○鹿野道彦君 私は、自由民主党・自由
国民会議を代表いたしまして、政府
提出の
政治改革関連法案に質疑を行うものであります。
さて、本日の産経新聞によれば、さきの総
選挙の際に、テレビ朝日の放送が意図的に介入し、特定の
候補者を当選させたとのこと等が報道されております。このことが事実とするならば、民主主義の根幹にかかわるゆゆしき問題であります。我が党は、民主主義、議会主義を守るために、本件の真相を徹底的に究明してまいります。
総理は、議会制民主主義の
基本にかかわる本件について、真相究明の意思があるかどうか、冒頭にお聞きしたいと思います。(拍手)
いよいよ
政治改革実現の最後の場面を迎えた、これが今私の胸にある率直な感慨であります。昭和から
平成の
時代の移り目にかけて、
我が国政治は未曾有の混乱の中にありました。私は、当時、党の総務局長の立場といたしまして、
全国の
選挙の指揮をとっておりました。
選挙の結果というものは、
国民のお気持ちが明確に示されるものであります。その民意の厳しさは、例えて言いますな
らば岩盤の
ごとくであり、どんなに訴えても雨粒ほどの力もない、こんな実感を味わいました。
政治と金の問題、公約違反ではないか等、
政策に対する不信の問題など、人々は
我が国の
政治のあり方に対して積年の不満、不信を怒りとしてあらわしたのであります。
我々自由民主党は、この
事態を
我が国の議会制民主主義の危機ととらえ、党を挙げて
改革の方途を探りました。そして、我が党といたしまして
改革の手だてを広く
国民に宣言したのが、
政治倫理の
確立、
政治資金及び
選挙制度の
改革、
国会の
活性化、党
改革、地方分権の
確立から成る
平成元年の
政治改革大綱であります。
自来四年余、かつて
制度を
改革することにまことに消極的であった
政党も、今や内閣を組織し、我が党が
政治改革大綱で打ち出した小
選挙区制の導入を政府提案として出されました。このことは率直に多とするものであります。と同時に、まことに今昔の感にたえないこともつけ加えるものであります。
今
国会は、もう待ったは許されないのであります。ここで
政治改革もできず、その混乱から
政策の遂行もできないという状態を招くようなことがありますならば、その結末が
我が国議会制民主主義にとっていかに致命的なことになるか、思うだけでも背筋が寒くなります。我々は、なすべきことは何かの使命感に燃えながら、この
改革を何としても今まさになし遂げる気概を持たなければならないと思います。(拍手)
幸いにも、政府提案の
法案と我が党提案の
法案においては、かっての与野党案と違い、天地ほどの根本的な隔たりはありません。土俵の輪郭は見えておるのであります。残されているのは、その直径を広めるのか狭めるのか、仕切り線をどこに置くのか、あるいは徳後をどうするのかといった点であります。これはルールですから、両者納得の上で決めるべき事柄であるのが道理でありますでしょう。
そこで総理、総理も公約を守ること、すなわち有言実行の精神には異論はないことと存じますが、ここで改めて、
政治改革の今
国会実現に内閣の命運をかけられるお気持ちなのかどうか、御決意をお伺いするとともに、両者納得のため政府案を譲歩するお心づもりがあるかどうか、そして、ルールづくりであることを尊重し、かつて我々も行わなかったように、強行採決は行わないこととするのかどうか、お尋ねをいたしたいと思います。(拍手)
我々自由民主党が議会制民主主義の再生のために目指している
基本的な理念は、真の
政党政治の
確立であります。システムとして
政党が
国民から期待される役割を担えるようにすることであります。
その
政治の役割とは何か、あるいは三権分立の中における立法府の役割とは何か。遠大なテーマではありますが、一言で申せば国の意思の
決定であります。すなわち、主権者である
国民の
政治的意思を
一つにすることなのであります。その中で
政党が
国民の意思形成に大きな役割を果たすべき存在であることは、議会制民主主義がみずから求めるところであります。ここに、
議会政治は
政党政治であると言われるゆえんがあるのであります。
ましてや、
我が国議院内閣制のもと、
衆議院は
内閣総理大臣指名の優越権を持ち、解散もあることからして、その
選挙は政権選択の意義を持つものであります。すなわち、
国民はどの
政党に自分たちの生活をゆだねるのか、それを決める
選挙なのであります。
政策のない政権などはあり得ません。したがって、
衆議院総
選挙は
政策本位で争われるのが本来の筋なのであります。
その
国民の政権選択の意思、
政策選択の意思が最も端的にあらわれる
選挙制度が小
選挙区制であります。
国家
国民に
責任を持つ
政治が
確立されなければなりません。国際社会は日に日に変動を重ね、欧米に追いつけ追い越せの
政治の手法は、もはや過去のものとなりました。今や日本は、みずからの
責任でみずからの進む道を切り開かなければならないのであります。外にあっては東西対立の
