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1994-06-21 第129回国会 衆議院 国会等の移転に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成六年六月二十一日(火曜日)     午後二時三十分開議 出席委員   委員長 保岡 興治君    理事 谷  洋一君 理事 東家 嘉幸君    理事 西田  司君 理事 村田敬次郎君    理事 安倍 基雄君 理事 山岡 賢次君    理事 小林  守君 理事 久保 哲司君      田野瀬良太郎君    根本  匠君       古屋 圭司君    井上 喜一君       河村たかし君    渡辺浩一郎君       関山 信之君    横光 克彦君       青山 二三君    玄葉光一郎君       中島 武敏君  出席政府委員         国土庁大都市圏         整備局長    荒田  建君  委員外出席者         参  考  人         国会等移転調         査会長         (関西経済連         合会相談役)  宇野  收君         国会等移転に         関する特別委員         会調査室長   杉本 康人君     ————————————— 委員の異動 六月二十一日  辞任         補欠選任   長浜 博行君     渡辺浩一郎君 同日  辞任         補欠選任   渡辺浩一郎君     長浜 博行君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国会等移転に関する件〔国会等移転調査会の  中間報告首都機能移転その意義効果)につ  いて〕      ————◇—————
  2. 保岡興治

    保岡委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  国会等移転に関する件について、本日、参考人として国会等移転調査会長宇野收君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 保岡興治

    保岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  4. 保岡興治

    保岡委員長 国会等移転に関する件について調査を進めます。  本日は、去る十四日に国会報告されました国会等移転調査会中間報告首都機能移転 その意義効果」につきまして、参考人から意見を聴取いたしたいと存じます。  この際、参考人一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、大変御多用中にもかかわらず御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  まず、宇野参考人から、国会等移転調査会中間報告概要について御説明をいただきました後、委員からの質疑に対して忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  それでは、宇野参考人、お願いいたします。
  5. 宇野收

    宇野参考人 国会等移転調査会会長をいたしております参考人宇野でございます。お呼びをいただきましたので、ただいまから意見の陳述をさせていただきます。座ってひとつ……。  昨年の九月より国会等移転調査会基本部会中心にいたしまして調査審議してまいりました首都機能移転意義効果に関しまして、去る六月十日に開催されました第四回国会等移転調査会におきまして中間報告取りまとめて、同日付で羽田内閣総理大臣に私から御報告をいたしました。その後、十四日付で内閣総理大臣より国会報告されたと承っております。  本日、この場にお招きいただきまして、御報告機会を賜りまして、まことにありがとうございます。  さて、基本部会は、昨年の五月十八日に開催されました第二回調査会においてその設置が決定されまして、昨年九月七日に第一回部会を開催して以来、精力的に審議を進めてまいりまして、途中、二回にわたる海外調査東京都からのヒアリング、公聴会等も交えながら、本年五月十八日まで計十一回にわたり検討を進めてまいりました。  基本部会審議に当たりましては、私も可能な限り出席させていただきましたが、国土庁首都機能移転問題に関する懇談会取りまとめや、内閣首都機能移転問題を考える有識者会議取りまとめ議論、その他、従来からある種々の学説や論調等をも踏まえつつ、「移転意義効果」を大きく八つの観点から検討いたしました。  すなわち、中間報告最終ページ基本部会開催経緯がございますが、まず、「国際的役割の増大への対応」「新しい社会への変革のトリガー」「人心一新の好機」「政治行政改革契機」「東京過密問題解決への寄与」「二十一世紀にふさわしい国土構造実現」「地震等災害に対する脆弱性への対応」及び「その他」の八項目であります。これらにつきまして専門的に調査審議を進めてまいりましたが、このたび、これまでの成果を幅広く国民各位の御論議に供することが必要であると考えまして、調査会中間報告として、ここに取りまとめた次第でございます。  首都機能移転問題に関する報告書といたしましては、過去におきましても、先ほど申し上げました国土庁懇談会取りまとめがございますが、これは国土政策上の観点にウエートを置いた報告内容となっており、また、内閣有識者会議取りまとめは、大所高所から首都機能移転必要性を強調したものであります。  この中間報告は、各委員の見識と英和を結集して、これら先行した二つの懇談会における論点につきましても、一層具体的かつ詳細な分析に努めるとともに、より幅広い観点から、新たに国民意識価値観政治行政システム経済社会構造国際情勢変化等、多岐にわたる観点からの検討を加えたほか、歴史的な考察も行うなど、さらに広い視野に立ち、掘り下げた議論を行った上、取りまとめたものであります。また、具体的な例示をふんだんに盛り込むとともに、通常の型にとらわれない文体、言葉を用いるなどにより、国民的合意を図る上でより理解しやすい内容にすることを目指して取りまとめた次第でございます。  そこで、報告書を順にめくっていただきますと、最初に「はじめに」、続いて「目次」がございまして、一ページの「序章」となるわけであります。その「序章」の冒頭に、「われわれが、この小論で試みようとしていることは、首都機能移転という壮大な歌劇序曲を奏でることである。」というくだりがございます。首都機能移転オペラに例えていますが、皆様御承知のように、オペラの場合、通常第一幕の前に序曲が演奏されます。序曲は、幕あけがすぐそこまで来ていることを告げると同時に、幕あけ以降に展開されるであろう歌劇内容を聴衆にあらかじめ暗示することを役目としていると言われております。  こうしたことになぞらえ、ここでは、中間報告が、これから始まっていく首都機能移転という壮大なプロジェクト幕あけを宣言するとともに、その道筋を、多くの国民がその内容を予見した上で理解を深めていただくことにより、首都機能移転への理解を高め、かつ期待を膨らませていただこうということになっておるわけであります。  全体の章立ては、いわゆる起承転結意識して構成しております。起に当たります「第一章 転換期を迎えた日本とその二十一世紀における新しい方向」は、今なぜ首都機能移転が必要かについて議論を説き起こすために必要な我が国内外情勢変化に関しまして、来るべき二十一世紀における変革方向について概観しております。  三ページからの「一 価値観多様化と「個」の確立」では、従来、組織中心価値観や横並びの重視により個を軽視してきた我が国社会において、最近、社会成熟化に伴い、国民が個性豊かな生活を求め、価値観多様化しつつあり、また国際的な交流意欲積極性を増しつつあること。  六ページからの「二 改革転換期にある政治行政システム」では、今まで我が国経済社・会を長く支えてきた政治行政システムが、情勢の激変により政策課題が著しく変化してきたにもかかわらず、総合的な視野の不足が指摘され、変革への機敏な対応をおくらせており、このため制度疲労を来していること、政治行政経済社会との関係を二十一世紀にふさわしい新たな関係に変える視点が重要であり、政治行政国民から見ても、また、国際社会から見てもわかりやすい姿で遂行されることなど、透明公正な政治行政が求められていること。  七ページからの「三 変革を求められる経済社会」では、従来の国内産業重視の効率的な生産重視経済社会構造が、成熟化社会を迎え、自律・自助の社会への変革をおくらせ、国民の多様な価値観実現を妨げ、国民の豊かさの実感を阻んでおり、また、ゆとりや精神的な豊かさへの欲求、国際協調への要請が高まりつつある今日、そのような経済社会構造が大幅な体質改善を求められていること。  九ページからの「四 冷戦構造の崩壊と新たな国際秩序の模索」では、米ソ二超大国が対峙する冷戦時代終えんを迎え、新たな国際秩序の構築が模索されており、我が国がその地位にふさわしい役割を十分に果たしていくことが求められていること。  十ページからの「五 東京一極集中国土利用のアンバランス」では、経済的、文化的側面のみならず、心理面でも抜きがたい東京一極集中志向背景として、東京圏においては依然として深刻な住宅、通勤通学交通廃棄物処理等の諸問題が山積しており、東京一極集中メカニズム打破が求められていることなどをそれぞれ分析しております。  次に、承に当たります「第二章 首都機能移転意義」におきましては、十三ページの「一 国政全般改革」で、我が国根本に踏み込んだ幅広い改革を迫られており、首都機能移転がそのための重要な機会であり、国政全般改革を強力に補完し、加速し、定着させる手段であること、規制緩和地方分権と並び、二十一世紀へ向けた我が国社会改革のための車の両輪ともいうべき重要施策であること。  さらに、十五ページからの「二 首都機能移転歴史的役割」で、内外歴史を振り返れば、首都機能移転は新しい時代を創生じようとするときに、新たな政治行政システムヘの転換、国民意識変革、新しい文化の生成、国土構造改編等さまざまな面で重要な役割を果たしてきたこと。  さらに、十七ページからの「三 首都としての東京限界」で、東京過密巨大都市化に伴う諸問題の深刻さ、地震災害に対する弱さ、国際政治活動への制約等首都としてのさまざまな限界に直面していることといった三つの観点から首都機能移転意義を述べた上で、二十ページからの「四政経分離首都機能移転必要性」において、第一章で分析いたしました社会変革をより確実に推進し、加速し、定着させていくためには、明治以降、政官民一体となって経済発展に専念してきた体制を改め、新しいルールを確立するとともに、物理的な政経分離を図る必要があること、その際、政治行政機能がみずから率先して移転すること、すなわち首都機能移転が最も有効かつ適切な手段であること、さらに、二十二ページからの「五 新しい日本は新しい革袋に」において、平清盛と源頼朝歴史的事例等を踏まえて、新しい日本を築いていくためには、新首都という新しい革袋が必要であることを強調しております。  「第三章首都機能移転効果」は、首都機能移転がもたらす効果について述べております。  そこでは、まず、首都機能移転社会全体の雰囲気を一新し、政治行政経済文化等に大きな変化を生じさせること、そしてそれらが相互に作用し合い定着していくことにより、我が国あり方そのものを大きく変貌させるものであることを述べた上で、二十四ページからの「一 東京中心社会構造変革」で、東京中心序列意識が崩れ、人々や企業の東京志向が緩和され、東京優位性が相対的に低下することにより、地域の自立が促進されるとともに、東京中心社会構造意識面から改革されていくこと。  二十五ページからの「二 新しい視点対応した政治行政システム確立」で、規制緩和地方分権等政治行政改革を促進する契機になり、政策立案視点経済効率重視、大都会的なものから生活優先的、地域住民的なものに変化するとともに、危機管理機能が格段に向上するなど新しい政治行政システム確立されること。  二十七ページの「三 新たな経済発展」で、新首都建設で世に認められた独創的技術の応用、関連社会資本整備による広範な社会的、経済的効果、内需の拡大等により新たな経済発展が図られ、諸外国との経済的あつれきが緩和されること。  さらに、二十八ページからの「四 世界へ向けた日本の新しい姿」で、首都機能移転が、今後の日本の新しい姿を世界にシンボリックにアピールすることにより、我が国理解の増進に役立ち、また、国際交流を促進すること。  二十九ページからの「五 国土構造改編」で、東京については、過密の軽減、都市居住環境向上防災性向上国土全体については、東京への集中集中を呼ぶメカニズム打破東京吸引力の大幅な減殺、新首都圏形成による国土構造の再編、複合的な情報通信交通ネットワーク形成、さらに、防災については、政経分離によるリスク分散災害対応力強化等国土構造改編に大きな効果を及ぼすことの五つの柱にくくって、できるだけわかりやすく根拠を示しつつ説明をしようとしております。  「第四章 「新首都時代」の創出」はいよいよ結に相当する部分でありますが、そこにおきましては、まず、三十二ページからの「一 新首都創造」で我々がどんな新首都をつくろうとしているのか。すなわち、我が国未来国民国際社会にアピールし、新しく生まれ変わる日本の姿を代表するような日本の進路を象徴する都市であること、新しい時代要請対応して生まれ変わる政治行政システムが十分にその機能を発揮できるような新しい政治行政都市であること、世界日本をつなぐ役割を十分に果たせる本格的な国際政治都市であることを述べた上で、三十五ページからの「二 生まれ変わる東京と新首都との連携」で、首都機能移転契機に生まれ変わる東京政治行政の新たな中心地となる新首都との間の機能的な分担・協力関係を支えるための密接な連携確保について考え、また、三十六ぺ−ジからの「三 首都機能移転問題点とその克服」で、国民の求心力、方向性の喪失のおそれ、日本経済活力効率性低下のおそれ、東京活力低下のおそれ、新首都への新たな集中のおそれ、投資の優先度に対する疑問の五つ問題点について、当調査会としての見解を述べると同時に、それらをどうして克服したらよいのか、とりあえずの解決策を探るともに、四十ページからの「四 新首都づくりに当たって予め講ずべき措置」では、第一回公聴会での御意見等をも踏まえ、新首都づくりに当たって、あらかじめ、公正透明な手続の確保土地投機の防止、環境との調和・共生の確保.が図られるよう措置される必要がある旨記述いたしました。  そして最後に、四十一ページからの「五 「新首都時代」の展望」及び四十四ページからの「六「東京時代」から「新首都時代」へ 変化実感と夢の創造」で、新首都がつくり出す新しい時代、すなわち、魅力ある選択肢が多様に提供される自由度の高い時代、国の政治行政の運営がより開かれた透明性の高いものになっていく時代、豊かな国際交流が展開する時代及び独創的で個性的な地域社会形成が進んでいく時代実現について、期待を込めて展望してみました。新首都建設は、人々時代変化実感し、心機一転してよりよい未来を志向する、そういう歴史的な大事業であり、それにめぐり会い、参画する機会を得ることは、未来へ向けた夢の創造そのものであると言えましょう。  中間報告概要は以上でございますが、私から羽田内閣総理大臣に御報告申し上げました際に、羽田総理からは、未来を見据えた夢のある仕事だ、二十一世紀あり方を今考えることが大切である旨のお話がございました。私も全く同感でございます。  本調査会におきましては、この中間報告を踏まえて、今後、首都機能移転具体化に向けて、新首都具体像首都機能移転の進め方などについてだれもが胸の中に描き得る検討材料を提供できるよう、さらに議論を進めてまいりたいと思っております。  また、国会におかれても、広く内外人々に語りかけるなど、国民にわかりやすいPRの実施に努められて、一歩一歩実現に向けて国民合意形成が図られますよう御努力くださらんことを期待いたしております。  なお、お手元にございます十ページ程度の中間報告の要点は、「首都機能移転はいかなる意義効果をもつものなのか、また、問題点やその解決策は何か、さらに新首都はどんな首都になり、どのような時代が展望されるのか、」などにつきまして、中間報告の主要なポイントをまとめてみたものでございますので、御参照ください。  以上をもちまして、私からの報告とさせていただきます。ありがとうございました。
  6. 保岡興治

