館における投票ということで、郵便投票は採用していなかったところでございます。  当時の議論といたしましては、郵便投票につきましては、選挙の公示から投票までの期間が短くて、投票用紙の請求だとか送付だとか返送だとか、こういった一連の手続を行うことが困難ではないかな、それから、国によりましては郵便事情が悪くて、遅配だとか無配だとか、ういった事故の生ずる可能性が高いと思われるところもあるのではないかな、また、本人の投票であるかどうかという確認が難しくて、選挙の公正の確保が困難である、国内の郵便投票におきましても、こうした理由で極めて限定的にしか認めてこなかった、こういう経緯がございます。  前回の政府提案では、こういうようなことから郵便投票制度は採用しなかったところでございますけれども、今後、在外選挙制度の検討に当たりましては、こうした点も踏まえつつ、関係省庁とも協議の上、総合的に検討すべきものと考えておる次第でございます。
  66. 野田佳彦

    野田(佳)分科員 有権者が投票をする際何よりも必要なのは、その判断材料であろうと思います。それ以前に、まずは選挙があるのかないのかという告知が必要ですし、一たび選挙があるならば、どういう方が立候補をされ、どういう経歴、どういう政見を持っているかというものがちゃんと周知されなければ、やはり意味がございません。  そこで、在外選挙制度を取り入れた場合に、選挙の告知や立候補者の氏名、政見等をどのように周知していくのか、その点をお尋ねをしたいと思います。
  67. 佐野徹治

    ○佐野(徹)政府委員 前回の法案では、選挙の告知だとか立候補者の氏名、政見等の周知につきましては、実態的に見ましてこれらを制度化するというのは困難であるということから、特段に制度を設けていなかったものと承知をいたしております。  今後、検討に当たりましては、今御指摘の点も大きな課題の一つであると認識をしておるところでございます。
  68. 野田佳彦

    野田(佳)分科員 いろいろと技術的には難しい問題があろうかと思いますけれども、ぜひとも前向きに御研究をいただきたいと思っております。  続きまして、身体的にハンディのある皆さんの投票参加の問題に移りたいと思っています。  最近では、国際障害者年などを経まして、障害者の活動の輪というのもだんだんと広がりつつあるようには思いますけれども、政治参加、投票参加という点についてはまだまだ限界があろうかと思います。本日は、とりわけ視覚障害者と聴覚障害者の問題を扱いたいと思っていますが、まず、前提としてお伺いをしたいと思います。  視覚障害者の投票参加を促進するためにどのような手段を現在のところ講じられているのか、お尋ねをしたいと思います。
  69. 佐野徹治

    ○佐野(徹)政府委員 現行の公職選挙法では、目の見えない方々のために、点字による投票だとか代理投票が認められているところでございます。  また、各都道府県におきましては、目の見えない方々の便宜を図りますため、点字による候補者名簿を作成をいたしまして各投票所に備え置いたり、それから、啓発事業の一環といたしまして、候補者の氏名だとか経歴等を記載した点字による選挙のお知らせ版、いわゆる点字公報を配布しておりまして、例えば昨年七月の衆議院の総選挙ではすべての都道府県におきまして配布されたと承知をしておるところでございます。  さらに、目の見えない方々を含めまして体の不自由な方が投票しやすいように、投票所につきましては、エレベーター等の昇降設備がない二階以上の部屋には設けないように指導をしているところでもございます。
  70. 野田佳彦

    野田(佳)分科員 都市部の有権者は、割と選挙公報を見て投票行動を起こすという方が数多くいらっしゃると思います。  視覚障害者においても、公報で、どういう経歴であってどういう公約をされているのか、それを踏まえて初めて投票所に行って一票を投ずるという行為が起こると思うのですが、点字訳の選挙公報、幾つかの地域においては一生懸命取り組まれているようでありますけれども、例えば知事選挙であるとか市長選挙であるとか、候補者の数が少ないものなどについては点訳が間に合う。しかし、例えば衆議院議員選挙みたいに突然解散があって、しかも数多くの候補者が出た場合には点訳が間に合わないというような実情もあるようでございます。少なくとも点訳ができるような組織というのは、ヘレン・ケラー協会であるとか非常に限られていて、実務的に大変難しいような状況もあろうかと思います。  しかも、選挙期間もだんだん短縮の傾向があって、普通、我々にとっては、選挙期間が短くなればお金がかからなくなって公正な選挙が行われるであろうという価値観がありますが、しかし、こうした障害を持っている皆さんにとっては、例えば点訳作業が間に合わないというような状況になって逆に公正ではなくなってくるというような矛盾も抱えているように思います。  そうした視点で、そういう技術的な、実務的な困難さは思いますけれども、各級選挙において点字訳選挙公報をできるだけ発行すべきではないのかなというのが私の意見でございますが、自治省の方の御意見を賜りたいと思います。
  71. 佐野徹治

    ○佐野(徹)政府委員 現行制度お話をまずさせていただきたいと思いますけれども、公職選挙法上の選挙公報と申しますのは、候補者から申請された掲載文を原文のまま掲載しなければならないというようにされております。そういう点から、現行法上、点字訳の選挙公報の発行はできないのではないかと考えております。  また、各選挙管理委員会が限られた期間内に誤りなく点字訳を調製することができるのかどうか。また、調製したものを視覚障害者の方々に対して公平に配布することができるのかどうか等の技術上の問題等もございますために、新たに制度化するということにつきましてはなかなか困難な点があるのではないかなというように考えておる次第でございます。  ただ、先ほども申し上げましたけれども、視覚障害者の方々の便宜を図りますために、啓発事業の一環といたしまして、候補者の氏名だとか経歴等を掲載いたしました点字による選挙のお知らせ版というのを各選挙管理委員会におきまして配布をいたしております。  先ほど申し上げましたように、私どもの方で調査をして承知をしております限りでは、例えば昨年の衆議院の総選挙におきましてはすべての都道府県で配布されたというように承知をしておりまして、それぞれ各都道府県の選管におきましても、こういった点につきましては鋭意努力をしておるものというように理解をいたしております。
  72. 野田佳彦

    野田(佳)分科員 視覚障害者にもいろいろな方がいらっしゃいまして、点字を読める方もいらっしゃるけれども、読めない方もたくさんいらっしゃいます。そうした皆さんを考えた場合には、むしろ選挙公報を朗読し、テープに入れて、そして必要な方には配布をするというようなことも考えられるかと思いますが、残念ながら、今公職選挙法ではテープとかいう近代兵器の規定が余りないようでありますが、この点についてはどうお考えでしょうか。
  73. 佐野徹治

    ○佐野(徹)政府委員 先ほど選挙公報関係で現行の制度の問題についてちょっと御説明を申し上げましたけれども、現行制度では選挙管理委員会選挙公報をテープに録音して配布するということは、公選法に定める選挙公報の発行には当たらないというように私ども解釈をいたしておりまして、現行法ではなかなか困難ではないかと考えております。  また、選挙公報は必ずしも全文が文章形式となっているとも限りませんで、それを朗読する際には要約だとか原文の加工が必要となってまいりますために、選挙の公正さの確保という点から考えますと、選挙の管理執行機関でございます選挙管理委員会がこれらを作成するというのはなかなか困難ではなかろうかというように考えておるところでございます。
  74. 野田佳彦

    野田(佳)分科員 次に、聴覚障害者の投票参加の問題に移りたいと思いますけれども、現状のところは聴覚障害者の投票参加を促進するためにどのような手段を講じられているか、まずはお尋ねをしたいと思います。
  75. 佐野徹治

    ○佐野(徹)政府委員 聴覚障害者の方々に対します投票参加の促進の手段でございますけれども、聴覚だとか言語に障害がある方々が立候補をされました場合の政見放送につきましては、あらかじめ提出された原稿を放送事業者が録音したものを使用することができることとされております。  それからまた、投票者サイドにつきましては、一般的には、視覚障害者の方々とは異なり、選挙公報だとか候補者等のビラ、ポスター等で各候補者等の政策だとか経歴等を見ることが可能でありますために、制度上特段の措置は講じられていないところでございます。  なお、障害者団体等が聴覚障害者等のために政見放送を録画したビデオを手話通訳を介して見るための集会、いわゆるビデオ集会と言われておりますけれども、これらにつきましては、それが自主的に行われ、かつ、選挙運動にわたるものではなくて、各候補者等に対して公正、公平に行われる限りにおきましては、直ちに公職選挙法に違反するものではございませんので、都道府県によりましては、地域実情に応じまして、その開催にビデオの貸し出しなどの便宜供与が図られているところもあると承知をいたしているところでございます。
  76. 野田佳彦

    野田(佳)分科員 手話通訳つきのビデオ上映についてはちょっとこの後質問をしたいと思いますが、その前提で、選挙公報と並んで大変有効な有権者の判断材料となるものとして政見放送があると思うのですが、この政見放送、手話通訳つき政見放送といいますか、そういうことが可能かどうかなんですが、これについては、現状においては国が定めた政見放送及び経歴放送実施規程に定めがなくて実施が困難であるというふうに伺っておりますけれども、これについては都道府県の選管からも何回か要望が出てきているというふうに思いますし、聴覚障害者の団体からも要望がかなり出てきているというふうに思っています。  政見放送研究会ですか、政府内に設置をされていて、検討をされてきているというふうに伺っておりますけれども、今どの程度検討が進んでいるのか、お尋ねをしたいと思います。
  77. 佐野徹治

    ○佐野(徹)政府委員 政見放送への手話通訳の導入につきましては、今お話のございました政見放送研究会におきまして現在検討していただいているところでございます。まだこの研究会からの御報告をいただいていない段階でございますので、具体的なことを申し上げるわけにはまだまいりませんけれども、この研究会におきましては、現在前向きな姿勢で意見の取りまとめに向けて努力をしていただいているというように聞いております。  近くその最終報告をいただけると伺っておりますけれども、いずれにいたしましても、その結論を待ちまして、できるだけ早期に対応できるように努力をしてまいりたいと考えております。
  78. 野田佳彦

    野田(佳)分科員 早く前向きな検討の結果が出て、朗報が聞ければというふうに思っておりますが、それまでの段階でも結構なんですけれども、先ほど御答弁の中にありましたとおり、政見放送をビデオで撮って会場を設けて上映会をやる、そこに手話通訳がっくというような試みを地域で随分やっていらっしゃるところもあるようです。  私が承知しているところだと、新潟とか山形とか群馬とか、六つか七つぐらいこうした都道府県があるようでございまして、都道府県の選管がこうした動きに対して公費の助成をされているというふうにもお伺いをしていますし、自治省の方でも、地方の選管から要求があれば国も助成をするという形をとりつつあるというふうに聞いているのですが、今この実績はどうなっているかをお尋ねしたいと思います。
  79. 佐野徹治

    ○佐野(徹)政府委員 都道府県のこの問題につきましての取り組みの状況でございますけれども、私どもが調査をいたしました一番新しいものは一昨年の、平成四年の参議院の通常選挙でございますが、これにつきましては、いわゆるビデオ集会に対しましてビデオの貸し出し等の便宜供与を行いました団体は、四十七都道府県中二十二団体であったと承知をいたしております。  便宜供与は各都道府県がそれぞれ地域実情に応じて行っておりますために、その内容につきましても多種多様でございますけれども、大体大きなものを申し上げますと、ビデオテープの貸与だとかそれから手話通訳者への謝礼だとか旅費の負担、それから会場の借り上げ、職員の派遣、それぞれ各団体ごとに地域実情に応じまして行われておるところでございます。  ただ、総額といたしましてこれがどの程度の額になるかということにつきましては、特段把握をいたしていないというのが実情でございます。
  80. 野田佳彦

    野田(佳)分科員 質問自体はこれですべて終わったわけでありますけれども、きょうお話し申し上げました時間的、空間的そして身体的にハンディを持っていらっしゃる方の投票参加の問題、それぞれ本来はすべてやるべきであると思うわけですが、それぞれに技術的、実務的に困難が伴うものがあるし、規定の見直しが必要なものもあるということでございますが、基本方向として、やるべきならば、こうした技術的な困難をできるだけ乗り越える知恵を政府の方もそして私ども議会の方も出し合うという形でいきたいものであるというふうに改めて思います。  ほぼ時間でございますので、これで質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  81. 伊東秀子

    伊東主査代理 これにて野田佳彦君の質疑は終了いたしました。  次に、和田貞夫君。
  82. 和田貞夫

    和田分科員 石井大臣、おめでとうございます。  大臣と同じ県から出ておられた故砂田先生には、常に日本行政書士連合会の顧問をやっていただいてかなりの長い年月の間御面倒をおかけしたわけでございますが、長い間の行政書士会の望みというのはなかなかかなえることができなくて今日に至っておるという状況でございます。  もともと行政書士というのは、これは古く明治政府の時代からさかのぼりますと、代弁人と代書人制度、代弁人は今日の弁護士でございますが、官公署に届ける書類の作成一切合財、これは代書人がやっておったわけであります。それが官公署という非常に幅の広い分野でございますので、おのずから専門的な申請手続というものが行政の推移の中で出てまいりまして、例えば特許庁関係の弁理士制度というのができ、あるいは法務省関係の司法書士制度というのができ、あるいは税務署関係の税理士制度ができ、あるいは法人の会計監査のために公認会計士制度ができ、そしてまた戦後新たに社会保険労務士制度ができるというようなことで、もともとの代書人であったいわば仕事の分野というのが、業務というのがちくりちくりと削り取られていく、こういう歴史をたどっているわけなんであります。  したがいまして、行政書士の皆さん方は、もうこれ以上削られていくということになるとたまったものではないという思いを持っておられますし、行政書士の場合も、従来は地方自治体の知事の許可、こういうことで、例えば地方公務員、国家公務員の十年以上の行政事務の経験者、これに許可を与えるという制度であったわけでございますが、現在では国家公務員あるいは地方公務員の行政職に携わった経歴二十年以上、そして新たに行政書士の資格試験というのが自治大臣の主催によって行われて資格が取得される、こういう制度になってきております。あわせて、弁護士、弁理士、税理士、公認会計士については、これは行政書士の資格をあわせて付与する、こういうことになっておろうかと思うわけなのです。  そこで、きょう私が質問をさせていただきたいのは、そういうような過程、そして現在の現状というものを踏まえましたならば、司法書士の皆さんあるいは社会保険労務士の皆さんには行政書士の資格が付与されておらない。税理士には資格が付与されておる。税理士の皆さんの業務というのは、これは税理士法によりまして、「税務官公署に対してする主張若しくは陳述につき、代理し、又は代行すること」ということと、あわせて財務諸表の作成ということが業務になっているわけです。  しかし、代理権があり、作成権がございますが、税務署に書類を提出するということは、これは付与されておる行政事務の一部であるというように私は解釈するわけです。作成するのは税理士さんの仕事であるけれども、作成してその書類を税務署に提出するのは行政書士の仕事である、こういうように私は解釈するわけでございますが、その点の見解をお聞かせいただきたいと思います。
  83. 吉田弘正

    吉田(弘)政府委員 税理士法の関係は直接自治省の所管でございませんので、所管の省庁の考え方が、有権解釈があろうかと思います。  今御指摘がありましたような税理士の業務の内容について税理士法で規定されているところでございます。  一方、行政書士の業務につきましては、今ございましたように、「官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することを業とする。」というふうになっているわけでございます。ただ、行政書士にはいわゆる代理業務というものが付与されていないということはあるわけでございます。
  84. 和田貞夫

    和田分科員 私がこの質問をいたしておりますのは、税理士法では財務諸表あるいは税務書類の作成、これが税理士の業務になっておる。そしてあわせて行政書士法では、「次の各号の一に該当する者は、行政書士となる資格を有する。」ということで、その中に「税理士となる資格を有する者」ということが入っているわけです。したがって、税理士法でいうところの税理士の業務というのは、書類を作成するという業務であると同時に、片方、行政書士法で決められておる、書類をかわって提出する、依頼者から報酬を受けてかわって提出する、そういう業務というのは行政書士の業務でしょう。  だから、税理士さんの方も、作成するまでは税理士の仕事であって、提出するということはここで言われているように行政書士の仕事じゃなかろうかという見解についてどうですかということです。税理士であると同時に行政書士であるから、それができるわけです。
  85. 吉田弘正

    吉田(弘)政府委員 これは税理士法と行政書士法との関係でございますが、税理士は税理士法の規定に従ってその書類を作成しそれを提出するということは、税理士法の税理士としてできるということでございまして、行政書士もその書類を提出することができるというふうに理解しております。
  86. 和田貞夫

    和田分科員 私は、やはり提出するという分野は行政書士を兼ねておる税理士が行政書士の業務として提出するのだというように解釈しているわけです。ひとつ見解をきちっとしてもらいたいということを私はこの機会に申し上げておきたいと思います。あくまでも書類を作成するのは税理士の仕事であって、書類を提出するのは資格を付与されておる行政書士としての仕事であるというように私は解釈するわけでございますので、ひとつ検討しておいてもらいたいと思います。  そこで、先ほど申し上げましたように、大臣権限がだんだん減らされていくでしょう。そこで、たまさか今商法の改正が議論されているわけです。商法の改正が議論されて、そして会計調査人制度というのができようとしているわけです。会計調査人には、公認会計士の皆さんは税理士を排除しよう、税理士の皆さんは行政書士を排除しよう、そういう動きがあるわけです。  私は、やはりせっかく商法改正をするということであれば、先ほどから言っておりますように、税理士の皆さんは税理士法で、財務諸表の作成やあるいは税務書類の作成をするというのが税理士の仕事であると同時に、行政書士は、書類を作成して提出するという業務が行政書士にあるわけなんです。したがって、商法でいうところの商人は、商法の三十二条で、「商人ハ営業上ノ財産及損益ノ状況ヲ明カニスル為会計帳簿及貸借対照表ヲ作ルコトヲ要ス」というように商人に義務、づけられておる、その義務づけられておる商人から委託を受けて現実に行政書士の中でその書類を作成している方々があるわけです。現実に書類を作成しておる行政書士があるわけだ。  したがって、この調査人制度ができるならば、ひとつ行政書士もその資格の付与についてぜひとも努力をしてもらいたい、行政書士担当の自治省として努力をしてもらいたい、こういう私のお願いでございますが、どうですか。
  87. 吉田弘正

    吉田(弘)政府委員 行政書士につきましては、今先生お話ございましたように、官公署に提出する書類その他の権利義務または事実証明に関する書類を作成し、これを官公署に提出する手続をかわって行うことができるという規定があるわけでございます。  ところで、今お話ございました商法改正に関する会計調査人制度の問題でございますが、これは御案内のとおり平成二年の商法改正の際に法制審議会の商法部会でいろいろ論議されたものと承知をしております。その論議の中で、今までと違った、正規の監査とは違った調査という方式で計算のチェックの制度の成立の可能性、うまくできるかどうかということですとか、あるいは調査対象の範囲をどうするかとか、さらには会計調査人となり得る者の資格をどうするかというような論議がいろいろあって、意見がまとまらずに見送りにされたというふうに承知をしているところでございます。  したがいまして、自治省といたしましては、今後とも商法改正における論議の動向を見守りながら、行政書士法の趣旨にのっとってこの行政書士制度の適正な運営に努めてまいりたいと考えている次第でございます。
  88. 和田貞夫

    和田分科員 適正な運営について努力したいということでございますが、私の質問は、会計調査人制度ができれば行政書士もその対象として資格の付与について努力してもらえるかどうか、そういうことをお聞きしている。
  89. 石井一

    石井国務大臣 会計調査人制度については、平成二年の商法の改正のときに法制審議会商法部会において論議されておるものというふうに認識をいたしております。ただ、最近この論議が必ずしも深まっていないというような記録もここに拝見いたしておるわけでございます。  それから、会計調査人という問題に関しましては、今後の経済的な激動する状況の中において株式会社等に対して計算上の適切な確保をするため、公認会計士に限定しない会計専門家による簡易な計算のチェックの制度としてこの制度を導入するべきだ、こういう意見がございます。  私は、そういうふうな中では、これまで職域をどんどん侵害されたというふうに言われましたが、行政書士の皆様方は当然これを扱うのには適された資格を持っておられるのではないかというふうに想像いたしておるわけでございまして、今後、自治省が進んでこれをこうせいと言うことはできないにいたしましても、第三者機関である法制を審議しておる機関でまずそういうふうな方向づけ、結論を出していただくことが非常に重要ではなかろうかというふうに認識いたしておるわけでございます。  それから、冒頭から御指摘のございましたこの代理業務という問題に関しましては、申請手続の代理人の付与、このことに関してやはりもう少し法的な位置づけということを進めていく必要があるのではないか。  いわゆる士業と申しますか、それらにつきます法律、私もこれまでいろいろなものを見てまいりましたが、大変古い法律で、その文章も古色蒼然としておるというふうなものを時代に合わせてどんどん改正をしてきたわけでございますけれども、今日的、時代的な要請に合うために行政書士法に関してもやはり改正をするべき時期が来ておるのではないか。その中に、今申されたようなことをも位置づけると同時に、行政書士会が御要望になっておりますこの申請手続代理業務というふうなものをもっとはっきり新しい改正法の中に位置づけることによりまして、公認会計士との関係のいろいろな問題ももっと明瞭に出てくる、はっきりしてくるのではないか。  今のところは、そういう御主張がございましても、何かまだ漠然としておるというふうな面があるのじゃないかなというようなことを、これは私の感想でございますけれども、今のお話を聞きましてそういうふうに感じさしていただいたような次第でございます。
  90. 和田貞夫

    和田分科員 今後の商法の改正に当たって、今議論されておる中での結論を見守るということになると思いますけれども、行政書士を所管しておられる自治省としても、できるだけその対象に、資格として行政書士にも付与されるように御努力いただきたいということをお願いしておきたいと思います。  それから、もう一つの、今大臣がおっしゃいました行政書士法の改正問題でございますが、これはどうなんですか。この国会では無理であっても、次の国会で自治省の方で改正案を用意をしていただけるでしょうか。
  91. 吉田弘正

    吉田(弘)政府委員 申請手続の代理権の問題でございます。  これについて、大臣からもお答えを申し上げたとおり、既に従来から行政書士会の方から要望が出されていることはよく承知をしております。これは、いわばその業務を充実いたしましてきめ細かなサービスができるようにしようという観点から、行政書士法の一条に申請手続代理業務を追加するということを主たる内容とするというふうに理解をいたしております。  この問題については、御承知かと思いますが、申請手続の代理権の問題は、主として自動車業界の団体からの反対が唱えられておりましく現在のところその了解が得られていないというような事情もあるようでございます。自治省としては、両者におきまして十分に意見の交換をしていただきまして、速やかに問題解決が図られるということが大事であるというふうに考えておりまして、その点から適切な助言、指導も行ってまいりたいと考えております。  そういう中で、仮にそういうことで話がついてこれをどうするかという場合でございますが、法律改正ということになりますと、これは先生御承知のように、この行政書士法というのは、制定されたときもそうでございますし、またその後の主要な改正は過去すべてが議員立法ということで行われてきているという経緯もございます。その辺も踏まえなから、また最近における規制緩和というような論議も踏まえつつ対処していく必要があると考えているところでございます。
  92. 和田貞夫

    和田分科員 議員立法でやれということであれば、議員立法で各会派で相談をさしていただいてやりたいと思います。  今いみじくも言われた自動車関係との間で話をしているということですが、これは大臣、ここに問題があるのです。行政書士の業務というのは第一条の一に「行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、」ここが問題なんです。「報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務」云々ということ。「報酬を得て、」報酬を得ないでやればこれは行政書士法違反ではないという、こういうことになるわけなんです。これが問題なんです。  したがって、今ディーラーの皆さんが車庫証明を警察の方に出す、こういう手続を自動車の販売セールスがお客さんにサービスだということでやっているのです。その問題を今言っておる。本来、行政書士法の違反なんです、行政書士の資格がないのだから。  ところが、ディーラーの皆さんは、報酬を得ておらぬ、車庫証明の手数料というものをお客さんからいただいておらぬということを言っておるのですが、実際は、自動車の販売価格の中にそれがちゃんと盛られているのです。これは金額にいたしましたら行政書士がびっくりするほど、一件当たり五万円から六万円程度取っているのです。それは、そのディーラーからセールスマンに駄賃だということで返しておるのですよ。セールスマンのアルバイト、セールスマンが車庫証明をとりに行くことがアルバイトになっておるのだ。そういう抜け穴が今あって、そして自動車のディーラーの皆さんがその手続をするとの資格を取ろうとしておるわけなんです。そこでこの話をしておるわけなんですね。  だから、私は本来的に言うならば、そういうような横紙破りのようなことをやっている相手と話をすること自体がおかしいわけでございます。しかし、せっかく今話をしているわけでございますので、それもそれぞれありましょう。しかし、本来的に言うならば、先ほども大臣の方から法律の不備ということを言われたわけでございますが、いわゆる代理権というもの、そのことがあるないにかかわらず、ほかの社会保険労務士あるいは司法書士あるいは税理士あるいは公認会計士、それぞれみんな代理権というのがあるわけでございますが、行政書士にだけ代理権というのが伴っておらない法律の不備があるわけなんですね。  大臣もそれを何とかしようということを先ほど言っていただいたわけでございますが、自治省として、あなた個人がこれは行政書士にも代理権を与えることはよかろうというようにお考えなのか、いや、決してこれは与えるべきでないというようにお考えなのか、ひとつお聞かせを願いたい。
  93. 吉田弘正

    吉田(弘)政府委員 今お話ございましたように、例えば税理士法でございますとか社会保険労務士法でございますとか、さらには司法書士とか弁護士の関係、弁理士という問題については、それぞれ内容は違いますが、代理権というものが付与されているということかと思います。  行政書士については、この法律にございますように、代理権という格好ではなくて、行政書士がつくった書類について官公署に提出する手続をかわって行うことができるという規定に相なっているわけでございます。そこで、これをきちっと代理権ということにすべきだというのが行政書士会の御意見でありまして、そういう強い要望があることは十分承知しているわけでございます。  ただ、先ほども申しましたように、関係業界等との調整という問題も残っているわけでございます。そういう段階で、意見交換をさらに進めていただいて速やかに結論を出していただくということがまず第一かと思います。  そういうような段階でございますので、今私どもの方でこれを、過去にずっと議員立法でされた経緯もあり、また最近の規制緩和等の問題もありますので、ただ、この段階で直ちにどうすべきだということを申し上げるというのはちょっと差し控えさせていただきたいというふうに思うわけでございます。
  94. 和田貞夫

    和田分科員 代理権を与えるのは規制緩和と何も関係ないじゃないですか。規制緩和と代理権を与えるのとは何も関係ないじゃないですか。だから、あなた、そんな、何でも構わぬ、時間がたったらいいのやということででたらめな答弁をしてもらったらそれは困るわけだ。個人的に、代理権を与えてもいいというようには思っておられるというような顔をしておられるので、私は安心しますが。しかし、今の先ほどから言われた、ディーラー等の関係、話し合いの最中であるのでそれを答えることができないという心中も私はよく察することはできますが。  しかし、かわって手続をするということだけでなくて、実際に官公署へ行けば、これはどうですか、こう言われれば、いや、もう一回帰って依頼者に尋ねできますかということを言えないでしょう。ちょっと判こをここは押し間違っているので判こを押し直してください、いや、そっちを依頼者に言って判を押してもらってきますかというようなことを言えないでしょう。  やはり代理権というものを与えて、行った以上は判この押し忘れがあれば判こを押すことも代理権として行使をする、間違ったところを窓口から言われればすぐに訂正して書き直す、そういうふうな手続をする代理権も行使できるというようなことを付与してやってもらわないと、ほかの士族と比べれば非常に不便さを感じているわけなんです。  そういうことで、ひとつぜひとも御努力いただきたいと思いますが、大臣の方から最後にひとつ御所見をお聞かせいただいて、質問を終わりたいと思います。
  95. 石井一

    石井国務大臣 御主張の点はよく理解いたしましたので、各業界との調整もあるのでしょう、また各省との調整という問題もあり、またそれぞれのとの業界との整合性というふうなこともあろうかと思いますが、重要な問題として受けとめさせていただきたい、そう申し上げさせていただきたいと思います。
  96. 和田貞夫

    和田分科員 終わります。
  97. 伊東秀子

    伊東主査代理 これにて和田貞夫君の質疑は終了いたしました。  次に、若松謙維君
  98. 若松謙維

    若松分科員 まず初めに、今回自治大臣に御就任された石井大臣、政治改革特別委員会で大変活躍されて、そしていよいよ政治改革法案、区割りの最終局面に来まして、政治改革が日本のあらゆる改革の出発点ということで、最後の仕上げ、ぜひ石井大臣の力を存分に発揮されて、最高の政治改革を構築されることを切に望むところでございます。  初めに、いわゆる戻し税、二〇%の一律大型減税、約六兆円を超える金額、その始まりが今月あるわけですけれども、この所得税住民税の大型減税、これが実施されますと、当然国民の方は非常に喜んでいると確信しておりますけれども、この減収分、当然地方公共団体におきましては財源等が不足して、その結果、住民サービスが質、量ともに低下を招く、これを何とか乗り越えようということで非常に努力をされているというふうに認識しております。  そこで、早速お聞きしたいのですけれども、この住民税減税によります将来の減税補てん債の返済、この原資を確保するのに地方自治体は今躍起になっているところですけれども、自治省としてどういうふうにこの財源の手当てなりについて各自治体に配慮または考慮されているのか。これについて御返答願います。
  99. 湯浅利夫

    湯浅政府委員 御指摘のように、平成六年度におきましては、当面の経済情勢に配慮いたしまして、所得税住民税の特別減税を実施することになったわけでございます。この影響額は地方財政にとりましても大変大きなものでございまして、個人住民税の減税については直接的にそれぞれの自治体影響されますし、所得税の減税についてはその三二%が地方交付税の減収というものにつながりまして影響を受けるということでございます。  御指摘のように、個人住民税の減税によります減収、それから、普通乗用自動車の消費税の特例税率を今度廃止いたしますから、この廃止に伴いまして消費譲与税が減額になりますが、こういう減収につきましては、これは全国で合計すると一兆六千四百六十一億円に上るわけでございます。これにつきましては、全額減税補てん債ということでそれぞれの地方公共団体に特別の地方債を発行していただくということで、財政の運営上支障のないようにしたところでございます。  問題は、今御指摘のように、こういう大型の減税に伴う特別の地方債を発行した以上、その返還財源、利子を含めます返還財源をどうするかということが大変大きな問題になってまいるわけでございます。この点につきましては、現在、税制調査会におきましても税制改革の御論議がずっと進んでいるわけでございまして、こういう減税補てんのために出されました地方債の償還財源というものは、税制改革を通じまして地方税源の充実によってこの分を確保するというのが基本的なものではないかと思うわけでございます。  三月末に地方税法の改正について御審議いだたきましたときにも、地方行政委員会におきまして附帯決議をいただいております。これも、この「償還財源については、税制改革の実現を図る中で地方税源の充実によって適切に確保すること。」こういう附帯決議もいただいているわけでございまして、この方向に沿いまして私どもといたしましても努力をしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  100. 若松謙維

