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1993-05-27 第126回国会 参議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年五月二十七日(木曜日)    午前十時一分開会     ―――――――――――――    委員の異動  五月二十一日     辞任        補欠選任      狩野  安君    大島 慶久君      釘宮  磐君    井上 章平君      翫  正敏君    喜岡  淳君      渕上 貞雄君    櫻井 規順君      前畑 幸子君    種田  誠君      渡辺 四郎君    三重野栄子君      西山登紀子君    上田耕一郎君  五月二十五日     辞任        補欠選任      西川  潔君    下村  泰君  五月二十六日     辞任        補欠選任      上田耕一郎君    西山登紀子君  五月二十七日     辞任        補欠選任      久保田真苗君    翫  正敏君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長        遠藤  要君     理 事                井上  裕君                石川  弘君                上杉 光弘君                柳川 覺治君                角田 義一君                村沢  牧君                山本 正和君                白浜 一良君                寺崎 昭久君     委 員                井上 章平君                石井 道子君                岩崎 純三君               大河原太一郎君                大島 慶久君                沓掛 哲男君                下稲葉耕吉君                成瀬 守重君                野間  赳君                野村 五男君                服部三男雄君                林田悠紀夫君                星野 朋市君                松浦 孝治君                穐山  篤君                翫  正敏君                及川 一夫君                喜岡  淳君                櫻井 規順君                清水 澄子君                種田  誠君                堂本 暁子君                肥田美代子君                三重野栄子君                山口 哲夫君                荒木 清寛君                猪熊 重二君                広中和歌子君                長谷川 清君                西山登紀子君                吉岡 吉典君                磯村  修君                乾  晴美君                下村  泰君                武田邦太郎君   国務大臣       内閣総理大臣   宮澤 喜一君       法 務 大 臣  後藤田正晴君       外 務 大 臣  武藤 嘉文君       大 蔵 大 臣  林  義郎君       文 部 大 臣  森山 眞弓君       厚 生 大 臣  丹羽 雄哉君       農林水産大臣   田名部匡省君       通商産業大臣   森  喜朗君       運 輸 大 臣  越智 伊平君       郵 政 大 臣  小泉純一郎君       労 働 大 臣  村上 正邦君       建 設 大 臣  中村喜四郎君       自 治 大 臣       国 務 大 臣  村田敬次郎君       (国家公安委員       会委員長)       国 務 大 臣  河野 洋平君       (内閣官房長官)       国 務 大 臣  鹿野 道彦君       (総務庁長官)       国 務 大 臣       (北海道開発庁       長官)      北  修二君       (沖縄開発庁長       官)       国 務 大 臣  中山 利生君       (防衛庁長官)       国 務 大 臣       (経済企画庁長  船田  元君       官)       国 務 大 臣       (科学技術庁長  中島  衛君       官)       国 務 大 臣  林  大幹君       (環境庁長官)       国 務 大 臣  井上  孝君       (国土庁長官)   政府委員       内閣法制局長官  大出 峻郎君       内閣法制局第一  津野  修君       部長       国際平和協力本  柳井 俊二君       部事務局長       公正取引委員会  小粥 正巳君       委員長       公正取引委員会  糸田 省吾君       事務局審査部長         警察庁長官官房  垣見  隆君       長       警察庁長官官房       総務審議官事務  泉  幸伸君       代理       警察庁警務局長  井上 幸彦君       総務庁長官官房  八木 俊道君       長       総務庁長官官房  瀧上 信光君       会計課長       総務庁人事局長  杉浦  力君       北海道開発庁予  村上 喜堂君       算課長       防衛庁参事官   三井 康有君       防衛庁参事官   太田 眞弘君       防衛庁長官官房  村田 直昭君       長       防衛庁防衛局長  畠山  蕃君       防衛庁経理局長  宝珠山 昇君       防衛庁装備局長  中田 哲雄君       防衛施設庁長官  藤井 一夫君       防衛施設庁総務  竹下  昭君       部長       防衛施設庁施設  江間 清二君       部長       防衛施設庁建設  黒岩 博保君       部長       防衛施設庁労務  荻野 貴一君       部長       経済企画庁調整  長瀬 要石君       局長       経済企画庁総合  田中 章介君       計画局長       経済企画庁調査  土志田征一君       局長       科学技術庁長官  興  直孝君       官房会計課長       科学技術庁原子  石田 寛人君       力局長       科学技術庁原子  佐竹 宏文君       力安全局長       環境庁長官官房  森  仁美君       長       環境庁長官官房  小沢 通成君       会計課長       環境庁大気保全  入山 文郎君       局長       国土庁長官官房  藤原 和人君       長       国土庁長官官房  藤田  修君       会計課長       国土庁計画・調  横谷 真平君       整局長       国土庁土地局長  鎭西 迪雄君       法務省刑事局長  濱  邦久君       外務省アジア局  池田  維君       長       外務省欧亜局長  野村 一成君       外務省経済局長  小倉 和夫君       外務省経済局次  林   暘君       長       外務省経済協力  川上 隆朗君       局長       外務省条約局長  丹波  實君       外務省国際連合  澁谷 治彦君       局長       大蔵大臣官房総  日高 壮平君       務審議官       大蔵省主計局長  斎藤 次郎君       大蔵省主税局長  濱本 英輔君       大蔵省理財局次  根本 貞夫君       長       大蔵省国際金融  中平 幸典君       局長              国税庁次長    瀧川 哲男君       文部大臣官房長  吉田  茂君       厚生大臣官房総  瀬田 公和君       務審議官       農林水産大臣官  上野 博史君       房長       農林水産大臣官  堤  英隆君       房予算課長       農林水産省経済  眞鍋 武紀君       局長       通商産業大臣官  江崎  格君       房総務審議官       通商産業省貿易  渡辺  修君       局長       資源エネルギー  黒田 直樹君       庁長官       中小企業庁長官  関   收君       運輸省運輸政策         局次長      和田 義文君       兼内閣審議官          郵政大臣官房財  新井 忠之君       務部長       労働大臣官房長  七瀬 時雄君       労働省職業安定  齋藤 邦彦君       局長       建設大臣官房長  望月 薫雄君       建設大臣官房会  木下 博夫君       計課長       建設省建設経済  伴   襄君       局長       自治大臣官房総  遠藤 安彦君       務審議官       自治大臣官房審  松本 英昭君       議官       自治大臣官房会  斉藤 恒孝君       計課長       自治省行政局選  佐野 徹治君       学部長   事務局側       常任委員会専門  宮下 忠安君       員     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○平成五年度一般会計補正予算(第1号)(内閣  提出衆議院送付) ○平成五年度特別会計補正予算(特第1号)(内  閣提出衆議院送付) ○平成五年度政府関係機関補正予算(機第1号)  (内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、平成五年度補正予算三案の総括質疑に関する理事会決定事項について御報告いたします。  質疑を行うのは五月二十七日及び二十八日の二日間とすること、質疑割り当て時間の総計は二百十八分とし、各会派への割り当て時間は、自由民主党三十六分、日本社会党護憲民主連合九十八分、公明党・国民会議二十八分、民社党・スポーツ・国民連合日本共産党及び民主改革連合それぞれ十四分、二院クラブ及び日本新党七分とすること、質疑の順位についてはお手元に配付いたしておりますとおりとすること、以上でございます。  ただいま御報告いたしました理事会決定のとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  4. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 平成五年度一般会計補正予算平成五年度特別会計補正予算平成五年度政府関係機関補正予算、以上三案を一括して議題といたします。  三案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより総括質疑に入ります。角田義一君。
  5. 角田義一

    角田義一君 角田義一でございます。  まず、補正予算関連につきましてお尋ね申し上げたいと存じます。  本会議でも総理大蔵大臣の方から今回の補正提出をされた経過なり理由なりがるる述べられましたけれども予算委員会でもございますので同一会期内でしかも当初予算成立して間もない時期にこれだけの大型補正予算を組んで国会に出してこられたことについては、やっぱり一応御説明をいただかなければならぬと思っておりますので、御説明いただきたいと思います。
  6. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 委員御指摘のとおり、本会議及び当委員会におきまして提案理由の御説明を申し上げました。かいつまんで申し上げますならば、景気現状を見ますと、回復の兆しの動きが徐々にあらわれておりますけれども前回の例を見まして、特に四年度の補正予算の例を見ますと、大変おくれて補正予算審議お願いしましたということで、景気の先行きに対しまして、その影響もありまして若干まだはっきりしないところがある、予断を許さない状況にあるということでございます。  政府といたしましては、平成五年度の予算お願いし、不況に配慮しました予算ということでお願いをしまして、三月三十一日にはこれを成立させていただきました。早速、前倒し等をやりまして実行を図っておるところでございますが、景気足取りを一層確実なものにするため、極めて異例な時期ではありますけれども、総合的な経済対策を四月十三日の日に決定したところでございます。  その実施をいつやるかということでございますが、やはりおくれるよりは早くいろんなことをやることが景気足取りを明らかにするためにも必要であろう、こういうふうなことを考えまして今回の補正予算提出したところであります。  前回対策前回対策と申しますのは昨年八月につくりました対策でありますが、それと平成五年度の予算及び今回の予算と相まちまして、経済持続的成長の実現を一層確かなものにすることができるというふうなことを考えているところでございます。  まさに提案理由の中でも御説明申し上げましたけれども、こうした異例な措置を講じまして御審議をいただいているということ自体経済を私たちも非常に心配しているということのあらわれでありますし、また、こうした御審議をいただいていること自体につきましても、私は経済に対して やはり国会も一生懸命やっているという形で好影響をもたらすものだと考えておりますし、本予算案の円滑な御審議と速やかな成立を重ねてお願いするものでございます。
  7. 角田義一

    角田義一君 事務当局お尋ねしますけれども、戦後四十数年たちますが、同一国会会期、特に常会で当初予算が通った後さらに補正提出をされたという例は何回ございましょうか。  それから、特に一般会計で、当初予算成立した後さらに一般会計について今回のような補正を組まれたという例はございますか。
  8. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) お答え申し上げます。  戦後、同一国会内に当初予算補正予算が同時に提出をされましたのは全部で七回ございます。  御質問の一般会計補正が行われましたのは昭和三十四年度に例がございます。
  9. 角田義一

    角田義一君 その昭和三十四年度の一般会計補正予算は何のために組まれたものでございますか。
  10. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 国際通貨基金及び国際復興開発銀行への出資のための補正でございます。
  11. 角田義一

    角田義一君 今回のように、景気足取りを確保するため、確実なものにするため、そういう理由補正が組まれたことはありますか。
  12. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 今回が初めてでございます。
  13. 角田義一

    角田義一君 財政法の二十九条を私から申し上げるまでもなく、三十一国会でのIMFと国際復興開発銀行への出資というのは、一つ条約上の義務を果たすためということで、二十九条の要件を一応私は満たしておるというふうに思いますが、緊要の場合にしか補正予算を組めない、こういうことになっておるにもかかわらず、今回景気足取りを確保するためという形で出てきた、これはまことに異例なことであります。  そこで、総理お尋ねいたしますけれども、本年の一月五日の初めての閣議あるいは同日の都内のホテルで開かれた経済四団体の新年祝賀会でのごあいさつ、さらには三月十八日の日商の総会でのごあいさつの中で、必要があれば既往の殻にこだわらずに必要な手を打っていく、こういうことを何回も言っておられるわけでありますけれども、この御趣旨はどういうことだったのでございましょうか。
  14. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 最初に、同一会期の中でしかも本予算成立直後にこのような大きな補正予算を出すということについて、お尋ねがございました。御批判がございました。  この点は率直に申しましていわば前例のないことであります。国会のお立場からして、このようなことであればどうして本予算段階でそれが取り込めなかったのかという御批判は、私は政府として甘んじて受けなければならない。まことに異例なことをいたしましたことにつきましてはぜひ御理解お願いを申し上げたい、こう申し上げるしか基本的には私はないのだと思います。違法だとは思っておりませんけれども、そういう御批判があることは重々それは承らなければならないと思っております。  ただ、あえて申しますならば、本予算そのものは昨年の十一月ぐらいのいわば経済見通しの上に立って編成せざるを得ないわけでございますが、この経済の今回の状況の上から十一月の段階見通し得る将来についてはおのずから限界があったという事実がございますのと、もう一つは、本予算というものが来るべき年度の一年間における国の施策の全体を盛り込むという意味でやはり本予算の中にバランスのようなものがございまして、その中である種のことに強いアクセントをつけるというのは事実上なかなかやりにくいという問題があるように思われます。  それらの事情がありましたことを申し上げて、ひとつ御理解お願いしたい、こう考えるわけでございますが、今お尋ねになりました、私は確かに適時適切な手を打ってまいりますということを申し上げました意味合いは、今度の不況の中に金融関係証券市場関係の両方の問題がございまして、金融について申しますならば、いわば不良債権の処理の問題あるいは住宅専門金融機関についての問題等々がございますし、証券市場につきましてはここでエクイティーキャピタルを起こすということが非常に難しいという現状がございますし、そのような問題については、適時適切に金融証券の問題について手を打っていくつもりだということを頭に置いて申しておりまして、その段階補正予算ということを頭に置いて申したわけではございませんでした。  ただ、もう一遍繰り返させていただきますが、こういう、間を置かずに、しかもかなり国会で御議論があったいろいろな問題について、本予算でなくあえてすぐに補正予算提出したということにつきましての国会のお立場からの御批判は、私はそれなりに私どもとして謙虚に承らなければならない、こういう気持ちでございます。
  15. 角田義一

    角田義一君 私は、財政の大家であられる総理があえて年頭所感等で、既往のことにこだわらず適切な手段を打つ、枠にこだわらないというようなことをおっしゃったのは、もう本音で、おなかの中では、これはもう当初予算通ったら間もなく補正を組まざるを得ないんだ、こういうように私は考えておったというふうにしか思えないんですよ。そうでなければ、官房長官が一々総理年頭あいさつだとか商工会議所あいさつについて、いや、政府としては本予算を通してもらうのが精いっぱいで、それがまず第一なんで、補正予算については考えておりませんなんて、そんなコメントする必要ないじゃないですか。  私は、総理はみずからもうそういう腹を持っておったんじゃないかと、こういうふうに。今日、補正を出されてみて、やったな、これはえらいことやってくれたなと、こういうふうに私は思うんですが、いかがですか。率直にもう本腹を言ったらいかがでございますか。
  16. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほども申し上げましたとおり、私としては、証券金融等大変に神経質な状況でございまして、殊に三月危機ということが言われておりました。これは、この三月の決算期に当たって、殊に証券市場でございますけれども、どういう動きをするだろうか、それいかんによっては決算が非常に困難になるということがございました。また、金融についても、やや金融機関の中に、これはもちろん大きな金融機関ではございませんけれども、地方の金融機関の中でやや不安を伝えられておったものが幾つか御承知のようにございます。そういうことが念頭にありましてああいうことを申したわけでございます。  もとより先々の問題として、平成五年度を通じて補正ということはあり得る、それは考えておりましたけれども国会の御審議中の段階でそういうことを自分が申すべきでもないし、また、むしろ問題は三月危機の問題にある、こういうふうに考えておったわけでございます。
  17. 角田義一

    角田義一君 それじゃお尋ねしますけれども、当初予算の当委員会における審議の中で、総理も、いわば今年度の経済成長率三・三%というのはこれは決して高い数字とは思わない、民間はもっと低いけれどもどもはこれやれる自信があると。三・三%というものはやや願望的な要素も私はあると思いますけれども総理が当時、経済成長率三・三%と。私は議事録を何回読んでも、三・三%は決して高い数字ではない、やれるんだ、こう言っている。  そうすると、あれでございますか、今度の補正をやりますと、当然経済成長率は三・三%以上になるというふうに私ども理解しなければいけませんね、これは。簡単な論理だと思うんです。いかがでございますか。
  18. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 三・三%という経済見通し成長率数字は、一年を通じましていろいろあり得べきことを考えながら経済企画庁を中心につくられた経済見通してございます。いろいろあり得べきことというのは、内外のいろいろな事情ということとして申し上げざるを得ませんが、そういうものでありますので、いつ補正がどういうふうにして行われる、あるいは行われないとい うような、そういうことはいわば捨象した形で全体としての見通しを立てたものと、こういうふうにひとつ御理解を願いたいと思います。
  19. 角田義一

    角田義一君 それは言い逃れですね。そういうことを言っちゃいけないんじゃないですか。  私はあの当時の予算審議、ずっと見ておりまして、聞いておりまして、きょう総理に御質問するのに議事録を何遍も何遍も丁寧に丁寧に読んでまいりました。やはりこれ、これだけの大型予算を組んで、じゃ一体三・三%超えるんですか超えないんですか、端的に答えてください。
  20. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ですから、大変に難しいことをお尋ねになっているわけであって、この補正予算がなくても三・三%、あっても三・三%という話はおかしいじゃないかと言っておられるわけでございますから、お答えをする方もこれはなかなか容易なことでございませんで、まあ一年間のこれだけ大きな経済見通しというのはやはりあり得べきことをある意味で捨象して見通しとして申し上げていると、そこらのあたりでひとつお許しをいただけないかと思います。
  21. 角田義一

    角田義一君 私は総理を許すとか許さぬとかそんな大それた立場にはないんですけれども、どう考えてもこれはおかしいんですよ。やはりそれは、あの当時はこの予算がベストである、これは最高なんだ、これでいくんだと、何回も何回も言っておられたんです。そして三・三%はちっとも難しくない、決して高い数字ではない、こうここでもってたんかを切ったわけですよ、総理らしくなく。珍しくたんかを切った。ところが、今度また出てきて、これは一体どうなんだと言ったら、答えられないと。天下の総理にしては珍しいじゃないですか。もう一遍やってくださいよ。
  22. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 三・三%を達成しなければならないと大変に決意をいたしておりましたが、この補正予算成立させていただきますと、いよいよ確かになると。
  23. 角田義一

    角田義一君 それは、みんな笑っておられるけれども、本当におかしな理屈なんですよ、だれが考えても。もっと素直に言っていただいた方がよろしいんじゃないですか、国民の前には。  もう一つお尋ねしますけれども、今度の補正予算はまことにでたらめですな、私に言わせると。この予算を見ますと、例えば消防庁の関係で、施設整備費というのは当初予算ではわずか一千万しかついてないんです。ところが、今度の追加額を見たら十億五千百万ですわ。百五・一倍ついているわけです、一カ月半で。それから国立博物館、これも当初二億七千七百万です。ところが、追加で八十九億一千百万です。これは当初予算に比べると三十二・一六倍ですよ。たくさんいろいろあるわけなんですけれどもね。  そこで、じゃちょっと自治大臣にお尋ねします。  補正予算で消防庁は十億、これはありがたいことだとあなた方は思うかもしれませんが、何しろ百五・一倍ついちゃった。そうすると、わずか一カ月半で何で百五倍つけなきゃいかぬの、これ。合理的に説明してくださいよ。大臣、こういうことが通るんですか。まず大臣が答えて、後、事務方の方で答えてください。
  24. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 事務方も参っておりますが、私は消防を所管をしておりまして、消防についての要望は全国的に極めて高いわけでございます。これはずっと昔から極めて高いわけでございますが、いろいろな施設について御要望申し上げておりました。それが総理が聞き届けていただくところとなって非常に大幅な補正を組んでいただいたと、心から感謝をしておるところでございます。全国の消防も感謝しております。
  25. 角田義一

    角田義一君 そんな子供だましのことを言ったってだめだよ、あなた。わずか一カ月半で百五倍のものがついて、これは総理大臣の特別な御高配でなんて言ったって通らないですよ、世間は。通らないよ、こんなもの。当初予算のときからこんなものは必要なんだ、消防署をどうするかなんということは。そうじゃないですか。景気のため景気のためで何でもまかり通っておるということになるんですよ。こういうでたらめの予算の決め方というのは、許されるんですか。  しかも、いいですか、シーリング、シーリングといって当初予算で抑えておいて、そして補正予算になったらばさっと出してくる、何でも出してくる。これは文部省なんてひどいものですよ。文部本省の留学生会館施設整備費なんというのは当初予算で削られている。追加で三十八億四千六百万円だよ。無限大ですよ、ゼロからだからね。えらい話になっている。  こういうことを平然とやって出してくるというこの感覚、この感性、これ、総理どうですか。当初予算補正予算の関係を根本的に崩すようなことを平然とおやりになる。こういうことは許されるんですか、どうでしょうか。もう事務の問題じゃないですよ。大蔵大臣、答えてください。
  26. 林義郎

    国務大臣林義郎君) いきなりぱっとつけたのはおかしいじゃないか、こういう御指摘でございますが、消防庁の方につきまして申し上げますと、今まで当初予算額が一千万円、こういうことでございました。補正で追加しまして十億五千万円、こういうことです。確かに百倍になるんですが、やりましたのは消防庁における通信衛星系の施設の整備、それから消防大学校が老朽化しておりますからその施設の改修を行う。まあ前から話があったわけでありますが、今回の補正でつける。こういった仕事は、公共事業としてやるならばやはり仕事がふえるし景気対策としてはいいものではないかということでやったところでございます。  それから文部省の方の関係でございますが、文部省の方は平成館というのをつくる、こういうことでございまして、それと老朽危険建物の改修工事等をやる、こういったことをやっているところでございます。
  27. 角田義一

    角田義一君 よろしいですかこれは景気に関係ないわけですよ。消防署の設備にしろあるいは文部省の予算にしろ、景気景気ということで出してくるのは筋が違うでしょうと言っているんです。消防署の機構を整備する、設備を直すというのは当初予算のときから言われているはずじゃないですか、そんなことは。  だから、私が言いたいのは、この予算を見てみますと、本来であれば当初予算をあるいは修正をしても出すのが筋だと私は思っている。こういうでたらめなことをやって、これでまかり通る。当初予算を出して、しかも補正予算を出してくる。その補正予算の中身を見たら、本来であれば当初予算に組み込まないものなんかいっぱいある。こういうでたらめな財政法を無視したようなことを平然とやってくるということは、大蔵大臣、どうなんですか全然あなた反省ないんですか。
  28. 林義郎

    国務大臣林義郎君) まさに異例な形でお願いをする予算でありますし、補正という形で、今まで問題があったということではありますでしょうが、やはり景気に配慮したことでやるならば今申し上げましたようなことをやれば景気に対していい影響を与えるであろう、こういうふうなことであえて補正予算という形でこうしたものを組んだところでございます。
  29. 角田義一

    角田義一君 この問題については後刻山口委員の方からきょうまたお尋ねさせてもらいますが、当初予算というのは、私が申し上げるまでもなく一年間の国家財政の骨格を決めるものですよ。補正というのは本当の異例でなきゃいかぬ。補正そのものは財政法七十九条で厳格に規定がされているわけですよ。ですから、こういう原則を破ってまで出してくるという、これは大蔵大臣に私はうんと責任があると思うんですね。本来であれば、あなたやめなきゃならぬ立場ですよ。ずっとそこへ座っていたいんですか。そういうものじゃないと私は思うんですが、どうですか。そのくらいの責任を感じてもらわないと困りますよ。どうですか。
  30. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 御答弁申し上げますが、私は、こういったことでやるので景気対策になるであろう、それであえて異例と思われる時期にい ろんなことを考えまして景気刺激策として補正予算を組んだということでございます。
  31. 角田義一

    角田義一君 おやめになる意思もなくてそこへずっと座っておられるということでございますから、しかし、そんな簡単なものじゃないということを申し上げておきたいと思うんです。  あと二つばかり総理お尋ねしたいと思うんですが、減税の問題でございますけれども、野党三党、さらに連合、ユニオン、今回の補正以前から所得税減税についてずっと要求をしてまいりました。今日、与野党間の実務者協議もあるようでございますけれども、しかしそれはそれといたしまして、今日、所得税減税そのものは必要なんだという御認識は持っておられるのかどうなのか。いやそんなものは要らないんだというふうに思っておられるのか。ここは一番私大事だと思っているんですけれども総理の御見解を賜りたいと思います。
  32. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昭和六十二年、三年のころに今の税制の抜本改正をいたしまして所得税法も変わりましたですけれども、あのときにやはりまだし残した仕事がある。いわば累進等々の問題につきまして英米のような形にまでなっておりませんで、中堅層の重税感がしたがって非常に強いという問題が残っておりまして、これは相当財源を必要といたしますが、やはり近い将来にはこれは直さなければいけない。殊に、近い将来に公的年金の財政再計算のこともございますし、統一ということもいろいろ考えている段階で、国民の負担と給付という問題に、もう来年はその時期になりますので、直面しなければならない問題がございます。そういう中でやはり所得税の問題というのは私は近い将来にどうしても考えなければならない問題ではないかと、自分としてはそういうふうに実は考えております。
  33. 角田義一

    角田義一君 総理のお手元に私どもの資料をお届けしてあると思うのでありますけれども、所得税の対国民所得負担比率の推移というものを見てみましても、これは総理は御専門で大家ですから私の方から申し上げることはないと思いますけれども昭和六十二年に所得税減税が実施されたときは所得税の税負担率は六%でございました。今日もう七・一%まで上がっております。それから租税負担率そのものもかなりのところへ上がっておるわけですね。二六・一%ということでかなり高いわけであります。それからさらに、消費支出等を見ましても前年に比べたら全部マイナスになっておるというのが統計上はっきりしているわけであります。  私は、そういうことを考えますと、今日やはり所得税減税というのは緊急の課題ではないかというふうに思っておるのであります。総理は、その必要性を認めるけれどもいろいろ財源の問題があってやれない、場合によれば赤字国債を発行しなければならない、赤字国債は発行したくない、こういうことで必要性は認めるけれどもいろいろ財源の問題で行き詰まっているんだと、こういうふうに今のお立場を私ども理解してよろしいんでしょうか。
  34. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 総理から御答弁になります前に一言私から申し上げておきますが、今の先生のお話の所得税の対国民所得負担比率の推移というのだと思います。走り書きで書いていただいた数字だろうと思いますが、確かにそういうふうな形で昭和六十二年、六十三年に比較しまして上がっていることは事実であります。  これは、実は抜本改正のときに利子所得課税の改正をいたしました。それから株式譲渡課税の改正などをいたしまして、いわゆる利子所得であるとか株式譲渡所得に対する課税を、ここが増収をしているような形をとったわけであります。今までそういったものについて取っていなかったのをふやす、こういう形でやりましたからその分がふえているということと、もう一つは、昨今におけるところの地価の高騰によりまして土地譲渡所得というのはふえている、これでもって税収が非常にふえてきている、この結果が先ほどのような数字の中にあらわれているんだろう、こう思っているところでございます。  一般的に申しまして、国民所得はずっとふえておりますから、それに基づいてある程度まで所得税の負担率がふえていくということは、これは一般的には当然のことだろう、こう思いますが、むしろ税制におきまして、国民所得に対する所得税負担とすることではなくて、一般的にいわゆる定点を置いてやるところの標準世帯における給与所得者における税負担の変化というものを見た方が私はいいんではないかな、こう思っているところでございます。  数字の話でございますから、私からちょっと御説明をさせていただきました。
  35. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点も一つでございます。こういう財政状況でございますし、平成四年度の決算状況がどうなるかという問題もございますので、抜本的な所得税の改正というものはかなりの財源を必要とする、それを調達、今の段階でし得ないという問題が一つでございます。  もう一つの問題は、実はこのたび、いわゆる俗に言います教育減税であるとかあるいは住宅関連の減税であるとかいうものが入っておりますけれども、このぐらいですと財源的には大したことはない。しかし、本当に抜本的に所得税をやるといたしますと、私は、それは、しばらく将来に向かって所得税のいわば最終的な姿と申しますか、そういうものをつくっておかなきゃいけないと思うにつけまして、それならば税制全体の中でそういう所得税がどういう位置を持つかというはっきりした展望と考え方の上に立つべきであろうと。  それは例えば戻し税というようなものも御議論もございますけれども、それですと将来の所得税の最終的な税制の中における姿というものは浮かんでまいりませんので、前回の抜本改正の次の段階としては、やはりしばらくならばこの高齢化社会に向かいましてもこれでまずやっていけるというようなものを構築したいと思っておりますので、すなわち一つは財源の問題でございますが、一つははっきりした税制の中における所得税の位置づけというものをやはり考えなければならないんではないかという気持ちもございます。
  36. 角田義一

    角田義一君 そこで、二つの問題について絞って端的にお尋ねいたします。  この赤字公債ですね、どうしても収支が合わない。歳入欠陥が出てくるというときになれば、これは万やむを得ず赤字国債というものは発行しなければならぬという立場に追い込まれることもあると思うのでございます。そしてまた、今日のように、本当に景気回復をするためであればやはり赤字国債を発行するのもやむを得ないんじゃないかという議論も片っ方にはあるわけでありますけれども総理は、いかなる場合でも赤字国債というものは発行しないんだ、してはいけないんだと、こういう哲学を持っておられて、それを押し通そうということでございますか。それとも、赤字公債というのはそれはもうやりたくはないが万やむを得ないときはそれはしょうがないんだというお気持ちなんでございましょうか。その辺、私は一番大事なことだというふうに思っておりますので、ひとつ御所信をお願いしたい。
  37. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 過去において不況の時代にやむを得ず赤字公債を発行いたしました。それを解消いたしますのにたしか十五年ほどかかったと思います。それは、あの六十年代の初めの好況がございまして幸いにして赤字公債をやめることができたわけでございますけれども、やはりこれがございますと、予算を編成いたしますときに、財源がないのでここでひとつ勘弁をしてもらいたい、みんなで我慢しよう、そういうかんぬきが一つ抜けてしまうものでございますので、これはできるだけやっぱりやらない方がいい、ならば何とかいろいろやりくりをしてでもやらないで済ませたいという気持ちは大変強く持っております。  もちろんそれはいわば財政のことでございますから、国民生活がもう非常な危殆に陥るとかいうことになりますと、おのずから物事の軽重という ことは存じておりますけれども、今の状況でございましたら何とかそれは回避していけるだろう、またその限りではいきたいという気持ちを持っております。
  38. 角田義一

    角田義一君 そうしますと、回避をできればそれにこしたことはないというふうに私どもも一般的には理解できるわけでありますけれども、赤字国債を絶対悪だ、絶対これはどんなことがあってもやってはならぬというふうなお考えではないというふうに理解してよろしいでしょうか。
  39. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 我が国にとって大変な危機であるとか国民生活が非常な危殆に瀕するとかいうことになりますれば、それはおのずから物事の軽重はあるということを存じております。
  40. 角田義一

    角田義一君 それからもう一つこれに関連してお尋ねいたしますけれども、今、総理は、税制体系そのものの中で所得税のあり方、減税のあり方というような問題についても考えなきゃならぬというふうにおっしゃったと思うのでございますけれども国民がやっぱり心配しておりますのは、所得税減税はやられた、しかし消費税の税率は三%から五%に上げざるを得ない、こういうことが言われておるのではないかここまで考えられておるのではないか。いわばセット論でございますね。この辺についてはどういうお考えでございますか。
  41. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 鈴木内閣の時代に何年までに赤字国債をやめるということを宣言をされまして、実は経済が非常にそこから悪くなっていきまして逆に大きな歳入欠陥を生じたという時代がございます。そのときは、もう赤字国債はやめるという旗はもう実は旗だけであって実体がないというふうに御批判を受けた時代がございますけれども、その後、経済運営が順調になりまして、したがって税収もかなり入りまして赤字国債をやめることができたという経験がございます。  ですから私は、これだけ大きな経済でございますから、経済運営いかんによりまして歳入の二兆とか三兆とかいうものは決して難しい話ではない。そのかわり、下手をやりますとそれがマイナスに出ることもございます。そのくらいの大きな経済でございますので、やはり経済運営を間違いなくやっていく、順調に動いて法人も個人も経済各分野で順調に所得がふえていくというようなことになりますと税収というものはかなり大きくふえるという経験をお互いが知っておりますので、私は、必ずしも税制全体の中で所得税を減税するからすなわち消費税をふやさなければならないと、そこを必ずしもイコールに考えなければならないというふうに思っておりませんで、そういうことはできれば避けて、経済運営をうまくやって、所得税の減税もでき、新しい負担をあえてお願いしなくても済んだというようなことにならぬものだろうか。  ただ、ここに一つ公的年金の問題がございますので、それも含めまして何とか将来に向かっての経済運営をうまくやっていくということをまず考えるべきだと思っておるわけでございます。
  42. 角田義一

