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1994-05-26 第129回国会 衆議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成六年五月二十六日(木曜日)     午前十時一分開議  出席委員   委員長 山口 鶴男君    理事 衛藤征士郎君 理事 中川 秀直君    理事 野中 広務君 理事 深谷 隆司君    理事 月原 茂皓君 理事 山田  宏君    理事 後藤  茂君 理事 中西 績介君    理事 草川 昭三君       伊藤 公介君    江藤 隆美君       小澤  潔君    越智 伊平君       大島 理森君    金田 英行君       菊池福治郎君    久間 章生君       後藤田正晴君    近藤 鉄雄君       志賀  節君    関谷 勝嗣君       田中眞紀子君    東家 嘉幸君       平泉  渉君    村田敬次郎君       村山 達雄君    谷津 義男君       柳沢 伯夫君    若林 正俊君       綿貫 民輔君    岩浅 嘉仁君       江崎 鐵磨君    岡島 正之君       川端 達夫君    工藤堅太郎君       笹山 登生君    鮫島 宗明君       白沢 三郎君    田名部匡省君       高木 義明君    長浜 博行君       二階 俊博君    西村 眞悟君       山田 正彦君    山本 幸三君       吉田  治君    吉田 公一君       伊東 秀子君    石井  智君       岡崎トミ子君    坂上 富男君       鉢呂 吉雄君    細川 律夫君       三野 優美君    東  祥三君       石井 啓一君    北側 一雄君       谷口 隆義君    渡海紀三朗君       穀田 恵二君    松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  羽田  孜君         法 務 大 臣 中井  洽者         外 務 大 臣 柿澤 弘治君         大 蔵 大 臣 藤井 裕久君         文 部 大 臣 赤松 良子君         厚 生 大 臣 大内 啓伍君         農林水産大臣  加藤 六月君         通商産業大臣  畑 英次郎君         運 輸 大 臣 二見 伸明君         郵 政 大 臣 日笠 勝之君         労 働 大 臣 鳩山 邦夫君         建 設 大臣  森本 晃司君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     石井  一君         国 務 大 臣         (内閣官房長官熊谷  弘君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 石田幸四郎君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      佐藤 守良君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 神田  厚君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      寺澤 芳男君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      近江巳記夫君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 浜四津敏子君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 左藤  恵君  出席政府委員         内閣官房内閣安         全保障室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障室         長       坪井 龍文君         内閣法制局長官 大出 峻郎君         内閣法制局第一         部長      津野  修君         公正取引委員会         委員長     小粥 正巳君         公正取引委員会         事務局経済部長 矢部丈太郎君         公正取引委員会         事務局審査部長 関根 芳郎君         総務庁人事局長 杉浦  力君         総務庁行政管理         局長      八木 俊道君         防衛庁参事官  高島 有終君         防衛庁長官官房         長       宝珠山 昇君         防衛庁防衛局長 村田 直昭君         防衛庁装備局長 中田 哲雄君         防衛施設庁総務         部長      草津 辰夫君         防衛施設庁労務         部長      小澤  毅君         経済企画庁調整         局長      小林  惇君         経済企画庁物価         局長      谷  弘一君         環境庁長官官房         長       大西 孝夫君         法務省刑事局長 則定  衛君         外務省総合外交         政策局長    柳井 俊二君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    高野幸二郎君         外務省総合外交         政策局軍備管         理・科学審議官 林   暘君         外務省アジア局         長       川島  裕君         外務省北米局長 時野谷 敦君         外務省経済局長 原口 幸市君         外務省条約局長 丹波  實君         大蔵大臣官房総         務審議官    田波 耕治君         大蔵省主計局長 篠沢 恭助君         大蔵省主税局長 小川  是君         大蔵省理財局長 石坂 匡身君         大蔵省国際金融         局長      加藤 隆俊君         国税庁次長   三浦 正顯君         文部大臣官房長 吉田  茂君         文部省高等教育         局私学部長   泊  龍雄君         厚生大臣官房総         務審議官    佐々木典夫君         農林水産大臣官         房長      高橋 政行君         食糧庁次長   永田 秀治君         通商産業大臣官         房審議官    稲川 泰弘君         通商産業省通商         政策局長    坂本 吉弘君         郵政大臣官房財         務部長     楠田 修司君         郵政省電気通信         局長      松野 春樹君         郵政省放送行政         局長      江川 晃正君         労働大臣官房長 征矢 紀臣君         労働省婦人局長 松原 亘子君         建設大臣官房長 伴   襄君         建設省建設経済         局長      小野 邦久君         自治大臣官房総         務審議官    松本 英昭君         自治省行政局長 吉田 弘正君         自治省行政局選         挙部長     佐野 徹治君           委員外出席者         予算委員会調査         室長      堀口 一郎君     ————————————— 委員の異動 五月二十六日  辞任         補欠選任   島村 宜伸君     田中眞紀子君   高鳥  修君     久間 章生君   中山 太郎君     金田 英行君   若林 正俊君     菊池福治郎君   川端 達夫君     吉田  治君   田名部匡省君     山田 正彦君   高木 義明君     西村 眞悟君   二階 俊博君     岩浅 嘉仁君   伊東 秀子君     岡崎トミ子君   細川 律夫君     石井  智君 同日  辞任         補欠選任   金田 英行君     平泉  渉君   菊池福治郎君     若林 正俊君   久間 章生君     高鳥  修君   田中眞紀子君     島村 宜伸君   岩浅 嘉仁君     吉田 公一君   西村 眞悟君     高木 義明君   山田 正彦君     白沢 三郎君   吉田  治君     川端 達夫君   石井  智君     細川 律夫君   岡崎トミ子君     伊東 秀子君 同日  辞任         補欠選任   平泉  渉君     大島 理森君   白沢 三郎君     田名部匡省君   吉田 公一君     江崎 鐵磨君 同日  辞任         補欠選任   大島 理森君     中山 太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  公聴会開会承認要求に関する件  平成六年度一般会計予算  平成六年度特別会計予算  平成六年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 山口鶴男

    山口委員長 これより会議を開きます。  平成六年度一般会計予算平成六年度特別会計予算平成六年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊東秀子君。
  3. 伊東秀子

    伊東委員 社会党護憲民主連合伊東秀子でございます。羽田政権になりましてから、初めて質問をさせていただきます。  社会党が離脱いたしまして、大変複雑な心境でございますが、やはりびしびしと言うべきは言いというところで質問をさせていただきたいと思っております。  まず、国民羽田内閣に対する支持率のことでございますが、こういう混迷の状況を反映いたしまして、大変国民世論も厳しいのではないか。各新聞によってちょっと違いますが、五月十六日の新聞、これは時事通信社が十五日にまとめたもので、支持率は四〇・九%で、前月の細川内閣より五・三ポイント下回っている。つまり、前政権よりも下回ったのは極めて異例であるという報道がございます。  それから日経新聞、これは五月十八日ですが、支持率は四二・二%、不支持は三一・六%、そして予算成立後に早期に解散すべきであるというのが五一・一%、総辞職すべきであるが一三・六%。しかも不支持理由が、我々社会党などが離脱した理由さきがけ閣外に去った理由と大変関係していると思うのですけれども、政策決定がわかりにくい、四四・一%、安定感がない、四五・二%となっております。  それから、昨日の読売新聞でも、やはり不支持率は三四・二%。その大きい理由に、首相が実権を握っていない、四一・五%、安定感がない、四一・三%。ちなみに、このきのうの読売新聞によりますと、支持率支持するは五一・六%となっております。  こういうふうになっておりまして、その不支持理由に、羽田総理は個人的には大変いいけれども、どうも背後に権力者がいる、政策決定過程が見えづらい、政治への透明感がないということが国民一般の声ではなかろうかというような状況でございます。  しかも、一つだけ、毎日新聞に載りました投書を紹介させていただきます。この方は、五十五歳の会社役員の方でございます。  国民多数の支持を得たものではない羽田内閣。「閣僚の顔ぶれも限られた人材の中から無理やり選びだしたことが歴然であり、とても国民本位とは思えない。景気対策税制改革などの国内問題だけでなく、貿易黒字や朝鮮民主主義人民共和国の核疑惑への対応など、重要問題について現内閣の手にゆだねるわけにはいくまい。政治改革を成し遂げるという点でも、過去に数々の疑惑を持たれた閣僚を抱え込んだ現内閣には期待できないと私は考えている。本年度予算については早期成立を図り、できるだけ早い時期に解散・総選挙をして民意を問うべきである。」こういう投書も載っております。  こういう形で、国民は大変現内閣に対する不安定感、しかも権力行使決定過程が不透明であるという非常に政治の根幹にかかわる不信感が強いとも言えるのじゃなかろうか。これについて羽田総理は、簡潔で結構でございますので、どういうふうに国民にお答えになるのか。
  4. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 今、世論調査といいますか、そういったものをもとにしながらお話があったわけでありますけれども、五月十六日というお話でしたけれども、社会党さんが去られた、また少数与党による政権であるということであるから、前政権より確かに支持率が下がっておるということは、これは私はもうやむを得ないことであろうと思っております。しかし、今お話がありましたように、昨日あたりは五一・六%というので逆に上がってきているということ、このあたりも私は踏まえたいと思う。  ただ問題は、私自身はまさに社会党さんの支柱も得て首相になったということですが、結果として社会党が去らなければならなかったということは、これはもう私は、本当に残念というよりは、もう本当になぜという実は率直な思いがあるところです。しかし、いずれにしましても、この八カ月間社会党さんと一緒にやってきた中で政治の新しい道が出てきたということ、これは私はやはり評価するし、また誇りにしておるということであります。  ですから、これから私たちがしていかなければならぬことは、多少下がったり上がったりということがありますけれども、しかし少数与党の中で政治を進めておるということ、それから社会党さんと一緒に歩んできた道は決して間違っていなかったということを考えたときに、私どもとしては、やはり誠心誠意を尽くして一つずつの問題に対して対応していくということが重要であろう。  今御指摘のあったことをよく私も腹に据えながら政治運営に当たっていきたいということを申し上げたいと存じます。
  5. 伊東秀子

    伊東委員 ちなみにこれは、最後の読売新聞前回よりも下がっておりまして、新聞によってとり方が違うのでしょうけれども、電話調査では前回は五六%であった、それが今回五一・六になったというふうに書いております。  それから、単刀直入にお伺いしますが、内閣というのは国政運営の最高の指導機関である、内閣の外に別な権力の核をつくるということは非常に政治への信頼を損なわしめると思うわけでございますが、一般国民も今権力の中枢に小沢一郎議員がいるというふうに思う人が多い。その中で、なぜ小沢さんが入閣しなかったのか。外交防衛についても独自の理論を持ち、現実ロシアに行ったりアメリカに行ったり外交をやっているじゃないか、なぜ入閣させなかったのか。それを率直に羽田さんとしてはお答えいただきたいと思うのです。
  6. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 二重権力ということは、これはいろいろな立場の人で、やはりそれを言わなければいかぬという場合もあろうと思いますけれども、私に対して例えばこの政治をこうしなさいなんという指示を受けたことはないということ、これはもう明確に申し上げておきたいと思います。  ただし、議院内閣制であるということ、あるいは政党政治であるということ、そういう意味では、これは過去ずっと長い歴史をこうやって振り返っていただいても、やはり政党政党として活発に活動することが必要であるし、あるいは、政党一つの意見を述べていくということ、また、内閣はあるときにはそういったものを吸収していくということ、これが議院内閣制であり、また政党政治であろうというふうに私は確信をしております。  ただ、それが二重権力構造と見られるようなことは、なるべくこれはやはり避けていかなければならないことであろうということを私自身も自覚していきたいと思います。  しかし、いずれにしましても、まだこの内閣は発足しまして一カ月たったかたたないかというところでございまして、そういう中で、これからの政治行動というものをやはりよくごらんいただきたいと思うのです。  それから、アメリカには彼は行っておらない、ヨーロッパと、たしか帰りにロシアに寄ったということはあったと思いますけれども。しかし、ロシアに寄りましても、あるいはヨーロッパに行きましても、いろいろな政治的な勉強というのはするでしょうけれども、権力者に会ってどうのこうのということをやっているわけではない。  ですから、その意味では私は二重の外交になっているということは言えない。ただ報道なんかではおもしろおかしく書かれておりますけれども、そういうものではないということ、これを私はこういう機会に国民の皆さんにも知っていただきたいと思います。
  7. 伊東秀子

    伊東委員 今の答弁を伺っていますと、要するに、小沢一郎さんは党務に専念させるべきだというふうに判断して内閣に入閣させなかったということでしょうか。
  8. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 御指摘のとおり、やはり党には党として一つの指導的な立場の人が必要であるということでございまして、全部が閣僚に入るということではないということを御理解をいただきたいと思います。
  9. 伊東秀子

    伊東委員 たびたび前回政権の内部でも代表幹事として、一・一ラインとか俗に言うような言葉が使われるぐらい、社会党やあるいはさきがけの方々も含めていろいろな、何と言えばいいのですか、いざこざと言えばいいのですか、小沢さんは中心的になってこられた。  しかも、社会党に対する、かつ女性に対する侮べつ発言についても、当人閣僚でない、責任をとる立場にない、だから、きのう女性担当大臣を通じてしか、本人言葉が代読という形でしか出てこない。  しかも、小沢さんにはゼネコンに関する疑惑がありまして、前回、昨年の秋には、社会党では証人喚問しようかということまで検討された。しかし、閣僚にいないためになかなかこういう場でも質問もできないという状況、これは国民責任を負う内閣としては、私は大変無責任ではないかというふうに考えるわけでございます。その点はいかがでございますか。
  10. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 いや、そういうことを明らかにするために閣僚になっていただくということではない。また、個々の問題があるとすれば、これは国会の中でいろいろな議論をすることができることでございますから、そのために閣僚にというのはこれはお許しをいただきたいと思うのですけれどもね。  それと、侮べつ発言というのについても、きのう長官の方から秘書に聞き、そしてまた本人にも聞きということで報告があったところでございまして、本人の意思というものは正確に伝わっておらなかったということもあろうかというふうに思っております。  いずれにしましても、しかし、そうかといいましても、私はあのときにも申し上げたのですが、あのとおりの発言であるとすれば、社会党さんを傷つけるということもあろうし、また、これは世の中からいったら決して適切な発言じゃないということで、明確に申し上げておるところであります。  やはり私たち政治に携わる者が発する言葉がそのまま報道されてしまったりなんかする、あるいはそれが多少変わった形で報道されるということもあり得るのだということ、それを考えたときに、疑念を呼ぶ発言というのはできるだけ注意していかなければいけないということを、みずからのこととして戒めておるところであります。
  11. 伊東秀子

    伊東委員 今小沢さんの女性べっ視発言のことが問題になりましたが、私は実はきのうの官房長官答弁を聞いて大変心外に思っております。  と申しますのは、その発言が二十五日の夜十時過ぎに行われた。そのときは社会党としては閣外離脱を含めた重要な三役会議を行っていたときで、院内で行われたということで、私は、これは重大な問題だ、女性だけの問題じゃないと思ったために、翌日すぐに小沢さん本人会見を申し入れたわけでございます。  つまり、もし間違っていたなら新聞報道をうのみにしてはならない、本当に真実かどうかを知りたいということで会見を申し入れました。ところが、ずっと会えない、お忙しくて会えないということで、私は、先輩議員でもございますし、弁護士の大脇雅子参議院議員とともに新生党小沢事務所に伺いました。そして、個人の秘書に真偽のほどを確認したのでございます。そのときには、事実を否定なさらずに、一部が大げさに報道された、全体の文脈が伝わっていない、こういう返答でございました。  それで、私は、お忙しいでしょうからファクスで結構でございます、二十六日、全体のどういう文脈の中でどのような御発言をなさったのか私の事務所にお教えくださいというふうに、溝口さんという方でしょうか、秘書の方にお願いいたしまして帰ってまいりました。  二十六日、社会党の方では抗議記者会見をするという状況もありましたし、女性議員として抗議をするという状況も起きておりましたが、小沢事務所からの返答を待っていたわけでございます。ところが、ファクス電話も催促したにもかかわらず来ない。そして、記者会見をする五時半直前になりまして、マスコミ担当秘書官という方が私の事務所にお見えになりました。  そして、そこでおっしゃったことは、当人記憶にないと言っている、言っていないだろうとも言っているというようなあいまいなことをおっしゃったわけでございます。わずか一日半ぐらい前のことを記憶にないということはどういうことか、しかも、言っていないということと記憶にないということは相反するではないか、どちらが正しいのだと詰め寄りましたところ、記憶にないということでその場は終わりまして、じゃ何かコメントをとお願いしましたら、正式な記者会見ではないのでコメントできないということでしたということだったわけです。  そのときに、事実の歪曲であるとかということは一切おっしゃらないし、こちらは、歪曲かもしれないから真実言葉を教えてくれと言ったにもかかわらず返答がない。きのう官房長官がおっしゃったような、どういう女性と結婚しようとデートしようとその人の自由ではないかなんていう言葉はそのとき一切出てこなかったわけでございます。それで、一カ月後にこういうふうな形で出てきた。  私は、小沢さんは、もう少しこういったことに関してもきちっと同僚議員に対して対処すべきであるし、もし記憶になくて、言ったかもしれないと思うのなら、潔く全女性に対して申しわけないというような率直な態度を示すべきではなかろうか、そういうふうに思うわけでございます。  しかも、私は、現実にそれを聞いたという記者の方が私のところに取材に参りましたので、その方にも事実を伺いました。さらに、四月二十六日の産経新聞の夕刊にもこのように書いてございます。この産経新聞記者もいたと小沢さんはおっしゃっているわけですが、「連立与党内の統一会派「改新」を推進したとみられる新生党小沢一郎代表幹事は、社会党政権離脱の決断に対し、「どの女と寝ようといいじゃないか」「理由なき反抗だ」と批判した。」というふうに書いてございます。  ですから、このように、事実の歪曲だと言って別の言葉を今さらおっしゃる小沢さんの態度はまさしく問題ではなかろうかと思うわけでございますが、官房長官女性担当大臣としていかがお考えですか。
  12. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 私は、昨日の報告はそのまま、小沢議員から伺ったそのままを御報告したわけでございまして、この事実関係その他につきましては承知をいたしておりません。  ただ、いずれにいたしましても、総理お話をされましたように、やはりお互いに疑念を招くような不注意な発言は私自身の問題として慎んでいかなければならないという総理お話は、まことに我々自戒しなければならないお言葉だと思っております。
  13. 伊東秀子

    伊東委員 それから、最近こういった問題に関して、マスコミ政治の問題というのはきちっと国会でも論議されなければならないというふうに私は考えているわけでございますが、また小沢さんを例にとることになるのですけれども、この発言をめぐりまして、小沢一郎さんが朝日新聞をアカ新聞というふうに批判したというふうな報道に接したわけです。  私は、アカ新聞というのは何の意味かちょっとわかりませんでしたものですから、ブラックジャーナリズムというのは何となくわかったのですけれども、それを三省堂の広辞林で引いてみました。それによりますと、アカ新聞とは「社会の裏面や人の秘密をすっぱぬいた記事を主とする低級な新聞。」というふうに書いてございました。  私はこれを読みまして、マスコミ批判、確かに政治家もマスコミに対して批判する自由はある。マスコミもいろいろな先走った報道をしたりする場合もあり、私も批判的な意見も持っている。だから、批判をすることは許されるにしても、このようなことは批判を超えた一つの名誉棄損的な行為にも当たるのじゃないか。現実の裁判で、ブラックジャーナリズムと使ったことで訴訟が起きているという実態もございます。  こういう状況の中で、小沢一郎さんは、かつて日経新聞産経新聞に自分に関する報道歪曲されていたから記者会見をシャットアウトするとか、今回の朝日新聞記者懇からシャットアウトしたいと言っているようなことを風間で伺っております。  それで、私はこれは国民の知る権利という憲法上の問題からいって大変問題があるのじゃないかと思っているわけでございます。というのは、政治というのは国民の信託を受けて行われている。ガバメント、つまり政府というのは大変重大なニュースソース、国民にとって知らなければいけない情報源である。  小沢一郎さんは与党の代表幹事のお一人である。家族との、全く私生活等は別にいたしまして、彼の政治に関する言動というものは国民は知らなければいけないし、知る権利がある。それを、一部の報道機関を自分にとって都合が悪い場合にシャットアウトするということは、この国民の知る権利に対する挑戦になる。これはやはり非常に政治家としての見識を欠くのではなかろうか。  彼が政治家でなければそういうことは言えるかもしれないけれども、ガバメントの中枢にいる方のこういう態度は、私は、憲法二十一条、国民の側の、主権者の知る権利からいって問題であるというふうに考えるわけでございますが、羽田総理、いかがお考えでいらっしゃいますでしょうか。
  14. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 言論というものは、これは報道の自由あるいはそれぞれの個人の発言というものも自由であるということもあろうと思っております。  ただ問題は、今お話がありましたように、権力によって抑えていくということではない、また、それをやったとき、例えばシャットアウトなんかしたときに、今度は逆にリアクションというのが起こってくるということもあろうというふうに思います。  そして、憲法二十一条違反かどうかということになりますと、これは非常に難しいあれでございまして、ただ、小沢さんの場合に、いつも私も彼にもよく言うのですけれども、おまえさんは説明が不足して誤解されることが多いぞということは言っておるわけでありまして、それはやはり政治家として注意していかなければならぬ問題だろうというふうに思っております。  ただ、憲法二十一条違反というものについて、私が今どうこうと言う立場にないということ、これはひとつお許しをいただきたいと思います。
  15. 伊東秀子

    伊東委員 私は、憲法二十一条に反しているということではなくて、国民主権主義、それから報道の自由が憲法上の保障があるというこの建前に立ったときに、やはり問題ではないかということで総理の御意見を伺ったわけでございます。
  16. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 どうも失礼しました。やはり政治というのは、国民との対話を私は大事にしたいなんということも言っているぐらいでございますから、できるだけオープンにしながら自分の意見というものを言う、そしてまたそれに対する批判がある、またそれに対して答えていく、そういうことは大事なことであろうというふうに私は考えております。
  17. 伊東秀子

    伊東委員 今の説明ではちょっと私の質問に的確にお答えしていただいていないのじゃないか。つまり、政治家としては国民政治に関する情報を恣意的にここの社を通しては流さないというようなことをなるべくするべきではないとお考えなのか、してもよいとお考えなのか、その辺をお伺いしたいのです。
  18. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 確かに、政治家といえども、個人として自分の話したことがそのまま伝わらないということでは困るよということで、対抗措置なんということをとる、今までもよくありましたけれども。あるときにはつらいかもしれないし、あるときには、何だおれのしゃべったことと違うことを書いたじゃないかということで怒ることがあっても、できるだけそういった人たちにもオープンにしておくという姿勢というものは、私は今御指摘があったことを大事にしていきたいというふうに思います。
  19. 伊東秀子

    伊東委員 わかりました。  次に、ゼネコン疑惑に関してなんですけれども、先ほどの投書にもございましたように、いろいろ「過去に数々の疑惑を持たれた閣僚を抱え込んだ現内閣」という言葉が出てまいりましたが、今回のゼネコン疑惑につきましても、四人の自治体の首長さんの汚職が発覚して、かつ、元建設大臣の中村喜四郎さんが斡旋収賄罪で現在も起訴されているという状況でございます。  そもそもこういった政治改革というのは、本来、金丸さんがあれだけ巨額のやみ献金を受けていた、それでいながら政治資金規正法違反で二十万円の罰金あるいは所得税法違反でしか問われない。これがどう見ても政治に対する信頼を国民から失わさせている。そもそもはこういった政治家と金の関係をいかに断っていくかということが出発点だったはずでございます。  ところが、今回の政治改革羽田総理も大変熱心にお進めになっていらっしゃるわけですが、徹底的にこういった政治家と金の関係にメスを入れるということに関してはどうも熱心でないような気がいたしているわけでございます。  それで伺いますが、国会議員がこうした、例えばゼネコンの問題に例をとりますと、公共工事の指名や落札に関してあっせん行為をなし、報酬やわいろを受けた場合にはその行為そのものが処罰される、そういった新しい特別立法をつくるべきだ、こういった声が法律家やあるいはそれ以外の一般国民からも出てきております。  私も、超党派の若手の議員で、腐敗防止法、地位利用利得罪というものを創設すべきだということで、今そういう活動に取り組んでいるわけでございますが、羽田総理、こういった新しい地位利用利得罪の創設についての御意見はいかがでございますでしょうか。
  20. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 この問題につきましては、たしか昭和十六年なんかにも何かこういう問題が提起されて、これは否決されたようですね。それから、昭和二十九年あるいは三十三年というものもあったようでありますけれども、いわゆる政治家の活動というものをどんなふうにあれするかということなんかが議論になって、これは一応だめになってしまったということのようであります。  しかし、今度の政治改革関連法案というものは、今の地位利用利得罪という名前ではありませんけれども、例えば連座制の強化ですとか、あるいは何年間立候補できませんよというようなこと、非常に厳しい腐敗防止的なものも各党の話の合意の中で実はつくられておるということでありますから、まず私はそれをスタートさせることが何といっても現実的に大事な一つの効果を上げる道であろうというふうに考えておりまして、そういう中でさらに必要であるということであれば、私はこれはまた議論していく問題であろうというふうに考えております。
  21. 伊東秀子

    伊東委員 確かに連座制の強化とか、そういった意味では腐敗に一歩前進はある。しかし、こうした国会議員が職務権限、大臣とか政務次官という、そういう残務権限がない場合に、不当なお金をもらってもその行為そのものは処罰されない、別な法律でもって、つまり政治資金規正法で罰則が及ぶ。行為そのものは許されているということ自体やはりおかしいと私は考えるわけで、その行為そのものが悪なんだという意味国民に対するきちんとした政治家としての立場を明確にする意味でも、今回こういう法律をつくるべきであると考えるわけでございますが、いかがでしょうか。
  22. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 ただいまも申し上げましたように、御指摘のあったこと、そしてそういった問題についてももっと踏み込んだらどうだというお話もあろうかと思うのです。それが多分、この政治改革、私は自民党にいたときにやっておったわけですけれども、その後、今度は各党間の中でずっと話し合いをされてこの法律というのが今出されておるわけですね。  その中にもそういう問題が含まれている、要するに腐敗防止的なことが含まれておるということですから、まずここで前進をさせるということで、そしてさらにそういったものは御議論いただきながら検討していくということは、私はこれは否定するものではないということであります。  ですから、まずこれを通して実際に動かしてみるということが、今私たちが直ちに行動すべきことなんじゃないのかなという思いを率直に申し上げます。
  23. 伊東秀子

    伊東委員 それから、政治家の証人喚問なんですが、これも民間人については、ジャーナリストであり、報道の自由ともいろいろ問題のある、憲法上の抵触すら考えられる椿さんについてはあっという間に証人喚問を実施しながら、政治家の証人喚問はなかなか行われないということで大変国民の指弾を浴びている。こういう状況の中で、政治倫理綱領からいっても、疑惑を持たれた政治家はみずから解明しなければならないという規定もある。  その中で政倫審も一度も開かれたことがない、こういうおかしな状況が続いているわけでございますが、こういった状況をこのまま続けていくならば、ますます政治不信は広がっていく。だから私は、この政治倫理審査会、これを常任委員会として、衆議院、参議院のある一定の議員の要求があれば開いていけるような、そういうような形に変えていかなければいけないというふうに考え、これも超党派の議員でこういう法案を用意しているわけでございますが、これに対する御意見はいかがでしょうか。
  24. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 この問題につきましては、これは実は行政府がどうということを申し上げるということは、これこそはばからなきゃならないことだろうと思います。  ただ問題は、ロッキード問題が起こったときにこれが大変議論されましてこの委員会というものが設置されたわけですね。ですから、そういった中で例えば国会議員の資産公開法なんというものが制定されていくとか、それぞれの改革というものは進められておるというふうに思っておりますけれども、これをさらにどう活用していくかということにつきましては、私はまさに国会の中で御議論をいただき、そしてより効果のあるものといいますか、本当にそういったところで国民政治に対する理解というものが深まるものにしていくということが大事なんじゃないのかなというふうに思います。
  25. 伊東秀子

    伊東委員 新生党の党首という立場ではいかがお考えでしょうか。
  26. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 私はまさに連立与党の中に立っておる人間でありまして、まあ大体、総理大臣というのは昔も派閥離脱なんということを言っておりましたから、余り党には関係しませんけれども、しかし、新生党の党首であろうと、やはり議会の問題を内閣総理大臣という今の立場で、ただ党首という形で申し上げるということはできないことはぜひ御理解いただきたいと思います。
  27. 伊東秀子

    伊東委員 次に、税金の、税制改革の問題に移りたいと思いますので、事前に了承を得ております資料をお配りいただけますでしょうか。
  28. 山口鶴男

    山口委員長 配ってください。
  29. 伊東秀子

    伊東委員 先日来から、総理及び大蔵大臣の今回の税制改革の必要性、その理念についての説明がございました。  それによりますと、おおむね日本の所得税率は高い、中堅所得者層の負担が重い。一昨日でしたか、志位議員の質問においては、度を超しているともいうような答弁もしておられましたし、二つ目には、高齢化社会のコスト増に対処するためには、生涯を通じて働き盛り、つまり現在の壮年世代の負担を軽くするということ、そして勤労意欲を喚起することが必要であるし、さらには将来の現役世代、今の若い人たちですけれども、この負担も軽くする必要がある。  こういった世代間の公平を図る見地からも、広く、薄く取れる消費税の税率アップ、そういった消費税シフトを強める必要があると考えるというような、おおむねそういうような御趣旨の御発言があったかというふうに了解してよろしゅうございますね。簡潔にお願いいたします。
  30. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 正確に私の気持ちを言っていただいたと思います。
  31. 伊東秀子

    伊東委員 それで、きのう柳沢委員質問にもございましたが、本当に日本の所得税率が高いかどうかということに関してでございます。  きょうお配りいたしました資料をちょっとごらんいただきたいのです。これの三枚目の図1というのがございます。「主なOECD加盟先進国における個人所得税収の対GDP比」、つまり個人の平均所得税率の国際比較を行った図でございますが、日本の個人の所得税率は約八・三%、きのう主税局長もお答えだったと思うのですけれども、フランスに次いで二番目に低い平均所得税率である。  それで、「実効税率の国際比較」というのがその図の2でございます。これを見ましても、実線が日本でございますけれども、日本は所得の約七百万ぐらいまでは世界で実効税率も最低である。世界で最低というか、この五カ国の先進国を比べても最低である。上がってくるのは、二千五百万以上を超えて大変この実効税率が高くなるというような結果が出ております。これは、図1の出所はOECDであり、図2は大蔵省でございます。  さらに、実際にどれだけの所得税や住民税を支払っているかというのの国際比較が表の一、一番目でございまして、これも大蔵省から出ている資料でございます。  日本の勤労所得者は、大体八割が七百万以下と言われている状況にございますけれども、この七百万の世帯、夫婦子二人の給与所得者、これを見ますと、現行では日本は税額が七・六%である。アメリカは一八・九%。しかも、間接税の国と言われるイギリス、ドイツ、フランスと比較いたしましても、イギリスが二六・九%、ドイツが一八・〇%、フランスが八・六%という状況になっておりまして、このように、税額においても七百万までは最低である。  二千万、高額所得者であると言われる二千万を例にとりますと、日本が三一・三%、アメリカが三一・五%、イギリス三五・四%、ドイツ三五・六%、フランス二六・九%。二千万でもこのように、フランスに次いで日本は低いという税額の状況が出ているわけでございます。  今まで、所得税率が高い、だから直間比率を見直さなきゃいけないんだと、こればかりを言ってきたわけでございますが、この論拠というのは、きのうの柳沢委員質問にもございましたように、全く根拠がない。むしろ日本の税率は、所得税率も間接税率も、OECD加盟先進国を見ても低い方にあるという状況にあるわけで、この辺の、大蔵省あるいは大臣のこれまでおっしゃったところが破綻しているのではないか。  むしろ、こういった日本の所得税率は低いし、かつ日本は所得税中心主義、これをシャウプ勧告以来とってきたわけでございますけれども、この税制によって日本の所得格差が、アメリカでは約十一・二倍と言われているにもかかわらず、四・七倍程度におさまっている。むしろ、この所得税の累進機能を重視することこそ大事ではないかというふうに考えて、今回の税制改革の理念の一番に挙げていること自体が破綻しているというふうに考えるわけでございます。  だから、そういう意味では、所得税率が高い、特に中堅所得者層の負担が重いから下げなきゃいけないということではなしに、こういった所得税制度の中にある不公平なもの、いろいろな不公平税制がございますが、それによって課税ベースが縮小している。そこにむしろ問題があるというふうに考えるわけでございますが、大蔵大臣、いかがでございますか。
  32. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 きのうもお答えしましたように、数字及びその所得税の現状というのは、伊東委員おっしゃるとおりです。きのうも柳沢さんにはお答えしたように、日本は個人所得に対する所得税の比率は低うございます。  しかしながら、それは何から来ているかと言えば、課税最低限が非常に高いこと、それに伴う税率構成から来ていることは事実であり、そのことは非常にいいことだ、これは、日本の高度成長の成果をそういう形で還元した非常にいい税制であるということをまず申し上げたいと思います。  しかしながら同時に、今見ていただいたようなグラフの中で、角度がやはり急勾配になってきているということはひとつ御理解をいただきたいことが一つです。またもう一つ、これも柳沢さんにはお答えいたしましたが、戦後の所得再配分効果の一つの大きな部門として役割を果たしているということは所得税の大きな役割である、このこともそのとおりだと考えております。  しかしながら、今申し上げたように、七百万、八百万あたりお話もございましたが、そこいらから急角度に、課税最低限が高くて、そして最高税率が高いということから当然出てくる勾配の問題ということについては御理解をいただけるのではないかと思います。そういう観点からの税制改正であるということも御理解をいただきたいと思います。
  33. 伊東秀子

    伊東委員 今勾配の問題をおっしゃいました。勾配の問題に関しましては、消費税導入のときにはもっともっと最高税率は高くて、勾配は急勾配であったはずでございます。それを五段階にフラット化した。十三段階ですかあったものをフラット化したわけで、急に最近になってそういった勾配が高いということを問題にするのはいかがなものか。  しかも今、大蔵大臣は、課税最低限が高い、これはいいことだというふうにおっしゃいましたが、私もこれを調べてみました。表4というところをごらんになっていただきたいのですが、国際比較をいたしましても、日本の課税最低限三百二十七・七万円、大変高い水準にございます。むしろ問題は、私は、国際的に見てこの課税最低限が高過ぎるのではないか。これをもう少し考えることの方がいいという考えも成り立つではないか。それをなぜ大蔵大臣は、課税最低限が高いことはいいというふうにお考えなのか、その辺のちょっと論拠を言っていただきたいのですが。
  34. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 今、後ろから拍手も出ていたように、私は非常に貴重な御意見だと思います。しかし、ここまで上がったものを下げるということは、それは実際であり得ない話ですし、もう一つ私はあえて申し上げますが、高ければ高いほどいいとは決して思いません。ただ、余り低いということは執行上の問題もあるということが一つあります。  それから、やはり所得再分配機能ということから見て、余り低い方からいただくということは適切でない、こういうことを申し上げたいと思います。
  35. 伊東秀子

    伊東委員 私がこの課税最低限を下げるということも検討の一つでないかと申し上げたのは、今回消費税率を上げると、消費税率を上げた場合に、この所得層にとってはどちらが優しいか。つまり、消費税率を七ないし一〇に上げるというようなことを言われておりますけれども、そのことよりも、むしろこの課税最低限の国際的な高さというものをもう一度検討する方が、彼らにとっては優しい結果になるということを申し上げているわけでございまして、それは検討なしに、いきなり消費税率を上げるために課税最低限が高いのはいいことだというような、大蔵大臣は本音ではそうは思っていないにもかかわらず、消費税率値上げに持っていくためにこのようなことを言っているのではないかというふうに考えているわけでございますが、いかがですか。
  36. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 再度同じお答えになりますが、大変フリーな御議論として今承っておりました。ただ、現実の問題としてそういうことは実行できるものでもございません。また、政治としていい姿とは、選択としていい選択ではないと思っております。  もう一つ、ぜひ御理解をいただきたいことは、私も今から三十何年ほど前に税務署の第一線にいたのでございますが、余り低い階層の方から所得税をいただくということの執行上の問題についても御理解をいただきたいと思います。
  37. 伊東秀子

    伊東委員 執行上の問題というのは非常に重要なことでございまして、執行上の問題だから取りやすく消費税に行くというようなことが今回安易に行われているということは、私はやはり問題だと思うのですよ。  後でもう一回それは問題にいたしますけれども、国税庁の職員の実態を調べましても、大変厳しい労働状況の中にある。それで、そういう状況に対しては、まあどうするつもりかわかりませんけれども、とにかく取りやすい、税額が確保できるところ、財源が確保できるやり方は何かということから今回の消費税率の値上げ、アップというところに来ている。もう少しこういった根本的な問題の再検討、これをすべきじゃないかということを言っているわけでございます。        それで私は、今回所得税率は高くない。そういう意味でいうと、所得税中心主義、これは日本の所得格差をここまで拡大させないできた非常に重要な役割を果たしてきた。むしろ、直すべきは所得税の中にあるさまざまな不公平な部分であるというふうに申し上げました。  その第一番目が、余りに日本の所得税が勤労性所得に偏り過ぎて、資産性所得への課税、資産課税が非常に軽課となっている。むしろ、今国民の資産格差が開いている。しかも、高齢者にいくほど資産格差が開いている。それも図の5というところに出しておりますが、「年齢者別の金融資産保有格差」、これを見ましても、高齢世代ほど資産の格差が開いているという状況にある。  とすれば、若年世代の大変過重なものによって高齢世代の今後の社会保障費を負担するのが大変だという大蔵省の理論であれば、むしろ資産性所得への課税の強化、具体的には預貯金の利子、それから株の配当とか、あるいは株の譲渡益、土地は今大して上がっていないのですが、土地の譲渡益ですね。こういったキャピタルゲインヘの課税、これは今分離課税になっているわけですけれども、これを総合課税という形へ持っていくべきではなかろうか。なぜ先にこの総合課税制度導入を図らないのかということでございます。
  38. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 今御指摘の、税制における不公平ということは大変大事な観点だと私どもも思っております。  そこで、具体的に何が不公平かということについていろいろと御意見があって、若干の違いがあることは事実であると思います。政策減税というものがイコール不公平とは思っておりません。例えて言えば、住宅取得のような減税は、これは非常に多くの方に支持されていると思います。しかし、これが政策減税であることは間違いないと思います。  しかし、今伊東委員が端的にこれとこれとおっしゃっていただいたもので逆にお答えしやすいのでございます。利子についてのお話がございました。利子課税というのは、シャウプの初め三年間は総合課税をやったわけでございますね。しかし、現実には機能していなかったわけでございます。昭和二十五年から二十八年の執行の状況をお調べいただければそれはよくわかると思います。つまり、執行の体制、執行のシステムというものがはっきりしていない限り、この利子の総合課税というものは絵にかいたもちになるし、逆に別の不公平をつくり上げます。私はそのことの方が悪い不公平だと思っております。  したがいまして、現在の利子課税については、理想というか、所得税のあり方としては私は総合であると思っております。同時に、その執行の裏づけの勉強をしなければならないし、現にずっとやってきておるわけでありまして、それが世に言う番号制度だと私は思っております。番号制度についても今検討していただいておりますが、そのコストの問題、また国民の皆様の理解の問題、こういうことについて見きわめながら、今のお話は検討に値する課題だと思っております。  譲渡所得につきましては、ここでいろいろ議論がありましたように、今でも高過ぎるといういろいろな御議論がある中で、私どもは土地基本法の精神に基づいて、譲渡所得、分離ではありますが、三九%というのを守っておるということもあわせて御理解をいただきたいと思います。
  39. 伊東秀子