    保岡委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
  7. 保岡興治

    保岡委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古屋圭司君。
  8. 古屋圭司

    古屋委員 古屋圭司でございます。座ったまま発言させていただきたいと思います。どうぞお許しいただきたいと思います。  宇野会長におかれましては、国会等移転調査会会長といたしまして、今般の取りまとめ大変御苦労さまでございました。私も、この中間報告を読ませていただいて、一言で言いまして大変魅力的な内容であるな、こういう印象でございます。平易な文章で書かれていることはもちろんでありますが、その起承転結が、将来に向かって、夢を提供していただく、まさしく二十一世紀を代表する国家的プロジェクトなんだ、こういった情熱というものがひしひしと伝わってくるような、すばらしい内容だったと思います。新首都のあるべき姿であるとか、あるいは、新しい日本文化創造だけではなく、政治経済行政あるいは生活様式などなど、次の世代にマッチした抜本的な改革必要性というものを、ソフトとハード両面にわたって大変説得力のある内容でございまして、大変私も感銘をいたしました。  今、私は、世界は五百年ぐらいのスパンで見ても、三回目の大きな変革期にあるのではないか、そんな位置づけをいたしております。五百年前のルネサンスの時代、あるいは産業革命に始まる近代化時代、そして東西冷戦終えん、この三回目の大きな変革期にある。したがって、この大きな世界のうねりの中で、日本もその流れに取り残されないように、そういった姿で二十一世紀国土を構築していく必要があるのじゃないか、その大きなインパクトがこの首都機能移転ではないか、こんなふうにとらえております。  以上のような感想を持ちましたけれども、この中間報告取りまとめ責任者といたしまして、この内容につきまして御感想、特に今後は、この中間報告もとにして、その実現に向かって国民の間でさらに具体的な実現性を持った議論というものが出てくるような、そういった各論をこれから詰めていかなければいけない、大変重要であり、かつ難しい事業だと思いますが、この辺も含めて、御感想をまずお伺いさせていただきたいと思います。
  9. 宇野收

    宇野参考人 今、古屋先生から御指摘のとおり、まさに大きな変革期でございますから、これは三遍目といいますか二遍目といいますか、いろいろ見方があると思いますが、そういう中で、首都機能が移ることの意味というのはやはり歴史的に判断をしなければならないという意識が、皆さん、非常にお強かったと思います。恐らく、その費用がどうなるのかとか、あるいはどういう首都にするのかというふうな問題はこれからいろいろ詰めていかぬといかぬと思いますが、そういう問題でなくて、歴史的に、こういうものをやることが、今先生の指摘された大きな変革期に、日本がその変革に乗れるという一つのチャンスである、それが首都機能移転であるというふうに私どもは考えました。  先ほど、ちょっとこの中にも触れておりますが、日本も、かつて公家政治から武家政治に変わるときに、平家は、武家政治に変わるのであるにかかわらず、公家政治中心京都でそのまま武家政治をやった、そのために公家政治武家政治がわからぬような状態になったこともあって、平家はうまくいかなくて滅びたわけです。その後、源氏は、源頼朝京都から離れて鎌倉に武家政治中心を置いたということが極めて象徴的だと言うべきだと思うのですが、そういう意味で、この際、首都圏移転というものをまず歴史的な背景から判断をする必要があるということにつきましては、調査会の中で、皆さん意見は全く一致したわけであります。  問題は、そういうことを国民皆さんがやはり理解をしていただくということが必要でありまして、そのために、どうして合意形成をするかについて一年間をこの調査会は費やしたわけでありますが、やはり時間はできるだけかけよう、そのためには、先ほどもお願いいたしましたが、立法府の方からもぜひそういう問題について国民合意形成に御努力いただきたいというのが、私どもの念願でございます。
  10. 古屋圭司

    古屋委員 この首都機能移転については、確かにPRの問題、今関係者の中で盛んな議論が行われています。しかし、国民に対してはまだまだ啓蒙ができていない。やはりこれは、政財それぞれの関係者一体となって、二十一世紀を代表する国家的プロジェクトだ、こういう位置づけでもってPRをしていく、これが何よりも大切だと思います。  さて、その中で、きょうは時間が大変限定されておりますので幾つか論点を絞ってお伺いしたいと思いますが、まずこれは、いずれは場所の問題というのは避けて通ることができないということだと思います。きょう、村田先生も御出席でございます。新首都推進懇談会先生会長をやられておりまして、二百五十名近い国会議員がメンバーでございますが、その中でも、三年以内に場所選定をしよう、それは国民投票のような形でやったらいいのではないか、基本的にはこんな考え方かと思います。しかし、国民投票にする、あるいは場所選定するといっても、これは大変大きな仕事でありまして、実際、この場所が決まることによりまして、一気に動きが加速をされるか、あるいは我田引水的なことになって過去の悲しい例のような結果を見る、両極端、両方の可能性があると思うのですが、この場所選定についてはどのような形で決めていくのが一番いいと思うか、この辺につきまして、宇野会長さんの率直な御意見をお伺いしたいと思います。
  11. 宇野收

    宇野参考人 場所選定基準のようなものは、既に国会においても一つのスケルトンのような形でお話があったことは承知いたしております。しかし、調査会の方では、先ほどから申し上げているように、三年間の調査期間という中で、一番大事なことはまず国民合意形成だというので一年間を費やしました。これから後やるべき問題の中に、選定基準なりあるいは何らかのスタンダードのようなものはつくらなければいかぬと思います。思いますが、その基準ができた上で、具体的にどこがどうなるのかという問題については、調査会とは別の機関をつくって審議していただくというのが妥当でないかと私は今考えておりますが、この辺については、まだ調査会の中で十分議論はしておりません。しておりませんが、今からやるのは、選定基準その他について議論はしているということはございます。
  12. 古屋圭司

