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1993-11-10 第128回国会 衆議院 大蔵委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年十一月十日(水曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 宮地 正介君    理事 新井 将敬君 理事 石原 伸晃君    理事 太田 誠一君 理事 早川  勝君    理事 村井  仁君 理事 海江田万里君       相沢 英之君    大原 一三君       岸田 文雄君    佐田玄一郎君       塩崎 恭久君    福田 康夫君       堀之内久男君    山中 貞則君       米田 建三君    永井 哲男君       日野 市朗君    細谷 治通君       渡辺 嘉藏君    青木 宏之君       上田 清司君    栗本慎一郎君       山本 幸三君    斉藤 鉄夫君       谷口 隆義君    田中  甲君       中田  宏君    藤村  修君       大矢 卓史君    北橋 健治君       佐々木陸海君  委員外出席者         参  考  人         (経済団体連合 齋藤  裕君         会副会長)         参  考  人         (経済団体連合         会経済調査委員 水口 弘一君         会企画部会長)         参  考  人         (筑波大学社会 宮尾 尊弘君         工学系教授)         大蔵委員会調査 中川 浩扶君         室長     ————————————— 委員の異動 十一月十日  辞任         補欠選任   久野統一郎君     佐田玄一郎君   中村 時広君     藤村  修君 同日  辞任         補欠選任   佐田玄一郎君     久野統一郎君   藤村  修君     中村 時広君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の会計税制及び金融に関する件(財政及び  税制等に関する問題)      ————◇—————
  2. 宮地正介

    宮地委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制及び金融に関する件、特に財政及び税制等に関する問題について調査を進めます。  本日は、参考人として午前中は、経済団体連合会会長齋藤裕君及び経済団体連合会経済調査委員会企画部会長水口弘一君に御出席をいただいており、午後は、筑波大学社会工学系教授宮尾尊弘君の出席を予定しております。  この際、両参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。両参考人には、財政及び税制等に関する問題全般につきまして、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序についてでありますが、まず、齋藤参考人に三十分程度意見をお述べいただき、次に、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  それでは、齋藤参考人お願いいたします。
  3. 齋藤裕

    齋藤参考人 経団連の副会長をしております新日鉄齋藤でございます。私ごとでございますが、ちょっと音声を傷めておりまして、お聞き苦しい点がありましたならば御容赦をいただきたいと思います。  本日は、委員長からのお話がございましたように、経団連経済調査委員会水口企画部会長とともに、景気対策並びに税制改正に関し、経済界意見を申し述べる機会を与えていただきまして、まことにありがたく光栄に存じております。  まず、私から、これから御説明申し上げることを六つの点に整理して申し上げたいと思います。  第一は、景気現状はまことに厳しく、雇用に大きな影響が出る心配があるということであります。  第二に、既に決められております政府の諸対策効果が十分に上がっておりませんので、これを迅速に実行していただきたいということであります。  第三は、従来の対策だけでは十分対応できないと思われますので、税制面中心に思い切った追加対策を講じていただきたいことであります。特に、五兆円以上の思い切った所得減税を実施すること、またそれと同時に、法人税負担軽減して企業の活力を取り戻すということであります。  第四は、その財源としては、景気の立ち直りが期待される二年程度期間を置いて消費税引き上げることもやむを得ないということであります。  第五には、心理面から景況感を厳しくしている証券市場立て直しのために、発行市場を再開していただきたいことであります。  第六は、銀行の貸し渋りを是正するために土地流動化を図ること、そのために土地保有及び土地譲渡にかかわる税制抜本的見直しが必要なこと。  以上の六つでございます。  さて、景気現状につきまして私どもがどう見ているかでございますが、これは極めて深刻でございまして、今や景気が底割れしつつあることを実感いたしております。特に、消費者経営者マインドが極端に冷え込んでいることを非常に心配をいたしております。先ごろ実施いたしました経団連アンケート調査によりましても、経営者景況感は極端に悪化しておりまして、雇用にまで手をつけざるを得ないとする企業が著しくふえておるのであります。先行き景気が立ち直る時期につきましても、従来よりも半年先にずれ込んで来年の四—六月以降とする見方がほとんどになっております。既に決められた金融財政等景気対策を早急に実効あらしめていただきたいと思う次第であります。  このように経営者マインドが萎縮していることを反映いたしまして、企業設備投資は大幅なマイナスを続けております。特に、将来の国民生活日本経済の発展にとって不可欠であり、本来いわば聖域であるはずの研究開発投資さえもこれを切り込まざるを得ない状況にあり、まことに憂慮すべき事態であります。これまでの対策の中で、投資減税は制度的には拡大され実施していただいておりますが、執行面において対象設備から外された設備も多く、実効が上がっていないのが実情であります。この際、投資減税を拡充していただきたいと存じます。また、試験研究税制につきましても拡充をお願い申し上げたいと思うのであります。  企業マインドに加えまして消費者心理も一段と冷え込んでおりまして、消費性向が再びマイナスに転落をいたしております。個人消費につきましては、過去の不況時でも前年割れになったことはなかったのでありますが、今回は、百貨店が十九カ月連続マイナススーパーが十三カ月連続マイナスとなるなど前例のない不振が続いておるのであります。スーパー経営者に伺いますと、客の数は堅調であるが、一人のお客が買う金額が減っておるということであります。  これら消費者マインドが冷え込んでおる最大要因は、雇用に対する不安が高まっているということであります。消費者心理の冷え込みは経営者マインドの落ち込みに拍車をかけ、それがまた雇用不安を深めまして消費者マインドに悪い影響を与えるなど、悪循環に陥っているのが現状でございます。さきに述べましたように、景気対策としての所得税減税は不可欠であるというふうに存じておるのであります。  次に、生産動きでございますが、最近におきます実際の生産は今回の景気局面において最低のレベルにまで下がっており、十月の生産は六年前の水準まで落ち込む見込みであります。  私が属しております鉄鋼業界について一例を申し上げますと、統計数字が出るたびに需要の減少が見られます。今年の鉄鋼生産は二年続けて一億トンを割り込むのは確実であります。我が国鉄鋼生産が一億トンになりましたのは約二十年ほど前であります。この二十年を振り返ってみますと、一億トンを切った生産のケースが二回ございますが、いずれも一年で回復をしてまた一億トンに戻っておるのでありまして、今回の景気がいかに厳しいものであるか御理解いただけるものと存じます。  このように実体経済が一段と悪化いたしました要因一つ冷夏長雨影響であります。農産物のみならず製造業におきましても、冷夏長雨影響がエアコン、衣料品スチール缶並びにビールその他飲料の売れ行きに顕著にあらわれております。冷夏によって生産の落ち込んだ米、野菜等農産物につきましても、緊急輸入を含め、需給や価格の安定を図るとともに被害の大きな地域へ適切な対策を講じていただきたく存じます。  また、この機会に、あわせて、食料品を含む輸入品内外価格差原因である諸規制をぜひ見直していただきたいと存ずるのであります。  景気低迷を加速しているもう一つ要因でございます円高であります。経団連モデルで計算いたしますと、ドル百十円が一年間続いた場合には、ドル百二十五円のときと比べまして成長率が〇・九%低下するという結果が出ております。既に自動車などの輸出に影響が出ておりますが、今後企業経営全般に大きな影響が出てくることが懸念されております。  為替相場につきましては、従来百十五円程度が適正と言われておりましたが、私ども経済界の実感といたしましては、余りにも急激な円高で、ドル百円という水準を経験した今となりましては、百十五円になりましても景気は立ち直らず、少なくとも百二十円程度に戻ることが必要であると考えられております。  何よりも、諸外国が納得できるような黒字の縮小策を決定するなど、対外不均衡是正に対する我が国の断固たる姿勢を示すとともに、国際的な話し合いや協調介入を一層促進することによって円相場の安定が図られるよう、ぜひ御尽力を賜りたいと思うのであります。  以上のような景気現状から見まして、今私どもが最も心配をいたしておりますのは雇用への影響でございます。  企業内失業が既に二百万人を超え、完全失業者の百七十二万を上回る規模に達しているとの試算もございますが、実際、ほとんどの業種で過剰雇用を抱えております。今や第一次石油ショック以来最大過剰雇用、いわゆる企業内失業が発生いたしております。その調整には相当な時間がかかると考えられます。どこの企業も、できるだけ雇用は守りたいということで、雇用調整助成金などを活用しながら努力をいたしておりますが、今のように景気が落ち込む一方で、いつ底を打つのか全くめどが立たないという状況では、その努力にもおのずから限界が出てくるものと思われます。  従来余り関心が持たれていない雇用統計といたしまして、会社都合による解雇者動きに私ども注目をいたしております。その増加幅は五月までは徐々に縮小いたしておりましたが、六月以降再び増勢が強まりまして、三〇%ないし四〇%の割合でこれがふえてきております。倒産や解雇がこれ以上ふえないよう、中小企業対策を含め本腰を入れた対策が必要であると考えます。景気対策をさらに充実させ、雇用機会を拡大するとともに、企業における教育訓練をさらに一層支援するなど、雇用保険制度を拡充すること、並びに出向や再就職に関する情報提供を充実させることが重要であると存じます。  昨年来御当局が決定されました思い切った景気対策につきましても、経済界も歓迎をいたしております。ちなみに、去る九月の緊急経済対策と公定歩合の〇・七五%引き下げの効果経団連モデルで分析いたしましたところ、今年度GNPを〇・五三%引き上げることになります。ただし、その実行がおくれますと効果は大きく落ちてしまうという計算結果も出ており、それが国民企業経営者マインドをさらに一層落ち込ませることは必至であります。  公共事業につきましては、本年度前半契約率が七〇%程度まで進んだと言われておりますが、問題は、その後執行がおくれ、建設資材等の実需にいまだに結びついてこない点であります。  その主な原因は、地方公共団体予算措置のおくれなどによって執行が延び延びとなっておること、並びに景気刺激効果の小さい小規模事業中心になっていることであり、最近では、いわゆるゼネコン不祥事影響が大きくこれに出てきているように見受けられます。こうしたことを反映いたしまして、鉄鋼業の例で申し上げますと、建設部門向けの受注は一昨年の八月以来二年以上もマイナスが続いておるという状況になっております。  今何より重要なことは、補正予算を早く審議していただき、既に決定した一連の対策早期かつ着実に実行していただくことであります。また、景気刺激効果が期待できる大規模事業につきましても、今後積極的に実施していただきたいと存じます。さらに、病院、福祉施設試験研究設備教育施設など波及効果が大きくしかも即効性のある社会資本の整備に今後一段と力を入れていただきたいということもあわせてお願い申し上げたいと存じます。  また、金の要らない、金のかからない景気対策として規制緩和を着実に進めていくことが効果的と考えます。この点につきましては、一昨日、経団連平岩会長会長とする経済改革研究会中間報告を提出されましたので、その最終報告を待って着実に実行されるよう強く希望いたします。規制緩和が予定どおり実施されるためには、規制緩和進捗状況を監視するオンブズマン制度のようなものを総理直属機関として設けることが望ましいと考えます。  規制緩和に対しましては、一時的に関連の分野で雇用中小企業に悪影響を及ぼすとの御指摘もございますが、私どもは、規制緩和内需拡大を通じて雇用拡大につながるとともに、消費者に大きな利益をもたらすことにも注目すべきであると存じます。  税制面におきましても、今や思い切った決断が必要ではないかと考えます。冷え切った消費者マインドを喚起し消費需要を拡大するために、できるだけ早期に五兆円を上回る規模所得税減税を実施すべきであると考えます。その際には、減税目的に照らして、広く薄く減税を行うよりも重税感が強い中堅所得層に重点を置くべきであると思います。とりわけ教育費住宅費負担軽減に配慮していただきたいと存じます。  さらに、現在の消費低迷は、二百兆円にも上る企業販売費一般管理費など法人需要の減退によってもたらされている面が非常に大きいという点に注目をしていただきたいと存じます。大幅な所得減税はもとよりでございますが、あわせて、国際的に極めて高い水準にあります法人課税につきましても、国・地方を通じた負担軽減が必要であると考えます。この点で、税制国民との信頼関係によってでき上がっていることを考えれば、少なくとも本年度末で廃止する約束になっております法人特別税並びに自動車への消費税の上乗せ、これらにつきましては当然撤廃すべきものと考えております。  こうした減税財源につきましては、景気が回復するのを待って、具体的には少なくとも二年程度期間を置いて消費税減税に見合う程度引き上げることが望ましいと考えております。  また、その場合のつなぎ財源をどうするかでございますが、この点につきましては、経団連といたしましては、法律によって償還財源を保証した中期の保証債を発行するという独自の提案をいたしております。そして、その消化につきましては、金融市場資本市場への影響を最小限に食いとめるために、資金運用部財政投融資公社債投信に適正に配分することが適切ではないかと考えます。  一部に、所得税減税をしても将来消費税を増税するのでは景気対策としての効果が相殺されるのではないかという見方もございますが、私ども経団連シミュレーション分析を行ったところでは、大幅な所得税減税を行えば、消費税率一定期間後に引き上げたとしてもGNPに対してはプラスの効果があるという結論を得ております。  同時に、厳しい不況感を払拭するためには、証券市場活性化金融機関不良資産対策もあわせて実行することが必要であると思います。  証券市場におきまして、発行市場機能を停止し、流通市場も株価が再び下落するなど低迷を続けていることが心理的に不況感を深めていることは否めません。当面の市場立て直し策として税制を活用すべきであり、株式投資の魅力を減殺いたしております有価証券取引税軽減従業員持ち株制度促進のための税制措置創設などを図るべきであります。また、発行市場流通市場がともに活性化することによって初めて証券市場本来の機能を発揮することになりますので、発行市場早期に再開していただきたいと存じます。  金融市場につきましても、不良債権を抱えていることが金融機関の貸し渋りの大きな要因となり、これがまた実効金利が下がらない原因となっているのが実情でございます。金融機関の貸倒引当金を拡充するとともに、不良債権償却についても格別の配慮が必要であると思われます。  なお、金利につきましても、我が国金利は米国と比べますと短期の実質金利の低下がかなりおくれ、現在でもいまだ高い状況にございます。さらに一層市場金利を低目に誘導していく必要があると考えます。  ところで、景気が全般的に不振をきわめている中にありまして、住宅建設だけはやや明るい兆候を見せ始めております。中長期的に見ますと、現在住宅建設は四十年周期の上昇局面にあると言われており、潜在需要が旺盛であるだけに住宅取得に対する政府の支援には大きな効果が期待されます。この際、所得階層のいかんにかかわらず広く住宅建設が促進されるよう、住宅取得促進税制を初め税制金融上の措置を拡充するとともに、所得制限の撤廃をお願いしたいと存じます。  また、こうした住宅建設促進のためにも、さらには景気全般立て直していくためにも土地流動化が不可欠であると思います。現在、バブルの時代緊急措置としてとられた税制規制が複雑に絡み合って土地流動性を妨げておりますので、これを抜本的に見直していただきたいと存じます。  すなわち、土地譲渡益課税軽減及び長期保有土地減価償却資産への買いかえ特例の継続、並びに不動産取得税登録免許税軽減を図っていただきたいと存ずるのであります。  また、特に地価安定のための緊急対策としてとられた地価税は直ちに廃止すべきであると思うのであります。仮にそれが難しいということであれば、少なくとも地価税固定資産税を合わせた負担合理化適正化を図るべきものと考えます。  以上のほか、地方税につきましても私どもは国税に劣らずこれを重要視いたしております用地方においても行財政改革を進め、税負担軽減に努めるべきと考えますしばしば伝えられております事業税外形課税化地方消費税創設につきましては、いろいろな問題を含んでおりますので私どもはこれに反対をいたしております。むしろ、当面は企業に対する重課の大きな要因となっております超過課税を撤廃することが先決であると存じております。  最後になりましたが、経団連といたしましては、皆様方にお願いするだけでなく、自助努力必要性も重視しておりまして、先月、水口部会長中心となりまして「ヒューマン・キャピタリズムとわが国産業企業の変革」という提言を取りまとめ、新しい時代を迎えて、企業経営姿勢を正すとともに、みずからも積極的な努力を行うべきであると呼びかけましたこともあわせて申し述べさせていただきます。  以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
  4. 宮地正介

    宮地委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  5. 宮地正介

    宮地委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  この際、委員各位に申し上げます。  質疑につきましては、理事会の協議によりまして、一回の発言時間は三分以内となっておりますので、委員各位の御協力をお願いいたします。  なお、質疑のある委員は、挙手の上、委員長の許可を得て発言するようお願いいたします。また、発言の際は、所属会派及び氏名をあらかじめお告げいただきたいと存じます。  それでは、質疑のある委員挙手を願います。
  6. 青木宏之

    青木委員 新生党・改革連合青木宏之。  御苦労さまでございました。二点ほどお伺いいたします。  一つは、景気刺激のために大幅減税が不可欠である、こういう御論調でございました。五兆円を超える、こういうことでございましたが、五兆円を超えるものが一応大幅という御理解だと受けとめさせていただきますが、なおそれ以上の減税であればより効果があると自然に考えられると思うのです。財源とも絡みますけれども、私としては五兆円ではやや少ないという感じを持っておりますが、その辺のお考えはいかがでしょうかということ。  関連いたしますけれども、いわゆるつなぎ国債の後消費税率アップという御提言でございましたが、特に中小企業団体の中に、この消費税率アップということについてはかなり抵抗感がある。むしろ明確に反対だという論調が聞こえてきておるわけでありますけれども、その辺につきましてお考えはいかがでございましょうか。  この二点についてお願いいたします。
  7. 齋藤裕

    齋藤参考人 最初の御指摘所得減税の幅の問題でございますが、五兆円を上回るという表現をいたしました。御指摘のとおりこれは多ければ多いほど効果があるわけでございますが、経団連といたしましては、やはり赤字国債というものは避けるべきであるという考えに至っております。したがいまして、中長期的な直間比率是正ということで対応する必要があると考えております。  その際に、当然考えられます先行き消費税引き上げということに関しましては、所得税減税の幅が大きければ大きいほど当然この消費税引き上げの幅も大きくなるわけであり、そういったところから考えますと、余りに大きな消費税引き上げを必要とするような所得税減税はいかがかという考え方から、まずは五兆円を上回る、これは上限は申し上げてはないわけでございますけれども、五兆円を若干でも上回る程度所得税減税であれば消費税引き上げによって十分財源が賄える、かような考え方から、一応規模としてその程度が妥当ではないかと申し上げたわけであります。  それから、消費税引き上げにつきましての中小企業等反対ということにつきましては、今の日本税制がどうしても直接税に偏っております。これはもう明らかでありまして、これを中長期的に是正して間接税をふやしていく、直間比率見直しということを行うのは必然の方向であろうかと私は思います。したがいまして、将来的に、この消費税引き上げというものは中小企業の方々にもひとつ十分御理解をお願いしたいというふうに考えております。  以上でございます。
  8. 海江田万里

    海江田委員 日本新党の海江田万里でございます。  御高見ありがとうございました。お疲れのようですから水口さんからでもよろしゅうございますが、今実際の失業者がおよそ百七十万、これは認められているところでございますけれども、問題は潜在失業者の数でございますね。製造業では大体百万人ぐらいだろうということでよろしゅうございますが、これはどうなんですか。製造業は比較的数字をとるのが簡単だろうと思いますけれども、非製造業部門、このあたりにどのくらいあって、企業内失業で二百万、完全失業百七十万というお話ですけれども、もう少し多いようなデータも幾つか出ておりますので、社内失業が二百万だと言われた理由と、それから、もし社内失業が外に出てしまった場合の失業率、これが一体どのくらいになるのかということをお聞かせいただきたいのですが。
  9. 齋藤裕

