運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1994-03-24 第129回国会 衆議院 商工委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日平成六年一月三十一日)(月曜日  )(午前零時現在)における本委員は、次のと おりである。   委員長 中井  洽君    理事 逢沢 一郎君 理事 甘利  明君    理事 尾身 幸次君 理事 額賀福志郎君    理事 大畠 章宏君 理事 古賀 正浩君    理事 伊藤 達也君 理事 河合 正智君       浦野 烋興君    小川  元君       小此木八郎君    小里 貞利君       梶山 静六君    熊代 昭彦君       田原  隆君    谷川 和穗君       中尾 栄一君    中川 秀直君       中島洋次郎君    丹羽 雄哉君       野田 聖子君    山本  拓君       沢藤礼次郎君    関山 信之君       野坂 浩賢君    細谷 治通君       松本  龍君    土田 龍司君       豊田潤多郎君    西川太一郎君       山田 正彦君    枝野 幸男君       武山百合子君    山田  宏君       赤羽 一嘉君    赤松 正雄君       佐藤 茂樹君    吉田  治君       吉井 英勝―――――――――――――――――――――― 平成六年三月二十四日(木曜日)     午前九時三十一分開議 出席委員   委員長 中井  洽君    理事 逢沢 一郎君 理事 甘利  明君    理事 尾身 幸次君 理事 額賀福志郎君    理事 大畠 章宏君 理事 古賀 正浩君    理事 伊藤 達也君 理事 河合 正智君       浦野 烋興君    小川  元君       小此木八郎君    大島 理森君       梶山 静六君    熊代 昭彦君       田原  隆君    谷川 和穗君       中川 秀直君    中島洋次郎君       丹羽 雄哉君    野田 聖子君       細田 博之君    今村  修君       岩田 順介君    輿石  東君       沢藤礼次郎君    細谷 治通君       松本  龍君    土田 龍司君       豊田潤多郎君    西川太一郎君       山田 正彦君    武山百合子君       矢上 雅義君    山田  宏君       赤松 正雄君    佐藤 茂樹君       吉田  治君    吉井 英勝君  出席国務大臣         通商産業大臣  熊谷  弘君  出席政府委員         通商産業大臣官         房長      牧野  力君         通商産業大臣官         房総務審議官  江崎  格君         通商産業省通商         政策局長    坂本 吉弘君         通商産業省生活         産業局長    土居 征夫君         中小企業庁長官 長田 英機君  委員外出席者         郵政大臣官房国         際部国際政策課         長       大橋 郁夫君         商工委員会調査         室長      山下 弘文君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十五日  辞任         補欠選任   小川  元君     渡辺美智雄君 同日  辞任         補欠選任   渡辺美智雄君     小川  元君 同月二十二日  辞任         補欠選任   小川  元君     鹿野 道彦君   熊代 昭彦君     後藤田正晴君   田原  隆君     桜井  新君   吉田  治君     川端 達夫君 同日  辞任         補欠選任   鹿野 道彦君     小川  元君   後藤田正晴君     熊代 昭彦君   桜井  新君     田原  隆君   川端 達夫君     吉田  治君 三月二十四日  辞任         補欠選任   梶山 静六君     大島 理森君   山本  拓君     細田 博之君   関山 信之君     輿石  東君   野坂 浩賢君     今村  修君   松本  龍君     岩田 順介君   枝野 幸男君     矢上 雅義君 同日  辞任         補欠選任   大島 理森君     梶山 静六君   細田 博之君     山本  拓君   今村  修君     野坂 浩賢君   岩田 順介君     松本  龍君   輿石  東君     関山 信之君   矢上 雅義君     枝野 幸男君     ――――――――――――― 三月二十四日  繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する  法律案内閣提出第一七号) 同月一日  繊維産業危機打開MFA発動に関する請  願(川端達夫紹介)(第一〇号)  同(北橋健治紹介)(第一一号)  同(小平忠正紹介)(第一二号)  同(塚田延充紹介)(第二三号)  同(米沢隆紹介)(第一四号)  同(川端達夫紹介)(第七八号)  同(神田厚紹介)(第七九号)  同(小平忠正紹介)(第八〇号)  同(笹木竜三紹介)(第八一号)  同(塚田延充紹介)(第八二号)  同(中野寛成紹介)(第八三号)  同(西村眞悟紹介)(第八四号)  同(米沢隆紹介)(第八五号) 同月八日  繊維産業危機打開MFA発動に関する請  願(宮地正介紹介)(第二九七号) 同月十五日  繊維産業危機打開MFA発動に関する請  願(河上覃雄君紹介)(第三五八号)  同外二件(畠山健治郎紹介)(第三七五号) 同月二十四日  繊維産業危機打開MFA発動に関する請  願外二件(佐藤茂樹紹介)(第六一九号)  は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月二十八日  実効的な緊急景気対策に関する陳情書外四件  (第五〇号)  大規模小売店舗法見直しに関する陳情書  (第五  一号)  フロンの回収と再利用システム早期確立に関  する陳情書外一件  (第  五二号)  太陽光発電普及に関する陳情書  (第五三号)  地域産業活性化等地方経済対策の推進に関す  る陳情書外一件  (第五  四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する  法律案内閣提出第一七号)      ――――◇―――――
  2. 中井洽

    中井委員長 これより会議を開きます。  ただいま付託になりました、内閣提出繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより趣旨説明を聴取いたします。熊谷通商産業大臣。     ―――――――――――――  繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  繊維工業につきましては、現行の繊維工業構造改善臨時措置法に基づきまして、昭和四十九年度から構造改善事業を実施し、商品開発力技術開発力の強化、設備の近代化等を推進してまいりました。  しかしながら、現在我が国繊維工業は、消費低迷輸入増大寺厳しい環境変化に直面しており、高付加価値化による品質面での差別化クイックレスポンスによるサービス面での差別化を緊急に実現することが不可欠となっております。  一方、我が国繊維製品流通部門について見れば、複雑でむだの多い流通構造となっており、現下の衣料品消費低迷により、構造改革必要性が顕在化してきております。  これらの状況を踏まえ、一昨年十二月、通商産業大臣より、繊維工業審議会及び産業構造審議会に対しまして、今後の繊維産業及びその施策のあり方について諮問がなされ、約一年間にわたり両審議会において慎重な審議が重ねられました。  その結果、昨年十二月、我が国繊維産業が現在の厳しい環境変化を克服し、今後さらなる発展を遂げていくためには、市場の求めるものを把握し、開発し、生産販売するという市場指向型の産業構造構築と、消費者を刺激し、潜在的ニーズを引き出すための創造性をはぐくむ産業構造構築が不可欠であるとの答申を得たところであります。  政府といたしましては、この答申内容に沿って政策を推進すべく、本法律案を提案することといたした次第であります。  次に、この法律案要旨を御説明申し上げます。  第一は、この法律が廃止されるものとされる期限につきまして、本年六月三十日までとなっているものを、平成十一年六月三十日まで五年間延長することであります。  第二は、繊維工業繊維製品流通部門構造改善を総合的に推進するため、法律の題名を繊維産業構造改善臨時措置法とし、従来の繊維工業構造改善に加え、繊維製品販売事業構造改書対象とすることであります。第三は、施策対象者を拡大し、繊維工業者繊維製品販売業者連携による情報化を軸とした販売または在庫の管理合理化繊維工業者繊維製品販売業者デザイナーの共同による新商品開発などを内容とする構造改善事業を促進することとすることであります。第四は、産地基盤の整備のため、産地の核としての役割を果たしている繊維リソースセンター等構造改善円滑化計画作成主体とすることにより、これらが行う構造改善円滑化事業に対するソフト面での支援充実することであります。  以上が、この法律案提案理由及び要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 中井洽

    中井委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  5. 中井洽

    中井委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田治君。
  6. 吉田治

    吉田(治)委員 ただいま趣旨説明をいただきまして、質問させていただきたいと思います。  まず第一点目、繊維産業というのは、衣食住という中で非常に大きなウエートを占め、「衣食足りて礼節を知る」という言葉があるくらい非常に重要な産業であるというのは御認識のとおりでございますし、また、事業者数におきましては三十八万、従業者数におきましては二百八十万で、これは全雇用の一〇%をこの繊維産業というものが担っている。繊維というのは、どうもずっと昔の産業のイメージがあるのですけれども、現実としては、日本産業の中でも今でも非常に大きなウエートを占めでいっている。  その中におきまして、現在の繊維産業を取り巻く環境というのは非常に厳しいものがあるのではないかと思います。長期化するこの消費者不況というもの、そしてずっともうここ十年続いております円高というふうなことによります輸入製品の急増ということによりまして、本当に環境は厳しく、繊維産業自身がある意味での危機的状況に入っているのではないかと思うわけであります。  今回の繊維工業構造改善臨時措置法の改正が、こうした繊維産業現状を救済するというのですか、よりよいものにするという目的でありまして、その早期成立関係各界から渇望されているのは、事実、御承知のとおりだと思います。  しかしながら、この織工法早期成立とともに、繊維産業がこれだけ厳しい状況になった原因の一つには、やはり外国繊維製品の急増問題があると思います。特に、輸入秩序対策などを確立する必要があるのではないかと思いますし、そうしなければならないと思っております。  不況を脱出しまして、繊維産業構造改善を成功させるこの臨時措置法趣旨が十分生かされている間、その間だけでも公正な国際ルールに基づきます繊維製品輸入秩序化対策を講じる必要があると思います。そのために、現在、ガットによって認められておりますMFA、多国間繊維取極というふうな国際的ルール発動を決断するときだと考えております。  MFAに関しましては、日米繊維交渉等のときにこのMFAに携わりました大阪の商工会議所の副会頭をやられていました近藤駒太郎さんから私も生前何度もお話を聞かせていただきまして、この話になりますと一時間、二時間になるのですけれども、繊維産業だけは、ほかの産業と違って、多国間でこういうMFAという取極をしているのだから、それだけ摩擦も起こらない、非常にすばらしい取極だ、これを日本もそろそろ生かすときに来ているのじゃないかというふうなお話を生前よくお聞きしましたけれども、大臣、この繊維貿易秩序化対策についてどのようにお考えで、どのように対応されるのか、まずお答えいただきたいと思います。
  7. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 お答えいたします。  繊維産業をめぐる環境の厳しさにつきましては、委員指摘のとおりでございます。  昨年の十二月に、こうした状況を受けまして、先ほど申し上げましたことでありますが、繊維工業審議会及び産業構造審議会で取りまとめられた答申、いわゆる新繊維ビジョンでは、輸入増加に伴う国内の悪影響の軽減は、構造改善等を円滑に行うための支援策基本とし、MFA規制は、発動による効果と問題点を比較考量し、種々の支援策の実効が期待できない場合の手段と位置づけら れたところでございます。  現在、この答申を受けまして、繊維工業審議会に設置された通商問題小委員会において、個々の業種の実態と展望を踏まえ、MFA発動の枠組みについて集中的に御審議いただいているところでございます。  委員お名前を引用されました近藤駒太郎さんは、実は私もかつてともにまさに繊維規制問題、これは当時はアメリカ規制日本が反対する立場であったわけでありますが、時がたちまして、我々は攻守所をかえてきておるということでございます。私どもも、委員の御指摘のような状況を踏まえまして、今後、通商問題小委員会の検討を踏まえつつ、総合的見地から適切に対処してまいりたいと考えているところでございます。
  8. 吉田治

