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1993-10-05 第128回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年十月五日(火曜日)     午前九時一分開議 出席委員   委員長 山口 鶴男君    理事 衛藤征士郎君 理事 越智 通雄君    理事 野中 広務君 理事 深谷 隆司君    理事 中西 績介君 理事 野坂 浩賢君    理事 杉山 憲夫君 理事 草川 昭三君    理事 井出 正一君       伊藤 公介君    石原慎太郎君       江藤 隆美君    小澤  潔君       木村 義雄君    後藤田正晴君       近藤 鉄雄君    志賀  節君       島村 宜伸君    関谷 勝嗣君       高鳥  修君    武部  勤君       東家 嘉幸君    中山 太郎君       松下 忠洋君    松永  光君       村田敬次郎君    村山 達雄君       若林 正俊君    伊東 秀子君       坂上 富男君    鉢呂 吉雄君       細川 律夫君    三野 優美君       青木 宏之君    岩浅 嘉仁君       上田 清司君    江﨑 鐵磨君       大谷 忠雄君    工藤堅太郎君       笹山 登生君    月原 茂皓君       山本 幸三君    石井 啓一君       河上 覃雄君    谷口 隆義君       二見 伸明君    荒井  聰君     五十嵐ふみひこ君    石井 紘基君       鮫島 宗明君    高木 義明君       中野 寛成君    佐々木陸海君       志位 和夫君    松本 善明君       吉井 英勝君  出席国務大臣         内閣総理大臣  細川 護煕君         法 務 大 臣 三ケ月 章君         外 務 大 臣 羽田  孜君         大 蔵 大 臣 藤井 裕久君         文 部 大 臣 赤松 良子君         厚 生 大 臣 大内 啓伍君         農林水産大臣  畑 英次郎君         通商産業大臣  熊谷  弘君         運 輸 大 臣 伊藤  茂君         郵 政 大 臣 神崎 武法君         労 働 大 臣 坂口  力君         建 設 大 臣 五十嵐広三君         自 治 大 臣         国家公安委員会 佐藤 観樹君         委員長         国 務 大 臣 武村 正義君         (内閣官房長官)         国 務 大 臣 石田幸四郎君         (総務庁長官)         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)     上原 康助君         (沖縄開発庁長         官)         (国土庁長官)         国 務 大 臣 中西 啓介君         (防衛庁長官)         国 務 大 臣         (経済企画庁長 久保田真苗君         官)         国 務 大 臣         (科学技術庁長 江田 五月君         官)         国 務 大 臣 広中和歌子君         (環境庁長官)         国 務 大 臣 山花 貞夫君  出席政府委員         内閣官房内閣外         政審議室長         兼内閣総理大臣 谷野作太郎君         官房外政審議室         長         内閣法制局長官 大出 峻郎君         内閣法制局第一 津野  修君         部長         国際平和協力本 鈴木 勝也君         部事務局長         警察庁長官官房 廣瀬  權君         長         総務庁長官官房 池ノ内祐司君         長         総務庁長官官房         審議官     上村 知昭君         兼内閣審議官         総務庁行政管理 八木 俊道君         局長         北海道開発庁総 竹内  透君         務監理官         防衛庁参事官  高島 有終君         防衛庁参事官  萩  次郎君         防衛庁長官官房 宝珠山 昇君         長         防衛庁防衛局長 村田 直昭君         防衛庁教育訓練 上野 治男君         局長         防衛庁人事局長 三井 康有君         防衛施設庁長官 米山 市郎君         防衛施設庁総務 草津 辰夫君         部長         防衛施設庁施設 江間 清二君         部長         防衛施設庁建設 森本 直孝君         部長         防衛施設庁労務 小澤  毅君         部長         経済企画庁調整 小林  惇君         局長         経済企画庁総合 吉川  淳君         計画局長         経済企画庁調査 土志田征一君         局長         科学技術庁研究 石井 敏弘君         開発局長         科学術庁原子  石田 寛人君         力局長         科学技術庁原子 笹谷  勇君         力安全局長         環境庁長官官房 大西 孝夫君         長         国土庁長官官房 藤原 和人君         長         国土庁計画・調 糠谷 真平君         整局長         国土庁大都市圏 荒田  建君         整備局長         国土庁地方振興 秋本 敏文君         局長         法務省刑事局長 濱  邦久君         外務省総合外交 柳井 俊二君         政策局長         外務省アジア局 池田  維君         長         外務省北米局長 佐藤 行雄君         外務省欧亜局長 野村 一成君         外務省経済局長 小倉 和夫君         外務省条約局長 丹波  實君         大蔵省主計局長 篠沢 恭助君         大蔵省主税局長 小川  是君         大蔵省理財局長 石坂 匡身君         大蔵省銀行局長 寺村 信行君         文部大臣官房長 吉田  茂君         文部省初等中等 野崎  弘君         教育局長         厚生大臣官房総 佐々木典夫君         務審議官         厚生省健康政策 寺松  尚君         局長         農林水産大臣官 上野 博史君         房長         農林水産大臣官 福島啓史郎君         房審議官         農林水産省経済 眞鍋 武紀君         局長         農林水産省構造 入澤  肇君         改善局長         農林水産省農蚕 高橋 政行君         園芸局長         農林水産省畜産 東  久雄君         局長         食糧庁長官   鶴岡 俊彦君         林野庁長官   塚本 隆久君         通商産業省通商 坂本 吉弘君         政策局長         通商産業省貿易 中川 勝弘君         局長         通商産業省産業 内藤 正久君         政策局長         中小企業庁長官 長田 英機君         運輸省鉄道局長 秦野  裕君         郵政大臣官房長 木村  強君         労働大臣官房長 征矢 紀臣君         労働省職業安定 七瀬 時雄君         局長         労働省職業能力 松原 東樹君         開発局長         建設大臣官房長 伴   襄君         建設省建設経済 小野 邦久君         局長         建設省道路局長 藤川 寛之君         建設省住宅局長 三井 康壽君         自治大臣官房長 遠藤 安彦君         自治省財政局長 湯浅 利夫君         自治省税務局長 滝   実君  委員外出席者         参  考  人 三重野 康君         (日本銀行総裁)         予算委員会調査 堀口 一郎君         室長     ――――――――――――― 委員の異動 十月五日  辞任         補欠選任   関谷 勝嗣君     木村 義雄君   高鳥  修君     松下 忠洋君   柳沢 伯夫君     武部  勤君   綿貫 民輔君     石原慎太郎君   井上 一成君     三野 優美君   加藤 六月君     岩浅 嘉仁君   志位 和夫君     吉井 英勝君 同日  辞任         補欠選任   石原慎太郎君     綿貫 民輔君   木村 義雄君     関谷 勝嗣君   武部  勤君     柳沢 伯夫君   松下 忠洋君     高鳥  修君   岩浅 嘉仁君     上田 清司君   吉井 英勝君     佐々木陸海君 同日  辞任         補欠選任   上田 清司君     江﨑 鐵磨君 同日  辞任         補欠選任   江﨑 鐵磨君     大谷 忠雄君 同日  辞任         補欠選任   大谷 忠雄君     青木 宏之君 同日  辞任         補欠選任   青木 宏之君     加藤 六月君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  予算実施状況に関する件      ――――◇―――――
  2. 山口鶴男

    山口委員長 これより会議を開きます。  予算実施状況に関する件について調査を進めます。  この際、羽田外務大臣から発言を求められております。外務大臣羽田孜君。
  3. 羽田孜

    羽田国務大臣 お許しをいただきまして、ロシア情勢について御報告申し上げたいと思います。  日本時間の四日二十二時、大統領側最高会議ビルヘの本格的な攻撃を再開いたしましたところ、二十三時ごろから同ビル内から約三百名が投降を開始しました。この時点でルツコイハズブラートフの両名も投降し、大統領側に身柄を拘束された後、逮捕されたということであります。  日本時間の二十二時ごろ、クリコフ非常事態地区司令官は、モスクワ時間で四日の二十三時から翌日五日朝五時まで、日本時間の五日五時から十一時まででありますけれども、外出の禁止令を発出しております。  日本時間の五日の午前二時ごろになりますと、これまで続いておりました銃撃戦もほぼ静まったようであります。しかし、戦闘は一応の終止を見た感が強いわけでありますけれども市内各所議会支持派狙撃兵七十名ほどが残留、潜伏しているという情報もございます。  なお、四日の戦闘における死傷者数につきましては、日本時間五日朝五時のロシアテレビニュースによりますと三百六十九人、うち三十二人死亡とされていますが、これには最高会議ビルをめぐる銃撃戦死傷者は含まれていないため、最終的な数はより大きなものになるであろうということが予測されております。  また、在留邦人死傷者はないということであります。  この関連で、四日の夕方、日本大使館にはロシア政府から緊急の要請がございまして、大使館の医療相談室備えつけの医薬品のうちから鎮痛剤等医薬品モスクワ市内救急病院に寄附、寄贈したということであります。  以上、御報告を申し上げます。
  4. 山口鶴男

    山口委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。深谷隆司君。
  5. 深谷隆司

    深谷委員 ただいま羽田外務大臣から、ロシアにおける混乱状況についての御報告がございました。  私ども新聞ニュースを通じてしか現地の情勢はわからないのでありますが、多くの新聞の報道するところでは、最高会議ビル戦車攻撃をして完全に鎮圧をした、エリツィン大統領が完全に制圧したという形で報道されておりますが、現状はそういう理解でよろしいでしょうか。
  6. 羽田孜

    羽田国務大臣 ただいまも申し上げましたように、私どもはそのように理解いたしておりますけれども、まだ市内には七十名ほどの狙撃兵が潜伏をいたしておるようである、散発的な銃声が聞こえるというようなことも情報として入ってきております。
  7. 深谷隆司

    深谷委員 このロシア混乱状態について、まだ完全に終息したわけではありませんから、総理がどのようなお考えか言明することに難しさはあろうと思いますが、既に官房長官談話を発表しているようでありますから、改めてここでロシア状況についてのお考え、そして対応の仕方について、日本国総理大臣として御発言を願いたいと存じます。
  8. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 今外務大臣から御報告を申し上げたとおりの状況でございますが、まだ詳細につきましては掌握をしていないという部分がかなりございます。  その全貌をつかみませんと一概に申し上げられませんが、とにかくこのように流血事態を招いた、多くの市民がその犠牲として巻き込まれたということは、大変残念なことだと思っております。一刻も早く公共の秩序が回復をされるように願っているところでございます。ロシアにおける改革が、さらに円滑な形で進行していきますように願っているところでございます。
  9. 深谷隆司

    深谷委員 官房長官談話が発表されておりますが、もう一回発言を求めます。
  10. 武村正義

    武村国務大臣 今の総理の答弁とほぼ同じ趣旨でございますが、モスクワ各所における三日以降の流血事態により、双方犠牲者が出たことを極めて残念に思います。  我が国政府としましては、ルツコイハズブラートフ両氏など、反大統領側の挑発によって開始された武力衝突が四日中に一応の決着を見、モ スクワ市内において法と秩序が回復されつつあることを評価をしております。  政府としましては、ロシア政府及び国民が一日も早く今回の悲劇を乗り越え、エリツィン大統領改革を推進する基盤がさらに強化されることにより、ロシア国民の意思を真に反映する民主的な議会が誕生するに至ることを強く希望します。以上、発表させていただきました。
  11. 深谷隆司

    深谷委員 そもそも今回の混乱の発端というのは、反対派が牛耳る議会の活動を、エリツィン大統領大統領の命令によってこれを抑えようとしたところから始まっていると思います。よその国の事柄でございますから、どちらが正しい、どちらが悪いというところまで私は申し上げようとは思いませんが、いずれにしても、このような大きな混乱が起こった、死者も相当出たと思われる。こういうような状態の中で、なお従来と同じように、直ちにエリツィン支持を打ち出すという外交姿勢は果たして正しいのだろうか、本当に大丈夫なのだろうか、そういう危惧を抱きますが、外務大臣はいかがでしょうか。
  12. 羽田孜

    羽田国務大臣 私どもといたしましては、エリツィン大統領の進めておりましたところの民主化改革努力、こういったものを、この行為というものを支援するということを申し上げてまいりました。  そして、大統領府におきましても、私どもが知る限りにおきまして、いわゆる議会が銃を持って、ホワイトハウスですか、これに立てこもるという状況でありましたけれども、ともかく武力によってこれを鎮圧するようなことはできるだけ避けたいということであったようであります。しかしこういう銃撃戦か始まってしまったという中で、このあれを極力小さく抑えようという中でとられたものであろうというふうに理解をいたしておるわけでありまして、今官房長官からの報告がありましたように、やはり一日も早くこのような現状が平穏な中に解決される、それを今望んでおるところでありまして、そういう中で、我々としても率直な話し合いができるような環境が整えばよろしいというふうに思っております。
  13. 深谷隆司

    深谷委員 かつて中国において天安門事件というのが起こりました。これは、民主化を求める大衆、人民が立ち上がったのを武力をもって弾圧した。今回の中身とはかなり違うという認識は持っております。  しかし、いずれにしても、国内混乱戦車をもって弾圧しなければならない、制圧しなければならないという異常な状況というのが現在のロシアにあるわけでございまして、改革路線支持することは結構でございますが、エリツィン最初から支持しこれを支えるといったような、応援するような言動というのは、私は十分に注意しなければならぬと思うのであります。人道的な問題から申しましても、そこに深い日本政府の配慮がなければならないと思いますが、もう一度総理大臣のお考えをお聞きしたい。
  14. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 おっしゃるようなことは十分念頭に置いて対応しなければならないことだと思っております。しかし、総合的に、今外務大臣からもお話がございましたように、政府としては総合的に判断をいたしまして、市民動向等判断をいたしまして、改革路線支持するということを打ち出すべきであろうという判断をしたところでございます。
  15. 深谷隆司

    深谷委員 ロシアというのは我が国にとっては隣国でありますし、膨大な地域と人口を持ち、また百二十種類以上の人種がいるところで、ここの混乱というものはたちまち日本に影響してまいります。ですから、できる限り理解をし友好を高めようということは結構なのでありますが、そのことを追う余り、現実の判断の誤りのなきようにくれぐれも御注意を申し上げたいと存じます。  さて、いよいよエリツィン大統領日本おいでになる。二回にわたって、残念ながら直前において訪日中止ということになった。私どもから言わせれば、公式日程がきちんと決まって、その直前になって取りやめるということは外交上まことに非礼なことだと思って、いささかの怒りを抱いておったのでございます。しかし、このたびはぜひ日本に来る、あるいはぜひ日本に来てほしいという双方の気持ちからでありましょう、日本を訪ねてくることになったわけでありますが、その直前にこのような混乱が起こったわけでございます。一体来れるのだろうか、来れないのだろうか、ここいらの判断について、外務省当局の御判断を願いたいと思います。
  16. 野村一成

    野村政府委員 お答えいたします。  今現在のロシア情勢のもとで、エリツィン大統領訪日問題について影響ということでございますが、先ほど御報告大臣の方からございました。そういった情勢、いま一つその推移を見守ってまいりたい、そういうふうに思っております。  いずれにしましても、私ども基本的な考え方としましては、事態が早急に収拾されまして、大統領訪日というのが実現することを期待している次第でございます。
  17. 深谷隆司

    深谷委員 外務省の有力な方の発言でもまちまちのようでございます。来れるという者もあれば、延期せざるを得ないであろうという、そういう形もまちまちでございますから、果たして、もともとエリツィン大統領という人は飛行機に乗って日本の空港でタラップをおりるまでは確かじゃありません人ですから、そういう意味ではぎりぎりまでわかりませんが、一応日本おいでになるということを前提に、これから質問をさせていただきたいと思うのでございます。  今度のエリツィン大統領訪日に当たってやかましく国内で論議されておりますのは、言うまでもなく領土問題でございます。我が国にとってはかけがえのない四島、この返還をめぐっては先輩たちが営々と努力を重ねてまいりました。しかし、今度の訪日においては、この領土問題はほとんど前進がないであろう、それどころかマイナスではないかという言葉すら私どもには聞こえるのでございます。私は、エリツィン大統領日本おいでになった場合の我が国首脳、つまり細川総理大臣エリツィン大統領首脳会談での柱というのは、我が国にとって最も大事な北方領土問題を解決し、両国関係を正常化する、その第一歩にさせるということでなければからないと思うのであります。少なくとも、そういう位置づけで日ロ首脳会談というのは行われなければならないと思うのですが、この点について総理はいかがですか。
  18. 羽田孜

    羽田国務大臣 お答えさせていただきます。  今御指摘がございましたように、私どもはやはり基本的には、今お話のあったことを踏まえながら対応していくということが重要であろうというふうに思っております。
  19. 深谷隆司

    深谷委員 具体的に申しますと、旧ソ連が歯舞色丹二島の返還を約束した一九五六年の日ソ共同宣言、これは返還交渉の基礎になっているものであります。そして、国後択捉二島を含む北方四島が返還交渉対象になっているということの確認を求めること、そしてそれを具体的に再び明記すること、これが一番大事だと思いますが、いかがでしょうか。
  20. 羽田孜

    羽田国務大臣 その問題についてこれから話し合うことですから、細かい内容についてどうこうということじゃありませんけれども、今お話のありました、御指摘のありましたこと、これがやはり基本になりながら我々としてはそのことについて話していくというのが、これ当然の我々の務めであろうというふうに思います。
  21. 深谷隆司

    深谷委員 これからエリツィン大統領おいでになって話すことだから細かいことは言えないという意味のことをおっしゃったが、私が聞いているのは、どういう意気込みで、どういう構えで、どういう前提で臨むかという日本姿勢を聞いているわけです。
  22. 羽田孜

    羽田国務大臣 その姿勢につきましては、御指摘のありましたことを私たち基本に置きながら、これをきちんと話し合っていくということであります。
  23. 深谷隆司

    深谷委員 一九九一年四月のゴルバチョフ・ソ 連大統領日本おいでになった、そのとき海部首相と合意した共同声明、これは歯舞色丹国後択捉四島を対象領土画定交渉を行うということになっておりますね。このことについて、今度の会談の後、共同宣言というのをなさるでしょうが、明記するおつもりがあるのかないのか伺いたい。
  24. 羽田孜

    羽田国務大臣 この東京宣言といいますか、この宣言につきましては、まさに両首脳が会って、今お話のありましたようなことを率直に首脳同士で話し合う、そういう中から発せられるものでございまして、今この内容についてどうこうということだけは、申し上げることはひとつお許しをいただきたいと思います。
  25. 深谷隆司

    深谷委員 そのお答えはおかしいのです。既に海部さんとゴルバチョフの間に書いてあることを領土返還交渉第一歩とするという、この記念すべきエリツィン訪日に当たって、日本側としてはきちんと明記する、はっきり物を言う、これが外交でなきゃならないのに、今のあなたの発言では、どうも相手もいることだから、それはわかるけれども、はっきりした姿勢がない。断固明記する、日本のためにこれだけはきちんと記録していくというようなことをどうしておっしゃろうとなさらないのか。
  26. 羽田孜

    羽田国務大臣 先ほどから申し上げていますように、今深谷委員の方から御指摘のありました点を私たちはきちんと踏まえながら話し合っていくということを申し上げているわけでありまして、そういったものを明記するように我々が努力することは当然のことであろうというふうに思います。
  27. 深谷隆司

    深谷委員 最初からそうやって、明記するように努力するとおっしゃればよろしい。  そのことについて総理大臣はどうお考えか、おっしゃっていただきたい。
  28. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 今までの交渉の経緯というものを踏まえまして、今外務大臣からも申し上げましたような基本的な姿勢首脳会談に臨みたい。もし首脳会談が実現をするならば、我々としても今までのかたい決意というものを持って交渉に臨みたいと思っております。
  29. 深谷隆司

    深谷委員 我が国の固有の領土を一方的に占拠して、自来今日まで一向にこれを返そうとしないのはロシア側であります。この点に関して我が国に瑕疵はありません。一方的に他国の領土を占拠して全く返そうとしないロシア姿勢というのは誤りであります。  今、エリツィンが置かれているロシア状況が極めて大変であるということは承知しておりますけれども外交は、まずみずからの国の利益やあるいは立場を守る、そういう大前提に立って議論をしなければならないわけであって、巷間伝えられているロシア状況が悪いから今回は領土問題は避けて通らなければならないといったような政府首脳の声などがくれぐれもないように、相手のことを考えることは大事だけれども考え過ぎて日本の固有の領土を手放してしまう、日本の将来に禍根を残すようなことの断じてないように、私は共同宣言においてきちっと明記されるように、この機会にはっきり要求させていただきたいと思う次第であります。  そして、そういう問題を解決していくためには、大事なことは、総理を中心に閣僚が一体となって我が国の大事な領土を手放さないんだ、難しい交渉であるけれども全力を挙げて取り組んで、国民の期待にこたえていくという決意と熱意がなければならないと私は思うのであります。しかし、どうもその熱意が欠けているように思えてならない。  具体的に申し上げれば、所管大臣である石田総務庁長官、この間、二日に北方領土を視察された。そのときに記者団が質問をしたら、あなたは、日本人としてかつて日本領土であったことを思い、望郷の念がふつふつとわいてくるとおっしゃった。また、今はロシア領土となっている北方領土を目の前にしてと言われた。単に口を滑らせた失言であるということで済むとお思いになるのか。少なくとも我々は、今日まで四島は日本領土だと主張してきた。ただの一度もロシア領土と言ったことも考えたこともない。いかにうっかり発言といっても、一国の大臣が、しかも担当大臣が北海道の現場に行ってそのようなことを言うということは、許されざる行為だ。そういう状態であの手ごわいロシアエリツィンを相手にして北方領土が戻せるものか、そのことについて石田長官の弁明と、あなたのはっきりした姿勢を示してほしい。
  30. 石田幸四郎

    石田国務大臣 前回の発言につきましては、不適切な表現であったと思いますし、直ちに訂正をしたわけでございますが、本来北方四島問題については、さまざま今日まで議論がありますけれども、一貫して我が国固有の領土であるということはいろいろな角度で、いろいろな局面で我が党も申し上げてきたことでございます。  表現に不適切なことがあったことについては、おわびを申し上げておきたいと思います。
  31. 深谷隆司

    深谷委員 おわびを言われている大臣をこれ以上責めるつもりはありませんが、念のために、総理大臣はこの発言をお聞きになったときにどういう印象をお持ちで、またどういう注意を閣僚各位にしなければならぬと判断したか、お尋ねしたい。
  32. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 おっしゃるように、今御指摘がございましたが、石田長官御自身からお話がございましたように不適切な発言であった、各位におきましては、あらゆる問題につきましてそれぞれ不適切な発言がないように、これはもう当然のことでございます。改めてそういうことは申し上げなくても、各自が、各閣僚がそのことは十分心得ておられることと思っております。
  33. 深谷隆司

    深谷委員 言われたことについての反省を求めたわけでございますが、一番言いたいのは、そういう北方領土に対する本当の構えが心の中にないからそういうことになるのではないかという点なのであります。どうぞ、総理大臣初め全閣僚は、北方四島は我が国固有の領土である、あらゆる角度からこの返還を求め続けていく、それが日本のためである、日本人のためであるという認識を持って臨んでいただくように強く要望いたしたいと思います。  さて、エリツィン大統領との会談において領土問題、一生懸命頑張っていただきますけれども、おっしゃるとおり難しいという場面が出てくるであろうと思います。そういうときに、経済的な応分の支援をしなければならないというテーマが当然大きく出てくるのではないだろうかと思う。G7において、大蔵大臣も御出席をなさって、あのときのG7の結論はロシア支援ということでございました。このことをどう受けとめ、エリツィン大統領訪日に当たってどう考え、対応するか、大蔵大臣のお考えを尋ねたい。
  34. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 ただいま官房長官談話などにもありましたように、現在進んでいるロシアそのものの民主主義を求める、あるいは市場経済を進めていくという方向について支援をするということを申し上げたわけでありまして、その後の事態については、これはあの段階においてフョードロフ蔵相が出られて、それをぜひ推進していきたいという発言を受けての決定であったというか、コミュニケであったというふうに理解をしています。
  35. 深谷隆司

    深谷委員 今までもロシアに対してさまざまな支援を約束してきた日本でございます。どちらかというと、世界が日本に求めるのは資金的な応援ばかりでありますことは残念でありますが、とりわけロシアの経済の混乱を含めて考えますと、日本が応分の協力をしなければならないという声が各国からわいてくるということはやむを得ないことだとは思うのであります。しかし、私たちの国は、従来から政経不可分、拡大均衡ということをロシアとの外交の国是といたしてまいったはずでございます。ですから、政治の分野はさておいて、経済の分野だけが先行するということがあってはならないわけでございます。  そこで、お尋ねしたいのでございますが、かつ て旧ソ連が日本領土を認めないころ、我々の先輩たちは、政経不可分の原則を主張して、政治が動かなければ経済は動かさないということを原則として、その考えを貫いてまいったわけであります。その後、ゴルバチョフの時代に入って、ソ連側も領土問題の存在をようやく認めるに至った。そこで、両国間の政治的な話し合いも徐々に進んでまいりまして、政治と経済両面でよい影響を与え合うという均衡のとれた関係、そういう形を発展させようということで、拡大均衡路線へと変わっていったわけでございます。今回のエリツィンとの会談において、もし経済問題が先行して領土問題が全く後退するということになれば、この拡大均衡は拡大不均衡に相なると思うのであります。  そこで、細川総理大臣は、旧来からとってまいりましたこの拡大均衡という路線を、日ロ関係の原則として相変わらずお考えをお持ちであるかどうかの確認をさせていただきたいと思います。
  36. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 東西の冷戦も終結をいたしましたし、そのような状況の中でロシアがどうなるかということは、世界の経済にとっても、また政治にとっても極めて大きな影響を持っている問題だと思っております。  そういう状況を踏まえて、これからの我が国の対応といたしましても、従来から我が国がとってまいりました、今お話がまさにございました拡大的な均衡の方向をとっていく、それが私はやはり正しい道であろう、そのように考えております。
  37. 深谷隆司

    深谷委員 社会党にお尋ねしたいと思うのでありますが、このロシアとの外交に関して拡大均衡路線、経済だけ発展させればいいというお考えが社会党にあったというふうに記憶しておりますが、私の記憶が間違いかどうか、山花大臣にお尋ねしたいと思います。
  38. 山花貞夫

    ○山花国務大臣 過去の流れの中で政経不可分の原則に固執するということがあってはならないという考え方を持っておりましたが、その後、拡大均衡という政府の方針につきましては、そうした姿勢で今後ともロシア状況の推移を見た中、ロシアとの関係をつくり上げていただきたい、こうした考え方でございます。これまで総理外務大臣お話ししたことを支持する立場で閣僚として努力をしてまいりたいと思っております。
  39. 深谷隆司

    深谷委員 そうしますと、社会党の旧来からの考えが変わった、あるいは変わりつつあるということでしょうか。かつて明らかに社会党は、政経分離で経済を優先して、そして日本は対ロシア、かつてのソビエトに対応すべきだ、こう言い続けてきたと思うんですが、お考えが変わったわけですか。(発言する者あり)
  40. 山口鶴男

    山口委員長 御静粛に願います。
  41. 山花貞夫

    ○山花国務大臣 かつて、政経不可分というそこだけに重きを置くということではならないという立場から、先生御指摘のような主張もあったかと思いますけれども、今手元にございませんが、党の運動方針とか、あるいは対ロシア政策では拡大均衡ということを推し進めるべきである、こういう考え方で今日では対応してきたということについて御報告をさせていただきます。
  42. 深谷隆司

    深谷委員 せっかくおられるから、お隣の佐藤大臣にも同じことを聞きたいと思います。
  43. 佐藤観樹

    佐藤国務大臣 自治大臣として直接的な所管ではございませんけれども、今御質問でございますので、社会党の閣僚としてお答えをさせていただければ、今、山花政治改革担当相が言われたことに尽きていると存じます。
  44. 深谷隆司

    深谷委員 私たちは、五会派連立内閣でございますだけに寸外交問題に関して同じ考え、同じ路線で進んでいかなければならないという観点から、かつて社会党が政経分離から経済協力の方へむしろ力を注ごうとしていた、そういうお考えがあったことを指摘し、それが今変わっていることを聞いて安心しているわけでありますが、どうぞ総理におかれましては、各党連立の内閣でありますから、歩調を一つにして、国を挙げてこれに臨むようにぜひお計らいをお願いしたいと思います。  重ねて申し上げますが、エリツィン大統領日本に来る、その一つの目的は、みずからの国での立場を誇示し世界に示すというアピールという点の考えもあるでありましょう、より一層支援も引き出したいという思いも持ってくるでありましょう。しかし、そういうような前提で来るエリツィン大統領に対して、単なるおざなりの握手や笑顔だけで迎えるようなやり方だけは避けてほしい。  特に、私はこの機会に一言申し上げさせていただきたいのでございますが、私たちの心の中に、ソビエトの第二次世界大戦における行動というのは片時も忘れることのない苦い経験として残っておるのでございます。  細川総理は、戦争についての遺憾の意をあらわす、後で時間があればお尋ねしますが、そうおっしゃっている同じようなレベルで、ロシア大統領が第二次世界大戦における日本に対する対応、とりわけシベリアに罪のない人たちを大勢運んで、その人たちに塗炭の苦しみを与えてしまったことについて触れられるように求める必要があるのではないだろうかと私は思う。  忘れもいたしませんが、我が日本が第二次世界大戦で旗色が極めて悪くなって、ついに八月の六日、八時には広島に原爆が投下されたのでございます。一発の原子爆弾が日本人のとうとい命をあっという間に奪った。本来ならそれについてのアメリカの責任も問うべきだと私は思っていますが、その八月六日のいよいよ原爆が落ちて我が国がどうにもならぬと思われた二日後の八月八日に、突如としてソビエトは日本に対して宣戦布告をしてきたのであります。ワシレフスキー元帥、極東軍司令官、その率いる百五十七万の軍勢が満州を主体に千島、樺太と攻め込んでいったのであります。日ソ不可侵条約があるにもかかわらず、完全にもう原爆が落ちてだめになった日本に対して宣戦布告をして、満州や千島、樺太に攻め入ったこのソビエトの行動というのは、断じて歴史的にも許されない事柄でございます。  私ごとを申し上げて恐縮でございますが、そのときに私は遠く満州のハルピンに生活をいたしておりました。父が満州電業に勤めていたために一家を挙げてハルビンにいたのであります。敗戦の詔勅を涙ながらに聞いた、まだその涙も乾かないうちに土足で我々日本のそれぞれの家に入り込んできて、略奪の限りを尽くしたのはソビエト兵でございました。まだ小学校であった私どもにも、そのときの屈辱とそのときの悲しさは片時も忘れることはできなかったのであります。そして、そのソビエトは、罪のない日本人をシベリアに送った。厚生省の調べによれば、抑留された人たちの中で実に十万二千人がお亡くなりになったという。連行された日本人五十七万五千人、抑留中に五万五千人、合わせて十万二千の人々がお亡くなりになるという歴史の中に刻まれた最も悲惨な状態があったわけであります。  それについて旧ソビエトも今日のロシアも謝罪や弁明を格別にしておるとは思えない。エリツィン大統領日本に来るに当たって、せめて何らかの発言をすることこそ拡大均衡、政経不可分の我が国の方針に沿うのではないか。そのことについて、総理のお考えを尋ねたい。
  45. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 それは、今おっしゃったような気持ちというものを、多くの国民の方々が複雑な思いで感じておられるのではないか。しかし、過去の歴史の問題についてどのようにそれぞれの政府が認識をするか。それぞれの国が認識をするか。今お話がございましたように、ロシアも国自体の形も変わってまいりまして、そういう中で、どのように考えるか、そのことについて歴史的な認識を示すかということは、これはそれぞれの当事国が判断をされることであって、こちらからいろいろ申し上げることは差し控えなければならないであろう、そのように思っております。
  46. 深谷隆司

    深谷委員 ただいまの発言は極めて重要だと思うんです。あなたが日本の過去の戦争について侵略戦争だとおっしゃり、その行動について世界に陳謝するということを言われたばかりに、それに 対しても私たちはいろんな意見持っているんですよ。過去の戦争について、人道的な立場に立って反省を表明するというならばまだいいんですが、日本の過去の国策を一方的に侵略であると断罪し、非はすべて我が国にありとすることは、時代が変わって中身が変わろうとも、今日の日本総理大臣が本来言うべきものではなかった。  この総理発言に対して、作家の上坂冬子さんが新聞に載せられた文章をごらんになったでしょうか。どのような歴史観を抱くのも自由だけれども、その根拠は厳密かつ明瞭でなければならない。日中戦争は一発の銃声によって始まったと言われるが、あの一発は日本側から撃ったと細川総理は思っているんだろうか、こういう問いかけから始まっているんですよ。そして、大変な数の人々が犠牲になった。さらに、戦勝国が敗戦国を裁くという軍事裁判、戦争裁判が行われて、七人のA級戦犯、千六十一人のBC級戦犯の人命をささげた上でサンフランシスコ講和条約にこぎつけたのだ。こういう歴史的な諸問題を踏まえながら、戦争で犠牲になった人たち、一生懸命国家のために命を投げ出した人たちのその思いも忘れて、一方的に侵略戦争であったと言い、かつ謝罪をする、そういうことはいかがかと、こういう批判が今ごうごうとわいている。  しかし、百歩譲って、そう言われたあなたなら、ソビエトのシベリアに日本人を抑留させて何十万も殺してしまった紛れもないこの事実に対して、はっきり物を言うのは当然ではないでしょうか。  もう一回お答えを願いたい。
  47. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 それは、繰り返しになって恐縮でございますが、それぞれの政府判断でやられるべきことであると思っております。(発言する者あり)
  48. 山口鶴男

    山口委員長 御静粛に願います。
  49. 深谷隆司

    深谷委員 私が申し上げているのは、そのことにエリツィン大統領がどう答えるかについてではありません。日本総理大臣としてこのことについてエリツィンにはっきり物を言って、何らかの答えを出すだけの努力をするのが当然の務めではないかと申し上げておるのであります。  それに対する答弁は納得いきません。よくお考えになってお答えいただきたい。――外務大臣にお尋ねしておりません。
  50. 山口鶴男

    山口委員長 外務大臣。(発言する者あり)御静粛に願います。
  51. 羽田孜

    羽田国務大臣 委員長の指名でございます。  今総理からお話があったわけでありますけれども、私どもといたしましては、今深谷委員の方からお話がありましたこの歴史的な事実というもの、この問題については私たちもきちんと腹の中に据えているわけであります。そういうことをこれから首脳会議という中で率直に話し合っていく。そして、エリツィンさんも最近言われている言葉の中に、やはりこれからのロシア外交というものは、いわゆるスターリン時代、こういった時代のやはり残滓というものを取り除きながら、法と正義に基づいてこういったものに対して対応していきたいということを言っておるわけであります。ですから、私どもといたしましては率直な話し合いをする、そういったものに対してエリツィンさんがどうこたえていくかという問題であろうというふうに思います。
  52. 深谷隆司

    深谷委員 外務大臣のお考え了解いたします。  私は総理に尋ねている。総理のお考えを改めて求めます。
  53. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 それは、今の外務大臣お話にもございましたように、ロシア政府としては、法と正義に基づいて今後日ロの関係を考えていくということを申しているわけでございますから、そういうこともロシア政府としては当然腹の中に置いているであろうということは思っておりますが、それはやはり最終的にはロシア政府判断をされることでございますから、私どもとしては、そういうことは腹の中に置いてはおりますけれども、露骨にそれを求めるということはいかがなものであろうかということでございます。
  54. 深谷隆司

    深谷委員 私は、日本の過去の戦争について、問題はあるけれども、率直に言われたあなたの姿勢、それに基づいて当然、第二次世界大戦で日ソ不可侵条約を一方的に破って攻め寄せたんですから、そして、罪のない人をシベリアに送って大変な数の人たちを殺したわけですから、この歴史的な事実は疑いの余地がないことですから、議論の余地のないことですから、そのことについてただし、そのことについて何らかの発言を求めるというのは日本を代表する総理のお役目だと思う。そのことをロシアエリツィン大統領が拒否したり発言しなかったり、それは先方の御判断だし、そのことについて日本ロシアにどうするかを判断するのは日本がすればよいことでございます。  くどいようでございますが、腹に置いてとか、あるいは露骨に発言するとか、そういうお言葉ではなしに、もっと日本の立場に立って、きちっとこの点だけはお話をなさっていただきたい。なさることは決してあなたにとってマイナスではありません。どうぞひとつお考えをもう一回聞かせてください。
  55. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 私も実は個人的には大変複雑な思いを持っております。ソ連の収容所で私の身内が亡くなったりしたこともございますし、恐らく委員以上に私はそうしたことについて強い思いを、ある感慨を持っているわけでございますが、そのことは、恐らくこれはロシア政府において当然考えていただけることであろう、それを強く期待をいたしているということでございます。
  56. 深谷隆司

    深谷委員 細川総理の今の御発言を私はきちんと受けとめるつもりです。ただ、思っているだけで口に出さないでは外交ではありません。どうぞ具体的にはっきりと、やはり申すべきは言う、これを原則として考えていただきたい、外交ですから。  露骨なことを言えないというのは、悪いことを言うとか卑劣なことを言う場合に使う言葉でございまして、歴史の事実に基づいて、むしろこれからの日ロ関係を平和的に進めるためには、これ一つの原点ですから、これについては腹の中におさめていく、そういう思いを持っているけれども表には出さないということではなしに、やはり率直に語る。語った結果の答えについては、その判断、我々が、あるいは国民が改めてすればいいことでございますから、そのことを強くあなたに申し入れておきたいと思うんですよ。言わないということでこの場で終わらすつもりではないでしょうな。
  57. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 どこまで言うべきことを言うか、どういうタイミングで言うか、それはもちろん考えております。しかし、それは外交でございますから、国と国との間の重要なかかわりにかかわる問題でございますからそのことについては腹に置いてやらせていただきたい、こう申し上げたわけでございます。
  58. 深谷隆司

    深谷委員 あなたの御発言と、とりわけ外務大臣、あなたの言葉に期待をして、日本国民を代表して少なくともそのことには触れて日本の実情を話して、そういうことをきちんとけりをつけないと友好的な日ロ関係は生まれないということを明確にする、そのことが真の外交だということを認識されてしっかり頑張っていただくように申し上げたいと思いますので、外務大臣からもう一言おっしゃってください。
  59. 羽田孜

    羽田国務大臣 まさにロシア我が国の隣国であります。その意味で、やはりこの国と本当のおつき合いをしていくのは率直なお互いの話し合い、これが大事だろうと思います。そして、間違いなく今のエリツィンさんが改革を進めようとしておりますのは、かつてのソビエト、これとは違った、今新しい市場経済、民主主義、自由社会、これを目指しておるということでありますから、そういう中から、また法と正義に基づいた外交を進めようということを言っておられますので、私どもやはり率直な話し合いをする中に真の友好を築いていきたいというふうに思っております。
  60. 深谷隆司

    深谷委員 では、次に進みたいと思います。  先月二十七日、細川総理大臣は、ニューヨークの国連総会で演説をなさいました。首相として一般討論演説に臨んだのは一九八七年の中曽根総理に続いて二人目でございます。大変好評であったということは御同慶の至りで、私どもにとっても喜ばしいことだと思っています。  英語で特に演説をなさった。大変英語がお達者でございまして、そのことは結構だとは思うのでありますが、一つだけ、大事なことですからお心にとめておいていただきたいんですが、世界はさまざまた言語がございますから、英語圏というのもあればそうではないところもございます。これは日米会談とかそういうことであれば構わないのですけれども、どうか国連というような場所では、英語がお上手でもむしろ日本語で、正しい通訳をつけてお話しなさることの方が間違いがないのではないかと私は思っておりますので、御参考までにそのことを申し上げたいと思います。  国連という舞台であなたが演説をなさった。本当に、まあそう言ってはいけませんが、だれもが想像できなかった政権、そして総理大臣になられたあなたが国際舞台でデビューされるというのはなかなかすばらしい感覚だと私は思います。しかし問題なのは、新しい政権のもとで国連にどのような形で参加するかということでございます。一番注目を集めたことは、安保理の常任理事国入りの問題だと私は思う。冷戦が終わって国際環境が激変する中、国連の役割というのは次第に大きなものになりつつございます。それだけに、アジアの、とりわけ経済大国と言われる日本がどう対応するのか、ひとしく国連参加の国々が注目をしているところでございます。  去る七月には、宮澤総理大臣がガリ国連事務総長にあて意見書を送りましたが、その中で、日本は「安保理においてなし得る限りの責任を果たす用意がある。」と、事実上の常任理事国入り立候補宣言とも受けとめられるような姿勢を示しました。細川総理発言は、平和維持活動における要員の安全確保だとか、個々の活動の時限化といった問題を提起して、さらには国連の行財政をめぐる問題点を指摘した上で、改革された国連において、なし得る限りの責任を果たす用意がある、こういう表現をされたのであります。宮澤総理と違うところは、「改革された国連において」という言葉をあえてお使いになったことです。  再来年、創立五十周年を迎える重要な課題は、安全保障理事会の改革問題ですけれども総理はその問題にとどまらず、国連全体の改革を求め、その改革ができたら常任理事国に参加するという、こういう意味なのかどうか、そこらのお考えをまずお尋ねしたい。
  61. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 その時間的な、時系列的な問題は、どちらが先になるかということはちょっとわかりません。しかし、いずれにしても国連というものが、今日国際社会の中で果たさなければならない役割、期待されている役割というものは、以前に比べて大変大きなものになってきていると思いますし、そうした意味で、今度の総会におきましても、行財政改革の問題あるいはまた平和維持に関する問題、あるいは安保理のあり方、そうした問題について私の所信を申し述べてきたところでございます。  安保理におきましても、安保理の役割というものは、国際の平和と安全に特別の責任を有する機関でございますから、そこに入ってどのような役割を果たすことになるのか。ただ、そこに入るについては、先般来申し上げておりますように、背伸びをして、選挙運動をしてまで入るというのはいかがなものであろうか、自然体で、今多くの国からも我が国は推されているところでございますし、人をかき分けてまでやらなくてもいいのではないか、そのような感じを私は持っているということでございます。
  62. 深谷隆司

    深谷委員 報道された記事を見ますと、受けとめ方が全くばらばらのようです。例えば、読売新聞でいうと、「国連改革 日本も参加」という見出しで、安保理常任理事国入りには直接的言及を避けた、そういう報じ方。毎日は、国連改組を条件に常任理事国入りを目指すというふうに書いてあるわけであります。  今までの常任理事国入りの考えと今の総理の話には違いがあるのかどうか、今のお話でまだ定かでありません。改革と常任理事国入りがどちらが先かということも含めて、積極的に入るお考えがあるのかないのかということをこの機会にはっきりおっしゃっていただけないでしょうか。
  63. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 今申し上げたとおり、自然体で行くということに尽きると思っております。そこに推されれば我が国としてなし得る限りの責任を果たしていく用意がある、それはもう当然のことであるというふうに考えているところでございます。
  64. 深谷隆司

    深谷委員 こちらから運動して入るべきでない、推されれば入る用意があるという言い方をどこかでされておられたようですが、この問題では、外務省と特別補佐の田中秀征氏との間で激しいやりとりがあった、こう巷間伝えられているのであります。田中さんは、今のままの国連であれば常任理事国になるべきではないという考え方であったというふうに聞きます。それを受けてでしょうか、武村官房長官も去る二十七日の記者会見で、常任理事国入りは国連改革前提と述べたと伝えられております。  官房長官、その間の経過はどうでしょうか。お尋ねしたい。
  65. 武村正義

    武村国務大臣 お話しのとおり、こういう問題でございますから、いろいろな意見の交換はあったようであります。私は全部を承知をいたしておりませんが、そういう意見交換の結果、総理の国連演説が最終の案として総理みずからの判断で決められたわけであります。  お尋ねの御質問については、当然今、国連の改革、なかんずく安保理事会の改革が大きな論議の対象になっているわけでございますから、その改革が行われた暁に日本が入るか入らないか、こういうテーマであると私どもは認識をいたしております。現在の安保理事会に、改革をしないで参加の問題が出ている、常任理事国の参加の問題が出ているとは、私は認識をいたしておりません。
  66. 深谷隆司

    深谷委員 国連改革前提だと今おっしゃったんですか。(武村国務大臣「はい」と呼ぶ)国連改革前提だとおっしゃると、国連改革というのは大変な作業なんですね。簡単に一朝一夕にしてできる作業じゃないんです、国連改革というのは。しかも、単に常任理事国を拡大するという意味改革でなしに、国連全体の改革という意味だと思うんですね。  そうしますと、常任理事国には当面入らないということなんですか。もう一回質問したい。
  67. 武村正義

