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1994-03-24 第129回国会 衆議院 大蔵委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成六年三月二十四日(木曜日)     午前十時四分開議 出席委員   委員長 宮地 正介君    理事 石原 伸晃君 理事 金子 一義君    理事 堀之内久男君 理事 村上誠一郎君    理事 日野 市朗君 理事 村井  仁君    理事 海江田万里君 理事 太田 昭宏君       新井 将敬君    大島 理森君       大原 一三君    太田 誠一君       岸田 文雄君    久野統一郎君       熊代 昭彦君    塩崎 恭久君       橘 康太郎君    福田 康夫君       保岡 興治君    山中 貞則君       秋葉 忠利君    中村 正男君       永井 哲男君    細谷 治通君       青木 宏之君    上田 清司君       栗本慎一郎君    山本 幸三君       田中  甲君    中田  宏君       中村 時広君    矢上 雅義君       斉藤 鉄夫君    竹内  譲君       谷口 隆義君    大矢 卓史君       北橋 健治君    佐々木陸海君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 藤井 裕久君  出席政府委員         大蔵政務次官  早川  勝君         大蔵大臣官房総         務審議官    田波 耕治君         大蔵省主計局次         長       竹島 一彦君         大蔵省主税局長 小川  是君         大蔵省関税局長 高橋 厚男君         大蔵省理財局長 石坂 匡身君         大蔵省証券局長 日高 壮平君         大蔵省銀行局長 寺村 信行君         国税庁長官官房         国税審議官   窪田 勝弘君         国税庁課税部長 若林 勝三君         国税庁徴収部長 吉川  勲君  委員外出席者         経済企画庁調査         局内国調査第一         課長      小峰 隆夫君         経済企画庁経済         研究所長    澤田五十六君         通商産業省生活         産業局文化用品         課長      上野  裕君         大蔵委員会調査         室長      中川 浩扶君     ――――――――――――― 委員異動 三月十四日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     金子 一義君   山下 元利君     熊代 昭彦君 同月二十四日  辞任         補欠選任   中田  宏君     矢上 雅義君   谷口 隆義君     竹内  譲君 同日  辞任         補欠選任   竹内  譲君     谷口 隆義君 同日  理事相沢英之君同月十四日委員辞任につき、そ  の補欠として金子一義君が理事に当選した。     ――――――――――――― 三月二十四日  平成六年分所得税特別減税実施等のための  公債発行特例に関する法律案内閣提出第  三号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  四号)  酒税法の一部を改正する法律案内閣提出第五  号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第六号)  平成六年分所得税特別減税のための臨時措置  法案内閣提出第七号)  関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出第二〇号) 同月一日  消費税率引き上げ反対食料品非課税実現に関  する請願吉井英勝紹介)(第一号)  消費税率引き上げ反対生活必需品の完全非課  税化課税最低限大幅引き上げに関する請願  (東中光雄紹介)(第二号)  所得税課税最低限を年収百五十六万円以上大  幅是正に関する請願佐々木陸海紹介)(第  三号)  消費税税率引き上げ反対不公平税制是正  に関する請願伊東秀子紹介)(第六六号)  同(岡崎トミ子紹介)(第六七号)  同(岡崎宏美紹介)(第八九号)  同(岡崎宏美紹介)(第一〇一号)  たばこ問題の厚生省への所管替え等に関する請  願外一件(原田憲紹介)(第八七号)  消費税率引き上げ反対不公平税制是正に関  する請願田中昭一紹介)(第八八号)  同(緒方克陽紹介)(第一〇二号)  同(大出俊紹介)(第一〇三号)  同(小森龍邦紹介)(第一〇四号)  同(嶋崎譲紹介)(第一〇五号)  同(野坂浩賢紹介)(第一〇六号)  同(前島秀行紹介)(第一〇七号)  同(大木正吾紹介)(第一二五号)  同(中西績介紹介)(第一二六号)  同(鉢呂吉雄紹介)(第一二七号)  共済年金の改善に関する請願唐沢俊二郎君紹  介)(第一〇〇号)  消費税率引き上げ反対食料品非課税実施に関  する請願岩佐恵美紹介)(第一四五号)  同(穀田恵二紹介)(第一四六号)  同(佐々木陸海紹介)(第一四七号)  同(志位和夫紹介)(第一四八号)  同(寺前巖紹介)(第一四九号)  同(中島武敏紹介)(第一五〇号)  同(東中光雄紹介)(第一五一号)  同(不破哲三紹介)(第一五二号)  同(藤田スミ紹介)(第一五三号)  同(古堅実吉紹介)(第一五四号)  同(正森成二君紹介)(第一五五号)  同(松本善明紹介)(第一五六号)  同(矢島恒夫紹介)(第一五七号)  同(山原健二郎紹介)(第一五八号)  同(吉井英勝紹介)(第一五九号) 同月八日  消費税率引き上げ反対等に関する請願岩佐恵  美君紹介)(第二〇四号)  同(穀田恵二紹介)(第二〇五号)  同(佐々木陸海紹介)(第二〇六号)  同(志位和夫紹介)(第二〇七号)  同(寺前巖紹介)(第二〇八号)  同(中島武敏紹介)(第二〇九号)  同(東中光雄紹介)(第二一〇号)  同(不破哲三紹介)(第二一一号)  同(藤田スミ紹介)(第二一二号)  同(古堅実吉紹介)(第二一三号)  同(正森成二君紹介)(第二一四号)  同(松本善明紹介)(第二一五号)  同(矢島恒夫紹介)(第二一六号)  同(山原健二郎紹介)(第二一七号)  同(吉井英勝紹介)(第二一八号)  同(穀田恵二紹介)(第二六一号)  同(佐々木陸海紹介)(第二六二号)  同(東中光雄紹介)(第二六三号)  同(藤田スミ紹介)(第二六四号)  同(正森成二君紹介)(第二六五号)  同(矢島恒夫紹介)(第二六六号)  同(吉井英勝紹介)(第二六七号)  消費税率引き上げ反対不公平税制是正に関  する請願五島正規紹介)(第二一九号)  同(田邊誠紹介)(第三〇二号)  同(細川律夫紹介)(第三〇三号) 同月十五日  鉄道共済年金見直しに関する請願伊東秀子  君紹介)(第三六二号)  同(池端清一紹介)(第三六三号)  同(田中昭一紹介)(第三六四号)  同(土肥隆一紹介)(第三六五号)  同(鉢呂吉雄紹介)(第三六六号)  同(伊東秀子紹介)(第三七九号)  同(池端清一紹介)(第三八〇号)  同(田中昭一紹介)(第三八一号)  同(鉢呂吉雄紹介)(第三八二号)  同(池端清一紹介)(第四三八号)  同(田中昭一紹介)(第四三九号)  同(田中昭一紹介)(第四九〇号) 同月二十四日  消費税率引き上げの際の年金受給者に対する特  別措置に関する請願石橋大吉紹介)(第五  〇九号)  消費税税率引き上げ反対不公平税制の是  正に関する請願渡辺嘉藏紹介)(第五一〇  号)  消費税率引き上げ反対不公平税制是正に関  する請願渡辺嘉藏紹介)(第五一一号)  同(加藤万吉紹介)(第六〇九号)  鉄道共済年金見直しに関する請願田中昭一  君紹介)(第五一二号)  同(田中昭一紹介)(第五四三号)  同(前島秀行紹介)(第五四四号)  同(田中昭一紹介)(第五六三号)  同(加藤万吉紹介)(第六一〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月二十八日  大型所得減税早期実施に関する陳情書  (  第一四号)  消費税率引き上げ反対に関する陳情書外五件  (第一五号)  大幅なたばこ増税実施に関する陳情書  (第  一六号)  土地税制見直し等に関する陳情書  (第一七号)  固定資産税評価替えに伴う登録免許税の取り  扱いに関する陳情書  (第一八  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  四号)  関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出第二〇号)  平成六年分所得税特別減税実施等のための  公債発行特例に関する法律案内閣提出第  三号)  酒税法の一部を改正する法律案内閣提出第五  号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第六号)  平成六年分所得税特別減税のための臨時措置  法案内閣提出第七号)      ――――◇―――――
  2. 宮地正介

    宮地委員長 これより会議を開きます。  この際、御報告いたします。  長らく本委員会委員として御活躍されていた山下元利君が、去る十四日、逝去されました。まことに哀悼痛惜の念にたえません。  ここに、委員各位とともに故山下元利君の御冥福を祈り、謹んで黙祷をささげたいと存じます。  御起立をお願いいたします、——黙祷。     〔総員起立黙祷
  3. 宮地正介

    宮地委員長 黙祷を終わります。御着席願います。      ————◇—————
  4. 宮地正介

    宮地委員長 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 宮地正介

    宮地委員長 御異議なしと認めます。よって、金子一義君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  6. 宮地正介

    宮地委員長 本日付託になりました内閣提出相続税法の一部を改正する法律案及び関税定率法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。藤井大蔵大臣。     —————————————  相続税法の一部を改正する法律案  関税定率法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  7. 藤井裕久

    藤井国務大臣 ただいま議題となりました相続税法の一部を改正する法律案及び関税定率法等の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  まず、相続税法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  政府は、最近における相続税負担状況に顧み、その負担の軽減を図るため、本法律案提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  まず、相続税税率について、その税率区分の幅を拡大するとともに、税率の刻みの数を減らすことにより累進構造緩和を図ることといたしております。  また、相続税遺産に係る基礎控除について、その定額の控除額現行の四千八百万円から五千万円に、法定相続人一人当たり控除額現行の九百五十万円から一千万円に、それぞれ引き上げることといたしております。  その他、配偶者相続すれば課税されない遺産額最低保障額について、現行の八千万円から一億六千万円に引き上げる等の措置を講ずることとしております。  次に、関税定率法等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  政府は、最近における内外経済情勢変化に対応し、我が国の市場の一層の開放を図る等の見地から、関税率減免税還付制度等について所要改正を行うこととし、本法律案提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして、御説明申し上げます。  第一は、関税率等改正であります。  粗糖、一部の自動車用部品等関税率の撤廃または引き下げを行うとともに、平成五年度末に期限の到来する牛肉の関税緊急調整措置について、その適用期限延長等を行うこととしております。また、平成六年三月末に適用期限の到来する暫定関税率適用期限を延長する等所要改正を行うこととしております。  第二は、減免税還付制度改正であります。  加工再輸入減税制度について対象品目拡大等を行うとともに、平成六年三月末に適用期限の到来する石油関係免税還付制度について、その適用期限を延長する等所要改正を行うこととしております。  その他、規制緩和の一環として、昨年九月の緊急経済対策決定に基づき、保税上屋及び保税倉庫を統合して保税蔵置場とするため所要改正を行うこととしております。  以上が、相続税法の一部を改正する法律案及び関税定率法等の一部を改正する法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  8. 宮地正介

    宮地委員長 これにて趣旨説明は終わりました。
  9. 宮地正介

    宮地委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石原伸晃君。
  10. 石原伸晃

    石原(伸)委員 大臣趣旨説明を聞かせていただきまして、関税定率法等の一部を改正する法律案並び相続税法の一部を改正する法律案、御趣旨理解をさせていただいたところでございます。  それではまず、純粋に、この委員会でこれまでも日切れ法案として扱ってまいりました関税定率法等の一部を改正する法律案について、二、三質問をさせていただきたいと思います。  趣旨説明を聞かせていただきます限り、昨年九月の緊急経済対策で検討を約束しておりました関税率見直し粗糖あるいは自動車部品、これらが含まれておりますし、また、減免税還付制度対象品目見直し等が今回の関税定率法等の一部を改正する法律案の骨子ではないかと推察をしているところでございます。  そこでまず、関税局長で結構でございますが御質問をさせていただきたいのでございますが、粗糖、いわゆるお砂糖でございます。これをキロ当たり四十一・五円から二十円と大幅に関税率引き下げになる。なぜ今という時期にこのお砂糖というものを下げるのか。そして、この改正趣旨、並びに国内生産農家あるいは生産者、あるいはまたこれによって内外価格差がどのようになるか、影響について御答弁を願いたいと思います。
  11. 高橋厚男

    高橋(厚)政府委員 お答え申し上げます。  粗糖につきましては、輸入粗糖関税のほかに調整金を課しまして、それによりまして輸入糖国内産糖価格調整を行ういわゆる糖価安定制度という仕組みがございます。その仕組みによりまして国内のサトウキビやてん菜糖農家保護を行っているところでございます。  関税につきましても、今御指摘ございましたようにキログラム四十一円五十銭、従価税に換算いたしますと約一四〇%という高い関税となっているわけでございます。  近年、砂糖還元ブドウ糖でありますソルビトールというものを混入いたしまして、これを十数%混入いたしますと加糖調製品というものになるわけでございまして、これは関税率は三〇%でございます。粗糖に比べて大幅に低い水準であるわけでございまして、そのためにこの加糖調製品輸入が近年急増をいたしてきております。  こういう状態が続きますと、この加糖調製品砂糖需要を侵食いたしまして、砂糖との代替が進んでまいりますと、砂糖需要減少によりまして将来的には精製糖企業の存続、ひいては先ほど申し上げました糖価安定制度の維持に重大な支障を来しかねないという状況になってきているわけでございます。  こうした状況を踏まえまして、砂糖加糖調製品に対する価格競争力の回復を図りますとともに、原料コスト低減によります食品産業体質強化、あるいは食品内外価格差是正に資するために、粗糖関税現行の四十一円五十銭からキログラム二十円へ大幅に引き下げることとしたところでございます。  今回の関税引き下げによりまして、砂糖国内価格キログラム当たり約十五円低下をいたすことになります。このことは、ただいま申し上げましたように、基本的には消費者の利益につながるものであるというふうに考えますが、一方、先ほど申し上げました糖価安定制度仕組みがございますので、国内甘味資源農家等に対する保護水準には変化がないものと理解をいたしておるところでございます。
  12. 石原伸晃

    石原(伸)委員 理解させていただいたところでございます。  この法律案とはちょっと別件でございますけれども、この秋にはガットウルグアイ・ラウンドをめぐりまして関税率等改正実施が見込まれると思うのでございますけれども、実施に向けて大蔵省として、これは大変大きな問題で、今回の関税定率法の一部を改正する法律案に比べて、まあ比べたらいけないのかもしれませんが、大蔵省にとりましても大変大きな作業になってまいります。また国益にも非常に大きく作用してくる問題だと思うのでございますが、この問題について大蔵省としてどのように取り組まれているのか、そしてまた実施時期をどの程度に見込んでおられるのか、大臣、御答弁を願いたいと思います。
  13. 藤井裕久

    藤井国務大臣 御指摘のように、ウルグアイ・ラウンドの発効の問題だろうと思います。  昨年の十二月十五日に実質合意ができましたときには、一九九五年、来年でございましょうか、七月一日をめどとするということにほぼ合意ができていたわけでございますが、その後、関係各国の間で、それを一月一日にしたらいいではないかという意見が多く出てきていることはもう御承知のとおりでございます。実際にこれをどうするかは、本年の四月に署名のための閣僚会議というものが行われると存じますが、その後に関係閣僚が集まり、実際の決定をしていくと存じます。  同時に石原委員指摘の、大変大きな国内問題だろうと思いますが、純粋に大蔵省の技術的なことで申し上げても、関税率の問題あるいは特殊の関税制度仕組み国内的にどう仕組んでいくかという問題等々、法令改正は大変多くわたると思います。この問題につきましても鋭意検討して、その実施時期がどうなるにせよ間に合わせるようにしなければならない、こういう気持ちで取り組んでおります。
  14. 石原伸晃

    石原(伸)委員 ガットウルグアイ・ラウンドの問題につきましては、昨今のこの米不足問題等、きょうは大蔵委員会でございますから農林省の方に来ていただいておりませんけれども、密接に絡んでまいりますし、関税率問題等につきましては十分に議論をさせていただきたい。今回は日切れ法案という扱いで非常に審議時間が短くなっておりますけれども、この問題については、非常に大切な問題でありますので当委員会でも十分に御配慮をいただきたい、こういうふうに考えているところでございます。  関税定率法等の一部を改正する法律案につきましては、自民党といたしましても賛成の立場でございますのでこのぐらいにさせていただきまして、次の問題に移らせていただきたいと考えております。  先ほども私申しましたように、この関税定率法等の一部を改正する法律案あるいは租税特別措置法、これはいわゆる純粋日切れという扱いでこれまで当委員会でも、予算委員会が行われた後夜なべをして、私の経験でも多いときは週に三回でございますか、大臣委員長でいらっしゃったころそのような審議をして、本当に粛々と与野党が一体となって審議をしてきた。  これまでのそんな慣例を打ち破るかのように、今回はこの関税定率法等の一部を改正する法律案相続税法の一部を改正する法律案が同時にきょう審議されることになって、実は内輪話をさせていただくと、昨日きょうの委員会が決まって、質問もゆうべ慌ててっくった、こんな現状でございます。  本来ならば、これは大変重大な改革でございまして、昭和六十三年以来の大改革でございますので、私がたった一人質問をして通すような法律案ではないと思います。ましてや与党の日野先生、社会党の政審会長であられる方、そうそうたるメンバーがいる中でどなたも質問しない。大ベテランである山中先生も控えているのに、私ごとき者がたった一人質問をする、これは非常に大きな問題じゃないか。  審議が始まってしまって問題だと言うのは非常に恐縮なんでございますけれども、私は、これは決して日切れ法案だとは思いませんし、ましてや異常な事態は、租税特別措置法が当委員会に付託されていないわけであります。しかし、相続税法では非常に重要な部分がこの租税特別措置法の中にある。六十九条の三、多々ございます。こういうものを考え合わせたとき、今回は非常に異常な事態だと思うのですが、なぜこのようになってしまったのか、政府を構成される主要大臣であります大蔵大臣から一言お話を聞かせていただいてから、個々の問題に入らせていただきたいと思います。
  15. 藤井裕久

    藤井国務大臣 大蔵省関係でございますから、相続税法日切れかどうかというお話で申し上げたいと思いますが、御指摘の意味はよくわかります。  ただ、今回の相続税一連改正というものが、現下の、相続税地価高騰等のため非常に異常な状況になっているという中で、相続税法租税特別措置法に分けて各種の施策を講じているわけでございまして、御指摘いただきましたように、租税特別措置法日切れであり、その中に実は小規模宅地あるいは小規模事業財産についての特例措置を入れているわけでございます。同時に、相続税法の方には、御指摘のとおり基本的な相続税改正が入っているのも事実でございます。  しかしながら、これをやはり一体的に何とか処理をしていただけないかということで政府としてお願いしておりました趣旨は、この一連相続税の問題が一体的なものであるということに加えまして、これは一月一日から適用することを予定しているわけでございます。既に相続案件も現実には発生しているわけでございまして、遺産分割等の問題もいろいろ出てきているやに聞いております。  遺産分割というのは、これまた御承知と思いますが、一回決めてしまうと変更ができないというようなこともございまして、既に相続の発生した方々のことなども考えまして、この相続税法日切れに準ずるものとしてお願いをしている次第でございますので、御理解をいただければありがたいと思います。
  16. 石原伸晃

    石原(伸)委員 御趣旨はまさに、私もこの問題、議員にさせていただいた年から四年間取り組ませていただいてきた問題でございますので非常によくわかるのですが、法律論とは離れて大臣政治家として御答弁をいただきたいのは、今おっしゃられたように、本来なら租税特別措置審議が終わって相続税法審議をすれば矛盾は発生しないのです。私も先ほどちょっと委員部の方に聞かせていただいたら、本則と附則という形でこういう審議はあるけれども、片一方が大蔵委員会におりてきてないわけであります。  大臣承知のように、この十二時からの本会議趣旨説明を行う。こういう極めて異常な事態を迎えてのこの審議、こういうものに至った理由政治家としてこの委員会で御説明願わなければ、私としても、御趣旨はよくわかりますけれども、はいそうですかと、こういうあしき慣例を残すような今回の事態。  大臣大蔵政務次官あるいは委員長として当委員会歳入委員会としての権威、この権威あるいは伝統というものは与野党が一丸となって築き上げてきたものでございます。この伝統に傷をつけかねない今回の事態でございますので、政治家藤井大蔵大臣として、今回の事態に至った御説明なりをもう少しお話しいただきたいと思います。
  17. 藤井裕久

    藤井国務大臣 いろいろ院の各党の御協議の上このようになっておりますもので、私として、院の問題について触れるのは避けさせていただきたいと思います。  ただ、その根っこに、石原委員のお気持ちの中におありだと思いますが、平成六年度本予算が越年編成をした、そして三月の四日に提出させていただいた等々のお気持ちがあられるのではないかと思います。  私は、この越年編成問題につきましても、過般の国会でも申しておるのでございますが、普通の姿としては越年でない方がいいのはもう明らかだと思います。思いますが、年度末になって三次補正を組むというやり方が、景気のある側面において、特に今回のような不況の側面においては意味を持っているということも過去にあったわけでございますので、そういう例も勘案してああいう決定になったわけでありますし、さらに大きな政治的な問題もあったのはもう御指摘のとおりであります。  大蔵委員会でもございますのでそこには触れませんけれども、私ども経済運営の立場から申しますと、ノーマルな姿ではないけれども、三次補正を年度末に組むというやり方は景気対策の一つの手法として過去にも例があり、私は、それなりの効果がある、この六年度予算とあわせて経済対策上の効果があるという気持ちでやらせていただいているという点を御説明申し上げたいと思います。
  18. 石原伸晃

    石原(伸)委員 大臣が私にかわって私の心中を吐露していただいたような気もいたしますし、また、政治的問題という極めて政治的発言で、これが何を指すかというのはここにお集まりの委員の方は御承知だと思いますが、いわゆる予算を三月四日に提出しておきながら予算委員会が開かれない、この問題を指してのことだと思います。  そして、その主因は何かということは、昨今の新聞報道等を見れば明らかなとおりでございます。いわゆる細川総理の佐川急便からの一億円の借入問題、これをめぐって委員会を起こそうという姿勢が見られないために、言葉をかえるならば、隠された真実を明らかにしようとしない、疑われても仕方がない。厳しい言葉でございますけれども、総理の政治姿勢によって予算委員会が正常化しないために、その割を食って伝統あるこの大蔵委員会も今回のようなノーマルでない姿で審議をすることになってしまったのではないかと私は考えております。  多くの同僚の委員の方も御賛同をいただけると思いますけれども、それでは、なぜ細川総理がこのような——予算というものが非常に大切で、その予算を通すことが政権党あるいは政権者にとって一番重要なことである。それなのに何の回答も出してこない。  予算委員会の方では、山口委員長のもと、百四条、こういう国会法のもとで資料請求を行いましたけれども、委員長がみずから持ち出しておいて、あの補正予算を通した。しかし結果としてはゼロ回答である。こういう状態について、大臣、非常に聞きづらいのでございますけれども、御所見がございましたらお話を聞かせていただきたいと思います。
  19. 藤井裕久

    藤井国務大臣 この問題は、さっき院の問題と申し上げましたが、まず予算委員会において連日御議論をいただいているところでございます。また、細川総理のお気持ちというか、それもいろいろ御発言があるとおりでございまして、私、大蔵大臣の立場でこの委員会で発言することは差し控えさせていただきたいと思います。
  20. 石原伸晃

    石原(伸)委員 それでは、一般論でこの話をもう少しさせていただきたいと思うのですが、国税庁の方に来ていただいておりますけれども、細川総理が提出されたと言われる、いわゆる一千万円の領収書というものがございます。私もこちらに領収書のコピーなるもののコピーを持っております。  私が改めて言うまでもありませんけれども、発行人の住所、氏名が書かれていませんし、印も押していない。収入印紙ももちろん張られていない。借入金ですから収入印紙は張らなくてもいいという説明もございますが。あるいは「受取書」とありますが、これは何を意味するのかも不明確である。  こういう領収書というものが、一般論で結構でございますけれども、確定申告の際通用するものなのか。お話を聞かせていただきたいと思います。
  21. 若林勝三

    ○若林政府委員 お答えいたします。  まず、個別にわたる事柄につきましては具体的に答弁することを差し控えさせていただいております。どうぞ御理解いただきたいと思うわけでございます。  一般論で申し上げますと、国税当局が所得を認定する場合に、必ずしも何か書類があるとかまたないとか、そういったことのみによって判断いたしておるわけではございません。個別のケースにおきましていろいろ事情を総合的に検討させていただく。最終的には実質的に判断をさせていただいておるところでございます。
  22. 石原伸晃

    石原(伸)委員 それは、先ほど政府委員の方が来てこういうふうに答えると言った答えと一緒で、私は質問を実は変えさせていただいて、一般論としてこういうような形の領収書が確定申告で通用するかしないかという質問をさせていただいておりますので、ちょっと趣旨が違うと思います。私は、所得ということでの質問ではなくて、こういう領収書がまかり通るか通らないかという一般論の質問をさせていただいております。
  23. 若林勝三

    ○若林政府委員 何らかの書類についてそれがどういう意味を持つかということでございましょうが、国税当局の立場といたしましては、あくまで所得の認定をする場合というのが主たる関心事でございます。  そういう意味におきまして、そういう認定に当たりましてある資料があるかないかということだけではなくて、いろいろなことを総合的に判断する、そして実質的に考えるということでございますので、ある書類が一定の要件を満たす、満たさないという問題とは違った次元で実質判断を最終的に我々はしているということでございます。
  24. 石原伸晃

    石原(伸)委員 一般論として聞いているのであります。総合的に国税当局が判断されるのはそれは当然でございますが、こういうものが通るのか通らないのか。確定申告で一般の方が、言葉をかえるならば、例えば私がこういう領収書をつくって青色申告をしたら、それを国税当局はどうとられるのかという一般論を聞いているのでございます。
  25. 若林勝三

    ○若林政府委員 たびたび同じような答弁で恐縮でございますけれども、納税者の方から何らかの書類が提出された場合には、その書類がどういうものであろうとも、我々としては一つの重要な判断材料として所得の認定の際に参考にさせていただく、こういうことでございます。
  26. 石原伸晃

    石原(伸)委員 それでは、若林さんは大蔵省のエリートでございます。その方から見て、こういうものが社会通念上通用するのか通用しないのか、御答弁願いたいと思います。
  27. 若林勝三

    ○若林政府委員 私、個人的にどうこうという問題ではなく、あくまで国税当局の立場として御答弁させていただいておるわけでございまして、具体的にこの問題について個別にどうだということについては、先ほど申し上げましたように答弁は差し控えさせていただきたいと思っておりますので、その点を御理解賜りたいと思います。
  28. 石原伸晃

    石原(伸)委員 私は別に国税庁を責めているわけではなくて、これが一般論として本当にどういう意味を持つのかという話をさせていただいておりますので。まあ若林さんの気持ちもわからぬではないです。  きょうの日本経済新聞、読まれた方がいるかと思いますけれども、一面にこんな記事が出ておりました。  井原西鶴の「日本永代蔵」の中の、水間寺観音というのですか、大阪の貝塚にある。ここは、お金を観音様から借りるときは、翌年になったら倍にして返すから何の証文もとらない。それの話と細川さんの話はよく似ているというような記事で、読まれた古いらっしゃると思いますけれども、ちょっと読ませていただきますと、   細川首相が衆院予算委員会提出した「領収  証」のコピーを見た。国会を空転させた元凶で  ある。佐川急便から八二年に借りた一億円のう  ち一千万円を、九〇年一月三十一日付で返済し  た物証だという。あぜんとした。入金は「細川  護煕様」とペン書きされているが、受取人の名  がどこを探しても書いていない。   接待先で白紙の領収証をもらう社用族だっ  て、もう少しましなのを用意する。確定申告に  苦しんだ人なら、百も承知のことだろう。こん  な領収証を税務署に出したら、すぐに突っ返さ  れる。おまけに通し番号もなければ、印紙も  はっていない。 云々。  首相自ら「献金でなく借金」と断言しているの  だから。 こんな記事が載っているのですね。そしてまた、   野党ならずとも、水間寺の観音だって怒る。  これでは市販の領収証でつじつまを合わせた、  と疑われてもしかたがない。首相側近は、よほ  ど経理に暗い人しかいないとみえる。首相は資  料提出を「これっきり」と突っぱねる気らしい  が、もともと「証文なし」だったのではない  か。 ここまで一国の総理の行為が愚弄されている、おもしろおかしく書かれている。  これによって当大蔵委員会権威も失墜して、この大変大切な相続税法審議並びに関税定率法の一部を改正する法律案審議が、幾ら公党間の決め事とはいえ、それこそこれまで培ってきた伝統を無にするような形で今審議が行われていることを私は非常に遺憾に思いますし、残念でなりません。大蔵大臣、御所見をお聞かせ願いたいと思います。
  29. 藤井裕久

    藤井国務大臣 領収書などの個別の問題については、国税当局がお答えしたとおりであります。  また、そのほかの問題につきましては、先ほど申し上げましたように予算委員会が中心になって御協議いただいておりますし、また総理自身もいろいろな立場を表明しておられますもので、私としては答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  30. 石原伸晃

    石原(伸)委員 お立場、非常によくわかるのですが、それでは私からのお願いでございます。  予算を預かる大蔵大臣として、予算委員会審議が正常化しない元凶は細川総理のこの一千万円の領収書並びにこの一億円の借入金問題にある、このようにやゆされている現状、並びにこの委員会でこれまで培ってきた伝統が一夜にして崩れ去ったこの現実、こういうものを、閣内を構成する、しかも主要大臣としての大蔵大臣からぜひとも総理に申し述べていただきたい、こういう要請をさせていただきたいと思います。いかがでしょうか。
  31. 藤井裕久

    藤井国務大臣 たびたび繰り返しますけれども、予算委員会で大変真剣な御論議がある段階でございますので、私、それについての答弁は差し控えさせていただきますし、また、今おっしゃったような問題の所在については、総理はよく事態は御承知であると考えております。
  32. 石原伸晃

    石原(伸)委員 きょうこのようにして異常な形で大蔵委員会が開かれ、しかもこの重要法案で野党の私だけしか質問できない、また与党の方も質問ができないような事態になったということもあわせてぜひともお伝え願いたい、重ねて御要望を申し上げる次第でございます。  この問題、このぐらいにさせていただきまして、この法案審議に移らせていただきたいと思うのですけれども、もう一言付言させていただくならば、国税当局が、この領収書は、もちろんこんなものじゃ通りませんと言えるわけはないのですね。言ったら大変なことになりますし、これでも通りますと言ったら、確定申告、来年のときにこういう領収書が横行してしまう。そういう重要な意味を持つ今回のこの佐川の一億円貸し付け疑獄であるという御認識を持っていただきたい。これを最後に申し添えさせていただきたいと思います。  それでは、実質的な法案内容につきまして論議をさせていただきたいと思います。  相続税法の一部を改正する法律案、私、拝見させていただいて、個人的にもかなりいいできばえであるとは思っておりますけれども、やはり中には疑問を感じる箇所が多々ございます。そして、相続税というものは一体どういう意味を持つのか、こういう哲学的な話も、この抜本改革に当たりましては議論をさせていただきたい、こんなふうに考えております。  その前に、もう一度大臣、この相続税法案と、租税特別措置法案が本委員会に付託されない状態でこういう審議になった事実を、私は異常と考えますが、大臣はどう考えられるか。異常か異常じゃないかで結構でございますので、一言御答弁をいただきたいと思います。
  33. 藤井裕久