    吉田(治)委員 大臣の答弁で一つあれなのは、それだけ悠長なことを言っている今現状がなというふうな気がいたしております、特に繊維産業におきましては。  私の手持ちの資料では、一九八七年に初めて日本におきまして繊維貿易が、輸入輸出を超過する。つまり日本は、繊維に関しましては、今や輸出大国ではなくて大きな輸入大国になっている。  もう一つ資料によりますと、一九九二年におきましては、日本国内消費されております繊維製品輸入浸透率、つまり私たちの着ている服、さまざまな繊維製品という服を、スーツだとかすべてを含めたその割合というのは四五・八%、つまり市場の四五・八%は今や輸入品が占めるようになってきた。  そういう中におきまして、円高になってくる、工場を海外展開していく、海外からどんどん安いものが入ってくる。そういう中で、いや、支援策で何年間かしのいで、その間に何とかなるよというお考えというのは、いつまで待たすんだという繊維業界の、また、繊維に携わる従業員皆さん方の切なる要望というのがあるのではないかと思っております。  そこで、先月十八日に調査を開始されましたパキスタン綿糸ダンピング疑惑につきましては、速やかに断固たる措置をとられるべきと考えますけれども、現在の調査進捗状況等、アンチダンピングに対する政府の御決意のほどをお聞かせください。
  9. 土居征夫

    土居政府委員 御指摘パキスタン産の二十番手、大番手でございますが、その綿糸にのきましての対日輸出に関するダンピング、関税の課税の問題につきましては、昨年の十二月二十日に業界から提訴がございまして、去る二月十八日に政府として調査開始を決定したところでございます。これは調査開始されましてから原則として一年以内に結論を出すということになっておりますので、現在、そういった作業に入っているところでございます。  調査に当たりましては、ガット・コード及び国内関係法令にのっとりまして、透明かつ公平、厳正に対処していくこととしております。
  10. 吉田治

    吉田(治)委員 そういうふうにしていただきたいところですけれども、この項に関しましては最後に一点だけ意見を述べさせていただきたいと思います。  何度も申し上げておりますように、日本は今や市場占有率で四五・八%が海外製品だ。大臣もいみじくも言われました。アメリカにおきましては、一九七四年に、市場に八・三%の繊維製品が入った段階で、MFA発動している。その結果、現在アメリカ繊維産業がどうなっているかというと、御承知のとおり、いっとき非常に下火になったのが隆盛になってきた。  日本におきましても、具体名を挙げていかがかと思いますけれども、ヘインズですとかさまざまな下着が入ってきている。日本がいつまでも海外に気兼ねというふうなものをされて、その結果として日本繊維産業が衰退の方へ向かってしまう、暗い長いトンネルに入っていくというのは、果たして通産省がとるべき道かどうかというのは非常に疑問だと思います。  また、その中におきまして、四〇・五%も中国から製品が入ってきている。それがある意味で、アメリカなんかは人権を侵害している中国から製品を入れるのはいかがかという声が出るくらいですけれども、しゃ中国の占める割合が四〇・五%もある日本において、ひょっとして、万が一でもこのMFAに関してそういうふうなことの関係、影響というようなものがあるのであれば、それは取り除いていただきたいということを最後に一言申し上げまして、具体的な質問に入らせていただきたいと思います。  この織工法にとりまして四つのポイント情報化ですとか国際化、また高齢化というようなのが今産業全体について言われておりますが、繊維産業につきましてももちろんこれは言えることでありまして、また、繊維産業にはこれとは別に環境問題というものがやはり影響してくるんではないかと私は思っております。  そこで、まず第一点、情報化についてですけれども、生産流通消費の各段階情報構造改善産業活性化に役立てるために、各企業情報化支援策というものが必要になってくると思います。コンピューターシステムPOSシステム、さまざまなことが念頭に置かれていると思いますが、どのような施策をお考えなのでしょうか。
  11. 土居征夫

    土居政府委員 御指摘のマーケット・イン型の構造改善といいますか市場指向型の構造改善、これを達成するためには、製造業者流通業者連携によりますクイックレスポンス体制繊維業界に広く普及することが重要でございます。  このため、来年度予算につきましては相当な拡充を行っておりますが、まず第一に、中小製造業及び流通業が、この情報化のための構造改善グループを組みまして、いろいろな構造改善事業をやっていくという場合に、これについてのフィージビリティースタディーあるいはシステム設計費の補助を行うということにいたしておりまして、そのための新たな予算を編成しております。  それから第二点は、各グループによる構造改善事業を推進する上でのベースになる問題でございますが、繊維業界における共通のといいますか統一のデータベース、これがぜひとも必要でございます。特に中小企業にとっては必要でございます。いわゆる共通商品マスターデータベースというものでございますが、この開発がこの対策の一番の基本ということでございまして、そのための予算も、来年度だけでは終わりませんが、何カ年計画でやることになると思いますが、そのための予算。  それから、特に中小企業にとってPOS情報日本繊維産業においてはPOS化というのは非常におくれておりますので、この情報化分析システム開発を行うことにしております。
  12. 吉田治

    吉田(治)委員 今、局長言われました中で、異なる企業グループを組んで構造改善事業をやっていくわけでありますが、その制度は、中小零細企業中規模企業整理淘汰促進につながるということではなくして、中小零細企業にもグループ参加機会が確保される。  イタリアの例なんかも、御承知のとおりイタリアというのは繊維産業構造日本とよく似ている。中小企業が中心になって輸入も非常に多い。しかしながら輸出展開を非常にしている。その理由は、日本の場合は大企業による系列化イタリアの場合はそうじゃなくて中小がそれぞれ競争しでいっている、切磋琢磨することによってイタリア中小繊維産業が生き残っているという一面もあると思うのです。  そういうふうな諸外国の例もある中で、このグループ参加機会が確保されるということ、それは非常に重要なことだと思うのですけれども、その辺の配慮がされているところの考え得べきことはどいうふうになっているのか、お願いいたします。
  13. 土居征夫

    土居政府委員 この構造改善事業につきましては、連携グループをつくることによって、相互に機能を補完し合って、商品開発とか情報化を進め  ていくということでございますので、そのグループの中には、中小企業あるいは小規模企業、こういったものが当然主体的な参加をしていただくということを予定しているものでございます。  そもそも今度の構造改善事業に対する支援というのは、グループの中にはもちろん大企業は入りますけれども、支援措置自体はほとんどが中小企業向け対策でございまして、そういった意味でも、中小企業あるいは小規模零細企業に対しましては、具体的なこの構造改善事業の中で大きく位置づけていきたいというふうに考えております。
  14. 吉田治

    吉田(治)委員 今回のポイントでありますメーカー、流通デザイナーというのですか、生産流通消費という、川上、川中、川下とよく言われているものの連携というふうなものによって新しい繊維産業展開を開きたいというふうなのが趣旨にあるのですけれども、その中におきまして、特にデザイナーでございますね、ピエール・カルダンですとかなんとか私たちは知っていますし、また、日本にもさまざまなデザイナーの方がいらっしゃると思うのですけれども、そのデザイナー等繊維産業事業者に加えることは非常に有意義なことと考えます。  その優秀なデザイナー等人材を確保するという意味で、繊維の特性を理解した専門家を、デザイナーを含めて、単にデザイナーというだけじゃなくて、繊維産業におけるある意味管理職というのですか、マネジメントをする人たちを含めた方々を育てていかなければならないと思います。  そういう施策がとられていくんだと思いますけれども、特に、先ほどのイタリアの例では、それぞれ企業がやるだけじゃなくて、行政ですとかそういうようなものがさまざまな援助をしていると聞いておりますが、その施策充実というふうなのが必要になってくると思いますけれども、こうしたある意味でのソフト面充実についてはどうなっているのでしょうか。
  15. 土居征夫

    土居政府委員 人材育成につきましては、今先生おっしゃったように、デザイナーだけではなしに、マーチャンダイザーとかパタンナーとか、企業内のそういった専門家の養成も必要でございますし、さらにはマネジメントクラス経営者あるいは中堅幹部、こういったところの高等教育、これが非常に重要でございまして、今御指摘になりましたイタリアの例もございますし、フランスあるいはアメリカアメリカではFIT、ファッション工科大学というのが非常に繊維産業の中核的な教育機関になっておる面がございますが、そういったことから、御指摘のような方向がぜひとも必要だということでございます。  そういったことで、実は平成四年の二月に、関係業界協力のもとに、財団法人ファッション産業人材育成機構というものが設立されておりまして、日本としてのこういった高等教育機関役割を果たしていこうということで関係者が今努力を始めておるところでございまして、政府としても、このファッション産業人材育成機構についての今後の支援ということを特に重要と考えていきたいと思っております。
  16. 吉田治

    吉田(治)委員 それでは、高齢化対策というふうなもので次に質問させていただきたいと思います。  零細な企業が特にこの伝統的な産業を支える中には多いのですけれども、その中におきましては後継者難というふうなものが言われておりまして、後継者難によってその伝統的な繊維産業の存続自身が危ぶまれているものがあると聞いております。  後継者難を解決するためには、税制の問題でいきましたら、事業承継税制の充実というふうなものがあるでしょうし、繊維産業自身を、先ほど言いましたように、長く暗いトンネルの中に入っているんだというのじゃなくて、前途の明るい生活総合産業として位置づけて、その求心力を回復していく必要が大いにあるのではないかと思います。政府は、この後継者対策及び繊維産業の長期ビジョンについて、どのような施策と見通しを立てているのでしょうか。
  17. 長田英機

