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1993-11-02 第128回国会 衆議院 政治改革に関する調査特別委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年十一月二日(火曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 石井  一君    理事 大島 理森君 理事 北川 正恭君    理事 野田  毅君 理事 保岡 興治君    理事 左近 正男君 理事 前田 武志君    理事 権藤 恒夫君 理事 三原 朝彦君       逢沢 一郎君    荒井 広幸君       石破  茂君    斉藤斗志二君       笹川  堯君    自見庄三郎君       津島 雄二君    西岡 武夫君       額賀福志郎君    葉梨 信行君       穂積 良行君    細田 博之君       増子 輝彦君    阿部 昭吾君       秋葉 忠利君    大畠 章宏君       堀込 征雄君    三野 優美君       吉岡 賢治君    岩浅 嘉仁君       大谷 忠雄君    岡田 克也君       実川 幸夫君    白沢 三郎君       豊田潤多郎君    吹田  愰君       赤松 正雄君    大口 善徳君       太田 昭宏君    日笠 勝之君       石田 勝之君    長浜 博行君       初村謙一郎君    前原 誠司君       茂木 敏充君    簗瀬  進君       石田 美栄君    川端 達夫君       柳田  稔君    正森 成二君       吉井 英勝君  出席政府委員         自治政務次官  冬柴 鐵三君         自治大臣官房審         議官      谷合 靖夫君         自治省行政局選         挙部長     佐野 徹治君  委員外出席者         参  考  人         (評論家)   大宅 映子君         参  考  人         (元最高裁判所         長官)     岡原 昌男君         参  考  人         (上智大学教授猪口 邦子君         参  考  人         (慶應義塾大学         教授)     小林  節君         参  考  人         (東京大学教授佐々木 毅君         自治省行政局選         挙部選挙課長  松尾 徹人君         自治省行政局選         挙部管理課長  山本信一郎君         自治省行政局選         挙部政治資金課         長       大竹 邦実君         特別委員会第二         調査室長    田中 宗孝君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月二日  辞任        補欠選任   中川 秀直君    荒井 広幸君   大畠 章宏君    吉岡 賢治君   三野 優美君    小林  守君   小沢 一郎君    岩浅 嘉仁君   岡田 克也君    豊田潤多郎君   吹田  愰君    土田 龍司君   日笠 勝之君    平田 米男君   前原 誠司君    初村謙一郎君   簗瀬  進君    石田 勝之君   柳田  稔君    石田 美栄君   正森 成二君    吉井 英勝君 同日  辞任        補欠選任   荒井 広幸君    中川 秀直君   小林  守君    三野 優美君   吉岡 賢治君    大畠 章宏君   岩浅 嘉仁君    大谷 忠雄君   土田 龍司君    吹田  愰君   豊田潤多郎君    岡田 克也君   平田 米男君    大口 善徳君   石田 勝之君    簗瀬  進君   初村謙一郎君    長浜 博行君   石田 美栄君    柳田  稔君   吉井 英勝君    正森 成二君 同日  辞任        補欠選任   大谷 忠雄君    白沢 三郎君   長浜 博行君    前原 誠司君 同日  辞任        補欠選任   白沢 三郎君    実川 幸夫君 同日  辞任        補欠選任   実川 幸夫君    小沢 一郎君     ――――――――――――― 十一月二日  小選挙制反対企業団体献金即時禁止に  関する請願岩佐恵美紹介)(第五一四号)  同(穀田恵二紹介)(第五一五号)  同(佐々木陸海紹介)(第五一六号)  同(志位和夫紹介)(第五一七号)  同(寺前巖紹介)(第五一八号)  同(中島武敏紹介)(第五一九号)  同(東中光雄紹介)(第五二〇号)  同(不破哲三紹介)(第五二一号)  同(藤田スミ紹介)(第五二二号)  同(古堅実吉紹介)(第五二三号)  同(正森成二君紹介)(第五二四号)  同(松本善明紹介)(第五二五号)  同(矢島恒夫紹介)(第五二六号)  回(山原健二郎紹介)(第五二七号)  同(吉井英勝紹介)(第五二八号)  同(岩佐恵美紹介)(第五七七号)  同(穀田恵二紹介)(第五七八号)  同(佐々木陸海紹介)(第五七九号)  同(志位和夫紹介)(第五八〇号)  同(寺前巖紹介)(第五八一号)  同(中島武敏紹介)(第五八二号)  同(東中光雄紹介)(第五八三号)  同(不破哲三紹介)(第五八四号)  同(藤田スミ紹介)(第五八五号)  同(古堅実吉紹介)(第五八六号)  同(正森成二君紹介)(第五八七号)  同(松本善明紹介)(第五八八号)  同(矢島恒夫紹介)(第五八九号)  同(山原健二郎紹介)(第五九〇号)  同(吉井英勝紹介)(第五九一号)  小選挙制反対に関する請願中島武敏紹介  )(第五二九号)  小選挙制導入反対に関する請願岩佐恵美君  紹介)(第五三〇号)  同(穀田恵二紹介)(第五三一号)  同(佐々木陸海紹介)(第五三二号)  同(志位和夫紹介)(第五三三号)  同(寺前巖紹介)(第五三四号)  同(中島武敏紹介)(第五三五号)  同(東中光雄紹介)(第五三六号)  同(不破哲三紹介)(第五三七号)  同(藤田スミ紹介)(第五三八号)  同(古堅実吉紹介)(第五三九号)  同(正森成二君紹介)(第五四〇号)  同(松本善明紹介)(第五四一号)  同(矢島恒夫紹介)(第五四二号)  同(山原健二郎紹介)(第五四三号)  同(吉井英勝紹介)(第五四四号)  同(正森成二君紹介)(第五九二号)  同(正森成二君紹介)(第六七九号)  小選挙制導入反対企業団体献金即時禁  止に関する請願岩佐恵美紹介)(第五四五  号)  同(穀田恵二紹介)(第五四六号)  同(佐々木陸海紹介)(第五四七号)  同(志位和夫紹介)(第五四八号)  同(寺前巖紹介)(第五四九号)  同(中島武敏紹介)(第五五〇号)  同(東中光雄紹介)(第五五一号)  同(不破哲三紹介)(第五五二号)  同(藤田スミ紹介)(第五五三号)  同(古堅実吉紹介)(第五五四号)  同(正森成二君紹介)(第五五五号)  同(松本善明紹介)(第五五六号)  同(矢島恒夫紹介)(第五五七号)  同(山原健二郎紹介)(第五五八号)  同(吉井英勝紹介)(第五五九号)  同(岩佐恵美紹介)(第五九三号)  同(穀田恵二紹介)(第五九四号)  同(佐々木陸海紹介)(第五九五号)  同(志位和夫紹介)(第五九六号)  同(寺前巖紹介)(第五九七号)  同(中島武敏紹介)(第五九八号)  同(東中光雄紹介)(第五九九号)  同(不破哲三紹介)(第六〇〇号)  同(藤田スミ紹介)(第六〇一号)  同(古堅実吉紹介)(第六〇二号)  同(正森成二君紹介)(第六〇三号)  同(松本善明紹介)(第六〇四号)  同(矢島恒夫紹介)(第六〇五号)  同(山原健二郎紹介)(第六〇六号)  同(吉井英勝紹介)(第六〇七号)  同(岩佐恵美紹介)(第六八〇号)  同(穀田恵二紹介)(第六八一号)  同(佐々木陸海紹介)(第六八二号)  同(志位和夫紹介)(第六八三号)  同(寺前巖紹介)(第六八四号)  同(中島武敏紹介)(第六八五号)  同(東中光雄紹介)(第六八六号)  同(不破哲三紹介)(第六八七号)  同(藤田スミ紹介)(第六八八号)  同(古堅実吉紹介)(第六八九号)  同(正森成二君紹介)(第六九〇号)  同(松本善明紹介)(第六九一号)  同(矢島恒夫紹介)(第六九二号)  同(山原健二郎紹介)(第六九三号)  同(吉井英勝紹介)(第六九四号)  企業団体政治献金禁止法制定に関する請  願(岩佐恵美紹介)(第五七二号)  同(藤田スミ紹介)(第五七三号)  同(正森成二君紹介)(第五七四号)  同(松本善明紹介)(第五七五号)  小選挙区制の導入反対に関する請願寺前巖君  紹介)(第五七六号)  同(矢島恒夫紹介)(第六七八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公職選挙法の一部を改正する法律案内閣提出  第一号)  衆議院議員選挙画定審議会設置法案内閣提  出第二号)  政治資金規正法の一部を改正する法律案内閣  提出第三号)  政党助成法案内閣提出第四号)  公職選挙法の一部を改正する法律案河野洋平  君外十七名提出衆法第三号)  衆議院議員選挙画定等委員会設置法案(河  野洋平君外十七名提出衆法第四号)  政治資金規正法の一部を改正する法律案河野  洋平君外十七名提出衆法第五号)  政治腐敗を防止するための公職選挙法及び政治  資金規正法の一部を改正する法律案河野洋平  君外十七名提出衆法第六号)  政党助成法案河野洋平君外十七名提出衆法  第七号)      ――――◇―――――
  2. 石井一

    石井委員長 これより会議を開きます。  内閣提出公職選挙法の一部を改正する法律案衆議院議員選挙画定審議会設置法案政治資金規正法の一部を改正する法律案及び政党助成法案並びに河野洋平君外十七名提出公職選挙法の一部を改正する法律案衆議院議員選挙画定等委員会設置法案政治資金規正法の一部を改正する法律案政治腐敗を防止するための公職選挙法及び政治資金規正法の一部を改正する法律案及び政党助成法案の各案を一括して議題といたします。  本日は、各案審査のため、午前中、参考人として、評論家大宅映子さん、元最高裁判所長官岡原昌男君に御出席をいただいております。  なお、午後は、上智大学教授猪口邦子さん、慶應義塾大学教授小林節君、東京大学教授佐々木毅君の出席を予定いたしております。  この際、両参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本委員会での審査に資するため、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  次に、議事の順序でありますが、大宅参考人岡原参考人順序で、お一人二十分程度に取りまとめて御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。  それでは、大宅参考人にお願いいたします。
  3. 大宅映子

    大宅参考人 おはようございます。大宅映子です。  最初に、私のスタンスをちょっと申し上げたい、それぞれの立場というお話がありましたので。  今、評論家という肩書をいただいたみたいなんですが、私は普通、ジャーナリストと言わせていただいております。評論家というと、何かやはり政治評論家と思われるとちょっと困るので、私はあくまでも生活者の目からということを自分スタンスにすごくきっちり置いているつもりです。それで、「あまから問答」という大臣にインタビューする番組を十一年もやらせていただいておりますけれども、それも見ていらっしゃる方にわかるようにと、こっち側に立っては絶対にいけない、見る側に立とうというふうにずっとやってきております。  今回この参考人というお話をいただきまして、どさっとこんな重たい資料が来ました。これを読めというのかと、もうそれで一番に頭にかっときまして、そんなあほなことができるわけがないと。私はそれだけをやっているわけではなくて、いろいろなことをいっぱいやっている。ほんの数日の間にこんな生の法律案を読んでわかるだけの私は頭もないし、それに基づいて批判をしろと言われても、そんなことはとても常人ができるわざではない。  私は、生活者スタンスを守っているというのは、普通の人が普通に生活をしていて入ってくる情報新聞なりテレビなり、私はそれプラスあまから問答」なんかで情報はある程度入ってはきますけれども、その域を出てはいけないと自分で思っております。ほかにもたくさん専門家の方が参考人でいらっしゃいますから、私は自分の、普通の人の行動範囲で得られる情報の中でという立場を捨てないつもりでやっている。あくまでも生活者スタンスということでやっています。わかっていないようなことを言い逃れるつもりではないのでして、それが私の本当に必要なことだというふうに思っています。  政治改革なんですが、まず、ぐちゃぐちゃ言わないで早くやってください、これしかありません。長々、不退転の何とやらとかいろいろ言っちゃ、総理の首がかわってまた動かない。もう何をやっているのかといらいらが募っている。もちろん、政治腐敗に関しての国民の不満が募っているのは確かなんですが、それプラス何ぐちゃぐちゃやっているんだ、早くしてよというのが物すごくあると思うんですね。  もちろん、でもそう簡単にできる話ではないし、私たち国民の将来が全部がかっているわけですから、そう簡単にやってもらっては困るのですが、でも、皆さんが何百時間とかいろいろおやりになったのであれば、ある程度の方向はもう既に出ているはずだと思うんですね。それを、やれ一票がどうとかだ二票がどうとかだとか、三百がどうとか二百五十、もうどうでもいい。そんなものはこれで絶対だなんということはあるわけないんですね、その制度改革に関して。  そこそこのところがあるはずなので、それを早く承りまとめて、実際問題は政治改革というのは入り口なわけですよね。それで、政治改革をやっただけで国民生活がよくなるわけでも何でもないわけです。それを早くやって、一番政治家にやっていただかなきゃいけないのは、この本当に混沌とした世界の中で、こんな不景気の中で早くみんなが将来に明るい見通しが出て、ああそうだ、これでやっていけるんだというふうにやっていただくことが政治家にお願いすることであって、政治改革というのはそのゼロのスタートなわけですよね。それもできなければ、多分景気回復とかなんとかいうことはほとんど無理だろうと思うのです。だから早くやってくれというのはそういうことです。  もしこれで細川さんが年内にできなかったらといった言質をとって、またぐちゃぐちゃやって流れましたなんということになったら、もう本当に私は腹を立てて国外に逃亡するかもしれませんので、その辺よろしくどうぞお願いしたいと思います。  もう一つ政治改革イコール選挙制度なのかというのがどうしてもやはりひっかかるわけです。もちろん、いろいろなものの諸悪の根源は、全部たどっていけば中選挙区制だという理論もわからなくはないのですが、では小選挙区制ですかというときに、その辺の国民に対する説得力みたいなものがどうも欠けているという気がするんですね、小選挙区制のひとり歩きみたいなもので。  ここへ来るまでは、やれ並立だの併用だの連用だのと、これでもう頭みんなぐちゃぐちゃですよね。テレビであれをやるとみんなチャンネルを変えるという。わからぬと。さっきも言いましたように、わからないんだけれども、一つ一つ多分理屈はあるんでしょうが、根っこのところさえ押さえてくだされば、後はという気がするわけです。  今この並立制でまとまって、今度またわけがわからなくなったのは、さっき言いましたように一票だとか二票だとか、一人頭何万円だとか、二百五十がどうとかとか、本当にこれは本気皆さん国民にわかるようにやっていらっしゃるのだろうか。  根っこのところで一番問題だと思っているのは、どう考えても政権をとる側の論理なんですよね。これをこうやると二大政党になる、これをやると連立て何となく安定政権にならないとか、政権の話なんですよね。政権の話の権力側のところでとまっているということが多分私たちから見てわからぬと思うし、何か、まあいいよというふうに逃げてしまう部分でもあるんじゃないかというふうに思います。  もうここまで来たら党議みたいなものに縛られないで、どうも新聞情報でいろいろ出てくるのを聞きますと、各党の間でもこっちだあっちだと、全部こっちとこっちがつながっていた方がいいような話がいっぱいあるようなんですね、二票制、一票制にしても。だったら、もうばらして、本気皆さんで投票してみたらどうでしょうかみたいなことすら思っております。そんなことはできるわけはないだろうと言われたらそうなんでしょうけれども、こっちから見ていると、本心はこうなのに党議がこうだからこうやっているとやっていることは、一体何なのかというのが読めないから、そこでいら立っているというわけなんです。  もう一つ、私どうも腑に落ちないものの一つは、自民党政権のときに小選挙区制というのが出てきたときに、政権交代ができないからいけない、政権交代というこういう結果を求めるために、逆にやるとこれは小選挙区制でしかないというふうに出てきたわけなんですが、ずっとそのまま中選挙区制でやっていれば政権をとれた自民党が、何でわざわざ自分たち権力を失うような制度を出してきたんだろうか、これはどうしてもわからない。何か裏があるんじゃないかとか、本当はそうじゃないんじゃないかとかと、いまだにそれは私にもよくわかりません。  それで、多分、もちろんいろいろなものを突き詰めていくと中選挙区制になるんだろうとは思いますけれども、何か言いくるめているのかなとか、じゃ本気で、本当に自分たちの身を犠牲にしても日本国の将来を考えて本気なのかな。それを言っている間にあの政権がかわっちゃったものですから、それはそれでいいのですけれども、本気日本議会のシステムが民主的に行われて、それで国民の支持を得て、機能しているかどうかということに立って選挙制度を変えようとしているのかどうかということに関して、どうも何かいまだに腑に落ちないでクエスチョンマークのままでいるということです。  一番中選挙制度がまずいといったのは、要するに金がかかるという。金がかかるからまずいというのは、これはとっても国民にわかりやすくて、お金が絡んでいるからみんなああやっていろいろな疑獄事件が起きる。そうよ、金がかかるのがいけないのよ、政治家が金ばかり集めるからいけないのよ、こう言うのはとても通りがいいわけですが、問題は、これはもうよく言われていることですけれども、選挙民がたかっているというか、地元に利益誘導するためにお金がかかるということはたくさんあるわけで、私も去年、おととしですか、衆議院議員秘書公設秘書を二名から三名にふやすというのの委員をさせていただきまして、先生方とか秘書の方にいろいろお話を伺いました、  政策を考えるためにお金が要るというのであれば、私は幾らでも出そうじゃないのと思っている人です。ところが、議員の方の仕事の中身、それから先生方のお部屋に伺ったときに、私は十何人だか秘書がおりますが、政策を考えている秘書なんというのは一人もおりませんと断言なさった立派な先生がいらっしゃいまして、もう私は唖然としました。  選挙区から選挙民がいらしたら国会も案内しなきゃいけないし、それはまあいいでしょう、国会議員がいなきゃいけないという話になっているから。これもおかしいとは思いますけれども、まあそれはいいですけれども、選挙区から人が来たときに、お帰りになる汽車までに時間があれば、そのお相手もしなきゃいけないとおっしゃいました。もう頭にきて、冗談じゃない、そういうのにお金が要るんだったらとんでもない、選挙運動なのか政治運動なのかはっきりせいというふうに思いました。  つまり、どこまでが民主主義必要コストなのかということをもっと明確に出すべきだと思うのですね。お金がかかる、かかるというのだけばっとこれもひとり歩きしていますけれども、これを全部出したら二つ効用があると思います。  一つは、選挙民の人に、あなたたちが余計なことをいろいろ言うからこんな余計な、むだなお金がかかるんですよというのをちゃんと突きつけられる。先生方はみんなその票の上に乗っかって生きていらっしゃるわけだから、なかなか選挙民にそれを突きつけられないというのがあるんでしょうけれども、一つクッションを置いて、しかし、こういうことでこうこうこういうお金がこうかかっていますと言えば、幾ら何でも日本国民はわかるだろう。  それからもう一つは、本当にどこまでが必要コストで、だったら私は本当にお上で、お上というか公に見て構わないと思っているわけです。でも、それがまたぐちゃぐちゃになって、家族が秘書になって、それに全部行ってしまうとかそういう話だったら、泥棒に追い銭になってしまうわけですから、とんでもないというふうに私は思うわけです。だから、どこまでが政治に対して、民主主義政治のための最低限必要なコストなのかというところを、これはもうちゃんと練らなくちゃいけないんじゃないかというふうに思っています。  公的助成金でも、多過ぎると言われたら減らすとか、何かかなりいいかげんで、ほとんど論拠はないんじゃないかという気がしますし、政治活動に制限をつけないと言われると、税金で何やってもいいと言われても、それも困るよなというふうに思います。  理想的に言えば、個人が政治家に寄附をするという形がいいんだというふうにおっしゃいますが、私は、日本国においてそれが何世紀後に実現するだろうか、それは理想かもしれないけれども、とても無理だろうというふうに思います。政治家からお金を取ろうと思っている人はいるだろうけれども、政治家お金を出そうという人がそういるとは思えないので、私は、理想かもしれないけれども、かなり無理なんじゃないかというふうに思います。  先ほども申し上げましたように、制度というものを変えるときに一〇〇%これでよしなんということはないわけで、実はこの間税調の視察でもってアメリカとカナダヘ行きましたけれども、彼らがその制度を変えるときの意識は、八割方よくなったらいいじゃんという感じなんですね。  ところが日本の場合、消費税のときにもおわかりのように、何かとんがった、すごく特別な例外的なところを持ち出して、こういう不合理があるじゃないかと言うと、ほとんどマスコミはそればかり追いかけて、根っこのところはなくなっちゃうみたいなところがありまして、もうちょっとおおらかに、そこそここの程度、さっきも言いましたように、我々の議会制度を守るために、これだけこうやればこういうふうにうまく機能するんだという根っこの八割方を押さえていただけたら、それでもう早くやっていただきたい。  ただ、私はもう一つ政治改革といったときに、どうしてもやっていただきたいことが二つあるのですが、一票の格差の是正です。これは日本国に住んでいる国民としての最低の権利だと思うのですね。東京に住んでいる者にとりましては、それが三分の一でいいでしょうという話というのは、どう考えてもおかしいと思うのです。  それをある政治家にぶつけましたら、じゃ、それで全部人口割りしたら、大宅さん、全部都市の人に誘導する政治になってしまいますよと言われましたけれども、でもそれは、もし過疎対策とかいうのが必要なのであれば別枠でやればいいことであって、基本的な権利としての一票の重さというものが違うというのは、どう考えても私はおかしい。居住地によってその一票の重さが、軽さが変わるというのは、どう考えてもおかしいというふうに思います。  都市に住んでいる人はいろいろな利益代表のところに組み込められるから、いろいろな発言の場があるという言い方をなさいますけれども、逆に地方の方がしっかり組織化されていて、その意見が通るようになっているのじゃないか。一番かわいそうなのは都市のサラリーマンだろうというふうに私は思います。一番割食っているのが都市に住んでいるサラリーマンだろうというふうに私は思います。  それからもう一つは、これは根本的なことなんですけれども、国会審議をまともにやっていただきたい、そういうことです。やっと対論、反論とかを、たまにおやりになるようになりましたけれども、結局国会の場で議論されるのではなくて、見えないところで、いわゆる国対政治みたいなものでやられるということに対しての不信感というのは物すごくあるわけですね。今のというか、この間までの与野党のなれ合い、本当は何かけんかしている風をしているけれども実はもう全部できているんだとか、そういう話というのがだんだんみんなにわかってくると、ばかばかしくて見ていられないという話になるわけです。  総理の首をすげかえただけで、国会国民に対しての責任をいつも果たさないままずるずる来てしまって、今回はそういうことがないだろうということを私は期待しているわけですけれども、もう一つ総理のリーダーシップがないということはみんなわかっているんだし、やらなきゃいけないことの全部先送りになるわけですね。総理の座というものがかかっているので、ここで国民に対して耳の痛いこととか支持者に対して耳の痛い政策はやれないということで、みんなわかっているのだけれども先送り。  ウルグアイ・ラウンドにしても、米の自由化にしてもそうだと思います。米の自由化、もう随分前に、玉置さんが総務庁長官のときに、もうほとんど決まりかかっていたように私は感じていたのですが、その後どういうぐあいかわかりません、またぎいぎいさい。現場の農民の人も、もう絶対だめだろうなと思っている。政治家先生方も、テレビなんかで御一緒すると、控室にいるときは、もうそうです、テレビじゃ言えませんがねともうずっとそうなのに、もう何年もそうなのに、まだここでやっていて、まだ反対という話をしているわけです。  今回の不作のことで、一粒なりとも入れないと言っていた日本が輸入するようになりました。私が外国の人だったら、一粒なりとも入れないと言ったじゃないか、やらないよと言うと思いますけれども、やはりお金が絡んでいると、ぜひ買ってくださいという国が出てくるから困ったものだと私なんぞは思っております。  政治家というのは、国民の耳に痛いことも言わなくちゃいけない、泥もかぶらなきゃいけないということだと思うのですが、何かみんなにいい顔をしようとする。これは絶対無理です。しかも、今までのように欧米に追いつけ追い越せで、それが大目標で、もう経済が最優先で効率よくやればいいという形でやってきたときはそれでもよかったのでしょうけれども、今ここまでの豊かさになって、みんなのニーズがばらばらなわけですね。  あちら立てればこちらが立たないというのがある中で、これを練った上で、こちらの言うこともわかります、こちらの言うこともわかりますが、こうこうこうで、今の状況だとプライオリティーとしてはこちらですねというような、そういうことをやるのが政治の場だと私は思うのですが、それをやるようなシステムができ上がっていない。全然ディベートをしていない。  それがこれからずっとどうやって意思決定をしていくのだろうかというのが、外から見て日本の顔が見えないというのは、まさにそういうことだと思うのですね。どこで何がどう決まったのかが見えない。それが見えるような、もちろん我々国民に見えるような場でやっていただきたいし、それをやれば、多分外からでも顔が見えるということになると思います。  多分派閥という話が今までの政治改革という話で問題なのは、個人の集金能力を超えたお金が要るようになった。そうすると、派閥のボスはそれに輪をかけて集めなくちゃいけない。派閥のボスはその権限で総理の座をどうするかということがある。メンバーの人たち大臣のポストだとかが問題であって、それがあるかないかでもって、いわゆるよく言われる許認可権だとか予算の配分だとか交付金の配分だとか、そういうものが全部絡んでいるという図式だったんだと思うのですね。  それを変えるために、一応それが全部中選挙区のせいだということもおありかもしれませんけれども、私は税調だとか、行革審もついこの間の専門委員をさせていただいていましたけれども、何が一番むなしいかといいますと、幾らたちが一生懸命論じても、税調のときは、今までは政府税調で出しても自民党税調でぐちゃぐちゃっとやって、違うのですね。行革審にしても、やるやると幾らあれしても、全然お役所側は動く気がなさそう。  私が入っていた方の部会じゃありませんけれども、特殊法人の見直しというのがありました。ところが、それにくっついていらっしゃる先生方をかさに、ヒアリングに応じないというふうな話がありまして、全然それが行革審の中に盛り込まれなかった。  私が感じているのは、新聞の記事が出まして、畜産事業団、牛肉が値段が差があり過ぎるので輸入は余りしないようにと書いてあるのですよね。それで生活者優先の、生活者重視の政策といったって、そんなものあるかというふうに思うわけで、最初にも申し上げましたように、本当にいわゆる政官財の癒着を断ち切って、生活者重視の政策がとれるようにしていただくのが本当の政治改革でして、それをやっていただくために、まだその制度のところでぐちゃぐちゃ、もちろん制度だって大事なんだけれども、それはもうなるべく早くクリアして、早くそちらの方に、実際の政策面に動いていけるようにやっていただきたいというふうにつくづく思っております。  ちょうど二十分になりました。勝手なことを言わせていただきました。(拍手)
  4. 石井一

