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1994-05-26 第129回国会 衆議院 決算委員会第二分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会平成六年五月十九日(木曜日)委員会 において、設置することに決した。  五月二十五日  本分科員委員長指名で、次のとおり選任さ  れた。      小宮山重四郎君    安倍 基雄君       前田 武志君    山岡 賢次君       楢崎弥之助君    竹内  譲君  五月二十五日  前田武志君が委員長指名主査選任され  た。 ————————————————————— 平成六年五月二十六日(木曜日)     午前十時開議  出席分科員   主 査 前田 武志君       安倍 基雄君    山岡 賢次君       楢崎弥之助君    斉藤 鉄夫君       竹内  譲君    兼務 稲葉 大和君 兼務 岸田 文雄君    兼務 栗原 博久君 兼務 野田 聖子君    兼務 蓮実  進君 兼務 浜田 靖一君    兼務 林  幹雄君 兼務 小森 龍邦君    兼務 矢島 恒夫君 兼務 山原健二郎君  出席政府委員         防衛政務次官  東  順治君         防衛庁参事官  萩  次郎君         防衛庁長官官房         長       宝珠山 昇君         防衛庁教育訓練         局長      上野 治男君         防衛庁人事局長 三井 康有君         防衛庁経理局長 秋山 昌廣君         防衛施設庁長官 米山 市郎君         防衛施設庁施設         部長      江間 清二君         外務政務次官  平田 米男君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    高野幸二郎君         外務省経済協力         局長      平林  博君         文部政務次官  勝木 健司君         文部大臣官房長 吉田  茂君         文部省初等中等         教育局長    野崎  弘君         文部省教育助成         局長      井上 孝美君         文部省高等教育         局長      遠山 敦子君         文部省高等教育         局私学部長   泊  龍雄君         文部省学術国際         局長      佐藤 禎一君         文化庁次長   林田 英樹君         労働政務次官  河上 覃雄君         労働大臣官房長 征矢 紀臣君  分科員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    福井 武弘君         防衛庁防衛局防         衛政策課長   伊藤 康成君         外務大臣官房審         議官      天江喜七郎君         外務大臣官房文         化交流部文化第         二課長     小野 安昭君         厚生省保健医療         局企画課長   川邊  新君         会計検査院事務         総長官房審議官 山田 昭郎君         会計検査院事務         総長官房審議官 奥村 勇雄君         会計検査院事務         総局第二局長  森下 伸昭君         決算委員会調査         室長      山本  正君     ————————————— 分科員の異動 五月二十六日  辞任         補欠選任  小宮山重四郎君     坂井 隆憲君   竹内  譲君     斉藤 鉄夫君 同日  辞任         補欠選任   坂井 隆憲君     荒井 広幸君   斉藤 鉄夫君     竹内  譲君 同日  辞任         補欠選任   荒井 広幸君     橘 康太郎君 同日  辞任         補欠選任   橘 康太郎君    小宮山重四郎君 同日  第一分科員矢島恒夫君、山原健二郎君、第三分  科員稲葉大和君、栗原博久君、野田聖子君、蓮  実進君、小森龍邦君、第四分科員岸田文雄君、  浜田靖一君及び林幹雄君が本分科兼務となつ  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成二年度一般会計歳入歳出決算  平成二年度特別会計歳入歳出決算  平成二年度国税収納金整理資金受払計算書  平成二年度政府関係機関決算書  平成二年度国有財産増減及び現在額総計算書  平成二年度国有財産無償貸付状況計算書  平成三年度一般会計歳入歳出決算  平成三年度特別会計歳入歳出決算  平成三年度国税収納金整理資金受払計算書  平成三年度政府関係機関決算書  平成三年度国有財産増減及び現在額総計算書  平成三年度国有財産無償貸付状況計算書  〔総理府防衛庁防衛施設庁)、外務省、文  部省及び労働省所管〕      ————◇—————
  2. 前田武志

    前田主査 これより決算委員会第二分科会を開会いたします。  私が本分科会主査を務めることになりました。何とぞよろしくお願いを申し上げます。  本分科会は、総理府防衛庁防衛施設庁)、外務省文部省厚生省所管、環境衛生金融公庫及び労働省所管についての審査を行うことになっております。  なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に、決算概要説明会計検査院検査概要説明及び会計検査院指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。  平成二年度決算外二件及び平成三年度決算外二件中、本日は、労働省文部省総理府防衛庁防衛施設庁)及び外務省所管について審査を行います。  これより労働省所管について審査を行います。  まず、概要説明を聴取いたします。河上労働政務次官
  3. 河上覃雄

    河上政府委員 労働省所管平成二年度決算について、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額及び歳出予算額とも四千二百二十六億三千四百四十二万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして支出済み歳出額四千二百億八千六百七十二万円余、不用額二十五億四千七百七十万円余で決算を結了いたしま した。  次に、特別会計決算について申し上げます。  まず、労働保険特別会計について申し上げます。  この会計は、労災勘定雇用勘定及び徴収勘定に区分されております。  初めに、労災勘定について申し上げます。  歳入につきましては、歳入予算額二兆二千百三十三億四千百八十万円に対しまして、収納済み歳入額二兆一千七百三十四億七千七百七十三万円余でありまして、差し引き三百九十八億六千四百七万円余の減となっております。  次に、歳出につきましては、歳出予算現額一兆三千百九十五億一千八百八十六万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額一兆三千百八十六億九千七百二十二万円余、前年度繰越額八億二千百六十四万円であります。  この歳出予算現額に対しまして支出済み歳出額一兆八百七十九億四千五百七十二万円余、翌年度繰越額十五億九千四百十七万円余、不用額二千二百九十九億七千八百九十六万円余で決算を結了いたしました。  次に、雇用勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額二兆三千七百二億五千五百二十万円余に対しまして収納済み歳入額二兆三千七十億二千八百九十六万円余でありまして、差し引き六百三十二億二千六百二十四万円余の減となっております。  次に、歳出につきましては、歳出予算現額二兆四百二十億九千百二十万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額二兆四百二十億五千万円余、前年度繰越額四千百二十万円であります。  この歳出予算現額に対しまして支出済み歳出額一兆五千九十一億九百七十七万円余、翌年度繰越額四億六千四百五十七万円余、不用額五千三百二十五億一千六百八十五万円余で決算を結了いたしました。  次に、徴収勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額三兆六千七百五十一億三千九百二十万円余に対しまして収納済み歳入額三兆五千三百四十九億九千三百五十八万円余でありまして、差し引き一千四百一億四千五百六十二万円余の減となっております。  次に、歳出につきましては、歳出予算現額及び歳出予算額とも三兆六千七百五十一億三千九百二十万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして支出済み歳出額三兆五千二百十三億二千五百十一万円余、不用額一千五百三十八億一千四百九万円余で決算を結了いたしました。  最後に、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計石炭勘定のうち、労働省所管分歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額及び歳出予算額とも二百四億三千八百二十万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして支出済み歳出額百七十四億二千五百二十五万円余、不用額三十億一千二百九十四万円余で決算を結了いたしました。  次に、一般会計及び特別会計における主な事項につきましては、お手元に配付してある資料のとおりでありますが、時間の関係もございますので、御説明を省略させていただきたいと存じます。よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。  続きまして、平成三年度の決算について御報告いたします。  労働省所管平成三年度決算について、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額及び歳出予算額とも四千四百六十八億四千二百三十一万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして支出済み歳出額四千四百二十一億一千八百五十八万円余、不用額四十七億二千三百七十二万円余で決算を結了いたしました。  次に、特別会計決算について申し上げます。  まず、労働保険特別会計について申し上げます。  この会計は、労災勘定雇用勘定及び徴収勘定に区分されております。  初めに、労災勘定について申し上げます。  歳入につきましては、歳入予算額二兆三千九百七十三億九千六百三万円余に対しまして収納済み歳入額二兆二千四百六十九億二千五百十七万円余でありまして、差し引き一千五百四億七千八十六万円余の減となっております。  次に、歳出につきましては、歳出予算現額一兆二千八百八十七億六千百二十四万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額一兆二千八百七十一億六千七百六万円余、前年度繰越額十五億九千四百十七万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして支出済み歳出額一兆一千三百十四億五千五百二十万円余、翌年度繰越額三十三億一千三十五万円余、不用額一千五百三十九億九千五百六十八万円余で決算を結了いたしました。  次に、雇用勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額二兆五千六百十二億六千三百二十六万円余に対しまして収納済み歳入額二兆五千五百十四億七百九十八万円余でありまして、差し引き九十八億五千五百二十八万円余の減となっております。  次に、歳出につきましては、歳出予算現額二兆一千六百二十二億一千六百七十七万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額二兆一千六百十七億五千二百二十万円余、前年度繰越額四億六千四百五十七万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして支出済み歳出額一兆五千五百八十六億七千二百五十六万円余、翌年度繰越額一億六千四百六十一万円余、不用額六千三十三億七千九百六十万円余で決算を結了いたしました。  次に、徴収勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額四兆四百二十四億九千九百三十九万円余に対しまして収納済み歳入額三兆八千百十五億七千七百八十万円余でありまして、差し引き二千三百九億二千百五十八万円余の減となっております。  次に、歳出につきましては、歳出予算現額及び歳出予算額とも四兆四百二十四億九千九百三十九万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして支出済み歳出額三兆八千百八億二千百二十五万円余、不用額二千三百十六億七千八百十三万円余で決算を結了いたしました。  最後に、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計石炭勘定のうち、労働省所管分歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額及び歳出予算額とも百八十六億七千二百七十六万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして支出済み歳出額百五十五億九千百九十万円余、不用額三十億八千八十五万円余で決算を結了いたしました。  次に、一般会計及び特別会計における主な事項につきましては、お手元に配付してある資料のとおりでありますが、時間の関係もございますので、御説明を省略させていただきたいと存じます。よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。
  4. 前田武志

    前田主査 次に、会計検査院検査概要説明を聴取いたします。会計検査院森下第二局長
  5. 森下伸昭

    森下会計検査院説明員 平成二年度労働省決算につきまして、検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律政令もしくは予算に違反し、または不当と認めた事項五件及び意見を表示し、または処置を要求した事項一件であります。  まず、法律政令もしくは予算に違反し、または不当と認めた事項について御説明いたします。  検査報告番号二〇四号は、労働保険保険料徴収に当たり、事業主からの申告に対する調査確認が十分でなかったため、徴収額過不足があったものであります。  検査報告番号二〇五号は、雇用保険失業給付金支給決定に当たり、受給資格者からの申告等 に対する調査確認が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったものであります。  検査報告番号二〇六号は、雇用保険特定求職者雇用開発助成金支給決定に当たり、事業主からの申請に対する調査確認が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったものであります。  検査報告番号二〇七号は、雇用保険地域雇用開発助成金支給決定に当たり、事業主からの申請に対する調査確認が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったものであります。  検査報告番号二〇八号は、労働者災害補償保険療養給付に要する診療費支払いに当たり、医療機関からの請求に対する審査が十分でなかったため、支払いが適正に行われていなかったものであります。  次に、意見を表示し、または処置を要求した事項について御説明いたします。  これは、労働者災害補償保険費用徴収制度の適切な実施に関するものであります。  労働省では、労働者災害補償保険において、労災事故発生前に故意または重大な過失により加入手続をとっていなかった事業主については、保険給付に要する費用の全部または一部を徴収することとする費用徴収制度を設けております。しかし、労働省において、費用徴収制度の運用について実態を十分に把握していないなどのため、保険給付を行った労災事故のうち、事故発生後に加入手続がとられたもので同制度費用徴収が行われているものはほとんどない状況となっておりました。  したがって、労働省において、事業を開始したときから加入手続をとって保険料を納付している事業主との間の負担の公平を確保することなどを目的として設けられた費用徴収制度を、労働者災害補償保険法の趣旨に沿って適切に実施するよう、所要の措置を講ずるよう改善処置を要求したものであります。  続きまして、平成三年度労働省決算につきまして、検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律政令もしくは予算に違反し、または不当と認めた事項五件であります。  検査報告番号一九六号は、労働保険保険料徴収に当たり、事業主からの申告に対する調査確認が十分でなかったため、徴収額過不足があったものであります。  検査報告番号一九七号は、雇用保険失業給付金支給決定に当たり、受給資格者からの申告等に対する調査確認が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったものであります。  検査報告番号一九八号は、雇用保険特定求職者雇用開発助成金支給決定に当たり、事業主からの申請に対する調査確認が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったものであります。  検査報告番号一九九号は、雇用保険地域雇用開発助成金支給決定に当たり、事業主からの申請に対する調査確認が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったものであります。  検査報告番号二〇〇号は、労働者災害補償保険療養給付に要する診療費支払いに当たり、医療機関からの請求に対する審査が十分でなかったため、支払いが適正に行われていなかったものであります。  以上をもって概要説明を終わります。
  6. 前田武志

    前田主査 ただいまの会計検査院指摘に基づき講じた措置について、説明を聴取いたします。河上労働政務次官
  7. 河上覃雄

    河上政府委員 平成二年度の決算検査報告に掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾に存じております。  これらの指摘事項につきましては、鋭意改善に努め、今後このような御指摘を受けることのないよう一層努力をいたしたいと存じます。  続きまして、平成三年度の決算検査報告に掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾に存じております。  これらの指摘事項につきましては、鋭意改善に努め、今後このような御指摘を受けることのないよう一層努力をいたしたいと存じます。  以上でございます。
  8. 前田武志

    前田主査 この際、お諮りいたします。  お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明はこれを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 前田武志

    前田主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————    平成二年度労働省所管一般会計及び特別会計決算概要                労 働 省  労働省所管平成二年度決算について、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額及び歳出予算額とも四千二百二十六億三千四百四十二万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額四千二百億八千六百七十二万円余、不用額二十五億四千七百七十万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものについて申し上げますと、雇用保険国庫負担金職業転換対策事業費失業対策事業費等であります。  これらの経費は、雇用保険法に基づく求職者給付等に要する費用の一部負担、高年齢者労働能力活用事業実施に要した費用等緊急失業対策法に基づき実施した失業対策事業に要したもの等でありますが、このうち失業対策事業実績は、事業主体数三百三十四箇所、事業数八百四十六、失業者吸収人員一日平均九千人となっております。  なお、不用額の主なものは、職業転換対策事業費等であります。  つぎに、特別会計決算について申し上げます。  まず、労働保険特別会計について申し上げます。  この会計は、労災勘定雇用勘定及び徴収勘定に区分されております。  初めに労災勘定について申し上げます。  歳入につきましては、歳入予算額二兆二千百三十三億四千百八十万円に対しまして、収納済歳入額二兆一千七百三十四億七千七百七十三万円余でありまして、差引き三百九十八億六千四百七万円余の減となっております。  これは、保険料収入等予定より少なかったため、徴収勘定からの受入れが少なかったこと等によるものであります。  つぎに、歳出につきましては、歳出予算現額一兆三千百九十五億一千八百八十六万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額一兆三千百八十六億九千七百二十二万円余、前年度繰越額八億二千百六十四万円であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額一兆八百七十九億四千五百七十二万円余、翌年度繰越額十五億九千四百十七万円余、不用額二千二百九十九億七千八百九十六万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、労働者災害補償保険法に基づく保険給付支給に必要な経費及び労働福祉事業実施に必要な経費等であります。  次に労災勘定による事業実績概要について申し上げます。  保険給付新規受給者数は、七十九万八千人余、年金受給者数は、十九万六千人余、支給額は、七千五百三十一億二千八百十万円余となっております。  また、労働福祉事業に必要な経費に係る支出済歳出額は、一千九百三十一億三千七百三十一万円余となっております。  なお、不用額の主なものは、保険給付費等であります。  つぎに、雇用勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額二兆三千七百二億五千五百二十万円余に対しまして、収納済歳入額二兆三千七十億二千八百九十六万円余でありまして、差引き六百三十二億二千六百二十四万円余の減となっております。  これは、保険料収入等予定より少なかったため、徴収勘定からの受入れが少なかったこと等によるものであります。  つぎに、歳出につきましては、歳出予算現額二兆四百二十億九千百二十万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額二兆四百二十億五千万円余、前年度繰越額四千百二十万円であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額一兆五千九十一億九百七十七万円余、翌年度繰越額四億六千四百五十七万円余、不用額五千三百二十五億一千六百八十五万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、雇用保険法に基づく失業給付支給に必要な経費並びに雇用安定事業能力開発事業及び雇用福祉事業実施に必要な経費等であります。  次に雇用勘定による事業実績概要について申し上げます。  失業給付には、求職者給付就職促進給付がありますが、求職者給付の中心を占める一般求職者給付月平均受給者人員は、四十八万二千人余、支給額は、七千四十三億七千八十五万円余、また、就職促進給付受給者数は、二十五万七千人余、支給額は、七百七億六百七十九万円余となっております。  また、雇用安定事業等事業に必要な経費に係る支出済歳出額は、三千九百八十五億九千四百五十七万円余となっております。  なお、不用額の主なものは、予備費等であります。  つぎに、徴収勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額三兆六千七百五十一億三千九百二十万円余に対しまして、収納済歳入額三兆五千三百四十九億九千三百五十八万円余でありまして、差引き一千四百一億四千五百六十二万円余の減となっております。  これは、雇用保険に係る保険料収入予定より少なかったこと等によるものであります。  つぎに、歳出につきましては、歳出予算現額及び歳出予算額とも、三兆六千七百五十一億三千九百二十万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額三兆五千二百十三億二千五百十一万円余、不用額一千五百三十八億一千四百九万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、労災勘定及び雇用勘定への繰入れに必要な経費であります。  次に徴収勘定に係る業務の実績概要について申し上げます。  労災保険適用事業場数二百四十二万余、労災保険適用労働者数四千三百二十二万人余、雇用保険適用事業場数百七十五万余、一般雇用保険適用労働者数三千百十九万人余となっております。  なお、不用額の主なものは、労災勘定及び雇用勘定への繰入れに必要な経費であります。  最後に、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計石炭勘定のうち、労働省所管分歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額及び歳出予算額とも二百四億三千八百二十万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額百七十四億二千五百二十五万円余、不用額三十億一千二百九十四万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、炭鉱離職者緊急就労対策事業実施等に必要な経費にあてるための炭鉱離職者援護費等であります。  このうち炭鉱離職者緊急就労対策事業実績は、事業数八十七、年間就労人員延十九万八千人余となっております。  なお、不用額の主なものは、炭鉱離職者援護対策費であります。  以上が労働省所管に属する平成二年度一般会計及び特別会計決算概要であります。  以上をもちまして、労働省所管に属する一般会計及び特別会計決算説明を終わります。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。     …………………………………    平成二年度決算労働省についての検査の概要に関する主管局長説明                会計検査院  平成二年度労働省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項五件及び意見を表示し又は処置を要求した事項一件であります。  まず、法律政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項について御説明いたします。  検査報告番号二〇四号は、労働保険保険料徴収に当たり、徴収額過不足があったものであります。これは、事業主申告した保険料の算定の基礎となる賃金の支払総額が事実と相違していたことなどにより、徴収額過不足があったものであります。  検査報告番号二〇五号は、雇用保険失業給付金支給が適正でなかったものであります。これは、失業給付金の受給者が再就職したのちも基本手当を支給していたり、事実と相違した再就職年月日に基づき再就職手当を支給していたりして、給付の適正を欠いていたものであります。  検査報告番号二〇六号は、雇用保険特定求職者雇用開発助成金支給が適正でなかったものであります。この助成金は、高年齢者等の特定求職者の雇用機会の増大を図るため、特定求職者を公共職業安定所の紹介により雇用した事業主に対して、その者に支払った賃金の一部を助成するものでありますが、事業主が既に雇用している者を新たに雇用したこととしていて支給要件を欠いていたりなどしているのに助成金を支給しており、給付の適正を欠いていたものであります。  検査報告番号二〇七号は、雇用保険地域雇用開発助成金支給が適正でなかったものであります。この助成金は、雇用機会が不足している地域の雇用開発を促進するため、施設等の設置・整備を行って当該地域に居住する求職者等を雇用した事業主に対して支給するもので、雇い入れた労働者に支払った賃金の一部を助成する地域雇用奨励金、施設等の設置・整備に要した費用と雇い入れた労働者数に応じて助成する地域雇用特別奨励金などから成っておりますが、事業主が既に雇用している者を新たに雇用したこととしていて支給要件を欠いていたりなどしているのに助成金を支給しており、給付の適正を欠いていたものであります。  検査報告番号二〇八号は、労働者災害補償保険療養給付に要する診療費の支払が適正でなかったものであります。療養給付は、業務上の事由又は通勤により負傷又は発病した労働者に対して、医療機関において診察、薬剤の支給等を行うもので、都道府県労働基準局において医療機関からの診療費請求審査することになっておりますが、医療機関診療費を誤って過大に算定しているのに請求どおり支払っており、支払の適正を欠いていたものであります。  次に、意見を表示し又は処置を要求した事項について御説明いたします。  これは、労働者災害補償保険費用徴収制度の適切な実施に関するものであります。  労働省では、労働者災害補償保険について労災事故が発生してから加入手続がとられる事態の防止を図るとともに、事業主間の負担の公平を確保するなどのために、昭和六十二年四月から、故意又は重大な過失により加入手続をとっていなかった事業主については、保険給付に要する費用の全部又は一部を徴収することとする費用徴収制度を設けておりますが、北海道労働基準局ほか二十三労働基準局において、費用徴収制度労働者災害補償保険法の趣旨に沿って適切に実施されていない事態が見受けられました。  したがいまして、労働省において、速やかに各労働基準局における費用徴収制度の運用の実態等を調査した上で、故意又は重大な過失の要件、費用徴収の範囲等について通達等の見直しを行うなどして、本制度を法の趣旨に沿って適切かつ効果的に実施するよう改善処置を要求いたしたものであります。  なお、以上のほか、平成元年度決算検査報告に掲記いたしましたように、労働者災害補償保険診療費の算定について処置を要求いたしました.が、これに対する労働省処置状況についても掲記いたしました。  以上をもって概要説明を終わります。     —————————————    平成三年度労働省所管一般会計及び特別会計決算概要                 労 働 省  労働省所管平成三年度決算について、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額及び歳出予算額とも四千四百六十八億四千二百三十一万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額四千四百二十一億一千八百五十八万円余、不用額四十七億二千三百七十二万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものについて申し上げますと、雇用保険国庫負担金職業転換対策事業費失業対策事業費等であります。  これらの経費は、雇用保険法に基づく求職者給付等に要する費用の一部負担、高年齢者労働能力活用事業実施に要した費用等緊急失業対策法に基づき実施した失業対策事業に要したもの等でありますが、このうち失業対策事業実績は、事業主体数二百五十五箇所、事業数五百七十八、失業者吸収人員一日平均六千二百人となっております。  なお、不用額の主なものは、職業転換対策事業費等であります。  つぎに、特別会計決算について申し上げます。  まず、労働保険特別会計について申し上げます。  この会計は、労災勘定雇用勘定及び徴収勘定に区分されております。  初めに労災勘定について申し上げます。  歳入につきましては、歳入予算額二兆三千九百七十三億九千六百三万円余に対しまして、収納済歳入額二兆二千四百六十九億二千五百十七万円余でありまして、差引き一千五百四億七千八十六万円余の減となっております。  これは、保険料収入等予定より少なかったため、徴収勘定からの受入れが少なかったこと等によるものであります。  つぎに、歳出につきましては、歳出予算現額一兆二千八百八十七億六千百二十四万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額一兆二千八百七十一億六千七百六万円余、前年度繰越額十五億九千四百十七万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額一兆一千三百十四億五千五百二十万円余、翌年度繰越額三十三億一千三十五万円余、不用額一千五百三十九億九千五百六十八万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、労働者災害補償保険法に基づく保険給付支給に必要な経費及び労働福祉事業実施に必要な経費等であります。  次に労災勘定による事業実績概要について申し上げます。  保険給付新規受給者数は、七十六万四千人余、年金受給者数は、十九万九千人余、支給額は、七千七百六億八千百七十四万円余となっております。  また、労働福祉事業に必要な経費に係る支出済歳出額は、二千百十二億二千七十八万円余となっております。  なお、不用額の主なものは、保険給付費等であります。  つぎに、雇用勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額二兆五千六百十二億六千三百二十六万円余に対しまして、収納済歳入額二兆五千五百十四億七百九十八万円余でありまして、差引き九十八億五千五百二十八万円余の減となっております。  これは、保険料収入等予定より少なかったため、徴収勘定からの受入れが少なかったこと等によるものであります。  つぎに、歳出につきましては、歳出予算現額二兆一千六百二十二億一千六百七十七万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額二兆一千六百十七億五千二百二十万円余、前年度繰越額四億六千四百五十七万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額一兆五千五百八十六億七千二百五十六万円余、翌年度繰越額一億六千四百六十一万円余、不用額六千三十三億七千九百六十万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、雇用保険法に基づく失業給付支給に必要な経費並びに雇用安定事業能力開発事業及び雇用福祉事業実施に必要な経費等であります。  次に雇用勘定による事業実績概要について申し上げます。  失業給付には、求職者給付就職促進給付がありますが、求職者給付の中心を占める一般求職者給付月平均受給者人員は、四十九万四千人余、支給額は、七千六百八十九億四千八十五万円余、また、就職促進給付受給者数は、二十七万三千人余、支給額は、七百九十六億四千九百十八万円余となっております。  また、雇用安定事業等事業に必要な経費に係る支出済歳出額は、三千四百八十億五千百八万円余となっております。  なお、不用額の主なものは、予備費等であります。  つぎに、徴収勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額四兆四百二十四億九千九百三十九万円余に対しまして、収納済歳入額三兆八千百十五億七千七百八十万円余でありまして、差引き二千三百九億二千百五十八万円余の減となっております。  これは、労災保険に係る保険料収入予定より少なかったこと等によるものであります。  つぎに、歳出につきましては、歳出予算現額及び歳出予算額とも、四兆四百二十四億九千九百三十九万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額三兆八千百八億二千百二十五万円余、不用額二千三百十六億七千八百十三万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、労災勘定及び雇用勘定への繰入れに必要な経費であります。  次に徴収勘定に係る業務の実績概要について申し上げます。  労災保険適用事業場数二百四十九万余、労災保険適用労働者数四千四百四十六万人余、雇用保険適用事業場数百八十一万余、一般雇用保険適用労働者数三千二百三十三万人余となっております。  なお、不用額の主なものは、労災勘定及び雇用勘定への繰入れに必要な経費であります。  最後に、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計石炭勘定のうち、労働者所管分の歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額及び歳出予算額とも百八十六億七千二百七十六万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額百五十五億九千百九十万円余、不用額三十億八千八十五万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、炭鉱離職者緊急就労対策事業実施等に必要な経費にあてるための炭鉱離職者援護費等であります。  このうち炭鉱離職者緊急就労対策事業実績は、事業数七十九、年間就労人員延十五万八千人余となっております。  なお、不用額の主なものは、炭鉱離職者援護対策費であります。  以上が労働省所管に属する平成三年度一般会計 及び特別会計決算概要であります。  以上をもちまして、労働省所管に属する一般会計及び特別会計決算説明を終わります。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。     ━━━━━━━━━━━━━    平成三年度決算労働省についての検査の概要に関する主管局長説明                会計検査院  平成三年度労働省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項五件であります。  検査報告番号一九六号は、労働保険保険料徴収に当たり、徴収額過不足があったものであります。これは、事業主が提出した保険料の算定の基礎となる賃金の支払総額が事実と相違していたことなどにより、徴収額過不足があったものであります。  検査報告番号一九七号は、雇用保険失業給付金支給が適正でなかったものであります。これは、失業給付金の受給者が再就職しておりますのに失業給付金のうちの基本手当を支給していたり、事実と相違した再就職年月日を基に再就職手当を支給していたりして、給付の適正を欠いていたものであります。  検査報告番号一九八号は、雇用保険特定求職者雇用開発助成金支給が適正でなかったものであります。この助成金は、高年齢者等特定求職者の雇用機会の増大を図るため、特定求職者を公共職業安定所の紹介により雇用した事業主に対して、その者に支払った賃金の一部を助成するものでありますが、事業主が既に雇用している者を新たに雇用したこととしているなど、支給要件を欠いているなどしているのに助成金を支給しており、給付の適正を欠いていたものであります。  検査報告番号一九九号は、雇用保険地域雇用開発助成金支給が適正でなかったものであります。この助成金は、雇用機会が不足している地域の雇用開発を促進するため、施設等の設置・整備を行って当該地域に居住する求職者等を雇用した事業主に対して支給するもので、雇い入れた労働者に支払った賃金の一部を助成する地域雇用奨励金、施設等の設置・整備に要した費用と雇い入れた労働者数に応じて助成する地域雇用特別奨励金などから成っておりますが、事業主が既に雇用している者を新たに雇用したこととしているなど、支給要件を欠いているのに助成金を支給しており、給付の適正を欠いていたものであります。  検査報告番号二〇〇号は、労働者災害補償保険療養給付に要する診療費の支払が適正でなかったものであります。療養給付は、業務上の事由又は通勤により負傷又は発病した労働者に対して、医療機関において診察、薬剤の支給等を行うもので、都道府県労働基準局において医療機関からの診療費請求内容を審査することになっておりますが、医療機関診療費を誤って過大に算定して請求しているのに請求どおり支払っており、支払の適正を欠いていたものであります。  なお、以上のほか、平成元年度決算検査報告に掲記したしましたように、労働者災害補償保険診療費の算定について、及び平成二年度決算検査報告に掲記いたしましたように、労働者災害補償保険費用徴収制度の適切な実施について、それぞれ処置を要求いたしましたが、これらに対する労働省処置状況についても掲記いたしました。  以上をもって概要説明を終わります。     —————————————
  10. 前田武志

    前田主査 以上をもちまして労働省所管説明は終わりました。  これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、労働省所管については終了いたしました。     —————————————
  11. 前田武志

    前田主査 次に、文部省所管について審査を行います。  まず、概要説明を聴取いたします。勝木文部政務次官
  12. 勝木健司

    ○勝木政府委員 文部政務次官を拝命しました勝木でございます。よろしくお願いします。  平成二年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算概要を御説明申し上げます。  まず、文部省主管一般会計歳入につきましては、歳入予算額二十三億八千四百五十九万円余に対しまして収納済み歳入額は二十六億九千五百九十五万円余であり、差し引き三億一千百三十五万円余の増加となっております。  次に、文部省所管一般会計歳出につきましては、歳出予算額五兆五百四億六千二百五十六万円余、前年度からの繰越額八十八億三千六百八十六万円余、予備費使用額五百八十六億九千五百四十万円余を合わせた歳出予算現額五兆一千百七十九億九千四百八十四万円余に対しまして支出済み歳出額は五兆九百九十一億六千四十三万円余であり、その差額は百八十八億三千四百四十万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は百十九億九千六十二万円余で、不用額は六十八億四千三百七十八万円余であります。  次に、文部省所管国立学校特別会計決算について御説明申し上げます。  国立学校特別会計収納済み歳入額は二兆七百六十六億四千八百五十一万円余、支出済み歳出額は二兆二十三億五千六百九十一万円余であり、差し引き七百四十二億九千百六十万円余の剰余を生じました。  この剰余金は、国立学校特別会計法第十二条第一項の規定により翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  次に、歳入につきましては、歳入予算額二兆三百十一億一千九百九十二万円余に対しまして収納済み歳入額は二兆七百六十六億四千八百五十一万円余であり、差し引き四百五十五億二千八百五十九万円余の増加となっております。  次に、歳出につきましては、歳出予算額二兆三百十一億一千九百九十二万円余、前年度からの繰越額百十一億一千七百八十五万円余を合わせた歳出予算現額二兆四百二十二億三千七百七十八万円余に対しまして支出済み歳出額は二兆二十三億五千六百九十一万円余であり その差額は三百九十八億八千八十六万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は百六億二千四十二万円余で、不用額は二百九十二億六千四十三万円余であります。  以上、平成二年度の文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。  何とぞ、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。  続きまして、次に、平成三年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算概要を御説明申し上げます。  まず、文部省主管一般会計歳入につきましては、歳入予算額二十四億二千五百九十六万円余に対しまして収納済み歳入額は二十六億七千五百八十六万円余であり、差し引き二億四千九百八十九万円余の増加となっております。  次に、文部省所管一般会計歳出につきましては、歳出予算額五兆二千三百八十六億六千八百七十八万円余、前年度からの繰越額百十九億九千六十二万円余、予備費使用額三百六十四億四千六百万円余を合わせた歳出予算現額五兆二千八百七十一億五百四十一万円余に対しまして支出済み歳出額は五兆二千七百二十二億三千五百五十九万円余であり、その差額は百四十八億六千九百八十二万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は六十八億六千三百六十五万円余で、不用額は八十億六百十六万円余であります。  次に、文部省所管国立学校特別会計決算について御説明申し上げます。  国立学校特別会計収納済み歳入額は二兆一千六百二十二億七千百二十二万円余、支出済み歳出額は二兆八百七十六億六千八十一万円余であり、差し引き七百四十六億一千四十万円余の剰余を生じました。  この剰余金は、国立学校特別会計法第十二条第一項の規定により翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  次に、歳入につきましては、歳入予算額二兆一千二百十五億六千百五十三万円余に対しまして収納済み歳入額は二兆一千六百二十二億七千百二十二万円余であり、差し引き四百七億九百六十八万円余の増加となっております。  次に、歳出につきましては、歳出予算額二兆一千二百十五億六千百五十三万円余、前年度からの繰越額百六億二千四十二万円余を合わせた歳出予算現額二兆一千三百二十一億八千百九十六万円余に対しまして支出済み歳出額は二兆八百七十六億六千八十一万円余であり、その差額は四百四十五億二千百十五万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は百七億九百九十万円余で、不用額は三百三十八億一千百二十四万円余であります。  以上、平成三年度の文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。  何とぞ、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  13. 前田武志

    前田主査 次に、会計検査院検査概要説明を聴取いたします。会計検査院奥村審議官
  14. 奥村勇雄

    ○奥村会計検査院説明員 平成二年度文部省決算につきまして、検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律政令もしくは予算に違反し、または不当と認めた事項二十八件であります。  検査報告番号一〇号は、東京工業大学が施行した校舎等改修工事において、工事の契約、施工及び代金の支払いに係る会計処理が会計法令に違背し、適正を欠いているものであります。  検査報告番号一一号から二〇号までの十件は、義務教育費国庫負担金等の算定において、教職員の標準定数を過大に算定したり、諸手当について国家公務員の例に準じて定められたところによることなく算定したりしていたなどのため、負担金等が過大に交付されていたものであります。  検査報告番号二一号及び二二号の二件は、高等学校定時制及通信教育振興奨励費補助金の算定において、補助の対象とは認められない修学奨励費の貸与金額を含めていたため、補助金が過大に交付されていたものであります。  検査報告番号二三号から二八号までの六件は、公立小学校校舎増築事業等において、補助の対象とは認められないものを事業費に含めていたり、補助種目の適用を誤っていたりしていたものであります。  検査報告番号二九号から三七号までの九件は、北海道大学ほか八国立大学におきまして、授業料を免除する学生の選考に当たりまして、経済的困窮度等の免除要件に関する判定が適切でなかったため、授業料を免除できないのに免除していたものであります。  以上をもって概要説明を終わります。  次に、平成三年度文部省決算につきまして、検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律政令もしくは予算に違反し、または不当と認めた事項十八件、意見を表示し、または処置を要求した事項一件及び本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項一件であります。  まず、法律政令もしくは予算に違反し、または不当と認めた事項について御説明いたします。  検査報告番号七号から一八号までの十二件は、義務教育費国庫負担金等の算定において、教職員の標準定数を過大に算定したり、諸手当について国家公務員の例に準じて定められたところによることなく算定したりしていたなどのため、負担金等が過大に交付されていたものであります。  検査報告番号一九号から二三号までの五件は、公立小学校校舎増築事業等において、補助の対象とは認められないものを補助対象事業費に含めていたり、補助種目の適用を誤っていたりしていたものであります。  また、検査報告番号二四号は、静岡大学におきまして、授業料の免除に当たり、制度の理解が十分でなかったなどのため、半額しか免除できないのに全額免除したり、免除できないのに免除したりしていたものであります。  次に、意見を表示し、または処置を要求した事項について御説明いたします。  これは、公立の小学校及び中学校の校舎及び屋内運動場の整備事業において、学級数の減少が見込まれる場合の補助対象面積の算定に関するものであります。  文部省では、公立の小学校等の校舎等の整備事業を行う市町村等に対し、事業実施年度の五月一日の学級数に応ずる必要面積により算定した補助対象面積をもとに補助金を交付しております。このため、翌年度以降学級数が減少することが見込まれる場合にも、上記により算定した補助対象面積をもとに校舎等の整備が行われ、新しい校舎等の供用開始時には学級数の減少により必要面積が過大となり、ひいては補助対象面積も過大となっている事態が相当数見受けられました。したがって、文部省において、現行の補助制度を見直すなどして、補助金の効率的な使用を図るよう改善意見を表示したものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項について御説明いたします。  これは、医学部附属病院の看護に係る診療報酬の請求に関するものであります。  秋田、群馬、岡山各大学の医学部附属病院の産婦人科等におきまして、特三類看護料を請求できる看護を行っていたと認められるにもかかわらず、特三類看護の承認を得ていなかったため、これより低額な特二類看護料しか請求しておりませんでした。これについて指摘したところ、改善の  処置がとられたものであります。  以上をもって概要説明を終わります。
  15. 前田武志

    前田主査 ただいまの会計検査院指摘に基づき講じた措置について、説明を聴取いたします。勝木文部政務次官
  16. 勝木健司

    ○勝木政府委員 平成二年度予算の執行に当たりましては、予算の効率的な使用と経理事務の厳正な処理に努力したところでありますが、平成二年度決算検査報告において会計検査院から御指摘を受けましたことは、まことに遺憾に存じます。  指摘を受けました事項につきましては、適切な措置を講ずるとともに、今後、この種の事例の発生を未然に防止するため、より一層指導監督の徹底を図ったところであります。  次に、平成三年度予算の執行に当たりましては、予算の効率的な使用と経理事務の厳正な処理に努力したところでありますが、平成三年度決算検査報告におきまして会計検査院から御指摘を受けましたことは、まことに遺憾に存じます。  指摘を受けた事項につきましては、適切な措置を講ずるとともに、今後、この種の事例の発生を未然に防止するため、より一層指導監督の徹底を図ったところであります。
  17. 前田武志

    前田主査 この際、お諮りいたします。  お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明はこれを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 前田武志

