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1994-06-22 第129回国会 衆議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成六年六月二十二日(水曜日)     午後四時二十分開議 出席委員   委員長 菅  直人君    理事 小杉  隆君 理事 鈴木 宗男君    理事 原田昇左右君 理事 福田 康夫君   理事 柴野たいぞう君 理事 高市 早苗君    理事 秋葉 忠利君 理事 若松 謙維君       安倍 晋三君    斎藤 文昭君       坂本三十次君    櫻内 義雄君       二階堂 進君    伊藤 英成君       遠藤 利明君    伊藤  茂君       濱田 健一君    松前  仰君       山崎  泉君    草川 昭三君       前原 誠司君    東中 光雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 柿澤 弘治君  出席政府委員         外務政務次官  平田 米男君         外務大臣官房長 池田  維君         外務省総合外交         政策局長    柳井 俊二君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    高野幸二郎君         外務省総合外交         政策局軍備管         理・科学審議官 林   暘君         外務省アジア局         長       川島  裕君         外務省北米局長 時野谷 敦君         外務省経済局長 原口 幸市君         外務省経済協力         局長      平林  博君         外務省条約局長 丹波  實君  委員外出席者         農林水産省農蚕         園芸局植物防疫         課長      吉村 正機君         食糧庁管理部企         画課長     小林 芳雄君         資源エネルギー         庁長官官房省エ         ネルギー石油代         替エネルギー対         策課長     藤野 達夫君         外務委員会調査         室長      黒河内久美君     ───────────── 委員の異動 六月二十二日  辞任         補欠選任   小池百合子君     遠藤 利明君   赤羽 一嘉君     竹内  譲君   古堅 実吉君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   遠藤 利明君     小池百合子君   竹内  譲君     赤羽 一嘉君   東中 光雄君     古堅 実吉君     ───────────── 六月二十日  ガット・ウルグアイ・ラウンド協定承認反対  に関する請願松本善明紹介)(第三二七七  号) 同月二十一日  ILO百五十六号条約の批准に関する請願(岡  崎トミ子紹介)(第三七七五号)  同(岡崎宏美紹介)(第三七七六号) は本委員会に付託された。     ───────────── 六月二十二日  沖縄返還極秘文書真相究明に関する陳情書  (第一六二号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ────◇─────
  2. 菅直人

    菅委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小杉隆君。
  3. 小杉隆

    小杉委員 まず、北朝鮮問題について質問をしたいと思います。  ちょうど一九九〇年に金丸田邊訪朝団が行きまして、それに基づいて日朝会談が始まったのですが、その後の日朝会談はどういう状況になっているか、まず御説明いただきたいと思います。
  4. 川島裕

    川島政府委員 お答え申し上げます。  八回にわたりまして日朝正常化交渉を行いまして、最後、八回目が一昨年の十一月でございますけれども、このときに、李恩恵の問題を契機といたしまして北朝鮮側が席を立って中断して、以後再開されていないというのが現状でございます。
  5. 小杉隆

    小杉委員 先日カーター大統領訪朝いたしまして、金日成との会談を行いまして、米朝協議が始まるということになりましたし、また金泳三金日成、この南北朝鮮トップ会談が行われることになったのですが、今回のこのカーター金日成会談について外務大臣評価はどうか、聞かせてください。
  6. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 小杉委員指摘のとおり、カーター大統領訪朝によって米朝第三回会談可能性が生まれたこと、また南北首脳会談可能性が生じたことは歓迎すべきことだと思っております。  ただ、北朝鮮態度に変化が出たのかどうかという点については今後なお確認すべき点もあろうかと思っておりますので、そうした点について北朝鮮側が、外交チャネルを通じまた実務者接触を通じまして、誠意ある態度をとってもらえるよう我々としては期待をいたしております。
  7. 小杉隆

    小杉委員 今回はアメリカ政府ということではなくてカーターという元大統領、いわばリタイアした政治家個人という資格訪朝をして、そしてこの制裁問題で今後どうするかという国連での非常に緊迫した空気の直前にこうした会談が行われて、今外務大臣からも歓迎すべきというお言葉がありました。  私はここで、国交のない国と日本外交進め方について以下触れたいと思うのですが、かつて一九九〇年、先ほども申し上げたように自民党金丸信社会党田邊誠代表団訪朝をいたしました。このときに、あのとき長年の懸案であった第十八富士山丸の問題、紅粉船長の釈放とかあるいは日朝政府間の交流きっかけをつくったということで大変画期的なことだったわけですが、これについての評価外務大臣、どのようにお考えでしょうか。
  8. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 本件も日朝国交正常化交渉きっかけをつくっていただいたという意味で私ども評価をいたしておりますが、ただ三党共同宣言の中には国交正常化交渉の中でなかなか難しい部分も含んでおりまして、この点についてはやはり三党の合意ということでございますので、今後政府レベルできちっと詰めていく必要があるというふうに考えております。
  9. 小杉隆

    小杉委員 先ほども言ったように、政府間ではなかなか解決できなかったこういう問題が、自民党社会党訪朝団の結果動き始めた。  今答弁にありましたように、日本の自由民主党、 社会党そして朝鮮労働党の三党による共同宣言というものが採択をされました。内容としては、非正常な状態を解消してできるだけ早い時期に国交関係を樹立ということをうたっておりますし、また政治経済、文化など各分野での交流を発展させ、当面は通信衛星利用、両国間の直行航路の開設というような具体的なことまで触れておりますし、また南北対話で平和的に統一を達成することが民族的な利益につながる、こういうような内容共同宣言が出されたわけです。  これについてその後の外務省の受けとめ方というのは、何かむしろプラス面よりもマイナス面の、何か少し出しゃばった取り決めをしてきた、こういうような受けとめ方をされているように思うのですが、この共同宣言についてのどういう部分評価され、どういう部分が問題だというふうにお考えなのでしょうか。
  10. 川島裕

    川島政府委員 ただいま外務省がその後、若干後ろ向きになったのではないかというお感じをお述べになられましたけれども、そういうことではございませんで、この共同宣言契機として日朝国交正常化がスタートしたことは紛れもない事実ですし、それは大変意味があることだったろうと思っております。  ただ問題は、そのころから核開発疑惑の問題が、テンポが上がると申しますか、だんだん深刻になってきましたことで、日朝正常化交渉を始めたころにも核疑惑というものはございましたけれども、あのころの雰囲気は日朝国交正常化、案外早く動くのではないかなという感じがございました。  それが、その後になって核開発の問題がより深刻さを増して、そしてそれを国交正常化条件と申しますか、やはり核疑惑の問題がきれいにならないと正常化はできないという立場をやりとりしているうちに北朝鮮の方は、核の話は日本とは関係ない話であるという姿勢になりまして、どうもうまくかみ合わなくなったというのが実態でございました。ですから、スタートの時点といたしましては、その意味でこの共同宣言意味があったと思います。  ただ一つ、あの当時、これのどのときだったか戦後の補償の話がございました。これは当時から日本国内でも受けとめ方が相当批判的な向きが多かったということは指摘できると思いますけれども、その戦後の補償をどうするかというような話まで日朝国交正常化の話に入っておりませんものでしたから、そこのところ自体はまだとてもそんなところまで入っていなかったということでございます。
  11. 小杉隆

    小杉委員 先ほどお話によりますと一昨年の十一月からほとんど日朝会談というのは途絶えている、こういうことであります。しかし、さきに挙げた一九九〇年の自民党社会党訪朝団あるいは今度のカーター訪朝に見られるように、国交正常化していない国との外交進め方としては政府よりもむしろ議員外交とか民間外交というものの役割というのは非常に大きいと思うのです。  そこで、どうも外務省は、外交問題は内閣の専管事項だ、そういう思い込みが強過ぎるのではないかと私は思うのですね。外交の一元化ということを盛んに外務省は言いますけれども、こういう難しい局面、国交正常化のない、しかもデッドロックに乗り上げたような場合にはもっと柔軟に対応できないのかどうか。  私はそういう意味で、これだけ複雑な難しい時代を迎えた今日、議員外交なり民間外交というものをもっと活用すべきだと思うのです。何か余分なことをやっているとか、何か出過ぎた約束をしてきてしまったというようなとらえ方ではなくて、やはりもっと機能分担をして、政府では表立ってできないことを議員に任せるとか、そういうことを大いに考えていくべきだと私は思うのですね。  今度、例えば三木睦子夫人訪朝して、二時間も一緒に会っているのですね。彼女は日本とか韓国あるいは北朝鮮の婦人や子供の問題でいろいろと交流をやっている。そういう貴重な経験を持っている人をもっと活用する。例えばこの間も自民党から山崎拓さんと谷洋一さんが訪朝し、また社会党訪朝団も行ってきたわけですね。やはりこういうような人たちとの連携というのですか、まあカーターさんは個人資格で行ったと言いますけれども、やはりクリントン政権といろいろあうんの呼吸で事前、事後連絡をとり合ってやっていると思うのです。  ただ議員が勝手に行って帰ってきたというだけではなくて、そういう場合には外務省ももっと突っ込んで、外務大臣が直接そういう人を呼んだり、あるいは自分たちは言えないけれどもこういうことでどうなのだろうかという打診をしてもらうとか、そういうようなことを積極的にやっていくべきではないかと思うのですが、大臣、どうでしょうか。
  12. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 国交がない国との関係正常化のためには議員外交等民間外交の果たす役割が重要であることは小杉先生指摘のとおりでございまして、日中国交正常化に至るまでの関係議員皆様方の御努力も私どもは非常に高く評価をい  たしております。  今回の問題につきましても、自民党社会党訪朝団につきましては、これは非公式でございますが、私どもお話を申し上げ、また帰国後お話を伺ったりいたしておりまして、その点では外務省としてはできるだけのお手伝いはさせていただ  いているつもりでございます。  三木睦子夫人につきましては私ども直接の接触がございませんでした。
  13. 小杉隆

    小杉委員 例えば田邊誠さんに行っていただくとか、あるいはしかるべき元総理大臣とか、そういう人に非公式に行ってもらうなんということも考えるべきだと思うのですが、どうでしょうか。  それから、今国交正常化国交回復しておりませんけれども、地方自治体では、例えば航空交渉なんかは政府政府ですけれども、例えば新潟県と北朝鮮との間、台湾と日本航空の子会社との間、あるいは北海道とロシア自治共和国との間というふうにいろいろと柔軟に対応している例があるわけですから、そういう自治体外交自治体による外交というものももっと活発に行っていくべきではないか。  何でもかんでも政府が全部一元的にやらなければいけないというかたくなな態度ではなくて、もう少し柔軟な対応というものができないものか。もう一度お答えいただきたいと思います。
  14. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 自治体外交につきましても外務省としても前向きに取り組んでいるつもりでございまして、私も中国から市長さんとか省長さんがいらっしゃいますと積極的にお会いをいたしておりますし、またロシアとの関係でいいますと、日本と隣接する極東部州知事の皆さんとかを日本に御招待する、東京都知事が中心になっておやりになる、これを外務省としても御支援を申し上げる、そうした形で努力をしているつもりでございますし、今後ともそうした幅広い外交展開が必要だろうと思っております。
  15. 小杉隆

    小杉委員 次の問題は、北朝鮮核兵器についての政府統一見解、昨日の参議院の予算委員会ですか出されましたけれども、この三項目を見ると、柿澤外務大臣が常々言っているように、過去の北朝鮮核疑惑の検証というものが大前提だ、こういうことで、この三項目の中でも、ブリックスIAEA事務局長から国連事務総長あての書簡の中で、北朝鮮が申告したプルトニウム以上のものが生産された可能性がある、あるいはプルトニウムが秘匿されているとすればこれは重大問題であって、北東アジア地域安全保障に大変な脅威になるというようなことで、第三項目北朝鮮IAEAによる査察を完全に受け入れることが重要である、こういう今の時点ではかなり厳しい内容統一見解を発表されたわけです。  アメリカは、カーター大統領は要するに現状を凍結すれば米朝会談第三ラウンドを再開してもいいのだ、今こういうふうな状況にあるわけですけれども、一体今度のアメリカ対応についてどう考えるのか。  それから、日本は非常にアメリカとの考え方に ギャップがあると思うのですけれども、その辺のギャップをどう埋めていくのか。統一見解アメリカ対応ですね。  それからIAEA国連との関連をどう考えるのか。それから、完全な査察を受け入れることがなければ日朝交渉はしないというふうに受けとめていいのかどうか。  その辺、まとめてお答えいただきたいと思います。
  16. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 アメリカ日本との間に基本的な違いがあるとは私ども考えておりません。アメリカ側も今回の第三回米朝交渉再開条件としては、IAEA査察官査察機器の維持、それと五メガワット燃料棒の再投入をしないということ、またそれの再処理をしないということを条件に挙げておりますが、しかし、米朝会談が行われた場合にはNPTへの完全復帰査察完全実施等を議論すると言っておるわけでございます。  我が国の場合には、従来の核施設運転歴も含めて検証されることが重要である、そして核開発疑惑を完全に解消していただくことが大事である、こういうことを申しておりますが、ただ、最後に触れられました日朝国交正常化交渉との関係でいえば、それが証明されることが再開の前提であるというふうには申し上げておりませんで、むしろ日朝国交正常化交渉の中でその問題も議論をし、そして国交正常化するまでには過去の問題も含めて疑惑が解消されるということが必要だというふうに考えているということでございます。
  17. 小杉隆

    小杉委員 基本的認識はそう変わらないと言いますけれども、今までの報道を見る限り、やはりアメリカは過去のことは問わない、要するに現状とこれから後のことを凍結してもらえば北朝鮮との会談に応ずる、こういうニュアンスが伝わってきておりますし、日本の場合は過去までさかのぼってきっちりと査察を受け入れなければだめだ、こういうニュアンスがあるわけです。  この点、今後、例えばアメリカが過去は問わない、現状を凍結して今後の心配さえなければ米朝会談に踏み切るのだといった場合に、一体IAEAとか国連あるいは日本政府はどう対応をするのか、そういうギャップをどう乗り越えていくのか。これは相手のあることですから難しいとは思うのですけれども現状、許される範囲で率直にお考えを聞きたいと思うのです。
  18. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 アメリカは核不拡散体制を守るという点を北朝鮮核疑惑に関しては非常に大事な課題だというふうに考えているわけでございますので、過去は問わないということを最終段階まで言うというふうには私ども理解をいたしておりません。  ただ、米朝交渉の過程でその問題をきちっとしたいというお考えが出てくるかもしれませんけれども、この点についてはまだ正式にアメリカ側から相談を受けているわけではございませんので、私どもとしては、日本としては核疑惑を過去、現在、未来といいますか、全面的に解消していただくことが最も──北朝鮮にとっては近隣国としては韓国日本でございますし、韓国日本を射程に入れたミサイルを開発しているということが言われている国でございますから、その点ではアメリカ以上に関心を持っているということは、これは御理解をいただけるのではないかと思っています。
  19. 小杉隆