    石井委員長 ありがとうございました。  次に、岡原参考人にお願い申し上げます。
  5. 岡原昌男

    岡原参考人 岡原でございます。  委員長、ちょっと書面を用意したのがございますので、皆さんに御配布願いたいと思います。
  6. 石井一

    石井委員長 かしこまりました。どうぞ。
  7. 岡原昌男

    岡原参考人 その二の個別的意見というところをごらんいただきたいと思います。  実は私、この席を与えられまして、何をしゃべろうかと、最初に考えついたことは、やはり検察、裁判に五十年間関与してきた者として、しかも最高裁長官の経験ある者として、一応大きな観点から国会のあり方とか三権分立のあり方といったようなこと、並びに立法に対する国会議員としての抱負とか今後の見通しといったようなことを中心に申し上げる、つまり総論的な、この印刷物でいきますと第一の分を中心に置こうと思ったのでございますが、昨日民間政治臨調の集まりがございまして、いろいろ皆さんお話を伺っておるうちに、これはどうしてもこの国会政治改革立法は完結しなきゃいかぬ。  例のイギリスの腐敗防止法も一八八一年から二年、三年と、三度目にあれば通っているのです。日本でもひとつこの三回目にぜひこれを物にしていただきたい。しかも、現在の経済情勢、この不況の中にあって、いつまでもこの問題にこだわっておる、こだわっておると言うとおかしいですけれども、とどまっておるべきものではない。早速これを切り上げて、そして新しい、国民の要望する線に国会は動かなきゃいかぬというふうに考えますので、きのう実は帰ってから三時間ほど考えました。  そして、これはいいという最後の妥協案みたいなものを考え出しまして、それを、大変不遜な言い方でございますが、天の声としてひとつ参考にしていただきたいということで、急遽この二の印刷の一部を変えまして実はお配りを申し上げたような次第でございます。  その主題によって申し上げます。  論点の前に、私は、選挙権を持たせる年齢を引き下げる必要があるということをかねがね考えておりまして、既に日本の年齢構成は異常な状態になって、老人の数がふえております。若手の連中の声を国会に入れるべきであるというふうなことで、ゼロというのは、これは野球の番号じゃないですけれども、後から考えついてぜひ入れなきゃいかぬと思って皆さんにあれしたことで、ゼロになっております。  それから、一の小選挙区比例代表並立制については、大体両案一緒でございますので省きます。  二の総数。これも四百七十一が現行法の基本はそうなっておるということから自民党案は考えられたことと思いますけれども、これはこの際割り振りの関係でどうしても窮屈である。五百名でやはりいくべきであるというふうに考えました。  それから、三の小選挙区と比例代表の割り振りでございますが、三百と百七十一というのはいかにも自民党に有利過ぎる。これは公平に見まして大変妥当ではない。今の情勢で参議院でつぶれるおそれがある。これじゃいかぬというので、本来この割り振りは半々がよろしいというのが普通の考え方でございますけれども、半々にいたしますと二百五十になります。二百五十を小選挙区に分けますと、鳥取と島根の関係でこれは極めて困難、不可能に近い数でございます。  ですから、私は、これは二百七十五ぐらい、これでもぎりぎりでございます、その辺で妥協すべきである。二百五十、二百五十をやめまして、二百七十五対二百二十五。そういたしますと、大変この数の割り振りがうまくいくような気がいたします。こういうふうにやった反面、比例代表区の二百二十五、これの方の都道府県に分けるのをやめまして全国の案にするということにいたしますれば、これで均衡がとれるというふうに考えます。  次に今度は、都道府県に割り当てて小選挙区をつくるにつきまして、内閣に審議会を置くか衆議院にその委員会を置くかという点でございますが、これはやはり衆議院の内部のことは本来ならば衆議院にお任せいたしたいのでございますけれども、今までの定数是正その他の経緯にかんがみまして、これは非常に困難である。しかも、やはりそこに置くと、いろいろと議員の個人的な利害によって曲げられるおそれがあると、少なくとも国民がそれを心配しております。  ですから、これは最高裁判所内閣に置く。最高裁に置くと非常に公平ですけれども、まあ今のところ能力もないと思いますので、これは総理府に置くという案が、政府案がいいと思います。  今度は、その割り振りの問題ですが、人数は国会で決めるよりも、その委員会なり審議会に任せるというのが一番正しいと私は思います。どうせもう一回法律をつくるのですから、そういうふうな方が一番早いというふうに考えます。  その次は六の定数是正。選挙権の平等の問題は、これは非常にシビアな問題で、実は現在は、こっちの人は一票よりもらえないのにこっちの人は三票もらえる、これで公平だというのは、私は何と考えても常識的じゃない、やはりこれは二対一以下でなけりゃいかぬというふうに考えます。したがって、その枠を法律の中に入れること、これは絶対必要であろうと思いますが、それに基づくこの区割りは、もとよりこの審議会なり委員会で決めることということでございます。  その次の投票数。一票にするか二票にするか。これは本来、理論的に申しますと一票の方が正しいと私も思います。しかしながら、現在の政治情勢にかんがみ、価値観の多様化に伴い、現在の連立内閣の情勢その他にかんがみますと、国民の声はやはりこの二票制が正しいというふうに私は思っておると思います。  というのは、この小選挙区においてはこの人が欲しいというのと、それから政党としてはこの政党を推したいという気持ちが実は現在ちぐはぐになっておるのが大部分の考えだと思いますので、これはぜひ二票を生かしたい。それで一回選挙をやってみて、その差が大したことなかったということであれば、すぐ一票に直せばいいんです。(笑声)これはもう皆さん笑いますけれども、立法というのはそういうものなんで、要するにその情勢情勢で、これを酌み取って生かしていくというのが一番正しいと私は思います。とりあえずは二票制ということでまあやってごらんなさい、何かいい線が出てくると私は考えます。  その次は記号式。これは記号式は結構でございます。ただ、ここで根本的に私考えていただきたいというのは、丸印じゃなくて、マル・バツ方式を考えていただきたい。これは、御承知のとおりギリシャのプレビシットという貝殻投票にあらわれておる思想でございますが、現在最高裁判所も実はこのペケ印でやっておられるわけでありまして、我々もこの×印をいただいた方なんでございますけれども、これは非常なやっぱり心の戒めとなりました。  のみならず、今度の金丸事件やいろいろあって、まあ事件ができた場合にこれをどうしたらいいか。リコール制は国会議員にはございません。そこで、わずかにこのマル・バツ式ではけ口を求める。そうしなければ金丸事件やピストル狙撃事件が起きる、それから検察庁にペンキを塗られるという暴力的事件が起きる。要するに、国民のふんまんを解放する手段としてこのマル・バツを採用していただきたい。これはぜひ、今国会に難しいとしても、次の国会で採用していただきたいというふうに考えます。これはぜひお考え願いたいと思います。  その次は、第九、第十、この当選人のあれとか没収のあれ、これは余り緩やかにする必要はございません。やはり近ごろの立候補の傾向を見まして、ある程度国民の支持があるという自信を持つ者でなければ立候補しちゃいかぬとまで、そこまで極端に言っちゃおかしいですけれども、そういう性質のものであって、中には相当怪しげなる意見選挙公報に載っける候補もございまして、あんなことに税金取られちゃってかなわぬというのが国民意見でございます。  したがって、これは現行法のまま、そしてさらに窮屈に、そういうふまじめな立候補者、自己満足するようなそういう立候補者は、これはとめなきゃいかぬというふうに考えます。それがさっきの点でございます。  それで、その次の第十の当選人ですね、そのところで、もしこの数を六分の一から四分の一というふうにもとどおりに直すとすれば、まあ相当窮屈な選挙になります。しかしながら、やはり全国民の代表という資格をもらうためには、かなり多数の人の賛同を得た人でなければ議員となっちゃいかぬ。「看板が泣く。」と書いてございますけれども、私はそう考えますので、ぜひこの点は今のままでよろしいと思います。  小選挙区に移行したからといって、どうせその四人、今まで四人区なら四人区のところは四つに分かれるというだけのことなんで、それぞれの数から見れば四分の一でそのままでいいと私は考えます。そういう意味でございます。  それから、補欠選挙は今言った関係。  それから、十二の選挙運動。この期間を四日圧縮するという案でございますが、これはやはり新人が出にくい。十四日でもなかなか主義主張を浸透させるのは困難である。のみならず、今度の考え方は、事前運動をたんたんと狭めていって集中的に十日で選挙運動させようというんですけれども、こうなるとどうしても現議員だけが有利になって、いかにも新人が出にくい。こういう考え方は私はよくないと思います。  その次、十三の戸別訪問の問題でございますが、これは一応やってみること。私は、今の政治情勢からいって、昔のような戸別訪問によって買収がふえるというふうなことは余り考えなくてもいいんじゃないかというふうに考えますけれども、実はそれが甘い考えでございまして、この東京付近なんかでも、最後の晩になりますと相当札が飛ぶというのが、現に事件になっております。したがって、これはやってみて、もしそれがあったらまた考え直す。これは自由自在にその辺はやってみることです。選挙区もそうですけれども、そう固定的にやる必要はない。  まあアメリカの議員定数の問題、ちょっと御参考に申し上げますと、下院の議員が四百三十五名、これが一九一四年から固定しております。ところが、人口の異動が非常にたくさんある。そこで十年ごとにこれを改定しまして各州に割り当てる。カリフォルニアなんかはその間三倍になっております。しかし、それに伴う選挙区の異動というのは、それだけ激しいにかかわらず、アメリカでは当然だというふうに考えております。こうならなければ私はいかぬと思います。  ですから、そういうふうに国会は、融通無碍といいますか、新しい情勢に基づいてすぐにそれに対応していくというふうなことを繰り返して、だんだんいい方向に進むべきであろうということでございます。したがって、とりあえず賛成。  それから、十四の争訟。これは余り細かい問題でございますけれども、表現の不正確を直していただきたい。これは非常に我々としては大事なところでございまして、要するに、その訴えをだれが出し得るか、あるいは異議申し立てをするのがだれか、その範囲を決める部分でございますので、これはぜひお直しいただきたいと思います。  それから罰則。この罰則は、私、総論関係で申し上げようと思っておったところでございますが、今まで検察庁、裁判所が一生懸命選挙違反退治のために、私なんかも検事の時代に夜遅くまで調べて、そしてやったんですが、うまくいかない。これは刑罰重視の考え方を取りやめまして、ぜひ法律が守られるような制度に考え直していただきたい。  それが別の資料の「民衆訴訟による資格剥奪訴訟制度の復活」というところがございますが、その資料をゆっくりとお読み願いたいと思います、これは恐らくこの論理の運び方には御異存はないと思います。問題はその線に沿ってやるかどうか。この選挙法自体の全体の問題でございますが、ぜひこれはやらなきゃいかぬ、その気持ちを持てばこれは必ずできます。国民はそれを希望しておるわけでございます。  余り細かいところはもう抜かしまして、最後に、「立法は妥協である」という「結論」というところがございます。これは特に社会党の皆さんに申し上げたい。  従来、社会党が国民の支持を余り得なかったというのはこの点なんでございます。要するに一つの理論にこだわって。ところが、今度連立政権の中に入ってみますと、そのとおりにはいかぬということがわかった。それで自民党政権政策を踏襲する。それでいいんです。要するに、そういう連立政権になったらなったで考えをずっと転換いたしまして、新しい事態に対応するようにならなきゃいかぬと私は考えます。  このことによって、恐らく社会党の一部の人は反対するでしょう。しかし、それによって減る票というものよりも、国民が社会党を見直して、その賛成票が数十倍になることを私は信じて疑わない次第でございまして、若干のところはこの際のんで、ぜひ、今の執行部はやった、細川内閣、これで法律ができたということになれば、社会党の功績であるのみならず細川内閣としても一つの功績になると思いますので、その線でひとつ進んでいただきたい、これが最後に申し上げることでございます。  以上。(拍手)
  8. 石井一

    石井委員長 まことに忌憚のない御意見をありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  9. 石井一

    石井委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大畠章宏君。
  10. 大畠章宏

    大畠委員 日本社会党の大畠章宏でございます。  ただいまはそれぞれの参考人の方からいろいろと傾聴に値する御意見をいただきまして、大変ありがとうございました。御両名とも大変お忙しいところを本当に日程を都合をつけていただいて御出席いただきましたこと、心から御礼を申し上げたいと思います。  もう既にこの政治改革法案の審議は前国会でも百七時間、そして今国会で約七十時間近い論議を経ております。さきの総選挙国民の民意というものは、まさにもう政治改革を断行しなさい、ロッキード、リクルート、佐川急便事件とずっと続いてきました日本政治風土そのものを変えるような大胆な政治改革をやりなさいというのが国民の総意ではなかったのかと思います。  そういう中で誕生しました細川政権、高い支持率を得ていますが、あの細川流と申しますか、これまでと異なったあのスタイルが何かやってくれるんじゃないか、そういうことが結局高い支持率につながっているのではないかと思います。そういう意味で、きょうこの委員会に属しております委員皆さんは、とにかくその国民の民意を重視して今国会で何としても成立をさせよう、その心意気ではみんな一致しているのではないかと思います。  ただ、それぞれ自民党案、与党案、法案が提出されておりますが、何点かのところで異なっておりまして、ただお互いに論議をしていますと、どうもそれぞれ与党に有利な案あるいは自民党さんに有利な案という、そういううがった形での論議がありますので、きょうはお二人の参考人の方から、先ほどから率直な御意見をいただきましたけれども、さらに何点か御意見を賜りたいと思います。  一つは、議席配分の問題、投票方式、比例単位、企業献金等々において自民党案、与党案異なっているわけでありますが、それぞれについてお伺いしようと思いました。しかし、大宅参考人の方からは、そんなごちょごちょを言わないで、とにかくやれという御指摘もありました。また岡原参考人の方からは、事細かにもう資料としていただきました。本当にいろいろと貴重な御意見をありがとうございました。  そこで、ちょっと原点に返りましてお二人の方からお伺いしたいと思うのですが、この政治腐敗防止のための基本的なポイントといいますか、どういうふうに考えておられるのだろうか、どういうところに起点を置いた政治改革をやってほしいということを考えておられるのか。  例えば、よく言われます今日の日本政治腐敗の原因といいますか、それは政財官の癒着問題であるとか、あるいはまた企業献金というものがその根本にあるんじゃないか、さらには、先ほど大宅さんの方からもありましたけれども、政治改革というとなぜ選挙制度に結びついてしまうんだろうか、やはりこの腐敗防止というものが中心なんじゃないかというようなお話もありましたけれども、お二人の参考人の方から、大宅さんの方からは生活者としての視点、あるいはまた岡原さんの方からは、これまでの御経験から見て、この政治腐敗の防止のためのポイントというものはどういうところにあるかということをまずお伺いしたいと思います。
  11. 岡原昌男

    岡原参考人 お答えいたします。  私は今まで、先ほど申したとおり、約五十年間この問題に取り組んでまいりまして、やっている最中には実は気がつかなかった重要な点でございますが、選挙違反を処罰によって直そうということは絶対不可能でございます。これは私の印刷物の中に細かく書いてございます。  じゃ、どうすればいいのか。やはり皆さんが立候補された場合に、法律は守っていこう、選挙違反はやるまい。要するに、選挙というのは一つの枠に皆さんが立ちまして、同じ条件のもとに民主主義の代表を選ぶということなんでございまして、一人が抜け駆けすると、ほかもこれはかなわぬというので、みんなが違反すれば怖くないというのが現在の状況でございますが、これでは大変世の中にそういう悪い空気を流していることでございまして、ぜひこれは改めてもらいたい。自分の気持ちから改めてもらいたい。法治主義とかあるいは法の秩序、そういうことは全部吹っ飛んでおります、現在の選挙全体が。  ですから、私は、そういう議員はこれを失格させるべきである。要するに、法律をつくる人が法律に従わないというのは、これはナンセンスです。ですから、そういう人はその座にいる資格はないということをはっきりさせるために、例の当選無効訴訟を提案しているわけでございます。  これをイギリスで一八八三年にやったために、三十年間にしてイギリスの選挙界は全く粛正されまして、一九二三年、今から七十年前からその種の訴訟は一件もございません。それほどイギリスの選挙は粛正されました。十九世紀の非常にひどい選挙区、腐敗選挙区というのが三十年で全く改まったわけでございます。  その原因はいろいろございますけれども、今言ったようなこと、なかんずく議員諸公がこれじゃいかぬというふうに考えることでございます。ですから、その線でひとつお考えおき願いたい。細かいことは印刷物に譲ります。
  12. 大宅映子

    大宅参考人 先ほど申し上げたんですけれども、基本的に私は、政治家だけじゃなくて、日本じゅうが戦後、金という物差しで全部はかるようになってしまったということが大きな根っこなんじゃないかというふうに思っているのです。金ではない名誉みたいなもの、名誉の復権みたいなものが必要なんだろう。今、申しわけないけれども、政治家を尊敬している人たちはほとんどいないと思うのです。みんなではかにして、何か汚いことをやって自分の私腹を肥やしてというふうに思っている。国民の代表で、何かを国民のためにやってもらっているというような信頼関係が今基本的にもうできてない。  ただ、それはもう政治家だけじゃなくて、日本じゅうの人々がみんなそうなんで、例えば子供たちが、女の子たちが別に自分の下着を売ったってどうってことはない、こんなものは自分も小遣いになるし、買った人も喜んでいるんだし、どうってことないでしょうみたいな、人に迷惑をかけなければいいとか、法律に触れなければ何してもいい、この自由の履き違えみたいなものも一つ大きな日本じゅうの問題としてあると思うのですね。  ですから、これは教育の場なんかもそうなんです。教育がおかしくなったというのは、学校の先生が、苦みたいに聖職というのは気の毒だとは思うけれども、労働者としての同じ条件を与えてさしあげたいとは思うけれども、逆に彼らが、私たちは工場で物をつくっているのとはわけが違います、人様を、お子さんを預かっている、人間を扱っているんだからという誇りを持っていてほしかった。  それと同じことを政治家にも私は持ってほしい。人に何を言われなくても自分自分を律するとか、金じゃない物差しでちゃんとやる。  だから、どうやったらその名誉を回復できるかということを考えると、私は、本当にお金が要るんなら出してやろうじゃないのという話はもう前からしていたわけです。それで、みんながお金集めで顔が悪くなっちゃうんじゃなくて、もうちょっといい顔の政治家が出てきてくれれば、少しはみんなも尊敬もするだろうというふうに思っていたのですが、でも、出すことに関しては、その使い方は全部透明にしていただかなくちゃ困るので、私は、名誉を回復することみたいなのが根っこにあるんじゃないかなというふうに思っています。
  13. 大畠章宏

    大畠委員 それから当初、議席問題、投票方式、比例単位問題等について御質問する予定だったのですが、先ほど言いましたように、岡原さんの方からは、もう既に細かいものが出ておりますので割愛させていただきます。  大宅さんの方にちょっとお伺いしたいのですが、例えば議席配分で異なっているのは、民意の反映か民意の集約がというので、この議席配分いろいろこの委員会でも議論されました。どちらを重視した方がいいのかというのをちょっとお伺いしたい。  それから、投票方式については、これは一票制と二票制というものが出されております。一票制ということであれば非常に二大政党というものに流れていく、二票制を志向すればある程度穏やかな多党制を志向するということですが、どちらを考えておられるか等についてお伺いしたいと思います。
  14. 大宅映子

    大宅参考人 民意というのはもう本当に難しくて、さっきも言いましたが、私は余りとんがったところまで全部制度で押さえようというのは無理だと思います。ですから、大まかなところがつかめて、もし本当に手を下さなきゃいけないものであれば、別の枠でやるというのがいいというふうに思っています。  それから、二票制と一票制に関しては、私も、さっきから言いました、しっぽから計算していくというのがどうしても納得がいかないので、二票制ということを考えます。それにやはり選挙する側からすると、ああ変わったなという感じがして、その方がいいんじゃないかというふうに思っています。
  15. 大畠章宏

    大畠委員 ありがとうございました。  あと、この政治改革法案の中には入っておりませんけれども、例えば生活者立場から、使途不明金の問題が非常に今ゼネコン問題でも出されておるのですが、この問題についてはどういうふうに考えておられますか、大宅さん。
  16. 大宅映子

    大宅参考人 それも申し上げるつもりだったのですけれども、言うのを忘れたのですけれども、それはもう本当に徹底的にやっていただきたいというふうに思っています。  お金が要るという人たちがこっち側にいまして、いかに制限しようが要るんだということであれば、どうやってでも入手する方法というのをお考えになりますよね。それと、キツネとタヌキみたいな話ですから、そうしたらいろいろお考えになるというのがあるわけですよね。それを引っ張り出せという話がありますけれども、わからないから使途不明金なんで、それはどうなんでしょう、会計のシステムでできるのかどうか私もよくわかりませんけれども、企業献金そのものというよりも、使途不明金の方が私は追及していただきたいと思っています。
  17. 大畠章宏

    大畠委員 時間が参りましたので終わりますが、本当に御両人ありがとうございました。また、特に岡原参考人におきましては、社会党に対する大変温かいお言葉も先ほどいただきました。心して頑張ってまいりたいと思います。  ありがとうございました。
  18. 石井一

    石井委員長 次に、豊田潤多郎君。
  19. 豊田潤多郎

    ○豊田委員 新生党の豊田潤多郎でございます。お二方の御意見陳述に関しまして、二、三御質問をさせていただきたいと思っております。  まず、岡原さんの方からは、天の声ということで、ほとんど結論めいたことが既に妥協案として示されているわけでございまして、特にこれ以上お伺いするようなことはないわけでございますが、ただ、現在、政府案並びに自民党の間でいろいろ議論されております中で、かなり重要な問題でコメントのございませんところもあったように思います。その点、まず岡原さんの方に三点ばかり、私もこれは重要だなと思っておりますところをちょっと御意見をお伺いいたしたいと思います。  その第一は、三%条項でございます。  これは政府案におきますと、直近の国政選挙で三%以上の得票率が政党要件の一つということになっておりまして、自民党の場合にはそれがないということでございますが、これは自民党さんの主張ですと、有効投票の一部切り捨てということになりまして、有権者の権利を奪うことになる、場合によっては憲法違反のおそれもあるという指摘があるわけでおりますが、逆に自民党の案によりますと、比例代表選挙の単位につきましては都道府県単位を採用している。これは岡原さんの御指摘で二百七十五、二百二十五、政府案がこの点で譲るかわり、自民党は比例代表を全国とするということで譲るべきだという御提案がありました。  それで、自民党の案によりますと、都道府県単位でやりますと、恐らく三%条項で比例代表の政党要件を律するよりも、有効投票においてそれを切り捨てる部分がかなり大きくなるのではないかというふうに思われます。例えば、都道府県で二人の区であれば、三〇%余りを獲得してもその投票が無効になるおそれもありますし、また三人の場合でも二五%、四人ということになれば二〇%余りの得票をしておりましても、それが有効にきいてこないということになります。  したがいまして、私は、自民党の主張される都道府県単位で比例代表選挙の単位を見るべきだという主張と、それと絡むのですが、政府提案の三%条項が憲法違反だというそしりを免れない、これはどうも主張に矛盾があるような気がするわけでございますが、その辺につきまして岡原参考人の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  20. 岡原昌男

    岡原参考人 国民の声をどの程度に集約するかという問題でございますが、これは法律で規定すれば余り憲法違反の問題は起きない、その規定の仕方にもよりますけれども。したがって、私は集約する方法として大体こんなところはどうだろうかという意味で賛成する、こういうわけでございます。  これが都道府県ごとに分けた場合がどうかとか、そういうことをそれぞれ利害関係を論じてまいりますと、非常に難しいといいますか複雑になってまいりますけれども、大きなところでそういうふうに押さえるならば、私は三%でもよろしい。三%、五人、三十人といったようなあの政党を認めるあるいは届け出政党を認める、そういう形、これは大体いいのじゃないか、こういうふうに考えております。
  21. 豊田潤多郎

    ○豊田委員 どうもありがとうございました。  引き続いて第二、第三の点になりますが、これはお金に関係することになりまして、一括して申し上げたいと思います。  第二の問題は、いわゆる企業団体献金の取り扱いでございます。また、それに関連すると思われますが、第三の問題として政党に対する公費助成、この点でございます。  岡原参考人からの御意見の陳述の中に、ちょっと企業団体献金、また政党助成、この点のコメントがございませんでしたので、今政府案、自民党案、もう中身はよく御存じだと思いますが、その点につきましてもし御意見ございましたら、よろしくお願いいたします。
  22. 岡原昌男

    岡原参考人 企業献金の問題につきまして、例の昭和四十五年の最高裁判決がございますけれども、あの読み方について自民党の中で非常にあれをルーズに読みまして、その一部だけを読んで企業献金差し支えない、何ぼでもいい、こう解釈しておりますが、あれは違います。我々の立場からいいますと、我々といいますか私の立場から申しますと、あの企業献金というのは、法人がその定款に基づかずして、しかも株主の相当多数が反対する金の使い方でございまして、これは非常に問題がある。  アメリカで十九世紀末にマッキンレー大統領が当選したときに、事務長が非常に企業献金をあっちこっちから集めて、当選したら、これどうしてくれる、見返りを欲しいと殺到いたしまして、大問題になったことがございます。それで一九〇七年に連邦中央銀行その他を中心とする献金禁止の法律ができまして、それがだんだん広がって、現在は会社並びに団体すべてについて献金が禁止されております。許されるのは、ある州によって、教育とか慈善とかあるいは福祉とか、そういう問題ならばまあよかろうという判例あるいは法律はございますけれども、非常に窮屈なものなんです。  本来営利団体である会社でございますから、非取引行為、つまりもうけにならぬこと、これをやることは株主に対する背任になります。もし見返りを要求するような献金でございますと涜職罪になるおそれがある、そういう性質を持ったものでございます。  今まで事件を起こしたのは、要するに涜職になったのが挙げられておるわけでございますけれども、そういうことは要するに企業献金にそのもとが、原因があるわけでございますので、これはぜひ小さくしていきたい。あの判例の中にも、認められる範囲は極めて低いというふうに細かい意見の中に書いてございます。  そういうふうなことで、あの判決をもとにとって、企業献金は何ぼでもいいというふうな考え方はやめてもらいたい。先般、三塚さんがそれを言いましたので、私は判例の解説のプリントを持っていきまして、三塚さん、これ上げますからよく読んでおいてください、これを読んだ以上は企業献金は自由であるなどと大きなこと言わぬでくださいといって申しておきましたが、その復そういう声は聞いておりませんけれども、そういう性質のものでございますので、ぜひこの点は企業側も考えなきゃいかぬし、政治家側といいますか、献金を受ける側も考えていただきたい。  その意味で私は、個人献金については、やはりこれは個人から個人に対する献金というふうなアメリカ式の考え方でなきゃいかぬ。それから会社からのもの、もし認めるとすれば、これは政党に対するものに限るというふうなことでなければいかぬと私は考えております。  以上でございます。
  23. 豊田潤多郎

    ○豊田委員 今の岡原さんの御答弁は、まさに政府案、我々連立与党が後押しをいたしまして政府が提案させていただいている案と同じというふうに理解させていただきたいと思います。  それからもう一点、重ねて恐縮ですが、政党助成の問題。これが自民党案によりますと国民一人当たり二百五十円、政府案ですと国民一人当たり三百二十五円ということで計算される。約まあ自民党案ですと三百九億円、政府案ですと四百十四億円ということになります。  その点について自民党からは、政府案は非常に金額が多過ぎるという指摘もあるわけですが、逆に私は、今までのような政治家個人への企業団体献金を認めておきながら、さらに約三百九億円、一人当たり二百五十円の政党助成を認める自民党案の方が少し問題があり過ぎるのではないかという気がいたしますが、その点についてちょっと一言簡単にお願いいたします。  それで最後に、済みません、大宅さんに総括的に御質問いたしますので、岡原さん、ひとつその点の政党助成のこと、簡潔にお答えいただきたいと思います。
  24. 岡原昌男

    岡原参考人 公費助成の金額の問題でございますが、実は私としては、どっちがいいかということを申し上げかねる。  というのは、この金額の問題について、実際とれだけ金がかかるかということについてよくわからないのです。要するに、現在の使い方というものが非常に野方図な使い方をしておりますので、まあそう言っちゃ悪いけれども、それを基準に三分の一とかなんかというのもおかしいし、要するに、納税者といたしましては少ない方がよろしいと。  しかし、先ほど言ったように、企業献金を徹底的に少なくするならば、その反対として国民は、この政治家国民のために働いておる政治家の活動のために、正しい活動のために金を出すのは当然であるというふうなことでございまして、あとはひとつお任せいたします。
  25. 豊田潤多郎

    ○豊田委員 わかりました。大変どうも示唆に富む御意見ありがとうございました。時間もあと残り少なになってまいりました。  最後に大宅さんの方に、今までの岡原参考人と私の間でのやりとり、また岡原参考人の配付なさいましたこのペーパーをごらんになりまして、一番最初に、生活者スタンスから政治改革を何としても早く成立させるべきだという御意見が冒頭にございましたけれども、我々政府、また連立与党はできるだけ年内にこれを何としても成立させるべく、何とかこの自民党との間の溝を埋めたい、何とかその案を成立させたいということで努力しているわけでございます。  その点につきまして、まさに岡原参考人からは大変示唆に富む具体的な御指摘があったわけですが、この点を総括的にごらんになりまして、大宅参考人の方から、このような形での妥協案なりまとめ方につきまして御意見がございましたら、最後にお願いいたしたいと思います。
  26. 大宅映子

    大宅参考人 先ほどから申し上げているんですが、政治改革政治家改革でとどまらず、本当に日本の国の政治を変えるためになるべく早くやってほしいということが基本です。  さっき私、申し上げるのを自分で書いてきて忘れたんですが、バツつけたいというのが岡原参考人から出てきて、そうなんだ、そうなんだと思いました。棄権する人が多いとか国民の意識がと言われるたびに、だって入れる人いないんだもん、バツつけさせてくれるんなら行くわよという声がたくさんあるわけですよ。だから、そういう意味でバツつけるというのを私大分前にテレビで言ったことがあるのです。そしたら、そんなもの無理ですと言われて、一言のもとに却下されてしまったのですけれども、法律の大専門家が言ってくださっているから、もしかしたらこれは見込みがあるなと思って、ちょっと楽しみにしています。  それから、今のお金なんですが、お金も納税者としては少ない方がいいと岡原さんおっしゃいましたけれども、長期的に見て本当に政治家皆さんお金集めに腐心しなくて済むようになるのであれば、私はお金がかかってもいいと思っているわけです、本気で。多過ぎるって、何に比べて多過ぎるかというのは別に基準がないわけですから。  で、最初の話に戻りますけれども、どこまでの活動が政治活動として認められて、民主主義コストとしてはここまでだというのをどうにか出す方法というのはないのでしょうか。それを基準にして、じゃこのぐらい要りますねという話が逆に出てくる話で、一人頭何円という話ではどうしてもないような気がするのです。  以上です。
  27. 豊田潤多郎

