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1993-11-10 第128回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年十一月十日(水曜日)     午前九時四十四分開議 出席委員   委員長 菅  直人君    理事 小杉  隆君 理事 鈴木 宗男君    理事 原田昇左右君 理事 福田 康夫君    理事 井上 一成君 理事柴野たいぞう君    理事 若松 謙維君 理事 牧野 聖修君       安倍 晋三君    加藤 紘一君       櫻内 義雄君    二階堂 進君       後藤  茂君    土肥 隆一君       濱田 健一君    工藤堅太郎君       赤羽 一嘉君    草川 昭三君       西村 眞悟君    古堅 実吉君       糸山英太郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 羽田  孜君  出席政府委員         外務大臣官房審 野上 義二君         議官         外務省アジア局 池田  維君         長         外務省北米局長 加藤 良三君         事務代理         外務省欧亜局長 野村 一成君         外務省経済局長 小倉 和夫君         外務省経済協力 上田 秀明君         局長事務代理         外務省条約局長 丹波  實君  委員外出席者         防衛施設庁建設 戸邉 悦男君         部設備課長         外務大臣官房外 河村 悦孝君         務参事官         通商産業省通商 豊田 正和君         政策局米州課長         外務委員会調査 黒河内久美君         室長     ――――――――――――― 委員の異動 十一月二日  辞任         補欠選任   錦織  淳君     三原 朝彦君 同日  辞任         補欠選任   三原 朝彦君     錦織  淳君     ――――――――――――― 十一月八日  原爆ドームユネスコ世界遺産一覧表への記載  推薦に関する陳情書  (第九三号)  核兵器全面禁止廃絶国際条約締結促進等に  関する陳情書  (第九四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 菅直人

    菅委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。牧野聖修君。
  3. 牧野聖修

    牧野委員 それでは、質問をさせていただきます。  まず最初に、日韓問題について質問させていただきます。  今般、細川総理が、就任後初めて隣国であります韓国を訪問いたしまして、金泳三大統領と胸襟を開いて会談をされました。その一部始終につきましては、私たち新聞テレビ等報道範囲内でしか承知ができなかったわけでございますが、その範囲内におきましても、過去のいろいろな問題につきまして、具体的な事例を挙げて素直に加害者としての立場から陳謝を申し上げ、大統領初め与野党の政治家皆さんあるいはマスコミ、そして大勢の韓国国民からかなりの好意を持って受け入れられた、こういうふうに承知をしておるわけでございます。  今回の細川総理訪韓につきまして、また両首脳会談成果につきまして、どのように御理解されておるのか、総括的で結構でございますので、御答弁をいただきたいと思います。
  4. 羽田孜

    羽田国務大臣 お答えを申し上げたいと思います。  ちょうど六日、韓国の慶州、こちらで開催されました日韓首脳会談、この会談は、報道にございましたように、まさに格式にとらわれない自由な雰囲気の中ということでありまして、二人の首脳会談というものを中心にしながら、本当に率直な話し合いが行われたというふうに私ども伺っております。まさにそういう中で、両国首脳、ここに個人的な信頼関係というものが築かれたということであろうと思います。  大統領などの発言の中にも、今まで私も大変な数、首脳会談をこのところ行ってきた、しかし、これほど本当に友好裏に、しかも胸を開いて、格式張らない会談というのは初めてであったということを言われたぐらいであります。  総理から、今お話がありましたように、過去における歴史に対して率直な認識がなされたということ、そういう中で、今後は未来に向けて、未来志向ということで、日韓お互い立場というものを尊重しながら、しかも、いろいろな国際問題、そういった問題に対しても互いに話し合い情報を交換し合い協力していこうということが言われたということ、なお、北朝鮮核兵器開発問題については、互いに憂慮すると同時に、やはりこういったものが実際に進まないように互いにいろいろな形で努力していこうということ、あるいはアジア太平洋地域における両国協力の拡大をしていこう、また、経済論理に基づいた新しい日韓関係構築していこう、それと、何と言っても若い人たちお互いに交流すること、そして互いの国を知ること、このことが今後の日韓関係になくてはならないことであろうということで、こういったことについてお互い認識が一致したということでありまして、私どもは、今度の韓国訪問はまさに大きな成功であったということが言え、ここから新しい日韓関係がまたスタートするのじゃないかと思っております。
  5. 牧野聖修

    牧野委員 ありがとうございました。  私も、細川総理訪韓が大成功のうちに終わったということで大変喜んでいる一人でございますが、今度の両首脳会談成功する裏には外務大臣を初めとした外務当局の地道な外交努力があった、こういうふうに思っておりますので、引き続きまたいろいろな面で御努力をいただきたいと思います。  朝食会のときに何か金大統領の方から「大道無門」という書を細川総理にお渡しをした、そんなことも漏れ伺ったわけでございますが、その言葉の裏には、大道を行って正々堂々とやってほしい、仮にもうそがないようにという願いが込められていたというふうなことも漏れ伺ったわけでございます。  外交言葉やりとりだけで終わってはいけないと思います。これから具体的な詰め、行動がどういうことが行われるかということによって初めて成果を見られる、そういう感じがいたしておりますので、大臣の方から一部御説明をいただいたわけでございますが、重複する点もありますけれども、お許しをいただきまして、具体的なことについて質問をさせていただきます。  まず最初に、両国間の過去に起因するいろいろな問題を、政府間では決着はしていると言いつつも、やはり国民が納得しないという問題も幾つかあると思いますので、そういった強制連行とか従軍慰安婦等の問題につきまして、これからどういうふうに対応されようとしておるのか、この点について御答弁いただきたいと思います。
  6. 羽田孜

    羽田国務大臣 お答え申し上げます。  過去の日韓関係につきましては、先ほどもちょっと触れましたように、我が国植民地支配によりまして朝鮮半島の人々の母国語教育機会を奪ってしまったということ、あるいは自分の姓名を日本式に改名させたということ、それと、従軍慰安婦ですとかそして朝鮮半島からいわゆる強制連行というようなことがあり、そういったものがさまざまな形であの地の人たちに耐えがたい苦痛を経験させてしまったということ、あるいは悲しみというものを経験させてしまったということ、こういったことに対して率直に反省し深く陳謝をされた、率直に陳謝をされたということ。こういったことが、金泳三大統領から、この総理歴史的な認識というものに対してこれを高く評価するということ、それで日本が結果としてやってしまったことに対して率直にわびていただいたということ、これはまさに精神的な和解を築いたということで、大統領が評価されたということであろうと思っております。  以上を踏まえながら、過去を率直に直視して歴史の教訓を生かしていくことが将来に向けて確固たる友好関係構築のために大変重要であるということで両首脳合意をしたということでありまして、私どもは、これがこれからの日韓関係というものに本当に大きな基礎になるのではなかろうかというふうに考えております。
  7. 牧野聖修

    牧野委員 ぜひ具体的に行動として進めていただきたいと思います。  そしてまた、会談の中で新たな提言といいますか問題等が出てきたわけでございますが、先ほど大臣からの御答弁の中に触れられておりましたけれども韓国側からは、貿易均衡是正そして建設市場開放等の具体的な要求というものがなされてきたわけでございます。そして今度は、細川総理の方からは、文化人や学生さんやあるいは経済人、そしてお役所の皆さん等々を含めました日韓フォーラムの新設というお話も出てまいりましたし、そして、実に具体的な例として、留学生受け入れを拡大していくのだというお話も出てまいりました。  こういった問題につきまして、具体的にどんな計画をお持ちか、もし現状で明らかにできることがございましたら、御説明をいただきたいと思います。
  8. 池田維

    池田政府委員 お答えを申し上げます。  初めに、日韓貿易均衡是正の問題でございますけれども、この問題につきましては、六日の日韓首脳会談の場におきまして、まず、経済論理基礎として日韓間で新しい経済関係構築を目指していこうという合意がございました。そして具体的には、一つ日韓経済人フォーラムというフォーラムがございますが、このフォーラム関係者が最近報告書を出しました。そしてその報告書は、例えば、日本側におきましては、会長であります平岩座長から首相に提出されたわけでございますが、このフォーラム提言に基づいて、今の貿易均衡の問題を含めて日韓経済関係を解決していくために努力するということが一つ決まったわけです。それから、韓国側もそれに応じまして同様の努力を行うということです。  それからまた、二国間で新しい経済分野協議を行うための機構をっくってはどうかという話し合いがなされました。そして、これにつきましては実務レベルで今後詰めていくということでございますけれども、原則的には両国間で新しい何らかの経済協議機構というものをつくろうということになりました。  それから、ただいまの人的文化面の御指摘でございますけれども日韓フォーラムというものの設立が十二月の前半にも行われることになっておりますけれども、この設立を歓迎いたしまして、両政府としては積極的に支援していきたいという表明が双方からございました。  それから、留学生受け入れにつきましては、細川総理の方から大幅に拡大する方策を具体的に考えたいという指摘があったわけでございます。
  9. 牧野聖修

    牧野委員 具体的にこれからどういうことを行っていくかということが日韓両国にとりましては大変重要な問題でありますし、ましてや今度の両首脳会談を受けて具体的などういう行動をとるかということを、全アジア地域皆さんのみならず全世界皆さんが本当に注目をしている、そういう感じがしておりますので、どうぞ言葉やりとりだけで終わらないように、また具体的にぜひ実現するように努力をしていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  またその節、両首脳会談の中で北朝鮮核開発疑惑についても触れられた、こういう報道を伺っておるわけでございます。もとより、この問題は日本のみならず、あるいは韓国日本だけでは解決できない、アメリカにも力添えをいただかなければいけないという感じはしておるわけでございますが、もう少し突っ込んで話し合いが行われたかどうかということにつきましてはどうでしょうか。
  10. 羽田孜

    羽田国務大臣 核兵器北朝鮮の開発問題につきましては、韓国との話し合いの中でも金泳三大統領との話し合いの中でも、何というのですか、本当に対話協議、これを通じて解決を図ることがやはり重要であるということ、これを認識したこと。特に、そういう中で日米韓がやはり緊密に協議する、情報交換するということが大事であろう。そして、北朝鮮にIAEAの査察を受け入れてもらうようにいろいろな形でお互いが呼びかけていこうじゃないかということ。そして特に、南北が今対話が途絶えているわりてはないわけですね、ですから、こういう中で本当に胸を開いてといいますか、そういった中で話し合いを進めていくことが大事なんじゃないのかということ、こういったことが両首脳の中で一致したというふうに私どもお聞きいたしております。
  11. 牧野聖修

    牧野委員 ありがとうございます。  それから、会談の中で、ロシア日本海への放射性廃棄物の不法投棄問題について、細川総理の方かる、一月には日韓ロシア三国での三国共同調査が行われるのではないかというふうな示唆の含まれた発言があったようなことを記事で読みましたけれども、これはもしかすると、日本ロシアの間でかなり話し合いが進んでいるのかなという感じを一瞬受けたわけでございますが、この点につきましてはどうでしょうか。
  12. 池田維

    池田政府委員 ただいまのロシアの海洋投棄問題につきましては、日韓首脳間での話し合いの際に、総理の方から、日韓で密接に情報交換を行っていきたいということと、今後日本韓国ロシアの三カ国の間で共同調査を行う方向で調整していきたいという発言がありまして、それに対しまして大統領の方からも、自分たちも基本的にそういうアプローチに賛成ですという返事がございました。  それで、日本韓国ロシアによるこの共同調査というものをできるだけ早期に実施したいということで、事務レベルで現在三カ国の間で協議を開始しております。
  13. 牧野聖修

    牧野委員 いずれにいたしましても、今後の両国努力に期待するわけでございますが、細川総理の方の発言にもありましたように、加害者としての立場から陳謝をしてきたわけでございますので、どうぞまた両国の本当に緊密な友好にあふれた関係をさらに未来志向型ということで構築していくために御努力をいただきまするようにお願い申し上げまして、この問題を終わり、次に移りたいと思います。  次に、APEC非公式首脳会議につきまして質問をさせていただきます。  私も、アジア太平洋地域の安定と繁栄のためにこの域内諸国間での対話協力を推進していくことが大変重要だと考えている一人でございます。この意味で、今月の十九、二十日に開催されますアジア太平洋経済協力閣僚会議APEC非公式首脳会議には大変期待するものがあるわけでございます。地域主要国首脳一堂に会する歴史的機会だ、こういうふうに考えておりますが、このAPEC政府としてどういう気持ちで臨み、どういう話し合いをされていこうとしておりますのか、その点について御答弁をお願いいたします。
  14. 羽田孜