時代が終わり、内にあっては日本人一人一人の
価値観が実に多様化してまいりました。このときこの状況において、決断し
機能する
政治、行為能力のある議会、政権が打ち立てられなければならないのであります。
責任を負って決断するのは、申し上げるまでもなく、
政治家であり、
政党であり、議会であり、その支持を受けて誕生する政権であります。
しからば、その
責任感と決断の力の源泉をどこに求めるのか。それは、明確な
国民の審判、すなわち小
選挙区制による民意の表明に基盤を置く以外にありません。
我々は、こうした
観点に立って、このたび、小
選挙区三百、
都道府県単位の比例百七十一、そして政権を選択する総
選挙という意義を明確にするため、両者通じて一票とした
改革案を
提出いたしました。この仕組みにより、
政治家、
政党、議会、政権が真に
国民に
責任を負い、そして
国民と
我が国の目標を共有して、困難な
時代にたくましく歩みを進めていくことができるものと信ずるからであります。
そこで、我が党の
改革の理念と比べつつ、総理にお尋ねをいたします。
第一に、総
定数についてであります。
総理は、政府案の総
定数五百は諸外国と比べても多い数ではないとし、是認しているところでありますが、そもそも
政治改革は、
政治不信の解消、すなわち
政治家がみずから襟を正すことが求められていることを忘れてはなりません。地方議会の二割を上回る
定数削減をなしてきた苦しみというものは、どこかと比べて多いか少ないかの発想からでなく、自助努力が
基本にあるのでありま
す。現在、公選法本則の
定数は四百七十一でありますが、少なくとも
国政もこの数に戻すべきではないでしょうか。これは理屈よりも
政治姿勢の問題であります。総理にその姿勢があるかどうかをお尋ねしたいと思います。(拍手)
第二に、小
選挙区
定数二百五十、比例
定数二百五十と両者を同数にするという、政権発足前からの総理のお考えの根拠をお尋ねしたいと思います。
政府案の
提出理由には、
政策本位、
政党本位の
制度とするためとありますが、この点我が党は、
政策本位、
政党中心の
制度であります。
政党本位であれば
比例代表の割合が必然的に多くなるのはわかります。
しかし、我々は、政権選択の総
選挙において、選ぶ側の関心の度合い、選ばれた者の
責任の負い方、そして
国民が直接代表を選出することにより政権を選ぶという代議制
民主政治のあり方からして、
政党作成による
比例名簿からの
選出議員を多くするというのは、
国民の政権に対する関与の意識を低めるのではないかとの懸念を持つものであります。ましてや
全国比例、かつ
重複立候補であります。
候補者名簿は一
政党五百人にも及ぶ場合があります。有権者が、
投票所で幾つもの
政党の何千人もの
候補者を目の前に示されて、果たして戸惑いを感じないものでありましょうか。
こうした現実の一方、政権は常に拮抗する複数
政党によって組まれやすくなります。端的に言えば、そうして生まれた政権には
責任性の欠如が生じます。
選挙で掲げた公約を、ただ単に政権維持の目的のために平然と破ることが起こるのであります。閣僚としての立場と、一
政治家、
政党の一員としての立場での発言は違う、こんなことが容認されては、何のために
国民に信を問うた
選挙か。
政党が政権をとれば公約は紙切れ同然にするのか。まさに有言実行の
政治家の倫理にもとり、
議院内閣制の自己否定であると言わなければなりません。それもこれも、連立という政権の形態は、
国民が直接的に選択したものではなく、
国民の手に届かない
政党間の取引によって生まれるからであります。
各党は事前に
政策協定を結び、
選挙に臨むと総理は言われますが、それではなぜ協定を結べるほどの
政党が
一つになって
選挙ができないのか。小
選挙区と比例とを同じ比重にするということは、既存の
政党の固定化を意図したものとしか思えません。我々、
政治には、
時代に即応したダイナミズムが必要と考えるところであります。すなわち、小
選挙区
定数の割合を高めることが欠かせないのであります。
以上、総理は、目標とされている穏健な多党制と比較し、現内閣の七党八会派で組まれる連立政権の形態は、好ましいものであると考えておられるのかどうか。その際、各党が持つ固有の
政策と、その党の閣僚との間に食い違いが生じても、
政治家の倫理、
責任として問題にならないと考えられるのか。また、
国民が政権をより直接的に選択するという総
選挙の意義を明瞭にするため、
比例代表の割合を下げるお考えをお持ちなのかどうか、お尋ねしたいと思います。
第三に、
比例代表選挙の位置づけについてお尋ねいたします。
我が党は、
衆議院議員の
選挙の第一の意義は
国民による政権の直接的選択にあることから、
選挙の
基本はその意思が端的に示される小
選挙区にあると申し上げてきているところであります。その中にあって比例部分の役割は、小
選挙区では議席に結びつかなかった比較少数の意見を吸収すること、すなわち小
