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1993-10-26 第128回国会 衆議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年十月二十六日(火曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 中井  洽君    理事 逢沢 一郎君 理事 甘利  明君    理事 尾身 幸次君 理事 額賀福志郎君    理事 大畠 章宏君 理事 古賀 正浩君    理事 河合 正智君 理事 伊藤 達也君       安倍 晋三君    浦野 烋興君       小川  元君    小此木八郎君       小野 晋也君    熊代 昭彦君       佐藤 剛男君    田原  隆君       谷川 和穗君    丹羽 雄哉君       野田 聖子君    山岡 賢次君       山本  拓君    沢藤礼次郎君       細谷 治通君    松本  龍君       土田 龍司君    豊田潤多郎君       西川太一郎君    山田 正彦君       赤羽 一嘉君    赤松 正雄君       佐藤 茂樹君    枝野 幸男君       武山百合子君    山田  宏君       吉田  治君    吉井 英勝君  出席国務大臣         通商産業大臣  熊谷  弘君         国 務 大 臣         (経済企画庁長 久保田真苗君         官)  出席政府委員         公正取引委員会 植松  勲君         事務局取引部長         経済企画庁調整 小林  惇君         局長         経済企画庁物価 坂本 導聰君         局長         経済企画庁調査 土志田征一君         局長         通商産業大臣官 牧野  力君         房長         通商産業大臣官 江崎  格君         房総務審議官         通商産業大臣官         房商務流通審議 川田 洋輝君         官         通商産業省通商 坂本 吉弘君         政策局長         通商産業省貿易 中川 勝弘君         局長         通商産業省産業 内藤 正久君         政策局長         通商産業省機械 渡辺  修君         情報産業局長         通商産業省生活 土居 征夫君         産業局長         資源エネルギー 堤  富男君         庁長官         中小企業庁長官 長田 英機君         中小企業庁計画 村田 成二君  委員外出席者         科学技術庁原子 鈴木 治夫君         力局政策課長         大蔵大臣官房企 河野 正道君         画官         大蔵省理財局資 乾  文男君         金第一課長         文部省高等教育 喜多 祥旁君         局企画課長         食糧庁業務部需 梅津 準士君         給課長         労働大臣官房参 後藤 光義君         事官         建設省住宅局民 藤田  真君         間住宅課長         国民金融公庫副 土田 正顕君         総裁         中小企業金融公 井川  博君         庫総裁         参  考  人         (商工組合中央 児玉 幸治君         金庫理事長)         商工委員会調査 山下 弘文君         室長     ――――――――――――― 委員の異動 十月二十六日  辞任         補欠選任   梶山 静六君     安倍 晋三君   中尾 栄一君     佐藤 剛男君   中川 秀直君     小野 晋也君 同日  辞任         補欠選任   安倍 晋三君     梶山 静六君   小野 晋也君     中川 秀直君   佐藤 剛男君     中尾 栄一君     ――――――――――――― 十月二十五日  特定中小企業者の新分野進出等による経済の構  造的変化への適応円滑化に関する臨時措置法  案(内閣提出第九号) 同月二十六日  ガス事業法令等改正反対LPガス業界の発  展に関する請願甘利明紹介)(第三三二号  )  同(大石正光紹介)(第三三三号)  同(大原一三紹介)(第三三四号)  同(奥田幹生紹介)(第三三五号)  同(瓦力紹介)(第三三六号)  同(小渕恵三紹介)(第三三七号)  同(佐藤敬夫紹介)(第三三八号)  同(坂本三十次君紹介)(第三三九号)  同(町村信孝紹介)(第三四〇号)  同(松田岩夫紹介)(第三四一号)  同(森田一紹介)(第三四二号)  同(山崎拓紹介)(第三四三号)  同(山中貞則紹介)(第三四四号)  同(石原慎太郎紹介)(第三六二号)  同(岩浅嘉仁君紹介)(第三六三号)  同(古賀誠紹介)(第三六四号)  同(谷垣禎一紹介)(第三六五号)  同(西岡武夫君外二名紹介)(第三六六号)  同(細田博之紹介)(第三六七号)  同(亀井善之紹介)(第四〇四号)  同(武部勤紹介)(第四〇五号)  同(渡辺省一紹介)(第四二二号)  中小企業対策に関する請願矢島恒夫紹介)  (第四七一号)  同(吉井英勝紹介)(第四七二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  特定中小企業者の新分野進出等による経済の構  造的変化への適応円滑化に関する臨時措置法  案(内閣提出第九号)  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ――――◇―――――
  2. 中井洽

    中井委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本日、参考人として商工組合中央金庫理事長児 玉幸治君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中井洽

    中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。     ―――――――――――――
  4. 中井洽

    中井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。尾身幸次君。
  5. 尾身幸次

    尾身委員 尾身幸次でございます。きょうは、関係機関の皆様、そして参考人の皆さん、お忙しいところ出席をいただきまして、ありがとうございます。中小企業の問題について質問をさせていただきます。  現下経済状況バブル崩壊の後、円高、冷夏その他により非常に景気低迷をしておりまして、景気低迷というよりも、極めて厳しい不況下にあります。そういう中で、特に中小企業景気低迷しわ寄せを受けておりまして、大変深刻な状況にあるわけでございます。そういう状況で特に大切な問題は、中小企業に対する金融の問題でございまして、最初中小企業金融の問題につきまして質問をさせていただきたいと思うわけでございます。金融の問題といいますと、一つ中小企業資金繰りの問題でありますし、もう一つ金利の問題であるというふうに考えているわけであります。  最初にお伺いしたいのでありますが、これは大蔵省の方にお伺いをさせていただきますが、民間金融機関中小企業に対して貸し渋りをしているのではないかというような声がありますが、これについてどう見ておられるか、お伺いをさせていただきます。
  6. 河野正道

    河野説明員 御説明申し上げます。  最近、金融機関貸し出し伸びが低い状態が継続しているということは事実でございます。これは、基本的には、現在の景気情勢の中で企業資金需要低迷しているということが原因であるというふうに考えてはおりますけれども、同時にまた、金融機関におきましては、バブルの反省から審査適正化といったようなことも進めておりまして、私どもといたしましても、このような審査適正化は重要ではございますけれども、そのことによりまして景気回復に向けまして企業が必要とする資金が円滑に供給されないというような事態が生じないように注意してまいりたいと考えておる次第でございます。
  7. 尾身幸次

    尾身委員 資金需要低迷していることも事実だと思うのでありますが、やはり優良プロジェクトについて、その審査の仕方あるいは担保見方等について必要以上に慎重になり過ぎていて、そのために中小企業に健全な経済の活動のための資金が順調に流れないという危険性もあると思いますので、この点については、具体的な事例をここで申し上げるわけにいきませんが、これから十分対応していただきたいと思いますから、そういう点についてもう一遍ちょっと答えてください。
  8. 河野正道

    河野説明員 私どもといたしましても、今委員指摘のとおりの問題意識を持っておりまして、このため、先般の緊急経済対策におきましても「金融円滑化」と題しまして、中小企業向けを含めまして、資金の円滑な供給が図られますよう、金融機関融資態勢の強化などを要請したところでございます。
  9. 尾身幸次

    尾身委員 そこで、特に民間貸し出しについてもう一つ伺いをいたします。  御存じのように、公定歩合長期プライム等金利が非常に大きく下がっております。例えば公定歩合は、平成二年八月の六%の水準からことしの九月の一・七五%まで、下がった幅が四・二五%下がっている。長期プライムも、平成二年十月の八・九%からことしの十月の四・五%まで、下げ幅四・四%というふうに下がっているわけであります。銀行かなり資金調達資金源になります短期プライムレートも、平成二年十二月の八二一五から平成五年九月には三・三七五ということで、四・八七五下がっているわけであります。  そういう状況のもとで、では一体この期間における民間金融機関貸出金利がどうなっているかというと、同じ期間都市銀行で一番高いときに七・九%であったものが四・八四%にまで下がっている。一地方銀行で七・七八%であったものが五・○〇%まで下がっている。第二地銀で八・○八%だったものが五・六四%まで下がっている。信金で七・九六%だったものが五・九四%まで下がっているということでございまして、公定歩合及び長期プライムレート下がり幅が四・二五とか四・四という水準短期プライム四・八七五という水準で下がっているにもかかわらず、都市銀行地方銀行、第二地銀等々大体二%から三%程度までしか実は下げ幅がない。つまり、長期短期プライムレート及び公定歩合下げ幅に比べて、民間金融機関貸出金利下げ幅、これはストックベースでありますが、下がってきていないという状況であります。  そういうことを考えると、実はここ一、二年の間の金利下降局面において、金融機関が、金利下降による、タイムラグと言ってもいいかもしれませんが、そういう点で相当利益を得ていて、借りる方の中小企業を主体とする需要者側がそれのしわ寄せを受けているのではないかという感じがするわけでありますが、この点についてどうお考えになっているか、お伺いをさせていただきます。
  10. 河野正道

    河野説明員 御説明申し上げます。  金融機関貸出金利につきましては、ただいま委員指摘のとおりの数字がございますが、若干時点の問題は確かにございまして、データがとれます直近の時点が本年八月でございますので、実は、ただいま御指摘いただきました計数の中にはまだ九月以降の公定歩合引き下げ並びにその他の金利引き下げは織り込まれておりません。また、御指摘いただきました計数ストック計数でございますので、そういう意味でも、やはり新規貸出金利が低下しましてからこのストックの方に反映されるまで若干の時間がかかることはやむを得ないかと存じます。  いずれにしましても、私どもといたしましても、市場金利実勢が適正に貸出金利に反映されますように引き続き注視をしてまいりたいと考えております。
  11. 尾身幸次

    尾身委員 大変大事なことを言われましたが、公定歩合が下がったのは九月なんですね。二・五だったのが一・七五に下がったということですね。そうすると、その分の引き下げ分、これに連動して長期プライム短期プライムも下がると思うのでありますが、その分についてはまだ今の水準に織り込まれていないだろう、タイムラグがあれば、ある程度の時間があればその分の民間金利はさらに下がるだろうというふうに予想されていると理解していいですか。
  12. 河野正道

    河野説明員 もちろん、申し上げるまでもございませんけれども金融機関貸出金利というものは、やはり各銀行におきまして、借入先状況でございますとか資金需給などを勘案しまして自主的に決定をいたしますので、公定歩合水準にそれがすべて直接連動するという形ではございませんけれども、私どもといたしましても、やはり現下市場実勢というものが貸出金利に今後適切に反映されていくことを重ねて強く期待しているところでございます。
  13. 尾身幸次

    尾身委員 この点について、中小企業庁のお考え伺います。
  14. 長田英機

    長田政府委員 中小企業庁といたしましては、現下中小企業をめぐる非常に厳しい状況考えますと、民間金融機関貸出金利については、そのコストを反映した適正な水準に定まっていくということが重要であることは言うをまたないことでございます。金融当局におきましても、先般の緊急経済対策を初めとして、従来から民間金融機関に対して適切な措置を指導してきておられるところでございまして、私どもとしては、その実効が上がっていくということを期待しているわけでございます。
  15. 尾身幸次

    尾身委員 次の質問に移ります。  民間金融機関貸し出し伸びはそれほど高くなっていませんが、それに比べて中小企業関係金融機関貸し出し伸びが比較的高い水準にあるわけであります。ここ一年の数字で見ますと、全国銀行貸出残高は三百四十二兆でございまして、一年間の伸びが二・一%、信用金庫が六十五兆で一年間の伸びが三・四%、信用組合が十八兆で一年間の伸びが一・八%ということになっているわけであります。これに対して、国民金融公庫残高八・四兆円でありますが、ここ一年間で八・八%伸びている。中小企業金融公庫残高八・八兆円でありますが、一年間で九・八%の伸びを示している。商工中金だけが十一・六兆円でありますが一・八%の伸びでありまして、やや民間金融機関よりも伸びが低い、特別低いという数字になっております。  私は、国金中小企業金融公庫についての伸びが高いのは、政府関係機関として適切に資金需要に対応していることが一つ原因だというふうに評価をしているわけでありますが、これにつきまして三機関の代表の方々及び通産省に、どう評価しておられるかお伺いをさせていただきたいと思います。特に商工中金につきましては、伸びがほかよりも低いわけでございますが、この原因はどういうことかということも含めてコメントをお願いいたします。
  16. 井川博

    井川説明員 御指摘のとおり、当公庫に対します中小企業者期待及び実際の融資実績というのは大変高いものがございます。特に、本年度上期の実績が出てまいりましたが、本年度上期については、対前年同期比二七%と大変高い伸びをいたしてございます。私たちといたしましては、中小公庫長期、低利、固定という資金御用立てをするという性格を持っておりまして、そのメリットを中小企業者方々評価をして我々の窓口に来ていただいているということでございます。  ということで、実は我々といたしましても、現在の不況下大変経営難にあえいでいらっしゃいます中小企業方々のお役に立ちたい。累次の総合経済対策あるいは緊急経済対策措置に準拠をいたしまして頑張っているところでございまして、その結果がそういう数字となって出てまいったというふうに考えておるわけでございます。
  17. 尾身幸次

    尾身委員 ちょっと今、中小企業金融公庫総裁の御意見ですが、二七%というようなお話でしたが、私がお伺いしておりますのは、実は残高ベース考えておりますが、残高ベースでそういう数字になっておりますか。
  18. 井川博

    井川説明員 ただいま申し上げたのは貸付ベースでございまして、残高ベースで申しますと九・八%ということになっております。
  19. 児玉幸治

    児玉参考人 ただいま尾身先生から御指摘ございましたように、中小企業機関の中では商工中金貸し出し実績伸びが低いことは事実でございます。平成年度の上期の貸出実績、四-九でございますが、これは前年同期比の成長率で見まして一・五%の伸びにとどまっております。また、今年の三月末と九月末を比較してみますと、〇・五%の伸びにとどまっているわけでございます。これはこれまでにない低い伸びでございます。  その原因でございますけれども、私ども商工中金におきましては、中小公庫あるいは国民金融公庫と異なって短期資金かなりの量取り扱っているわけでございますが、これが景気低迷あるいは売り上げ不振によって減少いたしておるわけでございまして、とりわけ割引手形が減少しているというのがその原因であろうかと考えているところでございます。  こういう状況でございますけれども、元来商工中金使命というのは、事業資金の円滑な融資によってメンバーの中小企業成長、発展に資することにあるわけでございます。お取引先が困っているときこそ親身になって御相談に応じていくというのが使命だと私ども思っておりまして、これまでの何回かの不況の際にもそのように対処してまいっております。したがって、今回もその方針で、我々は本店、支店を挙げまして全力投球をいたしているところでございます。  具体的にそれらをどうするかということでございますが、一つは、累次の景気対策の中で創設をしていただいております各種特別貸し付けを推進する、あるいは適時適切な融資を実行する、さらには、既往貸し出しにおける返済猶予などの各種金融支援をする等でございまして、個々の中小企業のお客様の実情に応じまして、本、支店一体となって対応しているところでございます。また、赤字企業担保力に乏しい中小企業に対しましても、その経営実情に応じましてできる限り弾力的な扱いをいたしておるところでございます。
  20. 土田正顕

    土田説明員 国民金融公庫の場合、取引先中小企業の中でもなかんずく小規模企業がその大宗を占めております。この小規模企業は一般に経営基盤が脆弱でありまして、民間金融機関金融ベースに乗りがたく、また必要な資金を十分に借りられないといった状況にございますので、私どもは、これらの企業に必要な事業資金を供給していくということが国民金融公庫に与えられた使命であると考えておるものでございます。  昨今、国民金融公庫貸し付け大宗を占める普通貸し付け残高は、委員お示しのように、ここ数カ月、前年同期に対しまして人ないし九%の伸びになっておりますが、これは、現在の経済環境のもとで中小企業事業を支え、また景気を支えてまいりますのに役立つよう努めてまいりました結果でありまして、私ども、今後とも、民間金融機関を補完し、中小企業資金需要に適時適切に対処してまいりたいと考えておる次第でございます。
  21. 長田英機

    長田政府委員 今、三機関からお話がございましたけれども政府としましても、この政府系中小企業機関に対する中小企業期待というのは非常に高いものがございますので、御案内のとおり、本年四月に総合経済対策で一兆九千億円、そして今回の九月十六日の経済対策で一兆円超というような貸付規模の拡大を決定したところでございまして、私どもとしましては、この政府系の三機関を通じて中小企業金融円滑化が図られていくということを万全を期してまいりたいと思っているわけでございます。
  22. 尾身幸次

    尾身委員 政府関係中小企業金融機関が積極的に中小企業者資金ニーズにこたえて、新しい貸し出しについてはかなり金利融資をしているという実態にあることはよく存じ上げております。しかし、実は一方で、既往債務中小企業者の既に借りている債務金利が相当高い水準にあるわけであります。  先日の、九月に政府が出しました経済対策の中でも、補正予算が成立した後ということでございますが、運転資金支援特別貸付制度限度額の増加とかあるいは要件緩和ということが一つ打ち出されました。それからもう一つは、緊急経営支援貸付制度として、これも要件緩和が打ち出されて、大きな二点の政策がなされているわけであります。その新規貸し付け金利基準金利ベースで四・五%、これは全体の金利引き下げの中での動きでありますけれども、そういう水準になっているわけであります。しかし今までの貸付金利というものが、かなり高い金利の債権、債務が残っておりまして、それが中小企業経営の大きな負担になっているということも実情でございまして、私は、現下中小企業政策の大きなポイントはこういう既往債務についての金利負担を軽減していくことにあると考えているわけでありますが、この点について通産省の御意見伺います。
  23. 長田英機

    長田政府委員 先生指摘既往債務についての問題でございますが、これはいろいろな金融制度との関係がございまして、例えば既往債務金利引き下げるということにつきましては、中小企業金融公庫とか国民金融公庫長期固定金利融資という制度としての大前提、これを事実上覆すということになるのではないか、また変動金利貸し出しを中心としている民間金融機関との競合問題などもございまして、現時点では大変困難な問題であるというふうに考えております。
  24. 尾身幸次

    尾身委員 今二つ目に言われた民間との競合問題というのはどういうことですか、もう一言説明してください。どうして競合問題があって引き下げられないのですか。
  25. 長田英機

    長田政府委員 中小企業金融公庫国民金融公庫長期固定金利で貸しておりまして、変動金利による貸し付けをとっておりません。民間ではそういう形をとっておりますので、政府系金融機関がそういう変動金利制をとりますと民間金融機関がやっていることと同じようなことになっていくという点からでございます。
  26. 尾身幸次

    尾身委員 それでは、高い金利借りていた今までの既往債務金利の低い新しい融資に切りかえるといういわゆる借りかえ融資ができないのか、この点についてお伺いいたします。  少なくとも国民金融公庫では現貸し決済制度という例がありまして、これは金額の小さいものでありますけれども、今までの残っていた金利の高い債務を新しい債務に吸収合併して新しい低い金利貸し付けるという制度国金の場合にはあるというふうに聞いておりますが、その点も含めてお答えをいただきます。
  27. 土田正顕

    土田説明員 国民金融公庫扱いにつきましてのみ御説明を申し上げますが、国民金融公庫におきましては、その設立の当初から一企業貸し付けを原則といたしまして、既往貸付残高のあります企業が新たに資金を必要とし、再び公庫借り入れを申し込んだ場合には既往貸付残高を差し引いて貸し付けるという建前をとっております。これは国民金融公庫取引先大宗経営基盤が脆弱な中小企業でありまして、重複で融資することによりまして返済元金負担が増加し、企業資金繰りに大きな影響を及ぼすことになるというところに注目いたしまして、企業返済力などを勘案いたしまして、個別具体的には取引先の顧客と相談の上ということになりますが、やや限定的に運用しているところでございます。  総論として、既往の高い金利貸し付けにつきまして単に貸付金利引き下げるために融資するということは、ただいま政府の方から御説明もありましたようなことでございますが、私どもは認められないものと考えております。
  28. 長田英機

    長田政府委員 国民金融公庫は今御説明がございましたように非常に特殊な事情でそういうケースがございますが、基本的な考え方といたしまして、政府関係中小企業金融機関既往債務の低い金利での借りかえにつきましては、これはいろいろな金融局面で事情があるのですが、金利上昇局面では固定金利借り入れのメリットを十分享受できる、しかし金利下降局面では低金利借りかえをする、もしそういうことを認めたといたしますと、長期固定金利を事実上骨抜きと申しますか、そういうことになってしまうのではないか。あるいは、政府系中小企業金融機関金融機関として契約をして貸し付けをやっているわけでございますから、個別の契約で貸し付けをやっている点、一つの約束でやっているという点でございます。それから、政府系中小企業金融機関も原資を高金利で調達しているというような事情で、低金利借りかえによりまして経営上の健全性が損なわれるというような点から考えまして、実施するのはなかなか困難であるということでございます。
  29. 尾身幸次

    尾身委員 既往貸し付けを低い金利貸し付けに切りかえることは困難であるというお話でありますが、じゃ、それならば、中小企業の立場から見たら一体どういうことになるのかというと、今この不況のもとで非常に高い、民間金融機関から借りるのよりも高い金利の借金の残高がある、その残高を何とかもっと安いお金を借りて、借りかえをすることによって企業金利負担が低くなる、そういうことも中小企業の立場から見ればどうしてもしたいということになるわけです。ですから、そういうときにまさにそれができるようなことでなければいけないと私は思うわけであります。  ですから、それならば民間の安い金利のお金を借りて、その金で中小企業金融機関既往債務を一括して返済するようにしたいという企業も、これは資金借入能力がある企業については出てくるわけであります。そういうときに中小企業金融公庫の窓口に行っても、国金の窓口に行っても、商工中金の窓口に行っても、窓口では、これは一たん貸したものですから最後までちゃんと十五年間かかってゆっくり返してください、高い金利も、借りかえはできないのだから、そのまま払ってくださいということを言われるのですね。今までの貸し付けを返済することを認めません、認めないというような言葉で言われるわけなのですね。我々としてはそういうものを認めるわけにいきませんという表現で言われる。そのために中小企業者は、そう言われたときに、それでも強引に返したら金融機関との関係が悪くなって、今度また自分が資金需要が生じたときに貸してもらえないかもしれない、そういう心配があるものですから、これを聞かざるを得ない。もっと安い金利の金を借りて返済できるのに、そういう返済ができないというような実態にもあるというふうに言われておりますけれども、その点についてどういうふうに考えておられるか、御意見をお伺いします。
  30. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 委員が各方面から事態を浮かび上がらせて、現在の中小企業の置かれた状況の中で、御指摘のような状況というものが中小企業の立場から見ればいかに大変かということは私もよく理解をいたします。  ただ、御案内のとおり、政府関係金融機関の立場から申しますと、この原資が財投資金に依存しておる、財投資金固定金利ということになっているわけでございまして、今度はこの三機関経営考えますと、これを破滅させるわけにもまいりません。そういうところが多少物わかりの悪いようなお答えにあるいは聞こえたのではないかと思うわけでございます。ただ、私どもとしても、だからこれをこのまま御意見も聞きませんということではございませんで、全体の問題に響いてまいりますのでなかなか難しゅうございますけれども、検討の課題にさせていただきたいと思います。
  31. 尾身幸次

    尾身委員 大臣の答弁はちょっと私は違うように思うのですよ。この点について、本当に認めないというようなことをやっているのか、またそういう権利があるのかということについて、金融機関の方の責任者の御答弁をお願いいたします。
  32. 井川博

    井川説明員 中小企業庁長官あるいは通産大臣からのお答えにもございましたように、システムとしては、特に中小公庫の場合におきましては長期固定金利である、その原資は財投原資であるというふうなシステムになっております。したがいまして、貸し出しをいたしますときに、中小企業者の方といろいろな長期的な経営内容を相談して、採算が合うという前提のもとにそのときの金利でお貸しをしている、こういうことになるわけでございます。  実は我々、中小企業方々といろいろお取引をします場合にでも、長期的な観点でいろいろな物事を相談していこう、したがって金利の高いときもあるけれども、安いときもある、そのときそのときに御用立てをしていくというやり方でございます。これが、高いときの金利の分は返したい、返すというふうなことになりますと、我々のシステムとしての長期固定金利というものが崩れてくる、ということは、反対からいいますと、中小公庫経営基盤が危うくなってくる、収支の悪化を来すという問題が別途ございます。しかしながら、一方、中小企業者の窮状もいろいろお聞きしていかなくちゃならぬ、そういうことで、私といたしましては、返すべきではないとか返させないということではなくて、我々の立場を十分御理解いただくということが先決なのではないか。したがって、中小企業者のそれぞれの経営内容の御相談に応じながら、我々のシステムないし我々の立場も十分説明して、納得していただくように、こういうことを申し上げているわけでございます。  末端の一部において、必ずしも私の申し上げるような趣旨ではないような感じで中小企業方々が受け取るようなことがあるかもしれませんが、我々の立場は、ひとつぜひこういう立場も御理解の上、我々は、七年、十年、十五年という長期の、資金も長うございますが、いろいろ長期のおつき合いをする、その間を考えながら御納得いただきたい、こういうふうに申し上げているわけでございます。
  33. 尾身幸次

    尾身委員 私は、民間中小企業がほかから、いろいろな事情があると思うのですよ。長期的に固定金利で貸さなければシステムが崩れるという話、私もよくわかりますし、借りている中小企業金融機関の原資は固定金利になっているわけでありますから、貸す方が固定金利でなくて貸して、しかも途中で返されたら困るという事情はわかります。しかし、それは貸す方の事情でありまして、借りている方の中小企業の事情から見れば、もっと安いところから借りられる状況にあるのに、しかも経営が倒れるか倒れないかという状況にあるのに、そちらで貸してくれる人がいるのに、その金を借りて高い金利の金を返そうと思ったら返せないというのでは困るわけであります。事情はわかりますし、話し合いはする必要はあると思いますが、これはどうしても返したいという人には、この返済は認めるべきであると思いますが、責任ある答弁を求めます。  お役所、機関、両方からお願いいたします。
  34. 長田英機

    長田政府委員 今、中小企業金融公庫総裁からお話がありましたとおりだと思うわけでございまして、私ども制度といたしまして考えてみた場合に、一括返還をするというようなことはなかなか難しいというふうに考えております。
  35. 尾身幸次

    尾身委員 そうすると、一括返還は難しいというのはわかりましたが、仮に返したいという申し出があったとき、認めるのか認めないのか、どちらか答えてください。いや、中小企業庁長官に聞いています。
  36. 長田英機

    長田政府委員 これは、金融庫総裁がお答えしましたように、中小企業者との間でよく話し合って御理解を得る、相互の話し合いのもとで決められるというふうに考えております。
  37. 尾身幸次

    尾身委員 いや、それじゃ、どうしても返したいと言ったとき、認めるのか認めないのか、それについての指導官庁としての行政機関の方針を聞かせてください。
  38. 長田英機

    長田政府委員 なかなか難しいところでございますけれども、やはりよく話し合って、なるべく本人の御理解、中小企業者の御理解を得て、そして問題の解決を図っていくというふうにしたいと思います。
  39. 尾身幸次

    尾身委員 中小企業者の御理解はわかりましたよ。中小企業者の事情があるときに、中小企業の事情を金融機関の方で理解していただいた場合に、窮状を理解した場合にどうなるのかということを聞いているのです。中小企業金融機関の事情だけを中小企業者が理解しろというのは一方的な話で、中小企業者の事情を中小企業金融機関が理解することも必要なのです。そのことを私は聞いているのですよ。  総裁の方にお願いします。
  40. 井川博

    井川説明員 ごもっともな話でございます。しかし、半年前に総合経済対策でつくっていただきました返済資金緊急特別貸し付けというのも、実は、やはり高金利のものについて、これは繰り上げ返済云々というふうなことではなくて、現行の安い金利で運転資金としてその返済分を融資しようという制度でございます。  我々といたしましても、中小企業方々から従来そういう声が大変強かった、このことを主務官庁、政府にも申し上げまして、先生方の御理解を得てこれができたと思うわけでございまして、返済資金緊急特別貸し付けといったようなものをぜひひとつ御活用いただく、そういうことによって、我々のシステム自体も大きい痛手をこうむらずに済むということをぜひやっていきたいということで、こうした返済資金緊急特別貸し付けなりあるいは運転資金特別貸し付けという制度を御説明をして、それを御活用願っているというのが実情でございます。
  41. 尾身幸次

    尾身委員 この点については、どうしても返済をしたいと言ってきたものは、これを認めないというようなことは、私は、少なくとも自由経済体制をとっている限りにおいてはできないというふうに理解をしております。もちろん、話し合いをして、お互いに理解を深めるということは確かでありますが、これは基本的な経営権の問題でありますから、できないというふうに理解をしておりますが、仮にその期間の途中で、政府関係金融機関から借りた高い金利のものを返済したい、どうしても返済したいということを中小企業者が言ってきたときに、これを認めないということが法律的にできるのでしょうか。中小企業庁長官のお考えをお伺いします。
  42. 長田英機

    長田政府委員 当初の契約は、長期固定金利ということでございますから、長期で当初融資契約をしているわけでございます。それを途中で返済ということでございますから、最初の契約内容とはその返済の仕方が変わるわけでございまして、そうなりますと、そこは当事者間でよく話し合っていく、こういう問題になるのだと思います。
  43. 尾身幸次

    尾身委員 住宅金融公庫という機関があるのです。住宅金融公庫は、住宅用の資金貸し付けております。これについては、金利がこういう時代になってくると、一般のいわゆる住宅を建てる人、個人が高い金利負担、昔借りた住宅金融公庫負担にたえられなくなったときによくあるのですよ。銀行から安い金利の金を借りて返すのです。住宅金融公庫は、返すお金を受け取っているわけです。そして、それで関係が切れるわけですね。個人の場合には、もう一たん住宅を建てれば住宅金融公庫とのつき合いがこれ以上なくて済むわけだからいい。しかし、中小企業者の場合には、経営がゴーイングコンサーンである限りにおいてはこれからもずっと続いていかなければならないということの中で、どうしても認めないと言われたら、それが法律的に妥当性を持たないものであっても、言うことを聞かなければこれからの取引が停止されてしまうかもしれないという力関係のアンバランスの中でこの議論がなされているわけですね。ですから、これは非常に大事な点なので、住宅金融公庫は事実上そういうふうな返済がかなり行われているというふうに聞いておりますが、中小企業金融公庫とか、中小企業機関だけはこれができないということだと大問題だと思うのであります。  この点についてもう一度、できないのかできるのかについて、これは大事な点なので、ほかにもいろいろ質問したいことがあるのですが、はっきり答えていただかないと、絶対できないと言われたのでは、これは大変な問題なんですよ。その点をもう一遍お答えください。
  44. 長田英機

    長田政府委員 従来からお答え申し上げておりますように、当初長期で契約をしておりますものでございますから、やはりそこは、基本的にこの制度全体、システムを踏まえた上での当事者間の話し合いということだと思います。
  45. 尾身幸次

    尾身委員 この点について大臣に、今、中小企業庁長官はそういう答弁でございますが、大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  46. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 先ほどあなたの意見は違っていると、こういうお話があったのですが、先ほど申し上げましたように、私は、制度全体の根幹に触れる問題であるのでなかなか大変ですという立場はあるけれども、しかし、中小企業者の痛みといいますか、それも現下をよく見ればお互いよくわかるわけでございまして、したがいまして、我々としては、私契約のことですから、最終的な私契約を変えるというときはいろいろ議論があるのでしょうけれども、全体の運営としては、余りがたいことを言わずに、少し勉強、検討課題にすべきことではないかというのが私が感じておるところでございまして、尾身先生御案内のとおりいろいろな課題がございますけれども、重要な課題として検討させていただきたいと思うのでございま す。
  47. 尾身幸次