    ○長田政府委員 御指摘のとおり、繊維産業を含めまして、中小企業におきまして事業承継は非常に大きな問題になっております。特に、戦後の世代の交代期を迎えまして、この問題を何とか相続税の面で改善できないかという声が非常に大きくなってきております。  こういうような状況を踏まえまして、私どもといたしましても、従来から大蔵省とも実は率直にいろいろな相談を行ってきておりまして、平成四年度あるいは五年度におきましても制度の改善を行っております。それからさらに平成六年度でございますが、六年度につきましては、相続税率の税率構造を大きく見直しましたり、あるいは小規模宅地に係る減税特例というものを改善をしたり、そのような改善措置を講ずることにしております。  しかしながら、この問題は、先生御指摘のとおり、非常に大きな問題でございますので、私どもとしても、本件につきましては、今後円滑な事業が図られるように一生懸命こういう面の努力を続けてまいりたいというふうに考えております。
  18. 土居征夫

    土居政府委員 二点目の繊維産業の明るい将来ビジョンということでございますけれども、これにつきましては、繊維工業審議会及び産業構造審議会が昨年の十二月に答申をいたしました「今後の繊維産業及びその施策の在り方」、いわゆる新繊維ビジョンにおきまして、二十一世紀の生活文化提案型産業としての可能性ということを非常に強くうたっております。  具体的には、日本繊維産業というのは世界一流のテキスタイル、織物技術、もちろんその背景には素材技術がございますが、あるいは世界一流のデザイナー、さらには世界一流の繊維機械メーカーが日本国内にある、さらに世界第二位の豊かな国内市場、さらに近隣に最も成長性に富んだアジア市場がある。  こういったことから、今一時的に産業調整で非常に厳しい時期にあるけれども、将来また生活文化提案型産業として日本産業構造の一角を支えていくものであるということで、明るい展望を今度のビジョンは出しているところでございまして、そういった長期的な方向に向かって、今度の法律案に基づきます構造改善対策というものをぜひ進めていきたいというふうに考えております。
  19. 吉田治

    吉田(治)委員 そういうふうな中で、高齢化というものはどの産業も進んでいくでしょうけれども、繊維産業の中で高齢化が進んでいく部分におきまして、やはり合理化ですとか省力化の推進というのは繊維産業活性化にとって非常に不可欠なものであると思います。  しかしながら、それを支える中小零細企業の中には、現下の状況のもと、運転資金の調達もままならないという声も聞いておりますし、また、そういう状態で新たにこういうふうな法律が出てきてさまざまな施策をやっていく上で、新規の設備投資というふうなものが非常に困難、厳しいものになるのではないでしょうか。  政府は、こういう繊維関連企業合理化ですとか省力化の支援策についてどのように取り組んでまいられるのでしょうか。
  20. 土居征夫

    土居政府委員 繊維産業における高齢化の進展というのは、特に産地中小企業において御指摘のとおり進んでいるわけでございます。そういった意味から、設備の合理化、省力化が必要不可欠というふうに考えているわけでございますが、こういう構造不況状況にございまして、現在、設備投資の前にまず運転資金というふうな状況でございます。  こういった緊急の経営対策については、一般的な中小企業対策を中心に緊急の経済対策を講じているところでございますが、さらに、中長期的な今後の経営動向を見ながらの設備投資につきましては、この繊維構造改善対策におきまして、中小企業事業団による高度化融資、さらには中小企業の設備近代化資金の貸し付けについての償還期間の延長、あるいは中小繊維工業活性化特別貸付、こういったところで制度的なメニューは大きく用 煮したところでございます。  さらに、税制につきましても、この法改正によりまして、従来の機械装置の割り増し償却制度の延長をお願いをしておるところでございまして、そういった意味で、制度のメニューは、この設備の合理化、省力化にかけて相当程度整備したところでございます。  現在の構造不況を乗り切って、さらに中長期的な観点からの設備投資マインドが出てくるということになれば、この対策が生きてくるものというふうに考えております。
  21. 吉田治

    吉田(治)委員 その中で、再び貿易の方向へ少しお話を戻したいと思うのですけれども、先ほど言いましたように、一九八七年に初めて日本繊維産業輸入産業になってまいりました。輸入産業というか、輸出よりも輸入の方が多くなってまいりまして、それから以降どんどん輸入がふえてまいっている。現状では六十六億六千万ドルもこの繊維産業において日本にとっての貿易赤字。つまり、六十六億六千万ドルも海外から余分に、余分というか、輸出するよりもたくさん買っている。  先ほども言いましたように、日本という国は、今や輸出大国から輸入大国へというかけ声の一番先頭を切っているのがこの繊維産業であって、また、先ほどから申し上げておりますように、その中においては、構造不況という非常に厳しい状況の中、円高でも、ある一部の産業によって、貿易黒字は一千億ドルだ、やれ何百億ドルだという形で、もっと日本輸入をふやせ、そのために円高圧力がかかってくる。円高になってくると、ますます繊維という一番取り扱いやすい産業というふうなものは海外へ出ていく。  御承知のとおり、日本繊維産業がたどってきた道というのは、より安いところを求めて、韓国へ出、台湾へ出、そしてシンガポールヘ出ていき、今やインドネシア、マレーシア、そしてベトナム、中国というふうな形で、そして最終的にはインド、バングラデシュと。  私も、アメリカ時代に、きょうは着ておりませんけれども、スーツを買ったり、このワイシャツはアメリカで買ったワイシャツです。買ったワイシャツですけれども、アメリカ製と言えないのは、後ろを見ますと、メード・イン・バングラデシュですとか、メード・イン・カリブ海のどこか知らない国の名ですとか、そういうような形の服を私もたくさん着ておりまして、繊維業界の方にその話をすると、君は体が大きいからその服しか買えないんだろうといつも言われるのですけれども、でも、そういうふうな形でどんどん海外製品が入ってくる。  しかしながら、だったらアメリカで、例えばアメリカでの話ですけれども、アメリカ繊維産業が全然だめになったのかというと、そうではない。先ほども申し上げましたように、アメリカからの輸出は確実にふえていっている。  その中では、駐日アメリカ大使館のある商務官の女性の方が、一生懸命日本市場を開拓するために、この三年間、ベトナム系アメリカ人の方らしいですけれども、本当に一生懸命、東京、大阪、日本じゅうを歩いて、日本に合う製品日本人が喜ぶような製品日本人が買ってくれそうな繊維製品というものを、情報をこつこつ集めてアメリカ本土へ送って、その結果、アメリカ企業日本へ出てきた。  私の地元大阪では、本当に繊維産業の占めるウエートが高こうございます。日本輸出製品組合の本部も私の選挙区にございまして、本当に繊維で今まで飯を食ってきた、繊維輸出することによって飯を食ってきた。そして、それが日米の繊維交渉、日米の貿易摩擦の一番取っかかりである繊維交渉から、一ドルシャツに代表される繊維交渉から、だんだん輸出割合が減ってきて、今やもう輸入になってきた。  輸出組合の方でも、いつまでも輸出組合ではいかがか、エクスポートアソシエーションじゃなくて、トレードアソシエーションに変えようかというふうな組合の方の声も一部出てきている。  そういう中で、先ほど言いましたように、繊維産業が占める日本での割合、雇用においては一〇%、それだけの産業をこのまま自然死させていくのはいかがか。長いトンネルに入ってきている。将来これは構造改善さえできればいいよとか、頑張れば何とかなるよという段階じゃなくて、また次の新たな希望に燃える火を出す必要があるのではないかと考えます。  その中で、今申し上げました国際化という中で、輸入ばかりじゃなくて、もう一度輸出というのですか、日本繊維製品は、今局長言われましたように、非常にすばらしいテキスタイルの技術を持っている、デザイナーの力を持っている。そして機械も世界一流のものを持っている。そして国内市場は世界第二位だと言われている。それだけの基盤をもう一度繊維産業に復活さして、そしてそのことによってまた海外への輸出もふやしていくというふうなことも、これからは発想として必要ではないかと思います。  繊維産業人たちの中には、私たちは戦後の復興期一生懸命頑張ったのにその後は虐待され続けている、何でこんな苦しい目に遭っているんだという声も確かにあると思います。  その中で、日本繊維製品が、価格面においても、また、品質面、デザイン面におきましても世界の市場において確固たる地位を占め、輸出をする、輸出をふやして繊維産業の技術革新と新規商品開発意欲を刺激するということが繊維産業の再活性化の道ではないかと私は考えるわけであります。単に、輸出で苦しめられて、何とかしようじゃなくて、今度は、守りじゃなくて、攻めをもう一度考える必要があるのではないかと思います。  その中におきましては、日本発のブランドイメージも必要でしょうし、メード・イン・ジャパンにおける信頼性というものを、そこへこの織工法で言われているようなデザインですとか、川中、川下の部分までプラスさせていけば非常にいいものが出て、確固たる世界の繊維産業繊維のマーケットにおける地位を占めるのではないかと思うのですけれども、こうした確固たる地位を占めるために、ブランドのイメージの育成ですとか産業の育成に今回のこの法改正というふうなものはどの程度の支援と効果が期待できるのでしょうか。  業界の方は非常にこの法案について期待されておりまして、これによってもう一度自分たち産業を夢あるもの、そしてもっといろいろな人たちに勤めてもらえる力のある産業、伸びている産業にはどんどん人も集まってまいりますので、そういう産業にしたいという希望もございます。その辺はどういうふうにお考えなんでしょうか。
  22. 土居征夫

    土居政府委員 今先生が冒頭にお話しになりましたアメリカの例を引いてのお話、確かに、アメリカだけではなしに、ヨーロッパ諸国も含めて、繊維産業は入超産業でございますけれども、しかし、ファッション産業として、量的には入超の中で、繊維産業は隆々として先進国型産業として栄えておるということも事実でございます。  さらには、海外展開等、米国もやっておりますけれども、それも国内繊維産業の体力があってという状況であるのは御指摘のとおりでございまして、この日本の今回御提案しております繊維構造改善対策につきましても、先ほどのような中長期的な将来ビジョンのもとに、御説明しましたクイックレスポンスの件だけではなしに、今度の構造改善事業の中では、クリエーション型の構造改善事業というのを特に強調しています。  これは、従来の産地生産が、どちらかというと下請分業型で、コスト削減というところに集中的に向かっておったわけでございますけれども、それをむしろ今御指摘がありましたイタリアのように、ファッション性も含めて、外に対して発信していけるようなクリエーションの能力を持った繊維産地あるいは繊維産業、これを育てていかなければいけない。  さらには、アパレルの分野についても、日本繊維産業はどちらかというと海外の流行に追随し て、それに安住していた面がございますけれども、そういった面についてはむしろ日本発の発信をこれからしていかなければいけない。  そういう意味でも、クリエーション型の構造改善が重要であるということでございまして、今度の構造改善事業一つの大きな柱でありますこの事業を中心に、今御指摘がありましたような攻めの政策展開ということが必要であろうというふうに考えております。
  23. 吉田治