    前田主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。    平成二年度文部省所管決算概要説明                 文 部 省  平成二年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算概要を御説明申し上げます。  まず、文部省主管一般会計歳入につきましては、歳入予算額二十三億八千四百五十九万円余に対しまして、収納済歳入額は二十六億九千五百九十五万円余であり、差引き三億一千百三十五万円余の増加となっております。  次に、文部省所管一般会計歳出につきましては、歳出予算額五兆五百四億六千二百五十六万円 余、前年度からの繰越額八十八億三千六百八十六万円余、予備費使用額五百八十六億九千五百四十万円余を合わせた歳出予算現額五兆一千百七十九億九千四百八十四万円余に対しまして、支出済歳出額は五兆九百九十一億六千四十三万円余であり、その差額は百八十八億三千四百四十万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は百十九億九千六十二万円余で、不用額は六十八億四千三百七十八万円余であります。  支出済歳出額のうち主な事項は、義務教育費国庫負担金、国立学校特別会計へ繰入、科学技術振興費、文教施設費、教育振興助成費及び育英事業費であります。  次に、これらの事項概要を御説明申し上げます。  第一に、義務教育費国庫負担金の支出済歳出額は二兆六千九百七十一億五千四百十八万円余であり、これは、公立の義務教育諸学校の教職員の給与費等の二分の一を国が負担するために要した経費であります。  第二に、国立学校特別会計へ繰入の支出済歳出額は一兆二千六百四十三億二千四十四万円余であり、これは、国立学校、大学附属病院及び研究所の管理運営等に必要な経費に充てるため、その財源の一部を一般会計から国立学校特別会計へ繰り入れるために要した経費であります。  第三に、科学技術振興費の支出済歳出額は六百八十四億五千三百九万円余であり、これは、科学研究費補助金、日本学術振興会補助金、文部本省所轄研究所及び文化庁研究所等に要した経費であります。  第四に、文教施設費の支出済歳出額は二千四百二十億九千四百三十万円余であり、これは、公立の小学校、中学校、特殊教育諸学校、高等学校及び幼稚園の校舎等の整備並びに公立の学校施設等の災害復旧に必要な経費の一部を国が負担又は補助するために要した経費であります。  第五に、教育振興助成費の支出済歳出額は六千四百九十二億二千四百三十七万円余であり、これは、生涯学習振興費、義務教育教科書費、養護学校教育費国庫負担金、学校教育振興費、私立学校助成費及び体育振興費に要した経費であります。  第六に、育英事業費の支出済歳出額は八百三十六億三千三百二十八万円余であり、これは、日本育英会に対する奨学資金の原資の貸付け、財政投融資資金の利子の補給及び事務費の一部補助のために要した経費であります。  次に、翌年度繰越額百十九億九千六十二万円余についてでありますが、その主なものは、文教施設費で、事業実施に不測の日数を要したため、年度内に支出を終わらなかったものであります。  次に、不用額六十八億四千三百七十八万円余についてでありますが、その主なものは、教育振興助成費で、学校教育振興費等を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。  次に、文部省所管国立学校特別会計決算について御説明申し上げます。  国立学校特別会計収納済歳入額は二兆七百六十六億四千八百五十一万円余、支出済歳出額は二兆二十三億五千六百九十一万円余であり、差引き七百四十二億九千百六十万円余の剰余を生じました。  この剰余金は、国立学校特別会計法第十二条第一項の規定により翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  次に、歳入につきましては、歳入予算額二兆三百十一億一千九百九十二万円余に対しまして、収納済歳入額は二兆七百六十六億四千八百五十一万円余であり、差引き四百五十五億二千八百五十九万円余の増加となっております。  次に、歳出につきましては、歳出予算額二兆三百十一億一千九百九十二万円余、前年度からの繰越額百十一億一千七百八十五万円余を合わせた歳出予算現額二兆四百二十二億三千七百七十八万円余に対しまして、支出済歳出額は二兆二十三億五千六百九十一万円余であり、その差額は三百九十八億八千八十六万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は百六億二千四十二万円余で、不用額は二百九十二億六千四十三万円余であります。  支出済歳出額のうち主な事項は、国立学校、大学附属病院、研究所、施設整備費及び船舶建造費であります。  次に、これらの事項概要を御説明申し上げます。  第一に、国立学校の支出済歳出額は一兆一千九百七十六億三千八百二十三万円余であり、これは、国立学校の管理運営、研究教育等に要した経費であります。  第二に、大学附属病院の支出済歳出額は四千六百三十億四千四百五万円余であり、これは、大学附属病院の管理運営、研究教育、診療等に要した経費であります。  第三に、研究所の支出済歳出額は一千四百四十三億七千六百十八万円余であり、これは、研究所の管理運営、学術研究等に要した経費であります。  第四に、施設整備費の支出済歳出額は一千四百四十四億二千六十一万円余であり、これは、国立学校、大学附属病院及び研究所の施設の整備に要した経費であります。  第五に、船舶建造費の支出済歳出額は一億六百七十一万円余であり、これは、国立学校における実習船の代替建造に要した経費であります。  次に、翌年度繰越額百六億二千四十二万円余についてでありますが、これは、施設整備費で、事業実施に不測の日数を要したため、年度内に支出を終わらなかったものであります。  次に、不用額二百九十二億六千四十三万円余についてでありますが、その主なものは、国立学校で、退職手当を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。  以上、平成二年度の文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。  何とぞ、よろしく御審議のほど、お願い申し上げます。     …………………………………    平成三年度決算文部省についての検査の概    要に関する主管局長説明                 会計検査院  平成二年度文部省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項二十八件であります。  検査報告番号一〇号は、大学校舎等改修工事の予算執行が会計法令に違背しているものであります。  東京工業大学において、改修工事の予算執行に当たり、その規模及び内容などからみて平成二年度内には完了しないことが明らかであったのに、二年度末直前の三年三月に請負契約を締結いたしました。そして、これらの工事が、実際は三年六月に完成していたにもかかわらず、会計法令に違背して、二年度内に完了したこととする事実と異なる検査調書を作成し、工事代金は三年四月に支払ったとしていたものであります。  また、検査報告番号一一号から二〇号までの十件は、義務教育費国庫負担金等の経理が不当と認められるもので、北海道ほか七県において、教職員の標準定数を過大に算定したり、諸手当について国家公務員の例に準じて定められたところによることなく算定したりなどしていたため、国庫負担金が過大に交付されていたものであります。  また、検査報告番号二一号及び二二号の二件は、高等学校定時制及通信教育振興奨励費補助金の経理が不当と認められるもので、滋賀、島根両県において、補助の対象とは認められない修学奨励費の貸与金額を補助対象経費に含めていたため、補助金が過大に交付されていたものであります。  また、検査報告番号二三号から二八号までの六件は、公立学校施設整備費負担金及び補助金の経理が不当と認められるもので、郡山市ほか五事業主体において、補助の対象とは認められないもの を補助対象事業費に含めていたり、補助種目の適用を誤っていたりしていたため、負担金等が過大に交付されていたものであります。  また、検査報告番号二九号から三七号までの九件は、国立大学の授業料の免除が不当と認められるものであります。  これは、北海道大学ほか八大学において、授業料を免除する学生の選考に当たって経済的困窮度及び学業優秀の判定が適切でなかったため、免除できないのに免除したり、半額しか免除できないのに全額免除したりしていたものであります。  なお、以上のほか、平成元年度決算検査報告に掲記いたしましたように、高等学校定時制課程に在学する生徒への教科書の給与事業及び夜食費の補助事業について意見を表示し、また、医学部付属病院特殊救急部が行った救命救急医療に係る診療報酬の請求及び国立大学医学部付属病院等の診療棟、病棟等の建築工事における鉄筋の加工組立費の積算についてそれぞれ処置を要求いたしましたが、これらに対する文部省及び大阪大学の処置状況についても掲記いたしました。  以上をもって概要説明を終わります。     —————————————    平成三年度文部省所管決算概要説明                文 部 省  平成三年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算概要を御説明申し上げます。  まず、文部省主管一般会計歳入につきましては、歳入予算額二十四億二千五百九十六万円余に対しまして、収納済歳入額は二十六億七千五百八十六万円余であり、差引き二億四千九百八十九万円余の増加となっております。  次に、文部省所管一般会計歳出につきましては、歳出予算額五兆二千三百八十六億六千八百七十八万円余、前年度からの繰越額百十九億九千六十二万円余、予備費使用額三百六十四億四千六百万円余を合わせた歳出予算現額五兆二千八百七十一億五百四十一万円余に対しまして、支出済歳出額は五兆二千七百二十二億三千五百五十九万円余であり、その差額は百四十八億六千九百八十二万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は六十八億六千三百六十五万円余で、不用額は八十億六百十六万円余であります。  支出済歳出額のうち主な事項は、義務教育費国庫負担金、国立学校特別会計へ繰入、科学技術振興費、文教施設費、教育振興助成費及び育英事業費であります。  次に、これらの事項概要を御説明申し上げます。  第一に、義務教育費国庫負担金の支出済歳出額は二兆八千十二億一千七百十四万円余であり、これは、公立の義務教育諸学校の教職員の給与費等の二分の一を国が負担するために要した経費であります。  第二に、国立学校特別会計へ繰入の支出済歳出額は一兆三千四十七億五千十六万円余であり、これは、国立学校、大学附属病院及び研究所の管理運営等に必要な経費に充てるため、その財源の一部を一般会計から国立学校特別会計へ繰り入れるために要した経費であります。  第三に、科学技術振興費の支出済歳出額は七百十七億一千五百六十二万円余であり、これは、科学研究費補助金、日本学術振興会補助金、文部本省所轄研究所及び文化庁研究所等に要した経費であります。  第四に、文教施設費の支出済歳出額は二千五百五十五億二千七百九万円余であり、これは、公立の小学校、中学校、特殊教育諸学校、高等学校及び幼稚園の校舎等の整備並びに公立の学校施設等の災害復旧に必要な経費の一部を国が負担又は補助するために要した経費であります。  第五に、教育振興助成費の支出済歳出額は六千四百六十九億九千百九十七万円余であり、これは、生涯学習振興費、義務教育教科書費、養護学校教育費国庫負担金、学校教育振興費、私立学校助成費及び体育振興費に要した経費であります。  第六に、育英事業費の支出済歳出額は八百六十二億七千二百七十六万円余であり、これは、日本育英会に対する奨学資金の原資の貸付け、財政投融資資金の利子の補給及び事務費の一部補助のために要した経費であります。  次に、翌年度繰越額六十八億六千三百六十五万円余についてでありますが、その主なものは、文教施設費で、事業実施に不測の日数を要したため、年度内に支出を終わらなかったものであります。  次に、不用額八十億六百十六万円余についてでありますが、その主なものは、教育振興助成費で、学校教育振興費等を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。  次に、文部省所管国立学校特別会計決算について御説明申し上げます。  国立学校特別会計収納済歳入額は二兆一千六百二十二億七千百二十二万円余、支出済歳出額は二兆八百七十六億六千八十一万円余であり、差引き七百四十六億一千四十万円余の剰余を生じました。  この剰余金は、国立学校特別会計法第十二条第一項の規定により翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  次に、歳入につきましては、歳入予算額二兆一千二百十五億六千百五十三万円余に対しまして、収納済歳入額は二兆一千六百二十二億七千百二十二万円余であり、差引き四百七億九百六十八万円余の増加となっております。  次に、歳出につきましては、歳出予算額二兆一千二百十五億六千百五十三万円余、前年度からの繰越額百六億二千四十二万円余を合わせた歳出予算現額二兆一千三百二十一億八千百九十六万円余に対しまして、支出済歳出額は二兆八百七十六億六千八十一万円余であり、その差額は四百四十五億二千百十五万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は百七億九百九十万円余で、不用額は三百三十八億一千百二十四万円余であります。  支出済歳出額のうち主な事項は、国立学校、大学附属病院、研究所、施設整備費及び船舶建造費であります。  次に、これらの事項概要を御説明申し上げます。  第一に、国立学校の支出済歳出額は一兆二千四百七十億七千二十五万円余であり、これは、国立学校の管理運営、研究教育等に要した経費であります。  第二に、大学附属病院の支出済歳出額は四千八百二十九億二千六百十九万円余であり、これは、大学附属病院の管理運営、研究教育、診療等に要した経費であります。  第三に、研究所の支出済歳出額は一千四百八十四億九千九十七万円余であり、これは、研究所の管理運営、学術研究等に要した経費であります。  第四に、施設整備費の支出済歳出額は一千五百三十二億三百五十万円余であり、これは、国立学校、大学附属病院及び研究所の施設の整備に要した経費であります。  第五に、船舶建造費の支出済歳出額は一億五千八百七十六万円余であり、これは、国立学校における実習船の代替建造に要した経費であります。  次に、翌年度繰越額百七億九百九十万円余についてでありますが、その主なものは、施設整備費で、事業実施に不測の日数を要したため、年度内に支出を終わらなかったものであります。  次に、不用額三百三十八億一千百二十四万円余についてでありますが、その主なものは、国立学校で、退職手当を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。  以上、平成三年度の文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。  何とぞ、よろしく御審議のほど、お願い申し上げます。     …………………………………    平成三年度決算文部省についての検査の概    要に関する主管局長説明                会計検査院  平成三年度文部省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項十八件、意見を表示し又は処置を要求した事項一件及び本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項一件であります。  まず、法律政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項について御説明いたします。  検査報告番号七号から一八号までの十二件は、義務教育費国庫負担金等の経理が不当と認められるもので、教職員の標準定数を過大に算定したり、退職手当について国家公務員の例に準じて定められたところによることなく算定したりしていたなどのため、国庫負担金が過大に交付されていたものであります。  また、検査報告番号一九号から二三号までの五件は、公立学校施設整備費負担金及び補助金の経理が不当と認められるもので、補助の対象とは認められないものを補助対象事業費に含めていたり、補助種目の適用を誤っていたりしていたため、負担金等が過大に交付されていたものであります。  また、検査報告番号二四号は、国立大学の授業料の免除が不当と認められるものであります。  これは、静岡大学において、授業料を免除する学生の選考に当たって、制度の理解が十分でなかったなどのため、半額しか免除できないのに全額免除したり、免除できないのに免除したりしていたものであります。  次に、意見を表示し又は処置を要求した事項について御説明いたします。  これは、公立の小学校及び中学校の校舎及び屋内運動場の整備事業において学級数の減少が見込まれる場合の補助対象面積の算定に関するものであります。  文部省では、公立の小学校等の校舎等の整備事業を行う市町村等に対し、補助金を交付しております。  この補助金に係る補助対象面積は、事業実施年度の翌年度以降学級数が減少することが見込まれる場合も含めて、事業実施年度の五月一日の学級数に応ずる必要面積により算定することになっております。したがって、事業実施年度の学級数に応ずる必要面積により算定した補助対象面積を基にそのまま事業実施したときは、新しい校舎等の供用開始時には既に、あるいは開始して間もないうちに、学級数が減少し、結果として補助対象面積が過大であったと認められる場合があります。  そこで、事業主体において事業実施年度の翌年度以降学級数が減少すると見込んでいる場合の校舎等の整備事業について調査したところ、見込んだとおり学級数が減少し、結果として補助対象面積が過大であったと認められる事態が相当数見受けられました。  このような事態は、必要以上の財政負担を招くもので、補助金の効率的かつ有効な使用の観点から適切とは認められないので、児童及び生徒の数が減少する状況に対応できるよう現行の補助制度の見直しを行うとともに、予定学級数の推計を的確に行うなどして補助金の効率的な使用を図るよう意見を表示したものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項について御説明いたします。  これは、医学部附属病院の看護に係る診療報酬の請求に関するものであります。  秋田、群馬、岡山各大学の医学部附属病院では、各県知事から特二類看護の承認を受け、入院患者に対する看護に係る診療報酬を社会保険診療報酬支払基金等に請求しておりました。しかし、検査したところ、各病院の産科婦人科等では、より高額な特三類看護料請求できる看護を行っていたと認められましたので、大学当局の見解をただしましたところ、各大学では、各県知事から特三類看護の承認を受け、適正な診療報酬を請求するための処置を講じたものであります。  なお、以上のほか、平成元年度決算検査報告に掲記いたしましたように、高等学校定時制課程に在学する生徒への教科書の給与事業及び夜食費の補助事業について、及び医学部附属病院特殊救急部が行った救命救急医療に係る診療報酬の請求について、それぞれ意見を表示し又は処置を要求いたしましたが、これらに対する文部省及び大阪大学の処置状況についても掲記いたしました。  以上をもって概要説明を終わります。     —————————————
  19. 前田武志

    前田主査 以上をもちまして文部省所管の説明は終わりました。     —————————————
  20. 前田武志

    前田主査 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林幹雄君。
  21. 林幹雄

    ○林(幹)分科員 自由民主党の林幹雄でございます。  私は、外国語教育、特に英会話、英語の教育について絞ってお尋ねをしていきたいと存じます。  我が国は、皆さんが認める世界で最も進んでいる先進国でありまして、特に経済ではだれもが認めるトップクラスの国でありますけれども、国際語イコール英語というふうに私は理解しているのですが、その英語になってくると、特に会話という形になってきますとおくれているのじゃないか。むしろ後進国かなというような気がするわけでありまして、その英語教育、つまり生きた英語とは会話じゃないかな、このように私は認識しておるわけでありますけれども、政務次官は英会話ができるのでしょうか。国際化がどんどん進んで、国際化の中で英会話は絶対必要だと私は思いますけれども、いかかでしょうか。
  22. 勝木健司

    ○勝木政府委員 私も林先生と同じように、英会話の必要性というのは十分、英語教育の重要性について深く認識をいたしておるところであります。  残念ながら英会話はできませんけれども、英語教育につきましては、やはり聞くこととか話すこと、あるいは読むこと、書くことについてバランスのとれた指導というのが重要じゃないかというふうに思っております。先生のおっしゃったように、国際化の時代にふさわしし英語のコミュニケーション能力というものを一層育成して、重視していくことは極めて大切であるというふうに私も認識をいたしております。
  23. 林幹雄

    ○林(幹)分科員 今文部省の教育指導では、英語は、中学で三年、高校で三年、大学へ行くと四年、短大もありますから二年もありますが、大学へ行くと約十年やるわけですね。十年英語をやって英語が話せない、わからない、これでは非常に情けないのじゃないか。私も御多分に漏れず十年間やった組ですけれども、やはりわからない、話せない、情けないの一人なんでございます。  私は、千葉県の県会議員時代ですけれども、一九八五年、昭和六十年なんですが、コンベンションホールの視察にシンガポールへ出向いたことがありました。その際、フリータイムのときに仲間とスーパーマーケットに買い物に出かけたわけです。カップヌードルを求めようとしてとっさに、赤いきつね、緑のたぬきプリーズ、こう言ったわけですね。そうしたら、そのジョークがその店長らしい人に通じまして、オーケーということでちゃんとそのコーナーに連れていってくれた。要するに通じたわけですね。  ですから私は、習うよりなれろというのですか、一々文法から行かれるとなかなか言葉というのは出ない。言葉は瞬間的に、反射的にというのですか、出てくるものだというふうに思っているわけですけれども、政務次官はお子様がいらっしゃいますよね。そのお子様が子供のころ、日本語を覚えるころ、どのように日本語を教えていたのか、その辺ちょっとお聞きしたいのですが、まさかこれが主語で、これが動詞で、これが形容詞でといろいろ教えながら日本語を教えたのかどうか。どちらかというと私の方は、よちよちとかお利口さんとか、よくわからないような話で自然の環境の中で覚えさせていったというふうに感じているわけですけれども、いかがでしょうか。
  24. 勝木健司

    ○勝木政府委員 私も、英会話、英語は、わからない、話せない、情けないという方であります。  子供の教育につきましても、私は幸い子宝に恵まれまして三人の子持ちでありますが、大学を卒業しまして民間の企業に入りまして、労働組合の仕事をしておりましたから、家庭のことはすべて女房というのですか伴侶に任せておりましたし、教育のことは、家庭教育のことはそういう形で任せておりましたし、学校教育については学校の先生を信頼してお任せするということであります。
  25. 林幹雄

    ○林(幹)分科員 英語が今のシステムでいくと中学校から始まるわけですね。つまり、ABCのスタートになるわけです。私の言いたいのは、その始まるときにいきなり文法やら何やらすると混乱してしまうのじゃないか。ですから、まず最初は、なれさせる、言葉を覚えさせる。つまり、単語なのかもしれませんけれども、そういったもの、ヒアリングとかスピーキングとか、そういう環境の中で会話になれさせることが非常に大事じゃないかな、このように認識するわけです。  外国語教育、特に新学習指導要領で重視しているのはコミュニケーションの力、こういうふうに位置づけているようであります。そういう意味では、一つの学級は二十人学級くらいにしたらどうかという声もあるようでありますが、英語の学習として現在の学級数四十人、これは多過ぎやしないかどうか。  同時に、今文部省はLLの普及にずっと力を入れてきているわけですけれども、現況をどういうふうに評価しているのか。コミュニケーション重視のための音声指導教材があるわけですけれども、購入の促進方は検討していらっしゃるのかどうか、この辺をお聞きしたいと思います。
  26. 野崎弘

    ○野崎政府委員 今先生御指摘のように、コミュニケーション能力の基礎を中学校の段階で培っていくというのは、大変大事だと思っております。  古い学習指導要領では、文型とか文法事項については学年ごとに指導すべき事項を示していたわけですが、それは先生のような御指摘がございまして、言語活動を一層充実させるということから学年による配当の枠を外す、それを整理し、整理統合を図ったということで、御指摘のような、聞くこと、話すことということを重視していきたい。  そういう中で、教育機器の有効活用と同時にネーティブスピーカーの協力というようなことも十分配慮しているわけでございまして、先生の御指摘もございますので、我々も一生懸命そういう方向で努力をしたいと思っております。
  27. 林幹雄

    ○林(幹)分科員 先ほど政務次官にお尋ねしたように、子供が小学校に入るまで、一歳か二歳ぐらいから日本語になれて覚えていく、そういう多くの積み重ねの時間が会話の中にあるわけですけれども、そういう意味では極めて時間が少ない。十年といっても中身は極めて少ないというふうに思うわけですけれども、それが、今英語を週四時間とする中学校がふえてきているようですけれども、その実態はどうなっておるのか。  そしてまた、私はそういう少ないという認識から、クラブ活動、課外授業というのですか、そういったものをどんどんふやしてやってみたらどうかというふうに思うのですけれども、その点についていかがでしょうか。
  28. 野崎弘

    ○野崎政府委員 平成五年度におきまして、公立中学校を対象に教育課程編成状況の調査をいたしました。それによりますと、英語の授業時数につきましては約九割の学校が週四時間としております。これは具体的に申しますと、第一学年ですと八八・一%、第二学年で八九・一%、第三学年で九〇・二%ということで、九割の学校がそう実施をしています。  それから、それ以外の時間でということでございますが、これは各学校それぞれいろいろなクラブ活動とか部活、そういうものを実施しておりますので、そういう中で各学校がいろいろな工夫をしていくことではないか、こう思っております。
  29. 林幹雄

    ○林(幹)分科員 今コミュニケーション重視、つまり私は会話、ヒアリング、スピーキング、こういうふうに理解をしているのですが、より積極的にこれを進めるという意味から、高校入試の中身を変えたらどうか。変えたらという言い方はないのですが、ヒアリングを今でも取り入れているようでありますけれども、これを思い切って重視するということを検討なされたらどうかというふうに思うのです。  現在は、百点満点中で例えますと二、三十点、二、三割をヒアリングに充てているのではないか。これを入学試験で七割から八割ヒアリングにするということにすれば、児童は一生懸命そっちの方向に、同じ受験勉強とはいえ勉強スタイルが変わってくるのではないか。つまり、覚える意味ですごくスピード化されるのではないか、そういう考え方があるのですけれども、いかがでしょうか。
  30. 野崎弘

    ○野崎政府委員 高校におきます入試につきましては、私どもも多様なものにしてほしい。生徒が今九六%にもわたって進学しておりますので、そういう中で各県でもいろいろな工夫をしております。推薦入試を受けたりいろいろしておりますが、今お話しのヒアリングにつきましても、相当数の県でそういうものを取り入れてきております。  ただ、これはあくまでも設置者は各県でございますし、各学校がいろいろな学校の目的を持った校風をつくってほしいと私も思っておりますので、文部省が強制的に何かを実施するというよりも、いろいろな取り組みを慫慂していくということが大事だと思っております。先生の御指摘の点につきましてもそういう中で十分配慮をさせていきたい、このように思っております。
  31. 林幹雄

    ○林(幹)分科員 今までは教わる側の話だったのですけれども、ちょっと変えまして、教える側、つまり教員の問題について取り上げてみたいと思うのでありますが、教員養成の段階でコミュニケーションの指導力をつけるという意味での教育はどうなっているのか、その辺ちょっとお聞きしたいのです。
  32. 野崎弘

    ○野崎政府委員 教員養成の段階といいましても、具体的な授業展開、ちょっと私どもも十分承知をしていないわけでございます。教員の会話力の実態というようなあたり、これもなかなか正確な資料を得るのが難しいのでございますけれども、文部省実施しています高等学校の英語教育指導者講座、この参加者の中でいわゆるTOEFLの試験の状況を調査したことがございます。  これを見ますと、平均で五百二十点というような点でございます。最高が六百七十七点という人もおりましたけれども、平均で五百二十点、こういうような状況が出ています。これはいわば受講者として選ばれた教員の中からの成績でございますので、全体を示している状況ではございませんけれども、そういうような実態で、私どもも必ずしも十分でないという指摘があるということは承知をしているところでございます。
  33. 林幹雄

    ○林(幹)分科員 今、何を基準に五百二十点なのか六百何点なのかよくわかりませんけれども、では切り込みを変えまして、教員の採用試験のときに会話力、どのくらい会話ができるかという試験の実施というのですか、そういったのがあるのかどうか、そういう状況はどうなっているのか、それが一点。  それから、現在中高の英語の先生が全国で約七万人いらっしゃるというように聞いているのですが、数字は違うかもしれません。そのうち何割程度会話ができるのか、その辺はどのくらい把握していらっしゃるのか、お聞きしたいのです。つまり、例えばクラブ活動で剣道を教える先生が剣道を全然わからなくて、理論ばかりで教えているというのと何か似ているような気がしまして、私は冒頭言ったように、英語こそ生きた会話だというふうに理解している一人なものですから、その辺ちょっとお聞きしたいなと思います。
  34. 野崎弘

    ○野崎政府委員 コミュニケーション能力の評価をどうするかという点について、ちょっと今各県の実態の資料を持ち合わせていないのでございますけれども、先生の御指摘にもありますように、私どももそういうものを評価をしていくということは大事だということで、各都道府県の教育委員会に、外国語担当教員の選考採用に当たってはそ ういうものを重視するようにお願いをしてきているところでございます。そしてまた、大学におきます外国語教員養成課程の在学生に対しましては、外国における学習機会拡大のための国費留学生制度というものの拡充を平成六年度の予算案にも計上させていただいておるところでございます。  なお、現実の英語教員の会話力がどうか、これはなかなか実態が把握しづらいところでございます。七万人という御指摘ございました。私どもも大体その程度の数字というふうに把握をしておりますけれども、先ほどのようなデータがある程度でございまして、全体ということは私どもも十分把握はしていないわけでございますが、御指摘のような、十分ではないのじゃないかという指摘があることは私どもも十分承知をしている、こういう状況でございます。
  35. 林幹雄

    ○林(幹)分科員 今教員の転換というのですか、会話、コミュニケーションの方への転換ということが求められているわけですけれども、そういう意味では、では一体教員に対する研修はどうなっておるのか。聞くところによりますと、中学校及び高校英語担当教員海外研修、こういったのを打ち出してきておる。中身は、二カ月研修が百九十名、六カ月研修が五十八名、十二カ月研修が三十名、合計、年間二百七十八名。  もう一点は国内研修のようでありますけれども、英語教育指導者講座というのが一カ月程度で六百名、こういうふうに聞いておるのです。国内講座のことなのか、別の各都道府県なのかは承知していないのですけれども、この国内研修で、例えば熊本では、研修教員を全部合宿させて、合宿中は日本語は使わせない、日本語禁止だ、英語で通すというような試みをしていらっしゃるとか、あるいは文部省では、筑波の国立教育会館分館に合宿というか、教師を缶詰にして、そこで集中的に中央研修をさせているというお話があるのですけれども、非常にいいんじゃないかと私は思うのです。  そこで、海外研修が二百七十八名。七万人のうちの二百七十八名、この数で寂しい限りじゃないのかなという気がするのですけれども、今もうぱっと光の時代だと言われているのに、七万人やるのにこれでは何年かかるのか、思いやられるのじゃないかと思うので、思い切って一年で最低でもこの十倍、三千人ぐらい対象にしたらどうか。また国内研修も六百人なんてことを言わずに、施設の問題もあるかもしれませんけれども、いろいろブロックに分散するなりして、これも十倍の六千名、できれば年間一万人くらいの研修体制を図られたらどうかと思いますけれども、いかがお考えでしょうか。
  36. 野崎弘

    ○野崎政府委員 今先生の御指摘のいただいた数字は平成六年度の今の予算案に計上されている数字でございまして、二百七十八名ということでございます。実はその中に長期の研修、十二カ月の研修でございますが、これが二十六名であったのを三十名にふやした。まあ先生から言わすとわずかな数字じゃないかと怒られるわけでございますけれども、そういう意味で、逐年少しずつではございますが、私どももそういう形でふやしてきております。  それからこの六百人、これも実は平成六年度からそういう形にしようということで、平成五年度は二百人だったわけでございます。それを三倍にした、こういうことで、この二百人の研修というのは、まさにその間は英語でしかだめだというようなことで、先生もお話があったような形で実施をしているわけで、六百人につきましてもそういう形で実施をしていきたい。  そのほかに、今熊本県のお話がございましたが、各県でもそれぞれ独自にやっているわけでございまして、今お話ししたのは文部省が補助を出してやっているものでございますので、そういうものをまた各県の段階でも広げていただきたい。  私どもの考え方は、海外研修で全部の先生をこの補助制度にのせて実施するというのではなしに、指導的な人にこういう形で実施をし、そしてそういう方がまた各県に戻って研修の中核になっていただきたい、こんな意味で実施をしておりますが、いずれにしても、こういう問題についてのさらなる努力が必要である、このように考えております。
  37. 林幹雄

    ○林(幹)分科員 一つ提案なんですけれども、教える側の教員にもやはり励みになるような制度をぜひぜひ考えてもらいたい。例えば、研修をし終わると特別なライセンスを得られるとか、あるいは逆に、希望によっては外国に日本語教師として短期間においても派遣をするとかいうような、何か英語をやって、英会話が習得できて励みになるというようなものをぜひぜひ考えていただければ、またまた違うんじゃないか。また、教わる方の中学生にしても、何か英会話に溶け込めるようなもの、つまり、冒頭申し上げましたように、かた苦しい文法ばかりじゃなくて、もっと遊べるような、そういったものもぜひぜひ考えていただきたいな、このように思います。  そこで、この会話は、中学になってから外国語という概念で今いるわけですけれども、むしろ、もう小学校の高学年からこういった英語を導入したらどうかというふうに私は思うのです。五月二十二日の読売の朝刊に、「「開かれたニッポン」めざす 初の児童英検 二万人が挑戦」、こう出ているのですね。  ちょっと読ませてもらいますと   幼稚園や小学生などを対象にした初めての  「児童英語技能検定(児童英検)」が二十一日、  全国一斉に行われ、八百五十七か所の会場で約  二万人の子供たちがヒアリングの問題に挑戦し  た。   主催した日本英語検定協会によると、昭和三  十八年にスタートした英検の受験者は、昨年度  までに延べ約三千七百万人を超えた。最近は、  幼児を対象にした英語塾ができたり、幼児期を  海外で過ごす子供が増えていることもあって、  五級(中学一年程度)を受けた小学生は、昨年  度は六十二年度の六倍にあたる約七万九千人に  のぼった。 こういうふうに出ているのですね。  これに対していろいろ慎重論があるように聞いているのです。例えば、小学校の段階では日本語を基礎としたコミュニケーション能力の育成をまず重視すべきだ、あるいは児童の学習負担という意味からも応分に考えるべきだというふうな指摘もされているのは聞いております。そしてまた問題点は、そういう意味での基本的なあり方、つまり英語教育ありきという方向性が定まっていない。  そして、先ほど指摘しました教師の問題。外国人教師の確保やら日本人教師の育成やら、その辺の問題もある。そして、入学試験のシステムなんかもあるというふうに思うのですが、逆に子供は新鮮な興味と率直な表現力を有し、音声面における柔軟な吸収力を持っているため、外国語の習得に極めて適しているというような指摘もあるわけです。  そこで、小学校の高学年から英語教育の導入を検討したらいいんじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  38. 野崎弘

    ○野崎政府委員 小学校段階からの外国語教育ということにつきましては、先生御指摘のように、いろいろ意見がございます。  平成五年、昨年の七月三十日に外国語教育の改善に関する調査研究協力者会議、ここからの報告もいただいたわけですが、その中でも今先生の方からお話ございました賛否両論の議論があったわけでございまして、やはり小学校教育のあり方、あるいは小中高等学校全体の教育内容のあり方、さらには教員養成、教材の問題など幅広い観点からの慎重な検討が必要である、こう思っております。  特に、これから学校週五日制ということの推進という中で、全体の授業時数が減っていくという中でこういう問題をどうとらえていくのかというような問題もあろうかと思うわけでございます。したがいまして、なかなか小学校の高学年からど うかということを結論を得るには時間を要するし、またいろいろな面での慎重な検討が必要なんじゃないか、こう思っております。
  39. 林幹雄

    ○林(幹)分科員 現在、文部省では、小学校における外国語学習に関する研究開発学校というのを全国十六校指定しているというふうに聞いておるわけであります。それはそれでいろいろな研究をする、調査をするというようなための指定校だというふうに聞いているのですけれども、同じく読売の朝刊に   私立淑徳小では、三−五年生の希望者八十六人が検定にチャレンジ。テープで流れる「DOG」などの単語や簡単な英文を聞いて、何枚かの絵から単語の意味や情景に合ったものを選んだ。   同小では、全学年とも週に二時間ずつ英語の授業があるだけに、初歩的な三級を受けた国沢玲圭ちゃん(四年)は「学校の勉強よりも簡単で、絵もきれいだった」。中本圭祐君(同)も「絵を選ぶのが面白かった」と満足そう。同小の三浦恵子教諭は、「次回からはヒアリングだけでなく、会話も取り入れて欲しい」と注文していた。 こういうふうに出ておるのです。  今小学校は全国で約二万五千校というふうに聞いているのですが、そのうちの十六校を指定して調査研究、私はもう調査研究の段階は既に済んだのじゃないか、もうこれからは実践じゃないのか。つまり、もうテスト校じゃなくて実践して推進していくというためのモデル校に変えるべきだ、そして、各都道府県こその趣旨を理解をしていただいて、希望をどんどん募って進めていくというふうに取り組むべきだと思うのですけれども、いかがお考えでしょうか。
  40. 野崎弘

    ○野崎政府委員 今研究指定校十六校という御指摘を受けたわけでございますけれども、これは実証的な検討資料を得たいということで研究開発学校に指定をいたしまして、小学校におきます外国語教育についての研究をお願いをしておる。具体的には、教科としての活動とかあるいはクラブ活動、国際理解教育の一環としての総合的な活動などいろいろな取り組みをしていただいておるわけでございまして、まさにそういう取り組みの中から検討の資料が得られればいいな、こう思っているわけでございます。  そういう意味では、まだ緒についたばかりというところでございますし、また具体の児童を研究の対象とするわけでございますので、やはり慎重な対応が大事だ、こう思っておりまして、現時点で一律に全都道府県にモデル校というどころまでは考えていないところでございます。
  41. 林幹雄

    ○林(幹)分科員 モデル校までいかないにしても、それではテレビ教育を考えたらどうかと思うのですね。テレビの中で短編のアニメだとか映画だとか音楽だとか、そういったものに触れさせる。楽しく遊ぶ、触れるという観点から、そういった意味でのテレビ教育はいかがでしょう。現況と今後の考え方についてお伺いしたいと思います。
  42. 野崎弘

    ○野崎政府委員 放送を利用した教育ということについては、各学校も取り組んでおります。私どもも、具体的にどういうものが実施されているかということまではちょっと承知しておりませんけれども、それぞれ各学校いろいろな工夫をしていると思います。先生のような御指摘の取り組みの方法もあろうかと思いますので、その辺はいろいろな機会に、多様な取り組みという意味で指導をしてまいりたいと思っております。
  43. 林幹雄

    ○林(幹)分科員 高校、大学と聞きたかったのですけれども、時間がないものですから、結論からと思います。  臨時教育審議会では、第二次答申では、現在の外国語教育、特に英語の教育は見直す必要がある、そして、第四次最終答申にも「外国語とくに英語の教育においては、広くコミュニケーションを図るための国際通用語習得の側面に重点を置く必要があり、中学校、高等学校、大学を通じた英語教育の在り方について、基本的に見直し、各学校段階における英語教育の目的の明確化、学習者の多様な能力・進路に適応した教育内容や方法の見直しを行う。」こういうふうにうたってあるのですが、文部省としては今後の教育方針はいかがでしょうか。
  44. 野崎弘

    ○野崎政府委員 今お話がございました臨時教育審議会の答申を受けまして、新しい学習指導要領の中でコミュニケーション能力を重視していくとか、そういういろいろな施策を打ち出しておるわけでございます。  例えばJETプログラムと申しまして、語学指導等を行う外国青年招致事業、これも昭和六十二年に始めたわけでございますけれども、そのときには八百十三名でございましたが、平成五年には三千五百人、来年度の予算案においてもこれを四千人にしたいというようなことで、そういうネーティブスピーカーを通しての話学教育につきましても十分力を入れていきたいと思っておりますし、国内外の研修事業の拡充につきましてもさらに重視していきたいと思っております。
  45. 林幹雄

    ○林(幹)分科員 終わります。
  46. 前田武志

    前田主査 これにて林幹雄君の質疑は終了いたしました。  次に、浜田靖一君。
  47. 浜田靖一

    浜田(靖)分科員 自由民主党の浜田靖一でございます。今回、この決算委員会分科会において質問をさせていただく機会を与えていただいて、本当にありがとうございます。感謝を申し上げる次第であります。  教育行政に対し、日ごろ私なりに疑問に思うことを率直にお聞きしてまいりたいと思います。  昨今の社会的問題、経済的問題、政治的問題を含めて、教育というものの重要性を実感しない日はないと思うわけでありまして、時代も大きな変革の時代を迎えて、日本が今後どのような方向に向かうか、そしてまたどのような国家となるのか、そういう意味では、我々がこれから次代を担う子供たちに対して残せるものはやはり教育しかないのじゃないか、私はそのように思うわけであります。  とすれば、二十一世紀へ向けて、いま一度現在の教育体制、また予算も含めてこれを見直しをし、改善をしていく必要があると私は思うわけであります。無論、文部大臣を中心に、文部省の方々が日々精いっぱいこれに取り組んでおられることは私自身も十分に承知をしておるわけでございますけれども、今回、内閣の改造に伴って政務次官もなられたばかりでございますが、せっかくの機会でありますので、文部省として、これからの教育行政全体を含めて所信なりお考えをお聞かせ願えればなと思うわけであります。ただ、その中に何か問題点があれば、事務局の方からまたお話をお聞かせ願えればと思うわけでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  48. 勝木健司

