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1993-11-09 第128回国会 衆議院 政治改革に関する調査特別委員会公聴会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年十一月九日(火曜日)     午前九時三十一分開議 出席委員   委員長 石井  一君    理事 大島 理森君 理事 北川 正恭君    理事 野田  毅君 理事 保岡 興治君    理事 左近 正男君 理事 前田 武志君    理事 権藤 恒夫君 理事 三原 朝彦君       逢沢 一郎君    石破  茂君       石原 伸晃君    今津  寛君       斉藤斗志二君    笹川  堯君       自見庄三郎君    白川 勝彦君       津島 雄二君    中川 秀直君       中谷  元君    額賀福志郎君       葉梨 信行君    穂積 良行君       細田 博之君    増子 輝彦君       阿部 昭吾君    秋葉 忠利君       大畠 章宏君    小林  守君       堀込 征雄君    岩浅 嘉仁君       岡田 克也君    北村 直人君       実川 幸夫君   柴野たいぞう君       豊田潤多郎君    広野ただし君       松沢 成文君    赤松 正雄君       大口 善徳君    太田 昭宏君       日笠 勝之君    前原 誠司君       茂木 敏充君    簗瀬  進君       川端 達夫君    柳田  稔君       穀田 恵二君    正森 成二君  出席公述人         政治改革推進協         議会会長    亀井 正夫君         筑波大学教授  花井  等君         弁  護  士 坂本  修君         日本労働組合総         連合会会長   山岸  章君         産経新聞社論説         委員      箱崎 道朗君         慶應義塾大学教         授       曽根 泰教君         スタンフォード         大学         フーバー研究所         上級研究員   片岡 鐵哉君  出席政府委員         自治政務次官  冬柴 鐵三君         自治大臣官房審         議官      谷合 靖夫君         自治省行政局選         挙部長     佐野 徹治君  委員外出席者         自治省行政局選         挙部選挙課長  松尾 徹人君         自治省行政局選         挙部管理課長  山本信一郎君         自治省行政局選         挙部政治資金課         長       大竹 邦実君         特別委員会第二         調査室長    田中 宗孝君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月九日  辞任         補欠選任   自見庄三郎君     中谷  元君   西岡 武夫君     石原 伸晃君   三野 優美君     小林  守君   小沢 一郎君     松沢 成文君   吹田  愰君     実川 幸夫君   太田 昭宏君     大口 善徳君   日笠 勝之君     平田 米男君   正森 成二君     穀田 恵二君 同日  辞任         補欠選任   石原 伸晃君     今津  寛君   中谷  元君     小此木八郎君   実川 幸夫君     北村 直人君   松沢 成文君     豊田潤多郎君   大口 善徳君     太田 昭宏君   穀田 恵二君     正森 成二君 同日  辞任         補欠選任   北村 直人君    柴野たいぞう君   豊田潤多郎君     岩浅 嘉仁君 同日  辞任         補欠選任  柴野たいぞう君     広野ただし君 同日  辞任         補欠選任   広野ただし君     土田 龍司君     ――――――――――――― 本日の公聴会意見を聞いた案件  公職選挙法の一部を改正する法律案内閣提出  第一号)  衆議院議員選挙画定審議会設置法案内閣提  出第二号)  政治資金規正法の一部を改正する法律案内閣  提出第三号)  政党助成法案内閣提出第四号)  公職選挙法の一部を改正する法律案河野洋平  君外十七名提出衆法第三号)  衆議院議員選挙画定等委員会設置法案(河  野洋平君外十七名提出衆法第四号)  政治資金規正法の一部を改正する法律案河野  洋平君外十七名提出衆法第五号)  政治腐敗を防止するための公職選挙法及び政治  資金規正法の一部を改正する法律案河野洋平  君外十七名提出衆法第六号)  政党助成法案河野洋平君外十七名提出衆法  第七号)      ――――◇―――――
  2. 石井一

    石井委員長 これより会議を開きます。  内閣提出公職選挙法の一部を改正する法律案衆議院議員選挙画定審議会設置法案政治資金規正法の一部を改正する法律案及び政党助成法案並びに河野洋平君外十七名提出公職選挙法の一部を改正する法律案衆議院議員選挙画定等委員会設置法案政治資金規正法の一部を改正する法律案政治腐敗を防止するための公職選挙法及び政治資金規正法の一部を改正する法律案及び政党助成法案の各案について、昨日に引き続き公聴会を行います。  この際、御出席公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。審査中の答案に対する御意見を拝聴し、審査の参考にいたしたいと存じますので、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、御意見は、亀井公述人花井公述人坂本公述人の順序で、お一人二十分程度お述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えを願いたいと存じます。  それでは、まず亀井公述人お願い申し上げます。
  3. 亀井正夫

    亀井公述人 亀井でございます。  本国会にお呼びいただきまして、政治改革に関して公述人として意見を述べる機会を与えていただきましたことを、感謝する次第でございます。  私は現在、政治改革推進協議会俗称民間政治臨調と申しておりますが、これの会長といたしまして、昨年の四月から、政治改革の問題について民間人立場からいろいろと研究をし、そして運動を続けてまいったのでございます。  この経緯を申し上げますと、実は社会経済国民会議という、経済界労働界学識経験者の三者構成によりまして、そのときどきの日本の将来に対する経済問題、福祉問題あるいはエネルギー問題等々を勉強する機関がございます。この中に政治問題特別委員会というのがございまして、私、数年来この委員長をやっておりました関係上、実は政治の問題に首を突っ込むことになったのでございます。  そういう関係から、平成元年竹下首相政治改革に関する有識者会議というのを開催されまして、そのメンバーに呼ばれまして、約半年勉強させていただきました。そして、竹下首相が御退任になりました後、御承知のとおり第八次選挙制度審議会というものが設けられまして、私もそのメンバーといたしまして二年間、日本政治の問題について勉強したのでございます。そして、その選挙制度審議会の答申が出まして、平成三年に、海部内閣の際に政治改革の三法案ができたのでございますが、これが結局いろいろないきさつによって廃案ということになりました。  これが、思い出しますと平成三年の秋でございますが、特に自民党の若手の議員方々で非常に政治改革に燃えておられる方がございました。そして、海部首相に涙ながらに訴えられた。しかし、情勢いかんともしがたく、だめだということになって、私どものところへ来られまして、ぜひともひとつ民間団体として自分たち運動に協力をしてくれないかということがございましたので、私どもは考えまして、単に政治の問題を、民間の三者構成でも勉強するだけではだめだ、これはひとつ具体的な意見を、成案を持って運動展開しなければ政治改革はできないのではないかということで、その年の秋に準備をいたしまして、昨年の四月二十日から政治改革推進協議会という名前で、民間人立場から政治改革を推進しようという運動展開をいたしました。そして、いろいろ研究をいたしまして、昨年の十一月でございますが、「日本政治危機政治改革の道筋」という緊急提言を発表いたしました。  そのとき、ちょうど十一月の十日でございましたが、日比谷の音楽堂で、我々と気持ち一致する国会議員方々、また労働界経済界学識経験者方々、約四千人集まりまして、いろいろと政治改革議論展開をいたしました。最終的には、中選挙区をやめるべきではないかということで、中選挙廃止宣言というものを決議をいたしまして、国会議員方々与野党を通じ、そのときの与野党と現在の与野党はかわっておりますけれども、約二百人の方々の署名をいただいたという経過がございます。そして、その年の暮れには地方分権に関する意見書も発表する、こういうことをやってきたのでございます。  それからいろいろと、宮澤内閣になりましてから政治改革が進みました。そして、御承知のとおりに、あのときには自民党案は小選挙区制一本ということであり、そして野党の方はドイツの制度にならった併用制という案を提案、これで対立をしまして、それを何とか私どもとしては調和をとる方法はないかということで、とにかく中選挙区をやめられて新しい制度をやろうということは、自民党野党の方も一致を大体しておる。小選挙区というものをとるということも、これは一致しておられる。ただ問題は、比例代表野党の方は入れようとするし、自民党の方は認めないということですから、その何か妥協あるいは話し合いの道がないかというので、私ども民間人でありながら、連用制という案を出しました。野党の方がこれでまとまった。ところが、自民党は小選挙区一本やりということをやられたので対立をいたしまして、不信任案が可決され解散ということで、現在の政局の大きな地殻変動というのが起こったように私どもは理解をしておるのでございます。  そして、細川連立政権ができましてから、再び、細川政権としては政治改革ということが第一の任務であるということで、鋭意取り組んでおられるわけでございます。議論が現在非常に進み、また国会議員方々は熱心に、百何十時間という時間を通じてまた再び非常に熱心に議論をされるということに、私どもは衷心より敬意を表する次第でございます。  現在、考えますと、申すまでもないことでございますが、政治改革というのが本当に緊急の課題であろうというふうに思います。現在、世界日本も非常に大きな転換期に際会をしております。特に、ソ連というものが崩壊いたしまして、東西冷戦構造が崩壊をした。世界政治の枠組みが変わってくる。そして、日本経済力に対する国際的な関心も非常に高い。そういう場合に、日本政治というものが、果たして国際的にこれから行く体質にあるのかどうかということも問題がございます。  また、相次ぐスキャンダルということによって、国民政治というものに非常に不信感も持つ状態になっております。国民自分たちの選んだ国会というものに対して不信を持つほど、私は不幸なことはないというふうに信ずるのでございますが、そういう意味におきまして、どうしてもここで政治改革をやっていただきたい。それがなければ、恐らく現在、当面大きな問題の深刻な不況の問題であるとか、あるいは日米関係を初めとするいろいろ国際関係というものの処理も非常に難しいのではないかというふうに思います。  そういうことで、きょうは時間もございませんので後の質問でも申し上げたいと思いますけれども、根幹は、平成元年自民党政治改革大綱を出されましたときに、日本の現在の衆議院の中選挙区制というものに、やはり六十数年やって手あかに汚れ、制度疲労を起こしておるのではないか、そこにいろいろ胚胎をするということでございますので、この中選挙区を廃止をされて、そして新しい制度に乗りかえるということが現在緊急の問題であろうというふうに思います。  現在、政府案自民党案というものが対立をしておるという格好になっておりますけれども、いろいろ細部の点では対立点がございますが、しかし大きなところでは、小選挙区と比例代表並立制をとろうということでは一致をしておられる。けさの新聞の報ずるところによりますと、その細部につきまして七点の修正協議項目があるということが指摘をされております。並立制の総定数とその配分の問題、比例代表の、府県にするか全国区かの単位の問題、あるいは投票方式を二票にするか一票にするかという問題、それから戸別訪問を認めるか、それを認めないということにするか、選挙区の画定機関総理府に置くのか衆議院に置くのか、あるいは企業・団体献金につきまして、政党及び政治資金団体に限るというふうに限定するのか、政治家個人にもある程度認めてはどうかという意見、また公的助成についての金額の相違、こういう七点があるそうです。これが細部の詰めということになっておると思います。  これで、私は非常に印象のある、この問題について伺ったのは、十一月一日に私ども民間臨調といたしまして緊急の集会をやりました。そして、各党の政治改革に熱心な議員の方が出られまして意見を申されました。その中で、自民党のある非常に元気のいい方がこういうことを言われました。とにかく与党野党の間で並立制をとろうということでは一致しておる。そうすると、これは何を食べようかというのでビフテキを食べるということは一致した、ただ、それをウエルダンでいくのかレアでいくのかという対立てあるので、何かそこでミディアムということがないだろうか、こういう非常にうまい表現をされました。私は、これをぜひひとつ今回の解決のめどに置いていただいて話し合いをしていただきたいというふうに思うわけでございます。  昨日、私ども緊急国民集会というものを開催をいたしまして、細川首相河野自民党総裁が御出席になり、閣僚の方数名と国会議員が百五十名、また国会議員の代理の方が約四十名、百九十名ぐらいの方々、そして労働界経済界学識経験者の人が二千数百名、約三千人の集会をやりました。その際に、細川首相といたしましても、この際に何とか政治改革実現をしたい、ここでどうしても区切りをつけたい。特にお話で印象に残りましたのは、今回首相韓国へ行かれまして、韓国金泳三大統領が非常に熱心に政治改革を推進しておられる、その政治改革を推進されることによって韓国国民の気分が非常に明るくなっておるような印象を受けたということが、私は印象に残ったわけであります。  日本政治改革は既に五年の経過を、国会審議をされておりますが、まだ実現をしないということは残念でございます。そういう意味におきましても、ここでどうしてもひとつ改革をしていただきたいと思います。そういうことで、きのうのこの緊急集会におきまして、我々はその意を受けまして三項目についての緊急アピールというのをまとめて皆さんの賛同を得たわけでございまして、この三項目について御紹介を申し上げたいと思います。  第一は、この政治改革法案というものを今国会でぜひともひとつ成立を強く求めたい。そのためにも、与野党改革派議員は党派を超えて団結し、法案の今国会成立を阻もうとするいかなる動きに対しても共同で立ち向かうことを強く求めたいということが第一でございます。  第二には、与野党の党首は、法案成立に向けて党内をまとめ切る決断指導力を今こそ国民に示すべきである。また、連立与党自民党法案修正協議を急ぐとともに、細川総理河野総裁トップ会談を早急に実現し、不退転の覚悟で決着をつけるべきである。  第三は、我々主権者たる国民の支援なしに政治改革実現できない。そこで国民は、政治改革実現に立ち向かう勇気のある国会議員を支援し、ともに連帯する姿勢を明らかにするとともに、改革を阻もうとする動きに対しては断固とした態度で臨むことを宣言するということを、約三千人近い方々の盛大なる拍手をもって決議をいたしました。これをひとつ先生方においては深く意にとめていただいて、この政治改革実現に向かってひとつぜひお願いをしたいと思います。  考えてみますと、政治改革の問題は、リクルートに端を発し、既に五年の経過を経ております。海部内閣挫折をし、そして宮澤内閣挫折をし、そして大きな政治改革の問題が挫折をしたのでございますけれども、ひとつこの際、総理総裁、両所の決断とリーダーシップを強くお願いをする次第でございます。  なお、政治改革の問題につきましては、単に衆議院のいろいろ制度改革だけが、これは私は始まりであって、これからこの次には参議院の改革が必要でありましょう。第二には、国会運営方法についても、旧態依然たる方法については、今回の政治改革特別委員会は別のことでございますけれども、今までのいろいろ慣習とか、もっと近代的、民主的な運営というものが必要ではないか、あるいは情報がもっと公開されてもしかるべきであろうというふうに思っております。それからあとは、その次には地方分権の問題あるいは規制の緩和等々ございますが、現在の非常に大きな国際情勢転換期において、日本国民の二十一世紀の幸福を開くためにも、ここでぜひともひとつ国会議員先生方決断お願いをする次第でございます。  甚だ意を尽くさない意見でございますけれども冒頭陳述として申し上げる次第でございます。どうも御静聴ありがとうございます。(拍手
  4. 石井一

    石井委員長 ありがとうございました。政治改革推進協議会会長亀井正夫君の陳述は終わりました。  次に、筑波大学教授花井等公述人お願いいたします。
  5. 花井等

    花井公述人 実は私は、ここへ参りますについては少々アンハッピーな気持ちでおるわけであります。というのは、どうも公聴会というのは成案を得るについて不可欠なんだけれども、それだからやっている、どうも形だけ整えているという感が非常にするわけですね。それで、私ども公述人としては、それじゃ本当にどういう役割を担っているのかという疑念を持っておりましたら、土曜日、六日の毎日新聞の社説に、私の言いたいことがびたっとこう出ているのですね。  そこを、ちょっとそのくだりを読んでみますと、「八日から十一日までは法案についての中央、地方公聴会がセットされている。公聴会での公述人決定ずみだ。」そして、「公述人意見を聴取もせずに、妥協案を決めてしまうというのはいかがなものか。」それで、この次が一番言いたいことなんですね。「第一、忙しい日程を割いて出席する公述人に対し失礼であろう。」ここのことを私はまず冒頭申し上げたいと思うわけであります。  それで次は、総論と各論に分けて、時間の許す範囲で意見を述べさせていただきたいと思うのでありますが、私は若い時代に、石井委員長と同じ時代なのですよ。石井委員長スタンフォードにおられるころに、私は南カリフォルニア大学におりまして勉強をしておったわけでありますが、大学勉強することとともに、五年間アメリカの生活を送ったということが非常に貴重でありました。  その体験の中でいろいろな学ぶことをアメリカから得ましたが、一つ政治であります。その政治も、一番魅力があるのは、政権交代ができる二大政党制、これが非常に安定している、いつでも取ってかわることができる政党がいるということであります。アメリカの戦後政治を見ましても、一番長い大統領で二期八年、アイゼンハワーとレーガン、この二人しかいないのですね。あとは大体民主党と共和党政権交代している。そういうことを非常にうらやましいと思いまして、日本もいつかやっぱり二大政党にしなきゃいかぬなということを考えておりました。  アメリカだけでなくイギリスもそういう制度をとっておるわけでありまして、本日の論点はそこにまず絞っていきたいと思うわけでありますが、もう一つアメリカで非常にああこれはいいなと思ったのは、国民の過半数が共和党員民主党員なんですね。それで党費を納める。その党費が中心になって政治運営される。だから、国民が、有権者がすなわち政治の主人公である、政治家はそれに仕えるものである、こういう精神が徹底しているわけですね。ですから、選挙なんかありますと、特に大統領選挙なんかそうですけれども、小さなホームパーティーに行ってもそのことでもうやり合いしているわけですね。それで子供まで、私はレーガンを選ぶとか、私ならクリントンを選ぶとか、こんな小学校の一、二年生の子が偉そうに言うんですよ。それは、親の話を聞いているわけですよね。何とかしてこういうところに日本政治を持っていきたいものだ、こういうことが私としては感じられるわけであります。  先ほど亀井公述人から御指摘もありましたが、今日の日本を見ると、どうも政治システム政党システムというものが国際化時代に対応できていない。その典型的な例は湾岸危機湾岸戦争、もうそのときに国会がうろたえうろたえしたわけですね。こういう例に挙げられるように、どうしてもこれは、もっと国際化にふさわしいそういう議院内閣制議院民主政治というものをつくっていただきたい、こういうふうに思うわけであります。  そして、昨今は大変な不況です。皆さん方ここまで車でいらっしゃったのでしょう。私は地下鉄に乗ってきたのですよ、こうなって。そこで聞こえる声は、もう断末魔の悲鳴に似た不況に対するのろいであります。そういうことを考えると、不況対策あり、それから対米関係も一見今静かですが、それはもう大変底流では厳しい。そういう問題とか、米の問題どうしますか。今年いっぱいにけりつけなきゃならぬ。そういう問題がメジロ押しになっているのに、国会議員の方はなかなかその審議の方が済まないから、ずれにずれ込んでおる。こういう状態なことを大変私は、先生方の努力は認めるとしても残念だなと、何でもう少し早く公聴会も開けなかったのかなという気がいたすわけであります。  政府案自民党案とを比較対照して私は読みました。出席すると決まった三日ほど前にこんなのが、法案が全部来たんですよ。あれは、学生の試験の採点をするよりもっとしんどい。学生採点は、場合によっては扇風機で風飛ばしたって文句言われないのだけれども、これはやっぱり一行一行読んで自分の頭に整理してやらないといけない。こういうことで慎重に読んだわけでありますが、その両者、確かに亀井公述人もおっしゃっておるように、政府案自民党案もかなり近寄ってきているということでは皆様方の御苦労を認めるわけでありますけれども、私は、両方をしっかり読んでみて、やっぱり、ベストじゃないけれども自民党案の方がベターじゃないかなという気がしたわけであります。  それは、自民党は五年前に政治改革大綱というのをやっているわけですね。それから、海部内閣においても宮沢内閣でも、これを根本にして成案を得ようとしたわけですね。その間の勉強というもの、蓄積というものがやっぱり重くどっしり自民党案の中に感じられる。なかなか政府案もいいけれども、何か自民党案に乗っかってちょっと色を変えてみたという感じが政府案にはいたします。  そういうことで、次に各論について申し上げたいわけでありますが、各論、申し上げたいところは六点あるのですが、到底そこまで時間としては行くまいと思いますが。  要するに選挙が小選挙区制と比例代表制になっておる。それで、これは一つ、小選挙区制というのは二大政党を目指している、そして比例代表というのは多党化中小政党の方に向いていく、こういう異質なものを二つ抱き込んだということでありますけれども、私は、アメリカ体験からして、日本は二大政党、それも政権交代可能な二大政党、これが相争うという政治システムが一番理想的ではなかろうかと思います。そういう意味からいいますと、できるだけ小選挙区制の方に人数を振り当てたい、そして比例代表制はできるだけ人数を抑えたい、こういうことでありまして、そういう観点からまいりますと、自民党案は四百七十一のうち三百が小選挙区制に当てられておる。小選挙区制というのが三百、そして比例代表というのが百七十一ですね。それに対して、政府案は二百五十、二百五十、こういうことになっておるわけであります。  イタリアもいろいろ小党分立の問題があり、いろいろ問題が、スキャンダルなどありまして、今回は、比例代表制を今度小選挙区制に変えてしまう、こういうことであります。私は、気持ちとしては、できるだけ二大政党政治をつくるために小選挙区制の人数をふやす、できるだけふやす、そして比例代表の方をできるだけ減らすということに賛成であります。  次に、一票か二票か、この問題であります。この問題も、二大政党制を重視するということであれば、政策中心、政党中心という一票制を提案している自民党案の方が、二票制を提唱している政府案よりもよかろうではないか、こういうふうに私は考えるわけであります。  それで、現在は五百十一人の議員がありますが、これを減らそうということでは確かに政府案自民党案もその点では努力をしておるわけでありますが、その内実を見ると、先ほど申したとおりに、二大政党ということの観点からいえば、政府案よりは自民党案の方がベターではなかろうか、こういうことであります。  次に、政治献金の問題、政治資金の問題でありますが、自民党案では法人も献金ができる、そして政府案では法人の寄附は禁止している、こういうことになっておりますけれども、やはり法人というのは公的存在、社会的存在でありますから、これが献金できないということであれば、政治の自由というもの、結社の自由というもの、そういうものに圧力が加わってくる、こういうふうに私は考えるわけであります。  最後に、公的助成の問題を申し上げます。自民党案では三百九億円、そして政府案では四百十四億円というふうになっております。アメリカなんかと比べるといろいろおもしろい点が出てくると思うわけでありますけれども国民の負担は、現在の時点では、国が三分の一、政党が三分の一、そして政治家が三分の一、お互い三分の一ぐらいずつで帳じりを合わせるということが賢明ではなかろうか。そういう三者が三分して持つという意味合いでいくと、これまた自民党案の方が近い。しかし、これにも正直言うとそれほど大きな差はない、妥協ができるんではないか、かように思っておる次第であります。  いずれにしても、国民政治不信というものはピークに達しております。もう大変な不満、不平であります。これを一掃するために、政治改革法案を今国会成立させていただきたい。昨今の経済不況というのは、私は政治的混乱が原因だ、一つあると思いますね。だから、政治的な安定というものがあれば経済も安定するであろう。そういう観点からも、今国会でぜひとも成立させていただきたい緊急の要件である、かよう申し上げて、とりあえずの公述を終わらせていただきます。(拍手
  6. 石井一

    石井委員長 筑波大学教授花井等君の陳述は終わりました。忌憚のない御意見、大変ありがとうございました。  次に、弁護士坂本公述人お願いいたします。
  7. 坂本修

    坂本公述人 公述人坂本です。  在野の弁護士として長く活動してきた者として、普通の国民を、恐らくその気持ちを代表できると思いますが、国の主人公は国民であり、その参政権、平等な価値のあるそれぞれの一票の行使は私たちの基本的人権なんです。この審議に当たって、いろんなことが議論されていますが、憲法と民主主義と国民の人権との立場で、これは何なんだ、そのことによってどの案がよく、何をしてはいけないのか、何をすべきなのかという観点が、私がお伺いしている限りでいうと、いささか審議の中で尽くされてない、残っている問題だ、あるいは一番大事なことが残っているんだというふうに私は思います。  最初に申し上げたいのは、小選挙並立制並立制と簡単に以下申しますが、両方の配分が二百五十対二百五十であれ三百対百七十一であれ、実質は小選挙区制であり、それは民意をゆがめ、大量に国民の意思を切り捨てることによって虚構の多数議席を第一党に与える。これは、憲法が保障しております国民のそれぞれの人権としての平等な一票を侵害するものであって、私は、この改正によって、将来憲法改正のためであるかどうかということがよく議論されていますが、これ自身が少なくとも憲法原理についての大規模な改悪だ、もし改悪という言葉がこだわられるならば、改憲行為だ、一種の立法改憲行為だということを冒頭に申し上げたいと思います。  小選挙並立制には致命的な欠点があると思います。まず、小選挙区で恐るべき民意切り捨てをしてしまうことになりますね。例えば、一選挙区で六党が立候補すれば、理論上一六・七%で当選する。このことは法案も予想しておりまして、法案の中に、有効投票数の六分の一以上の最大得票者をもって当選とするというのは、今私が指摘したような事態が起き得るということを予想していることであります。  死に票の山ができます。試算によれば、現行中選挙区では二割五分前後の死に票率が、小選挙区では、全国平均で、これは各党が全部対立して立つことを前提にしていますが、各党対立の場合で六割に上ります。東京では七〇・五%、大阪では何と七三・七%にはね上がります。六割ということは、三千七百万の投票者の投票が死に票になるということであります。これは、どう考えてもこの制度の致命的な欠点ではないでしょうか。  小選挙区が民意をゆがめてしまうではないかということを日本共産党の志位和夫議員が質問しておられますが、細川首相はこれに対して、小選挙区だけであればそのようなこともあるだろう、それはそうですと、その範囲では認めております。しかし同時に、比例があるから民意の反映はそれによって行われるとか、穏健な多党制が実現するんだとかいうこともまた繰り返し答弁されておられます。そうなんでしょうか。事実が最も大事だと思います。  比例で民意を反映といっても、最初から二分の一はもう比例から消えているわけですから、例えば一〇%の得票をとれば、本来の民意反映の比例ならば五十議席を得られるはずの政党が二十五しか入らないわけですから、こういうのは本来は比例とは言わないのです。各国の選挙制度のすぐれた研究者である朝日新聞編集委員の石川真澄氏は、最近の著作、ここに持ってきておりますが、その中に、こんなに大幅に値切られてしまえば比例代表とは到底呼べないと書いてありますが、これが私は大事な点だと思います。  第二に、大政党、とりわけ第一党は、小選挙区で三割台の得票で八割台の多数を手に入れ、しかもその上にさらに比例で議席配分を受ける、いわばボーナス配分を受けるわけですから、民意をはるかに上回る議席を手に入れることになり、他党、特に第三党以下は、よく学者が罰金を科せられるという表現を使っていますが、罰金を科せられるという表現に値するような非常に差別された状態になります。  いろいろ議論しているよりも、事実が一番そのことを証明していると思いますので、簡単に申し上げます。東京新聞の試算では、各党それぞれに戦えば、得票率三六・六%の自民党は、小選挙区で二百三、比例で九十九、合計三百二、議席占有率六割という多数を手に入れます。つまり、三割台の得票で六割が手に入ります。一方、例えば得票率一五・四三%の社会党は、トータルで議席占有率一〇%に転落をいたします。これは民意に反すると思います。  今は昔と違う、連立与党が一本化すれば自民党に勝利できるからいい、そのことによって二大政党実現をする、政権交代実現するという主張があります。しかし、国民の民意をどう反映して、憲法のルールどおりにどう選挙をやるかというのが基本なのですから、ルール破りをやったら、そして、どの政治勢力がうまくやったら勝つか負けるかという議論は、議論の立て方が国民の方から見たら逆立ちをしているという思いをどうしても禁ずることができません。  実際にも、恐ろしく民意に反する結果が随所に出ます。私も調べてみて本当にびっくりしました。  私、東京に住んでおります。東京の票だけを分析してみました。東京地区の得票率、前回自民党は逆風の中で大後退を強いられましたが、それでも二七%という有権者の支持を得ております。この二七%の支持を得ている自民党が、二十一の小選挙区で試算をしてみますと、わずか一議席、議席占有率四・八%という転落になります。一方、一本化した連立与党は、五三%の得票率で二十議席、占有率九五%ということになります。ちなみに、一二・七%で五議席を得ていた日本共産党は、どちらの場合も、つまりばらばらにやっても一本になってもゼロであります。東京は政治の中心です。このたくさんの有権者の中で、各党が全力を挙げて政策を訴え、選挙をやって、にもかかわらずこんなアンバランスな議席になるというのは、小選挙区制というものの持っている致命的な欠点だと言ってよろしいのではないでしょうか。  正直に申しまして、私は自由民主党に投票してこなかった人間です。その政策に批判を持っております。しかしながら、だからといって、二七%の支持を得ている自民党が一議席しか入らないなどという選挙は、民主主義に反するものだとして絶対に反対だということを申し上げておきたいと思います。これはよくない、こういうやり方は。  連立与党の場合に、一本化すれば勝てるとか二大政党、いろいろ言われます。シミュレーションにもそれはあります。ありますが、大問題があります。それは、この各紙のシミュレーションは、いずれもこれが完全に一本化した場合に勝つという話なんですね。この一本化というのは、時間がないので省略しますが、結局は一党化にならざるを得ないと思います。とすれば、政策が一致した、本当に活動していく中で政策が一致したから一本化して、それを国民に訴える、そして二大政党で対決をしたというならば私は文句を言いません。けれども、実際のこの状況というのは、この仕組みの選挙の中で勝って生き延びるためには、いやでも応でも一本化しなければならない。  今まで社会党を支持してきた有権者、今まで公明党を支持した有権者、いろいろ違いがある。新生党とももちろん違いがある。あるんだけれども、一本化しなきゃどうしようもないじゃないかという、いわば鉄の枠みたいなものがあって、そこで政策を議論したりそのことを有権者に問いただすという作業がないままに一本化して、AかBかしか投票するところないですよ、あとの第三党以下みんな死に票になりますよ、これは国民の選択権を奪うものであって、この国の憲法が予定しているものではない。いわば強制的に、理念抜き、政策抜きに一党化の強制連行をされるということは民主主義に反するということを言いたいのです。  もう一つ、ここで一つだけ補足しておきます。  こんなやり方をしてまで二大政党がいいんだとか二大政党による政権交代がいいんだということが無論証的に言われていますが、これはほとんど学界でもいろいろな研究者の中でもつぶれてしまっている議論だということです。二大政党制とか小選挙区制というのは、民意を代表せず政党政治をよどませるということで、時代おくれだとされています。  イギリスでは、既に過半数を割り続けながら、十七、八年にわたって保守党が政権を続けようとしています。第三党の自民党は、この間毎回二〇%前後、例えば前回の社会党の票よりも多い得票をとりながら、三%前後の議席しかない。このために、政治にイギリスの市民の意思が反映されないということで、比例代表に変えるというのが世論調査では五割を超えました。変えようとしているのです。小選挙区の母国、二大政党の母国と言われたイギリスなどでもう時代おくれだとして変えようとしているものに、何で日本が突っ込んでいかなければならないのでしょうか。  この点についても、先ほどの石川真澄氏は、英国ではもう見直しが始まっていることを明らかにした上で、ちょうどこの時期に日本はその小選挙区を採用することが政治改革だと思い込み、実現に向かって走っている、珍妙な風景であると言わなければならない、そこまで酷評をしておられます。珍妙なという表現については私は表現は違いますけれども、しかしやはり大きな間違った選択をしようとしているんだという点については、思いを同じくするものであります。  この点のまとめとして、憲法のことを申し上げておきたいと思います。  日本国憲法は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動すると明記し、主権は国民に存在すると宣言しております。国民こそ国の主人公であり、私たち国民は価値においても平等な一票を保障され、これを行使し、こうして選ばれた皆さんが全国民を代表する議員として国会で活動する、それによって議院が構成される。これはだれがどう見ても憲法の基本原則です。先ほど私が言ったような、国民の意思とあれほどまでかけ離れ、ほとんど半ばに近い国民の票を死に票にしてしまう可能性のあるあのような制度をもって、どうして憲法が定めた制度だと言えるでしょうか。冒頭申し上げましたように、私は、これは立法改憲であると言わざるを得ないのです。  次に、少数政党の問題に入りたいと思います。  政治改革法案は、第三党以下に罰金を科すと言われるほどの不利益を与えるだけではないのです。それだけではなくて、国会議員を五人以上持たないか、あるいは国政選挙で三%以上の得票を上げなかった政党については、実際上政党として生き延びることが不可能な規定を随所につくっております。これは、改めて読んでみて本当に驚きました。  入り口では、三十人以上の候補者を立て、一人六百万、合計一億八千万の供託金を積まなければ比例選挙への参加ができません。無所属で小選挙区から立候補しようと思えば、政見放送も認められず、選挙活動は単純に言えば二分の一しかできません。つまり、絶対に勝てません。  第三に、最も重大なのは三%足切り条項です。これらのハンディを超えて必死に選挙に臨み、前回の得票率でいえば三%に近い百八十数万の票を得ても、議席は三%以下なら全部没収、与えられないのです。余り言われていないことですので申し上げておきますが、これを三%で切るというなら、完全な比例なら三%であれば十五議席あるはずです。三、五の十五議席あるはずです。ところが、三%以下で全滅させるということは、つまり議席の剥奪率でいうと六%といいましょうか、比喩的な言い方ですが、六%、十五議席を民意に反して奪っているということであります。もしこういう政党が二つあれば、約四百万の得票、実質十五の議席、今度の法案でいけば十五議席でしょうかの議席が法律の名によって消されるということです。これは、少数政党の権利が侵害されるというだけでは済まず、私たち主権者国民のすべての参政権が奪われるということであります。二百万に近い、あるいは四百万に近い人の参政権が法律によって消される。  しかし、今日の少数政党は、日本新党やさきがけがそうであったように、国民の動向によっては大きく成長するのです。そして、そのようにして成長した政党国会でどのように活動するかを見て、国民は、自分の票を次にまた託すか、もっとその力を広げるか、あるいはやはり票を入れるのをやめるか、それを決めるのです。  国民政党の従属物ではありません。自分で判断して、自分の要求、人間らしく生きようという要求を実現するかどうかで決めるのです。なのに、二百万近い得票を集めて、本来ならこの法律によっても七議席以上になるはずの政党国会に全然出てこれないとなったらば、国民は判断するチャンスがありません。その意味でいうと、それはその二百万の投票者だけではなくて、すべての国民の参政権を侵すものだというふうに言わなければなりません。  あと五分くらいしかないので話を進めます。  金権腐敗、これは断固改めてもらいたいというのは、私たちも町であらゆる人に会っても圧倒的な国民世論です。にもかかわらず、政府案によれば、企業献金は政党、その支部を通ずれば認められます。最初条文を読んだときに、市町村云々というところ、「一以上の市町村」というところ、何のことかよくわかりませんでした。読んでみてわかりました。  それで、たまたまきょう朝、来る前に電車の中で朝日新聞を買ってきましたら、実におもしろい解明をしてあります。新生党長野県連会長中島代議士は、現在の選挙区内の三十四の市町村に党支部を設ける予定だ。新生党の場合は、多くは後援会に党支部の看板を掲げるだけだ。新生党代表幹事の小沢一郎代議士の地元岩手県では党員募集をしていないが、いざとなったら小沢後援会を支部に衣がえすればいいんだからと後援会幹部は事もなげに語っている、こうなっています。確かに支部の数を、こういうふうにやると三千二百三十六の地方支部ができる。これと選挙区の支部ができる。これの混合形態もできる。入り口は無数です。この中で金が動く。そして政治家個人に寄附できる。その中身は明らかにする必要はない。これは自民党からも批判が出ていると思いますが、政治資金の流れを今以上に不透明にし、とんでもない企業献金や汚職を誘発するものではないでしょうか。  私たちは弁護士ですが、事実関係でこれだけのことがあるのにこういう法律をつくろうとして、これを企業献金を取り締まり政治をクリアにするんだというふうに言ったら、私たちは法廷では絶対に通らないというふうに思います。法廷で通らないことが、この世で通ったり国会で通ることがないように心から望むものです。  違憲の政党助成の問題も申し上げたかったのですが、時間がないので省略をさせてもらいます。できれば、質問でもしていただければ、私の意見を述べさせてもらいたいと思います。  最後に、あと二分数十秒で結論を申し上げたいと思います。  今まで小選挙並立制について推進される側の主張してきた根拠、政権交代がそうしなければ不可能だとか、金のかからぬ選挙にするためだとか、中選挙制度疲労論とかは、いずれも事実において崩壊していると思います。  残された主張はただ一つ細川首相などが強調しておられる国際貢献国家として行動し、国民に痛み、苦しみを与える政治であっても決断し、実行できる政権と政治体制をつくるためだというものであります。本国会でもその種の質問がされ、そして細川さんはそのとおりでありますということを言っておられます。私はこの点について、そういう政治は間違っていると言いたいのですが、そこはもう省略をして、最後に公述人としてどうしても言わなければならないことを申し上げたいと思います。  それは、痛みを味わうか、どんな国際貢献をするか、米はどうしたらいいのだ、それを決めるのは基本的には国民だということです。国民の意思が違い、票が違ってそれが実現できなければ、政治家ないし政党としては、おれは違うぞ、おれはこっちをやりたいんだと思ってもそれが実現できない、それが民主主義だと思うのです。そういう中で、もし国民が選択した道が間違っており、そのことによって国民が被害を受けたら、国民はその中で次の選択を変えていくのです。これが民主主義の基本であります。民意からかけ離れ、国民を代表しない強力な政府が仮に、仮にですよ、主観的によかれと思ってやったところで、その政治は汚れ、しばしば独裁になり、国民に不幸をもたらします。そのことは歴史が繰り返し証明しているではありませんか。  私も、戦前、強力な政府によって戦場に駆り出された、そしてフィリピンのクラークフィールド飛行場で病にかかり、戦病死した兄を持っております。日本国憲法は、こうした不幸を二度と繰り返さないことをかたく誓い、そのためにすべての国民に平和で人間らしく生きる権利を保障し、主権者である国民に価値において平等な一票を基本的な人権として保障したのだと思います。皆さんは、国会議員として憲法を擁護する義務を負っておられます。  先ほど亀井公述人からありましたが、私たちは十一月七日、八万人の庶民、労働者、国民と一緒に代々木公園で反対の運動を起こしました。広く今国民に本当にどうなのと聞いたら、企業献金その他を改めるのが先よとおっしゃると思います。そして、政治腐敗を改めるのが一番大事よと言うと思います。選挙制度のことならば、小選挙区制にしろというのは、あるいは並立制でも結構です、それは私は国民のごく少数だと思います。  多数の国民の意思を、その国民からの一票一票を受けて当選された皆さんが、国民に対して、国民の信頼にこたえた審議をされることを心から願って、私の陳述を終わることにいたします。(拍手
  8. 石井一