    齋藤参考人 企業内失業につきましては、正直に申し上げて統計がはっきり出ておりません。いろいろな推定があるだけでありまして、私も今その数字の御指摘に対してはお答えする的確な根拠を実は持ち合わせていないのでございます。  しかし、私ども企業の実態からいいましても、百万の単位企業内失業というのは十分ある。例えば私ども新日鉄の例で申し上げますと、現在在籍者が五万二千名おります。そのうちに一万五千名は出向社員でございます。その出向社員は、もちろん全部とは申し上げませんが、非常に多くの部分が企業内失業者と言っても差し支えない性質のものがございます。そういう点から類推いたしまして、恐らく製造業には百万単位企業内失業者がいるということはそれほど間違った数字ではなかろうというふうに考えております。  以上でございます。
  10. 太田誠一

    ○太田(誠)委員 自由民主党の太田誠一でございます。  きょうはありがとうございました。どうぞ水口さんから御答弁いただいてようございます。  土地税制あるいは土地取引に対する制約というのはこの五年くらいの間に非常に常ならざる規制の強化がなされ、また地価税も導入されたわけでありますけれども、今地価税を撤廃すべしというお話でございました。それでなければというお話もありましたが、それは必要がなくて地価税を撤廃せよということだろうというふうに受けとめております。と同時に、いわゆる総量規制というものが行われておって、今は事実上はこれは発動していないのですけれども、トリガーというものが残されております。そのことについて、トリガーといえどもそういう規制が潜在的には不動産に関連をする融資を抑える役目を果たしているのではないかというふうに我々は思っているわけでありまして、この点についても御所見をお伺いしたいと思います。  それから、株式市場の活性化の問題でありますが、一つは、今おっしゃった発行市場にかかわるさまざまな制約を取り払うべきだ、規制を取り払うべきだというふうに私も考えておりますけれども、自社株の取得について、実は来年の通常国会にでも一部認める方向をただいま検討しております。その際に、この部分について特例的に、少なくとも特例的にみなし配当課税というものを適用しないということにしなければ、事実上これは効力を持たないわけでございまして、その点についての御所見をお伺いしたいと思います。  第三点目であります。  不良債権の処理の方法についてさまざまな提案がなされておりますけれども不良債権の買い取り会社というものをもっと広範囲に認めて、そしてそういう不良債権を買い取った会社の株式を発行するとか、つまり流動化、証券化という方法があるではないかという御指摘もございます。その点について何かお考えがありましたらお伺いしたいと思います。  以上、三点です。
  11. 齋藤裕

    齋藤参考人 地価の問題につきましては、地価を今日のように大きく下げたのはやはり総量規制金融措置であったろうと思います。釈迦に説法でありますが、地価税が地価を下げたのではなくて、総量規制が地価を下げたという認識をいたしております用地価税というのはもう地価が下がってきた後で成立したわけでありまして、地価税というものが地価を下げたのではないという認識。したがって、仮に将来また地価が上がるようなことがあれば、この総量規制金融措置で十分対応ができると私ども考えております。  地価税は私どもが廃止を要望しておりますが、非常に不公平な税制になっているということであります。一部の業種に非常に偏った税制でございまして、これは税制としては非常におかしな税制になっている。それと、あの当時、この地価税によって地価を下げようという非常に強い雰囲気がございましたが、もうこれは役を果たした、むしろ土地流動化を阻害している大きな原因になっているという認識から、地価税はこの際廃止していただきたいというふうに考えておるわけであります。
  12. 水口弘一

    水口参考人 それでは、太田先生の御質問の後半の部分、一つは自己株式取得につきましてのみなし配当の問題でございます。  自己株式の取得の意義ということにつきましては、経団連といたしましても再三御要望、お願いを申し上げておりますのでその問題は省略いたしまして、事実関係として、例えばアメリカの株式市場におきましては、この数年見ましても、毎年五百億ドルから八百億ドル、千億ドル近い自己株式の取得が行われて、これが市場活性化に非常にプラスになったという経過もあるわけでございます。我が国におきましては御高承のとおりでございますので、中期的には商法改正ということが必要かと思いますが、当面の問題としましたら税法の改正ということでみなし配当という問題にぜひ対処していただきたい、このように考えてお願いをしているところでございます。  それから、発行市場の再開につきましては、先ほど齋藤会長意見発表のとおり現在がなり流通、発行市場ともに疲弊はしておりますけれども、その中でも、例えば株式分割をするとか増配をするとかいうようなことで、投資家にとってもいい会社、それから発行会社にとりましてもいい資金調達ができるという企業はあるわけでございますから、そういう意味では全面ストップというようなことではなしに、いいものから出していくという引き受けの機能を十分に発揮するようなことをお願いしたいと考えております。  それから、債権の証券化という問題は、まさにいろいろな不祥事件もございますけれども、証券化のやり方とディスクロージャーをどうしていくかということによってこれは非常に有力な方法であろうと思いますし、これからの大きな、世界的なグローバルな流れはやはりセキュリタイゼーションということでございますので、これを利用していくことは非常に有力な方法であると考えております。  以上でございます。
  13. 石原伸晃

    ○石原(伸)委員 自由民主党の石原伸晃でございます。  今の齋藤参考人お話を聞かせていただ名まして、地価税を廃止すべきだという御説を御説明されたと思うのでございますが、先ほど譲渡益課税についても見直していただきたい、そういうお話があったと思うのです。土地税制というものは、理論的に言えば、保有税を強化して譲渡益課税を軽くするか、あるいは保有税を軽くして譲渡益課税を重くするか、そのどちらかによって土地の値段の適正化を図るべきものではないかと考えるのでございますが、保有税も軽くして譲渡益課税も軽くした方がいいとお考えになっているのか、その辺のところをもう少しお聞かせ願いたいと思います。  それともう一点ですが、先ほど消費税の増税はやむなしというお話でございました。消費税導入の経緯で高齢化社会対策に資するという一言が入っていて、国民レベルの議論からすれば、現在の消費税が一体何に使われているのか、そういう不満が多々ある仲で、景気対策の一環として、景気の回復を待ってというを言葉がございましたけれども、すんなり国民レベルで所得税減税はするけれども消費税もネットで増税になるよという議論は通らないのではないか、なかなか理解を得られないのではないかという気がするので、その二点についてお話をお聞かせ願いたいと思います。
  14. 齋藤裕

    齋藤参考人 保有税と譲渡益課税両方とも軽減するのはどうかというお話でございますけれども、地価の高騰によって何もかも非常に過大な税金を、保有税にも地価税ということで創設されましたし、譲渡益課税も普通の企業の利益の上にさらにオンをして税金を取るということで、あの時点ではやむを得なかったのかもしれませんが、今となって地価が鎮静した時期におきましては過酷な税制であるというふうに認識をいたしております。したがって、保有税も譲渡益課税も両方とも見直していただきたいというふうに考えるわけであります。  それから、消費税につきまして、この目的が問題という御指摘でありますが、さっき申し上げましたように直間比率是正というのが日本税制の避けて通れない方向であろうと思うわけであります。それが、景気対策としての所得税減税ということに直結いたしますと、消費税引き上げによって影響を受ける人たちからの抵抗感が出るのは無理ではないと思います。したがって、ここに一定期間の時差を設けることによって中長期的な直間比率是正という方向に持っていっていただきたいと思っているわけでございます。マスコミ等の論調はえてして所得税減税消費税引き上げというふうに書いているようでありますが、そこに時間を設ける、その間に景気が回復すれば非常に税金の問題も解決しやすくなるということを配慮されてはいかがかというのが私ども考えでございます。  以上でございます。
  15. 岸田文雄

    ○岸田委員 自由民主党の岸田文雄でございます。きょうは本当にお忙しいところをありがとうございます。  先ほどのお話の中でいろいろ御要望があったわけでございますが、その中で規制緩和の推進、それから金利の低目誘導という御要望、この二つに関しましてぜひ参考人の御意見をお伺いしたいと思うわけであります。  規制緩和の推進、これは私も間違いなく進めていかなければいけないと思うわけてありますが、事金融機関金利ということに関して言いますと、金融機関におきましては、こういった景気対策にかかわりなく前々から金利に関して自由化を進めてまいりまして、御案内のとおり、来年春には流動預金の金利も完全自由化されるというようなことが予定されております。こういった中で、それこそ公定歩合は現在史上最低の一・七五%ということでありますが、こういった公定歩合そのものの意味合いも薄れるのではないかというような議論も出ておりますし、また金融機関による利用者の選別等も危惧されておるような状況であります。そして、現実問題として現在、先ほど参考人お話にもありましたように、公定歩合史上最低にもかかわらず金利の下げ渋りというかそういった状況が起こって、十分に低い金利が反映されていないというような状況もあるわけでございます。  そういった中で、この金利の低目誘導をという要望を考えますときに、たまたま今金融機関ということで例を申し上げたわけでありますが、こういった分野に関しては逆に規制を強化して、規制という言葉が適当かはわかりませんが、実質的には規制を強化するような場面も必要になってくるのではないかなというような気もするわけであります。その辺に関しまして御意見をお聞かせいただければと思います。よろしくお願いします。
  16. 水口弘一

    水口参考人 それでは先生の御質問につきまして、一つ規制緩和、もう一つ金利の問題でございますが、規制緩和という問題につきましては、これは平岩委員会でも一昨日中間的な報告が出ております。また、私ども民間におきましても、経団連あるいは経済同友会におきましても規制の緩和。撤廃ということでかなり大胆な意見を出しております。  ただし、問題は、これをやっていきます過程におきましては、産業構造の大改革でございますので、大きな摩擦、特に雇用問題を中心にして摩擦が起こることはやむを得ないことがございます。中長期的には労働力が日本では不足するという状況がございますので、そのミスマッチをどうするかということで先ほど齋藤会長のような意見を出しているわけでございますが、特にこれは民間だけではなくて、規制緩和という場合は公務員の方々においても相当な失業問題、雇用問題が発生するということがございますが、この対処は官民挙げて努力をする必要があるというふうに考えております。  金利の問題でございますけれども現状におきましては公定歩合が一・七五%、史上最低であって、これがかなりシンボリックな意味であるということは先生御指摘のとおりであろうと思います。ただ、ほかとの、例えばアメリカの場合は実質金利は現在ゼロになっておるわけでございますが、これはちょっと行き過ぎて、私の意見ではアメリカはそういう点ではバブル寸前というような感じがなきにしもあらずでございますが、日本におきましては、お手元の資料にありますように実質金利はまだまだアメリカに比べてかなり高いということがございます。  とはいいましても、来年完全に全部自由化されるということでございますので、これは規制をするということではなくて、完全に規制を緩和していく。現に国債の大量残高というマイナス面はございますけれども、一面では債券市場につきましては国債が一つの完全なマーケットの指標金利になってきている。百四十五回債の国債というものは大体三・五%ぐらいという利回りになってきておりまして、これが一つの標準でございますので、これをもとにして金利が決まっていくというのは私はあと一息ではないかと思います。  特にコールレートにつきましては、これだけ金利が下がってきている場合、もちろん景気が悪いので民間の資金需要がないという問題はございますけれども、四十兆円に及ぶコール残高があって、しかも、これは私に言わせればかなり高いのではないかというような、特に二・五%段階というのはかなり高とまりではないか。もうちょっと低くていいのではないかということでは、もう少し金融当局としても低目誘導ということがぜひ必要であろうと思います。この場合は規制ということではなかろうと思います。  ですから、片方で規制金利と自由金利が併存するという場合になりますと、バブルの原因一つはそこにもあった。コマーシャルペーパーで資金を調達して、これを銀行の大口預金金利にしたら黙っていてもさやがとれるというような問題が、完全な金利自由化へ来る途中での不幸な経済現象であったという理解もしておりますので、ここは規制というよりは、流れとしたら、特にグローバルなマーケットという問題もございますので、完全に自由化の方向へ持っていくということが非常に重要であろうと思います。  それからもう一つは、貸出金利の問題につきましても、先ほど貸し渋りという表現がございましたけれども、これはいろいろな要件がございまして、あつものに懲りてなますを吹くという審査態度の問題もあろうかと思います。したがいまして、最近の傾向は、民間金融よりも公的金融のウエートが非常に高くなってきていて、金融マーケットにおいてもその点はかなりいびつな状況になってきておりますので、この辺もやはり金利の自由化あるいは低目誘導を進めていくことが必要ではないか、このように考えておる次第でございます。
  17. 山本幸三

    ○山本(幸)委員 新生党・改革連合の山本幸三であります。  三点ほどお伺いしたいのですが、一つ土地価格のところであります。  先ほど齋藤さんは、土地価格が下がったのは地価税影響ではない、金融措置の総量規制できいた話だというようにおっしゃられたのですが、私はこれはちょっとおかしいなというふうに思っています。  つまり、土地価格がそもそもどういうふうに決まるかというモデルは、どういうモデルを持っているかによって決まるのですが、これについては経済学者の間でこれまで相当の議論が行われてほぼ決着がついた。その経済学者の間で決着がついた結論は、土地価格は基本的に将来のその土地から得られる収益を金利水準で割り引いたものによって決まる、ファンダメンタリストモデルと言いますが、これで大体けりがつく、それで説明できないものがバブルであるというところで、これまで随分議論がなされたわけですね。  その理論モデルによれば、土地価格というのは、土地保有税を上げれば確実に収益に影響を与えるから必ず土地価格は下がるというモデルで説明されているわけです。したがって、私は、地価税は確実に土地価格を下げる効果があった、金融措置云々はむしろそういう収益に影響を与えない行動ですから、その取引自体の問題を起こしたかもしれないけれども土地価格という点で考えてみれば、むしろ保有税というものが影響を与えたことは間違いなかったというふうに思うのです。  それでは、その地価税がそれでいいかというと、これについて私は個人的には疑問を持っています。先ほどおっしゃったように、保有税というのは本来経済のそれぞれの分野に中立的に資源配分を余り阻害しないような形で行われなければならないのに、この地価税というのは実に特定の分野だけの需要供給に影響を与えるという意味で非常に問題があるというふうには思っております。したがって、結論から言えば、地価税を将来的になくすか、あるいは固定資産、先ほどありましたけれども、最低限その調整をやらなければいけないだろうというふうに思っております。よくこんな地価税みたいな税金をつくったものだというように私は個人的には思っておりますが、その点についての御意見をお伺いしたいと思います。  それからもう一つ。二番目は、所得税減税をやって、それから消費税を二年後に上げるということでいろいろ議論があるが、経団連のシミュレーションでは効果があるというようにおっしゃったわけです。これは非常に興味がありまして、そのときに問題になるのは、それではどういう消費関数を持っているかということが問題になるわけですね。経団連モデルというのは、消費関数において限界消費性向を幾らに見ているのか、あるいは消費関数はどういう理論モデルに基づいた消費関数なのか恒常所得仮説に基づくものなのか、あるいは単に可処分所得の増加関数として規定されているものなのか、そのときの限界消費性向は幾らに見ているのか、そしてどれだけの効果があるというように結果が出ているのか、これをお教えいただきたいと思います。  それから三番目は、先ほどの金利水準の話ですが、私も水口さんと同じように、私は今回の不況最大原因日本銀行の金融政策にあるというふうに思っております。まさに公定歩合をある程度下げてきている。下げてきていると言いながら、実際の限界資本コストを決める短期金融市場、特にコール手形市場を高目に誘導して、その結果、銀行の限界資金コストは下がらず、そして実効金利が下がらない、これが私は今回の不況をもたらした最も大きな原因であると思っております。恐らく水口さんはそのことを言っておられると思うし、私も現在のコール市場が、一・七五といいながら二・五ぐらいで推移して四十兆もあるというのはおかしいと思っていますが、それと同じような御意見なのかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  18. 齋藤裕

    齋藤参考人 地価税の問題についてはいろいろの見方が御指摘のようにあるかと思いますが、私どもは、この地価税のために土地価格が下がったという認識はないのであります。あの時点で大きく土地価格を下げたのは総量規制であろう。御指摘のような、土地の収益力というものを低下させることによって地価税効果があったということは、理論的にはあるいは言えるのかもしれませんが、私どもが実際に土地の取引に携わり、あるいは地価を目の当たりに見ている感じでは、そういう理論分析とは別な認識、感じを持っておるということを申し上げたいと思います。  それから、地価税に関しましてはなおいろいろの見方があると思います。御承知のように、固定資産税というのが、最初はああいう形では地方自治体も考えていなかったわけでありますが、大幅な公示価格引き上げということになりまして、結局地価税と同じような考え方で税金を取るようになってきたわけであります。固定資産税地価税とどこが違うのか。どうも考え方が同じようになってきておる。それでは私どもにとっては非常に困ることでありまして、もし地価税が、まだ施行されてからわずかな期間で、仮にすぐには廃止できないということであれば、この固定資産税と一緒にこの保有税を見直していただきたいというのが私ども考え方であります。  以上であります。
  19. 水口弘一

    水口参考人 それでは、先生御指摘の後の問題について、私から若干意見を申し上げたいと思います。  一つは、現在の土地価格の問題、地価税というものに関連してございますが、私は、これは株式市場でも同じ問題が言えると思いますが、学者の言うファンダメンタルズ理論というものともう一つ心理学的、あるいは特に資産の場合は流動性というものが非常に重要な問題がございます。特に、ファンダメンタルズより外れて上に行った場合も下に行った場合も、流動性という問題が非常に問題が多いと思いますので、流動性を全く阻害したという意味におきまして、税制の問題というのは一時的には価格効果はあっても、その価格効果が十分に出た場合には流動性をいかに回復していくか。昨年来、土地流動化ということを盛んに言われておりますけれども、そういう方向への政策転換といいますか、考え方が必要ではないかというふうに考えております。  それから、減税効果経団連シミュレーション、〇・八%プラスになるという話でございますけれども、これは多次元モデルでいろいろやっておりますので、前提が狂うといろいろ変わっていくという問題もございます。また、私ども自身でやりましたモデルでも、例えば昨年来の三十兆に及ぶいろいろの経済政策、景気対策の結果、これは初年度において一・八%の景気浮揚効果がある、こういうシミュレーションを出しましたけれども、結果として、その後の大幅な円高によりましてほとんど大部分がすっ飛んでしまうという状況がございまして、モデルというのはその辺がかなり弱い点がございます。  したがいまして、具体的にどういう内容を持ったかということにつきまして、私も計量モデルを自分でやっておりませんのでわかりませんが、必要であれば、経団連モデルをやりました者の方から資料をお手元にお届けさせていただきたいと思います。  それから、金利の問題につきましては、私も特にコールレートの低目誘導ということは非常に重要であるというふうに考えております。したがいまして、マネーサプライの問題は、この数カ月来あるいは昨年来、民間エコノミストあるいは学者と日銀当局の学者とめ間でいろいろ論争のあるところでございますが、私は、中央銀行というものは金利政策だけではなくて金融政策全般についての賢明な対策をぜひお願いしたい、またそれを期待するという考えを常に述べております。それだけ申し上げておきたいと思います。
  20. 塩崎恭久