    藤井国務大臣 本来あるべき姿からいえば、ノーマルな形ではないと思っております。
  34. 石原伸晃

    石原(伸)委員 さすがに大蔵委員長も務められ、私はそのとき与党の理事としてお仕えいたしました関係で、ノーマルでないという言葉ですけれども、はっきりと大臣の口からこの異常事態について御指摘があったことを私は評価をさせていただきたいと思います。  それでは、これは主税局長でも結構でございます。相続税の目的について、哲学的な話でございますけれども、経緯並びにこれまでの動向等を踏まえて、簡単に御説明願えますでしょうか。
  35. 藤井裕久

    藤井国務大臣 補足することがあれば主税局長から答えさせますが、私は、一言で言うと、相続税というのは、少し青い言葉ですが、社会的正義を実現する税制であると考えております。すなわち、富の偏在というものに対して、余りにその偏在することが社会のあり方からいっても望ましくない、したがって、相続原因が発生したときそれなりの是正をするということで、私は大きな意味を持っていると思います。  もちろん税収という観点がないとは言えませんが、税収以上にそういう意味が大きいというふうに考えておりますし、日本も明治時代からある制度でありますし、世界の各国はいずれもこの制度をそういう観点から取り込んでいると考えております。
  36. 小川是

    ○小川(是)政府委員 基本的な考え方、大臣から申し上げたとおりでございますが、例えば、昨年この改正を議論いたしました税制調査会におきましては、相続税というのは我が国で資産課税の中核をなしている、これは生涯を通じて獲得したフローとしての所得の積み重ねである資産に、死亡時点で清算課税を行うものだというふうにとらえることができるということを一点言っております。これは、いわば亡くなった方の立場から考えた場合の相続税の意義であろうと存じます。  もう一点は、今この答申で言われておりますのは、同時に、富の過度の集中を排除する上で重要な機能を果たしている。これは、いわば受け取った側、どなたが相続されるかによると存じますけれども、受け取った側の問題であろうかと思います。  どちらにも共通しておりますのは、こうした資産に対して課税をしようという考え方の背後には、こうした資産が所得を生むということが一般的に考えられる。だから、富の集中に対してある程度この偏在を排除するようなことが必要ではなかろうか。それが所得税とあわせて相続税を持っている理由ではなかろうかと考えているわけでございます。
  37. 石原伸晃

    石原(伸)委員 私も大体同等な考えを持っております。大臣答弁がありましたように、これは明治三十八年に、ロシアとの日露戦争のときですね、戦費調達として導入され、富の集中を抑制し資産の再配分機能を尽くしてきた、これまではこういうふうになってきた。  しかし、なぜここで相続税の法律の一部改正案が出てきたかというと、東京あるいは地方の大都市で相続税が払えないために町を出ていかなければならない。これは大都市圏の地価の異常な高騰、そういう大きな原因があるのかもしれませんけれども、この税制自体がそれに耐え得るものでなくなってしまった、そんなところで実はこの改正案が出てきたものと私も理解しているところでございます。  そこで、私も資料を持っておるのですけれども、相続税の国税に占める割合について、主税局長、今大体どのぐらいになっているのか、そしてこの水準をどう見ておられるのか。また、この税制改正によって、平年度ベースで結構でございますけれども、どの程度の減税になって、国税に占める収入の割合がどの程度小さくなるのか。数値がございましたら新しいデータをお教え願いたいと思います。
  38. 小川是

    ○小川(是)政府委員 まず、平成六年度の相続税の税収の見積もりは二兆七千五百億となっております。これはただいま御提案しております改正後の見積もりでございます。改正による減収額は初年度で千七百二十億、平年度で三千二百二十億というふうに見積もっております。  そこで、この相続税収が国税収入に占めるウエートでございますが、平成六年度の場合には国税収入の見積もりが五十六兆六千五百十億円、これは減税を織り込んだ後の見積もりでございます。このため、税収に占めるウエートは四・九%というふうになっているわけでございます。  最近の動向を見ますと、昭和六十年代から最近まで、大体税収に占めるウエートは三%台から四%台というふうに推移をいたしてきております。本年は減税が大きく行われていることから分母が小さくなっている、そのため税収に占めるウエートも高くなっているということもございますので、単年度ごとでどの程度のウエートを占めているかということをとらえてみてもいかがかと思いますが、全体としては三%ないし四%程度、こういった水準に今日まで来ているところでございます。
  39. 石原伸晃

    石原(伸)委員 四・九%というお話でございましたけれども、この三千二百二十億円の減税がない場合は、単純に計算して五%を超えてしまう事態になったと推測されますけれども、いかがでしょうか。
  40. 小川是

    ○小川(是)政府委員 二つの要因がございます。  一つは、平成六年度の相続税収の見積もりの二兆七千五百億円と申しますのは、初年度の減収額である千七百二十億円を引いた残りがこうだというところでございます。したがいまして、平年度になりますと、この実態の伸びを別にいたしますと、二兆七千五百億よりは相続税収は小さいということになるわけでございます。  それからもう一つは、分母の方の国税収入全般は、五十六兆六千億は三兆八千億の所得税の減税後の姿でございますから、もしそれがなかったならばという形で分母が大きくなるわけでございますから、四・九というのは実態としてはかなり低いウエートに変わるはずである、こういうことでございます。
  41. 石原伸晃

    石原(伸)委員 ちょっと誤解しておりまして、よくわかりました。  大体四%、三%で推移しているというのは、私も表を持っておりますが、見ますと、いわゆるバブルが始まりました昭和六十年代、六十一年、六十二年ぐらいは三%台で推移してきておりますけれども、地価のピークと言われた平成二年あるいは平成三年、このぐらいから四%になり、今では四・九%になってしまった。古い数字を見ますと、昭和三十年代、これは大体一%に満たない数字で、四十年代に一%台になる。徐々に増加してきていると思うのですけれども、その主な理由にはどんなものが挙げられるでしょうか。
  42. 小川是

    ○小川(是)政府委員 相続税につきましては、近年だけでも昭和六十三年、平成四年度と減税、負担の調整を行ってまいったわけでございます。にもかかわらず、古い時点に比べると国税収入に占めるウエートがかなり高いという点につきましては、それだけ相続税の課税対象となる財産価額が大きいということでございます。何よりも大きいのは、我が国のお亡くなりになる方々の持っておられる資産、バブル期における土地の高騰もございましたでしょう、その他の有価証券もございましたでしょう。しかし、一番大きいのは土地の資産価額の上昇であると存じます。  そういう意味におきましては、この相続税の税構造が我が国のそれまでの経済社会のあり方と比べてうまく合っていなかったという問題ではなしに、逆に土地が経済とのバランス上、非常に大きくなっている、資産価値を上げているというのがこの税収入に占めるウエートを高めている最大の要因である、このように考えているわけでございます。
  43. 石原伸晃

    石原(伸)委員 私も同意見でございますし、その資産に占める土地の割合というものが、一説には全国平均で七割程度と言われておりますけれども、事大都会に至っては、これが九割、九割五分。そういうところに、相続税が払い切れない、あるいは物納がふえていくという問題があると思うのですけれども、そこの点についてはいかがでございますか。
  44. 小川是

    ○小川(是)政府委員 御指摘の点は、まことにそのとおりであろうかと存じます。したがいまして、近年における相続税の軽減、負担調整の取り組み方というのは、もとより税率構造あるいは課税最低限見直しもございますけれども、小規模宅地の評価軽減というところに大きなウエートを占めてきているというのも、まさにそういった問題意識に基づくものであると考えております。
  45. 石原伸晃

    石原(伸)委員 局長のおっしゃるとおりでございますし、また話をちょっと前に戻しますけれども、この国税に占める割合の外国との比較、これも大蔵省の方からいただいた資料で私も持っておるのでございます。  この外国との比較を見ますと、先ほどのお話ではございませんけれども、日本が三%、四%で推移しているということでございます。税目が違いますので、単純比較がちょっとできないのかもしれませんけれども、アメリカの一・七%あるいはイギリスの〇・八%、ドイツの〇・五%、フランスの二%、イタリアの〇・二%等と国際比較しましても、ちょっと全体的に突出している。  そして、その原因については、局長の御答弁の中で、その重立った原因は現在の地価高騰にあるということですけれども、そうはいってもこの国際比較はちょっとずば抜けているのではないか。そして、相続税の持つ意味、資産の再配分機能という、物事の限度をちょっと超えているのではないかという印象を持つ方もいると思うのでございますが、局長、その点についてはいかがでございましょう。
  46. 小川是

    ○小川(是)政府委員 ただいまの各国の税収に占める相続税のウエートを比較すると、かなり日本が高くなっているというのはそのとおりであると存じます。  こういった場合に二つ要因があると思います。他の税収の規模が各国と比較したときにどうなっているかという反作用という面もございますが、相続税収については、我が国の課税対象が大きいという要因が断然大きなウエートを占めているというふうに考えております。  こうなっている要因は、主として、先ほど申し上げました課税対象資産、土地価額の高騰であるというふうに考えますのは、例えば課税件数割合、お亡くなりになった方のうち、どれくらいの方が課税対象になっているかというところからいたしますと、我が国の場合、そうひどく上がっているというわけではございません。  そういう意味からいたしますと、最近十年ぐらい百人中五人、六人、高いときには七人台になることはございますけれども、五、六人というところでございます。にもかかわらず相続税収が非常に大きくなってきているのは、まさにいかに土地の価格が大きいかということであろうかと存じます。  また、付言させていただきますと、この相続税は税収を第一の目的にして課税するという性格のものではございませんから、仮にこのウエートが下がったときに、何が何でも相続税制を見直して上げていかなければならない、そういう性格のものでもないということだと存じます。
  47. 石原伸晃

    石原(伸)委員 次に、法律案の中に入らせていただきたいと思うのですが、今までもいろいろ御説明をいただきまして、相続税の沿革についてのお話は非常によくわからせていただきましたし、問題点についても十分御指摘があったと思います。それをいかに今回の改正案で是正していくか、あるいは今回の改正案ではどの部分が是正するに至らないのかということを話を詰めていきたい、こんなふうに考えております。  まず、この法案の概要の中で、先ほど局長の答弁の中にございましたけれども、課税最低限の引き上げというものが出ております。現行定額控除の金額が四千八百万円、これを改正で五千万円、あるいは法定相続人比例控除の金額は、九百五十万円に法定相続人の数を乗じた金額を一千万円に改定する、こういう数字が出ておりますが、今回の課税最低限の引き上げの根拠並びにねらい、お聞かせ願いたいと思います。
  48. 小川是

    ○小川(是)政府委員 相続税課税最低限は、前回平成四年度の税制改正におきまして、土地の相続税評価の適正化ということで評価割合が適正化されました。  その際の負担調整の一環といたしまして、それまで四千万円というのが定額控除でございましたが、四千八百万円に引き上げられました。また、法定相続人の比例控除八百万円を九百五十万円に引き上げて現在に至っているわけでございます。  申し上げましたとおり、平成四年度には評価の適正化に伴う負担調整という観点から行いましたものですから、こういったかなり端数のついた形で調整が行われました。相続税の計算上、やはりできるだけ簡明であるということは重要なポイントであろうかと存じます。  そういう意味では、今回の相続税見直しいたしますときには、先ほど御指摘がありましたように、中心となりますのは都市部での地価高騰による負担を念頭に各種の調整を御提案いたしておりますけれども、その中にあって、この課税最低限につきましても、全国一律で適用になるものでございますから、できるだけ簡明な形で調整をいたしたい。ただ、他方で問題の所在が都市部の土地の価格であるというところからいたしますと、この課税最低限を大きく引き上げるという形で調整を行うことは相続税のあり方としていかがなものであろうかということから、課税最低限につきましては小幅な調整を御提案しているという次第でございます。
  49. 石原伸晃

    石原(伸)委員 最後のくだりがよくわからない。課税最低限を大幅に引き上げることはよくないということが伝わってきたのですが、なぜよくないのか、もう少し説明していただけますか。
  50. 藤井裕久

    藤井国務大臣 ただいま主税局長が相続税の問題点を申しまして、石原委員も基本で御了解いただいたとおりでございます。要するに、大都会における土地問題が非常に大きなネックであるということは事実だと思います。  もし全般的に課税最低限を上げますと、さっき百件の相続案件があると六人とかいう話がございましたが、地区によっては百件ありますと一人というようなところがあるわけでございます。これを、課税最低限全体を上げますと、ある地区においては相続税を払ってくださる方がほとんどなくなるというケースもあるわけでございます。  しかし、全体として大都会のそういう問題がありますもので、全体的な課税最低限を上げるよりは、大都会の、しかも土地の問題というものを頭に置いてのいわゆる小規模宅地あるいは小規模事業地の減税の強化というような形で対処させていただいた、これが趣旨でございますので、御了解いただきたいと思います。
  51. 石原伸晃

    石原(伸)委員 大臣は神奈川県でございますので切実な問題ではないのかもしれませんが、事東京に住んでいる人間にとりましては、四千八百万円から五千万円にした基礎控除の、課税最低限の引き上げというものは、何で二百万円だけ上げたのか、よくわからないわけですね。説明がつかない。  先ほど局長が答弁されたように、平成四年度は負担調整措置ということで四千万円に八百万円乗せて端数が出た、これはわかります。では、その前の改正、昭和六十三年はどういうことだったのでしょうか。
  52. 小川是

    ○小川(是)政府委員 昭和六十三年の相続税改正におきましては、この課税最低限につきまして前回が昭和五十年ということで非常に長い年数を経ていたわけでございます。これは昭和五十年代の地価が比較的安定をしていたということもあったと存じます。全般的に、先ほど申し上げました相続税の課税件数というので見ましても、それほど大きく変化をするところがない。  ただ、この六十三年を要しましたのは、地価の高騰に伴って次第に件数も上昇する、課税対象も大きくなってくるというところから抜本的な改正が行われたわけでございます。したがいまして、それまでの二千万円あるいは四百万円が倍に引き上げられたわけでございます。  それに対して、平成四年は約二割の引き上げでございます。路線価について評価の見直しというもので、負担が増加するのを全般的に調整を行おうということで二割程度の引き上げを行ったのが平成四年の改正である、こういう経緯でございます。
  53. 石原伸晃

    石原(伸)委員 では、昭和五十年の改正ではどういうふうに変わったのでしょうか。六十三年の前は、大きな改革は五十年ですね。
  54. 小川是

    ○小川(是)政府委員 昭和五十年の改正は、相続税につきまして課税最低限をそれ以前のほぼ倍まで引き上げたわけでございます。昭和五十年の改正前の課税最低限が、標準型で申しますと千五百六十万円。それが、昭和五十年の改正で三千二百万円になりました。そして、六十三年に六千四百万円に引き上げられた、こういう経緯でございます。  昭和五十年には、それまでの課税の状況等からかなり思い切った改正が行われたわけでございます。
  55. 石原伸晃

    石原(伸)委員 局長のお話を聞かせていただきますと、これまでも課税最低限の引き上げというものは、相続税の問題が発生したときには、昭和五十年は六百万円を二千万円に、あるいは法定相続人一人当たり百二十万円を四百万円に、あるいは昭和六十三年はそれまで二千万円、そして法定相続人一人当たり四百万円だったのを、それぞれ倍増して四千万円あるいは八百万円、こういう形で課税最低限を実は上げてきているのですね。だけれども、今回は二百万円にしてしまった。小規模宅地は考慮するけれども、相続税を払う人が地方でいなくなってしまうと困るので二百万円しか上げなかった。これはちょっと説明がつかないのではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
  56. 藤井裕久

    藤井国務大臣 先ほどからいろいろ御議論にありましたように、この相続税の問題というのは、相続件数に対してどのくらいの方が相続税を払っていただくのかというのが大変重要なポイントだと思うのです。それがそもそもの相続税趣旨だろうと私は思います。  そこで、私が学校を出てこの社会に入ったとき、昭和三十年ですが、百件に対して〇・九件だったと思います。昭和六十二年は全国で七・九ぐらいにいきましたか、今六・四ぐらいになっていると思います。ところが、余り県の名前を言うのは避けますが、ある県とかある国税局は既に一ぐらいになっているわけでございます。〇・九とか一になっている。  そういうことを考えますと、全国に波及する課税最低限というものを上げますと、その地域においては相続税を払う方が本当にいなくなってしまうということで、この趣旨からいって逆におかしいということを御理解をいただきたいと思います。  しかし、反面において、東京を中心とする、石原委員のおられるようなところは、本当の意味の中流の方からもいただいているわけです。そして、政治の目的の中には、健全な中堅所得者というか階級を育てるという大事な仕事があるわけでございまして、そういう方々から相続税をいただくのはこの趣旨をやや逸脱しているのではないかと同時に考えます。  したがいまして、今提案させていただいておりますように、大都会、土地問題というものに焦点を当ててこの案を提案させていただいていることを御理解をいただきたいと思います。
  57. 石原伸晃

    石原(伸)委員 聞いていて苦しいかなというような気もするのですけれども、わからないでもない。  そのぐらいにさせていただきたいのですが、またしつこいようですけれども、過去二回の改革では倍にしてきた。そして、先ほど五十年から六十三年のときはタイムスパンが非常に長い。その前は、昭和五十年の前のはそんなに長くないのですな、調べますと。そして、やはり倍にしている。  あるいは今大臣おっしゃられたように、百人当たり何人払っているか。昭和五十年の相続税の抜本改革をやる前、私は昭和四十八年の数字しか持っておりませんけれども、百人で四・一人だった。昭和五十年の改正をしたら二・一人になった。半分になったわけですね、課税最低限を倍に上げて。昭和六十三年はどうだったか。六十二年に百人当たり七・九人、およそ八人だった。それが昭和六十三年に課税最低限を抜本的にいじったら四・六人になった。  先ほど言っているように、百人当たりの人数を減らすのに課税最低限をいじるということはそれだけ有効なわけですね、このデータが示しているとおり。それが何で二百万円なのか。  ですから、すごく乱暴な話ですけれども、昭和六十三年の前は五十年で、十二年間くらいあった。今度は抜本改革で五年間だ。ではその半分上げてもいいじゃないか。何で二百万円なのか。  四千八百万円が端数だから五千万円にしたということですが、それだったら、四千八百万円が端数なんだから、八百万円をとって四千万円の半分の二千万をくっつけて六千万円にするというのもぴったりするような数字だと思うわけですよ。そこのところの説明がいま一つなされていない。  そして、大臣からも百人当たり何人かというお話がありました。これは皆様方に言っても釈迦に説法なんですが、東京の二十三区の中の平均では一七・八%、三多摩を入れても一三・三%、全国の二倍か三倍です。そして、東京に幾らの人が暮らしているのか。日本の人口の十分の一の方が暮らしている。まさに日本の首都なんですよ。東京プロブレムは日本の問題なんです。そういう認識をもう少し持っていただかないと、端数ですから五千万円にしたということでは納得もできません。  あるいは個々に言ってもいいのですけれども、千代田区なんというのは、これは特異なケースだけれども、相続人の半分の方、五割の方が相続税を納めている。これではこの町に人が住めなくなるのは当然ですね。あるいは銀座のあります中央区でもおよそ三〇%、港区でも二七・四%、新宿区でも二七%、文京区でも二六%、私の住んでおります杉並区でも二三・六%。このように全国平均と比較してもかなり高いのです。  私は、こういう問題を解決するようなことをやっていただきたい。今度のことでかなりの改善は見られるのですが、事この課税最低限の問題についてはどうもいま一つ納得できないのですけれども、何かございますでしょうか。
  58. 小川是

    ○小川(是)政府委員 課税最低限と申しておりますのは、課税価格、対象価格が決まったところで幾らを控除するかという問題でございます。  そこで、先ほど来御指摘がありましたように、今回の相続税改正の、問題の解決の眼目は、大都市における土地問題、その中での居住あるいは事業の継続、とりわけ配偶者の方が残されたりしたときにどうしても住みかえなければならないといったような状況を何とか極力軽くしたいという点でございます。  そういう観点からいたしますと、繰り返しになりますが、一番考えなければいけないのは、小規模宅地についてどういうふうに評価を考えるかということであり、もう一つは、配偶者の方の課税をどうやって軽減するかという点でございます。  そこで、今回御提案しております小規模宅地をお考えいただきますと、住宅ですと、従来六割軽減をしていたということは四割課税、それが、今回八割軽減というのを御提案しておりますので二割課税。そういう意味では、この土地の課税対象に入ってまいります評価額がそこで半減されているわけでございます。あるいは配偶者について、二分の一または八千万円というところの八千万円を一億六千万円に引き上げている。  こういう形で、いわば課税対象を大きく外すことが問題に対する対応として適切ではなかろうかというところで、ここに重点を置いて御審議をいただきたい、あるいは改正をさせていただきたいということでございます。
  59. 石原伸晃

    石原(伸)委員 私が質問する前に局長の方が法案の先に先にと進んで、租特まで入られてしまって、審議を促進していただきたいということかなと思いますが、局長、もう一問だけおつき合いください。  これもまた国際比較をさせていただくと、先ほども言いましたように、課税制度が違いますので単純比較はできないと思うのですが、アメリカと比べますと、昭和五十年代の前半の課税最低限は、アメリカが大体十二万ドル、日本が全部ひっくるめて三千二百万ですね。それで、今アメリカがどういう状況になっているかということを私もちょっと調べてみましたら、アメリカは百二十万ドルで大体十倍になっております。日本は今度の改正を入れる前で二・四倍です。  アメリカも同じようにバブルを経験して地価が上がったわけですから、それを考えても四千八百万円から五千万円に上げるという、このプラス二百万円という課税最低限の引き上げはいま一つ根拠がないのではないかということを一言つけ加えさせていただきたいと思います。何かありますか。なければ次に進みますけれども。
  60. 小川是

    ○小川(是)政府委員 まさに御答弁の繰り返しになりますが、結局、相続税の問題は、土地の財産価額の非常に大きな高騰にどう対応するかということであり、しかもそれが集中的に大都市で生じている。したがって、居住とか事業とか通常の生活の継続に大きく支障を生じている。その部分にどうやって対応していくかという観点から、相続税の問題を現状において対応を考えていくのが最も適切ではなかろうかというふうに考えている次第でございます。
  61. 石原伸晃

    石原(伸)委員 繰り返しの答弁でしたので、私の趣旨も局長に伝わったと理解させていただきますので、引き続いてここの部分はもう少し勉強してください。  続いて、局長が言ってくださったので、配偶者相続税負担の軽減措置の拡充策として、配偶者最低保障額現行の八千万円から一億六千万円に引き上げる、こういう御配慮がなされております。これは私もいいことだと思います。しかし、税法をちょっと読ませていただいて、非常に危険だなと思う箇所が一カ所ありますので、話をさせていただきたいと思います。  それは、二の五項というところですか、「第一項の相続又は遺贈に係る相続税の納税義務者が、同項の被相続人の配偶者に係る相続税の課税価格の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づきこ云々という箇所があるのですけれども、私はここの箇所、非常に怖いな、こういう印象を持ったわけであります。  と申しますのは、適正な申告を確保するために、軽減措置の対象となる財産については、当初の申告の際に仮装または隠ぺいされた財産は含まない。適正な申告をするために、非常にもっともらしく聞こえるのですけれども、現実のことを考えますと、ここの部分によって非常に怖いことがある。  これはよくあるケースだと思うのですけれども、例えば相続が発生して、相続争いというのはよくあるのですね。お嫁さんがもっととれと言ったので、自分の息子さんはいいと言っていたのだけれども、財産ないかないか、こんな話も本当に町でよく聞く。こういうものが現実としてあった場合。  あるいは財産というものは夫婦で築いてきた場合が結構多いですから、だんなさんが亡くなる前に、例えば奥さん名義で預金をしておく、家族名義で貯金をしておく。それは話さないで何かのときに使おう。例えば百万円や二百万円でもいいかもしれません。それらの預金があった。それを本人が知らなくて、例えば後から発覚したら、この仮装または隠ぺいというのが適用されるのではないか。こういうことも十分現実として私はあると思うのです。  言葉をちょっとかえさせていただくならば、被相続人の財産は本人の生前の諸活動の結果のみならず配偶者が一緒に寄与してきた、それはさっきも言いました。あるいは残された配偶者の方が、これは御老人が多いのですけれども、老後の保障面などを前提に、最大レベルにおいて遺産額の半分を配偶者が取得した場合についてはその相続税額を非課税にするのが本来の税制の趣旨だと私は思うのです。  そうすると、仮に当初の申告の際に仮装あるいは隠ぺいした財産が存在していたとしたら、事後的にそれらの財産については配偶者の税額軽減を認めないというこの文言によって、それら財産については、相続税申告の適正化のみを図る、もっともなんですけれども、その観点から、国は配偶者としての法的権利をも奪う事態が発生するのではないか。  言葉をもう一言突っ込ませていただくと、納税者というものは相続が発生したときにやはり心理的に隠す、言葉をかえるならば納税者の性悪説というのですか、これを国が考えていると言わざるを得ないのではないか、私はこんな気がするのですね。  そしてまた、仮装または隠ぺいした財産を一体だれがどこで発見して、だれがまた決定するのか、これは非常に難しい問題です。私も一年前に祖母を亡くしたのですけれども、うちの母がびっくりしていたのは、亡くなった次の日には祖母の数百万円あったような預金口座まで閉鎖されたり、現実に税務署が入ってくるのですね。税務署の仕事ですから、入ってくるのは当然なのかもしれませんけれども、人の悲しみの最中にこういうことが起こる。  ましてや、仮装、隠ぺいということが本人の知らないところである、あるいは故意の場合もあるかもしれませんけれども、それによって根本的な権利をも侵害するということは、この部分は実は非常に問題なのではないか。私は性善説に立っていると言われればそれまでですけれども、現実問題としてこれらの問題があるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  62. 小川是

    ○小川(是)政府委員 ただいまの配偶者に対する相続税額の軽減制度、相続税法の十九条の二の現行制度でございますが、配偶者について二分の一あるいは現行で八千万円というものを控除の対象とする場合には、みずから申告をすることが要件になっているわけでございます。  逆に申しますと、現行相続税法でも、みずから申告をせずに調査で何か別のものがあることが発覚した場合には対象としない制度になっているわけでございます。現行制度はもともと、みずから申告をしていただくということがこの軽減の適用の要件になっているわけでございます。  それは一つには、配偶者の方がどれだけ相続をされるかということにもかかわってまいるわけでございます。御自分でこの規定の適用を受けるかどうかを申告をしていただくことになっております。繰り返しになりますが、したがって、現在のところも調査によって何か発覚したものについてはこの軽減の対象になっておりません。  今回の改正をお願いいたしておりますのは、そうした制度からいたしますと、調査を受けた、そして仮装、隠ぺい、隠していたのが見つかりそうだ、あるいは見つかってしまったということで慌てて修正申告を出してくるという場合には、この申告要件というところでいわば抜け道になってしまうという点があるわけでございます。  そこで今回、先ほど読んでいただきました条文のところにありますように、更正あるいは決定があることを予期して申告書を出してきたときには適用がありませんという形に直させていただきたい。従来から、調査を受けることなく自発的に気がついて、今おっしゃったように、別のものがあったということで修正申告をしてこられるときにこの適用が受けられないということではないわけでございます。  今後とも同じでございまして、仮装、隠ぺいの事実があるということを調査でつかまえられてしまったということから、嫌々といいますか申告をしてきた場合、それには適用はありませんという手直してございます。したがいまして、善意度と申しますか、不可避的な状況で、調査を待たずして修正申告を出してこられた場合にこれの適用がないということではございません。
  63. 石原伸晃

    石原(伸)委員 御説明はわかるのですけれども、別に隠してきた人を私はかばっているわけではなくて、法律の持つ怖さみたいなことをちょっといろいろ御質問させていただいているのです。  例えば言葉をかえますと、では隠ぺいとか仮装というものはどうやって明確な基準を設けていくのか、ここのところが今の御説明でもよくわからない。  あるいは最近の現場の事例、私もいろいろ歩いて聞くのですけれども、今の局長の答弁ですとそういうことはないという話だったのですけれども、よくあるのは、家族名義や実名預金や実名貯金については、隠ぺいであるという理由から、現場として重課税にしているケースが結構あるのですよ。それは悪いこと、すごく悪質なのかもしれませんけれども、現実としてそういうことがあるのです。法律上ないんだという御説明なんですが、ここの部分をもう少し明確に判断できるようなものを国民の方に、改正するなら知らせる必要はあると思うのです。  そして、例えば本日が申告期限相続事案について、国が仮装または隠ぺいを根拠に配偶者の税額控除を否認できる日時というのは、これはさかのぼっできますから、一体いつまでなのかというようなことも聞かせていただきたい。あるいは、例えばこれが調査によって明らかになった場合は、重課税が戻ってきてしまったりすると非常に不安になると思うのですね。  その辺について、もう少し明確に国民に対してこういうふうになるんだということの基準を明らかにしておいた方が、私は別に悪いことをする人の肩を持つわけではないですけれども、法律を変える以上は明らかにした方が私はいいのではないかとこの条文を読んで感じたもので聞いているのです。いかがでしょうか。
  64. 小川是

    ○小川(是)政府委員 仮装あるいは隠ぺいということが要件に入っているわけでございますが、ここで言う仮装あるいは隠ぺいと申しますのは、国税通則法で、お話がございましたように重加算税の適用がある場合につきまして、この仮装あるいは隠ぺいをしというところがございます。これと同様の法律的な意味づけでございます。  したがいまして、この条文の適用につきましては、重加算税の適用を受けるような仮装とか隠ぺいという事実認定が国税当局からあった場合には、もちろん争う余地はあるわけでございますけれども、法律的な考え方といたしましては、国税当局の調査において重加算税の対象となるような仮装または隠ぺいの事実ありという場合には、この新しい第五項の適用を受けることになる。  逆に言いますと、その発見された、あるいは追加的な申告部分については配偶者の課税の特例の適用が受けられない、こういう関係になるわけでございます。
  65. 石原伸晃

    石原(伸)委員 大体わかるのですけれども、それをこの法律はさかのぼって、四月一日に施行されたら一月一日からということになりますので、それを十分に国税当局としてお知らせしてあげる必要があると思います。そこのところは当局としてよろしくお願いしたいと思います。  それでは、時間も大分迫ってきましたので、次の質問に移らせていただきたいと思います。  税率区分、この法律案でもう一つ大きなところがあると思うのですが、これは十三段階あるものを簡素化して間が広くなっております。非常に評価に値すると思うのですが、一つ問題なのは、これは所得税との絡みから、七〇%という最高税率の問題です。  所得税も抜本改革で五〇%まで下げたという経緯があって、この相続税の最高税率七〇%というものは日本だけではないかという気がするのです。英国やフランスは四〇%ですし、果たしてこのままでいいのか。  これは本当にごく一部の方だと思うのです。五億以下で全体の八割から八割五分程度ですから、そんなお金のある方の心配をする必要もないと言えばないのかもしれませんけれども、ここはひとつ所得税との関連で、最高税率には今回の法案では触れていないのですけれども、もう一度深めていく必要があると思うのですが、どういう御見解をお持ちでしょうか。
  66. 小川是