    角田義一君 趣旨理解できるんですけれども、そうしますと、最近、大蔵省が消費税率を五%に上げるということを検討しているというようなことが言われておりますけれども、これは一体どういうことなんでございましょうか。
  43. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 私の口から消費税率が上がるなどということを言ったことは一つもございませんが、消費税をどうするかというのは、過去の経緯もありますし、いろいろ考えていかなければなりません。特に消費税の税率というのは大変国民的な議論のあるところでありますから、国民のお気持ちを十分にそんたくした上でやっていかなければなりませんが、税制全体の体系の中でどうしていくかということをやはり考えるべきものだろうと思います。消費税だけの話ではありません。税制全体として、資産、所得、消費というものについてどういうふうにかけていったらいいかというような基本問題からやっぱり議論をしていかなければならない問題だろうと私は思います。  もう一つ申し上げますならば、来るべき高齢化社会に対してどんな負担をしていくのか、これにつきましては、租税及び社会保障負担というものをどうするかという問題もあるだろうと思います。そうした中で議論をするべきものでありまして、今すぐにどうだこうだということは私の方は全然考えていないことだけははっきり申し上げておきたいと思います。
  44. 角田義一

    角田義一君 念押しになりますけれども、林大蔵大臣とすれば、消費税率は自分の在任中は上げないと、こういうふうに安心して承っておいてよろしいのでございますか。
  45. 林義郎

    国務大臣林義郎君) いつまで私が大蔵大臣をやっているか……  先ほどはどうだというお話もございましたけれども、私はやはり基本的な考え方といたしまして、今申し上げましたようなことで消費税の問題というのは考えるのが筋だろうと、こういうことを申し上げたところでございます。
  46. 角田義一

    角田義一君 私は余りくどいことを聞きたくないんだけれども、端的に答えてください。
  47. 林義郎

    国務大臣林義郎君) お答え申し上げますが、どちらとも考えてないということでございます。
  48. 角田義一

    角田義一君 どちらとも考えてないということは自分の在任中でも消費税率を上げるというふうにもとれますけれども、それじゃ、そういうふうに伺ってよろしいんですか。
  49. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 申し上げますならば、いろんなことを考えていかなければならない、情勢がどうなるかということもありますから私は今のようなお答えを申し上げたところでございます。今すぐにこの国会にどうだこうだなどということは当然に考えてないところでございます。
  50. 角田義一

    角田義一君 またこの問題は後で及川先生がお尋ねになると思いますから、次の問題へ移りたいと思います。  PKOの問題に移りたいと思いますが、今回のPKOで前途有為の亡くなられた中田厚仁さん、高田晴行さんに対して心から私ども哀悼の意を表し、御冥福をお祈りして、そして御遺族の皆さんに対してもお悔やみを申し上げ、さらにけがをされた方々の一日も早い回復を願いながら、これだけの犠牲を払っておるわけでありますから、国家の方針として誤りがないように、こういう立場でいろいろこれからお尋ねを申し上げていきたいというふうに思っております。  まず総理お尋ねをいたしますが、御案内のとおり、現在カンボジアで総選挙が行われておりまして、いよいよ地方に巡回をして投票が行われるということでございますけれども、今回の選挙によりまして、パリ協定の最大の目的でありますカンボジアの国民的な和解、復興ということの基礎が築かれたというふうに総理はお考えになっておられるのかどうかその辺の今日の状況認識といいましょうか、お尋ね申し上げたいと思います。
  51. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 前途有為のお二人の青年を失いましたことは、私もまことに断腸の思いであり申しわけなく思っております。  そういう方々の御努力もありまして、ともかく八割何分と推定されます投票が自由な明るい雰囲気の中で行われたということは大きな成果であったと思います。  これによって、カンボジア人が自分たちの力で自分たちのカンボジアをつくろうという国づくりの一番大切な基礎ができたということを申し上げてよろしいであろうと、我が国もそれに対して何がしかの貢献ができたことを喜んでおりますが、これから後、これはUNTACといういわば国連という第三者的な機関のもとに行われたことでございますから、やがてこれは制憲議会という形でカンボジア人による国づくりへ進んでいかなければならない段階でございます。  何よりもしかし、選挙がこうやって行われたということは、将来に向かってカンボジア人がカンボジアをつくる上での大事な最初の第一歩が踏み出せたと、ここまで申し上げられることは間違いないだろうと思います。
  52. 角田義一

    角田義一君 選挙が明るく楽しくやれたとは私 は思っておりませんのです。選挙直前まで各派のいろいろな妨害工作といいましょうか、そういうものもありましたし、何人かの人も犠牲になっておるというのが現実でございますから、総理のようにちょっと万々歳というようには私は認識をしておりません。  そして、確かに選挙が終わりまして一応形の上では、形式的、手続的な面では憲法制定議会というものができるわけでございますけれども、本当にそういうふうに順調にいくのかどうか。特にクメール・ルージュが選挙をボイコットしておるわけでございますし、それから選挙が無効だということを事前に何回も声明を発表している、こういう実情がございます。そしてさらに、今日のプノンペン政権もこのクメール・ルージュと手を組むということについては必ずしも楽観は許されない。むしろ選挙によって、日本の言葉で言えば、片一方、勝った方は官軍、負けた方が賊軍というふうな形になって内戦が起こるのではないかというような私は心配もなくはないと思っておるのであります。その辺についてはどういう御認識を持っておられますか。
  53. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 冷静に考えまして、選挙による国づくりというのはいわば民主主義の教科書に書いてある種類のことでございますので、そのようなことが、恐らく多くのカンボジア人にとっては選挙は初めての体験だと思います、二十数年ぶりということは。そういう方法でカンボジア人がこれから国をつくっていくというのは、これはもう最初の私はカンボジア人にとっての体験であろうと思います。  ですから、教科書に書いてあるように、これでデモクラシーができてうまく動いて、それで全くよかったというふうになりますかなりませんか、最初の経験でございますだけに、それは冷静に考えまして過度の楽観をするわけにはいかない。しかしながら、ともかくUNTACに我々も協力してまず必要な第一歩はここで踏み出すことができましたので、基本的にはこの上で国づくりをすることはカンボジア人の本来の仕事でございますから、そこへ問題を進めるというか返すというか、そういうことにこれからなっていくのであろう。  これから後の段階で、UNTACというもの、あるいはそうではありませんでむしろ国と国との関係になるかもしれません。いろんな意味での援助を我々としてもカンボジアの国づくりのためにしていかなければならないと思っておりますけれども、それは第一義的にはやはりカンボジア人のなすべき本来の仕事である、こういうふうに考えます。
  54. 角田義一

    角田義一君 私は、この総選挙というものがどういう成果を生むのか、まだちょっと軽々に判断するには時期が早いというふうに思いますし、将来歴史的ないろいろな評価がどうなるか、本日の段階ではわかりませんけれども、少なくとも総理が終始一貫して言ってこられたのは、例えば選挙を延長して何の得るところがありますかというふうなことを本会議で言っておられました。  私が思うに、国連の立場からすると、国連はもうことしの秋には引き揚げる、制憲議会等ができれば引き揚げる。逆に秋から順番に追ってきて、何が何でも総選挙をやってしまわなければならない。私は、ガリさんの国連報告を読みますと、パリの和平協定というものはかなりの程度崩壊をしておる、しかしそれでもなおかつやっぱり選挙はやるんだと、これは一つの政策判断、政治判断だと私は見ておるのであります。  そうしますと、この判断が正しいのか。もしこれが正しくなくて、選挙をやったけれども結果はまた内戦等が勃発をしたということになりますと、やはり国連としてもあるいはその選挙を推し進めた立場としても、これは大変な私は責任を感じなきゃならぬ立場になるんだろうというふうに思うのでございますけれども、そういうふうにスケジュール的にパリ協定が破れてもなお政治的な判断で選挙は強行するんだ、こういう形がよろしいのかどうか、私は非常に疑問に思っておるわけであります。その辺いかがにお考えになっておられますか。
  55. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私の見方からいたしますれば、もし今、角田委員の言われますような展開になりますといたしますと、それはパリ協定そのものにやはり問題があったということになろうかと思います。  あの協定は、御記憶のように、ああいう状況の中でともかくまとまった、そしてそれが、ともかくもと申しますが、ともかくもこの段階まで来たということでございましょう。これから失うまくいってくれることを本当に祈りますが、それはやはりカンボジア人がそうしてくれなければなりませんので、ともかくもまとまったパリ協定をともかくもここまでUNTACに我々も協力して進めてきた、後はやはり第一義的にはカンボジア人がどうやって国をつくってくれるかということだと思います。  この際、選挙をすることがよかったか悪かったかということは、後世史家の判断にまたなければならない。確かにこれはガリ事務総長の決断であったと思います。我々もとうとい犠牲を出しましたし、UNTACの構成国もみんなたくさんの犠牲を出しましたが、ともかくああいうふうに自由な雰囲気の中で選挙が行われたということは、一つのやはり結果であったと。選挙を延ばしていきましたときに、その際のそういう選択肢の結果がどうであったであろうかやがてクメール・ルージュがもっと和解的な妥協的な立場に出てきてもっともっといい結果になったかもしれないというお話であれば、それは何とも申しがたいことでございますけれども、与えられたこの時間の中でやりましたこととしては、私はガリ事務総長の決断そのものは今考えまして間違っていなかったのではないかと考えております。
  56. 角田義一

    角田義一君 そのガリ事務総長の判断といわば日本の法律で言っております停戦の合意との問題については若干後で触れたいと思うんですが、私どもが大変心配をしておりますのは、プノンペン政権の当局者が最近、選挙で新しい政府ができたら多くの国から軍事援助を含む援助が約束されておると。こういう報道があるわけです。恐らく総理も聞いておられると思うんです。  ただ、選挙が終わって新政権ができて国連が仮に引き揚げる、そして大国がもしさらにその新政府に対して軍事援助をしてポル・ポト派を武力で追放するというふうなことになれば、これはもうパリ協定以前の構図が再現することになってしまうわけでございます。したがって、そういうことはどうしても避けなければならないというふうに私は思うんです。  これは一つのやっぱり日本の外交努力にかかるところもあると思うんです。どういうふうにそのポル・ポト派等も説得をして、例えばシアヌークさんが言っております救国政府というのができるかどうかわかりませんけれども、しかし、あくまでもやはり血を流さないで和解ができるようなそういう外交努力というのを日本は率先してやらなきゃいかぬじゃないかというふうに思うのでございますけれども、その辺のお考えなり、そういう外交努力をおやりになるのかどうか、これは外務大臣も含めてお尋ねしたいと思うんです。大変に私は大事なことだと思っているんでございますけれどもね。
  57. 武藤嘉文

    国務大臣(武藤嘉文君) 私の方からそれじゃお答えさせていただきます。  今回の総選挙の結果というのは、先ほどもお話のございましたように、八十数%という高い投票率でございます。必ずしも日本などと違って安定していない状態の中であのような投票率があったということは、カンボジアの国民の皆さんがぜひ今回は、もう二十一年目の総選挙でございますから、やはり自分たちの手で自分たちの国をつくるんだと、この意欲の私はあらわれだと思うのでございます。そして、気持ちとしては一日も早く平和な、内戦が長く続いたわけでございますから、平和な国家になりたいと、それには自分たちの手で平和な国家をつくるんだという私は気持ちのあ らわれだと思いまして、それはやっぱり高く評価すべきではないか。  今、ポル・ポト派のことも大変御心配でございますけれども、シアヌーク殿下が選挙の直前に帰ってこられたということはポル・ポト派に対しても私は一つの牽制になったのではないかと、こういうふうに思っております。我々は外交努力として、北京へ派遣をいたしまして、シアヌーク殿下にもぜひ早く帰っていただいてイニシアチブをとっていただきたいと、こうお願いしたわけでございます。これは私は一つの成果であったと。  それからいま一つは、ポル・ポト派に対してはタイあるいは中国からの説得というのがやっぱり関係が深いわけでございますので、そのような努力はずっと今日まで続けてきたわけでございます。今後も私どもはそのような努力を続けていき、やっぱりポル・ポト派もカンボジア人なのでございますから、それはあのような虐殺をしたというグループではありますけれども、ここまでカンボジアの大多数の国民が平和な国家を願っておるときには、たとえどういう今までの立場であろうともカンボジアの国づくりに何らかの形であのグループも参加できるようなことになるのが私は望ましい姿だと思い、そのような外交努力は我々はしていかなきゃならないと思っております。
  58. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今の御指摘の点は大変大事な問題であると思っております。  結局、こういう選挙をしまして国づくりをする中で、クメール・ルージュというものがその国づくりの中で積極的にこれに参画をするのかあるいは積極的にこれを妨害するのかという、極端に言えばその両方のケースでございますから、ここは非常に大事なところであると思っております。  これから恐らく制憲議会というものをつくることになるのであろうと思いますが、制憲議会をつくりますためのいろいろな準備というようなものがまず入り用になってくると思います。そういう段階の中でクメール・ルージュがどういう態度をとるかというあたりから問題が始まるのではないかと思っておりまして、そういう意味では、今、外務大臣の言われましたように、やはりいろいろな努力、我々としてのできる努力をいたしていかなければなりません。クメール・ルージュに比較的影響力のある国というものはございますから、そういうところを通じ、また我々自身も実は今まで何度がやってまいりましたそういう努力、ただこれは内政干渉ということになりかねない問題をやがて含んでまいりますから、そういうことに気をつけながら全力を尽くさなきゃならぬと思っております。
  59. 角田義一

    角田義一君 もう一つ重ねてお尋ねしておきたいんですけれども、そのプノンペン政府当局が多くの国から新たな軍事援助を含む約束ができておるというようなことを言っておる。これが事実とすれば大変なことなのでございますけれども、その軍事援助というのは武器を売るなり貸すなりいろいろするわけでございます。日本はもうもちろんそういうことはやらない、やれない立場でございますが、西欧諸国なりあるいは幾つかの国々がこういう挙に出るということについては、これはパリの和平協定を結んだ当事者にもう一遍お集まりになっていただいて、こういうことをしないようにするという申し合わせ、協議、これはやはり日本がイニシアをとっておやりになるということが私は大事だと思うのでございます。  外務大臣あるいは総理大臣、その辺の外交努力、軍事的な混乱が起きないまた内乱が起きないためにどうするか、これは日本の外交努力というのは大変大事なことだ、それが私は大変な国際貢献になるというふうに思っておるのでございますけれども、いかがでございますか。
  60. 武藤嘉文

    国務大臣(武藤嘉文君) 先ほど申し上げましたように、カンボジアの国民は平和で民主的な国家を願っているわけでございますし、そのような情報は私は実は承知をいたしておりませんが、調べてはみますけれども、そういうことはあってはならないことだと思います。  我々はこれから、今、総理もおっしゃいました内政干渉になってはいけませんけれども、少なくともカンボジアでまた内戦が発生するというようなことは、我々は起きないように最大限の外交努力をしていくのは当然でございまして、そういう面では安保理の立場なりあるいはパリ協定を結んだ我々の関係国もございますから、そういうことにならないように努力をしていくというのは当然でございます。
  61. 角田義一

    角田義一君 続けて申しますけれども、外務大臣、やはりこの選挙が終わったら、もちろん内政干渉になってはいけないことでありますけれども、戦乱になってもいけないわけでありますから、これは日本が率先してパリ協定を結んだ当事者に呼びかけて会議を招集をしてそういうことにならないようにする、この努力を率先してやるんだということをはっきり私はこの席で言っていただきたいと思うんですよ。それは私は日本の外務大臣としての見識だと思うのでありますが、いかがでございますか。
  62. 武藤嘉文

    国務大臣(武藤嘉文君) 平和憲法を持っている世界唯一の国なのでございますから平和を願う気持ちは世界のどこの国よりも強いわけですが、日本だけが平和であってはいけないわけでございますから、やはりカンボジアが平和であるために私どもできる限り国際会議においてもイニシアチブをとれるように努力をしてまいります。
  63. 角田義一

    角田義一君 若干問題を変えます。  今回やはりこれだけ大きな問題になったPKO、日本の部隊の業務の中断あるいは撤収ということが大変議論になりました。  そこで、私は、撤収するとかしないとかというのは最後は決断といいましょうか、政策的な判断が非常に働くと思いますけれども、建前はどうなっておるのか。法律的な意味でといいましょうか、法的な意味、あるいは国際的な意味、国際的にはこれが許されるのかどうかという建前だけはきちっと押さえておく必要がある。これは共通の認識としてお互いに持っておく必要があるというふうに思います。  そこでお尋ねいたしますけれども、私は忘れもしませんが、去年の五月の十八日、PKOの特別委員会でこの問題大変議論をいたしました。そこで、当時の丹波政府委員、当時国連局長、今は条約局長でございますけれども、その議事録お手元に持つように申し上げておきましたのでお願いしますが、その議事録の十五ページの一番上段の丹波さんの説明、これをちょっと読んでいただきたいと思うんです。
  64. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先生がおっしゃっておられますのは、この議事録の十五ページの上段の一番左側のところでございましょうか。全部でございましょうか。
  65. 角田義一

    角田義一君 そうですね。六行目ぐらいまでですな。
  66. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先ほどからの議論にも関係がありますが、日本は派遣するに当たって基本的に主権国家としての地位は保っているわけです。したがいまして、いかなる場合でも適切な事前の通告を行うことによって撤退することができるわけです。  これは前提が崩れていないときでも撤退することができる。ましてや今、先生とのやりとりしております状況は前提条件が崩れたときである。そのときに、先ほど申し上げましたけれどもステップバックする、前提が崩れたので身をかわすということは各国がやっておることでございますし、やっておることのみならず、先ほども申し上げましたけれども、スイスの例でございますが、まさにスイスは、これはスイス的なものではないんだ、国連の平和維持活動と不可分の一体をなす考え方であると。したがって、その前提条件が崩れたときに、先ほどのところをもう一度お読みいたしますけれども、スイスはいかなる時点でも正当性を証明することなくみずからの部隊を撤退する可能性を留保するということで立法をしようとしているわけです。
  67. 角田義一

    角田義一君 これは非常に大事なことなんです。やるかやらぬかというのは、それは当時の政府の判断でございますからそれは政府がやることでございますけれども、建前として、これ、非常に大事なことを丹波さんは言っておるわけです。  要するに、主権国家である以上、国連に別に従属するわけではない。したがって、事前の通告さえすれば理由を問わずこれは撤退できるんだという建前、このことをはっきり国会の中で言っております。このことはそういうふうに今日もなお承ってよろしいというふうに聞いておいていいんでしょうな。これは、前の国会ではそうだけれども今の立場は違うというようなことでは私は許されないと思うのです。この辺どうですか。だれが答えますか、責任持って。これは大臣だな。
  68. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまの先国会における政府委員の答弁、今日もそれでよろしゅうございます。
  69. 角田義一

    角田義一君 そこで、次に進みます。  国連との間では、このカンボジアの派遣に限って申し上げますけれども、去年の九月に、包括的な協定を結びたいということではございましたけれども、国連の方から包括的な協定は拒否されておるというふうに私ども聞いておりますが、そういうことでございますか。
  70. 澁谷治彦

    政府委員(澁谷治彦君) 確かに私どもからも申し入れをいたしまして、国連は拒否ということではなくて、現在その体制が整っていないということでございます。法律分野におけるエキスパートを相当必要といたしますけれども、その体制が整っていないということでございます。
  71. 角田義一

    角田義一君 そうすると、協定を結ぶようにこちらが要求したのは、日本の独特の五原則というものがあって、それをきちっと国連との間で確認をしなければいけない、これが国会でも議論になっておったから、そういう立場で国連に協定の締結を申し入れたと、こういうふうに私は理解をしているんですけれども、それでよろしいでしょうか。
  72. 丹波實

    政府委員(丹波實君) ただいまの先生の御質問の点につきましては、昨年のいわゆるPKO特別委員会、当室におきまして何度も議論の対象になった点でございまして、典型的には、この法律が通った後日本が一定の地域に派遣する場合に国連とどのような取り決めを結ぶのかという質問でございました。  それに対して私たちが答弁申し上げましたのは、幾つかのことを念頭に置いて国連との協定を結ばせていただきたいと考えておりますということでございまして、一つは、先ほどから私は一定の議事録を読んでおるわけでございますけれども、先ほどから議論の対象になっております国連の出しておるモデル協定というものがこれが一つ、それからもう一つは、各国がどのような取り決めを結んできたかということ、それから三つ目は、この法律の枠内で当然行政府は行動をするわけでございますからこの法律の枠組み、その三つぐらいのことを重要な指針として国連との間の取り決めをやっていきたいという説明を申し上げました。  今、国連局長が御答弁申し上げましたけれども、私たちといたしましては、先般、昨年、カンボジア及びアンゴラに監視団を派遣するに当たりまして、国連との間で、この国連自身が出しておる包括的なモデル協定というものがあるんだからこういう包括的なモデル協定というものを日本政府としては締結したい、そういう申し入れをしたのに対しまして、非常に率直に申し上げて、国連の考え方は、確かに将来的にはそういう取り決めをやっていきたいと思うけれども今国連は手がいっぱいでそういう協定を結ぶ用意がない、各国との間では口上書で処理しております、しかし、口上書で処理してはいるけれども国連の出しておるモデル派遣協定の諸条項というものが当然の行動の前提になっておりますと、そういう説明でございましたので、各国と同じように口上書の取り交わしで処理したと、こういう次第でございます。
  73. 角田義一

    角田義一君 そうすると、協定はないと。口上書だけであると。  その日上書は、昨日ですか、衆議院の予算委員会の方に御提出になったというふうに聞いておりますが、そうとすれば、委員長、これは私は参議院の方にも非常に大事な口上書でございますので提出を願いたいと思うんです。官房長官いないから総理でもいいです、衆議院に出したものを参議院に出さぬというわけにいかぬと思いますが、お出しいただけますか。どうでしょうか。正式に出してください。
  74. 武藤嘉文

    国務大臣(武藤嘉文君) お出しをいたします。
  75. 角田義一

    角田義一君 わかりました。  正式に出していただくわけですけれども、私どもの入手したいろいろな情報によりますと、こちら側の口上書、UNTACに出した日本政府の口上書の中には、いわばその私どもの国連に出す、基本法に基づいて出すんだということは書いてありますが、しかし現実に日本のこの法律というものが、例えば英訳をされてUNTACの方にちゃんと届いておるのかどうか、これが私は大事だと思っておるんですけれども、これはどうなっておりますか。
  76. 澁谷治彦

    政府委員(澁谷治彦君) 国連に対しましては、昨年の夏、法律が成立する前に五原則について説明いたしまして、法律が成立いたしました直後にも法律の枠組みについて説明しております。その際に、関係資料といたしまして英語に訳しましたものを提出いたしております。
  77. 角田義一

    角田義一君 私は英語は読めませんけれども、だれかに訳してもらいますから、その英語の文書、日本の法律についてどの程度外務省なりがUNTACに出しておるのか私どもわかりませんので、それもあわせてお出しいただけますか。
  78. 澁谷治彦

    政府委員(澁谷治彦君) 法律の概略を仮訳として出した資料がございますので、それは御提出できると思います。
  79. 角田義一

    角田義一君 今回、私は非常に疑問に思っておりますのは、日本の政府は終始一貫してパリの和平協定の枠組みは崩れていないと言っているわけであります。しかし、ガリ事務総長の一番最新の報告を見ますと、パリ和平協定の枠組みというのは相当崩れておる、しかし政治的な判断で選挙をやらざるを得ない、こういうふうに言っているわけですね。  そうすると、日本政府というのは、法律で三つ決められておるわけでありまして、そのいずれかが崩れてもこれはもう撤退をしなきゃならぬわけでありますが、ちょっと細かいことは申し上げませんけれども、今日だれが見てもパリの和平協定がそのまま守られていると思っていない。停戦も崩れておるし、ポル・ポト派は同意していない、そして必ずしも選挙が中立に行われていないというふうに私は見るのが妥当だと思うんですね。  それにもかかわらず、ガリさんまでそう言っておるのに、日本の政府はあくまでもそこを突っ張って、和平協定というものは遵守されているんだ、守られているんだと、これは少しおかしいんじゃないかと思うんですよ。むしろガリさんのように、崩れてはいるんだけれどもやるんだと。  日本政府は、崩れてはいるんだけれども撤退はできないんだと。とすれば、撤退できない事情国民の前に話すのが筋だと私は思うんです。それを口先だけで突っ張って、あくまでもパリ和平協定は守られているんだと、こういうことを言う方が私はむしろ間違いだというふうに思うのでございますが、これはいかがでございますか。
  80. 丹波實

    政府委員(丹波實君) お答え申し上げます。  最近の事務総長報告におきましての表現は、選挙のための諸状況というものはパリ協定で期待されていたものとは異なるという表現はございますけれども、全体としてのパリ和平協定の枠組みが崩壊しておるという考え方に立ってこういう報告が出されているというふうに私たちは考えていないわけでございます。  確かに、パリ和平協定が当初予想していたよう な強固な停戦というものにはなっておりませんけれども、先ほども総理のお言葉で曲がりなりにという華言葉がございましたけれども、やはり基本的な枠組みというものは、若干脆弱な面は個々ありますけれども、全体としてはそういうものは成立しておるというのが私たちの考えでもあり、国際社会の考え方でもあると思います。  まさにそういう状況でございましたので、先般の選挙も八割以上の投票率が達成できたという、そのことは状況としてはやはり全体としての枠組みが有効であったということを証左しているんであろうと私たちは考えておる次第でございます。
  81. 角田義一

    角田義一君 私は、ポル・ポト派というのは絶対にパリ協定は破棄しないと思います。なぜ破棄しないか。破棄をすればこれはもうただの反徒になるわけでありますし、破棄をしないで守っていくことによって例えばあの虐殺は責任を免れているわけであります。  要するに、あのパリ協定を見ますと、新しい例えば議会ができ新しい刑法ができても遡及してポル・ポト派の虐殺の責任を問わないということが協定の中に明文として書かれておるんですね、それは総理も私は御案内と思うんですよ。ということになれば、絶対にポル・ポト派の方からパリ協定を破るというようなことはあり得ない。私はパリ協定というのは絶対に永久に破られないんじゃないかと思うんです。  そうしますと、政府立場に立ってみますと、パリ協定が守られている守られているということを言い続けることによって日本というのはどんな事態が起きても撤退をしなくて済むのではないかというふうに思わざるを得ないのでございますけれども、では一体日本が撤退をするときはどういうときなんだろうか、こういうことについてやっぱり説明がなければ私はおかしいと思うんですが、いかがでございますか。
  82. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) ただいま条約局長からパリ協定の状況につきましては御答弁ありましたけれども、これは御案内のとおり、日本が撤収する場合、法律上は業務の終了と言っておりますけれども、と申しますのはいわゆる五原則のうち特に最初の合意の原則、同意の原則、中立性の原則、そのいずれかが存在しなくなったという場合に閣議決定をもって撤収することがあるということでございます。  もとより法案の審議の際にもいろいろな機会に申し上げてきた点でございますけれども、そういう基本的な前提が崩れるということは相当客観的に明らかな場合であろうと、そうとすれば、この場合にはUNTACでございますけれども、UNTACの判断と日本政府の判断というものは一致する場合が通常であろう、しかしながら、仮にUNTACの判断と日本政府の判断が一致しない場合でございましても日本政府としてはその前提のいずれかが崩れたということになりますれば独自の判断で撤収することができる、こういうことでございます。  カンボジアの現状に照らしてみますれば、このパリ和平協定の条項すべてが円満に守られてきたということではございませんけれども、少なくともこの停戦の合意という基本的な条件は今もって崩れていないというふうに判断しておりますし、カンボジア及び紛争当事者の同意というものも現在もなおある、またUNTACの活動も中立的に行われているというふうに判断しているわけでございますので、現状におきまして終了、撤収ということを検討する状況にはないというのが日本政府の考え方でございます。
  83. 角田義一

    角田義一君 そこで、カンボジアを最近訪問しまして実情をよく調査してこられました喜岡議員の方から関連をして質問させていただきたいと思いますので、お許しいただきたいと思います。
  84. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 関連質疑を許します。喜岡淳君。
  85. 喜岡淳

    喜岡淳君 喜岡でございます。  まず最初に、国連UNTACの支援の問題ですけれども総理に議論の最初として大変失礼ではございますけれども、我が国は人だけでなくて金の方も国連UATACの方にかなりの金額を出しております。このお金を出しておる趣旨について、その目的ですけれども、本当に申しわけないです、話の入り口としてスタートの切り口を切りたいと思いますので、お金を出しておる目的について説明をしていただきたいと思います。
  86. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) パリ和平協定によりまして国連がUNTACをいわば臨時の行政を行う機構としてつくりまして、そのUNTACがカンボジア人の国づくりのための土台をつくって今日に至っておりますが、このような国連の活動はカンボジア人のためになるものである、また我が国の平和協力の趣旨に沿うものである、かように考えましたので、この活動に対して我が国としても財政的な負担をする決定をいたしたものでございます。
  87. 喜岡淳

    喜岡淳君 それで、外務大臣にお尋ねをいたしますが、この国連UNTACに対して我が国は一体どれぐらいのお金を今日まで負担をしてきておるのか、ちょっと金額を教えてください。
  88. 澁谷治彦

    政府委員(澁谷治彦君) 平成三年度、平成四年度を合わせまして一億四千万ドル弱でございます。
  89. 喜岡淳

    喜岡淳君 約百八十億円近い金額だろうと思います。  ところで、お尋ねをいたしますけれども、岡山県倉敷市水島海岸通一の一というところに、UNTAC向けの仕様車、真っ白い車が大量に今なお、選挙監視用の車両でありますが、選挙は二十八日に終了いたしますけれども、この車両が大量に野積みをされておるという件について御存じでしょうか。外務大臣に聞いています。
  90. 武藤嘉文

    国務大臣(武藤嘉文君) その報告は受けております。
  91. 喜岡淳

    喜岡淳君 少し詳しく御説明お願いしたいと思います。大臣にお願いします。
  92. 武藤嘉文

    国務大臣(武藤嘉文君) 選挙監視用の車が調達をされてまだ先方へ渡っていなくて、今お話しのとおり岡山県にあるということだけ私は承知をいたしております。
  93. 喜岡淳

    喜岡淳君 いや、詳しく報告してください。
  94. 武藤嘉文

    国務大臣(武藤嘉文君) それ以上のことは私は報告を受けておりません。
  95. 喜岡淳

    喜岡淳君 十万円や二十万円のお金じゃないんですから、ちゃんと言ってください。
  96. 澁谷治彦

    政府委員(澁谷治彦君) 念のため国連の事務局にも照会いたしました結果を御報告いたします。  これにつきましては、当初、日本側の商社と八百五十台の車両について契約を結んだと。ところが、国連はことしに入って、そのうち四十五台を転売し、カンボジアに百台を出したと。来月にはモザンビークに百十一台を出すと。さらに、ソマリアには百台を割り当てることにしていると。したがって、現在のところ使途がまだ確定していないのが四百九十四台ある。これが倉敷に存在しているということでございます。
  97. 喜岡淳

    喜岡淳君 委員長、ちょっとここで確認を求めますから、(資料を示す)これのことだと思いますけれども、澁谷さん、この件でしょうか。この写真、ほぼ間違いないということでございます。ちょっと見ていただきます。白い国連仕様の左ハンドルの車であります。  去年の八月に、日本の商社、金商又一が国連本部と直接に契約を結んだ八百五十台、これは選挙監視用にということであったようであります。生産を始めたところ、突如去年の十月一日にはストップの話が出てきたようであります。  ストップしたって、もう生産しておるんだからということで百台だけがカンボジアに船積みをされたと。じゃ、あとの車はどうするのかと聞いたら、あなたのところで転売してよろしいと。転売をしておりますと、四十五台の転売が終わった時点、ことしの一月になって、転売をやめてもらいたい、あとは引き取りますと。そして、八百五十台分のうち四十五台は転売しておりますから、残りの八百五台分のお金が金商又一に全額入金をさ れておる。しかし、使い道がないためにようやく考えっいたのがモザンビークヘ出すと。これは百十一台出す予定でありますが、残りたくさん、五百九十四台もとめ置きされているわけですね。つまり、使い道がないわけです。使い道がないから持っていくところがないんですよ。  そして、今のお話ではソマリアに百台行くと言うけれども、ソマリアのPKO活動予算というのはもう既に決定しておるんでしょうか。外務省答えてください。
  98. 澁谷治彦