    吉田(治)委員 こういうふうな構造改善、新たな立法措置また新たな予算措置をしていた中で、よく中小企業の、私の地元なんかは中小企業が多いものですから、話を聞いていますと、そういう制度があることすら知らない。繊維の場合は非常に業界団体がしっかりされていますのでよく御承知だと思うのですけれども、いろいろな施策をされている中で、ああそういうのがあったのとか、そういうのは知らなかったというのが非常に多々あることですし、また、そういう声も非常に聞きます。  こういう場合に、今回の法改正が、この法案の要綱にもありますように、今までの法律を期間延長するだけのものではなくて、中身もこれだけがらっと変えた、全然今までと違う発想で、繊維産業を夢あるもの、希望あるものという形で、次に進展させていくというふうなものであるんだよということの周知徹底というふうなものが必要になってくると思います。  商工会議所ですとか、経済団体によってはさまざまなパンフレットがございまして、ああこんなのあったの、あんなのあったのと。私の父親なんかは、町工場をやっておりまして、一日じゅう工場で働いておりますから、そういうところにすら行かない。行けよと言うのですけれども、行って何ぼのものになるという非常に大阪的発想をするものですからなかなか行かないのですけれども、やはりその辺の周知徹底というものは、来るのを待つんじゃなくて、こちらの方からどんどんそれを図っていく。英語で言うパブリックリレーションズ、広報という言葉だけにとどまらずに、こちらから足を運んでいくということも、繊維産業の方々のみならず、さまざまな産業の方々にとっても必要ではないかと思います。  その辺をお願い申し上げますとともに、やはりこの織工法の改正で終わりということでは私はないと思うのです。これからまた、今までの問題を解決する非常にいい法律だと思いますけれども、今後のフォローアップというのですか、この法案ができて以降のフォローをどういうふうな形でされていかれるのか、お願いいたします。
  24. 土居征夫

    土居政府委員 この改正案が成立されました後に速やかに改正内容を周知徹底するということは、当然、御指摘のとおり必要なことであろうというふうに考えておりまして、まず第一に、繊維産業業界関係につきましては、中央では日本繊維産業連盟というのがございます。こういった業界団体に対策のフォローアップ体制をとっていただきまして、ここを通じまして、全国の中小企業を中心としました繊維関係者対策の周知徹底を図っていきたいと思っております。  通産省といたしましては、各通産局を通じまして、都道府県あるいは今御指摘ありました商工会議所、商工会、産地組合、こういったところに説明会等を通じまして周知徹底を図っていくということにしております。  今後のフォローアップ体制につきましては、先ほどの業界の体制と同時に、このビジョンの答申を出しました審議会の小委員会等によりまして、定期的にこの対策については、今後、業界あるいはマスコミを含めました関係者委員が入っておりますので、そういったところでこの対策のフォローアップを行っていくという体制をつくってまいりたいというふうに考えております。
  25. 吉田治

    吉田(治)委員 引き続きまして、環境問題、それにかかわる経費についてお聞かせいただきたいのですけれども、環境問題というのは非常に大きな問題がクローズアップされてきまして、すべてのものが環境にかかわってくる。私の快適あなたの不快適、私にいいこと地球によくないこととか、さまざまも言葉が言われるようになってきております。  そういう中で、日本も、一九六〇年代、七〇年代の公害問題、公害訴訟等を通じて、公害というのはとりもなおさず環境というふうなものに対する一つの破壊行為だと思うんですけれども、それに対するさまざまな規制ですとか調整が図られるような施策がとられるようになってきております。  繊維産業においても、これは労働条件というだけじゃなくて、繊維、テキスタイル自身が石油からできておったり天然資源からできておったりするわけでありますから、環境に対する取り組みというのは繊維産業自身にも非常に大きな課題、問題、また必要なものであると思うんですけれども、その中におきまして特に染色産業の方々でございますね、生地に色を染めていくという業界の中におきまして非常に問題が起こっておりますのは、この環境に対する規制が彼らにとっては非常に厳しい。厳しいという言い方はいかがかと思うんですけれども、環境についての規制、それに対する、それにかかわる経費、費用の膨大さに非常に苦しんでいる状況でございます。  川の水を汚さないということは重要なんですけれども、それに対して色の規制をかけてくるという県があると聞いております。色規制というものなんですけれども、規制といいますと、今の流れとしては規制緩和という形で、どんどんそういう規制もなくしていった方がいいんだという声はあるんですけれども、事環境に関しましては、規制緩和の方向をすべて歓迎するわけにはいかないと思います。規制規制ということで環境問題の規制まで規制緩和ということでやっていきますと、いつかは自分たちにめぐってくる問題がこの規制の問題だと思います。特に、繊維の問題におきましては、この染色業界の方々が言われるのは、川の水への色規制などかあることによって、例えばこの織工法ができて、クイックレスポンスまたはデザイナーということで、この色がはやっている、こういうふうな商品がはやっているというふうな川下からの情報が川上のそういう業界に入ってきても、いや、済みません、うちはこの色を使うたらあかんことになっているんです、だめになっているんですと。そうなってきますと、織工法のこういう趣旨自身がちょっといかがなものになってくるかと思います。  ですから、規制を緩和しろと私は決して申し上げません。そうじゃなくて、そういうふうなことにかかわる環境対策の各種支援というものと同時に、先ほど申し上げましたように、技術の革新というもの、これだけ技術立国だと言われている日本で、川に流れるその色を規制する、そのためにその色が使えないということがあってはいかがかと思います。  例えば、川でそれをやった場合にでもその色が出ない、そういうふうな技術の革新も必要になってくると思います。その辺を含めての環境に対する支援策というふうなものをお願いします。
  26. 土居征夫

    土居政府委員 御指摘の染色整理業というのは、日本繊維産業のシステムの中で非常に重要なセクターであります。技術水準も非常に高いし、そういった意味繊維産業のキーセクターと言っても過言ではないと思っておりますが、その染色整理業の問題は、染色排水処理の問題でございます。そういったことから、特に中小規模の企業が大宗を占めます染色整理事業者にとっては非常に経営上の大きな負担になっておるということでございますので、政府としてもこれまでいろいろな対策をとってきております。  具体的には、技術開発に対しましては技術改善費補助金による支援をしていく、さらには公害防止設備について税制上のいろいろな特例措置を講じておく、さらには中小企業金融公庫、国民公庫、あるいは中小企業事業団、開銀、こういったところを通じまして公害防止関係あるいは環境対策関連の特別の融資を行っていくということで、 支援を行ってきているところでございます。  さらに、染色整理業はエネルギー多消費型の業界であるということから、その染色関係の設備につきまして、いわゆるエネ革税制、エネルギー需給構造改革投資促進税制におきまして、装置を指定しまして、この支援を行っているところでございます。  御指摘のありました色の問題についての技術開発、こういったことも十分念頭に置きまして、今のような制度を活用して、この染色整理事業者の環境対策を推進していきたいというふうに考えております。
  27. 吉田治

    吉田(治)委員 るる御質問してまいりましたが、結局行き着くところは、繊維産業を夢あるもの、将来あるもの、そして守りでどんどん自然死というんですか、先行き不安、日が暮れ商売というんですか、もう先がない、後は真っ暗やみだよという産業にするのではなくして、これからもう一度日が上ってくる産業、春がやってくる産業というふうなものになるように、この織工法が成立し、また、それによってさまざまな施策が講じられることを望むと同時に、やはりその時間というものは、繊維業界の方々は私たちが思っている以上に時間がないのかもしれません。本当に短期に早く、そして迅速に、しかしながら繊細に、細やかに、優しくこのことをしていかなければならないと思います。  そのためにも、これ以上繊維産業皆さん方が苦しむような繊維貿易現状のあり方というふうなものを再考いただいて、繊維貿易の秩序あるあり方、その確立を望むと同時に、この施策が非常にいいものを生むことを期待しまして、私の質疑を終わらせていただきます。
  28. 中井洽

    中井委員長 吉田治君の質疑は終わりました。  次に、吉井英勝君。
  29. 吉井英勝

    吉井委員 吉井でございます。  日本繊維産業というのは、日本の経済の中、それから産業史の中でも非常に大事な役割を果たしてきたと思うわけです。戦後の日本の経済が立ち直っていく過程におきましても、日本産業全体の中で繊維産業は極めて大きな位置を占めてきました。  例えば戦争が終わって十年ほどたった一九五五年で見ましても、製造業に占める繊維の製造業の事業所の中での割合というのは二〇・四%でありますし、当時の従業員数で見ますと、四人に一人に当たる二三%は繊維であった、こういうふうに非常に大きな役割を果たしてきたわけでありますが、これが八五年のプラザ合意の後、円高政策がとられ、円高不況が来て、前川レポート等、円高をてこに輸入拡大政策というのが進められてきました。それが今日のこの戦後最悪の不況と結びついて、繊維製品輸入は急増してくるわ、繊維産業自体がこの不況の中で本当に深刻な打撃を受けているというのが今日の事態だと思うわけです。  中でも産地中小企業は極めて深刻です。これはマスコミ等でも紹介されておりますが、例えば丹後ちりめんの里では、一九七五年で七百九十五万反の生産量が、八五年で四百二十九万反に減っておったものが、この六年間でさらに二百八十八万反に減ってくるとか、輸入で見ても、七五年の六十五万反が、逆に八五年で二百二十二万反にふえ、九一年で二百四十五万反にさらにふえています。こうした中で、最近の一年半で三十名ほどの自殺者、自殺未遂の方が出てくるなど、丹後ちりめんの里で深刻な事態が生まれているということで、これは報道もありました。  私は、この繊維産業の問題を考えるに当たって、今日の深刻な事態についての大臣の認識というものを最初に伺っておきたいと思います。
  30. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 繊維産業が、歴史的に見ましても、日本の工業化の初期から大変重要な地位を占め、そして雇用の機会を提供する重要産業であったことは、まさに御指摘のとおりでございます。  ただ、この繊維産業が、一方で、後進国といいますか開発途上国からの追い上げに、また、アメリカを初めとする先進国の繊維産業輸出に対する規制と両面相まちまして、挟み打ちに遭いまして、なかなか厳しい状況になってきたのは、実は最近ではございませんで、歴史的に見ますと、二十年以上も前からじりじりと進行してきたわけでございます。加えて、日本の為替レートがだんだん上がってくる。御指摘のような状況の中で、大変に繊維産業が厳しい状況に遭遇しているということは、私どもも承知をいたしているところでございます。  こういうふうな状況を踏まえて、累次にわたりまして、いわゆる繊維工業構造改善臨時措置法という名のもとに、構造改善策を講じてまいったわけでございます。  しかしながら、申し上げましたような環境の変化というものはいよいよ厳しくなってきておるわけでございまして、この構造改善策のあり方についても再検討することが必要だということで、今回の繊維工業構造改善臨時措置法の期限が来るのを契機にいたしまして、新しい繊維産業についてのビジョン、そしてそのビジョンに基づく新しい対応策を講じていこうではないかということになりまして、昨年の暮れに、いわゆる新繊維ビジョンというものを織工審、産構審合同部会において取りまとめてまいったところでございます。  私どもとしては、国内に何といいましても所得の高い一億二千万の大マーケットがあるわけでございますし、先ほど来吉田委員からの御指摘もございましたが、他の先進諸国の動きなどを見ますと、一たんは厳しい局面になっても、工夫と努力によりまして輸出を伸ばしていくということも可能でございます。そういった産業にしていきたい。現実に二百数十万の従業員を抱える大産業でございまして、そうした新しい手がかりをつかんでいきたいということで、今回、繊維産業構造改善臨時措置法という形で法案を取りまとめまして、御審議をお願いしているところでございます。  日本が長い間培われましたこの繊維産業にかかわるノウハウ、そして人材の蓄積、また産業の基盤、こういうものが根本的に崩れているわけでございません。我々は、適切な官民挙げての協力、努力によりまして、この難局をくぐり抜けることができると確信しているわけでございまして、その大きな柱の一つとして今回の法案を位置づけておるところでございますので、ぜひ御理解の上、早期成立につきまして御支援を賜りたいとお願いする次第でございます。
  31. 吉井英勝