    ○豊田委員 時間が参りましたので、これで質疑を終わらせていただきます。お二人の参考人の方、大変どうもありがとうございました。
  28. 石井一

    石井委員長 次に、逢沢一郎君。
  29. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 自民党の逢沢一郎でございます。お二人の参考人には、きょうは大変お忙しい中お出ましをいただきまして、貴重な御所見をお伺いすることができまして、心からお礼を申し上げたいと思います。  私に与えられました時間は四十分ということでございますので、早速幾つかのことにつきまして質問をさせていただきたいと思うわけであります。  政治改革の議論も既に相当な時間、日数を要してまいりまして、いよいよこれからが大詰め、まとめ、与野党の合意点を見出す、そういう一番大切な時期に差しかかったというふうに認識をいたしております。もちろん、国民多くの皆さんの期待にこたえて、どうしても今回は政治改革をなし遂げなきゃならぬ、私どももそういう強い思いを持ってこの改革の議論に積極的に参画をいたしているわけであります。  冒頭の意見陳述の中で既にお触れをいただいたこととも多少重なるかと思うのですが、今回の政治改革は、まあ考えてみれば日本政治の土俵あるいは枠組みをもう一からつくり直す大変な大事業というふうに言えると思うのですね。この政治改革ができなければ、経済の構造の見直し、あるいは行政や財政の本当の意味で突っ込んだ見直しもやはりできない。政治改革一つのネックになっている、それは確かな話ではないかと思いますし、まあ癒着という言葉が適当かどうかはいろいろ議論があるかもしれませんが、確かに政治の世界、そして官界、経済界、これらの関係もやはり見直されてしかるべきだな、そういう率直な実感を私も持つわけであります。  そこで、両参考人にお伺いしたいわけでありますが、今回の政治改革が実現をした暁には、これは与野党がここまで歩み寄っているわけでありますから、まあ常識的には合意点、妥協点というのはその中間に求めるということになるわけでありますが、政治改革ができた後の経済やあるいは国民生活国民意識に、それはいろいろな大きな影響があると思うのですね。  その影響というのは、やはりプラスの影響にしていかなきゃいけないなというふうに積極的に私どもとらえているわけでありますが、この政治改革ができたということで、まあ大きく言えば日本の経済社会が、あるいは国民生活の実態やあるいは国民意識がどういうふうに変化をするという展望を両参考人がお持ちであるかということをまずお伺いをいたしたいと思います。
  30. 大宅映子

    大宅参考人 とりあえず、何しろこれをクリアしていただかないと、何も見えないということだと思うのですね。  今、生活者側としては一番困るのは、あなたたちが物を買わないから経済が、景気が悪いと言われると本当に困るので、実は私たちは、今まで新製品が出たといっては、みんなも買ったからといって買わされて、使えるのだけれどもまたそれを捨てて新しいものを買うというのをやってきた。洋服が、ことしはこれがはやりですと言われると、もうたんすがいっぱいなのに買ってきた。  今になってよく考えると、別に洋服も着られるものはたくさんあるし、もう入れるところもないし、車も普通に動くし、電気製品もみんな壊れてないし、ああこの方が人にあおられないで結構コンフォダブルで、この方がいいのだというふうに思っているわけですよね。  ただ、そうやると日本経済の活気がなくなってしまうじゃないかというふうに言われるのですが、今までみたいにいつでも右上がりでどんどんいくというのは、どう考えても無理ですよね。環境問題を考えても南北問題を考えても、日本がこれ以上のぜいたくをするというのは無理ですよね。  でも、人々がより豊かな暮らしをしたいというこの願望を抑えることは無理ですよね。江戸時代みたいになって、みんな仙人みたいに洗濯板で洗濯してみたいな話というのは、そこに戻ることは絶対無理なわけですよね。じゃ、どういう形がというのが見えてないわけですね、今。その不安ですよね。老後の不安と、どういう日本の社会というのがありようなのかというのが見えていない。  その根っこが、企業なんかはもう結構リストラが始まっていますし、動き始めているのだけれども、一番の根本である政治が一番おくれているということ。そこが動いてくれないと、さっきから言っていらしたような政官財の癒着とか、本当は私たちに欲しいところにお金が流れてないということですよね。それがみんなにわかってきたわけです。  それが本当にうまく流れるようになれば、ただただ人がやっているぜいたくを私もしたいというのではない、本当の豊かさの実感できる暮らしというのができる可能性があると思うのですね。それを見せていただければ、ああそうか、みんなにあおられて、こうやって人の物差しであおられていたのじゃなくても、今までに変な要らないところに流れていた金が私たち向けに来るようになるのだわということになれば、私たちも将来に対して明るい見通しが出るはずだと私は思っています。  ですから、何しろやっていただかないとだめなので、やっていただければ多分その見通しが見えてくるのじゃないかと思っています。
  31. 岡原昌男

    岡原参考人 今度の細川内閣成立とともに日本政治情勢ががらりと変わり、恐らくこれから行政改革、財政改革が進められる段階になると思います。そのために、国民が一致して推す議員皆さん方による思い切った改革を私は希望いたしており、またそれができると思っております。  例えば、地方行政の根本的な改革と申しますか、中央集権を分散いたしまして地方にこれを与える。その一つの方法として例えば許認可事項を整理する。これは今一万九百件あるというのが大分減ってまいりつつありますけれども、まだ不徹底でございます。これはやはり地方の住民に直結するそのそれぞれの地方事情による裁定をすればいいのでありまして、中央で一々細かいことまで枠をはめる必要はない。それによって日本の経済は動きが非常に悪くなっているのみならず、対外的な関係においても非常に不利をこうむっております。  例えば、アメリカの方から経済使節がやってきまして、日本の談合のあり方について文句を言っております。これは当然であります。いかにも不公正なことで、私は千葉の検事正時代に大きな談合事件を検挙いたしまして、そのときに、その談合問題の最も中心の悪い点はどういうことかというところを見つけまして、これを当時の事業主体である県知事に進言したことがございました。今度のゼネコンの検挙によりまして、恐らく検察庁のみならず、政財界ともいろいろな談合の悪い点について徹底的に考え直すいい機会だと私は思っております。  ですから、今度の政治改革と同時にこれを断行していただきたい。こういうふうな従来の悪弊を根本的に直していただきたい。従来は、ともするとこの政財官のトライアングルという、がっちりと組んで、その間に構造汚職を繰り返しておったということは、この政治改革によって新しい空気が日本に導入され、それに伴って今のような諸改革が割合にやりやすくなってくるのじゃなかろうか。  細川さんも武村さんも地方行政の責任者たる地位におられた人でございますので、そういう問題点はことごとく御承知のことと思いますので、それを片っ端から直してもらいたい。そういうことをすることによって日本の経済全体が明るくなって、そうして今の不況の打開にも若干の寄与するところがあるのじゃないか、こういうふうに考えますので、ぜひこの改革は急速に、しかも間違いなくこの国会内で成立させていただきたい、かように考えるわけでございます。
  32. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 ありがとうございました。  そこで、今回の政治改革に伴って、じゃ一体将来の政党政治像、政権像をどう展望したらいいか、そういうことはまさに当事者である我々の間でも大変議論をしているわけでありますが、両参考人にそれぞれの理想政治の姿、ある程度具体的にお持ちなのか、あるいはおぼろげながらこういうスタイルというのが将来の日本にあるべき政治の姿じゃないかというふうにお考えなのか、その辺のところをお伺いしたいわけであります。  一つよく出る議論では、二大政党制があるいは穏健な多党制という言葉がよく使われますが、幾つかの政党あるいは政治グループに分かれての政治ということがよく議論になります。  二大政党制ということになりますと、これははっきり政権は単独で一つ政党が担うということになりますし、多党制ということになれば、例えば今回の並立制でも、小選挙区と比例区の割合によっても、多党制でも場合によっては、選挙制度によっては単独政権も可能でありましょうし、あるいは制度によれば、ちょっと当面はこれは連立していくしかないなということが制度上もたらされるということがあろうかと思います。  単独で政権を担うということになれば、それは何といっても責任の所在がはっきりするし、政党政治そのものが機能するとすれば、やはり何か物事にレスポンスするときも早い、責任も明確だ、そういうことがあるでしょう。  あるいは連立政権ということになれば、どうしても公党間で議論をしなければいけない、相対的には時間がかかるということになるけれども、しかし、民主主義を考えれば、その政策ができ上がってくる、あるいは物事が決定されるプロセスが国民に見えるということが政治の成熟に随分意味があるんだという評価もあろうかと思いますが、両参考人、どうでしょうか、御自身が将来の日本政治、どういう政党政治を望んでおられるのか、あるいはこうあるべきじゃないかということをお考えなのか、時間の都合もございますので、ぜひ御所見を簡潔にお伺いいたしたいと思います。
  33. 大宅映子

    大宅参考人 さっきからちょっと申し上げたのですけれども、何かしっぽを、結論を先に決めて、それをやるために制度を変えるというのは、私はどうしても余り好きじゃないのですね。  例えば駆けっこがあったとする。この子はいつも一等賞になるので、この子を二等賞にするためにスタートで何か変えよう。何か駆けっこというのは用意ドンで速さを競うわけですよね。それと同じに、主たる目的が、国民の民意を反映して、国全体を見たときに一番いい政治を行うという前提があって、そのためにどういうシステムがいいか。その結果がどうなるかは国民の意識の問題なんですよね。だからアメリカの二大政党みたいなのがいいみたい。だから二大政党という話というのは、どうも私は違うんじゃないかという気がしてしょうがないのです。  だから、基本的に政治家がちゃんと政治活動ができて、その政治政策を論じている場が全部我々によく見えて、みんながちゃんと論じ合って、では今これですねというちゃんと意思決定の過程が見えて、それをチェックする国民の意識もちゃんとあって、変なことをしたら落とすというちゃんと国民側の力もあって、結果がどうなるかは、それはもう見ないとわからないということなんじゃないかというふうに私は思っています。
  34. 岡原昌男

    岡原参考人 十九世紀にイギリスにグラッドストーンという有名な政治家が出ました。あの方はもともと金持ちのお坊ちゃんで、保守党の有力メンバーでございました。ところが、保守党が単独政権でございまして、これに競うものがいないというので、わがまま、横暴が募ったために、この有力なメンバーであるグラッドストーンが保守党から分裂いたしまして、自由党を創設いたしました。  そうして、両党が切磋琢磨することによって政治はよくなるんだという旗印とともに、保守党の党首であるディスレリーと議会政治のあり方、民主政治のあり方についていろいろ協議をいたしまして、それが一八八〇年の大きな選挙違反の発生を契機といたしまして、例の腐敗防止法ができることになった経過がございます。  そういうふうなことから見ますと、この大政治家と言われる方も、一党独裁ではこれはどうもいかぬ、わがままが高じて悪いことをして、お互いにかばい合うというその弊風がなくならない、やはりこれは反対党が健全に育って、これとの間でいろいろ競争するということでなければ国民が助からぬというふうなことに気がついたのでございます。  それと同じでございまして、自民党四十年の、正確に言うと三十八年ですか、この長年の一党独裁、この間の自民党の功績というものを私は高く評価しておると同時に、その末期に近づくに従って、そのおごりがついに今度の金丸事件に至って最高潮に達したというふうに見るわけでございます。これを繰り返してはいかぬ。そのためにはやはり野党が育たなければいかぬというので、私、今度の選挙の前後を通じまして新聞にいろいろ投書いたしまして、日本政治のあり方はこうでなければいかぬというふうなことを考えてやった次第でございます。  細川内閣が曲がりなりにも八党の協力で成立いたしました。極めてこれはまだ脆弱でございます。しかしながら、この脆弱な与党を自民党皆さんが今のうちにつぶせというのでしきりとやっておるあの姿は、私は好まない。ぜひ与野党協力して、日本国民のためにどういう線が一番いいのかというふうなことをやっていただきたいというふうに考えるわけでございまして、私は、最終的にはやはり二大政党的な存在でなければいかぬ、そういうふうに考えるわけでございます。  ただ、現在、議会政治の模範国と言われるイギリスにおきましても、先般の総選挙におきまして第一党、第二党のほかに第三党、四党がかなりの数を、三十名ですか、とりまして、これは二大政党といっても、そういう国民の相当多数に上る少数意見というものは尊重しなければいかぬというので、二大政党といいますか、小選挙区見直し論が出ております。  そういうことも御参考になって、私は、最終的には二大政党と申しますか二大ブロックと申しますか、とにかくそういうものの間で政権の争奪をする。こっちがまた二つに割れることもあるだろうし、こっちが三つに割れることがあるかもしらぬけれども、とにかく二つのブロックが相互に政権をやったりとったりする、それによって国民は最も自分たちに有利なことを考えてくれる政党の方に投票するというふうなことをやる、その切磋琢磨が必要であるというふうに考えておるわけでございます。
  35. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 そこで、続けて岡原先生にお伺いをいたしたいのですが、先ほどちょうだいいたしましたレジュメの二の二の七番のところの投票の仕方ですね。小選挙区で選びたい候補と応援したい政党が食い違う場合が多い。その現実を無視できない。したがって、現在においては二票制がよい。しかし、今言及なさいましたように、将来的には一票制への移行を考慮というふうなお考えをここで示しておられるわけでありますが、これを拝見いたしまして、かなり現実直視型というか弾力的というか、そういう思いを持ちました。  今回、中選挙制度から決別しよう、小選挙区を中心とした、そしてそれに比例代表制を加味した新しい選挙制度に移行しようというその決意の背景には、何といいますか、制度ですからどっちが百点満点ということではないけれども、ここでは本当に日本政治が大人にならなければいけない、やはり政党中心の、政策本位のそういう選挙をやりたいものだ、そういう政治をやっていこう。そのことを通じて、少し言葉を使えば、日本民主主義を成長させていこう、成熟させていこう、そういう一つ政治の決意といいますか意図というか、それを十二分に発揮をしたい、そしてそのことを正しく国民の皆様にも理解をしていただこう。  こう言うとちょっと恐縮かもしれませんけれども、国民の皆様に対して、そういう意味でより教育的であり啓蒙的な今回の議論をしたいと思うし、またその結果も、与党の皆さんもおっしゃっておられる政党中心、そして政策本位の政治にこれからなるのですよ、したがって、こういう制度にいたしました、そういう目的意識がしっかりしていなければいけない、そういうふうに思うのです。  その点で、一票制ということは今までの中選挙区から考えれば相当程度二大政治ブロック化を促進するということで、かなり気持ちの上で、一気に変わったなということで戸惑いは恐らく国民皆さんの間にあるでしょう。しかし、それを思い切ってやるのがまさに政治改革の意義であり、そこに新しい政治をスタートさせようという国会の意欲というか、決意が内外に示されるものではないか。  そういう意味で、私どもは、この一票制ということは、ここで大きく変えるのだということについてはどうしても譲れない制度なんだという考えに立っているわけでありますが、改めて先生の御所見を伺いたいと思います。
  36. 岡原昌男

    岡原参考人 一票制か二票制か、どっちがいいかという問題でございますが、今おっしゃるとおりに、理念的には確かに国民の意識というものは分裂しちゃいかぬ、小選挙区となった以上はこっちをとるか、こっちをとるかはっきりしろ、これはもうごもっともでございます。  ただ、現状を私つぶさに見ておりまして、それですべての問題を割り切ることができるかという観点から実は見直したわけでございまして、今の一般庶民の政治意識の程度におきましては、そう言っちゃ悪いのですが、これを割り切る能力はまだ不十分でございます。  私はそう考えておりまして、これを今すぐに一票に割り切ってしまえばかなりの混乱ができる。結局わけがわからぬから、何といいますか、棄権しておけというふうに走られちゃ困るというふうなことから、その意思が那辺にあるかということで、まず今回の法律では二票にして、そうして国民の意識の分裂がどの程度あるかということを確かめて、その上で考えた方がいいんじゃないかというのが、現実的な理論になるかもしれませんけれども、私の考え方でございます。  これはぜひ自民党でもお考え直しといいますか、ほかの問題と関連いたしまして、この程度のことはひとつ譲ってもいいじゃないかというふうに、大きなところからこれまた成長していただきたいというふうに考えるわけでございます。
  37. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 その大きなところから考えれば考えるほど、やはりこの問題は本当に大事だな、あえてそうすることによって本当に政治を変えることができる、私はそのように考えているわけでありますが、さらに国会において議論を深めてまいりたい、そのように思います。  時間も限りがありますので、次のテーマに移りたいわけでありますが、大宅参考人にお伺いをしたいのですけれども、先ほど政治資金、民主主義政治コストの負担のことについてお触れをいただきました。どこまでが必要なことなのか、それを明確に示し、それが言ってみれば政治本来の活動であり政策の研究であり、そういうことならば私も喜んでそのコストを負担しましょう、そして、国民大多数もきっとそういう思いを持っておるに違いない、そういう意見をお述べをいただいたわけであります。  大変そのとおりだというふうに思うわけでありますが、今回議論になっております公費の助成、政党への公費助成でございます。これは御存じのことと思うわけでありますが、改めて御紹介申し上げますと、連立与党案は総額四百十億円で、総理がよくおっしゃっておられましたように国民一人当たりコーヒー一杯、それを割り算いたしますと一人当たり三百三十五円になるそうであります。それに対して自民党の案は総額で三百九億円、一人頭二百五十円という格好になっています。  そこで、ここはちょっといろいろ議論があるところだろうと思うのです。つまり、せっかく国会に当選しても、何だかいろいろ聞いていると、政治活動のための必要なお金を、あるいは次の選挙のための準備のお金を、持っている時間、エネルギーの七割も八割も使ってそればかりやっていて、一体何のためにあなたは国会議員になったの、よくそういう話がジャーナリズムを通じて我々の耳の中にも飛び込んでくるわけであります。  確かに、私も国会に出させていただいて足かけ八年目になるわけでありますが、いささかそういうことにエネルギーを使ってきたということは否定しないわけでありますが、しかし同時に、忘れていけない議論があると思うのですね。  つまり、極端に言うと、じゃ国会に当選してきたら、じっとしていても自分の所属する政党を通じて公費がもらえて、それでもう政治活動が、まあ余裕とはいかないかもしれないけれども、賄うことができるということで、本当にそれで政治がいいんだろうかな、あるいは政治家がある意味で成長するのかなというところも、これはまじめに考えておかなければいけないところだろうと、実際に自分自身がやってみてそのことを感じるわけであります。  もちろん、国民の皆様の御理解をいただいて公費をいただかなければいけないところもあるでしょう。しかし、私の感覚からいえば、そうですね、全体の政治活動に必要な、上限が四分の一か二割か二割五分か、そういうところにむしろとどめるべきではないかな、そういう意見を持っているのです。  と申しますのも、やはり政治家というのは、当選をした後も引き続き自分政治に対する理想や夢や政策をできるだけたくさんの皆さんに語って、こういう人間ならば自分のポケットマネーも出してもいいな、あるいは自分のうちは中小企業でなかなかそんなに大変なことはできないけれども、月々五千円とか一万円とかそういう金額ならば出してもいいな、そういう部分をむしろここで忘れるべきではないんではないかなというふうに思います。  ちょっと差しさわりがある話になるかもしれませんけれども、そのときの勢い、ブームでとにかく当選をしてきてしまった、当選した。その意思というのは国民の意思だし、国民の選択でありますから、それは大変貴重な結果であろうかというふうに思うのです。  ただ、この前の総選挙が終わった後テレビを見ていましたら、選挙が終わった二日か三日後ですよ、テレビを見ていたら、あなたはどの方に入れましたか、たしか東京の団地の奥さんだったと思いますけれども、いやあ、だれに入れたか忘れました、選挙には行ったんだけれども忘れました。どの政党に入れたか、いやあ、それもたしか新しい何とかという政党だったと思うけれども、どの政党に入れたかもよく覚えていないし、だれかも忘れた。わずか選挙の二日、三日後ですよ。しかし、そういう形で当選された方も、もちろん国民の意思を反映をした立派な議員であるし、それは有権者の一つの審判だと思うのです。しかし、その後いろいろ何か経歴だとか、その前の行動に問題があったということも一部報道もされました。  つまり、そういう意味で本当に、選挙というのも一つの我々政治家にとっては高いハードルであるけれども、しかし、それだけでいいんだろうか。政治家がみずからの仕事をしていくために自分の考え方を述べて、それに共鳴、共感をしていただける方の浄財を集めていく。その部分をなくしてしまうということは、私は、政治にとって重大な問題を引き起こすことになるのではないか。  ただ、もちろん企業献金にいたしましても、一つの会社から何百万円とか、そういう単位になるとそれは問題外でしょう。したがって、本当に節度ある、自民党の案では一つ政治資金調達団体に月々二万円までという制約を設けているわけでありますが、そういうことはむしろ今私が申し上げたような意味で生かしていかなければいけない。それこそが国民皆さんにもより政治に参画をしていただく一つの大きな手段として大事にしていきたいというふうに考えているわけでありますが、大宅参考人の御意見を例えたらと思います。
  38. 大宅映子

    大宅参考人 全部お上で丸抱えというのがいいと思っているわけじゃないんです。さっき個人が出すというのはほとんど私は夢だということを申しました。個人が出したくなるような政治家になっていただきたいということなんです。  さっき、それじゃもらっただけで、国会に座っていてぼうっとしているというようなお話がありましたけれども、今ぼうっとしていられるのは、みんな立法案を行政にやってもらっているからですよね。議員立法を皆さんが本当におやりになるようになったら、ぼうっとしていられるはずがないわけですよ。  だから、本当に政治家自分たちの手で自分たちみずからの政策をつくるんだということになれば、多分そんなぼうっとしていられる暇はないと思うし、それをやってくださるようになって、この政治家はこういう政策を出したこういう人よとかというのが私たちみんなに見えてくるようになれば、多分私は自分でこの人には出しましょうというふうになると思うのです。今の状態だとだれもそんなものは見えないわけですから。基本的には、さっきおっしゃいました自分たちの仕事というところまでやっていただかなきゃ無理なんだと思います。
  39. 岡原昌男

    岡原参考人 アメリカのPACの制度をちょっと御説明申し上げたいと思いますが、アメリカの企業PACと申しますのは、企業献金を禁止するかわりに、その企業内に働く人たちの一人一人が例えば一ドル、そういう細かい金を献金することを喜んでやるというふうになっておるのが企業PAC制度でございます。ぜひそういうふうに日本でもいってほしいと思っております。  それからもう一つは、やはりこれをもらう限りは正しく使ってもらいたい。会計検査とは申しませんけれども、厳重な監査をして、それが国民に公表されて恥ずかしくないような使い方をしていただきたい。使い方にもよると私は考えます。  以上、ちょっと簡単に。
  40. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 ありがとうございました。  お金のことについて引き続きちょっと議論もしたいんですが、いわゆる企業献金ははなから悪なんだ、性悪説、そういう議論もございますね。どうでしょうかね、そうお思いになりますか、そうではないとお思いになりますか。
  41. 岡原昌男

    岡原参考人 企業献金そのものが悪とか善とかということよりも、法律的に余り理屈は通らないものであるということだけば申し上げたいと思います。  それはどういうことかといいますと、さっき言ったとおり、法人というのはその定款なり寄附行為に定められた事業の範囲で生きているものでございまして、それ以外のものについてはできない、つまり適法性がないわけでございます。その意味で、先ほど言った八幡製鉄の事件におきましてもその点が真っ先に唱えられておるわけでございまして、その意味で、企業献金というものが現在のような形で数百万、数千万あるいは億といったような単位で入ってくるというのは、これは悪です、私の評価からいいますと。これはあるべからざることである。だから、これを何とか直してもらわなきゃいかぬ、こういうふうに考えております。
  42. 大宅映子

    大宅参考人 私は法律的なことはわかりませんけれども、初めに企業献金は悪であるからスタートするということに関しては反対です。別に法律上と言われると、私たちにはそこまでの知識はありませんから。ただ、企業からの献金は悪というのが大前提で、その中身を問わずにそのまま走り出すということに関しては、問題があるというふうに思っております。
  43. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 ありがとうございました。  それでは、もうあと残りの時間も五分ほどでございますので、最後一、二問になろうかと思うのですが、冒頭にも申し上げましたように、ここまで議論を積み上げてまいりました。そして、きょうは大先輩といいますか、大長老の岡原先生からの天の声も出たようなことでありまして、いよいよ第四コーナーを回ってホームストレッチに入ってきたな、いよいよ何としても転ばずにテープを切らなきゃならぬというところに来たというふうに思うのです。  そこで、しかし改革が実現した後、新しい制度というか仕組みを本当に生かさなきゃいけない。せっかくこれだけの大改革をやろうとしているわけでありますから、制度が変わってよくなるということだったんだけれども、どうも実態がそれについていけないというか伴わないということになったんじゃ、これは一体何のためにやったのかということになろうかと思うのです、  今国民の皆様が想像してみて、将来を予測してみて、ううん、どうなるかな、どうなるでしょうかねということで一番気をもんでいるのは、やはり選挙のことですよね。小選挙区になりますと、つまり今なら、私の選挙区は岡山一区というところですが、七、八人立候補して五人当選できる選挙。それがとにかくもう少し小さい区域に分かれて、当選者は一人ずつということでありますから、どういう選挙になるのか。  本当に額面どおり政党中心、政策本位の選挙になればいいんだろうけれども、じゃ、どういう政党同士がぶつかって、しかしもう政権交代も行って、前政権の基本政策を引き継ぐと言っているから、外交とか防衛とかあるいはエネルギーとか、今までは確かに選ぶ有権者の側から見ていると、明らかにこういう政策の違いがあるわねという部分が、今度連立側の方が連立を解いた段階でまたそれぞれの政党に戻れば、また固有の政策に戻れて、選挙になればまたそういう色合いができてくるのかもしれませんが、その辺のところにまじめな国民、有権者の皆さんはある種の不安というか展望を描き切れてない状況、そういう心理状況におられると思うのですね。  お金のことにしても、もちろんこれは何としても奄美大島のようなことになら保ないようにしなきゃならぬわけでありますが、しかし、当選者は一人だけということになると、とにかくそんなことも言っていられない。超現実論に立てはという議論の展開を岡原先生も先ほど一票制、二票制のところでしていただいたわけでありますから、そのことはよく御理解がいただけると思うのです。  しかし、変える以上は、やはりそんな大変なことになっちゃいけないわけでありますから、どういう国民国民の努力が必要なのか、あるいは我々政党人は政党人としての努力が必要なのか、そこのところがやはり一番大切なことになってくる。  そこの努力が足らなければ、本当に政党本位、政策本位じゃなくて、もう本当に情実の、お金がかかるよりひどい状況になるという危険性もないことはないなということは当然考えておかなきゃいけないと思うわけでありますが、新しい仕組みをつくる、制度をつくる、それをもとに政治をよくするためにはどうしなきゃいけないか、国民はどうしなきゃいけないか、政治家は、政党は。最後に両先生から御所見を伺いたいと思います。
  44. 岡原昌男

    岡原参考人 イギリスの腐敗防止法ができるまでの経過を申し上げますと、あれができるまでは、先ほど三年と申しましたが、その前段階において日本の現在やっておるようなごたごたがしばらくあったわけでございます。結局、いろいろ法律をつくって、これでもだめ、これでもだめ、それで一八五四年に既に腐敗防止法の初期の法律ができております。それでだめ。それから、その後六八年、七二年といろいろ改正しましたけれども、八〇年に大違反が発生いたしました。  要するに、その法律を守るという皆様方の意思が固まらなきゃいかぬ、それが先決でございます。国民はそれを見ているだけでございまして、ぜひ自己改革、意識改革というものを先にやっていただきたい。そして、やればできるという気持ちでこの改革を進めてもらいたい。  今度の法律で依然として何かまずい点があれば、直ちにそれを直すということを重ねなきゃいかぬ。選挙区などというものはしょっちゅう変わって差し支えないものなので、これは不安定になりますけれども、理屈からいうとアメリカの下院議員の数の変動と、先ほど申し上げましたが、それと同じで、要するにこれでやってみてだめ、それならまた変わるというふうなのが本当の法律のやり方だと私は考えます。それに国会は怯懦であってはいかぬ、かように考えるわけでございます。
  45. 大宅映子

    大宅参考人 今まさにおっしゃられたことは私たちが今一番戸惑っているところでして、前のように政策が明らかに違っている場合だったら、政党で選びますというのはいとやすかったのですけれども、今社会党が中にお入りになりましたら大変現実路線になられまして、今度ばらばらになって党として出てきても、果たしてどのぐらいの差が出るのだろうか、そこが一番問題なんですね。社会党が、反対していらっしゃる方も含んだ上でまだやはり社会党ですというふうにおっしゃられると、多分わからないと思うのですね、私たちには政策が。  だから、政党政策で選ぶという話であれば、どこが本当に違うのか、本気でこれに反対しているのか、党内をまとめるために反対しているのかというのが、困るわけですよ。だからそれがちゃんと出てこない限り選べないし、また、私たち選ぶ側からすると、私は東京なものですから本当に温泉に行ったことも何もないし、おむすびの中に一万円札が入っていたこともないわけですけれども、そういうので後援会というのはどうなるのか。今回原先生おっしゃったみたいに選挙区がしょっちゅう変わってしまうぐらいの方が、もしかしたらいいのかななんというふうに思ったりもしております。  以上です。
  46. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 時間が参りましたので、質問を終わります。ありがとうございました。
  47. 石井一

