○熊代昭彦君 私は、
自由民主党の新人、熊代昭彦でございます。私は、
自由民主党・
自由国民会議を代表しまして、中でも特に新人を代表しまして、
政府提出の
政治改革関連法案に関して
質疑を行うものであります。
私は、昨年の初めまで、厚生省に約二十九年勤めた公務員でありました。その間に、米国の大学院に二年間留学してアメリカの
政治などを勉強し、また、約十年前まではニューヨークの
国連に三年出向して働いておりました。昨年初めからは、郷里岡山に帰り、岡山一区の隅々まで歩いて草の根
政治活動を展開して、多くのすばらしい方々に出会い、多様な
意見を吸収してまいりました。
その過程で、私は、
日本の行政と
政治の裏も表もしっかりと見せていただいたと自負いたしております。また、米国在住合計五年の間に、米国の生活と
日本の生活を比較しながら、
日本のあり方を客観的に見る目を養うことができたと
考えております。
その中で私が感じたことは、
日本の
政治の大切さということでありました。
日本の
政治の評価は、
日本の学者やマスコミの間では余りよくはありませんが、私が何年もかけて追求して学んだことは、
日本の
政治は、アメリカやヨーロッパの
政治に比べ、
日本のマスコミや一部の社会科学者の
人たちの言い立てるほど悪くはないということでした。
日本の将来を選択するという大切な機能を、これまでしっかりと担ってきております。
しかし、
政治腐敗などの大きな問題も生じてきたことも事実です。今
我が国に必要なことは、
日本の
政治制度のおくれや悪さをヒステリックに言い立てることではなくて、現行の
制度と新しく
提案された
制度の利害得失、プラス・マイナスを冷静に比較して、冷静に
判断することであります。
その
ような観点に立つとき、今大変気になることがあります。それは、
選挙制度について、
我が国マスコミと学者の大部分が中
選挙区制を
制度疲労の一言で片づけ、よい点にはいささかも言及することなく、小
選挙区のよい点を、大した根拠も冷静な反省もなく言い立てたことであります。これは極めて異常なことであると言わざるを得ません。
歴史をひもとくとき、マスコミがこぞって同一方向の報道をし、世論を一定方向に導こうとするとき、
我が国は大きな過ちを犯しました。その典型的な例が、戦前の軍部の独走に対するマスコミの一方的な肩入れであります。今も同じ過ちを繰り返そうとしているのではないでしょうか。我々がつくった
政府だから多少の過ちは、あるいは大きな過ちも大目に見
ようというマスコミの態度は、時の
政権に対して一定の距離を保って冷静に批判するというみずからの使命を忘れてしまっているのではありませんか。(
拍手)
細川総理、今マスコミがあなたに追い風を送っているからといって、調子に乗って
歴史に汚点を残す
ような
総理にどうかならないでいただきたい。これをまず
お願いしておきます。
ここでお断りしますが、私は、
自由民主党の党議に反する議論をこれから展開し
ようとしているのではありません。
政党人として党議をあくまでも尊重することは当然の義務であり、私はあくまでも党議に従って行動してまいります。しかし、今回の
政治改革は、今後四、五十年の
日本の
政治の命運を決めるものであると
思いますので、これまでの惰性に流されることなく、根本的、根源的な
質問をさせていただきたいと
考えております。それこそが、今生き生きと再生を始めた
自由民主党が、これまでの慣例を破り、本
会議での名誉ある
質問の機会を全くの新人の私に与えてくださった意義を本当に生かす道であると信ずるからであります。(
拍手)また、
自民党とほとんど全く
政策の同じ
連立与党が成立してしまったということは、これまでの議論の
前提を全く変える
状況が生じたということであります。これまでの議論をこの新しい
環境下に根本的に問いただしてみることが、全国
有権者に対する我々代議士の義務であるとも信ずるからであります。
まず第一に、小
選挙区制導入の真の目的を
総理に
お尋ねいたしたい。
小
選挙区
制度にすれば
選挙に金がかからなくなるとか、
政治腐敗の
防止に自動的につながるという
ような
意見が俗論であることは、
総理も同意されることと
思います。
政治腐敗を
防止することは本当に大切なことであり、
国民の多くが切に望んでいることでありますが、これらは小
選挙区導入で解決できるものでないことは、昨日の我が党の保岡
議員の体験的な御指摘で明らかであります。また、
日本で過去に何回か実施されました小
選挙区
制度による