選挙区における
選挙結果を補完することにあります。だからこそ、小
選挙区と
比例名簿で同時に
候補者となれる
重複立候補を採用し、小
選挙区で善戦しながらも当選できなかった
候補者が、比例では善戦の度合いによって当選できるようにしているのであります。
しかも、
都道府県内の小
選挙区の結果を補完するものでありますから、比例の
区域は同じ県内であるのが理の当然であり、自然であります。(拍手)代議士を選ぶということからも、地域の有権者にとってなじみやすい仕組みと言えましょう。
しかし、政府案では、二百五十人の
比例代表を
全国単位で選ぶこととしており、しかも、やはり
重複立候補制としておりながら、
投票は小
選挙区と
比例代表とでは別々の二票制としておるのであります。これは、これまでの発言から察するところ、
全国単位の方が
都道府県の単位よりも少数民意を反映しやすいし、小
選挙区
選挙と比例
選挙はあくまでも別々の
選挙だから、
投票も別々でということでありましょう。
が、ならば、
一つには、なぜ三%以上
得票しなければ議席の配分を阻止するのか。その立法上の合理的根拠はどこにあるのか。仮に
有効投票が六千万票ほどあれば、二百万票近くが強制的に切り捨てられることになるが、このことは憲法の法のもとの平等に反するのではないでしょうか。これらの点にお答えいただきたいと思います。そして次に、二つの別々の
選挙であるなら、なぜ一人の
候補者が両方に
立候補できるのか、二票制において
重複立候補をよしとする理由をお尋ねしたいと思います。
第四に、地方
政治に対する配慮であります。
民主主義の原点は地方
政治にある、地方分権は一層推進しなければならない、これが本院の共通認識であります。そのためには、何よりもまず地方
議員に自由で活力ある
政治活動を保障しなければなりません。しかるに、政府案では、節度を持った企業・
団体献金すら全面的に
禁止いたしております。しかも、なぜ
国会議員を有する
政党にだけ認め、地方
議員に認めないのか。地方を大事にするという総理のお考えにはどうしてもそぐわない気がするものであります。この配慮はどうされようとしているのか、御見解をお尋ねしたいと思います。
第五に、政府提案の小
選挙区
比例代表並立制は、
重複立候補を除けば、ほほ
現行参
議院の
選挙制度と同じであります。そこで、今後参
議院についてはどのような
改革案を考えておられるのか、総理、山花前
委員長、羽田代表、石田
委員長の各大臣に順にお尋ねをしたいと思います。
ここで、我が党の
改革案である並立制は、
比例代表を小
選挙区の補完として位置づけている点及び一票制を採用していることで、参
議院の
制度とは根本的に理念を異にしていることを申し上げたいと思います。
すなわち、参
議院は、
衆議院の優越を認めた中で、その意義の発揮のために、
選挙はかつての地方区、
全国区が今の
選挙区と
全国比例代表とに変わったものの、もともと異なる民意を吸収する二つの
選挙、二つの
投票としているところであります。よって、
衆議院は、
国民主権の原理に基づいて、より
国民に密着した代表民主制の理念に貫かれていなければなりません。小
選挙区の割合を多くし、この
一つの
選挙であくまで政権の選択が行われるべきであり、それにはどうしても
政策の国家性という
観点から、
候補者とその所属する
政党は
一体と見るべきであります。これを殊さら二つの
選挙にするということは、
政策本位、
政党中心、そして政権選択という
衆議院の
選挙の理念的合理性を分断するものと言わざるを得ません。(拍手)
また、我々の提案しているところの一票制はマークシート方式でありまして、
候補者と所属
政党を一日で確かめられて
投票ができるようになっておるのであります。無所属
候補者に投じる者は
政党に
投票できないから、法のもとの平等に反するという論も聞かれますが、すべての有権者に一票は完全、平等に保障されているのであります。それを
政党所属の
候補者に入れるか無所属
候補者に入れるかは、有権者の全くの自由であります。二百万票とも予想される三%の
有効投票を
法律によって強制的に切り捨てる政府案の方が、はるかに違憲の疑いが強いと申し上げざるを得ません。
以上、
改革の理念を中心に質問を行ってまいりました。国際社会大激動のとき、この大きな変革に
機能する
政治を、腐敗のない
政治を、国の行くべき道が明確でかつ公正な
政治を、これが
国民の長年の期待であると思います。本院に席を置く我々一人一人の決意が、
国民から厳しく見詰められていることを肝に銘じなければなりません。
今、党派を超えて、おのれを捨てる覚悟が必要なときではないでしょうか。今
国会でぜひとも
法案を成立させ、各党が山積する重要な
政策課題に堂々と取り組みができるようにしていかなければならないことを最後にお訴えを申し上げ、私の質問を終わるものであります。(拍手)
〔
内閣総理大臣細川護煕君
登壇〕