    政府委員(澁谷治彦君) これは決定しております。
  99. 喜岡淳

    喜岡淳君 金額は。
  100. 澁谷治彦

    政府委員(澁谷治彦君) ちょっと資料を手元に持っておりませんので、後ほど御報告いたします。
  101. 喜岡淳

    喜岡淳君 金額が決まっておるならば出していただきたいと思います。  それから、総理、どうでしょうか、こういった出来事について。  これはすべて税金でありますから、こういったお金は、最初にお聞きいたしましたように、相手の国の人のためになり我が国の趣旨にもかなうという御答弁でありましたけれども、こうやって野ざらしにして商社にお金を与えるというのが我が国の趣旨なんでしょうか、この点についてお答えいただきたいと思います。
  102. 武藤嘉文

    国務大臣(武藤嘉文君) 日本は国連に拠出しているわけでございまして、国連がその金に基づいて、これも日本だけの金じゃなくて、国連の金で今おっしゃったとおり契約をしているわけでございます。私の方から、国連のそのようなお金の使い方についてはひとつ注意をさせていただきたいと思います。
  103. 喜岡淳

    喜岡淳君 具体的にどういうような形で国連に対して監査の要求をされるおつもりでしょうか。これだけの事件なのだろうか、あるいはほかにもたくさんあるんじゃないだろうか、納税者の皆さんは疑問でございます。こういった納税者の期待にこたえられるような明確な御見解を示していただきたいと思います。
  104. 武藤嘉文

    国務大臣(武藤嘉文君) 私どもは、国連については、この問題というよりは機能の効率化また財政的な効率化ということを強く今までも言ってきているわけでございますので、具体的な事実を私も今回承知をいたしましたので、そのラインで国連に対して申し入れをしたいと思います。
  105. 喜岡淳

    喜岡淳君 それでは、正式に国会に対してこの件の報告を詳しく求めたいと思いますが、どうでしょうか。よろしいでしょうか。
  106. 武藤嘉文

    国務大臣(武藤嘉文君) 国連には大使を派遣しておりますので、大使から国連事務局に対して私は話をさせてみたいと思います。
  107. 喜岡淳

    喜岡淳君 報告は出てくるわけですか。報告を聞いています。
  108. 武藤嘉文

    国務大臣(武藤嘉文君) 何も隠すことはないと思っております。
  109. 喜岡淳

    喜岡淳君 それじゃ、詳しい報告をお願いしたいと思うんです。  我が国は国連中心主義ということを訴えておりますが、国連に対する貢献の問題でございますけれども、これは総理、外務大臣にそれぞれお尋ねしたいと思うんです。  人的貢献、お金の貢献、さまざまな貢献があるわけですけれども、結局たくさん日本の負担したお金が何に使われておるかわからない、あるいは今度のカンボジアの復興支援の中ではそのお金が武器の購入にさえ使われるかもわからないと角田議員から今指摘されたばかりであります。やはり国連に対してもっと会計検査、監査、決算審査、あるいはそのお金の使い道が本当に効果的なのか、軍事的な利用がないのかどうか、こういった点について我が国が積極的な提案をしていく、これは非常に大きな国連また世界に対する貢献ではないかと思いますけれども、こういった問題の方向性について御見解を賜りたいと思います。
  110. 武藤嘉文

    国務大臣(武藤嘉文君) 国連は国連憲章に基づいて行動しておるものと私は信じておりますのでそのような武器の購入に充てられるようなことは私はあり得ないと思っておりますけれども、国連がやったわけではなくて国連から援助を受けた国がやる場合がもしあるとすれば、それは国連のお金がその目的どおりに使われていないわけでございますので、先ほども私は申し上げましたように、国連の資金の使い方というものを、もっと効率よく国連憲章に基づいて使われるのが当然だと思っておりますから、そういう面で今回の問題を含めてよく国連に申し入れをしたいと思います。
  111. 喜岡淳

    喜岡淳君 よろしくお願いします。  次に、村田自治大臣・国家公安委員長にお尋ねをいたします。  今日の政治不信について、その原因はどこにあるというふうにお考えでしょうか。
  112. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) お答えを申し上げます。  今日の政治不信は、いろいろな不祥事が相次ぎ、そして政治に対する国民の不信というものが、特に政治資金の問題についての非常な不信感が出た。したがって、これに対してはぜひその政治不信の原因を除かなければならないということで各党が御相談をしていただいて、そして今連日のように真剣な研究がなされておる、このように存じております。
  113. 喜岡淳

    喜岡淳君 大臣は平成元年六月に本会議におきまして当時の宇野総理に対して自由民主党を代表した質問をされておると思います。まさに政治腐敗の問題、リクルートのさなかの代表質問であります。恐縮ですが、その当時の代表質問の趣旨について覚えていらっしゃいますか。
  114. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 私は、当時、党の三役、政調会長でございました。したがって自民党を代表して宇野総理に御質問をしたのでありますが、そのときの基調は政治は愛であるということで、選挙制度その他にも触れたと思います。
  115. 喜岡淳

    喜岡淳君 こういうくだりがございます。大臣のくだりですが、率直に言いまして今国民の心は国会から離れたところにある、政治は愛である、心の触れ合いのない政治であってはどんな政策も真の血の通ったぬくもりのあるものとはなりません、こういう考えは今でも変わらないんでしょうか。
  116. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 変わっておりません。
  117. 喜岡淳

    喜岡淳君 先般、大臣はカンボジアヘ行かれました。非常に日程の厳しい中で御苦労さまでございました。  ところで、カンボジアに行かれた目的は一体何だったのですか。
  118. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 五月七日の夜に総理から直接御指示がありました。カンボジアヘ行くようにということで、私は参りますと即答いたしまして、そして官房長官に私がお会いしたのがその日の夜の九時でございます。そして、決定をしたのが五月八日の午前零時五分だったと思います。各方面にも根回しをされて、航空券の手配もつきました。したがって、五月八日の午前十時過ぎには成田を立って、バンコク経由でプノンペンに向かったわけでございます。  目的は、こういった高田さんの非常にとうとい犠牲が出ました、若い命を落とされた、この隣どうしてもUNTAC本部に行って日本はUNTAC及び国連の方針を支持するつもりであるということを明石代表に伝え、そしてさらに、今派遣をせられている要員、これは世界各国から三十二カ国出ておりますが、日本もその全体の二万六千人の中の約三%弱が行っておりますが、その方たちの安全その他を三十二カ国の中で、よく明石代表に申し入れるように、そういう御指示であったと思います。
  119. 喜岡淳

    喜岡淳君 向こうへ行かれてたくさんのことを見たり聞いたりされたと思いますけれども、それについてどのような報告を総理の方に行われましたか。
  120. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 先ほど角田委員から御指摘がありましたように、喜岡委員御自身が最 近バタンバンやプレイペンや、そしてUNTAC本部にも行っていただいたと思います。したがって、非常に実感の面で共通をしている面があるんではないかと思います。  私は、明石代表と会いまして総理の国連UNTACを御支持を申し上げるというお話を伝え、明石代表は非常に喜ばれました。そして、総理にくれぐれもよろしくというまず最初の出会いがありまして、それから正味一時間半、日本から派遣せられておる要員の安全確保について万全を期してほしいと。これはもちろん、三十二カ国が参加をし、その中の日本の派遣をされておるのは三%であるから、日本だけのことを言うわけにはいかない。しかし、全体の安全の中でぜひ日本の派遣要員の安全を図ってほしいと。  今度行きます四十一名の選挙監視要員、当時はまだ着いてなかったと思うんですが、その配置先についてはひとつ各国と同じように各国の部隊のいるところに配置をしていただけないかと。これは非常に快諾をしてくれました。当然タケオに行かれることになると思いますと。タケオは日本の施設部隊が行っております。それをフランスの軍隊が守っておる。こういう配置でございますが、その当時においてはまだ非常に安全なところだった。  それから、高田さんがお亡くなりになった。そして四人の方が負傷をされた。こういった事態を踏まえて、ぜひ文民警察官の安全その他についても万全の注意をしてほしいと。ルース隊長は文民警察官の総司令官であるから山崎隊長の上司になるわけですが、ルース司令官を同席させてほしいと言いまして、ルース司令官を呼んでいただいて、そして私と今川大使、向こうは明石UNTAC代表とルース司令官、こういうことで、話は私と明石代表がしたわけでございます。そして、今重傷を負ってバンコクに入っておられる方は、病気が治られたら、一カ月以上の療養であれば日本に帰って療養することに同意をいたしますと。それから、文民警察官全体の安危についても全力を挙げて守りますと。  今よくお話が出ております防弾チョッキ、これらのことも六千着を用意しておりますし、それから投票所については千八百カ所を予定しておりましたが、千四百カ所に減らしますと。その後ちょっと数字が動いて現実には千四百三十のようですが、なお減らす必要があれば減らしますと。こうおっしゃいまして、派遣をされておる方の安全確保は最も大切な問題でありますから今村田大臣にお答えできることは者お答えをいたしますし、お答えのできない面については私が連日のように御連絡を申し上げましょうということで、それでそのときは別れてきたわけでございます。  今川大使と山崎隊長にはたびたび一対一で会いまして、どんなことがあっても頼むよと。山崎隊長は非常に男らしいいい男だと思います。必ずやります、一生懸命やりますということでプノンペンの飛行場まで私を送った。  その後、私は帰りましてから、五月十二日の朝八時十分、総理官邸に参りましたら、もう既に総理はお待ちかねでございました。それで、そういった状況を詳細にお話をいたしまして、現地では場合によれば水と糧食が確保できないようなところもあるようです、ぜひそういうことについて今後よろしくお願いをいたしますということを詳細な報告と同時に申し上げましたら、総理は、当時官房長官も御一緒でございましたが、すぐにそれに対して対応をされまして、翌十三日には柳井事務局長、警察庁からは総務審議官等々がお供をしてバンコク経由でプノンペンに飛んだわけでありまして、その後の対応は総理及び官房長官が本会議その他で御報告を申し上げておるとおりでございます。  私は、明石さんの誠心誠意を信じることができますし、また一生懸命やってくれておると思います。そして、幸いに制憲議会選挙があすは終わるわけでありまして、その後が最も大事なときが来るわけでございまして、これに対してひとつぜひ万全を期して先ほど総理のおっしゃったような方向づけをしてほしい、このような気持ちでおります。
  121. 喜岡淳

    喜岡淳君 今詳しくお話をいただきましてありがとうございました。  また、四名の皆さん方のお話もありましたが、私もその四名の万全員にお会いをしてまいりました。そのやりとりの結果を書いた紙がここにございます。申しわけありませんが、これを大臣に読み上げていただければ大臣の御報告と私の報告とが確認ができると思いますが、どうですか。(発言する者多し)  それでは、私が読み上げますから確認をしてください。確認を求めます。重傷者八木一春氏、三十七歳。「背中にロケット弾の破片を受けたが、私は幸い脊椎にまで食い込むことがなかったので助かってありがたいと思っている。」同じく重傷者谷口栄三郎氏、三十二歳。「私は亡くなった高田さんと同じ部屋で生活をしていた。責任感の強い人で、かわいがってもらって残念だった。仕事熱心の立派な人だった。」「銃弾を受けたが、右わき腹から貫通をした。」  この谷口さんの奥さんは非常に身重でございましたけれども、谷口氏死亡というテレビのニュースが間違って流れて、そのショックで少し出産に影響が出たと聞いておりますが、無事に女児を出産したそうでございます。軽傷者川野辺寛さん、四十四歳。「ポル・ポト派の村の入り口でスピードを落とした。そこから一キロ入ったところで襲撃を受けた。それまで一切トラブルも何にもなかった。いきなり撃ってこられた。前と横から撃たれた。応戦する暇もなかった。ただ伏せただけだ。弾の風圧を感じた。皮膚と髪の毛がぴゅっと音を立てて血を噴いた。やられたと思った。」「それまで、やられるとは思っていなかったが、危険な空気がひしひしと押し寄せてきていることは感じていた。二月までは村のポル・ポト派とも一緒に飯を食ったり護衛までしてやったことさえある。」病室の眼鏡にもまだ血のりが残っている。「高田さんはいい人だった。いざというときの輸血のために我々はチーム全員B型の血液で、個性のあるメンバーばかりだった。彼は口数も少ない方だったが、ストレスがたまってくると冗談を言ってみんなを和らげてくれた。食べ物がないときなどは、高田さんは御飯にマヨネーズをかけて食べていた。」軽傷者鈴木さん、三十四歳。「高田さんは元気だった、スポーツマンとして鍛えた体で行動力もあって、たったたったと仕事をこなしていた。勉強熱心な人で、英語のカセットや本を持ち込んで国境監視の業務の合間に英語を勉強していた。スウェーデンのチームからも親しまれ、高田、高田と呼ばれていた。最後に虫の息で「みんな大丈夫か」と言って最期だった。」ということでございます。  そういう状況も確認されたんでしょうか。答えてください。間違いありませんか。確認しておきたいと思います。
  122. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 今お読み上げいただいてありがとうございました。  私も喜岡委員と同じように八木、谷口両重傷者、そして重傷者に比べれば軽傷ですけれども、決して軽傷とは言えません川野辺、鈴木、四人の方にお会いをして、そして現地の状況等も、表現は違いますが承ったところでございます。高田さんの悲報を悲しんでおります。
  123. 喜岡淳

    喜岡淳君 今、私が確認を求めたのはなぜかというと、非常に重要な問題だからです。失礼だという与党のやじもございましたけれども、これは人の命にかかわる極めて重要な問題です。間違いがあったのでは質疑ができません。確認を求めた理由を御理解いただきたいと思います。  このお話のやりとりを聞いておりますと、国境監視の業務をしておった、食い物がないときが あった、こういうことが明らかになっております。これらの業務はいわゆる実施要領で述べておる本来業務のうちのどれに当たるんでしょうか。
  124. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) お答え申し上げます。  喜岡先生も御承知のとおり、この攻撃事件がございましたのは五月四日午後零時三十分ごろでございましたが、そのときはフォンクーからアンビルに向かう途中だったということでございます。そして、そのときはフォンクーで会議があって、また物資を届けるというような用事もあったそうでございますが、その帰りにあの難に遭ったということでございます。したがいまして、そのとき国境監視というようなことをやっていたということではないと承知しております。  ただ、あの地域でいわゆるボーダーコントロールと申しますか国境監視と申しますか、そういうことをやったこともあるということを聞いておりますので、この点につきましては実態がどういうものであったかということを現在調査しております。  法律との関係で申しますと、御承知のとおり、文民警察の与えられた任務と申しますのは現地の警察に対する助言、指導、監視ということでございます。したがいまして、これから外れたようなものであれば問題があるということで、実はこのいわゆるボーダーコントロール、国境監視というような問題のほかにも、例えば政党事務所の警備をさせられたとか、あるいはVIPの警護をさせられたという話も聞いておりましたので、先ほど村田大臣からお話がございましたように、私、村田大臣が行かれた後、フォローアップで行ってまいりましたけれども、そのとき明石特別代表とルース司令官に対しまして、そのような我が国の法律の枠を外れたことがあるとすればそれは困るということを実は再度申し入れた次第でございます。  ただ、そのときには国境監視というような話は聞いておりませんでしたのでこの問題自体については触れませんでしたけれども、政党事務所の警備、VIPの警護という問題につきましては、ルース司令官の方から実はそういうことは現地警察のやることである、文民警察はそれを監視することだという説明がございました。それならば我が国の法律の建前と一致するからひとつぜひそれを徹底してほしいというふうに申し入れてきたわけでございます。  繰り返しになりますが、国境監視と言われるものが実態としてどういうものであったかということはなおまだ調査をしているところでございます。  いずれにいたしましても、我が国の文民警察は、これは国際平和協力法の枠内で業務をすることでございますから、それを外れることはないようにいたしたいと思っております。
  125. 喜岡淳

    喜岡淳君 枠内じゃないでしょう、そんなのは。大臣も現地で確認をされたと思いますが、そういう声を聞いたんですから、そんなものは枠内だと言えるんですか。大臣はどうお考えになりました、向こうでそういうお話を聞いて。枠内ですか、そんなのが。
  126. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) ちょっと補足させていただきますが、私は枠内であるというふうに申し上げたつもりはございません。法律の枠内で業務を行うべきであるということを申し上げたわけで、実例として政党事務所等、法律の枠を外れたものについてはやめてほしいということを申し入れだということを例として申し上げたわけでございます。  国境監視というものは、この実態が具体的にどういうものであったか、その点をよりよく承知した上で、もしこれが法律の枠を外れたものであればこれは是正方を申し入れるべきであるということを申し上げている次第でございます。
  127. 喜岡淳

    喜岡淳君 残念ながら、失礼ですけれども、今の答弁は緊張感が感じられません。大臣もそうお考えだと思いますが、わかるまで待つようなお話ですね。選挙が比較的平穏に終わったからそういうようなことを言っておれるんじゃないんですか。現地はそんなのじゃやっぱりないでしょう、大臣。大臣行かれたときも選挙終盤戦の本当にさなかで、流血の選挙だったと思いますよ。  私もバッタンバンの選挙事務所へ行きました。フンシシペック党は入口のドアは銃撃でえぐられておるじゃないですか。ソン・サン派の事務所には羽根つきロケット弾が落ちておるじゃないですか。こんな中での選挙戦です。そういう選挙を行う政党の事務所の警護を日本の丸腰の文民警察官にやらしているんでしょう。そういう事実を村田大臣、向こうでお聞きになりましたか。
  128. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 私は帰ってまいりまして、実は今お答えを申し上げた柳井事務局長、それから警察庁の田中総務審議官も参りましたが、田中総務審議官は行くときに私に、全部済むまで行ってまいりますと、こう言って行きまして、まだプノンペンにおっていろいろUNTACと今川大使とともに折衝してくれておりますが、そういった文民警察官の実情というものを非常に心配し、そして危険のないようにということで最大の配慮をしつつあるところだと思います。
  129. 喜岡淳

    喜岡淳君 そういう実態を感じられて、どういうふうにお考えになっておるのか伝わってきませんよ。  危ないですよ、本当に。  プノンペンの東五十キロにプレイペンというところがございます。私も行ってまいりました。そこの文民警察官、香川県出身の三十五歳の警部補でございますが、彼は、夜の六時から朝の六時まで真っ暗やみで、その中で防弾チョッキ一枚で事務所警備をしております、もちろん電気もございません、四人一チームでやることに決まっておるが一人だけの夜もあると言っておりますよ。  実力で選挙を阻止するというポル・ポト派はロケット砲と機関銃で武装しておることは御存じのとおりでしょう。そういう中を一人で、丸腰の防弾チョッキ一枚の文民警察官を張りつけにしておいて、あなたはその送り出した責任者として、当然これは事前に確認した業務だと今なお確信しておりますか。
  130. 河野洋平

    国務大臣(河野洋平君) 今回のPKO派遣要員につきましては私が所管大臣でございます。  所管大臣といたしまして、中田さんの死、さらに高田警視の事件というものがございまして、安全対策にさらに一段と気を使っていかなければならぬということを考えまして、私からお願いをして総理の御指示で村田大臣に現地へ行っていただいたわけでございます。  村田大臣は現地で、先ほど御報告がございましたようにいろいろ作業をされ、御自身でも危険な地域へ行ってみるといって提案をされまして、一カ所現地もごらんになって帰ってきておられます。村田大臣のそうした御努力、私どもは大変高く評価をしているところでございますが、今喜岡議員の御指摘になりました、文民警察官の業務が本来の与えられている業務を超えているではないかという御指摘につきましては、私も報告を聞いております。聞いておりますが、これらの問題についてはできるだけきちんと調査をすると同時に、UNTACに対して厳重に申し入れる必要がある。  つまり、要人の警護、もしくは事務所の警備ということをしておるということを聞いておりましたので、それらが本来の業務である現地の警察官がそうした業務をやることを指導するといいますか、監視するといいますか監督をするといいますか、そういうことが本来の業務でございますから、もし本来現地の警察官がそういう仕事をしておるところを横で一緒に指導をするという立場でそこに参加しておるということであれば、そういうこともあり得るかもしらぬ。そうではなくて全く一人でやっておるということになれば、これはUNTACにきちっと申し入れなければならぬということなどございまして、関係者にもその事情を問うたことがございます。  先ほど来柳井事務局長が御答弁申し上げておりますように、そうしたことを含めてUNTACに 対してこういうことがあるとすれば、我々はそういうことを聞いておるけれども、こういうことがあるとすれば我々の本来の仕事と違うということを柳井事務局長からUNTACに申し入れ、UNTACのルース部長をしてそれはUNTACとしてもそうしたことを了解していないという返事があったということでございますから、UNTACをして本来の業務にきちっとするようにやってもらわなきゃならぬ、こういう状況でございます。
  131. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 角田君の残余の質疑は午後に譲ることといたします。  午後一時再開することとし、暫時休憩いたいたします。    午前十一時五十八分休憩      ――――◇―――――    午後一時開会
  132. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  平成五年度一般会計補正予算平成五年度特別会計補正予算平成五年度政府関係機関補正予算、以上三案を一括して議題とし、休憩前に引き続き、質疑を行います。角田義一君。
  133. 角田義一

    角田義一君 じゃ、関連して喜岡君に引き続いてお願いします。
  134. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 喜岡淳君。
  135. 喜岡淳

    喜岡淳君 午前中の質問の中で、今、岡山県倉敷市水島海岸通一の一、そこのところに五百九十四台の車があるということが明らかになりましたけれども、午後からは少しだけ時間をいただきまして、村田自治大臣に最後の御質問をさせていただきたいと思います。  ところで、大臣、あと何人死んだらという発言がなかったという御答弁をされた後に、今度は聞いていないという御答弁になっておりますけれども、どうしてこういうふうに変わっていったんですか。
  136. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) お答え申し上げます。  本会議で後ほど申し上げた御答弁、私はその発言を聞いておりません、これが正しい表現でございます。
  137. 喜岡淳

    喜岡淳君 非常に重要な問題ですね。私もプノンペンで複数の関係者からお話を聞いてまいりました。あなたはカレーを食べながら聞いたんじゃないんですか、あと何人死んだら帰れるのかと。そういうお話の中で聞いたんじゃないんですか。そして、その夜のホテルカンボジアーナの夕食会では、私も皆さんのことを心配しているんだ、一日も早く帰国できるように、そういうお話をホテルカンボジアーナの二階でやったんじゃないんですか。みんな期待を持っていますよ。何だ、おれたちの訴えを聞かれなかったのか、何のために大臣は来たんだと。人が命をかけて仕事をしておるときに、上司だからこそ甘えて言ったことをなぜあなたは聞かなかったと言うんですか。答えてください。
  138. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 山崎隊長を初め十三人の方からよくお話を聞きました。このときは、現状の非常に厳しい状態、そしてまた時には食糧や水がなくなるようなときもあるということ、そして警備の模様などを詳しく聞きました。そして、その日の夜、今お話のあったボランティアの方、文民警察官の方、自衛隊の方、皆さんにお集まりをいただいて私はお会いをしたわけです。  そのときに、いろんな実情を承ってショックを感じた、こういう表現をしたのでございますが、それがその言葉を聞いたというふうに誤解を受けたのかと思いますが、ショックを受けたというのは、現地の文民警察官あるいはボランティアの方がいかに厳しい状況を耐えてやっておるかということを目の当たりに見てどうしてもしっかりお守りしなきゃならないなと、こういう意味でその御発言のことにショックを感じたという意味でございます。  しかし私は、今、喜岡委員がおっしゃったような文民警察官の言葉は聞いておりませんし、山崎隊長とは向こうを出発するときにも一対一でお話をし、その前夜にも一対一でお話をし、よくお話を聞いて、私は総理に申し上げ、そして政府はベストを尽くして対応しておられますし、また柳井事務局長、田中総務審議官が現地に参りまして、今川大使とともにUNTACに毎日のように交渉をしていただいておるところであると思います。
  139. 喜岡淳

    喜岡淳君 あと何人死んだらという訴えは聞かなかったというのか、なかったというのか、この二つ、非常に重要です。なかったのか、あったけれども聞いていないのか。聞いていないという場合には、あったかもしれないと発言を否定しないことになるわけです。ですから、私はやっぱり聞いていないということはあったように思うんです。私はそう思いますが、間違いありませんか。
  140. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 大変重要な点でございますから、修飾語抜きで申し上げます。私は聞いておりません。
  141. 喜岡淳

    喜岡淳君 じゃ、なかったのですか。
  142. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 私は聞いておりません。
  143. 喜岡淳

    喜岡淳君 委員長の方でちょっと整理していただきたいと思いますが、なかったかどうかという質問をいたしております。なかったならなかったというふうに言ってください。  もう一回聞きますよ。私は聞いてきていますよ。なかったんですね。
  144. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 村田自治大臣、重ねて、聞いておらないのか、なかったのかということで……
  145. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 大変重要な点でございますからもう一回ゆっくり申し上げますが、私は聞いておりません。
  146. 喜岡淳

    喜岡淳君 なかったんですね。なかったわけですね。
  147. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 重ねての喜岡君からのなかったのか聞いておらないのかというお尋ねに対して再三の答弁がございましたが、聞いておらないということはなかったと理解していいんじゃないんでしょうか。
  148. 喜岡淳

    喜岡淳君 これは私は、なかったというのはあり得ないと思います。私も複数の関係者から現地で聞いてまいりました。あと何人死んだらという発言があったではないか。どうしてそういうことをもみ消すんですか。  あなたは、聞いていないと言った。聞いていないとおっしゃるけれども、大臣が向こうに行かれた目的は何だったんですか。あなたが最高責任者である国家公安委員長として派遣したその文民警察官に死傷者を出したわけです。あなたの部下が亡くなったわけですよ。非常に大変な状況だと、それで現地の状況は一体どうなのか、その状況をあなたは聞きに行ったんじゃないんですか。  あと何人死んだらという意見は、あるいはこの日の会見は、前日から若い人たちが、いよいよ大臣が来る、高田先輩が亡くなった、直訴しないかといってこの日の昼の会合になったんじゃないんですか、彼らの熱気は。直訴だということが彼らの共通の合い言葉だったんじゃないんですか、前の日は。命をかけた発言に対して聞いていなかったと。何のためにあなたは行ったんですか。何を聞きに行ったんですかじゃ。
  149. 河野洋平

    国務大臣(河野洋平君) 村田大臣に現地へ行っていただいたのは、私の援言を総理に取り入れていただいて行っていただいたといういきさつがございますから、私からも御答弁をさせていただきたいと思います。  村田大臣に現地に行っていただいた一番大きな理由は、日本の高いレベルの人として、日本のUNTAC要員、日本の文民警察を含む現地の文民警察の安全問題についてUNTACの明石特別代表と話し合うということが主たる目的でございます。もちろん、そのことと同時に、現地で苦労をしておられる多くの方々のお話を見たり聞いたりしてきていただくということも当然その目的の一つであったかもしれませんが、私どもがまず一番 期待をしておりましたのは明石特別代表との話し合いでございます。
  150. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 私は、帰国いたしましてから、午前中にお話し申し上げたとおり、宮澤総理が全面的にそれを受けていただいて、UNTACの明石代表と交渉をするために柳井局長、警察庁からは田中総務審議官が参りまして、そして文民警察官あるいは派遣要員の安全を守るためにベストを尽くしておるところでございます。  私が帰りましてから聞きましたのは、現地の文民警察官は、山崎隊長以下、村田大臣が来たからおやじに話すような気持ちで一生懸命訴えたんだということを聞きました。私は感激をしたところでございます。ただし、先ほどの言葉は聞いておりません。
  151. 喜岡淳

    喜岡淳君 死と直面した勤務をしておる現地の人たちが、なかったなどとよくも言ってくれたなと、こういう声を聞いてまいりましたけれども、大臣はどうお答えしますか、この声に。
  152. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 総理はベストを尽くしていただいております。UNTACもベストを尽くしていただいております。私も微力でございますが一生懸命に対応しておるところでございます。(発言する者あり)
  153. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ちょっと待ってください。  自治大臣に委員長から照会しますが、今、質疑者は、今度何人死ねばというような話があったかないかということに対して聞いてないということなんで、聞いてなければ聞いてないで結構だろうと思いますが、そういうような話があったのかないのかというのは、わからなければわからないと、こう答えてほしいと思います。  それからいま一つは、そういうふうな大臣とお会いになった人たちの気持ちが、今ここでなかったとか聞いてないということになった場合のことでの相手方の心境というのはどうかというような点を質疑者は聞いておるというような点で、その点を簡単にお答え願いたいと思います。
  154. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 喜岡委員が再三お聞きになるのは、喜岡委員が誠心誠意お聞きになっていただいておるというのはよくわかります。私も誠心誠意お答えを申し上げておるのでございまして、その言葉は聞いておりません。
  155. 喜岡淳

    喜岡淳君 そういう、何というんですか、私は、大変失礼ですが、それは現地の皆さんの気持ちということに全然答えていないように思います。今、その答えは幾ら言われても全然現地の文民警察官の方の気持ちには入らないと思います。入らないでしょう。そんなのは聞いていないと。生死と隣り合ったところで仕事をしておる人が腹の底から言ったことに対して、あんなのは聞いていないと。  じゃ、ちょっと質問を変えますが、何人死んだらなどというのは恥だと言うのは、大臣、本当におっしゃたんですか。新聞記事は正しいんですか。
  156. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 私は、帰国をいたしましてから参議院本会議における答弁について新聞記者からも聞かれました。そして私は、名誉を重んじる日本の警察官がそんなことを言うはずがないというようなことをあるいは言ったのかと思います。
  157. 喜岡淳

    喜岡淳君 何人死んだらという発言は恥でも何でもないんです。現地の文民警察官は、それでも私は言われた任務はやると言っておりました。帰りたくて言ったんではないと言って、これは本当に怒っていますよ、大臣。これは組織の人間としての上司に対する信頼なんです。あなたはそういう信頼の上に立っておりながらその信頼にどうこたえているんですか、今までの答弁は。何が恥ですか。
  158. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 上司に対する信頼、それから私の部下に対する信頼、それは私は人間として及ぶ限りやっておると思いますし、また行っている間あらゆる機会をつかまえてお話を聞いたり、そして折衝をしておりますし、帰ってからも総理のもとで一生懸命やっておるところでございまして、私は、上司に対する信頼、部下に対する信頼は、及ばずながら懸命に努めておるつもりでございます。
  159. 喜岡淳

    喜岡淳君 警察庁の中にも、既に国家公安委員長がなかったなどと言ってしまったからもう後に引くに引けなくなってしまっておると。現地の文民警察官の中にもそういう声を聞いてまいりました。したがって、このままいくならばもうこれから文民警察官などというのは行くものではないと。  話が違うかったではないかという士気の低下が広がっておるというふうに、あなたは感じますか感じませんか。私は感じてまいりました。
  160. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 警察庁長官以下、私を含めて、私が委員長でありますが、そして警察庁長官以下部下を完全に信頼しておりまして、そのためのベストを尽くしておると思います。それは、田中総務審議官が行くときに、私は任務を終わるまで帰ってまいりません、こういうふうにきっぱり言っておるところでも明らかでありますし、私は部下を完全に信頼しておる、そして私の言動から部下が不信の念を起こすようなことはないと思っております。
  161. 喜岡淳

    喜岡淳君 そういう部下の空気さえ、失礼ながら、つかまれていないというのが残念であります。  私の父親も戦前は満州で警察官をしておりましたが、警察とか消防とか、あるいは自衛隊もそうでしょうけれども、いわば体を張った仕事をしておる皆さん方は、当然そのトップに立つ上司たる者もそういうつもりでやってくれるものだというふうに思っていなければこれはできない組織でしょう、仕事でしょう。それを上司だからといって、本当のことを言ったら恥だ、何人死ぬかなど恥だ、こんなことを言うようでは、私は極めて大臣の国家公安委員長としての、上司としての適格性については疑問の余地を感じております。  そしてもう一つは、あなたは従来からずっと政治と人の愛ということを説いてきた方だと私は尊敬をいたしております。大臣の本についても幾つかは読ませていただきました。「政治も究極の心は「愛」であり、それが基本原理になるからこそ人を説得しうる道理がみちびき出される」、これは大臣の名文章でございます。  あなたの部下が約束が違うかったではないかと言いたくても言えずに死んでおるのに、あなたは、本当のことを死んでも言い切れない、こういうような態度では、派遣した責任者の国家公安委員長としての適格性を私は疑わざるを得ません。  時間が参りましたからこれで終わりますけれども角田議員に譲りますけれども、死んだ方の御遺族の方、私も三十日には岡山の葬式に行ってまいりますが、やはりこのPKOというのは命がとられるものだということが今度明らかになったわけですよ。失礼ですが、今の答弁の中では、それを覆い隠して、平和なところで警察に対する指導をするんだからなどと言って送り出したあなたの責任はみじんも私は感じられません。  午前中の角田議員の質疑の中でも、政府の御姿勢は三原則が完全に崩れてしまわない限り中断、撤収をしないわけですから、完全に三原則が崩壊するまでずるずると死傷者がふえ続けていくというのがこのPKO協力法の中身であるという危険性を、私は改めて確認いたしました。  これで、角田議員とかわります。
  162. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 私は、喜岡委員がお体を張って現地に行かれたことをよく知っています。そして、危ないところにも行っていただいたということも知っておりますし、いろんな方に会っていただいたということも知っております。したがって、喜岡委員が誠心誠意、今、質問をぶつけていただいた、大変心から感じるものでございますが、私も三十日のお葬式には行くつもりでおります。  私の近親者にも戦死者がおりまして、あなたのお気持ちは全く私の気持ちだろうと思います。ただ、私は文民警察官の総指揮官という立場で参り ました。あなたは現地を視察していろんなことをお感じになったと思います。お互い感じる心は心でございます。したがって私の答弁も、高田さんの死を悼み、そして文民警察官の身を案じておるということは、全く一緒だということを改めて申し上げます。
  163. 角田義一