    伊東委員 今総合課税のためには執行面の問題、つまり納税者番号制度の導入が必要であるというような、そのためには国民の理解が必要であるという御答弁でございましたが、この消費税率のアップ、これこそまさに、このように資産格差が開いた中で、これからも開いていく中で、資産への課税にならない消費課税というものの問題点を考えれば、消費税率のアップこそもっともっと時間をかけて国民の理解を得なければいけない。六月中に成案を得るとか、ことしじゅうに法律をつくるとか、そんなに絶対に急いではならない。  税金というのは国民の納得にも納得の上で行うことが必要であり、まず消費税率を上げる前に、国民の理解が必要とおっしゃっているその総合課税と納税者番号制度、これの導入を図るのが先決ではないか。そして捕捉率も高めていく、クロヨンの解消もしていく、これがまず税率アップの前にしなければいけないことである、私はそう思います。社会党としてもそのような方針でございます。それについてはいかがか。なぜそれを先にしないのか、それを伺いたい。
  40. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 今の御指摘も大変大事なことだと思います。あらゆる税制については、国民の皆様の理解というものが当然なければできないと思っております。  この税制の議論というのはそういう意味で非常に難しい面がございますが、私は、消費税の問題というのは、ここで二、三回お話ししましたように、昭和四十三年、つまりECができてから、当時からヨーロッパに勉強に行き、いろいろな積み上げを経てきていることも事実でありますし、また平成元年に三%の消費税を導入するときにもいろいろな御議論をいただいたように承知をいたしております。  そういう中で、消費税というものの意味等については御理解は相当進んでいるのではないかというふうに考えておりますが、さらに国民の皆様の合意を得ること、そして、その代表である国会の各派の御意向をよく承るということは極めて大事だということは御指摘のとおりと考えております。
  41. 伊東秀子

    伊東委員 消費税の意味が理解になった、だから税率を上げていいということには結びつかない。非常に今こういう不況の中で、しかも個人消費が伸びない。そもそもこの税制改革は、景気対策としての減税論議から始まり、いつの間にかそれが所得税減税というふうに限定され、それが社会保障費の負担のコスト増、そしてネット増税という形に変わってきた。  しかも、今の税調の案では、年収八百万以上にとっては確かに所得税減税の恩恵を受ける。しかし、今回のように所得税減税と消費税率アップとをセットで行えば、八百万以下の人にはネット増税になるというような状況になっているのは御存じのとおりと思います。  それをちょっと私のきょう用意した表でごらんいただきたいのですけれども、表2、「収入階級別の所得税の納税者数」というのをごらんください。  これを見ますと、給与収入階級八百万以下という人は何と八八・三%。つまり今回の税制改革、本来は景気対策として何としてでも内需を拡大したい、個人消費を伸ばしたい、GNPの五六%、約六割を占めるような個人消費を伸ばすことが景気回復の一番重要な対策だということで出てきた。それがいつの間にか八百万以下、国民の八八%にとっては増税になる、わずか一二%の人にとって恩恵が行くというような消費税税率アップの税制改革にすりかわった。これでは何ら個人消費を伸ばすことにならないではないか。  時間差が三年ありますと言うかもしれませんけれども、三年後に増税になるということがわかった庶民にとって、私も主婦でございますけれども、余分なものは買わないというふうに心理的に思う。こういった心理的なマインドの問題というのは、物を買うときには非常に主婦にとっては大きな動機づけでございます。そういうことも考えないで、いきなり消費税率アップに行った。これで景気対策としての効果があると大蔵大臣はお考えでございましょうか。
  42. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 伊東委員は、ずっと私が申し上げたこの場でお聞きいただいていたと思いますので、十分御理解をいただいていると思いますが、初めに所得税減税ありきでは国会の昨年八月以来の議論は行っておりません。将来の福祉社会、長寿社会のあり方としてこういう税制が必要だという中で、現在の景気情勢ということからこれを先取りして所得税減税を先行しよう、こういう経緯をたどっていることは御承知のとおりであります。  したがいまして、今回の減税というものは、いろいろな御意見がありますけれども、それなりの消費拡大効果、景気回復効果というものを持っている、そのことはいろいろな面にあらわれてきていると思っております。  しかし、もともとをたどってみますと、これからの長寿社会の中の税制のあり方から始まっているという点も、ひとつ御理解をいただきたいということに尽きていると思います。
  43. 伊東秀子

    伊東委員 としますと、こういう不況の中で、不況対策としての減税ではなくなってきて、中長期的な課題である問題を六月中に成案を得る、これは幾ら何でもむちゃくちゃではないか。当面の景気対策として何としてでもことし中とか六月中というのはわかる。  しかし、中長期的な問題について六月中に成案を得る、しかも、先ほどの投書にもありましたように、重要な課題はやってもらいたくない、少数与党政権安定感がない、そう言われている政権でこういう問題をやって、消費税率を上げるということ、こんなことは私はとても国民の本意に反する、やってもらいたくないことであると国民は考えていると思うのです。  何でそんなやってもらいたくないことを、中長期的な課題を今やらなければいけないのか。これについて羽田総理大臣、お答えください。
  44. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 これは今藤井大蔵大臣からもお答えいたしましたけれども、いわゆる長寿社会における日本の税制のあり方というもの、これが基本であって、ただ何%ありき、あるいは税率を上げるということがありきということではないというお話がありました。  ただしかし、ことしの場合には、所得減税というものが一年ということで特別な措置がなされたわけですね。そのときにも実は国会の中で御議論いただきまして、これこそ超党派で抜本的な税制の改革をしなければならないということも、実はその中でわざわざ修正をしていただいておるということであります。それは、今申し上げたようなことがあるということであろうと思います。  ただしかし、これは直ちに、今この不況の中でありますから、直ちにやろうということじゃなくて、やはり時間差を設けてやりましようということも実は議論がされておるということをぜひお考えいただきたいことと、それともう一方では、やはり所得減税をやりなさいということでやった。  それともう一方では、やはり高齢化社会がやってくる、その間に、その前に、あるいは新しい時代のニーズに基づきながら公共投資というものも、今四百三十兆というのをやっておりますけれども、これにさらに加えなさいという議論も、実はこれは与党の中からもあるいは野党の中からもたくさん出てきておる。また、そういう社会に向けて今準備しておかなければならない課題の一つであろうと私は思う。  そういったときに、我々としては何らかの方法である程度の、財政というものをきちんと健全なものを保つために、こういった税制についても議論をし、そして一つの方向性を出しておかないと、本当に、何というのですか、赤字国債等を乱発するようなことに、増発するようなことになって、これが累積していったときには完全に財政が硬直してしまうということを考えたときに、つらいし苦しいけれども、私たちは議論しなければいかぬ。  そして少数政権が、一つ投書の中にありますけれども、また別の投書の中には、まさに少数政権であるからこそいろいろなところに配慮しながらできるんだから、そういった問題について取り組むようにというような御議論もあることをぜひともひとつ。  ですから、私たちはいろいろなところに配慮しながら誠意を尽くしていくということでございますので、そういう中で物事を進めていくということだけはひとつぜひ理解していただきたいと思います。     〔委員長退席、中西(績)委員長代理着席〕
  45. 伊東秀子

    伊東委員 その問題、本当に高齢化社会のコスト増、世代間の負担の公平のために消費税シフトが最もいいんだということ自体のおかしさということはまた後で取り上げますけれども、そうしますと、今までの大蔵大臣あるいは羽田総理の御答弁を伺っていますと、所得税減税が当面緊急に必要な景気対策として、一年間ということでできたわけですけれども、三年後に増税が待っているわけですから、これについてはさしたる景気対策にはならないということはお認めになるということでしょうか。  私は羽田さんと、いっかテレビにお出になったとき、去年の秋ぐらいのときだったでしょうか、所得税減税の論議があるときに、減税をしてもそれが本当に消費に回るかどうか大変問題だというような御発言をなさっておられました。しかも、その前の林蔵相も同じような意見であった。それが今は所得税減税が景気対策として有効なんだというふうにお変わりになったのかどうか。その辺はいかがでしょうか。
  46. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 この問題につきましては、所得税というものの減税というもの、あるいは公共事業の投資というもの、さあどちらが効果があるかというと、むしろ私は公共事業の方があるんじゃないのかというふうに考えておりました。  しかしこれは、与野党の皆さん方の議論の中で、これをやはりやることが大事なんだということで、これはまさに多数の皆さんによって決めていかれたということであります。だとするならば、今度はそういったものに対する穴埋めという言い方、簡単な言い方ですけれども、そういったものもきちんと考えておかないと、結局はこの国というのは、よその国の例を見るまでもなく、財政が非常に硬直したものになって、いろいろなものに対して対応できなくなってしまうということを考えなければならない。やはり現実的な対応ということであろうというふうに思っております。
  47. 伊東秀子

    伊東委員 そうしますと、個人的には減税の景気対策効果はないけれども与野党の合意だからいたし方がない、そういうようなことで減税に一年限り踏み切ったということかと思いますが、アメリカで日米蔵相会議が四月の二十四日ですか、藤井大蔵大臣もいらっしゃいまして、なされましたね。そのときに、何か所得税減税について一年限りではないというようなことを約束されたのかどうか、それが第一点。  それからもう一つ、その次の日の四月の二十五日かの日経新聞に、アメリカの財務省の高官が日本の税制改革は差し引き減税になるようでなければ内需拡大にはならないというような記者発表をしております。つまり、だれが考えても、内需拡大のための減税であれば、ネットで増税になるのが内需拡大策になるはずがないわけで、とすれば、増税になることを来年度からも続けてやりますということをもし約束されたとしたら大変な問題である。むしろ、本当に内需を拡大したいのであれば、一年とか二年とか限って消費税の執行停止の方がどんなにか庶民にとっては物を買いたいと思うマインドになるのに、何ゆえにこういうような所得税減税と限定してお約束されたのか。この二点についてお伺いします。
  48. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 四月のお話でございましたが、去年の九月、ことしの二月、ことしの四月と、三回G7には出席させていただきました。そのたびごとに今のようなニュアンスの報道がなされておりますが、改めてここで申し上げますが、国内政策を外国に約束するということはあり得ないことでございますから、ひとつ御理解をいただきたいと思います。  ただ、私は、この三回を通じて常に申したことは、G7とはまさに政策協調の場でございますから、我が国の経済政策はこのようにやっていくつもりであるということを申し上げていることは事実であります。それが今のような形で一部報道されていることは、正確ではないということを申し上げます。  また、もう一つ、米国高官の話がございました。私どもは相手がどう言ったということは言わないことになっておりますが、念のために申し上げますが、G7の場においてそのような具体的な話があったことはありません。
  49. 伊東秀子

    伊東委員 としますと、一部報道されているように、来年度以降も所得税減税をするというのはアメリカに対する国際公約だというようなことはないというふうに受けとめてよろしいんでしょうか。
  50. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 約束ということを外国にするということは性質上あり得ないということを今申し上げました。ただし、私どもが国内の経済対策として、所得税をまず本年六兆円、中の五兆五千億をいたしました、同時に、現在国会の全会一致の合意のもとに修正が行われ、その所得税、平成七年度以降の所得税減税を含む基本的税制改正を行うという修正が行われております、こういうことを申しました。
  51. 伊東秀子

    伊東委員 としますと、あくまでも先回法律が通りましたように、所得税減税に関しては、まあ一年限りということで、殊さらに今後については公約はしていないというふうに受けとめさせていただきます。
  52. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 大変恐縮でございますが、重要なことでございますので。  国際的な約束はあり得ないということが一つと、平成七年度以降の減税については、国会の全会一致の修正により、基本的税制改正の中で考えるという修正があるという事実を申し上げたということでございます。
  53. 伊東秀子

    伊東委員 事実を申し上げたということは、何ら約束とは関係ないということじゃないと思います。  次に、中長期的、中長期的というか、そういうようなもとに消費税率アップ、取りやすいところから取るということで今回こういうふうに浮上しているわけですが、この消費税の中にさまざまな不公平な部分が含まれている。いわゆる益税の解消という問題でございますが、一つ一つ伺います。インボイス方式をとるべきだとお考えか否か、いかがでしょうか。
  54. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 ECの付加価値税がそのような仕組みをとっているのはもう御承知のとおりであります。日本は帳簿式を、とりあえずの、まず導入の段階で入れたことも事実であります。しかし、帳簿方式といえども企業間においては請求書等々があるのは当然のことであって、そういうふうに既に運用はされていると思います。  今おっしゃったインボイスという意味は、それが控除するための法的な条件かどうかということだと思いますが、現在、既に事実上は相当行われているということが一つあると思います。  さらに、税制調査会においても、日本的インボイスという概念がいいのかもしれませんが、実情に合った、しかも、今申し上げたような実際上は行われていることを法的に何かできないかというような検討が行われているように承知をいたしております。
  55. 伊東秀子

    伊東委員 今の御答弁では、じゃ、今の帳簿方式は何らかの形で改めたい、そういうインボイス方式の方向へ近づけたいとお考えであると受けとめてよろしいでしょうか。
  56. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 現在の帳簿方式であっても、事実上これは請求書等々がついているのが通例だということを一つ申し上げたことと、そういうような実情を踏まえながら、何がしかのそれを法的な段階に格上げしていくことができないかということを現在、税制調査会でいろいろ技術的なことも検討していただいておりますが、その結果については尊重をいたしたいと思っております。
  57. 伊東秀子

    伊東委員 それから、やはりいろいろと問題のある免税点、簡易課税制度、限界控除制度、この三点についても国民的な批判が非常に高い。これについてはどのように改正するお考えを持っているか、一つ一つにお答えください。
  58. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 消費税を導入する際、中小企業の方々の立場も配慮して、このような特例措置があることは御承知のとおりであります。しかも、平成三年度の税制改正、これは国会が、本当に多くの皆様が御議論をいただいてこの改正をしたわけでありますが、その中においては、簡易課税の限度の引き下げ、そしてまた仕入れ控除率の実情に合った改正等々が行われており、巷間、当初言われていたような問題にはなっていない。平成三年の改正というのは非常に大きな意味を持っていたとまず思います。  免税点、限界控除を含めまして、税制調査会の御意見を伺いながら、今後検討させていただきます。
  59. 伊東秀子

    伊東委員 これを改めないでこのまま消費税率アップ、そういうことはおよそ国民的合意は得られないと私は確信しておりますが、その点について、積極的に改めるという御意向なのか、ただ検討をしていきますという程度なのか、いかがでしょうか。
  60. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 今申し上げましたように、平成三年度の改正等々によりまして、益税というものは、巷間言われているようなことはないということはまず申し上げられると思います。同時に、導入の際の中小企業への配慮ということも大事でありますが、また、伊東委員のおっしゃったような角度ということも、これは十分検討しなければならないことと考えております。  今税制調査会で具体的にその検討をしておられますが、その答申は尊重します。
  61. 伊東秀子

    伊東委員 それから、先日の大蔵大臣の御答弁の中に、クロヨンは解消をされたかのような答弁がございました、私は耳に残っておりますが。そのクロヨンについては解消されたと本当に思っておられるのかどうか、いかがですか。
  62. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 私は、クロヨンという言葉は営業所得者に対する侮辱だと思っております。
  63. 伊東秀子

    伊東委員 じゃ、クロヨンという言葉じゃなしに、所得の捕捉率の格差というふうに言いかえますが、その点はもう解消されたとお考えでいらっしゃいますか。
  64. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 給与所得者に対して営業所得者の把握という問題、これは、国税当局も来ておりますが大変重要な仕事であり、そのために最大限の努力を払っているということを御理解いただきたいと思います。
  65. 伊東秀子

    伊東委員 今のは回答になっていなくて、解消されたというふうにお考えなのか。単に鋭意努力を払っているというだけでは回答にならない。  それで、私の方でもう時間がないので申し上げますが、表の5というのをごらんください。  これは三枚目になりますけれども、国民の税に対する不満感、特にサラリーマンの中に非常に多いのがこの捕捉率の格差の問題でございます。通称クロヨンという言葉でも言われておりますが、私の方で、国税庁の税務統計と経済企画庁の国民所得の統計、この中から所得の捕捉度というものをこのような形で出しました。  それによりますと、サラリーマンを一〇〇とするならば、一〇〇対五五対二八という形で捕捉度の格差がある。それで、やはりこれは非常に、サラリーマン、酷税と言われ、一番大きな問題として存在しているわけで、これをなくすこと。政府は、消費税導入以前の問題として、税に対する公平感、信頼度、それを高めるためにもまず手をつけなきゃいけないはずだ。  とすれば、やはり先ほどの納税者番号制度、これはもう早急にやらなきゃいけない、消費税率値上げ前に国民の合意をとらなきゃいけない問題であると私は思うわけでございます。それに対する大蔵大臣のどうも熱意のほどが感じられない。クロヨンはもう、クロヨンという言葉がおかしいとすれば、捕捉率は解消されたかのような答弁をなさっておられた。  むしろ一番国民がやってほしい不公平税制の改正には消極的で、とにかく財源をどこかから取ってこよう、消費税が一番取りやすい、ここに大蔵省そのものがあり、かつ大蔵大臣羽田総理ともにそちらの方に力が向いている。これが大変今の、この六月までに成案を得るということの問題点ではなかろうかと思うわけです。  この納税者番号制度、総合課税、これに対する考え方、早急にやる気があるのかないのか。まず羽田総理大臣、いかがでしょうか。     〔中西(績)委員長代理退席、委員長着席〕
  66. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 御指摘と順序が逆になって恐縮でございますが、私は、国民の皆様に税の不公平感があるということは本当に大きな問題だと思っています。このことは、政治に携わる者として非常に重要な問題だと私は受けとめております。  そこで、この不公平感という中には、執行と制度と二つあるわけでございます。私は、制度は相当是正になっていると思います。みなし法人制度などというものが巷間言われておりましたが、これはもはやありません。  執行の問題があると思います。そこで、私はなくなったということは一言も言っておりません。クロヨンというような事態はないし、まじめに営業所得者で申告してくださっている方に対する侮辱だということを申し上げただけであります。また国税当局は、まさにこの執行、把握率を上げるということに全力を出している。また、そのことが国税当局の組織目的であるということで五万の人間がいるという、その事実も御理解をいただきたいと思います。このためには全力を出してまいります。  また、制度の問題として番号制度の御指摘がございましたが、これは私が申し上げましたように、総合課税が所得税のあるべき姿である。しかし、執行の裏づけなくしては、これはかえって逆の不公平が出る。そのために番号制度というものについては今検討しておりますが、国民の皆様の理解、コスト、こういうことを考えながら、今の御指摘の趣旨は十分承らせていただきたいと思います。
  67. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 もうほぼ大蔵大臣がお答えしたとおりでございまして、我々としても、やはりそういう不公平感というものを持たれないような努力というものはこれから積極的にやっていかなければならぬということは御意見のとおりであることを申し上げたいと思います。  以上です。
  68. 伊東秀子

    伊東委員 納税者番号制度については、国民的にはかなりもう、この不公平感をなくすためにとらざるを得ない問題であるという理解が進んでいる。むしろ、だから、その辺を政府としてはPRに努めるし、理解に努める、そういうことをまず三年間おやりになったらいかがなんでしょうか。  消費税率アップの税制改革などということにいきなり六月中に成案などとおっしゃらずに、まずこの資産課税の適正化を図る、そのために総合課税、さらには納税者番号制度の導入、これにまず三年間という期間を当てる。消費税の問題に入る前に、PRなり理解あるいはそういう国民の合意が得られるかどうか、選挙の争点にしてもいい、そういうぐらいの覚悟がおありなのかどうか、その辺をお伺いします。
  69. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 総合課税の理念というのは、私は決して間違いでないと思います。ただ、今お話がありましたように、今これに国民的な合意を求めるために三年間かけろという話でございますけれども、やはり背番号問題に対するプライバシー、この基本的な問題というものがあります。また、番号をつけただけではやはり不十分であるということで、人的にも相当なものがかかる、あるいは物的、そして膨大なコストをかけるということでありまして、有効性ですとかあるいはその担保、有効性の担保というものが大変困難であろうというふうに思っておりまして、理念としてのいわゆる総合課税とあるいは現実とを十分やはり両にらみで、私ども対応しなければいけない問題であろうということを改めて申し上げたいと存じます。
  70. 伊東秀子

    伊東委員 これまでも常に総合課税や納税者番号制度に対する政府の態度というのは、そういう態度で今日まで来た。  なぜ私がこういうことにこんなにこだわるかといいますと、この図の4ないし5というのをごらんいただきたいと思うんですけれども、今大変資産格差が開いているわけですね。つまり、年収の高い人ほど預貯金が多い、さらには有価証券の保有額も多い。しかも、これから高齢化社会で高齢者の負担増、負担増と言いますけれども、高齢者にいくほどこういった形での資産格差というのは開いている。  これからの高齢化社会のコスト増をどう負担するかというときには、やはり資産や、富裕な高齢者からの相応の負担をしていただくという方向も考えなきゃいけない。高齢化社会だから、はい、一律に若年世代の税金や社会保険料で全部賄うんだという、そういう考えを前提に今回は消費税の税率アップを算定しておりますけれども、その考え自体、本当に今後もとるのかどうかということに大変私は不信感を持っているのです。現実にこういうふうに資産格差が開いているならば、この資産を持つ人たちに負担をやはりしていただく制度というものを考えなきゃいけない。  それには、資産課税というものはやはり適正にどんどんやっていく。その制度の導入というのを、広く、薄く、逆進性の強い消費税の税率アップなどという方向に行く前に、やはり税制改革ではまず考えなきゃいけないと思うからこそ申し上げているものでございまして、プライバシーの問題とか、そういうものは今までも納税者番号制度において言われてきました。しかし、いつまでもそれで先送りにして、こういうような状況で、今度またまた逆進性の強い消費税の税率アップというところに来る、これが問題だということを指摘しているわけでございます。いかがでしょうか。
  71. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 この図5を見ましても、お年を召したところで非常に格差が出ているというか、私は、お年を召した方がそれなりの資産をお持ちになるということは非常にいいことだという面もあると思いますが、同時に、今御指摘の点は、私、大変大事なことだと本当に思っております。  元来のシャウプ税制というのは、完全総合課税であった。しかし、それが三年しか守られなかったことには、それなりの理由があった。その裏づけが今の番号制度だと思います。私は、この国会の場で、ずっと過去を見ておりまして、今の伊東委員のようにはっきりこれをやるべきだという御議論はむしろ昔は少のうございました。しかし、このようにして言っていただいているということは大きな世論の一角だというふうに率直に受けとめさせていただき、ありがたいことだと思っております。
  72. 伊東秀子

    伊東委員 それから、やはりもう一つ不公平税制の大きい問題は、法人税の中にあるさまざまな特例措置だと思うんですね。自民党の一党支配時代に、かなりいろいろな業界の人たちとの中で特例措置が、租税特別措置がとられてきた。それは一概に悪とも言えない部分もあったかもしれない。つまり、輸出を奨励するとか海外に企業を進出させるとか、あるいはそういう社会経済政策上の社会的な背景があったかもしれない。  しかし、今やそういう特例措置はやはり時代に合わない。むしろどんどんこういった特例措置に基づく不公平な部分というものを直していかなきゃいけない。そして、法人税全体の課税ベースを広げる。そうすれば、今国際的に高いと言われている法人税率、これの引き下げだって可能じゃないか。  そういう意味では、やはり幾つか私は直すべきだというものをピックアップさせていただきますが、それについての御意見をちょっと伺いたいと思います。  一つ目は、法人間配当無税の制度とか、これはやはり、むしろもはや根本的に見直すべきである。というのは、資本を開放している企業、つまり大企業なんかと、それから閉鎖性、小さい資本閉鎖性の企業とは別に扱うべきであって、こういう昔の政策的な配慮から法人間の配当については無税というようなことは、もう置くべきでないということが第一点。  それから、企業の税務会計処理システムの中にもいろいろ不公平な部分がある。例えば企業の福利厚生費。企業の利潤からそれに充てることをルーズに余りに認め過ぎているんじゃないか。二つ目にはそういったこと。  それから、これは宗教法人への課税の強化、まあ公明党の方もいらっしゃいますけれども、でございまして、私、宗教法人について調べましたところ、宗教法人の数は、今公益法人が全体で、平成五年十二月の調べでは二十五万二千四百三十件のうち、宗教法人が十八万三千八百九十四件。そして、収益事業を行っている公益法人が二万一千七百九十六件、所得金額二千二百十二億というような状況になっております。  宗教法人以外の学校法人、社会福祉法人、民法三十四条の法人というところでの収益事業というものの割合が少ないところから見ても、宗教法人の課税、この軽課措置というのは、やはりもうここらあたりで収益事業については改めるべきじゃないか。若干の手直しはされておりますけれども、こういったところを、今回ですか、平成六年の改正ありましたけれども、非常に微々たるものである。この辺はもう少しきちんと私は手直しすべきじゃないか。  それから四番目には、準備金特別償却についても硬直化している。この点についての大蔵大臣の御意見を伺いたい。
  73. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 まず伊東委員の、課税ベースをもっと広くして法人税率を下げろと、非常に正しい御意見だと思います。  また同時に、政策減税は全部まずい、悪いのではないというお話もいただきまして、中小企業などの措置は私は有効だと思っております。  この特別措置、法人について見ますと、高度成長のころいろいろあったわけでありますが、昭和四十七年が一番ピークで、法人税収の九%が特別措置になっておりました。現在、これが三%でございますから、非常に低くなっているということをまず御理解をいただきたいと思います。  第一の、法人間配当でございますが、今の御意見は承りましたが、ヨーロッパでは完全にこれをフリーというか非課税にいたしております。アメリカが若干課税しておりますが、それと平仄が別に合っているわけじゃありませんが、日本も八〇%に抑えているわけであって、やはり世界の大勢に全く逆行することはできにくいのではないかということを御理解いただきたいと思います。  二番目の問題は執行の問題だと思いますが、税務当局において厳密にやらせておるつもりでございますが、よく御意見は承りました。  宗教法人でございますが、民法三十四条の中には、宗教から慈善から教育から、みんな平等に並べてございまして、公益法人の中で宗教法人だけを重課するということは、やはりこれはまずいと考えておりますが、今御指摘のように、収益事業のとり方あるいはその税率が一%低いという問題、これは公益法人全体の問題として考えていく問題だと思っております。御指摘のように、大変連立与党の皆さんのお力をいただきまして、一部この収益事業の部分、直したわけでございますが、今後ともこれらの問題については、皆さんの御意見を承りながら、引き続きやらせていただきたいと思っております。  準備金の問題については、引当金というのはこれは企業会計上の原則でありますが、これは不断の見直しはもちろん必要だと思っております。準備金あるいは特別措置の問題についてはさっき申し上げましたが、引当金、準備金についてもそれなりの理由があるのは事実でありまして、その制度そのものを否定することはできませんが、その率等については不断の見直しが必要だと考えております。
  74. 伊東秀子

    伊東委員 それからもう一つは、国際課税の空洞化ということも問題になっているんじゃないか。例えばタックスヘーブンの悪用とか外国税額控除制度の欠陥による税金逃れとか、こういうこともやはりもう少しきちっとやっていかなきゃいけないというふうに思います。この点についても、答弁を求めますともう時間がなくなりますので、ぜひきちんとした適用をしていただき、課税ベースを拡大するというようなことに努めていただきたい。  それで、あともう一つは、一番私として大事だと考えております高齢化時代のコスト増に対して、大蔵省が、中堅所得者層の所得税の累進構造を緩和して所得税を減税すること、さらには高齢化時代の現役の世代の負担をなるべく低くする、そのためには消費税の税率アップが最もベターである、消費税シフトをすべきであるということが、本当に世代間の公平になっているのかどうか、この点についてでございます。  このために図を用意してきたのでございますが、図の3というところをごらんいただきたいのです。これは、標準報酬月額、これをもとにして生涯賃金を出しまして、その生涯賃金がそれぞれの世代、一九三五年生まれから、現在五十九歳ですか、それから現在二十四歳の人たち、この人たちが、今の年金制度のもとで、賃金の上昇率を約三%と見込みまして、それぞれの年齢階層に応じて幾ら保険料を支払い、幾ら年金を受給するかというこの「厚生年金の生涯受給率・保険料率」、これをこの下の方々が出した表でございます。  これによりますと、つまり現在の五十代、あるいはこの表でいきますと四十六歳ぐらいが分岐点になるのでしょうか、こういった現在の高齢者世帯の方々、一番所得税減税の効果を享受する、減税になる層でございますが、この方々は、生涯の受給率と保険料率の差がこんなにあって、大変この純受益が生涯所得を大きく上回る。これは現在の年金制度を前提にしての考えでございますが。  ところが、今の若い人たち、若年世代、現在二十四歳の方は、ここに出ていますけれども、この人たちが生涯に保険を払い続ける額と、生涯年金を受け取る額との差というのは、これほど開いておりまして、全体で見ると受給がはるかに少ない。つまり、約八百万ないし一千万以上の所得を得ている現在の働き盛り、中堅所得者層、この人たちは今の年金の中ではたくさんの年金の額もいただける上に生涯の保険料の支払いは少なくて済む。そして若い人たちは生涯、大変たくさん保険料を払わなきゃいけない上に受給の額は少ないという不公平がある。  だから、むしろこういった今の壮年世代、消費税の税率を上げたいがゆえに所得税の減税をしますよという八百万ないし一千万以上のそういう中堅所得者層にこそしっかり高い所得税を払っていただいて、若年世代に回す負担を軽くするというのが公平の概念から見たら当然ではないか。それを今逆のことをやって消費税を上げようとしている。こういったことでございまして、何ら、大蔵大臣がきのうから、きのうといわず先日来から説明している若年世代の負担を軽くすることにはならない、こういうことになるわけでございますが、これに対して大蔵大臣、いかがでございますか。
  75. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 この保険そのもののことは厚生省の方でお答えすべきことだと思いますが、将来、若い方もいずれはそういう世代に入っていくわけでありまして、そういう今若くてこれからどんどん働く中堅の社会人になっていく方々に対して将来の御負担は所得税に関する限りこういうものですということをお示しすることは、こういう若い方々に活力を持っていただく一つの重要な施策だと思っております。  一つ加えますが、税金と保険料率をあわせて負担として考える考え方ということは、大変大事なことだと思っております。
  76. 伊東秀子

    伊東委員 今、若年世代も中高年になれば恩恵を受けるというふうにおっしゃいました。確かに、非常に高額所得を得るような、先ほどの表でいえば一千万以上というのは、表の2によりますと、一千万以下の人というのが国民の勤労世帯の九四%なんですよね。だから、その六%に入れば減税に浴するかもしれない。しかし、そうでない場合には若い世代にも増税になり、かつ退職した後も消費税を支払わされる。そして高齢世代になっての負担がずっと続くという。  ですから、今のお答えは、それは中堅層に、つまり五十代ぐらいになったときに一千万以上の高額所得を得られる可能性の人には言えるかもしれないけれども、圧倒的国民にそれは言えないじゃないか。やはり政治というのは九割の人たちのことを考えなきゃいけない。九四%の人たちは生涯大して恩恵はなくてもいいんだということになったら問題ではないかということを言っているわけでございます。
  77. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 今の数字は平成元年の数字をおっしゃっていると思いますが、平成四年についてはまたそれが上へずっとシフトしているということは事実でありますし、またこれからの経済情勢どうなるかわかりませんけれども、やはりそういう将来に対して、所得が上がる、給与が上がっていけばそんなに大きな、めちゃくちゃな税金負担にならないということについて希望を持っていただくということは、大変これからの若い方々にとって大事だと思います。
  78. 伊東秀子

    伊東委員 それは大変おかしな答弁でございまして、私は過去の給与収入階級というのも十年ほど当たってみました。そうしましたところ、物価の上昇、賃金の上昇で上がってもこの比率というのは大して変わらないのですよ。だから、例えば一千万以下というのが、もうちょっと一千二百万になるかもしれない。しかし、減税の効果をこうむる人と消費税率が上がって増税になる人との割合というのは変わらない。  それからもう一つ、最後につけました表6と7、これは厚生省が、今後こういう形で負担がふえるから今回の消費税の税率を上げなきゃいけないというようなことのためか、財政の見通しを平成六年度につくったものを抜粋したものでございますが、厚生年金の財政見通し、平成七年では保険料率は一六・五%で、収入がこれだけであり支出がこれだけである。  つまり、収入が三十兆五千八百八十五億円、支出が二十一兆七千五百六十一億円、それで積み立ての度合いは五・七倍というふうになっておりますが、この表をずっと見ますと、つまり、支出というのは厚生年金の支払いになりますね。収入というのは現役世代が保険料を支払うと収入になるわけですが、何と一九九五年から二〇六〇年まで、積立金、つまり今高齢化世代にある人たちの積み立てているものは取り崩さないで、ずっと現役世代の社会保険料で高齢化世代を扶養するといえばいいのか、年金を出すということでこういうような試算をしている。国民年金も同じだ。そして、しかも年金の今の受給の額というのは現役時代の全体の生涯の賃金をベースにしている。だから、高額所得者ほど年金受給額は多い。  それで、本当に資産の乏しい若年世代がいつもいつもそういった形で税金なり社会保険料というものを払い続けて、そして資産をたくさん保有しているその人たちの年金を持つというこの仕組み、これが大変だから消費税を上げますよと言っているのですけれども、積立金を崩さないということは、こういうことを考えているというのは、私は、世代間の公平には全くなっていない。  本当に現役世代にとって何てむごい今回の試算であり、消費税率アップであるか。これこそまさに世代間の公平どころか、若年世代にとっては厳しく、富裕な高齢世代にとってはますます大変な受益になる制度であり、高齢者の高額所得者にとっては大変な恩恵を与え、しかも高額所得でない高齢者にとっては消費税の負担ががっぽり退職後もかぶってくる。  そういう意味では、所得格差をますます高齢世代に開く、大変逆進性の強いものであるというふうに考えるわけで、こういった政府が今ねらっている、つまり一部の、数%の将来成功したいと思う人のその勤労意欲を喚起するために、圧倒的、九割以上の国民にとっては生涯、所得格差をますます広げて増税になっていくようなものは、何ら世代間の公平にもなっていない、世代内の不公平を助長するというふうに考えるわけでございますが、その点についての反論はいかがですか。
  79. 佐々木典夫

    ○佐々木政府委員 ただいま、今回の厚生年金の財政再計算に関連します資料ということで表6、それから国年の見通しで表7ということで資料が出ておりますので、若干御説明をさせていただきます。  御案内のとおり、年金制度につきましては世代間の支え合いということでございますが、今回の財政再計算につきましては、まさに年金財政、長期的な将来見通しを行うためのいわば定期点検でございます。五年に一遍将来の財政見通しを行うということでございまして、被保険者数だとか受給者数の推計、あるいは給付費がどうなるか。一方、歳入のベースになります標準報酬がどうなるかという推計、さらには積立金収入がどうなるか、そして国庫負担の見通しのもとに長期的な財政計画を立てまして、保険料の拠出計画を設定するということでございます。  細かくは省略いたしますが、その際に基本的に、今積立金のお話がございましたけれども、今回保険料の計画、長期的な設計をいたします際に、三〇%を超えないようにするというふうな考え方、現在の倍の範囲に抑える、これを基本にいたしましたが、特にその際の考え方として四点を入れてございます。  まず第一は、本格的な高齢社会で一定の保険料、最終的に先ほど申しましたように三〇%の範囲に抑える。それから二つ目には、後代になるほど保険料の引き上げが大きくならないように段階的に設計するということ。そして三つ目には、単年度の収支が赤字にならない。そして最後に、積立金の関係でございますけれども、経済情勢が短期間に変動した場合にも対処できるように、一定の準備金、つまり積立金を常に保有する。この四つの考え方のもとに財政再計算を行い、年金法改正案をまとめて国会に御提案をいたしているところでございます。  そんな考え方で、この資料、見通しをいたしてございますので、補足的な御説明をさせていただきます。
  80. 伊東秀子

