○玉沢徳一郎君 私は、
自由民主党・
自由国民会議を
代表し、本日
細川内閣が行おうとしている
ウルグアイ・ラウンド農業交渉にかかわるドゥニ
議長調整案受諾に対し反対の意思を表明し、
国民と
国会に対し不誠実な
態度をとってきた細川首相に対し、その責任を求め、問いただすものであります。(
拍手)
具体的な
質問に入る前に、ただいま
総理は、田中
議員の
質問に対し、ドゥニ
調整決議案は受諾せず留保していると答えられましたが、外電ははっきりと
我が国が受諾したと伝えております。この点に関しまして、まず
総理は、直ちに
ジュネーブに明確に確認をして、その正しい回答をここに示していただきたいと存じます。
さて、今日まで我々が
主張してきたように、米は
我が国の主食であり、一時もないがしろにできない重要な基本
食糧であります。しかも、その米の貿易量は、
世界の生産量五億トンのうちわずか千四百万トンのまことに微々たるもので、それゆえ基本
食糧の確保は一国の安全保障にとって死活的な問題であります。この
食糧の安全保障に対する
ガット上の明確な
位置づけを
ウルグアイ・ラウンド当初から
我が国が強く求めてきたのでありますが、ドゥニ案には全くそれが考慮されることなく、
交渉に終止符が打たれようとしていることは
極めて遺憾な事態であり、絶対に譲ってはならない点を譲ったと評される失敗の
交渉であったと言えますが、
細川総理は何と見るか、まず
お答えをいただきたいと思います。
ウルグアイ・ラウンド交渉が
開始されて今日までの七年間の中で、細川
政権が誕生してからの四カ月は極めて重大な時期であったと
考えます。なぜなら、
各国は従来から
主張してきた原理原則を乗り越えてまで
ラウンド終結を口にしながらも、いかに自国の利益をその中に盛り込ませるかということに死力を尽くして戦う
交渉の場となりました。
この重大な時期に、本院においては、我が党の保利、柳沢両
議員から再三にわたり
指摘いたしましたように、
ラウンド交渉は
農業交渉のみにあらず七分野に上るものであり、縦割りの官僚主導の
交渉に任せず、総合的な視点に立って、何を譲り何を獲得するか、戦略的な
立場から
総理にリーダーシップを発揮されることを
要請したのでありますが、
総理は、
国会決議に基づき目下ぎりぎりの
交渉を行っていると繰り返すのみで、担当の
農水大臣や、全体を見るべき
外務大臣も派遣することなく、ただ事態の推移を見守る
態度に終始してきたのは、一体いかなる理由からでありましょうか。それで
我が国の利益を守るための最善の
努力をしたと言うのでありましょうか。
総理は、就任早々の九月と十一月に米国を訪れ、クリントン大統領と会い、
我が国の経済構造の
改革と一方的な
市場開放を
約束しましたが、その際、米の問題についても何らかの
約束をし、その
内容を
ドゥニ調整案の形で提示されるのをただ待っていたのではないかという重大な
疑念があるのでありますが、いかがでありますか。
この件に関し、我が党の松岡
議員一行が先般
ジュネーブで米国
代表部にただしたところ、去る十月の下旬には
日米双方の
合意が成ったとの回答があったと言われております。当時、本院においては、我が党の提案による四度目の
国会決議案が提出された時期と符合いたします。その我が党提案に対し、新生党を初めとする連立与党各党は、
政府の
交渉の手足を縛ってはならないという理由で反対しました。
しかし、もしそのとき
日米合意案が既にできていたというならば、
国会に対して何らかの報告があってしかるべきではないか。この事実を明確にしていただきたいと存じます。もしそれが事実であったとするならば、重大なる
国会軽視であると言わざるを得ません。
細川総理は、
ドゥニ調整案に至るまで、いつ、どこで、何を
交渉してきたのか、ここに
交渉の経過をはっきりとお示しいただきたいと存じます。(
拍手)
さらに、
ドゥニ調整案に関して、
関税猶予後七年以降の扱いについて追加
条項が明らかになった時点で、我が党からの強い申し入れを受けて、
羽田外相が再
交渉のため急速
ジュネーブに飛んだのでありますが、その後の展望はどのように開かれたのか、
お答えをいただきたい。また、
農業分野のほかに、他の分野の
合意は果たして得られたのか、
総理にお
伺いをいたしたいと存じます。
さらに重要なことは、
ドゥニ調整案の全文がいまだに
国会に提出されておらないことであります。公表されたのは、
我が国に関する附属書五のみであります。この点においても、
国会に対して
政府の
対応はまことに怠慢であると言わざるを得ません。これでは、国際
交渉における
合意の公平性、平等性が果たして貫かれたか否か、にわかに
判断できません。
そこで、
質問させていただきますが、例えば、
我が国が問題を
指摘し、廃止を明確に要求してまいりました
アメリカのウエーバーの扱いはどうなったのでありましょうか、食肉輸入法は存続するのでありますか。