    角田義一君 私の方からPKO問題について二つばかりお尋ねしておきたいと思うんです。  PKO法案が通りましたのは昨年の六月の十五日でございました。六月の十三日の日に和平プロセスの第二段階の武装解除が始まったわけでありますけれども、そのときにポル・ポト派は拒否をしております。そうしますと、今日のような事態というものは当然予想されたのではないかというふうに思うんです。特にカンボジアに派遣をする前に、ポル・ポト派が武装解除を拒否しておる、いろいろな紛争が発生するだろうと、この見通しなり情報収集なりというものは一体どうなっておったのか。その辺の見通しを誤って出したということについての政府の政治責任、私は非常に重いと思いますよ。これをどう考えておられましょうか。
  164. 河野洋平

    国務大臣(河野洋平君) カンボジアヘの派遣につきましては、四派がそれぞれこのパリ和平協定に調印をする、和平協定の中心的な柱でございます停戦の合意というものが四派によって合意をされておる。確かに先生がおっしゃいます武装解除というものは、停戦の合意をさらに一段と正確なものにするといいますか確固たるものにする、そういうことであることは私も承知をいたしております。しかし、一番我々にとって大事なことは、停戦の合意が成るか成らないか、そしてその四派が一致してPKO活動に同意するかどうか、こういったことがやはり重要なことでございます。  停戦の合意がなされ、UNTAC要員の派遣に各派がそれぞれ同意をするということであれば、さらに外交交渉、外交活動によりましてこうした停戦の合意が進む、かたいものになる、より強固なものになる。武装解除についても、日本の外務省を中心にそうした交渉がポル・ポト派相手に行われたことも事実でございます。こうした総合的な判断をいたしまして派遣をいたしたというのが経過でございます。
  165. 角田義一

    角田義一君 官房長官、もうちょっと率直にお答えいただいてよろしいんじゃないですか。  ポル・ポト派が武装解除を拒否して現にいろいろ紛争が起きている。そういう見通しについてはやはり甘かったと。甘かったは甘かったというふうに私は率直に言うのが国民に対する今日の信頼を回復する道だと思うんですね。そういう強弁をして、自分たちのやったことは全く間違いないというふうに言い張ることの方がむしろ私は恐ろしいと思う。いかがでございますか。
  166. 河野洋平

    国務大臣(河野洋平君) UNTACは、ポル・ポト派に対しても最後まで門戸を開くと同時に説得をいたしております。国際社会も一致してポル・ポト派に対してUNTACの進めます和平プロセスに協力をするということを説いたわけでございますし、ポル・ポト派は、確かに先生御指摘のとおり武装解除を拒否いたしましたけれども、しかし一方でパリの和平協定は遵守するということを言い続けてきておるわけでございます。パリの和平協定を遵守するということであるならば、本来、武装解除もしなければなりませんし、と同時に停戦の合意を守らなければならないわけでございます。  現実に今回の投票に至るまで停戦の合意は、私どもはその大枠は守られてきたというふうに思っております。こうした判断で派遣をいたしておるわけでございます。  今回、高田さんの死という極めて残念な申しわけのない事態を起こしましたことにつきましては大変責任を感じておりますが、派遣に至るまでの経過、考え方は以上のとおりでございます。
  167. 角田義一

    角田義一君 先ほどちょっと官房長官は定例の記者会見で席を立っておられまして、私どもの議論をお聞きいただかなかったところがあると思うのでございますけれども、それはそれでいいんですが、総理、もうちょっとこの問題については率直に国民にわびるべきはわびて、今後のPKO活動というものが誤りなきを期するためにもやっぱり非は非として認めるべきは認めた方が私はよろしいと思うんですよ。その辺、総理から私は聞きたいと思います。
  168. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、当時おりましたのは私がずっとおりましたので、私がお答えを本来すべきことであろうと思います。  結果としてクメール・ルージュの武装解除というものが行われませんで、その結果我々は非常に貴重な犠牲を出したわけでございますから、私どものそこのところは考え方が事実と違った結果になったということはまず申し上げなければなりません。  当時、その年の六月、七月ごろ、私自身が記者会見を何度かしておりまして、これは実は非常に大事なことになりかねない、我々としては極力クメール・ルージュに対して武装解除に応ずるような努力をしなければならぬと言っておりまして、また実際いろいろなことをいたしました。結果はできませんでしたけれども、いろんな外交努力を各国と一緒にいたしましたし、また最後には経済封鎖のようなことまでいたしたことは御承知のとおりです。  それからもう一つは、当時やはり四派だけでございますと自分のところだけ武装解除をしてしまうと攻められるという疑心暗鬼がある。むしろUNTACが存在をだんだんしっかりしてくれればそういう安心の中で武装解除ができるかもしれないという、これも結果としては希望的観測でございましたけれども、そういうこともございまして、我々としてはなるべくUNTACの支援に立とう、こういう気持ちもございました。  そういう状況でございましたが、結果としてはしかしそれは我々の希望が実現をしなかった。しなかったのみならず実はそれが貴重な犠牲につながったということで、私は非常にこのことは今考えても残念に思っていますし、犠牲者に申しわけないと思っています。将来に向かいまして非常な反省材料になると考えております。
  169. 角田義一

    角田義一君 PKOについて最後の質問をいたします。  それは、今回の総選挙が始まる直前に、新聞報道等によりますと、明石特別代表がポル・ポト派等から攻撃を受けた場合には自衛のために戦うというような趣旨のことを発言されたというようなこと。さらには、PKOの流れというものが、事務総長の報告にもありますように、平和執行部隊というような形で何だか武器を持って戦うような、そういう流れに私はなっていくような非常な心配をしているわけであります。  日本は憲法第九条がございまして、それを非常に厳格に解釈をしていくというのが私は総理のお立場だろうというふうに思っておるわけでありますけれども、国連の今後のPKO活動、特に平和執行部隊等でやはり武力を用いるといいましょうか、そういう流れに対しては私は非常に憂慮すべきことだと思っておるのでございますけれども、それについての総理の御見解、御見識を最後に承っておきたいと思っております。
  170. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) クメール・ルージュから選挙の前に非常な攻勢がありましたときに、我々の犠牲者を出したときでございますけれども、UNTACの活動の安全を確保するのはUNTAC自身、いえば明石代表の第一義的には責任でございますために、いろんな意味で明石さんにプレッシャーがかかっておったと思います。  一つは、クメール・ルージュがああいう攻勢をかけてくるのであれば、こちら側もフン・セン初め他の派もございますから、それに対していわば反撃をすればそれが一つの戦乱をおさめる条件ではないかというそういうプレッシャーと、それらの派に対して一応押収した武器を返してやるべきではないかというプレッシャーと、両方ございました。明石さんがこのプレッシャーによく耐えてくれましたことは私は非常に幸せだったと思いま すけれども、しかし、その立場は容易なものではなかったろうと思います。  つまり、これをうっかりやり損ないますとUNTACの中立性というものが失われるわけでございまして、これは我々の法律で申しますと三条件の一つ、それからパリ協定からいいましても、UNTACというものが中立でないということになりますと協定の履行というものに非常に暗い影を落とす。しかし、実は非常な危険な状況であった。そこはよく耐えられたというふうに私は思っていまして、幸いにしてそういうことはなくて済んだということでございました。  そこで次に、おっしゃる問題にまさにそこが関連をするわけですが、もしUNTACが何とかして自分の目的をとにもかくにも達成すればいいんだということでありましていわゆる兵力増強というようなことを仮にいたしました場合には、これはPKOの本質に実はかかってくることになります。ですから、その圧力に耐えられたことは大切なことだったと思います。今、角田委員の御質問は、しかしそのような状況において、ブトロス・ガリ事務総長が著書で書かれたように、将来、国連は、こういうことがあるのであるから重大器を持っていざとなればそういう抵抗を排除するということも必要ではないかと、平和執行部隊のようなことを言われました。このことは、ですから当事者の合意とか中立性とかいうこととは違う次元の問題になります。  そういうことは国連憲章に別にはっきり書いてあるわけでもございませんから、ブトロス・ガリさんが自分の体験で、それも非常に圧力のもとにある立場として、そうでもしなきゃできないじゃないかという気持ちもおありになるだろうと思うんですけれども、しかしそうなりますと、それは今まで我々が考えていたPKO、PKFというものとは違います。全く新しいお考えですから、安保理事会等々でいろいろそういうことを議論していただくことは悪いとは思いませんが、殊にソマリアのような事態がたまたまそうでございましたから、悪いとは思いませんけれども、我が国としてそういう活動に従事するわけにはまいらない。それはやはり武力の行使というものに極めてつながりやすいのでございますから、我が国がそういうことに参加をできるとは思いませんが、そういう議論が行われること自身は、これは我々としても別にそれを拒否することはないだろう、こうは思っております。
  171. 角田義一

    角田義一君 最後になりますが、今後のPKOのあり方と憲法の問題についていろいろ世間様でも議論が始まっているようでございますけれども、私はあくまでも日本国憲法の一つの理念、精神というものに立脚をして国際貢献なり国連の協力というものがあってしかるべきだというふうに思っておりますけれども、その辺のことを最後に総理から御所信を承りたいと思います。
  172. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま申し上げましたことからも御理解をいただけると思いますが、この法案御審議の過程におきまして各党からいろいろな御主張がございまして、その御主張は必ずしも政府の考え方と一緒ではございませんで、政府の考え方についても厳しい御批判がございましたことをよく記憶をいたしておりますし、またしかし、それはある意味政府に対して一つの教訓と申しますか、ガイダンスにもなっておるわけです。  我々は国際的な平和貢献を今後ともいたしたいと思いますけれども、それは海外において武力行使をするということは我が憲法の趣旨ではない、そこに我々の守らなければならない限界がある、こういうふうに考えてやってまいりたいと思っております。
  173. 角田義一

    角田義一君 それでは、時間もございませんけれども、政治改革、政治腐敗について時間の許す限りお尋ね申し上げたいと思います。  去る五月十七日に東京地裁で贈賄側の森口五郎共和副社長に対しまして懲役五年六カ月という大変厳しい有罪判決が出ました。その後の新聞報道等によりますと、森口被告は身辺整理が済めば下獄するというふうに報道されておるわけでございますが、裁判長はその判決文の中で、収賄側の阿部被告とともに、国家行政の公正に対する国民の信頼を著しく失墜させ、国民の政治不信に火をつけた、二人が国民に政治離れの風潮を引き起こしたのは見過ごせないと強調しております。  総理はこの判決を聞いて、特に収賄側の阿部文男代議士は宮澤派の事務総長であったわけでございますが、改めてこの問題について総理はどう考えておられるか、そしてやはり私は、総理は阿部文男議員に対して改めてこの判決を踏まえて議員の辞職を迫るべきだというふうに思うのでございますけれども、いかがでございますか。
  174. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 阿部議員に対する判決ではございませんが、そういう判決文の趣旨はこの間私も報道で承知をいたしました。阿部議員に対する判決ではございませんけれども、極めて遺憾なことであります。阿部議員も起訴されておるわけでございまして、極めて遺憾なことと考えておりますが、阿部議員御自身の出処進退につきましては、これはやはり以前から申し上げたとおり阿部議員において考えられるべきものだというふうに私は考えております。
  175. 角田義一

    角田義一君 私、ちょっと一つだけどうしても総理に確認しておきたいことがあるんです。  最終的な判断はそれは阿部文男さんがおやりになることだと思いますが、しかし総理として、自分の派の事務総長として、あなた、おやめになった方がいいのではないかというような御忠告はしたことがあるんでしょうか、親身になって。そのことだけ私はお尋ねしておきたいんです。どうしてもお尋ねしておきたい。
  176. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 阿部議員もたくさんのいい友人を持っておられます。たくさんの友人がいろいろなアドバイスをしておるということは事実だと思いますけれども、これはしかし、最終的にはやはり阿部さんのお考えになるべきことだと思います。
  177. 角田義一

    角田義一君 総理、的確に私の質問に答えてくれませんか。私は、最後の決断は阿部さんがやることに依存はありません。しかし総理として、しかも自分の派の事務総長としてこういう不祥事を起こした者に対して、みずからが真心を込めて辞職を迫ったことがあるのでございましょうか。そこだけ聞いておきたいと思うんです。
  178. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) こういう場でございますから一般的なお答えでお許しをいただきたいと思いますけれども、阿部君の長い間の友人たちがいろいろな意見を持っておるということは御当人の耳には届いておることは間違いないと思います。
  179. 角田義一

    角田義一君 法務大臣にお聞きいたします。  金丸さんの脱税事件で検察庁は大変な地域あるいは場所を家宅捜索いたしました。あの脱税事件の原資にゼネコンからのやみ献金、裏献金、これが充てられておるということはある程度わかっておるわけでありますけれども、どういうゼネコンに対して家宅捜索をしたかというようなことについては一切国会で明らかにできませんか。どうでしょうか。
  180. 濱邦久

    政府委員(濱邦久君) お答えいたします。  今、委員お尋ねになっておられますところの金丸前議員らに対する所得税法違反事件につきましては、さきに当委員会でその捜査結果を御報告したとおりでございます。  その捜査の過程で捜査機関、検察当局がどのような証拠資料を収集したかあるいはどのような事実を把握したかということにつきましては、これはもういつも申し上げていることでございますし、もう角田委員は十分御理解いただいているところでございますけれども、この国会の場でお答えを差し控えさせていただいているわけでございます。  もとより、国政調査権の行使に対しまして法務当局としても法令の許す範囲内でできる限りの御協力をしなければならないことについては全く異論がないところでございまして、先般の当委員会における報告も、そういう趣旨から刑事訴訟法四 十七条の制約の範囲内で許されるぎりぎりのところを御報告したつもりでございます。  したがいまして、それ以上のことは国会の場でお答え申し上げることは差し控えさせていただきたい、捜査資料等の提出等につきましてもこれは御遠慮させていただきたい、このように思うわけでございます。
  181. 角田義一

    角田義一君 濱さんちっとも答えてくれないから、私が申し上げます。  東京地検特捜部に家宅捜索を受けた十八社、清水建設、戸田建設、西松建設、飛島建設、大成建設、鹿島、青木建設、前田建設工業、三井建設、東急建設、佐藤工業、間組、奥村組、大林組、日本国土開発、森組、大阪砕石工業所、私の調べでは十七社、これ間違いありませんか。間違っていなかったら、こっくりしてください。
  182. 濱邦久

    政府委員(濱邦久君) お答えいたします。  先般の捜査結果の報告において御報告いたしましたように、大手建設、総合建設会社等の事務所を捜索したことは御報告申し上げたとおりでございますが、その逐一につきましてお答え申し上げることは御遠慮させていただきたいと思うわけでございます。
  183. 角田義一

    角田義一君 建設大臣にお尋ねします。  これら大手ゼネコンは金丸さんに対していわば裏金を提供したということのようでございますが、今回補正予算で大変な公共事業が出てきているわけであります。建設省は、建設省独自のお立場でこういった大手ゼネコンに対して裏金献金についての実情を調べておられますか、おられませんか。
  184. 中村喜四郎

    国務大臣中村喜四郎君) お答えをいたします。  裏金献金の実態については、関係法令に違反する政治献金、いわゆる裏献金の事実の有無については本来しかるべき機関において調査されるものであり、建設省としては調査をしておりません。  しかし、現在、一般的な建設業の健全な発達を促進する立場から主要の団体からヒアリングを行っております。その中身は、事業活動の実態、会費の徴収方法、事業活動等の適正化、そのことにつきまして現在内容を整理中であります。引き続き業界からもヒアリングを行い、その結果、必要性に応じて業界に対する事業活動の適正化、企業倫理の確立などに向けて適切な指導を図っていきたい、このように考えております。
  185. 角田義一

    角田義一君 到底納得できませんな。これは、今後入札制度をどうするかというような御議論は、それは大いにやっていただいて結構であります。当然でしょう。  しかし、私が申し上げたいのは、要するにゼネコンに対する裏金というようなものが公共事業の一%ないし三%が渡っているのではないかということは公然と言われているわけですよ。しかも、今度は補正予算で大変莫大な公共事業を出しておるわけです。そうすると、国民にしてみれば、その辺のことがちっとも解明されないでそしてまた出してくる、これは納得できない話なんです。そして、濱さんが何も言わない。こっくりもしない。だれも言わないとすれば、建設省は少なくとも公共事業をこれだけ出してきた以上は、相手がしゃべるかしゃべらないかは別ですよ、政治姿勢として大臣がやはりちゃんとその辺は調べるという態度を示さない限り、私は国民は納得しないと思うんです。どうですか。
  186. 中村喜四郎

    国務大臣中村喜四郎君) 御指摘をいただきましたように、公共事業の受注についてその都度数%の政治献金というお話でございますが、このことにつきましては、一般的に受注の都度に政治献金を行うということは到底考えられないことである、このように考えておりますし、公共工事の予定価格につきましては厳正な積算に基づいて会計検査院等の厳格な検査も経て行っておりますので、その余地はない、このように考えております。  しかし、今回このような御指摘をいただいたということで、さらに透明性、競争性をこれを機会に高めていくということで来月早々に公取、会計検査院、学者の方、マスコミの方も交えた積算のための検討委員会を省内に発足いたしまして、現在の積算体系そのものをもう一回第三者的な立場からいろいろと御意見をいただきながら、その意見を参考にしながら今後も積算体系の見直しを行っていきたい、このように考えております。
  187. 角田義一

    角田義一君 このことについて宮澤内閣がちゃんとやっぱり調査をする。相手がしゃべるかしゃべらないかは別ですよ。しかし、聞きただしてみる。この姿勢がない限り私はこれ以上質問続けられません。はっきりこの辺約束してください、やってみると。このことが約束できないようでは、この補正予算通りませんよ。検討してください。やるならやるとはっきり言ってください。
  188. 中村喜四郎

    国務大臣中村喜四郎君) 先ほどの答弁を繰り返すようなことで申しわけないのでありますが、建設省としては所管に属さない法令に対して違反しているか否かについて調べるべき機関でございませんので、しかるべき機関において判断をしていただき、建設省としては業者からのヒアリングにおいて個別の政治献金の実態についてまでは聞くことはできない、このように考えております。
  189. 角田義一

    角田義一君 私は総理お尋ねしたい。  これは宮澤内閣の政治姿勢にかかわる問題ですよ。政治改革、政治腐敗を根絶するとか偉そうなことを言うのであれば、やはりこれはもう一遍私の問題提起を踏まえて検討してみるということぐらいの答弁はできませんか。全然やる気ありませんか、どうですか。
  190. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 所管官庁といたしまして、殊に国の公共事業を請け負うというような企業に対して、その企業の経営が適正に行われているか等々につきましては、所管官庁としては関心を持つのは私は当然と思います。どの政治家に幾ら金を出したかというようなことを今言っておるのではございませんが、きちんと経理、経営がなされておるかどうかということは私は所管官庁としては当然関心を持つべきものと考えます。
  191. 角田義一

    角田義一君 最後にちょっとだけ。  関心を持つべきものであるということであれば、私の問題提起に対して前向きに宮澤内閣として御検討なさいますかなさいませんか、それだけぜひお聞きしておきたい。
  192. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 所管官庁として関心を持った行政をやってもらうようにいたします。
  193. 角田義一

    角田義一君 終わります。
  194. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 以上で角田君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  195. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 次に、石川弘君の質疑を行います。石川君。
  196. 石川弘

    ○石川弘君 自由民主党を代表いたしまして、補正予算案を中心に総理並びに関係閣僚に御質問をさせていただきます。  最初は、先ほど角田委員おっしゃいましたように、既存のと申しますか本予算での審議の中で、経済がどのように展開されるだろうかという景気見通しがございました。今回、そういうものの見通しをさらに確かなものにするということで補正が行われるわけでございますので、最初に景気の動向から質問をさせていただきます。  まず、現状、今の時点で景気をどのように分析をなさっていらっしゃいましょうか、企画庁長官にお答えをいただきたいと思います。
  197. 船田元

    国務大臣(船田元君) お答えをいたします。  我が国経済現状を見ますと、個人消費はなお低い伸びとなっております。設備投資につきましても製造業を中心に減少するなど引き続き民間需要を中心に低迷をしておりまして、依然景気の調整過程が続いている、この基本的な考え方あるいは認識は変わっておりません。  しかし、そうした中で公共投資が御承知のように堅調に推移をし、住宅建設もそれにつられるという形で回復の動きが続いております。また、最近は産業面を見ますと在庫調整が進展をしてそろそろ一巡をするかなという感じになっております し、金融情勢においては御承知のように株式相場が上昇する、そのようなことで一部に回復の兆しを示す動きがあらわれてきております。また、景気動向指数いわゆるDIでございますが、その先行指数も年の初めから二カ月連続で五〇%を上回っている。景気の局面が変化をする可能性を示しているということは言えるのではないかと思っています。  したがいまして、現在、一部に回復に向けた動きが見られることは事実であって、受注、生産、出荷等に見られた期末要因の変動の程度も含めて今後の推移を注目していかなければならない。それと同時に、今後の景気足取りを確かなものとするために今般の新総合経済対策の着実な実施を図ってまいりたい、このように感じております。
  198. 石川弘

    ○石川弘君 今、御報告いただきましたように、五月の月例報告を見ましても、調整過程ではあるけれども変化が始まってきているという御報告があるようでございます。  そのプラス要因として、今お挙げになりました例えば在庫調整が進んでいる。それから住宅投資、公共投資、この二つは特に今回の補正に大きく関係するわけでございますが、こういうもの。それから、金融面では株価あるいはマネーサプライの下げどまりといったようなこともありますし、これは余り期待し過ぎるとまた黒字ということになりますけれどもアメリカの景気回復というふうなこともプラス要因として挙げられているようでございます。  ただ、よく言われるように、民間投資あるいは個人消費といったような部門だとか、あるいは雇用のようにおくれてくるようなもの、こういうものについてはまだ不安があるとか、あるいは地価等につきましても資産デフレ効果がまだ継続しているんではないかという、そういう問題意識と、それからもう一つ強調されますものとして為替の変動の仕方、特に円の急展開というようなことがどう働くかというようなことも言われているわけでございます。  実は、きのうきょうということでございますので、特にこの円高の急展開の問題、米の財務省報告を契機としまして、サマーズ次官自身も人為的に操作するつもりは全くないんだということを言っていらっしゃいますが、昨日に引き続いて本日、また一円程度の円高という形でございますので、その辺の状況につきまして大蔵大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  199. 林義郎

    国務大臣林義郎君) お答え申し上げます。  二十五日にアメリカ財務省の世界経済と為替政策に関する報告書というのが発表されました。この中の一部分をとりまして、アメリカの政策で円高を容認するかのごときものがあるんではないかということが言われておりまして、実はサマーズ財務次官には、ちょうど私の方の財務官がワシントンに行っておりましたのでその辺を確かめさせたのでございますけれども、サマーズ米財務次官からは、この報告の内容は純粋に分析的、説明的なものであって、為替の問題につきましては、この前のG7の会合が四月二十八日にありましたが、そのときにありましたのは、為替はファンダメンタルズを反映して安定的に推移すべきである、急激な変動というのは決して好ましくない話である、そういった形でいろんな問題が起きたときにはお互いに協力していこう、こういった線はお互い確認をし合ったところでございます。  引き続きまして、二十六日でございますが、下院の中小企業委員会で証言に立ちまして、今申し上げましたようなことを述べると同時に、米政府はこれ以上の円高を求めない、こういう言明をしたということでございます。  実は、きのうからちょっと為替が非常に円高に振れております。私も非常に憂慮しておりますが、申し上げましたように、安定的に推移することが望ましい、こういうふうに考えますし、この辺につきましては関係各国とも緊密に連絡しながら適時適切に対処して為替相場の安定を図ってまいりたいと考えております。  今、二十八日と申し上げましたのは二十九日の誤りでございましたので訂正させてもらいます。
  200. 石川弘

    ○石川弘君 今、大蔵大臣から御説明いただきましたけれども、先ほどの企画庁長官のお話で、現時点でいわば過去のいろんな苦しい局面からやや変化の兆しが出てきているというお話でございます。こういう景気の問題を先行きの方でどう判断するかということはいろいろと難しい要素があるようでございますけれども、最近のいろんな経済誌等を読んでおりますと、過ぎてからのことになりますが、景気が底を打ったかどうかというような書き方をしておりまして、よく一-三月期にもう打ったんだというような書き方とか、あるいは必ずしもそこまでは言ってないものがあるんですが、こういうことにつきまして、企画庁長官どのようにお考えでございますか。景気は底を打ったという言い方というのに対してどのようにお考えでございますか。
  201. 船田元

    国務大臣(船田元君) お答えいたします。  先ほども景気現状の認識について申し上げさせていただきました。確かに、先ほど申し上げたような経済指標で一部明るさが見られる、そして五月の月例経済報告におきましても回復という言葉を初めて使わせていただきまして、一部回復の動きが見られると、こういう表現をさせていただきました。しかし同時に、やはり経済の大宗を占める個人消費、それから民間設備投資、そこがやはりなかなか上向いてこないという現状があることも事実でございます。  そういうことで、私どもとしては、なお景気は調整過程にある、こう言わざるを得ない状況であると思います。もちろん個人的な感触としては、確かに今申し上げたような回復の兆しを示す数字もかなり出てきておりますので個人的には底を打ちつつあるのかなという気持ちは持っておりますけれども、しかしながら、なおその数字がより広い範囲においてよい条件にならないと正式な底を打ったということにはなかなかつながっていかない、しかしそう遠い時期ではない、このように思っております。
  202. 石川弘

    ○石川弘君 先ほど、角田議員の最初の御質問のところで足し算しても三・三%という御質問があったわけでございますが、そういうことよりも、経済誌の多くは今回のこの新総合経済対策を織り込んでも三・三に行かないんじゃないかと書いてあるのが実はいろいろあるわけでございます。それはもちろん経済動きを見るときの総量の見方だとか乗数の掛け方とかで違うわけでございましょうけれども、本予算審議の中でも総理は、この三・三%についてはもとがそもそも相当低くなっている、そこから上がってくるわけだから、今回のこういうものも含めればもちろんでしょうが、やはりこの三・三ということについてはかなり自信を持ってお答えになっていたように私は感じておるわけでございますが、この時点におきまして総理としてはこの問題をいかがお考えでございましょうか。
  203. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御承知のように、げたという非常に技術的な話がございますが、これをちょっと別にしておきまして、私は平成五年度の経済が大体年率で三・三%の実質成長を遂げるようなそういう動きをしていくだろうということは、私はあっても黒とするに足りない。ここから、第一・四半期のところから始まるわけでございますので私はそういうふうに運営できるのではないか。ただ、今御審議をいただいております補正予算等々につきまして、これをお認めをいただいて執行させていただくということが大事でございますけれども、そう思っております。
  204. 石川弘

    ○石川弘君 今のお答えのように私は当初もそう思っておりましたけれども、この我が国の経済成長というものが我が国だけの問題ではなくて対外的な問題も含めて大変大事な事態になっていると思いますので、そういう意味では、新総合経済対策というものを織り込みました今回の補正というのは非常に国内はもちろん国外も含めて期待をされているものではなかろうかと思うわけでござい ます。  そういう意味におきまして、新総合経済対策そのものの必要性ということに関する論議は、ある意味ではもう既にかなり早い段階で済んでいる。予算としての審議は当然なされなければなりませんけれども、こういうことの必要性ということは、実は本予算審議の中でも時々この種の話が出てまいっておりましたから、私は必要性を論ずるという必要はなかろうと。ないと言うとちょっと語弊がありますけれども、みんなの腹の中に入っていることではなかろうかと思うわけです。したがいまして、これが円滑に実施され、前倒しをされつつあります本予算に継ぎ足されることになりますれば、この言葉の中にあります足取りを確かなものにするというのは非常に的確な表現になるんではなかろうかと思っております。  そこで、そういう必要性をさらに若干中身の点で申し上げたいと思っております。  一つは、従来から行われております公共事業、これは何かいろいろ変わり目にきますと、今までの公共事業の重要さということよりも何かそこにいろんな問題があるんじゃないかということを論ぜられることがありますけれども、私は、国土というものを基本的に整備をしていきます公共事業の必要性は毫も少なくなってはいない、むしろこういう面で非常に大事な仕事だと思っております。特に各種の長期計画を伴っております公共事業というのはそれなりに方向性なりやり方なりということをきちっと決めておりますから、そういう意味で公共事業の必要性を今さら論ずる必要はないと思いますが、今回の補正の中で、いわゆる公共事業的なもの、いわば公債対象経費のほかに、その外側でいろんな事業が実は行われております。  先ほどの御議論の中で、例えば文教関係施設とかそういうものは当初に比べて非常に大きなボリュームがついているのではないかというような御指摘がございました。しかし、本予算審議の際にも、野党の先生からもそういうものの必要性を実は論ぜられて、大変おくれた試験研究施設等は大いに整備すべきではないかというような御議論もございました。そこの問題は、金目をどれだけつけるかということのほかに、役所的に言えばやはりその種の官庁営繕みたいなものについてどういう計画でどういう形でやっていくかということがありませんと大きな波ができ過ぎる、そういうような御指摘ではないかと思っておりまして、私はその種のものが今回の予算に盛り込まれましたことは非常に意味が大きいと思っております。これは別にお答えをいただく必要はないことだと思っております。  それで、その周辺にもう一ついわゆる新社会資本と言われている言葉、これは本予算審議している間でもいろいろとこの言葉が出てまいりましたし、中身をどうするんだというようなお話もございました。その辺について少しお伺いをしたいと思っております。  総理からこの新社会資本の問題につきまして経済審議会でいろいろ検討するようにという御指示があったということを伺っておりますが、どのようなお考えでそのような御指示をなさったか、伺わせていただきたいと思います。
  205. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 実はいろいろな複合したことからそういうことを申し上げたのでありますけれども、本来、生活大国というものが当然お互いが知っておりますいわゆるインフラを必要とすることは間違いございません。それはある意味で伝統的な公共投資ですけれども、しかし、その中で例えば下水道であるとか公園であるとかごみ処理でありますとかそういういわば五十年前の生活と違った意味で新しい生活のためのそういうインフラ、そういうところのウエートをできるだけ大きくしていきたいという問題意識が一つございます。  それから、しかし生活大国はそういう物理的なインフラができればできたというものではなくて、やはり研究であるとか学術であるとか、あるいは福祉であるとか医療であるとか、通信もそうでございましょう、そういう施策が立派に行われておりませんと本当の価値観の高い豊かな生活というものは生まれないと考えておりますが、たまたまこれらのかなりのものが、予算のシーリングというのは私は経費の効率的な使用という意味で大変に意味のある施策であると思っておりますけれども、長くやっておりますから幾らかのデメリットも出ておりまして、殊に非常に人件費の大きい文教関連等々の施策はどうしてもこの何年間かの間にやはりおくれている部分が出てまいりまして、そういうものはやはり生活大国にはなくてはならぬものでございますから、そういうものにも少し重点を置かないといけないのではないかという思いももう一つございます。  それから、通信等々の問題は、都市美観とかいう問題もございますけれども、やはりコンピューターを中心にしたこれからの教育ということも考えてまいらなきゃなりませんし、そういうようなものを、この新社会資本というのはやや言葉が上手にでき上がってまいりまして内容というものをきちんと定義しかねておる点はございますけれども、何となくお互いにやっぱり理解できるそういう分野がある、伝統的な社会資本というもののほかにもう一つそういうものがあるんではないかというそういうこととしてひとつこれからの経済あるいは財政政策の中でも考えていってほしい、こういうことを経済審議会で申し上げたわけでございます。
  206. 石川弘