    伊東委員 今のは私の聞いたことには何ら答えていないわけでございますが、時間がないのでもう結構でございます。要するに、今回のように消費税を上げることで高齢者を一律に扱うと言えばいいのでしょうか、富裕な高齢者もあるいは中低所得者の高齢者も一律に扱う、そのための消費課税というのがおかしいんだ。このように国民の資産格差、特に高齢世代に向かって資産格差が開いている現状では、こういった大衆課税、一律課税の消費税率アップというやり方ではなしに、これまでと同じ、所得税の累進機能というものを重視するということと、さらには社会保険の今後のあり方としても、高齢者の富裕層から応分の負担を求めるという方向性も探るべきではないか。  それをしないで、いきなり今の、財源をどう確保したらいいか、そういった安直なところで、九割以上の人にとって増税となる消費税のアップというものを持ってきているのが今回の税制改革であり、それは、これまで国民が最も不満に思い、政治に対するあるいは税制に対する不信の根にある不公平感、これへの抜本的な改革には全くなっていない。単にまず消費税率アップありきと言われているところは、今私が申し上げたようなところに根拠が求められる。  先ほどの世代間の公平にもなっていないということに対しても今の方はとんちんかんな、全然別個なお答えしかできなかったということからもはっきりしたのではなかろうかと思います。  時間がありませんので、最後に北朝鮮問題につきましてお伺いいたします。  これまでの答弁の中で、北朝鮮の核疑惑、これは北東アジアにとっての大変な脅威である、何とかしなければいけないというようなことを羽田総理柿澤外務大臣もお答えになっておられました。  ところで、一体日本は最も近い国である北朝鮮の、こういった今大臣たちがおっしゃっている根拠となる情報をどのようにして得ておられるのか、お答えください。
  81. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 情報という問題でございますから外務省だけの所管ではございませんけれども、国連の場、また日米、また日韓等の交流を通じてその辺を把握すべく努力をしているところでございます。また、IAEAのメンバーでもございますので、IAEAからも情報はいただいていると思っております。
  82. 伊東秀子

    伊東委員 そうしますと、今のお答えでは、国連のIAEAとアメリカ、韓国ということのようでございますが、日本独自で北朝鮮に対する情報収集活動は行っていないのかどうか、いかがでしょうか。
  83. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 先ほどの例に挙げました国に中国との関係もつけ加えておきたいと思います。  それから、北朝鮮につきましては、御承知のとおり日朝国交正常化交渉が一昨年十一月以来中断をされておりまして、話し合いの機会を持っておりません。非公式の接触はいたしておりますが、限られた範囲でございますので、直接のルートというのは余り大きな比重を占めていないというのは事実でございます。
  84. 伊東秀子

    伊東委員 アメリカからはどういう形で情報を得ているのか。韓国、中国からはどういう形で情報を得ているのか。いかがでしょうか。
  85. 川島裕

    ○川島政府委員 お答え申し上げます。  アメリカは、いろいろな情報については、衛星等々ございますので、上から見ていると申しますか、そういう情報がありますし、これは日本としては持っていないところでございます。  それから、中国はやはり一番の友好国でございますので、中国が北朝鮮の動向をどういうふうに考えておるかということについては、これは大変参考になるものがある次第でございます。  その他いろいろ関係各国それぞれ何がしかの情報は持っておりますし、私どももそれなりのものは持っておるものですから、その辺の情報交換というものは折に触れて非常に緊密にやっております。  ただ、直接の接触がないのと、どちらかといえば閉鎖された国というふうに形容されておりまして、ほかの国に比べますと情報量がどうしても少ないということは事実でございます。
  86. 伊東秀子

    伊東委員 今の御答弁を伺っておりますと、独自の調査情報収集能力は持たずにアメリカあるいはほかの他国任せのような状況に感じられる。それの間接的な情報で大変北朝鮮の脅威、北朝鮮の脅威というようなことをあおり立て、しかも社会党政権離脱する前の政策合意にまで有事立法をにおわすかのような、一歩そこまでも踏み込めというようなことをやった、迫ったということは、大変私はゆゆしき問題ではなかろうか。  独自の情報網を持ち、その情報に基づいて分析し、そしてそれに基づいて自国の安全とかそういう問題を考えるのではなしに、よその国で聞いたもので、ああいうわずかな、非常にせっぱ詰まった状況の中で北朝鮮問題の対応にぎりぎりぎりぎり迫る、これは私は政権の姿勢として大問題ではなかろうかと思うのですが、羽田総理、いかがお考えでいらっしゃいましょうか。
  87. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 今御指摘のありました点につきましては、私は、何というのですか、ぎりぎりと迫るというような姿勢というのはずっと今日までとってきておりません。ともかくやはり北朝鮮が門戸を開いていただくということ、これを求めるということで、各国に対しましても、ともかく対話というものを粘り強くやってほしいということを言ってきております。  それから、今情報についてのお話でありますけれども、もうよく御案内のとおり、例えば幾つかの国が情報機関を持っておりますけれども、これは相手の国にとっては本当に厳しいような組織を持ちながら対応しておるということでありまして、さてそういった情報機関というのは日本が持つことが許されるか、あるいはそれに対する国民世論形成というものができるのか、あるいは先方の国なんかはどんなような影響を持つのか、そういうことも考えなければならぬと思います。  そして、この情報というのは、決して単なる当て推量とかそういったものではなくて、今お話があったように、衛星の写真ですとか、そういった割合と客観的に、しかも現実的にこうやって見ている、具体的に見ているものによってやっておるということでありまして、しかもそれはIAEAの保障措置をきちんとしてほしいということでございます。だから、IAEAの査察というものをきちんと受けていただければ、持っていない、あるいはそういったものがなければきれいにわかってしまうのですから、何とかそういうものに対応していただきたいなというのが私たちの本当の偽らない気持ちなんであるということはぜひとも理解していただきたいと思います。
  88. 伊東秀子

    伊東委員 最後になりますけれども、今の御答弁を伺っていましても、どうも独自にきちっと情報を収集し分析し調査した上で独自のというのじゃない。そうじやなしに、なぜあんなに急いで、政策合意、中国は入れるなとかそういった、しかもこれまでの羽田総理の御答弁を伺っていますと、国連の決議がなくても、日米安保条約あるいは韓国との協議の上で対応するかのような御答弁までなさっている。そこまで踏み込むようなことをなぜあのとき急いでなさったのか。  永野発言、しかも永野さんは陸軍幼年学校、士官学校、そしてさらには自衛隊の幕僚長という、ずっとそういった道を歩いた方をわざわざ法務大臣に据え、さらには柿澤発言、神田発言と続いたということは、この際に北朝鮮の核疑惑核疑惑という脅威をあおりながら、有事立法体制を何としてでも日本にしきたいというような、そういった非常に今の政権に対する危惧感を持っているわけでございます。  どうもその点の危惧感はぬぐい去れないわけでございますが、質疑の時間が終わりましたので、これで終了させていただきます。
  89. 山口鶴男

    山口委員長 これにて伊東君の質疑は終了いたしました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ————◇—————     午後二時三十一分開議
  90. 山口鶴男

    山口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。平泉渉君。
  91. 平泉渉

    平泉委員 きょうの質問に当たりまして、少し旧聞になりますけれども、平成五年、昨年の政変の意義を改めてひとつ考えてみたい。  その後、いろいろ国民の間に、私どもも選挙区で伺っておりますと、この平成五年からのわずかまだ一年足らずの間に大変な大きなことが起こった、一体これは何だったのだろう、こういう考え方をする方が多い。また、その中でいろいろ何が起こって、どういうことだったのか、これからどうなっていくのかという混迷の感が深いような気がいたします。  そこで、本日は、少しさかのぼりますが、昨年の七月十八日、わずか十カ月前ですけれども、総選挙がありました。その総選挙の結果を改めてこの際読み返してみたいと思うのであります。  自民党は二百二十三、社会七十、新生五十五、公明五十一、日本新党三十五、共産十五、民社十五、さきがけ十三、社民連四、無所属三十、これが結果でございました。  この選挙は非常に微妙な数を示したために、その後十日間にわたって政局は混乱をきわめたことは皆さん御承知のとおりでございます。殊にさきがけの向背で政権が左右されるのではないかということが非常に注目をされたわけでありますが、最終的に七月の二十八日に自民党議員の離党がありまして大きく流れが変わったということが指摘されております。その結果、七月二十九日に八党・会派による連立政権樹立の合意が行われ、さらに八党派覚書というものもつくられたわけであります。これをこの際、読み返してみたいと思うわけであります。  その中に、こういうことが書いてあります。連立政権樹立に関する合意事項、今回の総選挙で国民は、自民党政権にかわる新しい政権を求める歴史的審判を下した。これは非常に疑わしいですね。選挙の結果を見ると、必ずしもそうは読めない。しかし、まあこういうことを言われた。そして、自民党政権のもとではなし得なかった抜本的な政治改革を実現する連立政権の樹立を決意した、こういうふうに書いてあります。これは、いわゆる細川内閣の根本文書でありますが、これが後継承、継承で今の羽田内閣に来ておる。その意味で伺っていくわけであります。  さらに言葉を続けて、根本的政治改革関連法案を本年中に成立させる、これが一であります。二に、我が国憲法の理念及び精神を尊重し、外交及び防衛等国の基本施策については、これまでの政策を継承しつつ、こういうことがうたわれておるわけでありまして、このことは覚書にも再び確認をされておるわけであります。  ここで重要なことは、外交及び防衛等国の基本施策については、これまでの政策を継承しつつと明記したこと。端的に言えば、連立第一党の社会党を初めとする旧野党諸君の党派の主張というものは封印した、凍結をいたしました。自民党の政策を全面的に継承するということがうたわれているのであります。  私は、この点は非常に重要な問題だと思いますので、これは前の政権のことでありますが、これを継承しておるということを再び今度の確認書で言っておられる羽田総理から、まずこの点について再び御確認、これをお願いいたしたいと思います。
  92. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 確かに、細川政権から我々かわったわけでありますけれども、基本的に、今御指摘がありましたように私どもは前政権から続いてきたもの、これを我々もやはり継承していきたいというふうに考えておるところであります。
  93. 平泉渉

    平泉委員 そこで、細川内閣羽田内閣との関係ということになるのですが、今度の四月二十二日の、新たな連立政権樹立のための確認事項というものが四月二十二日の未明にでき上がった。この確認事項というものは、一体これはどういうものなのですかね。これの性格について、これを一つ伺いたいのです。  これは昨日ですか、この連立政権樹立のための確認事項に関する政府統一見解というものが我が党の深谷君の質問に関連して行われました。それを拝見いたしますと、政府としては有権的な解釈を行う立場にない、こういうことを書いておられますが、大事なことは、有権的解釈がどうかということじゃなしに、一体政府はこの確認事項に拘束されるのですか、拘束されないのですか、総理
  94. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 確認事項というものは、私どもは、これは尊重しながら我々としては対応していくべきであろうというふうに考えます。
  95. 平泉渉

    平泉委員 拘束という言葉はお避けになりましたけれども、尊重でも同じことで、実態はそうじゃないだろう。そうでなければ、首班指名の合意というのはおかしくなる。この確認が連立与党の間の確認であって、その確認に基づいて国会における指名選挙が行われた、こういうふうに私ども理解しております。したがって、この確認事項、これはおれが書いたものじゃないのだということでなしに、これに羽田さんは新生党の党首としても合意されたし、個人としても合意された上で、そうしてその連立与党から総理の候補ということで推薦されることを受諾された。一方的な宣言であってもそれを受諾しておられるわけですから、これはやはり拘束じゃないですか。
  96. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 これは、行政府と立法府、これの違いというものはありましょう。そして各党とも、党の党是なりそういったものを持っております。しかし、内閣ができたときに、その首班になったときに、それが全部実行できるかというと、やはりそういうものではない。そういったものを踏まえながら現実的に対応していくということがやはり必要であろうというふうに考えます。
  97. 平泉渉

    平泉委員 まあいいでしょう。これは基本的には非常に大事な点でありまして、我々はこの確認事項というものを中心に審議をしていかなきゃならぬ。あなたが今いろいろと、行政と何とかは違う、こう言われるけれども、どうもよく意味はわかりません。  私は、常識的に考えれば、この確認事項というのは羽田政権の性格を根本的に規定するものであるし、もしそこのところが、それはくだらないことはいいのですよ、つまらないディテールは。しかし、根本の性格については、これで国会の中において合意がなされたということでなければ国民に対して説明できません。その点は確認されますね。
  98. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 先ほども申し上げましたように、私たちは、やはりこういった基本的な確認事項というのがあったわけですから、そういったものを尊重しながら進めていくということであります。
  99. 平泉渉

    平泉委員 ありがとうございました。  そこで、この確認事項ですが、これを見ますと、一番の冒頭に「昨年七月二十九日の「合意事項」及び「八党派覚書」を継承し、細川連立政権の掲げた「改革」を旗印に、」云々、こうあるわけですから継承しておられる。また再び継承ですね。やはり違った党派が連合するのですから余り新しいことは書けない、できる限り継承継承でいった方が無難だということは、これは実情はよくわかります。まさにそういうことでしょう。  そこで、重大な問題が出てくるのは、まさにそういう先ほど申し上げたような基本政策は自民党を継承するんだという政権が今も続いているということを今総理自身で確認されたわけですが、一体自民党との関係はどうなるんだということですね。国家の基本政策について自民党の政策を継承しつつ、他方、第一院において圧倒的な第一党である自民党を排除する政府というのは、これは一体何ですか。  政策は全く変わってない、そして、国民の民意を一番代表する第一院において圧倒的な第一党である自民党を排除する、これは一体何か、これは現段階において国民が一番我々に問いかけることなんです。あなた一体何やっているんですかと。自民党と羽田内閣というのはどこが違うんですかと。  そこで、殊に新生党の党首である羽田さんにお伺いしたいんですけれども、自民党内で、あなたも長年自民党におられた方ですが、自民党内でもどちらかといえば右派の諸君が公明党や民社党の諸君、さらには社会党の諸君と連立を組む、政治を非常にわかりにくくしていますね。これはどうも何となく権力をとるためだけの権謀術策のような感じを与えているんですね。あなたは否定されますけれども、多くの人が一体どうしてこういうことになっているのかというふうな疑惑を持っている。  それは、政治改革をやるための細川内閣、同じ問題のときに、予算委員会で細川さんはそこへ座っていろいろなそういうふうな質問が出たときに、とにかく自民党を排除する政権をつくることに絶対の意義があるんだ、こういうことを言われましたね。万雷の拍手だった。今は政治改革の基本法はほとんど国会で成立しましたね。  今の段階の羽田内閣において、この状況というのは何を意味しているんですか。これはあなたも私もよくわかっていると思うけれども、そこが国民が一番聞きたがっているんです。どうしてこういうふうな不自然な状況になっているのか。だから不安定がささやかれるのか。今、国際的にも日本の経済がうまくいかないけれども、やはり一番大なのは、日本の政治の不安定じゃないかということが言われている。羽田さんのような方からこの辺をはっきりと、まさにわかる言葉で言ってほしい。お願いします。
  100. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 私は、確かに自民党から離党し、そして新しい政治を興しました。基本的な物の考え方というのは、私は変わって出たわけではない。要するに、政策で争って出たということじゃございません。ただ、今度そういう中で、私どもは何も権力を握ろうというようなことじゃなかった。ただ、中核になって、政権の中にあった者の経験というものを生かしながら新しい政治を興していこうということでありました。しかも、この時代というのは、もうポスト冷戦という中で、やはり単なるイデオロギーの対立でもなくなっていたということです。  ですから私たちは、社会党ですとか公明党さん、民社党さん、そういった皆様方と一緒政治を始めて、お互いに一つの生い立ちとかいうものの垣根を越えながら議論をしてまいったわけでありますけれども、私は、この八カ月間の歩みというものは決してむだなものでなかったということと同時に、やはり新しい一つの方向というのが生まれつつあるのじゃないのかなということを今でも思っておるわけであります。  そして、当面するものが一体どうなのかというお話であったわけでありますけれども、今日の当面する課題というのはやはり政治改革、まだこれは完成したものじゃないのであって、関連法案が通りましたけれども、区画が通らなかったらこれは完成したものでないということでありましょう。そのほか、規制緩和を含めた行政改革ですとか、あるいはウルグアイ・ラウンドの問題についての対処ですとか、こういった問題は単にもう与党とか野党というものじゃなくてやはり一つの歴史的な課題であって、これは避けて通ることができないだろうというふうに思っております。  そういう意味で、確かに我々はこんな難しい問題に、少数与党の中にでき上がった脆弱な政権である、これはもう私は否定しません。しかし、今申し上げたように、これは当面する課題はどこでも、与党でも野党でも避けて通れないものであるというときに、私は、これらの問題を謙虚にやはり皆様に訴えることによって、お互いに協力し合ってこれらを進めていくことはできるんじゃないのかなという思いで、一日一日誠心誠意努めていきたいというふうに考えております。
  101. 平泉渉

    平泉委員 まさにそういうあなたの良識的な返事が出てくればくるほど、羽田政権の成立の情勢と経緯というものがわかりにくいのですね。それならまさにオール、与党、野党なしに、正しいやはり共通の目的を掲げてやっていかなければならぬと言われる、これは細川内閣と非常に違いますよ、あなたの今言っておられることは。そこはラジカルに変わっているんです。それなら継承ということの中でもっと新しい政治姿勢をあなたは打ち出すべきだったんですね。まさに与党、野党の境なしにやるなら第一党を尊重してやるべきだったんです。そこのところが根本問題なんですね。  しかも、政策の根本は自民党の政策を継承するという点では細川内閣と変わらない。細川さんという人が自分を革命家だと名づけたかどうかは知らないが、ああいうアドベンチャラスなことじゃないのです、問題は。あなたはもっと実直な方ですから、この辺を本当に考えていただきたい。これはこの後で、日本の政治史の中でこの一年間を振り返って一体何が起こったのかということを国民が本当に考える、我々も考えるときに大きな問題になる。後で申しますが。  そこで私は、率直に言って新生党と自民党は殊にどこに差異があるのかわからないのです。あなたは新生党の党首でしょう。しかし、新生党と自民党というのはどこに政策の差があるのですか。私は全然ないと思うし、国民も何もわかってないと思う、その点は。それは、自民党の方がもう少し枠が広いかもしれぬね、もう少しあなたのところよりも左つぼい人がいるかもしれない。  しかし、大筋を見れば、私は長年あなたと一緒のかまの飯を食って、それはあなた、まるで兄弟みたいなものでしょう。国民から見たらわかりませんよ、これは。だから、私らの周りいっぱい見ると、代議士が新生党へ入っちゃったから、そこに新生党のグループができる。石川県で、そうでしょう。だから同じ人ですよ。自民党の人なんです。だから、この件で、政治改革の件で宮澤内閣の不信任案に賛成をされた、宮澤内閣じゃできないんだといってそこからすべてが始まったんでしょう。  この際、政治改革の件も、今あなたは最後は残っていると言うけれども、これはもうまさに技術的なディテールが残っている。そういう点からも、ひとつこの際、もう一つ考えていかなきゃならぬという姿勢を示すべきじゃないか。気心のわからない政党と組むよりは、やはりあなたはそろそろ自民党に復党すべきですよ、それを申し上げておきたい。     〔委員長退席、中西(績)委員長代理着席〕
  102. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 今お話のあったこと、私もうなずくところが多いわけでありますけれども、ただ問題は、やはり一つ政権が長いこと続いておったというところ、そこに一つのピリオドが打たれた、そこからもう一度お互いが考え直して動き出したということは、私はいろいろな面でやはり大きなプラスになっているであろうと思うし、それから、今までは自民党と社会党というので真っ正面からこうやってぶつかってしまっておったわけですけれども、しかし今、きょうの税制の論議なんかをお聞きになっていただきましても、ほかの政党の方が課税最低限が高いのをむしろ低くしたっていいじゃないかということを、今まで課税最低限を上げろと言っていた立場の人がそういうことを発言されるようになってきた。  ともかく税制を同じ土俵の中で議論できるようになった、私はこれだけでも一つの大きな役割を果たしているんじゃないのかなというふうに思っていることを、これは一つのやはり変化であった、また、後世の歴史というものがそういったものをとらえてくれるんじゃないのかなという思いがあることを御理解いただければと思います。
  103. 平泉渉

    平泉委員 いや、それはいいことですよ、確かに。ただ問題は、私は、自民党を排除しているということが反民主的な性格を持つということを言っているのです、第一党ですからね。これはどう見てもおかしいということなんですね。  あなたの言われるように、例えば社会党の諸君が行政の責任を持った、政権責任を持つことによって考え方が変わってくるとか、野党の諸君が大いな、たった八カ月でも政治教育を受けた。これは大げさな言い方だけれども、我々が独占していたわけですね、公職を。それを分け合ったということは、それは長い目で見れば非常に大きな国民政治的なアセットがふえたわけですね、それは認めますよ。  しかし、今の段階のあなたの少数内閣というものについて、この点はやはりもう少し考えるという姿勢でいかないと、一体日本の先行きはどうなるのか、これは世界じゅうがそう言っていますよ。これはあなた、一番御存じでしょう。外務大臣経験者ですよね。その点を含めて、ぜひひとつお考えを願いたい。  これは、国民が私に質問してくれということだから質問しているんですよ。私のところの選挙区のたくさんの人から、どうか羽田さんにこれを聞いてくれ、何で自民党と新生党とがけんかし合って、そのために結局野党の人たちいっぱいからげ込んでやっているんですか、おかしいじゃないですかと。私もそう思いますよ。私は何も自分がそっちに座りたいからそんなことを言っているんでも何でもないです。国民の良識はそういうところにあるんじゃないかと思いますよ。ひとつお願いします。答弁ありますか。
  104. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 今お話がありましたとおりのことでございまして、私どもの呼びかけの違うところは、やはり改革と協調ということを申し上げておるわけでございまして、ですから、自民党の経験のおありになる皆様方のいろいろな意見も聞かせていただきたいというのはそういう意味で申し上げていることであります。
  105. 平泉渉

    平泉委員 それじゃ今度は、先ほど、内閣が尊重する、私の言葉で言えば内閣が拘束される、こういう確認事項ですね、これをひとつ検討したいと思うんです。  その中で、まず、きのうの政府統一見解、この二のところで「憲法と条約との関係」ということを書いておられるのですね。そこで云々とありますが、「一般には憲法が条約に優位すると解される。」「以上のことは国連憲章との関係でも同様である。」これはこれでいいんですか、総理大臣
  106. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 これは言わずもがなかもしれませんけれども、私はあくまでも拘束されるということよりは尊重されるということで申し上げたこと、これはぜひ、もうよくおわかりでしょうけれども、これだけははっきり申し上げておきます。  それから「憲法と条約との関係については、憲法の尊重擁護義務を負っている国務大臣で構成される内閣が」ということ、これはもうおきますけれども、いずれにしましても、私どもは憲法というものはやはり条約に対して優位にあるというふうに解釈いたします。これはやはり手続等が憲法改正手続に比べますとより簡易であるということから考えても、そのことを申し上げることができるんじゃないかと思います。
  107. 平泉渉

    平泉委員 なかなか重大な話なんですね、これは。  憲法九十八条というのがありますね。国連憲章上メンバーに課せられている義務と憲法とが背反したときは、憲法が優先するんだから憲章に従わない、こういうことになりますね。そういうことになっていいんですか。
  108. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 例えば、国連の中で決議なんか行われた場合でも、日本の場合にはやはり憲法の許される範囲の中で行動していくということでございますから、私どもはやはり憲法の範囲の中で国連の中で活動していくということであろうと思いますし、また、我々はその中で十分責務を果たすことができようと思っております。
  109. 平泉渉

    平泉委員 総理大臣に御注意申し上げますが、総理大臣、外務大臣国会における答弁というのは、その国を国際法上拘束するんですよ。それは、戦前の一九三〇年代に常設国際司法裁判所の勧告的意見の中に出ているんです。ですから、あなたの言われる一言一句、我が国は国連憲章を場合によっては守らないぞ、今はっきりそう言われたわけです。憲法と抵触する場合には憲法を優先させる。優先させるということは、最高法規の規定が憲法にもありますけれども、排除するということなんですよ。それが上です、そういうことをはっきり答弁する総理大臣というのがありますか。総理、これは一国の命運を傾けるもので、外務大臣の問題ではありません。総理です。
  110. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 実際に私ども、今までも国連の中の活動の中で、我々は憲法に許される中で行動しますということは、これは歴代総理が申し上げてきたことであります。そういう中で私どもは国連に十分寄与していくことができようと思っております。  ただ、こういったときの発言は、まさに突然そういう御質問等があるわけでございますから、多少あれがあるときがあります。そうでないと本当の率直な話ができません。そうしてお互いに議論というのは深まっていくということになろうと思っておりますから、そういったときには、私は、もし条約上の問題ですとかそういったことで誤りがあるときには、条約の専門の人たちから答弁させることもお許しいただきたいと思います。
  111. 平泉渉

    平泉委員 これは私は、総理、この今度の政府統一見解、ちょっと安易だと思うんです。だれがつくったのか知らないけれども、できている以上は政府の責任です。役人の責任じゃありません。この問題は、国際的に重大な問題になる可能性があります。  これは、日本は、憲法上も九十八条で、憲法は、国の最高法規である、誠実に遵守するということが書かれているわけですね。憲法上も問題があります。国際連合憲章は、我が国が署名しており、かつ発効しておる、批准をしておる最も重要な国際法規なんですね。他のすべての条約に優先するということが、たしか憲章は百三条で書いてあるわけです。そういうものと憲法との関係をそういうふうに安易にどちらが優先するとおっしゃることについては、私は非常に心配があるということを申し上げておきたいと思います。  私は、この今の意見に対しては、全面的に留保いたします。  そこで、結局そういう議論が出てくるというのはどこにあるのかという実体論に移りたいと思うんですが、結局、御心配なのは、憲章上の集団安全保障機構、このメカニズムの発動について憲法に抵触することがあると思っておられるんですか。総理
  112. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 総理がお答えする前に私から御説明をさせていただきますが、まず、国連憲章と憲法については、どのような事態を平泉先生が背馳するというふうに考えておられるのか、私は承知いたしませんが、今集団安全保障の例を挙げられましたので、国連憲章第七章の事態をお考えのことだろうと思います。  この場合には、四十二条において軍事的な措置を含む措置を決定することができるわけでございますが、それに参加するかしないか、その点は四十三条において特別協定を結ぶということになつておりますので、その点で我が国は憲法の許される範囲内で国連の活動に協力をするということで、その間に矛盾は生じないものと私どもは考えております。
  113. 平泉渉

    平泉委員 外務大臣が言われるように政府が考えておられるなら、なぜ優先するということが出てくるんですか。優先するというのは、抵触する場合に一方が一方を抑えて有効であるということを言っているんですね。それならおかしいじゃないですか。何も抵触はないんだ、そんなはずはないじゃないか、憲章四十三条で言うようなことは特別協定を結ぶんだ、そのときに考えればいいことだ、そう簡単なことですか。それなら初めから、優先するという、こんな問題が出てくるはずないじゃないですか。抵触するから優先するということを書いたつもりがあるんじゃないですか。それで聞いているんです。
  114. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 今集団安全保障についてのお尋ねがあったわけですけれども、今これは柿澤大臣の方からお答えしたとおりでありまして、この中における国連憲章第七章、そして四十二条ですか、この問題に関する部分であろうというふうに私ども思っておりますけれども、この場合にも、私どもはいわゆる憲法の枠の中で対応していくということで対応できるというふうに考えております。
  115. 平泉渉

    平泉委員 いや、私も、自民党がいつ政府になるかわかりませんから、余りこの問題で突っ込みたくないのです、本当言うと。非常に難しいデリケートな問題なのです。あなたは四十二条と言われたが、実は一番難しい問題は四十三条にある。四十三条にはアンダーテークと書いてあるのです、日本はアンダーテークすると。アンダーテークするのであとはそのいろいろな細かい条約を結ぶことができるのですけれども、やはりこれはバインドされているのです。しかも、安全保障理事会の決定は憲章二十五条ですべての加盟国をバインドする。  そういう規定をちゃんとわかっているわけですから、その辺のことをよくお考えいただかないと、例えばこの間の当委員会の質問の中で、日本は留保している、そういう話がありましたね。これはあなたが言ったのじゃないのですよ、だれか言ったのですね。留保できるのですか。政府はどう思っていますか。     〔中西(績)委員長代理退席、委員長着席〕
  116. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 我が国は、国連加盟するにつきましては留保はつけておりません。
  117. 平泉渉

    平泉委員 その辺よく総理御判断いただいて、この問題は我が国が今まさに、総理は前内閣とは非常に違うところですが、しかもその点は私はあなたと全く同意見なのですよ、前もって申し上げますが。安保理事会の常任理事国に日本がなるべきだということを非常に主張しておられる。最もそれはやるべきことなのですね、当然。  それは、これだけタックス払っていて代表されていないなんということでは民主主義の本質に反する。だからそれは安保理事会の常任理事国になって、国連の中心的機関は安保理です、それ以外のものよりもはるかに優先している。その常任理事国になることについて、前内閣は非常に批判的でしたね。現内閣はこの点について本当にどう思っているのか、確認を求めたいと思います。内閣総理大臣
  118. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 私は外務大臣のときもこのことを主張してまいりましたけれども、今お話がありましたように、拠出金等につきましても多くのものを、第二番目のものを支払っておるということもあります。そのほか、PKOの問題にいたしましても、あるいはその他のこの平和と安全の問題につきましても、日本の憲法の枠内でやり得ることについては日本はきちんと果たしてきておるということからいきましても、やはり国連をリードしていく安全保障理事会、この中で責任を果たすことが今求められているだろうというふうに私も考えるところであります。
  119. 平泉渉

    平泉委員 いや、だからそこであなたが、総理大臣国会でどういうことを言っておられたかということは、安保理事会のメンバーに日本がなれるかなれないか、これはまあ非常に残念なことですけれども日本は旧敵国ですから、なることについては各国の了承を得るのは容易でないですね。現に拒否権を持っている国の中で明らかに賛成でなさそうな国がありますね。そういう状況であると、これは私は幾ら外務省が努力しても総理が努力されてもなかなか難しいと思う。国民全体で総意を挙げて運動を盛り上げていかなきゃならぬだろうし、その理解を深めていかなきゃならぬだろう。  その段階で、安保理事会の行う一番主要な機能であり義務であり行動というのは国際の平和と安全を維持することですね。平和の破壊とかそういうものを速やかに認定してすぐに処置をとる、二度と二度の世界大戦の惨禍のようなことを起こさせない、これはもう憲章の前文に書いてある国際法の大原則ですね。  そのことについて日本政府は、憲法云々の問題でどうもそこがあいまいであるということのないように、どうかひとつ政府はこの点についてはっきりした意識を持って行動していただきたいし、そのときに現実にどういうことが起こるのかということも全部想定される必要があります。  私は、決して無理難題をあなたに言っているのじゃないのです。あなたと私だって、それは本当によくわかっているのだから、この問題について何もあなたの足を引っ張っているわけでも何でもないのです。これは日本の国にとって非常に大事なことなのですね。だから、日本は安全保障理事会のメンバーとして、しかも常任理事国として拒否権を発動する国として国際の平和と安全を維持するためにどういう行動をとれるのかという態勢は、国会全体で国民全体の合意でやっていかなきゃいかぬですね。それを伺っているのですから、どうかひとつ逃げ回らないで、あなたは逃げ回っていませんよ、しかし、答弁の肝心なところは何となくぼけないように、ひとつよろしくお願いしたいと思います。答弁してください。
  120. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 まさに今お話がありましたように、我々、例えばこれから四十三条が実際に、今までそういうあれがないわけですけれども、それが本当に進むときに一体どう対応するのか、今の段階で私どもはこれについてこうこうこういうことだったら日本は大丈夫であるというようなことは、今はまだ言える段階ではなかろうと思っております。  いずれにしましても、しかし、今お話がありましたように、これは徹底して議論をしていかなければならない、議論を深めなきゃならない問題であるという認識は私も持っていることを申し上げたいと思います。
  121. 平泉渉

    平泉委員 今すぐじゃないとおっしゃるけれども、あなた、朝鮮半島の事態をどう見ているのですか。そう簡単な事態ではないですよ。一触即発ですよ。このことについてはどうかひとつそう甘く見ないでやっていただきたいと思いますね。  集団安全保障の問題については後ほどもう少し詳しく論じなきゃならない問題が実はあるのです。それは、安保理事会の常任理事国になるということは、国連の中において日本は圧倒的な情報量を手にしますし、同時に情報を提供しなければなりません。一体それだけの準備が外務当局にあるのか、日本政府全体としてあるのか、一体そういう情報を持っているのか。  例えば今度の朝鮮半島問題、主要関係国は韓国と日本でしょう。アメリカじゃないでしょう。アメリカに対応するんだなんて議論がいろいろ行われているのは恥ずべきことですね。いざとなったときに国家、人命に影響があるのは日本なんです。カリフォルニアの住民じゃないのですね。一体外務当局はそういう朝鮮半島の事態というものを刻々にフォローできるような、あるいは国防当局がそういう情勢に今あるのかということを、後で、追及じゃないけれどもお伺いしますが、我々は非常に大事なことだと思いますよ。  ぜひひとつこういう点は、我々を含めて安保理事会というものについてもっと真っ正面から取っ組んでいただきたい、前内閣の方針は全く撤回していただきたいということを申し上げておきます。  この際、国際軍事情勢を聞きたい。今たまたままさに出てきた。なぜ安保理が急に動くようになったのかといえば、拒否権をシステマチックに行使する国がなくなったからでしょう。ということは、安保理はまさに機能が始まるのですね。もう既にどんどん始まっていますね、イラクのときから。そうすると、日本は相当の覚悟を持ってこれに入っていかなきゃならぬし、同時に国際軍事情勢についての理解は日本は世界で抜群に持っていなきゃ困りますね。世界の安全を担保する国になろうというのですよ、日本は。そうでしょう。その意味で、冷戦後の国際軍事情勢をどう見ているか、防衛庁長官
  122. 神田厚

    ○神田国務大臣 お答え申し上げます。  今日の世界において、冷戦の終結、特にソ連の解体により世界的規模の戦争の可能性は減少したと思っております。しかし、他方、地域紛争の危険性が増大するなど流動的な要素もたくさんありまして、先行きに対する不安感あるいは不透明感が存在しております。  なお、アジアでは依然として朝鮮半島に南北の軍事的対峙の構造が残るなど、複雑、不安な状況が継続しております。  また、先ほどお話がございました北朝鮮についての情報でございますが、防衛庁としましては独自に情報をとっておりますけれども、具体的にはお話を差し控えさせていただきます。
  123. 平泉渉

    平泉委員 今の防衛庁長官発言についてですが、私は冷戦時代というのは国際軍事情勢はある意味では安定していたと思うのですね。ある意味で非常に安定していた。  問題は、戦闘状態はなくてデテレンスの時代、抑止の時代ですね。始まったら終わりだから、逆にすべてが安定している。例えばユーゴスラビアの紛争、冷戦時代には起こり得たですか。起こり得ない。北朝鮮の現在のような事態というのはたった五年前に起こり得ましたか。中国やソビエトが全面的にピョンヤンを抑えるでしょう。起こりませんね。今は私は何が起こってもおかしくない、一触即発の危険な事態である、このことを防衛庁はぜひ認識していただきたいと思うのですね。  防衛庁設立以来今までの長い間、あなたの役所は戦争が起こらないということを前提としていたということは、今言ったっておかしくないですよ。起こったらもう終わりなんですね。今は戦争が現実なんです。そういう事態の中の防衛庁というものは実は根本的に性格が変わってくる。防衛の性格も、内容も、装備も。何よりも先に考え方を変えなきゃいかぬ。その点について、今のあなたの発言はどうもはっきりしない。どう決意しているのか。これは重要なことですよ。防衛庁長官の両肩には日本国民の生命財産、すべてを守る責任がのしかかっているんです。御答弁願います。
  124. 神田厚

    ○神田国務大臣 防衛計画の大綱の見直しなど、あり方を、一生懸命今やっておりますところでございまして、そういう意味では防衛自身も、総理の懇談会のこともございまして、こういう情勢が変わっていく状況を踏まえまして真剣に検討しておりますことを御答弁申し上げておきます。
  125. 平泉渉

    平泉委員 前の内閣でできた懇談会というのは、軍縮のためにあるんです。それは前の八党合意とかなんとか、全部軍縮という文字が書かれていますね。これを主張したのは社会党だろうと思いますが、まあそれはそんたくです。  しかし、そういうことの中で、従来の冷戦機構の中の我が国の防衛体制というものを見直して、もう少し考え直すべきだ。しかしこれは、縮小したらいいじゃないかという考え方に単純に立っているおそれがある。問題は全然違うと思いますね。こけおどしの兵器は要らないかもしれないけれども、これはわかりやすい言葉で言えばね、現実的に使われる兵器が今度は本当に使われるかもしれないという恐ろしさがある。その辺を本当に考えた防衛懇談会であってほしいと思います。  その辺、長官はかわったんです。内閣はかわったんですから、あなたはほとんど初代の防衛庁長官ですよ。戦争が起こるかもしれないというこの恐ろしい時代の初代の防衛庁長官なんです。その全責任を自覚して真剣に頑張っていただきたいと思います。所感はありますか。
  126. 神田厚

    ○神田国務大臣 先生の御意見、非常に重要でありまして、もちろん、こういう情勢が変わっていることをわきまえまして、一生懸命やらせていただきます。
  127. 平泉渉

    平泉委員 特に私は聞きたいのは、これは総理大臣にも伺いたいんですが、日本で一番大事なところの地域というのは、今軍事的に重要な地域を考えてみますと、朝鮮半島は間違いない。その次はペルシャ湾岸ですね。私は、この二つは我が国の本当にライフラインだと思うんですね。朝鮮半島の問題、日清戦争、日露戦争、そんなことを言うと古風に見えるかもしれないけれども、しかし、やはり先人がああいうときにああいう事態に立ち至ったということは、考えると我が国の生命財産に影響がある。湾岸は我が国の経済の大動脈ですね。これは我が国にとっては生命線ですね。  そこで、そういう問題を十分考えて、我々は安保理の常任理事国として一刻も早く行動してもらいたい、日本国政府に。同時に、防衛庁当局は絶えず情報の収集に努力されたい。正面装備とかなんとか防衛庁は莫大な防衛費をかけておられるけれども、重要なことは、私はやはり情報の把握だと思うんですね。一体、今防衛のための衛星が上がっている国は世界に幾つあるのか。日本はお金がないから上げられないんですか。お金があり過ぎて上げられないんですか。やる意思がないんですか。その辺をはっきりしてもらいたい。これは内閣総理大臣防衛の最高責任者。
  128. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 実はきょう、この問題につきましては午前中、伊東委員の方からも御指摘があったところでありますけれども、やはり安全という問題については、何といってもやはり一番大事なのは的確な情報というものをつかむことであろうというふうに考えておりまして、外務省の方にも情報をきちんと確保するための施設等が今整備されておることはもう御案内のとおりであります。  ただ衛星ということになると、これは間違いなく人の国の空の上を飛ぶということがありまして、そういったことなんかも実は議論があってなかなかこれは進んでいない。今お話があったように、お金がなくて日本ができないという問題じゃない。むしろ、情報の把握のためにはどこまで許されるか、どこまでみんな理解されるか、そしてこの国のために一体何をやらなきゃいけないのかということを我々検討しながら、これに対してもう対応するときが来ているんだろうというふうにこれは考えます。
  129. 平泉渉

