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1994-06-03 第129回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成六年六月三日(金曜日)     午前十時一分開議  出席委員   委員長 山口 鶴男君    理事 衛藤征士郎君 理事 中川 秀直君    理事 野中 広務君 理事 深谷 隆司君    理事 月原 茂皓君 理事 山田  宏君    理事 後藤  茂君 理事 中西 績介君    理事 草川 昭三君       伊藤 公介君    小澤  潔君       越智 伊平君    後藤田正晴君       近藤 鉄雄君    志賀  節君       島村 宜伸君    関谷 勝嗣君       高鳥  修君    東家 嘉幸君       村田敬次郎君    谷津 義男君       柳沢 伯夫君    若林 正俊君       綿貫 民輔君    川端 達夫君       工藤堅太郎君    笹山 登生君       鮫島 宗明君    田名部匡省君       高木 義明君    長浜 博行君       二階 俊博君    山本 幸三君       伊東 秀子君    坂上 富男君       鉢呂 吉雄君    細川 律夫君       三野 優美君    石井 啓一君       北側 一雄君    谷口 隆義君       渡海紀三朗君    穀田 恵二君       松本 善明君 出席公述人        日本私立中学高        等学校連合会会        長        堀越 克明君        上智大学経済学        部教授      岩田規久男君        東北大学名誉教        授        大内 秀明君        日本証券経済研        究所主任研究員  紺谷 典子君        全国労働組合総        連合事務局長   熊谷 金道君        TKC全国会会        長        飯塚  毅君  出席政府委員         内閣官房副長官 北村 直人君         総務政務次官  石井 紘基君         北海道開発政務         次官      佐藤 静雄君         防衛政務次官  東  順治君         経済企画政務次         官       古賀 一成君         環境政務次官  鴨下 一郎君         法務政務次官  牧野 聖修君         外務政務次官  平田 米男君         大蔵政務次官  石田 祝稔君         大蔵省主計局次         長         兼内閣審議官  武藤 敏郎君         大蔵省主計局次         長       中島 義雄君         厚生政務次官  井奥 貞雄君         農林水産政務次         官       木幡 弘道君         通商産業政務次         官       金子徳之介君         運輸政務次官  星野 行男君         郵政政務次官  永井 英慈君         労働政務次官  河上 覃雄君         建設政務次官  塚田 延充君         自治政務次官  倉田 栄喜君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      堀口 一郎君     ――――――――――――― 本日の公聴会意見を聞いた案件  平成六年度一般会計予算  平成六年度特別会計予算  平成六年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 山口鶴男

    山口委員長 これより会議を開きます。  平成六年度一般会計予算平成六年度特別会計予算平成六年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。  この際、公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成六年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  御意見を承る順序といたしましては、まず堀越公述人、次に岩田公述人、続いて大内公述人順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えを願いたいと存じます。よろしくお願いを申し上げます。  それでは、堀越公述人お願いをいたします。
  3. 堀越克明

    堀越公述人 委員長から御指名をいただきました堀越克明でございます。  本日は、平成六年度の予算を御審議しておられます衆議院の予算委員会にお招きをいただきまして、特に私立学校の問題、その中でも、なかんずく私学高等学校以下の施策について陳述の機会をお与えいただきまして、まことにありがとうございます。恐らく、国会において教育現状について御憂慮のあらわれと思いますので、忌憚のない意見と希望を述べさせていただきたいと思います。  御承知の曽野綾子さんという作家がおられますが、曽野綾子さんがある対談のときにこういうことを言っておられます。電気がつかない国や地方民主主義のことを語っても、これはなかなか通用しない。言うならば、電灯がともらないような国や地域がまだ世界じゅうにたくさんある、そこで民主主義をと言ってもなかなかこれは無理なことだ、こういうことを言っておられました。  その中で、特に今の日本若者は、そういった現実を知らないで育ってきてしまった子供がほとんどすべてである。ということは、言い直しますと、今の若い者たちは、生まれながらにして日本の国はこんなに住みいい便利な国だということを考えておりますので、他の地域のそういったことを知らないで過ごしている。だから、民主主義のありがたさというものを、まさに今の若者は教えられず、考えず、知らないで育ってきているんだということがその後につけ加えられた言葉でありました。  私は、民主主義が根づいていると申しますか、成熟していると申しますか、その尺度成熟状況をはかる尺度というのは幾つかあると思います。  まず一つは、例えば選挙の際に不正が行われているとか、これは極めて初歩的なことでございますが、あるいは今皆さんが御審議選挙制度がきちんとできているかどうかというようなこともその国その国の、あるいはその社会民主主義成熟度合い、これを測定する一つの基準ではないかと思います。  民主主義成熟度合いをはかりますバロメーターはたくさんあると思いますが、これを教育のことに当てはめてみますと、私はその国の教育、特に学校教育の中で私学教育がどのように評価されているか、国民がその国の、その地域私立学校にどういう期待を寄せているか、私立学校教育がそれに果たしてきちんとこたえているかどうかというようなことが、やはり民主主義をその国、その地域でどのように国民あるいは社会が考えて、それが成熟しつつあるかということをはかる一つバロメーターのように私は思っております。  したがいまして、日本の国は経済大国という言われ方をいたしておりますけれども、国の教育施策についてはやはりまだまだ貧弱なのではないかという気がふだんいたしているわけでございます。  そこで、そういった民主主義ということの成熟度合い関連をさせまして、やはり国公立教育だけを重視するのは今の世の中では時代錯誤であって、やはり新しい時代は自由と民主主義の確立ということが極めて大切でありますから、私立学校というのはそういう意味での申し子とでも言っていいのではないか。ですから、せめて国公立私立と対等による教育活性化というものが図られるべきではなかろうか、こう考えている次第でございます。  そこで、今一番印象に残っておりますのは、先般臨時教育審議会が開かれまして、その答申皆様も御存じだと思いますが、その結びのところに、「個性重視の原則、選択の機会拡大国際化情報化への対応等を考慮するとき、それぞれの建学の精神に基づいて設置され、高い公共的役割を担うべき私立学校教育は、今後一層重視されなければならない。」こういうふうに臨教審の答申は結んでおります。私立学校の実績と役割を正当に理解をして、これほどまでに高く評価されたことは今までになかったことでございます。これは私立学校に対する社会の信頼と関心の高まりがあることの証左ではないか、こういうふうに考えております。  さらに、皆様に対しては釈迦に説法でございますが、私立学校存在価値というものについてさらに踏み込んで考えますと、多様な文化的基盤存在民主主義社会を支え、その発展の重要な原動力となっていると思います。その意味で、個性的な私立学校存在は、民主主義社会における学校教育の推進のためにはなくてはならないものだと思います。  我が国の少なくとも初等中等教育は、その多くが公立学校で占められているわけでございますが、公立学校は地元の教育委員会を頂点とする一大組織を形成をいたしているわけで、各学校が歩調をそろえて画一的な活動を繰り返しているわけであります。  今申し上げました臨時教育審議会は、学校教育のこのような現状について、硬直化画一化閉鎖性というような点を鋭く指摘をしているわけでございますが、このような同質化した単一の社会は、ともすれば異質のものを認めない閉鎖社会に陥りがちでありまして、これがやがて国全体の衰退を招くことになりかねないというふうに私どもは考えております。  そこで、その私立学校に対する国庫助成意義ということでございますが、先進諸国比較いたしましても、我が国はより高い水準をまさに維持していると思います。しかし内訳、その内容は、公立学校に対する支出が大半を占めておりまして、ちなみに、平成五年度の文部省一般会計予算の中で、公立学校関連義務教育に対する国庫負担金文部省予算の五一・五%を占めております。公立学校施設費は五・〇%、五%を占めております。それに比べまして、初等中等教育私学関係の、私立高等学校等経常費助成はわずかに一・六%ということでございます。  したがいまして、私どもは、この国庫助成意義ということをさらに考えました場合に、国会で御制定いただきました、二十年近く前になりますが、私立学校振興助成法、この助成法趣旨というものが今日また見直されるべきだと思うわけでございます。この私立学校振興助成法は、所期の目標は、経常経費の二分の一の補助をできるだけ早く達成するということを国会でおうたいいただいていたわけでございます。ところが、現状ははるかにそこまで行っておりません。  そこで、平成六年度、今御審議中の政府予算案、これが案が確定をいたしておりますが、その編成の過程で、残念ながら、その根幹をなす国庫助成がいわば何の前ぶれもなくと申しましょうか、大幅に削減をされました。私立学校振興助成法が制定されて二十年ということを申し上げましたが、このような一方的な大幅な削減は初めてのことでございます。私学の諸団体、特に全国高等学校以下の私立中学、小学校幼稚園に学びます父母層には少なからぬ衝撃を与えたわけでございます。  特に大蔵原案は、最初は前年度対比五〇%カットという方針が示されたわけでございます。最終的には二五%減ということで、ただいま六百三十五億円という数字で御審議をいただいているわけでございますが、その後、地方交付税措置減額分は埋められたわけでございます。私立学校高等学校等にかかわる国庫助成地方への移譲を志向する財政当局の御意向もあるやに聞いておりますが、やはり私学助成の将来に深くかかわる問題だけに、軽々にこれを見過ごすということはできないのではないかと思います。仮に国庫助成が各地方自治体に移管されれば、その使途は各地方自治体の首長にゆだねられ、必ずしも私立学校に振り向けられるという保証はございません。  これは、地方交付税法趣旨というのが、いわば世に言うひもつきでないということでございます。例えば、私ども自然災害等がある地方で起こった場合に、やはりその県の行政はどうしてもそちらの方へ重点的にやらざるを得ない。例えば、昨年の鹿児島県の集中豪雨であるとかいろいろな天災がございますが、そういったことが県内に起こった場合には、やはりそちらの方が重点的に行われる、地方交付税趣旨からいって当然のことではないかと思うわけでございます。そういう不安な状況がもし今後続くとすれば、これは私立学校、さらにはそこに学ぶ子供、親に対して大変不安を助長することでございますので、ぜひその辺の御配慮、御考慮を私はお願いをしたいわけでございます。  このたびの予算は、そういった意味全国私学とその父母たちに著しく衝撃を与えました。生徒一人当たりの金額は確かに伸びたということが言われるわけでございますが、国庫補助が今から十年ほど前に、シーリングの関係で一〇%減という時期がございました。そのマイナス一〇%をまさにその前年度の同じ水準回復するために何と十年間かかりました。十年かかってやっと一〇%カットの分がその前年と同じような額に到達した、こういう歴史がございますので、このような国の補助金削減は、もしこれが今後も続くとすると、これは大変な大きな打撃を私どもは受けるということになりかねません。  そういう意味で、私どもは、ぜひひとつこの国庫補助金については、これがあってこそ各地方が今までばらつきであったところの私学助成を大体おおむね足並みがそろうようなところまで持っていくことができたわけでございます。しかしなお、今父母負担ということを比較をいたしますと、同じ、公立高等学校に通わせている親の学納金のおよそ五・七倍が私立学校に通わせている親の学納金負担ということでございます。幼稚園の場合ですら公立の四・一倍というような、若年層の親が負担をさせられて自分の子供幼児教育をやっている、こういうような現実でございます。  概算要求が出されまして、文部省の額に対して大蔵省の第一次査定が行われましたときに、第一次の内示が行われましたときに、文部大臣大蔵大臣の間でこういうお約束があったやに承っております。それは、国の財政が今不如意であるということが一つ理由であるから、これをこの年度一年限りのことと考えて、むしろ、この平成六年を乗り越えて、平成七年度になればまたもとの状態に返すということを前提としてのお約束をしたいということを文部大臣大蔵大臣に言われたそうでございます。  そんなようなお話し合いもあったし、また、このことは、先ほどから申し上げました国の補助金をもう一般財源化してもいいではないか、そういう第一歩にするわけではない、こういうことが両大臣の間でお約束ができていると承っておりますが、これも平成七年度になってみないとわからないことでございますが、ぜひそういった子弟の教育上の不安を、経営的に問題の私立学校に対して持たないで済むようなそういう措置をこの予算の面でもひとつお考えいただけたら大変私どもはありがたいというふうに考えているわけでございます。  青少年の未来への投資というのは非常に重要であるということの御認識はもちろん皆様お持ちでございましょうが、私は、この国の補助金というのはやはり新社会資本を蓄積していくんだ、欧米諸国に比べまして、私は社会資本が非常にまだ蓄積が乏しい国だと思いますが、そういった意味で、新たな社会資本を備えていくんだ、蓄積していくんだというような要素も十分あるということをお考えいただきまして、ひとつ国の、政府予算についての御検討をお願いできたら大変私どもはありがたいと考えております。  いろいろ雑駁なことを申し上げましたが、主として私の関係いたしております事柄について、予算審議過程で御配慮をいただけたらということで申し述べさせていただきました。  まことにありがとうございました。(拍手)
  4. 山口鶴男

    山口委員長 ありがとうございました。  次に、岩田公述人お願いいたします。
  5. 岩田規久男

    岩田公述人 それでは、私は、今度の予算景気に対する影響という観点から金融政策との関係をお話ししたいというふうに思います。  このいわゆる平成不況の中で、公共投資等をふやすという総合経済対策等が何度も打たれているわけでありますが、なかなか景気回復しないという状況であります。そして、公共投資等に関しても、いわゆる国民所得を引き上げるという乗数効果が非常に落ちているのだということが言われている中、金融政策景気回復効果がないということで、ことしから所得税減税ということで景気回復効果をねらうというような状況にあるわけであります。  財政政策公共投資を初めとする財政支出政策所得税減税も同等でありますけれども、こういう政策というのは、実はその効果、いわゆる公共投資効果がなぜ落ちてきているのかということでありますが、そうした財政政策効果が落ちている基本的な要因というのは、為替変動相場制になりまして、かつ、だんだんと日本資本国際間の移動自由化を進めてまいりました。こういう変動為替相場制をとり、かつ、国際間の資本移動が自由になるという場合には、政府景気回復のために公共投資拡大いたしますと、金融政策が伴わない場合には必ず実質金利を引き上げるという効果を持ちます。これは、財政支出によりいろいろ経済が活発になれば、取引が拡大すれば、貨幣に対する需要が増大して、実質金利を引き上げるという効果を持つわけであります。  この実質金利上昇は、変動為替相場国際間の資本移動自由化されていないような状況の場合には、設備投資を抑制するという形でいわゆるクラウディングアウト、民間設備投資を締め出すという効果を持っておりまして、その面で公共投資景気回復効果をそれだけ減殺してしまう効果を持つわけでありますが、ところが、資本移動が自由になって変動相場制をとっている場合には、財政支出による実質金利上昇円高を必ず呼びます。  それはなぜかというと、海外から日本債券等に対して投資することが有利になってくるからでありまして、そのために円債、円建ての債券等に対する投資が活発になってまいりまして、その過程で、円債を買うという過程で、ドルが売られて円が一たん買われ、そしてそれが円債投資等に向かうわけであります。そのために、ドルが売られて円が買われるという中で必ず円高効果が出てくる。これは見事に、総合経済対策が打たれた後しばらくたって円高になったことからも証明されると思います。  そうしますと、円高によって輸出が減り、輸入がふえるという形で貿易黒字の縮小というメカニズムが起こるわけであります。これによって内需として拡大した財政支出、これは景気回復効果を持つわけでありますが、ところが貿易黒字という、今度は外需の方の減少が生じますので、公共投資景気回復効果をそれだけ減殺するわけであります。これが、そのために公共投資乗数効果が落ちている基本的な理由であります。  そのことに一応疑いを持たれる方は幾らかいらっしゃると思いますが、これは歴史的に見てみれば明らかでありまして、七三年以降変動相場制をとる、そしてそれ以後、七〇年代から八〇年代の初めにかけて、日本国際間での資本移動自由化をどんどん進めてまいります。この過程公共投資乗数効果が落ちてきたというのはぴったりと符合しております。  それでは、過去においては、固定相場制時代にはどうだったかと申しますと、固定相場制をとっておりますと、公共投資支出拡大して実質金利が上がっても、国際資本移動をまず制約するということと、もし国際資本移動がある程度生じても、そのことによる円高傾向は生じても、金融当局固定相場制を守らなければならないということで、必ずドル買いに走ってまいります。その過程で、ドルを無制限に、かつては三百六十円というレートで買うということを通じて、財政支出拡大しても必ず円高を食いとめるという、これは定義的にそうですが、金融当局は自動的にそういうことをしなければならないということで、公共投資の総需要拡大効果輸出減少によって減殺されてしまうという効果固定相場制時代にはなかったということであります。  このことが基本的には公共投資乗数効果をやはり低下させているということでありまして、もちろん、真水が足りないとか公共支出がおくれるとかいろいろありますが、しかし、基本的な要因は、公共投資乗数効果の低下はそういう点にあるわけであります。そういう点から考えまして、財政政策公共投資などをするということは、景気対策としては効果はほとんど、ほとんどと言っては語弊がありますが、非常に小さいと考えなければならない。  では、どういう効果があるかというと、これは、財政支出をふやしますと、輸出減少しますので、ちょうど内需外需を転換させるという効果を持ちますので、景気がほぼ中立的といいますか、余り不況じゃないような場合に貿易黒字削減しながら、かつ、景気を維持するという意味では非常に効果的な政策でありますが、同時に景気回復も図ろうとするのには無理があるということをまず理解すべきだというふうに思います。  そのように考えますと、同時に一体何をすれば景気回復にもなるのかというのは、やはり金融政策が大事だということであります。余り実質金利が上がって日米実質金利格差拡大しますと、円高になって、急激な円高によって輸出が非常に冷え込んでしまうということで、景気がなかなか回復しないということであります。長期的に円高になる傾向はどうしても避けられない傾向がありますが、急激な円高というのは、さまざまな、日本経済にこの一、二年の間に非常に重大な影響を及ぼし、景気回復をおくらせている原因であります。  そうしますと、やはり実質金利というものを適正化するということが必要であります。そのためには、現在公定歩合金融政策として一・七五%と、歴史的に低いという状況にあるので、もうこれ以上金融を引き締めても何の景気回復効果もないというふうに一般に信じられていると思います。  しかし、金融政策効果というものは、名目金利ではなくて実質金利で見なければならない。現在のように、卸売物価が将来的にもかなり持続的に低下するだろうというような予想が一般的に企業家の間にあるときには、名目金利は低くても実質金利は決して低くならないという状況が生じてしまいます。  そういうように、現在の景気状況あるいは企業マインド冷え込みという状況のもとでは、実質金利はかなり高いのですから、名目金利は歴史的に低いから十分だということでは済まされず、むしろ、企業投資意欲冷え込みであるとか不良債権が大量に出ているとか、あるいはバランスシートが非常に悪化しているということ自体がまた歴史的になかったことでありますので、ここは歴史的に見ても名目金利はかなり低くなるように誘導すべきだということであります。  実際、最近の銀行実質貸出金利を見てまいりますと、日本銀行公定歩合を引き下げ始めたのが九一年七月でありますが、それ以後次第に公定歩合を引き下げてきたわけでありますが、この期間、銀行実質貸出金利は横ばいでありまして、決して下がっておりません。名目金利は下がっていますが、実質金利は下がっていないということであります。かつ、実質の長期の銀行貸出金利を見ますと、むしろ上昇ぎみだということでありまして、金融実質的には引き締められているというふうに考えるべきであります。現在でも、銀行実質貸出金利は大体六%台半ばぐらいにあります。  これがどういう大きさであるかという比較をするために、平成景気の真つただ中の八九年を見てみますと、実質金利が三・五%でありました。したがって、平成不況期の今現在の実質金利が六%半ばというのは、一番日本経済が好況であるというような状況のときの実に八割も高いところにある。つまり、不景気で何とか景気回復しなければならないというときの実質金利の方が好況期のときよりも八割も高いというのであっては、だれが設備投資意欲を持ってありましょうか。こういうような状況の中で、企業に資金需要がないのだ、ないのだ、だからどんなに実質金利を引き下げてもだめだという意見が随分あるわけであります。  しかし、他方では、規制緩和をしてビジネスチャンスが拡大すればきっと設備投資意欲は出てくるだろうという意見があるわけですが、しかし、現在の六%台半ばという実質金利は歴史的に見ても非常に高いのでありまして、平成の好況時で大体三・五%、せいぜい四%台でありますから、それを考えますと、果たして、規制緩和によって確かに新しいビジネスチャンスは出るけれども、すぐ今の実質金利でお金を借りて設備投資に踏み出していくという企業がどれくらいあるかということでありまして、規制緩和によってビジネスチャンスを広げることも大事でありますが、やはりそのときに企業が積極的に投資ができるような実質金利を誘導するということが必要であると思います。  最近、中小企業等で随分お話を聞くと、やはり銀行がなかなか貸してくれないということでありまして、また、銀行が貸そうとすれば実質金利が非常に高いということでありまして、決してここに来て資金需要がないということではありませんで、資金需要というのは実質金利が幾らかということに依存するわけでありまして、それが高いならば資金需要がないのは当然であろうというふうに思います。  それからもう一つ実質金利が高いということと関連してもうこれは既に先ほど述べましたが、米国との実質金利格差拡大しております。日本実質金利の方が米国よりも今だんだん高くなっておるという状況、実はこれが円高要因であります。  つまり、財政政策景気回復しようとしたときに金融政策実質的に緩和をしないと、実質金利日本でこのように六%というのは高いわけでありまして、アメリカはむしろ物価が上昇ぎみでありますから、名目金利から物価の上昇率を引くと実質金利は非常に今低くなっている、名目金利の高さに比べて実質金利は非常に低くなっているわけでありまして、そうした状況一つ資本移動を引き起こしてドル日本に流入するということを促進することによって円高が実は生まれているわけであります。  よく、日本貿易黒字が非常に大きいということが円高要因であるという考えがありまして、産業界はほとんどそういう考え方であろうかと思います。つまり、貿易黒字がなかなかなくならないから円高の圧力があるのだと言いますが、よく、貿易黒字が非常に大きくて、それに対して日本がアメリカに対して数値目標等の譲歩をしないと円高圧力がかかるとか言うわけですが、その貿易黒字があって、そのことでアメリカが何か圧力をかけたときに、一体どうやって圧力をかけて円高を誘導するのでありましょうか。方法はないわけであります。  よく口先で米国の高官が言うと円高になることは確かにありますが、それはやはり短期的な現象であって、背後には経済の実体で、実質金利日本の方が高いのであるから日本で資金を運用した方が得だという背景があるから基本的には円高になるわけであります。  そのように考えますと、例えば、貿易黒字円高の原因に決してならないという例は、例えば一九八〇年代の初め、日本貿易黒字がどんどんふえました。しかし、その期間に起こったことは、実に円安であり、ドル高であったわけでありまして、この時代ドル高は逆に、アメリカのこのときは実質金利日本に比べてはるかに高いという状況が生じたわけでありまして、日米実質金利格差にやはり注目した財政金融政策を運営すべきであるというふうに思います。それでは、これから一体どういうふうに現在の不況の対策を進めるべきかと申しますと、やはり円高が急激に進むというようなことをある程度和らげるということをしつつ不況から脱出を図るというためには、金融実質的な緩和が不可欠であるということであります。  その手段としては、一つ、やはり公定歩合を一層引き下げるということが必要でありましょうが、それとともに、公定歩合を引き下げただけでは効果がありませんで、引き下げた公定歩合で日銀貸し出しをふやすということが必要であります。あるいは買いオペをもっとふやすということが必要でありまして、これによって、コール・手形レートや銀行の譲渡性預金であるCDレートが低下いたします。  そうしますと、銀行の資金調達コストがそれだけ引き下げられるわけでありますので、銀行はこれによって資金調達コストが下がれば、それだけ実質金利をもう少し下げて貸し出そうとする。そうすれば、次第に借り入れ需要も出てまいりまして、マネーサプライが増加していくということになりますが、現在はそういうメカニズムが働いておりませんので、マネーサプライがなかなか増加しないということであります。  さしあたりの実質貸出金利がそのようにして低下すれば、中小企業を初めとする資金需要が出てくるものというふうに期待されますし、急速な円高による国内空洞化の問題、これは雇用をどんどん今減少させている要因であります。これもやはり緩和をすることができるというメリットもあるわけであります。  ところが、現在は、いろいろな問題があって実質金利が、コール・手形・CDレートも十分に下がっていないために、実は銀行貸出金利との間の利ざやが非常に拡大しております。これは銀行のいわゆる貸し渋りの一つの証拠というふうに考えられるわけですが、これは一つには、不良債権を大量に抱えている銀行にとって貸し出しが非常に慎重になっているということの証拠でありますが、実際に不良債権を多く抱えていると思われる銀行ほど、この期間、貸し出しの伸び率は低下しております。  これは、このような貸し渋りの解決は、一つには、やはり銀行の資金調達コストを一層下げるということであります。それにより銀行貸出金利を引き下げるということが必要であります。もう一つは、やはり不良債権自体をもっと早期に処理して、過去のことは処理をして新しい出発に備えるということが必要でありまして、そのためには、現在、無税の償却だけを行っておりますが、有税の償却も辞さない。それによって、それは引当金を非常に有税で積み立てているということになりますので、銀行としては赤字決算ということも起こり得る、あるいは無配になるということも辞すべきではないというふうに思います。  そして他方では、やはり不良債権を証券化するというスキームをなるべく早くつくるということが必要ではないかというふうに思います。現在、不良債権の証券化というスキームはなかなかできておりませんけれども、そういったものを進める。米国がそういう不良債権の処理をしたわけでありますが、そのような方向を見習うという点が大きいのではないかというふうに思います。  このように金融政策財政政策が一体となって運営されないと、今回の景気回復財政金融政策が支援するということは非常に難しいわけでありまして、せっかく所得減税を今回もいたしましたが、これもやはり金融政策が伴わないと、所得税減税によって消費支出がふえると取引がふえ、活発化するにつれて実質金利は一層上昇し、さらなる円高を呼ぶことによって輸出が打撃を受けて、せっかくの消費という内需拡大をまたまた相殺し、景気上昇の足を引っ張るということになるということが考えられますので、十分検討すべきだというふうに思っております。  以上でございます。(拍手)
  6. 山口鶴男