    ○石川弘君 私、そういうことの必要性ということを十分感じておりますし、そういうことがこれからの、何も公共投資という意味だけじゃなくていろんな社会の資本整備のために必要だと思っておるわけでございますが、この経済計画みたいな観点で接近する場合と、もう一つ例えば今の四全総にありますような国土全体の均衡ある発展というような接近の仕方と、私はその二面性が実は要るんではないかと思っております。  きのう本会議で中山間地域のことで総理からお答えをいただきましたけれども、私どもそういう地域を見ておりますと、やはり地域がバランスよく発展するということの必要性を痛感しているものでございまして、そういう意味で、こういう事柄を審議なさいます際に企画庁のお考えももちろん必要でございますし、あるいは国土庁で大いにその辺を配慮していただいて、これを方向づけるときに地域全体と申しますか国全体がバランスよく発展するというような視点も入れてお考えを進めていただきたいと思っております。  次に、労働大臣にお伺いをいたします。  今回の補正の中で雇用問題が大きな比重を占めておりますけれども、私は率直に言いまして、この雇用問題というのは、ほかのところが少しよくなってくるころに底にくるという非常に難しい、景気は少し上向いてきたかなというときにはまだ雇用問題は厳しい側面だという、そういう性質からいいますと大変大事なことだと思います。若年者の雇用、新卒の雇用についてもここ十数年ないというような大変厳しい話もありますし、あるいはリストラ等を伴う中高年齢層の転職問題等あるわけでございますので、景気回復といいますと、何か大いにやりましょうという話だけじゃなくて、その背後にある非常に苦しい立場の人をぜひこの問題でもやるべきだと思っておりますので、大臣の御所見を伺います。
  207. 村上正邦

    国務大臣村上正邦君) 雇用につきましては、おっしゃるように、他のいろいろな景気動向よりも一足おくれていろいろな動向が出てくる。おっしゃるとおりでございます。そこで、ここしばらくは雇用調整の動きなどに十分注意していく必要がある、こう思っております。  そこで、雇用対策といたしましては、とにかく失業者を出さないということを基本に、でき得ることは今までにも思い切って実施いたしました。今回のこの補正予算におきましても、助成率の引き上げや対象事業主の拡大など雇用調整助成金制度、これは特に総理が関心をお持ちでございまして、今回その充実を盛り込んでおります。企業の雇用維持努力を全力を挙げて支援していきたい、 こう考えております。  それから、最近、希望退職の募集や退職勧奨が行われております。特に注意をしなきゃなりませんのは、中高年齢者の方々が非常に勧奨を受けている。しかしながら、この中高年者の方々の知恵、経験を生かすということで特に今考えておりますのは、開発途上国等々にこういう中高年層の方々の人材派遣を考えて世界に貢献をしていくシステムを考えていったらどうだろう、こういうことで考えております。  雇用につきましては全力を挙げて、先ほど言いましたように失業者を出さないということであらゆる知恵を政府としても出してまいる、こういう方針でございます。
  208. 石川弘

    ○石川弘君 先ほど、この補正予算提出の時期なりあるいは内容等についてのいろいろな御批判もあったわけでございますし、また総理からも異例であるということのお話もございました。  私、率直に言いまして、やるべき時期にやるという意味では、昨年の補正はたしか八月にプランニングをして十二月だったでございましょうか、そういうことがあったことも、これやはり今回の四月十四日でございますか、の決定で、今度六月の八日なら八日という時期を考えますれば、いろんな異例なこともあったかとは思いますけれども、この出す時期というのはむしろ早かったことがよかったのではないかと思っております。  ただ、若干書生論になるかもしれませんけれども財政演説をちょっと読ましていただいておりますと、実は予備費二千億のことが書いてありまして、この二千億を引き算をしたのは、やむを得ない財源措置というところを強く読むのか、それとももう余り余裕ありませんよというそっちの方を読むのか、まあ私は昔から要求側におったものですから、どうも後ろの方を読むと、余りお金がないよというのもおかしいなという気もしました。時期の問題といえば、この当初に予備費を二千億引くという異例な事態でございますが、大蔵大臣はどちらをか点を置いて、これ読んだらよろしゅうございましょうか。
  209. 林義郎

    国務大臣林義郎君) どちらに力点を置いて、これはやっぱり両方のことがございまして、三千億円計上しておったところでありますけれども、厳しい財政事情でもありますし、二千億だけここからカットしましょうと。年初にこんなことやって、あと大丈夫かと言われるんではございますけれども、やはりいろんなことをこれから考えてやらなければならない。予備費の使用というのは出てまいりますけれども、効率的な使用をやっぱり図っていくということは必要だろう。どちらがどちらだというわけにもいかない。両方の問題でこういうふうな形にした、こういうふうに御理解を賜りたいと思います。
  210. 石川弘

    ○石川弘君 それでは次に、対日支援問題について伺います。  実は、この対日支援問題というのは何も今に始まったことじゃございません。かなりこれで何回かのお話でございますが、今回の補正の中では項目としては非常に大きく出ているわけでございます。  関心がありましていろいろと調べておりましたら、けさ新聞を見ましたら、多分総理も外務大臣もお読みになっていると思いますが、「対日支援と日本の出方」というので五カ国の知識人の方の御意見が出ておりました。私もいろんな意味では何か腑に落ちないものがあったんですが、これだけの知識人の方がこれだけ違うことを言っていらっしゃるんですから、この編集の方はこれを一刀両断で、一言で言えば、日本側に理念が欠落している。」と、こう割り切っていらっしゃいますけれども、これだけ知識人がいろんなことをおっしゃるというのは、なかなかそういう意味でみんなの気持ちをそろえることが難しいことだと思います。私も含めて我々日本人の多くは、ここに書いてありますように「ある種の釈然としない素朴な気持ちがある。」というところではなかろうかと思っております。  したがいまして、何か結論めいたことを外務大臣なり総理にお伺いするよりも、今回の補正の中身を一つずつ時間がありませんから簡単にお聞きして、その後で外務大臣なり総理のお考えを聞かせていただきたいと思っております。  まず一つは、緊急人道支援。これ、一億ドルの方でございます。これは、中身を見ますと食料、医薬品というようなことになっています。これはどういうことを具体的にお考えか、お答えをいただきたい。
  211. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  現在、ロシアにおきまして、市場経済への移行ということに伴いまして非常に大きな経済的な混乱がございまして、それに伴いまして特に社会的な弱者と申しますか、特に年金生活者等につきましては非常に生活が困窮しているという状況にございます。これをG7、この前の閣僚会議におきましても、引き続き食料あるいは医療について支援を行っていくべきであるという結論が得られたところでございます。  今回、補正予算で組まさせていただいております一億ドルの食料、医療につきましても、これはそういう趣旨にのっとって組まさせていただいたものでございますが、特に食料、医療につきましても、やはり我々の支援がロシア国民の目に見える必要があるという点に着目いたしまして、マネタイゼーションという方式を取り入れでございます。  これは、例えばハバロフスクならハバロフスクにおきまして、特定の店で調達しました医薬品あるいは食料品などを市価よりも安い値段で売りまして、そこで売上金を別途ハバロフスク市なら市の特定の口座に納めて、それをさらに社会的弱者に分配するという方法でございます。その販売に当たりまして、やはりロシアだけではないと思いますけれども、買い物をいたしますとビニールバッグというのに入れて帰るわけでございますが、それに特に日の丸と、それからロシア語できちんとこれが我が国の支援であるということを明記して、それを各買い物のロシア人に渡しているという措置をとっております。  今現在置かれているロシアの状況を考えますと、先ほど申しましたように、G7の国々の一致した認識としまして、現状においてはやはりこういう手当てが必要であるということでございます。
  212. 石川弘

    ○石川弘君 私はちょっとその認識が違うところがあるんです。といいますのは、医薬品はこれはかって例のポリオのときに生ワクチンを供給してもらったりいろんな意味で、それからチェルノブイリのああいう事故に遭われた方を救済するとかそういうのは非常にわかりやすいんですが、食料というのはソ連全体として絶対的な不足の国と私は思ってないわけです。それは物のやりとりとか動かし方のまずさはありますけれども。  したがいまして、食料援助というと、例えばアフリカの飢えに対してというような意味のことではなさそうだと思う。ましてやそういう意味で、例えば持っていくものを考えましても缶詰だ何だというような話、あるいは乳製品だ何だというようなことになろうかと思うんですけれども、どうもアメリカその他は食料政策として将来の市場というようなことも頭に置いた食料援助、これはかつて日本がそれを受けたわけですから、そういうものがあるわけですが、どうも人道上という名前だけでそれがぐるぐるマネタイゼーションで回ってちゃんと浸透していく、日本はいいことしているというような観点だけではどうもほかの国のこの問題の考え方と違うんではないかという意味で実はお聞きをしたわけでございます。  こればかり聞いておられませんので、その次に、実は技術援助その他いろいろお聞きしたいんですが、私は、この中で日本の国民が本当はどうなんだろうかというので一番わかりにくいのは実は核に対する援助ではないかと思うんです。援助といいますのは、分解したりなんだりするというあの部分でございますけれども、この破壊兵器である核というものに一億ドルのお金がついておりまして、これをどうやっていくかということは、 これは少し前からもやっていらっしゃるし、今度も入っている。これは皆さんもう御承知のように、片一方ではチェルノブイリみたいなこともありますし、トムスクみたいなこともある。それから、たしかソ連はまず第一に海洋投棄はやらぬと言った国で、アメリカがやっていたのをソ連をまねて途中でやらなくなったと思っていたら、あけてみたら日本海の方へぼんと入っていたというようなことで、これは一体どういう意図でやっているかは別にして、日本がこれに協力するというのはかなりわかりやすく説明をしませんと、この問題も先ほど言った何かもやもやしているということの大きなもとだと思っているんです。  科学技術庁にお伺いしますけれども、この核兵器の廃棄に関して、科学技術庁としては今までどのような形で対応されたか。例えばトムスク7の調査等もおやりになっておるようですが、そういうことも含めてこの問題に対する対応をお答えいただきたいと思います。
  213. 石田寛人

    政府委員(石田寛人君) お答え申し上げます。  まず、お尋ねのトムスク7の事故でございますけれども、トムスク7は、御承知のとおりに旧ソ連がいろいろ運営しておりました軍事関係の施設の一つでございまして、核関係の軍事施設は全部で十カ所ばかりあると言われておりまして、いずれもトムスク7みたいに番号がついておる、そういう閉鎖都市あるいは秘密都市と言われておるところでございます。  そのトムスク7の事故でございますけれども、これは軍事用のプルトニウムを生産する目的で、科学的な工程で申しますと、使用済み燃料の再処理みたいなことをやりまして、そこから兵器級のプルトニウムを取り出すというそういう過程で事故が起こったものというふうに承知しておるわけでございます。  この事故が起こりましたので、私どもはたまたま現地におりました科学技術庁の職員をロシアの原子力大臣の記者発表に参加させるとか、あるいはさらにそれに加えまして四月二十六、七両日におきましては関係機関の専門家をロシアに派遣いたしまして、実は私どもは、トムスク7に行きまして調査することも希望はしておったわけでございますけれども、それはできませんでした。できませんでしたけれども、専門家の目から見ましていろいろな問題点あるいは事故原因等をそれなりに究明して帰ってまいったということであるわけでございます。  これにつきましてはロシア自身もさらに原因究明を行っておるようでございますし、ウィーンに本部のございます国際原子力機関も調査をしておるようでございますので、ぜひ調査結果を総合的にまとめていきたいと思っておるわけでございます。  これを踏まえながら、旧ソ連の核の廃棄につきまして一体いかなる努力をしておるかということであるわけでございます。  御承知のように、核を廃棄いたしますと高濃縮ウラン、さらにはプルトニウムが出てまいるということであるわけでございます。高濃縮ウランにつきましては、御承知のように、アメリカにこれを渡しまして、アメリカがこれを希釈しまして一般の原子力発電所用の燃料にし直すことにつきましてはそれほどの困難はないというふうに言われておるわけでございます。  プルトニウムでございますけれども、これをどうするかという議論は当然あるわけでございます。プルトニウムにつきましては、これはそのまま例えば高レベルの放射性廃棄物にまぜて薄めましてそのままずっと保管するというようなこと等々いろいろな考え方があるわけでございますけれども、私どもといたしましては、やはり原子力発電所で燃やして燃料として使うというのが一番いいんじゃないかというふうに思うわけでございます。  そういうことで、これまで私どもが原子力の平和利用として培ってまいりました各種の技術を使いましてプルトニウムを効率的に燃やす、なるべくプルトニウムをたくさん抱えながらプルトニウムを使っていくというそういう概念の炉の勉強をいたしておりまして、これにつきましてもぜひこれから西側の関係諸国とも十分話し合いをしながらロシアとも協力して研究していきたい、かように考えておるところでございます。
  214. 石川弘

    ○石川弘君 この問題は、今ちょっとトムスク7の調査に行かれたというお話がありましたけれども、あそこは軍事のところですから実際は中まで行っていらっしゃらないで、モスクワで協議をなさっているようです。ですから、時間があれば日本海投棄のこともお聞きしたいんですけれども、そういう意味で核の施設である、なおかつ軍事の施設であるということで、やはりかなり向こうは向こうで隔離状態と言ったらおかしいですが、しかし事故が起きたらそういうことじゃ済まぬわけでございます。私は、こういう問題一つ考えても、金目で一億ドル出すとか出さぬとかという前の事実の把握というところが対ソ連の場合はなかなか進んではいないんではないかというのがどうもそのもやもやの一つであるわけです。  時間がありませんので、その次に実はもう一つの項目でございますエネルギー産業とかあるいは中小企業育成という点についてお伺いします。  中小企業、まあ日本では中小企業という言葉ですっとわかりやすいんですが、国営企業から解体していったソ連ですから、中小企業というもの自身がはっきりしていないと思います。このソ連の中小企業について、通産としてどのような把握をなさっていましょうか。
  215. 関收

    政府委員(関收君) ロシアの中小企業の状況でございますけれども、実は必ずしも十分な統計はございませんで、明確な数あるいはどういう定義がなされているかはっきりしない点もございますが、現在でもかなり数があるというふうに承知をいたしているところでございます。  先生御案内のとおり、今、ロシアにおきまして市場経済への移行を計画しておられるわけでございますが、その中で中小企業の育成というのが一つの重点であるというふうに私ども理解をいたしているわけでございます。  私どももロシア政府などといろいろ情報交換を通じましてわかりましたことは、これからのロシアにおきます中小企業の育成に当たりまして、やはり企業の経営のノウハウでありますとか技術ノウハウといったものが十分ではない。あるいはまた、法制度も含めまして中小企業育成のためのいろいろな環境条件、この点が未整備であるということをよくおっしゃっておられるわけでございまして、私どものサイドからいろいろお手伝いできるとすればそのようなところが中心になるのではないのかと考えておるところでございます。
  216. 石川弘

    ○石川弘君 もう一つ、事実上の問題としてお聞きしますが、ロシアのエネルギー産業の現状をどのように把握なさっておりますか。
  217. 黒田直樹

    政府委員(黒田直樹君) お答え申し上げます。  ロシアのエネルギー産業、特に石油・天然ガス部門というのがロシアにとって外貨収入源の約半分にもわたっているわけでございまして、その生産の維持、回復、発展というのがロシア経済の再建の観点からも非常に重要な課題であるというふうに思われます。  ただ、現実の動向でございますけれども、まず石油につきましては、一九八八年が生産のピークでございましたが、一九八九年以降減産が続いておりまして、暦年でデータがわかっております最新の九二年では最盛時の約三割ぐらい減少というレベルにございます。九三年に入りましてからも第一・四半期、前年同期比で一四%もさらに減少しているという状況でございまして、こういった状況が続きますと、九三年全体としては七百万BDぐらいということで、最盛時の四割ぐらいの減少のレベルになろうかというような予想もございます。  それから、天然ガスにつきましても、九〇年、九一年ごろまでは増産が続いていたわけでございますけれども、その後は一進一退という状況でございまして、九二年は微減、それから九三年、ことしの状況は微増ぐらいの見込みかなということ でございまして、この数年横ばいを維持してきている、こんなような状況かと思います。  先ほど申し上げました石油につきましては特に大幅な生産落ち込みになっているわけでございますが、その背景といたしましては、一つは、資金不足などの事情によりまして油田の維持管理に必要な資機材の供給が不足している。現在、ロシアの生産井、油田の井戸でございますが、十七万ぐらいあるうち三万ぐらいが地上設備の故障であるとか資機材の不足によって休止状態にある、こういうふうに言われております。それから二つ目には、特に大油田、チュメニなんかがございます西シベリアを中心とする大油田が老朽化をいたしておりまして、また、石油の生産の方法といたしましても、過剰に水を入れて生産するといったことなどによりまして油田の生産性が非常に落ちているといったこと、それから長期的には新規の油田開発がおくれているといったようなことが挙げられるのではないかというふうに思います。  以上が状況でございます。
  218. 石川弘

    ○石川弘君 今、事務的にいろいろとお伺いをしたわけですが、いずれも現状認識においてもなかなか大変だというのが本当だろうと思うんです。  普通の国の国内でいろんな予算をつけるとかなんとかというのなら、こういう状態じゃなかなか率直に言って、積算だとかその投資効果がどうだなんてなかなか言えない状態。しかし、今のソ連の体制というようなものの中で、例えばその市場化を推進していかなきゃいかぬとか、あるいは原子力というようなものの安全性というようなことを考えればやらなきゃいかぬとかということが外側にありまして、こういう形で踏み切って、しかもソ連の援助といいますか支援の場合は受ける相手方がどうだというところから大体始まるわけですから、なかなか容易なことじゃないと思うんです。  この点につきまして、外務大臣、それから科学技術庁長官、通産大臣、おのおの所管のことについてどのように考えどのようにやっていただけるか、お答えいただきたいと思います。
  219. 武藤嘉文

    国務大臣(武藤嘉文君) 先ほど最初に御紹介がありましたように、日本国民としてはこのロシアに対する支援というのは私はなかなか理解がしにくいと思います。それはやっぱり、旧ソ連時代、かつて第二次世界大戦末期においては勝手に日ソ不可侵条約を破って満州へ入ってきたじゃないか、あるいはその満州から五十万とか六十万とか言われているいわゆる若手というか働き盛りの人をシベリアに勝手に連れていって、そこで強制労働させ、その約一割を殺しちゃったじゃないか、あるいはまた、第二次世界大戦が終わってから九月の初めにいわゆる固有の領土の北方領土へ入ってきて今なお返していないじゃないか、そんな国をなぜ応援をしなきゃいけないんだ、これは私は本当に日本人の素朴な気持ちだと思います。  ただ、一方、この間のG7の会議でもあれだけ議論をいたしましたけれども、現在のロシアの体制というのが、我々と同じように政治の面では民主化の方向を目指していく、あるいは経済の面では市場経済原理を導入していこう、そして外交の面では、法と正義に基づく外交でやっぱり我々と同じようないわゆる立場に立ってやっていこう、こういうことをやっているので、これがまたおかしな方向に行くよりは、せっかく冷戦がなくなり東西に対立がなくなったんだから、そのロシアが我々と同じような国家になってもらうようなことでお互いに応援しようじゃないかという、まあ国際的な話でございますので、我々日本としてはこういう特殊なものがあるということは主張しながらも、その中で応分の私はやはり日本として国際社会の中でやっていかなきゃならない点、そういう問題が一方にあるということはよく承知をしながらも、あのような形でまとめさせていただいたつもりでございます。  ただ、しかし、辛抱強く領土の問題を一日も早く解決をして、そして平和条約を締結し、本当に日本とロシアが完全な形での国交正常化ができるように私は今後とも強くそのような方向で努力をしてまいらなきゃいかぬと、こう思っておるわけでございます。
  220. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 基本的には、外務大臣から今お話しのとおりでございます。  実は、四月の二十四、二十五日でございましたか、東西産業・貿易・経済大臣会合というのを実はこの東京で開きました。これは昨年ドイツで開かれたのが第一回目でございまして、日本、アメリカなどのG7の通産大臣、それからいわゆる計画経済からこれから市場経済に移ろうという国八カ国が参加をいたしております。ロシアを初めとしてポーランド、チェコ、あるいはハンガリー、白ロシア、カザフスタンと、いろいろ過程ではばらつきはございますけれども、そういう国々の商工大臣、貿易大臣がお集まりになりました。  そこでいろんなお話を申し上げましたが、その前に行われましたG7の緊急蔵相会議で、やはりこうした国々に対してみんなで力を合わせて、共通の認識を持っているわけですから、援助していこうじゃないかという合意ができているわけでございまして、具体的ないろんなお話をいたしました。  そこで、私どもいろんなお話を申し上げる前に、私はこんなことを申し上げたんです。  ちょうど会場が東京都庁の前の京王プラザホテルでございましたから、この窓から東京をごらんになってください、まさに新宿はこれだけのビルが林立している、日本のまさに発展ぶりの象徴的な町です、しかし、ここは四十五年前はやみ市が横行していて、まさに廃墟中だったんです、そこからここまで日本は努力しました、全く資源がございません、とにかくどうして資源を買い求めるかというその外貨を獲得するために大変な努力をしました、と。もう一つは、日本じゅうが均衡あるこうした発展を遂げてきたというのは、それぞれの地方に工場があった、もちろん軍需工場が多かった、それを転換して中小企業というふうに位置づけてこれを育成していった。こういうようなお話を申し上げたんです。  それぞれの国の皆さんは本当にある意味では驚いておられました。本当に四十年前にここに何もなかったんですかと、こんなお話でございました。また、ある意味では私たちもやればできるんだという自信も持たれたと思うんです。  そういう意味で、石川委員もおっしゃいますように、石川さんより私は十年ばかり後輩ですが、我々もやっぱりいろんな思いはございます。しかし、あなたも北陸の金沢出身、特に三県は非常にロシアとの交流は深いですね。それで、ロシアの方々がいろんな形でここ二十年ばかりいわゆる交流をやっておられるわけです。そういう人たちを見ると、本当にいい人たちが多いんです。いい人たちが多いのになぜこんなことになったかというのは、やっぱり政治が悪かった、仕組みが悪かった。その仕組みと政治を変えて新しく出直そうとしておられる、そういうことであるとするならば、やはりきめ細かくお手伝いを申し上げるということもまたこれは大事なことではないだろうか。  そういう意味で、通産省といたしましては、今それぞれ事務当局から申し上げましたように、まず外貨を稼げるようにしてあげるということが大事だろう。それから、世界じゅうの石油や天然ガスの供給国でございますから、そういう面でのバランスが欠けてはいけませんねと、そういうことでまずひとつそうした施設をできるだけ早く近代化させていくことを応援しましょう。もう一つは、それぞれの地域が活性化できるように中小企業を中心にしてぜひいろんな意味でお手伝いを申し上げましょう。端的に言うと、帳簿のつけ方もわからなければ生産の管理システムも全然おわかりにならぬというのは、まことに失礼なことですが、そういう実態であったと思います。  私どものこの通産省も戦後二十四年にスタートしたわけですが、総理から戦後出てきた割にはいろんな知恵が出るねとよく褒められたりするんで すが、この通産省もかってはやっぱり軍需工場の監督をしていた監督庁であったということも考えてみますと、そういう意味で通産省の体験というのは私は大変大きいのではないかと。  そういう意味で、ロシアを初めとして、そうした今新しく価値観を一緒にして市場経済へ移行していくという国々に対して、通産省が持っておるいろんなそういう意味での先輩としての知恵あるいは今日までの実績をいろんな角度で御指導を申し上げるということが私はやはり大切なことではないかなと、このように考えておるところでございます。
  221. 中島衛

    国務大臣(中島衛君) 旧ソ連における核兵器の廃棄等に関しては、第一義的には当事国が責任を持って対処すべきものであると考えておりますが、核軍縮の進展を図ることが国際社会の平和と安定にとって重要な課題である等の観点から、科学技術庁としてもこれまで培ってきました原子力平和利用の技術と経験を生かして協力をしてまいりたいというように考えております。  具体的には、核兵器の廃棄等に伴って生じる核物質の厳格な監視等による貯蔵、管理に関する支援、また核物質をエネルギー源として平和利用する方策、保障措置制度の確立のための支援方策等について技術的観点から検討を行っているところでございます。また、放射性廃棄物の海洋投棄問題については、日ロ共同による海洋調査等が円滑に実施されるよう所要の準備を進めているところでございます。  科学技術庁といたしましては、今後とも、原子力の平和利用の原則にのっとりまして、我が国の技術を生かしまして、支援が効果的なものになるよう貢献をしてまいる所存でございます。
  222. 石川弘

    ○石川弘君 各大臣から御意見を伺ったわけでございますが、最初に申し上げましたように、この問題が国際的にもあるいは国内的にもいろんな御議論のあること、しかもやってみればやってみるほど、何と申しますか、はっきりわからないことも含めていろんな対応を今後必要とすることだと思います。  そこで、総理にお伺いをしたいと思うんです。  総理、この前のG7の会合の前にサミットというようなお話もありましたですね。この問題に関して、サミット前倒し論みたいなところから始まってこの前の四月の結論になったと。そして今度。今度の七月のサミットで来られることは間違いないわけです。今度は日本のことだけじゃありませんから、まさか来ないということはないと思います。  そうなると、じかにやっぱりエリツィン大統領と日ロの問題というのをお話し合いにならなきゃいかぬと思うんですが、私どもはこれだけ日本の国の中でいろんな意見はあろうが、今各大臣からお話がありましたようないろんな形での日ロの支援ということを打ち出して、しかもこれは、何も今回限りじゃありません、これまでもありましたし、これから将来もあるだろうということでございますので、そういう日本人の気持ちというものが率直にロシアの方に伝わって、そしてそのことがやはり日ロ間のかねての懸案だとかそういうものの解決に一歩でも前進をいたしませんと、何か物の本によると、遼東半島を返せと言ったあのときと同じだとかそういう感情論みたいなことばかりが横溢して非常にまずいんではないかなという気がするんです。  たまたまこの前、キルギスの方ですか、アカエフ大統領が来られて、あの方なんかは何か顔を見ると日本人のようで全く親しい感じの方だったんですけれども、そういう友好の芽というものは決して少ないわけではないわけでございますので、この問題に対して大変御苦労なさっている総理、この点、今後の展開についてどのようにお考えか、お聞かせを願いたいと思います。
  223. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) もともとこの話の発端は、昨年の一月にニューヨークで私とエリツィンさんが会いましたときに、エリツィンさんの方から、日本にそのうちぜひ行きます、領土問題もありますしと、こういう切り出しでありました。で、いろいろありましたけれども、じゃ九月がいいと。エリツィンさんは自分で外務大臣の手帳を取って、自分で日をこのあたりでどうだというようなことであったんですね。そのときには恐らく私は、エリツィン氏が自分が大統領になって、経済も何とかうまくいく、国内もうまく治められて、そして九月にはこの懸案をという気持ちであったのでございましょうね、そうでありませんと向こうからああいうことを言われることはありませんので。  ところが、いろんな意味で事志とたがって、経済はうまくいきません、政治勢力も、向こうが呼びますから仮にそう呼びますが、いわゆる反動勢力が出てきて、そういう交渉はとんでもない話だということになってしまったというのが昨年正月から九月までのああいう出来事の経緯であったと思います。  そこで、今、私が感じますことは二つございます。  一つは、九月に急に訪日をやめられたことから、ここまで日本側あるいは国民一般が持っておる感じというものが御本人に十分に伝わっていないと思われる節がございます。それは向こうの立場に立ってみますと、毎日毎日が恐らく大変な毎日であって、一日おくらせればどうかなるというそういう問題でない問題、今のような種類の問題はどうしても後回し後回しになりかねない。しかもそういう状況の中で、ロシアの外務当局はかなりこの問題について熱心に努力をしておりますけれども、なかなか大統領に自分たちの考えなり相手国の状況なりを報告する機会というものが物理的にないらしい。それはもう非常に我々とするとややもどかしいことでございますけれども、どうもそういうことで十分に大統領にこちら側の空気というものが伝わっていないらしいという問題が一つございます。  それからもう一つの問題は、仮にそれがわかりましても、今のような状況の中で政権そのものが非常に苦労のある政権ですから、なかなかこういう、どっちかといえばいわばしょい込みになる問題でございましょう、それを取り上げる空気というものが出てこない、できるならばこれは後へ延ばしておきたい。つまり端的に言えば、実情について十分に大統領がどれだけわかっておられるかというこういう問題と、仮にわかったとしても処理が非常に、できれば延ばしておきたいという種類の問題がある。  この二つが私は問題だと思うのでございます。  そうではありますけれども、先ほど各大臣が言われましたように、殊に通産大臣が言っておられましたが、これからあれだけの大国が本当に民主主義になっていくのか市場経済になっていくのかどうかということは世界全体にとって今大きな問題ですし、いわんや隣国である我々にとりましてはいわば人ごとではない種類の問題でございますから、どうしてもそこのところだけは遅々としてでもそっちの方向へ行ってもらわないと困る。  今としてはエリツィンさんがそれをともかくも主導しようとしておられるのですから、先ほど石川委員がお話しのようなせんだっての対ソ支援の会議にしても我が国が主導をする、先ほどお話のありました十八億ドルにしましても、そういう限られた性質のものではあってもG7の中では我が国がかなりいいつき合いをしている方でございます。それなんかも、そういうことでとにかくエリツィンという人をこの際やっぱり守り立てていくことがロシアの近代化路線というものを推進するゆえんだろう、そういう我々なりの好意と申しますか考え方でやっておることでございます。  ですから、今度G7でおいでになられるということは、これは私がG7の議長として御招待をいたしたのでございますから、G7の会議が済みました後で別に場を設けてセブンとエリツィンさんとが意見交換をする場をつくりたいと思っておりますけれども、そのときには私はG7の議長としてお話をいたしますので、二国間の問題を私から提起するというつもりはございません。  ただ、そういう機会に、エリツィンさんが来ら れるということで私と個別の会談をする場合はあり得ることと思っております。  その際には、これは今度はG7の議長という立場ではございませんから、私から、かねてあなたのおっしゃっていらっしゃるように領土問題というものがあって、それは法と正義に基づいて処理をするというあなたの御方針、これにもちろん変更がないということはこれは確認をいたしておかなければならない問題でございますけれども、これは、二人の話となりますと、やはり両国間の一番大きな問題はこの問題であり、そうしてこの問題を解決して国交を正常化する、講和、平和条約を結ぶということでございますから、これは私からお話を申し上げておく。  そういうことでございますが、その中で、エリツィンさん御自身は一遍五月の夫なりに訪日ができるかもしれないということをやや一方的に言われて、それはまた別の事情で、またちょっと都合が悪かったと。これは正式のお話でないから一つ臨時みたいな話でございますね。そうして今は、七月にはそういうことで来る。その後、やはり訪日をしなきゃならぬのではないかなということを考えておられるようでありまして、それは私は、そういう御用意があれば、もちろんこちらとしては日さえ合えばおいでを願ってお話をしたい。  こういう環境でございますので、確かに懸案が片づいておらない状況の中でいかに当面のあれに限るとはいえ、かなりの援助をしていくということについては、国民の中にいろんな御意見があり、いろんな感情がありますことを私は存じておりますが、さりとて先方も二国間の問題についてこれをないがしろにしてしまうという態度でおられるわけではないと、こういうこととして御理解お願いいたしたいと思います。
  224. 石川弘