    武村国務大臣 今申し上げたのは、既に国連改革という表現もございますが、なかんずく国連改革の中の安全保障理事会の改革、これはその中の一つというより、一番大事なテーマでありますが、その改革の論議が今行われているさなかでございまして、まだかなり時間がかかるという説もございます。二、三年ぐらいはかかるんではないかという説もございまして、その中で、日本が新しい安全保障理事会に常任理事国として入るか入らないか、こういうテーマだと私は認識をいたしております。
  68. 深谷隆司

    深谷委員 国連改革と一般的に言われている中には行財政改革も含まれているわけですね。つまり、相当なむだ遣いがあるではないか。アメリカと日本が莫大なお金を出しているが、適切に使われているんだろうか。国連そのものの行政改革という問題も含まれているわけですね。ですから、国連改革と一口に言いましても、非常に幅広いものなんです。  せっかく官房長官がお答えになりましたから、官房長官のお考えではどこまでの枠を考えておられるのか。そして、それができないと常任理事国入りはしないということなのか。そうすれば、現実的には、当面しないという答えしかないわけなんですが、そこのところをお尋ねしたいんです。
  69. 武村正義

    武村国務大臣 今の、改革以前の安全保障理事 会に日本が常任理事国として入るという議論ではないというのが私の認識でございます。したがって、当然、改革の論議が既にかなり活発に行われているところでございまして、御承知のように、数をふやすという視点もございますし、常任理事国の数も当然その中でふやしていこうという議論も行われております。あるいは常任理事国の拒否権の問題についても議論があるようでございます。そういうふうに新しい安全保障理事会の数をめぐる問題もありますし、役割、改定案もございますから、そういった役割の問題も含めて多面的に活発な論議が行われているさなかでございますから、その結果、これが二、三年か、中には数年という人もありますが、あるいは国連創設五十年、あと二年ぐらい先だろうという見方もありますが、いずれにしましても、論議に決着がついて、新しい形が整った段階で、今、日本の参加の問題が決まるというふうに私は思っております。  もちろん、国連改革という言葉は、この問題に限らず、総理の演説にございますように行財政改革もPKOの問題もございますし、あるいはもっとほかの、私なんかは個人的に環境問題に関心を持っておりますが、昨年のブラジルのUNCEDなんかでは、地球環境に対する国連の新しい機構の設置の決議もなされておりますが、そういった問題もあるいは国連改革という広い概念には入ってくるのかな。したがって、憲章の改革まで含むような問題だというふうに認識をいたしております。その中の安保理のあり方、それに対する常任理事国として日本が入るか入らないか、こういう議論だと私は認識をいたしております。
  70. 深谷隆司

    深谷委員 この件に関して外務大臣はどうお考えでしょうか。
  71. 羽田孜

    羽田国務大臣 私どもといたしましては、今国連に求められているもの、この点をやはりきちんと基本的に考えるべきであろうと思っております。  確かに冷戦時代というものとポスト冷戦となってからの状況というのはやはり異なっております。しかも、最近では紛争が世界で頻々として起こっております。この紛争というものを見てみますと、歴史的なものを大きく背景にしたものあるいは宗教あるいは民族の争い、そして内紛が非常に多くなってきておるということですね。ですから、安保理事会そのものが果たす役割というものは、もっと今まで以上にきめの細かいものになってきておるということじゃなかろうかと思っております。  例えば、この間のUNTACの活動というのは、例えばラジオ等を使いながら国民に対して、選挙というのはどんなに大事なものか、民主主義というものはどんなに大事なものか、争いというのはどんなに悲劇的なものか、これを相当細かく国民に伝えたようですね。これはまさに明石さんの指導のもとで進められたということで、日本人のそういうきめの細かい対応というものは非常に高く評価されておったということであります。  そんなこともありましてか、今度国連に参りましたときにもいろいろな国の外務大臣あるいは首相、そういった立場の方々が我々に対しても、日本のそういった役割というものをぜひ国連の中で発揮してもらいたいという実は要請があるところでありまして、そういう要請があるならば、我が国として今日繁栄を築いてきたのはやはり平和の中で築き上げてきたということ、この四十八年間の経験というものをもとにしながら私どもとしてこれに対してこたえていきたいというふうに思っております。  特に安全保障理事会というのは、非常に幅広い問題について割合とあそこの中でいろいろと決められる動きというのがあるというのが現状であります。そういう中で、要請されるならば、私どもとしてはやはり積極的にそこで発言し、また働いていくべきであろうというふうに思っておるところであります。  そして、今お話がありましたように、国連をちゃんと機能させるためには、やはりいろいろな面での改革というものは必要であろうと思います。今お話があった環境問題等についての委員会というものを、常任委員会と同じようなものをつくりなさいという話もあります。また、例えば人権なんかの委員会なんというのは人が不足しておるなんという状況でもあります。しかし、片っ方ではどうもむだなこともやっているんじゃないかということもあります。そういうものもあわせてやはり改革していく必要があろうと思っておりますけれども、その中において、私どもとしても発言をすべきものはする、あるいは改革をするためにも積極的に発言をしていくという姿勢をとっていくことが大事であろうというふうに考えております。
  72. 深谷隆司

    深谷委員 常任理事国入りについては、前の内閣の姿勢から踏み込んだわけでも後退したわけでもなくて、やはり積極的な意欲を示しているんだと外務省大臣、お考えなんですな。
  73. 羽田孜

    羽田国務大臣 もう先ほど総理からもお話ありましたように、別に前に進むとかあるいは後退しているということじゃない。私どもは、前政権が進められてこられましたこと、この問題については私どももそういう考えを持っております。  ただ、要するに、安保理そのものの働きというものがこれから大きく変質してくるであろう。きめの細かい対応というものがやはり求められてくるだろう。そういったときに日本としての働く場所があるのかなということを、私は今度の会議でいろいろな人たちお話ししながら、改めてそのことを強く感じておることを申し上げたいと思います。
  74. 深谷隆司

    深谷委員 結論から申しますと、外務大臣並びに外務省考え方と総理との考え方、とりわけ官房長官発言に見られるような、改革なければ入る必要ないといったような感じ方、微妙にずれておりますから、どうぞ、国連に対する日本の対応というのは世界注目の的ですから、意見の一致を常に見て、同じような考えで進んでいただくように要望したいと思います。  それでは、PKOの関係についてお尋ねしたいと思います。  我が国として初めて国連平和維持活動に参加して、カンボジア等に派遣された人々も帰ってきて、ようやくその任務を終了いたしました。私は、過酷な環境の中で世界の平和を求めてPKOの隊員として参加した、そしてまた、民間人も含めたボランティアその他の人たちに深甚なる敬意と感謝を注ぎたいと思っています。  しかし、このPKOの問題に関して、今までの議論を見ておりますと各党ばらばらのようであります。そのばらばらの各党から大臣がお出ましになっているところに連立政権の難しさがあると思ってはいるのですが、大事な問題ですから、この際改めてそれぞれの皆さんにお尋ねをしてみたいと思うのです。  PKOについて、まず日本新党代表でもあります細川総理、今までの評価と今後の考え方をお述べいただきたいと思います。
  75. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 今までの考え方とおっしゃいましたが、それは日本新党としての考え方という意味でございますね。それは、私は自衛隊そのものの別組織化論ということを申し上げてまいりました。そのことについて詳細に立ち入って申し上げませんが、日本新党の考え方はそのようなことでございます。(深谷委員「別組織」と呼ぶ)自衛隊そのものの別組織化論ということを言ってまいりました。自衛隊の、それはまあ立ち入った話は差し控えますが……(深谷委員「いや、大事なことだから」と呼ぶ)よろしいですか。自衛隊の中にPKOの部隊をまた別に置くべきであるということでございます。一深谷委員「自衛隊の中に」と呼ぶ)自衛隊そのものの別組織化論ということを申し上げてまいりました。まあ、中か、外か、その辺の議論はいろいろ私も詰めたわけではございません。そういうことでございます。  それから、その評価についてでございますが、それは、とにかくまだ一年しかたっておりませんが、国内からも海外からも高い評価を受けてい る。そのことは大変に結構なことだ。中田さんや高田さんがあのような不慮の事故に巻き込まれたときには大変懸念をいたしておりましたが、幸いにそれ以上のことにならずに済んで、そして、今日これだけの評価を得ているということは、また他のアンゴラとかモザンビークにおいてもそうでございますが、大変結構なことだと評価をしているところでございます。
  76. 深谷隆司

    深谷委員 細川総理のお考えというのは、自衛隊というものを基礎にPKOを考えて、自衛隊の中に、何というか一つの別組織のような形のものをつくっていこう。要するに自衛隊が中心であるというお考えですな。それには間違いないわけですが、それでは、社会党は、委員長は前でございますが、山花大臣、お考えを。
  77. 山花貞夫

    ○山花国務大臣 まず、カンボジアにおける今回のPKOの活動につきましては、無事任務を果たしてお帰りになった自衛隊員の皆さんを含む御努力された皆さんの御苦労に心から敬意を表して、その苦労をねぎらう、こういう気持ちでございます。同時に、とうとい犠牲者お二人を出したことにつきましては、深く悲しみ、哀悼の意を表する次第でございます。  また、評価ということについてお答えをさしていただきますならば、こうした犠牲者を出したということについてはまことに残念でありますけれども、武装した自衛隊が紛争に巻き込まれることが、その意味では大規模な紛争に巻き込まれることがなかったということについては、大変幸いであったと考えている次第でございます。  しかし、今回の教訓として、従来の国会でも議論となりました指揮権の問題等幾つかの問題が提起されてきたのではなかろうかと思っておりますので、こうした問題につきましては、今後の見直しの作業の際にきちんと整理すべき課題ではなかろうかと思っているところでございます。  なお、今回の政権に臨むに当たりまして、社会党としての考え方は従来から発表しているとおりでございまして、党としてのこうした考え方を変更する気持ちはございません。しかし、今回の連立政権の合意に当たりまして、PKOの問題についても合意の大事な中身として含まれているところでもあり、成立したPKO協力法につきましては、五原則の厳格な適用等を含めて、私たちは閣僚として対応してまいりたい、このように考えているところでございます。
  78. 深谷隆司

    深谷委員 各党からお聞きしようと思ったのですけれども、きのう一番問題になった点について、若干でもお言葉を変えるのかと思ったら、あなたは全く変えないので、あえてこの問題を少しく質問したいと思います。  あなたたちはPKOは別組織でとおっしゃっているわけですね。その根拠は、自衛隊が違憲であるからということですね。きのう、そう、あなた、自隊衛は違憲だ、こうおっしゃった。PKOは自衛隊とは別組織につくっていくべきだというのが社会党の変わらざる主張であります。なぜならば自衛隊が違憲だから。  にもかかわらず、連立政権をとった場合には、合意に基づいてこの考えを捨てて賛成して協力している。PKOに協力する。大矛盾ではありませんか。あなたは政治家として、一方において社会党の立場では、自衛隊は違憲である、したがってPKOも違憲であるとのお考えを持ちながら、大臣という役についた場合には、そのことは急に志を変えてPKOの存在を認め、総理大臣がPKOを評価しこれからも行うという考えに立つならば、それに従う。政治家として恥ずべき行為ではありませんか。(発言する者あり)
  79. 山口鶴男

    山口委員長 御静粛に願います。
  80. 山花貞夫

    ○山花国務大臣 昨日もお話をしたところですけれども、私たちは今回の選挙に臨むに当たりまして、五党・会派で合意をつくりました。選挙が終わってからではなく、選挙に臨むに当たってでありますから、よく引用いたします連立政権樹立に関する合意というのは七月二十九日でございます。  私が申し上げましたのは六月の二十七日、不信任案の可決を受け、政治改革を実現していくために非自民の連立政権を目指そうではないか、こうした協議をした際に、五党党首の会談を行いまして合意の文書をつくったところでございます。政治の浄化を目指そう、腐敗をなくし政治改革を実現しよう、そのためには選挙についても協力して行っていこうという五党・会派の党首集まっての合意をつくったときに、しかし、それぞれこれまで立党の精神が異なり、異なる政治理念を持ち、そして政策についても御指摘のPKOを含めてしかり。  では、そうした各党派が一つの目的を持って連立政権をつくろうとするためには一体どういう基本的な合意が必要なのかということにつきまして、何よりも、政権が交代した場合国民の皆さんが一番心配することが考えられる外交とか防衛政策などについて、一体どうするのかということについては明らかにした上で選挙に臨まなければならない、そうすべきであろうという観点から、私たちは新しい政治をつくるに当たっては、外交、防衛など国の基本施策についてこれまでの政策を承継しつつ、世界平和と軍縮のために責任及び役割を担い、国際社会に信頼される国づくりを行うことを国民の前に明確にする、こうした連立政権についての基本合意を発表をいたしまして選挙に臨んだ次第でございます。  選挙は連立政権をつくる前の選挙ですから、その意味ではそれぞれの固有の政党の政策を持っているわけですけれども、したがって、私たちはそうした考え方のもとに政権をつくったわけでありますから、全く一貫しているわけでありまして、御指摘のような問題点はない、こういうように確信をしております。
  81. 深谷隆司

    深谷委員 私が聞いているのは、政治改革を一緒にやりましょうということでまとまったら、外交も防衛も基本的なイデオロギーさえも変えていくのかということなんだ。あなたは、自衛隊は違憲である、したがってPKOも違憲である、社会党の立場ではそう言い続けながら、今はその自衛隊が行動するPKOを認め、これに追随するということは政治家の姿勢として誤りではないか、欺瞞ではないかということを言っているんだ。それについてだけ答えればよろしい。
  82. 山花貞夫

    ○山花国務大臣 今の御質問は、連立政権という問題についてのお考えを抜きにした御質問だと思っています。  私たちは、固有の政策はしっかりと堅持しながら、しかし国民の期待にこたえて政権交代と政治改革を実現しようとしたわけでありまして、例えばPKOにつきましても法案を国会に出している、その中で党の政策については明確にしているところであります。連立政権の場合には、それぞれ違った立党の精神と理念を持った政党がその時点における国民の期待にこたえて合意をしていくわけでありますから、固有の政策は堅持しながら、大義に従って連立政権の合意をつくり、これに従っていく、これが連立政権の当たり前のあり方だと私たち考えているところでございます。
  83. 深谷隆司

    深谷委員 それは違うんだ。要するに、大臣になる前は自衛隊は違憲である、PKOは反対である、大臣になったら連立て合意したから賛成する、大臣が終わったらもう一回自衛隊は違憲である、PKOは反対する、そんな欺瞞が政治の世界で通用すると思ったら大間違いだ。あなたがどんなに弁明しようとも、大臣になる前と大臣のときと大臣の役と、憲法にかかわる重要な違いがあるということは政治家としては許せないことだということを考えるべきだ。  十歩譲って、百歩とは言わない、十歩譲って、きのうは、法制局長官は、憲法第九十九条によれば国務大臣は「憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」はっきり言われた。あなたは自衛隊は違憲だとおっしゃった。その考えに変わりはないと社会党の代議士諸君は言った、大臣諸君は。違憲であったら憲法に合うようにこれを変えなければならない義務を大臣は持っているんだ。それは一体どうなっているんだ。
  84. 山花貞夫

    ○山花国務大臣 お答えいたしますが、先ほどの御質問の中で、大臣になるから見解が変わったというのは、そうではありません。選挙が始まる前に国民に公約をして選挙をやったということを申し上げたわけでして、私は、時期を置きかえますと議論として正確ではないと思いますので、一言触れておく次第でございます。  そうした立場に立って、選挙の前に公約をして、そして基本政策問題についても党の固有の政策についてこう考えます、しかし連立政権ではこうですということを国民に訴えた中で選挙における審判を受けた次第でございます。  自衛隊の問題につきましても、私たちは社会党の固有の政策としては自衛隊の今日の実態は違憲である、こういう考え方を捨てるつもりはございません。しかし、連立政権の合意に従って私たちは閣内の統一を守ってこれからも努力していきたいと思っているわけでありまして、憲法九十九条の私たちの義務につきましては十分私たちは果たす中で、今後もそれぞれ閣僚としての務めを果たしていきたいと考えているところでございます。
  85. 深谷隆司

    深谷委員 それでは大臣として、自衛隊が違憲だから自衛隊をなくせと閣議の中で発言すべきだ、PKOについても断固反対すべきだ、それが政治家の信念というものだ。あなたが大臣の席で、きのうも、きょうもまた、自衛隊は違憲である、その違憲の自衛隊がPKO派遣されている、それを一方では評価している。そんな欺瞞に満ちた言い方で通すとするならば、憲法第九十九条は何のためにあるのか。第九十九条は、国務大臣は「憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」その義務を負ってない。この状態については納得いきません。納得いくような回答を寄せていただきたい。
  86. 山花貞夫

    ○山花国務大臣 私たち社会党から閣内に入っているすべての者は、どなたにも負けないで憲法を擁護する気持ちを持っています。したがって、九十九条についてもこれを何よりも尊重していく、こういう姿勢は全く変わるものではございません。
  87. 深谷隆司

    深谷委員 細川総理大臣に、あるいは官房長官に、今の問題は極めて重要であります。私たち政治の世界に身を置く者として、自分の政策やイデオロギーを捨てるということになるような状態になることは大変なことなんだ。  今まで自衛隊は違憲だからけしからぬと言い、PKOはけしからぬと言い、猛反対して議員辞職まで行ったような人たちが、大臣になったら唯々諾々としてその内閣に参列をして、その内閣で自衛隊が違憲であるということを承知の上でPKOを称賛して、大臣が終わったら何と言うつもりなのですか。また自衛隊は違憲である、PKOけしからぬ、立場が変わったら言うに決まっている、そんなことを許されるはずがない。憲法第九十九条の国務大臣は憲法を尊重し擁護する義務がある、こういう規定に明らかに抵触している。この件について、総理大臣並びに政府の共通したお考えを示していただきたい。
  88. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 これはヨーロッパなどでも連立政権において見られますように、連立政権のあり方というものは、今、山花大臣からお話がございましたように、それぞれ固有の政策があって、その固有の政策はそれとして連立政権の政策協定というものを結んで連立というものが成り立っているわけでございますから、それは私は、連立政権の本来の性格というものはそのようなものであろうと思う。それについていろいろおっしゃられても、それはそのようにしか申し上げようがないということに尽きると思っております。社会党の党員としてその固有の政策について話をされるということと、閣僚として話をされるということとは、これはまた別の問題であって、先ほどおっしゃられた九十九条の閣僚としての憲法の尊重義務とこれは次元を異にする問題である、私はそのように思っております。(発言する者あり)
  89. 山口鶴男

    山口委員長 静粛に願います。
  90. 深谷隆司

    深谷委員 連立政権を組むときには、それぞれが妥協しなければならないというあなたの考えはわかります。しかしおのずから、どこまで妥協するかという話なのです。自衛隊が違憲であるという、憲法にかかわる全く違った意見も、我慢して連立政権を組むために捨てるということではないのです。  今の総理のお答えでは納得できません。私は、総理初め政府の統一見解を改めて求めたいと思います。
  91. 山口鶴男

    山口委員長 理事会で相談をさせていただきます。理事会で相談します。後刻理事会で相談させていただきます。
  92. 深谷隆司

    深谷委員 憲法六十六条は、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」ということになっておりますから、この責任もあるわけですから、私は簡単なただいまの委員長のお言葉では納得できません。
  93. 山口鶴男

    山口委員長 それでは、深谷君の質問は保留し、次に移ります。  江藤隆美君。
  94. 江藤隆美

    ○江藤委員 まず総理にお尋ねしたいと思いますが、いいですか。(発言する者あり)
  95. 山口鶴男

    山口委員長 御静粛に願います。
  96. 江藤隆美

    ○江藤委員 細川内閣の功罪を問われたら、私は功の部分があると思うのです。今まで何でも反対だと言っておった社会党が大分大人になってきたということだろうと思う。予算委員会だったらもう必ずスケジュールが組まれておって、山口委員長もよく御存じだ、私らは国対委員やったから。もう必ずいつにはとめる、何日間横に寝るということをやっておったが、そういう社会党がこの国会からなくなってきたということは、私は細川内閣というのは大いにその発足において功績があった、そう評価しております。  そこで、まずあなたにお尋ねしたい。  あなたは選挙が終わった直後には、第三の道を選ぶ、あるいは数合わせのことはやらないと主張してこられた。それがいつの間にやらこのような、七党か八党か九党か知らぬけれどもヤマタノオロチみたいな政権になった。  そこで、今も深谷君から御質問がいろいろありましたが、連立を組まれるからには、各党の立党の精神があるはずであります、各党の綱領をよくお読みになりましたか。
  97. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 大まかには承知をいたしております。
  98. 江藤隆美

    ○江藤委員 大まかということはどんなことですか。社会党というのは何を目指した政党ですか。綱領には何と書いてありますか。ちょっとお尋ねします。――おわかりでなかったら、総理に聞いている。総理に聞いています。ほかの人に聞いているんじゃない。
  99. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 それは、私はつぶさには承知をしておりません。今大まかにと申し上げたのは、大まかに、まさに大まかに、社会主義、社会党と言っておられるわけでございますから、それは社会主義というものを基盤にして国民の福利厚生というものを考えていこう、こういうことでございましょう。
  100. 江藤隆美

    ○江藤委員 政治家が政治を行う場合に一番大事なのは、私は立党の精神だと思っています。それを忘れたときには、私は政治家というのはおかしなことになる。どんなにつらくても、どんなに苦しくても、自分たちのよって立つ基盤だけは失ってはならぬと私は日ごろ思っています。  そこで、山花さんにお尋ねします。  日本社会党綱領というのは、今も生きておるのですか。
  101. 山花貞夫

    ○山花国務大臣 社会党の長い歴史の中で、かつての綱領から始まって幾つかの文献については歴史的な文献ということに整理をいたしまして、今日新しくつくった新宣言につきましても、新しい世界の情勢の展開ということを考えながら改定の作業を進めているところでございます。  したがって、新宣言、党の規約の前文の改正を行いながら、社会党自身も自己改革をしなければならない、こういう形で現在は新宣言をどうつく り直していくかという作業を行っているところでございます。  なお、書き直した社会党の規約の前文は修正いたしましたけれども、私たちは社会民主主義を選択する、こう書いているところでございます。
  102. 江藤隆美

    ○江藤委員 私が言っておるのは、日本社会党の綱領は現に生きておるのですかと私は聞いておるのです。作業をやっておることは知っておる、私も。  それならば、私はあなたにお尋ねをする。山花さん、あなたにお尋ねする。ほかに、委員長はいないからね。  その中で、「民主的、平和的に資本主義を変革して、社会主義革命を達成すべき歴史的段階に進んでいる。」こういういろいろなことがあるが、これで選挙しているのだから、あなた、今ごろ知らぬとは言わせないよ。そして、たくさんあるから、その後にこういうのがあるのですよ、まだ。独占金融資本の直接の支配下にある重要産業の公営と農業、漁業、中小企業、零細工業の協同組合経営を進めていく、こういう考え方はもうなくなったのですか。今改定作業中だから、あれはもう昔のこととこっちで言っておるけれども、そういうことですか。そうかどうかを言ってね。あなたの弁解を聞こうとは思っていない。
  103. 山花貞夫

    ○山花国務大臣 今の御指摘は、かつての社会党の考え方でございまして、現在はそういう考え方ではございません。
  104. 江藤隆美

    ○江藤委員 それでは、これは間違いであった。間違いであった。それはそうでしょう。これをもってあなたは選挙を戦うてきたんでしょうよ。国民に訴えてきたんでしょう。党員にそのことを号令をかけてやってきたんでしょう。それはもう昔のことだったとは、そんなことは言えるものではない。だから私は、それならば日本社会党綱領というのはとうの昔に廃棄してしかるべきだったと思う。廃棄できなかったということは、よって立つものはほかになかったということでしょう。だったら、これが現に生きておるということですよ。違いますか。  それから、よくあなたたちは一党支配の歴史が終わったと言う。一党支配だったんだろうか。あなたは当時の社会党の委員長だから、あなたに聞く。社会党はいつ政権をねらったことがありますか。衆議院の定数は、過半数は二百五十六名である。少なくとも二百五十六名以上の候補者を立てて、堂々と戦いを進めてこそ、天下の野党としての使命があったと私は思う。それを長年怠ってきたのは日本社会党じゃないですか。違いますか。なぜ候補者を立てなかったか。(発言する者あり)君たちはその程度の頭だからだめなんだよ。答えなさいよ。なぜそういう候補者を立てなかったか。立てられなかったんでしょう。  ある当時の野党の委員長は何と言いました。政権をとらざる政党はネズミをとらない猫に等しいという名言を残した。あなたたちはまさに、どれもこれも、ネズミをとらない猫だったんだ。それが、たまたま、七人か八人か知らぬけれども、関取に寄ってたかって、そして土俵の外に追い出して、今綱を締めてここに座っておる。そうでしょう。社民連なんというのは、あなた、たった三人か四人のはず。相撲の番付でいえば、あなた、序の口だ。万年序の口。私はそう思うよ。違うと言うんだったらば、この次の選挙に堂々と全選挙区に候補者を立てて、各政党がみずからの信ずる道を国民に訴えるというのが私は憲政の常道だと思いますが、山花さん、違いますか。
  105. 山花貞夫

    ○山花国務大臣 次の選挙をどのように戦うかは、それぞれの党の判断でございます。  なお、前段御質問ありました、私たち――失礼しました、今の言葉を訂正します、社会党の場合にも、三十年代までは過半数の候補を立て、政権を目指していたと記憶をしているところでございます。その後、残念ながら候補の数が減ってまいりましたけれども、土井委員長の時代に連合政権の構想、田邊委員長の時代に連合政権の構想から連立政権の構想、私たちは、今日の日本の政治状況のもとにおいて一つの政党が過半数という国民支持を仰ぐことは先進諸国と同じように困難である、それならば、それぞれ違った立党の精神を持った政党が国民の期待にこたえて連合政権か連立政権をつくっていかなければならない、こうした形での政権構想でございます。今先生御指摘のような一党で過半数とるという政権構想ではございません。しかし私たちは、政権を担って国民の期待にこたえる、そうした政党としての路線については明確に打ち出してきていることについて申し上げる次第でございます。
  106. 江藤隆美

    ○江藤委員 だから、それは一つの弁解であって、連立政党になるから、今の深谷君の発言のように政治の基本となる憲法問題等についてぶち当たってくるんじゃありませんか。政党というのは、国民に、我が党が政権をとったならばこういうことをやりますということを約束して、国民支持を得るわけでしょう。いや、それはほかの人の力もかりるのよ、あっちもかりるのよ、都合の悪いのは昔は捨てて、そして都合のいいところだけつまみ食いするのよと、そんな政党がどこにありますか。  そこで、先ほどの深谷質問で、私は、あなたはかわいそうだと思うよ。あなたは入閣されるとき、こう言っている。各党の党首が皆入閣をするんだから、自分が入らなかったら細川内閣は成り立たぬ、だから私は入る人だとあなたは言って入閣された。だとするならば、社会党の委員長は、あなた、かわられたのだから、当然おかわりになって私はしかるべきだと思う。自民党でも、選挙の結果大敗をしたら、いかなる総理・総裁といえども責任をとって辞職したのがこの歴史ですよ。あなたは、選挙の大敗、それも半分になってしまった、たった七十人。にもかかわらず、その責任を全くとろうとはなさらなかった。そして、党首が内閣に入らなければ内閣が成り立たぬというならば、村山さんが委員長になったんだから、深くその座を譲るというのが私は当たり前だと思うんだけれども、わからないからお尋ねをするんです。
  107. 山花貞夫

    ○山花国務大臣 社会党が全党で判断した結論でございます。  今御指摘の責任の問題については、当時、社会党委員長として、私には二つの大きな責任があると受けとめました。一つは、先ほど来申し上げました、選挙の前に公約をして、連立政権による非自民の政権を政権交代によってつくっていくという公約を果たす責任、いま一つは、選挙に敗北をして、党内的に委員長としての責めを負わなければならない、二つの責任がございましたけれども、その二つの責任をどうとるかということにつき全党に諮った中で今日に至っている次第でございまして、民主的な議論のもとに選択した道であったことをお話しさせていただいた次第でございます。
  108. 江藤隆美

    ○江藤委員 あなたが責任をとって閣僚を辞任するという話があったということは、私は聞いたことがない。いや、こういうことを言っておったってしょうがないから、次に移りましょう。  先ほど深谷君の質問の中で、国連常任理事国の話がありました。随分と時間をかけて議論をされた。そこで、私はちょっと気になることがあるんですよ。  あなたは、自然体で、人を押しのけてまでも常任理事国に入ろうとは思わぬ、その姿勢は私は評価していいと思う。ならば、推されたら入るんですか。推されれば入ると、こういうことですか。
  109. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 当然、そういうことでございます。推されれば、それなりの役割を果たしていく用意があるということを繰り返し申し上げているところでございます。
  110. 江藤隆美

    ○江藤委員 常任理事国入りをすれは、さまざまな国連協力というものの先頭に立って日本は働かなければならぬことになっていく。それは、ある場合には経済的な問題もあるでしょうし、ある場合においては軍事面の協力も当然要請されると思う。そういう認識ですか。
  111. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 憲章の中では、兵力の提供 について安全保障理事国が義務づけられているということはございませんし、あくまでも我が国は、当然のことでございますが、憲法の枠の中で我が国としての行動をとっていくということに尽きるんであろう、こういうことでございます。
  112. 江藤隆美

    ○江藤委員 それでは、このことを心配したアメリカの上院の有力議員であるウィリアム・ロス議員がクリントン大統領に質問をした。それに対して、クリントン大統領からロス議員に対して回答があったと報道されておる。その中に、こういうことがあるんですよ。  ロス議員が言うのには、日本は独自の憲法解釈を持っておるから、やれることとやれないことがありますよと。ということはどういうことかといったら、軍事面の協力は日本はできないと言っているんですと。それから、第二番目に、日本の参加がなかったら本当の国連の安全保障理事会というのは成り立たないのではないかと。日本が都合のいいことはやるが都合が悪いことはやらないというんであったならば、国連安保理事会は動かないのではないかと。第三番目に、その結果、日本は自国のできない軍事行動を米国などの若者の生命の犠牲に頼りながら事業を行うということにはならないかと。これを指摘して、これに対するクリントンの回答は何と言ったかというと、グローバルな平和安全活動で、従来より積極的役割を果たすことを伴う、憲法を理由として特別配慮はしないという姿勢をクリントンは明らかにしたと、こう言われている。  だから、もし安保理事会に入って、日本は憲法の域を越えて国連軍に参加してくれなどという要求が出たならば、金は出すが兵は出さぬと。そのときには、先のことでありますけれども、断固として日本は譲れないから、ある場合においては国連の安保理事会を脱退せざるを得なくなるんだと思う。そういうことを配慮の上でこの問題を処理なさるのかどうか、そのことをひとつ総理に。
  113. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 昨日、どなたかの御答弁でも申し上げましたが、安全保障理事国に対する期待というものは軍事面でのものだけではなくて、軍縮でありますとか、不拡散でありますとか、あるいは環境とか人口とか、その他さまざまな非軍事的な分野での貢献というものが求められているというふうに認識をいたしております。そして、そういう分野についての貢献というものがさらに強く求められてきているというのが今日の世界における客観的な事実ではないかというふうに思っておりますし、必ずしも日本に対して求められている貢献というものは軍事面ということに限られないであろうと。恐らくクリントン大統領がおっしゃったグローバルな意味というものはそのようなことを指して言っておられるのではないかというふうに私は受けとめております。
  114. 江藤隆美

    ○江藤委員 それでは――まだ君は総理大臣じゃないから。  それでは、軍事面の協力は一切しないと、こういうふうに理解していいのですね。――わかりました。  それでは、ちょっと総務庁長官にお尋ねをしたいのです。  さっき北方領土その他で深谷君の質問がありましたが、あなたは北方四島はロシア領だとおっしゃるそうだが、その根拠はどこですか。単なる言い間違いですか。勘違いですか。それとも認識の相違ですか。
  115. 石田幸四郎

    石田国務大臣 認識の違いかというお話でございましたけれども、私どもは、本来北方領土については日本国有の領土であるということを申し上げておってきたところでございますから、その認識についてはいささかも変わりはございません。  ただ、北方四島の一日も早い返還を望むもので、不法に占拠されているという意味を申し上げようと思ったのでございますけれども、言葉足らずで御迷惑をかけましたが、直ちにその点については訂正をさせていただいたところでございます。
  116. 江藤隆美

    ○江藤委員 北方四島とか、あるいは千島がいかなる経過によってソ連軍から占領されたかの経過については御存じですか。
  117. 石田幸四郎

    石田国務大臣 これはソ連が、先ほども話がございましたけれども、終戦の前におきまして不可侵条約を破って急遽日本に兵を向けて、満州から樺太、千島の方を占拠した、そういう歴史的過程であると思っています。
  118. 江藤隆美

    ○江藤委員 せっかくおいでになるんなら、歴史的な背景ぐらいはちゃんとお調べになっておいでになったがよろしいと思う。だから一番大事なところで、まあ言葉足らずだったか勘違いであったか知らぬけれども、それは重大な失言として残っている。それが今後の外交交渉に大きな影を及ぼす。  北方四島というのは、戦争が終わったのが八月十五日、八月二十七日か八日に択捉島にソ連軍が上陸をしてきたのです。それから九月四日までの間に全島を占領して今日に至っておる。これは明らかに総理、侵略と違いますか。これは侵略と違いますか。総理に聞きます。
  119. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 多くの方々はそのように判断をしておられることと、私もそう受けとめております。
  120. 江藤隆美

    ○江藤委員 率直にそのように私も認識しておると言われるのは、私は率直で大変よろしいと思う。  ならば、あなたが、侵略戦争に対して、今ごろあの戦争は間違いで侵略戦争であったと言われるなら、さっきの深谷君に対する答弁は舌足らずですよ。一週間前に満州に攻め入って六十万のシベリア抑留者を連れていって五万人以上の人が亡くなったんでしょう。ヘーグ条約違反じゃないですか。捕虜取扱法違反じゃありませんか。何か日本があのときソ連に対して悪いことをしましたか。そして、今、中国からたくさんの残留孤児が日本に帰ってきて、人々の涙をそそる。それなら中国残留孤児というのは、天から降ってわいたのか、あるいは地からわき出たものか。なぜ中国残留孤児は今日まで悲惨な歴史を繰り返してきたか。ソ連軍じゃありませんか、ソ連軍。そうでしょう、違いますか。違うとおっしゃるなら違うとおっしゃってください。
  121. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 おっしゃるような事実もあったろうと思います。
  122. 江藤隆美

    ○江藤委員 事実もあったと言われると、事実以外のことはどういうことですか。事実もあったと言うなら、中国残留孤児が発生した、それにはほかの理由があったと言われるなら、それは何ですか。
  123. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 私もその全貌については承知をしておりませんが、恐らくそういう事実が相当部分あったであろうということを申し上げたところでございます。
  124. 江藤隆美

    ○江藤委員 これは怒濤のごとく攻め入ってきた、略奪はする、暴行はする、強姦はする。それで、自分の子供を知り合いに預けるか、あるいは逃げる途中で道端に置いてきぼりをするかして今日の中国残留孤児というのが発生をしたものであります。それを思う程度ではだめですよ。よく歴史の文献をひもといてみられたらいい。そして、あまつさえ北方領土をあれほど占領してきたんでしょう。  だったら、今度ロシア大統領が来るとき、あなたが侵略戦争として世界にわびるのだったら、日本国民に対して遺憾の意を表し、わびて当たり前じゃありませんか。それを要求するというのが、私は日本総理大臣じゃなきゃいかぬと思うんだ。それが堂々たる外交だと思う。そして、経済協力その他についてやるべきことはやったらいい。一番都合の悪いことについてはほおかぶりをして、そうして、ただ援助をする、あるいは協力すると言うから国民の中に不協和音ができてくる。ちょうどエリツィンが来るいい機会ですから、それをおやりになることを私は提案したい。あなたの御感想を求めます。
  125. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 先ほども腹に置いてということを申し上げましたが、それは外交交渉でございますから、相手の立場も考えて当然交渉しなけ ればならないことでございますし、そういうことを今この場で私が申し上げるということが、すべての外交交渉全体にわたって影を差すようなことがあってはならない。そういう配慮があって、私は先ほど腹に置いてということを申し上げたわけでございますが、当然そのようなことは腹に置いているということをひとつお含みをいただきたい、このように思っております。
  126. 江藤隆美

    ○江藤委員 腹に置いても主張しなかったら同じですよ。あなたは歴史的な発言として、過去の三千年の歴史を侵略の戦争であったと断罪された。大東亜戦争を侵略戦争だったといって断罪されたわけでしょう。それだけの勇気のある人だったら、それはあなた、ロシアに対してそれだけの要求をするのは当たり前じゃありませんか。腹に置いてとは何事ですか。それを踏まえてしっかり日本の主張を述べていきます、それが北方四島の返還交渉につながり、今後の日本ロシアとの友好の私は第一歩になると思う。国民の納得のいかないことをふたをしながら前へ進もうといったって、なかなかそうはいかぬ。
  127. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 いや、腹に置いてと申し上げている意味は、ここでそういうことを申し上げることが、今おっしゃったようなことをこの場で申し上げてしまうことが果たして、これは外交交渉でございますから相手の国の立場というものも考えなければなりませんし、そういう意味で、私はそのことは十分ひとつ任せていただきたい、こういうことを申し上げているつもりでございます。
  128. 江藤隆美

    ○江藤委員 それはここで言えずに、あなた、どこで言うのですか。ここは国会ですよ。どこかの公民館とは違う。国民から選ばれたこれほどの国会議員が、皆国の将来を案じながらそれぞれの立場で一生懸命考えておる。その場所でそういう話が言えない。相手の立場の方が国会よりか大事ということはどういうことですか。  それから、官房長官に一つ聞きます。あなたはさっき、今度エリツィン反対派を征服するために、これは外務省もそうだけれども、国会議事堂へ向けて大砲を撃ちかけた、戦車を持ってきて。反対派が挑発しだからやむを得ない措置であった、だからエリツィン支持するというなら、相手から挑発されたことであるなら、いかに武力を使おうとも、いかなる非人道的なことをやろうと、あの中には非戦闘員の婦女子もおったわけだから、それらに向かって大砲を撃ちかけても、それは正しいことであったとあなたたちは言えるのですか、官房長官
  129. 武村正義

    武村国務大臣 先ほどお答えを申し上げましたのは、反大統領派の挑発によって武力衝突が始まったということを申し上げたわけであります。テレビでごらんのとおり、あれはテレビ局の建物でございましたが、トラックが後ろ向きにぶつかるような画面が出ておりましたが、あの辺から始まったのかなと、私はテレビを見ながら想像しておりましたが、そのことを申し上げたわけであります。始まった動機を申し上げたわけです。
  130. 江藤隆美

    ○江藤委員 私が言っておることは、さっきだれか、外務大臣かな、法と正義に基づいてエリツィン大統領はやると言ったでしょう。あれがロシアの法と正義ですか。反対派がおって言うことを聞かぬだったら国会を解散して、私は共産党は嫌いじゃからな、あの保守派というやつは共産主義者らしいから。それはそれとして、しかし彼らにも人権がある、彼らにも国を思う心は私はあると思う。それを、言うことを聞かぬから国会解散せよ、言うことを聞かぬだったら兵隊を投入して、それで戦車を持っていき、装甲車を持っていって、そして大砲を撃ちかける、それが法と正義だと官房長官は思いますか。
  131. 武村正義

    武村国務大臣 私が申し上げておりますのは、この武力衝突の動機を、今もう一度繰り返してメモを見ながら御説明を申し上げたわけであります。動機はそうでありますから、エリツィン側が全く正しいということを申し上げているわけではありません。当然、御指摘のように法と正義のためであれば手段を選ばず何をしてもいいという考え方を持っているわけでもありません。
  132. 江藤隆美

    ○江藤委員 それでは、あの政府声明は不正確であったと。あれで満足ですか。満足だと言うならまだあなたと議論するわ。
  133. 武村正義

    武村国務大臣 その後段でありますが、一応この事態がほぼ鎮静化しつつあるということを申し上げながら、このことが完全に近々、鎮静化するかどうか、そしてまた鎮静化した後ロシア国民支持が、大統領におおむね高い支持があるかどうか、その辺もきちっと見きわめることも大事だろうと思っております。  そういう前提で、エリツィンが、国民のこの暴動鎮圧に対する姿勢支持されながら、なおかつ今までと同じように経済開放や民主化への努力を真剣に続けていくということであるならば、このことに対して我が国政府支持を続けていきたいということを申し上げたわけであります。
  134. 江藤隆美

    ○江藤委員 私が言っているのは、自分の意に逆らうやつはいかなる者であろうとも大砲を撃ちかけていいというのは、それは法と正義ですかと。それを支持するという、そういう政府声明という官房長官発言というのは、言葉が足らなかったと言うならそれは勘弁のしようもある。しかし、それが正しかったと言うなら、それは私はまだ後にたくさん議論がありますよ。  アメリカの立場もあればイギリスの立場もある。しかし、日本が右へ倣えで、アメリカ、イギリスその他の国と歩調を合わせてエリツィン支持するなどということは、いささか私は外交を粗末にするのではないかと思うから聞いておるのです。  もう一回。
  135. 武村正義

    武村国務大臣 御承知のように相手側が先に事を始めだということを申し上げ、テレビ等の報道でも聞いておりますように、中に武器を持って立てこもっている、そんな状況で、この大統領側の鎮圧の動きが行われたというふうに認識をいたしております。  御質問の、法と秩序あるいは法と正義を守るためであれば何をしてもいいのかというお尋ねに対しては、それはノーであります。手段選ばずという考え方はとりません。何回も申し上げますように、反大統領側が先に事を起こした、しかも銃なんかを持ってあの建物に立てこもっていた、こういう状況で、エリツィン側もああいう反撃に出たんだろう。これはまあ外国のことですから、余り偉そうに、つぶさに申し上げる資格はありませんが、そういう前提の上で私は今の認識を申し上げているわけであります。
  136. 江藤隆美

    ○江藤委員 それならば、相手が先にしかけりゃ、戦車を持っていっても大砲を持っていってもそれは正義だと言うのですか。そうでしょう。いや、もう一回答えなさいよ。相手が手を出しさえすりゃ、こっちは何をしてもいいと。あの中には婦女子もいたのですよ。だから、日本はもう少し事態の推移をよくよく眺めて、しかる後に発言してもしかるべきではなかったかと私は思うから聞いておる。
  137. 武村正義

    武村国務大臣 相手が先に手を出せば、後は何をしてもいいとも思いません。それはまあ、正当防衛その他いろんなケースが日本の法律でもあるわけでございますから、それはそのとおりであります。  日本政府としては、この暴動の起こる前もそうでありますが、エリツィン大統領改革民主化姿勢を、これを支持するという言い方をいたしております。アメリカ大統領の場合は、エリツィン大統領支持すると、この辺に日本政府とアメリカ政府との支持をする姿勢のいささか微妙な違いがあるということを申し上げておきます。あくまでも、エリツィン大統領国民の幅広い支持を得て民主化、開放の努力を続けていくならば、その姿勢に対しては日本支持をしていこうという考え方を表明しているところでございます。
  138. 江藤隆美

    ○江藤委員 それは、その発言の後の話ですよ。前と後と一緒にしなさんな。  だから、私は、こういうことはもう少し言葉を 選んで、時期をよく考えぬと、慌てふためいて我おくれじとばかりやるような外交ではいかぬと思うから、時間をかけてこのことを議論をしたわけです。  ならば、はしなくも法と正義のもとに裁かれたのが極東国際軍事裁判ですよ。  総理にお尋ねしたいのです。あなたは侵略戦争と断定をなさったわけだが、その歴史的な背景は何ですか。いかなる根拠に基づいて、いかなる歴史観、いかなる世界観に基づいて、あれは選挙の公約にもお書きになっておる。そしてまた、御丁寧にも各野党で国会決議までしょうとしたという、五十年も昔の話を。なぜですか。自民党との違いを際立たせるためにそういうことをしようとなさったのですか。あなたの年来のそれは主張ですか。それをちょっとお尋ねします。
  139. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 これは、自民党の中にもさまざまな受けとめ方をしておられる方々がいらっしゃるであろうと思います。国民の中にも、事ほどさように、歴史観の違い、世界観の違いというものはさまざまであろうと思っておりますし、一概にこれを論ずることはできないと思いますが、どこからどこまでが侵略行為であったかということについて線引きをするということは、これは難しいことであろう。しかし、多くの国民、多くの国の人々に多大の苦しみと悲しみを与えてきたということについて、私の率直な気持ちを申し上げたということでございまして、その辺はぜひ御理解をいただきたいと思っております。
  140. 江藤隆美