ECにおける
輸出補助金は何品目を対象とし、税率の
削減率は実際に何%になったのか。この点が
ドゥニ議長案に明記されておらないという報道があるが、事実でありますか。事実とすれば、甚だ公平性、平等性に欠けると言わなければなりませんし、まさにこのことは、
我が国外交の無力さを露呈したものと言わざるを得ません。(
拍手)まことに残念な結果であります。本来、
輸出補助金によって
農産物が過剰になり過ぎて国際競争が激化したため、これを取り除く目的で始まった
ウルグアイ・ラウンドでありながら、堂々と米・
ECの密約によって残されていることが問題であります。今後も
我が国はこれを取り除く
努力を行うべきではないかと存じますが、
農林水産大臣の明確な
答弁を願います。
さらに、米と同様、
ウルグアイ・ラウンドで重要な案件となっていた
乳製品、酪農、畑作物の
取り扱いであります。
全国的な生産物である
乳製品を初め芋、でん粉、雑豆等にありましては、北海道や南九州の
農業、経済にとって大きなウエートを占めておりますし、落花生、コンニャク等の
農産物は中山間地域の重要な作物であり、今度の
ドゥニ調整案によってそれらは
関税化の事態となります。事実上の
関税化を認めた米以外のこれら重要な
農産物については、従来、
関税化したら守れないと言ってまいりましたが、これらの
関税化を認めたことはまことに重大なことで、
関税化拒否を明言してきた
細川総理の責任をどう果たすのか、はっきりしていただきたい。
さらに、
木材関税につきましても、これまでの
我が国との
約束にもかかわらず、
アメリカは
関税相互撤廃を要求し、また、インドネシア等は、原木に五〇〇%の輸出税をかけ、事実上の輸出禁止をしている中で、一方的に五〇%もの
関税引き下げを要求しておりますが、いわばこうした理不尽な
各国の要求に対し、
我が国はあくまでも断固これを拒否することはもちろん、
輸出規制を解くよう明確に要求すべきであります。
政府はこれに対してどう対処しているのか、御
答弁をいただきたいと存じます。
次に、視点を変えて、
細川総理、あなたは、
我が国農林漁業、農山漁村が担い手の確保に困難を来し、過疎化、高齢化が進み、集落の崩壊にもつながる危機に直面している現実をどう見ているのでありましょうか。しかも、細川
政権になって以来、農林漁業、農山漁村住民の問から、生活者重視という政治の
方向に、生産者が軽視され、人口の集中している都会重視の
方向に
政策が変更されていくのではないかという不安の面持ちで見ております。
細川総理は、農林水産委員会での
質問に対し、農山漁村の果たしている役割を理解し、住みよく活力のある農林漁業、農山漁村づくりに全力を尽くすと言われましたが、
財政制度審議会の報告が来年度
予算編成方針の重要な指針となり、農林水産業にとって大変な混乱と不安を巻き起こしている事実を御存じではないのか。生活者重視の政治とは、ドゥニ案を容認したり、農林漁業の生産基盤整備を抑制したりする政治を行うことを意味しているのか、これが
総理の言う「責任ある変革」の実態であるのか、はっきりと
答弁していただきたいと存じます。
さらに、本年は、天明の飢饉以来と言われるほどの未曾有の凶作に
日本列島は襲われました。農家は生産意欲の減退が強まり、経営の存続にも深刻な悩みをもたらしております。それに加え、米について、
ミニマムアクセスの
受け入れで輸入量が年々拡大されることになれば、全国の
稲作農家及び畜産。畑作農家すべてが崩壊に向かって進むことになりかねません。
我が国農政はまさに新農政を目指して動こうとしているやさきであり、それゆえ我々は
関税化拒否を
主張し続けてきたのであります。
さらに、
稲作農家は、現在、厳しい米の
生産調整を
実施中であります。まさに
生産調整は農家の
政府に対する理解と協力があってこそなし得るものでありますが、
ミニマムアクセスの拡大によって米の
生産調整がさらに強化されることになれば、生産農家の意欲を著しく低下させることとなりますが、
総理はどう受けとめておられるのか、
お答え願いたい。
最後に、我々は、
細川総理の政治がもはや行き詰まっているものと
判断せざるを得ません。(
拍手)
総理、あなたは、
政治改革が年内に実現できなければ責任をとると明言されました。また、米の
関税化を阻止するために、従来方針を堅持すると言ってまいりました。しかし、
政治改革の年内実現も怪しくなり、
例外なき
関税化阻止も果たせないで、
総理は重大なうそをついていると言わざるを得ません。
国民はもはや
総理の言葉を信用しないでありましょう。「信なくば立たず」とい言葉があります。
国民にうそをついてまで政治を混乱させている事実を率直におわびして、責任をどうとるか、
細川総理の明確な
答弁を求めて、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣細川護煕君
登壇〕