    ○塩崎委員 自由民主党の塩崎恭久でございます。本日はまことにありがとうございます。  ただいまのエコノミストの山本先生の緻密な質問の後に大変雑駁なお話で恐縮なんでございますけれども円高とこれからの日本の経済の姿についてお伺いをしたいわけでございます。  先ほど海江田先生から失業のお話も出ました。短期的な問題のみならず長期的に円高が産業構造の変革をもたらすということはもう言うまでもないわけでありまして、けさも新聞を見ておりましたら、群馬県のどこか忘れましたが、その辺の企業がこぞって中国へ進出するというようなお話もございました。  また、私どもの地元でも、経団連に入るほどのそんなに大きな企業ではないわけでございますが、国内の生産規模を五分の一ぐらいに縮小して、これは雇用ベースでの話でございますが、海外での生産雇用ベースで五倍ぐらいにふやすというようなことが現実に行われておるわけでございます。  かたがた、この間のバブルの影響で潜在成長力が低下したというようなことも言われているわけでございまして、このようなことで、円高が恐らく今近辺で当分行くのだろうと思います。そういうことになれば、ますます海外での生産拠点の設立というのがふえて、このお配りいただきました資料にも「総合的な機能の海外移転を促進する」というふうにお書きでございますが、出ていくのは結構なんでございますのでは、残った方はどうなるのか、こういうことだろうと思うのです。  かつてトヨタのライバルは日産だと言われておりましたけれども、今は最大のライバルは日本電装だと言われていると聞いているわけでございます。これまで自賄いはしないで外でやらせていたものを全部自分のところでやろう、いわば縮小均衡とは言わないまでも、産業構造として生産波及効果というのは余り外へは広がっていかない形になっているのかな。そういう中で失業の問題がこれから大変問題になってくるのではないだろうかということで、日本がいわば生産拠点ではなくなるかもわからないな、そういう中で失業の問題についてどんなふうに経団連ではお考えになっているのかということをお聞かせ願えたらと思います。
  21. 齋藤裕

    齋藤参考人 御指摘はまさにそのとおりでございまして、円高が今のような形で進んでまいりますと、日本製造業は、内外価格差のために国内での生産では採算がとれないということになってきておるのです。したがって、海外にどうしても移転せざるを得ない。その結果は国内生産の大幅な縮小になるわけで、このことは即失業の発生ということになるわけであります。先ほどから申し上げておりますとおり、来年以降今のような情勢が続く限りにおいては、この雇用の問題が戦後の日本経済におきましては初めて、しかも最大の問題になるという危機感を持っておるのであります。  したがって、一つには今の円高があるべき水準円高であるかどうかということ、これは人によっては、貿易黒字を続けておる原因である日本製造業を縮小させようという陰謀であるという説まで出ておるわけでありますが、事の是非は別として、今我々にのしかかっている姿は、まさに製造業が国内においては縮小せざるを得ないという姿であるかと思うのであります。したがって、このための対策として、どうしても私ども内需拡大ということをお願いして、この円高による日本製造業の縮小、減退を何とかある程度のものにとどめたい。そして、雇用を維持したいということを考えております。  しかしながら、それだけで果たしてこの雇用の問題が解決できるかというと、やはりそうはいかないだろう、ある程度雇用問題の発生は避けられないだろうと見ております。したがって、この雇用問題については国を挙げての対策が必要になる。どうしても従来の日本製造業の維持継続ということだけでは貯えない。何か新しい産業を生み出していく必要があるのではないか。そこに、今、経団連が取り組んでおりますヒューマン・キャピタリズムという考え方が出てまいります。こういう考え方によって新しい事業分野、新しい雇用を生み出そうという努力経済界内部にもしていく必要があるということ。それから、雇用流動性を保つために国を挙げての何か措置をとる必要があるという二面からこの雇用問題に対処する必要があるのではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  22. 新井将敬

    ○新井委員 自由民主党の新井将敬です。  先ほどおっしゃった金融機関不良債権の問題ですが、今、公定歩合が非常に下がっている中で、銀行の収益構造をよくして不良債権償却原資をつくってやっていく。また一方では、不良債権の買い取り会社をつくる。この二本立てで進めているわけですが、その手段では限界に達していることにもうそろそろ気づいているのではないかと思うのです。  その一つは、このような銀行の収益を今の形で確保しながら、百兆円というふうに推定されています不良債権償却をやろうとすることが、本当に現実的な手段なのかどうかという問題が一つありますし、公定歩合を下げれば収益がよくなるという現象もそろそろ限界ですね。ピークアウトしているというふうに言われております。  もう一つは、ここ二、三年の間に海外での日本金融機関の格付、ムーディーズとかの格付が随分と低下してきておりまして、海外での資金調達もほとんど困難に追い込まれていっている。その中で、海外の方からも、公的資金の導入がなければさらに格付は下げていくということが言われておりますので、ここで新しい金融機関の再建策を考えませんと、信用創造能力が衰退してさらに大きなデフレの影響を与えると思うのです。  一つは資産再評価ということ、それからもう一つは公的資金の導入。この公的資金の導入は、むしろ自己資本を拡充する方向で導入するということなんです。債権買い取り会社というのは、説とかそういうことではなくて、金融機関の自己資本を拡充するという方向に進む。一番の資産再評価は、これはよく御承知ですからあえて申し上げませんが、資産再評価によってその収益を不良債権の回収に充てる。  もう一つの公的資金は、不良債権償却に資本金や準備金を使って償却をしていって、その間に議決権のない優先株を発行して自己資本を補う、ここに公的資金をつぎ込むことは仕組みとして資金運用部を使えばできると思います。そういうビジョンを持たないと、今のままずるずるではとてもだめだということは、実はもう皆わかってきているのではないかな、ちょうどそのタイミングに来ているのではないかと思っておりますので、御意見をいただければありがたいと思います。
  23. 水口弘一

    水口参考人 今先生御指摘の点、不良債権百兆というこの金額はよくわかりませんけれども、問題意識としては、私も個人的には全く新井先生と同じような認識を持っております。  実は昨年から、特にアメリカのSLの例あるいは一九七〇年代のイギリスにおけるライフ・ボート・オペレーションという問題がございましたけれども、かなり抜本的な、要するにこれを短期に始末するか長期にかけてやっていくという、漢方薬でいくか外科手術的なことを併用するかというかなり政策判断の問題があろうかと思うのですが、当面はまずそれぞれの金融機関の自己責任においてやるということで展開されているわけでございます。今先生おっしゃいました再評価の問題と自己資本充実という問題、これはアメリカでもそういう方法が行われまして、私どものNRIとしましても昨年そういう問題提起はした時期がございますが、その後、割合順調にいくというようなことで、今見守っているところでございます。  ただ、国内はそれでいけるとしても、本当に五年、十年先まで見通していけるかどうかということは、相当賢明な経営者なり政策担当者でないとできにくいという問題もございますし、それよりも、非常に重要なのは、今先生御指摘の海外における格付機関の格付がどうかという問題でございます。  御指摘ございましたので、手元にことしの七月にスタンダード・プアーズが出しました、これは公表している数字でございますが、日本の銀行の格付状況というのがございまして、一九八五年におきましては、興長銀以下ほとんどの日本の銀行はトリプルAという最高位の格付でございましたが、一九九〇年のときには、開銀、輸銀、農中、興銀だけがトリプルAになりまして、あとはダブルA以下シングルAまで下がったわけでございます。一九九三年、ことしの七月にはトリプルAは輸銀と開銀、これは国の政策機関でございますが、あとはダブルAマイナスというところからトリプルBまでになっておりまして、トリプルBになりますと、一歩間違うとこれはジャンクボンドになってしまうという状況でございます。  しかも、ムーディーズは、今後の変更の方向ということのコメントは全部ネガティブというふうに書いておりますので、この辺は、海外におけるファンディンクをどうするかという問題にも非常に響いてくる問題でございます。ここで相当抜本的な、アメリカの例なんかも倣いながら、現在アメリカは完全に復活して金融機関は非常に高収益を上げているわけでございますけれども、もう一度いろいろな案、特に今先生おっしゃいましたような案も再検討する必要があるというふうに私は考えております。
  24. 谷口隆義

    ○谷口委員 公明党の谷口隆義でございます。  三点ほどお聞きいたしたいと思いますが、まず初めに、景気雇用の問題でございます。  先ほどのお話の中で非常に感じるところがあったわけでございますが、現状景気が極めて深刻である、こういう認識の中で、戦後の日本経済が、好況と不況を比較すると好況が非常に長かったわけで、そういう意味では長期好況型経済。しかし今後、バブルが破綻して巷間言われておるのは、長期不況型経済になるのではないか、こういうような状況にあるのではないか、このように思っているわけでございます。  十月の有効求人倍率を見ますと〇・六九。私、大阪選出なんですけれども、先日大阪へ帰っていろいろ話をしておりますと、大阪では十月は〇・三九という有効求人倍率になっているわけでございまして、大変深刻であるな、このように思っておる次第でございます。そういう状況の中で、先ほどお話のあった過剰雇用、バブルのときの過剰雇用を抱えておられて、この調整に今入っている。  そういうことで、私非常に感じるのは、景気が底入れしたときに、雇用調整景気の問題というのはダイレクトに相関関係があるのかないのか。例えば、今企業の方は、むしろこの際に企業リストラの一環で、日本的経営の一環と言われる終身雇用制を見直そうという動きがあるわけでございます。企業リストラの観点から雇用調整していこうという動きがどうもあるようでございますので、その辺どういうお考えであるのかということでございます。  二点目は、本日の新聞にも載っておったわけでございますけれども、米国日産が移転価格をめぐって向こうで課税されたということがありました。今月の十六日に政府税調の答申が出るわけでございますけれども、この政府税調の答申、中長期の税制の方向に、まずポイントとして高齢化社会への対応と国際的調和という問題があると思うのですね。日本税制が国際的調和の中でどうあるべきか。例えば移転価格税制の問題であるとか外国税額控除の問題であるとかタックスヘーブン税制、このような問題の中で、経団連としてどういうお考えを持っておられるのかということをお聞きいたしたい。  最後の三点目でございますけれども事業税の外形課税について反対なさっているということをさっきお聞きしたわけでございますが、国と地方の税源の問題をめぐって、御存じのとおりこの事業税というのは所得が課税標準になっているわけでございまして、法人税の税収減と比例して大変な減収になっておるわけでございます。私はむしろ外形標準化を進めていくべきであると考えておりまして、そのような観点でどうお考えであるのか。  この三点についてちょっとお聞きいたしたいと思います。
  25. 齋藤裕

    齋藤参考人 終身雇用制の問題でございますが、企業といたしましては、従来日本の終身雇用制というものが日本の労使関係を支えてきたということでございまして、できることならば、この労使関係を維持するためにも終身雇用制というものは維持していきたいというのが恐らくすべての経営者の根本的な考え方であろうと思います。ただ問題は、余りにも経営環境が悪いということになってきておりまして、果たしてそれで企業が維持できるのであろうかということにまで追い込まれそうな段階に立ち至っているわけであります。  しかし現在、この終身雇用制をやめて欧米のような雇用体系にするということを正面切って言っておる企業はないだろう、みんな歯を食いしばって頑張っておるという姿だろうと思うのであります。ただ、この不況が収拾のつかないような状況で推移すると、この問題はどうしても出てこざるを得ないのではないかという点を危惧いたしておるということを申し上げなければならないと思う次第であります。  それから、税調の考え方の中に国際的調和の問題があるという御指摘でございます。まさにそのように私どもも伺っておるわけであります。その中で、移転税制の問題もありますけれども、基本的には直接税、間接税直間比率というような問題が国際的な税制から見ても一番問題になる点ではなかろうかというふうに私には考えられます。とにかく、非常なスピードで進んでおります日本の高齢化対応のためにも、この直間比率是正というのは国際的に見ても避けて通れないのではないかと認識をいたしておるわけであります。  第三番目の、地方税事業税の問題でありますけれども、御指摘のように今までの事業税は所得にリンクして徴収されておったわけでありますが、これをこの際外形標準化という方向に変えたいという考え方が出ておるわけであります。  企業は、現在、景気ということに非常に左右されて大変な収益の減退を続けておる、新聞紙上に報じられているとおりであります。しかも、これが先行きもっとひどくなる可能性があるという段階において、所得にリンクする従来の税制を外形標準化して課税するということは、少なくとも今その時期ではあるまい。理論的には一つ考えであるかもしれませんが、今それを行う時期ではあるまいというのが私ども考え方でございます。  以上でございます。
  26. 細谷治通

    ○細谷委員 社会党の細谷でございます。  三点ほどお尋ねをいたしたいと思います。  一つ地価税の問題でありますけれども、先ほど山本委員の方から地価税の理論的な根拠についてはお話がありました。まさに私もそういうことではないかと思っております。と同時に、常識的に考えても、やはり保有のためのコストを高めるということ、そして譲渡益課税というものをある程度軽減していくのが土地取引を活性化する方法である、税制に限って言えばそういうことではないかと思うわけであります。  そういう意味において、欧米に例を見ないような異常な土地バブルという反省の上に立って我々は地価税の導入を図ったわけであります。今課税ベースが非常に狭くなっている、そういう意味においては特定分野に集中しているところにむしろ地価税の問題があるのではないかと思っておりまして、逆に私は、地価税の課税ベースをむしろもっと広げて、場合によってはもっと税率を下げても課税ベースを広げるということが必要な措置ではないかと考えております。  譲渡益課税に限ってみますと、やはり勤労所得とのバランスというものも考えなければいかぬ。五年超の長期保有で見ますと、地方税まで入れて三九%になっているわけでありまして、所得税の最高税率が六五%ということから見ても、私は今の税率が決して高いものではないのではないかという感じがいたしております。検討の余地があるとするならば、保有コスト、保有税はむしろ拡充する、そしてもっと公平、公正なものにしていく、譲渡の部分ではもう少し軽減するということもあり得ていいのかなという感じを持っているということでございまして、そういう意味においては多少山本委員とも、結論の部分ではちょっと違うかもわかりませんけれども、私はそういう感じを持っている。  それから、固定資産税もまけてもらいたい。固定資産税地価税の議論がありましたけれども、これは税の性格が違うわけでありまして、固定資産税地価税は、課税負担ということでいえばそれは重いか軽いかという議論はあると思いますけれども、おのずから税としての性格は異なっておるわけでありますので、これはこれとして分離して、独立の税体系として考える必要があるのではないかというふうに考えております。この辺について、もしお考えがあれば、御感想でも結構でございますので、お聞かせいただきたいと思います。  二点目は所得税減税の問題でありますけれども所得税減税財源としては、当面はつなぎ国債でしのぐにいたしましても、将来的には直間比率見直し、すなわち消費税の税率アップということが避けられないというふうに私も認識をいたしております。しかし、だからこそ、逆に言えば大衆課税の消費税の税率アップという問題があればなおさらのこと、所得税減税のあり方についても我々はそれを視野に置いてよく考えておかなければいかぬというふうに思っております。  この所得税減税のあり方として、課税最低限を上げていくや方を中心にするのか、軸にするのか。それとも税率、今税調なんかでは、今の五段階の税率区分を三段階にするのだ、そして最高税率も六五%から五〇%に下げるのだ、これは地方税を入れてでありますけれども。そういう議論がありますけれども、一体我々としてはどちらを主軸に、主体に考えていったらいいのか。その辺について、お考えがあればお聞かせいただきたいというふうに考えております。  特に、五公五民という、そんな考え方があるかどうかわかりませんけれども、お上が五取って民が五、半分半分だということにしますと、今の日本所得税体系では、大体年収五千万を超しますと五公五民でちょっと公の方が取り過ぎという感じになるわけです。年収五千万という人はそんなにいるわけじゃない、まさに高額所得者だと思いますので、私は今の五段階の税率区分で、多少刻みを拡大するということはあっても五段階を維持すべきではないかと考えておるわけでありますけれども、この辺についての御感想をお聞かせいただきたい。  それから、もう一つ消費税の目的税化の問題でありますけれども、これの税率アップ、もちろん制度の欠陥についてもいろいろと是正をしなければいかぬと思いますけれども、この消費税の使途について、国民の間に疑念といいましょうか不満があるというような感じがするわけであります。私は福祉目的税、もっと絞っていいのですけれども、年金目的税みたいな形にこの税を組みかえていく、そのことが消費税に対する国民理解を促進するゆえんではないかというふうに考えております。もちろん財政当局から見れば大変不満でありましょうけれども、そういうふうにして国民理解を得ていくことが消費税の定着のためにも大切だというふうに考えておりますけれども、この消費税の目的税化について、もしお考えがあればお聞かせをいただきたい。  以上三点でございます。
  27. 齋藤裕

    齋藤参考人 地価税の問題につきまして、むしろ地価税は課税範囲に問題があって、これを広げるべきである、譲渡益課税の軽減の方が筋ではないかという御指摘だと思います。  私どもは、二番目にお話しになりました固定資産税という問題どこれを切り離して考えることができないのでございます。税の性質が違うという御指摘でありますけれども、対象になっている土地も同じであり、税を納めるのも同じ企業が納めるのでありまして、性質が違うというのは、取る理屈が違うということかもしれませんが、出す方は全く同じであります。これを別には考えられないのでございます。  地価税の理論的根拠につきましてはいろいろの考え方がございますけれども、確かに御認識のように非常に偏った税であって、ああいう税はほかにないのではないかと思います。これを広げるということになりますと、結局固定資産税と似たようなことになってくる。  先ほど申し上げております意味は、この固定資産税が従来と大きく違いますのは、公示価格を時価に近づける。激変緩和の措置はとられておりますけれども、今、今後の三年間、私ども企業が納める固定資産税は、毎年ほとんどきっちり七%ずつふえていくのであります。  この税金がつくられましたときは、名目成長率が七%くらいはいくであろう、したがってその程度の税はさしたる負担ではないという話があったのでありますが、もうおわかりのように、ことしの成長率はゼロであります。それにもかかわらず固定資産税は自動的に七%ずつふえていくというのが実態であります。三年ごとの見直しはありますけれども、例えば七%ずつ固定資産税がふえ続けて、十年たちますと今の固定資産税負担はちょうど倍になります。それほどの固定資産税を納める応益があるのかということを私どもはお伺いしなければならない。それに加えて地価税があるわけでありますから、その負担は非常に重いし、我々税を払う者の立場からいってみれば、明らかに二重の負担であるというふうに思われるわけであります。  それから、消費税の目的税化という問題でありますが、これはやはり財政の硬直化という問題につながるわけでございまして、私どもは、原則的には税の目的税化というのは避けるべきであろうと考えております。しかし、現在税調でも議論がありますように、その一部を目的税として使うという考え方に対して、それまで否定しようとは思っておりません。これは大いに税調の中で御論議があってしかるべきだと考えておる次第であります。  以上でございます。
  28. 北橋健治

    ○北橋委員 民社党の北橋でございます。  きょうは貴重なお話、まことにありがとうございました。  とりわけ私ども、これまで地価税につきましてあるいは土地税制全般につきまして、現時点におきまして極めて不合理な制度がたくさんあると考えております。近い将来に地価税の廃止を含めまして土地税制の抜本的な改善を図谷べきだと思っておりましただけに、きょうは与野党の同僚委員の前で貴重な御意見を聞けたことはまことに大きな前進だったと思っております。  時間が限られておりますので、私の方から二点お伺いいたします。  まず第一に、租税特別措置の扱いについてであります。  これは、過日連立与党におきましても、これまでの委員会の附帯決議に沿いまして徹底した整理合理化という方針が出されたところでありますが、与党の一員としてこういうことを申し上げるのは大変恐縮でございますが、租特の中には産業の省エネあるいは重要な政策目標に向かって誘導するという大事な租税特別措置もたくさん含まれております。そしてまた、整理を図らねばならないものも一緒にございまして、一概に徹底した整理合理化のもとには片づけられない問題があると思っております。特に、これからの厳しい状況の中で日本の産業の活力を取り戻すために重要な租税特別措置があると思いますし、またその政策的意義は高いと思っておりますが、それについての率直な御所見を聞かせていただければと思っております。  二番目に、行政改革についてでございます。  今、政府税調におきましても地方消費税創設、あるいは外形標準課税の問題を初めといたしまして、行革の精神に反するような増税の理念が出てきていることはまことに私ども残念に思っております。本来新しい税を考えるときには徹底した行革があってしかるべきでございます。国においてはそれなりの行革の方針というものは貫かれておりますが、むしろこれからは地方自治体において大きな課題が残されていると思っております。そういった意味におきまして、規制緩和を初めとして行政改革を一層断行することがあらゆる増税の前にやらねばならない試金石であると考えておりますが、この重要性についてお考えがあればお示しいただければ幸いです。
  29. 齋藤裕