    古屋委員 しかし、選定基準を決めること、あるいは場所を具体的に決めていくこと、これについては、新首都推進懇談会でも三年をめどにということを言っておりますが、既に成立してから半年たっておりますので二年半しか残されていないわけでありまして、そういった意味からもこの問題については、着実に取り組まなくてはいけないが、のんびりやっている時間的な余裕がないと思っております。  そういった意味で、具体的な基準の大もとになるものですね。最終的に、国民投票のような形がいいのか、あるいは全く違う形をとるのがいいのか。その辺につきまして、基本的な考え方で結構ですから、宇野会長からの御意見を賜りたいと思います。
  13. 宇野收

    宇野参考人 今の調査会の中には基本部会とそれから新都市部会と二つの部会をつくりまして、それぞれ専門的に、そうした基準の問題あるいは新首都のあらまほしき姿の問題等は検討をしていくことになっております。ただ、今から残された期間の間にそれをどのようなところまで持っていって、もうその次には具体的にこの場所がいいですよというところまで持っていくというのには、まだ皆さん議論は詰めておりません。先ほども申し上げたように、具体的にどこがいいかというのはちょっと別の機関でやった方がいいんではないかというふうに私は思っておりますが、これはまずは皆さんともう一遍議論をしていきたい、こういうふうに思っております。
  14. 古屋圭司

    古屋委員 ということは、別の機関で一カ所以上、複数の場所選定をしていただいて、その中から何らかの形で最終的な場所選定をするということに相なろうかと思います。  例えば、今新首都推進懇談会で言っている国民投票、これはちょっとオブラートに隠すような言い方だと思うんですが、その辺についてはどんなようなお考えをお持ちでしょうか。やはり数百年に一遍の首都機能移転でありますから、既存のやり方というのはなかなか通用しない。新しい方法を創造していかなければいけないと思うんですが、そういった観点からお答えをいただければと思います。
  15. 宇野收

    宇野参考人 お話しのとおり、どういう基準で複数の候補地を絞るかという仕方については、調査会委員の中にも既に非常に具体的な案をお持ちの方もございます。したがって、そういう御意見皆さんの中で議論をいたしまして、今、先生御指摘のように国民投票というのもありますが、むしろ候補地の地域の方から手を挙げてもらって、その条件が合えばというふうな見方もございますので、その辺のことを含め、すべて今の専門の基本部会と新都市部会の中で議論をしてもらって、その上で、別の機関で最終的に候補地を絞るということをしてもらったらいいんではないかと思います。
  16. 古屋圭司

    古屋委員 もう時間がないので次に進ませていただきますが、いずれにしろ、可能性のある地域可能性の全くない地域というのがあるわけでありまして、したがって、可能性のない地域に対する配慮と申しますか、こういったものも同時に必要かと思います。そういうことをしていかないと、なかなか国民全体のコンセンサスを得ることはできないんじゃないか、そんな気が私はいたします。  それでは、次の質問に移らせていただきますが、この中間報告にも最後に触れておりまして、また、この場所選定とも密接な関係があるわけですが、仮に場所が決まった場合、土地の投機的な取引の防止というものは適切な措置が十分講じられるよう事前に検討しなくてはならないということでございますが、これ、時間がございませんので、具体的にどういうことを議論されたか、簡単で結構でございますから、ちょっと一言お聞かせいただきたい。
  17. 宇野收

    宇野参考人 これは大変検討を要することでありますし、これが恐らく非常に大きな問題になるんだろうと思います。  これは私の意見というよりも、我々の調査会の中の一委員考え方の中には、国の方から条件を出して、その中で、私はこれだったらできますよと言ってこられるところだけを一応選定したらどうだという御意見一つの有力な参考意見だと私は思っておりますが、せっかく立派なアイデアでせっかく立派な選定基準をつくりましても、具体的に決まる直前で、そうした問題のためにまずいスキャンダルを起こすというようなことは極力避けぬといかぬという考え方でいろいろ考えてまいりたいと思っております。
  18. 古屋圭司

    古屋委員 もうほとんど時間ありませんが、ただ、首都機能移転をするためには、直接費用だけで十数兆円かかるということでございます。この財源の問題というのが一番ポイントだと思うんですが、一九九一年から四百三十兆円の公共投資をすると決まっておりまして、毎年一〇%ずつの伸びを示しているということで、目標の達成は可能だろう。今度は一九九五年から新たな十カ年計画として六百兆円という数字が政府の方から出てきたようでございます。  しかし、六百兆円ということであっても、公共事業のシェアと申しますか、これは固定化されていてなかなか変えることはできないということでありまして、新首都建設を初めとして、例えば情報通信の基盤整備であるとか、あるいは新首都建設に伴う高速鉄道の整備あるいは超音速飛行機に対応できるような空港整備等々につきましては、新社会資本の整備として新たな財源をつくる必要があるんじゃないか。  仮に今、税制改正の問題がいずれ国会の中では避けて通れない話題になることは間違いありません。そういう中で、消費税のアップということも言われているわけでございますが、単にこれが高齢化社会対応するため、これだけでは何かたそがれ的でありまして、夢を与えるということがない。したがって、そういった新社会資本の整備あるいは首都機能建設も含めたことに対して、消費税のうち例えば何割かをそういったものの財源に充てる、目的税化させる、こういった考えもあるとは思うんですけれども、この財源の確保の問題については、これは一分や二分で答えられる問題ではないと思いますが、宇野会長としては、一言で申し上げれば、どんなふうにお考えなのか。
  19. 宇野收

    宇野参考人 今の財政は体質としては大変よくないという局面が一方でありますが、一方で、これだけの黒字をためておるという局面もまたありまして、要するに日本にはまだ国としての経済力が十分にあるというのが今の時点だと思います。したがって、社会資本の充実のための原資をどう出すかということについての技術的な問題はちょっと別にしまして、現在は出せるんだと私は理解しております。  その社会資本の総額が四百三十兆円から六百兆円になれば余計そういうことでありますが、その中に首都機能移転のための枠というものを、今委員もおっしゃいましたけれども、とるべきであろうというふうに私は思います。それが十四兆になるのか二十兆になるのかあるいは三十兆になるのかもしれません。しれませんけれども、そういうことをやることによって日本の将来の一つの夢というふうなものができるきっかけが、種が植わるわけでありますから、それはこの際、公共投資の枠の中で、新社会資本の充実の中でやはりやるということが必要であろうと私は思います。
  20. 古屋圭司

    古屋委員 時間が来ましたので、これで終わらせていただきます。
  21. 保岡興治

    保岡委員長 安倍基雄君。
  22. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 宇野参考人、きょうはお忙しいところありがとうございました。また、今までいろいろ前の古屋先生がおっしゃいましたけれども、本当に立派な中間報告をありがとうございました。  時間もございませんから、具体的なところでいささか各論にわたると思いますが、ずばりお聞きしたいと思います。  私は、実はこの報告書で地震問題を取り上げていることは非常にいいかと思っております。と申しますのは、私は昭和二十八年に大蔵省へ入りまして、二年目に外債課というところに行きました。そのときに、当時においても震災外債というか、関東大震災の外債をまだ払っていたということを見て非常にびっくりいたしまして、いかにその震災の傷跡が大きかったかということを認識をさせられたわけです。  もう一つ、私は、災害対策委員会あたりでいろいろ議論したときに、例えばホテル・ニュージャパンの火災だけでもあれだけの大騒ぎになった。ところが、これだけ高度化した都市ですから、これは大震災が来たときにどのくらい大きな災害が来るかわからない。考えますと、本当に我々は、確かに関東地方、この辺は数十年に一回。私も実はその後で保険二課というところで地震保険の研究をしましたものですから、首都移転を論ずるときに、やはりどういう地域が一番地震に対して強いかということをまず考えなければいかぬだろうと。  確かにここには一応、災害を考えなければいかぬとか、あるいは今の話でも国民投票をするという話がございますけれども、まず首都移転の一番基礎はどの地区が一番安全か。要するにそれだけの巨大なる投資をするわけでございますから、それで投資をした結果、百年に一回くらい壊れるということではいけないということで、その辺、調査会は、ただ作文だけではなくて、これから日本における土地をよく分析して、どの地帯が一番安全なのかということを考えていただくべきではないかと思っているのです。その点はいかがでございますか。
  23. 宇野收

    宇野参考人 ただいま安倍先生から御指摘のとおり、この選定基準というものの中で非常に大きな問題は、やはり災害に対する安全度ということだと思います。これは極めて専門的に調べないといけない問題があるやに思います。  したがって、先ほど申し上げましたように、この調査会全部で最後はまとめますけれども、新都市部会の方で、専門の先生方がその辺を緻密に調べて案をつくって、そして調査会に上げて検討するという一つの大きな問題だと考えております。もちろん安全度だけでなくて、もっとロケーションが便利だとかなんとかということもあると思いますが、やはり新都市選定するときに非常に大きな問題は安全度の問題だというふうに考えております。
  24. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私は浜松周辺なものですから、本当は日本のど真ん中ということであそこへ持っていきたいのですけれども、それは全く個人的なあれでございまして、むしろ基本的にはそういう地盤のかたさというか、ニューヨークのマンハッタンなんかすごいビルが建っておりますけれども、あれは絶対地震がないということがあるようであります。その面で私は、調査会一つの大きなポイントとして、日本全体におけるそういう地震の強度という調査をしていただけないかと思っております。  二番目は、いろいろ大きな問題でございますけれども、これから日本の体制を連邦制的な話へ持っていくのか、あるいは中央集権のまま持っていくのか。中央集権のまま持っていけば、要するに幾ら新しい都市をつくりましても、すべての機能はそれにくっついていきますから、また巨大な第二の東京をつくらざるを得ない。そこは御承知のように、オーストラリアにおいても連邦制でキャンベラでございますが、アメリカも連邦制でワシントンが首都です。日本政治体制そのものが変わらないと、首都の性格がそこまで、連邦制をとるか、今のままでいくかによって首都の大きさが変わってくるわけです。  私の考えは、むしろ、動かすのもあれだけれども、その前にやはり地方分権なら分権という一つの体制にして、そこで出てくる首都の性格が変わってくる。それをこれはある程度触れておられますけれども、基本的に地方分権の場合には実質的な意味首都機能が分散されるということになります。どちらが先か。私は単に首都を物理的にぽんと移転しても、今のままの体制であれば第二の東京ができて、もっとすごいことになるわけで、新しい集中が始まるわけでございましょう。ある程度制度的なものの見直しが先ではないか。その次の段階で首都移転されるのではないかと思いますけれども、この点いかがでございますか。
  25. 宇野收