選挙が著しい金権
選挙となったことは、周知の事実であります。
小
選挙区導入の唯一のメリットとされていることは
政策・
政党本位の
選挙ができることであることは、
政府案及び我が党の案の
提案理由にそれのみが掲げられていることでも明らかであります。このことは、小
選挙区制の主たる推進者である小沢一郎氏もはっきり述べておられるところであります。小
選挙区で
政策本位の
選挙をすることによって、
少数意見を過度に尊重することなく、すなわち、それを
思い切って切り捨てて、国の大きな
政策転換をスムーズに行うことができる
ようにすることが小
選挙区の真の目的であるといろんな機会に述べられており、
自衛隊の扱いをめぐる
憲法改正をも見据えた
考え方であることは明らかであります。
ところが、
連立与党が成立して、この理由づけの
前提条件が怪しくなってまいりました。
連立与党は、
自民党の
政策をそのまま継承すると言っております。
政策のほぼ全く同じ二大勢力が一人ずつ候補者を立てるとき、小
選挙区で
政策の違いによる
選挙が行われる余地が全くなくなった。残るのは、サービス合戦、情実
選挙だけではないでしょうか。保岡
議員が戦慄を持って
思い起こしておられる奄美大島
選挙が、全国に広がることになってしまいます。
私は、小
選挙区
制度を導入するに当たって、
有権者の方々に本当に納得のできる、これまでと違う新しい理由を挙げなければ、
選挙制度の
改革の本当の推進力は出てこないのではないかと思っています。
政府案、
自民党案に
共通の問題でありますが、ここは
政権を担当しておられる
総理から明快な
答弁を
お願いいたします。
次に、小
選挙区制に並立して
比例代表を採用する理由に関して
伺います。
この理由は、一言にして言えば、
少数政党の
少数意見の尊重でありましょう。しかし、これを過度に尊重するならば、小
選挙区導入の目的は全くあいまいになってしまうのではありませんか。それならば、現行中
選挙区制の方がはるかによいのではないでしょうか。少なくとも、二百五十の
比例代表を入れるのは、
現状を固定して波風を立てまいとする小心翼々とした態度であります。もし
比例代表の二百五十に固執するならば、細川さん、あなたこそが真の守旧派です。守旧派の汚名を私は甘んじて受けますとの率直な御
答弁をいただかなければ、私は納得できません。
どうしても小
選挙区制を導入するならば、すべてを小
選挙区制にしなければ中途半端であります。我が党の三百小
選挙区はぎりぎりの妥協ラインだと
思いますが、
総理の御見解をお
伺いいたしたい。
次に、
政府案では、
比例代表を全国一本にすることにしていますが、これは、地方の
時代、地方分権の
時代に逆行するのではないかと
思います。
具体例を
我が国山県を例にとって申し上げます。現在、岡山一区、二区各五人で十人の代議士がおります。
政府案ですと、これが四区で四人になります。六人も減ってしまう。比例の中に理論的に四人計算されていることになるが、それが
現実に岡山県の代表になる担保がありません。その担保がなければ、地方の
時代を
実現するための勢力を著しく減らしてしまう
時代錯誤の
政策ではありませんか。
総理は、これを担保するためにどの
ような方策を
考えておられるのか、お
伺いいたしたい。もし明確な回答がおできにならないならば、率直に
自由民主党案に対して脱帽していただきたいと
思います。(
拍手)
さらに根本的問題があります。それは、小
選挙区の定数の各都道府県への配分を人口比例にすることであります。
中
選挙区では、人口比三倍未満は最高裁の判例でも許容されていました。これは、過密・過疎問題で、過疎の地域の
発言力の弱さを補う目的があったと
思います。それをいきなり都道府県別定数の配分では人口比一対一に改めてしまうのは、革命的改悪ではないかと
思います。地方の
人たちは大変に心配しております。我々が望んでもいない小
選挙区案に血道を上げた上に、我々の代表を大幅に減らし、関東圏、近畿圏に代議士の数をどっと移してしまう。過疎地の声はますます小さくなり、首都圏の声がますます大きくなり、首都移転もできなくなってしまいます。その行き着く先は、過疎の滅亡であり、首都圏の過密による爆発的滅亡ではないかと、本当に心配しておられます。
総理、この
ような問題をどの
ように解決されるのですか。
総理のいすが欲しくて変節し、そのいすに恋々として国の将来を大きく誤ってしまうことが、あなたの目的なのでありましょうか。この大きな問題については、定数をあらかじめ