    ○勝木政府委員 私も、このたび文部政務次官を拝命して、浜田先生のおっしゃったとおり、責任の重大さを痛感いたしておるところであります。  教育というのはやはり国家百年の大計であろうと思いますので、次の世代を担うにふさわしい、そういったくましい、心豊かな青少年の育成を図ることが国民の強い願いであると私も承知をいたしております。もう二十一世紀も間近に迫っておりますので、二十一世紀の新しい時代を見据えっつ、国際化の時代、そしてまた国内的には高齢化あるいは少子化社会の中で、我が国が創造的で、また活力のある社会を築いていかなければいけない。そのためには、教育、学術、文化、スポーツの振興というものが極めて重要であろうというふうに私も考えております。  このために、私は、これまでの施策を基本的に継承しつつも、これから、時代に合ったような個性を重視した教育改革あるいは基礎研究の推進、文化発信社会の構築に向けた文化政策、スポーツの振興など、文教各般の施策の推進に向けて、国民の皆さん方の意見が行政に十分反映されますように、大臣をよく補佐してそういうパイプ役に徹するように、一生懸命に全力を尽くしてまいりたいと思っております。
  49. 浜田靖一

    浜田(靖)分科員 事務局の方は何かございませ んでしょうか、補足する点。
  50. 吉田茂

    ○吉田(茂)政府委員 ただいま政務次官のお話、決意表明があったわけでございますが、私どもも、今政務次官のお話の中にございました各事項につきまして、それぞれ当面の重要な課題である、こう認識しております。  特に、浜田先生の御指摘のございました予算の問題があるわけでございますが、大変厳しい予算状況の中で、今政務次官の申されたような事柄をどう実現していくか、事務当局としても知恵を絞ってこれから対応していかなければいかぬ。そのほかにもいろいろあるわけでございますが、次官の指摘をフォローアップし、実現するように努力をしてまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  51. 浜田靖一

    浜田(靖)分科員 確かに予算の問題になりますといろいろと問題もあろうかと思うわけでございますけれども、果たして現在の教育に対する予算というものが国の予算の中で十分な、要するに今の教育問題というものを解決するに当たって十分なのかということになると、私どもも非常に疑問を感じるわけであります。しかしながら、将来へ向けて、本当に政治も社会も経済もいろいろな意味で大きな転換期を迎えているわけでありますので、この辺でひとつ思い切って教育予算に対して国全体の予算を、必要なものは全部必要なもので運営されておるのかもしれませんけれども、その中においてもやはり教育というものを考えたときには、思い切った予算をつけるべきではないかと私は思うわけであります。  特に、文部省、また教師の皆さん方の御努力によりまして、教育の格差というのは確かになくなったかもしれませんが、しかしながら、教育施設や教育環境、そういうものの格差というものがまだちょっと取り払われていないのではないか。まあ私は千葉県の片田舎の方のあれでございますから、そういう施設面での不備というのを非常に感じておるわけでありますけれども、同じ日本の国に生まれ育つ子供たちが、都会に住んでいる子は施設の面では十分に足りていて、遠隔地の子供たちはなかなかいい施設で勉強ができない、これは何とか解消していかなければいけないのではないかなと私は思うわけでありますけれども、その点については文部省としてはどのようにお考えでございましょう。
  52. 井上孝美

    ○井上政府委員 お答え申し上げます。  公立学校施設につきましては、先生御案内のとおり、義務教育諸学校につきましては国庫負担制度がございますし、そのほか補助制度も充実をするような取り組みをしているところでございまして、設置者でございます市町村、都道府県等の努力によりまして児童生徒一人当たりの面積も改善されまして、鉄筋化率も現在では約九七%に達しているわけでございまして、逐年その整備が進んでいると私どもは把握しているわけでございます。  また、質的な面におきましても、コンピューター教室の整備など、教育内容、方法の多様化に対応した施設づくり、屋外教育環境の整備や木材使用の促進などによるゆとりと潤いを備えた特色ある施設づくり、あるいはクラブハウスの整備など、生涯学習活動を積極的に支援できる施設づくりなどを推進してきているところでございます。  特に、平成六年度予算案におきましては、学校建築にかかわる指標となります標準設計を約三十年ぶりに見直すことによりまして、建築単価を大幅に引き上げますとともに、学校図書室に係る補助基準面積の改定、特別教室等における空調施設整備を国庫補助の対象とするなどの制度改善を行うこととしております。  今後におきます公立学校施設の整備につきましては、量的な面では、昭和三十年代から四十年代にかけて大量に建築されました鉄筋コンクリートづくり校舎等の老朽化に伴う改造や改築のための必要な事業量の確保に努めますことはもとより、教育内容、方法の多様化に対応した施設づくり等、質的な面での整備のより一層の充実を図りまして、ゆとりと潤いのある学習環境づくりに努力してまいりたい、このように考えているところでございます。
  53. 浜田靖一

    浜田(靖)分科員 そういうふうに御努力なされているということは十分に承知しております。大まかな、大きい建物とかそういうものに対する施設の面ではそうかもしれませんけれども、細かな点でなかなか足りない部分もあるようでありますので、さらに一層その辺にも御配慮を願えればと私は思う次第でございます。  私自身も小学生を二人持つ親でございますので、この四年間、実はPTA活動に参加をさせていただきまして、国会議員になってからもPTAの会長をやっておりまして、小学校でPTAの会長をやっている国会議員というのは非常に少ないと僕は思うのですが、その中で大変いろいろといい勉強をさせていただいたわけであります。地域の方々との触れ合いもあり、また逆に言うと、学校の教育現場に実際に足を踏み入れて、教師の皆さん方との触れ合いもあったわけでありまして、先生方は先生方なりに一生懸命努力をしていらっしゃる。私自身にとっては大変勉強になったわけであります。  ただ、PTAの活動というものがこのごろはなかなか理解していただけない。なぜかというと、私自身感じたことでありますが、なかなか暗くて、学校の先生とつき合うのは嫌だとか、学校に対するイメージの暗さとかいろいろあったりしまして、そういう意味においては、中に入って始めてしまえば、子供のためだということで一生懸命親御さんもやってくれるわけでありますが、なかなか参加をしていただけない。  PTAの組織というのは全国組織でもあるわけでありますので、PTAの活動の意義ということになると、やっている本人もなかなかよくわからぬところがあるわけでありまして、そういう意味において、文部省としてはPTAというものに対してどのような御評価をされているのか、そんな専門的なことじゃなくて、ちょっとニュアンス的なものでも結構ですので、教えていただきたいと思います。
  54. 吉田茂

    ○吉田(茂)政府委員 今担当局長がちょっと参っておりませんが 文部省全体としたしましては、やはりこれからの生涯教育を発展させていかなければならない。そういう中で新しい時代に向けてのPTAの役割、これはさらに充実し、拡充していかなければならない、こういう基本的な考え方を持っておりまして、そういう時代に向けての新たな視点からの活性化ということをお願いをしておるわけでございます。しかし、これはあくまでも自主的な活動でございますので、そのあたり、我々としてもそういった面にも配意しながら大いにPRなりお願いなりしてまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  55. 浜田靖一

    浜田(靖)分科員 そういう御認識でひとつ学校の問題、教育問題というものを考えていただくには一番いい場だと私は思いますので、文部省の方にもまたひとつPTA活動というものに力を入れていただいて、見ていただきたいなと思う次第であります。  それで、今のお話の中でもありましたように、生涯教育の問題等いろいろたくさんあるわけでありますが、二十一世紀に向けての教育というものを考えたときに、いろいろ今研究部門での問題もあろうかと思うのですが、特に基礎研究というものに対する重要性というものが非常に高くなってきておるわけであります。  しかし、ちょっと私も耳に挟んだことでありますけれども、国立大学における研究施設の老朽化というか、そういうことを耳にしたことがあるのでありますが、その点に関しましては文部省としてはどのように把握されていらっしゃいますでしょうか、ちょっと教えていただきたいと思います。
  56. 吉田茂

    ○吉田(茂)政府委員 先生御指摘のように、国立大学の研究施設の老朽化ということは、我々としても非常に大きな課題であるというふうに考えております。特に大学の教育研究条件の改善充実ということは、将来にわたる我が国の発展あるいは 国際貢献の上で非常に重要な課題であるということでございます。  ちなみに、現在国立学校が保有しております建物面積、これは約二千万平米でございます。このうち、ちょっと細かくなって恐縮でございますが、通常改修等が必要とされる建築後二十年以上の建物、これが約九百八十万平米で、全体の約五〇%を占めております。この施設が相対的に御指摘のような老朽化が進んでおるということでございます。  これにはいろいろ原因があるわけでございますが、特に平成五年度におきましては、三次にわたる大型の補正をいただきまして重点的な整備を進めておりまして、当初予算を含めると平成五年度の事業費総額が四千三百二十四億円ということでございます。平成四年度の補正後の金額千五百五十八億円に比べまして平成五年度は四千三百二十四億円ということで、大幅な増額をいただいておるわけでございます。  こういったことで、厳しい財政状況の中ではございますが、教育研究条件の整備に今後計画的なものも含めて努力をしてまいりたい、こう考えております。
  57. 浜田靖一

    浜田(靖)分科員 そういう努力をされておることを本当によくわかるわけでありますが、そこで一つ御提言なんであります。  緊縮型の予算でありますので大変難しい点もあろうかとは思いますが、私学の助成というものも何割かその中には入っておろうかとは思いますが、それよりもう少し思い切って、ここで思い切ってという言葉を使わせていただきたいと思います。どうも私学助成、ちょっと減少傾向にあるようでありますけれども、私学助成を思い切ってこれに投入をして、そういう老朽化施設をとにかく新しくして、これから何十年後、何百年後にわたって重要な基礎研究というものを活性化させていくことが必要なのではないかと私自身は考えておるわけでありますが、文部省としてはその点に関してはいかがお考えでございましょうか。
  58. 泊龍雄

    ○泊政府委員 私立大学における基礎研究の充実を図れという御指摘と理解をいたします。  私立大学に対しては、大学は御案内のとおり、人材養成と基礎研究の推進というのが課せられた社会的な使命でございます。そういう中で、私立大学がいわゆる積極的な基礎研究の展開を図ってもらうというために、私どもいろいろな形でのサポートをしてまいらなければいけないというふうに思っております。  昨今の厳しい財政事情のもとでございますけれども、例えば研究という面に限って申し上げれば、幾つかの側面があろうと思います。日常的に研究を進めていくためのいわゆる経常的な経費の問題、それから実験等をやっていくための装置、設備の整備の問題、それからまた今御指摘もございましたように、建物、研究室等の整備の問題等々ございますが、研究費の面につきましては、私立大学等経常費補助金というのは、先生御案内の私学助成の大きな柱として、私どもも厳しい行財政事情のもとでその確保に必死に頑張っているということでございます。  そういった形で、配分等に当たりましても、いわばせっかくの限られた資金でございますので、特に基礎研究等に意欲的に取り組んで、かつすぐれた実績を上げておられるところにそのお金が効果的に配賦されるようにというようなことも考慮いたしまして、経常費補助金の中でも特に特別補助という形で着目をして、奨励を図っているといったような努力もいたしております。  それから、装置、設備等の問題につきましては、これは御案内のとおり、大型の装置でありますとかあるいはそれ以下の小型の研究設備等に対する助成を行っております。これらにつきましても逐年増額を図って、その充実に努めているところでございます。  それから、私立大学の施設面につきましては、先生御案内のとおり、日本私学振興財団というものが融資事業を行っております。長期間にわたって可能な限り低利でお手伝いをするというシステムをとっておるわけでございます。  こういった施策というものを今後とも、御指摘の大学としての大きな使命であります基礎研究の推進ということを考慮に置きまして、広い意味での私学助成の確保というものに努力してまいりたいというふうに思っております。
  59. 浜田靖一

    浜田(靖)分科員 ありがとうございます。本当にそういう意味では私自身も何か非常に危機感を持っておりますので、ぜひともその点に関しては文部省の方にも頑張っていただきたいと思いますし、私どもも御努力させていただきたいと思います。  そこで、もう一つ心配がございます。というのは、理工系離れという言葉がよくあるわけであります。受験戦争がもたらしたゆえのことなのかわかりませんけれども、っいっい文科系の方に走りがちな学生が非常に多いわけでありまして、私の子供もどちらかといえば余り理科系は得意じゃございませんので、そういう意味では大変心配しておるわけであります。  そういうときに、こうなったらもう制度を抜本的に変えるというのは大変難しいと思いますけれども、いっそのこと思い切って国立大学の理工系の学費の値下げ、これも考えてみたらいかがなものかな。そうすれば必然的に理工系を目指す学生もふえてくるのではないかな、そういう考えもあるわけでありますが、その点に関してはいかがお考えでございましょう。
  60. 遠山敦子

    ○遠山政府委員 先生の御指摘のとおりに、これからの日本を考えますと、やはり科学技術立国という立場から、理工系離れというのをなるべく抑止していかないといけないと考えております。  このような状況を踏まえまして、私どもとしましても、理工系離れをどのように阻止をするといいますか、むしろ理工系の教育研究というものを魅力的にするということのために、その方策を考えるということで、ことしの三月に、高等教育局長の私的諮問機関でございますけれども懇談会を発足させまして、大学の理工系分野の魅力向上に関する懇談会というのを設置しまして、今その方策を御検討いただいております。  今先生の御指摘の考えというのは 理工系の関係者にとって大変ありがたい御発言ではございますけれども、国立大学の授業料といいますのは、学部の種類あるいは教育経費の多少を問わないで同一に設定するということによりまして、学生がみずからの持っている能力と適性によって希望する学部に進学するということを可能にしているということでございます。  そのように考えてまいりますと、理工系学部についてだけ授業料を値下げするということにつきましては、やはり私立大学との均衡の関係あるいは国立学校特別会計予算の充実の必要性というようなこともございまして、総合的に考えますと、現時点においてはなかなか困難であろうかと考えているところでございます。
  61. 浜田靖一

    浜田(靖)分科員 ありがとうございます。そういう意味ではいろいろな法整備等が必要になってくるので、すぐにというわけにはいかぬかもしれませんが、しかし、なかなかその解決を得られないという部分においては、ついついそのようなことも考えてみる必要もあるのかなと私は思いまして、御質問させていただいたわけであります。  そして、ちょっとまた飛んだりしておりますけれども、生涯学習についてお話を伺いたいなと思います。  それは、この生涯学習というのは、法律的にいうと平成二年に整備法が一つ出されておりまして、あとは審議会の答申だけしかないわけであります。生涯学習を徹底推進するということであれば少々不十分なような気がするわけでありますけれども、その点に関しては文部省としてはいかがお考えでございましょうか。お教え願えますか。
  62. 吉田茂

    ○吉田(茂)政府委員 生涯学習につきましては、御指摘のように法律の制定がございまして、また審議会の設置があったわけでございますが、現在、生涯学習審議会におきまして今後の方策について御審議をいただいておるところでございます。そ の結論が一つの今後の方策のポイントになってこようかと思うわけでございますが、さらに並行いたしまして、生涯学習振興のための諸事業をやっておるわけでございます。  例えば、生涯学習振興のための基盤整備のために、地方自治体におきます生涯学習の推進体制の整備であるとかあるいは普及啓発活動を行っておる、あるいは学習需要の喚起等につきまして比較的小ぶりで地味な事業を地方自治体でやっておるというようなことでございまして、さらに放送大学の全国化、これを平成六年度予算の中でお願いをしているわけでございます。放送大学、現在エリアが大体関東地域になっておるわけでございますが、これを全国化するためのいろいろな諸準備を進めていくための諸経費平成六年度の予算にお願いしておるというようなことで、御指摘のように、今審議会で審議中という面もあるわけでございます。  そういう中でも、我々としてはそういう形でいろいろな事業を進めてまいっておるつもりでございますので、またいろいろ御指導賜りたいと思います。
  63. 浜田靖一

    浜田(靖)分科員 生涯学習については、いろいろな各地方自治体の現場の方からすれば、やはりこれは法整備等も含めた中できちっとした形でやられた方がやりやすい。  何か掛川市でしたか、決して教育委員会だけではなくて、企画部か総務部かわかりませんが、そこが中心になって、地域整備を初めいろいろと市の全体の町づくりを含めた中での生涯学習ということを取り入れられておるようでありまして、大変その点ではまた新しい視点かなと私は思うわけであります。なかなか文部省だけではカバーできないものを、国においてもどこか総合的にまた窓口になって、これを進めていくところも必要なのではないかなと思うわけでありますので、その点に関してもまた文部省の方でいろいろとお考えを出していただければなと私は思います。これは要望とさせておいていただきます。  時間がそろそろなくなってまいりましたので、もう一点、二点ちょっとお伺いしたいのです。  きょう新聞を見ておりまして、その中で子どもの権利条約、二十二日に発効をされたわけでありますけれども、この点について文部省の対応に対して投書が出ておりまして、その中で「この条約では子どもの意見表明権が明記されている。自らの意見を積極的に表明し合うことによって、主体性や批判力を養うことができ、自我の確立にもつながると思われる。ところが通知の中では」この通知というのは文部省からの通知ということなんでしょうが、「「意見を必ず反映させることを求めるものではない」としている。」というような投書もあるわけであります。こういう反響もあるわけであります。  文部省としては、この子どもの権利条約に対してどのように対応されるのか、ちょっとお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  64. 野崎弘

    ○野崎政府委員 児童の権利に関する条約が二十二日に発効をいたしました。そういうことで二十日付で文部事務次官通知を出しました。  これは、実は国会でもいろいろな議論がございました。国内法制を変えなければならない点もあるのじゃないかとか、いろいろな指摘がございましたが、既に日本国憲法あるいは人権規約等で保障されていることが書かれているということで、そういう仕組みの変更は必要ないんだとか、そういう留意点を含めつつ、しかしやはり子供の人権を尊重していく、そういう教育を充実していくことが大事だという視点で通知を出させていただいております。  学校におきましては、これをどう生かしていくかという点でいろいろ考えなければならぬ点がございますので、そういう留意点も含めまして通知を出させていただいた、こういうことでございます。
  65. 浜田靖一

    浜田(靖)分科員 とかくそういう通知をするとこういう御意見もいろいろと出てくるわけでありまして、なかなか御理解を願うのが難しいわけでありますので、通知にしてもできるだけわかりやすい形でやっていただきたい。また、現場でも対応できるようなものを今後も御指導願えればと思う次第であります。  もう時間がなくなりました。本当は子供の少子化傾向、そしてそれに引き続いて教員が余るという状況の中でのチームティーチングのこととか、いろいろお聞きしたかったのでありますが、またそれは次回にさせていただいて、私の質問を終わらせていただきますけれども、とにかく二十一世紀を迎える非常に不安定な時期でありますので、文部省の役割というものを十分に御認識をされておると思いますが、思い切ったことをするときには思い切ったことを私どもにも言っていただきたいと思いますし、そういう意味での活発な議論を心から期待をする次第であります。  どうか文部大臣、勝木政務次官以下文部省各位の御健闘を心からお願いを申し上げまして、私からの質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  66. 前田武志

    前田主査 これにて浜田靖一君の質疑は終了いたしました。  次に、小森龍邦君。
  67. 小森龍邦

    小森分科員 時間も余りございませんから、質問も簡単にいたしますが、答弁もなるべく簡潔にお願いを申し上げたいと思います。  まず第一点、お尋ねをいたしたいと思います点は、全国的に大きな教育運動となっておりまして、毎年行われます全国同和教育研究大会には、何万の教育関係者が集まって議論をされております。恐らく一つのテーマを持って行われる教育のための集会は、これは全国で一番大きな集会ではないかと思っております。  そこで、この際お尋ねをしたいと思いますが、同和教育というものに対して文部省はいかなる方針を持っておられるか。  もっと焦点を絞り込みますと、どういうことをお答え願いたいかと申しますと、この教育をもって部落差別を解決しよう、こういうことなのでありますが、部落差別そのものを小学校においても中学校においても、あるいは高校においてもでございますが、特に小学校の高学年から中学にかけてが重要であろうと思いますが、部落差別をどのように教えておられるか。そして、この問題がなお我が国社会の未解決な問題として存在しておるその原因といいますか、そういうふうなものを文部省はどう考えておられるか、お答えをいただきたいと思います。政務次官からお答えいただきたいと思います。
  68. 勝木健司

    ○勝木政府委員 同和問題は、憲法に保障されました基本的人権にかかわる重要な問題であるというふうに私も認識をいたしております。また、この問題の解決のために果たす教育の役割というのも極めて大きいと思います。  文部省におきましては、この同和教育の重要性にかんがみまして、従来から学校教育及び社会教育を通じて広く国民の基本的人権尊重の精神を高めるとともに、対象地域の教育文化水準の向上に努めることを基本として、その推進に努力をいたしておるところでございます。  また、平成三年十二月に取りまとめられました地域改善対策協議会の意見具申におきまして、「学校教育、社会教育のより効果的な推進が必要である。」というふうに指摘を受けておりますので、文部省といたしましても、この意見具申を踏まえて、同和問題が一日も早く解決されるように、今後とも同和教育の充実に努めてまいる所存であります。  具体的なことについては政府委員の方から答弁をさせていただきたいと思います。
  69. 野崎弘

    ○野崎政府委員 学校でどのように教えているかというお尋ねがございました。  社会科、この中では日本国憲法に関する学習の中で、基本的人権尊重の重要性などについて指導をしております。また、歴史学習の中で、江戸時代における身分制の確立や、明治維新における諸改革の一つとして四民平等について指導することとしている、あるいは道徳では、差別せずに公正、 公平に振る舞うことなどを指導しているところでございまして、現在の社会科の教科書におきましてもいろいろな形で取り上げられている、こういう状況でございます。
  70. 小森龍邦

    小森分科員 私の質問いたしましたことはもう一つありまして、今日なお未解決であることの原因といいますか根拠ですね、それはどういうふうに文部省としてはつかんでおられるか。
  71. 野崎弘

    ○野崎政府委員 これはやはりいろいろな教育の面でも十分意識の啓発、そういうことにも努めてまいらなければならない課題だ、こう思っておりまして、政務次官の御答弁の中にもございましたけれども、同和教育の解決に果たす教育の重要性ということにかんがみまして、基本的人権尊重の精神を高めるとともに、対象地域におきます教育上の格差の解消と教育文化水準の向上を図る、こういうことを基本に同和教育の充実に努めていかなければならない、このように考えております。
  72. 小森龍邦

    小森分科員 どういうふうに教えておるかということについて基本的人権というようなことを言うのは、これはもうごくたやすいことで、だれでも言うのですね。それは無理に文部省の専門家でなくたって、隣のおじさんとの会話でも出てくるのです。  問題は、部落差別というものの現実をどうつかんで、そしてたまたま差別を受ける立場に生まれ合わせた子供にも人権の感覚から納得できたまたま部落差別は受けないいわゆる一般国民という立場にある青少年も、なるほどそうかということで、腹の底から人権感覚というか、正義感がわいてくるような教育は何か、そこのところを私は尋ねておるので、その辺は具体的にはやってないのですか。
  73. 野崎弘

    ○野崎政府委員 社会科の公民の分野、中学校の公民的分野、あるいは高等学校の現代社会におきましては、日本国憲法第十四条の法のもとの平等の学習などの中で、部落差別等の差別の撤廃が今日なお重要な課題となっている、あるいは差別をなくすために主体的に不断の努力をすることが必要であるということなどが教科書でも取り上げられておりまして、各学校におきましてもそういう指導をしていただいておりますし、私どもも指導を続けているところでございます。
  74. 小森龍邦

    小森分科員 今日なお社会的に未解決であるというのは、今あなたが答弁されたようなことの水準でしか教育が行われていないから未解決なんです。  先ほども私申しましたように、基本的人権とか憲法の条文とかというのは、それはだれだってわかっておるのです。あなたは先ほど条文を間違われたけれども、あなたが言われた条文は第十四条なんでしょう。すべて国民は法のもとに平等であるというところでしょう。それはいいですけれども、そういうことは。  しかし、本当の同和教育をやろうとする教師と、同和教育のみならず我が国の教育を進めていこうとする文部省との間に相当意識の格差があり、しかもその意識は残念ながら文部省が立ちおくれておる。我が国のこの問題に取り組んでおる教師たちの方がはるかに進んでおる。私はそういうふうな認識をしておるのですが、もう少し同和教育というものに対する突っ込んだ、具体的な実態を把握した、そういう観点から文部省の幹部は物を考え、方針を打ち出せないですかね。  現実に、例えば広島県でも、一昨年のことでありますけれども、女子高校生が自殺した。これは大問題だ。我々の運動は、全国キャラバン隊をつくって、全国の各地にその悲惨な事実というものを訴えて、みんなの気持ちを人権確立の方向に向かわせようという努力をした。そうしたら、この間、これは広島県の美土里町というところでありますが、その結婚差別、いわゆる女子高校生の自殺事件を何かあざ笑うかのごとき、あざけるかのごとき大きな落書きが教育集会所の壁にされておる。  この間、広島県知事と私と一緒に現地を見に行きましたが、例えば、そういう差別の苦しみに絶望し、世をはかなんで自殺するというようなことについては、自信を持たせるということ、人生を生きていく自信を持たせるという教育でなければならぬのですが、基本的人権だなどといったところで、そんなことはわかり切っていることなんですから、もう少し血の通った考え方は出ないんですかね。
  75. 野崎弘

    ○野崎政府委員 私どももこの社会の中に根強く残っております不合理な部落差別、これをなくすべく努力をしておるわけでございまして、具体的に個別のいろいろなことにつきましてお話を申し上げるというようなことまではできませんけれども、その辺の部落差別をなくそうという意欲におきましては先生と同じ気持である、このように考えております。
  76. 小森龍邦

    小森分科員 短い時間の中で私の考えをずっと述べるということもできませんが、要は、たまたま本人にとってはいわれなき、どこに生まれたかという偶然的な事実によって生涯部落差別というものを肩の荷に背負っていく。そこに、人生に絶望するというコースもあるが、またもう一つは、そういうことだからこそ奮発して頑張らねばならぬというコースもあるんですね。  教育は、だからこそ頑張らねばならぬ、こういう気持ちをいかにしてその児童生徒が持ち得るか、持ち得るように教育するかということが問題なんですね。それをただ世の中、差別があってはいかぬからというような、そんなものはもう何十年も前に、太平洋戦争の時代ごろから、いわゆる宥和教育とか宥和運動とかということで、戦争をしかけるような連中だって言ってきたことなんです。  だから、もう少し具体的にあなた方は方針を考えねばならぬ。また、現地で教育運動を続けておる人の知恵をかりて、全国的にそれを敷衍していくということをやっていただかなければならぬと思います。時間の関係で、やむを得ぬからばっと問題を投げかけておくという程度にいたします。  さてそこで、先ほど私は、人間の心の持ち方というようなことで、いかに意欲を持って生きていくかということを申し上げたのでありますが、今度は具体的な、客観的な状況として、同和地区の高校進学率あるいは大学の進学率、昨日レクチャーの際にも、項目を分けてその数字を示してもらいたいということを言っておきましたので、高校と大学の進学率、高校については普通科と実業科系に分けて、どういう分類になっておるか。それから、大学はよろしいですから、高校の方の退学率の状況、ここに具体的な教育の差別実態というものがあらわれておると私は思いますので、その数字をひとつお示しいただきたいと思います。
  77. 野崎弘

    ○野崎政府委員 高校の進学率、普通科と実業科別ということでございますが、実は普通科、実業科別の統計というものはございません。そういうことで、平成五年度の高校、高専の進学率ということになりますが、全国平均が九六・二%、これに対しまして対象地域が九一・九%、そういう状況になっています。それから、大学、短大につきましては、全国平均が三四・五%、これは現役の進学率で押さえておりますので、全国平均がそういう数字になっております。それから対象地域が二二・六%、こういう数字でございます。これも平成五年度でございます。  それから高校中退率でございますが、これは平成四年度の数字が一番新しい数字でございますが、全国平均が一・九%、対象地域が四%、こういう状況でございます。
  78. 小森龍邦

    小森分科員 数字を発表される前に若干の私の考え方を申し上げておきましたが、このいわば数字にあらわれる格差、この格差をどういうふうに思われているかということが一つと、もう一つは、非常に文部省はルーズなというか、こういうことに関する視点というものがぬるい。  そのぬるい証拠は何かといったら、普通科高校と実業科高校と今日学力に格差があることは明々白々たるものなんです。そうすると、こういう問題を正しく見ていくということになると、一体、部落問題を解決しようと思うと、実態がどうなの か、普通科高校へどれくらい行って実業科高校へどれくらいになっているのか、九一・九%のその比率というものはどうなのか、ここに気がっかなければならぬし、まあ一種のあれでしょう、問題を真剣に解決するには、気がつく、つかぬといったところで、すぐにそこのところへ目が向くのですね。  私はやはり心配になるんですよ。高校へ九一・九%ぐらい行くようになったが、部落の仲間たちの子供たちは普通科高校へどんどん行っておるのか、学力の少し低い実業科高校の方へ行っておるのじゃないのかと。その数字をつかんだら、何とか馬力をかけて国民の一般的平均水準のところまで持っていきたい、これを思うのは当然でしょう。そういう思いが当然として出てこないところに文部省の教育行政的怠慢というものがあるわけでしょう。  だから、そんな観点からこの数字の、これを我々は運動的には低位性というんです。その低位性というものがどういうところから出てくるのか、その実態をつかまなければ、地域改善対策協議会がどう言ったとかこう言ったとかいって、その表面の文章を三行か五行読んで事が済むものじゃないでしょう。その点、答えてください。
  79. 野崎弘

    ○野崎政府委員 どういう点が原因かということを分析するのはなかなか難しいことかと思いますが、私どもはやはり学力の向上あるいは進路指導、教科指導の充実、こういうことが大事だということで、従来から高等学校等の進学奨励費補助の充実、あるいは研究指定校とか教育推進地域におきます同和教育の内容、方法の研究、実践、加配教員の配置等によります指導体制の強化等の措置を講じてきたところでございまして、この地域改善対策協議会の意見具申におきましても、学校教育、社会教育のより効果的な推進ということが指摘されておりますので、そういう施策を充実していくことが大事だ、このように認識をしておるところでございます。
  80. 小森龍邦

    小森分科員 靴の裏から足をかくようなことを言うたって、人々の心の琴線には響かないのですよ。それはもうずっと伝統的に日本の文部省の悪いところなんですね。仮に文部省の高級官僚と実際に教育実践をやっておる小学校か中学校の教員と討論したら、あなた、二、三分でダウンしてしまいますよ。何か具体的な問題を突きつけられたらだめでしょう。それが要するに我が国の文部行政を指導しておる立場なんですから、だから日本の教育はこれでは前進しませんよ。  それで、この数字についてちょっとコメントを申し上げておきますが、我が国およそ六千カ所にある被差別部落、同和地区、そのうちのいわゆる地域改善対策のあの法律によって指定されていない未指定の千部落は除外されておる。まだまだ数字は深刻なんですよ。そんなことには思いが至ってないでしょう。  これは総務庁と、きょうかあすかまた時間があるから、私はやり合おうと思っておるのだけれども、日本の部落問題を解決するというのに、先進的に運動に取り組まれておるところだけの数字が出たんじゃだめですよ。先進的に取り組まれておるところだってこうなんですから。その辺も、きょうは私がちょっと何か文句を言っておるようだけれども、そういう視点というものを頭に入れてください。  そこで次に、これは一般的なことになりますが、小学校、中学校の不登校の状況について、小学校、中学校の数字をお示しいただきたいと思います。
  81. 野崎弘

    ○野崎政府委員 登校拒否の児童生徒数ということで、これは五十日以上の欠席者でございますが、平成四年度で小学校が〇・一二%、それから中学校が〇・九四%、こういう数字になっております。
  82. 小森龍邦

    小森分科員 それを実数で言ってみていただけませんか。
  83. 野崎弘

    ○野崎政府委員 登校拒否児童数、小学校の方でございます、一万四百四十九人、それから中学校の方が登校拒否生徒数四万七千五百二十六人、こういう数字でございます。
  84. 小森龍邦

    小森分科員 これは年々によって多少の違いはあると思いますが、私が数年前、三年か四年前に、決算じゃなくて予算委員会分科会文部省に尋ねたときには、小中学校を含めて実数が四万人程度であったと思います。これを見るともう六万近くなっているんですね。これは単純な表現をすると教育荒廃の傾向なんです。教育が崩れているんです。その原因はどこにあると思われますか。
  85. 野崎弘

    ○野崎政府委員 この登校拒否児童生徒数、確かに今先生御指摘ございましたように、昭和六十二年ごろは両方足しても三万八千人ぐらいの数字でございましたが、数がふえてきております。  この背景は、学校生活あるいは家庭の問題とか社会の問題、いろいろな問題が絡み合っておるわけでございまして、なかなかこの原因というものをどれだという形で特定できるわけではございませんけれども、やはり登校拒否の子供一人一人にいろいろな事情があるわけでございまして、私どもの取り組みといたしましては、これは特定の子供に起こるということではなしに、だれにでも起こり得る可能性のあることだということで、学校に対していろいろな対応につきましての通知を既に平成四年に出しております。  これは学校不適応対策調査研究協力者会議というものを平成元年に設けまして、そこから総合的なあるいは専門的な観点からの検討をお願いした結果が平成四年の三月に報告書としてまとまりまして、それを受けまして平成四年の九月に通知を出し指導している、こういう状況でございます。
  86. 小森龍邦

    小森分科員 これは要するに我が国の社会の全体的な構造、その構造を人間の意識とか心理とかに反映させて、結局最近は非常に低年齢の者も自殺をする傾向がふえております。要するに、世の中から疎外をされて、おれは河原の枯れススキというくらいならよいけれども、おれは河原の枯れススキということよりもさらに、もう自分が人間として尊重されていないという疎外感というものをずっと持たされて、そして、自殺の問題あるいは不登校現象というものも、一種のこれは若干の抵抗を含めた態度だと私は思うのですが、そこのところに目が向かなかったらだめじゃないですか。だから、それは文部省だけでなし得ることじゃないですけれども 私は これはまた通産省あるいは経済企画庁とやることにしていますが、ずっと前から言っているのです。  我が国の経済の状況というものは、経済構造の仕組みだけとっても二重構造と言われて久しいでしょう、元請、下請、孫請、ひ孫請。同じ会社に勤めて同じ門をくぐっても、いろいろあらあなで、それぞれ人間というものに格差をつけているでしょう。しかし文部省は、そういうものに少なくとも教育の面でもぶつかっていくというならいいけれども、そういう現実を肯定した教育をやっているでしょう。だから結局全体として荒廃の方向に行くのです。  だから、同和教育というのを私が冒頭に出したのは、同和教育の視点というものをもう少しまじめに考えてもらったら、教育全体が見えるようになるのです。同和教育のところがわからなかったら教育全体が見えないのです。教育はしょせん自己実現の道を探っておる手だてでしょう。そうすると同和教育というのは、自己疎外をされた、いわゆる人間疎外、自己疎外に悩んでおる者をどう人間復権するかというのが同和教育でしょう。もう少し根本的に考えていただきたい。なるべく機会を見て私はこの議論をしますが、文部省は、もうそれはとても議論に対応できる水準じゃないですよ。  もう時間がありませんから、そこでちょっと簡単に結論めいたことをお尋ねしたいと思うのです。  例えば我々が非常に心配している進学競争体制、この進学競争体制というのが人間疎外の方向に青少年を向かせておる、こういうふうに思っているのでありますが、高校の入学の制度で、一つの学校に対する学区を広げていけば、競争が激しくなってそこで物すごい学力がっくというような、何か錯覚を持っている連中がいますね。  私らは戦争に負けた直後高校生であったのです が、あのころは高校三原則といって、地域性、総合性、それから男女共学、これが言われておった。地域性、一つの郡に一つの高校の程度です。広島県は、何かがたがたして、今度は全県を一つの学区にしようか、いや二つぐらいにしようかというようなことを物をまぜている連中がいますが、これは地元では論陣を張りたいと思っております。  私は思うのですよ。一つの郡に一つの高校ぐらいのときに育った我々の年代が、食う物も食わずに、条件に恵まれていなかったけれども、どうですか、日本の社会を見事に経済的に発展させたじゃないですか。これは人間的な実力ですよ。何でもかんでも勉強、勉強といって競争しさえずれば、それはなるほど頭に知識は詰め込まれるかもわからぬけれども、本当の人間的なバイタリティーは出てこないと思いますよ。  そんなことで、尋ねたいのは、全国の各県の高校の中途退学率、大学進学率、この二つに分けて、かなりよいところとかなり悪いところぐらいを教えていただいて、その辺のよいところがどういう学区制度を持っておって、悪いところはどういう学区制度になっておるかということを、私は後ほどまた文部省資料をお願いいたしますので、時間がないから、きょうの議論とすればそこのところだけちょっと発表してください。
  87. 野崎弘

    ○野崎政府委員 高校中退率の方からお話をさせていただきますと、高校中退率の高い県は、沖縄県、高知県、大阪府、岡山県、東京都というあたりでございます。それから中退率の低い県は、岩手県、福井県、秋田県、島根県、福島県というあたりが中退率の低い県でございます。  それから大学進学率の高いところは、奈良県、兵庫県、京都府でございます。低いところは、沖縄県、青森県、岩手県、こういう状況でございます。
  88. 小森龍邦

    小森分科員 わかりました。  ではこれで終わります。どうもありがとうございました。
  89. 前田武志

    前田主査 これにて小森龍邦君の質疑は終了いたしました。  午後一時から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時六分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  90. 前田武志

    前田主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  文部省所管について質疑を続行いたします。岸田文雄君。
  91. 岸田文雄

    岸田分科員 私は、自由民主党、広島一区選出、岸田文雄でございます。本日は、質問の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。  まずもって、文部政務次官におかれましては、政局多難の中、政務次官に御就任になられましたこと、まことに御苦労さまでございますが、しっかりとした文教行政のため、ぜひお力添え、御努力いただければとお願い申し上げる次第でございます。  本日、文教関係の質問でお時間をいただいたわけでございますが、何しろ三十分という短い時間でございますので、ちょっとテーマを私なりに絞らせていただいて質問をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。  その絞らせていただきましたテーマ、公立高等学校の転編入に対する文部省の取り組みについて、ちょっとお伺いさせていただきたいと思う次第でございます。  日本の企業社会におきましては、転勤はつきものと言われております。私の地元広島におきましても、支店経済という言葉があるぐらいでございまして、大変転勤が多うございます。転勤で来られた支店長さんですとか会社関係の方がごあいさつに来られることも多いわけですけれども、そのあいさつで、家族は御一緒に広島にお越しでしょうかというのが決まり文句になっておるような状況でございます。要は、転勤で来られても単身赴任で来られるケースが非常に多い。特に四十代ですとか五十歳前後、こういった方はほぼ単身赴任で来られることが多いような気がするわけでございます。  このことにつきましては、住宅問題から始まっていろいろな問題はあるとは思うのですけれども、その大きな問題点としまして、子弟の教育問題というのがございます。要は、父親が転勤になりましても、子供の転校がなかなか難しいために父親とともに家族が移ることができない、結果として単身赴任が多くなってしまうということがあること、これは間違いないと思うわけなのです。  そして、その中で、小学校、中学校、これももちろんこういった問題があるわけなのですけれども、こちらは義務教育でございます。それに比べまして高等学校の場合、特に公立の高等学校の場合非常に転編入が難しくなっておること、これは一つの大きな問題として出てくると思うのです。  高等学校の転編入が難しいために、その年代の子供さんを抱えた父親の単身赴任がふえていってしまう、こういった相談事を地元におりましても随分多く受けるわけでございます。私も、自分の党で一、二回生で勉強会をやっておるのですけれども、このテーマで勉強をした際に、やはりほかの議員からも全国でもそういった相談事が多いという話を聞くわけでございます。このことは、家族のきずなですとか、思春期を迎えた青少年に対する影響ですとか、そういったことを考えますと社会的にも大きな問題ではないかな、そして単身赴任、これ自体決して好ましいことではないと思うわけでございます。  そこで、まずもって、この問題につきまして現状に対してどのような御認識を持っておられますか。このことについて政務次官、お答えいただければと思います。よろしくお願いいたします。
  92. 勝木健司