    宇野参考人 その問題は私も大変いろいろ考えまして、当初は、やはり今先生のおっしゃったような、地方分権という目に見えない遷都が実質的にできれば解決するのではないかという思いもしておりました。しかし、今私が考えた、到達したところは、一方で地方分権もします、一方で首都機能移転もしますということで、言うなれば車の両輪のようなものであろうというふうに考えておりますから、どちらが先かとおっしゃると、両手でたたいたらどっちの手が鳴ったのかというような感じかなという話でございます。  たまたま私は今、地方制度調査会関係地方分権の問題もやはりちょうど同じ期間やっておるわけでありますが、この両方を進めるということが、実は初めてこの両方が生きてくる方法であろう、どちらが先ということはもう言わないで進めるべきだという感じで私はおります。
  26. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これもちょっと関連するのですけれども、私もオーストラリアに領事として三年おりました。あそこはシドニーが産業の中心でございまして、キャンベラが行政中心行政といっても連邦でございますが。アメリカの場合にも、ニューヨークあたりが産業の中心で、ワシントンは行政、そういうぐあいに分かれておるわけですね。  本来、これは地方分権とまた絡まるのかもしれませんけれども首都移転という場合に、産業も一緒に移転してしまう。つまり、すべての本社がごっそりついていってしまうと、これはまさに文字どおり移転であって、いわゆる分極的な要素が出てこないという意味で、私は、ある意味からいうと、地方分権とは別に、今の首都移転というものが、一方は立法、行政中心だよ、一方は産業の中心だよというような分かれ方が一つ考え方じゃないかと思いますが、その点いかがでございますか。
  27. 宇野收

    宇野参考人 まさにおっしゃるとおり、政経分離といいますか、一方で立法、行政中心としての首都移転していく、一方で経済中心というのは依然として東京に残る、あるいは東京以外にもそうした中心が全国の中に幾つかできるというような姿が私は理想の姿であろうというふうに考えております。  今、先生御指摘のように、政経分離といいましても、やはり政治から出てくる情報が経済に非常に有利であるから、ある種の経済的な行動も出てくるのも事実だと思いますけれども、それはそれ、大きく政経分離をするという基本線は崩さずにやっていけると私は思っております。キャンベラの方へも調査団として私ども参りました。それからワシントンにも参りました。そしてオタワにも参りましたけれども、大体そういう線でいけておるなという感じで帰ってまいりました。
  28. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 第三の問題点になるのですけれども、今、それに対しては巨大なる投資が必要である。前の質問者から、これは消費税でやるかどうかという話が出ましたが、実は今度の、「THIS IS 読売」という月刊誌がございますけれども、それに私は論文を出します。そこで書いておりますのは、公共投資というものは最終的には受益者が負担すべきものである。つまり、今までの日本というのは、どちらかと申しますとみんなの税金でもって公共投資をやる。例えば、今の東京湾横断道路をつくる。そうなりますと、当然向こう側の千葉の辺がえらい地価上昇があるわけですから、本来、この建設費はそれによって地価が上昇するなりなんなりで利益を得るところが負担すべきである。これをしませんと、要するに公共投資というのはもともとが何というのか、それを建設国債でどんどんやっていって税金で完済するということになると、赤字国債と全く変わらないではないか。  でございますから、これだけの巨大なる投資をするならば、その投資のいわば効果を受ける地域が、当然、その辺は物価上昇もあるいは土地の上昇もありましょうし、いろいろな上昇もある。これが最終的にはそれを負担するという形で、例えば外国あたりだと、新しい都市をつくるときにあらかじめその辺を全部押さえて、そこでもっていろいろ投資をする。投資をした結果、そこにおける、当然いろいろな地価上昇なりなんなり出てきます。それを吸収してその投資分を賄うというのが正しい方策である。  私は、今度の首都移転につきまして、それについての論議がちょっと欠けているような気がするのでございます。これだけの膨大な投資を国民の税金でやるというのはおかしい。そこでもって投資を享受した人間が当然最終的には支払う、それは固定資産税の形であろうとどんな形であろうと。私は、そういう形でないと、今アメリカとの公約の何十兆円の投資をしていけば、これは日本はもう財政破綻するに違いない。必ずそれによって受益者から金を吸い上げるというシステムをつくらなければ、そんなアメリカとのいわば約束なんて意味ない。アメリカの要望しているのは、国内の黒字を消すための内需の拡大であって、投資そのものではない。私は、いわばそんなことを書いてございますけれども首都移転のいわば財源問題について宇野参考人の御意見を伺いたいと思います。
  29. 宇野收

    宇野参考人 今お話のありますのは、一言で言えば受益者負担という問題だと思います。先ほど私が申しました今の調査会のメンバーの中にも、どんな形で最後の候補地を選定するのかという問題の議論の中で、極めて受益者負担的な考え方で、手を挙げてきたところにやってもらうというようなことを言われる委員もおられます。しかし、それだけで果たしてできるのかどうかということに対して、また疑問を言っておられる委員もおられます。その辺のところは、先ほど申し上げましたように、調査会の中で十分に議論をいたしたいというふうに考えております。
  30. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 もう時間も少ないですから、今の考え方、それは一挙に最初の原資をそれで取るというのではなくて、当然投資した結果生じる、特に東京の場合なんかも一極集中といいますけれども、結局その分の、いわば東京都がいろいろな投資をたくさん受けて、国からの投資を受けて、物価、地価上昇がある。それを全然取らないでおるものだから、結果的な一極集中になる。私は、一極集中というのはただでできるのではなくて、膨大な投資が国の予算から入り込んでいるという要素があると思います。この辺は私の論文をちょっと読んでいただければわかると思います。  そんな意味で私は、最初の原資をそれで取るのではなくて、最終的には、そこからできる受益者負担で吸収するという形をとっていただきたいと思っておる。その点をちょっと、私の思いつきみたいな言い方でございますけれども。  例えば、アメリカにトランプという例の不動産業者がございますけれども、彼がどうやって成功するかというと、マンハッタンに高いビルを建てる、そのときには特別な財産税を払う。というのは、特別負担をもってそういったものをつくれるという種類のことであるということでございますけれども、ある意味からいうと、アメリカにおける公共投資というのはそういう受益者負担の原則が確立していると思うのです。その辺を、ちょっとまたこれからの首都移転については私は考えていただきたいと思います。
  31. 宇野收

    宇野参考人 今先生の御指摘の問題は、十分に検討いたしたいと思います。やはり受益者負担という考え方をやるべきだという議論は、先ほど申し上げたとおり、一方でございます。一方で、私は出身地が関西でありますが、関西空港というのが受益者負担であるような受益者負担でないような、どちらにもとれるような議論を今しておりまして、大変困難をしておる面がございますので、そういうことも参考にしながら、十分皆さんの御意見をまとめたいと思っております。
  32. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 以上で質問を終わります。
  33. 保岡興治

    保岡委員長 横光克彦君。
  34. 横光克彦

    ○横光委員 横光克彦でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  宇野会長には、このような非常にわかりやすい首都機能移転必要性意義、そしてまた効果等をまとめていただきまして、本当にありがとうございました。  最初に、重複する部分があるかと思いますが、なぜ首都機能移転する必要があるのかというところ、それはやはり東京の一極集中の弊害を是正するというのが一番大きいのではないかという気がするわけです。いろいろな必要性はあるでしょうが、その中でやはりこれが一番大きいであろう。  私は、実は地下鉄有楽町線で小竹向原というところから永田町まで通っているのですが、朝のラッシュは本当にすさまじいのです。これがただ一線ではなくて、朝あらゆる線が東京東京へと近郊から来る。そして、私は二十分ぐらいでいいのですが、これが一時間あるいは一時間以上かかる人もおるでしょう。そうした場合に、これはよく電車の中で考えるのですが、一時間も乗っていたら仕事をする意欲というのはそこで大分そがれてしまう。グローバルな意味で考えますと、これは大変な損失だなという気がいつもいたしております。  そしてまた、先ほどお話ありましたように、この過密都市の一番の危険性は、地震災害です。これはまだそんなに大きいものがないからいいようなものの、いつ来るか予告があるわけではありませんので、本当にこれが来たときは大変な甚大なる被害を被るであろう。このためにも一刻も早くこのプロジェクトは進めるべきであろうという思いがいたしております。  この中間報告にも書かれていますように、もし移転すれば、地下鉄のピーク時の混雑率が一〇%緩和される。そしてまた、首都高では三%程度減少するだろうという見積もりも出されております。そういった意味で、確かにこの東京の飽和状態というものを解消するためには、ぜひとも進めるべきプロジェクトであろうと思います。  ただ、その場合、先ほどからお話にもありましたように、私は国民理解ではなかろうかと思うのです。なぜ東京以外の首都が必要か、そしてまたその財源はどうするのかという問題がどうしても出てくる。この中間報告にも書かれていましたように、本当にこれから未曾有の高齢化、そしてまた国際貢献等で経費が増大する時代が来るわけです。そうした場合、今お話にありましたように、受益者負担という形で進めるであろうということでしたが、それでもやはり全国民に何らかの負担が強いられるのではなかろうか。そう思った場合、果たしてその人たちにとってもっともっと生活に密着したものが必要なのであり、これは自分たちとは関係のない問題だというところの考えを持つ人が多いのです。  そういった意味で、これから国民にどのような形でPRして、しかも理解を求めていかれるおつもりなのか、そこのところをちょっとお聞きしたいのです。
  35. 宇野收