    齋藤参考人 租税特別措置の問題につきましては、いろいろと検討が加えられておるわけでありますが、公害問題であるとか退職給与問題であるとか、さらに試験研究の問題であるとか、こういうものに関する租税の特別措置というものは当然に続けられるべきであると考えておるものであります。いろいろ御検討いただくことは当然でありますけれども、やはり租税特別措置は、日本の経済の今後の動向と関連をいたしまして、続けられるべきものはぜひ続けていただきたいというふうに考えております。  それから、地方自治体の問題、これは全くお説のとおり、地方自治体におきましてもとかく一極集中の是正というような言葉が非常に先行いたしまして、行革の対象になっていないような感じもありますけれども、私どもそれは間違いであろうと思います。国の行革とともにやはり地方自治体の行革も当然行われてしかるべきであるかと思います。  以上でございます。
  30. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 日本共産党の佐々木陸海です。  時間がもうありませんから端的にお聞きしたいと思います。  きょうは、今の日本の経済の状況やそれに対する経団連考え方、大変参考になりました。この「ヒューマン・キャピタリズムとわが国産業企業の変革」という文章の中に盛り込まれているのだろうと思いますけれども、今国民消費税の税率アップというようなことも求めていくという状況のもとで、それでは大企業の側として、現在の日本の経済にこういう事態を招来したことについての反省点、そして今後も大企業としてもこういう血を流してもやっていくんだというその決意、ありましたらちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  31. 齋藤裕

    齋藤参考人 バブルという状態を日本経済に招来したことにつきましては、もちろんこれは国全体、我々経済界もその責任の一端を担うべきものであろうと思うわけであります。何とかしてこの事態を解決して、日本の経済を再び活性化するということに努力をしなければならないと思っておる次第であります。  ただ、これは経済界のみでできることでなく、バブルを招来したのは国全体の問題である。反面、このバブルを解消することも国全体の問題であろうという認識をいたしております。我々大企業も当然その一員であるという認識でございます。  以上でございます。
  32. 宮地正介

    宮地委員長 これにて午前中の参考人に対する質疑は終了いたしました。  両参考人には、御多用中のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十六分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  33. 宮地正介

    宮地委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き、国の会計税制及び金融に関する件、特に財政及び税制等に関する問題について調査を進めます。  ここに御出席をいただいております参考人は、筑波大学社会工学系教授宮尾尊弘君であります。  この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。参考人には、財政及び税制等に関する問題全般につきまして、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序についてでありますが、まず、参考人に三十分程度意見をお述べいただき、次に、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  それでは、宮尾参考人お願いいたします。
  34. 宮尾尊弘

    宮尾参考人 筑波大学の宮尾でございます。  私のお話しするテーマは、お手元のレジュメにありますように「経済非常事態下における緊急措置に関する提言」という、ある意味では大変ショッキングな題名をつけておりますが、何分にも食事が終わった後で消化によくないといけないというので、まず別の切り口から入りますと、私が今愛読しております本に「マーフィーの法則」というのがございまして、これはアメリカにいるときに私は愛読をしておったのですが、今日本語訳が大変売れております。これは必読の書でございまして、私は英語で読んで、どれだけ日本語に間違って訳されているかというのを見るために読んでおるわけですが、できれば原文をお読みいただくと、大変今の日本状況日本経済状況をそのままあらわしているという気がいたします。  そこにヒントも隠れているわけですが、マーフィーの法則というものの一番の原点は、だめになる可能性のあるものは必ずだめになるという法則ですね。ですから、うまくいくのではなかろうかという楽観論を排しなさい、だめになるものは必ずだめになりますよという原則からいろいろなものが導き出されています。  例えば、悪い状況をほっておくとますます悪くなる、こういう話とか、隠された問題点は必ず明らかになって隠し通すことはできない。その他さまざまな教訓が含まれておる本でありまして、きょうもときどきそれを引用させていただきまして、今の日本経済の問題はどこにあるか、一体どういう考え方、どういう態度で手を打っていかなければこの状況が救えないかというお話をしたいというふうに思う次第です。  それでは、本のコマーシャルを終わりまして、本題に入らせていただきます。  実はけさ、皆さんもニュースでお聞きのように、日経平均株価が一万八千円を切るという状況が生じましたが、前場の引けにかけてどうも公的資金が入ったということで、何とか持ち直しております。  しかし、これははっきり申し上げて大変危機的な状況が来ていることのシグナルでございまして、今日本が実は非常事態にあるのだということの警鐘を鳴らしているわけです。特にきのう、きょう、あした、もし今週もっても来週の前半あたりが大変危機的な状況になるということは、政治的日程、経済的な状況をおわかりの皆さんにはもう重々御承知のことかと思います。これが実は悪循環を起こして今の危機が来ているという点だけをまずは強調しておきたいと思います。  悪循環、これは皆さんを支持されている方々の悲鳴でわかるように、失業が急増しておりまして、今百七十二万人の完全失業者がいる。企業内失業はそれにさらに輪をかけて二百万、三百万いるといいますので、日本では失業率が六、七%に既に達していると言われています。これが当然消費を縮小させ、経済を悪化させるという悪循環に陥っていること、これは一般の方もよくわかる悪循環でございます。  それから、ここ最近の株価の下落というのが昨年の八月をほうふつさせるような金融不安ということに結びついておりまして、銀行、生保あたりが防衛のために自分で今株を買い支えるというような状況にまで至っております。  それから、地価が下げどまらないということが起こっておりまして、まだ大都市では年率二〇%、三〇%落ちている。落ちているだけならいいのですが、取引がない。取引がないということは、価格がゼロだということですね。したがって、それは当然のことながら不良債権を増大させるわけですが、不良債権の確定のしょうがないわけです、取引がない限りは。したがって、これは大変な信用不安と信用の縮小を招くということになっています。  これはつまるところデフレですね。デフレ不況。既に大型倒産であらわれておりますように、経済がすべて縮小に向かっている。これは実は戦後初めての経験です。一時的なドッジ・デフレ的なことはありましたが、構造的に何年もデフレ的状態が続くというのは一応戦後初めての状態で、我々の経験ではほとんど対応ができない。  確かに実質のGNPマイナスに落ちたことはオイルショックの後、七四年から七五年に一年間だけマイナスの落ち込みがありました。そのとき地価も戦後初めて下がったわけですが、それは実はインフレだったわけです。ですから、物価は上がっていたということがある意味では救いになっていたわけです。例えば債務は、名目で一定の債務はだんだんと重みは下がっていきます。  しかし、今回は名目でも成長率がほとんどゼロかマイナスという戦後初めての経験です。したがって、我々は経験から物重言ってはいけない。これはマーフィーの法則ではありませんが、賢者は歴史から学び、患者は経験から学ぶといいますが、最近の患者は経験からも学んでないという人が政策当局にいるようです。少なくとも歴史から学ばないと、この苦境は脱出できないという状況になっていることは、このデフレだということから出てまいります。  それでは、なぜこういう事態にまで立ち至ったかということは、皆さんもう御承知のとおりですが、あえて私なりの見方をいたしますと、これまでとられてきた政策、景気対策が今ことごとく破綻をしております。これは大げさな話ではなくて、個々の対応を見ると明らかでございます。  まず第一は、伝統的な公共投資、財政支出に基づく公共投資の波及効果がほとんどなかったということが既に明らかになっております。過去に合計で三十兆円ぐらい昨年の春ぐらいから打っておるわけですが、ほとんど波及効果がない。なぜ波及効果がないかがちっとも政策当局にはわかっていない。ここで政策当局はある程度絞った方がよろしいわけですが、大蔵省、そういう財政政策のかなり主要な部分を左右している政策当局にとってよく理解ができていない。  私の見るところ、これは明らかに企業の財務体質が弱体化しているためにいわば細胞がばらばらになっているようなもので、土木関係の企業が多少公的な発注で潤っても、それでは人をふやしたり設備をふやしたり、そういうほかの企業に波及するような行動をとるかというと、そういう企業自身が財務体質を弱体化させているわけです。持っている株が下がり、土地が下がり、その他もろもろの経営資源、コストが上がり、弱体化をしている。それに昨今のゼネコン問題というようなことで新しい発注がなかなか見込みが立たない。そういうことになれば公共投資の波及効果はほとんどないし、これからもないだろう。  二番目。一番バッターが公共投資だとすると二番バッターは住宅だと、大体政策当局の口癖ですが、この二番バッターは快調だと言われています。しかし考えてみると、一番バッターも二番バッターも今回同じなんですね。住宅もほとんど公庫で支えられていますから、実は同じ公的な財政の支出が流れているだけの話で、過去の二番バッターは、実はそれをもとに民間の住宅投資が膨らんでくるという形が本当の二番打者のヒットだったわけです。ところが、今回は二番打者は粘りに粘ってバントか何かでやっと塁にたどり着いているという片肺飛行の住宅で、これも実はもう陰りが出ていると言われています。もともと買いかえ需要は余り盛り上がっておりませんし、一次取得者もここに来て大分選別を強めていると言われています。前倒しで買っている人もいますから、これ以上公庫にお金を流しても、どれだけ住宅の今のブームがもっかということは疑問になってきています。さらにこれから雇用不安がふえれば一次取得者も考える。  私の後輩が先日マンションが安くなったといって買って喜んでいたのですが、半年ぐらい前ですが、自分のボーナスや給料が下がるのでもう手放すかなんという話です。手放そうとすると半年前に買った値段も相当割り引かないと売れない、買い手もいないという状況ですから、一次取得者も実は困っているわけです。そういう状況に立ち至っています。  それから三番目。これがけさの株価の下落の話と関係があるわけですが、昨今の株価の下落ですね。PKO、株価維持策、これは失敗であったということが明らかになっております。これに買いに出動したところが、もう今や損をかぶってなかなか出にくくなっている。公的資金があるために取引はどうしても抑制されてきた。JR東日本株の上場まではPKOをやって、JR東日本株がどうやら支えてくれるだろうという当庁の思惑は全く外れて、逆に今不安定性を増している。しかし、出ざるを得ないというりがきょうの状況であろうと思います。したがって、こういうことをやっていては指標をいじっているだけで解決しない。  そして四番目、不良債権対策。昨年八月に対策が打たれようとしていたわけですが、これが問題の先送りという形でしか事態の収拾が図れなかったというツケがこの期に及んでおりまして、不良債権が増大しているだけではなくて、不況型の不良債権が今次々と降り積もっているということで、金融機関は問題の企業に対する支援を差しとめざるを得なくなってきた。これが大型倒産に結びついている。ある意味でお金を流して指標だけをよくしようという過去の三つか四つの柱がすべて最近では限界に来ているという状況、これを察知して日本経済が非常事態に陥っているということであろうというふうに思っております。  はっきり言って問題直視型ではないわけですね、これまでの政策当局の対応というのは。時間稼ぎをしていた。時間稼ぎをしていればやがて過去の循環的な経験則からいって景気が立ち直るであろうと思っていたわけですが、どっこい経験則は成り立たなかった。マーフィーの法則のように、最悪の事態は必ずやってくるという形でやってきてしまったということだと思います。  それでは、少し前向きに考えたらどうなのか。今検討されていますさまざまな改革ですね、これが日本経済の将来の明るい状況をもたらすのではないかということが言われております。今改革ブームといいまして、英語ではファッドとか言っていますが、そのブームが税制改革それから構造改革、具体的には規制緩和それから政治改革、改革の文字がつけばマスコミが飛びつくという世の中になっておりますが、この改革が果たして今の日本の問題を救うのだろうかというふうに考えてみますと、私は大変否定的です。  その最たるものは税制改革です。もともと税制改革というのは中長期の税のあり方の問題でありまして、これは経済がうまくいっていることを前提に書き上げたシナリオでございますので、経済がまずくいったときに働きようがない。うまくいきっこないわけですね。したがって、景気対策として所得税減税をやれという話が、いつの間にか直間比率見直しとか消費税引き上げに見合う所得税減税とか、そういう話にすりかえられておるわけです。これは全く議論のすりかえであることは明らかであるわけですが、そこはなぜか世の中のオピニオンリーダーだとか論者だとか、いろいろな方がそこをむしろわかりにくい形で議論しているために、何となく今日までこの話が来てしまっています。  しかし、海外から見るとこの誤りは明らかで、昨今アメリカのベンツェン財務長官以下、余り学者でもない、余り経済学を知らないような人から指摘されているぐらい、これは明らかなすりかえの問題だということは国際的にも明らかになっております。こういう改革は改革として中長期に大いにやっていただく、議論も結構です。しかし、今日本景気考えたらどうなるか。これは当然所得税減税というのをもっと初めにやっていなければいけなかったということです。  私は、二年ぐらい前からこれを唱えまして、昨年学者の提言というのを、ちょうど一年前ですね、余り使いたくもなかったのですが、建設省の記者クラブで提言をいたしまして、二、三新聞記事に載りました。それから、テレビにも一年ぐらい前に何回か、出たくもないテレビに出まして、所得税減税六兆円戻し税でやれということを言いましたが、一年がもう空転、空費されております。これは後で申し上げますが、こういう税制改革という形でやった場合には、むしろデフレ効果が激しいということが明らかになっています。  それから規制緩和、これが今の内閣あるいは細川政権の目玉だとされております。確かに規制緩和は長期的に経済の体質を改善し、日本では緊急に必要なものも多いわけです。しかし、規制緩和一般というのは明らかにデフレ効果を持つというのが経済学の常識でございます。短中期的な摩擦が起こるわけですから、規制緩和によって競争に負ける産業、負ける企業、負ける分野から当然のことながら企業、労働者が排出される。それが吸収されるものが出てくるまでは必ずデフレ効果が起こるわけです。これはアメリカが四、五年苦しんできている状況でありますが、日本はこれから四、五年そういうことをやる体力や意志があるのかどうかということが非常に大きな問題です。  歴史をさかのぼれば、この種の議論というのは、ちょうどことしが平成五年ですが、昭和五年の金解禁のときに行われた議論と全くうり二つです。歴史から学べば、日銀出身、大蔵大臣という組み合わせの政治的に野心がある井上準之助氏が自分のもともとの説を曲げて旧平価による金解禁とそれから大変な緊縮財政日本は国際的に強い体力がなくてはいけないのだという、大和魂を鼓舞して金解禁をした結果どうなったかという教訓から学べば、規制緩和一本やりで今回のものは乗り切れると考えることは全くの誤りであることがわかるわけです。  三番目、政治改革。これは私は専門でもありませんし、皆様に直接関係があることであえて申し上げませんが、簡単に申し上げれば、政治改革中は経済政策は空白期間になることは明らかでございます。したがって、例えばうがった見方をすれば、今回の所得税減税がなぜ十一月の十六日ぐらいまで答申が引き延ばされたかというと、それまでに政治改革が先行する、それが終わったころにそろそろ税制の話を出すという順番が明らかに国民には見えておりますから、それに嫌気が差してこれだけ経済状況が悪化しているということでございます。  ですから、こういう改革の議論は結構です。大いにやっていただきたいのですが、国民が苦しんでいるこの経済非常事態をどうやって救うかということがどこにも見えない状況は大変憂うべきことで、それははっきり申し上げて政治家の責任であろうと私は考えておる次第です。したがって、私としては、きょうぜひ政治家の皆様に次のことをやってほしいという提言を申し上げたいと思います。  私の今の状況に対する見方は、日本経済は病気になっているということです。この病気説をとるか、あるいは病気でなくて日本経済はだんだん年をとってきて、体力がなくなってきて、だらしなくなっているというふうに見るかという二つの路線は、大変違った路線なんです。  世の中に、規制緩和をし税制改革をすれば日本経済はよくなるというふうな議論をしている人は、日本経済はちょっと今疲れてちょっと体力がなくなってきている、年をとってきている、だからマラソンでもして冷水摩擦でもして体力をつければよくなる、こういう考え方なんです。しかし、では例えばがんに侵されている患者に冷水摩擦をしてマラソンをしろと言ったらどういうことになるか。それはやはり考えていただかなければいけない。  私は病気説をとっているわけです。その病気をだれが起こしたかという責任論はこの際おくとしても、病気の患者には手当てをしなければいけない。最近テレビタレントの方でがんに侵された方の例というのは、大変人ごとではなくて、日本経済を象徴しているわけですね。一度悪くなりかかって、医者が少し治療してくれて、治ったようなつもりでいたらどうも体の調子が悪い。この春ぐらいに行って幾ら医者に訴えても、もう大丈夫なんだ、それは手術の糸がちょっと残っているだけなんですとか言われて、待っているとどんどん悪くなる。これはおかしいというので医者をかえたら、これは大変だ、すぐ手術しろということで、応急処置をとって容体が安定してから大手術をして一命を取りとめる。これはまさに天の啓示で、病気にかかった方には申しわけないのですが、これがまさに日本経済をそのまま反映して、暗示して、何かを我々に語りかけているというふうに思わざるを得ないわけです。  つまり、ことしの春ごみ、日本景気が立ち直ったかのごとくあらゆる経済官庁、マスコミ、評論家たちが口をそろえて、もう景気の底を打った、仮に回復が弱くてもこの年度の後半からは力強く立ち直るということで、はっきり申し上げて、大蔵省、通産省がっくり上げた三・三%のことしの成長率は達成できるというシナリオで進んでおったわけですが、見事にそれが破綻した。それがきのう発表されて、それで株価が崩れ、雇用不安が一段と出てくるという状況かと思うわけですが、おかしいというふうにその後訴えかけても政策当局は、それはたまたま円高が来たから、たまたま冷夏が来たからという口実でひとつも治療をしようとしていない。その間に日本経済は瀕死の重症にまで陥っている。  ですから、私としてはここで医者をかえろということを申し上げたいわけです。つまり、政策のイニシアチブをとっている人たちをかえなさい。これまでの政策のイニシアチブをとってきたのはだれか、どういう考え方でとってきたのか、それをこの際、百八十度かえていただきたい。それをかえるのが政治家の役割だろうというふうに私は考えております。  医者をかえる場合に、どういう診断をするかということですが、まずは応急処置をしなければいけないのですね。  呼吸困難それから出血多量、貧血を起こしている病人には容体を安定させなければいけない。安定させるのは所得税減税であろう。まずはお金を少しサラリーマンに渡して、とにかく急場は何とか乗り切って、破産せずに、自殺せずに何とか生き延びてほしいということを言うのがまずはやることだ。これは当然赤字国債で戻し税方式。すぐにこの年末にもやるべきで、一刻を争う状況であります。戻し税方式でやれば、これは一回限りですから後でどうにでも償還ができるわけです。これを税制改正の問題にすりかえるので、永久に税率が変わってしまう。これに対してさらに永久的な財源という話になるので、そう簡単には物事が進まなくなることは当然なわけです。ですから、これは戻し税で緊急にやる、赤字国債で戻し税でやるということです。  それから、実質金利をなるべくゼロに近づける。これは難しいですね。日本はデフレですから、名目金利をゼロに下げても実質金利はプラスですから、これはゼロといっても言うはやすく行うはかたいのですが、少なくとも公定歩合はゼロにするということです。ですからあすにでも、きょうにでも三重野総裁、きょうはのんびり東京のどこかで講演しているようですが、そんな講演している間に日銀に戻って公定歩合をゼロにする、つまり特融を全面的にやることに近いことを決断しないともうだめですね。だめだという意味は後で申し上げます。  それでも、企業としては自分のつくっている物の値段がどんどん下がるわけですから実質金利は高いわけです。ですから一・七五まで下げたときに未曾有の低金利だなんと言った日銀総裁の経済的なセンスはやはり疑わざるを得ないわけですが、それは後にまたもう一回申し上げます。  そういう応急手当をして、底割れてしまった景気の底を多少かさ上げする、そして治療をしなくてはいけない。内科治療と外科手術というふうに私は書いているわけですが、内科治療というのは、金利をゼロにしても税の負担は時間とともにたまっていきますから、なるべく企業や家計のリストラの支援を特に税制面でしていくことが大切であろうと思います。  特に企業は今余分な設備を抱えております。これを企業の責任に帰していてはいつまでたっても解決しません。ですから何とか設備を廃棄する。廃棄する場合に出る損失をどうやって利益を圧迫しないように税の面でサポートするか。それから減価償却費、大変重荷になっているわけですね。三大固定費の金利と人件費と減価償却費、この一つの減価償却費を今考え直す時期に来ているわけで、これを少し先送りするわけです。例えば法定耐用年数を一割ふやせば、恐らく数兆円の減税と同じ効果を持つ。  それから、もちろん法人税の軽減です。変な株価維持政策をとるより法人税軽減の話を出した方がよっぽど株価は反応するわけで、本来の企業の税引き後の収益を助けてやるような政策をとらなければ、幾らお金で株を支えても結局はだめだということは経済学の常識ですが、今どうも常識のない人が株価操作をしているような状況がございます。  それから、今言ったような実質金利軽減、そういうリストラを支援する。  事実、家計なんかはあれですよね。大蔵省が何を思ったか、相続税の滞納は免除してやるみたいなことはやっているわけですよ。ですから、非常に政策が一貫してなくて、なぜ相続税の滞納を免除してやるのにほかの人には何もしないかというのは全く理解できないわけで、こういうところが政策当局に任せておくとだめだということです。もっと全体を見回すプログラムが必要である。そういうリストラへの支援をする。  そして、今は不動産が動いていない。株がこういう状態ですから、それに対する規制税制を緩和する。昨日、監視区域を弾力的に見直すという話がありましたが、これは即時全面撤廃ということを政治家の方が大いに各地方自治体に働きかけて全面的に緩和をする、廃止する。  それから、税制については買いかえ特例の復活、地価税の廃止、譲渡益課税、特に重課については廃止するというような、土地や証券を動かす方向に持っていく。動かすからといって必ずしも地価を上げる政策とは限らないわけで、動かしたらもっと下がるかもしれませんが、それは構わないので、動かして損切りができるようにする。リストラを支援するということです。  そして、いよいよ外科手術です。  これについては恐らく後で御質問があると思いますから簡単に申し上げますが、本格的な外科手術というのは民間レベルの金融システムをどうやって健全な形に戻すかということ、これがデフレ対策の一番のかなめになります。これは本格的な不良債権対策を行う。  今不良債権をどうやって流動化するかということが問題になっておりますが、端的に言えばアメリカから学ぶ、この分野で先進国のアメリカから学ぶ。アメリカでの不良債権対策の目玉は証券化ということ、それから公的な機関が証券化しても動かないものを買い取って、それをいかに安く市場に出して証券化の基礎をつくるかという公的資金、この二つに尽きるわけです。日本では公的資金、税金は無理にしても財投資金とか日銀の特融という手がありますので、これはやはりやるときに来ている。  それから、ウルトラCといいますか、検討に値するのが資産再評価とデノミの同時実施ということで、いろいろな問題が解決できるであろう。資産再評価だけをやるとかデノミだけをやるというと、それなりのメリット、デメリットが議論されますが、こういうものを同時にやる。一つの大きなプログラムとして資産再評価、デノミその他、そういうリストラへの支援策は非常に大きなプログラムの中で同時に行うということで、それぞれのメリットを生かし、デメリットを最小にするようなプログラムを考える、それが恐らく我々の役割だろう。  そして最後に、こういう事態に至らしめた政策当局の体質を改善するにはどうしたらいいか。さっき医者をすげかえると言いましたが、すげかえるといってもやはりまるっきりなくしてしまうわけにいかないので、今後ともお世話になるわけですから、もしやぶ医者だったら、それを訓練していい医者にしてやるにはどうしたらいいかということを考えなくてはいけないわけです。  それははっきり申し上げて政策決定、特に経済政策の決定方式の見直しです。特に経済官庁はそれぞれの委員会とか調査会、審議会というのを持っておりまして、そのメンバーの指定は全くその都合のいいように、自分たちの考えた政策のお墨つきを与えるようなメンバーの構成になっている。それを記者クラブ制度によって、子飼いの、自分の手懐けた記者に記事を流しでそれを掲載させる、そういうシステムが、政策がいわば広報的な手段として世論形成、世論操作に近いものが行われる。そしてまた、官僚のOBが評論家然としてテレビや新聞などに出て、そういう政策をあたかも国民のためというふうに吹聴する、そういう循環がこれまでの政策を誤らせてきた。それは、特にここのところの景気対策においては如実に見てとれるわけです。そういう悪循環のどこかから断ち切らなければいけない。当面は調査会、審議会、委員会のあり方、これを何とか議員の皆様、政治家の皆様のリーダーシップで根底から変える、メンバーを入れかえる。これまでのメンバーは、すべて再び委員会には出さないということですね。そういうあたりから切る。  そして、これは若干中長期的課題ですが、金融当局の組織改革と再編。長年、金融庁の創造、日銀をもっと独立性、独自性のあるものにして総裁以下経済のわかった人を民間から起用するという提案がなされていますが、ある意味では、これを持ち出すいい機会ではないかということです。大体そういうことが私の治療法の提言でございます。  そして、最後にあと一分だけいただきますが、今申し上げた中のものでも、なかなか普通の事態ではできないものが多いわけですね。それぞれ反対意見もある。かなり極論もあるし、学者の意見的なものも、青臭いものもあれば、なかなか実行に移せないものが多いわけです。ですから、私の意見は、こういうものを、英語で言うとコンティンジェンシープランといいますか、危機が起こったときの緊急策と促して今のうちからまとめておく。そして、いざ事が起こったら、もうきのう、きょう起こっているかもしれません、あしたぐらいに起こるかもしれない。しかし、株が、例えば一万五千円を切り一万円ぐらいまで暴落をしたときに、すぐ経済非常事態宣言というのが出せる、そして、こういうプログラムを政府考えていますというプログラムをきちんと出せるようにしておくのが政治家の役割だろうと思うわけです。  ですから、私は若干雲をつかむようなお話を今申し上げたかもしれませんが、こういうものをきちんとふだんから、ワーカブルな、つまり実行可能な形で具体的なプログラムにパッケージにしておいて、用意しておく。事が起こったときに、非常事態宣言を政治家がそろって超党派で発表し、このプログラムはこういうのがあるのだということを出す。  そして、その切り札は、私は時限立法だと思います。これは議員立法で、国会で緊急に時限立法で設立する。例えば一年なり二年なりの時限立法で、その期間内、二年間戻し税を六兆円やります、二年間実質金利をゼロにします、二年間減価償却をしないでいいということにします、二年間かかって不良債権を公的資金を入れて償却します、二年間証券化のための枠組みをつくります。例えば、アメリカなどのように不動産投資信託のような枠組みをつくります、その二年以内に資産再評価とデノミを行います、二年以内に政策当局の決定方式を決定的に変えますという、そういう時限立法で時代を乗り切ったらいかがか。中長期的な改革の話、税制改革、政治改革、経済の規制緩和を行う構造改革というのは、その二年間は緊急策が優先し、その二年後にそういう改革が再び動き出すような措置にするのが私は正解だろうと思う次第でございます。  以上で私の提案を含めた意見陳述を終わらせていただきます。
  35. 宮地正介