    ○江藤委員 それじゃ、もう一つ伺います。  あなたのおじいさんの近衛文麿公は、野村大使を通じ、あるいはまた駐日アメリカ大使を通じて、ルーズベルトと戦争をしないためにぜひ会いたい、ワシントンにも出かけます、ホノルルにも出かけますと、一生懸命に努力をなさった。しかし、お手上げになって、結局は大東亜戦争に突入したのですね。  ならば、ここが基本ですから、大東亜戦争というのはなぜ起こったのか、その歴史的背景を説明してください。
  141. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 これは今も申しましたように、個々の問題についてどこからどこまで、いつの時期にというところまで入りますと、さまざまな見方、歴史観というものがあろうと思いますから、私は、そこまで立ち入って申し上げることは差し控えなければならないであろう、そのように思っております。
  142. 江藤隆美

    ○江藤委員 私が聞いているのは、大東亜戦争はなぜ始まったのか、それがあったから、あなたは侵略戦争という発言をされたわけでしょう。一国の総理がそれほどのことを言われるならば、それなりの歴史観がなきゃいかぬと思うから、大東亜戦争はなぜ始まったのですかということをあなたに聞いているのです。
  143. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 さまざまな要因があったと思います。戦争には、これは申すまでもなく、どちらが必ずしも悪いといったような決めつけ方ができない部分も多々あろうと思いますが、しかし、昨日も御答弁でも申し上げましたように、これら一運の期間の我が国の行為というものを振り返ってみますと、胸に手を当てて考えてみるといろいろ思い当たる節があるのではないかそういう気持ちを率直に表明をするということが、これは、我が国としてこれから国際社会の中で生きていく上で極めて重要なことではないか、そういう意味で私は率直に申し上げたところでございます。
  144. 江藤隆美

    ○江藤委員 私が聞いているのは、大東亜戦争は、これほどの世界に大きな波紋を描いた大東亜戦争というのは、そもそもいかなる原因をもって起こったとあなたは認識をされておりますかと、それを私は聞いているのです。  あなたが言われるように、胸に手を当てて考えれば、それは、さまざまな国に迷惑をかけたりあるいは苦しみを与えたこともあったでしょう。あるいは、日本の軍国主義は我々から考えても許すべからざる行為をしたこともあるでしょう。だけれども、あの戦争は間違いであって侵略戦争であったとあなたが断定するのであれば、それなりの歴史観がなかったらおかしいじゃないですか。だから、大東亜戦争はなぜ起こったのですかと私は聞いているのです。
  145. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 今申し上げましたとおり、さまざまな要因が戦争というものにはあろうと思います。一概にこれが原因で起こったということを決めつけることはこれは難しい。それは戦争のほとんどの場合に当てはまることではないか。この大東亜戦争の場合にも、何か一つの点を取り上げて決めつけるということは、これはなかなか難しいことであろうと思います。  しかし、結果的に多くの人々にあれだけの痛みと苦しみを与えたということについて、我が国として率直な気持ちの表明をするということが必要ではないか、このように私は認識をしているということを申し上げているところでございます。
  146. 江藤隆美

    ○江藤委員 ならば、あなたはそう言うべきだったんですよ。侵略戦争などというどぎつい表現は慎むべきことであったと私は思う。あなたが今言われたような話ならば、我々もそれは顧みるところがあるし、納得するところはある。  それなら、あなたはさまざまな原因があったと言われるが、日清、日露の戦争は何で起こったか御存じですか。満州事変はなぜ起こったか、盧溝橋事件、日支事変の糸口となった盧溝橋事件は何で起こったか御存じですか。
  147. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 大体承知しておりますが、それは一々申し上げても仕方がないと思います。
  148. 江藤隆美

    ○江藤委員 国会の質問に対して一々答弁しても仕方がないとは何事ですか。あなたは、大変申し上げにくいけれども、日清、日露戦争の原因あるいは満州事変の原因あるいは盧溝橋、大東亜戦争、一連の、日本が戦争に引きずり込まれていったその歴史を御存じないんじゃありませんか。  政治家の一番大事なことは、我々の時代だけがこの世ではない、この国の歴史を子や孫の代に正しく伝えていく責任が我々にはある。だとするならば、我々の祖先は外国を侵略して、許しがたい人権を無視し、領土を略奪し、財宝を奪い、婦女子を犯し、そういう世界に顔向けのできないような祖先であった、そういう行いをしたのが我々の祖先であったと歴史を引き継ぐわけにはいかぬ。だから私はあなたに聞いておるのです、考えがお間違いではありませんかと。  これは、補助金がちっとふえるとか米が足りるとか足りぬとかよりか国家の基本にかかわることです。国家の基本にかかわること。だからあなたにそのことを聞いているんです。
  149. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 どこからどこまで線を引くか、そこにどういう原因があったかどういう要因があったかそういう区切りをつけるということは、線を引くということは、これはなかなか難しい問題であるというふうに私は思います。  しかし、今まさにおっしゃったように、これこそ我が国にとって、国民にとって子や孫の代まで大事なことである。私は、今この日本国民としての気持ちを世界に向かって表明をする、今おっしゃいましたように、さまざまな行為を我が国は過去において多くの国に対してしてまいりました。そのことに対して率直なおわびと反省の気持ちをあらわすということは、これは将来のためにまさに国民的な課題として必要なことではないかと、私はそのように思っているところでございます。
  150. 江藤隆美

    ○江藤委員 ならば、侵略戦争という発言は適切ではなかったということになるんじゃありませんか。あなたの率直な今の話なら私はよくわかるのよ。迷惑をかけた人もおる、随分とつらい思いをした方もおる、その人たちに胸に手を当てて相済まぬことをしたなというのを率直にあらわしたというならいいが、侵略戦争というのはいただけない。なぜならば、我々の祖先は屈辱に耐えながらサンフランシスコ条約を初めとして各条約、協定を結びながら、後世に迷惑がかからぬように懸命の努力をしてあそこで区切りをつけたのと違いますか。それを今ごろ、五十年たって再び覆すよう な発言というのは、それは総理大臣として私はとるべき行為ではないと、こう思うのです。  それならあなたにもう一つ聞きます。  今日日本は、我々も極東軍事裁判の結果というのは、全部当時の日教組、悪名高き日教組が、マッカーサーのいわゆる宣伝工作のために洗脳戦術としてつくった計画のもとに、あれは侵略だった、侵略だった、侵略だったと言って教育をした。あなたたちはその教育を受けられたんでしょう。  しかし、ここに東京軍事裁判の判事であったパル博士、後の国連司法委員会の議長ですよ。この人の主張というのは欧米においてその後高く評価をされて、最後には国連司法委員会の議長にまでなった人です。パル論文、パル判決というのはとうとう東京裁判でも読み上げられることはなかった。この人は、全部日本は無罪であると主張した。戦勝国が戦敗国を裁く資格はない、ならば戦勝国も裁かれるべきものであると堂々と論陣を張って、そしてこれは国際的な法学者が欧米において皆支持したから国連の司法委員会の議長までなられたのですよ。読まれたことありますか。ないでしょうな。  ならばもう一つ聞きます。  私は、ここに外務省がおるか知らぬが、外務大臣おるんだから。外務省に岡崎久彦さんという人がおった。ロシアの公使を務めて、それからボストンの総領事を務めて、それからサウジアラビアの大使をして、そして最後にタイの大使を務めた人ですよ。私は非常に尊敬している。あの人が訳した本ですよ、これは。序文にこう書いてある。「亡き牛場信彦大使に捧ぐ」。大先輩である牛場さんが、岡崎君、これが戦争の、大東亜戦争の真相だ、君はいつの日かこれを訳して、どこの書店でもいいからこれを出版して、多くの人に読んでもらうようにせいと言って言い残されたといってこれを翻訳したものですよ。  この中に、だれが書いたかといったら、ハミルトン・フィッシュという人ですよ。ルーズベルト大統領大統領選挙の政敵であった人です。この人は、日本が真珠湾攻撃をやって、一九四一年十二月八日にアメリカが日本に宣戦布告することになったそのとき、彼は有名な戦争推進のための賛同演説をやった。これが全米にラジオで報道された。これ全文が載っておるのです、全文が。私は誇り高く胸を張ってこの演説をした、しかし後になって、この戦争は日本がついにはめ込まれた戦争である、戦争に引きずり込まれたのは日本だったということを知るに及んで、私はあの演説を極めて恥ずかしく思うとこれに述べておるのです。読みますか、いつか。国会図書館にありますから読んでください。  これはルーズベルト大統領の娘婿が書いた本ですよ。カーチス・ドールという人が書いた本です。ルーズベルトはこう言っておったというのです。おれは戦争をするんじゃない、戦争をつくるのであると。だから、真珠湾攻撃を二日前に知っておりながらも、ついに現地にそれを指示することなく、責任をとらして首切ったわけでしょう。だが、彼らは軍事裁判を開けと言ったけれども、とうとうその機会はなかったわけですよ。  私は、日本の戦争を礼賛しようとかどうしようということではないんです。あなたも言われるように、戦争が起こるのにはそれなりの原因がある。それなりの原因がある。だから、よって来るというのはどこからどこまで線を引くのかわからぬから、そんないいかげんなことを言ってはいかぬ。さかのぼって、さかのぼって、さかのぼって、建国の時点までさかのぼって、そして我々は歴史を見詰めなきゃならぬ。政治家が歴史を断定するということは私は最も危険なことだと思う。これらのことは後世の歴史家が判断することであって、一国の総理が侵略戦争などと軽率な発言をすべき性格のものではないと私は思うから、あなたに聞いておるのです。  だから、結局はパル判事は無罪を主張したわけでしょう。あのときの主席検事のキーナンですら、数年たったら、あの極東軍事裁判は数多くの誤りがあったと自分が述懐しておるのです。一九五一年には、日本を占領したマッカーサーがアメリカの上院において、日本は資源のない国である、それは、すべて資源のない国がそれの糧道を断たれたならば彼らは命をかけて戦う以外にはなかったであろう、あれは自衛のための戦争であったと言ったのは日本を占領したマッカーサーですよ。  そういう数々の、我々も不勉強、私なんかこれ二十冊ぐらい読んでみた、あれから、あなたの発言から。いい勉強させてもらったと思って、それは感謝していますよ。その中には、日本軍国主義を打倒せよという独特の日本の学者たちもいます。しかし、押しなべて言えることは、外国の法学者というのは皆、あの戦争とは一体何であったのか、日本は本当に最初から侵略の意思があったのか、東京軍事裁判で言ったように共同謀議をもって、それで最初から戦争に突っ走っていったのか、外国の学者は皆そう言っていますよ。  ムソリーニはエチオピアを占領したとき、ルーズベルトはおまえの国に石油はやらぬと言った。そうしたら、石油の輸出を禁止するということは我が国に対するアメリカの宣戦布告であると開き直って、それをやめさせたと言われておる。  あの当時、リットン報告書でもあるでしょう、ちゃんと。資源のない日本がABCDの包囲陣で経済封鎖をされて、米も、あのときは米もですよ、石油も、米、食糧もすずも鉄も、そしてゴムも、全部のものを輸出を禁止されて首を絞められたら屈服するか戦うしかなかったといって、リットン報告書にちゃんと出ていますよ。これは国連の決議に基づいた調査団ですからね。そういうことをよくよくお考えになれば、あなたの発言は極めて不適切であった。  東南アジアに、大きい声では言えぬことだけれども、あれは皆独立国ではなかったんですよ。十五世紀以来欧米諸国は、植民地競争をして植民地をつくっていった。戦後、皆それは独立しましたよ。  あなたはインドの独立の歴史を知っていますか。そういうことを一国の総理大臣になったら深く静かに考えてほしいと私は思う。ですから、この際に、何かありましたら答えてください。
  151. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 大変御高説を拝聴させていただいて、私もよく勉強させていただきました。いずれ、今そこで挙げられましたような本も折を見でぜひ読んでみたいと思っております。  しかし、今お話がございましたように、確かに戦争にはさまざまな要因があろうと思います。さまざまな角度からの見方があろうと思います。それは事実でございますし、周りを取り囲まれて首を絞められて何もしないのか、そういうことは、これはまたあり得ないことであろう、それに向かって立ち向かうことが、これが正義ではないのかと言われれば、そうではないという側面もございましょう。ですから、一概にそれを決めつけるわけにはいかないと思います。  しかし、我が国の過去における一時期の行為が、これはどこからどこまでというふうに特定して申し上げることは、なかなかその要因等々をかんがみますと難しいことでございますが、しかし、よく考えてみると、やはりそういう側面が、侵略的な行為、侵略戦争と言われても仕方がないような行為というものがあったということは、これはやはり否定し得ない事実であったろう。そのことを、これは今もお話がございましたように、極東軍事裁判でも、戦勝国の裁判でございますからそれを一方的に受け入れるということはおかしなことではないか、それはもちろんそういう議論もございましょうが、しかし、それをとにかく我が国は、八カ国ですかその連合国の裁判というものを受け入れて、そして今後二度とそのような過ちを繰り返さないということを国際社会に誓って国際社会に復帰をしたということもこれはまた厳然たる事実であろうと、私はそのように思っております。  そういう趣旨で、私は私の気持ちを率直に申し述べさせていただいた、こういうことでございま す。
  152. 江藤隆美

    ○江藤委員 それなら極東国際軍事裁判というのは何でできたのかということを、あなたは御存じですか。あの法律はなかったんです、あれは。裁く法律はなかったんですよ。そうでしょう。法制局長官、そうでしょう。それで、あれは大東亜戦争の犯罪人を裁くという名のもとに裁判条例をみずからでっち上げて、そうしてつくっただけの話でしょう。あの判決もお読みになりましたか。判決の理由のついてない判決なんですよ、あれは。  だから、一部にそういうことがあったと言われれば私も否定はしない。だけれども、全体を律して侵略戦争というのは間違いだと言っているんですよ。まだ固執しますか。
  153. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 繰り返し申し上げておりますように、私は特定の時期等を、あるいは地域等を特定して申し上げているということではございません。
  154. 江藤隆美

    ○江藤委員 あなた、一国の総理ならそんないいかげんな言い逃れをしちゃだめですよ。認識が足りませんでした、勉強が足りませんでしたと言いなさいとは言わない。だけれども、あれは私の本意が正しく伝わらなかった、あるいは舌足らずであったとでも言うならまだ許せると思う。これはまた、たった二時間ぐらいでは足らぬから、またあなたと三時間、四時間やりますよ。それは覚悟しておいてください。  そこで、時間もないことですから、近ごろ気になることがある。盛んに、生活者優先それから消費者優先という言葉が出てきた。生産者はどこへ行ったやらわからぬ。そして、来年の予算では、東京の新幹線やら地下鉄やら公園やら博物館やら、あるいは住宅やら下水やら、そういうものに重点配分をする。地方の道路やら溝やら土地改良やら、そんなのは先送りでいいではないかということが何となく伝わってきておる。そういうことはありませんか。総理に聞く。
  155. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 そういうことはございません。地方の振興のために多極分散型の国土を形成していくために、生活者重視の視点に立って、生活者重視と申し上げておりますのは、昨日もどなたかの御答弁で申し上げましたが、これは何も都市生活者のことだけを申しているわけではございませんし、生産者も消費者も含めてすべて生活者でございますから、そういう観点であまねくそのような成果が均等に行き渡るように目指していきたい、まあ目標でございますが、そういうことを申し上げているところでございます。
  156. 江藤隆美

    ○江藤委員 日本新党の公約でもちゃんとそう言っていますよ、新生党もそう言っているわけです。高速道やら新幹線やらいろいろつくれということを言っておるということですよ。ところが、近ごろは国民の中でどういう風潮があるかというと、細川さんになったらもう地方は置いてけぼりだと。  大蔵省だってそうでしょう。地方の赤字になるような高速道路は、それはいいじゃないか、港もあるいは土地改良もいいじゃないか、もっとほかのところに予算を回せ、こう言うのでしょう。日本はいつ株式会社になったんですか大蔵大臣
  157. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 今総理もお答えになりましたように、生活者の立場にも重点を置いて考えようということを言っておられるわけでありまして、きのうも出たように、農業地域であれば、農民の方は生産者であると同時に生活者でもあるわけでありますし、そういう意味においては、農村に対してしかるべきものを配分するのは当然のことだし、また、多極分散という中で新しい地域の中核をつくるときにいろいろなそういう生活関連施設をつくるのは当然のことだと思っておりまして、今江藤委員がおっしゃったように、農村に公共投資を配分しないというような発想とは全く違うということを御理解いただきたいと思います。
  158. 江藤隆美

    ○江藤委員 それじゃ、建設大臣にお尋ねする。  四全総に基づいて全国高速道路網の建設が進められておる。夏には約千七百キロにわたって環境アセスメントの手続に入るはずだったはずです。九カ月かかる、環境アセスメントの手続だけで。そして、この秋には約千二百キロの施行命令を出すはずであった。なぜですか。環境アセスメントに入れないのはなぜですか。建設大臣にお尋ねします。
  159. 五十嵐広三

    ○五十嵐国務大臣 お答え申し上げたいと思います。  まず、細川内閣はどうも生活者、消費者優先ということで、殊に地方にかかわりの深い道路やあるいは河川等についてどうも力が及ばないのではないかというようなお話もございましたが、全くそういうことではない。殊に私ども所管のものにつきましても全力を挙げて、むしろ今の一極集中の体制というものを……(江藤委員「違う、何で環境アセスメントの手続に入れないのだと聞いておる」と呼ぶ)これを排除して、しっかりと多極分散の国土を形成するためには建設行政でも最善の努力をしていきたい、こういうぐあいに思っている次第であります。  そういう上で、御承知のとおり、自動車高速道路計画が今一万一千五百キロ……
  160. 江藤隆美

    ○江藤委員 そんなことを聞いているんじゃない。あなたは下がりなさい。
  161. 五十嵐広三

    ○五十嵐国務大臣 今その話に入るところであります。
  162. 江藤隆美

    ○江藤委員 あなたにそんなことを説明を受けなくてもちゃんと知っておる。
  163. 五十嵐広三

    ○五十嵐国務大臣 答弁中です。今その話に入るところだ。
  164. 江藤隆美

    ○江藤委員 最初からやりなさいよ、最初から。
  165. 五十嵐広三

    ○五十嵐国務大臣 最初からったって、話には流れがあるでしょう。
  166. 江藤隆美

    ○江藤委員 流れじゃない。質問に答えたらいい。余計なことは言わぬでいい。
  167. 五十嵐広三

    ○五十嵐国務大臣 お答えをしますから聞いてください。  全体で約一万四千キロの高規格幹線道路がある。このうち高速自動車が一万一千五百二十キロ、そのうちで今供用になっているのは四七%ぐらいでありますが、御指摘の点は、これは整備計画に指定をされていて、そうしてまだ施行命令が出てない、この点についてのお話であろうというふうに思います。これが約千二百キロぐらいある。  そこで、この千二百キロの施行命令の出てないものをとにかく一日も早くこれを施行命令を出していくということのために、我々も今努力をしておる。殊に大蔵省と、これはいずれにいたしましても国費に関係することでありますし、あるいはまた一方では、料金の問題もこれは一体このままでいいのかという議論もあるところでありますから、したがって、そういう点も含めながら、しかしそれにしてみても、例えば測量、設計等については前倒しをして施行命令をする必要があるのではないかということで今大蔵大臣とも話をしていて、少しでも早くこれの命令を出すように今努力をしていることを御報告を申し上げたいと思います。
  168. 江藤隆美

    ○江藤委員 建設大臣が何も努力してないとも言わぬし、全国の高速道路計画が何ぼになっておるなんて、あなたから聞かぬでもそんなことはおれの方が知っているんだ。相手を見てちゃんと答えなさい。  私が言うのは、地方になればなるほど災害でやられた、台風でやられた、みんな打ちひしがれておるのよ。打ちひしがれておる。そのときに、この夏にはおれらのところもいよいよ環境アセスメントに入って、そしてこれから建設への足取りが進むであろうと皆楽しみにしておった。それがあなた、八月がまだ進まぬじゃありませんか。なぜできないんですか。大蔵省が抑えているからだろう。大蔵省が抑えぬだったら建設省やったらいいじゃありませんか。そうでしょう。そして、十一月には千二百キロの施行命令を出して、来年にでも測量、設計、用地買収、着工の段取りになるはずだったはずですよ。それができないというの は、一極集中への方向をだんだんだんだんと細川政権がとり始めて大蔵大臣がストップをかけたからできないんでしょうが。  それなら施行命令をいつ出して、それから環境アセスメントの手続にいつから入りますか。一分間で答えなさい。前置きは要らぬわ。     ―――――――――――――
  169. 山口鶴男

    山口委員長 江藤委員の御質疑の途中でございますが、ただいま委員各位の席の後方にマリア・デ・ロス・アンヘレス・モレーノ・ウリエガス・メキシコ合衆国連邦議会下院議長御一行が本委員会を傍聴に見えております。御紹介を申し上げます。拍手で歓迎の意を表したいと存じます。     〔拍手〕     ―――――――――――――
  170. 山口鶴男

    山口委員長 江藤君。
  171. 江藤隆美

    ○江藤委員 今建設大臣が道路局長から知恵を授かっておる途中だから。あなたは大蔵省との関係ともおっしゃったが、来年、建設省は約一兆三千億の高速道路計画を持っておる、それに対して、国費は何ぼ要求していますか大蔵大臣
  172. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 要求ベースの数字は正確に理解しておりませんが、ただ、今のお話は建設大臣からも聞いておりますし、今早急に検討を進めているということだけ申し上げたいと思います。
  173. 江藤隆美

    ○江藤委員 一兆三千億の事業費を予定しておるが、一般公共事業費は千五百億ないんですよ。千四、五百億の一般公共事業でもって、あとは財投資金でつくるのが高速道路ですよ。それにブレーキをかける理由はないじゃありませんか。  これはあなたの北海道でも、高速道路のないためにどれだけ過疎に悩んでおるところがありますか。裏日本がそのとおり、四国がそのとおり、九州においてもそのとおり。高速道路のないところというのは全部後進地域になってしまっている、残念ながら。だから、みんな一生懸命、各国会議員も、あるいは関係者も一生懸命になって高速道路をつくろう、新幹線をつくろうと躍起になってやっているのですよ。道がなかったならば、そこには生活ができない時代になってきたということですよ。だから私は、細川内閣がますます一極集中の方向に転換したのではないかという心配をしておったことが一つ。  もう一つは、さっきから言うように、八月から環境アセスメントの手続に入るべきものがいまだに入らぬ。理由にならぬじゃありませんか。あなた前倒しとかなんとな言われる。それなら早速やりますか。やるかやらぬかだけ。いや、あなたに聞いてない。大蔵大臣、施行命令と環境アセスメントの手続については建設省とすぐ相談をして、なるべく早くその結論を出します、それだけでいいです。
  174. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 今の問題は既に建設大臣から聞いておりまして、早急に検討を進めている、そしてなるたけ御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
  175. 江藤隆美

    ○江藤委員 あなた、聞いておるだけじゃだめなんだよ。やらなければだめなんだよ。言うだけでやらぬやつをうどん屋のかまというのだよ。  だからこれは、例えば河川改修でもそうですよ。総理は、あなた現地に行かれたのでしょう、鹿児島に。昔から、今の日本の河川改修というのは、これだけの水が流れてくる、だからこれだけの堤防をつくらなければいかぬといって計画を立てておるのです、皆、全部。それがことごとく、山が荒れてきた、遊水地帯がなくなってきた、いろいろな事情で予想以上の水が流れてくるから災害が起こるのですよ。昔のような日本が貧しい時代の水が流れてくるのと、浸水するのと今は違うのです。国民の所得もふえた、機材もふえた、生活も豊かになった、それがばっさり水に浸るわけだから。  だから、鹿児島を視察されたのは大変御苦労なこと、よかったと思いますよ。だったら、なぜこの河川災害が起こったという、ならば日本の危険河川についてもう一回計画を見直して、将来災害が起こらないようにしようというのが政治家の務めじゃありませんか。だから、河川改修一つとってみても、それは膨大な金が要る、それを計画改定するとなると。だから、地方の港だとか、あるいは空港だとか、あるいは土地改良だとか林道だとか、そういうものに、病人の布団を引っぱがすような、そういうやり方をしてはならぬ、こう思うから申し上げたんです。  最後に、時間がありませんから、ウルグアイ・ラウンドについて一言申し上げておきます。  一言でいいから、米の自由化はいかなることがあろうともいたしませんという答えなら、これでもう終わりです。総理のお考え
  176. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 今までどおりの基本方針で臨むと繰り返し申し上げてきたところでございます。そのとおりでございます。(江藤委員「もう一回、私に答えなければ」と呼ぶ)そのとおりでございます。今までどおりの基本方針で臨むということでございます。
  177. 江藤隆美

    ○江藤委員 このことについてはさまざまな意見があります。米が足りないからこの際に一挙に自由化すべきであるという議論もあれば、あるいはまた部分自由化をすべきであるというもの、あるいは関税化を受け入れるという議論もある。  私は抜かったと思うことがある。それは、牛肉・オレンジの自由化、十年やった。外務大臣も一緒にやってきた。今にして思うと、関税化というものがいかに怖いものであるかということを今つくづく私は反省をする。  今日災害が起こるというのは、昭和三十七年に木材の完全自由化をしたからじゃありませんか。さまざまな理由はありますよ。それによって山は人々から見捨てられていったわけですよ。もうこれから山なんか、これは農林大臣のところの日田なんか、山なんかに行って働くやつはいませんよ、残念ながら。それはさかのぼると、やはり無条件に木材の完全自由化をやってしまった、数量制限もできなければ関税をかけることもできなかった、だから、それとともに山は荒れてきたのですよ。  これから米の関税化について、それを受け入れるなどという話は全く、円高が進んでみなさいよ。私らがあれをやったころは二百五十円ぐらいか。今は百円のときですよ。関税が下がった上に今度は円高で安く入ってくるわけだから、三〇%もことしだけで輸入牛肉は安く入ってくるという結果になってしまった。その点、私は配慮が足りなかったと思ってみずからを今反省をしておる。だから、そういう関税化などというのはやってはいかぬ。  それから、足りなかったからといって、自由化とは違いますよ、これは。御承知のように、日本は戦前も米を輸入しておったのですから。日本が最後に輸入をとめたのは昭和四十四年からですよ。昭和四十一年あたりは百万トン以上入れておるはずです。五十九年も十五万トン韓国から入れておる。だから、今の制度のもとでも足りないものはいつでも輸入して国民に迷惑をかけないというのが、これが農林水産省の基本方針でなければならぬと私は思う。だから、あたかも米の問題を譲歩しなければウルグアイ・ラウンドは交渉が決裂をして、その責めを日本が一身に負わなければならないがごとき風潮のあることを私は大変残念に思う。  外務大臣に聞きます。米を譲らぬからといってウルグアイ交渉が失敗しますか、合意しませんか。あなたはその道をずっとやってこられたから、御存じだから、あなたに聞いてみるのです。
  178. 羽田孜

    羽田国務大臣 ただいま江藤委員の方から御指摘があったわけですけれども、まさに今お話がありましたように、四十四年に国会に同じ議席を得まして以来ずっと農政をともに御指導をいただいてまいりました。  そういう中で、私ども牛肉のあるいはかんきつの交渉に臨んだときのことを今思い起こし、そしてそういった問題の経験を踏まえながら、今までもケアンズ・グループの、きょうは後ろの方に議員の方々もお見えになっておりますけれども、 その皆さん、あるいはダンケルさんたちにも申し上げました。それは、関税で処理をしたために、関税で処理するということ、相当高い関税であったわけですけれども、しかし、今お話があったように、円高でこういう目に遭ってしまったというのが現実であります。ですから、ダンケルさんに言ったことは、あなたがずっとこれを高い関税を守ってくださっているんだったらこれはいいんですよ、しかし、あなたはこれが終わったらおやめになる、あるいは途中でおやめになるかもしらぬということも率直に実は申し上げまして、しかも関税というのは、必ず日本の場合には大きな黒字をつくるものですから、こういう国に対してはもっと関税を下げろ下げろと毎年のように実は言われるという現実があります。  ですから、そういう意味で、例外なき関税化、包括関税というのは非常に苦しいなということをこれからも私どもは率直に申し上げると同時に、日本の国というのはやはり世界で最大の食糧の輸入国であるということをしっかりと申し上げてまいりたいと思っております。  そして、最後のところで、今言われたことをちょっと一言言ってください。
  179. 江藤隆美

    ○江藤委員 米を譲らなければ全部の会議が合意が得られないのかということです。
  180. 羽田孜

    羽田国務大臣 失礼いたしました。今その議論につきましては、スモールパッケージといいますか、そういう議論があることも私ども承知をしております。ただ問題は、やはり十五項目、これはガットが始まったときの約束事になっておりますけれども、やはりスモールパッケージでやるということになりますと、どこの国のどこの問題だけということになると、これはもう全部がまとまらなくなってしまうということの中で、農産物も含めて、農業問題も含めて全部をやはりパッケージにしてやらなければならぬということはあろうと思っております。  ただ、私ども日本の米等につきましての事情については徹底して、今総理からお話があったとおり、各国に対して理解を求めていく、この姿勢を貫いていきたいというふうに思っております。
  181. 江藤隆美

    ○江藤委員 昔は石油が国際戦略物資だったですね。今日からは私は食糧だと思いますよ。食糧をとめられたらどうにもならぬ。だから、大東亜戦前に日本は食糧をとめられたわけですよ。石油とともに食糧をとめられた。それから、今日になっても、近くなっても、二十年近く前に大豆の輸出を禁止されたのですね。で、豆腐が二十倍にもなった歴史がある。そうでしょう。そして、ソ連も金がないというので、金を払わぬからといってアメリカから二回も三回も小麦の輸出をとめられましたよね。イラクもやられた。  だから、我が国が金があっていつでも金さえ出せば食糧が買えるというのが末代まで続けばいいけれども、そうでないときもあれば、相手の都合も出てくる。だから、少なくとも基礎食糧は国内で自給しよう、こう言っておるのです。  もう一つ、あなたに聞きます。  私は、日ごろからこう思っているのですよ。あなたは国会決議を尊重すると、こうおっしゃったですね、きのうも。そうすると、どうもあの国会決議なるものは、日本の米の量は一千万トンと考えているんじゃないかと私は思う。しかし、本当にどこからも食糧が入ってこぬようになって、基礎食糧である米でもって日本が食いつなごうと思ったら、日本の米の必要量は千三百万トン近くに私はなるはずだと思うが、違いますか。今が、生産量が約一千万トン、消費量が一千万トンというのだけれども、実際は米だけ食っておったら日本は千三百万トンも私は自衛のためには必要な食糧の量だ、こう思うのですが、違いますか。あなたも熊本県知事しておったから、ちょっとは農業のことはわかるでしょう。
  182. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 いや、全くそのとおりでございます。
  183. 江藤隆美

    ○江藤委員 だから、日本が米の自由化をしないのはけしからぬという言い方は、私はいささかそれは的外れだと思う。既に日本は千三百万トン、四百万トンの生産量ありますよ。それをアメリカあるいはその他の国々の小麦によって、小麦の分が既に三百万トン、それは開放してあるんだから。だから日本が米を譲らぬのはけしからぬという同じテーブルに立った議論の仕方は私はおかしいと思う。本来ならば日本は、食糧安保というなら千三百万トン日本の米をつくらなきゃならぬ。しかし、歴史的な背景もあって、既に三百万トンは小麦によって、米ではないが小麦によって、アメリカの主要食糧である小麦によってそれは開放しておるんだから。そうでしょう。今度でもアメリカは米を買え米を買えと言うけれども、アメリカに何ぼありますか。二、三十万トンのものでしょう、今日本に輸出できるのは。だから、既にそれだけのものは日本は米の分野についてはこれは市場開放しておるというスタンスに立つのが本当だと思うのだが、農林水産大臣、どう思います、
  184. 畑英次郎

    ○畑国務大臣 ただいま江藤先生のお話を伺いながら、私自身もその先生のお気持ちを体して、さらにまた国会決議を尊重しながら対応してまいりたい、かように考えております。
  185. 江藤隆美

    ○江藤委員 もう一言言っておきますが、なぜアメリカが日本に対して米、米、米、米、米、米と言うか、二言目には。理由は一つでしょう。外務大臣は御存じのとおりです。アメリカは農業補助金を千二百億出して穀物で輸出しているんだから。目の前の敵は何だと言ったら、ECですよ。EC諸国は一兆三千億輸出補助金を出してアメリカと市場を争っておるわけだから。だから日本の米を開放させて、それをてこにしてアメリカはECの不当な輸出補助金を削減させよう、あわせて自分の国の農業補助金を切っていこう、こういう発想のもとに米に向かって集中攻撃しておるんでしょう。外務大臣、違いますか。
  186. 羽田孜

    羽田国務大臣 まさにECの場合にももうこれ以上補助金が出せない、またアメリカの方もそういうものを出せない、そういったものもそこの流れの中にあることはやはり一つの私はファクターであろうと思います。
  187. 江藤隆美

    ○江藤委員 したがいまして、私はそれは年内に合意に向かって各国が同意することは結構だが、ウルグアイ・ラウンドの交渉というのは十五分野にわたるものであって、金融からサービスから証券からたくさんある。その十五分の一の農業問題であって、その農業問題の中でこの米の問題というのはまたその一部分でもある。だから、米を譲らなければウルグアイ・ラウンド全体がだめになる、そういう発想というのは、日本政府は全部、皆の人が捨ててもらわなければいかぬと私は思う。  それからもう一つは、こういう背景があるわけですから、それぞれの国には戦術、戦略がある。だから、日本がウルグアイ・ラウンドの交渉の経過について、まあ農林省、一生懸命やっていますよ。だけれども、彼らは同根の民族ですから、どこで何の相談をするやら、我々のはかり知れないこともある。だから、慎重には慎重にこれを取り扱って、いささかなりとも、米の開放はやったがウルグアイ・ラウンドは片づかなかった、こういうことがないように。だから、これからウルグアイ・ラウンドに臨む最大の重点というのは、アメリカとECとの交渉の結果を日本は静かに見守って、その後適切な対応をするというのがこれからの方針でなければならぬと思うのですが、どっちが答えますか。
  188. 畑英次郎

    ○畑国務大臣 先ほど来江藤先生のお話を伺いながら、我が意を得たり、かような考え方を持っておりますから、その姿勢をもって努力をしてまいりたい、かように考えております。
  189. 江藤隆美

    ○江藤委員 それでは最後に、総理もそのことについては農林水産大臣と同意見である、しかも所管の官庁は農林水産省でありますから、ウルグアイ・ラウンドの米の交渉については全権を農林水産大臣に、当然のことでありますがこれは委任する、こういうことでよろしゅうございますか。
  190. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 それは、米の問題を初めと して農業の問題等々につきましては、所管大臣が当然、所管しておられることについては全力を挙げて対処される、最終的な責任は私が負う、こういうことでございます。
  191. 江藤隆美

    ○江藤委員 それでは、これで質問を終わります。
  192. 山口鶴男

    山口委員長 これにて江藤君の質疑は終了いたしました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  193. 山口鶴男