    平泉委員 長い耳を持った防衛組織をつくり上げるんだというのは中曽根さんの名言でしたが、その当時は金がなくてできなかった。長い耳を持つのは金がかかります。しかし、兵器ほどは金がかからない。非常に大事なことは、私は、これをぜひ羽田内閣は掲げて推進すべきだと思いますよ。何もわからないで何ができるんですか。  しかも日本は、安保理事会のメンバーになれば事実上ナンバーツーでしょう。そういう国が何の情報も持たないで、アメリカから適当な情報だけもらって発言していることをあなたは想像できますか。人の国の上をと言うけれども、宇宙空間は人の国の領空、領海の制限に服するんですか。まあこれはいいです。あなたに対するリマインダーだ。  それから、これはやはり日米関係に重大な影響が出てきていると思います。冷戦状態が終了したということは、日米関係を奥深いところで根本的に変えつつあるんです。そのことを十分認識しないと、日米関係というのは幾ら細かい議論をやってみてもなかなか進まない。アメリカは日本という国にこの膨大な軍事基地を持つということ、日本の協力を得ること、そういうことによってアメリカは世界における一つの大きな、軍事力の行使とも言えるし、安全保障体制をつくったとも言えます。その一番の支柱は日本なんですね。  その状態というものが少なくとも対ソ戦略の上ではなくなったということは、日米関係の根本的な性格を変えている。この辺のことから私は、国際軍事情勢の結果として一番大きく影響を受けている一つが、まさにこのアメリカとの関係だと思います。その辺の認識を外務大臣、どういうふうに見ておられますか。
  130. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 平泉先生御指摘のとおり、冷戦構造下の安全保障のあり方と冷戦構造崩壊後の安全保障のあり方に大きな変化が出てきたことは事実でございます。その意味で、アメリカのアジア・太平洋におけるプレゼンスの意味も少しずつ変化をしてきているというふうに考えておりますが、しかしながら、やはり日米安全保障条約は我が国の安全にとって基軸の関係であることは変わりないと思っております。  と申しますのは、依然として大量の核兵器を保持する国があるわけでございますので、その意味でも、それに対する抑止力は必要でございます。また同時に、極東の安全は我が国の安全にとって大事な関係でございます。その中で日米安全保障条約が果たす役割というものも今後引き続きあるわけでございますので、その二点において、我々は日米安保体制の維持は大事なことだと考えております。
  131. 平泉渉

    平泉委員 大変失礼しました。私の質問の要点をちょっとずらされたと思いますがね。私が言ったのはそういうことじゃなくて、防衛上の協力関係というものが昔ほどの緊密な、差し迫ったというか、要するにソビエトの強大な極東ソ連軍とか、あるいは当時まだ中国もそういう状況でしたから、そういったものに対応するものとしての日本との防衛協力関係というものは至大の重要性があったのです。そのことが日米関係のほかの懸案の解決を容易にした面がありますね。そのことがなくなってくるということの重要性なんですよ。  これを私どもは、外交当局、あなた長年の御責任のある外務大臣ですから、もう釈迦に説法ですからこれ以上言いませんが、国民の気持ちからすればそこに心配があるんです。なるほど、冷戦が終われば日本はだんだん違ってくるんだな、多くの人が、まさにちまたの人がそう思うから、政府当局者は子細その点を考慮に入れて、日米関係を従来のように、英語で言うテーク・フォー・グランテッドという、当然なことだと受けとめてしまう、大丈夫なんだ、アメリカは少しぐらい大丈夫なんだというふうにはどうもいかなくなってきているのじゃないか。総理、どうですか。
  132. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 これは御指摘のとおりでありまして、経済的な問題になればむしろ日本に対して注意をするというぐらいにアメリカも大きな変化を遂げておるんじゃないかというふうに思っております。  それだけに、やはりそういった面においてもお互いの信頼関係というものを構築する必要があろうということで、二月十一日のときにも別れるときにそのことをカンターさんとも話し、そしてマラケシュでもそういったことを念頭に置きながら、本当に理解するように、そのかわり言うべきことは率直に言うという中でお互いの信頼関係というものを構築していかなきゃならぬだろうというふうに考えておりまして、私どもは、今後ともそういうつもりで対応していきたいというふうに考えます。
  133. 平泉渉

    平泉委員 後から振り返るとあれがやはりターニングポイントだったな、曲がり角だったなということが歴史の中にあるものですね。この二、三年というのがそういう時代だった、日米関係の曲がり角なんですね。こういうときに今までの惰性で流れていると取り返しがつかないことになる。  私は、やはりこの際、政府当局、我々を含めて日本の政治に携わる者全体がアメリカとの過去数十年間のいわば安易な関係というものを再検討して、この際新たに、アメリカという国がいろんなわがままも言ってきますよ、それはとんでもないわがままも言ってくるだろうと思うが、そういう事態の中でどうこれに対処していくかということは真剣に考えなきゃならぬ問題だということを当委員会で私が発言したということを御認知いただきたいと思います。  核不拡散の問題に次に移りたいんですね。  これは確認事項の中で、核兵器の不拡散、「朝鮮半島問題」というところにありますね。「核兵器の拡散を防止することは国際的公共価値」である、大変難しい字を使っておられる。どういうことですか、総理。「国際的公共価値」である、日本語としては私知りませんが、ここに書いてあるんですね。これは、確認事項の中でこういうことをどういうふうに政府は受けとめておられますか。
  134. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 私どもは、核不拡散につきましては中心的な柱でありますNPT体制、これの維持強化が重要であろうというふうに考えております。  そういう意味で、我が国はこの条約の無期限延長というものを支持をするとともに、やはりNPTにまだ未締結国、こういったところに対しまして同条約への加入、これを働きかけるなどの努力というものを積極的に行っていきたいというふうに考えておるところであります。
  135. 平泉渉

    平泉委員 これ、簡単に書いておられるようだけれども、本当に重要なことだと思うんですね。  今の核不拡散条約に日本が入るときは、当時川島外交調査会長が先頭に立って自民党内の意見をまとめるのに非常な苦労をされました。本当に苦労したんですね。それはなぜ苦労したかというと、こんな不平等条約はないからで、こんなとんでもない条約はないということだったんですが、しかし、やはりこれが全然なかったらどうなるのかということを考えると、なきやしようがないなということになる  これは、ひとつぜひ日本政府及び外交当局に大変な努力をしていただきたいと思うのは、現在既に問題がある国はイラン、インド、パキスタン、それからイスラエル。イスラエルが核兵器を持っているということは言われている。しかも、これに加入しようとしないということは、実はどこか周りにそういう国があるということを暗示しているんですね。それからウクライナの問題も今やはり重要ですね。きのうのニューヨーク・タイムズの社説にも出ていますね。ウクライナの問題は国際の最も重大な問題になりつつあるというふうに出ていますね。  こういう事態を考えると、まさにさっき防衛庁長官ともお話ししたように、今の世界は危険きわまりない。ぜひひとつこの核の問題について日本は十分な情報を持って、だから私が衛星と言うんですよ。衛星があっても、北鮮の核兵器は余りわからぬらしいけれども、しかし、ないよりはいいですね。この点はぜひひとつ日本が中心になって頑張ってもらいたいと思っております。  そこで、朝鮮半島問題。いよいよ本論に入りますが、時間がだんだんなくなってきた。委員長、  いいですか。まだ一時間あるね。  朝鮮半島問題。いわゆるリムパックが二十四日から始まったんですか、防衛庁長官。リムパックは二十四日から始まりましたか。
  136. 村田直昭

    村田(直)政府委員 突然のお尋ねでありますが、そのように承知しております。
  137. 平泉渉

    平泉委員 そのように承知しているって、日本は参加しているんでしょう。承知しているって、防衛局長は担当局長だ。承知しているんですか、そうなんですか、どっちです。いや、官庁用語ですからね、そのように承知しているというのは、何となく外で行われていることを知っているというんでしょう。これは日本政府の決定でやっておることでしょう。
  138. 村田直昭

    村田(直)政府委員 二十四日からかどうかということについて、ちょっと私あれですが、当然のことながらことしリムパックに既に八隻の船と航空機等が参加しておりますので、ことしリムパックが行われる年であることはそのようでございます。  ただ、今言った日付について今ちょっと確認をしておりますので、しばらくお待ちいただきたいと思います。
  139. 平泉渉

    平泉委員 これは御承知のとおり、米、日、一豪、加、韓、五カ国でハワイ近辺で行われている大演習ですね。このたびの演習については、アメリカ側の報道では、海上封鎖に対する予行演習であるということが言われておりまして、二十三日一付で北鮮の外務省は強い声明を発表していますね。  そこで、今この朝鮮問題というのは、この間どこかの新聞世論調査をやったら、国民の六割近くが本当に心配しているんですね。珍しいことですよ、この平和ぼけの日本で。この問題を政府はもっと情報を提供して、かつその判断を示す。それはせんだって以来のこの委員会での皆さんの答弁を聞いていると、非常にデリケートで、先方をエキサイトさせたり挑発しちゃいけないから、細かいことは言えないというような話があるけれども、国民の心配もあるんですね。  これは、いざとなったらどうなるか。日本海沿岸、私は福井県ですけれども、あなたのところだってそんな遠くはないわな。だから、それは大変なんだ。そういうことを考えると、これはやはりもう少し北鮮に関して、一体これはどうなる、今北鮮のやっていることはハイジャック犯がやっていると言ってもいいし、あるいは煙突男と言ってもいいけれども、とにかくこれは国際社会を相手に脅迫みたいなことがずっと行われている、そういう中で目的を達そうとしているのか、それともどうなのかということはもう本当にわからな  い。アメリカの判断も絶えず変わっていますね。アメリカも、しかしこの中で目的を達成しようとあくまでもしているだろうが、最後になれば、と  いうことも言っていますね。  一体、日本政府は今の現状をどう見ていますか、はっきり言ってください。
  140. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 この問題について、私どもがやはり非常な慎重な対応をしておるということはもう平泉委員にはよくおわかりのとおり、ともかく国際社会としても、国連の議長声明という、ああいう形で対応しておるということ。それから、そういったものを一応受けながら、もちろんIAEAとの話もあったんでしょうけれども、いずれにしても北朝鮮の方でもその査察を今受け入れておるということであり、しかも燃料棒問題等についても話し合っておるというようなことがあるところでありますから、ちょうどこの一カ月ぐらいの問、非常にデリケートなときであったろうというふうに思っておりますし、今現在がやはりそういうときであろうというふうに思っております。  ですから、私どもとしては、やはり対話によって彼らが国際社会のそういった配慮に対して理解をし、そして門戸を広げ、そして保障措置を完全に履行してもらうということ、そしてNPTにやはりきちんと帰ってもらうということ、それが今やはり一番大事なことであろう。  そして、国民の皆さん方が大変心配しているということは私もよく理解するところでありますけれども、しかし、心配をなくなさすことが一番大事なことであろうと考えたときに、今の対応というのは、政府としてはそういう対応をすべきである。しかし、本当に一般論として言えば、万が一のときにはきちんと対応する、そのためには政府はいつでも連絡をとりながら対応できるということは、これは必要なことであろうというふうに思っております。
  141. 平泉渉

    平泉委員 今あなたが最後に言われたところの有事立法の問題、そのことについてはこの委員会でいろんな審議が行われている。これは、もし有事立法の準備が全然行われていないというなら政府の怠慢ですよ。この非常の事態で有事立法について政府が何もやっていないのだったらこれはえらいことです。これを何も奇貨としてやるのじゃないけれども、まさに国民に対する責任はあなたにあるのです。国民の生命財産を守る責任はかかってあなたの両肩にあるのですから、この問題については右顧左べんしないで十分考えていただきたいし、いざとなったら即刻できるのだという状態であるということは国民を安心させる。何もできていないということでは困る。  そこで、この問題全体を通じて、これはよくわからないのだけれども、国連で方針が決定された場合はそれに従うという言い方が時々行われているのですね、政府側から。今度の確認事項の中にありますね。「わが国は、国連の方針が決定された場合」、国連の方針といったって、これは他人じゃないのですね。あなたは国連の安保理事会の常任理事国になろうとしているのです。安保理事会の常任理事国でもし日本が仮にあったとしたならば、あるいは非常任理事国であっても安保理事会の選出されたメンバーであったとしたら、何を主張するのですか、日本政府は。国連がどう決定するかということについて、日本政府の対処方針、これはコンティンジェンシーでわからないわね。こんな状態になるとどうだ。しかし、そのところの腹はしっかり固めてもらいたいということを私は言いたい。アメリカが決めましたから従います、多数がそうだから従いますと。  一番の第一義的な関係国は我が国なんです。韓国の次は我が国です。韓国と我が国の利益に沿うようにアメリカは行動するでしょうし、我々が主張することにはアメリカは耳を傾けなければいけないですね。第一の関係国がどういう態度をとるかということもしっかりしないで、何となく、国連で決定された場合はこれは国連がやることですから憲法上も難しいことはないでしようとかね、おかしいと思うのですね。私は、この根本の精神がたたき直されないと日本の外交防衛の根幹が立たないと思う。ここをひとつしっかりお願いします。
  142. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 平泉委員のお気持ちは、私はよく理解しますし、言わんとするところもよく理解できます。しかし、先ほども申し上げましたように、今日の状況というのはまさに、北は別にただもう一切話し合いに応じないというのではなくて、非常に微妙な動きでありますけれども、国際社会に対して今少しずつでも門戸を広げようとしてきておる、この現実というものは私どもはきちんとつかんでいなければいけない。  その意味で、私どもは今日までもアメリカに対しても、あるいは中国に対しても、韓国に対しましても、ロシアに対しましても、ともかく彼らが話し合いに応じるように、そして門戸を広げるようにということで、今日我々は主体性を持ちなが らそういったことを呼びかけてきておるところでございまして、そういったものに北も今こたえっつあるのではなかろうかというふうに思っております。  しかし、私どもとしては、一つの、どうしてもそういうことがないときの問題というのはやはり常に念頭に置かなければならないことであろうということも申し上げることができると思います。
  143. 平泉渉

    平泉委員 そこで、今度のその確認事項の中で、るる書いておられますが、「この立場に立ち、かつ、朝鮮民主主義人民共和国が国際的に孤立しないよう、米国、中国及び韓国など近隣諸国と協同して、粘り強く協議を行う」、これが大体今あなたの言われたことです。その次、「国連の方針が決定された場合には、これに従う」「また、政府は、日本国」この「また、」が大事ですね。この「また、」が何を意味しているのか。  これは私のそんたくだけれども、文理上解釈すれば、国連の方針が決定されない事態が起こり得る、安保理の常任理事国の一人が拒否権を行使する、こうなれば国連の方針が決定できません、そうなるとということを恐らく言っているのだろうと思うのですね。まず、その解釈は正しいですか。よくわからないからちょっと聞いておきましょう。大事なことですよ。
  144. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 基本的な考え方は私はそうであろうと思います。
  145. 平泉渉

    平泉委員 そこが大事なところですね。そういうことを率直に答弁する総理は私は偉いと思いますよ。逃げちゃいけません、こういうことは。これは国民責任のある文章ですから。  「政府は、日本国憲法のもとで緊急の事態に備えるとともに、日・米及び日・韓の各国間で緊密に連携し、」云々、この文章の書き方は微妙ですね。現にこの問題がために社会党の代表者とそのほかの代表者との間で延々たる協議が行われたということが新聞報道されているのですね。つまり、日米というのが一つのカテゴリー。日韓、これも一つのカテゴリー。その次に「アジアにおける関係各国と必要に応じ連携するものとする。」というのは全然別行に書かれている。  つまり、日米、日韓というものは緊密に連携し協調して対応する、そのほかのアジアの国、例えば中国ですね、これは「アジアにおける関係各国と必要に応じ連携する」、これは明らかにディグリーの差がある。これが重大問題だったのですね、今度の確認事項の合意の中で。このために、例えば中国を入れるべきか入れるべきでないかという問題をめぐって社会党とその他の政党の間に大変大きな議論があった。当時あなたは外務大臣でしたからそういうどろどろした交渉に立ち会っていないかもしれないけれども、しかし、あなたはその結果責任を負わなきゃならない。  こういう事態になっているということ、つまり、中国の意向というものとアメリカの意向というものとは我が国が考慮する場合にかなり差をつけているという事態ですね、これは確認できますか。
  146. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 いずれにしましても、これは党の方の確認事項ですから、今私が政府の立場でこれについて細かくコメントすることは控えなければいけないというふうに思っておりますけれども、日本とアメリカ、そしてあるいは日本と韓国、こういったところはもちろんあれしますし、また中国は、その前のところにも書いてございますけれども、この「近隣諸国と協同して、」というところ、そして、私どもは実際にいろいろな面でやはり中国とも話し合っておりますし、また、中国とこういった問題について話し合うときに、中国は、制裁とか圧力ということについては、自分たちはどうもそれはだめだ、要するにそうしたくないんだ、しかし我々も韓半島に、朝鮮半島に核が出来することについてはこれは危険だというふうに思っておるので、ともかく北に対しても十分話し合っていこうということは中国も述べられておるところであります。
  147. 平泉渉

    平泉委員 これはかなり重大な問題でして、中国とは違うが日米韓は——要するに国連の決定ができないときですから、それはつまり中国が安保理事会の常任理事国として拒否権を行使したということは当然前提とされているということを今総理は確認したわけですね。その上で、その事態ではもはや中国は反対ですから、その中で日本は、日米韓は緊密に協力しながら、その他のアジア諸国とはまた随時連絡しながらやっていくんだということは、これは相当重大な事態を想定しなければなりませんが、この点については、総理はそこをはっきり確認してほしいのですね。  つまり、今あなたが言われたように、中国はこの問題ははっきりしているのですよ、終始一貫。これは、制裁行動は一切反対すると言っていますね。そうすると、例えばイラクのときに、あの湾岸戦争のときに中国は欠席しているのです、安保理を。イラクの問題について拒否権を行使させないために特に銭外務大臣をワシントンに呼んでアメリカは大変な努力をしたわけですね。今度はどうもそうじゃないね、中国の態度は。その辺を見きわめると、この問題は、我が国は非常に中国とアメリカとの間において難しい立場に立っているのですね。まあそれは、中国のことを非常に考えておられる公明党の党首もおられますから、この辺は十分お考えをいただきたい。  また、中国と北鮮との間の関係というものの地理的な位置を考えた場合に、制裁とかなんとかということは中国の理解、同意というものが一体どの程度必要なのかということは地図を見れば明らかですね。その辺のことも十分考えて、私はこの文章を見てちょっと心配になるのはその辺なんですね。何かコメントありますか。
  148. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 これについては特にあれでございますけれども、しかし、私ども、やはり現実的な対応というものなんかを考えたときにこういうことがこの中で記されたのだろうというふうに思っております。  しかし、中国の影響力というのはいろいろな意味で物すごい大事なものであろうというふうに思っておりまして、中国からの話りかけというものはこれからもよく、そういうことが起こらぬように中国からの働きかけというのは非常に重要であろうというふうに思っております。
  149. 平泉渉

    平泉委員 今の発言はちゃんと中国は聞いていますからね。で、私はそれを答弁してほしかったのです。その辺は国会答弁というものは極めて重要ですからね。これは真っすぐに直結して、衛星放送で全世界に飛んでいますから、あなたの一言一句は国際情勢をまさに形成する。そういう意味で、それはもう釈迦に説法ですけれども、よろしくお願いします。  そこで、我が国の国際貢献ということがだんだんこの際出てくる。この外交問題では、あとこれから日米関係、経済関係とだんだん移っていきますが、国際貢献ということの中で私はよくわからないのは、国際貢献というのは何かえらい卑屈な字ですね。もっと新しい言葉を使おうじゃないですか。何かあなた、封建領主に貢ぎ物をささげるみたいな貢献というのはおかしいと思うのですよね。貢献という字じゃない、もっと新しい字を政府はひとつぜひつくって広めていただきたい。政府が使うと全国民が使わざるを得なくなる。まさにさっきの話じゃないが、有権的な字句の使用方法になるのですね。  湾岸戦争のとき、日本の国際貢献というものについて世上流布されていることは、我が国は巨万の金を寄附したにもかかわらず、アメリカは全く感謝していない。クウェートは感謝の国のリストの中に入れなかった。世界じゅうから物笑いにされた。ところが、日本がほんのちょっと人を出せばもうみんなが物すごく認めるんだ、だから人が大事だ、こういう議論が随分行われていますね。そう思われますか。
  150. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 お話ありましたように、確かに平和基金、これが相当大きなものを拠出したということがあります。  また、中東の周辺諸国、こういったところに対しましても経済支援、あるいは避難民の援助ですとか、また、イラクによる停戦に関する国連の安保理決議を受け入れました後のペルシャ湾への掃海艇の派遣など、幅広い分野というもので貢献しておるということでございまして、今私がいろいろな国の人と会いますときに、この活動というものは大変評価されておるということと、アメリカのかつて相当な立場を持った方なんかも、じゃこれは我々ができたかというと、これはできなかったねということで、大変高く評価されておるということであろうというふうに思っております。  そういう意味で、我々としてもこういった問題に対して、これからも適切に対応していくことが必要であろうというふうに思っております。
  151. 平泉渉

    平泉委員 私、さっきから国連の安保理事会の構成、常任理事国になるとか、そういういろんなことを申しておりますが、まさにこの国際貢献というのは、日本は軍備がないからできない、我が国の憲法があるからできない、そういう議論というのはおかしいと思うのですね。  私は、憲法の範囲内ですさまじい国際貢献ができる。この湾岸の日本の貢献というのは、湾岸の総戦費の何%日本が払っているのか、そういう点について国民の認識すら得られない。それは政府が発表しないからです。政府はそういう計算をなぜしないのですか。国民の血税ですよ。あの湾岸戦争のときに増税してまで戦費を払った国は日本だけでしょう。アメリカは増税していますか。していないでしょう。イギリスは増税していますか。していないでしょう。全部日本から金をもらったんでしょう。その辺のことをどうして日本政府は払ってくれた納税者の国民報告しないのか。  私は、自民党の国際協力特別委員会、あそこの委員長をたまたましているので、外務当局に行って、これは全面的に計算しなさいと。一体何%を占めるのか。どんなに計算しにくいといったって、ほかの国はがめついですよ、そんなことの計算は。一体何で日本は、あれだけ何兆円も払って、それでしかもだれからも感謝されなかったと自分で言って回っているんですか。感謝するしないは、おれはこれだけ払っているぞと言わなければだめですね。それを相手に嫌なほどわからせなければだめだ。あの当時、日本の駐英日本大使も、駐仏日本大使も全部、どうかあの金を少しイギリスに回してくれ、フランスに回してくれと呼び出されているじゃないですか。そうでしょう、御存じでしょう。総理大臣は時の外務大臣じゃなかったでしょうか。  その辺を考えたときに、日本の外交姿勢というものは、人の言うなりになっちゃいけませんよ。日本は金があるんでしょう。金を使うのが何が恥ずかしいんですか。これほど貴重なものは世の中にないですよ。人命も大事だけれども、金も勤労の成果ですよ。何も恥ずかしいことはない。日本が経済大国なら、経済力を行使するのは何も恥ずかしいことはない。昔の侍みたいな変な議論が私は行われておることは甚だ遺憾だと思うのです。総理の御意見を承りたい。
  152. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 お話のとおり、例えば、先ほど申し上げたアメリカのかっての高官の方が言われたことも、ともかくあの日本のやった貢献というのはアメリカにもできなかったよ、ドイツにできただろうか、英国にできただろうかと、今言われた国の名前を挙げながら、これを日本が果たしたことをきちんとやはり日本人は理解しなければいけないと。ただ、世界に印象を悪くしたのは、いろいろな面での決定というのが少しおくれたね、ツーレートであったということは、こう言う人もあるよということを一言その方はつけ加えたということもあえて申し上げたいと思っております。  しかし、そういったことは、やはり我が国がきちんと言っておらなかったというところにそういう評価なんというのがあるのかなと思っております。  それから、今そのほかにも我々としては、地球環境問題ですとかあるいはエイズの問題ですとか、そういうグローバルな問題、こういった問題にも寄与することができるわけでございまして、私どもは国連の中でそういう役割をこれから果たしていくことが日本というもののこれからの生きる道であろうというふうにも考えております。
  153. 平泉渉

    平泉委員 そういう一つの継続みたいなことですが、在日米軍の問題です。これは実は重大なことで国民がだれも知らないような状態に置かれている。それは知らないのが当たり前で、冷戦の当時においては、これはまさに日本の抑止力であり、軍備であり、そういう意味において、在日米軍がどこにどんなものがどれだけいるんだというようなことは、これはまさに最高度の軍事機密である部分が随分あったし、もう一方は、日本国民に対して、こんなものを抱えているからおれのところはやられるんだという恐怖感を与えても困る。いろいろな意味でそっとされてきたんですね、この分野は。  しかし、実態はどうですか。今や、私がさっき申し上げたように、国際軍事情勢は随分変わってきたでしょう。そうなると、情勢は変わっているんですね。これは恐怖の問題ではない。我が国の対米貢献としては最大のものですね。その実態を防衛当局は明らかにすべきなんだ。国民の血税で賄われている部分がどれだけあるんですか。防衛施設庁が中心になって、我が国の国土、施設を、そしてレーバーを提供して、それは世界で最高の施設をつくっているんでしょう。横須賀や佐世保あるいは三沢の、あるいは岩国の、あるいは横田の米軍基地というものがなかったら、アメリカの軍事力というものは一体どうなるんですか。湾岸戦争もベトナム戦争も。  今やまさに在フィリピンの軍事基地が全部アメリカはなくなりましたから、日本の軍事基地というものは極めて重要。このことをもっと国民に知らせて理解を求めると同時に、そしてアメリカと日本はこんなに手を結んでやっているんだと。アメリカ人だって秘密のベールに囲まれて知らない人が多いですよ。世界の歴史において類例を見ない平時における軍事協力です。かかっている予算も膨大です。  この点について、私は今、例えば防衛白書を見るでしょう、五ページか六ページ書いてあるだけでしょう。あれでいいんですか。しかも細かい字で、老眼鏡かけないと見えないですね。もう少しこの問題について対処すべきじゃありませんか。  私は湾岸戦争と同じだと思うのですね。日本人は引っ込み思案で、金だけ出して、後は下向いて黙っている。およそ羽田総理の性格と違うじゃないですか。総理答弁
  154. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 これも全く同感でして、今までは国際社会においての会議なんかでも、これは先輩が言われた言葉ですけれども、ちょうど昼休みの時間まで頭をずっと下げて、議論が頭の上を飛び交う、そして昼の時間が来たら頭を上げる、これでよかったということが言われておりましたけれども、もうそうでなくて、金を出すというだけでなくて、やはり出すべき口も出していかなければいかぬだろうというふうに思っております。  なお、今お話がありました、これは在日米軍のために日本の自衛隊の施設を共同使用、そういったものの件数は百三十八件、面積で九百八十三平方キロに及んでおるということでございまして、本当にこの地域の安全というものを確保するために、我々はそういった面でも役割を果たしておるということを申し上げたいと思います。
  155. 平泉渉

    平泉委員 国会も一度視察に行ったらどうですか。私は、まさに防衛の問題というのは、もはや冷戦時代のような一つの戦略遊戯、ゲームの時代じゃないのですね。本当に身近な問題として考えなければなりませんね。国会議員は防衛庁の自衛隊の基地をもっともっと見にいかなければいかぬし、在日米軍基地をまず見なきゃいけませんよ。そこには最も恐るべき戦力が隠されているのですから、その実態を我々が何よりも先に知らなければいけない。我々の合意でこれは提供されているのです。  日米関係の中で、通商問題というのが非常に今出てきている。これは通産大臣もおられますね。外務大臣もおられると思いますが、呼んでなかったのだけれども、きょうは総括ですから、ありがとうございました。  大事なのは、功を焦らないでほしいと思うのです。何とかおれが片づけたとか、そういうことでこれはやってもらうような問題ではない。非常に深刻な問題であって、日本にだけ分があるわけではありません。アメリカにだけ分があるわけではありません。日本には構造上の重大な問題があるし、アメリカも同じような構造上の問題がある。その場の、おれが次の中間選挙までに何とかうまく成績を上げるんだとか、あるいはおれは羽田内閣でひとつ新しい成績を上げるんだとか、おれは新閣僚としてこれをひとつやるんだとか、こんなことでやられたら日本の経済政策上あるいは外交の先例として重大な問題になる。  どうか功を焦らないこと、腰を落ちつけて、これは日米関係という二つの偉大な産業国家、経済国家が、お互いに引っ越しできないのですから、その中でこれはずっと将来にわたって持っていかなければならない重大な問題なんですね。一内閣の問題じゃありません。しかし同時に、ここで変なことをすればこれは世界の貿易のルールを完全にねじ曲げることになる。そういう認識を持ってぜひ、わけのわからぬ合意を何とかサミットまでにやるんだとか、一番国民は評価しませんよ。そんなに国民の教育程度は低くないです。その辺について通産大臣の御意見をひとつ承ります。
  156. 畑英次郎

    ○畑国務大臣 ただいま先生御指摘のとおり、実はせんだってワルシャワで東西関係の経済担当大臣が会合しましたときにも、ドイツを初め各国の方々がこの日米間の経済摩擦の解決のありようといいますものにつきましては大変大きな関心を持っておられることも肌でもって痛感をさせていただいたわけでございますが、ただいま先生御指摘のとおり、ただ経済分野の信頼関係ということのみならず、これは世界に対して、そしてまた日米間の二十一世紀に向けての本当の意味での信頼関係を築くというようなベースを踏まえた解決を図っていかなければならない、かように考えておるわけでございます。
  157. 平泉渉

    平泉委員 今到着したフォーリン・アフェアーズというアメリカ外交雑誌には、ロジャー・アルトマン財務次官とコロンビア大学のバグワティ教授の、アメリカの言っていることはまさにこうで正しいんだ、それは財務省の次官ですから当技そう言う。一方、バグワティの方は、日本が全面的に正しい、日本にアメリカの悪い癖を持ち込もうとするな、こういう大論文が対立して二つ並んで出ていますね。  フォーリン・アフェアーズはエリートの雑誌だから大衆とは関係ないと言われるかもしれないけれども、やはり今この問題が深刻な問題であって、両者の発言にそれぞれ分があるんだ、こういうことをやはり腰を落ちつけて見なければならぬということを、やはりアメリカは良識の国で、だんだん揺れが、クリントンがなった当時の気負い立った状態から少しずつ変わってきている、この辺を十分念頭に入れて大国としての交渉をしていただきたいと思いますね。  それから、私はもう一つ重大な問題があると思う。日米経済関係というものが重大な問題になっているのは、一九六八年からですか、日本が経常収支で黒字がコンスタントに出始める。たしか六八年です。石油ショックのときにちょっと赤字になりますけれども、それはオイルが高くなれば当然我が国はちょっと赤字が出ますけれども、しかし、原則として日本は黒字ですね。これは何年続いているか。これは大変な年数になります。二、三十年、ワンジェネレーションの黒字の連続です。  しかも最近は膨大な額の黒字が出ている。これは始末に困ることになるのです。外貨建ての資産がこれだけふえますと、これはもう円にならないのです、だれが考えたって。これを円にすることはできません。だれか円を持っている人がそれを買って払ってくれるのならわかりますよ。そんなことはできませんから、ドルは永遠にドルの形のままで残っていることの方がほとんどの状態になります。だれか外貨を持たなければその通貨は消せません。  こういう事態で、今一体我が国はどのくらいドル資産を持っているのですか。それは直接投資もあるし、それからポートフォリオ投資もあるし、いろいろな区別がありますけれども、しかし累計するとね。  それからもう一つ、これは大蔵省は国際金融局というのが統計をとっているわけですけれども、考えておかなければいかぬことは、例えば東南アジアで日本がやはり大変黒字を出しますね。東南アジアで黒字を出すと、その決済を、東南アジアの諸国は、東南アジアがアメリカとの間で受けたドルの黒字の決済でするのですね。最終的にドルは全部日本のところに返ってくるのですね。そういう構造になる。  キーカレンシーだからそうだということもあるけれども、日本は結局、他人からいうと、わかりやすく言えば、債務証書を買い集めている人に見える。株券をいつの間にか買い集められてしまったなと、アメリカは気がついてみたら膨大な対日債務をしょっているなと。どのくらいになっていますか。
  158. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 今現在正式に数字が出ておりますのは平成四年末でございますが、対外総資産二兆ドル、それに対して対外純資産五千億ドルというふうに考えておりますが、間もなく平成五年末の数字が出てまいります。
  159. 平泉渉

    平泉委員 それは対米関係として表面、登記されているのがそうですけれども、それ以外の黒字も恐らくドル建てになっている。その辺を勘案しますと、私は、三千億ドル上積みして恐らく八千億ドルになるだろう。しかもそれはどんどんふえていますから、これだけの黒字になればそれには利子がつきますね。その利子がまた払えませんね。その利子はドル建てで来るのですから、払えるも払えないもそれはもうドルの資産に積み上げられる、こういうことになるわけですね。  ざっと考えて八千億ドルからやがて一兆ドルだという資産を日本がアメリカに持っている。それは大変なことですね。どうして大変なことなのか。目減りをしたときはどうなるんですか。八千億ドルということは邦貨換算約八十兆円でしょう。五円円高すれば四兆円消えてしまう。現に我が国の保険会社は膨大な為替差損をこうむっていますね。数字ありますか、大蔵大臣
  160. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 まずちょっと申し上げたいのでございますが、対外資産は全部ドル資産というふうになっておりませんで、これは各経営主体が持っているわけでございますが、それなりに為替リスクの問題を考えながら、各国の通貨の事情、あるいは金利水準、株価水準などを見ながら、それなりに地域別あるいは通貨別の資産というものを分けてやっておりますので、全部がドル資産であるということにはなっていないことは御理解をいただきたいと思います。  今、最後のお話でございますが、平成四年度末の生保会社の海外投融資の総額でございますが、大変恐縮でございますが、円ベースで二十二兆五千億、二千億ドルになっております。
  161. 平泉渉

    平泉委員 大蔵大臣せっかくのお答えですし、私は大蔵省の国際金融局の能力を疑うわけじゃありませんが、こういうものは統計がなかなかないのです。あなたの言う数字もそれほど確かなものじゃない。それはむしろ経企庁長官の前職、前におられたところの方がその問題は御理解が深いかもしれませんね。まあしかしそれは、その辺のところが世界の歴史の中でも空前の事態なんですね、こういうことは。  スターリング残高問題というのが私が昔外務省に入ったころにあって、大変重大問題だったことがあるけれども、第二次世界大戦でイギリスが対外債務を徹底的にポンドで支払っていって、それで残額が積み上がってしまった。どうやって決済するんだと。日本とアメリカ関係で、この膨大な資産を日本が持ち続けている、それはふえる一方です。これを返済させるためには、日本が経常収支で赤字を出さなきゃならないでしょう、理屈からいって。赤字を出す以外に方法はないですね。そういうことはあり得ないですね、しばらくの間。相当の研究をいろいろやってみても、極端な円高にならない限りなかなか赤字にならないんです。これはエコノミスト、みんな大体そう見てますよ。経企庁長官、どうですか、その辺の見通し。
  162. 寺澤芳男

    ○寺澤国務大臣 私もそういうふうに見ております。なかなか赤字にならない。
  163. 平泉渉

    平泉委員 日米関係に実はこの問題が潜んでいるんですね。これは、ドイツはこういうことをしてないんです。それは、日本は三十年ぐらい前に大体この傾向がわかったら——今あなたは分散投資と言われたけれども、一体、日本のようなこんな巨大な経済、巨大な貿易の中でほかの国の通貨でこんなもの賄える金融市場ありますか。それはあなた、野村証券さんに聞いたって大和証券さんに聞いたって、それは各生保会社だってこのごろ一四%以上外貨資産です。我が国のペンションファンドというもの、持っている外貨資産の割合というのは世界最高でしょう、金額は、絶対額で。日本は世界最大の年金基金の対外投資をやっていますね。  だから、そういう大きなことになれば、それはドイツ・マルクで運用できるとか、フレンチ・フランで運用できるとか、そんな生易しい状態じゃない。そういう問題についてドルとの間で、もはや緊密な関係にあってこれは切っても切れないんですよ。余り金を貸し込んじゃったら、その企業とは切れない。  そういう事態というものについて、これはやはり日米通商問題というだけの問題じゃなくて、アメリカが日本との関係で非常に心配しているのは、この日本のジャパン・マネーなんですね。そういうものを日本が仮に投げ売りしてでも引き揚げるということになったらどうなるか、これはアメリカの通貨当局にとっては何よりの心配だろうと思う。大蔵大臣の所見、どうですか。
  164. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 今お話しのように、おっしゃるように一九六八年からだと思うのですね、恒常的な黒字体制に入っていったのは。それ以来、特に最近の現象はもう申し上げるまでもございません。  もちろんこの体制に対しては今いろいろやっておりますように、国際協調的な産業構造に直す、あるいはまた市場開放をする、規制緩和をする、いろいろ言われておりますが、なかなか目に見えた形で即効的に出てきてないのも事実であります。赤字体質とまでは申しませんけれども、内需拡大の効果もそれなりに出てきていることは事実で、平成五年度の数字では明らかにこれは輸出の減、輸入の増が出ておりますし、円ベースでは三年ぶりに経常収支の黒字は減ってきておる。そのために、平成五年の成長率、実は〇・一%でございましたけれども、内需の増が〇・四、外需の減が〇・三というふうに少しずつ形が出てきている。しかし、根本的解決のところまでまだいってないというのは御指摘のとおりだと思います。
  165. 平泉渉