    ○勝木政府委員 この問題につきましても、私も岸田先生と同じように重要な問題だと認識をいたしております。特に、支持者の方々からもよくこの転入学についての要望をお聞きをしておるところであります。  高等学校におきます、特に公立の高等学校におきます転編入につきましては、保護者の希望どおりの受け入れ校を見出せるか等の問題が現状あるわけでございますが、希望に十分こたえていないのではないかとの指摘を確かに受けておるところでございます。特に、保護者の転勤に伴う生徒の転入学等につきましては、親の単身赴任が社会問題化している今日では重要な課題だと私も考えております。  このため、文部省におきましては、平成三年の局長通知などによりまして、各都道府県教育委員会に対しましても、保護者の転勤に伴う高等学校における転入学者等の受け入れの推進について、受け入れ機会とかあるいは受け入れ校の拡大などを図るようにお願いをしてきたところでありますし、また、国立教育会館におきましても、各都道府県教育委員会を通じて、他県の高等学校の概要あるいは転入学に関する情報が提供できるコンピューターによるネットワークシステムをつくるなどの取り組みを行ってきたところであります。  また、各都道府県におきましても取り組みを今進めていただいておるところでありますが、地元の進学希望者の門戸をできるだけ広げてほしいとの要望などもありまして、受け入れ側の事情により必ずしも十分円滑に実施されていないとの指摘も確かに受けているところであります。  今後とも、この問題、各都道府県に対し、また文部省といたしましても、受け入れを一層推進するように努力を促してまいりたいと思っておるところであります。
  93. 岸田文雄

    岸田分科員 政務次官の方からこの問題は重大な問題であるという御認識を承らせていただいて、大変心強く思った次第でございます。  それで、今御答弁の中で現在までの取り組みについて多少触れておられたわけでございますが、その現在までの取り組みについて少しお伺いさせていただきたいと思います。  今政務次官、平成三年の通知について触れておられました。私の方もいろいろその辺聞かせてい ただきますところによりますと、それ以前から、昭和五十九年にも通知を出されて、転校生に対する枠としまして欠員に加えて特別枠を設けられるとか、試験の回数をふやされるとか、それからその後も平成二年に、保護者の転勤に伴う転入学者等の受入れの推進に関する調査研究協力者会議を設けられる等の努力をされて、今おっしゃった平成三年の通知を出された。そこでも試験の時期、試験日等に御配慮をされているということをお聞きするわけでございます。  そこで、そういった御努力をされておられるわけでございますが、その御努力によりまして具体的にどれだけの効果が上がっておるかということであります。特に今申し上げました中で、転校生に対する特別枠の設置等のことがありましたが、その特別枠の設置等を中心に今まで努力を行ってこられた結果としましてどれだけの成果が上がっておられるか、その辺、できれば具体的な数字等で把握されておられれば調査結果をお聞かせいただければと思うのですが、お願いいたします。
  94. 野崎弘

    ○野崎政府委員 先生お話ございましたように、昭和五十九年、そして平成三年の通知などによって各都道府県の取り組みを促してきたところでございます。  これは、調査といいましても、紙面というよりも各都道府県教育委員会に問い合わせた結果でございますので、あるいはもう少し正確な把握の仕方もあるのかと思いますが、公立高等学校におきます転入学者数、平成元年で約八千六百人でございます。これが平成三年度には約一万二千人ということで、うち転勤転居こ伴うものが約五千五百人、こういうことになっております。ただ、転勤転居に伴うものは平成三年に調べたのみでございますので、他と比較できないのでございますけれども、数字としてはそういう数字になっております。  それから、各県におきましても、教育上支障のない限り受け入れられるよう各学校に対する指導を行っているわけでございまして、各学校におきます具体的な受け入れ状況、これの詳細を文部省が把握しているわけではないのですけれども、特に特別枠を設けて受け入れている学校がある、このように報告している県が昭和六十三年で十三県でございましたけれども、平成三年には二十四県に増加している、こういう状況にございます。
  95. 岸田文雄

    岸田分科員 この調査の実施方法につきましては、内容が内容だけに難しい面もあると思うわけですが、ぜひこの問題、重大な問題であるという御認識がおありになるというのであれば、より一層細かい実態の把握に関しまして御努力をいただきたいと思うわけでございます。また、その辺について調査結果が出ましたら、ぜひ教えていただきたいと思う次第でございます。  それで、今御回答の中に、確かに転校、転編入の受け入れの人数がふえておるということをお聞きしたわけでありますが、ただ、全体の転編入に対する要望、期待から考えますと、今出ておる数字が十分だとは決して言えないと思うわけなんです。  例えば今、特別枠の話で申し上げますと、転校生の枠としまして原則的には欠員を充てる、それに加えて特別枠を設けるという通知を出されておるわけでありますが、その欠員一つとってみましても、私のおります広島県、中途退学者が昨年公立高校だけで一千五百九十一人もおるわけでありますけれども、実際公立高校に転編入を希望しまして合格しました人数は二百九十二人という数字を見ましても、その枠がどれだけ活用されておるのか、大変心もとなく思うわけでございます。  それで、私自身思うのですが、今御答弁の中にもありましたように、この特別枠につきましてもその最終的な判断は各都道府県の教育委員会、さらに言えば学校長に任せられておる。枠を設けるかどうかという最終的な判断は、学校長、教育委員会にゆだねられているということがあると思うのです。その判断に基づいて設ける、設けないということが決められておるということが問題点として出てくると思うのです。  各学校の判断に任せられているということになりますと、当然各都道府県ごとに対応が違ってくる。聞きますと、福岡県とか愛知県は意外とこの特別枠の設置に前向きで、十分特別枠に対する実績が上がっておるということを聞くわけでございます。しかるに、これは転校生の転編入、言ってみればボールのキャッチボールですから、片っ方だけが受け入れオーケーでも、この状況に対していい方向には進んでいかないということを思うのです。  また、さらに言えば、各都道府県それから学校長に最終的な判断がゆだねられているということになりますと、どうしても人気のある高校の入学ということになってきました場合に、地元の生徒をより優先させたい。そうしますと、転校生の枠があるのであれば地元を優先させてもらいたいという声が出てきても当然だと思うのです。それで、そういった事情は、やはり文部省からしますと、そこら辺の最終的な決定権が手元にないという難点があるので、いま一つ思い切ったことができないということも言えるかなと思うのです。  そこでお伺いするのですが、文部省としてより直接指導できる立場の高等学校として、国立大学附属の高等学校があると思うわけです。国立大学附属高等学校につきましても、かつては定員に満ちていない場合、枠を設けるようにということをやっておられたということですが、平成三年の通知で、平成四年度から欠員がなくても特別枠を設けるように指導されておられるということをお聞きしております。特別枠を設けるということになると予算が必要になってくる、予算措置もされておられるということも聞いております。  そこで、具体的にその予算措置、どの程度の措置をされておられるのか、それから、それによって国立大学の附属高校においてその転編入の学生の受け入れの実績はどれだけ上がっておるのか、その辺、調査結果があれば教えていただきたいと思います。お願いします。
  96. 遠山敦子

    ○遠山政府委員 御指摘のように、国立大学の附属高校につきましても、先生のおっしゃるような転入学の問題については協力をする必要があると思っているところでございます。  従来から、生徒に欠員がある場合に転入学者を受け入れてまいったわけでございますが、平成三年度の文部省初等中等局長通知の趣旨に沿いまして、設置者といたしまして転入学者受け入れの一層の促進を図るということから、平成四年度から、欠員の有無にかかわらず受け入れのための特別枠を設定した附属高校には、その実績に応じて運営経費を加算して配分しているところでございます。額はそれほどのものではございませんけれども、そういう措置をいたしております。  この特別枠を設定した附属高校は、平成五年度には二校でございましたけれども、平成六年度には五校程度になる見込みでございます。実績そのものは、まだ制度が動き出したところでございますので、受け入れの実績についてはまだ数としては多くないわけでございますけれども、今後ともその面についての協力といいますか、そのことについて私どもとしても十分指導してまいりたいと思っております。
  97. 岸田文雄

    岸田分科員 今、国立大学の附属高校においてのお話だったわけですが、どうも国立大学附属高校においても、実際に世の中の期待との比較におきまして十分数字的に効果が上がっているのかなという気がしてならないわけでございます。これは、ぜひ国立からでもより一層その対応を進めていただきたいということを切に思うわけであります。  さらに、もう一つ踏み込んで言えば、国立大学附属の高校においてもより一層努力していただきたいのはもちろんですけれども、私は、これだけ世の中において経済活動の広域化が進んで国際社会が一層推進される中で、社会問題にもなるほど単身赴任がクローズアップされておる。そういった世相を考えたときに、やはり文部省としても何かもう少し踏み込んだ対策、対応が必要ではないかなということをつくづく感じるわけでござい ます。  そこで、もう一つ踏み込んで、これは法律の技術的な判断と、それから政治的な判断も加わってくるとは思うわけですけれども、特別枠に関する取り扱いに関しまして、国立大学附属高校のみなならず公立高校の範囲まで広げて、この特別枠を何らかの形で義務づける方法はないのかな。これはある意味では世の中の規制緩和の方向に逆行するのかもしれませんけれども、しかるべきところは新たな義務を、枠を設けるということは、やはり政治、そして行政の場から見た場合必要な場面も出てくるのかなということを思うわけです。  ですから、これは政治的判断も入ってまいりますので政務次官にお伺いしたいと思うわけですけれども、公立高校の範囲まで広げて、公立高等学校の転編入につきまして特別枠を義務づけるということにつきましてどうお考えになられますか、お聞かせいただければと思います。
  98. 勝木健司

    ○勝木政府委員 転入学者等の受け入れ枠の設定につきましては、保護者のみならず企業等からも要望が確かに寄せられておるところでありますので、各学校においても可能な限り積極的に対応していくことが望まれることを、文部省としてもまた認識しておるところであります。  ただ、今先生おっしゃいましたように、学校ごとに特別枠を義務化することについては、地域や学校の状況が異なるということ、また、枠が可能であるならば、その分を地元の進学希望者へ門戸を広げることへの要望ということも一方ではあるわけでございますし、また、転入学希望者が特定の高校への転入学を特こ希望するケースというのもあることなどから、難しい面もあるわけでありますので、今すぐこの特別枠を義務化するという要望に十分こたえられない点があるのではないかということも考えておるわけであります。  しかしながら、大事な手だての一つであると考えておりますので、各都道府県に対して、今後とも、特別枠の拡大により一層の努力を行うように、文部省としても指導していくように努力をしてまいりたいと思います。
  99. 岸田文雄

    岸田分科員 今難しいというお話を聞いたわけでございます。今御返事の中で、地元の希望者に対する優先というようなお話もあったわけでありますが、これは逆に、地元から希望される高校ほど転編入を希望ずる生徒にとっても魅力があるということは言えると思うのです。  それで、これは確かにその辺の調整が難しいとは思うわけですが、特別枠といいますと随分何か大きな枠のような気がいたしますが、政務次官、この特別枠、人数はどのぐらいの枠を文部省は指導されておられるか、聞いておられますでしょうか。
  100. 野崎弘

    ○野崎政府委員 文部省が特にこの数を幾らという指導はしておりませんけれども、実際にはやはり数人の枠というようなところじゃないかと思います。
  101. 岸田文雄

    岸田分科員 文部省は数は指導されておられないということですが、これは私の広島県の例なんですけれども、例えば五十九年、初等中等教育局長の方から通知をいただいて、それに基づいて各高等学校長に出されておりますこの通知を見ますと、「各学年ともその学級の数まで認めることができる」というような通知になっておるわけでございます。要は、一学年に五クラスあれば五人まで特別枠を認めていいよということになっておるようであります。  そうやって考えますと、要は、各クラス一人程度の枠だと思うんです。これだけ世の中が変わって、そして転編入に対する要望が強くなっておる中で、確かに地元の期待を優先しなければいけない、これは各学校で事情もあるかもしれません。しかるに、各学級に一人程度の特別枠を設けられないほど大きな障害はないのではないかなという気がするんですが、その点はいかがでしょうか。
  102. 野崎弘

    ○野崎政府委員 これは、私どもも県の教育長の方々といろいろな場でこの問題についてお話しする機会があるんですけれども、やはり実際に県の教育を預かっている教育長の立場からすると、これは議会等で大変大きな問題になる話で、そういう枠があるのならばなぜ地元の子供が行けないのかということが、まさにこれは県内の関心事になります。  今先生もお話ありましたように、転入学希望というのが、どこの学校でもというわけじゃなく、やはり特定の高校への転入学を希望するという形なものですから、そういう学校がまた県内でも大変関心が集まるというようなところで、各県の教育長さんの立場からするとなかなかこの問題は難しいんだという話はよく聞いております。
  103. 岸田文雄

    岸田分科員 おっしゃることもよくわかるわけであります。各県の教育委員会、県議会等でそういった問題を追及されるとなかなか苦しいというお話だったわけですけれども、考えてみますと、これはその地元の高校でほかの県の学生を受け入れると同時に、その県からも転校生が出ていくわけですので、全国一律に枠を設けるのであれば、何も地元の不利益ばかりではないということを思うわけです。  さらに、希望する高校に偏りがあるというのもおっしゃるとおりだと思うんですけれども、それであれば、特に転勤のケースが多く考えられるような地域、例えば政令指定都市だけでもその辺について配慮をするとかいうようなことは考えられないのかなと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  104. 野崎弘

    ○野崎政府委員 これも恐らくそれぞれの県でどう考えるかということで、私どもとしては、できるだけ各学校が積極的に対応していただきたいというのが基本線でございますので、これからもそういう意味の指導をしていかなければいかぬと思いますが、今お話があった政令指定都市といっても、つまり、学校をつくればそれで間に合うという話とちょっと違いまして、余り言葉はよくないかもしれませんが、枠があっても、そうじゃないんで、この学校に行きたいんだ、こういう話になりますと、なかなか実際の問題として対応が難しいというのが私どもがよく聞く話でございます。
  105. 岸田文雄

    岸田分科員 時間がなくなってまいりましたので、もうぼちぼち終わりにしたいと思うのですが、要は、努力はされておられるのは十分認識しております。ただ、今のままの、最終的に各都道府県の教育委員会、学校長に任せたような状況であれば、画期的な進展は難しいんではないかなということをつくづく感じるわけであります。  ですから、できれば法律事項等でこの辺を特別枠の義務づけができないかということを考えたわけであります。一クラスの定員の問題、四十人学級ということで、文部省も苦労されておられるわけでありますが、これは法律事項だ思うんです。ただ、これにしても標準四十人だというふうに解釈しておりますし、特別枠、先ほど言いましたような一クラス一人ぐらいであれば、時代の要請に配慮して、やはり大きな決断も必要ではないかなという気持ちはどうしてもぬぐえないところでございます。  この点につきましては、きょうは、三十分でもう時間がありませんので、引き続きまして文教委員会等関連委員会でお伺いしたいと思うわけでありますが、文部省におかれましても、この辺の問題、大変重大な問題であるという御認識は聞かせていただきました。であるからして、より一層前向きに、そして効果の出る、結果の出る形で思い切った対応をしていただきたいということを思いますので、御努力を心からお願い申し上げます。  以上で質問を終わらせていただきます。
  106. 前田武志

    前田主査 これにて岸田文雄君の質疑は終了いたしました。  次に、斉藤鉄夫君。
  107. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)分科員 広島一区選出、公明党の斉藤鉄夫でございます。きょうは、このような質問の機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。  きょう、私は原爆ドームの世界遺産化の問題について御質問をさせていただきたいと思っております。問題の性質上、文部省だけではなく、外務省の方にもお答えいただくことになっておりま す。どうかよろしくお願いいたします。  まず最初に、世界遺産条約についてお伺いをさせていただきます。  世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約、いわゆる世界遺産条約は、一九七二年にユネスコ総会で採択されました。今非常に変化の激しい時代、また地域紛争がいろいろなところで勃発をしている、また環境破壊も進んでいる、そういう中で、人類共有の財産である文化遺産または自然遺産を後世に確実に残していこうという、非常に価値のある条約だと私は考えております。  それで、我が国では一昨年六月、国会の承認を経て締約国になったわけでございます。ユネスコでの採択が一九七二年、しかし、我が国での批准が一昨年、一九九二年、この間に二十年近い年月が流れておりますが、その二十年おくれた理由というのはどういうところにあるのでございましょうか。
  108. 小野安昭

    ○小野説明員 御質問にお答えさせていただきます。  先生御指摘のように、我が国は一九七二年に十七回のユネスコ総会の場において、本条約の趣旨が大変好ましいものであるということから、この採択を支持した経緯がございます。他方、本条約の国内上の実施につきましては、各締約国の裁量にゆだねられている部分が非常に大きいということもございまして、本条約の成立後しばらくの間は、各国による締結及び運用の状況を見守ってまいりました。  この間、先生も御案内かと思いますけれども、昭和五十七年から同六十二年、五年間にかけましては、米英の脱退に象徴されますように、ユネスコの危機の時代がございました。この世界遺産条約のもとで設立されました世界遺産委員会の事務局をユネスコが務めております等の関係で、本条約の実施に深く関与しているユネスコの管理運営というものに大きな疑問が提示されたわけでございます。したがいまして、締結準備作業も、こういうような事情からおくれる一因になったのではないかというふうに考えております。ただ、その後、昭和六十二年でございますけれども、選出されましたマヨール新事務局長のもとで、我が国はユネスコの改革が推進されるよう積極的に働きかけてまいった経緯がございます。  我が国はその後、一九八八年でございますけれども、新たに提唱いたしました国際協力構想という三本柱の一つといたしまして、国際文化交流の強化というものを挙げた経緯がございます。これを受けまして一九八九年、翌年でございますけれども、ユネスコに文化遺産保存日本信託基金を設置する等、文化遺産の保存、修復の分野における国際協力の強化に努めてまいった次第でございます。  このような状況にかんがみまして、我が国としても、本条約による文化遺産及び自然遺産の保護のための国際協力の体制というものが早急に確立され、それに参加することをもって、この分野における我が国の積極的な取り組みという姿勢を改めて確認することが非常に重要であるというふうに認識したわけでございます。この認識に基づきまして具体的な締結準備を進め、先生も御発言されましたように、一九九二年に本条約の締結に至ったという経緯がございます。
  109. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)分科員 経緯は非常によくわかりました。現在では、日本は世界遺産条約を実効のあるものにするために、最大の資金提供国としても非常に努力をしているということがよくわかりました。  ことしの二月現在、百三十六カ国が加盟して、四百十一件が世界遺産として登録されているというふうに承知をしております。この登録は、各加盟国が加盟国の責任に基づいて世界遺産委員会に登録を申請する、こういうことになっておりますが、その申請されてきたいろいろな文化遺産または自然遺産を世界遺産委員会においてどういう基準で決めているのか、その世界遺産委員会の中における登録の基準についてちょっと確認をさせていただきたいと思います。  これから原爆ドームのことをちょっと質問したいと思いますので、文化遺産の登録基準について、いかがでしょうか。
  110. 小野安昭

    ○小野説明員 お答えいたします。  御指摘のありましたように、世界遺産委員会におきましては、条約の第十一条五の規定に基づきまして、本条約上の文化遺産または自然遺産を構成する物件が世界遺産一覧表に記載されるための基準を定めております。  この基準と申しますのは、第一には、比類のない芸術上の業績等をあらわしているもの、それから第二には、一定期間にわたり、または世界の文化圏において建築的に非常にすばらしいもの、それから記念工作物等の発展に大きな影響を与えたもの、それからさらには消滅しました文明の希少な証拠を示すようなもの、それからさらに建造物の集合で歴史上重要な時代を代表する様式のもの、それからまた、例外的な場合との条件つきでございますけれども、顕著な普遍的重要性を有する出来事あるいは理念、芸術作品等と直接関連しているものが例示的に示されております。  ただ、文化遺産及び自然遺産のいずれにつきましても、その保護、保存等が確保されるよう十分な法制度が整っていることが条件とされております。  以上でございます。
  111. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)分科員 その登録基準の中に、遺産の年代を限定する条文、つまり、ある一定以上古くなくてはいけない、そういう規定はありませんね。
  112. 小野安昭

    ○小野説明員 私が承知している限りございません。
  113. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)分科員 日本では昨年十二月、文化遺産としては法隆寺地域と姫路城、それから自然遺産としては白神山地、屋久島が登録されましたけれども、この日本の中における手続、先ほどは世界遺産委員会の中でどういう基準で登録されるかということをお聞きしたのですが、世界遺産委員会に提出するまでの日本の中の手続について、だれがどういう基準で選定し世界遺産委員会申請するのか、その手続をお伺いしたいと思います。
  114. 小野安昭

    ○小野説明員 御質問にお答えさせていただきます。  世界文化遺産に登録する手続でございますけれども、これは、この条約に基づきまして世界遺産一覧表というものがございます。そこに文化遺産を記載するためには、締約国が推薦物件の目録を世界遺産委員会に提出することが必要となります。  したがいまして、我が国につきましては、同目録が具体的に作成される過程といたしましては、文化庁が原案をまず取りまとめます。その後、関係省庁間の意見調整及び関係自治体への意見照会等を経ました後に、文化財保護審議会への意見聴取が行われます。その後、関係省庁連絡会議によります最終的な取りまとめを経て、外務省から世界遺産委員会に提出される、こういうのが手続でございます。
  115. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)分科員 手続は非常によくわかりました。  それから、次に文部省、文化庁の方にお伺いをしたいと思いますけれども、文化庁の中で、いろいろな団体から上がってきた文化遺産の案について、どういう基準で、またどういう手続でそれを選び、外務省の方に出しているのか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  116. 林田英樹

    ○林田政府委員 世界遺産委員会に登録申請するまでの文化庁の手続ということでございますけれども、平成四年に我が国が世界遺産条約を受諾いたしまして、我が国最初の文化遺産を推薦するに当たりまして、文化庁におきましては、学識経験者によります協力者会議を開催いたしまして、我が国が今後文化遺産として推薦していくべき候補物件のリストでございます暫定リストを作成していただきました。それとともに、平成四年の推薦物件といたしまして、姫路城と法隆寺地域の仏教建造物を選定していただいたところでございます。  これらを文化財保護審議会に諮りまして、了解 を得ております。それから、この手続を経まして、文化庁としての暫定リスト案、それから平成四年の推薦物件案を決定したということでございます。これを関係省庁連絡会議におきまして、文化庁としての案を提出し、検討した上で、政府としての暫定リスト、それから平成四年の推薦物件を決定いたしまして、外務省から世界遺産委員会へ提出したというところでございます。  なお、平成五年以降のことにつきましては、現在暫定リストに載っておりますもののうち、条件の整ったものから文化財保護審議会に諮った上で順次推薦していくというふうな形にしておりまして、平成五年には古都京都の文化財、京都市、宇治市、大津市を推薦したというところでございます。
  117. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)分科員 いろいろな委員会、また選定委員会等での判断の際に、文化財保護法で保護されていることが一つの基準になっているというふうに聞いております。これは条約の中に「文化遺産及び自然遺産の認定、保護、保存、整備及び活用のために必要な立法上、学術上、技術上、行政上及び財政上の適当な措置をとること。」と、国内で十分に法律でカバーしてその遺産を保護している、そういうことが必要条件となっておりますが、この文化財保護法以外の法律で保護されている場合についても、国内で保護されているというふうに認定するケースはあり得ますでしょうか。
  118. 小野安昭

    ○小野説明員 お答え申し上げます。  先生も御指摘にありましたように、本条約の第五条(d)におきまして、締約国がその領域内に存在する「文化遺産及び自然遺産の認定、保護、保存、整備及び活用のために必要な立法上」の措置等を「可能な範囲内で、かつ、自国にとって適当な場合に」とるよう努める旨、規定してございます。  我が国におきましては、基本的には御指摘の三法、すなわち文化財保護法、それから自然環境保全法及び自然公園法によって、世界遺産一覧表に物件が記載されるための基準を含めて、本条約が求める保護等を確保し得ると私どもは考えております。  具体的には、文化遺産につきましては、先生御指摘がございましたように、文化財保護法に基づき、文化財の指定あるいは管理または修理に対する補助、現状変更等の制限、所有者等に対する公開勧告、保存のために欠くことのできない伝統的な技術の保存等の措置がとられております。  また他方、自然遺産につきましては、先ほど申しました自然環境保全法及び自然公園法に基づき、すぐれた自然環境を有する地域を自然環境保全地域または自然公園として指定するという形で一定の行為を制限し、また、必要な施設を整備する等によって当該地域の自然環境の保全が図られているところでございます。  我が国としましては、これまでに世界遺産一覧表へ記載を推薦した物件につきましては、いずれもこの三法に基づいて保護されているというところでございます。
  119. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)分科員 先ほどお聞きしました世界遺産委員会における登録基準を考えますと、例えば、すぐれて普遍的な価値を有する出来事に関するものというふうな基準もございました。そういう基準を考えれば、文化財の場合ですけれども、文化財保護法だけでカバーされているというふうには考えられません。国民が、国が人類にとって普遍的な価値を有する文化遺産として世界遺産足り得る、こういうふうに判断すれば、文化財保護法でカバーされていなくても登録申請できると考えられますが、その点はいかがでしょうか。
  120. 林田英樹

    ○林田政府委員 ここは、私どもが今の先生のお考えについて御意見申し上げるのもいかがかという気がいたします。  究極には、認定いたします当局に私ども直接に当たるわけではございませんので、この条約を解釈いたします立場の方々から御意見を伺わなければならない立場ということになるわけでございましょうけれども、現在の我が国の法制におきましては、条約が要請いたします保護措置を確保しておりますのは、文化遺産については文化財保護法であると思っておるわけでございまして、私ども、世界遺産一覧表への記載推薦に当たっては、今後とも文化財保護法による法的保護措置がなされているものの中から推薦していきたいと考えているところでございます。
  121. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)分科員 世界遺産として価値があるかどうかが問題の本質でありまして、価値があるのに国内法でカバーされていない、だからだめということであれば、その国内的な措置を整備しなくてはいけない。ちょっと話が逆転しているのではないかなというふうな気がいたします。  世界遺産の中には、ポーランドのアウシュビッツ強制収容所も、いわゆる戦争遺跡としてすぐれて普遍的な価値を持つ出来事に関するものという基準で登録をされております。これはもう人類が永久に、決して忘れてはいけないものとして世界遺産としての価値がある、このように判断されているからだと思います。広島、長崎への原爆投下というのは、人類史上初の核戦争という意味で、またその核戦争のもたらす悲惨さを人類に教えてくれたという意味で、人類史上非常に大きな出来事であると考えております。アウシュビッツと同様に、人類がこれからも決して忘れてはいけない人類史上の大きな出来事であった、こういうふうに考えますが、その点についての認識はいかがでございましょうか。
  122. 林田英樹

    ○林田政府委員 御指摘のように、我が国が世界唯一の被爆国でございまして、原爆ドームが長く後世まで保存されるということは大切なことではないかと思ってはおりますけれども、現段階での世界遺産一覧表への記載に関しましては、国内法上の保護措置等の前提があるわけでございますので、私どもとしては今後慎重に検討していかなければならない課題だと思っておるわけでございます。
  123. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)分科員 広島の原爆ドームがある場所というのは平和記念公園となっておりまして、ほかにも当時の資料を保存してある資料館等がございます。核絶滅の発信地として、また平和の原点の都市として世界に知られております。本公園を訪れる人は、資料館の入館者が年間百五十万人前後、外国人の方も年間八万人前後訪れるというふうに記録として残っております。また最近は、小学校、中学校、高校生の平和学習のメッカとして、この原爆ドームの持つ平和の象徴、これから核兵器を廃絶し、世界平和を達成しなくてはいけないという象徴としての意味は年々非常に大きくなっている。  こういう意味で、世界遺産としての基本的価値は十二分に見出せる、このように考えておりまして、先ほどの基準の中の、すぐれて普遍的な価値を持つ出来事、思想、信仰に関するものという条件に十分合致する、このように考えております。これに対するお答えは先ほどの御答弁の中に入っていると思いますけれども、もう一度この点につきましてお伺いいたします。
  124. 林田英樹

    ○林田政府委員 先ほど申し上げましたように、この基準に具体的なものがどのように当てはまるかというふうなことにつきましては、これは本来的に世界遺産委員会で作成された基準ということでございますので、これについて私どもの見解を述べるというのもいかがかと思いますので、差し控えさせていただきたいと思いますけれども、基本的に、現在私ども文化財を保護する仕事をしております立場で申しますと、この保護法の対象となります史跡は、古墳や貝塚、城跡というような遺跡で、歴史上、学術上価値が高く、重要なものとして広く一般に認められ、定着しているものの中から文部大臣が指定するということでやっておるわけでございます。  現在史跡の指定の検討対象としておりますものは、最も新しいものでも明治時代の中ごろまでのものでございまして、それ以後の時代のものにつきましては、現段階では検討対象としておらないわけでございます。このような史跡の指定につきましては、今後、明治時代中期以降の遺跡に関する歴史上や学術上の価値の評価についての総合的、体系的な検討を行っていく中で、その一環と して取り上げて検討していくべき事項ではないかというふうに考えているところでございます。
  125. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)分科員 その点に関しましては、世界遺産委員会の中の基準にはそういう年代の規定がないということで、その辺十分御配慮いただいて御検討いただきたいと思います。  昨年十月十四日に、百三十四万人の署名を添えて原爆ドームの世界遺産化請願を出しました。内閣総理大臣また衆参両院議長あてに請願を提出したわけでございます。私も紹介護員として署名をさせていただきました。こうした多くの人の要望、声があることも十分御理解をいただきたい、このように要望いたします。この請願はことし一月二十八日に参議院本会議で採択されておりますけれども、その後この処理経過はどうなっておりますでしょうか。
  126. 林田英樹

    ○林田政府委員 本年一月二十八日の参議院本会議で採択されました原爆ドームの世界遺産化に関する請願の処理状況につきましては、近日中に処理意見を閣議で決定し、その後、速やかに国会に報告されるということになっていると承知しております。
  127. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)分科員 来年は被爆五十周年を迎えます。一つの節目でございますので、文部省、文化庁におかれましても、たくさんの人の要望、声を十分御理解いただきまして、前向きに御検討いただきたいとお願いする次第でございます。  最後に、原爆ドームと直接は関係しないのですが、放影研、放射線影響研究所の移転問題について一、二質問をさせていただきます。  御存じのように、放影研は、原爆被害の学術的調査を目的にして日米共同、費用は折半という原則で運営されている研究所でございまして、広島、長崎にございます。学術的にも非常に高い評価を得ている研究所でございます。  しかし、広島市の総合都市計画の中で、現在比治山公園という中にあるのですが、そこから広島市内へ、広島大学の跡地へ移転するという計画がございます。日本側は決して後ろ向きではないのですが、アメリカ側が財政上の理由、また費用の日米折半の原則という二つの理由から、非常にこの移転に難色を示しているわけでございます。今月二十三、二十四日にもアメリカ側との交渉があったそうですけれども、その結果もあわせて現在どういう状況にあるのか、お教え願いたいと思います。
  128. 川邊新

    ○川邊説明員 厚生省でございます。  現在の放影研の移転問題につきましては、今先生御指摘のような形で、実は平成四年度までは日米双方とも合意をいたしまして、移転計画の基本計画までは経費の折半のもとで動かしてきたわけでございますが、昨年来米国側は、今先生お話しのように、財政事情等々の理由から、早期の移転についての経費の分担については非常に困難であるという表明をしてきているわけでございます。  私ども厚生省といたしましては、昨年来数回にわたり直接担当のエネルギー省と協議をしておりますし、あるいは外交ルート等も使いまして、いろいろなチャンネルで依頼をしているわけでございますけれども、今お話しのように今月の二十三、二十四日の会合におきましても、早期の移転についての問題はなかなか困難だという姿勢は崩していないところでございます。  それが現状でございますが、ただアメリカ側も移転の必要性なりなんなりについて決して否定しておるわけではないというところがございますので、厚生省といたしましては、引き続き早期移転の実現について努力をしていきたいというふうに考えているところでございます。
  129. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)分科員 この移転希望は日本側の事情で出てきているということでございますので、日本側が負担して移転を促進する、こういうお考えはございますでしょうか。
  130. 川邊新

    ○川邊説明員 先生御指摘のございましたように、そもそも放影研の経費につきましては、昭和五十年の日米の交換公文で折半原則が定められておりますので、今のように一方的に日本側だけで経費負担するということになりますと、この公文の見直しの議論にまで発展するのではないかということが一つ議論としてあろうかと思います。  それと、確かに広島市等の地元の御要望も強いことで、日本側からお願いしている件でもございますが、いずれにしろ、今の放影研の施設そのものも大変老朽化してきておりますし、早期の移転なり改築なりという問題はどうしても必要な分野ではないかということを考えておりまして、先ほど申し上げましたように、アメリカ側も移転そのものについて反対をしているわけでもございませんので、当面は、私どもやはり日米折半の原則のもとで、アメリカ側の譲歩と申しますか、同意を得ていきたいということで努力をしていきたいというふうに考えているところでございます。
  131. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)分科員 来年は被爆五十周年を迎えます。そういう意味で、放影研の移転の問題、また先ほど質問させていただきました原爆ドームの世界遺産化につきまして前向きに御努力をいただきたいと要望しまして、私の質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  132. 前田武志

    前田主査 これにて斉藤鉄夫君の質疑は終了いたしました。  次に、山原健二郎君。
  133. 山原健二郎

    ○山原分科員 私は、決算委員会でこういう分科会を設けてやるというのは初めての経験でございまして、一歩前進だということで質問をさせていただきます。  最近新聞に報道されました教科書の価格問題なんですが、記事を見ますと、教科書出版業界で教科書出版から撤退する動きが顕著になっているということであります。出版労連の調べでは、ことし四月二十一日に締め切られた小学校教科書の申請出版社数は、前回検定の四年前に比べまして、社会科八社から五社に、生活科十二社から十社に、理科七社から六社に、音楽四社から三社にそれぞれ減りまして、版権をそのまま他の会社に譲った教科書も二社三種類あると聞いております。  この点について文部省に確認をしたいのですが、小学校教科書について、ことしの申請時点でそれぞれどの程度の発行中止あるいは版権移譲が行われておりますか、最初にその点を伺っておきます。
  134. 野崎弘

    ○野崎政府委員 検定申請状況についてのお尋ねでございましたけれども、これは現在検定の途中のことでございますので、現時点で申し上げることはできないわけでございます。ただ、検定申請がなされなかったということと発行者が発行を継続しないということは、直接には結びつくものではないというふうに私どもは認識をしております。  どの種目の教科書を発行していくか、こういうことは各教科書発行者にゆだねられておるわけでございまして、今後教科書の発行種類数が減少するかどうかということは、各発行者の判断によるものと考えております。
  135. 山原健二郎

    ○山原分科員 出版社の判断によると言われますが、こうした背景には児童生徒数の減少による教科書発行数の落ち込みに加えまして、常識では考えられないような教科書価格の低さが大きな要因となっていると指摘をされております。  ちょっとごらんになっていただきたいのですが、これは白紙の、いわゆる罫のない大学ノートでありますが、これは定価が二百五十円です。これに対しまして、これは中学校の英語の教科書です。大学ノートよりもページ数が多くて、しかもカラー印刷であります。さらに、研究者や教育者あるいは出版関係者の英知がこれには注がれていますし、文部省の検定という手続もくぐり抜けてきたものであります。この教科書が二百五十六円にすぎないわけですね。一方は二百五十円、一方は二百五十六円。  また、小学校の家庭科のこの教科書をごらんになっておられると思いますが、これは百九円です。薄っぺらの大学ノートや、缶ジュースは百十円ですから、それよりも安いということになるわけですね。この教科書価格の実態をどう受けとめているのか。安過ぎるとお感じになっていないのかど うか、この点を伺っておきたいのです。確かに出版社もいろいろ問題はあろうと思いますけれども、これが大きな要因になっているのではないかという点でお尋ねしますが、いかがですか。
  136. 野崎弘

    ○野崎政府委員 教科書の定価につきましては、教利用図書検定調査審議会におきまして、主要教科書発行者の教科書関係部門の経営分析というものがございまして、そういうものを踏まえまして、父母負担に係る公共料金とか財政的観点も考慮した上で、毎年度全教科書についての定価改定を行ってきているわけでございます。  この教科書発行というのは、御存じのように、売り上げ面での長期間の安定性というのがございます。また、資金面におきましては、前払いによる保証等もしている。そういう教科書発行特有の要素もあるわけでございまして、そういうことを考慮いたしますと、単純に価格が高い低いということについて申し上げることは難しいのではないかと思っております。
  137. 山原健二郎

    ○山原分科員 教科書の価格が安いということのみに原因を求めるということではないと思いますけれども、これは実際本当に常識を超した状態が今あるわけですね。  私は、この教科書の価格水準は、まさに今こういうふうに見てみますと、常識外だなというふうに思うのです。どうしてそうなのかという点ですが、現在の教科書価格の決め方が原価計算を踏まえたものになっていないからだというふうに言われております。  例外はあるわけでして、これは新設された生活科の教科書ですが、二年生用はオールカラー刷りの八十四ページ、これが六百九十二円となっています。これは新設教科書ということで原価計算がなされて、価格設定がなされているからこういうふうに高くなるわけですね。ところが、小学三年用の理科の教科書を見ますと、同じくオールカラー刷りで百ページのこの教科書の方は、生活科の教科書よりも二百円近く安い四百九十六円にすぎません。  これはどう考えても、現在の業界が撤収するとかいうような問題が出ておりますのは、そういう不合理な価格差が原因にあるのではないか。これは一切文部省の方は認めないような御見解を示されておりますけれども、確かにそのことがあると思わざるを得ないのですが、もう一回お伺いしておきます。
  138. 野崎弘

    ○野崎政府委員 今、原価計算のお話が出ましたけれども、現行教科書の価格改定率につきましては、無償措置法施行時の原価計算を基礎といたしまして、教科書発行者の中から比較的占有率の高い発行者を選び、毎年これらの会社の収支実績を基礎にいたしまして適正な改定率を定めているわけでございます。  なお、小学校の生活科の教科書についてのお話がございましたけれども、これは平成四年度の新学習指導要領に基づいて新設されたものでございまして、従来の教科と異なりまして編集面でも全く新しい企画に基づいて製造される、そういう教科の特殊性がございまして、平成二年度の原価計算、そういうものによってこの価格を決めているということでございます。一概に他の同様ページ数あるいは態様の教科書単価と比較することは難しいのではないかと思っております。
  139. 山原健二郎