    ○石川弘君 総理、私も何か従来の経緯ということだけで支援ということに対してただ消極的という意味で申し上げたのではなくて、先ほどの新聞で出ているのを申し上げたとおり、ソ連出身の方が今やるべきでないと言って、アメリカの方がやるべきだなんて書いてあるくらい、およそ意見がふくそうしていることでございますのでそれを一刀両断なんていうことはできっこないし、単純な政経不可分だとかあるいは拡大均衡というような言葉だけで片づけられる代物ではないということは重々承知しておりますので、総理もそういう機会に、日本の国民が何となくこの辺にあるものというのは実はそういうことだと思いますので、ぜひ今お話しになりましたようなことをエリツィン大統領にも伝えられて、もっと大きな立場での前進ができるように御努力をお願いしたいと思っております。  次に、ウルグアイ・ラウンド問題についてお伺いをいたします。  実はウルグアイ・ラウンドの話というのは、率直に言いまして、プンタデルエステから考えればもう相当な月日もたっておりますし、いつも何か十二月ごろになるとことしはという話がまた次の年ということになってきょうまで来ているわけでございますが、私自身このウルグアイ・ラウンド問題のイロハみたいなところから考えてみますと、非常にこれは私個人の考えでございますが、いろいろと考えさせられるものがあるわけです。  ウルグアイ・ラウンド、特に農業問題は明らかに世界の農産物の過剰生産ということを大前提に始まったラウンドでございますから、生産性の低いところはなるべくやめてもらうとかあるいは障壁も低くして売りやすくすれば何とかバランスとれるんじゃないかという話ですけれども、いろんなところで話すときに、なぜそうなったのかということを考えてみますと、実はそういうことになったのは私は疑いもなくあの穀物ショックがきっかけだと思うんです。  私どもは、あのときの記憶、まあ日本では大豆がどうこうでお豆腐がというような話ですが、実はそれ以上のことは、例えば麦だって御承知のように昭和四十八年から五十年にかけて日本は外国からうんと高い麦を買ってきて、年間ほぼ一千億ぐらいの金をつぎ込んで国内で安く売って、そして辛うじて物価安定をさせながらということをやったわけですが、日本は金があったからそういうことをしましたけれども、お金のない国は食べられないという話になったわけです。  したがって、世界じゅうの食糧輸入国はこれでは大変だというので大増産運動を始めて、御承知のように食糧輸入国がどんどんどんどん自給をし、自給どころか輸出国に転換していく。そういう中で、アメリカなり大陸のケアンズ・グループはもちろんですが、EC等がどんどん増産をしていく。日本でも御承知のように米の需給が不均衡になりましたけれども、日本は輸出というような手法じゃなくて生産調整でやってきた。その中で起こってきた問題。したがって、過剰を前提としたウルグアイ・ラウンドですが、実はその過剰のもとを起こしたのはむしろ不足だったわけだと思うんです。  そこで、現状を考えてみますと、ラウンドをやっておりますときは間違いなく過剰ということは現実ですから過剰を前提に議論をしておりましたけれども、同じ国連の組織の中でもFAOだとかその他の組織は少なくとも長期的に見れば食糧は足らなくなるという前提での議論をしているわけです。現状においても、先進諸国家群は余っているけれども発展途上国側は足らないという関係でありますし、それから需給といいましてもこれ貿易でございますから、金のある人の需給でございますから、本当は欲しくても金がない人は食べられないわけですから、人口その他のいろんな調査によれば、物の言い方もありますが、一割の方は栄養水準がまともではない、世界人口の一〇%の人は栄養的には満ち足りてないと言われているわけです。そうなりますと、余っているという前提でのこのラウンドの考え方がどこかで危険信号が出てくるんではないかという意識はみんなそこにあったわけです。  そこで、御承知のようないわゆる非貿易的関心事項なんという言葉で物を言われたりあるいはOECDで言われたりした貿易と環境との問題というような問題点が出てきたのが、実はそう遠くない。ある意味じゃむしろ最近と言ってもいいかもしれません。ましてやUNCEDあたりで持続可能な開発というような概念が出てきたのは去年のことでございますから、やはりこのラウンドの考え方の中にそういうものがだんだんだんだん表へ出てきたというような気がするわけです。  その辺をちょっと分析してみたいと思いますが、農水省にお願いしますか。要するに、この種の非貿易的関心事項ということがこのラウンドでどういう形で出てきてどういう展開をしているかというのを説明してもらいたいと思います。
  225. 眞鍋武紀

    政府委員眞鍋武紀君) 御承知のとおり、農業は、農業生産の持つ特殊性、食糧安全保障でございますとか国土、環境保全など農業が果たしております役割は大変多様でございます。そういうことで、こういう多様な役割が農業交渉等において反映されることが不可欠であるというふうなことで、我が国といたしましては、御指摘の非貿易的関心事項につきましてこの交渉が始まりましてからいろいろな場におきまして主張をしてきたわけでございます。  いわゆるダンケル合意案というものが取りまとめられたわけでございますが、このダンケル合意案におきましても、一つには、前文がございますが、この前文におきまして、非貿易的関心事項、すなわち食糧安全保障及び環境保護の必要性について考慮すること、こういうことがうたわれておるわけでございます。  これを具体的に本文の中でどういうふうに受けておるかということでございますが、国内支持措置について削減の対象にするかどうかこういう問題があるわけでございますが、非貿易的関心事項として代表的な政策でございます食糧安全保障を目的とする公的な備蓄に対する支出は削減の対象外にする、さらに環境でございますとか保全でございますとかそういうプログラムに基づきます支払いというものにつきましても削減の対象外の 政策と、こういうふうなものに分類をされておるわけでございます。我が国の主張がいわゆるダンケル合意案におきましてこの点については反映をされたということでございます。  しかしながら、残念ながら基礎的食糧でございますとか生産制限をしております食糧についての国境措置、これについての我が国の主張がこのダンケル合意案にまだ反映されてない、こういう状況でございます。我々といたしましては、この点につき引き続き主張に努めてまいりたいと思っておるわけでございます。これが交渉結果に反映されますように最善の努力をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  226. 石川弘

    ○石川弘君 今説明がありました備蓄に対する公的支出は削減対象にしないというのは、これは輸出国側からすればそれでいいことなんです。余計つくって渡しておいて、おまえはそれ持っておれ、持っていた分は補助金カットしなくてもいいよと言うんですが、必ず出てくるという保証がありませんから、受け渡して、受ける方だけに補助しても、それは輸出国サイドの安全保障としてむしろそれだけのものは余計つくっておられますからあるかもしれませんが、例えば先ほど言いました昭和四十八年から五十年の麦の状況を考えたら、そんなもの三年分も備蓄することなんかできっこないわけですから、私はこの非貿易的関心事項は大変矮小化されているんじゃないかと実は思っていたわけです。  そうはいうもののラウンドはどんどん進むし、大勢はそうだという話がどんどんいったわけでございますが、最近いろんな動きがある中で、これはどちらかというと役所の方の情報じゃなくてNGOの情報あたりに盛んに出てくるんですが、アメリカの下院あるいは上院でこの環境問題を頭に置いたいろいろな決議をしているんですが、去年の八月六日、下院でやりましたワックスマン決議というのを、外務省、ちょっと御報告を願いたい。
  227. 小倉和夫

    政府委員(小倉和夫君) ただいま先生御指摘になりましたワックスマン決議と申しますものは、私どもの了解では、先生がおっしゃいましたように、昨年の八月に米国の下院でワックスマンという、たしかカリフォルニアだったと思いますが、選出の下院議員から提出されたものでありまして、その内容は、私ども理解している限りにおきましては、例えば環境に関するアメリカの法律に適合させるための交渉をウルグアイ・ラウンド交渉の一環として開始するようにというようなことも書いてございますが、同時に、米国議会はいかなる貿易協定についても、もしそういう協定が健康、安全、労働または環境関連のアメリカの法律を危うくするようなものであれば、そういった貿易協定の実施についての立法を承認しないというようなことが書いてあるものだと理解しております。  ただ、この決議は下院では可決されておりますが、上院では可決されていない、こういうふうに理解しております。
  228. 石川弘

    ○石川弘君 今おっしゃったような決議が出てきておりまして、私がその後聞いておりますと、これはガットのことももちろん言っているんですが、NAFTAのことも実はここの中で言っているわけです。NAFTAは協定を結ぼうとしましたら、この決議が一つのきっかけになりまして、このワックスマン決議の趣旨に合致しなければ協定を危うくするというような話で、今、アメリカ、カナダ、メキシコでこれを補足するための条項の検討をやっているというような話があります。  その中で、アメリカの例のウエーバー品目の団体は絶対に言うことを聞かないということを言っているという情報があるんですが、こういう決議を大変多くするアメリカ議会でございますから、これ一つでどうこうということは私言うつもりはありませんけれども、どちらかというと貿易のこのガットの問題で非常に指導的立場にあるアメリカでこういう話が出てきているということは、やっぱり相当検討に値することではないか。  外務省にもそのNAFTAとの関係をお聞きしましたけれども、必ずしも定かではございません。したがいまして、私も、何も断定的には申しませんけれども、こういう動きはやはり貿易ということだけじゃない、非貿易的事項ということがこの貿易原則に大分かぶさってきているということがあるように思われます。  私は、これからまたサミット等におきましてもこういう貿易問題、特にガット問題というのは重要な議題になると思いますけれども、昨年のUNCEDの問題もしかり、そういうこともこういうことも含めまして、この貿易問題と環境その他の問題という関係をやはり我が国としても相当深刻に考えていかなきゃいかぬのではないか。  例えば現在、木材貿易で木材加工品ゼロ・ゼロ・オプションというようなことを言っていますけれども、私はよくよく考えてみれば、木を育林しているような国と天然林をただ伐採してそのまま放置している国が要するにお互いにゼロ関税でやれというのは、本当は無理だと思いますね。いずれ世界じゅうの山が全部そういうことになればバランスがとれるかもしれませんけれども。そういう問題というのは、片一方では持続的開発可能なことをやれというのは、命題としてじゃなくて、片一方ではそのゼロ・ゼロ・オプションで関税を設定しろというような話、これは日本は丸太は既にゼロにしておりますからなかなかその主張は今さら盛り返しにくいのですけれども、加工品について今ゼロ・ゼロと言っていますけれども、そういう問題は今後十分検討していかなければならないと思っております。  次に、かねがね総理もおっしゃっていただいております輸出国と輸入国のガット上のアンバランス問題でございます。  この話をしますと、せっかく輸出補助金までつけて安くしてくれるんならいいじゃないかなんていう非常に乱暴なことを言われたことがありますけれども、これは明らかに政府が金をつけたダンピングを公認するという制度でございます。貿易歪曲的なことからいえばこれほど激しいことはない。  要するに、競争しているところでは補助金をつけて安く売って市場を占領して、自分が思うとおりできるようになったらどんな価格でも売ろうということを政府公認でやる話ですから、これが単なる量的削減で済んでいるのに、自分たちは外へ迷惑をかけないで国内で生産調整をして農民の方にいろいろ嫌みを言われても生産調整をして国内でその始末をしているのを、これは今十一条二項同というガットの規定に合致してやっていることを、それはおかしいから全部関税化しなければおかしいというのは、私は普通の常識で考えればそれはちょっとひど過ぎるじゃないかと実は言えると思うんですが、どうも残念ながらこういう話をしておりましても、日本は貿易立国だから一番ガットの利益を受けている、したがってそういうところは何とか我慢してくれなきゃいかぬのじゃないか式の議論が横行するように思っているわけです。  私はやはり、先ほど最初に申しました、食い物は余るに決まっているという大前提でこのガット問題を考えるというのは大変危険だと思っております。私が生きている間ぐらいは大丈夫かと思いますけれども、子供や孫の代にそういうことでいいんだろうかという気持ちが常々しているわけでございます。  そういう意味で、総理、昨日の本会議でもこの問題でお答えをいただいているわけですが、私はやっぱりこの輸出国と輸入国のバランス、貿易というのは両方あってのことだと思うんです。片っ方の利益、どちらかというと工業製品に関して日本は輸出国の立場でございますけれども、もしこういう論理が貫徹しますと、農業国というんじゃなくて、私は率直に言うと工業国の農業というのはみんなつらいと思っているんですよ。  工業製品が主力でございましたら為替レートはそれで支配されますから、一生懸命やれば為替はどんどんどんどん強くなりますね。それで、農業 の場合は、例えば外国から安いえさを買ってやる農業はできますけれども、土地を利用する土地利用型農業というのは為替が上がってもなかなか自分のメリットはないわけですから、そういう意味で、食糧をある程度国内に持った工業国家の農業の発展の仕方ということを考えますと、このウルグアイ・ラウンド問題というのはやはり慎重にも慎重を期してやるべきことだというのが私の持論でございます。  総理は昨日も本会議でそうおっしゃっていただいているので、別に念押しとかそういうことじゃございませんけれども、今まで政府としてこの方針を堅持してやってきたわけでございますので、総理の御決意を伺いまして、私の質問を終わらせていただきます。
  229. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) るるお話がありまして、その中には当面の問題ばかりでなくこれから将来、少し先の将来の世界の食糧の需給、あるいはUNCEDで議論になりましたような環境の問題等々いろいろな背景についてお話がございました。  傾聴をいたしましたが、当面のウルグアイ・ラウンドの問題について、やはり私は今、石川委員の言われましたように、いわゆる輸出国の補助金の問題と輸入国の側の国境措置の観点とはどうもバランスがとれていない、ダンケル・ペーパーそのものの考え方がバランスがとれていないということは、最初から感じております。そういう上での関税化ということでございますから、我が国としては、この点についてはどうもやはり我々の主張を述べざるを得ない。  ダンケル・ペーパーについてはアメリカにもECにもおのおのいろいろな問題意識があって、その変更を求める立場を幾つかの点でとっておりますのでございますので、さしずめ、参りますサミットには比較的そういう問題にかかわりの薄い工業製品のアクセスでありますとかあるいはサービスでありますとか、そういうところ、可能な限りでの話の詰めをいたしておきまして、その部分はそれでいざとなればパッケージになるという状況までつくっておきまして、そして残りのダンケル・ペーパーの根本に関する部分を年末にかけて議論をしていくべきではないかこういうふうにほぼ関係国の間で合意ができまして、ただいまこちらの方の七月までの分の詰めを急いでおる、こういう状況でございます。  我が国としましては、したがいましてその七月から後のダンケル・ぺーパーの根幹に関する部分について我々の主張をぜひ会議の場、交渉の場で強く主張してまいりたい、こういうふうに以前と違わない立場で考えております。
  230. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 以上で石川君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  231. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 次に、山口哲夫君の質疑を行います。山口君。
  232. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 きょうは補正予算のあり方を中心に質問をしたいと思います。  午前中の我が党の角田議員の、三・三%は果たして大丈夫なんですか、補正予算を組んだら超えるんでないか、こういうような質問に対して、総理は、補正で三・三%を超えるか超えないか大変難しいことだ、この辺で許してほしい、そういうお答えでした。  許す許さないは後の問題ですけれども、私が総理にお聞きしたいのは、そんなに難しいことではないだろうと思うんです。なぜならば、三月三十日、ちょうどこの席で私は集中審議のときに総理にこの問題を随分お尋ねいたしました。総理はそのとき何とおっしゃったかといえば、三・三%の達成は大丈夫です、大したことじゃない、こうおっしゃったわけです。ですから、大したことはないということになれば、先ほどの大変難しいことだというお答えは私に答えたのと随分遣うんで、三月三十日の私に対する答えというのはあれはうそだったんですか。
  233. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) あのときのお尋ねは、平成四年度というのは一・六と言っているけれどもとってもそこまでもいかないんじゃないか、そうだとすれば五年度の三・三なんというのは大変高望みではないかと、こういう趣旨お尋ねでございました。  それで私は、平成四年度というものがゼロであったりマイナス〇・一であったりしておる、そういう状況の中ですから一・六も難しいということでございますが、しかし、およそゼロとかマイナス〇・一というような後でそれより沈み込むということはこれはよほどのことで、対前年三カ月のことをいうわけでございますから、ですから、仮に次の平成五年度が三・三になったとしてもそんなにえらい自慢をして申すほどのことではないはずでございますと。前が高い上の三・三ならそれは大したことでございますけれども、前が一・何がしなんというときにその三・三ぐらいのことができないということは、これはそう考えなきゃならぬはずもないじゃございませんかということを、そういう雰囲気で確かに乱そういうことを申し上げました。  その後にこうやって補正予算の御審議をしていただいておるわけでございますから、まあ三・三というようなことも、一年間の見通しをあれもこれもということで捨象して出ている数字でございますから、特にここでこれだけ補正があったからそれの分だけネットのプラスになるというほどきちっと詰めてしておる話ではございません。  しかし、先ほども申しましたが、私はそもそも三・三というのはそんなに無理なことではないと思っておりますにつきましては、この補正成立させていただいて総合経済対策をいたしますとさらにそれを確実にすることができるのではないかと、こういう意味でけさほどお答えをいたしたのでございます。
  234. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 衆議院の我が党の書記長の質問に対して総理が、三・三%の成長達成は可能だというふうに考えているんだと。こういう答弁を受けて、それで私は、今おっしゃったように、平成四年度は三・五を一・六まで下げちゃった、そういう景気が悪い中で本当に大丈夫なんですかと言ったら、私に対して、「何分にも前年度というものが非常な低い成長でございます。その上で三・三%というのは実は余り大したことではない。」、こうおっしゃっているんですよ。ですから、今言ったような私に対する答弁が本当だとするならば、先ほどの角田議員への答弁の方がうそだったということになるんじゃないですか。
  235. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いえいえ、私は概して同じことを申し上げているつもりなんでして、つまり私の申し上げようとしておりますのは、仮に平成四年度が一・六すら難しい。難しいだろうと思います。これは一-三が六月の終わりごろ出ますとそこで締まるわけですが、一・六というのは難しいと思うのでございます。そんな低い成長に比較いたしまして仮に三・三ぐらいのことがあってもそんなにそれは高い成長とは言えないということを申し上げようとしておるのでして、そのくらいの一種の経済の弱さなのでございますので、やはりこの補正はぜひやらせていただきたいし、その上で成長の足取りをしっかりしたいと、一貫して同じことを実は申し上げておるつもりでございます。
  236. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 いずれにしても、三・三%というのは当初予算を実行していけば達成できるという自信だけはお持ちだったわけです、一連の答弁から。それがなぜそれでは予算補正しなければならなくなったんですか。
  237. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 総理の御答弁を補足して私から御説明申し上げます。  昨年の経済見通しも三・五と、こういうふうな話がありました。だんだんやっていきますと、補正予算を組んでもなかなか難しい、一・六ぐらいになるだろうと。それがどうもやってみて二月ごろになるとそこまでいきそうもないぞと、こういうふうな話が実態でございました。正直に申しまして私はそういうことになってきたと思っているわけでございまして、三・三%という形で今やっております。  それは当初の見通しとしてはそういうことでやっておりましたけれども、なかなかこれは経済見通しはあくまでも見通してございまして、いろんな客観情勢によって変わってくるものである。予算を編成するときの大まかな私たちの見通しというか、一つの大きな目標というものでこの三・三%というものを考えてやっているわけでございまして、そこで、それじゃ今度新しい予算を追加したならばそれにプラスしてどうだこうだという話ではない。むしろ、あくまでも経済見通しでありまして、大まかなところを考えてやっているというのが我々の態度でございます。  持っているところの我々の経済は自由主義経済でございますから、いろんな要因があります。対外的な要因もありましたり、国内でいろんな別の要因も出てくるかもしれません。そういったものを考えて経済見通しというものを考えているわけでございまして、私は、そういった意味で今度は大体三・三%まではいけるんじゃないかなというのが総理の考え方だと思います。  もう一つ申し上げますと、昨年が非常に低い。低いところでスタートしますと、今度新しく持っていくときは普通の経済足取りでも割と高いところに行けるというのが今まで、いわゆるげたと申しますかそういったことでございますので、私もそういうことはまずまずできるんじゃないだろうかという感じは持っておりますが、今はまだ五年度の予算が始まったばかりでございますから、今からどんなふうな状況になるかというのはまだ予断を許さないというのが正直なところの数字でございます。  しかしながら、大体こういった形でやれば何とかそこまでは持っていけるんじゃないかなというふうに考えているところでございます。
  238. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 おかしいですよ。二月ころになったら景気がどうも怪しくなってきたんだとおっしゃるんですけれども総理が私に答えたのは、三月三十日に大丈夫ですと答えているんですから。
  239. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 経済見通してございますから、今、総理からお話がありましたように、一・六%ぐらいだというふうな話がありまして、それがどうも落ちそうだと、こういうことの中でいろいろなことを申し上げ、そうして三・三%というものを今目標としてやっているんで、何とかいけるんじゃないだろうかというふうな気持ちがあったんだろう、私はこう思うんです。思いますけれども、それをさらに確実なものにするために今回の補正予算お願いしてやっていこうということだろうと考えております。
  240. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 納得できません、これは。  それで、三・三%というのは達成できると言っているんだから補正を組んだら幾らになるんですかという角田議員の質問に対して、総理は、それは三・三%を確実なものにしたいんだと、こう言うわけですね。今、大蔵大臣も。  確実なものは前の予算のときに確実になっているわけでしょう、三・三で大丈夫だと言っていたんですから。それをなぜ今補正予算に組まなければならないのか、それを聞いたら、補正で確かなものにするんだと言うんです。しかし、それは本当ですか、確かなものにするというのは。  これは四月十四日の日本経済新聞ですけれども、「十三日、公共投資の追加などをテコに景気の浮揚を目指す「総合経済対策」を決定した。」と。午前中に自民党から申し入れがあって、午後からすぐ閣議で決定したわけですね。政府はこの対策により向こう一年間で名目国民総生産、GNPを二・六%押し上げる効果があると試算している。先ほどからどのぐらい上がるんですかというのに、この二・六という数字になぜ一言も触れないんですか。
  241. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 経済効果として試算をいたしますと二・六%ということで一応計算がされるであろうということは、これは私も前提にして考えておるところでございます。  したがいまして、計算をいたしますと、四・九%というのが名目成長率でございますから、その数字に対しましてプラス二・六%ということでどのぐらいになるかと、こういうことが出てきます。出てきますが、そういったところのものまではとてもできないであろう、しかしながら景気そのものの及ぼすところの経済効果につきましては一応二・六%ぐらいのものが見込まれる、こういうことでございまして、その三・三%というものは、まさに今まで考えておりました数字の中でそれをさらに確実なものにするためにやっていくというので数字をはじいているので同じ段階でのベースの話ではないだろう、こういうふうに考えておるところでございます。
  242. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 それは全然違いますね。  三・三%を当初予算で大丈夫だと言って、その後に総合経済対策を組んだときに二・六%名目、実質は恐らく一・六%でしょう。そのときに総理もこう言っているんですよ。「「対策の乗数効果は二・六%と言われているので、昨年の対策の二・四%と重なるとかなり大きな効果になることは間違いない」と強調、景気回復への効果に自信を示した。」と。  それは、経済企画庁長官、総理大臣でさえ二・六%は大丈夫だと言っているんですから、これ直しなさいよ。当然、直さなかったら我々審議できないでしょう。政府予算提出して二・六%の名目の効果があると言っている以上、どうしてこれを直さないんですか。
  243. 船田元

    国務大臣(船田元君) お答えいたします。  先ほど来この新しい対策の効果、GNPを名目で二・六%押し上げる効果がある、これは私どもの世界経済モデルではじいて出してきたものでございます。  ただ、これは三・三%との関係で言えば、三・三%の政府見通しというのは平成五年度のこの一年間、こういうことでございまして、それと、その二・六%というのはこの対策が実際に始まってからそれから一年間、こういうことでございますので、若干の時間のずれというのは当然のことながらあるのではないかというふうに思っています。ですから、三・三と二・六を全く同じベースといいますか同じところで議論するのはややこれは違うのではないかなというのが一つでございます。  それから、三・三%の達成をより確実にするためにと、こういうことで総理並びに大蔵大臣からお話をいただいているわけでございますけれども、やはり私自身もそのような考え方で今回の補正予算の取りまとめということをさせていただいたわけでございます。今般の対策によりまして、政府経済見通しで想定をした五年度の我が国経済全体の姿の達成はより確実なものになる。ただ、その全体の姿の想定が結果として変わらないのであれば、個々の項目の状況の変化などが直ちに見通しの改定に直接つながるという関係には決してないのではないか、このように私は考えております。
  244. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 当初予算補正予算の性格が経済成長率に及ぼす影響が違うことぐらいわかっています。一年間、これからでしはう、この補正が決まってから一年間。そうすると来年度に入りますね、平成六年度に。とにかく仕事はやるけれども金は払わない、来年以降だと。債務負担行為もあるわけですからね。そんなことはわかっている。  しかし、半分くらいは効果があるでしょう、当然。二・六%、一年間やるというんですから。六月に補正予算が決まって、七月ころからですよ。地方だって九月議会で決めて、それから執行したら半年くらいの期限があるじゃないですか。半分は必ずこれは影響がある。だから、これは直してもらいたいと思うんです。直さないうちは私は審議できないですよ、これは。
  245. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御承知と思いますけれども経済見通しは、これはもう長い間、十数年以上ですが、最初に立てまして、そして次の改定は年末に次の年の予算を編成するとの関連でそのときに見直しをすると、そういう性質のものとして今まで取り扱っておりまして、経済情勢の変化 が多少ありましても本当はその都度直すというのが理屈かもしれませんけれども、もともと一年間の見通しという性格上、途中で直すということをいたしておりません。
  246. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 それは不親切ですね。経済企画庁で持っている、政府の方で持っている経済モデルを使ってコンピューターでやったらすぐ出るでしょう、こういうものは。
  247. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは不親切ということではなくて、もともと経済見通しというものがかなり長期的なものでございますので、一つ一つの事象が起こりましても一定の期間の間でいろんなものがお互いにプラス、マイナス捨象し合う関係にあるものですから、かなりの事象が起こりましてもそのときには直さずに年末に一度だけ改定をすると。そういう意味では、一年間の展望ということでございますので、毎日毎日の変動ということの批判に耐え得るものではなくて、やはり長期的にある程度見たときに達観してこのぐらいと、本来そういう性格のもの。モデルを使えばとおっしゃいますけれども、モデルを使ってそんなにきちんと予測し得るものじゃございませんので、そういう性格のものだというふうに私ども今まで取り扱ってまいりました。
  248. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 二・六%の影響があるということははっきり言っているわけですよ。そして、十三兆二千億の経済対策について議論をせいといって補正予算を出しているんですよ。それなのに、影響は余りない、何とか三・三%を確実なものにするためにと言う。片方では三・三%を確実なものにすると言い、片方では二・六%の効果があるんだと言っている。矛盾があるじゃないですか。
  249. 船田元

    国務大臣(船田元君) 今、総理からも御答弁があったわけでありますけれども、私ども政府経済見通しというものの本来の性格というものは、これは政府のさまざまな経済運営、経済上の努力ということを、もちろんいろいろなケースがあると思いますけれども、そういったものを全部ひっくるめた上で、そして政策努力の結果として三・三%という見通しをお示しをしている。こういう性格のものでございまして、例えば個々の一つ一つの政策、これはもう細かいものから、あるいは今回のようなかなり大きな効果を持つ新たな追加的な経済政策についても、しかしそういうもの一つ一つにおいて、これが政府経済見通しに直接影響を与えるというのか、それによって変更をその都度加えなきゃいけないという性格のものじゃないという、そういう気持ちで私ども政府経済見通しを示させていただいているということでございます。  それから、念のために申し上げますと、昨年の十二月にこの経済見通しをお示ししたときに、「平成五年度の経済見通し経済運営の基本的態度」、こういう文章もあわせて示させていただいたわけでございます。そして、その中に「現在調整過程にある我が国経済を内需を中心とするインフレなき持続可能な成長経路へ円滑に移行させるため、適切かつ機動的な経済運営に努める。」ということを書いてあるわけです。私どもの今回の新総合経済対策は、広い意味でやはりこの「適切かつ機動的な経済運営に努める。」という中の一つとしてやらせていただいているということであります。  そういうことで、今回の対策も含めた上でこの三・三%というものをより確実な状況にしていこうというのが私どもの願いでございます。ぜひ御理解いただきたいと思います。
  250. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 理解できませんですね。  二・六%の効果があるということだけははっきり言っているんです。そして、総理のお答えは三・三%を確実なものにしていかなければならないとおっしゃる。じゃ、今度の補正予算をやっても三・三%を超えることはないんですね。
  251. 船田元

    国務大臣(船田元君) この三・三%のことは、先ほど性格上として申し上げたわけでございまして、そういう努力、そして今後ともさらに機動的な運営を怠らないようにするということの中で三・三%の達成はより確実なものになるということを申し上げたいと思います。
  252. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 だから、三・三%を超えないんですね。
  253. 船田元

    国務大臣(船田元君) 三・三%の達成はより確実になる、このように思っております。
  254. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 経済企画庁長官、今の山口君の質疑は三・三%を超えないのかということであるので、その点もっと明確に答えてください。
  255. 船田元

    国務大臣(船田元君) 三・三%を超えるかどうかということでございますけれども、これは現在の対策、そして今後とも経済の運営というものを機動的に運営をしていくということを通じて三・三%の達成を可能にしよう、こういうことでございまして、超える超えないということについては、なお私どもとしては十分経済の今後の動きというものに注目をしながら機動的に運営をしていきたい、このように思っております。
  256. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 それでは、何のために補正予算審議を今やっているかわからないです。あれだけ自信を持って三・三%達成は可能だと当初予算のときに大臣は言っているんですから、何のためにそれじゃ補正予算審議させるんですか。
  257. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは決してふまじめなお答えをするつもりで申し上げておるのではございません。そもそも経済見通しというものは、山口委員の御承知のように一生懸命それは関係者はいたしますけれども、なかなかそのとおりにまいらない。これはおわかりいただけると思います。モデルも随分開発されましたけれども、それでもやはりそのとおりにはなかなかまいりません。  それで、三・三%という政策目標を掲げていたしておるわけでございますけれども、何分にもこういう難しい経済でございますから、やはりそこはもう一度補正お願いして確かにいたしたい。  確かにいたしたいという意味は、それは三・三を達成する、それより多くはいかないんだな、それより下でもないんだなとおっしゃいますと、それは詰められれば何か申し上げなきゃならぬことになりますけれども、できるだけ一生懸命やりまして、ちょうどいきましたらそれは御喝采と言っちゃいけませんが、足りないこともあるかもしれない。しかし、うまくいったら少しいくこともあるかもしれない。これは決してふまじめで申し上げるのではございませんで、経済見通しというのはそういう性格のものでございます。  どちらかと言えば、やっぱり経済足取りが危うい、弱いと思っておりますものですから、こういう補正お願いして三・三%できたらお約束のとおりできましたと、それで十分だと決して申しておるわけではございませんので、まあせめてそこまではいたしたい、こんな気持ちでございまして、決してふまじめなお答えとおぼしめさずに御理解をいただきたいと思います。
  258. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 当初予算のときに私たちは、平成四年度が一・六まで下げられた、大変なんじゃないんですかと、こう言っているんですよ。だから、頭の中には補正予算まで組むことを考えているんじゃないんですかというような質問も随分あったですよ。そういう質問の中で、胸張って三・三%は大したことないんですとあれだけ言ったじゃないですか。私たちは信用しますよ、総理の答弁ですから。やっぱり私に対してうそを言ったとしか思われないですね。
  259. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私は、あれだけ低い成長の後の三・三%というのはそんなに威張って言える数字じゃないという気持ちがございますから、それぐらいはできなきゃいかぬなという気持ちをやっぱり持っております。持っておりますが、他方で、しかしこれ、こういう経済ですからよっぽどもう至れり尽くせりのことをしておかないとそれも心配だなというところがあるという、正直を申しまして、とにかくこの経済を何とか早く正常にしたいという気持ち、しかしそれを今のように詰めて詰めてお尋ねがありますと、きちんとはお答えしにくいところがございますけれど も、気持ちはそういう気持ちでおるわけでございます。
  260. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 いや、このままでは私、どうしても納得できないですね。もうペテンにかけられているとしか思わないです。三月三十日の答弁がそこまで我々がばかにされていたのかなと思ったら、やっぱり何か一言なかったら引き下がるわけにいかないし、さもなければ一・六の半分くらい、〇・八くらいは効果がありますというような答えでもない限り納得できないです、これは。
  261. 船田元