    宇野参考人 今、横光先生お話しになりました問題は、東京都のあるいは東京都におられる皆さんと地方の人との意識の差をどう詰めるかという問題も一つあると思います。  それで、東京都におられる方は、やはり今依然として東京首都を置いておくべきだという方もおられると思いますが、少しでも今の生活環境をよくするために、出ていってもらったらそれをしおにできるよという御意見もあると思うのです。しかし、逆に地方の側から見れば、東京の人が困っていても私たちは困っていないよ、私たちのところへ来られて、東京都と同じようなことがあっては困るよというようなことを極端に言う人もないわけではないと思います。  したがって、東京都の生活環境、あるいは東京都に起こる災害に対する対応をどうするかという問題は首都圏移転に非常に関係がある大きな問題でありますが、それと別個に、先ほどから出ておりますように、二十一世紀日本という国を考えた場合の首都あり方というのはどうあるべきかというのを一つ歴史的な展望で国民理解を得るというのは、これは非常に難しいことなんです。難しいことですが、これがやはり基本的にありませんといけないのだろう。そのときの国の姿というのはどういうことなんですかという理解も必要だと思います。地方分権という問題もそれに絡んでまいると思います。そういう問題、両方の面からやらないといけないのではないかと思います。  もう一つは、東京都の災害の問題について申しますと、東京都の方が大変なえらい目に遭うということですが、災害の面からだけ見れば、これは日本機能がとまってしまうのですね。そういうこともあるから日本国としても対応を考えなければいかぬという説明、これはできると思います。そういう幾つかの面から問題を並べて、皆さん理解をさらに深めるということが必要ではないかというふうに思います。  それから、財源の問題は、何遍か先ほどから出ておりますが、全部受益者負担という形でできるかどうかについては、調査会の中でも一遍よく検討したいと思いますが、しかし、強く出ておるのは、受益者負担的な要素も加味しないと、すべてこれは国のものでやるということはいかがなものかという御意見のあることも事実でございますから、十分にこの辺のことは皆さん議論を重ねまして、調査会としての意見をまとめたいというふうに思っております。
  36. 横光克彦

    ○横光委員 調査会でことしの三月に公聴会を開催されたそうですが、この公聴会ではどのような意見が一番多かったでしょうか。
  37. 宇野收

    宇野参考人 これは東京でいたしましたので、東京都の方が大半であったと思います。しかし、これがあるために地方から出てきたという方もおられました。そういう方の御意見は、大体こういう公聴会東京の人だけでやるのはけしからぬというお話もありましたが、その中で、やはり強く地方に持ってくるべきだという御意見がございました。  詳しいところはちょっと私記憶が鮮明でありませんのですが、そういうことの経験を踏まえたわけではありませんでもともと計画しておりましたのですが、この調査会は、これから地方に参りまして、公聴会をさらに重ねてまいりたいというふうに思っております。
  38. 横光克彦

    ○横光委員 先ほど財源の問題をお尋ねしましたが、やはり膨大な経費がかかるということ、そしてこの中間報告では要するに一括移転ですね。一括移転ということが前提でほとんど盛り込まれておりますが、要するに、一括ということは、東京あるいはその移転先、その中間の交通体系ぐらいが関係になりますね。  ところが、これを分散といいますか、経費の問題から考えても、例えば、東北あるいは仙台、名古屋、大阪、福岡、こういうふうに機能を分散するということにすれば経費も安くなるであろうし、各地方もそれなりの、一カ所だけでなくて各地の地方分権等にもつながる可能性もある。そういった一極、一括でなくて、分散型ということはお考えに、討論にはならなかったのでしょうか。
  39. 宇野收

    宇野参考人 まだそこまで踏み込んだ議論のところまでいっておりません。先ほど申し上げましたように、中間報告を出すまでは合意形成の問題に集中しておりました。  今御指摘の分都あるいは展都、陪都、何か事故があったときどこかへっくるという町、そういうような問題もこれからの議論の中に出てくると思いますけれども議論の流れとしては大体一括して出すという流れであると私は理解をしております。しかし、今の、機能別に少し分けたらどうだというような議論も恐らくこれから出てくるのだろうと思っておりますが、今のところ私ははっきりしたことはわかりません。議論としては出ると思います。
  40. 横光克彦

    ○横光委員 宇野会長は一括移転賛成ですか、それとも分都でもいい、どちらの方のお考えでしょうか。
  41. 宇野收

    宇野参考人 私個人の考え方をお聞きでございますか。——私は、少なくとも立法と行政というものは一括して一カ所におられないと国民が非常に不便するのではないかと危惧をいたしております。
  42. 横光克彦

    ○横光委員 今度、四全総で、第二国土軸、新国土軸というものが二十一世紀国土政策の柱に位置づけられたわけです。この新しい国土軸という構想がこれから動き始めるわけですが、この国土軸というのも、さっきと同じように、その必要性と財源という大きな課題がこれから立ちはだかるでしょうが、二十一世紀日本の展望を考えるならば、やはりこれも国会移転等と同じくらいの大プロジェクトであろうと私は思うのです。  そうした場合、どこかに移転した場合の新しい移転地と東京との密接さ、これは切れないわけですから、その意味では交通体系というものが物すごく重要な位置を占めてくるわけですね。そうした場合、この国土軸構想、例えば東京から伊勢湾、紀伊半島を通って四国、九州、あるいは東京から東北、北海道、あるいは北海道から山陰の日本海側の大構想軸がこれから出てくると思うのですが、そういった国土軸構想と国会移転等のあれはある程度加味してやらないと、これから新しく選ばれる移転地のことを考えますと、これを全然別々にやってしまうと大変むだなことになるのじゃないか。これをうまいぐあいに絡めていくというようなことはお考えでしょうか。そこのところをちょっとお聞かせください。
  43. 宇野收

    宇野参考人 当然、これは相絡んでおることだと思います。  国土計画というのは、今第四次の国土計画が見直されて、恐らく次が第五次になるのでありましょうが、今まで全総、新全総、三全総の中では、首都圏をどこに置くという考え方を入れた国土計画はなかったと思います。しかし、恐らく四全総の見直しからあるいは五全総に入る段階では、この移転問題との絡みの中で国土計画があって、したがって、それに絡んだ交通体系のあり方という問題も一つの大きな要素に入ってくるのではないか、また、入らなければ国土計画としては用をなさないのではないかというふうに思います。
  44. 横光克彦

    ○横光委員 今回、移転意義効果について中間報告が出されたわけです。これを土台にしてこれから進めていかれるわけですが、今後スタートするわけですが、その審議の予定、これがどのようになっていくのか、また、どのようなところにまず重点を置いて最初に取りかかっていくのか、そこのところをお話しいただければと思います。
  45. 宇野收

    宇野参考人 先ほどから申し上げておりますように、これから先はいよいよ具体的に、移転をする先の選定基準あるいはそのための手続のあり方というような、具体的な問題のスタンダードを審議するということになると思います。それがいつまでかかるかというのはちょっと私どもわかりませんが、この調査会の期限は再来年の三月でございますから、少なくともそれまでには今のような問題は当然やっておかなければならないと思いますけれども、それと別個に、具体的に候補地はこことこことになりますよという問題をこの調査会ではやらないで、別の機関でやるのが穏当ではないかと今私は考えております。
  46. 横光克彦

    ○横光委員 終わります。どうもありがとうございました。
  47. 保岡興治

    保岡委員長 久保哲司君。
  48. 久保哲司

    ○久保委員 公明党の久保哲司でございます。  宇野参考人には、本日は、大変お忙しい中を当委員会にお出ましいただき、中間報告概要を御説明いただいてありがとうございました。  それでは座って何点か御質問をさせていただきたいと思います。  私も、昨年秋に調査会委員に任命をしていただいて、以来、調査会に二回出席させていただき、先ほど会長からもお話がありました過日の十日に中間報告を承りました。本当によくできているなと言うと偉そうな言い方になりますけれども、よくまとめられたなという思いがしております。なかんずく、そんな中で一つ感じましたのは、この国会移転というのは、一つは要するに東京過密を解消するという東京問題なのかなという思いがしたのですが、この点については会長の御感想はいかがでございましょうか。
  49. 宇野收

    宇野参考人 今、久保先生御指摘のとおり、一つ東京問題だと思いますが、先ほども横光先生にも申し上げたのですが、東京問題だけということになると問題が極めて矮小化してしまっていくのではないか。  東京問題もあります。大変集中し過ぎた問題がございます。したがって、災害に対する対応もできない、生活のアメニティーも悪いという問題もありますが、それと別個に、この報告の中に何遍も書いておりますように、世の中が大きな変革期に入っておるので、次の日本の姿はどういうふうにあるべきかということを考えていきますと、この歴史的な転換点の中で、新しい時代というのは規制の緩和もしなければいかぬし、地方の分権もしなければいかぬし、それから中央政府ももっと小さなもので、しかも大事なことだけやってもらわなければいかぬというようなことが幾つか出てくるわけでありますが、それと絡めて首都圏移転することが実は新しい時代をつくる大きな、画期的な、一つ人心一新機会であるということも強く出てくると思います。そうでないと、ただ東京都が苦しいからどこかへ出ていってくれというだけでは、これは余りにも問題が一面的過ぎることではないかと私は思っております。
  50. 久保哲司

    ○久保委員 確かにおっしゃるとおりでございまして、物理的な面を見ると東京問題という見方ができます。  そんな中で、私も中間報告をずっとお聞きもし、その後また読ませていただいて、そこで、先ほど会長の御説明の中にありました、地方分権あるいは規制緩和と今回の首都機能移転は車の両輪のようなものなのだという位置づけをなさっておられる。むしろ私は、それ以上に地方分権あるいは規制緩和、さらに言うならば行政改革、これをせんがために首都機能移転は必須不可欠なのだという位置づけもこれまた必要なのかなと思ったりしております。  といいますのは、宇野会長御自身が先ほどおっしゃいましたように、地方分権についても今まさに必死の議論をやっていただいておる。そのトップ、リーダーをやっていただいておるわけでございますけれども、私自身も地方自治体におって、長らく地方自治をやってまいりました。さまざまな様子を見るたびに、三十年代以降いろいろな提言がこれでもかこれでもかとあったにもかかわらず、結果的には正直言って遅々として進んでいない。三歩進んで一歩下がるのだったらいいけれども、三歩進んで、時には五歩下がっているような感も否めない、そんな思いをしております。  そういう意味では、ここに来て、一つ東京問題というか首都機能移転という大きな起爆剤、日本の国のすべての面にわたる、今会長がおっしゃったようなさまざまな意味での弊害といいますか、それを大きく塗りかえる起爆剤にすべきなのかな、そんな思いをしておりますし、そういう面からこの報告書を読ませていただく限りは、もろ大賛成と言って拍手をしたいような思いで読ませていただきました。  その中で、先ほども横光委員の方からもお話がございましたけれども、過去の歴史を振り返りますと、首都機能移転、いわゆる遷都という場合にも展都であるとか分都であるとかあるいは改都であるとかいろいろな議論があったようでございますすれども、この中間報告取りまとめられるに当たってそこらあたりの議論があったのかなかったのか。確かに、国会移転に関する法律そのものがごそっと行くことを想定している法律のようなイメージもしますし、そういった意味では、今回の報告も基本的にはそちらの方向を向いているのかなと思っているのですが、その点はいかがでございましょうか。
  51. 宇野收