    石井委員長 ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  9. 石井一

    石井委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大畠章宏君。
  10. 大畠章宏

    ○大畠委員 日本社会党の大畠章宏でございます。きょうは大変お忙しい中、御三名の公述人皆さんにおいでいただきまして、大変ありがとうございました。  十分間という限られた時間でございますので、端的に何点か、ただいまの御意見をベースとして御質問をさせていただきたいと思います。  実は私もきのう、亀井さんが主宰しておられます民間政治臨調の集会にも出席させていただきました。今国会中にこの政治改革法案成立するか否かの重大な局面を迎えている、政治改革は海部さん、宮沢内閣に続く三度目の挑戦であり、もし三たび挫折するならば、国民政治に対する信頼は地に落ち、変革を求める世界の期待をも大きく裏切る結果になりかねないというようなアピールも採択されております。  そういうアピールに賛同をしながら、ぜひ今国会の間に成立しますよう全力で頑張るという立場から御質問をさせていただきますが、これまでいろいろな論議がされてまいりました。この特別委員会、また各界の方々からもたくさんの貴重な御意見も賜りました。そういう中で選挙制度関係については、もう私は、きょうも御意見を賜りましたけれどもあとはどう決断していくか、そういうことだと思います。過日の委員会でも、ごちゃごちゃ言わないでもうやりなさい、そういうふうな御意見もございました。そういうことで、この選挙制度問題、いろいろな御意見がありますが、とにかくもう、きょうの御意見も踏まえて決断をするというところに来ているのかなと思います。  そういうことから、私は、ちょっと選挙制度とは別なところ、いわゆる献金問題等々に、お金の問題について三人の公述人皆さんにお伺いしたいと思いますが、一つは企業献金問題であります。  これは昨日、愛知県の伊藤さんという市議会議長さんから、企業というものは利潤を追い求めるものだ、したがって、献金はすなわち企業が利潤を求めるために出しているのじゃないか、そうしか思えない、そういうふうな企業献金に対する御認識がございました。また過日、元最高裁判所長官の方からは、いろいろな意見があるけれども、企業献金というものはそう無節操に認めていくものじゃない、最終的にはやはりなくすべきじゃないかというような御意見もあったわけでありますが、この企業献金について三人の公述人皆さんはどのような認識をお持ちか、まずお伺いしたいと思います。
  11. 亀井正夫

    亀井公述人 企業献金とあわせまして団体献金、この二つの問題があろうかと思います。私どもは、政治をおやりになるというのにはどうしてもやはりコストがかかる、そのコストをどういう格好でやっていくかということが基本問題であろうかというふうに思っております。  冷戦構造が崩壊するまでは、日本の中において、自由主義経済を支持する政策を持つ政党と、それから社会主義経済を志向する方角の政党のポリシーとがあったと思いますね。そういう意味で、私ども経済人の立場からいうと、やはり自由主義経済がいいのだ、社会主義経済ということは決してよくならないという信念のもとに、自由主義経済を志向する政党を支持していく。それにはある程度のコストを負担をするということでございまして、どこの議員の方が言われたか知りませんが、それがすぐ利権につながって献金をしておるんだというのは、私は言い過ぎであろうかというふうに思います。  ただ、理想は、その金ができるだけ少ない方が望ましいということも一つございます。それから、そのコストを先進国のように個人がやっていく。ところが、残念ながら、日本ではまだその習慣といいますか、そういうことが確立ができない。  しかし、どこかでコストを負担しなければいかぬということになると、私どもといたしましては、ある時期は企業・団体献金は認めるかわりに、それを透明化していく。例えば銀行口座一本にやっていくということで、ある適当な額の範囲内においては、銀行口座は一本にして透明化をする、透明度を高めるということが一つ。それから第二には、それについての罰則を、そのルールに違反した者については罰則を強化していく。そしてもう一つは、私ども臨調で主張しておりますのは、監視機関を置いてやっていくということで、やがて、いつになりますか、国民が当然政治に対してコストを負担しなければいかぬという考え方で、先進国のように個人献金という時期になればやってもいいけれども、当分の間は、現在の制度についてやはり透明度を高めることと、それから罰則の強化と、監視機関ということによって、きれいな金を民主主義政治を支えるコストとして負担をしていくというのがいいというふうに考えております。
  12. 花井等

    花井公述人 ただいまの大畠委員にお答え申し上げたいと思いますが、まず第一に、政治は金がかかるものなんです。金がかからない政治というのは、むしろそれがファッショ的、一党独裁政治なわけですね。それは歴史が証明しておるわけです。したがいまして、不明瞭な金が、それも膨大にかかる、そこをチェックする、そこが問題であろうかと思うのでありますが、その点に関しまして、私は先ほども申し上げましたけれども、企業は月額二万円という程度ならよかろうじゃないか、それまでも根絶やしにするということであれば、一体、企業が本来社会的存在であるということをどう見るのかということになります。なお、最高裁の判断も、企業は一つの社会的存在である、こういうことを言っておりますから、最高裁の判断からしましても、企業の献金はまあ月額二万円程度ならよかろうじゃないかと。  今まで金が余りに不透明に、しかも膨大に裏を通っていた。もう金丸事件から、金がかかり過ぎるということで今回の問題になっておるのですけれども、もう一度最後に申し上げますと、政治は金がかかるんだ、それをどの程度チェックするか。それについては罰則規定もあるわけでありますし、そのほか腐敗防止法でチェックする方法もあるわけでございますから、企業の献金はある程度許してよかろうではないか、こういうふうに思うわけであります。
  13. 坂本修

    坂本公述人 私は、企業献金が今あれだけの悪を流しているということをまず見て、そこから結論を出していくというのが大事だというふうに思うのですね。しかも、それが少しずつ整理されてきたのではなくて、ますますひどくなっている。ですから、企業献金はすべて禁止、個人に切りかえるという以外に道がないと思います。そして、それは世論調査の非常に多くの意見だというふうにも思います。  すぐやるのは大変だと、政党によってそうおっしゃるところがあるのですが、それぞれに力のある政党でございまして、施行日時をいつにするかとかそういう点は、やめるというのを決めて、企業献金はもう廃止するぞと決めて、それをいつからぴたっととめるかということについては直近で、引き延ばしじゃない直近で、しかし合理的な日時を設定してやればいいことだというふうに思います。労働基準法で労働時間を縮めるときであれ何であれ、その瞬間その経営者はつらいし、つらいことは世の中にたくさんあるのだと思います。しかし、そこはやはり勇気を奮って、決めるものはきちっと決めるということが大事だ。  もう一点だけ。弁護士の立場で申しますと、そういうことでとまるのが一番いいんですけれども、それを破った人に対して、やはり残念ながら処罰するとかそういう裏打ちがなければだめだというのも事実だと思います。その場合に、企業献金をきちっと決めておけば、趣旨がどうだとか貸し方がどうだったとか、秘書がどうだったかという話ではなくて、裁判も迅速に、罰すべきものは罰し、無罪にすべきものは無罪にできるわけです。その意味で、企業献金禁止というのに踏み切られるのが一番正しいというふうに私は考えております。
  14. 大畠章宏

    ○大畠委員 ありがとうございました。  時間でございますので、次の方に移りたいと思います。貴重な御意見、ありがとうございました。
  15. 石井一

  16. 松沢成文

    松沢委員 新生党の松沢成文でございます。きょうは三人の公述人皆さん、お忙しい中大変ありがとうございます。  まず第一に、今回の政治改革は、特に選挙制度においては衆議院制度を中心にやっているわけで、もともと政治腐敗や汚職事件が多くなってきたその裏には、現在の中選挙制度、この問題に密接に絡みついているということで、選挙制度はまず衆議院先行で改革をしていこうということになったわけなんですね。ところが、御承知のとおり日本は二院制の国でありまして、国会には衆参両院あるわけで、この衆議院改革というのは密接にもう一つの院である参議院の改革に結びついている、関連が深いわけであります。  そこでお伺いをしたいのでありますけれども、当然、この衆議院制度改革が終わりますと、次は参議院の改革ということで、もうある党ではかなり進んだ議論がなされているところでありますけれども日本のこの二院制のチェック・アンド・バランス、その中で衆議院に小選挙比例代表並立制、これを導入するために私たち今一生懸命やっているのですが、もしこの制度を導入した場合に、皆さんは、参議院にはこの二院の関連も含めてどういう制度を導入するのが日本国会全体の国政機能といいますか、チェック・アンド・バランス機能を持つにはふさわしいと思うか。坂本公述人の場合はちょっと制度改革はなしということなので、とりあえず亀井先生と花井先生に、参議院、私はこういう改革するべきだという御意見をお聞きしたいと思います。
  17. 亀井正夫

    亀井公述人 参議院の問題でございますが、衆議院改革をされたらぜひ参議院の改革をやっていただきたい。  私ども、不勉強でよくは知りませんが、憲法制定の過程において、最初は一院制であった案が、日本の方から、貴族院という制度があって、これが衆議院の問題に対して均衡、補完、抑制という、チェック・アンド・バランスと先生おっしゃったような機能を発揮した、こういうことをぜひ入れたい、それはいいじゃないかということで設けられたということでございます。そこで、その立法の趣旨といたしましては、衆議院に対する均衡、補完、抑制で政治の本当の実現の実を上げるという精神でありますから、政党から離れた運営ということが一つ想定されておったというふうに思います。  最初、スタートの四十年ぐらい前には、緑風会という政党から離れた、非常に良識の府としていろいろな意見をやり活動をされた。ところが、時日を経過していきますと、選挙制度関係もございますけれども、だんだんと政党化していって、結局衆議院議論したことを参議院で同じ議論の繰り返し。これは、私は国鉄改革の問題に何遍か御承知のように衆議院に呼ばれ、参議院で同じ質問を繰り返した。非常に現在手間がかかる制度になっております。  参議院というものについて廃止論もございますけれども、私ども民間政治臨調といたしましての案としましては、やはり均衡、補完、抑制で、しかも衆議院とは別の良識の府という格好からいうと、政党の拘束はできるだけ少なくしていく。  しかも、今現在が百五十二と百で二百五十二人でございますが、私ども一つの案として申し上げますと、アメリカ制度のように一都道府県二名ずつということにすると九十四人、二百五十二人から九十四人のその差の百六十人ぐらいがなくなるのですけれども、これは非常に過激な案のように思われますけれども、それで余る費用は、むしろ参議院の方の秘書をふやすとか研究をやる費用を持つとか、アメリカのように思い切って参議院の方にいろいろそういう活動できるような案を盛ったらどうだろうか、そういうのが民間政治臨調の案として提言を出しております。
  18. 花井等

    花井公述人 当然のことながら、衆議院改革するということは参議院を改革しなければならないわけでありますが、並立制にしますと参議院に余計似てくるわけで、似たものが二つできる、こういうことで非常に問題があるわけでありまして、当然参議院というものが衆議院と異なるそういうシステムをとるように改革をしていかなければならないと思うわけでありますが、先ほど亀井公述人からお話のあったように、全国二人ずつというのも一案だろうと思います。  アメリカは、御承知のとおりに下院は小さな区割りの、文字どおりの小選挙区制でありますけれども、上院は大きい州も小さい州も二人、五十州ありますから百人。その上院では、下院が地方的な、地域的な利益にばかりこだわるというのに対して、全国的な利益に立って議論をする。しかも、特に上院議員の場合は、自分共和党に属しているからといって共和党に束縛されない、民主党に属しているからといって民主党に束縛されない、いわゆるクロスボーティングというのがあるわけですね。  そういうようなアメリカの上院型のモデルを参議院の中に取り上げていけば、一つ新しい政治改革の方向が出てくるのではないか、かように思う次第であります。したがって、分けて言えば、地方の、地域の利益を代弁するそういう衆議院と国益を代弁する参議院、こういうことであろうかと思います。
  19. 松沢成文

    松沢委員 そこで、今の花井先生のお話に関連して伺いたいのですが、花井先生は、衆議院をできる限り小選挙区制に近い制度にして、比例代表もあるけれども、それで二つの二大政党政権交代可能な二大政党制アメリカやイギリスのような形を導き出すのが最も望ましいだろうということだったのですが、先般行われましたカナダの総選挙で、非常に私、一面怖いなという結果に遭ったのですね。  それは、カナダもアメリカのように単純小選挙区制をしいていますけれども、カナダの場合は日本と違って、まあ連合国家みたいなところがあって、例えばケベック連合というのですか、ケベックの独立を目指すという、一部の地域に、非常に狭小的な利益なのだけれどもそこの地域では極めて利害が大きい、こういうものを目指すワンイシュー的な政党、あるいは改革党というのも、西部の方の非常に保守的な政党らしいのですが、こういう政党がその地域で物すごい支持を得ていると、小選挙区制では出てこれるわけですね。  そうしますと、カナダの場合、今回政権をおりた進歩保守党というのが、やはり全国平均で見ると、これは全国政党なのですが、一六%の支持なのだけれども、全国に散らばっているために、今回政策の失敗で何と二議席に、百何十議席あったのが二議席に減ってしまった。ところが、ほぼ同じ支持率の、ケベック連合一五%の支持率、そして改革党一七%の支持率、こういう支持率はほとんど同じなのだけれども、地域に固まっているがために小選挙区制で出てこれて、これが何と五十議席台の議席を持ってしまう。  そうなると、日本の場合、小選挙区制に近い形で導入した場合、非常に地域に強い政党が出てきて、その中で、衆議院の中で大きな議席を持って閣僚にもなっていく。それは、全国的な支持率で見てみるとほとんど変わりない政党でも、全国政党には非常に不利だ、こういう状況になるわけですね。  そうしますと、私は、小選挙区を半分にして、あとの半分は全国の比例代表に置いた私たちの政府案というのは、こうした地域狭小的な政党が全国の得票率よりも議席率がぐんと大きくなってしまうということを、弊害を防げる面があって、自民党の提案している比例代表も都道府県というのでは、地域性はいいかもしれないけれども、全国的な利益は余り反映できないようなデメリットがあると、カナダの総選挙を見て非常に感じたのですが、花井公述人にお聞きしたいのですが、こうしたカナダの結果も踏まえて、小選挙区制のデメリットを逆に防ぐ意味で全国の比例代表を加味するという私たちの政府案のメリットは、私はあると思うのですが、その辺についてはいかがでしょうか。
  20. 花井等

    花井公述人 今、松沢委員がおっしゃいましたように、カナダで起こったことは予想外のことであります。ただ、カナダの政治システムは御承知のとおりに、単純小選挙制度で、しかもあれは非常に地域に人口が密集しているという状況でありまして、やや特異な状態であろうかと思います。日本の場合には、並立制を導入する、そして人口が、確かに東京その他集中しておりますけれども、カナダのような集中ぐあいとは違うというような差異を考えますと、必ずしもカナダの例が我々の政治改革に直結する懸念になる、こういうふうには私は思わないのであります。
  21. 松沢成文

    松沢委員 時間でございますので、以上で終わります。ありがとうございました。
  22. 石井一

    石井委員長 次に、日笠勝之君。
  23. 日笠勝之

    日笠委員 公明党の日笠でございます。公述人の三先生方、大変に御苦労さまでございます。  まず、亀井先生にお伺いをしたいと思いますが、今度の政治改革、今国会でやっておりますが、海部内閣宮澤内閣と二回にわたってつぶれ、三度目の正直ですし、前回の宮澤内閣のときも百七時間、私もそちらに座って答弁者としてお答えをした一人でございますが、地方公聴会の時間まで入れますと、それにもう近づくような大議論を今回もやっております。政府案自民党案も同じ並立という同じ土俵、その土俵を、長さをもう少し広くするか短くするか、仕切り線をどうするかとか、そういうたぐいではなかろうかな、こう思っておりますから、とにかく早く修正をすべきところはして結論をつける。  でないと、今ちまたの声では、細川政権内閣の大命題は政治改革である、これをやらない限り、その次に控えておる、先ほどからおっしゃっておる米の問題とか景気対策とか年金改革とか税制改正とか来年度の予算とか、もうすりガラスで何も見えない、とにかくこのすりガラスをぶち破る、すなわち政治改革を早く、お互いに妥協すべきところは大胆に妥協してやるべきだというちまたの声があふれておりますが、亀井先生はその点、私は細川内閣を連続改革内閣、こう位置づけております。ですから、まずこれを突破口にさらなる改革改革ということで、日本のあるべき姿、方向性というものを国民に示さなければならない、こういう不透明な時代でございますからそう思っておりますが、御意見、御所見はいかがでしょうか。     〔委員長退席、三原委員長代理着席〕
  24. 亀井正夫

    亀井公述人 もう今先生がおっしゃった御意見に全く一致しておりまして、現在、国民は本当に、五年かかって政治改革ができない、それにかてて加えて大変な不況で、雇用不安も起こっておる、こういう状況でございますね。外国からは、見られてみると、例えば、前にも申し上げましたが、この三月、私シンガポールに行ったときに、西にイタリー、東に日本、三大汚職、イタリーはどうも改革するが、日本はどうなるのですかということをシンガポールの政府高官、これは政府のお役人ですが、高官は全部政治家でもあるのですが、言われまして、私は返答に困ったわけです。  そして外国も、やはり日本はこれだけのウエートを持ってきたら何か自己改革能力を持っておるのだという期待があると思うのです。その期待にも沿い得ないということはまことに残念なことでございまして、そして今おっしゃったように、もう前の国会で百七時間以上、今度はもう百数十時間という時間を費やして、もう全部問題点は出た、後は腹を決めるだけということでございますから、昨日の緊急総会でもお願いいたしたように、ここは細川総理とそれから河野総裁とが腹を割って話し合って、ここでひとつやろうじゃないか、こういう決断をしていただく、それが各党の中で、ひとつ総理総裁、そういう方を盛り上げて、者お任せします、そしてもう、いやここでやってくださいという機運をつくっていただくことが一番ではないかというふうに思っておる次第でございます。
  25. 日笠勝之

    日笠委員 花井先生、一点お聞きをしたいと思います。  先ほど先生は小選挙区の定数の問題等々おっしゃいましたが、比例の方の単位でございますが、自民党案は都道府県になっております。政府案は全国一本、こうなっておりますが、先生は、この比例代表の単位、都道府県単位がいいのか。何か、自民党はしっかり何年間も蓄積があるからベター、こうおっしゃっておられますが、この比例の単位はいかがでしょうか。
  26. 花井等

    花井公述人 今の件でございますけれども自民党案の方がこの点でもベターだろうと思いますのは、都道府県単位で候補者が出てくる。  そうすると、投票する人々は顔が見えるわけですね。ああ、あの人なのだな、こういうことで親しみが持てる。そういうところが、反対に、政府案になりますと、全国区という単位になりますと、だれやらだれだかわけわからぬ、名前だけどんどんどんどん出てきて顔が思い浮かばぬ、そういう状況になる可能性が非常に強いではないか。そういうことで、政府案よりは、この点においても自民党案の方がベストじゃないけれどもベターではあるまいか、かように申し上げた次第であります。
  27. 日笠勝之

    日笠委員 同じことを、亀井先生はいかがでしょうか。
  28. 亀井正夫

    亀井公述人 これは、私ども臨調で出したのは府県案でございました。というのは、選挙というものは、やはり顔の見える選挙ということが必要ではないか。全国区では広過ぎまして、しかも参議院の全国区でもこれは残酷区というぐらいまあ大変な負担があるわけでございまして、そういう意味でいいと思います。選挙制度審議会で出した案では、これはブロック制でございました。  そういうことで、この全国か府県かということで、私どもの臨調としては府県別の案で顔の見えることの方が望ましいということで出しましたけれども、その辺のところはやはり、全国か府県かあるいはブロックか、その辺の三者のどれを選ぶかということにしていただいて、やってみてまずければまたそのときに変えるという方法もあるんじゃないかというふうに思っております。
  29. 日笠勝之

    日笠委員 結局、都道府県別の比例代表であれば、定数をまず自民党案は一県に一つずつこう置きますですね。そして、あと人口比例ということになりますと、ここの議論でも、この特別委員会でもいろんな議論がありましたが、例えば人口の少ない鳥取県と、それから神奈川とか東京の場合のその格差、一票の格差が一対二・九ぐらいまでになっちゃうんですね。小選挙区の方はもう一対二を基本とする、こういうことであります。比例の方は一対二・九、一対三近くになってくる。こういうことがあるんですが、その点も踏まえて花井先生は都道府県別がいいと。一票の格差ということに重点を、もし視点を置いた場合はどうでしょうか。     〔三原委員長代理退席、委員長着席〕
  30. 花井等

    花井公述人 今の点でございますけれども自民党案では、一人ずつとりあえず都道府県、残りを人口比例ということでありますから、人口に比例して割り当てられるわけでありますから、これは私は問題がそうあるまいと思います。今までは、もうとにかく農村人口がどんどん減っているのにそれを無視してでも定数をそのままにしておいたということから見れば、はるかにベターな案ではないかかように思います。
  31. 日笠勝之

    日笠委員 いや、ですから一票の格差がその場合は一対三近くになってくるんですね。裁判なんかでは、一対三になると違憲状態とかいうことで言われていますね。ほっておくともう五年後の見直しですから、即その間にもう一対三ぐらいになっちゃう、比例区の部分ですよ。それでもやはり都道府県の方が、一票の格差という視点から見ても都道府県単位の方がいいと、こうおっしゃるのでしょうか。もう一度、済みません。
  32. 花井等

    花井公述人 おっしゃるとおりに一対二・九というのは非常に際どいところですが、憲法判断で一対三というところまではかすかに間があるということで、まあ五年後の見直し、これにお任せをするということでよろしいのではないか、かように思います。
  33. 日笠勝之

    日笠委員 時間もありません。最後に坂本公述人にお聞きしたいと思います。  先ほどいろいろ公述されたお話を聞いておりますが、じゃ一体どういう選挙制度が今の日本にいいのか。政府案自民党案も小選挙区があってよくないと、こうおっしゃるんですが、じゃどういう選挙制度をお考えなのか。その主張がないとどうも、建設的な意見がないと、批判的ばっかしですと、我々も参考にさしていただくのにもぜひ御意見をと思います。
  34. 坂本修

    坂本公述人 どうもありがとうございました。  全くいい案があると思うんです。それは、現行中選挙区で定数を抜本的に是正することだと思います。これは私、あるマスコミの幹部の方に会って聞いてみたんです。聞いてみましたら、それはそうなんだと言う人は結構いるんですね。ただもう流れでこうなっちゃったと。というのは、比較的票と議席が比例するんです、準比例制という。これは学者の方も、選挙というのは大きく分ければ、選挙制度は単純小選挙区制を中心とする小選挙区制、多数決で一票でも勝ったらそれがもう議席を占めるというのと、完全に民意を反映させる比例と、この二つが両方のレールにある。この中で中選挙区制というのは、どちらかというならばこの比例に近いんだ、定数をちゃんとさせれば非常に比例に近づくということを言っているわけですね。  それで、今OECD諸国の中で、たしか二十四カ国中、小選挙区制は七カ国です。ECが全部集まった欧州議会、EC統合をした欧州議会という最も近代的な政治をこれから行っていく、各国のいろんな多様な意思を集めて近代的な政治を行っていくというところは、イギリスを除けば全部比例です。そしてイギリスには、その小選挙区でやるのをやめろということをECは決議しているはずです。  ですから、中選挙区で定数を是正してやれば、顔も見えるし、皆さん一人一人の活動もよく見えるし、そして政党も選べる、そして民意が、何よりも民意が反映するという点ではこれが一番いい制度で、これをかねて私ども、私の所属している法律家団体も建設的に提案し続けているんですが、なかなか取り上げてもらえないのが残念です。
  35. 日笠勝之

    日笠委員 結局そういう国会での長時間の議論で、共産党さんを除いては、もう中選挙区制へ帰る橋は焼き切って新たな制度を今議論していることを申し添えて、終わります。
  36. 石井一

    石井委員長 次に、前原誠司君。
  37. 前原誠司

    ○前原委員 どうも御苦労さまでございます。さきがけ日本新党の前原でございます。  政治改革議論もいよいよ大詰めになってまいりまして、昨日、亀井公述人会長をされている民間政治臨調では、細川総理決断のときだというふうなことをおっしゃっておりました。私が耳にします国民の多くの方々議論というのは、いつまで議論しているんだ、もうそろそろ決断をして、ほかの重要な案件というものにもっと精力を使うべきではないかというふうな御意見というものが大半を占めているわけでありまして、そういう意味からも、国民方々のフラストレーションというのは随分たまってきているんじゃないかなというふうに私は思っております。  私は一年生議員でございまして、新人議員でございまして、一つ不思議なことがございます。我々政府案それから自民党さんが出されている自民党案にしても、まとまるまでにいろいろと議論をして、そして文句をつけるというのは、それは全然構わない。しかし、一たん出してきて、それからそれをだめにするためにいろんなグループが足を引っ張る、文句を言う、これは余りにも往生際が悪いんじゃないかというふうに私は思うわけであります。  そういったところで、もちろん早期の結論を出してまとめ上げるというふうなことに皆さん方一生懸命やっておられるわけでありますが、時々ふと最悪のシナリオといいますか、まとまらなかったらどうなるんだろうなというふうなことが頭をかすめるわけでありまして、その点についてまずちょっと初めにお伺いしたいと思うわけでありますが、不成立になったということになりますと、これは解散・総選挙があるいは総辞職かということになると思いますが、多分また信を問い直すということで解散・総選挙ということになると思います。  果たして、国民の側からすると、政府案にしても自民党案にしてもそれほど差がない、信を問うと言われたってどちらかどうかよくわからないというふうなことが本音の部分じゃないかと思います。それよりも、三つも内閣をつぶして何をしているんだという政治不信というものが、もう地の底に落ちるというふうなことになる方が私は大きな問題ではないかというふうに思います。  そこで御質問をいたしますが、不成立になった場合に国民はこのことをどう受けとめるというふうに思われるのか。それと、その総選挙になった場合、私が一番心配しているのは、果たして選挙に行ってもらえるだろうか。この二点を、亀井会長そして花井先生にお伺いしたいと思います。
  38. 亀井正夫

