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1994-05-12 第129回国会 衆議院 本会議 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成六年五月十二日(木曜日)     —————————————  議事日程 第十号   平成六年五月十二日     午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑     ————————————— ○本日の会議に付した案件  国務大臣演説に対する質疑  国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣提出)     午後一時三分開議
  2. 土井たか子

    議長土井たか子君) これより会議を開きます。      ————◇—————  国務大臣演説に対する質疑
  3. 土井たか子

    議長土井たか子君) 国務大臣演説に対する質疑に入ります。河野洋平さん。     〔河野洋平登壇
  4. 河野洋平

    河野洋平君 私は、自由民主党を代表し、新たに政権の座につかれた羽田総理に、基本的な政治姿勢及び当面する内外の諸課題解決策について質問をいたします。  質問に先立ちまして、去る四月二十六日、多くの犠牲者を出しました中華航空機事故の御遺族に謹んでお悔やみを申し上げ、負傷者の方々に心よりお見舞いを申し上げたいと存じます。外国人関係者への十分な対応を含め、政府においては万遺漏なく再発の防止善後策に努めるよう望んでおきます。  さて、去る四月八日の細川総理辞意表明以来、大変長い期間にわたって政治全体が混迷を続け、航空機事故の際にも国家危機管理体制について国民を不安にしたり、いまだに平成六年度政府予算案についての実質審議が開始されないなど、深刻な経済不況への対策を初めとする政策課題政治が十分な対応をなし得ていない状況を招いております。このことについて、私は、その責任の大半は連立与党の側にあるとはいえ、国の政治に直接携わる政治家の一人として国民皆様にまことに申しわけないことと考えております。(拍手)  政治は、政治家や政党のためのものではなく国民のためのものであります。ここ数カ月間の連立政権の枠組みをめぐる騒動と混乱を目の当たりにしてきた国民の多くは、深い幻滅と失望、さらにはあきらめに近い思いを抱きつつあるのではないでしょうか。  同僚議員皆さん日本政治が今極めて不正常な状況にあるということについて、皆さんも私と同じ認識を持っておられると存じます。国民生活を守り、国の進路を過たないために、今すべての議員政治正常化に向けて全力を傾注しなければならないと存じます。(拍手)  みずからの疑惑を解明できずに退陣した細川内閣の後、引き続き権力を維持するために、みずから非難したはずの政権たらい回しによって発足した羽田内閣は、衆議院の議席の過半数にはるかに及ばない、三分の一をわずかに超えるにすぎない基盤の上に辛うじて立っているにすぎません。  昨年夏の選挙によって国民に選ばれた第一党の自由民主党、第二党である日本社会党を排除して、ごく一部の人々の思惑によってつくられた改新なる会派中心とするこの内閣は、選挙を通じて示された国民の意思を反映したものでなく、議会の過半数の支持も得ておりません。したがって、この内閣民主制のもとでの正統性を持たない、そもそも政権担当資格がない内閣と断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  なぜこんなことになったのか。すったもんだがありました。しかし、そのいきさつをここで詳しく振り返る余裕はございません。一言で言えば、社会党皆さん首班指名羽田孜と書かせたその直後に、政権基盤をひとり占めしようとした。つまり、我々の先輩政治家に言わせれば、宝物を埋めるのに連れてきた仲間を、穴を掘らせたりさんざん汗をかかせた後、帰りの橋の上で後ろからばっさり切り捨てた。(拍手)つまり、あなた方の、政権掌握のためには民主主義の手順も、また、それを大切にしようとする誠意も邪魔だと言わんばかりの強権的な政治手法原因となったことは、衆目の一致するところではありませんか。(拍手)  このような事態を招き、国政を混乱させ、国民生活を守る力のない形で内閣を発足させた責任を、羽田総理、あなたはどのようにとられるおつもりか、深刻な反省と明確な御答弁を承りたいと存じます。  それを羽田さんに聞くのは酷だという声が聞こえてきました。確かに、新会派構想羽田総理が聞かれたのはそのほんの直前だったとのことでありますし、もっと言えば、前の内閣が、連立与党権力者が他党の党首首班に担いだいわゆる二重権力構造内閣だったのに対して、今度の内閣は、やはり何かよほどの事情があってのことか御本人はひな壇に並んでおられないものの、シナリオを書いたと言われる小沢氏の内閣そのものであることを国民はみんな知っているのであります。(拍手)  しかし、はっきり申し上げておかなければなりませんが、羽田総理、仮にあなたが役者であるにすぎないにせよ、内閣総理大臣の職にある以上、国民の運命にかかわる責任はすべてあなたが一身に背負わなければならないということを、しかと肝に銘じていただかなければなりません。  さらに、政権が発足して早々に、永野前法務大臣が、日本政府日本国民歴史認識について諸外国に重大な誤解を与える、閣僚として極めて不適切な発言責任をとって辞職した問題は、羽田内閣政権担当資格ばかりか当事者能力にも欠けることを示した出来事でありました。(拍手)  言うまでもなく、近隣諸国との良好な関係の維持は、日米関係とともに我が国安全保障基礎であります。日韓関係についても、日中関係についても、平和を願う国民決意を受けて、多くの先輩が良好な関係を構築するために営々と努力を重ねてこられたのであります。  さらに、最近の北朝鮮核開発疑惑への対処をめぐる問題について、韓国中国など近隣諸国協力を求める最大限の努力をしなければならないまさにそのときに、わざわざそれら諸国国民感情を踏みにじるような発言をするなどということは、正常な判断力の持ち主であれば考えられないことではないでしょうか。かねがね北朝鮮核開発疑惑への対処を声高に叫んでいる新生党出身閣僚がこのような発言をして安全保障基礎を危うくするということは、そのねらいは、問題そのもの解決にあるのではなく、危機感をあおることで何らかの目的を達することにあると思われても仕方がないと思います。  さらに、この内閣において、集団的自衛権の問題について憲法解釈を変えるべきだという発言有事立法に積極的な意見が多く聞かれます。  柿澤外務大臣、あなたは、四月二十八日の記者会見有事立法検討は必要との認識を示し、翌二十九日には民放テレビ番組で、集団的自衛権についての憲法解釈を再検討すべき時期であると述べておられます。さらに、五月一日には、熊谷官房長官がやはり民放テレビ番組で、有事立法が必要になった場合の実務的な準備が完了していると述べています。  これらがあらかじめ打ち合わせ済み羽田内閣方針なのか、あるいは陰の権力者に対する点数稼ぎなのかはわかりませんが、いずれにせよ、政権の性格は前内閣とは大きく変わったと断ぜざるを得ないのであります。我が国安全保障国民に相談もなくある方向にずるずる引っ張られようとしている、こういう姿勢国民から危惧の声が上がるのは当たり前のことだと思います。  永野氏の辞任は当然のことでありますが、この問題に対する羽田総理対処もまた国益を損なうものだったと言わざるを得ません。永野発言が報じられたのは五月四日付の新聞の朝刊であります。にもかかわらず、あなたはこの発言に関して迅速な処置をとることもなく、パリでは「不適切な発言」と発言をされましたけれども、五月六日のブリュッセルにおける記者会見においては「一緒に仕事をしていきたい」と述べて、更送に否定的な見解を示されました。その間、アジア諸国疑念は増幅され続けたのであります。辞任永野氏の申し出によるものであって、結局、あなたはこの問題についてみずからのイニシアチブで明快な対応をすることはありませんでした。  このことは、あなた自身歴史認識について多くの人たちに疑問を抱かせたと思いますが、何よりも、問題への的確な対処ができずに国家の損失を大きくしたことについて、御自身責任をどうおとりになるおつもりか、お答え願いたいと思います。(拍手)  また、その際、羽田内閣として集団的自衛権をめぐる憲法解釈の変更などを行うつもりがあるのかどうか、有事立法についての考え方とあわせて明確にお答えを願いたいと思います。  さて、以上の基本的な問題に続いて、幾つかの政策課題についてもお伺いをいたします。  羽田内閣政策的な方向性は、首班指名に向けての政策合意づくりにおける新生党主張などから推測することができました。そこで際立っていたのは、政治改革については、選挙制度のことのみを言って疑惑解明腐敗防止の文字がなかったこと、北朝鮮核開発疑惑問題への対処について、問題をどう平和的に解決するかということよりも、制裁になったらどう協力するかに議論が偏っていたこと、税制改革については、とにかく間接税税率引き上げるという姿勢が突出していることなどが挙げられると思います。  政治改革について、私たち自由民主党は、これまでの議論と決定を前提に、さらに腐敗防止など必要な改革を進める決意であります。そのため、いわゆる区割り案早期成立を図り、次の選挙を新しい制度で行うための準備を早急に進めなければならないと思っています。  しかし、それに先立つ問題として、みずからの疑惑を解明せずに辞職した細川総理が、いまだに日本新党党首という連立政権を支える公的な地位にとどまっておられることに注目をしなければなりません。したがって、私たちは、細川氏の政治資金にまつわる疑惑については、さらに徹底解明の必要があるというふうに考えているのであります。(拍手)  今回の所信表明において、総理は、さすがに我々の指摘を受け入れて、政治腐敗の根絶を期して具体的に行動を起こしていかなければならないと述べられました。しかし、相変わらず疑惑解明についての言及はないのであります。私たちは、国民政治への信頼を回復するためには、まず権力地位にある人たちの問題についての真相解明が必要と考えております。羽田総理のお考えをお聞かせ願いたいと思います。  次に、北朝鮮核開発疑惑問題に対する政府対処方針についてお伺いをいたします。  私はやはり、連立与党政策合意が、いかに問題を平和的に解決するかということよりも、制裁にどう協力するかということに偏り過ぎている嫌いがあるのではないかとの危惧を強調せざるを得ません。歴史経験からいって、必要以上に危機感をあおり立てることは、そのこと自体が武力紛争原因一つとなるおそれがあるからであります。  政策協議では、中国と協調して対応することを盛り込むことを求めた社会党主張が、新生党や公明党などの強い反対によって拒否される場面があったと伝えられております。しかし、話し合いによる解決のためには、中国が大きな役割を果たすことを期待しなければならないというのが国際社会のほぼ一致した見方なのではないでしょうか。ましてや、仮に経済封鎖をするといっても、地続きの中国協力抜きではその効果は期待できないと思います。この間の事情について御説明を願いたいと存じます。  私は、北朝鮮核兵器保有を目指すことは、地域の安定を損ない、国際的な核不拡散体制を破壊することにつながるために、決して容認すべきでないと考えております。北朝鮮は、IAEAの十分な査察を受け入れて核武装への疑念を晴らし、アメリカなどとの関係正常化交渉を進めるべきであります。そのことは、国際社会の信頼できる一員となることを通じて北朝鮮が将来繁栄に至る道である、こう私は考えます。現在のように国際社会との対決姿勢を強めることは、そのためにも得策ではありません。我々は、これらのメッセージを北朝鮮に明確に強く伝えなければならないと考えます。  しかし、そのような努力は、あくまでもアジアの安定した新しい秩序をどうつくっていくのかといった地域的な広がりを持った視点北朝鮮に住む人々の姿を思い浮かべながら、何十年か先の共存共栄関係をつくるために今何をすることがいいかといったことを考えるといった長期的な視点の中で、建設的な発想考えることも必要ではないでしょうか。  制裁制裁と言い立てて、北朝鮮日本が普通の国になるための踏み台にしようとするかのような発想は、北朝鮮に現実に暮らす人々のことを無視し、北朝鮮国際政治権力ゲーム対象としてしかとらえない考え方だと思います。これは、ヒューマニズムを冒涜する、ヒューマニズムを否定する発想であって、やはり女性を「対象」としてしか考えないあの暴言と非常に通じるものがあると感じたのは私だけでしょうか。(拍手)  総理所信表明で、北朝鮮を孤立させないよう、アメリカ中国韓国など近隣諸国と共同して、粘り強く協議を行うと述べられました。そこで伺います。そのために、具体的にいつ何をするおつもりでしょうか、具体的に御説明を願いたいと存じます。  私は、この問題を考えるときに、かつてアメリカ外交政策立案者の一人であったジョージケナン氏が第二次大戦後に提唱した対ソ政策を思い起こします。それは、ソ連がもし勢力拡張を図るならば、断固とした態度でそれを阻止する決意を明確にし、一方で、ソ連国内の問題については、国民の苦難に同情しつつも、長期的には問題はソ連国民によって解決されるという楽観論に立って、こちらから体制崩壊をねらっての介入はしないというバランスのとれたものでありました。この政策の正しさは半世紀近くを経て証明され、現在九十歳にしていまだ研究や評論の活動を続けるケナン氏も深い感慨を示しておられます。  総理は、このジョージケナン氏の対ソ戦略論をどう評価されるのでしょうか。外交政策根本には、歴史観に裏打ちされた百年単位の長期的な視点と、人間社会国家についての、ヒューマニズムを基調とした、しかし冷静な洞察が不可欠なのではないでしょうか。  なお、旧ユーゴボスニア・ヘルツェゴビナ情勢が緊迫化しております。この旧ユーゴやソマリア、ルワンダなどの例から見ても、一時ブトロスガリ国連事務総長らが強調していた、実力行使に重きを置いた国連中心安全保障考え方は、その妥当性が疑われているのが現状であります。  我が国国連安全保障機能強化のために知恵も出し、汗もかくべきだと思いますが、同時に、これからは国連による安全保障の時代だ、だから日本軍事面での貢献をしないと孤立するといった短絡的な対応をとるのではなく、国連武力行使についても抑制的な方向で進んでいくべきだと提案する必要があると思いますが、総理認識はいかがでしょうか。  今年度のピュリッツァー賞を受賞した、飢えて力尽きた子供の後ろにたたずむハゲワシの写真は、まことに衝撃的でありました。残念なことに、依然としてこの世界には飢餓や貧困に苦しむ人々がたくさんおります。何とか手を差し伸べたいと思うのが多くの国民の心情だと思います。  以前にもこの壇上で申し上げましたが、民族紛争宗教紛争などの武力紛争の背後には、必ず貧困社会の不安定があるのであって、国際貢献は、これら問題を解決して紛争原因根本から取り除くため、途上国保健衛生の向上や識字率アップなど教育の普及、あるいは環境エネルギー関連科学技術研究技術供与などの分野に一層力を注ぐべきであります。  人口爆発に手をこまねいていたり、米問題を単なる貿易の問題としてとらえる姿勢では、資源の枯渇や食糧不足地球環境の悪化などを通じて我が国の将来にも暗雲が立ち込めることになるでしょう。これらの問題の解決に向けての決意と具体的な施策をお示しください。  さて、細川内閣の拙劣な対応によって悪化してしまった日米関係についてお伺いをいたします。  あなたがこのたび任命した新外務大臣は、わずか二カ月前この壇上で、当時副総理、しかも外務大臣であったあなたの目の前で、日米首脳会談は失敗だったと厳しく述べたではありませんか。こうした認識を持つ人を外務大臣に任命をなさったというところを見ると、総理もまた全く同じ認識なのだと思いますが、私たちは、首脳同士会談にゴア副大統領と羽田総理が同席して、四人で話し合う場面もあったという二月の日米首脳会談決裂は、連立政権の犯した最大の失策の一つであることは、我々はかねてから指摘してきたところでありますが、この責任を当時の副総理外務大臣としてどう考えておられますか。そもそも、二月の日米経済協議決裂原因は一体何だったのでしょうか。お考えをお示し願いたいと思います。  私は、交渉基本方針として、対策の重点を、マクロ政策による内需の拡大、市場開放のための規制緩和内外価格差縮小に置いて力を入れる一方で、個別分野の問題については民間の良識を促し、政府政府調達関連以外は深入りを避けるべきであると考えておりますが、政府方針はいかがでしょうか。包括協議再開の見通しも含め、総理日米関係改善へのシナリオ決意をお聞かせいただきたいと思います。  次に、国内経済の問題に移りたいと思います。  まず、羽田総理景気現状をどう見ておられるかについてお伺いいたします。  やや明るい指標も出ているとの説もありますが、果たして中期的な上昇軌道の始まりなのでしょうか。あるいは、一時的な現象と分析をしておられるのでしょうか。企業内失業や来年の新卒者の採用がどうなるか、多くの人たちが心配をいたしております。深刻なこの雇用情勢の中、一体あなたはどんな対策をおとりになるのか、お答えください。  また、円高が最近まで引き続いて進んできたことも忘れてはなりません。これに対する対策についてもお述べ願いたいと思います。  総理、私は、さき国民福祉税構想撤回騒ぎや今回の連立与党政策合意づくり経過を見て強く指摘したいのは、あなた方は税制改革について、景気への影響など生きた経済をめぐるマクロ政策の観点からの検討や不要な支出の削減に必死で取り組んだり、政府資産活用知恵を絞ったりということをほとんど置き去りにして、とにかく消費税あるいはそれにかわる新税の税率引き上げようということにばかり熱心なのではないかという疑問です。  三月七日の代表質問で、我が党の指摘は、連立政権が晩酌のビールから高速道路通行料金まで庶民の暮らしを直撃する公共料金などの引き上げをこの時期に集中させたために減税効果は半減してしまうのではないか、こういう指摘でした。まことに大きな失政と言わなければならないと思います。  私どもも、長期的には、高齢化社会を支えるために国民負担をどの程度の水準にすることが適当かについて十分議論をする必要があることは認めますし、そのことについて国民の理解も得られつつあると感じています。  しかし、私は、当面の景気対策としての減税は、まず減税効果を確かなものにするために、一年限りの定率減税ではなく、中堅所得層税負担に配慮した税率構造緩和による恒久的なものとして実施するべきであると考えております。そして、財源の手当ては、景気回復による税収増を見きわめつつ、行政経費の徹底的な節減努力と並行して検討されるべきものだと思います。  その意味では、細川政権以来の、あなた方が初めから所得税減税六兆円に対応して九兆円もの消費税引き上げを当然のこととする考え方は、国民を納得させることはできませんでした。一体、連立政権は、この九カ月余り、行政経費節減特殊法人にかかわるものなどの政府資産有効活用にどれだけの知恵を絞り、成果を上げたというのでありましょうか。  初めから間接税引き上げ前提とした所得減税など、景気対策効果がごく限られたものにならざるを得ないことは、これまで指摘したとおりであります。税制改正のあり方を総理はどうお考えになっているか、率直に承りたいと思います。  総理、きょうは既に五月の十二日であります。いまだに平成六年度の当初予算案審議にも入れない状況です。これは、我々自民党の再三にわたる忠告に耳をかさずに予算編成を越年させ、二月中旬にやっとその編成に着手をし、国会に提出したのは何と三月四日という、極めて異常な対応連立与党がとったことがそもそもの原因であります。(拍手)  さらに、二月二十二日に予算委員会における全会一致の決議を受けて衆議院国会法に基づいて行った細川総理疑惑解明のための資料要求に応じずに、さらに証人喚問要求を拒み続けたことがさらなるおくれの原因となった事実をまずしっかり認識していただかなければなりません。原因は、挙げて与党側にあるのであります。(拍手)  このことは、さき予算委員会理事間の話し合いにおいて、与党理事皆さん予算審議のおくれの責任連立与党にあることを認めて陳謝をされたことでも明らかであります。(拍手総理、あなたは前内閣の副総理という重要な地位にあり、このような状況を招いたことに関する責任は極めて重いと言わなければなりません。この責任を一体どう受けとめておられるのでしょうか。  細川内閣以来の景気に対する甘い認識、適時適切とはお世辞にも言えない対策が深刻な景気の低迷を長期化させています。私たち自由民主党は、今日の経済状況にかんがみて、一日も早く景気の動向や国民生活に直結する予算案審議に取り組むべきであると考えています。  私は、総理に重大な決意をしていただかなければならない時期が到来しつつあると感じておりますが、総理は、予算審議にまず全力を傾注し、成立を目指すために、国民に対してその責任ある身の処し方をなさるおつもりがあるかどうか、伺っておきたいと存じます。(拍手)  さて、今日の日本国民は、みずからの英知と努力によって世界第二位の経済力を誇る豊かな国となったことを認識し、東西冷戦構造崩壊に伴って新たな安定した国際秩序への模索が続く中、どのような座標軸に基づいて内政の充実と国際社会への役割を果たしていくかという歴史的な転換点に立っているということを認識していると思います。私たちは、今日を生きる我々の後に続く世代のために、この国に生まれてよかったと言える、また、世界人々から日本という国があってよかったと言ってもらえる、政治経済社会、文化など、すべての面での美しい国の創造を目指すべきであると考えています。  しかし、それ以前の問題として、私は、どうしても最近の政治運営に深い危惧の念を禁じ得ないのであります。連立政権発足以来、その手法は、絶えず「国あってこその国民」という強権的色彩の濃いものでありました。多くの国民は、改革への期待どころか、その危なっかしさ、さらには一種の恐怖の気持ちを隠せなくなっていることを私は指摘しておかなければなりません。  政治は、国民のための国家基本とすべきであると私は考えます。私たち自由民主党は、これからも党の体質を抜本的に改め、政策を磨き、長年にわたる豊かな経験と人材を我が国の未来にささげる気概を持って日本政治改革に取り組んでまいります。  私は、最後にこのことを国民皆様に表明し、心ある人々とともに、いつでも羽田内閣に取ってかわり政権を担当する決意であることを宣言して、私の質問を終わらせてもらいます。(拍手)     〔内閣総理大臣羽田孜登壇
  5. 羽田孜