    宮地委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  36. 宮地正介

    宮地委員長 これより参考人に対する質疑を行います。質疑のある委員挙手をお願いいたします。
  37. 上田清司

    ○上田(清)委員 新生党の上田清司です。  先生、貴重な御提言をありがとうございました。  一つお尋ねしたいのですが、赤字国債を発行することに関して、特に大蔵省サイドで非常に懸念を持っている。また、先般の大蔵委員会で大蔵大臣も、経済が悪くなるよりも体質が悪くなるのが非常に心配だというような発言があったのです。正直なところ浅学非才でわからないのですが、なぜ別に構わないのかということについての理由なりお考えなりをちょっと教えていただければ大変ありがたいと思います。
  38. 宮尾尊弘

    宮尾参考人 お答えいたします。  確かに日本赤字国債の残高というのはGNP比で見ても、例えばヨーロッパの国をとりますと、どのヨーロッパの国よりも高い。アメリカよりは若干低いかもしれませんが、大変高い水準にあることは事実です。しかし、その趨勢、兆候、その動きというのを見ますと、日本の場合には、昭和六十一年、二年、一九八六年、八七年以降、基本的にはそれを償還する方向で政府全体としては動いてきているわけです。しかも、狭い意味での政府の収支ではなくて、政府貯蓄というような幅広い、政府がどれだけ民間からお金を吸い上げているかというような視点で、これは実はアメリカが最近問題にしている指標ですが、こういうもので見ると、依然として政府の貯蓄というものは大変大きな額でお金を取り込んでいるという事実があるわけです。  ですから、もちろん長期的にはこれを続けていくことが行財政改革になることは確かなんですが、申し上げましたように非常事態であるわけですから、この趨勢を長期的には変えずにどうやって今の問題を処理するかという難問に我々直面しているわけです。今の問題の解決は、その長期的な動向と結びつけてしまうと何もやらないということに実はなるわけです。したがって、私がここで提案しているのは、ある意味ではそれに対する解決案を提言しているので、一、二年の臨時措置として国債発行の戻し税方式で減税をする。しかし、これはあくまで一、二年の問題であって、これを償還する方法は、その臨時措置が終わった後、どうやってこれを償還するかというのを国民が知恵を絞って考えるべきである、そのときに政治的リーダーシップが再び問われるということです。  ちなみに、これについて一言だけ私は申し上げたいのです。国民減税をつまみ食いするという表現がございますが、これほど国民をばかにした表現はないわけです。実は財政当局の思い上がった、都合のいい言葉なんですが、これが不思議にマスコミも政治家も学者も国民もみんな使っているわけです。考えてみると、国民減税をつまみ食いするというのを国民が言っている国は日本だけですね。  ですから、国民考えて、今減税が必要なら減税をする。そして、増税が必要なときには政治的リーダーシップのもとに増税をする。あるいは、増税せずに支出を削って、もっと行革をし、むだな歳費を削って捻出するということも、もし一年、二年限りの赤字国債であれば十分長期的にできるわけで、そういう形で私はこれを主張しております。  それから、さらに一言づけ加えますと、赤字国債というのは基本的には国の借金ではありません。これは国民国民に対して負うているものであって、国債を保有する方にとっては資産になるわけです。したがって、国家の財務体質は悪くなっていないわけです。外国に借金しているわけではない。むしろ実体経済にそれがどういう影響を及ぼすかというところで判断すべきだというのが経済学の常識でございます、財政学の常識でございます。今のように失業が起こり、遊休が起こった場合には、赤字国債を出して実体経済のむだをなくすことが本当にむだがないことであって、赤字国債がむだなんだという議論はまるっきり間違っているというのが財政学の常識でございますが、なぜか世の中の財政学者、特に審議会の委員になっている方はそういう常識を忘れて議論されている傾向があると思いますので、一言づけ加えたいと思います。
  39. 大原一三

    ○大原委員 自民党の大原と申します。  きょうは、非常に興味のある、すべて私が関心の持てる事項ばかりでありまして、特に、今所得税減税お話が出ましたけれども、ひとり歩きしてしまっているのです。アメリカの財務長官も、所得税減税をすれば景気が出るような単細胞的発言をきのうかおとといしておられましたね。なぜ私がそういうことを言いますかというと、財政当局は、消費税引き上げでこれを賄う、そういう単細胞的発言ですね。  先と言われたとおりに、仮に十兆円の減税をいたしますと、所得税減税分の四割から三割は貯蓄に回ってしまうのですから、十兆円からの減税をして消費に回る分は六兆円しかないわけです。それを消費税で賄った場合には、消費マイナス効果が十兆円ですから、差し引き景気対策としては明らかに四兆円のマイナス効果になる。その辺のことの議論なしに、所得税減税はすぐに消費税引き上げで、財政当局はそういう発想から物を言っているようでありまして、これは間違いである。ですから、先生がおっしゃるとおり戻し税減税ないしは所得税減税の二年か一年の先行型の消費税引き上げという問題ならば、これは効果があるだろうと思うのです。私はそこは、先生の御意見、非常に賛成であります。  きょうお聞きしたいのはそこではありません。実は資産再評価の問題であります。  私は、これに非常に早くから関心を持っておりまして、自民党の財政会長をやっているときから資産再評価の提言をしたことがあるのです。金融当局の一部がこれに関心を持ってくれました。しかしながら、この議論が本格的に始動しない。いろいろな理由があるということでございましょう。  昨年、私はシュレジンガーさんにも会ったのでありますが、ドイツに行きましたときに、EC統一指令でもって、土地並びに固定資産の再評価をしなさいという統一指令が出ているのですね。そうして、土地の再評価の四五%を資本準備金に繰り入れなさい、株についてはもう既に先行してやっているのです。四五%を資本繰り入れできるようにしているわけであります。シュレジンガーさんはこれに反対でございました。しかし、ドイツの大蔵省はこれはやるべきだ、ECで足並みをそろえようということで法律を出したときに、なぜシュレジンガーさんが反対したかといいますと、ドイツはインフレが最大関心事だ、したがって金融機関のふんどしを緩めてはならない、緩ふんにしてはならないということからすごい抵抗をしておられましたが、最後は納得をされたわけです。  そういった先進国の事例もあり、我が国の固定資産の時価と取得原価の格差は、これは世界で一番大きいわけですね。しかも、最近アメリカの公認会計士は、日本の貸借対照表は当てにならない、土地の資産価値というものが全然表面に出てないではないか。さらにまた、最近の世界的公認会計の流行は時価主義だというような議論もこれあり、それらのもろもろの見地から、私は資産の再評価を提案したわけであります。  特に先生おっしゃるように、不良債権償却ということから、この金融機関、これはすぐれておりまして、ドイツの場合は銀行だけなのです、認めたのは金融機関だけなのです。イギリスとフランスはオーバーオール、すべての企業に認めております。  ただ、日本の場合、経済界がこれに非常にシュリンクするのは、税金を取られやしないか、戦後五回ぐらいやりましたが、あのときは強制再評価を除いて六%の資産の税金を取っているのです。それに恐れをなして日本経済界発言しない傾向があります。  ところがヨーロッパでは、イギリスとドイツは、土地を売ったときに課税いたしますということにしているわけですね。売ったときに課税します。だから、ノミナルな資産の評価をやった段階では課税をいたしません。こういう仕組みにしているわけでありまして、やりようによってはそういうこともできるわけでありますから、私はこの際、不良債権償却という緊急体制をつくるために、少なくとも金融期間だけと言っていけるかどうかわかりませんけれども、税金をかけない方法で土地の再評価をして、さらにその一部を資本準備金として繰り入れるという仕組みをつくって、金融機関のリストラをやっていくことが大事ではないのかな。  単純に計算いたしますと、金融機関だけでもこの固定資産の再評価をやりますと、いわゆる自己資本比率八%すれすれが一〇・五%にずれ上がるわけです。そうなりましただけでも金融機関の懐が若干緩んで、いわゆる貸し出しもしやすくなる。両方から見て、私はこれは一挙両得ではないのかという議論をしたいと思っているし、またやるべきである、こう思っている一人でございまして、もう少し先生の御意見をこの点について敷衍をしていただけたらありがたい、こう思います。よろしくお願いします。
  40. 宮尾尊弘

    宮尾参考人 大変長い御質問だったので、ほかの方の公平のために答えを短くいたします。  私もその点いろいろ実は研究中でございます。税については大変難しい問題があるということで、よく言われますのは、再評価益を資本として繰り入れるのか利益とするか。利益として損とうまく相殺すると不良債権の問題が解決すると言われていますが、その場合課税の問題が出てくる。非常にジレンマの面があるわけですが、私は、そのためにも特例緊急措置期間というのが利用できるのではないか。つまり二年間なら二年間、この資産再評価をやって、その利益はその期間は少なくとも課税しないという形でこの臨時の特例の期間というのが使えるのではないか。  いろいろな会計学者の議論がありまして、それをやっているとまた延び延びになるわけですね、ちょうど所得税減税と同じように。ですから、今は緊急事態ですから、資産再評価の課税をどうするかという問題についても中長期的に議論しよう、しかし、とにかく今やって利益を出して不良債権を相殺することが先だとすれば、二年間なり三年間の特別立法期間にそういう措置を行うのも一つの案ではないか。  それからもう一つの問題点は、土地を持っている銀行、上位都銀というのはそれだけである程度自分の不良債権償却できる体力を持っている。逆に、体力がないところは土地も余りないという関係をどういうふうに考えていくか。そこを、もう一つ制度的な工夫があって、今の系列方式をそのまま一つの制度化して、土地を再評価して利益が上がった都銀のその系列下のノンバンクも全部含めて助けるという制度をつくれば、それが作用するけれども、それをまるっきりばらして競争しておいて再評価をした場合には、強いところはますます強くなるというのをどう考えるか。その辺の工夫はもう一つ必要かと思いますが、これも特例期間にあるルールをつくって、系列下の不良債権を救う方に使うという措置をつければ成功する可能性が大変高い。  最後にもう一点、これはデノミなどとの組み合わせというのは案外重要で、具体的には、例えばデノミをするとその費用が金融機関に比較的多くかかってくるということが言われておりますので、今度再評価の場合には金融機関は潤うということですから、そういうのを相殺するような議論をすれば、より一般に受け入れられるかなという気がしておる次第でございます。
  41. 村井仁

    ○村井委員 新生党の村井仁でございます。  先ほどの上田議員の質問に関連してでございますけれども赤字国債の議論に関連いたしまして、国債がふえますと当然国債費が歳出面で非常な圧迫要因になる。これは財政の上では非常によくわかる。もう一つ金融の面で、長期金利が高とまりになるという議論が当然あるわけでございますね。そういう意味で、景気に対して必ずしもプラスの要素にならないのではないかという議論があります。この点についてどんなふうにお考えになるか、これを一点お尋ねしたい。  それから全然別の話でございますが、先生の御議論で不動産の譲渡所得税軽減、それから買いかえ特例の全面復活という大変明快な御意見があるわけでございますけれども、このあたりにつきましてもう少し詳しいお話をお伺いできないか。こちらの方は解説を少ししていただきたい、そういう趣旨でございます。
  42. 宮尾尊弘