    ○小川(是)政府委員 相続税の最高税率が現在七〇%、所得税、住民税の最高税率が六五%というのが現状でございます。アメリカあるいはイギリス等で見ますと、アメリカでは相続税五五%に対しまして所得課税の方は四七%、イギリスは両方とも四〇%といったようなところでございます。  したがいまして、この相続税の最高税率を考えます場合には、やはり先ほどの資産再分配機能というものを重視すると同時に、所得課税というものも念頭に置いて考えていく必要があろうかというふうには思うわけでございます。  現状におきましては、我が国の所得税相続税あるいは資産課税の状況からいたしますと、この最高税率水準は維持をしておくのが適当ではないかというふうに考えている次第でございまして、今回はその適用区分の拡大という形で改正案を提案した次第でございます。
  67. 石原伸晃

    石原(伸)委員 現状として云々という話はわからないではないのですけれども、感情的な問題として、やはり何でも半分、アバウトな言い方ですが、こういう感情というのは往々にしてありますし、欧米と比べても若干高目でございますので、これは所得税との絡みでもう少しじっくり、数からいっても本当に限られた方です。  都会で困っている方でも相続税の納税額が一億円ぐらいですから、最高税率の部分というのは触れてこないのですが、例えば私の選挙区であります渋谷区などは、御存じのように道玄坂とか公園通りとか、二階建てで、一階お店で二階に住んでいるような、まだ道玄坂なんてあるのです。そういう人たちは、地価が異常に高騰したという理由のために、この最高税率にひっかかってくるケースもありますので、そういうことも考えてこの問題については勉強していただきたいと思います。  それでは、もう時間も大分迫ってまいりましたので、本委員会には付託をされていないのですけれども、租税特別措置相続税関係のあるところを先ほど来局長が、小規模宅地についてはこれで配慮しているのだと再三再四御答弁いただいておりますので、ここの部分に問題を移らせていただいてお話をさせていただきたいと思います。  それではまず、租特の六十九条の三のいわゆる小規模宅地の減額特例の拡充でございますか、ここについて質問をさせていただきたいと思います。  ぱっと見させていただきますと、非常に頑張ってくれたな、配慮してくれたなと思うのですが、ちょっとよくわからないところがある。例えば、現行特例は居住用と事業用と国の事業用という区分です。これを今度は、我々も主張していたのですが、居住用と事業用、これを同じにして、国の事業用、それに今度新たに貸し付け用というのが入っていますね、区分に。なぜこういう新しい区分を設けたのか、お聞かせ願いたいと思います。
  68. 小川是

    ○小川(是)政府委員 現行小規模宅地についての課税の特例の減額割合は、事業用について減額七〇、居住用六〇ということになっておりました。したがいまして、それ以外のものについては減額の対象になっていなかったわけでございます。  そこで、大きくは二つの問題があろうかと存じます。一つは、住宅用と事業用とを果たして七〇、六〇と、いろいろな議論の末でございますけれども、区分をしておくというのは、大都市における土地問題を考えるときに実態に合っているであろうか。この点につきましては、居住の継続あるいは雇用の確保、コミュニティーの維持といったような特別な配慮から、大きな財産価値であっても、この減額をするということからすれば一本にまとめて考えるのが適切ではなかろうかというのが八〇にこれを一本化したいという点でございます。  もう一つの問題は、実は、事業用と事業用以外とし、事業用というからにはある程度の規模の不動産の貸し付けである。お店や何か商売をやっておられる方はもう当然事業用のものといたしまして、不動産の貸し付けというものにつきましては、相当規模のものであれば事業用ということで大きな減額が行く。しかし、事業用に至らない程度のものであると全く減額が行かないというのがこれまでの制度でございました。  これは、ある程度の資産を持って不動産貸付業を営まれる、よく言われております。基準として設けられました貸室の五棟十室といったような、規模が大きければ減額が行くけれども、例えば部屋を貸している、一部に住んでビルの他の階を貸しているといったような場合には事業用に当たらないというところから、全く減額がないというのはいかにも実情から見て無理があるのではないか。  そういうところから、今回のこの改正におきましては、不動産貸し付けとかあるいは駐車場用の宅地といったものにつきましても全体として五〇%の減額ということで、この分野を軽減をし考えていくのが実情に即しているのではなかろうかということで、こうした改正を御提案している次第でございます。
  69. 石原伸晃

    石原(伸)委員  御趣旨は大体わかりました。いわゆる五棟十室の問題に対処するためにこの五〇%の減額をというような話だと思うのです。  さらに、ここに書いてあることで、附則みたいなところで私が何でかなと思う点がもう一つあるので、質問させていただきたいのです。  今の特例では、例えば居住用の場合は被相続人が居住していれば特例対象となっているのですけれども、改正案ではさらに要件として、同居していた親族が引き続いて居住用に供する場合のみ八〇%の減額が認められ、引き続き居住用に供しない場合は、住まなかったら五〇%しか減額されないような、言ってみるならば、正しい表現がわかりませんが、継続概念みたいなものが今度導入されたと思うのですけれども、これは何でなんでしょうか。もっとすっぱり、もっと簡単に、こんなものくっつけないですっきりいった方がわかりやすいのではないかという気がするのですけれども、お聞かせ願います。
  70. 小川是

    ○小川(是)政府委員 小規模宅地に対する課税の特例というのは、財産として見た場合には他の資産と同様にそれだけの価値を有する。しかしながら、居住の継続あるいは事業の継続という配慮から、そうした財産価値はあっても、評価を軽減することによって負担を軽くし、その継続を可能にしようという考え方でございます。  そういうことからいたしますと、やはり居住の継続あるいは事業の継続というものが重要なポイントになってくるわけでございまして、そうした継続を考えない場合には、八〇%の軽減対象にすることは適切でないというふうに考えられるわけでございます。  ただ、申し上げておきますと、同居しておられる配偶者あるいはお子さんがそのまま継続をされる場合はもとより軽減対象でございますけれども、親御さんと同居はしていなかった場合でありましても、一定の要件のもとにおきましてはこの軽減を対象にすることにいたしております。  具体的には、相続開始前三年間自宅に居住したことのない親族が、お父さんが亡くなったのでその後に移り住むといったような場合には、居住は継続しておりませんけれどもこの軽減の対象にするというふうに制度をつくることにいたしているわけでございます。
  71. 石原伸晃

    石原(伸)委員 どうも聞いていてまだるっこいのですけれども、もう一つわからないことがあるので、ちょっとお聞かせ願いたいのです。  いわゆる不動産貸し付けについては、現行特例では、その貸し付けが事業である場合には特例の七〇%の減額が受けられるようになっておりますけれども、改正案においては、すべての貸し付け用の不動産の場合において特例の減額割合が五〇%となっていると思うのです。これはなぜなんでしょうか。もう一度お聞かせ願いたいのです。
  72. 小川是

    ○小川(是)政府委員 大きく二つの理由がございます。  一つは、不動産貸付事業であるか事業でないかというその認定によりまして、片方は七〇%減額になる、片方だめだということになるとゼロであるというところは、貸付業の認定、何かの基準をつくって認定していかなければならない。それによって非常に大きな差があり、実態としていろいろな課税のケースを見ると実情に合わないのではないかというところが一つございます。  この基準で従来課税をしてまいりますと、個々のケースをたくさん集めてみますと、どうも実情に合わないところがございます。そこで、これを統合した形で制度化する方がより適切であるという、これは過去における課税の経験からのものでございます。  いま一つの問題は、先ほど来申し上げておりますように、守るべきは居住とか事業の継続という、それぞれの人の生活あるいは社会、コミュニティーの継続という観点から基本的には小規模宅地に対する課税の特例がつくられているわけでございますから、同じ事業あるいは不動産の貸し付けというのは他の御商売をやっておられるのとはちょっと違うのではないか。  そういう意味では、財産の運用という観点があるわけでございます。そうしたものにつきましては、事業と切り離してあるいは居住と切り離して、財産の運用に着目して五〇%という別の軽減のグループをつくってはどうかというのが二つ目の理由でございます。
  73. 石原伸晃

    石原(伸)委員 二つ目の理由のところで、申告するときも不動産所得というのは別建てになっていますし、わからないでもないのですが、今話題のお米屋さんや魚屋さんや果物屋さんとか、そういうものは八〇%認めるけれども、不動産貸付業では五〇%というのは、逆に納税者を国が差別しているような印象を私は持つわけです。  疑問点に対してるるお答えいただいたのですけれども、非常にまだるっこい感じがします。こちらに大先輩であります山中先生いらっしゃいますけれども、山中先生の持論ではありませんけれども、二百平米以下の事業用あるいは居住用のものについては、二百平米というのは大した広さじゃないのでぽんと非課税にしてやれ、こういう考えがあって、その方がわかりやすい。  これでいろいろ附則がついてわかりづらいよりはその方が何となく安心するし、これにひっかかるのではないだろうかどうしようかという、都会に暮らす方々の不安感を解消させる意味でも、今回の八〇%というのは頑張られたと思うのです。  よく、銀座の土地と北海道の土地は違うから、銀座の土地をみんなが買ったら困るとかいろいろ言われますけれども、現実にそんなことはないわけですから、そこのところをもう少し勉強して、さらにわかりやすいものにしていっていただきたい、こんなふうに考えております。何かありますか。
  74. 小川是

    ○小川(是)政府委員 土地に対する評価をこのように軽減するようになりましたのは古いことではございません。自分が住んでいても、財産は財産ということで本来は評価をきちっと受けるべきものでございますが、本日いろいろ御指摘のあったような事情から、小規模宅地についての評価の軽減をいたしているわけでございます。  その場合に配慮しているのは財産価値ではございませんで、いわば利用の面に着目をしているわけでございます。ですから、居住とか事業とかいうものを継続する場合に限り一定のものを軽減するというのが、他の財産をお持ちの方に相続税が満度でかかることとのバランス上、許される限度はこのあたりではなかろうかというふうに考えるわけでございます。これを、小規模であるから非課税に持っていってはどうかというところには、考え方において大きな越えがたい財産と利用の問題があるのではないか、現状でそのように考えているわけでございます。
  75. 石原伸晃

    石原(伸)委員 その問題は、私がするより山中先生とぜひ局長じっくりやっていただいて、この問題の解決にもう一段の前進を図っていただきたいと思います。  時間も大分迫ってまいりまして、あと二つばかりどうしても聞かせていただきたいのです。  一つは、いわゆる延納申請していたものから物納への切りかえです。これは今度の法案に入っておりますが、古い新聞、平成五年四月の新聞を持ってきたのですけれども、自民党税調でもこれを認めるようにということでやろうとしてきた問題でございます。それが取り入れられたことは非常に評価に値するのですが、ちょっとお聞かせ願いたいのですけれども、なぜ期限を区切って昭和六十四年の一月一日から三年の十二月三十一日までにしたのかという問題です。  平成三年の十二月三十一日までと期限を区切りましたよね、何で期限を区切ったのか。税を徴収する側に非常に問題があるというのは十分承知しているのですけれども、では平成四年の一月一日に相続を開始した人とは逆に新たな不公平が生まれるといった問題があると思うのです。この期限を限定した理由。  もう一つは、申請期限を本年の四月一日から九月三十日までと限定していますね、これはなぜなのか。私はもうちょっと弾力的に、緩やかなものにしていいと思うのです。  ですから、勘ぐった見方ですけれども、四月一日から九月三十日までで相続事案が発生したものは、各税務署が事情調査やそういうことをやろうとしているのではないか。半年間なら一生懸命やれば全部やれる、何とかそこで頑張ろう、そんなことを考えているのではないかという気がするので、それをお聞かせ願いたいと思います。
  76. 小川是

    ○小川(是)政府委員 延納から物納への切りかえの特例措置を設けなければならなくなった状況は、先ほどお話がありましたとおり、一昨年あるいはとりわけ昨年の審議論がされたところでございまして、こうした切りかえ措置というものを途中で、延納を選択してしまった後から講ずるということは、既にみずから財産を処分して相続税を納められた方とのバランスあるいは制度の安定性といったことからしますと、大変ためらいがあるわけでございます。  しかし、それを乗り越えなければならないほどの社会的な情勢の変化があったということが今日の制度改正につながっているわけでございますから、いろいろな行動を起こされる前提となった制度の安定性と、こうした特別性との調和をどこかで図らなければいけないというのが対象期間を区切る一つの大きな理由でございます。  その場合に、確かに対象を昭和六十四年一月から平成三年十二月末といたしておりますが、この間の土地の価格の動きあるいは取引の状況から見まして、これだけの期間をとれば十分カバーをしているのではないかと考えるわけでございます。  もう一点の、申請期間を半年と区切っておりますのは、こうした異例の措置でございますから、できるだけ早くこの問題の処理を進めたい、あるいは制度の安定性から見ましても、一定期間を区切ってやらせていただきたい。もとよりこの制度の周知という意味では、現在延納を申請して延納の適用を受けておられる方々でありますから、執行面において十分に配慮をしてまいりたい、かように考えている次第でございます。
  77. 石原伸晃

    石原(伸)委員 時間が参りましたので、最後に一問だけ質問させていただいて、質問を終わらせていただきたいと思うのでございます。  いわゆる物納の問題ですけれども、物納の申告件数が平成四年度に一万二千七百七十八件ございまして、そのうち許可されたものが二千百十三件、わずか一六%である。しかし現実には、土地も売れませんから物納申請というものがふえてきておりまして、それを管理する大蔵省も大変ですし、これが相続税額の税収の中には入っておりません。今後この問題についてどういうふうにお考えになるのか、最後にお聞かせ願いまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
  78. 藤井裕久

    藤井国務大臣 物納の制度というものが認められながら、お話のように順調にこれが許可になっていない、そのとおりだと思います。その理由ももう石原委員から御指摘のあったとおりでございます。  物によっては管理が非常に難しい等々ございますが、本年度というか、平成六年度予算ではこれに関係の人員の増加あるいは経費の増額を予算上計上いたしておりまして、なるたけ本来の趣旨に沿うように努力をいたしてまいりたいと考えております。
  79. 石原伸晃

    石原(伸)委員 時間が二分オーバーしてしまいましたが、今いろいろ質問させていただきまして、よくできている法案だとは思いますけれども、私の指摘させていただいた問題点等まだございます。あるいは、調和という言葉を主税局長お使いになりましたけれども、これでは本当に調和されてないと思う方もいますし、哲学的な部分もまたありますので、一般質問の時間等を使わせていただきまして、先ほど議論ができなかった哲学的な話も引き続いてさせていただきたい。  いずれにいたしましても、この法案については賛成でございますので、これをもちまして質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  80. 宮地正介

    宮地委員長 次に、佐々木陸海君。
  81. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 この通常国会は、召集もおくれ、予算案の提出もおくれ、しかも、三月既に二十四日になるというのに、先ほども話がありましたように、首相の姿勢にかかわる問題が障害となって予算案の審議すら始まっていない、極めて異常な事態であります。  そのもとで、与党と自民党の合意に基づき、日切れ法案の処理ということで、一九九三年度中に必ずしも成立させなければならないものでもない法案、例えば予算案の重要な一部分をなす減税法案及びその財源法案、これを予算審議が全くないままに通してしまうとか、酒の税金の引き上げをもくろむ重大な法案を今通してしまうとかいうことが、きょう、あすの両日で行われようとしているわけであります。先ほど大蔵大臣自身、ノーマルでないとはっきり認めている事態であります。  こういう中で質問時間も極度に制限される、こういうやり方に、私、日本共産党を代表して、賛成できないということを最初に一言明確にしておきたいと思います。  時間が限られておりますから質問に入りますが、提案された関税定率法等の一部を改正する法律案について質問いたします。  この法案では、来年度の皮革・革靴の関税割り当て枠を今年度比一五ないし二〇%引き上げる。革靴に関して言えば、今年度の六百九十五万五千足から二〇%増の八百二十四万六千足に拡大しようとしています。三年連続で二〇%増ということになります。関税割り当て制度、いわゆるTQ制度が始まった一九八六年度の二百四十五万三千足の三・四倍。しかも、これで三年連続二〇%アップということになります。ただでさえ不況で苦しんでいる日本の皮革・革靴産業、そこで働く人々にこうした措置が極めて重大な打撃を与えるものであることは政府も知らないはずがありません。  革靴・履物産業関係者はこういうことを言っています。  既に、一九八六年の輸入自由化以来、外国からの革靴の輸入は、TQ制度の一次輸入枠の拡大、不正常・脱法的なスポーツ靴と称する革靴の大量輸入によってふえ続け、異常な勢いで急増するパーツ、部分品等の輸入を含めれば、その総数は四千万足に迫る驚異的な数量に達した。既に日本はEC諸国に何ら遜色ない革靴輸入大国となっている。  日本の皮革産業が極めて零細で脆弱な経営基盤にあり、大量輸入の影響とバブル経済崩壊後の長期にわたる不況によって企業の倒産や廃業、労働者の失業や仕事切れが加速化するという、極めて深刻な産業と労働の実態等々を述べております。  関税割り当て枠をまたも二〇%拡大するその理由は何か。現状維持でもなく、五%拡大でもない、一〇%拡大でもない、二〇%拡大するその根拠は何か。諸外国からの要望にかんがみとか、国内産業事情にも配慮しとかいうことが言われておりますけれども、その辺を明確に示していただきたいと思います。
  82. 高橋厚男

    高橋(厚)政府委員 皮革・革靴の関税割り当て数量でございますが、今御指摘ございましたように、近年は毎年一五%から二〇%の伸び率で拡大をしてきております。平成六年度の法律で定める関税割り当て基準数量につきましても、その伸び率を前年度と同じとすることとしておりますけれども、これは諸外国の要望と国内産業保護のぎりぎりの接点を求めた水準ということで、物資所管庁でございます通産省によりまして十分検討されたものであるというふうに承知をいたしております。
  83. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 では通産省にお聞きしますけれども、諸外国の要望とは具体的にどういうもので、国内産業事情にどういうふうに配慮しているのか、もう少し具体的に言ってほしいと思います。
  84. 上野裕

    ○上野説明員 御説明をいたします。  諸外国の最近の市場開放の要求の例でございますけれども、昨年の秋に行われましたウルグアイ・ラウンド一連の交渉の過程におきまして、例えばアメリカからは、革靴については国内市場の三〇%まで即時開放をすべきではないか。この三〇%、試算はいろいろ前提がございますけれども、仮定で計算しますと、おおよそ二千五百万足という膨大な数量になるわけでございます。こういった非常に厳しい市場アクセスの改善についての要求が、ほかのヨーロッパ諸国からも類似の要求が出ております。  私どもとしては、一方で、やはり先生御紹介いただきましたような国内の皮革・革靴産業の置かれた状況はもちろん十分考慮するとともに、他方で、こういった諸外国から出ております大変厳しい改善の要求内容を、両方を勘案し、そのぎりぎりのところで接点を何とか見つけて、具体的な数量枠の決定関係方面にお願いをしてきたところでございます。  先ほど関税局長からも御説明ありましたように、来年度につきましては、そういう両方をぎりぎり勘案をいたしまして、前年度と同様の伸びが適当ではないかというふうに判断をして審議をお願いしているところでございます。
  85. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 率直に言って、国内の産業に本当に配慮している姿勢が全くうかがえないような答弁だと思うのです。  ウルグアイ・ラウンドでは、革靴の関税割り当て問題はどういうふうになりましたか。
  86. 上野裕

    ○上野説明員 お答えをいたします。  ウルグアイ・ラウンドにおきます革靴の関税率の今後の引き下げでございますけれども、革靴の関税率、二次税率、現在六〇%または一足当たり四千八百円という数字になっておりますが、これを三〇%または一足当たり四千三百円のいずれか高い方を適用するというふうに合意をいたしております。  また、関税割り当ての枠内の数量に適用されます一次税率につきましては、現行、各種税率ございますが、代表的な税率は二七%でございまして、これを二割引き下げをするということで合意を見ているところでございます。
  87. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 要するに、一次税率もさらに引き下げて、外国の革靴がもっととうとうと入ってきて国内産業を押しつぶす、そういう方向に明確に進んでいる。本当に日本の零細な皮革産業はつぶしてしまうということにほかならないというふうに考えざるを得ないわけであります。  ここに、一月の十二日に東京の台東区の区議会が全会一致で採択した決議がありますけれども、中小企業の町台東区を支えている地場産業である皮革産業、これが大変な事態になっている。戦後最長と予測されている不況と革靴の大量輸入の影響によって、皮革産業の置かれている事態は最悪の状況である。政府におかれましては、このような皮革産業の実情を十分御賢察の上、関税率の大幅引き下げ、今言われた引き下げを取りやめ、関税割り当て制度の維持強化やスポーツ靴に名をかりた革靴の無秩序な輸入に対しての規制など必要な措置を図り、長期的な展望に立った皮革産業振興の抜本的な対策を講じるよう強く要望いたします。  区議会が全会一致でこういう決議を上げ、これは政府にも届いているはずであります。  私は、本当にこういう方向で政府はやるべきであるということを強く要求したいと思います。  そして、今議題になっております、この関税定率法等の一部を改正する法律案、個々には賛成できる項目もありますけれども、こういう問題にかんがみて私たちは反対せざるを得ないということを表明して、質問を終わります。
  88. 宮地正介

    宮地委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。  この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十九分休憩      ————◇—————     午後一時五十分開議
  89. 宮地正介

    宮地委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  先ほど付託になりました内閣提出平成六年分所得税特別減税実施等のための公債発行特例に関する法律案酒税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案及び平成六年分所得税特別減税のための臨時措置法案の各案を議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。藤井大蔵大臣。     —————————————  平成六年分所得税特別減税実施等のための   公債発行特例に関する法律案  酒税法の一部を改正する法律案  租税特別措置法の一部を改正する法律案  平成六年分所得税特別減税のための臨時措置   法案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  90. 藤井裕久

    藤井国務大臣 ただいま議題となりました平成六年分所得税特別減税実施等のための公債発行特例に関する法律案酒税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案及び平成六年分所得税特別減税のための臨時措置法案、以上四件につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  まず、平成六年分所得税特別減税実施等のための公債発行特例に関する法律案につきまして御説明申し上げます。  所得税減税の実施等により、平成六年度の一般会計予算において見込まれる租税収入の減少については、公債発行により対処せざるを得ないところであります。このため、財政法第四条第一項ただし書きの規定により発行する公債のほか、公債発行を行うことができることとする必要があり、本法律案提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  平成六年度の一般会計予算において見込まれる、平成六年分所得税特別減税実施による所得税の収入の減少、法人特別税の課税対象期間の終了による法人特別税の収入の減少、相続税負担軽減による相続税の収入の減少及び普通乗用自動車の譲渡等に係る消費税税率特例の適用期間の終了による消費税の収入の減少を補うため、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で、特例公債発行することができること等としております。  次に、酒税法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  政府は、酒類に係る税負担水準の現状、最近の酒類消費の態様の変化等を踏まえ、酒類に対する税負担の適正化を図るとともに、ビールの製造免許に係る最低製造数量基準の引き下げその他制度の整備合理化を行うこととし、本法律案提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、酒類に対する税負担の適正化を図る観点から、酒税の税率を見直すこととしております。  すなわち、酒税の税率を各酒類の基準アルコール分で一キロリットル当たり、ビール等については一万三千六百円、しょうちゅう甲類等については三万五千九百円それぞれ引き上げることを基本に、清酒等の酒類については、原料事情、消費動向等に配慮して、引き上げ幅につき所要の調整を行うこととし、これにより酒類間の税負担格差の縮小を図ることとしております。  また、発泡性を有する酒類に係る加算税率については、これを廃止することとしております。  なお、税率改正に際し、税率の引き上げが行われる酒類を酒類の製造場または保税地域以外の場所で、一定数量以上所持する酒類販売業者等に対しては、従来と同様、手持ち品課税を行うこととしております。  第二に、ビールの製造免許に係る最低製造数量基準を二千キロリットルから六十キロリットルに引き下げ、ビールの小規模生産の道を開くこととしております。  第三に、酒類製造者が自己の製造場間で行う酒類の移入について、すべて戻し入れ控除の対象にする等制度の整備合理化を行うこととしております。  その他、本法律案においては、清酒製造業等の安定に関する特別措置法に定めるしょうちゅう乙類業対策基金に充てる資金の全部または一部を、国が日本酒造組合中央会に対して無利子で貸し付けることができるよう所要改正を行うこととしております。  次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  政府は、最近における社会経済情勢等にかんがみ、土地住宅税制について適切な対応を図るとともに、租税特別措置の整理合理化等を行うほか、課税の適正公平の確保その他所要の税制上の措置を講ずることとし、本法律案提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、土地税制について、土地の有効利用の促進等を図る観点から、優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の軽減税率特例、事業用資産の買いかえの場合の課税の特例等の拡充等を行うとともに、住宅税制について、住宅取得資金の贈与を受けた場合に贈与税額を五分五乗方式により計算する特例の拡充等を行うこととしております。  第二に、近年における地価の水準を踏まえ相続人の居住や事業の継続に配慮するため小規模宅地等についての相続税の課税価格の減額の特例の拡充等を行うほか、土地の登記に係る登録免許税の課税標準を減額する特例の新設等の措置を講ずることとしております。  第三に、課税の適正公平の確保を推進する等の観点から、交際費課税の見直し及び使途秘匿金に対する追加課税制度の新設を行うこととしております。  また、企業関係租税特別措置等について特別償却制度等の整理合理化を行う一方、高齢者、障害者が円滑に利用できる特定建築物について割り増し償却を認める等社会経済情勢に即応して所要措置を講ずることとしております。  その他、清酒に係る酒税の税率の軽減措置、国際金融取引におけるいわゆるオフショア勘定において経理された預金等の利子の非課税措置適用期限の到来する特別措置につきまして、実情に応じその適用期限を延長する等の措置を講ずることといたしております。  次に、平成六年分所得税特別減税のための臨時措置法案につきまして御説明申し上げます。  政府としては、当面の経済の低迷を打開するため、一年間限りの措置として、平成六年分の所得税につきまして、三兆八千四百三十億円の特別減税実施することとし、本法律案提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして、御説明申し上げます。  この特別減税は、平成六年分の所得税額からその二〇%相当額を控除することにより実施することとしております。なお、二〇%相当額が二百万円を超える場合には、二百万円を限度としております。  この特別減税の具体的な実施方法に関しましては、給与所得者については、本年一月から六月までの間に支払われた給与等に係る源泉徴収税額の二〇%相当額を、原則として同年六月に還付し、同年十二月の年末調整の際に、給与等の年税額の二〇%相当額から同年六月の還付金額を控除した残額を控除することにより実施することといたしております。  次に、公的年金等受給者については、原則として本年六月及び十二月に半年分の源泉徴収税額の二〇%相当額をそれぞれ還付することとしております。  また、事業所得者等については、平成六年分の確定申告の際に、所得税額からその二〇%相当額を控除することにより実施することとしております。なお、平成六年分の所得税に係る予定納税基準額は、特別減税を加味して計算することといたしております。  以上が、平成六年分所得税特別減税実施等のための公債発行特例に関する法律案酒税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案及び平成六年分所得税特別減税のための臨時措置法案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  91. 宮地正介

    宮地委員長 これにて趣旨説明は終わりました。
  92. 宮地正介

    宮地委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大原一三君。
  93. 大原一三

    ○大原委員 速やかに審議をされんことをお願いしますという、これほど速やかな審議は今までの国会審議の中でもなかったのではないのかな。大蔵委員会に八法案出ているそうでありますが、きょう、あすの審議で六法案がパスをするということになれば、これほど速やかなことはかつて、大蔵大臣、記憶がありますか、ちょっとお答え願いたい。
  94. 藤井裕久

    藤井国務大臣 私の昔の大蔵省時代の生活また議員になりましてからの生活の中で、ここまでいろいろ決定がおくれた段階で、急遽このように御措置をいただくということは記憶にございません。ありがたいことだと思っております。
  95. 大原一三

    ○大原委員 自民党が野党であってよかったな。これは普通だったら、一人は違いますけれども、向こうへ座っておられる方たちのときはこうはうまくいかなかったですよ、委員長。本当に委員長恵まれていますよ。  この六法案は重要法案なんですよ。私も自民党の中で国対と政調におりまして、我々の議論は、純粋日切れ法案だけ取り出して、その分だけ特別法で延長して、そうして中身については、本体法についてはじっくり議論しよう、そういうことであったのでございますけれども、急遽皆さん方から御提案の国対委員長会談というのがもたらされまして、細川総理、国対なんというのは、あんなものはやみ取引だからやめろと言った方から話がありまして、我々としても精力的に取り組んだ結果きょうの審議になったわけであります。  つきましては、委員長にお願いがあるのでありますが、所得税法のこの特別減税と、さらにまた租税特別措置法についての修正案、自民党から提案をしております。これは大蔵大臣に直接お聞きしてもいいのですが、委員長、この取り扱いについては、これらの短期間の審議でございますけれども、非常に重要なポイントを含んでおりますので、与野党の十分な話し合いを委員長のところでやっていただきますことをお願いしたいと思うのです。その原案についてはもう既に委員長の手元に着いていると思います。その辺の御意見をまず委員長からお伺いしておきたいと思います。
  96. 宮地正介

    宮地委員長 委員長といたしましては、ただいまの趣旨に沿いまして、与野党において十分に議論を尽くしてまいりたい、こう考えております。
  97. 大原一三

    ○大原委員 我が自民党の理事も非常に馬力のある精鋭ばかりでありますから、その点について厳しい要請があると思いますから、最初に質疑に立ちますから特に私からも申し上げたいと思うわけであります。  中身は後で租税特別措置のところで、全体を私にレビューしろという御下命でございましたから、各論で専門家が控えておりますけれども、私の方からきょう御提案の全体について一応の御質問をしたいと思うわけであります。  それでは、まず所得税特別減税でございます。予算委員会におきましても私、藤井大蔵大臣にお聞きしたと思うのでありますけれども、これが消費に及ぼす影響、景気対策としてどの程度のパワーがあるのか、その辺は大蔵省としてはどう考えておられますか。もし具体的な数字を挙げてお答えになる方がいたら、大臣でなくても結構だから答えてほしいと思います。
  98. 藤井裕久

    藤井国務大臣 過般の予算委員会でも、大原委員からの御質問に対し、まず少なくともムード的には大変大きな影響がある、今マインドという問題がある中で、明るいムードをつくる大きな要因の一つに本格的減税があるというか、大幅な減税があるということを私は申し上げました。  また、今回の減税の方策についてでありますが、御承知のように、ちょうど今耐久消費財を中心といたしまして、ストック調整的なものがまさに最後の段階というか、終わりかかっているところであります。そういう際にまとまった減税が行われるということは、そういうものに向かう消費が十分期待されると考えておりますし、同時に、今回の中で自動車に対する消費税の本則への復帰ということもございまして、それらをひっくるめまして消費に与える効果は大きいものと私は考えております。  数字については、これは企画庁のことかもしれませんが、例の世界経済モデルでは、これが実施された一年間の効果として乗数効果〇・六と見ていることをあわせて申し上げたいと思います。それで、二・二%の効果があるというふうに世界経済モデルに基づいて企画庁においても計算されておるように承知をいたしております。
  99. 大原一三