    若松分科員 先ほどの税制改革というところですけれども、いわゆる地方消費税、私個人としてはやはり必要な問題ではないかと思っておりますけれども、自治省のこの導入についての決意なり抱負なりをお聞かせいただきたいと思います。簡潔で結構です。
  101. 湯浅利夫

    湯浅政府委員 今もお話し申しましたとおり、個人住民税の減税という形で地方税がこの分減ってくるわけでございますから、それを補てんするのは、やはり地方の独立税でこれを確保するというのが本来の建前ではないかと思うわけでございます。そういう意味で、ただいま自治省では、地方消費税という問題も含めまして地方の独立税源でこの償還財源を確保するということに努力をしているということでございます。
  102. 若松謙維

    若松分科員 続きまして、いわゆる不交付団体交付団体自治省と非常に頻繁に交流の機会があると思うのですけれども、不交付団体、特に埼玉県では十万から四、五十万の都市が非常に多くて、そういった不交付団体から財源不足をいろいろな形で訴えられているケースが多いわけです。  特に私が住んでおります大宮、これが今回減税補てん債を発行しまして、平成六年度末のいわゆる公債比率、これが一二・四%になるということで、一五%、一つの危険ラインに近づく。こういうことで、不交付団体について、昭和六十三年の消費税導入のときにも、いろいろな物品税とか、また地元で取れる財源等がどちらかというと国に持っていかれた、そういう被害者意識がかなり強い。こういった不交付団体にどういった配慮をされるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  103. 湯浅利夫

    湯浅政府委員 不交付団体は、本来は、税源が比較的豊かということで地方交付税交付を受けないでも財政運営ができる団体でございます。しかし、最近の景気の低迷を受けまして、そういう自治体におきましても税収が非常に伸び悩んでいるというようなことで、財政運営は非常に大変だと思います。特に、今回の住民税の減税は、やはり住民税は都市が一番影響を受けるわけでございますから、個人住民税のウエートの高い都市ということになりますと不交付団体が多いというようなことで、この住民税の減税が、そうでなくてもかなり大変な財政運営のその上にまたオンされたというようなことでございますから、なかなか容易なことではないと思います。  そのこともございますから、こういう独立税で減税をしたという以上は、独立税でそれを補てんしてもとに戻すという努力をしていきませんと、今仰せのような不交付団体については財政運営が非常に厳しくなってしまうということでございますので、何とか独立税でこの補てんをする、こういう努力をしていかなければならないというふうに考えております。
  104. 若松謙維

    若松分科員 ぜひとも自治省におかれまして、不交付団体の声、結構大きなものがありますので、真摯に耳を傾けていただきたいと切に願うものでございます。  続いて、できましたらこれは自治大臣の方からお答えをいただければと思っております。  いわゆる在日外国人、何というのでしょうか、定住外国人の地方参政権、これが今話題になっております。特に諸外国ですと、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、オランダ、アイルランド、こういったところが地方参政権を認めている。また、去年の六月二十九日ですか、大阪地裁でもこの地方参政権の請求、これは却下されましたけれども、その判決の一部で、今後の国際化等も考えて定住外国人にそういった地方参政権がないというのは不当ということも理解できる、こういった判決もありましたので、ぜひ日本として、いわゆる国際化または人権大国、こういったところのリード役を果たすために、地方参政権、これの導入について考える時期ではないかと思うのですけれども、自治省の考え方を。  さらに追加させていただければ、今度いわゆる党員という考え方がございますけれども、新生党さん、さきがけさん、たしかこれは外国人の方も党員になられる、また我が公明党もそういうことを中央で今検討しております。こんな状況も含めて、また、私の知っている限りでは、大阪府の岸和田市議会、これも議会で決議した、こういった状況ですので、この地方参政権、どういうふうにお考えなのか。また、地方でいろいろ動いてきた場合に、それを抑えつけられるのか、またそれを一つの認める方向でおられるのか、そういった点も含めて御答弁いただきたいと思います。
  105. 石井一

    石井国務大臣 私が就任いたしましてからも、いわゆる大韓民国の民団の代表等々、これに対する要望が、その当事者の団体だけでなく、日本人のサイドからもそういう声が出てきておることを私も認識いたしております。これは新しい問題として検討ら値する問題ではないか、そういう考え方も持っております。  ただ、過去の事例をいろいろ調べてみますと、法律的にも大変極めて難しい問題であり、また、諸外国の例を見ましても、例えばアメリカ、ドイツ、フランス、イタリー、イギリスもアイルランド系の人を除いてはということでございますから、かなり先進国で対応している姿も厳しい状況になっておる、こういうことでございます。  それから、ただいま委員が御指摘になりましたこの参政権の判例を見ましても、御承知のとおり、憲法九十三条の「住民」と憲法十五条の「国民」とは別の概念としてとらえるのは適切でなく、統一的に理解すべきであり、「住民」は、日本国民であることが前提となつておるというべきである、したがって、日本国籍を有しない外国人に対しては、地方公共団体についての選挙権が憲法で保障されるということはできない、こういうような判例が、これは平成五年でございますけれども出ておる、こういうふうな状況でございます。  それから、もう一つ私が感じますのは、外国人か非常に偏在しておると申しますか、朝鮮半島出身者が大方七〇%ある、また、それが対立をしておるというふうな現況もございまして、ただ、納税の義務を果たし、地域社会に融和しておる場合に、「国民」と「住民」には差があってもいいという御主張もありましょう。したがいまして、これまでは非常にネガティブな立場で自治省は対応しておったということでございますが、今日的な国際化の時代をも踏まえて、ひとつ今後検討の材料にしていきたい、そういうふうに思っております。
  106. 若松謙維

    若松分科員 今後検討されるということですので、国際化、そして世の中の流れに十分のっとられて、ぜひ前向きの御検討をいただければと思います。  続きまして、いわゆる最近の地方分権、特に国の行政機関の地方への移転促進が図られておりますけれども、特に、またこれも私の地元で恐縮ですけれども、ここには大宮、与野、浦和と挟まれた旧国鉄の跡地がありまして、「さいたま新都心計画」と地元で言っておりますが、ここに総額約一兆五千億円ぐらいになるんでしょうか、そして十省庁十七機関、いろいろ計算はありますけれども、こういうかなり大きな計画があるわけです。これは非常に喜ばしい、東京の一極集中を緩和するという面ではいいんでしょうけれども、反対に今度は地元がいろいろと混乱を来している。  埼玉県、先ほどの大宮、与野、浦和、こういったところで、特に新駅ができる、また焼却炉ができる、ではそういった負担をどうするのか、こういったところがなかなか見えない状況にありまして、今自治省としてこの具体的な問題について何かお考えなり方針なりがありましたら、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
  107. 湯浅利夫

    湯浅政府委員 埼玉の新都心計画、これは旧国鉄の大宮操車場跡地を中心にいたしまして、非常に広大な地域を再開発して首都圏の新しい拠点にしていこう、こういう計画であるということで承知をいたしております。  この計画を実施するに当たりましては、基盤整備といたしまして、例えば区画整理事業あるいは街路事業というような交通手段の問題とか、あるいは上下水道などの整備、あるいはごみの焼却場、そういうあらゆる基盤施設の整備をした上で、ここに核となる各種の施設を誘致しよう、こういうことであろうかと思います。  基盤整備に当たりましては、そのほとんどが地方公共団体が実施をするというような事業にもなってまいりますので、相当の規模の事業費になるのではないかと思いますが、平成二年度に想定した事業費が一度示されたわけでございますけれども、現在これを全面的に見直しをしているというふうに聞いております。  どの程度の金額になるか、これから具体的に詰めなければいけませんけれども、いずれにしても相当の事業費になることは間違いございませんし、それぞれの基盤整備はほとんど地方公共団体が関与していかなければできない事業でございますので、地元の動きというものを十分見ながら、財政運営に支障のないように事業が実施できるように、よくこれから御相談をしながらやってまいりたいというふうに考えております。
  108. 若松謙維

    若松分科員 全面見直しというお話という理解でよろしいわけですね。  何かいろいろといっぱい資料がありまして、どれが本物なのかよくわからない、こんな状況もありますので、なかなか地方だけに任すには大き過ぎるようなプロジェクトですので、今後も自治省、ぜひいろいろなコーディネーションまたはリード役としてお働きいただければと思います。よろしくお願いいたします。  そして次に、今度はいわゆる道路なんですけれども、特に国道、道路と地方都市計画とは当然密接な関係があるのですけれども、特に和光富士見バイパスの計画、二百五十四号国道、これに関してなかなか土地の買収も進まないようなんですけれども、地元では、二十年も三十年もかかるのではないか、なかなか都市計画ができにくい、そんな声があるのです。  こういう長期のいわゆる国道建設、これに関して自治省としてどういうふうなお考えがおありか、ちょっとお聞かせいただければと思います。要は、早急に促進をすべきという勧告をされるのか、または、これは別の省だから、どちらかというと任せっきりと。
  109. 湯浅利夫

    湯浅政府委員 首都圏の中心地域では交通が非常に混雑しておりまして、道路整備の要請が非常に強いということは私どもも承知いたしております。  道路整備につきましては、国道、地方道によりまして、それぞれの建設主体が努力をしてやっていただいているわけでございますけれども、地元の自治体におきましては、国道とか地方道とかという区別なく、やはりその地域の交通緩和あるいは交通手段の整備というものに無関心ではいられないわけでございまして、そういう意味で、計画された道路というものを早急に実現するのが最も望ましいということで、それぞれの自治体も懸命に努力をしていると思います。  ただ、そういう地域はなかなか用地買収も困難であるということも事実でございますので、私どもも、財政的な観点から御援助できる点は、例えば用地の先行取得を進めたいということであれば、そういうことについての御相談にも応じていかなければならぬと思いますし、関係省庁ともよく連携をとりながら、こういう国道の整備についてはできるだけ早く実現できるようにまたお願いもしてまいりたいと思っております。
  110. 若松謙維

    若松分科員 ぜひ自治省におかれましても側面的なサポートをよろしくお願いいたします。  つきましては、本当に地元の良識ある方々から、いつできるのかという声が強くて、建設省、おいででしたら、そこら辺の目安なりをぜひ御説明いただければと思います。
  111. 脇雅史

    ○脇説明員 御指摘の一般国道二百五十四号は、東京都の文京区を起点といたしまして、埼玉県和光市、川越市、神川町を経て長野県松本市に至る延長二百五十二キロメートルの埼玉県中央部地域を縦貫する幹線道路でございます。関越自動車道、東京外郭環状道路及び首都圏中央自動車道等と連絡をいたしまして、県南西部及び県北地域の沿道開発及び産業、経済の発展を担う重要な路線でございます。  埼玉県内におきましては、実延長百九キロに対しまして改良率が九六・七%、舗装率で一〇〇%となっておりますが、都市化の進展が著しい東松山市以南の都市部におきまして、沿道の開発や市街地の拡大、近年の交通量の増加等によりまして一段と交通混雑が著しくなっており、円滑な社会経済活動の妨げとなっているところでございます。  国道二百五十四号の和光富士見バイパスは、この交通渋滞を解消するとともに、埼玉県南西部地域の幹線道路ネットワークの強化を図るため、和光市新倉の東京外郭環状道路から富士見市前新田の富士見川越有料道路までの延長六・九キロメートル区間について、昭和五十九年度から着手したものでございます。このうち、平成四年度に東京外郭環状道路に接続する和光市分の〇・六キロメートル区間につきまして暫定的に供用したところでございます。当該区間はバブル崩壊後も依然として地価が高く、全体事業費は約一千億円と非常に膨大であるために、現在、埼玉県においてさまざまな整備手法につきまして検討がされているところでございます。  今後とも、地元関係者の協力を得ながら事業の促進に努めて、既に暫定供用している箇所に引き続き、できるだけ早期に沿道地域で利用できるように順次供用を図ってまいりたいと考えております。
  112. 若松謙維

    若松分科員 そういうことでぜひ整備促進を、今後建設省、地元の要望をしっかり聞いていただいて進めていただきたい。  つきましては、私の知っている限り、先ほど一千億円の工事、それに対して今は大体二、三十億円の年間支出。これでやりますと、単純に三、四十年かかるということで、具体的なめどというか決意というか、そこら辺は何年ぐらいをめどに考えていらっしゃるか、ちょっとお聞かせいただければと思います。
  113. 脇雅史

    ○脇説明員 具体的な年数ということでございますが、事業事業費との関係は、事業が進みましてお金が使えるようになれば、我々といたしましてもできる限りの集中投資をしたいと思っているわけでございますが、現在のところはまだお金をかけても使えないという状況でございますので、一日も早く計画を煮詰めて、地元の方々の御理解も得てお金を使える状態にいたしたい。その段階では、できるだけ早くできるように集中的に投資をしてまいりたいと考えております。
  114. 若松謙維

    若松分科員 ぜひできるだけ早くよろしくお願いいたします。  最後の質問に移らせていただきます。これもできましたら、基本的な考え方で結構ですから、自治大臣からお話しいただければと思います。  いわゆる市町村合併なんですけれども、私個人としてはこの市町村合併、まさに今言われている行政改革、これに直結し、かつ地方分権推進役になるのではないかというふうに理解しております。  特に、これも私の選挙区で恐縮ですけれども、朝霞、新座、志木、和光、この四市合併、話はあるけれども進まない。特に先ほどの大宮、与野、浦和、上尾、伊奈、こういったユーアンドアイとか、そういったさまざまな動きがあるのですけれども、なかなか地元の住民の要望は強いんだけれども進まない。  そういったところに対して、自治省の御努力として、例えばいわゆる時限立法の市町村合併促進法、または中核市制度、パイロット自治体、こういったいろいろなすばらしい試みはされているのですけれども、今後の市町村合併、これについて自治省の基本的なお考え、いわゆる推進されるのか、ある意味で中立な立場なのか、そういったところをお聞かせいただきたいと思います。
  115. 石井一

    石井国務大臣 今若松委員が御指摘になりましたように、私も漠然と市町村の合併というのはもう大方終わっているんじゃないかなんというような考えをしておりましたが、実は今の立場に就任いたしましていろいろ調べまして、いろいろなことを聞きましたが、これは今結論的に申されましたように、もう一度今日的な角度から検討するべき重要な課題ではないかなというふうに考えております。  もともと昭和三十年前後に一万ほどありました全国の市町村の合併が急激に進行いたしまして、現在の約三千三百になっておりますが、その三十年を経た今日、ほとんど進んでおりません。  その最大の理由というのは、結局、地方の自主性というものを尊重し、制度的にはその障害となる事項を取り除くというふうな基本的な考え方に立っておるだけでありますけれども、その間、地方で制度が定着いたしますと、それからもうほとんど動かないというふうな状態になっておる。合併いたしますと、例えば四市が、四人おられた市長さんは一人になる、議員の方は四分の一になるというふうなことが起こります。それからまた、交付税等の総額等の計算とか等々というふうな問題でも合併が必ずしも大きなメリットにならない。こういうふうな一面もあるようでありますから、そういう形で、やや消極的な規定のまま自主的合併というふうなものは静止状態にある、こう理解してもいいのじゃないかなというふうに私は思うのでございます。  そこで、自治省では、平成七年三月末で特例法が切れるというふうなこともございますので、現在、自治省で設置いたしました調査研究会の報告書が取りまとめられた、そういうふうな段階で新たな角度から検討を進めておるところでありまして、地域の一体的な整備、行財政の基盤の強化、それから高齢化社会に備えた社会福祉等住民の身近な行政サービスの充実、こういうふうな観点から、ひとつ有効な施策を打ち出すべきだというふうに考えております。今後、四月に発足した地方制度調査会の答申などをも踏まえて、合併が効果的に進められるよう支援体制を検討していきたい。  今、中核市構想でありますとか広域連合とか地方拠点都市とかいろいろやっておりますが、これは合併でない、やはり現代的な要請にこたえる措置でございますけれども、そういう間接的なものも、これはそれぞれ必要ではなかろうかと思いますが、同時に、もっと直接的な合併というものに対してもう少し踏み込んでいってもいいのではないか、そういうふうに私は認識いたしております。
  116. 若松謙維

    若松分科員 今大臣から合併について踏み込んでというお話をいただきました。私も、公認会計士でずっとリストラをやってまいりました。結局リストラ、恐らくこちらで言う行政改革、厳しい話ですけれども、やはり人数の削減、こういったところが実質的な、金額的なメリットかな。そういった点で非常に厳しいところも予想されるわけですけれども、そういったところをあえて乗り越えられる強い御決意というか、果たしてまた違ったところからお進めになるのか、簡単で結構ですから、コメントをいただければありがたいと思います。
  117. 吉田弘正

    吉田(弘)政府委員 市町村合併の問題につきまして、大臣の方からもお答えをいたしたわけでございますが、近年合併についての機運もいろいろ生じてまいりました。また、地方分権ということで、市町村の行財政能力を向上させる上からもこの合併を推進すべきではないかという声があることも事実でございます。  私どもとして、大臣からお話し申し上げましたとおり、調査研究委員会を設けまして、今後の合併特例法をどうしていくかということについて種々検討をお願いいたしまして、その中で、合併についてはもちろん、住民の共同意識の醸成でございますとか、あるいは関係する市町村住民の自主的判断というものは必要であるけれども、やはり今後の行財政の基盤の強化とか地域の一体的整備等で非常に有効、適切な方策であるという考え方も打ち出していただいております。そして、今あります現行法が、どちらかというと特例法は中立的な立場にありますので、この支援措置等についても、もう少し特例措置等についても見直しをして充実強化をするべきである、あるいは住民の発議制度ということについても検討すべきだという御提言もいただいているところでございます。  そういうことを踏まえまして、また、第二十四次の地方制度調査会がこの四月に発足をいたしまして、ここでも専門的な見地からこの合併の問題について御検討をいただくということになっておりますので、これらの答申も踏まえまして、今後適切な対応策を検討してまいりたいと考えている次第でございます。
  118. 若松謙維

    若松分科員 もう時間も過ぎましたので、これで終わらせていただきます。  いずれにしても、この合併、どこの住民も非常に関心が強うございます。そういった点で、合併のメリット、デメリットをしっかり説明していただいた上で、できれば推進というところでお働きいただきたいということをお伝えさせていただいて、質問を終わらせていただきます。
  119. 伊東秀子

    伊東主査代理 これにて若松謙維君質疑は終了いたしました。  以上を持ちまして自治省所管についての質疑は終了いたしました。  この際、暫時休憩いたします。     午前十一時三十五分休憩      ————◇—————          午後三時四分開議
  120. 山本拓

    山本主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  文部省所管について政府から説明を聴取いたします。赤松文部大臣
  121. 赤松良子

    ○赤松国務大臣 平成六年度文部省所管予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  平成六年度文部省所管予算につきましては、我が国が、来るべき二十一世紀に向けて、創造的で活力ある文化の香り高い国家として発展し、世界に貢献していく基礎を築くとともに、国民の一人一人が、ゆとりと潤いの中で自己実現を図ることができ、多様な個性を発揮できる質の高い社会をつくっていくため、教育・学術・文化・スポーツの各般にわたり、その着実な推進を図ることとし、所要の予算の確保に努めたところでございます。  文部省所管の一般会計予算額は、五兆五千四百三十一億六千万円、国立学校特別会計予算額は、二兆四千四百十七億三千九百万円となっております。  何とぞ、よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。  なお、時間の関係もございますので、お手元に配付してあります印刷物を、主査におかれまして、会議録に掲載されますよう、御配慮をお願い申し上げます。
  122. 山本拓

    山本主査 この際、お諮りいたします。  ただいま文部大臣から申し出がありました文部省所管関係予算概要につきましては、その詳細は説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  123. 山本拓

    山本主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————    平成六年度文部省所管予算概要説明  平成六年度文部省所管予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  平成六年度文部省所管予算につきましては、我が国が、きたるべき二十一世紀に向けて、創造的で活力ある文化の香り高い国家として発展し、世界に貢献していく基礎を築くとともに、国民一人一人が、ゆとりと潤いの中で自己実現を図ることができ、多様な個性を発揮できる質の高い社会をつくっていくため、教育・学術・文化・スポーツの各般にわたり、その着実な推進を図ることとし、所要の予算の確保に努めたところであります。  文部省所管の一般会計予算額は、五兆五千四百三十一億六千万円、国立学校特別会計予算額は、二兆四千四百十七億三千九百万円となっております。  以下、平成六年度予算における主要な事項について、御説明申し上げます。  第一は、生涯学習の振興に関する経費でありますが、生涯学習社会の実現に向けて、人々の生涯にわたる多様な学習活動の振興に資するための施策を総合的に推進することとしております。  まず、生涯学習の基盤整備につきましては、地域における生涯学習に取り組む体制の整備、学習情報提供機能の充実、社会教育指導者等の確保に努めていくこととしております。  学校の生涯学習機能の拡充につきましては、放送大学について、広く社会人に大学教育の機会を提供するため、放送衛星を利用した全国化準備を進めるほか、公開講座や学校開放の促進、専修学校教育の振興を図ることとしております。  また、社会教育の面では、男女共同参画型社会の形成を目指し、女性の社会参加への一層の支援に努めるほか、青少年の学校外活動の振興や現代的課題等の学習機会の拡充を図ることとしております。  さらに、国立オリンピック記念青少年総合センター等国立社会教育施設の充実を図るとともに、公民館、図書館等の公立社会教育施設の整備に努めることとしております。  第二は、個性豊かな自立した人間性を育てる初等中等教育の充実に関する経費であります。  まず、公立義務教育諸学校の教職員配置につきましては、第六次教職員配置改善計画の第二年次分の改善を着実に実施することとしております。  なお、義務教育費国庫負担制度における富裕団体調整につきましては、その対象を、平成六年度以降、現行の地方交付税の不交付団体から当該年度前三か年の平均の財政力指数が一を超える団体へ変更することとしております。  次に、教員の資質の向上を図るため、初任者研修の円滑な実施や、教員の海外派遣、教育研究団体への助成等を行うとともに、中学校の免許外教科担任の解消等を図るため、非常勤講師を配置し、調査研究を行うこととしております。  教育内容につきましては、新学習指導要領の一層の定着を図るため、引き続き、運営改善講座等を行うとともに、新教育課程の実施状況について総合的に調査研究することとしております。  また、高等学校学習指導要領の実施等に対応するため、理科教育設備及び産業教育施設・設備の基準を改訂し、整備を進めるほか、情報化への対応を円滑に進めるため、教育用コンピュータの整備、学習用ソフトウエアの開発等を行うとともに、国際化に対応した外国語教育の充実や、豊かな人間形成に資する読書指導の充実を図ることとしております。  また、中央教育審議会の答申の趣旨を踏まえ、総合学科や単位制高校の設置の奨励等、高等学校の個性化・多様化の推進を引き続き図ることとしております。  学校週五日制につきましては、平成四年九月から月一回実施しているところでありますが、平成六年度におきましても、その円滑な定着を図るための研究協議を行うとともに、月二回の学校週五日制の導入に必要な実践研究等を行うこととしております。  なお、義務教育教科書の無償給与につきましても、所要の経費を計上しております。  次に、児童生徒の問題行動等に適切に対処するため、いじめや校内暴力等の問題行動等に関する総合的な調査研究を行うこととしております。  また、登校拒否問題について、適応指導教室についての実践的研究を拡充するとともに、高等学校中途退学問題について、総合的な調査研究を実施するなど、学校不適応対策事業の一層の充実を図ることとしております。  さらに、進路指導の改善を図るため、地域の教育力を活用して、中学生が将来の進路の選択を適切に行うことができるように、実践的な研究等を行うこととしております。  また、環境教育の推進を図るため、環境教育フェア、環境教育担当教員講習会等を行うとともに、ボランティア教育の推進を図るため、研究協議会の開催、ボランティア活動等様々な体験活動の機会を与えるいきいき体験活動モデル推進事業等を行うこととしております。  道徳教育につきましては、新たに道徳教育用ビデオ教材の開発等を実施することとしております。  幼稚園教育につきましては、幼稚園就園奨励費補助を充実するとともに、幼稚園教育振興計画推進することとしております。  特殊教育につきましては、心身障害児の職業教育の在り方等の調査研究を行うとともに、特殊教育就学奨励費を充実することとしております。  健康教育につきましては、エイズ教育や交通安全教育の充実に努めるとともに、豊かで魅力ある学校給食を目指して、食事環境の整備充実等を図ることとしております。  また、海外子女教育・帰国子女教育につきましては、日本人学校の新設等に対応し、派遣教員を増員するとともに、在外教育施設における現地社会との教育文化交流等を推進することとしております。  次に、公立学校施設の整備につきましては、市町村等の計画整備が円滑に進められるよう必要な事業量の確保を図りつつ、標準設計の見直し等に基づき、補助基準単価の大幅な引き上げを行うとともに、大規模改造事業の拡充等を行うこととし、二千四百九十七億円を計上しております。  なお、定時制及び通信教育の振興、地域改善対策としての教育の振興など各般の施策につきましても、所要の経費を計上しております。  第三は、私学助成に関する経費であります。  まず、私立の大学等に対する経常費補助につきましては、平成五年度に対して七十八億円増の二千七百三十三億五千万円を計上しております。このほか、教育研究装置施設整備費補助及び研究設備整備費等補助についても、それぞれ増額を図るなど教育研究の推進に配慮しております。  次に、私立の高等学校等の経常費助成を行う都道府県に対する補助につきましては、一般補助を前年度より削減いたしましたが、一方で、地方財政措置を充実し、補助金と地方財政措置を合わせた国全体としての財源措置は拡充を図っております。また、私立高等学校等の教育改革を一層積極的に推進していくため、新たに、国際化の推進等を補助対象に加えるなど、特別補助については充実を図ることとし、これらに要する経費として、全体で六百三十五億円を計上しております。  日本私学振興財団の貸付事業につきましては、九百四十億円の貸付額を予定しております。  第四は、高等教育の高度化等の要請に応え、その整備充実に要する経費であります。  まず、大学院につきましては、研究科等の新設整備、高度化推進特別経費や最先端設備の充実などを行うこととしております。  国立大学につきましては、大学改革を推進するため、教養部の改組や所要の経費を充実することとし、また、教育研究環境の改善充実を図るため、老朽・狭隘校舎の解消、基準面積の改定など国立学校施設の整備・高度化を推進するほか、教育研究設備の充実、教育研究経費の充実等を図ることとしております。  なお、国立学校の授業料につきましては、諸般の情勢を総合的に勘案し、これを改定することとしております。  次に、育英奨学事業につきましては、大学院等学生の貸与人員の増員を図ることとし、政府貸付金七百九十四億円、財政投融資資金四百十七億円と返還金とを合わせて、二千百十一億円の学資貸与事業を行うこととしております。  また、公立大学につきましては、医科大学、看護大学等の経常費補助及び教育設備整備費等補助について、所要の助成を図ることとしております。  第五は、学術の振興に関する経費であります。  まず、科学研究費補助金につきましては、独創性に富む優れた学術研究を推進し、我が国の学術研究を格段に発展させるための基幹的研究費として大幅に拡充を図ることとし、平成五年度に対して八十八億円増の八百二十四億円を計上しております。  また、我が国の学術研究の将来を担う優れた若手研究者を養成・確保するため、特別研究員の採用人数の大幅な拡充等を図ることとしております。  次に、学術研究体制の整備につきましては、研究組織の整備、研究設備の充実、学術情報システムの整備、大学と産業界等との研究協力推進など各般の施策を進めることとしております。  さらに、天文学研究、加速器科学、宇宙科学、核融合研究、地域研究等のそれぞれの分野における研究の一層の推進を図ることとしております。  第六は、ゆとりある質の高いスポーツの振興に関する経費であります。  広くスポーツ施設の整備を進めるため、社会体育施設、学校体育施設の充実を図るとともに、学校体育指導の充実を図ることとしております。  さらに、生涯スポーツ推進の観点から、地域におけるスポーツ活動の充実など諸施策の一層の推進に努めることとしております。  次に、競技スポーツの振興につきましては、日本オリンピック委員会が行う選手強化事業を引き続き実施するとともに、スポーツ科学の推進を図るため、国立スポーツ科学センター(仮称)の建設に伴う事前調査を行うほか、国民体育大会への助成などを行うこととしております。  また、平成十年に長野で開催される第十八回オリンピック冬季競技大会の準備を推進することとしております。  第七は、豊かな個性ある文化の推進に関する経費であります。  「文化発信社会」の基盤を整備する観点から、優れた舞台芸術活動への支援、若手芸術家の育成、地域の特色ある文化活動への援助等の諸施策を進めることとしております。  また、時代の変化に対応した文化財の保存と活用を図るため、史跡等の整備・公有化、国宝・重要文化財等の買上げや保存修理、天然記念物の有効活用などの施策を講ずることとしております。  さらに、国立博物館・美術館等の施設の整備と機能の充実を図ることとしております。  第八は、教育、学術、文化の国際交流・協力推進に関する経費であります。  留学生交流につきましては、二十一世紀初頭における十万人の留学生受入れを目途に、国費留学生の計画的受入れ、短期交換留学制度創設、私費留学生に対する援助施策の充実、宿舎の安定的確保、大学等における教育指導体制の充実など各般の事業を積極的に推進するとともに、円滑な海外留学を促進することとし、そのために要する経費として四百四十一億円を計上しております。  さらに、外国人に対する日本語教育、特に我が国の義務教育諸学校に在籍している外国人子女への日本語指導の充実を進めるとともに、アジア・太平洋地域における女性のための識字教育協力などユネスコ等国際機関を通じた教育協力等の推進を図ることとしております。  次に、学術の国際交流・協力につきましては、諸外国との研究者交流、各種の国際共同研究、開発途上国との学術交流、国連大学への協力等を推進することとしております。  また、文化の国際交流につきましても、海外フェスティバル等世界各地の舞台での公演活動に対する支援、海外にある日本美術品の修復協力をはじめとする文化財保存の国際協力など各般の施策の充実を図ることとしております。  以上、平成六年度文部省所管予算につきまして、その概要を御説明申し上げました。  何とぞよろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。     —————————————
  124. 山本拓

    山本主査 以上をもちまして文部省所管についての説明は終わりました。     —————————————
  125. 山本拓

    山本主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましては、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。小此木八郎君。
  126. 小此木八郎