    山口委員長 ありがとうございました。  次に、大内公述人お願いいたします。
  7. 大内秀明

    大内公述人 まず冒頭に、お願いしたいことでございますが、平成六年度の予算案につきましては、可及的速やかと申しますか、一日も早く審議をしていただきまして、国会を通過させ、成立を期していただきたい、これが今国民国会に対する最大の期待であるということを、私からも特に冒頭強調させていただきたい、こう思います。  ことしの初め、第三次補正予算を組んだ段階では十五カ月予算ということが言われましたけれども、当初予算、もう既に六月でございまして、十五カ月どころか九カ月予算ということになっておりまして、これは本当にゆゆしきことかと思います。どうぞ一日も早くお願いしたいということを申し述べる次第でございます。  早く通すということで中身はどうでもいいということを私は申し上げるわけではございませんで、内容につきましても、私はかなり改善の跡が認められる、前向きに評価できる点が幾つかございます。そういう点でも早急にお願いしたいということでございます。  予算編成から申しますと、この予算案編成については、大変難しい時期ではあったと思います。言うまでもございませんが、戦後最長の不況のもとで、一方で税収が不足する、他方で景気対策をしなきゃならない、こういうことで、非常に抑制ぎみにはなっておりますけれども、その中で、かなり改善された点はあると思っております。  目ぼしい点を若干挙げさせていただきますが、一つは、公共事業が四・〇%の伸びでございます。総合経済対策とあわせて、今のお話では公共投資景気対策効果について消極的な評価もございますけれども、いろいろ検討する点はあるにしても、やはり従来各省庁の既得権化していた事業費についてある程度の弾力化を図りまして、特に住宅を中心に生活関連が重視された、そういう方向に改善が図られたという点は、私は高く評価をしたいと思います。  次に防衛費でございますが、これが〇・九%の増で抑えられたということも前向きに評価していい。一九六〇年度以来初めて一%以下に抑制されたということは、冷戦時代が終わってポスト冷戦、そういう中で組まれている予算として、私はやはりこれは前向きに評価していい、こう思っております。  それから第三に、景気対策との関連でございますが、約五兆円の所得税減税、住民税減税が行われるようでございますが、その実質的な効果はどの程度かということはともかくといたしまして、私の記憶する限りでは、初めて所得税減税景気対策としてトライするという、こういう挑戦を予算案がしているという点で、私はやはりそれはそれなりの評価をしなきゃいけない、こう思っているわけであります。  幸いなことに、これはちょっと遅きに失したわけでありますが、景気の方が私の判断ではほぼ底入れに近づいている、あるいは底入れと言ってもいいんじゃないかと思う状況に来ております。したがいまして、私としては、この所得税減税効果景気回復をこれから加速、増幅させる効果をむしろ持つものという点で期待したい、こう思っているわけであります。  以上、私としては、基本的にこの予算案に賛成ということで意見を申し上げているわけでございますが、ただ、それにしても、これは日本に限らず先進国及び途上国など共通しておりますけれども、今大変深刻な財政危機、これは租税国家の破産と言ってもいいような、そういう状態を迎えてしまっている。日本もその例外ではないという点で、私どもはやはり、この予算についてはそういった点を見逃すわけにはいかないと思います。  昨年日本で翻訳された、アメリカの経営学者ドラッカーの「ポスト資本主義社会」(ポストキャピタルソサエティー)という本がございますが、これはベストセラーの一冊に入りました。これを読んでおりまして、ドラッカーは、この財政危機は冷戦国家の破綻という形でとらえております。巨大国家になった、それが冷戦時代に冷戦国家として財政の巨大化、硬直化を招き、それが破綻をしている、こういうことでありまして、ある意味では、ポスト冷戦の時代はこの破産した冷戦国家、これをどうするかという、こういう課題を先進国共通に抱えているのではないかと思っております。  今度の予算案でも、公債の依存度が一八・七%になってしまう、あるいは公債の残高が二百一兆円でございますか、これはいろいろ各国によってデータ、差がございますけれども、今の日本財政状態は、双子の赤字のアメリカよりも悪い面を幾つか持っておりますし、また、ドイツ統一のツケで、比較財政はいいと言われていたドイツ連邦財政、これと比べてもちょっと問題がある部分も指摘できるかと思いますので、非常に深刻である。これを何とか解決するという、これは何も日本だけの問題ではございませんので、しかし、我々はみんなで協力をしなきゃならない、そういう時代を迎えているかと思います。  その点で、先ほど申し上げた、防衛費の伸びを一%以下の、つまりベルリンの壁が築かれた六〇年代以前のところに戻すように努力をしたという点は、まさに冷戦国家によって破産をした今の状態を打開するともかく第一歩を少なくとも踏み出したという点で私は、歴史的な評価をしてもいいだろう、こう思っているわけでございます。  それから、破産した租税国家をどうするかという点から申しますと、私は今、景気についてはどうやら底入れを迎えるだろう、こういう判断をしておりますので、景気のこれからの動向いかんにもよりますけれども、減税については、もう余り長期に続ける必要はない、一年限りにしていただいてもよろしいのじゃないだろうか。  この減税そのものが、日米首脳会談、アメリカの大統領との国際的な公約から何か制約を受けているような面がございますけれども、私は、これは日米構造協議のときからいろいろ感じていたのですけれども、やはりアメリカの大統領制と日本の議院内閣制とは違うわけでございますから、アメリカの大統領がいろいろ言うのと日本の総理が首脳会談で言うのとは全く違うわけでございまして、首脳会談で、何か大統領制に引きずられた形で減税のような話が先行してしまうというのは、日本国会の権威、国家主権とのかかわり合いでもやはり非常に問題でありまして、そういうことは今後ないように、どうぞ国会がその点しっかりしていただきたい、私は心からお願いをしたい点でございます。  それから、確かに、今の財政危機を打開するということになりますと、高齢化社会を迎えるに当たって増税ということが出てまいります。ただ、そのときに、すぐ安易な形で消費税の税率アップということになりますけれども、これは私は、やはりできるだけ慎重に考えなければならないと思います。  なぜかと申しますと、ヨーロッパは、御案内のようにVATということで、付加価値税をかなり早くから入れております。そして税率も非常に高うございますけれども、その西ヨーロッパも、付加価値税では租税国家の破産を救えなくて今日に至っているというふうに考えますと、何か困ると消費税という考え方はやはり安易に過ぎはしまいかというふうに思っているわけでございます。  私は、この際、やはり財政再建の初心に戻って、ぜひこれから国民総意のもとに財政再建に取り組む、そういう時期を迎えたと思っているわけであります。  それにつきましても幾つか申し上げたい点がございますが、一つは、言うまでもございませんけれども、行政改革の徹底でございます。いろいろ努力はなされておりますし、細かい点は私もいろいろ知ってはおりますけれども、やはりこの際、省庁の統廃合をやるぐらいの英断をぜひお願いできないものかどうか。そういった裏づけがなければ、やはり国民は、財政再建に対してみんなで協力をするということはないのではないだろうかと思います。これが一点。  それから二点目でございますけれども、やはり歳出の量と同時に中身をよく検討する時期を迎えているかと思います。  公共投資につきまして、私も、従来のような景気対策としての効果がなくなっている、薄れてきているという点は、先ほどの御公述の御指摘と同じような見解を持っております。ただ、私といたしましては、やはり公共投資の性格を、従来の産業基盤整備からもっと社会生活資本の方へ大きくシフトするとか、あるいはハード優先からソフトな面に変えるとか、そういう努力がまず必要でありまして、具体的には、土木、施設中心から設備や機器やシステム、それに堀越公述人がおっしゃったのですが、新社会資本として教育、人材、これがもっと考えられなければならないという、私も大賛成でございまして、人材の育成確保を含めてそういう方向に変えるべきである。  その点では、私、昨年の今ごろまで社会党のシャドーキャビネットのお手伝いをさせていただいていたのですが、そのシャドーキャビネットで緊急経済対策の検討をしたときに出したわけでございますが、財政法四条ただし書きの建設国債ではなく、むしろそれを整理しながら新たに、これは仮称でございますが、社会的生活資本整備国債、こういう名前で、基盤中心あるいは施設中心ではなくて、むしろ設備や機器やシステムや人材の方へ大きくシフトできるような、そういった方向に転換を図らなければ対応はできないだろう、こう思っているわけであります。  それから、税制に手をつける、増税をある程度せざるを得ないというこの場合も、私は、納税背番号制、こういうものを含めて、何よりもまず不公平税制の是正の徹底、まあ今回の予算案でも、中小企業の交際費であるとか使途不明金への課税など改善が図られておりますので、これを高く評価いたします。しかし、もっと大きく踏み込んで、不公平税制の是正だけはやはり大前提になることではないだろうかと思います。  それから、取得税から支出税あるいは財産税にシフトしていくということはある程度必要かと思いますけれども日本の場合は他の先進国と比べて、資産の価額が国民所得比でかなりといいますか、ずば抜けて高い特徴を持っております。という点から申しますと、所得税中心をシフトしていくにしても、私は、やはり資産課税、財産税の方にまずは重点を置いて考えていただきたい。その上で消費税ということ。  ただ、何分にも逆進性の強い消費税ではございますし、これは一たん入れますと、麻薬のようなことでずるずると行きますので、国民の十分な理解、まあ既に三%入っておりますけれども、これは物品税の減税と抱き合わせで何となくうまく入れてしまった導入の経過がございますので、やはり国民がもっとよく消費税の何たるかを理解をした上でなければこれはまずい、こう思っております。  それからさらに、私、租税国家の破産という前提から考えると、財源を租税や国債に求める、そういう租税国家の今までの建前を、その枠を取っ払って、租税国家を超えるような新たな財源の確保という方向で再建策を考えるのが当然じゃないだろうかと思っております。財源をもっと多様な形でいろいろ工夫して考えていくということでございます。  一つとして、例えば環境政策にはナショナルトラストなどをもっともっと進めるということも一つであります。それから、町づくりなどには各種のNPO、ノンプロフィットオーガニゼーション、非営利企業体を創設して、市民、住民の参加を進めるとか、あるいはスポーツに関して申しますと、今は議員立法ということで準備が進んでいると聞いておりますいわゆるサッカーくじ、正式にはスポーツ振興くじでございますか、法案ですね、こういうものなども脱租税国家の財源として前向きに評価すべきではないかと思います。  批判として賭博性を言いますけれども、パチンコや宝くじと比べてどうしてサッカーくじが悪いのかというのは、私にはどうにも理解できません。私はただ、生まれて一度もパチンコにさわったことがございませんし、たばこものんでおりません。酒はまあ飲む、酒を飲まないと申し上げると、何というんですかね……。やはり第一勧銀が窓口になっております宝くじ、そういうものの一種として、戦後も野球くじであるとか相撲くじとかいろいろございまして、スポーツはやはり勝ち負けを楽しむ以上、それにくじが当たるかどうかの夢もかける。  私も一年ほどヨーロッパで生活したことがありますけれども、不健全どころか、むしろそうしたくじを楽しむ余裕やゆとりがある、それが健全な成熟社会のありようだし、夢を買いながら新しい社会資本の財源を負担する、これこそ受益と負担の統一であるというふうに考えるべきではないだろうか。  若者が期待に夢を膨らませるようなそういう財源確保、私も教育に携わる者でありますけれども、学生たちと話をしておりまして、まあ、そう心配をするようなことはあり得ない話でございます。既に未成年でも新入生は酒やたばこをのみ、かつ、一気飲みで救急車のお世話になるようなそういう現実があるとすると、そっちの方がずっと問題でございまして、やはり健全な形で前向きに財政再建のためにいろんな多角的な、そして受益と負担の統一の道をみんなで探し出す、こういう時代を迎えているということかと思います。  時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。失礼いたしました。(拍手)
  8. 山口鶴男

    山口委員長 ありがとうございました。     ―――――――――――――
  9. 山口鶴男

    山口委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本幸三君。
  10. 山本幸三

    ○山本(幸)委員 改新の山本幸三であります。  きょうは大変貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございました。時間が限られておりますので、ポイントを絞って、特に岩田先生にお伺いしたいと思います。  今私どもがやるべきことは、この長い不況をどうして解消することができるのか、一体日本経済に何が起こったのかということをしっかり解明して、そしてそれに対する処方せんを打っていかなければいけないというふうに私も考えております。  その意味で、私は、この過去の経済政策の中で、特に金融政策が非常に問題があったというように考えておりまして、きょう岩田先生のお話を伺って、まさにそのとおりだと思ったわけであります。残念ながら、そうした金融政策の運営について、必ずしもきちんとした解明が行われておりません。今回の予算に対する質疑においても、そうした追及が行われたこともありませんし、その意味では政策論議が十分でなかったと私は大変残念に思っております。  そこで、先生がおっしゃったように、日本経済で今起こっていることは、財政政策では確かにいろいろな手が打たれてきた。昨年の春、秋の経済対策、そしてことしの経済対策、総合で三十兆を超えるだけの対策が打たれてきたわけですが、これがなかなか効いていない。それは、今おっしゃったように、経済のメカニズムとして、固定相場制のときと変動相場制のときは財政支出効果が違うんだ、これをはっきり認識しておかないと政策を誤るということなんですね。  つまり変動相場制のもとでは、財政支出拡大しても金融市場にプレッシャーがかかり、そして国際資本移動も自由ですから、その結果、金利上昇プレッシャーがかかって円高が生じる、これがまさにこの過去二、三年、日本経済に起こっていることなんですね。これはまさに、いわゆるマンデル・フレミング・モデルが示している、そのとおりの状況が起こっているわけでありますけれども、したがって、変動相場制のもとでは、むしろ金融政策をより柔軟に発動しなければならない。そうしなければこの金利高、円高という現象を解消することはできないし、そしてまた、景気回復することもできないというわけなんですね。  私は、なぜそういうことが起こったんだろうか、一体日本銀行はそういう金融理論、そういう理論を理解していないのか、あるいは日本銀行はもっと違った理論に基づいてやっている、それが間違っているのか、そのどっちかだと思うんですけれども、岩田先生、その辺はどういうふうにお考えでしょうか。
  11. 岩田規久男

    岩田公述人 日本銀行がどういう考えで現在金融政策を運営しているかというのは、なかなか外部から見て難しいんでありますが、日本銀行は一応、私の見るところ短期の、特に名目金利、コール・手形レートに代表される名目金利を見ながら金融政策を運営していて、景気の動向との兼ね合いで、恐らく現在の名目金利は十分に低いということで、これ以上することはない、その効果をじっと見詰めるということであろうかと思いますが、そういう意味で、非常に名目金利重視の金融政策を運営するということ、そのために実質金利がよく見えないということだと思うんです。  しかし、それでは実質金利重視の方がよいのかと申しますと、確かに実質金利がよくわかればいいのでありますが、実質金利というのは、これから物価がどの程度下がるだろうというふうに企業家たちが予想しているということ、それをきちんと把握できないとなかなかこの運営も難しいわけであります。  現在恐らく、先ほどから、実質金利が非常に高いというのは、このところずっと物価が、卸売物価ですが、特に下がっているということから、企業家は物価の低下を相当予想しているというふうに考えられ、その点からは実質金利が高いと申し上げたわけですが、本当はこの実質金利がなかなかよくわからないということで、これをうっかりすると、それを今度は名目金利だけ見て、実質金利をよく見ないで、また実質金利もよく十分には、正確にわからないのを、そういう実質金利も指標にしておりますと、やはり金融政策運営を誤るということになりますので、やはりこれは、一九七〇年代の終わりから八〇年代の初めにかけて日本銀行金融政策として非常に成功したと考えられるマネーサプライをもう少し重視するという考え方に立った方がよいのではないかというふうに思います。  マネーサプライをもし重視する政策に転換し、前のようにそれを維持していれば、一九八〇年代の終わりに起こったように、今度はマネーサプライ重視をやめて、ほとんど私には軽視と思えるんですが、大体一〇%台から一二、三%台というようなマネーサプライの増加をずっと許容してしまったということがバブル経済を起こしたわけでありまして、今度は何かそれに、あつものに懲りてなますを吹くということでありましょうか、九〇年代に入ってから、今度はマネーサプライの変化率が前年度比マイナスになっても放置するというように、全くマネーサプライを軽視して、日本銀行が適切だと思う名目金利に固執し過ぎているということが八〇年代の終わりから今日に至るまでの金融政策がうまくいっていない原因ではないかというふうに判断しております。
  12. 山本幸三

    ○山本(幸)委員 日本銀行は、おっしゃったように、実質金利の計測が難しい、この委員会でもそのことについては議論がありました。最近は価格破壊が起こっているから、いろんな意味で物価について今の指標をそのまま使うのはおかしいんではないかということです。私はそのとおりだと思いますが、しかし計測が難しいということと、物事の重要性がなくなるということとは全く別の話だと思うんですね。  もし、おっしゃったように、実質金利というものが重要なんだけれども、しかしその計測等がなかなか難しいという場合に、やはりマネーサプライを重視した政策を行うべきだ、私もそう思います。その場合に、どうも日本銀行は、歴史的に公定歩合一・七五まで下げちゃったから、あるいはコール・手形市場を、歴史的に最も低いレートまで来ちゃったから、それ以上動かせないんだということで、そのためにマネーサプライの運営が非常におかしなことになっている、それが実体経済を傷めてしまった、私はそう思うんですが、それでは、そのマネーサプライを重視するという場合に、どういうことを考えて運営したらいいでしょうか。
  13. 岩田規久男

    岩田公述人 マネーサプライを増大させるような政策というのは、正当的には日本銀行の貸し出しを、公定歩合での貸し出しをもっとふやすということ、及び一般的な買いオペをもっと進めるということであります。これに対して、日本銀行がなかなかそういうことに踏み切らないというのは、日本銀行が恐れているのは、それによって名目金利が非常に低下して、余りにも低下が急激に進むということが金融市場を混乱させるというふうに考えているわけであります。  そのようにして名目金利のある程度日本銀行がよいと思う水準に固執して、マネーサプライをふやすような政策、今のような金融政策を運営するとかなり低下するということが金融市場の混乱を必ず招くというような、何かそのことに考えが凝り固まっているために、結局マネーサプライが伸びるような政策が運営できないというふうに、ジレンマに陥ってしまっているというふうに思います。  しかし、将来の物価の動向等を考えると、やはり名目金利が、コール・手形レートが低くても、歴史的に企業マインドは冷え込んでいるとか、歴史的に不良債権を抱えているというときにはやはり歴史的にも名目金利を引き下げ、それによって間接的に実質金利を引き下げるという政策、こういうふうにすれば、結果的にマネーサプライはもっと、大体成長経路の六%ぐらいまでに増大するというふうに思います。
  14. 山本幸三

    ○山本(幸)委員 日本銀行が日銀信用をふやすなり、あるいは買いオペをするなりしてマネーサプライをふやすべきだ、私もそういうふうに思います。ただ、日本銀行はどうも過去の歴史上のレート、名目のレートというものに余りに固執し過ぎていてそれをやろうとしない、そのことが日本経済をここまで傷めつけたというように思うわけですね。  そのように日本銀行が余りにその名目金利に固執してしまって、そしてマネーサプライをふやそうとしない。これはやっぱりどこにその原因があるんだろうかなと思うと、どうもやっぱりバブルに対する原罪意識が強過ぎるということにあるんじゃないかなというふうに思うんですね。ここは、やっぱり我々としては、金融政策だけでそのようなバブルを退治しようということが、逆に実体経済を傷めてしまった、つまり病気を治そうといったら、もう死んでしまっていたというようなことになっているわけで、この点はぜひ日本銀行も考え直してもらわなければいけないというふうに思います。  それからまた、その実質金利のほかに、先ほども御指摘がありましたが、不良債権が大量にある。しかも、こういう不況状況で、円高もあるというようなことで、不確実性が大変高い。その場合には実質金利、つまりインフレの影響だけじゃなくて、いわゆるリスクプレミアムというものも考えなければいけない。そうすると、名目金利からインフレを考慮し、つまり実質金利を考え、そしてそれにまだリスクプレミアムというものを考えなければいけないとすれば、日本企業が直面している実質資本コストというのは大変高い。これをやっぱりなくさない限り、先般の委員会でも御指摘がありましたけれども、中小企業が幾ら銀行に行っても決してお金を貸そうとしない、こういう現象が起こっているんだと思うんですね。この点についての御見解もお伺いしたいと思います。  それからもう一つ日本銀行金利を下げたと言っているんですが、しかし市場を見てみますと、常にコール・手形レートというのは公定歩合より高い。最近でこそ大変その差が縮小していますけれども、〇・五ないし、場合によっては一%を超えるぐらいの格差をもってコール・手形レートの市場が決まっていた。これは、つまり何を意味するかというと、公定歩合は実際下げていても、日本銀行はコール・手形レートをそれ以上のレートで維持している。つまり必要な資金を供給していないということなんですね、その公定歩合を下げたレートについても。これは私は、とんでもない話で、公定歩合を下げた、下げたと言いながら、実際は全く引き締めているということで、まさにある意味では非常に問題のある政策だというふうに思うんです。  本来ならば、コール・手形レートは、必要な公定歩合を下げたと言えば、それだけの資金を供給すれば公定歩合の市場レートに近づくはずなんですが、あるいはもう同じでなければいけないんですけれども、そうでない。したがって、銀行公定歩合で借りても、これをコール市場に投げれば、自動的に利益をもうけちゃうわけですね。したがって、決して貸そうとしない、貸そうとする努力をする必要がない、そういうふうに日本銀行はシステムとしてこれまで支えてきた。しかも、企業にとっては実質金利が高いし、しかもリスクプレミアムがあるということですから、私はまさに日本銀行のそういう運営というのは大変問題があったというふうに思います。  最後に、その点についての先生の御見解をお伺いして終わりたいと思います。
  15. 岩田規久男

    岩田公述人 今おっしゃったような、そのとおりだというふうに思います。  最後に、その点に関して幾つか、この委員会でも疑問に思っていらっしゃる方があるという点についてのみ、もう一つ触れておきたいと思います。  それは、これ以上名目金利を引き下げた場合に、消費者物価は安定しておりますが、定期預金等の実質金利が非常に低下してマイナスにもならないか、それが高齢者の利子所得というものを低下させる、それが非常に問題であるということになっております。  高齢者の利子所得の減少というものが消費を抑制して経済のむしろ回復をおくらせる効果というのがあるんではないかと言われますが、それよりも基本的にはやはり設備投資円高による輸出減少等の方が、あるいはバランスシートが回復しないためになかなか景気回復しないといった方がやはり効果としては大きいと思いますが、しかし高齢者の利子所得というものもなるべくならば減少を少なくしたいということになりますと、現在、預金金利あるいはコール・手形レート等が下がっても貸出金利がかつてのように下がらないという点がもう一つ問題になっております。  したがって、コール・手形レートや預金金利をもう少し引き下げてもらうということも必要であります、それは他方で必要でありますが。同時に下がったときにきちんと貸出金利ももっと下がるという、つまり銀行の利ざやがもっと縮小するというメカニズムが必要である。そのためにやはり不良債権の処理というものをもっと急ぐということが必要であって、これははっきりと有税償却等を進めて引当金を銀行に積み立ててもらうということになると、赤字決算であるとか無配といったことで銀行の経営責任が問われる状況になる。  そのことが金融機関としてどうも好ましくないということで、ゆっくりと無税で償却していくということで、これで銀行は安泰なんでありますが、金融仲介機能がそれで衰えて、せっかく預金金利などが下がって、預金者が犠牲を払っても貸出金利が下がらないという状況がかなり続くということでございますので、不良債権の処理を有税償却及び証券化というフレームワークを早急につくっていただきたいというふうに思います。
  16. 山本幸三

    ○山本(幸)委員 ありがとうございました。
  17. 山口鶴男

    山口委員長 次に、近藤鉄雄君。
  18. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 本日は、私たちがこれからの予算財政金融政策を考える上で大変参考になる御意見を三公述人から承りました。心からお礼を申し上げたいと思います。  限られた時間でございますが、三先生にそれぞれ二、三点、御質問をさせていただきたいと思います。  最初に、堀越先生でございますが、先生のお話の中に、民主主義成熟度と私学教育というのはまさにパラレルの関係にあるんだ、こういう話がございました。私も海外をいろいろ回って、いろんな学校を見て、本当に私学教育の盛んなところ、私立学校の多いところはそれだけ民主主義が盛んだという先生のお話、非常に同感するわけでございます。そういう観点から、我が自由民主党が中心になりまして、もう二十年前ですね、私立学校振興助成法をつくらせていただいた。二十年たったわけでございますが、まず第一点、その二十年間、法律の趣旨に沿って政府私学助成に努力をしてまいったのか、それとも先生の御判断で、十分じゃないというか、むしろ法の精神が曲げられているじゃないか、どういうふうにお考えになっているのか。これは端的に最初に承りたいと思います。    〔委員長退席、中西(績)委員長代理着席〕
  19. 堀越克明

    堀越公述人 お話の振興助成法という法律が議員立法で制定されましたのが、おおむね二十年前でございます。この法律がうたっているのは私立大学初め私立幼稚園に至るまでのすべての私学に対しての振興助成という法律でございますが、その附帯決議が最初つけられておりまして、速やかに私立学校が必要とする年間経常経費の二分の一に到達するように努力をするということが附帯決議で出ておりました。  昭和五十一年以後、最初の八、九年は大体その方向に向かって順調に進んでまいりましたが、たまたまそのころ財政硬直というような時期に逢着をいたしまして、シーリングというようなことが次年度の予算編成のときに毎年毎年行われることになりました。  それ以来、前年度対比マイナス一〇%というのが一応原則的に大蔵当局から出てきたわけでございますから、その最初の昭和五十七年度だったと思いますが、マイナス一〇%を忠実に文部省お考えになって、一〇%カットということが、これは大学も含めて高校以下も行われたということで、さっき申し上げたその回復におよそ十年かかったわけですから、それ以来の十年間は大変とんざしたといいましょうか、伸びが鈍化したと申しましょうか、甚だ法律の趣旨に沿うような点には行っていなかった、こういうふうに記憶をいたしております。
  20. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 これは率直に考えて、これから高学歴社会に入る。大学でもそうでございますし、また中学校義務教育ですが、高等学校もほとんど義務教育化しているわけでございます。  そういう中で、公立とそれから私立の父兄の負担を考えますと、これは当然でありますけれども私立負担が大きいわけでございますが、ある意味では、その分だけ本来国が負担しなきゃならない財政的な負担一般の方々に、民間の方にお願いをしている、こういうことでございますから、一人当たり教育費がその分安くなる、割り切って考えればそういう理解もできるわけでございますが、そういう点から考えると、安上がり教育という言葉は私は決していい言葉だとは思いませんけれども、やっぱり資金効率を考えた場合にも私学教育は非常に大事であります。しかも、先生がおっしゃいましたように、非常に人格、それから文化とかいろんな面の多面的な能力の開発という点から考えれば、それは私立学校にはるかに公立学校比較して可能性が大きい、私はこう思いますので、そういう意味で、私ども政治家はもっともっと私学教育に努力していかなければならないと、みずから言ってまいったわけでございます。  そこで、端的に先生のお話ございました私立高等学校経常費助成でございますけれども、我々も当初大蔵省が五割カットということを言ってきたときには、関係者激怒したわけでございます。とんでもないことだ、こういうことでいろいろ我々努力いたしまして、予算的に二五%カットまで下げたといいますか、回復をした。  ただ、財政当局と話をいたしますと、確かに私学助成という形で国の直接国庫補助は減ったけれども、しかし、地方交付税交付金をふやしている、だからトータルの公費負担というのはむしろ従来よりもふえているのではないか、こういうことを言っているわけでありますけれども、国が負担するのか、地方自治体負担するのか、公費負担は公費負担でいいじゃないかということ。  それから、お話もございましたけれども、大学教育は国がやるんだ、しかし高等学校教育は県が中心になってやる、そして中学、小学は市町村ですね、そういうふうにいわば教育の国と地方役割分担があると考えると、むしろ交付税でこれから進めることが筋論ではないか、こういう意見も実は財政当局を中心に出てきているわけでございます。こういった意見に対して先生はどうお考えになりますか。
  21. 堀越克明