    ○山原分科員 局長はこだわっているようですけれども、小中学校の教科書価格はどういうふうに決められるかといえば、これはもちろん文部省が一番よく知っておるわけですが、教利用図書検定調査審議会のもとに置かれているわけで、そのもとにある教利用図書価格分科会の建議に基づいて文部大臣が定めることになっている、こうなっています。  その建議の際の基礎資料である教科書関係所要経費調が一九八二年、十二年前からずっと公表されていません。なぜ公表されなくなったのか、この理由を明らかにしていただきたいと思います。同時に、今後はこうした基礎的な資料は以前のように公表すべきではないかと思いますが、この点はいかがですか。
  140. 野崎弘

    ○野崎政府委員 教科書所要経費調、これは各教科書会社から任意に提出を求めている企業内教科書関係経費資料、こういうものに基づくものでございまして、これは全く公表というようなことを考えて提出を求めているものではございません。そういうことで私どもとしてはこれを公表してこなかったわけでございまして、今後ともそういうものを公表するという考えは持っておりません。
  141. 山原健二郎

    ○山原分科員 全くその原価もわからなければ、いわゆる物価指数あるいはそういうものの変化も考えないで、教科書会社の都合だけで決まるというものではなかろうと思いますが、十二年前は、その以前はこの資料は公表されておったと聞いております。企業秘密云々ということを言われておりますけれども、仮に会社側が公表しても結構だということであれば、公表すべきではないか。  あるいは、教科書作製会社としても、経費をカバーできない価格設定で大変な苦境に陥っているわけですから、教科書作製に係る経費がこんなに大きくなっているということをぜひ明らかにしてもらいたいというようなことであれば、文部省としてもその基礎資料を明らかにして、そして価格決定の基礎にするというのが当然ではないかと思いますが、この点どうですか。
  142. 野崎弘

    ○野崎政府委員 個別の教科書会社がどのような判断をされるか、それは私どもはわからないわけでございますけれども、少なくとも私どもが求めているものは、そういう公表を前提にして提出を求めているようなものでございませんので、公表するというようなことは考えていないところでございます。
  143. 山原健二郎

    ○山原分科員 多彩な教科書がつくられるということは子供たちにとっていいことですね。もともと、戦後そのことが基調になっているわけですが、つぶれようがどうしようが、減ろうが構わぬ、そういう文部行政の姿勢では、私はどうも納得いかないのです。  もう一点問題なのは、この教利用図書価格分科会のメンバーの中に教科書製作者側の代表が加わっていないということでございます。例えば米価審議会であれば、生産者代表は消費者代表や学識経験者などとともに必ずメンバーの中に入っているわけですね。その点を考えましても、これは当然改めるべきではないかというような思いがするわけです。これは文部行政の一つの欠陥になっているのじゃないかという気がするわけですが、この点をどうお考えですか。
  144. 野崎弘

    ○野崎政府委員 教利用図書検定調査審議会の委員、これにつきましては、法令に基づきまして教育職員あるいは学識経験のある者、関係行政機関の職員のうちから、公正かつ均衡のとれた構成となるように文部大臣が任命をしているところでございます。この教利用図書検定調査審議会は、各発行者から検定申請される図書につきまして調査審議を行うことなどを任務としているわけでございまして、教利用図書価格分科会の委員につきましても、申請する側でございます教科書作製者、その代表を委員とするということは困難だと思っております。  しかし、この教科書価格の調査審議に当たりましては、教科書発行者側から提出いただきます経営・価格等に関する資料等をもとに調査審議を行っておるわけでございます。また、教科書発行者、そして供給業者の団体から文部大臣に要望等がある場合には、これを審議会に報告するというようなことも現在しているところでございます。
  145. 山原健二郎

    ○山原分科員 文部省も実情はよく知っておられるはずだと思いますが、原価計算が踏まえられていないというだけではなくて、物価上昇率分もカバーできていないのですね。  消費者物価の上昇率と教科書価格の上昇率を一九八二年、いわゆる十二年前から九二年、この十年間の比較をしてみますと、消費者物価は二二・三%になっているのです。ところが、教科書価格は一五・七%にとどまっているわけですね。この間、出版業界の経費は、一般の消費者物価上昇を大幅に上回ってアップしておるというのが実態です。そして特に一九八九年から九〇年、この二年 間で印刷、製本単価が一〇%ないし三〇%も上がっているのですね。ところが、この二年間で見ると、教科書価格はわずかに三%しか上がっていません。これで正常に教科書ができるとは思えないのですよ。だからこそこういうひずみが今出てきているわけでして、この点には文部省としてもやはり目を配って、これらの動きに対して注目する必要があると私は考えます。  教科書製作経費は物価上昇を上回って膨らんでいるのに、さらに価格は物価上昇より低く抑えられる。ただでさえ原価計算を踏まえずに価格設定されている教科書が、物価上昇分さえカバーできない価格に抑えられれば、業界が立ち行かないのは当然ではありませんか。文部省予算で抑えられておりますから、苦しい気持ちはわかりますけれども、少なくとも教科書を製作する側の立場というものも当然勘案をしなければならぬと思いますね。  だから、そういう中で、教科書会社で働く労働者の実態も、そのしわ寄せを受けまして大変悪化しておりまして、例えば教科書業界に先の見通しを見出すことができないで転職する人も相次いでいます。皆、技術者で経験者だ。  冒頭紹介しましたように、教科書会社が教科書出版から離脱していくこの事態を放置いたしますとどういうことになるかといいますと、ごく一握りの教科書会社しか生き残れない。これは教科書の寡占化の道を歩むことになるわけです。まさか教科書価格を抑えることによってこういう意図を持っておるとは私は思いませんけれども、しかし、これを放置すれば、まさに教科書の寡占化の道を歩むことは必至ではないかというふうに考えまして、文部省はその辺に対してどういう判断をしておるか。
  146. 野崎弘

    ○野崎政府委員 文部省といたしましては、毎年の全教科書の適正定価改定ということにつきましては努力をしてきたわけでございます。  現在、近年の経済状況あるいは児童生徒数の減少、そういうことなどを踏まえて、教科書発行者において経営の方針を見直す動きがあるということは承知をしております。しかしながら、このことは各発行者におきまして経営の状況、方針等さまざまな事情がございますので、一般的にどうだということを申し上げることは困難だ、このように思っております。
  147. 山原健二郎

    ○山原分科員 やはり文部省も財政事情の問題はあると思いますよ、小中学校の教科書は、これは国が支給するわけですからね。だから価格の問題というのは非常に大きな問題なんです。  しかし、例えば公共事業の積算などというのはどういうふうにやられておるか、文部省はよく御承知だと思いますが、経費などを度外視して低く設定されるというようなことは聞いたことがありません。それどころか、かなり水増しさえして公共事業の場合は措置されているというのが実態ですね。これは私もよくわかるわけですが、公共事業にかかわってきた人からも証言として出ているような状況が、一方ではそういう実態を知っている人の間から出てくるわけですから、そういう意味で、こうしたゆがみを正せば財源は確保することができる。  同時に、ここで確保する努力をしなかったら、今のままてしようがないんだ、そういう仕組みなんだということでほっておいたならば、これはますます事態は悪化すると思います。教科書が学校教育を支える上で重要な役割を果たしていることは間違いございません。それに携わる業界、関係者が教科書づくりに展望を見出せなくなる、どんどん見限っていくというような事態はやはり極力避けるべきではないかと思います。  多様な人々、多様な視点からの教科書づくりがなされて、それぞれが刺激し合ってこそ、わかりやすい豊かな教科書の追求という点でも前進するわけでございますから、そういうことを考えますと、この教科書出版をめぐる今のゆゆしい事態というのは、私は軽い事態ではないと思うのです。決して教科書出版業界だけの問題ではない。教育全体の問題にかかわる問題でございますから、そういう意味でも文部省の見解を伺っておきたい。
  148. 野崎弘

    ○野崎政府委員 教科書、これが教員と並んで学校におきまして大事なものであるという認識におきましては、先生と全く一致しておるわけでございます。そういうことで、毎年金教科書の適正な定価改定ということにつきましても努力をしてまいったわけでございまして、図書検定調査審議会におきまして、経営分析等も行いながら定価改定を行ってきているわけでございます。今後ともそういう面での努力を続けてまいりたいと思っております。
  149. 山原健二郎

    ○山原分科員 よろしく頼みます。  それで、今ちょうど九四年度の本予算が審議の真っ最中でありますが、並行して来年度の概算要求の準備段階にも来ているわけですね。教科書価格が余りに低過ぎることは明らかであって、文部省として、教科書作製経費の実態を踏まえた適正価格の設定に向けて価格のアップを計画的に実現すべきだ、そういうふうに私は考えますので、そのために必要な教科書予算の獲得へ向かって努力をすべきであると思います。この点の文部省の決意あるいは政務次官の御見解を伺っておきたいのですが、いかがですか。
  150. 勝木健司

    ○勝木政府委員 文部省といたしましては、引き続き毎年の全教科書の適正な定価改定を図るように、先生のおっしゃる御意見も踏まえまして努力をしてまいりたいと思います。
  151. 山原健二郎

    ○山原分科員 国立大学の授業料の問題について一言質問をいたします。  羽田内閣は公共料金を凍結する方針を打ち出しましたが、凍結期間は年内にすぎないということで、国立大学の授業料値上げは対象にもならないという事態のように思います、まだ十分聞いておりませんけれども。羽田内閣の公共料金値上げの凍結が生活重視の立場から出されているものであって、当面を取り繕う策ではないというのであるならば、年内凍結にとどめず、また、他の公共料金に比べても大幅な値上げが繰り返されてきた国立大学授業料、入学金の値上げこそ凍結すべきだと思います。  この点は、先般文部大臣に対して質問しましたところ、授業料並びに入学金等の値上げが交互に行われることは好ましいこととは思わないというふうな発言もあったわけでございますが、今や世界でも例を見ない高い学費となっているわけでございまして、庶民の家計を著しく圧迫していることはもう政務次官も御承知のとおりと思います。この高い教育費、学費が子供をつくるためらいの大きな要因となっていることは、今度の厚生白書にも指摘をされている点でございまして、この問題についてもぜひ努力をしていただきたいと思います。これらについての御決意を伺いたいと思います。
  152. 勝木健司

    ○勝木政府委員 国立大学の授業料等の学生納付金の改定に当たりましては、従来から、先生御案内のように、国立学校特別会計予算の充実あるいは私立大学との均衡等、諸般の情勢を総合的に勘案して改定してきておるところでございます。  なお、国立大学の授業料につきましては、人材育成あるいは教育の機会均等の確保の観点から、家庭の経済力に余り影響されずに進学できるような水準を維持していく必要があろうかと思います。  四月八日に開催されました物価問題に関する関係閣僚会議におきましては、公共料金についての政府の基本方針が決定をされました。また、五月二十日には「既に政府において決定又は認可が行われたものを除き、本年中はその引上げの実施を行わないもの」として閣議了解をされたところでございます。  国立大学の授業料につきましては、既にこの平成六年度予算案の中で、平成七年度の入学者から改定することを政府において決定しているところでございます。今回の措置の対象にはならず、改定することとなるわけでありますが、今後、基本方針を踏まえつつ、私立大学における状況あるいは社会経済上の諸情勢等を総合的に勘案して対処してまいりたいと思います。
  153. 山原健二郎

    ○山原分科員 例えば文教委員会なんかでも一昨年来随分問題になりまして、この大学予算というのはシーリングの枠を外せ、それがある限りこれ以上改善が難しいという声が出てまいりまして、そういう意味での一定の改善も出てきているわけでございますけれども、学費の問題は、なかなかこれは解決できないネックになっているわけでして、ぜひこれは努力をしていただきたいということを要請しまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  154. 前田武志

    前田主査 これにて山原健二郎君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして文部省所管の質疑は終了いたしました。     —————————————
  155. 前田武志

    前田主査 次に、防衛庁防衛施設庁所管について審査を行います。  まず、概要説明を聴取いたします。東防衛政務次官
  156. 東順治

    ○東(順)政府委員 それでは、平成二年度における防衛庁関係歳出決算につきまして、その概要を御説明いたします。  まず、(組織)防衛本庁の経費につきまして御説明申し上げます。  当初の歳出予定額は三兆七千二百十七億八千六百万円余でありまして、これに政府職員等の平成二年四月以降の給与を改善するため等の予算補正追加額一千八十億七千五百万円余、高空における放射能塵の調査研究のため、科学技術庁から移しかえを受けた額二千二百万円余、南関東地域震災時における自衛隊の災害派遣計画作成の諸元に関する調査等のため、国土庁から移しかえを受けた額六百万円余、南極地域観測事業のため、文部省所管文部本省から移しかえを受けた額三十九億一千七百万円余、前年度からの繰越額三百五億一千六百万円余を加え、既定予算の不用等による予算補正修正減少額百六十四億八千六百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は三兆八千四百七十八億三千九百万円余となります。  この歳出予算現額に対して支出済み歳出額は三兆八千二百四億六千五百万円余、翌年度へ繰り越した額は二百十八億九千八百万円余でありまして、差し引き不用額は五十四億七千五百万円余であります。  次に、(組織)防衛施設庁経費につきまして御説明申し上げます。  当初の歳出予算額は四千三百七十三億六千三百万円余でありまして、これに駐留軍等労務者等の平成二年四月以降の給与を改善するための予算補正追加額四十億四千万円余、前年度からの繰越額二百八十八億五千九百万円余を加え、既定予算の不用等による予算補正修正減少額八億八千九百万円余、防衛施設周辺の障害防止事業等に要する経費として移しかえをした額、農林水産省所管農林水産本省へ七億七千九百万円余、建設省所管建設本省へ十七億五千九百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は四千六百六十八億三千五百万円余となります。  この歳出予算現額に対して支出済み歳出額は四千三百三十八億四千八百万円余、翌年度へ繰り越した額は三百二十三億八千万円余でありまして、差し引き不用額は六億六百万円余であります。  なお、主な事項につきましては、お手元に配付してある資料のとおりでありますが、委員各位のお許しを得まして、御説明を省略させていただきたいと存じます。よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。  次に、平成三年度における防衛庁関係歳出決算につきまして、その概要を御説明いたします。  まず、(組織)防衛本庁の経費につきまして御説明申し上げます。  当初の歳出予算額は三兆九千二百八十四億八千六百万円余でありまして、これに政府職員等の平成三年四月以降の給与を改善するための予算補正追加額六百六十六億四千万円余、高空における放射能塵の調査研究のため、科学技術庁から移しかえを受けた額二千二百万円余、平成三年度総合防災訓練のため、国土庁から移しかえを受けた額百万円余、南極地域観測事業のため、文部省所管文部本省から移しかえを受けた額十六億七千二百万円余、前年度からの繰越額二百十八億九千八百万円余を加え、既定予算の不用等による予算補正修正減少額百六十七億二千万円余を差し引きますと、歳出予算現額は四兆二十億百万円余となります。  この歳出予算現額に対して支出済み歳出額は三兆九千七百六十二億七千八百万円余、翌年度へ繰り越した額は二百二十二億二百万円余でありまして、差し引き不用額は三十五億二千万円余であります。  次に、(組織)防衛施設庁経費につきまして御説明申し上げます。  当初の歳出予算額は四千五百七十三億四千三百万円余でありまして、これに駐留軍等労務者等の平成三年四月以降の給与を改善するための予算補正追加額四十四億七千四百万円余、前年度からの繰越額三百二十三億八千万円余を加え、既定予算の節約による予算補正修正減少額四億五千八百万円余、防衛施設周辺の障害防止事業等に要する経費として移しかえをした額、農林水産省所管農林水産本省へ七億五千五百万円余、建設省所管建設本省へ十五億七千二百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は四千九百十四億一千二百万円余となります。  この歳出予算現額に対して支出済み歳出額は四千六百三十六億二千百万円余、翌年度へ繰り越した額は二百六十七億五千六百万円余でありまして、差し引き不用額は十億三千四百万円余であります。  なお、主な事項につきましては、お手元に配付してある資料のとおりでありますが、委員各位のお許しを得まして、御説明を省略させていただきたいと存じます。よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。
  157. 前田武志

    前田主査 次に、会計検査院検査概要説明を聴取いたします。会計検査院森下第二局長
  158. 森下伸昭

    森下会計検査院説明員 平成二年度防衛庁決算につきまして、検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは 本院の指摘に基づき、当局において改善処置を講じた事項一件であります。  これは、防音工事により設置された設備を維持するための補助事業に関するものであります。  防衛施設庁におきまして、自衛隊等の航空機による騒音防止のために小中学校に設置された換気設備の電気料金等を補助する事業において、飛行場の運用形態の変更により騒音が低減したため、設備が使用されていなかったり使用時間が著しく減少していたりしているのに、使用実績に基づいた補助金の交付が行われておりませんでした。これについて指摘したところ、改善処置がとられたものであります。  引き続きまして、平成三年度防衛庁決算につきまして、検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律政令もしくは予算に違反し、または不当と認めた事項一件であります。  これは、海上自衛隊硫黄島航空基地隊におきまして、部外者に対して供給した生活用水道水の使用料金の徴収に当たり、給水単価の適用を誤ったなどのため徴収額が不足していたものであります。  以上、簡単でございますが、説明を終わります。
  159. 前田武志

    前田主査 ただいまの会計検査院指摘に基づき講じた措置について、説明を聴取いたします。東防衛政務次官
  160. 東順治

    ○東(順)政府委員 平成二年度決算防衛施設庁について、会計検査院から御指摘をいただきました件について申し上げます。  平成二年度の決算検査報告において掲記されております処置済み事項につきましては、会計検査院の御指摘に基づき、平成三年十一月に、補助金の交付が換気設備等の使用実績に応じた適切なものとなるよう防音事業関連維持費補助金交付要綱 を改め、同年十二月から適用することとするなどの処置を講じたところであります。  今後とも補助事業のより適切な執行について努力する所存であります。  引き続き、平成三年度決算防衛庁について、会計検査院から御指摘をいただきました件について申し上げます。  防衛庁といたしましては、常に適正な会計処理に努めてきたところでありますが、平成三年度の決算検査報告において、歳入にかかわる事項につきまして会計検査院から御指摘を受けましたことは、まことに遺憾に存じます。  これにつきましては、既に徴収不足額の徴収決定を完了し、全額収納済みとなっているところでありますが、今後、このようなことのないよう適正な事務処理に十分注意する所存であります。
  161. 前田武志

    前田主査 この際、お諮りいたします。  お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明はこれを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  162. 前田武志

    前田主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————    平成二年度防衛庁関係歳出決算に関する    概要説明                 防 衛 庁  平成二年度における防衛庁関係歳出決算につきまして、その概要を御説明いたします。  まず、(組織)防衛本庁の経費こつきまして御説明申し上げます。  当初の歳出予算額は三兆七千二百十七億八千六百万円余でありまして、これに政府職員等の平成二年四月以降の給与を改善するため等の予算補正追加額一千八十億七千五百万円余、高空における放射能塵の調査研究のため、科学技術庁から移替えを受けた額二千二百万円余、南関東地域震災時における自衛隊の災害派遣計画作成の諸元に関する調査等のため、国土庁から移替えを受けた額六百万円余、南極地域観測事業のため、文部省所管文部本省から移替えを受けた額三十九億一千七百万円余、前年度からの繰越額三百五億一千六百万円余を加え、既定予算の不用等による予算補正修正減少額百六十四億八千六百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は三兆八千四百七十八億三千九百万円余となります。  この歳出予算現額に対して支出済歳出額は三兆八千二百四億六千五百万円余、翌年度へ繰り越した額は二百十八億九千八百万円余でありまして、差し引き不用額は五十四億七千五百万円余であります。  平成二年度の予算の執行に当たっては、「防衛計画の大綱」に定める防衛力の水準の達成を図ることを目標とする「中期防衛力整備計画」の最終年度として計上された予算を効率的に使用して計画を着実に実施し、実質的な防衛力の整備を進めることを主眼といたしました。  以下、陸・海・空各自衛隊別にその主な内容を申し上げます。  一 陸上自衛隊につきましては、七四式戦車五十六両、八九式装甲戦闘車八両、七三式装甲車二十三両を取得し、新たに平成三年度以降取得予定の九〇式戦車三十両、八九式装甲戦闘車九両、七三式装甲車二十四両の購入契約をいたしました。   また、航空機は、対戦車ヘリコプター七機、観測ヘリコプター十一機、多用途ヘリコプター十機、輸送ヘリコプター五機合わせて三十三機を取得し、新たに平成三年度以降取得予定の対戦車ヘリコプター八機、観測ヘリコプター十五機、多用途ヘリコプター八機、輸送ヘリコプター五機合わせて三十六機の購入契約をいたしました。  二 海上自衛隊につきましては、昭和六十一年度計画の護衛艦一隻、昭和六十二年度計画の護衛艦二隻、昭和六十一年度計画の潜水艦一隻、昭和六十二年度計画の潜水艦一隻、昭和六十三年度計画の中型掃海艇二隻、平成元年度計画の音響測定艦一隻、平成元年度計画の支援船三隻、平成二年度計画及び調達に係る支援船一隻合わせて十二隻を取得し、新たに平成三年度以降に竣工予定の護衛艦一隻、潜水艦一隻、掃海艦一隻、中型掃海艇一隻、ミサイル艇二隻、輸送艇一隻、音響測定艦一隻、支援船五隻合わせて十三隻の建造契約をいたしました。   また、航空機は、対潜哨戒機九機、救難飛行艇一機、訓練支援機一機、電子戦データ収集機一機、連絡機二機、初級操縦練習機二機、掃海ヘリコプター二機、初級操縦練習ヘリコプター二機、合わせて二十機を取得し、新たに平成三年度以降取得予定の対潜哨戒機八機、連絡機二機、初級操縦練習機七機、対潜ヘリコプター十一機、合わせて二十八機の購入契約をいたしました。  三 航空自衛隊につきましては、要撃戦闘機十二機、輸送機二機、中等練習機二十機、輸送ヘリコプター三機、救難ヘリコプター三機合わせて四十機を取得し、新たに平成三年度以降取得予定の要撃戦闘機十機、早期警戒機二機、中等練習機十九機、飛行点検機一機、輸送ヘリコプター二機、救難ヘリコプター二機合わせて三十六機の購入契約をいたしました。   また、地対空誘導弾ペトリオットは、五FUを取得し、新たに平成三年度以降取得予定の一個高射群分の購入契約をいたしました。平成二年度の防衛本庁の職員の定員は、自衛官二十七万三千八百一人、自衛官以外の職員二万二千五百六十一人でありまして、これを前年度の定員に比べますと、自衛官については同数であり、自衛官以外の職員について百五十人の減員となっております。  また、予備自衛官の員数は、前年度と同数の四万七千九百人であります。  次に、翌年度への繰越額二百十八億九千八百万円余は、計画及び設計に関する諸条件等のため、工事等が遅延したことによるものであります。  また、不用額五十四億七千五百万円余は、地元との調整の難航等により、施設整備費を要することが少なかったこと等のため生じたものであります。  続いて、(組織)防衛施設庁経費につきまして御説明申し上げます。  当初の歳出予算額は四千三百七十三億六千三百万円余でありまして、これに駐留軍等労務者等の平成二年四月以降の給与を改善するための予算補正追加額四十億四千万円余、前年度からの繰越額二百八十八億五千九百万円余を加え、既定予算の不用等による予算補正修正減少額八億八千九百万円余、防衛施設周辺の障害防止事業等に要する経費として移替えをした額、農林水産省所管農林水産本省へ七億七千九百万円余、建設省所管建設本省へ十七億五千九百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は四千六百六十八億三千五百万円余となります。  この歳出予算現額に対して支出済歳出額は四千三百三十八億四千八百万円余、翌年度へ繰り越した額は三百二十三億八千万円余でありまして、差し引き不用額は六億六百万円余であります。  支出済歳出額の主なものは、調達労務管理費につきましては、アメリカ合衆国軍隊等が使用する駐留軍等労務者の離職者対策、福祉対策、従業員対策等に要した経費七百三十一億五千八百万円余、施設運営等関連諸費につきましては、「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」等に基づき、自衛隊施設及び「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」等に基づく提供施設の維持運営等に関連し必要な土地の購入及び借上げ、施設の整備、各種の補償、障害及び騒音の防止措置、飛行場等周辺の移転措置、民生安定施設の助成措置等に要した経費三千三百十九億六百万円余、提供施設移設整備費につきましては、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国 における合衆国軍隊の地位に関する協定」による日米間の合意に基づき、現在提供中の施設及び区域の返還を受けるため、当該施設及び区域を集約移転するのに要した経費三億九千四百万円余等であります。  平成二年度の防衛施設庁の職員の定員は、三千三百六十四人でありまして、これを前年度の職員の定員に比べますと、十三人の減員となっております。  次に、翌年度への繰越額三百二十三億八千万円余は、計画及び設計に関する諸条件、アメリカ合衆国軍隊等の事情、用地の関係等のため工事等が遅延したことによるものであります。  また、不用額六億六百万円余は、精算の結果等により、教育施設等騒音防止対策事業費補助金を要することが少なかったこと等のため生じたものであります。  以上をもって、平成二年度における防衛庁関係歳出決算概要説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。     …………………………………    平成二年度決算防衛庁についての検査の概    要に関する主管局長説明                 会計検査院  平成二年度防衛庁決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項一件であります。  これは、防音工事により設置された設備を維持するための補助事業に関するものであります。  防衛施設庁では、自衛隊等の航空機騒音を防止し又は軽減するための防音工事が実施された小中学校等を所管する市町村等に、防音事業関連維持費補助金を交付しています。この補助金は、防音工事の一環として小中学校等に設置された喚気設備等を授業時間中に使用したことにより必要となった電気料金等を補助の対象とするものであります。  そして、電気料金に関する補助金の額は、一定の限度内で、各小中学校等に係る年間支払電気料金を、当該学校のすべての電気設備に占める換気設備等の容量の割合により按分した額に補助率三分の二を乗じたものとなっています。  本院が、自衛隊等が使用する飛行場のうち、飛行場の運用形態が変更された立川飛行場周辺の十市に所在する小中学校に設置された換気設備等の使用状況などについて調査いたしましたところ、換気設備が故障したのにそのまま放置していて使用していないものや、年間使用時間が著しく少ないものが相当数見受けられました。  このような状況となっているのに、換気設備等の使用実績によることなく、換気設備等の容量の割合を基に算定する方法により所定の補助金の交付を行っており、適切とは認められませんでした。  このような事態が生じていたのは、防衛施設庁において、補助金の交付要綱に航空機騒音の低減等により換気設備等の使用時間が減少した場合における取扱いを定めていなかったことなどによるものと認められましたので、当局の見解をただしましたところ、防衛施設庁では、補助金の交付が換気設備等の使用実績に応じた適切なものとなるよう交付要綱を改めるなどの処置を講じたものであります。  以上、簡単でございますが説明を終わります。     —————————————    平成三年度防衛庁関係歳出決算に関する    概要説明                防 衛 庁  平成三年度における防衛庁関係歳出決算につきまして、その概要を御説明いたします。  まず、(組織)防衛本庁の経費につきまして御説明申し上げます。  当初の歳出予算額は三兆九千二百八十四億八千六百万円余でありまして、これに政府職員等の平成三年四月以降の給与を改善するための予算補正追加額六百六十六億四千万円余、高空における放射能塵の調査研究のため、科学技術庁から移替えを受けた額二千二百万円余、平成三年度総合防災訓練のため、国土庁から移替えを受けた額百万円余、南極地域観測事業のため、文部省所管文部本省から移替えを受けた額十六億七千二百万円余、前年度からの繰越額二百十八億九千八百万円余を加え、既定予算の不用等による予算補正修正減少額百六十七億二千万円余を差し引きますと、歳出予算現額は四兆二十億百万円余となります。  この歳出予算現額に対して支出済歳出額は三兆九千七百六十二億七千八百万円余、翌年度へ繰り越した額は二百二十二億二百万円余でありまして、差し引き不用額は三十五億二千万円余であります。  平成三年度の予算の執行に当たっては、「防衛計画の大綱」に定める防衛力の水準の維持に配意して閣議決定された「中期防衛力整備計画(平成三年度〜平成七年度)」の初年度として計上された予算を効率的に使用して計画を着実に実施し、実質的な防衛力の整備を進めることを主眼といたしました。  以下、陸・海・空各自衛隊別にその主な内容を申し上げます。  一 陸上自衛隊につきましては、九〇式戦車三十両、八九式装甲戦闘車九両、七三式装甲車二十四両を取得し、新たに平成四年度以降取得予定の九〇式戦車二十六両、八九式装甲戦闘車九両、七三式装甲車九両の購入契約をいたしました。   また、航空機は、対戦車ヘリコプターAH−1S九機、観測ヘリコプターOH−6D十五機、多用途ヘリコプターUH−1H八機、輸送ヘリコプターCH147J五機合わせて三十七機を取得し、新たに平成四年度以降取得予定の対戦車ヘリコプターAH−1S六機、観測ヘリコプターOH−6D九機、多用途ヘリコプターUH−1J十二機、輸送ヘリコプターCH−47J三機、練習ヘリコプターOH−6D五機合わせて三十五機の購入契約をいたしました。  二 海上自衛隊につきましては、昭和六十三年度計画の潜水艦二千四百五十トン型一隻、平成二年度計画の音響測定艦二千八百五十トン型一隻、平成二年度計画の輸送艇四百二十トン型一隻、平成二年度計画の支援船五隻、平成三年度計画及び調達に係る支援船五隻合わせて十三隻を取得し、新たに平成四年度以降に竣工予定の護衛艦七千二百トン型一隻、護衛艦四千四百トン型一隻、潜水艦二千四百トン型一隻、掃海艇四百九十トン型一隻 支援船八隻合わせて十二隻の建造契約をいたしました。   また、航空機は、対潜哨戒機P13C九機、訓練支援機U−36A一機、電子戦データ収集機EP13一機、連絡機LC190二機、初級操縦練習機T−5七機、対潜ヘリコプターSH160J十二機、救難ヘリコプターUH−60J三機合わせて三十五機を取得し、新たに平成四年度以降取得予定の対潜哨戒機P−3C二機、救難飛行艇US−1A一機、試験評価機UP−3C一機、初級操縦練習機T−5九機、対潜ヘリコプターSH160J五機、掃海ヘリコプターMH153E一機、救難ヘリコプターUH−60J三機合わせて二十二機の購入契約をいたしました。  三 航空自衛隊につきましては、要撃戦闘機F115十二機、中等練習機T14二十機、輸送へリコプターCH147J二機、救難ヘリコプターUH−60J二機合わせて三十六機を取得し、新たに平成四年度以降取得予定の要撃戦闘機F−15八機、中等練習機T−4二十一機、飛行点検機U−125一機、輸送ヘリコプターCH147J一機、救難ヘリコプターUH−60J四機合わせて三十五機の購入契約をいたしました。   また、地対空誘導弾ペトリオットは、四FUを取得し、新たに平成四年度以降取得予定の一個高射群分の購入契約をいたしました。平成三年度の防衛本庁の職員の定員は、自衛官 二十七万三千八百一人、自衛官以外の職員二万二千四百三人でありまして、これを前年度の定員に 比べますと、自衛官については、同数であり、自衛官以外の職員について百五十八人の減員となっております。  また、予備自衛官の員数は、前年度と同数の四万七千九百人であります。  次に、翌年度への繰越額二百二十二億二百万円余は、計画及び設計に関する諸条件等のため、工事等が遅延したことによるものであります。  また、不用額三十五億二千万円余は、期末手当が少なかったこと等により職員諸手当を要することが少なかったこと等のため生じたものであります。  続いて、(組織)防衛施設庁経費につきまして御説明申し上げます。  当初の歳出予算額は四千五百七十三億四千三百万円余でありまして、これに駐留軍等労務者等の平成三年四月以降の給与を改善するための予算補正追加額四十四億七千四百万円余、前年度からの繰越額三百二十三億八千万円余を加え、既定予算の節約による予算補正修正減少額四億五千八百万円余、防衛施設周辺の障害防止事業等に要する経費として移替えをした額、農林水産省所管農林水産本省へ七億五千五百万円余、建設省所管建設本省へ十五億七千二百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は四千九百十四億一千二百万円余となります。  この歳出予算現額に対して支出済歳出額は四千六百三十六億二千百万円余、翌年度へ繰り越した額は二百六十七億五千六百万円余でありまして、差し引き不用額は十億三千四百万円余であります。  支出済歳出額の主なものは、調達労務管理費につきましては、アメリカ合衆国軍隊等が使用する駐留軍等労務者の離職者対策、福祉対策、従業員対策等に要した経費八百五十一億一千二百万円余、施設運営等関連諸費につきましては、「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」等に基づき、自衛隊施設及び「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」等に基づく提供施設の維持運営等に関連し必要な土地の購入及び借上げ、施設の整備、各種の補償、障害及び騒音の防止措置、飛行場等周辺の移転措置、民生安定施設の助成措置等に要した経費三千四百八十六億四千万円余、提供施設移設整備費につきましては、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」による日米間の合意に基づき、現在提供中の施設及び区域の返還を受けるため、当該施設及び区域を集約移転するのに要した経費三億四千万円余等であります。  平成三年度の防衛施設庁の職員の定員は、三千三百五十一人でありまして、これを前年度の職員の定員に比べますと、十三人の減員となっております。  次に、翌年度への繰越額二百六十七億五千六百万円余は、計画及び設計に関する諸条件、アメリカ合衆国軍隊等の事情、用地の関係等のため工事等が遅延したことによるものであります。  また、不用額十億三千四百万円余は、土地使用関連補償等が少なかったので、施設運営等関連補償費を要することが少なかったこと等のため生じたものであります。  以上をもって、平成三年度における防衛庁関係歳出決算概要説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。     …………………………………    平成三年度決算防衛庁についての検査の概    要に関する主管局長説明                 会計検査院  平成三年度防衛庁決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項一件であります。  これは、部外者に対して供給した生活用水道水の使用料金の徴収に当たり、給水単価の適用を誤ったなどのため徴収額が不足していたものであります。  海上自衛隊硫黄島航空基地隊では、硫黄島内で建設工事を実施している建設業者に対し生活用水道水を供給しております。検査したところ、同基地隊は元年度の使用料金の算定に当たり、元年四月から九月分の使用料金について、その給水単価が決定されるまでの間、暫定的に昭和六十三年度の給水単価を適用して算定しておりましたが、元年度の給水単価が決定された後も、追加徴収措置を執っておらず、また、平成二年四月から四年五月までの分の使用料金について、本来適用すべき二年度及び三年度の給水単価を適用せず、誤って元年度の給水単価を適用していて、使用料金の徴収額が不足していたというものであります。  以上、簡単でございますが説明を終わります。
  163. 前田武志

    前田主査 以上をもちまして防衛庁防衛施設庁所管の説明は終わりました。     —————————————
  164. 前田武志

    前田主査 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉大和君。
  165. 稲葉大和

    稲葉分科員 私は、自由民主党を代表して、政府並びに東政務次官に、今、日本国において世界各国から要求されております国際貢献、それに関連する国際貢献に派遣されました自衛隊、この自衛隊の憲法上の位置づけあるいは合憲性につきまして若干御質問申し上げたいと存じます。よろしく御指導いただきとう存じます。  既に世界各国の中で今東西の冷戦状態が解消し、しかしその反面、世界各国で逆に局地的な紛争が頻繁に勃発している。しかし、あるところでは停戦が完了し、そして自衛隊に対し、あるいは正確に言うならば日本国に対しまして、国際平和協力活動の要請を受けて、自衛隊の隊員がカンボジアあるいはモザンビークに出かけている。この現状をかんがみますときに、果たして世界からの要求だからといって簡単に自衛隊の海外に対する派遣が許されるものかどうか、その辺を少しく御説明願いたいと思うわけであります。  話が大変大上段になるかもしれませんが、まだまだ憲法九条の解釈において自衛隊が明確な形で合憲的な存在であるかどうか、ここは国民的な合意にまでは高まっていないのではないか、そのように私は考えておりますので、政務次官はこの自衛隊の存在が憲法九条から見て合憲性のあるものかどうか、そこのところをお答えいただけませんでしょうか。
  166. 東順治

    ○東(順)政府委員 お答えさせていただきます。  この憲法九条は、我が国が主権国として持つ固有の自衛権、これまでも否定したものではない。したがいまして、この自衛権の行使を裏づける自衛のための必要最小限の実力を保持するということは、この憲法第九条の禁止をしているところではない、このように考えます。したがいまして、自衛隊は我が国を防衛するための必要最小限度内の実力組織である、このような観点から憲法に違反するものではない、このように考えるところでございます。
  167. 稲葉大和

    稲葉分科員 今のお答えは、かつて自由民主党が政府・与党を構成していたときの自衛隊に対する見解を引き継がれたものと私は受けとめているのであります。  しかし、一般国民の間で、私も含めてでありますが、果たして自衛隊が必要最小限度の抵抗をするだけの実力を持った組織体、言ってみれば非常に抽象的であって、明確性を欠くそういう定義づけなわけでありますが、実際私たちの感覚の中では、自衛隊はもう既に戦力ではないか、あるいは軍隊ではないか、そのような素直な認識を持って受けとめておられる方が少なからずおられるわけであります。であるからこそ、九条と自衛隊の問題について、自衛隊そのものが合憲性について若干疑わしいのではないか、そういった反論を持っておる方もおられるわけでございます。  そういう方々に対する明確な説明の仕方とし て、私たちももっと研究しなければならないかもしれませんが、もう少し突っ込んだ形で、自衛隊は感覚的にあるものだからしようがないとか、自衛隊の今まで果たしてきた役割、すなわち災害救助活動とか、言ってみればボランティアに近い活動について、これはもう欠かすことができない存在だ、あるいは、これをもう防衛庁あるいは国家の組織の中から解消していくには難しい組織体だからというような、何といいますか消極的な肯定論ではなくて、積極的な存在、肯定論に転換していくことができないものだろうか。そのことを私、逆に求めていきたいものですから、もう少し突っ込んだ御説明がいただきたいと思うわけであります。これは御答弁いただかなくて結構であります。  あと、自衛隊に関連しまして、最小限度の侵略行為に対する自己防衛本能を持った実力組織体、そういうことでありますと、当然自衛隊の行動範囲、また守備範囲というものが限られてくるはずなのでありますから、今現在自衛隊に望まれている国際協力活動、すなわちPKO活動について、端的に言うならば自衛隊は海外に出ていってはならない、そのように九条の解釈上限定的に自衛隊を位置づけられているはずなのであります。それにもかかわらず自衛隊がカンボジアあるいはモザンビークに、端的に言いまして出動しているのはどういう根拠に基づくものなんでしょうか。
  168. 東順治