    ○小此木分科員 神奈川一区から選出をされております小此木八郎でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。  本日、文部省管轄の要望、質問をさせていただきます。特に、ワールドカップあるいはオリンピックの招致のことに関してお伺いをいたしたいと思います。  皆様が御承知のとおり、昨年発足いたしましたJリーグのサッカー人気は一大ブームを巻き起こしております。私の選挙区の横浜においても、横浜マリノスあるいは横浜フリューゲルス、こういう二チームがありまして、他の都市にまさるとも劣らない大人気であります。両チームの本拠地である横浜市神奈川区の三ツ沢競技場の入場チケットは、私なんかでは大変にそのチケットを手に入れることは難しい。これは大臣であっても難しいんじゃないかと思うぐらいなかなか入手が困難な様子であります。それぐらい人気があるということであります。  ところで、サッカーといえば、四年に一度開かれるワールドカップのサッカーが今月アメリカで開催されます。そして、次の一九九八年にはフランスで開催することがもう決まっています。このワールドカップは世界最大のスポーツイベントと言っても過言ではないと思っております。ちなみに、前回一九九〇年に開かれたイタリア大会では約二百五十万人の観客を集めたと聞いておりますし、また全世界で延べ二百七十億人がテレビの観戦をしたということであります。  ここで質問をいたしますけれども、二〇〇二年すなわち平成十四年に行われるワールドカップサッカー開催に向けて各国が招致活動を繰り広げていると聞いておりますけれども、現在日本国内ではどのような招致活動をされているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  127. 赤松良子

    ○赤松国務大臣 お答え申し上げます。  ワールドカップサッカーは、国際サッカー連盟が主催をいたしまして、開催国のサッカー協会が主管をすることとなっているというふうに承知をいたしております。このため、二〇〇二年のワールドカップサッカーの日本開催に向けましては、財団法人の日本サッカー協会及び招致委員会が国の内外におきまして積極的な招致活動を行っているというふうに伺っております。  今後日本サッカー協会及び招致委員会におきまして、国際サッカー連盟の動向等を踏まえまして、従来にも増して効果的な招致活動を推進していく御意向だというふうに聞いております。
  128. 小此木八郎

    ○小此木分科員 では、文部省といたしましては、この日本招致に対し今後具体的にどのような活動をされていくつもりなのか、それもお聞かせいただきたいと思います。
  129. 奥田與志清

    ○奥田政府委員 今大臣が申し上げましたように、日本サッカー協会及び招致委員会が核になって一生懸命努力いたしております。同時に私どもも、そちらの方からの御要請に基づきまして、可能な範囲の御協力をし、お力添えをしてまいりたい、そして目的を達成するように努力したいと考えております。
  130. 小此木八郎

    ○小此木分科員 ぜひ積極的にお願いをしたいと思います。  オリンピックと同じように、役員や選手へのビザの発給や警備、輸送などの政府保証がまだ閣議了承されていないように聞いておりますけれども、具体的にいつごろこれを了承する予定なのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  131. 赤松良子

    ○赤松国務大臣 二〇〇二年のワールドカップサッカーの開催条件そのものが、来年の春、国際サッカー連盟で決定されることになっておりますので、現時点で未定でございます。  そこで、政府の対応につきましては、その開催条件その他の諸事情を踏まえまして、慎重に検討することが適当かと考えております。
  132. 小此木八郎

    ○小此木分科員 先ほども申し上げましたが、大臣、ぜひこれからも積極的に招致活動をしていただきたいと思います。  ところで、先月、キリンカップサッカーで、世界のスーパースターであるアルゼンチンのマラドーナ選手、大変有名な選手でありますが、この選手がビザの発給を拒否されて、アルゼンチンチームの来日か急遽中止になりました。  そこでお伺いですが、この出来事がいわゆるワールドカップ招致にどのような影響を及ぼすとお考えでありましょうか。
  133. 奥田與志清

    ○奥田政府委員 先生ただいまお話しのように、アルゼンチンからチームを招きたいという関係者の強い要望でございましたが、御指摘のような事情でこれがかないませんでした。  お話ございましたように、ワールドカップ招致に影響があるかどうかという点につきましては関係者の間でも意見が分かれておりまして、必ずしも影響があるというふうに一概には言えないのではないか、一部の方ですけれども、事前の票読みが甘いのではないかというふうな意見もあったようです。したがいまして、これを機に、むしろ全力投球する必要性を痛感したという関係者の御意見もございます。
  134. 小此木八郎

    ○小此木分科員 また先日、FIFA、国際サッカー連盟の副会長選挙で、日本サッカー協会の村田副会長が残念ながら最下位で落選されてしまったということでありました。これは招致に関して非常に大きな影響を及ぼすと思うのですが、この点に関して文部省はどのようにお考えでしょうか。
  135. 奥田與志清

    ○奥田政府委員 ただいま先生御指摘のように、本年五月、アジアサッカー連盟のアジア選出国際サッカー連盟副会長選挙におきまして、残念ながら、日本サッカー協会副会長を当時しておりました村田さんが当選をしなかったということは承知をいたしております。  日本サッカー協会の関係者によりますと、先ほどもちょっと触れさせていただきましたけれども、むしろこれを契機にいたしまして、アジアだけではなくて広くヨーロッパ等も含めて、多くの関係者に対し、日本が一生懸命熱意を持って努力しているということを理解していただくよう、今後とも全力投球をしていきたいというふうに考えているようでございます。  ちなみに、今月の十六日に、投票権を持つ二十一名の方が決まるそうでございます。そのうちアジアの票数が三票でございまして、残り十八票が、ヨーロッパの八票を含めまして、大多数がアジア以外の国だというふうなこともございます。
  136. 小此木八郎

    ○小此木分科員 そういったように大変に熱心にやられている、ありがたいことであります。  未定ということでありますが、突っ込んだ話、現在、ワールドカップ日本招致実現の可能性というのは一体何%ぐらいと見ておられるのでしょうか、答えにくい話かもしれませんが。
  137. 奥田與志清

    ○奥田政府委員 今先生御指摘のように、これからが勝負じゃないかと関係者も言っております。そういうふうなことで、先ほど来ちょっと申し上げておりますように、実は関係者の間におきましても、今度のことを教訓にいたしまして、サッカー協会自体の体制の立て直し、役員等の改選もせんだって行われております。  それから、今後どういうふうなきめ細かい効果的な招致活動を展開していくのかということも、先ほどもちょっと触れました合計二十一名の投票権を持つ方が決まりますので、そういうことも十分念頭に置きながら対応していきたいということでございまして、可能性につきましては、これからの勝負じゃないかというふうに思っております。
  138. 小此木八郎

    ○小此木分科員 これからの勝負ということでありますけれども、横浜のサッカーファンの皆さん、これは横浜だけじゃないと思いますけれども、そういったことには非常に敏感で、そして大変興味のある話でありますので、ぜひ何とか実現に向けてお願いをしたいと思います。  例えば日本で開催が決まった場合なのですけれども、そのときに開幕戦や決勝戦を一体どこでやるのかということがもう一つ話題になっております。開幕戦や決勝戦を行うにはそれなりの収容人員を持つスタジアムが必要と考えますけれども、スタジアムは何人収容であればいいものなのか、こういったことをちょっとお聞きしたいのです。
  139. 奥田與志清

    ○奥田政府委員 先ほど大臣がお答え申し上げましたように、二〇〇二年のワールドカップの開催条件というのが来春決まるということでございます。先生御指摘のように、その中には、当然のことですけれども、開幕戦、決勝戦を行うスタジアムの収容人員というふうなことも入ってくるだろうと思います。そういうものを踏まえてこれから対応していくことになろうかというふうに考えております。
  140. 小此木八郎

    ○小此木分科員 では、現在、開催候補地に挙がっている十五都市があるわけですが、その中で、今後の新設スタジアムも含め、該当する都市名を挙げることができますか。
  141. 奥田與志清

    ○奥田政府委員 先生先ほど冒頭にお触れくださいましたように間もなくアメリカで開催されるわけでございます。したがいまして、来年春に示される開催条件が、例えば、仮にアメリカで今度開かれる場合と同じであったというふうに仮定をいたしますと、開幕戦、決勝戦を行うために必要な収容人員のスタジアムとしては、六万ないし八万人ということになっております。  そこで、現在、日本サッカー協会によりますと十五の都市から計画が出されておりまして、その中には、さらに収容人員増を計画変更したいというふうなこともあり得るということでございまして、現時点におきましては、この条件を満たすところを具体的に名を明かすことは適当ではなかろうというふうにサッカー協会が申しておりますので、大変恐縮ですけれども、ここでお答えさせていただくことは差し控えさせていただきたいと思います。
  142. 小此木八郎

    ○小此木分科員 横浜に、横浜総合競技場というのが、もう御存じのとおり、完成する運びになっております。そこが大体七万人収容ができるということでありまして、先ほどの御答弁では六万人から八万人ということでしたね。その中で、日本開催が決まったと仮定した場合に、それでは横浜もその開幕戦、決勝戦が行われるというふうに私ども思っても、一つの候補地であると思っていいわけでございますね。
  143. 奥田與志清

    ○奥田政府委員 これも先ほど先生に申し上げましたように、開催条件によるわけですね。開催条件は、スタジアムの収容人員のほかに開催都市の数、これについても、現在十五の都市をぜひ立候補させたいということでサッカー協会及び招致委員会が努力をいたしておりますけれども、例えば、十五ではなくてもっと数は絞れとかいうふうな話になることも考えられないことではございません。  したがいまして、現時点ではなかなかサッカー協会も先生お尋ねのことについては答えにくいのではないかと思いますし、私どももいろいろ聞いてみましたけれども、そのような気持ちのようでございます。
  144. 小此木八郎

    ○小此木分科員 わかりました。ありがとうございました。今後ともよろしくお願いをしたいと思います。  次に、オリンピックについて質問いたしますが、冬のオリンピック、冬季オリンピックは四年後の平成十年、長野で開催されることがもう決まっております。夏のオリンピックは、平成八年アトランタ、そして次の平成十二年にはシドニーで開催されることが決まっています。その次の平成十六年すなわち二〇〇四年か、平成二十年、二〇〇八年の夏のオリンピックはぜひこの日本で開催したいと願っておりますけれども、政府としてはどのようなお考えでしょうか。
  145. 赤松良子

    ○赤松国務大臣 オリンピックの競技大会を我が国で開催することになりますれば、我が国のスポーツの振興あるいは国際親善に大きく寄与すると考えられます。オリンピック開催地として日本のどこかの都市が立候補することになりますと、その場合は、オリンピック憲章によりまして、財団法人の日本オリンピック委員会、JOCの承認を経まして行うこととなります。したがいまして、開催を希望する都市は、財団法人日本オリンピック委員会と連携をとりながら対応していくことになる、このように理解をいたしております。
  146. 小此木八郎

    ○小此木分科員 開催地を決定する場合なのですけれども、各都市から名のりを待つのか、あるいは政府として日本での開催を決定してから各都市に呼びかけていくものなのか、そのどちらかなのでしょうけれども、いずれでしょうか。
  147. 奥田與志清

    ○奥田政府委員 オリンピックの開催地として日本の都市が立候補するということになりますと、ただいま大臣が申し上げましたように、JOCの承認を経て行うということになっているわけでございます。  そこで、それが複数になった場合にどうするかということですけれども、その場合におきましては、これもオリンピック憲章に基づきまして、どれか一つに決めるということが日本オリンピック委員会に一任をされているわけでございます。したがいまして、もし日本で開催するということになりますと、JOC、日本オリンピック委員会の果たす役割というのは非常に大きくなると思います。  なお、これまでの例によりますと、複数ありました場合には、開催希望都市のいろいろな状況等々をJOCが調査いたしまして、そして最終的にどこを推薦するかということを決めてきております。
  148. 小此木八郎

    ○小此木分科員 現段階で名のりを上げそうな都市というのは、文部省の方でどのような認識をされているか、これも聞きたいのですけれども。
  149. 奥田與志清

    ○奥田政府委員 オリンピックの開催につきまして、どこで開催をするかということを決めますのは、オリンピック憲章によりますと、開催をする年の七年前に決めるということになっております。したがいまして、それまでの間に立候補を各国がするということになりますし、それぞれの国にもし複数の都市がありますと、それまでに一つに絞るという作業が行われることになるわけでございます。  先ほど申し上げましたように、その場合には財団法人日本オリンピック委員会の役割が大きいわけでございますけれども、JOCのところに現在まで、ぜひうちの方で立候補したいというふうな話がそれほど具体的な話として来ていない、それはまだ時間的な余裕があるということでもあろうかというふうに理解をいたしております。
  150. 小此木八郎

    ○小此木分科員 横浜市でもこの問題に関して、先般新聞で市長が名のりを上げたように報道をされまして、これは議会でも相当な反響を呼んで、皆さん積極的に活動されておりましたけれども、横浜市の可能性というのも聞きたいのです。大変に難しいことはよくわかるのですけれども、私も選出をされて出てきておりますから、その辺のことはぜひ地元の皆さんにお伝えをしたいと思いまして、できればお聞かせをいただきたいのですが。
  151. 奥田與志清

    ○奥田政府委員 先生お話しのように、非常に難しいお話だと思います。特に、日本で複数の都市が立候補したときに、先ほど申し上げましたようにJOCで調整をするということになりますし、日本以外の国でどういう国が立候補するのかというふうなことも関連をしてまいりますので、先生の御質問ではございますけれども、私どもの方から現時点において、そういう情報は持っておりません。
  152. 小此木八郎

    ○小此木分科員 私も、この横浜オリンピック開催に向けて実はこれからも積極的に活動をさせていただきたいと思います。また、大臣とも、あるいは文部省の方々とも、この開催に向けてこれからもお話をさせていただきたいと思いますし、積極的に活動をいたしたいと思っております。何とぞ御尽力のほどを私からもお願いを申し上げる次第であります。  大変に時間が余りましたけれども、以上で質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  153. 山本拓

    山本主査 これにて小此木八郎君の質疑は終了いたしました。  次に、石橋大吉君。
  154. 石橋大吉

    石橋(大)分科員 きょうは、地元の島根大学の工学部の設置の関係について主としてお尋ねをしたいと思いますが、その前に、二、三関連してお伺いをしたいと思うのです。  まず最初に、大学の地方分散について、文部省のお考えを承っておきたいと思うのです。  最近非常に売り出し中の、私の地元の出雲の岩国哲人という市長がおりますが、彼が大分前から、農村県では米の減反を強いられてどんどん農村経済が疲弊をしていく、そういうことで、農村県で米の減反をするなら大都市では大学の減反をすべきだ、こういうことをよく言っています。文部大臣も多少御承知かと思います。  なぜ高等教育機関、大学などの地方移転問題をかくほど強調するのか。一つは、申し上げるまでもないことですが、若者の地域間移動の要因として、進学が非常に重要だからであります。それが地域からの若者の流出、ひいては地域の活力の低下につながっている、こういう問題意識がまずあるからであります。二つ目は、大学などの持つ研究開発機能が知識集約型社会では重要な役割を果たすということが期待されるからであります。  これは三、四年前のちょっと古い数字で恐縮ですか、大学、短大の学校数は全国に一千百程度あるが、そのうち国立が約百、学生の定員数二百五十万のうち五十万人が国立、十万人が公立、大部分の百九十万人、八百五十校が私立である。日本の高等教育は数の上では圧倒的に私立依存である、こういう実態があるわけです。  これを東京圏だけで見ると、定員は約百万人だそうでありますが、国立八万、公立一万、私立九十万人強で、比率では九〇%が私立、こういうことになっているわけですね。しかも、これらの学生の相当部分が卒業しても東京にとどまるということですから、首都圏の人口はますます拡大していくということになっております。結果、過疎過密が進み、国土の均衡ある発展が阻害されるということにつながってもいるわけであります。  首都機能の地方分散などについても別途国会でもいろいろ議論をされているわけでありますが、そういう意味で地方拠点都市の問題などとも関係しますけれども、大学、高等教育機関の地方移転について、最初に申しましたようにどういうふうにお考えになっているか。  私も高等教育を受けていませんのでよくわかりませんが、子供の話を聞いたりすると、例えば、イギリスのオックスフォードだとかケンブリッジなどという歴史のある大学は、非常に小さい都市に立地をして、しかも伝統と世界に名をとどろかすような業績を上げている、こういうこともあるわけですから、何も東京にだけ大学を立地していなければ優秀な研究ができない、こういうものでもなかろうと思うのですね。  そういう意味で、一挙に地方分散ができないにしても、今あるいろいろな地方の大学あるいはこれから新設される大学などに徐々に地方の大学の機能充実をしながら地方分散を進めていく必要がある、国土の均衡ある発展からいってもこれは非常に大事だ、こういうふうに思うのですが、まず第一にそのことについてお伺いをしておきたいと思います。
  155. 赤松良子

    ○赤松国務大臣 一極集中ではなくて均衡のある発展、日本は国土がそれほど大きな国ではございませんから、どの地方も文化、産業が均衡のよくとれた発展をするということはとても大切なことだと思います。先生御指摘のように、そのためにも大学その他高等教育機関が適正に配置されているということも重要なことであるというふうに基本的に考えております。  そこで従来からも、大都市にばかり大学をつくるのではなくて、新増設は抑制をいたしまして、逆に地方で整備をするということを考えてきたわけでございます。その結果地域間格差の是正を図る、こういう方向で努力をいたしてまいりました。大都市圏以外での大学等の新増設がただいまも進んでおりまして、大都市圏への学生の集中あるいは大学等の収容能力の地域間の格差は是正の方向、具体的には少なくなっているということか言えると考えております。  また、平成五年度以降の大学設置の審査の取り扱い方針につきましても、原則として大学等の新増設を抑制しながら、地方の中核的都市やその周辺都市につきましてはその抑制の例外として認める、このように取り扱うものとしているわけでございます。  文部省といたしましては、今後ともこのような方針で大学等の地域配置の適正化という方針を維持してまいりたいというふうに考えております。
  156. 石橋大吉

    石橋(大)分科員 最初に申し上げましたことからも明らかなように、地方ではそのことを非常に期待しておりますので、ぜひひとつ今後とも努力をお願いしたい、こういうことを申し上げて次に移りたいと思います。  二番目には、同じようなことですが、私、社会党の日本海沿岸議員連盟の事務局長をしておりますので、そういうこととの関係で環日本海時代の到来と、日本海国土軸構想などもあるわけですが、そういうことに関連して日本海沿岸への大学、高等教育機関の立地についてちょっと承っておきたいと思うのです。  御承知のとおり、長い間冷戦体制が続いたということもありますし、アメリカの援助で戦後の復興をやってきた関係もありまして、経済的に日米関係が非常に緊密であった。こういうようなことから、この四十数年間、我が国の産業、学術、文化、あらゆるものが太平洋沿岸中心に立地をしてきたと私は思っています。そういう意味で、日本海沿岸はこの間の発展から総じて取り残されてまいりましたし、人口も流出をして過疎化が進んでまいりました。  しかし、一九八九年から九〇年代の初めにかけてソ連、東欧などの社会主義圏が崩壊をしたということもあって、いわゆる冷戦体制が終わりました。そして、冷戦体制が崩壊をしたことを契機にして、中国は御承知のとおり十二億という大きな人口を持っておりますし、それからシベリア、沿海州を中心にして眠れる豊富な資源の開発問題などもあります。  いずれにいたしましてもこれからは環日本海時代の到来だ。あるいはそういう環日本海時代の二十一世紀に向けての発展を考えたときに、我が日本の国としては、今まで放置をされてきた日本海沿岸を中心にして大陸沿岸諸国とのいろいろな交流を活発にしていくためにも、産業、技術あるいは大学、高等教育機関などの立地を中心にして、日本海沿岸に大陸沿岸諸国との交流を活発にできるようなインフラの集積といいますか、そういうものが非常に大事になってきているわけであります。  そういうことから私たちは、環日本海の交流を活発にするということで、社会党の場合独自に、今五回くらい日本海時代のフォーラムをやってきたりしておるのですか、そういうことで、当面日本海国土軸をきちっと据えてもらって、今申し上げましたように産業、学術、文化、技術、高等教育機関も含めて拠点的な戦略的な配置をお願いしたい、こういうふうに思っているわけです。  最初の質問ともよく似ていますけれども、もう少し焦点を絞って、そういう意味で新しい日本海時代を展望しながらぜひ日本海沿岸にそういう立地をお願いしたい、大学の拠点的な集中的な配置、充実をお願いしたい、こういうことを関連して伺っておきたいと思うのですが、いかがですか。
  157. 赤松良子

    ○赤松国務大臣 適正な地域配分ということを申し上げましたが、先生御指摘のように、これまでは確かに太平洋沿岸の方に重点が置かれた発展をしてまいりまして、日本海の方がやや手薄と申しましょうか、発展に格差が見られるということは事実かと思います。そこで、均等な発展というような観点から申しますと、日本海の方により重点的に配分を行うということは望ましいあり方ではないかというふうに存じます。
  158. 石橋大吉

    石橋(大)分科員 ぜひひとつそういうことも念頭に置きながらこれからの努力をお願いをしたいと思うのです。  そこで第三番目に、その一環としての島根大学の工科系学部の設置問題について、地元の皆さんにかわりましてちょっとここで改めてお願いをさせていただきたい、こう思うのです。  近年、我が国では非常に技術革新や高度情報化、国際化の進展が著しいために、四年制大学の工学部が未設置である私ども地元の島根県においては、地域産業の高度化や技術力の向上を図り、また県内高等教育、高校生の工学系学部への進学の機会の確保を図るためにも、島根大学への工科系学部の一日も早い設置が望まれていることは文部省もよく御承知をいただいておると思います。  またこれに関連いたしましては、平成六年度予算には島根大学の工科系学部設置に係る創設準備経費の計上をいただいたところでありまして、島根県におきましても官民挙げて積極的な支援を行うべく準備を進めているところであります。  これに関連して、まず二つほどちょっと簡単にお伺いしたいと思うのですが、道路なんかを建設するときには二段階、三段階と手続を踏んで、やっと何年かして建設、こういうことになるわけですが、大学の新しい学部の設置なんかはどういう手順を踏んで開設にこぎつけるものなのか。  もう創設準備経費を計上していただいたわけですから、来年からすぐ開設をしてもらう、これが地元の要望ですけれども、そういう段取りになるものなのかどうかちょっと私も余り知りませんので、念のためにお聞きをしたいということと同時に、これを先に、答えいかんによっては後の質問が無意味になりますから、どっちが先がいいかなという感じもしないでもないのですが、もう一つは、やはり来年度の予算平成七年の予算編成、概算要求において、ぜひ工科系学部が開設をできるような措置をひとつお願いをしたい、こういうことで県の方からも陳情を出しておると思いますが、この辺について文部省のお考えを承っておきたいと思います。
  159. 遠山敦子

    ○遠山政府委員 現在、御存じのように十八歳人口が大変減少してまいっておりますので、学部等新たにつくるということにつきましては、現在の厳しい財政状況下もございまして、私どもとしてはかなり慎重な検討をして事柄を進めるというふうにやっているところでございます。  一般論として、大学の学部増設というのはどういう順序かということについて御説明いたしますと、まず何よりその大学におきまして将来構想についてきっちりした検討がなされて、例えば将来計画委員会などを設けられて検討がなされ、そして学内のコンセンサスを得て一つ構想がまとまった段階で、文部省予算要求という形で参るわけでございます。そのことについて私どもとしては、学部構想であれば学部構想という角度から具体的な検討をいたしまして、まず調査費を措置をするところでございます。そして、その後に創設準備費というものをまた構想の熟度に応じまして措置をしていくという関係になるわけでございます。  島根大学の件についてお尋ねでございますけれども、島根大学における工科系学部の創設ということに関しまして、平成五年度から学部等改革調査費というものを措置いたしまして、工科系学部のあり方について検討してきたところでございまして、平成六年度の予算案におきましては、これをさらに進めるために、工科系学部の創設準備を行うことといたしまして、そのための要員と経費を計上したところでございます。先ほど申しましたような手続を踏んで、平成六年度の予算案において創設準備のための経費を計上しているという段階でございます。  現在島根大学におきまして、学内措置として工科系学部にかかわる委員会等を設置して、そのことに関する教育研究面あるいは施設設備、教員人事等について検討中であると承知しているところでございます。
  160. 石橋大吉

    石橋(大)分科員 それで、地元からの要望としては、文部省で既に御承知をいただいておると思いますけれども、新しく設置をされる工科系学部について、その具体的な内容について、産業界等の意向を踏まえた学科の計画的設置ということで、地場産業の振興と先端技術産業の育成、誘致のため、電気・電子系、機械系、情報系に加えて、特に環境保全、新物質・素材系、バイオテクノロジー等の分野に御配慮いただきたい、こういう要望を出しておるわけでございます。  地元の要望もさることながら、文部省文部省として国家的な観点から、さっきも言いましたように、将来的にはやはり対岸諸国との関係もありますから、そういうことも含めて、地元の要望とはやはり少しは違った角度でまたお考えになっておる向きもあるかな、こんな感じもするのですが、ここら辺についてどういうふうにお考えになっているか、この機会にぜひ伺わせていただきたいと思います。
  161. 遠山敦子

    ○遠山政府委員 平成五年度の経費で学部等改革調査費を措置しまして、それに基づいた調査が学内でなされたところでございます。その結果、平成六年度の予算で今創設準備費をお願いをしているという段階でございます。  したがいまして、具体的にどういうふうな内容の学部としていくのか、あるいはどのような学科を置いていくのかというのはこれからのことであるわけでございますけれども、文部省といたしましては、一般論として申し上げれば、今後そういうことを考えていきます際に、まずその圏域を取り巻くいろいろな状況を判断するというのが一点でございますし、それから当該大学における工科系学部創設についての検討の状況がどうであるかというふうなこと、あるいは国の行財政状況等を踏まえまして、当該大学からの概算要求を待って対応するということでございます。概算予算の時期もまだ先のことでございます。現在学内で大いに検討がなされているというふうに私どもは考えているところでございます。
  162. 石橋大吉

    石橋(大)分科員 そういうことで現状れからだということでございますが、今申し上げましたような新しく設置をされる学部の内容についても、できるだけ地元の意向を尊重していただきまして、ひとつ期待にこたえられるような学部を設置をしていただきますように、地元にかわりまして私の方からもお願いをしておきたいと思います。  最後に、ちょっと変わりますが、大学における国際交渉学部あるいは国際交渉に関する講座というかゼミというか、そういうものが設置をされているのかされていないのか知りませんが、ないとすれば、やはりこういう点を非常に重視をしてかかる必要があるのじゃないか、こういうふうに実は私は思っているわけであります。  私は衆議院の農林水産委員会にずっと関係をしていまして、特に最近の事例でいうと、ガットのウルグアイ・ラウンドの交渉などで再々ジュネーブに飛んで、アメリカの代表やECの代表などともやり合ってきたのですが、やはり外国の人と交渉してみると、したたかですね。それこそ自分に不利なことは全部、言い方は悪いけれども厚かましく棚に上げておいて、とにかく主張したいことだけは徹底的に断固主張する、こういうことでは徹底していますね。  何かいっか大分前にテレビでちょっと見たことがあるのですが、さっき言いましたイギリスのオックスフォードだったかケンブリッジだったか知りませんが、大学の最後の卒業前の試験は討論みたいな感じでしたね。AとBに分けて、白と黒と言った方がいいかもしらぬが、白の方になった人はとことんその主張について白を貫く、黒の方は黒の方でそれを貫きながら白を負かす。こういうことで、とにかく最優秀な学生は何かということをそういう討論の中で決めていく、どうもこういうシステムをとっているみたいですね。  こういう育てられ方をした政治家や外交官を相手にして、偏差値だけと言ってはちょっと語弊があるけれども、そういうことを非常に重視した教育の中で育ってきた日本の、私たち政治家も含めてですが、政治家も外交官も他の公務員も、国際交渉の場に立ったときに非常に弱いような感じがしているわけです。  特に我が国は、古来余り自己主張しないのが美徳みたいな教育を受けているし、そういう儒教的な観念というか、そういうものが何となく下敷きになっておるところがありますから、そういう点では、国際交渉の場に臨んで非常に不利なのじゃないかということを常々感じているわけであります。私もそういうことがありまして、次男坊はアメリカの大学を出しましたが、それは別にしまして、そういう意味では外国なんかでは、交渉だとかそういう駆け引きに関する技術だけではなくて、情報の収集の仕方、使い方などを含めてかなり重視をしているのじゃないかと思うのです。  私は、これからますます国際的な関係が緊密になってくると、そういう意味で練達の国際交渉のベテランを持っていないといけないのではないかというふうにかねがね思っています。きょうは、文部省で余り質問する機会がありませんので、せっかくいい機会ですから、そういう意味で大学の学部に交渉学部、学部が無理だったら交渉に関する高度なゼミ、講座でもちゃんと持つ、こういうことが非常に大事になっているのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  163. 遠山敦子

    ○遠山政府委員 石橋委員御指摘のように、これからの国際化時代には、やはりみずからの考えを的確に表現して、きちんとディベートできる人材を養成していくことは大変大事だと思っております。  国際関係の専門的な教育研究を行う組織といたしましては、時代の要請に対応して、近年積極的な対応が大学においても見られるところでございます。具体的には、「国際」の名を冠した学部が国公私を通じて平成五年度現在では十九大学十九学部となっております。ただ、それらが先生がおっしゃった国際交渉能力というようなことを明確に打ち出して人材養成をする学部では必ずしもないわけでございますけれども、少なくとも国際関係が重要ということで、いろいろな角度からの学部なり学科の充実ということが図られているところでございます。  本年十月には宇都宮大学に新たに国際学部が設置される等の動きもございます。公私立大学でも国際関係学部が置かれている大学がございます。大学院レベルでは、国際協力研究科でありますとか国際開発研究科というようなものが国立大学あるいは私立の一部でも置かれておりますし、筑波大学の国際政治経済学研究科あるいは大阪大学の国際公共政策研究科のように、国際機関における上級職員の養成を主とした目的とする教育研究体制の整備も進められているところでございます。  これらは「国際」ということを冠していろいろな学問分野にわたって教育研究をする場所でございますが、先生おっしゃいましたように、表現力の教育研究というのは単に大学からではなくて、やはり初中教育段階からでも大事ではなかろうかと思うわけでございます。  このことに関しましては、新しい学習指導要領のもとで、自己教育力というものを身につけたり表現力を身につけたりというふうな教育の形態をとりつつあると聞いておりますし、また大学におきましても、これまでのようにただ外国語の文献が読めるということではなくて、実際に使えるような外国語ということで、新たな教育のあり方について見直しが行われ、改善工夫がなされ始めております。  単に国際交渉学部というものをつくるだけではなくて、いろいろな専門分野にわたる人たちがそういった能力を持って表現をし、あるいはみずからの考えをきちっと述べていくことができるような、そういう人材養成というものを各般にわたって整備していく必要があろうかと考えております。
  164. 石橋大吉

    石橋(大)分科員 予定をした質問は以上で終わりますので、時間が少し余っていますが、これで終わりたいと思います。  いずれにいたしましても、地元島根大学の工科系学部の設置、あるいは今最後に申しました国際交渉に強力に力を発揮できるような人材の養成に向けて、ひとつ文部大臣以下頑張っていただきますようにお願いいたしまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。よろしくお願いします。
  165. 山本拓