    平泉委員 そこで、アメリカはもう困っていろんなことを日本に要求を突きつけてくるわけです。マクロ経済政策の協調をよくするんだとか、極端な円高は困るとか、あるいは円高に誘導するんだと言ってみたり、今度はドルが余り下がっちゃ困る、長期金利が上がったら大変なことになる、まあ本当に迷走状態ですね。それをまた追っかけて我々の方の資本市場は本当にこれは一喜一憂しなきゃならぬ。これは二大経済国としてよほど考えなければならぬ事態ですが、その際、日本の経済政策というものがどういうふうになっているのか。内需振興策をやれと、またしてもあなたはG7の会合に行けば言われるでしょう。また、そういうことがずっと合意されてきている。  ところが、こういうときに、殊に不況克服だ、内需主導型の経済をつくるんだ、こういうことを言うと、大蔵省以外の官庁、経企庁を含めて経済官庁みんな、通産省の現役の局長さんもみんな、公共投資、社会資本投資をこの際やるべきだ、声をほとんどユナニマスに言いますね。一致して言う。エコノミストもみんなそう言う。宮澤総理もそういうことを主張された。大蔵事務当局は徹底抗戦する。  いや、そこで私は何も大蔵省が悪いと言っているんじゃないんですよ。大蔵省事務当局は、国債の増発にかかわるようなことはもうとにかく願い下げだ、身を挺して反対する。政府の部内で二つの意見が絶えず対立する。公共投資、社会投資をどんどんどんどん国債を増発してでもやるべきじゃないかという議論と、これは絶対いかぬという議論とが絶えずあって、内閣総理大臣はそのことの調整に非常に困る。これがこの数年間、自民党時代を通じてずっと日本経済の経済政策のフォーミュレーションの中で我々が悩み抜いてきた事態なんですね。  そのことの裏を考えないといけない。国債を余り出さないというのはどういうことですか、大蔵省。それは、将来の経済成長に自信が持てないからなんですね。将来の経済成長、GNP比率の国債の残高というものがむしろ減少していくというぐらいに経済成長するんだという自信があればそんなに反対する必要もありませんが、まず経済成長に自信が持てないと実は大蔵省は言っておるのかどうか。国債出すのは反対だ、国債の残高、これはもうこれで腹いっぱいですよ、これ以上出したら財政の対抗力を失います、私も経企庁長官としてそういう答弁をここでしているんですよ。それは一体何を意味しているか。それは、日本の経済は成長できませんよ、税収がそれだけ上がってきませんよ、払えませんよということを言っているんですか。  それとももう一つは、仮説がありますね。今度あなたがお出しになった、大蔵省がお出しになった文書にもあります。たとえ少しぐらい税収が上がっても全部厚生省の予算に食われてしまうのです、社会福祉の負担というのはもう天文学的に増大していく一方です、それを抑える手だてはございません、財政の対抗力はそこでも失われる、経済の成長がまずない、そこへプラスしてまさに高齢化社会の悪夢が到来するんだ、だから国債出しません。出したってそれは払う当てはありませんよ。金利が上がるだけですよ。そういうジレンマを自民党政権のときからずっと引き続いて我々は持っているのです。これは何もあなた方を責めているのでも何でもないのです。我々の今共通の最大の問題なんですね。  その辺を大蔵当局から、大蔵大臣から、当局というよりもあなたから、その辺の腹づもりを本当に国民に率直に話しかけてください。
  166. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 私どもも公共投資に対してそんなに否定的というか消極的ではございませんで、例えて言いますと、今度平成六年度の見通しを見ますと、IGベースでございます、これは一番私は正確だと思うのですが、IGベースで平成五年度が一〇%なんですね。それに対して平成六年度は一二%でございまして、そのIGの財源というのは当然これは国債でございまして、私はこれは相当な努力をして内需拡大策をやっているということの御理解の一助にもなるんじゃないかと思います。  また、私は建設国債といえども国債であることは変わりないという意味において、平泉委員にも改めて申し上げるわけでございますが、特に赤字国債になりますと、基準がなくなってしまう。そしてそれが結局、例えばレーガン減税の例を見ても、国債政策によって経済を喚起することによって、税収がそれを全部確保できるような形の実際の経済運営ということは成り立たないのではないかということをもう一つ私どもは考えております。
  167. 平泉渉

    平泉委員 これは大蔵大臣としては答弁しにくいことですね。やはり一国の経済の根幹に関する診断をやるということですから、影響もあります。殊にあなたが言われれば影響が出ます。だからあなたは言葉を避けられましたけれども、私の質問は意義があるのですよ。これは残る問題なんです。これは実は日本経済の最大、一番重要な問題だと私は思います。  そこで、それは政府、大蔵省当局は双肩に日本経済をしょっているんでしょう。だからそこまで心配されるんだが、それは実は日本国民だってそうなんです。将来の経済成長に不安があるから貯蓄するんですよ。将来の福祉対策に不安があるから貯蓄するんですね。そうでしょう。政府が国債出せないというなら国民も貯蓄しなければならぬ。やはりそれはみんな不安なんです。そのもとにあるのは不安なんです。不安だから先々払える見込みのない債券は出せません、これ以上赤字がふえたら大変なことになります、税について国民の合意がいただけるかどうか本当に不安でございます。すべて不安、不安だな。  まさにそういう事態というものが、今度は逆に経済を萎縮させる、そして貯蓄に励むということになる。その中で民間貯蓄は高どまりしますね。他方、民間の投資や政府投資は相対的に減少していく。経済はどうやって循環するんですか。経常収支の黒字が積み上がるより方法はないのですね。それが今の日本の状況なんですね、この数年の。これはもうみんながよく知っていることですね。  だからこれは、単にG7で集まって、お互いにその場その場で金利だ何だといって専門用語を駆使して、実は何も言っていない、よく読んでみると。そんな文章を幾らつくっても仕方がないんですね。あなた行ってこられたばかりで甚だ失礼なことを申し上げているようだけれども。  その辺のところを政府は、大蔵省も経企庁もそれぞれ意見が違うとか、その場の、税収の見込みのところをすり合わせをしないと予算案がつくれないとか技術的な議論でなしに、本当に国民を説得してもらいたい。これだけ国民が膨大な在外資産を積み上げるほどに貯蓄に励むということは何なんだ、この辺が私は重要な問題だと思いますが、経企庁長官答弁してください。
  168. 寺澤芳男

    ○寺澤国務大臣 平泉委員のおっしゃるように、とにかく膨大な貯蓄、我が国では、国民が一生懸命に働いたお金を貯蓄し、なおかつドル資産というのは非常に巨大になっております。そういうことについては、それをよく見きわめた上で、そしてまた今後の円ドルの問題も絡んでまいりますが、日本経済全体の動きというものがやはりそれによって相当大きく影響されるということもわきまえながら、日本の経済運営、かじ取り役としてしっかりやっていきたいと思います。
  169. 平泉渉

    平泉委員 とにかく無類に活力のある国民の経済ですから、大蔵当局や経企庁当局やその他政府が経済の先行きについて余り心配し過ぎたことばかりやっていると、物すごいその余力というのはほかのところに流れていっちゃう。このかじ取りは難しいですよ。  石油ショックのときには、あるイギリス人が、日本というのは何百万トンの巨大なタンカーが太平洋を動いているようなものだ、方角転換しようと思ったら周りの船もみんなやられる、なかなか簡単に回れないんだ、こういうことを言いましたけれども、日本経済は迷走状態である。この問題を日本政府は、経済は政府が全部動かせませんよ、しかしそれでもGNPの四分の一の大予算を抱えている、まさにこの予算委員会で審議している、政府としてこういう責任がありますね。  この経済の迷走状態、多くの政治家が取り組んで、この数年来全く解決を見ていない。またしても、公共投資をふやせ、いや出せません、こんな議論ばかりやっている。あばら家に住む高利貸しだ、一橋大学の野口君が、大蔵省にいた男ですよ、そう言っているじゃないですか。名言ですね。  私は、日本が今こういう閉塞状態に来たときに、ぜひ教育投資に力を入れていただきたいと思うのです。文部大臣、おられますか。日本の教育政策というものは大成功だったと言われているけれども、それは初等教育、中等教育です。高等教育は世界で最低なんですね。少なくとも評価はそうです。その辺について文部大臣、今政府投資がこんなに低調で、公共投資をやったって全然赤字になるし、こんなものはだめだ、返せませんと言って議論をしているけれども、まさにこういう人間に対する投資を考えたらどうですか。大臣、  コメントしてください。
  170. 赤松良子

    ○赤松国務大臣 人間に対する投資という御説でございますが、まことにそのとおりだと思います。あるいは人間を育てておくということは最も重要な、最も有効な投資ではないかと思います。それにいたしましては、今の高等教育の現状が大変憂うべきものであるという御指摘もそのとおりだと思います。  この数年、そのことに文部省といたしましても気づくというか、その点に注目いたしまして、確かに大学の施設設備等が老朽化、劣化をしておりましたので、その改善に全力を挙げなければならないというふうに考えている次第でございまして、平成五年度は三次にわたる補正予算で、かなりの投資といいますか財源をその改善のために使わせていただいている、また、ただいま御審議中の六年度の予算につきましても、かなりな増額を予定させていただいている次第でございます。
  171. 平泉渉

    平泉委員 だんだん時間がなくなって十分質問ができませんが、その設備のことも大事です。殊に理工系の日本の大学教育は悲惨な状態であることは、もうあなたの言われたとおりです。  しかし、同時に大事なことは、日本の大学の持っている封建性ですね。一たび教授になったら二十年も三十年も教授のままでおられるとか、あんなとんでもない社会はありませんよ。アメリカのハーバード大学やMITはどうですか。あんなばかげたことをやっているから、私は名前をここで挙げると人権問題になるから言わないけれども、日本の大学教授なんというのは大蔵省へ持ってきたら使えませんよ。  そんなに大蔵省を高く評価しているんじゃない。僕は官僚制度について後で言いますけれども、まさにその辺が問題なんです。アメリカは学界の第一線を国際会議に持っていってすぐ使えるでしょう。そうしたら、実際の訓練を受けますね。IMFにでもどこでも全部大学の先生が直接行ってやれるでしょう。日本は出せますか。そういうところに問題があるんです。  日本の大学というのは、単に金だけつけるだけの問題じゃない。教授会の自治と称する何とも言えない中世的な封建制度というものを打破することを文部省、考えてくれなきゃだめですよ。  最後に、もう時間がなくなってきたのですが、我が国の高齢化のことですね。これは重大な問題だと思うのです。  さっき私は申し上げたけれども、高齢化というのはまさにオブセッションなんです。オブセッションというのは、何というのかな、頭について離れない。こういうふうに今、日本は全体が高齢化の問題でパラライズしているんだね。麻痺しているんです。政府の政策立案能力を完全に麻痺させている。  それはつまり、現代社会というのは寿命を延ばせても、中途半端な医学ですから、寿命はフィジカルに現実には延びているけれども、実際は活力のある長寿社会とは言えない。半身不随の人間が三十年も四十年も生かされる残酷な社会なんです。現代医学の水準というものを本当に検討する必要がある。早く殺せと言っているんじゃないんですよ。そこを誤解してもらいたくない。  生かす以上は本当に生かしてもらわなければならない。そのためには若いときから注意しなければいけない。そうでしょう。長年の、若いときのあれが報いだなんてよく言って酒を飲んでいるやつがおる。若いときから注意した長寿社会、六十で死ぬんだということを前提とした社会では間に合わないんです。九十まで生かされるんだ。どうやって九十年間の健康を守るかということを考えることがない限り、社会保障政策はただただ泣きと出費の渦、際限ない増大のために国家財政を破滅させつつあるんです。大内厚生大臣、御所見を承ります。
  172. 大内啓伍

    ○大内国務大臣 御指摘のように、健康な長寿者をつくるということが高齢化社会の費用を軽減する意味では非常に重要な課題だと我々思っております。特に、男も女も七十五歳を過ぎますと相当ぼけの比率が急速に高まりまして、特に八十歳代になりますと一二%から一五%という比率になります。  したがいまして、私ども厚生省といたしましても、長寿科学研究推進十か年事業というのを今遂行しておりまして、ここでは痴呆の発生メカニズムの解明、予防、治療、リハビリといったようなことを総合的に実は研究する体制を今急ピッチで進めているわけでございます。  その一環といたしまして、平成七年度からは、これは愛知県でございますが、長寿医療センターというものを設置をいたしまして、全国的にモデルになるような長寿医療、あるいは臨床と医療を一体として扱う長寿医療といったようなものの開発に鋭意取り組んでいるさなかでございまして、御指摘の点はまさに最も重要なポイントである、こう認識しております。
  173. 平泉渉

    平泉委員 これは日本は大変なことになりますね。これから先の税収がたとえふえてもそれは全部厚生省に取られてしまう。それはきのうの書類がそうでしょう。あれ見たら慄然としますね。だから、大蔵省何もできないというのはわかります。大蔵省の文書と厚生省の文書が一緒に出てくるんですから、政府税調に対して。これはもう老人に滅ぼされつつあるという事態、こんな惨めな社会がありますか。  老人というのは、どうして老人になっちゃったんですか。というのは、私はここにおられる皆さん国会議員だから申し上げたいけれども、国会では六十歳といってもちっとも年寄りじゃないんですね。国会では七十でもまだ若いんですね。なぜか。落選すると途端に死にますよ。そうでしょう。こういうことは何を意味しているかというと、定年がないと言っちゃ失礼だけれども、それはいろいろ反対が出るかもしれないけれども、私はやはり張りのある生活をさせるということがいかに健康に重要かということで、六十過ぎたら老人だと扱う社会のソフトウエアを変えなければ老人問題は解決しないんです。  僕は、二十五から五十五までの三十年のA社会、五十五から八十五歳までのB社会と二つの社会が一つの社会の中に併存していいじゃないか、別々の労働市場があっていいじゃないか、別々の生産市場があっていいじゃないか。そういう進歩した社会を日本が率先してやらなかったら、日本は高齢者問題につぶされる惨めな先進国になってしまう。私は、大内厚生大臣が党人派として入閣されて、長年の労働運動の経験がある方ですから、どうかひとつこれは抜本的なことを考えてもらいたいと思うんです。ソフトウエアの開発です。九十歳社会というものを前提として、日本が世界で初めて、ナーシングホームとか酔いどれ老人とかぼけ老人とかのただふん尿のにおいに満ち満ちた老人ホームをたくさん建設することだけが厚生省のやることじゃないんですね。大臣の所見を伺います。
  174. 大内啓伍

    ○大内国務大臣 御説のとおり全くごもっともでございまして、今申し上げたような具体的な取り組みをしているわけでございます。御期待にこたえたいと思っております。
  175. 平泉渉

    平泉委員 今の問題は労働大臣もぜひ御協力を願わなくちゃならぬと思うんです。これはつまり、老人と言わなくしさえすれば八十歳でも純粋な労働力ですね。高齢者労働、労働白書を見ますと、高齢者の労働問題というような考え方をしている。高齢者じゃないです、こんなのは。熟年労働。今、全然違います。認識を改めた労働市場のつくり方、育て方、こういうものをぜひお考えいただきたいと思います。  それからその次、地方分権のことですね。これは細川内閣のときから羽田内閣に受け継がれてきて、絶えざる大きなメーンテーマになっているんで、これも国民が非常に聞きたがっています。  核心をひとつ聞きたい。この分権というものの本質は何ですか。何を一番ねらって言っているんですか。私が聞きたいのは、国から地方へ、地方から県へ、県から市町村へとだんだん分権していく。要するに、最終的には中間の、インターミディアットみたいなものは全部ぶつ飛ばして、まず市町村と中央政府とが向かい合う、こういうようなことが分権なんですか。担当大臣総務庁長官
  176. 石田幸四郎

    ○石田国務大臣 地方分権で一番大事なのは、何といいましても、現在、日本の行政というのはどちらかといえばオールジャパン的な発想が私は多いと思うのでございますけれども、やはりそれぞれの地域の中で独自の文化を持ち、また独自のそういった風土を踏まえた、そういった地域住民への一つの行政サービスが独自の考え方で確立されることであろう、こんなふうに考えておるところでございます。
  177. 平泉渉

    平泉委員 これは大変大事なことでして、日本の中央政府を中心とする政府というのは、今世界で最大の中央集権国家なんですね、日本は。こんな大きな規模のGNPでこんな大きな人口の中央集権国家というのは世界に一つもありません。中央集権国家の代表をフランスにとれば、日本の半分から三分の一に近いGNPであるし人口ですね。日本は、そういうことを考えますと、よほどこの分権の問題はうまく考えていかなきゃならぬ。  今の御意見は、当たりさわりのない大臣の御意見は別に反対のしようもありませんけれども、どうも明確でない。ポイントが明確でない。やはりこの際、私は、具体的にどうするんだということ、アイデアをまず国民に政府が提示する義務があると思いますね。ただ分権だ、分権だ。行き着く先ほどうなるのか、何を考えているのか。中央政府の権限を縮めるのか、中間の方がだんだんふえて、こっちは縮まるということを構想しているのか。そうじゃない、それとも中間を排除することを考えているのか、その辺のことを聞きたいと思いますね。今すぐ答弁は難しいかもしれませんが、私個人は連邦制をスクエアリーに目指すべきだと思います。  私、本当に時間がなくなってしまったんで、これで最後にしますが、官僚制の問題ですね。これはアメリカが提示して、日本の官僚はよくないということを非常に言っているようですけれども、官僚制について羽田総理大臣、御意見はどういうふうに持っておられますか。
  178. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 日本の官僚制、これにつきましては継続性あるいは一貫性、こういうものがあろうかと思っておりまして、私はこれは一つの日本の国がここに来るまでの間大きな成果を上げてきたというふうに思っております。  ただ、やはり人事の点で多少硬直性があるというようなことが指摘されるようになりまして、最近では大分各役所との交流ですとか地方との交流ですとか、そういうことに努めるようになってきておろうと思っておりまして、そういうあたりを我々としてもよくチェックをしていく必要があろうと思っております。  ともかく、いずれにしましても、よく最近では省益あって国益なしなんていうことがありましたり、またあるときには局あって省なしなんてことも言われるようになっておるということ、これは先ほど申し上げたことと同じことの例なんでありましょうけれども、いずれにしましても、やはり一つの窓から物を見るというんじゃなくて、もっと広い範囲から物が見られるようなシステムというものを構築していかなければいけないだろうということを今思っておることを申し上げます。
  179. 平泉渉

    平泉委員 日本の公務員制度というものが非常に質の高い人を集められるというんですけれども、それは魅力的な職場を独占的に共有されているからなんですね。ごく特定の限られた人だけが独占的に何十年にわたってその人たちだけしか得られないという経験を積ませるということになれば、これはやはりいろんな点で問題が出てくる。やはり独占市場なんですね。  今あなたが言われたように、もっと広くいろんな人に門戸を開かなきゃならぬということをよほど考えませんと、これはこういうふうに大きな改革の時代には、昔の陸海軍が最後まで争ったみたいな、省間のお互いの闘いなんかがひどくなっちゃって改革ができないんですね。規制緩和とかこういう問題に最後まで抵抗するようになったのでは、これは一体日本の官僚制度というものは何のためにあるのかわからない。ぜひひとつこの辺はよほど考えなきゃならぬと思いますね。  私は、その規制緩和の問題というのは、日本がこれからこれを乗り越えられるか乗り越えられないか、一つの新しい段階に入れるか入れないかの一番のメルクマールだと思うんです。ぜひ日本の官僚制度の改革ということについては抜本的なことを考えなきゃならぬですね。しかも、三十年前に試験を通ったから後何十年でもそのポスト、さっき私が大学教授について言ったのは、大学も国家公務員なんです。そういうシステムというものは根本的に腐敗を招くのですね。おれは何年にどこの試験を通っているんだからというんで、それをずっと独占的にして、公職を全部歴任するというシステムというものは抜本的に考えなきゃならぬ。  このことは政党内閣ができなかったらだれもできません。しかも、それは最も難しいこと。いわゆる行政改革じゃない。定員とかそんな問題じゃない。システムそのものについて考えなきゃならぬ。これを日本ができなければ日本のシステムも変えられませんよ。その結果、すさまじいことが起こってくるおそれがある。私は、そういうことを申し上げているうちに、とうとう時間がなくなりました。  そこで、この一年間、政治改革を旗印に一大変化が起こってきた、こういうふうに言われるけれども、実態を見ると、この政治改革というものはどうもはっきりしていない。いわゆるこの法案が通った以後の羽田内閣の性格というものを、やはりこの際はっきりと国民支持の基盤の上に立って、国民の選挙の基盤の上に立った内閣に、幅広い支持のもとの内閣につくりかえていく、政局の転換を図るということをしない限り、これは竜頭を掲げて蛇尾に終わるということを私は一番憂慮しますね。  政治家に一番大事なことは、こういう諸般の問題を一番抱えているこの日本が、まさに政界自身の内部の野心や怨念のために政治改革の美名のもとに国家百年の大計を害するようなことが起こらないように、心から望みたいと思います。  質問を終わります。
  180. 山口鶴男

    山口委員長 これにて平泉君の質疑は終了いた  しました。     —————————————
  181. 山口鶴男

    山口委員長 この際、公聴会の件についてお諮りいたします。  平成六年度総予算について、議長に対し、公聴会開会の承認要求をいたしたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  182. 山口鶴男

    山口委員長 起立多数。よって、そのように決しました。  なお、公聴会は、来る六月三日開会することとし、公述人の選定等諸般の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  183. 山口鶴男

    山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、深山正敏氏の証人喚問につきましては、先ほどの理事会におきまして協議決定いたしました。明日の委員会において決議を行うことといたします。     —————————————
  184. 山口鶴男

    山口委員長 質疑を続行いたします。  次に、志賀節君。
  185. 志賀節

    ○志賀委員 大変遅まきではございますけれども、羽田総理大臣に、総理大臣に御就任なされましたことをお喜び申し上げたいと思います。  特に、あなたと私は、ともに葉たばこ収納価格の決定等をめぐりまして、徹夜等の若き日の政治家生活もともにさせていただいておりますし、また、かつて食事などもごちそうになった覚えがあります。いささか懐かしい思いがございます。  一方、重ね重ね私ごとで恐縮でありますが、あなたのお父上の羽田武嗣郎先生、私の父の志賀健次郎は、ともに朝日新聞記者から国会議員をやったという共通項もございまして、私は勝手に親近感を持たせていただいておりますが、それだけにお喜びの気持ちをこの機会にはっきりと表明をさせていただきたいと存ずる次第であります。  しかし、それはそれ、これはこれでございまして、これからはお耳ざわりのこともあるいは聞くことになろうかと思いますが、この点はひとつ割り切ってお答えをいただきたい、かように存ずる次第でございます。  まず第一に、いささか古い話で恐縮でございますけれども、宮澤内閣不信任案が成立をいたしました。そのときに、実はあなたを初め新生党の方々は自由民主党の党員でございました。在籍しておられたと私は記憶をしております。一方、さきがけの方は、例外はあるようではございますが、ほとんど離党いたしまして賛成投票に回ったと記憶をいたしておるのでございます。  私は、この点は、もしそういう表現で許させていただくならば、脱藩をしないままに藩主の首にやいばを当てて素っ首切り落としたという印象をぬぐえません。したがいまして、政治は最高の倫理と言われている中で、このようなことが果たして許されるかどうか、私は絶えず考えるのでございますが、その点について、羽田総理自身の御見解をまず承っておきたいと思う次第でございます。
  186. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 事実関係だけ。これは私から言うのもどうかと思いますけれども、さきがけさんは、宮澤政権に対して、これは一票入れて支える方に回ったわけです。そして、その一票入れてから今度は逆に離党をされたという経緯であります。  さて、あのときの考え方というのは、私ども、実は、やはり改革法案というものをどうしてもやろうということ、しかも、やらなかったら大変なことになってしまうぞという御指摘総理からも何回も実はお話がある。そういう中で私たちは、やはりこの国会の中で何とかひとつ対応してほしい。ということは、要するに、この国会を会期延長してひとつやってほしいということをお願いをしたわけであります。  ただし、延長しても結果はだめな場合もある。しかし、やはり延長して本当の努力をしょうじゃないかということを執行部の皆さんあるいは総理にも申し上げました。そうして、どうしてもそれがだめだとなると、我々はこれだけのことを主張してきて、もう国民の信というものは本当に失われてしまいますということを言いながら、結局は、結果としてそういうことになってしまったために、まさにつらい、本当に苦しい思いをしながら離党せざるを得なかったということ、この心境だけは御理解をいただきたいというふうに存じます。
  187. 志賀節

    ○志賀委員 心境は理解をいたしますが、少なくとも出ている姿は、大変言葉が悪いけれども、謀反人のおやりになったことだ、私はこういう印象をぬぐえないことだけをこの機会に申し上げておきたいと思うのです。  それから、もう一つ申し上げておきたいと思うのは、民主主義というものは責任の所在を明確にすることではないかと考えておるのでございます。でありますから、独裁政権の場合には、選挙をしないままにいつまでも独裁者のもとでいることもこれ可能でございましょうが、民主政治のもとにおける代議員または国会議員と言われる者は、やはり折々、ときどき、解散・選挙という洗礼を受けなければならない。そのことによって責任を明確にしていくというシステムであると私は理解をしておるのでございます。  ところが、現下、民主主義政治のもとにおきまして、責任の所在がまことに不分明な状況が現出しておる。さきに、全くまじめで純潔、純白な人だということで登場した細川内閣総理大臣は、御案内のとおりのていたらくで退陣を余儀なくされたわけでございます。  しかも、ただいま御決定を見ましたように、その深山秘書が遠からず当委員会において証人として証言台に立たなければならないところにきておる。こういうような、言ってみれば、真っ黒い人を真っ白いというような形で総理大臣につくり上げたいわば陰の力、これを今日、広く二重権力構造などと呼ばれておるわけでございますが、その同じ人物の手によって羽田総理が誕生した、これも広く伝えられ、そういう認識になっておるわけでございます。  もとより私は、ただいま申し上げましたとおり、羽田孜という人に対しての個人的なもろもろの感情はございます。しかし、一たび、その私心を別にして考えるならば、これはやはり重大な責任、無責任の問題がここに出てきておるわけでありまして、この点は十二分に私どもは考えていかなければいけない。  この二重権力構造と言われている構造の中で、今日総理の座におられる羽田内閣総理大臣自身の御心境、この問題に対していろいろ今までも言われてきたし、今日もいろいろお考えだと思うのでありますが、その点について明快にお答えをいただきたいと思うのであります。
  188. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 まず、先ほど謀反人というお言葉を使われたのですけれども、しかし、謀反人、これはもう謀反人でも私は結構ですけれども、しかし、まさにあのときには私たちは外に出る、しかもあそこで解散ということでありますから、自分たち政治生命というものをかげながらやってきたことであります。そのことだけは申し上げておきたいと思います。  それから、今二重権力構造の中で出てきたというお話でありますけれども、しかしこれは私は、確かに社会党さんがああいう、結果として要するに我々の連立から離れられたということ、これはもう本当に残念であったわけでありますけれども、しかし、そういう各党の皆様方の御推薦をいただきながら私そのものがこの座にあるということでございまして、決して二重権力構造の中から生まれたというものではないということ、このことだけはぜひ御理解をいただきたいというふうに存じております。  しかし、結果としてまた少数与党の上にあります政権であるということ、このことを思うときに、やはりいろいろな立場の皆様方の御理解を得るために、あるいは御賛同を得るために、我々は謙虚になって誠心誠意を尽くして努力をしていかなければならないというふうに思っております。  ともかく、そんなつもりで今我々の前に山積いたします課題に取り組んでいきたいというふうに思っております。
  189. 志賀節

    ○志賀委員 いろいろ考え方というのはあるわけでありますから、総理総理、私は私の考え方があるわけでございまして、二重権力構造は世間が見ておるとおりの二重権力構造であると私は確信をしておる、このことをこの機会に申し上げておきたい。  それから、もう一つ申し上げておきたいのは、御存じのとおり世界は従来の動きと一変をしたわけでございます。これは、第二次世界大戦直後から米ソの二超大国によって世界がいわば二つの世界に分かれて、それぞれの営みを持っておった。もちろんこの両者の間にはそれなりの交流とか有機的なつながりがなかったわけではないけれども、しかし、まずそういう形であったと考えてよろしいと思うのであります。  それが、言ってみればベルリンを東西に分けておりましたあの壁が崩れ去ってから、それをまるで象徴するかのようにこの二つの世界の関係ががらがらと崩れていって、全くどちらが西でどちらが東かわからないような状況になった。  言ってみれば、そこからいわば混沌ないし混沌に近い形が生じておりまして、今日はまだその状態ないしその状態の余波が続いておると思うのでございますけれども、この状況の先に、言ってみれば世界新秩序とでもいうべきものはどういうものを総理大臣としてはごらんになっておるのか、あるいはごらんになりたいと思っておるのか。そしてまた、それに対して日本はどのような立場でこれの協力をするのか、協力をしないのか。こういう点についてのお考えを、私はこの機会に承っておきたいと思うのであります。     〔委員長退席、後藤委員長代理着席〕
  190. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 冷戦後の世界というのは、依然やはり変革期の特有の不透明で、非常に流動的な状況にあろうと思っておりますし、また多くの課題というものが新しく生まれてきておるというふうに思っております。  そういう中におきまして、国際社会はより平和で繁栄した世界、今飢餓と栄養失調なんというのが何億人なんという数があるということでありますけれども、こういったものをやはり含めた繁栄した世界の実現というこの共通の目標というものを目指して、その英知と努力というものを私たちは結集していく必要があるんじゃないのかというふうに思っております。  我が国といたしましても、特に戦後五十年近く、今五十年になろうとしているわけでありますけれども、この中で蓄えてきました、例えば人口を克服いたしました、あるいは環境の問題も日本は幾つかの問題でやはり大きく克服してきたというノウハウを持っているんじゃなかろうか、あるいはあの廃墟の中から立ち上がってきたという、中小企業、零細企業の働きの中からこの日本ができ上がってきたということもあろうと思っております。  こういうノウハウというものをフルに活用いたしまして、政府開発援助でございますとか、あるいは地球環境問題、このグローバルな課題、こういったものに対してやはり日本の国としては、消極的にだれがどう言ったからというのじゃなくて、むしろ積極的にこの世界の舞台に参入しながら、何もしかし、大国意識で出ていこうということじゃありません、しかし日本の持てるものを、やはり世界の理解があったからまた日本がここまで来ることができたわけでありますから、そういう意味で、日本が蓄えた技術あるいはノウハウ、こういったものをもって世界に貢献していくということが重要なのであろうというふうに考えております。
  191. 志賀節

    ○志賀委員 日本も含めてそれぞれの国がそれぞれ持てる力をそれぞれに国際貢献等々に使う、こういうことは、もとよりそのこと自体結構なことだとは思いますが、しかし、これは言ってみれば、司令塔のないままに世界じゅうの国々がてんでばらばら、思い思い、そういう形でこれをやりますとまことに効率が悪い。あるいはまた、いろいろなあつれきがそこに出ないとも限らない。そういうことでありますから、その場合には、何かやはり日本自体が勝手に気ままにやるというような形ではなくて、当然考えていかなければいかぬことがあるんじゃないだろうか。その辺は総理はどういうふうにお考えになっておられるかを承りたい。
  192. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 これは、今おっしゃりたい一つのあれは、やはり日本の国が国際的な協力、いわゆる日本一国でどうこうするということじゃない。私がこの間ヨーロッパを訪ねましたのも、ヨーロッパ関係の深い、歴史的な関係の深い、例えば東欧ですとかあるいは中欧ですとか、また中東あるいはアフリカ、その他の地域、こういったところにいろいろな細かい問題があります。  こういったときに、日本が一国でやるよりはそういったところにノウハウを持っている国、こういった国と連携していくことが必要であろう。あるときにはグローバルな形で、国連というようなものの中でともに苦労していくことが必要なんじゃないのかなというふうに思います。
  193. 志賀節

    ○志賀委員 ただいま最後の方で総理がお触れになったように、やはり国連を軸とするのが一番穏当、妥当なような気が私はするのでございます。  ただ、ここで十分御理解をいただきたいと思うのは、日本の古来からの一つの発想だと思いますが、日本国以外にどこかに常世の国がある、あるいはユートピアがある。現にソ連邦というものは、私などは家庭環境からでしょうか、まことに恐ろしい地獄のような国だと思って育ったのでありますけれども、人によってはこれがユートピアだと思って育った方も少なくない。現に岡田嘉子が、杉本良吉と二人、俳優が手に手をとってソ連国境を越えて亡命をした。これももとをただせば、今申し上げたとおりの理想郷に理想を求めて飛び込んでいったもののようでありますが、ごく最近明らかになったことによると、杉本良吉は逮捕された早々銃殺刑に処せられておったということが明らかになっておる。  こういうようなことでありまして、現実に世界にそう簡単にユートピアとか桃源郷のようなものはあろうはずがない。ところが、人間はどうもそういうものがあるのではないかと考えてしまう。需要あれば供給ありかどうか知りませんが、何かそういうものが存在するかのような錯覚にとらわれる。  そこに出てくるのがやはり一つ国連の問題でありまして、国連というものは、日本人の多くは相当これは立派な組織であり、これに頼っていればもう間違いないんだ、最近どなたかがおっしゃったはやり言葉に瑕疵という言葉がありますが、瑕疵でも瑕瑾でも結構だが、もうきず一つないんだというようなふうに思われているようでございます。これは既に羽田総理大臣、外務大臣もお務めで十分御存じのとおり、もう言ってみればどろどろのところでありまして、各国の欲望、駆け引きの渦巻いておるところと考えても差し支えない。そういうところなのだということを日本の国民が十分に納得し、理解してこれにかかるのでなければいけないと思うのでありますが、何かにしきの御旗がそこにあるようなど錯覚がある。これを十分に国民にわからせる必要があると思います。  さればといって、国連をおとしめようとか、国連を、その幻滅の中から国連の存在意義を無にしてしまえというわけではない。これを立派なものに我々が育てていくためには、どうしてもこれは通らなければならない関門ではなかろうかと思うからこのことを申し上げるのでありまして、この点はひとつ十分に、政府としてはあらゆる広報面で徹底して国民にその点をわからしめる道を講じていただきたい、このように思うわけでございますが、いかがでございましょうか。
  194. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 御指摘、私も全く同感であります。まさに国連という場所は各国のエゴのぶつかり合いの場所であるなんということも言われます。ただ、私たちは今までも国連中心主義で日本はいくんだということを言ってまいりましたので、多少その幻想というものを我々自身も持っているかなという思いがあります。  ただ問題は、そういった国連、しかも戦後の体制の中で生まれてきた国連である、これを変えなさいという、ほかのものをつくろうという話もありますけれども、しかし私どもは、現存する機関の中では唯一の普遍的な国際機関であろうというふうに思っておりますので、やっぱりこの国連というものを生かしていくことが大事だろう、そして、そういう中で世界の平和と安全、安定というものを築いていくことが大事だろうというふうに思っております。  いずれにしましても、冷戦の時代というものにあっては、これは確かに大国の利害というものが対立したということから国連の機能というのは麻痺していた側面というのはあったと思いますけれども、しかし冷戦が終結したという今日、むしろ国連に対する期待、また新しいニーズというものが生まれてきておりまして、例えば国連の平和維持活動、こういったところにも各国が派遣するなんということが出てきました。また先ほどもちょっとお話ししておりましたけれども、例の経済開発ですとか、あるいは環境ですとか、また人口、エイズ、こういったグローバルな問題にも国連が取り組むようになってきておるということであります。  私どもは、そういった新しいニーズにこたえられるような国連というものにつくり直していく、これがちょうど今国連の改組のための作業部会の活動ではなかろうかというふうに思っておりまして、今御指摘のあったことなんかも私どもよく念頭に置きながら、これから国連の改革のために我が国としても一つの役割を果たしていきたいというふうに思っております。
  195. 志賀節

    ○志賀委員 総理大臣、どうかその点よろしくお願いしたいと思います。  それから、以前も御質問があったかと思うのですが、今日的な段階でもう一度承っておきたいのは、国連における、日本もその対象に含まれている敵国条項、敵視されているこの条項についてはいかようにお考え、いかようにお臨みになるかについて、この機会に承っておきたいと思います。
  196. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 このことにつきましては、実際にもう死んだ条項であるということを言われる方があります。しかし、文言としてこれは明記されておるということでありますから、私どもとしては、ここまで国連の中で、しかも第二番目の拠出国にまでなっていて、これが敵国条項の対象になっているというのではこれはおかしいということ、そしてまた、新しい時代に新しい秩序を求める、その司令塔と先ほどお話がありましたけれども、そういうところに脱皮しようというときには、ぜひこの敵国条項についてもなくなしてもらうように、今日までも発言してきておりますけれども、我々はこのことを主張していきたいと思います。
  197. 志賀節

    ○志賀委員 もう一つ承っておきたいことは、安全保障理事国入りを日本が志していることに関してでございます。  今まであるいはこの点、御質問があったかどうか聞き漏らしておるのでありますが、安保理事国はやはり拒否権という伝家の宝刀があることによってそれだけの重みを加えておると私は理解をしておるのであります。しかるところ、最近日本、ドイツを安保理事国に入れる場合には、拒否権を持たせない、言ってみれば丸腰の安保理事国を創設をして、そして入れるというような考え方があるやに聞くわけであります。  一体、安保理事国に日本が入りたいと言っていることとこういう動きというものは、調和のとれている話なのか、それとも全く違うことになっているのか、その辺ひとつ、私はよくわかりませんので御説明をいただければと思いますが、この点は総理大臣でしょうか、外務大臣でしょうか。
  198. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 お答え申し上げます。  常任理事国の拒否権につきましては、それが乱用されるときには安全保障理事会の機能が停止をしてしまうという点で問題があろうかと思いますが、同時に、国際社会の平和その他に貢献をする大きな責任を持っている国々にとっては、その拒否権というものの持つ意味もあると考えております。  最近の安保理改組の議論の中では、志賀先生御指摘のような議論もされていることは事実でございますが、我が国としては、拒否権が乱用をされることのないように、またそれが大国のエゴにならないようにということを念頭に置きながら運用されるのであれば、従来の安全保障理事会の常任理事国に参加をすることで差し支えないのではないかというふうに考えております。
  199. 志賀節