    ○大原委員 細かい議論をするようで恐縮でありますが、二・二%というのは今回の総合景気対策全体の効果でありまして、それも大した乗数を見込んでいるわけでありまして、大したことはない。  その際も申し上げたのですが、今回の減税の中、仮に三兆八千億として、貯蓄へ向かう分がまず三割ぐらいは行く、三割というのはちょっと高過ぎるかもしれないけれども。そうしますと、消費に向かう分が二兆六千億程度ではないのかな、まあ七割簡単にぶっ掛けますと。  現在の国民総消費といいますのは五百兆として、大体七割五分ぐらいでございましょうから三百七、八十兆円が国民消費だと思うのです。その中へ二兆六千億ぶち込んでみたところで、これは全くスズメの涙であります。これから消費が喚起されるというような議論は大変持って回った議論でありまして、経済学の初歩を知っている人間なら、これが消費にプラスになるとはまさか思わない、私はそう思うのです。今回の減税を景気対策として判断するならばこれはナンセンスではないのかな、私はこう思っておりますが、大臣いかがですか。
  100. 藤井裕久

    藤井国務大臣 今七割五分とおっしゃいましたが、まあ六割ぐらいではないかと思いますけれども、相当大きな消費の中の何がしかの数字であるということはおっしゃるとおりだと思います。私は、景気対策としての減税政策というのは常にこういう面を持っているんだと思います。  特に今回の減税規模というのは、これも前にも申し上げたかもしれませんが、所得課税、つまり住民税を入れてでございますが、それに対する合いただいている税収入のうちの一五・八%の還元というか、減税率になる。これは極めて大きなものであると私は考えておりますから、この減税効果は十分考えられる、景気対策としても十分効果があると考えております。
  101. 大原一三

    ○大原委員 大蔵大臣は効果がある、こうおっしゃるのですが、私は大したことないと思うのです。これはこれからの経済の動きが証明をすると思うのですが、減税によって消費刺激というのは、それは、レーガンさんぐらいのことをやれば、なるほど消費に影響があるかもしれぬけれども、減税による消費効果というのは大してない、私は日ごろこう考えている者の一人です。ですから、余りそこへ行きますとまた国民世論を惑わせることになりはせぬかな。  かてて加えて、公共料金の引き上げという問題があるのですね。きょうも大分厳しい批判を自民党の若手の議員がやっておりましたけれども、この公共料金の引き上げの効果、ないしは現在予定されている公共料金全体のわかっている範囲でいいのでありますが、大蔵省でだれかがつかんでおりますか。わかっておりましたらお答えが欲しい。
  102. 藤井裕久

    藤井国務大臣 具体的なことは事務方からお答えさせますが、今回の経済見通しの中で消費者物価一・五%と見ているわけでありますが、既に決まったもの、予定されているものは既に算入されているように経済企画庁から聞いております。  また、今あえてこちらで申し上げさせていただきたいのでございますが、レーガン減税のお話がありました。一九八一年だと思いますが、あのときのいわゆるカット率は九%でございまして、今度が一五・八%であるということ。それから、GDP対比で見ましても、レーガンさんのときの〇・九%に対して今回が一・二%であって、レーガン減税よりもはるかに規模の大きいこともひとつ御理解をいただきたいと思います。
  103. 田波耕治

    ○田波政府委員 公共料金の引き上げの全容というお話でございますが、これは当然のことながら、公共料金全体は経済企画庁でやっております。したがいまして、この料金ということを今、私手元に持っておりませんけれども、経済全体に与える影響ということ、なかんずく消費に与える影響、いわば実質所得という観点からするならば、そういった公共料金の引き上げ等を勘案して全体の経済見通しがつくられております。今大臣からお答え申し上げましたように、平成六年度の消費者物価上昇率が一・五%ということでございまして、その限りにおいては全体としての経済見通しの中で整合性がとれているというふうに考えておるところでございます。
  104. 大原一三

    ○大原委員 けさほど厚生省、これは私が頼んだ資料ではないのですが、並びに企画庁から届いた数字をばらぱらっとめくってみたのですが、この公共料金の中に厚生年金の引き上げと国民年金の保険料の改定は入っていないのです。だから、物価にもこれは入らないね。それが大きいのですよ。  二兆六千億、それのこれは平年度化ベースですから、そのうち一兆八百三十億が今年度引き上げる。あれやこれや合算しますと、所得税の減税の中から貯蓄を引いて、そして消費に向かう部分とこれら全体を加えた、いわゆる吸い上げ部分とを相殺しますと、一兆円そこそこになりはしないかなという感じがするのです。  その辺は大蔵省も計算しておって、数字を出すとけちがつくので、我々もよくやったわ、こんな数字出してもしょうがないから隠しておけと。出してくれと私言っているわけじゃないのですよ。  だから、これを景気刺激効果と言うのはいかがなものかな。私は、勤労所得者に対する負担調整と正直に認めた方がこの減税の目的ははっきりすると思うのです。ですから、そういう意味では景気論から所得税減税論を取り上げるのはいかがなものかな。  なぜ社会保険料負担を公共料金に入れないのですか。だれか専門家おりませんか。
  105. 藤井裕久

    藤井国務大臣 社会保険料の物の考え方だけ申し上げますが、今回の社会保険料の引き上げ分というのは、もう御承知のとおり、そのまま給付の改善につながって出ます。したがいまして、それは払った方と受け取られる方が層が違う等々の問題はあるかもしれませんが、そういう意味においては効果はスクエアである、社会保険料の引き上げはスクエアであるというふうに考えております。  また、先ほどの減税とサラリーマンの負担のあり方の問題でありますが、常々申し上げておりますように、本格的な税制改革は、まさにこれからの福祉社会の中で応分の負担をしていただく場合に、どのような負担のあり方がいいのかという観点からの問題であると思います。それは本格的な税制改革の問題であり、それに先行する意味の平成六年の措置は景気対策として行っていみことを改めて申し上げたいと思います。
  106. 田波耕治

    ○田波政府委員 社会保険料等の引き上げの性格でございますけれども、これはいわゆる公共料金のようにマーケット価格を動かすものではないわけでございます。さはさりながら、保険料が上がることによってそれが可処分所得に与える影響、それは考えなければいけない、そういう性格のものだろうと思います。  したがいまして、公共料金の中に入れない、引き上げの影響を考えるときに入れないのは、理論的にそれは正しいと思いますが、後段のその影響につきましては、今大臣からお答え申し上げましたように、給付と大体見合っているということでございまして、それほど大きな影響があるというふうには考えていないということでございます。
  107. 大原一三

    ○大原委員 これは、細かい数字ですから水かけ論になるところもありますので、私の意見だけ申し上げて、この問題は打ち切りたいと思います。  ところで、所得税の議論をする以上、当面の出たとこ勝負の減税ではなくて、今後の所得税制のあり方について大蔵省はどのように考えておられるのか。最高税率を五〇に下げてきましたよね。地方税と合わせると、松下幸之助さんは九七%税金がかかると言った時代もありました。  たしか、アメリカでも五〇年時代は所得税だけで最高税率が九一%、それが八〇%に下がり、レーガン前後は七〇になりましたね。私の記憶が間違っておりましたら後で訂正してください。それから一五と二八に直した。それから、ブッシュさんが二%上げちゃったかな。そのときにたばことガソリンを上げちゃって、公約違反だといって次の選挙に落選する。こういうことになったわけです。  そこで、レーガンさんのこの税制というのは私はめちゃくちゃだと思う。所得税というのは累進があって初めて意味があるのですね。二段階のフラットにして、しかも安い税率で取れば景気がよくなるだろうと期待したレーガンさんの期待は全く裏切られたわけだ。  しかも、最近私、おもしろい本を読んだのです。これは予算委員会で言ったかと思うのだけれども、「中産階級の崩壊」という題でドナルド・バレットという人でありますが、堺屋太一さんの翻訳で読んだわけです。レーガン税制の結果か、いやそれ以前からの最高税率を下げてきた結果かわかりませんけれども、アメリカの五分位を見ますととんでもないんだな。十年前は第一階級と第五階級の格差が十倍であった。それが今十三倍ぐらいに開いているのですね。つまり、貧富の格差がますますアメリカ経済の中では開いておる。  日本としてはこれは何と考えたらいいのか。我々の日本の格差はむしろ下がっておるのですね。つまり、八八年は二・六倍だったのが、九二年、これはどこからいただいた数字かよくわからないけれども、二・五倍に格差が縮んでおる。これは日本経済の活力の源泉だな。  私はそういう意味で、極端な例を引いたのでありますが、レーガンの所得税体系に対するあの挑戦はとんでもない間違いをアメリカ経済の中にもたらしたのではないのか。消費税時代も来たのであるが、やはり所得税の累進というものは大事にしていかなければならぬ税制ではないのか、こういうふうに考えるわけで、そこらを大蔵省主税局長大臣ばかり答えさせないで、おれの質問に答えてくれよ、たまには。
  108. 藤井裕久

    藤井国務大臣 どうも、私ばかり出て申しわけございませんが、私、実は一九八一年のレーガン税制のとき大蔵政務次官をやっておりましたもので、特に印象が深いのでございます。  ただ、やはり特定国の特定の制度を私の立場で批判するのはいかがと思いますから余り申しませんが、所得税というものが先進国における基幹税であるという立場は私は変わってないと思っております。学者の議論の中に支出税のようなものもありますけれども、やはり所得税が基幹税であるということ。また、大原委員の御指摘のように、過去の日本の超過累進制度に基づく所得税が、いろいろな要因があったにしろ、一つのファクターとして所得階級の平準化をもたらしたという効果も否定できないと思います。大きな役割を果たしてきたと思います。  ただ、おっしゃいますように、余りに過度な超過累進というものがいいか悪いかということだろうと思いますし、世界的に言うと、今日本は一番超過累進度が高いということもこれは否定のできない事実と思います。  そこでどうあるべきかということについては、御指摘のように最高税率五〇ぐらいがいいのではないかという御議論もありますし、税制調査会は大体そういう方向を指向しているように思いますが、私どもといたしましては、そういういろいろな御意見を伺いながら、やや中期的な観点といいますよりも、年内にあるべき税制改革ということが言われておるわけでありますから、そういう問題を含めまして議論をしていくべきことだと考えております。  補足があれば主税局長に答えさせます。
  109. 大原一三

    ○大原委員 僕がなぜこういうことを言うかといいますと、自民党は消費税反対、当面は。しかし、そんなことを年がら年じゅう言っておれない。大原一三は確信犯的なところがあります、私二十年のうち十二年間主税局というところに勤めたわけですから。一体これからの財源調達をどのようにしていくのか、大蔵省としては非常に悩みの深い時代だと思う。  我々の時代は高度成長期でありますから、自然増収がどんどんふえていく。一体これをどうするのだということで、半分を減税、半分を歳出という時代ですから、毎年毎年減税をやっていったわけでありますけれども、今はもう八方ふさがりだ。経済成長はゼロ成長、伸びたって三%ぐらいしかいかぬだろう。そういう中で、老齢化社会が急速に、世界一速いスピードで伸びていくわけですから、一体何でこれを賄うのだということになれば、税源か国債発行か行政改革、この三つしかないわけですね。  ところで、税源に何を求めるかということになりますと、今申し上げたように所得税の根幹をしっかり据えて、これを体系にどのように位置づけるかということを決めて、それから消費税なら消費税、場合によったら国債なら国債でいかなければならぬと思うのですが、この前総理大臣にも、予算委員会藤井大蔵大臣にも、国債というのも、これは五一%でしょう、GNP対比が。  昭和十二年、日支事変が始まる前が五六%というのでありますから、もう一息でいわゆる日中戦争の始まる前の大変な負担率に接近するわけでありますから、やたらに国債発行も言えない。にもかかわらず、四百三十兆円が足りないから十年計画の中であと百兆円ふやせ、こういう議論も一方で出ておる。  いや、行政改革はやりなさい。この前申し上げましたが、日本の公務員というのは世界で一番少ないのですね、正直言って。私も、何も役人であったから公務員かばうわけじゃないのですよ。行政改革によってひねり出せということは、公務員の数を減らさない限りそれほどの実入りのある行政改革は私はないと思います。  今まで国鉄、電電、専売を民営化して、これによっていろいろのメリット、経済メリットが出たからというようなこともあると思うのでありますが、それに匹敵するような改革が今後ありやなしや、これも八方ふさがりだ。そうなりますと国債と増税しかないんだな、本質的には。  それは、我々だって与党の皆さんだって、行政改革をやって、役人は、会計検査院でどこでむだな金使っておるからあれらをやめさせろと言えば、訴えばいい。訴えばいいが、これから二〇〇〇年には恐らく、先日の厚生省の試算でも年金支払い額が百十兆円を超えようという、二〇一〇年には二百三十兆円ぐらいになろうという。今五、六十兆円のようでありますが、大変な老齢化負担をしょわなければならぬわけであります。  一体、今後の財政のかじ取りの方向を、申し上げたような問題に絡んで、これは大蔵大臣に答えていただきたいと思います。
  110. 藤井裕久

    藤井国務大臣 これからの二十一世紀のあるべき社会において、どういう形でこれを運営し、そしてその場合に、どういう形の国民の皆様の御負担をお願いするかというのは、非常に基本的な問題だと思っております。  私ども、税制調査会が昨年出しました結論の方向というのは正しいと思っております。つまり、御指摘のように所得税は基幹税である。しかし、これに過度に依存するということは、とても今後の福祉社会を勤労者だけの力によって支えていただくことはもはや無理だし、活力のある福祉社会は実現できない、そこにやはり消費課税というようなものもお願いしなければならないと考えております。  もちろん今お話しのように、政治の姿勢としては常に不公平税制是正であるとか行政改革ということに対して真剣に取り組んでまいることはもとよりでありますけれども、それだけではなかなか解決しないというのもただいま大原委員の御指摘のとおりであると考えております。  したがいまして、まあ二十一世紀の初めぐらいには四〇%の真ん中辺、そして老齢化が最も進んだときに五〇%、厚生省が出されたあれは幾つかの選択肢が出ていると思います。五〇%前後の幾つかの選択肢になっておりますが、そういう中で、あの程度のところへおさめ、かつ御負担をいただく形としては、所得税の基幹税の地位は相変わらず変えるべきものではないと思いますが、バランスのとれた形で消費課税についても十分検討していかなければならないと考えております。
  111. 大原一三

    ○大原委員 行革審の第三次答申というのがありますね。今大蔵大臣が触れられたけれども、昨年の十月二十七日に出ています。これによれば、紀元二〇二〇年ごろ五〇%以下にしたい、こう言っておられる。二十一世紀初頭四〇%台にしたい。初頭というのがよくわからないのですけれども、恐らく二〇一〇年までぐらいのことを言っているのかな。だけれども、これは前提要件が非常に多くて、私が単に社会保障費を政府の数字をいただいて国民所得を三%成長で置いていきますと、とてもこんな数字にならないのだね。  この前、予算委員会大蔵大臣に、時間がなくて余り細かいことは言えなかったけれども、私の計算では、国民所得三%成長でいくと二〇〇〇年に五一%になってしまうのですよ。二〇二五年の数字がありませんでしたから、二〇二〇年を計算してみると、国民所得三%成長ですよ。あっちの方は四%、五%成長で置いているが、私の方は三%、こっちのほうが正直なのだ。  あっちは安くするためにたくさん成長率を上げてしまったからね。単純に三%でいくと二〇二〇年に六五、六%になってしまうのだな。行革審がここで言っている五〇%とか四〇%というのは一体何だろうか。行政管理庁の人を呼んで聞くけれどもわからない。計算根拠もわからない。だれに聞いたらいいかといったら、土光さんに聞いてくれと言うのだよ。もう亡くなっちゃっている。  だから、ああいう願望を言った人というのは、それは気持ちはわかる、そんなに上げたくないからというのでね。だけれども、大蔵省は昨年のこの行革審答申にどれだけ関与しているの、その数字の発表に。だって、主税局がいなければこんな数字はできないはずです。ちょっと教えてもらいたい。
  112. 藤井裕久

    藤井国務大臣 今ごらんになっていましたように事務方もよくわからないだろうと思いますが、少なくとも臨調の時代から一つのあるべき姿として今のような方針があり、それはやはり引き続いて踏襲すべきだというのが第三次行革審のお考えだろうと思います。願望というよりもそういうところに政策目標を置くべきではないか、こういうところからきていると考えております。
  113. 大原一三

    ○大原委員 世界の老齢化率というものがありますね。主要国を調べてみたのですが、その中で日本は一三・一%。一番高いところがスウェーデンで一七・七%。アメリカ、イギリス、フランスがその真ん中に位置しているわけでありますが、国民所得に対する国民負担が全くこれとパラレルになっているのですよ、パラレルに。そういう意味で、これからの日本の老齢化率は、もう間もなく、二〇二五年には二五%になろうとしておる、二〇一〇年にはスウェーデン並みになるわけですね。  そうしますと、今日本より若干老齢化率の高いイギリスとドイツが一五・八%、一五・三。それが、国民負担が現在既に五〇、五一というところですね。スウェーデンが一七・七%ですが、これは七七%という、こんなとんでもない国民負担になっておるわけであります。  そういう意味で、もう目に見えた老齢化社会の到来、一体選択肢をどこに置いて税金をこれから賄っていくか。働く人は減るわけですね。年寄りはふえる。これを所得税オンリー体系でいきましたらもうパンクすることは目に見えているわけであります。少なくなった労働力人口の中から、額に汗する人からもまずます取らないと老齢化社会の負担が貯えないという事態が起きるわけでありますから、間接税なら間接税に負担を求めなくてはならないということは、もう火を見るよりも明らかなんだ。  だから今、余り逃げ口上を言わないで、先ほどの厚生省の答申にしてももっとはっきりと、消費税なら消費税、それを国民福祉税と言おうがどうしようと構わない。その部分を割りかけていきますよくらいはもう既に国民の前にははっきりしなくてはいかぬのに、これは逃げ回っているという感じだな。そこらのところを少し鮮明にしてもらいたいのですよ。厚生省も、ここまで出ているのだけれどもそれから先はなかなかよう言わないという事態でありますから、ますます国民は迷うわけです。  そこで、細川総理の福祉目的税というのがある日突然出てくるわけでありますが、これについては大蔵大臣はどの程度関与されているのですか。福祉目的税の七%には主税局長も関与しているわけでありましょう。どれだけ大蔵省の責任が、総理ばかりを責めていますけれども、大蔵省が言わなくてはこれはなかなか総理の知恵だけではなかっただろうと思うのです。あるいはそうではないかもしれぬ、よくわからぬのでありますのでお答えを願いたい。
  114. 藤井裕久

    藤井国務大臣 昨年八月の細川内閣成立以降、私どもは今大原委員が御指摘になったような方向をただの一度も逃げたことはありません。昨年の国会においても、総理も私も、これからのあるべき税制としては所得課税の軽減、消費課税の充実ということが時代の方向であるということを一度も逃げたことなく申し上げ続けてまいったつもりでございます。これは御了解をいただきたいと思います。  また次に、今の問題でございますが、昨年の内閣発足以来今のようなことを申し上げ、かつ税制調査会の答申あるいは平岩委員会の報告というものは同じ路線にあったと私は考えております。そういうことを考えられながら、かつ連立与党の代表者会議の方々の御意見、あるいはこれは与党内部のことで大変恐縮でございますけれども、政策幹事会等々という連立与党の正規の場においていろいろ議論のあった方向をおおむね踏まえながら、総理があの案を提案されたというふうに私は承知をいたしております。  私もあの具体的なものについて、これも衆議院予算委員会でお答えいたしましたが、あのものずばりのものを承知いたしたのは、あのごく直前であります。しかし、物の考え方は、常に私どもはああなければならないというふうに考えてきたこともあわせて申し上げたいと思います。
  115. 大原一三

    ○大原委員 直前に細川総理から聞かされたということであります。しかし、出した以上はやはり責任を持ってもらわなきゃいかぬわけでありまして、あんな出たり引っ込んだり、また出たりでは困るわけですね。だれも相手にしなくなっちゃう。この問題は、将来の国民負担を占う一番大事な問題でありますから、出す以上はやはり責任を持ってもらわなければならぬ。  私は、細川さんの気持ちはわかるけれども、しかしその担当部局は大蔵省でありますから、よほどしっかりした根拠なしに、思いつきでプラス四%というような案を出されて、だれが計算したか知らないけれども、僕が計算しても七%なら大体採算に合うわな、二年間の減税を取り返しをして。そしてとんとんでその失いけるだろうくらいはだれが見たってわかるわけでありますが、余りにも責任のなさに、いささか私も財政の中へ足を踏み込んだ人間の一人として情けないなと思ったのですよ。  だれが責任持つんだ。あれだけの大事な問題を提案しておいて、細川総理一人の責任にするのも私は非常に問題があったと思います。そこらは大蔵大臣、今後またいろいろの提案があると思いますけれども、ひとつしっかりしていただかないと国民を惑わすもとになりますので、お願いをしたいと思うのです。これは答えは要りません。  そこで、特別減税についてでございますが、余りこればかりやっていると時間がありませんのでお答え願いたいと思うのでありますが、この国債は一年限りでございましょう。それで一年後には返すわけですね。その辺の赤字国債法、どういう段取りになっているのですか。いかなる種類の国債を発行して、償還はどうするのだという話。
  116. 竹島一彦

    ○竹島政府委員 減税のための財源といたしまして特例債をお願い申し上げておりますが、これは種類といたしましては、いわゆる短期国債を考えております。  それで、先ほど来出ております、年内に行われることになっております税制改革の結論を得まして、今回発行いたします国債の償還財源、償還方法の具体的検討をさせていただきたいと考えております。
  117. 大原一三

    ○大原委員 そこでお伺いするのでありますが、政府・与党間の話し合いは今どういうふうに進行しているか。総理の予算委員会答弁によれば、今会期中には結論を出して、そして今年内に法案化して出します、こういうふうに答えていらっしゃるのですが、現在の政府・与党の打ち合わせの進行状況、ここではっきりしていただきたい。
  118. 藤井裕久

    藤井国務大臣 これは与党の問題でございますので私が余り踏み込んで申し上げるのはいかがかと思いますが、先ほどの問題が決着したときに連立与党の代表者の方々が合意された内容は御承知と思います。とにかく平成六年度は先行的な景気対策としての減税をやる、本格的な税制のあり方については年内に結論を出して実現を図る、こういう連立与党の代表者の方の合意があります。  それに基づきまして、実際の協議会は二月十七日に発足をいたしておりまして、既に、週二回ほどのペースと承っておりますが、審議を進めておられるように聞いておりますし、この協議会では六月ぐらいまでには結論を出したいというふうな方向で進んでおられるように承知をいたしております。
  119. 大原一三

    ○大原委員 それでは大蔵大臣にお伺いしますが、大蔵省としての望ましい結論はどういう内容のものだったらいいのですか。
  120. 藤井裕久

    藤井国務大臣 今連立与党の協議会が議論されている方向は望ましいものであると承知をいたしております。
  121. 大原一三

    ○大原委員 連立与党で行われている方向というのがわからないのですよ。事務当局も参加しているでしょうから内容説明してほしい、わかる範囲で。これは自民党のときだって、自民党からも出ていくし、政府の方も出てきて、大蔵省がいちゃもんつけて、まあしょうがないや、この辺で、こうくるわけだから、もうちょっとざっくばらんに、今度は主税局長答えてください、たまには。
  122. 藤井裕久

    藤井国務大臣 なるたけ政府委員でない方がいいという皆様方の御決定でございますので、答えさせていただきます。  先ほど申し上げました連立与党代表者会議合意文書の中にございます方向でございまして、所得、資産、消費の三分野のバランスのとれた税制改革を目指す、こういうことでございまして、私どもの考えている方向と同一の方向ではないかと想像いたしております。
  123. 大原一三

    ○大原委員 それでは具体的に伺いますが、消費税は話に入っていますか、増税。
  124. 小川是

    ○小川(是)政府委員 先ほど大臣から御答弁いたしましたとおり、与党内の協議の状況でございますが、私どもも事務方としてお手伝いをしているところがございます。  その知る範囲で申し上げますと、協議会の中には三つのグループができておりまして、年金・医療等福祉に関する小委員会と行財政改革に関する小委員会と税制の基本に関する小委員会、この三つの小委員会がそれぞれ現在毎週二回ずつ開いてやっておられます。その上にいわば協議会があるという形でございまして、現在の状況は、それぞれ、福祉の問題あるいは行財政の問題、税制について、現状について、関係の省庁からヒアリングをする、あるいは外部の方からヒアリングをするという形で、この勉強、検討を進めていっておられるというふうに承知をいたしております。  私ども、実は税制の基本に関する小委員会には自治省の税務局とともに事務方としてお手伝いをし、現行税制の状況あるいは問題点といったようなものを御説明をいたしております。その中には、当然のことながら所得税もあれば法人税もあれば消費税の問題もあるわけでございます。
  125. 大原一三

    ○大原委員 所得税お話は後の質問の方に譲るとして、自民党の方で今与野党折衝をしていただいていますが、平成六年分所得税特別減税のための臨時措置法に関する修正案というのは、事務当局、ごらんになっていますな、自民党から出された案。それに、附則に、平成七年以降の所得税制については——大臣もどこかで来年も続けてやりたいと。そうじゃないのですか。やりたいのでしょう。所得税の減税は引き続いてやりたい、消費税の増税ができるならば。  そこまでは言っていないけれども、そういう気持ちであることは間違いないと思いますので、平成七年以降の所得税制、「速やかに、税制全般の在り方について検討を加えて税制改革を行い、抜本的な所得税の減税を行うものとする。」さらに次に、行政改革についてもこの法律案の附則に入れてほしいという提案を自民党はしておりますので、事務当局、大蔵当局もこの問題について十分検討していただきたい。結論は後から理事会でおやりになると思いますので、お願いをしておきます。  次に、租税特別措置法でございます。余り時間がありませんので飛び飛びになると思いますが、租特の減収額はふえていっているのですか、減っていっているのですか。昔は租税特別措置一覧表というのを出して、個人と企業とに分けてやっておりましたが、最近の傾向はどうなっているのですか、教えてください。
  126. 小川是

    ○小川(是)政府委員 租税特別措置による減収額につきましては、実は平成六年度はまだ作業中のところがございますが、直近のところで平成五年度の予算ベースでございますが、約一兆円でございます。これは交際費課税の特例による増収分を差し引いたものでございまして、それを加算いたしますと約二兆円の租税特別措置による減収額でございます。  なお、その最も大きいのが、例えばマル老、老人の少額預貯金の利子の非課税であるとか、あるいは生命保険料控除といったようなもの、これが約八千億ございます。それから、例えば住宅関係で五千億といったようなものが大きなものでございます。
  127. 大原一三

    ○大原委員 いやいや、ふえているのか減っているのかという話、傾向。
  128. 小川是

    ○小川(是)政府委員 傾向といたしましては、平成二、三年あたりをピークといたしまして、その後減少傾向に転じております。最も大きなものはマル優、少額貯蓄の利子の非課税を改めてきたといったようなところが効いていようかと存じます。
  129. 大原一三

    ○大原委員 土地税制についての特別措置の減収割合、これは宅地も入れてですよ。土地、住宅、これは特別措置の減収額の中でどういう位置づけになっていますか。
  130. 小川是

    ○小川(是)政府委員 土地関係につきましては、土地の譲渡益課税の特例の拡充あるいは縮減による増減収見込み額につきましては、従来から、そうした改正が土地取引の売り手買い手にどういう影響を与えるか、必ずしも税率を引き上げたときに増収になる、下げたから減るというものでもございませんので、租税特別措置による増減収額には計上いたしていないのが実情でございます。
  131. 大原一三

    ○大原委員 いや、ないからお聞きしたのでね、あればわかったのだけれども。  そういうことでございますが、実はまたこれも申し上げておかなければいかぬのです。後で細かい議論があると思いますが、現在のバブル不況に対応する土地政策として、自民党は政府案にないものを幾つか提案をしております。それを大蔵当局としても十分検討をしていただきたい、こう思うのであります。  その中で、地価税の問題でございますが、これを二年間ストップしろというと六千百億円減収になるようでありますから、これはとても大蔵省がうんと言う話ではないようであります。しかしながら、とにかく検討はしていただく価値があるだろう。  と申しますのは、地価税、二年間徴収していただいているのでありますが、五年後に見直すことになっているのですね。我々が自民党税調でちょうちょうはっしとやって、反対論のある中で、これほど紛糾した税制はありませんでした。私も若干まとめ役に回って収拾したのがこの地価税五年後見直しということでございますが、大蔵当局としては、見直しを控えて、今地価税の性質についてどう考えていらっしゃるか。  六千百億円の大事な税源であるというだけではなくて、地価税の性格論からいって、五年後といったらことしか入ってあともう二年でしょう。ですから、それをどう考えていらっしゃるか、まずお聞きしておきたいと思います。
  132. 藤井裕久

    藤井国務大臣 もうよく御承知のとおり、地価税は、平成元年の土地基本法に基づいて、俗な言葉で言いますと、土地を持っていると得するということではなく、やはりどういう資産であっても同じような関係になっていなければいかぬということから出てきた、それなりのコストがかかるということから出てきたと思います。したがって、あれは単にバブルの一時的な現象ではなく、基本的な土地税制のあり方、そして、資産、所得あるいは消費のバランスの一環でもあったというふうに考えております。  五年ごとの見直しの問題はそのとおりだと思います。この問題は、固定資産税とあわせて、いわゆる土地に対するコストがどうなっていくのかということを見ながらこれを再検討することだと存じますので、五年後の見直しのときには、当然固定資産税、地価税あわせた形でのコストの観点からいろいろな検討が行われるものと考えております。
  133. 大原一三

    ○大原委員 そこのところは大臣と私の認識が多少違うのですね。地価が高騰して、とにかく経済のアキレス腱とも言えるほど高騰した。それに対してやはり特別対策をとらなきゃいかぬということで、五年の時限立法と言いたいところでございましたけれども、土地の高騰を鎮静化させるために導入した税制だ、私はこう思っております。  だから、税制というのはいつも後手後手になってしまうだよ。物を考えて、こういう制度をつくって鎮静化させようと思ったころと、法案化して国会で議論をして通るときとは、大分タイムラグがあって、政策の発動が機敏に行いがたいというのが税制の特徴のようですね。これは外国でもそうです。これが発動して動き出して、機能したころには地価が下がり出しちゃった。いや、これはちょっとひどいじゃないかという議論が、今ほうはいとして起きているわけなんだ。そういう意味で、政策のすれ違いがこの税制にはかなりあったのじゃないかな。  そういう意味で、政権党であったら、二年ぐらいストップして、さらにまた地価が上がり出したら、いわゆるトリガーシステムというのか、引き金を引いて、税率も決めるし、施行日も決められるような弾力的な税制にしておいたらいいのじゃないのかな、こういう議論がその背景に多分にあったと私は思う。私もそういう主張をさせていただいた一人でありますけれども、その辺のことも十分御検討を今後おやりになっていただきたい。  今後と言ったらいかぬのか。きょうやってもらわなければいかぬのです、自民党案が出ておりますので。委員長、そこらも含んでひとつよろしくお願いをしたいと思うわけであります。  その辺、日本の地価の高騰については、この前も予算委員会大蔵大臣と大分やり合いましたけれども、これが全部日本経済の裏側に張りついてしまって、現在の資産デフレという問題が、土地に起爆して、土地に原因があって資産デフレを生んでおる。とにかく九〇年まで、五年前に対して一千四百兆円ぐらいふえているんですよね、地価が。それに連動して流動性もふえてくるし、株も六百五、六十兆円、五年間で膨れているんですね。  それが、株は見事にその膨れた分が吹っ飛んでしまった。地価についても、一千四百兆ぐらいふえたものが、現在恐らくその六、七割が減額になっているのじゃないかな。それが、あるいは金融システムを通じて全部の企業にへばりついてしまっているのですね。これが現在の資産デフレ、不況の一番最たるものだと思うのです。  そういう意味で、きょうは議論はしませんけれども、この前、いわゆる金融機関の不良債権の処理の問題について、これはすぐれて大蔵省で検討していただきたいと申し上げたのが資産の再評価問題。まあ現在藤井大蔵大臣、にやにや笑ってよくわかっていますと、議論をした仲間ですから。大蔵大臣は、それもいい知恵だなとは言わなかったけれども、とにかくそういう手法もあるということですね。  そういったことで、ここでは、税制でありますから、地価税についても十分そういった配慮が必要ですよ。六千百億円入るようになった、来年は一兆円になるだろう、これは金輪際手放しませんよということがないように、地価税の生い立ちの経緯を十分反省しながら税制としては考えていってほしいな、こう思うのです。主税局長、どうですか。
  134. 小川是