    宮尾参考人 お答えいたします。  初めの方の問題は、一、二年あるいは非常に短期に限った赤字国債であれば今の情勢からして長期金利が上がることはほとんど考えられないと思います。これがまた構造的な国債の増発、残高の中長期的な増加になってまいりますと大変問題でございますが、今のように景気がこれだけ悪くて金利が下がっていっている状態では、むしろ早く全体の状況をかさ上げすることが目的でございますので、私は臨時の一、二年の発行であればほとんど長期金利に対して影響はないというふうに考えております。  それから、後半の議論が私は大変重要であるというふうに思うわけですが、今回の不況はデフレ不況というふうに申し上げました。もともとこの原因は資産デフレということで、証券や不動産の価値が大変急速に落ちたことによるいろいろなデフレ効果というのがそもそもの原因になっているわけですから、これをどうやって解決するかということです。よく言われるのは、またもう一回値段を上げればいいではないかという話がありますが、これはなかなか上げたくても上がらない状況ですし、上げるのが望ましいかどうかということも、またそれなりの議論がございます。  私の視点は、むしろ欧米市場でこの資産デフレにどう対応したかということを考えますと、これは損なら損で損を確定して、損切りをして、早く損に対処することを官民挙げて努力したということが一番大きいわけです。その結果、景気が立ち直ると再び株が新高値をつけたり、不動産が回復したりというのが結果として出てくるわけですから、結果として出てくるものを先取りして、株や地価が上がらないと景気が回復しないという議論もあるのですが、それよりはむしろどうやって今の不動産取引を復活させるか。売れていれば安くてもそれで処分して、それで損を確定して、その損を一体どういうふうにしたらいいかという政策の見通しが立つわけですね、個々の企業政府も。  ところが、今はもう売るに売れない、買い手がまるっきり市場にないわけですから価値ゼロですよ。とてつもない負債になるから、それは表ざたにしないで、しょうがないからそのまま持っている、金利も払ってない、そういう状態になっているわけです。今の状態は一番悪い状態ですから、とにかく動かす。動かす第一段階というのは、取引を規制しているものを緩和する、これが監視区域を撤廃しろというふうに申し上げた次第です。しかし、現状では、実は監視区域をなくしても恐らくほとんど取引は復活しないと思います。もうそこまで取引は落ち込んでいます。  ですから、次に手をつけるのは税制ですね。土地税制についてはいろいろ大変複雑な問題があるのですが、国際的な常識でいいますと、買いかえ特例というのが諸外国では原則になっておりまして、特に住宅については買いかえ特例あるいは原則非課税というのが欧米諸国共通であるわけです。日本も一時こういう方向に行ったのですが、なぜかこの五、六年、やれ買いかえを進めると地価が上がるとか、地価がどこかへ波及するとか、何かそういう、はっきり申し上げて非常に子供っぽい議論が政策当局の一部の頭の中に入り込みまして、買いかえ特例といういい制度までもなくしてしまった。  それが、確かにいい制度だという議論が圧倒的だというので、昨年ですかことしですか、若干復活したのですが、この復活の仕方がまるっきりやる気がない復活の仕方でして、何か一億円の上限とか、十年持っていないといかぬとか、二年の時限であるとか、あらゆる水をかけていますから、ほとんど買いかえに効果がないわけです。ですから、これを本格的に、買いかえを進めて、少なくとも買いかえにかかわる不動産を動かすという意味では、税の面で買いかえ特例を全面的に復活する。それから、居住用に限らず商業用不動産も買いかえを全面的に認める。  そして、特にここ数年入ってきた譲渡のうちでも重課というものですね。これまでにない重い税、特に短期のいわゆる転がしを防ぐという名目で入ってきた重課というのは、これは非常に土地を固定化させるわけですから、少なくとも重課部分はもとに戻す。最終的に譲渡課税そのものをどうするかということは実は学者の中でもいろいろな議論がございまして、土地に限らずほかの譲渡課税をどうするかという税制改革一般の中での議論がございますから、これは検討課題として残ると思います。  当面、買いかえ特例、それからここ四、五年入れられてきた重課をもとへ戻すという、そういう土地流動性を高める税制措置は緊急に必要であるというふうに考える次第です。  それから、はっきり申し上げて地価税ですね。もともと土地の保有課税というのは税制改正の中にもターゲットの中になかったわけです。いわゆる所得から消費から資産へ、この資産というのは資産所得課税のことで、保有税というのはもともと概念としてないわけです。ところが、たまたま地価が上がって、地価が上がってけしからぬとか抑えてくれという世論とマスコミの動きに乗っかって、資産課税としてもう一ついいのがあった、税を取りやすいのがあるというので、それで入ってきたのが地価税ですよ。  ですから、今これが自治省と大蔵省の間でもめているのは当然のことで、もともと自治省の領分、固定資産税地方税の分野に国が手を入れたわけですね。国が手を入れる、つまり戦前の地租体制に戻す口実として今回の地価高騰が使われたというのが事実です。  私は、政府税調の土地問題に関する小委員会に暴れ馬として入ってくれという要請があったのを断りまして、そういう陰謀のある税を議論する委員会に入らないということで、昨年一年間それにずっと反対し続けてまいりました。そのために私はマスコミやなんかで、不動産屋の味方じゃないかとか変なことを書かれまして大変憤慨しておるわけですが、私は本来あるべき税の形というものを、そういうマスコミや世論の流れに流されずに見てきております。今資産デフレ不況というときですから、誤った地価税は即刻廃止、それから譲渡に関するものは、買いかえは前面復活、そして重課も廃止という措置を、できるだけ今検討されている段階で入れる、そして来年度から実施ということをやっていただきたい。  残念ながら、今の税調の間もなく出る中間報告では、そこは恐らく全く触れずに答申が出ると思います。これは、実は税調の委員がけしからぬわけで、税調の委員は全面的に即時入れかえというふうに私は主張する。実はもう間もなく期限が切れるのですが、なぜかお手盛りで、自分で延長を決めるというようなけしからぬメンバーです。この税調のメンバーはもともと今回の政権交代以前のメンバーですから、全面入れかえで、もし全面的に入れかえれば私は入ることはやぶさかでございませんので、それだけ申し上げておきます。
  43. 塩崎恭久

    ○塩崎委員 自民党の塩崎恭久でございます。  ただいまの買いかえのお話でございますけれども、私も買いかえの復活について賛成であります。  私は愛媛県の松山出身でありますけれども、例えば、松山市内に工場を持っていて、手狭になっているとか騒音で苦情が来るとかいうときに、外に出ようと思って土地を物色していて、ほぼ決まっていたのだけれども、この買いかえ特例がなくなって、長期の保有資産、土地償却資産の取得に関する特例がなくなってしまったということで、今で言えば数少ない設備投資がやるにやれないところに来ているという苦情が大分来ております。そういう意味で、資産の買いかえ特例の復活については私も賛成ということでございます。  質問はその件ではなくて、デノミの件でございます。先ほど資産再評価とデノミはワンセットでというお話がございました。資産再評価については益出しということでよくわかるのでございますが、デノミの話はよく不況になりますとお話が出てまいります。そのときどき、派生的な需要効果等々いろいろ話があるわけですけれども、果たしてそれがどれだけの効果があるのかというのはいま一つ私も乗り切れないところがあって、先生のこのデノミの経済的な効果についての評価と、なぜ一緒がいいのかという点について御説明をいただきたいと思います。
  44. 宮尾尊弘

    宮尾参考人 大変大きな問題で、短い時間でお答えすることはできないのですが、一言で申し上げますと、これは実は戦後の日本の積み残してきた問題をここで考えるという分岐点に今来ておるわけです。それは確かに、私が申し上げている臨時の緊急措置というよりは、むしろ本当の意味の改革の一環として位置づけられるべき問題だというふうに思うわけで、それはもともと一九九五年ないし九六年のシナリオという形で以前からスケジュールに上っておった課題のうちの二つの大きなテーマであるわけですね、資産再評価とデノミというのが。  国際的な会計基準に日本が合わせていく、国際的な経済で非常に重要な役割を果たす国としての通貨の単位をどうするか、そして世界と同じような数字、同じような感覚で国民が世界経済を論ずるような環境づくり、枠組みをどう考えるかという大変大きな歴史的な課題であるわけです。  その点で、この資産再評価とデノミというのは、それぞれ方向性は、資産再評価はどちらかというと国内向きであって、国外にもインパクトがある。一方、デノミの方はどちらかというと対外的な効果をかなり重視しながら国内的なインパクトがある。そういう国内、国際のそれぞれの方向性の役割分担がございますし、それぞれの政策のメリット・デメリット、それからそれによって潤う産業分野というものを考えますと、大きな政策を一つだけやるとかなり偏った効果になる可能性があって、その分で議論がつぶれる可能性があるわけです。その意味では、デノミと資産再評価というのは比較的違った方向に経済効果が分散されるという側面、そういうさまざまな問題がありますので、政治的リーダーシップがとれる段階になって、それは今の政権か次の政権かわかりませんが、政治的リーダーシップを発揮するときに、一つの石で二つの鳥を落とすという形で行うのが一番適当ではないか。  それは、はっきり申し上げて官僚任せではなかなかそういう冒険はやりたくもないしできないし、自分の任期の間はやってくれるなという安全主義がどうしてもはびこりますから、やはり失敗したときの泥は政治家がかぶるという形で、首相なり特別に任命された委員会がリーダーシップをとって、そういう大きな改革を二つ三つ同時に行う。それを行うきっかけとして、こういう緊急事態の非常事態宣言ということで、国民に非常事態の問題意識を持たせた上で議論をするのが適当だというのが私の議論でございます。  あと詳しいことは、よく物の本や雑誌にあります資産再評価の効果、デノミの効果ということで御理解いただければと思います。
  45. 栗本慎一郎

    ○栗本委員 新生党の栗本慎一郎でございます。どうもありがとうございました。  幾つも非常に多岐にわたる御提案なんですが、一貫しておるものがあると思います。特にその中で、ここで先生が外科手術というふうに挙げられた本格的な不良債権対策、これは銀行の担保不動産の流動化を図るために具体的な手法として提案されていることに関して、非常に関心がございますのでちょっとお伺いしたいのですけれども、この場合に日本国内では若干の反論がございます。  というのは、日本では証券市場のPKOだけでなくBKOというのもあると私は思うのです。バンク・キーピング・オペレーションというものがございまして、アメリカも例えば整理信託公社のようなものは、銀行が場合によったらつぶれる、あるいはつぶれ得るということを前提にしていきますから、そこが持っている担保不動産等もパッケージにして、簡単に言うと、そういった場合になぜ土地市場が活性化するかというと、安い価格のものも出てくるし、高ければ高く売れるということですね。ところが、バンク・キーピング・オペレーションがありましたらば、そうはいかないというのが一つの主要な反論といいますか、一つの疑問ではないだろうか。  あと、ありますのは、土地の意味がアメリカと日本では違うのだからというふうな、土地の場合には担保になっているものでも日本の場合はそんなに広くないし、パッケージにするというのも問題がいろいろあるのだというふうな、これは従的な反論だと思いますが、この辺に関しまして先生の方から、いや違うのだというふうな、あるいはこういう対策があり得るのだというお考えがありましたらちょっとお教えいただきたいと思います。
  46. 宮尾尊弘

    宮尾参考人 核心に触れる御質問をいただきまして、簡単にポイントだけを申し上げます。  私が、本格的な不良債権対策の中で二つの柱、一つは証券化ということを申し上げました。一つは、公的な資金、財投の資金とか日銀特融というのを申し上げましたが、これはそれぞれ多少違った部分を念頭に置いてやるわけで、今銀行が自分たちの業界だけで共国債権買取機構というのをつくっているわけですが、ここに集まっている不良債権というのは比較的問題が少ない。不良と言われていてもそれほど腐っていない、少しにおいがする程度のものですね。  これが集まっているわけですが、今やっていることは、それをなるべく切り離して、簿価じゃなくて時価で評価して、その差額を損にして税制上のメリットを得たいということで、時間稼ぎとしてやっているわけです。自分でお金を回して、自分で買い取る形にして、その差額で税の恩典を得ようということです。しかし、それでは不良債権対策になっていないことは明らかで、最終的な買い手があらわれるかどうかということが非常に大きなポイントになってまいります。  それで、時間稼ぎをしていてもいいことはいいのですが、そうするとまた三年とか五年とか時間が空費されまして、その間、ほかの経済は時間がもたないわけです。したがって、そういうものはもっと直接証券化をしてマーケットにのせるということが大切です。それは銀行の救済ではなくて、はっきり申し上げて、大蔵省主導の銀行の持っている秘密主義、情報開示をしないということにむしろ風穴をあけるわけです。証券化をするためには情報を開示しなければいけない、それが嫌なので日本では実は証券化ができていないのです、はっきり申し上げて。ですから、ちゃんと銀行が持っている資産、本当の不良債権の形——今、開示義務がある。六カ月まるっきり一銭も払っていないというようなものだけ開示しているというのは、国際的な基準からいうと全くお笑いで、本当にどれだけの資産、財務内容かということを、あるいはその資産を例えば子会社に移して、この子会社の財務内容を全部ガラス張りにするということがあって初めて証券化が起こるわけです。  ですから、証券化というのは、今の日本の護送船団方式と言われている金融システムのあり方に対する非常に大きな牽制ないしは風穴をあけることになるという意味で私は申し上げているわけです。証券化で動かせるものは動かす、そして最終的な買い手を国際的に見つけてきなさい。今の日本不良債権で、いいものであればジョージ・ソロスでもチャイナ・マネーでも買いにくるのですね。買いたい人はいっぱいいるわけですよ。それを買って証券化してもうけようという人は今日本にどんどんコンタクトしています、投資銀行の人とかいろいろなファンドが。しかし、それには日本金融当局は余り直接タッチしたくないわけですね、体制が崩れるといけないということで。ですから、そこはぜひ証券化をして、今のような上からの系列方式、人を送って、何とか大蔵省の主導のもとに時間稼ぎをして、体力のある銀行が少しずつ償却をして、その間、お金を回して共国債権機構で持っていようというように方式を変えないといけないだろうというふうに思っております。  それはそういう話として、もう一つ、公的な資金という話になると、今言われた、それでは銀行を救済するのか、税金を使ってけしからぬという話ですが、これは他国から学ぶ。どうしようもなく腐って、その腐りがほかに影響して経済全体をだめにする、一種のがんみたいな腫瘍は取り除かなければいけないわけです。今これが見えない形でいろいろ下にどんどん落とされているわけです、系列のノンバンクとか。それから、開示がされていない地銀、第二地銀それから住専というようなところにある。これは明らかにせずに救済策をつくってやっているわけですが、そういうことをしていると十年、二十年かかってしまうわけです。  それも時間の問題になると、破綻するだけなわけです。さっきのマーフィーの法則ではありませんけれども、必ず破綻することがわかっていてやっているようなところがありますから、そこが破綻して、株価が全部暴落して、日本国民も全部それと一緒に心中するつもりならいいですけれども、我々もちゃんと生活を続けたいですから、そこはやはり政府がリーダーシップをとって国民に問題の所在を明らかにして、これだけのお金を使うということを明らかにして、そういうものを買い取る。要するに、アメリカのSアンドLをテークオーバーして、整理信託公社的な活動をどこかでやって、そしてそれをきれいにして——臨時の立法が必要でしょう、債権関係をどうやって解きほぐすかということは今の法律ではできませんから。それも臨時の一、二年の立法で、権利の一番上位にあるものは全部処分していいとかなんとかといういろいろな臨時の立法をつくる必要がありますが、そうやって処分をして、国債市場で売れる値段を探るわけです。  しかし、きっとただみたいな値段でしか売れないでしょうね。一〇〇だったら一〇とか二〇くらいでしか売れませんけれども、八〇というのは、そこは当面公的な資金でサポートする以外にないわけです。そういう形で早くうみを出して、その損を国民全体で埋めていく。今は日銀の特融をやってマネーサプライをふやす手段としてそれを使ってもいいわけですし、財投の資金で余っているものを出してもいいわけですから、ある意味ではそれが経済をさらに活性化させるという方にも働きます。そういうことをきちんと説明すれば、国民もそれは決して銀行救済ではなくて我々自身を救っているんだということがわかるのではないかというふうに思う次第でございます。
  47. 岸田文雄

    ○岸田委員 自由民主党の岸田文雄でございます。  先生、きょうは本当に有意義なお話をありがとうございます。先ほど隣の塩崎議員の方からもデノミの話をちょっとお伺いさせていただいて、重なって大変恐縮ですが、ちょっと理解できない部分があるので質問させていただきます。  先ほど先生から、資産再評価とデノミをセットされる、それぞれ極端な部分があるので組み合わせるというお話があったわけであります。デノミのメリットの部分についてなんですけれども、これは私の理解の範囲で考えてみるに、デノミのメリットは、もちろん需要喚起と、一般に言われているものいろいろあると思うのですけれども、今先生もおっしゃるような昨今の非常事態、大変厳しい状況の中でのデノミというのはいかがなものでしょうか。特定業種に逆に偏った負担の増加とか、それから消費の喚起ということから考えますと、デノミを行った際に消費に対する心理効果ですね、そういった部分に対するマイナス効果とか、逆にそのマイナスの部分の方がたくさん考えられるような気がするわけであります。  先ほど先生、資産再評価の方は国内向けとおっしゃいましたでしょうか。そしてデノミの方、海外向けというようなお言葉もあったわけでありますが、その海外向けという意味も含めてデノミのメリットの部分、もう少しわかりやすく教えていただければと思うのですが。
  48. 宮尾尊弘

    宮尾参考人 それでは端的に申し上げます。デノミは、はっきり申し上げて円高対策ですね。今、はっきり申し上げて円が高過ぎるわけです。円がなぜこれだけ高くなったかというと、政策の失敗です。国内の内需をこれだけへこませましたから。結局、日本は輸入すべきものが余りされてない。企業は一生懸命輸出しようとしますから、当然これだけの膨大な黒字がここ二、三年たまってしまっているわけです。失政によって円高になっているわけです。ですから、当然これはあらゆる産業界を直撃するわけで、これははっきりいって悪い円高なんです。  以前のいい円高というのは、日本企業が非常に生産性を高め、国内の内需も拡大し、そして企業がどんどんと新しい設備をつくり、いいものをつくってそれで輸出が伸び過ぎて黒字になったのはいい黒字で、これは円高になればそれが相殺されてちょうどいいということだったわけです。今は悪い円高になっているわけです。ほっておくと悪循環になりまして、またアメリカとか摩擦が起こって、日本企業はけしからぬということで、日本企業の体質を弱めようという戦略を出してくるかもしれません。これはまた日本の国内をさらに悪くする、円高誘導なんていうのはそのいい例です。  したがって、このデノミをやることが非常に大きな国際政治経済上の戦略になるということがよく言われているわけで、一ドル一円になればアメリカとしてもびっくりするわけです。これまで一ドル百円とか二百円という国が、突然一ドル一円になってくる。まさか相手国の一円よりドルを安くするわけにはいかぬだろうということで、そういう一つの戦略的な意味があるというふうに言われております。しかしそれは余り長期的なお話ではないかもしれません。少なくとも当面の円高対策というのには、円高に歯どめをかけるということにはなる。  それからもう一つは、やはり先ほど申し上げましたように、もう少し中長期的に日本国民が本当に国際化をするときに、いろいろな経済の感覚、数字、そういうものが、今換算するだけで大変ですよね、一ドル百幾らとか。ですから、一ドルが一円とか、大体一けたで数字が推移すれば、いろいろなものを見たときに、国の内外を問わずいろいろなものが自然に国際的な発想ができる。それでなくても日本日本人の固有の発想が多いわけですから、少なくとも経済的には、数字の面だけは国際的なレベルに合わせる等々のプラスがあります。  それから、ゼロを二つとることのメリットというのは非常に大きいですね、これは見直されておりますけれども。今速記を一生懸命されていますけれども、いろいろ書くときにも、国民全体がゼロを二つ書いているということは大変むだな努力をしているわけですよ。本当の話です。読むときも大変ですよね、千とか万とか、間違いも多いです。ですから、こういうものを一回やれば後ずっとメリットが及ぶわけで、これは大変な社会的なメリットですね。大変なプラスです。  それに対して、短期的に特需が起こる産業とコストを負担する産業が出てくることは確かです。例えば印刷とか紙とか、いろいろなものが特需が起こると言われています。一方、そのコストを負担する部分もある。一説によると、銀行、金融業界はかなりコストを負担するだろうとか、自動販売機はどうかとか、いろいろな議論があります。しかし、それははっきり申し上げて若干二次的な効果です。しかし私としては、そういうものが織り込まれて、そういう新しく刺激される産業の株がまた見直されたり新しい需要がそこで起こってくれば、あとはマイナス面をどうやってカバーするかということを政策的に考えてやればいい、新しい材料が出てくるということだろうと思うのです。  そのときに、金融セクターでそういうコストが負担されるとすれば、資産再評価と組み合わせることで多少は帳消しがあるかな。しかし、私のポイントは、そういう戦後五十年積み残してきた問題を考えるいいチャンスであるし、それが対外的にも国内的にもいろいろなものを、例えば円高対策にしても、それから国内の活動を活発化するというような効果考えてみると、やはりやるときではないか。  しかし、結論としましては、資産再評価というもので不良債権対策考えるところに重点があることは確かで、デノミというのは若干それに付随したポイントであることは言うまでもありません。
  49. 早川勝