    羽田国務大臣 今御指摘がございましたように、まさに今度の会議というのは一つの新しいアジア太平洋の時代というものの幕あけ、そういうものを思わせるようなやはり重要な会議であろうというふうに認識をいたしております。  我が国としましては、このAPECというのは、一つの見方からいたしますとガット、これを補完する、あるいは強化する開かれた地域協力の場、こういうふうに位置づけて、アジア太平洋地域、ひいては世界経済、この発展のためにその重要性というのはこれからいよいよ増大していくものであろうというふうに考えます。  この閣僚会議におきましては、貿易投資委員会設立てすとかあるいは賢人会議が開かれておりましたがこれの報告、そして新規の加盟問題、こういった問題について議論が予定されておりますけれども、こういった問題も通じながらさらにこれを強固なものにしていくことが大事であろうと思っております。  また、その後行われます非公式首脳会談、これにおきましてはアジア太平洋地域現状、そして将来のあり方につきましてまさに大所高所、こういったところからの意見交換というものが行われることになろうと思っておりますし、我が国としては、この地域の安定と繁栄のために、この地域のこれからの可能性課題につきまして相互理解を深め、共通の認識を形成することができるように、我々としてもこの会議には積極的にやはり取り組んでいくべきであろうというふうに考えておるところであります。
  15. 牧野聖修

    牧野委員 このAPECサミットのことに関しまして昨日の新聞に、これは読売新聞でございましたけれども韓国国防省のシンクタンク、国防研究院というところの車栄九さんという人の記事が載っておりました。もちろん経済という問題が中心であることには違いがないというふうに私も理解をしておりますけれども、そのほかに政治的な問題、例えばアジア太平洋地域外交とか安保も当然視野に入れた協議になっていくだろうというふうな発言等もありましたし、それから、過去にこの会議出席した各国メンバー等を調べてみますと、外交関係の人のみならず安全保障関係の人の出席がかなり多かったような感じがするわけであります。そういたしますと、新しい経済協力というだけではなくして、幅広く安定と繁栄という言葉で総括されているかもしれませんが、そういった問題等につきましても当然幅広い論議がされてくると思います。  そういう意味で、北朝鮮核問題等もありましたので、もう少し大きな意味日本国としては参加をされるのではないかなという感じがしておりますが、その点につきましてはどうでしょうか。
  16. 羽田孜

    羽田国務大臣 APECの今度の会議そのものはやはり経済問題、先ほど申し上げたようなことを中心にしながらやはり議論がされていくものであろうと思います。  ただ、御案内のとおり、今度の首脳の集まりは、相当高いレベル皆さん方一堂に会するということであります。そういう中で、やはり経済が安定して発展していくということになりますと、やはりその地域政治が安定するということ、それと安全保障というもの、これが確保されているということがやはり経済発展につながっていくのであろうというふうに思っております。  そういう意味で、先ほどもちょっと申し上げましたように、やはり将来のあり方というような問題についても議論がされるということでありますから、そういった高いレベルでの話し合いの中ではそういったことなんかも話されるだろう。しかし、今はまず、このAPECというものを、お互い経済の問題で率直な話し合いができる、率直な協力ができる、そういう舞台をつくるということが何といってもやはり今度の最大の課題であろうというふうに思っておりまして、そういう中からお互いにやはり議論がだんだん展開されていくものになろうと思っております。
  17. 牧野聖修

    牧野委員 訪韓に引き続きまして、その余韻を受けた中での今度のAPECという感じがしますので、さらに日本外交の実りあることを期待しておりますので、ぜひ頑張っていただきたい、こういうふうに思います。  続きまして、ウルグアイ・ラウンドがいよいよ大詰めを迎えてきております。この大詰めを迎えた今日、我が国政府としてはどういう気持ちでおられるのか、そして現状どういうふうな交渉が行われているのか、そしてどんな見通しがあるのか、この点について御説明をいただきたいと思います。
  18. 小倉和夫

    小倉政府委員 最初に、現状につきましてどのような状況になっておるかということをまず御説明さしていただきたいと思います。  御案内のとおり、ウルグアイ・ラウンド交渉は四つないし五つの大きな分野で行われておりまして、いわゆる物の関税引き下げと申しますか市場アクセス交渉サービス交渉、それから機構と申しますか貿易機構あるいは紛争処理の問題、それから農業、こういった分野について行われているわけであります。  物の問題につきましては、七月に東京で閣僚会議が開かれまして、そこで合意が達成されました。したがいまして、今はいわゆる四極と言われておりますアメリカヨーロッパ日本、カナダ、この四極の間で合意されましたものをどのように四極の間でさらに交渉していくかという点、それからもう一つは、この四極で既に合意されているものをどのようにほかの国に適用していくか、ほかの国がそれに参加していくかという問題、この二つの点をめぐって、物の交渉と申しますか市場アクセス交渉についての話し合いが行われているということであります。  サービスにつきましては、サービス協定の文言、どのような条件でサービス分野についての国際的なルールを確立するかということでございますので、そのルールづくり、これが一応ほぼ終わっております。ただ、そのルールの中で、どのようなサービスのセクターと申しますか分野につきまして各国がどういうことをするか、オファーと言っておりますが、その問題につきましては、アメリカが海運とかあるいはヨーロッパの方で映像、視聴覚の問題とかいろいろございますので、あるいはまた最恵国待遇からどういうものを除外するかといった問題、そういった問題についての交渉が行われているわけであります。  それからもう一つの、今申し上げました機構及び紛争処理の問題については、ほぼ細かな議論作業部会を通じまして行われておりまして、大体、まあかなり煮詰まっていると思います。  最後農業でございますが、農業につきましては米国とEC間のいわゆるブレアハウス合意というのがございますが、これがまだ最終的にここの明確化ヨーロッパ要求しておりますので、その点の話し合いが行われつつあると申しますか、行われなくちゃならないという状況にあると思います。  それからもう一つは、我が国が非常に大きな関心を持ってやっております包括関税化の問題、この点が大きな問題として残っている。  では今後どうなるかでございますけれども、現在そういうことがジュネーブ中心に非常に熱心に行われておりますので、一応十二月十五日という期限までにとにかくみんな頑張ってやろうということで、大体今のところ大使級会談随時ジュネーブで行われているという状況でございます。
  19. 牧野聖修

    牧野委員 大詰めを迎えていると思いますので、さらに御努力していただくことをお願いいたしまして、最後の私の質問に移りたいと思います。  ODAについて質問をさしていただきます。  確かに国際公約でございますし、人道上の見地から、いろんな観点からこのODAのことにつきましては世界も期待をしておりますし、日本の義務的な問題でもある、こういうふうに私も思っておりますが、しかし、もう外務大臣も御案内のとおり、現在非常に景気が悪い、未曾有の不景気、これを乗り越えることができるかできないかという本当に瀬戸際を迎えていると言えますし、ましてや、たび重なる災害等の問題とかでいろいろなことがありまして、国内には予算が幾らあっても足りないという状況が来ております。  そういう中で、国民の素朴な質問として、非常に厳しい財政の中で、また来年度の予算要求伸び率八・三%、一兆六千億ぐらいに伺っているわけでございますが、今こそODA必要性というものをもう一度国民にわかるように、この厳しい中それでもやるんだというその御説明をいただき。たい、こう思いますが、お願いいたします。
  20. 羽田孜

    羽田国務大臣 今ODA必要性重要性についてお話があったわけでございますけれども、私も全く同感でありまして、日本の国はまさにエネルギーを含めた資源がない国である。そういう中で、各国から資源を求め、また、各国にそれによってでき上がった製品というものを買っていただきながら今日の繁栄を築いている国であります。そういう意味で、日本としては、やはりみずからの持てる力、この中で最大限のものをやはり世界に寄与する、そういう中で各国理解また信頼というものが得られてくるのであろうというふうに思っておりまして、非常に厳しい財政事情でありますけれども、私どもとしては、やはりやり得ることをやっていかなければいけないだろうというふうに思っておるところであります。  そういう中で、今お話がありましたように、何といっても、やはりODAはこれは税金によって賄われるということでありますから、国民理解というものは本当に得なきゃならないということであろうと思います。その意味で、私どもといたしましても、さらに国民の皆様に、なぜ日本がこういったことに対して寄与しなければいけないのか、苦しい中でもなお、なぜ寄与しなければいけないのかということについて、やはりよくお伝えし、理解していただくことが必要であろうと思っております。  私も、大蔵大臣の時代からですか、各国首脳皆さんお話ししたり、あるいは首脳の皆様方の来訪をいただきながらお話をしてまいりましたけれども、ともかく世界が今日ほどみずからの努力によって、あるいは地域お互い協力によって何とか発展を遂げていきたいという意欲に満ちているときというのは、私は、今までに余りなかったのじゃないのかな、特に顕著にそういった動きを感ずるわけでありまして、その意味で、やはりそういった皆さん方に手を差し伸べるということはどうあっても大事なことであり、また日本がそういったことに対して果たしていくということが、これがやはり日本の生きる道であろうというふうに思っておりまして、そのことをこれからも国民皆さんに積極的に訴えていきたいというふうに考えております。
  21. 牧野聖修

    牧野委員 時間も迫りましたので最後質問にしたいと思いますけれどもODAは確かに大切だと思いますから、ぜひ進めていただければとは思いますけれども、やはりむだなくより有効にしていただきたいという気持ちはあるわけでございます。  その中で、ODAの大綱の中にも武器の輸出入国の問題等も原則を決めておりますが、この点のことにつきまして、大分最近は原則が崩れているんではないかという感じ一つするということと、それから、円高によりまして国内の中小企業が大変な厳しい状況を迎えているところがいっぱいあるわけですが、外務省はこの予算編成の中に円高メリットをどういうふうに盛り込んでいるか。この点のことをお聞かせをいただいて、最終質問にしたいと思います。
  22. 上田秀明

    ○上田政府委員 まず、武器の輸出入にかかわる点でございますが、御指摘のとおり、ODA大綱の原則の一つに、ODAの実施に当たっては被援助国の武器輸出入の動向にも十分注意を払うということを定めてございます。この私どもの考え方につきましては、いろいろな場面におきます政策対話というような場を通じまして途上国の理解を求めてきておりますが、具体的な運用に当たりましては、各国の置かれた安全保障をめぐる環境が異なっているということもございまして、具体的な状況に即しまして一定期間における動向を見るということにいたしております。  これが我が国国民から見て、また国際社会から見て明らかに問題であるというようなケースにつきましては、日本としても事実関係を照会し、確認し、また必要に応じ外交的な働きかけ等を行った上で、もし改善が見られないようでありますれば、当該国に対する我が国の援助方針を見直すというような考えております。  それから、円高の点でございますが、政府開発援助の予算は円建てで編成されておりますけれども、円高によります差益が生じたような場合には、こういったメリットを、何しろ国際社会においては援助の需要が増大する一方でございますので、円高のメリットをこういった国際社会の要請により積極的にこたえられる形で活用するということと、それから予算の効率的な執行に努めるということを旨として行っております。
  23. 牧野聖修

    牧野委員 時間が来ましたので、これで終わります。ありがとうございました。
  24. 菅直人

  25. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 私は、今回アジア太平洋閣僚会議が開催されるに当たりまして、それに続いて非公式の首脳会談も行われることになっておりますし、極めて大事な会議だと思います。また、これに関連して、政府側の出席される前にぜひ国民にその立場をよく理解してもらう必要があると思うのです。そういう観点から若干の質問をさせていただきます。  アジア太平洋地域は、御承知のように世界で最も活力のある発展を続けておりまして、世界経済の牽引力として今やその役割が大変期待されておるわけであります。  この地域のこのような活力なりダイナミズムというのはどういうところから出てきたかというと、開放的な自由貿易体制のもとに日本からの莫大な投資、例えば、通産省からいただいた統計がここにあるんですが、一九九〇年、九一年等でも各年五十億ドルから六十億ドル、こういう巨額な、莫大な投資が行っておる。それに誘発されて、NIES等から巨額の投資が同じく誘発されておるわけであります。  そういったことから生み出されているということだと思うのですが、このような観点からアメリカアジア太平洋地域アジア地域を極めて重視して、今度のクリントン大統領の提案する非公式首脳会議というのがこの二十日に持たれるということになったのではないかと思います。  私は、この会議アメリカは非常に積極的に主導権を握って、アジア太平洋地域経済の活性化とそれに伴うアメリカのリーダーシップというものを意図しておるように思いますけれども、それを警戒するASEAN諸国との間に相当激しい綱引きが行われるんではないかと思うのです。  現に、マレーシアのマハティール首相は出席しないということを言っておられるわけでありまして、この間にあって日本の果たす役割というのは非常に大事だと思うし、また日米首脳会談も予定されておるわけでありますから、ぜひ日本アジア外交の真価を問われるような場面にあると私は思います。  まず伺いたいのは、特にアメリカアジア外交を最近非常に重視してきておる、アメリカにとってアジアというのはどういうように映っておるのか、アメリカはどういうように考えておるのか、そして、日本はこの首脳会談なりAPECに対してどのような対処方針で臨まれるのか伺いたいと思います。
  26. 羽田孜