    小杉委員 アメリカ追随というような外交がよく批判されているわけですけれども、やはりこれまで日本は過去の分についてまで疑惑というものを問題にしてきた。それを黙認した上で北朝鮮のこの核施設、例えば軽水炉に変えるといった場合に経済支援だけは分担をさせられる、こういうことでは私は国民はなかなか釈然としないと思うのです。  今後の交渉がありますから私はこれ以上のことは言いませんが、ぜひそういう国民の疑念を招かないような確固たる態度でひとつ臨んでもらいたいと思います。  そこで、さっき質問をした例えば日朝交渉、今政府間では李恩恵問題でデッドロックに乗り上げて一年半も開かれていないわけですけれども、こういうふうに米朝会談とかあるいは南北朝鮮会談がもう目の前に実現しようというときに日本朝鮮との間は一年半前のそのままの状態でいいのかどうか。  私がさっき言ったように民間のしかるべき、例えば元総理大臣とか社会党の元委員長田邊さんとかそういう人が訪朝をして、下話をするというような、地ならしをするというような、そういうことは考えられないか。もう一度お答えをいただきたいと思います。
  20. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 そうした方々がひとつここで汗を流してやろうというお考えでございますれば我々としてもそれに期待をいたしたいと思います。
  21. 小杉隆

    小杉委員 次に、プルトニウム国際管理の問題について申し上げたいのですが、去る六月四日にオーストリア・ウィーンで、安全保障常任理事国日本、ドイツ、ベルギー、スイス、九カ国とIAEAが参加をして、この国際的な枠組みを決めようということになったわけです。  従来アメリカプルトニウム商業利用には反対だったのが、ここへ来て英国やフランスと同じように変わってきたというのはどういう理由なのか、そして日本がこのプルトニウム国際管理に関してどういう姿勢で臨むのか、お答えいただきたいと思います。
  22. 林暘

    ○林(暘)政府委員 お答え申し上げます。  今御指摘のように六月四日に九カ国とIAEAが集まりまして、プルトニウム国際管理に関する会議ウィーンで開催されました。これは二度目でございます。  米国の態度についてお尋ねでございますが、アメリカがいわゆるプルトニウム民生利用というものについてかなり厳しい態度をとっているということは、昨年クリントン大統領が公表いたしました不拡散政策に明らかになっているところでございます。  その中で、一般的にアメリカは厳しい態度をとっておりますが、日本及び西欧諸国については過去の約束は守るという言い方で、日本及び西欧諸国プルトニウム民生利用というものについては基本的に容認する態度をとっているわけでございます。そういう態度を踏まえてこの会議にも臨んできております。  我が国といたしましては、まだ協議が継続しておりますが、基本的には国際的な管理枠組みというものをつくりまして、そこにおきましてプルトニウムについての平和利用透明性を高めるということが実現されるように努力をしていきたいというふうに思っております。
  23. 小杉隆

    小杉委員 あかつき丸問題等で非常に国際世論にさらされた日本としては、こういう面についてはやはり透明性を高めるという見地から大いに積極的にやってもらいたいと思います。  時間がなくなりましたから、私がODAについてこの前取り上げた中で、ちょっとその後の展開におきましてどうしても外務大臣お答えをいただかなければいけない問題を取り上げたいと思います。  それは、中国が最近地下核実験をやりまして、斉藤事務次官経協局長平林さんが中国大使を招いて、この中国核実験援助との関係について警告を発したということですけれども、二年前に制定したODA大綱、これの非常に重要な大量殺りく兵器というところに該当するわけですから、これは私は外務大臣からしっかりとした見解を承って、今後中国に対してどう対応していくのかお答えをいただきたいと思います。
  24. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 今回中国核実験を行いましたことは、今小杉委員指摘ODA大綱の観点からも大変遺憾なことでございまして、先般私が訪中した際にも、日本政府としての遺憾の意を中国側に明確に伝えるとともに核実験の自制を求めたところでございます。  しかしながら、一方、日中友好関係及び我が国経済協力中国近代化支援において担っている重要な役割というものを考慮いたしますと、対 中経済協力が今後とも円滑に行われていくこと、それによって日中友好関係が保たれること、これも同時に大事な課題であろうかと思っております。  したがって、ODA大綱との関連からもまた日本国民核兵器に関する特別の感情からも、今般の核実験が対中経済協力に対する日本国民理解支援を得ることに好ましくない影響をもたらすことを懸念をいたしておりますし、その点は中国側に対しても率直に申し入れを行ったところでございます。  今小杉先生から御指摘のように、斉藤事務次官から在京大使に対して、また経済協力局長から公使に対してもその点申し入れをいたしました。経済協力局長がこの件に関して申し入れをしたというのは初めてのケースであるかなと思います。
  25. 小杉隆

    小杉委員 せっかくODA大綱を決めたのが空文化しないように、やはり友好友好あるいは近代化支援支援として、一方において今ほかの核大国実験を自粛している中で中国のみがやっている、こういう異常な態度に対してはやはり毅然たる態度でひとつ臨んでもらいたい、このことを注文しておきます。  もう時間が迫ってきたのですが、もう一つODAで。  実はこの前、草の根レベル援助ということを私は申しました。それで、先週IPU、列国議会同盟のアジア太平洋地域会議がありまして、主として科学技術分野についての協議がありました。私と秋葉委員とが出たのですけれども、そこでアフリカのウガンダの副議長とお会いしたときに、私が申し上げたソーラーシステムに非常に関心を持ちました。  それで、今アフリカの国では飲み水がもうどんどん汚染されていると。それでみんな汚れた水を飲んでいる。それから夜電灯がなくて、子供さんたち奥さん方が勉強ができない。あるいは診療所へ行っても薬を保存する冷蔵庫がない。それから農業も、かんがいがあればもっと増産ができると。このように開発途上国にとっては無限の資源ともいうべき太陽熱、太陽の光、こういうものが本当の意味草の根レベルに有効な援助だと私は思っております。  こういう面で、実は通産省の方は二十年来このソーラー実験をいろいろしてきておりますけれども、実際に開発途上国で今実験をやっているようですけれども、どことどこの国でどういうことをやっているのかちょっと簡単に教えてください。
  26. 藤野達夫

    ○藤野説明員 御説明申し上げます。  太陽光発電についての技術開発の一環としまして、現在ネパール、モンゴル、タイ、マレーシアの四カ国におきまして、新エネルギー・産業技術総合開発機構が共同実証研究を行っております。  なお、このほかの承知しているものとしまして、国際協力事業団の海外開発調査関係でインドネシアあるいはキリバス、既に終了しておりますけれども、そういうところの地方電化計画について調査等が行われておるということを承知しております。
  27. 小杉隆

    小杉委員 それから、最近沖縄で大変すばらしいサクセスストーリーがあるのですね。それは農薬とか殺虫剤を使わないで、ウリミバエの不妊虫を放飼といいますか放し飼いにして、交配をしてもふえない、そういう新しい技術でウリミバエを絶滅させて、沖縄の農産物や果物、果樹等が年間にして約百数十億円増収になった。  それから、フィリピンなんかも、ミカンコミバエという熱帯、亜熱帯地域のそういう害虫に苦しんでおりまして、もしこういう技術をフィリピンが導入をしてやれば一年間に大体二億円以上の増収になる、こういうことであります。  今農業におきましては大量の農薬とか殺虫剤とか化学肥料を使って土壌がどんどん痛めつけられている。こういうふうなときにこの不妊虫、沖縄が大変長い時間かかって、政府援助もありましたけれども、沖縄県民のそういう英和と科学者の協力によってこういう世界に誇るべき技術を開発して害虫を追放、駆除した。  これは農林水産省が相当指導してこられたと思うのですが、こういうものをもっともっと地中海の地域とかあるいはカリブ地域とか熱帯、亜熱帯地域に応用したら、本当に日本としてすばらしい援助だと私は思うのですけれども、農林水産省、この問題についてどう考えておられるのか、一言。
  28. 吉村正機

    ○吉村説明員 御説明させていただきます。  沖縄県におきまして実施されましたウリミバエの根絶事業につきましては、これはその規模といい、取り組みの大きさからいって世界的に類を見ない事業でございまして、国際的にも非常に高く評価されているところでございます。このウリミバエの根絶の技術につきましては、今までに沖縄県におきまして外国からのミバエの技術の研修生の受け入れを進めております。  沖縄県におきましてこの事業が成功いたしましたのは、大陸から遠く離れておりまして、島の面積が比較的小さい、島ごとに順次根絶を進めたという条件、地理的条件に恵まれた面も多うございまして、これを気象条件が異なる諸外国に適用する場合には各国の諸条件に応じ特有の問題を解決していく必要があろうかというふうに考えております。  今後この技術を諸外国に対してどのような形で技術協力できるかという点につきましては、各国から具体的な要請があれば外務省あるいは沖縄県等、関係機関と協議しながら検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
  29. 小杉隆

    小杉委員 もう時間が来ましたからやめますが、外務省に特にお願いしておきたいのは、こういうソーラーシステムとかウリミバエのような不妊虫による害虫駆除というような、大変小さな金額でもかなり地域住民に歓迎されるような、そういう草の根の援助といいますかそういうところへもっともっと私は力を入れてもらいたい。  まだまだお話ししたい、尋ねたいことはいっぱいありますが、きょうのところはこれで終わります。ありがとうございました。
  30. 菅直人

    菅委員長 斎藤文昭君。
  31. 斎藤文昭

    ○斎藤(文)委員 私はまず最初に、北朝鮮核疑惑問題についてお尋ねをいたしたいと思います。今ほどの小杉委員質問と若干重複する問題もございますけれども、重ねてあえてお尋ねする次第でございます。  アメリカ北朝鮮核開発計画の凍結を条件米朝高官協議第三ラウンドの開催に応じる姿勢を示したことは、北朝鮮疑惑の最大の焦点だった過去の検証を棚上げして、現在及び将来の核計画防止へとシフトしたことを意味しているのであります。  これまでIAEA査察で常に問題になってまいりましたのが、核開発の意思も能力もないはずの北朝鮮の過去におけるプルトニウム抽出量であります。アメリカのペリー国防長官も一ないし二個の核兵器の保有の可能性を既に表明しているところでもあります。  報道によりますと、羽田首相は去る十八日の街頭演説におきまして、北朝鮮核兵器を持っていないとも、つくろうとしてもいないとも述べたと報道されておりますが、北朝鮮が核関連施設からのサンプルを拒否したことや原子炉からの一方的な核燃料棒交換を行ったことなどを考えておられるのかどうか、総理の認識に大変疑問を抱かざるを得ないのであります。  いずれにしましても、北朝鮮の過去の核開発問題を不問に付すことは我が国及び北東アジア安全保障上大きな疑念を残すことになると思うのであります。  政府はこの問題について、米朝交渉を行う米国に対し、我が国としては断じて容認できないとの意思を表明すべきと考えますが、外務大臣、あなたのこの問題に対する見解対応についてまずお聞きをいたしたいと思います。
  32. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 斎藤委員から羽田総理の御発言について言及がございました。その点については予算委員会でも総理御自身が釈明をいたしておら れましたけれども金日成主席が核兵器を持つつもりもないし、持っていないと言った言葉を信じたいという趣旨のことをおっしゃりたいつもりで、その信じたいというところが抜けてしまった。そのために誤解を与えて、また海外にまで報道されたことは遺憾であるということで、その点については釈明をいたしました。  常日ごろから羽田総理はこの北朝鮮核開発疑惑は北東アジアの安全と核不拡散体制の維持のために重大な懸念であるとおっしゃっておられますので、その点についてはひとつ誤解を解いていただければと思っております。  また、カーター訪朝の後、米国側が北朝鮮核疑惑の過去については問わないというような報道がなされていることもありますけれども、しかし私どもが確認している限りでは、アメリカはそうした方針転換を行っているわけではなく、当面第三回の米朝会談を開催する前提としては、現在ある査察体制の維持、それから五メガワット実験炉に対する燃料の再投入や、その再処理を行わないということを言っているわけでございます。  米朝会談の中で過去、現在、未来についての検証をきちんとやってもらって、完全にNPT体制に復帰してもらうことが大事であるということは触れておりますので、その点では我が国と基本的には考え方は違っていないというふうに認識をいたしております。  しかしながら、斎藤先生の御懸念もございますので、私どもとしては、我が国のそうした姿勢を米国に伝えるべくさまざまなチャネルを通じて努力をいたしていきたいと思っております。
  33. 斎藤文昭

    ○斎藤(文)委員 次に、IAEAのブリックス事務局長ですか、北朝鮮核疑惑を解明するには放射化学研究所、それから実験用原子炉の燃料棒、核廃棄物貯蔵施設二カ所、この三つに対する査察が必要であり、どれか一つ欠けても全体像は全くわからなくなると述べておるところであります。  米国は北朝高官会談で特別査察を求めていく方針を表明しておりますが、たとえ北朝鮮が特別査察を受け入れたとしても過去がどの程度わかるのか全く不明であります。  我が国として納得のできる査察とはどのようなものであるのか、外務大臣見解をお伺いいたしたいと思います。
  34. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 技術的な問題も含まれますので、政府委員から答弁させます。
  35. 林暘

    ○林(暘)政府委員 北朝鮮が過去に再処理を行った際に抽出したプルトニウムがどの程度であったかという過去の歴史について知るすべについては、今先生御指摘のとおり、今回燃料棒を引き出してしまった五メガワットの実験炉の燃料棒を測定すること、それから核貯蔵関連施設と目されております二施設についての特別査察、その他必要な情報を北朝鮮側が開示するということが必要であるというふうにIAEAとしても言っておったわけでございます。  そのうちの五メガワットの燃料棒については既にすべて引き出しが、抜き取りが終わってしまいました。残念ながらこれによって過去を知るすべというのはなくなってしまったわけでございますが、あとの残る二施設の特別査察及びその他の施設に対するアクセスないしは情報の提供ということによって知り得ることができるかもしれないということであろうかと思っております。
  36. 斎藤文昭

    ○斎藤(文)委員 このことにつきましてはこれからの我が国安全保障に大変重要な問題でございますので、ひとつできるだけの御努力をいただきたいと思います。  それから、報道によりますと、政府は去る二十日ですか、北朝鮮に対しIAEAによる査察の完全受け入れを条件に日朝国交回復前にも国際機関や関係国などを通じて経済協力を行う多国間支援の検討に着手したと伝えております。支援の対象としては軽水型原子炉の開発、中国ロシア国境にある豆満江の開発などが挙げられております。  経済協力を行うことについて異論はございませんが、経済協力を行う条件としては、米国などの要請により行うのではなく我が国が納得できる査察結果が出たときのみ援助を行うこととし、同時に戦術ミサイルの開発及び輸出の中止を強く要請すべきであると思うのであります。  この問題に対する外務大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
  37. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 ただいま先生が御指摘のような、新聞報道にあるようなことを政府において検討しているという事実はございません。  ただ、今回のカーター金日成会談の中で、黒鉛減速型の原子炉を軽水炉に変える、ならばプルトニウムの発生量が減少するというようなことが付言されておりまして、アメリカ側がそうした点を検討対象にしていることも事実であろうかと思います。  ただ我が国といたしましては、今先生御指摘のようにやはり核疑惑の解消、これが私ども北朝鮮に対してさまざまな協力をする上での大事な前提であろうかと思いますし、またそのほか日朝国交正常化交渉との関係もございますので、そうした点については決して容易なことではないと思っております。
  38. 斎藤文昭