    亀井公述人 お答えいたします。  もし不成立の場合、これは全く望まないことでございますけれども、もしあった場合は、おっしゃるように解散か総辞職ということになる。  ところが、この七月の総選挙において立候補した方は、ほとんどの方が全部政治改革は絶対やりますということで選挙運動展開されたと思うのですね。それで、それじゃそういう方を選ぼうということで皆さん方は選ばれて出てこられた。それができないということになると、国民はまただまされた、いよいよ政治不信というものが高まっていくという状況、それと国際的な信用というものはもう一つがた落ちになるということで、やはり大きく見れば日本の、今まで戦後せっかくここまで築いてきた日本というものがこれは転落のプロセスに行くということを国民としてはひしひしと感じて、これはもう全く、自分たちでどうにかしなきゃいかぬなということになろうという、まことに不幸なことになる。これは絶対避けていただきたい。皆さん方がそういうことを考えることすらもう外に置いていただきたい、こういうことをぜひお願いをしたいと思います。
  39. 花井等

    花井公述人 おっしゃるように、もし不成立になるということになったら革命が起こりますよ。本当に国民はもう飽き飽きしている。しかも、今のところ、案を見ると、政府案自民党案も今までの与野党に比べると非常に接近しているんですよ。こんな珍しい事例は余りないと思うのですね。ここまで双方が歩み寄っているときに、お互いに対立して解散・総選挙になる、こんなばかげたことがあるとすれば、それは憲政史上の汚点であります。  したがって、投票率は多分一〇%ぐらいに落ちるんだろう、こういうふうに思いますが、それ以上に問題なのは、細川政権というのはガラス細工でできている。細川さん、これは年内にやるともう言っちゃったわけですね。これはやれないとなったら、細川さんやめるわけですよ。失礼ですけれども、政府・与党は、実は細川さんの個人的人気でもっているんですよ。その細川さんがやめちゃったらどうなりますか。もう政治的混乱はひどいものになって、国際的なレベルかも、アメリカも、そんな相手で一体経済的な改革ができるのか交渉ができるのかというような姿勢に出てくる。そして、国内においては、一体不況をどうするんだという国民の絶望的な怒りが出てくる。  そういうところについての問題に思いをいたし、今国会で絶対にやるんだと、それは先生方決断ですよ、我々の決断じゃなくて。バトンタッチはそっちにある。それで、案を見たら、もう二百七十五とかなんとか出ているじゃないですか。目の前ですよ。やってください。
  40. 前原誠司

    ○前原委員 本当に目の前まで来ているということで、我々の立場がやるということをおっしゃいましたけれども、我々の立場はもう完全にやるつもりでいるわけでございますので、今のお二人の御意見を全国会議員にぜひ聞いていただきたいというふうに思うわけであります。  それを受けまして、次に採決のことについてお伺いしたいと思います。  一般論でございますけれども議論というのは、時間をかけてまとまるときと、時間をかけてもまとまらないときが必ずあると思います。妥協点が見出せないのにいつまでもずるずると引き延ばすというふうなことが、果たして民主的と言えるかどうかというふうなことが私はあると思いますが、私は決して民主的であるとは思っておりません。ある程度の議論の期間を設けて、それでもまとまらなければ、多数決というそれこそ民主的な議論でまとめるというふうなことの方が、私はより民主的ではないかというふうに思うわけでございます。  私も、今まで国会の強行採決というふうなものはテレビで見ておりまして、あれほどばかげたことはないなというふうに思っておりました。しかし、実際問題考えておりますと、あれは強行採決じゃなくて採決強硬阻止じゃないか、採決をしようとするのを強硬に阻止をしていることじゃないかと。つまり、いつかは議論を煮詰めて、そしてまとまらなければ採決をするというのが民主的なものであれば、それをいつかやらなければいけないけれども、それを阻止するという方が非民主的ではないかと私は思うわけであります。  そこで、お伺いしたいと思いますが、まとまらないまま、ある時期に区切りをつけて採決をすること自体が果たして強行採決と言えるかどうかということについて、亀井会長そして花井先生にお伺いしたいと思います。
  41. 亀井正夫

    亀井公述人 非常に核心をついた御質問でございます。  デモクラシーというのは、多数決主義というのが原理に立っておるわけですね。これは私は、前に宮澤内閣のときに、政治改革どうしたらよろしいかというときに、やはり総理決断とリーダーシップですよと。それで、それをやっていくのに、この国会の今までの運営というのがデモクラシーという考え方から少し外れておるんじゃないですかと言ったら、国会は伝統で大体全会一致方式、こういうことをやっておると。そして反対の政党があったら、採決をするときは欠席してもらうか、あるいは、まあまあと目をつぶりますということにするか、反対の票を投ずるけれども目をつぶる、そういう状態がしゃんしゃんの採決であって、それで、絶対反対でやると、そこを多数決で決めると、これはどういう用語か、強行採決ということになる。だから、この用語の使い方も私はおかしいと思っております。  私が申し上げたのは、そういうことで、全会一致という考え方というのはデモクラシーとある程度違うのじゃないかと。これはイザヤ・ベンダサンも、全会一致という決断というのは一番まずい決断だ、反対があって決める、そして、やってみてまずかったらもう一遍やり直す、これが本当の民主主義だと。そういうことにあるいは国会の習慣も変わっていただくということが、私は道を開くことではないかというふうに思います。
  42. 花井等

    花井公述人 前原委員にお答えいたします。  今回は議論が相当煮詰まっています。そして、先ほど申し上げたように、両案が非常に接近して妥協の余地がある、ないのは時間だけ、こういう状況でありますから、成立する可能性は大いにあるんではないかと思います。まあ最悪の場合でも、衆議院通過して、参議院は継続審議という形になるかもしれませんが、そこまでは最低限いくだろうと思うのですね。したがいまして、その採決の過程の中で、野党が強硬に採決方法に反対するとか、そういう姿勢をとるということはないと思いますね。あの牛歩戦術、あれを見て国民は全く嫌気が差している。強行採決、これも国民が全く嫌気差している。  私は、今や自民党はその点十分野党から学んで、野党になった今、強行採決とか、それに手をかすようなこととか、あるいはそれを阻止する、力をもって阻止するということでなしに、真に多数決の原理に従って粛々と行動をとるだろうと信じております。  私が申し上げたことにもし問題があり、反対があれば、私自身が河野総裁に会って面詰をいたします。
  43. 前原誠司

    ○前原委員 終わります。ありがとうございました。
  44. 石井一

    石井委員長 次に、柳田稔君。
  45. 柳田稔

    ○柳田委員 きょうはお三方の公述人、本当にお忙しい時間帯においでいただきまして、そして貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございました。  限られておりますので、質問をさせていただきたいと思うのでありますが、花井公述人にまずお伺いをしたいと思います。  自民党案の中で一票制というのがありまして、このことについての質問なんですが、憲法四十三条の第一項で「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」と書いてあります。自民党さんの案の場合は、都道府県単位で比例が出るわけでありますけれども、ところが、その比例の人を直接投票できないんですね。小選挙区に出た人に投票すれば、それがおのずと比例の方にも回る。となれば、この都道府県単位で選出された比例の議員というのは、選挙された議員とは言えないんではないかと私は思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  46. 花井等

    花井公述人 いや、今の問題は、何とか私から引き出そうという感じが濃厚でありますから、もう大体見え見えでございます。したがいまして、それ以上のお答えはいたしません。
  47. 柳田稔

    ○柳田委員 見え見えとかいうんではなくて、私自身はそう思っておりましたので、どういうふうなお考えであるのかなと思って、お伺いをさせていただいたのであります。  我々与党も、細川先生お一人の人気でもっているということもなくて、みんなで一生懸命支えていい政治をしようということで頑張っておりまして、大変厳しい御批判を先ほどいただきましたが、御安心して見ておいていただければと思う次第であります。  先ほどの質問、お答えがなかったんでありますけれども、次に亀井会長にお尋ねをしたいんでありますが、きのうの緊急国民集会で、河野総裁の方から、機が熟せば、条件が整えば、私としてもトップ会談をして決断をしたいというお話がございました。もちろん公聴会、いろいろな人の御意見を賜りながら決断をしなきゃならないと思うんでありますけれども、さきの国会も考え合わせますと、私は、もう既に機は熟している、さらに条件は整っておるというふうに思うんでありますけれども、いかがでございましょうか。
  48. 亀井正夫

    亀井公述人 柳田先生の意見と全く同一でございます。もう本当に問題は出尽くした。あとは党としてのコンセンサスで、そして、それもいろいろな意見があるにしても、この際はトップにお任せしようと。各党ともが、あるいは連立政権でいえば、連立の八党派が細川さんという人をリーダーに選ばれた。自民党でいえば、やはり河野総裁をこの際の総裁、トップのリーダーとして選ばれたわけですから、こういう大きな問題、これはAかBか、両方やろうということはできないわけで、AをとるかBをとるかという場合には、やはりトップにお任せをします、そしてその責任もとっていただくという決断をやられることで、そういう意味において、今回の選挙において各党とも新進気鋭の方が随分出られました。そういう方の若さのバイタリティーで、ひとつ党内の空気をおまとめいただきたいというふうに思います。
  49. 柳田稔

    ○柳田委員 今度は企業献金、ちょっとお尋ねをしたいんでありますが、私も企業献金は将来的にはなくす方向がいいだろうと思っています。ただ、現状を考えた場合に、透明性を高めて、それなりの道は残すこともいたし方ないんではないかというふうな気がいたしておるわけであります。  最近、企業の献金、我々もいろいろお願いに行ったりするんでありますけれども、大体、企業のトップの方がオーケーを出せば献金もらえるんです。でも、企業というのは大体株式会社ですよね。となると、経営者というのは、株主にかわって経営をしておる。となれば、この企業献金も、株主さんの承認を得ないと出せないんじゃないかなと私自身は思っているんですが、花井先生どうでしょうか。
  50. 花井等

    花井公述人 まあとにかく柳田議員は、難しいことばかり僕に聞きますね。  さあ、これが株式の問題とどうつながるかということについては、正直言って、私は調べたことがございませんので現時点ではお答えしかねると思います。
  51. 柳田稔

    ○柳田委員 アメリカの方は、企業献金というのはほとんどないというふうに聞いております。多分、このことが大分ひっかかっておるんではないかな。株主さんは、やはり配当を求めますからね。配当ということは利益の追求でありますから、それを代行している企業のトップはその意を受けて経営をしておるということを考えれば、企業献金というのは、多かれ少なかれ、やはり見返りを望む。逆に言うと、望まないと株主に対して申しわけないんじゃないか。そういうことがあって、多分ないんではないかと思っておるんです。  ただ、政治にはコストがかかる、これも我々としては認識をしなきゃならない。ということで、先ほど花井先生、透明性だとおっしゃいました。この透明性を高くするために、個人でやりとりしますとそれが消えてしまいますので、大分薄められますから。それで、党を経由して、この道を残して、透明性を高めたらどうかというのが我々の提案なんです。まだ自民党さんとこの辺がちょっと違うわけでありますが、このことについては、どう御判断されますでしょうか、花井先生。
  52. 花井等

    花井公述人 先ほど冒頭で申し上げましたが、やはり企業、法人というものは社会的存在である、そういうことは最高裁も判断しておる、こういうことでありますから、企業から月二万円程度もらうということは是としてよかろうではないか、こう思うわけであります。どうも疑惑、スキャンダルが続いているものですから、非常に不透明な金が政治家の周りに回っている、こういう印象が非常に強い。それはまた事実でもありますが、しかしだからといって、いきなりこれはいかぬと言うことは、これは極論ではなかろうかと思います。したがいまして、私は、今の時点では、自民党案の程度の法人の政治献金というものは許されてしかるべきだ。  アメリカの場合には、確かに企業が政治献金をするというシステムがありませんが、おっしゃるとおり、これはもうとにかく株主総会がうるさいわけですね。しかし日本の場合には、そういった企業あるいは企業の連合体といったものが、場合によっては官僚システムと、場合によっては政党システムと三つで三角形をなして、そこで民主主義を切り開いていくということをやっておるわけでありまして、この点については、私は必ずしもアメリカの問題は日本にとって参考にはならないんではないかこういうふうに思います。
  53. 柳田稔

    ○柳田委員 亀井会長、同じことの質問なんですが、いかがお考えでございましょうか。
  54. 亀井正夫

    亀井公述人 やはり株主総会というのに関係あると思いますけれども、現在の政治資金規正法で認められた範囲内の政治献金を出すということは、これは合法的に認められているわけですね。そして、その趣旨が、結局、汚い利権とかいろいろではなくて、よい政治をしてもらう、よい政治があれば企業も繁栄できる、そういう大乗的見地から政治資金規正法の枠内で出すということは、私は、総会においてもこれは十分納得をしていただける性格のものではないか、現状においてはそう考えております。
  55. 柳田稔

    ○柳田委員 時間もそろそろ来たんで、最後に、同じ質問になるかもわかりませんが、もし今回成立しなかった場合、政治家に対する不信というのは相当強まる。先ほど一〇%の投票率しかないんじゃないかというお話もありましたけれども、もしこの政治改革ができなかった、そうなったときに、国民日本の将来に対してどういうふうなことを考えるようになるのかなと、私は投票率一〇%以上にそっちの方がそら恐ろしいんでありますが、亀井会長、どうお考えになりますか。
  56. 亀井正夫

    亀井公述人 国民日本の前途に非常に心配を持つようになってくる、そして政治家は信頼できないということになると、言いたくはございませんけれども。  かつて第一次大戦後にドイツがやはりワイマール憲法という理想的な憲法をやったけれども、十五年間で二十回内閣がかわって、スーパーインフレといいますかハイパーインフレまで行ったときに、結局独裁者のヒトラーが出てきたというふうに、あるいは国民の間にそういうふうな独裁的な、ファッショ的なものを望むような空気になったら、私は日本の破滅ではないか、そういう危惧を持っております。
  57. 柳田稔

    ○柳田委員 もう時間ですから、終わります。  今の亀井会長の御意見、十分肝に銘じまして頑張ります。どうもありがとうございました。
  58. 石井一

    石井委員長 次に、石原伸晃君。
  59. 石原伸晃

    石原(伸)委員 亀井会長を初め三公述人先生方におかれましては、長時間本当にありがとうございます。  責任野党自民党立場で質問をさせていただきたい、お話を聞かせていただきたいと思います。  花井公述人からは、先ほど明確に、二大政党制を目指す、これからの日本政治のあるべき姿は二大政党制であるから、自民党案の方がよりベターであるというお話をちょうだいいたしました。亀井公述人におかれましては、これからの日本政治のあるべき姿、二大政党制がいいのか、あるいは細川総理がおっしゃってられる穏健な多党制、すなわち連立政権がよろしいのか。まず、亀井公述人、そして坂本公述人に、これからの日本政治のあるべき姿についてお話を聞かせていただきたいと思います。
  60. 亀井正夫

    亀井公述人 お答えいたします。  これからの政治の、政党のあり方ということでございますが、結局今まで、戦後現在までは、やはり東西対立構造というための冷戦構造が、日本政治の中にもイデオロギーを中心にして投影された格好であった。しかし、それが崩れましたから、これからの政党の姿がどうなるか。  そうしますと、比例代表だけによる非常に多党制になりますと、イタリーのようないろいろ弊害が出てくる。そういう意味で、政党というものはある程度のまとまりということが要るんではないか。そうしますと、まとまりでいくと結局二大政党というところへいくわけですけれども、その二大政党というものが必ずしも非常にフィックスされたかたいものではなくて、ソフトな形の二大政党と、それからそこに、例えばドイツの緑の党のような環境問題だけをシングルイシューにする小政党、衛星のような党が二、三か数個あってもいい。  そういうふうなソフトな体制で、ただ、二大政党の流れは、私は、人間の本性というものは、これは現状維持を非常に強く主張する側と、状況に合わせて改革進歩していこうという人間の性がございますから、やはり政治の体質も勢い現状維持というものを中心にする政党と、それから改革をしていこうという流れと、その二つという大きな流れに分かれていく、そういう姿になろうというふうに考えております。
  61. 坂本修

    坂本公述人 数年前にアメリカのABCの三人の記者から、日本の過労死について取材を受ける機会がありました。結論から申しますと、我が国の政府が、米の自由化とかおもちゃ屋をどこに出すかとか、そういうことで日本政府に迫っているけれども、本当にやらなきゃならないのは、世界の働いている人の人間的な労働基準を日本にしっかり守ってもらうことなんだと、それが大事だということで帰られまして、ゴールデンアワーに十五分にわたってそれは放送されました。  申し上げたかったのは、今日本をどうしたらいいのかということをめぐっても、いや、米の自由化だと言う方々もおられるでしょうじ、それから、いや、労働条件を、労働時間短縮をきっちりやることが大事なんだと言う人もいると思うのです。これは一つの例にしかすぎません。  民意は非常に多様であり、たった一度しかない人生を幸せに生きたいと思っている国民の要求というのは、非常に多面的だと思うのですね。それを吸収して国会に、有名な言葉ですが、できるだけ鏡のように反映するのが私は今日の世界政治の流れだと思います。したがって、二大政党制、まして先ほど言ったような小選挙区を軸にして、あれをチャンネルにしての二大政党制には反対だし、それではうまくいかぬだろうと。穏健な多党制というのも細川さん言っておられますが、先ほどの少数政党規制などを見ますと、どうしてこれで穏健な多党制なのですかとどうしても言いたい。だから私は、民意が最大限度に正確に反映できる中選挙区制での抜本是正が一番いいんだというふうに思います。  一言だけつけ加えて終わりにしたいと思います。本当ならば完全比例が一番いいと思いますよ、都道府県単位のね。とりあえずという意味です。  それから、もう一つだけ言って終わらせてください。調べてみました。GNPが国民の社会保障などに使われている率を見ますと、圧倒的に比例代表の国が高くて、二大政党、小選挙区の国の方が非常に低いんです。その結果、ユニセフの調査では、児童の貧困化率が最も高いのがアメリカで、最も低いのが北欧諸国なんです。これは、選挙制度だけだと私申しません。しかし、やはり民意を刻々に反映していく政権があり、政治があるというのは、そういう貧困の解決とか人間らしく生きていくための社会保障とか、そういうレベルのところに非常に正確に反映しているんじゃないだろうか。そっちの方が、日本の国もこれだけたくさんの人がおり、知識のある国ですから、私はうまくいくと信じています。決してドラスチックにだめになるとか、ヒトラーが出てくるということではないと思います。
  62. 石原伸晃

    石原(伸)委員 三公述人のお話を聞かせていただきまして、大体、二つの勢力ではなくて、そこにやはり民意を代表する、亀井公述人の言葉をかりるならば、緑の党のような小さい政党も、また坂本公述人の言葉をかりるならば、鏡のような民意を反映するものが存在するべきである。私も、まさにそのお考えには同感でございます。  そうしますと、今この制度論議のところで、小選挙区の部分を三百にするのか二百五十にするのか。坂本公述人は、制度改革すべてに反対でございますのでちょっとおかせていただきますけれども、三百にするのか二百五十にするのかによって、民意の反映の度合いというのは実はかなり大きく違ってくると思うわけです。二百五十、二百五十であるならば、やはり亀井公述人の言われるような形に近いでしょうし、三百、百七十一という自民党案では、花井公述人の言われるような形により近づく。  実は、並立制ということでは一致しているんですけれども、哲学の部分では大きな隔たりが与党野党の間に私あるような気がいたします。これからの改革というものは、実はこの哲学の部分をしっかりどちらがいいのかということを明らかにして、そして原則と実態を一本の線で結ぶような改革案を、私は、これから二十一世紀に日本が国際社会で名誉ある地位を占めていくためにも、この国会改革を行わなければならない重要な点であると認識しております。  そのことにつきまして、哲学の部分に違いがあるんですけれども、この哲学の部分は与野党案歩み寄ることが可能とお考えか。花井先生、お話を聞かせてもらいたいと思います。
  63. 花井等

    花井公述人 おっしゃるように、数の上ではそれほど違いがないですけれども、その哲学的な背景、思想的な背景というものには非常に大きな隔たりがあるわけですね。  私は、自民党の方は比例代表の方で譲ったと思います、もうそこで十分譲ったと。だから、これから後は、やはり自民党が主張している三百におさめたいと。二百七十五というような話もちらほら出ますけれども、私は、最終的にこれがもう可決しないぎりぎりのタイムリミットに来たら、そういう状況もあるいは考えなきゃならぬかなと思いますけれども、現時点から、二百七十五だと、足して二で割るということがもうちらほら話されて、その後で公述人意見を聞く、これはもう論外のことだと思うんですよね。ですから、我々としては最後まで自民党は三百でいってほしい、そういうふうに希望をいたします。
  64. 石原伸晃

    石原(伸)委員 亀井公述人は、今の……。
  65. 亀井正夫

    亀井公述人 選挙制度を私ども民間臨調議論した場合には、先ほど言ったソフトな二大政党を想定いたしますと、やはり小選挙区の方に重点を置く、そして比例代表で多様な民意を反映する道を開く、こういう建前でございますから、臨調としては、三百と比例代表二百と。  なお、あの当時の野党の方に同意していただくために、ああいう連用制ということで、もう一つ選挙区で勝ったところは比例代表の方では遠慮して、弱い政党にハンディを与えよう、こういう思想でございましたから、基本的には小選挙区を軸にして、そして政治というのは意思決定というのを迅速的確にやる必要がございますから、そういう意味においては小選挙区を軸にした制度の方がいい、そういうふうに考えております。
  66. 石原伸晃

    石原(伸)委員 両公述人より制度の哲学についてのお話がありましたので、私も、やはり制度を変えるならば、この理念のところをあいまいにして足して二で割ったようなものが決していいとは思わない。それはすなわち目指すものが違ってきてしまって、中間の目指すものというものはないわけですから、与党並びに野党であります自民党理事方々、よろしく御指導をお願い申し上げたいと思います。特に与党皆様方、よろしくお願い申し上げます。  先ほど亀井公述人のお話の中から出てきて、多くの問題点が明らかになったと。本当に多くの問題点が、この委員会の審議の中で私も明らかになってきたと思います。実は、その問題点に対してまだ明快な回答が得られていない点が多々ある。先ほど来出ておりをす政党助成の問題、あるいは企業・団体献金、これが本当にいいのか悪いのかといった問題、また三%の足切り条項の問題、もう長い時間各委員から質問されたり、討論を私もさせていただいたんですけれども、どうもあやふやなままでございます。そこのところについて、各公述人より続きましてお話を聞かせていただきたいと思います。  まず政党についてなんでございますけれども、先日も私この委員会で質問させていただいたんですが、実は、日本の憲法の中で政党のことを言っているのは憲法二十一条の結社の自由のところしかございません。そして、今度公的助成を行うということによって、四日、五日に行われましたこの委員会で細川総理が答弁しておりましたけれども公的助成がなされた場合は会計監査が入る、そういうことを明確に御答弁されておりました。会計監査が入るということは、実は国家権力が政党に対して大きな影響を持ってくるということと私は考えるのでございますが、ここの部分は政党の自由な政治活動を阻害するおそれのある非常に重要なところでございますので、公的助成政党との絡みで、この問題について三公述人皆様方がどうお考えになるか、簡単にお話をお聞かせ願いたいと思います。
  67. 亀井正夫

    亀井公述人 結局、公的助成というのは国民の税金を政党に出すということでございますから、会計法上といいますか、国民の納得を得るためには、やはりそれが正当な目的に使われたということの証明が必要ではないかと思いますから、公的監査ということをやるのが、別にそれが国家権力の介入とまで考えなくてもいいんではないだろうか。  ただ、その監査機関を、我々臨調の場合には、資金の監視機関というものを内閣に置けというときに、これは自民党さんからは、内閣に置かれたら、そのときそのときの政権によってそれを締めつけられるといかぬから、国会に置いてもらいたいという意見がございました。したがいまして、公的監査ということは置くべきでありますけれども、どこへ置くかということで、やはり権力の介入ということを避けるようなベストの方法審議されるということが必要ではないか、そういうふうに思います。
  68. 花井等

    花井公述人 石原委員のお尋ねでありますけれども亀井公述人の御指摘のありましたように、国民の税金を使っている、こういうことでありますから、やはりその使途が明瞭である、透明性が高いということを確約するだけのシステムがなきゃならぬ。そういう意味からいたしますと、私は、やはり会計検査というものも一つの手だてであるまいか、こういうふうに思うわけであります。  この問題についてまだ十分論議が尽くされているとは思いませんので、その点については、私としては、会計検査が入った方がより透明である、こういう御意見を提案させていただきます。
  69. 坂本修

    坂本公述人 政党には、皆さんもそうですが、歳費とか立法事務費とか、現在でも各国に比べてもかなり巨額な金が出ていると思うんです。私たちは、それは、それこそ議会制民主主義を守り、政治活動、国会活動をしていく上に重要なことだと思って、反対はしておりません。  問題の、石原さんの質問されているのは、今度の助成金でございますね。これはもう政党活動そのものに無限定に出る金で、国会審議の中でも、例えば派閥の会合でこれは飲食費に使われても使えるはずですし、他党との間で法案をどこで上げるかということで、例えば赤坂の料亭で懇親を深められてもこれは使えるはずでございます。そういうふうになると、国民から見たらその金は自分の思想や信条に反すること。国民はやはり、あの政党は好きだ、あの政党はカンパしたい、あの政党は反対だというのは国民の自由ですから、それが血税から持っていかれるというのは反対なので、出すべきでないというのが、言うまでもないことですが私の立場です。  問題は、それを前提にして、会計が入ったらどうなるかという話になるんですが、それは原則がそうだということを言った上で、会計監査が入るのは、私は政党にとっては非常にやはり危ない事態だというふうに思います。政党は金が要るんだと皆さんおっしゃっている。それは、四百十四億などという非常に巨額な金が要るんだ、いろんなことに使うんだというふうに、融通無碍なものですね。そこのところに、これは何に使い、だれに払い、どの店で払いということが一々入ってくる。しかも、恐らくこれはそうでなければしり抜けになりますから。それを、虚偽を言ったり、間違ったりして過誤があったり、故意があったりすれば、犯罪ということになる。犯罪ということになるのは、終局的には警察の問題になるということです。私は、政党がそんな金で国家に養われ、縛られるような仕組みは絶対にやめた方がいい。必要ならば、立法事務費やその他を国民にきっちり訴えて、その中で合理的な解決を図るべきだというふうに思います。
  70. 石原伸晃

    石原(伸)委員 三公述人の話、いろいろお話があったのですが、私も実は個人的には坂本公述人と同じように、公的助成に非常に危機感を持っている一人であります。といいますのは、国民サイドからいえば、企業・団体献金が悪だ、そしてお金を集めるのが難しくなったから、自民党案では三分の一、与党案ではそれより多いものを出してもらおう、どうもそういうふうに映っている、そういうような気がするわけであります。  なぜこういうことを申しますかというのは、これももうこの委員会で質問が多々出ておるのですけれども政党法が規定され、憲法の中に政党が編入されている西ドイツでさえ、判決で、国家から政党に一般的な資金を補助することは違憲であると宣言をして、しかし一方、政党の日常活動と選挙活動は理論的に分かれることができるから、その選挙活動に対して国が、国家の義務である以上、選挙のために費用を補助することは正当であるという、こういう判決が一九六〇年代と九〇年代に入って、出ているわけですね。  こんなことを考え合わせたときに、こういう議論をまだ実はそんなに奥深くされていないところで、そしてみずからの政治家が襟も正していなくて、公的助成をすればこういうゼネコン疑獄やあるいは不正献金がなくなるのかというギャランティーが何にもなされないままに、今この議論がされているということは、個人的に私は非常に危険性があるのではないかと、再三再四言わせていただいております。  それともう一つは、政党というものは、収益事業や寄附行為によって成り立つ団体としてこれから生きていくのか、それとも収益事業や寄附行為によって成り立たない団体として生きていくのか。実は、政党というのはこの二つの選択が理論的には考えられると思うのですが、政府案野党案も、実は両方とも間の足りない分は国から出してもらいましょう、こういうような気がしてならないわけであります。  なぜこんなことを言わせていただくかと申しますと、日本のいろいろな団体や事業を見て、補助金が入って足腰が強くなったというものを私は見出すことができないもので、政党人として心配してこういう意見を個人的に述べさせていただいておりますのですが、三公述人の御意見を聞かせていただきたいと思います。
  71. 亀井正夫

    亀井公述人 理論的に申しますと、石原先生の議論は正しいと思います。  ところが、現実でいいますと、やはり選挙にお金がかかる、特にこの日本が法外な金がかかるということでございまして、三年前の衆議院選挙のとき、今回の選挙はわかりませんが、新聞で、真偽はわかりませんが五当四落ということを言われましたですね。五億使えば当選する、四億では落選するんだ。そういう莫大な金というのは、いかにして集めるかという大変な問題がございます。  本来いいますと、やはり国民主権ということでありますから、主権者たる国民が望ましい政治家を選び、それを、失礼ですけれども育てるといいますか、そういうことが本当の理想的なことだ。ところが、日本ではこれは現在、あけすけに申し上げますと、政治家は冠婚葬祭に手厚くしてくれる人とか、子供の入学、就職の世話をしてくれる、そういう常識というのか一般に通用しているわけですね。その現状において、望ましい政治家にお金を上げろと言っても、現在、恐らくこれは事実不可能ではないか。拒絶反応の方が多いのではないか。  かつて、尾崎行雄さんのような方は、憲政の神様で、三重県で一文も使わずに、みんなで運動して出していった。こういうことは理想でありますけれども、その理想に近づくのには現実を踏まえてやっていって、一切禁止した場合には、恐らくもっとアンダーテーブルの、悪いことが進行する可能性があるのではないかというふうに思いますので、やはり現実とそれから理想とをいかにバイステップに近づけていくかという方策を、ひとつ御論議をぜひいただきたいというふうに思います。
  72. 花井等

    花井公述人 石原委員のお説、もっともでありまして、公的な助成というものをどうするかという問題は、一つの大きなテーマであります。  私は、アメリカの例を見ておりまして、国民が党員になって、そして共和党なり民主党なりの党費を賄う、それでもって政治をやる、こういうやり方が最も進んだ民主主義のあり方だと思うのですが、残念ながら日本はそこまで行っていない。みずから好んで金を出そうという人はいなくて、選挙のときにはどこの候補のところに行ったら酒がうまいとか、どこの候補のところに行ったら弁当がまずかったとかいう話をしょっちゅう耳にするレベルでありますから、個人的にうんと金を政治のために出してくれというのは、ちょっと難しかろうと思うのですね。  大前さんの平成維新の会、これは一万円ずつ百万人から集めてあれするんだと。私はそのとき思いましたよ、大前さん何考えているんだ、あんたはアメリカにいるつもりでおるのかと。日本のどこに一万円ずつ百万人も、たった一つ政党でもない団体に金が行くのかと。あのことを追跡調査したいと思うのですね、一体何ぼ集まったのかと。どうもまあ四、五十万ぐらいは集まったらしいのですけれども、そんな程度なら事務所も維持できないということでありますから、日本には目下のところは金を出したがらないという風土があります。  そうなれば仕方がない、税金という形で間接的にちょうだいをするということでやる、それが公的助成ということになると思うのですね。したがいまして、公的助成に寄りかかるということは、私は非常にまずいと思いますけれども、過渡期としてはやむを得ぬのかな。そういう意味では、自民党が国と政治家政党が三分の一ずつ持つという案を出しておるのは、まあこういうところが今の日本の精いっぱいのところかな、これ以上はちょっと望めぬな。将来十年、二十年たって日本国民が民主政治に成熟する、そういう事態になりましたら、それに応じて公的助成を減らしていって、そしてアメリカのように国民が党員になり党費を払い、それで選挙を賄う、そういうシステムの方に向かっていくべきだと思いますが、なおその間にしばらくの時間が要るのではないか、かように思う次第でございます。
  73. 坂本修