    羽田国務大臣 まず、お話のありましたクリントン政権、クリントンさんのアメリカ、これがアジアにどうコミットしようとしているのかというお話でありますけれども、もう既に御案内のとおり、大統領は、サンフランシスコの演説、あるいは早稲田大学でこの七月に演説されております。そういう中におきまして、アジア太平洋地域との貿易というのが米国全体の貿易の四割に達しておるということ、そして米国の雇用を多数生み出しており、アジアは米国の経済成長にとって重要であるということを指摘をいたしておるわけでありまして、アジア各国とのより緊密な関係、これを構築たいという姿勢を表明しておるということであろうと思っております。  また、安全保障の面からも、七月の韓国の国会における演説におきまして、米国の積極的なプレゼンス、これが地域における侵略を抑止し、あるいは米国自身の利益を確保する最善の策であるという話を実はされておるということでございまして、まさにアメリカとしてもこのアジアというものを大変重視しておるということのあらわれであろうと思っております。  また、アジア各国にとりましても、やはりアメリカアジアにおけるプレゼンスというもの、また日米安全保障条約というもの、これがこの地域の安全に大きな役割を果たしておる、安定に役割を果たしておるという評価をされておることでありますし、また、アジアの諸国がアメリカに対して輸出しておる量というものも大変大きなものでございます。そういう意味で、いろいろな議論はありますけれども、しかし、アジアもやはりアメリカとの関係というものを非常に大事にしておるということは言えるのじゃなかろうかと思います。  そういう意味で、我が国を含みますこのアジア諸国は、米国は貿易あるいは投資、多岐な経済分局においても重要なパートナーでありますし、また安全保障面でもアジア太平洋地域において大変大事なところであろうということ、このあたりを我々も認識をしながら、まさにその中に入って——中に入ってという言い方はあれでございますけれども、積極的に語りかけていくということが重要であろうと思っております。  そして、先ほど申し上げましたように、我が国として、やはりこの地域というのはいわゆる排他的なものであってはいけないということ、世界に開かれたものであるということ、そして、今お話がありましたように、自由貿易という中でこのアジアというものは大きく発展してきたわけでありますから、このアジア太平洋地域もやはりそういう広がりのあるものの中でこれから発展させていかなければいけない、自由貿易というものを基本にしなければいけない。  その意味で私どもは、このアジア太平洋経済協力閣僚会議APECというものを、まさにガットを補強するものであり、あるいは補完するものである、強化するものである、こんなふうに実は考えておるところでございまして、そんなつもりで我々としてもこのAPEC会議に積極的に臨んでいきたいと考えております。
  27. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 今外務大臣から伺いました経済の面では、まず、賢人会議が何かAPEC賢人会議として経済共同体というような構想を出しておられるのですね。これに対して、アメリカ大統領の意図は、相当これに積極的に、緩やかな経済共同体へ移行しようという意図があるやにうかがえるわけでありますけれども、その布石として各国首脳会談するということにとられはしないかということが一つ。  それからもう一つは、安全保障体制の問題ですが、これについても、各国首脳一堂に会するということによってこういう話し合いが展開する。もちろん、今おっしゃったように、アメリカのプレゼンスというのが非常に大事でありますから、そういったものをてこに話し合いの場をつくっていこうというように考えられておるのですけれども、これについてどうでしょうか。
  28. 野上義二

    ○野上政府委員 今御指摘アジア安全保障問題を今後どう考えていくのかという点でございますが、先ほど外務大臣の方からも御説明申し上げたように、今回のAPEC閣僚会議においては、基本的にアジア太平洋地域経済の活性化、協力の強化を図るということでございます。それから、その次に行われます非公式首脳レベル会合におきましては、高いレベルからその経済活性化、地域協力の基盤となるような政治環境等も話されると思いますが、アジア安全保障全体を取り扱うということにつきましては、御承知のように、ことしの夏のASEAN拡大外相会議でASEAN地域フォーラムという機構合意されております。  私どもアジア太平洋における安全保障問題をどういうふうに考えるかということでいろいろ考えておりますけれども、基本的にはやはり、冷戦終了後アジアにおいては、カンボジアの和平といったような望ましい姿も出てきておりますが、他方、依然として緊張の要因もございます。それからまた不安定の要因もございます。そういった問題をどういうふうに考えていくかということであろうと思いますが、そういった中でやはり一番基本となりますのは、日米安保体制といいますか日米安保体制をも含むこの地域における米国のプレゼンス、存在といったものが一番基本のところにあると思います。  こういった点を前提といたしまして、二国間の安全保障条約といったものを前提といたしまして、その地域の緊張であるとか不安定要因を話し合うような、一種の小さな地域的な問題、例えば日米韓での話し合いといったような問題、こういったものが一つの次の段階として考えられると思います。  さらには、そういった問題をもっと大きく、域内の各国が一応の安心感を持つというような感じで、全体的な信頼とか安心感を高めるような枠組みも必要であろうと考えております。それが先ほど申し上げましたようなASEANの地域フォーラムといったようなところで、これには、アジア太平洋諸国、それからヨーロッパ、それに加えまして中国、ロシア、ベトナム、こういったところも含まれまして、地域全体の安全保障の問題についてそれぞれの安心感を高めるような方向での話し合いを行っていく、こういった多層的といいますか複数の構造を持ったシステムを今後考えていく必要があると思います。  こういった問題は、先ほど申しましたように今後のASEANの地域フォーラムという場で議論されていくと思っております。
  29. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 今ASEANの地域フォーラムの話が出ましたけれども我が国はどういう態度でこれに臨むのですか。簡単に言ってください。
  30. 野上義二

    ○野上政府委員 ASEANの地域フォーラムにつきましては、先ほど申しましたように、我が国アジア太平洋及びそれ以外の国も含めて関係国の安心感を高めるという目的で積極的に対応していくということでございます。
  31. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 私は、地域安保の確立のためには各国信頼醸成というのが非常に大事だと思うのですけれども、それに対して今、APECに対して、経済的には何かアジアの国で話をしようじゃないかということで、これはEAECという構想がありますね。これに対して、積極的にAPECの中にEAECを位置づけるということに対しては歓迎だということを武藤大臣は前に言っておられますが、これから日本はこれに対してどういうように考えていかれますか。
  32. 羽田孜

    羽田国務大臣 アジアの中で先日合意されたことでありますけれども、EAECにつきましては、APEC協議体、これの一つとして位置づけていくということであったと存じております。今後ASEANのEAECに関する考え方、これを踏まえまして、アメリカあるいは豪州その他の国とも十分な連絡をとりながら、我が国の具体的な対応ぶり、こういったものを政府部内の中で十分にやはり詰めていきたいというふうに考えておるところであります。
  33. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 マレーシアのマハティール首相は、日本に対して非常に信頼を持っておられる方だと思うのですね。この人がEAECについては非常に積極的におやりになっておられるわけで、日本としてもこれらのアジア諸国に対して、我々はアジアの国なんですからしっかりと信頼関係を裏切ることのないような行動をしていただきたいし、同時に、アメリカの同盟国としての立場ということで、日本が両者の対話の促進に際して仲介役として一番適切ではないかと思うのです。  そういう点で、この間にあって日本が非常に積極的にリードしていく必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  34. 羽田孜

    羽田国務大臣 まさに日本アジアに位置する国であるということでありまして、今御指摘のありました点について、私も理解するところであります。  ただ、私どもは、私自身が外務大臣に就任いたしましてからも、これはアメリカにはもちろんであります、しかし、カナダですとかあるいはそのほかの豪州、こういった国の皆さん方に対しても、やはりアジアの実態というものをよく理解してもらいたい、そして、やはり漸進的に進んでいかなければなりませんよということを向こうに申し上げると同時に、一方では、アジアの各閣僚の皆さん、そういった皆様方に対しましては、やはりこれからの位置づけというのはやはりアジア太平洋、そして多くの資源を持つ国もありますし高い技術を持っている国もある、そういう意味で、この関係が本当にお互い信頼しながら協力し合っていくことが大事であるということで、アメリカですとかあるいはカナダですとかあるいはオーストラリアですとか、そういった国と本当に連携をとることが大事なんだということを実はアジアの皆様方には申し上げておりまして、まさに我が国としてはそういった役割を果たしていくことがこれから重要であろう。今御意見のありましたことも我々よく念頭に置きながら、これから対応していきたいというふうに考えます。
  35. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 アメリカの最近のちょっと気になる点があるのですね。NAFTAというのを北米三カ国でやろうということで、今アメリカの議会では大変な議論になっておる。御承知のように、カナダではそれに消極的だという内閣ができて、これも非常に問題なのですけれどもアメリカの議会の議論に対してアメリカ大統領みずから日本をだしにするとしか思えない発言が相次いでおるわけですね。日本の脅威のためにはこれをやらなきゃいかぬとか、反対派はNAFTAを成立させたら日本の脅威が増すとか、メキシコ経由で製品が入ってくるとか、いろいろなことを言っておるのですね。  これに対して、日本政府として傍観していていいのでしょうか。これだけだしにされて、向こうにやはり日本側の本当の真意というのを理解させる必要があると思うのです。テレビ時代ですから、アメリカ国民がこのような宣伝合戦に非常に影響を受けるおそれがある、私は憂慮しておるのですが、これをどういうように考えておられますか。
  36. 羽田孜

    羽田国務大臣 報道等で私どももそういうことを承知いたしております。ただ、このNAFTAというものをめぐる、しかも一つの非常に短い期間をめぐっての論争、こういった中に入り込んでしまうということは、やはり一面危険なところもあろうと思っております。ただ、双方で何か日本脅威論というものに乗ってしまってやるということは、これはやはり日米関係を損なうものになるであろう。こういったことはそれぞれのルートを通じながら私どもも話しかけておるということ、ただ論争の中に入り込んでいって今論争することは私は今は少し慎重にした方がいいと思っております。  しかし、アメリカというのはやはりおもしろい国で、そういう議論がありますと、必ずほかの方では、そういった日本脅威論のようなものを持ってきてこういったことを論争することはむしろ危険であるという議論なんかも生まれてきておるということでございまして、しかし、しかるべきところに申し上げるべきことはやはり我々としても言っておくべきであろうというふうに思っております。
  37. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 このAPECの後に首脳会談が行われることになっておるわけですが、その首脳会談日本側はどういう対応をするのかということについて、私は二、三の問題についてお伺いしたいと思います。  特に、まず米問題については、国際舞台で議論をする時期はもう過ぎて結論を引き出す時期になっておって、たまたまクリントン大統領細川総理が会う時期がかなりいいタイミングになるんですね。これについて、日本政府の見解を先方と率直に話し合うのかどうか、どういうふうにおやりになるのか、それについて伺っておきたいと思います。
  38. 羽田孜

    羽田国務大臣 こういう個別具体的な問題については、首脳会議で私は出るというふうには思っておりません。ただ、やはりAPEC会議の中で、このガットはやはり成功させなければならないだろうというふうに考え、そういう議論というのは当然行われるであろうというふうに思っております。そして、それは問いかけというのはこれは先方もあることでありますから話があることでありましょうけれども、しかし、双方とも、また参加しております各国とも、みんなそれぞれ困難な問題というのは抱えておるわけでございますから、こういったものを私どもは一緒にやはり解決していくことであろう。  それで、今具体的にお話のありました問題につきましては、私どもやはり国会の決議というものを基本にしながら、率直に話し合っていくということが大事ではないかというふうに思っております。
  39. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 そのほか、今日米間で日本の大幅な経常黒字の削減と市場開放をめぐって協議が行われておるわけですね。これについても今先方は、何か新聞によりますと具体的に数値目標を出せというようなことを言ってきて、交渉が一応中断しておるというように聞いておりますが、今どんなふうになっているのですか。それと関連して、今度の首脳会談にこういった交渉の促進とかあるいは数値目標の問題等について、何か話が出るような状況になっているのかどうか伺いたいと思います。通産省、来ておられますか。
  40. 豊田正和