    石井委員長 最後に、吉井英勝君。
  48. 吉井英勝

    吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。本日はどうも御苦労さまでございます。  岡原参考人に主としてお伺いしたいと思うのですが、先ほど八幡製鉄判決について、企業献金は個人から個人へ、本来そういうふうに改めるべきだという御発言など、関心を持って聞かせていただきました。これまでいろいろこの関係で書かれたものなども若干読ませていただきましたけれども、政治腐敗の防止に随分関心を持っておられるように伺っております。  そこで伺いたいのですが、この一年間ほどの世界の動きを見ておりましても、小選挙制度のフランスでも、比例代表制度のイタリアでも、小選挙区併用制のドイツでも、小選挙並立制の韓国でも、どこでも政官財を含んだすさまじい大規模な汚職事件が発生したり、あるいは金権買収選挙が大きな問題になってきました。ですから、もともと政治と金というのが政治改革の原点ということになっておりますし、国民皆さんも腐敗を防止せよ、ここに一番の政治改革の問題点、原点ということを見ていると思うのですが、結局選挙制度を変えても腐敗はなくならないということは、世界各国の例をみても大体あらわれていると思うのです。  そうすると、この腐敗防止には別な手法を考えなければいけないということも出てくると思うのです。随分その点についてお書きになっておられますが、この機会に改めて伺ってみたいと思います。
  49. 岡原昌男

    岡原参考人 選挙制度とそれによって選ばれた議員による涜職、これは直接の関係はございません。ただし、今の中選挙制度というものがかなり同士打ちをやる、その結果非常に金の乱れ飛ぶ状況がある。要するに中選挙区の制度疲労が甚だしいということも、これはもう間違いのないところでございまして、腐敗の一つの原因をなしていることは、これはもう間違いないところでございます。金が要るからあちこちもらって歩く、それで結局悪い金に手を出すということの繰り返してございまして、これを徹底的になくするにはどうするか。  これは、私がイギリスの腐敗防止法の制定並びにその後の経過について研究したところによりますと、やはりそういうことをした議員を直ちにその籍から外すという資格剥奪という制度が功を奏しているように考えるわけでございます。のみならず、議員の方ではなくて一般有権者についても、公民権を停止するということを徹底的にやっております。  例えば公民権停止の結果どうなるかというと、公職につくこと自体、公職ですよ、一般公職につくことに差しさわりが出る。単に投票ができない、選挙に立てないというだけではなくて、公職にもつけないというほど厳密なことをやったわけです。それから、議員についてはその選挙区から永久に立候補禁止、これは現在は今の国民代表法で変わりまして、たしか十年間というふうに停止期間が短縮されておりますけれども、それほどのことでイギリスは立ち直ったわけでございます。  ですから私は、そういう法律からはみ出して選挙運動をした者は一種のアウトロー、つまり枠外に出た人であるから、これに対する法律的な保護といいますか、これは外さなくてはいかぬ。そのために、そういう人の意見国会に反映さすべきではない。同時に、金をもらった方の有権者についても、同様これを排除すべきであるということを徹底してやったために、イギリスはこれに成功したわけでございます。  そういうあれから考えますと、落ち着くところはやはり資格を停止するという、当選無効並びに立候補停止のみならず、選挙権も停止するという公民権停止の方向でこれを徹底してやらなければ、私はよくならぬと思います。ですから、そういう方向に私は今動きつつあるわけでございます。
  50. 吉井英勝

    吉井委員 結局、選挙制度を変えても腐敗はなくならないわけで、ですから、中選挙区制であれば、制度疲労というのはこれは全く違う議論であって、中選挙区制でいうならば定数の抜本是正とか、そして徹底した腐敗防止のための手法を導入することが、制度としての疲労というものを生み出さないという最大の問題であると思うわけです。  連座制と公民権の停止の強化を中心とした公職選挙法の改正などを具体的に提起されたりしていらっしゃいますが、つまり、入った金の使い方の問題ですね。もう一つは、入る金を規制するという問題があると思うのです。  入る金については、いろいろ法律はあっても、小口分散化して届け出ないでもいいようにする脱法行為を行うとか、あるいは広告料名目のやみ献金など、いろいろな抜け道をそのままにしておいたのでは結局だめなわけであって、ですから、どういう法律をつくっても抜け道があるというのは、要は企業団体献金を全面的に禁止する以外に結局防ぐことはできないわけで、参考人の方も先ほど八幡製鉄の判決に関連して、本来個人から個人へというお話でありますが、この企業団体献金の全面禁止ということについてはどういうふうなお考えでしょうか。
  51. 岡原昌男

    岡原参考人 できればそういう方向に行きたいと思います。ただ、あの判決をよく読んでいただきますとわかると思いますが、これだけ企業献金がその当時、あれは昭和三十五年の事件でございます、行き渡っておったのでは、最高裁があれをやれるわけがないです、違憲であるとか違反であるというふうなことに。全部の候補者がひっかかるような、そういうことは実際上としてやれない。したがって、あれは助けた判決、俗に我々助けた判決というものでございます。  ですから、方向としては、詳細に読んでいきますと、これは極めてその範囲が狭いんだということを書いてございますが、あれによって考えていただきたいと思うわけでございます。  それからもう一つ選挙制度とは直接の関係がないと言ったのは少し言い過ぎでございまして、中選挙制度の同士打ちが候補者の金を欲しがる意識を高めたということは、これは間違いございません。そこで、ある涜職の議員が、選挙が近づくと泥棒をしてでも金が欲しくなる、あれが心理だと思います。私は一その気持ちはわかりますけれども、そうあってはならない。ぜひその点は議員諸公並びに立候補する方は考えていただきたい。  それで、中選挙制度制度疲労の状況その他について今さらここで議論する必要はないと思いますけれども、民間政治臨調におきまして例の「日本変革のヴィジョン」という本をまとめて最終に出しております。あれをぜひ皆様お読み願いたいと思います。日本の進むべき方向が書いてあると私は考えております。
  52. 吉井英勝

    吉井委員 その問題については、ここでずっとやっておりますのでおいておきますが、最後に一点、国の公共事業を行うゼネコンが国政選挙に参加してきて、ゼネコン選挙対策本部までつくって、人も金も機材も含めて寄附行為を行ったり、特定候補者の選挙運動を行っている問題などもあります。ゼネコンも下請も、選挙応援しないと次の国などの公共事業が天の声でもらえないということで応援したりしているわけですが、候補者の側の中にも、ゼネコンの応援を受けております、当然のことだと言っておる人もおるわけですが、これではゼネコン汚職が絶えなくなりますね。  そこで、私は最後に一点お聞きしておきたいのは、こういう問題は公職選挙法百九十九条や二百二十一条が不備なのか、法を厳正に執行しない方がうまくないのか、この点についての参考人のお考えを伺いたいと思います。
  53. 岡原昌男

    岡原参考人 ゼネコン汚職にも関連いたしますが、今回の選挙の最中にある大臣が関係の企業に寄附を仰せつけた、あれはとんでもない話なんでございまして、今おっしゃる百九十九条、二百条、罰則が二百四十九条、あの辺にございます。  結局ああいう規定が設けられた趣旨は、これをちょっと踏み外すと、契約関係があればそれにひっかかります。同時に、それに職務関係が絡むと涜職になります。これは非常に公務員の道徳にも反することでございますので、ああいうことはぜひやめていただきたい。私は、ああいうことを大臣が言い出すほど当時の自民党はおごっておったというふうに解釈しております。
  54. 吉井英勝

    吉井委員 終わります。
  55. 石井一

    石井委員長 これにて午前中の参考人に対する質疑は終了いたしました。  両参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  56. 石井一

    石井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  ただいま御出席をいただいております参考人は、上智大学教授猪口邦子さん、慶應義塾大学教授小林節君、東京大学教授佐々木毅君であります。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。本委員会での審査に資するため、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  次に、議事の順序でありますが、猪口参考人小林参考人佐々木参考人順序で、お一人二十分程度に取りまとめて御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。  それでは、猪口参考人にお願いいたします。
  57. 猪口邦子

    猪口参考人 きょうは参考人として意見を表明する機会に恵まれましたことを大変光栄に存じます。  私の専門は国際政治でございますが、世界の中の日本を考える一人の研究者として、あるいは一人の市民、あるいは母親として、この重要な問題について意見を述べさせていただきます。  政治改革への議論に熱心に取り組んでくださいましたことについては敬意を表したいと存じますが、ここで改めて、何のための改革であり、それから政治改革法案を評価するときの基準とはどういうものかということについて、かなり根本的なことでございますけれども、お考えいただくようお願い申し上げたいと思います。  私が思いますに、以下のような評価基準を強く意識することが重要であり、どのような政治改革法案も以下の点を補強する必要があろうと思います。  四点あるんですけれども、まず第一に、都市人口と農村人口はどこまで公平に政治代表を選出できるかという点です。それから第二に、男性と女性はどこまで公平に政治代表を選出できるかという点です。第三に寸政治腐敗を根絶し、政治資金の流れの公開性を義務づけることができるかということです。それから四番目に、政党の組織運営を民主化し、また知的に高度化し、国際的な指導力を発揮できる存在へと発展させることができるかという、この四点について議論申し上げたいと思います。  まず第一の、都市人口と農村人口はどこまで公平に政治代表を選出できるかという点でございますけれども、これについては、中選挙制度か、あるいは小選挙制度か、あるいは比例代表並立制とかという選挙制度自体の相違によるというよりも、人口と代表の比率を法律によってある程度自動的に調整するような仕組みを取り入れることが必要であると考えます。  現行のように、裁判所の判決を見ながら調整するというより、どのような選挙制度を採用するにしても、人口とそれから代表の比率を公平にする仕組みを法律的に組み入れることは、今後一層日本の社会が発展し、また就労形態が変化し、それとともに人口移動が自由に起こる社会を想定すれば、必要なことであると存じます。  御存じのとおり、例えばアメリカの議会でも、上院は各州から二名、それから下院では代表数が人口の変化に応じて変化する仕組みになっておりますし、何らかの形で自動性を取り入れている先進国は少なくございません。  また、地域による政治代表の公平性ということを考えるときには、以下の二つの視点を同時的にとらえる複眼性が必要であるというふうに思います。  第一に、どのような過疎地域でもしっかりと代表を出せる仕組みが法律によって規定される必要があります。とりわけ日本での農業の重要性を考えるとき、農村部が政治的に的確に代表される保障は必要であると考えます。ただし、現代日本において農村からの代表だけで農業が守れる時代は終わり、農業は都市住民にとっても、例えば子供たちの食糧の安全性や国土の保全という観点から重要になっているわけで、むしろ都市人口とともに国民的な合意によって、つまり、生産者と消費者の国民的合意によって守る時代となりつつあります。  ですから、都市対農村という二項対立的な構図で考えることは時代おくれでありまして、都市人口の政治代表もまた日本の農村を真に強化することを考える立場にあると思います。むしろ都市人口の政治代表の方が、変動する世界の中でどのように政治的に、また戦略的に、また効果的に日本の農業を守るかを考える立場にあるかもしれません。  これからの時代は、国際社会との整合性なくして、どのような国益も長期的には守り切ることはできません。ですから、過疎地域の政治代表を保障することは必要ですが、日本の農業を守るために農業人口の政治代表のみを不公平なまでに重視する選挙制度は、改善の必要があるかと存じます。  それから、第二のこの点に関連する点ですが、普通の生活者の日常や人生がもっと国の豊かさを実感できるようにする社会改革が必要ではないかと思います。生活者が最も多く暮らす都市の政治代表が今まで日本の社会では少な過ぎて、この点が後回しにされてきたのではないかと思います。  例えば生産者は、農業にしても産業にしても、組織化された勢力となってみずからの利益を守る術を有しているわけですが、普通の消費者や生活者は、組織化された勢力とはなりにくいわけであります。ですから、政治家こそがその立場を守る役割を負っていると思うのですが、都市人口の政治代表は少な過ぎ、最も人口的に多いただの普通の生活者や就労者の利益が、国政全体の中で十分に代表されているとは言いがたかったのではないかと思います。  ここで、有権者一人一人のかけがえのない人生をひとしく大事にするという政治の基本姿勢についてお考えいただきたいと思うのです。ですから、代表の配分の公平性という概念について、もっと真正面から御議論いただけてもよかったのではないかと思います。これが第一点であります。  それから第二点は、男性と女性はどこまで公平に政治代表を選出できるかという点でございます。  男性と女性の政治代表については、日本が他の先進民主主義国の水準を著しく逸脱するほど不公平な水準にあることは言うまでもないわけで、ノルウェー、スウェーデンの例を挙げるまでもなく、そのような北欧の国々を初め多くの国で、女性が国会議員の三分の一以上を占めたり、あるいは閣僚の女性の割合の増加について積極的な姿勢をとる国が多いことは、御存じのとおりであります。  日本の社会では、全般的に女性の参画の水準が他の先進民主主義国と比べると著しく問題があるわけです。例えば一つの例を挙げれば、国連開発計画で作成している人間開発指標というのがございますけれども、これによると日本は世界二位ですが、男女平等の度合いを加味すると一気に十八位に落ち込むということで、日本の女性の社会参画をめぐる問題の深刻さは、今日では国際社会からも指弾されるような問題になっております。  国会は、本来そのような問題について模範的な方向性を示す立場にあると思いますが、むしろ女性の政治代表は非常に少なく、私は一人の女性市民として、このことを残念に思います。  どのような選挙制度改革案も、女性議員を大幅に増加するという点についての合意がなければ、実質的には重大な欠陥を持っていると言わざるを得ないと思います。従来の中選挙制度のもとでは女性代表は著しく少なかったわけですけれども、小選挙区比例代表並立制にしても、女性の政治代表の増加が促進されるかは疑問なわけで、むしろ、一人しか立てられないのなら男性をという発想に帰着することがないように、強い合意をごの際形成しておく必要があるというふうに思います。  そのためには、各政党とも党内組織を民主化し、それから女性差別があるとすればそれを完全に克服することが必要でありますし、それがなされなければ、やはり重大な正義の侵害があると私は考えたいと思います。  この問題についての本格的な問題認識がこの国会に十分にあることを証明するために、できれば、どのような政治改革を行う場合においても、日本政治における女性の政治代表を大幅に増加し、意思決定過程に女性の意見を公平に代表させる先進社会を築くという内容の国会決議を行っていただけないかとお願い申し上げたいと思います。例えば、比例代表名簿をつくるときも、一人置きないし二人置きに必ず各政党とも女性を入れるというような政党意思といいますか、そういうディシジョンが必要であるというふうに思います。  この問題は、間接的ではありますけれども、政治腐敗防止の問題に重要な意味合いがあります。  御存じのとおり、これは半分冗談ですけれども、とにかく政治腐敗のニュースが流れるときには、テレビの画面は男性一色の風景となるわけでありまして、これは結果論ですが、男性だけの閉ざされた閉域における行動原理が、日本の社会の良識や常識や市民的金銭感覚からほど遠いところに日本政治を連れ去ってしまったのではないかという気がするからであります。  私は、決して女性で世の中が救えるとは楽観しておりません。しかし、異質な常識的な勢力が日本の政界の本流に参入することによって、特権的な男性だけの閉ざされた世界で培ってきたような金銭感覚や行動原理の異常さに皆で気がつくきっかけになると思うのです。  例えば、建設業界の談合体質とか政界との癒着問題も、すべて男性だけの異様な世界で起きています。どのような社会も、同質的な勢力によって特権的な立場が長期にわたって独占されていれば、思わぬ非常識がまかり通ることになるようになると思います。  ですから、それを正すには、従来からは本流から外されてきた異質な勢力と遭遇する必要があるわけで、普通の常敵を取り戻すための一つの実質的な答えがそこなんでありまして、例えばこの部屋の四分の一ぐらいでも少なくとも女性となったときに、日本政治腐敗の構図は解消しているのではないかというふうに思います。  繰り返しますが、私は決して女性だから世の中が救えるとか、そういうフェミニストではないわけですけれども、やはり日本の社会の現実として、女性の方がより多く生活者としての苦労を負っているわけです。例えば家計のやりくりから子供の教育とか、老人とか身障者の介護とか、ごみのリサイクル問題まで、実際にその負担を負って生きているわけですから、皆さん生活大国とかと言うときに、その負担を負っている人たちの声を直接に政治に反映する必要はないと考えますかということですね。  例えば政治家の方々が、皆さんは違うかもしれませんけれども、一部に何億という単位のお金を不法に受け取っているニュースを聞くときに、一万円の使い道をあれこれ考えて大事に使う、そういう主婦の金銭感覚でやはり政界を洗濯しなければならないのではないかというふうに思うこともあります。  このことは国政レベルだけの問題ではなく、地方議会でも同じであります。地方議会への女性の進出はさらにおくれているところがありまして、地方自治体レベルの汚職もまさに男性のみの閉域で起こっているというふうに考えます。地方分権には賛成でありますけれども、地方分権も、そのような地方政治の近代化と差別克服とをワンセットで行わない限り、矛盾の分散だけになりかねないということであります。  それから三番目の点、つまりこれは政治腐敗を根絶し、政治資金の公開性を義務づけることができるかという点についてお話し申し上げたいと思います。  中選挙区制ではお金がかかるという議論がよくあるわけですが、小選挙区制にすればお金がかからないという議論、このような議論は実は問題の本質をすりかえていることになりかねないと思います。つまり、政治腐敗や不正資金の問題は、制度より政治家としての倫理観や意識や自尊心の問題であります。  どのような政治改革を行おうとも、公人としての政治家たるものは不正資金で品位と自律を汚してはならないという高邁な意識がない限り、同様の問題が違った形で再発するに違いないわけです。ですから、その政治家としての公正であることの責任や自意識を棚上げにして、選挙制度のために金をばらまく必要があったんだというような論じ方というのは、いい年の大人になっても、都合の悪いことは何でも親のせいだというような無責任な人に似ているわけであります。  ですから、小選挙制度に切りかえるならそれでよろしいですけれども、それはお金がかからなくなって、みんながクリーンになるからやるといった他律的な金銭感覚のこじつけ、そんなものを乗り越えたもっと積極的な理論が必要なんです。お金政治選挙を取り仕切ろうというような意識の低さがある限り、どんな選挙制度改革をしてもこの国は救えないわけです。  ですから、やはり先生方には先進民主主義国としての政治家、つまりそれは世界の政治的なリーダーなわけですから、そういう意識の高さをお持ちいただきたいということです。  私は、民主主義社会では、多くの人にみずからの見解や政策を訴えるには、それなりの政治資金は必要であると思います。それを著しく制約することは、例えばむしろ無償労働を何らかの仕組みでほぼ強制したり、その組織化を競うといった別の問題を長期的にはつくり出すことになりかねないということも考えます。  本来、個人献金で政治資金というのは賄われるべきだと思いますけれども、このように政治腐敗による政治不信が広がる中では、日本の社会ではもう個人献金はだれもしなくなるということかもしれまぜん。にもかかわらず、やはり普通の市民の政治への期待と信頼を取り戻して、個人献金をふやすという王道にもっと目を向けていただきたいと思います。  そして献金者の公開性ということを拡大することが、これこそが非常に重要で、公的資金助成の増加ということも重要であると考えますけれども、すべての資金を公的助成にするという考え方は、巨大なむだを可能にするという危険性も伴うということを指摘したいと思います。  それから、最後の第四番目ですけれども、これは政党の組織運営を民主化する、そして知的に高度化する、そして国際的な指導力を発揮できる存在へと発展させるということです。  私自身は政党活動を行ったことがないので、直接は理解できないのですけれども、多くの方に意見を伺いますと、やはり政党組織の、前近代的という言葉がよろしいかどうかわからないけれども、そのような運営手法というのは、多くの政党に共通している問題だとおっしゃいます。世界の中の日本政治的指導力が問われるこれからの時代において、やはり日本の各政党は、世界と日本の平和と繁栄と正義を考える知的な主体になってほしいわけです。  私は、知識界に身を置く一人として常に感じることは、真に知的な発展とは、やはり自由濶達な風土がないと期待できないということです。ですから、長老支配やあるいは内部的な締めつけが大き過ぎるような組織あるいは硬直化したような組織、それはもう与野党ともにこの際本格的に自己反省して、知的に高度化して、民主的な政党運営へと成長していただきたいと思います。  そうでなければ、若い人を引きつけることができなくなります。若い人口が減少していくこれからの日本で、志と先見性のある優秀な若い人材をめぐって政界はとても不利になるというふうに思います。これからの若い人は、だれも封建的な組織の中で生涯を送りたいとは思わないでしょうから。  ですから、そのような政党組織自体の改革からさきに述べた政治家としての意識や倫理や高邁な考え方というものも生まれるでしょうし、それから国際的な指導力を持つ人材も輩出されるだろうというようなことです。  それから、比例代表並立制をとるならば、その名簿は、国際的な指導力を発揮する人材の補充が急務である今後の日本の課題に照らしてつくられるべきで、例えば集票実績のランキングとか、長老処遇のような機能をその制度に負わせるべきではないということを初めから合意しておく必要があります。  その点から考えても、比例代表の単位について、与野党とももっと本質的な機能論をめぐってじっくり話し合っていただきたいと思いますし、それを政治的な取引とか妥協の材料にしてもらいたくはないというふうに思います。  以上申し上げましたが、法案の早期成立も重要でありますけれども、ここに述べましたような長期的に重要な基準について、この時期に真剣に考えていただくことも重要であると思います。ともすれば技術的な詰めに追われがちになるかもしれないと懸念されるこの時期であるだけに、きょうは基本的な問題点を、発言者として最初ですから前座のようなものでありましたけれども、論じさせていただきました。  日ごろ思うことが非常に多くあって、やや言い過ぎた点もあったかと思いますが、それは御容赦いただきたいと思います。  言うまでもなく、最後に申し上げますが、ここにきょう私が参上いたしましたのは、やはり一人の市民として、私はこの国とこの国会のあすを信じたいと思ったからでありますし、私たち皆さんの突破力といいますか、改革力というものを信頼申し上げているからであります。  私にとってはこれは大変緊張を伴います一大仕事でございましたが、機会があるならば、やはり日本政治家皆さんと積極的に話し合って、よりよい日本をつくろうという、そういう市民とか日本女性は多いということを理解していただきたいと思うし、その熱意と善意はしっかりと受け取っていただきたいというふうに思うのであります。  どうもありがとうございました。(拍手)
  58. 石井一

    石井委員長 率直な意見をまことにありがとうございました。  次に、小林参考人にお願いいたします。
  59. 小林節

    小林参考人 小林節でございます。  私の専門は憲法学でございます。その観点から、既に自民党からの実とそれから政府からの案、両方通読させていただきまして、今私が感じているところを論点別に申し上げます。  論点は、まず第一に、やはりこの議論をする観点でございますが、何のための政治改革か、これが一点。それからその次に、では、あるべき選挙制度の条件は何か、そしてその次に、選挙区画定審議会ないしは委員会の設置について、それから戸別訪問の解禁論議について、それから政治資金制度について、それから政治倫理の向上の問題について、政党に対する公的助成について、そして結論として、政治改革の緊急性という話をいたします。  まず、何のための政治改革か。これはわかり切ったことで恐縮でございますが、やはりこの観点をまず定めないと議論が始まりませんので、簡単に申し上げます。  私は、次のような認識をしております。まず第一に、政治の腐敗を防ぐということが目的で、もう一つは、やはり政治政策論争の場に戻す、そして、それを通してこの激動の時代に国がきちんと的確に対応する政治を築くということであったと思います。  それで、現状分析としては、やはり半ば機能不全に陥っているという立場をとります。その原因は、意識も大切ですけれども、制度が大きなファクターであることは否めませんで、やはり衆議院選挙区制、これが与党同士の同士打ちと、それから野党、ある意味では部分利益に安住していれば専業野党でいられてしまうというこの仕組みに私は問題があると思います。  そこで、衆議院選挙制度改革が急務なのでありますが、次に、あるべき選挙制度の条件であります。これが大変矛盾に満ちたもので、第一に、民意を正しく反映する、これはある意味では多党分裂志向でございます。第二が、それはそれとして、明確な政策決定と明確な政治責任追及の可能性、これは逆に言えば、何というかしら巨大な党を一つつくれるといいという、これは非常に矛盾したものでございますが、どちらも必要なことであると思います。  この両立しがたいものをどうするかでありますが、二院制の中でこれをトータルに考えていかなければならないと私は考えております。そういう意味では、現在参議院の改革論議がおくれていることが大変残念なんですけれども、とりあえず現在の参議院制度を前提問題として、今のものを、今の方向をちょっと特色を強調して、意義づけて先へ進んでみたいと思っているのです。  要するに、今の参議院は地域利害の代表員という側面と、それから全国レベルでないと議席にありつけない小さな部分利害の代表という二面を持っていると思うのです。これはある意味で正確な民意の反映に十分機能する面を持っております。となりますと、残る衆議院、新しい衆議院像はどうなるか。それはやはり明確な国家意思の形成ができることと、明確な政治責任の追及ができることであろうと思います。  すなわち、これは変な言い方ですけれども、強力でかつもろい政権をつくる。つまり、多数派に有利に議席が配分される選挙制度でとりあえずきちんとした政権をつくる。ただ、一たびそれが国民の信を失った瞬間には、簡単に倒れるような仕組みが好ましいのではないかと私は思います。そういう意味では、結論としましては、単純小選挙区制が最も正直な制度であると思います。  そういう意味で、現在出ております二つの案は、どちらも小選挙区をベースにしているという点でアクセプタブルな案であると私は思います。ただ、筋論からいけば、自民党案の方がよりすっきりしていて、私はベターであると思います。  そこで、ただ一つ懸念は、今のどちらの案でも無所属の立候補が可能であるという点は、これはともするとまだ過渡期に公認漏れの殴り込みのようなことが起きて、結局は自民党自民党系の泥仕合いというような、かつての保岡先生のあの御苦労なさった選挙区みたいになってしまう危険がある。これはもちろん立候補する方の参政権、人権問題ではありますけれども、公正な制度を維持するという公益の観点から、この無所属規制ということはどこかで考えねばならない問題であると思います。  それから次、選挙区画定審議会ないしは委員会の設置についてでありますけれども、私率直に申しまして、政府案には憲法上の疑義ありと思っております。つまり、これは選挙の実質を決めますから、ある意味では利害関係人の議員先生方から離した第三者機関が望ましい。これはだれでもわかることなのですが、ただ、現行憲法のもとでは、四十七条で選挙制度の決定権は国会の専権でございますから、そこから離すわけにはいかないと思うのですね。  そういう意味では、単純に考えて、内閣に附置するよりは国会側に附置する方が筋であると思うし、それから内閣の側に附置するということは、一見第三者機関風でありますが、要するに与党附置でありまして、これまた別の問題が起きるのではないかと私は思います。  ただ、いずれにしても、これは第三者機関風にして、それに実質的権限を与えないと意味がないのですが、繰り返しますが、実質的権限をほかにゆだねたのでは憲法四十七条にぶつかってしまうということは申し上げておきます。  それから戸別訪問、これは私ども憲法学者が長々議論してきた話題の一つなんですが、結論と いたしまして、私はこれは当然解禁すべきことであると思います。つまり、この点については政府案に賛成であります。つまり、戸別訪問というのは、私どもだれでもが公平に一つ与えられたこの体と心を使える、要するに、一番公平で安直な元手を使ってやれる自然な選挙運動方法でありまして、これは憲法二十一条の政治的表現の自由として保障されているという理解に立ちます。  もちろん、さまざまな弊害が言われるわけですが、不正行為、これは買収とか脅迫とかあるそうですけれども、先例を見ましても共産党が買収をしたという話は聞きませんし、要するに、買収は買収として打てばいいので、戸別訪問を戸別訪問なるがゆえに何が何でも打つというべき話題ではないような気がするのです。  それから、有権者のプライバシーとか生活の静穏を害してしまうのではないかというのですけれども、これは実際やってみればおわかりと思いますけれども、そんな戸別訪問をして効果があるわけないわけでありますから、自然にそういうものはなくなるので、言われているような弊害、本当はどこにあるのかなという私は疑問を持ちます。  それから、政党によって動員力が違う、それが差別だとおっしゃいますけれども、自由な民主主義国家において、動員力のある者とない者が実力のある者とない者でありますから、それは差別ではないと私は思うのですね。したがって、戸別訪問を規制する理由は見当たらないという結論になります。  それから、政治資金制度につきまして、両案とも政治資金の少額化と透明化を志向しておりますが、これは大変好ましいことで、少額化というのはそれは要するにわいろ化の防止でありますし、透明化というのは不正使用の防止でありますし、大変結構なことだと思います。しかし、政府案では、無所属の多い地方政治家は、企業団体からの寄附と公費助成が絶たれ、政治活動が著しく制約されないかという不安を感じます。これは差別の問題、これこそ憲法十四条の問題ではないかと思います、  つまり、企業とか団体というのは、その構成員である自然人、個々の人とは別に、やはり法人としての独自の自己主張がある、また独自の社会的負担があるわけでありますから、それも政治参加することは人権であると、これは最高裁の判例にもございますから、ここは気をつけられた方が私はいいのではないかと思います。  それに、国政と地方政治の違いは、もう御承知のことで申しわけないのですけれども、大きな国策選択を行う国政と、これからの地方分権の流れの中で考えても、地方政治というのは住民の日常的利害調整でありますから、ある意味では党派的、イデオロギー的分類になじまない分野であるという点で、地方政治家に対してちょっと過酷な政府案なのかなという気がいたします。したがって、やはり無所属も保護する自民党案がこの点ではすぐれていると私は思います。  それから、政治倫理の向上につきましては、もうこれは残念ながら明らかなように、連座制、公民権停止等、罰則強化のほかに道はない。しばらくこれを実行してみるほかに方法はないから、両案とも正当であると考えます。  それで、あと政党に対する公的助成でありますが、これについては重大な問題が指摘されております。第一が、本来自立的な団体であるべき政党の本質に反する、つまり国家によるひもつき化という指弾であります。それから第二が、憲法十九条、国民の良心の自由に反する、つまり嫌な献金強制ではないかという問題が提起されております。しかし、結論として私はいずれも答えは否、つまり、その問題がないという立場をとっております。  と申しますのは、まず政党は、それは確かに歴史的には任意の団体でございましたけれども、明らかにもし歴史を語るなら今の歴史になるわけでありまして、日本国に限らず、この手の政治制度の国の統治過程の不可欠な一部分になっており、そういう意味ではもはや既に公的な存在であるということ、ただ本来の任意団体であったというその本質は考慮して、経費の何分の一かを公費で負担する極めてこれは妥当な線であると私は思います。細かな額は論評しようもありませんけれども、この発想は僕は妥当だと思います。それから、その際に議席と得票に応じて配分するのも、最も自然で公平な方法であると考えます。  それからあと、思想、良心の自由に反するという指摘ですが、これは恐らく両法案の説明の仕方がまずいために招いた誤解である。つまり、国民一人頭幾らというようなわかりやすい御説明が、何か私が好まない政党に私が好まない特定の献金を私の懐からじかにすることを強制される、これは明らかに憲法違反で良心の自由に反しますが、そうではなくて、いろいろな形で税金あるいは国の別の収入等で国庫に入ったものを、要するに予算配分の一例にすぎないわけでありまして、たまたまわかりやすいように説明で、一人頭にするとこうでねと言っただけのことでありまして、それを言いましたら、国から自衛隊に金が出ているのが気に入らないとか、私の嫌いな政党公設秘書の給料がどうして出ているんだとか、全部良心の問題になるわけでありまして、これは話がそれてしまっているのではないかと思います。  そして最後の話でありますが、私などが一市民として拝見して前国会の末期など非常に残念に思ったことは、要するに言いわけばかりしていて、議論ばかりしていて先に進まない。私は、やはり政治にとって重要なことは、議論をすることと同時に決めることだと思うんですね。有効なる政策国民に給付する責任が永田町にはあると僕は思うんです。どんな案にでも欠点というのは必ずあるんですね。そこを指摘し合うことによって一歩も前に進まない、そういうことで、ある意味では国民のフラストレーションは既にピークに達しているところか、達して久しいと私は思います。私自身の思いでもございます。  本当に失礼な言いようでございますが、完全な制度などあり得ない、まずこの点御納得いただきたいと思います。多くのものは、よくも悪くも先ほどの先生お話にもありましたけれども使えるわけでありまして、要は、後は運用でよくしていくということだと思います。皆で欠点のけちつけ合いは結構でございますが、それで気づいたところは運用でカバーしていくという覚悟をして、前にお進みになれば済むことであります。  これもまた午前中にもお話があったようですが、初歩的知識で申しわけございませんが、妥協と試行錯誤によって修正しながら前進していくのがまさに民主政治のわざであったわけで、ここがその場であるはずでありますから、これは多少陳情じみてまいりますけれども、どうか大胆な妥協をしていただいて、今国会政治改革の成案を見ることを私は切に期待させていただきます。  以上でございます。ありがとうございました。(拍手)
  60. 石井一