    坂本公述人 二つあると思います。石原さんの言っていることにほとんど賛成です。  一つは、企業献金はやはりやめて、それは、どうやめるか、いつやめるかとかいろいろあると思いますが、きっぱりやめるということを、まず原則を確立するということがすごく大事なんじゃないでしょうか。もしそれがきっちりすれば、国民はそこがきっちりしただけでも、国会国会議員皆さんは大きな義務を果たしたということで、積極的に評価してくれることだというふうに思います。  金がかかる、金がかかるという話、さっきから聞いているのですけれども、私はもう六十一になりますけれども選挙で何かお金がどこからか回ってきたということは一度もないし、私がそれなりに有権者になって参加した選挙活動の中で金をかけたこともありません。かけているんじゃないでしょうか。だからそれを、かけているんだ、しかし国民はそれを求めているんだ、民主主義が成熟していないんだ、だから要るんだ、要るんだと言っていてこの弊害がストップすることは、私はないと思います。そこをきっちりすべきだと、これが一つです。  二番目。政党助成があったときに、先ほどは会計監査のことが質問されましたが、政党法にいくのではないか。これは三塚さんも政党法を考えるということをおっしゃっておられますし、たしか武村さんもそれを承って、検討に値すると言われたと思います。今国会は出ないとしても、この形で四百十四億の金が注入されれば、政党法という問題にいくと思います。  かつての自民党の吉村私案であるかどうかは別といたしまして、国が政党の要件を決めて、さまざまの規則をつくり、その違反を処罰し、処罰するというのは犯罪ということでありますから、警察がそれで行動できるというのは、やはり民主的な、どういう政党であれ民主的な政党であろうとする政党にとっては極めて重大な事態だし、国民の思想、良心の自由にも絡むことで、やめた方がいい。そこにまた引っ張っていかれるようなのはだめだろうし、石原さんが言われましたように、こんな金をもらっている政党が、国民立場に立って、必要なときに国家から独立をし、言うべきことを言い、自主的にびしびし活動するというのは非常に難しいんじゃないでしょうか。御用組合がろくなことをしないと同じように、国から金をもらってもし御用政党になったら、その政党にとっても国民にとっても不幸の限りだと思います。
  74. 石原伸晃

    石原(伸)委員 三公述人のお話は、非常に参考に私も今聞かせていただきました。坂本公述人は理念的なお話を、また両公述人におかれましては実態の話をされて、私も、ですから与党の方に言わせていただきたいのは、そういう指摘がある以上は、公的助成というものは多ければいいというようなことを、全部国からもらえればいいみたいなことを議論しないで、やはりこの公述人方々の話を非常に参考にさせていただいて、抑えるだけ抑える、そして襟元を正してこの制度を導入するならば、今最後に坂本公述人のお話があったように、国民の思想の自由を奪うのではないかという心配、実はクリアになっておりません。一律支出は、政治信条を特に持たない、結社をつくらない自由、そのほかの自由を侵害するのではないかという意見もありますので、この部分は非常に注意深く取り扱わなければならない点だと思います。  それと、やはり政党法の問題についても、憲法の中に政党を編入するということになりますと、これまでの政党の位置というものが大きく変わってきてしまいますので、これは非常に実は大切な問題でありまして、ここの部分は憲法学者の先生等の話も十分聞いて議論しなければならない。私は個人的にはまた続けさせていただきますけれども政党法をつくって憲法の中に編入する形は、日本には好ましくないと考えております。今自由な結社であるからこそ政党が自由に変わることもできる、改革することもできますけれども、それがその枠組みに、国家の法律の枠組みに入ってきたときは、私は日本の民主主義にはふさわしくないということを述べさせていただきたいと思います。  もう時間も参りましたけれども、最後に一点お聞かせ願いたいのですが、いわゆる三%条項という問題があると思います。これは公的助成にも絡んでくるわけでございますけれども国民にふさわしい政党という形で三%で線引きをすることが本当に民主主義のルールにのっとっているのか、被選挙権あるいは立候補の意思というものを大きく阻害することになるのではないかという危機感を私は持っているのですが、これについても、国会答弁の議事録を読んでもなかなか明快な答えが返ってきてない。この部分も実はじっくりと詰めなければならない問題だと思いますのですが、この項目について三公述人のお話を聞かせていただきまして、私の質問にかえさせていただきたいと思います。
  75. 亀井正夫

    亀井公述人 阻止条項の問題でございますが、ドイツではやはりワイマール憲法下のあれで多数の党、三十幾つの政党があった。こういう弊害を除去するために五%条項ということを設けたと聞いておりますが、やはり一人一党でたくさんになると、もう国会運営からすべて収拾つかない。ですから、ある単位ということで三%ぐらいの阻止条項を置くということは妥当ではないか、こういうふうに私は考えております。
  76. 花井等

    花井公述人 石原委員の質問でございますが、私はやはりドイツ並みの五%というのは余りにもハードルが高過ぎると思います。さればとて一%、二%がいいのかというと、正直言うとよくわからないのですね、やってみないと。まあ常識的に見てドイツの五%は厳しいから、真ん中の二・五%を四捨五入で三%というところで、私は学者でありますけれども結構アバウトなところがございまして、そういう点はアバウトで、三%でどうなのかなという政府案に同調をしておるわけですが、これはやってみて、やはりこれは問題だということがありましたら、この阻止条項のパーセンテージをどうするかということについて再度議論をし直す必要があると思います。
  77. 坂本修

    坂本公述人 先ほども申しましたけれども、むちゃくちゃに高いハードルだ、ちょっと世界で例がないんじゃないか。西ドイツよりもトータルでいったらきついと思います。  まず、出ることが難しいからです。それから選挙活動が、政見放送もさせないのですね、無所属で出たら。政見放送もさせないというのは、これは本当にひどい話でしょう。しかも、その他のいろんなポスターの張り方とか車の使い方についても、乱暴に言うと二分の一ぐらいの力しか与えられません。これで小選挙区では絶対にもう通らない。そして、比例に出ようと思うと最低一億八千万ですね。そして、三%というのは、先ほどから少数政党、少数政党と言いましたけれども、三%というのは七議席以上に相当するんです。連立与党でも七議席以下の政党だったところはあるんじゃないでしょうか。それがだめだという話は、これはないでしょう。  それから、先ほど私余り言われてないことだと言って申しましたが、民意を反映するというレベルでいえば、半分が小選挙区で事実上奪われているわけですから、三%とれば、普通ならば三、五の十五議席もらえるはずの少数政党、本当なら、全部が比例ならば。十五議席もらえるところがゼロになるという、このからくりはまだ余り明らかにされていないように思います。しかも、それで全滅をしますと、一億八千万は全額没収で、小選挙区の方でも支援に人を立てていれば、その金も没収です。これでは、出るな、出さすな、活動させるな、そして出てきても追い出せという、これほどひどい仕組みというのはない。  繰り返しますが、その三%政党、七議席がぐんと国民の輿望を受けて、風をはらんで大きな政党になるのかならないのか、それを決めるのは、申しわけないですが私たち一人一人の主権者に任せてほしいのです。それを、国会に出させないで、私たちから隠して、活動させないで、永遠の三%以下の政党に閉じ込めるということになるでしょう。それは民主主義の僕はイロハに反すると思います。これを穏健な多党制というのは、私は、言葉きつくて、国会でこんなこと言っていいのかどうかわかりませんが、シロをクロとするなんというふうに、法廷ではすぐそう言って相手を弾劾したい、そのぐらいひどいと私は思っています。
  78. 石原伸晃

    石原(伸)委員 終わります。どうも三公述人先生方、ありがとうございました。
  79. 石井一

    石井委員長 次に、中谷元君。
  80. 中谷元

    中谷委員 本日は、公述人皆様方におかれましては、お忙しいところ国会にお出いただきまして、まことにありがとうございました。  先ほど花井公述人から苦言を呈せられましたけれども、現在の状況では法案の行方が委員会でも全くわからない状況でございまして、本日の公述人の発言が大変参考になるわけでございますので、どうぞ心して御発言をいただき、また拝聴させていただきたいというふうに思っております。  まず、亀井公述人におかれましては民間臨調の会長ということで、私もこの一員としてこれまでこの会の意義と機能を十二分に評価をいたしておりまして、心から感謝をしているわけでございます。先ほど公述人の方から、もはや議論はもうビフテキでいえばレアかウェルダンの差であって、ミディアムでいいのではないかという御発言がございましたけれども、私といたしましては、この四年間ここまで議論が来て、もうそろそろまとめなきゃいけないというふうに思うのですけれども、やはりその基本理念として大切なところはどうしても捨ててはいけない、少しでも、一歩でも理想に近づく政治改革ができるために、もう少し議論が必要ではないかなというふうに思います。  というのは、そもそも政治改革の目的といいますと、今の中選挙区の弊害から起こるスキャンダル、そして国際情勢の変化に伴う日本政治意識の変化というところから来ているわけでありますけれども、その中でも、個人を主体とした選挙から政党・政策本位の選挙にしていこうというのが本来の目的でございました。  そこで問題になってくるのは、やはり一票制か二票制がというところでございまして、一票制なら党イコール候補者イコール政策ということでまさに理想的でございます。二票制だと、党イコール候補者ではなくて、党と候補者を別々に選んでいこうということでございますが、今の中選挙区における弊害の中で私が大きな弊害と思っているのは、党のけじめだと思います。  例えば、自民党におきましては、選挙応援でいろいろと分裂選挙が起こって、これに対するしかるべき処置もされておりませんし、政策においても消費税についても、それぞれさまざまな意見が言われております。現在の社会党も、内閣の一員としてはこうだけれども政党としてはこうですというようなことがまかり通っていまして、本来、党是とするならば、本来の社会党からその内閣の一員に対して不信任案が出されて当然だと思いますけれども、そういうこともなされていないということで、一票制か二票制がという問題はまさに政治改革の本質にかかわる問題でありまして、一番大事なときに一番大切な理念を失ってしまえば画竜点睛を欠くような、河野さんはきのう総会で、この制度は五十年、百年かかるものだからもう少し議論が必要だというふうに言いましたけれども、そういう点において、この一票制、二票制につきまして、いかがお考えでしょうか。
  81. 亀井正夫

    亀井公述人 一票制か二票制で今対立があるわけでございますが、私ども民間臨調でこれを検討しましたときに、現在の参議院が、これは、一つは府県単位の選挙と全国区の比例代表でこれは二票制をとっておられるわけですね。いろいろそのときに、自民党の幹部の方の御意見を聞きますと、あのときにも自民党案としては一票制にしたかったけれども、法制局で、憲法上の問題でどうも一票制は無理があるということであったので二票制にした、こういうことを伺いました。  そういうことで、民間臨調といたしまして、この連用制なり併用制並立制とか考えたときにも、それから選挙制度審議会で出しましたときには、三百、二百でやはり二票ということを置いたわけです。ですから、その憲法上の解釈問題ということがクリアできておるのかどうか、その辺のところは私その後定かにしておりませんけれども、そういう前提に立って、二票制ということを我々としてはいいと考えておるわけであります。
  82. 中谷元

    中谷委員 私ども自民党は、その問題はクリアできているということでございますので、やはり選挙改革する以上は個人の選挙はもうやめて、政党・政策本意の選挙にしていくべきでございますので、今後よろしくお願いいたしたいと思います。  次に、花井公述人にお伺いします。  先ほどアメリカの二大政党を評価され、一般国民に至るまで政党が定着して、非常に民主的な選挙が行われているという旨のお話がございました。果たしてこれが日本の場合どういうふうになるかなと考えてみますと、私の考えでありますけれどもアメリカというのは多民族国家でございますので、そういう選挙とか政治を中心に国家をまとめる必要があるということで、非常にそういう点に力点を置いているわけであります。  日本の場合は単一国家でありますので、そういう上からの力以上に日本の情といいますか、おつき合い等を通じて、お歳暮やお中元を贈ったり、年賀状を送ったり、いわゆるそういうふうな村社会が今まで定着をしていたわけで、その上に中選挙区も立脚していったのではないかと思いますけれども日本に、そういう単一民族国家に、そういう政党本位の政策を根づかせようとして、果たして日本の社会の体質が変わっていくかどうかということと、それから小選挙区にすれば一般国民の末端まで政党に分類化される、すなわち系列化されるということでございまして、昔、小選挙区を日本でやった場合に、政権がかわると一地方の警察官までかわる、自治体の長までかわるというような非常に大きな政府による選挙干渉等もありまして、殺し合いの騒乱も起こったこともございますが、果たしてそういう状況を防止するというか、うまくソフトランディングするためにはどうすればよろしいのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  83. 花井等

    花井公述人 ただいまの中谷委員の質問に答えさせていただきます。  アメリカの場合には多民族国家である、したがって二大政党政治がそこで機能するんだろう、こういうふうに言われておりますけれども、多民族国家だからなかなか二大政党は定着しないんです。むしろ単一民族国家の方が、価値観が共有されているわけですから、そう分散されないから、二大政党に向いておるわけです。そこへ収れんされていくように民族的なシステムからいえばできておるわけです。むしろアメリカの方が、ばらばらになって意見がまとまりにくい。だから、意見をまとめるために政治活動を活発にやって、そしてそこで何とか意見を集約して二大政党に持っていくという努力が見られる。努力の結果、二大政党にむしろ合わないアメリカが二大政党を堂々とやっておる。  日本の場合には努力がないものだから、本来簡単に集約できるはずの単一民族国家が、集約できない状態になって、小党分立状態に向かいつつある。これだからこそ、今国会において提案するものは小選挙区制に重点を置いたものにすべきである、比例代表というよりは小選挙区制が第一だ、こういうふうに私は思うわけであります。
  84. 中谷元

    中谷委員 私の今の印象は、日本の場合は単一だから全会一致主義であって、アメリカの場合はやはり多民族であるからぱちっと採決をして多数決に従わせる、こういうふうな違いがあって、世の中をおさめるには、何か民衆と違うところで論争をして、それを聞きながらおさめるというようなことも必要ではないかなというようなことも感じつつ、今の御意見を聞かせていただきました。  続きまして、企業献金と公的助成について亀井公述人にお伺いをいたしますけれども、今回の公的助成の金額の算定の理由は、すべての三年間のトータルで政治活動に一千二百四十三億円かかる、その三分の一程度の公的資金を出そうということで四百十四億円が決まったわけでありますが、その残りが八百二十九億円でございます。衆参議員を足してみますと七百六十三人いるわけでありまして、一人当たり約一億九百万円負担をしなきゃいけないわけでありまして、これは先ほどの大前先生の話じゃないですけれども、一人一万円の会費で集めると、一人の候補者が一万人の会員を募って集めなきゃ成り立たない。それを政党に納めるということで、これは単純な計算でございますけれども、そうなれば、個人の企業献金を禁止して党に企業献金を集中するというのはわかりますけれども、あくまでもやはり個人の努力によっても政治活動をしたいわけでございまして、今の自民党案提出しております月額一人二万円の、公開基準もぐっと下げた方法の方がむしろ常識的な考え方ではないかと思いますけれども、この点につきまして、いかがお考えになっておられますでしょうか。
  85. 亀井正夫

    亀井公述人 その自民党のお考えになっている、一人月二万円でしたですね。月に二万円ですと年に二十四万円ですかね。二百人いたら四千八百万円。それぐらいの努力というのはやはりなさる方がいいというふうに思いますね。  しかし、それだけではとても私は足らぬと思います。お話をいろいろ聞いてみますと、例えば十万の有権者にはがき一枚出しても、やはり印刷費から何からいうと相当のお金が要るということも聞いておりますし、そういう意味でやはり公的助成ということを、一般が本当に政治家を、主権者たる国民政治家を支えるというところまで時間がかかりますが、いくまでの間はやはり企業・団体献金というものについて、漸次減らしていって、透明化していくということをする必要があるというふうに思っております。
  86. 中谷元

    中谷委員 どうもありがとうございました。  次は坂本公述人にお伺いをいたします。  お話の趣旨はよく理解さしていただきました。その中で、選挙制度においては国民の民意が第一である。すべて政治による責任は国民が負うべきであって、政治が失敗すれば国民が責任を負えばいいというようにも聞こえるわけでありますけれども、それでは政治のリーダーシップというものは何でしょうかということになります。私は、政治というものは、国民が困らないようにするために、国民に先んじてリーダーシップをとって国を治めていくのが政治のある面ではないかな。そのためには、やはり政権を目指して、政権に立ってリーダーシップを発揮しなければ、国民というものはばらばらになってしまって、秩序も乱れてしまうんではないかというふうに思っているわけであります。  そこで、現在の中選挙区をお述べになるわけでありますが、政党である以上は政権をとらなければならないわけであって、現在の五人区においてはやはり三人、四人、五人の候補者を立てて、三人、四人、五人と当選をさせなきゃいけないんですけれども、同じ政党で、同じ考えで争うときに、果たして中選挙区で三人、四人、五人と当選させるにはどうすればよろしいんでしょうか。やはり理想のままではいかなくて、どうしても同じ政策の場合には、サービス本位とか冠婚葬祭とか情に訴えるような風潮になってしまうのが必然的な結果ではないかと思いますけれども、この点につきまして、いかがお考えでございますでしょうか。
  87. 坂本修

    坂本公述人 幾つか質問があるわけですが、一番最初に、政党がそれなりに政治的な判断をし、国民に訴え、必要な場合にはリーダーシップを振るうとか、そういうことを否定するつもりはありません。  ただ、それは、国民が望んでいることが何なのか、国民の要求をどう実現するかということで、国民と、言葉が適切かどうかわかりませんが、ぴたっと重なり合って反映して進むというのが、私は民主主義の基本だというふうに思うのです。  例えば、国民の非常に多くの部分、過半数以上が労働時間を短縮してくれと言ったときに、私のリーダーシップによると、働きが足りないから労働時間の短縮ではないんだという法律をつくって、しかも先ほど言った四割台の得票で六割の議席を独占して、これはそうしないと日本はうまくいかないんだということでやるというのは間違っている。恐らくしばしば間違えるでしょう。それから、間違っても、国民自分で選択をし自分で間違ったときの方がはるかに、国民は次の新しい選択をし、また新しい政治勢力を選択できるだろう、それが私の考えです。  それから二番目に、じゃ、政権はどう目指すのか、目指さないのか。私はこう思っています。今のような中選挙区で抜本定数是正をすればかなり比例になりますが、これはもう予測に属しますけれども、今までの統計によれば、過半数をとる政党はないかもしれません。単独で政権をつくれないかもしれません。連立の問題が起きてくると思います。しかし、まさにそういう中で、どういう政策で連立をしてどんな政治をやるのか、プラスかマイナスかを国民が選択をし、その次に、単独でとれる政権になるのか、もっと違った連立になるのか、その中で決めていくというのが私は国民主権の本来のあり方だろうというふうに思うのです。それでいいんじゃないでしょうかというのが私の意見です。
  88. 中谷元

    中谷委員 今の御意見で、私の考えは、学校の先生が生徒に勉強したいですかと聞いても、生徒は余り勉強したい人も少ないと思いますので、やはりある程度先生が勉強しましょうという提言もしなきゃいけませんし、また国民に対して、消費税とかPKOとか、非常に痛みを伴うようなことも政治の側から提示しなければ、この国の平和と繁栄も守られないわけでありますから、ある程度リーダーシップがとれるためにも、小選挙区のような理念提示型の選挙スタイルも必要ではないかなという気がいたしております。  それで、先ほど民意を反映すべきだというお話がありまして、そこでひっかかるのが、やはり都市と地方の議員の格差の問題でございます。現在私がおります高知県は、中選挙区におきましては定数が五人でございます。ところが、今回の政府案によりますと定数が二になってしまうということで、半分以下になってしまいますが、今の時点でも非常に過疎や高齢化があって、このままいったらどうなるんであろうかという、そこに住んでいる住民におきましては、非常に将来に対する不安も多い。非常にこれから、一票の格差を重んずる余り都市の議員がますますふえてしまいますと、細川内閣ではありませんけれども、生活者主権の政治ということで、やれ公園だとか下水道だとか、そういうことを重視する余り、地方で産業を興す、生活基盤の整備がますますおくれるような気もいたしているわけでありますが、この都市と地方の議員の格差について、政府案は余り配慮もされていないという気がいたしますが、その点、政治改革臨調の亀井公述人のお考えを聞かしてください。
  89. 亀井正夫

    亀井公述人 民主主義で一票の重さということは一対二未満というのが基本原則でありますから、そういう格好でいくべきではないかというのが私ども立場です。  そうすると、今中谷委員の心配された地方の問題でございますけれども、私は今の日本政治の流れが間違っておると思うのですね。結局、余りにも中央集権であって、そして、先般の選挙においても、政治改革をやるという人と、中央に自分がパイプがあるから選んでくれ、こう言われる。ところが、私どもの考え方はやはり地方分権で、国政というものは、これだけ国際情勢が揺れ動いていくときには、やはり外交であるとか日本の安全とか治安とかあるいは税制とか、基本的な問題を議論して、そして地域住民に近い行政、政治というものは地方に移管していく、分権していく、そういうことであるべきではないかというふうに私は考えています。  今までは、余りにも平穏といいますか、冷戦構造の谷間に日本があって、国際的なことは天動説でついていくという格好です。今度は自主的にやらなければいかぬ。そこに非常に国政の負担がかかってきますから、地方は地方自身が活性化していく、そのために権限と財源を与える、そうすればおのずからそこに人材が集まっていく、こういうことになろうと思う。  これはひとつ、ちょっと時間をとりますが、話を聞きますと、フランスが前は非常に中央集権の強い国だったそうです。したがって、ENAという高等行政学院を出た優秀なのは大蔵省とか中央政庁へ入って、地方のことを鉛筆なめなめいろいろやる。ところが、十二年前にミッテランさんが地方分権を思い切ってやった。財源も権限も地方にやる。そうすると、今度はENAの優秀な秀才は中央では余りやる仕事がなくなった。優秀な人材がみんな今地方庁へ就職することになって、地方が非常に活性化をされておるということでありますから、政治改革をやって、そして、細川首相なり皆さんの、やはりこれから規制緩和、地方分権、これは国民の声であります、そういうことによって進めていくということが大事ではないかというふうに思います。
  90. 中谷元

    中谷委員 同じ質問につきまして、坂本公述人のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  91. 坂本修

    坂本公述人 地方ですね。私も秋田県の片田舎の方で、過疎なんです。過疎なんですが、中選挙区で定数是正をしていって、多少減ったりしても、結局どうなんでしょうか、Aの県から出た人は、国の全体の、例えば消費税をどうする、老人問題をどうする、過疎対策をどうするというのを、それぞれの地域から民意を反映してきているのですから、Aの県から出てきた議員がBの県の過疎問題について手がつかないとか、わからないとかいうことにはならないのじゃないでしょうか。  むしろ、今のように、ある種の利権と結びついたり、小選挙区でそこのボスになって、そこのボスとしてすべてを、業界から何からコントロールしてしまう、古い殿様か代官みたいになることの方が物すごく政治力でアンバランスの多い地方格差を生んでしまうのではないでしょうか。私の秋田県はいろいろな議員さんがおられますけれども、新潟県などに比べれば余り恵まれているところとは思いませんけれども、やはり全国を見るというのは、民意に反映さすということを基本にしていった方が、地域に個別的に反映さすというよりは私はすぐれているというふうに思います。
  92. 中谷元

    中谷委員 どうもありがとうございました。  しかし、政治家の心理からいいますと、どうしても選挙に受かるには票をもらわなきゃいけない。東京で林業のことを訴えても票になりませんから、どうしても下水のこととか公園のこととか言うわけでありまして、ますます林業とか農業が廃れる一方でありますから、こういう点で、やはり国土の均衡ある発展を目指すならば定数も多大に影響するのではないかなというふうに私は思っております。  それから、花井公述人にお伺いをさせていただきますけれども、先ほどアメリカの二大政党を評価されましたけれども、今の日本政治の現状は、自民党か非自民と、いわゆる二大政党に近い状況になっておりますが、今後の国際情勢も踏まえまして、外的には、一つには、国際貢献をやる場合に血を流してまでもやるべきか、それとも平和主義に徹するかという二つの分かれ方がありますが、内政的に見まして、この二大政党国民に提示する場合にどのような分かれ方が考えられるのか、この点についてお考えがありましたらお述べください。
  93. 花井等

    花井公述人 アメリカの方は二大政党制というものが定着をしておりまして、そしてそれが、甲論、乙論という形で民意に問われるという政治システムになっております。  日本もいよいよ国連の安保理の常任理事国に入るということでありますから、そういうことになりますと、日本の出番が非常に多くなってくるわけでありまして、その出番が確かであるためには、民意がしっかりコンセンサスを得ていなければならない。そういう中で考えますと、やはり多党制、中小政党の乱立というようなことでは到底意見のまとめができない。そういうことでありますから、今後ますます日本は、国際的な面からいっても、二つの意見を集約する、まとめるという役割を政党が担う。そういう場合は、でき得ることならば政権交代可能な、あくまで可能な、そういう二大政党が相競うという形が最も望ましいわけであります。  そういうことで、基本的には政府案もそれから自民党案も変わらないわけでありますけれども比例代表制の面で見ますと、自民党の方が都道府県単位ということを強調しておりまして、ここにはなるべく地方の格差を少なくしようという意見も反映しておるのだろう、こういうふうに思うわけで、その点から見ても、政府案よりは買っていいのではないか、評価していいのではないか、かように私は思う次第であります。
  94. 中谷元

    中谷委員 どうもありがとうございました。  それでは、亀井公述人にお伺いさせていただきますけれども、今の内閣、細川内閣でございますけれども、これができた要因も国民の力でございますが、その出発点となったのが、海部内閣の終盤で政治改革はどうなるかというときに、民間政治臨調が非常に活動を始められ、そして昨年の今ごろ中選挙制度廃止宣言等をして、与野党議員の垣根を低くしていただいたという、非常に歴史的な機能を果たされたというふうに思いますが、果たしてその結果、選挙による第一党の自民党野党になってしまって、それ以外の政党が連立を組んで政権を担うという形の政権ができてしまったことについて、今の政権、内閣をどう評価されているかということと、それから、もし今後政治改革実現をしまして小選挙区制になった後、民間臨調の出番として、その後の政界再編や参議院の改革等を含めて、どのような形で活動をされていくお考えであるのか、お述べいただきたいと思います。
  95. 亀井正夫

    亀井公述人 私どもの活動に過分の評価をいただきまして恐縮でございますが、今回の政変というのは、我々臨調としては全く予期しないような展開が非常に大きな地殻変動で行われたというふうに思っております。  実は、あの連用制を出して、野党がおまとめになったときに、自民党並立制まで歩み寄られる、比例代表を入れるということでスムーズな格好に進行することを私は望んだのでございますけれども、あのときの自民党は小選挙区ということを固持されたために、結局不信任案、解散ということになって、こういう政権が起こった。  ただ、細川さんという方が総理になられまして、そしてこれは非常に新しい感覚の持ち主ということで、今までの政治の体質とは違うような方ということで非常に国民的人気がありまして、支持率が七十何%ということでありますから、こういう方が出て、そして連立与党ということでおまとめになったので、この際、ぜひひとつ自民党と話し合って、政治改革というまず衆議院改革をやっていただきたい。  それから、先ほどうなるのかということですが、先ほども申し上げたと思いますが、衆議院改革の次は参議院の改革が必要、それから国会改革が必要、それから、やはり先ほど申し上げた地方分権、こういう問題については、我々は一つの提言を持っておりますので、そういうことを、恐らく国会においても次は参議院の改革が問題に取り上げられるでしょう。それから国会運営方法、あるいは情報の発信の基地としての機能、いろいろなことも議論されておるように聞いておりますが、そういうことが出てきますから、そういう問題について我々はまた緊急アピールをしたり運動展開していきたい、そういうふうに考えております。
  96. 中谷元

    中谷委員 時間が参りましたので、終わらしていただきます。  きょうは大変参考になる御意見を聞かしていただきまして、ありがとうございました。
  97. 石井一

    石井委員長 最後に、正森成二君。
  98. 正森成二

    ○正森委員 まず最初に、坂本公述人にお伺いいたします。  先ほど同僚の石原委員から政党に対する公費助成について御質問があり、ある程度お答えになりましたが、企業献金を継続しておきながら、さらに政党助成法によって巨額の助成金を政党の一般活動に支給するという点についてのあなたの御意見を、最初の一般的な御意見開陳では十分に述べておられないように思いますので、よろしかったらお聞かせいただきたいと思います。
  99. 坂本修

    坂本公述人 これは私の言い方が悪かったのかもしれませんが、企業献金の方を野放しにしておいて巨額のというのはちょっと違ってまして、企業献金を野放しにするのは反対、それから、それがどうであろうと政党助成は憲法に反して間違っている、そして、それが両方一緒になっておるとこれはもうますますひどいというのが私の意見であります。  先ほどもちょっと申しましたけれども、私は、条文を見たときにわからなかったぐらい、後で調べてわかりましたが、あんなに自由自在に数千の入り口からお金が入っていって、つまり、支部の問題ですね、支部から支部に金が回ったり、支部から政治家のところに行ったり、しかもその段階に行くともう公表義務がないというのは、金が無限に入ってくる、非常に巨額の金が流入してくるというだけではなくて、透明性もなくなる。したがって、これは企業献金を廃止し、金権政治をやめてもらいたいと言っている国民の要求から見たら、全然違うだろうというのが一つです。  それから、政党助成の問題についてです。何か人口当たりということで分けておられますが、二重三重に矛盾があると思います。私たちは、主権者としてAの政党を支持し、カンパをしたい、これは私たちの自由だと思います。Bの政党は支持したくない、カンパはしたくないというのもあると思います。もっと極端な場合には、政党は一切おれは関心を持ちたくないんだというのも、これもまた人間の基本的な人権に属することだと思うのです。にもかかわらず、税金から徴収される。つめに火をともして年金暮らしをしている老人の消費税からも、過労死に半ば以上の労働者がおびえている状況の中の源泉徴収の金からも、みんな持っていかれる。  私は、弁護士として、労働組合が強制的に特定政党のカンパを徴収することについて裁判で争って、勝ったことがございます。労働組合なら、まだ組合をやめればともかくこのカンパを免れられますけれども国民は税金でございますので、払わなければこれは処罰もされるし、強制執行もされるのです。これはだれがどう見ても、私は憲法違反であって、やるべきではない。あちこちでいろいろな人と話しますが、そういう声は国民の中に満ちているというふうに思います。
  100. 正森成二

    ○正森委員 亀井公述人に伺いたいと思います。  おいでになるので、少し前の新聞などを見たのですが、五月二十二日の産経新聞を見ますと、あなたがあのころの国会審議をにらみながら、民間臨調の責任者として、連用制という非常にユニークな案をお出しになりました。これは一定の影響を与えたと思います。そのことについて、この産経新聞ではこう言っておられるのですね。   われわれが提案した小選挙区・比例代表連用制は、自民党案と社公両党案の共通点を考えています。小選挙区三百と比例代表制二百を連結させ、小選挙区で勝った政党には遠慮してもらい、弱い政党にハンディキャップを与える仕組みです。海部前内閣で廃案となった小選挙区・比例代表並立制より小党が救われる率が高いので、魅力があると思うのです。  「思想、哲学がない」という人もいますが、孔子は「高明を究めて中庸による」と言っています。高邁で明晰な議論を尽くした果ては、ほどよいところに落ち着くということです。 こういうことで、みずからを「高明を究めて中庸による」という孔子の教えを実践しているという意味でおっしゃったのだと思いますが、そうだとすると、今度双方から出されている小選挙比例代表並立制、特に政府案について言いますと、小選挙区で、細川首相も認めている、民意を必ずしも反映しない、民意の集約だ、それを救うために並立制をやって、連用制とは違うのですね。連用制と違って、並立制だったらばとったものは全部もらえるわけですからね。しかも三%以下の得票率の場合には足切りで、今他の公述人からもお話がありましたけれども、七、八議席、二百五十の七、八ですから五百全部で考えれば十五議席切り捨てるというようなのは、あなたがつい数カ月前におっしゃったこの産経新聞でのお説からすると、孔子の教えに背くということにならないのですか。あなたは今どう考えておられますか。
  101. 亀井正夫

    亀井公述人 数カ月前にしゃべったことをまた点検いただいて、御質問いただいて恐縮に存じます。  結局あのときの時点においては、御承知のように、自民党さんの方は小選挙区制一本、そして野党の方は併用制といいますかドイツの制度、しかし私は、中選挙区をやめるということでは共通点がありますと。それから、小選挙区を両方とも導入するということでも、ある。ただ、比例代表ということが入っていないわけですね、自民党の案に。したがって、比例代表をどういう形で入れるかということが結局解決の中心になるのではないかということで、知恵者の意見もかりましてああいう連用制という案を出した。これは、イギリスにおいて、小選挙区だけですといろいろ先ほどのカナダのようなぎくしゃくが起きる、ハンサード委員会ということでああいう案をやっているそうですね。アディショナル・メンバー・システムという案がある。そういうのを採用してあそこへ出したわけであって、ゴルフでいえば、小選挙区で強いところは比例代表で弱い人にハンディを上げよう、こういう格好でやったらどうか。  それで、これは東洋哲学、我々皆東洋人でありますから、結局この中庸によるというのが一つの哲学だから、この際これでいかれたらどうですかというアドバイスをやって、私は別に孔子のつもりでやったわけではありませんで、日本の前途を開くために、ここで何とか中選挙区をやめて新しい制度にいっていただきたいという、その突破口を開くための提言をしたわけで、あのままでやれるとは私は思っておりません。しかし、何とかここで新しい改革をやっていただきたい。  私は、政治改革で、正森先生が出した記事から申し上げますと、この今の政治改革をなぜやっておるかということは、これは竹下さんの賢人会議のときに私申し上げたのですが、現在国民政治不信があるから政治改革をやるということは、これは大事でしょうけれども、問題は、本当の政治の本質というのは、国民に新鮮な目標を与えて夢を持たすことです、それには国民政治に信頼ができないとそれはできませんよ、そのための政治改革だということを申し上げた。そういうつもりで私は活動しております。
  102. 正森成二