    内閣総理大臣羽田孜君) 自由民主党河野総裁お答えを申し上げたいと思います。  去る四月二十六日に発生いたしました中華航空事故につきましては、一昨日の所信表明でも述べましたとおり、事故原因の究明を急ぎまして、このような惨事が再び繰り返されることのないよう安全対策に万全を期してまいりますことを申し上げたいと存じます。  なお、国民生活を守る力のない少数連立政権という形で内閣を発足させた責任をどうとるかというお話でございました。  今回、連立政権が不幸にして業半ばで退陣されたことに加えまして、連立与党内におきまして残念な経過がありました。(発言する者あり)いや、細川内閣であります。一部の会派が閣外へ去られましたことは、私は、ともに政権を担当し、そして一つの新しい日本の道筋をつくってきたと誇りに思う者といたしまして、まことに残念に思っております。  その結果といたしまして、これまで平成六年度予算の国会審議が進んでいないことなど政治空白を招いておりまして、これを尋常ならざる事態として謙虚に受けとめておるところでございまして、私としては、国民皆様に率直におわびを申し上げたいと存じます。  国民皆様の不安感や政治に対する不信感をぬぐい去るためにも、今こそ事態の打開に向けまして、政治の指導力が問われているものと考えます。私といたしましては、今後とも与野党の皆様方の御意見に一層謙虚に耳を傾けながら、国民的合意を求めつつ政治を進めていきたい、かように考えております。(拍手)  また、前法務大臣の発言につきまして、私の歴史認識に疑問を生じさせるというお話でございました。  我が国の侵略的な行為や植民地支配等が、多くの国々の人々に耐えがたい苦しみ、そして悲しみをもたらしたという認識を新たにいたしております。この問題につきましては、深い反省の上に立ちまして、平和の創造に力を尽くしていくとの歴史認識は、私は、自由民主党にありましたときからこのことを申し上げてまいりました。今般の永野発言に際しましても、改めて明確にしたところでございまして、疑念が生じたことに対して、私の考えは変わらないということを改めて申し上げたいと思っております。(拍手)  永野発言につきましては、私は直ちに、これはヨーロッパにありましたけれども、注意を申し上げたところでございまして、その後、関係諸国に対しましても私どもの真意をお伝えをし、遅滞なく対処したということを御理解をいただき、また各国の皆様にも御理解をいただいたというふうに思っております。昨日も、二十八日に予定しておりましたけれども、これが延びました、アジアの各国の皆様方、これは西南アジア皆さんも含めてでありますけれども、大使の皆様方とも、その点につきましてもお話を申し上げたところであります。  また、集団的な自衛権をめぐる憲法解釈の変更ということについての御指摘がございました。  これは、国際法上では、国家は、集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利を有するものであるというふうにされております。我が国が、国際法上このような集団的自衛権を持っておりますことは、主権国家である以上、当然であります。しかし、憲法第九条のもとにおいて許容されております自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限の範囲にとどまるべきものであると解しておりまして、集団的自衛権を行使することはその範囲を超えるものであって、憲法上認められないと考えております。  集団的自衛権問題につきましては、政府は、かつての自由民主党時代から一貫して以上のような解釈をされており、私どもの政府もこの解釈を変更する考えがないことを改めてここで申し上げておきたいと存じます。(拍手)  また、有事立法についての御指摘でありますけれども、北朝鮮問題に関連しまして、新たな立法措置が必要であるかとの御指摘につきましては、ただいま国際社会も外交的な努力が行われておるところでございます。仮定の話であり、具体的なコメントは差し控えたいと存じますけれども、一般論といたしまして、安保理事会におきまして何らかの措置が決議された場合には、日本としても、憲法の許される範囲におきまして責任ある対応をすることは当然のことであろうというふうに考えます。  自衛隊の行動にかかわるいわゆる有事法制の研究につきましては、自衛隊法の第七十六条の規定によりまして防衛出動を命ぜられるという事態において、自衛隊がその任務を有効かつ円滑に遂行する上での法制上の問題につきましては、まさに、かねての政府部内で昭和五十二年、このときから検討がされてきておりまして、検討の結果につきましては、昭和五十六年四月と五十九年の十月にそれぞれ取りまとめて公表されたところでございます。  法制化の問題につきましては、高度の政治判断にかかわるものでございまして、国会における十分な御審議、また国際世論の動向等を十分に踏まえながら慎重に検討されるべきものである、このように私は考えております。  国民政治への信頼を回復するためには、真相の解明が必要ではないかということでありますけれども、私は、政治家たるものは権力地位にあると否とにかかわらず、常に国民に対してみずからの様を正していかなければならないものであるというふうに考えます。御指摘の問題の解明につきましては、前総理自身のプライベートな問題でございまして、この前の前総理の潔い身の処し方を私は重く受けとめたいというふうに考えます。(拍手)  新たな連立政権の際の政策協議につきましての北朝鮮問題に関する中国との協力の問題、その間の事情についての説明というお話であります。  御指摘の点を含めまして、連立与党内の政党間のやりとりの子細につきまして、この場で申し述べることは必ずしも適当でないというふうに考えます。  いずれにいたしましても、我が国といたしましては、この問題の解決のために中国を含むアジアにおける関係各国と必要に応じ連携していくことは当然でございますし、この方針は、連立与党間で作成されました「新たな連立政権樹立のための確認事項」、ここの中でも合意されておるところであります。  アメリカ中国韓国などと共同して、粘り強く協議を行うことという御指摘がありました。  我が国といたしましては、私自身外務大臣在任中から、本問題の対話による解決、これを目指しまして、アメリカ中国あるいは韓国、そしてそのほかの非同盟の国、そういった国々と、あらゆる機会を通じながらこのことを申し上げてまいったところであります。今後とも、このような粘り強い話し合いを引き続き行い、北朝鮮への働きかけを行っていきたいというふうに考えております。いずれにしましても、私どもの粘り強いこの語りかけというのが、さき国連の措置におきましても、議長声明という形で行われたところがこれをよくあらわしているんではなかろうかというふうに考えます。  また、北朝鮮問題の関連におきますジョージケナンさんの評価についてでございますけれども、同氏の対ソ戦略論は、その後、米国の対ソ政策にも重要な影響を与えたものでございまして、御指摘がございましたとおり、ソ連歴史国民性への深い洞察に基づいたものであるというふうに私も理解をいたすところであります。  いずれにいたしましても、北朝鮮の核兵器開発問題につきましては、国際社会が一致結束して北朝鮮に対して確固たる姿勢を示しますとともに、常に対話の窓口を開いておくことが重要であります。また、北朝鮮国際社会の一員として責任ある行動をとられるならば、国際社会は快く北朝鮮を迎え入れることであろうというふうに私は信じております。  武力行使につきましての、抑制的な方向で進むべきとのお考えでございましたけれども、我が国として、紛争があくまでも平和的に解決するよう、また武力行使ができるだけ回避されるよう最大限の努力を行わなければならないことは当然であろうというふうに考えておりますし、私がしばしば申し上げていることでありますけれども、これこそ平和な中で今日を築いてきた我が国国際社会において果たすべき役割であろうということを確信をいたします。  国際貢献についての姿勢及び施策いかんということでありますけれども、今も述べたわけでありますけれども、我が国としては、世界の平和と繁栄に積極的な役割を果たしていくことは我が国の国際的責務と認識しておりまして、平和な歩みの中で蓄えてまいりました多くの技術ですとかあるいはノウハウ、こういったものを十分に活用して、政府開発援助の推進やグローバルな国際的な課題解決努力をしていく考えであります。  特に、政府開発援助におきましては、大綱におきまして、貧困の軽減を主といたしました保健衛生、教育の基礎生活分野等を重点項目と位置づけるとともに、環境やエネルギーを初めとした各分野の人づくり及び研究協力等、被援助国の技術の向上・普及をもたらす協力は、安定した国づくりの基本となるとの認識であります。かかる分野での援助も重点的に今日まで実施してまいったところでございますけれども、今後とも、途上国貧困の軽減あるいは社会の安定のためにこそ、我が国は積極的に尽力をしていくべきであろうというふうに信じます。  本年二月の日米首脳会談決裂責任を当時の副総理・外相としてどうとるか、どういう考えを持つかということであります。  副総理・外相として、二月の日米首脳会談での合意に向け、実はあらゆる調整を図ったところでございまして、二月には、残念でありますけれども、これは不調に終わったところであります。しかし、私は、今度の不調に終わったことは失敗であったというふうには受けとめておりません。包括経済協議に関しまして、政府調達などの個別分野の措置の実質面では、次官級協議を通じまして相当程度の進展を見ておったというふうに私は思っております。  最終的に米国との間で合意に至らなかったのは、個別分野の措置の進展をはかるための客観的な基準に関しまして、米側提案の一部が実質的には数値目標と同じであり、規制緩和といった我が国政権基本理念と相入れないものであったところであります。しかし、この問題につきましては、アメリカ側のカンターさんも、自分たちは数値目標ということで制裁を加えるものではないということは再三お話がありました。しかし、残念ですけれども、今までもそういう話であったものが実際には制裁措置のような動きになった、こういった経験に照らしたときに、私はこれを了解することができないということを申し上げたわけであります。(拍手)  さて、日米関係改善シナリオ、これの決意はいかんというお話であります。  現在冷却期間にある日米包括協議個別分野交渉につきましては、今後の話し合いの中で、日米双方とも交渉のドアをオープンにしておるという立場にございます。私どもはあらゆる機会をとらえまして、交渉再開の糸口を模索していきたいというふうに考えております。その際、政府としては、これは我が国自身のために行うんだという姿勢で、規制緩和中心とする市場開放や内需主導型の経済運営の確立など、主体性を持って大胆に経済改革を進めてまいる考え方であります。  先般の対外経済改革要綱は、このような観点から、内外価格差の是正あるいは消費者選択の多様化を通じまして、まさに我が国国民生活を向上させる、そして我が国にダイナミズム、いわゆる活力と創造性に満ちた我が国経済というものを構築していくことが不可欠という認識に立って、政府調達の手続などを含めまして最大限努力したものでございまして、また、規制緩和等につきましても、六月末までに検討の成果を取りまとめるというふうにされておるところでございまして、私は、実りの多いものに最大限努力をする必要があろうというふうに考えておりまして、これは関係議員皆様方の御協力も賜りたいというふうに思っております。  こうした努力を行いながら、サミットの前までに日米経済協議の再開を図りまして、一層強固な日米関係というものを構築していくことが、我々が今課せられている問題であろうというふうに認識をいたしております。  また、景気現状についての所見いかんということでありましたけれども、景気現状というものを見ますときに、公共投資は累次の措置によりまして堅調に進んでおります。また、住宅投資は大変高い水準で推移しております。そして、個人消費にはやや持ち直しの動きが見られますものの、やはりバブルのときに積み上げました設備につきましては、大変ストックが大きいということもございまして、まだ、残念ですけれども、設備投資というのは減少が続いておるということを認めざるを得ません。そして、企業収益ですとかあるいは雇用情勢というものも依然厳しい状況にあろうというふうに認識をいたしております。このように、我が国経済は、一部に明るい動きが見られるものの、総じて低迷が続いておると申し上げざるを得ません。  政府といたしましては、こうした明るい動きを、あるいは明るい兆しというものを経済全体に広げて、我が国経済を六年度中のできるだけ早い時期に本格的な回復に向けまして、七年度以降の安定成長を確実なものとするために、二月に決定した総合経済対策の着実な実施を図っておりますところでありまして、さらに、六年度予算につきましても、五年度の第三次補正予算とあわせ、可能な限り景気に配慮するよう執行に努めてまいりたいというふうに考えておるところであります。  また、深刻な雇用情勢のもとでの対策いかんということでありますけれども、厳しい雇用状況対応するため、去る二月に決定いたしました総合経済対策平成六年度予算において、雇用支援トータルプログラムの実施など積極的な雇用対策を盛り込んだところでございまして、また、来年の新卒者に関しましては、早い段階から事業主団体に対しまして求人要請を行うなど求人の確保に努め、新卒者の円滑な就職を援助してまいりたいというふうに考えております。政府といたしましては、雇用の安定を図ることは極めて重要な政策課題であると認識しており、今後とも全力を挙げて取り組んでまいります。  また、円高対策に対する考えということでありますけれども、経済や為替の動向に細心の注意を払いながら、引き続き内需を中心とした持続的成長の確保に努めるとともに、規制緩和を初めとして前政権が開始した国内経済改革方針を継承発展させ、強力に実施させてまいる所存であります。もちろん、この間にありまして、国際社会と十分な連携をとってまいりますことは申し上げるまでもございません。  なお、税制改正のあり方についての見解であります。  間接税引き上げ、これが先にありきという御指摘がありました。税を引き上げるということは、これはだれもが喜ぶことではありません。しかし、活力ある豊かな高齢化社会の実現を目指し、福祉政策等の積極的な展開あるいは減税措置に対する財源確保の観点も含めまして、個人所得税の軽減と消費税の充実を柱にしまして、均衡のとれた税体系をつくるため、消費者の皆様方の御理解を得ながら、六月中には何とかひとつ成案を得て、必ずや年内に税制改革を実現するよう最大限の努力をしていきたいというふうに思っております。(拍手)  今後における所得税減税の問題につきましては、昨年十一月の税調答申の考え方に沿いまして、年内に実現を図る税制改革の一環として、所得税制のあるべき姿の検討、これもあわせて進めてまいりたいというふうに考えます。  なお、今後とも財政改革を強力に推進し、財政の効率化に向けた努力を続けることは言うまでもございませんけれども、高齢化による当然増の要因を抑える中で、歳出削減に多大のものを期待することはなかなか困難であるというふうに考えざるを得ないことを申し上げざるを得ません。  また、予算審議についてのお話でありますけれども、平成六年度予算の成立が大幅におくれておりますことは、これはまさにゆゆしき事態でございます。国民生活に重大な影響を与えないことにつきましては、まさに私も政治家としての責任を負っておるというふうにみずからが理解をしております。  新内閣といたしましては、前内閣が提出いたしました平成六年度予算を引き継ぎ、責任を持ってその実施に当たることを初め、我が国の直面する困難な事態から一刻も早く脱却し、将来の見通せる軌道に乗せるべく、一丸となって邁進する覚悟であります。このため、私は、誠心誠意を尽くしまして政府の最高責任者としての重責を果たしてまいりたい、かように考えます。(拍手)  なお、先ほど最後に御指摘もありましたけれども、日本の国が、あってよかった国、こういうものを目指そうというお話がありました。私自身が全く同じ言葉で国民皆様に今日まで呼びかけてまいったことでございまして、まさに私どもも、今河野総裁からお話のあったことを肝に銘じながら努めていきたいというふうに思います。  また、政治国民のものであるということ、これはもうだれも否定できるものではなく、当然そういうものであることを、やはりこれも肝に銘じて私はこれからの政治の運営に努めてまいりますことを申し上げたいと存じます。  以上であります。(拍手)     —————————————
  6. 土井たか子