    ○東(順)政府委員 ともすれば海外派遣ということが海外派兵というようなことと混同して受け取られる節があるわけでございますけれども、海外派兵につきましては、一般的に言って、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣するというようなことが定義づけられるわけでございまして、これは自衛のための必要最小限度を超えるというものでございまして、当然憲法上許されないものである、このように思うわけでございます。  他方、国際平和協力法に基づきます自衛隊が実施する国際平和協力業務、こういうものは武力行使を目的としているものではないということは言うまでもないことでございます。したがって、その際の武器の使用というものは、我が国の要員の生命等の防護のために必要最小限度のものに限られるということで、我が国が憲法第九条で禁じられている武力行使を行うとの評価を受けることではない、このように思うわけでございます。  したがって、国際平和協力業務の実施のための自衛隊の部隊が海外に派遣されたとしても、これは憲法上禁じられた海外派兵には当たらない、このように思う次第でございます。むしろ国際貢献のために、人的貢献等を通しまして、より積極的に我が国も国際社会の中における国際国家としての責任から世界平和のために貢献をしていく、そういうとうとい、また大切な役務というものが私はPKO活動等の国際平和協力業務である、このように思う次第でございます。
  169. 稲葉大和

    稲葉分科員 私とて自衛隊の存在を否定するものではないのですけれども、ただ、今政務次官の御説明による、自衛隊というものは外国からの侵略に対する防衛本能に基づいた実力組織と、言葉は正確でありませんが、そういった定義づけと同時に、海外派兵ではない、いわゆる派遣なのだという御説明は、依然としてかつての政府からの踏襲であるわけであります。  つまり、日本国民として世界の平和に協力したい、あるいは貢献させていただきたい、そういうことをすることによって世界平和を希求する日本国民が世界の中において名誉ある地位を占めたい、まさに前文に規定されているとおりの行動ができるわけでありますから、むしろその事実関係を大事にするがゆえに、事実関係というか、今自衛隊が貢献しているその貢献度、これを肯定するがゆえに、逆に不明確な、海外派兵ではない、派遣というような言葉を使った説明の仕方、あるいは自衛隊は侵略組織ではない、侵略行為に対する防衛のための最小限度の実力の組織体であるという、私たちもそうだったわけで、これまた追及することは心苦しいところなんですけれども、やはり今ここではっきり自衛隊という存在は実態はどうなのか、そこまで深く認識を改めて、それならば自衛隊そのものが憲法上保障される立場に、保障される地位にまで高めてやった方が自衛隊員としても誇りを持って行動できるでありましょうし、私たちも一国民として国の防衛に対する認識というものがもっと深く改まっていくのではないか。  そういった考えを持っているものですから、決して軍国主義に走るとか軍事大国を目指すとか、そういうもくろみを持って言うわけではありませんけれども、この際はっきりと、憲法九条についての規定の仕方とか、あるいは国際協力法とか自衛隊法とか、関連の法案について見直すことも念頭に置いていただけないものかということを若干政務次官にお尋ねしたいと思います。よろしくお願いします。
  170. 東順治

    ○東(順)政府委員 委員御指摘の思い、お気持ちというのは私も十分承知しているわけでございます。  私も、前政権からの云々ということよりも、以前から、当然のごとくこの自衛隊というものは、明確に主権国家として自衛権を有するということは当然のことでございまして、また、その自衛隊が海外の平和協力業務のために積極的に出ていく、そしてしっかりと国際貢献をするということに対しましては、これはもっと大いにやっていくべきであるという考え方に立つ者の一人でございます。  その上で、改めて確認をさせていただきたいのですけれども、当然主権国として持つ固有の自衛権というものは、これは憲法第九条でこれを否定したものではないわけでございまして、繰り返しになりますけれども、自衛のための必要最小限度の実力を保持するということは、これは主権国家として当たり前のことでございます。  そういう意味で、明確に憲法に合致した存在、これが自衛隊という存在である。そして、我が国を防衛するための必要最小限度内の実力組織という位置づけでもって明確に位置づけられるのであろう、このように思う次第でございます。
  171. 稲葉大和

    稲葉分科員 大変くどいようで申しわけないのですけれども もうそれぞれ九条についてはそらんじておられるぐらい御理解されておられることと存じますが、素直に九条一項、二項を通読しますと、一項では、戦争放棄だ、自衛戦争も含めた一切の戦争を放棄するんだ。そして第二項で「前項の目的を達するため、」と置かれておるわけでありまして、その「前項の目的を達するため、」というのは、いかなる戦争をも放棄するために「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」そう規定しているものだと思うのですね。  そうしますと、今の自衛隊の組織、そしてまた実力からしまして、これは世界で何番目の軍事力があるのかどうか私は定かではありませんけれども、決して今までの説明の最小限度の抵抗力あるいは最小限度侵略行為に反発する自衛のための実力組織体だ、そういう定義づけには当てはまらないのではないか。現実に日米安保条約のもとにアメリカとの共同演習が行われたり、またつい先ごろは韓国との、これは安保条約上日本と韓国はできないということになっているそうですけれども、しかし、事実上三国の合同演習が行われている。  この実態を見ますと、軍隊とは言えないかもしれませんけれども、かなり強力な、戦力に近い組織にまで自衛隊の存在というものが国民の間でも考えられているのではないか。だとしたならば、九条を無理して解釈をしないで、自衛隊の実態を認めるような方向づけをもって九条の見直しを図っていかれたらいかがなものかと、あえて問わせていただきます。
  172. 宝珠山昇

    ○宝珠山政府委員 憲法の解釈につきましては、先ほど来政務次官からお答えしているところでございます。  先生の御指摘の憲法の否定する戦力に当たるのではないかという点につきまして申し上げますと、この判定というのは、御指摘のように抽象的 なものでございますので、いろいろの意見があるということはございます。これにつきましては、国権の最高機関であります両議院において御審議の上決定されるべきものというのが私どもの理解でございます。  この点について申し上げますと、防衛庁設置法及び自衛隊法によりまして、部隊の編成、規模、それから行動する場合の要件などが厳重に規定されているところでございます。このような法のもとにあります現在の自衛隊というのは、憲法九条が否定している戦力を超えるものではないということでございます。  しかし、防衛をするというものと、あるいは侵略をする軍隊があると仮定いたしますと、それとの間にどういう相違があるかということになりますと、国会でも長い間にわたって論議がございますように、核兵器でございますとか大型の空母でございますとか、そういう専ら相手国の領土あるいは施設といったものを破壊するということのために使われるようなものというのは、侵略的なものであり、憲法の許容するものではないということを申し上げております。この間の自衛力といいますか防衛力といいますか、憲法の禁じていないところの力というものとの間の差というのは、なかなか一義的には決め切れないのであろう。  そういうことで、法律によって規定し、あるいはこういう委員会を通じて常々チェックをされていくことによって、憲法の範囲内の防衛力というものが維持されていき、理解を深められていくものかと思っております。
  173. 稲葉大和

    稲葉分科員 ちょっとわかりにくくて申しわけないのですけれども、要するに、私たちの感覚からしましても、またその所属している自衛隊員自身からしましても、自衛隊という存在が果たして今国民の間に、何といいますか、受け入れられる存在かどうか。  要は、よくいろいろなアンケートの中に出てきますが、自衛隊に求められるものは何か。そういった場合に、アンケートのポイントの一番高いのは、災害救助活動とかそういったいわば災害復旧、災害救助。  本来私たちは、自衛隊というのはそういった任務のために組織された実力のある組織体というふうな認識はしていないはずなんです。私はそう受けとめております。ただ、憲法九条の中で自衛隊が、あるいは極論すれば軍隊だとか、あるいは近代戦争を遂行する能力のある戦力とか、そういった認定を受けたくないがために、自衛隊の主務活動というのが、本来の国家防衛のための最小限度の実力行使に求められないで災害救助活動に求められていってしまうということは、私どもにとりまして大変遺憾であります。  また、自衛隊員御自身にとりましても、自分は国の防衛のために自衛隊員として誇りを持って活動しているのだという認識、その意志を逆に阻喪するものではないか。そういう危惧を抱くものですから、もっとはっきりと、明確な定義づけなりあるいは自衛隊の地位を向上させるような方策をとっていただけないものだろうか。  そういった、いわば私は皆様方を責める立場というよりも、応援団の意味をもって御質問しているわけでありまして、ぜひともここのところはもう少し前向きに発展的に取り組んでいただきたい。そのことを願って、次の質問に移らせていただきます。  先ほども申し上げましたように、今自衛隊の国における存在意義というのは大変貴重なものがあるわけでありまして、私たちは、果たしてその自衛隊が自衛隊として十分な活動をし得るだけの予算措置というものが講ぜられているのかどうか、そこが一番気になるところであります。余りに超軍事大国化されることは拒絶しなければなりませんけれども、最小限度の実力行使の組織体としての活動を十二分に賄えるだけの予算措置が講じられているものかどうか、そこのところをお尋ねしたいと思いますが、この平成六年度の一般会計の中で、防衛庁が占める予算の額と割合というのはどのぐらいなものになっているのか、ちょっと教えてください。
  174. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 今御審議いただいております平成六年度の一般会計歳出予算関係で申し上げますと、その中に占めます防衛関係費の割合は約六・四%でございます。金額は四兆六千八百三十五億円でございまして、一般会計歳出予算総額が七十三兆八百十七億円、そういう額のもとでの比率でございます。
  175. 稲葉大和

    稲葉分科員 私、全体を見渡してなくて恐縮なんですが、先ほども申し上げましたように、確かに今東西冷戦は解消されたとはいえ、まだまだ局地的な紛争、さらには、今一番私たちが心配しております北朝鮮の核疑惑問題につきまして、大変な心配をもたらされているわけであります。  そういう点を勘案しましても、私たちは、決して防衛費が突出することを望むわけではありませんけれども、少なくとも一億二千万国民の安寧のためにもう少し防衛庁予算の割合が多くなれれば、そう願いながら、また私自身がそういう応援団になれれば、そう思っているわけであります。  その防衛関係予算の中で、それと同時に一番今私たちが求めているのは、決して紛争を解決するための自衛隊という存在だけでなくて、やはり先ほど申し上げましたPKO活動における自衛隊。世界から日本の自衛隊に対する、国際平和貢献の自衛隊の活動に対する感謝の気持ちがかなり強く出されてきておりますが、今まで自衛隊がPKO活動として海外に派遣されておりましたカンボジア並びにモザンビークにつきまして、カンボジアに関するPKO活動、これは一概にまとめて数字ではあらわされないものかもしれませんけれども、大ざっぱなところでよろしいですから、カンボジアにおけるPKO活動にかかった費用、これをちょっと教えてください。     〔主査退席、楢崎主査代理着席〕
  176. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 カンボジアヘの施設大隊等の派遣にかかりました経費でございますけれども、平成四年度におきまして約七十五億円を要しております。それから、平成五年度におきましては約二十九億円を予算措置いたしたところでございます。     〔楢崎主査代理退席、主査着席〕
  177. 稲葉大和

    稲葉分科員 およそ百億の支出がされたわけでありますが、カンボジアにおきましては六百人に及ぶ自衛隊員の活動があったわけでありまして、果たしてこの百億で十二分な活動ができたかどうか、若干疑問視するところがあります。  と同時に、今モザンビークで活動中の自衛隊の隊員、施設要員五人以下四十八名、この五十三名の実態について、カンボジアの現状よりもかなり厳しい条件下にさらされて活動をされておられるという実態を承っております。  つい先般も、駐日モザンビーク大使、ジャモ大使から、モザンビークにおける自衛隊の活動について大変日本国に感謝の意を表明された経緯があります。と同時に、日本の隊員が非常にまじめなものですから、他の国の隊員から、自分たちはサボタージュしても日本の自衛隊がやってくれる、そんなことも聞いております。結局しわ寄せが日本の自衛隊員に寄せられてきてしまいますので、もう少しその実態を把握されながら、要するに政府の方々、あるいは現場に慰問することができるならばやっていただきたい。  あと、隊員の家族のことにつきましても、ヨーロッパからの隊員の家族は頻繁に現場に来ることができるけれども、日本の隊員の家族はなかなか現場に来れない、また隊員自身が日本になかなか帰れない、そういった実態がある。と同時に、国際電話もなかなかかけづらくなっている。そのことを承っております。  でありますから、もし可能であるならば、もし隊員の家族あるいは隊員が望むのであるならば、羽田さんが外国へ行くときばかり政府専用機を使うのではなくて、自衛隊員が一時帰国されるときとか、あるいは隊員の家族がモザンビークにお父さんに会いに行くときにその政府専用機が使えるようになるとか、そのぐらいの温かい御配慮をしていただければ、あの灼熱地獄で働いておられる 自衛隊員の士気も大いに鼓舞されるでありましょうし、と同時に、日本国を代表する国際平和協力部隊である自分としての誇りを高めてもらえるものと思っておりますので、そこのところをひとつ御検討いただけないものか。どなたでも結構ですから、ちょっと御答弁ください。
  178. 伊藤康成

    ○伊藤説明員 ただいま先生御指摘のように、モザンビークの場合は、例えば天幕で生活をしなければいけない。これはモザンビークの平和協力隊全体のいわば方針でございますので、そういうような生活を強いられているとか、もちろん今御指摘のような、大変気候が厳しいといったようなところで努力をしていただいているということは御指摘のとおりでございます。  ただ、幾つか先生御指摘いただきました、例えば政府専用機の問題等でございますが、この辺につきましても、今の制度上は、国の予算でもって家族を慰問に出すというようなことはなかなかできない仕組みになっております。そういうことで、私どもできるだけ現地の人たちに仕事をしやすいようにしておるつもりでございますが、幾つかのそういう制約があるということでございます。  そういうことで、特に家族に関しましては、各種の相談窓口を設置いたしますとか、あるいは派遣部隊の近況とか現地の各種の情報をきめ細かくこちらの留守家族の方にお知らせする、あるいはまた新聞、雑誌等をいろいろお送りするというようなことでできるだけのことをやっておりますが、引き続き努力を続けてまいりたいと存じます。
  179. 稲葉大和

    稲葉分科員 今現在ある状態を極力改善できるように御尽力いただきたいことをお願い申し上げまして、私の質問を終了させていただきます。ありがとうございました。
  180. 前田武志

    前田主査 これにて稲葉大和君の質疑は終了いたしました。  次に、矢島恒夫君。
  181. 矢島恒夫

    矢島分科員 私は、航空自衛隊入間基地、米軍横田基地及び米軍所沢通信基地、これらの問題に関しまして、政務次官、そして防衛庁防衛施設庁、それぞれに質問をしたいと思います。  まず最初に、防衛庁にお聞きしたいと思います。  基地周辺の住民の皆さん方に対する騒音防止の措置というものをぜひ強化していただきたい、こういうことでありますけれども、防衛庁は、入間基地に関しましては、離着陸の時間は午前八時から午後五時まで、また、夜間訓練につきましては日没後一時間半、毎週月、火、水、この曜日にやる、こういうことを住民に約束していると思うわけです。関係する自治体からも、この問題では、基地周辺住民の騒音公害、こういう問題からその軽減をするために、夜間、早朝あるいは日曜、祝祭日、こういうときの飛行はぜひ中止していただきたい、こういう要請も出ているのではないかと思います。  ところが、埼玉県の環境部で調査しました調査結果を私は調べてみました。昨年の十二月にまとめられたものですけれども、航空機騒音調査結果というのが出ております。これによりますと、ずっと昭和六十三年、平成元年、二年、三年、四年とあるのですが、全部申し上げてもあれですから、昭和六十二年と平成四年とをちょっと比較してみたいと思うのです。実は測定の固定局が狭山、所沢等に設置されているわけですけれども、狭山の固定局の調査結果ということで申し上げたいと思います。  年間発生回数、昭和六十二年が一万四千七百三十回、それが平成四年になりますと一万六千七百八十五回とふえているということ。それから夜間、早朝訓練につきましては、午後九時から翌朝七時までを調べた結果ですけれども、昭和六十二年が百六十九回、平成四年が三百二十六回、これも大幅にふえております。それから、日曜日にどれくらいの飛行が行われるかということで、その騒音を調べてみたわけです。騒音発生回数は、一日平均にしまして、昭和六十二年が八・一回、平成四年が十一・三回、いずれも騒音回数は増加しているというのがこの調査結果からはっきりしているわけです。  同時に、最近の状況の中で、いわゆるC1という輸送機だとかあるいはYS11、これらの飛行機の午後五時から午後八時ごろまでの離着陸訓練というのですか、これが頻繁に行われている。日常化しているのではないか。付近の住民からは、電話がよく聞こえないとかあるいはテレビの音声が聞き取れないとか、こういう苦情が大変多いわけです。  私が一番最初に申し上げましたような、防衛庁が住民に約束したことを守る気があるのかどうか、この点についてお答えいただきたい。
  182. 上野治男

    ○上野(治)政府委員 お答えいたします。  入間基地に限らず航空自衛隊全体につきましては、飛行訓練等の過程でもって少しでも騒音が軽減するようにということで、訓練の方法等について対策は各種のものを講じております。また、地元の関係自治体等についても、その内容等について通報する等によって協力を願っているところでございます。  そして、その中で、入間基地におきましては、先ほど議員からお話のありましたような関係の、平日の日中に訓練するということを中心としたものは、今御指摘のとおりでございます。しかし、この数年間のものを私も、先生からも質問の通告を受けておりますので念のため調べてみましたが、この二、三年の過去のものと比べて特に著しくふえているという数字は出ていないところでございます。今の御指摘のありましたものも含めてということでございました。  見方がいろいろ違うものですから、あるいは議員の御指摘のような意味のがあるのかもしれませんが、私どもとしては、訓練は、地元へお約束しているとおり、特に深夜地元に迷惑のかからないように特段の注意をしてやっているつもりでござ  います。
  183. 矢島恒夫

    矢島分科員 そうすると、埼玉県の環境部のやったこの調査結果を否定されるわけですか。
  184. 上野治男

    ○上野(治)政府委員 今の調査結果というのを私、手元に持ち合わせておりませんので、再度調べてみたいとは思います。  しかし、おっしゃるとおりだと思いますが、今私が申し上げましたように 特に平成になってからですが、毎年、訓練の回数、離着陸の回数等あるいは特殊な時間帯での離着陸等の数字を見てみますと、この数年間はむしろ減少の傾向はあっても増加してないものですから、あえて申し上げた次第でございます。  ただ、今のようなことで、地元にはいろいろな御迷惑、少なからざる御迷惑をかけていることも十分承知しておりますし、さらにその解消のための努力はしなければいけないと思っている次第でございます。
  185. 矢島恒夫

    矢島分科員 ぜひその環境部の調査結果というのは取り寄せて調べてみていただきたいと思います。  そこで、最近の離着陸訓練の状況ですが、私、先ほど申したような状況なんですが、これを減らしていくということはどうかということなんです。電話の声が聞こえないとかテレビの音声が聞き取りにくいとか、いろいろな苦情が最近相当ふえているということは事実であります。埼玉県では十一年前に環境基準ということで七十W以下にするというのがありますが、これに近づけるということの上からも、離着陸訓練を減らすという方向をぜひ出してもらいたいと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  186. 上野治男

    ○上野(治)政府委員 まず、全体につきましては、先ほどもお答えいたしましたとおり、何とかして地元に迷惑をかけることが少なくなるように努力している次第でございます。  しかし、こちらから御説明させていただけるならば、最近いろいろな実任務がふえているといいますか、最近でいけば、例えば昨年の夏には鹿児島でもって風水害がありました。そういうようなときには、直ちに国土庁長官等も現地に行ってもらいましたが、その派遣をするための飛行機を出すとか、先月の例でいきますと、中華航空機が墜落したのがあります。あのときに、私どもの基地 が名古屋にございましたので、そこで撮影された各種のフィルム等を直ちにこちらへ持ち帰りまして、運輸省ですとかマスコミに提供するということがありましたが、そういうのになりますと、確かに夜間の十一時過ぎに離陸して朝の六時ごろ帰ってくるというようなこともございます。そういったような任務が今までよりかふえている面もあることは事実でございます。  ですから、そういうのは地元の人々にとってみれば同じことなんですから、ふえているという御指摘になれば、確かにそういう面があって御迷惑な面もあろうかと思いますが、任務の内容によってはお許しいただければと思っている次第でございます。
  187. 矢島恒夫

    矢島分科員 住民の理解と協力という言葉をよく使いますけれども、住民に約束したことも守れないようでは、何が理解と協力か、こういうことを言われても仕方がないのですよ。この点を強く指摘しておきたいと思います。  次に、施設庁の方に聞きます。  埼玉県内の住宅防音工事、この問題で聞きたいと思います。  航空自衛隊入間基地、それから米軍横田基地にかかわる新規工事については既に完了している。今やっているのが、いわゆる追加工事と呼ばれているもので、これが実施中ということ。一刻も早く追加工事を完了してもらいたいという声が大きいわけなのですが、いつごろ工事は完了するか、その予定をお聞かせいただきたい。
  188. 江間清二

    ○江間政府委員 住宅防音の関係でございますけれども、ただいま先生お話しのようこ、入間あるいは横田につきましては新規工事、いわゆる当初一、二室工事をやるわけですが、これにつきましては、大体平成元年度までに当時の希望世帯に対しては完了しておるということでございます。  ただ、今先生のお話の中に、もう新規工事は全部終わったかのように受け取れるお話がございましたけれども、一応その段階で希望されていた方々には終わっていますけれども、その後逐次出てまいりますので、それに対しましては逐次それに対応して新規工事を行っているというのが実情であります。  大きな流れとしましては、御指摘のとおり、まさに今追加工事の方にウエートが移っておりまして、追加工事に鋭意私どもも努力をしておるわけでございます。まだ実績は集計中でございますけれども、五年度の計画段階までを見ると、入間、横田ともにおおむね三〇%ぐらいの進捗率というような状況になっておりまして、私どもも、今先生の御指摘にもございますが、できるだけ追加工事の進捗率を上げなければいかぬということで、鋭意今努力をいたしておるわけであります。  そこで、お尋ねの追加工事の完了時期が一体いっになるのかという点でございますけれども、これは今後の予算、将来にわたります予算状況でございますとか、あるいは住宅所有者の希望の状況というようなものもございますので、具体的に何年までに完了をするということを申し上げることは非常に困難であるというふうに考えております。
  189. 矢島恒夫

    矢島分科員 いろいろ言われましたが、入間基地というのは、御案内のとおり市街地の真ん中にあるわけであります。とりわけあの周辺の自治体はいずれも人口急増地帯。飛行機が飛び出しますと、まさに人家の上を飛ぶという状況であって、海はありませんから、旋回して海の方へ逃げるというわけにもいきませんし、同時に、西側の空域については米軍とのかかわりがあります。そういう特殊性を持っている基地なのですね。  ですから、そういう特殊性というものを考えても、ぜひ一刻も早く追加工事を完了させるという方向で努力してもらいたいわけですが、今いろいろな関係で三〇%だけれども、いつごろ完了するか。予算やそのほかの関係で、こうおっしゃるのですが、施設庁としての大体見込みぐらいは示せないのですか、大体ここまで来ているのですから。
  190. 江間清二

    ○江間政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、大体何年度までにこれを完了する見込みだというようなことを申し上げることは、不確定要素が多過ぎるものですから、私は申し上げることは非常に困難だというふうに考えております。  ただ、先生おっしゃいますように、私どもといたしましても、今のこの進捗率で満足しているわけではございませんので、できるだけこの進捗率を高めていくということでの努力は当然やっていかなければいかぬ。私ども、いろいろ予算の要求あるいは予算の張りつけということを考えます場合に、住宅防音施策の推進というのは非常に重点項目の柱の一つに立てまして、努力をしておるところでございます。  そこで、もう一言触れさせていただきますと、先ほど住防の全体の状況をお話ししました際に申し上げましたが、新規工事というのが御案内のとおり大体もう終わってきておる、山を越えておりますから、今後はウエートが追加工事に行くわけでございます。したがって、その追加工事の進捗率というものを従来のテンポよりは当然高めて進めていきたいというふうに申し上げることはできょうかと思います。
  191. 矢島恒夫

    矢島分科員 ぜひひとつそういう方向で頑張ってもらいたいと思います。  次に、いわゆる区域指定後に当該地域に住宅を新築したというような場合の防音工事についてですけれども、いわゆるドーナツ現象の解消ということで、沖縄の嘉手納基地関係で、今年度予算ですか、百三十三世帯工事を実施するという方向になった。大きな前進だと思います。しかし、これを前進だと評価すると同時に、この問題はそれぞれたくさんの基地で抱えている問題だと思うのです。入間基地や横田基地、これも一つの視野に入れながら、ドーナツ現象の解消ということをぜひ図ってもらいたい。その決意を聞きたいと思います。
  192. 江間清二

    ○江間政府委員 ただいま御指摘のいわゆるドーナツ現象、つまり指定の告示を段階的に実施してきましたことに伴う是正工事といいますか、そういう対象住宅のことでございますけれども、これは、先生今お話しの中にもございましたように、現在御審議をお願いしている六年度予算案の中で、沖縄の嘉手納地区の住宅の一部について、百三十三世帯についての予算を計上させていただいているところでございます。  これも過去数年、ドーナツ現象の解消に向けてということで財政当局にもお願いをして、ようやく予算計上に持ち込めたということでございまして、私どもも非常に喜んでおるところでございますが、ただいま申し上げたような非常にまだ一部、百三十三世帯というような程度でございますので、今後ともこのドーナツ現象の住宅の解消には手をっけ、進めていきたいと考えておるわけでありますけれども、これがまた一体どの程度の期間でというようなことになりますと、先ほどの追加工事のときにお答えした趣旨と同様のお答えをせざるを得ないということでございます。  ただ、私どももこれに対しては、従来からの長年の懸案の課題の一つとして進めておるところでありますから、今後とも努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  193. 矢島恒夫

    矢島分科員 施設庁は、今までこの問題は国会でも何回も出てまいりまして、その答弁なんかでもいわゆる検討課題だということで言ってまいりまして、私も何度か施設庁の方にお邪魔いたしましてこの問題を伺ったところ、同じような返事を受けております。それから大分久しい時間がたっておりますから、いつまでも検討課題、検討課題ということではなくて、ぜひ具体的な方向を目指してやっていただきたいと思います。  同時に、これに関連する質問なんですが、政策的な問題ですので政務次官にちょっとお聞きしたいのです。  国の施策として、実はこの所沢、入間、飯能、狭山、この地域というのは東京に隣接する地域ですから、東京都のベッドタウンとして重要な住宅地ということが言えるわけなんですが、次官御案内のとおり、生産緑地法に特定市として指定されているわけであります。ですから、市街化区域内 の農地については宅地並み課税ということで農業がなかなか続けられなくなっていく。そういう中で住宅地として転用するという方向を強めていこう、言葉はそれぞれございますが、そういう状況であることは確かなんです。  ところが、そういう地域に住宅をつくっていこうという施策を一方では進めながら、一方ではそこに住宅を建てると大変住環境がよくない、騒音で。というのは、その地域は防音工事がやれませんから。ですから、矛盾しているわけですよ。農地を宅地にして住宅を建てる方向を一方では出しながら、そこに建った住宅については、もちろん騒音地域です、指定区域内ですが、ここには防音工事はできないのですよ。これでは本当に矛盾した施策ということを指摘されてもやむを得ないのではないかと思うのですが、そういう点から考えても、この新しく指定区域内に建った住宅に対する防音工事をひとつ積極的に進めるという意味で、次官の方のお考えをお聞きしたい。
  194. 米山市郎

    ○米山政府委員 ただいま先生の御指摘になられた問題、これは民間空港でも同じような問題がございまして、危険への接近理論というような考え方で、音のあるところへ承知をして入ってきた人たちに対しては行政上の救済はなかなか難しいという一つの原則と申しますか、最高裁でも認められた一つの理論というものがございます。  そういった観点の中で、先ほどのドーナツ化現象につきましては、行政の一つの矛盾ということで、それを何とか解消しようということで民間はちょっと先に既に手をつけておりましたが、今回初めて私ども翌年度予算こそれを盛り込ませていただいたということでございまして、おっしゃられる趣旨は確かにわかるのですけれども、騒音対策とそういう地域対策との関連という観点から問題を解決するのはなかなか難しい問題ではないかという感じがいたしますが、私どももそれはもちろん検討はさせていただきたい。
  195. 矢島恒夫

    矢島分科員 ぜひひとつ検討、研究を進めてもらいたいと思います。  時間の関係がありますので、次に移ります。  防音校舎の温度保持、除湿設備というのですか、いわゆる電気空調設備のことだと思いますが、今この地域では二つの高校、飯能南高校、それから狭山高校等で一部工事が終わりまして稼働を開始している。さらに、狭山工業高校や入間向陽高校では着工の予定という状況になってきております。  実は、昨年の夏にいわゆる試運転というのをやったわけです。そのときの調査結果をいただいたのですが、結論からいいますと、いわゆる温度保持や除湿の能力が非常に低くて、もっと増強してもらいたいのだ、こういう結論なのです。調査結果は、室温が二十六度Cのときに空調を入れたのだそうです。なかなか温度が下がらない。場所は音楽教室なので、最上階だから機械室からは一番遠いところ、こういうことになっています。  ところが、下がらないところか気温はその間に上昇しました。ですから、一時間半後にはかったら三十度になっていた。そういう事態で、不快指数は六〇から八〇に上がった。こう空調能力が弱くては役に立たない。同時に、設定温度になかなか達しない、時間がかかる、こういうような苦情があるわけです。能力を増強できないのかということ。  もう一つは、これは集中方式といいますか、機械室をつくってダクトでずっと各教室へ持っていく。それも管理棟あるいはホームルーム棟、特別教室棟と、棟ごとに行くわけですね。そうすると、これは非常に使いにくいという点があるわけです。というのは、例えば電気量にしてもエネルギーにしても非常にむだが多いのではないか。  例えば、ホームルーム棟についてこれを使い始めますと、使ってない教室だろうと日陰の教室だろうとひなたの教室だろうと、全部一律に空調が働き出すわけですよ。では、使ってない教室はそこでとめたり調節したりすることができるかといえば、できないわけですね。こういうような状況で、各個別に、つまり部屋ごとに調節できないものだろうか。施設庁としてはこういうむだな工事をこれからも進めるのですか、こういうことなのです。
  196. 江間清二

    ○江間政府委員 まず、御質問の一点目の具体的な学校名をお挙げになられての空調効果といいますか、それのお尋ねがございました。  私の理解しております通常やる場合には、当然のことながら設計あるいは調査をやって、どういう設備がいいのかというのを決めていくわけでありますから、そういうような事象が生じているということについては今の御質問の中で初めてお聞きしましたので、そういう実情があるのかどうかは私どもも調べてみたいと思っております。  もう一つのいわゆる空調方式の問題でございますけれども、確かに私ども従来やっておりましたのは単一集中ダクト方式と申しますか、そういう方式をとってきておりました。  これは、学校なんかで一律的に同じ時間に各教室に対する空調という意味では、非常に経費効率等においてもすぐれておるものでございます。そういうことでその方式をずっとやってきたわけでありますが、近年、先生のお話にもございますが、生徒数の減少というようなことで学級数が減少してくる。そうすると、この部屋は使わなくていいとかというようなケースも出ておりますし、また学校を増築するという場合に、かなり大きくではなくて、数教室だけをつくるというようなケースもあるものですから、問題は、空調の技術の関係でいわゆる防音効果が減るようなことになると、本来の目的を達しないわけであります。  そこで、技術的な調査もやりまして、最近の技術の面から見て個別空調方式も防音効果上余り影響がないという結論を得ましたものですから、六年度から集中ダクト方式と個別空調方式の両方をそのケースケースに応じて実施をしていけるという方策をとったところでございますので、御報告をさせていただきます。
  197. 矢島恒夫

    矢島分科員 個別空調方式というものも採用していくということで、結構なことだと思います。同時に、そういう工事を始めるに当たっても、また現在既に使っているところについても、現場の意見とか要求あるいは使われ方 これは私が知ったところでは、せっかくできたけれども、私の言ったような理由から使われていないというのもあるわけなので、そういう点の調査をぜひやっていただきたい。  時間の関係がありますので、それはお願いしておいて、実は政務次官、時間が残り少なくなりましたので、所沢の米軍通信基地の問題でぜひひとつお願いしたいのです。  ここの基地は所沢市の真ん中にありまして、市といたしましても町が分断されてしまっている。市当局が進めようとしている町づくり、都市計画、こういうものに大変大きな支障を来している。ですから、早くから基地返還の運動が全市的に市民ぐるみで取り組まれてきていた。  こういう状況の中で三次にわたって返還が行われ、現在九十七万平方メートルが残っている。これは通信基地に使われているわけですが、先日、二月五日に所沢市の基地対策協議会が主催しまして、埼玉県や所沢市も後援しまして、返還運動推進大会というのが二千人規模で持たれております。いずれも全面返還をということの決議が採択されている。  あるいは、ことしの五月五日の共同通信、その後朝日新聞の西埼玉版にも記事が載りましたが、共同通信のニュースとして、アメリカを訪問していた埼玉県の土屋知事が国防総省のホーリー空軍首席補佐官と会って基地の問題を話したところ、所沢基地を初めとして県内の米軍基地の縮小、返還に努力する、こういうことが述べられたという報道があるわけです。  ぜひひとつ次官、米軍の立場ではなくて、地域住民のいろいろな熱烈な要望を踏まえて、その立場に立ってアメリカとこの所沢米軍基地返還ということについて折衝していただきたいのですが、いかがですか。その気持ちございますか。
  198. 東順治

    ○東(順)政府委員 ただいま御指摘がございまし た状況につきましては、私も十分承知しているつもりでございます。今引用なさいました新聞記事等につきましても読ませていただきました。これまで七〇%返還をしてきて、防衛庁としましても、また全国の基地、例えば全面あるいは一部あるいは共有、いろいろな形で一生懸命努力をさせていただいておるわけでございますが、何分相手があることでございますので、現実問題としてなかなか難しい問題もございます。  この件につきまして、当然そういう地元からの声や要望等も私ども承知しておりますので、米軍にいろいろと問い合わせてみたところ、これ以上、今回の三カ所のこの要望を入れてしまうと、通信施設としての能力の維持が大変難しいという非常に厳しい状況であるという答えもいただいておるわけでございまして、何とか地元の要望に沿いたいという思いは十分にあるわけでございますが、現実問題として、遺憾ながら現状としては極めて困難である、このように認識をせざるを得ないという状況でございますので、どうか御理解をいただきますようによろしくお願い申し上げます。
  199. 矢島恒夫

    矢島分科員 全面的に返還してもらいたいという要望と、それから今次官は、三つの地域から要望が出ている。私、まだそこまで質問の時間がなくて入っていないのですけれども、いずれにいたしましても、所沢基地をぜひ見ていただきたいし、それから市長や住民に会ってどういう状況かということをぜひじかに聞いていただきたい。そして、この全面返還はもちろんですけれども、部分的な返還や共同使用という面でもぜひ次官が大きな役割を果たされることを私期待いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  200. 前田武志

    前田主査 これにて矢島恒夫君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして防衛庁防衛施設庁所管の質疑は終了いたしました。     —————————————
  201. 前田武志

    前田主査 次に、外務省所管について審査を行います。  まず、概要説明を聴取いたします。平田外務政務次官
  202. 平田米男

    ○平田政府委員 外務省所管平成二年度決算について。  平成二年度外務省所管一般会計歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  歳出予算現額は二兆一千二百五十九億八千二百九万円余でありまして、支出済み歳出額は二兆二百九十億七千七百六十二万円余、翌年度繰越額は九百四十一億一千八百四十二万円余、不用額は二十七億八千六百三万円余であります。  歳出予算現額の内訳は、歳出予算額一兆八千七百九十億三千百五十一万円余、前年度繰越額一千九十五億一千四百九十三万円余、予備費使用額一千三百七十四億三千五百六十三万円余であります。  以上、平成二年度の外務省所管一般会計決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。  引き続きまして、外務省所管平成三年度決算について。  平成三年度外務省所管一般会計歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  歳出予算現額は七千六百四十七億九百二十六万円余でありまして、支出済み歳出額は六千五百五十一億四千八百九十四万円余、翌年度繰越額は一千七十三億九千三百三十六万円余、不用額は二十一億六千六百九十五万円余であります。  歳出予算現額の内訳は、歳出予算額五千八百二十二億五千二百九十一万円余、前年度繰越額九百四十一億一千八百四十二万円余、予備費使用額八百八十三億三千七百九十二万円余であります。  以上、平成三年度の外務省所管一般会計決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  203. 前田武志

    前田主査 次に、会計検査院検査概要説明を聴取いたします。会計検査院山田審議官
  204. 山田昭郎

    ○山田会計検査院説明員 平成二年度外務省決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。  また、平成三年度外務省決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。  以上でございます。
  205. 前田武志

    前田主査 この際、お諮りいたします。  お手元に配付しております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  206. 前田武志

    前田主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————    外務省所管平成二年度決算概要説明                 外 務 省  平成二年度外務省所管一般会計歳出決算につきまして、その概要をご説明申し上げます。  歳出予算現額は二兆一千二百五十九億八千二百九万円余でありまして、支出済歳出額は二兆二百九十億七千七百六十二万円余、翌年度繰越額は九百四十一億一千八百四十二万円余、不用額は二十七億八千六百三万円余であります。  歳出予算現額の内訳歳出予算額一兆八千七百九十億三千百五十一万円余、前年度繰越額一千九十五億一千四百九十三万円余、予備費使用額一千三百七十四億三千五百六十三万円余であります。  次に、支出済歳出額の主なものは、経済協力の  一環として、青年海外協力隊派遣、開発調査、センター協力、機材供与、保健医療協力、農林業協力、産業開発協力、開発協力、専門家養成確保等−の事業、アジア諸国等の開発途上国に対する経済開発援助及び国連開発計画等の多数国間経済技術協力のための拠出等に要した経費四千百八十八億  一千九十三万円余、エネルギー対策のため国際原子力機関に対し同機関の憲章に基づく分担金及び拠出金として二十九億四千二百三十九万円余並びに各種国際機関に対する分担金等として一兆四千三百三十億二百四十六万円余であります。  次に、翌年度繰越額について申し上げますと、財政法第十四条の三第一項の規定による明許繰越のものは九百二十八億一千二百万円余でありまして、その内訳は経済開発等援助費六百八十八億六百十九万円余、食糧増産等援助費二百四十億五百八十一万円余及び財政法第四十二条の規定による事故繰越のものは十三億六百四十一万円余、その内訳は経済開発等援助費七億六百四十一万円余、食糧増産等援助費六億円であります。  不用額の主なものは外務本省の項で輸送費を要することが少なかったこと及び在外公館の項では、職員諸手当を要することが少なかったこと等のためであります。  以上、平成二年度の外務省所管一般会計決算につきまして、その概要をご説明申し上げました。  何とぞ、よろしく御審議のほど、お願い申し上げます。     —————————————    外務省所管平成三年度決算概要説明                 外 務 省  平成三年度外務省所管一般会計歳出決算につきまして、その概要をご説明申し上げます。  歳出予算現額は七千六百四十七億九百二十六万円余でありまして、支出済歳出額は六千五百五十一億四千八百九十四万円余、翌年度繰越額は一千七十三億九千三百三十六万円余、不用額は二十一億六千六百九十五万円余であります。  歳出予算現額の内訳歳出予算額五千八百二十二億五千二百九十一万円余、前年度繰越額九百四十一億一千八百四十二万円余、予備費使用額八百八十三億三千七百九十二万円余であります。  次に、支出済歳出額の主なものは、経済協力の一環として、青年海外協力隊派遣、開発調査、センター協力、機材供与、保健医療協力、農林業協力、産業開発協力、開発協力、専門家養成確保等の事業、アジア諸国等の開発途上国に対する経済開発援助及び国連開発計画等の多数国間経済技術 協力のための拠出等に要した経費四千二百八十九億七千百三十一万円余、エネルギー対策のため国際原子力機関に対し同機関の憲章に基づく分担金及び拠出金として三十六億三百三万円余並びに各種国際機関に対する分担金等として九百二十二億二百九十一万円余であります。  次に、翌年度繰越額について申し上げますと、財政法第十四条の三第一項の規定による明許繰越のものは一千六十四億八千八百九十八万円余でありまして、その内訳は経済開発等援助費八百四十九億三千百三万円余、食糧増産等援助費二百十三億二千七百九十八万円余、在外公館施設費二億二千九百九十五万円余及び財政法第四十二条の規定による事故繰越のものは九億四百三十八万円余、その内訳は経済開発等援助費五億七千三十万円、食糧増産等援助費三億三千四百八万円余であります。  不用額の主なものは経済協力費の項で、食糧増産等援助費を要することが少なかったこと及び在外公館の項では、職員諸手当を要することが少なかったこと等のためであります。  以上、平成三年度の外務省所管一般会計決算につきまして、その概要をご説明申し上げました。  何とぞ、よろしく御審議のほど、お願い申し上げます。     —————————————
  207. 前田武志