    堀越公述人 これは財政論の問題かと思いますが、今お尋ねの教育費全体を考えますと、民間の活力をいかに利用するかということが今時代で問われているわけでございますね。これは何も教育だけじゃなくて、私は民間の活力を大いに導入すべきだ、利用できるものは大いに民間を利用しろというような方向に世の中進んでいると思うので、教育もその例外ではないと私は思っております。  したがいまして、そういった観点から私学の振興を考え、そこにある程度の公費を投入するということは決してむだなことではないというふうに国及び地方財政事情からも私は思うんですが、ただ、今御指摘の高等教育はまず国が責任を持とう、それから初等中等教育、特に後期中等教育は県段階でいいじゃないか、それから初等教育、中等教育の初期、初等中等教育の前期中等教育を含めたものは市町村、こういう所轄が一応考え方としてはございます。  私、財政負担の問題はそれでいいんですが、やはり日本の国の教育というものを長い目で考えた場合に、外交とか安全保障というのは、今地方分権論というのが大分議論されておりますけれども、これはそれぞれの地方に任せるわけにはいかない、何か国全体で考えなきゃいけない性格のものだと思いますね。  ですから、例えば今北朝鮮の問題が話題になっておりますが、これなどは例えば九州一地区で考えればいいんじゃないかとか、北海道で考えればいいんじゃないかという問題ではなくて、やはり安全保障とか外交の問題は国が一つの姿勢で処理をしていくという方向が大事だろうという意味で、教育も、やはり今日まで日本が戦後五十年近くここまでやってこられたのは、教育というものに国が力を大変注いできたあらわれでありまして、今ここで所轄がそれぞれの学校、種別で違うからそこへ任せようじゃないかという議論もございますけれども、そうすると、やはりここに何かアンバランスなものが出てきてしまって、国全体の発展のために私は不幸な結果になるおそれがあるということで、やはり国がある程度のそういう意味の姿勢を示すということが大事なんだろう、こう考えているわけでございます。
  22. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 私も先生のお話、大変同意するところが多いわけでございまして、それは、地方地方でもっと地元に密着した教育をしていいし、その分の応分の資金的な負担もしていいと思うんでありますけれども、いろいろ統計、データを横並びで見ますと、やっぱりそうは言っても、東京を中心とした富裕自治体はそれなりの教育に対する助成をできるわけですね。そして、過疎県とか過疎自治体は、それだけの教育に対する資金を回したくても回せないのです。  先生のお話にございましたね、いろんな災害が起こったとかなんだというと、結局そっちの方にもう行っちゃいますからね。だから、教育は国家百年のと言いながら、やっぱり目の前のことに、手元不如意ですから、行っちゃうとなれば、やっぱりそこは国の責任においてきちっと基本的なことをやるんだという、それはやっぱり我々政治家として教育姿勢が根本になければならない。  いろんなやり方その他については地方が考えていいけれども、そういう過疎過密といいますか、地域格差というものを教育の分野で解消するということが私は非常に大事だと思いますので、その点は、国は高等学校、中等の教育といえどもやはり負担すべきものは責任を持ってやるという、この根本はぜひ譲ってはならないと我々自由民主党は考えておりますので、先生のお話を承ってさらに参考にしていきたい。  最後に、先生、そういう観点の中で、よくこれは私学助成について言われますけれども、何でもかんでも右へ倣えじゃ困るじゃないか、いい学校もあれば、率直に言って悪い学校もあるから、みんな一人頭幾らみたいじゃ困るので、もっともっと個性のある、またすぐれた教育をやっていただける学校補助していこう、そして、そうでない学校については多少厳しく対応させていただいていいんじゃないか、こういう議論がございますが、そういう点で、現行のまさに高等学校、中学校教育に限って、先生のお考えでもっとこういうことを国がやってくれたら個性あふれる私学ができるんだがな、こういうお話があったら承っておきたいと思います。
  23. 堀越克明

    堀越公述人 私立学校存在意義というのはいろいろ言われるわけでございますが、やはり私は、公立学校ではやり得ないことをやる学校があってもいいだろう、それがやはりこういう自由な民主主義社会民主主義国家で大事なことじゃなかろうか。  ですから、公立ですべて教育を請け負ってしまうという考え方もございますが、これはかつての全体主義の国などはそういうやり方でやってきたわけですが、せっかく日本の国家社会がここまで自由に闊達に伸びてきたのは、やはり教育の面でもそういう何か特色あるものをそれぞれが発揮する、それを国民が期待をして自分の子弟を預ける、それが将来の日本の国家社会を担っていくというような、多様な価値観の時代と言われている、その多様な価値観こそ、やはり私は私立学校がそれにこたえるような教育をするのが私学存在意義ではないかと思います。  そこで、補助、助成の問題でございますが、私立学校といえどもこれは自助努力を大いにしなきゃいけないということで、経営の合理化その他は最大限努力はしているわけでございますが、いろいろ地域地域によって必ずしもそれがうまくいかないところがあります。ですから、統計を見ますと、やはり東北であるとか九州地域であるとかというところはなかなか父兄負担の限界というのが、大都市部とは違いまして限度がございます。もうそれが恐らく限界に来ておりますので、もし私学教育というものが日本の将来のために必要だということであれば、そういうところへは少し効率的に補助をしていただく、そうすればそういう地域でもそれぞれの特色を発揮する教育が展開できるんじゃないか、こんなふうに考えております。  ちょっと一般の方の誤解があるといけないんですが、私立学校をなぜ補助しなきゃいけないかということなんですが、自助努力の限界が私立学校にはございまして、例えば企業で生産を大いに上げて利益を上げて、利潤を上げて経営をうまくするというようなそういう性格のものもございますけれども教育事業というのは、利潤を上げ、利益を上げて何とか経営が成り立つようなというそういったものではないことは百も御承知でございますので、やはりこれを何とか生かすためには、必要な公費の補助というものをやって、これがうまく運営できるようにやっていただくということが必要なんじゃなかろうか。  その特色発揮のためには、大いにこれが私学の目玉であるというような、そういう特色を発揮している学校にはそれだけの傾斜的な配分というようなものがあってもしかるべきだろう。それは既に各県でかなり考えているのが実情でございます。  そんなことで、よろしくお願いいたしたいと思います。
  24. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 次は、経済問題に移らせていただきますけれども、もう時間もございませんので、岩田先生、大内先生、お二人に御質問させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。  岩田先生のお話、私も前に承ったことがありますが、大変理論的に明快でございまして、私、予算審議の前に承ってから質問すればよかったんじゃないかと、こう思って今後悔しているわけでございます。  ただ、先生、公共事業はいいよ、公共事業は今度は状況が変わってきたので、こうなると、まさに国内の金利が高まってきて、今度は外資が入ってきて、そして円高になる、そうすると、公共事業で事業はふえるけれども円高輸出が減ってくるから、トータルの需要効果は減るよと、こういう話でございます。  理論的には全くそうだと思うのです。ただ、先生、あえて申しますが、それが今必要とされているのではないでしょうか。すなわち、公共事業をふやします。片っ方で円高円高だから公共事業をふやすんだけれども円高が負債になって輸出ができなくなる。とすれば、企業は今度は内需転換をしていかなきゃならないんですね。そうすると、公共事業をふやして、そして結果的には輸出が抑えられて内需企業が転換をしなきゃならない、そうすることこそが今国際的に日本が求められている政策じゃないかと思うのですが、先生、どうでしょうか。
  25. 岩田規久男

    岩田公述人 先ほど申しましたのは、景気効果としては公共投資や所得減税の効果は小さいということを申し上げたので、違う観点から必要がないというふうに申し上げたわけではございません。したがって、不況対策ということであれば、やはり金融政策を緩和して民間の設備投資の落ち込みを防ぐということによって内需をその点でも拡大する。それから、もう一つ内需拡大としては、やはり社会資本の整備がおくれております、特に生活関連がおくれておりますので、それも大事であります。そういったものが、ある程度急速な円高を呼ぶということが少し問題であるということで、金融政策はやはり緩和を同時にしていくということが必要であるということであります。  そういうふうに運営した場合には、景気回復することによる景気拡大によって逆にその面での量的な輸入がふえるという形で、円高はある程度急速な進み方、例えば百円を突破してしまうというようなことはないけれども、むしろ日本経済全体が拡大することによる輸入の増大という、そういう形で貿易黒字にも対処するのがオーソドックスな方法ではないかというふうに思います。
  26. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 私たちの最大の課題が当面は景気回復であり、そして日米経済交渉に代表されるような経済摩擦でございますが、大内先生からお話がございました、何も日本の税制をアメリカまで行って説明しなくてもいいじゃないか、私も全くそう思いまして、これは予算委員会で私も取り上げたんだけれども、クリントン先生にかつて細川生徒が、今は羽田生徒ができの悪い論文を書いていって、何とかこれでひとつ及第点くださいみたいなことは、少なくとも大人の関係ではないですよね。  だから、アメリカからいろんなプレッシャーがかかるのと全く関係なしに、私は言ったんですよ、日本の問題として、カンターがどうでもいいとは言わないけれども、我々日本国会に、あなた方はどうして日本の経常収支の黒字を解消するのか、答案書きなさい、持ってきなさい、ワシントンへ行く必要ない、ここで話せ、そういうことを私は強く申し上げたわけでございます。  さあ、そこで先生、方向は方向としてどうしたら日本輸出が減りますか、また、どうしたら日本の輸入がふえますか。結果的に日本の経常収支のバランスが改善しますか。私は基本的には岩田先生と同じ意見で、やはり円高はいけないと思うのです。円高は抑えるべきだと思っていますが、どうしたら日本輸出入が改善すると先生はお考えになりますか。     〔中西(績)委員長代理退席、委員長着席〕
  27. 大内秀明

    大内公述人 日米関係の対応ということで私は特に所得減税についてのみ申し上げたわけでございまして、それが日米首脳会談の席上で何か国際的な公約のように決まってしまって、それによって国会国民もみんな制約を受けるというのはおかしいということを申し上げて、それについては近藤先生もかねてからそういうことを御主張いただいていたということで、私もぜひそういうことで、国会の権威のためにも、国民のためにも、一層の御努力をお願いしたいとむしろ申し上げたいと思います。  とは言っても、やはり日米経済対立が非常に深刻になってきておることは事実でございますし、特に先生が山形で、宮城の隣でいらっしゃるものですから、御存じのとおり、仙台空港、ホノルルとの定期便も、これも日米経済対立のあおりを食いまして、今のところストップをしてしまいまして、チャーター便でしかない。こうなりますと、単なる貿易摩擦どころか、航空摩擦であり、あるいは課税をめぐっての、税金をめぐっての対立までなって、これはいわば経済的には全面戦争かな、そう思わざるを得ない非常に深刻な事態であることは間違いないと思います。私もこの点では大変危惧をしているものでございます。  ただ、やはり私は、従来のレーガン、ブッシュの共和党政権と違いまして、民主党のクリントンということになりますと、アメリカの政策の根本がかなり大きく違ってきている、これはやはり十分認識してかかるべき必要があるだろうと思います。  冷戦時代でございますと、共和党と民主党の対立といっても、ソ連という共通の、敵といっては変ですけれども、相手があって、余り共和党と民主党の政策の違いも表面化しない状態がずっと続いてまいりましたけれども、しかし、ポスト冷戦を迎えまして、今までと違って、共和党と民主党の政策スタンスあるいは政権の基盤、この違いが表に出るようになってきた。  御案内のとおり、共和党の場合は金融筋がバックにおりまして、したがって、金融国際化とか自由化とか、先ほど岩田公述人のいろいろなお話にもありましたようなそういう流れがあったと思いますけれども、クリントンの場合には民主党でございまして、完全に産業界がバックであり、かつ国内重視という立場に立っているわけでありまして、日本の場合もその点をはっきりさせて、当然日本の場合もやはりある程度国内を重視して対応するんだということをアメリカにはっきり言わないと、やはり国際派的な従来の共和党、レーガン、ブッシュの路線のような対応の仕方ではだめなんじゃないかということ。いたずらにノーとだけ言えというわけではございませんけれども、その違いをもっと明確にして、国民にもはっきりわかるようにしていくべきではないだろうか、これが一点ございます。  それから、もちろん私も、内需拡大努力をするということで、先ほども財源についても、今までのように租税、国庫を前提にして、ただ租税、税金で取って、足りないところは国債で、そして赤字が膨らんでいくということではなくて、もっと多様な財源を確保しながら、そして受益と負担とが統一されるような、国内の実需を拡大しながら財源も確保できるような、そういう道を早くつくらなければだめだということを申し上げているわけでありまして、おっしゃるように内需拡大のための努力をさまざまな形でやるべきであるということはわかります。  ただ、何といいましても、日本の場合、貿易黒字を初め経常収支の黒字が突出してしまっていることは事実でございます。やはり私は、内需拡大と同時に黒字の国際的な還流、とりわけアジアが御案内のとおり新しい世界の経済の成長地帯として勃興しているので、やはりアメリカと日本とNIESなどの間の、これは八〇年代、トライアングルというふうに言われましたけれども、それはどうやらもう終わって、今や日本と東南アジア、それからアジアNIES、それから中国、ベトナム、一種の新しい成長の四角形ができあがっているようなそういう時代でありますので、そういう点に十分配慮をして対外投資あるいは対外援助、むしろアジアの基盤整備などに思い切った手を打っていただいて、そういう点で対外的な還流を図るという中で問題の解決を進めるべきではないだろうか。  確かに、日米、非常に長い成熟した大人の関係でございますけれども、大人の関係というのは、やっぱり若いときと違って、できるだけ少し距離を置いて、若いときは、例えば悪うございますけれどもダブルベッドだったんだけれども、少し中年になるとちょっとやっぱりベッドも別にする、年をとれば相当な距離を置いた方が、夫婦関係じゃございませんけれども仲よくなる、仲を保つ、自分のことを申し上げるわけじゃありませんが、やはり成熟した大人の関係というのはそういうことなんですね。そういうことで、少し日米関係をもっと高度なレベルで話し合いができないものか、そんなふうに私は思っております。  私、国際経済はそう専門ではございませんけれども、いろいろ勉強しておりまして、そういった見解を持っておりますので、私も、日米摩擦の解決のためにはできるだけの努力をしなければならぬ、その点では全く同じあれですが、さしあたり考えているのは以上のようなことでございます。
  28. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 議論がございます所得税減税も、私は所得税減税は賛成なんです。賛成だけれども、所得税を減税した、そのときは可処分所得はふえました、さあ、後、靴を買いなさい、テレビを買いなさい、何を買いなさい、どんどん使って内需拡大しょう、おまえが年をとったときは社会保障で面倒を見てやるから、今はどんどんぜいたくをして、ぜいたくというと言い過ぎだけれども、使って景気をよくしよう、私は、これはいい政策だと思わないのです。  こんなことをしたら、日本国はまさにキリギリス国家ですよ。まさにキリギリスとアリの寓話がありますけれども、どんどんどんどん使って、後は息子に面倒を見させようという、だから消費財、消費財、こういう話はいい話ではないんで、所得税減税は賛成です、だけれども、余ったお金はむしろ福祉だとか教育だとか、それから、まだまだおくれている社会資本設備だとか、そっちの方に回すことだと私は思うのですよ。  そして、私たちはもう今は大分満ち足りているんだから、背広だってネクタイだってもうありますから、むだをしなくたっていいんです。それを残して、それをもっと大事な方向に使って、そして私たちが年をとったときに、自分たちが貯金してつくった福祉施設で今度は安定した老後を送る、そういう資金循環を私は国として政府が考えるべきであると思うのですね。単に、景気が悪いから減税して物を買ってもらえ、それは一過性ですよ。そういう軽薄な政策日本政府はとるべきではないと私は思うのであります。  そこで岩田先生、先生の金融理論、私も二、三、本を読ませていただいて、大変明快で分かりいいのですが、どうでしょう、いわゆるマーケットメカニズムに基づくところの金融政策でそうした構造的な資源配分政策ができるのかどうか。私はまさに、マーケットメカニズムの金融金利政策じゃない、もっと構造的な、産業構造の転換だとか、それから将来に向かっての教育だとか福祉に金を流すとか、そういうもっともっと構造的な経済政策金融政策が望ましいんであって、その点について、ぜひひとつ岩田先生の御見識を承りたいと思います。
  29. 岩田規久男

    岩田公述人 それでは、内需拡大との関係で、金融以外の、構造調整といいますか、そういった問題で、現在どういう問題が重要かという私の考えを述べさせていただきますが、まず第一に、今おっしゃられたように私的な消費というのはかなり充実しているので、所得減税で使いなさいというような政策は余り望ましいというふうに私も思っておりません。  むしろ、私的な消費といいますか、私的な消費には必ずしも入らないかもわかりませんが、もし残っているとするとやはり住宅であろうというふうに思います。住宅に関しましては、やはりもっと質を改善するというような問題が必要であるということになりますと、もっと土地を有効に利用する、そういう政策がひとつ非常に重要である、その上で、いろいろ住宅に対してある程度の援助をしていくということが必要かというふうに思います。  それから、住宅との関係でもありますが、社会資本の整備がやはりおくれている。特に首都圏などを考えますと、やはりいつでも通勤電車は混雑をしておりまして、普通、鉄道は社会資本とか公共投資の方に入っていないわけですが、こういったものに対してもっと充実させていくという必要があろうかと思います。つまり、住宅が大きくても遠くにあったのでは通勤難で大変でありますので、鉄道などはもっとどんどん整備する必要があろうと思いますし、道路に関しても、首都圏では放射道はできたけれども環状は全くできていないというようなことがあちこちで渋滞を起こし、またNOxなどの排出量をふやすことによって大気汚染の原因にもなっているわけでありますので、いわゆる新社会資本と言われるものもそうですが、そういう交通関係社会資本というものももっと整備することが我々の生活を豊かにするのではないかというふうに思います。  それから、教育とかそういった問題はもうおっしゃられましたので、私もそのとおりだというふうに思います。  ただ、その社会資本のときに、ではどういう財源が一番よろしいかといいますと、最初は国債なり地方債でもって発行してやっていくけれども、それの償還資金、利子支払いは何が一番よろしいかといいますと、やはりこういったものは開発利益が地価に出てまいりますので、地価にリンクした保有税、そういったものをもう少しきちんと強化して、それを社会資本の整備に回していく。これは開発利益を公的に還元するとともに財源を確保するという手段でありまして、そういった政策がぜひとられれば、高齢化社会に向かってほかのものを増税しないで社会資本が整備できるというふうに考えております。  それからもう一つ、これからやはり民間の設備投資、依然として重要であるというふうに思いますので、そういったものに対しては、今後の構造調整という意味ではやはり規制を緩和して、民間が自由にいろいろな分野で技術革新等を行い、ニュービジネスを展開していくということが必要であって、そういう社会資本と民間の新しい設備、そういったものが内需拡大としては重要で、私的な消費に余りこだわる必要はないというふうに思っております。
  30. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 先生もおっしゃったように、大事なのは、住宅がおくれていますね。私は、どうも日本の経常収支の黒字というのは、日本経済の力の表現であるよりも日本の国内マーケットの貧しさの表現と見られますね。国内で物をつくったって売れないから外に積んじゃっているわけですから。ただし、さっきも言いましたけれども、本当のマーケットは十分開発されてなくて、もう自動車とか背広だとかハンドバッグだとか靴だとか、そういったマーケットはもうサチュレーションですね。  ですから、やっぱり住宅マーケットというのをもっともっと積極的にこれから開発しなければならないと思いますけれども、そのための政府の機関として住宅金融公庫というのがあるんです。私たち政治家は単純だから、住宅政策、わかった、それじゃ住宅金融公庫の融資枠を一兆円ふやせ、こういうことでいったんだけれども、最近データ見たら、民間の金融機関の住宅ローンはほどほどなんです、ほとんどふえていないんですね。そして、さすがに国がやった住宅金融公庫のローンはふえている。考えてみると、住宅金融公庫のローンが民間ローンを食っているんじゃないか。これは官業の民業圧迫じゃないかという見方も実はあるわけですね。  私の友人の銀行家の皆さんに言わせると、どうもやりたいんだけれども、住宅金融公庫がでんと真ん中に座っていて安い金利で長期の金を貸すもんだから、やりにくくて仕方がない、もしあれがなければ自分たちはいろんな形の住宅ローンのいわばコモディティーですな、タイプを考えて、こういうのもあります、ああもやります、こうやればいいんだ。だから、住宅金融公庫をやめちゃって、毎年ウン千億の補助金出しているんだから、これを減税財源にして抜本的な住宅減税をやる。住宅ローンで利子補給でやるのか減税でやるのか、同じ国の金を使うんだったらいっそのことあらゆる金融機関、都市銀行から農協から漁協から信金まで含めてあらゆる民間の金融機関が住宅ローンに積極的に介入する、その分で減税で優遇されるというような、そういう抜本的な金融制度、住宅金融の改革をしたらどうかという議論もありますけれども金融問題の専門家として、岩田先生どうお考えですか。
  31. 岩田規久男

    岩田公述人 ただいまの、住宅公庫が民間の住宅貸し付けを食ってしまっているという問題でありますが、基本的に金利自由化されている中で銀行は短期資金を調達しておりますので長期住宅貸し付けば金利変動のリスクにさらされるために非常に難しい局面にあるということを押さえておく必要があると思います。そのためには、民間の住宅の貸し付けというものを証券化するというアメリカ方式をもう少し導入しないと、今の民業圧迫だけの、公庫融資がそのためだというだけではなかなか民間の銀行が代替できるという能力は少しないのではないか。  特に、最近の不良債権を抱えている中では、銀行のリスクテーキングは落ちておりますので、そういう証券化を進める。それによって住宅抵当証券が随分出てまいるわけですが、そういう状況であれば、住宅金融公庫は債務保証をするというような、これはアメリカでも政府が債務保証を住宅金融としてはやっておりますが、そういう事業をするとか、あるいは住宅抵当証券を購入する投資家になるといいますか、そういったことによって安定的な住宅に対する資金供給ができ、かつ低利でできるという可能性が開けるのではないかというふうに思います。  それに対して、今のようなのは一つの方法でありますが、もう一つ、今おっしゃった利子控除、住宅の利子を所得控除していく、所得税法上控除していくという問題であります。これはアメリカで用いられているわけでありますが、ただ、この方法をとるときにはもう少しいろいろ考えておく必要がある問題が幾つかございます。  それは、利子控除、利子支払いを所得控除するということは、所得の高い人ほど税率が高いものですから、非常に税金がたくさんそれだけ軽減される、納税額が軽減されるという問題で、言ってみれば金持ちほど得をする税制であるということをまず押さえておく必要がありますので、公平上どうするかということであります。アメリカなどでは昔は何軒でもよくて最近は二軒までになりましたが、この利子控除を使ってお金持ちが、非常に日本人から見るとめちゃくちゃに広いような住宅に住んでいるのはこのおかげでありまして、そういったことまで容認するということは、なかなか私は公平上問題であるじゃないか。そういうことになりますと、やはり利子控除を導入してもどこかで上限をつけるということも考える必要があると思います。  それからもう一つ、現在は、公庫融資もそうですが、全体に持ち家に関する税制は優遇されておりまして、例えば税額控除制度もありますし、親からの住宅資金の贈与に関しては非課税だというようなことで、持ち家というのは賃貸住宅に対して税制上非常に優遇され、公庫融資上も優遇されております。  そういう中で、今持ち家と賃貸住宅の格差が大幅に広がっておりまして、賃貸住宅はせいぜい四十平米ぐらいが上限でありますが、今や持ち家は百平米を平均的に新築は皆超えているわけでありまして、そういう状況を考えますと、やはり民間の住宅建設に対する支援であるとか所得の低い人たちの家賃補助であるとか、そういった賃貸住宅の手当てもきちんとしながら、今おっしゃったような利子控除制度というものも考える必要があろうかと思いますので、その点を留意し、かつ、そういう住宅需要が支援されて増大した場合に、土地が本当に住宅用地としてすぐ転換しやすいという意味で、土地税制を、保有税などを地価にもう少しリンクして長期的には考える、それによる負担地方の住民税等の軽減で対応するというような、いろいろな組み合わせが今後やはり必要ではないかというふうに思います。
  32. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 どうもありがとうございました。  これで終わります。
  33. 山口鶴男