    ○豊田説明員 日米フレームワーク協議についてのお尋ねでございますが、御承知のように七月の両首脳の共同声明から始まっておりまして、実際の会議も九月以降、九月、十月そして現在十一月と三カ月にわたって進められているわけでございます。その中で、来年の一月までにとりあえずの結論を出そうと言われております四つの分野においては、とりわけ精力的に議論交渉が進められているわけでございます。  その中に自動車、政府調達などが入っているわけでございますが、ただいま先生御指摘のように、アメリカからは、それぞれプロポーザル、考え方が出てきておりまして、日本側からもそれにお答えをしているというところでございます。  そのアメリカのプロポーザルの中に数量目標的な考え方が散見されるのは新聞報道されているとおりでございますけれども、私どもは、数値目標については、第一に、共同声明、その中にそうしたものはとらないというふうに合意されていると理解しておりますし、第二に、そのような数値目標といったものは政府の介入を深めることにもなりますし、行政の不透明性を増すことにもなりますし、それから、購入者、消費者やユーザーの立場を必ずしも考慮に入れない考え方にもなりますので、強く反対をしてきているわけでございます。  具体的な交渉は、まだこれからさらに深められるということでございますが、私ども立場といたしましては、数量目標は市場メカニズムに反するものだという立場交渉に臨んでいるわけでございます。
  41. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 今の件に関しまして、羽田大臣は九月上旬の記者会見で、ワシントンでの日本記者との懇談で、この数値目標について割に前向きの発言をしておられるというふうに聞いております。さらに、最近の政府の例の平岩審議会ですか、あれなんかでも、GDPの二%ぐらいにしたらどうだという目標を掲げて、黒字の幅をそれ以下ぐらいに目標を掲げてやった方がいいのではないかという意見も出ておるやに聞いておりますが、これについて、アメリカでも、ノーベル賞受賞者の有力学者等が、むしろ数値目標を決めてやるのはおかしいと言うくらい、米国政府等に意見書を出しておられるやにも聞いておりますが、この辺は羽田大臣の率直なお話を承りたいと思います。
  42. 羽田孜

    羽田国務大臣 議論の過程の中でいろんな議論が出てくる、そして、お互いに率直にそういう話し合いというものが話し合いの過程で出てくるということについて、これは否定するものではないねという話はしたことがあります。しかし、別にこれを、例えばワシントンの記者会見で私がそういうことを申し上げたという事実はございません。  ただ、問題は、そういうものが、何か数値が出ますと、すぐに報復ですとかそういったことが出てくるわけですね。これでは完全なる管理貿易になってしまうということになるので、そういうのは、大変私どもは危険なものであろうというふうに思っております。
  43. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 今の報復という点では、アメリカのスーパー三〇一条の問題ですが、これなんかも非常に勝手な法律を向こうは制定しておるわけで、我々としては、絶対にこれは反対すべき問題だと思うのですね。これらの問題については、今度の非公式首脳会談で、あるいは日米問題として、大統領・細川会談においてぜひひとつ前向きに、しっかりと対応していただきたいと思います。  さて、これに関連して、米中会談が行われるということでございますが、この米中会談の問題については、これは、中国が最近初めて国際会議出席して出てくるわけですね、しかも、米中の間でどういう問題が話し合われ、どういう決着になってくるかというのは我々としても極めて関心の高いところだと思うのです。状況についてわかっているところをぜひ説明してほしい。
  44. 池田維

    池田政府委員 米中の首脳会談がシアトルで行われるであろうということは私ども承知いたしておりますが、第三国間同士のことでございますので、具体的にどういう中身が議論されるかということについて正確に申し上げることはできませんが、米中の二国間関係、それから、アジア太平洋における米中の協力といいますか、国際問題についての論議になると思います。  最初の米中の二国間関係ということになりますと、想像できますことは、やはり現在の二国間で問題になっている懸案として三つぐらい挙げることができると思いますが、一つアメリカ側から見た人権の問題、それから拡散の問題、例えばミサイルの部品拡散、それから米中間の貿易均衡の問題というようなことではないかという感じがいたします。  それから、アジア太平洋の問題ということになりますと、いろいろな分野にまたがると思いますけれども、もちろん、APECそのものにおいて今後どういう協力関係をつくっていくのかということもあると思いますが、やはり一つの大きな課題というのは、北朝鮮問題といったようなことについて、北朝鮮の核開発の問題等についても論議が行われても不思議ではないというように想像いたしておるわけでございまして、そういった意味では、米中の双方が関心を持つ幅広い問題というものはカバーされると思っております。
  45. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 この際、この人権問題というのは米中間で一番とげの刺さった問題だったと思うのですけれども、人権問題でいうと、アジア全般に対しても相当議論しなければならない。アメリカ流の人権ということであれば、かなりの問題があるわけですね。そういうところは、アメリカに対しても、よく理解をし柔軟な姿勢でやってもらうことを、日本がかなりアメリカを説得する必要があると思うのですよ。そして、我々としては、米中間が非常に安定した関係になるということは大変日本にとってもいいことだと思うのです。そういう意味で、中国に対しても、アメリカの言うことをよく聞くように話をしていくことが必要じゃないかと思うのですが、日本外交としてはどういう立場でこれに対して臨むのかお聞かせいただきたいと思います。
  46. 羽田孜

    羽田国務大臣 人権問題というのは、これは人類の一つの普遍の論理であろう、哲理であろうというふうに私も考えております。ただ、御案内のとおり、それぞれその国の成長の歴史というものがあるということがあろうというふうに思っておりまして、このあたりを皆さんにも、アメリカその他の国の皆さんにも理解していただく必要があろうと思っております。  ちょうど加藤さんがきょうここにおいでですけれども、あれは何年前でしたかね、天安門事件の直後でしたか少したったころだったと思いますけれどもアメリカに行きまして、この議論になりますと実は大変沸騰いたしまして、そのときに我々率直に、確かに人権問題として指摘すべきものは指摘しなければいけない、やはり厳しく注意するものはしなければいけない、しかし、それで全部、例えば経済的な交流はやめる、あるいは人的な交流はやめる、技術的な交流はやめる、資金的な交流もやめるということになってしまうと、例えばその国が一生懸命になって今改革を進めようとしておる、こういったものを閉ざしてしまうことにもなるであろうということ、これは非常に危険じゃないかなというようなことを実は申し上げ、また、帰国いたしましてからも、訪米される皆さんにあるいはサミットに臨む総理に対してもそのことを申し上げ、そういう中で各国理解というものを深めることの経験を我々しておるわけであります。  いずれにしましても、人権問題というのは重要であるということ、これはきちんとそれぞれの国、具体的には中国に対しても我々は申し上げなければならぬ。それと同時に、そういう人権問題を注意しながら、しかし経済改革ですとか、あるいは社会改革に対して努力している、こういったものに対してはお互い協力していくべきではないのかということで、我々がそのことを語りかけていくことが重要であろうというふうに思っております。そして、今私どもあちこちで海外のいろいろな皆さん方と話し合うときにも、そういった発言こそ日本がしてもらいたいということをよその国からも言われておるということで、我々はそうい。うことを自覚しながらこれから日本外交は進めていかなければいけないというふうに思っております。
  47. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 今の大臣お話は全く同感でございます。  さらに、一つ私の懸念しているのは、中国の兵器の拡散の問題です。これをこの際、米中間の関係等しっかりする上の非常に大事な歯どめにしてもらわなければならぬと思うのです。  我々がアジアの安全を考える場合でも、兵器移転登録制度というのを日本の提案で国連につくってもらいましたけれども、こういったものをどんどん推進していって、お互い安全保障については、信頼を醸成するために、専門家の交流とかいろいろなことをやることは必要ではないかと思うのです。これはアメリカに入ってもらって、それをみんながAPEC等で取り上げていくということは非常に大事なことではないかと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  48. 羽田孜

    羽田国務大臣 具体的にそこまでの話になりますと、今果たしてその時期が醸成されているかどうかということだろうと思っております。  ただ、幸い今度のAPECでは各国首脳が集まるということでありますから、その首脳が大所高所から、今後のAPECあり方あるいは安全保障なんかの問題についても今後どうあるべきなのかというようなことは、これはあるいは高い次元でお話しになることではなかろうかというふうに思っております。  しかし、いずれにいたしましても、核もそうでありますけれども、ミサイルの技術等についても拡散されていくということ、そういったものが移転していくということ、これはアジアというだけでなくて、世界の安定といいますか、そういったことにも影響してくることでありますから、こういった問題について我々としても話し合うということが大事であろうということは我々も腹に据えていきたいというふうに思っております。
  49. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 今の点については、私は「外交フォーラム」の五月号というのを拝見しまして、そこで外務省の研修所の総括指導官という方が提言しておられる文章を読んだのです。大変斬新な、極めて現実的な考え方であろうと思いますので、ぜひひとつこういった構想を御検討いただきたいと思うわけであります。  さて、それでは、アメリカと中国の問題ですが、軍事協力とかPKOの取り組みに対して米中間で協力しようという構想があるのですか刀
  50. 池田維

    池田政府委員 今までのところ、そういう構想があるというようには問いておりません。
  51. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 いずれにしても、そういう点について、日本アメリカとの間でPKO協力を具体的にしようという話がありますね。米軍の輸送機を使えとかいろいろな話が出ていると思うのですが、その点はどうですか。
  52. 丹波實

    ○丹波政府委員 PKOに関連いたしますところの日米協力ということで、確かに、輸送の面でアメリカがもしできることがあったら協力しましょうかという一般的な話があったことは、先生おっしゃるとおりです。  しかしながら、この点について具体的に事務的な話し合いがその後進められているということは、今日までのところではありません。
  53. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 先ほどの中国との協議というものも、実はアスピン米国防長官が言っておる記事がワシントン発で出ているのですね。中国との軍事協力、PKO協力、これは全然外務省御存じないですか。十月三十日付です。
  54. 丹波實

    ○丹波政府委員 先生御承知のとおり、アメリカと中国はそれぞれ安全保障理事会の常任のメンバーでございまして、PKOは基本的には安保理で大変な議論がされることは御承知のとおりで、そういう過程を通じて、一般論として、米中間でPKOの問題が話されるということは私たち承知しておりますけれども、具体的な事務的な交渉として、直接の米中のPKO協力関係というものが取り上げられているというふうには今の段階では承知していないということでございます。
  55. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 外務省の情報収集能力を疑うわけではありませんけれども、ひとつぜひ、こういう問題は非常に大事な問題ですから、しっかりと情報をキャッチするようにしておいていただきたい。  それから、最後大臣に伺いますが、今度アメリカ大統領が提唱してこういう首脳会議が行われるようになったわけですが、この次は東京でぜひやったらどうかと思うのですが、いかがでしょうか。APECは先進国と発展途上国と交互にやるとかいう話し合いになっておるそうですが、次に先進国でやる場合は東京というのはどうですかね。ぜひ日本首脳会議を提唱して、東京でやるべきではないかと思うのですが、どうでしょう。
  56. 羽田孜

    羽田国務大臣 今お話がありましたように、明年はインドネシアで開催されるということでありまして、我が国といたしまして、東京になるのかどうかあれでございますけれども、いずれにしましても、日本で開催するように働きかけをしていくということであります。
  57. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 その際、中国の代表の問題ですが、今、香港、台湾もAPECには入っておるわけですね。それで、日本がやろうというときは台湾はどうするのですか、台湾は。
  58. 羽田孜

    羽田国務大臣 失礼しました。先ほど申し上げましたのは、閣僚会議というお話だったかと……(原田(昇)委員閣僚会議じゃないです」と呼ぶ)首脳会議というお話だったようで、首脳会議につきましては、まだ今度初めてということでありますから、今御指摘ありましたことをよく頭に置きながら、日本としてもやはり首脳会議なんかを、こういう会議を持てるように我々も考えていかなければいけないかなということを改めて思っております。
  59. 池田維

    池田政府委員 台湾の問題につきましても、日本首脳会議が開かれるという前提でのお問い合わせかと思いますが、今大臣から御答弁がありましたように、そのものについてはまだ決まっておりませんので、今の段階で余り具体的に申し上げることはできないと思います。
  60. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 いや、それは決まってないことは当たり前ですよ、私は決まってないことを言っているんだから。日本でおやりになったらどうですか、それは非常にいいですねというお答えたから、私はそうだと思うんだ。その際、台湾はどうしますかということを聞いているんです。
  61. 池田維

    池田政府委員 台湾の扱いにつきましては、例えば、今回アメリカでどういうふうに中国と台湾の代表が扱われるかといったようなことが前例になると思いますので、それに従えばいいのではないかと思います。といいますのは、さらに具体的にはどういう形になるかということで、今の段階では想像の域を出ませんけれども首脳レベルなのか閣僚レベルなのかというそういう使い分け、そういうものを含めて、シアトルで開かれます前例というものを参考にすればいいのではないかと思います。
  62. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 この問題については、議論はまた後ほどにしておきます。  ありがとうございました。これで質問を終わります。
  63. 菅直人