    石井委員長 ありがとうございました。  次に、佐々木参考人にお願いいたします。
  61. 佐々木毅

    佐々木参考人 本日は、こうした形で私の意見を述べる機会を与えられましたことを大変ありがたく存じております。  この政治改革諸法案の意味するところは、これは改めて述べるまでもなく極めて大きいのでありまして、今国会はいわば百年あるいはそれ以上の長きにわたって記念されるであろう大改革を行おうとされているというふうに私は理解しておりまして、そういう場に居合わせられた先生方も大変幸せであろうと思いますし、また、そこで意見を述べる私も大変幸せに存ずる次第でございます。  ただ、これは非常に問題が錯綜しておりまして、単純に言いますと、先ほどの小林さんのお話ではありませんけれども、とかく誤解を招く傾きがございます。  以下、私も幾つかの点に分けまして問題点を指摘させていただきたいと思います。  第一は、問題の発端であります政治資金をめぐる諸問題でございます。  この点につきましては、現在論じられております二つの法案は、これまでの制度をいわば構造的に改革しようとするという点で、多くの共通点を持っているというふうに考えられるわけでありますが、なかんずく日本政治資金制度の一番の問題点は、この政治資金の流れ及び総量云々が全くわからないという点にあるわけでありまして、しかも、それがさまざま制度上の恩典によって支えられ、あまつさえそこで腐敗が起こるというのでは、これは政治資金というパブリックマネーとでもいうべきものの名にまことにふさわしからぬ状況にあることは改めて述べるまでもございません。  そういう意味で、今回の政治資金をめぐる諸課題の一番重要な点を、まず透明性といいましょうかディスクロージャーといいましょうか、ここに当てていただきたいと私は思うのであります。  といいますのは、すぐお金がかからなくなるようにするにはどうしたらいいかという議論になるのでありますけれども、私に言わせれば、それはもう少し先に行ってから、とにかく現状がわからないところでどうしたらいいかという話をしましても、これはいかんとも前進いたしませんので、その意味で、いわゆる抑制なり政治資金を少なくしていくといったようなたぐいの作業は、残念ながら先に、次の段階に譲らなければいけない面もあろうかと思います。  その意味で、こうした点で不十分な点があるということによって、全部が生きてこないということになることはまことに好ましからざる趨勢、そういうことがあってはならないことだというふうに思います。  その意味で、いつも問題になりますのは、この公開基準につきまして、両案を拝見させていただいたわけでありますが、全体として見ますと、政府案は大体五万円というあたりに一つの一般的な基準を設定しておりまして、大体どこへ行っても五万円、五万円というのが出てくるというような構造になっております。これに対して自民党案は、いろいろでこぼこといいましょうか工夫がおありのようでありまして、あるところは五十万円であるかと思うと、あるところは一万円であるというような形になっております。  こうした問題について、常日ごろそういうことを考えない国民がばっと見てもわかるように制度をしておくということも、非常に大事なことかなというふうに私は思います。そうした意味で、非常に単純化した形でディスクロージャーを一気に進めていくということをぜひともお願いしたいと思います。五万円がいいのか、もっと三万円がいいのか二万円がいいのか、それはまたいろいろ御議論があってしかるべきだと思いますが、非常に複雑な制度をつくって、当人たち以外は非常にわかりにくいという制度は、やはり考え物だろうと私は思います。  特に、献金の問題について、政治資金関係の団体の数を限るという試みも大変評価されるわけでありますが、また、それとの関係で、企業団体献金を扱う扱い方については、これは既に御案内のように、いろいろな点で差異があるわけであります。この点についてはいろいろ議論がございますが、国政レベルで問題を考える場合においては、私は、政府案の方が物事のとらえ方としては国民にはわかりやすい案ではないかというふうに思います。  企業献金をどうするかという問題、大変複雑な問題であります。個人献金はよくて企業献金は悪であるというふうな単純な議論をするつもりはございませんが、たまたまその資金を集める、二十数万円まで集められるということがあるために先生方が非常にお忙しくなるというようなことがあってはならない話でございまして、それはやはり本来、資金の問題は政治家の方々がそういうところでエネルギーを使わずに、国政の重要な問題について十分なエネルギーと時間を使っていただくというのが本改革の精神がなというふうに私は考えているからでもございます。  ただ、政府案をちょっと見まして、資金管理団体というんですか、こういう団体がございますけれども、この管理団体をめぐる仕組みというのはなお私にはよくわからない点がございまして、いわゆる政治団体とこれらとの関係についてはなお御議論をいただき、あるいは御教示を賜ればというふうに思います。  それから、パーティーが相変わらずこういう形で寄附と外にくぐり出されているということについては、私はかなり疑問を持っております。結局、これは企業団体献金をそっちへよけたというふうな意味になるのではないかという懸念を持つからであります。もちろん、公開性というものは従来よりも格段に改善されるというわけでございますけれども、この点についてはぜひとも十分な御検討をいただきたいと思うわけであります。  つまり、いわゆる資金調達団体あるいは管理団体企業団体献金の話にばかり関心を向けて、こちらの方はそっとしておくというのでは、言葉は悪いですけれども、これは明らかにバランスを失することになりはしないかということでございます。  それから、第二の大きな点としまして、私は今回の改革一つの大きな特徴は、政党というものの地位が非常に変わってきた、法的にも金銭的にも多分非常に変わるということにあろうかと思うのであります。問題は、これにふさわしいさまざまな装置が十分整えられているかという点について、なお疑念を持っておるわけでございます。  既に御存じのように、現在でも公選法の二百二十四条の三に「名簿登載者の選定に関する罪」というのがございまして、名簿登載者が不正な手段で利益を獲得して名簿の決定に際して一定の行動をとった場合に、それが処罰されるということになる。これは明らかに政党の内部に法律がもう既に入っているという実例でございます。ですから、現行制度におきましても政党は既にそういう形で法律の中に入っていて、それを片方では任意団体であるというような形でやっていますから、当然、間に入った事務当局の御苦労というのは察せられるわけでございます。  こうした点を含めまして、政党のあり方、これは政党助成とも絡みますけれども、政党のあり方について、今すぐできる範囲は限られているかもしれませんが、この四百何十億と三百億との対立というふうな構図が一つ引かれておりますけれども、やはり一番大事なのは、国民政党との関係がこれによってどう変わるかということでありまして、これは劇的に変わる可能性を含んでいるのでありまして、コーヒー一杯というような話では到底済まない感覚的な変化を呼び起こすわけであります。  そういう意味で、政党の側にどれだけそれにこたえる装置ができているのか、政党助成法案を見た限りにおきましては、大変率直に申し上げて、なお心もとない感をいたすわけで、例えば二百二十四条の三を政党の側にぴしっと入れておくというようなことさえ果たして行われているのかどうか、非常に疑わしいのでございます。その意味で、政党のあり方というものが、今度は新たな争点となって、政治資金の問題につきましても選挙制度の問題についても出てくると私は思います。  そして、その意味でいうと、今度は政党の中でのお金の動かし方なり、流れ方なりなんなりがどうなるかということについて、十分な準備をしておかないといけないだろうと思うのでありまして、今までは直接受け取ったけれども、今度はそっちを介すればいいのだというような単純な見方をされますと、これは先生方の御意向にも反することだろうと思うのであります。  世上、政党法的な議論、政党法という言葉が使われて、これは非常に多義的なものだと思います。我が国の場合は、これは国庫助成法といったようなものになろうかと思いますが、それにしましても、これだけの大改革をやったにしては、その主たる担い手である政党をめぐる制度的考察がなお十分とは言えない面があるのではないか、継続的に御検討をいただければというふうに思うわけでございます。  それから、三点目が選挙制度問題でございます が、率直に申し上げて、事ここに至ればもうこれでやっていただくしかないというのが私の意見でございます。原点に戻ってもう一度始めるというわけには、政治的には国民が許さないだろうと思うわけでありまして、そして、ここまで来て話がまとまらないということであれば、これはおやりになる意欲が十分とは言えなかったというふうな評価を国民が持つことを僕は恐れるものでございます。  そうした中で、幾つかの点を申し上げさせていただきます。  第一点は、並立制という性格上、私はやはり二票制が素直であろうというふうに考えます。その点で、これは八次審のときから問題になっていた点なのでありますけれども、それから、たしか海部内閣のときも二票制であったと思うのですが、並立制というのがどうも我が国の場合は重複立候補制とセットになっているものですから、並立てあるような並立てないような、非常に性格が変質いたしております。そこに実は一つこの問題が絡んでいるというふうに私は思っているわけであります。  本当の並立てあれば、参議院で見られますように、片方で落選したから片方で当選するといったようなものでは本来あり得ないはずでございます。その意味で、並立制の問題というのが、我々が今念頭に置いている並立制自体が既に変形をしているということについて、もう少し御議論を賜りたいと思います。  その意味で申しますと、既にその重複立候補、これは私たちも八次審で議論したときの責任もあるのですけれども、どうもいろいろ考えてみれば問題がある。小選挙区比例代表併用制というのがありますけれども、比例代表小選挙並立制みたいなような、言葉はちょっとあれですけれども、非常に片方が結果として事実上出っ張ってきているというような、運用が可能な制度でございます。  もちろん運用でやるということはできるのですけれども、特にこの小選挙区の議席を動かすというような点について議論がもしされるようでありましたら、この重複立候補の問題についても同時にぜひ御検討をいただきたいわけであります。  つまり、既に比例代表の中に重複立候補でもって小選挙区の候補者が大量に入り込んでいるという中で、さらに小選挙区の議席をふやすということは、これはそういうことがないところで議論するのとは非常に違った意味を持ち得るからでございまして、どうもこの政府案、自民党案とも重複立候補の話はもう初めから入ってしまったものですから、余り議論が十分されているとは思えない面がございます。  これは、数の問題等について、これから議論をされる過程で整理をしていただきたいと思うわけであります。あるいはこれは過渡的なものとして考えるということはあり得るかもしれませんけれども、それならそれでしかるべき段階で処置をするようにしていただかないといけないかなというふうに思います。  そういうふうにしてみますと、一票制の問題というのは、実は一票制と比例代表の区域の問題、それと小選挙区と比例区の人数の配分という問題、さらに実はもう一つ、この重複立候補という問題が加わっているというのが現在の論点ではないだろうかというふうに僕は思います。ですから、三点ではなくて四つ論点が実際上ありますが、一つは両方とも共有しているものですから、余り議論しないできているというふうに思います。  選挙制度のあるべき姿ということについて抽象的な議論をここで申し上げるつもりはございませんが、基本的に、政治の場において、特に政党政治の場において意見の集約が十分なされるような仕組みをつくるということは、意見が公平に代表されるということと同時に、これは非常に重要な観点であることは申し上げるまでもございません。  ただ、いわゆる二大政党制というものについて申しますと、これはもういっの制度でもありますが、絶対的な制度というのはないのでありまして、集約もおかしな集約をするような二大政党制もないとは言えないのでありまして、そのことがかえって病気を重くするということもあろうかと思います。  その意味で、私は、既に本院ではこの小選挙区制についてはいろいろ議論が進んでいると思いますが、一体比例制の効果というのは何なのかということについて、むしろ正面から議論をしていただくことが大切な面もあろうかと思っております。  私個人の考えを申し上げれば、いわば並立制というものの機能は、一方で二大政党的な機能をビルトインしているということは、重複立候補がなくてもそういうことだと思うのでありますが、これは人数にもよりますけれども、しかし、同時にそういうものが弊害を起こした状態においては、それをある程度自動的に相対化するようなメカニズムとして比例部分というものがあるのではないかというふうに考えておるわけであります。  いずれにいたしましても、これからの選挙におきましては、こういう制度改革を経た選挙におきましては、どのような形で政権をつくるかということを争点にしない選挙というものはあり得ないことになるだろうと思います。  その意味で、現在の状況をそのまま投影して未来が進むというふうに考えるわけにはいきませんから、私は、比例制も一定の求心力を持って働いてくるというふうに、十分そういうふうに想像いたしておるわけであります。その意味で、政治状況及び制度状況というものの変化につれて、この並立制、どちらの案でもそれなりの求心力というものは非常に明確に出てくるのではないかと私は思います。  問題は、それをどの程度絞るかということと、各党のいろいろな戦略、戦術がおありだろうというふうに思いますが、私個人の見解を一言言わせていただくと、どうも都道府県の比例制というのはちょっとぐあいが悪いのじゃないかというふうに今思っております。何か小選挙区制と中選挙区制が一緒になるような感じもちょっとするものでありますから、この点はやはり、ほかの問題もいみいろあろうかと思いますけれども、御検討をいただく必要があろうかと思っております。  最後に、政治倫理等についての課題であります。  この問題については、連座制についていろいろ規定がございますが、やはり院の政治倫理委員会の活性化等についていろいろな議論をもっとやっていただかないことには、すべていわば司直の問題として処理されるという面が、そちらの方へ負担がかかり過ぎているという感想は否めないのであります。  いずれにいたしましても、私は、特にこの政治資金及び政治倫理の問題については、繰り返し継続的に御努力を賜りたいというふうに思っておりまして、これで終わりということは絶対にないものである、したがって、逆に今度いろいろ問題があるからこれはだめだというような議論に対しても、ぜひそういう形で応戦していただきたいと思うわけであります。  どうもありがとうございました。(拍手)
  62. 石井一

    石井委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  63. 石井一

    石井委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤松正雄君。
  64. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。  ただいまは三人の参考人皆さんに極めて示唆に富んだ貴重な御意見を聞かせていただきまして、本当にありがとうございました。一人十五分ということでございますので、手短に質問をさせていただきます。  まず、お聞きした一番近いところから、佐々木先生からお聞きいたしますけれども、今、公的助成が行われて国民政党とのかかわりというものに劇的な変化が起こるというふうなことを言われて、政党をめぐる制度的な考察をというお話がありました。  それに関連するわけですけれども、今、主に連立与党の指導者の側から、二大政党制あるいは二大政権勢力あるいはまた穏健な多党制、こういうふうな考え方がいろいろ出ているわけです。自民党は現在二百二十七という、野党でありますけれども与党の中で一番大きい政党よりも三倍もある勢力を持っている現状の中で、連立与党側はどうしても一本化、新たな新党的なるものをつくらざるを得ないという状況にあるわけです。そういう点につきまして、先ほど先生のおっしゃった政党をめぐる制度的考察をというふうなものと絡めて、お考え方を聞かせていただきたいと思います。
  65. 佐々木毅

    佐々木参考人 どうもちょっと私の任に余るような御質問でありまして、大変心もとないのでありますけれども、政党がどのような格好で協力関係をつくっていかれるかということは、私は、これはもう全く状況に応じてあれされるわけですから、わかりません。  ただ、私は、二大政党なのか二大勢力なのか穏健な多党制なのか、言い方はいろいろございますけれども、いずれにしましても、政権のつくり方は二つぐらいのところで選択していただくというふうな政治にしないと、国民の方がむしろ満足しない状況になっていっているということではないでしょうか。ですから、そのときにどういう形でそれを国民め前に提示されるかということについては、これは先生方の知恵でやっていただくということではないかと思います。  穏健な多党制というのは、私の意見では、結局政権のつくり方が二つになる、やたらにいろいろあるということではないという、そういう意味での多党制というふうに私自身は理解しているわけでございます。
  66. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今のこととも関連するわけですけれども、選挙制度の数の問題です。  先ほども言いましたが、自民党皆さんの勢力が大変大きいという状況下で、今自民党の案というのは、ハードに政権党を選択していこう、そういうふうなねらいが見えるわけで、それに対しまして政府案の方は、ソフトに、緩やかに政権党をつくっていこう、民意を吸収してやっていこう、そういうねらいがあって、大きなところでその対立があると思います。  その上で、自民党が第二党の三倍の勢力を持っている状況下でハードな二大政党化を志向しますと、結局落差が埋まらないで、新たな五五年体制というものができてしまうというふうなことでしかないと思います。したがって、今回の改革は、新たな五五年体制にしないというためにも緩やかなものが望ましい。具体的に言いますと、比例部分がより多い方がいいと思うのですけれども、それについてお考えを聞かせていただきたいと思います。佐々木先生、お願いします。
  67. 佐々木毅

    佐々木参考人 そういう御観点からしますと、今の政府案の二百五十、二百五十というのは、私は一つのバランスのとれた案ではないかというふうに思います。比例部分が大きくなり過ぎますと、今度はまた別の副作用も起こってくるのではないかというふうに考えるからでございます。
  68. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今までの日本政治状況というのは、政党間の対立軸というものが、冷戦下ということもありまして米ソ対決を色濃く反映した、いわゆる憲法改悪か護憲かというふうな極めてそういうイデオロギー色の強いものであったと思います。  今は政治改革をめぐって、いわば改革派がそれとも守旧派かというふうなそういう見方によって、ほかの問題にもそれが派生したような形でなされがちであります。しかし、これは私は極めて過渡的なものであって、やがて選挙制度の変革を経た上で、そうした政党間の対立軸というのは、現実政治に根差したものの中で幾つかの対立点というものが生まれてくる、そういうふうに思いますけれども、そうした際に、中心的な政策の分岐点、政策体系の分岐点というものは一体どういうふうなものになっていくのかということにつきまして、先生方のお考え方を聞かせていただきたいと思います。  例えば国際政治を優先するとかあるいは国内的な政治改革を優先するとか、あるいはまた企業経済優先あるいは生活者優先、幾つかの考え方が今既に出ておりますけれども、これからの時代の、新しい時代のいわゆるポスト冷戦、五五年体制以降の状況の中における政党間の政策を分かつ対立点といいますか、対立軸といいますか、そういう点についてお三方のお考え方を聞かせていただきたいと思います。  猪口先生から順番にお願いします。
  69. 猪口邦子

    猪口参考人 ポスト冷戦とおっしゃいましたけれども、アジア部分においてはいまだ状況が不安定であり、そういう状況についての分析の仕方とか認識の仕方ということについても意見の対立というのはあり得ると思います。そういうことをめぐって、防衛力の整備の水準であるとかそういうことについても考えの違いというのは、それは冷戦のさなかとは対立の先鋭化の仕方というのは違うと思いますけれども、にもかかわらずあると思います。  それから、冷戦が終わりますと、国際政治の中で、冷戦時代には後回しにされた、しかし非常に重要な問題が浮上してまいります。例えば地球的規模の環境問題であるとか、あるいは途上国の民主化であるとかですね。日本は途上国に対する資金供与国であるという立場からも、そういうことについての認識を非常に強化しなければならないわけですけれども、その際に、自分の社会である模範的な水準を示して初めて説得的であるわけですから、では、その環境保全についてどの程度の強い措置をとるかということについても、やはり認識の違いというのは出てくるかと思います。  それから、税制等の問題についても、これは国際貢献路線を邁進する限りにおいて、いずれ非常に大きな負担がかかるということになりまして、そういうことについてももう少しきめ細かい違いというものは出てくると思います。
  70. 小林節

    小林参考人 大変難しい予測問題でございますが、当分はイデオロギー対立もまだ尾を引く状況にあると思います。それも一つの軸だと思います。  それから、先生の御指摘の国際か国内か、企業中心か生活者か、それからほかに農村と都市とか、それから世代間競争とか、それから今猪口先生お話にもありましたけれども、対アジア政策、意外と我々忘れてきた話題でありますとか、それからもう一つ、すべてで争いがなくても、人心一新というのも一つの観点だと思うのですね。そんなようなことで、恐らく過渡的に何回か繰り返しているうちに、おのずと制度の助けもかりて、二つに収れんしていくのではないかと私は思っております。
  71. 佐々木毅

    佐々木参考人 既にお二人が繰り返したことは私は申し上げませんが、多分今までよりも非常に大きな問題は、やはり国内の経済体制、それから請負担の問題というもののウエートが非常に大きな問題になってくるのではないか。その意味でいえば、今まではややほかのセクターに任せていた面も少なからずあったのではないか、そういうふうに思っております。
  72. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 さっき小林先生お話の中で、二票制と一票制の問題が御報告の中に入っていなかったと思いますので、憲法学者の立場から、この二票制、一票制についてのお考え方、お願いいたします。
  73. 小林節

    小林参考人 結論だけ触れてしまったのですけれども、私は自民党案を是とすると申し上げました。それは衆議院では先生の言われるところのハードな政権選択をという、私はそういう理念を選択しましたので、そういう意味では多少大ざっぱな切り捨ての面はありますけれども、それは参議院でカバーするとしてということで、一票制ですっきりすると考えております。
  74. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 小林先生は、先ほどの御報告の中の最後で、大胆な妥協というふうなお話をされました。また、たしか前国会がああいう形で終わった後のお書きになったものの中で私は拝見しましたら、できるはずの妥協も拒否した、そういう御指摘をされておりましたけれども、そういった二の舞を踏まないためにも、おっしゃるところの大胆な妥協のアウトライン、概略どの辺が望ましいと思われるかにつきまして御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  75. 小林節

    小林参考人 どっちをとるかと申しますと、私は先ほど申し上げたように自民党案をとるのですけれども、ただ政府案もアクセプタブルであると申し上げましたので、無責任な答え方かもしれませんが、妥協は先生方があの二つの間でなさることで、どう転んでも、あの範囲内であれば一歩前進であるという認識を持っております。
  76. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 また、これは小林先生、有権者の意識改革の必要性ということをおっしゃっておるところがあります。私は、今回の政府案の中で、例えば公費の助成、それから戸別訪問の解禁、先ほどは戸別訪問は賛成だとおっしゃっておりましたけれども、こういう行為を通して有権者の従来の政治に対する意識、かなり変えていく一つの大きな機縁になるのじゃないかと思います。  そうしたものに加えて、さらにそうした有権者の意識変革に必要な具体的な手だてといいますか、お考えといいますか、おありでしたらお聞かせ願いたいと思います。あるいは、ないとしたなら、先ほどのことについてさらに敷衍していただいてもいいのですけれども。同じことを後で猪口先生にもお願いします。
  77. 小林節

    小林参考人 私は戸別訪問に非常にこだわったのですが、そういう意味では、共産党とか公明党はある意味では手足が本気で動いている面がありまして、自民党もそうしたらいいんではないか。したがって、私は、最大量強政党自民党があえて少数党の動員力に恐れずに戸別訪問解禁に乗られて、御一緒にああいう御苦労をなさったら随分意識改革の足しになるのではないか。もちろん、だからといって札びらは切れないようになりますので、そういう効果は生まれるのではないかと考えております。
  78. 猪口邦子

    猪口参考人 戸別訪問については基本的に構わないと思いますけれども、ただ、日本の社会ではそういうことについてのマナーというものが必ずしも確立しているとは言えないので、その点についての意識を高めていくというようなことが必要であると思います。
  79. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 猪口先生は、前の選挙が終わったときに発言されている中に、冷戦が終わって、国際政治のマクロの構造からやや日本全体が自由になって、自分たちに好ましい政治のありようというものを今初めて日本人は模索し始めているように思えるという御発言をされておりますけれども、そういった状況認識、今後悲観的でしょうか、楽観的でしょうか。どういうふうな見通しを持っておられるか、お聞かせ願いたいと思います。
  80. 猪口邦子

    猪口参考人 冷戦構造がヨーロッパにおいて消滅して、また米ロ間においても関係は著しく改善しているわけですけれども、今度新たに主要国による協調体制によって世界経済あるいは政治を運営していくという、こういう大きな時代の課題がありますので、その意味で、日本がひとり独自に勝手に自由にというわけにはいかない。  もちろん、経済面ではガット、IMF体制、これをどう今後も維持継続、強化していくかということがありますし、それから先進国間の首脳会談といいますか、経済サミットのような、あのような場を通して世界経済、政治運営についても協議する立場にありますので、そういう意味では日本らしい新しい社会というものを目指すべきときでありますけれども、同時に世界のリーダーシップの一翼を担うという立場であると思います。  ただ、この政治改革についてつけ加えるならば、どこか一つの外国をモデルとするというようなことでなく、やはり日本政治風土に照らして、日本的であり、そして非常に近代的、民主的で成熱した制度ということを考えていただきたいというふうに思います。
  81. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 猪口先生はさっき、比例代表の名簿の選び方ということにつきまして、幾つかのポイント、比例代表の機能論というものが大事だというお話をなさっておりましたけれども、もう少しその辺を詳しく教えてください。さっきは集票能力の実績とかとおっしゃっていました。かるいは男女交互にとかとおっしゃいました。
  82. 猪口邦子