    議長土井たか子君) 村山富市さん。     〔村山富市君登壇
  7. 村山富市

    ○村山富市君 この国会は、日本政治の根幹を問い直す国会として、内外注視の中で開かれています。私は、日本社会党・護憲民主連合を代表し、「優しさと多様性に満ちた日本」を目指す立場から、羽田総理大臣の所信表明演説に関し質問をいたします。(拍手)  まず初めに、先月名古屋空港で起こった中華航空機の痛ましい事故に遭われた御遺族の方々に心からお悔やみを申し上げます。また、入院中の皆様の一日も早い御回復をお祈りするとともに、事故原因の究明並びに再発防止について我が国政府としても万全を期すよう強く要請をいたします。  総理日本がかつてない厳しい難局を抱えた難しいときに、あなたは首相になられました。戦後最も長い不況から抜け出せる展望もいまだ見えておりません。不況対策のため極めて重要な予算は、成立しないどころか、五月半ばになってなお審議さえ始められていない状態でございます。これは戦後三番目の記録であります。その犠牲となって苦しんでいる二百万人の完全失業者を初め、多くの国民が不安と焦りを覚えています。  まじめに働き、ほんのささやかな幸せを大切に生きている国民は、今、日本政治に何を期待しているでしょうか。期待してもむだだとあきらめている人たち。どうせ政治家はみんな悪いことをするものと不信を抱いている人々。私も政治に携わる者として、その責任も痛感しながら、しみじみと考えさせられています。  羽田内閣は少数与党でこの難局をどう乗り切るつもりだろうかと、不安な気持ちを持たれている人も多いでしょう。また、政権はかわったが政治はまだまだ変わっていないと見ている人もたくさんあります。そうした国民に、総理はどう対応していくおつもりでありますか。  三十八年間続いた自民党の腐敗した政権崩壊し、国民の大きな期待の中に細川連立政権が誕生しました。(拍手連立政権は、政治改革を最大の課題として取り組み、一定の役割を果たしてまいりました。  しかし、国民が最も期待したのは、不正と腐敗を絶滅することであります。残念ながら、この点については中途半端で、政治不信がこれで解消されたとは到底思われません。もっと大胆に不正と腐敗の実態を国民の前に明らかにし、腐敗を防止するための制度を整備しなければなりません。政治家国会政府に対する国民の信頼をどう回復するかについて、お互いもっと真剣に考るべきだと思いますが、総理はいかがですか。(拍手)  また、政治にとって、民主的なルールは大事にしなければなりません。連立政権は、もともと理念も政策も違った政党・会派が一定の政策合意によって支え合っているだけに、運営の方法が最も民主的でなければなりません。そして、連立与党間の政策形成過程の公開など、政治の透明性を高めることによって国民の理解、批判を得られるようにすることが、政治に対する信頼を高める上で大事なことだと思います。  わずか八カ月間でしたが、連立政権で学んだこともたくさんあります。反省すべき点もまた多くありました。例えば、突如として細川総理から示された国民福祉税や内閣改造の問題など、いつ、どこで、どのような手続で決められたのか全く不明でありました。細川総理辞意表明後、自民党の派閥領袖を対象とした道理なき連立の枠組み変更の画策、そして突然の院内会派改新の発足など、すべてこれまでの連立与党間の合意を全く欠いたまま進められたものであります。(拍手)  こうした問題に共通していることは、合意を得るための民主的な討議や手続が無視され、数をすべてに優先させるという権力発想であります。簡単に言えば、力ずくの政治手法であります。社会党連立政権を離脱せざるを得なかった理由は、政権の中枢がこのように議会制民主主義の原則を踏み外すという政策以前の政治手法の問題によって、連立与党間の信頼が失われ、信義が欠落したこと、つまり連立政権としての前提条件が崩壊したからであります。(拍手)  総理、民主的な政治行動は、信義と誠実の原則によって支えられなければなりません。すなわち、提起された原案に対して示される多様な見解が尊重され、真剣な討議を深めることによって、原案よりも一層国民的な合意を得やすいものにするという寛容と忍耐による作業がなされる、これこそが民主的な政治手法であり、「合意と納得の政治」ということができると思います。(拍手)  羽田総理、あなたの手法は、あなたの人柄からしても「合意と納得の政治」にあると思いますが、いかがですか。世に言われるような二重権力を排して、リーダーシップを発揮するという自信がおありですか。これまでの反省も含めて明らかにしていただきたいと思います。(拍手)  総理羽田内閣は少数与党内閣として船出しました。我が党は、お互い責任を持って立案し、国会に提出されている予算案や予算関連法案については、その成立責任を持つことは既に明らかにしています。しかし、その後、内外の重要な政治課題に対してどうするおつもりなのか、果たして少数与党でこの難局を乗り切れるのかどうか、国民は不安に思っていると思います。  この事態を乗り切る選択の道は、私は三つしかないと思います。  一つは、エンジンをとめて何もしないで漂流する。二つは、与野党徹底した話し合いで合意を求めていくか、または野党に限りなく譲歩して妥協を図る。そして三つ目は、総辞職か解散だと思います。幾ら何でも第一の無責任な道はとれないでしょう。あなたはどの道を選択されますか。いずれにしても厳しい政局運営を迫られると思いますが、今後の政局運営について、党首会談等を通じて話し合う考えがあるかどうか、この際承っておきたいと思います。  さきにも申し上げましたが、腐敗を防止し、政治に対する国民の信頼を取り戻すためには、引き続き政官財癒着の構造を断つことが必須の条件であります。三者の癒着構造にメスを入れ、腐敗防止法の制定、企業・団体献金の全面禁止、国会議員の地位を利用したあっせん利得罪の検討などの改革が必要であります。さらに、国民に開かれた国会、自浄能力を高めるため国会改革も急がなければなりません。総理、いかがでしょうか。  私は、この際、日本社会党政治的立場を申し上げておきたいと思います。  社会党は、細川連立政権の合意事項と八党覚書とに集約された改革方向に沿って、政権を懸命に支えてきました。そして、政治資金規正法、公職選挙法などの改正による腐敗防止策の強化、公共事業における入札制度改革など、不十分ながらも一歩前進させ、また景気回復などを重点とする平成六年度予算案編成し、その予算案はこの国会に提案されているところであります。  第二次連立政権ともいうべき羽田内閣の発足に際しても、昨年の政権合意による改革を継承することを前提にした「新たな政権樹立のための確認事項」について合意し、羽田首班を選出をいたしました。しかし、この間の連立政権の運営についての政策以前の疑問、権力の二重構造とも言われる政治体質についての重大な疑問によって社会党が連立から離れた現在、これらの確認事項にそのまま拘束されることはありませんが、国民に対する約束として、野党の立場になっても党独自の判断によってその実現のために努力していくつもりでございます。(拍手)したがって、羽田政権に対しては、改革の初心を貫くのであればこれを支持し、逆行の懸念が見えれば具体策を提起し断固対決する所存であります。(拍手)  ところで、細川総理は、私たち主張を入れた連立政権合意に基づき、就任直後の特別国会で、過去の我が国の侵略行為や植民地支配などが多くの人々に耐えがたい苦しみと悲しみをもたらしたことに改めて深い反省とおわびの気持ちを表明されました。その後、日韓、日中首脳会談などを通じて、日本の植民地支配や侵略戦争を率直におわびし、近隣諸国との信頼関係の回復に努めようとしてまいりました。アジアの国々は、こうした日本の変化を感じ取り、新しい時代への期待を抱いたのであります。これは、自民党政権のもとでは決して実現できなかった改革の一歩というべきでありましょう。(拍手)  問題は、改革を継承するという羽田内閣姿勢についてであります。あなたが法務大臣に選んだ方が、あれが侵略戦争と定義されるのは間違っているなどと発言し、内外とりわけアジアの国々から厳しい批判を受けて、大臣を辞任するに至りました。しかし、事はそれで終わったのではありません。世界人々は、歴史を歪曲し犠牲者の痛みを無視する政治家の存在に驚き、そのような人物をよりによって法務大臣という人権のかなめとしての要職に任命されたあなたの見識と日本政治レベルを問題にしているのであります。総理、法務大臣には永野氏が最適と判断された理由を明らかにしてください。  まして、永野氏は戦前戦後を通じての職業軍人であります。組閣に当たって、憲法第六十六条の国務大臣の文民規定をあなたは御存じだと思いますが、一体その精神をどう理解されておられたのか、見解を伺いたいと思います。(拍手)  「かつての戦争に対する反省」は、昨年の政権合意にも明記され、細川内閣によってようやく始められたばかりであります。永野発言で大きく失墜した日本の立場を一日も早く回復しなければなりません。そのため、戦後五十周年の節目を目前にしたこの国会で、侵略戦争の過ちに対する国家意思の表明として謝罪と不戦の決議を行い、それを受けて、国会内閣が共同し特別の行動を起こすことを与野党すべての皆さんに提案したいと思います。総理、いかがでしょうか。(拍手)  御承知のように、旧西ドイツ以来、ドイツの戦後補償は高く評価されており、それを推進する合い言葉として「過去の克服」ということが盛んに言われました。その意味するところは、過去を内面で十分に理解し自分のものにすることとか、過去を繰り返し徹底して心に刻み込むことだと言われています。羽田内閣改革政治を継承するというならば、そのよって立つ原則としてこれを確認されるよう心からお願いしたいと思います。  ところで、総理は、国連安全保障理事会の常任理事国となることを望まれていると伝えられています。  国連は、今、一九九五年に迎える設立五十周年に備え、組織全体の改組改革検討を始めたところであります。日本政府は、これに向けて、二十一世紀にも通用する新たな国連のあり方を提起すべきであります。  さきの大戦の戦勝五カ国があらゆる面で実権を握り、安保理事会では常任理事国のこの五カ国が拒否権を持つという現状を改め、常任理事制度の改廃や地域代表としての現在の理事国の拡大などが必要だと考えています。また、安全保障理事会のほかに、新たな時代に対応できるよう、環境や人権に関するそれぞれ独立した理事会を創設することも大切と考えています。  このような国連改革を進めることこそ時代の要請であり、日本の国際的な役割ではないでしょうか。それをしないで、旧来の国連に大国としてその地位を占めることが日本国連外交であってはならないと思いますが、総理、いかがでしょうか。(拍手)  次に、朝鮮半島問題と、それに関連する日本対応についてお伺いしたいと思います。  羽田内閣の発足後、官房長官、外務大臣などが、朝鮮民主主義人民共和国の核疑惑に関連して、有事法制問題や憲法解釈などについて活発に発言されています。歴代政府は、たとえ国連の指揮下であっても、自衛隊が海外で武力を行使することは憲法上許されないとしてまいりましたが、今回の発言の中には、これまでの見解を改め、集団的自衛権の行使を可能にすべきだという発言、つまり自民党政府にもできなかった根底からの解釈改憲を求めるものが目につきます。  他方、総理は、世紀を越えた喜びを祝賀する南アフリカ共和国のマンデラ大統領就任式典に、政府特使として、細川内閣の防衛庁長官だった中西啓介議員を派遣されました。彼は、今回法務大臣を辞任せざるを得なくなった永野茂門氏が主宰する研究会において、国連指揮下の自衛隊による武力行使は合憲と発言し、引責辞任せざるを得なかった人であります。総理、あなたが重ね重ねタカ派の政治家を選ばれるのは、あなた自身の思想もそうだからと思わざるを得ませんが、違いますか。  総理の今回の人事は、憲法に規定された国務大臣等の憲法尊重、擁護の義務を侵すこととなるおそれがあるばかりでなく、細川政権下で掲げた平和と軍縮の立場とも全く逆の方向をなすものであります。みずからの人事に関する方針責任をどのように自覚しておられるのか、明らかにしていただきたいと思います。(拍手)  さて、朝鮮半島問題で留意すべきは、北朝鮮の核疑惑に名をかりて有事立法集団的自衛権の行使を強調することは、北東アジア政治的、軍事的緊張をあおり高める以外の何物でもなく、また、朝鮮半島問題の本質を取り違えた本末転倒の議論だということであります。  北朝鮮を孤立させてはいけないとよく言われます。まさにそのとおりだと思います。そのためにも、北朝鮮が核拡散防止条約にとどまり、国際原子力機関の査察を受け入れるよう粘り強く説得すべきであります。私たち社会党はその努力を直接行ってまいりましたが、羽田内閣も今後そうした取り組みに努力されるというのであれば、我が党も大いに協力してまいりたいと思います。  そもそも日本の朝鮮半島への対応には、他の国々とは違う、かつてその地を植民地としたという歴史的な責任が伴っているのであります。そうした歴史関係を踏まえるならば、日韓関係と均衡を図りつつ、日朝関係の一日も早い正常化に向け努力をし、まずもって北朝鮮の孤立化を防ぐという外交上の選択をすべきであります。これにより米朝間の交渉を促し、ひいては朝鮮半島全体の平和と安全に寄与するという方向こそ求められているのではないでしょうか。これまで外務大臣としてこの仕事を担当してこられた羽田総理決意方針を伺っておきたいと思います。(拍手)  羽田内閣が平和への道に逆行しないと言われるならば、さきにも触れた「合意と納得の政治」を外交の基本にすること、すなわち、大国主義を否定し、どんな国であっても対等、平等の外交関係を築くようにすべきであります。  現に、米韓中三国はそれぞれ北朝鮮話し合いに努めている最中であり、とりわけ韓国中国制裁措置に極めて慎重な態度をとっているのであります。これと比べて、日本は、北朝鮮の核拡散防止条約からの脱退表明以来、この一年、直接何も働きかけをしてこなかったことを厳しく反省しなければなりません。その上で、日朝国交正常化交渉の再開、関係国及び関係国際機関への働きかけなど、国際的な紛争は対話と協調によって解決するという気構えに立って日本独自の平和外交を展開するよう強く求めたいと思います。(拍手)  この問題で最後に、有事立法についての総理の明確なる見解を伺っておきたいと思います。  有事立法は、現在の国際関係からは到底考えられない我が国に対する急迫不正の侵略があった場合を無理に想定して、自衛隊出動などのために国民の権利を大幅に制限することが必要であると主張し、そのための法制をあらかじめ準備しようとするものと思われます。総理はそのような立法を検討準備されるというお考えがあるのかどうか、総理のお考えを伺っておきたいと思います。  なお、先ほどの答弁の中で述べられた集団的自衛権の見解については、外務大臣認識とは大きな食い違いを持っております。これは閣内不統一ではありませんか。その点も明確にしていただきたいと思います。(拍手)  一九六九年十一月、佐藤・ニクソン会談後の共同声明の背後に、有事の場合沖縄への核持ち込みを日本が事実上認めるという秘密協定に署名されていた事実が、最近になって当時の佐藤総理の特使によって暴露されました。沖縄では、この四月、二日間にわたって米軍のF15など軍用機二機が墜落、県民の不安は募っているやさきのことであります。直ちにこの席で真相を御報告いただくとともに、羽田内閣はこの密約に拘束されると考えるのかどうか、それともあくまで日本の非核三原則を守るのかどうか、明らかにしていただきたいと思います。(拍手)  さて、経済成長を優先するこれまでの経済政策は、既に歴史的な役割を終えました。先進諸国は、いずれにおいても量を求める時代から質を選ぶ時代を迎えており、これまでの競争・効率といったキーワードよりも、連帯・公正といった価値観が重視されるようになっています。このことは、生活の重点が量的な充足からゆとりと優しさに象徴される質的な充実に移行する時代、多様な価値観、多様な国籍の人々が共生し共存する時代を迎えたということであります。言いかえれば、人に対しても環境に対しても、また他の国々や民族に対しても寛容な社会を形成しなければならず、それを基本とした「優しさと多様性に満ちた日本」となるべき時代を迎えたということであります。この新たな時代にふさわしい財政や経済のあり方についても検討されなければなりません。  例えば、高齢化社会対応できる税負担国民に求めようとする場合、安心できる福祉のプログラムを明確化する、不公平税制の是正、益税解消や逆進性緩和による消費税の抜本的な改廃など、直接的な条件整備がその前提として必要であります。このように、所得の低い、弱い立場の人々に十分な配慮を行った上で関係制度のあり方を改革することを条件にしなければ、税制改革国民の合意は得られません。私もサインいたしました政権合意のうち、税制改革の項に「国民の理解を得つつ」という表現が挿入された理由もここにあります。総理は、細川総理の失敗を反面教師として、適切な手順と方法で国民の理解を得るようにしなければならないと思いますが、税制改革についての総理方針を明らかにしていただきたいと思います。(拍手)  さて、当面の景気対策は予算の早期成立所得税減税の実施を急ぐことにあることは言うまでもありませんが、景気対策として活用されている公共投資のあり方にも触れておきたいと思います。  それは、生活の質的な充実というテーマに沿うように、分権・自治を基本とする住民参加の町づくりを進める中で、生活者として必要性の高い生活基盤に向けた投資が優先され、推進されるようにすべきだということであります。ところが、公共投資の配分は、建設、農水、運輸の三省を初めとする各省の既得権益によって全く弾力性を失っているのが現状であります。  そこで、いわゆるシーリングシステムのあり方を根本から見直し、省庁を超えた社会的、総合的な観点から公共投資のあり方を評価し、コントロールするシステムが新たに開発されなければなりません。国会としても、予算審議その他の委員会審議において公共投資のあり方について論議をより一層深めるのは当然でありますが、内閣としても、例えば総理直属の内政審議室に新たなセクションを設け、その検討準備を始めるといった積極的な姿勢を求めたいと思いますが、総理はいかがでしょうか。(拍手)  次に、日米関係、特にいわゆる貿易摩擦問題への対応についてお伺いをいたします。  日米関係については、単に大人の関係に入ったなどと自画自賛しているわけにはまいりません。日米両国のGNPを合わせると全世界の四割を占めるという現実は、両国の世界経済に果たす責任が極めて重いことを物語っており、関係改善に向けた相互の努力が今後一層必要なことを示していると思います。  特に、日本の貿易収支の黒字約千四百億ドルのうち対米貿易によるものが約六百億ドルに上るといった不正常な関係を是正するには、日本としては、その経済を公正で生活者優先に転換することが不可欠だと思われます。そのためには、この目的に沿って、所得税減税、公共投資の拡大、住宅・土地対策の強化など、内需拡大に向けた施策を進めるとともに、適切な規制緩和の推進、内外価格差の是正などの施策を重点的に行う必要があると思います。  したがって、日米貿易摩擦問題としては、アメリカの求める数値目標ではなく、いわゆる新社会資本を中心とした、生活基盤を充実させるための日本としての総合的な中期目標の設定、建設国債などによる財源確保を図るとともに、貿易黒字について、例えばGNPの一定率以下に抑制するといった独自の目標を早急に自主的に策定し、七月のナポリ・サミット前に日米包括協議を再開することを目指すべきではないでしょうか。総理の見解を伺っておきたいと思います。(拍手)  次に、ガット・ウルグアイ・ラウンドによって多大な影響を受ける農業を初めとする農林漁業の問題についてお伺いをいたします。  環境に優しい社会という見地に立つと、農林漁業の問題は極めて重要であります。これからの農林漁業政策基本環境保全型産業と位置づけ、これを国土利用計画や環境基本計画の主要な柱に据えること、その上で、特に国土の約七割を占め、自然的、社会的条件が極めて厳しい中山間地域の農業振興や、沿岸及び内水面における漁業振興についての本格的な施策を早急に講じることが必要であります。また、環境上の見地に加えて、国民に安全な食糧を供給する観点から、有機農業の全国的な普及に向けて公的な援助策を確立する必要もあると思われます。これらのことが、農林漁業を取り巻く厳しい国際状況の中で、地域の特性に即した日本の農林漁業の健全な発展を図るためにぜひとも必要と考えていますが、農林大臣を経験された総理、いかがでしょうか。  また、ガット・ウルグアイ・ラウンド合意の実施時期までに、政府は、新たに農産物、特に米の生産・流通体制の整備、農業の体質強化、地域活性化対策等を検討し、所要の法制度の改正等を行うとしているようでありますが、例えば、米のミニマムアクセス導入に伴って、転作や減反の強化は行わないこと、食糧自給の原則を踏まえ、中期的視点に立って本格的な備蓄制度を確立することなどが必要と考えますが、総理はいかにお考えですか。(拍手)  さて最後に、憲法や日本の進路に関する羽田総理考え方についてお尋ねをいたします。  世界の冷戦構造が崩壊して以降、今日もなお大きな変動が続いています。旧ユーゴスラビアの紛争などが依然として続いている反面、中東危機の象徴であったパレスチナとイスラエルの対立がようやく暫定自治の合意にこぎつけ、歴史的な和解への第一歩を踏み出しています。また、長きにわたってアパルトヘイト、人種隔離政策をとってきた南アフリカでは、人種の平等、平和と繁栄、民主と公正などを理念とする新しい国づくりが始まろうとしています。  そのような世界の動きや時代状況の中で、武力による紛争解決を否定した日本の平和憲法がますますその輝きを増していると思います。(拍手)  一九七〇年代半ばまで三十有余年の議会生活を送ったアメリカのフルブライト元上院議員は、その回想録の中で、日本について次のように書いています。  私は日本の平和憲法とそれに基づく国連中心外交、非武装政策を最も高く評価する一人だ。   私が望むのは、日本が大国にふさわしい知恵と金と設備、人材を提供して、世界平和のための貢献をしてほしいということだ。平和維持に軍事力以外の方法があることを身をもって示し、米国に範を垂れてほしい、と願っている。 平和憲法に対するこのような評価と、平和憲法を踏まえた日本国際貢献のあり方について、この際、総理の率直な御意見を明らかにしていただきたいと思います。(拍手)  私はさきに、新しい時代の求めている日本の姿は「優しさと多様性に満ちた日本」ではないかと申し上げました。つまりそれは、自由、平等と並ぶ博愛の精神を基本とし、人権、環境、平和、公正のために尽くす国を目指すということだと思います。  この目標を実現するためには、国内においては民主的な改革を目指す人々の連携が必要であり、国際的には、世界から核の廃絶を求めている国々や武器の輸出禁止を目指す国々など、平和を目指す国々の連帯が必要であります。我が国の憲法は、これからは積極的な実践の方向を示す世界の羅針盤としての歴史的な役割を担っていると言うべきではないでしょうか。(拍手)  重ねて申し上げます。  私たち日本社会党は、羽田内閣に対し、責任政党としての立場から、是は是、非は非としての対応をしてまいります。しかし、ねじ曲げた憲法解釈によって武力による国際紛争解決に参加、協力しようとするなど、歴史に逆行する姿勢が克服できない場合には断固対決し、新たな政権樹立に邁進する決意であることを申し上げておきます。(拍手)  中国の黄河の激流の中にそびえ立って動かない大きな岩石のことを中流の砥柱と呼んで、乱世に処して毅然として節操を守るさまによく例えられています。私たち日本社会党は、激動する世界の中で、平和憲法を体現し、中流の砥柱としての役割を果たす所存であることを強く申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣羽田孜登壇
  8. 羽田孜