    ○斎藤(文)委員 次に、米問題について伺いたいと思います。  昨年の大冷害によりまして米不足が生じ、緊急輸入されたタイ米が消費者の嗜好と合わず、消費されることなく大量に残っていると聞いておるところであります。  新聞報道によりますと、ある市民団体が国内で消費されずに残ったタイ米を集め、砂漠化で食糧に困っているアフリカ諸国への救援物資として送ろうという動きが出ていると伝えております。こうした動きに対し食糧庁は、必要な食糧として輸入した、逆輸出はできるだけ避けてほしいとしております。  我が国の米輸入で世界的に価格が暴騰し、米を主食にしている人々にも大きな影響を与えておるところでありまして、このままの状態でタイ米を我が国でむだにするということは、食糧に事欠く人々のためにも、そして我が国の輸入に伴い悪影響を受けた国に対しても許されるべきではないと考えるのであります。  食糧を有効に利用しようという観点からすればこのような市民団体の活動は好ましいと考えるのでありますが、外務大臣はこの問題についてどのように考えておられるか。  また政府は、消費されずに残存する輸入米、きょうの新聞ではタイ米が今秋、秋以降も恐らく二十万トン以上残る可能性があるというようなことが報道されておりますが、こうした残存する輸入米の取り扱いについてどのように考えておられるのか伺っておきたいと思います。
  39. 平林博

    平林政府委員 お答え申し上げます。  せっかく輸入したタイ米をむだに使うべきではないということはお説のとおりだと考えます。これを食糧援助に回すかどうかということにつきましては慎重に検討する必要があろうかと考えております。  日本は長きにわたりまして世界の食糧不足国に対して食糧援助を行ってきておりますが、これは食糧援助規約その他いろいろ国際的な約束に基づいてやってきていることは御承知のとおりでございます。その中にはタイから、毎年買っておりますが、十万トン程度買いまして、第三国に援助をさせていただいているということもございます。  日本でどれだけタイ米が余るかまだわかりませんが、仮にそういう事態になりました場合にはこの食糧援助規約との関係あるいは需要状況、さらにはよその国がどういう対応をとるかといったいろいろな視点をかみ合わせまして、また食糧庁、農水省とよく吟味しながら検討していきたいというふうに考えております。
  40. 斎藤文昭

    ○斎藤(文)委員 引き続き米問題でございますが、我が国はさきに合意した米の部分開放に伴いまして、来年は四十万トン近くということで、毎年一定量の米を輸入しなければならないことになったわけであります。  今回の緊急輸入で我が国における外国米の消費傾向が明らかになったと思うのであります。今後 米の輸入に当たっては国民の嗜好を考慮した形で行わなければならないと考えるのでありますが、政府の米輸入に対する方針について伺っておきたいと思います。
  41. 小林芳雄

    ○小林説明員 ことしの緊急輸入につきましては、非常に大きな不作の中でいわば大量のお米を二十数年ぶりに輸入するということに相なったわけでございます。そういう中で私どもできるだけ日本の消費者に合ったお米ということで、いわゆるジャポニカをできるだけ各国の協力を得て輸入したいということで努めてきたわけでございますけれども、全体として世界貿易の中でジャポニカ種が少ないこともございまして、そういう中で主食用にも長粒種を供給したということでございました。  来年以降のミニマムアクセスにつきましては、四十万トン弱から始まるわけでございますけれども、今先生お話ございましたようにやはり国内の需要動向、そういったニーズを十分踏まえながら進めていきたいと思っておりまして、現在そういった具体的な仕組み等につきまして検討を進めておるところでございます。
  42. 斎藤文昭

    ○斎藤(文)委員 御承知のように、現在世界の人口は五十五、六億人、二〇五〇年には百億人を突破するだろうというようなことを言われております。毎年世界の人口は一億人前後増加していると言われております。こういう中で地球環境問題等考えますとき、今でさえ不足しております食糧事情を考えますとき、我が国が食糧を生産できる力を持ちながら、いわゆる減反をしながら米を輸入しなければならないというのは大変な矛盾だと思うのであります。  来年以降輸入しなければならない米について、私は飢えに苦しむ人々にODAの一環として援助すべきと思うのでありますが、政府見解について伺いたいと思います。
  43. 平林博

    平林政府委員 今の御質問でございますが、ウルグアイ・ラウンド合意に基づきましてミニマムアクセス量を輸入していくということにいずれなるわけでございますが、その場合に食糧を日本の方から何らかの形で輸出するあるいは食糧援助をするという御質問かと思います。  ただ、先ほど申し上げましたように、日本政府は食糧援助規約のルールにのっとりまして今までやってきてまいっておりますが、原則、現金拠出ということでやってきております。したがいまして、実際の実物を食糧援助に使う場合にはまたなお十分関係諸国あるいは関係国際機関と協議する必要があろうかと思います。  ただ、ミニマムアクセスで日本に輸入したお米を、日本の国内で余るか余らないかわからない状況で、そのまま右から左に援助に回すということにつきましては、いろいろこれは多々問題があろうかと思っております。  先ほど申し上げましたように、輸入したけれども非常に余ってしまった、それをむだにしないという観点から何かするべきではないかということにつきましては先ほど答弁申し上げたとおりでございます。
  44. 斎藤文昭

    ○斎藤(文)委員 これはかって大量に余りまして、あのときも外国にでも援助したらいいのじゃないかというような声も大分あったのですけれども、結局それはなされなかったわけです。  これから毎年、来年から四十万トン、最終的には七年後に八十万トンですか、大量にこれは入ってくるわけです。そういう意味では今までと全く違う状態になったわけであります。国内のお米の生産力を持っているということは、将来のことを考えますとき大変大事なことだと思いますし、まして、先ほど言いましたように食糧の事情、将来の食糧事情を考えますときに私は、何とかこれは工夫して、外国から入ってくる米については外国に援助できるというような方法をぜひ考えていただきたい。重ねてお願いをしておきたいと思います。御答弁ありましたら。
  45. 小林芳雄

    ○小林説明員 昨年のウルグアイ・ラウンドの結果を受けまして私ども、米の備蓄を初めといたしまして、これからの安定供給をどういうふうに図っていくかということにつきまして中期的観点から今検討を始めております。  その中で備蓄ということになりますと、その備蓄をされたお米のまた活用といいますかそういったことが出てまいりまして、そういう中で輸入されたお米の一部を援助用として利用することも一つ考え方としてあるのではないかというふうに理解しております。  ただその場合には、やはりその援助に関する国際的ルールといいますか、他の輸出国との関係等々ございますし、また当然財政負担の問題もございます。そういったなかなか難しい問題も含む事柄でございますので、今後関係省庁とも十分連絡をとりながら検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
  46. 斎藤文昭

    ○斎藤(文)委員 今の問題についてはぜひひとつ前向きに取り組んでいただきたいと思います。  それでは次に、国連安保理常任理事国入りの問題についてお尋ねをしたいと思います。  我が国国連安保理常任理事国入りの問題につきましては、現在、国連の作業部会におきまして安保理の改組を含む国連改革の議論が行われておるところであります。  その中で、安保理全体の理事国数を、現在の十五カ国から拡大し二十ないし二十五とすることでは大方の意見がほぼ一致したが、日本とドイツの常任理事国入りを含む常任理事国メンバーの拡大や選考基準、拒否権付与の問題では依然意見に大きな開きがあるなどとの新聞報道がなされております。  これまでどのような議論が行われ、どのような方向性が出てきているのか、中間報告をいただきたいと思います。
  47. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいまお尋ねのございました国連安保理改組に関する作業部会の進捗状況につきまして中間御報告を申し上げたいと存じます。  この作業部会は昨年十二月の国連総会決議によって設置されまして、ことしの一月に入りましてから実質的な会合を開始しております。これまで十九回の会合を開催いたしました。  ここでの議論は、各国が非常に強い関心を持っているということもございまして大変活発に行われております。これまで大まかな意見の収れんが見られました点は三点あると存じます。  第一点は、現在の安保理の規模と構成は国際社会の情勢変化にこたえていない、また国連加盟国の急増に伴う安保理の代表性の問題にこたえるためにも安保理メンバーの拡大が必要であるということが第一点でございます。  それから第二点は、安保理の拡大に当たりましては地理的な議席の衡平配分、これにも配慮する必要があるということでございます。そして同時に安保理の効率性が維持されるべきであるということでございます。  そして第三点は、先ほど先生が御指摘になったとおりでございまして、拡大後の安保理の適正な規模は二十議席から二十五議席の範囲であろうということでございます。  以上三点につきましては大まかな意見の収れんがあったということが言えると存じます。  そして他方、現在はこの作業部会のいわば第二ラウンドの議論を行っているところでございますが、これからの議論といたしましては安保理の常任理事国の増加問題、どういう国を入れるかというような問題、あるいはどういう基準で入れるかというような問題があると思います。  それから、これまでに安保理の常任理事国と非常任理事国の間に準常任理事国というような新たなカテゴリーを設けてはどうかというような提案も出ておりますので、それが適当か否かという問題がございます。  それから、拒否権の取り扱いをどうするかという点につきましても今後さらに議論を深めていく必要があると存じます。  なお、日独につきましては、この作業部会も含めまして相当多くの国から常任理事国になるべきだという意見が出ております。  なお、ことし九月の現在行われております総会 の会期末までに作業部会としての報告書が作成される予定でございます。  以上、中間御報告を申し上げました。
  48. 斎藤文昭

    ○斎藤(文)委員 まだたくさんの質問が残っておるわけですけれども、時間でございますので終わりますが、ただ一つだけ。  我が国の常任理事国入りについてはやはり国民のコンセンサスといいますか、外務省のこの間の調査では賛成が五〇%を超したというようなことも伺っておりますけれども、まだまだ国民理解を十分に得られたとは私は到底思えないわけでございますので、このことについてはひとつ十分国民理解、コンセンサスを得られるようにやっていただきたいということを要望申し上げまして、私の質問を終わります。
  49. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 ただいまの国民の御理解をいただいて進めていくべきであるという斎藤先生の御指摘については私どもも一生懸命努力をいたしてまいりたいと思います。
  50. 斎藤文昭

    ○斎藤(文)委員 ありがとうございました。
  51. 菅直人

    菅委員長 前原誠司君。
  52. 前原誠司

    ○前原委員 与党側を代表いたしまして質問をさせていただきます。  大臣も参議院の本会議に行かれるということでございますので、五分程度おつき合いを願えればと思います。よろしくお願いします。  まず、朝鮮半島の情勢についてお話をさせていただきたいと思うわけであります。  カーター大統領訪朝されまして金日成主席と会談をされたというふうな後の展開でございますけれどもアメリカとしましては三つの原則というものを持って、それが確認をされれば米朝協議再開の用意があるというふうなことでありますが、それと同時に安保理における制裁の議論を継続するということを述べているわけでございます。  日本対応といたしまして一つ大臣にお伺いをしたいのは、いわゆる核不拡散、NPTの体制というものを今後日本が制裁云々を決める最重要の課題としていくのかどうかというところについて御答弁をいただきたいと思います。
  53. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 旧ソ連の崩壊以降、核が中小国に拡散する懸念が大きくなってきておりまして、その点では現在核不拡散体制を維持していくということは今後の核戦争を防止するためにも非常に大事なことだと思っております。そういう点で我が国としては核不拡散体制、NPT体制の維持のために努力をしていきたい、引き続き努力をしていきたいと思っています。
  54. 前原誠司

    ○前原委員 今の御答弁でございますけれども、それは実際問題、非常に大切だと思うわけであります。  では、引き続いて御質問させていただきたいのは、NPT体制を維持するかどうかという判断基準を明確にすることによって制裁の内容が変わってくるということがあるわけです。──では、政務次官にお伺いしますので、どうぞ。政務次官、よろしくお願いします。  NPT体制、今大臣が最重要の課題として考えていきたいということだったわけでありますけれども、しかしこれは非常に難しい問題が出てくると思います。  と申しますのも、言われているように核爆弾をもう一発、二発持っているかもしれない、それでもそれは目をつむりましょう、核を持っている北朝鮮とつき合うけれども以後の管理については厳密に行っていこう、IAEAにも復帰をしてもらって査察も行っていくというふうなことで考えるなら、いわゆるNPT体制というものは北朝鮮においてなし崩し的に崩されたということになるわけですね。  だからそれは、NPT体制を守っていかなくてはいけないという最重要の課題にある意味では反するわけです。そこら辺はどういうふうに判断をするのか。  また逆に、現時点考えると北朝鮮がひょっとしたら時間稼ぎをしているのじゃないかということですね。ですから、時間稼ぎをしていて、そして核不拡散について重要な疑念が生じたときには関係国と協議をして、不拡散、NPT体制というものを堅持するために制裁というものも辞さないというふうなものになっていくのか。  そこら辺は私は、そのNPTを一つの価値基準として日本対応が大きく変わってくるという非常に難しい局面に来ると思うのですけれども、その点での外務省対応というものを、今の見解というものをお聞かせ願えればというふうに思います。
  55. 林暘

    ○林(暘)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど大臣からも御答弁申し上げましたとおり、我が国としてはNPT体制の維持というものが極めて重要なことであるというふうに考えております。  そういう観点からいたしますと、今御指摘のように北朝鮮核兵器を持っていたとしても過去のものについては問わないということはNPT、核不拡散条約上容認をできない事態でございますし、我が国としてはそういうことを認めた上でNPT体制維持ということはあり得ないというふうに思っております。  言いかえますと、過去にもし核兵器、核弾頭といったものをつくっておるとすればそれは廃棄ないしは撤去をしてもらうということが、北朝鮮がNPT体制に完全に復帰し、NPTの義務を履行するという大前提であるというふうに考えております。
  56. 前原誠司

    ○前原委員 今の御答弁なら、では、もしある程度の確率において北朝鮮が核爆弾を持っているというふうなことになった場合にはNPT体制というものが崩れた、なし崩しにされたということで、NPT体制を堅持するためにそれを排除するための制裁というものに日本政府としても賛成するというふうなことになるわけですか。
  57. 林暘

    ○林(暘)政府委員 北朝鮮核兵器を保有しているか保有していないかということが確認されるということが前提でございますが、もしされた場合にどういう対処を特に国連の安保理事会がとるかということは、その時点における国連安保理事会の決定、判断の問題でございまして、そういうことがあった場合に日本がどうするかということを今ここで御答弁するのは差し控えさせていただきたいと思います。
  58. 前原誠司

    ○前原委員 先ほどの答弁とちょっと食い違うところもあるわけでありますれども、確かに今おっしゃったように余り軽々にNPT体制の堅持というものは  建前では最重要課題であるということは言ってもいいと思うのでありますが、国際政治という生き物の中でひょっとすれば持っているかもしれないし、確認されるかもしれない、あるいはひょっとすれば時間稼ぎでやっているかもしれないという部分があるわけであります。  核兵器を持っていないということをある意味期待をする部分もあるわけでございますけれども、そのNPT体制の堅持というものを前面に打ち出して、だからNPT体制は崩れたというふうなことで日本政府が、例えば制裁がエスカレートしていったときに海上封鎖なんかの非常に問題のある、問題といいますか有事の可能性の強いものについては、私は非常に慎重に対処をしていただかなくてはいけないのじゃないかというふうに思います。  また時間がたてば状況が変わる部分もありますので、この点については慎重に対処をしていただきたいということだけ要望させていただきたいというふうに思います。  では次に、核兵器使用の違法性について、この間議論がありました点について再度お尋ねをしたいというふうに思います。  いわゆるICJによるあの質問に対して、あるNGOが中間の集計をしたところによりますと、十五カ国のうち九カ国が違法であるというふうに答えてきたというふうなことなのですね。そのNGOによると、何か日本もその九カ国の一つに入っているというふうなことだそうであります。  政府は、実定国際法に明記されていないのだから違反とは言えないというふうな見解を削除され ましたけれども、その方針は変えていないということについては私は非常に憂慮をしているところでございまして、その点についてちょっと議論をしていきたいと思うわけであります。  オーストラリアとニュージーランドが、「核兵器の使用が違反かどうかは政治的な問題で、法律問題になじまない」という回答をしているわけです。私はこれは非常にいい回答だと思うのであります。政務次官あるいはほかの担当者でも結構でありますけれども、このオーストラリア、ニュージーランドの見解についてどのようにお考えになるか、見解を聞かせていただければというふうに思います。
  59. 高野幸二郎