    菅委員長 加藤紘一君。
  64. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 今回のAPECの参加に際しての日本立場につきましては、同僚議員がそれぞれ御質問されたようであります。私も、ですから手短にこの問題には触れたいと思いますが、マハティールは今度のAPEC出席しますか、しませんか。
  65. 池田維

    池田政府委員 今まで私ども承知しておりますところでは、出席しないということでございます。
  66. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 新聞報道によりますと、親戚の結婚式だから出席しないという話があるそうですけれども、これほど重要な会議の場合に、極めて異例の理由だと思いますね。多分、EAEC等に絡む彼の構想がなかなかアメリカ受け入れられない、そういう中で、アメリカ中心にまたはオーストラリア中心APECが進められるということについての若干の不快感の表明なのかもしれません。  EAEC構想につきましては、ASEAN諸国の中でもいろんな議論があるそうですから、そう一概に簡単に言えるわけではないのでしょうけれども、これはアメリカの中にもある議論だと思うのですけれども、NAFTAがあってなぜEAECがまずいかこの点についてはどう思われますか。
  67. 池田維

    池田政府委員 EAECにつきましては、私ども、最近ASEAN諸国の中でこれをAPECと関連づけようとする動きが出てきておりますので、こういった努力そのものは評価しているわけでございます。  それで、もしEAECというものがアジ了・太平洋そのものを分断するような形にならない、むしろアジア太平洋協力というものを促進する方向でできるということであれば、これは好ましいことではないかと思っておりますが、現在の段階におきましては、まだEAECというものがどういう形で具体的にワークするのかということも余り明瞭ではございません。それから、例えば参加国の範囲をどうするのかということもはっきりしておりません。あるいは、アメリカ、豪州がこれに入りたいという希望を出しておりますけれども、これについても、まだASEAN側としては余り明瞭な態度をとっていない。  そういった意味で、EAECについてはいろいろと不明確なところがございますので、ASEAN側と十分に話をして、EAECというものを、もうちょっと具体的にどういうものになっていくのか、それでそれは、先ほど申しましたように、アジア太平洋全体の協力というものを促進する方向でできるのかどうかというようなものを見きわめてから判断すればいいのではないかというように考えているわけです。
  68. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 ただいまの局長の御判断によりますと、やはりこれから経済にしろ政治安全保障問題にしろ、アジアだけで一つの組織をつくったり協議体をつくることは必ずしも望ましくないというふうに受け取られますが、そのように理解してよろしいですか。  つまり、やはりアジア問題を考えるときには、アジア太平洋という概念で考えていかないといろいろ問題を起こしかねない。ベーカー国務長官がEAECの構想を聞いたときに、太平洋のど真ん中に線を引くような話はよくないよという発言をしているわけですけれども、やはりアジア問題を考えるときには、どうしてもこのAP、アジア・パシフィックということで考えないといろいろ今後問題を起こしますね、というような基本的な考えと受けとめていいか。  つまり、これは実は非常に重要な部分で、我が国外交の基本というのは、国連、日米、アジア、この三本柱で成り立っているわけですけれども、そのアジアの問題と日米とのコンフリクトが起きる可能性があった場合に、そこをどう調整していくかというのは今後の日本外交の基本問題だと思っておりまして、外務省内でもいろいろ論争があるようでございますけれども、その辺はいかがですか。
  69. 池田維

    池田政府委員 ただいま加藤先生おっしゃいましたように、日本にとりましてアメリカとの関係というのは、これはもう非常に重要であります。これはもう外交一つの基軸をなしているということでございます。他方、日本アジアの一国であるということもこれまた厳然たる事実でありまして、そういった二つをまたにかけている日本として、この二つの間の調整あるいは二つの間をうまく調和させていく、そして、日本の国益にとって一番望ましい形に持っていくというのがいいのではないか。そういたしますと、やはりアジア太平洋という大きな枠で考えましたときには、ここにはアメリカも入っておりますし、それからアジアも入っている、そういった意味で、私は、余り小さな枠ではなくて、やはり全体としては大きなアジア太平洋というもので考えていくということが、より日本外交にとっても望ましい姿なのではないかなという感じはしているわけです。  他方、マハティールさんが唱えておられますEAEC、これはまた日本に対して非常に親近感を持っておられる人の考え方でありますから、もしそういう考え方が、今私が申しましたような全体のアジア太平洋外交を進めていくということに合致するような形で成立し得るのであれば、これはもちろん考えていいことだと思います。したがいまして、初めから真っ向からこれはだめなんだということは間違った対応だと思います。  したがいまして、やはりEAECが具体的にどういう形になっていき、それに対してアメリカとかオーストラリアがどういうような対応をとっていくのかということもよく見きわめながら、最終的な判断を行うということがいいのではないかと考えているわけでございます。
  70. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 その辺が非常に重要なところだと思うのですけれども経済に限った組織であれば、仮にアメリカが入ってなくてもアメリカのプレッシングがあれば将来考えられ得ることなのかその辺はいかがですか。
  71. 池田維

    池田政府委員 ただいまの御発言は大変示唆に富んだ御意見と承りますが、同時に、例えばオーストラリア等もこの問題については非常に強い関心を持っております。したがって、アメリカ、オーストラリア、カナダなどもどういうように考えるかということもやはり重要な点かと思っております。
  72. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 今の質問はかなり仮定的な議論に聞こえたと思います。やはりアジア全体の問題を考えるときには、軍事面でのアメリカのプレゼンスというのはどうしてもなければいけないし、経済政治分野だったらアジアを排除するという発想となると、これはアメリカとしては望ましくないと思うのは当然だろうと思います。したがって、今後マハティールさんを中心に、安全保障政治についてはアメリカは参加してくださいね、経済についてはちょっと排除いたしますねという考えでは成り立ちませんよということを、明確に日本側の態度として表明しておくことが一つの方途ではないかなというような気もいたします。  先ほど外務大臣アジアアメリカの問題を、それぞれ技術的な力を持つ国があるし資源のある国もあるしということをおっしゃいました。そういう経済的な観点も重要ですけれども、それを超えた問題があって、やはり今後アメリカのプレゼンスをどうやってアジアに確保するかというのはかなり重要な問題でありますので、そういった観点からマレーシアに対する説得というのは必要なのでないかなという気がいたしますが、これは私の個人的な見解にとどめておきます。  次に、この間から話題になりましたロシアによる放射性廃棄物の海洋投棄の問題です。  今ロンドンでの会議で低レベル放射性廃棄物を含めた放射性廃棄物の海洋投棄の全面禁止が検討されておって、我が国はその全面禁止の方を支持するという方向になりつつあると聞いておりますが、一部の国ではそれはちょっと早急に過ぎないかという議論もあって、いろいろ議論されておるようですけれども現状いかがでしょうか。
  73. 河村悦孝

    ○河村説明員 先生が御指摘のとおり、八日からロンドン条約締約国会議が開催されておりまして、ここで条約改正問題が主要議題として取り上げられております。その一環としまして、低レベル放射性廃棄物の海洋投棄の問題が検討されてございます。  大勢といたしましては、この低レベル放射性廃棄物の海洋投棄の禁止提案を支持している国が多いわけでございますけれども、一部の先進国におきましては若干意見は異なっておりまして、現在、ワーキンググループにおきまして、この提案をもとにコンセンサスを得るように協議が行われております。  なお、我が国といたしましては、この低レベル放射性廃棄物の海洋投棄の禁止を内容とする条約改正を支持するということでございます。
  74. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 その一部の国にロシアは入っておりますか。
  75. 河村悦孝

    ○河村説明員 入っております。
  76. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 ロシアとしても、ここまでの非難も浴びて、そして全面禁止の方向にいきたいというふうに心としては思っているのだろうと思いますけれどもロシアの国自体に放射性廃棄物の処理・貯蔵の施設が現在ないのではないかという状況では、本当にそれを実施できるのかねという現実の問題があろうかと思いますが、ロシア現状はいかがですか。
  77. 河村悦孝

    ○河村説明員 ロシアにつきましては、低レベル放射性廃棄物の処理につきましては、西欧側の方にはあるわけでございますが極東にはないということがございまして、その辺でやはり問題があるということはロシアとしても述べております。
  78. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 その際、我が国ロシアに対して低レベル放射性廃棄物の処理に関して技術協力をしていく、支援していくという方針をとってもいいのではないかな。これは我が国の海の問題でもあるし、我が国がそういう技術を持っておる以上、この辺は踏み切ってもいい話ではないかなと思いますが、いかがですか。
  79. 河村悦孝

    ○河村説明員 先ほど申しましたように、ロシアの処理工場につきましては、欧州部にはございますが極東部にはない、そういうことで、ロシアとしては問題があるということを言っております。そういうことでございますので、今後の動向を注意する必要があると存じます。  ただ、これまでのところロシア政府からは、一般的な形での液体放射性廃棄物の海洋投棄を停止するための我が国に対する協力が必要であるという要請はございますが、具体的な要請については今のところまだ提案はされておりません。  なお、ロシアのこの問題を解決するためにはロシア国内でこのような処理能力を高めていく必要があるわけでございますが、まず、ロシアの第一義的な自助努力が必要であると考えます。しかしながら、我が国としても、具体的にいかなる可能性協力できるか今後とも協議していくというふうに考えております。
  80. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 この問題を私自身考えてみて、私は今、支援していくべきではないかということを申しましたけれども、やはりそれを考える際に幾つかの思いが錯綜するわけです。  一つは、核廃棄物の処理という問題になれば、当然のことながら原子力潜水艦から出てくるものも入るかもしれない。我が国がこれまで何十年、防衛努力をするときに常に頭にあったのはソ連の原潜であります。そうすると、その後処理をこれから我々が、例えば日本資源を使って、財源を使ってやるのかねという問題もあります。しかし、これは割り切らなければいけないことであろうと私は思います。冷戦の終結はいいことでありますし、その後の環境の問題をグローバルに考えていくと、過去の経緯は経緯として、日ロの間の協力を進めていくべきだ、こう思います。  ただ、もう一つ思いが錯綜しますのは、昨今ロシアで行われてきた幾つかの事件でありますけれども、そういう観点から、きょう残りの時間を経済援助と人権問題という観点についてお聞きしたいと思います。  エリツィンさんが国をまとめるために、この間、議事堂に戦車の砲撃を加えましたが、ロシアで人権侵害は行われたでしょうか行われなかったでしょうか。
  81. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  先ほどの御指摘の事態に当たりまして、これは十月三日でございますけれども、モスコー市に非常事態宣言というのが出されまして、例えば集会、デモ、あるいは検閲につきましても、一時的な市民の権利及び自由の制限を伴う措置がとられたことは事実でございます。その後の事態の収拾に伴いまして、この非常事態宣言につきましても、十月十八日でございますが、解除されまして、現在のところ、人権の尊重を含む法と秩序というものが回復されている状態である、そういうふうに認識いたしております。
  82. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 現在ロシアでは人権侵害が行われている状態ではない、それはもう解消された、こういうふうに断定しているということですか。
  83. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御説明申し上げましたように、非常事態宣言に伴うもろもろの措置はございましたが、それが解除されておりますので、したがいまして、例えば一例で申しました検閲とかあるいはデモの禁止とか、そういう措置はとられていない、そういうふうに認識しております。
  84. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 あの議事堂が砲撃されるという事態はかなりシリアスな話てあったわけですけれども、それは我が国政府としては遺憾の意を表明したわけですね。一方、それはエリツィンさんにしてみれば、日本に来て、仕方がなかったことじゃないか、日本でもかつてやってきたことじゃないかという発言があって、あれを人権侵害の非常にシリアスな問題だととらえていないところがあったと思いますが、これに対して日本はどういう認識を持って、どう対処いたしましたか。
  85. 野村一成