一つずつ各県に配分する
ような小手先細工では、何の解決にもなりません。この問題は
自民党案にも
共通でありますが、マスコミの追い風に乗った
政府こそ、根本的解決案を打ち出すべきであると
考えます。それができないならば、真の世論に忠実に、
政治腐敗の
防止策だけを優先して、小
選挙区制の実施をもう少しじっくり
考えた方がよいのではありませんか。
総理の明快な
答弁を求めます。
次に、
政治家の
政治団体への企業・団体による
政治献金の禁止について
伺います。
政府案はこれを禁止しましたが、これは本当に
政治を浄化する道でしょうか。昨日及びきょうの我が党の津島
議員の
答弁でも明らかな
ように、欧米先進国で
政治家に対する企業・団体献金を全面的に禁止している国はありません。企業献金は見返りの利益を求めるからとの理由づけがなされていますが、個人献金ならば見返りの利益を求めないとするのは子供じみた議論ではありませんか。企業も個人も、見返りの利益を求めることもあり、正当なルールに従った
政治献金をすることもあるというのが、本当にまじめな議論でありましょう。
企業・団体にも個人にも正当なルールに従った
政治献金をしてもらえる
ような
制度をつくることが、見かけ倒しのまじめさではなく、真のまじめさでありましょう。
自民党案こそが真のまじめな案であります。
政府案は、アル・カポネの
時代の禁酒法にそっくりです。一見まじめそうに見えるが、実はやみ酒の横行、それを資金源にした暴力団の頭領アル・カポネが栄えることになります。裏金を受け取ることを平気で行うことのできる者のみが生き残り、裏金を受け取ることを潔しとしないまじめな
政治家は消えていくことになります。
連立与党の某実力者に対する某宗教団体の巨額な裏金提供のうわさがちまたに横行しております。真偽のほどは知りませんが、
総理、あなたは、個人献金の困難性を十分知りつつこの
ような
法案を出して、
日本のアル・カポネの出現を待ち望んでおられるのですか。明快な御
答弁をいただきたいと
思います。
次に、
一つだけ我が
自民党について
意見を申し述べさせていただきます。
我が
河野総裁は、
政治改革の
実現するときまでに派閥を
解消することを約束されました。私は、派閥を真の
政策集団にするためには、個々の派閥を党に発展的に
解消し、党則を定め、明確な
政策を掲げ、わかりやすい明快な手続で党首や党役員を選び、自由民主連合に代表を送る、その
ような
思い切った党
改革が、
政治改革を支える
自民党としても必要ではないかと
考えております。五党か六党の自由民主連合と八党派の
連立与党、なかなか多彩な二大
政治勢力になると
思いますが、いかかでございましょうか。これに対してはどなたにも
答弁をいただかなくて結構でございます。
次に、アグリーメント・ツー・ディファーについて
伺います。
これは、イギリスの
内閣や
政党における慣行でありまして、異論の協定とでも申すべきでございましょうか。しばしば
内閣不一致でお困りになっている細川
内閣でもぜひ研究なさると大変お役に立つと
思います。
私が申し上げたいのは、
連立与党内でも小
選挙区
制度の導入については異論のある方も大変多い
ようでありますので、アグリーメント・ツー・ディファーを適用されたらいかがでございましょうかということです。今後、
日本の四、五十年の
政治の命運を決め
ようかという問題で、ファジーな新しい
政治を断行されている
細川総理が、義理人情で人の自由な意思を縛るのはまことに情けないと思われませんか。御
提案の案が自信のある案ならば、ぜひ異論の協定をして、
連立与党二百六十四名に良心に忠実な投票を許すことをお勧めいたします。そうすれば、
自由民主党も直ちにそのよき先例に従うことは間違いなしであると
思います。
総理の明快な
答弁を
お願いします。
最後に、いろいろとこれまでの流れからすれば、お気にさわることを申し上げたと
思いますが、私は、我が
選挙区でも一番くそまじめな、一番正直な候補と評価されてまいりました。一票一票を金や情実で買うことのない
よう、本当にまじめな
選挙の
実現を心から望んでいる者でございます。ここまで来たのだからもうしょうがないなどというのではなくて、本当に納得して、大きな
改革の一歩を踏み出したいと心から願うものであることを申し上げて、
質問を終わるものであります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣細川護煕君
登壇〕