    ○正森委員 もう一問だけ、今度は花井公述人に聞かせていただきます。  今伺っておりますと、政治資金の問題で、法人というのも社会的存在である、これに対して政治活動といいますか、政治献金を認めるのは当然のことであるという意味の御発言がございました。  しかし、この間当委員会に参考人としてお見えになりました、八幡製鉄の判決をお引きになりましたが、その判決に関与された岡原元最高裁長官は、あの判決のことを助けた判決だと言い、法人は、定款に定められた事業の範囲で言っているもの、それ以外はできない、つまり適法性がない。あなたはアメリカに五年おられたそうですが、アメリカの裁判所ではこれをウルトラバヤリースというのですね。適法外だという、能力外だという意味であります。そして、企業献金が現在のような形で行われるというのは、これは悪である、何とかして直してもらいたいという意味のことを言っておられます。  この点についてあなたのお考えを簡単にお聞きして、恐れ入りますが、私の持ち時間が終わりましたので、終わらせていただきます。
  103. 花井等

    花井公述人 一言だけ申し上げますと、やはり企業というのも社会的存在である、これに活動を許さないということはやはり問題である、こういうことを申し上げたいと思います。
  104. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  105. 石井一

    石井委員長 これにて午前中の公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な忌憚のない御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十二分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十一分開議
  106. 石井一

    石井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、御出席公述人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。審査中の各案に対する御意見を拝聴し、審査の参考にいたしたいと存じますので、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、御意見は、山岸公述人、箱崎公述人、曽根公述人、片岡公述人の順序で、お一人二十分程度お述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。  それでは、山岸公述人お願いいたします。
  107. 山岸章

    ○山岸公述人 連合会長の山岸でございます。  私は、まず、ただいまから意見を述べますが、その前提として、基本的には、この政治改革につきましては、今国会に提案されております内閣提出の原案に賛成であるということを明らかにしておきたいと存じます。ではございますが、新聞報道等でも伝えられておりますように審議もいよいよ大詰めを迎えておりますので、原則論ばかりを述べておりましても参考にはならないと思いますので、あえてもう一歩、二歩踏み込んだ立場で見解を申し述べたいと存じます。  私は、四点について意見を申し上げます。  まず第一点として強調したいのは、この百二十八臨時国会においてぜひとも内閣提出政治改革法案を一括成立をさせていただきたいということでございます。今日、先生方も御存じのように、国民政治不信は頂点に達しておると思います。政治改革は、具体的に論議が始められまして今日で五年間経過をしております。もしこの国会政治改革法案について決着がつかないということになれば、私は、日本政治は崩壊の危機にさらされるおそれ極めて大である、こういう問題意識を持っております。でありますがゆえに、ぜひともこの国会成立を期していただきたい。  なお、一部には、腐敗防止対策だけ決めればよい、あるいは政治資金だけメスを振るえばよいという御意見もあるやに受けとめております。しかし、腐敗防止と政治資金の改革と、そして公費助成制度国会改革選挙制度改革は、私は一体のものであると認識をしております。ぜひとも、一括して成立をさせるという観点で御尽力をいただきたいと存じます。  それから第二点は、状況判断でございます。私はこう見ておりまして、さきの百二十六通常国会の論議と合わせまして、もはや与野党政治改革に対する審議は尽くされた、こういう認識をしております。あとは本特別委員会において、最終的な与野党話し合いによってその仕上げをどうするかという段階までもう来たのではないかと考えるわけでございます。そして、従来、選挙制度改革につきましても与野党意見に大きな開きがございましたが、私たちの理解するところでは、現段階においては、選挙制度改革に例をとりますと、並立制でいこうという点では完全に与野党意見一致しておると認識をしております。したがって、対立点も非常に縮まってきておるということでございまして、与野党それぞれが一致点を見出すためには、より踏み込んだ妥協も辞せずという立場でお話し合いをいただければ、必ず私は前向きの結論が出るものと確信をしておる次第でございます。  そういう観点から、現在、特別委員会のレベルでのお話し合い、さらには与野党代表による話し合い等が行われておりますが、この話し合いを進めていただくと同時に、最終的には細川総理河野自民党総裁トップ会談で速やかに結論を出すという方向で、御尽力をお願いいたしたいと思います。そして、一日も早く政治改革法案衆議院における審議を完了していただいて、今、景気対策が非常に重大でございます。したがって、次の課題である景気対策について衆議院がより突っ込んだ論議を行い、的確な対処方針をお決めいただくように期待をする次第でございます。  それから第三点は、日程的な問題でございます。まあこれは、私どもとしましては、参議院においては審議期間に一カ月ぐらいは必要だという認識をいたしております。そういうことを考えますと、本法案審議衆議院の大山は今週中という認識をしておるわけでございまして、ぜひとも今週中に事実上の決着がつくよう御尽力を期待する次第でございます。  それから、よく強行採決がどうこうというようなこともマスコミ報道で言われておりますが、私たちの立場からいきますと、私などは特に絶対的平和主義者でございまして、余り切った張ったということは好ましいとは思っておりません。そういう意味では、ぜひ与野党の徹底した話し合いを煮詰めていただいて、話し合いによって前向きの結論を出すということに最善を尽くしていただきたいと存じます。そういう観点から、茶の間から見て何か強行採決をやったんじゃないかと見られるような形の議事運営というのは、やはりこれは好ましくないと考えます。ぜひ話し合いをモットーにしてお願いいたしたいと存じます。  最後に、第四点としまして、昨日来マスコミでも報道されておりますが、与野党話し合いで修正についての協議、七項目が大体ピックアップされたというようにも理解をしております。そういったことも頭に入れまして、私はこの際、今修正のテーマになっております七項目のうちの四項目について、私の希望を述べておきたいと存じます。  まず第一は、衆議院の総定数及び比例区と小選挙区の定数配分に関する問題でございます。この点に関して、本来は、総定数は公職選挙法本則で定める四百七十一名というのが理想でございます。しかし、現実の情勢を考えました場合に、それじゃちょっと無理じゃないかと考えます。したがって、第八次選挙制度審議会が答申いたしましたように、総定数は当面五百ということでお考えいただくのが妥当ではないかという判断をしておるわけでございます。  それから、比例区と小選挙区の定数配分でございますが、政府案は二百五十、二百五十、それから自民党案は三百、百七十一というように承知をしております。私は、このいずれにてもこれは決まらないんじゃないかと思う。実は陰の声がございまして、君はきょう公述人になって公述をする以上は自民党原案賛成と言えというお話もございましたが、それも難しい。それから、私が見ますところ、二百五十というのは、これは自民党さんが納得しない、そう横から見ておると判断をいたします。したがいまして、定数配分の問題については、各党それぞれ歴史的な経過、それから御見解がございますが、私たちの立場からいいますと、与野党双方ともに譲り合って結節点を見出すという御努力をいただきたいと考えます。それは皆さん方で十分御相談いただきたいと思います。  それから第二は、比例区の単位の問題でございます。これは現在、全国一本化、それから都道府県単位でいくのか、与野党意見が分かれております。しかし、私は第八次選挙制度審議会委員もやらしていただきました。御案内のように、第八次選挙制度審議会の答申はブロック制でございました。したがって、そういう経過も踏まえまして、比例区の単位はブロック制が妥当ではないか、こう考えておる次第でございます。それは、全国一本と都道府県の単なる折衷案に過ぎぬじゃないか、真ん中をとるような考え方はおかしい、哲学がないというような学説も一部にございます。しかし私は、このブロック制というのは、先ほども申しましたが、第八次選挙制度審議会の答申そのものでございまして、これは歴史的な経過とそれから明確な哲学を持っていると思います。  とりわけ最近は、地方分権ということがやかましく言われております。そして、分権国家を志向しようという御意見国民の中には盛り上がっております。その場合に、地方経済ブロックのとり方としては、やはり道州制的な単位というものを大事にして、地域、地方の開発を図ろうという意見が強うございます。そういった点等も考えますと、選挙管理委員会をどういう形にするかという問題は残りますが、私は、比例区の単位は地方ブロック制というのが現状においては常識的ではないかな、こう考えておる次第でございます。  第三は、一票制か二票制がという投票制の問題でございます。この点については、私は、国民の常識としても一票制よりは二票制の方が支持されるのではないか、こう考えておるわけでございまして、二票制で与野党の合意を形成するという観点に立っての御努力を期待いたしたいと存じます。  最後に、第四としまして、企業・団体献金廃止と、これに絡む公費助成制度の新設の問題があります。私は、今日、ゼネコンを初めとします汚職事件が続発をしております、これに対する国民の批判は極めて厳しいものがあると存じます。この厳しい国民の批判に耳を傾けて、やはり政治家個人に対する企業・団体献金というものは、これは直ちに廃止をするべきではないかこう考えるわけであります。  そういう観点から、自民党案では、政治家個人に対するこの企業献金というものの道は、幾つかの前提条件をつけて存続されるようになっておりますが、しかし私は、これはなじまないと思う。やはり国民感情からいっても、企業・団体献金を当面存続するとしても、それは政党へ一元化するべきではないか、こう考えております。そして、この政府案は、五年後に企業・団体献金を見直すということで提案をされておりますが、私たちとしましては、五年後の見直しの際にはぜひ企業・団体献金廃止をする、こういうやはり姿勢を貫いていただきたいと思います。もちろん、企業・団体献金というと、団体献金の中には労働組合の献金も入っております。だから、企業献金はだめだけれども労働組合の献金はいいんだというような、横着な考えは持っておりません。それは、企業献金も労働組合を含む団体献金も全廃をするべきであるという考えでございます。  そういった立場に立ちまして、今、与野党から提案されております政党に対する公費助成金制度の新設については、私たちは賛成をいたしたいと思います。ただし、金額の問題については、ぜひ与野党でじっくり話し合っていただいて、結節点を見出していただきたいと思います。  なお、昨日の公聴会でも意見が出ておったやに伺っておりますが、地方議員、それから地方の知事だとか市長だとか、いわゆる首長、こういった人たちに対する公費助成のあり方については、この内閣提出の原案にも明確な対処方針は盛り込まれておりませんので、ぜひ与野党でお話し合いをいただいて、これは地方の時代といったって地方がスポイルされるのでは問題がございますので、地方政治に対してどのような形の対応をしていくのか、ぜひ明確な結論を出していただきたいと思います。  以上で、私の公述を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手
  108. 石井一

    石井委員長 ありがとうございました。  次に、箱崎公述人お願いいたします。
  109. 箱崎道朗

    ○箱崎公述人 産経新聞の論説委員をしております箱崎でございます。  私は、企業献金のあり方、比例代表制の問題点、政治資金への財政からの助成などについて所見を述べたいと思います。  まず、企業献金についてであります。今度の改正あるいは改革について、企業献金をどうするかということが盛んに問題になりました。しかし、改正案が収れんされる過程で、現在の経済社会で果たしている企業の役割や意義、あるいは企業献金が持っている社会的な意味や機能、企業献金が禁止された場合の経済社会を動かすもろもろの力学、パワーへの影響などについて十分な検証がなされたかというと、残念ながらそうではなかったと思います。それどころか、企業は悪だという一面的な先入観、見方でこの問題を割り切り、企業献金の問題をとらえる傾向が目立っていました。また、企業献金を禁止さえすれば政治の腐敗は断たれ、政治改革の問題は一挙に解決するといった、単純な議論がまかり通っていました。最後には、今禁止できなかったら、五年後の禁止を法律で約束しろという議論もあります。  企業献金の禁止に消極的な側も、政治資金はやがて財政からの助成と個人献金に対する税額控除の適用によって賄っていけるという楽観的な思い込みから、企業献金の持つ意味、禁じた場合について討議を深めていこうとする空気はなかったように思います。しかし、この問題は極めて重要な意味を持っています。企業献金を禁止されると、当然ながら、企業やその集団であります財界の政治運営、経済運営に対する発言力は目に見えて低下するのはわかり切ったことです。  日本には、金を出しても口は出さないのが上等であるという文化があります。その裏返しは、金も出さないのに何を言うかというものであります。企業の政治献金が禁じられ、企業が金を出さなくなったら、世間やマスコミには、企業経営者や財界団体を、さも自分たちの金もうけだけを考える集団として軽くあしらう風潮が高まるでしょう。経営者とか財界人という人たちは、その道では功成り名を遂げた人でありますから、世間の誤解、無理解に一々抗議するようなことはしません。よく言えば上品、悪く言えばけんか下手の人たちです。自分たちの属する企業社会、財界が不当におとしめられることに対してもつい黙ってしまいがちなのです。  しかし、企業は現代社会の基盤であります。根源であります。雇用を支え、経済の繁栄を維持し、税収を上げ、福祉を達成する根源です。それは、資本主義下でそうであるだけではなく、社会主義の中国でもそうだし、ソ連でもそうでした。企業の不振がソ連を崩壊させたのです。  ガルブレイスが言うように、現代の大企業は、何年も先を見て長期的な視野に立って技術革新を進め、資本を調達し、投資を行い、エネルギーや原材料を確保し、市場を開拓しています。ビッグビジネスのテクノクラートは、企業のこの長期的活動を支えているのであり、財界はその上に立って、当面の経済運営から十年、二十年後のエネルギー資源の確保の見通し、産業全体の技術水準などについて情報を交わし、協議し、問題があれば政府や政治家あるいは社会に対して、提言したり警告したりするのです。財界は、そういう機能、役割を担っています。企業献金の禁示によって財界の地位が低下し、発言力が弱まると、財界が経済社会で持つこの機能は、今までのように果たせなくなってしまいます。そうなれば、その影響は直ちに日本の経済や国民生活の衰弱となってあらわれることでしょう。  ところで、企業献金の禁止によって財界の地位、発言力が低下していく事態に、内心喜びを隠せないのは官僚です。なぜなら、官僚の最大の対抗勢力は経済界であり、財界であるからであります。官僚は、財界の地位低下、発言力低下がはっきりすれば、初めて自分たちのヘゲモニーが確立したことを確認でき、権力と権威を独占できます。  官僚の対抗勢力は政界ではないか、政治家こそ官僚を使っているではないかという反論があろうかと思います。しかし、残念ながらそうではありません。日本政治は、政党政治の流れと官僚政治の流れの二つの部分に分けて考えた方がよいという見方があるほど、今や官僚はあらゆる分野で政党政治の力を排除し、政策決定を行い、政治実現しています。政治家あるいは政党政治決断に係る政治は、税制、外交、防衛、教育などの骨格にかかわる分野に押し込まれています。これ以外の政策決定で、官僚は政党政治に本質的な譲歩をすることはめったにありません。  三十八年の自民党政権下で、政党政治と官僚政治は幅広い分野で融合し合い、政治の行政化が進みました。その結果、今や官僚は、政権が交代しても官僚政治には影響を与えないという状況をつくり出しました。今の政治がまさにその姿であります。かつて何々族と呼ばれた族議員華やかだったころ、党高政低、党が高く、政府は押されっ放したと言われました。しかし、それも今は昔で、政治家はその後、一人また一人と官僚の側に取り込まれて、あげくの果ては選挙で役所の応援を得ています。今日の政官業の癒着は、こうしてでき上がったのであります。  大蔵省では、今でも予算について「御査定いただく」という言葉が使われています。旧憲法下から使われてきたこの言葉は、主計局で目下の者が上司に使うものですが、政党政治家に使われることはありません。大蔵省ではまた、「予算に飛躍なし」という言葉があります。公共事業の配分が何十年も動かないのは、予算に飛躍がない結果でした。マックス・ウェーバーは、事に当たって政治決断、リーダーシップを振るわぬ官僚はすぐれた官僚だが、決断せず、リーダーシップに欠けた政治家は不道徳な政治家と決めつけています。その意味では、道徳的な総理大臣は戦後ごく少数しか我々はいただかなかったのであります。  表面は政党政治が支配しているのに、何も変わらない、どうにもならないこの閉塞感に、国民は変化を求めました。政治家としてはキャリアのほとんどない首相に、世論調査はかつてない支持を与えています。それは、閉塞状況からの脱出に対する国民の渇望です。  しかし、政党政治は、官僚の対抗勢力では現在のところありません。官僚にとって唯一の対抗勢力、財界が献金禁止で凋落すれば、官僚はもはや怖いものなしです。その上、政治資金まで財政からの助成を受けるとなると、官僚にとっては状況はますます有利であります。いろいろな手段を講じ、新しい選挙制度での比例代表の枠に官僚はOBを次々に送り込んでくるでしょう、参院の比例代表区が既にそうでありますように。断っておきますが、私は官僚に何の恨みもございません。それどころか、官僚には友人がたくさんおります。ただ、官僚がこの国を一元的に支配しては、国を滅ぼします。国の発展には、政界、官界、労働界、そしてマスコミなどの各セクターがバランスよくあることが必要です。  官僚のセクターは、優秀な人材を抱え、一糸乱れぬ体制を片時も崩さず維持できます。しかも、各省庁には記者クラブ制度を抱えていることで、新聞、テレビを味方に、あるいはシンパにつけているのです。財界が凋落すれば、官僚にとってはもはやライバルは生まれないでしょう。そうなると、官僚国家が完成するでしょう。しかし官僚国家では、重化学工業の発達はできますが、情報や先端技術、ハイテク、ソフト、ファインケミカルに象徴される現代の経済社会の基盤は、維持させ、発展させることはできません。日本は、繁栄した世紀を閉じることになるでしょう。  アメリカだって企業献金を禁じているとおっしゃるかもしれません。しかしアメリカの官僚制は、もともとそれほど強くありません。大統領がかわると、三千人とか四千人と言われる上級職員が交代し、新政権によって任命されます。日本に当てはめると、各省庁の課長クラスまで交代することになります。企業献金は悪ではなく、日本社会のパワー・オブ・バランスを図り、福祉の発達を達成する上で必要なことです。企業献金を禁止し、このバランスをどうして変える必要があるのか、衰退の道をどうして選択しようとするのかと、私は問いたいと思います。  しかし、もし日本がどうしても企業献金を廃止するのだったら、アメリカ並みに上級公務員の政治任命制度を取り入れる必要があります。決していいとは思いませんが、バランス上必要であります。企業献金の問題点は、透明性を確保することで対処できると思います。その点、政府案自民党案も、残念ながら十分とは思いません。  次に、比例代表制について所見を述べます。政府案比例代表制への定員配分は多過ぎると思います。多過ぎる定員は、将来官僚のOBのなだれ込みを許すだけになるでしょう。細川首相は、比例代表は多様な民意を反映すると言いました。しかし、その保証はどこにもありません。選挙区も全国区では広過ぎます。また、これでは参議院とどう一体違うというのでしょう。衆参同時選挙が行われた場合、選挙民は何に興味をつなげばいいのでしょう。今から白ける感じがします。  次に、政治資金への財政からの助成についてです。公聴会に出るに当たり、各党の党費を調べました。年間五千円未満の政党がたくさんありました。政党は、外国でも衰退の道をたどっていると言われ、多額な党費は負担でしょう。しかし、財政からの助成額は、政府案では国民一人年間三百三十五円だそうです。党費に対して、この数字は大き過ぎないだろうかと思います。地方選挙への公的助成も必要になるとすると、その額はさらにふえます。もっと少なくするのが妥当ではないでしょうか。  次に、政党への個人献金に対する税額控除についてです。制度の創設には賛成です。しかし税額控除は、税金の一部を政党政治家個人に移転する制度です。政治資金の透明性を確保することなしに税金の一部を流用することは、問題を残します。  以上で私の意見表明を終わりますが、今回の政治改革をぜひ実現するよう願っています。選挙制度には一長一短があります。イギリスでは小選挙区制を採用し、保守党と労働党が交代で政権を担当してきました。しかし、そのイギリスからはアメリカへの投資が一貫して高水準で、今でも日本を凌駕し、対米投資のトップを占めています。資本がこのようにアメリカへ逃避することがイギリス病の原因で、その背景には、労働党政権を誕生させる小選挙区制があると言われてきました。労働党が政権をとると、国有化を初め社会主義的政策を採用します。それを嫌って、資本がアメリカに逃避するんだという指摘です。  そういう問題はありますが、中選挙区制では議員の世襲化がますます高まる傾向にあります。投票総数の一六、七%で当選できるという、選挙の意義を薄める要素もあります。県知事選、市長の選挙が、事実上対立候補のない無競争で、民主主義の空洞化現象も広がっております。このような閉塞した状況を破り、政治に緊張感を取り戻すには、小選挙区制は有効です。  これで私の意見陳述を終わります。どうもありがとうございました。(拍手
  110. 石井一

    石井委員長 産経新聞論説委員箱崎道朗公述人の公述は終わりました。ありがとうございました。  次に、慶応義塾大学教授曽根泰教公述人お願いいたします。
  111. 曽根泰教

    ○曽根公述人 慶応大学の曽根でございます。  私は、四点に絞りましてお話をいたしたいと思います。一番目は基本認識、二番目は原理的な問題、三番目は政党の役割、四番目はこの法案では余り触れてない問題ということで、お話をしたいと思います。  一般に政治改革というのは、安全保障や国際政治のようなハイポリティックスでもない、あるいは貿易、経済のようなローポリティックスでもないという言い方がされます。あるいは現実の景気対策、規制緩和、税制改正、米という問題が緊急に迫っているではないか、こういう御指摘もあります。しかしながら、政治改革というのは、政治を行い政策を実行に移すいわば基盤であります。インフラストラクチャーであります。このインフラストラクチャーであるところがゆがんだ土俵であったり、あるいは穴だらけのグラウンドであったりいたしますと、いかにすぐれたプレーヤーといえども立派なゲームができないわけです。  そこで、このインフラストラクチャーという例えを申し上げましたけれども、これは現実の政治の場では制度及びルールの問題になります。それと、どれだけよい政策あるいは政党間の競争ができるかということは、また別の問題というふうに理解いたします。ただし、ルールの改正、ルールの変更というのは、ゲームの内容に大幅な影響を与えます。そこに改革のねらいがあることも、また事実であります。  そして、このインフラストラクチャーの問題でありますけれども、このインフラストラクチャーが国民の信頼をどれだけ得ているかどうか、この不信感ということが、政治改革のねらいの一つであるわけです。そういう意味で申し上げますと、リクルート以来、政治改革という問題が前面に出てきたわけですが、いずれもまだ決着はしていない、つまり具体的な解決はなされていないというふうに理解した方がよろしいかと思います。  既に、政治改革をめぐりまして二つの内閣がつぶれております。そういう点では、大変重い問題であります。つけ加えて申し上げれば、本国会では政府案自民党案の間にほぼ合意ができるところまで、私の観察では来ていると思います。それは、海部内閣当時提出されました並立案と現行連立政権下の並立案では、その意味が異なっているのではないかというふうに思います。中には、中選挙区でも政権交代があったではないかという御指摘がありますが、実は、政治改革をめぐりまして党を割る勢力、党を割る動きがなければ、政界再編、政権交代はなかったわけでありますから、そういう意味政治改革というのは、日本政治において非常に重要な争点であることは間違いありません。  そして、現行連立政権下の並立制というのは、いろいろな試算がございますが、与野党間の競争というものがかなり拮抗しているという予測が多いと言うことができます。この点に関しまして、厳密に、制度を変更しても制度自体が中立性を保つということは言えないわけですけれども、ある程度の可能性を持ちまして合意ができるのではないか。つまり、制度はそれほど、どちらに得でどちらに損だと一言で言い切るほどの変更点はなかろうというふうに認識しております。合意の高い案でありますので、自分の利害にのみ固執しなければ、私は合意ができるだろうと思います。  合意案というのはイコール最良の案というわけではありませんけれども、この貴重な合意のチャンスを逃がすことはないと思います。あるいは、合格点を百点に近く設定いたしますと、あらゆる改革案というものは成立いたしません。そういう意味で、この政治のインフラストラクチャーあるいはルールというものを充実することによりまして、政治のプレーが、ゲームが充実を増すということを期待するわけであります。その点では、そのプレーの水準というのは、国民の意識にも左右されるわけですから、単に政治家だけの問題ではありません。そういう意味で申し上げまして、時計の針を逆戻りさせるようなことは、今の段階では控えた方がよろしいのではないか、こう認識しております。  既に、七項目あるいは二十一項目の相違点というのが出ておりますけれども、これは並立制の中での相違でありまして、小選挙区と比例代表という全く異なる考え方をこの場でいきなり妥協せよという、そういう提案ではないわけであります。そういう点では、合意ができる代表的な例であります。  ただし、よりよい制度というものは何であるのか。制度変更という問題は簡単なものではありませんけれども、実施をいたしまして不都合があったならば変えればよろしいのではないか、そういう覚悟で臨むことが必要なのではないかと思います。大学の入試制度のように、目まぐるしく頻繁に変わりますと、学生は甚だ迷惑するわけでありますが、逆に言いまして、いかなる入試制度でありましても、その制度が想定いたしますすぐれた学生、すぐれた入学者というのは必ずいるということも、これまた事実であります。そういう点では、柔軟な姿勢が望まれるというふうに思います。  ここで、少々原理的な問題を申し上げます。私は、選挙制度に関しまして、四つの基準というものが必要であろうと思います。それは、公平、平等、簡素、選択の多様性という四点でございます。これは、税制を考えるときにも、あるいはそのほか制度改革を考えるときにも、非常に関係してくるわけでございますけれども、特にこの点では、有権者の選択ということを重視しております。そういう点で、公平、平等、簡素、選択の多様性という点を主張したいと思います。  私がここで申し上げます選挙制度というのは、得票を議席に転換するシステムというふうに簡単に理解しております。その点では、小選挙区であっても比例代表であっても、いずれもある種の転換方式でございます。その点では、得票イコール民意というふうに理解してもよろしいのですが、いずれの制度も民意を反映する方法であります。ただし、それぞれの方式には相当癖がございます。一方を世論の集約、もう一方を世論の反映という見方もできますが、いずれも得票を議席に転換するということでは変わりがございません。  ただし、比例代表の思想的背景を申し上げますと、比例代表がヨーロッパ大陸において導入されたときには、その背景には人種、宗教、言語などの対立があったという点で、単なる小選挙区では機能しないということがございました。それが比例代表の歴史的な背景でございます。その点では、日本には人種、宗教、言語などの非常に厳しい対立というものは存在しておりません。そういう意味では、制度の選択においてはかなり自由度はあろうかと思っております。  次に、一票制か二票制がという問題について議論をしてみたいと思います。単純に申し上げますと、一人一票制というのは個人の選好、好みですね、好みの第一順位をカウントする、計算するというシステムです。その票を平等、公平に扱い集計するというのが原則であると思います。ということは、各個人が持っております第二順位以下の好み、選好というものは全く考慮していないということになります。あるいは、一位と二位の差は無視をしているという前提であります。あるいは、自分ではこの人を落としたいということを思ったとしても、それは投票にはあらわすことはできないわけです。これは日本選挙日本だけではございませんが、日本選挙の特徴として単記非委譲型投票の顕著な点でございます。  そこで、小選挙比例代表制を考えるときに、一票制か二票制がという問題が出てくるわけですが、一票制の場合には、小選挙区の選好第一位の候補者への投票をもって比例区の第一位ということを推論するという、非常に難しい問題がございます。本来、小選挙区の候補者への好み、選好と、比例区の政党への選好というのは違いがあるんだろうと思います。あるいは、両者の選好において形が似ていたとしても、両者は独立しているというふうに理解しております。  そういたしますと、すべての組み合わせということを、小選挙区及び比例代表のリストに載せる必要が出てまいります。リストに載せるということになりますと、それは事実上の二票制と同じことになってしまいます。ですから、一票制が生きるという場合は、小選挙区と比例区の選好、好みが一致した場合のみでございます。その点では、私は二票制の方が、有権者の選択の多様性ということに関しては生きてくるのではないかというふうに理解いたします。  ここで、選択肢の多様性と選択の多様性と、二つのことを分けております。特に小選挙区になりますと、選択肢は間違いなく減ることになると思います。そこで、選択の多様性を重視するということになりますと、有権者の方が順位をすべてにつけるという方法もございますが、この順位を全部につけるということなどを採用いたしますと、簡素という、先ほど申し上げました簡単であるという原則に抵触するわけであります。その点では、選択の多様性を生かすということでは、完全とは言えませんが、並立制による二票を行使することによって、有権者の選好の多様な表現を確保するということが重要であろうというふうに思います。  比例制は、しばしば多様性ということに合致するという見方もありますが、これはリストを提供する政党に候補者の選択を任せている方法でありますので、有権者の選択の多様性が増加するということではありません。これは私は、比例というのはある意味でお任せという制度であろうというふうに理解をしております。  ここで、並立制における理論的な欠陥と前から指摘がございます、異なる理念に基づく二つの制度をここでくっつけるということはいかがなものかというような御意見がございます。それを、二票制を行使することで多様な選択が可能にならないかということが、一つの工夫であります。これは、選挙の際に、あくまでも一つ選挙であるということが明確になる必要があります。これは、ドイツなどは投票用紙に、これは一つ選挙でありますよ、あなたは二票持っていますという記述がある場合、それは明確になるわけですが、選挙執行上は非常に工夫が必要になる点だろうと思います。つまり、同一選挙で二つの選挙を行うんではなくて、一つ選挙自分の意思を二つに分けて表明することによってその人間における選択の多様性をあらわす、有権者において選択の多様性を持つ、それを有権者が強く持てるような執行上の工夫がないかということが、一つ提起する問題でございます。  それから、選挙制度というのは、通常これは三つないし四つの基準から判断することができます。一番目には、いかに転換をするのかという転換の公式、方式でございます。二番目は議席の大きさ。三番目は票をいかに行使するか、その方式。この三つくらいが代表的な考え方であります。そうしますと、並立制は、第一の基準で申し上げまして、二つの原理が採用されております。この点に関しては、与野党案両方とも同じでございます。そうしますと、議席に関しましては、小選挙区は一であります。そこで、比例区の方が全国単位と県別という二つの案が提案されております。投票方法では、今触れました一票制と二票制の対立がございます。そして、この議論の延長として、総定数を幾つにするのかという問題が出てくるわけです。これを第四番目の問題として理解しております。  それで、第一の問題に関しては、相違点はないというふうに思います。その点で、併用制と違いまして、比例の当選者の確定というのは基本的には名簿によるわけですから、両者の違いは一票制か二票制がということで、これは既にお話しいたしました。そこで、原理的な問題として、小選挙区部分が三百、二百五十において決定的な対立点があるのかというふうに考えるかどうかになりますが、私はこれは原理の対立てはない、全体の選挙制度の構成上の問題であると理解しております。そういたしますと、仮に二百七十五という妥協案というのは、両方の原理を損なうことにはならないというふうに考えます。  むしろ、原理的な問題というのは、比例区における全国と県別の相違であります。比例の基本的な原理から申し上げれば、得票にできるだけ議席を近づける方法ということが、比例のその特徴でございます。そういう点で申し上げれば、選挙区の規模が大きい方がよろしいわけです。ただし、名簿の規模というのが同時に大きくなってしまうので、これは執行上の問題として出てくるわけです。ところが、県別比例というのは、小選挙区との並立てはなくて、恐らく中選挙区の代替案としては成り立ち得るものであるだろうと思います。すなわち、小選挙区と中選挙区を並立しても、私自身は意味は余りないだろうというふうに理解しております。つまり、全部を県別比例という原則に立って案をつくるんでしたらわかるんですが、百七十一を県別にいたしますと、二議席区、三議席区というのがかなり出てきてしまうわけです。これを比例で行うのは、制度の趣旨からいって、甚だしく比例の趣旨を生かしてないというふうに認めざるを得ません。  そして、小選挙区を生かして、かつ比例区で少数党を救うとするならば、全国区の方が意味があるというふうに理解いたします。本来、県別やブロックというのは、阻止条項を使わずにミニ政党の乱立を防ぐという意味が一方ではございます。そういう点では、三%阻止条項が入っていれば、全国区であってもその趣旨は十分生かせるものと理解しております。  それから、重複立候補に関しまして若干申し上げたいのは、これは両案とも惜敗率あるいは善戦率という工夫がございますが、小選挙区の落選者を比例において当選とする根拠を今から決めておく必要があるだろうと思います。小選挙区の当選者を比例の当選者確定に使うという併用制であればよくわかるんですが、小選挙区での落選者の敗者復活という意味での重複立候補は、単なるこれは過渡期の問題である、移行期の問題であるとするならば理解できるんですが、恒常的な問題とするのかどうか、原則確認が必要になると思います。  小選挙区では落選したけれども、高位の得票をとったのであるから比例区では当選資格があるとしたのでは、比例区の地位が一段低いものになってしまいます。また、小選挙区で落選させた有権者の意思を無視することになります。そのときに、小選挙区でのいわゆる死票を救うという意味であるなら、比例区そのものの導入の意味が薄れてしまうわけであります。もしこのとき、制度の趣旨を一貫させるとするならば、小選挙選挙におきまして、小選挙区代表としてはふさわしくないけれども比例代表として認めるという有権者の意思表示が何らかの方法でとられるならば、これは理解される制度となるわけです、これは執行上非常に難しい問題があると思いますけれども。  この案、両案を拝見いたしますと、基本は政党による解決ということを目指した案と読み取ることができます。選挙制度政治資金法、それから政党助成にしても、政党の役割を重視した案でございます。そのとき、政党とはいかなるものであるか、具体的なイメージを早急に国民に提示することが必要でありますし、それから、制度改革によって政党政治システムがどのようなものになるかも、国民に示す必要があるというふうに思います。現法案では、政党の定義というのは、専ら議員数が何名あるいは得票率が何%という、数による定義しかありません。そういう意味では、政党を一種のブラックボックスにしてしまうのは得策ではないわけです。政策立案、選挙の主体、いかに責任を持つかということが、政党の役割の重要な点になると思います。そういう点では、連立を含めまして、それぞれの政党の具体的なイメージの提案、それから党内民主主義の手続といった問題の透明化、これが最も重要な点であるのではないか、私はこう考えます。  政党に関しまして言えば、選挙政党が行うのか、個人が行うものか、あるいは小選挙区の候補者の選定における決定手続、公認問題、あるいは比例区における名簿掲載上の方針はどうするのか、非常に重要な点がございます。  また、二点目には、政治資金の受け皿を政党にするということは、政党がどれだけ責任を持つのかという点にかかっております。この点では、英語で、同じ責任でもアカウンタビリティーという言葉がございます。どれだけアカウンダブルなものになるのかという点が、公開制と透明性をどれだけ高めて国民不信感を取り除くことができるのかということで、重要になる点であります。これは政治資金、それから政党助成に関しましても、政党というものをいわゆるマネーロンダリングの機関として考えてはならないというふうに思っております。  それから、政党助成は文字どおり政党に対する助成でありますが、公的な資金を仰ぐということは、腐敗防止ということと絡めて出てきた案であると思います。その点では、税金が使われている点におきまして、絶えず国民の監視下に置かれるということは考えられるわけですが、その点に関しまして、自由な政治活動という原理と公的助成に基づく原理というのは、実は対立する原理であります。そういう意味において、献金を中心にするのと公的助成を中心にするということでは、これはいわば並立制でございます。両案がここで混在しているわけでございます。  この点に関しては、軸足をどちらに置くのかという点を明確にすることが必要なんではないか。そういう点では、もし政党助成に頼るというのだったら、献金を一切使わずにゼロから出発するということも一つの案でございます。これはかなり乱暴な改革案でありますけれども、そういう点はあり得る案だろうと思います。献金に関しまして申し上げれば、実は献金額あるいは献金よりも、やみ献金と言われる問題の方が大きいわけでして、この点に関しては、私は単に政党助成あるいは政治資金規制だけの問題ではなくて、やみ献金をどうするかという点が最大の問題かというふうに思います。  さらに一、二点つけ加えますと、本法案には出ておりませんけれども政党が政策立案能力を高めるということが今期待されているわけですが、もしそうであるならば、来年当初から採用されます、実行されます政策秘書というものは、政党の政策立案能力の向上に使われるべきでありまして、個人秘書というよりも、政党がシンクタンク機能を持つときの有力な人材源として使うことが望ましいのではないか、かように思います。  もう一点は、区割りに関しましてですが、区割りというのは実は人口動態、生活の実際に即したものでつくられることが必要なわけですが、現時点では人口比が平等であるといたしましても、将来的には人口変動が起きます。通常、人口の変化というのはS字曲線を描いて変化すると言われておりますが、それが増加時の数なのか、減少時の数なのかという点を見きわめる必要がございます。あるいは、人口比が一対二未満におさまらないときには、必ずしも行政区にこだわらずに生活空間を重視すべきではなかろうか。そのためには、国勢調査の統計区データやメッシュデータなどをもっと利用すべきであるというふうに考えます。そういう意味で、人口統計学者や経済地理学者などの意見を聞くことが必要かと思います。  以上、速やかな合意に向けましての感想と提言を申し上げます。(拍手
  112. 石井一