    山口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。石原慎太郎君。
  194. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 きょうは、実は北富士の演習場と総理の侵略戦争問題についてちょっとお尋ねしようと思いましたら、どうも内閣のスタッフが非常に神経質でしてね、日がな夜がなうちへ電話をしてきて、何を聞くんだ、何を聞くんだと。これは、あなたが新しい内閣でやろうと思われている議会運営の本意に随分反するんじゃないかと思って、私は、ごく常識的なことしか尋ねないから、総理の歴史観なるものを構築している常識でお答え願いたいということを申しました。  昨日の橋本政調会長の例の侵略戦争問題についての質問にも、率直な気持ちをあらわしたとお答えになっておりますが、それはそうなんで、結構なんですけれども、前後して、さしたる明確な歴史観も示さずに、あいまいなままそれを愚直に言われても周囲が困るし、現にいろいろ被害が出ている。  先般、ヨーロッパから帰ってきました大きな会社の社長が、彼の会社の支社のイギリスとオランダにいるビジネスマンたちが、ほら見ろという形で、非常にイギリスなりオランダの人たちから、改めてあの太平洋戦争における日本のイギリスやオランダに対する戦争責任、捕虜の虐待云々もあったんでしょうけれども、それについて言われて、非常に肩身の狭いというか迷惑しているという話を聞きましたが、むべなるかなという気がいたします。  そこで、あなたの本意をもう少し具体的にお聞きして、細川さんのそれなりの歴史観というものを私はお聞きしたいと思うんですが、まず、過去の戦争と言われますけれども、どの戦争とどの戦争を指して侵略的な戦争だったと思われているのか、まずそれをお聞きしたいと思います。
  195. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 再々このことについては御答弁申し上げているところなんでございますが、過去のどの部分ということで線を引くことはなかなか、これは歴史観によってもそれぞれ違うところでございますし、それはなかなか容易なことではないと思っております。  ただ、全体として、過去における我が国の行為の中に侵略的な事実があったということは、これは否定し得ない事実ではないか、そのことについて率直におわびをするということが我が国としてのとるべき態度ではないか、そういう意味で、私は私なりの素直な気持ちの表現をすべきであろうということで申し上げたところでございます。
  196. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 率直も素直も結構なんですけれども、過去の戦争といっても、日本が少なくとも明治以来行った戦争は幾つかあるわけですな。日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦、まあ太平洋戦争と言われて私たちが非常にひどい目に遭った。その戦争すべてが、つまり部分的にしろ侵略的な性格があったとお考えなんですか。  私は、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦、これは歴然として性格の違う戦争だと思いますし、それを一緒くたにして、そのどの部分にも、あるいはどの戦争も侵略的な性格のものであったと言われると、これはもうあなた、歴史に対する大変な誤認であって、言ってみれば日本という国家民族の歴史に対する冒涜にもなりますよ。どの戦争なんですか。太平洋戦争ですか。日清、日露、第一次大戦、第二次大戦、全部、日本が参加した戦争が侵略的な意義があったということですか。
  197. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 私は、さきの大戦についてということを申し上げたわけですが、さきの大戦、それもどこから始まってということはなかなか御議論のあるところだろうと思います。その点については、これは、どこからどこまでということはなかなか難しいというふうに申し上げているところでございます。
  198. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 謝罪という言葉もいろいろの意味合いがありまして、特に政治家なり政府の主宰者が謝罪という言葉をすると、国家対国家の物的な弁償行為ということを連想されがちでありますけれども、それはもう既に終わったことである。精神的な意味で謝罪をするということはあり得るでありましょう。しかし、ならば、太平洋戦争に限って言っても、つまりどの国、どの相手にどういう形でその謝意というものを抱くべきだと総理はお考えなのか、もう少しひとつはっきりとお教え願いたい。
  199. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 多くの人々に迷惑をかけた、どこの地域あるいはどの時点ということの特定をすることは、これは先ほど来申し上げますように、さまざまな歴史的な評価というものが、認識というものがおありであろうと思いますし、そのことにまで私は踏み込んで言ったつもりではございません。もっと漢とした形で、その中における、これも昨日申し上げたことでございますが、胸に手を当てて考えてみれば思い当たる節があるのではないか、そういう意味で率直な気持ちを申し上げるということが適当ではないかと、こういうことを申し上げたところでございます。
  200. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 さきの太平洋戦争も、確かにおっしゃるように非常に複合的な性格を持ったものであったと私は思います。  第一は、日本が、過去の戦争も踏まえてでしょうけれども、国際法の上では合法的に獲得したシナ大陸の権益というものをめぐっての紛争が、結局は日中間の長い戦争になって、少なくともシナの人たちには大きな迷惑をかけたということは私は歪みません。  第二は、日本と同じ植民地主義でアジアにも出張ってきた列強、アメリカ、イギリス、フランス、オランダ、ドイツ、そういった国々とのフリクションというものが戦争になった。これは、きっかけは、太平洋戦争に関しては真珠湾の攻撃ということだったでしょう。これもアメリカの現代史家の過半は、つまりハル・ノートなどを参照して、外務省の怠慢で、つまり翻訳がおくれて三十分遅参したために、さながら日本が奇襲をかけて非常に卑劣な行為をしたというふうなコンセプトができ上がっているけれども、実態はそういうものであって、言ってみれば日本が追い詰められてやむなく行った戦争であるということを、アメリカの現代史家がそういう解釈を下している、そういう部分。つまり、日本もまた植民地主義を有色人種の国家の中で唯一行った国家でありますけれども、その日本と白人の列強というものがアジアで衝突した。  その性格と、第三は、ソビエトという、不可侵条約、中立条約を日ソ間で結んでいたそのソビエトが、一方的にこれを踏みにじって越境し、日本にまさに侵略、侵入して、邦人を捕虜としても使役せしめて日本に大きな悲劇をもたらした。  この三つの要因が大別してあると思いますけれども、太平洋戦争のこの三つの要因の相手国にすべて日本はやはり謝意を抱き、物的な弁償は別にしても、謝意を抱くべきだとお考えなんですか。まさかソビエトにも申しわけなかったと言えと言われているんじゃないでしょうな、これは。
  201. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 もとよりそういうことではございません。
  202. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 いや、第二の場合はどうなんですか、第二の場合。つまり、欧米の列強と日本は枢軸、反枢軸に分かれて戦いましたけれども、太平洋戦争では、日本は、形の上ではアメリカ、イ ギリス、フランス、オランダですか、それらの国々に敗れたことになる。弁償もした。しかし、それらの国にも日本は謝意を抱き続けなくちゃならぬのか。改めて謝意というものを鮮明にすべきであるとお考えですか。
  203. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 どの国の人々にということは、先ほど来申し上げますように、余り特定をして申し上げるということはいかがなものであろうかと。これも人によってさまざまな見解がございますし、そこのところは時期とかあるいは地域とかということに関して私が申し上げたことではない。  私が申し上げた趣旨は、過去において、繰り返しになりますけれども、多くの人たちに御迷惑をかけた。その中には、イギリスの方もおられるかもしれない、オランダの方もおられるかもしれない、いろいろな国々の方々がおられると思います。必ずしもアジアの方々だけではない。そういう方々に対して素直な気持ちでおわびを申し上げるということが私は必要なのではないか、そういう気持ちで申し上げたところでございます。
  204. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 あなたのおっしゃることは非常に総括的で、あいまいで、実に短絡的で、繰り返して申し上げますけれども、歴史に対する誤解を誘引しかねないし、ひいては私たち国家民族の誇りある部分も、誇るべきでない部分もあるかもしらぬが、いずれにしろ、歴史そのものに対する冒涜というものになりかねないですな。  どうしてこれ、私たち、例えば太平洋戦争におけるいわゆる戦勝国、東京裁判を主宰したいわゆる戦勝国にも私たちはわびなくちゃいけないんでしょうか。私は、敗者が悪であり、勝者が正しいというふうなそういう戦争観というのはとてもこっけいだと思うし、現にアメリカは、ベトナム戦争に負けてベトナムに謝ったことがない。裁判も行われなかった。  この間、こういうことがありましたね。オランダのユリアナ女王が日本に初めておいでになるときに、宮中の晩さん会で日本総理大臣はこの際女王にじかに謝意を表すべきじゃないかという論があって、私たちは、私だけじゃなしに複数の有志が、総務会で、それはおかしいと言ってつぶしました。敗者が常に勝者にわびるという、そういう戦争に対する価値観というのはとてもこっけいですし、現にアメリカはベトナムに謝ったということは聞かない。  こういうこともありますね。レーニンの言葉に、近代ヨーロッパの繁栄というのは、しょせん、植民地における安価な労働力と豊富な資源の一方的収奪の上に成り立っている。私は、共産主義というのは嫌いですし、随分でたらめなことをレーニンは言いましたが、それが結局今日のロシアの悲劇を生んでいるんでしょうけれども、このレーニンの言葉は私は正しいと思いますけれども、いかがお考えですか。ヨーロッパの近代主義は、植民地における安価な労働力と豊富な資源の一方的収奪の上に成り立っているということをレーニンは言っているわけです。どうお考えですか、私は正しいと思いますけれども
  205. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 ヨーロッパの植民地主義、あるいはその他の国々における、主としてヨーロッパということになるのでございましょうが、帝国主義というものは、全くそういう認識は、私もほぼ同感でございます。
  206. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 つまり、日本人だけが有色人種の中でレーニンが非難した帝国主義的な対応というものをとって、結果としては太平洋地域で列強と相まみえて戦争を行った。  私は、迷惑をかけたのは、東南アジアの人たちとかシナ大陸の人たち、かつては併合した朝鮮、それに日本はすべきことはしたと思いますけれども、結局、彼らの民族のプライドからいえば許し得ぬことでしょう。なしに済んだらなしに済むべき歴史だったかもしらないが、しかし、朝鮮半島の歴史をあの時点で推理してみれば、あのときの朝鮮の混乱からいえば、隣の清国なりロシアに併合されていたことは間違いがない。彼らの行った選択肢がベストであったか、セカンドベストだったか、ワーストだったか、私わかりませんが、いずれにしろ、そういった国々に私たちはあるキルティーコンシャスを感じますけれども、同じように植民地を例えば一方的に収奪して、その上に繁栄を長い間遂げたヨーロッパ、アメリカ。アメリカだって、これはアメリカ人がインディアンの要するに居住区というものを完全に植民化して、今居座っているわけでしょう。  私は、そういうことからいうと、私たちが戦争に敗れはしたけれども、敗者としてオランダやフランスやアメリカやイギリスに謝罪する、それは戦争の責任としての弁償はしたかもしらないけれども、今改めてそういう謝意を抱く必要はどこにもない。全くこっけいなことで、同罪ではあってでも、どちらの罪が重い、軽いという問題は、比較にならない。  だから私は、先ほど言った太平洋戦争の第二の要因である、つまり植民地主義の列強と日本がこの太平洋地域で相まみえた、その戦争に敗れた責任というものを、今この時点で改めて謝罪という形で国民が胸にする必要は毛頭ない、私はそう思いますけれども、いかがですか。  ちょっとその前に、見てごらんなさい、例えばアラブです。アラブの境界線はだれが引いたんですか。あれは欧米人が引いたんでしょう。こんな国境というのはないですね。国境というのは川とか山に沿ってジグザグにあるものだけれども、アラブの国境線というのは全部直線じゃないですか。だれが引いたんですか。ヨーロッパの人間が引いたんだ。アメリカも手助けした。  そして、その権益を守るために、国連に全く関係のない湾岸戦争をこの間やったんですよ。その戦争の収支会計もでたらめ。しかも日本は、ハイテクというものをひそかに供与することであの戦争を助けてやった。そういうものを全然評価せずに、アメリカは一方的に日本は協力しない、協力しないと言って、かつての内閣はこれに非常に卑屈に謝罪したりして、日本人もわけのわからない原罪感を持った。  これは本当にそこら辺からボタンのかけ違いですけれども、アラブの境界線を見たって、つまり欧米の列強、レーニンの言ったとおり、あるいは日本も含めて、つまりかつての植民地の収奪の上にこそ成り立っているので、それを行った同士が戦った戦いで、負けた者が勝った者に謝意を抱く必要なんか全くない。謝罪の必要なんか全くない。歴史というのはやっぱりそういうものだと私は思いますけれども、いかがお考えですか。
  207. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 それは過去の歴史の中において、また、戦争というか武力の行使によって収奪も行われてき、あるいはまた解放も行われてきたと、いい意味での解放ということがなされたという側面も多分にあろうと、そう思っております。それは、アジアにおいても、あるいは今お話しの中東においてもそういうことがあったかもしれない。ヨーロッパにおいてもそういうことが繰り返されてきたのが歴史であると思っております。  しかし、先ほどのお話でございますが、連合国八カ国ですか、その中の人たちに謝る必要はないのではないか、こういうお話でございましたが、それはやはりアジアの方にもそれらの国々から随分来ておられたわけでありますし、そういう人たちに多大の迷惑をかけている、迷惑どころではなくて大変大きな痛みを与えたということについて、我が国としてそれなりの謝意の気持ちを表するというのは、これは私は当然のことではないか、そう思っているところでございます。
  208. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 いや、話をそらしちゃいけませんよ。私は、つまり、日本が戦争したり、一時植民地にしたような、統治した、そういう列強同士の戦いの戦場になった人たちには、やっぱり気の毒な思いをさせたし、一つの謝罪もしたし、弁償もしたと思うんです。ただ、弁償もさせられた戦勝国に対して、同じ植民地主義の列強としてそれに参加して敗れた日本がなぜ、要するに、あのアジアに迷惑をかけた同士の、敗者、勝者の違いはあるかもしらぬけれども、なぜ敗者が勝者にわ びる必要があるのか。まさかそんなことはお考えになってないでしょうなということを確かめているわけでありまして、アジア対日本の問題じゃないのです。もっと言えば、イギリス、フランス、オランダ、アメリカというかつての反枢軸ですか、そういった戦勝国と称している国々に、かつての太平洋戦争に関しては日本が原罪感を抱く必要は毛頭ないと私は思いますけれども、いかがですか。  それは、わびるならお互いにわびたらいいんです。日本だってひどい目に遭ったし、じゅうたん爆撃やって非戦闘員がたくさん殺されたし、一発の原爆で三十万の人がとにかく今日に至るまで亡くなっている。こういったものに対する歴然とした謝意というものをアメリカの政府があらわしたということを聞いたこともないし、つまり、そこはうやむやになって、勝者、敗者の関係だけはあるわけですから、今になって一国の日本総理大臣が、戦争というものの内容の規定もあいまいなままに、さながら、要するにイギリスにもオランダにもフランスにもアメリカにもわびる必要があるというようなことを言われると、さっき申したように、ヨーロッパではそれをとって、オランダなりイギリスの捕虜を確かに日本人はうまく扱えなかったでしょう。それを虐待行為として訴訟が起こる。そういったものに市民の声が加担する。向こうで働いているビジネスマンが非常に迷惑をするという事態が起こっているわけです。これはあなたの発言の責任ですよ。  だから、やはり確たる歴史観もなしにあいまいなことを愚直に申されることはない。もう少し慎重に、歴史というものを国民も世界も誤らないように発言していただきたいということを私は申し上げているわけであります。  例えばこのごろになってわかってきたことですけれども、アイゼンハワーは、ドイツ人を懲罰すると言って、百万人のドイツ軍の捕虜を野ざらしに、食料も与えずに餓死させて懲罰した。これはリーダーズダイジェストに出たりしてだんだんわかってきた。あるいはイーデンは、独立のために戦うウクライナ人、これは結局方法として対独協力をした、それを、運命がわかっているのに請われるままにソビエトに送り返して、スターリンはこれを全部処刑した。その他この他いろんな問題があるわけです。  私は決して戦争を是認するつもりはないけれども、そういったものは、勝者であろうが敗者であろうが、そういった残虐な非人道的な行為というものを歴然として行ってきたわけで、だから私は、日本のオランダ人やイギリス人捕虜に対する扱いが云々ということで、それを踏まえて、今また改めてこの時点で、さながら彼らが、日本がそのことに弁償も含めて謝罪するんだろうというような錯覚を起こすような軽率で短絡的な発言はしていただきたくない。これは国民は怒りますよ、あなた。やはり歴史に対する冒涜ですよ、これは。  文部大臣がどんなに頑張ろうと、教育者がどんなに頑張ろうと、最高指導者としての総理大臣が自分の歴史というものを歪曲しかねないようなこういう発言を軽率にするということ、これはやはり万死に値する。私は、それは深く自戒していただきたいし、あなたの発言が非常に粗雑で、大まかで、誤解しやすいものであったということをはっきり認めていただきたい。
  209. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 それはいささか歴史観の違いというふうに申し上げるしかない、私はそう思っております。  繰り返し申し上げておりますように、過去の一時期における我が国の行為というものが、多くの人々に耐えがたい痛み、苦しみを与えてきたということは、これは事実であろう、そのことについてやはり率直にわびるべきであろう、こう申し上げているわけでございますから、それは私は、私の歴史的な認識というのはそういうことだということでございます。
  210. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 ですから、私はそんなことを言っているんじゃない。謝るべき者には謝る必要があるけれども、謝る必要のない相手にまで謝る必要があるような発言があったから日本混乱し、特に外国にいる日本人が迷惑をしているということを申し上げているわけです。  じゃ、あなたと私といささか史観が違うというのなら、時間は十分ありますから、ほかの質問をネグってもいいから、どこがどういうふうに史観として違うのかです。  私は、歴史は相対的に意味があると思う。例えばスカルノやナセルに私は物書きのころ会いました、ある人の紹介で。そのときに二人が期せずして言ったことは、いろいろ評価もあるだろうけれども、しかし、日本人があの太平洋戦争に有色人種で唯一参加したために、それが引き金になって、戦後は我々を抑圧する第三の世界大戦が起こったけれども、全部我々は独立戦争としてそれをから取って、勝った。この勇気を与えたのは日本人だということを言っていますよ。ほかの国のリーダーも言っていますよ。  だからといって私は太平洋戦争をすべて肯定するつもりはないけれども、歴史にはやはり物事と同じようにすべて相対的な価値、意味がある。それをやはり柔軟に認めること、それを踏まえて物を言うことが、誤解を招かないように物を言うことが、日本の一応最高の指導者になられたあなたの責任じゃないですか。だから、いささか歴史観に違いがあるなら、どこが違うのか教えていただきたい。わかりやすく、学校の教科書にも載り得るように。
  211. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 戦争には、一般的に、結果としてそれがその地域の圧制を受けている人々を解放するという意味を持った戦争もあったと思いますし、また逆に、それによって抑圧をされる結果になったという戦争もある。それは、その戦争の結果というものは、結果においてさまざまなものがあろうと思います。  しかし、敗者が勝者にわびなければならない、あるいは、勝者は敗者にわびなくてもいいんだ、必ずしも私はそういうことで規定できないのではないか。それはそれぞれの事情によってすべて違ってくることだと思いますし、我が国においては、素直に過去の歴史的な事実というものを考えてみれば、先般来申し上げているような侵略的な事実というものに対して、その気持ちを率直に表明をするということが私はいいのではないか、こう申し上げているわけでございます。
  212. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 ですから、私はかつての戦争に侵略性がなかったとは言わない。だけれども、侵略的事実に対して、その対象になった人たちには謝意を表するということは必要でしょう。生きている限りそれを抱き続けることも必要でしょうけれども、侵略的事実の対象でない、侵略行為の対象でない、同じような侵略を続けてきて、その縄張り争いで、まあ言ってみればやくざ同士の縄張り争いみたいなものだ、悪いたとえかもしらないけれども。それで市民に迷惑をかけた。その市民にはわびなくちゃいけないかもしらないけれども、足を洗ったら。  しかし何で、同じその侵略行為、明らかに植民地主義という侵略行為でしょう。しかし、それは一つの歴史の課題であったし、それをこなさなかったら、どの国も先進産業国、近代国家にならなかった。要するに、そういう歴史の非常に不条理な原理、公理というのはあったけれども日本はそれを一応こなした。まあそれはどうでもいい。  ですけれども、その侵略的行為の対象になった人たちには謝罪する必要があると思うけれども、しかしそうでない、日本と同じように迷惑をかけて、植民地をもっと日本より長く経営してきたその連中に私たちが、たとえ戦争に負けたとしても、それにまで謝意を表する必要があるがごとき発言が誤解を受けているから、その部分を取り消されたらどうですかと、もっとはっきり物を言われたらどうですかということを言っているわけです。
  213. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 先ほど来、これはまあ行ったり来たりの議論になりますが、どこの地域で、 どこの時点でということを特定をするということは、それぞれによって歴史的な見方が違うわけでございますから、それを言えとおっしゃられてもなかなかこれは難しいということを申し上げているわけでございます。
  214. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 じゃ、お聞きしますけれども、アメリカだって、マッカーサーのお父さんは、スペインから解放されて独立しようと思ったフィリピン人を抑えつけて三十万人餓死させたんだ。だから強烈な独立運動があって、結局この間の米軍の基地撤回にもつながったわけだ。  そのアメリカや、香港をいまだに領有しているイギリスや、あの上海に「シナ人と犬入るべからず」といって外人租界を日本もつくったけれども、イギリス、フランス、オランダという人たちは、これはどうなんですか、一体。この人たちは侵略行為をやったんじゃないんですか。こういった国々の植民地主義というものは、これは侵略的な行為じゃないんですか。そのために行われた一方的な戦争もありました、アヘン戦争その他。これは非常に非人道的な、唾棄すべき、ざんきすべき、反省すべき戦争じゃないんですか。どうなんですか。  アメリカ、イギリス、フランス、オランダ、ドイツがこのアジアでやったこと、中東でやったこと、アフリカでやったこと、アラブでやったこと、これは侵略的な行為じゃないんですか。どうなんですか。植民地主義でしょう。
  215. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 その中には多分にそういった侵略的な行為、まさに侵略戦争といったものが、植民地主義にのっとった、帝国主義にのっとったそのようなものがあったことはもう歴然たる事実だと思っております。
  216. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 だったら、同じ帝国主義的な拡張をやって、太平洋地域ではたまたま日本と遭遇して、片っ方は勝者になり、片っ方が敗者になった。その勝者にまで謝罪しなくちゃいけないような誤解を与えているわけだ、現に。イギリスとかオランダでそういう運動が起こっているじゃないですか。その責任はあなたの発言ですよ。だったら撤回なさい。もっと明瞭に話をなさい。  我々が謝意を抱くべきはアジアの地域の人間であって、かつて植民地主義で我々とこのアジアで遭遇し、戦ったその相手ではないということをはっきりおっしゃいよ。それはあなたの責任ですよ。国民に対する、世界に対する責任ですよ。歴史の真実に対する、相対的な真実に対する責任ですよ。
  217. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 おっしゃることはわかりますが、しかし、過去において我が国が行ってきた行為が現実に多くの人々に大きな苦しみを与えてきたわけでございますから、そのことについて率直におわびの気持ちを申し上げるということは、これは私は当然のことであるということを申し上げているわけでございます。
  218. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 私はそれも当然だと思いますが、それじゃ、その当然の中には、つまり相手として、アメリカやイギリスやフランスや、つまり私たちに戦勝国として東京裁判を主宰した、そういったかつての植民地主義者の列強はあなたの感じている謝意の対象にはないんですね。そうすべきじゃないでしょう。入ってないんでしょう、それは。つまり、アメリカやイギリスやフランスやオランダにも我々はやはり一応謝罪すべきだと。つまり、いまだに原罪感を持つべきだと、謝意を持つべきだとお考えなんですか。だったら面妖な話だね。私はこんな総理大臣は尊敬できない。あなたがもしそれを是とするなら、それは完全にアメリカの東京裁判史観ですよ。
  219. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 繰り返し申し上げますが、特定の国、あるいは特定の地域、あるいは特定の時点、時期についてそれを申し上げるということは、これはそれぞれによって見方も違うところである、これも再々申し上げているとおりでございます。
  220. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 まあ本当に何という答弁なんだろう。見方が違うといったって、それはあなたがもっと率直に、アメリカやヨーロッパの機嫌を損じたくないというんならいいですよ、率直で。これはいろいろな交渉もあるだろうから。しかし、見方が違うとか、あなたと私は微妙に歴史観が違うとか、一番大事な先鋭的な問題について話をしているのだから、それははっきり言ってもらいたい。国民はみんな当惑しますよ。あなたの教養の問題にもなってくるよ、本当に、悪いけれども。はっきりなさいよ、はっきり。  じゃ、もう一回開くけれども、つまり我々はこの時点で、アメリカやイギリスやフランスやオランダ、日本を東京裁判で裁いた。あの裁判そのものも法的な根拠というのは私はないと思うけれども、いずれにしろ懲罰的な裁判をやった。そして、日本も十分そのための弁償も払った。そういう国に対しても依然として私たちは、あの太平洋戦争、これは多くの植民地も解放したし、アジアの人たちに迷惑もかけた。しかし、そういう多面的な意味はあっても、戦勝国と称したかつてのそういった国々、今は日本と一応友好なつき合いはしているけれども、そういう国々にも今の時点で謝罪の必要があるとお考えなんですか、ないんですか。
  221. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 東京裁判についても、これもさまざまな見解があることはもう改めて申し上げるまでもございません。戦勝国による一方的な押しつけであると受けとめられている向きもございますし、そうしたお考えを持っておられる方々もたくさんいらっしゃるだろうと思いますが、しかし、とにかく八カ国による裁判というものを我が国が受け入れて、そして、二度とこのようなことを、国際社会の中で過ちを繰り返さないということを誓って国際社会に復帰できたわけでございますから、そうした事実は厳然とした事実として受けとめなければならないであろう、このように思っているところでございます。  先ほどの、幾つかの国の名前を挙げてお話がございましたが、そういう国々の中にも、そういう国々の国民の中にも、随分と痛い、本当に耐えがたい痛みを与えた人々がたくさんいるということを私どもは忘れてはならない、このように思っているところでございます。
  222. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 非常にこっけいな、マゾヒスティックな物の考え方ですね。まさに今発言がありましたが、私たちも痛い思いをしたのです。一方的にソビエトに裏切られて、随分その国を持ち上げた政党もあるけれども、しかし、そのおかげで私たちはひどい目に遭った。  原爆というのは完全に非戦闘員を殺した要するに超現代兵器でしょう。その被害をこうむったのは日本人だけでしょう。いまだに被爆者は死んでいますよ。これは痛い目じゃないのですか。しかし、確かに私たちも彼らに痛い目を遭わせた。これはお互いさまじゃないですかね。これは植民地主義、あなたはさっき、過ちは繰り返さないと。私は、本当なら東京裁判でうたわれるべきものは、植民地支配の時代は終わった、つまり、お互いにもう植民地支配をやめようということを誓い合って日本がある程度の敗者としての弁償をするのはわかるけれども、何であなたこれ、東京裁判で私たちは過ちを繰り返さないって誓ったのですか。冗談じゃないよ、本当に。そんなわけのわからない史観でくくられたら怒るよ、国民は。  何回も言うけれども、物事には相対的な意味があるのです。それを踏まえながら柔軟に物を考え発言していただきたい。だから、歴史を短絡的に切って、つまり非常に誤解を招き、歴史そのものを冒涜するみたいな軽率な発言はしてもらいたくない。それを取り消してくれと言っても取り消すつもりもおありでないようだからもうこれはやめますが、とにかく、あなたの言うことこそ非常にあいまいで、短絡的で、わけがわからない。  それで、人によればとか何によればと言うけれども、あなた自身の意見を聞いているので、内閣の参事官、さっきうろうろしていたけれども、そんな人間の意見を聞きに私は予算委員会に出てきたんじゃない。国民にかわってあなたの歴史観を聞こうと思ったけれども、ついにお答えにならない。だれがどう言った、物によれば、事によれば と言うけれども、これはもうそれでやめましょう。  じゃ、次に移りますが、あなたはしきりに地方分権ということを言われた。まあ分権も必要でしょう。しかし、私に言わせると、東京や大阪の大都市というのは不必要に地方から収奪を受けている。あなたの熊本の財政がどんな結果になったか、あなた自身は御存じだろうけれども、しかし、いずれにしろ私は、地方は地方の意味がたくさんあると思うし、地方の時代ということの意味は、日本という非常に地政学的にコンパクトなこの社会の中で、場合によっては地方の政治的なイシューが、その地方だけじゃなしに、国家全体を左右する、そういう意味を持ち得る、つまり、地方は非常に国家的な機能というものを持つような、そういうコンパクトな社会になったということの一つの表示だと思います。  私は、例えばそのいい例は、青森県のあの下北半島にある六ケ所村の再処理施設の問題です。これも賛否両論ありましたが、幸い進行しておりますけれども、その認識で言えば、国会も地方議会も、同じ政治、議会として、あるいは東京に主に本部を置く政党も、その地方の支部というか地方の本部も、できれば一枚岩で事に当たるということが必要だと思うし、それでないと議会なりあるいは政党の責任が果たし得ないと私は思うのです。もちろん、その地方の議員あるいは地方の議会、地方の政党の支部が本部と違う意見を持って、それが逆に国会なりあるいは東京にある政党の本部を規制するということも十分あり得ると思うし、また、なくてはならないと思いますけれども、いかがですか。
  223. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 国家的な課題につきましては、これはやはり国がその責任を分担をしていく。私は、地方にできる限り権限なり財源なりを与えていくべきであろう。そういう意味で、かねてから地方分権、地方主権の確立ということを強く唱えてきたところでございますが、しかし、国家的な課題については、やはりこれは国が責任を持って、地元と連携をとりながら、自治体としっかり連絡をとりながら進めていくべきことであろうというふうに思っております。
  224. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 大変結構なお答えで、これから関係大臣にお聞きしますけれども、今の総理のお言葉をよく踏まえて物を言っていただきたい。  私もそう思いますね。地方のエゴもあるでしょう。場合によっては、国政というものが間違って地方の特色、特性というものを無視したプロジェクトを押しつけるということもあり得るけれども、しかし、大きな判断というのはやはり国が国の責任ですべきですし、地方もできる限りそれを受け入れるということで協力してもらうということが、国政というレベルで考えれば、政治の円滑な運行のために必要な条件だと思います。  もう一つお聞きしたいのは、かなり無理な連立内閣が今でき上がっているわけですけれども国民もはらはらしていますが、この連立政権の意味というのは、小異を捨てて大同につくというふうなことをいつかだれかが言っていましたが、まあそうだと思います。その大同というのは何かと言えば、外交、経済、防衛、エネルギーという非常に国家の基幹の問題にたまたま携わって長期政権をつかさどってきた自民党の政策。決して自民党の政策とは言いません。国民支持した、従来の国民のマジョリティーが支持した政策を細川内閣が継承する、これは大変結構なことだと思います。  そのためにはいろいろな約束があったでしょうし、与党を形成している各党間に多少の食い違いがあっても、それをうまく調整していこうという取り決めというか約束があったんでしょうが、もし具体的にどういうお話し合いがあったかということをお聞きできるならそれを、総理でなくても、官房長官でも結構ですから、お伺いしたい。     〔委員長退席、野坂委員長代理着席〕
  225. 武村正義

    武村国務大臣 もうこれまでの答弁で総理が申し上げておりますとおり、連立政権ができますには、当時七党一会派でございましたが、党首によって基本的な事項についての合意がございました。  同時にまた、もう少し具体的な各論につきましても確認をし合って、これは一応文言で表現をしてサインをしておりますので、これが我々の連立政権の基本合意であるというふうに認識をいたしております。
  226. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 そうすると、署名された文書もあるわけですな。それは別に秘密じゃないのでしょう。必要とあったら見せていただけますね。  それでお聞きしますけれども、その中でどういう誓約というか確認が行われたかつまびらかにまだしませんが、かなり党是というか党の基本政策というもの、従来のに抵触するあるいは背反するような政治的なイシューがこれからも出てくるでしょうし、今も出ている。それに対して、参加されている幾つかの党は、例えば場合によっては自分たちの党是なり、非常に歴史的な、長い間踏襲してきた政策の原則というものをこの際一変するという可能性もおありですか。つまり、そういう柔軟性を踏まえて内閣に参加されているのか。何といっても与党の第一党である社会党の前委員長である山花さんにそれをお聞きしたい。
  227. 山花貞夫

    ○山花国務大臣 今の御質問、政権をつくる場合の合意の前の段階では、選挙に臨んで五党の合意を行っています。そうした中で、御指摘の問題については、それぞれが固有の政策を持っている中で、今日の課題にこたえて政権交代を目指し、非自民の政権をつくろう、こういうことを決意した中で、これまでの国の基本政策についてはこれを継承していくということを合意をしてスタートした次第でございます。  したがって、我々も、例えば与党第一党の社会党も、党の自己改革を進める中で、今でも私たちの党の政策について党内議論を進めているところでありますけれども、なお意見の食い違いはございます。しかし、我々は、政権をつくる以上は、その政権での合意、できる限りオープンな議論をした中でまとまった合意については、これを尊重しなければ連立政権が壊されますから、それを尊重していく、こうした前提でスタートをしている次第でございます。
  228. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 もう少し具体的にそれをお聞きしますけれども、自衛隊法を改正するという動きがある。与党も、政府もそれを提出されるという意図があると聞きますし、されないなら、自民党は自民党の責任でそれを提出する。恐らく政権を構築している与党の大半の政党はこれに賛成だと私は思いますけれども、しかし、与党第一党の村山新社会党委員長は、自衛隊法の改正はもう先送りでいいじゃないか、この臨時国会は、何といっても眼目は政治改革なんだからそれをやることを徹底したらよろしいので、そんなものは今国会でやる必要ないというような発言をされたやに聞きますが、それはおかしな話で、何も全員が要するに政治改革の特別委員会に属しているわけじゃないのだから、することはほかにたくさんある。  現代の世界を眺めたら、不測の事態がいつ起こるかわからない。そのときに、直すべき法律、それを是とするなら、速やかに直すということが国会の責任じゃないですか。自分の都合で、これは意見がまとまらないから先送りする、今国会でやる必要はないという与党第一党のこの村山さんの発言というのは、国会の機能というものを低劣化することに益はあっても国民の本意には全くそぐわないものだと思うし、私は速やかに今国会でもこの改正法を討論し、要するに採決すべきだと思いますけれども総理、いかがお考えですか。     〔野坂委員長代理退席、委員長着席〕
  229. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 きのうでしたか、官房長官からもお答えをいたしましたが、今、与党の中でもいろいろ御議論があって詰めております用意見がまとまり次第出させていただきたいと思っております。
  230. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 いや、まとまり次第というよりも、まとまらなければ私たちが出しますよ。た だ、基本的にこの問題は今国会の大眼目じゃないから、自分の政党の都合で先送りしでもいいという、何も自衛隊法の改正にかかわらず、そういう物の発想というのは、いろいろ批判を浴びた非常に非能率的な国会の運営というものにまた油を注ぐみたいなもので、私はやはりおかしな発言だと思います。  次に行きますが、ここで私は、政府を構成している各党の間の防衛という国家の基幹にかかわる問題についての食い違いが既に露呈している問題についてお聞きしたい。  それは、この十一月の初めに山梨県の富士吉田、忍野の北にあります北富士演習場で行われる日米合同演習、訓練、これは八年ぶりのことでありますけれども、私は今日の世界情勢の中で、反対派は冷戦構造が崩壊した後今さら何だと言うけれども、それは従来の日米安保に対する非常にステレオタイプの反対論の域を出ない。  例えば、反対されている人たちに、後でそれを代表する形に図らずもなっていらっしゃる社会党の閣僚にお聞きしますけれども、あの北鮮の、まあどれほど効果があるか知らないけれども、とにかくキャリアまで開発した核装備、そしてその孤立と冒険主義、あるいは中国の相も変わらない、つまりかつて毛沢東の時代に明らかに文明、文化の違う、民族も違うチベットを強引に併合してダライ・ラマを追放する、こういった覇権主義というものが依然として行われて、それを助長するために、中国は持つべきでない、持ってもしょうがない、つまり海上の覇権というものにこそ効果のある、それにしか効果のないオーシャンネービーというものを構築しつつある。西沙諸島、南沙諸島でも、つまりフィリピンやベトナムとの間に非常に強い緊張が刻一刻募りつつある。  また、東シナ海で、領海でですよ、たばこの密輸を監視するという名目で、要するに日本を含む外国船に明らかに中国の旗を立てた艦船が発砲して不法な臨検をする。なぜかこれに対して外務省は全然というか弱腰の抗議しかしない。保安庁もこれに対して積極的な手出しをできない。私は、やはり領海が何たるかということを示すために、この際、北富士じゃなしに、東シナ海でも日米海軍の合同演習をリムパックと同じようにやったらいいと思う。  私はそんな気持ちでいますけれども、それについても総理に後でお聞きしたいかこの北富士の演習というものに関しては非常に過去にトラブルがありまして、八年前もそうですし、二十年前も、これが初めて行われたときに、演習地の入会権というものをある人が主張して非常に大きな混乱が起こった。そして、当時の公明党、社会党は熾烈に反対して抵抗した。極左の連中も入ってきた。わけのわからぬ外人部隊まで入ってきて、富士吉田の町は商店街がシャッターをおろして町の機能が停止するほど混乱し、迷惑をこうむった。八年前も同じことが起こった。とにかく農婦のおばさんたちがトラクターや戦車の下に寝転がって、進むなら自分たちをひいて進めと言って、本当に強い緊張が漂ったし、混乱がありました。  それで、以後五年ごとに現地と政府との間に演習に関する双務協定が結ばれまして今日に至っているわけです。現地側も理解が非常に深くて、この北富士の演習場は安保に基づく地位協定の第二条第四項の(b)に基づいて米軍の一時使用も可能だ、認めるべき施設だということで、一種の双務協定ですね、現地はそれを認め、その演習地使用の便宜を供与するが、同時に代償として周辺の整備をしてほしいということで、随時五年ごとの改約で周辺整備に政府も力を尽くしてきた。ことしの四月ですか、自民党政府のころ、第五回目の締結がありましたが、その後自民党の政府が崩壊して今の政府ができたわけだ。  ところが、現地の人から眺めてみると、きのうまで現地で大反対だった公明党と社会党が入っている。公明党はこのごろこの問題に対する姿勢が少し変わってきたように聞きますが、社会党は相変わらず猛烈な反対を展開しようとしているんですよ。  その予兆があったから、この間現地の代表の、この協議会のチェアマンをずっと続けている、私も個人的に親しい、かつては市会議長も務めたし、今の市長もつくった鈴木森夫君という富士吉田の市会議員、これは非常に有能な人物です。この人が出てきて、ぜひということで、私は武村官房長官に、本来なら中西さんに合わすべきだけれども、これはもうその以前に社会党、公明党の問題があるから武村さんに御引見願った。  そのときに、現地は、内閣がかわったんだし、できればもう一回、従来、閣議了解なり閣議報告で協定を結んできた、協定について閣議了解、報告があったから、今回も閣議報告をもう一回し直してほしいと言いましたら、官房長官は、防衛問題についてはずっと従来の政策を継承することになっているからその必要はなかろうということで、言葉を引用していいか悪いか、これはしかし常識的なことですから、こう言われましたな。社会党は決して一枚岩ではないので末端まで統制はできるかわからぬが、少なくとも地元における反対運動が起きないようによく伝えておく。  その後、当時は山花さんが委員長でいらした、今度の村山さんと、つまり現政府と社会党との間にどういう話し合いがあったのか私はまだ知りませんけれども、実は武村さんにお目にかかって二日後に、与党第一党の社会党の山梨県本部は、県や連立政府に共同訓練の中止を求めるように決定しまして、次の日申し込みをしました。その申し込みは、連合の参議院議員磯村修氏を代表として、北富士問題を考える県民の会として中止を防衛庁に申し入れた。そして、山梨県の県本部も県連としての新体制での初の執行委員会を開いてこの方針を確認した。  そして、磯村氏の県への申し込みには、社会党代議士の輿石さんですか輿石東議員も同行されている。これは現地にとってみれば非常に不安というか、困惑というか、そういう状況でありまして、富士吉田の市長はこの鈴木氏の質問に市議会で答えて、「こうなると、確約事項の確実な履行どこれを担保するため、改めて閣議報告あるいはそれにかわるべき証左がない限り、今日の日米合同演習は受け入れるべきでないと私は思う。」と答弁しているんです。これ、総理、どうお考えですか。  あなたの主宰していらっしゃる内閣を構成しているあなたの党とは違う党が、本部の意向はどうか知らないけれども、要するに県連本部の意向として、つまり真正面から反対するということを声明して、実際に国会で連合、社会党に属する国会議員が県庁と防衛庁にこれを申し込みしているんですよ。これは決して足並みがそろっているとは言えない。  まあそれはどうでもいいけれども、とにかく国民も迷惑、まして地元の人間は本当に迷惑、非常に不安を抱いていると思いますけれども、これをどう調整されますか。
  231. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 これは、今、武村官房長官から申しましたように、基本的に外交とか安全保障とか、そうした国の、先ほどまさしくおっしゃった国民がマジョリティーとして支持した政策というものは継承していくということを合意をしているわけでございますから、そういう方針で内閣としては臨んでまいりたい、そのように思っております。  詳細については私存じませんので、また防衛庁長官なりなんなりからお答えをいたします。
  232. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 詳細といったって、今言ったとおりのことなんですよ。あなたの内閣を構成している与党第一党の社会党の議員と連合の議員が、県会議員じゃないんですよ、市会議員じゃないんですよ、現場でとにかくこの反対申し入れを防衛庁にもしているということよ。これは一体どういうことなんだ。私はこういう、何も異分子とは言いません、その人たちはその人たち考えを持って行動しているんでしょうけれども、前委員長だった山花さんや、同じように防衛問題に一見識持っていらっしゃる上原さんが、要するに東京に 本部を置く社会党の現内閣に出向している国会議員として、政党人として、党の幹部としてこの問題をどうお考えか、お二人にお聞きしたい。
  233. 山花貞夫

    ○山花国務大臣 ただいま御指摘の日米共同訓練、実動訓練と申しましょうか、私も詳細、調べたばかりということもありまして、正確を欠く部分があるかもしれませんけれども、我々とすれば、我々の、我々というのは正確でない、社会党の対応といたしましては先ほどお話ししたとおりでございまして、これまでの外交あるいは防衛に関する政策についてはこれを承継する。そしてなお、この問題ではありませんけれども、平和と軍縮のために努力をしていきたい、こういう合意書をつくっているところでございます。  御指摘の問題については、党の本部と県本、そこでの関係かと思いますけれども、これは連立政権で直接影響するという問題以前の問題として、我々党内の本部と県本の問題として調整をしなければならない問題である、こういうように考えている次第でございます。  ただ、御指摘の問題について、私が知っている限りでは、御指摘の八年前とは今日までの間にかなりさまざまな変化があったのではなかろうかということも聞いております。  八年前の運動を含めて、その当時の思いがこもっておった現地の反対運動ということについて、我々はストレートにそこに参加したということの後、いろいろな協定もあったかもしれませんし、今度の運動についても、八年前の、規模も大分変わっているんじゃないか等々のこともよく聞いているところでございまして、ただ、党だけでの運動ではなく、多くの市民運動と基地反対闘争と絡んでいる問題ですから、我々としてはこうした問題について、基本的には現地の意見というものを十分伺った中で本部としての対応ということについても考えたい、こう思っております。
  234. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 何かふにゃふにゃした答弁でさっぱりわからない。  何か国事の以前の問題だと言うけれども、国事に関してあなた方の同僚の国会議員が現地で足引っ張っているわけだ、この内閣の。それは、基地問題には市民運動、どこでも反対運動、今までありましたよ。これからだってあるでしょうよ。しかし、やっぱり過半の意志というもので事を決めてきたんで、反対運動が絶対だったら政府もそれを無視してやりませんよ。だけれども、この場合には、現地の要するに双務協定という形で物をまとめて、とるものはとっていこう。言葉はよくないけれど、周辺整備もしてもらう。しかし、国の目的のために必要だということで現地も協力しているのに、全く県外の異分子まで入れて熾烈な反対運動をしてきて、やった当人、その政党たちが、新執行部になったというから少しは考え方が変わったかと思ったら、また同じように議決してこの反対を支持すると言っている。  これに対して、例えば、あなたもかつての委員長だったけれども、この内閣を構成する社会党はどう責任をとるのですか、内閣に対して。この異分子をどうするのですか。放置するのですか。上原さん、あなたちょっと教えてよ。
  235. 上原康助

    ○上原国務大臣 基本的には、今、山花大臣がお答えになったとおりといいますか、そういう立場で党はこの種の問題に携わってまいりました。私は、今現在は党のこの種の政策とか問題には直接タッチはしておりませんので事実関係についてはよく存じておりませんが、せっかく御指名ですから。  たしか、本件日米訓練は昭和五十七年、一九八二年以降、日米の有事に対処をしていく共同訓練として何年かごとに積み上げられてきたものと理解をいたしております。  そこで、党中央本部と基本政策なりあるいは運動論の面において食い違いのあることはやむを得ないところもございます。これは、この件だけではありませんが、ほかの問題においても、自民党さんでも中央と地方の違いが相当ある面もあろうかと思います。  ですから、基本政策については原則として内閣の一員として社会党閣僚でもそれを踏まえてやっていきたいという努力を現在やっておりますので、この種の問題についてもできるだけ地方の意向を聞きながら、摩擦が起こらないように、先ほど総理官房長官がお述べになったような方向で調整をしていくように社会党閣僚も努力をしていきたい、こう考えておりますので、御理解を賜りたいと思います。
  236. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 全然理解できないのです。焦眉の問題で、十一月の初めに大反対決起大会やろうとしているわけですよ。あなた、運動論と言ったけれども、論じゃないんだ。運動が展開されているんだよ、これは。政治というのは現実をハンドルするから私もここで質問しているので、論の問題をしているんじゃない。  社会党の組織というのは私は知りませんよ。しかし、前委員長であるあなたも大幹部の一人だ。だから閣僚になったんでしょう。その人が今みたいなふやけた、それこそかつての自民党のときに役人が書いた答弁みたいなことを言ったらだめだね、これは。もうちょっとぴりっとしてもらいたいね。  いや、私は、これはもう時間が来たからやめますが、とにかく十一月、要するに初旬に、演習が始まる前に、訓練が始まる前に総決起大会をやるわけですよ。それをやらしたらあなたのメンツもないよ、これは本当に。内閣のメンツもないですぞ。  これは、やっぱり国民が一番注目しているこの問題について、だから私は武村さんに好意を持っているんだ。これは下手すると命取りになるよと言ったけれども、命はとられないかもしらない。しかし、要するに非常に無理に、まあ接着剤で合わせた、接着剤の名前はエニワン・バット・ジミンという接着剤だけれども、この内閣にこれから亀裂が入っていく、それは慶賀にたえないかもしらぬが、自民党にとって。私は、現時点で国益というのは損なわれるおそれがあるから、これを御忠告申し上げながら、つまり、ここで熾烈な総理の指導力に期待するわけですけれども、いかがですか。
  237. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 それぞれ各党御意見はあろうと思いますが、内閣としては基本的な姿勢をきちんと持って対応してまいりたいと思っております。
  238. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 最後に、最初の問題に触れますけれども、あなたの答弁を聞いていて、国民は失望するというか落胆するというか、ある者はあなたに軽侮を抱くかもしらない、それは。それは御自分の言葉の責任なんだ。しかも今の答弁は、わざわざ私は具体的に物事を分析し、悪い意味じゃなしに水口も設けてあなたの本意を聞こうと思ったけれども、あなたが私の歴史観とどこが違うかさっぱりわからないし、そもそも歴史に対してあなたが何を考えているか、物によればとか人によればという話ばっかりしか聞こえない。  私は、やっぱり一国の指導者なら自国の歴史、自分の民族の歴史というものに対する、何も全面的にそれを礼賛し、肯定しようとは言わないけれども、もっと冷静な、要するに説得性のある史観というもので物を考えて物を言っていただきたい。じゃないと、日本はいろんな面で、教育の面でもすべての面で混乱を来す。歴史というものは、必ず現在にあるいは将来に反映されてくるものですから、その歴史という鏡をあなたのようにゆがめて据えかねないような言動というものは、非常に国家民族の将来にとって危険だということを私は申し上げて、終わります。ありがとうございました。
  239. 山口鶴男

    山口委員長 これにて石原君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  240. 山口鶴男

    山口委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁三重野康君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  241. 山口鶴男

    山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  242. 山口鶴男

    山口委員長 近藤鉄雄君。
  243. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 私は、この機会を利用させていただきまして、現下の経済問題について、総理及び関係閣僚のお考え、また政策をただしてまいりたい、こう考えております。  特に、日銀総裁、御多忙中のところお見えいただきまして、まずお礼を申し上げたいと思います。  せっかく日銀総裁がお見えになられましたので、総裁からいろいろ承りたいのでありますけれども、その前に総理、いろいろの問題が本委員会において議論されておりますが、国民の最大の関心の一つが景気問題でございます。総理は、現下の我が国の経済についてどのような認識を持っていらっしゃるのかそして、どういうことで景気を回復させようとお考えになっていらっしゃるのかまず端的にお考えと御決意を承りたいと思います。
  244. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 何といいましても、構造的な問題が一番基本にあろうと思います。そこに急激な円高というものが加わって、それがはじけたということによって、バブルのときにいろいろ行われた設備投資とかそうしたものがいろいろ今問題が出てきている、そういう状況ではないかというふうに思っております。  いずれにしても、構造的な問題を、まあ規制の問題もございましょう、さまざまな問題がございましょうが、少し根本的なところから変えていかないと、これからの日本の経済というものは、一時的な処方せんでそれほど効果が見えてくるのかどうかということについて大変懸念をしているということでございます。
  245. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 懸念をしていらっしゃるとおっしゃいましたけれども、しかし、全国津々浦々で大変経済的に困っている人たちが多くなっているわけでございますので、これは、あらゆる手段を講じて景気を回復させたい、そういう御決意でいらっしゃるのか、まず御決意のほどを承っておきたいと思います。
  246. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 もちろん、あらゆる手を尽くして、可能な限りの手だてを尽くして、景気がこれ以上悪くならないように、不透明感が一刻も早く払拭できるように、最善を尽くしてまいりたいと思っております。
  247. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 そこで、日銀総裁は先ほどまでワシントンの国際通貨基金の総会にも行っていらっしゃったわけでございますが、大蔵大臣予算委員会等の関係で一足先にお帰りになったようでありますけれども。  まず、日銀総裁、我が国の経済問題について御所見を承る前に、さきの国際通貨基金の総会でどのような議論がなされたのか、世界経済の現状について各国の大蔵大臣、中央銀行総裁がどのような認識を持ち、そして、各国協調してどのような政策でこの世界的な不況から立ち上がるということを模索していらっしゃるのか、まず端的に承っておきたいと思います。
  248. 三重野康

    ○三重野参考人 お答えします。  今度のIMF総会その他一連の会議に出ましての感想が三つございますので、それを申し上げてみたいと思います。  一つは、やはり途上国、これはアジア並びにラテンアメリカが中心でございますが、途上国は非常な高い成長を続けておるのに、対照的に先進国は極めて景気が停滞しているということでございました。この四月にインテリムがございまして、そのときにもG7がございましたが、そのときはまだ先行きにやや明るさが見えておりましたが、その後、各国の情勢は明るさがなくて非常に停滞をしている。例えば、ヨーロッパにおきましては、通貨の動揺が再び起きて、失業はさらに深刻化している。アメリカも、回復には向かっておりますけれど、力強さが欠けている。日本の国は、もう委員御承知のとおりでございます。したがいまして、今度の議題は、先進国をいかにして早く中期的に見たインフレなき長続きのする成長へ持っていくかということが中心の課題でございました。  この点につきまして、それぞれの国は自分のやっていることを話したわけでありますけれども、アメリカについては例の財政の赤字だと。ヨーロッパの国は、いずれもやはり通貨の安定とそれから財政の赤字だ。日本の場合は、今までとられてきました財政金融政策については評価を受けましたけれども、これから先については、大蔵大臣から広範な規制緩和と税制改革、この二つをやっていくんだという話をして、それに対する期待も出てきましたが、いずれにいたしましても、各国はそれぞれの国の事情に応じてしかるべき手を打って、なるべく早く中期的に見た長続きのする成長へ持っていきたいということでございました。それが第一でございます。  第二は、やはりロシア関係あるいは東欧関係でございますが、これは、ここに来て二つ分化しているという感じでございまして、割にうまくいっておりますのは、旧ソ連ではバルト三国それからキルギスタン、モンゴリア、それから東欧ではポーランドとチェコ、それ以外の国々はやはりなかなかうまくいかない。しかし、いずれにしましても、各国のさらなる自助努力が必要でございますし、先進国も忍耐強いと申しますか粘り強い援助が必要だという感じでございました。  第三は、どの国もウルグアイ・ラウンドのことを発言している。これが非常に印象的でございまして、ウルグアイ・ラウンドが成就しなければ、やはり保護主義あるいは貿易摩擦が非常に激化する、しかし、もしうまくいけば、世界中の企業のコンフィデンスが回復して景気回復にも資するだろうという趣旨でございまして、どの国もこれについて必ず言及したのが大変印象的でございました。
  249. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 そういう中で、総裁、先ほど公定歩合の引き下げをおやりになったわけでありますけれども、これはいろいろな議論がございまして、遅きに失したのではないかというような議論もあるわけでございますが、率直に言って、なぜこの時期に〇・七五という大幅な公定歩合の切り下げを断行されたのか、そこの点について承っておきたいと思います。
  250. 三重野康