    吉井委員 深刻な事態にあるということは大臣も御認識ということを今伺ったわけでありますが、繊維産業中小零細企業の比率が非常に高いものでありますし、実際、八五年の少し古い通産省の統計になりますが、従業者数が一人から三人のところが六一・三%、そのうち織物業でいきますと七三・二%というふうになっていきますが、そういう非常に中小零細のところでも現在残っておるところというのは、前回の円高不況の後、今もおっしゃった大変な工夫と努力、苦労して生き延びてきたというのが実態だと思うのです。  それにしても、今御紹介しました丹後のちりめんの里のように本当にたくさんの犠牲者が出てくるなど、今回の不況の中で、しかも輸入品は急増するという中で、言葉では尽くせない深刻な事態です。  そこで、今回の織工法の改正法案を初めとするこれまでの政府施策で生き延びられるのかどうか、率直なところそういう不安というのはあるわけです。まだまだ不十分なものではないか、こういう思いがいたしますが、通産省はどういうふうにお考えでしょうか。
  32. 土居征夫

    土居政府委員 繊維産業の非常に厳しい状況につきましては、先生御指摘のとおりでございます。こういった中でこの法律に基づきまして構造改善対策を進めていくわけでございますが、いずれにしても、日本産業構造はやはりこれまでも変化を遂げてきたし、これからも変化を遂げていかなければいけない。  具体的には、アジア発展途上国の成長も必要でございますし、アジア発展途上国にとっては繊維産業というのは一つの基幹産業にならざるを得な いわけでございますので、日本繊維産業もそういったアジアの繊維産業とのすみ分けを図りながら、今先生御指摘になったような今後の明るい展望を一方では持ちながら、産業調整は進めていかなければいけないということでございます。そういった意味で、やはり今後もそういう産業調整の中でアジアに譲っていかなければいけない部分というのが生じてくるのは不可避でございます。  しかし、そういった中で、全体として日本繊維産業が新しい分野を見出しながら、日本繊維産業として、あるいは答申で言いますような生活文化提案型産業として花開いていく、道を探っていくということでございまして、今度の法律、あるいは先ほど来御説明しました一般的な中小企業対策、こういったものも含めて、そういった方向に全力を挙げていきたいというふうに考えております。
  33. 吉井英勝

    吉井委員 そうすると、少し具体的に伺いたいのですが、繊維リソースセンターは前回の五年前の改正のときの目玉の一つだったと思うのです。あのときたしか大体年三カ所程度、五年間で十五カ所ほどというお話だったと思うのですが、現在五カ所ですね。  私は大阪ですから、大阪の例を少し見てみますと、業界団体の方の声なんですが、実のところ、大阪の繊維リソースセンターはできたけれどももてあましている感じだ、利用するのが非常にやりにくい、公的には余りそういうことは言えないけれどもということでありますが、例えば展示会を開くにしても、場所が泉州というずっと南の方ですから、お客さんをそこへ引っ張っていくのが業界の方からしてもなかなか大変だとか、率直にそういう声も語られております。  それから、自治体などの地元の関係者の声を聞きましても、繊維全体のコンサルタント的ノウハウの蓄積とか、人材養成などの面で、そういうことを今後やっていかないと、ここは機能してこないという御意見も伺っております。  実は、この繊維リソースセンターについてもともと通産省の方が示してこられたことというのは、展示であるとか人材育成の問題とか、こういうことを掲げられて、だからこれで活性化を図るんだということを言ってこられたのですが、実はそこのところは今そういう具体的な指摘があるわけですよ。ですから、実態は、繊維産業産地中小企業の振興を図っていくセンターというのにはほど遠いといいますか、いささか距離があると申しますか、それが実態でもあります。  そこで、これをどのように生きたものにしていくかという、この課題が今大事だと思うのです。この点についてのお考えを伺ってみたいと思います。
  34. 土居征夫

    土居政府委員 繊維リソースセンターにつきましては、御指摘のとおり、五カ所でございましたが、最近、倉敷で一カ所計画が出てきております。さらに、地場産業振興センターというような形で数カ所実現をしておるということでございます。  この繊維リソースセンターにつきましては、当初から想定されたことでございますけれども、単年度での黒字転換というのがなかなか難しいということで、開業後黒字転換は六、七年必要だろうということは見込んでおったわけでございますが、いずれにしても、リソースセンターの今後の経営の問題、あるいは産地における機能の活性化の問題というのは、今後の政策課題であろうというふうに考えております。  ところで、今回の改正によりまして、実は法文の中にも入っておりますが、繊維リソースセンターを新たに構造改善円滑化計画作成主体に追加をいたしまして、これによりまして地場産業等の振興対策補助金といったソフト面でのリソースセンターに対する支援が新たにスタートをするということにもなります。  そういったことを通じまして、特に今お話がありました人材育成等の面につきましては、先ほど吉田先生に御答弁いたしましたファッション産業人材育成機構による中央の高等教育機関、これを今育てつつあるわけでございますけれども、そういったものとの連携等を中心としまして、この繊維リソースセンターの役割の発揮といった方向に向けて、さらに施策努力を続けてまいりたいというふうに考えております。
  35. 吉井英勝

    吉井委員 私が今指摘しました経営の問題だけじゃなくて、実際できたものが、いわば前回の活性化の目玉だったリソースセンターを活性化しなきゃいけないといいますか、そういうところに直面しておりますから、これは本当に生きたものになるように取り組んでもらいたいと思うわけです。  次に、LPUの運用の弾力化に加えて、クイック・レスポンスとかマーケット・イン、こういう情報化の促進事業、それから開発促進事業というのを新設ということになっておりますが、消費者ニーズをフィードバックして、原料から最終製品までのリードタイムを短縮するとか在庫を削減するとか、この発想というものはよく理解できるわけです。  しかし、例えば八六年三月二十八日の衆議院の商工委員会で我が党の野間友一議員が取り上げましたけれども、あのときPOSシステムの問題について取り上げまして、公取委の方から、情報化が進むに伴いまして、不利益が中小メーカーに課されることは、不公正な取引方法の規制趣旨に照らして好ましくないという答弁がありましたように、実はこのPOSシステムの問題のときにもあったこういう問題が、メーカーや大手商社の系列支配の強化とか、下請中小企業流通業者を事実上いわば強制的に廃業に追い込むようなことにつながっちゃならないというのが、私は、今お考え情報促進事業とか開発促進企業をせっかく新設しながら、それがこれまで日本繊維産業を支えてきた中小零細企業に打撃を加えるものになっちゃいけないと思うわけです。  これは九二年のある新聞で、「よみがえる合繊産地」ということで紹介された中にも、系列化が進む中で、例えば福井県では全体の六割以上が織機二十台以下の家内工業的な機屋さんで、設備投資や人材確保ができず、八五年以降で一千軒が廃業をしてきた。そして、だんだん系列化が進んだ問題などが指摘されておりますが、今お考えのものがそういうことにならないようにという点での通産省の対応というのが非常に大事になってくると私は思うのです。この点についても伺っておきたいと思います。
  36. 土居征夫

    土居政府委員 情報化は、これは当然日本の経済社会がこれから進めていかなければならない一般的な命題でございまして、特に繊維産業の場合にはPOSの導入比率も非常に諸外国に比べて低いということで、この情報化を進めることが繊維産業が全体として今後大きく発展していくための一番基本的な命題だということで、今回の対策を進めるわけでございます。  その中で、実は先ほど来御説明しましたように、この情報化のための構造改善事業というものは、当然、大企業だけではなしに、中小企業、零細企業参加した形の対策をぜひ進めていきたいと思っておりますし、予算措置は、そういった零細企業中小企業に対してむしろ講じていくということを考えているわけでございます。  ただ、御指摘がありましたような不公正な取引あるいは下請の締めつけ、こういったことにつきましては、中小企業庁、公取と十分協議しながら、そういうことがないような施策というのが別途必要であろうことは当然であろうというふうに考えております。
  37. 吉井英勝

    吉井委員 次に、MFAの問題についてですが、この協定の締結の状況を、アメリカとECとカナダについて、これらのところが何カ国と協定を締結しているか、また、繊維製品の何割あるいは何%を対象にして輸入規制を行っているか、これについて伺っておきたいと思います。
  38. 土居征夫

    土居政府委員 あらかじめ御質問の通告がなかったものですから、カナダについてはちょっと今手元にないのですが、米国につきましては、ブラジル、中国、香港、韓国等二十八カ国との間で MFAに関する二国間協定が締結されております。
  39. 吉井英勝

    吉井委員 二十九ですね。
  40. 土居征夫

    土居政府委員 国の数が二十八で、ルーマニアが二本の協定になりますので、二十九の協定になります。  それから、ECにつきましては、十九カ国との間で二国間協定を締結しております。
  41. 吉井英勝

    吉井委員 何割かわかりませんか。
  42. 土居征夫

    土居政府委員 そのMFA規制品目の繊維製品輸入全体に占める比率につきましては、一各国とも公表をしておりませんので、正確な把握は困難でございますけれども、一般的には、アメリカの場合は米国の繊維製品の約八割がMFA対象になっているというふうに言われております。
  43. 吉井英勝

