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国務大臣(
宮澤喜一君) 最初に言われましたことは、冷戦の終局によって国連に寄せられる期待は非常に大きくなったということ。そして、ブトロス・ガリ事務総長もそういうことをしきりに考えておられるわけですが、ただ現実の国連というものがそれだけの仕事に十分まだたえ得ないということにつきまして安保理等々の話からお話が始まったわけですが、確かにこの第一の問題は、国連がこのような冷戦後の時代ににわかに大きな役目を背負うに至りましたけれども、国連自身の軍隊を持つという国連憲章が考えておりますようなそういう終局的な姿に至っておりませんために、時としてそれは多国籍軍であって、これは多国籍軍というのはおっしゃいますように国連ではないということになりますし、また各国が国連の旗のもとに行動する場合には平和維持が主であって、武力をもって国連の旗のもとに事態をどうするというわけにはいっていないのが現状でございますから、ガリさんはそこのところを何とか平和執行部隊のようなものにしたいというふうに考えておられるようでございます。それは意欲としてわからないではございませんが、なお国連ではもう少しそれについての議論が必要なのではないかというふうに思います。
それで、安保理事会のことでございますが、今武田
委員の言われましたことは五カ国の安保理事国というものが必ずしもフェアな存在ではないということを幾つか言われました。それは私は間違いだとは必ずしも申し上げません。殊に、今百八十カ国にも国連加盟国がなりましたが、憲章は冷戦前のものでございますから、安保理事会もそれからほんのわずかしか変化しておりませんので現状に合っていないということは事実と思います。
したがいまして、昨年、安保理事国の数を公平に再配分して拡大をしようというそういう国連総会の議決がございました。どういうふうにふやしてどういうふうに分ければ一番いいかということでございますが、それについて我が国も各国とともにことしの六月までには考えを提示することになっております。
したがって、ことしの六月以降これにつきまして各国の間で協議が行われることはそういう日程になりますけれども、もう御
案内のように、今の常任理事国をこれをふやすあるいは安保理事国の数をふやす、それをどういうふうに配分するかということになりますと、これは極めて難しい問題になることはもう目に見えておりますものですからかなり忍耐強い長い討議を必要とするというふうに覚悟しておかなければならないと思います。しかし、少なくとも公平な再配分と拡大ということだけは合意をしておりますので、そこは
一つの救いがある、望みがあるということではないかと思います。
それからもう
一つの問題は、今のいわゆる五つの常任理事国が拒否権を持っていることについてでございますが、沿革的には少なくとも安保常任理事国が一致をしたということでなければその決議は有効性を持たないだろうという冷戦時代の思想から拒否権というものが正当化されておったと思いますが、同時に、そういう冷戦時代にはしたがって米ソのどちらかが気に入らない決議というものは通らないということで、実は安保理事会がそういう場合には有効に機能しなかったということをお互いがよく知っておるわけでございますので、そういう意味では冷戦が終わったということ、したがって安保理事会の常任理事国の、安保理事国の数の増大と再配分というものが議題になりますと、一緒に恐らく拒否権をどうすべきかということはやはり
一つの問題としてこれから議論せられるようになるのだろうというふうに考えております。
それからもう
一つ言われましたことは、このいわゆる五つの常任理事国が核兵器を持っておって、そして片一方で核拡散防止条約のようなものがございましてこれを拡散することは認めないということは、ある意味で非常に不平等ではないかと言われますことは、NPT条約につきましてしばしば議論せられているところだと思います。
しかし、我が国の立場は、そうではあっても我が国は核保有国にはならないということでNPT条約に加盟をいたしております。いたしておりますときに、我が国は、しかし核兵器保有国といえどもできるだけ核兵器というものはまず核実験の停止ということから縮小していってもらいたいということは常に申しておりますし、また恐らくこのNPT条約はやがて、来年でございますか、二
十五年たって
見直しの時期になりますので、その現核保有国に対して非核国側からそういうことをはっきりまた申す時期がもう一遍、来年でございますか、必ず私は来るだろうと思っていまして、だからといって我が国は自分で核保有国になる気持ちはございませんが、しかし、その核を持っている国については核を減らしていってやがてはやめてもらいたいということはどうしても主張をいたしませんと、この条約の公平性というものはやっぱり私は担保できないというふうに考えます。
それから、ODAを出すのはいいのだが受け取っておる国のかなりのものがそれ以上の金額を軍備に充てておるという問題についてでございます。
これは、しかも先ほど言われました安保理事会の常任理事国が世界の兵器の八割を売っておるではないかということも事実でございます。この辺のところは我が国はこういう考え方をしておりますから、通常兵器を持つということ自身も非常に、本来的にやはり多ければいいというふうに考えておる国じゃございませんが、世界の国の多くはまだその通常兵器を持つということを積極的に評価する国が多いというのが残念ながら現実だと思います。
核兵器や長距離のミサイルは別ですけれども、大量破壊兵器は別ですが、通常兵器は持つことが国益になると考えている国が実際多いわけでございますから、我が国としてそういう通常兵器の取引をひとつ国連の登録制にしようではないかという提言をいたしまして、これは採用されたわけでございますから、せめてそのモニターをするといいますか登録をするというところあたりから始めるという、大変前途ほど遠い感はいたしますけれども、そういう問題ではないか。
並びに、我が国のODAの運用の
方針におきまして、相手国がいわば何といいますか過剰に貧しい国が兵器に金を使っておるというような場合には、我が国のODAの対応はやはりそれなりのことを考えなければならないと。干渉をするつもりではございませんけれども、しかし、我々が大事に送りました援助が兵器になってしまうということについてはやはり考えてもらわなきゃならないということは、ODAの実施
方針の際に用心をしながらではございますけれども相手国には必ず申しておるというのが現在のありさまでございます。
押しなべて申しまして、これが結論になりますけれども、国連がこれから大きな平和維持の任務を負うについて今の国連そのもので十分であるかといえば、いろんな意味で十分でないという問題と、それからまた、殊にその運営の中核になっております安保理事会の常任理事国のあり方につきまして、これはやはりことしの六月の各国の
意見の提示を契機にいたしましてこれからいろんな議論になっていくであろう。その際に、武田
委員の言われました基本の考え方は我が国としてもやはりこの問題に対応しますために持っていかなければならない考え方であろうというふうに存じます。