    ○三重野参考人 これは、委員はもう先刻御承知のことではございますが、現在の日本経済を大きな流れの中で見ますと、一九八七年から四年続いた高成長の間にバブルの発生あるいは非常な行き過ぎた投資ブーム、消費ブーム、そういった幾つかの行き過ぎた点を是正していくという調整期間にあるわけでありまして、そしてこの調整期間は時間もかかりますし、ある程度痛みも伴いますが、これを克服して初めていわゆるバランスのとれたインフレなき持続的成長に行くというふうに見て、それを目指していろいろ政策を講じているわけでありますが、ある程度ストック調整その他が進みまして、ことしの春には一部明るさも見えてまいりましたが、その後、これも御案内のとおりでございまして、急速な円高、冷たい夏、長雨、その他いろいろの悪条件がまた重なりまして、この間において日本の経済は引き続き停滞をしているわけでございます。ただ、その間住宅投資と公共投資は増勢を保って下支えに効果がございましたが、肝心の個人消費、設備投資についてはいまだに回復の兆しが出ておりません。  そういうようなことを考えまして、私どもとしましては八月以降市場金利の低下を図りながら、そしてまたそれは貸出金利の低下にもつながったわけでありますが、それをしながら情勢を見ておりましたが、今申し上げましたように回復の兆しがなかなか出てこないということで、ここで思い切って公定歩合を下げまして、これは史上最低でございますが、そういったことによって実体経済のサポートをしようということが今回の趣旨でございます。  もちろん、非常に低い金利にする、いずれも史 上最低になったわけでございますので、私どもとしてはかなり勇気の要った措置ではございますけれども、ただここに来てもすぐにバブルは起きない。なぜならば、地価等はまだ軟調でございますし、金融機関の融資サイドも慎重でございますので、バブルは起きません。しかしながら、これだけ低い金利を続けますと、あしき副作用が出てくる可能性はやはり否定はできないと思います。その際は、当面直ちにそれに対策を講じなければならないとは思いながら、今は景気回復を第一と考えまして、あの措置をとったわけでございます。
  251. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 確かに、総裁、大変な御決断で〇・七五という切り下げをされた。史上最低になったわけでありますけれども、これは率直に言って、せっかくの御決断でございましたけれども、余り経済の方は私どもの期待ほどの反応をしてなくて、依然として冷え切ったといいますか、白けムードでございますが……。  そこで、総裁、どうでしょう。もう日銀としては〇・七五も金利を下げたんだから、やることは全部尽くした、日銀としてはやることはもう全部やったんだ、後ほどなたかに景気回復をお任せする以外にない、こういうお考えでしょうか。また何か日銀としてやることがあるとお考えでしょうか。
  252. 三重野康

    ○三重野参考人 確かに、金利を下げたことは直接には直ちに需要の増加にはつながらないというふうに思います。特に今のような調整期間のときには、調整がもう少しめどがつかない限り、なかなか金利低下というものが目に見えてあらわれてくるということは少ないとは思います。しかしながら、今回の金利の低下ということは、消費マインドにやはり何がしかのインパクトを与えていると同時に、例えばの話でございますが、企業の収益等の下支えになります。これはやはりこれから後、回復への環境を整備するという意味では効果があると思います。  したがいまして、私どもといたしましては、今度の金利低下と今までとられた財政からのいろんな措置等をあわせまして、この環境整備が現実に景気回復にどうやってつながっていくのかを注意深く眺めてまいりたい、かように考えております。
  253. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 円高が景気にマイナスの影響を与えた、こういう話もございましたが、先進主要国の為替レートについて、さきのIMF総会では、参加国、加盟国内の特にいわゆるG7の中でどういうふうな議論が行われたのか、承っておきたいと思います。
  254. 三重野康

    ○三重野参考人 G7の議論は大蔵大臣からした方がいいとも思いますけれども、私も末席を汚しておりましたが、日本の場合、今度の急速な円高が日本経済に非常に悪い影響を与えたということにつきましては、非常に各国の理解が深まったというふうに私は理解しております。  それと、為替レートについては、それほど議論をする時間はございませんでしたけれども、各国の結論は、ことしの四月のG7の合意、これでいこうじゃないかということでございまして、この四月の合意というのは、これはステートメントに出ておりますけれども、それぞれの為替レートというのは各国の経済のファンダメンタルズをあらわすものである、したがって、それに非常な急激な変化は好ましくない、もしそういうような場合には、各国共同して、協調してそういった対応をしたいということでございまして、そういう結論になったというふうに思います。
  255. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 急激な円高は望ましくないというのは、好ましくないということは、そう思うわけでありますけれども、ただ、総裁どうでしょうか、今のような現実に一千二、三百億ドルを超えるような経常収支の黒字がこれからも続くとすると、いわゆるマネタリーな政策で円高をとめることが可能なのでしょうか。私は、こういった状況が続く限り、傾向としては円高はやむを得ないと思うのですが、どうでしょうか。
  256. 三重野康

    ○三重野参考人 為替レートは、為替市場のいろんな先行きの見込みもあって動くものでございますので、私どもは、政策によってそれをどこかの時点に維持するというようなことは不可能だと思いますが、しかし、今の円高の最大の背景というのは、やはり日本の経常収支の大幅な黒字だというふうに思います。したがいまして、この大幅の黒字をできる限りの対策をとって改善していくということは、為替レートの安定につながるというふうに考えております。  それから、確かに、今委員がちょっと仰せになったように、円高になることは必ずしも悪いことばかりではないというふうに思います。今は、輸出企業の収益が非常に低いところがもろに打撃を受けておりますので、デフレショックを大きく受けておりますけれども、これはやはり輸入原材料の低下がコストの低下につながっているはずでございますし、さらにもう少し長い目で見ますと、物価の安定で実質所得もふえるし、かつ経済構造の変革にも役に立つというふうには思っておりますが、現在はそういうふうに考えております。
  257. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 最近冷え切った消費マインド、投資マインドが、冷夏その他があってまた冷えて、円高でまた冷えてしまう。そこで金融緩和をされたけれども、どうでしょう、総裁、その金融緩和もいいけれどもお話がございましたが、資金繰りが楽になったんですね。いわば現金の言ってみればアイドルバランスですね、そのアイドルバランスが楽になってふえたんだけれども、それが積極的な投資なり消費にまだ向かっていかない、こういうことで、問題は、そのアイドルバランスをもっとアクティブなものに、アクティブマネーにどうして切りかえるかということなんであります。  その関連で、いわゆる所得税減税というものが、これはもう、総理もアメリカへいらっしゃっていろいろな方にお会いになったときも出たようだけれども、何か今や所得税減税の大合唱。景気対策として所得税減税しかない、こういったような雰囲気すらあるわけでありますけれども、これは、大蔵大臣にも承りますが、日銀総裁、こういう状況の中で、所得税減税がまさに積極的な支出刺激策として、内需拡大政策としてどのような効果を持つとお考えでしょうか。
  258. 三重野康

    ○三重野参考人 税制につきましては、現在、税制調査会で鋭意検討を行っているというふうに承っておりますので、私のような立場の者がここで具体的に申し上げるのは適当でないと思うので差し控えたいと思いますが、一般論として申し上げるならば、やはり所得税減税というのは、景気刺激効果がどうかということだけではなくて、いわゆる財源の問題、さらには中長期的な税制のあり方にも関係する非常に幅広い、深い問題だというふうに思っております。税制調査会でその点も含めて検討されて、適切な結論を出すことを期待したいと思います。
  259. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 税制の制度論は制度論として長期的な観点から議論をすることは、私、賛成でございますが、申し上げたいことは、今、当面の景気対策としてこの所得税減税がどれだけの効果があるかということについては、実は私も余り自信がないのです。むしろ、さっき三重野さん、手持ち資金のやりくりが楽になったと。  それから、減税ですから悪いことじゃないんですけれども、こんなときに積極的に物を買うかなというと、やはりこれは貯金にしておこう、貯金も、郵便貯金に預けた方がどうも安全だなと。そうなってくると、もうまさにお金が吸収されちゃって、それで、出てくるのは、来年度予算編成で財投計画ができて実行される段階でまた出てくる、こうなってきますから、どうなのかなという感じがいたしますが、大蔵大臣、大蔵大臣は、所得税減税の経済刺激効果はどうお考えですか。  税制調査会で議論、全くそうですよ。だけれども総理、景気対策は、税制調査会の先生方が何日も何日も、何週間も議論して、その結論を待ってやるように余裕がないんじゃないかと私は思うので、あえてその経済効果という点で承っている わけてあります。
  260. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 きのうも申し上げたのでございますけれども、これ、景気対策の一つとして、やらないむりやった方が効果がある、これはもう当然のことだと思うのですね。ただ、問題はそうじゃないので、こういう政策選択をするときに、よりマイナスのものがあるじゃないか、その比較考量の話だと思うんですよ。  そこで、今の段階で景気対策でやるとすれば、赤字国債以外に出す方法はないのですね。これはどうしても常識的にそう考えざるを得ません。そうしますと、将来に対してもっと悪い経済体質をつくっていくと考えますので、私は、経済効果の問題よりも、日本の将来の経済のあり方として反対いたします。
  261. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 かつて大蔵省におって、今、一橋大学の経済の教授の野口悠紀雄さん、私の親友なんですが、最近「バブルの経済学」という立派な本を書いて、私、ぱらっとめくっておったら、この中で、いろいろなバブルが経済になぜ起こったかという議論をしているわけですが、その一つに、「一九八〇年代の財政運営は、「財政再建」によって特徴づけられる。赤字国債からの脱却が目的とされ、歳出増加が抑制された。」そこで、国債残高のGDP比がずっと減ってしまって、九〇年度末には三八・一%になった。  問題は、こうなって国債の発行がなくなったものだから、「金融機関にとって適切な運用対象が減少した。」「仮にこの期間においても国債という投資対象の供給が増加し続けていたなら、貸出競争はあれほど激しいものにならなかったろう。」飛ばしますけれども、「国債発行の削減がなければ、不動産業への異常な貸出増は生じなかった可能性が強い。」  大学者がこう言っているのでありますけれども、まず日銀総裁、こういった考え方についてはどうお考えになりますか。すなわち、金融ではないので財政だというか、財政が怠けておったからバブルが起こったんだ、大体そのバブルの原因は日銀総裁だという議論が多い中で、こういう有力な議論が出ているのですが、総裁はどうでしょう。
  262. 三重野康

    ○三重野参考人 バブルの発生当時、長きにわたった金融緩和が一つの原因であることは事実だと思います。その点は私どもも認めております。  ただ、金融だけでバブルが生じたのではなくて、そのときの、例えば東京一極集中、あるいは土地に関する税制その他のものもあったというふうに思います。そういう意味では、私どもは、やはりこれは謙虚に受けとめて、今後の政策の一つの種といたしたいと思っています。  それと同時に、今委員がおっしゃったことでございますが、当時の情勢を振り返ってみますと、片一方に、財政再建というものが非常に一つの大事な目標でございました。他方、こちらには、いわゆるプラザ合意以降の円高不況を克服して、そしていわゆる内需中心の景気回復を図るということと、対外収支の改善、要するに黒字を減らすことが、これはいわば国是みたいなものでございました。そういう中に入って、非常に狭い、厳しい政策選択をとらざるを得なかったわけであります。  その結果として、確かにいわゆる円高デフレ、円高不況というものが克服されて、その後のいわゆるバブルさえ発生したような好況に導きましたけれども、あしき副作用としてバブルが生じたわけでございまして、その点はまことに、当時を見ますとある意味ではやむを得ないけれども、しかし、もっとやるべきことはたくさんあったという感じがいたします。  そういう意味で、委員の御質問は、財政と金融のポリシーミックスについての御質問が核心だと思いますが、いかなるときでもやはり財政と金融のポリシーミックスが適切であることが最も望ましいということは申すまでもありませんが、私は、最近は財政と金融のバランスだけではなくて、経済全体のバランスの中ではいわゆる規制緩和ということが、国内の投資もふやすとかその他いろいろな意味で財政と金融以外にもそういったバランスにも大いに力を尽くすべきではないか、かように考えております。
  263. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 規制緩和その他は私も賛成でありますが、大蔵大臣、日銀総裁のお話はよくわかるのですけれども、もうこれは率直に言いますと、日銀としてはもう全部やることはやり尽くしたのじゃないかなと、これ以上金利を下げてもどうかなという感じをどうも受けるのです。  そうすると、さっき言われましたように、大事なことはアイドルバランスの問題じゃないのですね。アイドルバランスをふやすことよりも、もっとアクティブ、アクティブマネーといいますか、それが大事なのであって、そうなるとこれはやはりもう財政に頼るしかないのじゃないか、こういうことであって、さきの内需拡大からバブルに行ったその経過を振り返って、今度は従来以上に細川内閣のもとで積極的な財政政策をやろう、こういうお考えかどうか承りたいと思います。
  264. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 今、日銀総裁も言われたように、私は、景気政策というのは当然、財政、金融一体となって、同じ認識のもとにやっていかなきゃならない。  それから、今、日銀総裁言われたこと、非常に大事なことを、構造政策のことを言われたと思うのですが、私は、もう一つ私の立場で構造政策を言いますと、金融システムの問題、これが崩れているわけですね。この金融システムの再構築ということを、今実は緊急経済対策に出しているわけなんです。余り大きく取り上げていただけなくて残念に思っておりますが、これを大きく取り上げているわけでありまして、やはり私は構造政策として金融システムの問題があると思っております。  それから、基本的に私は国債政策を景気対策に利用しないということを言っているわけではございません。これは、当然、国債政策というのはあるわけでございますが、そこを今まで既に建設国債で非常に私は国債政策をやってきたように思うのです。現にことしの四月の新経済対策、これはまだ緒についたばかりなんですね。平成五年度予算、これも極めて景気刺激的な予算でありますが、それでさえまだ国の契約率は六〇%台でございます。これから残っている。そして平成五年の六月の補正はまさにこれから効果を発揮する。そういうことで、まず状況を少し見るということも大事だと思うのです。
  265. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 総理総理が内閣を組織されて国民はそれなりに期待をしておると思うのですね。残念ながら総理支持率は大変今は高い、こういうことでございますから、それだけ期待をされていながら、どうも景気に対しては総理はいまいちじゃないかなということを率直にいろいろな人がおっしゃっているのです。それは、生活者重視とかいろいろなことをおっしゃっていますが、それは言葉が踊っているだけなんです。言葉が踊っているだけで、本気で国民の生活をよくするという決意と具体的なアクションがない、言葉が流れているだけではないかと思うわけであります。  そこで、私は総理にぜひひとつお取り上げいただきたいのは住宅でありますが、これはもう古くから言われていることでありますから何も新味がないんだけれども、この際思い切って住宅促進税制なり住宅促進金融をやっていただきたい。それが生活者重視、個人生活を豊かにするベースが個人の住宅だろうと私は思うからであります。  そこで、まず第一点として、私は実は労働大臣のときに労働省のお役人の国家公務員住宅をずっと一日かかって歩いたのです、局長さんまでは行かなかったのですけれども審議官から若い人たちまで行って。そして、非常に驚いたのでありますが、全くみすばらしい住宅で生活をしておりますね。  大体、今普通の家庭で電気洗濯機のない家庭はないはずだけれども、ですから公務員住宅にだってありますよ、だけれども電気洗濯機を置く場所 がないのですね。考えてみれば、昭和四十年代の前に電気洗濯機ができたものだから、それまでの国家公務員住宅には電気洗濯機を置く場所がない。どうしているかというと、電気洗濯機を台所に置くだとかベランダに持っていくとか玄関先に置いておく、そういう住宅が結構たくさんある。  それから、大体、公務員住宅は五階までが多いのです。東京都内の優良地に五階までですよ。なぜか。五階以上にするとエレベーターがつくのですよ。だから、エレベーターをつけなくて公務員住宅をつくるにはみんな五階なんです。  だから、かつての宮澤内閣で厚生大臣が赤ちゃんの歌をつくって、そしてみんなで子供を産もう、やはり少子社会じゃだめだという話だったけれども、いくらいい歌をCDで聞いたって、五階に住んでいる若い奥さんが、子供一人ならともかく、二人、三人持ったらこれは地獄ですよね。  だから、歌をつくる前に家をつくりかえる、こういうことを私は言ったのでありますが、これはいろいろな議論がありまして、そう言ったって先憂後楽じゃないか。大体お役人さんは、先憂後楽だから、後に楽しむべきであるという話があって、私は、それはそうかもしれないけれども、例えば労働時間だって先憂後楽と言われたけれども、まさにこれからは率先垂範だ。役人がみずから週休二日制をやることによって国民に範を示すんだということで、私は労働大臣として労働時間短縮に頑張ったわけでありますが、私は、ぜひ細川総理、そこにも立派なお役人がたくさんいるけれども、例えば外務省のお役人さんが海外から帰ってきて自分の家に、公務員住宅に外国の外交官呼べますか。国会議員の宿舎は、国会議員はどうも評判よくないから、私も大蔵大臣も同じ九段宿舎で生活しておりますが、それはともかくとして、私はもっともっと国家公務員の生活をよくしたいと思うのです。  大体三十二万戸あります、宿舎が。調べてみたら四十年以上の古い住宅がそのうちの二万五千戸なんですね。そして、二十年から三十年も入れると大体十七万戸、十八万戸ありますから、これを建てかえると考えたら、それは一戸一千万か一千五百万で計算したって、それはウン兆円。  しかも、これは総理、土地代要らないのですよね、そこにあるんだから。――もういいです。日銀総裁、済みません。  もう土地代金なしの全く丸々の内需ですから、だからこれは細川内閣で私はぜひひとつ実現をしていただきたいと思うのでありますが、大蔵大臣、何か物を言いたいようだから、大蔵大臣に言っていただいて、そして私は、これは総理に御決断をしていただく。やはり日本の役人の生活をよくしてやっていいですよ。これは率先垂範だ。新しい、近代的な生活のモデルに日本のお役人をしたらどうですか。大蔵大臣、どうですか。
  266. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 近藤委員から大変公務員に対して温かい御配慮を言っていただいてありがたく思っております。やはり公務員は、誇りを持って、そして責任を果たしていくということが大変大事だと思う。その基盤である居住条件をよくするということは、私は大変大事なことだと思います。  実は平成三年に公務員宿舎の予算というのは九百八十五億だったんですね。それが景気対策の意味も含めまして今は二千十八億なんですね。相当な額をふやしております。はっきり言うと、今までのお金はどちらかというと数の充足に使ったわけですね。ところが、今は九七%というようなことになっておりまして、今ようやく質へ転換をしている段階だと思います。  今、近藤委員お話にあったようなことは大変大事なことだと思いますし、そうやってふやした予算を質の改善ということに使ってまいりたいと考えております。
  267. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 確かに二千億になっているのですよ。これは当時の大蔵大臣羽田さんにもいろいろ言って、そして当時の総理大臣の宮澤総理もぜひ見てくださいよとこう申し上げたのだけれども、宮澤さんはどこか多摩ニュータウンか何かすばらしいマンションを見て、すばらしいと帰ってきてしまった。だからだめになってしまったのじゃないかと私は思うのでありますが、これは失言であります。ぜひひとつ、総理、見てやってください。  そう言ってはあれだけれども総理のような立派なお家柄で、さっきも話があったけれども、大変立派なおうちを持っていらっしゃる方と比較を絶するような生活をまじめなお役人がやっておりますからね。だから、二千億を五千億にしたっていいじゃないですか、今景気が悪いのだから。  それで、これは完全に建設国債対象事業ですよ。しかも完全に実需になりますよ。そして、いろいろな関連の需要が出てくる。そして、景気がよくなったらやめればいいじゃないですか。これはあしたにもできる、土地があるのだから。これはぜひひとつ、これは大蔵大臣もそれから建設大臣も関係するのだから、これはぜひお考えいただきたいと思います。  それから、次に話を進めますが、住宅金融公庫は今度の予算でも大きな役割を果たしているのだけれども、大蔵大臣、一体住宅金融公庫に幾ら一般会計から利子補給をしておりますか。
  268. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 約四千億でございます。
  269. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 今度の住宅減税でどれくらいの減税額を考えていますか。
  270. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 今度の住宅減税は大変意味のあることをやっていると思います。内容的に見ますと、一問のリフォームとか、きのうもお褒めをいただきましたが、二百四十平米という限界を取っ払うとか、いろいろやっております。ただ、減税効果としては、もう今まで相当やっておりますから、上積み部分というのは余り大きいものではないと思っております。
  271. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 住宅金融公庫が最近まで果たした役割を私は評価するにやぶさかではありませんが、総理、四千億も五千億も財投から金を入れて、その財投に利子補給しているわけですね。そして安くして住宅金融公庫融資をしているわけですね。これは大変皆さんに喜こばれていることは喜ばれておりますけれども、私はまさにその民活でやって、一般の市中銀行、それから農協、漁協も含めて、一般の金融機関はもっともっと住宅金融の表に出ればいいと思うのです。  だから、いろいろな減税の方法があります。所得控除だとか利子控除、いろいろな議論ありますけれども、大蔵大臣、住宅金融公庫に四千億も一般会計からぶち込むなら、その四千億を住宅減税の原資と考えれば、それは相当大幅な低利の住宅融資が、しかも特定の住宅金融公庫という、いわば官営金融機関じゃなしに、幅広い一般の金融機関を通じて庶民に対してどんどんどんどん住宅金融が進むわけでありますから、それはやはりすべきだと思うのだけれども、大蔵大臣、どうですか。
  272. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 もう一応御評価をいただいたので余りくどくど言いませんが、住宅公庫の果たしてきた役割というものは非常に大きいし、私は現在でも大きいと思うのですね。四・二%という金利によって、しかも安定的に資金が供給されている。しかも融資条件は非常にいいです、期間などを考えますと。民間金融機関に依頼したのではなかなかそこまではいかないと思いまして、私は、今の住宅金融公庫の仕組みというものは多くの方に現在も大変役立っていると考えております。  また、住宅減税でございますけれども、御承知のとおり、今六千億に達しておりまして、よく不公平税制という言葉が使われますが、政策減税の最大のものはこの住宅減税であります。それは意味があると思っております。悪いという意味で申しているのではございませんが、しかも、大体限度が三十万でございますね。三十万の所得税を払う人というのは、年収七百万の給与所得者であるということを考えますと、まあまあ住宅減税としてもいいところにあるのじゃないかなと思います ことを申し上げたいと思います。
  273. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 大蔵大臣、わかるけれども、二点。  一つは、やはり、まさに規制緩和なんですよ、民活なんですよ。住宅金融公庫は立派な組織である、これは私も認めますけれども、だけれども一般の市中銀行だって、山形銀行だって立派な金融機関だからね。だから、この人たちに広く積極的な投資対象考えさす、そのかわり借金は減税するよというふうにやって、四千億使ってごらんなさいよ。そうしたらもっともっと広範なインパクトがある。  問題は、繰り返しますけれども、単なるアイドルマネーを与えることじゃないのよ、アクティブマネーをどうするかですよ。よし、買ってやろう、使ってやろうと言わせなければ、いつ景気よくなるんですか。それを刺激していかなければならぬ。  もう時間がないから進みますが、私は、大蔵大臣、金融制度改革ということをずっと大蔵省はやってきましたね、金融制度調査会で。私も越智先生と一緒になって党の金融問題調査会でやったけれども、これは全部民間金融機関。民間金融機関の、都市銀行どうだ、信託銀行どうだ、保険がどうだ、そして証券と銀行の相互乗り入れどうだ。何か関係機関の利益調整みたいなことやっているんです、大蔵省は。  だけれども、大事なことは、もっともっと一般の金融――だから、民間金融機関の調査改革もいいですよ。だけれども政府関係金融機関だって今の状態でいいんですか。それは開発銀行、輸銀、たくさんあるけれども、それはできたのはできたなりの理由がありますよ。だけども、ひところは、バブル時代に開発銀行と興銀と都市銀行がみんな競合しておった。それから、国民金融公庫と中小企業金融公庫と地元、田舎の銀行が融資対象を争っておったんです。そんなこともあったわけ。とすれば、なぜ大蔵省は民間の金融機関だけを金融制度改革対象にするんですか。もっと民間と国を通じた総合的な、まさに国民のための、まさに生活者重視でいいですよ、金融制度を本気であなた方はつくることを考えないのですか。  総務庁長官、行政改革というものに大いに御熱心で、私は大賛成なんだけれども、そういう行政改革考えた場合にも、単なる国家の行政機関じゃなしに、政府関係機関、特に今金融が問題なら、まず政府関係金融機関の根本的な見直し、改革。私は住宅金融公庫をやめると言っているんじゃないんですよ。あり方を含めて、もう一回民間と公的金融機関をトータルに見直すことが必要だと思うのですが、総務庁長官、どうですか。
  274. 石田幸四郎

    石田国務大臣 お答えを申し上げたいと思います。  近藤先生の御議論は非常に卓見だというふうに私どもお話を承りました。私どもというより私は、この立場になる前には、例えば奨学金の問題なんかは、育英資金の問題等は民間のそういった資金を活用すべきではないか、こんなことも考えたことがあるのでございますが、今先生がおっしゃった政府関係機関の全体の改革というものは、まさに金融政策全般の中で考えられなければならない問題だと思うのでございますが、今も大蔵大臣から話がございましたように、それぞれがやはり政策体系の中ででき上がっている機関でございますので、今までの行革審の意見なども拝聴いたしましても、全体の統合的なそういうような問題についての御意見というものが余りない、そういう状況ではなかったかと思うわけでございます。  合理化、活性化を図れという、そういう御趣旨の答申はあったのでございますけれども、全体の統合までにはまだそれだけの意見が成熟をしていないというふうに思わざるを得ないわけで、現状としてはやはりそれぞれの特性を生かしてさらに推進をすべきものではないか、こう考えているところでございます。
  275. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 大蔵大臣はもう聞かなくても大体わかっているから、もう時間がないから。ただ、総理、私は総理にともかく二点。  一つは、本気で国民の住宅の改善向上に取り組んでいただきたいのです。そして、やはり国家公務員が問題になると、なぜお役人だ。私は問題になった方がいいと思うのです。ここで細川内閣が公務員宿舎を一挙に改造するならなさってください。賛否両論です。だけれども、そのことで細川内閣の国民住宅重視の姿勢が問われる、問われるというかPRされるのは悪いことじゃないんじゃないですか。ぜひこれは総理予算委員会が終わったらひとつどこか近くの公務員住宅へ行ってください。いかにひどいかということを見てください。そして考えてください。それが第一点。  第二点として、関連で、金融機関の行政改革政府関係金融機関の行政改革」も、これはぜひひとつ大蔵大臣も叱咤激励して、総務庁長官はもうちょっと大胆な発想をしていただいた方がよかったと思うのでありますが、せっかく公明党の委員長なのだから余り役人が言ったようなことをやらないでいただきたいと思うのでありますけれども、ぜひひとつ総理、頑張っていただきたい。一言御決意をお願いいたします。
  276. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 よく御高説拝聴させていただきました。  確かに、公務員住宅の改善を図っていくということは、公務員のモラルの向上にもつながっていくことでございますし、大変大事なことだと思っております。また、その他さまざまな、景気を刺激していくという観点からも検討に値することであろうと思っております。  金融関係のことにつきましては大蔵大臣から御答弁があったとおりでございますが、それなりに政府系金融機関の果たしてきた役割というものも、先ほどお話がございましたように、長期に低利に安定的にという役割もあったのであろう。そういうことも踏まえて、今後のあるべき姿というものは、これも今総務庁長官からお話があったとおりでございますから、そうした点を踏まえて、今後検討をしてまいりたいと思っております。
  277. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 もう一つ、総理細川内閣がはっきりしないのは地方開発の問題ですよね。やはり多極分散型国土の建設ということは言うこと久しですよ。いろいろな計画があった。だけれども、結果的にはみんな大都市集中、東京集中ですよ。だけれども、せっかく二人の知事さんが今日本の政治の中心にあるのですからね。熊本県の知事さんだった人と、滋賀県だったでしたかどこかの県の知事さんだった人が、総理官房長官日本の政治の中心にあるのだから。これは国土総合開発の、多極分散の政治ができる絶好のコンビじゃないですか。私は、ひとつこれはもう時間もないので、国土庁長官、この人も遠くから来た人ですからやはり多極分散のチャンピオンであって、恐らくだから総理はあなたを国土庁長官にされたと思うのだけれども、上原長官、どうですか、どうしたらいいですか。
  278. 上原康助

    ○上原国務大臣 いろいろ御協力いただきましてありがとうございます。この問題なら余り御批判もないと思いますから。  今御指摘のように、地方分散化というか地方の見直しというのは、御指摘のように大変重要な政策になっております。といいますのは、地方の人口の減少あるいは高齢化等によりまして地域社会の活力の低下が懸念をされておるということで、国土全体の均衡ある発展を図る観点はもとより、国土保全の観点からも、地方振興、多極分散型国土の形成を目指して、国土庁の地方振興局で鋭意努力をしているところであります。  こういう基本認識に立ちまして、これまでも地方の発展の拠点となる地域の整備、地域産業の高度化、総合保養地域の整備等の諸施策の展開に努めてまいりました。また、過疎地域等においても、産業基盤や生活環境の整備など各種事業を計画的に実施をいたしまして、人口の定住化と地域の振興、開発を図っておるところでございます。さらに、先般成立を見ました特定農山村法などに より、中山間地域等の振興対策の推進を図っていくことといたしております。  今後においても、引き続き地方の積極的振興と国土の均衡ある発展を図るため、今いろいろ御提言がありましたことなども参考にして、総合的な施策の推進に努力をしてまいりたいと思いますので、ひとつよろしくお願いをいたします。
  279. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 国土庁長官は、就任以来、大変勇気のある大臣だということになっておりますので、ひとつ思い切った地域開発に取り組んでいただきたいと思います。  そこで総理、私は、これは前に私が大内先生とそれから神崎先生、大臣予算委員会の理事をやった当時、話をしてやろうやろうと言っておったことに、国会移転だけれども、国会等じゃなしに、国会だけを移転したらどうだ。新幹線一時間で通勤できるぐらいのところに国会だけを移転、国会村をつくる。これはお役人も全部持っていこうとなると金がかかるし、また大変なんですよ。子供の教育がどうのとみんな反対する。だから、この国会と国会議員会館と国会議員の宿舎と、それから国会職員の宿舎とそれから政党本部ぐらいみんな持っていく。子供の教育があってだめだとおっしゃる方は国会議員やめて、子供の教育が終わってからなりゃいいんだから、お役人はそれができないから。だから、総理、国会だけ持っていったらどうです。シンボリックでございます。  通勤一時間以内なら、委員会が十時から始まるなら、それで国会にはもう局長しか来ちゃいけない、もう課長以下は要らない。朝十時委員会であったら九時に出れば来れるんだから、五時までだったら六時に帰れるんだから、遅くなったって大したことないんです。それが嫌なら局長にならなきゃいいんだから。  だから、まさに国会だけをシンボリックに、通勤一時間以内ぐらいのところにやって、そしてまあ赤坂も新橋も何もない。いいんじゃないですか。そういうところで、まさに質実国家だから、やはり質実国会をやったらいいと思うんです。これだったら、計算したら一兆も要らないんですよ。七、八千億ぐらいあればもう優におつりがついちゃって、すばらしい国会ができるんだけれども、どうですか。国会村をつくる、国会だけを移転することについて、総理はいかがお考えでしょうか。
  280. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 国会移転の問題につきましては、いろいろ御論議があっていることは御承知のとおりでございます。しかし、今のお話を伺っておりますと、国会だけということでございましたが、限定的にとか、限定的な首都機能の移転とかいろいろあろうと思いますが、今のお話は国会だけというふうに承りましたが、国政調査権の問題とかいろいろあるのではないかと思います。そうしたものも付随して移転をするということでないと、国会だけがどこかに行くというのはなかなか成り立たない話ではないかというふうに私は思っております。
  281. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 だから、総理、そういうことをおっしゃるから細川内閣の姿勢がはっきりしないのですよ。何かシンボルになるものがなければならない。せっかく二人の元知事さんが日本の政治を動かしているんだから、もうちょっと地方を大事にしてください。そして、本当に生活者重視を言うなら、生活の拠点は住宅だから、しかもこれは地方分散と密接な関係があるわけですから、ぜひお願いいたしたいと思います。  もう時間がなくなって、はしょりますが、さっき申しましたけれども、円高をやめるためには、今みたいな輸出をしておってはだめですよね。だから、千数百億ドルの貿易収支の黒字をどうしたらいいのか。それはもう何か黙っていればいつの間にか減るんじゃない。具体的にどの、例えば自動車の輸出がふえるのか減るのかコンピューターがふえるのか減るのか、繊維がどうだこうだ、具体的な商品が売れるか売れないかで決まるわけだけれども、どうなんでしょうね。  通産大臣、どうしたら日本の貿易収支の黒字が減るんですかどの商品を売らなきゃいいんですか、どの商品を買い込むんですか、具体的に例示をして御説明していただきたいと思います。
  282. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 御質問の意味は、これだけの円高になりまして、いかなる商品構造というか産業構造が、逆に言えば円高を引き起こさないような経済構造であるかということだろうと思うのですが、具体的な品目を言うのはなかなか難しい。あえて言えば、比較優位にあるものは日本に残るし、比較劣位にあるものは海外に展開をしていく、こういうことだろうと思います。  しかし、基本的には内需主導型の経済構造をつくり、また内需が盛り上がるような財政金融政策をやり、さらに市場アクセスがうまくいくように規制緩和その他を進めていくということが大事だろうと思うわけでありまして、まさにそれだからこそ今回の緊急経済対策におきまして、そうした方向に向けての中長期の構造転換を踏まえた第一歩としての政策を打ち出したということだろうと思います。
  283. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 通産大臣、そういうことを言っているからだめなんですよ。それはもうわかり切っていることなんだ、そんなことは。だけれども、問題は、自動車を今までどおりつくって売り続けるのですか。コンピューターを今までどおりつくって売り続けるのですか。円高で大変だ、大変だと言っているけれども、それは当たり前ですよ。円高というのは、単純なことだけれども、円高で海外で売れなくならなければ意味がない。だから、円高というのはもともと企業にはつらいことだ。つらいから、海外でもう自動車売れなくなるから、今度は内需に切りかえるのでしょう。円高がつらいから何とかしてくれといったら、またもとのもくあみですよ。  そこで皆さん、ちょっときょう、簡単にこれははしょって資料を調べてみたのだけれども、例えば今、九二年の通関収支差で約一千億ドルの黒字をなくすために、例えば自動車は五百五十二億ドル輸出超だからこれをなくす。それでも五百五十三億ドルが減るだけ。そして音響映像機器、その他も二百億ドル、この二百億ドルも減らす。だから、こういうようなことにならなければだめなのですよ。  だから、そういうふうな産業構造に変えていかなければ、まさに内需拡大政策はできない。平岩研究会、平岩レポートを待つとこうおっしゃるけれども、私は前川レポートができた直後の経企庁長官だけれども、その平岩レポートに期待するとしたら、こういうことをきちっとある程度指針を示していただいて、それが実現するためのまさに産業政策、産業構造政策をしなければ、いつまでたっても日本の経常黒字は直らぬのじゃないのですか。  そして、もう時間がないから、これは労働大臣に質問する時間はないのだけれども、ぜひひとつそれができるような労働行政の思い切った展開をしていただきたい。これは要望だけをしておきます。  そして最後に、ウルグアイ・ラウンドでありますけれども総理からたびたび、従来どおり米は絶対輸入しない、市場開放しないとおっしゃっておられる。私も農業県を代表する者として安心をしているわけでありますが、ただ、果たしてそれでウルグアイ・ラウンドがどうなるのだろうか。日本が頑張ることでウルグアイ・ラウンドがだめになるのじゃないか、こういう意見をみんな持っているわけです。そこが問題なんです。  そこで、私はぜひひとつ総理のイニシアチブや関係各位にお願いしたいのは、今までいろいろな議論をしてきたので、結局妥協をしていないの、できないのは、本当に政治的、国内的町題があるのだけが残っているわけですから、それはもうやらない。それで、残ったものだけで、残ったもので合意に達するということを、これはスモールパッケージと言っておったけれども、ぜひひとつこれを主張していただきたいし、第一、ウルグアイ・ラウンドの根本目標は世界貿易の拡大発展でしょう。世界貿易の拡大発展のために農業も大事だけれども、農業だけじゃないのです。  僕はよく言うのだけれども、アメリカを見てください。アメリカの農産物は世界最高ですよ。世界最高の農産物で、そして世界最大の農産物を輸出しているアメリカが、国際収支はどうなんですか。だから、農業貿易だけでは国際収支は足りないんですよ。いわゆるケアンズ・グループがあるから、ケアンズ・グループは農産物買えと言うんだけれども、私はむしろ逆だと思うのです。農産物だけしか輸出できないふうなケアンズ・グループの産業構造を転換をしてやる。そして、もっと多角的な商品生産経済に体質改善して、農業だけに依存しないで、バランスのとれた経済発展ができるように、そういうケアンズ・グループの経済開発に日本はもっともっと積極的になるべきだと私は思う。それをしないで、さっきだれか言っておったけれども、みんなタコつぼ形で、ばらばらで、個別撃破だから、全部農業にしわが寄っちゃうんですよ、農業何だ、何だと。これは冗談じゃないです。米なんか買う前に、日本経済はこの経済力で、世界経済の発展に貢献することは無限にあると思うんです。  だから、総理、私はぜひお願いしたいんだけれども、あなたのイニシアチブで世界に向かって物を言ってください。ウルグアイ・ラウンドはこれで終わり。しかし、世界経済の新たな二十一世紀以後の発展のために日本がイニシアチブをとっていく。ケアンズ・グループのような後進国の経済の多角化、高度化ですね。そして、その製品を日本が買いましょう、市場を開放して。そういう大胆な世界経済発展についてのプログラムを、日本は経済大国と言われるんだから、もうこういう中で、そういった新しい世界貿易発展のためのプログラム、世界会議を、私は日本がイニシアチブをとっていいと思うんです。  私は、労働大臣のときに、ともかく雇用問題を解決するためにG7の労働大臣が集まって世界の雇用問題をやろうと言ったんだけれども、これも宮澤さんが、そんなことなりますかねなんて言って、結局ならなかったんです。だからだめになっちゃったとは言わないけれども。それで、今度はクリントンが来て、あれはいいアイデアだと言って、今度は十一月ですか、労働大臣、やるわけでしょう。近藤構想が世界を動かしているんだから。日本だってできるんですよ。  ぜひ、総理、米にこだわらないで、もっと大きな角度から世界貿易を発展するために日本がイニシアチブをとる、これから。英語もお上手なんだから、ぜひやっていただきたい。その決意を最後に承って、私の質問を終わりたいと思います。
  284. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 世界の市場を拡大していかなければならない、それはもうまことにおっしゃるとおりでございます。そういう方向で我が国としてもできる限りの努力をしていく、そういう方向でこの内閣としても取り組んでまいりたい。そういうことの意味において、今度の経済研究会というものをつくらせていただいたところでございます。
  285. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 総理、世界の市場開放だけじゃないのよ。世界経済が発展するように、もうともかく物心両面で、技術的にも、必要だったら職業訓練も日本でやってやる。やはりトータルなプログラムを持って世界に問うということをぜひしていく。開放だけじゃないんです。  以上です。
  286. 山口鶴男

    山口委員長 これにて近藤君の質疑は終了いたしました。  次に、東家嘉幸君。
  287. 東家嘉幸

    ○東家委員 私は、総理と同じ熊本当身の同僚議員として、自民党議員としてともに働き、親しい間柄でございました。このように総理におなりになられたこと、県民として大変慶賀にたえないわけでございます。一生懸命務めておられることに対し、私たちもやはり同県人として当然声援を送るべきだという気持ちでいっぱいでございます。  なおまた、参議院から知事の方に転身したいというような御意見がございまして、当時、知事の四選問題等もございまして、自民党県連としては国会議員に後任は一任というようなことで、当時、園田直先生と私がその一任を受けまして、そして知事に就任いただいたわけでございますが、大変ユニークな新しい構想を打ち出され、私たちも期待をいたしておりました。が、突然おやめになるということで、実はびっくりしたわけでございます。しかし、それぞれ考え方の違いもございましょうけれども、このように総理まで上り詰められました。  しかし、知事時代にいろんな構想を打ち出された中で、私は一つだけ気になっていることを取り上げてみたいと思います。と申しますのは、知事が当時、新しい住宅政策の中で、イタリアだったと思いますけれども、熊本に熊本の独自のイタリア住宅をつくりたいということで、設計士等も引き連れて設計されて展示場に展示されましたが、居住性というものがなかなかそぐわないということで今さたやみになっておりますが、日本日本の古来のやはり伝統的な住宅もございますし、そういうことで、見かけだけではなかなか実態とマッチしない点もあろうかと思いますので、今後いろんな視点から総理に対しての御注文が同僚議員からもございますけれども、どうかひとつ実のある政策というものを今後とも掲げていただいて、そして立派な総理としての役目を果たしていただきたいと心から念じるわけでございます。  きょうは国土各般にわたることで御質問を申し上げたいと思っておりましたけれども、時間の短縮をせざるを得ない状況になりまして、かいつまんでの質問になりますし、一部は具体的なことも申し上げますけれども、特に総理のお考えの行政改革、そしてまた地方の時代、分権、そうした問題については非常に私たち考えとマッチする点がございます。  特に私は、元国土庁長官としてその任に当たる務めの中に、国土庁の役割というものに対し、しみじみとさらなる認識をし、取り組む姿勢というものを、私はその責任の重大さを痛感いたしたわけでございますが、特にきょうは四全総の成果と五全総の見直し、第二国土軸を今後の国土政策上の柱に据えて国土の均衡ある発展の基礎とすべきと思うことが多うございますが、このことについて総理の御見解を賜りたいと思います。
  288. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 均衡のある国土の発展、多極分散型の国土ということにつきましては、今お話に出ました四全総というものを基調として今日まで進められてまいりました。その結果として、第二国土軸までですか、いや、第一国土軸までですかとにかく幾つかの、基本的な、瀬戸内海に沿っての軸というものが、どこでどうつながっているかは別として、太平洋岸を中心としてでき上がってきた。それはそれで大変意味のあったことであったと思っております。  しかし、来年の六月でございましたか、たしか四全総も点検作業を終わるということになっておりますが、今後新たにその次の第五次全国総合開発計画を策定をするということになっておりまして、その中で新たにどういう軸を考えていくのか。先般も全国知事会に出席をさせていただいたんですが、そのときにも各知事さん方から、幾つかのほかの軸についてもお話がございまして、これはかねてからそういうお話は出ているところでございますが、たびたびこの委員会でもお話が出ておりますような均衡のある国土というものを考えていくときに、今後どういう軸を重点に考えていくのか。それは一にかかってこれからの点検作業の中で結論が、方向づけがなされる話であろう、そのように思っております。
  289. 東家嘉幸

    ○東家委員 国土庁長官にお尋ねいたしますが、東京一極集中もさることながら、地方でも大変な一極集中が著しい、こうした状況に対し、簡単で結構でございますけれども、どのように取り組もうとしておられるのか、御見解を賜りたいと思います。
  290. 上原康助

    ○上原国務大臣 お答え申し上げる前に、東家先生が国土庁の御先輩としていろいろ御協力いただいていることに大変ありがたく思います。  今、東京一極集中の是正、地方の時代を迎えてというか、その国土の均衡ある形成のために国土 庁どう取り組んでいるかというお尋ねですが、私から申し上げるまでもございませんが、昭和五十年代後半から御承知のように東京圏への諸機能の集中と人口の再集中化がなされ、同時に国際化の急速な発展に伴う東京の世界都市としての役割の高まり、あるいは国民のいろいろのニーズとの関連もありまして、ソフト化、サービス化といった我が国産業構造の変化等によるもので、こういう東京一極集中化が形成されるものと認識をいたしております。  このように、経済的効率性を求める動きが東京一極集中化の大きな背景あるいは要因だと見ております。また、政治・行政機能の東京への集積も大きな原因だと考えられております。  なお、地方における一極集中についても、地方都市を中心に産業構造の変化等により就業機会が県庁所在地等において総体的に増加をしている。これを是正をして均衡ある国土形成をしていくために、先ほど総理がお述べになりましたように、四全総、ポスト四全総を目下国土審議会を中心に検討いたしておりますが、その中で国土軸というものを新たに形成をしていきたい。こういう立場で、ポスト四全総を来春までに検討をいただいて、その御報告も受けながら、多極分散化、東京一極集中から地方への分散化というものの促進を図りたい。こういう立場で、目下いろいろ準備を進めていることを御理解を賜りたいと存じます。     〔委員長退席、野坂委員長代理着席〕
  291. 東家嘉幸

    ○東家委員 国土庁長官の役割は本当に私は大きいものがあると思います。私の経験からいたしましても、特に私が痛切に感じましたことは、各省庁間の調整、これはもう私は基本的な問題だと思っております。どうしても縦割り行政、その弊害というものが是正できないものであろうか。事業の執行に当たりましても、ややもするとまちまちでございます。圃場整備をしようと思っても、河川が改修されてない、河川改修を得たざるを得ないというようなことで、もっとそうした調整というものが行われるとするならば、もっともっと効率的な私は事業の推進というものができるのではなかろうかとかねがね大臣当時から、今もそのように思っておりますが、この調整費、幾ら今度増額するようになされましたのか、質問申し上げます。
  292. 上原康助