    ○志賀委員 この問題に関してはまだまだ議論したいのでございますが、時間の関係で割愛をさせていただきたい、またの機会にさせていただきたいと思います。  それよりも、むしろこの機会に私がお願いしておきたいことは、世界の新秩序について先ほど来総理の御意見を承ったわけでございますけれども、やはりこれをいろいろと表の皮を捨てて中の身のところまで進んでまいりますと、私は結局は人間がお互い同士尊重し合う、これは帰するところ人権という言葉で当てはまるかと思うのでございますが、その人権を尊重し合うというところに帰着するのではないかと考えておるのであります。これがスタートラインである。  言うまでもございませんけれども、人類は他のあらゆる種の生命の犠牲の上に生命を構築させております。これは何も四つ足とか二本足のことだけではなくて、植物ですら生命でございます。それらの犠牲の上に我々の生命というものは構築されているのだということを自覚するならば、お互いの生命を尊重し、お互いの人権を尊重しなければならないというところに帰着するはずでありまして、これを基本原理として今後新秩序の構築に向けて邁進をしていただきたいということをこの機会にお願いをしておきたいと思います。  なお、若干次元の違う話になるかもしれませんが、国内法の特に日本国憲法と、国際的な例えば国連憲章あるいはその他の国際条約、協定との関係につきましては、既に私の手元にも連立政権樹立のための確認事項に関する政府統一見解というものがありまして、私もこれを拝見をさせていただきまして、どうやら日本国憲法の方を上位に理解していただいておるようだな、これならいいなとは思ったものの、ちょっと私、わからないところがあるから御説明を賜りたいと思います。  この文章の第二項でございますが、「憲法と条約との関係については、憲法の尊重擁護義務を負っている国務大臣で構成される内閣が憲法に違反する条約を締結することができるとすることは背理であること、また、条約締結手続が憲法改正手続よりも簡易であること等からして、一般には憲法が条約に優位すると解される。なお、以上のことは国連憲章との関係でも同様である。」この文章でございますが、私がよくわからないというのは、真ん中の「また、条約締結手続が憲法改正手続よりも簡易であること等からして、一般には憲法が条約に優位する」、なぜ簡易だと優位するのかが私にはわからない。その簡易であること等からして憲法が条約よりも優位だというのがどういうところから来ているのかよくわからない。これをひとつ御説明をいただきたい。  それから、ここの「一般には憲法が」となっているこの「一般には」という意味をひとつ御説明をいただきたいと思うのであります。
  200. 大出峻郎

    ○大出政府委員 憲法とそれから条約との関係につきましては、憲法の尊重擁護義務を負っている国務大臣で構成される内閣が憲法に違反する条約を締結することができるとすることは背理であること、こういうことを一つ理由にして、また、条約締結手続が憲法改正手続よりも簡易であることなどからして、一般には憲法が条約に優位すると解してきている、これは従来からの政府の考え方であるわけでありますが、と同時に、先ほど御指摘のありました政府統一見解にもそういう趣旨のことが述べられておるわけであります。  そこで、ただいま御質問の御趣旨は、一つは、「国務大臣で構成される内閣が憲法に違反する条約を締結することができるとすることは背理」だと、この趣旨は……(志賀委員「それは問題ないです。次です」と呼ぶ)そうございますか。  それから、「条約締結手続が憲法改正手続よりも簡易であること」、これが憲法優位説の理由の  一つになっておると、こういうことでありますが、この趣旨は、御承知のように、憲法九十六条におきましては、憲法改正手続というものが定められておるわけであります。そして、その憲法改正手続というのは非常に厳格な手続で、国会においては特別多数議決でこれを国民に向けて提案し、そして、さらに国民投票によって過半数の賛成が得られないと改正を行うことができない、九十六条という規定はそういう厳格な改正手続になっておるわけであります。  ところが、今の憲法優位説ではありませんで、条約の方を優位させるということになりますというと、条約の締結手続は、憲法七十三条で、締結権は内閣の権限になっておるわけでありますが、国会の承認を要する場合には、これは過半数で議決、承認を得られるというような形になっておるわけであります。  そうなりますというと、国会の機能の面から見ましても、過半数で承認されたところの条約というものが仮に憲法に抵触をする、そして、しかもその条約の方が優位に立つということになると、憲法の定めている改正手続、非常に厳格な手続を定めているわけでありますが、それとの関係においても合理性がないというようなことを一つ理由にして、そういう趣旨のことを述べておるわけであります。  それから、「一般には憲法が条約に優位すると解される。」というふうにここは書かれておるわけでありますが、憲法の九十八条におきましては、条約のほかに、確立された国際法規という言葉が出てまいります。憲法と確立された国際法規との関係に関しては、これはまた、確立された国際法規といいますのは国際社会の基本的な法則とでもいうべき国際法規であるわけでありますが、このような法則を前提として各国がその存在を認めており、そして我が国憲法もその秩序の中に受け入れているというようなものがあるわけであります。  例えば外交使節の特権だとか公海の自由と言われるような、そういう確立された国際法規とされているようなものがあるわけであります。それとの関係をどう考えるのかということもありまして、ここのところでは文章が省略をされておるというようなことで「一般には」と。その辺の確立された国際法規との関係のところをここでは特に書いてございませんので、そういう意味一般にはという趣旨で入れておるということであります。  それからもう一つは、例えば平和条約のようなものにつきまして、平和条約と憲法との関係をどういうふうに考えるかというような非常に難しい問題も一つありまして、そういう非常に特別なケースについてはともかくとしてという気持ちがここには含まれておるということであります。  そういう意味で、この「一般には」というのは、確立された国際法規についてのことを触れていないということと、非常に特殊なケースというものがあり得るかもしれない、その点は除いてという気持ちが含まれておる、こういうことであります。     〔後藤委員長代理退席、委員長着席〕
  201. 志賀節

    ○志賀委員 ただいまの御説明は私よく理解できません。最後の方は、「一般には」はある程度できたんですが。  要するに、この「条約締結手続が憲法改正手続よりも簡易であること等からして、」憲法が条約よりも改正には手間取ると書いてあれば私はわかるんですけれども、優位ということは、私はどうしても理解も合点もいかない、これだけ申し添えておきます。私は法律学者でないからよくわからないんですが、常識的に考えればそうなるんです。  優位というものは、何で煩瑣な手続とか手間取るということで、難しいということでそっちがそうなるのかということは、少なくとも私だけではなしに、一般国民はわからないのではないかと思いますので、これはこの機会に申し上げておきます。お答えは結構です。  それから、私、このことを伺いました端緒はどこにあるかといいますと、昨年七月の総選挙におきまして、私ども衆議院議員選挙に立候補いたしましたほとんどの者がお米の自由化反対を公約にうたったと思うのであります。少なくとも、私は岩手県の二区の選出でございますが、一区も含めて立候補者全員がこれに反対を唱えたことは、私ははっきりと記憶をいたしております。都会地ではあるいはどうであったか定かではありませんが、岩手県に関しては間違いない。  ところが、この公約が、選挙が終わって間もなく弊履のごとく捨て去られた。これは、言ってみれば、おまえさんには、どこそこの銀行に行けば、これが何日に持って行けば現金化されるよと言って手形、小切手を渡したのが、実際に持っていったらば不渡りになっていたというのと同じで、あるいはそれ以上にひどい話で、これは普通だったならば刑事訴訟に持ち込まれる話でございますが、どうも選挙の場合にはこれが大目に見られる。  そういうようなことが現実に日本国憲法下において営まれた総選挙でなされて、それがガットのためだ、ウルグアイ・ラウンド締結のためだというようなったい文句でこれがなされた。こういうことについては、何か農民にも国民にも、国際法の方が、あるいは国際関係での条約とか協定の方が重みがあるような手品が使われているおそれがありますので、私はこの点を明確にしておきたいと思って申し上げたのでございます。  少なくとも、当時の農協の方たち、それから昨今もおいでになった農協、農民の方たちから、次のごとき話を聞かされました。随分このごろはこの公約違反が忘れられている向きもあるけれども私らは忘れてないよ、特にアメリカは、昨今見ていてもそうだが経済封鎖お家芸の国じゃないか、経済封鎖の中には食糧封鎖もあるよ、一体そういうようなことになったらばどうするんだねというようなことを言っていく人も現実にあるのでございます。しかも、一方において、この前からお話がありましたが、国会決議を数度にわたって重ねた。これをやっておる。  そういうことからして、一体この公約違反とガット・ウルグアイ・ラウンドとの関係をどういうふうに理解をし、国民に申し開きをなさるのか。しかもEC、フランスの方は、ガット・ウルグアイ・ラウンドでは、まあ詳しいことは申し上げなくても御存じのとおり、ちゃんとポイントを稼いでおりまして、全くばばをつかまされたのが日本のガットのウルグアイ・ラウンド交渉であった、こう申しても過言ではない。これについてどのように申し開きをなされるかをこの機会に承りたいと思います。総理大臣
  202. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 選挙が終わったら公約を弊履のように捨ててというお話があったわけでありますけれども、これはもう選挙になる前、それどころかガットが始まって何年かたった、その間私は、今お話があったように、例えば経済封鎖あるいはそういったことをなされたときに一体どうするのかというようなことも問いかけました。あるいは環境保全の問題も問いかけました。いろんなものを問いかけながら、このことで、まさに国会決議をもとにして世界を行脚してきたというのはもう本当に率直なところであります。  そういう中で、やはり百何カ国が集まって新しい秩序をつくろう、そのためにそれぞれの、一つずつの国がみんな、これだけは嫌だというものもみんなテーブルにのせて議論をしているときに、日本の国が最後になって嫌だということが本当に言えるのかということ。ですから私は、自由化は反対であるということ、しかし、何にも傷つかなくていいのかということは問いかけてきたものであります。ですから、私はそういう中で、しかもこれは弊履のごとくというよりは、ともかく十二月十五日という一つのタイムリミットがあるという中で、もうつらい中で、本当に断腸の思いでこれをやったんだということをぜひ御理解をいただきたいということ。  それと、国会決議をやったから何にもできないぞと言われたら、これは交渉というのは相手があってやっていることでありますから、そういう中で、ぎりぎりの交渉で、日本の立場というものも今度のミニマムアクセスという中で理解をかち取ることができたのだろうというふうに私は確信をいたしております。
  203. 志賀節

    ○志賀委員 相手が急に出てきたのじゃなしに、前からあるのですから、それはもう想定できているのですから。それで一方においては国会決議がなされたのですから、これだけはひとつお忘れなく。  それから、永野前法務大臣発言について申し上げたいと思うのであります。  私は、既にいろいろな方から、永野発言をめぐって総理大臣がどういうふうにお考えになっておられるかについては大体議論が尽くされたような気がいたしますので、この機会にはっきりと申し上げておきたいことは、どうも、政治家の世界もそうでありますが、政治家というのは人の師表に立つと言われているだけありまして、世間では本音と建前などというものの使い分けを上手にやる人間がむしろ歓迎されるようなおかしな風潮ができておる。私は、本音と建前を合致させる努力が人間らしい生き方だと考えておる一人でございます。  ところが、ここで大問題は、永野さんは、私は、おなかの中にあれがあったからあのような発言をなすったのだと確信しております。おなかの中が改まっていないのに、数日後には、口では私は間違えていました、それは取り消しますということを言うのは、一体いかがなものであろうか。むしろ、自分の信念に基づいて発言をこのようにしたのだ、だから、私のこの発言が通らないのであれば潔く閣僚を辞しましょう、これが私は本来あるべき姿であって、言葉というものはそういうものだと理解をしておるのであります。おなかの中と口から出る言葉とは全然別なんだということだったら、一体何をもって信じたらいいのか。私ども人間社会のこれは重大問題にかかわることでありますから、このことを申し上げておきたい。  特に私は、昨年の十月四日の当委員会における質問の際もはっきり申し上げておりますのは、国会議員は言論人である、言論人としての中枢にある者という自覚と誇りを持つべきであるという趣旨のことを申し上げたはずであります。であればあるだけに、国会議員はみずからの言葉というものに責任を持たなければいけない。私は、そういう意味において、言葉を簡単に撤回したり白紙にしたりというこの姿を私は蛇蝎のごとく嫌うのでありまして、この点について総理大臣のお考えを承りたいと思います。
  204. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 今、政治家というのは言論人である、言葉を大事にしろという話、まさに私もその点については全く同感であります。ですから、先ほどのウルグアイ・ラウンドの問題についても、いろいろな話を率直にしますと自由化なんということを言われたわけでありますけれども、そんなことで私も通してきました。  ですから私は、この間の永野さんの発言というのは、今そのことについてのあれはもうわかっているけれども、しかし、それはこうだという思いがあったことは私も率直にお聞きをしたいと思いますし、言葉というものは大切にしていかなければいけないというふうに思っております。
  205. 志賀節

    ○志賀委員 前回も私は申し上げたのでございますが、衆議院規則と参議院規則に朗読禁止条項がございます。これを別の言葉で言うと、大体自分の言葉で作文をしたのではなくて、人の言葉でなされている作文を読む可能性が非常に強い。要するに、人の言葉を自分がしゃべっているのだったら、自分の心にもないものを口でしゃべっているのと同じことになるわけでありますから、絶対に国会ではこの朗読禁止条項を遵守していただきたいということが私のかねてからの念願でありまして、そういう方向でやはりやっていかなければいかぬのじゃないだろうか。この永野発言の機会に痛切にこのことを私は感ずる次第でございまして、これを私は強く求める次第でございます。どうかよろしくお願いをしたい。  それから、もう一つ申し上げておきたいことは、永野発言をめぐってさらに私の考えとしては、なるほど、私は南京の虐殺もあったと思います。これはもう頭数においては区々でありまして、どれが本当であるか、私もだれもわかる人はないと思いますが、虐殺はあったであろうと思う。このことは私は認めるのでありますけれども、しかし、全般的に見て、日本が当時やったことのいいことも含めて全部悪いことにされているということはいかがであろうかということも私は実は考えているのであります。  私自身よく知っている人で、この人は故人になりましたけれども、オランダ人の俘虜を、戦時中に我が身に配給されたものまで割いてその人たちに分け与えていながら、戦後は巣鴨プリズンに引かれていったというケースもございます。そういう人道主義にのっとった人までがそういう目に遭っているということも含めて、私は、東京裁判の見直しという時期がそろそろ近づいているのじゃないか、もっとこういうことを考えてみる必要があるのじゃないかと思うのであります。  古来よく言われることは、歴史は勝利者によって書かれたものであって、真実を描いているものではないという言葉がございます。したがいまして、私は、敗者も含めて真実を解き明かすことのできる、そういう歴史が語られるべき時期が日本にも来ておかしくないのではないか、こういう考え方があるということをこの機会に申し添えさせていただきたい。どうかこの点も政府としては十分に御考慮の中に置いておいていただきたいと思う次第でございます。  それから、北朝鮮問題をめぐって今までもいろいろ御議論がございました。この御議論にいろいろ私も考えさせられるところがあるのでございますけれども、実は各党の新たな連立政権樹立のための確認事項というもので、社会党から出ておりました日中という言葉が消えて、そのかわりに「アジアにおける関係各国と必要に応じ連携するものとする。」となった経緯、あるいはこれらについて御説明いただける方がありましたらば承らせていただきたいと存じますが。
  206. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 私が申し上げる立場にはないということを申し上げたいと思っておるわけでございます。  これは連立与党の合意でございますので、政府としてお答えする立場にございません。
  207. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 「政府は、日本国憲法のもとで緊急の事態に備えるとともに、日・米及び日・韓の各国間で緊密に連携し、協調して対応する。」ということであります。これは、それぞれ、我々の方は日米安保条約ですとか、あるいは米韓の条約を持ったり、あるいは先ほどもお話ありましたけれども、合同訓練、こういったものをする仲でもあるということもあります。しかし、それより何より、やはり中国の存在というのはこれはもう無視できないこと、私もよく承知しております。  そういう意味で、中国にも、私自身も、あるいは細川総理が行かれたときにも、また先日久保書記長がおいでになったときにも実は親書をもって日本の立場を申し上げると同時に、ぜひ北に対しても話しかけをしていただきたいということを申し上げたことは事実であります。
  208. 志賀節

    ○志賀委員 私は、もし北朝鮮に対して何かのアクションをアメリカが起こすようなことがあった場合には、果たして日米韓だけでいいのかという非常な懸念と心配をしておる一人でございます。一体、日本は不測の事態に巻き込まれないで済むのであろうか、こういう懸念でございます。したがいまして、私は何ゆえに中を削ってしまったかわからないのでありますが、中国にひとつ、大いにこれにはコミットしていただけるような機会を今後ともお考えいただきたい。真剣に私はこれ、考えております。  私がここに持っておりますのは、朝日新聞の朝刊で、これには「朝鮮日報は二十三日付の朝刊で、新生党小沢一郎代表幹事との会見記事を掲載した。この中で小沢氏は、東アジアの脅威として、中国の軍事大国化と、核開発を図る朝鮮民主主義人民共和国を挙げ、「北朝鮮が何か問題を起こすようであれば、国連の枠内で日、米、韓がひとつになって対処すべきだ。」」こういうふうに言っておられる。これはもう当時からそうすると考えが固まっているのかな、中は入れないんだな、こういう気がしてならないこの記事でございます。  私はこの点を非常に懸念いたしますので、どうかくれぐれも中国というもの、現に中国というものは北朝鮮の隣なんですから、日本よりもむしろ近い、陸続きの国であるだけに、この国の権益というものも十分に頭に置いていかなければいけない。それだけのものを我々が持たなければ中国との間もどのようになるかわからない、これを私は特に御注意を喚起する次第でございます。  昨年、私はゼネコン主導による土建屋選挙なるものの実態を申し上げた次第でございます。こういうことが行われる限り、いかに政治改革を口の端に上し、いかに小選挙区制をやろうとも、これは翼賛選挙さながらのものになるのであって、これは極めて危険なことであるということを指摘をさせていただいたはずであります。  そこで、建設省に伺いたいと思いますのは、その後、入札制度についてはどのように改善がなされたかなされなかったか、これをちょっと教えていただきたいと思うのであります。
  209. 森本晃司

    ○森本国務大臣 志賀委員のお尋ねでございますが、昨年はそういった公共事業発注に関して、いろいろなことで国民の皆さんに政治不信を持たれたことにつきましては私も極めて残念に思うと同時に、遺憾に思っているところでございます。建設省としては、国民の信頼を回復するために、まず入札制度を変えなければならないということでそのことに取り組ませていただきました。  既に委員も御承知かと思いますが、指名制度から一般競争入札制度、殊に国の事業では七億三千万円以上あるいは政府関係機関では二十四億三千万円以上については一般競争入札とさせていただきました。さらにまた、中規模の競争入札につきましても改革を図りまして、公募制を取り入れること等々今図っているところでございます。  さらにまた、工事完成保証人制度、この制度が談合を呼んでいるのではないだろうかということもございますので、今履行ボンド制度について委員会を設けて検討を始めているところでございます。こういったまず入札制度を大きく変えていくことによって、談合やあるいは政治家の関与等々は起こり得なくなるものだ、今そういった点で取り組んでおります。  二番目には、入札談合の違法行為については指名停止の強化を行うようにいたしました。同時に公取とも大いに連携をさらに強化してまいりたい、このように考えております。  建設業界におきましても、日建連において政治献金等に関する当面の措置要綱というのを、平成五年七月二日、業界自身でそういう要綱をつくりまして、使途不明金となる政治献金は一切行わない等々を申し合わせた次第でございます。  私たちは信頼を回復するために、今まで以上にこういった問題に全力で取り組んでまいりたいと考えているところでございます。  以上です。
  210. 志賀節

    ○志賀委員 今公取とも連携を深めてというお話でございましたので、公取委員長に、どういうふうにこの連携を深めていくかについての具体的なことがありましたらお教えをいただきたいと思います。
  211. 小粥正巳

    ○小粥政府委員 お答え申し上げます。  ただいま建設大臣から入札談合問題について、入札制度あるいは私どもとの連携についてもお話がございました。  私ども、入札談合につきましては、申すまでもございませんけれども、この入札談合、つまり入札に先立ってあらかじめ受注予定者あるいは予定価格、入札価格を競争者同士で決定をする、こういうことでございますから、これは競争入札制度の根幹を揺るがす問題である、それから、申すまでもなく競争の実質的制限ということで独占禁止法に明白に違反する行為であるということで、従来から厳しく対応をしているところでございます。  私どもの対応といたしまして、簡単に申し上げますが、一つは、この三月に入札制度一般につきまして、つまり公共工事を含む公共的な入札全般につきまして、いわゆる入札ガイドラインなるものの原案を発表いたしました。現在、外国も含めて関係各方面からこの私どもの考え方についての意見を聴取しておりまして、その意見を十分に吸収した上で、できれば本年夏をめどに最終的な公共入札ガイドラインなるものを公表しようと考えておりますが、これはどのような行為が入札談合に当たるか、あるいは独禁法に違反する行為であるか、あるいはそのおそれがあるか、それから行為によってはそういうおそれのないものと、いわば行為を類型的に大別をいたしまして、できるだけ具体的にわかりやすく私どもの考え方を示そうとするものでありまして、これは入札談合の未然防止、予防に相当程度効力を発揮するものと考えております。  ただ、私ども公正取引委員会のこのような法運用の考え方を明らかにするガイドラインの公表等、あるいは違反行為があればこれに対して厳しく私どもが法的措置をとる、これだけでは十分ではございません。やはり発注官庁側の取り組みが大変重要だと考えております。  この点につきましては、私ども既に、建設大臣の諮問機関であります中央建設業審議会の昨年来の御議論のうちで、私どもが従来違反行為を取り扱いましたその経験から必要なことをいろいろ申し上げましたけれども、その中で発注官庁側にも十分御注意いただきたい、その点を具体的に意見具申をしているところでございます。  そして、現在私どもが発注官庁との関係で具体的に行っておりますのは、発注官庁において既にそれぞれ組織内部で連絡担当官というものを指名をしていただいております。この連絡担当官は公正取引委員会との連絡に当たる責任者でございます。この連絡担当官と私どもとの間の連絡会議の開催、これは既に実行しておりますけれども、これを通じまして発注官庁との連絡体制の整備を図っております。今後このシステムを通じまして、いわば入札談合をできるだけ組織的に集めていく、そういうことを私ども期待をしているわけでございます。  それからまた、これが有効に機能いたしますためには、やはり発注官庁側担当者に独占禁止法の正しい理解をしていただかなければならないのは当然でございますから、そのための職員の研修あるいはマニュアルの作成、そういう問題がございます。私ども、必要に応じましてこれらに対して積極的に支援していく、そういう試みを既に実行しているところでございます。  私ども、当面の取り組みといたしましては、ただいま申し上げましたようなガイドラインの策定、発注官庁側との連絡体制あるいはネットワークの整備、これとあわせまして、私どもがこれまで以上に違反行為に対する厳しい対応を行っていく、これが今後の入札談合の未然防止に大きな効力を発揮することを期待しているわけでございます。
  212. 志賀節

    ○志賀委員 小粥委員長、ぜひ御検討を願いたいと思います。ただいまのお話を承りまして、大変私も期待をする一人であります。  それから、まさに小粥委員長が言われたとおり、発注官庁の責任は重大でございまして、ひとつこの機会に森本大臣に申し上げておきたいと思いますことは、談合は必要悪だなどといって甘やかしてはいけない。私はこれはタブーにしなきゃいかぬ言葉だと思っておるのであります。談合は結局独占行為でありますから、独占行為はみずからの滅亡をもたらすと私は思っておる。結局、タコが自分の足を食っていくに等しいであろう、こう思いますので、どうかこの点は強く強く私は主張いたしますので、よろしくお願いします。  なお、もう一つお願いをするとともに承っておきたいことは、アメリカあたりでは、規模の大きくない土木建築会社はSBAという、これは私の聞いているのが間違いなければ、スモール・ビジネス・アドミニストレーションと、こう聞くわけでございますが、こういうものが既にできておるんだそうでありまして、このやり方等を建設省でも研究をして、日本に持ち込めるものなら持ち込んでいただきたいものだ。  大型のゼネコンと中小と一緒にしていますと、いろいろな問題で、いつまでも御努力をいただいても解決できないものがたくさん出てこようかと思うのであります。それの解決策の一つとして私は提案をするのでございますが、建設省ではこのことについて御研究になっておられるかどうか、もし御研究ならお聞かせいただきたい。
  213. 小野邦久

    ○小野政府委員 お答えいたします。  今先生おっしゃいましたSBAというのはどういうものなのか、申しわけございませんけれども、十分私どもでまだ研究はいたしておりませんが、我が国の建設業は五十二万でございます。ほとんどが中小企業でございます。大きいものは御案内のとおり一兆五千億に至るものから、中小は大変規模の小さな業者まで、さまざまな専門業者がおられます。  その間を一つの法体系あるいは制度といたしましても、公共の発注制度のもとで運用しておるわけでありますが、規模の大小等によってそれなりにいろいろな工夫をした上で、よりよき発注の形態でございますとかあるいは産業の政策というものが立案できれば、それにすぐるものはございませんので、十分研究をさせていただきたいと思っております。
  214. 志賀節

    ○志賀委員 建設省の方ではまだSBAには手が届いていないようでございますが、私の方からこれもお伝えをしておくと、前田邦夫富士大学教授ですね、「「談合国家」は衰亡する」という本だったかな、お書きになっている方ですが、この前田邦夫氏の論文が近く日本経済新聞に出るかと思いますので、これをひとつ御注目をいただければと思います。  なお、前田邦夫氏は、御存じの方もおられるかもしれませんが、往年の土工協の会長の前田忠次氏のおいであります。この点も申し添えておきます。  ただ、私はただいまの、いろいろ承ったお話だけではまことに心配この上ないのでございまして、一体これで日本における土建屋選挙が姿を消す方向に動いているんだろうか、まだまだこんなことではだめなのではないかな、私はその点が非常に心配でございます。どうか、くれぐれもここには力を入れてやっていただきたい。これは、私ども選挙をやる者にとりましても、やはり大事なポイントになってまいります。特に、土建屋さんが一致してつく、これは別の言葉で言うと天の声を発する人々でございますが、天の声を発するのは悪でございますが、悪が当選をし、しからざる者が落選をするようではおかしい。  その点では、私は前にお話をいたしましたとおり、翼賛選挙がそれでありまして、要するに、推薦候補は当選をし、非推薦は落選をした。今になって考えてみると例外もありまして、ここに鳩山大臣がおられる、この人のおじいさんあるいは三木武夫先生等ごく限られた人は、非推薦であって当選をしたということは私、記憶しておりますが、私の先々代は不幸にして落選をいたしております。  そういうようなことも含めて、私は身につまされるのであります。しかもそれが、日本が国家滅亡、衰亡のふちに行く一里塚であるとすれば、なおのこと重大問題である。そういう道を小選挙区が開いているんだということをこの機会にもう一度考え直してみる必要があるのではないかと思うのであります。  この五月のゴールデンウィークであったかと思うのでございますけれども、ごらんになられた方が恐らくおられるかと思いますけれども、NHKが放映をいたしました、小選挙区制というものに対する若干の疑問を視聴者に感じさせる番組であったと思います。  それは、イギリスは、簡単に言いますと政権交代不能に陥っている、小選挙区によって。それからイタリーは、今回だれが見てもわかるように、独裁政権志向型の右翼が進出した。そういうことを招来しておる。それから韓国は、現に金がかかり過ぎてあっぷあっぷするような選挙になっておる。こういうようなことが報じられたわけであります。  カナダは、フランス系の分離独立を求める民族問題等がありますので、事情は他の国々と若干異なりますけれども、前政権は、御存じのとおり二%しか得票率がない。しかも、前首相は御婦人でございましたが、落選の憂き目を見た。それから、三割の得票でございましたろうか、それで八割の議席を得ることができることもわかった。  こういうような恐るべきことが現出されているんだということが、この小選挙区をめぐるNHKの報道で報じられたわけでございまして、これは私がいいのあしいのを言っているのではなくて、こういうことが報じられたんだという事実を申し上げておきたいと思うのであります。  そこで、熊谷官房長官お話ししておきたいのは、私、過般テレビで見ておりましたところ、完全に世の中、悪玉と善玉に分けまして、何か守旧派は悪玉、改革派は善玉、小選挙区論者は善玉、中選挙区論者は悪玉、まことにこれは明快な色分けなんでございます。  私と一緒に見ておりました人、これは大変文学の好きな人でありますから文学の話にたまたまなりまして、人間というのは、一人の人間で一〇〇%善玉もいなきゃ一〇〇%悪玉もいないもんだ、やっぱり仏のような心を持っていながら残酷なことを平気でやるやつもいるんだ、それが世の中なのであって、本当の文学作品というものはそういう人間像を描き出すところにあるんだ、大体人間を色分けして善悪二色に分けてしまうなどということは文学作品ではこれは三文小説にもならない作品である、昨今マスコミなんかにもそういう三文作品の傾向がないわけではないけれども、そういうようなことは困ったもんですねということをその人は言っておりました。  また同時に、そういう悪玉、善玉を極めて明快に分けてしまうところにナチズムやファシズムがあったのだ。ユダヤ人と言っただけで、あるいは戦時中の日本人は、朝鮮人と言っただけで、あの差別や非常な虐待を事とした。  こういうことを考えるならば、人間を、人間社会を善悪に、ようかんをぶった切ったみたいに切る割り切り方なんというものはにせものもにせもの、大にせものの言うことであるという議論が私のわきでなされたわけでございますが、こういうことについてあなたのお考えを、熊谷官房長官、承りたい。
  215. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 物の見方、特に人間社会においてはそれぞれ置かれた視点といいますか、立場によって物の見方が変わる、相対的な面があるということは、先生が御指摘になった面もあるというふうに思います。
  216. 志賀節

    ○志賀委員 いろいろな見方があるのが民主主義でありますから、どうか峻別をして、あいつは悪玉、あいつはだめというような色分けをなさらぬ方がよろしいと思う。これは私は、この機会にはっきり申し上げておきたいと思うのであります。  もう一つこの機会に申し上げておきたいと思いますことは、最近、私ある人から、ぜひ質問のときに聞かせてほしいと言われたのは、どうも予算委員会等でしゃべったりなんかしている財政のことが難しくてわからないんだ、どうかわかりやすく、我々庶民の耳にもわかりやすい表現で聞かせてもらえないもんだろうかという要望がございましたので、その声を代弁いたしまして、どうか、大蔵大臣がよろしいでしょうか、極めてわかりやすく、単純明快に、この有権者、国民にわかるように御説明をいただきたい。  これは一々しゃべると長くなりますから、結構なんですが、例えば何ゆえに増税が必要なんだと、増税というものは自分たちはまだ決めてはいなくても、こういうことで増税は必要な方向にあるんだよというようなことを御説明いただけるとありがたいと思うのでありますが、不可能でございましょうか。
  217. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 私いつもなるたけ易しい、わかりやすいように申し上げているつもりでございますが、今のお話は、これからのというか、今の財政の話だと思いますが、はっきり言えば、今収入に比べてというか、家計で言えば月給に比べて歳出の、使うお金の方がふえちゃったというようなことだと思うんでございますね。それは大体、家庭で言えば本当はおかしいことかもしれません。おかしいことかもしれませんが、現実に家も建て直さなければならなかったよと、あるいは今はそういうことはちょっと例外的にある形になっておりますが、飯代まで少し借金でやらなければならなくなっちゃっているような事態になっているな、また、この家庭も、だんだん我々も年をとってくればそのためのこともしなければならないな、そのためには、我々で言えば、その家庭で言えば、少し収入もふやしていかなければならないな、こういう状況じゃないかと思います。
  218. 志賀節

    ○志賀委員 私は、そういうことに関連して一つ強く申し上げておきたいと思うのは、ここに例えば建設省の局長がいます。二、三年先には定年になる、そのときは天下りをすることが大体決まっておる、そして、その行き先とか給与まで決めて文書にする。これは新聞に出ている話ですから、何も私は作り話をしているんじゃない。そういう人は当然のことながら、役所に二、三年いる間に、その自分が天下りすることになるであろう会社の仕事等にはさじかげんはするのが人情だろうし、それしちやいけないと言う方がこれは不人情であり、むちゃじゃないかと思う。ですから、そういう点は、私はもう天下りをさせないようにすべきではないかと思っているのでありますけれども、その辺はどんなふうにお考えなんでありましょうか。  それから、民間人は必要に迫られますと、団体をつくることがございますね。例えば水をきれいにする会などというものがある。これは役所の世話になることに当然なりましょう。例えば環境庁、通産省がこれにかかわりましょう。そうすると、理事長は民間かもしれないけれども、専務理事とか事務局長というのはやっぱり役所から来る。役所からそういうものを受け入れないとお金が伴ってこない、こういうようなことになっておるわけでありまして、高級官僚はそういうふうになっておるわけであります。  しかも、高級官僚は一応の勤めを終えて退職金をもらいます。それから、天下った先で二、三年あるいは四、五年もすると、また前のに見合うくらいの退職金をもらう、それが二度も三度も繰り返される。  そういうことは庶民感覚の中では全くバランス感覚を欠いておると思うのでありますが、この不景気のこういう状況の中にあって、民間だったら大量解雇せざるを得ない。某航空会社のごときは半分ぐらい人員削減しているんじゃなかったでしょうか。そういうようなことをやっていて、その会社が努力をしているのに、役所の方は一向にリストラやってない。リストラをやってないだけではなくて、今度は削減をするような顔をして民間の方に押しつけてくるような傾向もある。  こういうことをやっていながら増税を図ろうとしても、これはちょっと御無理ごもっともとはいかないのではないだろうか。この辺について、総理大臣あるいは総務庁長官、いかがお考えであるかをお答えいただきたいと思います。
  219. 石田幸四郎

    ○石田国務大臣 志賀先生の御指摘については、例えば国家公務員のあり方というような問題で、大変私も頭を痛めておるところでございます。  まだそれに対して今計画的にこういうようなことを考えているということを申し上げるまでの状況にはないのでございますけれども、高齢化時代に向かって、むしろそういった高級官僚がかなりの年齢までその知識経験を生かしてやれるようなシステムを考える、そういったことも一つの方法かもしれないなというような程度の素朴な考え方はございます。  あるいは、ある人に言わせますと、やはりそういった知識経験を生かして政府としてのシンクタンクをつくったらどうか、こういうような御意見があるのも承知をいたしておるわけでございますが、いずれにいたしましても、役人がある一定の年数を経て、そして再就職をしなきゃならないという状況もこれあるわけでございます。  先ほど平泉先生からもこの問題は大変厳しく御指摘がありまして、むしろそういった政治的に任命できるようなシステムを導入したらどうなんだというようなことについて大変私は強い示唆をいただいたような気がしているわけなのでございますが、非常に難しい状況であろうというふうに思っております。  ただ、これからの時代を考えますときに、例えば今地方分権の話が出ておりますので、こういった問題を、これから本格的にその方向を定めていくわけでございますから、そういう中で一緒に考えなければならない問題とは思います。  それからいま一点、志賀先生のお話は、例えばこれからさらに増税をお願いをするのであれば、行財政の改革というのは何としてもやらなければならぬのではないかという、そういう御趣旨のお話であろうと思うわけでございます。  ただ、今までの行政改革をずっと子細に検討してみますと、財政的に大きな額を削るような、そういうようなことはなかなか行政改革を進めたからといって一遍にいくわけではないわけであります。  したがいまして、この行政改革、財政改革の基本というのは、やはり着実に行政が時代の変化、国民の皆様の御要望にこたえて変革を試みていく、一生懸命それをやっておる、そういうようなことが謙虚に、謙虚にというか実際の面で国民の皆さんが見ていただいて納得していただけるような、そういうような姿になってくることが私は一番大事ではなかろうか、そう思うわけでございます。  例えば行政指導の問題にいたしましても、今回行政手続法を国会の審議の中で成立をさせていただいたわけでございますが、それはやはり国民の皆さん方の大きなメリットを生む、行政の公正さというものを認識していただける、そういうような状況になるわけでございますから、そういう現実的に国民の皆さんの社会生活に資するようなことが一つ一つ積み重ね的に、的確に見られるような、そういう形で行政改革を進めていくというのは一番大事な問題ではなかろうか、そう思います。  ただ、どうしてもやはり、人間は感情の動物と申しますか、これだけの税制をお願いするのだったらば、目に見えた行政改革をというのがどうしても出てまいります。この問題についても、今具体的にそこまで発表申し上げられるような状況にはございませんが、真剣に検討しているということを御報告を申し上げたいと存じます。
  220. 志賀節

    ○志賀委員 そこで承りたいのは、防衛庁でありますが、AWACSの購入についてであります。  私は、ただいま申し上げたとおり、増税をするにしても何をするにしても、まずみずからの身を正し、リストラを役人の側もしたり、政府の側もしたりしていくことから始まらなければいけないではないかということを申したつもりでございますが、AWACSのごときは、私の承知している限りでは、既にアメリカではもう第一線の航空機ではない、こういういわばクリアランスセールみたいなものを国民の血税を使って購入をして、うわさによると、これでもってまた何がしの政治資金を稼いでいる手合いがいるというようなうわさまで流れているほどでございますから、こういうことについてはよっぽどはっきりしておかなければいけない。このAWACS購入についての防衛庁の考え、意見をただしたいと思います。
  221. 神田厚

    ○神田国務大臣 お答えを申し上げます。  早期警戒管制機でございまして、これは専守防衛を旨とします我が国におきましては、情報収集機能の一環として、早期警戒監視の機能が大変重要であります。  平時であれ有事であれ、我が国周辺の広範な海、空の区域で情報収集をするということは大変重要であります。また、特に有事の場合には、我が国の国土から離れたところから発射されるミサイル等を情報を察知しまして、この早期警戒機がそれに対応するということでございまして、これは極めてそういう意味では私は適切なあれだと思っております。  今お話がございました、これの使い古されたものであるとかそういう点につきましては、防衛局長から後ほど答弁させますが、決してそういうことの疑惑はないというふうに考えております。
  222. 村田直昭

    村田(直)政府委員 大臣答弁がありましたように、我が国の防空上必要なものとして整備をしたものでございまして、その経緯でございますけれども、当初、平成三年度からの中期防計画におきまして四機を導入するということで、その当時におきましてはボーイング707を母体とするAWACS、いわゆるE3という航空機を予定しておったわけでございますが、それが平成三年の八月に生産中止になった。ボーイング707自体が生産中止になるということで、その後、ボーイング767を母体とするAWACSというものを新たに選定いたしまして、それを採用することとしたという経緯がございます。  そして、先生、もうこれは今使われない、スクラップのようなというか、クリアランスというような話がございましたが、これにつきましては、米国で三十四機、それからNATO等でも使われております。それから、イギリス、フランスについては最近これを導入しております。また、ロシアについては、同様なメインステイという航空機で、このような機能を持ったものを十五機ほど整備しておるというような状況で、各国とも現在、防空体制の強化のためにこのような機種を導入している状況でございます。
  223. 志賀節