    ○小川(是)政府委員 平成三年度の税制改正におきまして地価税が創設されたときの論議は、先ほど大臣からお話し申し上げましたように、まずこれは短期的な当面の地価対策、高騰に対応して、これを引き下げるために施策として何か講じなければいけないということではなかったと存じます。  もとより、こうしたものが論議をされるようになった契機というのは、いわゆるバブル時代における地価の高騰であったと存じますが、なぜ地価税を必要とするかというのは、なぜ我が国の土地がこのような高騰をするのだろうかということをさまざま御議論をされました結果、一つは、土地を持つ者、持たない者、公平性の問題がある、あるいは資産に対する課税というものをもう少し充実する必要がある。それから、土地とその他の資産との間では、土地については保有コストが低くて資産として有利性がある、持っていれば決して損をしないといった特性がある、こういったことが御議論になったと存じます。  そうした議論は、地価の高騰と、その前々年でしたか、成立しました土地基本法の成立というものが大きかったと思っております。  当時の議論は、保有課税として仮に妥当だとして、固定資産税との関係をどう考えるのかということがございました。したがいまして、固定資産税の評価が今後どうなっていくか、総合税負担がどうであるかということを見直しをやる必要があるというのが、この五年見直しの規定が設けられ、論じられた趣旨であったと存ずるわけでございます。  いずれにいたしましても、地価が低下して、景気の観点からこの地価税を停止するという考え方は、地価税の創設から見まして、さていかがなものかという感じがする次第でございます。
  135. 大原一三

    ○大原委員 こればかりやっていると時間がなくなってしまうのですが、主税局長と私との認識のずれが大分あるようですね。保有課税として恒久税制として導入したものであると言わんばかりの御答弁でありますが、そこはちょっと違うのですよ。さっき申しましたいわゆる土地の高騰抑制ということでありますから、そこらの考え方はやはりいま少し検討していただかないと大変なことになるのじゃないかなという感じがいたします。これも検討をしておいてほしいということであります。  次に、自民党が提案しております土地譲渡益課税の特例というので、一部優良宅地について三〇%を二〇%に下げる、これは結構なことです。ただ、自民党としては、今のバブル不況の実態にかんがみ、土地譲渡所得については六年、七年分の二年間に限り二〇%に下げてほしい、こういう要望が出ております。これは経済効果としては、土地税制としては非常に重要な目玉ではないかなということで提案をしているわけであります。  それと同時に、法人についても一〇%の超過課税を五%に引き下げてほしい、こういう提案をしておることを大臣御存じですね。  それから、現在のいわゆるバブル不況にかんがみまして、赤字法人が企業再建をする場合に、土地を売った場合には損益通算を認めてほしい。つまり、一億円の赤字がある。土地は持っているのだけれども、これを売れば何とか赤字の再建ができるという場合に、土地を売った場合には、その赤字を補てんする範囲内において通算を認めてほしい。個人の場合については現在通算をやっているわけでしょう。だから法人についても緊急避難的で結構だから、やはり二年間だけでいいから企業のリストラのために新しい制度を導入してほしいというのが第三番目であります。  それから同時に、登録免許税にはしょっていきますけれども、まとめて申し上げますが、これは政府案においては固定資産税の評価が来年から一遍に上がるので困るから、四〇、五〇という二段階で認められております。それに若干プラスアルファをつけていただいて、三五に下がらぬかという提案が自民党の提案でございます。  まとめて申し上げましたけれども、後で理事会なり委員長の手元でこの問題については十分御検討をいただきたいと思うわけであります。  それから、有限会社の例の三百万円、これはもう当然やるべくしてやった。我々も毎度前々から主張をしておったわけで、株式会社については既に手配がしてあって、有限会社は八年で結構だからということでこれはしてきたものだと思うのですね。これは結構なお話であります。  ところで、商法改正に伴う株式償却問題がございます。これが入りますと、いわゆる五%の範囲内で自己株が持てるようになるのですね。それを社員に配当する、株式配当。あるいはまた給与として株式を渡す。賞与として渡す。さらにまた自己償却をする。  渡す場合はいいのだが、償却の場合にこの特別措置法においては、いわゆる源泉徴収だけはやめましょう、三五%、二〇%の源泉徴収はやめましょうということになっているのですね。みなし配当課税まで、非常にこれは難しい議論でありますが、突っ込んだ議論はできなかったのか、非課税を。その辺はどうですか。  これはこれとして、私は何も批判しているわけではないのですよ。おたくは前証券局長でしょう。いい主税局長が出たんですから、そこまで突っ込んだ議論はしなかったか、そこまでできないのかということを言っているわけです。いかがですか。
  136. 小川是

    ○小川(是)政府委員 委員が、本年の有限会社の最低資本金を満たすための出資に充てるための配当について、所得税を非課税とする措置及びみなし配当について源泉をしないということについての措置を踏まえられた上で、本質的にみなし配当課税そのものをやらないということは議論の対象にならなかったのかというお尋ねだと存じます。  この点につきましては、御要望を長年にわたって議論をしてまいりましたのは、みなし配当課税というのは所得税と法人税をつなぐ税制の最も基本的な部分である。やはり、株主の出損金である資本金あるいは資本準備金といったところにお金が入るときには、所得税が課税された後のものが入るというのが現在の法人の出損金でございますから、その所得税の課税なしに、いわば株主の持ち分である利益金あるいは利益準備金から資本に移るわけにはいかないというのが税制としての基本的な考え方でございます。そのために今回のような措置をとったというところでございます。
  137. 大原一三

    ○大原委員 いや、今回の措置が悪いと言っているわけじゃないです。非常によかったと思うのですよ。  そこで、アメリカはこの株式償却の先進国だな、自己株取得の。アメリカあたりはどうなっているのですか、これは。日本みたいなことをやっているのですか。非常にわかりにくい税制で困ったものだなと思うのですが、どなたが答える。
  138. 日高壮平

    ○日高政府委員 自己株式取得に関しますアメリカの考え方でございますけれども、これは州によって扱いが違います。大きく分けますと二つの流れがございますが、大半の州におきましては償却だけでなしに保有も認めるというような形になっております。  ただ、先生御指摘の税制の扱いにつきましては、ちょっと私もつまびらかでございませんので、後ほど調べて御報告いたしたいと思います。
  139. 大原一三

    ○大原委員 税制を聞いたわけですよ、僕は。  そこで、小川さん、前証券局長だったね。主税局長になるとやはり意見が変わってくるんだね。前は今僕が言っているような意見だったと思うのだけれども、主税局に来るとやはり主税局の方が、言っていることは正しいけれども、これは、みなし配当課税というのはわからないのですよ。大蔵大臣もわかりにくいと言っていましたね。  本当にこんな税制、今日までやってきて、こういった場合については源泉徴収はやらないというのは結構なお話でございますけれども、まあそこまでいっぱい突っ込んだ議論をしてほしいと思うのです。時間が参りますので、一応レビューしておかないといかぬので、次の問題に移らせていただきます。  中小企業の交際費課税、限度範囲内で一〇%カットしますという、これは一体どれくらいの税収増加があるのですか。三百万、四百万の資本金に応じた控除限度を設けてあるのに、大法人は全部アウト、中小企業だけ認めます、こういう思いやりのある税制であったのだが、それも一〇%削り込もうと。どれくらいの増収があるのですか、教えてください。
  140. 小川是

    ○小川(是)政府委員 中小企業の交際費課税の問題につきましては、現在交際費、直近のところで約六兆二千億ぐらいございますが、このうち三兆二千億ぐらいが課税されております。残り三兆弱が非課税になっております。  交際費は既に全額損金算入されておりますが、資本金が一千万円以下の法人の場合には年四百万円、資本金一千万円から五千万円までの法人の場合には年三百万円までの損金算入限度額がございます。これによって二兆九千億ないし三兆円の非課税交際費が出ているわけでございます。  今回は、この限度内のものにつきまして一〇%相当額を損金不算入とするものでございますが、この改正による増収額は、平年度ベースで約八百十億円というふうに見積もっているところでございます。
  141. 大原一三

    ○大原委員 この辺の発想がよくわからないのですよ。せっかく中小企業政策として、交際費に悪いものもあるのかもしれぬけれども、中小企業、少なくとも四苦八苦して自分の企業の伸長のために、この程度のものを年間認めてあったものまで削っていこうということは、来年以降もまた削られるぞ、いよいよ大法人並みになくなってしまうのじゃないかなという危惧を持つね、普通の人だったら。  だから、この辺の発想がどうも私よくわからないのは、重箱の隅をいじるように、ああこれがあった、あれがあったで税制をいじっていったのでは余り信頼されない税制ができ上がってしまうのじゃないかなという感じがしてならぬので申し上げたわけです。  次に、使途不明金の課税の問題でありますが、これはいろいろ倫理上の問題があって、あの答申もちょっと読みました。こういうことを税金で片づけ、税制で片づけていいのかなという議論もかなりあったようですね。しかしながら、現在の状況にかんがみ、議論はいろいろあるが二年間だけやってみましょうということで導入されたようであります。  ところで、会計原則上は使途不明金はどういう扱いになっているのですか。そこを、専門家おられたら教えてちょうだい。
  142. 日高壮平

    ○日高政府委員 いわゆる使途不明金という概念は、人によってその使い方に差があるのかもしれませんが、概して申し上げれば、その使途を明らかにすることができないために税務上損金算入されない性質の費用というふうに言えようかと思います。したがいまして、企業会計上はこのような考え方、概念は実は認められていないということになります。  では、企業会計上どのような扱いになっているかと申し上げますと、税務上損金算入されない性質の費用でございましても、企業会計上は、その支出金の性格に応じまして、いずれかの費目に計上されている。例えば、その支出金の性格に応じまして、交際費であるとか寄附金であるとか、そういったそれぞれの費目に経理されて、財務諸表に反映されているという状況でございます。
  143. 大原一三

    ○大原委員 大蔵省令おっしゃいましたように、企業会計原則ないしは企業会計の慣行としては、やはりどこかで処理されているのですね、どこかで処理をされておる。  そこで、税金をこれで取ろうということの理論的整合性というのかな、会計原則との、それはどういう根拠に基づいて踏み切ったものかね。いわゆるペナルティーですか。そこらの性格がはっきりしない。いい悪いは別にして、会計論との整合性をお聞きしているわけでありますから、正確に答えてほしい。
  144. 小川是

    ○小川(是)政府委員  御指摘の使途不明金は、今回の租税特別措置法におきましては、第六十二条に規定いたしておりまして、具体的には「使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例」、「使途秘匿金」という言葉を使っているわけでございます。この課税は、使途秘匿金がある場合には、通常の法人税のほかに別途四〇%相当額の法人税を追加的に課税する。これで実質的な負担は九七%程度になるわけでございます。  今回の措置は、企業の不明瞭な支出が違法ないし不当な支出につながりやすく、それがひいては公正な取引を阻害することにもなるので、そのような支出を極力抑制するため、追加的な法人税負担を求めようというものでございます。したがいまして、御指摘の意味ではペナルティーということではございませんで、所得課税の枠内でこうした支出を抑制するという目的のために別途追加課税を行うというものでございます。また、そうした目的からいたしまして、二年間の暫定措置といたして御提案をしているものでございます。
  145. 大原一三

    ○大原委員 そこは大分議論のあるところですね。恐らく税制調査会でも、そうすんなり、この議論はいかなかったと思う。まあとりあえず二年間やってみようということになったようでありますが、この辺についても、事の善悪はともかく、やはり会計論との整合性のない課税をやたら持ってくるというのも、私は議論としては余りすっきりしないなという感じがするものだから、質問を申し上げたわけであります。  以上、特別措置の問題点を一応レビューしましたが、ここに理事さん、いらっしゃいますけれども、やはり一番大事なのは、先ほど我々が修正案を出しております土地税制について、何らか明確なお答えを出していただきたい。  とにかく、予算を三月四日に出して、審議が十分行われない。そんな状況の中で、大蔵委員会の重要法案を二日でもって上げてくれなんという、横着千万だ、これは。正直言って、自民党もやらなかったようなことなのね。  ですから、国会というのは一体何だということを特に与党の筆頭理事の皆さん方、農林水産委員会時代にも嫌というほど私、委員長時代に言われたのでありますが、とにかくこれだけの重要法案を三時間か四時間の議論で通してくださいというのは、本当に自民党も言わなかったよ、こんなことは。一人当たり二時間ぐらいの質問をずっとやっちゃってさ。  これは自民党の責任じゃないのですよ。やはり政府・与党の責任です、これは。法案をこんなにずるずるおくれて出してきて。できることなら、すべて審議一カ月半延ばしましょう、予算の提出がおくれたんだから。そして、国民生活に至大の関係のあるものは、その例外として二カ月間軽減いたしましょう、こんな暫定法をつくればよかったのですよ。そうして、もう少し十分議論しようというのが我々の議論であったのですが、こういう結果になったことは極めて残念だと私は思うのです。  酒税について、私、触れたいと思うのです。山中元税制調査会長がお見えになって、質問をしにくいのでありますが、委員長時代に私がかみついたね。とにかく大蔵省、困ったときは酒とたばこなんだよな。とにかく、糟糠の妻にへそくりないかと言って、困ったときは手を突っ込んでくるんだよ。それが成長産業ならいいですよ。成熟産業でもないんだよ。斜陽産業だ、これは。  正直に言って赤字企業が、まあ山中会長のところは乙であります、しょうちゅうが。宮崎県もしょうちゅうで、お酒飲みに行きますと、酒くれと言うと、しょうちゅうが出るのですよ。それも、あの臭いやつね。乙というやつ。それがみんな零細企業なんですよ。そこのアップ率が一番高い。その酒造メーカー、だれか来ておられると思うから、赤字企業が何割あるか、ここで言ってみてください。しょうちゅう業者とそれから酒のメーカー。しょうちゅうは乙。
  146. 窪田勝弘

    ○窪田政府委員 お答えいたします。  清酒製造業二千二百八十八社中赤字企業は七百四十社でございますしょうちゅう乙類製造業、これについては熊本国税局管内の数字でございます。つまり、熊本県、大分県、鹿児島県、宮崎県の合わせた数字でございますが、製造業者二百五十一社中八十一社が赤字でございます。
  147. 大原一三

    ○大原委員 日本の法人数の中で赤字企業が大体半分ありますね。しかし、ここは酒税をいただいている企業なんですな。だから、大蔵省のためにせっせと酒をつくって、売って、税金を三割も四割も納めていただいている企業のことなんです。その赤字企業が三割五分も四割もいるところから増税しようというのですから、これは大蔵大臣に言いたくない。一緒にやった議論でありまして、これは非常に酷な増税だよ。そういった意味では、これは大蔵省にとっては八方破れの増税ではないかと思うのですよ。  私はそういう意味で、この酒税の増税には反対であります。去年も、自民党の税調のときに私も随分大きな声を出して言ったのでありますが、零細企業が大部分なんですよ。しかも、大手企業というのはビール四社だけだ。そこの増税率は〇・七%、しょうちゅう乙の増税率は四・三%というのは何事だ、こう言いたいところであります。  大蔵省には産業政策がないんだな、酒とたばこに関しては。取れるだけ取れという政策ではないのかな。私らが主税局にいたときは、今ほど残酷じゃなかったと思うんだ。正直に言って、たばこ産業もこれ以上上げたらもうアウトだ。酒もこれ以上上げたらアウトだ。  先ほど本会議でだれかが言っておりましたが、五十九年の改正のときも、六百億か六百五十億の増税を見込んでやったところが、税金は全然上がらなかった。それはなぜかというと、景気が悪いからです。斜陽産業からそれをパイプに税金を取ろうといったって、これは大体残酷な話ですよ。私はそういう意味で、この酒税の増税には反対であります。  そういうことですから、反対をはっきり言ってしまって、これは私が反対。自民党はどうするかはこれから決めますけれども、そういう意味で、もう藤井大蔵大臣の気持ちは嫌というほどわかっているので、新進気鋭の小川君、これからも増税すると言ったらもってのほかよ。ひとつあなたの所懐の一端を述べてくれ。  私、質問の時間がなくて、これで終わります。
  148. 小川是

    ○小川(是)政府委員 ただいまもお話がございましたように、酒税につきましては、負担調整が行われましたのがちょうど十年前でございまして、その後抜本改革の中で再び行われた、それに次ぐ今回のお願いでございます。  基本的な考え方といたしましては、酒につきましては致酔性飲料である、酔いを求めるものである。あるいはのどの渇きをいやす飲料としての特性を持っておりますものですから、長らく財政物資としての税負担をお願いしているわけでございますが、近年、税負担水準が若干低下してきておりますので、その負担の回復をお願いしたいというのが第一の柱でございます。  その際、近年、しょうちゅう、これは伝統的に同じアルコールでありながら税負担が低いお酒でございました。いわゆる高税負担酒、ウイスキーがその典型でございますが、これに比べますと消費が相対的に大きくなるといったような形で、同じ蒸留酒の飲まれ方でも消費態様に変化がございます。そうしたところから、お酒の種類別に相互の税負担の公平化といった観点も考えまして、今回、税率の調整をお願いしているところでございます。  したがいまして、金額として申しますと、ビールについては基本的にリッター当たり十四円をベースにしております。それから、蒸留酒であるしょうちゅうにつきましてはリッター当たり三十七円という引き上げをお願いいたしておりますので、率的には両酒に差があるわけでございますが、従来、同じ蒸留酒でありながら税負担は相当の大きな格差があった。  また、この点につきましては、御案内のとおり、以前からEC諸国等から、同じ蒸留酒の間で余りにも大きな格差をもたらしているのは不都合であるといってガットに提訴をされたような経緯もございます。そういったところから、酒の種類別の税負担の公平の確保を図ろうということで負担のアップをお願いしている次第でございます。
  149. 大原一三

    ○大原委員 品行方正、学力優等の答弁だと思うね。それしか答えようがないと思うけれども、自分でつくった罪ですよ、これは。酒屋はつぶれちゃうよ、本当に。三五、六%の赤字というのは、これはもうどこがつぶれるかわからぬ。国税庁は来ておられると思うが、そういう実態も十分見きわめていただきたい。計画して数字だけぶっかけちゃって、千三百億入らないかもしれないと言うんだ。そこはかけてもいい、あなたと。入らぬぞ、これは。  そういう意味で、こういうところから税金を取るものじゃない。もう限度に来ているんだ、これは。たばこにしても同じですよ。そこをわかってほしいということを僕は申し上げているのです。  以上、時間が参りましたので、委員長、特に自民党修正案については最大限の配慮をし、事務局においても十分検討していただきますようお願いして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  150. 宮地正介

    宮地委員長 次に、塩崎恭久君。
  151. 塩崎恭久

    ○塩崎委員 塩崎恭久でございます。予定よりもちょっと早く始まったようでございますが、本日は自由民主党の三番バッターということで、もう既に石原委員、そしてただいまの大原委員の方から出た件について、若干重なる点が出てまいるかと思いますけれども、一時間の予定で質問をさせていただきたいと思います。  冒頭、今回の法案の問題に入る前に、先ほども大原委員の方から少しお話が出ておりました、今後の税制改革、抜本改革のあり方につきまして質問をさせていただきたいと思うわけでございます。  例の国民福祉税、歴史は夜つくられるというのが定着してまいりましたけれども、細川総理が夜中に記者会見をされて、消費税を廃止して国民福祉税を七%で新たに導入するという案であったわけでございます。この点について、総理のお言葉でありますから、本来は総理にお聞きをするのが筋かと思うわけでございますけれども、総理の御発言につきまして、まず冒頭、大蔵大臣の御所見をお伺いしたいと思うわけでございます。  一夜にして撤回をされたわけでございますけれども、そのときに、国民福祉税の提案政府提案ではなくて私個人の提案だというふうにおっしゃっているくだりがあるわけでございます。私自身も、テレビを見ておりまして、政府提案ではなくて私の提案だというのは一体どういう意味なんだろうかというので非常に理解に苦しみました。  そもそも私というのは行政府の長たる内閣総理大臣細川護煕さんであるわけでございまして、その行政府の長があの案を御発表なされたということでありますれば、やはりこれは政府の案と考えざるを得ないのかなと私は思ったわけでございますが、総理は、あれは私個人の案だ、こうおっしゃったわけでございます。  この辺につきまして、大臣の御見解、そして政府としてのあの国民福祉税の位置づけといいましょうか、これについてまずお言葉をちょうだいしたいと思います。
  152. 藤井裕久

    藤井国務大臣 今後のあるべき税制については、既にるる申し上げておりますように、昨年の八月以来、これからの福祉社会を健全に構築していくには今のような税制では限界がある、所得課税の軽減、消費課税の充実が必要である、こういうことを内閣発足以来言い続けてまいりました。  それを受けてといいますか、むしろ専門家の立場から税制調査会は同じような御結論を出され、平岩委員会もまた同じような結論を出された。そして、その上に立って政府・与党の皆様、特に与党においては、与党内部のことを言って大変恐縮ですが、政策幹事会等々の各機関を通じていろいろ御議論がありました。  いろいろな意見があったことは事実でありますが、そんなことを前提にしながら総理があの結論を出されたわけであります。私の承知をいたしておるところでは、個人という意味は、正式に閣議にかけていないという意味において言われたと思います。しかし、当然総理大臣として言われたというふうに認識をいたしております。
  153. 塩崎恭久

    ○塩崎委員 今のお言葉ですと、閣議にかけていなかったというお話でございますが、やはり内閣総理大臣たる細川護煕さんのお考えということでありますから、政府の案と考えてもいいと、ほぼそう考えてもいいというお言葉であると理解してよろしいわけだろうと思います。  ということになれば、やはりこれはかなり責任を感じていただかなければいけない発言であったと思うわけでございます。あのときの記者会見では、総理はプロセスに問題があったということをしきりにおっしゃったわけでありますけれども、むしろプロセスよりも言ったこと自体が問題にされるべきであると私は思うわけでございます。  今大臣がおっしゃったように、将来我々がちょうど高齢、まあ六十五歳を超えるころには四人に一人が六十五歳になるわけでございますから、中長期的に税制改革を何とかしなければいけないということは、ひとしく我々政治家としては考えているわけでございます。  しかし、それを民主主義のルールにのっとって、そしてまた国民的な議論を経た上で、あるいは今回の場合にはそもそも連立与党の中での議論が尽くされていなかったわけでありますから、そういう点では単なるプロセスだけではない、もっと重要な過ちを犯されたのではないかなと私は思っているわけでございます。大臣いかがでございましょう。
  154. 藤井裕久

    藤井国務大臣 今お話ししたことと同じになるのでございますが、やはり正式の閣議を経ていない等々を言われていると思います。  しかしながら、同時に、あのような物の考え方というものは、今申し上げましたように新内閣以来ずっと言ってまいったことでございますし、また塩崎委員お話しのように、そういう多くの方々が考えていらっしゃるという事実もあります。  そういうものを踏まえて総理が発言をされたと思いますが、そのときやはり閣議を経ていない等々のことを言われたと思いますし、むしろあれをもとにしてこれからいろんな皆様方、国民の皆様方の御意見をいただく一つの素案であるというか、草案という言葉を使われております。草案であるというふうに御理解をいただければありがたいと思います。
  155. 塩崎恭久

    ○塩崎委員 確かに一つの素案であったかとは思うわけでございますし、またこれからそれが素案となって議論が進んでいくことは間違いない。しかし、その素案がなくても多分議論は進んでいたのだろうと思うのです。  あの記者会見は、別に日本の中で夜中に起きている人たちだけが見ているわけではなくて、海外ではもう次の日すぐに、たしかアメリカの財務長官あたりも歓迎のコメントを寄せていたわけでございますから、全世界に向かってしゃべったという認識は総理としては持っていただきたいと思うわけでございます。  もう一つ私は、おわび会見のときに気になったことは、税制調査会についての位置づけでございます。この言葉を起こしたものを見ますと、「税制調査会というのはいわば国民を代表する有識者の方々によって構成されている機関でございます」、こういうふうにおっしゃっているのです。  確かにいろいろなバックグラウンドの方々を選んで税制調査会というのはできているわけでございますけれども、私はあのときにちょっと思ったのは、あたかもこの税制調査会が国民の意見を代表しているようなお考えで総理はおられるのかなというふうに思いました。  やはり国民の意見を代表しているのは選挙で選ばれている我々であるわけでございますし、議会がそのためにあるわけであります。税制調査会、特に政府の税制調査会というのは一つの場であって、政府がお願いをして意見を出してもらうという一つの場にすぎないのだろうと私は思うわけでございます。  もちろん、この裏には大蔵省の振りつけとか等々いろいろあるのはわかっております。しかし、それだけの位置づけとしてあるべきでありましょうし、本来の議論というのはやはりこの大蔵委員会の場でもあり、あるいは予算委員会の場でもあり、そして本会議の場であり、そして両院であるわけであります。その点、特に総理を振りつけられる立場にもあるかもわからない大蔵大臣あるいは主税局長、特にこの税制調査会が国民の意見を一〇〇%代表しているというような考えはお持ちにならない方がいいのではないかと私は思っているわけでございます。  もちろん有益な意見が出てくることは十分わかっておりますけれども、あの記者会見のときの言葉の中にちょっとこういう気になるところがあったわけでございますが、大臣、いかがでございましょう。
  156. 藤井裕久

    藤井国務大臣 私は、今塩崎委員の言われたとおりだと思います。税制調査会は総理大臣の諮問機関でございますが、そのメンバーの方は、それはおっしゃもように各グループから出ていらっしゃいます。経済界の方もいらっしゃいます。労働界もいらっしゃいます。主婦連もいらっしゃいます。専門家の、いわゆる有識者という方もいらっしゃる。そういう意味においてはいろいろな部門の方を代表していられるのは事実でありますが、同時に、本当の国民の意向というのは、その代表である国会であり、そして多くの国民の皆様だと思います。  ですから、まさにああいうことで一つの案をもとにしてそういう皆様の意見をこれから伺う草案であった、こういうふうに考えておる次第でございます。
  157. 塩崎恭久

    ○塩崎委員 二月八日の連立与党の合意につきましては、先ほど大臣からもお話がございましたのでもう繰り返して申し上げませんけれども、私もちょっとフォローしてなかった部分があるかと思います。予算委員会だったかと思うわけでございますが、この年内に法律を成立させるということについて、細川総理は内閣の公約として御発言をされたように記憶をしているわけでございます。その点について大臣の御見解をお聞かせいただけますでしょうか。
  158. 藤井裕久

    藤井国務大臣 いろいろな経緯はもう申しませんが、実は二月十八日に税制改正要綱というのを政府、閣議において決定をいたしております。その中に、年内に税制改革の実現を図るという文句があります。これは閣議において決定したものであります。その意味において今のお言葉は正しいものと考えております。
  159. 塩崎恭久

    ○塩崎委員 閣議が正式に決定をして年内に法律を成立させよう、こういうことであろうかと思うわけでございます。そうしますと、当然大蔵大臣としても責任のあるお立場であろうかと思いますが、大臣のその辺の責任についての御見解、いかがでございましょう。
  160. 藤井裕久

    藤井国務大臣 税制改正要綱は、これは閣議で正式に決定したものであります。広く皆様にも見ていただいているものでありまして、その責任は内閣として重いと考えております。
  161. 塩崎恭久

    ○塩崎委員 そうしますと、年内の成立が期待をされるこの法律の中身でありますけれども、今回減税が一年限りということで、先ほど竹島次長さんの方からも短期国債で返すというお話がありました。この決めようとしている内容は、一体どういうものを決めようとしているのか。  つまり、この連立与党の合意書を見ましても、いま一つよくわからないところがございます。これは「減税と税制改革に関する連立与党代表者会議合意書」、「一、」こというのは二つありますから、一つが減税、もう一つが税制改革、こういうふうに理解していいのだろうと思うのです。  この税制改革の中身が、減税財源の対策を考えるのか、それとも二十一世紀のあるべき税制の姿まで展望して中長期的な改革をここでやるのか、やり遂げてしまうのか。つまり、二十年、三十年の使用に耐えるだけの税制体系をつくり上げるということになるのか、これについてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  162. 藤井裕久

    藤井国務大臣 先ほど来の経緯をいろいろ御説明した流れの中から御理解をいただけると思いますが、今後のあるべき税制について御議論をいただいているのがこの税制改革に関する協議機関だと思います。  これは二月十七日に発足をいたして、既に先ほど申しましたように週二回議論をしておるわけでございます。その中に「減税とその財源について」という言葉もあります。ありますが、今塩崎委員のおっしゃった言葉からいえば、減税の財源の問題をやるのかというお話でございましたが、それも入ってはおりますけれども、ここに基本的に書いてあることは、あるべき税制であると御理解をいただきたいと思います。
  163. 塩崎恭久

    ○塩崎委員 そうしますと、かなり長い目で見た税制改革を断行しよう、こういうふうに理解をすることが正しいと思うわけでございます。  ここで、消費税が導入されるまでの経緯をずっと引っ張り出してみました。  昭和五十三年に自民党、大臣もおられたと思いますが、五十四年度の税制大綱を決定して、一般消費税、これを五十五年度実施を明記したというのが最初だったかと思うわけでございます。  今でも記憶がございますけれども、当時の大平総理が選挙で、一般消費税でいわば失敗をしたといいましょうか、自民党が大敗北をした。それがもとで短い間に二回も選挙があったことをきのうのように思い出すわけであります。  その後、売上税法案が廃案になって、それから、昭和六十三年にやっと十年越しで消費税が導入されたというわけであります。  この間には、もう与党の理事の皆様方はみんないなくなってしまいましたけれども、随分頑張って消費税反対の運動をされて、そしてまた、国民的な議論も随分あったと思うわけでございます。十年間の過程の中で、いろいろな議論が、そしてまたデモもいろいろあったでしょうし、職場での議論もあったろうし、テレビでの議論もあった。そういうのを経て十年間で出てきたわけでございます。  最初、自民党が出してきた一般消費税というのはネット増収を考えておったはずでございます。それから、今度売上税のときには増減税チャラということで考えていた。最終的に消費税ができたときにはネット減税になったわけであります。  この間の七%の国民福祉税、あれは恐らく減税を含めてネットチャラを考えておられたのだろうと思うのでございますが、今回の二十一世紀を展望した税制改革ということになりますと、これは増減税チャラというわけにはいかないような気がするわけでございます。今回、年内に法律を成立させると言うからには、もうあと何カ月もないわけでありますから、ネットで増税になることを考えた上の議論なのかどうか、この点について大臣の御所見をお聞きしたいと思います。
  164. 藤井裕久