    ○高野政府委員 委員お答えいたします。  ただいま委員指摘のオーストラリア、ニュージーランドが出しました陳述書につきましては、委員御承知のとおり、そもそもICJの方で公開を決定するまでは各国は公開しないということになっておるものでございますから、私どもといたしましては一切その内容について承知しておりません。     〔委員長退席、高市委員長代理着席〕
  60. 前原誠司

    ○前原委員 今私がお伺いしたのは、オーストラリア、ニュージーランドの政策がどうのこうのということではなくて、「核兵器の使用が違法かどうかは政治的な問題で、法律問題になじまない」ということについては非常に明快だということを私は申し上げているわけです。  この間高野局長とも少し議論をさせていただきました。国内法と国際法は基本的に違う、国際法というのは整備されていない部分が非常に多くて、この間もキャンバスに例えましたけれども、国内法なんというのは結構色が塗ってあって、色が塗ってあるからそれに書かれていなかったら違反とは言えないということについては言えるわけでありますが、国際法のようにまだまだ白地の部分が多くて、そしてまた色が塗ってあってもそれに乗るかどうかというのは各国の主権にゆだねられているというふうな部分については、実定の国際法上に明記をされていないから違法とは言えない、違反とは言えないというふうな言い方は、これはそもそも間違いであるというふうな議論をこの間一緒にさせていただいたわけであります。  ですからまず、またその点をぜひ伺いたいと思いますし、そういう意味で今私は、政治的な問題というふうに言われるのはわかる、しかし法律問題で違反とまでは言えないというふうな政府見解というものを削除はしたけれども撤回をされていないということには非常に疑問を感じるわけです。いかがですか、この点については。
  61. 高野幸二郎

    ○高野政府委員 お答えいたします。  先生御承知のとおり、そもそも事の起こりはWHOの方で総会決議によってICJの勧告的意見を求めたということでございます。御承知のとおり、この勧告的意見というのはICJ規程に書いてありますとおり、ICJの機能の一つとして国際法の解釈問題について意見を述べることができるわけでございます。それが勧告的意見である。その勧告的意見を求められましたICJとして、それを受理して勧告的意見を出すかどうか、またその内容をどうするかに当たりまして国連加盟各国に意見を求めているということでございます。  したがいまして、今回に限りませんで、ICJの勧告的意見は二十一回過去に出ておりますが、本来の任務である国際法の解釈問題について裁判所として意見を述べるということとの関係から、国際法、国連憲章の解釈とかが通常でございますが、その国際法の解釈問題について各国がどう思うかということ、及び通常行われますのはその前提といたしましてその申請を受理するかどうか、つまりICJとしての管轄権の問題、この二つが中心課題となるものでございますから、各国が意見を出す場合はこの二つについて中心に意見を述べるというのが通常でございます。  ただ、もちろんこれは各国が独自の判断に基づいて基本的には出すものでございますから、これらの二点についてその陳述書の内容は限定されるということではございませんで、その他の政策的な観点からの意見ということを書くことも間々ございます。  したがいまして、私が申し上げたいのは、この陳述書の中身というのは通常は法律的な観点からの意見が求められておる、ただし、それだけには限定されていないということでございます。最終的には各国が個々の判断に基づいて陳述書の内容を確定して出すということでございます。  したがいまして、そういう観点から、今回政府が提出いたしました陳述書におきましても、核兵器の使用問題についての法的評価という点とそれから核廃絶に向かっての我が国の基本的考え方という、この二点を中心に陳述書を確定し提出したという次第でございます。
  62. 前原誠司

    ○前原委員 ちょっと質問お答えがあれなのですけれども、ではイエスかノーかで結構です。その違法とは言えないという見解は変えておられないわけですね。削除はしたけれども変えておられないわけですね。
  63. 高野幸二郎

    ○高野政府委員 さようでございます。
  64. 前原誠司

    ○前原委員 この点について私がるる申し上げましたけれども、その違法とは言えないという見解を変えていないということを断定される根拠がまだまだ乏しいと私は思うわけです。  例えば、今おっしゃったのは法解釈上だったけれども、この間大臣にいろいろな方が質問されている中で大臣が答弁されている内容の一部には、現実に核抑止論に依拠しているのだからそういうものを違反とは言えないという言い方もされているわけですね、現実的な問題で。そうしたら、今おっしゃった法的な解釈の中に政治的な解釈も含まれている。  私は政治的な解釈において核兵器は現段階において即座に全廃すべきだという考えは全く持っておりません。核抑止論が存在しているというのもわかっておりますけれども、しかしそういう政治的な部分も言われているわけですね。  そうしたときに、またこの間の議論の蒸し返しになりますけれども、例えば抑止論というのは保有の議論で済むわけです。例えばNPTにしてもそれから部分的な実験の禁止の条約にしても、あれは保有というふうなものについて規定をされている条約だから、ある部分ではその裏返しで保有というものは認められているというふうな解釈がなされるわけです。  でも使用については何も決められていないわけですね。ですから、核兵器の使用について核抑止論を云々するというのは全く筋違いだと私は思うのですよ。  核兵器というのは使ってしまえばもう元も子もない兵器でありまして、使うぞ使うぞというおどし、それはいわゆる保有というものでありますけれども、使用というものについてはそういう規定がないにもかかわらず、核抑止論というものを持ち出して違反とは言えないというふうな見解の一部に理論構成をしているということについては私は納得できないわけですけれども、この保有と使用、核抑止論の問題について局長のお考えがあれば御答弁をお願いいたします。
  65. 丹波實

    ○丹波政府委員 国際法の解釈の問題でございますので、私から手短にお答えさせていただきたいと思いますけれども核兵器というものが究極的に廃絶されるべきものであって、かつ国際法のベースであるところの人道主義というものにその使用は合致しないということ、かつ先ほど申し上げたそういう観点から、日本政府としては唯一の被爆国として核廃絶に向かって人一倍今後とも努力していきたいという点は、これは一つ考え方で、まさにそれはこの日本政府の陳述書にあらわれているわけです。  それはもちろん重要で、そういうことでございますけれども、他方、現実の純粋な国際法上の解釈としてどう見るかということになりますといろいろな学説、いろいろな御意見はございます。  純粋に法的な観点からいえば、今日までのいろいろな、国家実行という言葉、国家の慣行という言葉がございます。それから国際法学者の学説、いろいろ判断した場合、今日の国際法に違反する とまではどうも言えないというのが国際社会の見方として言えるのじゃないか。もちろん異論を唱える国もあるわけですが、そういうことを申し上げている次第でございます。  実は、基本的に問題になりますのは、いわゆる有名なセントピータースブルグ宣言というところからずっと始まって、問題は、戦闘する場合にその軍事的な効果とかつ害敵手段を使う場合の人道的な要請、この二つをいかに考慮するかというところから問題は始まっておるわけでして、今日では、過度の傷害または無用の苦痛を与えるような兵器あるいはその使用というものは国際法上禁止されるべきであるという考え方は、一般国際法上確立した原則であるということは申し上げることができると思うのです。  ただ、それはあくまでも一般的な基準を示しているにとどまりまして、具体的な兵器の使用の規制につきましては、その具体的な兵器につきまして、例えばダムダム弾の禁止のための条約あるいは毒ガスの禁止のための条約的措置あるいは細菌兵器の禁止のための条約的措置ということで、個々に具体的な条約が成立してきておる。  そういう観点から核兵器の使用ということを見た場合に核兵器に特定したその条約的な措置というものが残念ながら今日までとられていない。そういう観点から核兵器の使用というものが直ちに国際法上、現在の時点で違反しているとまではまだ言えないのじゃないかということを申し上げている次第でございます。  抑止力の問題につきましては、残念ながら現実の国際社会はまだ核の抑止力に今依存しておるという現実を申し上げておる次第でございまして、あくまでも国際法の解釈とはそこは別のことを、現実を申し上げておるというふうにお考えいただきたいと考えます。
  66. 前原誠司

    ○前原委員 最後部分をもうちょっと長くやってもらいたいのですけれども、私が伺ったのは、核抑止論というのは、保有のことで核抑止論が成り立つのじゃないか。その使用のことについてICJは問うてきているのに核抑止論という保有の話を持ってくるのはいかがなものかというふうな質問をしているわけです。高野部長、お願いします。
  67. 高野幸二郎

    ○高野政府委員 お答えいたします。  これは先日の委員会でもお答えしたとおりでございます。私、理論的な考え方としてはあり得る話かと思いますが、保有と使用を分けまして、保有はいいということにしてその限りにおいて抑止力を維持する、ただし使用は違法だというのも一つのメンタルエクササイズとしてはあり得ると思いますが、現実にその使用が違法であるということになった場合果たして本来の核抑止力というものが確保できるのかどうか私は極めて疑問だというふうに考えております。
  68. 前原誠司

    ○前原委員 それはおっしゃるとおりなのですよ。ですから、核を使用することが違法であるというふうなことになった場合に核抑止力の内容というのは今おっしゃったように変わると思うのですね。ただ今議論しているのは、明確に違法であるというふうなことの議論じゃないわけですよ。規定がないから違反とは言えないというふうな議論はおかしいのじゃないですかという話をしているわけです。  それで、今申し上げたように禅問答みたいになってきますけれども、保有の問題についていろいろ条約解釈はあるが、しかし使用の問題についてはそういうものを書かれているところがないというふうなことでありますから、現実的に理由づけをされるのに核兵器の使用という問題について核抑止力の話をされるのがおかしいのじゃないですかというふうなお話をしているわけであります。  もう大臣が来られまして、秋葉先生の時間にも食い込んでおりますのでこれで終わりにいたしますけれども、その点について、できましたらまたいろいろ議論をさせていただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。  どうもありがとうございました。
  69. 高市早苗

    ○高市委員長代理 秋葉忠利君。
  70. 秋葉忠利

    秋葉委員 今前原さんが大変いい質問をされましたので、それに継続してちょっと別の観点から質問をしたいと思います。私の立場は前原さんとは正反対なのですが、ただ、どのような視点からもたえ得るような強力な主張を外務省の皆さんはお持ちだと思いますから大丈夫だと思います。  今の観点で、前に柿澤外務大臣もおっしゃいましたし、今外務省の担当者からもお話がありましたように、核抑止力があるということが今回の陳述書の内容に非常に大きな影響を与えているという認識でお話をなさっているわけですけれども、そういうことでよろしいのですね。
  71. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 現在国際社会の中で引き続き紛争また国家間のさまざまな争い事がある状況でございます。そうした中でそれぞれが通常兵器また核兵器等を保有して、それぞれが自衛のための活動をしているのは御承知のとおりでございまして、その意味では核兵器もそうした自衛のための抑止力として保有をしている国があることは事実でございます。  我が国は非核三原則を持っておりますし、その点では核保有はしないという原則のもとで自衛のための防衛力を保持していることも先生御承知のとおりでございます。
  72. 秋葉忠利

    秋葉委員 最初に申し上げるべきでしたけれども柿澤外務大臣、このところ大変多忙だと思いまして、きょうやはり少しお疲れになっているのじゃないかという気がいたしました。しかし、大事な問題ですからもうちょっと我慢をしておつき合いいただきたいと思います。  今の点ですが、実は大臣お答えいただくつもりではなくて、高野部長にお答えいただきたかったのです。今のような御答弁だけではなくて、大臣の先日からの御答弁それから外務省関係者の御答弁を伺いますと、高野部長から二月に伺ったことと正反対のことを言っている。  そのときに何をおっしゃったかといいますと、要するに核抑止力という問題があるから、あるいは我々が、日本アメリカの核の傘に入っているという認識があるから、そのことがこの国際司法裁判所に対する陳述書に影響を与えるのではないかという疑問を提出しましたけれども、それに対する答えが、法律問題について政策的判断が影響を与えることはないというふうに部長は断言されたわけです。これはどちらが本当なのですか。この点やはり責任ある立場でお答えいただいたわけですから。  しかしながら私に対する答えは、二月は核抑止論とは関係ない、ところが国会の場に出てきたら核抑止論が堂々と大手を振っている。こういうようないいかげんなことを言われちゃ困ります。高野部長。
  73. 高野幸二郎

    ○高野政府委員 お答えいたします。  私、日付まで覚えておりませんが、今秋葉先生から御紹介ありましたやりとり、内容的に私記憶しておりますし、そのようなことを申し上げました。  この機会に改めて私、趣旨は同じでございますが、説明させていただきたいと思います。  問題は二つございまして、一つは……(秋葉委員「結論だけ言っていただければいいです」と呼ぶ)はい。結論を二つ申し上げますと、要するに実定国際法上違法と言えるかどうかという法律解釈の問題と、それと違法ないしは合法といずれかの結論になった場合の、つまり核兵器の使用自体についての法的解釈がなされた場合の核抑止力との問題、これはいわば政治的な外交政策の問題でございますが、この二つ、それぞれ違った問題があるということを申し上げているわけでございまして、核兵器の使用が違法だという法的解釈をとった場合にその核抑止力との関係で困るから、したがって、法解釈を政治的な判断で変えたのだとかいうことでは決してないということを従来から申し上げているところでございます。
  74. 秋葉忠利

    秋葉委員 それでは答弁の中にそもそも核抑止力なんという言葉が入ってくるのはおかしいじゃないですか。関係ないことだったら関係のないこととして一切捨象して答えればいいことじゃない ですか。それが、なぜ核抑止力なんという言葉が入ってくるわけですか。この点はそれほど大事な点ではありませんのでちょっと省略しますけれども、後で時間があったらまた帰ってまいります。  それで、この問題についての政府態度は、結局、実定法上国際法違反ではないという態度は崩していないわけですけれども、実定法の定義を先日伺いました。その定義では余りよくわからないのですが、ごく手短に、属性によってちょっと定義をお願いしたい。  集合の定義をするというのは二つ方法がありまして、一つは集合の要素を全部羅列するという方法です。もう一つは属性によって一その集合の特性を示すことによって集合を特定するという二つの定義の仕方があるのですが、先日丹波局長がおとりになった定義の仕方というのは前者で、一つ一つの条約その他を挙げて、そういうものが実定法であるということをおっしゃいました。  ただ、それではその実定法というものの持つ特性がよくわかりませんので、その属性によって、例えば明文規定があることとかあるいは罰則があることとか、そういった形で幾つか条件を挙げていただけると大変ありがたいと思います。時間が余りありませんので、短くお願いします。
  75. 丹波實

    ○丹波政府委員 私は、先生のように学問的素養を持っておりませんので自信はございませんけれども、通常、実定国際法とは何かと問われれば、実定法と申しますのは、自然法に対する概念として使われておるわけでございまして、実定国際法という場合を二つに分けて申し上げたつもりですけれども一つは慣習というものを通じてつくり出されてきた慣習国際法、それからもう一つは国家間の明示の合意によって形成されてきたいわゆる条約、まあ協定その他いろいろな名前がございますけれども代表して条約、その二つを含めて実定法というふうに申し上げているつもりでございます。
  76. 秋葉忠利