    尾身委員 私は、今の大臣の答弁、それなりに納得できるものであると思いまして、評価をする次第であります。  それで、この点については、実はよく言われていることなんでありますが、この中小企業金融機関資金源資金運用部からのものである。資金運用部からのものであって、そちらの方が固定金利固定期間だから、そういう返済とか金利の軽減とかいうことができないというようなことを言われていると思うのでありますが、この点については、その資金供給源となっております資金運用部あるいは財投という問題を所管している大蔵省としてはどういうお考えか、その点についてお聞きをさせていただきます。
  48. 乾文男

    ○乾説明員 私どもの所管しております資金運用部資金でございますけれども、議員御案内のように、資金運用部資金は、郵便貯金であるとか厚生年金、国民年金等の年金資金をお預かりして、これを他方で政府関係金融機関等にお貸しをしている、そういう仕組みになっているわけでございます。  この貸し付け条件につきましては、私ども、お預かりする郵貯、年金等から長期固定金利でお預かりをしておりまして、その金利、預託金利と申しますけれども、その預託金利と全く同一の金利政府関係金融機関貸し出しを行っておりまして、私どもは一切利ざやを取らないという、そういうストレートに借り金利で貸すという仕組みになっておりますので、先ほど来の議論を伺っておりましたけれども資金運用部につきましては、今申し上げましたような性格から、この長期固定ということを変えることは困難であることを御理解いただきたいと思います。
  49. 尾身幸次

    尾身委員 先ほど井川総裁お話にありました制度があるのです。返済資金緊急貸付制度という制度でありまして、これは、ことしの四月に、自民党が政権にあったときに、その既往貸し付け資金負担を少しでも軽くするために返済の分の元利金、その年に払う分を改めて貸し付けるという制度でありまして、これは全体の貸付残高に対応するものではありませんが、その年の返済部分及びその年の金利部分についてだけ、これをそのまま返済ないし金利支払いをさせないで、その分を新しい条件で、低い金利貸し付けるという制度であります。  私は、この制度は非常にいい制度だと思うのでありますが、今回の九月の経済対策におきましては、実はこの制度の拡充強化がなされておりません。自民党時代のものでありまして、その制度があるのですが、これは実は制約があって、元利合計のお金を借りたいと思っていくと、今までの金利が六・九%超のものでなければ適用できないということになっているわけでありまして、六・七%とか六・八%で借りている企業はこの制度を適用できないことになっております。  これについては、ことしの五、六月ごろのプライムレートは五・四でありまして、今は四・五になっておりますが、その時代に決めた六・九%という水準であります。その後、公定歩合プライムレートその他いろいろ下がっているわけでありますから、この六・九というのがむしろ高い水準のものとして定義されるならば、新しい景気対策においては六・九を六・五ぐらいにまで弾力化をして、それによって相当程度の中小企業が、一〇〇%ではないまでもある程度救われてきたのではないかというふうに私は感じているわけでありますが、こういう制度が、その部分の弾力化ができなかったということはまことに残念だなと思っているわけであります。これにつきましてどういうふうに、そういうことを検討するお考えがあるかどうか、通産省の方にお伺いをさせていただきます。
  50. 長田英機

    長田政府委員 先生今御指摘制度は、お話ございましたように四月の経済対策でできた制度でございまして、中小企業者の返済の場合に、元本及び金利、これの返済資金に充てるための融資でございます。それで、六・九%という水準を決めまして、これを超えるものについて、御指摘のとおり、これの元利返済金を対象にした融資をしております。  六・九%という水準を決めるに当たりましては、前回の円高不況時に講じました水準、このときは実は七・四%でございました。それから今回の制度は、中小企業のカバレージを非常に広くしているというようなことを勘案いたしまして六・九というふうに決めたわけでございますが、これは基本的に返済期日が来た元本と金利融資するという資金繰り面の対策でございますので、特に金利が現状において下がったから金利を下げなければならないというふうにはならないのではないかというふうに考えております。
  51. 尾身幸次

    尾身委員 それはおかしい考え方だと思うのです。金利負担が高いから、高いものについて資金繰りのためのものであれば、金利の六・九という制約条件は要らないのです。全部返済のものに対応すればいいのです。それを六・九以上というふうにしたのは、金利負担を下げるということもあったと思うのです。ちょっと、そうじゃないですか。
  52. 長田英機

    長田政府委員 いわゆる元本と金利の返済時期が来たときに、その元本と金利を返済できない方を対象にして、その元本と金利の返済資金融資するということがこの制度の直接的な目的でございますから、特にその金利負担を下げるというようなことが目的になっているのではないというふうに理解しております。
  53. 尾身幸次

    尾身委員 今の中小企業庁長官説明は少しおかしいと思うのは、そういうことであれば、六・九%以上のものしか対応しないということを決めることがおかしいと思うのです。資金繰りに困っている、売り上げが減少している中小企業は全部対象にするという制度でなければ、あなたの言ったようなことにはなりませんです。ただ、もう一つ重要な質問があるので、この質問はこれ以上はしませんが、ちょっとよく考えておいていただきたいと思います。  もう一つは、今、政府系金融機関民間金融機関金利が一体どうなっているかということを調べてみました。都市銀行が平均金利、これはストックベースの平均金利ですが、四・八四、地方銀行が五・○○、第二地銀が五・六四、信用金庫が五・九四というのがストックベース残高ベースの平均金利なんです。つまり四%から五%台になっております。これに対して中小企業金融公庫は五・八六%一国民金融公庫が五・九四、商工中金が五・四一ということになっておりまして、実を言いますと、信用金庫は別として、第二地銀地銀と比べて中小企業金融公庫国民金融公庫は、相当ストックベース残高金利水準が高い水準になっております。商工中金だけが五・四一ということで第二地銀よりは低いのですが、地銀の五・○○よりは高い、そこそこの水準でありますが、中小企業金融公庫国民金融公庫は五・八六と五・九四ということで相当高い水準になっています。したがって、民間金融機関が、先ほどの大蔵省説明によると、プライムレート引き下げあるいは公定歩合引き下げに応じて、さらにこの金利ストックベースで下がっていくということになってきたときに、中小企業金融機関の平均金利の方が実は高い水準で取り残されてしまうということが私はかなり懸念されてくるわけであります。  そして、私の知っている私の地元の群馬県の中小企業の例で見ましても、これは中小企業金融公庫からお金を借りておりますし、民間の信用組合からお金を借りているのですが、中小企業金融公庫から借りているお金の直接貸しの残高金利が平均で六・八四です。そして、民間の信用組合から借りているのが、これは二十年物もあります、変動金利でありますが、五・六六%ということで民間から借りている。しかも、信用組合という小さい金融機関から借りている金利中小企業金融公庫より借りている金利に比べて平均で一%以上も低いという水準になって、完全に逆ざやになっているわけであります。ですから、そういう中小企業の立場を考えると、やはりこの高い金利のお金を返して、もっと低い金利の金に借りかえることが一番の企業のための体質改善になるのだという要望は極めて合理的なものであると私は思うわけであります。  それで、先ほどから大蔵省説明伺いました。いろいろな説明を伺っておりますが、一つの解決策としては、そういう事情にあるときに、どうしてもこういう低金利時代には長期固定金利で貸すという原則を立てていると政府機関金利の方が民間よりも高くなってしまう、高いときにはもちろん逆かもしれませんが、なってしまうという現状があって、このことが中小企業者政府系金融機関あるいは中小企業政策に対する不信感の大きな原因になっていると思いますし、私はその不信感というのは相当根拠があると思っております。  それで、そういうことを考えた場合に、財投の金利固定金利固定期間借りたにしても、中小企業金融機関としては、市中の一般金利よりも一段階低い金利で変動するような設備資金の貸付制度をつくって、その変動金利制による長期資金貸し付けということを考えるべきではないか。その場合に、固定金利の今までの制度変動金利借りるのかどうかということの選択は借り中小企業者の選択に任せるべきではないかというふうに私は感じております。原資であります財投金利が国債の金利と連動して長期固定ということになっているわけでありますが、この金利水準そのものは、つまり、資金源としての金利水準そのものはいつも長期プライムレートよりも非常に低い水準にあるわけでありますから、そういう低い資金源を使っている中小企業金融機関が独自で低い水準のままでの変動金利による長期貸付制度というのをつくっても、考えてもいいのではないか。  これは大企業の場合には、例えば三菱銀行のような都市銀行から借りるときは変動金利借りて、長興銀から借りるときは、長期信用銀行から借りるときは固定金利借りて、どちらでも借りられるようになっていると私は思うのであります。ですから、中小企業にもそういう固定金利借りるのか変動金利借りるのかという選択を、中小企業金融機関貸し付けのフレームワークの一つとして、そういう選択ができるようなことをこれからの課題として考えるべきではないかというふうに思います。そういう点について通産省の御意見をお伺いいたします。大臣、お願いいたします。
  54. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 卓抜した御提案だと思いますけれども、よく今考えてみますと、先ほどの話と似たようになかなか難しい問題もあるなどいう感じがいたします。いたしますけれども制度、仕組みは、これは人間がつくることでございますから、せっかくの尾身大先輩のお話でございますので、中小企業庁に命じまして研究課題にさせていただきたいと思います。
  55. 尾身幸次

    尾身委員 こういう問題について、ぜひ政府で真剣に取り組んでいくことを祈念をし、大臣の答弁に対しまして、商工中金理事長、一言。
  56. 児玉幸治

    児玉参考人 ただいま尾身先生からお話のございました変動金利貸し付けでございますが、中小企業機関の中で商工中金というのはちょっと組織の性格が違うわけでございます。例えば、その資金調達の方も利付商工債券という形で市中から調達しているということでございまして、半官半民と申しますか、民間的な色彩の強い組織でございます。したがいまして、従来から資金調達、運用全般にわたりまして、できるだけ民間並みの対応をしようということにいたしておりまして、貸し出しの運用につきましてもそれなりの弾力性を持たせていただいているわけでございます。  今お話のございました変動金利貸し付けでございますが、実は私どもの方では数年前からそういう制度を導入をいたしております。もちろん、今お話しございましたように、これは貸し手の側の判断が出てまいりますから、金利先安だと思うと変動性の貸し付け期待が多くなりますし、逆の場合は固定の方が多くなるのでございますが、現在この変動金利貸し出し、私どもの方では二兆五千億円ほどございまして、全体の長期貸し付け七兆七千億円の約三割を占めておりますので、この点だけ御報告いたしておきたいと思います。
  57. 尾身幸次

    尾身委員 時間でありますのでこれで質問を終わらせていただきますが、今大臣の御答弁のようなことで、ぜひ長期的な課題として、重要な課題として御検討願いたいと思います。  終わります。
  58. 中井洽

    中井委員長 次に、佐藤剛男君。
  59. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 委員長質問の資料としましてちょっと配りたいのですが、よろしゅうございましょうか。
  60. 中井洽

    中井委員長 どうぞ、配ってください。
  61. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 経済企画庁長官がおられますから、経済企画庁長官にお尋ねをいたします。  長官、先週の金曜日でございましたが、私こういう問題提起をいたしたわけです。その背景は、今回の消費問題に絡みまして、その喚起策としては所得減税問題である、あるいは新聞では消費税だの抱き合わせだのいろいろな問題が出ていますが、減税の問題は別にしまして、基本的に、熊谷大臣が一衆議院議員のときに日本経済の不均衡問題というのを取り上げて、その中で一番大きな課題というのが海外の経常黒字、対外黒字ということ、これはほっておくと大変なことになるということで、私はそれを、マクロ経済学的に大臣に御確認申し上げるのですが、説明いたしましたのは、日本の経済、マクロでいいますと、総貯蓄から総投資、住宅投資を含め、いわゆる公共投資を含めて総投資、この差が、我々貯蓄をS、セービングという言い方でよく経済論理に使うわけでありますが、また投資はI、インベストメントという言葉を使うわけでありますが、このSとIの差が対外黒字という問題にぶら下がって、これは千五百億ドルなりそういう膨大なるものに出る。これが一つの要因になって円高円高へと行く動きがあって、そういう経済論理とは別に、国際的なマネーの中で、恐らく六千億ドルとも言われている国際マネー、為替マネーが動いて、わっと経常黒だ、日本が出たというと、ちゃちゃちゃっと、こうやって円高基調に行く。そういう形の、何といいますか、いわば解くに解けないような、三角形でいいますと、頂点が低成長であって、底辺にあるのが財政収入不足であり、片っ方の底辺が対外黒字である、こういう非常に難しい局面に現在来ておるし、経済企画庁長官はその責任者として、その問題の本質というものをきちんと方向づけするのが必要だろうということを私は御指摘したわけでございます。つまり、ISギャップの増大問題をいかに対処するか。  それで、この一つの資料としまして、私がそのときに申し上げました資料で今大臣にお配りしたものをちょっとごらんいただきたいのですが、消費問題を言うときには、必ず家計の問題、日本の我々国民勤労者の家計がどうなっているのかということをよく含んで、分析して、そして対策を出していくということが必要であると思うわけであります。  それで、今ここにある一枚紙の、金融資産貯蓄純増率と契約貯蓄率という資料をお渡しいたしました。この思想はどういうことかといいますと、先ほど言ったISギャップがますます増大していきますよ、Sが膨らみますよ、なぜSが膨らむのかというと、ちょっと見てください、契約貯蓄率というのがあります。Sを構成している、貯蓄率を構成しているものは契約貯蓄率。契約貯蓄率というのは、住宅ローンの借金を返済しますと契約貯蓄率になるのです。貯蓄率が増大するのです。実は、これが昭和五十二年の七・八から今全体の形で一三・二。この中には生命保険の保険料の増大等々がございますけれども、その中で大きなウエートを示しているのが土地家屋の借金低減の問題であります。  そして、これはどういう背景かといいますと、昔は、若いときには日本人というのは、衣食足って礼節を知ると言いまして、大臣、住が抜けていたのですよ。衣食住足りて礼節を知るとは言わないのです。衣食足って礼節を知るというのはなぜだったかというと、この住に対して、江戸時代あたり見ましても、長屋の何さんじゃないですが、余り関心を持たなかった。ところが、戦後、特に昭和二十二年から二十六年に生まれた、堺屋太一さんの言ういわゆる団塊の世代の層というのがすごい持ち家志向になりました。今その人たちは四十二歳から四十六歳ぐらいまでの年齢におるわけです。今一番の経済的厄年にいるわけです。大体持ち家を終わりまして、借金返済をしている状況だ。この層というものがどういう動きをしていくか、そして、勤労者の中においていわゆる住宅ローンの負債というのがどうなっているかということをひとつ見きわめながらやっていくということが大きな対策になる。  なぜならば、この貯蓄率というのは、これは減らない、下に行かない現象に日本は来ちゃった。ところが、このSがIに移行しようとする――しなければいかぬのですよ。大臣御承知のように、最終的にSイコールIにならなければならぬわけですが、これは、いろいろな流動性の欠鉄、例えば土地を譲渡しようとすると譲渡所得税が三九%かかっちゃう、あるいは地価税みたいな形になっている、こういうふうなことであって、この膨らんだSの部分が、つまり住宅のローンの返済でSが膨らむ、契約貯蓄率が膨らむ、貯蓄率が膨らむ、それをいわばインベストメントしなければならないところに、いろいろな流動性の欠陥という問題があるわけでありまして、この面についての対策というのが多々要るわけであります。  それから、労働省、いらっしゃっておると思いますが、労働省の政策で雇用調整助成金という制度がありまして、今企業は過剰設備、去年あたりは本当に人手不足だ、人手不足だと言っていたのが夢のような形で、今は人余りになっている状況にいて、言うならば固定費の増大にふうふういっているわけであります。これを身軽にしてやる制度として、この労働省の雇用調整金の制度というのは私は非常にいい制度だと思う。こういう対策があるから企業内の失業率というものも日本は余り表面化しないでどうにか落ちついておるというふうに考えるのでありますが、まず、通産大臣おられませんので、久保田大臣、私の前回申し上げました一つの流れ、これを御理解の上にどういう方向で取り組まれるか、経済企画庁としてその点をお聞きいたしたいと思います。
  62. 久保田真苗

    ○久保田国務大臣 まず、黒字の問題でございますけれども先生おっしゃいますように、確かに日本の貿易黒字というものがございまして、これがずっと対外的な摩擦を起こしているわけでございます。これにつきましては、一つの国でもって大きな黒字をずっと継続的に持っているというようなことが世界各国の非常に関心の的となっておりまして、このために円高という問題も誘発しやすくなっております。したがいまして、政府といたしまして当然この黒字を縮小していく、経常収支の黒字縮小ということは企画庁の基本的な方針でもありますし、また、政府全体としての取り組みの対象となっておるわけでございます。それにつきましては輸入を増加する、これが一番望ましいことは言うまでもないことでございまして、輸入を増加していくという、そのためにいろいろな対策をとっているわけでございます。  したがいまして、短く申し上げますと、そのために先生のおっしゃるISギャップ、これが、確かにSがIの方に移っていかないというさまざまな障害がございます。それはおっしゃるような原因でございますけれども、日本の場合顕著なのは、世帯におきまして住宅ローン、例にお挙げになりましたが、住宅を取得しようとする意向が非常に強いわけでございます。しかし…
  63. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 大臣、ちょっと短くお願いします、質問の時間が限られておりますので。
  64. 久保田真苗

    ○久保田国務大臣 はい。  住宅の問題につきましては、今回政府として七十万戸出して、金融公庫金利も最低のところへいっている、そういうことでございますし、また、企業におきまして、省力化、省エネ化、そうした投資の方に今回さまざまの配慮をしているわけでございます。そういうことで、企業におきましても、また家計におきましても、こういったものが住宅投資その他の投資に入っていきますように努力しているという状況でございます。
  65. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 失礼いたしました。  私が言いたいことは、ISギャップを縮小する方向をやらないと、構造的に単に輸入だけをふやそうったって、なかなかそれだけで解決しない大きな問題を抱えていますよ、しかも、日本の中においては消費の問題で、消費増大で所得減税の問題が出ていますけれども、何となく浮ついたような形で議論がされているのじゃないですかという懸念を私は申し上げているわけであります。  建設省、どなたかいらっしゃっていますか。  今、住宅ローンの残高、公の住宅公庫あるいは民間金融機関、会社だの何だので出している部分はなくてもいいですが、どのくらいございますか。それはGNP比率でどのくらいあるか。
  66. 藤田真

    ○藤田説明員 現在の住宅ローンの残高でございますが、民間金融機関それから公的機関合わせまして、平成年度末で百三十二兆四千八百四十五億円でございます。
  67. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 その中には民間の、例えば各会社が共済だの何だのでやっているというものは含まれていないのですか。民間金融機関だけですか。私は、今の数字には含まれていないような感じがしますが。
  68. 藤田真

    ○藤田説明員 今先生お話にございましたものについては、含まれておりません。
  69. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 今建設省の方で言われた百三十二兆という数字、住宅ローン返済残高があります。これは統計でなかなかとれないと思うのですが、各会社は今一生懸命福祉関係で社員の住宅をやっているわけであります。相当なる住宅資金というものが家計に流れておる、その統計がないだけで、調べてないだけで。今、仮に建設省の百三十二兆でいいますと、これは大臣、GNPの約三分の一近くになっていますね。そういうことでございます。今やそういう家計がローンづけになっている状況なんだろう。そのローンづけになっている実情をもう一枚の紙で、私お配りしましたものでお見せいたしたわけでございます。  これをお見せしました趣旨は、住宅ローンを返済すると貯蓄になると計算される。貯蓄になってくる部分があるから、貯蓄率が下方硬直性になってしまって下がらないから、そのためにはできるだけ負担を少なくしていくような一つの住宅政策というのが必要です。これは例えば償還期間を長くしていく、金利負担を少なくする、この辺は建設省よくやっておられるのですけれども、まだ二十五年だの何だのというような短い部分もある。  なぜかというと、個々の勤労者の世帯のうち三分の一が大体住宅ローンを借りているのです。住宅ローンづけですよ。だから、消費がふえるときというのはどういうときかというと、例えば今度JR東の株が三十七万円からぽんと八十万円くらいになったとすると、何か買ってみようかなという感じになる。こういうフロー部分みたいな感じでない限り、ぴったりともうローンづけになっていますから、さらにそれに教育費だの何だのかかっているのが経済的厄年になっている今の中堅の部分ですから、そういう人たちに対して何を一体あれをすれば消費が動くのかということのきめの細かい対策が今必要になってきておる。  その一例として、一枚目に、契約貯蓄率も上がりますよ、それから住宅を買う前にも頭金というのがいるために、頭金をやるために積みますよ、それでこの貯蓄率が上がってきます。さらには、だんな一人だけじゃ頭金積めないから、奥さんまでが働きに出てやるわけです。ですから、女性の社会的参加というのは、教養がある人が参加しているだけじゃなくて、万やむを得ぬ形で出ている人というのがあるわけであります。これが日本の勤労者なんです。今日本の家計というのは、貯蓄もするがローンも借りているという実情にあるんじゃないか。構造的にそういうISギャップがあるんだから、それについて企画庁なり関係各省は本格的に取り組んで、こういうように今消費の問題が出て、あるいは消費税の問題が出る、所得減税の問題が出るわけですから、いかにするかということの時期に来ておると私は思うのでございますが、大臣、ひとつ簡単にお答えください。
  70. 久保田真苗

    ○久保田国務大臣 経済計画の中で、住宅が安く取得できる、その道を探るということで私どもは頑張りたいと思っております。したがいまして、輸入あるいは対日投資といったような面も今大いに探っているところでございます。
  71. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 ありがとうございました。そこはここら辺までで終わらせていただきまして、また別の機会に質問させていただきます。  次に、労働省後藤参事官いらっしゃっていますか。労働省にお聞きいたします。  先ほど申し上げましたが、いろいろな景気対策の中で、注射でいえばブドウ糖注射みたいな非常に効く注射、これが雇用調整助成金であります。そして私は、最近労働省がいろいろな面で改善を図っておられる、非常にこれは敬意を表するわけでありますが、その点ちょっと簡単にぱぱっとお話しいただけませんでしょうか。改善案がどのようになっているか、あるいはどのぐらいの業種が指定されておるか。それから、こういうものについて今後の運用方針等を、簡明で結構です、おっしゃってください。
  72. 後藤光義

    ○後藤説明員 御指摘の雇用調整助成金でございますけれども、御案内のように現下の雇用失業情勢が非常に厳しいということで、例えば有効求人倍率は八月には○・七倍ということで低下を続けておりますし、完全失業率も上昇傾向にあるなど非常に厳しい状況が続いているわけでございまして、こうした状況のもと、景気変動の影響を受けて雇用調整を余儀なくされた事業主に対し、雇用維持努力を支援する制度としてこの雇用調整助成金制度を活用することは失業防止の観点から非常に有意義である、このように考えております。  このため、昨年十月から一年間につきましては、業種の指定基準について緩和措置を講じました。また、本年四月からは手続の簡素化を実施し、さらに本年六月から一年間については助成率の引き上げ、支給対象事業主の拡大等を実施し、制度の拡充を図ってきたところでございます。さらに、現下の雇用失業情勢にかんがみまして、先般決定した緊急経済対策におきまして業種指定基準の緩和措置を、この九月で切れるところを来年の三月末まで延長することとしたところでございます。  現在、雇用調整助成金の対象になる業種数は百八十七業種でございまして、これにカバーされている労働者は約四百万人というような状況になっております。今後とも、機動的な業種指定を継続するとともに、申請手続の一層の簡素化等につきましても検討を行いまして、少しでも多くの事業主の方に雇用調整助成金を活用いただきまして、労働者の失業防止、雇用維持が図られるよう制度の運用に努めてまいりたい、このように考えております。
  73. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 先ほど申し上げましたが、今の制度は、景気対策がなかなか効き目がないのに、流動性が欠けているんです。土地の問題もそうなんです。だから動かない。税金で抑え込んだ部分もあります。ですから、そういうものの点もそうなんですが、今の一番の現状は、先ほど言いましたが、工場においては設備過剰、本来ならば廃棄するぐらいの経済情勢だと私は思っています。それから雇用、人余りですね。つい最近の夢のような話です。この雇用、人余りというのはいろいろな要因がありますが、しかし、それが表立たないでうまくスムーズにやっているのは私は労働省のこの政策だと思っておる。これが失業率を急激に上げないで非常にうまくやっているのです。予算は少な過ぎるように思えます。私は、予算は少ないが、その効き目は、中小企業に対してもそうだし、今御指摘の四百万の人たちに対してもすばらしいと思います。これを非常に弾力的にやっていただきたい。  それから、特に、この場合には大型の設備をやっている業種があります。例えば化学。化学は十月から指定されるようになった。これは私はいいことだと思います。指定する必要があるのが紙・パルプ産業です。例えばこういう紙というのは上質紙あるいは中質紙がありますが、現状はもう過剰設備です。稼働率を上げないことには、これは固定費が負担増になっていてどうしようもないという状況があるのです。それからまた、工場によっては新聞用紙もつくっていれば上質紙もつくっていれば中質紙もつくっていればという、幾つもの品種が別れているようなものがある。そういうような場合に運用で、例えば半分あれしたものについて限るとか、それは非常に弾力的になっているようです。その点私は非常にいいことだと思っております、一番重要な問題は失業を出さないということだから。  この秋から来年の春にかけて大きく注意しないと、私はとんでもないことになると思っているのです。だから、警戒警報じゃなくて空襲警報になっているわけだから、これについては労働省が本当に必死になってやっていただきたいと思いますし、私ども予算獲得だの何だのの部分については、私個人としてもそうですが、そういう面で大いにいい政策でありますし、応援したいと思っておるわけですから、そういう大型の設備、例えば石油化学の場合だったら、新設した、つくったら古いものをとめた、そうすると新しい人が行くのだけれども、人間は要らなくなっちゃうわけでしょう、新設の場合には。そういうようなものでなかなか指定されなかったようですが、これも指定される。条件改善になったわけです。紙・パルプも似たようなものなんです。こういう業種がたくさんあります。それをいろいろ積極的にヒアリングしていただいて、そして失業問題が出てきて、今米の問題だの、私は東北福島なんですが、そういうような形の電子機器の部品の下請がたくさんあるわけです。そういうところは指定になっていますからおかげさまであれになっていますが、そういうものにいろいろイーハンもリャンハンもついたような状況に来ているわけですので、まさしく今こそ労働省大いに奮い立ってやっていただきたいと思います。  労働省に関しましてはここで結構ですからもうお帰りください。ありがとうございました。  それでは、経済企画庁から政府委員がいらっしゃっておられますので、ちょっと私、先ほど御質問したものを繰り返すようでございますが、企画庁事務当局としましては、いわゆるISギャップ問題についてどのような形で取り組み、どういうふうな考え方を持っておられるのか。そういうことを景気対策の中でどのように考えておるかということをお話し賜ればと思います。
  74. 土志田征一

    ○土志田政府委員 お答えいたします。  経常収支でございますが、これは御承知のとおり、定義上、先ほどからおっしゃっておりますように、国内における貯蓄、投資の差額に等しくなるということでございます。これは定義式でございますので、一般的にどちらがどちらを決定するという因果関係ではないわけでございます。もちろんその際、為替レートとか金利とか輸入性向とかいろいろな要因が働くわけでございますけれども、これは大きな傾向、流れといたしましては、御指摘のように、家計の貯蓄率が高いということで国内は貯蓄超過の傾向がございまして、これが経常収支の黒字基調と裏腹になっているというふうに判断をしております。したがいまして、中期的には、先生指摘のように、貯蓄を活用していくということは重要な課題であるというふうに認識をしております。
  75. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 それで、一つはSの下方硬直性をできるだけ少なくするという、Sはほっぽり投げておくと上がっちゃう、これをいかに上がらないようにしていくか、これが基本の政策だろうと思いますし、それについては私は住宅ローンの返済期間というようなものを長期化していく。木造何々について二十五年、その他について三十年になっていましたか、そういうようなものについての長期化。それから金利については、今回たしか四・数%に下がっていますが、これはまたそうしてもらわなきゃいけない対策でありますが、金利の減少。それから頭金の比率を下げる。家をつくる場合には親戚から金を借りるか会社から金を借りるか、頭金をつくってこなきゃいかぬ、自己資金を。その自己資金をつくるためにみんな働きに出るわけですよ。国家公務員の宿舎にいたりしますと、定年間近になると皆家探しに困っちゃう。団塊の世代の二十二年から二十六年に生まれた人たちが今経済の中の非常に大きな消費の構造を持ってやっておりますから、その層のところにひとつ建設省もいろいろな面で考えていただきたいと思います。  どうぞ、建設省結構でございます。ありがとうございました。もし何か御答弁なさりたかったらひとつどうぞ。手を挙げている人、どうぞ。
  76. 藤田真

    ○藤田説明員 住宅ローンの融資条件の改善でございますけれども、特に金融公庫につきましては、先生御案内のとおり、一般会計から補給金を交付いたしまして融資条件の緩和を図っておるわけでありますけれども、当初五年間の返済額を軽減する仕組みでありますとか、あるいは貸し付け条件の引き上げなど負担軽減につきまして努力しておるところでございますけれども、来年度の予算につきましてもいろいろお願いしておるところでもございまして、今後とも努力をしていきたい、こういうふうに思っております。  なお、金利につきましては、現在四・二%でございますけれども、財投金利が十月二十日に四・三%に引き下げられたことに伴いまして、四・〇五%にするべく準備をしておるところでございます。
  77. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 どうもありがとうございました。  委員長、最後に私の感想も含めて、またこういうことを考えなければいけないのじゃないかなと思っているのですが、かような先ほどの、経済縮小の低成長になり、財政が赤字になり、対外的に黒字がたまる、このいわゆる悪魔の三角形、日本経済が縮小に入って、そしてつまり、具体的に経済論理からいえばIが不足しているわけです、投資が。とすると、流動性を固める形を考えなければいけない。ところが、工場の方には設備過剰という形で出した。民間の方は住宅を買いたいという、持ちたいという希望者というのがたくさんいるわけですけれども、まだそこまで動きにくい。マンションがちょっとある水準まで動くだけ。そういうふうな状況になっていますと、一番Iを緊急的に出しやすいのは――こんなことを言うとまた変なんですが、私は赤坂の宿舎にいるのです。赤坂の宿舎にいますが、議員宿舎で見て驚いたのは、あれだけのいい場所にまだ高層じゃなくて低層で建物が建っているわけです。外の方は、周りは幾つも幾つもの層があるわけです。あれは公有地だと思うのですが、こういう土地問題の部門だったら、そういう形の活用、公有地的な活用、それをやることがまた全体の、我々議員の活動にもいいわけですが、あれはもう何十年たっているのか知りませんけれども、いい場所ではあります。そういうことも、国会の中の部門でできるならそういうところから率先してやっていく必要があるのではないかと思うのですが、どなたに質問したらいいのかわかりませんので、感想を述べまして、私はこれで終わりにいたしたいと思います。  最後に、熊谷大臣、何か一つ、何でも結構でございますが、承っておきます。
  78. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 経済の再生のためにどのような手だてを講ずるべきかにつきまして、委員の卓抜したアイデアを含めてお伺いをし、私どもも同感、共感をするものが多うございます。とりわけ、最後に御指摘になりました東京都内、特に東京都内における公有地、国有地の活用を示唆された御発言と伺いましたが、実は政府内におきましても、このことは非常に共通の意識として指摘をされているところでございます。今後の非常に重要な検討課題をちょうだいしたと受けとめております。
  79. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 どうもありがとうございました。感謝申し上げます。
  80. 中井洽

    中井委員長 午後零時四十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時三十四分休憩      ――――◇―――――     午後零時四十分開議
  81. 中井洽