    ○志賀委員 そうすると、私が聞いている限りでは、一九九〇年七月三十一日をもって哨戒は中止され、しかも米空軍のAWACSが活動する分野は麻薬密輸監視だと言われているというのは、これはうそなんですか。  それから、NATO保有は十八機、英国七機、フランス四機についても作戦的な運用は行われていない、残るAWACS保有国はサウジアラビアのみであるという、これ、ちょっと古い資料かもしれませんが、そういうことが私の手に入っておるのですが、果たしてそういうことはもうでたらめなのか、それとも村田君の言っている方が本当なのか、ちょっと教えてください。
  224. 村田直昭

    村田(直)政府委員 今先生が御指摘になりました、一九九〇年の七月に運用が中止になったというのは、同様な飛行機で、やや似たものでございますが、米国におきまして、国家非常事態に当たって空中指揮所として二十四時間運用されているC135型航空機、空中指揮管制機というものがございます。これは、当時、核戦争なんかに備えて空中指令所を設けるということで運用しておったものでございますが、それを、その時代における情勢、ロシアとの間の冷戦の終結というような事情を受けてアラート待機を終了するという事実はございます。  しかし、このAWACSにつきましては、先ほども申し上げましたように、各国とも今、英仏については最近でございますが、整備するに至っておる。  しかも、こういうような報道がなされたこともありまして、私ども、それぞれ、米軍でありますとかNATOにその運用の状況について問い合わせをしたところ、運用の状況でございますから細部についてまでは向こうからも報告が、応答がありませんでしたが、少なくとも米軍は、トルコとかサウジアラビアで哨戒任務につけておる、そのほか沖縄にもアラスカにも二機配置しているというような、海外に展開している十八機のAWACSは我が統合参謀本部の指揮下で運用されているというような報告が来ております。NATOについても、NATOの状況としては、現在持っている十八機について、AWACSが飛行停止になっている事実はないという報告を受けております。
  225. 志賀節

    ○志賀委員 要するに、そうすると、これは現に使われている航空機であり、使われなければならない航空機であって、日付のもう古くなったものではないんだ、こういうふうに私どもは理解してよろしいんでしょうか。
  226. 村田直昭

    村田(直)政府委員 結論から一言で申し上げれば、そのとおりでございます。  要するに低空覆域、現在の航空機の侵攻の様相というのを考えますと、これは白紙的に考えた場合でございますけれども、まず一つは、戦闘爆撃機が非常に低空から、航続距離が長くなってきたものですから低空から侵入してくる、そして今度はそれに積んでおるミサイルの射程が非常に長くなってきておるというような両方の要因から、非常に遠い、低く来て、低く来ると見えにくいわけでございますが、そこから長射程のミサイルを撃つという侵攻様相が考えられるわけです。  そのためには、まずその戦闘爆撃機を遠くで発見するというのが一つある。そのために、この飛行機は高度が高いところから下の方を遠くまで見えるというのが一つと、それから、そのミサイルが発射されて例えばレーダーサイト等がやられる可能性もあるわけですが、そのときにこの飛行機は、空中警戒管制ということで、地上レーダーサイトが破壊された場合にそれの代替機能を果たせるというような、大きく分けて二つの機能を持っておりますので、いわゆる今日の航空軍事情勢の中で必要な飛行機であるということで各国とも維持しておるというわけでございます。
  227. 志賀節

    ○志賀委員 もう一つだけ聞いておきたいことは、何か購入価格について、どうも私なんかが聞いている限りでは明朗でない。これは真偽のほどがわからぬから確かめるのですが、これの当初の生産費は百八十億円程度のものが、こちらが色気を出したかのように見られた途端、七百億円にはね上がったとか、それを今度は六百億円にし、それが最終的には五百五、六十億円になった、こういうような話も聞いておるのですが、この辺は少なくとも私の耳には不明朗に聞こえるけれども、どうなんですか、事実関係を教えてください。
  228. 村田直昭

    村田(直)政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、先生が最初に言われました値段、三百二十五億という値段が最初ございました。これは、先ほど申しましたように、中期防を最初につくりました、平成二年十二月につくりましたときの見積もりとして、当時は、先ほど申しましたように、E3という各国が使っておるAWACSがあったわけでございまして、そのE3というAWACSの購入価格について、米軍等の情報に基づきましてそのような見積もりをして入れたわけでございます。  その後、先ほど申しましたように、今度は平成三年の八月になりまして、そのAWACS、E3の母体でありますボーイング707という航空機が生産中止になったということで、そして改めてボーイング767を母体とするAWACSというものをつくるということでいろいろ研究した結果、それを選定することになったわけでございます。  それは、今までAWACS、E3の場合にはたくさん、例えば英仏が買うというような情報もありましたし、それからほかの国も買うというような情報もございまして、見積もりとしては今言ったような三百二十五億だったわけでございますけれども、その後新たなボーイング767の上に乗せるということになった結果、いろいろ価格交渉をし、精査をした結果、五百七十億円という数字になったわけでございます。  しかしその後、実際の調達に当たりまして価格が下がっておりますのは、これは円高効果等もございまして価格が下がってまいりまして、現実に今度の平成六年度の価格では、まず平成五年度の予算においては約五百七十億円でございましたけれども、平成六年度の予算におきましては現在約五百四十三億円という数字で入っております。これは円高の結果としてなったものでございまして、基本的には内容的には変わっておらないわけでございます。  そのような経緯で値段が大分ぶれておりますけれども、これは円高効果の結果、安く調達できるということになったわけでございます。
  229. 志賀節

    ○志賀委員 今度は、郵政省に承りたいと思います。  私は長いこと逓信関係の勉強もさせていただいてきているわけでございますけれども、まあ政治家でありますから、例え話めいた話で恐縮なんですが、移動電話の日本の市場参入につきまして、私、なかなか理解しにくい点があるわけであります。  それはどういうことかというと、移動電話もNTT方式とモトローラ方式と二つあるのでございますね。そして、日本の旧来の方式がNTT方式でありますから、言ってみれば、モトローラが日本の方式をもって日本に来た場合にどうも障壁があって入れないというのだったらわかりやすい話でありますけれども、そうではなくて、NTT方式をとらないままに入ろうとして障壁がある、これはちょっとどういうことなのかわからないわけでございます。  しかし、郵政省の方にも、これは郵政大臣ではなくて別の方の力だというふうに私は耳に入っておるのでありますけれども、その方の力でモトローラの日本市場参入をどうしても認めさせたと。それはモトローラの機械のままで、システムのままでそういうふうにした、こういうことでございます。  それを私なりの理解で申しますと、日本の自動車は右ハンドルでありますが、アメリカの左ハンドルの自動車が、その機械を右ハンドルに改めないままに日本の市場に来ようとして、日本の交通法規がどうも自分の方にそぐわしくなくなっているから、日本の交通法規を改めてくれないとこれはどうも貿易の障壁になっておる、改めてほしい、こう言っているのに似ているような気がするなと。しかし、これはもう間違っているんだったら、間違っていてこういうことなんだよということの御説明をしていただきたいと思いますので、郵政省にその点をお願いしたいと思います。
  230. 松野春樹

    ○松野政府委員 自動車電話の日本の市場につきましては、従来からNTT方式を公社時代から始めておりました。昭和六十年に制度改革をいたしまして、競争原理を導入いたしました。そこで、一九八七年でありますが、NTTに対抗する新しい自動車電話事業として二つの事業体が名のりを上げてまいりました。日本高速通信系と第二電電系、母体でございます。  その際に、そのうちの一つが北米方式、先生御案内のようにモトローラ方式でありますが、北米方式でもってNTTに対抗したいという希望がありました。もう一つの方は、NTT方式でやりたい。その際に、モトローラ方式は日本にないものですから、技術委員会で、先生おっしゃるように随分議論が交わされました。ただ、モトローラ方式は世界で五十カ国ぐらいで採用されておりまして、日進月歩の世界ではありますが、およそ技術的には安定したものを持っておる。NTT方式とは若干特徴が違います。特徴が違いますが、そこで議論の末に採用が決定しまして、方式として二万式が一九八七年にスタートしたのがきっかけであった。  その後、その入り方が、東京と名古屋地区につきまして入りました現在のIDOという会社はNTT方式で、NTT、現在はドコモでありますが、NTTと対抗した。セルラー系でございますが、第二電電系の会社は、東京、名古屋以外の地域でNTT方式の事業者と対抗したいということで競争が始まりまして、一九八九年、先ほどお触れになりましたような東京、名古屋地区において北米方式が空白であるということをきっかけに摩擦が起きたという経緯がございます。
  231. 志賀節

    ○志賀委員 いや、今のお話お話で承ったんですが、松野さん、一体それは当然の競争と理解していいんですか、それとも、ちょっとこれは強圧的じゃないかと理解していいんですか、どっちなんですか。まあ役人としては言いにくいかもしらぬけれども。
  232. 松野春樹

    ○松野政府委員 これは恐らくいろいろな考えがありまして、今でもいろいろなお考えがあるだろうと思いますが、NTT方式は既に、NTTが民営、もちろん公社時代から開発しましたから、開発されております。当然技術の開発も、NTT本社と、現在ではNTTのドコモで連携してやっておられます。IDOという会社が最初それに対抗するために東京、名古屋地区で始めたわけですが、どうしても営業上立ちおくれるということがありまして、途中からやはり北米方式でもって対抗したいと。そして、既存のセルラー系、東京、名古屋地区以外で事業を行っておる会社と連携して、まあローミングと申しておりますが、これで将来、アナログ系のこの現在の自動車電話の営業を伸ばそうと、昨年に至るまでそういう決断を既に会社はやっておったようであります。  しかし、NTT方式も同時にやっておりますから、一見二重投資のようなことにもなりますが、会社としてそういう大きな決断をしたというのがこの問題の背景にあるということを申し上げておきたいと思います。あくまでも事業者の選択の問題という面が強かろうと私、思います。
  233. 志賀節

    ○志賀委員 そのことについてもう一つ承っておきたいのは、この間日本が香港で参入しようとして敗れましたね。日本が入ろうとして香港ではだめだったんじゃなかったでしょうか。モトローラの方がやったんじゃなかったでしょうか。  私はまあそのことはどうでもいいんですが、今後移動電話の場合に、モトローラ方式とNTT方式とこの二つ、日本の国内にあることはわかるんですが、世界的に見てこれは一本化するのか、どっちかに収れんされるのか、それとも二本のままでいくのか。それとも、日本国内ではこれからもずっとNTT方式は生き残るだろうけれども、国際的には通用しない状況になるのか。その辺はどういうふうにごらんになっているんですか。
  234. 松野春樹

    ○松野政府委員 現在の世界の情勢でありますが、ちょっとアバウトな言い方で恐縮であります、約ということで御理解いただきたいと思います。  北米方式で採用しておる国が約五十カ国ございます。それから、エリクソンでありますが、北欧方式で採用している国が二十八カ国あります。NTT方式はこれは日本であります。これはアナログであります。これからいよいよ二十一世紀を見ますと、ディジタルになります。  問題は、ディジタルになったときに、恐らくマルチメディア時代というのが背景にありますが、これで方式が違って結びつかないと非常に不都合なことになります。日本の場合も既にことしからディジタルのサービスインがありますが、ディジタルの自動車電話につきましては、これはアメリカとも話し合って共通の方式で研究いたしまして、今それで入っておりますから、いずれ将来ということでございますと、その今の二万式の問題はなくなるということになります。しかし、その間、アナログとディジタルの競争とか、また別の事業競争の面はまた多角化してくるということになろうと思います。
  235. 志賀節

    ○志賀委員 それではぜひ、そのディジタルの方になるときに、世界的な視野に立って、日本の放送通信関係の仕事として過ちなきを期すように、ひとつよろしくお願いをしたいと思う次第でございます。  しかし、それはそれとして、このモトローラの電話が日本に入ってくるについては、少しく私は不自然で、強圧的なものがあったことを認めないわけにはいかない。この点を今後はひとつ勉強させていただきたいと思いますので、この点もよろしくお願いをしたいと思う次第でございます。  この機会に申し上げておきたいと思いますことは、従来どうも五五年体制というものを、マスコミも政界もそうでありますが、一言で何かこう悪い体制、終わった体制、もう過去のどうしようもない体制であるかのような風潮が今日ないわけではございません。しかし、この機会に申し上げておきたいと思いますことは、五五年体制の中で今日の日本の経済大国化も繁栄も図られてきたという事実を見逃すわけにはいかないのであります。  ごく最近のことでありますけれども、鯨岡副議長がお書きになりました「五五年体制とは」という論文を拝見いたしました。その中にこういう一幕がございます。  当時、保守合同に全精力をつぎ込んでおりました三木武吉先生が、夜陰に紛れて松村謙三先生の中野の鷺宮のお宅に訪れられた。何事かと思って松村先生が応接に出ると、自分は絶対に保守合同をしなければならない、そういう確信に基づいて動いておるんだが、ぜひ君にも同調してほしい、そういうお話であった。それに対して松村先生は、もし保守同士が合同すればこれは一大勢力になる、これは権力である、権力はそれだけ強大化し、強大化すれば当然永続化するだろう、そうなれば必ずこれは汚れる、そういうことは断じて自分は賛成するわけにはいかないんだ、こういうことを松村先生が言われたそうでございます。  それに対して、三木武吉老は、自分はあなたのその言うことは十分にわかっておるつもりだ、わかってはおるが今見てみたまえ、日本は未曾有の敗戦というものを経験して国民は塗炭の苦しみの中にある、物不足どころか食い物もなくてあすをも知れぬ状況だ、こういう人たちの生命財産を保持し、しかも繁栄の方向にこの国を持っていくことを考えるならば、日本の政局が安定することをおいて考えようがないではないか。まことに松村君、君の言うことはよくわかるが、僕の言うこともわかってほしい、僕は既にがんに侵されている体だ、自分は、自分の命はさしてないはずだ、しかし冥途の土産にこの国の政局の安定を手土産に持っていきたいんだ、どうかわかってくれたまえ。こういうことが結局は、保守合同に最後まで反対を唱え、異を唱えておられた松村謙三先生が折れたゆえんであった。そのことを松村謙三先生本人から鯨岡副議長は聞いた。そのことをこの文章にしたためておられるわけであります。  まさにこれは、三木武吉も、そしてまた松村謙三も、ともに言っていたことが正しかったことが今日証明されているわけでありまして、そういう意味からしても、何ゆえの五五年体制だったかを考えるならば、一概にこの五五年体制というものをばかにしたり、だめな体制と言うのは早計に過ぎる、私はそういうふうに考えておるのでございます。  したがいまして、これからの日本の政局というものは、五五年体制というものは過去のものだとか、もうなってないんだとか、自由民主党というのはもう腐れているんだというようなことではなくて、そういうところに立ち返って考えなければいけない。現に自民党の中の腐れている部分が抜けているわけであります。それはもう世の中、私が言わなくても、世間が知っている。ですから、そういうことで私は、この五五年体制というものについてもう一度我々が真剣に取り組んでいく必要があるのではないか、このことを特にここで強調させていただきたいと思うのであります。  このことがまた本当の意味での政治改革の原点にもなろう、かように考えるわけでありまして、私はこの機会に羽田総理にお願いしておきたいことは、何も政治改革というのは、既に御自身おっしゃっておられるとおり、選挙区制度を変えることをもってすべてではない、いろいろな面がある。そのいろいろな面の中でもとりわけ私が強調したいことは、どうか罰則規定を設けて、これを強くして、そして政治家で悪いことをやったやつは二度とひのき舞台に立てない、そういう法律をつくることが大事ではないか、これを私は求めてやまないのであります。  この点に関して、羽田総理からの御意見を承りたいと思います。
  236. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 今お話がございました五五年体制、これはまさに保守合同ということがあったと思います。そして、それと同時に社会党の右派、左派、これの連合というものもあったと思います。そして、そのときは、まさに冷戦下にあったということであったと思います。しかし私は、今三木武吉先生、それから松村先生、このお二人のお話というものは、やっぱり示唆に富んだものとして受けとめたいと思います。  ただ問題は、三十八年間一つ政権というのが続きますと、どうしてもいろんなものが先送りになってしまうとか、あるいはよどんでしまうとか、そして今御指摘のあったようないろんな問題が実は生まれてきてしまうということ。ですから私は、確かに安定というものはやっぱり大事だと思います。しかも、ここまで来た日本の国ですから、さらに安定ということは大事なことであろうというふうに考えますけれども、しかし一つの道のための、新しい道を生み出すための産みの苦しみというものもやっぱりあるんだということ、これはぜひ御理解をいただきたいと思うところであります。  そして、後段のところについて、まさに選挙制度をいじるだけでこれが何でもということじゃありません。しかし、選挙制度というのは、政治資金その他の問題なんかもあるでしょう。それから、先ほど韓国その他の国の例もお挙げになってお話しになりましたけれども、しかしこれは、日本の場合には制度というだけでなくて、そういう新しい再編成も行われておるということ、いろんなものが機能してくるんだろうというふうに思いますし、また、この制度に合った政党がやっぱり生まれてこなきゃならぬ。あるときには、これは一遍ではできないでしょうけれども、候補者もそういう中で政党によって選ばれるようになってくる。こんなことが合わさったときに本当の議論ができる国会ができるということと、もう一つの今の腐敗問題というようなものを去ることができるんじゃないかというふうに考えております。  そして、今罰則の問題があったわけでありますけれども、いずれにしましても、まず、今我々はここで議論しておりまして、ようやく法案の部分は通ったわけであります。しかし、これをいつ実施するのか、あるいは区割りは一体どうするのか。これを通さないと、残念ですけれども何も動かないということでございますので、それをまずやりながら、今御指摘のあった点についても私たちは考えていかなければならないというふうに思っております。
  237. 志賀節

    ○志賀委員 きょう、決算委員会の分科会があったそうでありまして、この分科会で答弁に立ったのは各省庁の政務次官であったと聞いております。今までの自由民主党が政権与党であったときには到底考えられないことであった。それをやらせてもらおうといったって、野党が許してくれなかったからであります。  まさに、きょうそういうことが行われたということは、自由民主党が野党でそれを認めた、あるいは進めた、こういう雅量によるわけでありまして、こういう点は必ずしも与党と野党で、与党に今までなった人たちがすべていいことをやっていて、自民党が野党としてあれだというわけではないんだ、この点を特に強調しておきたいと思う次第であります。  時間が参りましたので、最後に申し上げたいと思いますのは、環境問題でございます。  実は、今までのあらゆる閣僚お話を承っておりますと、環境問題はどうやら各論の一つに扱われているようであります。しかし私は、環境問題というのは総論であると理解をしておるということをこの機会に申し上げておきたい。  というのは、今まさに社会主義、共産主義というものが姿を事実上消しまして、そして今までの資本主義のいわゆる尊大であるというか気ままであるというか、そういう点に対するチェック機能としての共産主義とか社会主義というものの果たしてきた役割は実に大きかったと思うのであります。  やはりマルクスもエンゲルスもそういう点に立脚をして、資本主義にチェックをして、できればそれに取ってかわろうとしていたのでありましょうけれども、それが結局不可能に陥った今日、自由主義と言われるかあるいは資本主義と言われるかわかりませんが、これが独走することによってどういう事態を招かないとも限らない。あるいは、古典的資本主義に逆戻りすることだって、考えようと思えば考えられなくもない。  そういうときに一番大事なものは何なんだ。これはやっぱり我々人類がみずからの欲望に歯どめをかけることではないかと思うのでありますが、これは従来の立場だと倫理とか宗教によってやったのじゃないかと思う。ところが、それとても人間の欲望に打ちかつことはなかなか至難のわざでありまして、もちろん例外的に宗教をもって至上とする人もいます。しかし、ほとんどがそれは難しい。  そうなってくると、地球環境の保全というものは、これは我々の子々孫々を安泰たらしめるという、いわゆる種の保存の上ではやっぱり欲望の発露にもつながるわけでありますが、同時に、物に対する物欲とか、そういうものに対する欲望、金銭欲、いろいろな欲がありますが、その欲望と同じ欲望の中で、同じ流れの中で、しかもこの地球環境というものを重視することによって初めて、社会主義、共産主義が消えた後の我々のこの生活というものに大きな光が当てられてくるのではないか。  そういう形での地球環境問題を頭に置かない限り、これを一各論の中に置いている限り、私は人類というものはなかなか見るべきものを見ないで済ませてしまうのではなかろうか、このように考えるのでありまして、私はこの点は強く強く主張し、そのような方向に行くことを求めて、私の質問を閉じる次第であります。  ありがとうございました。
  238. 山口鶴男

    山口委員長 これにて志賀君の質疑は終了いたしました。  次に、大島理森君。
  239. 大島理森

    大島委員 大分遅くなりましたが、いましばし総理初め大臣の皆様方にはおつき合いをお願いします。  総理、まず第一に、総理に改めての確認を申し上げたいのでございますが、今も議論されましたが、政治改革の目的は何だったのか。当然、自民党時代から羽田総理発言は何回ともう繰り返して伺いましたが、つまり、政党本位、政策本位、これでまさに拮抗ある戦いを選挙でしていくんだ。もちろんその他のこともございます。したがって、政策、政党というものが前面に出た選挙戦をやることによって緊張感と責任感を持とう、これが政治改革の目的である、こう私どもも思いましたし、今も思っております。総理も同じ御意見、御所見でございますか。
  240. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 ちょうど大島議員が官房副長官、私どもが政治改革の方の党の責任者をやっておりましたときの議論、今お話があったわけで、私も全く同感であります。
  241. 大島理森

    大島委員 そこで、改めて昨年の八月以来の政治の動きというものを振り返ってみますと、一体それぞれの政党が何を目指しているのかということが問い直されていい一年目になろうとしているのではないかと思うのです。  そこで、羽田総理が党首であられる新生党、まず新生党の綱領というのがあるのでございますか。
  242. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 基本的なことを一言であれしますと、自立、共生ということがございます。
  243. 大島理森

    大島委員 そこで、昨年の八月以来、細川内閣がまさに最初に出られて、国民支持率が八〇%、七〇%。そこに国民が期待したものは、むしろ私は、その中身ということもあったかどうかわかりませんが、そのイメージだったんだろうと思うのでございます。新鮮だ、クリーンだ。何か改革という言葉がいかにも、先ほども志賀先生のお言葉から出ておりましたが、改革こそ我々の専売特許である、そういうふうなイメージがあったわけでありますが、特に新鮮、クリーンという点では実態と全く違うということで退陣された、細川内閣は。それで羽田内閣が生まれた。  そこで、改めて私は、まさに総理が私と同じ考え方を今お持ちであるということであるならば、それぞれが一体何を目指すのかということを、羽田総理の目指すものをちょっとお伺いしたいと思うのですよ。それはまさに新生党の目指すものなのかもしれませんし、今各党の党首、連立を組まれているもの。  これはこういう分類をすると、いや、私は違う分類だと言われるかもしれませんが、どうも学者さん、学者というのは国民世論を代表した一つの分類でございましょう、あるいは考え方でございましょう。また、マスコミもあるいは国民も含めて、つまりこんな分け方が今何となくあるんですね。  これは全面的に私自身もそれに賛成しているというわけではありませんが、なるほどそういう分け方で対立軸を考えておられるのかということなんですが、まず第一に、保守対リベラルだ、こういうような分け方で議論されておられる。これは総理もおわかりだと思うのですね。保守対リベラルだ。  それから、運営論なんですね。今の予算委員会でも、運営論。少数による決断をして政治を持っていくか、それとも民主的手続による少数を尊重した形で政治の合意を求めていくか。あるいは改憲か護憲かみたいなものもあります。それは私は最後の方で防衛論でちょっと議論させていただきますが。  あるいは改革というその問題についても、今も五五年体制云々という言葉がありますが、過去の、そして今を全く捨てる、壊して新しいものをつくるという手法なのか、今まできたもののよきものを尊重しつつ改善をしようとするものなのかという分け方もあります。  まあその後段の二つは、私は今ここで聞きません。どうもいろいろな議論をして総体的に考えますと、総理、まず、保守かリベラルかということを私は今分けましたが、私の分け方をちょっと前提にさせていただきます。  それで、保守というのは、いわば小さい政府だ。それから市場万能主義、つまり自由競争、まずこれがあることだ。ここに非常に重きを置いた国家観、あるいはいろいろな財政でも経済政策でもとっていこうじゃないかという考え方ではないのだろうかと思うのです。  一方、リベラル、本当はリベラルというのは訳しますと自由ということですからあれですが、アメリカの中でもリベラルという意義がどんどん変わってきておる。今日本で使われるリベラルというのは、いわば中規模の政府、あるいは政府の役割というものをかなり重視していこう。だから、競争といった場合に、その競争のチャンスの平等も大事だけれども、結果の平等というものもある程度重視していこうか。  この二つの視点からの対立軸みたいなのが私が言う保守とリベラルというものだとすれば、羽田総理の哲学はどっちですか。
  244. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 これは非常に難しいのですけれども、私は、自立と共生ということを申し上げましたね、やはりみずからが立っていくということ、そのことのために競争とかそういったものを大切にしていく。しかし、そういう中にあってもやはり共生していくということ、相手の立場というものも大事にしていかなきゃならない。そういうことで、私はどちらがということは余り単純に言えないのじゃないのかなということ。そして、先ほど護憲か改憲かという議論もありましたけれども、しかし、いずれにしましても、それもどちらかということで簡単に分けられるというものじゃないんじゃないのかなというふうに思います。  その辺はこれからも自問自答すると同時に、私どもといたしましては、いずれにしても今私たち自身が実は少数であるわけでありますけれども、いろいろな人の意見を大事にしながら、しかし今私たちの前に置かれている課題というものはこれは避けて通れないということで、お互いにやはり理解を求めながら、そこで合意をつくり出していくということであろうというふうに思います。
  245. 大島理森

    大島委員 まだイメージがこう浮かんでこないのですよ、羽田政治というものが。  そうしますと、率直に言います。自民党から大変な政治生命をかけて離党された。自民党時代に自立と共生という思想が自民党になかったから、新生党をつくられて自立と共生の国家社会をつくるというふうに解釈していいのですか。
  246. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 まあ飛び出したときにはそこまであれしていたわけじゃありませんけれども、しかし、実際に私たちが過去の、私も二十四年ぐらいでしたかな、あの当時、国会議員の生活をしながら、そして自民党の中にあっていろいろな仕事をやらせていただいた、そういう中を振り返りながら、やはりこれからの新しい政治というものはそういうところに視点を置くべきかなという考えを持ちました。
  247. 大島理森

    大島委員 ここであれこれ時間をとるのは、もう遅くなりましたので大変あれですが、総理総理がまさに政治改革の目的というのは何か、政策本位だ、政党本位だ。そうしますと、具体的な政策を行うに当たって根本的にどういう理念とか思想を持っておられるかということは、とても大事なことだと思うのですね。  それで、共生と自立というのは私どもも非常にいい言葉かなと思うのです。そうすると、例えば我が党の中で共生と自立をする国家をつくろうということで、それほど違わないなと思うんですよ。  そうなりますと、一体どこでその違いを出すのか、どこで出すんだろうか。  まさに、後で選挙をどう考えておるかという政局のお話総理のお考えを伺いますが、やはり今、先ほど申し上げたように、国民の間から、特にオピニオンリーダーから、保守対リベラル、こういう対抗軸が一つありますな。それから、手法論として、まさに少数による決断ができるような、今こそそういう政治システムがいいんだ、そういう政治手法がいいんだという人もいるかもしれません。いやそうではない、やはりいろんな意見を聞いて、そして少数意見を尊重してやっていくんだ、こういうふうなやり方がいいんだという分け方。  どうも今国民が我々に問うているのは、そういうオピニオンリーダーを初め多くの人たちがそういう問い方をしているときに、総理自身は、いやそれについてはどうもあっちでもなければこっちでもないんだというんでは、まあちょっと寂しいような気がするんですが、改めて申し上げます。そういう対抗軸があったとすれば、総理及び今の内閣はどっちになりますか。     〔委員長退席、後藤委員長代理着席〕
  248. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 今お分けになったのは、これは大島さんとして、あるいはオピニオンの方が言われているのかもしれない。しかし、今の時代に保守かリベラルかという、そんな単純なあれでは分けられない時代じゃないのかなというふうに思います。  それから、よくタカかハトかという分け方もしますね。そういうものでは分けられないというふうに思いますし、少数による決断かと今これも言われたわけでありますけれども、これは確かにこの間の時期、というのは私たちの歩んできた八カ月というものは、大きな課題でしかもタイムリミットがあるような問題でしたから、これはあるときには決断を迫られて、非常に短い時間の中で物事をやっていかなきゃならぬ、たった八カ月の間に物事をやらなきゃいけなかったんですからね。そういうことはありましたけれども、やはり基本的には少数の意見というものを大事にしながら進める、これが私はこれからの歩むべき道だろうというふうに思います。
  249. 大島理森

    大島委員 そういう分け方で分けられない世の中だとすれば、何で分けられる世の中でございますか。  つまり、政策本位、政党本位というんですから、その政党が何を考えておるんだ、日本の国家をどういうふうに動かそうとするんだということが問われるわけですよ。だとすれば、総理のおっしゃる、政治改革やるぞ——一緒にやってきたつもりです。今ひょっとしたら我々も悩んでおるのかもしれません。悩んでおるのかもしれません。皆さんも悩んでおるのかもしれません。日本の最高責任者の総理が、政治改革に命を張ってやってこられた総理が、保守対リベラルでない、そんな分け方ではできないよと言うのなら、どういう対抗軸があると思いますか。
  250. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 私は、よく自分で、頼まれますと下手くそな筆で字を書きます。そのときに書きますのは、温故創新と書いているんです。古きをたずねながら新しさを積極的につくり出すと  いう言葉です。
  251. 大島理森

    大島委員 私どもが今自民党としてもやろうとすることとほとんど変わらないなという感じがしますね、本当に。それはそこだけで、本当はそういう同じ考え方を石田委員長や大内委員長にもお聞きしたいと思っておりました。時間がありませんので割愛させていただきますが、そこで具体的に、それでは政治改革について伺います。  大変いろんな形でこの六年、七年かけてやった経過、これは今さら申し上げません。その結果、二月二十四日、いわば当時の与党、野党という形になるんでございましょうが、覚書を交わさせていただきました。これは石井自治大臣、そのときのまことに達筆な、石井一、こういうふうに書いてある覚書でございます。この覚書を、総理羽田内閣としても最大限に尊重するおつもりですか。
  252. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 この点につきましては、本当にお互いに誠意を持って話し合ったことであります。私どもは尊重してまいりたいと思います。
  253. 大島理森

    大島委員 特にその中の、覚書と協議会結果というのがあるんですよ。これは総理、ここにあるんです。その中の「六」という項目がございました。これは簡単に言いますと、「当該政党政治資金規正法による収支報告に基づいて行われるので、その真実性、正当性を担保するため、」「政党交付金を適切に使用しなければならない」「政党助成法に明記する。」「政党交付金の交付を受けることができる政党は、法人格を有すべきであるとの自由民主党の意見に留意し、今後連立与党と自由民主党との間において協議を行い、衆議院議員の選挙区を定める法律案の国会提出までに結論を得るものとする。」という項目があるんです。  つまり、区画法を出します、区画法を出す前までに、政党法みたいなものを、そこのところを明確にするものを話し合いましょう、結論を得ましようという一項なんです。御存じですか。
  254. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 それは協議の中であることは承知しております。
  255. 大島理森

    大島委員 そうしますと、先ほど尊重すると言った範囲の中にはここも入ると考えさせていただいてよろしいですね。
  256. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 それは尊重いたしまして、その中で議論を詰めて、どうしていくかということを決めるんだろうというふうに思います。
  257. 大島理森

    大島委員 我が党の総裁は、政治改革が大事だと考えるならば次の選挙は新しい制度で行うべきだ、こう言っておるわけです。  そこで、連立与党政権樹立のための確認事項、ここからまたいろいろ後で伺いますが、その中で、「次回総選挙は新制度のもとで実施する。」こうなっております。また総理も、いろいろな報道を見てまいりますと、次の選挙は新しい選挙制度でやるべきだ——やるべきとおっしゃったかどうであるか、これはちょっと、ともかく次の選挙は新しい選挙制度でやるんだという意志が相当強くにじみ出ている。  当たり前のことでございますが、解散権は内閣にあります。だとすれば、羽田内閣を支える連立のそのベースになっている政策合意の中で、次の選挙は小選挙区で行うべきである、こう書いてある。内閣には解散権が依然としてある。そこの関係をどう考えたらいいんだろうかというふうに私なりにいろいろ分類してみました。  そうしますと、総理には解散権という権限がございます。これを区画法ができるまで、区画法ができて、そしてまず完全に次の選挙はもうできるんだ、新しい選挙制度でできるんだというまで、解散権を冷蔵庫のフリーザーの中に入れておきまして凍結するのか、これも一つの考え方ですね。もう一つは、いや、凍結まで言うと内閣のいわば最大の手段がこれはおかしくなる、まあチルドぐらいにしようか。もう一つは、チルドじゃなくて、まあ冷蔵庫にぽんと置いておこうか。あるいは、テーブルの上にそのまま置いておいて、いつでも食べられるようにしようか。こういう四通りぐらいあろうと思いますが、総理、どれですか。
  258. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 それはわかりやすい言葉なんですけれども、それで表現するというのは非常に難しいなと思いますのは、やはり内閣国会というもの、立法府と行政府が対峙するわけですね。そして、立法府がつくられたら、これは行政というものは執行しなきゃいかぬわけですね。このときに、アメリカの場合にはビート、拒否権がある。三分の二でなきゃ覆せない。これに対して日本の要するに議院内閣制の場合には、これは拒否権はただ一つ、解散権だけでございます。  その意味では、いかなる場合でも内閣総理大臣は、内閣は、解散権というのは放棄することはできないということであろうと思っております。
  259. 大島理森

    大島委員 そういう説明は当然のことなわけです。  ところが、まさにその解散権を縛るようなことを総理を支える連立政権のこの政策合意の中で言っているわけですよ。言っていますね。これを認めますか。
  260. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 合意の中にはそう書いてあります。ただし、これは政党国会の方でございますからね、私はまさに今行政府の責任者であるということでございます。
  261. 大島理森

    大島委員 我が国の制度は議院内閣制ですよね。そして、私ども自民党の内閣のときは、自民党の方から党議をもって次の選挙はこうしろなんというのは余り聞いたことがないし、私はするべきでないと思うのです。総理いいですか、議院内閣制なんですよ。つまり、羽田内閣はこれをまとめられた方々にお支えをいただかれておる。そこで、ここで書いておられる。ということは希有なことなんですよ、これは。そうでございましょう。それは異常なことだと思いますか、そういう姿が。
  262. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 ただ、我々の場合には一つ政党じゃなくて連立てあるということ、お互いに持ち寄って合意をするということ、この点はぜひ御理解をいただきたいと思うのです。そしてここでも、関連法案を国会に提出するものとし、可能な限り、今国会で審議し成立させると書いてあるわけで、そしてその次に、「次回総選挙は新制度のもとで実施する。」というふうに書いております。
  263. 大島理森

    大島委員 連立だから云々ということは、許されることと許されないことが私はあるような気がするんですよ。総理、いいですか。ここには「次回総選挙は新制度のもとで実施する。」と、こうしておるわけです。例えばそうすると今後いろいろな連立政権ができて、まさに自分たちが支える内閣の解散権を、与党がこうこうあるべきだみたいなことを書くことが普通の状態、連立だからこれはしようがないんだということは言えるんですか。
  264. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 私はもう常々お答えするときに、やはりそういったもので解散ができるように、次の選挙というのはそれで選挙ができるように努力するということは、私自身も言っておるわけですね。  ただ、これは党の場合には、例えば党議決定というものだっていろいろな党議決定がありますよ。しかし、内閣がそれじゃそれをそのまま実行してきたかというと、私自身党議決定に参画しながらそれが実行できなかったことは幾らでもありますよ。そして、内閣内閣として考えるんだというので、これはやはり議院内閣制でありますけれども、やはり行政府対立法府ということを、これはやはり御理解をいただきたいと思うのです。
  265. 大島理森

    大島委員 つまり、それがあり得べき姿かどうかというのはちょっと論議を抜きまして、今のやりとりを伺っていますと、そこは目標だと。ということは、あるいはひょっとしたら、当然その可能性として、総理の頭の中というか可能性の中で、中選挙区制でもそれは解散権の行使はあり得るかもしれぬ、こういうことですね。
  266. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 よく聞かれまして、私はそれは否定しないと言っております。
  267. 大島理森

    大島委員 それから、これもまた連立時代の一つの私は、これから我々も新しい政治状況の中で勉強しなきゃならぬことかなと思っておるんですが、野党二党である社会党の首脳さんから、不信任案を出される前に総辞職しなさい、こういう問題提起というか何というのですか、言われておられますね。普通、総辞職、まさに最高に重い内閣総理大臣内閣が、総辞職なりなんかをするときというのは、人から言われて、もちろん不信任案が通った場合はそうなりますよ。いわば、そういう一党から言われて総辞職しますということは、内閣のあり方として私は非常に、もしそうなったとすれば、これはまことに無責任かつ何のための総辞職かというイメージなんですよ。だから、社会党の首脳のそういう発言に対して、総理としてはどういう御感想をお持ちでございますか。
  268. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 私は、議論というのはいろんな議論があろうかと思いますよ。ただ私は、記者さんなんかにもそのことを尋ねられたりいたしました。しかし私は、一日を一生みたいなつもりで一日一日やっているんで、そういった先のことについて今何にも考えておりませんということを申し上げました。また、その首脳の方たちにも実は申し上げました。
  269. 大島理森

    大島委員 感想というのですか、一党の首脳から、あなたおやめなさい、そうしたら云々といういろんなことがありますが、そういうことに対しても、言われたことに対しても、いやあ、いいこと言ってくれましたなとか、あるいはとんでもない話だ、不愉快な話だ、あるいはまあ右から左に馬耳東風、流しておきましょう、いろんなあれがあると思いますが、今のあれですと聞く耳を持たぬ、こういうことですか。
  270. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 それぞれ御意見というものはいろんな意見がある、それから、政治に対する考え方というのもいろんな意見がありますから、それはその御意見として私はお聞きしたり、あるいは読んだりしたということでございます。しかし私は、それが失敬になるとかいうつもりで言われたものでもないというふうに理解をいたしております。
  271. 大島理森

