○大出政府
委員 憲法とそれから条約との
関係につきましては、憲法の尊重擁護義務を負っている国務
大臣で構成される
内閣が憲法に違反する条約を締結することができるとすることは背理であること、こういうことを
一つの
理由にして、また、条約締結手続が憲法改正手続よりも簡易であることなどからして、
一般には憲法が条約に優位すると解してきている、これは従来からの政府の考え方であるわけでありますが、と同時に、先ほど御
指摘のありました政府統一見解にもそういう趣旨のことが述べられておるわけであります。
そこで、ただいま御
質問の御趣旨は、
一つは、「国務
大臣で構成される
内閣が憲法に違反する条約を締結することができるとすることは背理」だと、この趣旨は……(志賀
委員「それは問題ないです。次です」と呼ぶ)そうございますか。
それから、「条約締結手続が憲法改正手続よりも簡易であること」、これが憲法優位説の
理由の
一つになっておると、こういうことでありますが、この趣旨は、御承知のように、憲法九十六条におきましては、憲法改正手続というものが定められておるわけであります。そして、その憲法改正手続というのは非常に厳格な手続で、
国会においては特別多数議決でこれを
国民に向けて提案し、そして、さらに
国民投票によって過半数の賛成が得られないと改正を行うことができない、九十六条という規定はそういう厳格な改正手続になっておるわけであります。
ところが、今の憲法優位説ではありませんで、条約の方を優位させるということになりますというと、条約の締結手続は、憲法七十三条で、締結権は
内閣の権限になっておるわけでありますが、
国会の承認を要する場合には、これは過半数で議決、承認を得られるというような形になっておるわけであります。
そうなりますというと、
国会の機能の面から見ましても、過半数で承認されたところの条約というものが仮に憲法に抵触をする、そして、しかもその条約の方が優位に立つということになると、憲法の定めている改正手続、非常に厳格な手続を定めているわけでありますが、それとの
関係においても合理性がないというようなことを
一つの
理由にして、そういう趣旨のことを述べておるわけであります。
それから、「
一般には憲法が条約に優位すると解される。」というふうにここは書かれておるわけでありますが、憲法の九十八条におきましては、条約のほかに、確立された国際法規という
言葉が出てまいります。憲法と確立された国際法規との
関係に関しては、これはまた、確立された国際法規といいますのは国際社会の基本的な法則とでもいうべき国際法規であるわけでありますが、このような法則を前提として各国がその存在を認めており、そして我が国憲法もその秩序の中に受け入れているというようなものがあるわけであります。
例えば
外交使節の特権だとか公海の自由と言われるような、そういう確立された国際法規とされているようなものがあるわけであります。それとの
関係をどう考えるのかということもありまして、ここのところでは文章が省略をされておるというようなことで「
一般には」と。その辺の確立された国際法規との
関係のところをここでは特に書いてございませんので、そういう
意味で
一般にはという趣旨で入れておるということであります。
それからもう
一つは、例えば平和条約のようなものにつきまして、平和条約と憲法との
関係をどういうふうに考えるかというような非常に難しい問題も
一つありまして、そういう非常に特別なケースについてはともかくとしてという気持ちがここには含まれておるということであります。
そういう
意味で、この「
一般には」というのは、確立された国際法規についてのことを触れていないということと、非常に特殊なケースというものがあり得るかもしれない、その点は除いてという気持ちが含まれておる、こういうことであります。
〔後藤
委員長代理退席、
委員長着席〕