    中井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。野田聖子さん。
  82. 野田聖子

    ○野田(聖)委員 岐阜一区選出の野田聖子でございます。初めての質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。  早速質問に入らせていただきます。本日は、現在の不況の中で特に緊急を要すると思われる中小企業に対する。取り組みについてお尋ねいたします。  不況が大変長引いています。さきの月例報告においても、経済企画庁長官の所信表明でも、「回復に向けた動きに足踏みが続いており、今後の本格的回復には予断を許さないものが」あるとされています。通産大臣は所信表明の中で、「通商産業政策の推進に向け、全力を尽くす」とあり、その第四の課題として「中小企業の活性化」を挙げられております。  また、私の地元岐阜県から最近のデータが送られてきており、そこには倒産、廃業の発生が増加傾向にあり、今後の推移が危惧されるという報告とともに、岐阜県中小企業は先行き不透明な中で企業マインドも萎縮したままであり、大変厳しい経営状況政府の画期的な景気回復策を切望しているということであります。  そこで、最近の中小企業の倒産の状況とその原因等について教えてください。
  83. 長田英機

    長田政府委員 まず、倒産の状況でございますが、中小企業の倒産は、平成年度数字をとりますと、一万四千五百件でございます。これはちなみに前回円高不況時、昭和六十一年度におきましては一万六千八百件ということでございまして、若干数は少なくなっております。また、最近十年間いろいろ景気の変動がありますから、十年間の月間の平均の倒産件数をとってみますと千百二十件なんですが、本年の九月には千二百五十八件ということで高い水準にあります。またその理由は、販売不振とか売掛金の回収難とか、そういうような不況型の倒産が約六割を占めているというような状況にございます。  また、御質問の廃業の点につきましては、これはどうも直接的なデータはないのでございますけれども、例えば中小製造業の事業所数の変化をとらえてみますと、平成三年以降、平成三年、平成四年、大企業に比べまして中小企業の数は大分減ってきております。
  84. 野田聖子

    ○野田(聖)委員 ただいまの御答弁の中で、倒産の件数は、昭和六十一年に比べて件数としては減っているけれども、やはり増加にある。実は岐阜県の資料でも、平成五年の最近の資料を見てみますと、月々で増加傾向にあるというデータがございますし、これは今おっしゃったように、かつての中小企業の自助努力不足による放漫経営型の倒産から不況による連鎖型というか売り上げ不振型、不況型の倒産が多くなっているということであるわけです。  また、廃業についてここでなぜお聞きしたかといいますと、今おっしゃったとおり、廃業についてのデータというのが入手困難だということを確認しておきたかったからなんです。岐阜県においてもそういう廃業という形でのデータというのがきちんとあらわれてきておりません。しかしこの中小、特に零細な企業において、倒産の前段階である廃業は倒産とほぼ同じ意味を持つものと思われます。国の視点にはこのような中小企業実情を完全には把握し切れていないところがあるのではないかと思われます。  また、その関連で、今国会に提出されました通称リストラ支援法案、これは実は本名は大変長いのでその俗称で話させていただきますが、これについてお伺いいたします。  私は、そのリストラ支援法案そのもの、内容については大変賛成なのですけれども、この法案が大きな問題点を抱えていることを指摘しておきたいと思うのです。つまり、そのリストラ支援法が救済対象としているのはある程度足腰のしっかりした中小企業であって、新分野とか海外進出をしようと考えている、そういう中小企業であって、先ほど申し上げたような廃業を余儀なくされる零細企業はそういった救済の網の目から漏れてしまうわけです。そこで、このリストラ支援法案を通すに当たり、むしろそのリストラ支援法案がもっと有効的に生かされるために、同時進行の形で小規模企業への対応も図っていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  85. 長田英機

    長田政府委員 まず、国会に提出させていただきました、私ども中小企業新分野進出法案と最近は言っておりますけれども、この法案は、御案内のとおり中小企業全部でございますので当然のことでございますけれども、別に小規模企業を排除しているものではない。そして、今先生指摘中小企業、特に小規模企業が現実に非常に困っているということに対応いたしましては、去る九月十六日に決めました緊急経済対策におきまして、運転資金の特別貸付制度とか、あるいは緊急経営支援貸付制度の拡充とか、あるいは保険制度の拡充というような、いわば経営を安定するためのいろいろな措置を同時に講じているわけでございます。  そのほかに、中小企業庁といたしましては、小規模企業対策ということで施策上一つの大きな柱を設けておりまして、小規模企業をめぐる非常に厳しい現状に対応しまして、国民金融公庫からの融資だとか、あるいは先般、本年の八月でございますが、小規模事業者支援促進法という法律を通していただいてそれを実施しておりますけれども、商工会や商工会議所がいろいろな施設整備を行うというようなことで、小規模企業対策としていろいろ配慮した対策を講じております。
  86. 野田聖子

    ○野田(聖)委員 ありがとうございました。  リストラ支援法案が小規模事業者、小規模企業を排除していないということは当然のことだと思いますけれども、ただ現実問題、そこに手が届くかどうかということを今改善していかなければいけないのではないか、そういう手の届く人をふやすことを今まさに緊急にやっていかなければならないのではないかと思っております。  そこで、今御答弁の中にありましたさまざまな制度についてなのですけれども、私が望んでいますことは、言い方は悪いですけれども、借金のための借金というような事態ということではなくて、この際、逆にこのピンチがチャンスというようなとらえ方をしていただいて、抜本的に中小企業の体質を改善する具体策を掲げていただきたいと思っているとごろなんです。  そこで、中小企業にかかわる一番の問題は人材だと言えます。日本は、国も国民もどちらかというと大企業優先志向があるように思われます。単にブランドイメージではなくて、現実に大企業中小企業のさまざまな格差を国民は目の当たりにしているわけで、ここでお尋ねしたいのは、その大企業中小企業の例えば賃金、労働時間、休暇、社宅等の格差について御承知の範囲で教えていただきたいことと、あわせて、この格差是正への御努力について教えていただきたいと思います。
  87. 長田英機

    長田政府委員 大企業中小企業の格差でございますけれども、近年におきましては、製造業の付加価値生産性、一人当たり給与、そういうような指標で見ますと、若干の変動はありますけれども、格差はほとんど横ばいで推移しております。しかしながら、最近よく言われますのは、設備面と申しますよりか情報面とか技術面とか、今先生指摘の人材面とか、そういうような面で中小企業と大企業との格差があるということが非常に問題になってきております。
  88. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 ただいま格差の状況については中小企業庁長官から御答弁申し上げたとおりでございますけれども、全般といたしまして、日本の経済の中で、中小企業と大企業の格差問題というのはいわゆる構造問題として認識されている、これはもう長い長い歴史を持った状況だろうと思うのです。  余談ですけれども、私は、実は野田委員と余り遠くないところに選挙区がございますので、私の友人や親戚も岐阜県には大変大勢おりまして、野田委員が長い選挙戦を通じて、選挙戦といいますか政治活動を通じて中小企業の皆様方に非常に深く接触をされ、その苦しみや痛みというのをよく存じ上げているということは遠く代っておりますので、私どもも、中小企業の立場から見て、この日本の経済の構造の改革のあり方というものを、私は同じ意見を持っていると思っております。  ただ、いわゆる中小企業と大企業の格差論というのは、かつての昭和二十年代、三十年代、四十年代前半ぐらいから大分状況は変わってきておりまして、また、それなりに中小企業の意味合いというものも、また、中小企業がゆえの強さというようなものもあると思っております。岐阜県から私どもの浜松に一人で、単身入ってまいりまして、そして勇躍この我々の地元の有力企業の当主として活躍している人もおります。  問題は、そういう中小企業特有のメリットを生かしながら活躍できる環境をいかにつくっていくかということを私は所信の中で申し上げたわけでございまして、先ほど、抜本的なといいますか、画期的な景気対策というような趣旨の御指摘がございましたけれども、実は、その抜本的であり画期的な施策が、従来型の、まさに委員指摘のような金融的な措置だけでは済まされない日本の経済状況に今あるんだ、それがゆえに、中長期を展望して構造改革をやる、あわせて内需拡大のための財政金融政策も行う、こういう考え方で私どもはいるわけでございます。
  89. 野田聖子

    ○野田(聖)委員 御答弁ありがとうございました。  先ほどの長官の方からの御答弁なんですけれども、技術的な面、情報的な面の格差が云々とあれましたけれども、実は、ちょっとお尋ねしたいのは、非常にベーシックなことで恐縮ですけれども、では大企業に勤めている人七例えば五人から九人の企業に勤めている人との待遇格差と申しますか、賃金格差については御存じでしょうか。
  90. 長田英機

    長田政府委員 従業員十人以上二百九十九人以下を中小企業と定義いたしまして、三百人以上を一応大企業、こういたしますと、一人当たりの賃金は、平成三年でございますが、大企業を一〇〇といたしますと、中小企業は六五・七に当たります。
  91. 野田聖子

    ○野田(聖)委員 それでは、週休二日制の実施状況については御存じでいらっしゃいますか。
  92. 長田英機

    長田政府委員 完全週休二日制の実施状況ですが、ここではちょっと三分類いたしまして、千人以上の大企業は六八・一%、中企業と申しますか、百人から九百九十九人までですが、二六・八%、小企業、三十人から九十九人まででございますが、一四・九%、こういう統計が労働省の調査でございます。
  93. 野田聖子

    ○野田(聖)委員 ありがとうございました。  生活者として豊かなゆとりある生活をするためにはやはりそれなりの賃金を得なければなりませんし、生活を維持していくためにはそれなりの賃金を得なければなりませんし、また、ゆとりのある生活を送る第一歩として、きちんと週休二日とれるようなところに勤めたいと思うのがやはり普通というか素直な気持ちだと思うのです。実は、いろいろと国の方で努力をしていただいているにもかかわらず、今のように依然として両者の格差というのは縮まっていないわけで、現在地方分権を標榜されている細川政権であるならば、地場産業の大部分が中小企業であるというその現実をいま一度御認識いただきたいと思います。  続きまして、また、この不況時に、下請体質の中小企業は一方的に親離れを宣言されたり、親が円高をにらんで下請の拠点を海外に移すという動きがある中で、本来のリストラ、構造を変えるということは、下請が親会社にはできない製造技術、ノウハウを確立し、それをてこに独自の市場を切り開いていく、むしろ中小企業が独自のものを持っている、そして逆に親を指名して、自分の製品を使わせてやるぞというぐらいまでレベルを上げていく、それが中小企業の自立に近いものだと思うのですけれども、その自立のために国は全力を挙げて支援していただけますでしょうか。
  94. 長田英機

    長田政府委員 おっしゃるとおりだと思うわけでございまして、今回提出させていただきました法案も、新しい分野、新しい商品あるいは新しい事業、海外に展開するということも含みますけれども、そういうようなことに取り組む、積極的に取り組んで活路を見つけるような中小企業をいろいろな面で支援していこうということでございます。金融面、税制面あるいは補助金というふうに考えております。  このほか、技術面のいろいろな支援も必要だと思うわけでございますし、これは県の工業試験所あるいは工業センター、こういうようなところも一生懸命地方の企業を指導しておりますし、また、人材面では、中小企業事業団とかあるいは商工会とか商工会議所がいろいろ人材の育成のための努力をしております。  要するに、いろいろな措置、多方面の措置を講じながら、中小企業の新分野進出というものを支援していきたい、こう考えております。
  95. 野田聖子

    ○野田(聖)委員 ありがとうございました。  私は、せんだっていろいろな資料の中にこういうパンフレットをちょうだいしました。非常に懇切丁寧にいろいろと、困った際にはどこそこへ相談してくださいとか、倒産しそうになったらこういうところに相談所がありますというような、大変親切な手引があるわけですけれども、現実に岐阜県の中小企業者、特に零細と言われる人たちに見せたところ、全くこれについての知識も面識もないというのが事実であったわけです。ですから、国が、通産省が、中小企業庁がせっかくここまで物をつくり上げたにもかかわらず、末端とのネットワークがどこかで分断されているというのが今の日本の社会構造というか産業構造になっているのじゃないか。これだけいいものをオファーしようとしながらも、受け手の方が何か空白が、例えば中小企業にしましても、いわゆる三百人ぐらいの中小企業もあれば親子でやっているようなものも中小企業に含まれるわけで、そういうもののすべてを網羅することはできないと言われてしまえばそれまでなんですけれども、できれば一番の末端に手が届くような、お互いに手を届かせるようなそういう方法というのはお考えでしょうか。
  96. 長田英機

    長田政府委員 御指摘のとおりでございまして、中小企業は約六百五十万おります。商工会、商工会議所、それから中小企業団体中央会あるいは商店街振興組合連合会、こういうような組織を通じていろいろな施策は末端まで流れるように努力をしているわけでございますが、御指摘のとおり何せ数が非常に多いわけでございますので、このPRは必ずしも十分だと私ども言い切れない面があると思いますので、これからも一生懸命わかりやすいPRをしていきたいと思うわけでございます。
  97. 野田聖子

    ○野田(聖)委員 くれぐれもよろしくお願いいたします。  まだ少し時間がございますので、ここで中小企業対策の具体案を一つ円高差益還元との絡みで提案させていただきたいと思います。  さきに電力各社が一軒当たり約百円の円高差益を還付するという発表をいたしました。しかし、金融機関の引き落としによる約百円の還付金に国民が差益還元を実感することはなかなか難しいのじゃないかと思われます。もし細川内閣が、今回の電気料金の還元は町の環境美化も考え中小企業景気対策の弾みのために電線の地中埋設工事に利用させてくださいとお頼みすれば効果はもっと目に見えたものになったのではないでしょうか。例えば、平成五年何月分還付金で何キロメートル施工したというような報告をされ、しかもこの工事は今問題のゼネコンではなくて、各電力会社の管理下のもとで、その地元の、例えば資本金一千万円ぐらいの中小の土建業者、土木業者の人や電気工事屋さんに施工していただくというような方法をとればいいと思うのです。  お聞きしましたところ、地中埋設の工事は一キロメートルつくるに当たり約五億から六億円かかるそうです。今回の円高差益の還元は一軒月約百円ぐらい、全国では約二千三百億円。たったというと怒られますけれども、今百円では缶ジュース一本買えないわけで、それが月々還付されることが本当に円高差益による景気刺激策になるのか。それよりもむしろ小金を集めて大変な大きな金額になったところで将来に向けての地方自治、特にこれから景観美化とか言われていますけれども、そういうことに取り組める、そして現実にすぐ工事に取りかかっていただけるようなことができるんじゃないかな。そして今後、日本の産業構造も変化してまいりまして情報社会が発展していけば当然光ケーブルの埋設なんかも出てくるわけで、大変私は単純な発想なのかもしれませんけれども、今回の差益還元には生かされないにせよ、今後またそういうことがあった場合には本当に現実的に感じていただきまして、月々百円返すことが景気刺激になるのか、それともストックしたものをきちんとそうやって公共なり将来の日本の何かに向けて使っていく、そしてそういうことが発生することによって、実際にお金を借りるだけじゃなくてお金を得ることのできる業者がふえるということが具体的な中小企業一つの救済策じゃないかなと感じているのですが、いかがでしょうか。
  98. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 今回の円高差益で、特に通産省のかかわる円高差益還元策といたしまして、電力、ガスにつきましてどういうふうに対応しようかという議論、これは過去も幾たびかこういうことがあったわけでありますけれども、私は結局この国、つまり日本の市場経済というものをどういうふうに将来持っていくかということの基本にかかわってくる、その認識が変わることによって政策は変わってくるものだろうと思うのであります。御存じのとおり、一ドル百円近い為替レートになっているにもかかわらず購買力平価は一ドル二百円ではないかという議論がございまして、このいわゆる内外価格差というものこそ日本の市場経済一つの大きな問題が浮き彫りにされていくところではないかという議論もございます。  私どもは、今委員指摘の電線の地中化という政策については、これは改めていわゆる融資措置を含めて今やってはいるわけでありますが、為替差益が出た、これをプールいたしまして特定の目的のために投入する、これはこれで確かに一つ景気対策になることは間違いない、今までもそういうことでやった例もございます。ただ、そのことによって、本来であれば非常に安くなるコストが安くならないということによって、消費者だけではなくて、電力を使うのはたくさんの中小企業も含めた事業がございまして、それはつまり、その分だけ割高の電力、ガスを使わなければならないということになるわけであります。委員の地元にもたくさんあります繊維業界、いかにこの電力料金のコストを、つまり、例えば今百円とおっしゃられたのですが、この百円をコストダウンするために、車の業界の歯車、ねじの一個一厘のコストダウンをするためにすさまじい努力をしているわけですね。例えば食堂のレイアウト、さらに運び方まで工夫をして一厘のコストダウンを図るためにやっているということを考えますと、やはり市場のメカニズムを大事にすべきではないだろうか、私どもはそういう考え方に立ってこのたびこの電力、ガスの円高差益還元に踏み切ったわけでございます。  確かに、平均的に言えば、一つの家庭に百円で大したことないというお話ですけれども、自動車、電機あるいは繊維製品、またセメントその他もろもろの小さい業界を含めた、今非常に塗炭の苦しみを味わっている業界の方々からは我々は高い評価をいただいておるというふうに考えております。私どもの細川内閣は、でき得ればこの市場のメカニズムを素直に生かしていく経済をつくり上げていきたいと考えているところでございます。
  99. 野田聖子

    ○野田(聖)委員 大臣、ありがとうございました。  確かに一般家庭と工場なんかでは電力に対する考え方がいささか違うかと思います。ただ、各家庭に、中部電力あたりですと一軒月約百六円から八円ですかを返すに当たって、コンピューターのプログラミングを大幅に変え、なおかつその還元を記すために用紙を新たにつくりかえるというか、わかってもらうための意思表示をしなければいけないという、私から聞くと何となく合理的じゃないなという部分も感じておりましたので、また引き続き御検討をお願いしたいと思います。  さて、時間もなくなりました。細川内閣では、生活者・消費者の視点に立った従来制度政策の抜本的見直しを打ち出されておられます。このとき、国民の多くが生活者・消費者であると同時に生産者であるという現実には余り触れられておられません。この点に関連して最後に通産大臣にお願いがございます。  私は、今日ある高度な日本経済の発展において生産者としての中小企業が果たしてきた役割は多大であると認識しています。また、通産大臣、所信表明の中にも「我が国経済の活力の源泉たる中小企業」という定義をしてくださっているわけで心強い限りなんですけれども、しかしながら、生産者としての大企業が脚光を浴びる反面、この日本経済の下部構造を支える縁の下の力持ちの実績が正当に評価されることは余り多くありません。長い不況の続く中、これら中小零細企業では、社長みずからが金策に走り、その奥さんがアルバイトを余儀なくされている昨今なのです。つまり、大国日本の陰の功労者中小企業に対し、今中小企業は何をするべきかだけではなく、政府として何ができるか、何をし得るかを考えていただき、具体的な施策の形で打ち出していただくことをぜひお願い申し上げまして、野田聖子の代議士としての初めての質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  100. 中井洽

    中井委員長 次に、山田宏君。
  101. 山田宏

    山田(宏)委員 日本新党の山田宏でございます。  熊谷大臣そして久保田長官、御就任本当におめでとうございます。とりわけ熊谷大臣には、実は私が二十代半ばのときに大臣の事務所に一時おり、私淑をしておりました関係で、こういった場所で初めてお目にかかり御質問ができることを大変うれしく存じております。とりわけ、今回は三十八年ぶりの政権交代で、世界じゅうが大きく変動している中、日本もAかBか、是か非かと選ばなければいけない政策課題が山のように次から次へと押し寄せてくる、こういう中で、今までのように内輪の論理と外の論理を使い分けながらやっていくということが日本の国でもなかなか不可能になってくる、こういった時代の中で御両名は大臣に就任されたわけでございます。そういった点で、我々としてもなるべく政府委員の答弁なしでやっていこうということなので、基本的に、問題を大臣に絞ってお聞きをしていきたいのでございます。  まず、日本という国は貿易国家ですから、あらゆる国から自由に物が入ってきて、それを加工して送り出していくというところでこの国の存立があることはみんな認識をしているわけです。消費者に対しても、また海外に対しても同じようなやはり使い分けのない説明がないといけない、こういう点で、内外価格差の問題や、また規制緩和という問題や、またウルグアイ・ラウンドの問題、こういった問題に数点御質問を絞ってさせていただきたいと思います。  まず、大変具体的なことで申しわけないのですが、これは大臣でなくて結構なのですけれども緊急経済対策の中で、円高差益の還元で通産省関連で、九月中を目途に文書で円高メリットが速やかに国民生活に還元されるように関係業界に対して要請を行っているはずであります。ガソリン、LPG、輸入自動車、輸入家具、輸入家電装品、輸入衣料品、輸入陶磁器、輸入スポーツ用品、輸入雑貨、輸入化粧品、輸入書籍・雑誌、ずっと挙げていくと大変なのですけれども、これら要請を行ったという原点には、六月に通産省が調べました輸入消費財価格動向等調査結果が九月十六日に発表されているわけですね。その中で、円高がここまでなっても小売価格が低下をしていないもの、テニスラケット、腕時計、写真用フィルム、一部について小売価格が低下しているものというので、乗用車や化粧品が挙げられているわけです。この結果をもとに要請を行ったわけでございますけれども、こういう今までの結果を踏まえて、今後、円高差益を還元させるためにさらに努力が必要だと思うのですけれども通産省としての今後の対応をお聞きしたいと思います。
  102. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 今までの事態につきましては、委員指摘のとおりでございます。今後我々としては、文書で配ったわけでありますが、これも我が国の市場経済をどう見るかという根本的スタンスにかかわってくることでありますが、個々の品目について通産省が乗り出していって行政指導をするというのは本来のあり方ではございませんで、我々としては注意を喚起するという立場にとどめているところであります。  大事なことは、消費者が正しい情報をいかに提供されるか、そして正しい消費行動をとるかによって市場メカニズムの中で円高差益の還元が行われることが本来的な自由な市場のあり方だろうと思うのです。電力、ガスのように、政府が価格の介入をしている分野については強制的に行ったわけでありますが、その他の今委員指摘のようなものについては、これは本来市場のメカニズムで決定されるべきことであります。  問題は、正しい情報を提供することによって消費者が正しい認識を持ち、正しい消費行動をとるということが大事になるわけでありまして、そのために、実は大蔵省関税局の方では、税関段階で輸入価格については今後調べてこれを公表する、さらに通産省としても、第二回の調査を行いまして、これもできるだけ早く事態を公表する、さらに、輸入品が安くなっているという実態を目で見てもらうという意味でも、かねて輸入品のフェアを行う、こういった消費者に肌身で触れるような、情報提供だけですと一過性でずっと消えてしまいますから、そういうものも含めて消費者の正しい行動を促すような努力を続けてまいりました。  今後ともこのことにつきましては、特にこういう問題がたまたま円高で起こったということでありますが、私は根本的には、先ほど来申し上げているように、日本経済の最大の問題は内外価格差というところにあらわれている、この問題をどのように解決していくかということが日本経済の将来を決めるとすら思っておりまして、突き詰めてまいりますと、そういうプロセスの中でより競争が制限されている分野、それがさまざまな形で、法律に触れるような形で制限されているものもありますし、法律が介入した結果、制限されて値段がつり上げられているものもありますし、もともとどうも生産性が上がらない、そういう生産性に非常に格差があって、しかも非貿易財である、サービス部門なんかそういうものが多いのですが、そういうものについてもっと工夫をすれば下がるというようなものもございます。いろいろありますけれども、いずれにいたしましても、我々にとって最大の課題だという認識を持ちまして、委員の御指摘のような方向で頑張っていきたいと思っておるところであります。
  103. 山田宏

    山田(宏)委員 ありがとうございます。  日本は世界の自由貿易の中で最もメリットを受けている、またこれまでも受けてきた、こういうふうに思っておりますけれども、大臣の御認識はいかがですか。
  104. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 まさにそのとおりでありまして、日本は、わかりやすく言えば、俗っぽく言えば、資源がない国でございまして、外国から資源を買ってきて加工して、そして海外に販路を求める、その差額で食べていくという国柄でございまして、こういう国柄であるがゆえに、自由貿易というものにある意味ではその生存がかかっているというふうに思っているところでありまして、基本的な認識は、まさに委員の御指摘のとおりだと思います。
  105. 山田宏

    山田(宏)委員 そこで、現在ECの統合の推進とか北米自由貿易協定の調印、ASEANの自由貿易地域の発効など、世界の各地でさまざまな地域経済統合の動きがありますけれども、こういった動きは、今のガット体制の最も恩恵を受けている我が国にとっては、こういう地域統合、自由貿易圏といっても地域統合の動きというのは好ましいものですか、それとも好ましくないものだとお考えですか。
  106. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 だんだん試験問題が難しくなってくるのですけれども委員がまさに御指摘のとおり、戦後の世界経済というものは、戦前戦火を交えるに至る歴史の流れを踏まえて、その反省のもとにガット・IMF体制というものをしいたわけであります。しかしそれは、現実にはアメリカという、言葉を選ばずに言えば、これは国際政治の言葉をかりて言うわけですが、覇権国の力といいますか、ベースがあってこれが成り立ってきたわけでございます。しかしながら、現実に歴史の推移を見ますと、それがあちこちにほころびが出てまいりまして、そういう中で、これは単に経済の論理だけではございませんけれども、ECが登場をし、さらに今委員指摘のような地域統合のさまざまな考え方が生まれ、そういう方向に具体的に、NAFTAもそうですしASEANもそうでございますが、生まれてまいったことは御指摘のとおりでございます。  問題は、そのような背景がございますので、一概にこのルールに基づいていないからノーと言うわけにはまいらない実態的な判断がございます。しかしながら、我々といたしましては、これがその地域の中だけのためのものであり、排他的なものになっていく、いわゆるブロック化になっていくということになれば、これは世界経済にとって不幸なことになってしまう、いかにこれがブロック化にならないように他の地域にもその均てんが及んでいく、そしてより自由な貿易体制というものが維持されるような方向で組み立てられ、運営されていく、そのように、ウルグアイ・ラウンドも含めて、実はAPECなんかもそうなんですけれども、そういうような方向へ向けて今後努力をしていかなければならない、こういう考え方を持っております。
  107. 山田宏

    山田(宏)委員 そうすると、昔マレーシアのマハティールさんが提案された東アジアの一つの自由貿易圏みたいなそういった発想には、やはり大臣としては余り賛成はしない、こういう態度と受けとめていいですね。
  108. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 EAECという枠組みについての御質問だと思いますけれども、EAECにつきましては、確かにマレーシアのマハティール首相の提言にかかわることでございますけれども、その後いわゆるASEAN諸国がさまざまな形で、これは必ずしも一本ではありません、いろいろな議論がなされております。実は、これは我々がそこへ入っていってかき回す性質のものではございませんので、どのような形の議論が成熟してつくり上げられてくるかというのを見守っておるところであります。  先般、私シンガポールへ参りまして、ASEANの経済閣僚たちと日本の通産大臣とのAEM-MITIという会合になっているのですが、定期会合がございまして行ってまいりました。そこで、少し考え方をまとめつつあるところで、ASEANの事務局長が各国を回りましてこの議論の推移の状況説明に上がりますということでございましたので、まだ私どものところに来ておりませんけれども、そういったものを聞きながら判断をしていきたいと思っておりますけれども、ただ、基本の考え方は、さきの委員の御質問にお答えした考え方を持っておるわけであります。
  109. 山田宏

    山田(宏)委員 日本は、ガット体制から一番メリットを受けている国ですから、これを維持強化していくというのはこの国の国益だと思うのですね。そういった意味では、中長期的な観点でもこういった体制を維持するために、基本的には、どんな財もどんなサービスも、国境を越えた移動についてはその数量を制限するとか例外を設けるというのは、原則的には日本の立場と違うのではないか、こういうふうに思うのですけれども、ウルグアイ・ラウンドが、もうすぐ協定が十二月十五日の期限切れまで随分迫ってきておりますけれども、日本の原則的立場というのは使い分けちゃいけないと思うのですね。それだけははっきりとアピールして、この場合はいいけれどもこの場合はやめておこうとか、ほかの国が言っているからうちの国も言うんだとか、交渉ですから少しずつやらなければいけないのは事実でしょうけれども、原則の立場だけははっきりさせておかなければいけない。どんな財やサービスについても、基本的に、将来的には例外を設けないんだというようなものがないと、やはり我が国のガット体制維持という立場は弱くなるんじゃないかと思いますけれども、この点についてはいかがですか。
  110. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 御存じのとおり、ウルグアイ・ラウンド交渉は、各国がさまざまな問題提起を行い、さまざまなブロックに分けまして議論が行われている交渉の途中、プロセスでございます。基本的な考え方、自分のこの分野は嫌だ、おれのところのこの分野だけは嫌だからほかのことだけ交渉事にしようと言ったら、交渉は前提が崩れてしまいまして、交渉事にならなくなってしまう。それぞれの国が、一つ一つがおれはこれだけは嫌だというようなことを現在の段階では言っている部分もございます。ございますけれども、ほかの国はまさにそれが前提だということになれば、じゃ、おれもこれやめる、そうすると、一気に話がつくのはほんの一握りの、ほんのわずかの、つまり交渉としてウルグアイ・ラウンドという新しい時代の貿易のルールを定めるという前提が崩れてしまう可能性もあるわけでありますから、我々はそういう観点で、ウルグアイ・ラウンドは今委員がおっしゃられたような考え方で、特定の国が特定の分野は交渉事にしないというようなことは、これは済まされない交渉であると考えておるところであります。
  111. 山田宏

    山田(宏)委員 そうすると、もし十二月十五日に、だれの責任というのはともかくとしても、まさかそんなことはないでしょうけれども、ウルグアイ・ラウンドがうまくいかなかったというふうになった場合、日本はどんな影響を受けますか。
  112. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 これは日本だけではなくて、実は私も、まさにさきのASEAN諸国のメンバーにお目にかかったときもそうですし、さきに韓国へ参りましたときも、まさに韓国の担当者、商工長官あるいは金泳三大統領との会談でも同じ意見でございました。また、私自身がこれまで、就任以来、イギリス、フランスを初めとするECの諸国、ヨーロッパ諸国あるいはオーストラリア等の諸国の貿易あるいは産業その他の閣僚たちの考え方というのは、ウルグアイ・ラウンドがもし失敗に終われば世界は大変なことになってしまう、ディザスターだという認識を持っており、しかも現在のウルグアイ・ラウンドの交渉がやや停滞ぎみであるということに非常な危機感を持っておるということでございまして、私どももまさにそのとおりだと考えます。
  113. 山田宏