    山本主査 これにて石橋大吉さんの質疑は終了いたしました。  次に、青木宏之さん。
  166. 青木宏之

    青木分科員 大臣初め、長時間御苦労さんでございます。新生党の青木宏之であります。  本日の本会議でもたまたま現政権での教育への取り組みということも出ておりましたが、私は、今教育改革ということがしきりに言われ出しておりますけれども、その観点から、数点にわたりましてお尋ねをさせていただきたいと思います。  やはり何といいましても、教育は国づくりの大本でございまして、極めて極めて各施策の中でも重要な地位を占める、こんなふうに思います。しかしながら、言うはやすく行うはかたしでありまして、教育のあり方を論じますと、まさしく百家争鳴というか、いろいろな議論が出てまいります。  しかし、これは国づくりの大本ということからすれば、やはり政権を担当する立場からは、もとより現状に対する施策も当然でありますけれども、将来にわたっての一つの大きな目標というか流れというか、そういったものをきちっと見定めて、そしてそれに着々と対処をしていかなければならないものだ、こんなふうに思うわけであります。  たまたまただいまの石橋議員の最後の御質問とも関連するわけでありますけれども、国づくりにかかわる人間としてどういう人間を育てるべきか、そこらあたりからそれぞれその時代時代の価値観なりそういったものがあらわれてくるわけであります。やはり私は、これからの日本をつくっていく、その人間を育てるということからいたしますと、どうしてももっと主体的な、あるいは独創性のある人間を育てることがこれからの日本にとって特に大事だ、こんな考えを持っておるわけであります。  そこで、主体的ということに限りましてお尋ねをさせていただきたいわけでありますが、今石橋議員からもお話が出ましたように、国際的な舞台に入っていきますとどうしても日本人は交渉が下手だという話がございましたけれども、そしてまた御答弁の方でも、大学に限らず小中からの教育への取り入れも考え、かつ今動き出しているというようなお話もございました。  いま一歩歩を進めましてお尋ねをさせていただくわけでありますが、やはり交渉が下手というもとは、議論あるいは討論の技術的なものが下手だ、なれていないということにもよるわけでありますけれども、その基本は、自分の考えをはっきり言わないということ、そして同時に、相手の考えももちろんしっかりとこれを受けとめ、聞く、この両々相まって交渉事が実りあるものになっていく要素ではないか。  そしてまた、もう一つ、やはり徹底的な議論をするわけでありますけれども、何かをその場、その社会で決めなければならないという場合には、これはある一定期間の議論の後に粛々と表決をする、そしてその表決には従うという民主主義の基本というものについての体感的な、体の隅々までそういう考えがしみ渡った、そういう人間が一人でも多くいる社会がやはり民主主義のレベルアップされた社会だ、こんなふうなことを考えるわけであります。  したがって、お尋ねとしては、先ほどの御答弁にちらっとありましたが、小学校、中学校からのそういう教育にも取り組み始めているんだというお話でありますけれども、例えば今からそれをやりましても、彼らが成人をするには十数年かかるわけでありますから、そういう彼らがいっぱい育った社会ができ上がるのは十数年後ということにもなるわけでありますので、これはそんなに悠長に構えておられる問題ではないというふうに私は思うわけであります。  人間社会にあって、経済活動もあるいは一般の社会活動もそうでありますが、それらを根本的に決定づけるものは政治でありますから、政治のあり方というものによってその社会か決まっていく、そして、その政治のあり方の基本は民主主義にありとするならば、何をさておいても、この民主主義教育というものについては相当に力を入れ、かつ具体的に今から取り組んでいかなければならない、こんなふうに思っております。  したがって、そういう私の思い、考えから、もう少し具体的に、小学校あるいは中学校低学年における現在の民主主義教育の取り組みと、そしてまた今後の取り組み姿勢ということについてお考えを聞かせていただきたいと思います。
  167. 野崎弘

    ○野崎政府委員 先生の今の討論ということは大変大事だという御指摘は、私どももそのように考えております。  従来、国語で「表現」という分野があって、これは新しい学習指導要領でもそういう分野かございますけれども、従来ですと、例えば、小学校の国語の第一学年で「経験した事の順序どおりに話すこと。」とか、そういうような漠とした表現であったわけでございますが、平成四年から施行しております新しい学習指導要領では、小学校の国語の第一学年では、「尋ねられた事に答えたり、自分から進んで話したりすること。」、第二学年になりますと、「相手の話の内容を受けて話したり、自分から進んで話したりすること。」ということで、自分の考えを話すということを重視をしてきております。  なお、国語の時間だけじゃありませんで、いわゆる特別活動の中に位置づけておりますが、学級活動とかあるいは児童会活動というのも学校にございます。  学級活動では、学級や学校における生活上の諸問題の解決あるいは学級内の仕事の分担処理、こういうことなどについて子供たちで話し合いをしながら決めていくというようなこともしております。  また、児童会活動、これは「学校の全児童をもって組織する児童会において、学校生活の充実と向上のために諸問題を話し合い、協力してその解決を図る活動を行う」というようなことを明記しておりまして、こういう活動の中で、先生御指摘のような民主的な資質を身につけていくというような教育を行っている、これが現状でございますし、これからさらにこういう面につきましての指導を充実をしていく必要がある、このように考えております。
  168. 青木宏之

    青木分科員 私も現場はまだつぶさに承知しておりませんが、逐一何か決まり切ったことをやるということもあれですが、ある一定の時間、一つの議題なら議題に限って、先生は遠くから授業を見て子供たちに勝手にわいわいがやがやさせる。その中でけんかが起こるかもしれませんし、それもある程度の段階まではそっと見守るというようなことで、余りきちっとした、決まり切ったような進め方でなくして、もう少し大ざっぱといいますか、そんな中から大きく育てていくということが必要じゃないかと思います。いずれにいたしましても、今から、小学校からそういう取り組みをされておるということでありますので、期待するところ大であります。  もう一つは、やはり昨今ちょっと言われるのですが、あくまで平和的手段というか議論で物事を解決する、暴力はいけないという教育も必要ですが、しかしながら、幼少期における自然発生的な、いわゆるけんかというものも、これはある程度、将来大人になることに必要なことではないかなということも思うわけであります。  最近の子供はけんかをしないということから、中学校、高校などになって一たんけんかになると、これはもう命ぎりのけんかになってしまう。どこでとめたらいいか、ほどほどということがわからないということがよく指摘され、ナイフを持ったり、道具を持ったりの大げんか、そんなようなことが、間々見受けられるわけでありますので、自分の考えを言い、相手のことを聞き、そういう議論、討論ということも当然やらなきゃいけませんが、もう一つ、自然発生的なけんかも大目に見ていくというようなこともあわせて、より大きな人間になっていくように、ひとつ積極的なお取り組みを期待を申し上げます。  次の点に移りますけれども、皆関連してまいりますが、最近、これまたよく言われるボランティア教育、これも本年度、六年度の予算にも計上されておるところでありますけれども、国際貢献に始まって、ボランティアということがしきりにいろいろな場面で言われるようになってまいりました。  これは結局は何というのか、他人のこと、人のことはすなわち我がこと、これは民主主義とも非常に絡まることでありまして、我がことだけで社会が成り立つわけではない、やはり他人あっての我であり、自分のためにもなるという基本的な、根本的な哲学からいってもこのボランティアということは非常に大切なことでありますし、またそれが、教えられたから、あるいはやらなければならないからやるというたぐいのものでは本来ない。自然発生的に、自発的にそういうことが行われるようになることが大事なことであります。  この点もこれから大いに取り組みをされていくと思うのでありますが、具体的にそういったものを高校なり大学なりで単位化をしたらどうかというような議論も最近出てきておりますけれども、この点につきましてどんなお考えか、お聞かせをいただきたいと思います。
  169. 野崎弘

    ○野崎政府委員 高等学校の方につきましては私の方から答えさせていただきますと、今のボランティア教育、これは私ども大変大事なことだと思っております。新しい学習指導要領でも、社会奉仕の精神を涵養する、あるいは公共の福祉とか社会の発展に尽くそうとする態度を育成するということで、いろいろな授業内容を展開しております。  単位化するということについてのお尋ねがあったわけでございますけれども、このボランティア活動というものが各教科・科目あるいは特別活動の一環として行われた場合に、それらの教科・科目等を評価する際の重要な要素にボランティア活動がなるもの、このように思うわけでございます。  ただ、ボランティア活動のみをもってその教科全体の単位ということは通常考えられないというようなことから、単位の一部として認定するというふうなことは各学校の工夫によって考えられるところだ、こう思っております。これは、単位に入れるだけじゃなしに、この子供のすぐれた長所として生徒指導要録に記載するというようなことも考えられるわけでございまして、この辺はまさに小中高等学校におきましては、ボランティア活動というものの動機づけをする、つまりそういう活動を将来とも続けていこうという意欲を起こさせることが大事なことだと思いますので、そういう視点からこういう活動を評価していくということが大事なのではないか、このように考えております。
  170. 青木宏之

    青木分科員 単位化が必ずしもいいというふうに思って申し上げておるわけじゃないのですが、一つの誘導策ということにこれはなると思うのですね。欧米はボランティアというのが非常に自発的で盛んだ、ごく自然発生的にこれがなされるという背景には、やはりこれは宗教性があるのじゃないか。やはりキリスト教というものの根っこがあって、そういうのが自然発生的に出てくる。残念ながら我が国は、仏教国かどうか知りませんが、それがないとは言いませんけれども、若干その辺の考え方が違うというところで、なかなか身についたものに現在まではなっていない。  そういうところから一つの動機づけ、あるいは誘導策と今おっしゃったようなことで、単位だとか長所として記すとか、そんなようなことにとどまるのかなということは思いますが、いずれにしても、こういうこともやはり大きくなってからということではなくして、本当に小さいときから人のことは我がことというようなことで、家庭教育とも両々相まって、ひとつ力を入れてお取り組みをいただきたい。  それで、次に移らせていただきます。これまた関連してきますが、そういう人間と人間との関係が今度は人種間、民族間、国家間ということに広がっていけば、国と国との関係においても、あるいは民族と民族との関係においても、人種と人種との関係においても、これはやはりボランティア精神というものが生かされていくべきだ。  そんなことから、特に今国際化時代と言われておりますので、違った言い方をすれば地球国家なりというような言い方もあるわけでありまして、もう現実には確かに、それは国と国、民族と民族、人種と人種というところの不信とか争いというものは残念ながら絶えないわけでありますけれども、一日も早くそういうものが大きく解決をされて、地球国家なりというような実態を備えるようにぜひ進めていかなければならない。それが国際時代における、特に日本のあるいは日本人の求められている人間像ではないか。  こんなことから思うのでありますが、それに必要なのは、どうしても介在するのが言語というものであります。言語はたくさんあるわけでありまして、どれがいいか、なかなか難しいわけでありますけれども、従来から一応我が国は第一外国語として英語をずっと取り入れてきておる。  しかしながら、私自身もそうでありますけれども、考えてみますると、中学校から英語と正式にかかわり合うわけでありますが、中学校三年間、高校三年間、中学校は義務教育ですね、高校は義務教育ではないですが、大半の進学があって大半の人が三年間英語教育を受ける。大学へ進んでも教養で相当しっかり英語をやる。しかしながら、会話ということになりますと、指摘されて久しいわけでありますけれども、私の周りでもそうですが、ほとんどできない。むしろできないと言った方がいいですね。日常会話すらできない。一体これはどういうことか。  読んだり書いたり、あるいは文法的なことは、確かにかなりの時間、スペースを割いてやってこられているとは思うのです。そういうものももちろん大事ですけれども、やはりまず第一に会話ができるということが言語の基本ではないか、そんなふうに思いまして、少なくとも中学あるいは高校を卒業した段階では日常会話はまあまあほとんどできるというぐあいにぜひすべきではなかろうか、こんなふうに思いますが、現実の教育の進め方とあわせて、そのあたりのお考えを聞かせていただきたいと思います。
  171. 野崎弘

    ○野崎政府委員 英語教育については、聞くこと、話すこと、あるいは読むこと、書くこと、これらのバランスのとれた指導が大事なわけでございますが、先生御指摘のように、私どもが受けた教育も、なかなか話したりするところまではいっていなかったというのが現実でございます。  ただ、現在の新しい学習指導要領の考え方というのは、できるだけ英語のコミュニケーション能力というものを育成していこうということで考えております。例えば、中学校の英語教育につきましては、英語を聞く、話すなどのコミュニケーション能力の基礎的能力と積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を重視する、こういうような改善をしたわけでございます。  ただ、これは、そういう英語の中につからないと実際になかなか簡単な日常会話も難しいという要素があるわけでございまして、現在ネーティブスピーカーということで、全国で平成四年で三千六百人ほどの外国人青年の招致をして、その方々の協力を得て、実際に母国語としてしゃべる方々の英語を聞く機会などをふやしておるわけでございますが、そういう施策を進めるとか、先生方の研修をするとか、そういう形で進めたい、このように考えております。  ただ、これにつきましては、先生全員がそういう方向で、私どももぜひそういう方向でこれは努力しなければいかぬとは思っておりますけれども、家庭に帰ると日本語だけで全部生活が済んでしまうという中で、なかなか日常会話をしゃべる能力までが学校の場だけでつけられるかどうかというあたりにつきましては、さらなる努力を必要とする課題だ、このように考えておるわけでございます。
  172. 青木宏之

    青木分科員 なかなか自信のおありにならないような御答弁ですけれども、いずれにしても、私が思うには、今までの中学校、高校なんかの英語教育がどうも偏っていたのではないか。だから、確かにおっしゃるように全員ができるようにというのは難しいかもしれませんが、その中でやり方、努力によってはかなり改善をされる、効果は出てくると思いますので、これは目に見えることですから、ぜひそういうお気持ちがおありになるなら結果を出すようにお取り組みをいただきたい。  それから、時間が余りありませんのでちょっと急ぎますが、これまた大きな問題で、最近、地球規模の環境問題ということがしきりにやかましく言われておりますし、これは現実に大変なことであります。森林が希薄になれば気象に悪影響を及ぼすということは現実に今出てきておるわけでありますし、これがなおこのまま続けばそう長くない先に地球の環境も相当狂ってくるというようなことから、もう遅きに失するくらいでありますけれども、環境教育と称されるものについては相当に力を入れて、現実的にそういう思いをいたす人間が大半を占めるような社会をつくっていかなければならないということからお取り組みをいただいておるとは思うのであります。  いろいろありますけれども、その中で非常に小さなことみたいになりますけれども、ずっと私が考えておりましたのは、小学校、中学校を見てみますと、例えば運動会なんかに参りますと、校庭はかなり広くありましても緑が本当におざなりといいますか、少しはあるのですけれども、非常に少ない。  そしてまた、もう一つ特に感じますのは、夏の炎天下にグラウンド、校庭へ行きますと目がくらくらするくらいの環境です、温度も上がっておりますし。そんなのを何とか改善することができないか。確かに日本の気候からいうと欧米のように芝生もなかなか育ちにくいということで難しいかと思うのですが、校庭あるいはそういう学校施設等あわせましてもっと緑化ということについて、その緑化も、単に緑をやればいいということではなくて、これはほかの省庁とも関係しますが、緑化するときにはその土地その土地の植生に応じた緑化をするということが基本だと思うのです。  南洋のものを、それはたまに一つ、二つ持ってきてもいいですが、よその全然植生の違うものをやるべきではない。そして、植生に合ったものをやることによって、今度はその土地土地の昆虫とか動物が関連して育ってくる。  特に、都市部でありますとチョウチョやトンボといったような、昔から身近に我々が見ることができたものを現在ほとんど見かけることかできないというようなことから、ぜひその緑化とあわせて、そういう昆虫類にも関連をした緑化、そして実際にどこかへ行って、野外教育とかいろいろありますけれども、実際学校の中におって身近に自然を観察し、触れることができる環境をつくることが大事ではないかと常々私は思ってまいりましたので、その辺を御理解いただくとともに、それを進めていただきたいという気持ちがありますが、いかがでございましょうか。
  173. 井上孝美

    ○井上政府委員 お答え申し上げます。  ただいま委員御指摘のとおり、たくましく心豊かな児童生徒を育てる上で、学校環境の緑化を推進し、自然との触れ合いを深め、自然を愛護することの大切さを理解させることは大変重要であると認識しております。  このため、文部省におきましては、学校施設全体について緑豊かな環境づくりを行うという観点に立って屋外教育環境整備事業を実施しているところでございます。  その具体的な内容といたしましては、木登りの森などの屋外運動広場、語らいの広場等の屋外集会施設及び観察の森学習園等の屋外学習施設の整備に要する経費について国庫補助を行っているところでございます。そういう屋外教育環境を整備する場合に、先生がおっしゃるとおり各市町村が実施主体でございますが、その地域の特色のある植生、動植物等について配慮しながら環境の整備を図っていただいているものと考えているところでございます。  平成六年度予算案におきましては、これらに係る経費といたしまして、二百カ所につき約六億七千万円を計上しているところでございまして、今後ともこれらの事業の実施によりまして学校環境の緑化を図り、環境教育の推進に努めてまいりたいと存じております。
  174. 青木宏之

    青木分科員 最後に、大臣に一言。  私、まだほかにお尋ねしたいこともあったのですが、時間がなくなりました。  とにかく今までのところで私の申し上げたいことは、最初に申し上げたように、主体的な人間づくりがこれからの日本にとって一番大切だ。今お話がありましたように、現在いろいろと進められつつあるわけでありますけれども、私が気が焦るのかどうか知りませんけれども、できるだけ早いスピードでそういう人たちが育ち、そして社会全体が、これは生涯教育の方にも関係してきますけれども、早く主体的な人間、そして民主主義思想がもっともっと全体的に高まる日本をつくらなければならない、こういう強い気持ちを抱いておりますので、大臣のそれに対する決意のほどを一言だけお聞かせをいただければと思います。
  175. 赤松良子

    ○赤松国務大臣 今御討論を伺っていまして、先生のおっしゃる方向は私も全く同感でございます。教育の内容が余りに知識を詰め込むという弊害があったのではないか、これに対して、自分で物を考える力が大事なんだ、それは討論を通しても育つものでございましょうし、ゆとりあるいは個性化というようなところから育つ、それが民主主義の根幹になるということは全く同感でございます。  効果がなかなか見えてこないという御指摘は、これはあるいは教育というものが時間のかかるものだ。私ども文部省の方針が、ある時期多少知育の偏重というようなところに弊害があったのを、今まさに変えようとしている時期に差しかかって、差しかかってしばらくはたっているわけでございますが、まだその効果が非常にはっきりとあらわれてくるまでに至っていないというところで多少もどかしさを先生のみならず多くの方がお感じになっているかと思いますが、そういう方向に向かっているということは確かなことではないかというふうに、私は昨年の八月から文部省の中でいろいろな方とお話をしていて実感として持っておりますので、多少時間はかかるかもしれませんが、長い目でぜひ見守っていただきたいと思う次第でございます。
  176. 青木宏之

    青木分科員 どうもありがとうございました。
  177. 山本拓

    山本主査 これにて青木宏之君の質疑は終了いたしました。  次に、中島章夫君。
  178. 中島章夫

    中島(章)分科員 私は、新党さきがけ・青雲・民主の風を代表しまして、主として文部省に御質問を申し上げます。  きょう私が取り上げたいと思っておりますのは、来年度予算の編成に当たりまして、義務教育費国庫負担法によります負担金、これを神奈川、愛知、大阪といったいわゆる財政力が高い府県に対しましては、新しいルールをつくりまして財源調整をするということが持ち上がりまして、文部省当局は既に御承知のとおり、各府県等では大変大きな問題となったものでございます。  実はこの問題は、これから地方主権あるいは地方分権というようなことを教育の面で考えていく上でも、国と地方との関係ということで大事な問題点を含んでいるというふうに思いますので、幾つかの点をただしてみたいと考えます。なお、時間がございましたら湘南国際村のことについても少し伺いたいと思います。  この義務教育費国庫負担法というのは、義務教育の教員給与の二分の一を国が自主的に負担をするというもので、我が国で昭和二十年代の後半にできた、実際には大正時代から続いていたものでもあります。特に戦後、義務教育費国庫負担法というものができて、大変すばらしい制度でございまして、私は、諸外国に出かけた場合あるいは諸外国からお客さんが来た場合、我が国では子供たちがどんな地域、どんな家庭に生まれても基礎的な教育をきちんと受けられるようなシステムをつくっているという意味で、極めて優秀な制度であるということを語っております。  それが、この民主主義社会にとっては極めて大事なことでありまして、だれもが参加する、基礎資質を得るというその基本になっているわけでございますし、文部省予算の五兆五千億余りですか、その予算の半分を超えるという部分がこの義務教育費国庫負担法の金額であることも御承知のとおりで、これが逆に、固定的に義務的な経費でありますから、政策的な経費を圧迫しているという、文部省自体が長く抱えている問題点一つであることもよく知っているわけでございます。  さて、実はこの問題の発端は、先ほど申しました大阪、愛知、神奈川といういわゆる富裕三府県が、これは数字等を合わせて八月の末でないとわからないのだそうですけれども、昨年、不交付団体から急に交付団体になったということでございます。それで、国の負担として四百何十億というお金が補正予算で必要になったということでございました。  今までは、そういうことが起こっても個別に起こってきたので、そんなに大きく一遍に三県が交付団体に転ずるということがなかったそうでありますけれども、そういうことがあって、大蔵省ともいろいろ協議もされたのでしょう。局長お話では、この問題についてはもう十年以上研究をしてきたという話は聞いております。  しかし、きょうは私の選出県であります神奈川のことについて主として質問をすることを許していただきたいのですが、神奈川の話では、一月の二十五日に内示を受けてということでありますから、既に各県の予算査定が終わっている段階で百億を超えるような、しかも義務的経費についての支出が行われない、それについて新しいルールを考えたということでありますけれども、各府県にとっては寝耳に水、そういう話であったということでございます。  そこで、私が四点ほど基本的に問題だと思っておりますのは、文部省がこの新しい年度の予算について、どの省でもそうでありましょうが、約一千億の予算の削減が必要であったということも聞いております。それをどういう項目でやるのかというのは文部省の役人の最も知恵、頭を使う部分であります。  これは大変苦しいことであることも承知しておりますけれども、この話は、少なくとも私が知る限り、昨年の暮れまではこういう形で動いてくるということは知らされていなかったはずであります。一月の二十日前後になって初めて聞かされたことであったということでありますので、文部省予算の削減という国の必要性からこのことを急に持ち出してきて、そして地方に押しつけていったという形ではないか、そう私は考えておるわけであります。  これは補助金ではなくて負担金でありますから、法律上、義務教育という大事なことで、一番最初に申しましたように、こういう大事なものをやっているというのは意味のあることですから、各府県としては、平成五年度に交付県になったということなれば、当然その次の年も同じような形で予算を組む。それだけのものが国の負担金として流れてくるのを予想するのはある意味で当然ではないかと私は思いますが、文部省予算削減の必要性から持ち出されたことであるということが一点。  二点目には、さっきも言いました一月末という予算査定が終わった段階で突如持ち出された、しかも百億を超える巨額の金であったということ。  三番目には、この神奈川県等は、特に神奈川県はそうでありますが、非常に大きく税収を法人税に依拠しております。平成元年には五一%余りであった法人税収入、そのときには、実額で言いますと五千二百二十一億という法人税収入であったのですが、平成六年では二千八百億余りということで、二分の一から三分の一に減ってしまった。バブルがはじけたということでこういう急激な影響を受けたそういう県であった。そこへねらい撃ちをしたような形で削減ということが行われた。  念のために申しておきますが、削減は、新しいルールというのは、過去三カ年の財政力指数というものを基準に、一を超えているところには財源調整を行う。つまり、一定の計算をして減額をした交付金しか行かない、そういう対象にするということでありました。これが三番目であります。  これは自治省や大蔵省とも相談をしたという話でありますが、後ほど伺いますが、どういう筋道でどういうふうに相談されたのか。県は了解をしておると言っておりますが、文部省から言われたということで非常に渋々であります。どういう事情か知りませんが、三府県で若干温度差はあるようであります。  四番目には、一番最初にも申しましたように、特定の年の八月にならないと五百億になんなんとするような、それぐらいの規模の補正予算を組む必要があるのかないのかわからないというようなことでは非常に不安定ですから、これは、多くの他の補助金でやっておられるという過去三年間の財政力指数を参考にするというのは当然としても、平常の年に出てくるなら極めて意味のあることだと私は思っておりますけれども、それがこういうバブルの直後という、県財政が大変な苦しいときに持ち出された、こういうことを私は大変不自然に思って、一月のそのときまで何も知らなかったのです。  二十四日に副知事がやってまいりまして、もう大変なことであります、これは義務的経費でありますから、普通の事業なれば、それは建物を建てないとか補助金を減らされれば事業を減らせばそれで済む、しかし教員の給与は、教員の首を切るわけにはいかないということで大変嘆いておりました。それ以来文部省にもいろいろ御説明を受けようとしたわけですが、いや、これはもう決まっております、国として何としても削減が必要でありますからという話以外に、余り県の方によく腹におさまるような説明が、特に私にもなかったように思うわけであります。  そこで、ひとつこれから幾つか御質問を申し上げたいと思うのですが、神奈川県知事からあるいはその他の知事から、神奈川県の場合には全会派一致で議会議長からもこの財源調整措置の撤回を求める意見書なりあるいは撤回についての要望なりというものが出たということについて聞いておりますけれども、各県からどんな反応があったのか、お答えをいただきたいと思います。
  179. 井上孝美

    ○井上政府委員 お答え申し上げます。  ただいま委員からお話がございましたように、義務教育費国庫負担制度は、義務教育の妥当な規模と内容を保障する制度でございまして、極めて重要な制度であると認識しているわけでございます。  義務教育費国庫負担金は、文部省予算額の五割を超える金額を占めているわけで、第二次臨時行政調査会、臨時行政改革推進審議会等の答申等におきまして再三にわたりその見直しが指摘され、昭和六十年度以降これまでに旅費、教材費、恩給費、共済費追加費用の一般財源化等を図ってきているところでございますが、国の財政事情が依然厳しい状況にあるということは御理解いただけるわけでございまして、そういう意味から、平成六年度予算編成におきましても義務教育国庫負担金の見直しの必要が迫られたわけでございます。そこで、今回の富裕団体調整のあり方につきましても、従来から見直しの対象とされ、議論され検討を行ってきたところでございます。  そこで、義務教育国庫負担制度におけるいわゆる富裕団体調整措置の対象については、先ほど委員からお話がございましたように、従来は当該年度の地方交付税の不交付団体としているところでございますが、平成五年度におきましては、昨年八月の普通交付税大綱の決定によりまして、従来不交付団体であった神奈川県、愛知県、大阪府の三府県が一挙に交付団体に移行して、約六百五十億円の追加財政需要が生ずる事態となりまして、国におきましては、大変厳しい財政事情の中ではございましたが、種々工夫の上、昨年十二月に成立した補正予算等においてその全額を措置したところでございます。  このような経緯等も踏まえまして、平成六年度予算案におきましては、国、都道府県双方を通じての財政運営の安定化に資するため、富裕団体調整措置の対象を、従来の当該年度の交付団体、不交付団体による区分方式から、当該年度前三カ年平均の財政力指数が一を超える団体と一以下の団体による区分方式に変更することとしているわけでございます。  今回の制度改正に伴い影響を受ける団体に対しましては、平成六年度において富裕団体調整額の三分の一相当額を制度改正に伴う激変緩和措置として交付することとしておりまして、平成六年度予算案におきましては、所要額二百三十八億円を計上しているところでございます。  そこで、関係三府県に対しましては、先ほど委員から急な話ではなかったかというお話がございましたが、昨年八月の平成六年度予算の概算要求以降、九月に開催されました都道府県教育委員会委員長、教育長会議平成五年度補正予算の編成過程など個別の機会をとらえて、平成六年度においては富裕団体調整について何らかの制度改正を行わざるを得ない状況であること等の説明を行いまして、理解を求めてきたところでございます。  そして、本年二月十日の平成六年度政府予算案内示の前でございましたか、本年一月二十四、二十五日の両日、三府県の来年度の予算編成作業への影響等を考慮いたしまして、三府県の教育長に対しまして私から直接今回の制度改正の具体的内容及び平成六年度における富裕団体調整額の三分の一相当額を措置する激変緩和措置の内容等について説明を行いますとともに、一月二十六、二十七日の両日には、教育助成局担当の大臣官房審議官が三府県に赴き、各府県の総務部長に対して説明を行い、理解と協力を求めたところでございます。  各団体とも厳しい財政状況にあることは承知しているわけでございますが、各県からもこれらについての見直しについて要望を受けたことは、先ほど委員からお話があったとおりでございます。しかし、各県におきましては、これらの国としての措置によりまして、それぞれ適切に対処していただいていると考えているわけでございます。  具体的には、神奈川県及び大阪府におきましては、今回の制度改正を踏まえた平成六年度当初予算が編成されているわけでございますし、また愛知県におきましては、国の制度改正を踏まえて今後平成六年度予算補正措置を講ずる予定であるということを聞いているわけでございます。したがいまして、三府県におきましては、今回の制度改正及びそれに伴う措置というものを踏まえた適切な対応をしていただいているというように私どもは承知しているところでございます。
  180. 中島章夫

    中島(章)分科員 今、適切な措置でそれぞれやりくりをしてというお話でありますけれども、もう一度伺いますが、こういうある特定の年度に補正額が急に出てくるということの矛盾を十年も前から研究をしてきたのだというお話、それは、都道府県等を巻き込んでその人たちの耳にどれくらい届いていたのかということと、私も九月に教育長や都道府県教育委員長会議があったのは知っておりますが、またそこで担当者会議が開かれても、何らかの形でこの問題に手をつけるという程度では、百億を超えるようなそういう深刻な話が飛び出すのかどうか本当にわかったのかどうか。  実際に、私どもの場合には神奈川県に聞いてみたわけですが、一月二十四日に話を聞いて、そして一月二十七日に審議官が総務部長を訪れてというところでしか本当にそういうことが行われているのはわからなかったという事情がありますが、その辺について、これは大事な国と県との関係、それで、これは国が言えばごもっとも、ほかに補助金もたくさんもらっておるんだし余り盾突くわけにいかぬ。私は、これが一番いけない。これは義務的経費でもありますし国の負担金でありますから、きちっとルールで決まっているものは明確にして、それは義務教育の大事さから考えて、そこに流していくというのが筋ではないかと思うわけです。  こういうルールを新しくつくり出して変えるということについて、今までどういう勉強をしてきて、それが各都道府県、当該都道府県等にどういうふうに伝わっていたのか。特に昨年の九月以降、私は少なくとも、先ほども申しましたように十月、これは日にちのことを別にぎちぎち詰めたいと思っているわけじゃないのです。ことしになって急遽出てきたという感触を私は持つものですから、大蔵省とも相談をしてこれでいこうという話になって出てきたように思うものですから、それならそれで事前にそういうことをきちんと当事者、教育長なり知事なりというものに、本当に予算編成をするところに伝わっていたのか。  私が聞いた限りでは、その辺が伝わっていなかったのではないか。それは、国で決めれば都道府県は何とかやるわという感じじゃなかったのかという感じを持つものですから、もう一度その経緯を伺いたいと思います。
  181. 井上孝美