    ○上原国務大臣 お答えさせていただきたいと思います。  私も国土庁のこの仕事分野の広さあるいは調整機能をどう充実化をしていくかということでは、先生の御認識、御理解と共通をいたしております。特に災害対策一つをとらえてみても、災害対策本部を設置をして各省庁といろいろ調整をしなければいかない。二十三省庁にまたがるいろいろの御理解と御協力を仰がなければ、なかなか臨機応変というか機敏に地方の要求にこたえ切れない場合が多いのです。ですから、そういう意味で今御指摘のような調整機能をもっと強化をしていくといいますか充実をしていく上で、国土庁の果たしていかねばならない役割というものは大変大きいと思います。その意味では、縦割り行政をできるだけ是正をして、各省庁の御協力も仰ぎながらやらなければならない、こう考えております。  そこで、今お尋ねの国土総合開発事業調整費の件ですが、これは東家先生の非常な御協力といいますか積極的な御提言もあって年々改善をされておりまして、もうとっくに御案内のように、平成五年度は当初予算約百三十三億円でしたが、補正予算で十五億円、本年六月に増加されまして、総額百四十八億で今実施をしているところであります。  次年度はさらに増加をしてもらいたいということで、当初から百三十八億円を概算要求で出させていただいておりまして、この総合開発事業調整費は、非常に関係団体、地方自治体等からぜひもっと強化をしてもらいたいという御要望も強いようでありますので、私としては大蔵省の御協力もいただきながら御期待に沿うように努力をしてまいりたい、こう考えております。
  293. 東家嘉幸

    ○東家委員 私は一けた違うのじゃないかなという思いを就任当時しみじみといたしました。やはりそうした調整費によってスムーズに、効率的に、国民の税金が生かされるわけでございますから、大蔵大臣、このことについてどのように御認識をしておられるのかもう一言で結構でございますから。
  294. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 今のお話の国土総合開発事業調整費、これは非常に意義のある金だと思っておりますし、国土庁にふさわしいお金じゃないかと思っております。平成六年度につきましては、なお現大臣とよく相談をいたしまして措置してまいりたいと思います。
  295. 東家嘉幸

    ○東家委員 同僚議員の江藤先生そのほかからも、総理の消費者の視点に立った公共事業の推進ということで、いろいろな予算配分等に建設省も農水省も戸惑っている嫌いがありはしないかと危惧をいたしております。確かに住宅、下水道、公園と、こうしたものも重要でございましょうけれども、多極分散型形成の促進のためには、やはりどうしても交流ネットワークの道路や、または住民の生命財産を守るためのそうした諸事業というものは不可欠だと思っておりますが、このことについて建設大臣、その関係の大臣もおられますけれども、まず建設大臣にその認識をお伺いしたいと思います。
  296. 五十嵐広三

    ○五十嵐国務大臣 お話しのように、道路であるとかあるいは河川であるとか、一般的に分けるときにいわゆる生活者でない分け方とされている嫌いがあるわけでありますけれども、しかし、道路といいましても河川といいましても、それは実際には日常の住民の生活の上では欠かすことのできない重要な問題でありまして、殊に地方におきましては大変そういう傾向が強いのは当然であろうというふうに思う次第であります。  そこで、ちょっとあれしますと、平成五年度でありますが、全体で、地方圏と三大都市圏と分けてみまして、やはり地方圏で約七割公共事業が配分されている、三大都市圏で約三割ぐらいということになっているわけであります。これはやはり、年度をずっと追ってまいりますと、地方にかなりウエートがかかってきている。中でも道路あるいは治山治水の面で見ましても、例えば道路ですと、地方圏で七四%、三大都市圏で二六%、あるいは治山治水でいいますと、地方が七六・八%、そして三大都市圏が二三・二%というようなことで、これは地方の方にこれらに関してもかなりウエートを置いて努力している。もちろん、一方で住宅であるとか下水道であるとか公園というようなことも全力を挙げて努力しなければならぬことは、もう言うまでもないことだろうと思います。     〔野坂委員長代理退席、委員長着席〕
  297. 東家嘉幸

    ○東家委員 私が大臣在任中に、雲仙の普賢岳災害の問題で大変苦労いたしました。特に、食事供与ということで、暫定的な措置で取り組みました。どうしても延長せねばならないということで、知事、市町村長とも協議いたしましたところ、少し延長のことについては待ってほしいということで、なぜかと申しますと、やはり仮設住宅に、若い人たちが、そのことによって非常にお互いに、就労の場がありながらも、そこでぎくしゃくする問題等があるから、まず就労のことを私たちは積極的に、県、市も取り組みますので、延長するということの発言は待ってほしいということでございました。  私が大臣の折で、ここで大変な人間の機微に触れるようなこと、はっきり申し上げますと、公明党の市川書記長、君は人情があるのか。人間の機微に触れる問題を、テレビ放映しておる前であのようなことを言われて、私は、大臣というものはこういうことまで我慢せねばならないのかとはらわたの煮え返る思いをいたしました。当時、野党の方から、個人災害として法律で取り組め、個人補償、法律で取り組めという御意見もございました。そのことは多く申し上げませんが、とてもでき得る問題ではなかった。しかし、このことも大変おしかりを受けた。選挙区に帰りますと、あな たは何と冷たい大臣なのかと。長崎に説明に行きました。  そのようなことが、今後どんなに、野党であろうとも与党であろうとも、そうした問題の、やはり人間の本質に触れるようなことは私は慎むべきではないかというふうに思うわけでございます。このことだけはいずれ私は言わせてもらいたいというふうに思い続けておりましたので、一言申し上げさせていただきます。  地方の時代ということで、拠点の整備法案にいろいろな御意見を賜りました。今、地方振興法は百余あると聞いておりますが、生かされていない法律もあろうかと思いますが、総理、この際、そうした法律はもう少し調整して、一体的に、本当に生かされたものに私は取りまとめていくべきではないかと思っておりますが、この点について、やはり行政改革、または新たな視点に立つこうした事業の推進の方向づけというものを総理みずからお示しいただくならと思いますので、お尋ね申し上げます。
  298. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 法律の改廃につきましても適宜見直しが行われてきていると思っておりますが、今後、今お話がございましたような地域の振興にかかわる法律につきましても、それなりに見直すべきものがあれば当然見直していかなければならないであろう、そのように思っております。
  299. 東家嘉幸

    ○東家委員 御案内のとおり、地方は人口減少県は十八にも及んでおります。そうした地方振興のために取り組んだ法律、それが生かされないということはゆゆしい私は問題だと思っております。  拠点法の問題一つ取り上げてみましても、もう少しそうした法律を一体的に、新しい法律に肉づけすることによって地方振興というものはもっと図られるというふうに感じますが、国土庁長官、あなた、今、おわかりになられましたかな。いいですか。じゃ、国土庁長官
  300. 上原康助

    ○上原国務大臣 今御指摘のように、また総理からも御答弁ございましたが、地方に関ずみ法律は多岐にわたっていることは先生御指摘のとおりであります。ただ、国土庁としては、地方拠点法を重点に、これをいかに有効に活用して地域の活性化を図っていくかということで、先ほども若干申し上げましたが、いろいろ努力をしているところであります。  特に近年、最近の地方の状況等を見ますと、若年層を中心とした人口減少が非常に広がる傾向にあること、あるいは地方全体の活力の低下が見られる一方、依然として、先ほどの御指摘もありました東京とか大都市への人口及び諸機能の集中化が続いている。  そこで、地方拠点法によります魅力ある就業機会等を地方都市、地域にどうつくっていくかということが、今先生御指摘の拠点法における一つの政策というか方針としてやっているということと、関連づけて、ゆとりある良質の住宅・宅地の供給など、地方都市においても居住環境の整備充実を図らにゃいかない。あるいはまた職住遊学といいますか、若年層というか、もちろん高齢者も含めてですが、職場の確保、今申し上げた住宅だけでなくして、スポーツその他娯楽等の施設等も確保していく、同時にまた、地方学園都市ということも念頭に置いた総合的な生活空間を創造しながらやっているつもりでございます。  現在、さきに国との協議が終了をいたしております地方拠点都市として三十二地域が指定されておるほか、さらに十二地域の指定が進められておりますので、こういう指定をされたもの、計画されたものを積極的に推進を図りながら、またほかにも早く指定をしてもらいたいという要望も強いわけでございまして、そういうことも考慮に入れて、積極的にこの地方拠点法に基づく地域活性化に努力をしてまいりたい、こう考えております。
  301. 東家嘉幸

    ○東家委員 自治大臣に申し込んでおりませんでしたけれども、同僚議員の質問の中で、やはり県との交流のことについてお答えになりましたが、県に至るまで本庁との縦割りになっている嫌いがどうしてもございましょう。そういうことが、やはり地方みずからのこの拠点法、みずからの知恵とそして努力によってみずからの開発、みずからの拠点整備を図ろうということになっておりますものの、実態はなかなかそのように至っていない。それは、やはりもう少し、縦割りのそれぞれの本庁の意向がどうしてもそこに反映する。これをぜひ、総理のお考えの真の地方の時代を形成していくためには、それは専門的な知識も吸収することも必要でしょう。そうしたことを段階的に、私は特に自治省の指導のもとにそうした問題をクリアしていきたい、いかねばならないというふうに考えますが、そうした交流問題について、新たなる視点に立ってのお考えがあるのかどうか、自治大臣にお尋ね申し上げます。
  302. 佐藤観樹

    佐藤国務大臣 突然の御質問でございますが、流れを聞いて、大体私の思うところと一緒でございますので、東家先生御承知のように、七十六兆の地方財政計画の中で、既に地方単独事業は約十六兆五千億と大変多く占めてきておりまして、地方単独事業のやっている中身を見ますと、厚生省に関係するものもあれば、文部省に関係する博物館あるいは芸術に関係するものとか、いろいろ多省庁にわたって、市長さん、首長さんがやる意欲さえあれば、かなり自由にやれるようになってきている。  これはもう戦後五十年近くたって、昔は道路ばかり、ばかりと言ったらいけない、道路も今お話があったように非常に重要でありますけれども、その基礎ができたんだと思うのですね、地方自治体に。これからは本当にその地域に特色のあるものをということで、やる気のある首長さんはどんどんやれるということになっています。  だから、そういう意味で、今、東家先生御指摘のように、さらにさらに横の連携を持ちながら、本当に特色のある、魅力のある地域づくりということに自治省としてもより一層、そのためにはまず何といっても総額確保、地方交付税にしろ地方税にしろ、総額確保していかないことには単独事業にも参りませんので、そのことも十分留意をしながら、まさに地方分権の時代に沿うような方向で頑張らしていただきたいと存じます。
  303. 東家嘉幸

    ○東家委員 かいつまんで、はしょっての質問でございますので、私の意のすることを表現でき得ないこともございましたでしょうが、総理、最後に総理にお尋ね申し上げますが、今回の総理の施政方針演説の中で、生活者の視点に立っての公共事業のシェアを抜本的に変更する、取り組みたいというような内容のことがございましたことが、どうも公共投資は大都市中心のように受け取られている嫌いがございますが、先ほどの質問でお答えになられましたので、どうかそのようなことに相ならないように、ひとつ総理の真意というものをよく今後とも伝えていただきたいというふうに思いますので、もうこれはお答えは不必要でございます。  私も限られた時間でございますので、私は、特に今中小企業の建設業の皆さん方が、大手がこの不況の中で零細企業、中小企業の分野まで入り込んで、今非常な窮屈な思いになってきておりますし、我々九州の労働基準局あたりでも建設業の解雇問題が大きくクローズアップされてきております。どうか建設大臣、この入札問題については、確かに一連のゼネコン汚職の問題については我々も政治家として反省すべきことでございますけれども、このことが、まじめに取り組んでおります地方の業界の倒産までに至らないようにひとつぜひ取り組んでいただきたい。  私は、かつて十年前に、入札問題の不祥事、談合のことで、鋭意入札問題で審議したことがございます。特にまた、準大手が下請に支払った、がしかし、下請は孫請に支払うことができない、倒産の状況に相なりまして、特に社会党を中心として社会問題であるということで、なぜ建設省としてはそのような業者に発注したのかということの非常なおしかりを受け、審議したことを記憶しております。疑惑は疑惑としてただしながらも、ど うかひとつ今後ともそうしたまじめに取り組む業界の圧迫にならないように、ぜひ御配慮願いたいと思います。  時間がございませんから、最後に、私はシベリアの抑留の経験者でございます。十七歳で、三年有余にわたってあの過酷な労働に耐えて生き残り、帰ってまいりました。それ以来、国会議員になって以来、この問題については、特に補償等の問題も含めて取り組んでまいりました。十二月二十五日、ハバロフスクに行ってまいります。と申しますのは、シベリアの凍土に眠っている皆さん方の慰霊碑を早く建立し、そしてまた日本ロシアの交流の促進を図るためにも、日本公園、庭園をつくって、そして平和のお互いの場としたいという考えで厚生省に大変今お世話になっておりますので、厚生省の職員と行ってまいります。  なおまた、このことと、私は、北朝鮮日本人妻問題でも、社会党の川俣先生初め超党派で、共産党以外、超党派でこの問題に取り組んでまいりました。昭和三十八年、約六千名の皆さん方が王道楽土建設のために意欲を燃やして北朝鮮に渡りました、日本人の妻が。この方々がどれだけ今苦労しているか。また、行方不明者も、また親を思う、子を思う、お互いのそうしたことも実現できない大変な悲惨な状況にございます。  私は、一昨々年、国際会議の中に紛れ込みまして北朝鮮に参りました。最高会議の責任者と、ベルリンの壁崩壊後で文通もできなくなったことについて、私なりに当時、思い起こしますと、よくもあそこまで私も言ったものだと思う。テーブルをたたいてまで抗議をいたしました。何とかその道は開けましたものの、現状は御案内のとおりでございます。  私が残念に思いましたのは、その国際会議に社会党の先生方も参加していただいておられましたので、私はその目的で行ったのではございませんけれども、こうした皆さんといよいよ会談のセットができましたので、どうかひとつ一緒に協力してほしいということを切実にお願い申し上げましたところ、このような呼び方は失礼かもしれませんけれども、金日成閣下に対して失礼なことはとても言えないと当時ある社会党の議員さんから言われましたときに、私は北朝鮮とあれだけの交流の深かった、またそれだけの外交がまだ行われてないときに、なぜそのパイプ役を社会党の先生方がしてさしあげる気持ちになっていただけなかったのか。  私も、余りにも当時興奮してやり合ったことで、外務省審議官が、あなたは危ない、早く帰ってくださいということで、飛行機のタラップまで私を送り届けたことがございますが、どうか山花前委員長、このことは北朝鮮とのパイプが深い皆さんの御協力で、早く自由往来ができますように、実現方を心からお願い申し上げますので、そのことについて一言見解を伺いたいと思います。
  304. 山花貞夫

    ○山花国務大臣 いわゆる日本人妻問題につきましては、平和条約の発効の前と後で戸籍上の取り扱いが違いますし、また同時に我が国が共和国を外交上承認していないということから、日本人の女性が婚姻を契機として共和国の戸籍を取ったとしても日本国籍を喪失していない等々のいろんな形があるのだと思っております。先生がお話しになりましたこれまでの御努力については、私も承知をしている者の一人でございます。  かつて、今お話がございましたけれども、まだ本格的な交流ということの前、朝鮮労働党と日本社会党の交流の機会など、私はお話ありました先生方の超党派の議員団の文書を取り次いで、共和国側に届けてきたという経過も実はございまして、それも今日まで関心を持ってまいりましたが、九〇年の九月に日本社会党と自民党の代表団が赴いた際、自民党の議員の先生の方からの指摘もあり、当時、相手側の書記の方から、十分に理解できる問題であり、双方努力して解決すべきという回答がもたらされました。  以後、日朝の国交交渉が進む中で、人道的問題として、この問題については国交交渉成立前にも実現すべきではなかろうかということについてかなり話し合いが進む中、お話ありましたおととしの先生の御努力等もあり、これからの問題となっているところだと思っています。  この問題については、基本的には国交交渉の中で解決されるものではないかと思っておりますけれども、御指摘のとおり、人道的な問題として一日も早くということについては同感でございますので、また閣僚の立場としても党によくこの経過につきましては伝えまして努力をしていきたい、こう思っておりますので、お答えさせていただきます。
  305. 東家嘉幸

    ○東家委員 今のことはよく承知いたしておりますし、私は、金丸、田邊訪朝の以前の話でございましたので、誤解のないようにお願い申し上げます。  最後の最後になりましたが、厚生大臣、先般、中国残留婦人問題であのような処置をとっていただきましたこと、日本に急遽帰国いたしたときの処置、心から感謝申し上げます。私も、残留婦人、中国孤児問題等に長い間かかわってまいりましたが、どうかこのことも本当にあのソ連の侵攻後の、私は残留婦人の皆さん方は本当に犠牲者だと思っておりますから、どうか温かく今後ともそのような措置をぜひとっていただきたい、心からお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
  306. 山口鶴男

    山口委員長 この際、小澤潔君から関連質疑の申し出があります。東家君の持ち時間の範囲内でこれを許します。小澤潔君。
  307. 小澤潔

    小澤(潔)委員 総理以下全大臣、御苦労さまでございます。  私は、総理を拝見、拝聴させていただきまして、総理が初めて初陣を飾った参議院議員の選挙のときを思い出しております。走馬灯のごとくよみがえってまいりますが、あのとき、もう二十二、三年たちますか、私が都議会議員時代でありました。JRの立川、国立駅頭等々で、横綱の玉の海関も参ったことも記憶をいたしております。  こういったわけで、その後知事になられ、そしてまた知事をやめられ、都知事選に出馬をするうわさも承っておりましたが、あれは出馬しなくて賢明であったと思います。そしてまた地方選に出られ、日本新党を名のり、現在の金的を射とめたのですから、立派であろうと思います。私も、お互いさま政治に志しておりますので、時には日本国を憂え、そしてまた愛し、世界平和をともに唱える者として、これからもお互いに頑張ってまいりたいと思います。  そして、きのうも橋本政調会長が申し上げておりましたが、責任ある野党として、正しいものに対しては徹底的に、全面的に支持、御支援をしたいと思いますし、批判するものについても徹底的に批判をしてまいりたいと思っておりますので、よろしく御理解をいただきたいと思います。  時間がありませんので、簡潔に申し上げて簡潔に答弁をいただき、本日は我が国の原子力政策に関する問題、特にプルトニウムについて質問をしてまいりたいと思います。  私は、プルトニウム利用を中心として、我が国の原子力政策について総理並びに関係大臣に質問をいたしたいと思いますが、我が国の原子力利用は、既に原子力発電が総発電電力量の約三割を担っており、我が国の基軸エネルギーとして確立されていることは御案内のとおりであります。  この原子力利用については、他の発電方式と比較をいたしまして、経済性にすぐれていることは言うまでもなく、供給の安定性にもすぐれております。また、既に四十六基にも達している我が国の原子力発電所は、極めて安定した運転実績を示しておるのが現状であります。この原子力発電を今後とも安定的に続けていくということは、エネルギー政策の極めて重要な課題であると思います。  このための重要課題の一つがプルトニウム利用であります。ウランも輸入に頼っておる我が国にとっては、プルトニウムは国内で新たに生み出さ れるまさに準国産エネルギーとも言えるものであろうと思います。さらに、高速増殖炉によりましてこれを効率的に生成していくことで、現在約七十年程度とされておるウラン資源を一千年以上活用することが可能となるとも言われております。  新エネルギーの開発もいろいろ言われており、その努力も必要かと思いますが、今の原子力発電に匹敵すべき経済性あるいは供給量を確保することは原理的に見でなかなか容易ではないこと、これは多くの専門家の指摘するところであります。  このような現状において、プルトニウム利用はエネルギー資源に乏しい我が国といたしましては極めて現実的な政策であり、プルトニウムの利用の推進を図ることがこれまでの原子力政策の基本であると私は認識をいたしております。  ところで、このプルトニウム利用については、国際的にさまざまな議論があることも事実であり、私も、昨年の十一月にブラジルで開催をされました環境と開発に関する列国議会同盟会議において、我が国のあかつき丸によるプルトニウム輸送に対する諸外国の懸念について、我が国考え方を説明する機会を得たところであります。  また、先般、かねてから注目をされておりました核不拡散政策を米国クリントン大統領は発表いたしましたが、その中で、西ヨーロッパ諸国と我が国の原子力計画におけるプルトニウム利用を従来どおり認めるとの方針が明らかにされたところであります。これは我が国のプルトニウム利用にとって歓迎すべき方向であり、このような時期に従来の政策を我が国としても維持することは極めて重要であろうと思います。  さて、来年の四月には、将来のプルトニウム利用の本命である高速増殖炉の原型炉である「もんじゅ」が臨界を迎えようとしておりますが、私は、本年三月、福井県の現地を視察し、つぶさに見てまいりました。世界の最先端の技術開発に携わっている現場の士気の高さを感じたところであります。  このような状況の中で、我が国がプルトニウム利用に今後どのように取り組むかということについては、内外の注目を集めているところであります。このようなことから、プルトニウムの利用の基本的な考え方について、総理並びに科学技術庁長官の答弁をお願いをいたします。簡潔にお願いをいたします。
  308. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 原子力の長期安定的な供給を確保していくために核燃料サイクルを推進をしていくということは、おっしゃるように大変必要なことではないかと、私はそう思っております。ただ、安全性ということには十分留意をしていかなければなりませんでしょうし、また、そこに国民的な合意というものが必要であることは論をまたないところである、そう思っております。
  309. 江田五月

    ○江田国務大臣 原子力発電についてはもう通暁をしておられる先生の今のお話、おおむねそのようなことだと思っております。  エネルギー政策としてどういう政策を選択をするかというのは、これは産業や経済のあり方とか、あるいは生活の選択とか、あるいは資源や環境についての見方、あるいは二十一世紀の展望とか、いろんなものを総合的に勘案してなされるべきものであろうと思いますが、今回の政権交代というのはそういうことがテーマになって起きているわけじゃないんで、そこで私ども連立八党派は、国の基本重要政策についてはこれまでのものを継承するというそういう合意でスタートしているわけでございまして、エネルギー政策についても基本重要政策であることは言うまでもない。その中で電力というのが重要な役割を占めておる、その電力の中で原子力発電が重要な位置を占めておる、これも言うまでもないことであります。  原子力発電については、これは原子力発電、我が国で成功してことしでちょうど三十年目ということになるようでありますが、昭和三十年に原子力基本法ができまして、これ、超党派で議員立法でできているんですね。で、初めての原子力委員会に有沢広巳先生も入ってスタートをしておりまして、もうそのスタートの当初から原子力委員会の原子力開発利用長期計画、最初はちょっと名前あるいは位置づけは違ったようでありますが、その中でプルトニウムというものは取り上げられているわけです。核燃料サイクルという考え方が取り上げられて今日に至っているわけでございますから、もちろん国民の中でこのプルトニウムに対して大変懸念もありますし、まだ確かに技術的にもいろいろ難しい問題もありますが、安全第一でこのプルトニウムというものを扱っていきたい。  プルトニウムをこの燃料に用いることによって、ウランをさらにプルトニウムに転換して増殖をしていくという考え方、これも技術的にいろいろ越えなきゃならぬ難点がありますけれども、しかし、日本のような資源小国としては、やはり世界のためにも取り組むべき将来のオプションじゃないかと思っておりまして、頑張っていきたいと思います。
  310. 小澤潔

    小澤(潔)委員 御理解ある答弁、御苦労さまでした。  プルトニウム利用については、連立与党第一党の社会党の皆さんは、私が委員長をしておりました本院の科学技術委員会においてよく反対の論陣を張っておられ、また連立政権が成立いたしました後においても、積極的に反対運動を指導しておられるようであります。  そこで、社会党の前委員長である山花大臣にお伺いをいたしたいと思います。プルトニウム利用についてはどのようにお考えになっているのか、お聞かせを願いたい。さらに、伊藤運輸大臣、五十嵐建設大臣佐藤自治大臣、上原国土庁長官、久保田経済企画庁長官にも、どのようなお考えをお持ちですか、お聞かせをいただきます。簡潔に願います。
  311. 山花貞夫

    ○山花国務大臣 簡潔にお答えしたいと思います。  御指摘のテーマにつきましては、安全性に最大限の留意をしつつ、慎重に見守っていきたいと考えております。  国の施策としては、るる御説明いただきましたとおり、プルトニウム実用化へ向けた研究開発に取り組んできていることは承知しております。連立政権は、この施策を承継しつつも、国民の命に直結する大きな問題であり、安全性に最大限の注意を払い、検証と協議を重ねていく重い責任を担っているものと認識しています。この姿勢は、今政権にかかわらず、いかなる政権においても欠くことができないものと確信をしているところでございます。  危険性やコスト面などから研究開発計画の中止が相次いでいる世界の動向も留意すべきであると思いますし、地元の皆さんが危険性に大きな危惧を抱いていることについても、承知しなければならないテーマだと思っています。  いずれにしても、国民の合意と協力が前提の問題であり、国民が本当にかみ合った議論、判断をするために可能な限りの情報公開を行うとともに、常に慎重に検証と協議を重ねていくことこそ国民が最も望むところであり、政権を担う者の責任であると認識しているところでございます。
  312. 佐藤観樹

    佐藤国務大臣 今、山花国務大臣が答えたとおり、同じ考えでございます。
  313. 小澤潔

    小澤(潔)委員 同じではもう同じと理解をいたしますが、プルトニウム利用を政府としては推進するということであれば、プルトニウム利用を図る上で中心的な施設である青森県六ケ所村の再処理工場につきましても、その建設の推進を図るということに山花大臣も同意であると考えてよろしいか、重ねてお伺いいたしますが、特に五十嵐建設大臣、久保田経済企画庁長官にも、あわせ御答弁をいただければ幸いです。江田大臣は結構でございます。もう結構です、時間がありません。山花大臣と五十嵐さんと久保田経済企画庁長官。
  314. 山花貞夫

    ○山花国務大臣 先ほどの前提を踏まえて手短にお答えをさせていただきたいと思いますが、前政 権の政策、施策を承継しつつも、プルトニウムの利用と核燃料サイクル等の問題は、国民の命にかかわる問題であります。また、日本の将来にかかわる大きな問題であり、安全性の確保に最大限の注意を払いつつ、常に検証と慎重な検討を重ねていくことは私たちの責任であると考えているところでございます。
  315. 五十嵐広三

    ○五十嵐国務大臣 今、山花大臣の申したとおりでありますが、しかし、プルトニウムの問題は、言うまでもなく最も慎重に考えていかなければならぬことだろうと思います。  御承知のように、プルトニウムの問題には、一方で廃棄物処理の問題があるわけであります。高レベルあるいは低レベルの放射性廃棄物の処理というのはもう世界じゅうが困り切っている難物でありまして、再処理工場についても、今国際的には随分もうやめちゃいまして、わずかなところしか再処理をしていないというようなこともございまして、最も慎重に対応していかなければならぬことだと考えております。
  316. 久保田真苗

    ○久保田国務大臣 閣僚としての立場は、山花大臣の言葉に尽きていると思います。安全性の問題についても同様でございます。  なお、一言つけ足したいと思いますのは、NPTは原子力の平和利用を認めております。けれども、このプルトニウムについて言いますと、プルトニウムは非常に魅力のある燃料であると同時に、極めて軍用に転用が容易な物質であって、しかも微量で毒性を持っているというこの事実を考えますならば、私は、プルトニウムの国際的管理というものをぜひ急いで、それを優先させるべきだという考えを持っております。
  317. 小澤潔

    小澤(潔)委員 政府の政策を実現するに当たって、与党がそれと反対の方向を向いているということは、国民から見て非常にわかりにくいことであります。これまで総理科学技術庁長官が御答弁されている原子力政策の推進に、社会党から閣僚として閣内に参加されている方々は、党内において十分な指導力を発揮すべきではなかろうかと思います。  よくこれは要望しておきますが、ただいまの発言によっても、やはり三者三様、いろいろと苦しい答弁がございました。あえて前委員長のほかは苦しそうな二名に質問をしたところであります。ぜひ全閣僚の方々が強力な指導力を発揮されまして、政府として円滑な原子力行政の推進を図られんことを特に要望いたしまして、これにて質問を終わります。  時間がないのが残念でありました。もっとたっぷりやりたかったわけであります。ありがとうございました。
  318. 山口鶴男

    山口委員長 これにて東家君、小澤君の質疑は終了いたしました。  次に、若林正俊君。
  319. 若林正俊

    ○若林委員 私は、実は異常気象、とりわけ冷害に伴う災害対策と、これからの農業、農政の問題を中心に御質問をさせていただくつもりでございます。  しかし、今、小澤委員がやや心残りのようでございました。私も、かつて当院科学技術委員会で自民党理事を務めながらこの原子力問題にもかかわった経験がございます。そんな立場から、小澤委員の気持ちを外しながら、一、二確認をさせていただきたいと思います。  原子力利用につきまして従来から賛成でない、あるいは非常に批判的な社会党の皆さん方を取り込んだ内閣ができるということで大変心配をしておりましたけれども、さきの特別国会の本会議におきます同僚町村議員の質問に対して、江田科学技術庁長官からかなり明確な御答弁をいただきましたし、ただいまも総理からも原子力の平和的なエネルギー利用について大変積極的な評価をいただいておりまして、ほっとしているところであります。  社会党の皆さん方も、原子力発電については基本的には御理解をいただいておりますし、プルトニウム利用につきましても、その安全確保ということに慎重な姿勢を示しながらも、基本的に反対だということではなさそうでございますので、ややほっとしているところでございます。この安全確保というのは当然のことでありますし、さらには、このことが非平和的利用に供されるようなことは万々あってはならないという意味で、厳格な管理下においてこのプルトニウム利用を推進しなければならないと思います。  しかし、いずれにしてもこの核燃料につきましては、これを効率的、効果的にエネルギー源として利用していくというそういう視点に立たなければ、我が国の長期的なエネルギーの安定確保はできないわけでございます。そういう意味ではこの核燃料のリサイクル、廃棄物処理ということは大変大切なことになります。  そういう観点から、実はこの高レベル放射性廃棄物の処理問題ということにつきまして心配をしている一人でございます。大変に高レベルの放射性廃棄物は処理が面倒であります。非常に深い地層の中に処分を行うということを基本にしているわけでありますが、まだまだその有効な地層処分技術を確立するに至っていないということもございまして、どうしてもこういう研究開発は早急に進めていかなければならない。  こういう観点から、政府は、動力炉・核燃料開発事業団の事業として北海道の幌延町に貯蔵工学センターを設けたいということでこの調査をさせてもらいたい、こんな希望を持っております。当然、国も予算措置を講じてこの貯蔵工学センター、研究施設の設置を進めているところでございます。原子力の開発利用に関しては大変重要なプログラムだと思います。  そこで、江田長官にこの貯蔵工学センター計画の現状とこれからの進め方について一言お伺いしておきたいと思います。
  320. 江田五月

    ○江田国務大臣 御質問のとおり、高レベル放射性廃棄物の処理というのは、これは原子力発電に取り組む以上どうしても避けて通れない、しかも非常に難しい課題でございます。トイレなきマンションなどと言われたりするわけですね。しかし、何とかこの処理問題を解決をしなきゃいけない。  そこで、いろいろな方法があるようなんですけれども、宇宙の端の方に飛ばしてしまうとか海の底の方に沈めるとかいろいろあるようなんですが、我が国では原子力委員会の基本方針で原子力開発利用長期計画というものがありまして、その中で、そういう宇宙に飛ばすとかいう方法ではなくて、ガラス固化によって安定な形態として、三十年から五十年、これをまず貯蔵して冷やす、その後に地下数百メートルの深い地層に処分をするという、いわゆる地層処分をするという方針を示しているわけでございます。  そこで、紀元二〇〇〇年を目安に実施主体をつくってやっていこう、今、貯蔵がこれから始まろうかという、あるいはちょっと始まったかというあたりのところでございますが、貯蔵工学センターという御質問のセンターは、そういう研究をやる施設ということでとりあえず計画をさしていただいているわけですが、北海道の幌延町にそれをつくりたいという願いを持っておりますが、しかし、いずれにしても原子力にかかわることですので、北海道及び地元の理解と協力がなければこれはできるものではないというので、今鋭意いろいろな話し合いを進めておる。  あくまで研究センターでございますが、どうしても、そうしますと、ついに最終処理もそこへ来るんではないかというそういう御心配からなかなか理解を得られていないというのが現状のところでございますが、なお粘り強く話し合いをしていきたいし、同時に、その最終処分場については、これは幌延町というものが別に前提になっているわけじゃありません。六ケ所村も前提になっているわけじゃありません。どこも前提になっているわけではなくて、まだ白紙ですので、これからいよいよこの大難問題に取り組んでいかなければいけないというところでございます。
  321. 若林正俊

    ○若林委員 今の工学センターの設置問題でありますけれども北海道開発庁長官にお伺いしたい と思います。」  昭和六十三年六月の閣議決定でありますが、第五期の北海道総合開発計画、その中に「原子力の電源に占める比率の上昇に対応して、電力供給の一層の安定化を図るため、原子力関連の研究施設等の建設については、調査結果を踏まえ、地元及び北海道の理解と協力を得て、その推進を図る。」これが閣議決定されているわけであります。  地元の幌延町では、かねてからこの工学センターの設置を希望をしているわけでありますが、北海道開発庁長官としてはどのような御見解でございますか。
  322. 上原康助

    ○上原国務大臣 若林先生お尋ねの件でございますが、確かに六十三年六月の閣議決定が御指摘のようにあります。また、この貯蔵工学センターは、御承知のように動力炉・核燃料開発事業団と、今科学技術庁長官からお答えがありましたが、科学技術庁の所管でございます。  そこで、今御指摘ありましたように、第五期北海道総合開発計画においては、「地元及び北海道の理解と協力を得て、その推進を図る。」こう規定をされておるわけであります。私も幌延町の誘致をしたいという気持ちが、意向が強いこと、あるいは周辺市町村のいろいろの要請なり、また一方においては安全性、先ほどもありましたように、この種のプロジェクトについては慎重を期すべきであるというような御意見等もあるということも一応理解をしているつもりであります。  そこで、北海道開発庁といたしましては、やはり第五期北海道総合開発計画において「地元及び北海道の理解と協力を得て、その推進を図る。」ということがキーワードになっておりますので、この点に重きを置いて、科学技術庁及び動燃の方においても地元の理解と協力を得ていただくように、また北海道開発庁としても連携をとりながら、この地域の活性化という意向もあるということも念頭に置いて、これからもよく相談をさせていただきたい、こう考えております。
  323. 若林正俊

    ○若林委員 北海道開発庁長官としては、江田科学技術庁長官がおっしゃっておられました、これはあくまで研究のための貯蔵工学センターの設置である、そして政府としては、どこにどうするかということは特定しているわけではないけれども、必要なものだ、積極的にこれを進める、こういう意向でありますし、これを受けての北海道総合開発計画での規定であることを考えれば、やはり北海道開発庁長官としては、地元北海道及び地元地域の人たち理解と協力が得られるようにこれはやはり努力をしなければならない。閣僚として、内閣としてもそのような努力をしなければならないものと私は理解をいたしております。  そういう中にありまして、社会党の北海道本部としてはこれに反対の決議をいたしておりまして、地域、地元の反対運動のかなり指導的役割を果たしておられる、このように承知いたしておりますし、社会党の国会議員の方も、このような反対運動に理解を示すのみならず、相当の激励をなさりながらこの反対運動を進めている、こんなふうに聞いております。  そこで、閣僚でもあり同時にまた北海道御出身でもあります建設大臣に、その状況と、もしも社会党の組織が反対運動を進める、こういう状況であるとするならば、これはやはり社会党として、また閣僚としてこれらの皆さん方に御理解をいただくような努力はすべきではないかと、こう思いますが、どうですか。
  324. 五十嵐広三

    ○五十嵐国務大臣 これはもう北海道では大問題であります。  まず、御理解いただきたいのは、私も国会に出てから十三年余たつわけでありますが、この問題が問題になりましてからもう十年になるわけであります。したがいまして、地元の議員として常に科学技術委員会等でも科学技術庁長官それから動燃の理事長に再三、いわばもう大臣理事長がかわるたびに御質問申し上げて一貫してお答えをいただいているところ、そしてまた、江田長官も同じようにお話しになっているんですが、それは地元の理解と協力を得てやると、地元の理解と協力を得なければ推進できるものじゃない、これはもう一貫しているところなわけですね。  それで、今一体その地元はどうなっているかといいますと、北海道は知事は反対。(若林委員「大体知っておりますので。知っておりますから、時間がないので急いでください」と呼ぶ)いやいや、それでもここはきちっと皆さんにもお話ししておかねばならぬところで。それから道議会も反対決議、それから幌延町は推進ですが、その周辺の町村、六つばかりあるのでありますが、これはいずれも反対もしくは慎重ということであって、この世論調査等も道民の圧倒的多数は常に反対という意向が示されているわけでありまして、こういう地元自治体の動向及び住民の意思というものを尊重していかなければならぬと思うのです。  御承知のとおり、北海道の、殊に天北のとこなは食糧基地構想として位置づけをされているところでありまして、それはもう北海道も、あの地域も、ここは食糧地域として一生懸命やっていこうというところに、貯蔵ともう一つ研究ですね、これは一時貯蔵として指定されている計画でもあるわけでありますから、それは食糧基地のイメージに全く合わない、こういう強い反対があることもこの際御報告を申し上げてまいりたい、このように思う次第であります。
  325. 若林正俊

    ○若林委員 私は、地元が大変に危惧をして、不安を抱いて反対をしているということは重々承知いたしております。しかし、その安全性につきましては、政府としてかくなる装置のもとにかくなる方策をとれば安全であるという、研究センターとして安全であるという政府の方針のもとに、政府はこれをどこかでやってもらおうとしておるわけですね。どこかでやってもらおうとしておるのですよ。  ですから、私は申し上げたいのは、社会党の主要な幹部の皆さんが閣僚として内閣を構成をし、かつ閣議決定にあります事項を進めていく、そこで地元の理解と協力がないままやりなさいと言っているのではないのですよ。地元の理解と協力が得られるように、その安全性を含めまして、これを説得をし、これに理解を求めていくという姿勢がなければこれはおかしいじゃないかということを申し上げたかったわけであります。  これは、長い反対運動の経過もあり、建設大臣にとりましてはなかなかつらいことだと思いますけれども、しかし、閣僚となった以上は、安全性にいささかも疑義を挟んだり、その地域の、今の食糧基地だ、こういうようなことも、それが本当に食糧基地としての機能を果たすようなことに危険があるのかどうかといったようなことも江田科学技術庁長官はよく聞いてもらって、その話をよく聞いた上で納得をしてもらわなきゃ内閣としておかしいと思うのですよ。納得をしてもらって、地域で反対をしている、とりわけ社会党の皆さん方には少なくともわかってもらうように努力をしてもらいたい。これは要望です。私は、農業問題を中心にやりたいということでありますので、強く要望を申し上げ、閣内において足並みの乱れるような行動がないように、むしろ積極的な努力をお願いをしたいと思います。  さてそこで、異常気象による農業、農村の災害対策についてお伺いしたいと思います。  まず総理、実は八月の二十三日に衆参両院で行われた細川総理の所信表明演説の中で、総理は、豪雨やあるいは地震、雲仙・普賢岳の災害復旧に言及をしておられます。しかし、当時既に八月十五日現在の作況が九五というふうに発表がなされておりました米を初めとする農業災害については全く触れておられません。  実は、この八月十五日現在の作況九五というのは極めて異常な状況なんですよ。戦後の冷害、災害対策で、八月十五日現在で作況九五ということがあったのは過去に一回あるだけなんですよ。それも、昭和二十八年のあの大冷害、作況八四、その大冷害のとき一回だけなんですね、九五以下になったのは。あとはみんな九五を超えているのですよ。だから、九五を示しているということは、 この二十八年災害のおそれが十分考えられ、かつ、それぞれ農業者は大変な不安を持っていたわけであります。それで、こういうような状況でありますのにこのことに全然お触れになっていなかったということについて甚だ遺憾に思っております。  同時に、これは、総理の農業観、農村についての考え方については後でお伺いしたいと思いますけれども、私は、総理が農業、農村について日ごろ余りどうも御関心をお持ちでないんではないか、さらに言えば、むしろ軽視しているあらわれではないかなといったような、失礼ですけれども、危惧を持っております。  総理は、先日、十月三日に福島県の冷害地の現地視察をなされました。そのときの総理は、現地の被災農民に求められて色紙に「農魂」と書いたそうであります。大事なことであります。ことしの災害で一番心配をしなければならないことは、まさに農業を担ってきた人たちが農業の将来に自信を失い、希望を失ってしまうことだと私は考えております。  そういうことを考えますと、農家を元気づけるというのは、単にその方に「農魂」と書いてあげることでは済まないと思うんです。今まで本当に経験したことがないような深い災害であります。前例のない大きな災害に打ちのめされている農家に対しては、基本的に前例にこだわらない国の援助をし、将来に希望が持てるような農政の方向をここで示していくということが非常に大事なことだと私は思っております。これから具体的な対策についてそれぞれ関係大臣にお答えいただく前に、このことについての総理の決意をまず伺っておきたいと思います。
  326. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 先般来の冷害による被害につきましては、非常に深刻に受けとめ、憂慮をいたしております。農家経済のみならず、地域経済にも深刻な影響を与えているわけでございまして、この先農家の方々が農業に対して意欲を失われることがないように、政府としてもできる限りの手だてを講じていきたいということで、先般八項目から成る緊急対策を発表させていただいたところでございます。当面できる限りの対策を講じているというふうに思っておりますが、なおさらに今後できる限りのことは考えていかなければなるまいというふうに思っているところでございます。
  327. 若林正俊

    ○若林委員 実は私は農林省にいまして、災害対策としての共済保険や金融の責任者をしばらく務めていたことがございます。五十五年災害のときにも担当者でございました。そのときに並べた対策八項目と実は同じなんですよ。そこで、その対策の中身が問題になってくると思うんですが、できる限りのことをするというのはいつもの政府側の答弁の常套語であります。  そこで、私がお聞きしたのは、作況が八〇、この収穫期にはさらに下がるだろうということも予想されておりまして、記録、統計がある限りにおいてはこんな災害はないんですね。戦前はおろか、人によっては天明以来だというようなことを言われる方もおられます。一番問題は、ここで災害に打ちひしがれて、そして農業そのものに意欲を失っていくということだと思うんですよ。  そういう意味では、今までの前例にない災害なんですから、前例にない対策をとる、そういう決意で臨むということをまずお聞きしたいんですよ。できる限りというんじゃだめなんですよ、できないことはできないということになっちゃうんですから。前例にとらわれない災害対策をやるということをまず言ってもらいたい。
  328. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 問題は、前例にあるかないかということよりも、結果的にはたまたまその八項目が同じだというお話は初めて私も知りましたが、しかし、現時点でできる限りの対策ということで政府としては取りまとめさせていただいたということでございまして、おっしゃるように、それはこれからまたさらに追加的な措置を講じなければなりませんし、その中に前例にないものも入ってくるかもしれません。それはわかりませんが、とにかく今後とも注意深く見守って、全力で、農家の方々の生産意欲がそがれることがないように力を尽くしてまいりたい、こういうことでございます。
  329. 若林正俊