    山田(宏)委員 もしこれが失敗に終わった場合は、日本が一番このガット体制からメリットを受けているわけですから、日本の株価はどっと下がるでしょうし、もう景気回復どころではなくなってしまうというおそれを私自身感じております。  ちょっと最後の質問になりますけれども、規制緩和なんですけれども、規制というのがなぜ生まれてきたかというところもあるのですが、規制緩和がこの内閣の重要な仕事ですけれども、規制というものは定期的に見直していかなければいかぬ、とにかくこの内閣の目玉だからやるんだということよりは、規制というものは常に時代の要請に応じて定期的に見直しが必要だ、こう考えるわけです。経済的な規制であれば、それを規定するときに、例えば時限的なものにするとかいろいろ期間考え方があるでしょうけれども、それからまた、健康面とか安全面などの社会的規制についても、技術が進歩しているわけですから、そうしたら、一定の年限に来たら延長するかまたはそれでやめるか、または変えるか、そういう検討も自動的に行われるようにしておく必要があると思うのですけれども、この内閣だけの仕事に終わらせないために、何とかその規制というものを定期的に見直す仕組みが考えられないかどうか、最後に規制についての取り組みをお聞きをしたいと思います。
  114. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 まさに委員が政治を志そうと足を踏み入れたころの国会におきましても、実は同じような議論を我々やっておったわけでございます。サンセットシステム、自動的に時が来たら規制をなくしてしまう、ゼロベースにするんだ、まずとにかくゼロにして考え直そうとか、いろんなアイデアが、これは世界各国が実は悩み苦しんでいろいろ解決策を探ってきたということが、その当時いろいろ調査してわかってきた。行政改革論議が極めて活発だったころに議論されたのですが、その後下火になり、いつか忘れられてしまったということ、その中で、日本の構造問題がもはや待ったなしの今状況になったということでございまして、私どもは、まさに規制緩和の問題につきましては、さきの九月十六日の緊急政策は、いわば今後の中長期政策展望の第一歩を踏み出したものにすぎない、問題は、これから始まるんだということだろうということは、まさに私は、考えますと、委員の御指摘のように、今後この規制緩和のシナリオといいますか、方向をどう持っていくかということを真剣に考えなければならないことだと思います。政府といたしましては、委員御案内のとおり、細川内閣が平岩研究会を設置いたしまして、そして衆知を集めて規制緩和を含めた経済改革の哲学、プログラムを今構築しつつあるところであります。  私は、ただ、十数年この政治の世界におりまして、余り長期に先々こういうふうになるというふうにするよりは、今この時点できちっとした哲学を構築して、できる規制緩和をやって、できると言うとまた消極的に聞こえるかもしれませんが、根本的な、根底的な規制緩和をやり遂げていくということが大事だろうと思います。一般的に、サンセット法みたいな形をつくったとしても、これはなかなか一般論でありまして、形骸化することが多いのではないかなという感じがいたします。  委員指摘のとおり、規制にはそれなりの理由がございます。もう法律を見るとすべて、消費者保護であり、投資家保護であり、預金者保護という美名がございます。しかし実際は、それがすべて担当者の利益を守るためのものであり、業者のカルテルを守るためのものになっているところに実は問題があるわけでありまして、ぜひ、委員に我々が期待をいたしますのは、そういうかぶっている仮面をはがして実態に触れ、根底に触れて、実態をつかみ直して組み立て直しをしていただく、私は、これは国会議員全員の責任ではないかと思っております。  私はかってから、これはもう一貫して消費税、いわゆる一般消費税議論が起こったときから委員とまさに同じような立場で、時の大平総理と大論争をやった。そのときから私は、決算委員会というものをもっと重視すべきだ、決算のあり方を、単に当不当ではなくて、妥当性までこの決算の審査をやれるようにすべきだということを何度がやってまいりました。やっと十数年ぶりにして今細川内閣の手で、こうした問題に我々はようやくみずからの手でこれをやり遂げるところまで来たわけでございます。  ただ、規制の問題は、国家は何をなすべきかということに触れる問題でありますので、一般論を個別具体的にすりかえる、あるいは個別具体的なのを一般論ですりかえるという、なかなか難しゅうございますけれども、私どもとしては、規制緩和につきまして、明確な哲学と具体的なプログラムをつくり上げていくということは、細川内閣最大の、政治改革法案実現後の最大の課題だ、こう考えるところであります。
  115. 山田宏

    山田(宏)委員 どうもありがとうございました。  大臣の御奮闘をお祈りします。ありがとうございました。
  116. 中井洽

    中井委員長 次に、安倍晋三君。
  117. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 私は、今回の不況に対して大臣がどのような認識をお持ちで、かつまた、どのような対策を考えておられるかを中心に質問をさせていただきたいと思います。  今回の不況というのは、今までの不況と違いまして、大変私は深刻なものがあるのではないかと思っております。一体いつになったらその出口があるのかということが現在に至ってもまだ大変不透明であるわけでありますし、今まで政府は二回にわたって大きな不況対策をとってきたわけでございますが、残念ながら、成果もあらわれていないわけであります。そしてまた、この不況が今回持っている大変深刻で暗い側面というのは、私は、いよいよこの不況が雇用に深刻な打撃を与えるのではないかという不安ではないかと思っております。  本年のセカンドクオーターの全従業員の一六%に相当する四百九十万人が過剰雇用ではないかということを何人かのエコノミストが指摘をしているわけでありますが、過剰人員比率が一〇%を超えると雇用調整が本格化するという経験則があるわけでありまして、いよいよ実際の生首が飛ぶ状況に日本は突入するのではないかという深刻な暗い不安があるわけであります。  我が国は先進国の中で飛び抜けた、雇用に対しては、失業に対しては全く優等生であり続けたわけでありますが、いよいよ我が国も飛び抜けた低い失業率を維持することが難しい状況になったのか。しかもこれは、瞬間風速的に大変な不況の中で起こったというよりも、これは構造的に、我が国はいよいよそういう段階に入らざるを得なくなったのかという不安がまさに私どもを覆っているわけであります。このことは、一面では米国の通貨、通商戦略の中で、日本にも必要な分担を求めているという側面も私は否定できないものがあるのではないかと思うわけでありますが、この認識のもとに何点か御質問をさせていただきたいと思います。  米国も、日本国様、バブル崩壊後大変深刻な状況に、不況に直面をしたわけでございますが、その中にあって米国は、各企業が得意な分野への経営支援の集中と、また雇用解雇など、大胆なリストラを行うことによって企業収益を急速に回復をさせているわけであります。ある意味では、マクロにおける失業という犠牲面を顧みずに、ミクロの中で企業の収益を急速に回復をさせるという手段をもって不況から脱出しつつあるというのも、私は有力な一つの見方ではないかと思うわけであります。  もちろん、金融機関の不良債権を無償償却させて健全性を回復させたり、中央銀行も実質金利ゼロの資金を市場に供給をし続けてこうしたリストラをバックアップをしてきたという側面があるわけでありますが、思い切って、失業率が上がることも顧みずに、ミクロにおいて企業の収益性を上げるということに絞って不況克服策を米国はとったのではないかと私は思うわけであります。  米国のこの不況克服策について、大臣がどのような印象を持っておられるかということをまずお伺いをさせていただきたいと思います。
  118. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 私はエコノミストではないものですから正確なデータに基づいたお答えができないかもしれませんが、基本的な考え方といたしまして、アメリカが落ち込んでいる悩みの根本はISバランスの問題だろうと思います。これは、まさに委員が御質問の中で御指摘になったとおりであると思います。だからこそアメリカは、まず財政赤字というものをいかにして解消するかということを最大の政治テーマにしている。しかしこれこそ、委員ももう一番御存じのとおりでございまして、政治にとっては一番難しい仕事でございます。しかし、現クリントン大統領も含めて、この問題に果敢にチャレンジしようとしているということは間違いないわけでありまして、我々はこの努力をやはり正当に評価しなければならないと思います。  第二に、委員が御指摘になりましたように、アメリカは自由な経済という伝統に基づきながらそれぞれの努力によって猛烈なリストラをやってきた、これが確実に、すべてとは言いませんけれどもかなりの分野で、しかも極めて重要な分野で多大の効果を上げつつあるということもこれは事実だろうと思います。そして、それがアメリカの企業かなりの自信回復になってきているという感じも、私ども同じであります。  とりわけ金融についての果敢なチャレンジというのは、私は委員の席におればもっと激しい言葉で言ったと思うのですが、今は通産大臣になってしまったものですからちょっと言いにくいのでありますけれども、日本の金融システムの認識と、それから解決への歩みから見ると、これはもう驚くべきほど差がございまして、私は、この問題にやはり日本がチャレンジしない限り日本の経済の回復というのはなかなか難しいとすら実は思っておりまして、個人的には大蔵大臣に毎朝そのことを申し上げているところであります。  しかし、いずれにいたしましても、評論家なりいろいろ言い立てる人はいますけれども、アメリカが自分たちの問題についての基本的な状況認識を正確に把握しており、その問題の解決に向かって障害を乗り越えながらやっているということは、我々は正当に評価すべきだというのが私の感想でございます。
  119. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 私も、大臣が大臣になられる前に文芸春秋に書かれました論文を読ませていただいて、大変心強く思ったわけでございますが、一生懸命頑張っていただきたいと思います。  また、ただいま大臣がおっしゃったことの中で、やはり雇用の問題というのは私ども政治家にとりまして大変厳しい問題であるわけであります。その中で、我が国は、米国とはいささか異なった形で、今までかなり高い雇用水準を誇ってきたわけでございますから、アメリカのような思い切った、ある意味ではクールな不況対策というのは大変とりにくいのではないかと思うわけでありますが、この雇用解雇なしで景気を回復するというのは大変難しいのではないかと私は思っておりますが、この雇用なき景気回復にどのような対策を持っておられるのか、教えていただきたいと思います。
  120. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 個々の企業、個々の産業におきまして構造的な問題を抱えておりまして、とにかく今は懸命に辛抱してください、我慢をしましょうということで抱えていただくということをやっているわけでありますけれども、これにはおのずから限界があると私は思います。おのずから、これからのあるべき産業構造の姿を考えますと、そんなことばかりはやっていられない。リストラを断行するというのは日本の産業のある意味では宿命であり、また乗り越えなければならない、どうしても乗り越えなければならない壁だ。そうしますと、実はそこに雇用問題というのが発生するというのは委員の御指摘のとおりでございます。  我々といたしましては、第一にやはり適切な内需拡大策がとられなければならないと思います。かつて日本経済が高度成長の時期には、同じ産業間で衰退する産業もたくさん出ました。しかし、それは全部うまく調整ができて、いわゆる日本経済の転換能力というものが言われたのは、高度成長があったからスムーズに問題が、それぞれの人々、それぞれの企業にとっては苦しみがあったのですが、全体としては良好なパフォーマンスが維持できたのはやはり一定の成長があったからでございます。したがいまして、我々は、まずあらゆる政策を駆使いたしまして、一定の経済成長が維持できる体制をつくらなければならない、これが第一だと思います。  第二に、しかしながら構造を変えていかなければならないわけでありまして、産業構造のあり方、その中で、新しいビジネス、新しい未来志向型の産業の構築、新しい職場の創出ということもこれから必要になってくるわけでありまして、それこそまさに産業政策を所掌する通産省の職務であると私ども考えておるところであります。  あわせて、さらにもう少しミクロに、規制緩和を初めとする、あるいは内外価格差の是正を初めとするミクロの政策も駆使いたしまして、委員指摘の今の、私は結局のところ日本経済のぶつかる問題の一番痛みの激しい部分は雇用問題だろうというふうに思う、これはもう全く委員と同じ意見でございまして、そのことを乗り越えるためにも、今のようなマクロ、ミクロ、そしてセミミクロのバランスのとれた政策を構築していくことが必要だと考えております。
  121. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 ただいま大臣もお触れになられましたが、また先ほど山田委員からも御指摘がございましたが、規制緩和というのは、今後我が国が構造を改善していく意味でも、また不況対策の意味でも、また通商摩擦解消の意味でも、大変私は大きな意味があるのではないかと思うわけでございます。しかし、この規制緩和というのは、もちろん経済をある程度活発に動かして自由な活動を促すということでは大変いい側面、評価できる側面もたくさんあるわけでありますが、他方、規制によってある意味では守られてきた産業というのも当然あるのではないかと私は思うわけでありまして、いわゆる社会政策的に規制の中で、社会政策という意味で規制を行っていて、その中で生きているという産業、また従事している人たちもたくさんいるのではないかと私は思うわけであります。つまり、この規制緩和を果敢に行っていくことによってある程度の失業というのが当然考えられるのではないかと私は思うわけであります。もちろん、規制緩和によって新しい雇用が創出されるという側面はあるわけでありますが、しかし、その間には当然タイムラグがあって、創出されるまでの間にはやはり失業者が出るということではないかと私は思うわけであります。  ですから、当然この規制緩和はいいことばかりではないということをある意味では勇気を持って国民に、先ほど大臣がありのままをさらけ出すということをおっしゃったわけでありますが、そういう面でもこういうことがあるんだということもやはり知っていただかないと、そう簡単には協力できない、総論では賛成だけれども、自分のところに火の粉が降りかかるのであれば反対ということになって、結局何もできないではないかということに落ちついていく危険性もあるわけであります。ですから、そういう意味で、こういう側面があるんだということを政府は責任を持って、勇気を持って国民の前に提示をしていく責任があるのではないかと私は思うわけでありますが、その意味において、九月十六日の緊急経済対策の中に規制緩和も盛られていたわけでありますが、この規制緩和は雇用問題とどのような関係があるのか、果たして失業者をある程度生み出す可能性があるかということについてお伺いをしたいと思います。
  122. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 さきの緊急経済対策について定量的に測定したものはございませんが、一般論で言えば、委員が御指摘のような側面、つまり摩擦失業の発生というものも私は否定できない事実だろうと思います。その摩擦を、よりこの痛みを少なくするためにも、実は財政金融政策による政策、内需拡大策というものが大事だということを私は申し上げ続けておるわけでありますけれども、さきの緊急対策はこれは第一歩でございます。ファーストステップでありまして、今後、時の進行とともに、予算編成もございますし、そういう中で、私どもとしてはさらに踏み込んだ方向を考えていかなければならないと考えているところであります。
  123. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 また、雇用の問題と同時に、今大変な円高という状況があるわけでありまして、その中でいよいよ賃下げをしないと競争力が十分に維持できないという議論もあるわけであります。また、この賃下げというのは、国内においてもコストダウンにつながるわけでありまして、細川内閣が標榜される生活者優先の政治ということにおいては、ある意味では生活者優先ということにもつながるわけでありますが、しかしながら、この賃下げによって競争力を維持して輸出をし続けた場合に、また同じように円が上がってしまうということも十分に考えられるわけでありまして、むしろ悪い方向に歯車が進んでいってしまうという危惧を持っているわけであります。私は個人的には、この賃下げというのはむしろ逆の方向に行くという意味で決していい政策ではない、企業がとるべき政策として、緊急避難的にもとるべき政策ではないという考えを持っておりますが、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  124. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 賃金の水準がいかにあるべきかということについてはさまざまな議論があろうと思います。一般論ではなかなか言いにくいところだろうと思いますが、賃下げというようなことが現実に行われる環境ではないような感じが私はいたしております。  ただ、申し上げたいのは、今の苦境の中で、委員も今御質問の中で指摘しておられたことでありますが、円の為替レートの状況というのを見ますと、私は必ずしもファンダメンタルズを反映した水準ではないというふうに思うわけです。ただ、その背景に経常黒字の存在、それも世界で突出した水準である、この事実が重くのしかかっているわけでございます。しかし、最近の貿易収支の状況を見ますと、ややこれに峠が出てきたのかなという気配も感じられます。今後我々が適切な中長期を展望した構造改革策を内外に鮮明にしていくことによって、私は、おのずからあるべきファンダメンタルズを反映した水準になっていく、このことは今の円高が是正されていくものと確信をいたしております。  でありますから、賃下げ問題というのは、今後労使の間で自由な労働市場において決定されることでございまして、かくあり得べきとか、かくあり得べからずというのを政府として申し上げるのはいかがかとは思いますけれども、ただ我々としては、そういう不幸なことにならぬようにありとあらゆる政策を動員して、そして今の日本の抱える個々の問題を解決していきたいと考えているわけであります。
  125. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 現在の不況が大変厳しいものであるという認識は今全く一致をしたわけでありますし、雇用の問題にいよいよ進んでいくということについても認識が私は一致したのではないかと思うわけでありますが、その中にありまして、企業の必要コストに含まれております税金、特に平成四年一月一日から施行されました地価税に関する重税感というものが大変強いものがあるわけでありまして、連日いろいろな業種の方々からこれを何とか廃止をしてもらえないかという強い希望が寄せられているわけであります。  振り返りましてこの地価税が導入をされたとき、当時は自由民主党が政権にいたわけでありまして、当然自民党は大きな責任があるわけでありますが、その当時の背景と経緯についてもう一度確認をさせていただきたいと思います。どのような経緯で導入されたかということと、どういう意義があったかということであります。
  126. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 これは委員もとっくに御存じのことだと思いますが、当時、土地は高騰をいたしまして、まさにバブルそのもので狂乱怒濤の価格になっていた。皇居を売るとカナダが買えるとか、東京を売るとアメリカが二つ買えるとか、だからこそバブルだったわけでありますが、そういう状況の中で、土地基本法の考え方にのっとり、土地保有に対する負担の公平を確保し、土地の資産としての有利性を縮減ないし減殺するということを主な目的として地価税というのは創設されたものと理解をいたしております。
  127. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 当時の状況と、そして現在の状況でございますが、地価等をめぐる状況、また景気状況についてどういう違いがあるのか、どういう認識をされているのか、教えていただきたいと思います。
  128. 内藤正久

    ○内藤政府委員 平成三年当時でございますけれども、昭和五十八年を一〇〇といたしました場合の公示商業地の価格が三四〇、それから公示住宅地の価格が二三〇でございました。それが現在におきましては、委員指摘のとおり低落傾向がございまして、公示商業地で二六〇、公示住宅地で一九〇程度の水準でございます。したがって、下落傾向がございますけれども、世帯収入等に比べまして地価はなお高いというのが現状でございますので、土地基本法で定められました考え方、先ほど大臣が御説明申し上げました資産、所得、消費の公平な税負担という観点では、地価税は現状においてはなお必要であるというふうに考えております。
  129. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 しかし、実際に今の不況の中におきましては、例えばデパートとか製造業は大変な、まさに、先ほど申し上げましたように、いよいよ首を切らなければいけない状況にあるわけであります。  かつて、この地価税について政府当局の何人かの方にお伺いしたところ、実際は大変負担は低いんだ、これぐらいであれば構わないのではないかというお話がございました。例えば鉄鋼高炉五社で大体八十億、一社平均十二億ぐらいであればそんなに大きな負担ではないということでございましたが、しかし、固定資産税を払った上でさらに払うわけでありまして、もう全く何にも出ないというところから例えば十二億払うのであれば、それだけの人員削減または賃金も引き下げなければいけない、出せないという状況の中で、これはまさに大変な重税と言わざるを得ないのではないかと私は思うわけです。この地価税が導入をされたときにはまさにバブル全盛時代でございましたから、そういう企業、反対したけれども何とかやっていけるという状況であったわけでありますが、現在はとても負担ができないという状況に追い込まれているのではないかと私は思うわけであります。  個別の産業についていろいろと申し上げるのは、本当は全体の政策を審議する上でいかがなものかという議論もあるかとは思いますが、あえてそういう議論をさせていただきますと、例えばデパートについては今最も大きく厳しくこの不況によって打撃を与えられているわけであります。先ほど、この地価税を導入するときに、例えば土地の有効利用を促すとか土地を資産として持っている利点を縮小するという目的を挙げられたわけでありますが、例えばデパートは、日本橋とかああいう地域になければ当然デパートとしての機能を果たし得ないわけでありまして、あれ以上の有効利用というのはもちろん考えられないわけであります。そしてまた、そこにあるがために大きな税金をかける。たとえもうかってなくても税金をかける。全く売買の行われていない、それによって地価の評価の低いところについては、例えば大きな利益を上げていても大変低い税金しかかからないということになっているわけでありますが、このことについてはどのような考えを持っておられるか。
  130. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 いわゆる土地高騰期に地価抑制のためにさまざまな政策がとられました。これは税制だけではなくて金融政策も含めて、あるいは規制策についても含めてとられたわけでありますが、それらについて一つの見直し期に来ているということは、私はかねがねそう主張いたしておるわけであります。特に、土地市場と金融市場の痛みの激しさを考えますと、やはり冷静に見直すべき時期があるのじゃないかなと思うのですが、事地価税に関しては、まさに自由民主党、私も自由民主党にいたわけでありますが、平成年度政府税制調査会答申におきまして、先ほど内藤局長がお答えしたような判断に立っておるところでございます。  ただ、今御指摘のように、一部の業種における負担が極めて過大であるということ、私も就任以来、絶えず御指摘をいただいているところでございますし、ただいま委員からも御指摘をいただいたわけでありますが、通産省としても、公益性、公共性を有する土地等に係る非課税措置の対象範囲の拡充をする、いろいろ細かに挙げてみますとたくさんございますけれども、そういった工夫を凝らしまして、負担適正化のための措置を講ずるよう大蔵省に対し要求を行っているところでございます。  いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、土地政策についてやたらとすぐに、朝令暮改が望ましいとは思いませんけれども、ただ、あの時期にあのような雰囲気のもとで行われたものについて、もう少し冷静に見直したらどうかねという委員の御指摘はまことに傾聴に値する議論だと私は思います。
  131. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 いわゆる地価税が導入されたときには、恐らく地価に対しての認識も、少しというか大分熱が出てしまっている、この熱を下げるためにはどうしたらいいのかという議論がまさに沸騰したのではないかと私は思うわけであります。その中でいろいろな施策がとられたわけでありますが、地価税も当然その中の一つの施策であったわけであります。しかし、これはある意味では創業の一つではなかったか。しかし、この熱を下げるためには、いろいろな議論があっても、とりあえずこの熱を下げるのにこの創業を飲もうということは、国民のコンセンサスもあったのではないかと思います。私の個人的見解では、それであってもなお私は飲むべきではなかったと思っているわけでありますが、例えば、製造業について言えば、具体的な例で言えは、日本鋼管があの京浜地区に持っている大きな工場、この工場を高い地価税を払わないためにどこかに移すということは現実問題として不可能なわけでありますから、こんな東京のそばでこんなことをやってけしからぬと言うに等しい税金ではないかと私は思うわけであります。  ですから、そういう意味では、先ほど内藤政府委員から御説明があったわけでありますが、国民一般の認識としては、もう既に高熱。平熱に下がったという認識を持っても私は構わないのではないかと思うわけであります。ですから、熱が平熱になったにもかかわらずこの劇薬を飲み続ければ、当然体は参って死んでしまうということになるわけでありますから、ここはこの薬をあえて飲むという決断をしたのと同じような理由で、私は今ここで思い切って、体力の回復をするために、この地価税については撤廃をするべきではないかという考えを述べさせていただきまして、私の質問を閉じさせていただきます。ありがとうございました。
  132. 中井洽

    中井委員長 次に、小川元君。
  133. 小川元

    ○小川委員 最初に、もう既に大勢の同僚議員が質問をしておりまして、私の質問も重複をするところが多々ある、審議を通じながら伺っていくということになりますので、その点、両大臣の御了解を得たいと思います。  さて、今大変な不況である。さらに、今後どのような方向に行くかということについて既に多くの御議論があるわけでございますけれども、私も冒頭にそのことに少し触れさせていただきたいと思います。  今内需不振ということで非常に大変な不況にある。これは考えてみますと、約二十年前の過剰流動性、そしてそれに伴うオイルショック後の不況ということにある意味では非常によく似ているわけであります。また一方、この円高も、第二次オイルショック後の円高、すなわち国内の不況によりまして輸出が非常に多くなる、輸入が減って大変な円高になったわけでありますけれども、現象的にはそういうものに似ているというふうに私は思うわけであります。別に私はエコノミストでもございませんので正確に分析をしているわけではありませんけれども、そういうことに現象としてはなろうかなと思うわけであります。ただ、一つ違うのは、当時は一次、二次のオイルショックという大変大きな外的要因があった。そして、それに伴って日本にそういう現象が付随して起きてきたわけでありますけれども、今回の場合には、国内的に特に外的な大きな要因がない中でこういう現象が起こるということは、再三お話が出ておりますように、日本の構造転換が必要な時期であろう、こういう結論になるかと思います。  そこで、私は非常に危機感を持っておりますのは、仮にここで円安になるということでまたさらに日本の輸出産業の競争力が回復してきた、こういうふうにしますと、それはいつか来た道で、また次に円高になってしまうのではないか。結局、今まで三百六十円からだんだん百円近くまで来た道を歩んで、ついには百円を割るというようなことになってしまっては、これは輸出産業そのものが存在できないというような事態になりかねないわけでありますから、そういう形をとらないでの経済のリストラクチャリングというものがどうしても必要であろう、そう考えているところでございます。こういう時代には、私は基本的に、やはり政治家が決断をして、政治家がこれから二十一世紀のあるべき姿というものを描いてその方向へ持っていく。言葉は悪いかもしれませんけれども、お役所任せということではなくて、政治家が決断をしていく時代ではないかな、そういうふうな観点からこれから幾つかの質問をさせていただきたいと思うわけであります。  さて、マクロの経済の問題につきましては、時間があれば少しいろいろとお伺いをしたいとは思うわけでありますけれども、そういう将来的な経済の問題の前に、今の、目下の大不況を克服しないことには、それは将来の話もないわけでありますから、まず現在の不況について御意見を伺わせていただきます。  最近、私ども自民党でも、いろいろ業界、団体の方々に税の問題等々でヒアリングをさせていただいているわけですけれどもお話はすべて不況を何とかしてほしい、こういうお話になってしまうわけであります。私のことで恐縮ですけれども、私は長野県の第三区、諏訪地方に住んでおりまして、あの地域は精密工業のメッカでございまして、円高に非常に今苦しんでいるわけでございますね。私は、実はつい最近の選挙まで議席がございませんで、地元に住んでその方々と行動をともにしてきたわけですけれどもバブルがはしけた最初のころは、地元の方々はほとんど株にも土地にも無縁で事業をやっておられる方が多かったわけですから、いわば東京で起こった他人事みたいな感じで見ていた方が多かったわけです。その後の内需の不振という問題も相当大きな影響はありましたけれども、やはりここへ来て円高になってしまったということが、輸出依存体質でございますので、非常に大きな影響を与えているということから、当然のことながらこういう不況下には常に中小企業というものが一番大きな影響を受けるわけであります。そういう観点から、少し中小企業問題についてまず最初に御質問をさせていただきます。  中小企業、今資金繰りが一番大変で、これから年末にかけて特に一番繁忙の時期になるわけですから資金が大変なんですが、現時点で、最近九月に緊急経済対策を発表されて、その中で中小企業対策も盛り込んでいただいたわけでありますけれども、まずどうも余り下部に浸透していない、あるいは実効が上がっていないというふうに私には受け取れるわけでございます。このまま追加の中小企業対策というものを行わないでいると、これは本当に大変なことになりはせぬかな、こう思うわけでありますけれども、現時点で追加景気対策中小企業対策というものをお考えかどうか、通産大臣にお伺いしたいと思います。
  134. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 委員指摘のように、幾たびか経済対策というのは、昨年十月、ことし四月と発表されまして、この九月に細川内閣における緊急経済対策が発表されたわけでございます。これは合わせますとほぼ四兆円の資金が投入されることになっております。この対策によりまして、少なくとも資金繰りに関しては政府関係金融機関の役割というのは非常に高まってきておりまして、現に日銀の資料によりますと、新規貸し出しの五割以上を政府関係金融機関が占めるというところまで来ているわけでございます。先ほど来尾身委員から何度が御指摘をいただきましたけれども民間金融機関のこれはやや消極姿勢が見えるな、しかしこれは、個々の銀行の態度というよりは、私はむしろもっと幅広い問題があるのかなという感じもいたしております。  いろいろな説がございまして、私は専門家じゃございませんのでよくわかりませんが、ただ、現に都市銀行の償却前利益は空前のもうけぐあいでございますし、どうも言われるように不良債権の償却に金が回ってしまって、そして本来、景気がまさに改善の方向に向かいますと中堅中小企業にまずお金が回り始めまして、まあ機動部隊が動き出すというのが従来のパターンだったのですが、これが全然逆で、そちらがぎゅうぎゅう締められているという実態がございます。例えばどうも短資市場が高目誘導されて、四十兆円もの金がそこにたまっておるんじゃないかという説もある、それに対する明快な大蔵、日銀の回答も我々は聞いたことがない、こういうことでございまして、私は絶えずいささか不満を言い続けておるわけでありますが、まあ理屈は立てようでございまして、百ぐらいの理屈を言って、それは合理的なんだ、こう言われてしまいますとこれはなかなか難しいわけでございます。  いずれにいたしましても、要は、日本の中小企業はまさしく日本経済にとっては宝でございまして、九九%の事業数を占めているわけでございますし、この体力が弱り、活力が弱まったときには日本経済の将来はない。私も信州に隣接した遠州の地でございまして、諏訪の部品を組み込んで機械を売るというメカトロニクスの東海地方でございますので、委員の御苦労というのはよく肌で感じておるわけでございます。  我々としては、当面この新規経済対策、緊急対策をまず全力を挙げて実現をする、あわせて、実はもっと深掘りした政策も必要じゃないかということで、今回いわゆるリストラ法案というものを出しまして、そして合併や協業化やあるいは新分野への進出や、また場合によっては新天地を海外に求めるということについても挙げて中小企業のためにお手伝いしようという法案を提出し、御審議を願っているところでございます。
  135. 小川元

    ○小川委員 今リストラ法案のお話が出まして、これは目下の経済対策ということではなくて、確かに輸出産業、今後生き残るにしても、付加価値を上げ、そして他人にできないものというものをやっていかなくてはいけない。ということになると、量を追うのではなくて質を追うことになりますから、逆に言えば今の数の、そういう産業の会社の数というのは必要でなくなるということでもあろうかと思いますので、大いにリストラの方はやっていただきたいと思うわけでありますけれども、しかし、その前にまずつぶれちゃうというような状況に実際問題としてはあるわけでございます。  そうした面で、今追加的な措置について特に具体的にお考えないというような御趣旨の御答弁だったと思うわけでありますけれども、この前の円高不況のときでしたか、一時期、特定不況業種とか特定不況地域に対する特定のいわゆる支援というものを自民党内閣時代にやったわけでございますけれども、そういうものをお考えにはおなりにならないでしょうか。
  136. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 何度も申し上げますように各般の、昨年十月、この四月、そしてその上に積み重ねて今回の中小企業対策一兆円を超えたわけでございまして、それには運転資金を含めて条件緩和、返済の繰り延べを含めた条件の深掘りを相当やっておるということでございまして、今現実にこの資金政府金融機関の中でショートしているわけではございませんし、我々としては最大限の施策を今講じつつあるということでありまして、格別今さらに上積みする、現に上積みしつつあるということでございますので、御理解をいただけるのではないかなと思います。
  137. 小川元

    ○小川委員 お話の趣旨もわかるのですが、これからちょっと細かい質問をさせていただきながら、緊急経済対策というものが必ずしも下部まで浸透してないその実情についてお伺いをしたいと思うわけでありますけれども、これを浸透させることももちろんでございますし、実はさらに悪化して手おくれになってからまた新しい対策が出ても、またそれも手おくれになるということになりかねないわけでございますので、私は、今具体的に不況業種とか不況地域の問題についてお考えをいただきたい、御検討をしておいていただきたいということを重ねて御要望申し上げたいと思うわけでございます。  それでは、その点につきましてはちょっとさておきまして、いろいろな中小企業対策、緊急対策で今回のみならず行っていただいているわけですけれども、基本的に、先ほどからお話にありますように民間銀行が貸し渋りである。今回の公定歩合引き下げなんというのは銀行のためにやったのではないかなんて話も地元ではぶつぶつ言いながら出ておるくらいでございます。銀行民間商売でございますから、それは貸す貸さないということは御自分の判断によるものでしょうけれども公定歩合引き下げというのは政府の施策でありますから、銀行が別に努力していることではないですから、それはそれに準じてスムーズに金利も下げ、そして貸し出しもしてもらわなければ銀行の責任が果たせない、私はこう思うわけでありますけれども、甚だけしからぬ話だと思っているわけであります。  しかし、それはそれとして、現実に民間は貸さない、そうなればやはり政府系金融機関というものがこれを肩がわりして、非常に苦境にある中小企業への対策というものをやっていってもらわなくてはいけないわけであります。その政府系金融機関は確かに貸し出しがふえているというお話が今ございましたけれども、現実に細かい面におきますと非常に問題がある。まず第一に、どちらかといえば、中小企業で今お金が借りられる人はむしろ幸いでありまして、借りたくてももう返さなくてはいかぬわけですから、借りられないという人たちが多いわけでありまして、現に地元でのいろいろな要望を聞きましても、一番多いのは、金利の高いときに借り資金借りかえをしてもらえないか、この要望が圧倒的に多いわけであります。  実際には自民党時代の対策で、その点については返済資金融制度というものがあって、それでもって実質的に借りかえができることになっているというお役所の説明があったわけですけれども、私の地元で借りかえしてくださいと言うと、書類も見ないで、いや、それはだめですということで門前払いになってしまうということを非常に多く聞くわけであります。その点について、現実に借りかえというものがスムーズに行われていないというのは、私の地元だけではなくて、今回の業界とのヒアリングでもその話を多く聞くわけでありますけれども、実態はどうなっていて、そして現実にどのように対応されるか、中小企業庁の御意見伺いたいと思います。
  138. 長田英機