    吉井委員 アメリカが八割、ECは五割ということですね。ECの方は五割でいいですね。うなずいていただいておりますので、五割でいいと。  こういうふうに、ECにしてもアメリカにしても八割とか五割とか非常に高い比率で規制をかけているわけでありますが、日本としてもやはりこういうMFA発動をしていただきたい、こういう要請が随分出ておりますね。日本綿スフ織物工業組合連合会などから、新繊維産業ビジョンの策定に当たっての要望事項で昨年も出ておりますし、また同様に、「綿スフ織物業の業況と課題について」というふうな中でも要望が出されております。  昨年十二月の答申の中でも、今度の答申をまとめられた繊維工業審議会の中に設けた通商問題小委員会で検討しているということでありますが、このMFA発動については大体五月中旬をめどに答申を出すというふうにも伺っておりますが、大体この検討のポイントというのはどういうところにありますか。
  44. 土居征夫

    土居政府委員 このMFAにつきましては、御指摘のように答申でさらに小委員会等によって検討すべしということでございまして、昨年の八月から通商問題小委員会というところで検討をしております。  個々の業種につきましてずっとヒアリングをしておったわけでございますが、そういった個別業種の実態と将来展望、こういったものを踏まえながら今検討しておりますのは三点ございまして、一点は、答申でも指摘していますように、MFA発動についてはそれなりの政策効果というものもあるわけでございますが、一方ではマイナス面というのもございますので、そういった面の比較考量についての政策判断の枠組みといいますか、こういったものを整理をするというのが一点でございます。  二点目は、これは国際的にもMFA発動の要件とされております市場攪乱、この市場攪乱の技術的な判断の指標の明確化というのがございます。  三点目は、品目カテゴリー、こういったところの技術的な検討ということでございまして、そういった点を中心に今検討をしていただいているところでございます。
  45. 吉井英勝

    吉井委員 それで、伝えられておりますように、時期は大体五月中旬ということで、MFA発動の方向でというふうに理解していいですね。
  46. 土居征夫

    土居政府委員 五月中旬に報告書を取りまとめる予定だということで作業をしております。  方向性につきましては、一応枠組みはビジョンで提示されておりまして、そういったビジョンで提示されましたMFAの位置づけについての今申し上げましたような三点の基準の明確化というところが中心であろうかというふうに考えております。
  47. 吉井英勝

    吉井委員 そこで、私は、このMFA発動をしなくても、今回のこの織工法さえつくれば日本繊維産業産地中小企業が生き延びられるのかどうか、このことを考えたときに、そう容易に生き延びられるような事態にないと感じているのです。  そこで、率直に大臣に伺いたいのですが、昨年の秋も議論しましたように、日本のこの貿易黒字というのは、輸出の上位三十社で五一%を占めるぐらい、大体、自動車、電機を中心として大きな貿易黒字を生み出しているわけですが、そのことがあるからということで、日本産業を支えてきた今日の繊維産業を犠牲にしていいというものではないと思うのです。  私は、やはりこの繊維産業を本当に守るためにMFA発動する、そういうところへ踏み切っていかなければいけないと思うのですが、大臣のこの点についての御見解を伺っておきたいと思います。
  48. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 本件につきましては、先ほど吉田委員の御質問にもお答えしたところでございますけれども、この小委員会での議論がまとまったところで、私どもとしては総合的な立場から判断をしてまいりたいと思っておるところであります。  申し上げるまでもなく、繊維の競争相手はいわば開発途上にある国々でございまして、そうしたものも踏まえながら、我々としては、日本繊維産業をどのように活路を見出していくかという視点に立って、総合的に判断をしていきたいと考えているとこみであります。
  49. 吉井英勝

    吉井委員 時間が参りましたので締めくくらせていただきたいと思いますが、やはりMFA発動問題について、本当に、これは総合的判断でということでありますが、文字どおり総合的に判断しても、日本繊維産業を守るという立場に立って、この方向で考えていっていただきたいと思うのです。  最後に一点だけ、この予算措置ですね。これを見せていただきまして、昨年よりは少しふえておりまして、四億六千九百万というふうになっておりますが、実はこの法律による助成策が小さいだけじゃなくて、繊維関連の予算も余りにも小さいというのが今法律を出しておられる時点での問題の一つだと思うのです。  私は、航空機開発補助金・交付金、YXXについて見れば、八一年から九三年の十三年間で百八十七億二千四百万円。ことしの二月にこの事業は凍結するということを宣言しながら、実は九四年度で五億七百万円の予算をYXXについては組んでいるのですね。これよりも繊維予算は少ないのです。私は、こういう姿勢はやはり改めていただいて、繊維対策の強化について予算も含めて取り組んでいただきたい。  この点について、予算についての取り組みなど、最後大臣の決意を伺って、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  50. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 委員御案内のとおり、この繊維政策というのは大半が中小企業政策でございます。むしろ繊維政策中小企業一般政策の中から特掲されて、特別に重視されて行われているというふうに私どもは理解しておりまして、実際に繊維産業に投入される資金というのは、実は大変な規模の金額がいわゆる構造改善政策関連高度化事業あるいは融資措置その他で導入されているわけであります。  ただ、御指摘のように、新しい繊維産業の特有の政策が出てまいりまして、私どもも今回、金額は小そうございますが、一応倍増ということでございますので、これからもそういう方向で努力をしていきたいと思います。
  51. 吉井英勝

    吉井委員 終わります。
  52. 中井洽

    中井委員長 吉井英勝君の質疑は終わりました。  次に、甘利明君
  53. 甘利明

    甘利委員 織工法の質問に入ります前に、先般の日米首脳会談について若干伺いたいと思います。  私は先週、規制緩和並びに貿易問題に関する調査団の副団長でアメリカに行ってまいりました。かなりタイトな日程の中で、USTRのカンター代表、バジェフスキー次席代表を初め政府関係者、それから下院の歳入委員会貿易委員長のギボンズ議員、あるいは下院のコルビー議員を初め議会関係者とも精力的に会談をこなしてまいりました。別に政府特使ではありませんから、かなり自由に物を言って、意見交換をして帰ってきたわ けでありますけれども、印象としては、日本国内で見ている以上に厳しいなと、これからのそのフレームワーク協議もなかなか厳しさが予想されるという感じで帰ってまいりました。  日米首脳会談は、合意が成り立った部分と、それから事実上決裂をした部分と双方あるわけですが、日本では全体が決裂したような印象を若干与えておりますけれども、かなりその象徴的な部分で話し合いがつかなかった。日米会談が部分決裂をして、その後にマスコミにはノーと言える日本という活字が随分踊ったわけでありまして、私はあの場面に関して、受け入れられないという主張をしたというのは、これは正しいと思っております。  客観基準、数値目標について、セクター別の部分で、進展度合いを数値で管理するということは、通産大臣が前からおっしゃっているように、まさに管理貿易でありますし、貿易すなわち民間部門の経済活動を政府が数字で縛るなんということは本来できるわけはありませんから、これはノーと言ったこと自身は間違いないことだと思っております。  私も向こうでいろいろ申し上げたのですけれども、貿易交渉には原理原則とそれを補完していく応用動作というのがある。原理原則というのは、日本アメリカもこれまで随分汗を流してはぐくんできた自由貿易体制である。それがうまく作動していくように応用動作で補完をしていくのだ。  応用動作は何かというと、それぞれ当事者の国の自主的な努力です。この自主的な努力を拘束をしてしまって、しかもそれを原理原則とすりかえるようなことになると、これは自由貿易体制そのものが瓦解をしていく、何のためのガットか、そして来年の一月からスタートをするWTOは有名無実なものになってしまうじゃないか、随分こういう主張をしてまいりました。  日米会談が部分的決裂をして総理がお帰りになって、その後がなり慌てて官房長官が日本側の自主的な努力、規制緩和も含めて三月末までに具体的な項目を詰めるという指示をなされましたけれども、その内容について、かなり詰まってきたものについて、ちょっと御報告をいただけますか。
  54. 坂本吉弘

    ○坂本(吉)政府委員 全体の概要でございますが、二月十一日に日米首脳による会談がございました。ただいま甘利議員御指摘のような結果であったわけでございます。  その後、日本側におきましては、いつまでもこの日米の貿易協議あるいは経済協議というものがいわばとげの刺さったような状態にあることは日米双方にとって好ましいことではない、また、世界の貿易経済全体の流れの中でも好ましいことではないということにかんがみまして、我が国としてフレームワーク協議、あるいはそれ以外に日本側の市場アクセスの改善、あるいは政府調達について透明性が必ずしも十分でないと言われている部分、あるいは輸入の促進、そういった我が国がいずれにせよ講ずる必要がある、また、アメリカ側からもいろいろ交渉において指摘のある、そういった各項目につきまして我が国として何ができるか、そういうことについて政府部内で検討を進めているところでございます。  いずれにせよ、日米フレームワーク協議に即して申し上げますと、日米双方があの共同声明において約束をいたしましたことは、日本側に即して申し上げますと、内需主導の経済運営を行うことによって経常収支の意味のある削減を図る、また、ミクロの分野につきましては市場アクセスの改善を図る、こういうことが大きな目的としてあるわけでございます。  その中で、優先的に取り上げるべき項目、また、優先的でないにしても協議を続けていく項目、それぞれの項目につきまして我が国として何ができるか、またそのことがアメリカ側でどのような評価を得るか、これは先のことでございますけれども、当面、我々として、我が国としてなすべきことはなす、こういう立場で臨んでいるところでございます。
  55. 甘利明

    甘利委員 移動体通信の合意も含めて、我が国として何ができるか、これは緊急課題として検討している。この今検討されていることは、日米会談がある部分で決裂をして、それを受けて始められたのですか、それとも従来のスケジュールに従って、ノーと言おうとイエスと言おうと従来のスケシゴールに従って我が国が自主的に取り組んでいるのですか、どちらですか。
  56. 坂本吉弘