    宇野参考人 後の方のお話の、一括して出るのか、分かれて出るのかという問題につきましては、先ほど申し上げたように、分かれて出るという御意見委員の中に出るかもしれません。しかし、私個人の理解としては、これは一括して出るのが議論の筋道だと考えております。  特に、立法と行政とが別々のところに出るというのは、国民皆さんに大変不便をお与えするのではないか。司法は別でも構わないかなと思いますが、その辺のところは一括して出ることを前提に御議論が進んでいくものと思います。しかし、委員の中には恐らく分割という御意見もあるだろうと思いますから、この辺はこれからの議論だと思います。
  52. 久保哲司

    ○久保委員 あわせて、これも村田先生中心になって今進めていただいています新首都推進懇談会の方では、昨年秋に三年以内に候補地を決めるよう決議をし、当時の細川総理にも申し入れをされたということで一つの具体的な目標ができたかな、こんな思いをしておるのですが、以前にも申し上げたことがございますけれども、これだけの事業は、もちろん準備期間、助走期間が相当要ることもわかりますししますけれども、一方、それだけばかでかい事業であるがゆえに、ちょっとでも前へ進められるところは、具体化できるところは具体化していかないと、議論議論が乗っかってということで、結局、十年、十五年なんてすぐに過ぎてしまうのじゃないか、そんな思いもいたします。  そういった観点からは、もちろん調査会としての作業スケジュールもおありでございましょうが、現実の東京過密状況、中央省庁の狭隘さ等々からいって、宇野会長としては、例えば候補地の選定基準等については今からつくっていくのだというお話でございましたけれども、目標としては、いつごろを目標に新首都建設しなければいかぬ、そのためにはいつごろまでには候補地を選定しなければいかぬなという、そこらあたりのことについては何か一つの展望というか、それをお持ちでございましょうか。
  53. 宇野收

    宇野参考人 大変ラフな感じから見れば、二〇〇〇年まであと五年半でございます。ですから、この五年半の間に、今、久保先生がおっしゃったような問題がどの辺まで詰まるかなということが一つのめどではないか。たまたまこれと同じように進めていっております地方分権の問題も、新しい法律、地方分権法をつくってほしいというような議論も出ておりますが、その法律ができて具体的に進められるのは今世紀末、そして具体的にそれが動き出すのは来世紀早々の時代、大体そんな感じじゃないかと私は個人的に思っております。
  54. 久保哲司

    ○久保委員 先ほどちょっと触れさせていただきました地方分権なり行政改革なりというところのお話に関連してくるのですけれども、実は、宇野会長にも大変御苦労いただきました関西国際空港、この前、関西の方が開港百日前ですと言って日めくりを持ってきてくださいました。きょうの朝、自分の部屋で日めくりをめくりましたら、ちょうどきようであと七十五日ということでございまして、ある意味で、大阪、関西の起爆剤、このような期待を込めての、私自身も約十数年間これに携わってまいりましたので大きな期待を持っておるのですが、御承知のように関西空港本体だけで一兆五千億近いお金、しかも周辺のレールアクセスあるいは道路アクセス等を含めれば全部で四兆円とも五兆円とも言われるほどの投資がなされた事業でもあります。  ところが、それがどれだけのものになるのかという感じで考えてみますと、確かに東京に比しての関西、大阪の相対的な地位を引き上げはするのでしょうけれども、私自身がやはり東京へやってきて東京生活を始めてみますと、東京の持っておる何とも言えぬばかでかいパワーといいますか、力といいますか、集中度というか、これをどこかへひつぺがして持ってくるほどのものではないのかな、そんな思いをものすごく強くしております。  中央集権ということがさまざまその弊害が言われてきたわけですけれども日本の国をぽんと魚に例えてみますと、ちょうど東京中心とする関東平野が魚の頭みたいなもので、そこから東海道、山陽道が大きい骨みたいな感じでずっとあって、あとは小骨が並んでいる、こういう感じ。その東海道、山陽道のところに最初に新幹線ができて、しかも昔から多極分散、多極分散と言いながら、結局はそこを通って東京東京へ吸い上げられる、このような効果でしがなかった。  そういう意味では、首都機能移転というのは、まさにやろうとしたことができなくて逆の効果を生んできた、その何回かの繰り返しを根本的に解決する一つの手法でもあるのかな、こんな思いをしております。そういう意味では、このことを何としても実現をしなければならぬし、やっていこう、このような決意に私自身も今立たしていただいておるのです。  ただ、この問題は、先ほどお話がありますように、投資するお金の額からいっても、またやろうとしている事業内容からいっても膨大なものでありますし、そういう観点からいきますと、今この問題に直接携わっているというのは、一つ会長のところでやっていただいている調査会、もう一つ保岡委員長中心にやっていただいております当委員会、そしてまた村田先生にやっていただいている懇談会、この場でやっているわけですけれども、やはり最終的には生活重視という観点も含めて考えれば、国民を主人公にした形での議論を進めていかなければならぬ、そのように思っております。そういう意味では、調査会の方はこの前東京で第一回目の公聴会をなさって、今後地方でやっていくよ、このような御計画をお持ちのようにお伺いをしておるのです。  私もこっちにおって時々新聞を開くと、国会移転のことあるいは首都機能移転のことはちょっちょっと新聞の囲み記事等では見かけるのですが、大阪におる間に新聞をどう開いておってもなかなか目につきません。一方、確かにかつて関西国際空港が関西で新聞に載らぬ日がなくてもこっちではほとんど載らぬというのと同じような現象かもわかりませんが、そういう意味では、この国会移転というのは関西空港という規模に比べればまたさらにはるかに大きい全国的な問題でしょうし、これを国民に周知徹底し、そして世論を巻き起こしていくという観点から、どのような方法といいますか、どういった手法を講じていくことが国民に最もわかっていただき、本当の意味で御理解をいただけるのか。  もちろんさまざまな御批判、御意見も出てくるのかもわかりませんが、まずは国民に知らせるということが必要だろうと思いますし、そういった観点からそのことについての何かお考えといいますか、こうすべきであるというのがおありでございましたらお聞かせいただければと思います。
  55. 宇野收

    宇野参考人 これは私の方もお伺いしたいと思っておりますが、やはり何といっても、中間報告なんかまとめましてもこれは皆さんそうすぐ読んでいただくわけではありませんから、これをもっと抜粋したちょっと短いものをつくっておりますが、こんなものを見ていただく。あるいは調査会としては公聴会をもう少し頻繁にやる。  それから何としても、こういう中間報告が出たら内容をやはりメディアに乗せて、メディアの中で討論会をやったり、メディアの中で解説をしたりという形で国民皆さんに訴えるというのが一番効果的ではないかと思います。これはもう諸先生方もぜひひとつそういう点についてやっていただいて、村田先生のところでまとめていただいている、あるいは保岡先生にまとめていただいている、そういうメンバーの方に市民も加わってみんなで座談会をするというようなことを企画していくことが非常にいいのではないかと思います。
  56. 久保哲司

    ○久保委員 本報告書の冒頭に「首都機能移転という壮大な歌劇序曲を奏でることである。」小論の目的をこのように書いていただいているわけです。  確かに首都機能移転、これがはしりで、あと先ほどおっしゃったようなさまざまな作業があって全体ができ上がるということなのでしょうけれども、単に論文をつくり上げるための序曲になることなく、本当の意味での、仕事が前に進むという意味での序曲、そしてそれを、きょうはたまたま調査会会長、また当委員会の委員長、そして懇談会会長もおいででございますので、関係者皆さん、私自身も含めてですけれども、全員でもってその序曲を奏でる、その始まりの日にできれば、このような期待を込めて私の質問を終わります。ありがとうございました。
  57. 保岡興治