    猪口参考人 先ほど申し上げたところに尽きるわけですけれども、男女の政治代表の公平性ということについては、その他の方法が難しければ、ぜひ比例代表名簿において一人置きないし二人置きに必ず各党とも女性を入れるような、そういう政党としてのディシジョンを、あるいはコンセンサスをこの際つくっていただきたいということであります。  それかる、本来、もし比例区を並立ということであれば、先ほど申し上げたように、やはり国際的なリーダーシップを担うような、そういう余裕をここの部分に持たせたいというところがその主眼であると思いますので、党内にいろいろ事情があると思いますけれども、集票実績であるとか、あるいは一部の議論にありますような長老を処遇するというようなところに帰着することのないように、もう少し機能的な、その筋論をしっかりと考えていただきたいということでございます。積極的に有効に活用していただきたいということであります。
  83. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 時間が参りましたので、終わります。大変にありがとうございました。
  84. 石井一

    石井委員長 次に、石田勝之君。
  85. 石田勝之

    石田(勝)委員 さきがけ日本新党の石田勝之でございます。  きょうは、それぞれの参考人先生、大変お忙しいところを御出席をいただいて、先ほど来貴重な御意見を拝聴させていただきました。大変ありがとうございました。  リクルート事件以来、幾つかの疑惑事件が発生をしまして、中央政界のみならず、今では地方政界まで腐敗の構造が明らかになりつつあります。国民政治不信も募るばかりでありまして、国民政治に対する信頼回復のためにも、何としても今国会でこれらの法案を成立をさせなければいけない、かように考えておりますし、それらが私どもの責務であろうと思っております。  まず最初に、佐々木先生にお伺いをさせていただきますが、先生はかねてから政治改革は速やかにやるべきだ、先ほどのお話にもありましたように、ここまで来てできないのであれば国民はさらに政治不信を募らせるだろう、そういう御意見でございました。  今国会政治改革の論議の中で、比例部分を全国か都道府県単位にするか、政府案が全国、自民党案が都道府県ということでありますが、先ほど佐々木先生お話では、都道府県は若干ぐあいが悪いのではないか、そういうお話もありました。都道府県単位ですと、一人区が二十一県、それから二人区が十三県できることになって、私も、比例代表を導入する意義自体が疑われる県ができることになるのではないか、かように思っております。  先生は第八次の選挙制度議会委員をお務めになっておりまして、その際は、全国を十一ブロックに分けるという考えでありましたけれども、都道府県単位は若干ぐあいが悪い、こういうふうなお話でありました。今回の比例の単位について率直な先生の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  86. 佐々木毅

    佐々木参考人 私は、全国があるいはブロックかということで八次審のときに議論しましたのは、結局、阻止条項の問題が一つあったと思います。ですから、阻止条項をつくらないようにするためには全国というのはいろいろ難しいのではないか、そこでブロックというような議論の運びがあったように記憶いたしておるわけであります。  ただ、ブロックの場合は、御存じのように線引き及び選挙管理上のいろいろな新しいことをやらなければいけませんし、その意味で、案としては私は成り立つ案だというふうに思いますけれども、いろいろな体制づくり、あるいは各党の体制づくりもそうでありますけれども、こういうものがいかなる形で進むのかということについては、ちょっと実感が正直言ってございません。これは先生方の実感で御判断いただくしかないというふうに思っております。  ですから、私は理論的にはブロックというのは十分あり得る案ではないかというふうには思っておりますが、実施のための諸条件というものについては、十分な成算があって申し上げているわけではございません。
  87. 石田勝之

    石田(勝)委員 ありがとうございました。  続いて、小林先生にお伺いをいたします。  先生は、諸悪の根源は中選挙区制にあるのではないか、中選挙区制は人気取り、そして競争になって政策抜きの政治となる、金をばらまいてサービス合戦でなくて、政策で争える政治にするためには小選挙区制、先ほどお話にありましたように、単純小選挙区制が一番すっきりしてよいのではないか、そういうお話でございました。  今回の選挙制度については与野党とも並立制ということでございまして、比例代表選挙を用いることによって民意の正確な反映については考えないでよろしいのかどうか、その点についてまずお聞かせいただきたいと思います。  それから、先ほどもちょっとお話が出ましたけれども、有権者の意識改革についてでございます。日本社会の場合は、贈答というか贈り物の社会習慣が非常に強い国でありまして、人の家に行く場合には手ぶらでは余り行かない、手ぶらでは行けないという方も非常に多いわけであります。そういう中で、戸別訪問の問題にも絡んでくるわけでありますけれども、この選挙制度改革の中で有権者の意識改革というものを先生はどのようにお考えになっているか、それらもあわせてお伺いをしたいと思います。
  88. 小林節

    小林参考人 今回の両案では並立制で、小選挙プラス比例ということで、そこで民意の正確な反映というふうに言われておりますけれども、しょせんあの程度の比例を足すことによって正確では決してないと私は思うのです。  ですから、正確ばかり言っておりますと、先ほど申しましたように、こういう多元的な時代ですから、それはある意味では意見の違いを尊重する、とうといことかもしれませんけれども、勝手に部分利益に閉じこもってしまっている人々の意識も超えられませんから、そういう意味ではどこかにトラスチックに大きく結論を出せる仕組みがないと政治は動かないと考えますので、そういう少数利益は既に参議院の比例区で十分である、あるいは地方区と足して十分であると考えまして、むしろ衆議院の方は単純小選挙区でいけばという私は考えをしたわけです。  ですから、比例制は妥協の結果出てきたんでしょうけれども、余りそれによって正確性が特に増しているとも私は考えておりません。  それから、有権者の意識改革であります。確かに贈り物の習慣でありますが、でも、これはやりにくくてもやらなければならない。特に、先生方みたいに新しく出てきた方は古いしがらみをしょっておりませんから、それこそこれから新しい先例をつくっていけばいいわけです。つまり、今こういう確立された慣行があるということは、過去積み重ねてきたからで、これからまた、学者ですから随分青臭いことを申しますけれども、新しい実績を積み重ねていく。  有権者の意識改革は、やはり政治家がイニシアチブをとらない限りできないと思います。しかし、とる限り、そして何回か重ねていく限り、私はできるし、またやるしかないと思っております。
  89. 石田勝之

    石田(勝)委員 ありがとうございました。  猪口先生にお伺いをいたしたいと思いますが、先ほど女性の登用についての御意見を聞かせていただいたわけであります。比例代表制で、並立制で女性の名簿を交互に一人置きとか二人置きとか入れるように工夫をして、女性が政界に進出できるように大いに工夫をしてもらいたい、そういう御意見でございました。  並立制ということを仮に仮定として考えるならば、一票制は無所属への投票が比例に反映されない、法の平等を定めた憲法に抵触すると言われております。また、二票制については、有権者が二つの政党を選ぶことによって、有権者の意思の分裂につながるという意見もあるわけでございます。  これらについて先生は、並立制というか、女性の登用をするにはやはり比例代表部分を確保して、そしてそこで各党で女性、男性というふうに相互に名簿に入れるような工夫が必要であろう、そういう御見解でございますけれども、有権者の意思の分裂につながるのではないか、この意見については猪口先生はどういうふうにお考えであるか、御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  90. 猪口邦子

    猪口参考人 比例代表並立制によってしか女性の政界進出を望めないということではなくて、むしろ本来は、小選挙区に移るんだったら小選挙区での立候補者に女性をもっと積極的に各党取り立てていただきたいということであります。ただ、比例代表の名簿においても十分に配慮していただきたいということなんです。  二票制で国民の意思の分裂につながるかどうかということについては、私は、日本の市民の政治意識は決して低くはないと思いますので、基本的にはそれは心配いたしません。その点については心配いたしません。
  91. 石田勝之

    石田(勝)委員 この政治改革において、現在公聴会の日程が決まるなど、与野党の駆け引きがまさに山場を迎えております。どういう形で妥協するか、与党、野党がどういう形で歩み寄るか、こういうことが今注目をされておるわけであります。  しかし、明らかにこの法案に一部ブレーキをかけようとしているグループ、隠れ反対派と申しますか、そういう動きが活発化しているようであります。これらの動きについて三人の参考人先生から率直な御感想をお聞きいたしたいと思っております。  さらに、その慎重派の具体的な意見としては、話し合い合意ができなければ腐敗防止の部分だけでも立法化させる、こういう意見もありますが、私は、これは一括処理でなければ意味がない、そういう意見を持っているものであります。この点も含めて三人の先生から率直な御意見を承りたいと存じます。
  92. 佐々木毅

    佐々木参考人 だれが反対派であるかということを見分けるための材料を先生方から十分国民に提供していただくということが非常に大事なわけでありまして、これを葬るためには非常に威し、い、かつ、こういうことをしなければいけない、こういうこともしていないじゃないか、もっとこういうことをしなきゃいけないということを言ってつぶすのが一番有効じゃないかと私は思っておるわけでありまして、したがって、非常に見分けがつきにくくなってくるという面がございますので、その点は十分情報の提供をプロの方からしていただかなければいけないということかと思います。  いずれにしましても、比喩が適切かどうかわかりませんけれども、船頭さんがああだこうだと言っている間に船が沈んでしまいかねないのでありまして、その意味で私は、今回もし不幸な事態になれば、これは決して何かがたまたまだめになったということを超えた非常に大きなダメージを日本の国政に与えるのではないかと思っております。  それから、腐敗防止の先行論ですけれども、これは私はいわゆる俗論だと思います。というのは、ほかの問題が全部片づいた後に初めていろいろなこと、腐敗防止についていろいろなことができる条件というのが出てくるという面も私は随分たくさんあるだろうと思うのでありまして、前提条件をつくらないでそこだけをやろうというのは、恐らく実は余りおやりになれないという結果を招く話ではなかろうかという、そういうおそれを抱いております。  以上です。
  93. 小林節

    小林参考人 隠れ反対派でございますが、結論としては、次の選挙で落とすということが大事だと思っております。そのためにはやはり事実を明らかにするということで、国民の期待はもう見えているにもかかわらずそれに背いているわけですから。私などのわずかな経験でも、現職の代議士の方が何かいろいろ議論をしてこられて、ずっと聞いていますと、結局は天下国家ではなくて御自分の存続を考えておられる。これは本当にけしからぬことだと思います。  ですから、政党内での努力、それからマスメディアの努力その他で、どなたがどういう動機で何をなさったか、これをはっきり有権者に知らしめて、レッテル張りは気をつけなければいけませんけれども、正確に、要するに隠れ反対派ということが明らかになった方には落ちていただくのが一番いいことだと思います。  それから、よくそういう方が使う、まあとにかく問題はスキャンダルから始まったんだから腐敗防止だけでも先にと、これはもう陳腐な言いわけでございまして、今佐々木先生も言われたように、環境があってああいうことになっているわけですから、制度の腐敗でありますから、その制度を直さずに腐敗防止だけペンキを塗っても、結局は腐敗が陰湿化するだけで、もっと悪くなると思います。  以上です。
  94. 猪口邦子

    猪口参考人 反対される立場というのは堂々と議論されればよろしいと思いますので、もしその隠れ反対派というようなことであれば、先ほどから申し上げていますいろいろなことの公開性であるとか情報の活発な交換ということの議会民主主義の精神に反すると思いますので、積極的に反対論も国民に聞かせていただければいいと思います。  腐敗防止の部分だけということについてはいろいろな考え方があるかと思いますけれども、しかし、ごく普通の社会の市民感覚から考えると、とにかくあのような腐敗のスキャンダルをこれから先進民主主義国の一員として繰り返し繰り返しやっていくわけには絶対いかないのであって、どこからかはしっかりと手をつけていただきたいということであります。
  95. 石田勝之

    石田(勝)委員 持ち時間が参りましたので、私の質問は終了させていただきたいと思います。大変貴重な御意見ありがとうございました。
  96. 石井一

    石井委員長 次に、石田美栄さん。
  97. 石田美栄

    石田(美)委員 私は、民社党・新党クラブの石田美栄でございます。  民社党・新党クラブを代表してということですから、本来はそういう立場で発言するのが、お尋ねするのが趣旨なんでしょうけれども、けさからずっと参考人の方々の貴重な御意見を伺っておりまして、それは本当にいろいろ学ぶところがございまして、ありがたいなと思っているのですけれども、その中で、本当を言うと、このたびの選挙制度改革の中で言われなくちゃいけないのに全く出てきていなかったような論点が出てきておりますことを大変うれしく拝聴し、そこのところで私もお尋ねすることの内容が変わってしまいました。  というのは、ただいまも、きょうの質問者九人の中で女性は一人でございます。そして、参考人でいらっしゃって御意見をおっしゃってくださった万五人のうち二人が女性で、そして今の衆議院の中、五百十何人の中、女性はたった十四人でございます。  そんな中で、午前中も大宅さんが普通の生活者の感覚でと御発言になったんですけれども、私自身も、多分きょう九人質問なさった中で、衆議院は初めてでも以前には地方の議員でいらっしゃったりで、私のように全くこれまで、もう三十年以上も一教育者であり母親であり主婦であり、そんな立場の者は私だけかなというふうに思います。ですから、まだまだ議員になって三カ月余りで、お話を聞いていてもいつもどちらの側にいるのかわからないという、むしろ生活者あるいは一有権者のような立場で物を見ているような人間で、政治家とは言えないような立場の者でございます。  ですから、もう何をいつまでこんな選挙制度のことで時間をかけて、よくこんなに時間をかけて話せるなと思っておりまして、さっさと早くやってしまって、もっと大事な、台所に米があるのか、もう六百円も値上がりしたじゃないか、今度注文したら米が来るんだろうかという、そんなことを早くやってほしいなという、そういう実感もあるというところでございます。そして、午前中の大宅さんの発言にしても午後の猪口さんの御発言にしましても、かなりこの場からも爆笑が沸くという、これもどういう意味があるのかなと私も聞いておりました。  それで、選挙制度を考えるときに、民意の反映というときに、国民の中の半数強を占める、そして今やみんなが掲げている生活者政治生活者立場に立ったそういう政治に取り組むというそれを考えたときに、本当にじっくり生活と取り組んでいるのはより女性の方でありますし、国の将来を考えても、なかなか男性の政治家の方に本気で取り組んでもらうことが難しいなといつも思っております子供の数が減っていく少子化社会ということは、本当に国を挙げてまず第一に大変な問題というふうに私はとらえております。  そんな意味から、女性の生活者意見の反映ということが、民意の反映というところでこのたびの政治改革の中で大きく欠落していたことに気づかされて、私も責任を感じているわけです。  ところで、このたびの政治改革選挙制度改革を論じる中で、どういう制度がより生活者といいますか女性の民意を反映できるような制度であるのか、あるいは今世界にあるいろいろな制度の中でどういう制度がいいのかということを三人の先生にそれぞれ伺ってみたいなと思います。そして現実問題として、今出されている現在の自民党と、そして与党の案の中では、どうした運用がそうした女性の意見を反映し、あるいは女性代表を出しやすい運用の仕方なのかをお三人の先生にそれぞれお伺いしてみたいと思います。よろしくお願いいたします。
  98. 猪口邦子

    猪口参考人 政治制度あるいは選挙制度としては、女性が選出されやすいかどうかということについては、大半の選挙制度は中立てあると思います。  ただ、それをどういうふうに政党の側で立候補者を立てるときに政治風土に照らして運営するか、考えるかということで大きな違いが出てくるわけで、小選挙区制にしたときに、先ほどもちょっと申しましたけれども、一人しか自分の党から出さないということであればまずは男性が二人目が出せるならば女性というような、何となくそういうところで考えていたことがあったとするならば、女性が出にくくなるかもしれないという理論的な懸念というのはあるのですけれども、実際には、今申し上げたように、政党の中での一定の割合で女性の候補者を発掘して擁立していこうという合意さえできていれば、そういう問題は起こらないわけですから、この制度にしたから女性が出やすいというようなことは特にないと思うのですね。  中選挙区制のもとでも、女性は出た方もいるし、全体的に出にくかった、絶対的な数としては少なかったということがあります。小選挙区になっても今申し上げたような問題がおるのかないのか、それは政党側の決断によるわけです。  ですから、私は先ほど申し上げたように、もしこういうことについて本当に先生方がお考えになっているのでしたら、今国会においてどのような選挙制度改革をするにせよ、日本社会として他の先進民主主義国と比べたときに、やはり国際的に見ても余りにも大きな問題があるのではないかと思われるこの点について、何か積極的に取り組むという旨の国会決議をしていただきたいという ふうに思います。  以上です。
  99. 小林節

    小林参考人 男女差別解消の特効薬は、ある意味では一つしかないような気がいたします。それはアファーマティブアクションとアメリカで言われているのですが、優先処遇ですね。ですから、これは気をつけないと今度は男性に対する逆差別になるのですが、女性枠というものをつくる、少しずつふやしていく。それで、ある程度女性が社会進出を果たしたら、枠を取り払っても自動的に伸びていくという、これをやらない限り、長い歴史の伝統の中で、男は社会、女は家庭という役割分担ができ上がっていますから、そう簡単には突破できないと思います。  ですから、本当に女性の議員をふやそうという方針が決まりましたら、これは法律レベルで選挙制度の中に組み込んでいいかどうかはちょっと心配ですけれども、それぞれの党にも好みがあろうと思いますので、それぞれの党で女性枠を党内で党議決定でもなすって、逆にそれが女性票の誘因にもなるわけですから、何かそういう工夫をお考えになったらよろしいと私は思うのです。  ただ、私はごらんのとおり男でございますので、時々話を聞いてちょっと気になることがあるのですけれども、御無礼を承知で申し上げますけれども、よく女は生活者、私も生活しているわけでありまして、それから母たる女とが、戦争と平和、今の母とか、私も命の父でありまして、何か大きく制度を動かしていくときに、何というか、ちょっと待ってくれと言いたくなるような、そういう女性たちの、それは長い歴史の中でそういう一種の被害者意識を持たせてしまった男ともが悪いのかもしれませんけれども、何かちょっとひっかかるものがあるということは、要するに比率を考慮する際に言わせていただくという要件として申し上げておきます。  以上です。
  100. 佐々木毅

    佐々木参考人 選挙制度と女性の進出というものの関係は、ひところは比例代表制と関係をしているんだというようなことが言われた時期はあったと思います。これは恐らく北欧その他の国々の時代を指してだと思うわけでありますが、しかし、それは選挙制度のためなのか、社会全体が女性の働き場が非常にたくさんあって、いわばああいうところに行きますといろいろなトップのところに女性がいるというような社会だからそうなのかということでありますから、選挙制度はやはりその意味で中立的な面があろうかなと思うわけであります。  ただ、この数十年の経験からしますと、選挙制度を変えること、それだけがすべてではありません。変えることが恐らく女性進出、まあ既に進出されている政党もたくさんございますけれども、さらに一層進出を意図的にやっていくということができるようにするためにも、選挙制度をひとつ変えるということは、私は重要な手がかりになる政党もあるだろうというふうに思っております。
  101. 石田美栄

    石田(美)委員 時間が限られておりますので、貴重な御意見、またアファーマティブアクションというふうな言葉も出していただきまして、クオータ制のこともお聞きしたかったのですけれども、ありがとうございました。  次にお聞きしたいことですけれども、けさから皆さん専門の方々等の御意見を伺っていると、このたびの選挙制度改革、現実は見えてきたような気がいたします。今の政権、新しく発足いたしました政権ですが、非常に国民の大きな支持を得ていて、その支持がいまだに続いている。今のような政権の方向といいますか、今の状況が国民全体が希望している方向と考えていいのかと思います。  そうだとしますと、先ほども隠れ反対派がいるというお話が出ましたけれども、私も日々感じておりますのは、今出てきている私たちは全員中選挙区で出てきたものでありまして、前回選挙制度が流れたときにも本音が出てきて、そのとき私は一有権者だったわけですけれども、やっぱりそうだったのかという、そういうことが今も日々だんだん周りで感じ取られます。  変えない方が自分には安心だといった、そういう本音が出てきておりまして、やはり懸念があるわけですけれども、今国民が望んでいる方向を、より今の政治状況を進めていくとすれば、このたびの出されているような小選挙区比例代表並立制はその方向にどのように機能するのかということを参考にお伺いできれば、有権者、皆さんもやはりそういう方向かなと納得できますので、お三人の今のことについての御意見をお伺いしてみたいと思います。  ですから、穏健な多党制といいますか、今のような政治グループに分かれていく方向をとるには、このたびの新しい、考えている選挙制度だとどう機能するかという先生方の見通しをお伺いしたいと思います。
  102. 小林節

    小林参考人 先生の御質問の趣旨を聞き違えておりましたらお許しください。  今二つの案が出ておりますが、私は先ほど来申し上げておりますように、どちらもはるかに現制度よりいい、その間で妥協がなされるべきであると思っておりますけれども、それは先生御指摘のとおり、今の政治改革を掲げた内閣に対する高い国民の支持率の期待にまさに真正面からこたえるという効果がある、機能的にも、そう私は信じております。
  103. 佐々木毅

    佐々木参考人 政治を変えてもらいたいということ、あるいは政策も入るかと思いますけれども、この点についての国民の期待というのは私は非常に高いと思いますし、なおかつ最近の世論調査を見ておりますと、政治改革はできるんじゃないかという国民意見が従来よりもかなり実は強くなってきているという意味では、国会も世論によって包囲された面があるのではないだろうか。従来は、やるべきなんだけれどもできないだろうなという意見が非常に多かった。この落差がだんだん私は縮まってきているんじゃないかというふうに観測いたしております。
  104. 猪口邦子

    猪口参考人 やはり政治腐敗を根絶させたいという国民の期待というものが今国会に寄せられているというふうに理解いたしますし、その意味で改革案がここまで煮詰まってきたということは、その可能性が十分にあるだろうという期待があるということだと思います。
  105. 石田美栄

    石田(美)委員 本当にありがとうございました。  本当に、余談になるかもしれませんが、最初に猪口先生がおっしゃいましたように、政治集団というのは知的集団で、国際的感覚を持った民主的集団、そういう意味で、猪口先生のような女性も私たちのような中に加わってほしいなという冗談を申し上げまして、終わらせていただきます。ありがとうございました。
  106. 石井一

    石井委員長 石破茂君。
  107. 石破茂

    ○石破委員 本日はどうもありがとうございます。  さて、どの委員も触れておられますから、女性の政治参加の問題についてお尋ねをいたしますが、要するに、日本国会に非常に珍しくて、珍しくてというんでしょうか、よその先進国の議会にはなくて日本にだけあるものというのは幾つかあるのじゃないのかな。  まず、牛歩なんというのは、世界じゅうのどこの議会に行っても余り見ることはできないだろう。それの反対の強行採決というのも、余り先進国の民主主義で聞いたこともありませんね、と私は思うんです。あとは二世代議士がやたら多いというのも、これも日本だけの、私も含めてそうなんですが現象ではなかろうか。それから、在職年数がやたらと長いというのも、これもどうも日本だけではないのかね。あとは、女性が少ないというのも、これも日本だけなんでしょう。もう一つは、スキャンダルを起こした人が堂々と戻ってくるというのも、これもどうも日本だけなんじゃないのかなという気がしていまして、これは外国の人は非常に不思議がると聞いているんですね。  その日本だけの現象というのは、どうもこれだけ並んできますと、じゃ日本だけに特異なものと いうのはほかにもないのかしら。それはやはり世界にまれなる中選挙区制、こう考えざるを得ない。やや牽強付会的な議論かもしれませんが、そういう気が私はしてならないのであります。  何で女性が少ないんだろうか。確かに今回我が自由民主党も女性が初めていうか、久しぶりに衆議院に当選をされましたが、それまでは一つ選挙区で一人しか出ていませんよという政党しか女性の政治参加というのはなかった、議員になるということはなかっただろうというふうに思うんですね。  そうしますと、なぜ女性が中選挙区が、まして複数出るところでは出られないんだろうかということに帰着せざるを得ない。それはやはりなぜ代議士が当選をするのか。  一つ選挙区で一人しか出ないようなところはいざ知らず、一人のところで三人も四人も出る、血で血を洗うようなそういう選挙をするということになりますと、我が党の政策はこれでございます、これを信用してください。それはほかの人もみんな言っているじゃないの、要するにあんたのアイデンティティーは何なのかね、こういうことになりますと、世間づき合いがいい、あの人は面倒見がいい、自分の家族のことをほっぽっても、自分の家族を犠牲にしても私のことを大事にしてくれる、そういうことで選択をせざるを得ないんじゃないだろうか。  女性の場合には、猪口先生のように双子のお子さんを育てていらっしゃって、上智の先生もなさって、そしてこれだけ活動をなさって、そういうスーパーウーマンもいらっしゃいますが、スーパーレディーというのですか、家庭のこと、子供を育てていかなければいけない、それは本当にもう大切なことであります。いろいろなことをやらなければいけない。それで、それ以外のいろいろな世間のつき合いができますかねといえば、それはなかなか難しいんじゃないだろうか。  やはり、制度がすべてとは言いませんが、中選挙区で政権をとっていこうと思えば、どこでも過半数の候補者を立てざるを得ない。そうすると、政策では勝負ができない。少なくとも私は、ぐるぐるあちこち回っていて、我が自由民主党の政策はこうですから、ぜひ私に一票入れてくださいと言うよりも、ほかの人より私を選んでちょうだいなと言うことの方が多分私でも多かったと思っているのです。今でもそうだと思います。  そうだとすれば、それ以外のこと、世間のおつき合いということで一票入れるという面が非常に多いと思う。それが女性が特に我が自由民主党において進出が難しかったということの一つの理由じゃないのかなという気がいたしますが、猪口先生、いかが思われますか。
  108. 猪口邦子

    猪口参考人 私は非常に忙しいですけれども、しかし、いろいろなおつき合いもしっかりといたしておりますので、女性だから特にそれがしにくく、だから女性を立候補者としないとか、もしそういうお考えであったら、そうでない女性もいるということを考えていただきたいし、それからもう一つは、やはり日本の社会のある種の風土がこの際変わっていかなければだめだと思うんですよ。  これは政界だけじゃなくて、企業社会でもどこでも、もうお互いの時間を拘束することが余りにも多過ぎて、特に若い世代に非常に負担になってきているということですね。ですから、この際、そういう意味では政治改革と経済改革もやっていって、行政改革もやっていって、もう一つ抜けているのはある種の社会改革であって、お互いの自由時間をもうちょっとたっとぶような、そういう人権感覚を増していく。有権者にもそういうことをわかってもらって、小選挙区制に移っていくならば、そういう社会風土の改革もあわせて試みられることがいいと思いますね。  ただ、女性だからつき合いがしにくかったとか、そういうふうに一律に、女性だから何ができなかったかというようなことを特に積極的に考える必要はなく、まあおっしゃるような傾向はあったかもしれないとは思います、現実的にはですね。ただ、男性にもそういうことが苦手な方はたくさんいらっしゃるでしょうし、そこはまた個人差ということも大きかったようなものでございますので、むしろ日本の社会が今後お互いをたっとぶようなつき合い方というものをもう少し考える。  ただ単に、非常に大きく時間を拘束したり、何かいつもいつも訪問してくれるとか、いつもいつもいろいろと接触してくれるとか、電話をくれるから、手紙をくれるから、あるいは贈答文化ということがございましたけれども、そういうことによっているとすれば、社会全体を変える中で政界も変わっていくというぐらいのことが必要だと思います。
  109. 石破茂

    ○石破委員 まさしくおっしゃるとおりなんで、何で選挙制度を変えなければいけないかと八いますと、私の考え方では、やはり選挙というものだけが政治と有権者を結ぶものであるからだと思うんですよ。  腐敗防止が優先だとかいろいろなことを言う人がいます。しかし、腐敗防止だけであれば、それは罰則を物すごく厳しくして、そしてまた連座制なんかも強化すれば、腐敗防止だけの目的であれば成就しないこともないだろうという気がしてならないのですね。  それでも、どんなに罰則を厳しくしましても、今問題となっているのはやみ献金なんですよ。これをどうやってなくすかというところまでは、それはどんなに罰則を厳しくしようが何しようが、ばれなきゃいいんだという人は世の中にはたくさんいますから、こればかりは難しい。どうすればやみ献金なんかしなくたってよくなるかということを考えていかねばならぬ。  それは、政治家に金を持っていけば何かいいことあるよということがある限りは、やみ献金というのはなくならないと思うんですね。政治家に何を持っていこうとどうしようと、そんなことはむだなことであるというふうに持っていかなければ、それをなくすることはできないんじゃないのかなというふうに思っておるわけでございます。  さて、選挙制度をどうして変えていかなければいけないか。それは、私は国民の意識改革をしていかなければいけないからなんだというふうに思っています。確かに政治家が倫理観を高く持ち、そして正義感を高く持つ、それは大事なことだと思っています。しかし同時に、有権者が一票を入れるときに、どういう意識で何の何がしという投票をするか、そこが選挙制度を変える一番大事なところではないのかなというふうに私は思います。  世の中にはいろいろな価値観があって、好きか嫌いか、おもしろいかおもしろくないか、正しいか間違っているか、そういうようないろいろな価値観があると思うんですね。それがすべてだと言うとおしかりをいただきますが、今の投票行動でどういう価値観がかなりの重きをなしているかというと、好きか嫌いかという価値観がかなりの部分を占めているのじゃなかろうか。自由民主党が三人出ます、四人出ます、それじゃだれが好きですかということでやはり選んでしまうだろうと思っているのですね。  私は、投票行動というのは好きか嫌いかじゃなくて、正しいか間違っているかで選んでいかなければいけないんじゃないか、そのためには選挙制度を変えていかなければだめなんじゃないのかなというふうに思いますが、それぞれの先生方の御見解を賜りたいと存じます。
  110. 佐々木毅