    内閣総理大臣羽田孜君) 村山委員長にお答えを申し上げます。  まず、中華航空事故につきましては、先ほども申し上げましたように、政府としては、事故原因の究明を急ぎまして、このような惨事が再び繰り返されないよう安全対策に万全を期してまいることを重ねて申し上げたいと存じます。  また、政治家国会内閣に対する国民の信頼をどう回復するのかというお話でございますけれども、政治改革をやはり実施すること、そして政治家国会内閣に対する国民の信頼を回復することが最重要課題であろうということで、昨年連立政権が誕生、このたびの政治改革関連法案におきましても、連座制の強化など腐敗防止のための措置も盛り込まれておるというふうに承知しております。  こうした政治改革への歩みは、関連法案の成立など土台づくりの段階から、さらに本格的な取り組みを行うべき新たな段階に来ておるというふうに認識をいたしております。今後は、いわゆる区割り法案の国会提出等を早急に進めるなど、国民から真に信頼される政治の実施のために引き続き努力をしていきたいというふうに考えます。また、さらなる腐敗防止の強化等につきましては、今後、引き続き検討すべき課題であるというふうに認識をいたします。  また、政治手法についてのお話がありましたけれども、この前の所信表明でも申し上げましたように、私はかねてから「血につながる政治、心につながる政治、そして普通の言葉の通じる政治」というのを心がけてまいりました。お互いに普通の言葉で率直に議論し、理解し、そして協調して歩んでいくことを大切にしてまいったところでございます。  今後とも、できるだけ幅の広い合意の上で政治を進めていく、この決意、この誓いはいささかも変わりません。改めて、内閣総理大臣という最高の責任者といたしまして、重責をかみしめ、国民皆様そして与野党の皆様方と論議を尽くしながら、開かれた中での政策決定を旨として、先頭に立って難局に取り組んでまいるつもりであります。(拍手)  そして、私どもは連立政権をこの八カ月進めてくる中にありまして、いろいろな議論がありました。確かに理解ができなかったこと、あるいは指摘される面があったこと、こういったものも反省しなきゃならぬと思います。しかし、そういう中にありましても、こういう議論が交わされる中で国民日本政治がよく見えるようになったという指摘もあります。私どもは、このあたりを大事にしていきたいと思っております。(拍手)  また、少数与党で内外の重要課題が山積しているときに難局を乗り切れるかというお話があったわけでありますけれども、御指摘もありましたように、我が国政治、行政、経済社会、この改革というものはまさに我々に課せられた歴史的な一つの責務であろうというふうに考えております。その実施につきましては大きな痛みと困難を伴うものの、広く国民の理解と支持が得られるものと確信をいたしております。したがいまして、国民皆様と積極的に意見を交わし、また国会にありましても各党の皆様方と率直に話し合っていく、そういう中で私は道は開けてくるというふうに感じております。  そして、今日の課せられている課題というものは、これは与党とか野党ということではなくて、どうしても今、日本としてやらなければならない問題であろうと思っております。その意味で、私どもが率直に真っ正面から皆様と御相談し、あるいは議論していくならば、私は、少数与党であるからこそ、むしろ逆にこの難局というものを乗り切れるんじゃなかろうかというふうに思っております。(拍手)どうか各党の皆様の御理解とまた御協力を賜りますことを心からお願いを申し上げたいと思います。  なお、党首会談をというお話がございましたけれども、党首会談につきましては、内閣総理大臣としての私からもぜひお願いをしたいと思います。そういう中で、我々の考え方を率直にそれぞれの皆様に申し上げ、御協力をお願いしたいと思っております。  腐敗防止法の制定の実現に向けた見解ということでありますけれども、政治改革の一環としまして、このたびの改正におきましては、連座制の強化や公民権停止などの制裁強化の措置が盛り込まれておりまして、腐敗防止に相当な効果が上げられるというふうに期待をいたしております。さらなる腐敗防止の強化等につきましては、今後、やはり議会の中でも十分に御論議をいただくべき問題であろうというふうに考えます。  また、企業・団体献金の全面禁止の検討、これが必要という御指摘がありました。  これは改革の一環といたしまして、このたびの改正におきまして、企業等の団体献金は、政党、政治資金団体並びに資金管理団体以外の者に対しましては一切禁止するということにされておりまして、制限が強化されたところでございます。改正法の施行後五年を経た場合には、資金管理団体に対するものは禁止措置を講ずるとともに、政党、政治資金団体に対する献金のあり方についても見直しを行うものというふうにされておりまして、これは廃止も含めて検討されるものであろうというふうに承知をいたしております。  あっせん利得罪の検討ということでありますけれども、御指摘の点を含めまして、政治腐敗防止策につきましては種々の議論がなされているところでございまして、これらの議論を踏まえながら、今後とも適切に対処してまいりたいというふうに考えております。  また、開かれた国会、自浄能力を高めた国会の実現に向けた改革、この点につきましてでありますけれども、国民に開かれた国会、自浄能力を高めた国会の実現に向けた改革などいわゆる国会改革につきましては、私もかつてこの改革の問題の自民党の委員長として各党各会派皆様方とお話をしたわけでございますけれども、どうか院内の各会派におきましてぜひともひとつ御検討をいただきたいと思っております。政治改革が進みましても、やはり国会改革というものが本物にならなければ、これは私は本当の改革にはならぬというふうに理解をいたしておるところでございまして、こういうものが合意されたならば、私ども内閣といたしましても当然これを尊重していくことを申し上げたいと存じます。  また、前法務大臣の就任を要請したことについての判断が述べられましたけれども、永野さんは昭和六十一年の七月、参議院議員に当選されました。科学技術の政務次官を務められたり、あるいは議員を二期にわたって務めておられるところでございます。そして、私も実はECとの会議ですとかあるいは国際的な会議等で一緒に発言あるいは議論をしてまいりましたけれども、戦いというものは何としても避けなければならないということを常に実は叫んでおられた方であります。その意味で、私は、すぐれた人格、識見というものを有する方であるというふうに考えながら就任をお願いしたわけでございますけれども、このような結果になったことは本当に心から残念に思っておるところであります。  また、憲法第六十六条の文民規定、この精神をどう理解しているのかというお尋ねでございます。  「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。」と規定しておりますけれども、この趣旨は、内閣総理大臣その他の国務大臣資格を文民に限定することで、国政がいわゆる、武道の武を断つと書かれますけれども、武断政治に陥ることを防ぐことにあるというふうに私は理解をいたしておるところでございます。  今国会で侵略戦争への謝罪と不戦の決議を行い、国会内閣が共同して特別の行動を起こすことを提案したいということ、この御認識あるいは御意見につきましては、私はこれを高く評価したいと思っております。実は、私自身もこのようなことをかつて自民党の中で申したこともございます。こういった問題につきましては、これは国会で御議論いただく問題でございまして、ぜひともこういった問題につきまして皆様の中で御議論いただきたいと思います。そして私どもは、そういった決議に対しまして、内閣としての対応も明確にしていきたい、かように考えるところであります。  また、国連改革についてのお話でございましたけれども、御指摘がございましたとおり、国連創設五十周年、これを明年迎えることになります。国連の組織全体の見直しが必要であること、また、その際、国際秩序基本にかかわる問題に大きな責任を有するに至った我が国といたしましては、このような改革に主体的に取り組むことが時代の要請であるとの御指摘は、全く私は同感でございます。  冷戦終えんの今日、国連役割というものは非常に多くなってきた、いろいろな新しいニーズも生まれてきたというふうに考えております。その意味で、国連の機能というものを一層強化していく必要がある点につきまして国際的に幅広い合意があろうというふうに思っておりまして、今、この作業部会にも、国連の大変多くの国が発言をされているという事実もあります。  そういう中にありまして、安保理の改組に関する動きもその背景のもとに活発化したものでありまして、平和の中で今日の繁栄を築き上げてきた日本といたしまして、世界の平和と安定のためにどのような責任を果たすかが国際的に問われている問題であろうというふうに考えております。  我が国はこれまで皆様と一緒に、平和主義そして国連中心主義、この外交理念といいますか、これを堅持してまいりましたし、また実践してきたというふうに確信をいたしております。私は、このような実績を有します我が国であるからこそ、常任理事国としても、過去の蓄積した、いわゆる平和の中で蓄積してきたノウハウというものを活用しながら、真の世界平和の構築のために貢献できるというふうに考えております。  PKOにつきましても、例のカンボジアにおける我が自衛隊の施設部隊あるいはその他選挙監視要員の皆さん方、こういった皆様方の働きというものは世界各国からも非常に高く評価されておることであります。  また、なお、環境ですとかあるいは人権の分野につきましては、国連には既に経済社会理事会、これが存在しておりまして、同理事会を中心としたこれらの分野における活動強化に努めていくことも我が国の大変大きな責務であろうというふうに信じます。  また、集団自衛権等に関係をされまして、人事の方針責任というお話もあったわけでございますけれども、私の人事に関します方針責任につきましては、人事は適材適所を旨として、人格、識見ともにすぐれた人々にその最も適した職務を遂行していただくということが私の最高責任者としての務めであろうと思っておりますし、今後ともそのつもりでそれを全うしていきたいというふうに思っております。  また、憲法第九十九条は、公務員の現行憲法に対する尊重、擁護義務、これを規定しておりますが、内閣といたしましては、同条の規定に従って憲法を厳に遵守すべきものであるというふうに私も考えておるところでございます。私どもは、これからも憲法というものを大切にしていくということを申し上げたいと存じます。  また、日朝国交正常化に対する総理決意方針いかんというお話でありましたけれども、日朝国交正常化交渉につきましては、北朝鮮対応によりまして残念ながら中断されて以来、再開のめどは立っておらないということでありますけれども、基本的な考え方につきましては委員長のお考えに同感するところであります。今後とも、朝鮮半島の平和と安定に資するものという二つの観点を私どもは踏まえまして、韓国などの関係国とも緊密に連絡をとりながら対応をしていきたいというふうに考えるところであります。  ただ問題は、北朝鮮の核兵器開発問題というその疑惑の問題、この解決がないとこれは国交正常化は困難であるということでありまして、私は、国際社会の呼びかけに対しまして北朝鮮が率直に胸襟を開いていただくこと、これを心から望んでおるところであります。  有事立法についてのお話がありましたけれども、これは先ほども申し上げましたけれども、北朝鮮問題につきましては、先ほど申し上げましたように、国際社会におきまして外交努力をまさに行っているさなかでありまして、新たな立法措置が必要であるかとの御指摘につきましては、これは仮定のお話でございますので具体的なコメントは差し控えたいというふうに存じます。  一般論といたしましては、安保理におきまして何らかの措置というものが決議された場合には、日本としても、憲法の範囲内におきまして責任ある対応をとることは当然であろうというふうに思っております。  自衛隊の行動にかかわるいわゆる有事立法研究につきましては、さきにも申し上げましたように、自衛隊法第七十六条の規定によりまして防衛出動を命ぜられるという事態において、自衛隊がその任務を有効かつ円滑に遂行する上での法制上の問題について、政府部内で五十二年から検討をされておるところでございまして、その結論につきましては、五十六年四月と五十九年の十月にそれぞれ公表もされておるところであります。所管庁が明確でない事項に関する法令につきましては、現在、政府部内で検討を加えておるということでありますけれども、これは現実の問題として、いついかなる問題についても、これは政府としては実務的に検討するということはあり得ようかと思っております。  法制化の問題につきましては、これこそ高度の政治判断にかかわるものでございまして、国会におきます御審議あるいは国民の世論というものを十分にこれは踏まえると同時に、そういった問題につきまして、もし必要があるときには、国民皆様にも十分に率直にお訴えしていく問題であろうというふうに思っておりまして、いずれにしましても、こういった問題はやはり慎重に対応すべき問題であろうというふうに考えております。  また、集団的自衛権をめぐる問題についての解釈のお話がありましたけれども、これは先ほども申し上げましたように、国際法上では、国家というものは、集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利、これを有しているものとされております。我が国が、国際法上このような集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上は当然でございます。しかし、憲法第九条のもとに許容されている自衛権の行使というものは、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどめるべきものであるというふうに解釈をいたしておりまして、集団的自衛権を行使することはその範囲を超えるものであって、憲法上認められないと考えております。  集団的自衛権の問題につきましては、政府はまさに、先ほども申し上げましたように、自民党時代からこれは従来一貫して今申し上げたような解釈をいたしておりまして、今この解釈を私どもは変更する考え方はないということ、これを明確に申し上げておきたいと思っております。  なお、一九六九年の佐藤・ニクソン密約の真相いかんというお話でございましたけれども、これはもう再三私どもの先輩たちお答えしてきておりますように、御指摘のような密約が交わされたとの事実はないということであります。そして非核三原則、これは当然のことながら、私どもも堅持をしていくということを明確に申し上げておきたいと思っております。  税制改革につきまして、その手段と方法あるいは方針、これについて話せというお話でございますけれども、私どもは、難しい問題でも、これはいつも私が申し上げてまいりましたように、国民皆様に現実というものを率直に訴えていくということであります。豊かで活力ある高齢化社会を目指しながら、個人所得課税の軽減、いわゆる若い勤労者の皆様方の所得課税というものの軽減と消費課税の充実を柱とする税制改革を年内に実現することは、これは緊急に取り組まなければならない重要な課題であろうというふうに考えておりまして、この国会でも全会一致で実は議決が行われていることを踏まえれば、その速やかな実現は、今やまさに国民的な課題であろうかというふうに私は認識をいたしておるところであります。  政府といたしましては、税制改革の具体案づくりに向けまして、国民皆様の御意見というものにも十分耳を傾けながら、税制調査会で御審議を進めていただくこと、また、先般の各党間の確認事項に沿いまして、与党協議会においても引き続き協議を進めていただくとともに、これまで税制改革の実現に向けましてともに協議を進めてきました社会党皆さんさきがけの皆様を初めとして、これは野党の皆様方にも御検討を進めていただきまして、各党各会派の御理解と御協力をいただきながら、何とかひとつ六月中には成案を得ながら、年内に税制改革の実現を図ってまいりたいということを率直に申し上げさせていただきます。  今後の公共事業の配分についての考え方についてのお話がございました。  社会資本の整備につきましては、高齢化社会が本格化する二十一世紀を間近に控えまして、重点的、効率的な投資を行う必要があるというふうに私も考えております。このような観点から、六年度の予算におきましては、財政制度審議会報告などを踏まえまして、国民生活の質の向上に資する分野、これに思い切って重点配分を行ったところでもございます。今後とも、社会経済情勢の変化ですとか国民の新たなニーズというものを踏まえて、国民生活の質の向上に資する分野に引き続き重点投資をしていくということは非常に重要であろうというふうに認識をいたしておるところであります。  サミット前に日米経済協議の再開を目指すべきではないかということでございます。  この問題につきましては、今まで私も、前国会ですか、お答えもしてまいりましたけれども、まさに私どもは、ただこれは決裂したというものではなくて、お互いの国の実情というものを率直にこれは述べ合ったということであります。そして、マラケシュにおきましては、お互いにどこに問題があるのかということを、互いに幅広く、しかも深く理解ができたなというのが今日の状況であろうというふうに思っております。  しかし、いずれにいたしましても、日米関係というのは、やはりこれは重要な関係であります。そしてこの問題は、単に日米関係ということだけではなくて、国際社会にもやはり関連があろうというふうに思っております。そういった意味で、これはサミット前に私どもも再開させたいというふうに考えます。そして、日米双方ともこの交渉のドアというものはオープンにしておるという立場でございますので、いろいろな機会というものを使いながら、交渉の再開の糸口というものを真剣に私どもも求めていきたいというふうに思っております。  そして、ただいま種々の御提言をいただいたところでございますけれども、私どもといたしましては、規制緩和中心とする市場開放あるいは内需主導型の経済運営、これは国民生活をより高めるということもございます。こういった問題などを含めまして、主体性を持って自主的に大胆に経済改革を進めてまいろうという考え方、これはいささかも変わりません。  先般の対外経済改革要綱というものは、このような観点から、しかも内外価格差の是正ですとかあるいは消費者選択の多様化を通じまして、国民生活を向上させ、活力と創造性に満ちた我が国経済を構築することが不可欠との認識に立って最大限努力したものでございます。  また、規制緩和で六月末までに検討の成果を取りまとめることとされていることについても、これは本当に内容のあるものにするように私どもは最大限努力していきたいというふうに思っております。  なお、特定の数値目標については、御指摘がありましたとおり、私は数値目標というものはこれは適切ではないというふうに今今日も考えております。  こういった努力を行いながら、日米協議の再開を図りまして、一層強固な日米関係というものを構築してまいりたいというふうに考えております。  農林水産業を国土利用計画や環境基本計画の主要な柱とすべきであるということにつきましては、まさに農林水産業は、国民生活に欠かせない、食糧の安定供給というだけではなくて、国土や自然環境の保全、また、ゆとりある生活や余暇空間というものを提供するという非常に多面的な機能というものを有していることは、もうこれは御指摘のとおりであります。現在、我が国の農林水産業は厳しい状況に直面しているところでありますけれども、今後とも、農林水産業の有します多面的な機能が十分発揮されるよう、その振興に全力を傾けてまいろうというふうに考えます。  なお、今後の各種の計画の策定につきましては、農林水産業の果たす今申し上げました機能というものが十分反映されるように考えていきたいというふうに思います。  また、ミニマムアクセス導入に伴う備蓄制度の確立ということでありますけれども、米のミニマムアクセスを導入する場合におきましても、所要の方策ですとかあるいは国内対策について十分検討していく必要があろうと考えております。  なお、前内閣におきまして設置されました緊急農業対策本部、本部長には細川総理の後を継ぎまして私が就任することになっておりますので、責任を果たしてまいりたいというふうに考えておるところであります。  その際には、ミニマムアクセス導入に伴います転作の強化は行わないこととしまして、国民への安定供給を確保できるよう、中期的な観点に立った備蓄と用途に応じた需給均衡を確保することができる新たな米の管理システムを整備することなど、前内閣考え方も踏襲していきたいというふうに思います。  また、フルブライト上院議員の平和憲法に対する評価ということでありますし、それに関連して国際貢献のあり方についてのお話でありますけれども、我が国は、先ほども申し上げましたように、皆様とともにこれまで半世紀にわたって一貫して平和主義、国連中心主義の理念を堅持してまいりました。昨今の国際情勢を見るにつけましても、憲法に掲げられたこの理念というものは誤りでなかったばかりか、私が一昨日申し上げましたように、そして今御指摘がありましたように、私はますますその理念は輝きを増しておるというふうに考えておる一人であります。  このような実績を有する我が国でありますからこそ、まさに援助についても、地球環境問題あるいはグローバルな課題解決への努力、あるいは地域紛争解決ですとか軍備管理あるいは軍縮の推進などへの取り組み、また国連の平和活動への積極的な参加など、非常に多面的な、多角的な国際貢献、これを積極的に展開し、より平和で繁栄した世界を実現するために、まさに知恵とそして技術あるいは蓄えましたこういったお金、こういったものも用いながら努力していくのが我が国の務めであろうというふうに考えております。  また、我が国憲法について、その羅針盤の役割を担っているかどうかというお話でありますけれども、我が憲法が、我が国の民主的な改革ですとか平和国家の連携に向けて積極的な実践の方向を示す世界の羅針盤としての役割を担っているとのお考えは、傾聴に値するものであると真摯に受けとめたいと存じます。  憲法は国の基本を定めた最高法規であり、その基本理念というものを政治運営に生かしていくことは当然でありまして、私自身も憲法の理念と精神を堅持していきたいというふうに考えておりまして、私どもはこれからこういった政策運営、政治運営というものをしてまいることを率直に申し上げますので、また御協力を賜りますこともあわせてお願いを申し上げたいと存じます。  以上であります。(拍手)     —————————————
  9. 土井たか子