    ○井上政府委員 実は富裕団体の調整につきましては、昭和二十八年以降、交付団体あるいは不交付団体のいずれになるかというのは、先ほども御説明いたしましたように、八月の普通交付税大綱の決定の時期にそれが決定するということで、国、都道府県にとって財政的に非常に不安定な状況にあったわけでございます。  したがって、国あるいは地方団体において、都道府県の財政状況が非常に厳しくなって、昭和五十六年以降交付団体になったり不交付団体になったりというのが、神奈川県、愛知県、大阪府について見ましても、その年その年で変化をしてきたという推移があるわけでございまして、年度途中で交付団体あるいは不交付団体になるというのは、国にとってもあるいは都道府県にとっても財政運営に非常に不安定なことであるということから、先ほど委員からお話がございましたように、十数年、国の財政再建時期が五十七年に始まったわけでございますが、その段階からやはりこれは一つの研究課題として関係省庁で検討を行ってきたことは事実でございます。  そして私どもは、急に昨年の八月段階で平成五年度予算補正が必要になる、それも約六百五十億の追加財政需要があるということから、三団体に対して、事前にこういう交付団体への移行という状況を私ども掌握していなかった、まだそういう話を聞いていなかったということもありまして、本来であれば、国の財政事情が富裕団体の措置については制度の見直しを行わざるを得ないというような非常に厳しい状況であるが、年度途中ということもあって、今年度については何とか既定予算のやりくりなり補正予算の措置によって六百五十億を全額措置するが、来年度についてはとても国の財政事情からいってその全額を措置することはできない。  したがって、三府県が不交付団体から交付団体に移行したのは、まさにこの義務教育費国庫負担制度始まって以来初めてのことでございまして、そういう点から、これらについては、特に国の財政事情が厳しいということもあり、その制度改正を行う必要があるということは、先ほど申し上げました九月の都道府県教育委員会委員長、教育長会議以来私のところに個別に三府県の教育長が見えたときには、必ず平成六年度については富裕団体調整の制度改正を行わざるを得ないということについてはお話をしてきたわけでございます。したがって、具体的に、最終的にやるというふうに決まりましたのは、先ほど申し上げましたような一月二十四、二十五日に三府県の教育長に御足労いただいて、私から御説明したという経緯があるわけでございます。  いずれにいたしましても、これについては、先ほど三府県が、神奈川県、大阪府については当初予算で適切に対応していただき、愛知県についても御理解をいただいて補正予算で措置していただくという状況でございますので、御理解を賜りたいと思います。
  182. 中島章夫

    中島(章)分科員 今のような御説明でありますけれども、財政、特に県税収入が非常に大きな欠損になるバブル後のこの時期に行われたということにもう一つ問題点が、最初に申しましたようにございます。  先ほど申しましたように、いっとき、平成元年ごろには約二分の一を超えていた法人税収入が全体の三分の一にまで落ち込んでしまった、額にして半分になってしまった、こういう時期であったということについては、どのように配慮されたのか。  特に、大蔵省の担当者に聞きますと、それは各府県等には十分文部省から連絡をとってやってもらっていることを前提にして考えているんだ、当然そう言われるでしょう。その辺の大蔵、自治との相談の経緯等も若干含めまして、バブル崩壊後の、県に言わせますと、財政調整基金というのも昨年度中に全部食いつぶしてしまっている、そういう状況で、この義務的経費が自分たちが予測したのに比べて百億も削られる。  その辺について、非常に大きな国に対する不信というのでしょうか、いまだにくすぶっているわけでありますけれども、その点についてお答えをいただきたいと思います。
  183. 井上孝美

    ○井上政府委員 お答え申し上げます。  先ほども御説明申し上げましたように、昨年八月に普通交付税大綱が決定されまして、三団体交付団体に移行するということから、それらの追加財政需要の六百五十億を措置しなければいけないという段階から、財政運営の観点から極めて不安定である富裕団体調整にかかわる従来の制度の見直しが必要となってきたということでございまして、私どもとして、そういう段階から関係省庁とも十分協議を重ねながら、先ほど申し上げましたような経緯でこの制度改正を行い、またそれに伴う激変緩和措置を講じたということでございます。
  184. 中島章夫

    中島(章)分科員 これ以上伺いましても、最初に申しましたように、国としてこの制度、今御説明があったように、年度の途中にならないとそういうことがわからないという不安定さは何とか解消したい、これもよくわかります。  しかし、国と地方とのつき合い方ということは極めて大事だと私は思っておりまして、法令で決まっていて、しかも、義務教育費という大事な義務的経費について、これは国の負担金である、それについては今までルールが決まっていた、そういうことで、昨年たまたま交付団体になって、これだけの額を期待をしていた、そこへ、突然新しいルールがしかれた、補助金に応用しているような、そういう過去三年間の財政力ということで、有無を言わさぬような形でひとつつくっておいて、私からすれば、これぐらいの額が落ち込みますよという事前の話ではなくて、それを押しつけたというふうに私には思えるわけであります。  そういう意味で、こういう部分はこれから、国それから都道府県あるいは市町村というのは補助金も含めましてたくさんのつき合いがあるわけでありまして、これは義務的経費でありますから、これをつけてやる、あるいはつけてやらないという筋合いのものではないのではないかと私は思っております。そういう意味からは、先ほどお話がありました一般財源化というのは私自身は大事なことだと思っているのです。  これから地方主権ということになれば、大事なその地方で行われるような学校のいろいろな経費等について都道府県が計画を立て、そして財源は国からもらって、それを責任においてつけていく。国が一々あらゆるものに関与するということは徐々に外していかなきゃいかぬと私は基本的に思っておりますが、今回のこの決め方というのは、ほかの大半、四十四の県については特に直接関係がなかったわけですが、たまたま私が相談を受けました神奈川県については、いまだに大変矛盾を抱えた制度であったという声が強かったものでありますから、その点をあえてただしたわけであります。  今のこのやりとりをお聞きいただいて、大臣にもし御感想があれば、ある意味で、国の補助金なら問題はなかったと私は思うのです。義務教育国庫負担法といったような法律によって行われます国の負担金の配分について、こういう県財政の情勢あるいは県への説明が不十分なまま行われたということは大変遺憾に思っておるもので、その点について、今後のいろいろなことにこれは影響してくることだと思いますもので申し上げたわけで、もし御感想があれば言いただければありがたいと思うのです。
  185. 赤松良子

    ○赤松国務大臣 ただいまのお話はいろいろ承っておりましたが、これは本年度の予算編成の過程でいろいろ井上局長から聞いておりまして、それは三府県に大変御迷惑をかけるんじゃないかという気持ちは私もとても持ちましたが、何分非常に厳しい財政の中でのやりくりでございまして、局長は神奈川を含めて三府県についての交渉あるいはお話はいろいろ一生懸命やっていたように私は印象を受けておりまして、今後とも、こういうことが起こる場合には、それはぜひ必要なことだというふうに思っております。
  186. 中島章夫

    中島(章)分科員 ありがとうございました。  以上で質問を終わります。
  187. 山本拓

    山本主査 これにて中島章夫君の質疑は終了いたしました。  次に、池田隆一君。
  188. 池田隆一

    池田(隆)分科員 まず、今細川政権から引き続いて羽田政権になっているわけですけれども、連立政権の目玉としてまず政治改革が挙げられ、そして地方分権が大いに論議をされています。まあ規制緩和の問題もあるわけですけれども、まず最初に、地方分権のかかわりで、教育の分野において地方分権をどのように進めようとお考えになっているのか、その辺のところからまずお聞きをしたいと思います。
  189. 吉田茂

    吉田(茂)政府委員 学校教育におきます地方分権につきましては、現在のおおよその形でございますが、御案内のとおり、高等学校以下の学校教育におきます役割の分担は、教育行政の、特に中心となります学校の設置、運営あるいは教員人事、こういった多くの部分は地方公共団体が担っております。国の役割は、基本的には学校制度の枠組みの整備あるいは学校の設置基準や教育課程の基準など各種の基準の制定のほかは、地方公共団体に対する指導、助言、援助、これが主体となっております。  御指摘のような地方分権推進につきましては、現在、平成六年二月十五日に閣議決定されております中期行革大綱に沿って政府全体で検討が行われておる。文部省におきましても、この政府全体の方針に沿いまして国の関与あるいは機関委任事務等について現在検討を進めているという状況でございます。
  190. 池田隆一

    池田(隆)分科員 確かに、文部省の機能としては地方教育委員会を指導助言をしていくという分野が非常に多いという理解はしています。私も教職の経験が二十数年間あるわけですけれども、それとともに教職員組合に属していまして、その辺の教育委員会権限というものも十分わかっていますけれども、最終的なところ、その指導助言というものが文部省に行き着いてしまう、その辺の壁がどうしてもあるのではないかという感じが強くしているわけです。  そういう意味では、各地方の教育委員会や各学校現場では地域に密着した創造的な教育というのが問われているのではないか。二十一世紀にわたって郷土から教育を考えていく、そして日本の教育を考えていくことが重要な問題として挙げられるのではないか。教育の地方分権という一つの言葉でくくってしまいますけれども、そういうような地方を大事にする教育のあり方ということが今後ますます重要になってくるのではないかというふうに私自身は考えています。  そういう意味で、今それぞれの考え方というものをお聞きしましたけれども、具体的にどのようなものを検討なさっているのか、教育の地方分権を、地方を育てていくという観点から具体的にどのようなものを検討なされているのか、わかる範囲で教えていただきたいと思います。
  191. 吉田茂

    吉田(茂)政府委員 御指摘のとおり、現在政府全体の方針に沿って、ただいま申し上げましたような国の関与あるいは機関委任事務等についての検討を進めておるところでございます。  具体的な方向性は、まだ検討中の事柄でございましてそれが浮き彫りになっていないわけでございますが、いずれにいたしましても、今後の検討といたしましては、さきに述べました教育行政分野におきます国と地方の役割分担、この考え方にのっとりまして、行政改革推進本部地方分権部会等における検討の状況を踏まえまして対処をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  教育行政分野において地方が現在多くの分野を担っておるわけでございますが、一方、国の役割もございますわけで、国は基本的に、憲法二十六条による教育を受ける権利であるとか教育の機会均等、こういったものについて努力をしていかなければならないし、同時に、全国的な教育水準の維持向上等、すぐれた人材の育成を図るという国に課せられた責任を最善の努力を図りながら全うしていかなければならない。それと裏腹に、また地方の役割があるわけでございます。その両者の役割分担をいかにやるべきか、これは非常に困難かつ重大な問題でございますので、そのあたりを十分見定めながら鋭意検討を進めてまいりたい、こう考えております。
  192. 池田隆一

    池田(隆)分科員 そうしますと理念的なもので、具体的な項目といいますか、今この段階で挙げられるものはないというふうに理解してよろしいでしょうか。
  193. 吉田茂

    吉田(茂)政府委員 現時点では、御指摘のとおり具体化はしておりません。
  194. 池田隆一

    池田(隆)分科員 地方分権を進めることによって地方が財政負担も含めて大変になるということは地方も期待していないわけでして、そういうようなことではなくて、法を改正することによって、権限移譲していくということで地方の活力がみなぎってくるような教育制度のあり方を模索していく必要もあるのではないかということでございまして、具体的な問題で提示をしたいと思いますけれども、人事面で、現在の市町村段階、県段階の教育長の任命の手続はそれぞれどのようになっていますでしょうか。
  195. 井上孝美

    ○井上政府委員 お答え申し上げます。  教育長につきましては、地方教育行政の組織及び運営に関する法律に基づきまして、都道府県、指定都市教育委員会は文部大臣の承認を得て、市町村教育委員会は都道府県教育委員会の承認を得てそれぞれ任命することとされております。  具体的には、まず任命権者である各教育委員会が教育長候補者を選任し、都道府県、指定都市の教育長につきましては文部大臣に対して、市町村の教育長につきましては都道府県教育委員会に対して承認を申請し、文部大臣あるいは都道府県教育委員会の承認を得て、各教育委員会における任命という手続を経て行われているところでございます。
  196. 池田隆一

    池田(隆)分科員 市町村についてはまず教育委員にならなければだめですね。教育委員になってから、その人の中から教育長を首長さんが選任をして、議会の同意を得て、なおかつ県段階での承認を得る、こういう理解でよろしいですね。  県段階は、特段教育委員でなくてもいい、首長の方で、知事さんの方で選任をして、教育委員会の同意が必要なんですか、そして文部大臣の承認を得る、そういうことで県としては任命をしていくという形をとりますね。これは議会の同意は必要ないわけですけれども、こういう県段階と市町村段階での違いがある。この手続の違いというのは、どうしてこのようになってきたのか。
  197. 井上孝美

    ○井上政府委員 お答え申し上げます。  教育長は、教育委員会の指揮監督のもとに教育委員会権限に属するすべての職務を具体的に執行するなどの職務を行う教育行政の専門家として教育委員会に置かれるものでございまして、レーマンたる教育委員で構成される合議制の教育委員会と教育行政の専門家である教育長が相互に役割を分担し、調和のある運営が行われることが期待されているわけでございます。  市町村教育委員会の教育長が当該教育委員会の教育委員の中から任命されることとなっているのは、市町村、特に小規模町村の財政事情等の実情にかんがみまして行政機構の簡素化を図るためにとられている措置でありまして、都道府県、指定都市の教育委員会の教育長については、教育委員と兼務しない専任の教育長を置くものとされているところでございます。  なお、教育長の選任につきましては、先ほど手続のところで申し上げましたように、都道府県の教育委員会におきまして選任をして文部大臣に承認申請するという手続で行われているところでございます。
  198. 池田隆一

    池田(隆)分科員 それでは、県段階の教育長については文部省として承認行為をするという形に法的になっているわけですけれども、いろいろお話を聞きますと、実際本人に会って人柄等を確かめた上で承認をしているというようなお話を聞いています。面接があるのではないかというようなお話を聞いていますけれども、文書だけといいますか、そういう書類だけで承認をしているのか、面接が実際に行われているのか、されているとすればその中身はどのように行われているのか、そのあたりをお尋ねしたいと思います。
  199. 井上孝美

    ○井上政府委員 お答え申し上げます。  教育長は、その職務の内容、職責の重要性にかんがみまして、教育に関して専門的識見を有し、行政にも練達した人材であることが望まれるわけでございます。このため、文部省といたしましては、教育長の任命承認に当たりましては、都道府県教育委員会からの任命承認申請書により、教育長候補者の経歴、選考の経緯等について拝見いたしますとともに、教育長候補者と直接お会いして、その識見などについてお話を伺うこととしているところでございます。
  200. 池田隆一

    池田(隆)分科員 いわゆる面接といいますか、実際に会って、本人の人柄等を含めて、今のお答えでいけば識見、力量、法的には「高潔」なというようなことも書いてありますが、そういうような形での面接が行われているという形ですけれども、具体的にはどんなようなことを本人に会ったときにお聞きになっているのか。その辺の例が、もしあれば示していただければありがたいと思うのです。
  201. 井上孝美

    ○井上政府委員 都道府県教育委員会の教育長につきましては、当然、当該県の教育委員会が所掌する行政全般について専門的な識見を持っているかどうかということが必要でございますし、そういう意味から、それぞれの県における教育界の現状認識なりそれらについての識見、そういうものについてお尋ねしているところでございます。
  202. 池田隆一

    池田(隆)分科員 実は、資料として、都道府県のそれぞれの現教育長さんの前歴というものをちょっと拝見させていただきました。そうしますと、要するに国の段階からといいますか、文部省自治省ですけれども、派遣といいますか任命をされているというのがあるわけですが、いわゆるこの承認行為というのが過去、各県段階から上がってきた段階でクレームをつけたり、かえさせたりというようなことが最近五カ年ぐらいで実際問題としてはあるのかどうか。  それから、今前段申し上げましたけれども、それぞれの県の地方自治の観点からいっても、いろいろ特色を持った自治をしていかなければならぬ、またそれが郷土の問題としていろいろあるわけですが、この文部省自治省から派遣のような形で教育長が行くということの問題を含めまして、どのような認識でおられるのか、その辺をお尋ねしたいと思います。
  203. 井上孝美

    ○井上政府委員 まず最初の第一点につきましては、都道府県教育委員会の教育長の任命に当たって、文部省としてクレームをつけたことは最近五年間にあるかどうかというお尋ねでございますが、そのような事例はございません。  それから第二点のお尋ねでございまして、教育長にどういう人材を起用するのが適当と考えているのか。先生から資料要求がございまして、各都道府県教育長の前職について差し上げているわけでございますが、教育行政を担当する重要な職でございます教育長には、先ほども申し上げましたように、教育に関する専門的識見を有し、行政にも練達した人材を確保することが必要でございまして、その職責から見まして、教育行政歴または教職歴を有することが望ましいと考えております。  教育長にどのような者を選任するかは、第一義的には任命権者でございます当該教育委員会の判断にゆだねられているわけでございますが、文部省といたしましては、都道府県教育委員会に対し、そのような経歴を有する者の確保に努めるよう指導をしているところでございます。  なお、各都道府県において、これらの経歴を有する者の中に教育長としての適任者が見当たらな  い場合には、教職または教育行政歴は有しないが、教育に関する何らかの識見を有し、行政に練達した者を教育長に選任することもやむを得ないと考えるわけでございます。したがいまして、広範な人材を都道府県の教育委員会として当該県の教育長として選任するということは当然あり得るわけでございまして、文部省としては今後とも教育長に適材を確保するように指導したいというように考えておるところでございます。
  204. 池田隆一

    池田(隆)分科員 いろいろその教育長人事の中で、いわゆる県レベルでも市町村レベルでも、三役人事みたいな認識で人事が行われていくというような側面がございます。そういう意味では、その三役のポストを得るという形のみにとられてしまいがちないわゆる教育長の仕事の重要さからいって、教育に精通をしている、また理解を示して進めていくという部分では、この人事というのは極めて重要だろうというふうに思っています。確かにそれを補完する制度として教育委員制度があり、そのことに対して意見を申し上げていくという形もあるわけですけれども、事務執行していくという部分においては極めて重要な職だというふうに考えるわけです。  それが県のレベルでは文部省の承認、そして市町村の段階では県段階での承認というような形を経なければならないということは、これこそ地方分権制度をゆがめているのではないか。地方に任すべきは任せる。特に市町村の部分では、教育委員の中から選任をしなければならぬ、選ばなければならぬ、議会の同意も必要だ、こういう形になっているわけですね。  だとすれば、議会で承認をした者をなおかつ上部機関として県段階の教育委員会に具申して、いかがですかと聞くスタイルは本当にいいのかどうか。それから、その市町村を含めての県のレベルの問題を国の段階でいかがですかという、これもまた市町村のように、どうしても必要ならば県議会の同意を得るという形の中で済んでいいことではないか。  県の段階、市町村の段階の自律性というものが地方分権では極めて重要視されてくるわけですね。それが市町村の段階ではそういうふうになっているわけです。何か他の機関の、上部機関という表現がいいのかどうか別にしまして、そこの顔色を見て決めていくということになりますと、過去五年間等を含めましてそういうようなことがなかった、クレームをつけたことがなかったということは言われているわけですけれども、何となく先取りをしてしまうという形もあってはいけないし、また教育長のあり方、任命のあり方が、県段階が特に議会の中でも論議するということもあってもいいのではないかということから、この辺の地方教育行政の組織及び運営に関する法律改正をも含めまして、地方分権の最たるものとして、教育の部分での最たるものとして変更していくということがどうしても今の時代には必要ではないか、特段大きなものをかけるわけでなくて、権限移譲をするだけですから。そういうことは文部省としては現段階でお考えになっているかどうか、その御所見をお伺いしたいと思います。
  205. 井上孝美

    ○井上政府委員 お答え申し上げます。  教育長の任命承認制度は、地方自治を尊重しつつ、国、都道府県、市町村が相互に連携を密にし、全国的に教育水準の維持向上を図りますとともに、地方教育行政のかなめとなる教育長に適材を確保するために設けられているものでございます。  過去、旧教育委員会法のもとにおきましては、資格要件または任用資格を定めておりましたが、昭和三十一年の地方教育行政の組織及び運営に関する法律の施行に際して、教育長に適材を得ることに必ずしも結びつくものではないというそれまでの制度の運用の実態に照らしまして、これにかえて、幅広く教育長に人材を求めるための制度として任命承認制度が設けられたところでございます。  この任命承認制度をめぐりましては、臨時教育審議会等におきましても種々御議論をいただいたわけでございますが、この教育長の任命承認制度の必要性については御理解をいただいているところでございまして、そういう点からも、このような現行の教育長の任命承認制度の趣旨、経緯を考慮いたしますと、今後ともこれを維持する必要があるというように考えているところでございます。
  206. 池田隆一

    池田(隆)分科員 細川政権から始まって、そのときに地方分権をしたい、地方に自律を求めて活性化をしていきたい、そういう立場から、国と地方の権限というものをどう移譲していくのか、考慮していくのか、今その側面にあるわけですね。  まさしくこれは教育長の、地方の責任者が、地方がみずから決めるということでの極めて重要な問題が、県の任命では文部省が関与している、各市町村のものはそれぞれの県段階が関与していくということは、本当に今の時代からいって逆行しているのではないか。膨大な金がかかるということであればその理屈もわかりますけれども、ただ人事の公平化、そういうような形の中から文部省が関与するという理屈がないのではないか。そういうふうに思うわけでして、大臣としては細川政権から続いて大臣をお務めになっているわけですので、その辺の御所見はいかがなのか、お聞きをしたいと思います。
  207. 赤松良子

    ○赤松国務大臣 ただいま教育助成局長からるる申し上げておりましたが、過去からの経緯等も伺っておりまして、やはりこの制度は非常に重要な、現在の教育制度の中で根幹をなすものだという認識も持っておりまして、現在のところ、この制度を適切に運用していくことがよろしいのではないか、かように思います。
  208. 池田隆一

    池田(隆)分科員 ちょっとすれ違いのようですけれども、そういう考え方を十分踏まえてやっていかないと、地方分権を教育の部分から考えていくというときにも、ある面では非常に制約になつてくるのではないかということを思いますので、今後大いに検討していただきたいということを要望しておきます。  時間もなくなりましたので、父母の教育費の負担軽減の問題について。  今子供を育てていくのに非常にお金がかかるということが言われています。子供の数が大変減ってきている、出生率も一・五を切るような状況、この中で、やはり子育てにお金がかかるということも子供を産み育てないという要素になったとすれば、非常に不幸なことでございます。それで、この辺のところを、お金のかからない子育てをしていくということで学校教育の側面からどういうふうに認識されているか。これは高校入試の問題、大学入試の問題、いろいろかかわるかもしれませんけれども、そのことも含めて御見解を簡潔にちょっとお願いをしたいと思います。  それから、時間がないのでもう一点、今公共料金のストップということが羽田政権の目玉でうたわれていますけれども、国立大学の授業料が上がるということで、この辺もあわせてストップするお考えが今のところであるのかないのか、これを簡潔にお願いをしたいと思います。
  209. 吉田茂

    吉田(茂)政府委員 前段の御質問に対してお答え申し上げたいと思いますが、国民の意識調査によれば、やはり子育ての費用の負担が大きいということが一つの原因ではないかというとでございます。  文部省では、教育の機会均等の実現ということで、父母の教育費負担が過大にならないようにということで、従来から予算面それから税制面などのさまざまな措置、同時に受験競争の緩和とゆとりある教育の確保のための諸施策、こういうものを推し進めたいということで取り組んでおるところでございます。
  210. 遠山敦子

    ○遠山政府委員 国立大学の授業料につきまして、その引き上げを凍結すべきではないかというお尋ねでございますが、このことに関しましては、物価問題に関する関係閣僚会議におきまして公共料金についての政府の基本方針が決定されまして、五月二十日には、既に政府において決定または認可されたものを除き本年中はその引き上げの実施を行わないものとして閣議了解がなされたところでございます。  国立大学の授業料につきましては、既に平成七年度入学者から改定することを平成六年度予算案として政府決定しているところでございまして、今回の措置の対象にはならないで改定するということになるわけでございます。今後、基本的な方針を踏まえながら、諸情勢を総合的に勘案して対処していきたいと考えております。
  211. 池田隆一

    池田(隆)分科員 校舎建設のあり方等を含めて質問を用意していたのですけれども、時間が来ましたのでこれで終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  212. 山本拓

    山本主査 これにて池田隆一君の質疑は終了いたしました。  次に、大口善徳君。
  213. 大口善徳

    大口分科員 私は静岡県選出の大口と申します。きょうは、我が静岡県にとって、また日本にとっても象徴ともいうべき富士山の世界遺産についてまず御質問させていただきたいと思います。  富士山は、多くのすぐれた文芸作品、絵画、版画、写真の題材として古代から現代まで取り上げられ続けております。まさに、万葉の古来より日本人の心情と深くかかわり、今日まで生き続け、日本人の心のふるさとと言われております。静岡県そして日本の象徴ともいうべき、後世に残すべき貴重な財産であります。さらに、美しい景観、豊かな自然、全世界においても知られた存在であり、国民共有、世界共有の財産と考えます。  富士山に対する大臣の御認識をお伺いします。
  214. 赤松良子

    ○赤松国務大臣 富士山をどう思うかということでございますならば、私、実はかなり長い間富士山のふもとにある須走というところに山小屋を持っておりまして、夏はもちろんでございますが、それ以外の季節にも暇があればよく行っておりました。季節ごとに変わる、あるいは一日の中でも朝、昼、夕方とまたこれは変わりまして、大変景観をエンジョイいたしました。これが日本の国民の心の中にも非常に大きな地位を占めている。  例えば、東海道を東京から大阪へもう何度往復したかわかりませんが、そういうときに必ずあの辺を通りますと、西へ向かって行くときは右側に座る、逆に東京に向かうときには左側に座って富士山を見たいという気持ちはずっと持っておりまして、これは決して私だけではないのではないかというふうに感じております。
  215. 大口善徳

    大口分科員 ただいま大臣から富士山に対する思いをお伺いいたしまして、これは大変心強く思うわけでございますが、昨年の十二月に、日本では初めて鹿児島県の屋久島、青森、秋田の日神山地、奈良県の法隆寺、兵庫県の姫路城が世界遺産に指定されました。  世界遺産につきましては、自然遺産と文化遺産の二つに大きく大別されるわけでございます。  世界遺産条約によりますと、文化遺産は、歴史上、芸術上、学術上顕著な普遍的な価値を有する記念工作物、建築物、遺跡等、要約すればそういうふうになると思います。  また、自然遺産につきましては、観賞上、学術上、また保存上顕著な普遍的価値を有する特徴ある自然の地域、脅威にさらされている動植物の種の生息地、自然の風景地など、このように定義は要約されると思います。  ところで、環境庁にお伺いしたいのですが、この世界遺産の中の自然遺産の選定基準につきましてお伺いしたいと思います。
  216. 菊地邦雄

    ○菊地説明員 御説明申し上げます。  世界自然遺産につきましては、世界遺産条約並びにその運用指針で選定の基準というのが定められております。  大要につきましては先生今おっしゃられたとおりでございますが、より具体的には四つに分類をされておりまして、地学的あるいは自然地理学的に非常にすぐれている、あるいは動植物の生態系というものが非常にすぐれて地球上で希有なもの、それから自然美あるいは自然的現象が極めてすぐれている、さらに、野生動植物の生物多様性というものを持ち、かつ特に絶滅のおそれのある種が存在するというような、概要でございますが、四つに大きく分かれた選定基準を有しているということでございます。
  217. 大口善徳

    大口分科員 富士山は、特色ある地形、多様で比類のない景観を有しておると思います。また、豊かな生物相を有しておる。  具体的に言いますと、日本一の高峰であり、玄武岩質の成層火山として世界有数の高さを持っている。富士山の発達の過程、成因は他の火山に比べて複雑であり、学術的価値が高い。多くの溶岩塚など独特の地形があり、噴火の歴史を今に伝えている。山ろく周辺に豊かな水辺環境と景観をつくり、文化、暮らしと深いかかわりがある。  駿河湾から優美な曲線を描きつつ、一気に我が国の最高地点である三千七百七十六メートルの頂上に至る雄大で崇高な美しさは、コニーデ火山の中でも世界に類例を見ないものである。また、ビュルム氷期以降に出現した火山で、独立峰で、本州中央部に位置している。氷河期の遺物とされるハイマツにかわりフジマツといういわゆるカラマツが高山帯の植生を特色づけている。また、暖帯から寒帯までの自然環境に対応する植物群落を見ることができる。そして、日本列島三千キロの植生の姿を濃縮しており、また貴重種も少なくない。また、本州、四国、九州だけに分布する六十四種の三分の二に当たる四十二種の哺乳類が生息しており、鳥類は全国約四百五十種のうち百八十五種が記録されている。  このようなこと等、いろいろ富士山については学術的にも研究されております。このような観点からこの自然遺産の選定基準に該当する、そう私は思うのですが、いかがでしょうか。
  218. 菊地邦雄

    ○菊地説明員 富士山につきましては、全くただいま先生がおっしゃられたとおりでございまして、我が国でも一番初めに指定された国立公園の一つでございます。そういう点で、日本において特にすぐれた風景地であるということについては全く私どももさように考えております。  ただ、世界自然遺産ということになりますと、先ほど申し上げた選定の基準に照らしましてかなり厳密な審査が行われます。そういう観点で、特に私どもといたしましては、富士山地域というのが必ずや世界自然遺産になるか否かという点につきましては、既にある自然遺産、世界で約九土地区が登録されておりますが、そういったところとの比較等も行いまして、関係省庁とともにより慎重な検討を行っていきたいというふうに考えております。
  219. 大口善徳

    大口分科員 ということは、富士山が世界遺産の選定基準に該当するか否かということを環境庁において今調査をしている、こういうふうに伺ってよろしいのでしょうか。そして、もしそういうことであるならば、いつをめどに調査を完了するのか、そのあたりをお伺いしたいと思います。
  220. 菊地邦雄

    ○菊地説明員 現在、最終的には世界自然遺産につきましては、関係省庁と申しておりますのは文化庁さんそれから林野庁さん、そして私ども環境庁で協議しながら決め、かつそれが合意に達した上で外務省を通じて推薦するということになります。  現在のところ、私どもといたしましても独自に、一体日本でどういったところが世界自然遺産に該当する場所であろうかという点について検討いたしております。先ほど申し上げました関係省庁で相互に意見を持ち寄りまして最終的に決めるということになりますが、現在のところはそれぞれの省庁がそれぞれの立場で検討いたしておるというふうに私どもは理解いたしております。
  221. 大口善徳