    石井委員長 曽根教授の公述は終わりました。  次に、スタンフォード大学フーバー研究所シニアリサーチャーの片岡鐵哉公述人お願いいたします。
  113. 片岡鐵哉

    ○片岡公述人 片岡鐵哉でございます。  石井委員長、それから御出席国会議員先生方各位、きょうは国会公聴会にお呼びにあずかりまして、私は大変名誉なことだと思っております。  フーバー研究所と申しますのは、スタンフォード大学の中にあります政策研究のシンクタンクでございまして、私の同僚にはシュルツ元国務長官とかミルトン・フリードマン博士とか、そういう人がおります。要するに、ブルッキングス研究所の共和党版とお思いになればよろしいんじゃないかと思います。  私は海外生活が長いんですが、一九八〇年ですか、ソ連によるアフガニスタン侵略が起きましてから、日本の外交について非常に心配するようになりまして、時には夜眠られないことがあるぐらいでございます。幸いにして、ことしの七月の選挙日本の体制が変わり始めたので、一挙にこれを完結させていただきたい。そのために、私はこの機会を使って、海外におります日本市民の一人としまして、私の判断を述べさせていただきたいと思います。  私の証言は簡単でございまして、これは政治改革の核心部分である選挙法に重点を置きます。私の論点と申しますのは、本国会提出されている二つの選挙法改正案のうち、自由民主党の法案が細川内閣提案の法案より、よりすぐれているということであります。これは選挙法についてであります。  今、日本が直面している改革は、政治浄化だけではありません。政治浄化はもちろん改革のうちに含まれますが、一番大事なのは新しい体制の選択です。既に崩壊しつつある一九五五年体制にかわって、いかなる内政、外交の体制を樹立するかが問題なのです。経済大国にとってかわる体制としては、政治大国以外に選択はないというのが私の判断です。そして、政治大国を日本の目標とするならば、政権交代が可能な二大政党政治が不可欠であります。いわゆる自民独裁はもちろんだめです。同時に、細川総理がおっしゃっているような、ゆっくりとした多党制度というのも危険です、これは後で説明申し上げますが。政党は二つだけに限ることが焦眉の課題でございます。  そのためにこそ、政府も野党も小選挙制度法案に導入したはずです。小選挙区制が新しい体制の基盤であります。これと並立している比例代表制は、自、社、公、民、共産という一九五五年体制を温存するものであります。ですから、二つの制度が並立する枠の中で小選挙区の数が多ければ多いほどよろしい、これが私の判断でございます。ほかの法案につきましても、この体制を変えるという観点から判断をすべきであると私は思います。我々は古い体制ときっぱり決別しなければなりません。そして、一刻を急いで政治大国に脱皮しなければならないと私は思います。  では、何ゆえに小選挙区制と二大政党政治政治大国に不可欠なのでしょうか。まずこの命題を証明させていただきます。この問いに答えるには、なぜ一九五五年体制が脆弱だったのか、その原因を知る必要があります。負けた原因を知らないで勝つことはできません。一九五五年体制の欠陥については、政治汚職が原因だとする意見がありますが、これは汚職、金権政治、派閥政治が欠陥であり、これを直せばおおむね現状維持でよいとする意見でございます。しかし、この意見は間違っております。汚職だけで政治体制が崩壊することはありません。内閣が崩壊することはあっても、体制が崩れるというようなことはありません。しかし、これが今まさに起きているわけです。また、汚職だけが問題ならば、なぜ七月の選挙で汚職と関係のない社会党が大敗を喫したのでしょうか。  汚職と金権体質は、もちろん旧体制の欠陥であり、これは政治改革がこれにこたえなければいけません。しかし、旧体制の最も重大な欠陥は、外交的に余りにも内向きであったことであります。外の世界は、冷戦の終えんとソ連の崩壊で驚天動地の変化を遂げているのに、日本だけが一九五五年体制と経済大国主義に綿々とこだわっていました。そこに湾岸戦争が起きたことで、日米間の摩擦が一挙に頂点に達したのであります。このたびの選挙で、クリントン大統領は反自民党選挙干渉まがいのことを東京でなさっていましたが、あれが日本の内と外とのずれがあるというあかしてございます。日本がこのまま現状に固執すれば、国家の存亡につながる危機に直面するであろうことは、私は予測できると思います。  ここではさらに続きまして、日本の体制の欠陥について、私の考察を述べさせていただきます。  戦後日本の建国の父に当たる吉田茂にとって、一九五五年体制と申しますのは経済大国という国是を追求する手段でございました。敗戦でひしがれた国家を再建するために、日本アメリカの勢力圏に入り、世界政治の表舞台は避けて専ら経済力を養うべきだと吉田は考えたのであります。これは、立派な経国の理論であったわけであります。彼はれっきとした帝国主義者でございまして、平和主義者ではありませんでした。ただ悲しいことに、米国に依存する安全保障体制を正当化するに当たって、吉田は平和憲法を利用しました。この憲法の理念が教条化され、ひとり歩きを始めたときに、日本は動脈硬化に陥ったのであります。  一九五五年体制というのは、占領の間に育った革新勢力が非武装中立の政策をとったことに起源がございます。革新側が安保条約に反対をしたものですから、これを抑制するために、そして日本を国際共産主義の脅威から守るために、保守勢力は保守合同を行って、いわゆる一党支配の体制を築いたのであります。しかし同時に、革新側が反米、護憲の政策をとったことで、日本は海外派兵、地域的集団安全保障の義務を免れて、国内経済の発展に集中することが可能でございました。  この体制とアメリカとの摩擦が始まったのは、ソ連がアフガニスタンを侵略し、レーガン政権が登場してからのことであります。日本は経済大国として大成功する一方、アメリカ世界の警察官としての仕事を重荷と感じるようになりました。そこで、軍事と貿易の両面において、秩序の維持に対する日本の貢献あるいは重荷の分担を要求するようになりました。それに対して日本政府は、総合安全保障という概念で対応することにしたのであります。これは、経済大国の現状をおおむね維持しながら日本の国際貢献を増大することをねらったものでありましたから、必然的に、財政的資源を負担して警察官を援助する、そういうことになったわけであります。私の判断ですが、例えばレーガン政権によるいわゆる悪魔の帝国との戦いは、実は日本の財政援助があってこそ可能だったのであろうと私は思っております。  それほどの貢献をした日本だったのですが、軍事的な貢献を避けたことが理由で、国際秩序の切り盛りには参加せず、パッシブに、受け身に安全保障を金で買うというのが実情でありました。これが総合安全保障の欠陥だったのであります。  そして、この欠陥を暴露することになったのが、まずは一九八〇年代の後半に起きたバブル現象です。これについては、大蔵省と経済企画庁が政策の誤りを認めていますが、なぜそれほど無理なかじ取りをしたのかについての説明はございません。私の判断では、このバブル、それから現在我々が苦しんでおりますこの苦境ですが、これはプラザ合意以降のG7の協調の過程で、日本の政府が米国の圧力に振り回されたのが原因だと私は思っております。しかし、経済大国主義の外交が本当に破綻したのは、湾岸戦争のときにおいてでございます。もうこれについては、今さら私がここで詳しく説明する必要はないと思います。  G7協調と湾岸戦争における日本の失態の原因は、自分の国を守るために分相応の義務を果たすことを回避し、そのかわりにお金を払うという政策であります。これが負い目になって、言うべきことを言わない体質になったと私は思っております。経済大国として、武力による恫喝なしに生き延びるには、人一倍の政治的な知恵が必要なのにもかかわらず、日本政治性を喪失し、外交を忘れたと言えます。これは、言ってみれば金権外交と言ってよろしいかと思います。そうやっているうちに日本は矮小化し、退化したと言えます。さらに、国内の政治腐敗も外交の腐敗が原因だとさえ私は主張してはばかりません。これは武力以前の問題です。政治の問題です。  では、日本はどうすればよいのでしょうか。私は、これから数年の間に日米間にかなりの危機が来る可能性があると思っております。それは、現在のアメリカのクリントン政権、これは今十一カ月目になりましたが、就任してからのアメリカの情勢をごらんになっていれば、どなたでも危惧を持たれるはずだと私は思います。ボスニア、ソマリア、ハイチ等で、アメリカ世界秩序を守ることを拒絶しているわけです。これらの一つ一つの事件が起きるたびに、これはアメリカの国家の安全保障と関係がないということで後退しているわけです。これは、二、三年前には起こり得なかったことなんです。先日はソマリアで、アメリカ兵の死体がソマリア市民によって引きずり回されたことで、アメリカ人の世論が急に、もううちに帰ろうというふうにぐらっと変わったのでありますが、こういうことは一、二年前には絶対考えられなかったことであります。  それから、ただいまクリントン大統領は、北米自由貿易協定というものを通過させるために、票が足りなくて非常に苦労しておるのでありますが、それもあってか非常におかしなレトリックを使うようになりまして、それによりますと、アメリカがNAFTAをつくってメキシコを取り込まないと日本がとりますよ、こういう一種の日本脅威論を売っているのでありますが、大統領がああいうことをやりますと、それをまねする人間が出てくるものでございまして、私はまた日米の関係が一回り悪くなるんではないかというふうに、非常に心配しておるのであります。  とにかく、アメリカがそういうふうになってきているということをぜひとも頭の中に入れないと、私はこの政治改革議論は進めていけないと思っています。これは、PKOとかPKFのことではございません。国連の常任理事国になれとかそういうことでもございません、必ずしも。これらは本当は枝葉のことでありまして、一番大事なのは、日本に強い政治をつくることであります。これが外交の基盤です。一たん緩急の際に、迅速果敢で合理的な動きができるような体制をつくっていただきたい。今をおいてほかにございません。  政治大国の外交には、内閣総理大臣の権限を強化することが不可欠であります。ところが現代、戦後の日本は、憲法で許されている、合法的に許されている内閣総理大臣の権限を、一九五五年体制という、これは憲法にない制度ですが、これによってそいでいる。内閣総理大臣の憲法で許されている権限を、政治制度で弱くしているというのが実情でございます。ですから、政治を改めることによって政治の中央集権化を行い、普通の国になる必要があるというのが私の主張でございます。  今までのように、首相と院政の二重構造はもちろんだめです。また、自民党の派閥と複数の野党に権力が分散され、多数決を数の暴力と誹謗し、政府が強行採決や単独採決を恐れる余り満場一致のコンセンサスを至上命令とし、野党の言うなりになる体制も通用しません。牛歩戦術と国対での与野党のなれ合いとは決別してください。これでは日本は地獄を見ることになると思います。どうしてもこのコンセンサス方式を廃止して、多数決で合理的に政策を決める制度をここでお選び願いたい。  一人区の小選挙区制のもとで二大政党が争い、多数決で世論を集約し、統一することが大事でございます。ばらばらになっている世論を集約することで政府は強くなります。民主主義の政治では、世論を背景にすることが政治力の源泉になります。一本の矢は折ることができますが、三本を束ねれば折れません。  多数決では死に票が出るという議論が、けさからここでたびたび開陳されました。この議論は、私はためにする議論で、真実ではないと思うのです。死に票が出るという議論というのは、要するに、国民は四年に一回ですか、総選挙があったときに投票をして、それで後はおしまい、はい、さようなら、そういう態度をとれば、野党に入れた票は死に票と見ることができるかもしれませんけれども野党というのは外交にとって非常に大事な存在なんです。  例えば一九五五年体制のもとで、これは敗戦直後のことでございまして、日本は今よりももっと弱い政府があったわけなんですが、その当時、吉田茂が社会党を使うことによってアメリカの再軍備の要求をはねつける、こういう離れわざをやっているのですが、野党というのはああいうふうに使うのがやり方なんです。どこの国でも、野党を使わないで外交をしようとする国はございません。例えばエリツィン大統領の場合は、この間野党を軍隊をもって鎮圧するということはしていますけれども、その直後に日本に来たエリツィン氏は、やはりあの反対派を使って、だから北方領土は返しませんよ、こういうふうに言うわけなんです。こういう野党の使い方というものは、死に票ではございません。こういう野党の使い方をしなかったら外交はできないのです。  民主主義の国で、特に日本のように武力を背景とせずに大きな強い国家、アメリカ、ロシアと対抗していくためには、我々は世論を喚起して、世論を背景にしなければ強い外交はできないのです。そのためには、どうしても国会で賛成、反対と、二つの立場国民に開陳して、議論をしてみせて、国民をその議論の中に巻き込んで、そして野党を使った外交をすること、これをやらない限りには、日本はいつまでたっても強力な諸国家の圧力に押されて、まともな外交はできないと思っております。  それから、ちょっと今時間になりましたが、最後に一つお願いしたいことがございます。細川先生は、ゆっくりした多党制度ということをおっしゃっていまして、これは恐らく日本新党が真ん中になって、左の方にリベラル、右の方に保守党を置いて、細川先生の日本新党が真ん中でキャスチングボートを握って、あるときは右に、あるときは左にやろうということだろうと思うのですが、これは、一九五五年体制ができるまでの数年の間、日本で経験して非常に苦しんだことがございます。当時も吉田茂の自由党と、それから重光葵あるいは鳩山一郎の指揮するもう一つの保守党と、それから社会党と三つございまして、社会党が右についたり左についたりすることで、日本は当時、バカヤロー解散、抜き打ち解散なんていうのをやって、必死になって安定政権をつくろうとしたのですけれども、不可能でございました。結局、仕方がないので自由党と民主党が一緒になって社会党を締め出すということになったのであります。  細川首相が、ここまで政治改革を推進してこられながら、この時点で一九五五年体制の前夜にお戻りになろうということを考えておられるのであれば、これは非常に時代錯誤で、私は嘆かわしいことこの上ないと思います。総理、どうかこのゆったりした多党制度というのは……(「穏健だよ」と呼ぶ者あり)穏健ですか。穏健な多党制度は、私は穏健だと思いません。無責任な政党政治をつくることになります。どうか、これだけはおあきらめくださるようお願いしたいと思います。  では、ちょっと時間が過ぎましたけれども、どうも。(拍手
  114. 石井一

    石井委員長 片岡鐵哉公述人意見陳述は終わりました。大変率直でユニークな御発言、ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  115. 石井一

    石井委員長 これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大畠章宏君。
  116. 大畠章宏

    ○大畠委員 日本社会党の大畠章宏でございます。きょうは、それぞれ大変お忙しい中、四人の公述人皆さんに都合をつけていただきまして、この委員会に出席いただきまして、大変ありがとうございます。心から御礼を申し上げたいと思います。  時間が短いということで、早速それぞれの皆さんに御質問をさせていただきたいと思います。  山岸連合会長には大変いろいろ示唆に富んだ、これからの論議における非常に参考になる御意見を賜りました。非常に私自身、このそれぞれの御意見については賛同する内容が多いわけでありますので、これについての御質問はちょっと控えさせていただきますが、ちょっと触れられておりません、いわゆる政治腐敗という、国民の観点からいうと、政治にお金がかかる、お金がかかるからお金が入ってくる、そしてそれを使う、そういうところのお金の流れが非常に不透明だというのが、私は国民皆さんが非常に政治に対する不信感を持っていらっしゃる一つの大きな因子だと考えております。そういうことから、この政治資金の流れというものの透明化を図るためには、あるいは確保するためにはどういうことが必要なのか。ちょっと漠然としているかもしれませんけれども、山岸さんの方からこの件についての御意見を、お考えをいただきたいと思います。  以上であります。
  117. 山岸章

    ○山岸公述人 私の考えとしては、その金額一万円を超えるものは全部オープンにするというような、大胆な改革をやらなければいけないと思います。もう一つは、政党等に対する献金も個人献金をもっと奨励して、それも特定の銀行預金口座を通じて入金をするという、そういうやり方が必要じゃないでしょうか。  私が聞いている限りでは、民間政治臨調の分析では、現在の政治資金の透明度は三%と言われております。これをどう一〇〇%に持っていくか、ひとつ十分御検討いただきたいということで期待をしております。     〔委員長退席、前田委員長代理着席〕
  118. 大畠章宏

    ○大畠委員 ありがとうございました。その他にもいろいろございますが、また御示唆に富んだ御提言がございますので、これをこれからの審議の糧にしたいと思います。  次に、産経新聞社の箱崎さんにお尋ねします。  いろいろとこれまでの御経験からの御意見がございました。企業献金についていろいろな御意見がございました。その御意見は御意見として拝聴させていただきますが、今も山岸連合会長にお話を伺ったのですが、国民の視点から見て、相変わらずゼネコン疑惑の問題が大きく報道されております。まだまだ出てくるんじゃないかという。これが、一つの今日の政治に対する国民の信頼が失墜した原因となっておりますけれども、このゼネコン疑惑等々をベースとした政治腐敗を防止するためにどうしたらいいかという観点からの御意見がなかったものですから、その件についてはどのように考えておられるか、お伺いしたいと思います。
  119. 箱崎道朗

    ○箱崎公述人 ゼネコン問題は、幾ら違反しても大した罰則がないというところに原因があります。それで、役人も談合を前提にした行政を進めています。談合を前提にした行政というのは、五十二万とか三万とか言われるその事業者の安定を第一に考えるというふうに、そこから出発しているわけです。あれは、私たちは完全競争を求めて、また、ゼネコンの談合に参加したならば、英国などでは二年間はあらゆる公共事業から締め出すというふうなことが行われているんですが、日本では四カ月が最大です。その四カ月というのは、一つの談合から次の談合をしてくるまで大体そのくらいの時間はどうしてもかかるわけです。  それでもう一つ、行政がぴしっと対応するということもありますけれども自民党与党も何ら今まで、長いことこの問題についてほとんど提案をなしていないというのは、我々には理解できないことであると思います。それで、社会党から出ている大臣も抽象的なお話をしますが、何らこの問題に重要なステップを置かない。そういう問題が、やはりこの問題の解決をおくらしていると思います。
  120. 大畠章宏

    ○大畠委員 ありがとうございました。  その次に、慶応大学の方から曽根教授がおいででございますが、今日の政治というものあるいは選挙制度等々を非常に理論的に、緻密な分析をされた御見解を賜りました。  その御見解に対するということよりも、ちょっと別な視点からお伺いしたいと思うのですが、ゼネコン疑惑を発端として、日本政治国民からの信頼というのが非常に失墜していますが、その一つの原因が、いわゆる政策決定の透明化が非常にない、どこでその政策が決定されているのかよくわからない、何かこうごじょごじょっとなって、天の声で決まっちゃったりなんかする。そういうことが政治に対する不信感を呼んでおるものと思いますが、この政策決定のシステムの透明化という観点から、何か曽根教授の方でお考えがありましたら、お伺いしたいと思います。
  121. 曽根泰教

    ○曽根公述人 原則的に、ゼネコンの問題を申し上げますと、談合のことは、これは独禁法上の問題と考えております。  それから、政策決定において、特に分権化、あるいは地方に権限を移譲せよという議論がありますけれども、現在の首長さんの権限及びそれに対するチェック機能は甚だしく弱いということが一般的に言えるのだろうと思います。その政策決定上の問題と、先ほどから問題ございます企業献金の場合ですね、二つの要素がございます。それは、企業献金がもし効果があったとして、政策決定に影響が及んだとするならば、これは贈賄になるわけでして、もし効果がなければどうなるかというと、今度は株主に対して背任になるという、現実的にはここの問題があります。  それから、もっと大きな点で申し上げますと、日本の経済におけるキャッシュの取引、現金取引というものがまだまだ相当部分残っております。このキャッシュ、三十三兆ぐらいでしょうか、正確な数はわかりませんけれども、そのうちのかなりの部分が、実は日常生活に必要な現金の比率というのは三分の一ぐらいでいいとか、あるいはもっと少なくてもいいと言われているのですが、依然キャッシュを使わざるを得ない取引が残っていることに、これは一つ政治だけではございませんで、経済全体をゆがませている問題があるというふうに理解しております。
  122. 大畠章宏

    ○大畠委員 ありがとうございました。  スタンフォード大学の片岡研究員の方からも、いろいろ日米関係の歴史的な背景を踏まえた考察等々、大変示唆に富んだ御意見も賜りました。  本来ですと御質問をしなければならないのですが、ちょっと時間がございませんので要望だけを申し上げたいと思うのですが、非常に日本の外交面で御心配されている、アメリカにおっても非常に日本が心配だというお話がございました。細川政権が誕生し、スタッフも一生懸命お願いしているのですが、御心配ということであれば、ぜひ日本に来て、実際にその御経験からのいろいろなアドバイスをいただければと思っております。  本来ですと御質問しなければなりませんが、時間でございますので、四人の方々の御意見に対して心から御礼を申し上げながら、何としても今国会政治改革法案成立させる、そういう決意を申し上げながら、御礼の言葉にかえたいと思います。ありがとうございました。
  123. 前田武志

    ○前田委員長代理 次に、豊田潤多郎君。
  124. 豊田潤多郎

    ○豊田委員 新生党の豊田潤多郎でございます。持ち時間が極めて短うございますので、要点を絞りまして御質問をさせていただきたいと思います。  まず、議席配分と比例代表選挙の単位、これは政府案また自民党案大きく異なる、しかも、かつ極めて重要な問題ではないかと思っております。その点について、少し詳しくお尋ねさせていただきたいと思います。  曽根公述人の方から、まさに我々政府案、また与党が主張しておりますとおりの御説明があったと私は理解いたしましたのですが、二百七十五の妥協案は特に比例の意義を損なわない、むしろ都道府県単位の方が比例の意味をなくすということで、中選挙区のむしろそれは延長線上にあるのだという御指摘がありました。私は、本当にそのとおりであるというふうに思っております。  自民党比例代表を加味するということを主張しておきながら、この都道府県別の選挙単位を導入する、しかもその数が百七十一ということは、極めて比例の意味をなくしてしまっているのではないか、このように思うわけでございますが、曽根公述人の御意見につきまして、山岸公述人のお話では、選挙の単位につきまして、都道府県と全国の間をとるような形になりますが、ブロック制が妥当ではないかという御意見がございました。これはそれなりに意味のあるものという御説明でございましたけれども、その曽根公述人の御意見に対する山岸公述人の御意見をちょっとお伺いできればというふうに思います。山岸公述人、よろしくお願いします。
  125. 山岸章

    ○山岸公述人 私も、曽根先生がおっしゃるように、全国一本で与野党の合意ができるならば、それは一番いいと思っております。それはなかなか難しいということになれば、これはやはり政治的選択の問題として次善の策を考えなきゃいけないのだろう、こういう観点から申し上げました。
  126. 豊田潤多郎

    ○豊田委員 そういたしますと、次に、定数とその配分のところで、山岸公述人与野党で歩み寄るようにということで具体的に、特に小選挙区部分二百五十、三百、歩み寄ればその間の数字になるというようなことになろうかと思いますが、選挙の単位につきましては、ブロック制という明度な、間をとってということの御指摘がございました。いま一度具体的に、もし定数配分につきまして御意見を聞かせていただければ大変ありがたいのですが、いかがでしょうか。
  127. 山岸章

    ○山岸公述人 これは非常に難しい問題でありまして、いずれにしても私がはっきり言えることは、自民党案の三百でもまとまるまい、それから政府原案の二百五十でもまとまるまい。これは、横から見ているとそう見えます。あとは、だから与野党で英知を結集していただいて結論を出していただければよいと思います。特に、社会党さんが絶対二百五十で譲らないというふうにおっしゃっているし、自民党さんが三百で譲らないと言っている。そこのところをもう一歩踏み込んで、お互い結論を出すための決断をしてもらいたいというのが趣旨でございます。
  128. 豊田潤多郎

    ○豊田委員 どうもありがとうございます。  もう瞬く間に時間がたちまして、まことに申しわけないのですが、一応今の御意見で、定数配分それから選挙の単位ということにつきましては、与野党間歩み寄りをして、できるだけ合意で、話し合いでいい結論になるようにという御指摘であろうと理解させていただきます。私もそうなることを心から願っておるような次第でございます。  最後に一言。片岡公述人のお話で、お答えはこれは必要ございませんけれども、お話の趣旨、力強い政治大国ということで、非常によくわかるお話でございましたのですが、結論として、自民党の案がすぐれているというところに結びつく御説明が余りなかったように思います。現在の政府案でも、十分その片岡さんの御指摘の御期待に沿えるものではないかというふうに思っておりますが、詳しい御説明は結構でございます。私の意見を述べさせていただきます。  それからもう一点、これは箱崎公述人の御意見でございますが、ちょっと私、異論がございますのは、私自身が官僚といいますか役所の出身でありまして、二十年近く大蔵省に勤務しておりまして、今回初当選で新生党で出てまいりましたのですが、御指摘の中に、企業献金を行わなくなると企業の発言力、財界の地位が低下するであろう、これを喜ぶのが官僚である、これは官僚がヘゲモニーをとれるようになるからだというくだりがございました。  私は二点、異論がございまして、まず私の実感としまして、二十年近くの大蔵省の経験で、官僚がヘゲモニーをとるために喜んで仕事をしているということは毛頭ございません。少なくとも私は、そのような仕事のやり方をしてきたとは思っておりませんので、これは私としては大変不本意な御発言ではないかなというふうに思います。  それから、済みません、もう一つ。企業献金を行わなくなると企業の発言力、財界の地位が低下するというのも、これもむしろ逆に、今のような時代でございましたら、企業献金を行わない方が、堂々と本来の業務である企業としての利潤の追求なり企業としての仕事をしていただく、これがむしろある意味で本当に国際的にも発言力を増す、あるいは財界の地位を高めることになるのではないか、このように私は思うわけでございますが、時間の関係もございます。  最後に箱崎公述人、箱崎さんのまた御意見もあろうかと思います。一言それをお聞かせいただいて、質問を終わりたいと思います。     〔前田委員長代理退席、委員長着席〕
  129. 箱崎道朗

    ○箱崎公述人 私は、官僚が途中でやめて入ってこられる、政界に参加されるというのは、それはいわゆる官僚の勢力拡大運動ではないと思いますから、大いに歓迎します。  それで、あとは企業が献金をしないとやはりどうしても、要するにあの人たちは非常に遠慮深いですよ。だから、お金を出しているとだれそれに会うということも自然にやりますけれども、幹事長になかなか会えないとか閣僚になかなか会えない、遠慮する。そして、遠慮しながら足が遠のいて声が反映しない、そういうようなことだと思います。
  130. 豊田潤多郎

    ○豊田委員 一応時間が参りましたので、私からの質問はこれで終わります。四人の公述人の方、大変ありがとうございました。
  131. 石井一

    石井委員長 次に、太田昭宏君。
  132. 太田昭宏

    太田(昭)委員 公明党の太田昭宏でございます。  早速ですが、先ほど曽根先生から、三百と二百五十は原理の対決ではないというお話をいただきました。私もそういうふうに実は思っております。  今回のこの委員会、もう百時間近くなっているんですが、その中で自民党方々から哲学とか理念ということを随分聞いたわけで、三百、百七十一、そして府県別単位の比例代表制というようなこと、また議院内閣制、参議院との総合的な考え方、こういうものの中できちっとした政権の担い手を選ぶという観点での衆議院制度がいいんだという、それが理念、哲学だということを何回もお聞きをしたわけなんですが、私は、要するに比例代表という部分が補完という位置なのか、それとも比例代表ということで積極的な位置づけを持つのかということが、一つの争点として大事な部分であろうというふうに思っております。哲学というならば、千変万化するような世相に対して私たちがどういう知恵を出すか、考えるかということが私は知恵だというふうに、また哲学だというふうに思っておりますけれども、そういう意味では、絶対に動かないというようなこと自体が私は哲学とか理念ではないかというふうに考えております。  私は、きょうは、違いを示すというよりも十分歩み寄りがあるんだというようなことで、その中での比例代表部分をもう一度大事な点であるということを強調したいと思いますが、第一に、これほどの価値観の多様する現在、多様な民意を吸収するにはやはり比例代表部分を積極的に使わなくてはいけない。山岸会長のもとで、私、商業労連の方なんかにお会いしますと、非常に柔軟な思考をしている、またいろいろな考え方を吸収して組織の運営をしているという感じがするんですが、そういうような多様な民意というものが、ますます価値観が多様化しているということを吸収するということは非常に大事になってくる。  また、現在のこの二百五十、二百五十でも、民意の集約という点では、これは民意の集約は私はできるという観点を持っておりますし、また逆に、第一党に有利過ぎるというような結果すら出てくるような二百五十、二百五十のバランスではないかというふうに思っております。また、この間も佐々木東大教授がおっしゃっておりましたが、鋭く意見を集約し過ぎる、ゆがみが出てくる。確かに衆議院でのゆがみは、参議院に行った場合には、私はゆがみが修正できないということを考えなくてはいけないというふうに思っております。  そういう意味で、三百、百七十一、一票制というのは、かなり力ずくの二大政党制志向かなという感じを私は持っているわけなんですが、その辺の比例代表制の大切さ、民意の反映ということについて、山岸会長の方からの所見を、数というようなことではなくて結構ですから、比例代表部分というのがかなり多いということが非常に大事だというふうに私は考えておりますが、いかがでしょうか。
  133. 山岸章