    山口委員長 次に、後藤茂君。
  34. 後藤茂

    ○後藤委員 社会党の後藤茂でございます。  きょうは、公述人の先生方には大変貴重な御意見を聞かせていただきまして、ありがとうございました。予算審議の中で十分に生かしてまいりたいと思うわけでございますが、最初に岩田先生が何か御都合で退席をされるやに委員部の方から連絡がございましたので、私、最初に岩田先生に二点ばかりお伺いいたしまして、御都合がおありでございましたら退席をしていただいて結構かと思います。  先生から、所得税減税による内需拡大、それは実質金利上昇をさらに高めていきはしないか、それはまた円高を誘導するのではないか、そしてそれが内需拡大策を相殺していく、こういうような御説明をしていただいたかと思うわけであります。  そこで、実質金利が高い、一・七五のこの金利、非常に低金利でありますけれども実質的にはその金利が非常に高いということで、ビジネスチャンスが仮にあったといたしましても、どうも設備投資意欲が上がってこない、こういう状況が今あるというように言われているわけでありますけれども、その対策として、金融対策とあわせて国の誘導策というものをとるべきである。その中身につきまして先生からもう少し具体的な御意見なり提言等がございましたらお聞かせいただきたいというのが一つです。  それからもう一つは、不良債権の処理、これは各金融機関があのバブルの中においてつくり上げてきた不良債権というものの処理に大変混迷といいますか、困惑しているわけでありますけれども、その一つとして証券化を進めていくとかいうことを言われましたが、この不良債権の処理に対するスキームについてもし御意見を聞かせていただければ大変ありがたいと思うのです。  その二点についてお伺いいたしまして、御都合がございましたら退席していただいて結構だと思います。
  35. 岩田規久男

    岩田公述人 実質金利をもう少し下げるような誘導をした場合の具体的な中身とおっしゃったのは、具体的にどういう産業あるいは設備投資が起こってくるのかということかと思いますが、現在、特に中小企業等のいろいろ調査、ヒアリングによりますと、かなりやはり銀行の貸し渋りがあって貸してもらえないということで、かなり資金需要が今だんだん出てきているということでありまして、従来からも割合中小企業からそういう意欲が出てきて景気回復するという面もあったわけであります。比較的そういうところで新しくやはりいろいろ将来に備えた省力化投資とかそういった意欲も随分あるわけであります。あるいは、いろいろいわゆるベンチャービジネスといいますか、そういった小型であるけれども中堅で、これからやろうと、いろいろな分野に出ていこうというところがやはり資金が借りられないというような、ヒアリングでいろいろ調査結果が出ております。  そのほか、具体的にどういうところで今後長期的にそういう資金需要が、一番設備投資意欲が起こってくるのかというのは、私もなかなか専門家でもありませんので難しいのですが、いろいろ言われているところで、技術者等の話も聞きますと、情報通信というのが一つ挙げられているわけでありまして、これは今後国を挙げて取り組むというようなこともございますし、あるいはバイオテクノロジーとかそういったものやファインセラミックスとかそういった面もかなり技術的にこれから将来希望があるところでありますし、あるいは高齢化社会に向けての医療分野でのさまざまな機器の開発等、従来とは大分変わってはくるかと思いますが、そういった面があろうかと思っております。  そういった面で、特に規制がさまざまなビジネスチャンスを防いでいる場合には、それを緩和する。そして緩和したときに、本当にやる気のある企業が現在のような高い実質金利でないもので借りられてできるという、そういうフレームワークが必要で、特に新しいチャンスのときにはやはり現在のような実質金利ではなかなかリスクが大きいのではないかというふうに思いますので、そういう面での金利の低下を申し上げたわけであります。  もう一点の不良債権のスキームに関しましては、現在の日本は、やり方は、結局無税償却をできるだけ広く認めるという方法をとっておりますが、しかしそれは無税償却ということにやはり限度があります。そんな何でも何でも損失と認めて税金を安くするというわけにもいかないという問題がございます。したがいまして、この方法としてやはりアメリカがとった方法は一つの参考になろうかと思います。  アメリカでは日本の都市銀行に相当するような商業銀行と非常に中小のいわゆる貯蓄金融機関とでは対応が違ったわけであります。商業銀行の場合にはどんどん有税でまず引当金を積んでしまつて、そして実際に貸し倒れが起きた場合にはそれで償却資金に充てていくという方法をとります。したがって、その場合にはどうしても赤字決算になったり、もう無配になったりしてしまうわけであります。  どうしてアメリカはそういう方法をとったかと申しますと、これはやはりアメリカは金融機関を初めとする情報公開が非常に進んでいる国であります。そのために、不良債権の定義も日本より広いですが、そういったものがどの程度あるかがもうガラス張りで市場にわかってしまうために、これを自分のところで貸し倒れ金などを有税でも積み立てて、あるいは無配にしてまで積み立てていかないと、まず預金金利が高くなってしまったり、とても集まらない、あるいは高くしても預金が逃げていってしまうというようなことや、劣後債などを発行しようと思っても格付機関が非常に悪い格付をするというようなことで、ほっておくともう経営責任も問われるし、銀行経営上もうやっていけなくなるというメカニズムがアメリカにはございます。  そのために、引当金を積んで無配にして赤字決算もしますが、これだけ引当金を積んだのですから貸し倒れが起こっても銀行は大丈夫ですよということを預金者や投資家に知らせるという、そのことによってアメリカの銀行は立ち直るという側面があるわけです。そうしたことによって初めて預金金利はそれほど高くならなかったりあるいは預金が逃げていかないといったことで対応をしていったわけであります。  そのほか、もちろん証券化ということを商業銀行でやったわけですが、もう一つのもっと小型の貯蓄金融機関の場合にはそういったことだけではとてもやっていけず、また預金保険機構も破産してしまうというような中で、新しくできた機関でまずその不良債権を買い取ってしまって、そしてそれをインベストメントバンク、投資銀行が買い上げてしまって、投資銀行がそれを小口にして投資家に売ってしまうということをしたわけであります。  これは一つの証券化ですが、それが可能だったということは、やはりインベストメントバンクが貸付債権の証券化のノウハウを蓄積していたということでありまして、インベストメントバンクがこの不良債権をどうやって今後きちんと返済してもらい、その企業からどういう収益を得ていくのかということをきちんと投資家にわかるように説明し、債権をきちんと私たちが管理しますから安心して投資してくださいというような、そういう債権処理とその証券の魅力を増すようなそういう手段を幾つか講ずるということをすることによって初めて証券化が可能になったわけであります。  日本ですぐあすから、ただ不良債権をそのままにしておいて、不良債権をどうやって処理していくか、例えば不良債権の担保になっている土地をどうやって利用していくかというようなことのスキームが何もないまま、いきなりきょう証券化して小口にしますから買ってくださいといっても買い手がないということでありますので、そういう不良債権の取り立てあるいはその担保になっている土地をどうやって利用していくかというようなことも含めたそういうインベストメントバンク的な役割が必要で、それが現在でもできるのはやはり銀行ではないかというふうに思ってはおります。
  36. 後藤茂

    ○後藤委員 短い時間でございますので、まだ今の先生の御意見に対してお聞きしたいことがあるわけでございますけれども、はしょりまして、堀越公述人に一点お伺いをしたいと思います。  私学建学の精神は、一体これはこれからどういうようになっていくのか。と申しますのは、偏差値教育と大学入試センター方式、こういう入試制度、そういうようなのが、今公述人から御指摘になったような教育の全体的な画一化、一律化ということ、それが私学にどんどん入ってくる。それで私学のいわゆる国公立と違う一つの特色といいますか、建学の精神というものがその一律化の中に埋没をしていく危険性といいますか方向が出ていっているのではないか。  一面において、国なり公共企業体が教育施設をつくらなければならないが、それが十分整っていない。そこで、私学というものが大きな犠牲を強いられてくる。したがって、私学助成というものを求めていくという声もまた一方にある。この私学助成拡大については私は賛成でありますけれども、じゃ、経常経費の中で何%ぐらいがこの私学助成として必要と考えておられるのか。時間がございませんので、手短に御意見を聞かせていただければと思います。
  37. 堀越克明

    堀越公述人 私学存在意義というところでちょっと触れさせていただきましたが、まさに私学というのは御指摘の建学の精神を掲げて最初はスタートした学校ばかりだと思います。ところが、その後の時代の変化に必ずしも即応できなくて振り回されている、教育の内容が変質しつつある私学が確かに御指摘のとおりあると思います。  やはり私学というのは建学の理想というものがそれぞれあってスタートしている学校ですから、やはりどこかでそれをもう一回思い起こしてみて、それぞれの特色発揮のための原動力にしなければいけないと思いますが、その特色の中の一つに、今お話しの偏差値問題などに振り回されまして何か進学至上主義のような学校がややふえてきたということは、まことに私は遺憾だと思っております。  むしろそうではなくて、本当の人格陶冶、個性を伸ばすということが中心であるのが私学が世間的に評価をされる点であって、そのものができ上がった上でそれぞれ特色を多様に発揮するような、そういう教育を展開しなければいけないなというふうに考えておりますのでその辺は私学の確かに戒めなければいけない実態だと思っております。
  38. 後藤茂

    ○後藤委員 大内公述人にお伺いいたしたいのですけれども大内公述人は、減税一年でいい。もうこれを二年、三年、何か日米首脳が公約をしているかのように聞いているけれども、それにこだわる必要はないというようなことを言われた。私どもは、少なくとも二、三年、もう少し継続的に減税を進めていかなければその減税の効果というものは生まれてこないのではないか、そういう観点に立っているわけでありますけれども、その辺の問題につきまして大内先生からもう一つ、そういうことをしなくてもいいんだという論点を御説明いただきたい。  あわせて、私も脱租税国家になっていくという方向も一方において考えていかなければならぬと思います。しかし、そのことから、サッカーくじ等がここ二、三日新聞紙上をにぎわしているわけでありますけれども、そういうトトカルチョ、くじあるいはギャンブル、一律にすべてこれが悪であるかのようにやるということについては私はとるべきではないと思いますが、ただ、サッカーくじはいいが、それでは相撲はどうか、ラグビーはどうか、あるいは野球はどうか。まあ幾つかのこれからも体育、スポーツというのは大きく普及をしていくでありましょうから、そうしますと、こうしたトトカルチョといいますか、ギャンブル性をより高めていく方向に際限なく進んでいきはしないか。財源の調達というものとあわせて、こういった点について先生の御意見を聞かせていただきたい。  それからもう一つ。まあ時間がございませんので、私も予算委員会で質問した中で、日米の貿易の大きなインバランスということ、千三百億ドルと言われる、これが何としても大きな圧力としてかかってきておるわけですから、先生はハードからソフトの方へということを言われておりますが、ひとつぜひ御意見をいただきたい。  私も提言をしているのですけれども、今、国際的に国境を越えていろんな研究機関とかあるいは国際的な機構というのがあるわけです。調べてみますと、世界各国それぞれ国際的な機関あるいは共同研究をするような機構等も持っている国、設置をしている国がある。そして、それぞれの国が乏しい財政の中からそれを援助をしているわけなんです。  ところが、日本では国際的なのはあの渋谷にできました国連大学ぐらいなんですね。しかも国連大学はキャンパスを持っておる大学と違って事務棟的なもので、ごくわずかな職員がいるというだけである。私はこうした国際的な機関を誘致をしていって、そして世界の研究者、学者がそれぞれの個々の大学に数人ぐらいが来て受け入れているんだということでない方向をとっていくべきではないかというように考えております。  先ほど岩田公述人からお話がありましたように、マルチメディアであるだとか、あるいは高齢化社会に対応する医療システムであるだとか、たくさんの新しい技術、新産業分野というものも展望はできるわけですけれども、この点につきましても、これからの日本内需主導型の経済産業構造がどういうようにあってほしい、あるいはあった方がいいということで先生の御意見がございましたら、聞かせていただきたい。
  39. 大内秀明

    大内公述人 時間がございませんので、手短に意見を述べさせていただきますが、まず第一点の、所得税減税を当面一年ということにしておいた方がいいという意見を述べましたが、これは景気回復との絡みがございまして、先ほど申し上げたように、私としては、東北のような地域の末端に生活しておりましても、どうやら底は入りつつあるというふうに見ております。  そういうことで、そもそもが景気対策的な面も非常に強い所得減税でもございますし、それから同時に、物価調整の所得税の減税をこの間にやってきておりませんので、何年かに一遍やるということとの抱き合わせで、できるだけ限定した方がいいということでございます。昨年は政府がちょっと景気の判断を誤って景気回復は早とちりですけれども、今度は大変慎重で、ちょっと遅とちりになるのではないだろうかなという心配もございます。  それから私は、やはり所得税減税によって消費、需要拡大するという点ではそれほど大きな期待が持てないという点では、先ほどの近藤先生の御意見にある意味では賛成でございまして、そういう点は十分踏まえて考えたらいい。という意味で、できるだけ限定的に処理した方が財政再建のためにはプラスになるという考え方でございます。  それから、サッカーくじの問題につきましては、私は特にサッカーというのは、これはちょっと私も雑誌に書きましたけれども、ちょっと今までの体育と違いまして、従来の日本の体育というのはやはり富国強兵の戦前の思想との結びつきで、保健体育というふうに言われているように、学校の体育ですね。こういう学歴社会の枠の中のものと、それから企業の労務対策とのかかわり合いもあったんでしょうかと思いますが、いわゆる実業団的な、そういう企業社会の枠の中に入っていろいろやってきた。それに、プロがやった。ところが、Jリーグのブームを見ておりますと、日本でようやく初めて西ヨーロッパにありますような地域スポーツの面が生まれてきた。  したがいまして、だからこそこれだけ急速に広がっておりますし、私は昨年の四月仙台に開学いたしました短期大学の学長をしておりますけれども、まず最初にできた、新しくできた短大のまず最初にできたサークルはサッカーなんですよね。それで、学生を呼んで聞いて、いろいろサッカーくじに類したようなことを聞きますけれども、かつてのように競馬や競輪で身を滅ぼしたというようなケースよりは、今問題なのはカード破産でありますとかあるいはサラ金なのでございまして、そっちの方がやはりいろいろ健全な生活への問題という点からいえば重大でございます。  そういう意味で、やはりサッカーというのはある種の日本における地域スポーツ、地域の文化活動へ大きく転換させる一つのスポーツ革命と言っていい、そういった意義を持っているから、そういう意味での財源を考えたいということでございます。  それから、第三の国際的な機構についていろいろもっと考えるべきだという点は全く賛成でございまして、例えば、私も東北大学におりましたときに留学生の教育などをやっているのですが、やはりできましたらアジアの中で単位互換の制度ぐらいなものをやって、そしてそういうものを推進するような、教育改革と結びついた国際的な機関を、日本はやはり黒字を有効に使う、これが、戦後五十年を来年迎えるわけでございますけれども、アジアに対する日本の大きな積極的責任ということにもなるんじゃないだろうか、こんなふうに考えております。
  40. 後藤茂

    ○後藤委員 ありがとうございました。
  41. 山口鶴男

    山口委員長 次に、松本善明君。
  42. 松本善明

    ○松本(善)委員 堀越公述人にお伺いします。  私学助成の問題につきましては、私ども私学の教員組合などからいろいろ請願があって、国会には私学助成についての請願が毎年非常に多いので、大変大事な御意見を伺いました。  私はちょっと別の観点から、これは東京とか大阪とかいうところでは特にその請願が多いですね。例えば、堀越さんは中野の堀越学園の校長でもいらっしゃると思いますが、中野の例でいいますならば、公立高校は東大の附属高校を含めて六校ございます。人口三十万でございます。ところが、田舎といいますか、地方でありますと、人口一方に一つの高校というのは決して珍しくない。用地費が高いから、公立高校が足らない。で、私立高校、私立学校の果たす役割というものが非常に、お金があって私立高校へ行くわけじゃない、そういう学校が足らないので行くという、そういう性質が東京なんかにはあると思うのです。  そういう私立学校地域による役割、そういうものについてどういうことをお考えになっていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  43. 堀越克明

    堀越公述人 私立学校地域における役割は、やはりできるだけ私は、私学といえどもその地域に密着した、何かそういった意味の、またこれも特色の一部だと思いますが、そういうものをそれぞれが出し合って、地域の方々に、最近は生涯教育ということが盛んに言われておりますので、そんな面でも奉仕をするような、そういう姿勢がやはり今必要なんじゃないかなというふうに考えております。  公立学校の場合もかなりそういったことを今着々と考えておられるようでございますが、私立学校こそその地域に愛される学校でなければいかぬじゃないかということは、これは大都会の場合などはなかなか難しいのでございますけれども、特に地方に行きますとやはりそういった文化の拠点というか、その地域の人が何かを学びたい、そういう中心的な存在になるということは努力によっては可能だと思いますので、そんなことで、大いにこれからも私立学校は愛される私立学校でなければいけないな、そういう意味補助金も出してやろうということに恐らくなるだろうと思いますので、その辺は私どもも努力をしていきたい、そんなふうに考えております。
  44. 松本善明

    ○松本(善)委員 予算のことがありますから無制限というわけにはいきませんけれども公立高校における父母負担私立高校の父母負担とを比べますと、どのぐらいの負担の差があるのでしょうか。それをお伺いしたいと思います。
  45. 堀越克明

    堀越公述人 昨年度の調査でございますが、いわゆる学納金、親が学校負担をする学納金という、入学金と施設設備費という名称のものがございますが、これと毎月の授業料を合わせたものを学納金と呼ぶといたしますと、公立高校一に対して私立高校は五・七、そういう比率でございます。高等学校段階が一番その辺の差が大きいと思っております。幼稚園の場合も、公立が一で私立が四・一と四・一倍の負担をしておりますので、特に、先ほど申し上げたのですが、幼児教育ということからいいますと、その親がまだ若うございますから、できるだけそういう点を、まあ就園奨励費等でカバーしていただいておりますが、同じくお考えいただけたらありがたい。なかなか父母負担の差は縮まりません。
  46. 松本善明

    ○松本(善)委員 大内公述人にお伺いいたしますが、今度の予算、連立与党の合意で間接税の引き上げが合意をされている。消費税の税率引き上げ問題は大きな問題になっていますが、当面の問題とそれから間接税についての御意見を承りたいと思います。
  47. 大内秀明

    大内公述人 税の体系として直接税、間接税というのはよく言われておりますし、いろいろ大蔵省などから出ているものには必ずその比率がございますけれども、それは税の納め方の技術的な面ではそういう区別がございますが、しかし、やはりこれは、私も財政学の専門でないのですけれども財政学の教科書的に申せば、税体系としては、先ほど私ちょっと申し上げましたように、税は、一つが取得税ですね。これは所得税それから法人税なんかも入ると思いますが、取得税。それから消費税などの支出税、それから財産税というか資産税、こういう三つに大きく分かれるのではないかと思います。  したがいまして、余り直間比率というレベルのところで議論をするよりは、今申し上げたような、やはり三つの、所得のところ、それから出るところあるいはためるところ、その辺のところでバランスを考えていくような考え方、最近はその三つのバランスの方向で考えるようになってはいるようでございますけれども、私たちはその方がいいのではないか、正しいのではないかと思っております。  ですから、直間比率をどうこうというのは余りこだわるべきじゃなくて、むしろ今申し上げたような税の体系の方からアプローチをすべきではないだろうかと思っております。  それで、その上で、むしろ間接税という意味支出税である消費税をどう考えるかということでございますけれども、これは、先ほど申し上げたように、やはりどうも日本では消費税の税率アップがすべて救いの神であるかのように考えておるけれども、ヨーロッパの例などを見ておりましても、決してそれは、すべてを解決するどころか、むしろそれでも解決できないまま今日の財政危機を招いているわけでございますから、私としては、あくまでも慎重に臨んでほしい、こういう考え方でございまして、先ほど申し上げたようなことで、いろいろやった上でどうしてもということであれば、できるだけ逆進性をなくす、あるいは益税みたいなものについても対策を講じた上で、慎重に税率などは考えるのが当然だろう。  物事に絶対ということはあり得ませんので、私は非常に消極的ではございますけれども、絶対というわけではございませんが、かなりネガであるということを申し上げておきたいと思います。
  48. 松本善明

    ○松本(善)委員 東京なんかの場合は、今相続税、固定資産税が非常に高いということで、今不服審査がかつてなくたくさん出ております。土地の相続ではやむなく土地を売却するとかいう、老後の心配よりも死後の心配だというような言葉があるぐらいな状況ですし、地価と路線価の逆転現象なんかもあります。  私どもは、収益還元方式というのを前から提唱しているのですが、この予算委員会でも、自民党の委員の方もそのことを言われる、それからほかの党もそれを採用されるというようなことも出てきております。相続税とかそれから固定資産税のかけ方についてやはり根本的に検討を加えないといけない、そういう時期に来ているのではないかというふうに思いますが、その点についてどのようにお考えになるか。
  49. 大内秀明

    大内公述人 私も、確かに資産課税、いわゆる財産税でございますが、これについて抜本的な検討を加えるべきだ、そういう検討を加えないままいきなり消費税アップというのは安易ではないだろうかということでございまして、おっしゃるようにその資産課税、固定資産税なども含めてしっかり考え直すというのは大賛成でございます。ぜひそういう点での検討をお進めいただきたいと思います。  ただ、固定資産税あるいは相続税、非常に深刻でございまして、私もちょっと母親が亡くなったりして実際に相続税、身にしみていろいろ悩んでいるわけなので、私個人の問題と公の問題とではいろいろ変わってはまいりますけれども、ただ、どうでございましょうか、生前の贈与ですと贈与税が非常に高いわけですけれども、ある程度相続税の前払い的に、贈与税と相続税なども少し関連させて、むしろ生前から遺言などをきちっとして、そういう形で払えるような道も考えておく。ということは、税収をかなり上げるという意味でもいろいろ考える必要があるのではないかなと思っております。  いろいろ財産の相続などをめぐって非常に深刻な問題もありますので、そういう社会問題を解決するという意味からも、そんなところを少し考えてみるのも一考かなと思っておりまして、ぜひ資産課税についてはいろいろ御検討いただくことを私としても特にこの際希望させていただきます。
  50. 松本善明

    ○松本(善)委員 何でも消費税ということには賛成しない、全くそのとおりだと思うのですが、私どもは、いわゆる公共事業、四十兆というふうに言われていますが、これはゼネコンのわいろまがいの献金だとか、それによる水増し利益とか、そういうものを節約するだけで、一割節約すれば四兆円ということも言われていますし、それから、国債費が予算の二割を占めるという状況になって、この国債の利率を一%下げれば二兆円の財源が出てくるというようないろいろな工夫を、財政支出の面でも収入の面でも抜本的な検討がやはり必要になってきているのではないかというふうに思っているわけでありますが、大内公述人は、今のことについてでも結構ですが、そのような何か御提案があればお話しいただきたいと思います。
  51. 大内秀明

    大内公述人 私も、今の租税国家の枠組みにとらわれずに、それを超えたような形で新しい発想で考えたいということを先ほど申し上げたわけでございますが、それと関連して、今の税を含めて財政全体にいろいろメスを加えていく、特にやはり、私、財政再建を急ぐべきだというのは、高齢化社会のために非常にこれからお金が要る、だから消費税アップというふうに安易に考えられるようだけれども、今先生おっしゃったように、まさに国の公債費そのものがちょうど社会保障費にほぼ相当する金額に上っているわけでございますから、もし高齢化社会のために福祉などを考えるならば、まさに公債費をゼロにするような努力が先決であるべきであるし、当然そういう中で、おっしゃるように公債に対する利率を再検討するということも検討の対象に含めるべきだと私は思います。  そういうことで、おっしゃることはまさにそのとおりではないか、こう考えております。
  52. 松本善明

    ○松本(善)委員 終わります。
  53. 山口鶴男

    山口委員長 ありがとうございました。  これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後二時から公聴会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十六分休憩      ――――◇―――――     午後二時三十三分開議
  54. 山口鶴男

    山口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  平成六年度総予算についての公聴会を続行いたします。  この際、公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成六年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  御意見を承る順序といたしましては、まず紺谷公述人、次に熊谷公述人、続いて飯塚公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、紺谷公述人にお願いいたします。
  55. 紺谷典子