    藤井国務大臣 ここには今、山中大先輩もいらっしゃるのでございますが、昭和五十年代ではなく、昭和四十五年、当時の自由民主党の政調会が、当時できましたEC、ここに付加価値税の勉強に行かれたころからずっと歴史は続いていると私は思います。少なくとも二十五年の歴史を経ているのがこの付加価値税であり消費税であると考えております。  当時の自由民主党政務調査会の報告書は全部読んでおりますが、今と同じように、国際的になじむ税制という言葉、それから、福祉社会のあるべき姿からいってこの方向は指向しなければいけないということ、あるいは、個別間接税の矛盾というものがみんな書いてあります。そういう延長線上に今日の税制の議論というのは続いているように私は思います。  したがいまして、半年、一年の問題ではない、二十五年間の蓄積に基づいて今この時点で何がしかの結論を出そうというふうに御理解をいただいた方がいいのだと思っております。  その税のあり方をどうするかは、今まさに議論をされておるところでございますもので、政府の立場にある私からは答弁はちょっと差し控えさせていただきたいと思います。
  165. 塩崎恭久

    ○塩崎委員 二十五年の歴史というお言葉でございますが、今回国民福祉税が出てきたときに、名前が福祉という名前で何とかなるかなというふうにお考えになった節もあるわけでございますけれども、あのときに、福祉税の七%の根拠はというところで、腰だめだというようなことで、よくわからないということでつぶれたような気がするわけでございます。  その後三つの小委員会をおつくりになって、福祉・医療、行政改革そして税制の基本、この三つをそろえて今御検討されているわけでございますけれども、福祉の問題あるいは医療の問題、それから行革の問題を踏まえなければこの税制はつくり上げられないということをこれであらわしているのだろうと私は思っているわけです。  それは正しいことだろうと私も思っているわけでございますが、さあ果たして、消費税を導入するまでの二十何年間、あるいは今日までの二十五年間でございましょうか、それまでの議論と、今、福祉・医療をどうするのか、あるいは行革、規制緩和を絡めての話でしょうけれども、これをどうするのかということについて国民的な議論が行われてきているだろうか。あるいは、もう既に起きているだろうかということを考えるといささか寂しいものを感じているわけでございます。  こういった問題については今議論をされているというふうにおっしゃいましたが、それはまだ連立与党の小委員会の中で議論が行われているだけのことだろうと私は思うのです。  ですから、それは、消費税を導入するまでに、少なくとも表に出てきて十年間かかっているわけでありますし、何もこれからも新しい税制をつくるのに十年かけろということを言っているわけではないのですけれども、やはり大事なことは、今度は福祉をどうするのか。例えば福祉、介護、こういったものでどれだけの水準を国民が望むのかということをまず第一に踏まえなければいけない。  これは、福祉ビジョンというのが三月に出てくるじゃないか。しかし、これもさっきの税調と同じでありまして、厚生大臣の諮問機関が上げてくるだけのことであって、議論はそこからスタートをすべきだろうと思うのです。それは国会でも議論しなければいけないし、国民的な議論もしなければいけない。そういう議論なくしていきなり決めようというのも、これはなかなか難しい話ではないかなと私は思うわけでございます。  先ほど、六月ぐらいには結論が出るというふうにおっしゃいました。六月といえばあと三カ月しかないわけでありまして、二十一世紀の二十年、三十年、場合によっては五十年先の福祉・医療のあり方について、国民がどの程度のレベルのサービスを望むのかということを踏まえた上でその答えを出そうとするのは、ちょっと時間的には難しいのではないかなと私には思えてならないわけでございますが、大臣、いかがですか。
  166. 藤井裕久

    藤井国務大臣 今の御指摘の点も大変大事な点だと思います。結論が六月に出たとしても、それから大きく世の中の皆様に、こういう方向でいかがかというキャンペーンをしていかなければいけない、これは当然のことだと思います。  私は、昭和五十六年に大蔵政務次官をやっておりましたときは、当時の渡辺大蔵大臣の命によって、ほとんど東京にはおらず全国の行脚だけをやっておりました。そういう大キャンペーンというものが当然必要だと思うし、その中で、本当の国民の皆様が求めている方向というものを模索し、出していくということではないかと思います。
  167. 塩崎恭久

    ○塩崎委員 今、大臣もかつて全国行脚をされたという力強いお言葉がございました。私も日銀におったものですから大蔵省に友達がたくさんおって、一般消費税のときにも随分いろいろなパンフレットをつくったり本をつくったり、学者に動いてもらったり、いろいろなことをやっておられたわけでございますが、まだまだ福祉の問題についても国民的にはよくわかっていない気が私はするわけでありまして、なぜそんなに六月までに頑張らなければいけないのか。つまり、頑張ることはいいのですけれども、議論なくして結論を出すこと自体はいけないというふうに私は思っているわけでございます。  大臣の所属しております新生党の羽田党首も、いつもオープンな議論をということで、本会議でも紙も見ずにいろいろ御答弁されておりまして、私もそれがいいと思います。  しかし、先ほど国民的議論というお話がありましたけれども、この連立与党の合意書は、「連立与党の合意を得て、年内の国会において関係の法律を成立させるものとする。」ということですから、少なくとも自民党の合意は要らぬ、それから国民の合意も要らぬというふうにとられても不思議はないような気がするわけでありまして、これは極めてひとりよがりな合意だなというふうに私は思いました。  やはり、我々の将来を面倒見てもらわなければいけない福祉でありますから、それのもとになる税制でありますから、国民的、そしてまた国会の中の幅広い議論を得て、まさに与野党一致して本当はやらなければいけない問題であろうと思うのです。しかし、どうもこのやり方を見ていると、連立与党だけですべてを決めますよ、多数があればいいですねというふうにとられるような合意文書だというふうに私はとりました。ですから、もう別に答弁は要りませんけれども、ぜひそういうような観点に留意をされていただきたいと思います。  ちょっとしゃべり過ぎましたが、次に酒税の関係でございます。大臣は、私は個人的にはよく存じ上げなくて恐縮でございますが、お酒はお好きでございましょうか。
  168. 藤井裕久

    藤井国務大臣 大変好きでございます。特にしょうちゅうが好きでございます。
  169. 塩崎恭久

    ○塩崎委員 先ほどもちょっと申し上げましたけれども、最近連立与党と大蔵省のバイブルともいうべき税制調査会の中間答申、ここに「酒税・たばこ税」というのがございます。「酒・たばこについては、特殊なし好品として、諸外国と同様、従来から」云々、こう書いてございます。酒、たばこというのは特殊な嗜好品というふうに書いてあるわけでございます。  嗜好品というのは、私さっき国語辞典を引いてみました。主食、副食物のほかに好きで食べたり飲んだりする品物。つまり、好きじゃなかったら食べない、飲まないということだから特殊だねということだろうと思うのです。  しかし、大臣もしょうちゅうがお好きだということでありますから、大衆的な大臣であります藤井大臣がお飲みになるぐらいでありますから、どうも特殊というのはいかがなものかな。よほど変わったものを、アフリカのどこかの山奥へ行かないととれないような食べ物だったら特殊な嗜好品でも結構かと思うわけでございます。しかし、もうそういう時代ではないと思うわけでございます。  ここに昭和四十九年三月十六日閣議了解というのがございまして、ちょうど第一次オイルショックの直後でございます。「石油価格の改定と物価安定対策の強化について」、これは章ですけれども、そこに、「基礎物資、生活関連物資等の価格抑制のための緊急対策」、言ってみれば、価格統制はしないけれども値上げをするときは事前に了解をとってくださいという緊急措置をとったわけです。  五十三の項目がございまして、その中に残念ながらしょうちゅうは入っておりませんが、ビールというのが入っているのです。つまり、ビールというのは、別にビールだけのことを言うつもりはないのですが、少なくとももう昭和四十九年でも基礎的な物資であり、生活の関連の物資だということをまさに政府が認めているわけですね。  ですから、税制調査会が「特殊なし好品」と書くのももういいかげん、財政物資というも言葉をよくお使いになりますが、それは何か戦前の古臭い感じがして、戦費調達のにおいがぶんぷんする。それはちょっと違うのじゃないだろうか。  そういうことになれば、先ほど大原先生もおっしゃったように、金がないときはたばこか酒だねという発想を保つがために、何か税調でも特殊な嗜好品という扱いにいつもしておこう。だから税金は上げてもいいんだというエクスキューズを事前に与えているような気がしてならないわけでありまして、今回、自由民主党はこれに反対だということでございます。  大衆課税ということでありまして、まさに大衆の飲むもの、特にしょうちゅうなどはそうでありますけれども——賛成の方も中にはいるようです。クロスボーティングの世界になってまいりますけれども、そういうことでありまして、今申し上げたようなことについて大臣、御所見いかがでしょう。
  170. 藤井裕久

    藤井国務大臣 特殊という言葉の使い方はともかくといたしまして、私は大変な財政物資であるということが一つあると思います。特に酒でございますが、これは致酔飲料であるということもこれに加えて考えなければいけないと思います。嗜好品ということは、押しつけて食べたり利用するものではなくて、好きな人が好きなだけ利用すればいい、食べればいい、飲めばいい、こういう趣旨のものだと思っております。  ただ、そこで、申し上げましたように、財政物資であるという一つの事実は否定できないと思います。おっしゃるように、ビールというものが今酒類の中で七割を占めております。非常に基礎的な生活になじんだ物資になっている商品であるということはもうそのとおりでありますが、同時に、歴史的に財政物資であるという面は否定できないし、致酔飲料であることも否定できないように思っております。
  171. 塩崎恭久

    ○塩崎委員 財政物資という言葉に何か我々若い者はぴんとこないところがございます。しかし、その歴史から見れば明らかなことでございますから、あえて突っ込みませんけれども。  先ほど五十九年の例が出ておりました。先ほどの本会議でも、チューハイブームだとか、あるいは値段を二度上げた後だったとかいうこともありましたけれども、値段を上げれば当然需要が減るというのは、これは経済学の大原則であります。今回、この税収見積もりを出すにも、大蔵省が計算をしておられますが、ネット増収になるように考えておられます。  この点は、本当にそうなんだろうか。ビールで九円ですか、それからしょうちゅうが今まで以上にずっと上がっているということでありますから、この見通しについて、特に、例えば弾性値というのは私はどのくらいあるのかよくわかりませんが、そもそも、値段が上がった段階で、本当にこんなに量がふえるものだろうか。その辺をちょっとお聞かせいただけたらと思うのです。
  172. 藤井裕久

    藤井国務大臣 数字は必要であれば後刻説明させますが、実は、五十九年のときに私は参議院の大蔵委員長だったのです。ですからよく覚えていますが、三千二百億増収を見込みました。それが、おっしゃるように全然増収効果がなかったと言ってもいいぐらいの状況であったと思います。  そういう経験を経ておりますので、今回は千三百億という形で、極めて規模の小さい、また御負担の可能な範囲のものであると思っております。きょうの趣旨説明でも申し上げましたように、現在価格の中の税負担の割合が下がっている分を回復する程度にしたい、こういう趣旨でございまして、規模においても、五十九年に比べると極めて小さいということは御理解をいただきたいと思います。
  173. 塩崎恭久

    ○塩崎委員 国際的に、例えばさっきビールを挙げました。しょうちゅうは国際的に比較ができませんから、ビールの税率を見ると、もう既に四四・一%になっているわけであります。アメリカが一五・四%、イギリスが三九・五とまあちょっと高いですが、ドイツは一九・九、フランス一七・五ということでありますから、諸外国に比べても日本はビールでもかなり高いわけであります。  あと酒類間のバランスという言葉がございます。その点についてまたもうちょっと後でお聞きしたいと思いますけれども、まだまだ上げてもいいよというほどの税率では決してないのではないかなという気は私はしているわけでございますが、いかがでしょう。
  174. 小川是

    ○小川(是)政府委員 先ほど来御指摘がございましたが、まず酒、たばこ、嗜好品の課税が、財政物資で財政が依存しておりましたのは、戦後でも昭和三十年ごろまでは実は酒、たばこの税収に占めるウエートは非常に高こうございまして、三割近くございました。それが財政物資として非常に支えていただいた点でございます。  それから、酒が全般的に税負担が高いのではないかという点は、例えばビールについては、我が国の場合には負担率が諸外国よりもかなり高いところもございますが、しかしこれはそれぞれ国によるわけでございます。ドイツ、イギリス、アメリカあるいはフランス、ビール、蒸留酒あるいはワインに対する課税、飲み方が違うものですから、長い伝統、歴史の中で負担率に差が出ているものであるというふうに思っております。  それから第三点といたしまして、税率アップで五十九年度のときのように税収が落ち込んだりすることがあるのではないかという点につきましては、先ほど大臣から申し上げましたように、今回いろいろの税負担の調整とは言いながら、かなり小幅にとどめるように配慮をした御提案をしているところでございます。  それと、やはりアルコール飲料につきましては、価格だけではございませんで、嗜好品であるというゆえんから、そのときどきの天候であるとか、社会のいろいろな動きであるとか、さまざまの要因によって影響を受けるところが大きいように存じます。先ほどのチューハイブームといったようなものはその一つのあらわれであったかと思うわけでございます。  したがいまして、余り大きな、極端な価格の引き上げを伴うことを避けつつ考えてまいりますと、アルコールの消費はかなり安定をしているというところから、負担率を調整いたしましても、こうした見込んでおります千二百億程度の増収を確保できるのではないか、このように考えている次第でございます。
  175. 塩崎恭久

    ○塩崎委員 よくわかりました。  今局長のも言葉の中に、それぞれ各国で飲み方あるいはお酒の種類によっていろいろ違うよというお話がございました。そういう意味では、しょうちゅうというのは極めてすぐれて日本的なものでありまして、ECからの要求によってずっと税率が上がってきた。人によってはむしろウイスキーの税率を下げればいいじゃないかという考え方もあろうかと思うわけでございますが、その話はともかくとして、割合しょうちゅう出身者が多いようでございます。  今ウイスキーとの差はたしか三・九倍になっておるわけでございますが、業界からすれば、もうそろそろこの辺で打ちどめにしてくれないと、とてもじゃないけれども、さっき全社の大体三分の一ぐらいが赤字だというようなことでやっているわけでございますから、その辺の将来の考え方というのはいかがでしょうか。
  176. 小川是

    ○小川(是)政府委員 酒の種類といたしましては、しょうちゅうもウイスキーもいずれも蒸留酒でございます。我が国ではしょうちゅうの飲まれ方は歴史の中で極めて特別な、諸外国にはない飲み物として発達してきたわけでございますが、とりわけ昭和五十年代以降、この製造技術がいろいろ発達をしたというのが一つ。  それから、国民の所得水準が上がり、消費が多様化したということの一つのあらわれとして、酒であれば昔はウイスキーが高級である、高いものほどいいと言われておりましたのが、しょうちゅう、とりわけ地域ごとにつくられるしょうちゅうというものが珍重されるようになった。地域的な飲み物から全国的な飲料になってきているというのが、このしょうちゅうといった蒸留酒、我が日本の独特のお酒が国際的な問題になってきたゆえんであろうかと存じます。  その場合に、今委員が言われましたように、かつてはアルコール度数一度当たりで両者、ウイスキーとしょうちゅうの開きは十五倍もございましたが、前回で五倍程度、今回何とか四倍を切る程度、三倍台になるというところでございます。単純にアルコール度数に対しての税負担という比較はできないというのは、先ほど来るる申し上げた各国の飲み方、伝統もあろうかと存じます。こういった調整につきまして、EC諸国等に私どもは理解を求めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  177. 塩崎恭久

    ○塩崎委員 いささか唐突な質問で恐縮なのでございますけれども、今規制緩和が大変ポピュラーな言葉になっているわけであります。酒の販売の免許制度、小売の免許制度について、国税庁でございましょうか、この免許制度についてのスタンス、今後の方針についてちょっとコメントいただけませんでしょうか。
  178. 窪田勝弘

    ○窪田政府委員 酒の販売の免許制度でございますが、これは酒税の安定的な確保を図るために設けられている制度でございます。そのほかに、国民の保健衛生あるいは飲酒事故の防止等々の方面にも寄与しているものというふうに私どもは考えております。  この制度を廃止あるいは大幅に緩和した場合は、酒類の需給バランスが崩れ、販売競争が激化するというふうな問題もございますし、これが酒税の確保に大変な支障を生ずるおそれがあるわけでございますが、それ以外に国民の保健衛生あるいは未成年者の飲酒防止等々の方面に弊害が生ずるおそれが大いにあるというふうに考えております。  この酒類の販売について主要諸外国においても専売制または免許制がとられているのが一般的でございますから、私どもは免許制度そのものは今後とも堅持する必要があると考えております。  しかしながら、その制度の運用については行革審の答申等を踏まえまして、これまで大型小売店舗に対する円滑な免許付与など、消費者重視の観点から規制緩和の方向で段階的かつ着実に運用してきているところでございます。  今後ともこの酒販免許の運用につきましては、現在進められている緩和方策を着実に実施するとともに、先ほどお話がございましたが、財政物資である、あるいは致酔性の飲料であるという商品特性にも考慮しながら、酒類の流通実態の推移に応じた適切な運用を図ってまいりたいと考えております。
  179. 塩崎恭久

    ○塩崎委員 大臣のお言葉の中にも致酔性という言葉が何度か出てきたと思いますし、今の御説明の中にも教育あるいは健康上の問題もあるというわけでありますから、私は、ちょっと酒税の問題と離れますけれども、確かに緩和の方向でいくのだろうと思いますが、ほかの規制緩和とはちょっと趣が違うのだろうと思います。  規制緩和の本家と言われるアメリカでも、販売免許といったらかなりきつい。販売免許だけではなくて、飲む場所とか、例えば道路を飲みながら歩いてはいけないとか、日本だったら缶ビールを持って歩いている人が幾らでもいますけれども、アメリカは必ず袋に入れてこそこそ飲む。あるいはレストランの中でも、ここは飲んでもいいけれどもここは飲んじゃだめと、すごく厳しくやっているわけです。  それは健康の問題でもあり、それから子供の教育の問題でもあるというわけでありますから、同じような感じで規制緩和はなかなか難しい。ですから、今審議官がおっしゃったような線が目いっぱいなのかなと思うわけでございます。  何でこんなことを聞いたかというと、致酔性ということがあるわけでありますが、酒税の課税の原則というのは、つまり今までいろいろな歴史の中でいろいろな酒類間の税率をいじってきました。ECから文句を言われて動かすとかということもあったかもわからない。それから、酒類間で新しいものが出てきて直すこともあったかもしれない。財政面の需要から出てきたかもわからない。いろいろなことがあったと思うのですが、どうもそこに一貫した哲学に少し欠けるのかなという気がするのです。  この問題の最後に、今後の酒の課税のあり方について、もうちょっと一本筋の通った方針があるべきではないかという意見が多く聞かれるわけでございますけれども、大臣あるいは局長でも結構でございます、いかがでございましょうか。
  180. 小川是

    ○小川(是)政府委員 確かに我が国の酒税につきましては、やや技術的になりますが、分類差等課税と申しまして、酒の種類を清酒であるとか合成清酒、同じしょうちゅうでも甲類だ乙類だ、ワインだ、ウイスキーだ、さまざまの酒類を分類をして課税をしている。かつては、これにいいもの、普通のものというような紋別制度というものも入れておったわけでございます。  これは、その酒につきまして、昔からの製法といいますか、だれがどういう形でつくってきているかということが一つと、それがどのように飲まれてきているかという両面から発達してきた課税方式であり、その中で同じアルコールであっても、どの程度の負担を求めたらいいかというものが積み重なってきたわけでございます。  ただしかし、やはりアルコール飲料に対する課税でございますから、同一のお酒の種類の中では度数に応じた加減算税率を置くといったこともやっているわけでございますから、一部には当然のことながらアルコール分課税という考え方も導入されてきているわけでございます。  かってに比べますと、一般的に価格に応じて消費税が入りましたものですから、この価格に応じた負担を求めるというのではなくて、やはり分量あるいは度数あるいは今申し上げたような酒類といったものに応じて酒税の負担を求めているわけでございます。今後を予測することは困難でございますけれども、繰り返しになりますが、やはり一国の社会の中におけるお酒の飲まれ方ということと離れて、極端に理屈で度数課税に走るようなわけにはなかなかまいらないというふうに考えているわけでございます。
  181. 塩崎恭久

    ○塩崎委員 よくアルコール度数に応じた課税ということも言われているわけでございますから、幅広くわかりやすい税制をまた検討していただきたいと思うわけでございます。  相続税の問題に移りたいと思うわけでございますが、けさほど石原委員の方からいろいろと御質問をさせていただいたわけでございます。主に物納の関係でちょっとお話しいただきたいと思うのでございますが、その前に件数の割合について大臣からも御説明がございました。今私の手元にあるのは平成三年の課税割合で六・八というのが全国の数字になっているわけでございますけれども、一つは外国と比べてどうなのだろうかというところがまず第一点。  それから、大臣が何度がおっしゃっていましたけれども、全国的に見ると一%も切っているところがあって、課税最低限を上げるとゼロになってしまったりするところがあるのだよというお話がございました。これは国税局管内でずっと見ていくと、平成三年までは一%というのは熊本で一・六というのがありますけれども、あとは大体もうちょっと高いのですね。  だから、その認識で本当に正しいのかな、どうかなというところが、平成四年がちょっと違うのかもわかりませんが、これがどうかなということでございます。ですから、まず課税割合が外国の主要国ではどんなふうになっているかということをちょっと教えていただきたい。
  182. 小川是

    ○小川(是)政府委員 お亡くなりになった方のうちどれだけ相続税が課税されるかというので、私どもが調べて知るところでは、アメリカで最近のところで約一%強、それからイギリスで約五%というふうに承知をいたしております。  片や、今言われました平成三年の我が国、全国では六・八というふうになっておりますが、うち東京局だけですとちょうど倍ぐらいの一三・三ということでございますし、この平均を上回っておりますのは、東京のほか大阪あるいは名古屋というところでございまして、その他の地域はこの平均をかなり下回っているわけでございます。
  183. 塩崎恭久

    ○塩崎委員 アメリカが一%ということでございまして、イギリスで五%でしょうか。あとフランス、ドイツあたりがどのくらいになるかわかりませんけれども、やはりまだまだ高いのかなということを私は申し上げたかったわけでございますので、引き続いてこれについてはまた議論をしていきたいと思うわけでございます。  物納の問題に移りたいと思うのですが、最近の物納の状況というのは、これは平成四年度までしかございませんので四年度で、さっきもちょっと話が出ましたが、二千百十三件の千五百七十一億円ということでございます。これが五年度、まだ終わっておりませんが、状況はどんな感じかをちょっと簡単に一言でお願いします。
  184. 吉川勲

    ○吉川(勲)政府委員 最近の物納申請は、地価の下落、土地取引の停滞等を反映いたしまして、平成二年度以降、東京、大阪などの都市局を中心に著しく増加いたしております。平成五年度の数字につきましてはまだ最終数字が固まっておりませんけれども、平成五年度の二月まででございますけれども、約一万件出ております。
  185. 塩崎恭久

    ○塩崎委員 基本的には相変わらずふえているということでよろしいわけですね。  ちょっと大臣にお聞かせいただきたいのですけれども、土地や建物による物納ということがこんなにふえてきている、こういう現状をどんなふうにお考えになっているか、一言お願いします。
  186. 藤井裕久

    藤井国務大臣 御承知のように国税の収納の仕方は現金納付が一番の数字で、それ以外には次は延納ときて、物納は全く例外だ、こういうことだと思います。  しかしそれが最近急速にふえているということは、やはり戦後の歴史の中でも、戦後二十年代に財産税というのがあったときには相当物納が多かったのでございますが、そういう財産税のような特殊な例を除きますと、むしろ例外中の例外だ。それにもかかわらず今のような事態があるということは、やはり土地という問題がこの相続税の中で、これはけさほどからの議論でございますが、異常と言っていいくらい非常に大きなウエートを占めてしまっていることからきている現象ではないかと思います。
  187. 塩崎恭久

    ○塩崎委員 そもそも私が聞いたところでは、この物納というのは昭和十六年に戦費調達のために税率を上げて、それで払えない人が物納したというところで始まった制度だと聞いているわけでありまして、極めて古いものでございます。戦後の、何というか、この平和な時代にはあってはおかしいような制度だというふうに私は思うわけでございます。  聞いたところによりますと、例えばマンション一棟で国が引き受けてしまったりすると、その管理もしなければいけないとか、ちょっと異常かな。ただ、延納でどうしても払えないということで物納をということで今回こういう措置ができるわけですから、それはそれで自民党の中でも議論してきたことで、歓迎をすべきかなとは思うわけでございます。  ただ、さっきもちょっと出ましたけれども、やはり物納をしたものが最終的にも相続税の税収に上がってこないという、国有財産に計上されてそれが売却されても相続税に入ってこないというのも何かしっくりこないなと思いますし、先ほどちょっと出ておりました今回のこの措置が、昭和六十四年一月一日から平成三年十二月三十一日までの間の相続だけというところも、やはり何かすっきりしないような感じがいたします。  つまり、特にこの期限を切るというのは、原則的には認めないけれどもこの期間だけということで、まあ土地関係のいろいろな租税特別措置とか今回のいろいろな措置がありますけれども、みんな一本筋の通った哲学ではなくて、とりあえずここだけやっておこうかというパッチワークみたいな政策がどうも多過ぎていけないな、こんな気がしてならないわけであります。それについてはいかがでございましょうか。
  188. 小川是

    ○小川(是)政府委員 ただいま委員が物納の歴史をいみじくも御指摘ございましたように、相続税法の建前から申しますと、相続税は現金で払っていただくのが原則でございます。しかしながら、これを一時に払えないときには延納という方法があるわけでございますし、確実な担保を提供していただいて延納を認めることがある。物納は、さらにそれが困難である、金銭で支払うことが先に向かってもなかなか困難であるという特段の事情のときに、物納というのが相続税法上は認められているわけでございます。  そういう関係からいたしますと、かつて一度延納を選択された方が、途中でどうしても、延納でも現金で払えないといって物納を選択するという道は一般原則の中にないわけでございまして、社会的な現象として、土地の異常な高騰とその後の低下、土地取引の停滞ということから処分し切れないという方、この方々に何か手を差し伸べなければならない。他方において、困難ながら当時処分をして相続税を納められた方もおられるわけでございますから、こういうバランスをどこでとれば社会的に受け入れられるだろうかという点でございます。  今回、対象年次を三年に区切っておりますけれども、土地の価格の状況あるいは取引の状況相続税の申告状況といったものを分析いたしまして、この範囲内まで広げておけば、こういう困窮事態、つまり処分ができるであろうと思って延納を選択していたら、通常人では到底予測できないようなことが起こったということで困るという方は、おおむねカバーできるのではなかろうか。そこが、一般原則と今回の特異な事態に対する対応との調和点として三年間というのを選び出したわけでございます。  したがいまして、パッチワークとおっしゃいましたが、まさに通常想定していなかったようなことが起きた、しかしそれは一回限りであろうと思います。これを想定して今後考えていくわけにはいかない、このように思っているわけでございます。
  189. 塩崎恭久

    ○塩崎委員 今、既に資産を売却して相続税を払った人もいるというお話がありました。土地を売却して相続税を払う場合には譲渡課税がかかるわけでございますね。これは時期にもよりますけれども、今は三九%だろうと思うわけでございます。  物納の場合には特に税金が取られるわけではない。これを売った場合には、もちろん幾らで売れるかというのもありますけれども、譲渡所得税がかかる。売却をして譲渡所得税を払って、それでその残りで相続税を払うというのは二重課税ではないかということが恐らく前から議論されているだろうと思うのです。私も、何でこんなふうに二重に払わなければいけないのかなと思っている一人でありますけれども、その点についてのお考えはいかがでございましょうか。
  190. 小川是

    ○小川(是)政府委員 この点は、まさに所得税相続税のかかわるところでございまして、古くシャウプ税制のときには、相続をいたしますと、その段階で一たんキャピタルゲインに相当するものに対する譲渡所得税を課税いたしまして、清算をしまして、それを引いた残りが相続財産であるというふうに考えまして、それに相続税を課税していたということがございます。したがいまして、相続が起こりますと譲渡所得税相続税が二つ一度にかかるわけでございますが、もちろん相続税は譲渡所得税を除いた残りにかかるという制度をとっておりました。  しかし、これは大変理論的でございます。なぜかと申しますと、亡くなられたお父さんが土地を残さずに、直前に土地を売られたと仮定いたしますと、譲渡所得税を払われた残りが相続財産になるわけでございますから、それに相続税を課するというのは理論的でございます。ただしかし、土地を売っていない状況で二つ一遍というのはいかにも実情に合わないということから廃止されたわけでございます。  今日は、御案内のとおり相続税が課税されまして、その後、今回の法案の中では、従来ですと相続後二年以内の譲渡については譲渡所得税の課税上、相続税を取得価額に含めるようにいたしておりまして、今度はその二年を三年に延長をさせていただくような改正提案しているわけでございます。  他方、物納につきましては、これまた今委員が御指摘のとおり、相続税の課税のときには評価額で課税がいく。したがって、物納も評価額で取るというところです。  片や自分で処分をいたしますときには時価であるというところから、時価と評価額にやはりアローアンスがあるだろうというところから、自分で処分をしたときは譲渡所得税を払っていただく。他方、物納の場合にはそのアローアンスも考えて非課税にしているというのが今日までの歴史でございます。
  191. 塩崎恭久

    ○塩崎委員 もう時間もございませんので相続税関係はこれだけにいたしますが、物納制度というのはどう考えても正常な姿ではないと思うわけでございまして、こういうことが起きないような実態をいつもつくっていかなければいけないなと思っているところでございます。  銀行局の方に多分おいでをいただいているのではないかと思うので、一つだけ。  いよいよ三月末を迎えるに当たって、決算に今入っているわけでございますが、不良資産の問題等々、きのうの新聞にも、二十一行ベースで今度十四兆円になるのじゃないかなんという観測記事が出ておりましたけれども、ディスクロージャーの問題についてのお考えを一つだけお聞かせいただきたい。  例えば、二十一行ベースだったらもう既に数字が出ているわけでありますけれども、金利減免債権についてのディスクロージャーについてはまだなされていないというふうに私は理解しているわけであります。いろいろな問題があって、銀行のサイズによっても、地域性があったり、そういうところでそういうディスクローズをすることはどうだろうかという問題もあるし、大変難しいとは思うのです。しかし、これから金融の本当の自由化をする、そして本当に足腰の強い銀行、金融機関を育てようということであれば、この金利減免債権のディスクロージャーについて、みずからやってもいいというところについては率先してやらせてもいいのではないだろうかと私は考えておるわけでございますが、この点だけ最後によろしくお願いします。
  192. 寺村信行