    ○山岸公述人 連合全体の意見としましても、大体今言われたような立場で積極的に比例代表の位置づけを行っておりまして、私も同感でございます。
  134. 太田昭宏

    太田(昭)委員 曽根先生が先ほど、ヨーロッパ関係比例代表というのは人種とか宗教あるいは言語の違いというものがあったということで、それが一つの基盤になっているというお話をいただいたんですが、今の社会というのは非常に、今価値観の多様化なんという言葉をぱっと使えば確かにそんな感じもするんですが、逆に価値観が多様化しているように見えながら、実際は根本的なところで画一化されてきているというような、そういうような時代状況の認識をする方もいらっしゃるかと思います。  果たして政党政党の分け目というものをつくるほどの価値観の多様化というようなものがあるのか、それとも画一化されてきているのか、あるいは中道化現象というのかというようなことの中で、この選択の多様性というのと現代社会というものの認識、そういうものについて曽根先生の御意見をいただきたいと思います。
  135. 曽根泰教

    ○曽根公述人 先ほど申し上げました政党というのは何かというところに関係することでございますけれども政党というのは、かつてはかなり重たいイデオロギーをしょい込んでいないと立派な政党とは言えない。つまり組織、資金それから党員という規模の大きなものが立派な政党というふに考えられていたわけですけれども、私自身は、政党の行き先はむしろ国民の選択の多様性に対応する形でつくり変えられ、あるいは再編があるんだろうというふうに理解しております。その点では、政党がプロジェクト、一つの課題を終了したら、その政党は解散してまた新しい政党ができても、あるいは新しいグループが糾合してもよろしいという理解をしております。これが最も極端な政党の理解ですが。  そういう点で、先ほど申し上げましたように、政党というのは日本では個人後援会中心というのが片方にあり、もう片方の近代政党というのは規律のある組織政党という二分法がありますけれども、多分、将来求めるときにはその中間、つまり国民の選択の多様性がありながら、かつ責任政府、責任内閣を担える政党であるという、その間が多分求められる姿であって、日本はそれをつくるためにこれからいろいろなアイデアを出さなければならない、そういう時期だろうと私は了解しております。
  136. 太田昭宏

    太田(昭)委員 企業献金につきまして、やはりこの委員会で企業献金は悪で個人献金ならば善なのかという、そういうような論議が随分あって、私はさまざまな人の話を聞きながら、私たちはかねてから企業献金は禁止ということを主張してきたんですが、それなりに政党には歴史と、よって立つ基盤があるんだということも私もわかりますし、また節度のあるという、そういうものであるならば、そういうことに限って認めるというようなこともあっていいのではないかというようなことも、また私は一理あるものだというふうに感じておりましたが、必ずしもこの企業献金と節度のあるものについては、クロというよりも、私は少なくともグレーというような感じがしたわけでございます。  しかし、先ほどのお話からもありますように、今回の政治改革というものが汚職の続発ということをどうするかということに一番源がある。そしてまた、いろいろな制度をつくっても、どうせ政治家は守らないで抜け道を探すんじゃないかというような、そういう不信感というのが物すごく今国民の中にあるわけですね。そういう意味からいっても、私はこの際、自民党の方たちの出している案の中で、確かに節度があるかもしれない。しかし、資金調達団体というところに企業からのお金が入るというシステムをつくる。それなら、それだけを論じれば確かに一理あるかもしれないという論理に立ったとしても、そこに一つの穴があいたということによって、さまざまな意味でもそこでまた抜け穴というものをつくってしまうのじゃないかというようなことを、国民は非常に心配しているというようなことまで考えて、私たちは今回の国民に対しての責任というものを果たしていかなくてはならないんではないか、私はそんなふうに思っているわけなんです。  そういう意味では、一たん反省の意味を込めて、私は、この企業献金は政党のみに絞っていくということが必要だというふうに考えているわけなんです。先ほど箱崎公述人の方からお話もありましたが、企業献金は悪ではないという話なんですが、私は、政党というところに企業献金を出すということをすれば、それだけでかなりの存在感が出てくるという判断をしているのですが、いかがでしょうか。
  137. 箱崎道朗

    ○箱崎公述人 何も、適正な規模であって、あるいはまた出入りが非常に透明であれば、個人に出しても差し支えないと思います。そして、余り党に集中するということは、党のまあ言ってみれば独裁的な権力を強めて、反主流派とかそういうふうな力を振るえないようなことになりかねないのではないかと思います。  それで最後にちょっと、今回の政治改革は、その汚職、腐敗という面もありますが、もうちょっと柔軟な政策決定ができるようにすることが、改革のねらいの一つであると思います。
  138. 太田昭宏

    太田(昭)委員 終わります。
  139. 石井一

    石井委員長 次に、茂木敏充君。
  140. 茂木敏充

    ○茂木委員 さきがけ日本新党の茂木敏充です。本日は、公述人皆さんには大変貴重な御意見、ありがとうございます。  きょうは、時間が限られておりますのでボードは使いません。そのかわり、二点に絞りまして、決断の時期と歩み寄りの方法について御意見を伺いたいと思います。  まず、この法案決断の時期でございますが、先月の十四日に始まりましたこの委員会での審議、既に審議時間が八十時間を超え、中央公聴会地方公聴会での審議時間を入れますと、約百十七時間の審議時間に達する予定でございます。これは、前回の政治改革関連法案の百七時間、そしてその前の消費税関連法案の九十六時間三十分、これを優に超えまして歴代第三位、すなわち三十五年の日米安保条約、そして四十六年の沖縄復帰特別措置法に続く、歴代第三位の長時間審議となるわけです。  確かに重要な問題ですので、十分な議論が必要だったわけですが、審議への参加者の一人といたしまして、この委員会では既にあらゆる角度からの議論が出尽くしているように私には思われます。まあごく一部には、まだ議論が足りない、こうおっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんが、これは政治改革を片手間で聞いている一部の議員の御意見ではないかな、こんな気さえいたします。  きょうで中央公聴会が終わりまして、あす、あさってが地方公聴会の日程というわけでございますが、その間でも今までの多くの議論を踏まえまして交渉は進められるわけですし、地方公聴会の方でよほどのハプニングがない限り、私は、今週末にもトップ会談、そして採決を含めまして決断の時期ではないかなと、このように思っておりますが、まず山岸会長にこの点について改めて、簡潔で結構ですので、御意見をいただきたいと思います。
  141. 山岸章

    ○山岸公述人 私は、全く同じ意見でございまして、先ほどもここだけは強調しなきゃいかぬと思いまして、まあ自分としてはゴシックで強調したつもりでございます。
  142. 茂木敏充

    ○茂木委員 次に、片岡公述人に同じ質問でございますが、片岡公述人は、本年七月号の「月刊自由民主」という大変立派な月刊誌に「政治改革を延期できるか」という、大変示唆に富んだ論文を寄せておられます。また、きょうの御意見を伺いますと、私の耳には、多数決、多数決という言葉が大変耳に残っているわけでございますが、早急な決断につきまして御意見をいただきたいと思います。
  143. 片岡鐵哉

    ○片岡公述人 私が「自由民主」で述べたことは、その時点でそう考えておったのでありますけれども、もしも先生がきょうここで、政府と自由民主党との間の妥協成立させないで、この法案をつぶしてしまうことの方がよろしいのかという御質問であるならば、私は、我々が一番恐れなければいけないことは、ここまで来て何も通さないこと、これが一番危険だと思います。恐らく、三回やってつぶしたら、今度はこれを手にかける政治家というのは出てこないだろうと思うんです。日本国民は非常に失意をして、政治から離間するだろうと思います。それから、国際社会でも、日本の政府はこれはだめだという意見が主流になってきて、それはあらゆる形で日本の国益を失うものになると思います。  それが私のお答えでございます。
  144. 茂木敏充

    ○茂木委員 そういうことで、この法案はどうしてもつぶせない。そういうことになってきますと、次に歩み寄りの方法というのが大変重要になってくると思います。既に二十項目以上の調整項目が提案されているわけでございますが、歩み寄りの方法といたしまして、そのすべてについて足して二で割る、こういうやり方もあるかと思いますが、しかし私は、大きなくくりの分野ごとに基本方向、この法案として、政治改革としての基本方向を定めて、その基本方向に沿って政府案自民党案の調整を行う、これが妥当な方向であろうと思っています。  そこで、大きな分野ごとでございますが、まず議員定数及び選挙区、次に選挙活動、第三に政治資金の順で、基本方向を一括してお伺いしたいと思います。  まず、議員定数と選挙区の問題でございますが、これは後で曽根公述人にお聞きしたいと思っておりますが、この中には、議員定数とその配分、比例区の集計単位、それから投票方式、三%条項、こういった六項目が含まれてくると思いますが、この分野に関しまして、私は、小選挙区と比例区選挙という二つの選挙を組み合わせた並立制の特徴が最大限に発揮される、このことが基本であると考えております。  例えば、比例選挙についてもう少し詳しく申し上げますと、比例選挙の特徴が生きるという意味におきまして、比例の定数を幾つにするか、こういう問題以上に、比例区の単位と投票方式が比例選挙としてどうあるべきか、このことが重要なんではないかなと考えております。逆の言い方をしますと、比例の定数配分についてはより柔軟に対応すべきである、このようにも考えております。  次に、選挙活動に関する分野でございますが、この点につきましては、箱崎公述人の御意見がなかったのでお聞きしたいと思っているんですが、この中には、戸別訪問運動期間、それから選挙違反の公民権停止の強化等々五項目が含まれるわけでございますが、この選挙活動に関しましては、民主主義の原点に戻りまして、より自由を基本に、ただし違反については厳しく対応する、これが基本的な方向ではないかなと考えております。  最後に、政治資金の問題について、山岸公述人に締めくくりにお尋ねしたいと思いますが、この中には、企業・団体献金の取り扱い、政治資金パーティーの基準、それから個人献金の税制上の優遇措置、公的助成等々十項目が含まれるわけでございますが、この政治資金の問題については、政財官の立場ではなくて国民立場からしますと、より透明に、そしてより厳しくを基本としながら、その一方で、より幅広く集められる新たな手段を開いていく、これが今回の政治改革の基本方向ではないかな、このように考えております。  これらをまとめまして、選挙制度については曽根公述人に、選挙活動については箱崎公述人に、そして最後に政治資金について山岸公述人に、締めくくりの御意見をいただきたいと思います。
  145. 曽根泰教

    ○曽根公述人 先ほど既に申し上げましたことと重複いたしますけれども選挙区に関しましては二百七十五、二百二十五という組み合わせ、これは妥協可能な線であるだろうというふうに思います。  そして集計の単位は、比例に関しましては全国もしくはブロックということは考えられます。私は、さっき三%阻止条項を使った全国と申し上げましたけれども、ブロックの場合に阻止条項が必要なのかどうかは、もう一度計算し直す必要がございます。  それから、投票方式に関しましては、選択の多様性ということで、有権者側から見た場合を考慮いたしまして、これは二票制ということを提案いたします。
  146. 箱崎道朗

    ○箱崎公述人 私は経済部出身で、政治部でないものですから、余りその辺のことは正しい答えをできる自信はありません。それで控えさせていただきますが、罰則についてだけは厳しくやるべきだと思います。
  147. 山岸章

    ○山岸公述人 私は、今言われましたように、政治資金の取り扱いについては、より透明に、より厳しく、より幅広くという基本原則でいくということは、同じ考えてあります。ただし、企業・団体献金は可及的速やかに全廃することが好ましいという考え方です。
  148. 茂木敏充

    ○茂木委員 きょうも十分ですが、私のいただきました時間は終わりになりますので、ここで私の質問を終わりにさせていただきます。本日は、どうもありがとうございました。
  149. 石井一

    石井委員長 柳田稔君。
  150. 柳田稔

    ○柳田委員 きょうは、四万、大変お忙しいときにおいでいただきまして、いろいろな御意見を賜りましてありがとうございました。中でも、野党を使った外交という、まだ与党になってなりたてなもので、大変いい御意見をいただきまして、本当にありがとうございました。これからフルに活用させていただければと思う次第であります。  まず、選挙制度についてお尋ねをしたいのでありますが、曽根公述人お願いしたいと思うのであります。  我々与党選挙制度は、小選挙区と比例を、まあ並立といいますか、ともにくっつけたという感じの選挙制度です、二票制ですから。ところが、自民党さんの場合は一票制。まあ選挙区の比例の範囲がありますけれども、これをもし、ちょっとあれですけれども、全国とした場合に考えてもらうと、小選挙区と比例全国、我々与党案も小選挙区と比例全国なんですが、一票制、二票制の違いがありまして、多分比例部分の結果というのが大変大きく変わるのではないかと私は思うのです。また、この比例の範囲を都道府県にすると、さらにその違いが顕著に出てくるであろう。これが、同じ並立制であっても大分違う点ではないかなと思っております。  我々も、党内にありまして、この一票制、二票制、いろいろ議論したわけでありますが、結果的にこの一票制を採用するというのは、憲法四十三条の「全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」というところにひっかかるんだろうということで、二票制というふうに踏み切ったわけでありますが、教授は、この一票制、憲法問題、どのような御判断をお持ちでございましょうか。     〔委員長退席、三原委員長代理着席〕
  151. 曽根泰教

    ○曽根公述人 私は、憲法学者ではございませんので、厳密な憲法解釈上の疑義に関しては正確なことは申し上げられませんけれども、一票制で起きる問題というのは、比例の議席をとるために小選挙区のところに立候補しなければならないという党はかなり出てきてしまう。それで、本来的に小選挙区が持っていた、小選挙区はある選挙区の代表であり、その代表というのは、通常、過半数には至らないまでも、相当の多数を代表するというところが小選挙区の重要な点だったわけです。それが、多数の党が小選挙区に立候補するということによって、当選ラインが非常に引き下げられてしまいまして、結果的には中選挙区で一五%ぐらいで当選するのと同じような結果が生まれてしまう。そういう意味で、小選挙区本来が持つ意味が失われる可能性がある、それが一票制の欠陥であるだろうというふうに思います。  それから、二票制に関しましては、先ほど選択の多様性ということで申し上げましたので、繰り返しません。
  152. 柳田稔

    ○柳田委員 どうもありがとうございました。  次に、箱崎公述人に、企業献金のことについて質問させていただきます。  私自身も、企業献金がすべて悪だとは思っていません。ただ、今までいろいろな疑獄事件が起きました。そのほとんどは企業献金である。これがまあ表の金か裏の金か問いませんけれども、多くが企業献金であったということは御認識をいただいているかと思うのであります。我々としても、この企業献金の中の悪の部分をどう排除していこうか、いろいろと考えたのでありますけれども、結果的にいいものと悪いもの、線を引くことは難しいのですね、これは。となれば、やはり国民の声を聞いて、この際禁止をすべきだろう、そういうふうにも思いました。  ただ、やはり政治をする上にはそれなりのコストもかかりますので、ならば、透明性を高めて、党が企業献金を受けるというふうな道を残したわけでありますけれども、私自身としては、将来的には企業献金はなくなる方向に持っていきたいなと思っておるのでありますけれども、御意見はいかがでございましょうか。
  153. 箱崎道朗

    ○箱崎公述人 党に出したものが個人の政治家に行く過程が、もう一つ不明瞭だったような気がします。それでまた、党であろうと個人であろうと、透明性を確保して、また罰則を非常に厳しくすればいいんじゃないかと思います。  それでもまだ、さらにスキャンダルが起こるということは避けられ得ないかもしれませんが、政治というのは、多少のスキャンダルがあっても、実際に政治課題をどんどん実行していく方が、ずっと国民にとったはいいと思います。
  154. 柳田稔

    ○柳田委員 今までのことでありますけれども、何回も何回も、最近はもうその間隔まで短くなってどんどん出てくるのですよね。それが国民政治に対する不信感を増長してしまったのです。それは、自民党政権のころもいろいろおやりになったと私は思います。しかし、それでもこれほどきわまったということは、やはり除去していかなければならないのではないか。我々、そういうふうに議論をここで通じてやってきたわけであります。  もう一つ、先ほど曽根公述人の方からもあったのですが、企業というのは営利を追求するのが本質ですね。つまり、何かに投資しよう、物とか金を出すときには、利益を追求しなければならないのが企業である。もし、いい企業献金といいますか、これはいい企業献金だからどこかに出しましたと。しかし、そうしますと、今度は株主に対する背任行為ですよね、これは。利益を追求せずに、何もないけれども、まあ頑張れよといって金を出しました、済みません、これはもうけにはなりませんというのは、株主に対して大変な背任行為になるのではないだろうかと、そういうふうにも思います。  最近法律が改正になりまして、株主の訴訟もできやすくなってまいりまして、こういうやはり政治家に対する企業献金、これからその方向からも相当厳しい目が株主からも起こってくるのではないだろうかというもろもろを考えますと、この際、いいものもわかりますけれども、禁止をするというのがいい線ではないかと思うのですが、もう一回、よろしくお願いします。
  155. 箱崎道朗

    ○箱崎公述人 これは言い忘れたのですけれども、株主総会で採決して企業献金を認めてもらうことが前提になります。  それで、さっき言い忘れましたけれども、ゼネコンが談合し、悪いことをしているであろうというのは、大体マスコミも国民もみんな、政治家皆さんもずっとわかっていたわけです。それがなぜ摘発できなかったかというと、五五年体制で余り自民党をいじめちゃ悪いというふうな自制が働いたんだと思います。
  156. 柳田稔

    ○柳田委員 株主総会の件も出ましたけれども日本における株式会社というのは、ほとんどが株主総会をやっているわけではないのですね。一人の人とか親族が株式を全部持っていて、自分たちで全部決められるというところもあるのですよ。そこまで考えた場合には、大変いい悪いという線が引きづらいし、間違っていますよと、株主の了承も得ましたよというのが大変言いづらいのではないかというのが我々の考えなんであります。  もう私に与えられた時間はそうないのでありますけれども、山岸公述人にお聞きをしたいのであります。  もう法案も大詰めを迎えまして、機も熟した、さらには条件もそろった、そろそろやらなければならないのではないか。国会の日程を考えますと、もう来週初めがタイムリミットだろうというふうにも思っております。きょう、実は参議院の先生と話をしたのでありますが、大分我々衆議院と温度差も違いまして、一カ月で本当にやってくれるのだろうかという気もいたしております。  ということで、何としてもこの法案をなし遂げなければならない、しかしできなかったらさらに怖いことにもなる、そういうふうなことも思っております。山岸公述人の、何としても政治改革を今やれということで、一言御意見を賜れればと思います。
  157. 山岸章

    ○山岸公述人 来週早々が大山であることは間違いないと思います。そのためにも、今週中にトップ会談を含めまして事実上の与野党の合意を形成するために、より一層の御尽力をいただきたい。私たちは、与党野党の区別なく、政治改革実現するという方を全面的に応援するつもりでございます。
  158. 柳田稔

    ○柳田委員 参議院も次に控えておるようでありますので、一生懸命頑張ることをお約束して、お礼を申し上げて終わります。ありがとうございました。
  159. 三原朝彦

    ○三原委員長代理 額賀福志郎君。
  160. 額賀福志郎

    ○額賀委員 四人の公述人皆さん方には、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがたく、参考になる御意見がたくさんございました。  順次御質問をさせていただきたいと思っております。まず最初に、山岸公述人に御質問をいたしたいと思います。  その前に、いろいろいきさつがあったようでありますが、連合会長三選目をお迎えになりまして、まことにおめでとうございます。労働界の重鎮として、今後もいろいろと御活躍あらんことをお願いをしたいと思います。  今、経済状況は、こんなところへ来るほど余裕があるとも思えるような状況ではありませんが、この際、これまでの延長線上でここに引っ張り出されたのだろうと思いますけれども、まず、先ほど来からお話がありますように、政治改革特別委員会でもこの政治改革をめぐって論議をしてまいりまして、大体問題点はこういうところかなということが浮き彫りにされた。山岸会長は、今週が大詰めであるということでございます。そこで問題は、山岸会長もおっしゃっておるように、総定数だとかあるいは公的助成だとか、いろいろと与野党の接点を探っていかなければならないということでございます。私は、この問題を考える場合に、今の連立政権がどういう経過をたどってできたかという原点に返ってもらうことが大切であるというふうに思うのであります。  まず、新聞あるいは皆さんがおっしゃっている考え方は、自民党一党支配を打破するのだ、そのためにはそれまでの選挙で公約をしてきた政策や理念を捨てても、それが最大の政治改革なんだということで、多くのマスコミや知識人から野合政権だとまで言われながら、連立政権をつくったわけであります。そうすると、その原点に立ち戻れば、ここまでの審議でほとんど相違点というものは、百八十度違っているわけではないということでありますから、これは連立政権の皆さん方が、私は連立政権をつくったときの原点に返って、何が国家国民のために必要なのか、何が新しい政治を生み出すのかということに返っていけば、これは自民党の案にすり寄っていくことぐらい、こんな小さな考え方はないのであります。私は原点に返って、やはり自民党の総定数にいたせば、これは小選挙区三百ぐらい受け入れてこの政治改革の骨格をきちっとしていくということは、枝葉末節のことであるというふうに考えるのが、私は与党政権の当然のことではないかな、それが大きな時代の流れにマッチする判断になるのではないかというふうに思うわけであります。  しかも、なおかつその連立政権の第一党は社会党であります。山岸会長も、二百五十、二百五十と言っているのは社会党であると言っているわけであります。そうすると、これではみんなは納得ができないと言っているわけでありますから、社会党を血は水より濃いと言って兄弟分のようにこれまで応援をしてきた山岸会長が、英断を持って社会党をリードされたらどうですか。それが、新しい時代をつくる山岸会長三選の役目ではないのかというふうに私は考えるわけであります。山岸会長のお考えを聞かせてください。
  161. 山岸章

    ○山岸公述人 御案内のように、社会党は党議決定で、二百五十という政府原案の定数は絶対死守するという非常に強力な方針をとっております。そういう流れの中で、連合会長とはいえ社会党員の一員である私が、こういう権威ある場所で、やはり社会党にも二百五十にこだわるな、与野党一致点を見出すために一歩踏み込めと言うことは、これは清水の舞台から飛びおりるぐらいの発言でございまして、大変なリスクを伴う発言でございますが、それはやはり言わなきゃいかぬ、こう思って私は言っているわけです。これは大変なことなんです。  それと同じことを、私は自民党皆さんにもお願いしたい。三百にこだわってはやはりだめ。二百七十五がいいかどうか、それは皆さんでやってもらえばいいが、社会党も一歩踏み込むべきだし、それから自民党も踏み込むべきだ、そうしないと与野党の合意点はつくれないのじゃないか、そういう危機感を持って私は申し上げております。
  162. 額賀福志郎

    ○額賀委員 私は、山岸会長が全電通のリーダーであるころ、新聞記者としていろいろとおつき合いをさせてもらったことがありますが、労使交渉をしているときは、大体労働側が企業側の譲歩を迫るわけであります。権力構造からいってそうでありますね。政府、政権を握っているのは与党であります。そういうことからいいますと、野党立場の主張を、これは権力を持っている与党が懐を深くして、そして新しい政治をつくるという、与党皆さん方自民党政治を打破するために主義主張を捨てて連立政権をつくったと同じような形でやれば、こんなことは簡単にできるわけであります。そこのところは考えてください。
  163. 山岸章

    ○山岸公述人 私が連合会長として先ほど申し上げた公述というのは、やはり大変な決断を要する発言なんです。それは額賀さんにも重く受けとめてもらいたい。  連合は、二年有余にわたる論議の結果、意思統一しているのは併用制なんです。並立制というのは連合は決めていないのです。しかし、国会審議経過を見ていきますと、今我々が併用制などというようなことを主張したのではまさにぶち壊しになる。やはりこれは、五年間もかかった政治改革ですから、なし遂げなければいかぬ。そのためには、組合から反発がきても、あるいは内部手続上、会長はちょっと先行し過ぎじゃないかと言われても、これは、与野党で合意している並立制については我々もこれを支持するという態度を打ち出さなきゃいけない、こう思って申し上げているのです。  しかも、連合と協力協調の関係にある社会、民社、それから公明、社民連、これは社会党はちょっと違いますが、二百五十で頑張るというのだから、それを、いや、もう少し踏み込んでやはり一致点を見出すために柔軟な姿勢をとったらどうですかということをお願いするわけだから、これは大変なことでありまして、もうこれ以上は何ぼ問われても言えません。
  164. 額賀福志郎

    ○額賀委員 先ほどの御説明で、与野党ともども一歩、二歩前進してきた、ホップ、ステップまで来たということでありますから、最後のジャンプに当たりまして実力者の山岸会長の御指導があって、社会党がより一層柔軟になって自民党に歩み寄ってくることを期待をいたしたいというふうに思います。  続きまして、箱崎公述人にお伺いをいたします。  官僚制打破というか、そういう話がございました。自由民主党一党支配、長い政権時代も、私は官僚政治の色彩が強かったというふうに認識をいたしております。そういう中で、今度の政治改革をしていく一つの理由が、政党中心の選挙の割合が多くなることによって、政治家が本来の仕事に従事する時間が多くなって勉強もし、金を集めに奔走するというようなこともなくなって、それがある意味では政党政治の本来の姿を取り戻し、官僚政治の打破にもつながるのかなという感じがありまして、私は一つの意義を見出しているわけでありますが、今度連立政権になったら、じゃ官僚主義というものが少なくなっていくんだろうかということになると、これどうも首をかしげざるを得ないね。  最近、まだ発足以来時間がたっておりませんが、大体ほかの官公庁の皆さん方も、今までは言いたいことは自民党に言つてきまして、自民党が大蔵省、財政官庁に対してああだこうだ、いろいろと注文をつけたり、文句を言ったりして国民の要望を実現してきたというのが今までの姿だったのかなと、それが政官業癒着の一つの原因であるというふうにも指摘されているわけでございますけれども、今実際的な政策立案者というのは、今の連立政権の中心をなしているのは官僚でしょう。自由民主党時代よりもそれは強まっているのが、本当の姿ではないのかなという感じがするわけでございます。  まして基本政策は、連立政権をつくるためにとにかくしゃにむに一致点を見出したというだけでありまして、まだ整合性を持って各党がきちっとしているわけではない。これは、社会党や各党の皆さん方も、連立政権の合意事項については従っていく、しかし党の姿勢は違うんだということでありますから、そういう状況においては、なおさらそういう官僚制というものがますます強まっていくんではないかという危険性を感じます。箱崎公述人の感想、印象を聞かしてください。
  165. 箱崎道朗

    ○箱崎公述人 額賀先生のおっしゃるように、私も現政権においては自民党よりも官僚主導であると考えております。税制改革では特に、大蔵省とそれから小沢氏との話し合いがスムーズに行われて、それが中心の下書きになっているように大体見受けられます。  それでもう一つは、実際問題として連立政権がどういう形で官僚制を打破していくかというメルクマールとしては、やはり国会での政府委員を排除をするというようなもの、それから審議官というものが、政治家の行政に対する役割の増大というものがあると思いますが、その辺に注目しております。
  166. 額賀福志郎

    ○額賀委員 ありがとうございました。  曽根先生にお尋ねをしたいと思います。  曽根先生が、政党のイメージというお話をされました。選挙というのは個人中心なのか政党中心なのかというふうな御定義だったんだろうと思うんでありますが、現在の公職選挙法では個人が寄附をいただいて、個人が活動をすることになっていると思います。政党は、確認団体として車を用意したりポスターを用意したりすることが、公選法の範囲の中でできているというふうに思っております。  政党政治の原点でありますが、与野党ともども政党本位の政治、政策本位の政治というふうに言っておりますけれども、私は、とりあえず国民皆さん方にわかりやすくするために、政党本位というふうに言っている場合が多いんではないかというふうに思います。それは比重、バランスの問題でありまして、例えば経済政策の問題でも、消費者だとか生活者重視というのが一つのイメージ、スローガン的に語られますが、生産者でない消費者、生活者はないわけでありまして、ただ、そのバランスを今後どういうふうに今までとは違った形にしていこうかという、政策の重点が幾らか変わりますよという意味なんだろうというふうに思います。  そういう流れからいきますと、政党本位の政治といっても、やはりこれは、政党というのは同じ理念、主義主張、政策を持つ者が自主的に集まって一つの任意団体をつくって、それが国民と国家意思形成のパイプ役を果たすということが政党政治の根幹なんだろうと思いますから、私は、今までは余りにも中選挙区制におきましては、選挙活動もそれから政治活動も個人中心主義であったから、そのバランスをもうちょっと政党本位にすることによって、能率的にあるいはまたいろいろな意味で透明性を持つ、公平さを保つ、そういった形が今我々が出している法案の本来の趣旨であって、基本的な政党政治それから政治活動の基本は、個人がみずからの活動と見識を持って政治に参加をしていくことが本当の姿なのかなというふうに思っておるのでありますが、曽根先生の御意見を聞かせていただければありがたいと思っております。
  167. 曽根泰教

    ○曽根公述人 この問題は大変重要な問題で、先ほどの公述のときに触れておりませんので、もう一度この点明らかにしたいと思いますが、実は私が理解しております日本選挙とそれから議会との関係ということで申し上げれば、従来の中選挙区下における日本選挙は、言ってみれば自分党の戦いだったと思います。自分党の戦いということにおいては、例えて言えばアメリカ型の選挙が行われる、一たびそれが議会に入りますとイギリス型の議会がそれに乗っている。これは、しばしばこういうふうに言われるわけですね。日本政治家は公約のうそをつく、公約をしているけれども実行しないじゃないか。それは、自分党の願望を選挙のときに述べているわけですから、それはうそじゃありません。ところが、議会に入ってきて党議拘束があり、イギリスよりも党議拘束は強いかもしれません。そういう点で、審議に入る前に党議拘束がかかっているような状態国会であるならば、これは自分党を貫くことはできないわけであります。     〔三原委員長代理退席、委員長着席〕  それで、改革をするのは二通りしかない。つまり、アメリカ選挙アメリカ型議会を乗せるというのが一つ方法であります。ただし、これは議院内閣制と抵触いたします。もう一つは、イギリス型選挙にイギリス型国会を乗せる。これは議院内閣制と一貫するわけでありますけれども、ただし、従来型の個人後援会を中心とする選挙というものがどこまで、選択の多様性ということで関係することでございますけれども、選択が多様でありながらかつ政党の役割が増大できるか、あるいは政策の一貫性を貫ぬくことができるかという非常に重要な問題でありまして、もし選挙国会との関係がすっきりした形になれば、政治家がつかなくてもいい公約を言わなくなる、あるいはうそと言われずに済むことが可能になるだろうというふうに思うわけです。  それからもう一つアメリカ型議会ということで申し上げれば、この政治改革委員会は大変重要な委員会だと思います。それで、しかも議院内閣制あるいは議会の役割が、非常に重視される代表的な機会であると思います。  と申しますのは、もし国民投票によって、単にある案あるいはある意見がいいということで、国会が始まったときに採決をするのであるならば、議会は必要ないわけです。だけれども委員会において長時間、百時間を超える間議論を重ねていくうちに問題点が浮き彫りになり、かつ妥協点が探れるということ、それこそが議院内閣制あるいは議会制の持っている意味でありまして、単に選挙が終わった段階で、国民の意思はここだからそれでもう実行せよという、一種の国民投票の考え方というものと異なる方向を探っているわけですから、そういう意味選挙国会との関係、今後国会改革ということも多分問題になると思いますが、この二つのことをどう結びつけるか、それが政治改革の重要な課題の一つだと私は理解しております。
  168. 額賀福志郎