    長田政府委員 政府系中小企業金融機関貸し付けに関しまして、既往債務金利の問題だと思いますが、金利が上昇していく局面では、最初に低い金利借りた人は上昇していく過程ではメリットがある、金利が今みたいに下がっていく局面では逆にデメリットがあって、前に借りたのは金利が高い、こういう問題だと思うのです。  それを、仮に金利を安く借りかえるということをいたしますと、この政府系中小企業金融機関の場合には長期固定金利で貸しておりますものですから、それは実質的には骨抜きになってしまうのではないか。あるいは、既に当事者間で契約を結んで、こういう期間でこういう金利借りているという契約をしているわけでございます。また一方、政府系金融機関の原資は高金利資金運用部から借りているわけでございます。それが下がりますと逆ざやになりまして、自分の方の経営上の健全性という問題が出てくるわけなんです。したがいまして、そういう意味の既往債務金利借りかえで金利を下げるということは難しいわけでございます。  それからもう一点、先生が御指摘になりました点でございますが、平成五年の六月四日以降平成六年の六月三日まででございますが、この期間内に弁済期が来る貸付金でございますが、弁済期が来た元本と金利につきまして、それについて返せないような資金繰り状況の方に対して資金融資するというような制度がございます。これを先と言っていらっしゃるのだと思いますけれども、しかし、これは既往債務借りかえをやっているということとはまた別の趣旨だというふうなことでございます。     〔委員長退席、古賀(正)委員長代理着席〕
  139. 小川元

    ○小川委員 率直に申し上げて、どうも今の御答弁は余り納得いかぬのです。それは、確かに借りかえをするということは、固定金利借りていれば、金利が上がっている局面では得して、下がっている局面でというのは勝手だということになるかもしれませんし、また、確かに借りかえをすれは資金がショートをしてくるからそれに伴う補充措置が必要だ、これはわかりますよ。わかりますけれども、何もそういうことをしょっちゅうやれという話ではないわけでありまして、現実に中小企業庁長官として景気の状態、中小企業の状態を見ておられると思うのですが、今それだけせっぱ詰まって、思い切ってそれだけのことをやらなくてはいけない事態にあるのではないか、そういう建前の論議だけではもう済まされないのではないかというふうに思うから質問をしているわけであります。その点についてもう一度御答弁をお願いしたいと思います。
  140. 長田英機

    長田政府委員 政府系金融機関民間金融機関と比べてみた場合、民間金融機関変動金利制融資をする、そこで機動的にやっている。しかし政府系金融機関は、金利固定化し、かつ長期化することによって中小企業者の方が安心して一つ経営計画を立てるというところで補完的機能を持っているわけでございまして、そういう意味におきまして財源も長期的に手当てする、長期固定金利で手当てされるということでございます。貸し出しもそういうことになるわけでございまして、そういう意味で一つのシステム、制度としてそういうことになっておるわけでございますので、この点の運用を変えるということはなかなか難しいわけでございます。  ただ、返済が非常に難しい方などにつきましては、例えば返済猶予を弾力的に認めて対応するとか、そういうようなことはできますけれども、この固定金利長期貸し付けというようなところは一つ制度でございますので、なかなか運用で変えてしまうというようなところが難しいので、ぜひ御理解いただきたいと思います。
  141. 小川元

    ○小川委員 前提として、民間金融機関が貸し渋りである、したがって政府系金融機関にもっと積極的に乗り出してもらいたいという趣旨で質問をしているわけでありまして、それはもちろん、民間金融機関がある以上は、政府系金融機関というのはそれを補完する立場に原則としてあるということは間違いないところでありますけれども制度だからといってその制度は変えられないというわけではないわけでありますから、こういう状況下においてはもっと思い切ってやっていかなくてはいけないのではないかと思うわけであります。  通産大臣、今の点につきまして、私どもの問答をどのようにお考えでしょうか。
  142. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 さきに尾身委員のときにも申し上げたことなのですけれども、現在の仕組みを前提にいたしますとなかなか難しい問題がございます。しかし、今度は中小企業の立場からいたしますと耐えがたい思いをしているというのも、私ども政治家でございますから、委員も日々中小企業の皆様方と接して思いが伝わると同じような意味で、私どももこのことはよく理解できるわけでございます。したがいまして、難しい問題がございますけれども、ひとつ検討課題にさせていただきたいと思っておるところでございます。
  143. 小川元

    ○小川委員 余り長く検討していただきますとパンクしてしまうことになろうかと思いますので、これは、検討といってもいわゆる今までの用語による検討ではなくて、真剣に、かつ至急検討していただきたいということを重ねてお願いをいたしまして、次の質問に移らせていただきます。  この間緊急経済対策を出していただいて、運転資金の支援の特別貸し出しの枠を広げていただいたわけでありますけれども、しかし現実には補正予算が出てきてなくて、したがって実行できていないわけですね。ほかにも補正予算が出ないために実行できていない緊急経済対策というのがあろうかと思うのですけれども、緊急なんですから、九月に出していただいて一カ月たってまだ予算案も出てこないというのは、緊急ではないというふうに言わざるを得ないわけであります。  これはもちろん通産省、通産大臣のお立場としてどうのこうのということではないわけでありますけれども、しかし本当に、経済の大もとであります大臣とされまして、この補正予算を早く出してくれないと年末にも間に合わなくなってしまうということもあろうかと思いますけれども、これについて具体的にどのような立場でおられるか、御質問したいと思います。
  144. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 委員の御指摘のとおり、通産大臣だけではできないことでありますけれども、私どもとしては、一刻も早く補正予算を提出し、御審議をいただこうと思っておりまして、大蔵大臣に対してもそのことを申し上げているところであります。今後ともそういうふうにさせていただきたいと思います。
  145. 小川元

    ○小川委員 ぜひそのようにしていただきますように、重ねてお願い申し上げます。  さて、次に、少し円高の問題について伺わせていただきたいわけでありますけれども円高を何とかしてほしいという要望は、当然のことでありますけれども非常に強いわけでありまして、これは中小企業だけではなくて、鉄鋼のような大手からもそういう話が出てくるというような、非常にせっぱ詰まった状況であります。しかしこれは、円高は日本の国だけでどうのこうのということができる問題でもないわけでありますし、また、基本的な経済の体質を変えていかなければ、最初に私が申し上げましたように、一時円安になっても、また次は百円を割るというようなことで、結局いつか来た道になってしまうというふうなことであろうかと思います。  ただ、ここまで経済が来ると、やはりこの円高問題というのはもっと本腰を入れて、一時的にせよ円安にできるように誘導していくというか、努力をしていく必要があるのではないかと思うわけです。その一環として、円高は何も貿易の黒字そのものではなくて、要するに貿易黒字によっていわば稼いだドルが還流していかないということに非常に大きな原因があると思うのですが、実情はどうなっておるか、おわかりになるでしょうか。
  146. 土志田征一

    ○土志田政府委員 お答えいたします。  長期資本収支の動向でございますけれども、八〇年代後半にはかなり大幅な流出超でございました。その後、九〇年度には流出超幅が大幅に縮小いたしまして、九一年度は流入超に転じたわけでございます。さらに、九二年度からは、全体としてまた流出超に戻っております。ことしに入りましての動きでございますけれども、基本的には流出超が続いております。ただし、その程度というのは、八〇年代後半のような大幅な流出超にはなっておりません。  中身を外国資本と本邦資本に分けてみますと、外国資本の方は年初から流入超になっておりましたけれども、六月以降はまた反対に流出超過に戻っております。一方、本邦資本の方でございますけれども、一時的に流入超になった力もありますけれども、基本的には流出超を続けているということでございまして、動きといたしましては、直接投資や対外証券投資がひところより活発でないということで流出超幅が小さいものとなっている、こういう状況でございます。
  147. 小川元

    ○小川委員 今の話は、資本の流出、流入ですか。
  148. 土志田征一

    ○土志田政府委員 長期資本の流出、流入でございます。
  149. 小川元

    ○小川委員 わかりました。  長期資本の流出、流入そのものはそうだと思うのですが、一方で貿易黒字による膨大な資金流入があるわけですから、それ全体で流出超になっているというわけではないわけですね。
  150. 土志田征一

    ○土志田政府委員 貿易あるいは貿易外を含めました経常収支の黒字というのは、長期あるいは短期の資本で、結果としては事後的にはバランスするような形になっているわけでございますが、最近の動きとしては、長期資本の流出超は、貿易あるいは経常収支の黒字よりは小さくなっているということでございます。
  151. 小川元

    ○小川委員 私は、この問題、要するに現時点での円高というのは、やはりいわゆる経常収支の黒字を埋めるだけの資金還流がないということが原因だろうと思うのですけれども、これは、民間不況ですから、設備投資をやろうといっても、東南アジアに工場を建てたり、せいぜい数十億ドル単位だろうと思うわけです。大きな資本の流れというのはそうは起こらないということはよくわかるわけですけれども、そうなるとなかなか円高の是正というのは難しいということになろうかと思います。  変な話ですけれども、かつて八〇年代に大変な勢いで資本流出が起こって、それによってかなり円安に、百五十円ぐらいまでなった時代があるわけですけれども、そういう資金の外国への還流というものについて何かいい方法はないものなのでしょうか、お伺いしたいと思います。
  152. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 私どもとしては、特に資金需要の強い発展途上国に対しまして、貿易保険等を活用して資金還流が行われるということを期待しておりまして、先般第一号の契約が結ばれたところでございます。今後とも、委員指摘のような方向で、限られた分野でございますけれども、我々としては努力をしていきたいと思っております。
  153. 小川元

    ○小川委員 この件で余り質問を繰り返しても、いい方法はなかなかない、ないからそういうことになっているのだと思うのですけれども、ただ、こういう格好で円高がずっと継続する、あるいは、結局日本の経済が本当に疲弊して、その結果円安になっていくというようなことでは困るわけであります。長期に見ればいろいろな施策はあるのかもしれませんけれども短期的に見て、今、株に公的資金というようなものが入っておるわけですけれども、そういう意味で国にはお金はあるわけですから、思い切って外国へ投資したっていいくらいのことを私は考えているわけですけれども、そういう資金還流について真剣に御検討いただきたいということをお願い申し上げておきます。  次に、物価の問題について少し経企庁長官伺いたいわけであります。  円高でドルベースの賃金は非常に上がっているわけでありまして、日本を一〇〇とすればアメリカは七〇とか七五とか、ドルベースでいけばそういう結果になっているというふうにも聞いているわけであります。当然、それによって日本の国際競争力というのは失われつつある。一方では、国民は一向に生活の豊かさを実感していないという状況が、これは実は今に始まったことではなくて、円高の前からそういうことがずっと言われながら続いているわけであります。  実際問題として、これからこれ以上賃金を上げるということは、ますます競争力を失うことになるわけですから、したがってこれはなかなか難しい。また一方、内需を喚起するといいましても、正直な話、これから先ほどの雇用問題等々が出てくれば、当然中高年層が一番影響を受ける。すると、比較的生活に余裕が出てきていろいろなものを買ってくれるはずの層が、不安になって買わないというようなことも起こってくるわけでありますから、そうした問題について、日本の物価が先進国を通じて高いということを是正していかなければいけないのは、これは緊急の問題だと思うわけです。  ここで、たまたまというか、円高という問題がございました。円高差益の還元をぜひともやっていかなくてはならないと思うわけでございますけれども、現在、経企庁としてどういう姿勢でどのようにお取り組みか、まず長官にお伺いしたいと思います。
  154. 坂本導聰

    坂本(導)政府委員 委員指摘のように、円高にはメリット、デメリットがございますが、そのメリットとして当然円高差益が国民生活に還元されるということは極めて重要でございます。したがいまして、政府といたしましても、本年九月十六日に緊急経済対策を打ちまして、その中で円高差益の還元を図っていくということを決定いたしました。それにのっとりまして、公共料金等は既にその幅、実施時期等を明示しているところでございますし、また委員指摘のような諸消費財、物資につきましても、そういった円高差益が円滑に行われるよう関係各省庁等を通じまして関係業界等に要請しているところでございまして、私どもは、こういった状況を着実に実施されるよう見守り、そして情報を収集し、その結果を国民の皆さんに提供してフィードバックさせていきたいというふうに考えております。
  155. 小川元

    ○小川委員 ちょっと後先になっちゃったんですが、いわゆる日本の物価を下げていって生活を豊かにしていくという基本的な考え方にのっとって経企庁がどのような御方針で今後取り組まれていくかという基本姿勢について、長官の御意見伺いたいと思うのです。
  156. 久保田真苗

    ○久保田国務大臣 円高差益還元、もうしっかりやって日本の輸入にかかわる物価を下げていきたいというのが第一歩でございますけれども、基本的に申しますと、先生おっしゃいますとおり、豊かさを肌で実感できないというこのギャップと、それから輸出品を軸とするところの今の円レートの問題が大きいギャップがございます。それはつまり国内物価が割高だということでございまして、もう先生御存じのとおり格差がございます。これを安くしていく、日本の内外価格差を縮小していくということがこれからの基本的な問題だということで、経企庁もこの問題に本格的に取り組むという準備をしているところでございます。
  157. 小川元

    ○小川委員 総論としては極めてそういうことになるかと思いますけれども、実際にはいろいろ難しい問題があって、相当な覚悟を決めて取り組んでいただかないとなかなか効果があらわれてこない、また国内的にも相当な摩擦もあるということであろうかと思いますので、その点ぜひ腰を据えて、不退転の覚悟で物価問題について取り組んでいただきたいと思うわけであります。  物価を下げていくという具体的な問題につきまして、一つには、日本でつくって、本当に日本の製品が優秀で安くていいものが外国に売れている、それで輸出が非常に多いということはもちろんあるのですが、と同時に、実は自分の国でつくったものを日本で買った方が高いというものが現実に相当あるわけでございますね。その辺については企画庁としてつかまえられておられるかどうか、そしてどのように考えておられるかお聞きしたいと思います。
  158. 坂本導聰

    坂本(導)政府委員 日本製品が国内で売られる場合と海外で売られる場合、これは当然国内で売られる場合の方が一般的には安いということでございますが、委員指摘のように、物によりまして、例えばテレビゲームあるいはテニスボールというようなものは、一部の諸外国の都市と比べますと、一割以上も日本製品が海外で買う方が安いというような商品もございます。  したがいまして、こういったことにつきましては、まず全体の内外価格差を解消することもさることながら、こういった国内製品が国内よりも海外において安いという事実を解消するためには、さらに国内の競争条件の整備等の充実を図る必要があると考えておりまして、関係省庁とそういった方向で進めているところでございます。
  159. 小川元

    ○小川委員 国内に高く売って海外に安く売るというのは、これは発展途上国の経済体質でありまして、日本のような経済大国がとるべき手段では絶対ないはずなわけであります。ところが、今テレビゲームとかなんとかという一例をお挙げになりましたが、現実には、日本でつくって輸出されている製品で日本で買った方が安いものを探す方が難しいのではないか、私はこういうふうに思うわけですね。  具体的にいろいろお聞きするつもりはないですけれども、じゃ、日本でつくっている自動車は本当に日本で買った方が安いのかということも私はあると思いますし、ここで国の方針として、そのことは要するに日本の恥でもありますし、製造業としてのモラルの問題でもあると私は思いますので、ひとつそういうことがないようにしてもらうように、具体的な施策はともかくとして、政府としてはっきりした態度を打ち出していただきたいと思うわけでありますけれども、企画庁長官どのようにお考えでしょうか。
  160. 久保田真苗

    ○久保田国務大臣 まずしっかりした調査をして、これが国民に情報として伝えられ、施策の上に反映されるということが大事だと思いますので、今いろいろな情報提供の取り組みをしております中でぜひ検討させていただきたいと思います。
  161. 小川元

    ○小川委員 これは考え方をそういうふうにしてもらうということが基本的に一番大切だと思いますので、具体的に個々の指導ということよりは、製造業なり流通業の方々にそういう態度で仕事をやってもらうというふうな、基本的な考え方をそのようにしていただきたいということをお願いをさせていただきます。  あと物価の問題につきましては、当然日本の商品の問題と同時に、もう一つ輸入品の問題があるわけでありまして、円高差益の還元も必要でありますが、そもそも向こうから輸入されるものが向こうで買うよりもべらぼうに高いということは幾つもの例があるわけです。経企庁でもモニタリングなんかをされて新聞なんかに定期的に発表されておられるのを拝見しておりますけれども、現状そういうものは是正の方向に向かっておるのでしょうか、教えていただきたいと思います。
  162. 坂本導聰

    坂本(導)政府委員 委員指摘のように、例えばアメリカの製品がヨーロッパで売られる場合と日本で売られる場合では日本の方が高いとか、あるいはヨーロッパの製品が日本で売られる場合とアメリカで売られる場合では日本の方が高いとかいうような商品がございます。これは輸出先の企業の価格戦略等の問題もございますし、それから私どもの国内の行政指導といいますか、要請がなかなかしがたい分野でもございますが、そういった点を乗り越えて何とかできないものか、関係省庁と今後とも協議して相談してまいりたいと思います。     〔古賀(正)委員長代理退席、委員長着席〕
  163. 小川元

    ○小川委員 今価格破壊とかいって、お酒が並行輸入とかいろいろな方法でもって安く海外品が入ってくるという実例があるわけですから、向こう側の輸出メーカーが、確かに量は少なくとも、価格を高く売れば楽にもうかるということで日本に高く売っている。それは日本の商習慣がそうなっているから向こうもそれに便乗しておるわけですけれども、それはやはりいろいろな方法で打破できる場合が非常に多いと私は思うんですね。  たまたま私の持っています、これは東京新聞ですか、記事を見ていましたら、「なぜ高い!日本のビール」こういう題で、アメリカの有名なブランドのバドワイザーがアメリカでは、これはいつの時点がな、百五円で換算して缶が七十三円である、ところが日本では二百四十円で売られている、こういうふうに書いてある。もちろん酒税が違いますから七十三円そのもので売れるわけじゃないですけれども、しかし二百四十円であるはずはない。ちなみに、同じ種類の日本のビールは二百二十円ですから、これは日本のビールより高くなっちゃっているわけですね。実際に七十円じゃなくても、その倍の百五十円で仮に販売できれば、現に販売している人がいるようですが、それが日本市場でずっと広がっていけば、ビールというのは庶民の飲み物ですから、それだけ安ければ当然日本でも相当向こうのビールを、たとえ少々まずいと思っても飲む人が出てくるのじゃないかと思うのですね。そうなればこれは日本のビールメーカーにとっては大変なことですよ、対抗するために百五十円にしなければいかぬということになるわけですから。でも、それがやはり今考えておられる、要するにそういうことをやらない限りは輸入拡大とか、特に消費者のための生活の向上には役立たないわけですね。  ですから、そういったことを、別にこれは政府ができる問題ではないですけれども、しかし、やはり積極的に政府がそういうことに対して支援をしていくようにしないと、なかなか日本の物価高というのは是正ができない、私はこう思うわけであります。具体的な今の事例についてお答えをいただく必要はないのですが、基本的考えについて長官の御意見伺いたいと思います。
  164. 久保田真苗

    ○久保田国務大臣 全く先生のおっしゃるとおり、いろいろな障壁それから商習慣、またそれに乗っかってくる外国の企業、こういったいろいろなものをひとつ十分にその原因を突きとめまして、私たちとしては、もちろん日本の物価を、内外価格差を縮める、その中でも特に国民の生活に最もかかわりの深いものについてぜひともこれを下げていく、その努力がすなわち生活者重視の政策だと思っておりまして、今後とも頑張っていきたいと思っております。
  165. 小川元

    ○小川委員 それでは次に、少し貿易摩擦の件について伺いたいわけでありますけれども、日本の黒字が増大するたびに主としてアメリカとの貿易摩擦が深刻になる、これは当然のことであります。また同時に、現時点で今それが起こっているわけでありまして、日米の協議も行われていると了解しております。少し大きなことを申し上げれば、ソ連というものがなくなってしまって、いわゆるアメリカの安全保障というものの対象が経済面、貿易面にも拡大されて、そして日本というものに対して、そういう意味で安全保障の相反する国ということになってきているか、あるいはなりかねないような要素もあると思うわけでありますけれども、現在の日米交渉において通産省としてどのような態度で取り組んでおられるか、大臣にお伺いしたいと思います。
  166. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 私は、委員の先代といいますか、おじ様に当たる小川先生とともに、日米の自動車交渉の第一号機に乗りまして実はワシントンヘ行きまして、当時の小川平二先生が阿修羅のごとく活躍したときに同行した議員でございまして、従来ずっと実はこのいわゆる貿易摩擦の交渉について何らかの形でかかわってまいりました。幾たびかの体験のもとで、我々もアメリカもいろいろ見込み違いもしたこともございますし、どうやらその後の後追いをしてみますと、いろいろな意味で限界のあることをやったこともあろうと思います。  しかし、今こうして考えてみますと、基本的には、世界は回っていかなければならない。現実の姿は、委員が先ほど日米ということで言われたように、この基本には日米間の間に他の国にはない突出した日本の黒字とアメリカの赤字というのが出てきておるわけでございまして、やはり世界の中でもこの日米関係経済調整というのは最大の課題であろうというふうに思うわけでございます。  実は、四月の宮澤・クリントン首脳会談を経まして、この七月に両首脳の共同声明によっていわゆるフレームワーク協議の路線が敷かれたわけでございます。その後細川内閣になったわけでありますが、細川内閣におきましても、この前内閣の敷かれた路線の上でこの交渉を成功裏に導くという基本的な考え方に立っているところでございます。  御存じのとおり、日米のフレームワーク協議のやり方というのは、第一にマクロの調整でございます。第二に、いわゆる部門別の政府調達でありますとか自動車でありますとか保険でありますとか、そういった部門ごとの調整、協議を行う。それから三番目が、今度は共同作業でもっとプラス・サム・ゲームをやろうじゃないかということで、地球環境の問題でありますとか技術協力の問題であるとか、こういったことを議論をする。総じて言えますことは、まず何といっても日米のこの経済協議は、七月の共同声明でもうたわれておりますように、「ハイリー・シグニフィカント・ディクリース」こう言っておるわけですが、要するに、日本の経常収支の黒字を十分意味のある是正をしていく、減少をさせていくというまずこれが基本だろうと思います。  そのためには、日本だけでできることと日本だけでできないことがございまして、これはアメリカ側にも、競争力を強化したり、それから財政赤字を是正したりということについての努力を払っていただく、それについては日本側も注文をつけますよ、こういうことでやっておりまして、現在、来年一月に一つの中間の、一つの節目を迎えるわけでございますが、事務レベルの協議が九月に始まりましたが、これはお見合いみたいなものでありまして、十月に入りましてようやく議論が、事務レベルの協議が本格化してまいったところでございます。今後、十一月にはクリントン大統領と細川総理の会談、これはAPECの首脳会談という形で行われることになっておりまして、こうしたものを踏まえながら、私どもとしては日米のこの経済調整をスムーズに、双方アクセプダブル、双方が受け入れ可能な形で交渉が成功に終わるように努力をしていきたいと考えているところでございます。
  167. 小川元

    ○小川委員 新聞報道等によりますと、アメリカが具体的に日本に買う目標を設定しろ、こう言って、日本はそれは管理貿易だからできない、こういうことの議論があったやに了解しておりますけれども、その問題はもう既に結論に達したのですか、まだ話し中なんでございますか。
  168. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 基本的には、いわゆる数値目標についての考え方というものは、七月の時点でもう既に決着済みなんだというのが私どもの日本側の態度であり、またアメリカも了解をしておると私どもは理解をいたしております。  しかしながら、さて、この部門別の協議をしてまいりますと、数値目標はしないけれども、客観的基準をベースにして双方の努力をしていこう、こういうことになるわけですが、その客観的基準なるものの定義をめぐってやはりいろいろ議論が出てくるわけでございまして、私どもはいかなる形であろうと管理貿易になっていくような、管理貿易を是といたしますと、今細川内閣がやろうとしている透明性の高い、競争性の高い、しかも国際性の高い市場経済をつくるという目標とは全く違う方向へこの国を導いていかなければならない、そんなことができるわけはございませんので、我々としては、その原則を確保しながらも、しかしお互いに努力の目標はあるわけでございますから、その努力の目標について双方がそれぞれ知恵を出し合いながら合意に導きましょう、こういうことでやっているところでございます。
  169. 小川元

    ○小川委員 当然管理貿易がうまくいくはずもないわけですし、そういうことになってはいかぬとは思うのですが、とはいえ、じゃ、現状のままでアメリカのものをちゃんと買うことができるのかどうかということについて、私は非常に疑問に思うわけですね。アメリカの体質自体が輸出体質じゃありませんから、まず第一に国内志向型で、輸出していても突然国内で売れ出せばやめちゃうとかそういった問題がありますし、そもそも貿易に対する考え方も違うということでありますから、非常にアメリカ製品というのはいわゆるコマーシャルベースで買うには難しい面がある。しかし、アメリカにとって最大の関心事は、やはりアメリカから物をどのぐらい日本が買うのかということになる。  今まで、かつて貿易摩擦が何回も繰り返し起こり、そのたびに何となくその場で解決ができてきたわけですけれども、基本的には何にも解決になってない。常にまた同じ現象が起こって同じ交渉の繰り返しになるわけですけれども、基本的に、いわゆる日本の貿易黒字というものをどのように目標設定をしないで減らしていかれるとお考えなんでしょうか。
  170. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 これは、先ほど来お答えしていることでありますけれども、まず第一は、何のかんの言っても内需主導型の経済、一定の成長率を維持しながら内需を主にする経済にしていかなければならない。それから同時に、ミクロの経済調整もやらなければだめだ。規制緩和もその一つですし、内外価格差もそうでありますし、その是正ということもそうですし、それから魅力ある新しい産業を育てるという意味での産業構造の政策もそうだろうと思います。  第二に、輸出型の産業というものが今大変な一つの壁にぶつかってきているわけでございまして、こうしたものについてはリストラクチャリングをやっていく。企業としても産業レベルとしても、仕組みのといいますか、構造の再構築をやっていく。  こういうような、一つはマクロの調整、もう一つはミクロの調整、それから三番目は、あえて言えばセミマクロといいますか、そういうような調整、この三つをやはり切り離さないで、三位一体のものとして、これを基本として進めていくということがハイリー・シグニフィカント・ディクリースの王道であろうというふうに私は考えているわけであります。
  171. 小川元

    ○小川委員 実際にアメリカの物を買う約束ができない、これは管理貿易になるからできないということになると、向こうは自由貿易が建前の国ですから輸入制限というような直接的手段はとらないでしょうけれども、ダンピングとか等々を十分に活用していろいろ報復措置も来るんじゃないか、非常に難しい局面に立っておられると思いますけれども、ここはひとつぜひ日本も、ある程度血を流してもアメリカの物を買う、実際的に買えるような形で、しかし、向こう側でやるべきものはやってもらうというような形で、難しいことですけれども、ひとつそういう姿勢で臨んでいただきたいというふうに思うわけであります。  さて、時間もなくなりまして、最後にちょっと所得税減税と消費税の件についてお伺いをさせていただきたいと思います。  この件は、直接御両所の関係でないことはわかっておりますけれども、いずれにしても、国民生活には大変重要な問題でありまして、生活者の立場からいっても、サラリーマンの立場からいっても、企業の立場からいっても非常に大きな影響があるものでございます。政治家としての御意見をちょっと基本的にお伺いしたい。  それは、所得税減税を行うと財源がないからその見返りとして消費税だという議論が非常に行われておりまして、それはそれで事実に近いわけだと思うわけでありますけれども、ただ私は、税というのは政府と国民との信頼関係があって初めてこれは成立するものだと思っていますので、そういう意味で、所得税を減税して後の見返りの財源を云々する前に、行政側の経費節減の努力というものを最大限に行わなければ国民の納得は得られないんじゃないか。もちろん、シーリングを設けいろいろなことをしながら今努力しておられることは事実ですけれども、しかしもっともっと、民間がこれだけ血を流しているときに、まず行政改革というものに対する努力というものが国民に見える形で必要ではないか。クリントン大統領は国家公務員の二一%削減をこの間打ち出した。そういう具体的なことはともかくといたしまして、行政改革に対する考え方というものを最後に両大臣にお伺いして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  172. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 私は、かつて一般消費税を導入する議論が行われた大平内閣の時代に、まさに委員と同じ意見を雑誌で主張をいたしたことがあります。その後、行革路線というのが自由民主党の政策の中心になり、歴代の内閣の中心になり、鈴木内閣そして中曽根内閣と大きく骨組みをつくってきたわけでございます。  私は、現下の税制の問題につきましては、どこかで何かべらべらしゃべっている大臣がおりましたけれども、今の時点では、これは税制調査会において議論をされている最中で、しかも客観的にさまざまな議論を踏まえて、一つの議論の素材としてやっていこうという最中で、総理もまさにこの議論を踏まえて政治的決断をどうするかというのは、これは政治の判断で、与野党を通じての共通の土俵に乗るわけでございますけれども、その前の時点で予断を与えるような議論をすべきでない、総理が予算委員会で一貫してお話をしていた、私もそのとおりだと思いますし、そうありたいと思っております。  ただ、一般的に申し上げますと、行政改革は細川内閣にとりまして、所信表明でも明らかにいたしましたとおり、政治の改革、経済の改革と並ぶ三大項目でございます。困難な道でありますけれども、私どもも新たな行革路線というものをぜひつくりあげていきたいと考えているところであります。
  173. 久保田真苗

    ○久保田国務大臣 税制調査会の中で、所得税減税の問題も含んで、基本的に不公正を是正するようなそうした税体系のあり方をやっていくというその基本はあるべき姿だろうと思っております。ただ、私どもとしましては、確かに国民と政府の間の信頼関係という点からも考えまして、やはり国民が大事にされているという実感を持てるような税制であってほしいと思いますし、私どもの立場からは、景気とかそれから物価とか、そういったものに気を配りながら税制調査会の結論というものを見守ってまいりますし、また、その上で国民の皆さんのお声も聞くというふうに決めておられるようでございますから、それを見守ってまいりたいと思います。  おっしゃいますように、行政改革の問題は当然この政治改革の後に続く内閣の大事な課題だと思っております。
  174. 小川元

    ○小川委員 どうもありがとうございました。これで失礼します。
  175. 中井洽

    中井委員長 次に、山本拓君。
  176. 山本拓

    ○山本(拓)委員 きょうは、通産大臣に御質問を用意してきたわけでありますが、久保田長官もおいででございまして、まず長官に率直に、先にレディーファーストで御質問をさせていただきたいと思います。  御案内のとおり、今景気低迷で大変な、地方は特にあえいでいるわけでありまして、景気対策が叫ばれているわけです。今までのお話の中で、小川さんの質問に対して、政府税調ですか、その段階ですから、具体的に今回の細川内閣がどうするこうするという話はなかなかお答えできないと思いますが、ただ、一般論として、景気対策をしているときに、結果的に消費税を上げる話になってしまったら、せっかく景気浮揚、個人消費を伸ばそうという議論をしている中に、結果的に所得税減税だ、所得税減税するためには財源を消費税に求めなければいかぬという話になって、いつの間にか議論のすりかえが行われてきたのじゃないかなという懸念を持っているんですね。本来直間比率の見直しはしなくてはなりませんし、だから所得税減税というのは、景気対策とは区分けして所得税の累進税率を変える、その分は何に求めるかという議論はまた別次元の話だと思うわけでございますが、今の一般消費者、特に女の人に買い物をしてもらわないかぬわけですから、長官の感覚として、消費税はもう既に今の消費者に受け入れられる、なじんだという受けとめ方をしておられるでしょうか。
  177. 久保田真苗