    議長土井たか子君) 米沢隆さん。     〔議長退席、副議長着席〕     〔米沢隆君登壇
  10. 米沢隆

    ○米沢隆君 私は、連立与党皆さんの御了解をいただき、連立与党を代表して、羽田総理所信表明演説に対し質問をいたします。  質問に先立ちまして、去る四月二十六日の名古屋空港における痛ましい中華航空事故の犠牲となられた方々とその御遺族に対し、連立与党を代表し、謹んでお悔やみ申し上げますとともに、負傷し入院されている方々に心からお見舞いを申し上げるものであります。あわせて、政府に対し、徹底した事故原因の究明を急ぎ、二度と再びこのような大惨事が繰り返されることのないよう安全対策に万全を期されるよう強く要請いたします。  さて、我々連立政権は、今回、残念ながら少数与党連立政権として再スタートすることになりました。内外ともに難問が山積する中、極めて厳しい政局運営を余儀なくされることになりましたが、総理におかれましては、今後、安定した政局の構築に向け、また、与野党の幅広い合意形成を目指して最大限の努力を傾注される真摯な政治姿勢を堅持していただきますよう心から求めてやみません。もちろん、連立与党も一丸となって汗を流す覚悟であります。(拍手)  先般、総理所信表明演説において、新内閣の任務として、細川政権改革路線を継承し、与野党の協力を通じそれを実現するという「改革と協調」の政治を行うと述べられました。まさに我が国政治状況を踏まえ、国民の要請に的確にこたえたものであり、この姿勢を高く評価いたします。  今や我が国も大きな転換期を迎え、細川政権から継承された政治改革経済改革、行政改革改革路線は、与野党問わず共通の緊急的政治課題であると確信いたします。国政運営に当たり重要なことは、政権の時代認識の正しさと国民が信頼するに足る将来に向けた明確なビジョンを持ち、国民の理解をいただきながら、それを着実に、誠実に実行していく意欲と姿勢の是非にあると考えます。  総理は、少数連立政権とはいえ、歴史の王道を歩んでいるとの確信に立って、信念を持って政権の運営に当たられるよう強く期待いたします。(拍手総理決意をまずお伺いいたします。  さて、羽田政権がなすべき当面の最も重要な課題は、今年度予算案の速やかな審議入りとその早期成立であります。今年度予算案は、三月四日に国会に提出して以来、本会議での財政演説を除き、全く審議されておりません。まことに異常な事態と言わざるを得ません。  我が国景気は、前政権時代に平成五年度予算の第三次補正を行ったことなどにより、ようやく明るさが見える状況になったとはいえ、昨今の円高の推移などから、予算審議の展開次第によっては回復の芽は摘まれかねない状況にあります。景気の回復を確実なものとするためにも、公共投資などの景気対策を盛り込んだ今年度予算案早期成立が不可欠であります。景気の回復と国民の雇用と生活を守るという大義に立って、野党の方々の協力を求めつつ、予算案及び関連法案の審議とその成立全力を挙げて取り組むべきだと考えます。総理決意をお伺いいたします。  さて次は、政治改革についてであります。  細川政権は、衆議院選挙制度について、民意の集約と民意の反映という長所をあわせ持ち、政策の是非により政権交代をもたらす小選挙区比例代表並立制を導入するなど、政治改革法案を成立させるという自民党政権時代においてなし得なかった歴史的な業績をなし遂げました。我々は、衆議院議員選挙区画定審議会の勧告を待ち、区割り法案の今国会での速やかな成立を図り、政治改革の一日も早い完成を図らなければなりません。  この点に関連し、最近、一部に、政局の動向次第では、旧選挙区制での総選挙を求める声があります。内閣の解散権の行使の場合は別といたしましても、区割り法案がいまだ未成立とはいえ、立法府が廃止を決めた旧制度選挙を行うということは、政治改革つぶしにも通じ、議会制民主政治を否定するものだと考えます。(拍手)次の総選挙は、立法府が決めた新しい選挙制度で行うことは極めて当然のことではないでしょうか。(拍手)  さらに、参議院選挙制度改革国会改革など、政治改革の残された課題に積極的に取り組んでいくべきであります。特に、衆議院選挙制度改革により、衆議院と参議院との同質化が一層進む状況にあり、参議院の選挙制度改革を急がなければなりません。この問題については、現在参議院において与野党間で話し合いが続けられているところでありますが、その努力を多とし、その速やかな結論を待って、来年の通常選挙に適用できるよう、関連法案の成立を目指すべきだと考えます。これら諸点についての総理の明快な答弁を求めます。  次は、日米経済摩擦問題と経済改革についてであります。  日米両国の友好関係の維持は、我が国安全保障経済発展の基本であるにとどまらず、アジア・太平洋の平和と安定のために不可欠であります。現在、日米経済交渉は物別れのまま、中断したままとなっておりますが、私は、経済関係の亀裂が両国の相互不信を高め、安全保障を含めた両国の友好関係に影響を与えることになることを深く憂慮いたします。  今や日米経済問題は、日々深刻の度を増していると言っても過言ではありません。この三月のアメリカの通商代表部の九四年不公正貿易報告書が指摘しておりますように、前政権がまとめた対外経済改革要綱をアメリカは不十分と判定しておりますが、総理は、このような事態に対応し、どのような対策を講じられる方針か、特に六月末までに取りまとめる約束をしたアメリカの対日アクセスの具体的な改善策をまとめることができるのかどうか、その進捗状況は現在どのようになっているのか、今後の日米経済交渉の見通しを含め、総理の見解を求めます。  私は、日米経済問題は我が国経済の構造改革と並行して進めない限り本当の解決はないと考えます。この意味において、「連立政権樹立のための確認事項」にもありますように、内需主導型への経済構造への改革や、情報通信分野及び環境調和型産業等、新産業の育成や中小企業の振興等により我が国経済体質の転換を図るとともに、内外価格差の解消に努め、過剰な経済的規制の大幅緩和による市場の活性化、経済活動の国際協調を促進するための諸規制の緩和をより積極的に、より迅速に進めるべきだと考えますが、経済改革についての総理方針と展望をお伺いいたします。  次は、高齢化社会対策税制改革についてであります。  我が国は、諸外国に例を見ないスピードで高齢化の道を進みつつあり、二十一世紀初頭に高齢化のピークを迎えます。この時代を活力のあるものとし、国民が生きがいを持って生活を営めるようにするためには、高齢化社会の福祉ビジョンを策定し、雇用、年金、医療、介護等の福祉政策を強力に推進するとともに、高齢化が本格化する二十一世紀までに福祉施設、住宅、交通、下水道などの福祉・生活環境の計画的整備を図る必要があります。  さらに、高齢化に伴い増大する社会の費用については、単純に増税に求めるのではなく、この不況下において民間企業が減量経営の努力を行っているように、政府みずからが身を削る決意を持って行政改革に取り組み、国民の理解を得る努力を行うべきでありましょう。この見地から、規制・保護行政からの脱却、補助金の整理統合、省庁の再編などの行政改革に積極的に取り組むべきだと考えます。また、所得捕捉の徹底や消費税の益税の是正などの不公平税制の是正にも真剣に取り組まなければなりません。このような努力と相まって、直接税に著しく偏った税体系を改める抜本的税制改革に取り組むべきだと考えます。  これら問題につきましては、現在、連立与党の福祉社会対応する税制改革協議会において協議が進められ、六月中に結論を出すことになっており、また「新たな連立政権樹立のための確認事項」においても、「直接税の軽減措置や現行消費税の改廃を含め、間接税税率引き上げ中心とした税制の抜本的改革について、国民の理解を得つつ六月中に結論を得て、本年中に関連法案を成立させる。」という合意に達しております。  また、この間、国会におきましても、六年度特別減税法の成立に当たりまして、全会派一致で、「平成七年分以後の所得税については、速やかに、税制全般の在り方について検討を加えて税制改革を行い、抜本的な所得税の減税を行うものとする。」との附則が修正追加され、税制改革は、今や国会での合意のみならず、国民的な緊急の課題であるとともに、国際公約ともなっておるわけであります。私は、野党各党の理解と協力を得て、改革の手順を踏みながら、年内にぜひその実現を図らねばならぬと考えますが、総理の所信と決意を承りたいと存じます。  次は、外交・防衛の問題についてであります。  我が国の外交にとって最も大事な、重要な課題は、アジア・太平洋地域の一員として、これら地域の人々の理解と信頼を確保することにあります。私は、この意味において、今般の永野前法相の発言アジア諸国近隣諸国人々の心に大きな傷跡を残し、我が国の信頼を損ねる事態を招いたことは、まことに残念な結果でありました。総理は、所信表明において、「平和の創造とアジア・太平洋地域の輝かしい未来の建設に向かって力を尽くしていくことこそが、これからの日本の歩むべき道であると信じる」と述べられておりますが、今回の舌禍事件に関連し、総理のこれらアジア諸国との外交に臨む決意を改めてお伺いしたいと存じます。  間もなく戦後五十年を迎えようとしておりますが、この間、我が国は目覚ましい経済発展を遂げ、世界の中で重要な地位を占める国に成長してまいりました。その責任を自覚し、我が国として世界の平和と繁栄に積極的に貢献していくことは、当然の務めであると考えるものであります。この視点から、我が国アジア諸国近隣諸国の理解を求めつつ、国連安保理の常任理事国になるとの意思を明確に表明すべきであると考えますが、総理の見解を求めます。  また、名実ともに国連が新しい国際秩序の中核的な役割を果たせるよう、国連に対し、旧敵国条項の削除、拒否権の乱用防止、財政の確立と監査体制の強化等の改革を求めていくことが必要であり、我が国自身もPKO分担金の予算計上や国連職員の養成、増員等を図っていくことが必要であります。さらに、PKOに積極的に協力していくとともに、カンボジアでの経験を踏まえ、国際国家の立場に立ってPKO協力法の内容の再検討を進めていくことが必要であると考えますが、これら諸点についての総理の御見解を伺います。  最後に、北朝鮮核開発疑惑問題についてお伺いいたします。  北朝鮮は、深刻な経済不況に直面しているにもかかわらず、多額の経費を投入し、軍事力を近代化、強化する一方で、先月行われた国際原子力機関の核査察を一部拒否するなど、核兵器開発疑惑は濃厚となっております。国内的には経済困難等を抱え、国際的には孤立した北朝鮮がどのような対応をとるか現在のところ全く不明でありますが、隣国である北朝鮮の不透明な情勢は、我が国及び東アジアの大きな不安定要因となっており、我が国としては、北朝鮮が核の査察を受け入れるよう、韓国はもとより、米国、中国とも緊密に連携をとり、粘り強く交渉していくことが大切であると考えます。そのために、政府全力を挙げて努力すべきであります。  しかしながら、北朝鮮国連議長声明などの要請にこたえないため、国連経済制裁などの決議を行った場合は、我が国国連の一員としてこれを尊重し、憲法が許す範囲内でこれに協力する体制を整える必要があります。また、国連の決定という形ではなく、多国籍型の制裁となった場合の対応検討も必要であると考えます。  いずれにせよ、隣国である北朝鮮の核開発の問題は、我が国安全保障にとって死活的に重要であります。あいまいな態度では国を守ることはできません。総理決意対処方針をお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣羽田孜登壇
  11. 羽田孜