    国務大臣(船田元君) お答えをいたします。  今、山口先生からもいろいろ御指摘もありましたけれども、決してペテンにかけるというような気持ちで申し上げたあるいは答弁をしたということは、全くそんなことは思っておりません。総理もその本予算審議のときにもお答えをいたしましたし、また私自身も答弁に何回も立たせていただきました。  この本予算というものの着実な実行ということをお願いすることによって三・三%は可能であろうと。私からあの当時申し上げたことは、しかしながら同時に、これはやはりバブル経済の崩壊、そして資産デフレということがあって、これが国民経済活動におけるさまざまな実体上のいろんな問題点を発生させた。したがって、回復をするにしても、その回復の度合いというものはやはり足取りの弱いものがあるかもしれない、過去において余り経験したことのないバブルの崩壊、資産デフレという影響が果たしてどこまであるのかということについてはなおこの見通しとして難しい点がありますと、こういうこともあわせて申し上げさせていただいた。  そして、三・三%はまあ大丈夫であろうけれども、しかし同時に、やはり今後の経済の運営を見ながら機動的に対応していかなければいけない、こういうこともあわせて申し上げさせていただいていたつもりでございます。  そして、その機動的な運営というもののその一つのあらわれとして私どもがこういう異例の形で提案をさせていただくことになったわけでありますけれども、今回の補正予算も、その機動的な運営の一つとしてその三・三%をより確実なものにしたい、こういうことであえてお願いをさせていただいているというようなことでございまして、ぜひ御理解いただきたいと思います。
  262. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 総理、三月三十日は当初予算を何とか通したいためにそういうようなことになってしまいましたと、そう素直にお答えになったらどうですか。理屈からいったって絶対これは合わないですよ。
  263. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そうでないことだけはぜひおわかりいただきたいと思うんです。つまり、三・三というものはできましたところでこれ景気が回復したなという感じのほどじゃないのでございますから、前が一・幾つでゼロみたいなものでございますから、ですから、そのこと自身がそんなに、これでもう景気はいいんだということとは私思っていないのでございまして、それならこれだけの補正を加えたらそれよりは少しいくだろうとおっしゃったら、それは理屈はそうでございますと申し上げるようなことになるんですけれども、一年間の経済ですから必ずそうなりますとも申し上げかねておりますけれども、決してそういうつもりではございませんでして、そこはおわかりいただきたいんです。  やっている経済見通しそのものがそういういろいろ完全でない要素をたくさん持っておる、それはもうぜひ申し上げなきゃならぬことでございますけれども、何か事をごまかすとかだまかすとかいうそういう性格のことではないんだということだけは御理解いただきたいと思います。
  264. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 三・三%という数字は、政府が出した生活大国五カ年計画、これは国際公約で、ここまでいったら大変景気もよくなるしというような中の平均的なGNPは三・五でしょう。三・三までいったら結構いい景気だなという状態になるんじゃないんですか。  だから、そういう中で私たちは言っているんですよ。だから固執しているんであって、三・三までいけるんであれば何も補正出す必要ないでしょうということになってしまうと思うんですがね。
  265. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そうではないんでして、五カ年計画をおっしゃってくださいましたから申し上げますけれども、そこの三・五というのは三・五、三・五、三・五と、そういう三・五でございます、前年対比で。  ですから、山口委員のおっしゃっていらっしゃるその今年の三・三というのは、一か一・一か一・六か、その次の三・三でございますから、それだったらそんなに大きなことでないんで、前年対比で申し上げておるわけですから、五年間の三・三とか三・五ということになりますとこれは確かにかなりいい経済運営になるのでございますけれども、仮に一・三とか六とか、せいぜい六。それ、いきませんですね。その上の三・三でしたら、決してそれは余りまだいい経済運営とは私は申せないように思います。
  266. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 いずれにしても、総理の三月三十日の答弁、それから先ほどの角田議員に対する答弁、これはいずれもそんなに心配することではないという答弁、それと今回のこの補正予算の二・六というものを全然積み上げようともしないこの矛盾に対しては納得できません。  それで、次に民間最終消費支出二・八%、これは大体どの程度になるんですか、二・六からいけば。
  267. 長瀬要石

    政府委員(長瀬要石君) 先生御指摘なされましたように、政府経済見通しにおきましては、個人消費につきまして二・八%、こういう数字をお示ししているところでございますけれども、個人消費の動きはかなり強くはないという面があるわけでございまして、そういう中で平成五年度を考えますと、物価が安定をしている。  そういう中にありまして、所得の面ではいわば所定外給与が徐々に生産が回復するにつれまして底を打って上がっていくということがあろうかと思いますし、他方では今まで消費を押し下げておりました逆資産効果でありますとか、あるいはまたストック調整の要因でありますとか、消費者のマインド、こういうものが徐々に景気の回復とともに変わっていく、こういうことが相まちましてそのような動きというものを今回の対策が下支えする、こういうことを通じまして、個人消費につきましてもそのような対策の流れの中で見通しが想定しておりますようなそういう動きに向かって進んでいくのではないか、こういうふうに考えております。
  268. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 数字は。
  269. 長瀬要石

    政府委員(長瀬要石君) 私ども需要項目それぞれにつきまして経済見通し全体としてお示しをしているわけでありますけれども、今回の対策の結果、各需要項目がどのようなものになるかというような細部にわたる計算を特にしているわけではありませんけれども、大きく申しまして、年度の後半になりますと民間内需が次第に経済を支える方向に動いていく、それを促進するために今回の対策というものが大きな役割を果たすのではないか、このように考えております。
  270. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 数字を示されないことは大変残念ですけれども。  それで、総理、民間最終消費支出、個人消費を少しでも上げるために私は所得減税をぜひやるべきだということで三月三十日にやったわけですけれども、きょうはもうそれは触れません。後ほど関連で及川議員が触れますのでそれはおきますけれども、個人消費をふやすために、公務員の給与の問題がありますね。  昨年、公務員給与の改定が、大体地方公務員全部合わせますと九千億くらい出ている。全部使ったとしても八割くらい、七千億程度はこれ個人消費に回るわけですね。これもやっぱり景気刺激に少しは役に立つと思うんですね。それで今まで十二月に支給していましたけれども、十二月でなくて秋ごろ、一番金のないとき、公務員がこれから一番使いたいときに、そのころに早目にことしは 公務員給与の改定をやった方がいいんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょう。
  271. 鹿野道彦

    国務大臣(鹿野道彦君) 国家公務員の給与改定につきましては、政府といたしましては今日までも人事院の勧告というものを尊重するという基本的な姿勢で対処をしてきたわけでございまして、御案内のとおりに昨年も財政事情がまことに厳しい中でも完全実施を行ったわけであります。  今年度につきましても、いろいろ国政全般にわたっての関連等も考慮しなきゃならないわけでございますが、人事院より勧告が出された場合におきましてはその基本的な姿勢に立ってできるだけの努力をしてまいりたい、このように考えております。
  272. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 ぜひ努力をして景気刺激策の一環にしていただきたい。お願いしておきたいと思います。  さて次に、先ほどこれも角田議員の質問に答えて、今回の補正予算提出したことについて違法ではないんだと、こういう総理の答弁がありました。これは私は違法だと思うんです。財政法二十九条のどこに該当して出したんでしょうか。
  273. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 財政法二十九条の「予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出を行う場合」というのに該当するということで提出をいたしております。
  274. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 一項ですか。
  275. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 一項でございます。
  276. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 これは緊要な場合に該当しますか。
  277. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 今回の補正予算というのは四月十三日に決定されました経済対策を実施するために必要な経費等を計上しているものでございまして、我が国経済足取りを一層確かなものにするという、先ほどの総理の御答弁にございました、いわば決定された経済対策についてはできる限り早期に予算補正を行った方がいいということで提出をいたしたものでございまして、「特に緊要となった経費」に該当するものと理解しております。
  278. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 財政法二十九条に言う「緊要」というのは、どういう場合のことを言うんですか。
  279. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 予算作成後の事由に基づきまして、そのときどきにおきまして「特に緊要」、この「緊要」という意味は重要という意味の程度の強いものであると理解しておりますけれども、「特に緊要となった経費」についての支出を行う、こういうことでございます。
  280. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 そういう大蔵省の答弁は、ちょっとおかしいんじゃないですか。  ここに大蔵省の元法規課長、総務課長をやって、現在、経済企画庁の官房長をやっている小村武さんの「予算財政法」という本があります。  読んでみます。  「義務的経費以外のものについては、財政法は、「予算の作成後」に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出に限っている。これは、義務的経費以外のものは、予算作成時に政策的判断として必要なものはすべてを予算計上するのが建前であるからである。逆に、予算作成時に計上されないものは、「緊要でない」という判断を下したことになる。」と。  だから、今出しているものは全部緊要でないと言っているんです。  「したがって、義務的経費以外で予算作成時に当然予期された経費は、補正計上できないことになる。」。この解釈からいったら、今出している補正予算は絶対に補正予算として出してはだめだ、こういうことを専門家が言っているんですよ。あなたの後輩でしょう。
  281. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 私の四年後輩でございます。  確かに、その彼の解説書に書いてある論点はそのとおりでございます。したがいまして、当初予算段階で政策的に織り込むべきであったいわば事項、金額については、補正予算に盛り込むべきでないということは当然のことでございます。  今度の補正予算は、当初予算のいわば成立後に決定をされました経済対策という新たな政策決定がございまして、その政策決定を受けて、いわば当初予算の作成後に生じたそういう政策決定に基づいて予算を出すわけでございますから、その意味で十分に「特に緊要となった経費」に該当するというのが私ども理解でございます。
  282. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 これは法解釈が違いませんか。「予算作成時に計上されないものは、「緊要でない」」と言っているんですよ。義務的経費は別だと言っているんです。
  283. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) そういうことを言っているわけではございませんで、いわば当初予算段階で政策的に織り込むべき経費であった、そういう経費については補正で織り込むことはできないと、こういうことを言っておるわけでございます。
  284. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 読み違いでないでしょう。「逆に、予算作成時に計上されないものは、「緊要でない」」と言っているんですから。予算作成時に計上されていないでしょう、これは義務的経費以外のものとしては。
  285. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) お言葉を返すようでございますけれども、第二十九条第一項は「法律上又は契約上国の義務に属する経費の不足を補うほか、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出」ということでございますから、今の山口先生の御解釈によれば、国の義務に属する経費の不足を補うもののほかは補正予算提出できないということになるのではないでしょうか。  したがって、予算作成後に生じた事由に基づきまして新たに政策的な判断を加えて特に緊要となった経費については支出できる、こういうのが二十九条の一項の確立された解釈だというぐあいに思います。
  286. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 私の法解釈はどうしてもそうならないですね。「したがって、義務的経費以外で予算作成時に当然予期された経費は、補正計上できない」。予算作成時に予期されていることが多いんでないですか。例えば、みんな今施設を組んでいて、当然何年か後にはやらなきゃならないんだけれども今ちょっと予算がないから待ってくれというのは何もここでは計上できないことになっているじゃないですか。
  287. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) ここで書いてございます「逆に、予算作成時に計上されないものは、「緊要でない」という判断を下したことになる。」という意味は、要するにそのときに、いわば予算作成後に生じた事由ということがなくて、しかもその事由に特別な事由もなく、当初予算に政策的に計上できる経費が補正予算に出てきたときには、それは補正予算の事由には該当しないということを言っているわけでございます。  もし先生のような解釈に従いますと、この一項の前段に書いてございます義務的経費以外の補正予算を一切組めないということになってしまうのではないでしょうか。
  288. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 そんなことないでしょう。例えばロシアとの交渉においてどうしても組まざるを得なかったという場合には、補正予算を出したってこれは構わないでしょう。そういう緊急やむを得ざる事態が発生したということをここに書いているんじゃないですか。それはおかしいですよ。
  289. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 先ほど引用されました小村さんの著書にも、「「特に緊要となった」とは、災害等の緊急支出に限られると狭く解釈する必要はなく、政府の合理的政策判断に授権されていると解すべきである。」という文言もあるわけでございます。  したがいまして、予算作成後に生じた事由に基づきまして特に緊要となったという経費であれば、それは義務的経費ということでなくて政策的経費であっても補正予算提出できるというのは、これは確立された解釈であるというぐあいに存じます。
  290. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 この法解釈を書いた人も含めて、今度ゆっくり検討してみてください。私はどう検討してもそれは納得できない。そう思います。  むしろ、政府が政治的な理由があってそういうものを、例えば大蔵大臣が組みなさいと言ったときに、事務方が法律からいったらそれは無理ですということをちゃんと進言しなきゃならないでしょう。個々の問題については後から言うけれども、それを事務方、官僚が政治的な立場と一緒になって法解釈を曲げてまで予算を組むというのは恐ろしいことだと思いますね。私は非常にそれは大変なことだということを申し上げておきます。  結局、補正予算を組まなきゃならなかったのは、クリントンと四月の十六日にお会いになる、それで、その前に、何とかひとつこの日米首脳会議を成功させるためにこれだけのお土産は持っていかなきゃならなかった、そういうあれがあったんでないんですか。どうですか。
  291. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは必ずしもそうじゃございません。そういうことであれば、七月のサミットもございますし、また先ほどのところへ話がなるべく戻らないようにしなきゃなりませんけれども、やっぱり景気はちょっと心配なものでございますのでなるべく早く経済対策を組みたかった。そういうのが本意でございます。
  292. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 それじゃ申し上げますけれども、自民党の方でそういった補正予算をどうしても組まなきゃならないということを盛んに梶山幹事長なんかが言っていましたね。異例なことだけれども国会会期中に補正予算と関連法案を提出して通過させ不況打開を確実なものにしたいんだ、こういうことを随分早くに言っている。総理も新年のごあいさつであちこちで補正予算を組まなきゃならないことをほのめかしていますね。そういうことからいいましても、初めから補正予算が頭の中にあったんではないですか。ということは、結局、選挙対策でもってそういうことをやらざるを得なかったというふうに私たちは解釈せざるを得ないんです。
  293. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのことは私は実は大変に気をつけておったつもりでございます。普通、秋というようなことであればこれは別ですけれども、お正月からいって秋というような話は無理でございますから、それは私は大変気をつけていたつもりでございます。  機動的に云々ということはよく申しましたけれども、先ほどもこれは角田委員に申し上げましたように、やはり証券市場であるとか金融機関であるとかいろいろ心配なことがございまして三月危機というようなこともあるしということはいろいろ考えておりましたけれども補正というようなことは私は大変に気をつけておったつもりでございます。
  294. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 私が言いたいことは、こういうものはすべて当初予算に組むべきものなんですよ。それをやらないで、あえて何だかんだと理屈をつけて二十九条違反と言われることまでやって、こういうやり方は選挙対策としか考えられない、堂々と当初予算で組むべきだということを指摘しておきたかったわけです。  それで、時間がなくなったんですが、この予算書を見ましたら、当初予算にも組んでない新しい項目が六項目も出てくるんですが、総務庁、環境庁、通商産業省、運輸省、どういう考えですか、これ。
  295. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 個々の経費につきましては各省庁からお答えする必要があるのかもしれませんが、財政法は二十三条で「歳出にあっては、その目的に従ってこれを項に区分しなければならない。」ということがございまして、当初予算の項で対応できるものにつきましては当初予算の項で対応いたしますけれども、それ以外のものについては新たな項を設置して補正予算として提出するというのはこれは例が幾らもございまして、補正予算ごとに新しい項を設置するということは行われていることでございます。
  296. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 例えば十一ページの総務庁の施設費一億何がし、これはどういう理由ですか。緊急性がどういうふうにあったんですか。中身を教えてください。  そしてもう一つ、当初予算に要求したのかどうか。
  297. 八木俊道

    政府委員(八木俊道君) お答え申し上げます。  総務庁の施設費一億四百七十八万七千円でございますが、昨今における行政の情報化の緊急な要請にこたえまして庁舎の施設整備等を行うものでございます。それによりまして通信回線の整備等を行いまして、全政府的な行政情報システムの高度化、行政の効率化の効果を意図するものでございます。
  298. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 当初予算に要求は。
  299. 八木俊道

    政府委員(八木俊道君) 実を申しますと、当初予算には要求はいたしておりませんけれども、昨今におきます例えば定員削減でございますとかあるいはまた完全週休二日制の実施、その他公務部門の体制を急速に整備する必要がございます。また、行政事務処理の迅速化を図る必要がございます。こうした情勢にこたえまして行政情報システムの急速な整備を図りたいという趣旨でございますので、御理解をいただきたいと存じます。
  300. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 きのう前段三項目を担当者に聞いたんですが、いずれも当初予算に要求していないんです。当初予算にも要求していないものが何で緊要な予算として出てくるんですか。今、そんなに緊急性あるんですか。
  301. 八木俊道

    政府委員(八木俊道君) ただいまもお答え申し上げましたところでございますけれども、昨今におけるコンピューター利用の急速な高度化というものを行政部門において活用いたしまして、行政事務処理体制を急速に整備したいということでございます。御理解をいただきたいと存じます。
  302. 江崎格

    政府委員(江崎格君) 私どもお願いしております通商産業検査所の施設費でございますが、その内容は、一つはバイオテクノロジー関係の検査業務のための施設でございます。それからもう一つが安全基盤の整備業務のための施設でございます。いずれも、これらは五年度の当初予算では要求をしておりません。  今回の総合的な経済対策の一環としまして内需の拡大を図る必要があるということでございますが、さらに加えまして、近年、生物化学関連製品が急速に増加しておりまして、そうした状況と、それから技術革新に対応した製品安全の確保の緊要性が増大しているという状況を踏まえまして今回補正予算お願いしたものでございます。
  303. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 当初予算に要求していないものを私は今言ったような理由でもって緊要な予算としては認められません。
  304. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 今回、補正予算にいろいろな施設関係の経費を計上いたしております。  その中には既定経費の項のあるもの、あるいは今のように新項を立てたもの、いろいろなものがございますが、いずれも総合経済対策におきまして景気の一層の回復を確実にするための措置として講じられております施設費等の追加、総額で六千二百億でございます。  その中の一環として、特に景気回復に資するものという観点から各省庁にもいろいろな観点からの要求を出していただいて、これをそういう形で総合経済対策一つとしていわば施設費を特に景気に非常に効果のあるものとして計上させていただいたと。その意味で、私ども補正予算の特に緊要となった経費に十分該当するということを確信しているわけでございます。
  305. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 当初予算に組まないものが緊要であるという理由は成り立ちません。これは理事の皆さんで一回論議してほしいと思うんですがね。
  306. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 補正予算で新しい項を立てておりますのは、今度の補正ばかりではなく、昨年度の補正あるいは三年度の補正、二年度の補正、元年度の補正、あらゆる補正予算と申しても過言ではないと思いますが、新しい項の立項をお願いしているわけでございます。
  307. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 何とお答えになろうが、私の常識からいえば、私も自治体で予算を組んだ経験がありますけれども、当初予算にも要求していない で、災害でも起きたというのなら別だけれども、何にも新しい理由がないのにいきなり補正で出てくるということは、これは緊急の要件にはどうしても入りません。十分ひとつ御論議していただきたいと思うんです。  そしてこの予算説明、これは何ですか。「最近の経済情勢等にかんがみ、総合的な経済対策の一環として内需の拡大等を図るため行う」、全部同じ説明なんです。まくら言葉の四十三字は全部同じ。そして、その後に国立学校特別会計に繰り入れると言っているんですよ。特別会計に繰り入れるというから、特別会計の方で何か書いているのかと思って読んでみたら、教育研究特別設備費として六十一億九千二百万と書いているんです。何にも中身書いてない。新聞にはちゃんと筑波大学と東北大学にコンピューターを一台ずつ買うと書いているんです。ほとんど全部ですよ、これ。四十三字同じ言葉で書いて、そして中身は一つも具体的に書いてない。こんな提案の説明ありますか。
  308. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 御指摘は予定経費要求書の経費要求の御説明をもっと詳しく書くべきではないかということであろうかと思います。  予算決算及び会計令第十一条におきまして、「部局等ごとに歳出の金額を分ち、部局等のうちにおいては、これを事項別に区分し、経費要求の説明、当該事項に対する項の金額等を示さなければならない。」という規定がされております。私ども必要事項につきましてはできる限り詳しく記述すべく努力しているところでございますけれども、要するに、膨大な予算の個々の経費につきましてはいわば画一的な処理ということも必要でございます。これは予算のコントロールという観点からでございますが、そういうことがございまして、この種の経済対策の一環としての内需の拡大を図るための経費につきましては、従来おおむねそういう総合的な経済対策の一環として内需の拡大等を図るために施行するのであるという表現に従来とも統一させていただいておるわけでございます。今回そういうことで従来の例に倣ったということでございます。  御指摘の点もございますので今後はできる限りさらに詳しく書くように努力はいたしたいと思いますが、片方でそういういわば画一的処理という観点を必要とするという予算書の性格も御理解いただきたいと思うわけでございます。
  309. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 理解できません。  「最近の経済情勢等にかんがみ」云々というこんなものは扉に一項目書いて、あと四十三字は全部具体的に書くのが当たり前じゃないですか。自治体でこんな予算を出してごらんなさいよ。私の経験からいけば、第一党の野党は自民党だったけれども、こんなもの審議できるかと言って本会議も出てこないでしょうね、恐らく。これほど国民をばかにした説明書のあり方、どうですか、これ、直しなさい。直さないうちは論議できないです、これは。
  310. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 実は、例えば国立学校船舶建造及施設費のところに確かに「最近の経済情勢等にかんがみ」云々というお読みいただいたようなことが書いてございます。実はこの種の書き方というのは予算書のいわば統一された書き方でございまして、例えば昨年十二月にお願いしました補正予算でも経済対策の具体化のところの説明はこのように書いているというぐあいに理解しております。
  311. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 二十八条の二項目にちゃんと書けと書いているじゃないですか、要求書などをちゃんと添付しなさいといって。こんなでたらめな要求書を添付せいなんて書いてないですよ。
  312. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 何回も同じ答弁になって恐縮でございますけれども、二十八条で予定経費要求書というのをつけることになっておりまして、今御議論いただいているのはその予定経費要求書の中身の事項の説明であろうかと思いますが、これは昨年の十二月に審議お願いしました補正予算の事項の説明でも同じような内容の説明となっておりまして、予算のいわば画一的処理、コントロールという観点から従来からそのような書き方をしているわけでございまして、特に今回についてそういう画一的な書き方を取り入れたというようなものではなくて、過去をさかのぼりますと、例えば四十八年度の補正予算説明以来、一貫した方式としてそういうことを続けているわけでございます。
  313. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 改めたらどうですか、来年から全部。
  314. 遠藤要

    委員長遠藤要君) その問題は後ほど理事会で検討させていただき、政府側がどうであろうと理事会としての意見をまとめて政府に要求するということも必要だと思っておりますので、質疑を継続していただきます。
  315. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 せっかく委員長がおっしゃるんですから、期待いたします。  画一的、統一的にやってきたというのは大蔵省の一方的な考え方であって、こんな不親切な提案の仕方なら今後絶対納得できません。来年からぜひ改めてほしいし、しかも「社会資本整備の新たな展開」というのは今回の極めて重要な経済対策でしょう。それが予算の中にどういうふうにあらわれているか一つも書いていない。これはどうですか。
  316. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 新社会資本整備というような話ではなくて、今回の政策は総合的な経済対策、こういうことで四月十三日の日に決めたものに基づいたものでございます。したがいまして、どういうふうなものだということにつきましては、経済企画庁が担当しておりましたので経済企画庁長官の方から御答弁をさせていただきます。
  317. 船田元

    国務大臣(船田元君) お答えいたします。  いわゆる新社会資本整備という考え方、これは四月十三日にこの対策決定いたしましたけれども、その「総合的な経済対策の推進について」というぺーパーの中でその趣旨について述べているわけであります。これは、やはり情報化、高齢化等社会経済の情勢の変化あるいは生活大国五カ年計画に示された将来への展望を踏まえながら景気現状に的確に対応していく、こういう観点から、さまざまな分野に幅広く投資を行うことによりその効果がより広範にかつ直接的、速効的に及ぶようにその新たな展開を図る、こういうことで、これは新社会資本という言葉は使いませんでしたが、ほぼ同様な趣旨で「社会資本整備の新たな展開」、こういう項目を立てて説明をさせていただいております。  以上でございます。
  318. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 この説明書の中を見たって何もわかりませんよということを言っているんです。それだけ重要な政策であれば、こういうところがその方針にのっとって出した予算ですということを書かなければ審議ができない、そういうことを言っているわけです。  総体的に、とにかく今回のこの補正予算は、当然これは当初予算にすべて組むべきものです。それを大蔵省がシーリングではめちゃって各省は全然どうにもならないものだから、経済対策にかまけてこれはもうけたといってこの機会にみんな予算化してもらおうというから、さっきの消防庁みたく一千万円が十億になって感謝しておりますという言葉になるわけです。各省みんなそうなんです。こういうやり方は納得できません。今後、こういうような政治的な立場に立ったような補正の組み方は改めていただきたい。あくまでも二十九条の精神にのっとって、必要なものを補正組むことは当然なんですから、そういう立場で出していただかなければ納得できない。そして、説明についてはもっと我々が読んでわかるようなそういう親切なものに改めていただきたいということをお願いして、関連質問の及川さんの方に渡します。  何かお答えありますか。
  319. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 御指摘でございますから私からお答え申し上げますが、予算、新しい政策、新経済政策という形でお願いをしたところでございます。私はそれが二十九条にいうところの いわゆる予算作成後の緊要な事由ということに当たるんだろうと思います。新しい政策をつくったことが事由に当たると思うんです。この中におきましては、公共事業をいろいろやっていかなければならない。公共事業が国民経済に及ぼすところの波及効果等がありますから、そういったことをやるのが新しい政策である、こういうふうな事由が生じたから補正予算お願いしているというのが私どもの考え方でございます。  それから、もう一つの点は、先生が御指摘のように、内容について非常に不親切ではないか、何か書いていることはもう木で鼻をくくったようなことで書いている、こういうふうなお話でございます。  私は思いますのに、今までのこれは前例もありまして、今まで、補正予算を出すときには恐らくそういったような形で一律な形で書いておった。予算書でございますから、各項目にわたりまして説明をどうするか、なかなか分けるということが具体的な問題としては私は非常に難しいことがあったのは御理解を賜りたいと思います。  どういうふうな形でやったならばもう少し内容がわかるようにできるのか、少しこれも勉強させてみたい、こう思っておるところでございます。
  320. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 関連質疑を許します。及川一夫君。
  321. 及川一夫

    ○及川一夫君 まず、総理にお伺いいたしますが、これまでの論議を聞いて、なぜこういったもめ方をするのかということをよく考えてみたわけです。  補正予算ですから、本予算のまずい点あるいは事情に合わない点を正しく補うというのが補正予算なわけであります。本予算は一体いつ決めたんだ、いつ成立したんだということを考えると、参議院という意味合いで言えば四月四日ということに実はなるわけですね。四月四日を起点にして考えると、一カ月強という状態。そこで補正予算というものが出されてきたんですが、総理、これからもこういう事例は起こるんですか。これからも同じように必要ならということが出てくるでしょうが、こういう通常国会中に、予算成立した国会中にまた補正をぱっと出すというようなことが続くんですか。
  322. 林義郎

    国務大臣林義郎君) この補正予算提案理由の中で申し上げましたように、異常な例であると、異例ではございますけれどもあえてお願いをするというのが今回のことでございます。  景気の回復を図っていかなければならない、これは当予算委員会におきましても随分と御議論をいただいたところでございまして、そうした形で野党の皆さん方にも大変ないろんな御努力をいただいて三月三十一日に予算を上げていただくというようなことができました。これも一つには、やはり野党の皆さん方が景気対策をしっかりやらなければならないということを考えておられた一つのあらわれだろうと私は思うんです。  そうした形をこの方で考えますと、やはり七月とか十月とかというような形でやったんではおくれるではないだろうかそういった形で私どもは考えまして、私たちの判断におきまして、異例な措置である、異例な時期であるけれどもという形であえてこの通常国会会期の中でお願いをするということにしたわけでございます。  以上でございます。
  323. 及川一夫

    ○及川一夫君 大蔵大臣そう言われても、過去の例を見れば今回のような事例はないわけですよ。本予算というものを成立さしておいて、そして、本予算景気対策だったでしょう。その気になってみんなまじめに、あなたの方から、自民党の皆さんからも、一日も早くしないとこの経済不況というのは克服できないと。早く、早く、早くじゃないですか。早くという中で一生懸命我々も協力して論議をしたんでしょう。少なくとも成立した予算については自信があるというふうに政府は言われたんで、まさかこんな補正予算が出てくるなんて全然考えなかったんですよ。  過去にはこういう例がない。これからあるんですかということを、今回初めてこれを実行したわけですから、あるんですかということをもう一回はっきりしていただきたい。
  324. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 先ほど御説明申し上げましたように、まさに異例な事態であるけれども、そういったことの方がいいだろう、こういう形で私どもは判断をしたわけでございます。  ですから、異例でございますから、普通ならば異例なことというのは余り起こらない方が私はいいんだろうと思いますが、しかし将来ということを言われますと、将来どんなことが起こるか、これは私も将来絶対に、おまえあのときどう言ったとか林大蔵大臣があのときこう言ったからだめだなどということでは私はいけない。そのときの状態、その年の状態によって判断されるべきものだろう、私はこう思っておるところでございます。
  325. 及川一夫

    ○及川一夫君 そうおっしゃるが、これまでは政府は良識を働かしてきたんですよ。やっぱりルールをちゃんと守ってきたと思う。なぜなら、過去に通常国会中に補正予算が出されたというのは、主計の方は何か七回と言っているけれども、僕が調べたところによれば二回しかないんです。三十四年と三十六年ですよ。そして、一つは仲裁裁定の問題で、裁定が出されましたから早く渡そうという意味合いのこともあったんでしょう、予算成立した通常国会補正を出された。それから、世銀とか国際何とか基金とかそういうものでもって、いわば緊急性、重要性、そういうものでもって補正が出されたというのは二回しかないんですよ。それ以外は常に、早くて九月であり遅くても十二月というような形で予算というものを補ってきたというのが実態なんでして、異例中の異例だというのだから、そんなこと毎年毎年あってたまるかいという気持ちになるんですが、そういう理解でよろしいですか。
  326. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 先ほど来御答弁申し上げていますように、異例なことでございますし、これだけ景気対策をしっかりやらなければならないというのは、先ほど仲裁裁定がありましたり国際通貨基金出資であるとか世銀の出資であるとかというふうなお話がありました。私はそれにも引けをとらないぐらい重要なことだと、そういうふうに私たちが景気回復というものを考えている証左であるともお受け取りいただきたい、こう思っておるところでございます。
  327. 及川一夫

    ○及川一夫君 こんな議論を交わしてもしょうがないというふうに思いますが、いずれにしても、政治に対する信頼の問題が僕はあると思うんです。我々は、我々というか皆さん方もそうでしょう、少なくとも予算成立させるからには、すべての国内にある問題、国際的にある問題を含めて一定の結論を出すために汗を流しているわけですね。だから、出た答えというのは、出た途端にまたもう一回やらなきゃいかぬというような、そんなものじゃないと思うんだ、僕は。  だから、そのことを前提にして考えますと、来年以降同じような事態が起こるとは思わないし、起こしてはならない。もし起こすのなら、山口議員が言われたように、何か皆さん方の都合だけでやっておる、選挙対策とかそういう意味合いでしかなくなってしまうじゃないかと。そんなことで政治が壟断されるということに対しては、私はやっぱり国民の目から見ると政治不信につながっていくというふうに思うので、この点はきつく私どもとしては要求しておきたい、このように思います。  そこで、次の問題でございますが、一つには経済改革の基本的な考え方というのを先ほど経企庁長官がお触れになりましたが、それと財政再建の問題が一つございます。それから中期展望というものも皆さん発表されておる。その内容について、重点的に何を言われているのか、ちょっと教えていただきたいと思います。
  328. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) お答え申し上げます。  今後の中期的な財政運営ということでございますけれども、今後、社会経済情勢の変化に財政が弾力的に対応していくために、後世代に多大の負担を残さず、再び特例公債を発行しないというこ とを基本としまして、公債残高が累増しないような財政体質をつくり上げていくことが重要であるということ、これが基本でございます。  このような考え方に沿って、今後とも、従来以上に制度の基本にさかのぼった見直しや施策の優先順位の厳しい選択を行いまして、財政改革を強力に推進してまいりたいというのが私どもの願いであるわけでございます。
  329. 及川一夫

    ○及川一夫君 具体的には何を目標とするんですか。
  330. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 具体的には、平成二年三月の財政審報告で五年程度をめどとしまして公債依存度を五%程度にしろということを御指摘いただいておりまして、それが具体的な目標となっているわけでございます。
  331. 及川一夫

    ○及川一夫君 それでは、平成二年から五年までの国債の発行額を教えてください。
  332. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 平成二年からでよろしゅうございますでしょうか。  平成二年五兆五千九百三十二億、平成三年五兆三千四百三十億、平成四年七兆二千八百億、平成五年八兆一千三百億、今度の補正で十兆三千七百億ということになっております。
  333. 及川一夫

    ○及川一夫君 その中で、昨年暮れの補正として国債を出された額、そして今回の補正として出された額というものはどのぐらいになるんですか。
  334. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 四年の補正で二兆二千五百六十億をお願いいたしております。今度二兆二千四百六十億であったでございましょうか、お願いしておるわけでございます。
  335. 及川一夫