    ○野村政府委員 先般のモスクワでの出来事につきましては、エリツィン大統領日本に来ました際にも大統領の方から説明がございました。大統領としては、最大限いろいろな仲介の努力も含めまして努力を傾注いたしたけれども、旧議会支持派が引き起こしました暴力行為に対してやむを得ずにとった措置であるということを強調いたしておりまして、私どもの得ている情報によりましても、あの当時最高会議のビルに立てこもった人々の多くは、強い共産主義信奉者であるのみならず、武力の行使によって混乱を生ぜしめるということを最初から目的とした由であるといった情報もございます。  先ほど先生の方から人権との絡みの御指摘がございましたけれども大統領側の措置が正当であったかどうかということにつきましては、これはいろいろな意見が私はあり得るところだろうと思います。しかしながら、これは第一義的にはロシア国民がどのように受けとめるかであるというふうに考えております。しかしながら、先ほど先生の方からも御指摘ございましたように、多くの犠牲者が出たということは遺憾でございます。その辺のところは、これはG7の一致した立場として大統領指摘しているところでございます。  なお、大統領は記者会見の場等で、我が国にあってもそういうことがあったじゃないかというふうな指摘がございました。これは全くの認識の間違いであるということで、その後外交ルートを通じましても先方にその旨を指摘してございます。
  86. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 大変遺憾なことであったけれども、議事堂に立てこもった政治勢力が武器を持ち、それを放置すると内戦に至るかもしれない、その政治的な混乱、内戦回避という観点から見ればいろいろな議論があり得て、それはロシア国民がこれから判断することであろうということをおっしゃったわけですけれども、天安門事件については、同じ論点についてはどう解釈しますか。  つまり、私は、あの事件は本当に遺憾な事件であったと思います。それは正当化されることではないと思うのですけれども、今言ったように、あれは放置しておけば文化大革命の再来で、また多くの命が失われるかもしれない、混乱があるかもしれない、そう考えるとやむを得ない点もあって、それは中国国民が判断するべきことであるというふうに認識いたしますか。
  87. 野村一成

    ○野村政府委員 ただいま先生の方からいわゆる天安門事件との比較の御指摘がございました。  天安門事件につきましては、民主化を求める学生あるいは市民による反政府行為の抑制のために軍が実力を行使した結果、多数の犠牲者が出たものであるというふうに認識しておりまして、それは民主化を求める学生あるいは市民に対し軍隊が発砲するといった行為でございまして、これは人道上の見地から容認し得るものではないというふうに考えております。  他方、先般エリツィン大統領が旧議会支持派に対してとった武力行使につきましては、先ほど説明いたしましたとおり、武装した旧議会支持派勢力が引き起こした暴力的な行為に対しまして、秩序回復という観点からやむを得ずにとられた措置であるというふうに認識いたしておりまして、この点、天安門事件とは基本的に異なる性格のものであるというふうに考えております。
  88. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 そうしますと、その天安門事件の一年前にミャンマーで事件が起きたわけですけれども、これはかなりの死者を出しました。  これはある意味では学生のデモに始まり、肥大化し、そして同時に、ミャンマーの当時の政府としては、恐らくあそこにまだ統一が完全に確立されてない中で、いろいろな異民族、多民族の武器を持った反政府活動がある中でやむを得なかったという説明をビルマ側、軍事政権側ではするのだろうと思うのですが、そうすると、ロシアとヤンゴンの事件の差はどういうことになるでしょうか。
  89. 池田維

    池田政府委員 ただいまの御質問は大変難しい問題でございます。  といいますのは、各国の事情が大変異なっておりますので、それぞれの国の政治的な安定度とかあるいは市民運動とか学生運動とかそういったもの、あるいはただいま御指摘になられましたミャンマーにおけるいろいろな少数民族の存在とか恐らく各国によって事情が異なりますので、どの国についてはどうであり別の国ではそうではなかったというように、余り断定的なことを申し上げることは必ずしも適当ではないかと思います。  しかし、ミャンマーにおきましては、八八年に学生の運動がございまして、それを軍側が鎮圧するということで多くの犠牲者が出たわけで、その点については我々は非常に遺憾なことであったというように考えているわけです。  その後、選挙が行われましたけれども、選挙の結果必ずしも民意が反映されておりませんで、軍事政権がそのまま存続している。したがいまして、私どもとしてはその軍事政権に対しまして、できるだけ早期に民政移管を行うようにということを言ってまいりました。そして、その結果として、これは評価の違いにもよりますけれども、若干の改善というものは行われつつあるのではないかというように考えております。  すなわち、国民会議というものが開かれて、新しい憲法を作成しようというような動きは出てきております。決してこれは早いテンポではございませんけれども、まあそういう動き、あるいは民主化の一つのシンボルとなっておりますアウン・サン・スー・チー女史の待遇の問題につきましても、釈放までには至っておりませんけれども家族との面会を許すといったこと、あるいは政治犯の釈放とか戒厳令を撤回したとかといったようなことで、軍事政権下においても若干の動き、民主化への動きが出てきているということで、我々としては引き続きミャンマーに対してはそういう動きを奨励していくということで、話し合いを通じて国内の状況の改善に努めているということでございます。
  90. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 ミャンマーのその後の動きについてはまだ後で御質問いたしたいと思いますけれども世界人権宣言で言われているように、国内で武力行使をすることによって政治的な安定を求めるということが一概に非難されるのかどうか。そしてそれが、今野村さんがおっしゃったようにある種の民主的な方向にいくのであるならば、あるものを弾圧するような形はだめだけれどもロシアの保守党のようであるならばこれは仕方ないことではないかというと、ある一定の政治的な判断があるわけですね。西欧民主主義のある種の判断があるわけですね。  人権というものはそういったぐいのものなんであろうか。そういうことであるならば、例えば、世界人権宣言の中には思想の自由や結婚の自由まで全部書き込まれておって、ある宗教に支配された極めてファンダメンタリストの多いイスラム社会で道ならぬ恋をしたからといって死刑に処せられるということは、どういうふうにこれを考えるか。実はこれは仮定の話ではなくてここ十年、二十年内で起きているわけですね。  ですから、これは人権問題というのを考えると、かなり西欧諸国が明確にきれいな形で言うようなことはなかなか無理なんであろうと私は思いますが、その際に、政治的な安定ということであるならば、どこまで許されてどこまで許されないか。それぞれの国のケース・バイ・ケースだと言いつつも我が国としてはある種の判断を持っていなければいけないんじゃないか。  天安門事件のときには、その後要人の往来は一年か二年カットいたしました。モスクワ事件の後には、カットしないところか十日後、なおかつ我が国は陛下にお金わせした。そのときに、これは陛下にお金わせすることは余りにもちょっと問題かなという発想は、その当時若干でも政府部内でありましたかどうか、これは外務大臣いかがですか。
  91. 羽田孜

    羽田国務大臣 私どもといたしましてもいろいろな議論があったことは事実であります。ただし、先ほどからお話をされていますように、ここの場合には、議会の中に立てこもった旧議会派といいますか、この皆さん方が武装をされておったということ、そして、そこからのあれによって放送局が武装集団によって占拠されたこと、あるいはモスクワ市ですかコメコンビルの中にありますモスクワ市役所、こういったものがそういった者によって占拠されるという事態であって、これはまさに武装集団に対して治安のために軍を出さざるを得なかったというのは、私はこれはちょっと違うのかなというふうに思いましたし、しかも、そういう中で民主化へ向けての努力という方向がはっきり見えておったということ、このあたりで、今ここでもし我が方が断るというようなことがあったならばこれは隣国の大きな国と結局本当に話し合いができなくなってしまう、また大きな溝ができてしまうということを考えたときに、私どもとしては、迎え入れ率直な話し合いをすることがやはり大事であろうというふうに判断をいたしたところであります。
  92. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 ここでひとつ外務省にお聞きしたいと思いますのは、ソフト・デモクラティックパスという言葉がありますね。民主主義にいくにはいろいろな道があるのだ、その議論をするときによく言われることですけれども発展途上国における民主主義、人権という概念があるのかアジアにおける人権の概念が西欧の国と違って存在するのかどうか、その辺の考えはいかがですか。
  93. 羽田孜

    羽田国務大臣 人権の基本的な考え方というものについて、やはり私は人権というのは普遍的な価値であろうというふうに認識をいたしておりますし、私どもといたしましては、欧米諸国と同じ価値といいますか、こういったものを、考え方を共有しているということは言えようと思っております。ただ、ある特定の人権問題に関しまして我が国と西欧諸国のアプローチが異なる場合があるとしますと、人権という普遍的な価値の実現のために何が最も効果的な方法であるかについての認識の相違というものがあるのではないのかなというふうに思います。  それと、これは言い方によっては非常に危険でありますけれども、その国の発展状況とかそういったものによって、西欧あるいは我が国と同じような人権をそのまま今適用できるかそれをせっからに求めることができるかということになると、基本的な、普遍的な認識については求めることはできるとしましても、それを直ちにということになると、なかなかそこにまた難しさがあるなということを率直に感ずることがあります。
  94. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 人権というものは、発展途上国における人権目標とかアジアにおける人権目標とかあるというものではなくて、目標としては普遍であろう。しかしそこに至る道、実現していく道についてはいろいろあるだろうし、事をせいてはいけないというのが我が国認識であるというふうにおっしゃって、私もそのとおりであろうと思います。  我が国がそういった認識、方針をなぜ立てるようになったのか、それはなぜなんですか。我が国が置かれている地勢的なものであるのか、思想的なものであるのか。例えば、中国の隣にいたとか、それから今羽田さんがおっしゃったように、隣国ロシアとの関係ということをいろいろ考えるとそう単純にもいかないよということをおっしゃいましたけれども、大きな国とか近隣であるとか、そういった概念からくるのか。なぜアメリカとそのアプローチについて差があるのでしょうか。
  95. 羽田孜

    羽田国務大臣 私は、これはあなたとも前に一緒に行ったときに議論したことがありましたけれども、要するに人権問題というのは、確かに私ども、今各国に対しても人権問題を求めていますよね。今普遍的であるということを私は申し上げましたけれども、しかし、この価値を本当に我々が認識し、そして実現をするために努力するようになった歴史というのは本当に長いものであったろうかということ。それからまた各国の、それぞれの国の中にもまだいろいろな人権問題というのはあるわけですね。ですから、人権問題というのは、私はこれは非常に難しいなと思う。  そして、発展段階ということを先ほど申し上げましたけれども、人権というものはやはり目的に向かって、目標、要するに普遍的な価値というものに向かって進んでいくその段階というものはあるんだろう。そのあたりを考えてあげないと、ただ人権だぞ、人権をおまえのところは侵しているぞ、もちろん完全に侵しているものに対しては我々は抗議を申し入れるし、いろいろな措置をしていかなければならぬけれども、それですべてのものを断ち切ってしまったときに、その国というのは、本当に人権というものを尊重しながらいくどころか、むしろ大混乱に陥ってしまう問題もあるだろう。そのあたりを注意深く我々としては見守っていくということがやはり大事であろう、その意味での気配りというのを我が国などが持つということは、我が国の生い立ちからいってもそういうことができるのかなという思いを持っております。
  96. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 今のお話では、我が国立場としては、それぞれの国が発展段階でいろいろな国内状況があるのだから、その発展段階について我が国は比較的理解し得る、これまで我が国自身の歴史的な経緯もあったから、それでソフトなアプローチをしていくんだということだと思いますね。  そうすると、一歩一歩人権の問題について解消していって、改善されていったら、それに応じて経済協力我が国からも一歩一歩進んであげようというのが我が国経済協力に関する原則だというふうに理解してよろしいですか。
  97. 上田秀明

    ○上田政府委員 お答えいたします。  人権問題に関しましては、昨年定めました政府開発援助大綱の中におきまして、原則の一つとして「基本的人権及び自由の保障状況に十分注意を払う。」ということを定めておりますが、先ほど来御答弁がございますように、この具体的な運用に当たりましては、各国政治的なあるいは経済的、社会的状況を十分踏まえながら、その動向も見守りつつ援助を実施するということにいたしております。  我が国から問題と見るべき事態が起こったようなときには、いろいろな場での対話等を通じて粘り強く働きかけて、それから、必要に応じましては懸念を表明したり外交的な働きかけを行ったりいたしまして、改善が見られなければ援助の方針を見直すということもございますが、他方、改善が見られるような場合には、その段階で援助をまた再開するという方向での見直しをすることももちろんございます。
  98. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 その扱いについては多分ケース・バイ・ケースになっていくだろうと思いますが、その際、どうも中国とかロシアだとかかなり大きな国で人権が問題になって世界的な関心を呼んだ場合には、かなり深刻に受けとめて、我が国の懸念も表明するし、一歩の改善があるとそれなりに対応していくというふうに見えますけれども、一方、比較的世界政治の中で存在感の少ない国に対しても同様に、それぞれの国の努力を見きわめながら対応していくのだという原則はしっかり守られているというふうに思ってよろしいですか。
  99. 上田秀明