    ○紺谷公述人 紺谷典子でございます。  本日は、私などの意見をこういうところで述べさせていただけるチャンスができまして、本当にありがとうございます。せっかくのチャンスでございますので、ふだん日本経済について私が考えているところを皆様にお聞きいただければと存じております。  本日、実は私は景気対策の重要性についてお話しさせていただきたいと思って参りました。景気はもうそろそろ持ち直し始めたのではないか、もういいのじゃないかというふうにお考えかもしれませんけれども、実はそうではないのですね。それから、景気対策をどう考えるかということは、経済運営について、政府の姿勢と申しましょうか、そういうものを示す重要なこれからの政策にもかかわることでございますし、それから今後の経済にも大きな影響を与えることでございますので、ぜひ景気対策についてお話させていただきたいと思って参りました。  不況というのは、短期的に、今経済が循環的に落ち込んでいるというだけではなくて、中期的、長期的に大きな影響経済に与えると考えております。  私は、最大の福祉政策というのは、安定した所得の増大である、所得の増大をもたらすような経済運営をすることが最大の福祉対策であろうかと存じておりますけれども、生活者重視という観点からいきますと、そうですと、景気対策というのは極めて重要になってくるのでございますけれども、どうもその辺ちょっと残念だなと思わざるを得ないところがあるわけでございます。  最も残念だと思いますのは、この予算審議がもうほとんど異常と言っていいくらいおくれていることでございまして、どうしてこんなになってしまったのだろう。もしも、景気対策がもっと手早く打たれていたら、予算がもっと早く通っていたら、経済はここまで悪化しないで済んだのではないだろうかというふうに思うのですね。  景気対策無用論というのがございまして、日本の方というのは、割合欲がないといいますか、精神論が好きといいますか、清貧でいいのだとかというような、今回、不況と言ったって別に生活実感がないではないかというようなお話が出てきまして、それでつい政府皆様方も油断なさった部分というのがあろうかなという気はするのですけれども、それはもうとんでもない間違いであると思っております。  これから高齢化社会、低成長の時代、もっと低成長の時代に入ろうとしている時期に、現在持っている生産力をむだにしていいのだろうかというふうに思うのですね。不況ということは、現在持っている生産力をむだにしているということだと思うのです。  どうしてかと申しますと、まず労働力が余ってしまっておりますね。つい二、三年前までは労働力が足りない、労働力不足倒産などというようなことが言われておりましたにもかかわらず、今は雇用不安が生じてしまっている。つまり、それだけ労働力をむだに遊ばせているということなんですね。一方で、つぶれてしまった工場とか、使われていない設備とか、いろいろあるわけでございまして、資本も労働も遊ばせているという状況は非常にもったいないのではないだろうかというふうに思うわけでございます。  そういう不況のときこそ、企業が効率化に専心して、より効率的な社会ができるという考え方もございまけれども、必要以上の効率化といいますか、倒れなくてもいい企業まで倒れたりとか、一生懸命働いている人まで職を失うというような状態は、決して好ましい社会とは思えないのですね。  ですから、一刻も早く、日本が従来持っている生産力をちょうど使い切るようなといいますか、適正な成長力といいますと、インフレも起こさず、失業も起こさないというような、そういう成長力なんでございますけれども、一刻も早くそういう状態に経済を戻していただきたいと思うのですね。  今、景気はもしかすると回復に差しかかっているかなという意見もございますけれども、とてもとてもという部分もございまして、例えば資産デフレの部分などはなかなか片づいていないわけでございますから、これから景気回復に向かうといたしましても、結構身が重く、少しよたよたする部分というのは多いのじゃないだろうかなと思うのですね。ですから、私は、景気対策はまだまだ必要だと思っておりますし、ぜひ有効な景気対策を打っていただきたいと思っているわけなんでございます。  先ほどの生活実感がないということなんでございますけれども、今の日本で生活実感のあるような不況が起きるというのはどういうことか。一部の評論家の方たちは、身売りが出ていないではないかとか、昔のように不況だからといって自殺が出たわけじゃないじゃないかとかというふうにおっしゃる方があるのですけれども、今の日本で本当にああ不況だな、食べるに困るな、身売りを出さなきゃいけないというような状況になったら、もうそれは経済の破壊と言ってもいいことでございまして、日本経済というのはずうっと成長してまいりましたから、不況と申しましてもこういうふうにずうっと成長してきておりますから、下がってまいりましても昔の好況よりはずっと経済状態はいいのでございますね。ですから、ほっといていいということには全くならないと思うのですね。  こういうふうに不況が生じるということは、もう一つ問題点があるのですけれども、それは常にしわ寄せが弱者にいくということなんですね。バブルのときにもうけた人たちが勝手に損しているのだからいいじゃないか、正常化なんじゃないかという見方もございますけれども、それも間違いでございまして、不況が進展するということはいつもいつも弱いところから困っていくということなんですね。バブルで不当に利益を上げた方たちが吐き出していく過程不況ではないのですね。そういうことを御配慮をいただかなくてはいけないと思うわけなんです。  こういうふうに、政策がおくれてしまって景気が一段と悪化した、景気が悪化したということ自体、非常に困ったことなんですけれども、それを政策が助けるのではなくて、政策がむしろ景気をさらに追い詰めてしまったという状況を生じてしまったのはどうしてなんだろうかというふうに不思議でならないのですね。生活者重視ということを第一番の政策目標に掲げてくだすった政権ですから、大いに期待させていただいていたのですけれども、どうもそうはならなかった。  そうして、どうして政策が足をとることがいけないかと申しますと、今回の不況というのは極めて心理的な不安要因というのが大きかったのですね。経済が大きくなって豊かになればなるほど、心理が景気に与える影響というのは大きいのですね。  例えば消費一つとりましても、経済がそれほど高い水準じゃないときには、生活必需品でございますからどんなに不況でも消費をしなくてはいけない、消費が経済の底固めをするというパターンが続いてきたのですね。ですけれども経済がある程度元気になって大きく豊かになってまいりますと、不要不急の消費というのがふえてまいりますから、心理的に落ち込んだということが大きな消費の落ち込みを招いてしまうわけですね。  経済がそういうふうに不安が大きくなってくると、企業投資を差し控えるということになりますし、企業投資を差し控えて企業が経営が悪化してきますと、労働者の方は雇用不安を感じますから、さらに消費を抑えるというようなことになるわけでございまして、政策がきちっきちっととられていれば起きなかっただろう不安がさらにその景気を悪化させてしまうという困った状態に陥ってしまったわけですね。こういう景気対策のおくれが景気を必要以上に落ち込ませて、その結果として税収の不足とか将来不安というのを生じているということをぜひお考えくださいまして、今後の予算を立てていただければと思うわけなんです。  こういうふうに、税収不足を招いて窮屈な予算編成になったということは、政府としてあり得べき将来設計像というのをお持ちくださっていると思うのですけれども、それを実現していくための足がかりが非常に弱くなっていく、歩みが遅くなってくる、政策の実行におくれが出てくるということにもなるのではないかと思うわけであります。  景気の対策のおくれに関して、国民はそういうわけで強い不信感を持ってしまいまして、不安感からさらに景気を悪化させるということになってしまったわけなんですけれども、ただ政府の方にはいささか誤解の部分もあるのじゃないのかなと思うのですね。  それはどういうことかと申しますと、一つは公共料金の問題なんです。公共料金の値上げに対して国民から随分反対の声が上がりまして、政府は早速公共料金の値上げの凍結という方策を打ち出してくださったわけなんですけれども、それがちょっと誤解なんじゃないのかなと私は思っております。  国民は、公共料金の値上げに反対したのではないのですね。安易な公共料金の値上げ、むとんちゃくな公共料金の値上げに反対したのでありまして、どうしても必要な公共料金の値上げであればちっとも反対はしなかったのではないだろうか。こういうふうに景気が悪化してきているときに、国民経済が傷んでいるときに余りにもむとんちゃくな公共料金の値上げがあった、それから国民が一生懸命リストラして、企業も家計も身を引き締めてこれから頑張っていこうとしているときに、どうも公共セクターが余りリストラに熱心ではないような印象を受けた、そういうことに強い反対を唱えたわけなんですね。  ですから、文句が出たから、反対が出たから料金を凍結すればいいということではなくて、もう少し国民の気持ちを受けとめてくださいまして、これから国民の傷をなるべく少なくするような政策、行政改革を進めるとか、公共料金の値上げをしなくても済むようなさまざまな方策をとっていただければと存じます。  そういうことも含めまして、私はどうも日本の政治と国民の間に互いに不信感と申しますか、過小評価の部分があるのではないのかなという気がいたしているのですね。  どういうことかと申しますと、今回の公共料金の値上げにつきましても、反対が出たのだからしばらく凍結すれば国民はそれで納得してくれるのではないかというふうにお思いになったのではないのかなと思うのですけれども、実はそうではなくて、国民は説得してほしかったのですね。もしも本当に必要な値上げでありましたらば、これこれこういう理由でどうしても上げなくてはいけないのだから、皆さん聞いてくださいとおっしゃっていただけば国民は納得したと思うのです。そうじゃなくて、値上げを凍結すればいいかというふうに見えるのは困ったことであると思うわけです。  国民が欲しておりますのは、正確な情報とか十分説得可能な政策、合理的な政策を打ち出してくださることでございまして、目先の利害とかそれから耳ざわりのよいキャッチフレーズとかそういうことではないのですね。ぜひ国民をもう少し御信頼いただきまして、国民を説得できるような政策を自信を持って打ち出していただきたいと思うのです。  一方、それと同じような政治に対する過小評価というのが国民の側にもあると考えております。それはどういうことかと申しますと、国民はどうも日本経済というのは大したことじゃない、まだまだ豊かではないと思いたがっているところがあるのですね。住宅事情が悪いとかいろいろゆえないことではないのですけれども、どうも日本経済現状というのを過小評価しているのじゃないだろうか。どうせ日本の政治はろくな経済運営はやってくれないと思ってしまっているところがあるのではないだろうか。  ですけれども日本の高度成長というのは世界に冠たるものでございまして、それは世界に誇っていい高度成長であった。その結果として、日本ほど所得と資産の平等が進んだ国というのはないのですね。所得と資産の平等化が進んでいるというのは、極めて社会を安定させるということで治安もいいのですね。そういう政治の成果というものをなかなか国民は酌み取らない部分があると思うのですね。そういうお互いの不信感といいますか、過小評価の部分が全体としての経済運営に影を落としているということもあろうかと存じます。  一つだけちょっと申し上げさせていただきますと、現在の日本経済が実はそれなりに豊かになってきている、政治の力もありまして豊かになってきているということを十分認識するというところから今後の経済運営を考えなくてはいけないのではないかと思っているのですが、一つの例を申し上げますと、例えば税制なんですね。  累進税が非常にきついというのは、国が貧しくて一部の大金持ちとたくさんの貧しい人たちがいるという時代には、累進税率のきつい税制もそれなりに公平で公正な部分というのを持っていたと思うのですけれども、こんなに社会の資産と所得の平等が進んできておりますと、日本の資産と所得の平等というのは世界でもトップクラスなんですね。  そうしまして、日本が一億総中流というような言葉を使われ出してからもう十年以上たっているのではないかと思いますけれども、それほど資産とか所得に関して平等化が進んできておりますと、当然それに合わせて税制も変わっていいんだ、税負担も変わっていいんだと思うのですね。  日本で貧しいと言われている人々でも、ほかの国に行けばもう十分高所得ということでございますから、税金というのはむしろ国民の、税金を支払うというのは余りうれしいことではありませんけれども国民の権利ではないのかなというような気がいたしますので、そういう点からも税制の公平さというのを見直す必要があるのではないだろうか。むしろ日本は弱者救済よりも、もっとこれからの経済運営に、仕事に対する意欲を育てるような、そういう税制の方があるいは必要なのかなという気がいたします。  同じように、経済現状、もう既にある程度豊かになっているという現状を見損なったのが不況にもあらわれていると思うのですね。日本経済というのは非常に資産市場が拡大してきておりまして、株式市場もそうでありますし、土地の評価も高くなっておりますし、いわゆる実物経済、GNPとか、物を生産したりサービスを提供したりするそういういわゆる実物経済の部分と、それから株式市場とか土地の市場とかいう資産市場のウエートというのは大きく変わってきているのですね。日本経済が豊かになった結果としてそういうふうに変わってきた。  その結果として、八〇年代後半は土地と株に生じたキャピタルゲインがGNPを超す、あるいはGNPに近いという年が続いたのですね。九〇年代に入りましてからはそれが逆になってしまいまして、それだけ大きなマイナスが生じているということになってきたわけです。  しかし、株式市場あるいは土地の市場がそれだけ大きな存在になっているということをつい見過ごしてしまったのではないだろうか。そのために株価の下落とか地価の下落が経済に与える影響というのを過小評価してしまって、結果としてこういう不況の深刻化というのを招いてしまったのではないかと思うのですね。  そういう経済現状を見誤っているということは、特に株式市場の問題について顕著であると思うのですね。株式市場というのは資本主義経済である以上は経済の根幹でございまして、株式市場がうまく立ち行かなければ経済運営というのはそもそも危うくなるというものなんでございますけれども、それがどうも十分に機能しなくなっているにもかかわらず、バブルの破裂であるからあれは正常化であるというふうに見過ごしてしまった、その結果として不況が深刻化してしまった。  それと同時に、政治家の皆さんのお立場としては、どうも国民が資産デフレ対策を望んでいない、だから資産デフレ対策というのはなかなかとれないんだということで今まで十分な対策がとられてこなかったのですね。ところが、国民は専門家ではありませんのでよくわからないのですけれども、株式市場が傷むということは経済へ非常に大きな影響を与えるわけなんですね。もうこれだけ資産デフレの影響が明らかになってくれば、ある程度国民の皆さんもおわかりになっていらっしゃるとは思うのですけれども、まだまだ理解の進んでいないところがある。ですから、株価対策ですとか土地の流動化を進めるというような対策に対してなかなか理解が得られないという状況になっているのですね。そこのところをぜひ、必要なんだからやらせてほしいということで国民を説得していただければと思うのですね。  資産デフレといいましても、株価が下がった、土地が下がったといいましても、土地持ちの方あるいは株式投資をしていた人だけが損をしているのではないのはもう御承知のとおりです。経済全体が悪くなることによって、雇用不安も生じているとか年収も落ちるというような状態が生じておりますし、それだけではなくて、例えば不況の進展によって金利が低下せざるを得なかったわけなんですけれども金利低下によって本当に弱者の方たち、年金生活者の方たちがお困りになっていらっしゃる、資産生活者の方たちがお困りになつていらっしゃるという状況が生じているわけなんですから、そういう状況を回避するためには、不況の元凶になっております資産デフレ対策をぜひやらないといけないのですね。  そうするためには国民を説得しないといけないということになっているという関係なんでございますので、ぜひとも国民に情報を提供して、こういう問題が生じている、だからこういう政策が必要なんだというふうにやって、一日も早い経済回復というのを果たしていただきたいと思います。  そういうことに関連いたしまして、ぜひ最後に株式市場の話を、せっかくのチャンスですからさせていただきたいと思うのですけれども、株価対策がなかなかとれない、株式市場対策がなかなかとれないということの理由一つに、どうも株式投資に対する、あれはばくちなんだというような不当な過小評価があるのではないかと思っているのですね。  例えば、日本では政治家の皆さんが資産公開なんかなさっているのですけれども、それを迫るということは卑しい行為ですから余りしない方がいいというふうに私個人は思っておりますけれども、ああいう資産公開のときに、ああこの人は株を持っている、株を持っていない、株を持っていない政治家があたかも清廉潔白であるかのような、そういう印象を国民全体が持っているし、もしかしたら政治家の皆さんの一部にもおありなんではないだろうかと思うのですね。  それから企業が、証券不祥事の後、若干の反省を込めまして、もううちは株式投資はやりませんといって世の喝采を浴びるという空気がございました。ですけれども、あれは安易な財テクがいけなかったのでありまして、みずからが株を発行して多くの人たちに株を持ってもらっている企業が、もううちはたとえ由があって資産運用の必要が生じていても株はやりませんというようなことは、例えて言えば、フグ屋の御亭主が、フグなんて危ないものにはおれはもう手を出さないと言っているのと同じことでございまして、天につばする行為なんですね。  ですけれども、それが天につばする行為であるというような理解がなかなか得られない。安易な登山で遭難をしたからといって、それは山のせいではないのですね。ですけれども、どうも株式市場のせい、株式投資のせいになってしまうような空気が株式に関してはあるということが極めて残念だと思っております。  そういうところも、今後国民の資産形成というのは非常に重要になってきておりますし、それから年金とか保険の基金の運用という点からも、株式市場というのは極めて重要なところなんですね。  株式というのは長期に投資すれば決してそんなに危険のあるものではないのですね。もちろん短期的には株価は乱高下いたしますけれども、戦後日本の株式の投資収益率というのは年当たりで一六・八%でございます。こういう戦後最大の不況が生じたといたしましても、それでもなおその不況の後まで見ましても、株価が六割以上も下がったという現状で見ましても、年当たり一六・八%で投資収益を上げてきた。長期に株式投資をすれば、結構利回りも高く、安定した収益を結果するんだというようなことをぜひ御理解いただきたいと思います。  アメリカなんかでは、株価の値上がりというのは経済成長の成果であるから、これを国民全員のものにしなくてはいけない。ですから、年金で株を持とうという、そういう意見がもう二十年も前から出てきているのですね。日本はどうもそこのところが逆でありまして、国民の大事な年金資金で株を買うとは何事だというような景気対策批判の言葉が出てきたりしてしまう。政治家の皆さんも、株式投資をできたらぜひなさっていただきたいと思うのですね。株式投資をするということは、ある意味では日本経済に責任を持つということだと思うのですね。  アメリカでは経営者に株を持っていただいて、株価の値上がりをするような経営をしてくださいということを経営者にお願いするという仕組みがございますけれども日本でも、経済運営を預かってくださっている政治家の皆さんにはぜひ株を持っていただいて、それで株価が上がるような経済運営をしていただきたい。株式投資は恥ずかしいことではないのですから、堂々と御自分の名義でやっていただければと思っております。  というわけで、時間が過ぎてしまったようですので、景気対策の必要性ということに関しましての私の話をきょうはこれで終わらせていただきます。  どうも失礼いたしました。(拍手)
  56. 山口鶴男

    山口委員長 ありがとうございました。  次に、熊谷公述人にお願いいたします。
  57. 熊谷金道

    ○熊谷公述人 私は、百四十万人の労働者を結集している労働組合、全国労働組合総連合、略称全労連といいますが、その事務局長をしています。せっかくの機会ですから、新年度政府予算案並びに関連する政府施策について、労働者の立場から意見を申し上げたいというぐあいに思います。  まず、政府予算案についてですが、不況対策、生活者重視ということを看板にしていますけれども、消費税率引き上げを前提とした減税あるいは福祉、私学助成、中小企業、農業関連予算削減など、国民に犠牲を強いる一方で、大企業向けの公共投資あるいは軍事費と米軍への思いやり予算あるいはODAの増額に見られるように、大企業とアメリカに手厚く配慮しながら国民に一方的に痛みを強要するものとして、私はこれに反対であり、国民生活優先、真の生活者重視の立場から抜本的な組み替えを行うべきとの意見を持つものです。  政府不況対策の目玉として減税の実施を打ち出しましたが、これが定率控除であるため、高額所得者にとってはともかく低所得者層にとってはスズメの涙程度にしかならない。一方で、ことしの十月から予定をされている厚生年金保険料の引き上げと合わせるなら、民間給与所得者の約六十数%、三人に二人を占めている年収五百万円以下の労働者では、減税分が帳消しどころか、かえって負担増になります。これでは個人消費の拡大にはつながらず、景気対策にならないばかりか、結果として個人消費をさらに落ち込ませ、今日の不況を長引かせることになります。  また、依然として生活基盤整備より大型プロジェクト中心の大企業向けの産業基盤整備を優先した公共事業、さらには、世界で最初の被爆国、そしてさきの侵略戦争の終戦から五十年という歴史の節目を来年に控え、核兵器廃絶、軍備縮小が国民の大きな願いになっているにもかかわらず、AWACSやパトリオットなど最新鋭正面装備の新規発注など、世界第二位に膨れ上がっている軍事費をさらに増額をし、世界に類のないほどの在日米軍基地をそのままに、アメリカ兵一人当たり千三百万円近くも負担我が国の中小企業対策費をはるかに上回る思いやり予算を計上していることなどは、生活者重視とはほど遠いばかりか、国民の期待に背を向けたものと言えます。  現在、我が国の労働者の雇用問題は極めて深刻な問題となっています。カラスの鳴かない日があっても人減らし合理化の記事が新聞に載らない日がないくらい、不況円高を口実としたリストラの名による国内生産の縮小と生産拠点の海外移転、労働者への首切り、移籍出向などによる企業からの追い出しが大がかりに展開をされ、完全失業者が二百万人を突破しているように、労働者の雇用問題が深刻になっています。  不況円高の責任は労働者にはありません。今日の大企業を中心とした大がかりな人減らし合理化攻撃は、二重、三重の意味で労働者への犠牲の転嫁であり、利潤第一、効率第一で労働者の生活も基本的人権をも顧みない大企業の身勝手な横暴と言わなければなりません。  羽田連立政権が生活者重視を真に追求するのであれば、こうした大企業の身勝手に対して、最高裁で確定している解雇に当たっての四条件を踏まえた解雇規制法の法制化や裁判所の判決よりおくれている過労死の認定基準の緩和・改善、公的就労事業の確立、雇用調整助成金を本来の目的である雇用確保に真に役立つようそのあり方を根本的に見直すこと、さらには国会決議や当時の首相答弁を基本に政府の責任で一千四十七人の国鉄労働者を一日も早く職場に復帰させることなどを積極的に取り組むべきだと思います。  国内での大量の人減らしの一方で、日本企業が出資する海外現地企業の雇用者数がこの数年間に百万人以上増加をし、二百五十万人を突破していることも明らかにされています。しかし、こうした海外展開は、我が国における雇用不安を深刻にしているだけでなく、国内産業の空洞化、とりわけ系列・下請企業の切り捨てと地域経済の空洞化など極めて深刻な事態を各地につくり出しています。政府は、こうした生産拠点の海外移転と国内の事業縮小については、事前に国や自治体に計画を提出させ、公表して、雇用や地域経済への影響などのアセスメント調査を実施し、場合によっては計画を中止、変更させられるような調査・勧告権を都道府県知事に保障する、企業に労働組合、地域住民、自治体との協議を義務づけるなどの立法措置を図るべきだと思います。また、進出企業に対して公害規制や労働者の基本的権利などについて我が国と同等の基準を守らせるようにすることが重要です。  雇用問題が一層深刻になろうとしているもとで、政府はこの国会に厚生年金や各種共済年金の改悪法案を上程していますが、私はこれに反対するものです。その最大の理由は、雇用問題とかけ離れた支給開始年齢の繰り延べと高齢者の生活切り捨ての年金水準の引き下げ、労働者への一層の負担増を強いる保険料の引き上げなどにあります。  とりわけ、支給開始年齢について言うなら、政府は六十歳定年制の定着と雇用と年金の連携の重視、高齢者雇用の促進を官民で努力することなどを挙げて六十五歳支給開始年齢を合理化しようとしていますが、これは実態とかけ離れた、かつ、極めて無責任な主張と言わなければなりません。  既に予算委員会での佐々木議員の質疑によっても明らかにされているように、六十歳定年制が定着したといっても、労働省自身の雇用管理調査でも五千人以上の大企業では定年前の早期退職優遇制度を四一・一%が持ち、定年年齢以前の退職者が四四%も占めていることに見られるように、現行の年金支給開始年齢までの雇用すら確保されていないほど中高年齢労働者をめぐる雇用情勢は厳しい実態にあること、しかも今日、各企業はリストラの中で年功制や終身雇用の見直しによって本格的に中高年齢者の企業からの追い出し攻撃を強めていること、これが政府が言うような本格的な高齢化社会を迎える時点で抜本的に改善をされ、就労を希望するすべての高齢者の雇用が確保されるなどという見通しは全くないし、政府自身もその点では努力するとしか言い得ていません。だからこそ、昨年の総選挙では、厚生大臣を出している民社党を初め連立政権の与党となっている幾つかの政党も現行の支給開始年齢の堅持ということを公約していたのだと思います。  羽田首相は雇用と年金の連携を重視すると言っていますが、年金の支給開始年齢は法律で繰り延べを強要しながら、雇用については何ら法的な保障もなく、努力するというのでは余りにも無責任です。確かに多くの労働者は六十歳を超えてもっと働くことを希望しており、政府もそれを支給開始年齢繰り延べを合理化する理由一つとして挙げています。  だとするなら、政府がとるべき道は、支給開始年齢を繰り延べることではなく、高齢者の雇用確保にこそ最大の努力を行うことだと思います。そのことが結果として六十五歳以前の年金受給者を自発的に減らし、年金財政に貢献することになり、一方では、働きたくても雇用が確保されない労働者には年金で生活を保障するなら、名実ともに雇用と年金の連携ということになると思います。  また、私は、膨大な無年金者の実態、さらには老齢年金受給者の六割弱が生活保護基準の半分以下の三万円程度にしかすぎない我が国の年金をめぐる実態を改善し、憲法が明らかにしている健康で文化的な最低生活を保障するためにも、すべての国民に国の責任で掛金なしで支給される最低保障年金制度を創設すること、さしあたっては国民年金への国庫負担を大幅にふやし、年金水準の引き上げと負担の軽減を図ることが生活大国に向けての国民生活の底上げのために重要な課題になっていると思います。  さらに、生活者重視、そして何よりも主権者たる国民無視という点で認めがたいのは、名目はどうであれ、政府が消費税の税率を大幅に引き上げようとしていることです。昨年の総選挙で消費税率の引き上げを国民に公約をして議席を獲得した政党は、与野党問わずただの一つもなかったはずです。選挙で議席を得てしまえば後は公約を無視して何をやってもいいという態度は、主権者たる国民を愚弄する行為です。  消費税そのものについて言えば、成立後一貫して食料品など日常生活関連品目の非課税化が強く要求されているように、高齢者など低所得者層ほど負担が重くなる逆進性の強い税制であり、経済支払い能力に即した課税という租税正義の原則からいっても廃止されるべき税制です。これをさらに大幅に引き上げる、しかも、高齢化社会への対応といって、わずかばかりの年金や貯金で生活し、所得税減税の対象にもならない低所得の高齢者に最も重い負担を押しつけるというのは本末転倒と言わなければなりません。  年金問題にしても、消費税率の引き上げにしても、高齢化社会に向けての財源問題が言われています。私たち全労連は、税の専門家の力もかりて、大企業優遇の不公平税制の是正などで数兆円の新たな財源をつくり出せるという税制改革の提言も公表しています。また、総評時代に学者や税理士などによってっくられた不公平税制をただす会などからも同様の提言が出されています。  税制改革というのであれば、最初に労働者や国民への増税ありきではなく、大企業への数々の優遇税制など不公平税制の是正からまずは検討すべきであり、経済の成長率や国民所得の伸びの見通しなども明らかにすべきです。また、財源問題ということでは、ゼネコン汚職など金権腐敗政治の温床となっている膨大な公共事業費や技術開発補助金など大企業への助成、拡大する軍事費の見直し、削減など歳出の見直しをあわせて検討すべきです。  最近日本共産党が発表した「日本経済への提言」では、これらについて一定の試算も出されています。大蔵省の試算について藤井大蔵大臣は、そうした歳入歳出についての総合的な政策検討は行っていないと説明していますが、これでは何が何でも消費税率の引き上げ、国民への際限のない大増税路線を一方的に押しつけるということであり、国民は納得できません。  最後になりましたが、三度の国会決議を踏みにじっての米の輸入自由化を初め、年金改悪、消費税率引き上げなど連立政権の公約違反の悪政に対し、衆議院を解散して現行の中選挙区制で総選挙を実施して国民の信を問えという声がさまざまな世論調査によっても日増しに強まっています。この声は当然のことであり、私も、連立政権の枠組みが変わって少数連立政権になったからには、憲政の常道にのっとって速やかに衆議院を解散し、一度も民意を問うことなくしかも参議院では一度は否決された法案を成立させた小選挙区制ではなく、多数の民意を反映させる現行の中選挙区制での総選挙を実施し、国民の信を問うべきだと思いますし、そのことを申し上げ、意見の表明を終わらせていただきます。(拍手)
  58. 山口鶴男

    山口委員長 ありがとうございました。  この際、公述人各位に一言申し上げたいと思います。  実は本日、衆議院に二十常任委員会がございますが、このうち十七の常任委員会が予算委員会と並行して審議中でございます。各党は、それぞれ理事の皆さんは出席をいたしておられるわけでございますが、今申し上げたような関係委員皆様出席が少ない点は、ひとつ御了承を賜りたいと存じます。  次に、飯塚公述人にお願いいたします。
  59. 飯塚毅