  58. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 玄葉光一郎と申します。新党さきがけに所属しておりますが、きょうはさきがけ・青雲・民主の風の一員として質問をさせていただきます。  きょうは本当にありがとうございます。大分重なっておりますから、どうしても申し上げたい点、あるいは重ねて強調して質問をさせていただきたい点、二、三絞って感想ともども申し上げたいなというふうに思います。  まず、この中間報告を読ませていただきました。最初にございますとおり、この中間報告の趣旨というかねらいそのものが序章にございますが、いかにして多数の人々理解を得て首都機能移転を推進することができるかについて、何らかの答えを出そうとするものであるというふうに理解をしております。そういう意味においては、私はこの報告書を読ませていただき、またきょうのお話をお伺いした中では、おおむねこの課題にこたえた内容になっているのじゃないかなというふうに共感を覚えております。  特に共感を覚えた点があります。それは、何度か先ほどから会長御自身おっしゃっておられますが、我々の国が今大転換点を迎えている、そしてその大きな流れはもうとめようもない流れなんだという時代認識があって、そしてその中で新しい首都づくりを、まさに新しい日本をつくるための最も大きな促進剤なんだというふうにとらえている点なんかは、最も共感を覚える点であります。なかんずく、新しい日本の姿として、政官財といいますか、政官民のこの関係に何回となく言及をしておられる点、ここに私は非常に共感を覚えました。いわば政官民の新しい関係を築くために、新しい首都づくりは重要だと何回となく強調されておられます。  私は、現在あるいはこれから十年の我々の国の最重要課題というのは、考えてみれば、行き着くところこの政官民の関係に帰着するのかなというふうによく感じますから、その正常な関係をつくるためにも、この新しい首都づくりというのを位置づけておられる、その点について非常に共感を覚えた次第であります。  また、もう一つ感想として申し上げるならば、東京一極集中という現象をこのレポートが、集中集中を呼ぶメカニズムとしてとらえておられる点、これは思わず読んでいてうなずいた点であります。東京には過密に伴ういろいろな問題がありますけれども、情報化とか国際化とか進展をしていく中で、その過密に伴うデメリットといいますか、それらを大きく上回るメリットというか魅力というか、そういうものがやはり東京には生まれているのかな、それが率直な私の印象であります。  私は県会議員を福島県でさせていただいて、地域づくりにこつこつ取り組みをしてきたのですが、どうも悪循環があるなと。東京には新しいビジネスが生まれて、そのビジネスチャンスを求めて企業が集中して、企業が集中するから就業機会を求めて人が集まって、そしてまた人が集まるから消費市場だ労働市場だといって企業が集まる。まさに悪循環があります。すべての道は東京に通じてもおります。地方からすると、まさに何か息子を教育すればするほど望む仕事を求めて東京に行く、そんな感じなんですね。それが今の現状だと思っています。ですから、まさにこの構造というかメカニズムというか、悪循環を断つという意味で、この遷都は非常に重要であるというふうに認識をしております。  以上の意味で、私はこのレポートに特に賛意を示すわけでありますが、一つどうしても強調しておきたい点がございます。私は、最近といいますかここ数年、背筋がぞっとすることが何度となくございます。先ほど安倍先生からもお話がありましたけれども、やはり地震とか災害、この問題はどうしても強調をしたいという気持ちでおります。  最近興味を持っていろいろと調べております。何か聞くところによれば、東京には最も危険な断層というかそういうのが幾つもあるそうであります。また、江東地区なんかがそうであるらしいのですが、地盤そのものも非常に脆弱であるということであります。ほとんどの専門家、何人かの方にお聞きしたのでありますが、必ず地震は来るんだ、東京直下型の地震が必ず来ますよ、場合によっては、マグニチュード八ぐらいの関東大震災並みの地震も来るんだ、その前の状況に今は似ているのじゃないかなどと言う人もいるぐらいであります。  また一方で、この間、東京新宿の新しい都庁に行ってまいりましたけれども、すばらしい防災システムがあります。しかし、あの防災システムをもってしても、現実に大災害があったときに対応できるのかといったら、やはり対応できないのだろう。なぜかといったら、それは避難場所がないからであります。つまり、首都機能移転することによって、そのすき間をつくってあげることによって、東京にもプラスになるということであります。このレポート、地震とか災害について触れられてはいるのですけれども、私は、幾ら強調してもし過ぎることはない、むしろもっと強調すべきじゃないかというぐらいの気持ちでおります。  あわせて、当然でありますが、移転先の選定基準の中においては、大地震が発生しにくい地域であること、あるいは活断層というか断層がないようなところであるとか、そういう意味で災害が少ないところ、そのことを第一の絶対的な必要条件にすべきじゃないかと思いますが、その点について改めて会長にお聞きしたいなというふうに思います。
  59. 宇野收

    宇野参考人 ありがとうございました。中間報告に対して全般的に評価をいただいたことについて、お礼を申し上げます。  今二っの点について御指摘がございましたが、後の方から申しますと、新首都選定基準の中で最も大事なことは、災害に対する対応の見通しがつけられることであるということでございました。私も全くそうだと思っておりますし、先ほどもそういうお答えを申し上げたと私は思っております。  ただ、これは大変専門的に調べないといけないのであって、例えば地震帯であれば、同一系統の地震帯でないということについての非常に確たる裏づけが要るであろうということもありますし、それから過去の歴史を調べてみて、どういう程度の災害がその地域であったかという問題もこれまた極めて学術的にやらぬといかぬと思いますが、そういうことが実は新首都選定基準の一番基本になっておるだろう。それに加えて、皆さんが行きやすいところとかなんとかこれは当然ありますが、そういうことだと思っております。  それから、最初におっしゃった東京の問題というのは、まさにその過密問題の裏返しに、災害が起こったときにどうなるのですかということに対する不安というのは大変なものだと私は思っておりますが、首都移転をしたらこの問題がすべて解決するということではない。ただ、首都移転をすることによって、それをきっかけにして災害対応手段がとりやすくなるということだと思いますので、東京都の災害対策問題というのは、首都移転とまた並行してこれはどんどん手を打たなければいけない問題ではないかというふうに理解をいたしております。  それから、今の御質問にはございませんでしたけれども集中集中を呼ぶというこのメカニズムがこれは避けられないと思うのです。  日本の場合は、明治維新以来そうでありますが、ひたすら欧米に追っつけという追っつけ型の努力をしてきた。戦争に負けてからは、またアメリカとの差を詰めろという追っつけ型のことをやってきた。これには実は中央集権、官僚体制が最も効果的であるということも事実であったし、またそれが効果を上げたというのも事実でございますが、今度首都圏移転するということ、そしてまた地方分権をするということは、集中集中を呼ぶという論理にこれはある種の歯どめをかけるわけでありますから、ある種の分散をやるのですね。そうしますと、言葉の上でいろいろうまいことを言いますけれども、やはり集中のメリットはどこかで失わなければいかぬという問題もこれは考える必要がある。  ただ、大きく見れば、分散することによって大きなメリットが歴史的に出てきますよ、あるいは長期的に出てきますよという踏まえをすれば、それはそれで割り切ったらいいのではないでしょうかというふうに私は思っております。
  60. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 全く同感であります。地震の問題については再度ぜひ、強調してもし過ぎることはないということを改めて申し上げたいなというふうに思います。  もう一点、ちょっとだけ実は気になることが読ませていただいてございました。ささいなことなのかもしれません。大分質問の内容がほかの方と重なっていますから、この点ささいなことかもしれませんが、申し上げます。  例えば三十二ページの下の方に、我が国の新首都というのは「日本歴史や伝統を体現する」、そういうような「風格ある未来文化都市でなければならない。」あるいは十七ページでありますが、「明治政府が、維新政府の立地場所選定するに当たり、当時既に世界有数の大都市として相当の集積を有していた東京をその候補地」とした、そのことは適当だったのだというような書かれ方というか文言があるわけですね。  これは深読みなのかもしれませんが、これは場合によっては、新しい首都の条件として、必要条件の一つとして、相当の集積とか歴史とか伝統が必要なんだというふうに読まれかねないこともないような文言になっております。私自身は、現実に新しい首都をつくる上で相当の集積が必要かというと、そうではないと思っております。  調査会で行かれたワシントンにしてもキャンベラにしても、まさに近くにスミソニアン博物館とか自由の女神とか、キャンベラだったら戦争記念館とか、あるいは公園都市づくりとかすることによって、まさに集積があったわけじゃない、全く新しいところにそういったものをつくって、アメリカとは何か、あるいはオーストラリアとは何かということをあらわした、体現したわけで、その点が、ちょっと私はこの文言が正直なところ気になったのでありますが、いわばそういった新しい首都づくりに当たって相当程度の集積というのは本当に必要なのかどうか。これは会長御自身の個人的な見解でも結構でありますが、その点について、私は基本的に余り何もないところにつくるべきじゃないかというふうに思っておりますけれども、いかがお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
  61. 宇野收

    宇野参考人 今の首都圏移転の問題が出ておる発端は、実は余りにも集積し過ぎておるという問題があって、同時に、新しい日本をつくる場合には、経済政治とを分けた機能にして持っていくべきだという二つぐらいの理由が大きく現にあってのことでございますから、政治経済を分けて、政治の部分だけで新しいものを持っていくときに、果たして集積というのは要るのでしょうかという問題に相なってくると思います。  そうしますと、これは全く何もない荒野につくるというのはいかがかと思いますけれども、何がしかの布石のあるところへ行くということは、またそこに妙な集積ができるのではないかということが起こりますから、私個人としてはそういうのは避ける方が賢明であろうと思います。第一、それ以上に、このごろはそんなものが来てもらったら困るという声の方が出るかもしれぬということだってあり得ると思います。
  62. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 もう時間がありませんが、先ほどのこの問題とも絡みますし、あるいは横光委員お話とも絡みますが、ぜひ新しい国土軸との絡みというものも大いに議論をした上で考える必要があるのではないかなというふうに思いますので、その点も考慮して、どうか今世紀末までに詰められるように、先ほどおっしゃいましたが、御支援といいますか、よろしくお願い申し上げたいと思いますし、私どもも頑張りたいと思います。きょうはありがとうございました。
  63. 保岡興治

    保岡委員長 中島武敏君。
  64. 中島武敏

    ○中島(武)委員 きょうは、宇野調査会会長大変御苦労さまでございます。  私は、この中間報告を読んで、そして先ほど宇野会長説明もいろいろと伺いまして、その上で率直な感想意見を述べながら質問をしたいと思うのです。  まずその一つは、この中間報告は、首都機能移転という国民生活あるいは国際的にも非常に大きな影響を及ぼすと思われる大問題を議論するに当たって、どういう立場をとっておられるか。まず最初に首都機能移転ありき、こういう立場をとっておられるように思います。移転意義効果を述べて、そして首都機能移転が現在の政治行政、さらに言えば経済についてのゆがみや問題点を全部解決できる万能薬のような、そういうふうに述べているように思えてならぬのです。  それで、私は、もともと国家国民にとって非常に大きな事業というのは、もちろん国民的な議論を大変必要とするものである。これは私どももしばしば指摘をしてきたところなんですけれども、今度の首都機能移転という問題は、私は功罪ともにあると思うのですね。メリットもあれは、デメリットもあるんじゃないか。そういう問題だと思いますので、やはりそういうメリットだけじゃなくてデメリット、これを含めてやはり国民的な討論に供する、判断の材料に供するということが非常に必要なんじゃないかと思うのですけれども、この点について、会長の見解を伺いたいと思うのです。
  65. 宇野收