    ○上田政府委員 具体的なケースごとによるということは仰せのとおりでございますが、私どももそれぞれのケースの動向を十分見きわめながら、必要に応じてきめ細かく措置をとっていくということにいたしております。
  100. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 ちょっと今私の質問に対して答えはなかったように思います。  私は、さっきちょっと申しましたように、ミャンマーの件ですけれども、あの国と我が国歴史的に、伝統的に非常に友好関係を保ち得る国、発展させ得る国だと思いますね。これは双方の国民感情からいっても、非常に希有なほど二国間関係発展する可能性のある国だと思っております。  しかし一方、八八年にラングーンの騒擾事件があって、そして選挙を行ったけれども、その選挙が意外な結果だったものですから軍事政権の方がそれを守らなかった、民政移管をしていない。これは私は、ミャンマーの方としては弁解のし得ない、ある種の十字架だと思います。この状況は早く直さぬ限り、いろいろな、国連だとかそれぞれの諸国の文書の中に、ミャンマーというのは、ヒューマンライツについてのメジャーバイオレーダーだと言われるのもこれは仕方のないことだと思うのですが、一方、昨年四月、いわゆるSLORCはタン・シュエ議長になって、それから政治犯の釈放、反乱軍との停戦、戒厳令の撤廃、いわゆるアウン・サン・スー・チー女史が家族と面会を自由にできるというような前向きな政策をとりましたね。このときに、我が国のいわゆる経済援助は一歩前進しましたか。かなりのメジャーステップだと思いますが、一歩前進したら何が行われたか、教えていただきたいと思います。
  101. 上田秀明

    ○上田政府委員 御指摘のとおり、またアジア局長からも御答弁ありましたように、一定の好ましい方向への動きが見られるということは、私どももそういうふうに認識しておりますので、まさに目下、このような情勢でどういうふうな対応ができるか、あるいはすべきであるかということで、経済協力の面での対応について検討しておるところでございます。  個別的には、これまでも、いわゆる緊急的なものあるいは人道的なものにつきましてケース・バイケースで対応するという方針をとってきておりましたので、人道的な分野では、昨年でございますけれども、NGOの団体が行っておられますエイズ予防のことに関しまして、政府の方からの補助金を出すというような形で対応しておるところでございます。
  102. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 それは私の質問に対しての答えではないのですね。エイズの話は、多分、小沢辰男さんが日本エイズ協会の会長をしているから小沢さんがやったのであって、それに数百万円の支援をしたという程度じゃないですか。違いますか。それは今ここの答弁に出てくるようなアイテムではないのではないですか。
  103. 上田秀明

    ○上田政府委員 エイズの方の件につきましては、御指摘のとおりNGOの補助金として六百万円を交付した件でございます。  それから、ミャンマーに対する経済協力の個々の案件につきましては、先方政府から、いろいろな案件につきましての具体的な要請、あるいは再開してもらいたいとか、そういういろいろな要請もございますので、目下どういう対応が可能であるかということを検討しておるところでございます。
  104. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 私が質問しているのは、何を行ったかであって、何を検討しているかではないのですね。  それで、例えば天安門事件の後には円借再開までかなりの短期間でやっているわけです。一方、ミャンマーの場合には、かなり大きなステップを踏んだと思いますけれども、それから現在まで一年七カ月ぐらいになっているわけですね。その間に何かおやりになったことがあるか、それで人権改善について、そこまでやれば諸外国も評価するのですよというエンカレッジの具体的な例として、称揚する、勇気づける具体的な例として、政府として何かやったかということの質問です。
  105. 上田秀明

    ○上田政府委員 お答えいたします。  時系列的に申し上げまして、昨年の四月以降の好ましい動きに対して、現時点までの間で、特に、例えば援助を再開というふうに位置づけられるような政府間ベースでの援助、案件を実施したことはございません。
  106. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 ミャンマーはことしの十月十五日までに約三千人と言われる政治犯のうち千九百八十九人の釈放を行っているわけです。恐らく天安門事件後の中国との関係では、かなり大きく評価されることだったと思います。しかし、ミャンマーの場合には何となくほうっておかれている。  つまり、私が言っておりますのは、ソフト・デモクラティック・パス、つまり一段一段やっていくべきなんだろうな。そして、それがケース・バイ・ケースということはそれでいいんだろうと思います。ただ、そのケース・バイ・ケースを適用するときに、やはり発言力の大きい国、外務大臣がおっしゃるように、隣の大きな国で今後問題になりそうな国という場合にはかなり迅速に手が打たれるのだけれども我が国との関係が非常によくなって友好関係が保ち得るような国であるけれども、国際政治の中での発言力が非常に少ないとか、それから貿易関係が非常に少ないというような国は、若干ほうっておかれる傾向にあるのじゃないかそこを危惧してこの質問をしているのであります。  それで、繰り返しますけれども、選挙をやって、それで民政移管するよと言いながら、なおかつ結果がちょっとひどい、危ないなと思ったら、軍事政権がそれを民政移管していないというのは、もうミャンマーのSLORCにとっては弁解のできない十字架だと思います。それは早く直していかなければならないし、そのために我が国は説得していかなければならないと思います。これはミャンマーのSLORCが努力しなければならぬところだと思います。  ただ、それを一つ一つやってきた場合にはやはりエンカレッジしてあげる。特にあの国の場合には、恐らく国際政治の中でどう対応していいかということが余り得手ではない国なんじゃないかと思うのですね。まあ、そういう意味で、今大きなステップを踏みながら、日本側が対応してあげていないというのはどうも手抜かりだったのではないかなという気がします。  人道的なものであったならば手を打っていく方針でしたということをおっしゃるけれども日本経済援助でヤンゴンにヤンゴン新総合病院というのができていますね。この間私は、ミャンマーに行ったことがないものですから現地を見に行ったのですけれども、八八年にでき上がった病院が、胃カメラがありファイバーカメラがありCTスキャンがあるのですけれども、その後日本とのコンタクトが全部とぎれていますから、その器械が全部アウト・オブ・オーダー、使えない状況なんですね。それを供給してくれたメーカー、代理店とのコンタクトも一つもできない状態というのは、どうもちょっとほうっておいていいのかな。やはりこの種の話というのは、人道上の範囲に入ると思うのですけれども、いかがですか。
  107. 上田秀明

    ○上田政府委員 ミャンマーに我が国がかつて行いました無償協力での、今御指摘のヤンゴン総合病院で器材等の維持管理がはかばかしくないという状況については、私ども承知はしております。もちろん、一義的にはそういった維持管理は相手国の責任ではございますけれども、したがって、ミャンマー側で対応していただくべき問題ではございますけれども、まさに人道的な観点から、この個別のケースにつきましてはどういうことができるか、検討してまいりたいと思っております。
  108. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 質問最後にいたしたいと思いますけれども、人権問題についての世界各国の対応、そして、それぞれの国が個別の国にいかに対応しているかということを見ますと、必ずしも非常にクリアな基準でやっているとも限らない、かなりダブルスタンダードでやっているケースが往々にしてあると思います。それは、現実の外交ですし、政治ですから、国際政治の中でそういうことがあることは当然だろうというふうにも思います。  しかし、少なくとも我が国と非常に友好関係を保ち得る国民であり、そして、かつては極めて豊かな資源を持って豊かな国であった国の人々が、早く豊かになり、そこで早く民主化が進められることは、我々の国の外交一つの目標であるべきだろうと思います。ミャンマーとアメリカとの貿易関係はほぼゼロに近い。そして、中国とアメリカとの貿易関係は数百億米ドルになります。ロシアアメリカとの貿易関係も二、三百億になるのではないかな。片一方はネグリジブルである。すると、教科書に書いてあったような人権問題を非常に強く要請するのに極めて手ごろな国というふうになっているおそれもあるような気がしますね。  ですから、我々は我が国外交の中で、アジア外交について言えば、カンボジアについて、我が国アメリカのいないところで、そのプレゼンスがほぼゼロのところで、この間、パリ会談から東京会談からPKOから、いろいろな努力をして一定の成果を上げる、いや一定どころじゃない、かなりの成果を上げたものと評価していいと思います。この次にミャンマーの問題を日本アジア外交がどう取り組むかは多くの国々から注目されているところであり、一方、中国、ASEAN諸国が積極的な努力と干渉を行っている中で、日本がどうも十分注意を払っていないのではないか、そんな気がしてなりません。  今後、ミャンマーを国際場裏にもっと早く引き出して、そして民主化の道を進めていくために、我が国はこれからどういう方針で臨まれるか、大臣ないしアジア局長のお考えを聞きたいと思います。特に、次なるステップとしてミャンマー側がどういったステップをとることが望ましいか、それから、我が国としては、オーストラリアとの仲介に立つとかアメリカの議会との仲介に立つとか、そういったことを今後やる意思はおありか、その辺をお聞きしたいと思います。
  109. 羽田孜

    羽田国務大臣 私、実は今加藤さんのお話をお聞きしながら、ミャンマーというのが本当に伝統的に日本の国と友好関係にあった国、何か心と心が、琴線が結び合うといいますか、そんな国であること、これは私も全く同感であります。  実は先日、タイを訪れましたときにも、タイの首相あるいは外相、こういった皆様方ともお話し合いをし、我々としてはミャンマーに対して大変な関心を持っておる、あなた方は隣国であるということもあって、このミャンマーが、今お話があったように国際場裏に出て、いろいろな面でお互いに話し合える、そういう環境というものをぜひともつくってほしいという話、そういう中で、あそこのタイの外務大臣もちょうどミャンマーに出かけるというお話もありましたので、そういう私どもの考え方もタイの大臣に対してお伝えしたところであります。  それから、国連総会の終わった後、オン・ジョー外相、この方が日本に寄られましたときに、私、時間をとりましてお話し合いをいたしました。そのときには、先ほど局長の方から話がありましたアウン・サン・スー・チーさんの問題、この問題というのはやはり国際的にも大きく目が向けられておるということなので、これは何とかひとつ解決してほしいという話をいたしました。ただ、彼らといたしましても、そういう国際的な目というものは私ども承知しておる、そういう中にあって、家族との面会あるいは女史が外国にもし出るということであればそれも認めるというようなお話でありました。  ただ、私どもといたしましては、あの方が国内で活動できるといいますか、そういったことを認めることがやはり大事なんだろう、もともと、やはりお話があったように、あの方は選挙によってきちんと認められた人であるわけですからね。ですから、そういう意味で、ただ外に、国外に出ることは認めますよというのではやはりなかなか納得できないんじゃないのかなという思い、こういったことを私ども率直にお話しすると同時に、我々としても、今お話があったように、あなたの国はかってやはり大きく豊かに暮らした国でありますから、そういうものに対して我々としても何とか復旧のためにお互い努力をしていきたい、我々としても協力をしていきたいというお話を実は申し上げたところでありまして、きょうお話がありましたことなんかも我々よく頭に置きながらあの国の動向をよく見詰め、そしてやり得ることはできるだけやる、そしてまた、彼らにもできるだけこの民主化を進めるようにこれからも話しかけていきたいというふうに考えております。  それから、今アジアとオーストラリアの問題についてのお話、あるいはアメリカとのお話がありましたけれども、我々は積極的に、やはりアジアに対してあの国、オーストラリアというものが一つの役割をこれからもアジアの中で果たしていくだろうし、またオーストラリアも、我々はやはりアジア太平洋の一員である、もうヨーロッパというよりは我々はアジアの一員であるということを本気で思っているんだということをこの間の会議のときでも切々と彼らは訴えておりまして、こういったことをやはりアジアに伝えていく、そんなものが私どもの役割であろうというふうに思って、いずれにしましても、お互いにこうやって対面している国々でありますから、お互いがやはり率直に話し合ったり協力できる体制をつくる、これがやはり日本の果たす役割であろうというふうに思っております。
  110. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 ありがとうございました。  今アウン・サン・スー・チーさんのことをおっしゃいましたけれども、そこも重要ですけれども、やはり憲法制定のプロセスを急ぐ、そして民政移管を早く進めるということが私は一番重要だと思いますし、我が国外交ルートを通じてミャンマーSLORC側に必死な説得をしながら、早く正常な道、ミャンマー関係になるために努力していただきたいと思います。  質問を終わります。
  111. 菅直人

    菅委員長 古堅実吉君。
  112. 古堅実吉

    ○古堅委員 核兵器廃絶問題と米軍基地のPCB問題についてお尋ねします。  細川総理は九月二十七日の国連総会の演説で、核不拡散条約の無期限延長を支持すると演説されて、核兵器保有国の核兵器保有を容認する立場を改めて表明されました。これは唯一の原爆被爆国である日本国民の核兵器廃絶要求を無視したもので、絶対許すわけにはまいりません。  ことし八月六日の広島宣言は、「少なくとも今世紀のうちに、すべての核兵器を完全に廃棄するよう、期限をつけた目標を世界に示すべきである。」こう述べておりまして、国民の願いをこのように表明したとも言えます。  なぜ政府核兵器の速やかな廃絶を主張できなかったのか、外務大臣から御説明願いたいと思います。
  113. 羽田孜