    ○飯塚公述人 ちょっと、公述に入る前に少し苦情を申し述べたい。  と申しますのは、私は、予算書を渡されたのがきのうの午後四時です。慌てて全体を見ようとしたのですが、午後四時ですからね。それで八時、九時までかかったのですけれども、もうちょっと早目に予算書を渡していただけないと責任ある言論は吐けないことになってしまう。その点を苦情を申し上げる次第でございます。  さて、本題に返りまして、私は、TKC全国会会長の飯塚毅であります。  TKC全国会とは、「全国約七千二百」と書いてありますが、七千二百事務所という「事務所」の三文字が抜けてしまっている、全国約七千二百事務所の税理士、公認会計士が自主的に、すなわち法的な強制を受けることなしに結成している民間の任意団体であります。その目的とするところは、日本職業会計人の職域防衛と運命打開でありますけれども、その基本理念は、自利利他、すなわち自利とは利他をいう、これを最初に言ったのは最澄伝教大師が言ったのですけれども、自利とは利他をいうとの実践哲学を媒介とする租税正義の実現であります。  その組織が結成されたのは一九七一年、ことしはこの全国会創設以来二十三年目になります。このTKC全国会は、同一のメンバーをもってTKC全国政経研究会という政治結社を構成しております。その目的は、国民経済の健全な発展と繁栄とに立法領域を通して貢献してくださる国会等の議員諸公を支援して当選を確実ならしめ、もってTKC全国会の目的、理念の実現を図ろうとするものであります。  さて、平成六年度の国家予算案でありますが、その内容は膨大かつ多岐にわたっており、与えられた意見陳述のための時間二十分間では、その全領域について意見を申し述べることはほとんど不可能であります。よって、私は、租税正義の実現という角度からこの予算書を眺め、意見を申し述べたいと思います。  まず第一に申し上げるべきは、租税教育についてであります。  国の歳入予算は租税収入と国債収入とによりますが、その大半をなすものは租税収入であります。この租税を国家権力による無償の財産権収奪と受け取るか、つまり無理やり国民から何にも与えずにただ奪ってしまうという無償の財産権収奪と受け取るか、または、国家という運命共同体の共益費の分担と理解せしむるかは、最も重大な根本問題であります。現代の民主的諸国家は租税を国家という運命共同体の共益費の分担と位置づけており、これを国民教育いたしております。その教育は、もちろん小学校、中学校及び高等学校で行われるべきものであります。  例えば、アメリカの初等教育第三学年は日本の小学三年に当たりますが、この学年の教科書「コミュニテイーズ」一共同社会一という名の教科書を見ますというと、税金の種類の説明、さらに、レシートによる図解入りで売上税についても具体的に説明しています。我が国の小学三年の教科書を調べてみたのですけれども、税金についてはほとんど解説がないのが現状です。消費税導入後、税金に関する国民の関心が高まっている今日、納税は社会のルールなんだといった観念や税金の使途、使い道を具体的に説明するといった教育が必要だと考えます。  さて、教育を担当する国家機関は文部省であります。では、平成六年度の国家予算案において我が文部省予算は、この租税教育という最も重大な根本問題についてどういう態度で臨んだかでありますが、残念ながら、その基本的態度を推知するに足る痕跡を表示しておりません。情けないなと感ずる次第でございます。どうぞ先生方しっかりしてください。  次に、予算との関連における税法のあり方の問題でありますが、世界の税法学会におけるナンバーワンの人物は、ドイツのケルン大学の前教授ティプケ、ドクター・クラウス・ティプケだとされておりますが、この方は現慶応大学の税法学の木村教授の恩師です。この先生には「租税正義」(シュトイヤーゲライティヒカイト)という名前の著作があります。その十一ページには「ペレルマン氏の六原則(ディー・ゼクス・レーゲルン・ペレルマンス)」というものが掲げられています。租税正義には六つの原則が含まれていると言うのであります。  その第一に来る原則が、すべての人に平等という原則だとされています。原文では「イェーデム・ダス・グライヘ」と書いてある。税法は、何よりもまずすべての人に公平の原則が貫かれていなければ、それは租税正義を貫いたものとは言えないということです。  その角度から吟味してみますと、現在の消費税法は、簡易課税制度の採用、諸外国と比べて高い免税点という二点から益税を生み出す仕組みを残している限りにおいて、国民負担の公平を実現しているものとは申せない。租税正義の理念とは相反しているということになります。議員諸公は、つまり先生方は、どこを向いて立法に従事しておられるのですかと言いたいところでございます。  第三に、現在は長期間に及ぶ不況下にあります。このような不況下において、不公平税制を正すことなく性急な消費税率のアップするということには反対であります。  そこで、この段階で最も重要な国家の基礎的条件は、納税額計算の前提となる会計帳簿の記帳義務の徹底ということであります。我が商法は、その第三十二条で会計帳簿と貸借対照表の作成義務並びに公正なる会計慣行しんしゃくの必要を定め、第三十三条で整然かつ明瞭な記載義務を規定し、第四百九十八条第一項十九号で会計帳簿に「記載スベキ事項ヲ記載セズ又ハ不実ノ記載ヲ為シタルトキ」は「百万円以下ノ過料二処ス」と規定しているだけであります。たった三カ条であります。  これに反してドイツでは、一九一九年制定のライヒ国税通則法第百六十二条、一九七七年改定の現国税通則法第百四十六条は、ともに同一文言で、会計帳簿は、完全網羅的に、真実を、適時に、かつ、整然明瞭に記載しなければならないと定めております。ドイツの商法第三十八条、現行ドイツ商法の二百三十八条は、正規の簿記の諸原則に基づく帳簿記載の義務を定め、ドイツ財政最高裁判所は、その正規の簿記の諸原則を判決の形でこれを公表し、その諸原則の数は現在約五百判例に及んでおります。  一方、アメリカはどうかというと、一九八六年内国歳入法第四百四十六条での「一般に認められた会計の原則」(ジェネラリー・アクセプテッド・アカウンティング・プリンシプルズ)を定め、その明細を内国歳入法施行規則第千四百四十六条の一にゆだねておる。そしてさらに、一九三三年の証券法及び一九三四年の証券取引法は、おのおの、前者は法第十九条、後者は法第十一条及び第十七条によって担当委員会に会計に関する規則制定権を与えておる。ここがちょっと違うところなんだ。規則制定権を与えている。  その規則の違反者に対しては、五年以下または二年以下の懲役刑あるいは五十万ドル以下、一万ドル以下または五千ドル以下の罰金刑を科すこととしています。その条文集は、ハーコート・ブレイス社という、ハーコート・ブレイス・アンド・カンパニーという会社の出版のもので、一九九四年版は厚さが四・二センチメートルあります。ページ数は一千ページを超えております。  EU加盟十二カ国を含むヨーロッパの会計基準手引書は、一九九二年に八一コート・ブレイス・ヨバノビチ出版社というところから出版されておりますけれども、そのページ数は一千六十七ページであります。  アイルランドの首都ダブリンにあるラファティ出版社が発行している「国際会計短信」という出版物があります。インターナショナル・アカウンティング・ブリティンといいます。これによりますと、日本の商法改正は必ず失敗するとの予言を公表しております。  その理由として掲げている事由は二つで、一つは、日本政府の行政機関の縦割り体制、二つ目は、商法改正の素案を作成する法務省の参事官室に会計学の専攻者が一人もいないということを指摘いたしております。世界の目は日本の法務省の参事官室にまで及んでいるのであります。  こういう体制では、記帳義務の徹底を図るための商法改正は現状では絶望的であります。特に虚偽不真実記帳について、我が国には破産法第三百七十四条、三百七十五条の場合を除いて刑罰規定が皆無である点が問題であります。  アメリカでは、内国歳入法第七千二百六条が、虚偽記帳を殺人罪または放火罪並みの重罪、フェラニという言葉が税法の本文の中に出てまいります。重罪。重罪であるとして扱い、三年以下の懲役または十万ドル、会社の場合は五十万ドル以下の罰金もしくは両罰の併科を定めており、フランスの国税通則法、これはコード・ゲエネラール・アンポという法律ですけれども、その千七百四十一条は、五年以下の懲役または二十五万フラン以下の罰金または両罰の併科と定めております。五年以内の再犯の場合は、十年以下の懲役または三十六万フラン以下の罰金または両罰の併科のほか、市民権の剥奪となっています。日本の所得税法二百三十一条の二は記帳義務を定めてはいますけれども、刑罰による担保規定は全くありません。いいんですかそれで国は。大丈夫なんですか、先生方。  第四に、我が国の税務行政に当たる現行の職員数では脱税者、無申告者、過少申告者の把握はほとんど不可能に近く、捕捉率の極端な低下を来す原因となっているのではないでしょうか。これを防ぐためには、それは、ドイツ税法のごとく、市町村役場の職員を煩わして住民の身分登録及び事業登録を実施すればよいものをと思うのでありますが、所得税法二百三十五条二項を有効に活用して積極的にこのような調査をやってもらって差し支えないんだと思うのでありますけれども、いかがなものでございましょう。ちょっと間違って、法を間違って利用しないでいるという状況じゃございませんか。ここに私は行政府の怠慢があると思っております。  第五に、すべての人に平等にという租税正義の原則を貫こうと思えば、脱税防止のための一方策として、コンピューター会計法の制定問題は避けて通れないものと考えます。  私は、福田幸弘国税庁長官時代に、長官のところへ行きまして、ドイツの連邦法及び各州の州法の全部、厚さにして約八センチメートルのコンピューター会計法の全文を三カ月間あなたに貸すから、ゼロックスをとるなり勉強しておいてくれということを伝えたのでありますけれども、残念ながら彼がその後すぐ参議院に出てしまって亡くなられた。その後全く音さたなしの状況が続いております。情けないと思いますね。こういうところが実に情けない。  世界でコンピューターの設置台数が一番多いのはもちろんアメリカでありますが、日本は世界第二位の設置台数を誇っております。そして、世界の先進文明国中でコンピューター会計法を持っていない国は日本一カ国だけであります。  諸外国のコンピューター会計法を見ると、納税者の会計記録の作成の要件及び保存すべき対象物の範囲が定められています。また、正規の簿記の諸原則を適用し、会計記録の作成が、真実を、適時に、網羅的に、かつ、整然と行われるよう規定されており、取引に関する電磁的会計記録は、すべて原始記録及び内部、外部の証憑に、または逆に最終合計金額に向かって追跡できるように設計するよう規定されています。法律の条文はそうなっている。  私は、日本のこの現状を気にして、TKCの税務研究所、所長は国税庁の税務大学校の副校長をやった野田という人でありますが、この野田君に頼んで、アメリカとドイツのコンピューター会計法を突きまぜていいところを抽出し、日本現状に合わせるべく日本向けコンピューター会計法の素案を作成してもらい、これを一千部印刷し、それを国会の先生方及び大蔵省に配付したのでありますけれども大蔵省は、所管が他省庁に及ぶということかどうか知りませんけれども、うんともすんとも反応がありません。また、国会議員諸公は、憲法第四十一条は見て見ぬふりで、みずから立法を行うことはせず、九九%を官僚に任せてしまっているように見えるのですが、これは誤解かもしれません。困ったものだと思っております。  実はコンピューターというのはすごい能力を持っていまして、これを動かすプログラムいかんによっては会計記録がいかようにでも変えられる。初めに記入した会計記録がぐあいが悪けりゃ、数字をきれいに入れかえて、しかも証拠を全く残さないこともできる。脱税志向者にとってこれほど物すごく武器となるものはない。  明治の横井小楠が、日本人ははしにも棒にもかからない国民だと嘆いたように、これの利用法を知ったならば脱税処理の名人になることだってできる。最高に便利だが、最高に危険な道具であります。だから世界の先進文明国は競ってコンピューター会計法をつくって、世の悪徳経営者に悪用されないように処置しているわけであります。我が国国会がコンピューター会計法を制定しようとしないのは、租税正義貫徹の意識がほとんど皆無のためではないかと案じられる次第であります。  最後に、平成六年度の税制改正要綱についてでありますが、アングラマネーの防止策としての国民総背番号制の採用はもはや緊急の施策のうちに組み込まれるべきものと考えられるのでありますが、これが欠けているのは、日本は現在欠けていますが、租税正義貫徹への勇気を欠くものと感ぜられる次第であります。残念の一語に尽きると感ずるものであります。  以上をもって私の意見陳述を終わらせていただきます。(拍手)
  60. 山口鶴男

    山口委員長 ありがとうございました。     ―――――――――――――
  61. 山口鶴男

    山口委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井啓一君。
  62. 石井啓一

    石井(啓)委員 公明党の石井啓一でございます。  本日は、三先生方におかれましては、お忙しいところお越しをいただきまして、大変にありがとうございます。  まず、私からは景気対策につきまして紺谷先生に御意見をお伺いをしたいと存じます。  先生おっしゃいましたように、予算審議がおくれたことは最も残念なことである。私どもも非常に同感でございまして、一日も早い予算の成立を期していかなければならない、このように思っているところでございますが、まず最初の質問といたしまして、私からは経常収支の黒字問題と景気対策関連をして御質問をいたしたいと存じます。  この黒字はいわゆる国内の貯蓄と投資の差である。これが海外に向かってしまっておりまして、せっかくの投資余力が国内の充実に向かわない、したがって経済大国と言われながらなかなか豊かさを享受できない、このことが非常に大きな問題ではなかろうか。それによってまた貿易黒字を生じ、また海外からもいろいろ言われる、こういったことかと思います。  したがいまして、この黒字解消のためにも、また景気対策のためにも、投資余力を国内の住宅あるいは社会資本の充実、こういったことに向けることが重要ではないか、このように考えますけれども、先生の御意見を伺いたいと存じます。
  63. 紺谷典子

    ○紺谷公述人 ただいまの質問にお答えさせていただきます。  経常黒字の解消のためにも住宅投資を促進し、そうして投資余力の部分を住宅の充実に向けたらどうかという御意見であったかと思いますけれども、今のところ、住宅投資は実はデータの上から見ますとかなり進んできておりまして、実は住宅地の価格というのは上がり始めているのですね、御承知かと存じますけれども。  今問題になっておりますのは、景気対策という点から見ますと商業地の価格なんでございますね。商業地の価格がずっと下がったままになっていて、これが金融機関を初めとする不良債権の源になっているわけですね。金融機関の不良債権問題が、何というのでしょうか、お金の流れを悪くしてしまっている、お金の流れの悪いことが景気を悪化させているという状況でございますから、景気対策という観点からいきますと、私はむしろ住宅問題よりは商業地対策、土地の対策をしていただいた方がいいのではないかと思っているのですね。  せっかくこういうふうに地価が下がっている。何というのでしょうか、余り下がってほしくないのですけれども、土地自体は生活価格でございますから下がってほしいのですね。ただ、不況で下がるのは困るということでございまして、土地に関してはもっと有効利用を進めるとか税制のぐあいの悪いところを直すとか、そういうような形で土地対策をするのが本道でありまして、不況の結果たまたま地価が下がったというのは、結局いずれかは戻るわけでございますから、それは土地対策ではないのです。  せっかく地価が下がっているのでございますから、この機会に公的なお金で土地をたくさん買ったらどうかというふうに思っております。商業地を買うのはどうだとか、よくない土地を買ってどうとかというようないろいろな反対意見があるのでございますけれども、私はよっぽど変な土地でない限りはどの土地を買ってもいいと思っております。安いときにたくさんの土地を買って、必要に応じてその土地を転売して、後で公共投資あるいは社会資本充実のために必要な土地と取りかえるようなことをすればよろしいのですね。  せっかく土地が下がっているわけでございますから、公的に土地を買い入れることによってそうして景気対策をやる、景気対策をやって内需拡大を図り、黒字問題も解消するというふうなことが最も有効な対策であろうと考えております。
  64. 石井啓一

    石井(啓)委員 ありがとうございます。  続きまして紺谷先生に、円高メリットをどう還元するかという問題ですが、景気にとっては急激な円高というのはマイナスでございますけれども、長期的に見ますと、これは円の購買力が上がるということでございますから、日本経済にとつてはプラスであろう、このように考えますが、この円高のメリットが消費者に還元されていないということが非常に問題であろう。  いわゆる各種の規制がたくさんありまして、円高によってそのまま消費者物価が下がるとか、あるいは内外価格差の解消ということになかなか向かわない。こういったことで、円高メリットを十分還元するために規制緩和等を積極的に進めていかなければいけない。このこともまた景気対策にも大きな対策であろう。  といいますのは、物価が下がればそれだけ実質的な所得は上がるわけでございますので、これもやはり大きな対策ではないか、こんなふうに考えますが、先生はどういうふうにお考えでございましょうか。
  65. 紺谷典子

    ○紺谷公述人 お答えさせていただきます。  確かに円高というのは日本国民にとってマイナスばかりではないのですね。長期的に見ればむしろプラスなんですね。円が高くなるということは、日本経済を世界が買ってくれたということでございますから、そうして輸入物価が下がるということでございますから、マイナスであろうはずはないのですね。  ただ、円高のマイナスの効果は早く出るけれども、プラスの効果は時間をかけないと出ない、そういうちょっとつらいところがございまして、円高というのは不況にとっては、少なくとも当座は非常に大きなマイナスになるわけなんですね。ですから、そこで規制緩和を進めて円高のメリットを生かすようにしたらどうかという御意見でございましたけれども、それは確かにおっしゃるとおりと思います。  ただ、規制緩和自体ももろ刃の剣でございまして、タイミングというのは非常に難しいのですね。円高がそうであったように規制緩和ももろ刃の剣なわけです。もうよく知られておりますように、規制緩和によって自由な経済が活発に行われてビジネスチャンスができるという一方で、そういう競争が進むことによって、落ちこぼれていく企業で解雇とか生じまして、雇用不安が生じてくるという問題もあるわけですね。  経済現状としましては、規制緩和というのが果たして一番いい景気対策であるかどうかということは少し問題があろうかなと思っております。規制緩和自体は長期的な視点からぜひともやってほしいところでございますけれども、今出ているような規制緩和の案件は活発な経済活動を促進するようなものかどうかというと、大層疑問があるのですね。  それから、規制緩和というときに問題になりますのは法的な裏づけのあるものだけでございまして、それだけで一万一千幾らあるというふうに言われているわけなんでございますけれども、むしろ規制緩和の問題点といいますのは法的な裏づけのないものなんですね。  規制緩和の数が多いか少ないかということばかりが日本では問題になっておりますけれども、どういうふうな規制をするかというのは国のそれぞれの政策にかかわることでございまして、日本がかなり不自由であって、経済の段階からいいますともっと規制緩和を進めてもらいたいということは間違いのないところなんでございますけれども、あえて強調させていただきたいのは、規制緩和の数の多さよりも、むしろその運用の不透明さとか、御都合主義といいますか、そちらの方が問題なんですね。規制緩和の数にも上っていないいわゆる行政指導というような、そういうものがございまして、明文化されていない部分も多うございますので、どうもその運用が不透明である、そういうことの方が経済を大いに損なっていると思うのですね。  ですから、景気対策としましては、むしろ行政指導にかかわっている、そういうものの方がより自由で活発な経済を動かすのではないだろうか。今進められている規制緩和策というのは、そういう意味では余り実効性のあるものではないような気がいたしております。
  66. 石井啓一

    石井(啓)委員 ありがとうございます。  タイミングを見計らってやるべしというお話と、規制緩和は行政改革にも密接にかかわってくる、透明な行政の構築というのを同時にやっていかなければいけない、こういうお話であったかと思います。私も全くそのとおりだ、このように思います。  それでは続きまして、税制改革につきまして、飯塚先生、税務に御精通されていまして、また比較税法の大家であるというふうに伺っております飯塚先生と、先ほど少しコメントをいただきました紺谷先生、両先生に税制改革についてちょっとお尋ねをいたしたいと存じます。  今進められております税制改革は、高齢化社会に備えた税制に改めるというのがその中心的な課題であろう、このように認識しているわけでございます。すなわち、急速な高齢化の進展によりまして財政需要が急増していく、これをどのように負担をしていくか。現行の税制のままでいきますと、やはり働く世代に過重な負担を強いることにもなりかねない。それよりは、間接税によりウエートを置いた形でより広く、広い世代で、また社会全般にわたって負担をしていくことがいいのではなかろうか、こういう趣旨にのっとっていると理解しておりますが、こういった高齢化社会に備えた税制改革につきまして両先生の御意見をお伺いしたいと存じます。
  67. 飯塚毅

    ○飯塚公述人 お尋ねの高齢化社会に備えて今の税法をどう直すかという問題でございますが、もちろんのこと、我々外部から、国会じゃないですから外部から眺めておるのですけれども、いろいろな議論があるようですけれども、やはり消費税の引き上げは避けられないだろうと思っております。  しかし、現在のままでは困る。というのは、益税をほったらかしておる。これは租税正義の理念に反する。どうしてもやはり全国民が公平に取り扱われなきゃ困るということ、それに尽きると思いますけれども、税法自身が持っているいろいろな弱点がございますから、特に日本の場合、ひどい弱点は、脱税の抜け穴が多過ぎるということでございます。これは一にかかって国会の先生方の責任だと私は思っております。よろしく願います。
  68. 紺谷典子

    ○紺谷公述人 税制に関してでございますけれども、私は高齢化社会の到来即増税というのはちょっと論理が一つ抜け落ちているのではないのかなというふうに思っております。  高齢化社会の到来というのは、それだけ人間が長命になって、日本人が長命になった。つまり健康者、健康で老人生活を送ることのできる人たちがふえているということでございまして、老人の数の増大が即寝たきり老人とか働けない御老人の方々の数がふえたということではなかろうと思うのですね。  それから、先ほども申し上げましたように、日本全体が非常にやはり豊かになってきているのですね。経済水準が上がっているわけでございます。ということは、福祉の形というのも当然変わってくるわけでございまして、すべてを国が手助けするのがいいかどうか。国が保障すべき部分は最低ラインにとどめておいて、あとは自分で人生を多様化するといいますか、好みに応じて好きな形を選ぶというような、そういうやり方がむしろ望ましいのではないのかなという気がいたしております。  ただ、そうはいいましても、やはり増税の必要が全くないというわけではございませんで、あるとは思いますけれども、その辺はもっとよく吟味して、高齢化社会だからといってすぐ増税ではなくて、やはり高齢者の方たちに働いていただく方法とかそういうことをむしろ前向きに考えて、それでも必要な増税部分という形で議論していただくのが一番よかろうと思うのですね。  直間比率の是正に関しましては、よく高齢化社会ということを理由に御説明を受けることが多いのでございますけれども、それはちょっと違うのではないのかなというふうに私は思っております。  今飯塚公述人からもお話がございましたけれども、どうも税に関しては公正じゃない部分、税金逃れをしていらっしゃる方が大分あるようである。そのことを是正するのが私は間接税であると思っているのですね。  どうも所得を捕捉するというのは非常にコストがかかりまして、税の議論について抜け落ちておりますのは納税とか徴税のコストの議論なんですね。そこを節約して、かつ、うまく税逃れをしている方たちからも税金をいただくというような仕組みが間接税なんですね。入ったところでとらえるのは非常に困難で費用もかかるのですけれども、支払いの段階、使う段階だったらば、前に政治家の裏金でもと言ってしかられてしまったことがあるのですけれども、そういう不透明なお金も必ず使ったときには税金を取られる、そういう所得捕捉の問題を解決するのが間接税であるというふうに一つ考えております。  それからもう一つ、豊かになったんですから広く浅く国民の皆さんが税を負担した方がよろしいというのは質問者もおっしゃったとおりですし、私も先ほど申し上げたとおりでございます。
  69. 石井啓一

    石井(啓)委員 両先生ありがとうございます。  飯塚先生おっしゃいますように、消費税の益税問題、それからさらに逆進性が強いという問題ですね、このことにつきましては、やはり解消なり緩和なりということを真剣に考えていかなければならない、そのように思います。  また、紺谷先生おっしゃいますように、課税の公平性という意味で間接税がより少ないコストで公平性が確保できる、これはおっしゃるとおりと思います。公平を実現する税制ということで消費税は有効な手段ではないか、このように思います。  時間が参りましたので、以上で終わります。ありがとうございました。
  70. 山口鶴男

    山口委員長 次に、深谷隆司君。
  71. 深谷隆司

    ○深谷委員 まず、三人の公述人の皆様に、お忙しいところ、また御高見を賜ってどうもありがとうございました。三人の皆さんにそれぞれ伺いたいと思います。  まず、紺谷先生、予算審議が非常におくれたことは景気回復を一層おくらせてしまっている、おっしゃるとおりであります。今私ども自民党は野党になったから言うわけじゃありませんが、大体予算というのは前年の十二月に編成すべきものであります。そして、一月に予算を提出するというのは財政法で決められている。それが三月四日になって提出したということは、これは連立与党の唯一と言っていいかもしれない統一的な見解の政治改革法案を通すためであった。つまり、予算編成を行うというと消費税の値上げ絡みの話になりますので、そうなると社会党が抜け出すだろう、だから先送り。それで一月になっても二月になっても、つまり政治改革法案を通すまでは予算を提出しないということから実は起こったわけなんですね。  しかも三月四日に提出いたしました後というのは、今度は細川さんの、大変残念でありますが、疑惑が一向に解決されないで、みずからが資料の提出や証人喚問の拒否ということで入り口を閉ざしたためにとうとうできない。最後は予算案をほうり投げて勝手におやめになってしまって、それからの羽田政権までの期間というのが延々と続きまして、結果においてまことに残念ながら今日のような状態になってしまった。  五月になってから予算審議するというのは戦後四度目です。今までの三回というのは、憲法発布の翌年のときであるとかあるいは選挙があったために再提出をしたという時代でございました。ですから、私どもといたしましては、この予算を、おくれましたけれども、また与党の責任ではありますけれども、その追及をしながら六月二十九日の国会会期いっぱいまでには何とか通さなければならないという前提で、今全く毎日毎日を大事に使いながら、計画の一切のおくれを少なくとも野党から生ずることのないように努力をいたしているつもりなのでございます。  そこで、予算審議がかようにおくれ、成立がおくれたということで暫定予算を組みましたけれども現実にどの部分で、どういうところで景気回復の足を引っ張っているか、そのあたりをひとつお考えをお尋ねしたいと思います。
  72. 紺谷典子