    ○寺村政府委員 金融機関の不良資産のディスクロージャーにつきましては、委員指摘のとおり、金融の自由化、国際化の進展に対応しまして、金融機関がみずから経営の健全性を規制する、みずから自己規制をするための手段としてその役割が今後非常に重要になってくるであろう、こういう認識を持っているわけでございます。ただ、一方におきまして不良資産のディスクロージャーというのは、諸外国におきましても米国においてしかまだ実施されていないという状況にございます。  一昨年の十二月に、金融制度調査会でこの問題につきまして御議論をいただきまして、報告をいただいておりますが、そのディスクロージャーに当たりましては、やはり信用秩序に対する配慮を行う必要がある。したがって、進めていくためには段階的、漸進的に行っていく必要がある、こういう御議論をいただいております。特に、金融機関の貸し出し業務にひずみをもたらすことのないような配慮が必要であるということで、実は、先ほど御指摘ございました都銀、信託、長信銀二十一行につきまして、破綻先債権と延滞先債権についてまずはディスクロージャーを始めるということになったわけでございます。  金利減免債権につきましては、元本の金利減免ということによりまして債務者の再建真意をはかることになっておりまして、一応元本の回収が前提になっているということでございます。それで、破綻先、延滞先債権は、元本の回収に危険が存在するというところでディスクロージャーを必要とするという仕切りにしております。  さらに、金利減免債権を開示した場合に、将来再建の可能性の高い企業に対します金融機関の適正な支援が抑制されるおそれがあるのではないかということで、当分金利減免債権の開示を求めないということになった、こういう御議論の結果、今そのようになっているわけでございます。
  193. 塩崎恭久

    ○塩崎委員 銀行を監督する立場としてみれば慎重にならざるを得ないのはよくわかるわけでございますけれども、かわいい子には旅をさせよというぐらいで、少しはみずからリスクを負うことも考えることも大事であろうと思いますので、引き続いて、本当の自由化に十分打ちかっていけるだけの銀行が育つように、ひとつまた行政面からの支援をお願いしたいと思うわけでございます。ありがとうございました。
  194. 宮地正介

    宮地委員長 次に、熊代昭彦君。
  195. 熊代昭彦

    熊代委員 岡山一区選出の、新人の熊代昭彦でございますが、相続税法改正案等六法案につきまして、一々どの法案ということではなくて、一括して御質問させていただきたいと思います。  初めに、感想的なことでございますけれども、日切れ法案というには非常にほど遠い、政策マターがたくさん含まれている法案ばかりでございますが、非常にうまく日切れ法案に滑り込まされたと思うのです。いずれにいたしましても、国民生活に非常に重要な影響があるものばかりでございますので、厳しく論議しました後は、自由民主党といたしましては、納得できるものにつきましては速やかに可決に御協力いたしたいというふうに考えているところでございます。  ただ、現在の連立与党の方々が、仮にでございますけれども、仮に近い将来に野党になられた場合に、連立野党というのか新・新党というのかわかりませんが、こういう国民生活に非常に重要な影響のある法案につきましては、今日自由民主党が臨んだと同じような態度で臨んでくださると確信するものでございますけれども、大臣の口からぜひそのお約束をお願い申し上げます。よろしくお願いします。
  196. 藤井裕久

    藤井国務大臣 私たち国会議員は、国民の皆様あっての存在であるわけでありますから、常に国民生活の安定、幸せのために行動することは当然のことだと考えております。
  197. 熊代昭彦

    熊代委員 それでは、いま一度確認的な意味で、この六法案の主要事項につきまして、減税見込み額と増税見込み額をお答え願いたいと思います。
  198. 小川是

    ○小川(是)政府委員  御提案しております法案に係る改正増減収見込み額、一般会計ベースについて主要事項を申し上げますと、次のとおりでございます。  まず一つは、平成六年分の所得税特別減税、これが三兆八千四百三十億円でございます。それから相続税負担軽減、これが相続税法租税特別措置法、両方ございますが、平年度ベースで三千二百二十億円ということになります。第三点に、土地住宅税制の改正関係が同様に減収百五十億円でございます。  増収の方を申し上げますと、租税特別措置改正で五十億円でございます。それから、交際費課税の見直し等課税の適正公平の確保で八百三十億円でございます。酒税の税率調整等で増収が千三百四十億円でございます。  便宜、関税について申し上げますと、減収で三百九十億円。  以上でございます。
  199. 熊代昭彦

    熊代委員 ありがとうございました。  酒税の引き上げ等につきましては、いろいろ既に議論は出ております。景気対策ということから純粋に見れば、この時期に引き上げるということはマイナス効果があると思いますけれども、あえてこの戦後最大量長の不況期に酒税の引き上げを実施する理由についてお伺いいたしたいと思います。
  200. 小川是

    ○小川(是)政府委員 酒税につきましては、課税方式は従量税によっておりますので、価格の上昇とともに税負担水準はどうしても低下するわけでございます。そこで、昨年十一月の税制調査会の答申におきましても、「随時負担見直しを行い、適正な税負担水準の確保に努めるべきである。」という基本的な考え方が示されているところでございます。  平成六年度において税制改正を行います際に、酒税についてこうした考え方でいろいろ検討を行いました。その結果、まず一つは、平成二年以降、主要の酒類は値上げによって税負担水準が相対として低下してきているというところから、その回復を図る余地があるのではないかというのが一点でございます。  また近年、国民の所得水準が一般的に上昇するとともに、嗜好の変化、酒類消費の多様化などに伴いまして、しょうちゅうなどのいわゆる低税負担酒の伸びがウイスキーなどに比べて相対的に高くなっている。そうしたところから、お酒の種類間の税負担の公平化というものを回復する必要があるのではないかと考えられたわけでございます。  さらに、EC等の諸外国からも、蒸留酒の中での税率格差の調整を早急に是正すべきであるという強い要請が重ねて行われてきているという状況のもとで、厳しい財政事情のもと、こうした小幅の酒税の改正をお願いしている次第でございます。
  201. 熊代昭彦

    熊代委員 根底に、酒は飲まない方が健康上いいのじゃないかというようなお考えもあるいはあるのかもしれませんが、この問題はさておきまして、原則論的に言いますと、減税、増税、景気対策にプラスかマイナスかという観点に立ちますと、減税はプラスで増税はマイナスであるということは当たり前の話でございます。  酒税につきましてはやや疑問がございますけれども、そのほか、所得税特別減税以外はそれぞれ社会政策的意図が明確だというふうに感じているところでございますが、最大の効果がございます所得税特別減税だけはそれが必ずしもはっきりしないというふうに思います。これは景気対策だけが目的であるのかどうか、大蔵大臣にお伺いいたしたいと思います。
  202. 藤井裕久

    藤井国務大臣 今回の六兆円の減税のうち五兆五千億円が今おっしゃいました所得課税の減税だと思います。これについては、前々から申し上げておりますように、とにかく世の中のマインドという面において非常に効果があることは否定できないと思うのでございます。今消費者の方、企業家の方を含めてマインドが非常に冷えておる、こういうことが言われておるわけでありますが、これにプラスがあることはもう間違いないと思います。  加えまして、御承知のように今ストック調整が最終段階に入っている。特に消費財についての最終段階に入っているということは大体否定できないところだと思いますが、こういうときにまとまった所得税減税をするということは、このストック調整を進めるという効果は大きいように考えております。特に自動車で言うならば消費税の一・五%減というのもありますので、こんなことを加えて、消費の、今ちょうどストック調整が終わりかかったというか、膨らみかかった芽を本当に花を吹かせるというような効果は私は十分期待できるように考えております。  すなわち、今回の所得減税は景気対策ということを目標にしたものであるということを申し上げられると思います。
  203. 熊代昭彦

    熊代委員 景気対策を主たる目的とした所得減税というお答えをいただいたわけでございますが、私ひとつ疑問に思いますことは、所得減税はアメリカにおいては恐らく非常に大きな景気対策であると思うのですが、日本で果たして有効なものであるかどうかということでございます。  なぜ平成六年度予算編成におきまして景気対策の目玉として所得減税を取り上げたのであろうか。公共事業が第三次補正までほぼ目いっぱいということで、残るものはこれということだと思いますが、取り上げた発端といいますか、一番根本の原因は何かということをお伺いいたしたいのです。細川総理がクリントン大統領に不用意にお約束になったことが唯一の理由であるのかどうか、その点について大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
  204. 藤井裕久

    藤井国務大臣 さっき社会のマインドということを申し上げましたが、今この不況の時期に政府はあらゆる手段をやっている、経済政策を講じていることは大変意味のあることだと思っております。したがいまして、もう二年ほど前から公共投資政策あるいは政策減税、これを積み重ねてきております。その上に今、これは日銀の所管でありますが、金融政策も史上最低のところまで来ている。マインドとしては、何となく一つ抜けているのが所得税減税じゃないだろうか、こういう空気があったことは事実であります。  そういう中でこの大幅な所得税減税。朝申し上げましたように、カット率というか、アメリカ的な言い方でありますが、所得減税率からいうと、大幅だと言われたレーガン減税が所得課税の九%であるのに対して今度は一五・八%だという、極めて大きなことをやるということは私は効果がないはずがないと思っております。  また、総理なり私がアメリカに何か約束をしたというようなニュアンスの話がございましたが、そういうことは全くございませんで、我が国がやろうとしている政策について説明をした、これは私がいたしました。いたしましたが、約束といったぐいのものは一切いたしておりません。総理もそのように言われたと承知をいたしております。
  205. 熊代昭彦

    熊代委員 クリントン大統領に約束したことはないというお答えでございますが、これは水かけ論でございます。何となく直感的にはそういうにおいが非常にするような気がいたしますが、これはこれで一応さておかせていただきます。  次に、経済企画庁にお伺いいたしたいのでございますが、いろいろな政策の景気に対する影響度を予測する際に、乗数効果といいますか、乗数効果の乗数をいろいろ使われていると思います。それを可能な限り、どういう乗数を使っておられるのか教えていただきたいと思います。  私は十分承知しておりませんで、公共事業とか所得減税とか社会保障、教育費、科学技術関係費等々、こういう分類でないかもしれませんが、私が申し上げた分類に限らず現在使っている分類による数字を挙げて教えていただきたいと思います。また同時に、我が国と米国の貯蓄性向の違いを御説明していただきたいと思います。
  206. 澤田五十六

    ○澤田説明員 経済対策の効果の評価の際に用いられます乗数につきましては、経済企画庁で開発しております世界経済モデルを使ったものでございます。  それによりますと、名目で一兆円の公共投資を増額いたしますと、一年目には波及効果がございまして、名目GNPで一兆三千九百億円を誘発するということでございます。したがって、一年目の乗数は一・三九ということになるわけでございます。二年目、三年目になりますと、さらに波及が広がっていきますので、当然乗数効果は大きくなりまして、二年目は一・八八というふうになっていくわけでございます。  片や個人税減税の方は、同じ名目で一兆円の減税をいたしますと、一年目に名目GNPを五千三百億円増加させるということで、乗数は〇・五三ということでございます。  そのほか先生は、社会保障関係費とか教育費とか科学技術関係費等の乗数のお話がございましたけれども、社会保障関係費の性質は家計に所得をふやすということですので、乗数は恐らく減税と同じようなパターンで、一年目は〇・五三、二年目が膨らんできまして一・一四というふうな形になるのではないかと思います。  教育費とか科学技術関係費等は、その性質によりまして需要効果と供給力増強の両方の効果があると思います。すなわち、人的資本をふやすとか研究開発資本をふやすとかこういう話になってきて、これは需要面もさることながら供給面の強化というふうな効果が別途あると思います。  需要面だけで見てみますと、施設関係にもしその費用が回るのであれば公共事業と同じような乗数になると思われますし、また政府消費的なものになりますと減税と公共事業との中間ぐらいの乗数効果になるのではないかというふうに思います。  我が国とアメリカの貯蓄率の違いにつきましては、小峰課長の方からお答えしたいと思います。
  207. 小峰隆夫

    ○小峰説明員 日米の貯蓄性向の違いについて御説明を申し上げます。  家計の貯蓄率ということでございますと、日本が一四から一五%、アメリカが四から五%ということでございます。国際比較が可能な一番新しい時点というと一九九二年ということでございますが、この時点で日本が一四・三%、アメリカが五・三%ということですので、日本の貯蓄性向がアメリカに比べますと相当高いという状況でございます。
  208. 熊代昭彦

    熊代委員 どうもありがとうございました。  それで重ねてお伺いいたしたいわけでございますが、その乗数効果の乗数というものでございますか、経済モデルを使ってつくっておられるということでございますけれども、客観的な事情が変化したときにもそれは不変なものであるかどうか。  例えば公共事業に余りに予算が集中したときや、日本のように土地代が非常に高い場合、これは含まれておるかもしれませんが、バブルのように土地代が急に上がった場合、それから土地の買収交渉に非常に時間がかかるときなどにも不変なものであるかどうか、その辺の事情をお伺いいたしたいと思います。
  209. 澤田五十六

    ○澤田説明員 乗数を算出するには経済の構造というのを前提にいたしまして、その構造を映すように経済モデルを使って、ある一定の期間その構造が安定的であると仮定した平均的なものに基づいて算定するわけでございます。しかしながら経済は、おっしゃったように刻々変化しているわけで、その経済の状況に応じて乗数が変化するのは当然のことでございます。  したがいまして、御質問にありましたように、公共事業に予算が集中してその消化に時間がかかるような場合とか、土地の買収交渉に時間がかかるような場合には、乗数効果の波及が平均より長い時間がかかる。したがって、一定期間をとりますと、その効果が小さく出るということは当然あることと思います。  また、土地代等が高騰する場合には、工事に回る部分が少なくなるわけですので、その波及が当然小さくなるという意味で、その分だけ効果が減殺されることは当然あるわけでございます。  そのほかにも、乗数効果を変化させる要因といたしましては、景気の局面であるとか経済構造の長期的な変化に従って変わっていくということはあるわけでございまして、例えば不況期で設備の稼働率が非常に低くなっているという場合には、当然乗数効果は平均的な値よりも小さくなることがあり得るということではないかと思います。
  210. 熊代昭彦

    熊代委員 ただいまの御説明で、乗数効果というのは客観的な事情が変われば大幅に動くものであるということでございますが、現実問題としては、現在使っているその乗数というのは一定の仮定のもとに客観的に使わざるを得ない、そういうものであろうと思います。あらゆることを予測して変えていくわけにはいかないということでございますから、現在政策の効果予測に使っておられる乗数というのが、大体どういう状況を想定してつくったモデル、どういう状況を想定してつくられた数字であるかということを、ごく概括的なことで結構でございます、御説明をお願いしたいと思います。
  211. 澤田五十六

    ○澤田説明員 景気の状況その他によって乗数は当然動くと思います。ただ、一応私どもも経済構造を映すモデルをつくるときに不況期、好況期を河期か含んだ安定的な構造を得るように努力しておりまして、そういう意味で、乗数というのは一つの目安として、このくらいの効果があるのかなという算定根拠として使えるのではないかと思っております。
  212. 熊代昭彦

    熊代委員 ただいまの御説明は必ずしもよくはわかりませんが、おっしゃることは大体想像がつきます。  そういうことで、御説明ありましたように、乗数効果の乗数自体はかなり可変的なものであるということは明らかでございますけれども、そうしますと、余りにこの乗数にこだわって、景気対策といえば公共事業、公共投資というふうな公共事業偏重は再考されなければならないと私は思います。公共事業偏重で随分我が国の経済社会はいびつになっているところがあるのではないか。バブルとかゼネコン汚職がございましたが、そういうところも一つの遠因ではないかというような気もいたします。  本年度は特に三次にわたる補正で著しく公共事業が予算化されておりますけれども、これは実際との程度実施されているのか。十六兆円とか十一兆円とか数字が新聞に躍りまして、躍った後はよくわからない。恐らく数字が躍ることで心理的効果をということもねらっていらっしゃるとは思うのです。しかし、そればかりでは本当の景気対策にはならないわけでございますから、現在の実際の一次補正、二次補正、三次補正の進捗状況はどうなっているのか。支出ベースでどれだけ実行されているかをお伺いいたしたいと思います。
  213. 竹島一彦

    ○竹島政府委員 お答え申し上げます。  平成五年度の一月末、ことしの一月末のデータが現在ございますけれども、それによりますと、分母となります歳出予算現額、これが十九兆七千億円程度でございます。それに対しまして、実際に支出が済んだ金額、これが八兆四千三百億円程度ということでございまして、進捗率ということで申し上げますと四二・八%ということでございます。  これは例年のことでございますけれども、三月という月に相当大きな支出が行われるというパターンになっておりますので、全体として公共事業につきましては促進型でやってきておりますし、補正予算もやっておりますけれども、その消化については万全を期しておるというふうに理解しております。
  214. 熊代昭彦

    熊代委員 これは、補正別にその執行の数字はわかりませんでしょうか。
  215. 竹島一彦

    ○竹島政府委員 ただいま申し上げましたのは平成五年度の当初、それから一次補正、二次補正でございまして、第三次補正につきましては、これは国会でお認めをいただきましたので早急に取りかかっておりますけれども、そのデータは今現在ございません。これにつきましても、着実な執行に最大限努力していくということで対応しております。
  216. 熊代昭彦

    熊代委員 それでは重ねて、恐縮でございますが二次補正だけについてお伺いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  217. 竹島一彦

    ○竹島政府委員 二次補正だけという数字は今手元にございませんので、恐れ入りますが、二次補正までの累計で申し上げたわけでございます。
  218. 熊代昭彦

    熊代委員 質問要旨といたしましては一次から三次までお願いいたしたわけでございますが、三次は御説明のように決まったばかりですからまだないということだと思います。それでは、まことに恐縮でございますが、後ほど二次補正だけに限った数字をお知らせいただきたいと思います。  現在、当初から二次補正までで四二・八%ということでございますから、必ずしもそれほど高い実施率ではないと思います。三月の実施を含めれば相当高くなるかもしれませんが。私が申し上げました公共事業の偏重ということは、景気対策につきましてはだんだんとブレーキになると思います。  いずれにいたしましても、公共事業は第三次補正まで組まれましてはぼ目いっぱいということだと思いますが、それを踏まえまして、先ほど大蔵大臣からの御答弁もございましたように、平成六年度予算では景気対策の目玉は所得減税だということでございまして、総額六兆円程度の所得減税でございます。  その六兆円の一部が、現在この法案がかかっているわけでございますけれども、それの当否が現在議論されているわけでございます。それに対比します、対案といいますか、かわりの案としましては、七十数兆円の一般会計予算がございますけれども、一般歳出は御承知のように四十兆円ちょっとしかないということでございます。公債費と地方交付税を引きますと四十兆円ちょっとしかないということでございます。  百八十八兆円とか二百兆円弱という国債残高に押されまして、一般歳出ベースで見れば毎年毎年恐ろしいほどの緊縮予算を組んでいるということでございまして、景気対策として、もし現在のように赤字国債にこだわらないで支出できるならば、もう一つの方法も対案として考えられるのではないかというふうに思います。  一般歳出に六兆円か、これは一年こっきりあるいは一年ないし二年ですから、所得減税のように恒久的に収入が減るわけでございませんので、十兆円とか上積みをして、これまでやりたくてもできなかったよい政策はいろいろございます。例えば科学技術の振興とか光ファイバーのネットワークをつくる、情報スーパーハイウエーとかいうのがアメリカでも構想が出されておるようでございますが、そういったたぐいの新技術の分野への思い切った予算の投下とか、教育の分野への思い切った予算投下。  あるいは、我が国の人口は御承知のとおり二〇一〇年前後から減り始めるわけでございます。厚生省が平成四年に出しました我が国の将来推計人口がございます。中位推計が世の中に出回る数字でございますけれども、これは百年たつと我が国の人口は九千万人台になるということですね。しかし、それと同時に低位推計というのが出ております。これはもう少し悲観的に、今の実態に即して見たらどうだろうということでございまして、これですと百年たてば六千二百万人になります。六千二百万人、半分になってしまいます。  ですから、高齢化社会、高齢化社会と言っていますが、高齢化自体はこの人口の減少に比べれば恐るるに足りないというふうに思います。人口が減少した場合の経済的なマイナスの効果というのは十分研究されてないということでございますけれども、非常に大きなものがあるのではないかと思います。  そういうことを背景にしまして、例えば児童手当、今三歳で打ち切っておりますけれども、十八歳まで、現在の五千円とか三千から一万円というのを倍増か三倍増かするような思い切った予算投下をするとか、医療や福祉の充実などを行うということがもう一つの選択肢だと思います。  これが選ばれないというのは、翌年以降に響くからだということが従来の説明であったと思います。しかし、所得減税も恒久化すれば翌年以降に確実に響きます。ですから、これは全く見合いの政策でありまして、どちらをとるかということの二者択一であると思います。政府案は、御存じのとおり前者を恒久的な形ではなくてとりあえず暫定的な形で選んだということでございます。  私は、平成六年度予算をこういう議論でこれから組み替えてくださいとお願いするにはちょっと現実的過ぎる人間でございまして、そういうことは申し上げるつもりはございませんけれども、暫定的にされたということは、本年いっぱいで恒久的なものにするのかどうかということをやろう、検討しよう、そういう態度でございまして、私自身は、とりあえず暫定的措置としたことを高く評価したいと思っております。  本年中に政府・与党は将来に向けての態度をお決めにならなければならないということでございますが、これは大きく言いますと今後の日本の命運を決めるような大きな問題ではないかと思います。従来の考え方にこだわらないで、真剣に、本気で考えていただきたいと思います。  まずそういう前提のもとでお伺いいたしますけれども、六兆円ないし七兆円の恒久的な所得減税を行った場合、一、二年後には消費税を七%にしなければ国の財政は明らかに破綻してしまうと思いますが、大蔵大臣、この点に関してどのように考えられますか。
  219. 藤井裕久

    藤井国務大臣 今熊代委員が言われましたように、所得税減税をそのような規模で連年続けていくということ、しかもそれを歯どめのないいわゆる特例公債発行で賄うというようなことはとても考えられないと思います。責任ある立場で財政を運営しなければならない立場から、そのようなことは考えられない。  それは、後年度に負担を残すことはもとよりであります。いつも申し上げているのでございますが、そういう国債というものは、要するに民間資金を公的部門に引っ張ってきてしまうわけでありますから、世界の例がみんなそうであるように、必ず将来の金利上昇を招き、インフレに結びついていく。そういう図式が当然予想されることであって、こういうことはあってはならないと考えております。  現在、今熊代委員の御指摘のように、まず先行的に景気対策として減税をやったわけでありますが、本格的な税制改正においては一体として所得課税の軽減と資産課税の充実というものを考えていかなければ、日本の経済社会の将来にとっては非常に大きな問題であると考えておりますので、御指摘のとおりだと思っております。
  220. 熊代昭彦

    熊代委員 率直な御答弁をいただきまして、大変ありがたいと思います。  それであるならば、消費税引き上げを恒久減税と同時に法律に書かなければ、これはこれまでの経験からしますと、いわば政治的食い逃げが起きるのではないかというふうに思います。法律に明記されれば実施されるし、明記されなければ、現実には所得減税だけで終わるという政治的食い逃げが起こるのではないかということでございます。  そういう心配があるわけでございますが、十二月に予算編成の準備は事務的にはできていたのではないかと思います。第三次補正がありましたけれども、十二月に予算編成はできていたのではないかと思いますが、それを二月編成にして二カ月弱おくらせてしまって、この景気の悪いときにさらに景気を悪くしたということがございました。  そのことは、これもまたちまたに報道されていることでもございますけれども、政治改革法案をとにかく通して小選挙区並立制を実施するということになりますと、あらゆる権限が党の幹部に集中する。三百九億円の公費助成も企業・団体献金も、これは修正されましたけれども、当初案では党にだけ集中する。小選挙区で立候補する立候補者も党幹部が決める、それから比例代表の順番も党幹部が決めるということでございます。  そしてまた、一つの党でなければ比例名簿を一本で出せないということでございますので、いろいろな党が連合を組んで比例名簿は出せないということでございますから、新・新党的な一つの党にしなければならないということは今度の改正法で明白なことでございます。  そういうことになりますと、いわゆるちまたに言われております一・一ライン、この意向にあのさすがの社会党さえも背くことはできないのではないか。  そういうことで、それならば二月に予算編成を送っても政治改革法案を先に書こう、先に上げよう、そして消費税引き上げを、国民福祉税と言おうと何と言おうと同じでございますが、恒久減税と同時に法律に書こう、そういうもくろみであったと思います。こういうちまたの観測は事実と違いございませんか。大蔵大臣にお伺いいたしたいと思います。
  221. 藤井裕久

    藤井国務大臣 私はかねてから、所得税減税をやる場合には、その見合いの財源を一体的に処理していただかなければ困るということを去年の八月以来常に申し上げてまいりました。現実の問題としては、もう御承知のとおりでありまして、現在、連立与党の代表者会議の御決定のとおり、年内にこの本格的な税制改革の一体処理をする、そのための協議会ができている、こういう段階に入っていると思います。  また、越年編成問題でございます。私は、これもはっきりいつも申し上げておりますが、通常の状況であれば年内に編成するのが筋であると思っております。ただ、こういう経済の局面、非常な不況の段階においては、年度末ぎりぎりにもう一つのインパクトを与えるということはそれなりに意味があることである。つまり、三次補正という意味でございます。  これは過去の例からいえば、御承知のとおり昭和五十二年、不況時にこの手法を使ったわけでありまして、私はこの選択は決して間違っていない、一つの意味のある選択だったと考えております。  そこで、熊代委員が言われたような政治改革法案と絡んでの話には、私、全く関与しておりませんので、これにお答えする能力はありません。  能力はありませんが、財政当局の立場として申しますと、今申し上げたようなことであり、何としても一体的処理をやっていかなければいけないという気持ちを持ち続けていたこと、また、越年編成というものは一つの手法として、越年編成ということよりも第三次補正を年度末にインパクトを与えるという意味においては、一つの政策選択として意味があることであるという気持ちだけは持っていることを申し上げたいと思います。
  222. 熊代昭彦

    熊代委員 私は、新聞に出された記事を非常に注意深く読ませていただいた限りでの、ちまたのうわさということを申し上げたわけでございますが、真偽のほどはなかなかわからないところでございます。  我が国の政治は密室政治と言われますけれども、我が国の密室というのはガラス張りであって、ところどころに穴があいているというのが密室でございます。こういうのが密室の定義に当たるかどうか、世界的には極めて危ういところでありますけれども、そういう意味では、新聞の隅々に書かれておりますことはかなり信憑性があるのではないかという気がいたします。  いずれにいたしましても、これは私の感想でございまして、申し述べるだけにさせていただきたいと思います。  あの社会党でさえもという、大変失礼なことを申し上げましたけれども、社会党さんはむしろ消費税反対で単独で選挙を戦った方が、百四十人から七十人に減ったのが、百四十人はおろか二百に達するかもしれない、これもちまたのうわさでございます。そういう意見を言っている人がおりまして、結局は先に延ばされた。  そして、大臣がお答えになりましたように、今年中にそれを決めるということでございます。それは御検討をお願いしたいと思いますが、私の立場は、申し上げましたように、それよりもむしろ思い切った大型予算を一年ないし二年組んで、景気の回復を待ってということでございますので、申し上げておきたいと思います。  それから、一つ念のためにお伺いいたしたいと思うことがございますが、所得減税の財源といたしまして、消費税と言えば大変評判が悪いということで、消費税と言わないで行革を大いに行う。極端な場合は政府は半分にしろとか、いろいろ言っていらっしゃる方がございます。行革も確かに大切でございますけれども、景気の悪いときに、所得減税をする傍ら、行革を行って政府の支出を大いに減らすということは、景気対策にならないのではないかというふうに思いますが、大蔵大臣、この点いかがでございましょうか。
  223. 藤井裕久

    藤井国務大臣 これもよく御承知のように、歴史的に、行政というものはほっておけば肥大化していく、これは世界の歴史で証明しているところだと思うのでございます。そういう意味においては、常に行政改革というものに対して厳しく立ち向かっていかなければいけない、こういう気持ちは私は非常に強く持っております。特に、今申し上げましたように、これからの税制のあり方についてお願いをしていかなければならない立場からすれば、一層これは厳しく対応しなければいけないと思っております。  景気との関連でおっしゃいましたが、そういう意味では、行革は景気の問題とは一応別の話として、別の角度から積極的に取り組んでいかなければならない重要な課題である。景気対策とは別だというふうに御理解をいただきたいと思います。
  224. 熊代昭彦

    熊代委員 大臣のお立場といたしまして、行革は大規模にやれば景気対策にならないというようなことはなかなか断言できないお立場だと思いますので、これは私が、行革は大切であるけれども、理論的にはそういうことがあるのではないかということを申し上げさせていただきたいと思います。  景気がよいときに思い切った行革をやるということは、経済的に見ましても非常にいいことではないかと思いますが、景気の悪いときの行革というのは、世の中が行革をしているから公共部門もやるんだということになりますと、ますます景気を悪くするということでございます。その辺は世の中の風潮にこびないでやっていただかなければいけないのではないかと思うわけでございます。  ところで、少しくどくなりますけれども、先ほどお伺いしました貯蓄性向、一〇%くらい日米の差があるということでございますので、恒久所得減税と一、二年後の消費税七%余の引き上げということで、本当に景気が回復するかどうかということを私は大変心配しているわけでございます。  所得減税を補う消費税であれば景気的にはかなりニュートラルかなという気もいたします。消費性向が違えば多少効果があるのか。逆であればマイナスになるということでございまして、そのほかのあらゆる対策をぼんぼん打って景気を回復するのだ、これ自身は景気に例えばニュートラルであっても、とにかくやる、直間比率を見直すのだ、こういう御意思かもしれません。  大蔵大臣にお伺いいたしたいわけでございますけれども、一つは、これまでの公共事業を前提といたしまして、恒久所得減税と一、二年後の消費税七%の引き上げで本当に景気が回復するのかどうか。これは増減税同じだとすれば、消費性向が変わらなければかなりニュートラルな話で、景気対策としては理論的には大したことにならぬのではないかという気もいたします。この二点についてお伺いいたしたいと思います。
  225. 藤井裕久

    藤井国務大臣 この点につきましては、所得減税を平成六年に先行的に実施するということでございまして、ここに時間差、格差が既に出ていると思います。そして、その後の本格的な税制改正のあり方という中でどういう御議論になるかわかりませんが、少なくとも先行減税という効果はあると申し上げていいと私は思います。  また、熊代委員が前から御指摘になっておりますように、日本は貯蓄率が高い、だから効果が薄いのではないかという問題でございます。この点は、さっきも申し上げたようにマインドの問題が一つあると同時に、今の時期というのは、消費財のストック調整が終わりかかっている。よく新聞で扱われている言葉の中で、消費者の方がもう節約疲れをしているという言葉もありますが、そういういいタイミングにこれを行うということは、必ずプラスの効果があるように考えております。
  226. 熊代昭彦