    佐々木参考人 今先生が言われたとおりだと私は思います。  そして、政治改革がこのままなされないでいきますと、ますます先と言われるように、どこもかしこも好きか嫌いかしか残らないような状態になっていって、この中もそういうふうになっていくのじゃないかということを非常に恐れるものであります。したがって、そういうものを制度的にある程度誘導していくための手だてとして本改革というものがあるのでありまして、それは同時に、政治家先生方もお変わりいただくということが入っているだろうと私は理解しております。
  111. 小林節

    小林参考人 石破先生の今の御指摘はそのとおりだと私は思います。  ただ、本質を論ずるとすると、有権者の行動が好き嫌いではなくて正しいか正しくないかにならなければならないというのは、余りに理論的過ぎるような気がするのですね。政治というのは、つまるところ、一面では利害の配分ですから、それはその方が私にとって好ましい好ましくないというのがあると思うのです。ですから、本質において、政治というのはやはり好き嫌いという面は否定できないと思うのですね。  ただ、問題は、釈迦に説法でごめんなさい。今の中選挙区制だと、その好き嫌いが結局はお人の好き嫌いになってしまうのですね。ところが、小選挙区制とか比例にすれば、それは政党の好き嫌いで、好き嫌いが政策の好き嫌いに転化しますから、それはすなわち先生のおっしゃる正しい正しくないに転化していくと思うのですね。そういう意味のお話と承りました。
  112. 猪口邦子

    猪口参考人 既にほかの先生方がおっしゃいました。先生のおっしゃるとおりという感じがいたします。  日本では、とにかく個人的な好き嫌いというのは確かに大き過ぎるのかもしれないと思うのですね。アメリカですと、例えば下院議員などは、自分はこういう法案についてはこういう立場をとったとか、こういう運動をしたとか、そういうことを非常にアピールするのですよね、政治的な立場ということを。自分はこういうボランティア活動もやっている、こういう政治的な業績があるということをあれこれあれこれキャンペーンするのですけれども、日本ですと、そういうことよりも、やはり就職の面倒を見ていただけるのかどうかとか、そういうことが問われるということであれば、政治家先生方にとってもある意味で不当な負担という感じがいたしますので、そういうところをこの際、社会文化を含めて改革していただきたいと思います。
  113. 石破茂

    ○石破委員 選挙制度改革の論争というのは神学論争みたいなところがありまして、どこまで行っても交わらないなみたいな感じはするのですね。  私が、ある自民党の領袖と話をしておって、どうしても意見が合わないのは、結局どっちの方が国民に向かってつらくて嫌なことが言い得る制度なんだろうかということなんですよ。  要するに、政治家の仕事というのは、確かに池田内閣で所得倍増であり、佐藤内閣で高度経済成長であり、田中内閣日本列島改造論であり、月給が倍になります、もっと幸せになります、あなたのところにも新幹線が通ります、高速道路ができます。政治家の役割がサンタさんであったときというのは、これは多少政治家がお行儀悪くても、まあいいや、おれも幸せになるのだからみたいなところがあっただろうと思うのですよ。  しかしながら、今や消費税は払ってください、年金は六十五歳支給でございます、減反はやってください、牛肉・かんきつは自由化でございますというようなお話で、要するに、国民につらくて嫌なことを訴えなければ国がひっくり返ってしまうよという時代に入っただろうと思っているのです。政治家がその役割を果たせるようなシステムをつくらなければ、どんなに制度を変えたって何の意味もなかろうというふうに思っておるのです。御機嫌取りの政治をやって滅んだ国というのはたくさんありまして、どうやって政治家が機嫌をとらないで、国民のためにつらくて苦しいことを訴える制度ができるかということが選挙制度改革の私は本質じゃないのかなと思うのですね。  腐敗がない政治も大事です。しかしながら、清くて正しくて美しい政治というような宝塚みたいなお話をするのが、それが政治改革の目的じゃないので、つらくて苦しくて嫌なことだけれども、国民のために必要なことを政治が本当に訴えることができるシステムとは、一体何でしょうかということを我々は議論をしていかなければならなかったのだろうというふうに思っています。  さて、そこに適合するものは中選挙区制でおるのか小選挙区制であるのかということなんですね。私は、平成二年の選挙のときに、消費税は絶対要るんだと言って選挙をいたしました。参謀たちは、おまえ、それでなくても評判悪いのに、消費税賛成などと言ったら絶対落選するから、変なことを言うのはやめておけとおっしゃった方もありましたが、私は徹頭徹尾要るんだと言って選挙をやったのですね。それで、本当にありがたいことに当選をさせていただいたわけであります。  そのときに、やはり中選挙区制というのは正しいんだなと一瞬思ったのですよ。五人に一人は本当のことをわかってくれる人がいるのだから、どんなに嫌なことでも五人に一人、四人に一人はわかってくれる。本当のことを勇気を持って言うためには、やはり中選挙区制でなければだめなのかもしれないなと一瞬思ったのでありますが、しかしながら、それと全然逆のことを言った人も堂々と当選をしているわけですね。消費税は絶対要らない、大丈夫、こう言った人も当選している。  どっちが正しいかはおきます、それぞれ違う考え方ですから。しかしながら、本当のことを言ってわかる人も五人に一人はいるかもしれないが、そうでないことを信じる人も五人に一人いるんだとすれば、それはこっちの方が正しいという理由にはならないのではなかろうか。十人のうち五人、二人のうち一人、その人たちに本当に説得できて、その人たちを納得せしめて初めて国の政策と言えるのじゃないだろうか。五人に一人の人にわかってもらえばいいのじゃなくて、二人に一人の人にわかってもらう努力を、政治が真摯な努力をしていくためには、やはり小選挙区制でなくてはいけないのではないかというふうに私自身は思ったようなことでございました。  そして、自分の党の政策と全く関係ないことを言ったって当選ができるというのは、やはりよろしくないねというふうに思ったのですね。自由民主党というのは、つらくても苦しくても消費税は必要だというふうに言ったわけです。それは消費税反対と堂々と言う人はいなかったですけれども、そのことに一言も触れないでやっていく人もいるわけであって、やはりそれはまずいんじゃないの。  小選挙区制で、国民に向かって訴えていくことができる、そして有権者の方も本当にどっちが正しいのかねということを真剣に考えるためには、つらくて嫌なことを訴えるためには、中選挙区制よりも小選挙区制の方がいいんだというふうに思ったのですが、おまえ、そうなると迎合政治になるよ、十人のうち五人にわかってもらうためには多少甘いことも言わなければいけないよ、どっちかというと政策は迎合的になるよ、こういう反論もいただきました。  これは本当に神学論争で、どこまで行っても交わりません。これは信じるしかない。小選挙区制にしていって、国民にそれを訴えかけていくしかないというふうに、これを私は信じてやっていこうと思っておりますが、いやいや、そうじゃない、迎合政治になると言う方もいまだにいらっしゃいます。  これはもうここまで来ましたから、先ほど小林先生がおっしゃったように、政府案にしてもそしてまた自民党案にしても、今の制度よりはるかにましたというふうに私は思っております。どちらにしても決めていかなければいかぬことでありますし、ことしじゅうにどうしてもやらなければいけないことだと思っていますが、ただ、本当にこれで迎合政治にならないようにするためにはどうしていけばいいんだろうかということは、私の中に、まだ心の中にひっかかりとして残っておるのですね。その点について御見解を承れれば大変ありがたいと思います。
  114. 猪口邦子

    猪口参考人 先生のおっしゃること、一言一言がそのとおりだというふうにお伺いしているのです。迎合政治になるか、これはですから、日本の先ほどから申し上げているような市民社会の政治感覚といいますか、政治風土をもう少しレベルアップしていくという大きな運動の中で初めて本当に政策論争のできる政治というものが実現されると思うし、これから高齢化社会に行ったりあるいは日本の国際負担がふえたりするときに、大変な課題についても率直に有権者にわかってもらうという政治も可能になると思うのですね。  先生お話を今伺っていて、かつて、余りにも言い古された言葉ですけれども、アメリカでジョン・F・ケネディが、国があなたのために何をやってくれるかではなくて、あなたが国のために何をやってあげられるのかということを有権者としては考えるのだ、それがシチズンというものだということを訴えたということを思い出します。  あのときのアメリカというのは、ちょうど六〇年代の初め、国際負担も非常にふえ、いろいろ大変な立場に立っていたときに、増税も含めた難しい課題について国民に理解を得なければならない、そういうことを彼は若い指導者として率直に言っていたのだと思いますね。  そういうことを言う勇気というのがやはり政治家には必要だし、そういうことも含めて、政治家先生方も、それから国民の側ももう少し新しい時代をつくっていくんだという意識が必要で、これは政治家だけがやれば事済むことだとか、いや悪いのは有権者の方でというような責任のなすり合いをしている限りにおいて、結局同じ社会の中で暮らしているわけですから余り大きな進歩が見られないと思いますし、制度改革をするときには、それを支える社会風土に突破口をあけるというぐらいの意識を持って、包括的に臨んでいただきたいと思います。
  115. 小林節

    小林参考人 今の先生お話をごもっともだと思いながら受けとめまして、整理して、そして私の補足意見を加える形でお答えさせていただきます。  確かに、政治家がサンタさんでいてよい時代は、政治家国民の欲望の代理人ないしは代言人であったと思うのですね。それはいわば便利屋さんで、ただ、もうそれが限界に来ていることはお互いわかってしまったわけで、そうなりますと、政治家はこれから国民の理性の代言人にならなければいけない。  つまり、現にあるむき身の世論が必ずしも正しいわけではないですから、現にある世論の代言人ではなくて、あるべき世論の代言人にならなければならない。ここで現実の欲望とぶつかってしまいますね。それで、今のような中選挙区制でいきますと、当然政権政党は、それだけ一番ある意味では利権に近いところにいる政党はサービス屋さんでいないと、個人競争ですから、結局欲望の代言人に堕してしまう。  そこで、今ここで検討されているいずれの案にしろ小選挙区と比例ですから、これは結局はお人選びではなくて政党及び政策セット選びでありますから、必然的に欲望の代言人選択システムから理性の代言人選択システムに変わっていくという展望が開けてくると私は思うのです。  それから、先ほど先生が五人に一人は本当のことを言ったらわかってくれると言われましたけれども、私はそのように楽天的にあの事実は評価していないわけでありまして、要するに逆に、そういう先生の言っていることはわからない、だけど男らしいとか、それから、先代からおつき合いしているから、あの茂ちゃんが随分立派に育ったわねというような感覚で入れてくだすった方が多いのではないか。したがって、いずれにしても、今の選挙制度先生があのときあれで当選なさったということは、それによって中選挙区制を支持する理由にはできないと私は思います。  以上です。
  116. 佐々木毅

    佐々木参考人 中選挙制度というのは、民主主義一つの病気であります迎合という問題を抱え込んでいるということは疑い得ない点でありまして、ただ私の見るところ、それもちょぼちょぼ的迎合というのも結構多いのじゃないか。つまり、大迎合をするほどの度胸も求心力もないのがどうも中選挙区制だった、だから安定してきたというのがどうも今までのあれじゃないかと私は思うのです。  小選挙区制の方は、これはある意味で、先生おっしゃるように正しいかどうかというふうにいく可能性も私は随分あると思います。しかし、そこで大迎合をやられますと、これはもうとことん大迎合になってしまう可能性もなしとしない。僕ははっきり言って、よその国のこと宣言って恐縮ですが、例えば八〇年代のアメリカなんかにはややその傾向があったのじゃないかというふうに思うのですね。  ここのところは、これは制度の問題でカバーできる面と、政治を実際担われる方の資質の問題あるいは物の考え方、いろいろな状況というものによって左右される面が何割があるのかなと思います。ただ、一たん大迎合をやってしまうと、あるいは中迎合でもいいですけれども、これをもとに戻すのは大変だろうと思うのであります。  そして、先ほど先生お話にもございましたように、やはり一つ政治制度の歴史的寿命といいましょうか宿命といいましょうか、位置というものはございまして、戦後のある時期から以降の日本というのと中選挙区制というのは、どっちが原因で結果かわかりませんけれども、いわば一種の共存状態みたいなものが可能であった。サンタさんというお話もありましたけれども、中サンタ、小サンタがそれぞれにやっていければよかったという時代があった。  しかし、まさに現在そういう諸前提そのものが問われている中で、もはやそういうものはその前提を失ったという点から申しますと、私の使っている言葉でいえば、いろいろな個別的要求に応ずる政治というよりも、もう少し何か将来を見通した責任のある政治というものへ切りかえていくという必要に迫られる段階に来ているのではないかというふうに思っております。ですから、その意味で、いろいろなレベルで今石破先生が言われたような問題というのを理解することができるのかなというふうに考えております。     〔委員長退席、三原委員長代理着席〕
  117. 石破茂

    ○石破委員 三先生とも教育者でいらっしゃいますから、これはお答えは結構なんですが、どんなに制度を変えても、やはり国民一人一人が何をすべきなのかということをきっちり理解しないと、これはだめだと思っているのですね。  私も、小、中、高、大と出ましたが、本当に国民政治に対してかく参加すべきだということを残念なくらい余り学校で教わったことがないのですよ。三権分立の仕組みであるとかいろいろなことを教わりました。私も慶応大学で田口教授に憲法を習った口でございます、余りいい成績はもらえなかったのですが。とにかくいろいろな知識は教えていただきますが、先ほど猪口先生がケネディの例をお引きになりましたが、国民というのはそういう義務があるんだよということを一体どれだけ学校教育で教えているんだろうかというと、それは甚だ怪しいんじゃないのかなという気がしてならないのであります。  それは確かに選挙制度にも関連していて、我々、国会見学というのがあるんですが、衆議院議員に余り国会見学のお客様は来ないのですね。もう地盤で絶対がんがんで、ここは私が強いというところはやってきますが、ほかの議員と半々なんというところは来ないですよ。なぜ来ないのかといいますと、例えば私のところへやってきた、私とある先生が半々のところの市町村の学校が。そうすると、帰った後でわあわあと文句が来るんですって、何であそこに行ったということで。それはまずいと。参議院であれば一人しかいないから、じゃあそこに行っておけば波風立つまいみたいな話で、参議院に国会見学というのはたくさん行って衆議院には余り来ないというような、これは変な例かもしれませんけれども。  私は、イギリスの総選挙や何か見ていて、子供たちが、僕は労働党だ、私は保守党だと。先生が、あなた方とにかく参加してきなさい、ボランティアやってきなさいというようなことで、積極的に参加するようなことを教えているらしいのですね。やはりそういうような教育というものもやっていくような必要があるんじゃないか。それは大学教育だけではなくて、小学校から政治の仕組みは習うわけですから、小学校、中学校、高校とやっていただきたいなという気がしておるわけでございます。  さて、お金お話でございますが、小選挙区では金がかからないのかどうなのかというお話がございました。私は、これはやはり制度に関連しているんじゃないかという気がしているのですね。  例えばここにコップがございまして、これは百円でございます、これはこのエリアでは猪口商店しか売っておりませんということになれば、だれだって猪口商店に行って、ちゃんとしたお金を出して百円のコップを買うだろうと思うのです。しかしながら、そのエリアでこのコップは猪口商店でも売っております、小林商店でも売っております、佐々木商店でも売っておりますということになれば、じゃ一体どういう動機でこのコップを買うのかしら。  同じコップであるとするならば、百円を十円値引きして九十円にしてくれませんか、同じコップであるならばジュース一本おまけにつけてくれませんか、同じコップであるならば私の家と近いお店から買いたいわ、同じコップであればおねえちゃんがきれいなところから買いたいねみたいな、そういうようなこのコップのクオリティー以外のところで投票動機が決まっていくのではないかしら。  やはり自由民主党でも複数の候補者を立てますから、自由民主党である限りは、国防、外交、教育、いろいろな政策で一致しているからこそ自由民主党で出ておるのであって、そうでなければほかの政党に行けばいいわけですから、それは個々人の政策という点では同じだろう。同じ政策であるとするならばもっとほかのサービスないの、それがやはりお金がかかるということに関連しているんじゃないかというような気がするのですが、猪口先生、いかがですか。
  118. 猪口邦子

    猪口参考人 まず、先ほどちょっと言い落としたことがありますので、あと学校教育についてもおっしゃいましたので、ちょっと一言その前に申し上げたいと思います。  国民にこれからは大変なことも背負ってもらわなければならないということを訴えなければならないとおっしゃいました。そのとおりだと思いますけれども、でもそのとき、日本政治はやはり潔癖でなければならないと思いますね。自分政治の世界自体が政治腐敗のニュースで揺れているようなときに、これからは国民が負担をもっと負わなければならないんだよというような議論というのは、やはり説得力がなく、国民から見放されるだろう。だからそういう意味で、政治改革というものとこれはワンセットで進めていかなければならないことだろうと思います。  それから学校教育についても、まあ皮肉な言い方をすれば、早くから政党政治のボランティアをしていらっしゃいとかなんとかということであれば、最悪の場合、非常に早くから談合とはどういうものかを知ってしまう。アーリーエクスポージャーになるんじゃないかという不安を持たなければならないような事態というのが少なくはなかったかというふうに不安に思います。  したがって、市民教育をするときにできるだけ政界には近づけないで、教科書的なところを論じようというところにもし教育が回帰していたとするならば、それはもう教育者としての責任もあるかもしれないけれども、日本政治というものがそういう若い青少年の心を沸き立たせるような恋とか理想とか突破力に満ちていたかということも、政治家先生方としては自問していただきたいというふうに思うのですね。  ぜひこれからはああいう政治をみんな目指そうよ、ああいう立派な先生もいるんだから、政治家もいるんだからという教育を現場でいたしたいと思いますので、それにたえる政界をつくっていただきたいと思います。  お金については、まあ先生がおっしゃったようなことをいろいろと議論されてきているわけですが、私が先ほど申し上げたように、確かに小選挙区制になれば今先生がおっしゃったような矛盾というのは解消されると思うけれども、でも風土そのものが変わらないと、別の形で、その中での泥仕合いみたいなことになりかねないということもまた考えていただきたい。制度を変えたからこれでみんながクリーンになれるんだという、何か非常に他律的な感じを受けるわけですね、そういうふうに言い切ってしまうことは。  ですから、制度を変えると同時に、先ほど申し上げているような政治風土の改革と、それから国民と一緒に日本の社会の余りにも合理的でないところは改革していくんだというコミットメントを持っていただきたい。そして、政治家先生方はそこにおけるリーダーであってほしいというふうに思います。
  119. 石破茂

    ○石破委員 さて、都市と農村の一票の格差云々かんぬんというお話がございました。  私の選挙区は鳥取県でございまして、よくいろんな例に挙がるんですが、全部かき集めたって六十二万人しかいないわけですね。それは鳥取市の人口なのかと聞かれますが、鳥取県全体でそれだけなのでございます。  私のところは、政府案であろうが自民党案であろうが、今ある定数四が二に減るわけですね。まことにけしかもぬことではないか。今四人いるのが、それでもまだインフラストラクチャーも整備されてないのに、まだ新幹線もなければ高速道路もついてない、やはり国会議員の数を減らしちゃ困るじゃないかという議論は、結構私の選挙区じゃあるんです。  そうではない。国会議員に頼んだから道路がついたとか、国会議員が怠けていたから公民館が建たなかったとか、それじゃ何のために市長や知事や県会議員や市会議員さんがいるのかね。国会議員というのは、国会議員じゃなきゃできない国防や外交や教育や経済政策、確かに今は票にもならないですよ、金にもならない。だけども、国の将来のために必要なことをやる制度というのは必要なことじゃないかしら。じゃ、地方分権というのが必要で、県のことは県が、市のことは市がやることが必要じゃないか。  この政治改革全体のグランドデザインの中で、地方分権の議論というのがまだきちんとしてない。そうなったときに、本当に地方はどのような役割を負うべきなのかという議論がきちんとされてないような気がする。これじゃ画竜点睛を欠くような気がするので、その議論は大急ぎでしていかなきゃいかぬだろう。そうでなければ、議員が減ったところは政治力が落ちるということは如実にあらわれることであって、そのことは避くべき事象じゃないかというふうに思いますが、いかがですか。
  120. 猪口邦子

    猪口参考人 おっしゃるとおりだと思います。  地方分権は今回の政治改革でも一つの理念的な主柱になっていると思いますので、それを積極的に進めていただきたいと思います。しかし、やはりここでもつけ加えなければならないのは、先ほども申し上げたように、政治腐敗の問題とかその他の社会正義の未達成の問題ということについて、地方の方が中央よりもはるかに進んでいるというわけにはなかなかいかなくて、この際、地方分権を進めるのであれば、地方議会における問題あるいは地方自治体全体における問題をしっかりと考えていただきたい。  そこを真に民主化、近代化して、私が申し上げているような女性の参画というようなことについても、バランス感覚に富んだ地方政治というものを実現していかない限り、腐敗の問題もここに来て地方レベルのものが一気に表面化しておりまして、こういうことが続けば、地方政治に対する、地方自治体に対する国民の不信感というものもまた大きくなってしまうのではないかということを懸念いたしますので、権利を与えるときには、その責任について厳重に注意していただきたいということであると思います。
  121. 石破茂

    ○石破委員 では、法案の部分についてちょっとお話をしたいんですが、私は、やはり自民党案の方が筋は通っているだろうと思うんですね。小選挙区というものに重きを置かなければ、二百五 十、二百五十で両方とも半々だからいいじゃないかというのは、一体どこに理念があるのかよくわかりません。  多様な民意がある、だからそれをできるだけ正確に反映すべきじゃないかという考え方と、多様な民意があるからこそどこかへ集約していかなければ、迅速的確な判断はできないじゃないか、これは全く交わらないんですが、世の中いろんな民意があるからこそ、どこかへ集約していくのが衆議院の仕事じゃないだろうかと思うんです。  我が国が一院制であれば話は別なんですが、いろんな民意を反映させるためには参議院というものがきちんとある。衆議院というのが政権選択のハウスである以上は、ある程度民意の集約というものに重きを置いてしかるべきじゃなかろうか。多様な民意の反映は参議院というものがきちんと一院としてあるわけですから、そちらの方にもかなりのウエートを置いて考えるべきで、衆議院の方が参議院よりも小選挙区部分が少ない、これはどう考えても納得いかないなという気が一つしておるわけでございます。  そして、一票制、二票制の問題ですが、私はこの場で総理ともいろんな議論をしたんですが、全然がみ合わなかった、私の言い方が悪かったのかもしれませんが。  私は、クロスボーティングというものは、本当に衆議院においていいんだろうかという気がするんです。いろんな党がいろんな政策を申し述べます。ある基本的な、根幹的な事柄にA党とB党と全然差があったといたしますね。私はA党の政策というのはどうしても信用できないんだけれども、A党から出ている某は好きであるからこれに丸をいたしましょう、しかし、政策としてはB党の方が正しいので、こっちに丸をいたしましょうということになりますと、この人は一体何を選択したのかなということがどうしても私にはわからないんですね。  それも自由でありますということなのかもしれませんが、民主主義は最後は多数決であって、一票違っても国策の選択というのはどっちかに振れていくわけですね。あれもいいがこれもいいんだというような人の意向で何人かの議員が出てきて、それによって当然議席は差が出てまいりますから、それによって一票差で国策が選択されるというようなことがあって、本当によろしいのだろうかという気が私はしてならないのであります。  確かに私どもは重複立候補というものを主張しておって、その重複立候補のゆえんは、多様な民意の反映というよりは、どうやって死に要部分を救済していくのかなということに重きを置いたつもりなのであります。確かに多様な民意の反映というのも大事なことでございましょう。同時に、死に票の救済ということも考え、重複立候補というものを考え、そしてまた同時に、これはまだ正式に決まったわけでもございませんが、いろいろと議論をしておりますのは、惜敗率と言おうと善戦率と言おうとそれは構わないのでございますけれども、どれだけの人の民意を反映しているかなどいう人を比例では当選さしていくべきじゃないか。  単に比例で上位に載っているから全然票が少なくたって当選させる、そういういいかげんな話じゃなくて、より多くの民意を反映した人を当選さしていくというようなことも案としては検討されておるわけでございますが、私は、とにかくどちらにしても今の現行制度よりもましだ、やってしまわなきゃいけない、それは認めております。しかし、二票制というもので本当にそれが、参議院の存在も考えた場合に、こちらの方がよいのだという積極的な根拠を私はどうしても見出しがたいのでありますが、佐々木先生、いかがでございますか。
  122. 佐々木毅

    佐々木参考人 この問題は、民意の集約というものをどういう形で、かつどれだけストレートにやっていくかということについての考え方が、実はいろんな立場があるんじゃないかというふうに私は思っております。  私自身の考えを申しますと、先ほどもちょっと申しましたけれども、自民党案といいましても四つぐらい僕はあるんじゃないかと思いまして、そのうちの一票制、都道府県比例、それから重複立候補、それから三百、二百とありますね。  このうちの全部を一気に、そういう形でこの並立制をいわば解釈するというか何というか、つくるといいましょうか、これは僕は新しくつくることだと思うんですけれども、これについては先ほどもちょっと申しましたけれどもやや心配があるというのは、この小選挙区に非常に重きを置いたときの、まあ言葉は悪いですけれども、迎合票みたいなものに対してちょっと私は正直言って懸念を持っておるわけであります。  ですから、決まることは決まると思います。AかBかということについては非常に明確に決まると思います。しかし、逆にそれがおかしな決まり方をしたときに、ブレーキがどういうふうにかかるのかなということについて、一抹の不安を正直言って持っているということがあるのであります。これは、いやそういうことは心配ないよとおっしゃられれば何ともあれですけれども、これは将来のことであります。  その意味で、少なくともその四つあるうちの例えばどこかについて何かの形で見直しを考えられるということはあっても、僕はそれなりに合理的な判断として成り立ち得るのではないだろうか。それは逆の方の案についても同じことでありまして、つまり、こっちの方は積み上げていくという方になろうかと思うのですけれども、その辺については、これは全くこうだからこうだというふうに論理的に決められる範囲というものは、非常に限られた点だと私は思っております。  ですから、この点についてはそれぞれの人の見通しなり、あるいは現状に対する判断なり、あるいは国民の、第一その政党に対する態度というようなものを考えたときに、どれだけ国民の意識が、例えば支持政党なしが圧倒的に多いから非常にきつい制度を入れて一気にやってしまうというのがいいのか、ややそこは緩いので、むしろそれよりは、そこまで締めないでやっていく方がいいんじゃないかという議論が御存じのように出てきていることもその一つなんですが、私自身が一番気にしているのは、いわばある種のそういう、暴走と言うとちょっと語弊がありますけれども、その面について若干の不安を持っているということから、私自身がそういう考えを持っているということでございます。
  123. 石破茂