    ○坂本(吉)政府委員 この問題は、国際的な側面と国内的な側面と、やはり二つの面からアプローチをすべき問題であろうかと思っておるわけでございます。  国内的な側面と申しますと、やはり時代の要請にこたえて経済改革というものを進めていくことが我が国の将来にとって必要である、こういう認識がございます。そういう意味では、例えば規制の緩和を進める、こういう点につきましては、少なくとも我が国独自の政策としても、これを一段と進めていこうということが私どもの政策の大きな流れとしてあるわけでございます。  また、それ以外にも、独禁政策というものを適切に運用することによって国内の競争状態をより強化しよう、こういったことは、これも含めて国内的な大きな流れの中でとらえるべき性格のものであろうかと思います。  もう一つ政府調達につきましても、かねてよりやや政府調達がわかりにくい、外から見て大変わかりにくい、あるいは一部には十分情報その他が公開されないまま入札が決められているんじゃないかということは、公共入札に関しましても、いずれにせよ経済改革としてこれを進めていかねばならないという国内的な側面がございます。  一方、海外からも、フレームワーク協議が典型的なものでございますけれども、幾つかの領域につきまして、外国製品ないしはサービスの輸入の拡大を図るために海外の目から見た規制を緩和してほしい、あるいは手続を簡素化してほしい、こういった話がございます。これは、単にアメリカのみならずヨーロッパ諸国からもそういう要請は来ておりますし、また、国内産業団体などからも規制の緩和、手続の簡素化ということは強く要望されておるわけでございます。  したがいまして、私どもがただいま検討しております内容は、まずもって、現在我が国が市場政策としてとるべき幾つかの規制緩和、競争政策、あるいは透明性、こういった大きな流れの中で問題をとらえるべきだと思います。  しかし、もう一つは、当面の重要な日米関係というものをできるだけその流れの中で正常なものにしていきたい。今のようなややトレードウォー的な色彩のあるものをできるだけ早く緩和していきたい。もちろん原則的な立場というものは我が国として堅持すべきであるとは思いますけれども、そういった両方の角度から取り組むべき性格のものだというふうに認識をいたしております。
  57. 甘利明

    甘利委員 質問と答弁が若干かみ合っていないのですが、私が申し上げたいのは、この一週間アメリカの首脳と会いまして感じたことは、日本が決定的に間違ったことが一つあるのです。それは何かというと、一連の交渉を通じて、決裂をして、三〇一をちらつかせて、そうしたら日本は慌てでいろいろな協議を始めた。具体的には携帯電話の回答がすぐ出てきたよ。やはり日本はこの方式が一番いいよ。議会関係者政府筋も今その確信を持っているのですよ。  なぜそういうことを言うかというと、決裂をして帰ってきた。マスコミには胸を張って帰ってきたというふうに書いてあります、張ろうと張るまいとそれはいいんですけれども。ノーと言ったことも私は正しいと思いますよ。だけれども、帰ってきて、それじゃ三〇一をやるぞ、いいのか、貿易戦争になっていいのかとおどしをかけたら、慌てて官房長官が旗振りをしながら各省に号令をかけて、何とか具体策が出ないかと始めた。そして、まず第一弾として携帯電話が出てきた。物すごくこの方式は効くよというのがアメリカの認識なんですよ。  だから、私は向こうに行って、あなた方、そう じゃないよ、我々はもう前からスケジュールを組んであって、これは勝手に我々がやっていることです、ノーと言おうとイエスと言おうと、これはスケジュールに従ってやっているんですよと。それを言わなければいかぬのですよ。  我々はそうだと言ったのです。向こうは笑っているだけですから、いや、そうじゃないでしょうと。日本は我々がおどしをかけたから慌てて始めたんですよ。前もそうだったじゃないですか。いつもそうですよ。だから、これからもそういう方法がいいや。つまり、日本はプレッシャーをかければ何でも打ち出の小づちでどんどん出てくるよ、この手法をこれからもやり続けますという印象ですよ、私の受けた印象が。  だから、あのときにどうやればよかったかというと、ノーと言うのはいいのです。ノーと言った後、この数値目標について、客観基準についてはまさに管理貿易だからノーと言います。しかし、イエスと言おうとノーと言おうと、それにかかわりなく我々はやるべきことはやっていきますよ、近日中にそれは取りまとめます。ノーと言ったからまとめるんじゃない、イエスと言ったからまとめるんじゃなくて、これは我々の従来の方針、スケジュールに従ってやることですということをなぜ強く言わなかったか。これが最大のまずかった点じゃないかと私はアメリカ日本関係者に申し上げてきたんですよ。アメリカは、やはりこの手法で日本を締め上げていくのが一番いいよという確信を今持っていますよ。  私が貿易委員会のギボンズ委員長と会ったそのすぐ後に、ちょうど公聴会が行われました。この後カンターが来るんだと委員長は言っていました。入り口でカンターとバジェフスキーとすれ違いまして、そこでカンターは公聴会の証人として、移動体電話で成功をしたこの手法で自動車・自動車部品も今後の交渉を進めていくんだ、この方式でやるんだという謹言をその委員会でしているんです。つまり、もうこういうプレッシャー方式で個別交渉は全部やりますよということを宣言してきているのですね。  郵政省、来ていただいていますけれども、一応おさらいの意味で、移動体通信の合意内容についてちょっと報告をしてください。
  58. 大橋郁夫

    ○大橋説明員 お答え申し上げます。  今回の自動車電話問題の合意内容でございますが、二本立てになっておりまして、事業体であります日本移動通信株式会社が計画を定め、それを郵政大臣に報告する、それを受けて日本政府は一定の措置を講じるという構成になっておりまして、まず、日本移動通信は、  ①IDOに割り当てられたNTT方式自動車電話用周波数八メガヘルツのうち、一・五メガヘルツを北米方式自動車電話用として使用する。  ②基地局百五十九局、チャネル数九千九百の設備を、平成六年四月から十八カ月以内に建設する。  ③ 三十日以内に設備建設の具体的展開計画を作成する。  ④ 北米方式自動車電話事業販売促進策を講じる。  ⑤NTT方式から北米方式への周波数移行を円滑に行うため、モトローラ社の協力を得て必要な施策を行う。というモトローラ、IDO両者間の合意に基づいた計画を定め、日本政府といたしましては、  ①IDOの計画の達成を把握し、見届ける。  ② IDOの計画の実施状況を評価するために、四半期ごとに又はいずれかの政府の要請があった場合には、米国政府と協議し、問題が生じた場合には、計画遵守を確保するために、全ての可能な措置を講じる。  ③IDOに割り当てられているNTT方式自動車電話用周波数八メガヘルツのうち、一・五メガヘルツを北米方式自動車電話用に使用することを認める。  ④IDOの計画を完了するために必要な許可、免許、料金認可手続きを迅速に進める等の措置を講じる。 以上の内容について、駐米の日本国大使からUSTRのカンター氏あて書簡を発出するというような合意内容になっております。
  59. 甘利明

    甘利委員 そこで、四半期、つまり三月ごとに進捗状況をレビューをするということですね。このレビューをするということは、進捗状況を担保をすることですか。
  60. 大橋郁夫

    ○大橋説明員 具体的な展開計画を含むIDOの計画の実施状況を把握するということでございまして、計画の遅延等の問題が生じないように遵守状況を見守っていくというものでございます。
  61. 甘利明

    甘利委員 それは強制力はないでしょう。
  62. 大橋郁夫

    ○大橋説明員 強制力はございません。
  63. 甘利明

    甘利委員 そこが大事なところなんですよね。アメリカは、わざと意識的に取り違えておれたちはこう理解するという節があります。アメリカの方は、政府が進捗状況を担保する、裏書きをしてくれているんだというふうに勝手に承知で理解をしている節があります。これは、達成できなかったらそのときには見ていろよということになるわけでありまして、またかつての半導体みたいに二〇%と言ったとか言わないとか、こういう議論になる。あえて意識的に、これは政府が担保するということなんですというふうにわざと取り違えて理解している節があります。  そして問題は、この移動体通信のでき上がった合意のやり方でこれからは個別項目を進めていくんですよということを、カンターはその公聴会で証人として述べているのですね。ですから、これからの交渉は相当これに足をとられることになりますから、国内向けにも国際向けにも、我々の日本側の理解、それが正しい理解だと思いますが、それはこういうことですということを毎回声を大にしてやっていかないと、これに足をとられて、自動車や自動車部品その他、個別の項目について全部この方式でやられるというおそれがありますから、今から警告を発しておきますから、その点は十分注意しでいただきたい。  それと、我々が行っている自主的な努力は、交渉が決裂をして、それでおどされてやっているんじゃないですよ、交渉の決裂いかんにかかわらず最初からスケジュールを組んで取り組んでいるんですということを内外に声を大にして言っていかないと、日本はあの方式が一番いいんだということがもう完全に定着していきますから、その辺は非常に私は危険だと思いましたので、ぜひそのことを踏まえてこれから取り組んでいただきたいと思っております。  時間が押しておりますから、織工法関係に入らせていただきたいと思います。先ほどの大臣答弁にもありますように、繊維産業というのは二百数十万の雇用を支える大産業であります。日本の経済の牽引役の産業というのは時代、時代に主役がかわってきたわけでありまして、造船や鉄鋼が主役として経済を引っ張った時代もあれば、自動車が引っ張った時代、今もそうですけれども、あるいは家電とか電子機器とか、それぞれ時代、時代に主役がかわっていくわけでありまして、繊維も戦後の復興から高度成長期前半あたりを支えた重要な産業であります。私は、毎回申し上げていますけれども、産業政策というのは、これは瀕死の状態の産業に生命維持装置をつけるのじゃないですよ。一時的に入院はしてもらうけれども、元気になってそれから働いてもらう、つまりそのポテンシャル、可能性があるところに手助けがあるのであって、点滴のパイプが外れないままずっと行くのですというのであると、これからほかの有力な産業が芽生えてくるのの阻害になる。完全にもう回復不能であるならば、むしろ思い切って新しいところに特化していくとか、新産業おこしにエネルギーを割いた方がいいんですね。そこで、先般、織工審並びに産構審から繊維ビジョンというのも出されたようでありますけれども、日本繊維産業というのは、やり方次第によっては、これからも日本経済を支えていく基幹産業になり得るのかどうか、その辺の見通しを ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  64. 土居征夫

    土居政府委員 昨年の十二月に答申が出ましたいわゆる新繊維ビジョンにおきましても言われておりますけれども、要するに繊維産業は、今アメリカ、ヨーロッパ等の先進国においても栄えている産業でございます。先進国は先進国なりに、生活文化との関係において一種のファッション産業として、むしろ世界をリードしていく産業として栄えておりますが、日本繊維産業につきましても、そのビジョンで、二十一世紀の生活文化提案型産業としてこれが一つの大きな役割を果たしていく、そういう位置づけをしております。  ただ、現在はいわゆる発展途上国との産業調整の真っただ中にございまして、この五年程度が非常に重要な局面であろうと思いますが、この産業構造調整の過程を経て、そういった新しい生活文化大国における一つの物づくりを支えていく産業として、重要な先進国型産業としてまた花開いていく、そういう位置づけのもとに政策の方向性が示されているところでございます。
  65. 甘利明