    大口分科員 自然遺産につきましては、環境庁の調査といいますか、いろいろ準備をする、資料をつくる、これも環境庁でやると聞いておりますが、そういう点で今独自の調査をしておるということですが、富士山もその中に入っておると聞いていいでしょうか。
  222. 菊地邦雄

    ○菊地説明員 私ども、日本じゅうの主として国立公園の中で一体どういうところが可能性がありゃなしやという点について検討いたしておりますので、そういう点では富士山も国立公園の当然ながら一つでございますので、検討対象という点についてはそのとおりでございます。
  223. 大口善徳

    大口分科員 ところで、昨年の第十七回の世界遺産の総会で、ニュージーランドのトンガリロ国立公園が、自然遺産に加えて文化遺産にも指定され複合遺産となった、こういうことで文化的景観という新しい概念が登場したわけでありますが、この文化的景観につきまして文化庁にお伺いしたいと思います。
  224. 林田英樹

    ○林田政府委員 先生御指摘のように、一九九二年の十二月に第十六回の世界遺産委員会におきまして、文化遺産登録基準に文化的景観に係るものが加えられたということがあったわけでございます。そしてまた、先生今御指摘のものが自然遺産に加えて文化的景観に係るものとしての基準にも合致するというような決定があったと聞いております。  しかし、昨年の十二月の第十七回世界遺産委員会におきましては、これについていろいろな議論が行われたようでございますけれども、各地域によって基準が異なり得る点に留意しなければいかぬのではないかとか、地域の意見を取り入れる必要があるのじゃないかというふうないろいろな意見があったようでございまして、これらの意見に基づいて適用基準についての検討作業を継続し、次回の世界遺産委員会において再度報告を行うというふうな形で、まだ具体的な内容については専門家の間におきまして検討中であると承知しておるわけでございます。
  225. 大口善徳

    大口分科員 では、文化庁といたしまして、富士山について、そうしますと、これは該当するとしましたら自然遺産の方向であるのか、そのあたりはどうでしょうか。
  226. 林田英樹

    ○林田政府委員 これは先ほど環境庁の方からもお話がございましたように、富士山につきましては、世界遺産として出すことが可能かどうか、適切かどうかということの検討をまだいたしておるところでございまして、具体的に、どの基準によって、どういうような形で出すというふうなことまでまだ検討が及んでいないという段階でございます。
  227. 大口善徳

    大口分科員 ところで、世界遺産の資質的要件につきまして、選定基準に合致するかどうかという検討が一つあると思いますが、さらにそれだけではなくて、世界遺産となった場合に、どう自然の保護をしていくか、これがまた非常に大事になってくると思います。世界遺産の範囲と、そして世界遺産の範囲となった場合に、それをどう保護していくかということが非常に重要なことになってくると思います。  そこで、今回十五年ぶりに環境庁そして静岡県、山梨県におきまして自然公園の線引きの見直しというものがなされておるということでございます。  この件につきまして、まず国立公園富士山地域の自然公園計画の見直しの状況、そして見直しをいつまでに完了するのか、そしてこれまで十五年間、十五年ぶりにこういうことが具体性を帯びてきたわけですけれども、その経緯についてお伺いしたいと思います。
  228. 菊地邦雄

    ○菊地説明員 私ども、国立公園につきましては、順次おおむね五年ごとに実はその状況を見直しまして、地域の皆様方と御相談をした上で適切な保護計画と利用計画を立案するということを順次いたしております。  富士山地域につきましては、実は昭和十一年に指定をされまして、その後現在まで、その都度微調整は行っておりますが、全体的な再検討と申しますか、調整をまだ経ておりません。  そういうことで、全体の国立公園につきましては昭和四十年ごろから順次やっておりますが、富士箱根伊豆国立公園の富士山地域につきましては今先生の御指摘のような状況で、環境庁が原案をつくりまして、静岡県それから山梨県の両県と、もちろん関係市町村を含めまして案の調整を急いでおるという状況でございます。
  229. 大口善徳

    大口分科員 これは地元の静岡新聞、富士は生きているという特集を組んでいるわけですけれども、その中で、公園計画の見直しについては、国立公園指定六十周年を迎える平成八年を目指して計画の見直しを完成させる、こういう記事があるのですが、このことについてはどうでしょうか。
  230. 菊地邦雄

    ○菊地説明員 私どもといたしましては、その平成八年までにはという、実は今そういう決意で諸事務を進めております。
  231. 大口善徳

    大口分科員 この自然公園の計画の見直しですが、今は要するに特別地域と普通地域、こういう形で指定されているわけです。それを今度は特別保護地区、そして第一種、第二種、第三種特別地域、そして普通地域、こういうふうに線引きのし直しをする、こういうふうに伺っております。  そういう中で、今までは特別地域は第二種相当ということでありまして、第二種と第三種で規制が違います。それはもう御存じのとおりです。そうなってきました場合、この第三種を認定しますとある意味では規制の緩和、こういうことになります。  今回の規制の見直しにつきまして、地元におきましては、公園の利用をむしろ大幅に緩和する方向と見られるということで、世界遺産との関係で心配をされている方々もいらっしゃいます。この点についてお伺いしたいと思います。
  232. 菊地邦雄

    ○菊地説明員 先生の御指摘のとおり、国立公園、国定公園につきましては、おむね特別地域と普通地域に分けまして、さらに特別地域を特別保護地区、それから第一種、第二種、第三種という地域分けをしてきめの細かい保護管理を行うということで計画を立案いたしております。  これは私どもの公園制度の場合、国有地ばかりではなくて一般の民有地等についても指定をする場合がありますので、そういったいろいろな私権との調整等を含めてそういった区分けをするということでございます。  富士山地域の場合、まだそこがなされておりませんので、実は特別地域ということで第二種扱いということでございますが、実際のところは、それぞれ運用上は、ただいま申し上げた一種、二種、三種、それぞれの状況を想定して管理を行っているというのが実態でございます。  今回の見直しにおきましては、その運用上行っているものを具体的な法律に基づく計画に落としていこうということでございまして、実態に合わせた制度にするということでございまして、規制の緩和というような観念で計画つくりがされているということは全くございません。
  233. 大口善徳

    大口分科員 そういうお話でありましたが、理解いたしますが、いずれにしても、この公園計画の見直しを完了することが世界遺産認定への大きな前進の一歩になる、こう考えてよろしいでしょうか。
  234. 菊地邦雄

    ○菊地説明員 世界遺産に関しましては、さきに登録されました、例えば屋久島の場合ですと、私どもの制度の場合、国立公園の特別保護地区でありますとか第一種特別地域、さらに白神を見ますと自然環境保全地域あるいは屋久島も原生自然環境保全地域というようにかなり強固な保護措置が備わっている地域ということでございます。  さらに、国有林におかれましても、森林生態系保護地域でありますとか、あるいは文化財保護法に基づきます。そういった指定ということで、三者三様にそれぞれが保護を行って、将来にわたってその自然が守れる、それを政府が担保したところが世界自然遺産になっておるわけでございます。  そういう意味では、富士山地域につきまして、私どものみの立場で申し上げましても、やはり前例に倣いますと、特別保護地区とか第一種特別地域という指定は不可欠であることは事実でございますが、見直し自体は、先ほど申し上げましたように、まさに早くやらなければいけない実務を粛々とやっているということでございまして、世界自然遺産ということ自体を意図してやっているということではございませんで、もっと以前からずっと続けて、おくれてしまっておるということでございます。
  235. 大口善徳

    大口分科員 平成五年六月に、静岡、山梨県で、自然保護団体でつくります富士山を世界遺産とする連絡協議会が設立されました。本年三月十三日から六月十二日まで三カ月間で、世界遺産指定を目指した百万人署名運動が現在展開されております。豊かな自然や文化に彩られた富士山を美しい姿で後世に伝えたいという深い願いと富士山に寄せる熱い思いから反響は大きくて、署名した人は静岡、山梨県、県内はもちろん、北海道から九州まで、知人から聞いてということで外国の方まで署名をされておりまして、九十万人を突破し、間もなく百万人を突破、達成することは確実な状況になっております。  私も静岡県民として、日本国民の一人といたしまして、この熱い熱い百万人の署名、これを何としても実現してまいりたい、そういう思いでいっぱいでございますが、この百万人の署名、この思いにつきまして大臣の方から御認識をお願いします。
  236. 赤松良子

    ○赤松国務大臣 百万人というのも大変な数だと思います。これは地元あるいは関係者の皆様方の大変熱い思いがこういう形になっているものというふうに認識しているわけでございまして、そういう意味で、富士山に対する思いというものはよく認識いたしております。
  237. 大口善徳

    大口分科員 富士山は、今、押し寄せる観光客のごみがあふれ、また開発に傷つき、山ろくの森が荒れたり、あるいは貴重な動植物が姿を消したりというようなことで、ある意味では危機に直面しているという面もあります。この世界遺産の登録へ向けての運動の中で、もう一度富士山というものをしっかりと守っていかなければいけない、そういう決意をしております。  続きまして、教科書への再生紙の利用について御質問したいと思います。  私、昨年十二月十四日に前の広中環境庁長官と対談いたしまして、その中で教科書に再生紙あるいは非木材紙をもっと積極的に使うべきである、こういう提案をいたしまして、広中前環境庁長官も、大変いいアイディアだ、予算委員会では隣同士で赤松大臣がいらっしゃるということで、これはしっかりと赤松大臣にもお伝えします、そういうことから、本年の四月十六日の朝日新聞にありますように、大臣にいろいろ御尽力いただきまして、文部省が作成している高校職業科の教科書に来年度から再生紙を導入する方向で検討に入った、こういう報道がなされました。そういう点では大変素早い対応である、そう思います。  この教科書への再生紙利用につきまして、大臣の決意をお伺いしておきたいと思います。
  238. 赤松良子

    ○赤松国務大臣 今御指摘ございましたようなこともこれあり、再生紙を教科書に使うということは、一つはシンボリックな意味もあるというふうに思います。  教科書課でございますが、ちょっと実情などを聞いてみましたが、教科書に使うことが量的にそれほどすごくたくさん再生紙を使うということには必ずしもならないような印象も受けましたけれども、教科書に使うということはいいことだというのは私もそう思います。ただ、技術的な面で多少問題がないでもないような説明もございましたが、そういう方向でもっと広げていくということはいいことだというふうに前向きに検討いたしております。
  239. 大口善徳

    大口分科員 平成四年五月の児童生徒数が一千九百二十九万人、平成五年度の教科書の総冊数か一億八千四百万冊と膨大なものでありまして、その中で再生紙を使っているのは非常にわずかである。  教科書会社のつくる教科書あるいは文部省著作の教科書、二つありますが、文部省については今まではゼロであった。来年からそれは使ってい一く。また教科書会社の教科書につきましても非常に少ないということですが、この現状についてと、あと教科書の副読本は一〇〇%再生紙を利用したものが出たというようなことも聞いております。この副読本についての再生紙の使用状況についてもあわせてお伺いしたいと思います。
  240. 野崎弘

    ○野崎政府委員 教科書への再生紙の使用状況ということでございます。これは文部省が把握している範囲内でございますが、中学校用教科書では十六点、それから平成六年度から使用されている高等学校用教科書では二十八点におきまして再生紙を表紙や口絵などに使用している、こういう状況でございます。  文部省著作の教科書に対する再生紙の使用のことでございますが、これは大臣から御指示もございまして、来年度から表紙や口絵などの一部に再生紙を使用していく方向で現在検討を進めているところでございます。  それから副読本の関係でございますが、これにつきましても社団法人で日本図書教材協会というところがございます。そういうところなどの教材関係団体に趣旨を伝えまして協力を求めてきているところでございまして、環境教育に関する副読本など一部の副読本におきまして再生紙が利用されるなど、徐々に利用が進んでいる状況でございます。今後とも十分関係団体に対しまして協力を求めてまいりたいと思っております。
  241. 大口善徳

    大口分科員 教科書が平成八年度改訂ということで、本年がその検定の年に当たっているということもあります。この教科書協会あるいは副読本の関係の日本図書教材協会等にも働きかけをしていただいて、再生紙の使用の拡大そしてまた再生紙の使用率の拡大、また副読本への再生紙の利用ということをしっかりとしていただきたいと思います。  また、環境に優しい教科書とともに、新聞にも出ておりましたけれども、環境に優しい学校、エコスクールですか、こういうことについても積極的に展開していただきたいと思います。  続きまして、時間ももうなくなってまいりましたので、少子化の問題についてお伺いしたいと思います。  平成元年一・五七ショックということで、平成四年には一・五〇と史上最低の出生率ということになったわけでございます。昭和四十八年は出生数が二百九万人でございましたが、平成五年は百十九万人台だということで、昭和四十八年からいきますと五七%になっている、四三%減になる、こういうことでございます。こういう中で、教育行政における少子化対策について大臣の御認識を伺いたいと思います。
  242. 赤松良子

    ○赤松国務大臣 御指摘のように少子化がどんどん進んでいるということでございますが、これはいろいろな要因があって、必ずしもこれだというわけにはいかないのではないかと思います。いろいろな原因をそれぞれに対応していくということだと思いますが、とにかく安心して子供を産めるような社会にする、そういう環境にするということが最も有効な方法なのではないかということでございます。  これからは働く女性というのはどうしてもふえていくわけでございまして、こういうことがもっと前に起こったら、女性が働くのはどうも少子化の原因なんだからそれをやめればいいじゃないか、やめればというか、やめられるような社会にした方がいいんじゃないかという考えも出てこないではなかったことでしょう。現在はそういうことではないのではないか。やはり女性は働き続けて、しかも子供を育て、それを喜んでできるような社会にするということを目指すべきではないかと思います。  そのためにいろいろな制度ももちろんございますが、意識の変革というのも結構大事な、これは教育の側面で解決すべきことではないか。意識というのはやはり家庭に対する、あるいは育児に対する父親の意識ということで申し上げているわけでございまして、学校教育、社会教育の面で父親の家庭への参加というのをより進める、これは男女共同参画型社会の実現というものの一環でもございますが、学校教育、社会教育の中で取り組んでいくことが、ある程度時間はかかるかもしれませんが、その方向は正しいというふうに感じております。
  243. 大口善徳

    大口分科員 時間もなくなりましたので、最後にやはり教育費の負担の軽減の問題、また子育てにおいて、子連れで気軽に行けるような文化社会施設の整備、あるいは学校開放、学童クラブとの関連もございますが、こういうことも積極的に進めていただきたいなという思いでおります。  本日はありがとうございました。
  244. 山本拓

    山本主査 これにて大口善徳君の質疑は終了いたしました。  速記をとめてください。     〔速記中止〕
  245. 山本拓

    山本主査 速記を起こしてください。  次に、寺前巖君。
  246. 寺前巖

    寺前分科員 九三年版の科学技術白書を読んでいましたら、若者の科学技術離れというのが出ていたのです。研究者の七一・三%が若者に科学技術離れの現象が起きているという感じを持っている。実際この間に大学の理工学部への志願者は、一九八六年には志願者全体の二五・六%を占めていたものが九三年になると一九・五%と下がっている。財界の皆さんも、このような若者の理工系離れの傾向は科学技術立国たるべき我が国の産業基盤を揺るがしかねないゆゆしき問題だということを言っています。一九九四年三月、これは財界の提言ですね。  最近では、日本物理学会、応用物理学会、日本物理教育学会の三学会か「理科教育の再生を訴える」という共同声明を出しておられる。「自然科学は人類が築き上げた文化の最も重要な要素の一つであり、高度に発展した現代文明を支える基盤である。しかるに、最近初等中等教育の段階で、学年が上がるに従って理科嫌いがふえていることが報告されている。この若者の理科離れと言われる事態、特に物理離れは我が国の将来にとって憂慮すべき問題である。」ということまで指摘をしているわけです。  小中高校の問題はきょうは抜きにして、大学教育の問題について、この理科離れという問題について文部省としてどういう見解に立っておられるのか、やはり同じ見解に立たれるとするならば、どんな対応を考えておられるのか、まず御説明いただきたいと思います。
  247. 遠山敦子

    ○遠山政府委員 今御指摘のように、各方面から理科離れの実態なりそれについての懸念なりが寄せられているところでございます。私どもといたしましても、これからの日本が一層発展して、しかも国際社会に質的な面で貢献いたしますためには、得意とする科学技術というものがさらに進展する必要がございまして、その意味で、理工系離れということがなるべく起こらないように、できれば大学における理工系の教育研究活動というものが魅力的なものとして若者に映るような形で今後力を入れていきたいというふうに考えております。
  248. 寺前巖

    寺前分科員 この間、新聞でしたか見ておりましたら、三月七日に高等教育局長の私的諮問機関である理工系分野の魅力向上に関する懇談会というのを設置されたようです。今もお話がありましたように、若者に魅力のあるようなものにしていきたいという御見解でした。  事実、文部省が全国の国公私立大学の学長や理学部長ら五十七名に緊急アンケートを行われておりますが、八割近い四十四人が最近優秀な学生が理工系の学部を志願しなくなったと回答しておりました。その理由はというと、現在の設備や教育内容では学生が十分に能力を伸ばせないという回答を四十一名の人がしておられる。  私は、こういうのを見て、実はこの問京都大学の理学部物理学教室を見てきたのです。かつて湯川秀樹さんなり、あるいはまた朝永振一郎さんを生み出したその部屋も見せていただきました。正直言ってこんなことでは本当に大変なことだなということをつくづく感じた次第です。  現在使用している学生用実験設備を見ました。一九五五年に製造したエックス線照射装置、今から三十九年前につくられたもので、絶縁が悪くてショートするため出力を下げて使用される。もう製造中止になっているため交換部品も手に入らない。また、真空紫外分光光度計というのも見ました。二十四年前の七〇年に製造されたもので、真空漏れを起こし性能も落ちるというもの、これも製造中止で修理部品のないものでありました。その他三十一年前や二十六年前に製造されたもので、真空管方式で保守部品が入手困難という代物がずらっとそれぞれの研究室に置いてある。  こういう中で努力をして、それこそ大和魂だ、あるいは名人芸だと言って奮闘しておられる先生のお姿を笑いながら聞いておったのですけれども、笑えない話になってくる。私はこういう事態を見たときに、これは若者に魅力があるようにと言ったって、先生の魅力だけで何とか格好をつけているなという感じしか受けないのですよ。  大臣、まだ見られたことがないのだったらぜひ見ていただきたい。こういう立派な人を生み出した大学なんかを見たときに、はたと私はそういう感じを持ちましたけれども、いかがなものでございましょうか。
  249. 赤松良子

    ○赤松国務大臣 先生は今京都大学のお話をしてくださいましたが、私は、去年の秋のことでございますけれども、京都はちょっと遠うございますから、東京で視察と申しますか、見に行って、これまた大変ショックを受けました。もうすごいひどさだ、今おっしゃったようなことに近いか、あるいはもっとすごいかというような状況でございました。それで、これはやはりひど過ぎると思いまして、もちろん設備や施設だけで学問ができるわけではないのは言うまでもございませんが、でも施設設備がそんなにひどいのではやはりそれは問題である、とても実感をいたした次第でございます。  それでどうしたかといいますと、それはほかにもいろいろあると思います、とりあえずは補正予算でかなりの額を要求をいたしまして、もし詳しいことを申し上げた方がよければ、局長は資料を持っていると思いますが、その補正予算、その後二次、三次とあったわけでございますので、それである程度の設備の改善は図れるのではないか。もちろん、十分というわけではございませんから、今御審議いただいております六年度予算もそういうことに配慮しているつもりでございます。
  250. 遠山敦子

    ○遠山政府委員 今大臣からお話がありましたように、先生御指摘のような問題の緊急性にかんがみまして、平成五年度予算におきまして教育研究環境の緊急かつ計画的な整備を継続的に進めるということといたしまして、国立文教施設整備予算の増額に努めまして、対前年度六十二億増の一千八十九億円を計上いたしておりますし、また三次にわたる補正予算におきまして、老朽狭隘施設の改善等のことを図るために三千二百余億円を追加計上したと亡ろでございます。  特に、今御指摘のように、理工系の学部学科におきます設備の老朽化ということに対応いたしますために、平成六年度予算におきまして、私どもといたしましては、大変厳しい財政状況下でありますが、幾つか工夫をした点がございます。これについてちょっと御説明をさせていただきたいと思います。  一つは学部教育ハイテク設備費というものを新規に措置することにいたしました。これは、現在産業社会におきまして設備の技術革新が大変進んでいるわけでございまして、大学においてそういう状況に対応して教育設備を整える必要があるわけでございますが、これまでなかなかそれができなかったわけでございますけれども、そのハイテク設備を整え得るようにするために、このための経費を計上しているわけでございます。  また、研究設備費につきまして、これは対前年度三十四億増ということで二百七十八億円増を措置をしているところでございますし、大学院最先端設備費ということで対前年度三億円増の約三十八億円の増額を図るというふうなことで、私どもとしては力を入れているところでございます。  以上でございます。
  251. 寺前巖

    寺前分科員 私が提起しているのは、要するに三十年も四十年も前のような、この三、四十年の間におけるところの変化というのは激しいものなのですね。すごい発展をしたわけでしょう。ところがそういう古い、もう更新させる機械もないようなもので一番基礎になるところの大学の教育をやっているようでは、大学院の方にはいろいろ今おっしゃったようなことをやったかしらないけれども、大学そのものの、ここの底辺のところに魅力が失われるともうとんでもないことになるということが問題なんです。  そこで、聞いてみたのですよ。原子核や素粒子、宇宙線物理の分野では八ないし十二人の、物性物理の分野では四ないし六人のグループで実験している。その予算は一体何ぼぐらいの予算をもらうのだと聞いたら、六十万から七十万で、これはずっと毎年一緒だと言うのだね。そうすると、六、七十万といったら何に使うのだと言うと、その古い古い機械を使っているものだから、そこらじゅうショートが起こったりいろいろ起こるから、そういうことをやったらもうそれでしまいなんだと言うのだね。だから結局機械の更新を一番発展した時期にやらぬままに来てしまっているんだ、ここが悩みなんだということを言う。  それで、ことしの予算を見ると、老朽化機器更新予算というのは十一億円組んでいる。去年ももちろん同じようなものを組んでいるというんだね。これでは、最先端を行くところの、かつて行ってきたところの大学教育そのものの中においては、これは手を打ったことにはなっていないというのが悩みとして提起されておるし、現に私は京都大学理学部で、先生方がおつくりになった「物理実験教育改革」という本をもらってきたのです。だから、結局こういう校費の改善をやらなかったらあかんなということをつくづく思うわけです。  大学の先生はこう言っていました。特定の分野が煙突の状態で伸びるというような予算の組み方はある、しかし、すそ野全体が枯れるというようなことをしておったら本当の意味の教育にならない。そういう意味では、今学部の空洞化ということが話題になっています。学部を空洞化させないようにしてほしいということで訴えられました。カリキュラムに見合った機器の更新と設備の設置を私たちは求めますと。  例えば、最先端を担う学部教育においてコンピューターとエレクトロニクスの設備がなく、これらの教育も欠如しているということを挙げておられました。実際、データを電算処理するのではなく電卓に頼っているというのが現状です。そのことを克服するために、基礎物理教育用計算機ネットワークシステムの導入の新設、こういうことを考えられないのだろうか。これだけでもわずか一億三千八百八十万円、全体の実験設備の新設導入を行っても五億七千三百万円という数字をはじいておられました。  こういう積極的改革案が出されておって、そして、理工離れや科学技術離れや、大学生よ理工に入れというようなことを叫ぼうと思ったら、このようなことの、要するに更新させるものの金額を積極的に組むということを考えてもらわなかったら、もう時代離れ、時代おくれも甚だしい。本当に切実な思いで、この話を聞きに行ったら、だあっと集まってきてこもごも、私は研究者かと思っておったら、教授でございます、何々教授と言われて、こちらが狭い思いをいたしました。  私、率直に述べさせていただいたのであって、ぜひ、御検討を大臣にしていただけるのかどうか、このことをお聞きしたいと思います。
  252. 遠山敦子

    ○遠山政府委員 大臣お話しいたします前にちょっと御説明したいと思いますが、先生のお話はやや極端であろうかというふうに私ども伺っております。  と申しますのは、教育研究の基盤的な経費といたしまして、基幹的教育研究経費ということで、毎年学生当たり、教官当たり積算校費を措置いたしておりますが、特にこれについては、平成六年度では一・八%増を見込んでおります。また、これにつきましては、実験実習関係の講座に対しては、それ以外のところに比べてかなり手厚い額を積算しているところでございます。  また、お話に出ましたカリキュラム改革等の大学改革ということが今起きておりますけれども、それを支援するために、その角度から新しくカリキュラムを見直し、そして実験実習というものを手厚くやりたいというふうなプランがありましたら、それに対応して教育設備というものを整えていくための経費として、平成六年度新規に三十億円を措置したところでございます。  先ほど申しました学部のハイテク設備費といいますものは、ハイテクという新しい設備ということを学部教育において実施していただくための経費として特別に措置したものでございますが、それ以外にも、今申し上げましたような各種の経費も考えているところでございます。  もちろん、長い間積み重ねられてきた、そういう、設備の更新がなかなかしにくかったという状況がございますので、一年とか半年でたちまちにというようなことはなかなか難しいかもしれませんけれども、昨年あるいは今年度というふうなことで、私どもも大変力を入れてまいっているところでございまして、今後ともそのような方向で努力をしていきたいというふうに考えているところでございます。
  253. 寺前巖

    寺前分科員 いろいろ御検討なさっていることだと思いますけれども、率直に言って、何十年も前の更新しなければならぬ期間であったものに即応する研究の設備が置いていないことは事実なんです。  それで、それはもとのあれもないような実態になっているということを見たときに、こういうものを更新させてやるために、五カ年計画でこうするとか積極策をやって、今の理科離れをしていくものを何とか乗り越えていこうという積極策に打って出ることを私は大臣に要望したいので、あと細部の問題は内部で御検討いただいたらいいと思いますけれども、そういう積極策が欲しいなということを率直に見ましたので、率直に大臣に申し上げたいというふうに思っています。
  254. 赤松良子

    ○赤松国務大臣 私が就任いたしましてから非常に何遍も聞く言葉というのが幾つかございますが、その中の一つに、大学設備等の老朽化、狭隘化、劣化というのがございます。それで、老朽化と狭阻化は割とよくわかったのですが、劣化とは何だろうと思いました。劣等の劣、下劣の劣、そういう劣でございますから、劣化、それはすごい言葉だと思いましたが、ただいま先生おっしゃったように、本当に劣化しているということでございます。  だから、そんな言葉は、何というか、聞くにたえないというか、よくない言葉なわけですが、その現状を認識するところからやはり次のステップは始まるのだというふうに思いますので、恥ずかしいことですが、老朽化、狭隘化、劣化、こう言って暮らしているわけで、それを一日も早く改善いたしたいというふうに思っております。
  255. 寺前巖

    寺前分科員 ぜひ御検討いただきたいと思います。  なおこの際に、関連して、学部教育充実のために技術職員の増員などサポートスタッフの増員も重要だと思いますが、現実に大学でどういうふうにやっておられるのかを見ますと、ティーチングアシスタントの問題があるのですね。大学院の方々が先生と一緒になって面倒を見ていくということをやっておられるのですね。その方々の報酬が九月、十月にならないと支給できないんだという話を、この間行って聞きました。  何でだと言うと、暫定予算の中に組んでいなかったからお金がないんだ、九月、十月まで出ませんから、採用するのはその時期になりますのやと。ほほう、こんな一緒になって研究の世話をしてくださっている人にやらなんだら、結局ほかにアルバイトに行かなきゃならない、そうでなくてもほかのアルバイトの方がましだと言われているときに、何でこういうものを暫定予算をちゃんと組んでやらないんだろうかなということを、私はそのときに感じました。それが一つ。  それからもう一つは、奨学金の問題ですが、大学院生の三分の一ぐらいの人しか当たらないんだ、だからアルバイトに走っていくという問題があるわけですけれども、諸外国などを見ると、実際に奨学金制度でこういう研究者を養成していくということを積極的にやっていますよ。日本の場合に奨学金が三分の一ぐらいの人しか当たらないという問題について、これはもっと広範な人たちに貸与制度をやるとか積極的に生かしていくように、何かそういうことをこの分野でも考えてもらえぬのだろうかということを感じましたので、この点についてどうでしょうか。
  256. 遠山敦子

    ○遠山政府委員 ティーチングアシスタント制度につきましては、優秀な大学院生に対しまして、教育的な配慮のもとに教育補助業務を行わせまして、大学教育の充実、院生への教育トレーニングの機会提供を図るということとともに、これに対する手当支給によりまして大学院学生の処遇の改善の一助に資するという目的のために、平成四年度からこの経費のための措置をとったところでございます。これは平成四年度からの制度でございますので、その配分に当たりましてやや時間がかかり、そして各大学の実際での使用に当たりまして配分の時期がややおくれる傾向にあったことは確かでございます。  このような経緯を踏まえまして、今年度の経費の配分につきましては、本予算成立の前ではございますけれども、昨年度末付で各大学に希望の有無を照会したりいたしておりまして、予算成立後速やかに執行できるよう準備を進めているところでございます。  同時に、今、暫定予算だから使えないというお話でございますけれども、こういうような経費につきましては、学内におきます経費の運用上の工夫、あるいは基幹的なといいますか、中心的な経費でございますので、予算執行のおくれによる影響が極力ないように適明な対処を指導しているところでございますし、また暫定予算の中でも使い得るようにしてあるわけでございます。その点はその趣旨の徹底が十分末端まで行き渡っていないかもしれませんけれども、私どもとしてはそういうふうに対応しているところでございます。
  257. 寺前巖

    寺前分科員 それでしたら実態をよく調べてください、一緒になって仕事をしたいと思っておられる方々は積極的に通年で面倒を見てもらうのは非常にいいと思いますので。  それから、奨学金の問題についてお答えがなかったのですけれども、ぜひこれは全体の皆さんに普及することができるように、僕はこういう分野は積極的に考えてほしいなと思います。  もう一点、せっかくの機会ですのでお聞きしたいと思いますが、学校の安全問題の件です。  ことしの三月一日に京都府下の亀岡市のある小学校で一年生の子供が焼却炉に落ちるという事件がございました。痛ましい事件でした。私、そういうことから学校の施設がどうなっているのだろうかなとこの間も見てきたところなんです。  調べると、京都の教職員組合が京都府下の学校を今中間的な点検をしておられるようですが、百八十カ所の危険箇所が見つかっている。床がはがれて生徒が転倒するおそれが二十八カ所、雨漏りで廊下が滑りやすいところが二十カ所、落下の危険のある窓枠が十二カ所、非常階段の不備が八カ所、緊急放送が不備なものが六カ所、ガスを使っているのにガス漏れ警報器がない、そういうようなところがずっと出てきます。  私もある学校へ行きましたら、プールの外周が四十五センチ幅ですから危険で立てないとか、そのブールのすぐ横が運動場ですが、バックネットがあって、バックネットのすぐ横に焼却炉があって、焼却炉には危ないから寄るなと書いてありますけれども、焼却炉に寄るなといったって、バックネットの近くですし、プールに入ろうと思ったらそこを通らなけねばならぬし、これは危ないなと思った。プールもさびついているぐらいですし、焼却炉もさびついているぐらいですから、長年それでやってきてよくぞ今日までもってきたものだとつくづく思いました。  それで同時に、朝日新聞を見ておりましたら、朝日新聞に、大阪で二割の学校が危険な状態になっている。私、子供の危険な問題というのは、気がついたときに全国的に調査をして対応するということを打って出なければいけないと思いますけれども、こういう問題についてどういう対処をしておられるのか、お聞きをしたいと思います。
  258. 井上孝美