    秋葉委員 ありがとうございました。大変よくわかりました。  それで、具体的に例を挙げますと、例えばこれは略称ですが部分核停条約というのは、そうすると実定法ですね。
  77. 丹波實

    ○丹波政府委員 これは、各国が署名して発効させたまさに条約、先ほど申し上げた一般的な意味の条約でございます。
  78. 秋葉忠利

    秋葉委員 その部分核停条約では核実験、これは実験ということですけれども地下核実験を除いて大気中あるいは宇宙それから海洋における核実験を禁止している条約、そういう単純な条約でよろしいのでしょうか。
  79. 林暘

    ○林(暘)政府委員 簡単に申し上げまして、地下核実験を除く実験を禁止した条約でございます。
  80. 秋葉忠利

    秋葉委員 そこで伺いますけれども、そうすると核兵器実験核兵器の使用との差を、これもまた属性によってお示しいただきたい。どういうことが実験でどういうことが使用であるのか。その差について明確にお答えいただきたい。
  81. 丹波實

    ○丹波政府委員 先生の御質問意味を必ずしも理解しかねますが、核兵器というものを、その核保有者の目的に合致した形で使用にたえ得るようなものをつくり出していく過程で実験を行うというのが核実験でございまして、そういう実験のプロセスを通じて完成された核兵器というものを使用するというのが核兵器の使用というふうに考える次第でございます。
  82. 秋葉忠利

    秋葉委員 そうすると、例えばイラクとか北朝鮮に核爆弾があるかどうかということが今疑問視されていますけれども、そのいずれの国をとっても、あるいは発展途上国その他の国の中で技術的にそれほどレベルの高くない国が非常に原始的な形の爆弾をつくったといたします。  それで、それは例えばアメリカの標準からいったらとても完成されたものとは言えない、いわばラジオのレベルでいえば、我々が通常使っているようなソニーのすばらしい製品に比べて鉱石ラジオのレベルのようなもので、これからもどんどんそれを製造あるいは性能を向上させようという意図を持っている。突然戦争が起こった。じゃ、これがいいチャンスだからというのでそれを使うというような場合にはこれはどっちですか。実験ですか使用ですか。
  83. 丹波實

    ○丹波政府委員 御質問意味が必ずしもあれですが、実験と申しますのは、実験の目的は戦闘の過程において害敵手段として使用する状況ではないわけでございますけれども、その同じものが今先生が描写されたような状況の中で害敵手段の一つとしてたとえ不完全な武器、まさにアメリカの水準から見て不完全な武器、原始兵器であってもその戦闘の過程で一定の目的を果たす、そういう目的のために使うということであればそれは核兵器の使用に当たるのだろうと思います。
  84. 秋葉忠利

    秋葉委員 そうすると、目的によって実験か使用かということが決まるわけですね。戦争の際に相手に対して、仮に国際法があったとして、核兵器の使用は禁止するという条約があったとして、その中には今のような明白な規定がないとして、それだけがあったとする。  そうすると、これを使いましたけれどもこれは実験です、殺傷の目的ではありませんということを言えばそれは許されてしまうことになりますね。要するに意図によって実験か使用かということがわかる、判然と区別されるというお立場ですね。
  85. 丹波實

    ○丹波政府委員 これは、使用禁止の条約というものが現在ないわけでございますから、一部地域を対象にした条約はございますけれども、一般的なものとしてはないわけでございますので、あくまでも抽象的、仮定の議論になってしまいますので、どういう規定がその条約に含まれるかということによって判断されるべき問題で、抽象的に仮定の議論はちょっとこれ以上私はできないというふうに考えます。
  86. 秋葉忠利

    秋葉委員 広島と長崎に落とされた原爆は実験であるという説がありますけれども、その実験であるという目的が明確にある程度されれば、あれは実験であって使用ではないというふうにお考え  になっておるわけですね。
  87. 林暘

    ○林(暘)政府委員 部分核停条約における核爆発実験の定義というのはきちんとしておらないことは今先生御指摘のとおりでございますが、ただ一つ書かれておりますのは、「その管轄又は管理の下にあるいかなる場所においても、」という字句がありますので、今御指摘アメリカが広島ないしは長崎で爆発させた爆発というのは、ここで言う、例えばこの条約をとった場合の実験というものには当たらないというふうに思います。
  88. 秋葉忠利

    秋葉委員 そうじゃないんじゃないですか。例えば実験を完全に、完璧にコントロールできるということであればそれはそうかもしれませんけれども、その規定をすべて満足するようなことばかりやっておれば禁止条約なんて必要ないのですよ。だから、それ以外のことが起こり得るからそれに対して制限をつけ加えているわけでしょう。  ですから、具体的に戦争になって、あれは実験でしたから間違えましたというときに、ではそれは今の解釈でどういうふうに説明するわけですか。
  89. 林暘

    ○林(暘)政府委員 先ほど条約局長も御答弁申し上げましたとおり、基本的にその戦争という行為を行っているような間において使われる、それも敵に対して使われる場合と、実験という、もちろんこの定義というものは非常に明確にできているというわけではございませんけれども、そこには明らかに違いがあるわけでございます。  そういう意味で、ここで言っている実験というのは、そういう他国その他に対して武力行使、戦争をしている過程において使うものではなくて、そのみずからの管轄地域にある地域ないしは場所において、いわゆる普通の意味で言う実験のためにやることを言っているわけでございます。  この点につきましては、今全面核実験禁止条約の交渉をジュネーブで行っておりますが、もう少しきちんとした定義をつくろうという努力はいたしております。
  90. 秋葉忠利

    秋葉委員 通常の意味における実験とおっしゃいましたけれども、その実験と使用というのは明 確に区別できない概念なのですよ。だから、幾らそれを明確に区別しようと思ってもできないのが当たり前なので、今のお答えだって、実験というのは要するに普通の意味で言う実験だというトートロジーになっているじゃないですか。それはやはり区別ができないからです。  実験と使用の区別ができないというのを十分に理解するためには、先ほども申し上げましたように、どのような国でも仮に核兵器を使ったような場合、それに対する正当化を行いますけれども、その際に実験というのは必ず使われる口実だと私は思います。現に広島、長崎の原爆に対しても、あれが実験であったということが最近公開された文書の中でかなり明白に出てきております。  しかしながら、そこのところは問題ではないのです。さっき丹波条約局長がおっしゃったような意図のところが実は大事なのではなくて、その結果が私は非常に大事だと思います。結果としてどのくらいの人が殺傷されるかというところが実は一番大事なところではないかと思いますけれども、その議論を今の意図のところに換言してしまってはまるっきりわからなくなってしまいます。  それで、ほかにもちょっと質問がありますので、この問題についてはさらに続けて後の機会に取り上げたいと思いますけれども、先日外務省の首脳が、この国際法違反ではないという部分を削除した件に関して、核の使用が国際法違反だなどと言う人間は非常に頭が悪いという発言をしたという報道がされております。首脳というのは大臣か政務次官か事務次官だというふうに私は伺いました。よもや柿澤大臣がこんなことをおっしゃるとは思いませんけれども、念のためにこういう発言をされたかどうか確認しておきたいと思います。
  91. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 私も頭が悪い方でございますので、自分では申しておりません。
  92. 秋葉忠利

    秋葉委員 ただ、この問題について意見の違いがあるということは当然だと思いますし、先日も申し上げましたように、特に被爆者の間にはやはり核兵器の使用ということは国際法上非常に大きな違反行為であるという気持ちが強くあります。  それを、その国民の気持ち、被爆者の気持ちを政治の中あるいは国際社会の中で実現していくのが広い意味での政治の仕事ですし、国際的な分野における専門家を自認していらっしゃるからこそ、その頭が悪いというような発言が出てきたのだと思いますけれども、そういう専門家の立場としてはそういった素朴な気持ちを具体的な場に反映させていくことが仕事ではないかというふうに思います。  その本質的な政治役割というものあるいは行政の役割というところを完全に忘れてしまって、学問的なあるいは国際法上の区別であるとかあるいは立場といったところから被爆者に対して、あるいはマスコミに対して、マスコミのほとんどの方々はやはり国民の意見を代表しているわけですけれども、そういった人に頭が悪いというような非常に侮べつ的な言葉を投げつけるというのは私は外務省態度として非常におかしい態度だと思います。  この際、大臣じゃないそうですから大臣に謝ってもらってもしようがないのですが、これはやはり外務省全体としての態度だと私は思いますから、その外務省全体としてこの問題をどうとらえているのか、そして今後この問題についてどういう決着をおつけになるつもりか伺いたいと思います。
  93. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 本件に関しましては、先般の外務委員会でも秋葉先生から御指摘があった点でございまして、国際司法裁判所に対する日本政府としての陳述書をどのようなものにすべきか、秋葉先生や外務委員会の皆さんの御意見また予算委員会での御意見等を承りまして、原案にありました実定国際法上必ずしも違法とは言えないという表現を削除させていただいたわけでございます。  そもそも政府の最初につくりました原案の中でも、実定法上は違法とは言えないが、政策論としてはこれを使ってはならない、またそうした使ってはならないということを定着させるために日本としても努力すべきだということを規定していたわけでございますが、いろいろな意味で誤解を招いた点もございましたので削除をいたしました。  ただ、その過程におきまして、実定法上違法とは言えない、違法と断定できないという点につきまして政策論と混同して議論をされることがしばしばございましたので、そこのところはぜひ別途の問題として議論をしていただきたいという趣旨でこの発言になったものだと私は理解をいたしております。  しかし、いずれにいたしましても、不適切な発言でございますので、この点は撤回をさせるようにいたしますし、外務省として二度とこのようなことがないよう私としても責任を痛感して、その方向で指導をしてまいりたいと思っております。
  94. 秋葉忠利

    秋葉委員 撤回していただくのは大変結構だと思いますし、二度と繰り返さないようにぜひその方針を貫いていただきたいと思います。  ただ、言葉というのは安いものですから、口では何でも言えるというふうに言うとちょっと失礼になりますけれども、事実、頭が悪いというのも口だけかもしれません。内容は伴っていないのかもしれないのですが、やはり本当に何を考えているかというのは行動によって裏づけされる必要が私はあると思います。  きょうも広島市長と話をしましたけれども、やはり広島でもこの発言は非常に大きな問題になっております。そういったところを踏まえた上で、やはりこの核兵器の使用は国際法違反かどうかという問題、被爆者の経験をもとに再検討をしていただきたい。あるいは再検討しないまでもより正確な事実を知った上で、これは国際法に違反していないのだ、だからこれを使ってもいいですよということを言うのだったら、それはやはり被爆者の痛みを理解した上で私は言っていただきたいと思います。  そういった点もあわせて、頭が悪い発言というのが真意でないのであれば、やはり謙虚に被爆者の話をいま一度聞いてみる必要がありはしないか。  これは毎度私はこの席に立つたびに申し上げていることですけれども、この際改めて提案をしたいのですが、できたら二つのチームをつくって、一つのチームは広島、もう一つのチームは長崎にということで、一日時間をとることが無理なら半日でもいいかもしれません。できたら一日とっていただきたい。  その中には大臣、政務次官、事務次官、それから条約局長あるいは高野社会協力部長あたりはぜひ入っていただいて、その二つのチームに分けて、被爆者とあるいは両市の関係者とひざを突き合わせて、被爆体験についてもう一度謙虚にぜひ聞いていただきたいと思いますし、それからその国際法違反かどうかという問題についてあるいは核のそれ以外のさまざまな問題についてぜひオープンな、率直な話し合いを持っていただきたいというふうに思います。  八月六日というのはたくさんの方が広島に来られるわけです。忙しいときでもありますから、そろそろ国会も終わりますし、確かに大臣は海外に出られたりして忙しくなられるかもしれませんけれども、できるだけ早く、夏前にはそういったことをぜひ実現していただきたいというふうにお願いしたいのですが、いかがでしょうか。  広島市長も、そういう機会をもしつくってもらえるのだったら広島市としても全市を挙げて歓迎するということを言っておりますし、本島市長も全く同じ考えだということを伺っていますので、ぜひ御検討をお願いしたいと思います。
  95. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 本年五月に広島で行われました国連の軍縮会議には外務省の平田政務次官、そして担当の林審議官も出席をさせていただきまして、被爆者の皆さんの貴重な御意見も承る機会がございました。また先般、秋葉先生の御紹介で広島市長、長崎市長がおいでになりまして、私も直接お話を伺い、改めて我が国の、日本の貴重な体験でございますこの被爆体験というものを承ることができたわけでございます。  その意味で、今後ともそうした機会がありましたら、私を初めとして外務省の幹部も広島、長崎にお伺いして、直接ひざを交えてお話を伺わせていただく機会をつくりたいと思っております。八月までこのポストにおりますかどうですか、内閣が続いておれば外務大臣として参りたいと思っております。
  96. 秋葉忠利

    秋葉委員 八月までどうなるのか神のみぞ知るような感じですけれども、ともかく外務大臣でいらっしゃるうちに、長期内閣になれば何度でもぜひ広島に来ていただきたいというふうに思います。  先ほどの国際司法裁判所に対する陳述書の問題に戻ります。  日本政府が国際司法裁判所に対して陳述書を出した、その内容を教えてほしいというリクエストが何度かありました。先ほども前原委員の方からそれに関連する話が出ましたけれども、陳述書は公開できないというのが返事だったように思います。その陳述書の内容が公開できないという実定法上の根拠を教えていただきたいと思います。
  97. 高野幸二郎

    ○高野政府委員 恐縮でございますが、国際司法裁判所規則第百六条、短い文章ですからまず読ませていただきます。「裁判所、又は裁判所が開廷中でないときは裁判所長が、陳述書及び附属書類を、口頭手続きの開始のときに又はその後に、公開することを決定することができる。」というくだりがございます。これが今お尋ねの法的根拠でございまして、私どもは念のためにハーグのICJの事務局にこの解釈について確認いたしました。  それによりますと、解釈としても実際の慣行上といたしましても、ここにありますようにICJの方で公開いたしますのは通常は口述の段階のようでございますが、裁判所の方で公開を決定するまでは陳述書を出した各国が独自に公開することは差し控えられている、したがって差し控えてもらいたいというのが裁判所側の説明でございました。
  98. 秋葉忠利

    秋葉委員 差し控えられているというのが現状だと思います。  それから、差し控えるように国際司法裁判所の方で要求を出しているということですが、実は、アメリカを通して私が調べた限りではそういうことは一切ありませんし、事実二つのことを混同されているように思いますので、そこを指摘したいのです。  国際司法裁判所が公開するかどうかという問題と陳述書を提出した国が自分の提出した陳述書を公開するかどうかという問題は全然別問題です。今おっしゃったのは国際司法裁判所の段階における公開手続です。ですから、国際司法裁判所がそれ以前の段階で公開する云々というところは恐らくおっしゃったとおりだと思います。  しかしながら、その陳述書を書いた国が自分の国の責任において自国の陳述書を公開するかどうかというところはそれに縛られない、少なくともそのことに対する規定は存在しないというのが私の理解しているところですけれども、それは間違っているのでしょうか。
  99. 高野幸二郎