    ○久保田国務大臣 買い物をする側から見ましたら、それは一々税がかかるということはなかなかなじまないものがあるかと思います。けれども、税制の体系を、全体として公正な、公平な税体系のあり方を求めるという場合、また、これに対して一体どういう見返りがあるのかなとと総合的な議論をした上で国民のお声を聞くという方針をとっておられると思いますので、私どもとしてはそれを見守っていくわけでございます。  もちろん、先生がおっしゃいますように、不況のときにあって、一般論として言えば、減税は望ましく、増税は望ましくないというのは、景気対策ではそういうことが言えるかと思いますけれども、しかし、これも一つの望ましい形の税体系、長期的な問題の中にセットされるということの中で今御審議が進んでいますので、私としてはそれを見守っていくということでございます。
  178. 山本拓

    ○山本(拓)委員 私が御質問申し上げたのは、消費税というものが消費者に定着しているという認識をお持ちかどうかということをお尋ね申し上げていますので、もう一度お願いします。
  179. 久保田真苗

    ○久保田国務大臣 消費税が導入されましたときには、日本で一般消費税という形での導入は初めてでございましたし、それは国民の中にいろいろと異論があったことは事実と思います。しかしその後、日にちを経まして、消費税というものに直間比率の見直しというような角度からのお声も出ております。ただ私は、国民の全部が消費税というものを必ずしも歓迎しているとは言い切れないものがあると思っております。
  180. 山本拓

    ○山本(拓)委員 いわゆる私が問題とさせていただきたいのは、消費税というものを今の、要するにタイミングですね、この景気対策で消費税の話の議論が前面に出てしまうと、今大臣のお話だと、一般論としてまだちょっとなじまないんじゃないかということであったら、それは逆に、消費する話がやはり貯金に回るとかローンの返済に回るとか、いわゆる消費の方になかなかストレートに回らないという懸念を私は持っていますので、その点は出発点なんですね。だから、仮に今導入されようとしても、今すぐじゃない、何年か先のことだと思いますが、何年か先にいたしましても同じことだと思いますので、率直な話、長官に、景気対策、婦人の立場からしまして、要するに買い物をする、消費をする、所得税減税というのはなかなか消費する奥さん方には直接返ってこない話ですからね、だから、むしろどういう分野に景気浮揚、または消費者が消費拡大を図るためにはどの分野の景気対策がやはり一番いいかなというふうに思っておられますかね。
  181. 久保田真苗

    ○久保田国務大臣 また聞いていないことだとおしかりを受けるかもしれませんが、私は、今やっております公共投資の中の住宅投資、これを徹底的に、継続的に累次の計画の中でやっていくということが景気浮揚策の中で非常に、柱にもしていますし、期待をしているところでございます。  また、税制の問題なんですが、いろいろと御議論があるように承っておるのですが、実は具体的なことでそれが明示されておりませんので、なかなか今の御質問にはお答えにくい面がございます。
  182. 山本拓

    ○山本(拓)委員 この話、幾ら議論していてもあきませんので、次に進めさせていただきます。  それでは、通産大臣にちょっとお尋ねいたしますが、先般、ロシアの液体放射性廃棄物の日本海海洋投棄問題が大変大きな問題になっております。まさしく私の住んでいる福井県なんというのは目と鼻の先ですし、実害はないとは思いますけれども、非常にイメージの悪いことこの上ないわけでありまして、この海洋投棄の問題について通産大臣としてどのように見解をお持ちか、まずお聞かせいただきたいと思います。
  183. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 まさに実害の問題を抜きにしても、私どもとしては、しかも公海において行われたことでございますし、まことに残念であり、政府としても、実は閣議におきまして強く抗議をしようということで、一致した意見でございました。私も、このようなことが起こらないように、今後もロシア政府に対して常に注意を喚起をしていくということが重要だと考えております。
  184. 山本拓

    ○山本(拓)委員 先般、新聞を見ていましたら、ミハイロフさんというんですか、ロシア原子力エネルギー大臣、日本にも来られましたが、いわゆる液体放射性廃棄物を海洋投棄しているのは、日本だってやっているじゃないかと。原子力発電所の施設の中で少し投げていますわね。それを指摘して非難をされておったというふうに、タス通信を通じて新聞報道されておりました。その言ったかどうかは本人に聞かなければわかりませんが、私がここで問題とさせていただきたいのは、そういう、日本だってやっているじゃないかというふうに非難される余地が日本側にあるのかどうか、その点。
  185. 堤富男

    ○堤政府委員 お答えを申し上げます。  ミハイロフ原子力大臣が、新潟県にございます柏崎刈羽原子力発電所をごらんになって、そこでも一年間で放射能が十キュリーぐらい、今回日本海に捨てたのは一キュリーでございますが、十キュリーぐらい出ているのではないかということをお話しされたことが一つのきっかけになっておると思います。  ただ、この十キュリーという言葉でございますが、実は放射線の中でも、管理のときにも必ず区別しているものがございまして、トリチウム、これは普通天然にも存在します二重水素あるいは三重水素というような、放射能能力といたしましては、通常のセシウムとかそういうものに比べますと十万分の一ぐらいしか影響力のないものというのがございます。そういうものと、そのほかの、先ほど申し上げましたセシウムあるいはニッケル、コバルトというようなものとの、普通区別をして議論をしているわけでございます。  現在、ソ連の廃棄されました一キュリーというのがどういう核物質によるのかということが実は解明されておりません。現在、モスクワであすから行われる会議でその辺がだんだんわかってくるのではないかと思っておりますが、日本で原子力発電所から出ております十キュリーといいますのは、先ほど申し上げました普通の放射線の、人体に対する影響度が十万分の一しかないような、そういうトリチウムから出たものであるということでございまして、科学者の皆様方もこれと二つを同列に論ずることは非常におかしい、科学的でないということを申し上げている次第でございまして、通常言われております一キュリーというものが本当に、廃棄物として言われておりますコバルト、ニッケル等でございますと、これは全く日本の発電所の場合にはほとんど検出量以下でございまして、その点では、同じキュリー数であるとか十倍であるとかということを単純に比較することは非常に科学的でないというふうに言われておる次第でございます。
  186. 山本拓

    ○山本(拓)委員 廃棄物とその他のものの海洋投棄ですか、これに対してはロンドン条約というのがあるみたいですね。だから、いわゆるロンドン条約では基本的には全部禁止になっているわけでしょう。その中で、IAEAがこの分野はいいですよという特例事項というのですか、勧告がなされているわけですね。だから、今の日本の排出しているものは、いわゆるIAEAの勧告の範囲の中で許されている分野でしたかね、ちょっと確認したいのです。
  187. 堤富男

    ○堤政府委員 お答え申し上げます。  ロンドン条約におきましては、実は、放射性物質を海に捨てること自身は許可なくしてやるのは違反だということになっております。ただ残念ながら、その許可基準というものが明確に決められておりませんために、どの辺までがよくてどの辺までが悪いということがわからないまま、いずれにしても低レベルのものにつきましては、ロンドン条約との関係からいいますと、決議という格好になっておりますのでやや紳士協定的な約束ということになっておりますが、低レベルのものも捨てないということになっておるわけでございます。そういう意味では、直接的にはその紳士協定である決議にまず一義的には反しているのではないかということになるわけでございます。
  188. 山本拓

    ○山本(拓)委員 今回のロシアの放射性廃棄物の海洋投棄は、いわゆるロンドン条約の決議違反ということで非難をしているわけでしょう。そうですね。
  189. 堤富男

    ○堤政府委員 基本的には、ロンドン条約の傘の下にある決議に反するということになっておるわけでございます。
  190. 山本拓

    ○山本(拓)委員 来月でしたか、今度また締約国会議があるとお聞きしているのですが、これもまた新聞で読んだのですが、今度は日本も全面的に海洋投棄の禁止を支持する。今までは、日本の場合は完璧に仕分けされていますから、だからそういう意味では低レベルということで余り積極的でなかったわけですが、しかし、ロシアなんかはどういう目盛りを使っているかわかりませんし、だから、この際一切禁止するということの支持に回るわけですね。その辺はどうなんですか。
  191. 堤富男

    ○堤政府委員 基本的には先生のおっしゃるとおりでございまして、締約国会議では、日本としては、廃棄物は海に捨てるのを基本的には禁止しようという方向で動くということになっております。
  192. 山本拓

    ○山本(拓)委員 そうすると、ロシアの大臣が指摘した、日本だって捨てているじゃないかというその分野も今度は廃止の項目に入るわけですね。
  193. 堤富男

    ○堤政府委員 ロンドン条約と申しますのは、基本的には公海、公の海に対するものでございまして、俗に言います内海に対するものはそれぞれの国の管轄下に入るわけでございまして、ロンドン条約の対象にはなりません。それから、日本でやっております内海に捨てるというものも、全くゼロというわけではございませんけれども、これはいずれも非常に厳格な規制のもとで人体への悪影響がないということを確認し、その上での排水が行われることがあるということです。
  194. 山本拓

    ○山本(拓)委員 私が申し上げたいのは、いわゆるこの廃棄物問題というのはこれから非常に大きな問題になりますし、環境問題と絡めましてちょっとしたことでも誇大報道されるわけでありまして、いわゆる日本のレベルとロシアのレベルとでは管理状態が全然違うわけですね。しかし、要するに、今のロシアの大臣の、日本だって捨てているじゃないかという話は五十歩百歩で、ここが違うあそこが違うと言っても、なかなか一般ではわかりにくいのですよ。だから、そういう意味では私は、今の話でロンドン条約は公海上だから日本近海のものはそれには当てはまらないということはわかるのですが、要するにお願いしたいのは、今現在原子力発電所から出しておりますものは限りなくさらにゼロに近づく努力を今後ともやっていただきたいなと思うし、また、そういう努力は当然されておるとと思うわけでありますが、その見通しをお聞かせいただけたらというふうに思います。
  195. 堤富男

    ○堤政府委員 おっしゃるとおりでございまして、その点については今後とも十分配慮したいと思います。  ただ、ちなみに、現在、トリチウムというものを除いた人体に影響のある可能性のある物質だけで日本全体で○・七一キュリーということでございますから、今回ソ連が捨てた量の日本じゅうで一千四百分の一というのが全体の数字でございまして、これがそれぞれ拡散してやっているわけでございますから、人体には全く影響がないということを確認した上でやっているわけでございます。
  196. 山本拓

    ○山本(拓)委員 限りなくゼロに近づく努力をしていただきたいと思うところでございます。  それと、今回ロシア側が捨てたのは海軍、いわゆる原子力潜水艦ですか、そういう軍事的なものだと伝わっているわけでありますが、もともとロシアにだって原発はいっぱいあるわけでありますし、ロシアの原子力の廃棄物はどこかで処理していると思うわけでありますが、現状はどうなっているか、把握しておられる点、教えていただきたいと思います。
  197. 鈴木治夫

    ○鈴木説明員 旧ソ連時代には、原子力施設について情報はほとんどソ連から出てまいりませんでしたし、専門家の行き来というのもほとんどございませんで、ほとんどよくわからなかったわけでございますが、最近ロシアもああいう状態になりまして、多少専門家も行き来をしているというような状態になってきております。  それで、我が方が聞きに行ったとか、あるいはロシア側から日本に専門家が来たときに聞いた話とか、そういったものを総合いたしますと、まず、原子力発電所から出てきますいわゆる低レベルの放射性廃棄物につきましては、廃液についてはアスファルトで固めるとかセメントで固めるとかそういうことをやりまして、固体の廃棄物と一緒に原子力発電所のサイトの中、あるいはサイト外の地域処分場、そういったところに埋設しているというふうに聞いております。それから、もちろん、基準値を下回る一部の気体廃棄物ですとか液体廃棄物は発電所から施設の外に出している。  ただ、軍の施設になってきますと、これはまだ依然として私どもそう行き来がないという状態でございます。今回問題になりましたウラジオストクの海軍の施設につきましても、低レベルの放射性廃棄物をどうも船のタンクに入れて貯蔵しておった。陸上のタンクではなくて船の上に乗っけてやっておった。それから、セメントで固めますとかアスファルトで固めますとか、そういう施設をどうも持っていなかったようである、そんな状態でございます。  それで、あしたからモスクワで日本とロシアの専門家の会合があります。それから来月、日ロの共同作業部会といったものも開かれますが、そういった機会をつかまえまして、ロシア側の廃棄物の処分だとか管理だとかの実態情報をもう少しつかんでいきたい、そういうふうに考えているところでございます。
  198. 山本拓

    ○山本(拓)委員 そのあしたからのロシアとの連絡会ですか、そこでは、日本側としては現状を掌握することが一つ、そして逆に言うと協力を申し出るというのですか、廃棄物処理の。私が申し上げたいのは、原子力行政というのは発電から廃棄物の最終末まで含めて原子力行政ですから、だから日本もこの終末、わかりやすく言うといわゆる原子力のごみの扱いは非常に苦労しているわけで、結局ロシア側だって、あそこで何やっているかわかりませんし、例えば今二回目中止したって結局どこで捨てているかわかりませんし、ごみは出るものは出るもの、やはりそれは最終的には日ロ同じ悩みの種ですから、日本の場合はまだ、六ケ所村がやっとできましたからそこで当分は安心でありますが、向こうは、ほっておくとわからぬうちにぽっぽぽっぽどこかに捨てるわけであります。  だから、そういう意味では、日ロの共同研究と申しますか、ロシアにこれからいろいろな形で経済支援をする中で、まずこの原子力発電所の廃棄物問題、これはもう、要するに海軍が扱っているからどうだとかそういうことを超えて、最終的に共同廃棄物処理の話はなさるおつもりはあるんですか、ないんですか。
  199. 鈴木治夫

    ○鈴木説明員 あしたから専門家会合がモスクワでありますが、まずそこの会合でやろうとしておりますのは、日ロの共同海洋調査をぜひ早くやりたい。日本側の調査船、水産庁、保安庁、気象庁あるいは科技庁関係の船とかいろいろ今出しまして、海洋調査、もちろんやっておりますが、ロシアの経済水域もありますので、どちらかというと、日本海の中央部から日本寄りのところで今調査をやっておる。それで、実際にロシア側が廃棄物を捨てましたもっとロシアの近くでございますね。まあロシアの領海の外ではあるのでしょうけれども、ロシアの経済水域のずっと向こう側、実際に廃棄物を捨てたところまで船を出しまして、あの辺の水をとったり泥をとったりしまして測定したい。これをやるに当たって、我が方だけでというわけにいきませんので、ロシアと一緒になって共同調査をやりたい、このための方策を検討する、これがまず第一の目的でございます。  それから、そうやって海水をとったり泥をとったりしたいと思っておりますが、そもそもどんなものをロシア側が捨てたのか。先ほどの御答弁にありましたような、単にキュリー数だけで言っても意味がございませんので、どういう種類の放射性物質を幾ら入れた廃棄物を海に捨てたのか。今回の投棄、それから、以前三十年近くにわたって旧ソ連時代に捨てておったわけでございますから、そういう情報をつかみたい。まずこの辺の海洋調査を一緒にやろう、それから捨てた廃棄物の情報をとりたい、これがまず主たる目的でございます。  その先の、先と言われるような、ロシアにどういう支援をするのかということは次の問題として出てくるかと思いますが、原子力発電所を応援するというのと、ロシア海軍のやっていることを応援する、多少その意味合いが違いますので、ロシアに対する軍事援助になってもまたぐあいが悪いかもしれぬ。そこは、ロシアの現状がどうなっているか、ロシアの廃棄物処分、管理、そういったものがどうなっているかという情報をつかみつつ、我が国として、日本として何ができるのか、どういう応援ができるのかというのを少し慎重に検討してみる必要があるのじゃないかと思っております。ですから、そういった情報も少しずつとっていきたいというふうには考えております。
  200. 山本拓

    ○山本(拓)委員 事務レベルではそういう調査はぜひともお願いしたいと思うのですが、それから、それをどうするかということは、これは政治判断だと思うのですね。だから、これは大臣にお尋ねしなきゃならないのですが、確かにいわゆる海軍のことをどうのこうのということは難しい点もあろうかと思います。ただ、廃船になった後の話になりますと、もう使わなくなっているもの、それの処分のことはやはり対象にせざるを得ないのかな。まあそれよりも、現状の、だれが見たって低レベルの廃棄物、低レベルに限らず高レベルも含めて、その処分というのは日本以上のことはあり得ないわけですね。日本より進んでやっているということはちょっと理解できないわけでしょう。だから、そうすればおのずとどういう形か想像がつくわけですね、知らなくたって。  だから、それはそれとして、ここで大臣にお尋ねいたしますが、ロシア側は非常に国が混乱していますし、そしてまたチェルノブイリの事故を見ましても、日本と比べ物にならぬぐらい原子力行政はレベルが低いわけですね、安全管理の面で。そういう中で、今後日本海に捨てなくたってどこかへ捨てるわけですから、日本として、原子力行政先進国として、その廃棄物の処理、終末処理について共同部な支援というのですか、研究支援、そういったことも今後ロシア援助の中で積極的に取り組んでいかれると思いますけれども、改めて大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。  そしてあわせて、二回目、とりあえず中止しましたね、日本のクレームで。しかし、こんなのわかりませんよ、監視してなきゃ。今回のだって、これは外務省に聞かなきゃいけないのでしょうけれども民間団体が発見してくれたわけですから、二回目は、二度とそういうことがないように、ロシアがしないと言うのですから信じていればいいのですが、決してそうじゃなしに、チェックを国としてするおつもりがあるのかどうか、大臣としての御所見をお尋ねしたいと思います。
  201. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 今回の海洋投棄についての考え方は先ほど私申し上げたとおりでございますが、委員指摘のように、この海洋投棄を、抗議して、監視して仮にやめさしたとしても、ロシアの状況から見て海洋投棄を完全にやめさせるには陸上の廃棄処理施設を整備しなきゃいけないじゃないか、これもまさにそのとおりだと思います。  ところが、さきに科学技術庁の政府委員が御説明したように、これは事柄の性質上、下手をすれば軍事援助になるかもしれないということがあるものですから、なかなかこれは難しい問題でございますけれども、とにかく問題が所在をし、かつロシアにおいては解決が、本来的にはロシアの問題でございますけれども、ロシアだけではできないということになるとすれば、我々も、問題の解決のために何ができるかを含めて政府で早急に検討をしなければならないと思います。
  202. 山本拓

    ○山本(拓)委員 いっそのこと、ロシアに広大な処理施設を日本がつくって、そこへ日本も、日本の分も預かってもらう、保管料を払って、そういうことも考えたっていいんじゃないかなというふうにざっくばらんに思うわけであります。  確認いたしますけれども、ロシア側の終末処理場、それのいわゆる援助というものは考えていかざるを得ないということですね。
  203. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 そういうことを含めて、我が国が何ができるかということを含めて、これは第一義的にはロシアの問題でございますからロシア自身が解決すべき問題だとは思いますけれども、しかし事柄の状況から見て、政府としても何ができるかを検討してみたい、こう思っておるわけでございます。
  204. 山本拓

    ○山本(拓)委員 何ができるかというよりも、向こうもそれしてくれと頼みに来ているわけでしょう。だから、それはするかしないかという話でございますし、ロシア側がそういうものを最終的につくらなかったらやはり日本側も、国民も安心できないわけですね。だから、今後対ロの援助をする場合に、やはりそれが最低条件だ。どうせ援助するわけですからそれが最低条件だという条件づけぐらい、それをしなかったらほかはしないというぐらいのことをしないと、肝心かなめのそういうものをほったらかし、援助は行くわ、ほかのことに使われちゃ、ロシア側へ政府が出す資金というのは国民の税金でありますから、国民はちょっと納得しないんじゃないかなと思うわけでありますが、その点はいかがでしょう。
  205. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 我々がロシア支援と申しているのは、必ずしも税金だけでは、広義でいえば税金の支えがあると言えば言えますけれども、いわゆる民間の契約を保険で円滑化するというようなことも含めてやっておりますので、直接税金が向こう側に行くということでは必ずしもないのですけれども、ただ、いずれにしましても、委員が御指摘のような考え方というのは大変大事にしなければならないと私も思います。そういうことを含めて、この問題につきまして政府として早急に検討をし、判断を下さなければならないと考えているところでございます。
  206. 山本拓

    ○山本(拓)委員 直接資金が行くことはなかったですか。直接はあったんじゃないですか。
  207. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 いや、ロシア支援の中には、直接税金が行くものもございますけれども、金額でいいますと、多いのは民間の契約に保険をつける、こういうものもある。それをロシア支援、クレジットラインを設定するというのも、クレジットラインそのものをロシア支援の中に入れているというのが現在の姿だと思います。
  208. 山本拓

    ○山本(拓)委員 直接間接であろうと、基本的には国民の理解が必要であります。だから、そういう形の中で今後、どうも国民側としてはロシアに対して非常にいい感情を持たない問題でありましたから、だからそれに対して早急に、ロシアに対して支援をする場合にはそれが最前提でぜひともお願いをしたい。  ロシア側としてはなるたけやりたくないと思いますよ。そんなものつくったって何の振興策にも向こう側はならないわけですからね。それだけに、やはり日本政府側の対応だけは毅然としていただかないと、北方四島は棚上げたわ、何は棚上げたわと、これは外交交渉の一環として強く、特に担当大臣がそれを主張することが私は一番大事なんじゃないかなと、総理直接よりも。だから、そういう意味では、担当大臣が総理と同じ対応ではいかがなものかな。やはり日本国内に多くの原子力を稼働させて、安全管理を訴えているわけでありますから、その安全管理というのは国内だけじゃなしに隣接も含むわけでありますので、そういう点は大いに担当大臣として、今申し上げた点を今後の対日支援の中で強力に示していただきたいな、推進していただきたいなと思うわけでございます。  この問題で幾らやっていてもしょうがないので、次に行きます。  ところで、私はかねてから、原子力は地下へ入れてしまえということを申し上げているわけですね。地下原子力発電所推進論者なのですよ。だからこういう、私はここ大体四年近く国会議員をやらせていただいて、役所の対応というのが最近よくわかってきましたので、例えばチェルノブイリが仮に地下立地であったらああいう大きな事故にはならなかっただろうと言うと、そっちの方にいる人は目の色を変えるわけですね。だからそういう言い方ではなしに、要するに、電柱でさえ地下へ入れるわけですから、もう原子力発電所も地下へ入れなさいよということを強く申し上げているところでございます。  そういう中で、昨年の国会、昨年と申しますか、今年度の予算で新規立地、地下立地を含めた対応を考えるというふうに言っていただいた答弁があるのですが、今現在地下立地に対してどのような進捗状況になっているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  209. 堤富男

    ○堤政府委員 かねがね先生から御指摘いただいております地下立地の問題につきましては、本年度から調査研究を着実に進めていくという観点から始めさせていただいております。具体的には、原子力発電技術機構という財団法人に対しまして委託調査をしておる段階でございます。地下立地という点につきましては、技術的にまだ解決をすべき問題もありますし、当然のことながら経済性の問題もあるということで、いい点もございますが、まだ解決されていない問題もあるということで、そういう問題を着実にこれから調査研究を進めてまいりたいと思っている次第であります。
  210. 山本拓

    ○山本(拓)委員 この地下立地につきましては、いろいろな機関にもう二十年も昔から調査をさせておられます、通産省自体が出先に。そして電力中央研究所ですか、そういったところからもいい結果も出ていますし、現にフランスのショーズ発電所、二十五年間地下で運営しておりましたし、ハルデン研究炉も地下で運営しておりますし、今ほど長官がおっしゃった、できない、わからないという理由が私はわからない。  それで、前の長官ですか、緒方さんの次の人、名前はちょっと忘れちゃったけれども、たしか、地元の方から地下がいいと言えばそれは前向きに基準をつくりますよという答弁まではしていただいたことがあるのですが、最近よくわかったのは、これはもう最後は政治判断なんですよ。だって、もうどこの原発だって、実際新潟だってどこだって、現実的には地下まで掘り下げているわけですから、それを埋めれば済むことですよ。だから、そこはもう政治判断なんです、正直な話。現に、地下立地などというのは、地下の空洞技術などというのは日本は最高レベルですし、専門家に聞いてもだれに聞いても、できないはずがないと言明しているわけです。  だから、そういう点で、地上が危ないから地下に入れるという議論ではなしに、町並み、景観を含めて、そして、先ほども言いましたように、電柱でさえも地下に入れる時代でありますから、原発だってもう地下に入れちゃって、技術が進んでいるわけですから、その上に何か温泉でもつくっておけばいいのじゃないかなというふうに思うわけでありますが、大臣はどういうふうに地下立地についてはお考えになっておられますか。
  211. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 通産省において地下立地の技術につきましては長期にわたって行ってきたのではないかと最初に御指摘があったわけでありますけれども、私が承知している限りは、いろいろなものを踏まえながら、現在高耐震構造の確証試験その他の予算をとりまして、平成五年も五億を超える予算をとり、来年度も少しそれよりも多くふやしましてこれをやっているということでございます。  基本的には、おっしゃるとおり、今後の原子力発電所の立地を考えてみた場合に、地下式の立地というのは極めて有力な案であろうと思います。大変気が長過ぎるというおしかりをいただいたわけでありますけれども、そうしたおしかりも十分我々頭に置きまして、さらに一層前進をさせていただきたい、こう思っております。
  212. 山本拓

    ○山本(拓)委員 前進ということは非常にありがたい話で、大いに前進していただきたいと思います。  地下に埋設すれば、もう避難訓練とか避難問題とかそんな話は出てこないのですよ、岩盤に囲まれていますから。だから、チェルノブイリだって事故現場を見れば、水をかけるのじゃなしに、土石とか土とか土壌だかをかぶせて注水しているわけでしょう。そういうことを言うと、また危ないから地下に入れるんだろうという話になるとだめだと言うからあれだけれども。だから、御案内のとおり、砂地のところでやるのじゃなしに、原発立地は岩盤のかたいところ、風光明媚なところを削るわけですから、これは環境問題から考えまして、横穴を掘って設置すればいいわけですし、世界じゅうどこもやったことがないのならそんなこと言いませんけれども、現にフランスでもハルデン研究炉でも立派に成り立っているわけですし、私だって現場に行ってきて、中へ入ってきたわけですから。だから、どうして日本にそういう耐震性とか岩盤がないかなどという話は、大体岩盤が弱いところは地上立地もできないところですから、現に地上立地でいっぱいあるわけですから、そういう意味ではこれ以上この問題あれしませんけれども、大臣のお答えが前向いて前進ということでありますから、足踏みはしないように、ひとつ大いに前進をお願いしたいと思います。  それでは次に、ガット・ウルグアイ・ラウンドについて一言だけお尋ねをしておきます。  最近、またぞろ米関税化を受け入れなければガットはまとまらないというような風潮が出てまいりました。これは一昔前というか、宮澤さんの内閣のときに、ブッシュさんの末期ですね、あのときも同じような、米だけが世界のガットルールを阻害する、米だけを受け入れればうまくいくのだという風潮があったのですね。仮にあのとき米を受け入れていたら今ごろガットがうまくいっていたのかなと思うと、決してそういうわけではありません。だから、今これから大詰めを迎えますガット・ウルグアイ・ラウンド、確かに成功させなくてはならないと思いますが、通産大臣の認識といたしまして、日本の米だけがガット全体の合意を著しく阻害しているという認識をお持ちなのかどうか。そしてまた、ほかの分野がいっぱいありますね、十五分野。そこらの、通産関係を含めて、総じてちょっと総括していただけませんか、今現在。
  213. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 私は、ウルグアイ・ラウンドはどうしても成功させなければならない、これは日本だけではなくて、今後の世界経済のためにも成功させなければならないという考え方にまず基本的になっておるわけでございます。私は就任以来、それこそ一泊二日ずつでございますけれども、アジアの各国の経済閣僚と直接面談をしてまいりまして、アジアの国々も皆同じような感じを持っておる。それからイギリスを初めとするヨーロッパの国々あるいはオーストラリアを初めとする国々の経済閣僚が私のところに参りまして懇談をいたしましたけれども、同じような認識を持っておる。ただ、ウルグアイ・ラウンドの交渉が最終局面になってまいりましていささか停滞ぎみであるということも否めない事実でございまして、さまざまな障害が見えてきておるわけでございます。これは別に農業分野だけではなくて全体として、ただ機運として、このままにしておいては大変だということが実は盛り上がってきていることも事実でございまして、今後我々としてはこのウルグアイ・ラウンドの成功に向けてあらゆる努力を払っていかなければならないというふうに考えております。  次に、米の問題についてでございますけれども、これは再三総理が申し上げているような基本方針を申し上げているところでございまして、私どももその方針に沿ってこの交渉を進めていきたい、進めていかなきゃならないと考えているところであります。
  214. 山本拓

    ○山本(拓)委員 私も、ガット・ウルグアイ・ラウンドというより、ガット体制は発展させていかなくてはならないと思っているところでございますが、どうも米問題だけが象徴的な問題としてクローズアップされるのはちょっと合点がいかない。御案内のとおり、あとのサービス分野でも、アメリカで例外を求める分野もありますし、だから非常にその点は理解ができないと思っているところでございます。  戦後ガット体制は本当にすばらしい自由経済をもたらしたと思うのです。しかしながら、工業分野でも著しくすべて関税化してきたのですが、結果的には逆に管理貿易が結構ふえてきていますね。これは何でなんでしょうね。結構工業分野で、日本でいうと自主規制、自動車の自主規制を含めて、そういうたぐいのものが非常に、学者によると全工業製品の四割近くいわゆる管理貿易が進んできたと言う人もおるのですが、その点どういう認識を持ってきたのかな。これはだれか、大臣…。
  215. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 エコノミスト的な分析を申し上げる能力はございませんけれども、一時やや管理貿易的な方向が、例えば日米間におきましても、あるいはヨーロッパ諸国と他の国々との間でも進んできたことは事実かと思います。しかし、それがまた、それを強制した国々に対しても必ずしもいい効果は生まなかったという認識も広まったわけでありまして、私ども日本の将来を考えてみた場合に、こういう方向ではなくて、より透明度の高い、また競争性の高い、かつ国際性の高い市場経済をつくっていくというのが私はこの国のあるべき姿ではないだろうか、そのことを考えますと、確かに委員指摘のように、このガットのルールというものがある意味でほころびが出てきたことは事実でございます。事実ではありますけれども、さらばといって、それじゃブロック化へ向かって進めていくのかとか保護貿易主義に向かって進んでいいのかということになると、恐らくまともに考えている人たちは、それはやめた方がいい、これはヨーロッパでもアメリカでもそうだろうと思うのです。我々としては、それらの地域的な統合も含めてさまざまな工夫がなされるけれども、しかし基本的にはそれが差別的なものでない、より市場経済の基本ルールに沿った拡大均衡的な方向へ向けて進めていくものでなければならない、そういうふうに考えます。
  216. 山本拓