    宇野参考人 今、中島先生からお話のございました、まず第一に、これは大問題なんです。したがって、この大問題を、初めからやるということで議論はしなかったわけです。これは大問題だから、こういうような首都機能移転に伴うようなことについては、まず国民皆さん理解合意がないとできませんよということでありましたが、私個人としては、国民皆さんの前に、委員皆さん自身が合意されますかどうかということが問題だったのです。そうしましたら、やはり多少御議論の違いが皆さんありました。ありましたが、やはりこれはやるべきだという御議論に相なったわけであります。したがって、委員間では大きな方向は決まったな、そうすると、あとは国民皆さんがいかにこれを理解してくれるかということについて、間違いないかということを詰めようじゃないですかというので、ほぼこれは一年間かかった結果の中間報告でございます。その点をひとつ御理解いただきたいと思います。  その次、メリット、デメリットの問題でありますが、これは確かに、これをやったらこんなメリットがありますよと言って目先の問題として出していきますと、先ほどお話が出ているような、首都の災害に対する対応を考えておかないとこれは大変ですよという問題、これはメリットが明らかにあると思います。しかしながら、デメリットということになれば、集中することによって効率が非常に上がってきたわけですね。日本行政、立法もそうだと思いますが、集中することによってのメリットが上がってきたわけでありますが、移転をすることによって集中がある程度分散いたしますから、分散によって効率が下がるという問題は、これは避けられないと私は思います。  それからもう一つは、やはり今、財政は何とかいけるとはいっても、膨大なお金を使うということについてそれだけの効果はあるのかねということについては、これは議論なきにしもあらずと思います。しかしながら、よく考えてみれば、先ほどから何遍も申し上げているように、歴史的な大きな転換点の中でこういうことをやることが、実は転換点の新しい舞台を迎える大きなファクターであるという理解をいたしましたからあえてこれをやったということでございます。
  66. 中島武敏

    ○中島(武)委員 今、宇野会長の御意見を伺ったのですけれども、これは法律でも決めていることなんですが、国は何をするかという点について言いますと、国が検討を行う上での検討指針をつくらなければいかぬということを言っているわけですね。ですから、私は率直に言えば、それに役立つものでなければならない、こういうふうに思うのですね。  それから、一年間のいろいろな検討の結果がそうなったんだ、こういうお話なんですけれども、国論は必ずしも統一してないと私は思うのですね。賛成の人もおりますけれども、反対の人もいる。かなり大きく分かれていると思うのですね。そういうときには、やはり一つの結論というよりは材料提供を行うというのがやり方としては正しいのじゃないかと私は思うのです。重ねての意見なんですけれども、どうでしょう。     〔委員長退席、西田委員長代理着席〕
  67. 宇野收

    宇野参考人 満場一致という言葉がございまして、議会でも問題になっていますが、これは満場一致という形にはならないことだと思います。しかし、大半の方が理解したなということであれば、もうそれは進められるという性質のものではないかと思います。  それから、ちょっと先ほどの話に戻りますけれども、私ども調査会の第一回のときに皆さん議論をいただいたところが、委員の中には、これはもう法律で決まっておるんだから、我々は決まったことをいかにやるかということを言うべきだという御議論の方もありました。いや、それはそうかもしれぬ、しかし私たちはやはり国民合意を得る前に、委員の中でもいろいろな御意見があるのですから、もう一遍皆さんの御意見をひとつ率直に出してくださいと言って、その辺のところは、法律で決まっているからそれをいかに守るかというためだけの調査会だということはしないでいきましようということで一年間をかけたわけでございますから、その点は御理解いただきたいと思います。     〔西田委員長代理退席、委員長着席〕
  68. 中島武敏

    ○中島(武)委員 ちょっと関連するのですけれども、私、これを全部よく読ましていただいたのです。それで、ちょっと結論的な私の感じを言いますと、この中間報告を発表することによって世論形成を図っていきたい、こういうお気持ちがあったのかなという気がするのです。  といいますのは、なぜかというと、これはどういうふうな書かれ方をしているかというと、結局、単に物理的な首都機能移転じゃないのですね、ここで論じていることというのは。それだけじゃなくて、第一章にはっきり書いてありますけれども、「転換期を迎えた日本とその二十一世紀における新しい方向」ということで、それで先ほど会長からもお話がありましたけれども、「価値観多様化と「個」の確立」に始まって、「東京一極集中国土利用のアンバランス」という五つのキーワードを設定しているのですよ。このキーワードを設定して、その情勢認識の上に立って国政全般改革する、これが大きな課題なんだという設定をして、そしてその改革の処方せんは何かと言えば、二つ出されているのです。一つ地方分権規制緩和、それからもう一つ首都機能移転なんですよ。そういう論理構成になっているのですね。  ですから、やはりこれも率直な意見なんだけれども、ちょっとイデオロギー的色彩が強過ぎるんじゃないかというのが私の感じなんですね。世論形成をねらいとされたのかどうか、ちょっと伺いたいのでございます。
  69. 宇野收

    宇野参考人 これをイデオロギーと言うかどうかは、ちょっと私も判断をいたしかねます。これにはイデオロギーがないと思います。  それから、世論形成をしようかどうかという問題は、私ども、まず皆さん理解をしていただくという意味でつくりましたことは事実でありますから、それをもって世論形成を上から押しつけてするという気持ちはありません。これに対して反対される方は反対されて結構なんです。ただ、こういうのがありますということの理解をしていただくためには何らかのものをつくらぬといかぬということでやりました。  それから同時に、ここらあたりで中間的に報告をまとめまして次のステップに入りませんと、選定基準をどうして選定するのだとかなんとかいう問題に入れないこともございまして、ここで一つの区切りをつけたということでございます。
  70. 中島武敏

    ○中島(武)委員 次の問題ですけれども首都機能移転が何で必要なのかということが言われた背景には、これは言うまでもないことですけれども東京一極集中があるわけです。だとするならば、これを是正して国土の均衡ある発展を図っていくためには、なぜ東京一極集中が起きたのかということを深く分析する必要があると思うのですね。その点でこの報告書はどうなのかなと私は感じるのです。深く分析しているのかなという気がするのですけれども宇野会長は何か御意見がおありかなと思いますので、伺いたいと思うのです。
  71. 宇野收

    宇野参考人 これは深く分析をしたつもりでおります。どういう点がなぜ集中したかということについて私の理解する限りでの分析というのは、やはり先ほどから申し上げておりますように、明治維新の後日本が考えたことは、いかにして欧米に追いついて近代国家をつくるかということであったと思うのです。したがって、近代国家をつくるためには何でもいいから脱亜入欧、要するにアジア的なものは捨てて欧米のものをどんどん取り入れてやっていこうというシステムとして、中央集権、官僚国家というものが一つの基本に、もうその時点からできたというふうに思います。一言で言えば、キャッチアップ型の政治体制というのが明治維新以来の日本の一貫した体制であったと思うのです。また、そのシステムは非常によく機能しまして、恐らく世界の中でこれくらいうまく機能したところがないから日本がこれだけ発展の基礎ができたと私は思います。  第二次大戦で負けました。負けた結果、アメリカは日本に自治をもっとやれと言いましたけれども、占領軍として見た場合に、やはり中央集権であって、自分が言ったら全部日本の中へ通じるような形がいいということ、アメリカ側もそれがわかっておったから、本当の意味の自治はやらずに適当に中央集権を許した。日本もまた、アメリカにキャッチアップするために中央集権がいいということがありましたので、それが日本の今の集権のシステムの根源であるというふうに理解をいたしておりますし、皆様の分析もそういうことであったと私は理解しております。ただ、歴史の転換点で、もうこのままこれは続けられませんよという認識が非常にあって、今こういう問題を議論しておるということだと思います。
  72. 中島武敏

    ○中島(武)委員 今、宇野さんの御意見を伺って、確かに中央集権的国家ができ上がり、官僚体制ができ上がったのですけれども、私は、同時にそのことが政財官の癒着を生み出した、こういう点があって、そしてそれが政治行政をゆがめてきたというこの問題を指摘しなければならぬのじゃないか。  実はこれは、最近の事件だけ言いましても、リクルート事件とか、それにすぐ引き続く証券スキャンダルとか佐川急便事件、あるいはごく最近を言えばゼネコン疑惑とか、もう続発をするわけです。今回の首都機能移転問題も金丸信元自民党副総裁が火つけ役とも言われているわけで、私はそういう点では、なぜ東京集中が起きたのかということを深くえぐる必要があるのじゃないか、これも私の意見ですけれども。  そして、そういうことをやった上で、これでもうよそへ持っていけば事が解決つくというのじゃなくて、私は、その問題を扱わなければなかなか問題解決には進まないのじゃないかという気がするのですよ。その点で会長は御意見を述べられたのですけれども、私もそういう点を——時間がもうないのですか。これから佳境に入りたいと思ったのですが、時間もないのじゃあれですね。ぜひそういうことが必要じゃないか。  時間もないようですから結論的なところへ話を持っていってしまいますけれども東京一極集中の問題の本質的な解決というのは一体どうするのかという問題だとか、それから地方分権の本当のあり方、やはり権限も財政も皆移譲するという本当の地方分権とか、あるいは政財官癒着の構造を打破するとか、まだあと二年間あるようなので、ぜひひとつ調査会の方でもそういう問題を深く分析して、その上で本報告をつくっていただきたいということをお願いして、何か御意見があれば伺って終わります。
  73. 宇野收

    宇野参考人 大変立派な御指摘をいただきましてありがとうございました。  まさにおっしゃるように中央集権になったことが利権を生んだ、利権を生んだことが政官財の癒着を今度生んでいるということでありますから、この問題は首都圏移転問題の前に整理しなければいかぬ問題だと思います。それは別の言葉で言えば、規制の緩和をもっと徹底してやらなければいかぬという問題だと思いますし、緩和した結果起こってくる、国の中でやらぬといかぬ問題だけは国がやりますが、それ以外のものは全部地方に任せてもらうという地方分権という問題が相絡んでおると思います。  したがって、首都圏移転という問題と地方分権規制緩和という問題はすべて相絡んだ、新しい時代をつくるための大変大きな仕組みといいますか、イベントであるというふうに理解をいたしております。
  74. 中島武敏

    ○中島(武)委員 終わります。
  75. 保岡興治

    保岡委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人一言お礼を申し上げます。  宇野参考人には、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十七分散会