    ○高野政府委員 私、先ほどの答弁の中で触れたつもりではあったのでございますが、言葉が足りなかったようでございますのでもう一度答弁させていただきます。  つまり、一般的にその裁判所が公開するまでは各国が公開することは差し控えてほしいという意味につきまして、念のためにその点についても在ハーグの我が方大使館を通じまして事務局の方に照会いたしました。つまり、各国が自分が出した陳述書を例えば自分の国において公開することも差し控えてほしいということか、裁判所規則の解釈としてそういうことであるかということをスペシフィックに特定して質問いたしまして、しかりという返事をいただいております。  ただ、こういうやりとりはございました。それでは、例えば日本政府の陳述書の場合、政府が出す陳述書の内容について政府が国内において言及することも一切差し支えありという意味かという私どもの方からの質問に対しまして、裁判所の方からは、いやそうではない、陳述書全体として公開することを差し控えてもらいたいので、大体どういう内容のものであるかということを陳述書を出した政府が独自の判断で公開といいますか、オープンにすることまでは妨げないのだというのが裁判所側の回答でございました。  秋葉先生御承知のとおり、先日来、政府の方は、政府が出す予定にしておりました陳述書の概要ないしは最終的に確定いたしまして六月十日に提出いたしました陳述書の概要については国内において公にしているのはそういう背景によるものでございます。     〔高市委員長代理退席、委員長着席〕
  100. 秋葉忠利

    秋葉委員 それが日本政府の解釈だというふうに思います。  実定というのはどういうことを指すのかいまだによくわからないところがあるのですが、実は今回の陳述書について、非常にたくさんの国が陳述書を出しています。もしこれがおっしゃるように国際司法裁判所がやっちゃいけないと言っていることだと迷惑がかかりますから国の名前は申し上げませんけれども、そのうちの幾つかの国について、長いのもあれば短いのもありますけれども、私手元に持っております。それは各国の政府が公開したものです。  ですから今おっしゃったことは、それは事によったらそうなのかもしれない。しかしながら、実際に日本の国会議員がこういったものを簡単に手に入れられるということは、今おっしゃったことは建前であって本音は違うのかもしれない。  その辺のところを十分お考えいただきたいと思いますし、この陳述書について外務省が我々に対して公開することによって生ずる害というのは私はほとんど存在しないというふうに思います。  さらに、国際司法裁判所の手続ですと、その陳述書のコピーといいますか、その内容は陳述書を提出した各国に対してほかの国のものも送付される。もちろんそれはその守秘義務がありますから、ほかの国の文書を日本が公開するというのは、それは論外です。  そんなことは申し上げておりませんけれども、大体何カ国ぐらいが陳述書を提出していて、そのうちの何カ国ぐらいがこの核兵器の使用について国際法違反であるという意見を述べているか。正確なところがわからなければ大体の数でいいですから報告していただければと思います。
  101. 高野幸二郎

    ○高野政府委員 お答えいたします。  先ほど来申し上げておりますとおり、ICJの方では公開手続の段階までまだ来ておりません。したがいまして、日本政府としては、どの国がいかなる内容の陳述書を出したのかということについて、国際司法裁判所との関係において一切の情報を入手しておりません。  ただし私どもも、大変関心事項でございますのでICJに対しまして、一体何カ国から六月十日までに陳述書が提出されたのかということは照会いたしておりまして、それに対しては回答を得ております。二十七カ国という回答を得ております。
  102. 秋葉忠利

    秋葉委員 そのうちの少なくとも九カ国は核兵器の使用が国際法違反だということを言っているという情報を持っています。恐らくその数はふえていると思いますけれども、その辺のところもより正確な数字がおわかりでしたら教えていただきたい。  それともう一点。広島、長崎の両市長からの要請がありました。国際司法裁判所がこの問題について決定を下すプロセスでぜひ広島、長崎の被爆者の声を聞いてほしい、そういった内容を陳述書に盛り込んでほしいという要請がありましたけれども、そのことは陳述書に盛り込んでいただけたのかどうか。イエスかノーで結構ですからお答えいただきたいと思います。
  103. 高野幸二郎

    ○高野政府委員 本来申し上げたいことはあるのですが、イエスかノーかという御質問でございますので答えだけ申し上げますと、その点については陳述書の中に盛り込んでおりません。
  104. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 その点については私も広島、長 崎の市長さんから要望を受けましたので部内で検討をいたしましたが、陳述書の中に盛り込むのが適切かどうかという点については意見が分かれましたので、この点については口頭で申し入れるということにさせていただいたということをつけ加えさせていただきます。
  105. 秋葉忠利

    秋葉委員 口頭というのも結構なのですが、できたらこの際やはり外務省の誠意を示すために、誠意を示すためというとちょっとおこがましいのですけれども、やはり人のことを頭が悪いなんて言った後はそのくらいのことはやってもいいのじゃないかと思うのでお願いしているのです。  書面できちんと国際司法裁判所に、外務大臣のお名前でそういうことを言っていただければ一番いいと思うのですけれども、広島、長崎市長のリクエストであるということを言っていただいても構わないと思いますし、ぜひ文書でも申し入れをしていただくわけにはいかないものでしょうか。
  106. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 せっかくの秋葉先生のお申し出でございますので、その方式等については検討させていただきたいと思いますが、検討をさせていただきます。
  107. 秋葉忠利

    秋葉委員 大変ありがとうございます。  別の問題に移りたいと思うのですけれども先ほどもここで取り上げられました日本安全保障理事会の常任理事国入りについてなのです。  今までの議論の仕方を見ていますと、どうもこれを公開の、ある程度組織化されたといいますか系統化された国民的な議論を起こして、その上で考え方を集約して日本の意思統一をするといったようなプロセスが明確な形で行われていないような気がいたします。  あちこちで、関心のあるところで火がぽっとついて消えて、こっちでもまたぽっと火がついて消えるというような形で散発的に、それから時間的にも、議論がある時点で沸き起こったり、また消えて起こったりというような形で行われているような気がするのですけれども、どのようなプロセスでこの常任理事国入り、この問題について検討することが望ましいというふうに外務省ではお考えになっているのか、もしお考えがあれば教えていただきたいと思います。
  108. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この問題につきましては広く国民理解をいただくということが大変重要であるというふうに私ども考えております。  これまでやってまいりましたことは、例えばマスコミの方々でございますとかあるいは政治、政界でございましたら各党の勉強会等におきましていろいろ御説明をするというようなこともやってまいりましたし、また国会におきましても、本会議あるいはいろいろな委員会におきましてこれまでも御質問がございまして、それに対してお答えをしてまいった次第でございます。  これからも広くいろいろな場におきまして安保理の改組問題、そしてこれに対する我が国考え方というものについて意見を交換し、御理解を得ていきたいと思っております。
  109. 秋葉忠利

    秋葉委員 今のお答えですと非常に受け身の形で外務省が動いているというような感じなのですけれども、どうも外から見ているとそうは見えない。外務省が方針をがっちりと固めて、そしてそれに役立つようなところでいろいろと、先走ったというのは言い過ぎかもしれませんけれども、非常に積極的に発言をしているというふうに思います。  そこで伺いたいのですけれども、そういうことをやっているわけですから、常任理事国入りをして日本は一体何をやろうとしているのか、そして常任理事国入りをすることによってある程度の力を、今日本が持っていない力を持つわけですからその力によって世界をどんな方向に引っ張ろうとしているのか、そういった青写真といいますかその辺のところは十分に描き切れているのでしょうか、そこを伺いたいと思います。
  110. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 安全保障理事会はやはり国際連合における中心になる機関でございますし、世界の安全の問題についての議論が行われることはもう秋葉先生御承知のとおりでございます。  現在北朝鮮核疑惑についても安保理の議論というのが行われ、また今後とも行われるであろうと思いますが、残念ながら我が国安全保障理事会のメンバーでございませんので、そうした点についての発言の機会を持っていない。しかしながら、そこで決まったことは国連のメンバー国としてそれに従う責任があるということでございます。  もちろん我が国の場合、憲法の範囲内ででき得る限りということでございますが、そうであればやはりそこで発言をして、例えば安保理のメンバー国がPKO活動について行き過ぎた、または準備不足のままで参加をしようとしているときに、それを引きとめる慎重な発言をすることもできると思っておりますし、また、安全保障の問題が武力または軍事力による抑止ということに偏りがちな議論に対して予防外交とかその他の面で発言をしていくことも可能だと思っておりますので、日本独自の役割というのは果たせると考えております。
  111. 秋葉忠利

    秋葉委員 今のお答えですと非常に消極的な役割を果たそうとしているようにしか見えない。これは一方に、積極平和外交というような言葉が私は今ちょっと頭に浮かんだのですけれども、それに対峙して消極現状追認外交といいますかそういうような形にしかとれないような気がするのです。  日本が仮に国連でもっと大きな役割を果たそうということであればより積極的な、世界をリードしていくような方向にもっともっと積極的に日本の提案を投げかけていく必要があるのじゃないでしょうか。そういったことを前に柿澤さんおっしゃっていましたから、そういったお答え期待していたわけです。  例えば、先ほど核兵器の使用が国際法違反かどうかという問題についても、日本態度は、実定法を見るとこれは国際法違反とは言えない、それが政府態度だというふうにおっしゃいました。だけれども、それはあくまでも非常に消極的な受け身の態度であって、日本国民考え方、思いからいえば、仮に外務省の解釈が正しいとして、それだったら日本が先頭に立って国際法をつくりましょう、条約をつくりましょう、それで国際法違反だということを明確にしましょうという提案をして、それを実行するのが日本の積極平和外交一つの目的になるべきじゃないのでしょうか。例えばそれが一つです。  あるいは核実験禁止についても全く同じです。先ほどお答えがありましたけれども中国核実験をやった、それについてどうしようか、やった後で今度日本対応する。あくまでも受け身、あくまでも消極的。だけれども、それに対してでも包括的な核実験禁止条約というのを日本が先頭に立ってまとめるための努力をしてもいいじゃないですか。汗を流すということをもっとしてもいいと思う。  それをやるには別に安全保障理事会の常任理事国になる必要はなくて、カーターさん一人でもできるのですから、柿澤さんの方がもっとすぐれていると僕は思うし、行動力もあると思いますよ。日本の力を背景にしてそういったことはどんどんできるじゃないですか。  そういった積極平和外交というのを本当にやる気がおありになるのかどうか。具体的な例、一つでもいいですから挙げていただきたい。
  112. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 先ほど秋葉先生は安保理においてどのような役割を果たすかというお話でございましたから、安全保障理事会の機能の範囲内でどのようなことができるかということで予防外交、むしろ予防外交に徹するべしという点も、これは私は受け身の話ではなくて平和をつくり出す、ピースメーキングという意味で積極的な活動だと思っております。  それから、今の核兵器の問題や軍縮の問題につきましては、これは安保理の直接の機能ではございませんが国連軍縮会議等で日本は主導的な役割を果たしておりますし、それからUNHCRでは緒方貞子さんが高等弁務官として難民問題の解決 の先頭に立っておりますし、国連の一機関でWHOでは中嶋さんがやっていらっしゃる。そういう点では日本は環境会議でも主導的な役割をこれからも果たそうと思っておりますし、国連組織の全体としては今おっしゃったようにいろいろなことができるわけでございます。  しかし、だからといって安保理に参加しなくてもいいということではない。やはり世界の安全、平和を守るという点で安保理の果たしている役割考えますと、そこできちっとした発言の機会を得るということも大事なことだと思いますし、その中でも今の常任理事国が全部核保有国であることを考えますと、非核三原則を掲げる日本として、それに対してまた新たな視点からの安全保障理事会のメンバーとしての役割が果たせるのではないかと思っております。
  113. 秋葉忠利

    秋葉委員 そうはおっしゃっても現実の動きというのはそれとは正反対のベクトルを示しているような気がいたします。  アメリカの上院の決議ですけれども日本が安保理の常任理事国になるについては国内法上の制約を撤廃して、国連のPKO軍事活動に参加できるようにならなくてはだめだということを決めている。ですから、今逆の影響力を行使できるというふうにおっしゃいましたけれども、実はそういう制限がついている。  それでもなおかつ常任理事国になりたいということは、外務省日本国憲法を改定して、それで自衛隊がフル装備で海外に出て軍事活動に参加できるような方向を考えているのか。そういう改憲ということまで視野に入れた安保理入りを目指しているのかどうか、ここで確認しておきたいと思います。
  114. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 安保理入りのために憲法を改正するとか、それを視野に入れて安全保障理事会常任理事国入りを目指しているということは全くございません。その点については国連事務総長ブトロス・ブトロス・ガリが日本へいらっしゃったときに細川総理にも明言をいたしているわけでございますし、各国も我が国の独自の活動で常任理事国としての活動ができるというのが大方の意見でございます。  アメリカ政府もそうした考えでございますが、先生引用されました上院の決議というのは、上院の意図表明、センス・オブ・セネツトというものでございまして、その中でそうしたことが言われておりますが、しかし、これはアメリカの行政府の意思を左右するものではないというふうに私ども理解をいたしております。
  115. 秋葉忠利

    秋葉委員 日本が世界的にもっと積極的に平和外交を推し進めるべきだという主張をいろいろな面からしているつもりですけれども、今おっしゃった安全保障ということは確かに非常に大きな問題だと思いますが、ごく基本的なところでいわば平和外交というものを日本がやる気があるのかどうか、それさえ疑わしいようなことが幾つかあるわけです。  そういうのを合わせるとやはりどうしても軍事的な貢献というところが外務省の頭の中に非常に強くある。あるいは外務省になくてもアメリカの頭の中に非常に強くあって、それが反映されているだけかもしれませんが、そういう面があるという感じが否めないところがあります。  例えば、非常に小さな例として伺いたいのですけれども日本国憲法の各国語訳、英語が世界的には一番通用すると思いますから、日本国憲法の英訳を各国の公館で、日本大使館初め領事館その他のところで常備しているのでしょうか。そして、その各国の人たちに積極的に日本国憲法の中の平和主義というものをPRする努力をどの程度されているのか、その点について伺いたいと思います。
  116. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 広報の問題でございまして必ずしも私の所掌ではございませんけれども、在外公館に勤務した経験もございますので、その経験に基づきましてお答えさせていただきますと、私の記憶では、いろいろなファクトシートあるいはパンフレットあるいは日本紹介の書物等の中で各国語に翻訳して、これを広く知らせるようにしていると存じます。
  117. 秋葉忠利

    秋葉委員 全然やっていないというふうには言いませんけれども、しかしながら、私も長い間アメリカに住んでおりましたので私の経験を言わせていただきますと、日本に帰ってきてからも外務省に何度もこの点についてはお願いをしてけられた経験があります。外国に行くときに、外国の友人たち日本国憲法のお土産を持っていこうと思って、外務省に英訳があるのかということを聞いたことが何度かございます。  最初のとき、これは一九九〇年だと思いますが、そのときには約五十部いただきました。それから、次の年に外国に行くときには、あれが非常に役立ったからということでリクエストをしたのですけれども、いや実はあれは外務省でつくっているものではなくて、たまたま国連協会かどこか、そういったいわばNGOの一つがつくっていたものを外務省が保管していたのであって、だから外務省にはその備えはございませんというのが答えでした。それから、つくる気はあるのですかということも聞きましたけれども、いやこれからつくる気はないというのがお答えでありました。  それから、もう一つ例を申し上げますと、恐らくこれは土井衆議院議長も同じ経験をされたのだと思いますけれども、土井さんは自分の名前が入った日本国憲法の英訳というのを自分で印刷して、外国に行くときにはそれを自分で持っていっている。  私の経験では、残念ながら在外公館で日本国憲法の英訳を簡単に手に入れることはできませんでした。ただ見せてもらうことはできる。しかしながら、例えば学校で使いたいから何か小さなパンフレットがあったら下さいというようなことを言っても、それは存在しないというのが答えです。  やはり積極平和外交というのはいろいろなやり方があると思いますけれども、事によったら外務省日本国憲法というのは恥ずかしいと思っているのかなという気さえしてしまう。世界に誇れる憲法だというふうに私は思いますし、憲法の遵守義務というのは外務省といえども持っているわけですよね。  まずその点から伺いたいと思うのですが、外務省も当然憲法の遵守義務を負わされていると思いますけれども、その点いかがでしょう。
  118. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 国家公務員として当然だと思います。
  119. 秋葉忠利