    前田主査 以上をもちまして外務省所管説明は終わりました。     —————————————
  208. 前田武志

    前田主査 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、頂次これを許します。野田聖子君。
  209. 野田聖子

    野田(聖)分科員 自由民主党の野田聖子でございます。  まず初めに、この決算委員会の席に大臣がいらっしゃらないということは大変残念なことだと思います。予算委員会も大切ですが、締めくくりの決算委員会も大変大切な委員会ではないかと私は思っているところでございます。  早速質問に入らさせていただきます。  本日は、羽田政権のもとで急浮上している感じのある我が国の国連安全保障理事会常任理事国入りの問題を取り上げ、外務政務次官に御質問したいと思います。  私が手に入れられる報道記事、ここにたくさんあるのですけれども、これを見る限りでは、安保理常任理事国入りについては対外的、つまり諸外国に対して支持を取りつけたり理解を得ようという姿勢、あるいはそれがどうも行政府の主導のもと、総理の発言であったり国連大使の発言であったり、そういう主導のもとに展開されているという印象を強く覚えております。  まず、この国連安保理常任理事国入りすることによって私たちの国日本はどのような権利を持つようになるのか、またどのような責任を負うことになるのか、明確にしていただきたいと思います。政務次官、お願いします。
  210. 平田米男

    ○平田政府委員 まず、冷戦が終えんをいたしました現在、国連の役割はますます重要になっているわけでございます。したがいまして、国連の機能を一層強化をしていこうという考え方が国際的に幅広く合意がある、こういう状況にあるかと認識をいたしております。したがいまして、安保理の改組に関する動きも、そのような背景のもとで活発化してきたわけでございまして、平和の中で今日の繁栄を築いてまいりました我が国といたしましては、世界の平和と安定のためにどのような責任を果たしていくかまさに国際的に問われている、こういう状況にあるかと思います。  ところで、我が国はこれまで一貫いたしまして平和主義、そして国連中心主義、この理念を堅持をし、また実践をしてきたわけでございます。  常任理事国になるということは、すなわち、我が国が過去に蓄積をしてまいりました平和のための業績あるいはそのノウハウ、また憲法の平和主義の理念を生かして真の世界平和の構築のために主体的に責任を果たす、こういうことであると考えております。これまで我が国は常任理事国という立場はありませんでしたが、しかし国連の場において、また国際社会において大いなる貢献をしてきた、そのように認識をいたしております。したがいまして、常任理事国になったからといって特段新たな責任とか義務とかということを負うのではなくて、これまでも同様に負ってきたその責任をまた新たな立場で同様にさらに負っていく、こういう考え方でございます。
  211. 野田聖子

    野田(聖)分科員 御説明ありがとうございます。  今の政務次官のお話によりますと、平でいても常任理事国にいても新たな責任はない、今までどおりなんだという理解をしてよろしゅうございますか。
  212. 平田米男

    ○平田政府委員 基本的にそういうことでございます。
  213. 野田聖子

    野田(聖)分科員 実は新聞の記事で申しわけないのですけれども、常任理事国入りをするに当たって、アメリカでは軍事ですか、そういうことをちょっとやってほしいんだ、今まで常任理事国五カ国あるのですけれども、それぞれやってきたことをやはり日本にもやってもらわなきゃ困るよということが米国の上院の方で決議されるようなニュースが実際にあるわけですけれども、そういうことも含めて、全く今までどおりの平の立場でやってきたことで、例えば負担も変わらないし、何か有事の際でも、何があってもこのままの状況で日本はいられるということで理解してよろしゅうございますか。
  214. 平田米男

    ○平田政府委員 おっしゃるとおり、常任理事国になったら軍事的責務が重くなるのではないか、こういう御指摘が新聞報道等の中にあるということは認識をいたしております。この点につきまして私どもは、現行の国連憲章上、常任理事国とその他の国連加盟国との間でその法的義務においては何らの差異がない、このように考えております。  もう野田先生も御承知かと思いますが、昨年の十二月にブトロス・ガリ国連事務総長が来日をされましたが、細川総理と会談をその際なされました。その会談の際にガリ事務総長はこのようにおっしゃっているわけでございまして、国連平和維持活動で軍事的な責務を負うことは常任理事国入りの条件ではない、また常任理事国はPKO設置の決定に参画するが、設置されたPKOに参加するかしないかは別問題である、このように述べられているわけでございまして、こういう事務総長の御発言から考えましても、私どもの考えていることとまた国連がお考えになっていることとの間には差異がない、このように思っております。  いずれにいたしましても、国連の活動というのはこれからもさまざまあるかと思います。また変動もあるかもしれませんが、しかし、基本的には憲法の枠内で貢献をしていくというのが我が国の考え方でございますし、また我が政府の考え方でございます。
  215. 野田聖子

    野田(聖)分科員 私も手元にガリ総長のインタビューの記事を持っておるのですけれども、やはり今国連の抱えている問題というのは、百八十四の加盟国がありながらその分担金は十四、五カ国しか払ってくれていない、そういう財政的にも悲惨な状況にあるということで、日本に非常に関心を持たれていると思います。ただ問題なのは、ガリ総長というのが未来永劫総長であり続けるという保証はないわけで、現段階でガリ総長がそうおっしゃっていても、次の総長はまた違う考えで日本にいろいろとリクエストしてくるやもしれません。  それは先のことなので、きょうはその議論はやめにしまして、今政務次官がおっしゃっていただいた権利とか責任についてですが、これは一般の国民はどの程度理解しているとお考えでいらっしゃいますか。
  216. 平田米男

    ○平田政府委員 さまざま報道もなされておりますので、相当程度国民の御理解は進んでいる。相当程度というよりも大分進んでいるのではないか、このような認識も持っているわけでございます。
  217. 野田聖子

    野田(聖)分科員 相当程度の理解があるという 御答弁なんですけれども、果たしてそれが事実かどうかというのはわかりません。何をもって証明できるのであろうかということであります。  実は私の調べたところ、いろいろと情報が出されているというのはあくまでも新聞とかテレビの会社、いわゆる新聞社の独自の調査とかそういうことはあるのですけれども、この常任理事国入りの問題に対しては総理府の世論調査もまだ行われていないという状況だそうです。実は、きのう御丁寧にも「外交に関する世論調査」という立派な調査書をいただきましたけれども、やはりその中には常任理事国入りに関する質問は一切ありませんでした。  総理府の方にお尋ねしたいのですが、総理府ではどのようなプロセスでこの世論調査の内容を決定されているのでしょうか。
  218. 福井武弘

    ○福井説明員 お答えいたします。  私ども総理府では、政府の重要施策の参考のために各種の世論調査を実施しておるところでございますけれども、世論調査のテーマの選定につきましては、各省庁からの要望を踏まえて、それから私ども毎年やっているもの、周期的にやっているもの等々、時系列に調査すべきテーマ等も勘案いたしまして毎年のテーマを選定しているところでございます。
  219. 野田聖子

    野田(聖)分科員 ちょっとよくわからなかったのですが、たくさんいろいろと調査をしたい項目はあろうかと思います。予算の都合もありますから調査の内容というのは限られてくるわけですけれども、最終的な決定、例えば外務省の世論調査であれ士、いろいろな項目の中でこれをやるというようなことは総理府の方でお決めになるのでしょうか。
  220. 福井武弘

    ○福井説明員 私ども年間の予算制約の中で毎年二月に各省庁にヒアリングをいたしまして、今年度でいいますと五十本程度ヒアリングがありますけれども、年間の予算制約の中で十七、八本が限度でございますので、その中でその時点での行政上の重要施策あるいは長期的、基本的な政策として調査すべき事柄、あるいは国民に直接関係のあるような行政政策、こういった観点を踏まえて決定しているところでございます。
  221. 野田聖子

    野田(聖)分科員 その際に、外務省がテーマを決めていくのか、総理府がこの世論調査の項目を決めていくのか、どちらが最終的に決定されるのでしょうか。
  222. 福井武弘

    ○福井説明員 お答えいたします。  基本的には、こういった内容の事柄に関しましては、所管省庁の御要望を踏まえて協議検討して決定するというプロセスをとっております。
  223. 野田聖子

    野田(聖)分科員 今の御答弁を聞いている範囲では、最終的にはその所管庁の俗に言う熱の入れようというか総理府の肝いりというか、どうしてもやりたいということが、恐らくや世論調査のプライオリティーが決定される要素になっているのではないかということを感じるわけなんです。  ということは、今日まで安保理常任理事国入りの世論調査を必要とする姿勢は、少なくともここ平成五年十月調査までは、総理初め外務省にもかなり乏しかったのではないかということを感じます。つまり政府・与党は、この問題に関して国民の意識を喚起させたり、国民的論議を活性化させようという姿勢に欠けていたのではないかなということをこの世論調査を見てみて感じているところです。  ところで、最近の常任理事国入りに関するマスコミとか有識者の議論を追ってみますと、最終的に求められているのが、この国民的議論を、論議でもどちらでもいいのですが、尽くすということをよく言われます。新聞の記事でも、必ずその社説なりいろいろな論説のところにそういうことが書かれているのですが、もちろん国民一人一人に常任理事国入りの是非を問うということは、非常に技術的にも難しいですし、またその問題の複雑さというか、今後の日本の将来にかかわる大きな問題で、大変なことだと思います。ただ、その国民的論議にかわるものがあるとすれば、やはり国会という場での論議ではないかと私は思います。  羽田総理は、さきの所信表明の中で常任理事国入りに対する決意を表明され、国会での論議がようやく始められるかなという気もしているのですが、ただこの総理の演説の中でも、議論の土台とするにはわかりにくい箇所があるわけなんです。それは、なし得る限りの責任を果たすという言い回しなんですが、羽田総理がここでおっしゃりたいことは、恐らく日本が常任理事国になる場合、常任理事国としてなし得る限りの責任を果たしますよということだと思うのですけれども、さっきの話と多少ダブるかもしれませんが、具体的にその責任の果たし方を御説明いただけますか。お願いします。
  224. 平田米男

    ○平田政府委員 野田先生御指摘のとおり、国会あるいは国民の中で常任理事国入りについての十分な議論がなされるということは、私も大変重要かというふうに思っております。したがいまして、今回この決算委員会で先生がこのテーマをお取り上げいただいたことは、大変時宜を得たことではないかというふうに思っておるわけでございます。  私どもは、既に総理あるいは外務大臣が代表質問とかあるいは予算委員会でも詳しく御説明もいたしておりますし、また御答弁もさせていただいていると思いますし、今国民の中あるいは国会の中でこのテーマが大きく取り上げられて議論をされているのではないか、また、され始めていると言っていいのかもしれませんが、そういう状況にあるかと思いますし、きょうの議論も通しまして、また別の場でも私自身この問題について国民に深い御認識をいただくように努力をさせていただきたい、こういうふうに思っております。  それで、先ほど野田先生から、総理の所信表明の中でのなし得る限りの責任を果たすとはどういうことなのか、こういうお話でございましたが、これは結論から申し上げますと、我が国は常任理事国に就任する意思がある、そういうことを表明しているわけでございます。  先生既に御承知かと思いますが、世界の国際社会における認識といたしましては、世界的な影響力を持った国が五大国以外に現に存在するということが国際的な合意でございます。その国はドイツと我が国である、こういうところまで具体的な認識があるわけでございます。  また、国連が発足をしたとき加盟国は五十一カ国でございましたが、現在は百八十四カ国、三倍以上にふえているわけでございます。これに対して安保理の理事国は、発足当時は十一カ国でございましたが、現在十五カ国でございます。十五カ国になったのは一九六五年、二十九年前ということになるわけでございます。そういう意味から、安保理を改革していこう、また常任理事国をふやすべきではないかという議論は、もうその方向性において国際的合意に達していると言っても過言ではない、私もそのように認識をいたしております。  さらに、国際社会における日本に対する期待というものは、先ほど申し上げましたように、世界的な影響力を持った国である、であるならば世界の平和と安定のために、また発展のために日本はその責任を果たすべきであるし、その立場を持つべきである、こういう大きな期待をいただいているわけでございます。  また、常任理事国にふさわしい政治経済その他の広い分野で多大な貢献をこれまで我が国はやってまいりました。そういうこれまでの過程の中で、また冒頭申し上げましたように、冷戦が終わりまして、いよいよ唯一普偏的な国際機関である国連の立場、機能というものが極めて重要になっているときに、日本がこのような国力の評価において世界の平和と安定のためにどうするのか、そういう視点から考えますと、やはりみずから進んで国連の機能強化に大いなる責任を果たしていこう、これが国として、また政府としての考え方でなければならないと思っているわけでございます。  そういう観点で私どもは考えているわけでございまして、繰り返しになりますが、なし得る限りの責任を果たすということは、そのような意味を 含めて常任理事国としての責務を果たしていく、そういう趣旨でございます。
  225. 野田聖子

    野田(聖)分科員 今御答弁の中で、日本が大国であり、そして国際的に認められて合意がある中で、粛々とその常任理事国入りのステップを歩んでいる。それはまことに結構なことなんですけれども、では果たして国内的な合意が、国内的な国民コンセンサスがあるかどうかというと、いささか心もとないような気がいたします。  実は羽田総理は、そのなし得る限りの責任ということも結構なんですけれども、そういう責任というのは、常任理事国に入らなければできないものなのかどうかということを確認したいわけなんです。  というのは、総理は以前、例えば五月六日のブリュッセルでの記者会見では、国連財政の負担や平和維持活動など今も日本は常任理事国にふさわしい責任を十二分に果たしているとおっしゃっているわけですから、別に常任理事国に入っていなくても、それだけのことはやってきたんだよということをおっしゃっているから、ではなぜまた今なおさら常任理事国に入らなければいけないのかなという矛盾が生じてきてしまうわけなんですね。要するに、何か入ればメリットがあるのかな、権限がふえるのかな、そういうふうなうがつた見方をしてしまうのですけれども、これは議論がまだ国会の中でも十分し尽くされていない問題なので、一応問題提起ということで、政務次官には総理の方に聞いていただければありがたいかと思います。  実は、今まで申し上げていることは何かというと、確かに国際的にはいろいろと応援をいただいたり、新聞の記事にも、いろいろな国が日本の常任理事国入りを賛成しますよとか、そういう記事が出ているわけなんです。これは意図的に我が方から来る外国のVIPに聞いて回っているのかどうかは知りませんが、いずれにしても、今まで来ている外国のVIPというのは、必ず日本は常任理事国入りしてほしいみたいなコメントが出ていることが非常に不思議だし、これが一つの大国のイメージなのかなとも思うのです。  問題は、やはり政府から国会議員、国民へのわかりやすい説明がどうしても不足しているように思えるのです。つまり、もう前提に常任理事国ありきで、その既成事実を外堀から埋めていくというか、外国にこれだけ認められているから日本もやらなきゃいけないんだよというように、実際、世論調査においても常任理事国という言葉をどれだけ国民が正確に理解しているか、そういう調査すらしない上での話の進め方というのはいささか早過ぎるのじゃないか。確かに国連五十周年に合わせて拡大されて、その中に入り込みたいわけですから、そういう気持ちもわかるのですけれども、それよりもやるべきことをもっと早目にやってほしいという気持ちがあるわけです。  これはどういうことかというと、まず最初にお願いしたいのは、総理府の方もいらっしゃるのですが、ぜひ今緊急の世論調査を行っていただきたい。つまり、私たち国民がどれほど国連に対しての認識、常任理事国に対しての認識を持っているかどうかを知る必要があると思います。正直、二、三の私の知り合いの女性に聞きましたけれども、安保理とか常任理事国という言葉は余りわからないという人が結構おみえになるわけなので、国民にどれだけ国連に対する意識、また常任理事国というものが一体どういうものか知っているか否や、そういうことすらやはりある程度政府の方では把握しておく必要があるのではないかと思うのです。  それで、これは先ほど総理府の方おっしゃったように、所管の外務省とかまたはその一番上である総理大臣がやってくれということであれば、緊急にできることではないかと思います。この手の決定には総理の前向きな姿勢が最も効果的に思われますので、さきの公共料金の値上げを凍結されたときのような御英断を期待しているところであります。  もう一つだけいいですか。  この問題、実は私たち国会議員がもっと真剣に議論しなければいけないと痛切に感じています。少なくとも私が当選してわずか十カ月ですが、新聞では連日常任理事国入りのいろいろなコメント、報道がある中で、国会内でそれの委員会なり質疑応答があったのは非常に少なかったように思われます。そこで私、外務省の人にお聞きしたところ、国連の常任理事国入りを審議するというか質疑をする外務委員会でさえ、今日まで常任理事国入りのこの問題に対して集中審議ですか、集中的に議論を行ったことがないということを聞きました。  ここにたまたま朝日新聞の記事があるのです。これは「政治家は鈍感すぎないか」というかなり厳しいタイトルですが、そこで書かれているのは「衆院委での論争は十年間で三回だけ」。要するに、政治家もだめなんだということを言っているのですが、「衆院外務委員会を例に取れば、この十年間で常任理事国入り問題が議論されたのは、三回に過ぎない。」これは国会事務局調べだそうです。御確認いただきまして、外堀を埋めるのではなくて、やはり国会の議論、そして世論調査を通じて国内のその声を起こすことが大切ではないかと思います。  そこで、この問題は、さっき政務次官がおっしゃったように、冷戦後のとても大切なマターだと思うのですね。世界的な秩序の再構築の動きの文脈で考えられるべきであり、重要課題であると認識されておられる。そしてまた、来年には国連創設五十周年をめどに答えを出さなければいけない。そういうことで、余り悠長に構えている時間はないと私は思うのです。  緊急の世論調査は始めていただき、かつ国会内においては、やはりこの国連の安保理常任理事国入りに関する特別委員会の設置が必要ではないかと私は感じております。ところが、これを政府の外務省の方に聞きますと、これは政府の問題じゃありませんよ、国会の議員さんたちの問題なんですということをおっしゃられたので、私はやはりぜひやっていきたいなと思っています。  聞いたところ、先輩のお話によりますと、そういう特別委員会を設置するに当たっては各党の事前の調整、平たく言うと根回しが必要なんだそうです。そこで私は、自由民主党の一人として、自由民主党にはその特別委員会の設置を強く働きかけていきたいと思うのですが、政務次官におかれましては、公明党でいらっしゃいますよね、党の方にこういうことをお声かけいただくことはお聞き入れ願えるでしょうか。ちょっと御答弁をいただきたいのです。
  226. 平田米男

    ○平田政府委員 幾つか御質問がございましたので、順次お答えをさせていただきたいというふうに思います。  まず最初に、最後の御質問からお答えをしたいと思います。  院内に先生御主張のような特別委員会を設けるかどうかということは、やはり院の立場での考えによって決まるわけでございますので、行政府の立場としてはお答えができないということにならざるを得ないと思います。  それで、政務次官、おまえは議員としてどうか、こういうお話でございますが、先生のおっしゃる御趣旨はもっともだというふうに私も議員としては感じておりまして、先生のその御趣旨を党内のしかるべきところにお伝えをしたい、こう思っております。  先生は緊急に世論調査をすべきではないかというお話でございまして、私も、外務省としても本件について世論調査を行って、我が国の安保理常任理事国入りの問題に対する国民意識を知るということは大変有益だ、こういうふうに思っておりますので、総理府等でそのような御調査をいただけるならば外務省としてもお願いしたい、このように考えております。  また、同様の認識に立ちまして、外務省といたしましても、ことしに入りまして既に独自に国連安全保障理事会に関する意識調査というものを実施いたしております。これは本年の一月二十五日 から二月七日にかけまして、全国二十歳以上の男女二千名に対しまして直接面接方式で実施をしたものでございます。  その結果につきましては近く発表できるのではないか、このように予定をいたしておりますが、先生の御質問がございましたので、その取りまとめ状況の中から少し調べてまいりましたところ、判明したところでは、日本が常任理事国に加わるべきか否か、こういう問いに対しまして、常任理事国に加わるべきだ、賛成だというふうにお答えになった人が五二・九%でございました。過半数を超えているわけでございます。これに対しまして、加わるべきではない、反対であるというふうにお答えになった方が一四・八%でございました。御報告を申し上げたいというふうに思います。  以上でございます。
  227. 野田聖子

    野田(聖)分科員 大変御親切な答弁をありがとうございました。  私は、常任理事国に入るべきか否やという議論よりも、一体常任理事国とは何だという、そのもう一歩前から国民に対しての喚起を促していただきたいと心からお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  228. 前田武志

    前田主査 これにて野田聖子君の質疑は終了いたしました。  次に、小森龍邦君。
  229. 小森龍邦

    小森分科員 一こま三十分でございますので、私もなるべく簡単に質問をいたしますが、答弁もどうぞ簡単にお願いをいたしまして、時間を有効的に使わしていただくようこお願いを申し上げておきたいと思います。  まず私は、衆議院予算委員会分科会等でも毎たびこの問題について発言をいたしておりますが、人種差別撤廃条約は今世界で何カ国が批准をしておるでしょうか。日本政府がこの批准を渋っている決定的理由は何でしょうか。まずその点お答えいただきたいと思います。
  230. 平田米男

    ○平田政府委員 締約国数が百三十九カ国でございます。渋っているという御表現をなさいましたが、この人種差別撤廃条約につきましては、あらゆる形態の人種差別を撤廃する、その条約の趣旨から考えまして早期締結が重要である、このように認識をいたしております。  他方、締結に当たっては、この条約に規定する処罰義務と表現の自由等の憲法の保障する基本的人権との関係をいかに調整するかという大きな問題がございまして、この問題を解決する必要があるわけでございます。この点を含めまして、本件条約を締結するためにいかなる方途が最善なのかということ、たびたび先生から御指摘をいただいておりまして、関係省庁とも検討を進めてきたわけでございますが、さらにまた進めるように一層努力をしていきたい、こういうように考えているところでございます。  もう少し具体的に問題点を申し上げますと、人種差別撤廃条約第四条には、人種的優越または憎悪に基づく思想のあらゆる流布、人種差別の扇動及び人種差別団体または活動への参加等を犯罪として処罰することを締約国に義務づけているわけでございます。  また一方、我が国憲法は思想の自由、憲法十九条でございます、また集会、結社及び表現の自由、憲法二十一条でございますが、思想、表現の自由というものを保障しているわけでございまして、この基本的人権の保障の観点、そして人種差別撤廃条約第四条の処罰規定、この規定の義務を履行するためには、基本的人権に対する考え方あるいは刑事立法政策上の制約、こういう問題点を調整し、詰めていかなければいけない、こういう状況にあるわけでございます。そういう意味で慎重に検討をする必要がある、このように認識をいたしているわけでございます。
  231. 小森龍邦

    小森分科員 ことわざに、焼香の間に合わねばならぬという言葉がありますね。葬式が出てしまって葬式に行ったってだめですね。つまり、世界が大体どういうテンポで動いておるかということを考えてやらなければ。これはもう随分前からの話なんですね。そして、やはり同じことを繰り返しているのです。  結局、言論の自由ということを問題にするというなら、既に先ほどの答弁で百三十九カ国と言われましたか、百四十カ国近い国が、では日本とは違う言論に対する評価を持った国なのか。いずれも近代的な市民的権利感覚を持った国がほとんどでしょう。そのほとんどの国が認めておることを日本がなぜ認められないか、こんなことになるのです。まあ繰り返しませんけれども。  先ほど来、国連中心主義ということを言っていましたが、軍事的行動だけ国連中心ではだめなんです。本当は、国連中心というのは、平和を守るために人権が不可欠であるということで世界人権宣言なるものが発布されたのですね。そこを考えて、邪魔をしておる省庁をちゃんと私は知っています。外務省は比較的まじめなんですけれども、しかし、外務省がリードしなければ、条約ですから、ぜひひとつ焼香の間に合うようにやっていただきたいということを申し上げておきます。  これで余り時間をとってもいけませんので、きのうアジアの人権状況などを通告しておりましたけれども、省略をいたします。  さて、率直にお伺いいたしますが、外務省の外郭団体である海外広報協会なる団体がございます。これは船舶振興会から助成金をもらい受けておる団体でしょうか。
  232. 平田米男

    ○平田政府委員 そのとおりでございます。
  233. 小森龍邦

    小森分科員 額はどれくらい、いつごろから補助金というか助成金を受けているでしょうか。
  234. 天江喜七郎

    ○天江説明員 お答え申し上げます。  日本船舶振興会よりの補助金は、昭和五十八年度より平成五年度まで、総額十九億一千四百六十九万九千八百円でございます。
  235. 小森龍邦

    小森分科員 その船舶振興会から助成金を受けている海外広報協会が、株式会社ユニバーサル・マルチメディア・コミュニケーションという会社に事業を委託しているでしょうか。委託しているとすれば、何年度からどれくらいの金額で委託しておるでしょうか。
  236. 天江喜七郎

    ○天江説明員 お答え申し上げます。  ユニバーサル・マルチメディア・コミュニケーション、省略しましてUMCと呼んでございますが、その会社が登記されましたのが平成五年度、五年三月三十一日でございます。したがいまして、平成五年のその設立後に委託してございます。その額が合計四億余でございます。
  237. 小森龍邦

    小森分科員 時間が短いから、余りそのことにりいて深くは時間をかけられないのでありますが、私が調査をしたところによると、平成四年から船舶振興会から海外広報協会に金が回っておって、つまりUMCに契約をしておる事業に関してですよ、今あなたが答えられたより一年早いというふうに私は認識しておりますが、それはいかがでしょうか。
  238. 天江喜七郎

    ○天江説明員 UMCの設立発起人会ができましたのが平成四年度、四年十一月三十日と承知しております。発起人会ができました後で、もろもろの都合がございまして登記が三月三十一日まで、翌年になりましたけれども、その間には正式の形で委託ということはございません。
  239. 小森龍邦

    小森分科員 そうすると、正式の形ではないが、正式でない形で何か言っているのですか。
  240. 天江喜七郎

    ○天江説明員 設立時期でございますが、その間に、将来設立、登記をした後にこの会社に委託をしようという話があったと承知しております。
  241. 小森龍邦

    小森分科員 公益法人の海外広報協会なるものが、しかも大蔵省主税局が指定する特定公益法人、つまり海外広報協会に金を寄附すれば免税枠がとれる。そういう二重三重の公益性を認められて法律の保護を受けておる団体が、大体この事業というものを株式会社にやってもらう。しかもそれは部分的というよりは、船舶振興会から行っておる金のほとんどはそれへ行っておるのでしょう。その点についてはどうですか。
  242. 天江喜七郎

    ○天江説明員 このUMCに対する委託の約四億余のお金でございますが、船舶振興会からのお金は約二億余でございまして、その他の企業からの 寄附というものが一緒になってUMCに委託という格好で行っているわけでございます。
  243. 小森龍邦

    小森分科員 あなたは四億と言われるけれども、五億に近い四億台だと私は認識しておるのです。その約半額は船舶振興会、それは社団法人であり、大蔵省主税局が認めているところの指定する特定公益法人である。それがみずからが事業をこなすというならば、公益性というものをそれは認めるでしょう。これも考え方によったら、各省庁が外郭団体をつくって、例えば国会の監督が及ばないようなそういうなしましにしておる。  それが日本の政治を随分毒しておると思うけれども、そこは現実の法律というものがあってそうなっておるのだから認めるとして、その認められた団体が公権力が及ばないいわゆる株式会社に事業を委託する。それは一体どういうことなのかということを私は尋ねておるのと、それから、せめて株式会社として発足した後に事業委託があったというならばまだわかるけれども、その前に、あなたは言葉が濁れておるけれども、何らかの形のものがあった。そこのあいまいさを私はこの決算委員会で明らかにしたいと思うのですね。その点どうですか。
  244. 天江喜七郎

    ○天江説明員 先ほど来お話しいたしましたUMCの設立の目的という点について一言御説明したいと思います。  これは、民法四十四条によりまして役員の連帯責任というものが公益法人に及んでくるわけでございます。この公益法人の役員といいますのは非常に薄給でございますし、連帯責任でもっていろいろな事業をやっているときこそこまでリスクを負担していただくというのは、これは問題があろう。また、外国とのいろいろな関係もございますから、為替のリスクもございます。また著作権の処理の問題におきまして、これは業界の現在の状況におきましては、発注主に著作権が当然及ぶという形にはなりませんので、UMCというような形の会社を設立して、そこに事業を委託するということによって、著作権に係る種々の費用を削減していくというような目的でつくられたものと承知しております。
  245. 小森龍邦

    小森分科員 そういう答弁は私も雑誌で読みました。しかし、それは具体的な運営に係るいわば弁解であって、基本的には、公益法人というものが公益法人ならざるものにそのほとんどの金を回して事業をさせるというのでは、法律的なコントロールとかそんなものは著しく緩むでしょう。そこを私は問題にしているのですよ。だからあなたの言われるような理屈は、わずか三十分しかないから、こんなことでずっと三十分いったんじゃほかのことも言えないから、これは重大な疑問、こういう形で留保しておきますよ。  これは私は今回に限らないから。こういう政治上の疑惑を持たれるような問題については徹底的にやらないと、選挙制度を変えるだけが政治改革じゃないのですからね。政治改革をかっちりやろうと思ったら国民が納得のいくようなことをしなければいかぬわけですから、これは一応問題を提起した、こういう形にしておきます。  それで、その会社ができる前年から金が行っていることについても、あなたは実にあいまいでしょう。だから話題を次に移しますが、次のことでもし関連があったら、その点についてまたあなたの方の発言をいただきたいと思います。  さて問題は、海外広報協会なる外務省の外郭団体で、私はもう一つ大変疑問に思うことがあるのですね。それはこの海外広報協会なるものが置いている事務所、この海外広報協会が入っている事務所ですね、これはそこで番地などわかりますか。
  246. 天江喜七郎

    ○天江説明員 海外広報協会の住所は、東京都千代田区平河町二の七の七でございます。
  247. 小森龍邦

    小森分科員 その中に政治団体水曜会というのが入っていませんか。
  248. 天江喜七郎

    ○天江説明員 政治団体の水曜会が入っておりましたのは平成四年三月二十七日まででございまして、現在は入っておらないと承知しております。
  249. 小森龍邦

    小森分科員 私も年度ごとに調べていないから、今はそれは出ておるのか後ほど調べてみたいと思いますが、海外広報協会という公益法人なるものが、要するに法律的に資格を与えられたものがなぜ水曜会という政治団体と同居しなければいかぬのですか。外務省が指揮というか監督し、いろいろ指導しなければいかぬわけでしょう。その団体がなぜ特定の政治団体と同居しなければいかぬのですか。
  250. 天江喜七郎

    ○天江説明員 水曜会がその事務所を出た後に海外広報協会が正式にそこに入ったのでございますけれども、現在は同居しておらないと申し上げた次第でございます。  先生がおっしゃられましたのは、そんたくいたしますと、水曜会の看板が最近までそのビルの入り口に掲げてあったという話を聞いておりますが、これはビルの所有者が昔の水曜会をしのんで掲げていたためであるということを承っております。
  251. 小森龍邦

    小森分科員 それでは、また後ほどこれも確かめさせていただきたいと思いますが、ある雑誌に、海外広報協会が家賃をその建物の持ち主に払っているならわかるけれども、実は水曜会へ払っているんですといって証言している人がいます。雑誌に活字になっていますが、その点についてどうですか。
  252. 天江喜七郎

    ○天江説明員 私どもでその雑誌を読みまして調べました結果、水曜会に貸しておった企業はホワイト企業ということでございまして、現在海外広報協会が借りているのもホワイト企業から借りているわけです。これは月にいたしまして七十一万円を毎月振り込んでおる。これは四十五坪の事務所でございまして、そこにちゃんとした銀行の送金の証拠も私どもいただいております。
  253. 小森龍邦

    小森分科員 ホワイト企業に払っているということをあなたは断言できるのですね。本当はこれはホワイト企業の建物なんです。ホワイト企業の建物であるのに、海外広報協会のある幹部が水曜会に払っているのです。しかも格安で借りているのです。その格安というのは年間六十何万円なんです。年間、月じゃないですよ。そんなことが活字になっているのです。  ところが、水曜会なる政治団体の収支決算書、自治省に報告しておるのを見ると 年間、これは平成三年度、この三年度は事務所の貸し料八百十五万七千六百円と書いてあるのですね。あなたが今言われる月七十何万といえば、これはほぼ符合するんですよ。だけれども、雑誌に出ておることからいえば、これは全然違うのですね。  あなた、先ほどのホワイト企業に払っておるのは間違いないかと私が言うのは、この水曜会という政治団体の収支総額に事務所貸し料となっているのですよ。この人が自分が人に物を貸すぐらいの事務所をほかに持っておるのですか、水曜会がそれはわからぬでしょう。だから私は大変疑問を抱くのですよ。その点のあなたの考えはどうですか。
  254. 天江喜七郎

    ○天江説明員 先ほどの説明が足りなかったのでおわびいたしますが、現在水曜会というものが存在しないで、海外広報協会がそこに間借りしている。そのお金の月額七十一万円をこのホワイト企業に払ったという現在のお話をしておったわけでございます。  過去につきまして私どもが承知しているところを申し上げます。  水曜会がホワイト企業から借りておった期間でございますが、平成四年三月二十七日までの期間に、海外広報協会が水曜会より一部事務所を借りておったという事実はございます。その期間は、昭和五十七年の六月から平成四年の二月というふうに承知しております。
  255. 小森龍邦

    小森分科員 大体こういう問題というのは、後から多少言い逃れができるようなことをやるものですよ。だから、私はうそを言っておるという決めつけはしないけれども、かなり厳密に、時間の制限なしに追及していけばやがて真実に到達できるけれども、こういう時間の制限のあるときはなかなかそういうわけにはいかぬですね。  そうすると、私はさらにそのことで問いたいと思いますが、この海外広報協会と水曜会の役員と いうのは重複していないですか。
  256. 天江喜七郎

    ○天江説明員 役員は現在一人重複してございます。
  257. 小森龍邦

    小森分科員 あなたは、都合のいいことは昔のことを言い、それからちょっと荷を軽うしようと思ったら今ごろのことを言い、それでは論理がかみ合わないのですよ。そんなことをやると、どうせこれは議事録になりますが、議事録を後で読まれた人はますますこれは疑惑を抱くのですね。  御承知のように、海外広報協会というものは、その設立の趣旨からいいましてもまことにきれいなことでしょう。「社団法人海外広報協会は昭和二十八年、日本の政治・経済・社会・文化等を海外に紹介し諸外国の日本に対する認識を深め、また諸外国の事情を日本国民に知らせる目的で設立されました。」と、これは海外広報協会の文書ですわ。  そういうまことに立派な趣旨でできておるものが、今私が問題にしなければならぬようなちょっとどろどろしたことがあるということは、外務省の指導不足というか監督不足じゃないですか、これは外郭団体ならば。だから、都合のいいところだけつまみ食いをして答弁をしないようにしてくださいよ。もうあと七分しかないんです。しかし、きょう私は、海外広報協会の疑問とするところだけは言っておかなければいかぬのですよ。  そうすると、海外広報協会というものは、これは答えてくださいよ、少なくとも日本の事情を外国に伝え、外国の事情を日本に持ってくるが、主として日本の事情を外国に伝えるということは、日本の信用といりことを、あるいま諸外国から信頼をかち取るような任務でしょう。それはどうですか、その点は。
  258. 天江喜七郎

    ○天江説明員 海外広報協会は、外務省の外郭団体として私どもが監督を十分しておると認識しております。  この海外広報協会の主要な仕事は、日本の現状が外国に知られていないということで、企業に対して外務省から委託等をいたしまして、さまざまなビデオをつくってそれを外国のテレビに流すというようなことを初め、種々の問題を、外交的なプラスになるような仕事を頼んでいるわけでございます。  先ほど先生が申しました、とある有力な月刊誌の話でございますが、この月刊誌に取り上げられましたことで海外広報協会は名誉を傷つけられた、こういうことで申し立てをいたしまして、今後公式に訴訟に持ち込むということでございます。その申し立て書が手元にございますが、それに対しましてこの有力な月刊誌の方は、海外広報協会が疑惑があるということについては否認する、そのような疑惑を報じた箇所は存在しないというようなことを月刊誌は申してございます。
  259. 小森龍邦

    小森分科員 そういう都合のいいことばかり言っちゃいかぬな。私もそのことは知っているが、要するに、その月刊誌の方は、いや、事実だけを言っておるのであって、事実でないことに疑惑を重ねるようなことは言ってませんよという答弁書なんですよ。あなた、よく読んでみなさい、それは。  まあそれはいいから、問題は、私が言うたのは、今の目的を読んだのは、国外に向けて日本の信用を高め、日本というものはそんなに疑わしい国じゃないんだ、信用してくださいという意味のこれは広報活動なんですね。しかし、先ほど私が申しましたような水曜会との関係の事務所の問題とか、あるいはUMCの問題とかを世間が知ったら、これは日本に対する不信感を持つんですよ。それじゃ外務省の外郭団体の価値がないじゃないか、こういうことで私は言っているんですから、焦点をぼかさないようにしてくださいね。謙虚に聞いてくださいね。  それで、実はこの海外広報協会は、御承知のとおり、日本の政界を大変汚濁に導いた佐川の渡辺廣康、彼が七年も八年も理事長をやっておったでしょう。私が言いたいのは、何を言いたいかといったら、そういう人がひょこつと、余計金を出すからといって、外務省の外郭団体の理事長にぽんとなれるという仕組みが問題なんですよ。昔から金で面を張るという言葉があるでしょう。札束でほおをなでるという言葉があるでしょう。これが日本の政治を腐敗させておる。  そして、この外郭団体は、まだずっと入っていったらいろいろな問題がありますよ。きょう私はあらかじめの時間を設定して、この時間に見合うたことしか言っていないのだけれども、調べていったら何ぼでもありますよ。どう思いますか。金で面を張るような海外広報協会、どういう感覚であなた方は思っているのですか。
  260. 天江喜七郎