    ○額賀委員 大変御示唆に富むお話を伺いましたが、イギリスの場合は物すごく政党が組織化をされておりますね。日本の場合は個人後援会でありますから、今度の政治改革法案というのは、恐らく政党の組織化を、個人後援会から政党の組織化を図っていくという形で、アメリカ、英国の折衷案というか、お互いのいいところを取り入れながら、そういった政党政治の形をつくっていく第一歩なのかなという感じがするわけであります。今後とも参考にさせていただいて、政治活動、政党政治の一層の発展に努力をさせていただきたいと思っております。  最後に、片岡先生にお願いというか御質問をいたしますが、多数決がいいではないかということで、これがマスコミの皆さん国民皆さん方に、この政治改革法案、この際、与党連立の方が多数でありますから、内容はともかくとして、審議日数が来たら多数決で採決をしろというふうに受け取られてもこれはいけませんので、ちょっと話をさせていただきたいと思うのでありますが、多数決はやはり民主主義の原理であると思います。しかしながら、我々は、ドイツの歴史で苦い思いも聞かされたり知ったりしているわけですね。ワイマール体制後ヒトラー体制になっていったのは、やはり民主的な手法でああいう独裁体制が成り立っていったわけでありますから、多数決が、多数を持っている者がいつも正しいとは限らない。そこにはやはり政党、政策の理念、理念があるかないかということでありますね。  本当にこの政治改革選挙制度をやることによってすばらしい政治体制が生まれるのか生まれないのか。そこに、今の与党が出している選挙制度なりあるいは政党助成法なりが完全無欠ではないとみずから言っておるわけですから、私はもっともっとこれはいろいろ問題がある。例えば二百五十、二百五十なんというのは、山岸会長もこんなものでまとまるはずがないと言っているように、足して二で割ったようなやり方が、そういうものが多数決で、これがいかにも国会の意思のように決められたんではたまらない、そういうことを申し上げておかなければならないというふうに考えるわけでございます。  その意味では、自民党の方が、小選挙区制を多目にして国民の意思をきっちりと集約をして、こういう激動期、変革期をてきぱきと乗り切っていくためにはこの制度以外はないということの方が、まあしっかりとした理念とか考え方が入っているわけでございまして、この点は我々も国民皆さん方に誤解がないように、そこのところを片岡先生から一言お言葉をいただいて、僕の質問を終わりたいと思います。
  169. 片岡鐵哉

    ○片岡公述人 私が申し上げておりました多数決というのは、これは一九五五年体制の核心でありましたコンセンサス方式というものと対照しての多数決でございます。  コンセンサス方式というのは、御存じのように、これは六〇年安保のときに生まれてきた政策決定の方式でございまして、あのときは、岸首相が安保条約改定条約を見事に通過させたにもかかわらず、そのやり方がいけない、強行採決がいけないということで詰め腹を切らされまして、それ以来、与党が多数を持っていて多数決を強行することが可能であるにもかかわらず、それはいけないということになって、それが日本の外交の一番の欠陥だったわけです。これをなくしてくださいというのが私のお願いでございまして、細かく考えてみると、現在はまだ半分ぐらい過去の体制の中で動いているわけですから、もちろん自民党にも細川与党の方にも、国のためを思うすべての議員に協力をしていただいて、この体制と決別をしてください、こう申し上げているのが私の趣旨でございます。
  170. 額賀福志郎

    ○額賀委員 ありがとうございました。
  171. 石井一

    石井委員長 次に、北川正恭君。
  172. 北川正恭

    ○北川委員 きょうは、公述人先生方、お忙しい中を貴重な御意見等をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。  企業・団体献金の是非について少しお伺いをいたしたいと思います。  かつてアメリカ生活の経験があられた外務省の方でございましたが、自分の御子息がアメリカの私立の高等学校に入られた。入られてすぐに、寄附を学校側から言われた。で、授業料とか入学金を納めたじゃないですかと、こう言われたんですね。それで、どうしてですかと尋ねたところ、アメリカは多様な国家でございますから、やはり教育は全部受ける権利があるという前提で、あなたは年収がこれぐらいございますから、当然これだけの寄附をしていただきたい、こういうことだったそうです。翻って日本の場合に、例えば私立の高等学校なり大学へ入って入学金も納め、授業料も納めて、学校の運営がやれていかないから、できないから寄附をしてください、これは実はなかなか日本では通用しない議論だと思うのです。したがって、アメリカ的発想でいきますと、寄附というのはボランティアじゃなしにデューティーの色彩、義務の色彩が大変強い社会体制になっているんだと、私はそう思います。  そういった中で、果たして個人献金という形で見事に今回の政府提案の法案が採用されて機能するかというと、相当な危惧をすべき点が私は日本の社会風土の中に存在をしているんだ、このようにまず理解をいたしておるわけでございまして、そのあたりは、今山岸会長さん、相当踏み込んで妥協をしろとおっしゃいましたが、政治資金の方もどうぞ妥協していただいて、スムーズに早く成案が得られるようにした方がいいのではなかろうかそんな気がいたします。  もう一つは、さまざまなやみ献金とか裏金とか、そういったことは当然厳しく罰せられるべきでありますが、日本社会を構成するさまざまな存在がありますが、その中で、やはり企業も社会的な存在であろうと思うのですね。そうしますと、企業メセナと言われる、例えば文化等に企業は積極的に貢献をしていくべきだということには御異論がないんではないか、私はそう思います。そうしますと、企業もこれからは、法人格という人格を持たれている以上は、それなりに社会的な責任を果たす、利益の追求だけでなしに当然社会的な存在として堂々たる、批判を受けない、そして国を、地域社会を、人々をリードするような存在になられるべきだ、こう思います。  企業メセナがよくて、そして政治、民主主義の根幹にかかわる政党政治なりあるいは議員に対してそれをしてはならないということ自体が、ひょっとすると民主主義の否定につながっていくのかなという私は実は危険性を感じますから、我々も企業献金悪という風潮を蔓延させた責任は当然感じなければいけませんけれども、しかしだからといって、あつものに懲りてなますを吹くようなことがあってはいけないのではなかろうかという観点から、僕は皆さん方に御意見をお聞かせをいただきたい、こう思います。  さらに、政党助成が国庫から支出されるということ、すなわち公権力の介入が、人々の代表で構成される国権の最高機関としての議員に対して、ある種財政的な支援ということになれば公権力の介入と、心配し過ぎかもしれませんが、私は相当なおそれがあろうと思うわけでございまして、それを緩める意味におきましても、ここは企業献金は当然認めた方が、よりバランスを考えた場合にはいいのではなかろうか、そういう気がしてなりません。  そこで、確かに政府提案の政治資金の方は、政党に限るというようなお話でございますが、政党と個人の管理団体との行き来は自由になっております。さらに、管理団体あるいはそれぞれの後援団体との行き来が自由になっていると僕は考えております。したがって、そのあたりの不透明性こそが、実は私はより大きな問題ではないのかという気がいたします。自由民主党の資金調達団体は二つに限っております。そして、団体間の行き来を禁止いたしている。こういう前提に立つならば、やはり限度額の設定さらに透明性の確保という観点から、これはぜひ私は皆さん方に考えていただきたい問題だ、そのように強く思っているところでございます。  そういう全体の流れを見まして、企業には商法なりあるいは会社法なりあるいは監査なり、さまざまなチェック機構がございますが、個人の場合は実はほとんどないということになろうと思います。アメリカのPACの例をとるまでもなく、企業が名前を変えて個人献金というような形にした場合に、果たしてそれが本当の個人献金と言えるかどうかということも考えていきますと、ここは本当に慎重に判断をするに値する課題だ、このように考えるわけでございますが、どうぞ四人の公述人先生方から、企業献金に対する御見解をいま一度お聞かせをいただきたいと存じます。
  173. 山岸章

    ○山岸公述人 私は、先ほども申し上げたように、企業献金、団体献金に対する国民不信感は物すごく強いと思いますね。確かに御指摘のように、しからば個人献金制度というのは本当に定着するかというと、そう簡単だと思いませんね。そういう意味においては、やはり税法上の措置も大分考えなければいかぬでしょうし、それから、国民に対する政治啓蒙活動も相当徹底しなければ難しいと思います。  しかし、いずれにしましても、汚職スキャンダルというのは、現実の問題として企業献金というものがやはり大きな原因になっておるわけですから、我々としてはやはり企業献金、団体献金というものはできるだけ速やかに廃止されることが好ましい。そして、政府原案も個人に対する企業献金はやめようということになっておりますが、制度的に政党に対する企業献金を廃止する問題については、五年後に見直そうということになっていますから、今御指摘されたような点も含めて、五年後の見直しへ向けて、私は前向きの突っ込んだ御論議を国会においてやっていただくことを期待をしたい、そう思っております。     〔委員長退席、前田委員長代理着席〕
  174. 箱崎道朗

    ○箱崎公述人 個人献金が果たしてどの程度集まるのか、これは非常に疑問だと思います。  それで、現在の控除率は三〇%でしたね。あれではほとんど有効な対策にはならないんじゃないか。それで、じゃ五〇%に引き上げるというと、それは非常に政治にとって都合がよ過ぎるというふうに思います。それで、企業の政治献金について世の中に不信感があることは確かですが、皆さんあるいは言論機関が、そういうものに対して透明度を高めるとか、一定の限度、節度を持ったものにすれば、それは企業社会の言い分を通すという、代表になるというふうなことでもって理解されると思います。  それで、企業献金も要らない、個人献金は集まらない、そうしたらみんな財政におんぶしようというようなわけかどうか。財政におんぶすれば、必ず統制というか官僚の発言権が高まるのは目に見えています。そういうものをぜひともどこかで払拭しないと、非常に怖い事態になると思います。
  175. 曽根泰教

    ○曽根公述人 この問題に関しまして、私本来の立場からいえば、政治献金に関しましてもそれから政治活動にしても、原則規制緩和、自由化の方向を立場としてはとっておるんですけれども、規制緩和ということで言えば、もう一つは裏側に公開性というものが担保されないと、透明性というものが担保されないと規制緩和はできないだろうというふうに思います。  ところが、政治献金に関しまして、自由化の論者としても反論できない二点がございます。一点目は、腐敗という実態があります。それからもう一つは、個人の寄附が現実としては集まりにくい、この二つが制約条件として非常に厳しく出てきているわけです。それで、公的助成なりあるいは企業献金なりということをどうコントロールするかというものになってしまうわけです。  もう一つ大きな点から申し上げておきますと、先ほど学校の例が出てまいりました。私自身、大学の寄附を集める役割ではないので経験ございませんけれども、学会の方で、国際学会を開くために寄附を集める、企業を回ったら、今もそうなんですが、最近不景気なものですから、ほとんど断られてしまう現実がございます。そうしますと、では大学だとか学会だとかという活動と政治活動に、どこに違いがあるのか。本来非営利組織である、利益を生まないという組織であるし、公的な活動をするわけですから、そこに差はないだろうということが出てくるわけです。そういう意味研究教育機関、財団、政党あるいは宗教法人その他、いわゆる非営利組織として考えられるものの会計基準を整備せよと申し上げましたのは、その理由であります。  そうしたときに、じゃ大学あるいは研究機関などと政党との違いで一番大きな問題というのは、見返りがどのぐらいあるかという問題になってしまうわけです。ですから最大の問題は、献金をしたという事実ではなくて、そのお金によって政策を買うということ、これはアメリカの場合、日本よりも厳しくその点が指摘されておりますけれども、政策をお金で買うということがあってはならない。見返りの問題というところが最大のことになるわけでして、その点幸いにしてというか、大学に寄附をいたしましてもほとんど見返りはございませんので、そういう点では非営利組織として貫徹はできると思います。  そして、この難問は、確かに政治家だけの問題ではございませんで、国民がだれのお金で、本当は自分のお金で政治を支えるというのが一番いいわけですが、だれがどう負担するかという問題を本来突きつけられているんだろうと思うんです。ですから、人のお金で人の団体に与える、そういう意味公的助成というのはややもすると自分のお金ではないという、そういう欠陥が出てくるわけでして、そういう点は本来であれば個人献金が一番いいんでしょうけれども、先ほど申し上げましたように、実態的に伴わないところがあるし、多くの国民の批判というのは、腐敗というものは企業献金あるいは企業のやみ献金から生まれるということから、まさしくリクルート事件以来の政治改革が出てきたわけですから、そこを一度断ち切るということが今回の課題であるだろう、かように思います。
  176. 片岡鐵哉

    ○片岡公述人 ちょっと私は毛色の変わった答弁をさせていただきたいと思うんですが、ここ一年来の日本のメディアの政治改革に対する扱い方を見ていますと、汚職が問題の焦点であるという意見が非常に強いんです。  私は戦後史を勉強していますものですから、これに似たようなことが前にあったのを覚えているんですが、それは、安保を通すときに、安保というのは外交問題で、安保は重い、安保は重い。恐らく山岸さんあたりもそういうことを覚えていらっしゃると思うんですけれども、そして、問題を探しているうちに、ある日、岸先生が強行採決をやられて、途端に問題が変わっちゃったんですね。問題が切りかえられて、岸を倒せということになったんですけれども、要するに、強行採決が問題になっちゃって安保の方は火がつかなかった、ちょっとそれと似たようなことが今起きているんじゃないか。  つまり、汚職、汚職といって毎日ゼネコン汚職を一面に載せている新聞がありますけれども、私に言わせると、これはちょうど安保のときと同じように、体制の変革から問題をすりかえようとするような動きがある。そういう底意があるような気がするんですが、汚職自体もちろんこれは取り締まらなきゃいけないんですが、これについては私は、細かいことについてどうのこうのと申し上げるよりは、私の態度としては、角を矯めて牛を殺すようなことはまずいんじゃないかというのが私の本音なんですね。全部お金の入り口を閉めてしまって、本当に政治ができるんだろうか。  もう私もかなりの年で、政治は随分、一生これは勉強したんですけれども政治というのはやはり性悪説でやった方がいいんじゃないかと思っています。ですから、余りに一時の熱気に浮かされて書生論で対処すると、後で困ることが起こるんではないかと私は思っております。  非常に漠然とした答えですけれども、これで勘弁していただきます。     〔前田委員長代理退席、委員長着席〕
  177. 北川正恭

    ○北川委員 私も、個人献金に移行していく、その方向性はいいと思うんです。ただ、個人の議員活動を保障するものがあった方がいいと思うんですね。例えば政党助成で国庫から縛られちゃう、あるいは政党のみに縛ったときに、例えば党官僚なるものが出てくる可能性もあります。  したがって、相対的な話として、バランスをとる意味合いでも、確かに政党に縛られる部分はあっていいんですが、やはり国民とか有権者に、その政党だけで縛られたんでは議員活動が不自由になるというようなことも、実は心配をするわけでございます。さらに政党が、もうある決まったところからどんどん入ってくるというようなことになったときに、政党自体の活動が不活発になる可能性もある。そういうふうなさまざまなことから考えて、これからいよいよ最終決断になっていくわけでございますが、ぜひそういったこともお考えをいただいて私は結論を導いていただきたいな、そんな気持ちで今、先生方に御質問を申し上げたような次第でございます。  さてそこで、先ほど私がお尋ねをしたり、あるいは前の質問者がそれぞれお話をし御答弁をいただいたんですが、実は、やみ献金とか裏献金とか言われること自体が、我々が本当に反省をしなければいけませんし、これこそ戦後、政治は経済なり、経済第一主義政策で豊かになること、豊かにすることが政治家の務めであった、国民にもその要望があったということは当然のことでございますが、そのあたりから本当に政治が、あるいは政治家が脱皮をしなければいけないんだろう、そう思います。  そうしますと、三権分立と言われる中で、司法が立法を裁くという事態が今いっぱいあるわけですけれども、私はこの三権分立からいっていささかおかしいと思いますが、それにしてもやはり我々の側も猛反省をしなければいけない、そう思います。したがって、今どなたかから、厳罰に処すというのは当然そうでありますけれども、本当言うと、刑事罰よりは行政罰的な要素を取り入れて、みずからが自浄能力を発揮して変えていくということにしなければいけないと思います。  そうしますと、政治政治家、こういった存在は有権者の皆さん国民と相対するものでありますから、私はこの際、この四法案を通すことに最大の集中をしなければいけませんが、なろうことなら、国民の本当に政治に対する、あるいは選挙に対する抜本的な意識革命を起こさなければ、ひょっとすると今度の制度改革は、まずくいくと改悪になる可能性もあると、実は私は大変心配をいたしているわけでございます。  したがいまして、この小選挙区比例並立を完成させた暁には、私は、連座制の強化、そして腐敗防止、そして罰則の強化、例えば公民権を停止する、さらに立候補制限、あるいは連座制の強化の場合には、秘書とか家族とか言わずに有権者全員に当てはめて、そして有権者の支持者の方が禁錮刑を受けられたら当然私どもも公民権は停止、これぐらいのことをしないと私はいけない、こう思っているわけでございまして、今山岸会長さんも、何かの折に、国民の意識革命こそが必要なんだという部分をおっしゃっていただいたわけですが、私は、まさにそういうことが大変重要なことになってくる、こう考えております。  この四法案は、与党野党問わず早期に結論を出す時期に来ていることは、もう全く間違いのない事実でございますが、残念ながら、それを完成すると同時に、これ並行して腐敗防止をやれなかったというのは残念に思っているわけでございますが、この四法案と連座制の強化、腐敗防止法の制定ということについて、恐縮ですが四人の公述人先生方から御所見を例えればと、このように思います。よろしくお願いいたします。
  178. 山岸章

    ○山岸公述人 私は、今先生が御指摘になりました考え方には全面的に賛成でございます。どうか、最終段階を迎えております政治改革法案の決着へ向けての与野党協議の中で、今先生から指摘されましたような連座制の強化、腐敗防止、立候補制限、罰則強化というような歯どめについて、可能な限りやはり織り込んでいただくような御尽力をお願いをしたい、こう思っております。  それから、余計なことですが、私たち連合の組合員から見ておりますと、これは与野党に対する注文なんですけれども、ゼネコンであれだけ大騒ぎになっておる。しかし国会で、従来だったらかなり今の段階では激烈な論議がなされておったであろう。にもかかわらず、今回はほとんど音なしの構えとは一体どういうことかという点の疑問がございますので……(発言する者あり)いや、私が言っているのは、政治改革法案を早く今週中に上げていただいて、次はそれと景気対策、ぜひお願いしたいと思います。
  179. 箱崎道朗

    ○箱崎公述人 私も、連座制強化とその他公民権停止、そういうふうな罰則を強化することには賛成です。しかし、小選挙区制を導入すると今までのようにはいかなくなるではないかということに期待しております。というのは、スキャンダルを出した議員というのは、かなり大物の議員でも小選挙区制では勝てないんじゃないか、そういうふうに思います。
  180. 曽根泰教

    ○曽根公述人 北川議員の御提案、全く賛成でございますけれども、解釈上一つ違うかなと思いますのは、刑事責任のかわりに行政責任とおっしゃいましたけれども、私、これは政治的責任だろうと思います。  政治的責任というのは、実はイギリスの腐敗防止法というのは、刑事訴訟法上の手続を踏まずして政治的責任を負わせるというところに特徴があるわけでして、まさしく刑事的責任と政治的責任は区別して考え、かつ政治的責任を重くするという御提案、そのとおりだと思います。
  181. 片岡鐵哉

    ○片岡公述人 私のお答えも今の箱崎さんと同じでございまして、なるべくでしたら司法の手をかりずに、政治自体が自浄の機能を働かせるのが一番よろしいんだと私は思います。  ですから、内閣の場合は汚職が起きたらそれは野党が取ってかわる、議員の場合は怒った有権者が落とす、これが一番先決の問題だと私は思います。そして、司法の手を使ったりすることは、これは第二の問題になってくるんではないかと私は思っております。これが政治の自浄の機能だと私は考えております。
  182. 北川正恭

    ○北川委員 与えられた時間もう少しあるのですが、国際貢献ということで、フーバー研究所にいらっしゃる片岡先生、五五年体制で来て、経済優先政策あるいは内向きの政策だった、こういうことだと思いますが、今度政治改革を完成させて、国際貢献に資するためのシステムとして、もう一回、いい制度というのはどういうことか、今の政府案自民党案の比較でもいいんですが、もう少し突っ込まれて、先生のお考えをお聞かせいただけたらと思います。
  183. 片岡鐵哉

    ○片岡公述人 私たち日本人が戦後頼ってきた制度というのは、冷戦の崩壊でなくなったわけなんです。それで、それが今、日本が直面している問題の事の起こりなんですが、じゃどうしたらいいかということについて、これは我々は外交を決めるに当たってはアメリカを見ざるを得ないのですが、日本の外交の基軸ということになっていまして。ところが、アメリカ大統領が今手探りで暗中模索の状態というところなんですね。  私は、軍事大国に今動くのは拙速だと思います。それ自体が日本の安全を脅かすことにもなりかねない。しかし、それだからといって、戦後の日本がやってきた外交ではとてももっていけない、日本はうまくやっていけない、そういう事態に来ており、そういう羽目に今臨んでいるんだと思います。これは非常に、はっきり言いまして苦しい立場なんです。大体、武力を背景にしない外交というのは余りあり得ないのですね、この世に。だけれども、それが日本の選択で、今の現在の時点において日本の選択からそれを外すとなると、これは日本人はかなり利口に立ち回らないことには、何といいますか、世界の大国に資金源として使われて、お金を出すだけで侮辱される。  先ほど私申しましたように、私は、現在の不況にもかなり日本の外交の拙劣さが原因になっている点があると思うのです。これは何も、アメリカに全部責任があるという話、そんな簡単な話じゃないのですけれども日本の外交が立ち回り方がうまくいっていれば、これほどのひどい経済のかじ取りをする必要はなかったんではないか。これは、湾岸戦争なんかよりももっと市井の市民の懐に響く問題で、私は最近日本に一月に一度、二月に一度も来ますが、来るたびに市民の苦しみを自分の目で見るようになりまして、これがもしも本当に企業の人員整理が始まってきたような場合に、これは先生方をおどかすわけではございませんけれども日本の有権者が本当に怒り出したときには大変なことになる、そういうふうに感じるようになってきております。  ですからなおさらのこと、外交の方に注意を払っていただきたい。日本の国の国益、これは選挙区で働いておられる先生方にとっては、時にはこれは遠いことに見えるかもしれませんけれども、もうそういう時代になってきているわけです。外で起きていることがすぐ我々の草の根の政治、生活に響いてくるような時代ですから、このことについて、合理的で迅速果敢な動きができるような政府をつくっていただきたい。それは私は、やっぱり幹事長と党の総裁を強くすることだろうと思うのです。そして世論を背景にして、これは野党も含めてですが、世論を背景にして外交をするのが現在の日本で残されたたった一つの活路ではないか。そのために、私は政治改革を推進してくださるようにお願いしているわけでございます。
  184. 北川正恭

    ○北川委員 昭和二十年代に匹敵する時期が今の時期かな。それで、そのときに吉田茂元総理が考えられたそういうレールに乗って戦後経済発展をしてきて、それが一つの破綻を来した。まさに昭和二十年代あるいは明治維新に匹敵する時期だ、このように思います。  そのために政治改革をやって、そして人々の意識を革命しながら、私たち自身も国家国民に対して責任をとる体制をどうつくるか、もう結論は出たわけでございますから、やっぱり私どももその志士の気持ちになったり、あるいは昭和二十年代の大人の世代の気持ちになってやればこんな話は必ずできる、こう信じて頑張ってやっていくことを四人の公述人の先生にお誓い申し上げて、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  185. 石井一

    石井委員長 最後に、穀田恵二君。
  186. 穀田恵二

    穀田委員 私は、日本共産党の穀田恵二です。  ついせんだって、こういうふうな記事がございまして、自治日報という新聞ですけれども、「国民政治や行政に参加することに伴う費用であると理解すれば、」民主主義コストというのは、「その負担は個々の国民が自発的に負うべきものであって、強制的な税金によって賄われるべきものではないであろう。」こういう意見がございました。  そこで、山岸公述人にお伺いしたいわけですけれども、先ほども確かに、企業献金はスキャンダルの大きな原因となっている、したがって速やかに廃止されることが望ましいと言っておられました。私もそのとおりだと思うのです。ところが、きのうもあったのですけれども、一方で企業献金は猶予するわ、公費助成はすぐやるわというのはおかしいんじゃないか、こういう意見もございました。政治家を志したのであれば、みずからの責任で資金を集めればいいじゃないかということが、これが先ほど引用しました独協大学の恒松さんの御意見でございます。そういう意味で、企業献金はやはりさっぱり、すぐ禁止すべきだということを私どもは言っています。だから、その一方で、公費助成はすぐやるわ、企業献金は残すわというあたりについての御見解を、まず最初にお伺いしたいと思います。
  187. 山岸章

    ○山岸公述人 私は、やはり政治には金が要ると思います。にもかかわらず、ガスの元栓を締めてしまったら、やはり政治は成り立たないと思います。企業・団体献金は速やかに廃止をするべきである。そして、個人献金制度というものをもっと定着、発展させるべきだと思います。そしてあとは、これは公費助成で賄うべきだという考えでございます。公費助成というのは、民主主義のコストというふうに我々は位置づけなきゃいけないのじゃないか。もちろん、その使途についてはガラス張りで一〇〇%明らかにされなければいけない、こう考えております。
  188. 穀田恵二

    穀田委員 その点、最後の方は随分意見が違うわけですけれども、先ほども言いましたように、民主主義のコストとは何なのかということなんです。  その点ではやはり、ついせんだって私どもの党でも明らかにしましたけれども、例えばゼネコンの問題や、それから政治資金のいろいろな状況を見ていますと、これは箱崎さんにお聞きしたいのですが、実は重要な組織活動の中で、例えば料亭の飲み食いだとか、さらには花を贈るだとか、それからいろいろな観劇だとか大相撲だとか宝塚だとか、そんなものまで膨大な費用として政治資金として使われている。その三分の一を民主主義のコストと言えるでしょうかね。それが一つ。  それと、箱崎氏は「月刊官界」で、「自民党政治と建設業界の公共事業をめぐる癒着、談合、ヤミ献金は徹底排除されなければならない。」こう述べておられます。私は、今本来求められておる政治改革の中でこういう問題については徹底解明が必要だ、これは論をまたないと思うのです。先ほどその点では山岸さんもおっしゃられたわけですが、その努力が不足しているということが私は今の現実だと思うのですが、その二つの点どうお考えですか。
  189. 箱崎道朗

    ○箱崎公述人 花を贈ったりすることに対する、それも持てというのは確かに問題でありまして、だから公費助成というのはだんだんに、余りそれに依存すると議員の地位が世間から軽んじられるような時代が来ると思います。だから、議員がいろいろな形でやるべきだ、集めるべきだと思います。  それから、ゼネコンではそのとおり私は思っております。
  190. 穀田恵二

    穀田委員 それでは曽根公述人にお聞きしたいと思うのですが、先生は「決定の政治経済学」という本の中で、「政治の経済学と民主主義のコスト」ということで、今の重要な問題についての御見解もなされています。そこの中で、「一般的に民主主義のコストとして考えられてきた最大のものは選挙に関する費用であろう。」こういうふうにおっしゃっています。  この点では、一定の公営化についてはなされておって、それは事実だと思うのですが、しかし、その後半でこう述べておられます。「金がかかるからそれを公営にすべきである、つまり税金でまかなうべきである、というのは議論が短絡している。」と。これは、今の日本の現実の中に、先ほど私がお話ししたような観劇の費用だとか料亭の飲み食いまで、さらにこれを三分の一に割っちゃってとにかく持てなんというのは、まさに短絡以上のものでひど過ぎるじゃないかというふうに思うのですが、その辺の御見解はいかがでしょう。
  191. 曽根泰教

    ○曽根公述人 随分昔に書いたものです。それで、今考えが変わっているかどうかということなんですが、原則的には先ほど申し上げましたように、私は個人に期待する方がいいという立場ですが、税金でそれを負担せよという根拠、これは、もう一方で腐敗ということがなくなるということとの取引関係というふうに考えるわけです。であるならば、税金を政党助成に使っても国民は納得してくれるのではないかというふうに思います。  ただし、個別政党あるいは個々の議員にとっては、支出先は余り明らかにしないような一種のつかみ金方式であるとか、あるいは一般的に申し上げまして補助金というのは足腰を弱くする、それはそのとおりだろうというふうに思います。ただし、民主主義のコストに関して国民的な合意は、だれが負担するかに関しての国民的な合意は、今の日本にはまだないというふうに私は思います。ということで、移行措置として政党助成ということを考えるという立場でございます。
  192. 穀田恵二

    穀田委員 昨日もその点議論になりまして、例えば公的助成が腐敗の担保になるだろうかということがありました。これで、昨日の公述の中ではイタリアの汚職の例も出しまして、やはりそう簡単にならないよという御発言もございました。私、同時に思うのですけれども、やはり政党の足腰というのはそれで本来的意味で正しくなくなる、堕落するということも、私も同様の見解を持っています。  時間もございませんので、先ほど公述人のお話、一番最初にありましたのは、多分「多数決原理とインテンシティー」というあたりの御意見を前に御開陳なされたように、ずっとお話しだったと思うのですけれども、私は少数意見の尊重という問題について、その点はどうしてもお聞きしたいと思うのです。  それは、今度の政府案を見ましても、御承知かと思うのですけれども、少数者が最初から排除される傾向にある。特に、足切り条項という形であります。それは、御承知のとおり三十人以上なければ比例にも出られない、一億八千万の供託金がなければだめだ、さらに三%以上の得票がなければ議席もとれない。そこで、三%で議席といいますと七、八名に相当する。もしこれが全国比例代表制だった場合は、きょうの午前中にお話がありましたけれども十五名に匹敵する、こういうものなんですね。  そうしますと、明らかに少数意見の尊重ということからしますと、これは排除して構わないという先生の御意見、例えばいろいろあると思うのですけれども、その場合でも基本的人権にかかわる、つまり参政権という基本的人権にかかわる重要な問題についてはそういうものを排除してはならないという御見解かと、私は先生の御本を読んで見たわけなんですが、その辺の御意見はいかがでしょう。
  193. 曽根泰教

    ○曽根公述人 これは選挙制度だけに限りませんで、多数決あるいはあらゆる決定ルール一般に出てくる問題です、少数者をいかに扱うか。  それで、多数決のお話が先ほどから出てまいりましたけれども、多数決は、原則としては、きょうの少数者はあしたの多数ということが成り立つケースには多数決は可能なわけです。ところが、宗教とか言語とか人種のような場合には、きょうの少数者はあしたも少数者で、世代交代、何十年か何百年かたたないとできないわけですから、そうした場合には比例代表が必要であるという、その根拠を申し上げました。  そして、足切りがあるのはどうなのかという、共通一次の足切りみたいなものですけれども、いわゆる三%条項もしくは五%条項ということは、ミニ政党、あるいは今で言えばネオナチのようなものが出てくるのをどうやって防ぐかということとも関係するわけですが、これは政党助成との関係で申し上げますと、ミニ政党あるいは超ミニ政党が助成を目指して出てくるということがございまして、候補者をたくさん集めて、供託金はかなり高くなっておりますけれども、そのようなことに関してはある程度の制限があってもよろしいんではないか。つまり、選択の多様性ということは無制限な選択の多様性ではないだろう。そして、その範囲はどこのあたりまで線を引くのか。これは大変難しい問題ですが、すべて超ミニ政党まで含めてもよろしいということには多分ならないだろうというふうに考えます。
  194. 穀田恵二

    穀田委員 一言だけ。  ただ、ドイツの場合でも、御承知のとおり五%条項はありますけれども、逆に言って、それでは排除するけれども、資金の場合は〇・五%ぐらいまで認めるという形で、それこそきょうの少数者はあすの多数者だということになりますよね。だから、そういう点では、私は足切り条項というのはまずいということを改めて言っておきたいと思うんです。  最後に、あわせて個人献金、なかなかなじまないと言いますけれども、私ども日本共産党は既にそういうことをやっておりまして、そういうことについては必ずできると思っていますし、また政党への企業献金、団体献金については直ちに禁止するという方向を改めて主張して、そのことをまた山岸さんにも実行していただくことを希望して、私の質問を終わります。
  195. 石井一

    石井委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  これにて公聴会は終了いたしました。  なお、明日から二日間、各案審査のため、委員を派遣し、全国十カ所において会議を開催いたします。  次回の委員会は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十二分散会