    ○早川委員 社会党の早川勝ですが、きょうはありがとうございます。  先ほどのお話とレジュメを拝見させていただいた中で、過去の経済対策の破綻で公共投資が波及効果なしということで言われたわけですが、それの原因なり背景なりを若干敷衍していただけたらということと、それを踏まえまして、内科治療のところに入るのかもしれませんけれども、いわゆる金融税制の分野が先生の提言の内容になっているわけですが、公共投資のあり方の問題を含めまして、やはり欠かせない分野ではないかと思うのです。  そのときに、波及効果がないというのは、従来型でも投資構造がなかなか変わらないと言われておりますし、そういった内容の問題もあると思いますが、それを踏まえてそれを変えていく場合、例えば都市再開発だとかかってよく言われておりますし、最近ですと新しい社会資本投資とか生活資本投資とか表現がされているわけですが、この公共投資の問題ですね。これについて、緊急とはいえ一年、二年を踏まえましてこれは存在し続けなければいけないと思いますし、中長期の課題でもあると思いますので、公共投資についてどんなお考えか、お聞かせをいただきたいと思います。
  50. 宮尾尊弘

    宮尾参考人 私、今筑波大学の社会工学系というのにおるわけですが、ちょっと別な話から始まるようで恐縮なんですが、その中の都市という専門のところに属しております。  都市というところは大変おもしろいところで、いろいろな寄り合い世帯なんです。どういう寄り合い世帯かと申し上げますと、私はソフト、経済学の方から都市をやっているわけですが、その対極には土木の方がいるわけです、土木専門という方。それから建築とか、いろいろの分野でバックグラウンドが違う先生方がいるわけです。そうすると、ちょっと専門が違うとこうも違うかというような人脈と発想と、もう全部違うのですね。学会ももちろん違うところか、それが都市というのによくまとまっているなと思っているのです。  私、その話から始めましたのは、実は公共投資というのは土木なんですね。はっきり申し上げて土木だけなんです、事実上。公共投資の少なくとも六、七〇%というのは土木事業なんです。ところが、民間の建設投資というのを見ると、土木というのは非常に少なくて、いわゆる建設それから電気関係とか、こうずっと上に積み上がっていくわけです。もともと土木の波及効果についての問題点というのが以前から指摘をされてきて、だんだんその乗数効果が少なくなってくるというふうに言われておりますが、特に経済がだんだん高度化、サービス化してまいりまして、土木の持っている意味合いも相対的に低下をしていっているわけです。  それに加えて先ほど申し上げました個々の企業で財務体質の方が特に悪化しているという状況を踏まえますと、土木中心公共事業の問題点というのは、今回やってみるまでもなくかなり明らかになってきているわけで、しかも公的な支出がふえる分以上に民需が落ち込んでいますから、ネットでは大変なデフレ効果を建築土木部門というのは全体としては負っているわけです。幾ら公共投資をやっても、民需が落ち込む部分を多少支えるくらいのことしかない。つまり、民間部門の落ち込みがすさまじいわけです。  このすさまじい民間部門の落ち込みはどこから来ているかというと、これは資産デフしから来ている。一番土地のピークで高いところをとるのは問題にしても、二千二百兆円の土地が今一千六百兆円ぐらいまで六、七百兆円吹っ飛んでしまっているわけです。それに株を加えると一千兆円吹っ飛んでいる。そういうもので地盤沈下している民間の市場を、たかだか二十兆や三十兆の投資で支えられるというふうに考えたのがそもそもの誤りなわけです。しかも、それが最も波及効果が小さな土木でやっている。その上今回のゼネコン問題が出てくれば、もう少なくとも景気対策としての一番バッターとしての資格はまるっきりないわけです。ですから、これは早いところトレードに出すかフリーエージェントでもして少しお引き取りを願う。しかし、二番打者の住宅はいいと言っているわけですが、これも先ほど言いましたように問題が残っていて、公庫に専ら依存していますから一次取得者のみ等々、そういう問題があるということは先ほど指摘したとおりです。  それではどうしたらいいかという御質問で、少し建設的なことを申し上げます。  もう少し広い意味で、公共投資の配分、財政支出の配分というのは非常に固定的だということをいろいろな方が書かれておりまして、常にもう十何年配分が変わらないわけです。これは、幾ら国レベルでやろうとしても相当の制度疲労がありますし、今回のように政治家の皆さんがほかのことで忙しいと、幾らかけ声はそういうものを生活者中心に変えると言っても、それを配分しているのは実際昔からそういうことをやってきた官僚の人ですから、そこは省庁間の力関係をそう崩すわけにいきませんから、なかなか変わりようがないのです。  ですから、私が以前から主張していますキーワードは、地方分権的な方向にこれを持っていくか、地方のイニシアチブでこの配分を変えていくかということを真剣に考える方向性が正しいのではないか。つまり、これはひもつきや各省庁の縄張りで上から下へという形が固定化していることの一種の反映であるとすれば、地方自治、地方分権を進める中で地方がそれぞれの生活のあり方、投資の配分というのをイニシアチブをとっていく。地方はまた、それぞれが最近の汚職問題で問題が起こっていますが、それはそれとして、地方がいかにその地方のあり方の特殊性を出すかという形で配分する、考える。  それでは中央は何をするかというと、これは大変理想論で、特にアメリカ的な発想で恐縮なんですが、中央はやはり究極的には地方の間の再分配ですね。どうしても税収が非常に上がる地方と、それからどうしても落ち込む地方があった場合に、どうやってお金を再分配するかということを、ひもつきではなく、ブロックグラントといいますが、一つのまとまったひもつきでない補助金で上げるという形で、あとはその地方の独自性、特殊性を生かした財政のあり方を考えていくという方向を少なくともある程度加味していくことによって、この固定的なものを崩していくというのが方向である。  そうすれば波及効果も、不必要な土木事業ばかり地方に行くのではなくて、本当にもう土木事業はいい、道路は十分整備された、もっとほかのことをやりたいということは、例えば新潟県なんかそういうことが多いと思うのですけれども、それでもやはり過去の配分で道路がどんどん行ってしまう。そういうことになってくると、国全体としての波及効果は余りないことになりますので、最近のキーワードを使うことを私は余り好んではいないのですが、地方分権ということは、私の都市経済の専門からも前から述べておりましたので、そちらの方向から風穴があけられるのではないかというふうに考えております。
  51. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。  きょう、先生、経済非常事態におけるお話ということでお伺いしました。それで、応急手当てとして、カンフル剤として戻し税による六兆円減税というお話を伺ったわけですが、きょうのお話からちょっと外れるかもしれませんが、中長期的には税制をどう見ておられるか。もし中長期的に見て今の直間比率を直すべきだという御意見をお持ちでしたら、例えば二年間の時差を置いて税制改正を行う。二年後に例えば間接税引き上げる、これでも戻し税と同じような効果があるのではないか。逆に、中堅サラリーマンにとっては、戻し説よりも税制そのものが変わったという心理的な効果、それが消費にかえっていい影響を及ぼすのではないか、このようなことを考えるわけですけれども、その点について御意見をお伺いしたいのが第一点。  もう一点は、きょう非常にトラスチックな提案をしていただいたのですが、こういうトラスチックな時宜を得た政策を展開していくためにも政治改革が必要なのではないか。そういう政治システムをつくるためにも政治改革は必要であって、まずそれを最初にやるべきではないかという考えも持っているわけですが、その点についても御意見をお伺いできればと思います。
  52. 宮尾尊弘

    宮尾参考人 お答えいたします。  答えになるかどうかわかりませんが、まず第一の点です。  第二の点にも多少関係あるのですが、今回の政治改革絡みの話で大変興味深い議論がありましたね。大きな政府か小さな政府がという話がございました。その大きな政府というのは、政府がいろいろなことをやるのだ、そのかわりもちろん財政支出も大きくなりがちで、税も取って政府は一生懸命やっていく方向なんだ。一方、小さな政府というのは何かというと、これは夜警国家的になってきて、だんだん支出も減らせば税も減らすのだという話がございました。  そういう話はそういう話であるのですが、不思議なことに、税の話になると、そういう大きな政府の人も小さな政府の人も全部消費税値上げになるのです。まあ、全部とは言いませんけれども。むしろ何となく方向は逆のところがあって、大きな政府を言っている人は余り消費税の値上げはしないで、小さな政府と言っている人に限って消費税を上げるというようになるのが大変奇妙に組み合わせなんです。  これは多少アメリカ的で恐縮なんですが、もし本当に小さな政府を志向する人であれば、アメリカでブッシュ前大統領がリード・マイ・リップスと言って選挙に負けたわけですが、選挙に負けたことはともかく、言わないけれども私の唇を見なさい、税は絶対に上げませんよという人があらわれてもいいはずです。それは別に消費税とか所得税に限らず、これから税は一切上げないという議論があってもおかしくないですね。  なぜかというと、支出を削るという議論が出てきていいはずです。それは、今最低限の税の不公平は直すけれども、あとは景気がよくなれば当然増収は起こります。特に所得税についての増収は起こってきます。ですから、景気が直れば税はまた戻ってきます。その範囲内で支出をどうやってコントロールするかということに専念する小さな政府の派の人がいてもいいわけですね。そういう議論が今ないのです。  私はどちらかというとそちらの派です。つまり、少なくとも中央政府は、中央は今後絶対増税をしないという方向で考えていく。私が赤字国債を臨時に出せと言っているのはそういうことであって、臨時に一、二年出した問題であれば、それは増税なしに歳出のカットでかなり長い時間かけて賄っていけるかもしれない。それを大きな税制改正でもって変えて減税をしてしまえば、これは大変な問題です。これは当然どこかで増税の税制改正をしなかったら、長期的にどんどん赤字が出てしまいますから問題だ、それだけ続けて歳出カットしていくわけにはいきませんから。  したがって、私は、そういう立場から消費税引き上げに長期的にも賛成しているものでもありませんし、それについては私は実は専門家でもございません。ただ、あえて言えば、私はどちらかといえば直接税主義をとっている立場に近いということだけは申し上げておきますが、あくまで増税せずになるべく中央の役割を引き下げていく。そうすると、問題はむしろ地方税のあり方が一番重要なポイントになると思います。  地方税のあり方で、市町村税をどうするか。特に今問題になっております固定資産税、住民税のあり方、それからもし消費税であれば都道府県レベルの消費税地方消費税、こういうものあたりをもっとみんなで議論するときかなと思うわけです。はっきり申し上げて大蔵省主導の、国の税をいかに取りやすいものを取るかというところにあらゆる議論が集約していっているというのに私は非常に不満を持っておりまして、第一の問題については直接のお答えは避ける形でそのようにお答えさせていただきます。  第二の政治改革、おっしゃることはごもっともです。しかしながら、私の申し上げておりますのは、政治的な空白、経済政策の空白というものが避けられないわけです。政治改革というのは実はこれから何年もかかる問題です。今は法案を国会で通すかどうかという入り口のところですね。通ってからまた一年二年時間がいろいろなことで空費されて、第一回、次の選挙に行くまでにこれから何年かかるか。その間につぶれるかもしれませんね、そういうことは軽々に言ってはいけないのですが。  そんなことをしている間に経済はどんどん悪くなる、経済はもうなくなってしまうのですね。ですから、それはそれで大いにやっていただきたい。しかしそれに対して、経済としてはこれだけの政策の準備がありますという緊急策を政治家は準備しておくだけの責任がやはりあるのではないかということで、私がきょう申し上げたのは、これをすぐやれという、できればやってほしい。このうちの一つでもやっていただきたいのですが、できなくても、ここに出ていらっしゃる委員の方あるいはその回りの方が集まってこういうプランをぜひひとつ具体的につくっていただきたい。こういうプランを常に準備しておくことが本当の経済の破綻を防ぐことになるのではないかというのが本来言っていることでございます。
  53. 大矢卓史

    ○大矢委員 民社党・新党クラブの大矢卓史でございます。きょうは本当にありがとうございました。  株価の中で、株価操作をすべきではないという先生の御説、私も賛成でございます。  土地の中で、今栗本委員の方から御質問ございました証券化と財投資金でありますけれども、今の不景気の中でまだ需要があると言われておるのは住居の問題でありまして、これを満たしていくために土地が動くことがいいんだ、不良債権を回収していくために証券化だという御意見でございますが、ちょっと私まだ先ほどの説明では、具体的にどういう形でなっていくのか。  普通の更地の場合ですと、昭和の初期にできました抵当証券法、これを活用し、そこに財投資金をぶち込んでいくという考え方もあるのですけれども、今の土地不良債権として銀行なりその系列が担保として押さえておるものでありますから、それをどういうぐあいにして証券化していくのかそういう具体的なことをお教え願えれば結構かと思います。
  54. 宮尾尊弘

    宮尾参考人 これは詳しく御説明する時間がないのですが、例えばアメリカの場合に、SアンドLという貯蓄貸付組合が破綻を来してアメリカ政府が何をしたかというポイントだけを申し上げます。それが一つモデルになると思うのです。  一種の整理信託公社、精算公社のようなものが破綻したSアンドLを結局全面的にテイクオーバーというか、取り込むわけですね。それを取り込んで、そのSアンドLが持っている不動産なら不動産、債権なら債権、いろいろな証券化したものをそれぞれより分けてばらばらにしまして、こういう商品こういう商品とプールいたします。それをそれぞれオークションにかけて、バルクセールといって大口で買ってくれるところをまず探したり、売れるものはどんどん売っていくという作業をするわけです。既に証券化されたものがありますからそういうものはそのまま売り出しますが、大体のところ、大口で投資会社とかいろいろなファンドが買い受けまして、その買い受けたものを証券化して最終的には投資家を探すという形になっているわけです。  ですから、ポイントは、今のように塩漬けにして時間を稼ぐという方法をとるのか、それとも何らかの形で最終的な買い手を探して、損切りをしてその損を早く埋めて身軽になって経済の復興に努力するのかという路線の問題が問われているわけで、私としては後者の路線をとるべきだということを先ほどから主張しているわけです。  具体的にどういう形になるのかというのは、アメリカで投資家の資金が一番集められた形は不動産投資信託という枠組みが一番役立ったわけですが、これは特別目的会社みたいなもので、出資者からお金を集めた一種の会社組織ですけれども、この会社組織が何でも買うわけです。債権で買ってもいいし不動産でもいい、権利の形でもいいし貸し付けの形でもいいから、とにかく債権というのを購入するわけです。その購入したもので上がった収益を投資家に配分するわけですが、この上がった収益の九五%を必ずその出資者に配分するという条件を満たすと法人税が免除になるわけです。ですから、投資家が会社をつくっているのではなくて、投資家が直接投資しているという一種のフィクションを使っているわけです。  このために、法人税分だけ収益が高いということで、不動産投資信託、リアル・エステート・インベストメント・トラストの頭文字をとりましてREITと言われておりますが、そのREITというのは非常に収益が高いし、運用も大変弾力的にできて何でも買える。そこは不良債権を買っていれば不動産も買っているし、いろいろな組み合わせができる。いろいろなタイプのREITがあって、すぐ上場できて、非常にオープンで、株をみんなが持っているような形になっていますが、その会社には法人税がかからない。こういうシステムがあって、日本でもそのアイデアが一番いいのではないかというふうに各界の意見がだんだん今集約されているようです。私は金融界、特に証券界、不動産業界、その他学者、アメリカの事情に詳しい人、国際的な投資家、いろいろな方と話しているのですが、そういう人たちの意見は大体、日本でREITというシステムがどうも必要ではないか。  これは非常に小口で投資家が買えるわけです。その資金を集めて何でも買える。そこに税制上の恩典がある。大変フレキシブルなシステムで、これがあれば日本の不動産、それから担保不動産の流動化不良債権流動化に役立つし、長期的にも、そのように証券化され流動化され小口化された商品であれば、再びみんな少し持ってみようか、買ってみようかという機運が起こるわけですね。というのは、流動性が高いですから、いざ事があったら市場があってすぐ売れるわけです。  ところが、これまでは、ビル一棟で持たなくてほいかぬとかそういうことをやってきたので、いざ事があるともう抱えてしまって何も動かなくなるということですから、例えば具体的な枠組みを考えて、こういう臨時措置や時限立法のときにそういうものをつくって、時限立法期間内は例えば法人税は免除して様子を見てみるということをやったらどうかという、その程度のお答えしかできませんが、モデルは、アメリカでやったことをできるだけ日本の制度に合わせて、そしてアメリカが今非常に力強く景気が回復しているということから学ぶべきではないかというふうに思う次第です。
  55. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 日本共産党の佐々木陸海です。  先生は、今の日本経済を非常事態というふうに特徴づけられて、病気があるいはくたびれて体力がなくなっているのかというふうに提起をされて、病気だというふうにたしか言われたと思うのです。  私、少し歴史的に考えてみますと、日本の戦後の歴史の中で、日本企業は国の保護や援助も受けながら急速に力をつけて世界有数のものになった。これに対して、国民の非常に多くの部分は豊かさを実感できない、こういう矛盾、これが一つの極限に達しているのが今の日本の経済ではないだろうかというふうにも思うわけです。  あのバブル経済などについても、国民全体に責任があるというような議論もありますけれども、やはり何よりも大企業に重大な責任があるというふうに言わざるを得ないと思うのです。それが今一つの極限に達していて、言ってみれば国民にさらに大きな痛みを押しつけなければならぬ、そうしないと企業、大企業の今までのような発展が図れないところに来ているというところから提起されているのが一つ税制改革であり経済改革である。そして、そういう国民の痛みをもっと受け入れてもらうような政治をやろうという体制、これをつくろうというのが言うところの政治改革であるというふうに私たちは理解をしているわけです。  そういう意味でいいますと、今の日本経済に、言ってみれば国民の方にもカンフル注射するけれども企業の方にもカンフル注射をする、寄せ集めのような政策ではなかなか根本的な解決はできないのではないかということも痛感せざるを得ないと私は思っているわけです。  率直にお聞きしますけれども、先生は、今のこの日本の経済の病気、この原因についてははっきり言われませんでしたけれども、その原因をどんなふうに考えておられるのかということをお聞きしたいと思うのです。  その原因は、私たちの考えによれば、今の経済の根本的な流れというものを、かじ取りそのものを変えていかないと、いろいろな療法をとっても、一時的にはよくなるにしても、最初に言われたようにだめなものはだめというふうにならざるを得ないという感じを持っているのです。その辺の原因と、その原因の観点から見た対策ということをもうちょっと説明していただきたいと思うのです。
  56. 宮尾尊弘