    内閣総理大臣羽田孜君) 米沢民社党書記長にお答えを申し上げたいと思います。  中華航空事故につきましては、政府といたしましては、事故原因の究明を急ぎまして、このような惨事が再び繰り返されないよう万全を期してまいることを重ねて申し上げたいと存じます。  また、少数連立政権とはいえ、政権の運営に当たって、一つ歴史的な王道を歩むつもりで臨んでいくようにという御指摘でありまして、ありがたいことであるというふうに私も思います。  三十八年間にわたる自民党の単独政権、これにかわりました連立政権というのは、新しい時代への期待というものを背に、政治改革あるいは経済改革、行政改革、こういったものに意欲的に取り組んできたものというふうに評価しておりまして、この八カ月間というのは、決して長い期間じゃありませんでしたけれども、私はやはり歴史的に評価されるものであろうというふうに考えておるところであります。  いずれにいたしましても、これらの改革というものは、大きな歴史の流れでありまして、これはもはや避けて通れない課題であろうというふうに考えます。この点につきましては、各党の御理解と御協力を得られるものであるというふうに私は信じております。新内閣としても、この改革の志というものを忘れることなく、また、これまで八カ月の連立政権の貴重な経験を踏まえながら、決意も新たに、改革の推進に加えまして協調の姿勢を重視した政治運営というものをしてまいりたいというふうに考えております。  予算及び関連法案についてでありますけれども、平成六年度予算につきましては、新内閣においてこれを引き継ぎ、責任を持ってその実施に当たる考えであります。現下の厳しい経済情勢にかんがみまして、既に国会に提出申し上げている法律案などとともに、平成六年度予算の円滑な審議と一日も早い成立議員各位の御協力をお願い申し上げたいと存じます。  次の総選挙は新しい選挙制度で行うべし、この御指摘でありますけれども、小選挙区の区割りにつきましては、過日、衆議院議員選挙区画定審議会、これが発足をいたしたところであります。現在ここの委員会で鋭意審議がされておるというふうに私は承知をいたしております。政府といたしましては、勧告がなされたときには、この勧告を尊重をいたしまして、関連法案を早急に国会に提出し、次回総選挙が新制度のもとで実施できるよう可能な限り早い時期に成立を目指して努力していきたいということを私も考えております。(拍手)  参議院の選挙制度改革のための見解という御指摘でありますけれども、この制度改革につきましては、参議院の各会派におきまして、既に改革案を取りまとめられたり、また、現在検討をされておるというふうに伺っております。衆議院選挙制度が改正された以上は、これに合わせて参議院の選挙制度も抜本的に見直すべきという御意見には、傾聴すべきものがあろうというふうに考えます。まず参議院各会派におきまして御検討をいただき、御指摘のように、できれば来年の通常選挙に間に合うように早急な合意が得られることを期待しております。各会派の合意が得られた場合には、政府といたしましても当然これを尊重していくべきであろうというふうに考えるところであります。  今後の日米経済交流への見通しについてでありますけれども、現在冷却期間にあります日米包括協議個別分野交渉につきましては、良好な日米関係を維持するためにも、サミット前に再開させることが必要であろうというふうに考えます。日米双方とも交渉のドアはこれはオープンという立場でございますので、我が国といたしましても、いろいろな機会をとらえて、交渉再開の糸口を模索してまいりたいと思っております。実は、一昨日でございましたか、クリントン大統領ともこの問題についても電話でお話をいたしたところであります。  また、我々といたしましては、こういった問題についての措置というものは、こういった措置をするために、これはただ外国のためにするということではなくて、これらの措置をすることによって国民生活というものが向上していくんだという、このことをきちんと我々はわきまえながら、規制緩和というものを中心にして、市場開放ですとかあるいは内需主導型の経済運営、これを確立するなど、主体性を持ってやはり大胆に経済改革を進めていくことが重要であろうと考えます。  このような観点から、先般の対外経済改革要綱、これを取りまとめまして、政府調達の分野を初め、最大限努力をしてまいったところであります。このような我が方の努力につきましては、今後とも米側の一層の理解を求めていきたいと思っております。  また、規制緩和など六月末までに検討の成果を取りまとめることとされておりますことにつきましては、内容のあるものにするように私どもは全省挙げてこれに取り組んでいきたい。この間の事務次官会議あるいは昨日の閣議でも、このことを皆様に指示したところであります。こういった努力を行いながら、日米経済協議の再開を図りまして、単に安全保障ですとかグローバルな協力ですとかそういった問題だけではなくて、経済問題においても日米関係の構築というものを進めていきたいということを申し上げます。  それから、経済改革の積極的な推進の方針、展望でありますけれども、内需拡大を中心といたしました持続的成長の確保、これに努めるということ、そして規制緩和を初めとして前政権が開始したいわゆる国内経済改革方針、これを継承発展させること、これはどうしても必要なことであろうというふうに考えております。  とりわけ、先ほども申し上げましたように、経常収支黒字の十分意味のある縮小、これを中期的に実現すること。やはり一つの国が突出して黒字であるということは問題があろうかと思っております。そのために、活力と創造性に満ちた我が国経済の構築を期する観点から、去る三月に決定された対外経済改革要綱におきまして六月までにまとめることとしている規制緩和を初めとする諸措置というものを迅速に進めていきたいというふうに考えております。  税制改革はまさに緊急の課題であるということでありますけれども、個人所得課税の軽減と消費課税の充実を柱とする税制改革を年内に実現することは、前内閣考えを継承し、新しい内閣が緊急に取り組まなければならない重要な課題であろうというふうに考えております。これにつきましては、私どもも責任を有しているということを強く自覚をいたしておるところであります。  いずれにいたしましても、所得税減税を含みます税制改革につきましては、国会でも全会一致で抜本的な改革をするように議決が行われていることを踏まえれば、その速やかな実現は今や国民的な課題であろうというふうに考えております。政府といたしましては、このような税制改革の具体化に向けまして、連立与党において速やかに協議を進めていただくようお願いをいたしたところでありまして、野党の皆様方におきましても検討を進めていただき、各党各会派の御理解と御協力をいただきまして、六月には成案を得て、ぜひともことしじゅうにこれを実現していかなければいけないというふうに改めて申し上げたいと思います。  なお、前法相の発言に関連しまして、アジア諸国との外交に臨む決意についてお尋ねがありました。  私は、所信表明演説におきまして、「我が国の侵略行為や植民地支配等が多くの国の人々に耐えがたい苦しみと悲しみをもたらしたとの認識を新たにし、これを後世に伝えるとともに、深い反省の上に立って、平和の創造とアジア・太平洋地域の輝かしい未来の建設に向かって尽力していく」ということを申し上げたところであります。私は、我が国といたしましては、過去の歴史を直視すると同時に、アジア諸国皆様方の声に謙虚に耳を傾けていくことが必要であろうと思っております。  そういう意味で、前内閣時代にも外務大臣として各アジアの大使の皆様方にお集まりいただき御意見を伺ってまいりましたけれども、総理大臣になりましてからも、実は二十八日に予定しておりましたけれども、御案内のような事情がございまして、昨日、各アジアの地域、全地域の各大使の皆様方にお集まりいただきまして、お一人お一人の皆様方から、アジア日本関係アジアはこれからどうあるべきなのか、アジアの安全というものはどのように確保していくのか、幅広い実は意見交換を行ったところでございまして、こういった努力というものを私は引き続いてやってまいりたいというふうに考えておりまして、この面におきましては、議員外交の面でも皆様方のお力添えを賜りますことをこの機会に改めてお願いを申し上げたいと思っております。  安保理事国についての見解でございますけれども、安保理改組というものが必要であるという認識は、もう既に国際世論になっておるというふうに私は認識しております。その中で日本国連におきましてより大きな役割を果たすべしとの期待ということも、これは各国の発言を聴取しましたときに、これは客観的な事実であろうというふうに思っております。我が国は、世界の平和と安定のために、政治経済などの幅広い分野で常任理事国たるにふさわしい多大な貢献を既に行っておる、このことが各国が我が国に対するいろいろな意見表明があったところであろうというふうに思っております。  我が国といたしましては、安保理を初めとする国連の機能強化にみずから進んで関与し、安保理においてなし得る限りの責任を果たしていく考えであり、このことは自分の所信表明演説や先般の訪欧のときにも各国の皆様方に率直に実は述べてきたところでございます。  また、敵国条項の削除あるいは拒否権の乱用防止、財政の確立と監査体制の強化、またPKO分担金の予算計上、国連職員の養成、増員における見解というお尋ねであります。  御指摘の諸点は全くそのとおりでございまして、いずれも、冷戦終えん後の今日、国際関係におきまして国連が枢要な役割を果たしていく上で極めて重要な課題であろうと認識をいたしております。  旧敵国条項につきましては、もはや我が国に対して適用がないもの、実際には適用されておらないというものでありますけれども、これは実際に明文化されておるということでありまして、これは自民党時代から歴代内閣国連において繰り返し同条項の削除を主張してまいってきておるところでございまして、私といたしましても、引き続き本件につきまして国連加盟諸国の理解と支持を得るよう努力をしてまいるところであります。  そのほかの問題につきましても、主要な国連加盟国であり、国連の強化に多大な責任を有する我が国といたしまして、真摯に対応していく考えであります。  PKOの分担金につきましては、その性質上、所要額の見通しというのはなかなか実は立てがたいというのが実情でありまして、従来は基本的に補正予算で対応してきておりますけれども、昨今の平和維持活動の財政需要の増大、これが大変大きくなってきております。そういう意味で、平成六年度政府原案におきましては、現在展開中の国連平和維持活動のうち一部の活動につきましては当初予算に計上することとした次第でございます。  また、日本人の国連職員の増加のため、政府としては従来から、政府及び民間からの優秀な候補者を推薦し、採用促進に努めてきておるところでございまして、国民皆様方も国連に関心を持っていただき、こういったものにチャレンジしていただくことを私は期待をいたしておるところであります。  国連平和維持活動への協力及び法律の見直しについての見解についてでありますけれども、国連中心とした国際社会の平和と安全を求める努力に対しまして、資金面だけではなくて、人的な面でも貢献を行うことが我が国の国際的な地位責任にふさわしい協力のあり方であると考えており、今後とも積極的に貢献を行っていくべきであろうというふうに考えます。  また、法律の見直しの問題につきましては、現段階では、まず国際平和協力法による協力の実績、これを積み重ねていくことが重要であろうというふうに認識をいたしておるところでありますけれども、見直しを行うに当たりましては、これまでのカンボジアですとかモザンビークにおける我々の貴重なその経験というものを踏まえながら検討していくことが必要であろうというふうに考えております。  北朝鮮の核開発の問題と決意ということでございますけれども、御指摘がありましたとおり、この核開発問題というのは、我が国を含む北東アジア地域の安全保障上の重大な懸念であるだけではなくて、国際社会にとりましても、核を拡散してしまったら一体どうなるんだという、この不拡散体制の問題があります。そういう意味で、国際社会も広くこの問題に対して関心を持っておるということであります。  我が国といたしましては、本問題の解決のためには、アメリカですとかあるいは韓国そして中国その他関係の国々と連携をいたしまして、北朝鮮に対しまして常に窓口を開いておくということでありますけれども、核不拡散条約、いわゆるNPTへの完全な復帰をしてもらうということ、もう一点は、IAEA、国際原子力機関、これの保障措置協定というものをやはり完全に履行してもらって、査察を受けてもらうということが重要であろうと思います。それから、南北、これは朝鮮半島の非核化、この共同宣言というものを実施してもらいたいということであります。  こういったものを通じまして、核兵器開発に対します国際社会の懸念、これを北朝鮮が払拭するよう強く求めていく考えでありまして、私どもはあらゆる機会にそういう行動をとっていくことを申し上げていきたいというふうに考えます。  以上であります。(拍手)     —————————————
  12. 鯨岡兵輔

