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大原委員 まさに私も重大な局面だと思っております。
ある本で「複合不況」という言葉がありまして、有吉さんの「複合汚染」というのは読んだのでありますが、「複合不況」というのは余り読んでないのでありますけれ
ども、宮崎さんという方が書かれたようであります。これは、いわゆる景気循環論からは一刀両断に割り切れない不況である、構造的な問題があると。だけれ
ども、我々、構造的、構造的という言葉でごまかしてしまうのですね。
いわゆる単純な不況論で言えば、景気循環論でありますから、在庫調整が終わったら景気は上がるだろう、こういう
考え方を、きょう企画庁お見えになっていると思うが、金輪際変えないというようなまことにお気の毒な判断を長いことやってこられたのですよ。その政策変更をされたのはたしか九二年の二月だったと思うな。それまでは頑固に、在庫調整で景気は必ずよくなりますという
考え方を日銀もとっておられるわけだ。
その中身の判断が、まさに気の毒という
意味は、大本営発表と同じだな。大丈夫です、大丈夫です、勝ってます、大丈夫ですといったあの大本営発表と同じことをやっておられる。その一番お気の毒な立場に置かれたのが船田前企画庁
長官でありまして、景気は底入れ、終わりましたという発言をされたが、熊谷さんに首になりましたあの産政
局長あたり、絶対に底入れ宣言はさせない、反対だと。通産省の方がよくわかっていたわけなんですよ。
そこで申し上げますけれ
ども、フローの不況とストックの不況とをはっきり分けていただきたいのですね。ストックの不況とは何かといいますと、いわゆるバブルによって踊った連中、その連中といいますのは株と土地であります。私は基本は土地だったと思うのですね。土地の値上がり、八五年から九〇年までに千四百兆円ぐらい膨れまして、二千四百兆円ぐらいに膨れちゃったのですね。五割から六割土地の値段が上がっているわけであります。
アメリカが五百兆円だから、
日本は二千兆円を超えました、
アメリカが五つ買えますなんて有頂天になった時代がございました。
私はある本を読んだのでありますが、ガルブレイスという人の本、これは非常におもしろい本でございましく
総理にお薦めするのでありますが、「バブルの物語」という小さな本でございますけれ
ども、それに
日本の土地狂者を非常に言葉厳しく批判をしておる。
ユーフォリアという言葉を使って、ユーフォリア、土地気違いなんですね、それをユーフォリアと呼んでいますが、ちょうど十七世紀のオランダのチューリップの投機、これを引用しながら、世界の投機で一番ひどかったのはあのチューリップ投機なんです。あらゆる貴族が財産を持って、あのつまらない球根一つを買うために私財を投じて一生懸命やったら、翌朝見たらただになっちゃったという話。まあそこまで極端じゃありませんが、言ってみれば陶酔投機狂というのかな、ユーフォリアというのは。そういった状態が
日本経済の実態だったのですね。
さあチョウよ花よと思っている間に、九〇年の一月から株がどんどん下がり
出して、ついに一万六千円ということでありますから、その前の五年間で六百五、六十億たまった株の値上がり益は一遍に飛んでしまった、ないしはマイナスになっちゃった。これが資産デフレの一つでありますが、問題は、元凶は土地だと思うのですね。土地の投機益が流動性を増して株にも波及していったというのが私は実態だろうと思うのですね。
ところで、まあ今不況でございますから、この不況の原因を生んだのが、今申し上げたようなユーフォリアの結果が、マイナス効果が今出ているのでありますから、そこは長期的な
考え方から判断しなきゃならぬ材料。まあ短期的には、やはり高い土地でございましたから、下がっちゃっては困るから少し上げてくれという政策は、短期政策としては当然私はうなずけると思うのでありますが、このユーフォリアは必ずまた起きるのですよ、
総理。
だから、今の問題に
総理は非常にかまけてお忙しいと思うのですけれ
ども、長期的に見たら、
日本経済のがんは私は土地だと思うのですね。もう申すまでもありませんが、いわゆる
アメリカが四つ買えるとか五つ買えるとかいったような地価ですね。こういった地球の上の乗っかり賃に法外なコストを払わなければならぬ経済というのは必ずつぶれる、これは。私は、
日本経済のがんはまず土地だと思うのですよ。
しかし、短期的な話を申し上げているのじゃないですよ。上がり過ぎたのが半分になっちゃったから、何とかしてくれないと持ちこたえられぬから景気対策をやってくれという気持ちはわかる。しかし、この前の土地のユーフォリアはいつだったかといいますと、昭和四十七年ですね。四十七年からいわゆる八五年といいますと、十三年目にやはり土地ユーフォリアが起きているわけなんですよ。やはり私は、
日本経済で土地のこのいわゆる陶酔的投機がこれから起こらないとは限らないと思うのです。
そういう
意味で私は、
日本経済の将来のアキレス腱というものが土地問題だということを、
国土庁長官おられますけれ
ども、あの土地基本法のときに私も特別
委員会の筆頭
理事で、土地とは公共の福祉のために利用しなきゃならぬという条項を入れちゃったのですね。お役人は反対でした。なぜ反対したかといいますと、
憲法の所有権の尊重ということに抵触する可能性がある条項は入れぬ方がいい。ところが、
社会党の井上さんとかなんとか、よく話しまして、頑張ろうじゃないか、ここまで入れぬとだめだということで、あの条文が議員修正で入ったわけであります。同時に、土地は投機をしてはならぬという条項も入っちゃったのですね。
にもかかわらず、全くそれと無縁の土地投機が起きたわけでありまして、今我々が不況だ不況だと言うのは、土地問題、さらにまたそれをめぐる株の問題、資産デフレが今日の状況を生んでいるんだということを
総理もしっかり御認識をいただかないと、政策の出発点を誤るんではないかと思いますが、いかがですか。