    宮尾参考人 今のお話を伺っていますと、私が先ほど分類した病気説と、体力がどんどん悪くなってくるという方の、何となく体力が悪くなってくるという方の議論に聞こえます。このごろ官僚の言っていることと共産党の言っていることが大分似てきているという話がございますが、その一つの例がなというふうにちょっと思わざるを得ないわけです。まあ、ちょっとそれは冗談でお聞き流しいただきたいのですが、ポイントは、確かにこの不況原因は何かというところで押さえないと本当の答えは出ないわけで、実はそこから私の診断は出ている。特に処方せんが出ております。  これは、私が申し上げましましたように、資産デフレというところに非常に大きな問題がございます。今、若干そういうニュアンスで言われたと思うのですが、八〇年代後半あるいは戦後の日本経済——私はこういう言葉を使いたくないのですが、よくマスコミの一部の方が使うのですが、バブルで踊ったのが今回壊れてこういうことになった、だから今回だんだん正常に戻ったというか、そういうような発想というのが時々あるのです。そこまで正常に戻ってないからもとへ戻せ、もっとちゃんとしろという話があるのですが、私のアプローチは次のようなものです。  今回の日本の問題というのは、これは実は日本だけの問題ではなくて、世界的な不況の一環として日本でも不況が起こったということをまず第一に踏まえておくことが必要です。ですから、今回起こった不況原因は世界的に共通の要因であるという説明がなければ、その説明は最初から破綻しているわけです。これが、日本の国内に問題があったという説の弱いところですね。例えばみんながバブルで踊ったとか、日本人の特有の気質だとか、日本の戦後がおかしかったとかいう議論は全部第一歩から間違っているわけです。あるいは非常に弱いわけです。つまり、世界的に不況が起こっている原因をどうとらえるかということが基本です。  これは、実は共産党や社会党がバックとされていたマルクス経済学の系譜がもし健全に今日まで発展していれば一番有効な分析手法を定義したのですね、残念ながら。ところが、マルクス経済学者はことごとくだめになりまして、今大学でも肩身が狭い思いでもう首切り寸前になっていますが、実は今のこの世界不況を分析できるのはマルクス経済学なのですね。  ですから、実はきちんとした学者、宮崎義一さんのような方は「複合不況」というきちんとした本を出されている。あれは立派な本ですね。あの本で、残念ながらバブルという言葉が出てくるのでみんな間違う。バブルというのを削るとあれほどいい分析はないのです。  宮崎義一さんの問題というのは、バブルというのは金融経済イコールバブルという言葉の使い方をされているのが残念なんです。彼は、実物経済で金融経済と分けているわけです。金融経済が実物経済を無視していったところがバブルだと言っているのですが、金融も実体なんです。実体と金融の上に乗っかっているのがバブルなんですね。そういう経済学的な定義にのっとると、あれほどきちんとした分析はないのです。  ですから「複合不況」で、なぜ今回の不況が起こったか、大きな金融制度の崩壊が起こったかというのは、いみじくも宮崎義一さんは、東ドイツの崩壊、東側経済の大崩壊の影響が西側経済に及んできたということを正確に指摘されているわけです。特に、一九八九年末からなぜ欧米経済があれだけの不況に陥り、日本も八九年末からだんだんと雲行きが怪しくなったかということは、世界のお金の流れが変わったわけですね。それだけ西側経済が東側経済を支えなければいけない時代になったということが今日の西側経済の大不況を説明している一番根本的な原因であります。  これを説明できるのは、実はマルクス経済学なんです。近代経済学という非常に技術的に刻一刻のデータと経験だけから奇形児のように精密化してきてしまったツケを今払っているわけですから、非常に残念なんですね。ですから、私ももうそろそろマルクス経済学者に転向しようかと思っているわけです。それはともかく、そういう要素がある。特に共産党と社会党の方によく聞いていただきたいのです。それは冗談で、大変失礼しました。  二番目は、しかしながら、そうはいってもアメリカは既に回復基調に入っています。ヨーロッパは確かに悪いの、ですが、それでもヨーロッパはヨーロッパ統合の条約に踏み出して再生を図っています。日本が一番悪いのですね。底が見えない。では、なぜ日本だけが世界的不況の中でこれだけ悪くなったかということも説明できないと説明は完結しないわけです。ここに実は国内的な理由があるわけです。  これは、戦後の日本云々とか日本人の体質とかそういうことを言っていたら説明にならないのです。以前は、日本はどんな不況になってもほかの国より早く立ち直ったわけですね、石油ショックでも何でも。ところが、今回に限り、日本がほかの国よりも深刻な不況に陥って、いまだに回復してないのはなぜかというと、これはここ四、五年の日本の政策決定のあり方に問題点を求めざるを得ないわけです。その政策決定のあり方は何か。それは、はっきり申し上げて金融当局の政策の誤りです。はっきり申し上げて日銀と大蔵省の政策の誤りがこの四、五年明らかに日本経済の方向を誤らせたというのが私の分析の結果でございます。  日銀については、デフレの時代にインフレだけを恐れ、金融引き締めだけに走り、地価や株価の値上がりをインフレの前兆と誤って、必要以上に窓口指導までして引き締める。大蔵省は、大蔵省の中の勢力が国際派から主税局中心の国内派に移動して、税収第一主義に走り、そしていろいろな税を導入して資産市場を窒息させるということが起こり、それはいまだに続いている。この金融政策の誤りがいまだに正されていないことが景気がいまだに回復していないことの理由であるというのが私の分析であります。  したがって、それを直せということで、体質改善で金融当局の組織改革と再編をしろ。だから大蔵省は、主税主義はいい、税収第一主義結構。しかし、それと金融政策は切り離してほしい。それから、金融庁は別個の組織にしないと、大蔵省の中でもう意見が封じられるわけですね。  それから日銀は、大蔵省、日銀が取っかえ引っかえ出てくるのではなくて、民間で経済のわかった人が総裁になり、そしていざとなればアメリカのグリーンスパンのように思い切って実質金利をゼロに下げることをやれるような人を選ぶ。しかし、そのかわりに政府から独立させるという制度改革が急務である。そこに絞らないと問題は解決しない。  したがって、そのような世界的な不況日本的な政策の誤りという二つの説明から診断を行い、そしてこのような処方せんを書いた次第でございます。  最後に、時間がありませんので一点だけ御質問に答えますが、私の発想は国民からの発想でございます。私は、特に土地政策について言っておりますのは、土地というのは実は国民が一番持っているわけです。それをマスコミの方々の多くは、特に若い方、ここにいらっしゃるマスコミの方は別として、若い方は間違って土地というのは不動産屋が持っているように思っているわけです。  ですから、例えば監視区域を外すと言うと、不動産屋が監視区域を外してと要求していた、そのために外すけれども、また上がったときに不動産屋はもうけるのではない。土地というのは不動産屋が持っているのではなく、国民土地を持っているわけです。不動産屋はそれを売り買いしたり、それを開発したりしているだけの話ですね。ですから、意外と不動産屋の人に監視区域を続けてくれという主張の人が多いのです。国民土地を持っていて動かせなくて困っているわけです。相続破産が起こり、そして家が買えなくて困っている。国民が家、土地を持ちたい、それを規制しているわけですね、税金を取りたい方が。  ですから、それをぜひ誤解なくマスコミの方は報じていただきたいし、共産党の方はそこを御理解いただきたい。これは企業対策ではなく、国民のためにやるのであって、企業と一緒に心中したくないですね。だから、企業と心中しないように最小限のコストで我々の命を救おうという提案でございます。
  57. 山本幸三

    ○山本(幸)委員 新生党の山本幸三であります。  先生のお話を伺っていて、一つは非常に共感を持つ部分がありますが、もう一つはちょっと違うなというのがあるのです。  まず共感を持つ部分は、金融政策が不況の大原因である。これは私も全くそのとおりだと思っておりまして、ここのところをちゃんとやり直さなければ今回の景気回復ができない。その意味で、実質金利ゼロにするというような方策をぜひやる必要がある。あるいはまた金融面のいろいろな規制等の緩和、それによって金融、融資面だけではなくて株式市場の活性化を図る、これはそのとおりだろうと思います。この点は大いに共感を持ちます。  他方、減税のところはあたかも十年前に戻ったような感じが私はします。アメリカのレーガン政権のときにラッファーという学者が出てきまして、要するに、今減税やって景気がよくなればその税収でその減税分は賄うことができるというようなことで、桃色のシナリオを描いたわけでありますが、これがすべて間違いであったということはアメリカの今日の財政事情を見ればよくわかるわけであります。その点で先生のお立場というのが、そのレーガン政権がもとにしたニュークラシカルエコノミストの立場に立っておられるのか、あるいは伝統的なケインジアンの立場もかんでおられるのか、そこのところはどうもよくわからない。  先般、私ども景気対策を我が党で勉強会をしたときに、小宮隆太郎氏に来ていただいてお話を伺ったのですが、小宮氏は、要するに財政の政策をやるときにコストのことをよく考えなければいかぬ。したがって、赤字国債を発行してやるというのはそのコストは相当大きい。しかも国債の利子支払いを毎年していかなければいけない。これは、所得の低い人からの税金を比較的裕福な人に払うという所得配分の問題もあるし、先ほど村井先生が言っておられたように利子率全体の問題もある。そういう意味では民間企業の活動に非常にゆがみを生ずるから望ましくない、コストが大きい。そういう意味で、今や大幅減税を主張する、特に戻し税なんて言うような人は理論的には一九七〇年以前のレベルであるというお話をされたわけてあります。  私は、先生が一九七〇年前のレベルだとは申しませんけれども、今日アメリカがそういう経験をした、あるいはECのマーストリヒト条約にも財政赤字の残高を一定以下にしなければだめだというような規定が入っているということも我々はよく認識しておかなければいけない。このことは歴史的に学んだことではなかろうかというように思います。  そこで、戻し税がきくという話をされたわけですが、ではそのときに消費というものはどうして起こると考えているのかが一つ問題になる。これまでの経済学者の間の大方の合意が得られている考え方は、恒常所得仮説、つまり恒常的な所得があるときにそれに応じて消費が伸びるのだという仮説が最もみんなの賛意を得られている説なのですね。それに基づけば、戻し税というのは全くきかない。したがって、戻し税がきくとすれば何らかの消費行動についての仮説を持っておかなければいけないのでありますけれども、この点はどういう仮説を持っておられるのかということであります。  そういう二、三のことを考えると、私は、金融政策のところはいいのだけれども減税をやればきくというようなことはちょっと単純過ぎる、ほかのところが理論的にしつかりしているのに、そこのところはどうも弱過ぎるという気がしてなりません。  それから、そうであれば、しかも減税してそのうち一〇〇%きくことはなくて、せいぜい四割から五割ぐらいしかきかないということですから、むしろいずれやらなければいかぬ公共投資、一〇〇%そのままきくわけですから、やった方が同じ国債残高のコストということを考えると弊害が少ないというように私は思います。  あと、企業のリストラあるいは不良債権の資産化云々はアメリカの経験をおっしゃっておられると思います。これは私も大いに勉強しなければいかぬと思い、使えるものは使っていかなければいかぬと思っていますが、ただ、アメリカがやってきて確かにアメリカ経済はよくなった。よくなったけれども、その中で何が一番問題になっているかというと、企業の体質は非常によくなった、リストラして。それは、みんな首切ってしまってがんがん体質をよくしたわけですからよくなったのだけれども、そこに起こった大量の失業という問題はどうするのかということがあるわけで、これは必ずしも我が国に適用できる方策がということはよく考えないといけないだろうと思います。  それから、資産再評価とデノミの問題は、私は経済的な意味がないというふうに思っていまして、むしろこういう時期ではコストのみが高いというように思います。そういう点では、今の政治改革云々の状況にあるこういう連立政権のもとでは、先生は、マーフィーの法則でだめになる可能性のあるものは必ずだめになると言われましたが、私は、こういうときの法則は、余り変わったことはしない方がいいというのが今やるべき原則ではないかなというように思っております。御所見を例えればと思います。
  58. 宮尾尊弘

    宮尾参考人 大変貴重な講義ありがとうございました。大変勉強になりました。  ちなみに、私の経歴を次のページで見ていただきますと、私はまさにおっしゃった七〇年代の初めにMITに参りまして、ノーベル賞をとりましたサミュエルソン先生とソロー先生の研究助手として勉強いたしまして、その後南カリフォルニア大学で教授をいたしました。南カリフォルニア大学の教授といいますと、先ほどお話に出たアーサー・ラッファーがおったところで、まさにレーガン税制のさなかに私はアメリカにおりまして、経済学者としていろいろな議論を闘わせましたが、その私にも大変ためになる講演をしていただきまして大変ありがたく思っております。  まず第一の所得税減税についてですが、これを税制改正としてやるところに大きな問題があるということを先ほど申し上げた次第です。一回限り、二回限りの戻し税減税というのがコスト面で一番ダメージが少ないというために議論をしておるわけで、税制改正でしか所得税減税がないという前提に立ちますと、これは非常に大きな財政上の問題になってくる。これが第一点でございます。  それから第二点は、所得税減税がそれでは消費を刺激するのか、経済浮揚効果があるのかという発想自身が、実は従来型の景気対策の経験で言われている側面があるのではないかと思います。今は景気が全面的に悪い、消費もだめである、そして各家庭、企業、個人が負債を負っている。そういうときに、減税されたものがどう使われるかということは、もちろん個々の家計や企業が判断すべきことです。消費に使うところもありましょう、自分のローンの支払いに充てるところもありましょう、将来の不安に備えて貯蓄することもありましょう。問題は、それは家計に任せればいいのです。そして、今は政府が取り込んでいるお金をどれだけ家計に戻して、当面の応急処置として既に期待されている所得減税をやるかという、応急処置として位置づけているのはそのためでございます。ですから、この部分は理論的な根拠は弱いというふうに言われればそのとおりで、そのために私は応急手当、応急処置ということでやっております。  しかし逆に、これをやらなければどうなるかということをお考えいただきたい。つまり、出血多量の人に輸血をしない、呼吸困難な人に酸素吸入をしなければどうなるか。本格的治療をする前に死んでしまいます。その経済の現実をやはりお考えいただかなければいけない。つまり、もう所得税減税は織り込み済みなわけです。これをやらないときの破壊的な影響考えるときに、政治家としては当然そういう判断がお働きのことと私は確信をしております。  それから二番目の点ですが、内科治療、企業や家計のリストラヘの支援策。  これは決してアメリカの経験を私は述べたのではございません。むしろアメリカは、多少これに近いことをやりましたが、基本的には制度を利用した企業のリストラの努力で、従業員の首を切って利益を出したわけです。ですから、私のこの提案は逆に、先ほどの御質問にありましたように、国民雇用者の立場を考えると、そのように企業の支援をせずに競争とリストラに任せて人の首を切って、もう一段二段景気を冷え込ませたときの破壊的な影響考えた上で、一種のいわば徳政令的な措置を提案しております。これは別にアメリカで行われたからではなくて、日本に今必要なことであります。  今、いわば平成の徳政令という言葉は悪いのですが、この支援策というのが各界で非常に大きな意見として浮き上がってきております。私は日夜いろいろな方と話しておりまして、先日も金融界、証券界、そしてさまざまな方と話をいたしました。ビジネスの方、流通業の方、そのリーダーが、今この支援策がなければやっていけない、これが必要なんだ、これがなければ雇用調整を大々的にやらざるを得ないということが非常に大きな意見となって盛り上がってきております。その意見が議員の皆様に届いていないはずはないというふうに確信をしている次第でございます。  したがって、これは、アメリカでこういうことが起こっているだろうから、それをどのぐらい日本に適用できるかという次元の問題ではなくて、これこそ今すぐやらなければいけない問題で、これをやらなければ今議員の皆様の支持基盤そのものが取り崩されるという時代になっていることをはっきりと御認識いただきたいと思う次第でございます。  それから、資産再評価、デノミにつきましては、確かに議論があることは先ほど申し上げました。これは、私も実はここに書き込むべきかどうか迷った次第で、先ほども申し上げましたように、緊急措置というよりは戦後五十年の制度をどうやって改革するかという、もしかしたら中長期的な改革の分野に入れるべき課題かもしれません。したがって、その点はむしろ後でゆっくり議論をさせていただきたいと思います。
  59. 海江田万里

    海江田委員 さきがけ日本新党の海江田万里でございます。  先生には、時間も過ぎておるところですので、なるべく手短に質問をしたいと思います。  やはり今回の不況がデフレ不況だという認識、これは全く一致をしております。片方で、GNPの六割を占める消費を何とかして拡大しなければいけないという場合、デフレの中での消費の拡大の契機は唯一買いかえ需要にしかないのではないだろうかという認識を私は持っておるのですね。  買いかえ需要ということでいいますと、まさにバブルの最盛期といいますか八八年、八九年に住宅投資もありましたし、新車も購入をしましたし、家庭用の電化製品も大量購入した。そういうものがちょうど五年目あるいは六年目の買いかえの時期に入っているわけでありますから、やはりこの買いかえ需要に焦点を当てた減税というのは、私はそれなりの意味があると思うのです。ですから、先ほど来の議論に対する一つの私なりの考え方、それからさきがけ日本新党でもそういう認識の者が多いということをお伝えしておきます。  ただ、ここでひとつ、先生のおっしゃる規制緩和が短中期的なデフレ効果がある、これはまさにおっしゃるとおりでございますが、この規制緩和の中にも、値段が下がることによって例えば旅行に出ていく、旅行に出ていくことによって消費をするというような効果もあるのではないだろうかという見方を私はしておりますので、連立与党の一員として、現在検討中の改革の問題点の方だけをクローズアップするのではなくて、この規制緩和需要の拡大につながっていくという認識を持っていただけたらありがたいと思います。  以上です。
  60. 宮尾尊弘

    宮尾参考人 いろいろと御示唆ありがとうございました。  特に、最後の規制緩和の点については、私はここに書きましたように、一般的な規制緩和全体として見ればデフレ効果があるというふうに申し上げたことで、その中で、確かに需要拡大、新規のビジネスを起こし雇用をふやすのに戦略的に非常に重要な規制緩和があるということを認めるにやぶさかではございません。  特に、先般の規制緩和に関する特別委員会で私は細かく申し上げましたが、資産市場、証券市場、不動産市場、それから最近諸外国で非常に話題になっております通信分野等、そういう戦略的な分野の規制緩和というのはむしろ積極的に短期的な施策としてもやっていくことが望ましいわけで、それを何でもかんでも規制緩和一般というふうに薄めてやるというのはかえって、はっきり申し上げて官僚的な発想に負けてしまうわけです。したがって、どこを戦略的に規制緩和を早急にやるべきかということをぜひ政治家の皆様方がリーダーシップをとられて特定していただいて、そこを戦略的にやっていただければ幸いだというふうに考えている次第です。  どうもありがとうございました。
  61. 宮地正介

    宮地委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人には、御多用中のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五分散会