    ○若林委員 まあこれ以上言ってもしょうがないでしょうね。しかし、できる限りということはいろいろなところで政府側が使う常套語ですから、実際は中身で勝負ということでいかしてもらいたいと思います。  そこで、農林大臣は、九月の十五日の作況を発表した際に、今総理が言われました八項目を含みます談話を発表しております。農業共済金の早期かつ円滑な支払いなどでございますが、これら対策につきましては、大蔵大臣を含む七人の冷害対策に関する関係閣僚が一体になって取り組むこととした、こう発表になっております。  自由民主党は、このような災害の状況を憂慮し、もう既に北海道、青森など十数県に及ぶ現地視察を行い、被災農家を初め、農業団体や地方公共団体などから切実な要望を聞いてきております。これら要望につきましては、農林水産委員会、災害対策委員会等におきまして、これから早急に検討、さらに協議、対策の方向が示されてくるものと思います。  しかし、この予算委員会の場は総理、大蔵大臣などがそろっている場でございまして、私の経験によれば、大体それぞれの委員会には総理は一回、三十年で農林水産委員会に一回出てきていただいたことがある。大蔵大臣は、私は少なくとも経験がない。そんな中で取り進められるものですから、きょうは関係の大臣、もちろん農林大臣もお伺いいたしますけれども、主として災害関係大臣として一生懸命やろう、こう決めていただいた大臣、とりわけ大蔵大臣にじっくりと聞いていただいて、そして御理解を示していただきたいと思います。  まず第一にあります農業災害補償制度でございます。共済金の早期かつ的確な支払いが約束されておりますが、問題は損害評価なんですね。通常の異常災害、通常の異常災害というのは変な言い方ですけれども、時々起こった大きな災害ですね、こういう災害のときに必ずこの要望が出るんですね。損害評価の特例評価というのが出ますのでは、それはやりましょう、こういうことでやる方法がこの間決められた一応の方法であります。  一つは、そういう網目ですね、被害粒を決めるための網目の幅を変える。それでもなお実態に合わないときには、それを搗精しまして、さらに被害の実態に合うようにやっていって、損害減収量というのを出します、こういうことをやるのです。それは書かれているわけでございます。  これはもう当然やってもらわなければならないことだと思いますが、二つ目は、共済組合の損害評価の経費であります。連合会の経費であります。もう御承知のように、年内なるべく早く支払えということで、今現地の農業共済組合の職員あるいは損害評価員の皆さん方はもう夜を日に継いで、一筆調査から始まって、損害査定業務に入っているわけですね。膨大な事務費が一気にかかってくるわけであります。このことについては、通常年におきます損害評価事務費補助というのは計上されております。とてもそんなもので間に合うものではありません。さらには農業共済組合の事務費の国庫負担金の流用があります。しかし、これも人件費が中心のものですから、それぞれでそう幅のあるものではないんですね。  実は、各共済組合が損害防除などのために剰余の中から積み立てている特別積立金というのがあるのですよ。これを相当に持っているところもあれば、余り持っていないところもある。従来はこれを損害評価のための事務費に取り崩して使いなさい、こう言っているわけですね。もちろん、取り崩して使う、そうしたら認めてあげますというのが農林省の行き方であります。  それはそれとして、認めてあげるのはいいんですけれども、やはりこれだけの大災害ですから、農業共済組合及び同連合会が必死になって早期の 支払いのために残業もしましょう、徹夜もしましょう、そしていろいろなところとの連絡に当たっておりましょう。そういうことでかかっていく経費については、そういう積立金を持っていても、それをもちろん充当をすることを条件にしても結構でありますが、やはり国が、この段階だから安心して急いで損害評価業務をやれということを言えるように、この事務費の助成をぜひ行ってもらいたいということをお願いをするわけであります。その点について農林大臣及び大蔵大臣
  330. 畑英次郎

    ○畑国務大臣 若林先生はこの面に関しましては実務も詳しい方でございますので、あいまいな御答弁では納得がいかない、そういう前提で申し上げるわけでございますが、御承知のとおり、各共済におきまして特別積立金、それなりのものをお持ちであるということも、私も心配をいたしまして、承知をいたしております。  今お話がございましたとおり、それに全然手をつけないというわけにはまいりませんから、それを使っていただき、さらなる異常な凶作でございますから、使っていただいた上でさらにまた問題があるという場合には財政当局とも協議をさせていただきたい、そういう考え方の中で、スタンスの中で万全を期してまいりたい、こう考えております。
  331. 若林正俊

    ○若林委員 大蔵大臣の前に。  いや、結構でありますけれども、全部使い果たしてから、足りなかったら見てやるというのはだめなんですよ。この特別積立金は損害防除とかその他の目的があるのですよ、通常は。その目的を目的外に、損害防除の費用ではなくて、今度の評価のために使ってもいいですよ、言ってきたら許可してあげますよ、こういう仕組みになっているのですから、これを全部使わなければ国が助成しないなんといったら本来の方の、そのために積み立ててきた積み立てが、積み立ての意欲、さらにはその目的のために使っていくということができなくなるわけですから、これは全部使わなければ助成しないなんということでは困る。  こういうことを申し上げながら、大蔵大臣、どうですか。
  332. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 今の損害評価の事務費の話でございますが、これはなるたけ早期に評価しなければいかぬということで、農林水産大臣が一生懸命やっていらっしゃいます。私どもは、今までの例からいきますと、例と言われると一番怒られるところですが、既定予算の中で全部処理したのはもう御承知のとおりですが、まあ進み方を見ながら、それから今の積立金の問題を見ながら、農林省、農林水産大臣とよく相談させていただきます。
  333. 若林正俊

    ○若林委員 お役人の優等生の答弁でありますけれども、これはこうやってやるんだと言わなければ、末端の共済組合の職員の皆さんや連合会の人も、もちろん不安があってというのじゃないですけれども、励みが違うのですよ。だから、検討するのは結構ですけれども、様子を見て、様子を見てと言うのじゃなくて、積立金の状況なんかは経理の方でわかるのですから、大体このぐらいならこのぐらい見てやろう、まあ二分の一は見てやろうとか、そんな姿勢を早く示してもらいたいということを要望しておきます。  それから、今後のことなんですけれども、これは農林大臣に要望をしておきたいと思うのです。  五十年に一遍、百年に一遍というような災害のために掛金を掛けていく、そのかわり権利として共済金を農家は受け取って所得補てんに充てられるわけですね。この制度を進めるに当たりまして、どうしても災害が少なくなると加入あるいは保険金額の選択、これにちゅうちょがあるということがあります。万々そういうことは最近はないと思いますけれども、掛金の国庫負担との関係などもないわけではなかった、過去において。  そこで、私はこの災害のこの機会に、この制度が、再びあっては困るのですけれども、天災ですから、有効に機能するように、共済金額の高額、高位の選択だとか、あるいは田んぼごとにやるいわゆる一筆保険というのは補てん額が少ないわけですから、農家単位の、オールリスクの、全相殺の加入、今全体で一割くらいしかないと聞いておりますけれども、こういう加入を積極的に進めていくんだということを生産者団体、自治体も含めて大いにこの時期に行政的には指導してもらいたい。これは希望を申し上げておきます。  次に、災害金融でございます。  この災害金融につきましても、この間の八項目で、天災融資法の早期発動、激甚法の適用ということをうたうわけであります。いつものパターンでございます。  問題はその融資条件なんですよね。融資条件であります。天災融資法につきましては金利が三段階になっておりますけれども、一番ひどい特別被害地域の特別被害農業者ということで三%であります。これは資金使途が一定に限られておりますし、期限も短いということがあります。既往の負債を負っている人とか、あるいは生活資金に充てたいというのはこの天災資金ではだめですから、農林漁業金融公庫の経営再建資金なりリリーフ資金なりを使うということになります。  そこで、枠は必要な枠だけ出してあげますよとか限度額の特例をしてあげますよ、これはやってもらわなければいけない。これはやるわけですけれども、どうですか私は、今までやったことはありません、これより低い金利を設けたことがないのですけれども、今の三%の金利ですね、特別被害地域の特別被害農業者、場合によってはそれをさらに限定してもいいかとも思うのですが、天災資金の三%については、公定歩合も御承知のような史上最低でありますし、預金金利もうんと下がって二%台になっているわけですから、いろいろな御議論はあろうかと思いますけれども、これは三%を切って例えば二%とか、そういう思い切った金利の設定をしてもらいたいと思うのですよ。  それができないとすれば、農林大臣に御要望申し上げますが、それはできない、金融政策上できないんだ、金利体系の問題だとおっしゃるのであれば、その理由を明らかにしながら大蔵大臣にお伺いしたいと思うのです。  公庫のリリーフ資金の四%あるいは経営再建の資金の四%につきましては、私はこれは下げる余地が理屈の上でもある、こう思っておりますので、こんな大災害で、とにかく経営再建を図ろうと、これも借金ですよ。地元へ行けば無利子にしろという声がいっぱいあるのですよ。これは無利子になればそれにこしたことはないのですけれども、少なくとも今までの災害で講じていた金利水準よりも、政府としては将来の農業のことを考え、この被害の甚大さを考慮して金利の引き下げをするという決意というのは、これは大変な農家への励ましであり、また事実上相当の効果があるものと、こう考えております。農林大臣及び大蔵大臣、どうぞお願いします。
  334. 畑英次郎

    ○畑国務大臣 ただいま御指摘のとおり、最近の低金利ということそのものも踏まえましても、そういった御期待があるということは痛いほど肌で感じておるわけでございます。  さような中にございまして、三%、これは中小企業等との、激甚災等との横並びという問題もございまして、これは問題意識としては持っておりますが、今現在なかなかこれは難しいなというように私は受けとめさせていただいておりますが、四%の問題、この問題につきましては、さらにこれから財政当局等と、あるいはまた今御指摘のように違った意味合いの対応というものもあるんではないかと、あるいはまたそれに対する市町村段階における対応の、これは自治大臣の所管になりますから私がどうこう言うのはどうかと思いますが、いわゆる横並びの中の八項目の中にもそういったような趣旨が入っているわけでございますから、この辺の一つの対応も努力を続けてまいりたい、かように考えております。
  335. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 もう若林委員が先におっしゃったとおりでありまして、両方とも全体の政策金利のバランスの中で一つの仕組みができていると私 は考えています。
  336. 若林正俊

    ○若林委員 不満でありますということだけ申し上げて、次に移りたいと思います。  それは、いろいろな制度金融の金利バランスというものがあります、中小企業からその他の金融全体について。あるのは承知なんですよ。しかし、これだけの災害というものは百年に一遍とも言われているわけでしょう。それが、今までの昭和五十五年あるいは昭和五十年段階の災害にも適用されていた金利より下げることができないと。金利体系、金利体系と言うのはどういう金利体系か。  私は、もしこれを仮に二%に下げたらどういう資金循環のおかしさが起こるとか金利水準相互間においてどんな問題が起きるかということを明らかにしてもらいたいと思うのですよ。しかしきょうは、これは多分農水でこれから同僚議員が詰めることだと思います。時間が限られていますので、先を急ぎます。  生産対策としては、以上の共済保険と金融のほか、非常に要望もあり、政府も八項目に入れていますが、予約概算金の利息あるい、は地方税の減免措置ということが書かれてあります。これについて、農林大臣は提案者ですからお聞きしませんが、自治大臣にお聞きしたいと思います。  それともう一つ、実は別のものとして農林大臣にお答えいただきたいのです。農業者年金というのが大分普及してきました。農民の老後あるいは経営移譲のための年金であります。この年金の掛金というのはかなり高額であります。だから、農業者年金保険料の納付の延納あるいは減免もあわせてやってもらいたい、こういう要望を受けております。この点について農林大臣から、そして地方税については自治大臣、お願いいたします。
  337. 畑英次郎

    ○畑国務大臣 ただいまの前段の保険料の問題、この問題は御案内のとおり、支払いが極めて困難というような方に対しましては二年間の猶予期間があるというようなことでございますから、この辺を大いにひとつとらえて私どもも指導をしてまいりたい。  なおまた後段の方の問題は、いわゆる国民の基礎年金の上の二階建ての分野でございますから、厚生年金基金等との絡み合いもございますので、いささか困難性が大きい、こういう中での問題意識を持っておるということでお答えにかえさせていただきます。
  338. 佐藤観樹

    佐藤国務大臣 大変な御専門家に答えるわけでございますが、御承知のとおり、昭和三十九年にできました通達によりまして、このような大変な災害をこうむった場合には、税の期間の延長、徴収の猶予、減免という措置が設けられていることは御承知のとおりでございます。  こういう状況でございますから、既に九月の三十日に税務局長から各知事あてに、災害の状況に合わせて、今申しました措置をとるようにという通達を出しておるところでございます。
  339. 若林正俊

    ○若林委員 次に、就業機会の確保というのがございます。昔はよく救農土木、救農土木と言っていました。非常に社会環境が変わってきております。そういう意味では、就業機会をどう確保するかというのはなかなか地域の事情から見て容易でないと思いますけれども、言ってみれば昔のように、労働省にいろいろ御苦労いただいたけれども、都会で出稼ぎのあっせんとか、そんな形じゃなくて、その地域に居住しながら、その地域の中で収入が得られるような、そういう就業機会の確保ということに特段の配慮をしていただきたいと思います。労働大臣
  340. 坂口力

    ○坂口国務大臣 お答えを申し上げたいと思います。  ただいま御指摘いただきましたように、これだけ冷害がひどくなりますと、新しい雇用の創出ということが非常に大事になるのではないかというふうに思っております。今御指摘になりましたように、まず第一、一番大事なのは、地元で就業できるということが第一審だろうというふうに思っております。  そこで、公共事業を初めといたしまして、地元で就業できるものが一体今どんなものがあるかということを今検討をいたさせております。そのほかの問題につきましても、今地元でできるものは何かということを早急にまとめたいというふうに思っております。それに対してどれだけの雇用があるかということはわかりませんけれども、対応したい。  それから、もし、今出稼ぎというのは、それは次の段階だという御指摘がございましたが、しかし中には出稼ぎでという方もあろうかと思いますので、そのときにはこの受け入れのところと、そしてその出身のところとの連絡を密にさせていただく。また、非常に農業が高齢化をいたしておりますので、高齢の方で、そして初めて他の業種につかれるという方も多いかと思いますので、他の業種へ転換をします場合の職業訓練あるいは安全対策、健康管理といったことにも十分な配慮ができるように今地元に言っているところでございまして、できる限りその点をやりたいというふうに思っております。
  341. 若林正俊

    ○若林委員 労働行政は、職安その他いわば国の、県がかかわっていますけれども、直接のふうなシステムになっておりますので、地域市町村などとのなじみが薄いのですよね。だから、労働省側が特に農村部における就業機会を確保するための諸対策については、地域の市町村その他農業関係の団体などから実情を十分聞いて、それに合うように措置してもらいたいし、常時フォローしていってもらいたいと思います。  それから、農林大臣に、これは確認で結構でありますが、再生産用の優良種子の確保、今度大変だと思うのですが、これへの助成でございます。種子の購入については、従来三分の一、あるいは他県から持ってくる場合の輸送費の助成などを講じておりますが、これについてもこの災害の特殊性にかんがみまして、再生産の確保のための種子手当てというのは助成を含めてしっかりやってもらいたい。  それから、よく聞くのですけれども、本当に私のところにもありますが、飯米がなくなっているということを聞きます。これは農家にしてみると大変つらいことなんですね。日ごろお米を買いに行かない人たちがお米を買わなければいけなく。なっているわけであります。こういう農家の心情を思いながら、困ったら食糧事務所には置いてあるよと、店屋に置いてあるように言ってあるよというようなことだけじゃなくて、そういう声があるところには、本当にそういう飯米上の不安なり不満なりが起きないようにちゃんとしてもらいたいと思います。  時間がありませんので、要望だけ申し上げて先に行きたいと思います。  問題は、お米の安定供給対策だと思います。生産農家につきましては、夜逃げをするとか、まあいろんなことがあるかもしれませんね、苦し紛れに。本当に今そんなに大変なんですけれども、しかし、この皆さん方とは日ごろのかかわり合いを持っております。それぞれが持っておりますので、その実情に応じた対策を講じていくというのは比較的やりやすい。ところが、供給の安定というのは大変難しいことであります。建前でいえば食管法によってみんなこれが把握されているわけでありますけれども、もう現実は経済行為としてかなりの不正規流通米が発生していることは事実でありますし、そのことが多く伝えられております。  そういう意味では、ことしの米の集荷ですね。不正規流通米が非常に活発化しておる、こういうような状況の中で、全量集荷を確保するという趣旨で農協組織が、JAが、もう自流米だ、政府米だ、他用途利用米だというようなことを割り当てで集めるなんて言っているうちにどんどんとほかに流れるおそれがあるということで、今必死に集荷をやっているんですね。とにかく持ってきてくれ、とにかく持ってきてくれということで、仮渡しなどにつきましても、政府米価格でとりあえず仮払いしちゃうというような措置を現にもういたたまれなくてやっているわけですね。  そういうような集荷の面で、政府の承認もなく、規則もなく、何もないまま勝手にやっているんだと、こういうような姿勢でいますと、これは大変なことになるわけですから、集荷団体である農協組織の活動について十分な理解をしていただきながら、結果どういうふうに決済するか。特別集荷奨励措置というような形でどのようなところまで救っていけるのか。全量集荷に努めた農協にその結果としてのしわが寄らないように、この点は特に措置していただきたいと思います。これについてひとつ御答弁をお願いします。
  342. 畑英次郎

    ○畑国務大臣 先生御指摘のとおり、こういうような作柄の中にございましては、残念ながらやみルートに流れる、そしてまた不正を働くという余地を与えて、そういった方々が、正直者がばかを見るというような要素を残しては絶対ならぬ。こういう姿の中から、いわゆる食糧事務所あるいは農協あるいは県、市町村段階で大変な、真剣なお取り組みを賜っておりますから、その行いそのものを何か勘ぐりを持って対応するということではなくて、真摯なお取り組みに敬意を払うという姿の中で対応を進めてまいりたいと考えております。
  343. 若林正俊

    ○若林委員 農林大臣の本当に的確な御答弁、敬意を表します。  私のところは、信州みそ、みその特産がございまして、加工用米の利用が非常に多いところであります。かねてこの加工原料としての米の供給に不安を訴えられておりました。そういう意味で、加工用に回るものが食用に回っていく。回すのが合理的なんですね。それだけに加工用の原料需要というものに対して不安があるわけであります。  この緊急輸入というのもそういうような観点で決断されたと思うのですけれども、そういう加工用米の確保の問題、これは御答弁は要りませんけれども、後で緊急輸入の方でお話を伺いますが、需要に応じて万全の措置をとってもらいたいと思います。  それで、問題は転作の緩和措置でありますが、農林省、もう転作の緩和を言っておられますが、早くやらないとだめだと。特に麦作、麦につきましては、もう種の手当てから圃場の準備をしているわけですね。だけれども、そこは米はつくれるし、つくりたいと言われればつくってもいいというところがあって、もう待っていられないものですから、そこのところは、水田の方でもうこの播種はしないというふうにすると時期を失してしまいます。そういうことを農林省まで上がって基準が決まってというのでなくても、合理的な生産者団体の指導のもとにまとまって、大型の水田耕作ができるような条件のもとにあります麦作地が今度米をつくるというようなところは、ちゃんと転作の緩和の中で拾っていく、それにしても早く決めてもらわなければいけないなと、こういうふうに思います。  次の問題は、田への復旧であります。  復田と言われておりますが、農林省が予定したように復円が進んでおりません、過去。それはいろいろな事情が絡まっておりますが、やはり一つは、少し中長期に米がつくれるんだということでなければ、再びその水路の補修をしたりしてやるということはできないわけですね。踏み切れない。それと、相当の経費がかかります。今この復円についてもそれなりの助成措置を講じていますけれども国内自給の体制を確立するという観点でありますから、この復円についての助成もこの際思い切って見直しながら、転作緩和措置とあわせてきちっとしていただきたいと思います。  それから次は、備蓄量の見直しであります。  大臣もこの間、百万トンでいいのかどうかと、改めて備蓄量の見直しに言及されておられました。この百万トンの備蓄というのは、承知する限りによれば、作況九五というのが二年続いたときに持ちこたえられるということで備蓄量を決めています。いっぱい持っていればいるほど安全であることは間違いないけれども、経費がかかります。金倉がかかっていく。そういう財政負担も考慮しながら、その九五、九五で、二年連続九五のときは百かな、まあ百二十ぐらいあればいいかなというので計画備蓄をしてきた矢先といいますか途中で起こった事故であります。この段階でいろいろな異常気象が続いていますから、果たしてその百万トンでいいのかどうか。特に加工原料用の対策等も考えますと、これは備蓄量は、かつて我々は二百万トンと言い、あるいは百五十万トンと言い議論をした結果なんですけれども、ここは備蓄量の見直しが必要なのではないかというふうに思います。  そして、供給対策の最後でありますが、緊急の今回の輸入が、これは別物だと総理以下それぞれの責任者がはっきりと言っていただいております。おりますが、にもかかわらず、きのうテレビを見ておりましたら、輸入自由化につながると思っているという人が六〇%だという世論調査の結果であります。これはゆゆしき一大事なんですね。これは大変なことだと思うのです。これはウルグアイ・ラウンドとは別だ、ウルグアイ・ラウンドは国会決議を踏まえてきちっとやりますよという答弁をしているけれども、それは国民が信用していないということなんですよ、その程度のことでは。ですから、信用していない、そうなるだろうという国内事情を背景にしながら、まあ経済人はもっと入れろと言う人もいるんですから、外国とやるというのは容易ならざることだと私は思うのです。  そこで、別だという気持ちはわかりますが、さてこういうことを踏まえて、ウルグアイ・ラウンドにおいて、従来、米は別だ、米はというか、米の関税化は認められないとしたいろんな理由を挙げていますけれども国民の皆さんにもわかるようにこういう主張をしていくんだ、こういう主張をして守るんだ、これはただ食糧安全保障なんて抽象的な言い方じゃなくて、こういう主張をして守っていくということをここで御発言いただきたいと思うんですよ。そうやって国民に、まあ六〇%の人がこれが引き金になって自由化するだろう、これは引き金にならない、別だ別だと言ったって信用されていないということを深刻に受けとめて、こういう主張をしていくんだということを明確にしてもらいたいと思います。
  344. 畑英次郎

    ○畑国務大臣 ウルグアイ・ラウンド七年目という段階でございまして、米の例外なき関税化は反対である、国会決議等々も再三いただいておるところでございます。  そういう中にございまして、今回の緊急輸入の問題、ただいま若林委員指摘のとおり、百年に一遍といいますか、未曾有のと申し上げた方が私はいいと思いますけれども、そういう異常事態に対する緊急避難的なあくまでも対応である。さような意味合いでは、これはあくまでもウルグアイ・ラウンドの貿易ルールの関係と違った次元の世界の問題である、こういう位置づけを私どもは再三にわたって申し上げておるわけでございます。  なおまた、かてて加えて、いわゆる私どものこれからの一つの考え方の中では、従来からいろいろ言われておるわけでございますが、何といってもこれからの人口問題を考えますと、今、日本では残念ながら一・丑といったような数字をめぐって論議が交わされておるわけでございますが、地球規模で考えました場合には毎年一億の人口がふえつつある。いわば地球の上にミニ日本が一つずつ誕生じつつある。人口問題即食糧問題である。  こういうことを考えました場合には、私は、それぞれの国が少なくとも主食は自給体制を確立することが、将来、近い将来懸念される食糧の奪い合いというものがなくなる、平和のための道筋を確かなものにする。私個人としましては、こういった仕事も国連が大きく旗を振って、この食糧問題といいますものの近い将来の危険、危険性といいますものに対応をして急がなければならない段階での主食といいますもの、米といいますものは、あくまでも日本の場合は自給体制を堅持していかなければならない。  そしてまた、最近心配をいたしますのは、いわゆる地球規模の異常気象がたびたび襲来をいたしております。本年はたまたま日本、大変失礼でございますが、今度は輸出国側におきましても異常気象の災害というものはあり得る。そういうことを考えますと、今の人口問題とあわせまして、この辺も力強く主張をしていかなければならない、かように考えております。
  345. 若林正俊

    ○若林委員 同僚議員の了解をいただいて、御質問ではありません、総理に問題を指摘しながら、同僚委員につなぎたいと思うのです。  まず一番先に申し上げました。さらに失礼なことを言わざるを得ないのを残念だと思っておりますが、これへのお考えは、武部委員が引き続き農業問題をやりますので、その際にあわせて総理の農業観、農村観というものをお話しいただければ、私は拝聴していきたいと思います。  実は先ほど、所信表明の中に農業のことについて触れてないということを指摘をいたしました。大変がっかりをしました。これは初めてじゃないでしょうかね、所信表明としては。かつてなかったことだと思います。  そこで、実は「日本新党 責任ある変革」という本があります。総理が編者になっております。そこの六節に「農業・農村の活性化政策プログラム」、こうありまして、こういう表現になっております。「コメの輸入自由化になれば、日本のコメ農家は全滅する」とありまして、そんなことないと言っておられるのですけれどもね。  ウルグアイ・ラウンド(ガットの新多角的貿易交渉)で示されている包括合意案は「例外なき関税化」をうたい、「コメ市場の開放」を日本に迫っている。そうなれば、日本の稲作は全滅すると農家は懸念しているのだ。  結論からいうと、将来、ウルグアイ・ラウンド交渉によりコメの完全自由化になっても、決して日本の農業が危機にひんすることはない。そのために、国際社会と共存できる農政改革を行っていかなければならないのである。  まずいえることは、自立てきない生産性の低い稲作農家は、自由化するしないにかかわらず潰れるということである。世界の経済は競争原理で成り立っており、日本の産業はそれに打ち勝って繁栄してきた。農業のコメだけを「一粒たりとも日本に入れるな」という理論は成り立たないのは、多くの人が認めていることである。もちろん、政治はその間に犠牲混乱を極力少なくする責任がある。だが、農政の大転換を行っていかぬ限り、低生産性農業はいくら保護しても生き延びさせることはできない。その理由は次のとおりである。と言って、いろいろと理由を述べておられます。  私は、生産性を上げるための努力はいろいろしてきたと思うのです。特に、ことし農業関係の基本であります農地の立法あるいは中山間地帯の特例の諸法制をつくりましていよいよ施行を迎えている、いわゆる新農政の展開であります。難しいことです。大変難しいことだからといって、ここで言うようにその後展開しておられますけれども日本で十ヘクタールだ、百ヘクタールだというような競争可能な稲作経営ができるところは、干拓地などのごく一部に限られていると私は思うのです。  特に、中山間地は日本の農地の四〇%、農家の約四二%を占めていますよ。そういう中山間地の農業というのは、規模拡大をするためによほどの基盤投資をしなければ、大変な金をかけなければ決してできない地帯なんですね。しかし、そういうところがいわば日本農業のふるさと地域でもあります。指摘しておきたいのは、総理のこういう農業観というのは日本の農業、農村をだめにすると私は思いますし、今農業にもう一つあるキーワードは、やはり環境とか地域の文化とか地域社会とか、そういうものを複合的に支えていく主要な生産活動だ、こういうふうに位置づけて、私は希望として言いますと、大変難しいことですけれども、そういう限定された地域で、しかし、そこに人が住んでいって農業をやってもらわなきゃ困るところにつきましては、デカップリングといいますか、直接的な生産助成というものを真剣に考えていくべきだ、こう思っているのです、日本型の工夫をしなければいけませんけれども。そういう観点からすると、総理のこの農業改革は、そんな視点が全く欠落しているという意味で問題を指摘して、終わりたいと思います。  お答えは武部委員の方ではっきりしていただきたい。
  346. 山口鶴男

    山口委員長 これにて若林君の質疑は終了いたしました。  次に、武部勤君。
  347. 武部勤

    武部委員 農業問題で通告しておりますが、冒頭、昨日、新生党の柴野たいぞう代議士に対して、弁護士の遠藤直哉氏ほかお二人が東京地方検察庁特捜部に告発状を出しております。そのことを耳にいたしましたが、法務大臣、このことについてどのように受けとめておられるか、御答弁いただきたいと思います。
  348. 三ケ月章

    ○三ケ月国務大臣 お答え申し上げます。  昨日、柴野代議士に対する公職選挙法違反、これは虚偽事項公表罪でございますが、その告発状が東京地検に提出されたと聞いております。その詳細につきましての答弁は差し控えますが、東京地検におきましてはその内容を十分審査の上、適正に対処するものと法務大臣としては考えております。
  349. 武部勤

    武部委員 大臣は詳細については答弁を控えましたけれども、刑事局長が来ておられるようでありますが、刑事局長、事実関係またその理由、御答弁いただけますか。
  350. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  今大臣からお答えがございましたように、昨日、柴野代議士に対する公職選挙法上の虚偽事項公表罪についての告発状が東京地検に提出されたということでございます。東京地検に昨日提出されたばかりでございますので、告発事実の詳細についてはお答えをいたしかねますけれども、先ほど申しましたように、虚偽事項の公表罪ということでございます。  これは告発事実の詳細等についてお答えを差し控えたいと申し上げた理由は、ちょっと御理解いただきたいと思いますが、現時点において、東京地検において告発状が告発として受理されたというふうにはまだ聞いていないわけでございまして、昨日告発状が提出されたと、告発状が提出されましてから告発受理になるまでには、手続的には、告発状に記載してありますところの犯罪事実として指摘してあるところが果たして構成要件に当たるものとして告発されているかどうかというような告発状、告発としての形式的な要件の調査というものが若干ございますものですから、今お答え申し上げましたように、正式には告発として今、現時点ではまだ受理されたかどうかということは確認いたしておりません。  そういうことでございますので、もちろん大臣からも先ほどお答え申し上げましたように、十分その内容を検討した上で東京地検において適切に対処するものというふうに考えているわけでございます。
  351. 武部勤

    武部委員 私がこのことを問題にしましたのは、九月十一日付の朝日新聞の夕刊に「「金日成主席と会見」はウソ」、そういう大見出しで新生党柴野代議士の問題が記事になっているわけです。これは新聞記事ですから、その事実関係はよくわかりませんが、ここの中で、「私なんか永田町では良識派」「人間ならだれだって何かある」こういうふうなことで書いてあるものですから、天下の朝日新聞に書いてあることで、我々同僚議員の問題でありまして、「私なんか永田町では良識派の議員だ。」と、こういうふうに本当に柴野代議士が言ったか、言ったのであるとすれば、これは我々議員一人一人にとっても名誉にかかわる重大な問題であります。  これらの問題については、今刑事局長からも詳しいことは御答弁いただけませんでしたから、そのポイント、私どもが聞いている範囲につい ちょっと述べておきます。  その一つは、柴野代議士が一九八八年に出版した著書で、実際は朝鮮民主主義人民共和国に行ったことがないのに金日成主席と会見したと記述した。また、当時の新自由クラブ事務局員の紀行文の一部を無断転用したということ。  二つ目には、同代議士が執筆した月刊誌「サンサーラ」、九二・十月号によりますと、ポル・ポト派潜入とされていたが、実際には現地に行っていなかった。  それから、この著書の略歴に米国カリフォルニア・コースト大学経営学博士課程修了と記載されているが、これは事実に反する。それから、昭和五十年当時、新自由クラブの全国連合政策室長という経歴が選挙ビラ、はがきに掲載されているが、同代議士はその当時その職になかったということになっているということであります。  さらに、九月二十八日に地元の新宿区議会で、連立与党の最大会派の社会党と共産党、自民党が一緒になりまして、新生党の柴野代議士に対して辞職勧告決議を採択した。これは極めて重大な問題であろう、こう思うわけでありまして、この際、新生党の党首でもあります羽田総理にどのような御感想を今お持ちか、受けとめておられるか、御答弁いただきたいと思います。
  352. 羽田孜

    羽田国務大臣 私も今その話をここでお聞きしたわけでございまして、よくどういう事情であったか調査してみたいと思っております。
  353. 武部勤

    武部委員 これはしかし、九月二十日には同代議士は新生党同僚議員に釈明文を配付しているということでもございまして、まあこの問題については、私、きょう通告していない問題でもありますのでこれまでにしておきたいと思いますけれども、これは司法当局も、先ほど大臣の答弁にありましたように、厳正に対処していただきたいということと同時に、我々同僚議員の間で起こった問題であります。我々としても見過ごすことができない、こう思いまして、予算委員会あるいはしかるべき委員会等でさらに事実関係を明らかにし、国会の名誉回復ということについてお互いの責任を果たしていかなければならない、このように思いますので、申し上げておきます。  そこで、次は農業問題について質問を続けてまいりたいと思いますが、けさほど来、総理と各委員とのやりとりを聞いていまして、私は非常に細川総理、尊敬していたのですけれども、少しがっかりした。これは細川総理らが編集した「日本新党 責任ある変革」という、今同僚の若林議員が示された書物でありますけれども、これはいわば日本新党の公約とも言えるのじゃないか、こう思うのですが、その中の「プロローグ」で、これは間違いなく総理自身が筆にされたと思いますけれども、そこに「いやしくも、一国の宰相は世界の大局を把握して、自分なりの言葉で、「歴史」について何を語るかが問われている。自国の進路を国民に指し示し、国民に対する啓蒙と自信に満ちた説得力を発揮すべきであって、常に最高決定者として毅然たる決意と不屈の意志とを、第一人称で国民に訴えるべきだ。」私は、これはすばらしい文章であり、細川さんのお気持ちだろうなと思って敬意を感じておりました。  しかし、けさほど来の質疑の模様を聞いておりますと失望を感ぜざるを得ないということでありまして、ぜひこの「プロローグ」で書いておられるとおりに思い切りやってくださいよ。我々、野党であろうと、国家国民のためにそれぞれの立場で仕事をしているわけですから、やはり細川総理日本国を代表する総理大臣ですから、我々は、やっぱり総理が堂々と明確な国民にわかりやすい言葉で自分の考えを明らかにしていただきたい、こう思うのです、気持ちも明らかにしていただきたいと。  そこで、この同じ本の中に、自由化の問題に関してこういうことを書いてあるのです。あるいはこれは細川さんの考えとは違うのかもしれません。これはどなたかがお書きになった部分かもしれません。この中にこう書いています。「多角的自由貿易体制の維持によって最大利益を得る我が国は、」「コメの部分自由化を含む農産物の市場開放は不可避である。国際社会と共存できる農業であるためには、輸入自由化してもつぶれない強い農業基盤を整える必要がある。」このように述べておられます。  また、このことについては、私は、農業の実態を知らないなと思ったのですけれども、二百八ページのところには「「市場開放の脅威」を誇大宣伝することも戒めるべきであろう。牛肉の輸入が自由化されて三年になるが、日本の飼育農家がダメになったという話も聞かない。」こう書いてあるのですけれども、このことについて、総理、今のお気持ちはこの中に書かれてあることとお変わりありませんか、お答えいただきたいと思います。
  354. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 日本新党の基本的な農業に関する政策は、かなり柔軟なものであったことは事実でございます。私自身も、基本的には米の自由化には慎重であるべきである、しかし、一粒たりともというのはどうであろうか、日本新党のときにはそのようなことをずっと主張してまいりました。  しかし、連立合意の文章の中でも、この問題については例外なき関税化には反対である、従来どおりの基本方針でやっていくということを明確に合意をしたわけでございますから、政策協定をして、それで内閣として国民に責任を負っていくということでございますから、そういう基本的な方針で臨んでまいりたいと思っております。
  355. 武部勤

    武部委員 昨日以来、社会党所属の各閣僚は、自衛隊は憲法違反だと明快にお答えになり、しかし閣内にあっていわゆる八項目の合意事項には素直に従っていく、そういうお話でありまして、これはある意味では、私は、今国民の皆さん方が政治家に求めているものは、本音で語ってもらいたい、二重大格では困る、うそは絶対言ってもったら困る、こういうお気持ちであろうと思うのです。  ですから、私は今の総理のお答えでは納得できない。どちらでもいいのですよ、はっきり明確に言っていただかないと、これは農業や農村の将来にかかわる問題ですから。ですから、このことは、私は、もっと本音で語っていただかなければ、対外的な事情もありましょうけれども国内の農民や農村はたまらないですね。  北海道開発庁長官、最後にありました牛肉の自由化以後、飼育農家がつぶれたりやめてしまったことはないと書いていることについて、北海道をよくもう勉強されたと思いますが、この感覚は実態とどうですか。
  356. 上原康助

    ○上原国務大臣 突然のお尋ねで、また私に予告もありませんでしたし、私は残念ながらその本は詳しくは見ておりませんので直にはお答えしかねますが、やはり農畜産物の自由化は私もある程度知っておるつもりでありますので、農民や農村地域の立場に立って政策は考えるべきものであるという自覚を持っております。
  357. 武部勤

    武部委員 まあ、まだ大臣に就任されて間もないから詳しくは御存じないかもしれませんけれども、上原大臣の職務は農業問題もありますからね。  畜産のことだけで言いますと、自由化前に二十万円であった素牛は今十万円そこそこですね。それから、ぬれ子はもう四万円、あるいは四万円を割っているかもしれません。そのことによって離農者続出です。後で、どうしてそういった農家を救済し、再建し、将来に夢と誇りを持ってやっていけるかというような、その考え方についてはまだ私の考えを申し上げたいと思いますけれども、私は、自由化の論議は今までは食糧安保論というものが大勢を占めていたと思うのです。しかし、これは必ずしも正しくない、こう思っています。  きのう以来いろいろ議論がありました。我々が考えなければならないのは、単なる食糧安保ということではなくして、やはり今までの経済成長政策のトレンドで、いわば工業化という、これはまあ西洋文明の一つの価値観でしょう。西洋の価値 観だと思いますが、そういうやり方をこれからもどの国もとり続けていきますと、先ほど畑農林大臣お話にありましたように、これが人口爆発、紀元二〇〇〇年には六十二億になる。十億も今よりもふえる。二〇五〇年には百億になる。そんなときに、黙っていても中東地域だとかアフリカだとか中南米だとか、そういうところは今よりも食糧事情は悪くなるわけなんですよ。さらに今、米の緊急輸入をしなければならぬということで、もうシカゴの米相場は上がっているわけですね。ことしは台風災害等で野菜が暴騰している。国内も大変ですけれども、タマネギの輸出国である台湾ではタマネギが上がっているんですよ。暴騰していますよ。カリフォルニアからも輸入している。台湾のタマネギが上がるということは、日本は金があるから買えるかもしれないけれども、台湾の消費者の皆さん方に迷惑をかけることになるのです。  ですから私は、今後の食糧政策、食糧の自給をなぜ堅持しなければならないかというその理論的根拠として、食糧安保論だけではなくして、やはり強者はそれぞれ少し遠慮しながら弱者を助けていくという、そういうルールですね。先ほど畑大臣お話にありましたように、国連あたりが提唱して、やはり一次産業、農業だとか林業だとか漁業だとか、そういったものについてその重要性を再認識して、地球環境の問題だとか国土保全だとか、あるいは農村には産物だけじゃなくて文化もあります、自然もあります、歴史もあります。そういうものを大事にしていくという一つの国民的合意というものが必要であり、そういう考えはやはり指導者たる総理大臣や農林大臣国民に示していく。  きのう以来のお話を聞いていると、合意があるから、自分の本音とは違うかもしれないけれども自給を堅持します、米の自給を堅持します、そういう話では、農村にある若い後継者は納得しませんね。これは先が見えた。農村が荒廃するということは、私は国滅ぶということにつながると思うのです。総理も熊本県の知事をおやりになったわけでありますから、やはり食糧の自給率をどうするか、食糧政策についてどうお考えになるか、そのことについて国民的合意、新たな国民的合意というものを求めて、国民に呼びかけていく、そういう姿勢を持って今後の基本農政というものを確立していただきたい。  今、自民党のことをいろいろお話ありましたけれども、我々はそういうことを常々訴え続けてまいりましたけれども、しかし、私は今ウルグアイ・ラウンドの問題については、極めて重要なときであるがゆえに、ここでお互いに確認しようということなんです。総理の御見解をお聞かせください。     〔委員長退席、野坂委員長代理着席〕
  358. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 農業の基本的な考え方についてのお尋ねであろうと思いますが、私はかねがね農業というのは国のもとであるということを言い続けてまいりました。それはもうずっと以前からそうでございます。  大国というのは、先進国というのは、まあ余り先進国とか後進国とか言ってはいけない、途上国とか言ってはいけないのかもしれませんが、あえて使わせていただくならば先進国というのは大体農業大国であって、我が国が目指すべき方向というのは、シンガポールとかあるいは香港であるとか、いろいろ土地が制約をされているために二次産業に依存をしている、そういう状態にならないように、幸いに我が国は七〇%が山でありますし、また豊かな農地にも恵まれておりますし、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、みんな先進国と言われるところはいずれも農業大国であって、その農業というものを国のもととしていく、その姿勢を忘れるべきではないということを言い続けてまいりました。ある意味で私は新農本主義者だ、農本主義というとちょっと古いのかもしれませんが、そういうことをいろいろな機会に申し上げてきたところでございます。  知事の時代にも、お話がございましたように熊本は農業県でございますし、そうした意味で、米、畜産、酪農、あるいはまた果樹、野菜、さまざまな分野の振興に取り組んで、農業には殊さら力を入れてきたつもりでございますし、またその成果もそれなりに私はあったと思っております。  それで、基本的なその農業の中でも大きな問題は、当面るるお話がございました米の問題でございましょうが、米につきましては日本文化の象徴的な存在として、田ごとの月というような言葉もございますが、田ごとに氏神さんを個々の家が祭っている、そういうやはり日本の民族の、日本国民の一人一人の琴線に触れるものであって、これは日本の文化のベースとして極めて大事に守っていかなければならない問題であるということを常々これも言い続けてきたところでございます。     〔野坂委員長代理退席、委員長着席〕  具体的には、農業について申し上げればいろいろ私も申し上げたいことがございますが、具体的に一言だけ言わしていただくならば、大まかに言って三つの柱があるであろう。一つは食糧政策、一つは生産政策、もう一つは農村政策。農村政策というものの中には、農業の持つ、先ほどちょっとお触れになりましたが、環境であるとかなんとか外部効果の問題、若林委員が先ほどお触れになりましたが、そういった外部効果の問題もあろうと思います。  そうした三つの大きな柱の中でそれぞれ具体価な施策を進めていくということが今求められているのだろうと思いますし、そうした観点から考えますと、これも先ほどお話が出ておりました新農政というものも私は大変評価をすべきものだ。先ほどこれを推進していくのは難しいという若林委員お話もございましたが、しかし、そういう方向に向かってやはり今後国内における農業改革というものを優先して進めていかなければならない、それが極めて日本の農業の将来にとって重要なことである、そのように認識をいたしております。  言葉が足りないかもしれませんが、簡単に申し上げるとそういう認識だということでございまして、決して農業を軽視をしているということではないということだけ改めて言わせていただきたいと思います。
  359. 武部勤

    武部委員 しかし、細川総理は毎日のようにテレビに出ていろいろ国民に向かって語っておられますけれども、農村では、本当に新政権は農業軽視の政権という、そういう気持ちを非常に強く持っています。  私は、このことについてあえてこれ以上申し上げませんけれども、このウルグアイ・ラウンドの交渉にあっても、先ほども言いましたように、何も食糧安保論で、あるいは米だけはどうしてもという、そういう考え方で申し上げているのじゃないのです。あらゆる農産物、やはり国際貢献論ということはあると思うのですよ。日本は瑞穂の国であり、農産物は投資をすれば相当な生産力を持っているわけですね。そういう意味と同時に、日本が世界に向かって今までの工業化一本やりのやり方を考える、地球環境の問題だとか南北問題だとか、そういった考え方に立って呼びかける、提唱していくという、そういう考えのもとに、明確な考え方でこのウルグアイ・ラウンドの問題、米の問題だけじゃありません、乳製品、でん粉なども含めてそうです、そのことを私は強く申し上げておきたい、このように思います。  それから、今、細川総理、余り農村、農業の実態を御存じないからそういうおっしゃり方をしているんだと思うのですけれども、実際に農業に就職する、就農する若い人たちが激減していますね。十年前までは九千人ぐらいいた新規学卒就農者、今はもう千七百人になっているんですね。もう林業二百人。医師国家試験で合格する人は八千人いるんですよ。それと比較しても、どうしてこんなに農村に担い手が集まってくれないか。  それから、離農も激増しているのです。平成十二年になりますと、六十五歳以上が四六%になるんですね。六十五歳以上の就農者が、私の記憶が間違っていなければ四六%になるんですよ。六十 五歳というのは、もうこれは定年で年金をもらう人たちじゃないですか、六十歳でもらっている人もいるけれども。敬老会に呼ばれる人たちですよ、六十五歳。そういう人たちがあと十年たったら、平成十二年ですから七年ですか、七年後にはもう半分近くになるということです。このことをやはり異常な事態と受けとめなきゃならぬと思うんですね。  それで、細川総理は今一生懸命やっているという、やろうとしているというそのあかしとして、日本新党の政策の中にも、それから細川さんの編したこの本の中にも、政府がつくっている第四次土地改良長期計画、これは四十三兆円ぐらいの規模だったかと思いますが、これを前倒しして五年でやれと、こう言っている。そのことをあなたたちはこの本の中でも提唱している。そのことは今も変わりませんか。いかがですか。それから、時間を節約する意味で大蔵大臣にも、いかがですか。  そして、もう少し先へ進めておきましょう。どうもこのところ公共事業の見直し論が盛んになっていまして、最近の新聞を見ても、識者と称する人たちが、どこの部分を削ったらいいかと。農業部分を削ったらいいというのが非常に多い。農林公共関係の予算を削減すべきだという議論もある。私は、やはり細川総理になってからにわかにそういう議論が強くなっているということはゆゆしき事態だと思いますよ。これは政権存立の問題じゃないですよ。日本の農業、農村、大きく言えば日本の存立にかかわる問題だと思うのです。お答えください。
  360. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 たびたび予算委員会でも御質疑があって、またお答えしておりますように、生活者重視の視点に立ってやっていく、そのことの中には当然農村基盤の整備ということも含まれております。基盤整備自体ももとよりそうでございましょうし、特に農村環境の整備などに、下水道でおるとか、そういった農村環境の整備には、このような緊急の事態でもございますし、目配りをしていかなければならないであろうなということを感じているところでございます。
  361. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 ただいまの総理の御発言で尽きていると思うのです。生活者をより重視するような財源配分をしたいということであろうと思いますし、特に農村部においても、今の下水道なんか一番いい例だと思うのですけれども、そういうことを重視していこうということであって、この物の考え方が農村における投資を減らそうという発想とは違うということだけ御理解をいただきたいと思います。
  362. 武部勤