    ○石破委員 結局、私は比例代表を組み込む意味というのは積極的にあると思うのですよ。それは単純小選挙区であれば物すごく振れますので、政策が。  イギリスの制度を議論しているときによくこういうことを言われた。おまえたちは単純小選挙区が正しい正しい、何にしても小選挙区だ、そんなに小選挙区が正しいのであるならば何でイギリスはあんなにだめになっちゃったんだ、こういう反論を加えられたことがありました。  それはやはり歴史的には保守党と労働党であって、企業が国営になったかと思えば突然民営になって、民営になったかと思えば突然国営になって、とにかく国策が物すごくぶれていくから、安定装置として比例というものはビルトインしておかなきゃいけないんじゃないか。比例を入れておく意味というのはそこにあるんだろうなというふうに思って、確かに理論的には単純小選挙区の方が正しいに決まっているのですが、比例を入れておく意味というのは、激変緩和としてあるだろうというふうに思っておるのです。  ただ、岡原先生が午前中にもおっしゃっていましたが、一回やってみて余りクロスボーティングが多いようだったら、それはもう一度考え直してもいいよというような御示唆をいただいたわけでありますが、たしかドイツの場合に、クロスボーティングの率というのは二割ぐらいじゃなかったかなというふうに思うのです。  あれもいいがこれもいいということで、最後の一議席か二議席で多数決で決まっちゃったというような事態もこれから先は起こるのじゃないか。 冷戦崩壊後の日本というのはそういうものじゃないのだろうかという気がするのですね。  国防でも外交でも、一体どうするんだということでがんがんと議論をする。私は何でこういう選挙制度改革をやらなきゃいけないと思ったかというと、これもあちこち言っていることですが、湾岸戦争、湾岸危機のときに全然議会を開かなかったというのは、一体これはどういうことなんだということなんですね。一番そのときに議論をしなきゃいけないのに、国会はお休みしていた。  それでとうとう百三十億ドル出しまして、でも百三十億ドル出すか出さないかでがんがん議論したかというと、それも余り私は自信がないのですね。そして出てきた議論に、安全なんだ、危なくないんだ、危なくなったら帰ってくるんだというようなお話があって、本当にそれもぎりぎり詰めた議論をしたのかなというと、そうでもない。やはりそれをやっていかなきゃいけない。  これから先の日本議会というのは、そういうものに直面しなければいけない時代に入ったときに、あれもいいがこれもいいんだということで、国策が最後の一票や二票で振れていくということをすごく恐れているのです。  だから、やはり一票制でなくちゃいけないんじゃないか。しかしながら、本当に世間で言われているスタンダードな一票制みたいに、何の何がしと書けばそれだけで何党という形じゃなくて、マークシートという形の変形一票というものを提案をしておるわけで、この提案をもう少し議論をし、御理解をいただかねばならぬ、かように私は思っておるところでございます。  さて、これから先、どういうような価値観によって分かれていくんだろうかということを私は思うのですね。私どもが自民党でいろいろなことを考えて、政権交代の可能性がある制度をつくらなければいけないというふうに申しました。そうしたらば、反論者いわく、何言っているんだ、中選挙区制だってちゃんと政権かわったじゃないか、おまえの言う論拠はもう崩れたぞ、こう言われるのですけれども、私はそうじゃないと思っているのですよ。  なぜならば、基本的な政策自民党のものを継承すると言ったから、中選挙区制で政権交代が起こったのですね。それが基本的な理由だろうと思っていて、これはもう非常に突発的な異常な事態だろうというふうに思っているのです。常に政権交代の可能性を担保しておくんだということは必要なのであって、今までの政策は変えました、自民党政策を基本的に継承しますというふうなことになると、国民はかなりびっくりしちゃうわけでありまして、もうここは違うんだよということを明確にして、選挙のときに国民にそれを訴えてやっていく、常に政権交代の可能性を担保しておく、チョンボしたらすぐかわるんだよということが大事なことではないのかなというふうに思います。  さてそのときに、今は与野党がひっくり返っちゃいましたが、社会党の皆さん方と議論して、ううんと言って頭を抱えたのは、二大政党はいいけれども、一体何で分かれそいくんだろうねということでございました。そこがどうしてもわからない。何で分かれていくんだろう。  それで、今の状況というのは、よく言われるわじれ現象ではないのかなと思っているのですね。連立与党の中にも自民党政策的には近い方もいらっしゃる。だれが何と言おうと、これはねじれ現象ですよ。これはやはり解消していかねばならぬ。解消した後に分かれていく場合の判断基準というのは何なんだろうか。これは法案の本質とは関係のないことでございますけれども、こういうことで分かれていくのかなということがあればお教えをいただきたい。  そしてまた、私はそれが大して変わらなくたっていいじゃないかという気もしているのです。基本的な政策においてそんなに変わりがない方がかえっていいかもしれない。その政党が何か間違いをしてかしたときに、大して変わらない政党が取ってかわりますよということがあれば、それはそれでもいいのであって、明確な対立点というものをあえて浮き彫りにする必要もないのかなという気もしておりますが、小林先生、いかがですか。
  124. 小林節

    小林参考人 大変難しい問題ですけれども、一つは、よく言われておりますように、憲法とか安全保障の問題、これは国家と個人の基本的な関係について大きな違いがあって、これはある意味では一種のイデオロギー対立のようになっていて、そしてそれが何か枠を超えてよじれている。これは一つの分かれる基準になるやによくはやされますが、さあ、我が国の民族性としてこういう選択を好むかどうか、いささか不安でございます。  となると、今先生が示唆されたように、似たものでいいと思うのですね。これはせめて人心一新の効果がありますし、別な言い方をすれば、農村有利に土木政策が動いていくのか都市型でいくのかとか、そういう何か似たベースの上で、単なる趣味の違い、それから人間ですから、これまでの行きがかりとか人脈というのも案外具体的な分かれ目に私はなると思うのです。  いずれにしても、制度が変わるときをきっかけとして分かれていくということはわかりますが、まことに申しわけございません、先生の御質問にお答えする能力、これで限度でございます。
  125. 石破茂

    ○石破委員 もう一つは、政治のリーダーシップについてなんです。  政治改革の目的もいっぱいございますが、一つは、政治がリーダーシップを持たなければいけない。官僚主導ではなくて、政治が明確に政策を提示し、それを国民が支持し、官僚ではなくて、本当に政治が力を持ってやっていかなければならない時代に入ったんじゃないかというような認識を持っておるのであります。もちろんこれは官僚の本分でありますが、先例から逸脱をすることはできない。六法全書から逸脱をすることはもちろんできませんわ。  湾岸危機のときに、じゃ集団的自衛権をどう考えるんだという議論があった。国連に対してどうやって参加をしていくべきかという議論があった。そのときに、外務省を退官されたある方が我々のあるグループに講演にお越しになって、集団的自衛権は当然違憲でございましてとすらっと言われたんですね。いやいや、それがまさしく問題なんじゃないんですかというような議論がございました。  そのときに、その元官僚の方答えていわく、済みません、役人時代の癖がつい出てしまいまして、ついそう言ってしまいましたというようなお答えがあったんですが、もうそれじゃなるまいよ。やはり政治というものが力を持って判断をしていかねばならぬだろうというふうに思うわけでございます。  例えば米の問題にいたしましても、我々は、備蓄は必要だ、やはり二百万トンぐらいの備蓄はしておかねばならないという議論は、もう三年も四年も前からしておったことでございます。関税化の是非はひとまずおきまして、でもそのときにやはりだめですよということになりましたのは、その財政負担をだれがやるんですかという話だったんですよ。  それは大蔵当局が、大蔵省が何でも言うなりに金を出していたら国はつぶれちゃいますから、大蔵もその辺は心してやらなければいけないことなんでしょうけれども、例えば農政について、自由民主党の政策はこうであります、日本社会党の政策はこうであります、日本共産党の政策はこうであります、お役人さんが何と言おうと、この政策を提示し国民がそれを支持して政権を得たからには、お役人はそのとおりにやってくれということがなければ、政治のリーダーシップというのは発揮できないと思っているんですね。やはりそれが国民がこの政策を選択したということである。これから先は、お役人任せであってはどこに行くかわからない。  ある方が、日本政治というのは自動操縦つきの飛行機みたいなものであると言う方がおられまして、自動操縦装置というのは世界に冠たる官僚機構である、それがきちんと動いているから、パイロットが酒を飲もうが付しようがちゃんと飛行機は飛んでいるんだ、こういう話でしたが、今はもう乱気流状態に入って、オート、自動操縦に任せておっちゃだめなんだ、政治家がきちんと飛行機を操縦していかなきゃいけないねという時代だろうと思っているんです。  私が何で小選挙区部分を主にしなきゃいけないか、何で一票制というものを考えていかなきゃいけないか。それはやはり政治がリーダーシップをとるためには、これが選択されたんだということをより明確に示していかなければ的確迅速な対応はできない。政治が的確迅速な対応をするために選挙制度改革政治改革をするとするならば、より民意が集約される方向に出るべきだ。それが政治が官僚から独立し、民意を背景にしていろいろな政策を推し進めていく礎になるであろうというふうに思っておりますが、いかがでございましょうか、猪口先生
  126. 猪口邦子

    猪口参考人 おっしゃるところに反対することは全くございません。
  127. 石破茂

    ○石破委員 じゃ、小林先生佐々木先生、いかがですか。
  128. 小林節

    小林参考人 私も全く同感でございます。
  129. 佐々木毅

    佐々木参考人 それは、今度は選挙制度を変えた政治家の方がその問題を解決するべく責任を負うということだと私も理解しております。ですから、国民との間ではこういう政策でやりますよということを言って、東京へ来たら従来どおり君臨すれども統治せずということでは、やはり困るだろうという意味でございます。  それから、先ほど先生がおっしゃられたこととの関係で、ちょっと一言申し上げさせていただければと思うんですが、どうも私は、我が国において何か大きな切り口があるとすれば、これからの政治は五五年体制というもの、これは決して政治の世界の五五年体制だけじゃなくて、そこでいろいろ積み上げられてきた物事の決め方やら政策やら、これをどうするかということが一番大きなテーマになっていくのではないかと思います。  それを守ろうとする人、Aという路線を行こうとする人、Bという路線を行こうとする人、この辺が社会主義とか自由主義とかというのじゃなくて、日本の体制論というのはどうも五五年体制というものにあるんではないか。これをどういうふうに次の世代へ、新しいものに変えていくのかということに私は一つの選択、いろいろな問題が結局そこに帰着するということであって、集団的自衛権もそういう中の一つにあるいは入っていたのかもしれないなどということをちょっと感じました。
  130. 石破茂

    ○石破委員 猪口先生小林先生から全く異論はないというお話でございますが、要するに私が申し上げたいのは、そうであるならば、やはり小選挙区にある程度ウエートを置くべきじゃないのかしら、そして二票制よりは一票制ではないのかしら。もちろんベストというのはないわけで、何が何でも自分たちの案が通らなきゃ嫌だというようなつもりは私は全然ないのですよ。ただ、本当に政治がきちんとリーダーシップを持ち、そして有権者がこれを選択したんだということをよりクリアにするためには、そちらの方に重きを置くべきではないのかということでしたが、それでも異議はないということでよろしゅうございますか。     〔三原委員長代理退席、委員長着席〕
  131. 猪口邦子

    猪口参考人 民意を集約するということについては、既にこの午後いろいろと議論がありましたとおり、今既に出ている政治改革案の幅の中でかなりの成果が上げられるというふうに感じますね。ですから、小選挙区にすることだけが決定的に重要だという、御主張の論理的なところというのはわかるわけですけれども、またそうであれば、いろんな不安なところもあるということはおっしゃっていらっしゃるわけですから、そういうところである種の妥協点というところが出てくるのだと思います。  また、民意というものが本当にクリアカットに単純に出てくることが望ましいかどうか、また、国民としてそれだけクリアに選択、単純に選択できるような単純な問題かと考えると、例えばクロスボーティングが非常に多く出たような場合は、そこだけ人々が非常に迷ったりあるいは論点があいまいにしか提示されていなかったりという、ある種の危険信号だというふうに読むこともできるかと思いますね。  これからの時代においては、先ほどから御議論されているような対立点というものは、冷戦下と比べるとそれほど明白には出てこられない時代かと思うのです。  思えば、二十世紀というのは、最初のころは民主主義対ファシズム、そして後には資本主義対社会主義という非常に二項対立的な世界観の中で国際政治も動きましたし、時代精神のような形で各国の国内政治もそれによって支配されていた感があるんですけれども、そういう二項対立的な世界観というのは極めて二十世紀的なものかしらというふうにも思います。  とすると、二十一世紀に向けたこれからの時代にあっては、余り二項対立的に先鋭化した形で選択肢が出てくる、したがって、自分立場はこれだ、イギリスのように、自分は労働党だ、保守党だというふうに、パーティーアイデンティフィケーションというもの、アメリカもそうでしたけれども、むしろそういう形というのは二十世紀的であるかもしれないんですね。とすると、その辺のかなりあいまいなところがこれから出てくる可能性があって、むしろ民意を非常に鋭く集約するということで、ゆがんでしまう部分があるのかないのかということもあわせて考えていただきたいと思うんですね。  この改革をもし実行したときには、またさらに修正するということも午前中の議論にもあったそうですけれども、考え得ることだと思いますので、そのことも含めて、もし民意が非常に分散したり揺れたりしているときには、それだけその問題の複雑さといいますか難しさというものがあって、また政治の側においてそれが集約できていないということ、つまり、国民が選択しやすいような形では示されていないという責任もあるというようなメッセージとして受け取られることがいいかと思います。
  132. 小林節

    小林参考人 先ほど手抜き工事のようなお答えをしまして失礼いたしました。私どもの間ではわかり会えてしまう論点だったと思ったものですから。きちんとお話し申し上げます、少しさかのぼって。  政治が決断を忘れている、これは大変な無責任だと思うんです。政権政党時代の自民党での経験なんですが、例えば憲法の問題でも、条文と解釈の関係で、条文に明確に書かれていないけれども、先ほどの安全保障の領域で解釈で条件づけているもの、いっぱいございますよね。あれは解釈であって、条文の枠の中での政策選択であって、それは政治の仕事なんですね。  その話を自民党の偉い政治家に申し上げましたら、でもそれは役人が許さないというお返事なんですね。私もびっくりしてしまいまして、役人が許すか許さないかの問題ではなくて、それは政治家がお決めになって役人に命ずる問題です。同じくその問題について、その役所の偉いところにいたお方に、OBの方ですが、私が文句を言いましたら、うん、それはわかっている、ただ政治が決めてくれないから我々は先例を踏襲しているんだ、それ以上政治家に申し上げる義務はないということですね。  まさにこれまでの政権政党自民党が中選挙区で人気取り合戦に明け暮れているうちに、そして専業野党の方たちは、失礼ながら固定席を維持する、内輪受けのする議論をして、深刻な政策論議をしないで、例えば自衛隊に守られているのに、自衛隊があると戦争が起きるというような議論をして平和で四十年来るとか、そういう議論をしていて納得し合ってきてしまった。その責任が今、堕落という形で政治改革の問題になってきていると思うんですね。  そこで、先生おっしゃるとおり、まさに、少し過激な結果になるかもしれませんけれども、しばらくは我が国民は丁か半かの決断の経験をしたらいいと思うんです。行き過ぎたらまた戻ればいい、それが代議制民主主義なんですから。ああ、ちょっとやり過ぎたな、じゃ戻そう。しかも、今出ている案は行き過ぎないようにブレーキとして比例制も加味されているわけですから、非常にころ合いもいいと思います。  ただ、その点で、一票制について一言異論を申し上げておきたいんですが、やはり一票制というのは、政党についてはある政策を選択します、だけれども、小選挙区ではそれとは無関係なあの人を選択します、これはまさに政策選挙がそこで壊れちゃうのですね。それで許されて議場に入った人は、実は政策上の束縛を有権者から受けずに勝手ができるのですね。これでは旧制度の堕落の道にまた戻っていくと思うのです。ですから、一票制、二票制、私は学者ですから、しつこく理論を詰めればこれは重大な問題で、二票制はいけないと思います。だけれども、あえて申し上げます。結論としては、どちらでも今よりはましたということはいつも感じております。  以上です。
  133. 石破茂

    ○石破委員 まさしく最後におっしゃったように、どちらでも今よりましなのですよ。ですから私ども、どちらにしても決断をしていかなきゃいけませんし、先ほどどなたかがおっしゃいましたが、とにかく中選挙区制に戻るということはやっちゃいけないことだと思っているのです。海部内閣をつぶし、宮澤内閣をつぶし、私どもにも、自由民主党にもこれを成立させる義務はあるわけですから、議会というのはとにかく話し合いをするためにあるので、おれの案が通らなきゃ絶対嫌だなんというのだったら、議会なんていうのはない方がよっぽどいいわけですから、どうしてもやっていかなきゃいかぬことだろうと思っています。  やはり私、ここまで来ますと、よくここまで来たなという気がするのですよ。よく世間の人は、政治家自分のことばかり考えてとか、結局やらないんじゃないのとかいうふうにおっしゃいますが、連立与党の皆さん方でもよく小選挙区比例代表並立まで踏み切ってくださったという気は、正直言って私は心から敬意を表さなきゃいかぬことだろうと思っています。政治家一人一人の身になってみれば、これは本当に大変なことなのですね。それはもう、利権がどうのとかそんな話ではなくて、過去何年も何年も、自分生活をかなり犠牲にしてでも、この議員のためにと走り回ってくれた人、そういう人たちと別れていかなきゃいけない。そして、選挙制度が変わったら自分は確実に落ちてしまうかもしれない。しかし、それでもやろうということでここまで来たのです。  本当に世論に私は訴えたいのだけれども、揶揄的な目で見ないで、自分たちが損をしてでもこの制度をやろうという議論がここまで来たんだということについては、どうか御評価をいただきたいというふうに思っておるのでございます。政治家は、決してそんな安易な気持ちで選挙制度改革をやろうとしてきたのではございません。どうか三先生にも、今後とも御教示を賜りながら、次の世代のためにこの改革をやり遂げるために御協力を賜りますように心からお願いをいたしまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  134. 石井一

  135. 正森成二

    ○正森委員 まず最初に、猪口参考人に伺いたいと思います。  今伺っておりますと、中選挙区だから金がかかる、小選挙区だからかからないというのは問題の本質のすりかえだというように最初におっしゃいまして、どのような制度でも政治家の自律を抜きにすることができない、いい年の大人なのに親のせいにするようなもの、こう言われました。私どもは、これは非常に政治家にとって痛烈な言葉だというようにありがたく拝聴をしておきたいと思います。  その上で、あなたは個人献金で賄うべきだということを言われました。あなたがお見えになるので、私も猪口教授新聞等に発表されました論説を拝見してまいりましたが、例えば昨年の十一月二十五日の産経新聞を見ますと、同じように女性がもっと進出する必要があるということを言われた後で、「制度面では、金丸氏のような対応が許される政治資金規正法を手直しすべきです。あれが許されるとなると、これまで高かった日本人の順法精神が崩れかねません。国民の順法精神が法治国家を裏から支えていることを考えてほしいものです。」こう言われております。それは、きょう言われたこととほぼ同じ趣旨で言われたんだと思いますが、企業献金と個人献金についてのあなたの考えを少し詳しく述べてください。
  136. 猪口邦子

    猪口参考人 今引用してくださったとおり、私も研究者という立場から考えると、基本的にはやはり個人献金ということが民主主義を運営する上で最も理想的な形であろうと思います。ただ、現在のこの問題を考えるときに、これほどまでに政治不信が深まった今日、日本では個人献金そのものについての理解も市民から得られない、そこまで腐敗の問題は深刻であると思います。  だからといって、個人献金では十分に資金が集まらないからというようなところで、半ば実質的にあきらめるということではなく、これからは、私は日本の市民社会というところはかなり信じたいというところがあります。それなりに政治的な意識というものは非常に高くなっていますし、昨今の情報メディアの発達によって、政治問題に対する意識というものは非常にまた活発になっていますので、日本政治がこの際生まれ変わることができるならば、市民のそのような政治参加意識といいますか、それを取り戻すことは十分に可能だと思いますので、個人献金を中心にというところを考えたいと思います。  他方で、先ほど申し上げたように、このように高度情報化した民主主義社会の中で自分政策を訴えるには、かなりの資金もまた必要だろう。それをどういうふうに保障し確保するかということをあわせて考えないと、資金だけを著しく非現実的なまでにただただ制限するということだけであれば、先ほど申し上げたような、場合によっては何らかの仕組みで無償労働が強化されたり、その組織化を競うというところの新しい問題ということが生まれかねないと思いますので、そういう意味では、やはり政治というのは生きている社会とともにありますので、その社会の中で余りにも非現実的な、ただ理想的なところだけを考えるというのでは社会を救済することにならないということについても、私なりに理解しているということであります。  ただ、筋論で考えれば、市民社会の政治への信頼を回復して、そして個人献金、そして流れの完全公開制というところで頑張っていただきたい。それを目指すように、過渡的なところとしては妥協的なことも考えられますけれども、その本筋を見失うことのないようにお願いしたいというふうに思います。
  137. 正森成二

    ○正森委員 企業献金の禁止が非現実的だという意味の批評については、私どもの党は同意できませんけれども、きょうは参考人の御意見を拝聴するためで論争するためではありませんから、そのまま伺っておきたいと思います。  先ほどから伺っておりますと、参考人に対する質問に関して、国民にとってつらく苦しく嫌なことでも国のためにしなければならない、やれるシステムをつくらなければならないという主張がされました。これは、一見すると非常に歯切れのいい言葉ですが、しかし、国民にとってはつらく苦しく嫌なことをノーと言う権利は当然にあるのじゃないでしょうか。そうでなくて、それを常に国のためにということで我慢しなければならないというような考え方は、ある意味では非常に危険な考え方であります。  国民は、かつてお国のためだというので戦争に出るように言われて、自分の夫を戦場に送り、あるいは自分のかわいい子供を戦場で死なせました。広島、長崎では原爆で何十万人も死にました。食べる食糧さえありませんでした。それに対して国民は、こういうつらく苦しく嫌なことはノーだ、やってはならない、それは同時に国家のためにもならないと言う権利が当然必要だったのじゃないでしょうか。  ですからこそ憲法は、政府の行為によって再び戦争の惨禍を引き起こすことがないように決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する、こういうように前文が言っているように、憲法のそもそもの考え方の基本であります。それを何か、国民につらく苦しく嫌なことを言うのが国のためであり、それが政治家であり、そのためにシステムを変えなければならないなんというのは、非常に私は、歯切れはいいけれども、よく考えなければならない問題を含んでいる、そう思います。  三人の先生方に、憲法学者もおられます、それぞれ御意見を伺いたいと思います。
  138. 小林節

    小林参考人 まず、前提問題として、国のためにと言われるときの国という感覚が、恐らく私が先ほど拝聴した先生方の感覚とそれから、私はそれを共有するのですが、正森先生の国という感覚とちょっと違うんではないかという印象をまず持ちます。  つまり、国というのが私たちとは関係ないところに非常に汚らわしくて危険なものとしてあちらにあって、あのために我々が犠牲になるというお話と聞こえてしまうのです。申しわけございませんが、私自身は今の憲法の、かつてのお話をなさいましたが、我々今の話をしているわけでありまして、今の憲法のもとでは、国というのは我々の延長線上にあって、我々自身のものなのだと私は理解しています。ですから、国のために我々が犠牲になるということは、まさに国を通して我々の利益に返ってくるはずだし、またそうでなければ、その事実をとらえて糾弾すべきだと私は思うんです。  私が今伺っていた範囲、先生お話は別として、伺っていた範囲で国という言葉が明確に出たかどうかは別として、文脈上出てきたときは、結局我々の利益の総体としての国という、そういう概念であったと私は思うんですね。例えば、国が平和であれば私が平和なんです。それから、国の経済発展は私の豊かさにつながるし、国の行政サービスがきちんと財政的に支えられて機能すれば、それは私の福祉だという、そういう次元でこれまでの先生方お話しであったと思うし、私も理解しているんです。  そういう意味で、私はあえて申し上げます、憲法学者として。私たちはこういう時代に、もはや個々の国民の私的な欲望、感情にとって仮に嫌なことであっても、国、すなわち私たち全体の福祉のために犠牲を受けなきゃならない場合もあるし、まさにそういう言いにくいことを理性を持って言うのが政治家のお仕事であると思います。
  139. 正森成二

    ○正森委員 ほかの方の御意見を伺う前に今の参考人に申し上げたいと思いますが、私は逆に、国民にとってつらく苦しく嫌なことでも国のためにはしなければならないという論理こそ、国民と国とを別に分けて考えている論理だ。むしろ国民のことを本当に考えるのが国であるならば、基本的にはこの関係は一致すべきであって、一致しない場合には、なぜ一致しないかということを十分に説得的に国民に訴えなきゃならないというように思うんですね。ですから、私は小林先生の論理は、そっくり私以外の質問者にお返し申し上げたいというように思います。  そこで、小林さんに伺いたいと思いますが、あなたは著書を書いておられますね。私はちょっと拝見をしましたら、「憲法守って国滅ぶ」という著書ですね。それを見ますと、どういう点を変えるかというので、「改憲の課題と方向を探る」という部分があります。その中で政党について憲法が規定していないのはおかしいという議論を開陳されまして、「公営選挙に参加できる政党は、次の各号のいずれかに該当するものに限る。」ということで、「有効投票の一〇〇分の四以上」だとか「五名以上の国会議員を有するもの」だとか、今度の法案にも似たようなことを言っておられますが、気になるのは、ドイツの憲法を模範にとらえて、ドイツの基本法の二十一条と同じように「この憲法秩序の破壊を目的とする政党の結成は禁じられる。」ということを言っておられることであります。  あなたは何をもって「憲法秩序の破壊を目的とする」と認定されるのですか。行為ではなしに、あるいは政策の綱領、思想から「憲法秩序の破壊を目的とする」とはどういうことですか。あなたの著書に書いてある。
  140. 小林節

    小林参考人 お答えいたしたいと思います。  幾つかございます。まず、憲法の中に政党が規定されていないのはおかしいという点から入ります。  要するに、先ほどの議論の中にもあったのですが、政党というものはもはや憲政の不可欠な一部分になっている公的な存在であるから、それを憲法の中に取り込めというところから入りまして、そして、その際に、憲法に書いてしまえと申しましたのは、政党法の次元でそういうことを書きますと、それが時に国会対策上の取引対象などになりまして、小党弾圧などに使われると困りますので、基本事項は、もう土俵は憲法で決めてしまえ、それでその提案をいたしました。  それで、その後の反憲法政党の、これは議論のあるところでありますが、まず理論の問題と実務の問題があると思うのです。二段に分けてお答えいたします。  理論の問題としては、私は、まず事実の認定はおきますが、仮に反憲法政党と認定されるならば、それはやはりこの憲法のもとで存在する理由はないと思います。つまり、ひねくれ者の自由も自由だという一つの議論はございましょうけれども、我々の共通の土俵を否定する自由は、この土俵の中にあってはならないと私は思います。これは理論の問題です。それだけです。  そしてあとは、さあいかに間違いなくその事実を認定するか。これは立法政策と司法実務の問題になってくると思うのですが、それは先生、これは憲法ですから抽象的に書いただけの話でありまして、実際にそれを手続化していくときには、相当厳格な過去の行動実績とか、それから当然憲法のもとですから、当事者に告知と聴聞でその手続がありまして、十分に手続を尽くして時間をかけて、そしてしかも公開で認定していく、そういう意味でありまして、何かあのことを書いたことによって共産党を葬り去れとか、そういうことを申し上げたことではございません。
  141. 正森成二

    ○正森委員 大分共産党を意識した答弁のようですが、私はあなたの今の御答弁を聞いて、自由についての考え方があなたと大分遣うんじゃないかという気がしました。  十九世紀の終わりから二十世紀の初めに、アメリカに有名な最高裁判所の判事がおります。あなたも御存じかもしれませんが、ホームズ判事とブランダイス判事であります。この方たちが判決の中で言っておられる自由の定義は、思想の自由とは、時の政府権力が許容する自由ではなくて、まさに政府が憎悪する思想の自由であると有名な言葉を言っております。私は、あなたの今おっしゃったことよりも、このアメリカの裁判官の言葉の方にはるかに敬意を表したいというように思うことを申し上げて、次の質問に移りたいと思います。  佐々木さんに申し上げたいと思います。あなたは九三年の四月の九日の「東洋経済」の中で、「大転換期の歴史と政治改革の意義」という論文を書いておられます。それを私がちょっと拝見しましたら、その中で  「冷戦の終焉」はそれまでかろうじて掛かっていた「体制の選択」の大看板まで失わせ、金権的政治構造をむき出しにした。八九年はリクルート事件と東欧革命の年であったが、この無関係な出来事の不可思議なコンビネーションはなかなかに意味深長なものがある。そして今や、内外で何が起こっても日本政治にとってプラスになることはほとんどなくなった。日米構造協議、湾岸戦争、バブルの崩壊、クリントン政権の誕生――みなしかりである。これは極めて不吉な予兆である。かくして日本政治は「成功の失敗」とでもいうべき矛盾に直面し、頬かむりをして「安楽死」に身を委ねかねない有り様になった。このままではかの成功も、一世代もすれば「邯鄲の夢」と消えないとも限らない。まさに、因果応報というべきであろう。こう言っておられます。私は四十年ほど前に東大で学んだ者ですが、そのころの東大教授はこういう難しいことをおっしゃいませんでした。今の東大の学生はこれで十分意味がわかるのかわかりませんが、OBの私にはよくわかりませんので、あなたはここで何を言わんとしておられるのか、残された時間で簡単に言ってください。
  142. 佐々木毅

    佐々木参考人 今思い出しましたのですけれども、私がそこで言おうとしましたのは、日本政治というものの今までの姿というものの歴史的な成果と時代の転換といいましょうか、こういうことを率直に申し上げたかったということでありまして、使った言葉がどうであるとかこうであるとかいうことはいろいろあろうかと思いますけれども、そういう認識を持ってこれからのことを見ていかないと、実はかえっていろいろ危険なことが起こり得るのではないだろうかというつもりでありまして、私としては、実は相当身構えたつもりで書かせていただいた文章だと記憶しております。
  143. 正森成二

    ○正森委員 ありがとうございました。
  144. 石井一

    石井委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  次回は、来る十一月四日木曜日午前十時委員会、正午理事会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十九分散会