    ○井上政府委員 お答え申し上げます。  委員からお話がございました調査につきましては、その詳細な内容を承知していないところでございますが、安全性の確保は学校施設整備におきまして最も優先されなければならない事柄であると認識しております。  このため、文部省といたしましては、学校施設整備指針を定めまして、安全性確保のための具体的な留意事項を示すなどによってその指導に努めておりますとともに、一定の年数を経た建物については耐力度調査等を行いまして、当該建物の危険等の状況の測定を行うように指導しているところでございます。  また、耐力度調査の結果、改築や改造の必要があると判定されました建物につきましては、その改築等に要する予算額を計上いたしまして、市町村の改築計画に支障のないように措置してきているところでございます。今後とも学校施設の安全性確保のために十分配慮してまいりたいと考えております。
  259. 寺前巖

    寺前分科員 いろいろやってきているのはわかっているのです。だけれども、考えてみたら、大阪で学校の先生が調べたら二割からの危険箇所がある。私もこの間見てきたら、そういうことになっている。こういう事態を踏んまえたときに、何らかの打って出ることを検討しなければいけないのじゃないですかということをお聞きしているのです。大臣、いかがでしょうか。
  260. 赤松良子

    ○赤松国務大臣 危険性というのは最もよくないことだと思います。ほかにもいろいろございますけれども、要するに、学生、生徒児童が安全に勉強できるということが一番基本的なことで、それが守られていないようでは本当に困りますので、そういうようなことがないように、要請があれはすぐにでも改善できると聞いておりますし、全体的な把握も必要だと思いますので、ぜひ今後とも十分気をつけてまいりたいと思います。
  261. 寺前巖

    寺前分科員 さっき奨学金の問題でお答えがなかったので、その点だけ。考えてくれますか。
  262. 遠山敦子

    ○遠山政府委員 育英奨学制度の充実につきましては、私どもの高等教育行政の中でも大変重要な仕事と考えておりまして、平成六年度の予算の中にも大学院の学生の急増に対応して育英奨学事業の量的拡充を図るということで、博士課程千五百人、修士課程二千人、合わせて三千五百人の増員を図ることとしているところでございます。  これは現状でございますけれども、大学院生にシフトはいたしておりますけれども、なお学部学生等に対する育英奨学金の拡充についても今回の予算案の中に計上させていただいているところでございます。
  263. 寺前巖

    寺前分科員 時間が来たのでやめますけれども、私が質問しているのは、そういう細部の数字を聞いているのではなくて、三分の一くらいしかもらえない状況になっているものを改善することを検討される必要があるのじゃないですかということを提議したのであって、大臣がお答えできるのだったらしていただいて、終わりたいと思います。
  264. 遠山敦子

    ○遠山政府委員 今の大学院の学生に対する貸与率でございますけれども、博士課程につきましては全体の五四・四%に対して貸与をいたすべく予算を計上しているところでございますし、修士課程につきましては二三・五%というところでございます。全体に院生の数がふえているところでございますが、その中で貸与率について私どもも今後とも留意をして適切に対応してまいりたいと考えております。
  265. 赤松良子

    ○赤松国務大臣 諸外国におきましては、大学のレベルまでただというところも結構あると承知しております。日本はそういうふうにはしない、高等教育は費用をいただく。しかし奨学金制度を充実して、学校へ行きたいあるいは行く能力があるのに大学まで行けないという人はなくしたい、授業料はただにはしないけれども、別途そういう方法で行けるようにして教育の機会均等というのを守りたいという方針だというふうに私は認識しております。だとすれば、奨学金はちゃんと払わないと首尾一貫しないわけでございますから、ぜひそういう方向を今後も充実させていきたいというふうに思います。
  266. 寺前巖

    寺前分科員 ありがとうございました。
  267. 山本拓

    山本主査 これにて寺前巖君の質疑は終了いたしました。  次に、大畠章宏君。
  268. 大畠章宏

    大畠分科員 日本社会党の大畠でございます。  事前に御通告していますが、現在の日本の教育上の幾つかの問題点について、関係当局並びに大臣の御意見等を賜りたいと思っております。  最初に、つい最近でありますが、またかという感じでありますけれども、いじめが原因ということで自殺をした中学校三年の男子生徒の記事が新聞で報道されました。昨年でしたか、マットに巻かれた少年が亡くなったという話が出まして、現在の日本の教育界の一つ問題点というのがクローズアップされた感じがしますし、それについては司法当局も入りながら、かつ文部省も必死に、二度とこのようなことが起こらないようにという対策を打ったはずでありますけれども、相変わらずこのような事件が残念ながら起こったということ、本当に心を痛めているところでございます。  私がこの教育問題に取り組んでいますのも、今福祉政策あるいは産業政策あるいは日本の外交や防衛問題等々がありますが、その根幹をなすのは教育だ、この教育がしっかりしてないと、どんなに経済的にうまくいったとしても必ず行き詰まるのではないか。アメリカの青年もまたヨーロッパの青年も一生懸命、今日の社会の中でどのような形で平和あるいは繁栄というものを共有する形でやるかということ、そういう行動をしているわけでありまして、日本の教育の方針というのがもしもこの世界の流れに即応できない、あるいは対応できないということであれば、将来、日本も大変な状況に至るのじゃないか。  私も今商工委員会に属しておりますが、日米貿易摩擦の問題あるいはまたいろいろな諸外国との関係において、やはり心が通い合うといいますか、自分だけが栄えればいいという感じじゃなくて、お互いに人間社会は助け合っていかなければならないということを根底としながら競争をしなければならない、そう思います。そういう中において、文部省も一生懸命頑張っていますが、相変わらず成績第一主義といいますか、戦後あるいは戦前から始まっていますが、日本の経済復興のため、あるいは産業界をいかにして振興するか、あるいはいかにすばらしいものをつくるか、そういう方針に余りにも文部省が乗り過ぎているのじゃないか。  これは、前回にも私は申し上げましたけれども、イギリスのBBC放送が日本特集をやったときに、戦前から戦中戦後の日本の教育というものをどのような形で取り上げたか。いわゆる産業、すばらしい製品をつくる、あるいはすばらしい経済力をつける、そういう意味での日本教育ではなかったのかという趣旨の報道がありました。  特に私はびっくりしたのでありますが、最近の文部省といいますか、戦後の文部省だと思いますが、例えば小学校でも、一〇〇%みんな子供たちが理解できるような教育、教科書の内容じゃない。中学校に入ると、今度は半分ぐらいの子供たちが理解して卒業すればいい、あるいは高校に至っては、私の記憶によれば多分三割ぐらいの子供たちが理解すればあと七割ぐらいは理解できなくてもいいというような方針で日本の教科書といいますか、そういうものができているというBBC放送の報道がありましたけれども、実際どうなんでしょうか。まず、それをお伺いしたいと思うのです。
  269. 野崎弘

    ○野崎政府委員 教科書についてのお尋ねがあったわけでございますけれども、学校で使われます教科書というのは、学習指導要領に示します各学年の学習内容、この範囲内でつくられておるわけでございます。特に、中学校段階でこれをお話しいたしますと、各教科等の内容につきまして、中学校段階におきまして確実に身につけさせるべき基礎的、基本的な内容に一層精選を図る、こういう趣旨でつくっているわけでございます。  ただ、先生、教科書についてのお話がございましたが、学校は教科書とそれから当然のことながら教師で成り立っておるわけでございます。したがって、私どもは、教科書を教えるというのじゃなしに、教科書で教えるということで、教科書を教材にしながら先生が具体的に基礎、基本的な内容というものを子供たちに教え、そして将来子供たちがそういうものを基礎にしてさらなる学習をしていく意欲を持たせていく、こういうことが大事だと思っておるわけでございます。
  270. 大畠章宏

    大畠分科員 教科書で教えるんだというのは、それはわかりますけれども、教科書の中身の問題なんですが、これは大学の入試の内容と非常に密接な関係があると思うのですね。最近の大学の入試の内容というのがかなり高度なものになってきている、難解なものになってきている。それを突破するために高校の方もそれに対応する教育をしなければいけない。その高校の方の入試も非常に難解なものになってきて、結局、中学校の内容もかなり難解にする。したがって、小学校の中でもそれなりに難しい内容にする。  ここら辺で私は、大学の入試というものを中心とした日本の教育内容じゃなくて、人間がどういう形で生きていくか、あるいは物に対する感動とか、あるいは人間としてこの社会の中でどのような形で生きるのか、あるいは人間として生きていく喜びはどういう形で得られるかとか、そういうものをもっと重視し、かつ、よく言われています、エデュケーションの語源エデュケートは詰め込むじゃなくて引き出すだ、そういう話源があるそうでありますけれども、どうも今の日本の学校教育全体が詰め込みになっているのじゃないか。これは過去二十年から三十年言われてきましたね。いろいろゆとりの時間とかやっても、どうもそこら辺がまだまだ方向転換できてないのじゃないか。  文部省として、一体どういう子供たちを育てていくのか、あるいはまた中国もヨーロッパもアメリカも、青年諸氏がこの地球上でどういう形で生きていくか、非常に努力しながらやっているわけでありますけれども、文部省の教育方針そのものがまだまだその時代の流れあるいは時代の変革についていってなくて、どうもこれまでの戦前、戦中、戦後のその流れの上にあるのじゃないか、そういう感じがしてしようがないのですね。  その一つのひずみがこのいじめ問題だと思うのですよ。  このいじめ問題の新聞報道を見ますと、友達もわかっていたのですね。例えば、この新聞報道によると、一年生のとき、体育の授業が終わった後で更衣室でよく殴られていた。「大丈夫」と友達が聞くと、目に涙をためながら「いつもやられているから平気だよ」と言っていた。別の生徒は、いじめは二年生秋ごろから毎日のように続いていたみたいだ、二年生の終わりに「先生に言ったらいいじゃないか」と話すと、「言ったら殴られるからいいよ」と言って、おとなしく無抵抗な明雄君へいじめはさらにエスカレートしていった。こういうふうな話なんです。  この問題と、先ほどの文部省の教育方針、事実としてこの問題が起こっているわけでありますが、もう一つ、最初のころありましたね。山形県のいじめマット死事件というのがありましたけれども、どうもこれは学校教育だけでは十分な対策にならないと思うのです。もちろん、家庭教育や社会教育も必要なんですが、何か私はここに今の文部省教育のひずみの一つがあらわれているのじゃないかと思うのですよ。  諸外国でいじめによる自殺事件というのは起こっているのでしょうか。諸外国の事例がもしもわかったら教えていただきたいと思うのです。わからなかったら結構ですけれども。
  271. 野崎弘

    ○野崎政府委員 ちょっと今諸外国の状況というのは資料としてつかんでおりませんので、申しわけございません。
  272. 大畠章宏

    大畠分科員 私は、学校の先生方あるいは文部省のお一人お一人のことを責めているのじゃなくて、戦後の日本の教育もそろそろ方向転換の時期ではないですか。さらに、文部省もこれまで一生懸命頑張ってきて、日本の経済発展や今日の日本というのがあるのはもちろん文部省の教育の一つの成果だと思いますが、ここまで経済発展もしてきましたので、そろそろ基本的な方向を変える時期に来ているのじゃないか。  もちろん、通商産業政策についても、日米問題、一番の問題は経済摩擦の問題であります。いかに日本の黒字を減らすか、これは競争の結果だから仕方ないじゃないかとはもう言えないところまで来ています。私は、そういうことからもうちょっと日本の教育、文部省の教育方針そのものを、従来の額面だけあるいは表面を手直しするというのじゃなくて、根本から文部省教育の方針そのものを見直すべき時期に来ているのじゃないか。  そして、よく言われますが、日本だけが繁栄すればいいというものじゃなくて、まさにアジア諸国あるいはアメリカ、ヨーロッパ諸国等々の青年諸氏と大いに手を携えて生きるんだ。それはすなわち、地域社会の中でもそういう黙っていじめられる子供をどんどんいじめるのじゃなくて、そういういじめを見たらきちっと、おかしいじゃないか、あるいはまた仲間が抑えに入るとか、つい最近もホームレスの方が殴り殺されたという話は聞きましたね。あのときもたくさん周りにいたというのですよ、日本人、日本人というか大人の人が。だれ一人とめに入らないし、警察にも通報しなかったという話がありました。これは、言ってみれば、このいじめ問題と今回のホームレスの方の事件というのは非常にかかわり合いがあるのじゃないかと私は思うのですよ。  したがって、これはすべて文部省だけの責任ではないと思いますけれども、いつもやられているから平気だよと言って黙って耐えて殴られていたという、そういう少年が全国にまだたくさんいるんじゃないか。私は、マットで巻かれて亡くなった子供さんもいましたけれども、そういう問題に対して、今文部省がどのような手を、これまでもとのような対策をとってきたのか、それを真剣に伺いたいと思います。
  273. 野崎弘

    ○野崎政府委員 今先生から教育の発想を変えるべきではないかということでございまして、実は私どもも今その問題に取り組んでおるわけでございます。従来、必ずしもそういうことを意図したわけじゃないのですが、やはり知識や技能の量ということをどうしても重視する、つまりどこまで知識なり技能の量があるのかというようなことで、それを学力と考えがちであったことは確かに御指摘のとおりだと思います。  私どもはやはりそういうことをこれから直していかなければいかぬ。これから大事なのは、子供たちがみずから考え、主体的に判断し行動できる力、つまり自分たちで考える、そしてまた自分たちで学習していく力、こういうものを育てていこうということで、新しい学習指導要領、小学校では平成四年から動いております、中学校は平成五年、高等学校がことし、平成六年から動いていますが、その新しい学習指導要領もそういう新しい学力観に立って改訂をしたところでございまして、今先生のお話を聞きながら、まさに私どもがこれから取り組もうとしていることを先生から御激励を受けたんだ、このような気持ちでお話をお伺いさせていただいたわけでございます。
  274. 大畠章宏

    大畠分科員 それで、激励もしますが、激励するとともに、こういう事件がもう起こらないようにしてほしいのですよ。  これはもちろんPTA、家族が悪ければ、家族というか社会や両親、両親というかみんなも、みんなで力を合わせてこれはやらなければならないのですが、とにかく、やはり学校の中でこのような事件が起こった、そしてどこへも訴えようがなかったというものがあったので、端的に、こういう子供たちが何か相談できるような窓口といいますか、あるいは学校内にそういう相談をする人がいるとか、先生に言うと殴られるというのですから、第三者が、何かそういういじめ問題とか子供さんが非常に困ってどうしようもないというときはここに電話してください、どこにも連絡せずに一生懸命問題解決のために取り組みますよ、そういう機関が必要じゃないかと私は思うのです。  そこで、先ほどの質問でありますけれども、山形の事件以来文部省がいじめの再発防止のためにどのような対策をとってきたのか、それを具体的に伺いたいと思います。
  275. 野崎弘

    ○野崎政府委員 いろいろいじめの問題につきましては、児童生徒の心身に重大な影響を及ぼす深刻な問題ということで私どもも考えておりまして、これにつきましては、早速問題行動の実態とかそういうことを調べました。昨年の十二月には、各都道府県教育委員会あるいは学校におきます指導あるいは取り組みの再点検というようなことを求めております。  それから、具体的に言えば、あとは教師向けの指導資料の作成とか、教員研修、教育相談活動の推進、いろいろな形で実施をしておりますけれども、特に私どもが今重視しておりますのは、いじめの端緒と申しますか、そういうものをだれが、見つけたかというのはちょっと言葉が適切じゃないのですけれども、そういうものが大体担任教師が三割ぐらいです。やはり学校全体としてこういう問題に取り組むということが一番大事なわけでございますけれども、担任の人がまずそういう端緒となるべきものを見つけて適切に対処するということが一番大事じゃないかということで、昨年十二月の通知の中では、学級担任が、担任する児童生徒の指導につきまして重大な職責を有するんだ、まず第一義的な責任を負ってほしいということを明確にしたところでございます。  なお、平成六年度の予算の中には、いじめ等につきまして教員あるいは児童生徒、保護者を対象にいたしました実態調査を行いたい、こう思っております。そして、学識経験者によります調査研究協力会議を設けまして、総合的な対策等を検討していきたい、このように考えております。
  276. 大畠章宏

    大畠分科員 非常に、点数でいえば、偏差値からいえば高い回答だと思うのですが、今全国で、例えば今回の事件のように、いじめられている子供さんがいるとしたら、どこに相談したらいいんですか。こういう事件がこれは二度も起こったわけですから、例えば文部省としてあるいは全国四十七都道府県に、いじめ一一〇番といいますか、この問題で悩んでいる子供がいたら連絡してほしい、そういう対策でもとれるんじゃないですか。そして実際に悩んでいる子供から連絡を受けて、それがまたいじめにつながるということにならないようにしながら、やはり子供たちの考えを聞いてあげてほしいんですよ。  例えば、私は非常につらかったのだろうなと思うのは、そばにあった三枚のメモ、自殺したその場所に三枚のメモがあって、だれだれ君の家に行ったら殴られたとか、そういういじめられた事実だけが書いてあって、死の間際まで自分の心情を吐露する言葉は全くなかったというんですね。どういう気持ちで死んだのか。だから私は、もしも文部省にいたら、即四十七都道府県に指令を出して、いじめに関する情報をキャッチする例えば電話の窓口ぐらいつくりなさい、そしてその話を聞いて、その当人たちも話をすればまた心が晴れるところがあるかもしれない。だから、どこにも相談がない子供がまだ全国にいるはずなんですよ。  この事件はまさに氷山の一角で、そういう子供たちに直接手を差し伸べるというのはまさに、通達を出したり、再点検をしたりじゃなくて、実際にそういう子供たちが助けを求められる窓口を早くあけてあげることだと思うのですよ。その情報をとりながら、もう一方では、今お話があったようなことをやればいいんじゃないですか。そういうことをやろうとする考えはございませんか。
  277. 野崎弘

    ○野崎政府委員 各県には教育センターとかそういう相談的なところがございまして、それぞれ各県あるいは市町村におきまして御努力をいただいておりますし、先生御指摘の点も大変大事だと思うのですが、やはり基本は、いつも子供たちを見ているのは学校の校長でありそしてまた担任の先生なんで、やはり私どもとしては校長なりそういう担任の先生というのにまずしっかり把握をしていただきたいということはまず求めていかなければいかぬと思っております。  しかし、いずれにいたしましても、それぞれそういう相談活動とかそういうものは各県の教育委員会市町村の教育委員会におきましてもございますから、そういうことを有効に活用していくということも大事な施策、このように考えております。
  278. 大畠章宏

    大畠分科員 その従来の機構では救えなかった事件が起こったわけでしょう。何らかの別な対策をとらなければ、やはり根本的な対策にならないと私は思いますよ。そういうふうなものが十分機能していた、それで十分だというならば、こういうふうな事件は起こらないじゃないですか。どこにも相談できないというわけですよ。  私は、今の文部省の官僚のトップの方としてはそういう答弁しかできないかもしれないけれども、それでは国民が納得しないと思いますよ。もうちょっと、そういういじめられている子供さんの両親とかあるいは先生方も一生懸命やっているんだけれども、なかなか最近煩雑で、そのものまでに手が回らない。そのエアポケットにこういうふうな事件が起こっているわけですね。  だから再度、この事件を契機として文部省内で見直してくださいよ、その対応の仕方について。多分全国各地でそういう助けを求めている子供さんもたくさんいると思うのですね。再度ちょっと御意見を伺いたいと思います。
  279. 野崎弘

    ○野崎政府委員 先生の御指摘は、今まであるような教育相談活動とかあるいは教育センターにおきますいろいろなカウンセラー機能、そういうものが十分動いていないという御指摘だと思いますので、よくその辺は連絡をとり合いながら適切な対応を考えていきたいと思っております。
  280. 大畠章宏

    大畠分科員 いや、動いてないとは言いません。実はうちのかみさんもカウンセラーをやっているんですよ。だから、動いてないとは言いません。しかし、それだけの範囲では拾えなかったんです。  したがって、例えば文部省から、この事件を契機として、いじめ問題等々について相談がある子供さんはここに電話してくださいよとかそういうのを再度徹底を図るとか、あるいはもちろん先生方にお願いするのは当然でありますけれども、これまでの従来の対策だけでなくて、再度きめ細かな対策をやっていただきたいということを私は申し上げているところであります。  あと五分ということでありますから、それはぜひお願いしますよ。全国でたくさんの子供たちがそういう手を待っているかもしれません。また、既存の電話相談とかなんかにも、まだ軽症といいますかそこまで至ってない子供さんたちはいろいろ電話しているのも聞いています。しかし本当に、こういうふうに全く死の間際まで自分の心情を吐露できない子供さんがいるということは、これは多分電話もできないのですね、そういうことをやったら、また回り回ってもっといじめがひどくなるんじゃないかと。ですからぜひ、そこら辺は文部省当局も、自分の子供のことと考えて、もっと真剣に対応策を考えていただきたいということを要望したいと思います。  二つ目には、私立幼稚園の支援策についてお伺いしたいのですが、この私立幼稚園の現状あるいは役割をどのように文部省として認識しているのか。  さらに、今子供さんが大変少なくなってきて、この私立幼稚園は、社会的にも大きな役割を果たしているところでありますが、経営難に至ってきています。この私立幼稚園のいろいろな団体の方のお話を伺うと、小規模な幼稚園と大規模な幼稚園がある。助成金等についてはほぼ助成金単価というのは同じ割合でやっているんだけれども、小規模の幼稚園の方が人件費がかかるんですね。それで、地域で要求しているのは小規模な幼稚園というか、私は、幼稚園としては小規模の幼稚園の方がより幼稚園にはふさわしいのかなと思うのですが、この私立幼稚園の現状や役割、そしてまた経営が非常に厳しくなっているのですが、今後どういうふうな支援策をとろうとされているのか、それをまとめてお伺いしたいと思います。
  281. 泊龍雄

    ○泊政府委員 まず前段の私立幼稚園の役割と現状ということでございます。  これは先生もう既に御案内のとおりでございますけれども、日本の幼稚園教育におきまして、私立の幼稚園の占める割合というのは極めて大きゅうございます。学校数でいきますと約六割、それから園児数でいきますと約八割が私立の幼稚園で保育を受けているということでございます。  それからまた、私立幼稚園ということで、その設置形態からくる柔軟性、柔軟に対応できるという特性がございます。そういったことで、いわゆる地域社会の幼児教育に寄せる多様なニーズというものに対して特色のある教育、保育を展開をしてもらっているという意味で、これまた大きな役割を果たしているということであろうと思います。  先生が御指摘になりました後段の問題でございます。子供の数が近年長期的にわたって減少傾向にあるということで、私立幼稚園を取り巻く経営環境というものも非常に厳しいものがあるということも承知をいたしております。  その際に、私立幼稚園に対する経常費の助成等についての配分の仕方ということについてのお尋ねでございますが、私立幼稚園等のいわゆる経常的経費に対する助成というものは、御案内のとおり、その大半の経費が、一つはいわゆる教職員の人件費、それからもう一つは直接保育にかかる経常的な経費、教育にかかる経費ということで、これらを対象にして現在いわゆる経常費助成を行っている。  その仕組みとしては、いわば私立幼稚園の所轄庁である都道府県がまずこれを行います。そして国は、都道府県に対してその財源の一部を補助するという形で現在行っているのが実情でございます。  先ほど申し上げましたように、経費の、いわゆる教職員の人件費それから直接園児の教育にかかる経常的経費という性格上、一般的に申し上げれば、園児数に応じてその増高があるということでございます。そこで、国が都道府県に対して助成する場合につきましては、全国さまざまな実情がございますので、これらの基本的な性格というのに着目をいたしまして、いわば園児数一人当たりに応じて助成する仕組みになっております。  ただ、個々の幼稚園に対する直接の補助ということになりますと、これは各都道府県が行うということでございます。そのために、やはり地域実情というものを一番把握している都道府県に応じて、配分方法については先ほど先生が御指摘になられましたような点も踏まえ、かつ園児数の推移も、全国的には先ほど申し上げたような諸状況でございますけれども、地域によってもまた違います、それから、いわゆる配置といいますか、公立幼稚園と私立幼稚園、そういった配置関係地域によって違いますので、そこの点は、今後ともやはり実情を一番承知している都道府県段階でその配分方法については十分工夫をしていただくことが大事ではないかというふうに思っております。  それから、今後どう持っていくかということは、やはりその役割の重要性がございますので、御案内のとおり、現下非常に厳しい国の財政事情等ございますけれども、私どもとしては、今後とも財政状況等諸般の状況も見ながら私学助成の推進ということについては努力をしてまいりたいと思っております。
  282. 大畠章宏

    大畠分科員 今いろいろ厳しいことを申し上げましたけれども、文部省に私は非常に期待するところ大なんです。そういうことから申し上げましたので、ぜひ行動をしていただけるようにお願いして終わります。  ありがとうございました。
  283. 山本拓

    山本主査 これにて大畠章宏君の質疑は終了いたしました。  次に、土肥隆一君。
  284. 土肥隆一

    土肥分科員 私は、最近というよりは平成二年ごろからいろいろとクローズアップされてまいりました学習障害児、LD児と申します、ラーニング・ディスアビリティーズと言われている子供たちのことにずっと取り組んでまいりましたが、きょうはそのことについて、今までの取り組みの総括と今後の問題点についていろいろお聞きしたいと思います。  文部省からいただきました学校基本調査によりますと、学校嫌いを理由として三十日以上長期欠席した子を登校拒否児童生徒と言うそうでございますが、小学生で一万三千七百十人、出現率〇・一五%、中学生で五万八千四百二十一人、一・一六%、これが登校拒否児でございます。  それから五十日以上欠席した数も出ておりますが、この数でいきますと一万四百四十九人、〇・一二%、これは小学生です。中学生は四万七千五百二十六名、〇・九四%。  それから高校では、新聞でよく大騒ぎになりましたが、平成四年度で十万一千百九十四人の中途退学者が出ておる。五百二十万人いる生徒数の中で一・九%、こういう数字が出ております。  この数字に間違いないと思いますが、ひとつお聞きしたいと思います。この高校中途退学者数で、平成三年度では二・一%が一・九%ということでございますが、この数字に間違いはございませんでしょうか。そして、その分析をお願い申し上げます。
  285. 野崎弘

    ○野崎政府委員 高等学校中途退学者数は、今先生御指摘のあった数字のとおりでございます。平成三年が二・一%、平成四年一・九%ということで、中途退学者の数が、率が落ちております。  これは、やはり近年中途退学についての問題が大変社会問題化してきたということで、各県におきましてもこれについていろいろ真剣に取り組んだということが一つあろうと思います。  それと同時に、高等学校というものを多様なものにしていかなければいかぬというようなことで、選択幅の広い教育課程を編成するとか、あるいは進級認定を弾力化する、つまり単位というものを重視していこうというような動き、そういう高等学校教育の多様化、弾力化、個性化ということが退学率の減少の成果としてあらわれてきているのではないか、このように考えております。
  286. 土肥隆一

    土肥分科員 多様化、弾力化、個性化、大変結構でございます。しかし、日本の学校というのは私の印象では実は大変画一的で全体主義的といいましょうか、あるいは子供の実態に即したというよりはクラスあるいは学級を経営するというふうな観点とか、子供の実態に即したきめ細かな教育やあるいはいろいろな実験や試行をしてみるというところに直ちに対応できない、そういうむしろ一種の硬直化というものが日本の教育の中に多く見られるのではないか。  その結果さまざまな問題が起きていて、今の高校生の十万一千人であるとか、もう既に小学生の段階から一万三千あるいは一万四百四十九とか、三十日と五十日で違いますけれども。この数が多いか少ないか、小学校から中学校へと一挙に四倍になりまして、そして高校にいくと十万人を超える、こういう実態がどこから生まれているかということを真剣に考えなければならない問題だと思うのであります。  そこで、私は冒頭申しましたように、LD児の子供たちにずっと注目をしてまいりました。そして地元にあります親の会の学習会などにも出させていただきました。また神戸では、神戸YMCAというのがございますけれども、そこの西宮ブランチというところがございますが、そこでLD児の学級を開いた。新聞にも載りましたけれども、全くYMCAの一方的な持ち出しでやるわけでありまして、中の資料を見させていただきますと、今までのLD児の学問の成果をかなり取り入れまして、それをYMCAの現場で、しかも限られたスタッフをそこへ応用してやろうというふうな状況が出ております。  また、名古屋では見晴台学園といって、自主的に親の皆さんがLD児の子供を集めて学校を開く、また後でこの点については質問いたしますけれども、いろいろな取り組みがございます。  LD児と呼ばれているものは日本ではまだ新しい子供の状態でございまして、これは教育学上のみならず医学的にも見てもらわなければならない、よく検討してもらわなければならないことでございまして、厚生省にも後でお聞きしたいと思います。  私の認識しているところによりますと、文部省平成二年から通級学級に関する調査研究をスタートさせまして、そのときにLD児についても研究を始めたというふうに考えております。  平成二年からことしまでの経過を、しかもどれくらいの予算をつけたかということについて、ごく手短に御説明ください。
  287. 野崎弘

    ○野崎政府委員 研究を続けまして、今先生御指摘にございますように、「通級による指導に関する充実方策について」という審議のまとめが平成四年三月三十日に出ました。この中では、今御指摘ございましたように、学習障害児についての研究をこの協力会議においても行ったわけでございますけれども、この審議のまとめにおきましては、「我が国では、学習障害については、全体的な認知能力に比べ特定の能力の発達が著しく遅れていることを特徴とし、該当児童生徒が存在するという点などでは関係者の間にほぼ理解の一致が見られるが、学習障害の判定基準や診断方法については見解が分かれている状況である、こういう指摘があるわけでございます。  そういうことで、現在のところ、まだ用語の定義あるいは判定方法等がまちまちで、医学的な原因についても必ずしも明らかにされていない状況、こう考えております。  そこで、平成四年度から、今度は調査研究協力会議を設けまして、学習障害児等の指導方法等に関する調査研究というのを実施しております。  また、国立特殊教育総合研究所におきましても、平成三年度から四年計画で基礎的な研究を行っているということでございます。  予算についてのお尋ねがございますが、調査研究費として年間約六百万円の予算を計上しております。  以上でございます。
  288. 土肥隆一