    ○紺谷公述人 質問者の方に質問というよりはむしろお答えいただくというようなぐあいになった部分も前半ございましたけれども、確かにおっしゃるとおりに政治改革によって景気対策がおくれた。国民が政治改革を望んでいたのは事実でございますけれども、政治改革は実は時間を争っていたわけではない、むしろゆっくり審議して国民が納得いくような実効性ある政治改革を行っていただきたいというふうに思っていたはずなんでございますけれども、急ぐ方の景気対策が先送りになってしまったのは私も非常に残念に思っております。  その景気の問題なんでございますけれども、私は予算審議がおくれて景気にどういう傷を与えたかというようなお話を先ほどさせていただきましたけれども景気の悪化といいますか、回復のおくれというのはそれ以上に国民の生活にとって非常に大きな問題を残したと思っているのですね。  それは幾つかの観点があるのでございますけれども、まず日本の国の国際交渉力を奪ったというふうに思っております。日本は歴史も文化も誇るべきものをたくさん持ってはおりますけれども、残念なことに世界的な交渉の場では、経済力がある、経済が安定しているということを唯一の強みにしてきたのですね。どうもそこのところがちょっとがたが来てしまいまして、世界的に経済運営に関して評判を落としてしまった、信頼をなくしてしまった。そのために日本経済構造には問題があるのではないか。ああしろこうしろというようないろいろな外圧を受けているわけでございまして、正しい外圧というのも変なんですけれども、あればそれはそれでいいのですけれども、中にはとてももう無理難題としか思えないようなものもございまして、それに対して強く主張するということができづらくなってきてしまったというのは非常に大きな問題であろうと思っております。第二点といたしましては、そういうふうに交渉力を失って日本人自身も自信をなくしてしまったという部分があった結果、日本の構造改革を進めようという意見が上がってきた。構造改革自体は非常に必要だと思っております。先ほど規制緩和のときにもお話しさせていただきましたように、日本の制度というのはどうも経済の身の丈に合わない部分というのがたくさん出てきてしまっている。戦後五十年間もの間ほとんど同じ体制で来ているわけでございますから、経済状況がこれだけ変われば当然状況の変化というものはそれに応じた変革を要求するわけでございまして、経済改革その他のさまざまな改革を要求するのは当然のことであります。  ですけれども、その改革に当たってどういう方向へ改革するかということはまず日本国民自体がどうしたら一番いいかということを議論しなくてはいけないのでありまして、どうもそこのところが外国主導でやられるようになってしまったということが極めて残念なんですね。  例えば、規制緩和の絡みで申し上げさせていただきますと市場メカニズム、どうも日本では市場メカニズムが働いていないではないかというような議論がよくなされるのでございますけれども、私はそれは必ずしも正しくないと思っております。アメリカの市場メカニズムと日本の市場メカニズムは違うんだ。  アメリカは非常に多民族国家でありますし、いろいろな価値観の違う人が多いですから、ルールをはっきりさせる、契約をはっきりさせるという形で経済運営をすることが多いのですね。ですから取引も、長期的な取引よりもむしろスポット的な、短期的な取引ということが多くなってくる。短期的な取引は、今日の前で条件がいいところと契約するということですから非常にわかりやすいのですね。  ところが日本の場合は、長い目で見て最もいい選択をする。今すぐいいかどうかはわからないけれども、今はむしろ悪いように見えるんだけれども、長い目で見ていいと思う取引先と契約するというような形で運営されてきているのですね。そういう日本的なやり方、日本的な効率性というのがあるわけでございます。  もしも日本が、他国から言われるようにそんなにも非効率、不公正であったといたしましたならば、日本がそんなに高度成長できるわけがないわけでございますし、日本経済国際競争力というのはもっともっと劣ったものになっていたはずなんですね。ところが結果は違うわけでございますし、先ほど申し上げましたように、非常に経済が安定し、所得と資産の平等が進み、治安もいい社会を築き上げてきたわけなんでございますから、日本のシステムが悪いところばかりであったはずがないんですね。  身の丈の合わない部分は当然改革しなくてはいけないのですけれども、どこをどう改革するか。それは日本の文化と歴史と風土にのっとった改革の仕方があって当然なんですね。ということは、従来のシステムを全部否定すればいいということではなくて、従来のシステムの功罪をきっちり見きわめるということがまず必要なのだろうと思っております。そういう作業が余り行われずに現状の否定ばかりが先行しておりまして、改革即現状否定というようなことになっているのはまことに残念だと思うのでございます。  景気の悪化が先ほど申し上げましたように外圧をふやし、日本人自身が経済状況とか日本現状に対して自信をなくして、ともかく現状を否定したがる。本来だったらば、よい部分もあったかもしれないのに、ともかく変えてしまえというような風潮を生んでいるというようなことは、日本経済の運営にとって、経済だけではなくて国民生活全体にとって、あるいは大きなマイナスなんではなかろうかなと思っております。  国際協調はもちろん必要なんでございますけれども国際協調、すべての協調というのはきちっと自立していてこそ初めてうまくいくものなんですね。日本として最適な改革は何かということが明らかになっていて初めて、じゃ、どこを譲ろうか、協調のためにはどこを譲っていこうかという議論になるのが本当なんだろうと思うのです。言われたから変える、それが国際協調なんだということではなかろうと思っておりますが、その景気対策のおくれがひいてはそういうところにまで傷を与えてしまったと考えております。
  73. 深谷隆司

    ○深谷委員 熊谷先生にもあわせてお尋ねしますが、消費税の問題が今非常に大きな問題になっている。私は、政権をとっていた時代から、そこに島村宜伸先生もおられますが、これらの問題については随分いろんな議論をしてきました。特に、売上税のときには真っ向から反対して大いに話題を集めたものです。  直間比率と簡単に申しますけれども、そんなに簡単なものではないとまず原則的に考えておりますね。しかも最近のこの消費税の値上げというと、専ら高齢対策、福祉対策といったような、そんな表現に急速に変えられていっている。前はそうではなかったですよ。やはり税制のバランスをとるために直間比率を見直すんだ、こう言っておったんですね。最近は、福祉のため、とりわけ高齢者の対策というようなことにこの中身というか背景が、説明が変わってしまった。私はこれはちょっと大きな問題だと思っているのです。  つまり、きのうも我が党の野中議員がここで質問をいたしまして、消費税の値上げの問題を論じられるたびに年をとった人は本当に肩身の狭い思いをしている。そんなに今自分たちが若い人に迷惑をかけているのか。我々も一生かかって今日の日本を築いてきた。その築いてきた日本のところに若い人が住んでいるのに、今になったら、何か専らお年寄りのために働いている者がどんどんお金を取られて困ったものだといったような、そんな感覚で語られては迷惑千万だ、こういう声もございました。だから私は、そういう意味では、やたら高齢者対策、福祉対策と、その中身が余りないにもかかわらず言うことは全く反対でございまして、そういう点では共通する点が多いのではないかというふうにさえ思っているわけであります。  そしてこの消費税の値上げというのは、私どもに言わせれば、大蔵省が最も打ち出の小づちみたいな、苦労なくて金が入ってくる方法だ。一%数字を変えたら二兆四千億入ってくる。数字を変えれば苦労なしに入ってくるところに私は麻薬的なおそれがあると言って、今でも消費税問題を論じているのです。  つまり、消費税を上げる前に、行政改革とかリストラとかさまざまなことをやって、国民の皆さんにこれだけ努力したんだからひとつ御検討を願いたい、こう言うならいいけれども、それをそっちのけにして、数字を変えるだけで、一%、二%、三%変えるだけでお金が入ってくる。こういう安易な増税というのが私はよろしくない、こう考えているわけでございまして、民主主義時代ですから議会で議決したものに対しては私どもは従っておりますが、しかし、とことんこの主張は今までも言い続けたし、これからも言い続けていきたい、こういうように思っておるわけでございまして、そういう観点から消費税の問題について、国民がどの程度それでは理解されておられるんだろうか。ここいらをひとつお考えを承りたいと思います。
  74. 熊谷金道

    ○熊谷公述人 お答えします。  今深谷先生の話を聞きながら大変奇妙な気持ちで聞いていました。つい最近までは政権党で自民党の幹部の方から、私どもが持っているような部分とかなり共通した消費税についての問題意識を伺いました。  先ほどの意見表明の中でも言いましたけれども、私は、大きく言って二つ、今の議論について意見を申し上げました。  一つは、もともと消費税が持っている逆進性の強さというもの、しかもそれが高齢化社会への備えと言いながら、現実には一番弱者で低所得者層である高齢者に結果としてしわが寄っていくようなことをやろうとしているということ、これがやはり一番大きな問題だと思うのです。  それともう一つは、手続上の問題からいって、これまで自民党政権時代は、私の内閣の時代には消費税率の引き上げをやらないということを代々首相が答弁をしてきた。連立政権ができ上がりましたけれども、この連立のどこの政党を見ても、昨年の総選挙で消費税率の引き上げに手をつけるということを公約をしてこなかった。そういった点で、国民的な、主権者の立場から非常に大きな問題があると今思っています。  そこで、消費税で、やはり私どもが一番心配しているのは、深谷先生もおっしゃられましたように、とにかく大蔵省主導というぐあいにマスコミなんかでも言われていますけれども、とにかく打ち出の小づちが欲しいということしか見えない。総合的に今後の日本経済の行方あるいはそこにおける勤労者の所得の伸びがどうなっていくのかとか、さまざまな多角的な財源問題あるいは税のあり方を総合的に検討するということではなくて、とにかく消費税の引き上げありきというような今のような議論というものは、逆に国民に対して議論を非常に起こしにくい側面も持っておると思うのですね。  何のために何が必要なのか、どうすれば、どういうような財源が必要なのかということが一切検討されないまま、藤井大蔵大臣政策的な検討は抜きにした試算だということを言っていましたけれども、やはり国民に広く今後の日本の未来図というか、一定の福祉あるいは高齢化社会へ備えての福祉ビジョンというものも出されましたけれども、あれも非常にわかりにくい。ああいうものももっと明らかにしながら、全体像を示しながら議論をしていくということではないのか。やはりそのためには、まず国民の信を問うということがこの問題については非常に大きいのではないだろうか。  今でも消費税問題が定着したという声がありますけれども現実には労働者の生活あるいは日常の主婦の生活から見ると決してそんなものではないだろう。やはり毎回毎回買い物をして小銭を受け取るたび、小銭を払うたびに消費税の煩わしさというもの、特にスーパーなんかで日常生活にかかわるような問題を毎日毎日体験している主婦なんかの中には非常に根強いものがあるだろうというように思っています。  以上です。
  75. 深谷隆司

    ○深谷委員 熊谷先生の今のお話にございましたが、私たちは自由民主党という政権をとった政党の場合でも主義主張というのはおのずからございまして、とことんその主張を貫いております。ですから、私どもは売上税から消費税までずっと反対であります。しかし、民主政治でございますから、最後に意見が多数決でまとまったものには従う。一つ政策が反対だからどこか都合のいい方へ飛び出すなんて安易な道を選ばないということでありますから、どうぞひとつ御理解いただきたいと思っております。  さっき紺谷先生から出ましたね、さっきの質問にもありました公共料金の話。私はこの間の羽田総理への質問の中で申し上げたのですけれども、単なる思いつきで、人気取りでやってはいけない、こういうことは。  あの日は、この予算委員会、ちょうど五月十八日のことでございましたが、総理大臣以下熊谷官房長官、全部おられまして、それで質問を普通にやっていたのですよ。それで、その委員会が終わるまで公共料金の凍結は話が一つも出なかった。途中から定例記者会見で官房長官が席を立った。で、戻ってきた。そのときも何の話もなかった。記者会見で何をやったのかなと思って、後で調べたら何と公共料金の凍結を発表した。それなら予算のこの委員会でまず発表するというのが議会制民主主義なんですね。聞いてみたらみんな二、三日前に聞いた、担当大臣が。  ですから、そんなふうな安易なものでございますし、年内凍結、こう言っていますから、あらかた今度は十月一日からですからせいぜい二カ月延ばし。じゃその先一体どうなるのかといったようなそういう問題など大いに私たちは追及したわけで、大問題だと私は思っている。  しかも、郵便料金とかさまざまな国にかかわる料金値上げはとっくに終わってしまっているのですよ。これから凍結するのは、例えばタクシー料金だとかNTTだとか火災保険料だとか、民間なんですね。それと地下鉄だとかバスというのはこれは地方公共団体、東京都なんというところですね。  だから、国がまず公共料金の凍結をする、あるいは場合によってはさかのぼっても何とかするというようなことをやってから民間だとか地方自治体にそのしわ寄せがいくというならまだわかるんだけれども、国は全部やっちゃって後からやるというところに、これはどうも羊頭狗肉で、マスコミを通して国民の皆さん大いに喜んだでしょうが、実は中身はないところか、このことによって、先ほどもお話があったような行政改革といったような努力や迫力が消えてしまうなどということになるとえらいことになると思っているのですね。  ですから、公共料金のこの値上げが一体今後、来年からですけれども、かえってしわ寄せになるという可能性もあるわけですが、一般的に主婦のお立場から、御主人がいらっしゃるかどうか私は聞いておりませんが、まあ女性の立場からこれらについてはどういう受けとめ方を一般の方が持っておられるかという御判断を承れれば幸いです。
  76. 紺谷典子

    ○紺谷公述人 残念ながら主婦ではございませんで、売れ残りでございます。申しわけございません。  ただ、公共料金の値上げの凍結につきましては、聞いた瞬間はみんなうれしいと思ったと思うのですね。ああよかった。だけれども、十二月までの凍結なのか、その後どうなるんだというふうに二番目にはまず不安になったと思うのですね。三番目にはばかにしないでよと思ったんではないかと思うのです。  どうしてか。一律に凍結ということはあり得ないことだからなんですね。いろいろなものがあるはずでございまして、そうしてそれぞれいろいろな状況があって、しかも本当に必要があって値上げを決めたことでありましたならば、そんな簡単にすべて一律というわけにはいかないんですね。  まず第一番目に考えられますことは、先ほども申し上げましたけれども、必要なんですと言って国民に改めてもう一度きちっと説明し説得するということですね。  それでもまだもう一段階考えて値上げせずに済むものがあれば努力いたしますというふうに、いろいろなものによって違う結果が出てくるはずなんでございますけれども、ともかく簡単に一律凍結ができたということ自体、値上げが安易であったということの何よりの証拠でありますし、それからまた、非常に無頓着に上げたものを無頓着に凍結ということで、何とはなしに本当におっしゃるとおりに、国民が目先の利害だけを見ているというような誤解がもしかしたら政府にはおありになるのではないだろうか。もう少し長期的な視点に立った、本当に国民生活のためになるような政策をとっていただきたいと、先ほど申し上げたのはそういう理由からでございます。
  77. 深谷隆司

    ○深谷委員 ありがとうございました。  飯塚先生に少しお尋ねしますが、私たち東京に住んでいまして都市問題を抱えているわけですね。今一番やはり問題になっているのは固定資産税の問題。特に中小企業は非常にこれで困っている。  これは申すまでもないことでございますが、評価額を公示地価の七割程度に引き上げるというそういうところから始まったのですが、激変緩和策というのは確かにとった。激変緩和、急に上がらないようにさまざまな手だてはとったのですが、それは不十分である。  それから、評価の時点が九二年の七月一日を基準日としているわけですね。激変緩和のために翌年の九三年の一月にもう一回その公示地価を参考に修正するということになっているわけなんですね。ところが、あれからまた一年たった。ですから、九三年からことしの九四年、評価をもう一回修正してから丸一年たっていますものですから、その間にも土地はもっと下がっている。渋谷なんかでは四〇%ぐらい下がっている。我々の住んでいる商業地なんて三〇%ぐらい下がっていますから、この前の、つまり去年の評価をした、それからそのさらに一年前の七月一日の基準日の評価からいきますと、どうしても極めて高い地価を基準にして計算されるから固定資産税が非常に上がってしまうわけなんですね。  この件についても政府にいろいろ今追及しているところですが、ここらについては、どんなふうな手だてで公正な納得できるような固定資産税というのが生み出せるものか、専門家のお立場から何か御意見があったら伺いたいと思います。
  78. 飯塚毅

    ○飯塚公述人 ただいまの御質問でございますが、これは難問題。我々は職業人として税の問題を扱っておりますけれども、税法そのものの構造的欠陥だとかあるいは税法は本当はこうあつた方がいいんだといったような角度の思考というのは余りしてないんです。それは全く申しわけないけれどもしてない。  むしろそれは、「国会は、国権の最高機関であって、」と書いてありますから、四十一条に。ですから、これは先生方がひとつやらせるべきじゃないか。御承知のように、日本の官僚というのは頭がいいですから、だから彼らに、ここはどう工夫したらいいのか、おまえたち工夫せよ、これをやらすべきじゃないですかね。私はそんなふうに思いますよ。幾らかお門違いではないかと思うのですよ。済みません。
  79. 深谷隆司

    ○深谷委員 お言葉を返してここで議論するつもりはありませんが、要するに、大蔵省的な発想でまいりますと、どうやってお金を取ろうかという話になっちゃうんですよ。だから、中小企業を支えておられる税理士の先生方にいい知恵があったらお教えください、国権の最高機関である我々が考えることは当然ですが、知恵があったらせっかくですからお尋ねしたい、こう申し上げたわけですから、別に議論をするつもりじゃありませんので、どうか質問の意味を御理解いただきたい。  それで、そんなことを言いながらまた聞いたらおかしいんですけれども、もう一つ聞きたかったのは、相続税の問題なんですね。今中小企業は相続いたしますと、三代でつぶれたのが二代でつぶれちゃう。これは土地の評価が非常に高いという都市の問題なんですね。私どもいろいろな立場から、例えば株価評価方式とか類似業種比準方式と二通りの基準があるんですけれども、どうもこの基準がなじまない。  なぜならば、中小企業が持っている株価というのは、売買できませんから、その価格が適正に計算されることが大事なんですが、一たん中小企業が倒産したか清算したような形で、土地の価格から建物から製品の残ったもの全部足して株価で割るから不当に高いものになって現実に合わない。しかも、よそに売りたくても同族会社の株は買ってくれませんので、非常にそのあたりが私ども毎日のように悩み続けているんですね。  ですから、この相続税、中小企業の承継税制ということについて、何か御高見があれば。なければ、しっかりおまえのところで考えろとおっしゃればまたしっかり考えますが、参考になる意見がありましたら、どうぞ。
  80. 飯塚毅

    ○飯塚公述人 ただいまの御質問でございますが、相続税に関してお話しのような問題点があることは間違いないです、これは。我々自身も悩んでいるんです、そのことは。  しかし、そこでひとつ考えていただきたいことがある。それは、一生涯のうち一度だけ、おまえさんは非課税にするぞという制度、これが意外にも、アメリカにもあるしドイツにもあるし各国にある。日本だけがない。こういうのを考えていただかなきゃならぬ。特に今相続財産、特に固定財産について悩みがあることをおっしゃいましたけれども、それは実はアメリカの内国歳入法なんかでもちゃんとあるんですね。ワンス・イン・ア・ライフタイム・エクスクルージング・フロム・ザ・グロスインカムという言葉を使っている。つまり、一生に一度だけはこれを収入と見ないぞという条文がございます。そういうものを先生方がおつくりになったらいいだろうと私は思うのです。それが第一。  それから第二は、日本の場合は文明各国と違って、日本だけが、おやじの死んだ生命保険、これに対して課税していますからね。御承知のように、昭和十三年以前はなかったんだ。課税しなかったんだ。ところが、日本が軍国主義体制に入ってきて、それで臨時軍事費が足りなくなっちゃったということで、軍部が大蔵省に圧力をかけて保険金に課税するようになったのが昭和十三年。  私は非常に不思議に思っているんですが、生命保険金にかけるのは戦時体制に入ってからなんですけれども、なぜその戦時体制の課税方式をいまだに残しているんだろうと。これはわからない。これは、国会の先生方の脳みその中にある問題だからちょっとわからないと私は思っているんです。  そういうことございまして、したがって、実は私は職業専門家として、アメリカやドイツやイギリスやフランスやイタリア、各国の経営者が死んだ場合のその保険金はどうなるか、非課税なんです。日本だけが課税されておる。これはちょっと考えなきゃいかぬと思うわけでございます。  終わります。
  81. 深谷隆司

    ○深谷委員 ありがとうございました。大変参考になりました。  今度私ども提案いたしまして、例えば二百平米までの居住用の宅地だったら非課税にせよということで、今度八〇%ぐらいまでいくと思うんですが、それでも都心では全く追いつきませんで、そういう諸外国の例などをひとつ今後一層勉強しまして、大いに大勢の皆さんの期待にこたえていきたいというふうに思っているところでございます。  もう一つ、熊谷先生が、少数連立与党になったんだから解散せよとおっしゃって、賛成なんです、私も。  やはり連立与党というのは、自由民主党が三十八年ぶりに政権交代した、これはやはり過半数を割ったからなんですね。しかし、比較第一党と考えたら、圧倒的に第一党なんですよ。ですから、幾つかの党と結べば、連立政権でつなげていくことは必ずしも不可能なことではない。しかし、あの当時としては、国民の批判を受けたからこの際野に下るというようなことを私たちは主張しておったわけでございますが、そして連立政権が実際にはできた。  しかし、残念ながらその細川総理はむしろ疑惑に満ちあふれていた。そして自民党の、問題だと言われた部分の人たちが出て新生党をつくっているんだから、こっちに問題が多いことは今や次々と明るみに出てきた。しかもその途中で、大きな政党である社会党が、改新というような、人によっては裏切り行為だというのだが、そういうことで抜けた。  今三分の一強なんですね。国会で、衆議院で三分の一強、参議院では四分の一。国民の大多数の支持を集めたという形で連立政権が成り立っていたんですから、そういう意味からいけば、やはりこの状態は異常な事態でございますから、政策をきちんと立て、予算を仕上げた後でもいいから、こういう政策を持ってやっていくんだということを国民に披瀝しながら選挙を行うということは、私は当然なことだろうと思うのですね。  ところが最近、小選挙区制という法律が生まれたんだからそれでやるべきだとか、あるいは、いや、中選挙区の方が有利だとか、さまざまな議論になっている。私に言わせれば全くナンセンスで、のっぴきならない状態で解散が行われたら、早ければ中選挙区でやるのが当たり前、遅ければ小選挙区になるんですから、先に中がいいか小がいいかなんて話をしていることが私は違うと思うのですね。  そういう意味から、もう一回そこいらの点について先生のお考えを承りたい。
  82. 熊谷金道

    ○熊谷公述人 先ほども申し上げましたけれども、何といっても、連立与党政権が少数政権になってしまったという意味では、この不安定な政権に日本の政治をゆだねるわけにいかないということが、やはり今国民の中にも、今の政局の動向を見ながらやはり解散をして国民に信を問うべきだという声として非常に世論の中で高まってきているということだというように思います。  また同時に、この少数連立政権が、しかも国民の中で非常に反対の強い、先ほど来話にもありました消費税の問題だとか、あるいはさきの法務大臣の発言に見られるようなああいう動きだとか、そういった連立政権のやろうとしている政策そのものに対する批判というものも、こういう陰には非常に大きなものとしてあるんだろうと思っています。  これから先は、先生は、直ちにやるんだから当然それは中選挙区だという話を……(深谷委員「いや、急にもし選挙ということが起こったら、まだ小選挙区改正してないですから、だから中選挙区になると言っている」と呼ぶ)その場合は当然そうだと思うのです。  同時に、私どもの労働組合は、昨年の秋以降この小選挙区制問題がことしにかけて展開されてくる過程の中で、あのこと自身もやはり国民にそのことを公約で明らかにして、そして総選挙で争って、そしてでき上がった連立政権がその公約に基づいて国民の前に示したものではない。そういう意味で言うならば、成立した法律そのものがやはり国民に一回信を問うて、改めて、それで結果として連立政権が多数になるということになれば、これはそれぞれ意見の違いはあったとしても、国民がそれを支持したということになると思いますけれども、私どもは決してそうではないだろう。そういった点で、そのことを含めてやはり国民に信を問うべきだという考えを私どもは持っています。  以上です。
  83. 深谷隆司

    ○深谷委員 大体政治改革のときに一番大きな問題点は、どうもマスコミを中心として右か左かと二つにすぐ分ける傾向があるのですね。憲法問題を論じると護憲か改憲かと、こう分けちゃうのですね。政権はというと自民か非自民かなんですよ。こういう二つの分け方が非常に大きなマイナスの要素になってしまった。  ですから、例えば中選挙区のいいところがあるじゃないか、小選挙区、問題点があるよというと守旧派。私たちなんか守旧派。島村宜伸なんかも守旧派ですよ、みんな。それで、守旧派といっているうちはまだいいのですよ。反改革派というんですから。そうなると、率直に国民に向かってなかなか言いづらいという向きもございまして、残念ながら一つの大きな流れができ上がってしまった。  しかし、最近のマスコミや世論の動向を見ますと、さてこれでいいのかしらんといったような疑問がだんだん生まれてきていますね。特に、国民がだれも頼んでいないのに税金の中から政党助成金をつくるという、公的助成なんというのは全く不思議な話ですから、こういうものについてはやはりきちんと国民に信を問うという民主主義の原点に立たぬといけないなと私は思っていまして、そういう意味では、私は先生の御意見というのは全くそのとおりだというふうに思っているわけでございます。  最後にちょっと、時間がもう五分ぐらいございますから、紺谷先生にもう一つだけ。  金融機関が中小企業に融資を出し渋っているんですね。せっかく公定歩合を下げても市中金利は連動しない。それは、先ほどもお話が出ました不良債権なんか抱えているからだというふうなことであろうということはわかるのですけれども、しかし、私に言わせますと、巨額の不良債権を抱えているのはわかるんですが、一方では、そのころの高い金利で貸し出したお金が残っているわけなんですね。貸出金利と預金金利の差で稼いだいわゆる業務純益というのは、九二年度で史上最高なんですね。  ですから、そういうことを考えますと、やはり中小企業は生き生きと活動する、それが景気回復になりますから、やはり金融機関、民間も含めまして、そういう貸し渋りだとかあるいは金利を連動させないというふうなことはいかがなものかなと思っていますが、その点どうお考えでしょうか。
  84. 紺谷典子