    ○天江説明員 先ほどの渡辺・佐川急便の元社長の件でございますが、これは理事長は理事会によって理事の中から互選で選任されるということでございまして、私どもはその報告を受けておるわけでございます。これは協会の定款によりまして理事長が選任されたということでございますので、それは平成二年の段階でございます。そのころにはまだ佐川事件というのは私どもは承知していなかったという経緯がございます。
  261. 小森龍邦

    小森分科員 もちろん佐川事件がある前のことなんですけれども、つまり外務省の外郭団体、外国へも信用を高めなければならぬような団体が、それは不明のいたす、こういうことになるでしょう。先が見えなかったということになるでしょう。それはみんながみんな先が見えるわけではないが、先が見えなくても、行政各省庁の動きというものは、万一に備えて下手なところに落ち込まないようにするというのが行政のやり方でしょう。  政治家でもよくそういう答弁をしておる。いや、あのときはまだ佐川はそう悪くなかったんです。細川総理大臣がそういうことを言った。だから彼は信用が落ちてしまって、今全くさまにならぬようになっているでしょう。私はそういうことを言っているんですから。  そこで、あなた方はそういうときに、いや、渡辺さんのことがよくわからなかったんですという意味のことを言っているんだろうが、消極的によくわからなかったと言うが、あなた方は積極的に渡辺さんを利用しようとしたんじゃないのですか。  もう時間がないからちょっと言いますよ、そのことを。これは、もう時間が切れたら、また後ほど別途何かのときにやりますし、また正式の委員会でもやりますけれども、朝吹誠さんという人に外務省のある官僚が手紙を出しておる。これはまた後ほどあなたに見せてもいいけれども。  「先日はお招きを頂き誠に有り難うございました。久し振りに愉快に騒いでしまいました。飲む程に気も緩み御無礼を致しました。」余り飲んじゃいけぬな、これは。「佐川急便の渡辺社長を貴協会の指導者に有しておられることは」、というのは、朝吹誠さんがこの海外広報協会だから。「貴協会の指導者に有しておられることは誠に時宜を得たものと思います。政府の規制が問題であるとの御所見を頂きましたが、小生はその通りと申し上げました。」云々とこうなっておるが、佐川急便の渡辺社長が後にあんなことになって日本の政界を汚濁して、私らは大変迷惑ですよ。小選挙区で政治がきれいになるのでないのに、いいかげんな理屈をつけて政治改革を選挙制度にくらがえさせてしまって、これは渡辺さんがあんな下手なことをやったから、世論がずっと悪い方へ誘導されたのでしょう。  そんなこともあるが、この外務省の官僚は、朝吹さんに渡辺さんをこんな評価した文書を出しておるじゃない。これは私が言うたということで、ちょっとあなたの見解だけ聞かせてください、それで終わりますから。後でまた見せますから。
  262. 天江喜七郎

    ○天江説明員 渡辺元社長が逮捕、収監されましたのが平成四年の二月でございますが、その前に、平成三年の七月三十日に理事長をやめていただいてございます。佐川急便事件が起こる大分前でございましたものですから、私どもはその起こった後、種々協議をいたしまして、そのような措置をとってもらった次第でございます。  その手紙の内容につきましては、私どもは初めてでございまして、承っておきます。
  263. 小森龍邦

    小森分科員 終わります。
  264. 前田武志

    前田主査 これにて小森龍邦君の質疑は終了いたしました。  次に、蓮実進君。
  265. 蓮実進

    ○蓮実分科員 私は、自由民主党の蓮実進でございます。外務省関係にちょっと質問をしたいと思います。  我が国のODAに対する期待は大変大きいわけでありますが、同時に問題も大変多いと思います。政府は、中期目標、一九八八年から一九九二年、この五年間で五百億ドルが達成されたといって安心をし、九三年から五年間で七百億ないし七百五十億ドルと目標を定めておるようですが、現在、現状をどうとらえ、いかに取り組もうとしておるか、お答えをいただきたいと思います。     〔前田主査退席、竹内(譲)主査代理着席〕
  266. 平林博

    ○平林政府委員 先生のただいまの御質問でございますが、日本政府といたしましては、日本の国際的な貢献の中でも最大かつ最も国民の皆様方の御支持も得、世界各国からも期待の多いこのODAにつきましては、もちろんその量を拡大することも大事でございますが、質の改善、さらには援助の効果的、効率的な実施、それから、できるだけ疑惑を招かないような透明性の確保、こういったものも合わせまして、新規の第五次中期目標では、総合的にいい援助を目指してやっていきたい、こういうことで考えておりまして、達成された先般の第四次中期五カ年計画の成果は成果といたしまして、さらに新しい時代の要請にこたえながら、反省を日々心に誓いながらやっているところでございます。
  267. 蓮実進

    ○蓮実分科員 今、世界経済の極めて低迷しておる中で、各国のODAが大変減っております。日本のみが突出しておる。世界各国の企業が、この日本のODA資金を何とか利用しようとねらっておる。この現状の中で、これから次の目標をどこに置いているのか。それから、ODAの基本理念に従ってということで、物足りないのではないかなと思うのですが、積極的に考えていくべきではないかと私は思います。  そこで、我が国のODAは量ばかりで、質において問題があるのではないか。また、本当に途上国の人々に役に立っておられるのだろうか。海外からの要望、評価にどうこたえておるのか、お答えいただきたい。
  268. 平林博

    ○平林政府委員 世界各国から日本のODAにつきまして期待が多いと同時に、日本のODAに参画して、できるだけ自分たちも開発途上国の発展に貢献したい、あるいはもう少し自分たちのビジネスのために日本のODAを活用したいという企業があることは確かでございます。  日本のODAは、よく言われますように、ひもつきではないかという御批判がありますが、実は円借款では九六%まで全くひもがついていない。残りの四%は日本と開発途上国に開かれておりまして、ほかの先進国には開かれていない。一部分だけひもつきでございますが、いずれにしても、全くのひもつきというものは一つもない。そういうことで諸外国の企業の期待も多いのですが、我々といたしましては、できるだけ効率的に、かついい援助をしたいと思っておりますので、受け入れ国に対しまして、透明な公開入札で、一番いい企業を選んでプロジェクトを遂行していただきたいということをお願いしてございます。  また、質の問題につきましては、借款だけでなくて贈与の比率をもう少し向上すべきだという国際的な要請がございますので、それにも少しずつこたえるということでやっております。  また、発展途上国で役に立っているかということでございますが、我々といたしましては、幾つか問題のあるプロジェクトもないわけではございませんが、総じて言いますと、大方十分にお役に立っていると考えております。残念なことながら、援助の現場が日本から遠い国でございますので、なかなか日本には目に見えないところがございますが、我々の把握するところ、大方うまくもいっているし、お役にも立っているという評価をいただいております。このことをいろいろな機会に、国会への御報告あるいは一般の国民の皆さんへの御報告ということで、できるだけ公開性を高めながら、御理解いただくように努力したいと思っております。
  269. 蓮実進

    ○蓮実分科員 問題は、援助が末端まで届いているかどうか、これが問題だと私は思うのですね。  問題点の一つとして、途上国の軍事支出あるいは民主化、市場経済移行の動きなどにこのODAをいかに関連づけて行うのか。それから、相手の国が欲しいと言っているからといって、それに黙ってこたえるだけで一体いいのかどうか。いかに考えているか、基本的な考えを示していただきたいと思います。
  270. 平林博

    ○平林政府委員 先生御承知のように、おととしの六月の閣議決定でできましたODA大綱の原則の中には、日本のODAは軍事目的には使わない、紛争を助長するようなことには使わないということのほかに、第三の原則の中に、受け入れ国の軍事支出の動向等に十分注意するということになっておりまして、この点からいいますと、日本は被援助国の相手国に対しまして非常に厳しい注文をつけております。  先般も、例えば中国でございますが、羽田前外務大臣の一月の訪中、さらには細川前総理大臣の三月の訪中のときにも、中国側首脳に対しましてこの点を提起いたしましたし、ほかのいろいろな国に対しても同様に問題提起をして、我々のODA大綱、ODAの理念、原則に相反することのないように、これは厳重に相手国にお伝えし、実行していただいているわけでございます。  また、相手国からいろいろな要請が参ります。しかし、日本といたしましては、この援助の理念、原則、例えば環境の重視、その他いろいろなものがございますが、そういうものも十分踏まえながら、まさに経済協力といいますが、日本と相手国が両方協力していい援助をつくるようにということでやっております。  例えば要請主義という言葉がかつてございましたが、今我々は要請主義という言葉を使わないようにいたしておりまして、先方の要請は尊重はするけれども、日本の注文あるいは日本の理念その他を十分に反映してもらうように、これは先方にもお願いし、それが聞き入れられない場合には、また場合によって援助として取り上げないこともある、こういう割と厳しい対応を最近になってとるようになっておりますので、先生の御懸念のようなことがないように努力しているということを申し上げたいと存じます。
  271. 蓮実進

    ○蓮実分科員 私が今の質問をしたのは、ほかでもありません。実は、この五月の連休前後にミャンマーの少数民族を私自身訪ねまして、現地のさまざまなことを見聞したからにほかなりません。ミャンマーは御存じのとおり大変難しい情勢にありますが、政府はどのような判断に基づいて同国に対するODAを実施してきたか、説明をしていただきたいと思います。
  272. 平田米男

    ○平田政府委員 御質問にお答えをしたいと思います。  我が国は、ミャンマーに対する援助でございますが、一九九二年の実績といたしまして七千二百六万ドル、これは支出純額ベースでございますが、行っております。  我が国の同国に対します経済協力は、現在、先生よく御承知かと思いますが、ミャンマーの政情等を踏まえまして、原則といたしまして停止をしているわけでございます。しかしながら、政変前から実施中の案件とかあるいは緊急・人道的性格の援助、こういうものにつきましてはケース・バイ・ケースで検討をしていく。このケース・バイ・ケースとはどういうことかといいますと、その案件が相当程度進捗しているものかどうか、あるいはその案件が国民生活に直結したものか否か、こういうことを念頭に置きまして物差しとして考えていきたい、こういうことでございます。  以上でございます。
  273. 蓮実進

    ○蓮実分科員 今政務次官からお話しのように、これまでの流れから見ると、民主化しない限り、スー・チー女史の問題が解決しない限り援助はし ないという姿勢のようですが、では一体見通しはどうなのか。日本は民主化のためにどんな役割を果たしているのか。そこに住む人々のことを忘れてはいないのだろうかどうか。このミャンマーの問題は、さきに指摘したとおり、軍事政権と民主化をどう見るか、我が国からのODAをいかにこの国の発展につなげていくかにあると思うが、どうお考えになっておるか。  我が国のODA下巻、一九九三年外務省経済協力局編によると、百四十ページ、早期民政移管がODAの条件のように記されております、御案内のように。その実態は一体どうなっているか。我が国からのODAがスー・チー女史の釈放に象徴される民主化実現に向けていかに役立っているか。  それから、同書の百四十一ページには現在の援助の見直しの必要例が示されておりますが、今どう考えているのか、見直しが必要と考えているのかどうか、お答えをいただきたい。
  274. 平田米男

    ○平田政府委員 もう先生既に御承知かと思いますが、一九八八年、政情が混乱をいたしました。また、さらにそれが長期化してきたわけでございまして、その後、クーデターにより誕生した新政権との間で正常な政府間関係が存在しなかった、こういうふうな事実がございました。そういうことから我が国は援助を事実上停止をしたということになったわけでございます。その後、八九年二月に現政権を承認をした際に、先ほど申し上げました基本方針を採用いたしまして対応をしているというところでございます。  それで、最近ミャンマーこおける種々な動きがございます。前向きな動きというふうに私ども考えておるわけでございますが、例えば政治犯の釈放とか戒厳令の解除などがございます。したがいまして、私どものODA大綱に基づく対応、この基本方針というのはその大綱に合致していると考えているわけでございますけれども、その基本方針に基づく協力のやり方が、ミャンマーの民主化あるいは人権状況改善に向けた努力に対しましてインセンティブを与えている、このように考えております。したがいまして、今後もミャンマーの人道上のニーズを踏まえて人道援助と人的交流、これを積極的にやっていきたい、こういうように考えております。  したがいまして、硬直した考え方ではありませんが、当然ミャンマーの国民の皆さんの幸せということを常に念頭に置いた上でのこの基本方針でもあるわけでございまして、その辺を先生も十分御理解いただいているかと思っております。  若干具体的な事実を申し上げますと、例えば本年二月二十八日にミャンマーのNGOとの間で三件の草の根、いわゆる小規模なものでございますが、草の根無償資金協力の贈与契約を締結をいたしております。一つは救急サービス増強計画というものでございまして、ミャンマー赤十字に八百四十万円供与をいたしました。また、母子保健促進計画につきましては、ミャンマー母子福祉協会に対しまして約四百二十万円供与をすることになっております。それからラカイン州マラリア対策支援計画、これは国境なき医師団に対しまして約五百八十万円でございます。  また、本日でございますが、この五月二日にミャンマーのラカイン州マウンドー部におきまして、サイクロンによりまして死者十七名、被災者総数六万四千九百七十名、あるいは学校が八十二、あるいは病院が二十四倒壊をするというような多大な被害が出ておるわけでございますが、それに対しまして、ミャンマー政府に対しまして我が国といたしましては、国際協力事業団を通じまして総額約一千百九十六万円相当のテントとかあるいはプラスチックシートとか石けん、タオルなどの緊急援助物資の供与を行うことを決定をいたしました。  このように、人道的配慮から緊急援助は積極的に行うことが我が国の考え方でございまして、そのような対応によって、るる申し上げましたようにミャンマーの民主化あるいは人権状況改善につながっているものである、このように考えております。
  275. 蓮実進

    ○蓮実分科員 私も大体承知をしているつもりでありますが、私は、実はミャンマーでカレン族の皆さんと面談をしてきました。民間団体の方々が四万ドルから五万ドルぐらい義援金あるいは物資をプレゼントするというので、実は同行したわけであります。現地の方々が一体どう考えているのか、あるいはどんな生活をしているのだろう、そういうことを見てこようと思って実は出ていったわけであります。  今お話しのように、民間団体、NGOによる援助について政府のお話がありましたが、実はそのときにミャンマーの総理大臣というのですか、どう言うのかわかりませんが、カレン民族、御承知のとおりミャンマーはたくさんの民族がおられますね、その中でもかなり大きいカレン民族同盟というのがあるのですが、そのカレン民族同盟の首相であるシンさんという方が、日本から国会議員が来られたということで、実は私どもとぜひお話し合いをしたいということで来たわけであります。  そのときに、シン首相というのですが、その方のお話によりますと、ミャンマーは四千二百万人ぐらいの人口だ。その中で自分たちカレン民族は七百万人ぐらいだ。ビルマにはカチン民族とかシン、アルゲン、ボー、モアとか、いろいろの民族がおります。恐らくそれ以外に百万人ぐらいいる。締めて四千二、三百万人だ。  今の軍事政権とカレン民族同盟との間で過去三回ぐらい、お互いビルマ人として仲よくしよう、ミャンマー人として一緒にやりましようということで話し合いをしたそうです。ところが、その三回とも無条件降伏しろ、こういうことなので、なかなかうまく歯車が合わない。我々は大東亜戦争、第二次世界大戦後、ともかく今のアウン・サン・スー・チーのお父さんになるのですか、その方の政権のときに、ビルマはみんな民族が一緒になって仲よく国づくりをしよう、こういうことになっておったのですが、アウン・サン・スー・チーさんのお父さんの暗殺事件があって、その後、今外務省からの説明のように今日に来ているわけです。  ともかく同じアジア人としてお互いに理解を深めて、今のビルマの政権と日本は大変友好的だ、日本政府と今のミャンマーの軍事政権が友好的だ、それで我々国会議員に心からお願いしたいと実は涙ぐんで要望をいただいたわけであります。日本の政府にぜひ伝えてくれ、この民族問題をビルマ政府に働きかけてくれないか、国会議員にぜひお願いしたい、今のビルマ軍事政権は武力で解決できないことを伝えてくれ、そして、お互いに話し合いで一緒になってやりましょう、ぜひひとつ日本として努力してもらえないだろうかというお話を聞いたのですが、これはやはり内政干渉とかいろいろそういう難しい問題もあると私は思いますので、深くは私どもの個人的な意見を申し上げなかったわけであります。  いずれにしても、私は、こうした今の政府の援助、ODAと別にNGOの援助が大変重要になってきている今、そういう中にあって、政府間の援助だけではODAの基本理念としている世界の平和と繁栄が必ずしも達成できないのではないかというふうに考えておるからであります。  ミャンマーの例を引くまでもなく、軍事政権に幾ら援助したところで平和はやってこない。カレン族に象徴されるように、この国を構成する民族がお互いに力を合わせて、そして国づくりに全力を挙げてこそ本当の平和が図れるのではないか。  冷戦後、世界の至るところで民族問題が火を噴いているのは御承知のとおりであります。旧ユーゴ、パレスチナ、イエメン、エチオピア、そしてアフリカの国々などを見ると、本当に援助すべきは何かと実は考えざるを得ない。ODAの基本理念に掲げられた全人類平和のためにどう考えていくか、もう一度原点に立ってみる必要があるのではないかと思いますが、どうお考えになるか。
  276. 平田米男

    ○平田政府委員 ミャンマーの少数民族の問題、先生大変御熱心に、また現地まで行かれて視察を してこられたというお話、大変意義深く伺っていたわけでございますが、先ほども申し上げましたが、我が国はミャンマーに対して一定の基本方針を持ってやっております。  先ほど人権状況改善というお話をしましたのも、やはりこの少数民族の問題の解決ということも当然含まれているわけでございまして、もう先生もよく御承知かと思いますが、既に十一ほどの少数民族との話し合いがミャンマー政権と行われたということも伺っております。カレン族でございますか、それとの話し合いも先生の御指摘ですと三回行われてきたということでございまして、三回行われてきたということは、さらに継続して行われるということではないかというふうに思うわけでございますが、そういうことで、粘り強い私どもの対応と、またミャンマー政権の少数民族との対話というものを進めることが今肝要なのではないか、このように考えているところでございます。  私ども、ODA大綱のあり方というのは、これは世界的にも誇れるものだというふうに思っておりまして、その精神と合致したこのミャンマー政権に対する基本方針というものは今変更する必要はない、このように考えております。  先生の御趣旨と私どもは違わないものだというふうに認識をいたしておりますので、ぜひ御理解をいただければと思います。
  277. 蓮実進

    ○蓮実分科員 余り時間がないようですのであれなんですが、では、経済協力の評価についてちょっと質問したいと思うのです。  ODAの問題は、援助のしつ放し、それが本当に役立っているかどうか、金を出してしまえばあとは相手国次第という野放し状態になっているのではないかなという心配を実はしております。評価が行われないところに進歩はないわけでありますから、ODAについて事業評価はどんな形で行われているのか、お伺いをいたしたい。
  278. 平林博

    ○平林政府委員 先生のおっしゃるとおりだと思います。政府といたしましても、事後の評価は極めて大事だと考えておりまして、会計検査院が行う我々に対する会計検査、その以前に政府としても事後評価のためのいろんな措置をとっております。例年、毎年でございますが、平均しますと千二百件以上の事前調査、それから事後の評価につきましても数百件の評価をやっておりまして、この評価の結果につきましては、国会を初めとする各方面に御報告申し上げております。数百ページにもわたる評価書でございます。  この評価につきましては、援助を行っております政府関係機関が独自に自分が行った援助を自己評価するということだけでは十分でないという考えでございますので、内外の有識者あるいは相手国政府の関係者、こういった人たちに評価を行っていただく第三者評価、さらにはいろいろな先進援助国あるいは国際機関、世界銀行等ですね、そういう国際機関や先進国の援助専門家との合同評価、例えば日本とアメリカそれぞれが行った援助を両方合同チームを組んでお互いに評価するというふうな合同評価などの手法も用いまして、できるだけ客観的に評価を行っております。  その上で、相手国に対しまして問題があれば指摘し、事後の参考にする。さらにまた、追加的な援助とか技術協力の継続とか、そういうものがあれば、フォローアップの一環といたしまして、その評価に基づいて後々もきちんと援助の実効が上がるようにする、こんなことをずっとやってきておる次第でございます。
  279. 蓮実進

    ○蓮実分科員 では、具体的にミャンマーについての評価がどう生かされておるか、お聞きをしたいと思います。  同書によると、天然ガス発電、これは恐らく二十八億円ぐらいですか、果樹研究センター二十一億円、橋梁技術訓練センター五億円、セメント工場百二十三億円、この四つの事業が対象となり、かなり厳しい評価がされておりますね。これは大変結構なことだと思いますが、ではそれがこれらの事業のその後の進展にどう生かされているのか。中には、目的の達成のために現状では不十分だとの評価もあるようです。どうなのか説明をいただきたい。時間がないから簡潔に。
  280. 平林博

    ○平林政府委員 大変申しわけないのですが、個々のプロジェクトの具体的な評価は手元には持ち合わせてないのですが、いろいろ指摘された評価の結果に基づきまして、その都度必要な措置をとるのが今の政府の考え方でございます。  先ほど申し上げましたように、必要ならば追加的な措置もとりますし、また改めていろいろな別の方策をとりまして実効があるようにしますし、また特に一たん終わった援助につきましては相手国の責任になる面が多いものですから、相手国の実施体制等につきまして厳しい注文をつけるというようなことをやっております。
  281. 蓮実進

    ○蓮実分科員 平成四年度会計検査院報告に関連して、平成四年度決算検査報告によると、政府開発援助の効果が十分発現していない事態が見受けられるとして、漁港の建設事業、それから発電所建設事業、通信施設拡充事業、地方幹線道路建設事業が列記されているが、これら事業に対してその後どのような措置をとっているか、現況はどうなっているか、説明をしていただきたいと思います。
  282. 平林博

    ○平林政府委員 今御指摘の四件は、七十二件会計検査院の方々が御視察いただいたうちの四件に問題がありということでございます。  そこで、順繰りに簡単に申し上げますと、スリランカでの漁港の建設につきましては、漁港の建設を先方の要望に従いましてやったのですが、調査を十分に関係者はやったつもりでおりましたが、予想を上回る砂が漁港の中に高波によりまして入ってきて、漁港が十分に使えなくなってしまったということでございます。そこで改めて調査をいたしまして、大変残念なことでありますが、追加的な無償資金供与をせざるを得ないことになりましたが、それを行うことによって当初意図した目的が達成されるようにやるということで、今実施中でございます。  また、発電所の建設事業につきましては、この発電所をつくったこと自体は大変よかったのでございますが、その発電された電力を使うほかの事業が先方政府のいろいろな財政状況によりましておくれてしまいまして、十分な能力が発揮できてないという御指摘なのでございます。これにつきましても、いろいろ送電線その他を需要の多い地域から引くようなことを今やっておりまして、我々がつくり上げた発電所設備の稼働能力が十分に発揮できるように今やっている最中でございます。  それから、もう一つの通信施設、これは市外電話網をつくったわけでございます。市外電話網と市内をつなぐ導線になる部分が第二次計画としてあるのですが、これも先方のいろいろな事情によりまして多少おくれましたが、間もなく完成いたしますので、完成すれば一〇〇%稼働する。完成しない現在でも市外電話の回数が急激にふえておりまして、役には立っているというふうに聞いております。  もう一つの地方幹線道路でございますが、これは熱帯地方の国の幹線道路をつくったのでございますが、大変なあらしでがけ崩れが起こったり、いろいろなことで道路が寸断されるということがございました。これも日本側の行った調査の予想を上回るところがございましたが、先方政府が非常に熱心にこれに取り組んでおりまして、日本の専門家の意見を聞きながら、そういう危険な箇所の修復等に今取りかかっておりますので、これにつきましても、会計検査院の御指摘がそのうちきちんと守られるようになるのじゃないかというふうに期待しております。
  283. 蓮実進

    ○蓮実分科員 御承知のとおり、ODAは国民の血税でございますよね。ですから、会計検査の受けっ放しにならぬように事後の対策を十二分に立てて、やはり所期の目的といいますか、それだけの効果のあるような使い方をするべきではないかなというふうに思っております。  こうした決算報告書の指摘は、今後の援助活動に十分参考にしてやっていただきたいというふうに思います。どうかひとつ、今後もむだ遣いのな い有効なODAをやっていただきたいということをお願いを申し上げまして、終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  284. 竹内譲

    竹内(譲)主査代理 これにて蓮実進君の質疑は終了いたしました。  次に、栗原博久君。
  285. 栗原博久

    栗原(博)分科員 蓮実委員との重複がありますので、省略しながらひとつ質問させていただきたいと思います。  このODAは、私どもの日本に比べまして極めて栄養失調の地域とか、病気で困窮しているとか、あるいはまた民族紛争等で日本の国あるいはまた先進国の助けを求めている国に対して、国民の血税のもとで援助しておるわけですが、特に途上国では、毎日三万四千人の子供たちが栄養失調や病気で亡くなっているとか、あるいはまた毎年千七百万人に及ぶ方々が下痢やマラリアなどで死亡しておる。同じ地球上にこういう途上国の三分の一の人口、約十三億人が常に絶対的な貧困の状況にある。こういうものを改善するのが実はODAの役目だと思っておるわけであります。  こういう中で、政府も、第五次の中期目標でODAを七百から七百五十億ドルまで引き上げるということで御努力されておるようでございますが、この中で、今後第五次中期目標をどのように進めていくかを端的に、簡略にひとつお答えをいただきたいと思います。
  286. 平田米男

    ○平田政府委員 先生御指摘のとおりでございまして、ODAというのはこれからの世界の平和と安定のためこ大変重要でございますし、また、とりわけ我が国にとって、国際社会においてその責務を果たすに当たりまして極めて重要なものだというふうに認識をしているわけでございます。  それで、もう既に御承知のとおり、冷戦が終わりまして、旧社会主義諸国への支援とかあるいは環境、人口、エイズ等地球的規模の問題が増大をいたしておりまして、その資金需要が期待されているわけでございます。そういう中で、我が国が果たす役割あるいはODAに対する国際社会の期待は増大をしているわけでございますが、かかる認識に基づいて、我が国といたしましては第五次中期目標を策定いたしました。  内容については御承知かと思いますが、一九九三年から九七年にかけまして、五カ年間でODAの実績総額を七百億ドルから七百五十億ドルにする、それに努めていきたいということでございます。そして、質的改善といたしまして、無償資金協力とか技術協力などの贈与の拡充、あるいは環境、人口等地球的規模の問題等の分野への援助の重点的実施、あるいは効果的、効率的な援助の実施のための援助要員の拡充とか、先ほども御指摘ございましたが、事前の調査あるいは事後の評価の拡充、さらにはNGO等との連携を行っていきたい、このように考えております。
  287. 栗原博久

    栗原(博)分科員 我が国は、ODAの中で贈与部分についての率が特に先進国のDACの加盟の中でも最下位の方でありますので、ぜひこれを積極的にひとつお進め願いたいというふうに思います。  ただいまのお答えの中でも、漠然としておるお答えでございましたが、やはり国際社会がこういうような冷戦時代を終結しまして、今までのソ連あるいは東欧の国に対するODAが進んでおります。特に我が国は、中国との二国間ベースで中国に対して多大なODA、インドネシア、フィリピンに並ぶODAをやられ、また、中国のODAのうち六割を日本が確かに負担しているように実は承知しておるわけであります。  田中角栄先生が一九七二年の国交の正常化で、我が国がかつて中国に与えました——これについては細川総理あるいはまた連立政権の方々、侵略行為というようなことを言っているようですが、私は、それは歴史がちゃんと後で解決することであると思うんです。しかしながら、中国の幾多の国民がやはり戦争によって多大な被害を受けたことは間違いありません。そういうことで、中国の穏便な、大変田中先生の力もあり、無賠償で国交が正常化しておる。そして、それに伴って、無賠償でありましても、日本はやはりその賠償に匹敵するODAというもので努力をしていると思うのであります。  その中で、連立政権の今回の法務大臣、永野法務大臣ですか、この方が南京事件について取り上げておられる。あれだけ南京事件はでっち上げであったと言いながら、もう翌日のうちに言葉を翻して、我が国が過去においてやはり侵略であったということで、そしてまた、大東亜戦争における植民地の解放などで、戦争は目的として正当だったということも翻しながら、また同じ事件がでっち上げたということも翻す。  要するに私が言いたいことは、余り触れなくていい、二国間の間にお互いにあうんのものが過去にあった。それを失言によって、歴史的に我が国が過去の中国の国民に対して残虐な侵略行為をやったと、それをその後記者会見で認める、こういうようなぶざまをかいているわけであります。  私どもが国民の血税によってこうして多大なお金を中国に、そして二国間の平和を結ぼうとしている。その中で、ただ一人の大臣によって、あるいはまた連立政権の無思慮な中でこのような大臣が出たことによって、このようなODAの評価というもの、あるいは国連においても日本が一番国連の負担金をも出している。この中で、一人の大臣によって、それも法務大臣によってそういうような失言をしたことによって、私ども日本はこういう国に対して大変な痛手をこうむらせておるわけです。これについて政務次官、どのようにお考えであるか、ひとつお聞きしたいと思います。
  288. 平田米男

    ○平田政府委員 先生御指摘の発言につきましては、私は大変残念に思っておりますと同時に、日本と周辺諸国とのこれまで築いてまいりました友好関係に影響がなければという危惧も抱いた一人でございます。  しかしながら、私は、これまで我が国とそして近隣諸国との間で大勢の方々が積み重ねてまいりました友好親善への努力というものは、大変大きなものがあると思っております。したがいまして、今回、残念なことではございましたが、しかし私は、近隣諸国と我カ国との友好親善の関係というものは決して揺るぐものではない、このように認識をいたしております。また、我が政府といたしましても、さらに我が国と近隣諸国との友好親善関係を深めるために全力で努力をしていきたい、このように決意をしているところでございます。
  289. 栗原博久

    栗原(博)分科員 私が申し上げたいことは、やはり一国の政権でございます。その中で国民が、これから中国との平和的な中で過去の歴史を、戦争、歴史観をどのようにお互いに見きわめるかということが私は必要と思っているのです。  今回、このような中で、一人の大臣によって歴史観が一方的に解釈され、またそれを連立政権の皆さんがさも認めるがごとき発言をしたことについては、大変私は国民の、特に今でも国内におきましては、恩欠の方々とか、そういうことでまだ戦争の痛手の中でその解決を受けていない多くの方がおられる。そういう方の目の前で本当におわびをせねばならないとも私は思っているのですよ。こういうことを私の意見として一つ申し上げる次第でございます。  次に、ミャンマーのODAについては、先ほど蓮実委員からもいろいろ御説明がありましたので、省略させていただきます。この中で私は、先ほど政務次官が、少数民族とミャンマー中央政府との問題が解決すれば、ミャンマーに対するODAというものも考えてもよろしいというような発言とちょっと受けたのですが、これはそのように解釈してよろしゅうございますか。
  290. 平田米男

    ○平田政府委員 先ほどもお話を申し上げましたが、民主化あるいは人権状況改善というものの中に、今先生御指摘の少数民族の問題も入っているという認識でございます。  先生御承知のとおり、我が国はODA大綱というのがございまして、民主化の促進等々あるいは人権保障、こういうことを重視した上でODAの対応を考えていくというのが我が国の基本方針で ございますので、その民主化あるいは人権状況改善というものが顕著にあらわれてくるならば、そのODA大綱に従って我が国も対応していくという考え方でございます。
  291. 栗原博久

    栗原(博)分科員 そうしますと、ODAの再開の一つのファクターとして、少数民族のこの問題が解決された場合はODAというものを再開できるのだというふうに解釈してよろしいのですか。
  292. 平田米男

    ○平田政府委員 民主化の進展あるいは人権状況改善等も一つのファクターでございますので、それのみでもってすべて判断されるということではございませんが、一つの要素であるということは先生おっしゃったとおりだと認識をいたしております。
  293. 栗原博久

    栗原(博)分科員 そのような認識に立ちました上で、今、ミャンマー人は四千二百万人ですか、旧ビルマの約七百万人がカレン人だそうでありますが、こういう中において我が国がODAを再開するについて、これに対して極めて関心があるようでございましたら、内政干渉のない範囲において、外交ルートを通じてこのようなカレン州における一部のカレン民族との和解というものに今後外務省としてお力をお示しなされるかどうか、ひとつお聞かせください。
  294. 平田米男

    ○平田政府委員 先生御指摘のとおり、いろいろな制約はございますが、我が国といたしましては、その国の民主化の促進あるいは人権状況改善ということについては、国の基本方針といたしまして相手国に働きかけてきているわけでございます。そういう意味で、先ほどからも申し上げておりますようこ、少数民族の問題もその一つのファクターとして存在をしているわけでございますので、我が国は、ミャンマー政権に対しましてそういう視点でODAを通じて働きかけてきましたし、また今後も働きかけていくということを御認識いただきたい、このように思います。
  295. 栗原博久

    栗原(博)分科員 ODAの大綱の中で四つの条項がございますが、民主化というのは、民主化していないところについて阻止条項なのか、それとも民主化することを条件としてODAを出すのか、どちらなんでしょうか。
  296. 平林博

    ○平林政府委員 民主化支援あるいは市場経済化への支援等ございますが、このODA大綱の運用につきましては、援助をとめるあるいは削減するというのは本来の趣旨ではございませんので、できるだけ友好的に、建設的に、相手国との対話を深めることによって、そういう人権の尊重とか市場経済化の方向というものを慫慂するように極力働きかけまして、そういうことを相手国が実行するにつれて我々もその分援助に対する姿勢を強めていくということにしております。  ただ、他方、本当に極端な事例が起こりまして、人権の無視とかあるいは民主化に全く逆行するというようなことになりますと、これは国際的な、いろいろな国の考え方もございますが、日本といたしましても、ODA大綱の精神、あるいはさらにはODA大綱云々でなくて日本国民の持っている価値観に基づきまして、やはり援助を削減あるいはとめざるを得ないということにもなります。  そういう事例が両方ございまして、いい方の国に対する援助をどんどん積極的にやるという例もございますし、逆にやむを得ず、不本意ながら援助をとめざるを得ないというケースも両方ございます。
  297. 栗原博久

    栗原(博)分科員 ぜひひとつODAを、国民の血税でございますから、それを十二分に発揮して、やはり世界の平和のためにひとつお力をお示しいただきたいと思います。  かつてビルマというものは、おわかりのとおりイギリスの植民地であり、また我が国も東南アジアにおける戦争の中において、ビルマに大きな痛手も実は与えてまいっておるわけです。そういう中で、約百三十五の少数民族がおられるそうでありますし、かつて約十一の民族とミャンマーの中央政府との間で和解が調っている。今、カレンだけが和解が調っていないことと承っております。  私も、先ほどの蓮実議員の方からもおわかりのとおり、先般タイに参りまして、メソットから川伝いに行きましたらいつの間にかミャンマーの国に入ったということで、私には実はその土地柄がわからなかったわけですが、その中で、彼らが素足で自分の母なる地を追われてタイに、あるいはまたタイの国境に着のみ着のままで来ているこの姿を見まして、同じアジアの一人として大変な悲しみに至ったわけでありますし、また、国政をつかさどる一人として、これを何とか解決してやることが私ども国民として、あるいはまた国会議員としての役目ではなかろうかと実は考えておるわけであります。  そういうことで、ミャンマーにおいて民主化を妨げておるのは、実はカレン族とかこういう少数民族の問題が解決していないからだ、それによってアウン・サン・スー・チー女史等の軟禁が続いているというようなお考えを一部の外務省の方もお持ちのようなことを実は伺っているのですが、それは個人的なお考えで結構であります。その中で、やはりこの少数民族問題、ODAの問題でぜひひとつ解決していただきたいと思います。  特にその中で、これはタイの国の中で、要するにカレンの人たちはミャンマーの国籍を持っており、またタイの方にも親戚があるということでタイの方にも籍があるということなので、実はタイの中でカレン側のソ・バ・シー副大統領兼首相ですか、あるいはまたD・エムマルタ外務大臣とおっしゃる少佐の方、あるいはラッスル将軍等に私はお会いしまして、彼らが異口同音に申し上げることは、日本のかつてのミャンマーへの経済援助、これが、軍政政権に対する援助が遠回しにカレンに対して犠牲者を出しているんだ。  それは、ミャンマーに対する援助というものは、かつて有償資金で約四千二十九億ですか、あるいはまた無償で九百三億等あって、現在これは停止中であり、特に有償資金については債務救済分だけやっておるというように承っておるので、実際、今現在何もやっていないに等しいように承っておるわけでありますが、やはりカレンの最人民族の方が、日本のこのような援助がとかくすると自分たちに無言の圧力をかけてきているというふうな解釈をする。  要するに 今の認められてしない政権の方々のお考えがあるわけなので、こういうことを考えれば、いっかこの人たちは和解すると思いますし、またカレンの大多数の、一番ビルマ族に次ぐ民族でありますから、こういう方にやはり誤解のないように、外務省も十二分に外交ルートを通じながら、あるいはまた民間ルートを通じて、これについてひとつ対処していただきたいということをまず御要望申し上げたいと思います。  それから、このNGOの問題でありますが、小規模無償でございます。これは先ほど蓮実議員からもお話がありましたが、これは一番有効的であると私は思っております。ぜひミャンマー、特にカレンに対して、やはり対話を通じて、可能かどうかわかりませんが、そういう措置をしていただきたい。  先ほど平田政務次官のお話ですと、NGOとしてミャンマーにいろいろなものをやっておるとおっしゃいましたが、私は、これはミャンマーの中央政府であると思うのですが、できますればカレン族に対してもそのような御手配を賜りたいということをひとつお願いしたいと思います。  それから、先ほど会計検査院の評価について蓮実議員からもお話がございましたが、ODAというものは、とかくしますと、イラクのあのような湾岸戦争でも指摘があったわけでございますが、膨大な軍事費を費やしているようなところにはODAをやらないとか、そういうふうなものをひとつお決めいただきたいと思います。  あるいはまた、ロシア等についても、これは私見でございますが、今一生懸命民主化をされておりますが、やはりODAを通じてロシアが軍事化の度を強めないように、ひとつお伝え願えるような御処置も賜れればと思います。  また、平成三年の三月ですかにバングラデシュにおけるODAの汚職事件が実はバングラデシュ政府当局から指摘がございましたが、こういうこ ともないように十二分に外交ルートを通じ、あるいはまたひとつ各方面の、私どもの融資、援助をしております約三八%くらいは、国内の事業者がまたもう一度行って仕事をしているわけでありますが、国内における事業者にも適正に供与、行政指導していただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
  298. 竹内譲

    竹内(譲)主査代理 これにて栗原博久君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、外務省所管の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十七日金曜日午前十時から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十五分散会