○中島武敏君 私は、
日本共産党を代表して、九四年度
政府予算三案に対して、
反対の
討論を行うものであります。(
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今
国会の一連の論戦を通じて明らかになったことは、
羽田内閣が
国民にとって無
責任かつ危険きわまりない反動
内閣であり、不信任に値する
内閣であるということであります。
その第一は、侵略戦争に対する無反省と
憲法無視の
姿勢であります。
憲法第六十六条の規定を無視して永野茂門氏を法務大臣に任命したばかりか、違憲の任命行為に何らの反省をも示さず、逆に永野氏の平和への熱意を強調するなど、みずからの行為の弁護に終始したのであります。
しかも、
羽田総理は、あの太平洋戦争について、侵略戦争であったと言明することをあくまで拒否しました。
総理の侵略戦争に対するこのような
認識は、侵略戦争と軍国主義への断罪を共通の土台とする戦後の国際社会の原点を否定する立場であり、
憲法の平和的、
民主的原則を否定するものであります。この点で、
羽田総理の侵略戦争に対する
認識の反動性は国際的にも際立っており、到底受け入れることはできません。
第二は、一度も
国民の審判を受けずに、
消費税の
税率引き上げを強行し、
国民を際限のない
増税路線に引き込もうとしていることであります。
言うまでもなく、
消費税は、低
所得者ほど負担が重くなる最悪の大衆課税であります。
政府は、
高齢化社会のためなどと言って、あたかも国家財政の危機が到来するかのような偽りの宣伝のもとに、いずれは一〇%以上へ
消費税率を
引き上げたいというねらいを露骨に表明したのであります。このような
国民への大収奪は断じて容認することはできません。(
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第三は、北朝鮮の核兵器開発の疑惑に対する制裁の名のもとに、緊急の
事態のもとでは、「
日米及び
日韓の各国間で緊密に連携し、
協調してこれに対応」するとの
方針を打ち出したことであります。
これは、アメリカとの共同の軍事行動や、そのための有事体制化に道を開く重大な危険性を持つ
政策宣言であります。国家
国民の命運にかかわる問題でこのような反動
政策を勝手に実施に移すことは、議会制
民主主義の立場から絶対に許されないことであります。
また、
政府は、国際司法裁判所に
提出する陳述書で、「核兵器の使用は
国際法上違法とは言い切れない」との表現を、
国民的批判の前に削除を余儀なくされましたが、この際、唯一の被爆国の
政府として、核兵器の違法性をきりばりと表明すべきであります。(
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次に、
予算案についての
反対理由を述べます。
その第一は、
消費税の大
増税を準備し、その実行を大前提とする
予算となっていることであります。
いかなる仕組み、いかなる名称であれ、
消費税の
増税計画は
撤回すべきであります。
日本共産党は、この最悪の大
増税計画を
撤回させるため、
国民とともに闘うことをこの際はっきりと表明するものであります。(
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第二に、
医療、年金などの
社会保障の全面的改悪を行おうとしていることであります。
年金支給開始年齢の六十五歳への引き延ばし、入院時の食事代の患者負担導入などがその
内容であり、いずれも高齢者の方々に負担と犠牲を強いるものであり、断じて容認できません。今、
高齢化社会に必要なことは、年金、
医療、介護を全面的に
充実する
計画をつくり、実施することではありませんか。
第三に、
総理は
所信表明演説で「
経済の一部に明るい兆しも見受けられる」と述べました。しかし、失業率はかつてなく高まり、大企業の新規採用の中止や手控え、リストラの強行、
中小企業の倒産も高水準を続けているのが実態であります。ところが、
羽田内閣のやろうとしていることは、労働者の配置転換や出向を促進するための補助金を新設するなど、大企業へのリストラ支援、大手銀行などの不良債権
処理の促進ではありませんか。
中小企業対策費は十二年間連続の削減を行い、一般会計に占める比率は史上最低となりました。
このように、
予算案は
中小企業、労働者に冷たい仕打ちをとっているのであります。大企業の人減らし、リストラ、海外移転、下請いじめの規制、官公需の
中小企業向け発注率の
引き上げ、公定歩合並みの
金利での緊急融資
制度の創設など、
国民の立場に立った対策を緊急に実施することこそ真の
不況対策であります。
第四に、米輸入自由化、
地方財政負担の増大、私学助成削減についてであります。
米輸入自由化が実施されるなら、
日本の農業が存亡の危機を迎えることは火を見るより明らかであります。しかし、
予算案は、輸入自由化を前提にして中小零細農家を切り捨てる農業新
政策を推し進めようとしているのであります。
また、
地方分権を口にしながら、そのために必要な
地方財政は保障しないばかりか、実際には国庫補助金の一般財源化などの
措置によって約一千億円を
地方の負担にしたのであります。
さらに、私立高校への経常費助成の二五%にも上る削減は、自民党時代にもなかった前代未聞のことであります。
米を初め、農産物の自由化
措置を直ちに中止し、減反
政策をやめ、適切な備蓄、食糧の自給率
向上へ一歩を踏み出すことこそが必要であります。
地方財政を保障し、私学助成を
充実して、未来を担う青年の
教育を受ける権利を保障すべきであります。
第五に、大量の赤字国債
発行に触れないわけにはいきません。
本
予算案では、五年ぶりの赤字国債
発行を認め、
公債依存度は実に一八・七%となり、年度末の国債
発行残高は二百一兆円となっています。その上、国庫負担の繰り延べや
特別会計からの借金などの隠れ赤字国債が九四年度だけで六兆円近くになり、累積では四十兆円となったのであります。
金利負担だけで年間十二兆円にもなるという借金財政は、新たな大
増税計画の実施など将来
国民に大きくのしかかるものであり、到底容認することはできません。
本
予算案では、引き続き軍事費が増額され、アメリカからの強要とそれに応ずる
政府の屈辱的
姿勢によって、米軍への思いやり
予算もこの十六年間で四十倍に達しました。思いやり
予算、
日米共同演習
経費など米軍支援のための一切の
予算の削除、AWACS、ミサイル護衛艦、パトリオットなど正面装備を全額カットすることは、
国民の命と財産を守り、
日本の平和と安全を確保するための必要最小限の
措置であります。
我が党は、私が今指摘した方向で
予算の組み替え
動議を
提出しました。
公共事業の莫大な浪費の構造にメスを入れ、大企業・大金持ち優遇の不公平
税制を根本的に洗い直し、軍事費を半減する、
国民の立場に立りたこうした
改革を行えば、
国民本位に
予算を組み替えることは可能なのであります。
なお、自民党の組み替え
動議は、
政府案の性格を変えるものではなく、意見を異にする部分もあり、
賛成できません。
三割しか
国民の支持がない
少数与党で構成される
羽田内閣が行おうとしていることは、大
増税計画、年金支給開始年齢の延伸、危険な有事立法の策定など、何一つ
国民の信を問うていないものであります。しかも、
政府・与党が強行した小
選挙区並立制そのものが、総
選挙での公約に背を向けた
政治取引の産物であり、
国民の審判を仰いだものではありません。私は、憲政の常道に従い、民意が反映する中
選挙区制のもとで
解散・総
選挙を行うことこそ
国民の要求であり、そのことを強く要求して、
反対討論を終わるものであります。(
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