    ○紺谷公述人 確かにおっしゃるとおりに、一時期は金利を低下させることによって銀行金利差の利益を、今おっしゃった業務純益を上げさせて、それによって不良債権の償却資金をつくろう、銀行の経営の立て直しを図ろうというねらいがあったと思うのですね。金利を下げるということは、預金金利は下がってしまうのですけれども貸出金利はそれほど下げないということで利ざやを稼いだのですね。  もう一つは、金利を下げますと債券の価格が上がるんですね。それで、その債券価格を上げてやはり銀行に利益を生み出したということなんですね。  そのことの問題点なんでございますが、実は資産デフレ対策、市場対策を、必要であったにもかかわらず、それに世論の反対があったために、どうも裏側からそういう国民には見えにくい形で資産デフレ対策を行ったという嫌いがあると思うのですね。それは非常に大きな問題でして、本当に必要な対策だったらばもっと正々堂々とやればいい。責任のある銀行が利益を上げていくようなそういう形の処理ではなくて、市場対策としてやるのが大事であろうと思っております。  御質問の中小企業との関係について言いますと、ただいま銀行が貸し渋りをしていないと言っておりますが、それでもやはりあると思うんですね。不況のもっともっと深刻な状況におきましてはもっともっとあったんですね。今一番リスクをとるべきは実は企業家よりも銀行なんですね。  中小企業対策というのは実は大変重要なんではないかと思っておりますけれども、今回の不況で中小企業、非常に大きく傷みました。従来は中小企業が割合早くに元気を回復いたしまして、それが景気の底上げの基地となるというところがあったんでございますけれども、今回はなかなか中小企業が立ち直れないでいる。日本経済の安定と高成長に寄与した中小企業が非常に傷んできておりますので、ぜひその中小企業のための対策をおとりいただきたいと思うんですね。  銀行がそれをするかどうかというようなことは銀行の競争性ということにかかっておりまして、銀行が一生懸命その顧客のためを考えるような仕組みというのがまだまだ日本ではできていないんですね。そういう意味では、金融制度改革その他をもっともっと進めてもらわなくてはいけないのでございますが、当座はそれでは間に合いませんので、中小企業対策をもう少し熱心にやっていただきたいと思っております。
  85. 深谷隆司

    ○深谷委員 短時間でございましたが、さまざまな御意見をいただいて、まことにありがとうございました。  私たち政治家も毎日、正直悩みながら一生懸命過ごしております。どうしても国民の目の届くところは問題点だとかそういうところばかりでございますが、日本の行方や国民のありよう、その幸せをどうやってつかむかということで、それぞれ本当に一生懸命私どもも悩みながら努力を続けているつもりであります。  どうぞこれを機会に、こういうときだけではなしに、さまざまなまた御提言や御意見をいただいて、我々の足らざるところを支えてくださればまことにありがたい次第で、その点をお願いしながら、感謝を込めて質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  86. 山口鶴男

    山口委員長 次に、中西績介君。
  87. 中西績介

    ○中西(績)委員 お三方、きょうばいろいろ御教示いただきまして、本当にありがとうございました。  私、大変時間が短いものですから、簡単に質問を申し上げますので、よろしくお願いを申し上げたいと存じます。  そこで、飯塚先生にお伺いしたいと思うのですけれども、先生のきょうの公述につきましてお聞きいたしました。私たちが主張いたしておるその内容そのまま言っていただいたような感じがしてなりません。  そこで、二つお伺いをしたいと思うんですけれども、公平、公正な税徴収をするということになりますと、何としても、脱税をどう防いでいくかということがまず一つあると思いますね。そのときに、先生も申し上げておりますけれども、職員数、国税庁の徴税にかかわる職員の数、これを試算をなさって、公正にやるためにはということで、今の職員数よりも増員するとすれば、どの程度あればこの数、達成できるかということをもしおわかりであればお教えいただきたいと思います。
  88. 飯塚毅

    ○飯塚公述人 ただいまの問題は、実は先生方がおつくりになった法律、その法律をちゃんと理解してそのとおりに利用すれば簡単に達成できる問題なんです。  例えば、ドイツの例をとります。ドイツの場合は、国の税務官吏は日本より一万人少ない。四万人台ですからね。しかし、実際はどうかといいますと、動員されている調査担当の役人は概算十七万人。  どうしてこんなことができるんだというと、ドイツの場合は分担がうまくいっているんですね。それで、市町村の職員を国税の基礎調査のために動員できる体制がつくられている。特にそれが身分登録と事業登録という形で実施している。ですから法律上は、なるほど国家公務員としての税務官吏は四万人台ですけれども地方自治体の役人の方を動員できますので、実質上は十七万人になっています。だから、ドイツでは三年に一回の実地調査が可能であります。  そこで、私が最初に先生に申しました、つまり、与えられている、先生方がおつくりになった法律、これを利用すればいいんだということなんです。具体的に申しますと、所得税法の二百三十五条、ちゃんと書いてある。つまり、国の機関は市町村の職員を動員することが可能なんだ。そうすると、日本の場合二十数万人おりますから、したがってそれを、まさか自治体の市長さんや助役さんまでも動員というわけにはいかないけれども、だからその点は七、八割になるでしょうけれども、かなりの人員を動員できる。それは、改めて先生が事務室へお帰りになって、所得税法第二百三十五条を御吟味くださればいいと思います。
  89. 中西績介

    ○中西(績)委員 もう一点お聞かせいただきたいと思います。  それは、租税正義を貫くための原則として、すべての人に平等、そして不公平税制をなくしていくという、このことがやはり鉄則だと言われておりますけれども、私の聞くところでは、昨年九月ごろ、国民の総背番号制は既に可能だという、そういう実態があると言われておるのに、政府はいまだに手がけておりません。今度のこの予算委員会ぐようやくこれを認めるような発言が大蔵大臣からされるようになってきたんです。  そこで、これらの問題について、国民総背番号制を実施する場合に、個人のプライベートの問題、いろいろ出てくるわけですから、私はむしろ今先行さすべきは、そうした、これを保護する法律なりなんなりを先行させて皆さんに安心させた上でこうした問題について取り組んでいく必要があるだろうと思いますけれども、こうした問題指摘がございますならば、お教えいただきたいと思います。
  90. 飯塚毅

    ○飯塚公述人 先生は、例えばスウェーデンという国のプライバシー保護法第十四条という法律は調べたことございますか。(中西(績)委員「ありません」と呼ぶ)ない。たしかスウェーデンだと思いましたけれども、プライバシー保護法の第十四条にあります。つまり、この領域とこの領域とこの領域はプライバシー保護の問題と関係ないという規定がある。  例えば刑事責任の追及、これはプライバシーの保護と関係ない。それから、あるいは保健の問題、つまり国民の健康維持の問題、こういう問題ですね。それから、あるいは国民の税の公平さを確保するための問題、こういうのはプライバシーの保護の問題と関係ないんだということの条文がございます。これはお調べになった方がいいと思います。  そして、特に申し上げたいことは、先生はたしか社会党でしたね。そうすると、社会党は現在法案の提出能力はあるはずでございますから、社会党の提出の法案として出す、そして、それが公正なるものであればだれでも反対できませんから、そこでちゃんと貫徹していただきたいというふうに思っております。
  91. 中西績介

    ○中西(績)委員 そこであとお二方にお聞かせいただきたいと思いますが、それは、絶えず問題になっておりますけれども予算編成をする際に概算要求をつくるときに、必ずシーリング枠というのを設定をするわけですね。ところが、例えば文部省だとか法務省だとか、こういうところでは人件費が八〇%以上を占めるようになっています。したがって、事業費というのが非常に希薄なんですね。したがって、そのためにこのシーリング枠、一時期一定の効果があったと思いますけれども、既に矛盾が大きく出ています。事業量の多い農水省だとか建設省というのは当然これはどんどん増枠されていくわけでありますから、こうした点についてどのようにお気づきになり、問題指摘ができるのか、もしおわかりであればお教えいただきたいと思います。
  92. 紺谷典子

    ○紺谷公述人 私は、財政は専門ではございませんのでよくわからないというのが本音でございますけれども、ただ、シーリング方式というのは、従来の予算の枠組みを前提として微調整を行う方式なんですね、と思うのですね。それですと、先ほど来から申し上げておりますように、経済の態様、国民生活の全体像が大きく変わりつつあるときに、従来の枠組みを継承して微調整でいくような予算のつくり方というのは実は余りふさわしくないんではないだろうか、もっと抜本的な予算の編成のやり直しということをぜひおやりいただいた方がいいのではなかろうかというふうに感じております。それだけでございます。
  93. 熊谷金道

    ○熊谷公述人 シーリングというのは、思い起こしますと、臨調が始まって小さな政府ということが非常に大きな問題になったときから、予算の伸びを前年度に比較をしてできるだけ抑えていくというところからかぶせて、今紺谷さんも言われましたけれども予算編成をしていくということできたのではないかという、たしか記憶ではそういうぐあいに思うのです。  やはり私たちの方から見ると、どういう政策政府が進めようとするのかということが明確になるかならないかのうちにまず予算の枠だけが決まって、そしてその後で政府の重点施策というものが出てくるという、手順からいうとたしかそうなっているような気もするのですけれども、八月末には概算要求大蔵省で締め切られてしまう。もう少しその手順、その前段のところで広く国民のさまざまな意見を、政府予算編成に向けて、概算要求最初の段階から、政府が、あるいは関係省庁が聞くような仕組みだとか、もう少し開かれた予算編成の仕方というものを私はぜひ検討していただければと思っています。
  94. 中西績介

    ○中西(績)委員 もう一点、お二方にお聞きしたいと思います。  それは、先ほどの紺谷先生の主張の中にもございましたけれども景気を考える際に、不況が心理的に大きくのしかかっておる。したがって、不安が必要以上に拡大されてきておるという主張がございましたけれども、バブル時代を考えてみますと、資産拡大のためにもうむちゃくちゃなことをやってのけたのが、細かくは申し上げません、時間がございませんから、土地価格の問題にいたしましても、株の問題にしてもいろいろあると思います。  そこで、これとのかかわりの中で、金融機関が果たした悪い意味での役割というのは相当大きなものがあったのではないか。したがって、私は、反省なしにこのこと、不良債権が多いとか早期にこれを解消しなくてはならぬということが今先に出ていまして、そのために国民の理解というのがないままやろうとすると無理がそこにはある。やはり信頼関係の中でしか成り立たぬわけでありますから、こうした点で、特に金融機関について申し上げますならば、どこら辺を反省し、そして手がけるべきであろうか、この点について、簡単でよろしゅうございますから、御教示いただければと思います。
  95. 紺谷典子

    ○紺谷公述人 お答えいたします。  銀行業に関しましては、実は貸出審査というのが非常に重要なんでございますね。それは、株式市場では株価が企業審査、企業評価をするのと同じような意味で、少ない資金をいかによく国民生活のために最適な配分をしていくかという機能を銀行は担っているわけでございますから、貸出審査が非常に重要なんですが、そこのところが非常にあいまいであった。そのために、ともかく、相手が借りたいと言っていないにもかかわらず借りてくれと言って貸して、土地とか株価の上昇を招いた側面というのは決して否定できないと思うのですね。そういう結果として不良債権を抱えるということになったというのも、全部が全部でないにしても、かなりそういう部分があるということもおっしゃるとおりでございます。  その点に関してどうしたらいいかということなんでございますけれども、やはり経営責任を明らかにするということが一番重要なんでございまして、経営責任を明らかにすることによってそういう放漫な経営を排斥していく。それと別に、国民生活全体を傷ませている市場対策、土地の流動化とか株式の取引の活発化ということを進めていくべきであろうと思っております。  今のところ国民の納得が得られませんのは、そういう責任者である経営者がきちっと責任をとる体制になっていないから、市場対策についても反発が強くて、結局そのツケが国民全体に及んでいるということなんでございますから、経営問題と市場問題というのを切り離せるように、経営責任をきちっと追及する仕組みをつくるのが大事であろうと思っております。
  96. 熊谷金道

    ○熊谷公述人 私も、今紺谷公述人が言われたことに尽きるのではないかというように思います。  私どもの労働組合にも金融関係の仲間がおりますけれども、何兆円もの不良債権が、本来であれば預金者の側に還元されなければいけない。今銀行、都市銀行を含めて、一般国民の預金残高というものは相当大きなものになっている。そういう意味で、それが全くどぶに捨てられるかのように償却をされていく。そして一方で、経営責任が一切明らかにならないまま、あいまいなままそのことが横行しているということが非常に大きな問題だというふうに思っています。  それと同時に、もう一つは、そういう仲間たちに聞くと、やはり銀行経営自身が、企業の顔とだけではなくて、やはり一般国民との関係でも、もう少し何らかの形で開かれた関係をつくっていくということが、いわゆる今銀行に、預金における一般国民との関係で見ても非常に大事な問題になっているのではないかという指摘もいただいているところです。
  97. 中西績介

    ○中西(績)委員 わずかでありますけれども、時間がまだありますので、最後に飯塚先生にお聞きをしたいと思っています。特に、先生の一番最後にございます平成六年度の税制改革要綱について、簡潔に先生の御批判なりなんなりがあればお聞かせいただければと思います。
  98. 飯塚毅

    ○飯塚公述人 私は一番最後に述べましたことは、アングラマネーの横行を防ぐために、国民の総背番号制を実施した方がいいということを申し上げたわけなんだけれども、実はアメリカでやつていますから、もう既に。あれは保険証の番号を使ってやっている。うまいやり方ですよ。しかし、日本だってそれをやれないことはない。やれますよ。工夫すればやれますよ。そして、アングラマネーをなくして、租税正義を完璧なものにして国民に存分な税負担を頼むということなら、国民も納得しますよ。はい、そういうことです。
  99. 中西績介

    ○中西(績)委員 以上で終わります。
  100. 山口鶴男

    山口委員長 次に、穀田恵二君。
  101. 穀田恵二

    ○穀田委員 日本共産党の穀田です。  お三方の公述人、御苦労さまです。もう私で最後でございますから、よろしくお願いします。  まず最初に紺谷さんにお聞きしたいのですが、景気対策の重要性をるるお話ありました。また、生活実感ということでございましたけれども、私は京都に住まいしている者なんですが、例えば、京都の丹後地方などでは、やはり今の繊維不況だとか全体の不況の中でたくさんの自殺者が出る、かつてない、三十数人も出るというようなことで、いわば極めて重大な不況に見舞われて、にっちもさっちもいかないという実態がございます。そういう点でも、生活実態からも、私は多くの方々のところで、ある意味じゃ今までにない形での不況実態というものを痛感しているんじゃないかなと思うのです。その点がいかがかと。  それと二つ目に、紺谷さんがお書きの雑誌の中で、「消費税率上げた方が得?」という、こういう論文がございまして、その中に「課税を公平にする消費税」、前段はいろいろあるのでしょうが、後段の中では「とは言え、消費税が低所得者層に重い負担をかける面のあることは否定できない。いわゆる逆進性である。」ということでお話しなさっています。  今国会で議論になっているのは、消費税の問題については、最初に増税ありきという形で、既に御承知かと思いますが、大蔵省の試算では七%、八%、九%、一〇%なんというふうになってきております。そうしますと、いわゆる低所得者層だけでなくて、本当の意味での中堅的な所得者層も含めて、これは差し引き大増税になってしまうというような経過があるんじゃないだろうか、その辺の御見解をお聞かせ願えればと思います。     〔委員長退席、後藤委員長代理着席〕
  102. 紺谷典子

    ○紺谷公述人 まず、丹後の自殺者が多いというのは、私も赤旗を購読させていただいておりますので存じておりましたけれども、ただ、一部の評論家の方たちが生活実感がないとおっしゃっているのも本当のことだと思うのですね。それは、それだけ経済が複雑になってきておりますし、全体としてやはり豊かになっておりますから、不況だからといって自殺に及ぶというような方たちが全体としては少数になっているんであろうと思うのですね。  でも、だからといって景気対策が必要ないというわけでは決してございませんで、むしろ本当の豊かさというのは、少数者の痛みを理解し、それに手当てができるということだと思うのですね。余り豊かでないときにはもうぎりぎり最低のことしかできないのでございますけれども、豊かになってくれば、なるほど少数者の痛みに手当てができるゆとりが経済に生じるということなんで、少数者だから必要ないということには決してならないと思っております。  それから、もう一つ消費税の逆進性のことなんでございますけれども、逆進性がないなんということはもう全然思っておりませんで、自分でも書きましたとおり、消費税というのは低所得者に負担をかける部分があると思っております。ただ、だからといって消費税導入に反対というのはいささか短絡的かなというような気がいたしております。  全体として、消費税というのは税逃れをしている人たちから税金を取ろうということなんでございますから、もしそれが十分な効果を出せば、増税しなくて済むかもしれない。消費税率が高くなることによって、むしろ所得税の低下とか、それから社会福祉、生活保護の財源というのがふえてきて、そういう全体としてトータルでは、逆進性の及ぶ方たちにもプラスの効果が出てくる可能性は大いにあると思うのですね。  ただ、今のところ問題は、増税だけが議論されておりまして、増税の結果逆進性の及ぶ方たちへの対策が余り具体的に議論されていないということなんですね。それをきちっと議論していただければ、私は基本的には消費税の導入にも賛成ですし、消費税率を高めて所得税の累進性を緩めるという方向で税制改革をしていただきたいと思っているものでございます。
  103. 穀田恵二

    ○穀田委員 ありがとうございました。  私は、その点では、今日の消費税が、この予算委員会でも随分議論になりまして、高齢化社会のためにという前言葉がいつもつくけれども、本当にそうだろうかという議論を今しているところでございますし、私どもとしても、本当の意味で消費税がどんな効果をもたらすのかということを改めて議論をしていきたいと思っています。  次に、熊谷公述人にお聞きしたいと思うのですが、今日の不況は、特に労働者、それから中小企業を直撃しています。先ほどのお話にもありましたように、個人消費を拡大するためには、当然庶民の懐を暖かくするということが大事なわけです。そのときに、政治は本来減税効果をつくり出していく、それも余りないというお話がありましたし、会社の方や企業の方は本来賃金の拡大ということで、一方政治は負担を軽くするし、一方企業の方は金をふやすということで、両々相まって、本来懐ぐあいが暖かくなると思うのですね。  ところが、実際は、先ほどお話がありましたように、減税は定率減税ですから実際は効果は、低所得者層ないしは五百万以下でしたか、ほとんどない、こういう現実があります。  もう一方で、上げるべきところのお金の方の、賃上げですね、熊谷さんは労働組合の代表者でもありますから、ことしの春闘、またそういった形でどうだったかということが一つ。  それから、二つ目に、私どもも昨日の予算委員会で追及したのですが、企業はいつもリストラを大幅にやって、ぜい肉を落としながらしばらくするとまた利益を拡大していく、こういう波をつくりながらやっているということをきのう私どもは指摘したわけですけれども、リストラと称して人員削減が大幅に行われている実態、こういう現場の事実などもお聞かせいただければと思うのです。
  104. 熊谷金道

    ○熊谷公述人 まず景気と春闘の関連でありまして、私どもはことしの春闘に当たって、日経連が不況だということを口実にして賃上げはゼロだ、雇用を守るためには賃金を抑え込むんだということを言って、抑え込みに回ってきました。私たちはそれに対して、そうは言いながら、経営者側は賃金も抑え込み、人減らしも進めてきている。それに対して、今深刻な不況を労働者や国民の立場から解決をしていくためにも、やはり一人一人の労働者や国民の生活が改善されることだ、そのためには賃上げによって個人消費を拡大し、内需拡大していくことが景気回復にもつながっていくんだ、そういう立場でことしの春闘に臨んできました。しかし、率直に言って、大変厳しい結果を私どもは強いられたというように思っています。  とりわけ、製造業では大変厳しい状況。これは単に経営者が口で厳しいと言っているだけではなくて、私も現場へ行きましたけれども、何というか、大企業の系列下請ではない、自前でやっている中小零細企業でも仕事がない。とにかく、江戸川や荒川だとか下町に行きましたけれども、昼間、パチンコ屋に労働者があふれている。それはサボっているのではなくて何日も仕事がない。一回仕事の発注があっても、その次仕事が来るのがよくわからない。ファクシミリで突然親企業から発注が来て、単価は後から回ってくるというような状況があちこちである。そういう状況の中で、製造業の問題が深刻だ。  それと同時に、ことしの春闘の中で、特に経営者側から強調されてきたことは、そんなに賃上げを言うんだったら中国へ行くあるいは東南アジアへ工場を移す、それが嫌だったら賃上げを我慢しろという、こういう海外展開とのかかわりでの労働者への抑え込みということが大変大きくあちこちで出てきました。地域にも行きましたけれども現実地域経済がそういう意味では空洞化をしてきているという現実もいろいろ見てきました。そういった点で、総合的にそういう海外展開の問題、リストラ合理化の問題というものをトータルにとらえながらということが非常に大事ではないか。  特に最近、鉄鋼、新日鉄だとか川鉄だとかいろいろなところ、あるいはこの春闘期間中でも、労働省は六十歳定年制を今度は努力目標から義務にするんだというぐあいに言っていますけれども、この春闘中に起きたのは、例えば愛知のオークマあたりでは、労使で定年年齢の引き下げをするとか、あるいは六十歳定年制を言っているときに五十五歳ぐらいで出向で首を切ってしまうようなことがまかり通るとか、そういうようなことが横行しているということについては、私はやはり労働行政としてもしっかりとそこは押さえていただきたいと思っているところです。
  105. 穀田恵二

    ○穀田委員 今、労働行政の話も出ましたが、私どもの党は昨日、下請中小企業対策についても述べたところです。といいますのは、今もお話を聞いてまた改めて驚いたのですが、仕事がなくて外に出ているという話がありましたけれども、実は、私が住んでおります関西の方では、松下は一割弱の減産で、下請には、第一次は三割減産、もっと下へいきますと五割減産というようなことがあるんですよね。今お話がありました、さらに海外にシフトを移していく、どっちを選ぶんだ、こういうふうに来るぐらいの話を聞いて改めて驚きました。  ですから私は、企業がもともと体力として内部留保金を一定積み上げているわけだから、そういう体力が回復している現実の中で、もっと吐き出す、つまり企業としての海外問題もそうですけれども社会的責任を果たすという点ではその辺の御見解はいかがでしょうか。熊谷さんにお聞きしたいと思うのです。
  106. 熊谷金道

    ○熊谷公述人 金融・証券スキャンダルの後、経団連が企業行動憲章というものを発表して、企業というのは社会的な存在なんだということを内外に明らかにしています。私どもも、企業というものはそういう存在だ、特に大企業になればなるほど、やはり地域の自治体や地域の労働者、住民に支えられながらそこで発展をしてきている、そういった点で、そこを成り立たせている労働者あるいは地域経済というものとの関係で、やはりそういう大企業の今やられているような身勝手には一定の規制をしていくとか、そういうようなことも非常に大事になってきているのではないかというように思っています。
  107. 穀田恵二

    ○穀田委員 それでは、飯塚公述人に最後、お聞きしたいと思うのです。  飯塚さんは「TKC」という一番新しい本の中の巻頭言でこんなふうに言っているのですね。「大臣等のポストの配分や、選挙資金の配給等の恩恵に心中で拘束されてしまうのであろう、一国の運命を方向づける程の重責をもつ国会議員が、自分の所属する政党内部で党の自浄機能が発揮できないのである。情けない話だが、これが日本現実だったのである。」こういうふうに書かれておられます。  ですから、自浄機能の発揮は極めて大切だということを公述人は述べておられると思うのですが、今の日本の政治の中で、政党が本当に今、先ほど議論がございましたように、政治改革ということで言われていたわけですが、本来政党としての金権腐敗だとかそういった問題に対して自浄能力を発揮するということが求められていると思うのです。その辺の見解だけお聞きしたいと思いまして。
  108. 飯塚毅

    ○飯塚公述人 実は私、難聴でして、よく聞こえない、よくわからない。だけれども、ここに書いてあることですか。要するに「国会議員が、自分の所属する政党内部で党の自浄機能が発揮できないのである。情けない話だが、これが日本現実だったのである。」と書いてあるけれども、これは間違いだと言うのですか。     〔後藤委員長代理退席、委員長着席〕
  109. 穀田恵二

    ○穀田委員 私もそのとおりだと思うのです。特に、先ほど議論になりましたが、政治改革と称して、本来政党がみずからの党として政治腐敗をなくすということに対して自浄能力を発揮すべきだと思うが、その点はいかがでしょうかと。その論文との関係で先生の御見解はいかがですかということなのですが。
  110. 飯塚毅

    ○飯塚公述人 いや、困ったな。御質問の趣旨がわからない。
  111. 穀田恵二

    ○穀田委員 先生は政党としての自浄能力を発揮すべきだというふうにその論文で書かれています。私もその点では同感なんです。  そこで、お聞きしたいのですが、政治腐敗、政治は腐敗をし切っている。リクルートからさまざまな事件がございましたね。そういう意味では、政治腐敗自身もみずからの政党としての浄化に努力すべき内容が問われているんじゃないだろうかという点についてお聞きしたいということなんですが。
  112. 飯塚毅

    ○飯塚公述人 同感。全く同感ですよ。  ただ、例えば自民党という政党がありますね、巨大なる。この自民党がもし本当に自浄機能を発揮していてくれたならば今日の混乱はなかったと思うのですよ。だから、そういう意味じゃもう少し御反省いただけたらと思うのです。しかし、それは、どうですかね。一番政党の中で潔癖さを誇りとしている先生方のグループですな。やはり我々の、第三者の冷静な批判に耐えられるんですかね。  いや、私よくわかりません。わかりませんけれども、例えば一点を申し上げると、どうもおたくの政党の場合、立候補なんか自由じゃないらしいんだね。それは私、間違っていると思うのですよ。だって、党に入ったことないんだからわからない。わからぬけれども、そういう印象を受けている。だから、別な意味で強烈なコントロールがしかれておる。だから、それは自浄機能の前に専制的機能が先行しているというふうに私は見ている。しかしそれは、先生の御質問に答えることになるのかどうかわからない。
  113. 穀田恵二

    ○穀田委員 ありがとうございます。私どもも、そういう意味では民主主義を守るために頑張りたいと思います。  どうもありがとうございました。
  114. 山口鶴男

    山口委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、来る六日午前九時三十分より委員会を開会し、ゼネコン問題等についての集中審議を行います。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時十二分散会