    秋葉委員 ありがとうございました。  ですから、やはり最低限の義務としてもっと広報に力を入れていただきたいと思います。  それからもう一つ。被爆の実相について、例えば広島、長崎の原爆被害のさまざまな資料がございます。そういったものについても在外公館にはほとんど資料を取りそろえていないというのが、少なくとも私の知っている限りの在外公館の現状です。その点についても検討をしてくださる余地というのはあるのでしょうか。
  120. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 来年は広島、長崎の被爆五十年ということでもございますので、そうした機会に今秋葉先生の御提言のようなことができれば考えてみたいと思います。
  121. 秋葉忠利

    秋葉委員 それで、実はもう一つその点に関連して申し上げたいのですけれども、少なくともこれまでのところでは、別に外務省が積極平和外交をやるとまだおっしゃっていないわけですから、押しつけがましくて申しわけございませんが、ぜひ積極的な外交をやっていただきたい。その点については御賛成いただけると思うのですが、その積極平和外交の一環として、例えばもっと日本の固有の経験を世界にアピールする。  それも国際司法裁判所のリクエストに従って、国際法違反かどうかというどの国でも答えられるようなことについて日本が改めて答えるのではなくて、日本だけしか提供できない貴重なデータとか考え方というものがあるわけでしょう。  例えば被爆の具体的な実相のデータ、環境に及ぼす影響だとか人間の健康に及ぼす影響、人的被害、社会的被害、そういったものを権威を持って 世界にデータとして提供できるのは日本しかないわけですから、例えば国際司法裁判所に対する陳述書の中でそのことについて触れて、国際法の判断は国際司法裁判所に任せると、それは百歩譲って言っていいかもしれない。しかし、それ以上に大事なことは、そういった事実を具体的に提供して国際的な議論の基礎にすることだったのじゃないかという気がいたします。  そういったところから日本外交はこれから根本的に態度を改めて考え直さなくてはいけないのじゃないか、そういう気がするのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  122. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 過去において米ソ冷戦構造の中で米ソ両国が大量の核兵器を保有し、大量報復が抑止力になっていた、そういう世界の中で我々は生きてきたわけでございまして、その意味でも、核兵器に対する日本の民族としての理想である核廃絶という主張がなかなか世界の現実の中で聞き届けられなかったということは大変残念だったと思います。  しかし、現在そうした冷戦構造も終えんいたしました。まだまだ大量の核兵器が存在をいたしておりますので、理想にはほど遠い状態でございますが、これからは一層我が国の理想を実現すべく努力する一つの転機に来ているというふうに私も理解をいたしておりますので、そうした面で努力をしていきたいと思っております。
  123. 秋葉忠利

    秋葉委員 大変前向きなお答えをいただいたところで私の質問時間が終了いたしましたので、ぜひその方向で頑張っていただきたいと思いますし、私たちも微力ながらその方向で一生懸命応援させていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  124. 菅直人

  125. 東中光雄

    東中委員 アメリカの戦略偵察機SR71が嘉手納へ再配備されるのじゃないかということが今沖縄の地元紙で報道されたりしております。六月十四日の新聞によりますと、「〝黒いスパイ機〟と言われた米軍戦略偵察機SR71の嘉手納基地への再配備の動きが出てきた。」という書き出しで、  国防総省筋によると、北朝鮮核開発問題の緊迫に伴い、同国の軍隊の動向や核関連施設などについて、偵察衛星では得難い詳細な情報を把握する必要性が高まったため、SR71の実戦配備を検討。復帰予定のSR71機は三機で、カリフォルニア州の基地から、北朝鮮上空を飛行した後、嘉手納基地まで五時間の偵察飛行を定期的に実施するもよう。嘉手納基地を拠点に、朝鮮半島への監視、けん制が強まることになる。 こういう報道がなされておるのですが、アメリカ側からそういう動きがあるのですか。
  126. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 ただいま先生御指摘になりました報道は私も承知をいたしておりますが、アメリカの偵察機SR71が沖縄に配備になるということは私ども時点においても承知をいたしておりません。
  127. 東中光雄

    東中委員 再配備になることは承知していないが、では、もし今言ったようなことがそういう方向で進んでくれば外務大臣、どうですか。そうするならそれでもいいということになるのですか。外務大臣として再配備を認めるべきではない、私はそう思っているのですが、どうでしょうか。
  128. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 私自身その点については確認をいたしておりませんし、今御指摘のものがどのような性格のものであるかという点についても確認をいたしておりませんので、答弁は差し控えさせていただきますが、北米局長から補足的に答えさせていただきます。
  129. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 先ほど申し上げましたように現時点におきましてSR71の配備があるというふうに私ども承知いたしておりませんけれども、いずれにいたしましても、米軍が我が国におきますところの偵察機能の強化ということを検討いたしておりましても、そのことが特に安保条約上問題であるというふうには私ども認識をいたしておりません。
  130. 東中光雄

    東中委員 七一年の沖縄国会のときもこのSR71についてはいろいろ論議がありました。私も直接その委員会にもおりましたが、高性能のスパイ機と言われるSR71偵察機も駐留を認めるべきではない、外国へ行って、そして中国の領空を侵犯しているとか北朝鮮への領空侵犯等があるということが言われている、そういうSR71についてどうするかということに対して当時の福田外務大臣は、沖縄協定が発効した後にはSR航空機が他国の領空を侵犯するようなことは絶対にさせないようにしたいと考えているという答弁をしています。これは本会議答弁です。  それから委員会では、アメリカはSR71が他国の領空を侵犯しているとは言っていないし、中国からも抗議も来ていないようである。ただ五回ばかり北朝鮮から抗議があったと聞いている。しかし、沖縄は我が国の領土となり、そこに駐留するSR71が国際法の原則に反して他国の領空を侵犯するようなことは我が国としては絶対に許しがたいことであるのでそういうことはしないように処置する、こういう答弁をしているのです。  今こういうことが現実に報道されている。実際にそうやっているかどうかはわかりませんけれども、もしそういうことになれば外務大臣が七一年の国会で表明した姿勢柿澤外務大臣もちゃんととられるべきだと思うのですが、どうでしょうか。
  131. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 先生御指摘の点でございますけれども、いずれにいたしましても、SR71というのは、私どもの承知しておりますところによれば、八九年十二月に全機米空軍から退役をしておる、こういうことでございまして、その沖縄配備というような仮定の問題につきまして立ち入ってお答えをすることは適当ではないのじゃないかと思いますので、先ほど申し上げましたように、一般論として、米軍が我が国におきますところの偵察機能の強化ということを検討しているということがあるといたしましても安保条約上問題があるというふうには考えられないということを申し上げさせていただきたいと思います。
  132. 東中光雄

    東中委員 退役しているからこそ復活が問題になっているのですよ。そういうことなので、退役しとらぬのだったら復活の問題はないわけですから。そういうことが現実に報道されているから、もし復活されるというようなことが、あればですよ、沖縄国会における福田外相のそういう姿勢は、それはどうでしょう。ないのだっならないでいいです。あるのだったらこの福田外務大臣の発言は変えるのですか。そういうことになりますか。
  133. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたように、今般の措置がどのような性格のものであるかということを私も承知をいたしておりませんので、それに対してイエス・オア・ノーでお答えすることはできませんが、今福田外務大臣の答弁をちょっと読ませてもらいましたけれども、他国の領空侵犯をするようなことは許されないということを申しているようでございまして、そういうことは我が国としても認められない、その考え方は変わっていないということでございます。
  134. 東中光雄

    東中委員 当時は福田外務大臣も五回ほど北鮮から抗議が来ているということがあるということを言っているわけですね。今問題になっているのも北朝鮮へ行くのじゃないかということが問題になっているので、もしそれが復活するのだったらこういうことは許されないという立場、それは変わりはないというふうにお聞きしていいですね。復活する可能性があるかどうかは別として。
  135. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 国際法上から見てもそれはそのとおりだと思います。
  136. 東中光雄

    東中委員 次の問題に移りたいと思います。  最近、米軍あるいは米軍関係者が自衛隊の基地を調査するというのが、この間の参議院の予算委員会でも、四回あったということが認められております。それから福岡市港湾局に対して博多港の状況調査に来る、これは米軍海軍関係者、米空軍というのが基地調査に来た。  日本の自衛隊基地なり港湾なりに対して米軍が調査に来るというやり方、これは北朝鮮にかかわる緊迫した状況との関係調査に入っているとい うふうに思えるのですが、そういう調査をやる米軍が日本の基地なり港湾なり調査をするというのは安保条約上の何か権限があるのですか、地位協定上の権限はありますか。
  137. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 アメリカの海軍関係者が博多港を訪問したということは私どもも承知しておりますが、これは、アメリカの海軍は随時世界の各地の主要港湾の情報収集を行っておるというふうに承知をいたしておりまして、今回の博多港の訪問というのもこのような情報収集の一環として行われたものというふうに承知をいたしております。そういう一般的情報収集を関係当局の自発的な協力を得て行うということについては安保条約上何ら問題はないというふうに考えます。  なお、先生から御言及がございましたけれども、ただいま申し上げましたように今回の訪問というのはいわば通常業務の一環として行われたものでございまして、特に現下の朝鮮半島情勢への対応といったようなことを念頭に置いて行われたものではないというふうに承知をいたしております。
  138. 東中光雄

    東中委員 在福岡アメリカ領事館総務部から福岡市港湾局港営課に出された文書によりますと、「米国海軍関係者がおよそ要望している貴港に関する情報は以下の通りです。」今お持ちになっているように。  そこで、港湾施設の現況、博多港出入港の船籍、それから出入港の貨物船の種類、それから港湾統計、貨物船の数等、あるいは将来の港湾開発計画等、四月九日から二十三日までの間の外国船の出入港スケジュール、四月十日から二十三日まで滞在する、そういう趣旨のことが書いてあります。  しかも米国海軍関係者というのですね。来た人はだれなのかわからぬそうです。聞いても名前は、言うたけれどもわからない。問い合わせたら、それに対しては個々人の名前を発表する慣例はないとか、その階級等はさまざまだとかいうふうな、これはプレス関係での回答ですが、そういう格好になっているのです。  極めて具体的な博多港というところ、それでそういう詳細な調査をやっている。しかも名前も何も明らかにしないという状態になっているのですが、米軍のあるいは米海軍関係者ということで、わかったようなわからないようなことですが、日本はそういう調査対象になっている。一体どういうことなのだろう。これは安保条約によって、地位協定でやるわけじゃないでしょう、こんなものは。どういうふうに、大いにやってくださいということになるのですか。
  139. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 繰り返しになりますが、先ほど申し上げましたように、今回行われました訪問というのは、世界に広く展開いたしますアメリカの海軍としていろいろな主要港湾についての情報を収集しておくという趣旨で行われたということでございまして、私はアメリカの海軍としてその種の関心を持つということは自然なことではないかというふうに思います。  なお、安保条約あるいは地位協定上こういうことが許されるかというお話でございますが、安保条約ないし地位協定というのはこういうことが許されるという立て方でつくられているものではございませんで、先ほど申し上げましたように、港湾当局の自発的な協力を得てこういう一般的な情報収集をするということは安保条約あるいは地位協定上何ら排除されているものではないというふうに考えております。
  140. 東中光雄

    東中委員 もう時間ですからやめますが、太平洋全地域でやっているみたいなことを言われましたが、では日本では博多港以外にもこういうことをやっているのがあるのですか。つかんでおられる範囲のことをお聞きしたい。
  141. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 存じておりません。
  142. 東中光雄

    東中委員 太平洋全域でやっておってそれは当たり前だ、しかし日本はどれだけやられているのかわからない、これは非常に無責任だと私は思いますね。終わります。
  143. 菅直人

  144. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 私はまず外務大臣にお伺いしたいのですが、この前、八日の当委員会におきまして、核兵器使用に関する陳述書の中の核兵器使用は国際法上違法とは言えないという政府見解について、私は違法ではないかということを質問いたしました。たしか秋葉委員も同じような趣旨の質問をしたと思うのですけれども政府はその際、外務大臣はそういった御意向も踏まえて考えるということは言ったものの、違法とは言えないという政府見解を削除することには全然触れなかった。しかも、むしろちゅうちょし、それについては正当性があるかのような御答弁がありました。  しかし、わずか数時間の間にいとも簡単に、予算委員会で追及されて日本政府の方針がひっくり返っちゃったということなのですね。これは一体どういうことですか。しかも我々には、この外務委員会には何にもその件をあなた自身が説明もしない。まことに我々を軽視しておると言わざるを得ない。私はここで厳しくこの姿勢を追及したいと思うのです。
  145. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 外務委員会におきましていろいろな御意見を承ったことは事実でございますし、それに対しまして外務省として検討してみたいということも申し上げたつもりでございます。  その後予算委員会でも同じような御意見が出まして、そのほか広島市長、長崎市長等おいでになって、各界の御意見の中で、これは外務省の意図に反して、その実定法上違法とは言えないという部分だけが取り上げられて誤解を招いているという事実がますます広がってまいりましたので、そうした状況対応するために、その段階で予算委員会もストップいたしましたので、その間政府部内で協議をさせていただいて、その点を削除をさせていただくことにしたわけでございます。そのときに私は予算委員会では、外務委員会での御意見も踏まえということを申し上げさせていただきました。  その後、修正の趣旨等について原田先生、秋葉先生等御指摘をいただいた先生方に御報告をいたさなかった点は不行き届きがあったかもしれません。その点はおわびを申し上げますが、その点外務委員会での御意見等も踏まえて対処させていただいたということはぜひとも御理解を賜りたいと思います。
  146. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 外務委員会のときは削除する意思は毛頭なかったのですよ、どうも答弁からいって。私は、あのときは大臣が出席の時間がないということで、二十五分しか自民党としてとれなかった。そしてその二十五分の間で審議に御協力申し上げたのです。だから、もっと議論はしたがったけれども、中途半端ではあったけれども、我々の意向を伝えて善処しろという要望をしたのです。にもかかわらず、予算委員会だったらその日のうちですよ、いとも簡単に方針を転換するということがあっていいのですか。外交方針というのはくるくる変わるのですか。おかしいじゃないですか。
  147. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 先ほど来、秋葉先生への答弁でも申し上げさせていただいたわけでございますが、今も申し上げましたとおり、そうした表現が挿入されることによって誤解を招くことは日本政府としての本意ではないということで表現の修正等も検討いたしましたが、最終的に削除することになったわけでございまして、その点では実定法上、実定国際法上違法とは言えないという点についての判断は留保しているわけでございまして、考え方をくるくる変えたということではなく、むしろ国際司法裁判所への発言の力点を国際法の基盤である人道主義、その人道主義に反する核兵器の廃絶に向けて我が国としては今後ともさまざまな努力をするという点に置いた形にさせていただいたわけでございます。
  148. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 そうすると外務省はまだ判断は変わっていない、外務省は国際法上違法とは言えないということで終始しよう、こういうことですか。
  149. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 これは外務省の判断としては、国際社会における実定国際法上の判断また国内における国際法学者のさまざまな意見等を慎重に勘 案いたしまして、違法と断定することは必ずしもできないという点は先生のおっしゃるとおりでございます。  ただ、それは人道主義に反するということから、今後廃絶に向けて具体的にそれを実現していくことが大事だということを主張した陳述書になっているということでございます。
  150. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 全然納得できません。おかしいじゃないですか。だから、あなたの方の次官だかだれか外務省首脳が頭が悪いなんていう話をしたということにつながるのですね。それをまたさっき同僚の秋葉委員質問で取り消したという話じゃないですか。そうでしょう。一体どうなっておるのですか。
  151. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 ですから、今申しましたように法解釈と政策論、そこのところが混同していろいろと誤解を招いたという点を釈明をし説明をする過程でそのような発言がありました。この点については不適切であったということで取り消すよう指示をいたすということをお約束をしたわけでございます。
  152. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 今のお話ですが私も資料を調べたのですよ。今ここで法律論を延々とやる時間はないから指摘しておきますが、国際法学者の安井さんはこれは全く国際法上、実定法上違法だ、こういう見解ですよ、それから横田さんも、実定法上必ずしも違法だとは言えない、しかし核兵器というのは限定的に戦術兵器として、戦場で戦闘目的としてのみ限定して使われることはあるのだから必ずしも違法とは言えないけれども、無差別に使うのならこれは当然問題だろう、こういう見解ですよ。それから、「核兵器と国際法にかんする世界法廷プロジェクト」、ニコラス・グリフというエクセター大学の講師、世界法廷プロジェクト発足記念セミナー、一九九二年、ジュネーブで行われましたが、これに提出された法的覚書、これは各国の学者から出しているのですが、これも実定法上違法である、そういうことになっていますよ。  外務省の実定法上違法であるとは言えないというのは、全面的に使用したらそれは確かに横田さんの言う見解はあるのだけれども、しかし実定法上も違法であるという見解がたくさんありますので、その辺をよく踏まえて考え直してもらわないといけないのじゃないかと思います。いかがでしょう。
  153. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 今後人道主義に反するという点に力点を置いて行動をしていきたい、日本政府として政策をとっていきたい、こう思っておりますが、実定法の問題については博覧強記の丹波局長がいらっしゃいますから、数多く例を述べさせていただきます。
  154. 丹波實