    ○副議長(鯨岡兵輔君) 大原一三君。     〔大原一三君登壇
  13. 大原一三

    ○大原一三君 私は、自由民主党を代表し、羽田総理所信表明演説に対し質問をいたします。長時間お疲れでございましょうが、よろしく御聴取を願います。  初めに、さき中華航空事故による犠牲者の御遺族の方々に対し心からお悔やみ申し上げますとともに、入院中の方々の一日も早い御全快をお祈り申し上げます。  ただいま、我が党の河野総裁より国政の全般にわたって質疑が行われたところでありますが、私は、いささか地味でありますけれども、主として経済、財政そして税制を中心に新総理にお伺いしたいと存じます。  実のところ、新総理の施政方針、美辞麗句に終始し、改革という言葉の羅列はたくさんありますが、具体性に乏しく、質問の取っかかりを見出すのに当惑いたします。質問は具体的にいたしますので、どうか答弁も具体的にお答え願いたいと思います。  羽田総理の今回の誕生につきまして、実のところ、国民不在の政治劇の結果、第一党、第二党を除外し、衆議院構成比三六%、過半数を割ること七十三という少数連立の、憲政の常識上考えられない異常な姿に、正直言って、驚きと同時に御同情さえ禁じ得ないのであります。しかも、組閣十日で大臣の交代をやむなくされるなど、国民の信はもとより、外国の信頼をつなぎとめることもおぼつかないのではないでしょうか。  また、閣内には、ステファン・ツワイクのジョセフ・フーシェのような、絶えず権力にすり寄る世渡り上手の閣僚もおられ、少数連立政権の謙虚さを忘れた思いつき発言が目につきます。  聞くところによると、総理は、今次訪欧の途次、西ドイツのコール首相から、あからさまに羽田政権の将来に疑問符を投げかけられたと聞いております。総理は、いかなる確信あって各国首脳と対話を持たれたのか、その成果のほどをまずお伺いしたいと思います。  このような累卵の政権与党を背負って、所信表明にもありました当面する内外国民課題を、羽田総理はどのような手法をもって議会多数の支持を得て解決するおつもりなのか、謙虚にお示し願いたい。  今日、政治がまさに天下大乱なら、経済も今まさに乱と申し上げるべきだと思います。経済現状には、一刻も猶予を許されない、解決を迫られている課題が山積しております。  細川総理改革の旗を掲げて勇ましく登場されましたが、当面する内外の重要課題はすべて積み残し、特に日米関係は戦後最悪の事態に放置したまま、あえなく内閣を去られました。そして、現在の国民が最も渇望する経済改革は全く手つかずの状態であります。  私は、後で申し上げるとおり、日本経済現状はただならぬ険しい分岐点に差しかかっていると思うのであります。かじのとり方一つ間違えば、日本丸は沈没しかねない激しいあらしのただ中に立たされております。  今ほど政治のリーダーシップが必要とされるときはありません。にもかかわらず、パワーゲームにうつつを抜かす政治現状は、中長期の問題はおろか、目下焦眉の課題にもこたえることができないのではないでしょうか。ひとしく国会に籍を置く者として、国民各位に対しまことに申しわけない気持ちにならざるを得ないのであります。我々としては、一刻も早く、多くの国民が期待する安定政権の樹立を目指す義務と責任をこの際一層強く感じるものであります。(拍手)  しかしながら、いつ発生するかわからない危機管理の問題は、時を与えてはくれません。例えば、去る四月二十二日、アメリカのペリー国防長官は、東京の外国特派員の前で北朝鮮問題に触れられ、「北朝鮮経済制裁の実施を宣戦布告とみなすと言っているが、米軍の増派に際しては、日本の基地の利用、さらに北朝鮮への日本からの送金の停止等、日本側の積極的な協力が必要だ」と言っておりますが、その後の展開はまさに予断を許さない状況であります。国民皆さんは、一衣帯水の朝鮮半島情勢に大きな不安を抱いていると思いますが、総理自身はこの際どのように対処されるおつもりか、しっかりとした覚悟のほどをこの際明らかにされるべきだと思います。  さて、私は、現在の経済状況はこれまで日本経済経験しなかった異質の不況であると考えます。在庫調整という循環不況の限界を飛び越えた資産デフレであります。バブル経済にどっぷりつかった企業や金融機関のリストラは、今始まったばかりであります。一年や二年で解決できる性格のものではありません。今経済に幾分かの明るさが見え始めたとはしゃぐのはいかがなものか、経済の底流はそんな生易しい事態ではないと私は思います。大蔵大臣を経験された総理には、こうした日本経済立て直しの抱負、そのための抜本的手法を当然お持ちであろうと思うのでありますが、この際明らかにしていただきたいと思います。  ロングランのお話をこの内閣にお伺いするのはいささか疲れるわけでありますが、私は、長期的に見て、日本経済の将来に今や「成長の限界」が見え始めたのではないかと危惧するものであります。イギリスのアンドリュー・ギャンブル氏の言う「大英帝国百年の没落」、つまりその英国病に似通った「日本病」ともいうべき事態が進行しているのではないかと恐れるものであります。  すなわち、狭隘な国土に過大なGNP、そのことによって繰り返される地価の高騰、無資源国日本の国是ともいうべき貿易立国の前に立ちはだかる貿易黒字批判の強烈な外圧、世界に誇った貯蓄率の減退、労働力人口の減少と老齢化、教育制度の硬直化、終身雇用と年功序列システムの崩壊と集団的忠誠心の喪失、かつては奇跡的成功の要因とも言われた優秀な官僚群の過剰なセクショナリズム、ウルグアイ・ラウンドを契機とする農業・農村の不安、かてて加えて、国内の高コスト要因による資本の海外逃避と国内産業の空洞化、どれ一つとってみても、日本経済の未来像が描けず、かつての成長経済からいわゆるゼロサム的停滞へ向かっている兆しが見えるのであります。私は、そのことを「成長の限界」と呼び、あたかもイギリスの凋落にも似た「日本病」と言ったつもりであります。  以上のような状況から、日本経済の再浮上を図るには、旧来のような通り一遍の手法ではだめでありまして、思い切った構造政策が必要と考えますが、総理はいかなるビジョンを持たれ、いかなる手法をもって日本経済のこれからのかじ取りをしようとされるのか。口頭禅だけの規制緩和や出たとこ勝負のびほう策では、事態は深みにはまるだけだと思うのですが、総理の所見をお伺いしておきたいと思います。  さて、政府政策手段の最も重要なものは言うまでもなく財政政策でありますが、肝心の財政自体が硬直化し、政策手法としても明らかにここでも限界が見え始めております。  国債残高は本年度二百兆円を超え、政府の長期債務はGNPの五三%に達し、双子の赤字を批判されるアメリカに肩を並べようとしております。これ以上の国債の増発は、民間資金を圧迫し、レーガン的金利上昇を招き、いわゆるクラウディングアウトを引き起こします。言うまでもなく、長期国債は六十年先までの後世代に負担を繰り延べるわけでありますから、増税の先送りであり、当世代の責任回避であると同時に、予見できない未来経済の攪乱要因ともなるわけであります。総理は今後ともこうした国債の増発を続けられるおつもりかどうか、お伺いをいたします。  次に、財政支出も既に硬直化し、各省の縄張りの壁を打ち破ることは、今年の予算編成の例を見てもほとんど不可能な状態であります。しかも、新たな政策的経費の純増額は、総予算額七十三兆円のうち、わずかに二ないし三千億円程度にすぎず、予算の大部分は既定経費ないし当然増経費に食われ、時代の要請にマッチした財政の弾力的運用はほとんど行うことができません。これでは、音を立てて地殻の変動を起こしつつある日本経済の操縦桿としての財政政策はまさに死に体と言わざるを得ません。であるとすれば、総理は、いかなる方法をもって財政の弾力性を回復し、政策の機動性を確立されるおつもりか、お伺いをいたします。  さきに述べたように、国債の野方図な発行ができないとすれば、行政改革と税制に期待するしかありません。  そこで、まず行政改革でありますが、自民党中曽根内閣において三公社を民営化したような大改革が、果たしてこの連立内閣にできるのでありましょうか。答えは明らかにノーであります。今、政府が二言目には国民負担の軽減の見地から唱えられる行政改革とは一体いかなるものでありますか、お答え願いたい。  省庁の思い切った統廃合か、現在赤字累増中の国有林野か、それとも一説に言う郵政の一部民営化か、あるいは現在九十二を数える政府関係特殊法人の思い切った改廃と民営化か。枝葉末節の組織いじりでは国民負担の軽減となるような大改革は行えますまい。総理の具体的な考えをお伺いしておきます。  次に税制の問題でありますが、増税がストレートに成長要因を減殺することは言うまでもありません。主要国の成長率と租税負担率が逆相関関係になっていることはよく知られるところであります。そしてまた、各国老齢化率の高さが租税負担率と順相関関係にあることも事実であります。  しかし、国民負担が一定率を超えると、スウェーデンの例を見るまでもなく、ゼロ成長に限りなく近づくことも証明されております。大きな政府は民間活力を弱め、経済成長の足を引っ張ります。しかし、これから世界一急速な老齢化の進行に伴い、負担の増高は避けられません。政府は、今後、租税プラス社会保障など国民負担率を一体どの程度の水準に持っていこうと考えているのか、具体的数値と、できればその根拠をお示し願いたい。  以上申し上げたとおり、日本財政の現状はいわば袋小路に追い込められていると言って過言ではありません。ただでさえ日本経済の内生要因による成長率の鈍化が予想される中、国債発行もままならず、国民負担の増高も限界、されど日本病の抜本的治療はしなければならない。一方、金融政策に頼ろうとしても、公定歩合一%台という超低利にもかかわらず、マネーフローは久方ぶりに二%台を聞いたばかり。経済のファンダメンタルズは、日銀のせっかくのえさにもなかなか食いつこうとしてくれません。  すなわち、当面する経済的要請の大きさとそれに対する政策手法の手詰まり状態とのギャップ、それにプラス外圧も加わって、今、日本経済は、トリレンマというよりは、まさにマルチレンマというにふさわしい。その錯綜した糸口を一つ一つ解いていかなければならないのが経済政策の最大の課題と思いますが、総理にはその自信がおありかどうか、お伺いをいたします。  なお、ここで一言お伺いしておかなければならないことがあります。  内外の要請の強い、四百三十兆円の公共投資十カ年計画を追加修正されるおつもりがあるかどうか。一説には百兆円程度を期間内に増額する要請もあると聞いていますが、どのように対処されるおつもりか、お示しを願いたい。  さて、総理は、さきの八党・会派の確認事項を尊重すると述べられました。また、さき所得税減税法案は、大蔵委員会において、各党合意に基づいて来年度以降も引き続き減税を行う条項を修正可決いたしたわけであります。羽田政権の構成メンバーはすべてさきの申し合わせに責任がある方ばかりで、いわば羽田内閣の公約でもあります。藤井大蔵大臣も、さきの主要七カ国蔵相会議の際、ベンツェン財務長官に、減税を今年限りとせず来年以降の継続を約束してこられたようであります。せっかくの所得税減税が今年限りで打ちどめになり、来年からもとに戻るのではないか、そしてまた消費税税率はどのような水準になるのか、今国民の最大関心事の一つであると思いますので、総理の御親切な答弁をぜひともお願いいたします。  もし万が一、六月まで結論が得られなかったとしたら、連立与党の重大な公約違反ともなり、総理責任は極めて重大だと思います。その際、内閣の命運そのものが問われると私は思うのでありますが、その点についての総理の覚悟のほどをあわせお示し願いたい。(拍手)  租税負担の問題に関連して、さき細川内閣ではやたら公共料金引き上げが目につくのであります。社会保障負担引き上げを含めると、せっかくの減税分の多くが吹っ飛んでしまいそうであります。まさか規制緩和が、公共料金引き上げ規制緩和だったとは思いたくないのでありますが、一体、今回の公共料金引き上げ額が、社会保障負担や地方公共団体分の公共料金引き上げ額を含めてどの程度になるのか、多くの国民皆さんは知りたがっております。羽田総理減税額と比較しながら明確にお答え願いたいと思います。  次に、規制緩和についてであります。  世はまさに規制緩和花盛りであります。我々も、特に大企業間の競争促進的な規制緩和はドラスチックに行うべきだと考えます。しかし、規制緩和には、そういったいい面だけではなく、マイナス効果もあるのであります。レーガン政権のもとでの航空業の自由参入の結果、アメリカ航空業界は過当競争に陥り、ついに最近は主力四社へ統合されようとしております。まさに寡占化が進んでいるわけであります。そして、採算の合わない小都市の空港が閉鎖された例が数多くあるのであります。また、規制緩和は、元来、大企業に有利で中小企業につらく当たります。多くの失業者を生んだ例がアメリカのトラック運送業界で数多く指摘されております。  これまで日本経済の重要な担い手であり、雇用労働力の八割を占める中小企業を直撃する規制緩和は、焦らず段階的に行うべきであると考えますが、総理はこの点についていかにお考えか、お伺いいたします。  次に、ガット・ウルグアイ・ラウンドについて、総理は去る十五日、外相としてモロッコでの最終合意文書に署名されてこられたが、そもそも昨年のウルグアイ・ラウンドの農業交渉の妥結内容が、農政の専門家としての総理自身の信念にもとる結論だったのではないかと思うのでありますが、その点について端的にお答え願いたいと思います。  アメリカのガルブレイス教授は、自然的条件に左右される農産物は工業製品と異なって国際競争場裏にさらすべきではないと言っておられるが、総理自身そんなお考えではなかったのでありますか、いかがですか。  最近の情報だと、アメリカの議会筋は、今回のウルグアイ・ラウンド妥結によって不利益を受ける経済分野について、新たにアンチダンピング法を矢継ぎ早に立法する動きがあると聞いております。他国には自由化を押しつけて、みずからはスーパー三〇一条、アンチダンピング法等で保護主義に走るアメリカ議会の動きはまことに理不尽であります。  アメリカの食肉輸入制限法はもとよりでありますが、八千項目に上る関税定率法にしても、各項目がバランスを欠き、それぞれの議員の地域エゴがそれぞれの税率の裏にあることを総理は御存じと思います。自由貿易を標榜するガットの裏にアメリカ議会のこうした保護主義の陰の部分があることについて、政府は今断固たる態度を示さなければならないときだと思うのでありますが、いかがですか。  それにつけても、これまで日本経済の対外視角は専らアメリカに向けられてまいりました。しかし、日本の地政学的なステータスは言うまでもなくアジアであります。したがって、これから無限大の可能性を秘めた中国を初めとするアジア諸地域に未来の経済外交のフォーカスを合わせ、明治以来のいわゆる脱亜入欧政策を軌道修正しつつ、フランク・ギブニーの言う「太平洋の世紀」、つまり「東アジアの世紀」に相ふさわしい政策展開をすべきだと思うのですが、この点について総理はどのような哲学をお持ちか、お伺いしたいと思います。現に、我が国の輸出構造は、かつてのアメリカ一辺倒から、アメリカ三、EC二、アジア五へと比重を移しかえつつあるのであります。  最後に、今回のドル安に対する日米欧の通貨当局の協調介入は、これまで例を見ない珍しい、望ましい姿であったと思います。ドル安はアメリカの株、債券のトリプル安に連動し、それが長期金利、現に七・五%を超えておりますが、その上昇を招いてアメリカ経済の腰を折ります。欧州通貨高は欧州経済回復の足を引っ張り、さらに円高日本経済の不況からの脱出をおくらせるという共通認識があったからだと思います。  しかし、協調介入には明らかに限度があります。この際、経済のファンダメンタルズと遊離した投機を抑制するためにも、EUのERM、為替メカニズムに準ずるような緩やかな参考相場圏の創設が望ましいと私は考えますが、いかがですか。総理お答えをお願いいたします。  今、円の動向は決して安心できません。百十五円が採算点と言われる日本企業にとって、百円そこそこの水準はさらなる国内産業の空洞化を招くことは必定であります。これまでに企業の海外進出によって一説には二十万人近くの国内失業を生み、さらに今後百万人台の失業を生む可能性があるとさえ言われております。  近年日本でも、アメリカ人在日企業家ビル・トッテン氏が批判するように、レイオフや解雇という安直なアメリカ型のリストラに走りがちな企業家の多い状況に加えて、産業の空洞化による雇用環境の急変には重大な関心を払わなければなりません。円高対策を初め税制や産業の構造転換等、政府の果たすべき役割は極めて多いと思いますが、総理はいかがお考えか、見解をお伺いいたします。  以上、羽田総理の誕生に当たり、主に経済財政問題について質問させていただきました。  今我々の焦眉の課題は、国民皆さんが一日千秋の思いで待っておられる平成六年度予算の国会通過であります。細川内閣の不手際で例年より二カ月おくれて国会に出され、暫定に次ぐ暫定という異常事態にありながら、連立与党国民不在のパワーゲームも手伝って、延ばしに延ばされてきた本予算の国会通過こそ当面の羽田政権の最大課題であります。総理としては、予算案の順調な審議のため細川疑惑にも的確に対処され、万全の努力をされるよう期待してやみません。  一部マスコミを喜ばせるちまちました政治のパワーゲームより、国民の目に真に国家国民のための政治が実感されるよう、たとえ命は短くとも、命ある限り羽田総理全力投球を期待して、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣羽田孜登壇
  14. 羽田孜