    羽田国務大臣 今最後に、なぜ核廃絶を政府はというお話があったわけですけれども、まさに私どもも基本的には今のお話理解するところです。  ただ、現実的に今しなさいということより、やはりここで核をまた拡散するということ、新たな核保有国というものが出現するということ、これはどんなことがあってもまず防止しなければならないことだろうというふうに私どもは考えます。ですから、その意味で我々はこのNPTの無期限延長というものを支持したわけでありまして、これは核保有というものを恒久的に認めるというものではないと思うのです。  ですから一方では、私どもは核をまず縮小させるという現実的なことを各国に、保有国に対し促していくと同時に、やはり核廃絶に向けてこれは粘り強く提言をしていくということが大事なんだろう。まずは核を拡散させないということ、これを現実的に対応することが私ども日本としてとるべき道であろうというふうに思っております。これはもう世界のまさに平和と安全のためであるということを申し上げたいと思います。
  114. 古堅実吉

    ○古堅委員 核不拡散条約の無期限延長ということは、核不拡散、そういう名において核兵器保有五大国の独占体制をこのまま維持するということにほかなりません。世界の願いは核兵器の速やかな廃絶であります。なぜ、そういうところで核兵器の廃絶、まともにそういうことを言うことが核兵器を速やかになくするということにつながらないというふうにでも考えるのか、どうなんですか。
  115. 羽田孜

    羽田国務大臣 おっしゃることは私もわかるんですよ。しかし、実際に核を新たに開発しているんじゃないかという疑惑を持たれる国なんかもあるわけですよね。ですから、やはりもう核は持たない、これからも保有するということはやめるんだよということをまずやるということ、これは私は基本的に大事なことであろうというふうに思っておりまして、それと同時に、核廃絶に向けて現実的に一つずつやはり積み重ねていくということが基本的に大事なんじゃないのかなというふうに私は思っております。
  116. 古堅実吉

    ○古堅委員 繰り返しの説明になろうかと思いますが、政府としては、核兵器を廃絶するという方向を考えながらも、今すぐ核兵器を廃絶しろというふうな主張はすべきでない、そういうことは言わないんだということなんですね。
  117. 羽田孜

    羽田国務大臣 そういう議論になりますと、これは核だけではなくて、通常兵器であろうと何であろうと人を殺りくするような兵器というのは一切持つべきじゃない、これはもう基本的な人類の普遍の価値であろうと私は思います。しかし、現実にそれじゃそれをやめなさいということはできない。そういう中で、やはり通常兵器等についても、この移転等についての管理というものをどうしていこうかということがやはり今議題になっているわけですね。ですから、私どもはこの核の場合にも、そういう現実的に、本当にやめさせなければならないわけですね。ですから、一つの現実的なステップを踏んでいこうということであります。ただ私どもは、すべての核兵器保有国が一層核軍縮、この促進展に努力すること、この重要性というものを指摘しますよということもここの細川総理の演説の中で、国連で申し上げておるということであります。
  118. 古堅実吉

    ○古堅委員 政府核兵器廃絶をまともに言おうとしないその裏には、やはり核抑止の政策、そういうものが裏返しのものとしてずっとあるんじゃないですか。
  119. 羽田孜

    羽田国務大臣 それは一切ないということです。私どもはやはり核の唯一の被爆国ですしね、このことからいっても、やはり核というもの、いわゆる大量殺りく兵器というものが一体どんなに危険なものであるかということを一番経験している国なんです。ですから、私どもとしては、今おっしゃるように、将来に向かって核廃絶をさしていくということが目標のために、そうかといって核廃絶だけ言いましても、それじゃやめてくれるか、なかなかやめない。むしろ実際に今軍縮が行われているという認識、要するに、例えばロシアアメリカとの話し合いの中で核軍縮というのが実際に行われている。ですから、そういう一つずつのステップを踏みながら廃絶に向けて歩みを続けるということが現実的な対応であろう、そして本当の核廃絶につながるんだという確信を私は持っております。
  120. 古堅実吉

    ○古堅委員 核兵器を廃絶すべしという、将来を考えるということを言いながら実際には核拡散防止条約の無期限延長ということは、一面核兵器体制をそのまま維持するということなんですよ。  世界保健機構(WHO)でも核兵器廃絶の必要性が強調されている、そのことについては外務大臣も御存じだというふうに思います。  四月二十六日にWHO事務局長がWHO総会に提出した「核兵器が健康と環境におよぼす影響」と題する報告書は、核兵器が健康と環境にもたらす危険は、「いぜんとしてひろく存在している。これらの危険は、核兵器が生産されるかぎり、つづくであろう。したがって、それの唯一の防止策は、核兵器を廃絶することである。」というふうに述べています。  外務大臣としても、健康と環境にもたらす危険を防止する策は核兵器を廃絶することであるというこの訴えは、賛成できるんじゃないですか。
  121. 羽田孜

    羽田国務大臣 我々もこのWHOのまさに一つの主要な国として、今お話がありましたように、健康その他にもやはり影響が出てくるということはあるわけですから、核廃絶に向けて私どもは着実に歩みを続けるということが重要なことであろうということは、私はもう全く同じ考え方を持ちます。
  122. 古堅実吉

    ○古堅委員 唯一の被爆国としてやるべき重要なこと、まさにこの核兵器廃絶について、世界日本立場というものを明確にして、そのためにまともな努力をするということが一番求められています。細川内閣として、そういうことはできないということですか。やるべきでないということですか。
  123. 羽田孜

    羽田国務大臣 細川内閣というより、細川総理みずからが、すべての核兵器国が一層の核軍縮の進展に努力することの重要性指摘するということで、まさに核廃絶に向けて歩みをしなければならないという思いを国連の総会でも述べておるところであろうというふうに私は思っておりまして、細川内閣としても、まさに核廃絶に向けての努力というものをこれからもやはり積極的にしていくべきであろうというふうに思っております。
  124. 古堅実吉

    ○古堅委員 八月六日の広島宣言のそういう国民、人類の願いにもこたえられない、WHOのそういうような指摘にもこたえられない、これは、核兵器廃絶という人類の根本的な願いに日本政府が、唯一の被爆国でありながら、まともな努力をしないということを表明するものにほかならないですよ。絶対許すわけにはいかない態度です。  以上のことを指摘して、次に進みます。  次に、米軍基地のPCB変圧器問題について若干お尋ねしたいと思います。  昨年の外務委員会でも、それから予算の分科会でも、私はこの問題を取り上げて何回か質問いたしました。外務委員会では、日本が米軍基地に提供した変圧器の中で、PCB入りが岩国基地だけで十三基あった、昨年の時点でこういう答弁でありました。その後、今日までわかったことを、きょうは最初に防衛施設庁の方から明らかにしてほしいと思いますが、その一点は、日本提供のPCB入り変圧器がどの米軍基地で何基判明したか、それが一つ、それはどこがどのように処理したか、それが二つ、その処理費用は幾らで、どこが負担したのがその三点について、まずお答えください。
  125. 戸邉悦男

    戸邉説明員 御説明いたします。  提供施設整備により米軍施設内に設置しました変圧器のうち、現在までに米側からPCBの混入の疑いがあるものとして通報があったものにつきまして、改めて日本側調査を行った結果、PCBの混入が判明し交換が必要になったものが合計八十一基ございます。これらのPCB混入の変圧器につきましては、すべて製造メーカーで交換が完了いたしております。  八十一基の内訳でございますけれども、本土の岩国飛行場におきまして五十四基、それから沖縄の方の基地におきまして二十七基という状況になってございます。
  126. 古堅実吉

    ○古堅委員 沖縄米軍基地の個々の所在、キャンプ、そういうことなどを明確にしてください。
  127. 戸邉悦男

    戸邉説明員 御説明いたします。  沖縄の関係の二十七基の内訳でございますが、キャンプ瑞慶覧に八基、それからキャンプ・コートニーが七基、キャンプ・マクトリアスに四基、キャンプ・ハンセンに三基、牧港補給地区に三基、普天間飛行場の二基でございます。
  128. 古堅実吉

    ○古堅委員 これらはどこがどのように処理し、その費用などの負担はどうなったんですか。
  129. 戸邉悦男

    戸邉説明員 御説明いたします。  これらの変圧器につきましては、メーカーの方にPCB混入の通知をいたしましたところ、メーカーの方で交換をしていただきました。費用についてはメーカー側め方のものでございます。
  130. 古堅実吉

    ○古堅委員 次は、米軍が米本国や南朝鮮など日本以外から調達した変圧器のPCB入りの実態について質問します。  その第一点は、米側が在日米軍基地の全体を調査したか、二点は、PCB入り変圧器はどのくらい見つかったか、三点目は、そのPCB入り変圧器が米本国に搬入されたのか、三点について。
  131. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 米軍の所有する変圧器でPCB変圧器であると判明したものについては、米側でその撤去等適切な処理をすることが既に昨年八月十九日の日米環境分科委員会において確認されている次第でございますが、これらの変圧器について米側に確認したところ、既にPCB変圧器であるということが確認されたものは約二千五百、それは全部撤去して順次米本国に搬送している今その途中であるということでございます。  なお、この撤去した二千五百基ということのほかにどれぐらい変圧器があるかということは、数が多いこともありまして、まだ全部調べがついておらず、引き続きアメリカにおいて調査中ということでございます。
  132. 古堅実吉

    ○古堅委員 米軍側から日本製品以外のものについての二千五百というのは初めての答えですが、米軍は在日米軍基地の全体について今調査をずっと続行しているということで、それで、その在日米軍基地の全体についての調査が済めば、政府にもその全体についての報告があるということになりますか。
  133. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 今申し上げましたとおり、米軍が保有する米軍基地内、これは日本全土に及ぶわけでございますが、そこにPCB変圧器というのがどれぐらいあるかということについては引き続き米軍の調査が進行中でございます。  いずれにいたしましても、先生、報告というお言葉を使われまして、この報告ということの意味なんでございますけれども、御案内のとおり昨年八月十九日の環境分科委員会の会合、そこでの確認、それから同じ月の二十七日に行われた日米合同委員会の場で、米軍施設、区域にかかわる環境問題についての日米間の連絡を強化すべきだということから、今後在日米軍施設、区域内でPCBの漏出問題なんかが出てきた場合にはあるいはそういう環境汚染の事故が起きた場合には、米側は、その状況、経過なんかについて日本側にできる限り速やかに連絡する、そして、必要に応じて環境分科委員会などを通じて日本側協議するということが確認されているわけであります。すなわち、問題があったときにそれが直ちに状況、経過報告を経てそして処理される、日本側との協議を受けて処理されるという枠組み、メカニズムがきちんとでき上がっているということが一つございます。  さらに、私たちの心証といたしまして、米側は非常に厳正な環境基準というものを在日米軍基地一般の中において適用しているということから、私どもとしては、米軍がPCB変圧器の処理について適正な処理を今も継続しているであろうということについては、実は疑いを持っていない次第でございます。
  134. 古堅実吉

    ○古堅委員 私が今お聞きしたのは、米軍基地全体についての調査がなされたら日本政府に対してもそういうことがきちっと報告されるかと。何か報告ということにひっかかったんでしょうかね。  合同委員会でそういうことが確認されていることは、日本政府に、どういう言葉、通報といいますかあるいは連絡といいますか、そういうことでもいいんですが、いずれにしてもわかるような、そういう状態になるであろうということと、では、その米軍基地全体についての調査というのはいつごろまでに完了し、そのPCB入りという変圧器はいつごろまでに全体として除去されるという見通しなんですか。
  135. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 米軍の調査が具体的にどれぐらい完了までにかかるかということについては、はっきりしたところはわからないわけでございます。しかし米側は、これを誠意を持って継続するということを述べているわけでございます。  そして、報告というところでございますが、もちろん、環境分科委員会、日米合同委員会、さらには、それを超えて日米間にはまさに毎日のように非常に密接な協議、連絡ということがいろいろなレベルで行われているわけでございまして、そういう過程において、先生が御指摘されたような点というものが取り上げられるということはこれは十分にあることだろうと、当然そうであるだろうと思っております。  いずれにいたしましても、私たちは、米軍が、調査が済むまでの間も在日米軍基地のすべてにおいて非常に厳正な環境基準というものを適用するという立場に立って調査を行っているというふうに承知いたしております。
  136. 古堅実吉

    ○古堅委員 もう時間が来ましたから終わりますが、いずれにしても、速やかに基地全体についての調査を厳格にやってもらい、すべてのPCB入りが米軍の手によって除去されるように日本政府からも引き続き強く求めてほしい、そういうことを申し上げて、終わらせていただきます。
  137. 菅直人

    菅委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時二十三分散会