    ○丹波政府委員 私たちも国際法学者の間で学説がいろいろあるということはずっと申し上げてきている次第でございまして、先生今横田先生を引用になられましたけれども、もう一人の日本の国際法の中での大御所でございます高野雄一先生も、「使用の方法、態様によって交戦法規上違法となるというべきだが、一般に核兵器使用が当然に違法とはいえない。そこに核兵器禁止の努力と運動の意義があり、その重要性があるというべきであろう。」こういうことをおっしゃっておられて、先生が引用されたそれは違法だと言う学者もおられますけれども、横田さんを含め高野さん、このような先生もおられることも事実です。  一言つけ加えさせていただきたいと思いますけれども、今のような政府考え方は自民党政府のときの政府の答弁書でも基本的に同じことが述べられ、細川内閣における政府の答弁書でも同じ考え方が表明されておる次第でございます。
  155. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 自民党政府のときにそういう答弁書があったというのは我々知らないからね、教えてもらわなければわからないよ。冗談じゃないですよ。ベールに包まれておったのが今やっと明らかにされたので御意見を申し上げているわけで、ともかくこの点については削除したということであるけれども外務省は依然として実定法上の見解については変わっていないということですか、本当に。大臣
  156. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 直ちに違法とは断定できないというところでございます。
  157. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 いや、直ちに違法だと言う学者もたくさんいるのですよ。一回国際法学者を、日本の学者とか外国の学者を集めてこの点をしっかり討論したらどうですか。調査してください。
  158. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 私どもとしてもそうした情報等を集めてみたいと思っています。
  159. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 それから、外務委員会軽視だと私は申し上げなくてはならないけれども外務大臣、ひとつ、少なくともここで答弁したことを大きく変更するときは我々に真っ先に報告するくらいのことはやってしかるべきではないかと思う。あなたから電話をかけるくらいはやったっていいのじゃないですか。どうしてやられないのですか。これからはちゃんとやってもらうことを約束してもらえますか。
  160. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 ずっと予算委員会に拘束をされておりましたのでできませんでしたが、時間を見つけて努力をいたします。
  161. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 それではこの問題については、これからその点を必ずやるということであれば次に進ませていただきます。  北朝鮮核兵器開発問題ですが、これについて御承知のようにカーターさんの北朝鮮訪問ということで大きく舞台が回ってきたと思うのですけれども、この辺の経緯についていろいろ見方があります。時間を稼ぐだけだろうという非常に厳しい見方もあるやに思いますし、一体どういうように認識しておられるのか。またカーター報告は外務省はしっかりと把握しておられるのかどうか、御説明ください。
  162. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 カーター大統領訪朝につきましては二年ほど前から計画をされていたということだそうでございますが、この機会に訪朝が実現をいたしまして、その中で北朝鮮側から、今後もIAEAの現在ある査察は継続するということを約束され、また核開発計画については他の手段がとられるなら凍結をするということが言われ、そして米朝第三回の会談可能性が出てきたということ、そして南北の朝鮮の首脳会談が実現の方向へ向かって進んできたという点については望ましいことだということで歓迎をいたしております。  ただ、今後NPT条約への全面的な復帰その他北朝鮮核開発疑惑を晴らすためには幾つかの問題がなお残されておりまして、そういう点について北朝鮮側カーター大統領約束をされた点、そしてその約束をされた精神をもとに誠意ある対応をしていただいて、この問題の話し合いの解決のきっかけになるということを期待をいたしているわけでございます。
  163. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 アメリカ政府はきょうの新聞によると何か確認の書簡を出したということでございますが、それはどういうことでしょうか。
  164. 川島裕

    川島政府委員 お答え申し上げます。  北朝鮮核開発凍結の用意ありというカーター大統領が持ち帰った感触を踏まえまして、この点をもう一度外交チャンネルで直接きちんと確認しようというのが米国政府の方針でございます。  具体的に確認を要すると米国が考えている事項といたしましては、五メガワット実験炉へ燃料棒を再び装てんするということを行わないこと、これが一つ。それからもう一つ、使用済み燃料棒の再処理を行わないこと。それから三番目にIAEAによる保障措置の継続性の維持。  この三つについてきちんと北朝鮮がやる用意があるのかというのを第三回米朝協議の開催の前にまず確認する必要がある。これが米側の立場でございますし、それに沿って……(原田(昇)委員「今の三つもう一回言ってください」と呼ぶ)五メガワット実験炉への燃料棒の再装荷を行わない。それから使用済み燃料棒、抜き取ったものですね、これの再処理を行わない、つまりプルトニウム抽出をやらない。三番目はIAEAによる保障措置の継続性の維持。これは具体的には現場にIAEAの担当官がおりますし、それから監視装置のカメラとかいろいろなものがきちんと動くように確保 すること。この三点でございます。
  165. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 そうするとこの三点を確認した文書かなんかが来ないと米朝会談は開かれない、こういうことですか。
  166. 川島裕

    川島政府委員 そういうことだと理解しております。
  167. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 それで伺いたいのは、米朝会談カーター会談がこうだったなという確認をしたら開くということですが、私は一つ心配なのは、キャッピングという言葉を使っているのかな、つまり過去は問わない。今北朝鮮が恐らくプルトニウムを相当量抽出した、人によっては一個分か二個分くらいは抽出しておるのではないかと言われておりますが、それはもう問わない。  これからもう開発しないという意思をはっきりしたのだからいいではないか、こういうことになりかねないと思いますね。その辺はどういうように考えていいのですか。
  168. 林暘

    ○林(暘)政府委員 ただいまアジア局長から御説明申し上げましたとおり、アメリカが設定しております条件というのは米朝会談を開くための条件でございまして、米朝会談の中でどういうことを話し合われるかということとは別の問題であろうと承知しております。特別査察によります未申告の施設の査察等については米朝会談の中で話し合われるものと我々としては理解をいたしております。  先生御案内のとおり、従来五メガワットの実験炉の燃料棒の測定という手段が残されておりましたけれども、現在、過去のものを問う手段としては未申告施設二施設の特別査察、その他施設についての情報公開等しか残されておりませんので、それを前提条件にいたしますと米朝会談が開かれないということになる結果こういうことになっているのだろうというふうに理解をいたしております。
  169. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 そこで伺いたいのですが、過去のことは問わないということになっていますから、米朝会談がこれで仮に開かれるということになった場合、日本政府は、外務大臣あなたはどういう考えですか。  そもそも米当局は、しばらく前は、一、二発の核兵器を開発する分くらいのプルトニウムはあるだろうと見て、これで核拡散防止条約違反だということで過去にさかのぼって核廃棄させようという態度交渉しておったわけでしょう、今まで。それが急遽再開する条件の中から落ちてしまった。  日本政府は一体それでいいのですか。あそこに核爆弾があるかもしらぬ、それを全然検証もしない、破棄もさせない、それでまあ一、二発はいいや、未来に向けて凍結さえすればいいのだ、こういうことでいいのですか。あなたの考えを聞かせてください。
  170. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 北朝鮮核兵器を持っているという確証はございませんが、プルトニウムがある程度の量が秘匿されている懸念がある、おそれがあるということはIAEAも認めているわけでございますので、その点についてもきちっと疑惑を解消していただくということが日本安全保障にとっては大事な点だと思っております。  アメリカ政府考え方まだその点で正式に聞いたわけではありませんけれども、情報として聞いているところでは、今申しましたように、当面米朝会談再開する条件としては従来の運転歴についての査察は要求しない、しかしながら第三回米朝会談の中で特別査察を含む査察の完全実施、そしてNPT体制への完全復帰ということを求めていくということのようでございますので、我が国としては、また政府としてはそうした形できちっと従来の分も含めて核疑惑が解消される、そのためにアメリカとしても米朝会談に臨んでいただくようこれは折を見て先方にも申しておりますし、今後ともその点は原田先生の御懸念に対応できるように努力をしてまいりたいと思っております。
  171. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 第一、日本総理大臣がどこかで、北朝鮮は核持っていませんよ、こういうことを言っておるじゃないですか。日本政府はそういう考えでこれに臨んでおるのか、こう思わざるを得ない。どうですか。
  172. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 その点につきましては羽田総理御自身が予算委員会で釈明をいたしましたとおりだと思いますが、金日成主席は北朝鮮としては核を開発するつもりもないし持っていないということを再三にわたっておっしゃっておられるのでそれを期待する、それが真実であるところを期待する。そして、それならばこの際全部査察等を受け入れ、そして対外的に門戸を開くことが北朝鮮の将来を救うことだ、そのために金日成主席が英断を奮ってほしいというようなことをおっしゃった、おっしゃりたかった。ところがその点が、金日成主席がそうおっしゃっているのを真実と信じたいというところが街頭演説でございましたから脱落してしまったということでございます。  真意は、予算委員会で羽田総理御自身が何度もおっしゃっておられますように、北朝鮮核開発疑惑を持たれているということは北東アジアの安全にとって、核不拡散体制にとって深刻な懸念であるということは何度も申し上げているわけでございまして、その街頭演説での舌足らずの発言が海外等にも報道されまして、そして大きな反響を呼んだことは責任を痛感して、その点については申しわけないとおっしゃっておられましたので、私もその羽田総理のお考えは今言ったように北朝鮮が持っていないということを断定したのではないというふうに理解をしておりますし、ぜひ御理解を賜りたいと思います。
  173. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 今の外務大臣がおっしゃったとおりなら問題ないのですが、大事な大事なところを落として言ったんじゃこれは大変なことですよ。一国の総理大臣、我々の総理大臣ですからね。  そのほかもう一つ問題発言は、日本核兵器製造能力があるということを明確に言ったのですね。これも私は、羽田総理、ちょっとぷつつんしちゃったんじゃないかとまでびっくりして聞いたわけです。とにかくこれは与党、野党問わず、我々の国を代表する総理として最も不適切な発言だと思います。話してはいかぬことだ。だから、これはいろいろ言いわけされるでしょうから、もう聞かぬでも結構ですから、とにかくそういうことのないように外務大臣、しっかりと補佐していただき、また総理にも十分ひとつ気をつけていただくようにお願いしておきます。  本当ならこれで、これだけでもあれですよ、審議はとめて、条約の審議なんかやらぬというところへいかなきゃいかぬのですが、私は与党ずれしておるとみんなから怒られておるわけですが、非常に憂慮しておりますのでその点を申し上げておきたいと思います。  もう一つお聞きしたいのは南北首脳会談カーターさんの行ったときの話で出てきた。それできょうの新聞でしたか、「三木夫人に明かす 「南北首脳会談八月十五日に」」これは、八月十五日は日本の終戦記念日と同じように向こうの民族解放記念日だ、だからこのときにやるのだ、こう言ったというのですが、外務省はどういう情報を得ておりますか。
  174. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 三木睦子夫人が北京へ出てこられたときにそうした趣旨の話をされた、御本人ではなかったようですけれども韓国側からもそのことは確認はされておりません。  むしろ、きょう私どもが入手した情報では、二十八日に板門店において韓国朝鮮民主主義人民共和国の副首相級の方が会談をする、それによって首脳会談を準備するということでございますので、まだ日付、場所等については決定していないのではないかと思っております。
  175. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 わかりました。  我々はこういう南北首脳会談はいずれにしても開かれて、平和裏に話し合いが行われるということは歓迎したいと思うのですが、いかがですか。
  176. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 南北首脳会談が開かれましてそれぞれの相互理解を深めるための諸施策が決定される、また南北の非核化共同宣言が実行されるための手段がとられるというようなことになりますれば朝鮮半島における緊張が緩和をし、そして安定が増すわけでございますので、これは隣国とし ての我が国にとっても大変望ましいことだと思っておりますので、ぜひとも成功の方向に向かうことを期待をいたしております。
  177. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 最後大臣にお伺いしておきたいと思います。  さっきのように、さっきのお話で過去は問わないということでアメリカと北鮮の話し合い、米朝会談が進んでいって、最後日本に資金援助してくれということでツケだけ来るというときはどうされますか。我々は、過去のキャッピングの中に入った核爆弾はあるかもしらぬ、その辺が明らかにされないうちは不安ですよ。この点は、それが明らかにされない限りいかなる日本の支出を伴うようなこともしないということを明言してください。
  178. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 基本的には核疑惑が解消し、また現在持っている核施設等が将来閉鎖されるということが明確になるということがそうした協力をするための前提であろうかと思います。  また我が国の場合には、同時に日朝国交正常化の中で、過去の植民地支配時代の住民に与えたいろいろな苦痛をどのような形で、請求権という言葉になっておりますけれども償っていくか、この問題もございますので、その点では日朝国交正常化交渉との関連でもこの問題は考えなければならない問題ではないかと思います。
  179. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 いや、私が言ったのは日朝じゃなくて米朝の話で、日本が中身に不満足なまま小切手は回ってこないでしょうね、それをまさか受け取らないでしょうね、こう言っているのです。
  180. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 今申し上げましたように、原則としてそういうことはあってはならないと思っております。
  181. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 終わります。
  182. 菅直人

    菅委員長 次回は、来る二十四日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時三十一分散会