    ○山本(拓)委員 確かに、ブロック経済とか保護貿易が昔みたいに出てきたら困るという学者の話はよくお聞きするのです。しかし、昔の一九三〇年代ですか、いわゆる保護ブロックといっても、昔は要するに全面禁止じゃなしに、関税率をうちはどんどん、関税率の倍掛けごっこをしたわけですね。だから、いわゆるすべてを関税化することによって、またそれができなかったら昔に戻るという議論はちょっと当たらないのじゃないかな。  本来、やはり市場経済でいきますと安いところから物が出る。その結果、今大変問題になっていますね。例えば農業分野でわかりやすくいいますと、木材市場を自由化して、結果的には最近ではもうマレーシアの熱帯林も伐採はだめだということで規制されちゃって、日本はバンザイですね。もうカナダからも締め出し、どこからも締め出し。そして牛肉も自由化しましたけれども、結果的にどうなっているかというと、アマゾン熱帯林がばんばん伐採されまして、伐採されたところへ牧場をつくっているわけでしょう。牧場をつくって焼き畑牧場で安い肉牛をつくって、安い肉をどんどん輸出しているわけですね。その一方では、これは大変だ、あのアマゾンの熱帯林が伐採されて、環境基金をつくれなんてやっているわけですよ。  だから逆に言うと、すべてコスト主義、コスト主義でやってくると、結果的に安いところにしわ寄せが来て、最後は輸出規制になる。ましてやガット・ウルグアイ・ラウンドでも、輸入国に対しては輸入制限を撤廃しなさい、関税化にしなさい、輸出国の輸入制限は残しますよということですから、非常に不公平な論理ですね。だから最近、自由貿易を推進しているアメリカでさえ、御案内のとおりメキシコとの間でのキハダマグロの問題で、メキシコが訴えてアメリカはガットの紛争処理で負けましたね。しかしアメリカはそれを受け入れませんでしたね、国内の環境団体の反対で。だから、結局あのアメリカでさえこれから環境が全面に出てくるとガットルールに従えない、守れない事例が最近出てきているわけですね。そして御案内のとおり、今問題になっていますNAFTA、あのNAFTAでさえ最近は、アメリカの副大統領は環境専門家でありますから、自由貿易といわゆる雇用と環境を絡めてNAFTAに合意項目を入れるという流れになってきましたね。  だから日本の場合、これから先自由貿易体制は堅持していくし、発展させていきますが、我々がモデルとしてきたアメリカでさえ今のNAFTAで環境と雇用を別項目で入れる動きになってきているわけですから、日本の通産大臣として今後の自由貿易体制の中で、やはりゴアさんのような考え方を、どちらかというと通産大臣はゴアさんとよく似たタイプとお聞きいたしておりますから、やはりそういう考え方をお持ちかどうか、それとも従来のコスト主義であくまでもいくべきだとお考えになっておられるのか、その点御見解をお尋ねしたいと思います。
  217. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 あのゴアさんというのは相当論旨明快、ぶっきらぼうな方でして、私とは大分違うのじゃないかと思って、私は相当愛想がいい方だと思っていますけれども…。  基本的に自由貿易をやっていくけれども、そこにさまざまな、単純な自由貿易だけではできないというのが委員の御指摘の点だろうと思うのです。例えば環境問題等で、自由にも限度がある。これは環境は環境についての一つのきちっとしたルールがあり、国際的なルールがあるということであればいいのですけれども、さまざまな貿易のプロセスの中で物差しを絶えずかえて、そして事実上の自由な貿易体制をゆがめるということがあっては、これは要するに実態が形骸化する。私は、いわゆる輸出自主規制という体制は、形は自由貿易の形をとりながら、まさに中身は管理貿易化するということ、こういうようなもので実態が形骸化されることによって世界の経済交流が縮小均衡に向かうということになってはならないというふうに思うわけであります。  ただ、例えば環境だけではなくて、エネルギー等についても実は国際的なルールといいますか、役割の見直しというようなものをやらなければならないのがございます。環境とエネルギーとがいわば混在した形でそうした問題がいろいろございまして、御指摘のように、例えば、このごろは強制収容所の人を使っているのではないかとか、子供たちを虐待して使っているから製品を輸入させないとか、いろいろな議論が混在して起こってきているようになっております。  事態はなかなか、それぞれに論拠がありますので難しい問題ではありますけれども、しかし大事なことは、さはさりながら、自由な通商というものを維持するということが世界が一つの地球的存在として維持される最低限の基本的な枠組みではないだろうか。幾たびかさまざまな理屈に基づいてこれとは逆行することが主張もされ、そしてまた政策的に実行されたことがございますけれども、すべてその代償が高過ぎる、ソーシャルコストといいますか、社会的コストが高過ぎるということで、最終的には自由な通商によって取ってかわられたのではないかと私は思います。  別の論拠でいいますと、日本型の発展を遂げてまいりまして、これをモデルにして実は幾つかの国々、特にアジアの国々が発展を遂げつつあるわけですが、それはまた共通の、日本が世界からやはりこれはかなわぬと思われる体質を持つようになってきているわけでありまして、今、これらの枠組みについて共通の理解をし合って門戸を開き、自由な投資と貿易の交流が行われるようにしようじゃないかということがいろいろな枠組みで話し合われようとしているのは、まさにそのことに起因するのではないかと私は思うのでございます。  したがいまして、今幾つかの例を委員は御指摘になりましたけれども、やはり基本的には、アメリカが今自由な貿易の方向へ向けて、いろいろ確かにございますけれども、アメリカの場合は異議申し立て社会ですから。しかし、それを乗り越えて努力している姿というのは、やはり認めなきゃならないのじゃないか。例えば中国、あの中国とは相当な激しいやりとりをしておりますけれども、現実には中国に対して最大の市場を提供しているのはアメリカでございます。私は、やはりそのことを考えますと、別にアメリカ礼賛主義じゃありませんけれども、アメリカも時に無理なことを言う人もいますし、間違った議論をする人もいるわけでございますけれども、それは正々堂々と我々は論破していけばいいのであって、基本的には、最低限我々がやっていけるのは、自由なルールというものを少なくとも通商面においては貫徹していかなければならない、私はこう考えます。
  218. 山本拓

    ○山本(拓)委員 大臣の趣旨はよくわかります。自由自由でやってこれればいいのですけれども、その結果、今御案内申し上げましたように自主管理貿易が進み、そして実際に問題が出てきた上で、本家本元のアメリカでさえいろいろな環境と雇用対策に対する条項までを持ち込んできた。  それで、いろいろ向こうからの話を聞いていますと、環境保護のコストを払わずに輸出ドライブをかける行為を防ぐために必要な貿易規制措置の発動までもアメリカは考え出しているということでありますから、やはり日本としては、大臣がおっしゃったように自由自由でいけばいいですけれども、自由自由でいかないから今日ガット・ウルグアイ・ラウンドのダンケルさんのペーパーも行き詰まっているわけでありますから、やはりそういう点は、今までのような物差しで自由自由というのではなしに、むしろ環境問題はこれから絶対に絡んでくるわけですし、今ほど大臣がおっしゃったように、国際的なルールがあいまいだからめちゃくちゃな問題が出てきているわけですね。確かにガット二十条にそういう問題がありますけれども、それは空文化しているわけですから、むしろ環境と産業を比較的うまく調和させてきた日本の役割として、これからしっかりとしたガットの中で、環境と貿易に関する国際協定なるものを日本がむしろ提案をしていく必要があるのではないか、この点はいかがですか。
  219. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 私は、委員が御指摘の点、今の環境問題が極めて重要であり、黙っていても、アメリカだけではなくてヨーロッパにおきましても、実は酸性雨の原因になっているようなやりたいほうだいをやっている国、そして低コストだといって品物を送り込まれてはたまらぬというような議論が公然と出てきておりまして、環境と貿易というのはもう不可分のものになりつつある、こういう認識は私共通でございます。  どういうルールをつくるかということについて、私もこれから検討させていただきたいと思いますけれども、ただ、我々は現実にアジア・太平洋地域の中に身を置いておりまして、特に今環境負荷の高い産業構造、エネルギー構造を持つ国々の渦中におるわけでございまして、今おっしゃられたように、単に貿易の面だけではなくて経済協力としても、これは我が国の環境の保護にもなることでございますので、そういうものも含めて広く対外政策に環境問題を取り入れた形で政策をつくり上げていきたいと考えております。
  220. 山本拓

    ○山本(拓)委員 今のお答えは、私が提案申し上げましたことを前向きに、これもまた前進ということで受けとめさせていただきます。  時間がもうなくなりましたので一つだけお尋ねしますけれども、日本の政府が、昔の政府のことを言うと自民党政府になっちゃうわけでちょっとやりにくいのですが、政府がかわっても役所は役所で変わりませんから、役所の対応についてちょっとお聞きしたいのですが、例えばガット・ウルグアイ・ラウンドの恩恵者だということで、日本はこれからもガットルールを尊重していかなあきませんね。しかしながら今、米問題なんかでよく提示されている話は、関税化を受け入れて例えば安い米がどっと入ってくるようだったら、政府ガードがあって、それでとめますよという説得材料も使っておられるわけですね、一説に。しかし、日本の産業界で一番ガットの優等生というのは繊維なんですね。日本の場合、繊維は本当にガットの優等生的存在でやってきましたね。ところが、御案内のとおり繊維業界が、低開発国というのか途上国の安い物がガットルールに乗っかってどんどん入ってきて、業界としてはとてもたまらぬ。それでルール上、MFAですかね、政府ガードの一種をどうかひとつ指揮権発動してくれという話を昔から業界によっては上げてきているのですが、通産省としては絶対それは使わないのですね。  これは通産大臣、繊維業界からそういう要請があるし、実態もよく御存じだと思っておりますが、熊谷大臣としてガットを尊重する上から、こういう繊維のいわゆるガットの優等生がガットルールに従って、国の指導に乗っかって関税率をぐんぐん下げてきて、それで大変な目に遭って、外国ではどんどん発動しているわけですから、日本の場合はこれを発動することはできないのですかね。大臣としてどうですか。
  221. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 自民党政権下における繊維工業審議会総合部会のいわゆる繊維ビジョン中間取りまとめの中では、これは私は当時自民党でございましたので責任を共有するわけでありますが、MFA規制を「発動によって得られる効果と、これによって生じる問題の度合いとを比較衡量し、種々の支援策の実効が期待できない場合の手段」、こういうふうに位置づけているわけでございます。率直に言いまして、今繊維産業だけで言えば、私は、私自身も地元に繊維業界もございまして、毎年のように集中砲火を浴びておりまして、委員のところは絹化繊の方ですが、私の方は綿の方でございまして、もっと激しい、いわば輸入攻勢の中で本当に土俵際ぎりぎりのところに追い込まれた産地を置いておりますのでよくわかるわけでありますけれども、現実に、まず基本的に、大変日本にとっては、経常収支黒字が膨大にあって、なかなか発動しにくいという状況が、これは語られざるまず基本的な背景じゃないかと思います。  もう一つは、仮に規制をしたといたしましたときに、この展望を持たないと、これをやって先行き、その結果、まず抑えておいてこの間にこちらをこういうふうに持っていくということがないと、結局、保護され過ぎた産業がしばしばかえって衰退をすると同じように問題が起こってしまうということでございますので、通産省は、ただ逃げているというだけではなくて、実は苦吟をしているというのが、私は久しぶりに通産省へ戻ってみまして、もっともっと悩みながらいるというのが実感でございます。  実は、先般もパキスタンあるいは中国、韓国、それぞれの、またこのごろはインドネシアなんかもかなり繊維がだんだん強くなってまいりましたので、バイラテラルの経済閣僚との会談ごとにこの問題に注意を喚起いたしまして、我々がやらないからといって問題がないわけではない、ルールに反することをやれば我々だって動かざるを得ないんだよということを申し上げておきました。特に今一番輸出の多い中国とパキスタンにつきましては、率直に申し上げました。とにかく今、自制して、ちゃんと日本の各業界と話をして、実態も明らかにするから聞いてほしいということでありましたので、我々は、それではすぐやっていただきたいということで、この間は矛をおさめてきたわけでありますけれども、しかし、この日本の繊維産業の状況を見ますと極めて重要な課題だというふうに私も考えております。
  222. 山本拓

    ○山本(拓)委員 今の大臣答弁は非常に不満でございまして、納得いたしませんが、時間でございますので、次の機会の楽しみにとっておきます。ありがとうございました。
  223. 中井洽

    中井委員長 次に、吉田治君。
  224. 吉田治

    ○吉田(治)委員 前政権より続きますこの構造不況というふうなもの、今月十五日の月例報告書でも、非常に悪いという状況に陥って、ますます円高等が深まっていくと同時に、中小企業を中心に、これはもう先行きないんじゃないかと。私の地元大阪も中小企業の町と言われまして、私の父親も町工場をやっておりまして、息子が国会議員やのに何とかならぬのかといつもおやじに言われておりまして、これは何とかならぬものは何とかならぬのやと申し上げておるのですけれども、この中小企業円高、またこういうふうな窮状について、大臣、どういうふうに認識され、またどういうふうに対処されていかれるおつもりなのか、まずお答えいただきたいと思います。
  225. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 私もこのごろできるだけ各地域ごとの意見も聞くことにしておりますし、自分もできるだけ時間があればあちこち出ることにしておるわけですが、正直言いまして、大阪が最も今の経済の中で厳しい状況にあるという実感を持っております。日本全体厳しいわけでありますが、とりわけ大阪は厳しいと。これはいろんな要因があると思いますが、御存じのとおり円高の進行で、特に自動車、電機、ましてそれの関連企業の多い中小企業は、大阪の場合は非常に厳しさがひとしおだろうと思います。  ただ、この状況というのを景気循環的な要素で片づけられるかというと、もうもはやそんなことではないというのは、私は立証されたのではないかと思うのであります。幾たびか従来型の景気対策が投入されましたけれども、事態はむしろ悪くなる。それから、円高が来たから悪くなったと、こういうふうに言うのですが、私は、実は円高は人災だと、こういうふうに思っているのです。昨年、私はまだ自民党におりましたけれども、当時の政府経済見通しを見て、この見通しを見た瞬間、この次来るのは円高だなということで、まあ、私はあえて当時の政調会の中でそういう発言もいたしたことがございました。  今のこの経済の状態というもの、これは中期的、構造的な問題の積み重なった日本経済全体の構造改革をやらない限り解決のできない難しい局面に我々は置かれているというふうに考えるわけでありまして、細川内閣が登場後、九月十六日に緊急対策を講じたわけでありますけれども、当面の例えば中小企業に対する運転資金融資を含めて緊急的な政策も講じつつも、この政策は中長期を展望した政策の第一歩にしたいということでつくられたわけであります。しかし、第二歩は第一歩でございまして、これで終わったのではどうにもならないと。規制緩和にいたしましても、あるいは財政金融政策にいたしましても、これから本格的な構造改革政策をつくり上げていかなければならないと思うのでございます。  細川内閣におきまして、総理大臣のイニシアチブで設けられました平岩研究会の検討もあわせながら、我々政治家として思い切った政策をあわせてつくっていかなければならないと考えております。
  226. 吉田治

    ○吉田(治)委員 それでは引き続き頑張っていただきたいと思いますが、次に、今回の米不足に関しまして、これは、特に外食産業等におきましては米の消費拡大ということが今まで叫ばれておりまして、私の手持ちの資料では国内消費の一千万トンのうち約三万トンは外食、中食産業というふうなものに消費されている…(「三百」と呼ぶ者あり)間違えました、三百万トンは外食、中食産業で消費されているというふうに聞いております。  それでは、この米不足に対するこれらの産業へのフォローについてお聞かせいただきたいと思います。できるだけ簡潔にお願いいたします。
  227. 梅津準士

    ○梅津説明員 お答えいたします。  本年は、異例の作柄に加えまして生育がおくれておりまして、新米の出回りがおくれており、特に政府米の集荷が厳しい実情にあることは事実でございます。しかしながらも、ことしのような異例の作柄のもとにおきましても、外食産業向けの米の供給を含めまして、各都道府県の近年の実績を基本に自主流通米と政府米を一体とした需給操作、それから各都道府県別の供給計画をつくりまして、実需に応じた時期別のきめ細かな計画販売、こういったことを通じまして、特定の地域や業者に米が偏在することのないよう適正に販売していきたいというふうに考えております。
  228. 吉田治

    ○吉田(治)委員 わかりました。  それでは次に、今外国から、特にアメリカを中心にさまざまな大学が日本に進出していると聞いております。中には倒産した、もしくは私の地元の岸和田、地元ではございませんけれども、大阪の岸和田では、岸和田市自身が誘致した大学が本部校の倒産によって非常に混乱を招いたというふうな状況において、たくさんの学生の方、また御父兄の方、またそこへ勤める講師、職員の方が多大な迷惑をかけられたというふうに聞いておりますが、この件につきまして、外国大学の日本進出というのは、国際化その他のことで望ましいといえば望ましいのですけれども、現在の対応並びに現状について、文部省のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  229. 喜多祥旁

    ○喜多説明員 お答えいたします。  現在日本に進出しておりますアメリカ大学日本分校でございますが、専修学校として知事の認可を受けておりますのが五校ございます。そのほかにつきましては、学校教育法上の認可を受けていない教育施設として事実上の教育を行っておるというのがおよそ二十数校あるのじゃないかというふうに承知をいたしておりますが、詳細につきましては承知していないという現状でございます。
  230. 吉田治

    ○吉田(治)委員 そこには多大な金額の、授業料という名のもとのお金が払われていると思うのですけれども、その辺は、消費者保護の観点から通産省の方も多分担当だとお聞きしておるのですけれども、同じような教育施設として今非常に派手なCMを打っておられる英会話学校がさまざまあると思うのです。中には、もう倒産してしまって経営者がどこかへ行ってしまったとか、またバブルのときにお金をつぎ込んで、そのお金がどこかへ行っちゃったというふうなさまざまな問題点があると思うのですけれども、こういうふうな教育産業、特に英会話学校を中心とした教育産業についての、倒産した場合の消費者保護策ですとか、授業料の返還、ローンの返済等の免除等をこれから考えなければならない。また、生涯学習という観点からも、こういう産業がいい方向じゃなくて悪い方向に進むのはいかがかと思うのですけれども、その辺につきまして、通産省の担当者の方、どうお考えがお答えいただきたいと思います。
  231. 川田洋輝

    ○川田政府委員 お答え申し上げます。  通産省におきましては、従来から、英会話学校を含む、いわゆる継続的役務取引をめぐる消費者トラブルにつきましては、トラブルの実態の把握、取引の適正化などに努めてまいっているところでございます。  本年六月には、継続的役務取引適正化研究会というところでお取りまとめをいただきまして、今後の継続的役務取引の適正化の方策として、業界、団体などにおいて業種・業態に応じた自主ルールを策定し整備していくこと、消費者に対する普及啓発活動の充実を図ることといったことなどが指摘をされているところでございまして、私ども通産省では、その報告書の提言を踏まえまして、関係業界、団体の指導などに努めているところでございます。  英会話学校などの外国語会話教室につきましては、現在、全国外国語教育振興協会というのがございますが、ここで業界の実態把握あるいは自主ルールの策定、整備に努めているところでございまして、私どもこれを今後ともプッシュしていきたいと考えております。
  232. 吉田治

    ○吉田(治)委員 この問題に関しましては、消費者というのですか生徒さんが、カリキュラムが悪いですとか授業の教え方が悪いというのが非常に言いづらい業界だと思うのです。授業を習っていて、あなたの能力が足らぬと言われたらそれまでの話でございますので、引き続き通産省におきましてウォッチなり、また実態把握を続けていただきたいと思います。  それに関係いたしまして、通訳、翻訳等の問題点について、お聞かせいただきたいと思います。  日米構造協議に代表されます貿易問題というふうなものの根底には、単に国内事情ですとか文化の違いだけではなくて、私自身、翻訳、通訳上の問題があるのではないかと思っております。例えば、市場開放論議等で、一番卑近な例は半導体摩擦ですか、この半導体の問題解決、日米半導体協定の中において、やれ目標値だとか目的値だとか、それまでにやるんだとかやらないんだとか、これはすべて、いかがでしょう、言葉の解釈、つまり翻訳だとか通訳の能力、もしくはその言葉の裏に隠された意味というふうなものを理解される力が足らないというふうなものがあるのではないでしょうか。  よく言われておりますように、日米構造協議が、トークというふうに始まったのがいつの間にかネゴシエーションになってしまった。その中には、パーセプションギャップですとかコミュニケーションギャップとよく言われる言葉があるのですけれども、この件につきましての政府のお考えを明らかにしていただきたいと思います。
  233. 坂本吉弘

    坂本(吉)政府委員 ただいま御質問の、日米間のいろいろ貿易摩擦問題に対する対応の仕方というのは、いろいろなパターンがあるわけでございますけれども、例として日米半導体協定というのが一つの典型的なケースとしてございます。これにつきましては、文言上、エクスペクテーションということで一つ期待が示されたわけでありますけれども、これはアメリカサイドでいわば一種のコミットメントというふうにとられて、三〇一条の対象になったというようなことがございました。どうしてもその数字というものが、たとえその性格が期待であるとか予測であるとか、そういうことであったとしても、結果的には数字がひとり歩きしてあたかも約束のようになることが起こりやすいというのは、どうしても外交関係には起こりやすいことでございます。  したがいまして、交渉の段階におきましてそういった誤解が生ずることのないよう、受け入れるものは受け入れる、できないものはできないということをはっきりさせていくというのが従来までの日米などの交渉における我々のひとしく学んでいるところであるわけでございます。したがいまして、今御指摘のように、貿易摩擦の解決その他につきましては、その点を今後ともはっきりしながら臨んでまいりたい、そんなふうに考えているところでございます。
  234. 吉田治

    ○吉田(治)委員 ありがとうございます。  いずれにいたしましても、この通訳ですとか、翻訳の問題というのは、通訳者自身、また翻訳者自身の質の向上というものを図らなければ、ある意味では今後の経済の国際化の中で非常に支障になりかねないと思うのですけれども、これらの専門職というのですか、これの養成システムを一層充実させるために、現在ですと、先ほどの英会話学校のように、私塾、私の学校で生徒を集めてやっているよとか、大きなところはそういうふうなシステムをとられているらしいのですけれども、そういうような翻訳者、通訳者学校の質の向上、また通訳者、翻訳者自身のカリキュラムですとかシステムですとか、そういうようなものが必要だと思うのですけれども、その辺についてはいかがでございましょうか。
  235. 川田洋輝

    ○川田政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように、翻訳あるいは通訳のレベルを向上するというのは、国際的な相互理解を深めるという観点から大変大切なものだと認識をいたしております。  翻訳業につきましては、私どもビジョン策定の事業などに補助金を交付するとかいったことで、社団法人日本翻訳連盟というところの活動に対して支援を行ってきておるところでございます。  通訳業につきましても、同じように大変大切な仕事だと思っておりますが、翻訳業との兼業とかあるいは個人による営業も多いというふうに思われまして、詳細は必ずしも明らかでございませんけれども、大変大切な仕事でございますので、私どもサービス産業全般を所管しておる部局でございますが、ぜひとも国際理解増進の上から今後ともこういう方面にも力を注いでまいりたいというように思っております。
  236. 吉田治

    ○吉田(治)委員 引き続き関係各省庁には、この問題に関しましては鋭意努力していただきたいと思っております。  やはり言葉の壁というふうなものがすべて、例の服部君の事件も象徴しますように、さまざまな問題を引き起こしていると思っておりますので、これは単に一省庁の問題だけじゃなくて、ある意味で関係省庁、また国としてのお取り扱いをしていただきたいと思っております。その点、忘れてはならないのは、英語だけぺらぺらしゃべれるのじゃなくて、しっかり日本語のできる人間が英語がしっかりしゃべれるというふうにしていただければいいかと、大学で英語の授業を持っております私としては一言付言させていただきたいと思っております。  以上でございます。
  237. 中井洽

    中井委員長 次に、吉井英勝君。
  238. 吉井英勝

    吉井委員 細川総理は、さきの日米首脳会談で、日米間の不均衡は認識している、日本の黒字を中期的に意味のある形で縮小すると約束をしてきました。通産大臣は、せんだっての委員会でも文春三月号を使われた方がおられて配付されておりましたが、我が国の巨大な経常収支黒字は、世界の撹乱要因とみなされ始めているとして、我が国が一方的に貿易黒字をふやし続けなくとも成長できるように、日本経済の構造改革に取り組む必要があると述べておられます。  そこで、まず大臣に伺いたいのですが、このそもそも異常な貿易不均衡をつくり出してきた我が国内部の要因というのは、自動車、電機などごく一部の巨大企業による異常な輸出攻勢にあったと私は思うのですが、この点についての大臣の認識を最初伺いたいと思うのです。
  239. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 日本の経常収支の黒字がバブルの時期ちょっと下がりかかったのですけれども、その後また一貫してふえ続けている、これはいろいろな要因があろうと思います。  一つには、国内の経済低迷したために輸出の圧力が強まる、また国内の内需が弱くなったために輸入はむしろ減りぎみになる、こういうことが今の数字の背景にあると思いますが、基本的には、我が国の経済の仕組みがやはり輸出立国的につくり上げられてきたということが大きな要因であろうと思います。私どもはまさに円高という形によってこの事態を反撃されているわけでありますが、このことを正面から受けとめて経済の構造を変えていかなければならないというのが私ども考え方でございます。
  240. 吉井英勝

    吉井委員 輸出立国的にやってきた、まさにそれが異常な輸出攻勢で今日さまざまの問題を起こしておりますが、そこで具体的に少しお聞きしておきたいのですが、我が国の輸出総額の中で、トヨタ、日産、本田、松下、ソニーなど大企業の輸出総額はどれだけ占めているのかという問題です。  ちょっと通産省数字の方を確認しておきたいのですが、上位十社で見たときに輸出総額に占める割合は三三・八%、上位三十社の比率というのは五一・三%、こういうものであると思うのですが、まずこの数字を確認しておきたいのと、さらに対米貿易黒字のほとんどは、結局これら巨大企業の生産する自動車と自動車部品、電気及び事務用機器の輸出超過によるものだと思うのですが、通産省の方、この点とういうふうになっておりますか。
  241. 中川勝弘

    中川政府委員 ただいま先生指摘のとおり、輸出額の上位十社、有価証券報告書で計算いたしますと、輸出総額十四兆五千億でございまして、輸出の総額が四十三兆一千億でございますので、十社で三四%、それから三十社の場合が二十二兆一千億に対して四十三兆一千億でございますので、三十社で五一%となっております。  それから、対米収支の貿易黒字の中で大きなウエートを占めておりますのは、御指摘のように自動車あるいはハイテク製品が中心でございます。
  242. 吉井英勝

    吉井委員 そういう点、お互いに確認し合った上で少し見ていきたいと思うのですが、前回の八五年九月のプラザ合意による円高・ドル安政策に転換したときに、我が党は、日米貿易不均衡の原因について、アメリカ側の要因と日本側の要因、アメリカ側の要因としては、貿易赤字と財政赤字の双子の赤字を生み出しているアメリカ自身の産業空洞化政策の問題と軍拡政策です。軍需産業に偏重していっている、そういう問題。我が国の問題としては、国内的な要因としては、劣悪な労働条件とか下請中小企業いじめを土台とした一握りの巨大企業の猛烈な輸出攻勢にあるのだ、このことを指摘してまいりました。  ところが、この急激な円高の中で巨大企業円高不況のツケをすべて今度はこれまた労働者、下請中小企業に押しつけて猛烈なコスト削減に取り組みました。その結果どうなったかというと、我が国の大企業は異常な国際競争力を一層強めるという結果になって、これが貿易不均衡を史上最高のものに拡大してくる、またまた最近の例の急激な円高、長引く不況をさらに深刻化させる、こういう事態を生じてまいりました。  大臣は、せんだって、十月二十二日付のあなたの地元の静岡新聞、「熊谷通産相に聞く」というインタビューで「黒字は個々の輸出企業のものであり、それが必ずしも国民個々の生活の豊かさにはつながらない。」「個人は置き去りにされた。」と述べておられました。私はこの点はあなたと思いを同じゅうするところなんですが、このごく一握りの輸出大企業が猛烈な輸出攻勢で貿易黒字を史上最高に拡大し、その結果急激な円高が生まれてくると、今度は自分の利益を第一として、国内生産を縮小して国内産業を空洞化させてどんどん海外に出ていく、そして労働者、下請中小企業、国民に犠牲をしわ寄せする、こういうやり方です。これは大企業には社会的責任というものがあるわけですから、こういうやり方はやはり根本的に改めさせていくということが通産大臣として相当力を入れて取り組んでいただかなきゃならぬところだと私は思うのですが、大臣、この点いかがでしょうか。
  243. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 委員の御議論の最初の部分というのは、私どもも学生時代によく読んだ、世の中をやや文学的に見る、文学者というのはかなり偏っているところもございますので、それは一つの仮説でございますから、一つの立論だろうと思うのですが、私は、今の世界は多少欠陥はありましても市場の論理というのが強く働く世界だろうと思いますし、特に我が国の場合は市場の論理というものが働く世界でございまして、期せずしてさまざまな問題がその結果として生じたということは認めるわけですけれども、例えば車の業界が大企業であり、ハイテク産業が大企業になるというのは、産業の持っておる宿命といいますか、資本集約型であり、規模の利益が非常に働く世界であり、特にハイテク産業になりますと、技術革新の分野に膨大な投資が必要だということになって大企業が一層有利になっていくということもあったと思います。そして、そのような大企業の周辺にさまざまな中小の企業がすそ野産業を形成して非常に強い競争力を持ち、それが輸出を振興させていったということであろうと思うわけであります。  私が新聞のインタビューで言った、そのまま録音されたものではないと思いますが、実はそれは中身は見てないのですけれども、インタビューに応じたのは事実でございますが、言わんとしたことは、みんな黒字がたまった、世界じゅうからはこんなに豊かになった、こう言われるんだけれども、ところが、それぞれの個々人から見ると、そんなに別に豊かになったとは思わないよという実感がある。それは日本には二つ問題があって、一つは、会社と個人でいうと、やはり会社主義という社会システムになっているからではなかろうか。それは突き詰めていくと税制その他の社会システムがあるのだ。第二は、いわゆる内外価格差という問題がございまして、一ドル百円で強くなった。確かに強くなった産業はそれだけの為替レートでも何とか、ちょっと一ドル百円近くなりますともう本当に息がぜいぜいしてきているわけですけれども、ところが我々の生活実感でいうと、いわゆる購買力平価、円は一ドル二百円の価値しかないのじゃないか、外国へ行くと初めてこんなに円というのは価値があるのか、国内で使ってみるとそんなに価値がない、こういう構造ができているがゆえに実は問題があるので、我々はまず社会システムを、これは税制も含めてでございますけれども、より個人に重心を置く政策をとっていくべきではないか。もう一つは、内外価格差というものを是正するためにあらゆるリソースをモビライズするといいますか、動員をしていくことが重要ではないかということを申し上げたかったのでございます。  しかしながら、現実に円高が進行いたしまして、その結果として中小企業方々も大変な苦しみを味わっているというのは、私もその部分に関しては委員と全く同じ認識を持っておりますけれども、しかし、実は大企業の方もまた塗炭の苦しみを味わっているわけでありまして、コストダウンを単に中小企業に押しつけているだけではなくて、今リストラクチャリング、みずからの再構築に向けて非常な苦労をしているということも事実でございまして、私どもはそういう苦労をやはりしていかないと、この次の時代に備える産業構造にならないと考えているわけです。  しかし同時に、そこから出てくるさまざまな、雇用問題を含めて、あるいは中小企業問題を含めて、新しい分野に出ていくとか、みずからも海外に出ていくとか、あるいは取引先が需要の縮減に応じた体制をとる以上は、協業化して、お互いに手を組んで、こちらもコストダウンを全体としてシステムとして図るとか、そういったことができるように今回もリストラ法というのを出しているわけでありますけれども、そういった工夫を凝らしていかなければならない、こう思っておるわけでございます。
  244. 吉井英勝