    熊代委員 私が心配症なのかどうか、将来消費税が上がるならば、慌てて買っておこうという人もいますけれども、大部分の人はもっとしっかりためておこうと思うのじゃないか、それが日本人じゃないかという気もいたしまして、そういう意味で大変心配でございます。毎年六兆ないし七兆歳入を減らしてしまう。十年で七十兆、二十年で百四十兆、利子も入れれば現在の倍ぐらいになるということでございますので、ここは相当な覚悟で財政を見なければいけないということでございます。  消費税七%でそれをカバーするということでございますが、これは直間比率の見直しということも哲学的に考えておられるのではないかと思います。直間比率の見直しを極端に進めていきました議論といたしましては、消費税を一〇%にして所得税をゼロにするという、小沢一郎氏の「日本改造計画」の所論がございます。そういうところに行き着くのではないかと思います。この場合、どういう哲学でそれをやるのか。  一つは、非常に卑近なことを申し上げますと、誇り高きタックスペイヤー、誇り高き納税者、プラウドタックスペイヤーがいなくなる。これは、国を支えるという面で大丈夫なのだろうか。何となくわあっと消費税で取れば取りやすいのだ、政府は賄えるのだということになりますけれども、プラウドタックスペイヤーはいなくなる。  それから累進課税は、これは釈迦に説法でございますけれども、所得の再配分をしまして、所得の差を認めるけれども余り極端にはしない、そういうことで所得の再配分効果をねらったものでございます。これが余り著しくなるとかえって高所得の人が国を出ていくというようなこともございますので、国税、地方税あわせて五〇%ぐらいにするというのはよい目的だとは思いますけれども、所得の再配分効果を余りに軽視しますと、我が国の、幸いにして目下のところ非常に安全な社会が非常に危険な社会になるということもございます。  そういうことですから、これは極めて大きな哲学的な問題あるいは政治、政策的な問題を含んでいることでございます。これは小沢一郎氏の所論でございますけれども、大蔵大臣大蔵大臣の立場で個人的にお考えになりまして、こういうプラウドタックスペイヤーのいなくなる、あるいは所得再配分の、これまで追求してきた我が国の、完全に平等ではない、不平等ではあるけれどもある程度の平等を達成しよう、そういう思想を捨ててしまうことがいいことかどうかにつきまして、御所見をお伺いしたいと思います。
  227. 藤井裕久

    藤井国務大臣 私も、今熊代委員が言われたように、所得税が基幹税でなければならないと思っております。ただ、OECD二十四カ国でも日本は極めて特異な税構造を持っていると思います。二十四カ国中、率におきまして所得課税最高、消費課税最低、二十四番目。こういう事実は、何もよその国をまねをする必要はないのですが、やはりそういう二十四カ国の知恵の中から出てきた一つのバランスがあると思います。  消費、所得、資産のバランスとよく私ども申しておりますが、やはりバランスがある。所得課税が基幹税でなければならないけれども、所得課税には限界があります。おっしゃるように過度の超過累進というものはその国の経済を悪くします。しかし、超過累進でなければならないのも事実でありまして、所得税がフラットであってはならないと私は思っております。また、執行面においても所得税には限界があります。そういう意味からいって、いろいろ考えて各国はおのずからバランスをつくっていると思います。  私は、今熊代委員と大体同じ感じなんでありますが、所得税は中核税である。ある程度の累進度は保ち続けなければいけない。そこに補完税として消費課税あるいは資産課税というものをはめ込んでいかなければいけない。そういう税制を一つの理念に持っております。
  228. 熊代昭彦

    熊代委員 どうもありがとうございました。  所得税ゼロというのは、考え方としてはそれほどいい考え方ではないというふうに間接的にお答えいただいたのかなという気がいたします。そのように理解させていただきたいと思います。  それで、私は先ほど申し上げましたように、一般歳出を例えば十兆円ほど上積みをする、思い切った景気刺激型予算にしまして、よい政策を、先見性のある政策を実施していく。そのことによりまして景気を回復させていく。景気が本格的に回復した後に所得減税。所得減税だけやればまた過熱しますので、本来の行政改革を思い切ってやる。行政改革と所得減税をやっていく。そして地方税、国税合わせて五〇%ぐらいに持っていくというのが正しい手順ではないかというふうに思います。  これほど財政が逼迫し、これほど景気の悪いときに所得減税を先行させて、その担保として消費税を上げるというのはいささか冒険に過ぎるのではないかという気がいたします。結果は同じなんでございますけれども、やはり安全度を見た、そしてまた世の中に対する影響を見た手順というのがあるのではないかと思います。  自由民主党は、三%の消費税を導入いたしまして、軽々にこの税率を上げないというお約束をしたこともございました。そういう立場を堅持して、しかも正当な手順で景気回復と所得減税をやっていきたい、このように考えるわけでございますが、こういう順番を間違えてやると大変なことになるのではないだろうか。  しかも消費税と所得減税——所得減税というのは所得の高い人はだれも楽しみにしておりまして、私自身も個人的には大変楽しみにいたしておりますけれども、それと国の将来をどう考えるかということとは別でございます。個人的楽しみというのは捨てて国の将来を考えなければいけない。  選挙区に行きまして所得減税反対だ、こういう趣旨のことを言いますと、これは大変評判が悪いのですね。おまえはそんなことを考えているのかと言われますけれども、評判悪くてもやはりこれは言っていかなければいけない。  消費税は、例えば民間で、ちまたで言われております、七%の場合年収七百万円を境にして所得減税が得する、七百万を下る人たちは消費税の方の負担が重くなるというような、正確かどうかは知りませんが、そういうのがございました。所得の再配分と反対の思想でございまして、所得の低い人から高い人に所得移転をしよう、そういう政策でございました。  連立与党の構成員の方々は、それと反対のことを主張していらっしゃった方が随分多いのではないかと思いました。私自身も、政治は弱者のためにあるという立場に立っておりました。しかし、自由主義経済をしっかりやって、政治は弱者のためにあるということをやっていきたいわけでございますけれども、そういうことで大変に問題があると思います。  いずれにしましても、年末までにしっかり詰めていただけると思いますけれども、もしアメリカにノーと言うのが本当の大人の関係であるならば、この根本的な考え方を示しまして、アメリカと日本は違うのだ、内需を拡大していくのは日本ではこういう方が有効なんだ、所得減税をすぐやるというのは、そして消費税をフォローさせなければいけないというのは有効でないんだ、こういう根本的なところでノーと言うべきではないか。  その一番根本のところでイエスと言って、後は右往左往して、とにかく収拾しようというようなことになってしまったのではないかという気がいたします。これは私のやっかみ根性かもしれませんけれども、その点について大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  229. 藤井裕久

    藤井国務大臣 所得減税の所得効果について、私は熊代委員の言われるのは学問的に正しいと思います。不況のときほど所得効果は低い、これは間違いないと思います。  しかし、先ほどから申し上げておりますように、そういう学問的所得効果だけではなく、今消費というものがストック調整が終わりかけている、限界に来ている、買いかえ需要が今まさに起こりつつあるというときにやる所得減税は、私は大変意味があると思います。段取りとして今所得減税を行うことは誤りではないのではないかというふうに考えております。  また、前のことを繰り返すようでございますが、何もよその国をまねをするわけではないけれども、やはりOECD二十四カ国の一つの趨勢というものは、あれはやはり国々の知恵だと思います。歴史的沿革とかそういうものはみんな確かにあります。ありますが、やはり一つの知恵というものがああいうふうに集積されてきている。  その中で、日本が所得課税で二十四カ国中最高の比率を持ち、消費課税で最低の比率を持っているという事態は、やはり素直に見ていっていいのではないかという意味から、私は先ほど来、八月以来申し上げていることを言っているわけであります。熊代委員とここのところは違うのでありますが、アメリカがそうしろと言っているとかそういう次元とは全く関係なく、私どもはこれからの政策選択としてこのことが正しいということを申し上げさせていただきたいと思います。
  230. 熊代昭彦

    熊代委員 アメリカの要望に従ったというのは、私の新聞などを読んでの感じでございまして、必ずしも事実に合ってないかもしれませんが、一応ノーと言うならばここということを意見として言わせていただきたいと思います。  次に、公債発行特例法案に関連いたしまして、赤字国債を出すということでございました。ここで私は根本的なことを考えていただきたいと思うのですが、赤字国債と建設国債を区別して、建設国債は将来に資産を残すからまあいいんだ、よくはないけれども比較的いいんだ、こういうことでございます。赤字国債は絶対だめだという、赤字国債と建設国債を徹底的に区別したこの考え方は、財政のあり方、予算のあり方に極めていびつな結果をもたらしたのではないかと思います。  極めて卑近な例を言いますと、例えば特別養護老人ホーム、特養、今大変評判がいいんのですが、これは要望の三倍から四倍ぐらい、各県とも予算がつく三倍から四倍ぐらいの要望を抱えております。しかし、これは実施しますと運営費がかかるのですね。運営費がかかりまして、赤字国債も出さぬといかぬ。だから、やたらにふやすわけにはいかぬのだということになるわけです。  これは一つの例でございまして、非常にいい施策であっても、赤字国債が絡むからできないというようなことでいかに選別されてきたかということでございます。これは非常に一般受けのしやすい議論でございますけれども、財政のあり方、経済のあり方につきまして一般常識を安易に持ち込むことは、実際上は大変マイナスをもたらすと思います。  今度赤字国債が発行されまして、この際、思い切って赤字国債と建設国債の区別をなくす、そして、それをきっちりやるのは政策判断、政策決定をする政治家であるのだ、あるいは政治家を補助する行政官であるのだ、こういうことを打ち立てていただけば、この赤字国債の発行も決して悪くはないと思います。国債の発行につきましても、発想の転換がなければ我が国の財政というのは思い切った改革がされないのではないかと思います。  時間も参りましたので、いろいろ申し上げましたけれども、このこととともに、最後に、今後の我が国の財政のあり方につきまして大蔵大臣の決意をあわせてお伺い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
  231. 藤井裕久

    藤井国務大臣 この赤字国債と建設国債は経済的効果において同じだということも、熊代委員の御指摘のとおりだと私は思っています。先ほどから国債のマイナスということを申し上げました。つまり、民間資金を吸い上げて公的部門に持ってくるわけであります。これによって、ある側面では非常にいい効果を発揮しますが、ある経済の側面になると、これは民間資金の枯渇、そして金利の上昇、そしてインフレという道をたどるわけでありますから、その点においては赤字国債も建設国債も同じであるということは、私は熊代委員と同じだと思います。  ただ、赤字国債というものと建設国債の違いは、さっき資産に残るというお話をされましたが、もう一つ、歯どめがあるかないかだと思います。建設国債であれば何かやるということの前提だ、赤字国債というのは始まったらどんどんふえていく。  現に昭和七年の高橋財政というのは、高橋さんは全部財政がわかった上でとりあえず出されて、そしてそれをやめようとされたわけでありますが、結局あのことが戦費に全部貢献してしまった。赤字国債を無制限に出すことが戦費の調達に貢献された。それゆえに、戦後の財政法はそこを分けて、同じ国債であっても歯どめのあるものとないものは分けよう、こうきたわけでありますから、私は、それはそれなりに意味があると思っておりますし、経済的なことにおいては熊代委員と同じに思っております。  とにかく、こういう国債体質というものは、そのままほったらかしておいていいということではないわけであります。これは後世代への負担という問題もあります。そしてまた、本当にやらなければならない財政の仕事が非常に圧迫されているわけでございますね、この国債費のために。  こういうこと等を考えれば、より一層制度の見直しをやる。あるいはまた、同じ資金でも重点的な投資をやることによって財政体質を直すことが、財政のためにも、そして同時に、先ほどから申し上げておりますように日本の将来の経済体質のためにも、全力をもってこれはやらなければならない課題だと思っておりますので、どうか御協力をいただきたいと思います。
  232. 熊代昭彦

    熊代委員 質問時間が終わりましたので一言だけ申し上げますけれども、社会保障とか教育、科学技術、そういったソフトの面に金が出されるときに、御承知のように現在は生産力過剰の時代でございますから、こういう消費部門があるということは、景気の極端な落ち込みを防ぐという意味で非常によいビルトインスタビライザーになることは御承知のとおりでございますが、その機能を不況のときにはしっかり煮詰めていただく。好況のときには民需が出てきますので公共事業を削っていただく、こういうような財政の発想の転換もあっていいのではないかと思います。  大蔵大臣、大変誠実にお答えいただきまして、ありがとうございました。これをもちまして質問を終わります。ありがとうございました。
  233. 宮地正介

    宮地委員長 次に、岸田文雄君。
  234. 岸田文雄

    ○岸田委員 大臣におかれましては、朝から本当に長時間にわたりまして、まことに御苦労さまでございます。予定によりますと、私がきょうの最後の質問者ということのようであります。質問も六人目に入りますと多少前の質問者と重なる部分もあるかとは思いますが、もう一息でございますので、元気にお答えいただきますよう、よろしくお願いをいたします。  それでは、まず税制改正、この全般的なものから話を始めたいと思うわけです。  税制を変えるに当たりまして、それこそ哲学的なレベルから実務的なレベルまで、本当に多くのことを配慮しなければならないと思うわけでありますが、私は、今の日本の状況を勘案した場合に特に大切にしなければならないこと、その一つとして景気対策のための税制、そしてまた、さらに一つとしては将来望ましい税体系の確立ということ、この二つのバランスというか双方に配慮した施策を施すことが何よりも肝要だということを思うわけであります。  その中の景気対策のための税制改正としまして、大臣も朝からたびたび強調されておられましたように所得税減税、これを大臣は位置づけておられるわけでございますが、この所得税減税につきまして、そもそも、この六兆円という規模の問題、また、一応現時点では一年限りということになっておるということ等から、その効果のほどを疑問視する声が朝からもたびたび出ておったわけであります。  この点については、私は、規模それから一年限り、こういったあたりの効果が十分かという部分ももちろん疑問に感じるわけでありますが、加えて、昨今新たに出てきました状況の中で、公共料金の数多くの値上げがあるわけであります。  これは、主なものだけを申し上げましても、予定されておるものをざっと挙げますと、まず一月にはもう既に郵便料金が値上がりしたわけであります。四月にはNTTの国内電話の料金、あるいは五月には首都高速道路の料金、六月には東京都の公共料金、水道料金が値上げの予定ですとか、七月には東京都の地下鉄、バス等も値上げの予定が言われております。さらには、医療費ですとか入院時の給食費等も負担が重くなるというようなことも言われております。さらには、国立大学の入学料は六年度から値上がる予定、あるいは授業料の方は七年度からというような話もあるわけであります。  さらに検討中のものまで数え上げますと、本当に切りがないような状況でございます。所得税減税、大臣は消費マインドにかなり資するものがあるということで自画自賛されたわけでありますが、一方で、この公共料金のたび重なる値上げは、消費マインドに対してかなりマイナスがあるのもまた事実だと思うわけであります。  こういった状況が進んでいく現在において、大臣、この所得税減税の意味合い、やらないよりはやった方がいいという話もあるわけですが、ここまで来ますと、やらなかったら大変だというような程度ではないかというような気も私はするわけであります。この辺の状況を踏まえた御所見をお伺いできればと思います。よろしくお願いします。
  235. 藤井裕久

    藤井国務大臣 まず、所得税減税の規模でございます。ちょっとけさ申し上げましたように、歴史的に有名だと言われている一九八一年のレーガン減税でございますが、これがGDP比で〇・九%の減税、今回のが一・二%。これは三割以上大きいということでございましょうか。  それから、アメリカがよく使う言葉でカット率というのですが、要するに、いただいている所得税の、これは住民税も入りますが、そのうち何%を減税に回したかという意味、いわばカット率といい、あるいは減税率でいいと思います。これはレーガン減税が九%、我が国の今回のこの減税が一五・八%、けた違いに大きいということはまず御理解をいただきたいと思うわけであります。  また、一年間問題について御言及がございました。私どもといたしましては、今回のは、まず先行的な景気対策としての減税と位置づけておりますが、同時に今御指摘のような、年内に連立与党内の議論、そしてその後に当然のことながら国会の御審議、国民の皆様の御理解ということが必要であることはもとよりであります。そういう本格的税制改革をやるという中には、何と申しますか、いわく言いがたいといった方がいいのかもしれませんが、期待というものは当然おありだと思います。  ただし、私どもは、本格的な税制改革は一体として処理していかなければいけないと思っておりますからそのことはつけ加えさせていただきますが、減税というものについてはそういう期待が多くの国民の方にあるということは否定できないと思います。  また、公共料金につきましては、これは経済企画庁の所管でございますので余り差し出がましいことは申し上げられませんが、消費者物価一・五%で一応見通しを出しております。現在決まっているものにつきましては全部これを織り込んでいるというふうに承知をいたしておる次第でございますので、私はこの減税効果は大変大きいものだと考えております。
  236. 岸田文雄

    ○岸田委員 今大変効果が大きいものだというお話があったわけであります。今レーガン政権との比較等で決して小さい規模のものではないという御説明もありましたし、効果があるという御説明であったわけではありますが、これは国も違えば時代、環境、みんな違うわけでありまして、今日本の置かれておる環境は決して今までの日本の歴史の中でも軽く見ることはできない重大な局面にあると思うわけであります。ですから、単にほかの国やら、かつての状況との比較においてその数字を並べても、どこまで意味があるかなという気もしないではないわけであります。  ですから、結局のところ、今回こういった所得税減税をやられたわけでありますが、今日までの状況を踏まえた中で、もうこれで今の経済環境に対して所得税減税、消費マインドの喚起という意味では、大臣、これで十分だ、もうこれ以上何かする必要がないと思われるのか、何かする必要があるのか。その辺の部分に関して御所見を例えればと思うのですが、お願いいたします。
  237. 藤井裕久

    藤井国務大臣 国によって事情が違うというようなお話、全くそのとおりだと思います。  貯蓄率が日本とアメリカでは大分違うということも先ほど議論が出ました。また、先ほど熊代委員が言っておられて、私も同じ意見なんですが、不況期ほど所得効果が低い、これも事実だと思います。  しかしながら、逆に今度は今の日本の置かれている状況でございますが、ちょうどまさにストック調整というものが終わりかかって消費に対して新しい芽が出だしたところ、このことはもう明らかにいろんな数字から出ておるわけでありますから、こういう時期にこのような大幅な所得税減税をやるということは、必ずこの芽の出かかった消費マインドが大きく膨らむと考えております。  特に、十五兆二千億という、これはそのうちの六兆円が減税でございますが、この効果を合わせ、しかもその中にはいわゆる総需要効果だけではなくて、問題のある分野に対するきめ細かい金融の問題であるとか、あるいは土地の流動化の問題であるとか、さらにまた新しいニュービジネスに対する助成だとか規制緩和だとか、こういうものを全部含めた十五兆二千五百億でありますから、私は、この今出かかっている芽を、平成六年度中のしかるべき時期に必ず本格的回復軌道に乗せられるという確信を持って今取り組んでいるということを御理解いただきたいと思います。
  238. 岸田文雄

    ○岸田委員 ぜひ大臣のおっしゃるように、効果があらわれることを私も期待しております。  そして、先ほど税制改正を考える上で、景気対策のための税制と将来の望ましい税体系の確立という、この二つの兼ね合い、これを配慮する必要があると申し上げたわけでありますが、もう一つの将来の望ましい税体系の確立という部分に関してお伺いをさせていただくわけです。  まずそもそも、これは基本的なことに戻ってしまうわけですが、今の日本の置かれている状況の中で、この状況に対応すべき望ましい税体系、これは余り漠然としてはお答えにお困りになると思いますので、直間比率云々の話で大臣のお考えをお伺いできればと思うのですが、お願いいたします。
  239. 藤井裕久

    藤井国務大臣 将来の日本の税体系、まず何よりもこれからの社会、なかんずく福祉社会というものを安定的に確保していくためには、ある程度国民の皆様の御負担をいただかなければならないことはもう否定できないと思います。  そのあり方というものは、社会保険料である場合もありましょう、税制である場合もありましょう、あるいは利用者負担というようなものもありましょう。どういう形でこれをお願いするかということが一つありますし、その中での税制はどういうふうに仕組むかというのが今の御指摘の点だと思います。  私は、昨年八月の内閣発足以来、消費課税の充実、所得課税の軽減という言葉をもって基本的理念を申し上げてまいりました。税制調査会も全く同じような考えに立っているようでございます。  先ほど申し上げましたように、OECDのまねをするわけではないのでございますが、二十四カ国の中で日本は極めて特殊な税体系になっている。それはそれなりに意味があったという面も否定いたしません。いたしませんが、やはり福祉社会を築き上げていく中で、先進二十四カ国の中で極めて日本が特徴的な位置にある。所得課税が極めて高い。消費課税は二十四カ国中二十四番目である。これは一つの参考としてやはり受けとめなければならないし、そのことが私どもが申し上げている理念と一致しているのではないかと考えております。
  240. 岸田文雄

    ○岸田委員 大臣のそのようなお考えの中で今回の所得税減税、財源につきましてはとりあえず一年間特例公債ということで対応をされたわけであります。大臣は、前回私も質問に立たせていただいたときも一貫して、無責任な赤字公債には反対しておられたわけであります。今回も一年限りということであるわけでありますが、この財源問題、本格的な税制改革の一環として福祉の全体的なビジョンを作成して結論を出したいという細川総理、政府お話であるわけでありまして、この論議が進んでいるということが朝方からたびたび出ておったわけであります。  私はこの財源というもの、確かにビジョンなり全体的な計画、これをつくり出していく中で財源問題を解決すること、これは大切だというのはわかるわけでありますが、実際問題として所得税減税の財源、金がどこからか降ってくるわけではありませんので、何らかの現実的な対応が迫られると思うわけであります。  そうしますと、具体的な選択肢としてはそれほど多くの選択肢が与えられているわけではないのではないかと思うわけであります。選択肢のうちどれを選ぶかということについては、これは全体的なビジョン、全体的な論議の結論を待って決めなければいけないと思うわけであります。その選択肢が幾つかあるとして、大臣のお考えの中で現実的な対応、いかなる選択肢があるかということについて幾つか具体的にお話をいただければと思うのですが、お願いいたします。
  241. 藤井裕久

    藤井国務大臣 選択肢の大きな中には、いかなる福祉社会を築き上げていくかという点が本当はあるのだと思いますが、その幅というのは、現実の問題として相当少ないと私は思っております。  今の年金制度の既定の路線の中で充実をしていくとか、あるいは医療の制度についても、手直し的なことはあるにしても、この日本の今の医療の仕組みを守っていく。さらに、介護でございますね。介護の分野というものは、よりおくれているものを充実していかなければならないということを考えますと、ほぼそういう意味での選択肢の幅は相当狭いのではないか。  その中で、では御負担をどういう形でお願いするかという問題についても、これまた選択肢は相当狭いと思います。所得課税をより充実する、つまり、働く方の御負担をこれ以上多くしてこの福祉社会を支えるということは、私は常識的にあり得ないことだと思っておりますから、この選択肢も相当幅は狭い、先ほどから申し上げているとおりだと思います。  その中で、一体何%ぐらいのことでやっていくのかというようなあたりは、もちろんこれから議論しなければならないと思います、その幅というのはありますから。しかし、大きな流れとして、我々の描いている福祉社会の図式、そしてそこでの御負担の図式はそんなに皆さんと違っていないのではないかという気持ちでおるつもりでございます。
  242. 岸田文雄

    ○岸田委員 今、大臣答弁をお伺いしまして、選択肢がかなり狭いということをたびたび強調されたのを聞きまして、何となく今までの経緯、例えば細川総理の国民福祉税発言等々、ああいう話がどうも頭にちらついて仕方ないわけであります。  その狭いという中にはもちろん、名称は消費税でも国民福祉税でも結構なんですが、その辺の税率アップというものも含まれるのは当然だと思うわけですが、それを除いた選択肢の幅というのはどうなんでしょうか。かなり狭い狭いとおっしゃいましたけれども、やはり何かお考えの中にあるのでしょうか。もしあれば教えていただけますでしょうか。
  243. 藤井裕久

    藤井国務大臣 安定した福祉社会を築き上げる上において所得課税をより充実していくという方向は、ほとんど多くの方が選択なさらないことだと思っています。
  244. 岸田文雄

    ○岸田委員 はい、わかりました。  この辺につきましては今御検討されておられる最中でありましょうから、とにかく一つ申し上げたいのは、この辺の論議につきましては、十分国民にわかりやすい論議、そして、どんなに手間暇、時間がかかってもそれを省略するようなことのないように、広くそして時間をかけた論議をお願いしたい。その上での結論を出すということ、これを心がけていただきたく心からお願い申し上げます。  それから次に、租税特別措置法の一部改正の部分でひとつお伺いさせていただきます。  これは、その中に相続税の延納から物納への切りかえの部分が盛り込まれております。午前中に相続税の部分についても質疑が行われたわけでありますが、最近における相続税負担状況にかんがみて負担の軽減を図ること、これは本当に大変評価できると思うわけであります。  それに関連して、租税特別措置法の中でも延納から物納への切りかえを認めるという部分が盛り込まれております。それについて一つ申し上げたいこと、そしてお伺いしたいことは、延納から物納への切りかえ、今までの質疑の中で、物納というものが、なかなか全体の希望数からすると認められることが少ない。それに対して、物納というのは極めて例外的なものであるというような御説明もあったわけでありますが、逆を言いますと、物納をするというのは、やむにやまれぬ事情が裏にあるというのもまた事実だと思うわけであります。  物納が進まないということに関して、管理上の問題という御答弁もあったわけでありますが、一方で、物納をする側の立場に立ってみますと、物納をしたい、ところが、物納したい物件がマンションですとかアパートですとか賃貸人がいるということになりますと、それを物納したくても、立ち退きを促さなければいけない。立ち退き料が要るとか、いろいろな問題が出てくるわけであります。  そして、この物納が問題になるような地域というのは、間違いなく東京都ですとか大都市部中心でありますので、物納したいと思う物件が、更地のまま、いつでも物納ができるような状態で保たれておることの方がまれであると思うわけであります。  ですから、今回、延納から物納への切りかえを認めるということを配慮、一段階前進はしたわけでありますけれども、より納税者の立場に立ては、現実問題、物納をしたくてもできないような条件が間々出ておる状況を考えた場合に、もう一段の配慮が必要なんではないかなという気がしております。  さらに、時間が余りないのでそのまま続けさせていただきますが、この延納から物納への切りかえが論議され始めた状況を振り返ってみますと、延納を一応決定して、延納させていただくことを決めさせた後に納税者が予期しなかったような地価の下落が起こったために、実際持っておるその物件を処分することができない等の状況によって納税が不可能になるというようなことがあったわけであります。相続税の評価額、いわゆる路線価と実勢価格との問題で考えますと、この二つが逆転するような状況も起こってくるような大変な、だれもが予期しなかったような状況が起こった中で、この物納問題が出てきた。  そして、さらに言えば、路線価と実勢価格との問題でいきますと、最近のような状況ですと、適正な売買事例がないような土地をどう評価するかというようなことも起こってきているわけであります。  そういったことを考えますと、課税の根拠となる評価額、これについては、もう少し細かな、新たな考え方が必要なのではないかということを思うわけです。この辺、延納から物納への切りかえにつきましてのさまざまな環境につきまして、大臣、少しその辺の御所見をお伺いした上で、今後の対応、何かお考えがあればお聞かせいただけますでしょうか。
  245. 藤井裕久

    藤井国務大臣 きょうの御議論にもありましたように、原則は即納で、次が延納で、例外的に物納だ、こういう仕組みが一つ基本にあるわけでございます。  最近になるまで物納というのは本当に減っていたのも事実でございまして、昭和二十年代の財産税のときに大分物納があったのでございますが、まさに金納という形で進んできたわけであります。  しかし、御指摘のような、大都会部の異常な地価の上昇というようなことから物納が出てきた。しかも、平成元年から三年までとりあえず延納の方も物納に切りかえることを認めようというのを今御提案申し上げていることでありますが、同時に本年度予算におきましては、できるだけ物納がスムーズにいくように、これはおっしゃるように、国税の問題というよりも、それを管理する財務局系統の問題であるものでございますので、人員の増加とか経費とか大分ふやしております。  ただ、お話にもありましたように、一棟のマンションはなるたけお引き受けするように、今方向に動いておるのでございますが、ワンルームとかあるいは共有でございますね。相続人の方の共有関係にあるようなものにお一人だけ受けるというような問題とか、いろいろ難しい問題があるので、限界があるということも御理解をいただきたいと思います。  また、路線価と実勢の問題でございますが、今そういうことがあるのかどうかちょっと私は存じませんが、やはり地価の下がっている状態においては路線価は適正に直していかなければいけない、これはもう当然のことだと考えております。  事務的に国税庁から答えさせます。
  246. 若林勝三

    ○若林政府委員 ただいま、路線価が実勢価格と逆転をしておるような状況についてのお尋ねがございました。少し技術的な点も含めて、恐縮でございますが御説明をさせていただきたいと思います。  まず、相続税における財産の価額というのは、これは相続税法によりまして相続財産取得時の時価によって評価する、これは当然のことでございますが規定されておるわけでございます。  ところで、相続税につきましては申告納税制度を当然採用いたしておりまして、納税者の申告の便宜とか課税の公平というようなことから、なるべく簡易かつ的確に土地の評価額を算定することができる、そういうことが必要でございます。その基準となる路線価等をあらかじめ定めておく必要があるということで定めておるわけでございます。  この路線価を定めるに当たりましては、技術的に、課税時期、直近にある時点を設けまして評価基準の作成を当然ながら行わざるを得ないということでございます。  この場合、課税時期、直近の地価変動をできるだけ路線価に反映させる、要するに実勢を反映させるという意味でございますが、反映させるため、当年の一月一日の時点を評価時点としております。そして評価基準を作成することにいたしておるわけでございます。まず第一点。  そして、次に一月一日以降の一年間実はこの評価をもって対応するということになるわけでございますが、この一年間の間に地価変動が当然起きる可能性があるわけです。そういったことの変動にも耐え得るようにという評価上の安全性を見込みまして、地価公示価格水準の八〇%程度ということで路線価がつくられておるわけでございます。  ところで、委員先ほど御指摘のように、路線価等の評価時点、これは一月一日でございますが、その後地価が下落をいたします。そういたしますと、課税時期、相続の開始時においては路線価等をそのまま適用して評価することが適当でない。要するに、地価が下落しているために適当でないような事態というのが発生する可能性があるわけでございます。  そのための八割程度のアローアンスは見込んではおるわけでございますけれども、なおかつそれでも適当でないというような場合、例えば鑑定評価を依頼するというようなことで適正価格で御申告をいただくということであれば、路線価でなくともそれをお認めするということで、個別に時価を判断するということで適切な課税事務としての対応をしておる。したがって、路線価による必要はない。路線価が実勢を下回るのであれば、そういった価格を適正に申告していただく。そうすれば、我々としてはそれに対して適切に処理するということをしておるわけでございます。  それからもう一点。売買実例がないような場合にどうやって路線価を決めるのだという御指摘もございました。  この点につきましては、相続税等における路線価は、地価公示価格、それから売買実例価格、不動産鑑定士などの地価事情の精通者の意見価格などをもとに評価いたしておるわけでございます。仮に採用するような売買実例がないというような場合には、地価公示価格であったり不動産鑑定士などの地価事情の精通者の意見等に基づいて適正に評価するという、事務的にはそういうふうに対応しておるところでございます。
  247. 岸田文雄

    ○岸田委員 もう時間もないようですので、ぜひその辺御配慮のほどをよろしくお願いいたします。  次に入ろうかと思いましたが、持ち時間が来てしまいましたようですので、大臣、朝から大変長時間本当に御苦労さまでございました。朝からの論議を見まするに、この日切れ法案を通すこと、これもまた大切なことかもしれませんけれども、その内容につきましてはいろいろと現実問題として疑問を感じる部分もたくさんあるわけでございます。ぜひこの辺の論議を十分踏まえた上で、前向きな対応を心からお願い申し上げます。  以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  248. 宮地正介

    宮地委員長 次回は、明二十五日金曜日午前十時三十分理事会、午前十時四十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五分散会