    大島委員 失敬でないということは、まあそれはなるほどそういう考え方もあって、尊重をしながらじっくりその真意を調べよう、こういうことですかね。
  272. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 この問題について昨晩、あれは何のテレビだかわかりませんでしたけれども、御本人がキャスターの方とお話しになっておったそうでございます。そこに何か大変いろんな意味の深い話がなされておったということでございます。
  273. 大島理森

    大島委員 いや、私はテレビの話を聞いているんじゃなくて、総理自身が、普通であれば、予算委員会を開いている、羽田内閣がベストと思う予算です。これは継続したあれかもしれませんが、そのことに対して何の感想もないような感想で本当にいいんだろうかなと思うのです。いかがですか。
  274. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 それこそ、ばかにしているとか、いろんな方もいらっしゃるでしょう。しかし、私はもうともかくみずからの、これは私自身が言われていることでありますから、ですから、一日一日を一生のつもりでこうやって一つずつ誠意を持ってやっていくんだということでありますから、いろんな御議論があること、私はこれはみずからのあれとして聞いてまいります。しかし私は、そういうつもりでやっておりますから、この問題について、そんなことに対して怒りを感じたとかなんとか、これは本当にないですよ。
  275. 大島理森

    大島委員 総理は、普通の言葉で語りたい、こう言っておられますけれども、総理になると普通の言葉で語ろうと思ってもなかなか語れないから、非常にお言葉が多いけれども意味がなかなかとれないという、そういうふうな批評もありましたが、私はまじめな話として、一日一日をおやりになるという姿勢、それはよく見えます。総理の姿は見えます。見えますが、その一日一日をそうやっているときに、あなたおやめになったら私助けてやりますよとか、そういうふうなことを言われて何の感想もないということは、私は内閣全体に対する、大臣の皆様方も一生懸命今やって、総辞職ということは大臣の皆様方が一たん首になるということなわけですね。そうした場合に、本当にそれぞれの大臣がそれぞれの政策に一生懸命やろうとしているときに、予算が通ったらおやめなさい。  これは、内閣を統帥する総理として、やはりきちっとしたお話をするべきだ。それは大臣の皆様方だって、予算が通ると後はでは。これはやはり姿勢の問題として。よく総理がおっしゃるように、日本の動向が世界に映るわけですよ。外交交渉をやっておる、今の羽田内閣やめなさい、いや、どうもそれに羽田総理内閣も何かきちっとしたお答えも出さない、どうやってそれじゃ本当に真剣に交渉したらいいんだろうか、まさに国際社会と日本の信頼の中でそういうことがじわじわじわじわと私、響くんだろうと思う。  総理、これは毅然とした姿勢をやはり総理言葉から、普通の言葉国民にわかりやすく、世界にわかりやすくおっしゃるべきだ、私はこう思います。
  276. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 言葉というのは、これはいろんな吟味の仕方というのがありますよ。私は、だから先ほどテレビのことを申し上げたわけですけれども、そこで割合と具体的にお話しになったということを聞きました。  いずれにしましても、悪意があってどうのこうのとか、あるいはばかにしてどうのこうのとか、そういうつもりで言われた、そのようにふっと受け取る方もあるでしょう。そうじゃない方々もあるということであります。
  277. 大島理森

    大島委員 そこは総理社会党の党首が悪意で言っているということじゃなくて、まさに政治の  一つのあり方論として投げかけている話なんであって、私は何も、悪意で言っているからその悪意に対してけしからぬやつだとかなんとかということを言えというんじゃないんです。だって、大臣の皆様方がこんなに一生懸命働いておられる。予算が終わったらやめなさい、これは私は本当に、ある意味では内閣として非常にゆゆしき問題のような気がするんですが、いずれにいたしましても、次に普遍的安全保障論に私は移らせていただきます。  もう既に何回かいろいろな議論がされました。そこで、内閣ができるあたりに、総理もそれから外務大臣防衛庁長官も非常に、いろんな集団的自衛権の問題を中心として、自民党時代とは異なる見解を出す意欲を見せておられました。私は、これは決して悪いことではないな、政策論争で結構じゃないか、大いにやるべきだ、こう思っておったんです。そうしましたら、このごろは完全にトーンダウンしました。トーンダウンしたんです。なぜトーンダウンしたのか。柿澤大臣なんかも、もっと議論したいんだろうと思うんです。きょうは、そのことについて少し細かくいろんなことを、総理の安全保障論をまた聞いていきたいと思うんです。  「新たな連立政権樹立のための確認事項」というこの項目は、もう一度聞きますが総理、今の内閣はこの確認事項を尊重するんですか、それとも全く関係なくおやりになるんですか。
  278. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 ここに署名された連立与党、この上に乗っている内閣であります。与党の確認事項というものは、我々は大切に尊重していくということは当然であろうと思います。
  279. 大島理森

    大島委員 そこで、普遍的安全保障と言われるところをちょっと議論をさせていただきます。  統一見解というものが出ました。第一に、「新たな連立政権樹立のための確認事項については、政府として有権的解釈を行う立場にない。」これはそうかもしれません。次に、「政府としては、与党統一見解で示された考え方を踏まえつつ、」こう書いてありますね。したがって、与党がここに書いてある考え方を踏まえるというんですから、考え方を一〇〇%御理解されておると私は認識してよろしいですか、総理
  280. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 ここに至るまでの経過がありますけれども、しかし我々としては、やはりこの考え方というものは理解をしながらやっていかなきゃいかぬと思っております。
  281. 大島理森

    大島委員 それでは改めて伺います。「与党統一見解で示された考え方」という普遍的安全保障論というのは何ですか、総理
  282. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 国連による平和と安全の維持のための枠組みの総体は、いわば国際社会全体によって受け入れられております。そのような意味で普遍的な性格を有するものであるということから「国連による普遍的安全保障」という表現を用いたということであります。
  283. 大島理森

    大島委員 その考え方なんですよ、総理。この第三の「安全保障」のところにこう書いてありますね。「日本国憲法は、」つまり憲法はですよ、「国連による普遍的安全保障を理念としていることを認識し、」ということは、我が国の憲法も、国連憲章第六章、第七章でしょう、そのことを、今おっしゃったその集団的云々、与党の解釈を「認識し、世界の平和とわが国の安全保障を図るため、日米安全保障条約を維持しつつ、国連の平和活動に積極的に参加する。」こういうことなわけですね。つまりその中には、もう一度私は問いますが、集団的自衛権というものも普遍的安全保障なんだということが入っているわけですね。
  284. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 集団的自衛権については、個別の自衛権と同じように、我が国、国連の中に一つの考え方として私は定着しておると思っております。ただし、日本としては、要するに憲法の範囲内ということで、憲法の中にあってはこれが、いわゆる日本にかかわりのある他国が攻撃されたときに日本がそれに対して協調して動くということはできないということであります。
  285. 大島理森

    大島委員 我々政権下における考え方とそれほど変わらないと考えていいんですか。
  286. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 そのとおりであります。
  287. 大島理森

    大島委員 そうしますと、一方こういう考え方がありますね、総理。イラクのときに党内でも議論しました、我々は。いろんな議論をしました。その中に、今ここに「普遍的安全保障」と書いてありますが、我が国の安全保障の世界というのがどうやら二つあるんじゃないだろうか。総理いいですか、ちょっと聞いてくださいよ。  国権と国権が争って、あるいは国権同士の集団が争って、その紛争を解決するためには集団的自衛権は使っちゃいかぬ。ところが、国連という世界がありますね、国連という世界がきちっとコミットした形においては違う世界の話なんだ、まさに第六章、第七章に基づく、この世界の、国連がコミットする紛争処理のためには、今まで我が党、我が国がとってきたその世界とは違う世界なんだ、だから、それは政治判断をしていけばいいのではないか、そして、そのことに態勢をとることが日本のあり方ではないかという議論がありました。今もあると思います。この考え方は羽田政権では一切とらないのか、あるいはまさにここの(三)の「安全保障」、連立与党政策合意の内容の中にそういう考え方は一切入っていないのか、どうですか。
  288. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 今イラクのことで具体的に名指しながら、これをもとにしてお話しになっておりましたけれども、イラクのような紛争に対して、いわゆる湾岸戦争ですね、これに対して我々は参加することはできないということで、もちろん、当然兵力を持ったものの参加というのはできないということでした。  ただし、あのときに協力しましたのは、たしか輸送ですとか、あるいは国連の決議に基づきながら私どもはたしか掃海艇を出しておりますね。そういったことは私はでき得るということであります。
  289. 大島理森

    大島委員 イラクのときの個々的なことを聞いているんじゃないんですよ。つまり、この中に入っている概念の、これだけは入っていないよと、入っていないんですね、羽田内閣もとらないんですねということを私聞いておるのは、もう一度申し上げます。つまり、集団的自衛権が日本の憲法上読めないんだという議論は、国権と国権の争い、ある国とある国の争い、あるいはある国同士の集団の争い、そういうものに日本が何かをして解決しよう、そういうときには集団的自衛権をとっちゃいけないんだと。これは憲法でもそう書いてあるんだと。  ところが今日、まさに国連というものが非常に大きな世界の平和秩序というものを考えなきゃならぬ重要な位置になった。国連の改革もしなきゃならぬ。しかし依然として、ニューオーダーという中に国連の存在というのは大きいですね。これはもう総理も何回も言っておられる。  そのときに、国連がなし得る紛争処理というのは六章、七章でいろいろ書いてあります。このことは、実は憲法の中でまだ我々日本の政治が判断していないものなんだ。むしろ国連がきちっとそこに入って、コミットしてその紛争処理をするとするならば、それは今までの集団的自衛権とは違う世界の話なんで、それは政治決断をすればできるんだという考え方はこの中に含まれていませんか、いますか。なおまた、羽田内閣としてはそういう考え方は、それはどこかで議論されておるかもしれないけれども、とらないよと言うのか、どっちですか。
  290. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 今お話のあった件につきましては、実際に今日までそういったもの、例えば国連軍というものはまだつくられておらないということ、国連の指揮官のもとに行動したということは、実際にまだ現実の問題としてないということ、また、そういうものがどんなふうに描かれているのか、描こうとしているのか、まだこれは議論になっておらないということ、そのあたりを私たちは考えたときに、さあ、それに対してどう対応するのかということをまだ申し上げる段階ではないということであろうというふうに思います。
  291. 大島理森

    大島委員 それは総理、ちょっと不勉強だと思いますよ。国連決議に基づく行動というのはあったじゃないですか。国連決議を担保する、国連決議を実行せしめるという行為があったじゃありませんか、イラクのときに。だから、そういう世界のときは別なんだと。違いますか。
  292. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 一般論としてお答えをさせていただきます。  集団安全保障の態様としては、今総理が申し上げました国連軍もしくはイラク型の多国籍軍、その他さまざまなことがあり得るわけでございます。イラクにおける多国籍軍の場合には、我が国としては参加できないというような考え方でございますが、しかし、これから先どのようなそうした形の行動が展開されるか、これについてはさまざまなことがございますので、そういう意味では、それを統一的にイエス・オア・ノーでくくることはなかなかできないというのが実態でございます。
  293. 大島理森

    大島委員 柿澤大臣、あなたは自民党時代に、私は副長官でこの議論を相当しましたよ。おわかりだと思うんです。だから、いやそういう考え方はとらないと言ってくださればいいのです。私、もう一度言いますよ。総理、これはまさに大事なところの議論なんです。私は議論したらいいと思うんです、堂々と。  もう一度申し上げます。例えば、今具体的に言いました。国連軍、正規の国連軍というのは、これはすぐにつくれといったってできる話じゃありませんよ。私はそのことを言っているのじゃないんです。  まさに、例えば国連決議に基づいて世界の紛争処理をしましょう、そういうときに、それは今ま  で日本が考えてきた集団的自衛権という世界は、もう一度言います、国と国が争って、国連がコミットしない、そこに日本がいろいろやっていくのはこれはいかぬと、軍事的に。そうじゃなくて国連決議、あるいは将来できるかどうか知らないけれども国連軍、国連というものがきちっと主体的になって、そしてそういうことをやろうとするときに、日本がそれに参加するとか協力するといったときの集団的自衛権という考え方は、それはそこには当てはまらないんだと。一羽田内閣総理大臣「そのとおりです」と呼ぶ)今大事なことをおっしゃった。そのとおりと、こう言っておられますが、後でちょっとお答え願いますよ、総理。  だから、集団的自衛権論というのは、もはや国連がコミットしたときには、違う世界の話なんだから、それは政策、政治判断でやったらいいんじゃないか、まさにそれが普遍的安保論だという、その中身にそのことが入っていますか、入っていませんか。そういう考え方は一切ありませんのか。あるいは羽田政権としてそんな考え方は一切とりません、今後とも。羽田内閣がいつまで続くか私わかりません、続く限りそういう考え方は一切とりません、それは否定します、こうおっしゃるのか。どっちなんですかということを聞いておる。     〔後藤委員長代理退席、委員長着席〕
  294. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 今の御質問は、まさに集団安全保障のために集団的自衛権についての考え方を変えることをいわゆる政治判断でできるんじゃないのかということは、それは考えられないということであります。  いずれにしましても、日本の今憲法の中で認められているのは、自国に攻撃を受けたときに最小限の対応しかできないということでありますから、要するに、他国のために武力を持っていって対応するということはできません。
  295. 大島理森

    大島委員 そうしますと、日本の自衛隊、まあ自衛隊の話は、自国を守るだけしか武力は使えません、こうおつしゃったんですが、本当にそういうお答えでよろしいですか。そうですが。わかりました。
  296. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 まさに国権の行使として武力を使うということはないということであります。
  297. 大島理森

    大島委員 もう一度、一回だけ確認します。私は、そういう考え方もいいし、そういうことを議論したらいいという考え方の一人なんです。  そこで、もう一度伺いますが、先ほど、この連立与党政策合意の考え方を踏まえる、こう総理が見解で出しました。だったら、この「国連による普遍的安全保障を理念としていることを認識」してというこの世界には、もう一度聞きますよ、国連が何かをしよう、紛争を処理するのに何かするんだ、安保理でも決議した、さあやろうといったときに、そのときに、それは今までのとおり、今まで内閣がずっと持ってきた憲法解釈に基づくやり方でしかできませんということで書いてあるのか。そうじゃなくて、違う世界、いろいろな範囲、こういうものも想定しているのか、どっちなんですか。羽田政権の考え方はわかりました。それは今おっしゃったこともそうですがね。そういう中身は入ってないんですね。もう一度伺います。
  298. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 これは、我が国の憲法に基づいて、その中ででき得る範囲のことをやるということでありますから、ですから、今言われたとおり、私どもが今までとってきた政策とその点では変わっておりません。
  299. 大島理森

    大島委員 この連立与党政策合意も全くそのとおりだと思っていいですか。
  300. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  301. 大島理森

    大島委員 わかりました。  そうしますと、今までの考え方、今までの方法論、これは一切変わらない。だから、憲法のそういうふうな中で、憲法解釈から手法論から、つまり国連と、ここで言う「普遍的安全保障を理念としていることを認識」していろいろなことをやりますよ、こう言っていることと、自民党政権下時代いろいろなことをやってきたことは基本的な考え方において何ら変わらない、こう思っていいんですね。
  302. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 今、新しい時代の新しいいろいろなニーズといいますか、いろいろな問題が起こってきておりますよね。そういったものがありますけれども、これはケース・バイ・ケースということがあるんでしょうけれども、しかし、私は基本的に今までのあれとは変わっておりません。
  303. 大島理森

    大島委員 ついこの間言ったことをあげつらうことは私は余りしたくありませんが、集団的自衛権もいろいろ意見があるんだから議論をしたらいいじゃないかと総理自身がちょっとおっしゃったやに新聞報道があった。総理になられた会見か何かでありますよ、ここに。柿澤大臣なんかは、特にそういうことをおっしゃっておられましたね。議論をしたらいいと思うのですよ、議論をしたら。(羽田内閣総理大臣閣僚じゃなかったから」と呼ぶ)そのときは閣僚じゃなかったからといって、今私語が総理大臣からありました。  そこで伺いましょう。二十三日、大出俊社会党委員長は、まさにこれに参加した社会党の考え方として、定義として、国連加盟国の各国の軍縮を前提に、各国の主権下の軍隊ではなく警察権限という形で国連に委託するものという考え方が提示された。総理、これは国連軍とは違うのですよ。勉強しておいてくださいよ。つまり主権が持つ軍隊を極力なくしていく、そして国連がほとんどの軍隊を持つんだ。これは大出さん、社会党の考え方なんだ、それが普遍的安保なんだ。この考え方に対しては、とてもそういう考え方は私は受け入れられませんと思いますか。これの考え方に対する評価をお伺いします。
  304. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 それぞれが主権を持ったということでないもので、そういう警察的なものを国連の方に提供していくということですね。そういった議論というのは、これから私はあることはあると思いますけれども、今の時点では私どもがそういったことに対して対応というのはできないと思っております。
  305. 大島理森

    大島委員 そうすると、大出俊先生の普遍的安保論の解釈がここに示されておりますが、それも議論としてはあるのかもしれないということを言いましたが、総理としてはこういう考え方に今どう思いますか。
  306. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 今私ども、そこに申し上げてありますこの新たな連立政権樹立のための確認事項についての与党としての解釈というものは、与党統一見解、ここに示されたとおりであろうというふうに考えております。
  307. 大島理森

    大島委員 まあいいでしょう。今私は決して揚げ足を取ったりしている議論をしているとは思っておりません。  むしろ総理、私はまた原点に戻ります。総理が政策本位だ、政党本位だと言うならば、安全保障において何がどう変わるのだろうかと期待しておったのです。(羽田内閣総理大臣「まだできていない、選挙やった後だから」と呼ぶ)いや、私語でいうと、そのまま言いますよ。まだできていない、選挙終わったばかりだということを言っておられました。選挙後だからと言いますが、しかしここに新たに、国連の普遍的安全保障を我が国の憲法の中でも大事にしていかなきゃいかぬという趣旨が書いてあるわけですね。  これは大いに議論したらいいなと、私はこれを見て非常に結構なことだと思ったのです。残念ながらその後、今もやりとりを伺いますと、まさに国連による決議、あるいは将来できるかもしれない真正国連軍の中に、さあ日本がどうするかといったときには、これは新しい政治判断をして新しいこういうことをやるというのじゃなくて、今までの基本的な考え方をそのまま踏襲した上で対応する。対応の仕方はいろいろそのときになってみなければわからぬ。これがこの与党政策合意の中身であり、羽田内閣の基本だ、こういうふうに国民の前に今明らかにしていただきました。  そこで総理、私自身も、あるいはここの新しい先生方は別にして、イラクのクウェート侵攻というのは大変大きな教訓を私どもに与えた。そこから我々日本の政治が何を学ぶか。これはまだまだ学ばなければいかぬし、世界も学ばなければならぬことがあると思うのです。その結果、PKO法案というものをその当時公、民の皆様方の御協力をいただいてでき上がりました。これは大変な努力をそれぞれされました。私は、戦後のまさに日本の安全保障、外交政策の大きな一つの成果であったと思うのです。  そこで、総理自身もその当時は自民党の有力な議員のお一人でございました。総理になられて世界の安全保障、日本の安全保障、これをどうしたらいいかといったときに、このことは当然御記憶にあるし、あるいはあれを踏まえて、こうしたい、ああしたいということもあってしかるべきだ、勉強してしかるべきだと思いますし、外務大臣も当時は自民党の外交部会長でございました。神田防衛庁長官も当然その当時は重要なお役割をしておられましたから、当然あのことを、防衛庁長官になったらああいうことをしてみたい、こういうことをしてみたいという思いがあってしかるべきだろう、こう思うのです。  そこで、そのことを踏まえつつ、それでは総理、普遍的安全保障論という中身はわかりました。結局変わらないということなんですね。変わらないということであっても、国連とのかかわり合いの中を言っておりますから、その国連とのかかわり合いの中の軍事的措置を基本的にどこまで関与していくか、関与するに当たっての基本的な考え方、こういうものを総理に私は若干お伺いしたい、こう思うのです。  多分いろいろなケースがあると思いますが、まず第一に、世界の中で地域紛争が起こりました。安保理でいろいろ議論しましたが、残念ながらそれは多数にはならなかったとしても、そのことのために日本が何が貢献できるかといったときに、いわばそこに多国籍軍というものが存在したとします。しかし、これは国連決議にもない、あるいは先ほど言った真正な国連軍でもない、しかし圧倒的多数は、国連のこの過半数以上の総意はあるんだけれどもどうもそれは得られないという中で、日本はそういう場合にどういう原則で対応されますでしょうか。
  308. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 我が国といたしましては、国連の平和と安全のための活動に参加、協力する際には、やはりこの場合にも憲法の枠の中で協力するということであろうというふうに思います。
  309. 大島理森

    大島委員 そうしますと、国連決議にないそういう措置、なおかつ日米安保条約というものではない措置という場合には一切できない、こう考えてよろしゅうございますか。
  310. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 あくまでも憲法に許される範囲です。
  311. 大島理森

    大島委員 つまり、先ほどの議論にありますように、国対数国の紛争処理のためには、日本は軍事的措置をすることは、御協力を申し上げることは、その憲法の範囲内ということを考えますと、それはまさにその一国対数国の何か紛争ということになるわけですから、そういうものには一切できない、羽田内閣ではそういうことはできないのだ、こう考えてよろしゅうございますか。
  312. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 当時の湾岸戦争のことを思い返してみますと、例えば避難する人たちあるいは難民の人たち、こういった人たちに対して我々は手を差し伸べることはできました。あるいは医療の点についても後方において行うことができたと思います。それともう一点は、その後掃海艇等を出して対応することができたというふうに思っております。そこまででありましょう。
  313. 大島理森

    大島委員 難民救済のときも国連機関からの要請があったのでございますよ、総理。国連機関からの要請があって、それを受けてという形にしたと私は覚えがあります。だから、全く国連がコミットしない、あるいは国連機関も何も関係ない、しかし多数国対一国の紛争処理になった。そのときには日本の立場としては集団的自衛権、まさにそれはとるべきではないというのですから、協力、参加はもちろんですが、そういうことはしないということですか。
  314. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 いずれにしましても、先ほど申し上げましたように、私どもとしては集団的自衛権というものをとることはできないということであります。
  315. 大島理森

    大島委員 これは具体的な事例がないとさらに突っ込んだ議論ができませんので、ここら辺でこの議論はあれします。非常にいろんなケースがあるかもしれません。  ただ、また政策合意の中で私申し上げます。それは朝鮮半島の問題なのです。ここには、「いずれにせよ、わが国は、国連の方針が決定された場合には、これに従うものとする。」したがって、国連決議あるいはそういうものが出た場合は、まさにいろんなことを考えられるかもしれません。とともに、「また、」と、こういくのですね。「また、政府は、日本国憲法のもとで緊急の事態に備えるとともに、」米韓両国と緊密に協調して対応をする、こう書いてあるんです。つまり、「また、」ですから、国連決議、国連がコミットする以外の一つの事例として「また、」という言葉を使っているのだろうと私は思うのです。そこには、米韓両国と緊密に協調して対応する、こういうふうに書いてあります。  当然に、確認をいたしますが、それも今までの判断の中でやりますよ、そうしますといろんな限界があります、しかし、これはそういうことだけなのかなという気がするんですが、この「また、」云々ということは、その場合においても、総理は、今までの範囲を絶対超えません、こういうことですか。
  316. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 まさに我々の方としては、この場合でも憲法の許される範囲の中で行うということであります。
  317. 大島理森

    大島委員 そうしますと、もう一度イラク・クウェートのときの政府の対応、我々は我々なりに議論したことを思い出しながら、これは防衛庁長官にもお答えをいただかなきゃならぬと思います。  つまり、今私がいろいろ申し上げたのは、国連決議あるいは国連がコミットしない紛争処理に当たって、日本の果たす役割の限界あるいは基本論を総理から伺いました。つまり、何ら今までと変わりはありませんということのような答えです。  だとすれば、今度は国連決議、これはまさに、イラク・クウェートのときは国連決議という一つの国連のオーソライズ、そのもとにできないろんな活動だったわけであります。そこで我々は悩みました。日本の政治全体が議論しました。  国連決議を受けて行われる活動というのは、当然いろんな形で日本政府はコミットすることはできますよね、総理の思っていることの中で。国連決議を受けて行われるいろんな活動があります。もっと言えば、イラクのときのことを思い出していただいていいと思うんです。今おさらいをしようと思って私は質問しておるんです。当然いろんなことができますよね。
  318. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 これはいろんな種類、いろんなケースがあろうかと思っております。
  319. 大島理森

    大島委員 そのときに、決議に基づいた活動というのが一つあるわけです。よくこれは議論されましたよ。それから、決議の実効性を確保するための活動というのがあるわけですね。二つあるんです、これは。  今国連との関係を話しますと、総理、PKO法案、まあPKFはまだ、さっきの話じゃありませんけれども冷蔵庫に入っておる、冷蔵庫でフリーズになっておるのです。法案はできておりますけれどもね。それではなくて決議なんです。決議に基づいた行動と決議の実効性確保のための活動というものがあるはずです。これは御認識ございますね。
  320. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 大島先生のおっしゃるとおりです。
  321. 大島理森

    大島委員 そうしますと、私は、これは防衛庁長官に伺いましょう。  現行法制度で、もし国連決議に基づいた活動、国連決議を担保する活動、こういうもので、例えば輸送の問題、あるいは何々。自衛隊法、多分防衛庁長官も読んでおられると思いますが、こことこことここは、まさに今まで、実は普遍的安全保障論というものが出て、それは今までと変わらないんだという総理のお答えでした。だとすれば、これは何も簡単な話なんですよ。  現行法制度で、今のような国連決議があって、それに基づいたその活動と実効性確保のための活動の中で、こういうことはできるけれども、残念だが新しい法律がないがためにこういうことができませんという、何か具体的な事例がございますか。
  322. 神田厚

    ○神田国務大臣 答弁いたしますが、どうも具体的なことでは答弁をすることができませんので、よろしくお願いします。
  323. 大島理森

    大島委員 私は、具体的な事例がどこかに今起こって、それの具体的なというんじゃなくて、それじゃ、例えば自衛隊法第八十二条、これは「海上における警備行動」、それから自衛隊法第九十九条、機雷の除去、自衛隊法第百条、輸送事業の受託、この三つについて、今国連決議が出ました、紛争処理に世界じゅうが何かやりましょう、この代表的なものなんですよ、これは。そのときに、現行法制度ではここまでできますけれども、残念ながらこの制度をきちっとこうしてもらわないとできません、こういうものありませんか。
  324. 村田直昭

    村田(直)政府委員 お答えいたします。基本的には、現行自衛隊法上で、決議が行われた場合に、その決議の内容を実行することが可能かどうかということを検討した上で判断することになると思いますが、今先生申されたように、自衛隊法八十二条「海上における警備行動」でございますけれども、その要件が国連決議の例えば実効性を確保するようなことに果たして合致するのかどうかと、それから八十二条の趣旨は、「治安の維持」ということが趣旨になっておりますので、その辺の検討を要するということで、直ちに今、この前もお答えしたわけですが、結論は得ない。  それから、機雷の掃海等についても、これはそのときの状況いかんによりますが、ペルシャ湾の機雷の掃海というのは、終結後、いわゆる戦争終結後において、もう遺棄されたものとしての機雷を掃海したということでございますので、いわゆるそのような輸送の事業にしましても、そういう状況いかんによるわけでございまして、その状況がわからない段階で、これはできる、これはできないというようなお答えはちょっと差し控えたいと思います。
  325. 大島理森

    大島委員 局長、法律解釈上できない、法律解釈上はこれだけは絶対できないということはございませんか。例えば、輸送という問題に対しましても、それは自衛隊の訓練のためとか、そういうことが一つの縛りになりますとか、そういうふうなことを聞きたいんですよ。
  326. 村田直昭

    村田(直)政府委員 今具体的にお尋ねの百条の関係で、輸送でございますと、要するに、確かに先生御指摘のとおり、「長官は、自衛隊の訓練の目的に適合する場合には、」これこれの機関からの依頼を受けて実施することができるということでございますから、当然のことながら、訓練の目的に合致しなければ行えないということでございます。  そういうように、法律でそれぞれ決められている条項については、そのとき与えられた決議の内容とその法律の条項と照らし合わせた上、その時点で判断をするということになろうかと思います。
  327. 大島理森

    大島委員 いろいろ申し上げました。実は、まだまだ本当はあるんです。  総理、逃げちゃいけないと思うんです。やったらいいんですよ。それで、私は何も有事法制をつくるべきだとかというんじゃないんです。今私の申し上げたことは、実は廃案になりました平和協力法のあのときの議論の積み重ねなんですよ。つまり、現行憲法の中でも政策論争できる点はたくさんあるんです。多分そのことを総理柿澤さんやあるいは防衛庁長官も、まああのときはまだなっていなかったからと総理がおっしゃったんですが、まさにそういう議論をしたらいいんです。委員長が、わしが廃案にしたから、こう言っておりますがね。  つまり、国連というもの、まさにこの普遍的安保論、もう一回、総理、これは非常に眼光紙背に徹しますと、私は、一つの問題提起だ、だからいいと思っているんです。やりましょう、議論を。今総理といろいろやりとりしましたら、何ら今までの基本論は変わっていない、与党の考え方も何にも変わっていないんだ、こういうことなんですね。それでも、もしそれだとしても結構。  だとするならば、有事法制がどうだこうだじゃなくて、PKO法案はできました、PKFの問題もいつかやらなきゃなりません。PKO、PKFと、いわゆる国権と国権が争うその中での判断は一つあって、その整備もまだ不備だとかいろいろあります。国連決議に基づいたそこの法体制というのは、今防衛局長がおっしゃったように、例えば補給崖を出そうといったって、それは自衛隊の訓練のためという、そこがあるわけですよ。  勉強してやったらいいじゃないですか、羽田内閣の中であれが廃案になった、その当時反対をされた政党も入った、我々もあのときは我々の自民党内閣で出した、まさにそういう議論を羽田内閣がやって、羽田政権というのはこういう顔だよ、安全保障という問題は日本の基本政策ですよと、なかなか議論がこれは活発になるかなと思って見ておりました。  せっかく、これを書かれた方は、普遍的安全保障論、こういうふうな新しい、これは新しい概念かな、ああ、これを持ってくるのかな、こう思っておったら、今いろいろやりとりしても、何ら変わっていない、変わっていません、自民党時代と同じなんです、政府・与党もそうなんです、それはわかりました、今の議論で。  だとすれば、その中でやり得る、国際社会の中における日本の、何かがどこかであったときに対応して整備しておかなきゃならぬ、そこのところが、国連決議に基づくその日本の行動基準を決めたものがまだないんです、今。やる気ありませんか。
  328. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 それは、今お話がありましたように、確かに例えば邦人に問題が起こったときにでも、残念ですけれども自衛隊法一部改正というのがいまだにできておらない、そういう中で対応ができていないということもあります。  それと同時に、今お話があったように、国連の決議あるいはそういったものの中で、ただ安全というものを願うだけじゃこれはやはりだめなんであって、我々としてでき得ることについてはやはり積極的にやっていくことが必要であろうと思う。何と何ができるのか、それは個々のケースによって違うと思います。ですから、そのあたりは我々としてもやはり十分議論しておくということは必要であろうというふうに考えております。ですから、そういう面では積極的な対応というものは必要であろうというふうに考えております。  ただし、武力を行使してのことについては、これは私は、今日本としてやることはできない。
  329. 大島理森

    大島委員 総理、もうわかりましたよ、そこは。だから、新しい概念はとりません。それはもう完全にそういうことは、今の与党でもありませんし、私もとりません。だとすれば、今の解釈の中で不備な点をきちっとさせておくということ、羽田内閣で法案体系までつくりたいという意欲はありますか。
  330. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 これはまさに個々のケースというのはどんな事例が出てくるのかということがありますから、そのあたりのところは、今の内閣でどういうふうにやっちゃいますよということは言えない。むしろ私は、そういうことこそ本当に議会の議員同士でもやはり大いに活発に議論していただく中で、そういった中から拾い上げていくということだってできると思いますよ。
  331. 大島理森

    大島委員 個々的にどう対応するかということじゃ足りなくて、国連平和協力法というもの、そのときは加藤大臣も政調会長で御苦労いただきました。私、よく知っております。だから、あの体系、整備されたものがありませんと、またその問題一つ一つに憲法解釈が伴って、自衛隊法の今の問題の解釈の問題があって大変なんですよ。羽田総理、あなたはまさに、先ほど私は、政策は何ですか、理念は何ですか、こう言ったときには、保守でもなければリベラルでもない、共生と自立だ。共生というのは、何か協同組合的なイメージ、自立というのは、いや、そんなものじゃなくて自由競争の世界、何となく非常に複眼的なあれなんですが、まあそれは自分の勝手ですから。  今のような、かつて四年前、五年前に我々が苦しんで失敗をした、失敗したのであれば、どこで何があるかわからないでしょう。国連というものがまた重要な役割になっているでしょう。その世界のところが未整備なんですよ。だとすれば、個々的にそのときに来たから解釈するんじゃなくて、それこそまさに改革の政治じゃありませんか。おやりになる気はありませんか。
  332. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 ですから、私どもとしましては、それは個々のいろいろな事例というものについて我々がきちんと対応できない、これではやはりいけないことなんであって、それは個々に勉強するということはあります。
  333. 大島理森

    大島委員 個々には勉強することがあっても、体系的なそういうものをまた考えるということは羽田内閣ではしないというふうなことですね、そうすると。
  334. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 ですから、国連がやはり本当の平和というものをつくり出すために、私どもの国の憲法の中ででき得ることが一体何があるのかということについては勉強し、そして対応することは、これは当然やらなきゃいかぬと思っております。
  335. 大島理森

    大島委員 よくわからないんです。個々的なことはあの大きな事例でもう勉強したんですよ。そして、なおかつ一つの事柄というのは、どういう事柄ができるかわかりません。少なくとも、しかし、私は冒頭に申し上げたように、我々日本の政治は、あのイラク・クウェートの侵攻というときからいろいろなものを学んできたし、学ばなきゃならぬはずだ。  だから、その一つの例として、今私が、国連決議をして、その実効を担保する、協力するというところのすきっとした法制度がないんじゃありませんかと言っている。それに対して、いや、個々的に出たらどうだこうだじゃなくて、そういうところの世界をそれじゃ羽田内閣としてきちっと基本から勉強して整備する意思ありゃなしや。
  336. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 今も具体的にお話しになりましたけれども、まさにそういう決議がなされて、そして、やり得ることが日本として法整備がないためにできないということが今問題があるとするなら、私どもとしては当然そういったものは勉強して対応するということであります。
  337. 大島理森

    大島委員 わかりました。  本当は税制改革もやりたかったんですが、実はもうかなり遅くなって、皆さんには申しわけない気持ちでございます。  大蔵大臣、せっかくでございますから二、三点聞いて税制改革のことは終わりたいと思います。  まず総理、六月末までに、これまた確認事項で案を出す、こう言っておられますね。これは一つの公約だと私は思います。出すことはだれでもできると思うんです、ある意味じゃ法案は、内閣も。その後の成立ということまで踏まえて私はある意味では羽田内閣の公約だと思いますが、六月末までに、まず、政府・与党の案を出すのですか、出さないのですか。そして、それがもう羽田内閣としての公約なんですか、いやそうではないものなんですか。なおかつ、その後成立までの過程を、現実政治を見ますと、多分今の与党税制協には社会党さんが正式に入っていないのだろうと思うのです。つまり、そういう意味では、少数与党という中にあって、どういう手順とどういう基本でそういう税制改革を成立させようとしておられるか、そこの……。
  338. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 今政府税調においても御審議をいただいておりますし、また我々の方の連立与党の税制協議会においても議論をされております。そういうことで、六月の末までに一つの方向を出したいということのための努力をしていただいておるということであります。
  339. 大島理森

    大島委員 大蔵大臣、政府税調から例の試算を出せ、大蔵省出せ、こう言われておりますね。あれはいつお出しになりますか。あした出すか、あさって出すのか、しあさって出すのかわかりませんが、ある程度こんなことを出したいと思っているという何か中身をおっしゃることができたらおっしゃっていただきたい。
  340. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 ただいま税制調査会で御審議をいただいている中で、こういう具体的議論をするには、定量的なものをやはり一つの取っかかりにしないといろいろ議論できないな、こういう話があった。それに対して会長として、大蔵省の事務当局に対して、ひとつそういうものを出してくれないか。  ただし、ここで念をもう一度押させていただきますが、試案とかそういうものでは全くありません。一定の条件のもとで機械計算をするとどうなるのかという機械計算を出してくれ、こう言われております。私どもといたしましては、あすの税制調査会が定例日でございますので、これを出させていただきたいと思いますが、もう一度念を押しますが、機械的計算でございます。御理解いただきたいと思います。
  341. 大島理森

    大島委員 それは当然予算委員会にも資料としてお出しいただくように、私お願いを申し上げます。
  342. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 あす税制調査会に出す以上、委員長なり理事会の御決定に従いたいと思います。
  343. 大島理森

    大島委員 その件はぜひ我々も議論したいと思いますので、委員長立場でも資料を出させていただくようにお願いいたします。
  344. 山口鶴男

    山口委員長 理事会に諮りまして対処いたします。
  345. 大島理森

  346. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 今藤井大蔵大臣の方からお答えしたとおりであります。
  347. 大島理森

    大島委員 いや、六月末までに出すということが公約か公約でないのか。あるいは羽田内閣の実態を見ますと、その与党の税制協議会には社会党さんが入っておられない。そういう中で進めて、政府・与党として案を出しました、例えばそれじゃ六月末までに出して、法案はいつごろ出すつもりですか。
  348. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 まさにその問題につきましては、一つの方向性を与党の協議会で出していただくということでありますから、それを踏まえて私たちはこれを法律にし、ことしのうちに何とか成立させたいというつもりで今対応いたしております。
  349. 大島理森

    大島委員 この辺で終わります。  税制改革についてはまたいつか議論をさせていただきますが、どうか総理、私はきょうは安全保障論のことだけで言いましたが、非常に大きな問題だと思います、私がきょう申し上げた世界は。ぜひお勉強していただいて、羽田内閣としても積極的に取り組まれることを期待申し上げて質問を終わります。  ありがとうございました。
  350. 山口鶴男

    山口委員長 これにて大島君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十七日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時五十三分散会