    内閣総理大臣羽田孜君) まず、訪欧につきまして申し上げたいと思いますけれども、コール首相からのいろいろな御指摘があったというお話でありますけれども、これはむしろ、コール首相あるいはミッテラン大統領初め、ともかく、よくぞいろいろなことを率直に語られたということ、それから私の方も率直にお話を申し上げてきたということ、これは申し上げたいと思います。  そして、その成果ということでありますけれども、私が組閣五日目にして訪欧いたしましたということは、やはり日本がこれから果たしていく役割というのは、例えば中東ですとか、あるいはアフリカですとか、また中欧ですとか、そのほか東欧あるいはロシアその他の国があります。こういった国に対して我々としてもいろいろな人道的な協力、こういうものをしていかなければなりません。そういったときに、これは日米だけではできない問題があります。ヨーロッパが大変深いつながりがあるところ、あるいは経験を持った国があります。こういった問題に対して適切に対応するためには、どうしてもやはりヨーロッパと話し合っておかなければならぬということがありました。  それともう一つは、やはり何といっても経済の問題があります。ヨーロッパの国はみんなアジアの今の発展ぶりに対して物すごい関心を持っていること。私たちにとりましては、今度新しく四カ国がふえたこのEUの動きに対しても関心を持っております。こういった問題をお互いにざっくばらんに話し合ったということも大事な目的でありました。  そしてもう一つの問題は、そういった問題についてやはりパートナーシップというものを築いていくこと、これが大事な問題であったところでございました。この中身については、まさに首脳会談そのものを全部ざっくばらんにお話しすることはできません。しかし、間違いなくこれから日欧の中で大きな一つの発展があるということだけは、私ははっきりとここで申し上げておきたいと思うわけでございます。(拍手)  それと同時に、各国ともいろいろな政治情勢というのは非常に難しゅうございます。そして、少数の政権も何回も経験している国でもあります。そういった中で、そういったもののことを勉強させられたことも私は大変よかったなという思いを持っております。  いずれにいたしましても、所期の目的、これは私は十分果たされたものというふうに考えておりますし、各国におきましても、私が就任した直後で最初にヨーロッパを訪問したこと、そういったことについて、ここのところ延び延びであったという中で大変評価されておったということを申し上げることができます。  また、少数連立政権にありまして、どのような手法で議会の多数の支持を得るかということでありますけれども、これはもう多くの言葉で申し上げるまでもなく、改革の旗というものをやはりこれは私も受け継いでいかなければならぬと思います。そして、皆さんと一緒にこれを進めていかなければならぬと思う。しかし、そのためにはどうしても協調が重要であろうということでありまして、これは皆様方の御理解を得るためにもう誠心誠意を尽くしていく以外に、これは言葉ではないということであろうというふうに思っております。(拍手)  また、北朝鮮状況対応の問題でありますけれども、これは我が国を含む北東アジア地域の安全保障上の重大な懸念であるだけではなくて、核不拡散体制ですとか、あるいは国際社会安全保障にかかわる重要な問題であります。我が国としては、今後とも、米国、韓国あるいは中国関係国と密接に連絡、協議を行いながら、本問題の解決に向かって努力していきたいというふうに考えます。特に、北朝鮮が先般の国連安保理の議長声明というものを真摯に受けとめていただきまして、まずもって国際原子力機関、IAEAとの間で合意された査察というものを完全に受け入れるということ、それとやはり南北対話というものにも誠実に取り組んでいただきたいと思っております。  なお、一般論といたしましては、安保理で何らかの措置というものが決定される場合には、我が国としても、憲法で許される中できちんと対応する必要があろうと思っております。  日本経済を立て直すということで抜本的な手法について、一部の明るい動きが見られるということを申し上げたのですけれども、これは決してはしゃいで申し上げておるわけではありません。一部に明るい兆しが見えてきているということ、これはやはり的確に私たちはつかむ必要があろうと思います。しかし、残念ながら総じて低迷が続いておるということも現実であろうと思います。  このような状況の中で、本格的な景気回復を実現するとともに、今後の新たな発展の基礎を築くためには、やはり時代の要請に合わなくなった制度ですとか慣行の改革を含めた各種施策というものを強力に遂行していくことが不可欠でございまして、また対外不均衡に適切に対応し、調和ある対外経済関係の形成というものを促進することは喫緊の課題であるというふうに信じております。  このため、政府といたしましては、経済ですとか、当然これは為替の動向にも細心の注意を払いながら、引き続き内需を中心とした持続的な成長というもの、これの確保というものに努めるとともに、規制緩和を初めといたしまして、経済改革、こういったものの方針というものを、前内閣のものを継承しながら発展させ、強力に実施していくということが重要であろうというふうに思っております。  どんなビジョンと手法日本経済のかじ取りをするのかということでありますけれども、国際社会と調和がとれるとともに、市場が活性化して、国民生活を重視した経済社会の実現を図るということが必要であります。  このために、政府といたしましては、先ほどから申し上げておりますように、内需を中心とした、安定してしかも持続可能な成長というものの確保に努めると同時に、やはり規制緩和というのはいろいろな問題があるところでございます。まあしかし、そういったものを克服しながら、また調和をとるところはとりながらこれを進めていくということが重要であろうというふうに考えておるところでございまして、御指摘がございましたように、出たところ勝負ということではなくて、中長期の視点に立ちながら対応することが重要であろうというふうに考えております。  また、国債の増発について、これを続けるつもりかということでありますけれども、残念ながら、私ども新しい連立政権になってから、建設公債等につきまして、これを発行せざるを得なかったことは事実であります。しかし、建設公債といいましても多額の利払いというものがありまして、予算というものを硬直化させてしまうという原因になっておることは、私自身予算編成をしながらそのことを身につまされて知らされておるところでございます。こういった点で、その点を留意しながら、引き続き公債残高、これが累積しないよう、累増しないよう、財政運営というものの基本的な方向というものはきちんと守っていかなければならないというふうに考えております。  また、財政の弾力性の回復の問題でありますけれども、確かに財政構造というものは、構造的に大変厳しさというものを増しておるということでありますし、また平成六年度末には二百兆円を超える公債残高というもの、これが予算の中で二割を占めてしまうということ、また国債費、地方交付税交付金、こういったものを除いた国家としての、国としての政策経費というものの割合は、実は全体の五〇%ぐらいにしかすぎなくなってしまっておるという状態であります。  本格的な高齢化社会に備えまして、福祉の充実というものは進めなければいけないということ、また着実な社会資本というものも整備しなければいけないこと、国際社会への貢献など、やはり多くの財政需要というものがあるわけでございまして、そういったものに適切にこれはこたえていかなければならないということは、もう私もよく承知をいたしておるところでございます。そういう意味で、我が国経済というものが、いわゆる社会の活力というものを保ちながら、これからの新しい時代のニーズというものに的確に対応していくために、何よりもやはり財政の対応力というものを十分確保していかなければならないであろうというふうに考えております。  ただ問題は、これは支出というものにつきましてはだれもが要求をいたします。しかし、削減については、これは削減してよろしいということは、残念ですけれども、私が大蔵大臣のときにも一人も実は御指摘いただくことができませんでした。そして、個々の問題について、じゃどこの役所のどんな問題が削減できるんだろうか、私自身、実は皆様の御質問を受けながら計算をいたしましたけれども、なかなかこれは難しいということでございまして、それこそ議員一人一人の皆様方の、あるいは各地方自治体初めいろいろな財政需要を持ちますところの皆様方の本当の理解ができなければ、これは進むことができません。しかし、私自身やはりこれについてリーダーシップを振るっていかなければならない、その責任があることは私も十分自覚しながら対応しなければならないというふうに考えております。  また、省庁の統廃合につきましては、確かにかつてやりました。そして、実際に国有林野のいわゆる現業の合理化等、これは私自身本当に苦しみながらこの問題と取り組んできた経験を持つものであります。  そういう中で、省庁、そういったものについては一体どう対応するのかということでありますけれども、いずれにしましても、やはり時代というものは大きく進んでおるという中で、省庁の再編成ということ、こういった問題は私どもとしてもきちんと目を向けていかなければならないということでありまして、規制緩和あるいは地方分権というものを推進していく中にありまして、基本的には、これはただ簡単にできるものじゃない、やはり中長期的な課題として私どもは受けとめると同時に、しかしその方向というものはきちんと示していかなければならない問題であろう、このように考えておりまして、そういった御意見についても私自身も率直に耳を傾けていきたいというふうに考えております。  今後の国民負担率についての御指摘でありますけれども、この税負担社会保障の負担というものは、我が国平成四年度の実績で三八%ということでありまして、五〇%を超えようとしておる欧米諸国と比較いたしますと、比較的低い水準にとどまっているということが言えようと思っております。しかし、今後は、やはり高齢化が進んでいくということと、また子供の数というものが減っていくという状況の中にありまして、社会保障に要する費用というものは増大してまいります。そういう中にあって、これはいろいろな批判があるところでありますけれども、国民負担というものも相当程度増大していくであろうということは、これは私どももやはり覚悟しなければいけない。  しかし、そういった場合にありましても、基本的には国民的な選択というものにゆだねるべき問題でありましょうけれども、経済社会の活力というものを維持しながら、過重なものにしていかないように我々としても財政の面で気をつけていかなければならないことは当然であろうというふうに思っております。そのために、我々としては、今申し上げたようなことを念頭に置きながら、国民負担率の上昇というものは極力低くしていくべきであろうというふうに考えておるところであります。  あえて数字をどのくらいにということは、かつて自民党時代に五〇%を超えないものということを私ども目標にしたことがありますけれども、そういったことも念頭に置きながら対応していきたいというふうに考えております。  また、錯綜した日本経済の問題を解決する経済政策を行っていく自信があるかということでありますけれども、本格的な回復軌道に乗せまして、将来の発展の芽をはぐくんでいくためには、政府としては、経済や為替の動向というものに細心の注意を払いながら、引き続き内需を中心とした持続的成長の確保に努めるとともに、規制緩和を初めとして前政権が開始した国内経済改革方針というものは継承させ、発展させ、強力にこれを実施していくことが必要であると考えます。  先般、事務次官会議そして政務次官会議が開かれ、そして一昨日ですか閣議が開かれたわけでありますけれども、それらの皆さん方を督励をいたしたところでありまして、内閣が一丸となってこれらの諸改革に着実に実施のために取り組んでいきたいというふうに考えております。  公共投資の基本計画の見直しについてでありますけれども、この問題については、三月二十九日に閣議決定した対外経済改革要綱におきまして、後世代に負担を残さないような財源の確保を前提とした公共投資基本計画の配分の再検討と積み増しを含めて手直しに着手をするということで、六月をめどにいたしまして取りまとめる努力というものを決めたところでありました。そして、これを受けまして、今経済企画庁を中心にしながらその準備を開始いたしておるところでありまして、具体的な見直しの内容につきましては、今後十分これを詰めながら、今申し上げました六月中にこの方向というものを明確にしていきたいというふうに考えておるところであります。  所得税減税の継続、そして六月までに税制改革の結論が得られるか、その覚悟はということでありましたけれども、昨年来の政府・与党におきます税制改革をめぐります種々の論議というものを踏まえながら、年内に税制改革を実現するとの方針で、いわば先行的に一年というものを実施することとしたものでございまして、本格的な税制改革につながる重要な第一歩であったというふうに私は認識をいたしております。  このような認識のもとにおきまして、先般の政府の対外経済改革要綱、これにおきましては、所得税減税を含みます税制改革については、六月中に結論が出されることとされております与党の協議も踏まえまして、年内にその実現を図る、この表明をしたところでありますし、また国会におきましても、全会派一致で、所得税の特別減税法に、「平成七年分以後の所得税については、速やかに、税制全般の在り方について検討を加えて税制改革を行い、抜本的な所得税の減税を行うものとする。」これは、国会で全会派一致の中でこの附則が修正追加されておるということであります。(拍手)  個人所得課税の軽減と消費課税の充実を柱とする税制改革を年内に実現することは、前内閣を継承した新しい内閣が緊急に取り組まなければならない重要な課題であり、政府はそれについて、私自身大きな責任を有しているということを自覚していることをはっきりと申し上げたいと存じます。  いずれにいたしましても、税制改革というものは、国会で全会派一致で議決がなされていることも踏まえれば、その速やかな実現は、まさに先ほど来申し上げておりますように国民的な課題であろうというふうに考えておりまして、政府といたしましては、このような税制改革の具体化に向けまして、連立与党において速やかな協議を進めていくようにお願いしておるところでありまして、野党の皆様方におかれましても検討を進めていただき、各党各会派の御理解と御協力をいただきまして、六月中に成案を得て、ぜひともその実現を図れるように御協力を賜りたいと存じております。(拍手)  公共料金引き上げにつきましては、経営の徹底した合理化を前提としまして、物価あるいは国民生活に及ぼす影響というものを十分考慮して、厳正に取り扱うことといたしております。その値上げに当たりましては、真にやむを得ないものに限るものといたしますとともに、その実施時期及び改定の幅につきましては極力調整してきておるところであります。  さらに、先般、物価問題に関する関係閣僚会議におきまして、公共料金の取扱いに関する基本方針を取りまとめたところでありまして、政府としては、本基本方針に基づきまして、今後の適正な公共料金が確保されるように努力していきたいというふうに思っております。  家計の社会保障負担増につきましては、年金の保険料というのは公共料金には含まれないものでありますけれども、その平成六年度の負担増は、年金の給付の改善ですとか、あるいは制度の成熟度による給付増にほぼ見合うものでございまして、国民経済として見たときには、私は、影響はそんな大きなものを及ぼさないものであるというふうに考えておるところであります。  いずれにいたしましても、政府といたしましては、二月に五兆四千八百億円の所得減税を含みます総規模十五兆円を上回る幅広い施策から成る総合経済対策を決定したところでございまして、その着実な実施を図ることなどによりまして、本年度政府経済見通しに示されたように、物価の安定を図りながら、我が国経済をできるだけ早い時期に本格的な回復軌道に乗せるということが重要な今の課題であろうというふうに考えております。  規制緩和につきましては、我が国経済社会の透明性というものを高めること、そして国際的に調和のとれたものにするということが重要であります。また、消費者が多様な商品あるいはサービスの選択を広げるということ、それと、経済構造の改革を進めていく上で、やはりこれは避けて通れないものであろうというふうに思っております。  ただ、規制緩和の推進というものは、経済社会国民生活の安定に十分これは留意しながら着実に進めていくべきものであって、先ほど御指摘があったような問題は十分やはり注意はしていかなきゃならぬと思っております。しかし、あるときには勇気を持って取り組まなければならないということはもう御案内のとおりであります。  我が国経済社会の活性化と国際的な調和を目指しまして、このような基本的な方針のもとで、今後とも推進につきまして努力を払ってまいりたいというふうに思っております。  ラウンドの農業交渉につきましては、これは農業は人間の生存に不可欠な食糧生産を行うとともに、国土・環境の保全あるいは地域経済の維持等の多面的な役割を持っておりまして、また立地の移動が困難で、天候に左右されやすいという特殊性を有しております。その意味で、私自身、自民党時代にこの問題と取り組んでまいりましたけれども、そういったときにも私どもが言ってまいりましたことは、単にこれは経済問題、貿易の問題ということだけではなくて、FAO等いろいろな食糧機関、こういったところ、あるいは将来の食糧の見通し、こういったものについても意見を聞くべきであるということを、各国に対してもこのことを主張してまいったところであります。  いずれにいたしましても、このような農業の有する特殊性というものが適切に考慮されるよう主張してきたところでありまして、私どもは、そういったものがいろいろなときに理解され、今後こういった問題について、今後のラウンドについての話し合いの中でも、環境問題等について考えられるということになってきております。  ウルグアイ・ラウンドにおける農業合意というものは、これは各国が対立の意見を踏まえた、まさにそれぞれの国の、私はエゴとエゴのぶつかり合いということを申し上げましたけれども、各国がみずからの主張、みずからの国の国益というもののぎりぎりの対決であったというふうに思っております。これは我が国が、皆さんと一緒に主張してきた問題がすべて取り入れられたというふうには私も考えておりません。しかし、相当程度の配慮がなされたものでありまして、ラウンドの交渉の成功、ひいては世界経済の発展及び自由貿易体制の維持強化によってもたらされる幅広い国民的な利益というもの、こういった観点からぎりぎりの決断として受け入れたものであったということ、これは議員皆さん方に理解をしていただくと同時に、私は国民皆様にもぜひとも御理解を賜りたいと願っておるところであります。(拍手)  米国の三〇一条やアンチダンピング法等の保護主義の動きへの対応ということでありますけれども、先般復活された三〇一条に基づく米政府の今後の対応ぶりですとか米国内の保護主義の動きにつきましては注意をしていく必要がありまして、また私どもは、米国の皆さんとお話しするときにも、率直にそのことは申し上げておるところであります。  しかし、いずれにしましても、円滑な日米経済関係の運営というものが世界経済の発展に課された両国の責務であるという観点から、米国政府に良識ある対応を期待するとともに、我が国としても冷静にこういった問題に対しても対処していくべきであろうというふうに考えております。  なお、一般論として申し上げますと、万一、一方的な制裁措置が発動された場合には、国際的なルールにのっとって解決を求めることになっていくであろうというふうに考えておるところであります。  なお、アジアにおける外交のフォーカスを合わせた政策の展開についての見解ということでありますけれども、御指摘がございましたように、近年、NIESあるいは中国、ASEAN諸国中心としまして、東アジア諸国というのは世界において最も目覚ましい経済成長というものを達成しております。このような事実というものを背景にいたしまして、アメリカですとかアジア諸国、豪州などを含みますアジア・太平洋地域の諸国が、その多様性ですとかあるいは相互補完性を生かしながら、さまざまな面で協力していこうという機運というものが高まっておるところでございまして、この問題につきましては、アメリカあるいはオセアニアの各国、そしてこの間のヨーロッパの国々、そういった国々の皆さん方もこういった問題について大変関心を持っております。  しかし、これらを本当に進めていくためには、やはりああいった国々はまだインフラ等を整備されていない面があります。こういった問題については、そういった関心を持つ国々とともに我々は協力をしていく必要があろう、それが本当の意味での発展につながっていくというふうに私は確信をいたしております。  それから、EUのERM、いわゆる為替メカニズムに準ずる緩やかな参考相場圏の創設が望ましいと考えるけれどもというお話がございました。  一九七三年に主要通貨が変動相場制に移行しましてから既に二十年が経過しております。この間、国際通貨制度のあり方につきましては、御指摘のような参考相場圏といったアイデアというものを含めまして、さまざまな国際会議の場でも議論が行われてきておるということであります。  ただ、一九八五年の十カ国の蔵相・中央銀行総裁会議の報告を初めといたしまして、現状では、各国間の自由な資本の移動のもとで変動相場制を前提としながら為替の安定というものを図るために、各国間で緊密に協力していくことが重要であるというのが、通貨当局間の共通な理解となっているというふうに考えております。  いずれにいたしましても、我が国といたしましては、為替相場というものは、それぞれの国の基本的なもの、いわゆるファンダメンタルズというものを反映して安定的に推移すべきであるというふうに考えておりまして、私どももG7の一員といたしまして、最近の為替相場の急激な変動につきましては、経済のファンダメンタルズから正当化し得ないという認識を有しておるところであります。  今後とも為替相場の動向というものに十分に注意して、各国と緊密な連絡をとりつつ適宜適切にやはり対処してまいりたいということ、これは大原委員はもう十分この点については御承知でありますけれども、うっかりしたことを申しますとまた為替にも大きな変動があります。ここでとどめさせていただきますけれども、よく御指摘のあったことは認識してまいりたいというふうに考えております。  なお、最後に、円高対策を初めとして税制や産業の構造転換等、政府のなすべき役割は多いという御指摘があったところでございます。  昨年来の急激な円高などを背景にいたしまして、コスト面の優位性などを求めまして、今後さらに製造業を中心に海外進出というものは進展していく可能性が大変大きいということは、私も認めざるを得ません。それが行き過ぎた場合には、国内製造業の空洞化が生じるのではないかという懸念があることは、十分私も認識をいたしております。このような懸念に対しまして、我が国としては、産業の活性化を促すことによりまして内需主導の国際調和型産業構造というものの形成を進めるとともに、雇用の確保というものを図っていくことが基本的に重要であるというふうに考えます。  さらに、二月に決定された総合経済対策におきましても、具体的には新規事業の創出、拡大、あるいは市場の効率化の規制緩和の推進ですとか、あるいは総合的な対策の推進、また新規産業の発展ですとか創造的な事業発展を促すための創造的研究開発の推進、あるいは独創的な人材の育成ですとか高度情報化に向けた環境の整備等の各般の施策というものを講ずることがあろうと思っております。  こういった総合的な政策というものをきちんと進めていくと同時に、世界経済というものの中では、日本に対して競争力のある産業の参入ということも実は各国も望んでおることであるわけでございまして、こういったところに道を開くということについても我々はやはり考えていく、これがまた雇用問題にも対応できる道であろうというふうに考えております。いずれにしましても、このボーダーレスな時代にあってどのように対応するのかということは、私たちは十分やはり考えていかなければならないことであろうと思っております。  いずれにしましても、御指摘がございましたように、私どももパワーゲームというものは、私はこれを是認するものではありません。いずれにいたしましても、もちろん民主主義ですから、数というものはこれは大事であります。しかし、パワーゲームにうつつを抜かしているということは許されるものではないということであります。(拍手)そして、我々少数政権というものは、大変運営が難しいことでありますけれども、しかし政策的には皆様方と一致する問題は幾らでも私はあろうと思っております。そういう意味で、御協力願うところは、私は率直に皆様方にお願い申し上げることはお願い申し上げていきたい。(拍手)  いずれにしましても、この日本の国のためでありますから、ともどもにこの国がうまく発展していきますように努めてまいることを、大原委員の最後の御指摘に対しまして申し上げまして、私の答弁といたします。ありがとうございました。(拍手)     —————————————
  15. 小坂憲次

    ○小坂憲次君 国務大臣演説に対する残余の質疑は延期し、明十三日午後一時から本会議を開きこれを継続されることを望みます。
  16. 鯨岡兵輔

    ○副議長(鯨岡兵輔君) 小坂憲次君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 鯨岡兵輔

    ○副議長(鯨岡兵輔君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。      ————◇—————
  18. 小坂憲次

    ○小坂憲次君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。  内閣提出国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。
  19. 鯨岡兵輔

    ○副議長(鯨岡兵輔君) 小坂憲次君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 鯨岡兵輔

    ○副議長(鯨岡兵輔君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。     —————————————  国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣提出
  21. 鯨岡兵輔

    ○副議長(鯨岡兵輔君) 国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  委員長の報告を求めます。文教委員長嶋崎譲君。     —————————————  国立学校設置法の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾に掲載〕     —————————————     〔嶋崎譲君登壇
  22. 嶋崎譲

    ○嶋崎譲君 長い答弁などもあって、お疲れさんでございましょうが、お勤めでございますので、あとしばらくの御辛抱をお願い申し上げます。(拍手)  ただいま議題となりました国立学校設置法の一部を改正する法律案につきまして、文教委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。  本案は、国立の大学における教育研究体制の整備及び充実を図るため、所要の改正を行おうとするもので、その主な内容は、  第一に、宇都宮大学の教養部を改組し国際学部を、岡山大学の教養部を改組し環境理工学部をそれぞれ設置すること、  第二に、新潟大学商業短期大学部、静岡大学工業短期大学部及び神戸大学医療技術短期大学部を廃止すること、  第三に、昭和四十八年度以後に設置された国立医科大学等に係る平成六年度の職員の定員を定めること などであります。  本案は、三月十一日、本院に提出され、四月五日本委員会に付託されたものであります。  本委員会におきましては、本日赤松文部大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑に入り、これを終了いたしました。  次いで、委員長より、本案の施行期日のうち「平成六年四月一日」を「公布の日」に改める旨の修正案が提出され、採決の結果、本案は全会一致をもって修正議決すべきものと決しました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  23. 鯨岡兵輔

    ○副議長(鯨岡兵輔君) 採決いたします。  本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 鯨岡兵輔

    ○副議長(鯨岡兵輔君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。      ————◇—————
  25. 鯨岡兵輔

    ○副議長(鯨岡兵輔君) 本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十四分散会