    ○及川一夫君 財政再建なるものは、平成二年に特例公債というものをゼロにしたという意味合いでみんな真剣になって財政再建を考えようではないかというところから出発したと思いますね。それで、この財政改革をするに当たっての基本的な考え方というのがことしの一月に出されているわけですね。そして、主計局長も言われたように、要するに依存度五%ということを最大目標にしてやられようとしている。平成七年に五%ということを前提にされているわけです。  それならば、平成七年に国債発行高というのは一体どのぐらいになるのか、それから今現在どのくらいのパーセントで国債がことし出されているのか、そのことを明らかにしてください。
  336. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) まず平成七年の公債発行予定額でございますが、財政の中期展望によりますと、平成七年の公債発行額は三兆六千三百億ということになります。  それから、依存度で申し上げますと、今度の五年度は追加をお願いしておりますものを含めますと一三・〇%ということを予定しております。
  337. 及川一夫

    ○及川一夫君 一三・○。
  338. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 大変失礼申し上げました。一三・九%でございます。
  339. 及川一夫

    ○及川一夫君 一三・九%で十兆三千七百六十億が今提案をされている。これは、平成七年に三兆六千三百億、五%を達成することができると思いますか。
  340. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 大変厳しい目標であろうかと思いますけれども、公債依存度をできるだけ下げたいということが私どもの悲願でございまして、精いっぱいの努力をしていかなければならぬというぐあいに考えておるわけでございます。
  341. 及川一夫

    ○及川一夫君 じゃ、来年は幾らにするつもりですか。
  342. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 今、事務当局から数字その他につきまして御説明を申し上げました。  確かに数字の問題、またどうだということになりますと、特に来年、今からまた予算編成をやらなくちゃいけませんから、今の段階で幾らぐらいになるなどということは申し上げる段階ではありません。ありませんが、大変厳しい状況であることだけは事実であろうと思います。  しかしながら、やっぱり財政が果たしていくところの節度というものがありますから、その節度のためにも財政再建目標というものをつくりまして平成七年度までにはこれだけやっていこう、こういうふうな形でやっていく。これからいろいろな努力をしていかなければ、正直言って私はできないと思います。一般的に経済不況であるならば税収というのはなかなか上がらない、国債に頼らないでどうするんだ、こういうふうな話になりますから、そこは歳出の方の削減をやりましたりいろいろな工夫を凝らしていかなければならないのが財政に与えられたところの役割だろう、こう思っておるところでございます。
  343. 及川一夫

    ○及川一夫君 大蔵大臣は気安う言っておりますが、言っていることとやってきていることを見なさいよ、これ。平成二年の決意はいいんですよ、お互いに。しかし、平成二年には一〇・六%なんですよ。そして、平成三年には九・五%に確かに下がりましたよ。しかし、平成四年には一三・三%に伸びているわけでしょう。そして、今回補正をしてトータルすると一三・九%。何ですか。減らすんじゃなくて伸びているんじゃないですか。こういうことで一体、決意をしてやろうとしたこととやっていることはこんなに乖離があるということは、国民から見て信頼できますか。
  344. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 数字上は先生御指摘のとおりでありますけれども、やはり財政というものは国の経済全体の中のかなめでありますから、財政をどう運営していくかということでありましょう。私は、そういった中で平成七年度までにはそういった形で持っていくという一つの目標を立てまして財政を考えていくというのが私どもの与えられたところの課題である、宿題である、こういうふうに考えて、今からも取り組んでいかなければならないと思っております。途中でできないからもうやめるというわけにはいきませんから、やはり財政というものは節度を持ってやるということが絶対必要だ、そう生易しい話ではない、こう私は思っております。生易しい話ではないけれども、やっぱり目標を立ててやっていくところに節度があるんじゃないかな、こう私は思っているところであります。
  345. 及川一夫

    ○及川一夫君 やめると言っていませんよ。やると言いながらやらないから、文句を言っているんじゃないですか。そこが大事なんでしょう。これも政治の信頼にかかわる問題なんですよ。政府は言うことはいいけれどもやることはまるっきりでたらめということになったら、僕らは一体どう説明したらいいんですか。そうだそうだと気持ちを合わせて一生懸命になって政府をたたいていればいいんですか。私はそんなものではないと思うんですよね。もし大臣がそうおっしゃられるのなら、基本的な考え方とか財政再建のあり方を見直すべきじゃないですか。
  346. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 今、財政再建目標という形で平成七年度に向かってそういったことを立てているところでありまして、私たちはそれに向かっていろんなことを考えていかなければならない、来年の予算の編成におきましても考えていただかなくちゃいけない、こう思っているところでございまして、決してその目的を放棄したわけではありません。確かに昨年、ことしといろいろ御期待にこたえることができないような形になっておりますけれども、それも経済の持続的な成長の過程に持っていくための努力である、そういうふうに私は考えておりますし、持続的な成長の方向へ持っていくならば必ずやいい方向に持っていけるものだろう、そういった期待を持って私たちもこれから努力をしていきたい、こう思っているところであります。
  347. 及川一夫

    ○及川一夫君 それなら、平成七年に五%が達成できないで一〇%あるいは十数%、さらには来年度というものを見たときに、少なくとも今年度より少なくするということができなかった場合にどうされますか。
  348. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 今申し上げましたような形で財政の運営を図っていくところでございまして、やはりそういった体質をつくり上げていくということを主眼に置いてこれからもやっていくというのが今の私どもの考え方でございます。
  349. 及川一夫

    ○及川一夫君 この問題はちょっと横に置きまし て経済企画庁にお聞きをしたいのでありますが、その前に、閣議了解事項というのはどういう性格のものなんでしょうか。それからちょっとお伺いしたいんですが。
  350. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) 閣議了解といいますのは、その前にまず閣議決定という形式のものがあるわけでありますが、これは合議制である内閣決定をする、こういうことであります。  そして閣議了解でございますけれども、これは主としては、それぞれの省庁において権限を有する、各省大臣が権限を有するという類のものにつきまして、ただしかしそれぞれの関係省庁といろいろ緊密な関係のある内容のものだとかあるいは非常にその施策を進めるのが重要なもの等につきましては、これを閣議において説明して了解を求めるということでございます。  したがいまして、形がちょっと違っているかと思いますが、ある省庁の施策の進め方について閣議全体でそれを了承するということでありますから、合意が成り立つということを意味することになると思います。
  351. 及川一夫

    ○及川一夫君 経済企画庁でもって先ほどお答えになりましたように、個人消費の物の見方というか、経済というものを判断された文書がありまして、それは閣議了解事項、五月十二日ですか御決定になりましたね。
  352. 土志田征一

    政府委員土志田征一君) お答えいたします。  今御指摘の点は、月例経済報告という私どもで作成しております毎月の資料でございまして、これは閣僚会議に御報告をしておるものでございまして、今の閣議了解というような性格のものではございません。そういう性格のものでございますので、責任は経済企画庁にあるというふうに考えております。
  353. 及川一夫

    ○及川一夫君 これは事務当局に聞いたらそういう答えが返ってこないで、閣議了解事項というふうに言われたものですから大変権威のあるものだろうな、こういう前提に立ちました。  問題は、そこに書いてあること、結論と書いてある中身が大変違うわけです。つまり、個人消費というものが低く伸びている、低いが伸びている、こういうふうに書いてあるんですが、具体的に挙げられた項目というのはすべてマイナスと書いてあるわけです。それなら、これはマイナス傾向というふうに書くのが当然じゃないかな、こう思うんですが、そういう書き方になっていることを経企庁長官は御存じですか。
  354. 土志田征一

    政府委員土志田征一君) お答えいたします。  個人消費の主な統計というのは、販売額の統計で百貨店とかチェーンストアというのがございます。こういったものが最近は前年比では減っておるという数字になっております。なかなか統計はとらえがたいものでございますけれども、最近ではディスカウンターとかそういうものの売り上げが非常にふえております。それから、家計調査も二月あたりは前年比マイナスでございますが、三月はプラスでございます。こういった点も世帯数の増加というようなことを織り込んでみますとマイナスではないのではないか。全体といたしまして、私どもとしてはそういった統計に加えまして各種のヒアリングその他をいたしまして基調的な判断をしているわけでございます。
  355. 及川一夫

    ○及川一夫君 皆さんの頭ではマイナスというふうに書きながら、マイナスというふうに、そういう傾向にあるということを書かずに、低くとも伸びています、上向いています、こういう結論を頭に持ってくるような書き方になっているんですよ。ですから、これは読んだ人は非常に迷いがあるし、直ちにこれは言葉が間違っているんじゃないかと。閣議了解事項だということももしついているならば、すごく権威のあるものだけに一体これでいいのかということと、先ほどの議論じゃありませんが、山口議員が問題にした三・三%の問題もそうなんですよ。そんなの見通しだから間違うこともあるわという程度に我々に問題提起をして議論をしろと言われる、そういう政府というのはこれはどういうことなんだろうなと。それじゃこれからすべてそういう前提で考えるかということに私はなりかねないというふうに思うわけです。  したがって、これは何回も言うようですが、一つ一つがやっぱり政治の信、不信につながっているということを前提にして、少なくとも整合性のあるものを提起をして、お互い確認をし合ったらそれに向かってやっぱり実行していく。少なくとも、スピードは遅くとも、十兆にしたいというやつがたとえ九兆であっても、やっぱりそれに追いつくというか、決定どおりとにかくやり通していくというような、そういう経済の運営にしなかったら一体どういうことになるんでしょうか、こういうふうに思います。  それから、大蔵大臣にもお伺いしたいんですが、確かに経済ですからいろいろと変化があるし、それについていかなきゃいかぬことも事実でしょう。だから、百八十四兆と言われる国債の発行だって、これ半分にしましょうとか全部なくしちまえと言ったら一体どういうことになるのかな、こう思いますよ、私も。恐らく経済は混乱するでしょうね。大混乱というふうになるかもしれません。しかし、だからといって百八十四兆という国債発行をこれからどんどんふやしていいんだということにもならないんでしょう。そうすると、当然ここで調和という問題が私は出てくると思うんですよ。そういったことを論議していますか。それとも、考えておられるんでしょうが、考え方があったら出してください。
  356. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 及川議員の御質問でございますが、まさに百八十四兆もあって、それがだんだんふえていったら困る、こういうことでございまして、そのために先ほど申しましたように五%のところのものにしよう、こういう形であります。毎年毎年国債というのは償還をされていきますからそういった形でありますが、これがふえることがないようなということを一つの大ざっぱな目標にしてやっていこうと。まさに国債を抱えた経済だ、こういうふうな話でございます。  私たちもそれはおっしゃるとおり半分でもぱっと切れれば切りたいんですけれども、なかなかそういったことができません。できませんから、せめて今のものがふえないように、少なくとも先ほど申しました財政目標だけは、少なくともそのぐらいのことは何とかしてやっておこうじゃないかというのが財政当局の願いであるということを申し上げておきたいと思います。
  357. 及川一夫

    ○及川一夫君 しかし、現実には平成七年までに五%にしよう、こう言っているわけですから、数字で言えば十兆を超える内容をいずれにしても三兆六千億台にしよう、しなければならない、こういう目標は変えないというわけだから、だからそのために実行できる方策は一体何かということをしっかりと踏まえて問題の提起をしていただかないと私は困ると思うんです。  それから、もともとこの建設国債の発行については我が党は反対なんですよね。反対であったわけですよ。  四十年論争というのを御存じですか。
  358. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 四十年代に建設国債を発行されたのは私も記憶をしておりますし、当時私は役人やっておりまして、大蔵省じゃありませんけれども、どうするんだというような話を随分した記憶があります。だけれども、建設国債といえども国債であることは間違いない。しかしながら、どういうふうな建設国債であるならば許されるかというのは私は四条に書いてあるところだろう、こう思いますし、やっぱり赤字国債とは違う、そういった形で取り扱いがなっているということだけを申し上げておきたいと思います。
  359. 及川一夫

    ○及川一夫君 建設と特例公債とどうして遣わさなきゃいかぬのですか。
  360. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 財政法四条の中に書いてありますのは、公共事業費、貸付金、出資金についてはその限りであらず、こういう形でありますから、それが建設国債と言われておるところであります。私は、そういったものは当世の人が負担をするものは当世の人が税金で払うべきであろう。しかしながら、借金をいたしまして、その借 金でもって例えば建物を建てる、いろんなものを建てたならば、それは現代における人がやっぱり受益をするだけじゃなくて将来にわたって受益をするのでありますから、応益負担という考え方からするならば将来の人にもその負担をしてもらってもいいではないかというのが基本的な考え方じゃないだろうか、私はこう思っております。それがやはり建設国債が例外として認められているところの物の考え方だと。  いわゆる特例公債ということになりますと、何でもかんでも皆、お互いの飲み食いでも国債で借金でやるということになりましたらお互いの家計だってなかなかもたない、こういうことになりますからそういったことはやるべきではないだろうというのが私は財政の秩序じゃないか、規律じゃないか、こう思っておるところでございます。
  361. 及川一夫

    ○及川一夫君 特例公債でもって財源をつくった、それを使うところが飲み食いですか。飲み食いという理解になりますか。
  362. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 今、飲み食いと申しましたけれども、特例公債というような格好でいわゆる経常的な経費をやるということになりましたならば、それは確かに今の人には裨益するところがありますが、将来にわたってそのツケを子や孫の時代に回すということはいかがなものだろうかなというのが特例公債という形になっている原因であろう、それはやっぱりそのときの法律でもって決めていかなければならない話じゃないかな、こういうふうに思っておるところであります。  もう一つ申し上げますと、私は思いますのに、将来の負担でありますから、今の人はお互い代議士なり国会議員に選ばれています、現在生きている人はやっぱり私たちを選んでくれているわけでありますから、その人たちのことについては私たちが責任を持つことができる。しかしながら、子や孫の時代というものは、投票権まだないわけでございますから、それらについてどうするかというものについては厳重な監査をしていかなければならない。そこがやはり私は建設国債と特例公債の違いじゃないだろうかな、こう思っておるところであります。
  363. 及川一夫

    ○及川一夫君 今の大人がいなければ、子供は育つんですか育たないんですか。少なくとも減税というのは確かに生きた人間に投資をするようなものですよ、それは、いろんな形で。だから、今いる、生きている人間がしっかりしてほしい、しっかりした生活でその中で子を育てる、教育をしていくというようなことになるんじゃないでしょうか。飲み食いということになりますかね。
  364. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 飲み食いということで申し上げましたからあるいは誤解を招いたかもしれませんけれども、私はもし何でしたらそれは訂正します。修正いたしますが、現在の費用でもってお互いの資金配分をするわけでありますから、それは現代に生活をしている人たちの間での資金配分の問題になるであろう。それは、現在、税金で収入がありますからそれでいい。ところが、それを将来にわたって借金をもって今そういった形をやるということになりますと、やはり将来に問題を及ぼす、子供たちの了解を得なければならないものではないだろうかというのが私どもの考え方であります。  例えば家を建てるとします。確かに家を建てたならば、それはお互い住むところの家を建てる。自分たちもいい家に入るでしょう。子供たちも入るでしょう。孫の時代も入るでしょう。こういう形で、私はそれは借金という形で認められるんじゃないだろうかなとこう思っているところであります。ところが、自分の洋服をつくる、あるいはいろいろな生活の、旅行をする、そういったものを三十年も四十年もするような借金でやって、そのツケを子供たちに回すというような話になったならばやはりおかしいんではないか。それはやはり、そこは考えるべきではない。  もう一つ、最初に申しましたけれども、建設国債というのは、家を建てる、その家は現在私たちも負担をするけれども、将来の子供たちも孫たちもみんな負担をしてもらってもいいんではないか、こういうふうな物の考え方がございます。そうでなくて、今すぐ使われるような費用につきましては、そこまでやって今やっているものを将来の子供に負担をさせるというのはどうかなというのが基本的な考え方だろうと思っているところであります。
  365. 及川一夫

    ○及川一夫君 大蔵大臣は何か国債関係は全部六十年返済、償還ということを前提にされているようだけれども、僕はそう考えぬでもいいと思う。やりようは幾らでもあると思うんですね。ただ、問題は、建設であろうとそれから特例、赤字であろうと借金に変わりはないんでしょう、これ。どんなこと言ったって、返済するための負担は後世の人は肩で担いでいかなければしょうがないでしょう、これ。そうじゃないんですか。
  366. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 借金でありますから将来に必ず、六十年であるとかあるいは三十年であるとか、そういったことは私はあるだろうと思います。しかし、今みんな六十年で一応考えるということになっておりますからそういうことで考えておりますけれども、やはり借金は借金で、それは建設国債であれ特例公債であれ、借金は借金であることは間違いない。これはそのとおりだと思います。ただ、どういった借金をするかにつきまして、私は物の考え方はそこで分けていってもいいではないかということを先ほど来御説明しているところでございます。
  367. 及川一夫

    ○及川一夫君 いや、借金だということを認められるなら、建設国債がいかに資産として残るといったって、どんどんどんどん出していく。去年の暮れから、あなた、これまでの提案でももともとの八兆から超えちゃって四兆幾らも出しているんですよ。我々減税というと、当面はいずれにしても四兆幾らぐらいの財源だ財源だと、こう言っているわね。あなた方は建設国債というと気安く気安く出すんだよ。それで、こっちが人間の今をひとつよくしようじゃないかという意味で減税と、こう言うと金を出さない。これは大変な政治の分かれ目だというふうに僕は思うんですが、どうですか。
  368. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 借金は借金でありますから、私はそこの点は同じだろう、こう思います。ただ、後代の人までも裨益するようなものというのがやはり公共事業ということになっているわけであります。公共事業というのは単に現在の人が裨益するだけではありません。例えば道路であるとか港湾であるとかというのは、それはお互い現在の人だけで、あと十年もたったらなくなるというわけじゃないんだろうと思うんです。そういったものをつくっていくならば後代の人も裨益をして、後代の人にもいい目を見てもらうことができるであろう。社会資本の充実というのはまさに現在だけでなくて将来にわたってのものでありますから、そういったものは後代の人にも御負担をいただいてもおかしくはないではないだろうか、こういうことでございます。  それに反していわゆる経常経費的なものにつきましては、現在の人がやっぱり負担すべきものは負担すべきではないかというのが私どもの考え方でありまして、建設国債だからぱっぱっとやっていいという話じゃない。何でもかんでもという話じゃないと思います。やっぱり建設国債の中でも、社会資本の充実というような格好でお互いの生活の向上に裨益するようなものにやっていかなければならない。新しい経済計画をつくりましたりしてやっておりますし、そうした新しい方向づけの社会資本の充実を図っていくということが、またそれに対して建設国債を使っていくということは私は後代の人も裨益していくことができる、そういうふうな確信を持ってやっていっていいものだろう、こう思っているところでございます。
  369. 及川一夫

    ○及川一夫君 どうしても納得できない、こういうふうに申し上げておきますよ。  そこで、問題の焦点は減税ということになるんですけれども総理は非常にこの問題では頑固ですね。なかなかもって我々の言うことを一顧だに しないというような姿勢を示されるんですけれども、減税については絶対に受けられませんか。
  370. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 総理よりもまだ頑固なのは私の方でございまして、私はやはり、先ほど申しましたようなことで申し上げますならば、建設国債は、将来、子孫に対してつくってやってよかったなと思うようなものでありますが、単に所得税減税ということになりましたならば、私たちの子や孫たちの時代に一体それをどう考えるだろうか。一九九二、三年時代の親たちは自分たちの生活を上げるためにやった、おれたちに借金を残したぞ、こういうふうなことを言われるのは現代に生きている政治家としてやっぱり慎むべきじゃないかというのが私の持っている基本的な考え方でございます。
  371. 及川一夫

    ○及川一夫君 私は、おやじが何だかんだ言ったって生きた人間が先だと。例えば不幸な事態があった場合でも、魚を食うなとかタコを食うなとか空ものは食べちゃいかぬというのがあったでしょう。そういうときに、子供に対しては、そんなこと言ったって生きた者が先だと言って、自分たちを、いわばおじいさんならおじいさんの子だから、だからおれたちが精進すりゃいいんだ、それで、子供やなんかはどんどん生きた人間としてちゃんと太るように、やせないように飯を食え、よくそう言われたものです。僕はそういう発想というのは非常にいいなというふうに自分では思っているんです。  いずれにしても、この問題は時間が余りありませんから横に置くにしても、総理総理・総裁なんだけれども、書記長・幹事長会談合意メモというのがありますよね、それでこの中で、不況対策を考える上で社公民三党の減税を中心とした共同修正要求は重要な指針として実行可能な施策を協議をする、こう書かれているわけです。そして、会談をやられた一当事者である我が党の書記長ということになりますが、記者との話の中で、幹事長の発言として、要するにこれが実現できなかったらバッジをとるよという話もあったことも御存じでしょう。ここまで来るとだれがどう見ても、ああ減税について政府・与党としての大幹事長が約束をしてくれたな、ならばということで予算を通したという経過、予算に協力をするという経過が僕は率直に言ってあったと思うんです。いまだにそれが実行されない。これはどういうわけでしょうか。
  372. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 委員御指摘のとおり、三月に予算を衆議院を通していただくときに四党間でいろんなお話し合いがありましたことも事実でありますし、その内容につきましては先生も先刻御承知のことでございますからくどくど申し上げません。しかしながら、先般また四党の会談がございまして、引き続いていろいろな問題については検討する、しかし所得税減税については当面の問題としては適当でないというような発言もありまして、三党に対しまして我が党の方から御返事を申し上げているということを聞いているところでございます。  公党間の話でございますから、政府立場といたしましては公党間でいろいろな話をする推移を見守ってまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  373. 及川一夫

    ○及川一夫君 宮澤総理ね、大蔵大臣をやられた年は六十一年から六十三年まで二年四カ月ぐらいだったと思うんですが、この中で減税をやられたことがありますか。
  374. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ええ、ございまして、そのときに一番最近の税制の抜本改正というものをいたしました。  そのときに所得税というのはかなり累進構造を変えましたですけれども、そしてどっちかといえば低と中の下ぐらいのところの重税感を直しましたんですけれども、私は十分まだこれが最後の姿だというところまでできていないという感じを持っておりまして、したがって、もう遠からざる機会にやっぱりこれはできればもっと累進構造を刻みを少なくしまして、段階を少なくしまして、中堅のところの重税感というのを減らしてしまわないといかぬと。英米のところ、大体あのぐらいのところへ、二段階、三段階ぐらいのところへいきたい、私はそうあるべきだという気持ちを持っております。やっぱり政治というのはイコール税みたいなものだと思いますのでできるだけ、殊に所得税というようなものは余り重いという感じはよくないと思っております。  でございますので、ことしも三月から予算の御審議との関連で減税についての御要求があって、幹事長もそれについていろいろお答え申し上げたりしていまして、私が今の場合に思っておりますのは、いかにも財政の悪い状況でございますし、平成四年度の決算もまだ済んでおらないような状況でございますから、ここのところでいかにも特例債を出して減税をするというのにちょっと時期として適当でないのじゃないかなと。  ただ、どっちみち来年はもう公的年金の財政再計算の年でございますし、再来年はそういうものを統一するしないという大きな問題を持っておるその今でございますから、やはり高齢化社会に備えてこれからの国民の負担とか給付とかというものをどうするのかということは、どうしてもこれは一遍根本から考えなければならない時期がもう来ておると申し上げても間違いないぐらい、ことしの秋ぐらいになりますと。  そういうときにおける税制というものはどうあるべきなのか、その中で所得税はどうすべきなのかと、今やり残しました問題をやはり考えていかなければならないというふうに思っております。  ですから、それで各党から一昨日か一昨々日かもお申し入れがありまして、今としてはいかにも財政状況がこうでございますがとお返事をしてありますけれども、やはり各党で引き続いて御協議をなさるということの中に、もう遠からざる機会にこの問題は御一緒に取り上げざるを得ないのじゃないかという気持ちが私には実はございまして、たまたま今この時期にということになりませんことは御意にかなわないことですけれども、しかし問題意識は私は持っております。
  375. 及川一夫

    ○及川一夫君 それは国民のサイドを考えると、増税感というものは大変私は高いと思っておるわけですね。爆発的になりそうだと、こんな感じを私は持っておるんですが、総理はそんなようなお感じで物を言われているんですか。
  376. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) よそとの比較で申しますならば課税最低限はかなり日本は高こうございますし、決して所得税が先進国との比較で高いとは思いませんけれども、累進構造が余り細かいということはやはり勤労意欲の上からもよくありませんし、税負担全体から見ても、いわば先進国といえば語弊があるかもしれませんけれども、我が国もここまで来ておりますので、もう少しこの刻みは段階は少なくする方がいいんではないかなと。また、そういうことが努力次第ではできるんではないかなと、それは裏返して申しますと、つまり中堅層の負担がかなり重いということでございます。また裏返して申しますと、それだけにこの減税をいたしますのには相当な財源を食うということでもあるわけですが、しかしそう長くはほっておけないような気が私はいたします。
  377. 及川一夫

    ○及川一夫君 今、総理がおっしゃられたのは、これは大蔵大臣でよろしいんですか、加藤税調会長が記者会見の中で言われたことと同じように聞こえるんですが、そう受けとめてよろしいですか。
  378. 林義郎

    国務大臣林義郎君) いずれ参議院にも租税特別措置法の改正案の御審議お願いすることになっておりますが、その租税特別措置で、今回ありました問題につきまして税制調査会でこの前御議論をいただきまして御報告を申し上げたんです。そのときの後に加藤さんがお話をされたことでございまして、総理からのお話も今お話がありましたようなこともありました。  ただ、加藤さんがもう少し言っておられましたのは、二兆円ぐらいなら何とかできるけれども五兆円なら消費税の値上げたなんというようなことがありましたので、事務当局をして加藤さんに確 かめさせたんです。そうしたら、いや、そんな五兆円とか何とかという話をしたのはたまたま二兆円とか五兆円というのは比喩の話でありまして、そういったことを考えておるわけじゃない、いろんな意見がありますからという話でありますし、それから財源をどこからどう求めてくるかということもやはり考えていかなければならない話だろうということをおっしゃった、こういうふうに私は承っておるところであります。  先生から加藤さんも同じかとのお話でございますから、私が知っている範囲で詳しく申し上げたところでございます。
  379. 及川一夫

    ○及川一夫君 加藤会長も消費税率の値上げをどうも考えているみたいな発想でありまして、私もよく存じ上げているが、あの方は余り適当なことは言わない方ですから、何か料理屋でやっているような調子で受けとめるわけにはいかない、私はこう思っていますよ。  それで、総理、私は終わりが近づいているんですが、総理は減税をおやりになったというふうにおっしゃいましたね。確かに六十二年にやっていますよ、一兆三千億規模の。しかし、売上税が出てきて五兆三千億、こう言われたんですよね、取り上げる分が。確かにこれは失敗した。成立しなかった。だけれども、六十四年ですか、消費税が出てまいりましたな。結局、取り上げられちゃったわけですよ。そうすると、私から言うと、宮澤総理大蔵大臣のときに形の上ではやったけれども実際的に取っちゃったというように私は考えているんですよ。だから、全然減税をやらない総理というのはそれはないじゃないかと。  大体これまでの実績を見たって、四十年代までは毎年のようにやっておったわけでしょう。やらないのがごく少ないわけですよ。ところが、五十年代になったらやらないのがいっぱい出てきて、その上に増税までしている、こういう実態というのは政治としてはどうですかね、ぜひ僕は考え直してもらいたいということを要請したいと思います。
  380. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 確かに宮澤総理はこの前減税をやられたわけでございますが、今お話がありましたように四十年代は割と減税というのはやっておったんですね。これは見ますと、そのときは経済成長率が非常に高いんです。高い経済成長率ですと所得も伸びるし、伸びてくると所得税なんというのは同じ率ですから、給料が上がっちゃったら今まで払っていない人も皆払わなきゃいかぬから、毎年毎年減税をやっていかないと追いつかないというのが私は実態だっただろうと思うんです。ところがその後、安定成長期に入ってきますと、そうじゃなくなってきた。そういった形で私は減ってきたと思うんです。  だから、日本経済でもこれから七%も八%も大変な成長でもすればまたそれだけ収入もありますから少々やっても大丈夫だ、こういうことになるでしょうけれども、なかなかそういうふうな形にはならないと私は思うんです。安定的な成長という形の中でのやはり税体系というのをどうつくっていくかというのは本当に考えていかなければならない話だろう、こう思っているところであります。
  381. 及川一夫

    ○及川一夫君 遅くなって大変申しわけないですが、もう時間がなくなりましたけれども防衛庁長官にお伺いしたいんですけれども、六本木の本庁の移転の問題、これは一体どういうことになっているんでしょうか。計画は進んでいるんですか。
  382. 三井康有

    政府委員(三井康有君) 防衛庁の本庁庁舎等の移転計画の進捗についてお尋ねでございますけれども、この計画は、防衛中枢を檜町地区から市ヶ谷地区に移転させるのを初めといたしまして、これに伴いまして十条、目黒、朝霞、大宮、霞ケ浦といった計六地区におきまして順次施設の再配置を図るものでございまして、昭和六十三年度に着手いたしまして逐次整備を進めているところでございます。  施設整備の状況につきましては、文化財の発掘調査といったようなことのために一部でおくれを生じている面もございますけれども、全体としては着実に進捗いたしております。  具体的に申し上げますと、市ヶ谷地区、ここは内局ですとか陸海空の幕僚監部あるいは統合幕僚会議、それから防衛施設庁といった防衛中枢を移転することを予定しておりますけれども、この市ヶ谷におきましては、埋蔵文化財の発掘調査を実施中ではございますけれども、新庁舎の一部の建設予定地にございます既存建物の解体を去る四月に終わりまして、今まさに新庁舎の建設工事に着手するといった段階に参っております。  それから、十条地区は、調達補給関係部隊を移転する予定でございますけれども、実はここが一番おくれておったわけでございますけれども、この地区につきましても、本年五月から仮設建物等の工事に着手したところでございます。  その他、教育関係機関を移設予定の目黒ですとか、東部方面総監部等を移転させます朝霞地区ですとか、三十二連隊を移設予定の大宮、あるいは各種補給処を移転させる予定の霞ケ浦といった地区につきましては、おかげさまでここ数年来順調に工事が進んでおりまして、完成済みの建物もふえつつあるといった状況でございます。
  383. 及川一夫

    ○及川一夫君 主な業者はお決まりになっているんでしょうが、東京地検の家宅捜査を受けたような業者はいるんですか。
  384. 藤井一夫

    政府委員(藤井一夫君) ただいま内局の施設参事官の方から御説明がありましたように、六地区で工事をやっております。したがいまして、契約しております業者の数は約三百に近いものがございます。  その中で、先ほどもお話の出ました代表的な本庁庁舎の移転先でございます市ヶ谷地区でただいま庁舎二棟の地下部分の建築工事を発注しておりますけれども、この建築工事は、清水建設、東急建設、松村組、浅沼組、東亜建設工業の五社から成ります建設共同企業体と契約をしております。  この企業がどのような捜査を受けておるのか、ちょっと私どもは承知しておりません。
  385. 及川一夫

    ○及川一夫君 新聞に挙がっているんだから、わかるじゃないの。とにかく大変な今状況ですから、ぜひともその工事を進めるに当たっては国民批判や糾弾を受けないような細心の配慮というものが、どんなことがあっても私は必要だというふうに思っています。  なお、最後になりますが、防衛庁長官、今の全国の駐屯地、もう住宅がどんどんどんどん密集してきたためなんでしょうが、住宅地の中に駐屯地がある、あるいは演習場があるというところが非常に多くなってきていますよね。これ、少し整理統合するというか、移転するというか、そういうお考えは一切今のところ持っておりませんか。
  386. 中山利生

    国務大臣(中山利生君) 及川先生おっしゃいますように、基地周辺、駐屯地周辺の社会情勢というのが大きく変わってきておりまして、部隊と地域住民の方々の関係というのが大きく変化をしております。  防衛というのは、地元の方々、国民の御理解がなければ全うできないという精神のもとに、事務当局から今説明申し上げましたように、なるべく密集地から郊外へというような方向で努力はしておりますが、今のところ全面的な計画というものは持っておりません。  しかしながら、先ほど申し上げましたように、地域の実情、個々の駐屯地の持っている状況、そういうものを勘案しながら、これからも努力をしてまいりたいと思っております。
  387. 及川一夫

    ○及川一夫君 終わります。
  388. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 以上で山口君の質疑、及川君の関連質疑は終了いたしました。(拍手)  本日の審査はこの程度といたします。  明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十分散会      ――――◇―――――