    甘利委員 私は前にも、製造業がいかにして国内に残れるかというのが、その国が栄えていくかあるいは衰退の一途をたどるかの境目ですよ、アメリカの失敗というのは、製造業を安価な労賃を求めて海外にみんな出しちゃった、そこから失敗がありますよと。むしろ苦しくても、どうやって残るか。残るためには、生産効率を上げていく、高付加価値に変えていく。いろんなアイデア、英知をそれに付加して、同じ製造業でも、十年前とは違いますよ、新しい付加価値を持った製造業として残る、そのための努力を永遠に続けていくことが、その国が発展するか、それともそうではなくなってしまうかの境目ですよということを申し上げたわけであります。  今度補助金政策も入っていくようでありますけれども、産業政策基本的な理念というのは、それによってその産業が強くなってくれる、それによってその産業が今まで以上に競争力をつけてくれる、そのために何をするかということを重要な基点として考えてもらわなければならないというふうに思うわけであります。  今回の織工法の延長は、単純延長ではなくて、随分と新しいアイデアが入れてありますね。それで、従来の法律ではどこが不十分であったのか、なぜ単純延長でないのか、今までも御答弁の中でありましたけれども、もう一回具体的にお話しいただきたいと思います。
  66. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 委員が御指摘のとおり、実は繊維産業というのは、現在三百万近い、二百数十万の雇用を抱える一大産業でございます。二十一世紀、二〇一〇年に情報通信産業が二百万の雇用を抱える大産業になる、こういうふうに希望をしているのに比べて、現実にはるかにそれを上回る雇用人口を吸収する大産業でございます。  確かに、コストという面ではいわゆる開発途上国の急ピッチな追い上げで苦労をいたしておるわけでありますけれども、しかし、国内に現実に大マーケット、世界に冠たる所得、一億二千万の人口の大マーケットを持っているわけでありまして、私は、このすばらしいマーケットを持っておるというのは、日本繊維産業の最大のパワーだろうと思うのです。  ただ、このパワーが生きていくためには、このマーケットに敏速に反応して、そしてこの先行のチャンスをものにするという産業に生まれ変わっていくということが必要でありまして、同じレベルで、開発途上国の繊維産業と世界の市場で争うということになれば、コストの面でこれはもう太刀打ちできないわけでありまして、それにまさるいい環境を生かしたそういう産業に生まれ変わっていくということであろうと思うのであります。  その一番のポイントが、他の消費者生産の工程の間をつなぐということだと私は思うのです。そういう意味で、従来、いわゆる繊維工業政策ということになっておったわけでありますけれども、販売の部門も取り入れて、今回は繊維産業法律の名前も変えさせていただいたわけであります。  この部分を取り入れて、あるいはデザインのような部分も取り入れて、マーケットと生産をつないでいく、そしていい商品を消費者に届ける、どこの国でできた商品よりもいい商品を届けるということを生かすことによって、実は先ほど局長から答弁の中で申し上げたことでありますが、繊維産業は、一面、生活提案型の産業でございます。仮に我々の衣服が全く人民服のようになったとしたら、恐らく甘利委員などは真っ暗になってしまうのではないかというふうに思います。  私は、そういう意味で、我々の生活感覚を豊かにしているこの産業が、さらにそういう分野で伸ばしていくことによって、実は輸出産業にもなり得る。先ほど吉田委員からも御指摘がありましたけれども、私どもよく香港でありますとかシンガポールのような工業化が進んだ都市、アジアの地域に参りますと、原宿でできたものが約一週間で航空便で届けられて、あそこの若者たちに原宿製品ということで売られるというのを見聞きしておるわけでございます。  これからアジア大陸、大変な工業化が進み所得が上がってまいりますと、私は、日本でできたすばらしいデザインカを持つ、消費者のニーズに合ったいい商品をつくる産業として、今後輸出産業としても活躍できる余地がある、こう考えておるわけでありまして、そういう方向にすべての資源を導入して繊維産業を再生させていきたい、こう願っておるところであります。
  67. 甘利明

    甘利委員 大臣おっしゃるように、私も常に四六時中、ネクタイの方がいいかマフラーの方がいいかとか、原稿を読むよりプロンプターの方がいいかとか、廊下を歩くより表を歩いた方がかっこいいかとか、そういうことを考えておりますから、ファッションというのは非常に重要な部分でございまして、最終消費者生産者とをもっと直結させるクイックレスポンスとか、マーケット・インあるいはデザイン・インとでもいうのですか、こういう消費者ニーズが具体的に即応体制で生産工程に織り込まれていく、それが言ってみればよりニーズに合った、付加価値が高い商品を素早く送り出すということになると確かに私も思います。  この今回のアプローチについては随分アメリカを参考にされていると伺いますが、そうですか。
  68. 土居征夫

    土居政府委員 マーケット・イン、クイックレスポンスの体制につきましては、審議会答申を出す前の段階から、アメリカ、ヨーロッパに調査団を派遣いたしまして、御指摘のように、QRにつきましては、アメリカの成功例といったものを基本的な参考にさせていただいております。  アメリカの場合は、レーガン政権のもとで非常に繊維産業が苦境にあったわけでございますが、特別の対策によりましてこの繊維関係流通構造改善が進みまして、日本では、今そうでございますが、大体在庫期間が一年近くかかっているあるいは一年以上かかっておるという状況で、その当時アメリカもそういう状況であったわけでございますが、このQR、クイックレスポンスによります情報化の進展によりましてPOSの導入比率も六割に達するというようなことで、この在庫期間が大幅に短縮をされて、アメリカ繊維産業の国際競争力が非常に飛躍的に強化されたというふうに評価しております。
  69. 甘利明

    甘利委員 レーガン時代の繊維不況からいろいろな知恵と努力で立ち上がった。アメリカという国は、見ていると、産業政策というのは余りしない国ですね、ほうっておいて、市場原理でそれぞれ立ち上がってくればいいと。アメリカ繊維産業に関しては、政府が織工法みたいな法律をつくったりあるいは補助金を出したり一切していないと思います。自分たちの力で立ち上がった。  アメリカは自分たちの力で立ち上がることができて、日本はどうしてできないのですか。
  70. 土居征夫

    土居政府委員 アメリカの場合には、先ほど来御説明ありましたようなMFAによりまして、繊維製品の八割をカバーする、外からの輸入がいわば輸入制限のもとにあるという形で国内産業が保護されておる、そういう状況の中で対策が進めら れておるわけでございます。  日本の場合は、輸入制限というのは、現在の日本の置かれた国の立場、黒字太国あるいはアジア発展途上国への協力という観点からなかなか導入しにくいということもございますし、さらには、日本繊維産業は非常に中小企業性が大きいということから、国内産業政策、これは主として中小企業対策でございますが、中小企業構造調整の支援という観点で国内対策を進めて、大企業については自己努力を求めておるわけでございますが、そういったことを中心に構造改善国内構造改善対策を中心に施策を進めて、できるだけ輸入制限については抑制的に運用するということで実はMFA発動をしてこなかった、そういう状況でございます。
  71. 甘利明

    甘利委員 先ほども質問者からMFAのことが出ました。今までMFA発動せずに、言ってみればかなりやせ我慢をしてきた国というのは、聞くところによると、日本とそれからスイスしかないということですね。これから五月に日中の繊維雑貨協議がありますね。それからこのMFAをどうするかということの検討がなされると思うのですけれども、今まで発動してこなかったということは、これからも発動しないということではありませんね。
  72. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 このMFAに対する日本の取り組みというのは、今までに、比喩の語弊ということには問題がありますが、竹光みたいなもので、実は何も用意をされてなかったわけであります。今回、新繊維産業ビジョンに基づきまして新しい産業政策をまとめるに当たりまして、この点についても検討をしていこうということで、現在、先ほど来の各委員の御質問にお答えしているとおり、五月中旬までにはどういうふうにやっていこうかということで検討をしておるところでございます。  ただ、これは名刀にもなりますが妖刀にもなり得るわけでございますので、これは抜くときはなかなか慎重、総合判断をしていかなければならない。十分我々の置かれた状況を見ながら、私どもといたしましては、日本繊維産業をいかにして活路を見つけていくかということを最も重視して考えていきたいと考えているところであります。
  73. 甘利明

    甘利委員 改正織工法が成立をして、支援措置も今までの織工法よりはぐっと幅が広く厚くなるわけですね。  ただ、MFA、これはなかなか難かしいと思うのですよ。正直な気持ちで、ここまで我慢してきたのをぽんぽんぽんぽん簡単なカードとして使いたくはないという思いもあります。  その一方で、さっき土居局長が御答弁されたように、アメリカMFAと相まって繊維産業が復活をしたという部分がありますから、発動する権利はずっと持っていて、三〇一条じゃないですけれども、いつでも出せるんだぞ、なかなか出さないけれども、出せる権利はいつでも行使しますよという姿勢をうまくかみ合わせてやってもらうのがいいのかなというふうに思っております。  MFA発動きしていないのは世界じゅうに日本とスイスだけだった。これは大変なことだと思うのです。かって、ガット・ウルグアイ・ラウンドでも、米のカードというのは日本にとっては非常につらいカードだったのですけれども、それを切った。また、通政局長いらっしゃいませんが、二国間協議のとき、あるいは多国間協議の場で日本はつらいカードを切っていますよ。  MFAも、実はカードとして使いたいけれども、我慢して耐えているんですよ。それはすべて自由貿易体制が何よりも大事なんだから、だからこれだけつらい思いをしていますよというのは過大宣伝ぐらいにやってもらわないと、日本はいいとこひとり占めでみんな占めちゃっている、こういう感覚がアメリカを中心にありますから、これだけつらい思いをしているんですよというのは交渉のカードとしてどんどん使ってもらいたい。その辺のアピールがまだちょっと足りないんじゃないかというふうに思っております。  時間はまだ十分ほどありますけれども、質問者が私の質問に重複をして御質問をされていることでもありますので、最後に、この織工法のかなりの大改正をするに当たって、繊維産業の発展に向けての大臣の決意を伺って、最後の質問とさせていただきます。
  74. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 先ほど来申し上げていることでありますけれども、通産省におきましては、繊維産業繊維工業というのは、歴史的にも最も柱になっていく産業でございました。伝統的にも重要産業でございました。今大変な苦境に立っているわけでありますけれども、しかし、よく見れば決して暗いばかりではない。我々の適切な政策とそして民間事業者の英知と努力によって必ずこの苦境を脱出することができると確信しておるわけでございます。  そういう意味で今回お願いをいたしておりますこの法案成立後、ぜひ我々はあらゆる努力を払ってこの危機を突破して、まさにイタリアやドイツやまたアメリカ繊維産業が苦境を乗り切って新しい活路を見出していったように、我が国の繊維産業の活路を見出していきたい、そういう方向で政策を運用していきたいと考えているところでございます。
  75. 甘利明

    甘利委員 終わります。
  76. 中井洽

    中井委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  77. 中井洽

    中井委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  78. 中井洽

    中井委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決まりました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 中井洽

    中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  80. 中井洽

    中井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時二十八分散会