    武部委員 農林大臣、いかがですか今のお二人の発言
  363. 畑英次郎

    ○畑国務大臣 来年度の概算要求の中にも、ただいま御指摘をされましたような懸念をいささか払拭をする内容のものも要求内容に入らさせていただいておるわけでございますし、なおまた、御指摘がございましたとおり、土地改良事業等々は用地費も要りませんし、こういった不況の時期には、農村に対する雇用の場としまして、あるいは景気回復に向けての大きな貢献がなし得るわけでございますから、私は、私自身、閣議におけるあるいは閣僚懇談会におけるやりとりの中にございましては、総理も大蔵大臣も十二分にただいま御発言のような趣旨で御理解をいただいておる、かように受けとめさせていただいております。
  364. 武部勤

    武部委員 農林大臣がそういうような答弁をされるようでは本当に心寂しいですよ。畑大臣は我々も御指導いただいた先輩であり、畑先生の農業や林業に対する情熱も私はよく知っております。その大臣がここで今の総理や大蔵大臣の答弁をそのままお認めになるようでは、私は納得できませんね。私が言っているのは、それは確かに生活環境――生活者というのはどういうことですか。私は、この考え方も、農村において非常に農家の若い人たちが自信を失っている、絶望感を感じている、失望感を感じている原因になっているのですよ。我々は、これはそういう農家の皆さん方にもわかりやすく理解していただけるような説明をしてもらわなくちゃならぬと思うのです。  時間の関係がありますから先へ進みますが、だけれども、先ほどの私の質問に対して正確に答えていない。第四次土地改良長期計画の繰り上げを唱えているのですよ、細川総理は。これを本当におやりになるというならば、十年間のものを五年間に縮めてもやろうというならば、その生活者ということも、農村も重視しているのだな。また、農村の存在というのは、農業の担い手の住むところではないのだ、これはもう国民すべての皆さん方にとって、環境保全の問題、国土保全の問題、そういったものも含めてですね。  あるいは私はこうも考えているのですよ。この東京で、大都市で通勤地獄で揺られて、そして本当に住宅が持てるか。一番求めているのは自然なのですね、いろんなアンケート調査を見ても、都市住民も。私は、飛躍した発想ですけれども、航空券つき建て売り住宅をやったらどうだというのだ。生涯運賃ただ。私のふるさとでは、二千万あれは家、土地、持てるのですから。千五百万でも持てるところがある。西頭部村なんかは、そこに十年間居住するなら七百万円で家、土地を提供しようという、そういう政策までとっているのですよ。新紋別空港ができれば、西頭部の村から一時間かからないわけですから。  だから、そういう考え方で、都市の皆さん方にも農村の自然景観だとか、あるいは文化だとか、そういった伝統芸能だとか、そういうものを提供するために、私は、土地改良長期計画、五年間でやってしまおうというお考えを持ったかというと、それが明確でない。まあ後でまたもしつけ加えてお話しされることがあったら申してください。  私は、今一番農業の基本政策の中で問題なのは担い手だと思うのです。ここでちょっと確認しておきたいと思うのですけれども、農林大臣、平成二年の閣議了解にあります長期見通しては、自給率を五〇%にする、こういうふうになっていますね。今度の新政策では、自給率の低下に歯どめをかける、こうなっていますね。この自給率、どのようにするつもりですか。今は四六%です、カロリーベースで。
  365. 畑英次郎

    ○畑国務大臣 御案内のとおり、本年から新農政、これが大きく期待をされ、なおまたこれの責任を果たしていかなければならない、これが与えられた私どもの当面の課題であるというように受けとめさせていただいておるわけでございます。  そういう中にございましての自給率四六あるいはまた二九、まことに深刻な数字である。さような中にございまして、今これを、五〇%をいつ、どうできるかということに対しましては、残念ながら具体的な手法あるいは見通しというものを申し上げる段階にはございません。それほど厳しい実態の中にございましては、私どもはやはり四六%という数字に歯どめをかけて、少なくともここで一つの将来に向けての明るい材料をつくるための数年間の努力が要る、こういうように考えているのが今日の姿であるというように御理解いただければありがたい。しかしながら、今御指摘がございましたような意味合いにおける、絶えず農政万般にわたっての努力を重ねてまいりたい、かような気持ちでございます。
  366. 武部勤

    武部委員 私は、食糧自給率五〇%にやろうと思えばできると思うのです。ですから、今大事なことは、総理大臣が食糧自給というものの重要性を国民に訴えて、自給率五〇%なら五〇%にするための手だてをやればいいのです。  それは、一つは予算ですよ。それからもう一つは、私は、担い手です。この担い手ということについて言えば、若い後継者ということも一つあるでしょう。しかし、担い手というのは必ずしも個人じゃないのですね、これから考えなきゃならぬのは。一つの経営体、組織体ということもある。そこに着眼して新政策がつくられているわけでありまして、私は、まずその担い手の問題について言うならば、大事な要素はやはり所得ですよ。それからもう一つは人間らしい生活、さらには老後 の保障ですね。老後が不安定なのですよ。田舎にあれば、役場職員が年金をもらって、悠々ゴルフをしたり、ゲートボールをしたり、パークゴルフをしたり、そういう姿を見ていると、親も子供に後を継げよということも言えない。子供も、親の背中を見ていますから、とてもしっかり腰を据えてやろうというような、そういう気持ちになれない。  私はここで、その担い手の問題について、まず人という問題について文部大臣に伺っておきたいと思うのです。  農業高校が四百二十幾つありますね。そして、卒業生は何万でしょうか。実際には、先ほども申し上げましたように、新卒就農者は千七百人になっているというわけですから、そのギャップを感ずると、これは政治に携わる者としてこのまま今のままでやっていっていいのだろうか。農業をやろうと思って農業高校へ誇りを持って行けない現実がありましょう。それならば、誇りを持って行けるような農業高校にしなければなりませんね。  もう時間の関係がありますから、あえて私の提言を申し上げますけれども、どうですか、農業高校を全国十か十五ぐらいにして、三年で卒業してもよし、五年まで行ってもよし、五年まで修学した場合には農業大学にも行ける道をつくる、全寮制で。そして農閑期に学校へ行って、農繁期は自分の農場で実習するもよし、篤農家の農場へ行って実習するもよし、そういうバラエティーに富んだ多様な農業高校あるいは農業後継者教育のあり方というものを、これは農林省の農業大学校の問題も含めてやるべきだ。こういうことをきちっとしないと、これはもう一つ一つが農村に絶望感を与える原因となっているわけです。文部大臣のお考えをお聞かせください。
  367. 赤松良子

    ○赤松国務大臣 農業問題の専門家でございませんので見当違いのことを申し上げるかもしれませんが、最近、米の輸入に関してエッセーを新聞で読みました。そのときに、農業というものを食糧の観点からだけ考えるのではなくて、私たちの美しい国土だとか環境だとか、そういうものとの観点においても考えるべきだという御指摘がそのエッセーの中でございまして、私は非常にそれに感銘を受けた次第でございます。  たまたまそのときに友人が、イタリア人なんですが、日本国内、九州を旅行して、何という美しい水田なんだろうという印象を私に言ってくれまして、これは先ほどのエッセーと関連づけて、そういうものが美しく維持されている、それはそのエッセーによれば、そういうものを維持するということは多少コストがかかったって安いものじゃないか、こういう御指摘だったと思います。非常にその印象を受けたということをまず第一に申し上げさせていただきます。  それを維持するためには、担い手、それは現在も担い手が大事なことは申すまでもございませんが、後継者がなくてはちゃんとしたその担い手が続かないわけでございますから、後継者が育つことが非常に重要というふうに認識をいたしております。  先生の先ほどの御提言、いろいろとございまして、私も研究が足りませんので一つ一つについて申し上げている時間もございませんが、農業高校を、三年を全部五年にするというのはちょっと難しいのではないか。卒業生に対して、さらに専門的な教育を続けるということについては専攻科というのがある、これを充実するということはいい方法ではないか。  また、現在、高等学校学習指導要領を改正いたしまして、来年からこれは実行されるわけでございますが、農業経済、バイオテクノロジーに関する内容を教える、情報に関する科目を新設するなどというような改善が図られる予定でございます。  そのような、あとまたいろいろお教えいただきたいと思います。
  368. 武部勤

    武部委員 いや、文部大臣の方が農業問題の本質を知っておられるなと、こう思いました。  しかし、これはやらなくちゃだめですよ。大体、農業高校が四百三十もあって、新卒の就農者が千七百人しかいない。これをこのままにしていて、私は差しさわりがあるから言わないんですよ。農業高校へ行くことによって、農村の若者が卒業後プライドを持って農業をできないという実態があるんですよ。みんな普通高校へ行っちゃうんですよ。それなら普通高校になさって、農業をやろうという者についてはなかなかはいれないぐらいに、これはもう全国門をたたいていくというふうな、そういうような形にしなきゃならぬと思う。時間がありませんから突っ込んだお話ができませんで残念ですけれども。  それから、もう一つは組織の問題、経営体の問題ですね。  私は、新政策の中で、法人化ということで踏み切られたことは結構なことだと思います。しかし、農村の実態は、皆さん方よく御存じのように、農業を真剣にやろうと思う若者に農地の集積が難しい状態になっているんですよ。御承知のように、二種兼農家が七〇%にもなっているわけですね。それから、北海道あたりでも土地持ち非農家がふえている。これは金持ちが、ある程度豊かな人たちが農業をやめちゃうんですよ。土地は売らないんですよ。貸すんですよ。だから私は、安易に土地を借りてやる農業ということについて疑問は持っているんです。  そこで、農協や市町村が出資し、あるいは株式譲渡の問題についても制限をつけるなり、土地利用計画なり、そういったものをきちっとやるならば、いわゆる第三セクター、株式会社が農地を保有し農業をやるということも結構じゃないかと思うんです。そのことによって農村のリストラクチャリングですね、例えば酪農家が二人で八十頭、百頭やりたい、だけど夫婦二人じゃ難しいですよ。施設はできてもえさがない、えさを確保するために農地を買わなくちゃいけない、借金をしなくちゃいけない、それじゃやれないんですね。だけど、えさを、粗飼料を供給してくれるところがあれば、何も投資しなくたって八十頭、百頭飼えるわけですね。そういうものを、個々の農家を支援するそういう公的な組織といいますか、あるいは思い切り株式会社でいいんじゃないか。このことに挑戦すべきだと思いますし、そのためには農地法を改正しなくちゃいけない。私は、食管法も思い切って見直したらいいんじゃないかと思うんです。私は、そのぐらいのことをやらなければ、本当に農業、農村というものの将来はなかなか難しいな、我々は出身地がそういうことでありますから、そういうことを申し上げるわけです。  そして、やはり所得の増大とともにコストを下げなきゃならぬ。これはもう皆さん方が指摘している、この本なんかには、みんなコスト、コストと書いている。コストを下げることはできるんですよ、やろうと思えば。なぜできないか。固定化負債がそっくりあるとか、それから親の借金背負って、そして優秀な、有能なやる気のある後継者が農村に入っていけないんです。それは優秀な男でも親の借金背負う。だから、やっぱり継承資金ですね、担い手については継承資金という長期の金を貸すとか、あるいは再建資金とか、あるいは規模拡大に伴う資金の手当てたとか、いろんなやる方法があると思うんです。  それから、これは山の方も同じです。流域管理システム、これはもう協議会しかないですね。これじゃだめなんです。民間でいろんな知恵を出しているのがあるんですね。富山の下草刈り十字軍はもう十七年間以上続いているんですよ、これはね。これはもう農林大臣御承知のとおり、人手がないからといってヘリコプターで枯殺剤をまくということに対して反対したグループが、自分たちで学生集めて毎年下草刈りをやっているんです。これを下草刈り十字軍といってやっているんです。  私は、PKOもいいけれども、GKO、グリーン・キーピング・オペレーションというのをやったらどうか。山を守り、森林の公益的機能という ものを国民の責任でやる。そのためには、私は、これはもうそれこそ目的税を取ってもいいんじゃないか、政府専用機を使ってみんな山に派遣すればいいじゃないか、ちゃんと手当も出してあげなさい、山はもう林業労働者も足りなくて大変なんですから。  そのほかにも、いろいろな工夫をしているのですよ。諸塚村などというのは、諸塚村国土保全森林作業隊というのをつくっているのですね。二十代の若者が毎年その作業隊に入っている。それは、そこの給料だけでは大変だから村もお金を出して基金を積んで、そして五十歳定年にして、社会保険もきちっとやっているし、退職金も出るし年金も出る、こういうことになっているのです。そういうふうに民間が一生懸命やっているわけですし、それから、森林交付税という案もありますね。これは和歌山の本宮町の町長さんが一生懸命ですよ。これは国税の中から別枠で、地方交付税の別枠で森林交付税を出そうという、そういうような発想がもう数々あるわけでありまして、きょうはいろいろ申し上げたかったのですが、最後に、総理並びに農林大臣に総括的に、農村の皆さん方が、細川政権も農山村に理解があり意欲がある、そうみんなに信頼してもらえるようなしっかりしたことを答えてください。
  369. 畑英次郎

    ○畑国務大臣 今、国民的課題の大きな柱といいますものは、過疎対策であろうかというように考えます。過疎対策の決め手は、やはり第一次産業の農業、林業、漁業の活性化にある。さような意味合いでの全力投球をしていかなければならない、その大変貴重な時間を生かしていかなければならない。さような意味合いで細川総理が私を農林水産大臣にしたんではなかろうかかようにも考えておりますから。
  370. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 全くそういうことでございます。  とにかく、先ほどからお話がございましたようなもろもろの御提言は、大変私も賛同するところが多々ある、傾聴に値する御議論であったというふうに思っております。中山間地が四〇%を占めている、また、山村、漁村、そうしたところを活性化していくためにどういう具体的な方策があるか、ぜひ、ともどもに知恵を絞っていい対策を講じてまいりたいものだと風っているところでございます。
  371. 武部勤

    武部委員 私は極めて不満足です、今の答弁は。  これは重大な問題だと思うのですね。人類の興亡の歴史を振り返ってみますと、やはり軽挑浮薄な繁栄に酔いしれているようなそういう民族は衰退し、ここのところは総理のお言葉をおかりしますが、質実剛健な民族が興隆しているのですよ。私はそういうことを思うときに、生活者、生活者ということ、これは非常に誤解を招く言葉ですよ。  ですから、本当にしっかりその辺のところをわきまえて、特に一次産業の復権、私は、一次産業の復権は一次産業を守るなどと思っていないのです、日本の生きる最後の道だろうと思っているのですよ。そして、瑞穂の国であるならば、その考えをそれこそ国連の場で総理が提唱するぐらいの価値のある話だと思うのです。食糧安保論、金があれば食糧は買える、だから経済第一だ、そうじゃない。強者は弱者をいたわるという、そういう気持ちですね。そういう国際貢献論で食糧政策を考えていく、それを農業の基本政策にしていくという考えでぜひ、我々もそう長く野党でいるつもりはありませんが、政治は継続性が大事でありますから、細川政権にありましてもぜひしっかりやっていただきたい、このように思います。  以上申し上げまして、質問を終わります。
  372. 山口鶴男

    山口委員長 これにて武部君の質疑は終了いたしました。  次に、佐々木陸海君。
  373. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 自民党政権にかわって細川政権が発足してから初の予算委員会であります。時間の制約もありますので、政府、特に総理基本姿勢に関して幾つか私は質問をしたいと思います。  最初に、金権政治への基本姿勢の問題でございます。  金丸元自民党副総裁の逮捕が三月六日でございましたが、その後、仙台市長、茨城、宮城両県知事、そしてゼネコン幹部の相次ぐ逮捕ということが進んでまいっております。国民の税金で行われる公共事業、中央地方合わせて年間四十兆円とも言われているこの事業が大手ゼネコンの食い物にされ、受注額の一ないし三%とも言われる巨大なやみ献金がいわばシステム化していることが明らかになっています。その真相究明と徹底的な根絶は国政上の急務であろうかと思います。  ところが、首相の所信表明演説では、これだけの大問題に対して真相究明の言葉さえありませんでした。国民の立場から見て、極めて異常なことであると考えます。一体、首相は、みずから積極的にイニシアチブを発揮してゼネコンの疑惑の真相究明に当たる決意があるのかどうか、その点をまず最初にお伺いしたいと思います。
  374. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 今この問題につきましては、捜査当局におきましても厳正な捜査を行っているところでございますし、また、中央建設業審議会におきましても、入札や契約制度のあり方などについてまさに今御審議をいただいているところでございますから、いろいろな角度から、こうした問題がぜひこれから改善をされて、金と政治にまつわるもろもろの問題がなくなっていくように取り組んでいかなければならない、そういうことで今政府としてもいろいろな角度から取り組みをしているということでございます。  そして何よりも、こうした問題を根絶をしていくために、根絶というか少しでもよくしていくために、今回国会に提出をしております政治改革四法案をぜひとも成立をさせていただきたい、そのように願っているところでございます。
  375. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 この疑惑の問題について、捜査当局やその他がいろいろやっている、そして、今後の対応策をいろいろ考えているということを今伺いましたが、これは公共事業の問題が今中心になっているわけでありまして、犯罪の有無にとどまらない真相解明の努力が必要だ、求められているということが今私の一番言いたい点でございます。  政府自身がかかわる公共事業について、数々の疑惑が指摘されております。九月二十二日の本院本会議で松本議員が指摘しましたように、東京湾横断道路の談合疑惑とか長良川河口堰の談合疑惑にしても、政府自身が深く関与している公共事業に金丸被告まで介入した疑惑がはっきりした形で指摘されているのであります。これらの公共事業の内容や発注先の決定は政府の仕事であり、そこに金丸被告主導の金権的な関係を持ち込むことは、政府の協力なしには成り立たないことであります。問題を個人的な違法行為とか刑事問題とかに解消できないことは明白であります。  その点で、今指摘をいたしかした東京湾横断道路の問題とかあるいは長良川河口堰の問題とか、今進行中の事業でございますけれども、こういうものに金丸さんが介入したとか、こういった問題を含めて徹底的な調査を行って、その結果を国会や国民報告する、それが政治改革第一歩として大事だと考えますが、その点いかがでしょうか。
  376. 五十嵐広三

    ○五十嵐国務大臣 公共事業は、大から小まで、また中央から地方まで、多様な形で執行されているわけであります。大体、例えば建設省で直轄している仕事というのは、全体のうち、件数にして四%ぐらい、金額にして八%ぐらいになります。やはり地方で行うものが圧倒的に多いわけでありますが、全体で約四十七万件に及ぶ公共工事でありまして、これを三千三百の地方自治体がそれぞれ執行していただいているわけであります。     〔委員長退席、野坂委員長代理着席〕  業者の方も、今、全体で我が国の建設業者というのは約五十二万業者に及ぶと言われているわけでありますが、もちろん公共事業を扱っているのはこのうち、まあ私の記憶では七万ぐらいという ふうに覚えているところでありますが、それぞれ多様な形で公共事業がとり行われているわけであります。  これらについて、せんだって来非常に残念な状態が続いているわけでありまして、先ほど総理から御発言ございましたように、私どもといたしましても、それぞれの多様な形での公共事業の執行についてしっかり分析しながら、殊にせんだって来の地方の首長にかかわる大手ゼネコンの事件の状況から考えて、やはり首長等の恣意性が及ばないような方法として一体どうしたらいいのか、そのためには透明性をもっと強めていこう、こういう考え方で、鋭意、中建審の特別委員会で御審議をいただきながら、我々としても内部で検討委員会を設けて最大限の努力を今いたしているような次第でございます。年内には改革の方向を明確にいたしまして、国民の信頼をしっかり回復していきたい、このように存じている次第であります。     〔野坂委員長代理退席、委員長着席〕
  377. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 真相究明の努力が必要だということを私は今強調をしているわけであります。先ほど言いましたように、東京湾横断道路の問題とかそういったいろいろな疑惑が指摘されている問題、これについて直ちにきっちり調べて、やっているのかどうなのかということを問題にしたいわけであります。  今建設相からそういう答弁がありましたけれども、建設省が、ゼネコン疑惑発覚後、ゼネコン三十社に対するヒアリングを行いました。その資料を出していただきたいということを本委員会を通じて要求いたしましたところ、内部資料だからといって断ってまいりました。また、ゼネコン三十社に対する過去十年間の各省庁や団体などの工事発注件数、発注金額の推移や、一件十億円以上の工事発注についての具体的な資料などを求めましたけれども、事務負担が大きくなるといって断ってまいりました。大蔵省も、過去十年間の資本金十億円以上のゼネコンの使途不明金の資料も、把握していないということで断ってまいりました。  この問題は、本当に国民が徹底的な解明を望んでいるわけでございますけれども、こういう姿勢では解明できないじゃないかということを申し上げたいわけであります。その点どうですか。  総理、そういう姿勢でいいということでしょうか、その点を伺いたいと思います。
  378. 五十嵐広三

    ○五十嵐国務大臣 できるだけ我々としてもそういう実態に迫る努力をしていかなければならぬのはもう当然でありますし、内部でももちろんさまざまな調査検討、分析等もいたしている次第であります。  申し込みがあったとされる状況につきましては、私もよく聞いておりませんでしたけれども、なかなかまあ、実際に提出可能な資料がどうかその辺もなお担当局の方からよく聞きまして検討いたしたい、このように思う次第であります。
  379. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 資料は至急検討して出していただきたいと思いますが、この問題で、例えば、新聞の報道ですが、建設大臣経験者によると、金丸元副総裁らの建設業支配は次のような構造になっている。道路、河川改修、ダムなどの毎年の建設予算の大まかな配分率は、金丸さんと竹下さんが建設事務当局と協議して決める。建設予算をどこに使うかを決める箇所づけも、二人と田中・竹下派幹部の建設族議員が了承した後、各議員に公表される。こういったようなことも新聞でも報道されてきております。つまり、自民党の中枢と官庁と業界が一体となった癒着の構造が、このゼネコン疑惑の問題で非常にはっきりと出てきているわけでございます。  総理は、このいわば政官業の、官の中心に今立たれたわけでございまして、総理所信表明演説でも「政治腐敗の温床となってきた、いわゆる政・官・業の癒着体制や族議員政治を打破するために全力を尽くしてまいります。」ということを述べておられますけれども、この政官業の癒着の最たるものであるところのゼネコン問題、建設省も大蔵省も当事者になるわけですけれども、首相はその最高責任者です。こういうことを本当に徹底して明らかにするという姿勢をはっきりと示していただきたいと思います。
  380. 山花貞夫

    ○山花国務大臣 今、新聞を引用されまして政官業の癒着とおっしゃっていましたけれども新聞を引用するまでもなく、御指摘の最近のゼネコン各社の摘発が連日続いていることなどをも含めて、この鉄のトライアングルと言われた構造については、国民の大方の皆さんの認識ではないかと思っています。そして、そのことに今日の政治不信の最大の原因があったということにつきましても、およそ我々の共通の認識ではないかと思っています。  今、総理に対して御質問がありましたけれども、今回の連立政権の使命というのは、まさに政治改革を実現すること、その要点は政治の浄化にあったわけでありまして、そうした使命を担ったからこそ、今回は、政権の姿勢を明確にする意味におきまして、政治改革の法案を政府が準備して、御論議いただく段取りをお願いしているところでございます。そうした政府姿勢の中に総理姿勢も示されているものとどうぞお受け取りいただきまして、これからの審議を通じてこうした問題についての徹底的な議論をさらにそれぞれの立場ですることが、今御指摘のお答えになるのではないかと思っているところでございます。
  381. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 政治改革の実現のための千載一遇のチャンスということも総理は前に所信表明で言われたこともございますけれども、まさに国民が今細川内閣に望んでいる政治改革というのは、こういうゼネコン疑惑に象徴されるような金権腐敗を本当になくすという問題、その前提としてこの政官業の癒着の実態を本当に解明することが今求められているのじゃないかと思うのです。その実態解明の方向を総理はどう考えているのか、本当に今の政府がそれをやろうとしているのかどうなのかということを私は聞いているのでございます。その点、総理、はっきりお答えを願いたいと思います。
  382. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 繰り返し申し上げておりますように、政官業の癒着の構造というものが今日の政治と金にまつわるさまざまな問題を生み出してきた大きな原因になっている、そのように認識をいたしておりますし、そのためにこそ政治改革の法案なりそうしたものも提出をし、また行政改革もこれから思い切って進めていかなければならない、そういうことを申し上げているところでございます。
  383. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 ゼネコン疑惑の真相解明、国会議員まで深くかかわるということが言われているこの問題についての解明はまだ進んでいないわけであります。その真相解明の努力は、率直に言いましてまともに行わないで、きのうの議論でも明らかにしましたように、民意をゆがめる選挙制度の改革とか、あるいは企業・団体献金は禁止しないで税金を政党に配分するとかそういった方向では、政治改革の方向は根本的に間違っているのじゃないかということを私は申し上げたいと思います。  このゼネコンの問題では、ことし四月九日の党首会談で、不破委員長が宮澤首相に対して公共事業問題の徹底的な調査を求めました。これに対して宮澤首相は、公共事業というのは国民の税金でやる仕事であって、政府が関心と責任を持つのは当然だ、その点ではこの真相を解明しろという指摘は正しい、そのとおりだ、犯罪行為を構成したかどうかとは別に、公共事業の発注、受注の上でフェアな関係があったかどうかを究明する責任があるということを言いました。この宮澤首相の姿勢に比べても、政治改革の問題での今の細川内閣の態度というものは筋が通らない。宮澤氏の方がまだ見識と責任を持っている。何のための政権交代だったか。ゼネコン疑惑の解明を徹底的に進める、そのことを強く求めたいと思います。  この問題では、政府がどうであれ、国会自身の仕事でもありますので、数々の談合疑惑や使途不明金の問題などを解明して、清潔な政治を実現するために、ゼネコン大手幹部の証人喚問などを実 現する必要があると私たち考えております。  その点で、既に理事会にも提出しておりますが、以下九人の証人の喚問を要求したいと思いますので、委員長においてよろしくお取り計らいをお願いしたいと思います。  藤田晋全国建設業協会会長・安藤建設会長、柴田平日本建設業団体連合会副会長・西松建設社長、石川六郎鹿島会長、淡河義正大成建設会長、今村治輔清水建設社長、大林芳郎大林組会長、石橋栄一ハザマ相談役、町田良治三井建設相談役、植良祐政飛島建設相談役、以上であります。  そして、先ほど建設大臣の方からも資料を検討してみるという問題がありましたが、資料要求も既に出しておりますので、その資料についてもよろしく御検討をお願いしたいと思います。
  384. 山口鶴男

    山口委員長 理事会において検討いたします。
  385. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 次に、不況対策の基本姿勢の問題について、特に消費税の問題について伺いたいと思います。  不況の対策で今一番求められているのが国民生活の消費を底辺から高めるための抜本的対策であることは論をまたないと思います。GNPの六割を占める国民消費の拡大こそ不況打開の決め手であると考えます。日本共産党はそのための一環として、二兆円規模の所得税、住民税減税、消費税の廃止等を主張しております。  消費税の問題に関しては、実施から既に四年半が経過いたしましたが、その害悪はこの不況の中で一層明らかになっていると思います。一世帯年間平均十一万円の負担、それに加えてお年寄りなどは、公定歩合の相次ぐ引き下げ、預金金利の低下という中で本当に利子収入が三年で三分の一から四分の一に減る、そういう中で、消費税の負担はますます重いということで、四年半たったけれども怨嗟の声はますます強まるという状況にあると思います。  消費税の問題で二つ聞きたいと思いますが、まず第一に、当面の問題として、不況の対策としても飲食料品の非課税を実施する意思がないかどうか、この点であります。九〇年の総選挙で自民党も公約したことでありますし、ことしの総選挙でも社会、公明両党が公約しております。  まず、こういう現実的な減税への国民の要望に総理はこたえるつもりがあるかどうかをお伺いしたいと思います。
  386. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 具体的なお話だけお答えいたしますが、消費税のうち食料品について非課税にすべきである、こういう御意見でありますが、消費税が実現いたしました平成元年以降、平成三年十月に、消費税が当初案について持っていたいろいろな問題点を各党が御議論をいただきまして一つの結論を得たわけでございます。それによって今消費税は相当各党の合意のもとに機能していると考えますので、今お話しのようなことをここで取り上げる考えはございません。
  387. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 各党の両院の協議会というものが行われた経過は私も存じておりますが、そこでも飲食料品非課税の問題は継続協議になっているはずでございますが、やる気はないということでございますから、それは確認した上で、次に進みたいと思います。  第二に、消費税の税率アップの問題です。  こういう不況の中で、閣僚からも連立与党の有力者からも政府税調の関係者からも、減税の財源の論議の一環として消費税引き上げの発言が相次いで、国民を不安に陥れております。総理政府税制調査会に直間比率の見直しを実質的に諮問したことが消費税引き上げの不安を広げております。減税の財源という問題に関していえば、従来の自民党政治の枠にとらわれずに、政治の姿勢を変えれば出てくると私たち考えています。軍事費の削減とか、大企業の特権的優遇税制の是正とか、公共事業の浪費にメスを入れるなどがそれであります。  これは我が党の特殊な要求ではありません。最近のある新聞の世論調査でも、減税の財源として求められたもののトップは、不公平税制の見直しが四九%、防衛費の削減が二五%、補助金の整理などの行財政改革が一四%、消費税の税率引き上げ、赤字国債発行はそれぞれ六%、また三%にすぎません。  こういう国民の強い不安がある中ですから率直にお聞きしますけれども総理は消費税を引き上げるおつもりですか。
  388. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 まず、景気対策としての減税ということについては、過般からお話しいたしておりますように、これはあり得ない。今の段階において赤字国債以外にないわけですから、これはない。  そこで、基本的税制改革について、総理がこの間、税制調査会に実質的諮問というような言葉まで使われてごあいさつに行かれ、そこの中で税制のあるべき姿を議論してほしい、こういうことを言われました。今その議論が進んでいる段階でありますから、私どもがその特定の税目についてどうこう言う立場には全くありません。  それからもう一つ、今、誤解がないように申し上げますが、税制調査会の議論は、税制の基本的なあり方を議論しているのであって、減税のための財源探しをやっているのとは全然違うということだけ申し上げたいと思います。
  389. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 総理は、九月三日に税調に対して直間比率の見直しを事実上諮問しているわけですけれども、これが間接税を引き上げる趣旨であることは明白ではないかと考えます。消費税引き上げ以外にどういう方法で間接税を引き上げるというのか。やはり国民の多数が不安を感じている重大問題ですので、その点をはっきりさしていただきたいと思います。総理、いかがですか。
  390. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 ただいま申し上げたとおりでありまして、税制調査会に税制の基本的なあり方を諮問している段階で、余り個別の税目のことには触れたくないと思います。これはむしろ触れることは不見識であると考えております。
  391. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 今大蔵大臣が申し上げたとおりでございまして、税調の御審議に予断を与えるようなことを今申し上げるべきではないと思っております。
  392. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 ここに九月二十八日付の社会新報、社会党の機関紙がございますが、社会党の第六十回定期大会の、この間の大会ですが、一般党務報告、赤松さんの報告が載っておりますが、「財源についての消費税の税率アップについては、連立与党間で現内閣では行なわないことを合意しています。」というふうに書いてありますが、これは事実ですか。――内閣の姿勢として聞いているんですけれども
  393. 山花貞夫

    ○山花国務大臣 今御指摘の点につきましては、七月二十九日に連立政権が合意をいたしました。これは文書等でも発表いたしましたし、これまでの審議のやりとりでもその内容について御紹介してきているとおりでございます。その時点におきまして、八党・会派の党首が相談をした際、私の方から消費税の問題について問題を提起いたしまして、まずは来年度の予算において消費税アップの問題については手をつけない、そこは合意したいということについて申し上げたところです。  各党、消費税問題については意見が確かに違っております。しかし、新しい政権をつくってまずは最初予算をつくるという、そこまでは、私たちとしてはこの問題について手をつけないということで合意をしてもらいたい、こういう要請をいたしました。当日の党首の合意として、結構でしょうということになったのがその日の口頭約束と、赤松書記長が相談したところでございます。  なお同時に、同じ日に政審会長のベースで取り交わされました八党派の覚書におきましては、消費税とはまた別のテーマということで、税制についての協議の仕方についても、これは文書で合意となっておりますが、消費税に関しましては、今御報告いたしましたような党首の口頭の合意でというのが事実関係でございます。  以上、私がそういう提起をした関係もありますので、私が発言をさせていただきました。
  394. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 現内閣では消費税の税率アッ プは行わないということですか。(山花国務大臣「そうは言ってない」と呼ぶ)そう書いてあるのですよ。これは間違いですね。
  395. 山花貞夫

    ○山花国務大臣 事実の経過としては私が申し上げたとおりでございまして、消費税率、当時も話題となっておりました。そうした話題に関心があった私の立場から、少なくともこの八党・会派の党首が集まった場面で、来年度予算についてはこれを引き上げないという約束をしたわけでして、そこまでの口頭約束でございます。
  396. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 じゃ、社会新報に書いてあることは事実と違うということですね。連立与党間で、現内閣では税率アップを行わないと言っているのですから。  総理、どうですか。現内閣では行わないということで合意しているというのは事実なんですか。総理、答えてください。現内閣では行わないと社会党が言っているわけですよ。
  397. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 連立政権の樹立に当たりましての合意事項の中で「公正な国民合意の税制改革」というものを掲げて、「所得、資産、消費のバランスのとれた総合的税制改革を行う。」という合意がなされておることは承知をいたしております。それ以外のものについては存じません。
  398. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 じゃ、この社会新報の書いていることは虚偽の内容だということになりますよね。(山花国務大臣「虚偽ということではない」と呼ぶ)まあそれはいいです、それじゃ。ともかく、事実ではないことははっきりしていますね。(山花国務大臣「事実ですよ。事実が書いてありますから」と呼ぶ)確認しないんですよ。現内閣ではアップしないなんてことは決めてないというふうに総理が言っているわけですから。
  399. 武村正義

    武村国務大臣 文書で合意いたしておりますことは、今総理からお答えをしたとおりでございます。  なお、当時の山花委員長さんのお話も事実でございまして、その意味では、現内閣の編成する来年度の当初予算においては消費税の引き上げは考えないという口頭の申し合わせがあったと認識をいたしております。
  400. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 わかりました。これから編成する予算の中では消費税の税率アップはしない、そこまでが確認である、それ以上のことは何もないということですね。  総理は、消費税の引き上げをこの内閣でやらないというような確約はできないということですね。
  401. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 そういうことでございます。
  402. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 現内閣で消費税引き上げをしないという確約はできないということを今総理は確認されました。  それでは、山花さんにお聞きします。  与党の社会党、公明党両党は、総選挙の公約で消費税税率引き上げに反対ということを明言しているわけですが……(発言する者あり)社会党の山花さんにお聞きしますけれども総理は、いいですか、質問しているんです。(発言する者あり)総理は、この内閣の中で消費税税率引き上げをしないという確約はできないというふうに確認されているわけですが、社会党や公明党はこの間の選挙の中で消費税の税率引き上げには反対するということを公約に掲げているわけですから、山花さんはその社会党の代表としてその公約を守られるかどうか、その点について伺いたいと思います。
  403. 山花貞夫

    ○山花国務大臣 答弁に先立ちまして一言つけ加えたいと思うのですが、今御指摘の社会新報の記事ということだったわけですが、今私の方に注意が入りまして、社会新報は草稿の段階、原稿の段階でそこに記事を出したものではないだろうか。大会当日の書記長報告では、来年度の予算ではということについて正確に入っているはずであるということですので、大会当日の書記長報告をできれば後ほどまたお届けさせていただきたいと思いますので、新聞の記事と草稿で、現実の大会に報告したものとにつきましては、その若干の時間的なずれがあるかもしれないということがありますので、後ほど調べた上でまた正確に御報告をさせていただきたいと思っているところでございます。  なお、後段の質問につきましては、消費税の問題については、私たちは消費税についての考え方について基本的に変更しておりません。しかし、先ほどの連立与党の合意の際に、私がせめてここまでということでお願いしたことをも含めて、連立与党の合意に従って私としては閣僚として対応したいと思っているところでございます。
  404. 武村正義

    武村国務大臣 もう一度繰り返しますが、今、山花大臣が申し上げたとおり、来年度、いわゆる平成六年度の当初予算においては消費税の引き上げは見合わす、こういう口頭了解があったと記憶いたしております。したがって、そのことは細川内閣が消費税の引き上げを行わないということではないというふうに御理解をいただきたいと思います。来年度の予算編成の制約であるというふうに御理解いただきたいと思います。
  405. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 社会新報はちゃんとこれ発行されている。ここにあるのはコピーですが、発行されているものの中ではそういうふうに書いてあるということは事実でございます。  もう一つ、石田さんにお伺いしますが、公明党も税率引き上げには反対ということをあの総選挙の中では言われたはずですが、それを貫かれますかどうか、ここで約束いただきたいと思います。
  406. 石田幸四郎

    石田国務大臣 お答えをいたします。  公明党としては、消費税率のアップは大変厳しいというふうに受けとめておるところでございます。  なお、細川政権の考え方については、今官房長官が申し述べたとおりでございます。
  407. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 何かよくわかりませんが、消費税税率アップに反対という選挙の公約を最後まで貫かれるということですか。
  408. 石田幸四郎

    石田国務大臣 その約束しました消費税のアップの問題については、これは私どもはアップ反対でございますから、その反対の認識というのは大変、今申し上げたように、そう簡単にアップできるような状況にはないと、反対は依然として強い、こういうことを申し上げているわけです。
  409. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 はっきり貫くと言えないわけですね。いいですか。  じゃ、この国会の場の発言ですから、それは確認しておきたいと思いますが、要するに消費税の問題は、低所得者ほど負担が重くて高所得者ほど負担が軽くなる逆進性を持つまさに悪税でありまして、五兆円、十兆円の所得減税先行、つなぎ国債、そして消費税アップという議論が出ていますけれども、しかし、その減税も、結局中心は大金持ちと大企業向け、圧倒的多数の庶民は消費税率引き上げで増税になることは必至であります。自民党の消費税導入の際にも庶民には増税が残りました。これでは、賢明な国民は減税分を、もしあったとしても、貯蓄に回さざるを得ないという点で、不況を深刻にするばかりであります。現在の不況対策にすればもちろんのこと、民生の安定という政治の根本的目的からいっても、消費税引き上げという増税の不安を政府が率先して解消するとともに、同時に雇用の不安、年金の不安の解消に努力を尽くすことが必要であろうかと思います。  消費税の問題については、その不安は解消されないということでございましたけれども、雇用の問題についてちょっとお伺いしたいと思います。  鉄鋼や自動車、電機などの大企業が、不況や円高を理由にして軒並み大がかりな人減らし合理化計画を発表しています。完全失業者もふえておりますし、新規学卒者の就職難も極めて深刻であります。「雇用不安の時代が到来する」という新聞見出しさえ躍っている、そういう状況でございます。国民の過半数を占める労働者の中に雇用不安が広がっております。こういう不安をそのままにしたのでは消費が拡大するはずがない、減税の効果も上がらず、不況打開にも真っ向から反するこ とになることは明白でございます。  そういう中で、NTTが今後三年間で三万人の人減らし合理化を計画し、既に一万人の希望退職の名による首切りを始めております。政府が持ち株の三分の二を占める巨大企業、まともな競争相手もいないこの半国営企業が雇用不安をあおる先頭に立っているのは極めて重大であります。まさに民間大企業の大規模な人減らし合理化の突破口にされる危険もあります。  総理は、九月二十四日の参議院本会議の我が党立木議員への答弁の中で、雇用の安定は国政上の重要課題であると述べておりますが、そうであるとすれば、まず手をつけなければならないこと、また手をつけ得ることは、政府が株式の三分の二を持っているNTTの希望退職、合理化、こういう問題にストップをかけることだと思いますが、このNTTの事態に何か手を打たれますか。その点を伺いたいと思います。
  410. 神崎武法

    ○神崎国務大臣 お答えをいたします。  NTTは、効率的経営を図るとの観点から、一層の合理化を推進するために、本年の二月に平成八年度をめどに二十万人体制の合理化の計画を策定したわけでございます。その中に、人員をスリムにするために希望退職を実施するということが入っておりまして、本年八月三十一日に、本年度と来年度、両年度で一万人の希望退職を募るということを公表したところでございます。  NTTは我が国における基幹的電気通信事業者でございますから、その効率化を図って、国民、利用者の皆様方に低廉で質の高いサービスを提供することが求められているわけでございまして、その意味で、今回のこの希望退職はその趣旨に沿うものである、このように見ております。したがって、昨今言われております不況に伴う雇用問題とは別の問題である。労使間で真摯な話し合いをして、それを踏まえて実施されるものと承知いたしております。  以上です。
  411. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 不況対策とは州とかなんとかと言われますけれども、今本当に優良企業と言われていて、政府が大株主であるNTTでこういうことが進んでいる。それを政府が容認しているということになると、その他の企業はその政府姿勢に当然倣うことになって、雇用不安をますます増大するということにならざるを得ないと思うのです。こういう問題について、政府は本当に積極的な対策をとるべきであるということを私は要求をしたいと思います。  最後に、外交基本姿勢について一言だけ伺っておきたいと思います。  日本新党が昨年の十二月に発表した政策大綱の公約の中ではこういうふうに述べています。戦争放棄を全世界共通の理念とすべく平和憲法の理想を掲げ、今世紀末を目途とする核兵器の全廃、全面軍縮を目指して、積極的イニシアチブを発揮する。  それからまた、総理自身の著書「責任ある変革」の中でも、今世紀末を目途として、核兵器を全世界から廃絶することを目指す計画を提唱して、その実現に向けて、米、露、中などの大国と、核などを保有する可能性を持つ途上国への働きかけを行う。  それから、七月二日に発表されました日本新党の総選挙政策でも、先進国首脳会議や国連などの場を通じて、今世紀末までに核兵器等の大量破壊兵器を全面廃棄することを目標に頑張るということを述べておられるのですが、これは総理、引き続きこの立場で努力されるということでしょうか。
  412. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 そういう目標で、そういう意気込みで努力をしてまいりたいと思います。
  413. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 しかし、この中では、アメリカやロシアにも働きかけるとか、国連でも頑張るとか言っておりますけれども、先ほど国連にも行かれましたし、それからアメリカにも行かれましたけれども総理になられてからの総理姿勢というのは、期限を切った今世紀末までの核兵器廃絶というような問題ではなくて、究極的な核兵器廃絶ということを国会でも言われましたし、国連で中心的に言われたのは、核不拡散条約の無期限延長、そういうことに頑張るんだということでありまして、これは核不拡散条約の無期限延長というのは、詳しく申し上げませんけれども、今世紀末までに核兵器を全部なくすのだということとは全く別の、国連常任理事国であるところの五つの大国が核兵器をずっと保有し続けることを認める条約でありまして、今世紀末までの核兵器廃絶とは全く違った立場を国連でもアメリカでも強調されたということを言わざるを得ないと思うのですが、その点いかがですか。
  414. 細川護煕

    細川内閣総理大臣 今度の国連演説でも、軍縮や核不拡散の問題についてお訴えをしてきたところでございます。
  415. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そういうふうにおっしゃいますけれども総理が国連で強調された、軍縮の最初に一番強調されたのは、核不拡散条約の無期限延長ということでありました。  この問題について、もう時間がありませんから、最後に申し上げておきたいと思いますが、ことしの八月九日の長崎市が採択した長崎平和宣言、この中では、核不拡散条約への世界のすべての国の参加と二年後に無期限延長を求める政治宣言を先進国首脳会議が採択した、しかし、この条約は核兵器廃絶を目指した条約ではありません、速やかに核実験の全面禁止と多国間交渉により核兵器全面禁止国際協定を締結すべきでありますということを述べておりますし、八月六日の広島市の平和宣言は、この核不拡散条約の問題について危惧の念を表明する、無期限の延長は、核兵器を持つ国と持たない国との関係を不安定にするだけでなく、核兵器廃絶の願いに反する、少なくとも今世紀のうちに、すべての核兵器を完全に廃棄するよう期限をつけた目標を世界に示すべきであるというふうに広島宣言は述べております。  総理の国連などで強調されてきた立場というのは、こういう立場とも異なるし、そしてまた、日本新党が公約した立場とも異なるということを申し上げて、時間になりましたので、質問を終わりたいと思います。
  416. 山口鶴男

    山口委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。  次回は、明六日午前九時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十一分散会