    土肥分科員 もう一度確認いたしますけれども、平成二年から毎年六百万円の予算を計上しているということですか。
  289. 野崎弘

    ○野崎政府委員 平成二年のときは通級学級に関する調査研究協力会議という形で、現在は学習障害児等の指導方法に関する調査研究ということで、調査研究の内容は違っていますけれども、予算はそういうことでございます。
  290. 土肥隆一

    土肥分科員 先ほど学校基本調査の数字を申し上げましたけれども、どうやら親の皆さんの声を聞いておりますと、このLD児の、LDであるがゆえに、つまり学習にむらがあるために、これがいじめの対象になったり、あるいは登校拒否の理由になったりというようなことがございまして、このLD児が一体どれくらいいるのか。あるいはその判定の方法についてもまだ検討中だということでございますが、文部省は、この平成四年の報告書によりますと、LD児に該当すると考えられる児童生徒が我が国に存在するという点では関係者の間で見解が一致している、こう述べております。  現在文部省としてLD児と考えられる子供が何人くらいいて、その出現率は何%くらいか、それをお伝えください。
  291. 野崎弘

    ○野崎政府委員 これは先ほどお答えしたところでございますが、現在、この学習障害の定義とかあるいは実態把握の方法等につきまして、外国におきます実情等も踏まえて検討しているところでございます。したがいまして、その辺が明らかにならないとなかなか実態把握あるいは出現率というようなことについての把握も困難だ、こういう状況でございます。
  292. 土肥隆一

    土肥分科員 ちょっとそれは困るのでありまして、これは実態に合わない、あるいは誤差があるとは考えられましても、やはりこの調査をしてほしい。  例えば、親の会の皆さんが出している報告書を読みますと、五千人をサンプルいたしまして出現率約二%、こういうふうに言っております。親たちは自分の子供をLD児と認識して、そしてみずから自主的に調査をしたようでございますが、そういうことも現場で、現場というか民間の皆さんが、親たちがやっているというようなことも含めて、ぜひこれは早く一定の数を出していただかないと、子供たちはどんどん成長していくわけであります。二年から今もう平成六年、四年間たったらもう学校を卒業してしまうわけですね。卒業後のこともお聞きいたしますけれども、そういうことも考えて、厳密でなくてもなるべく早い調査をお願いいたします。  いつも医学的な問題でこのLD児に関して意見が分かれるわけでありますが、厚生省にお聞きいたしますけれども、厚生省では、どうでしょうか、実態調査あるいはこのLD児に関する治療や療育に関する研究などをやっていらっしゃるのでしょうか。今の厚生省が取り組んでいらっしゃる現状をお聞かせください。
  293. 三觜文雄

    ○三觜説明員 お答え申し上げます。  厚生省におきましては、学習障害について、平成四年度から心身障害研究におきまして学習障害の定義の明確化、その原因、対応方法などにつきまして研究を始めているところでございます。現在までのところ、学習障害についての定義あるいは判定基準等につきまして関係者の間で意見がまだ一致していない状況でございます。  しかし、今日まで研究の中で明らかにされていることにつきましては、まず第一点といたしまして、学習障害はおおむね中枢神経の障害に起因することが推測されるということが現在まででわかっております。しかしながら、その障害の性質などにつきましてははっきりしたことがわからないという段階でございます。  また、そのほか学習障害の検査方法についてでございますけれども、心理学的な面も含めましてさまざまな方法を現在試みている段階でございまして、さらにこういった対象者につきまして幅広く実施していく必要があるということが研究報告に示されておりますので、今後とも研究をさらに推進してまいりたいと考えておるところでございます。  したがいまして、学習障害の実態につきましては現在までのところ統一的な判定の基準がございませんので、まだ今の段階では実態調査に着手できないというような状況でございます。
  294. 土肥隆一

    土肥分科員 何度も申しますけれども、子供はどんどん成長してまいります。実態調査、実態調査とおっしゃいますけれども、また判定が難しいとかおっしゃいますけれども、実際子供を抱えている親御さんから見れば、もうどうしたらいいかわからないままに子供はどんどん育っていくわけでございます。  これは私は御提案申し上げたいのでありますけれども、文部省と厚生省がしっかりと手を組んで、お互いに実態調査なりあるいは判定方法なり共同してやっていただきたい、こういうふうに思うのであります。どうも私が事前にお聞きしました範囲ではそうではないようでございまして、その点について文部省さんがやはり主導権をとってやっていただきたいのですが、その点についてはいかがですか。
  295. 野崎弘

    ○野崎政府委員 先ほどもお答えいたしました協力会議、これには厚生省の協力も得ておるわけでございまして、よく厚生省と連携をとりながら進めていきたいと思っております。
  296. 土肥隆一

    土肥分科員 子供が徐々に、しかも学校で暮らしているうちにどうも適応が悪くて、ますます難しい子育ての状況になってきている現状で、学校生活といいましょうか、学校でどういうふうな位置づけをされているかということが非常に重要なことになってまいります。調査中だ、あるいは判定がまだできていないといいますと、ああまだ未知の部分がたくさんあるんだなということで学校全体もこれに真剣に取り組もうとしないし、できないのじゃないか。  どうでしょうか。義務教育段階で結構ですから、今学校におけるこの学習障害児の教育はどういうふうになっているのか、現状をお知らせください。
  297. 野崎弘

    ○野崎政府委員 これは先ほどの「通級による指導に関する充実方策について」の審議のまとめにも出ているわけですが、学習障害の判定につきましては、表面上の諸現象だけではなく種々の検査、観察を行って専門家による総合的かつ慎重な判断が必要だ、こういうようなことでございます。したがいまして、学習障害児の一部につきましては言語障害あるいは情緒障害特殊学級などに通級している実態があるとは思いますけれども、しかし、それが本当にそうなのかというあたりはもう少し専門的な研究というものがどうしても必要になってくるのではないか、このように思っております。
  298. 土肥隆一

    土肥分科員 そうすると、文部省は、この学習障害児などに関する、通級学級の中でも結構ですけれども、都道府県の教育委員会に通級学級の中でのLD児の扱いについてどういうふうに指示をしていらっしゃるのですか。
  299. 野崎弘

    ○野崎政府委員 これは先ほどのお答えに尽きるわけでございますけれども、LD児の定義あるいはどうやって診断するのか、そのあたりがまだ研究を推進中ということでございますので、各県に指導をするとか、そのような段階にまだ至っていないところでございます。
  300. 土肥隆一

    土肥分科員 極めて残念なことであります。暫定的な措置でもようございますから、こういう子供がいるということは皆さんの調査、協力会議でも結論が出ているわけであります。  どれくらいいるかとかどんな人がどうかというふうなことについては指示ができないかもしれませんけれども、しかしやはりこういう子がいるんだよということを学校現場全体に伝達するような道をぜひともやっていただかないと、子供たちを抱えている親たちにとってはたまらないわけですね。いい先生に出会ってよかった、この一年はよかった。次の先生がまた御理解がないものだから、またもとへ戻っちゃって、子育てでてんやわんやというところです。  ぜひともその辺は何とか手を打てるような状況にしていただかないと、地方の教育委員会もそれに取り組みまぜん。ましてや学校現場も取り組まないわけですから、強くそれをお願いしたいのですが、どうでしょうか。今、何かお答えできますか。
  301. 野崎弘

    ○野崎政府委員 恐らく各県、それは学校におきましても学習障害の子供がいるということはわかっているのじゃないか、このように思うわけでございます。  ただ問題は、どういう形で指導していったらいいのかということにつきましては、これは先ほど先生のお話にございましたように、医学的な立場あるいは心理学的な立場、そういう全面的な指導の問題になってまいりますので、やはり私どもとしては十分な調査研究をした上で対応していくことが必要なんじゃないか、このように思っております。
  302. 土肥隆一

    土肥分科員 厚生省の児童家庭局が監修しております「児童相談事例集 第二十四集」に、これは平成四年の十一月発行ですが、そこにLD児対策として細かい事例報告が出ております。このようなものは、今厚生省の中では、例えばそれを教育現場に返すとか児童相談所に返すとかいうことはしていらっしゃるのでしょうか、いかがでしょうか。
  303. 三觜文雄

    ○三觜説明員 厚生省におきましては、児童の福祉に関する窓口といたしまして児童相談所があるわけでございますが、そういった児童相談所におきまして相談業務に役立てるために職員のために、今先生御指摘の事例集を平成四年度に発行いたしまして、こういった症例を参考にいたしまして指導に当たるようにということを周知徹底を図っているところでございます。
  304. 土肥隆一

    土肥分科員 これを読みますと、大変いいものができているのですが、これが学校現場あたりにどう普及しているのかと思いますと不安になります。ぜひともすべての校長先生ぐらいにはお渡しいただきたい、このように思っております。  さて、そうしますと、LD児というのは、生まれて間もなくからだんだんと発見され、かつどうもこの子はと思われるような事態が発生し、それから親たちは、学校教育、義務教育の段階に入る。どうやらこうやら中学校も行く、間もなく中学校も終わりまして、中学校を卒業するという段階になります。そうなりますと、もういわばLD児じゃございませんで、学習障害者と言うのもおかしいのですけれども、成人化していくわけですね。その中で最も重要なのは、中学校を出ましたけれども、この子たちはすぐに例えば中卒として働くとか、また高等学校に入りましても、何とか高等学校に入るのですけれども、学習に追いつかなくて追試追試をずっと繰り返して、追試が終わったら次の試験がもう来るというような、また追試に追われるというようなことがございまして、高等学校教育、高等教育のあり方について非常に問題があるということでございます。  そこで、きょうはぜひとも皆さんに検討していただきたいのですが、先ほど言いましたように、例えば名古屋で見晴台学園というのができておりまして、一年生から四年生までありまして、四十五名の生徒を現状で預かっているようであります。教職員が十七名、これは非常勤や事務職も含むわけでありますけれども、そうした経営の中で入学金が三十万円、預かり金は一口十万円、五口以上、授業料は五万円、あとは実費徴収、こうなっております。  私は、この学校の運営を見ておりまして強く感じるのは、高等学校の経営が極めて難しいというのは、要するに学校法人としてこれを認定できないからであります。  御承知のように、一条校以外は専修学校ということになるわけでありまして、八十二条の二ですけれども、「専修学校の目的」の中にこう書いてありますね。「第一条に掲げるもの以外の教育施設で、職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図る」云々、これを専修学校という、こうなっております。そして、修業年限が一年以上であるとか教育を受ける者が常時四十人以上であるとかいうふうな法律になっておりまして、しかも学力というものを一つの基本に、上に上がっていくに従って、例えば高等専修学校などいわゆる学業を規定しているわけであります。  それから同時に、八十二条の六では、校地、つまり学校の敷地あるいは校舎の面積とか位置とか環境とか非常に厳しい制限がついておりまして、私はせめてこの専修学校くらいを多様化したらどうかというふうに思うのであります。  親たちが一生懸命学校をつくって、バラックの中で子供たちを集めている。子供の数も常時四十人以上なんてならないし、あるいは、どんな汚い校舎でもいいとかいう意味じゃございませんけれども、限られた財源の中で、募金をしましてもLD児に対する社会的な目がまだ十分ではございませんからお金も集まらない、そういう状況であります。そしてまた、先ほど申しました民間の神戸のYMCAなどは自主的に研究しているけれども、そこには一切の補助金が出ない、こういう状況でございます。  ぜひとも多様な学校を認めていく、そして実験的なことも含めて援助していくようなそういう政府の姿勢がない限り、この子供たちの将来というのは大変展望が開けない、こういうふうに思いますが、文部省の見解をお聞きいたします。
  305. 野崎弘

    ○野崎政府委員 高校以下の学校ということでございますから、都道府県知事がこれを所轄することになるわけでございます。具体的に申請があった時点でどういう判断をするかというのは、そういう意味では、文部省というよりも都道府県段階において判断することになろうと思います。  学校ということになりますと、やはりそれに必要な施設設備ということを保有することが求められるわけでございますし、当然学校ということでございますから、永続性なりそういうものが担保されるかどうかとか、いろいろなことをやはり考えていかざるを得ないんじゃないか。  ただ、いずれにいたしましても、これは具体の問題として考えないと、一般論としてどうだということはなかなかお答えしづらいと思います。
  306. 土肥隆一

    土肥分科員 ですから、専修学校の法律、学校教育法というものを根本的に見直さなければいけないということを言っているわけでございまして、その点についてはどうでしょうか。
  307. 野崎弘

    ○野崎政府委員 今のところ学校教育法の専修学校の規定をいじるというようなことを私どもとしても検討課題に挙げたことはございませんので、先生の御指摘が今あったわけでございますけれども、にわかにここでお答えがいたしかねるわけでございます。
  308. 土肥隆一

    土肥分科員 ちょっと時間が超えましたけれども、それじゃ身もふたもない話でございまして、やはり教育というのは子供たちの実態に合わせて制度を変えていくということであるべきでありまして、法律がこう決まったからというのでありましたら、私は、議員立法でもして法改正の運動を起こさなければならない、そのように思いますが、文部大臣、どうですか。  今三十分の間のやりとりで、LD児が二万とも三万とも、二%といいますと二十万、三十万ぐらいの人数になるかもしれませんが、もっと多様な教育機会を与えたいという私の気持ちをどうお考えになるでしょうか。
  309. 赤松良子

    ○赤松国務大臣 最初LD児の問題ということでいただきまして、この問題については私は全く知識がないなということを痛感しながら伺っておりました。  能力にアンバランスがあるということで、必ずしも全体として劣っているわけではない、アンバランスなんだということで、それじゃ私も小学校のときLD児の範疇だったかもしれないなと思ったりしながら最初伺いました。そうでもなさそうだというようなこともだんだんわかってまいりました。  ただ、いろいろ伺っておりますと、まだその研究とか調査などが本当に緒についたばかりというか、あるいはまだそれさえもつかないというような状態のように理解していたわけでございます。やはりいろいろな子供があるわけで、それに対してそれにふさわしい教育をするというのが教育のあるべき姿だろうと思います。多様化ということは正しい方向だと思います。その対応についていろいろと検討をさせていただきたいと思います。
  310. 土肥隆一

    土肥分科員 終わります。よろしくお願いします。
  311. 山本拓

    山本主査 これにて土肥隆一君の質疑は終了いたしました。  次に、吉田公一君。
  312. 吉田公一

    吉田(公)分科員 私学助成についてお伺いしたいと思うのでありますが、今年度から私学助成については一般財源化をしていく、こういうことで、交付団体については御承知のとおり交付税の中に組み込んでやる。では不交付団体はどうするんだということになるわけですが、そのことについていかがでしょうか。
  313. 泊龍雄

    ○泊政府委員 お尋ねの私立高等学校等経常費助成費補助金につきましては、現下の極めて厳しい国の財政事情ということがございまして、一般補助につきましては既に御案内のとおり三〇%削減措置をとらざるを得ない。私どもとしては、大変苦しい対応ではございますけれども、現下の財政事情にかんがみましてやむを得ない措置というふうに受けとめております。  ただ、今お話にもございましたように、一方では、地方交付税につきまして拡充を図り、国庫補助金地方交付税とをあわせた国の財源措置としては拡充を図るという対応をいたしているところでございます。  これに対応いたしまして、今先生御指摘にございましたように、従来、いわゆる財政力指数が一・〇を超える富裕団体交付税の不交付団体に対しましては一定の減額措置がとられていたわけでございます。東京都の場合で申し上げますれば一五%の減額調整が行われていたということでございますが、今回、こういった一般補助の削減措置ということもございましたので、これに対するいわば激変緩和措置という形で、この地方交付税交付団体に対する減額調整システムというものについては廃止をするという形でいたしております。したがいまして、積算の中でも、それらに見合う約二十三億ほどは別途その中で増の計上をいたしているところでございます。  それから、一方、今日の国際化、情報化といったようなことで高等学校の改革といったようなことを進めてまいっておりますので、特別補助につきましては、こういった教育改革をさらに一層積極的に推進を図ってもらいたいということで、これにつきましては拡充を図るという対応もいたしております。金額的にはまだ一般補助の額に届くわけではございませんけれども、伸び率としては約五〇%の伸びという形で計上させていただいているところでございます。  したがいまして、お尋ねの不交付団体については交付税措置がないではないかということではございますが、先ほど申し上げましたような厳しい財政事情のもとでのやむを得ない対応ということでございまして、これは他のいわゆる交付団体につきましても同様の措置がとられているということ、そして、申し上げましたような不交付団体に対する減額調整措置を廃止をするというようなことでございますので、また、あわせて、逆の意味で申し上げれば、いわゆる基準財政需要額の中にこういったことを盛り込んだ上での地方財政計画が策定をされているといったようなことでございますので、御理解を賜りたいと思います。
  314. 吉田公一

    吉田(公)分科員 そうすると、不交付団体というのは東京都しかないのですけれども、三〇%カットでも約六十億なんだそうですね。ことし大騒ぎしてお願いに歩いたのですけれども、来年度からは名称がいろいろ変わっても六十億東京都が負担をするというようなことはない、こういうことでございますか。
  315. 泊龍雄

    ○泊政府委員 来年度以降の問題につきましては、先生、大変恐縮でございますけれども、予算という性格上、それぞれの各年度における財政事情等を総合的に判断をして対応しなければならないという問題がございます。そういった状況のことも勘案しながら、ただ、私学助成というものは私どもも大切な施策と思っておりますので、推進には努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  316. 吉田公一

    吉田(公)分科員 ただ、今回限りという話を伺っておりまして、今回限りというのは、今度の措置は一年限りだよ、来年からは違うよ、こういう今回限りなのか、今度特別に東京都は面倒を見てやったけれども、今回限りで来年は違うよ、こういう意味なのか、その辺が一つ。  それから、東京の私学は二百四十四校あるのです、高等学校は。中学校は百八十校、小学校が五十一校ある。こういうことで、他の府県に比べまして東京都は格段に私学が多いのですね。特に、埼玉、千葉、神奈川、山梨、場合によれば栃木、茨城、そういうところの児童生徒が私学へ入ってくるわけです。もし私学助成がだんだん一般財源化で削られていくということになれば、都の予算でやらなければいけない、こういうことになるわけですね。  そうすると、神奈川だとか千葉だとか埼玉だとか、学校によれば半分くらい例えば埼玉の生徒や児童を入れているということになると、では、東京都が出す財源でやるのだから神奈川の人には上げませんよ、埼玉県から来る児童は上げませんよ、こう言っても仕方がないのか、その辺はどうですか。
  317. 泊龍雄

    ○泊政府委員 今年度限りかという点につきましては、大変恐縮でございますけれども、少なくとも平成六年度について、いわゆる富裕団体に対する減額調整を廃止をいたしましたという点で御理解を賜って、都市部等におきまして、後段のお尋ねにございましたように、相互に、何といいますか流出入といいますか、ある県から入ってきたりあるいは出ていったりという子供の動きがございます。  この点もいろいろな御議論があることも承知をいたしておりますが、一面では、例えば地方財政計画ないしは地方交付税その他の場面においては、それぞれの地域内の、例えば児童生徒数であったり、あるいは教職員数を基礎としたりというようなことで、いわばそういったことも前提にしながら、受け入れている都道府県における対応ということになっております。  ただ、こういった問題というのは、そういった面以外も、いわば近県の各県がいろいろな形での情報交換その他調整をやるというようなこともあるやに承知をいたしております。いわばそういった形での実質的な協力関係というものは、特に今日の三大都市圏等を中心にする都市部ではある程度やむを得ない面があるのではないか。ただ、それについては、関係都道府県であるいは連絡協議の場を持つといったような形で対応していただくのが現実的な対応ではないかなというふうに思っております。
  318. 吉田公一

    吉田(公)分科員 御承知のとおり、大体教育というのは国がやるということになっているわけであります。だから、財政が逼迫したからおまえのところはやらないよ、そういうこと自体が、金の計算でやること自体が本来おかしい、そう思っているわけでして、たまたま東京が不交付団体ということであって、だからそこの児童生徒については、金があるのだから国の金はやらないよということは大体おかしいなと思うわけでございます。  次に、義務教育費国庫負担制度というのが御承知のとおりあるわけであります。しかし、だんだん国の予算がせっぱ詰まってまいりますと、大体大蔵省がいろいろな制度改革をしたり予算を削減したりしてくるわけでありますが、義務教育費国庫負担制度を今後維持していくのかどうか。学校職員だとか学校の栄養士だとか、そういうものについては地方団体で面倒を見ろよ、こういうように一つ一つ抜き出して、そして大蔵省が削減をさせる手だてにしていくのではないか、そういうことを非常に心配をいたしておるわけですけれども、その制度そのものを堅持していかれるのかどうか、その点について文部省のお考えを伺っておきたい、こう思います。
  319. 井上孝美

    ○井上政府委員 お答えを申し上げます。  委員からただいまお話がございましたように、義務教育費国庫負担制度は、我が国における義務教育の妥当な規模と内容を保障するための制度でございまして、極めて重要な制度というように認識しているわけでございます。  国の財政事情が非常に厳しくなりまして、昭和五十七年から国の財政再建計画はスタートしたわけでございまして、そういう中にありまして、従来から、臨時行政調査会等の答申の中で、義務教育費国庫負担金の見直しについての答申等をちょうだいいたしまして、義務教育費国庫負担金が文部省予算全体の中で五割という大きな比重を占めているということから、昭和六十年度以降その見直しを進めてきているわけでございます。  そして、先生御指摘がございました事務職員、栄養職員につきましては、既に先生御案内のとおり、学校事務職員は事務に従事するというような職務内容でございまして、学校におけるさまざまな事務の処理に当たって学校運営上重要な職務を担当する職員でございまして、そういう意味では、学校におきまして基幹的な職員という認識をしているわけでございます。  また、学校栄養職員につきましても同様に、学校給食を実施するための基礎である生きた教材としての献立を作成するとともに、児童生徒が生涯にわたり健康な生活を送るための基本である望ましい食生活に関しまして児童生徒に対し指導等を行うなど、重要な職務を担当する職員で、学校栄養職員についても、学校の基幹的職員と認識しているわけでございます。  そういう意味で、従来から義務教育費国庫負担制度の対象としているわけでございますので、今後とも適切に対処してまいる所存でございます。
  320. 吉田公一

    吉田(公)分科員 次に、学校週五日制のことについて伺いたいと思うのであります。  今、月一回。今読みましたら予算概要にも書いてありましたが、今度は月二回を検討していこう、こういうことなのです。もともと週四十時間にしたということは、日本の労働者は働き過ぎだ、したがって、生活大国なんということを宮澤内閣のときに言いましたが、労働者にできるだけ休暇を与えて、そして豊かな生活を送ってもらう、どうも日本人というのは働き過ぎだということで、週五日制というのは元来労働者に対する施策だったわけだ。  だけれども、学校の先生については働き過ぎだなんてだれも思っていない。しかも、児童生徒を預かっている先生が、公務員がみんな週四十時間だから、おれたちも同じ公務員だから一緒にやらなくちゃいけない、そういうことでこれから週五日制にしていくという。そのためには、今一回だけれども、二日を検討してみようじゃないかと。  だけれども、学校の先生というのは、夏休みがあって、冬休みがあって、春休みがあって、そのほかに週五日制にして、それで土曜日の児童生徒はどうするのだ、その対策は全然ないのだよ。何でそうしなければいけないのですか。
  321. 野崎弘

    ○野崎政府委員 先生、学校の教員の勤務の問題としてこれをお尋ねがあったのですが、実は、私どもがこの学校週五日制というものを考えたときは、先生方の勤務というよりも、むしろ子供たちにもつとゆとりを持たせる必要があると、子供たちの方の観点を重視したわけでございます。  今までの御質疑の中でもいろいろ出ておりましたが、子供たちがもっと自発的に物を考え、行動するような能力を養う、これは学校教育においてももちろん考えなければいけませんけれども、やはり子供たちにそういう時間を与えて、子供たちが自分たちで生活というものを考えていく、そういうことが大事だろうということでございます。  そういうような意味で、この学校週五日制につきましても、すぐ全面実施というようなことじゃなしに、やはり段階的に実施をすることによって学校、家庭、地域社会がそれぞれ教育のあり方ということを見直していく必要がある、こういうことで考えているわけでございます。  平成四年九月から導入をしたわけでございますので、平成五年度丸々一年を実施いたしまして、そういうような状況を見ながら、あくまでも子供が主体的な生活が送れるのかどうかということを重視しながら月二回ということの導入について検討していきたい、このように思っております。
  322. 吉田公一

    吉田(公)分科員 しかし、一説には、ゲームセンターがいっぱいになって、土曜日子供たちをどうすればいいか、そういうことを実際父兄の人たちは心配しているわけなのです。だから、私がさっき言ったように、もともと週四十時間にしたということは、日本の労働者が非常に働き過ぎだ、残業もやったり、朝早く出ていって、日曜日も出てこいなんて言われる。それではやはり豊かな生活にならない、生活大国にならない。一つは外圧もありますよ、日本人を余り働かせるなという。何でそれなのに学校の先生まで土曜日休める。それは子供のためじゃないでしょう。それは学校の先生のためじゃないですか、あくまで。子供なんというのは、別に自由とかなんとかいったって、あとどうするという考え方も何もないわけだから。だから、土曜日を休ましたら児童生徒たちはどうするんだということが先に出てこなきやおかしいのですよ。  それを学校の先生だけ先に休ませるんだと。公務員だから先生だけ週五日制にしなきやおかしい。みんなそうですよ、警察だって消防だって。だからあき交番なんて最近ふえてきちゃった。警察だって週五日制にしようと、こういうことなんだ。消防署だって週五日制にしよう。人員の方はふえない。結局交番のお巡りさんなんかどんどんどんどんあき交番が出てきて治安問題にもなっている。  だから、何で学校の先生を、春休み、夏休み、冬休みもあってですよ、なぜちゃんとやらねえのかな。教育だからきちっとやった方がいいと思うんだね。何も土曜日あけなけりゃ、子供達の教育や生活観や、そして児童生徒を圧迫したり、そうするものじゃないと思いますよ。私たちはずうっとやってきたんだから、それで。何とも思ってないんだ、それで。  だから、公務員だから学校の先生だけ週五日制にしなきゃうまくないと、そういうことがあるんじゃないかと思うんだな、底辺に。最初は国家公務員が休んで、地方公務員が休んで、このごろどこの中小企業に行ったってお前ら休め、お前ら休めって、そば屋まで休めって言っているよ。  そういうように、何だか知らないけれどもやたらに休め休めと、こう言っている。だから学校には通用しないことでしょう、これ。労働者が働き過ぎだからやったんだからもう一遍ひとつ答弁してくださいよ。
  323. 野崎弘

    ○野崎政府委員 先生からのお話でございますけれども、私どもはあくまでも子供を中心に考えております。現実に、月一回を実施した状況によりましても、ゆっくり休養できたというのが二二・五%、あるいは近所での遊びや運動、散歩ができたというようなことを答えているのが一〇・六%ということで、子供達がゆとりとかさまざまな体験を得る機会がこれによってできて、また活用してもらっていると思うわけでございます。  子供は六日でいいんだというふうに私どもも考えるわけにはいきませんので、やはり子供が自分たちの生活をつくっていくということは、これから世の中が激しく変化していくわけでございますから、その中で子供たちが自分の将来の生活設計を考える意味でも、自分たちの生活を切り開いていくそういう時間を持つということは大変私ども大事だと思っておりますので、先生のお話でございますけれども、私どもはあくまでも子供中心ということでこの問題に取り組んでいるわけでございます。
  324. 吉田公一

    吉田(公)分科員 私が都会議員でおりましたときに、都立高校の教員が、つまり自宅研修というのがあるが、校長にも届けないでぶらぶら休日をやっている。そしてうちで何やつているんだと、そうしたら自宅研修だ。自宅の研修なんということはあり得ねえと、それは。だけれども、戦後の買い出しの習慣をそのままずうっと今日までやってきている。それで私は都議会の予算委員会でやって、今は少しはよくなったらしいのだけれども。  つまり、そういうように児童だけ分離して児童生徒のと、こう言うんだけれども、児童生徒というのはまだ独立していないわけで、あくまで、父兄のもとにどうあるべきか、あるいは学校の先生の指導の中にどうあるべきかということを考えるのが先決であって、児童というのは、御承知のとおり学校が休みだとみんな喜ぶんだから、ああよかったなと。単純ですよ、それは。  今は、そんな深い考え方で休みがよかったなんて言っている児童はいない。ああ、あしたは休みで朝はよく寝ていられるな、友達と遊べるな。それだけの話ですよ。もともとなぜ土曜日を休まして、その後の土曜日の児童生徒対策というのかな、そういうのを父兄たちとよく話し合って決めたとはとても思えないのですね。ぜひその辺も十分検討していただきたい、こう思います。  それから、小中高の先生で長期休暇をしている先生がたくさんいる。東京都なんかでは二千人ぐらいいるんじゃないかな。そんなにいないかな。千ちょっとぐらいだと思うのですが、全国で一体、そんなこと言ったって急に統計があるわけじゃないでしょうけれども、長期入院している先生がどのぐらいいるのか。その長期入院している先生がいないときには時間講師を頼んでやっている、こう思うのですが、じゃそれは、一体いつまで時間講師でやっているのか。取り決めがあるのかどうか、規定があるのかどうか教えていただきたい、そう思うのですよ。
  325. 井上孝美

    ○井上政府委員 教員の病気休暇等から長期休業期間中の教員がどの程度いるかというお尋ねでございますが、実は昨年、特に先生がお尋ねのことだと思いますが、精神障害等による教員の長期休業者はどのぐらいあるかという実態調査では、ちょっと具体的な数字、正確ではございませんが、約千百人余りございまして、そういう人たちにつきましては、もちろん教育委員会の方で代替教員等の措置を講じているのが通常でございます。  ただ、期間が短いというような場合につきましては非常勤講師等で対応するということももちろんあろうかと思うわけでございますが、いずれにいたしましても、児童生徒の教育の円滑な実施のために、教育委員会として、それぞれの学校について教育活動が支障なく行えるように、教職員の構成の適正を確保するという観点から、適正な教員の配置を行うよう私どもとしても従来から指導しておりますし、また各都道府県教育委員会でもそのような努力をしているもの、このように考えている次第でございます。
  326. 吉田公一

    吉田(公)分科員 まだまだ申し上げたいことはありますけれども、私が最後だし、そんないつまでも時間どおりやらなくてもいいわけですから、これでおしまいにして、八分早いのですけれども、終わらせていただきます。
  327. 山本拓

    山本主査 これにて吉田公一君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして文部省所管についての質疑は終了いたしました。これにて本分科会審査はすべて終了いたしまた、  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事をすべて終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。  これにて散会いたします。     午後八時六分散会