    吉井委員 インタビューは、大臣、文学的な思いで述べられたのかもしれませんが、私は、文学の議論をしているわけじゃないわけで、経済、産業の問題をやっておるわけです。  それからもう一つは、誤解があってはいけませんからはっきり申し上げておきたいと思うのですが、大企業を悪として言っているのじゃないのです。大企業には大企業としての社会的責任というものがかかってくるのだから、それはうんと大きくもうけて、内部留保を蓄えるなど、利益を上げて、蓄えたものをそっちはしっかり抱え込んでおいて、自分の輸出攻勢で貿易不均衡をつくる、円高が生まれてくる、そうしたら、今度は働いている皆さん、中小企業のそこを犠牲にして、自分はどんどん海外へ出て、自分はどう生き延びるか、これだけでは日本の経済、産業の問題としてはだめなのですよということを言っているわけなのですよ。私は今こそ、この円高、コスト削減、大量の人減らし、合理化、これがまた国民生活を悪化させたり、一方では貿易黒字を拡大する、そして貿易摩擦の激化、また円高というこの悪循環、こういうものがずっと続いてきておりますが、ここをやはり断ち切って、日本経済のひずみを正す必要があると思うのです。  大企業の大量の人減らしとか合理化、工場閉鎖をやっていると、それは結局また消費購買力を落としめて、仮に逆輸入したって物はだんだん売れなくなるわけですし、今日本は、こういう点では、内需の拡大とか所得減税実施だといったって、そういうやり方をしておったのじゃ内需自体拡大できないわけですから、根本的な対応というものが求められてきているのだ、このことを申し上げまして、少し具体の事例に即して今の話を展開していきたいと思うのです。  最初に、自動車、電機など巨大企業の輸出ラッシュの問題、先ほど少し指摘しましたが、トヨタと日産の国内及び海外生産の比率、ことしに入って昨年と比べてどう推移しているかというのを少し見てみますと、これは通産省の方に確認しておきたいのですが、トヨタ自動車の方は国内生産が、ことし一月から九月ですが、対前年比で国内は七・四%減少して、海外生産が一九・八%伸びている。日産自動車は、国内で一三・六%減少して、海外で三三・九%伸びている。これが、昨年の海外生産の比率と今年度の九月までのものを比べてみますと、トヨタ自動車では、昨年一六・三%の割合が一九・八%と海外がふえ、日産は二九・〇%から三五・五%と、国内ではうんと生産を縮小して、海外ではうんと拡大する、比率の面で見ればはっきりそういう傾向を読み取ることができるのです。この数字の面で、これも通産省と認識が違ってはいけませんので、ちょっと確認しておきたいと思うのです。
  245. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 お答え申し上げます。  トヨタ、日産がそれぞれ事業計画とプレスリリースした資料で拝見いたしますと、おっしゃるような数字になっておると思います。
  246. 吉井英勝

    吉井委員 先ほども出ておりましたもう一つの電機の方ですね。カラーテレビとVTR、この海外生産の比率というものを、一九八五年と九二年でどう推移しているかというのをちょっと見てみますと、カラーテレビについては、海外生産の比率が八五年の三八・八%から六五・九%、VTRが六・三%から三六・一%、いずれも急速に海外生産にシフトしていっていることを読むことができますし、ことしの一月から八月の方で、国内生産と輸入数量、これは大蔵の統計なども見て読み取りますと、カラーテレビでは、国内生産は一一・八%減少しているのですが、輸入の方は四七・六%伸びている。VTRは、国内生産が一九二一%落ちているのに、輸入の方は三五・五%伸びている。これが今の日本の電機の実態だと思うのですが、これも数字が異なっておってはいけませんから確認させていただきたいと思います。
  247. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 御指摘数字、おおむね正しゅうございますが、私ども数字は、VTRの八五年の海外生産比率六・三が、九二年では三二・二という数字になっております。その一点を除きまして、おっしゃるとおりでございます。
  248. 吉井英勝

    吉井委員 海外進出と、海外生産拠点からの逆輸入というのが急激に進んできているということがこれらの数字の中でも示されておりますが、大事なことは、猛烈な輸出ラッシュで貿易摩擦、異常円高を引き起こして、それ自体国民に多大な困難をもたらしたその企業が、今度は、国内では採算が合わない、だから国内生産を縮小、廃止して、あるいは工場閉鎖まで行って、一斉に海外へ生産拠点を拡大していく、私は、ここにやはり今日根本的に考えなきゃいけない問題があると思います。  その点で、実は、ことしの一月、日本共産党の不破委員長が、衆議院の予算委員会でこの問題を取り上げました。生産の海外移転が日本の景気に大きな影響を及ぼす程度にまで広がっているとして、電機、自動車の具体例を示して、「海外生産移転の流れは企業が自己規制すべきだし、政府としても凍結すべきだ。」こういう追及を行いました。これに対して当時の森通産大臣は、「企業の海外展開が現時点の雇用状況に悪影響を与えているとは考えられない。」と、そのときは答弁したわけです。しかし、そのやりとりの後、一カ月もたたないうちに、日産自動車は神奈川県座間工場 で閉鎖を含む大合理化計画を突然発表しました。私も、二月の衆議院予算委員会の総括質問でこれを取り上げましたけれども、その後も自動車、電機など大企業は、一斉に工場閉鎖あるいは大量入減らしの計画を次々と発表しております。森通産大臣は、企業の海外展開が雇用状況に悪影響を与えているとは考えられないと言ったのですが、まさに雇用に重大な影響を与えるという事態がその後続出してきております。  そこで、大臣にお聞きしたいのですが、海外進出一般の問題としてではなくて、一般的に言って、いいの悪いのということについて、それをああだこうだと言う、それは大臣、お考えはわかっていますから、わかった上で聞いているのですが、少なくとも労働者や中小企業、地域経済に重大な影響を及ぼす大企業の海外進出については、せめて不況の間は凍結してもらわなければ困る、それぐらいのことは言って、やはり政策的にもそういう指導を強めていくということが今求められているときだと思うのです。大臣のお考え伺いたいと思います。
  249. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 海外投資、自動車についても電機産業についてもそうなんですが、いわゆる国際的な調和のある産業構造への転換、あるいは対外不均衡の是正ということに役に立つことは、これは事実でございます。しかし、これがまた他面で、今委員指摘のように行き過ぎますと我が国産業の空洞化につながる、これも我々、アメリカの例を見るまでもないわけでございます。やはり物事にはほとほとがあり、バランスというものがあるわけでありまして、ただ、それをいわゆる指令経済としてやるべきものではない。我々は、市場の仕組み、経済政策の組み立て方によってそういうことが行われるようにしていかなければならないと思うのでありまして、過度な円高もそうでございますし、いわゆる内外の価格差もそうでございますし、そういうものを是正していくような政策を積み上げていくというのが私は基本的な道筋ではないだろうかと。  そのために、まず第一に内需主導型の経済政策経済運営、これを行うこと、いわゆるマクロの調整でございます。第二に、規制緩和をやったり、あるいは成長性のある産業をつくり上げていくというようなミクロの調整もやる。さらに、委員先ほど来具体的に御指摘のように、産業あるいは企業、やはりどうしてもリストラクチャリングせざるを得ないものもあるわけでございまして、そういうものについても雇用の問題に目配りしつつこれを進めていく、そのための環境条件を整える。あえて言えばミクロとマクロの間ぐらいのセミマクロというような、そのくらいの分野になるだろうと思うのですが、そういったものを三位一体的に組み合わせた道筋をつけていくということが私は基本的に大事だろうと思うのであります。  今、日産の例をお示しになられましたけれども、もともと日本の自動車産業、私、自動車の専門家ではありませんけれども、少なくとも内需自体がもう低迷しておりまして、日本を世界の製造工場にして、日本でつくったものしか売らないよというのでどんどん輸出だけするというのは、アメリカを含めて世界じゅうが勘弁してくれということになっているわけですから、今私は、日本の自動車産業が、あるいは電機産業がやろうとしていることは、むしろマーケットをカルチベートするような、向こうへ出かけていって、今まで乗っていない、今まで使っていないというような地域に出かけていって工場をつくって生産をして、そこでマーケットを維持しながら、また日本にも輸出をしてくる、日本からすればいわゆる逆輸入ということになるわけですけれども、そういったことが実現することによって、内外バランスのとれた水平分業というのはまたある面望ましいことでもあろうと思うわけであります。  相手だって、日本から買うばかりではお金が入らないわけですから日本にもある程度売る。原材料でしか売るものがないとしても、日本は製品を売るということだけでは、これも相手の国の人たちもまた製品を買ってほしいということもあるわけでございまして、ただ問題は、今委員指摘のように、その結果として日本の産業が空洞化してしまう、日本経済が空洞化してしまうということを避けなければならないわけでございまして、そのために所信表明でも申し上げましたように、バランスのとれた政策、三位一体でやっていきたいというのが我々の考え方でございます。
  250. 吉井英勝

    吉井委員 集中豪雨的な輸出が問題を引き起こしていること、それから、産業空洞化を続ければ、大臣も、アメリカの例を見るまでもなく、産業の問題だけにとどまらないで社会の荒廃を招いてしまう問題など、深刻な事態をもたらしてしまうということについてはお考えだと思うのです。  さて、どうするかという点については、要するに、資本主義経済の枠の中で規制と誘導のやり方についていろいろそこには違いがあるにしても、そういうやり方でやろうということだろうと思うのです。  私はそこで、少し具体的な実例に基づいて次に伺っていきたいのですが、三洋電機の子会社で三立電機というのがありますが、ここの徳島工場、ことしの春まではパート、下請の方を含めて、関連従業員約五百人というところでした。現在は従業員百六十八人で、CDラジカセの組み立て工場があるのですが、三洋電機がこの十月末で発注を打ち切るということで、工場閉鎖の危機に見舞われております。私も今月初め、三洋電機の本社にも行きましたし、三立電機の徳島工場にも調査に行きました。三洋電機の話では、海外ヘシフトするから発注停止というのではない、消費不況で発注するものがなくなってきたということだったのですが、しかし三洋電機の方でよく聞いてみますと、海外生産拠点からのオーディオ製品の逆輸入というのを昨年の五十万台から七十五万台へ五割も拡大しているわけです。カラーテレビの輸入も五十万台へ拡大している。一方、二十六年間、三洋の一社専属で尽くしてきたこの下請企業への発注を突然停止ということですよね。  こういう事態になりますと、これは工場閉鎖に追い込んでいくやり方であるわけですし、なるほどこれまではその下請企業であったかもしれぬけれども、自分のところの生産工程の完全に一ラインとして動かしてきて、それで今度は完全にとめてしまう。余りにも身勝手なやり方だと思うのですが、私はさっき言いました具体な話に照らして言いますと、こういう問題について、それは大企業としてやはり社会的責任を果たさないといけませんよと。どういう規制と誘導の仕組みで大臣がされるかは別としても、やはりそういう指導というものが今必要な時代じゃないかと思うのですが、この点、大臣、どうですか。
  251. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 家電メーカーはとりわけ今の状況の中で厳しい立場に置かれておりまして、まさにサバイバルゲームをやっておるというふうに思うわけでありますが、そのための生き残りの道としてさまざまな工夫をしておられるのだろうと思うのですけれども、御指摘の件、私も詳しくは承知はいたしておりませんけれども、そういう過程の中でぎりぎりの選択をしたものだろうと思うわけであります。  一般的に言えば、もちろん経済の論理ですから、海外生産をするというのは企業によっては自由といえば自由なんですけれども委員も先ほど来おっしゃっておられるように、企業は一面また社会的存在でもございまして、その社会的責任もあるわけですから、さまざまな地域経済、従業員も含めて、地域経済に含めても配慮するのはこれは当然のことだろうというふうに思っております。  まあ個々のケースをすっぽり支えることができるかどうかは別といたしまして、通産省としても、海外生産にシフトするということはこれから起こってくることでございますから、そういうものについて地域経済その他目配りをしながらやっていくということを、これはやはり各企業にメッセージを送りたい、行政指導じゃございませんで、我々としてはできる範囲の最大限の友情ある説得を行いたい、こう思っております。
  252. 吉井英勝

    吉井委員 私は、これは今全国的に広がっている一つの事例として、この企業をこの委員会で特にということじゃなくて、これが非常に典型的にあらわれているから、ぜひよくお聞きもし、考えていただきたいと思っているのです。  私、三立電機の徳島工場に行ってきました。仕事はもちろんですが、技術設計から材料から主要設備、計器類、すべて三洋電機からの貸与ですね。新機種の生産に当たっては必ず三洋から技術指導を受ける。ですから文字どおり、確かに会社としては一応三洋でない形になりますが、完全に三洋の一ライン、組み立てラインそのものなんですね。その三立電機がことし四月から六月にかけて四十日間、さっきも出ておりました雇用調整助成金制度に基づく一時帰休というのを実施しました。実施に当たって、三立電機の社長に同行した三洋電機の部長は四国通産局で、帰休明けの発注を何とか継続するように努力すると約束しているわけです。ところが約束に反して、三洋電機は七月三十日に突然、十月末で発注をやめると通告を出してきたわけですが、重大なのは、三洋電機は、三立電機で生産を予定していたものを、十一月からは、国内で販売予定の新機種のCDラジカセを一時帰休中にマレーシアでの生産に変更するという決定をしているのですね。これは雇用調整助成金制度を悪用した非常に悪質な行為だと言っても言い過ぎでないと思うのですよ。こういう点で、三立電機への一方的な発注停止の通告を撤回し、工場存続に努力するように三洋電機に対して、友情ある説得、対応をということですが、私が三立電機の問題にこだわっているのは、上にあるのは三洋電機ですよね。  私の大阪というのは、三洋から松下からシャープ、家電メーカーのずらりとあるところなんです。ここでこういうことがあいまいにされておったときには、実は後ほどまた触れていくのですが、大阪の家電関係の下請、孫請をやっている町工場は本当に深刻な事態を迎えています。だからこそ、まず具体的にあらわれた問題について、大臣として直ちに特段の指導をやっていただきたい、こういうふうに思うのですが、どうですか。
  253. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 私は、その徳島とか大阪よりももっと貧しくて恵まれない町に生まれ育ちまして、今でもこの町はあるわけでございますけれども、もうちっちゃな企業をやっとやっとみんなで苦労をして誘致をいたしまして、不況が来るたびにこれが閉ざされるというのを経験してまいりました。しかし、その際にも我々はみんなで町長さん以下と走り回りながら、通産省の窓口に行ったって目もとめてくれませんからね。我々は自助努力でいろいろやってきたわけであります。  もちろん、だからといって私がどうこうと、これを逃げるということではございませんで、ただ申し上げたいのは、三洋さんを含めて、これは私直接聞いたわけじゃありませんけれども、家電メーカーも好きでこれをやっているんじゃないだろう、恐らく塗炭の苦しみを味わい、恐らく途中では融資もしたでしょう。いろいろな仕事も自分の骨身も削ってもやるというようなことを、私の今までの、他のケースでございますが、体験ではいろいろやって、なおかつ、恐らくもうせっぱ詰まった形ではないだろうかなという感じがいたします。  我々としては、特定の企業に指示権があるわけではございませんので、委員に先ほど申し上げましたように、友情ある説得をしつつも、そこから起こる社会的摩擦を極小化するように努力をしていかなければならない。通産省だけでできることではありませんが、各省庁連絡をとり合って努力をしていきたい、こう思います。
  254. 吉井英勝

    吉井委員 今大臣、通産省は目もとめてくれぬとおっしゃったけれども、あなたが大臣の間には目もとめ、目もかけるような通産省にしてもらいたいと思います。  それで、三立電機の非常に高齢の会長が私におっしゃったのは、三洋の仕事一筋に二十六年間頑張ってきた、不景気になってから他社の仕事を探せと言われても困るんだ、海外に移すから発注停止と言われたんじゃもうお手上げだ、二十六年尽くしてきたんだ、もう悔しいと言って男泣きに涙されました。私は、今非常にそのことが印象に残っているのですが、中小企業家のこういう悲痛な声にこたえることこそ、今本当に日本の通産行政に求められていることだと思うのですよ。  特に私は、通産省と三洋との関係というのは単なる友情関係ではないと思うのです。例えば通産省の技術開発補助金、昨年は八億四千五百万円、ことしは十億四千万円を三洋電機に出しておるのですよ。三洋電機は通産省に随分お世話になっている会社なんですよ。もらう分はもらっておいて、通産省から言われたってそっぽ向いて言うことを聞かぬというのはとんでもない話だと思うのですよ。  それで、通産省が告示した下請中小企業の振興基準では「親事業者は、継続的な取引関係を有する下請事業者との取引を停止し、又は大幅に減少しようとする場合には、下請事業者の経営に著しい影響を与えないよう配慮し、相当の猶予期間をもって予告するものとする。」これが大体六カ月ということですが、下請中小企業振興法第四条には、主務大臣は、必要があると認めるときは、親事業者に対し、振興基準に定める事項について指導を行うものとすると明記しているわけです。あなたにはそれだけの権限があるのですよね。だから私は、友情という段階じゃなくて、やはりこういう事態になっているときに、法律に基づいて三洋電機に対して具体的な指導をするんだ。具体的な指導の中身というのはきょうは置いておきますからね。ですから、法律上の細かい話は、事務方の方はいいですから、大臣にその決意だけお聞かせいただいて、あとのことはまた事務方の方と話をしたいと思います。
  255. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 それぞれの法律なり手続に従っていろいろなことが行われるのは当たり前の話でありまして、それに基づいて三立電機さんの件につきましても行われるだろうと思います。  ただ、ここで申し上げておきたいのは、役所が、江戸のかたきは長崎で方式で、この補助金を出しているからとか、おれらの言うことを聞かないととんでもないところで弾を撃つという、これが日本の官僚機構の最も悪いところだと実は私は思っておるのですね。これはたまらないですね。突如、文書を渡そうとして渡しても受け取らなかったり、入れたままほうり込んでおいたり、サボタージュする。本当は尊敬していないのだけれども、たまらないから頭を下げるというケースを私はたくさん見てまいりました。したがって私は、政治家として通産省に戻ってまいりましたのですが、そういう姿というものを変えていきたい。透明性の高い、役所が尊敬されるとすれば、役人が尊敬されるとすれば、見識で立ち向かうべきだ、江戸のかたきは長崎で方式のやり方でやるべきではない、私はそう思っておりますので、ただ、委員が御指摘の件につきましては、私どもも事態をつまびらかに検討してみたいと思います。
  256. 吉井英勝

    吉井委員 私は、江戸のかたきを長崎でというような、そんな次元の話で言っているのじゃないのです。なぜ補助金を出しているかといったら、やはりそこには社会的な存在でもあれば技術的な力もあり、もっと大きな社会的な役割を果たしてもらうということを国として考えてやっているのでしょう。その中身の当否は私はここで議論しませんが、ですから、そういう社会的存在として認めてやっている企業に、社会的存在を果たしなさいよ、これぐらいのことを言うのほかたき討ちとは全然次元の違う話ですから、ですから私は、やはり友情という次元の話じゃなくて、法に基づいて厳格にやっていただきたいということを申したわけです。ぜひそういうことで取り組んでいただきたいと思います。  次に、その問題がちょうど今の、さらに二次、三次の中小下請企業の問題とかかわってくるわけです。私は大阪ですから、三洋、松下、シャープの下請などを随分回ってきておりますが、大阪の中小企業というのはなかなかのもので、例えば畳二畳ぐらいの町工場で、数値制御のコンピューターつきの精密工作機二千万円、エアコンその他部屋の改装費を入れて二千五百万円ぐらい投資して全く親方一人でやっているところでも、非常に高い技術力と親方自身のすぐれた加工技術、能力、そういうものを日本の中小企業は持っておるのですよ。これが支えてきたのですよ。ところが、その中小企業が今はどうなっているか、これが今の問題だと私は思うのです。これが今、大企業はどんどん海外へ出ていく。中小企業、下請企業経営者はみんな本当に大変なんです。ことしの暮れが越せるかどうかという深刻な事態です。既に経営が行き詰まって自殺をする人も随分出ているんですよ。そういう中で、下請代金支払遅延等防止法、下請中小企業振興法などによって一定の努力をやっているのは知っておりますけれども、実際には一方的かつ一律の単価切り下げとか発注削減、発注停止というのが横行しておって、これはもうまさに下請無法地帯とも言うべき事態になっております。  私、中小業者のところを回ってずっと一軒一軒アンケート調査をやって、事細かに記入してもらって集めて調査をするというのを大阪の方で取り組んでいらっしゃる方から幾つかそういう資料をもらっているのですけれども、親会社は、ことしから来年にかけて中国、マレーシアに海外生産することを決定して、残った製品についても外注から内製化する計画を持っている、毎月の受注が減少していって自然廃業に持っていかれそうだ、いわば中小下請企業が自然死の状態に追い込まれる、こういう事態が、先ほど挙げたような大手の電機メーカーの二次、三次で出ているのです。設計の下請ため、木型がため、金型がため、プレスがため、もう三割、五割の減、仕事欲しかったら単価の切り下げ、将来の展望は見通し持てません、こういうところへ今置かれているんですよ。  ですから、私はこの機会にまず公取の方に伺いたいのですが、こうした実態をどう認識しておられるか。けさの朝日を見ておりましても、二万社を対象に公取と中企庁で実態調査をやっておられるという取り組みも載っておりましたけれども、年末にかけて親企業が下請に対して一層の無理難題を押しつけてくるということも予想されますので、下請代金法の運用を一段と強化することなどを含めて、具体的にどう対応していかれるのか伺いたいと思います。
  257. 植松勲

    ○植松政府委員 公正取引委員会の方からまずお答えさせていただきます。  下請法違反行為につきましては、下請事業者からの申告というものが問題の性格上余り期待できないわけでございます。そのため、公正取引委員会におきまして、毎年親事業者それから下請事業者に対して、違反行為の発見のために定期的な書面調査を行ってきております。  これに加えまして、今般の円高などの状況にかんがみまして、親事業者が下請事業者に対して不当なしわ寄せ行為を行うことが懸念されるため、円高などの影響が大きいと思われる一般機械器具製造業などの下請事業者約一万社を対象に、下請法違反行為が行われていないかどうかについて、毎年定期的に行っている書面調査とは別に、今回特別に書面調査を行うこととしまして、今週末から実施することとしております。この特別調査によりまして下請法違反の疑いのある行為が発見されれば厳正に対処することとしております。  また、特に年末におきましては下請事業者の資金繰り等について厳しさが増すことから、中小企業庁とも連携しつつ、親事業者による不当なしわ寄せ行為が行われることのないよう、下請法遵守の一層の徹底を図るための通達を発出することなどを考えております。
  258. 吉井英勝

    吉井委員 とにかく実態は深刻で、私は大阪だけ言っているんじゃないのです。この間、委員長の三重県も本田は大変ですよ、本田の調査も下請の方とお会いして調べてきましたが。それから今度の公取、中企庁の調査にしても、三次、四次を含めた本当に徹底した調査をこの機会にやっていただきたいと思うのです。  中企庁に伺いたいのですが、公取と力を合わせて、下請代金法の運用はもとよりなんですが、下請中小企業振興基準の徹底など、親企業の下請いじめをやめさせること、下請中小企業を守る取り組みを一段と強めていただきたいと思います。この点についての取り組みなりお考え伺いたいと思います。
  259. 長田英機

    長田政府委員 まず、先ほどの下請代金支払遅延等防止法の関係でございますが、私ども中小企業庁も、九月十六日の経済政策の決定にのっとりまして、日ごろやっている調査とは別に、一万件を対象にしまして十一月初旬に調査にかかりたいと思います。その調査結果によりまして、違反の事実を行っていないかどうか、それを調べた上で適切に対応をしたいと思います。  また一方、今御指摘の下請振興基準というのを下請振興法で決めておりますので、この基準の遵守、普及についても一生懸命取り組んでまいりたいと思います。
  260. 吉井英勝

    吉井委員 私、たくさんの業者の方からの聞き取りなどに基づいての資料などを見ましても、単価切り下げも本当に重大な問題になっております。  それから同時に、何といっても仕事が欲しい、仕事の確保が、これは深刻です。下請企業振興協会の下請取引あっせん実績というのは、実は全国的にも落ち込んできているのですが、成約がうまくいかない。大阪はこれまた中小企業の多いところだけにこの中で深刻なんですが、不況だからこそ頼りにしたいのに、九一年から九二年、さらにことしに入ってあっせん成立件数、金額は大きく減っております。東京もそうですが、大阪などの大都市部が大きく減っているのが特徴的です。このまま放置しますと、日本経済の発展を支えてきた下請中小企業体制が大きく崩壊しかねない。これは、私は経済の面だけでなしに、日本の技術を枯らしてしまっては大変だと思うのですね。  そういう点で、大企業の海外進出、内製化による下請への発注減とか発注停止を、これは仕方がない、当然だという見方じゃなしに、下請企業振興協会任せじゃなくて、やはり通産大臣としても、大企業に対して下請中小企業の仕事をきちっと確保するように、特に日本の産業を支えてきた高い技術力を持った下請企業をこういう時代だからこそしっかり守り抜いていくようにということで、私は大臣からも要請をしてもらうくらいのことは必要だと思うのですが、大臣、どうでしょう。
  261. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 下請振興協会のあっせん事業状況を見ますと、ここのところ、委員指摘のとおりなかなか厳しいものがあるなという感じがいたします。このため、本年度においては、下請取引オンライン・ネットワーク・システム、これは県内外、今おっしゃったように大阪府下だけではなくて県境を越えた形でのあっせんをやれるようなシステムでございますが、こういったものを一層充実をしたいなと考えております。また、そういう単なるあっせん事業だけじゃなくて、各都道府県でお見合いをする、仕事を出す方と下請業界の側とを一堂に会しましてあっせんを進める、こういったことで強化したいと考えておるわけでございます。基本的には、内需主導型の経済成長というものが軌道に乗るということが基本だと思いますけれども委員指摘のように、我々この下請あっせんにつきましてはいろいろ工夫、努力をしていきたいと考えております。
  262. 吉井英勝

    吉井委員 その努力をやってもらいたいと思います。  私、この機会に経済企画庁長官にひとつ伺いたいのですが、消費税というのは国民や中小業者にとって最悪の大衆課税だと私は思っておりますが、長官とは消費税導入に反対して八八年の十二月末の参議院本会議で、私もあなたと一緒に二十五時間、牛歩で頑張りました。日本共産党は、強行採決の直後から消費税廃止という方針で頑張ってきたのですが、社会党は、廃止の世論が高まった八九年六月に、公明、民社の皆さんもそうでしたが、ちょうど都議会議員選挙の始まったときから、廃止とか撤廃という方針を打ち出されました。八九年の参議院選挙で消費税廃止を公約されました、あなた自身が。実はその前年の八八年の消費税国会も、八六年の国会のときも、大型間接税は導入しない、この顔がうそをつく顔に見えますかと公約して多数をとった自民党が消費税を持ち出したのは公約違反だ、これは大臣自身、私は八六年の会議録を持ってきているのですが、そういう追及をなさっておられます。  それで、大臣の公約は消費税廃止ですが、そのあなたが、消費税の廃止でなくて消費税率の引き上げをやってしまったら、私はこれはうそをつく顔になってしまうと思うのですね。消費税廃止がそれとも税率引き上げが、いずれの態度をとられるのかということは、これはやはり今問われている問題じゃないかと私は思うのです。大臣として、みずからの選挙公約を守って消費税廃止という立場で頑張っていかれるのか、それとも内閣の中で、まあ当初予算の段階では、来年当初の段階では消費税税率引き上げは盛り込まないということでお約束されているそうですが、その後は細川内閣としては消費税引き上げはやらないとは決めていないということを、予算委員会で官房長官等の御答弁もありました。あなたはいずれの態度をとられるのか、これをこの機会に率直に伺っておきたいと思います。
  263. 久保田真苗

    ○久保田国務大臣 消費税の問題につきましては、連立政権成立のときに八党の合意、あるいはその後の了解事項というものがございまして、私どもとしては、税の体系を、不公平税制であるという問題は片づいておらないわけでございますから、それを、バランスのとれた税体系を検討するということについては合意しているわけでございます。  しかし、同じく八党の間で、ともかく来年度の当初予算の中で消費税のアップというようなことを考えることはないんだという了解に達しているわけでございまして、目下所得減税の問題を含めて総理が税調の中で検討をお頼みになっているという状況でございます。この税調の中でどういう御論議があるのか、いろいろな御論議があるようでございますけれども、明示的にどうというところまで行っておらないと思います。したがいまして、税調は一定の中間的な答申を出し、なおかつ国民の声に耳を傾けていくということでございますので、私どもとしましては、そのような状況を自分の職務に照らして見守っていきたいという考えでございます。
  264. 吉井英勝

    吉井委員 時間が参りましたのでこれで締めくくらせていただきたいと思いますが、農水の方に来ていただきながら気の毒なことになりましたが、今、米が不作で深刻な事態ということになっているときに、実は大手商社などの米の買い占め問題が起こっております。それで小売の米穀店に米が入ってこないという深刻な事態です。  これに対して、最後に通産大臣に、確かにこれは農水の舞台なんですが、しかし流通の問題をつかさどる国務大臣として、かつて第一次石油ショックのときに石油、トイレットペーパー、砂糖、あらゆる物資の物隠し、売り惜しみ、値上げがやられました。こういうことを今二度とやらせちゃならないということで、私はこの流通分野について、米がそういう事態になりかけているわけですから、大臣としても、特に流通を扱う国務大臣として、これは農水省の問題だということで身を引くのじゃなくて、積極的な取り組みをやっていただきたい。この点について大臣のお考えだけ一言伺って、ちょうど時間が参りましたので終わりたいと思います。
  265. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 本件は、委員指摘のとおり農水大臣の所掌することでございますが、私も農水大臣とは絶えず連絡をとり合っているのでありますが、いろいろなことが報道されておりますけれども、新米については百五十万トンの確保もされ、まあ若干いろいろなことがあったことはそうだろうと思いますけれども、おおむね需給については問題のない方向へ歩み始めたというふうに聞いております。  いずれにしましても、流通の適正なあり方というのは、これはなかなか難しい問題がございますけれども、米に関する限り、我々は、内閣一致して、国民に迷惑をかけない方向で協力し合わなければならないと思っておりますし、今のところ、農林水産大臣が中心になりましてしっかりやっておられますので心配はないと思いますが、私どももできる範囲で協力はするつもりでおります。
  266. 吉井英勝

    吉井委員 終わります。
  267. 中井洽

    中井委員長 両大臣の所信に対する質疑は終了いたしました。      ――――◇―――――
  268. 中井洽

    中井委員長 次に、内閣提出特定中小企業者の新分野進出等による経済の構造的変化への適応円滑化に関する臨時措置法案を議題といたします。  これより趣旨の説明を聴取いたします。熊谷通商産業大臣。     ―――――――――――――  特定中小企業者の新分野進出等による経済の構   造的変化への適応円滑化に関する臨時措置   法案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  269. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 特定中小企業者の新分野進出等による経済の構造的変化への適応円滑化に関する臨時措置法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  近年、我が国の産業をめぐり、海外の地域における工業化の進展等による競争条件の変化、情報化や技術の高度化に伴う投資の一巡、技術革新による生産工程等の変化その他の経済の多様かつ構造的な変化が生じております。これらは、最近の厳しい景況や円高のさらなる進展を契機に、一層顕在化してきております。このような状況のもと、経済の構造的変化の影響を受け、または受けるおそれのある中小企業者がこうした変化に適応していくことが強く期待されているところであります。本法律案は、以上のような観点から、かかる中小企業者の新分野進出等による経済の構造的変化への適応を円滑にするための各般の措置を講ずることを目的として立案されたものであります。  次に、この法律案の要旨を御説明申し上げます。  近年における経済の構造的変化が、工業その他の特定の業種に属する中小企業に影響を及ぼしていることにかんがみ、その事業がこれらの変化による影響を受け、または受けるおそれがある中小企業者を「特定中小企業者」と定義いたします。そして、特定中小企業者が行う新たな事業の分野への進出または海外の地域における事業の開始等について、これらを円滑にするため、中小企業信用保険法及び中小企業近代化資金等助成法の特例措置、課税の特例措置等の各般の措置を講ずることとしております。  また、特定の業種に属する事業が新たに開始されることが、特定中小企業者経済の構造的変化への適応に資することにかんがみ、このような事業の開始について、中小企業近代化資金等助成法の特例措置等を講ずることとしております。  以上が、この法律案の提案理由及び要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  270. 中井洽

    中井委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  次回は、来る二十九日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十分散会      ――――◇―――――