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国務大臣(
宮澤喜一君) 当初
予算を御
審議いただき
成立いたしましてまだ日もたっておりませんのに、同一会期に
補正予算を出すというようなことは甚だ不見識なことであるという御批判をいただきました。
確かにこれは極めて異例なことでありますことは御
指摘のとおりでございますが、実は昨年の八月に
総合経済対策をかなり大きな
規模のものをいたしました。その
補正の御
審議をお願いいたしましたが、これにかなりの時間を要したわけでございます。その間、本
年度の、
平成五
年度の
予算編成におきまして
公共事業等を
中心に財投も
地方単独も一二%余りの大きな
公共投資を組んでおります。これを
年度内に
成立させていただきましたのでその執行が始まっておるわけでございますが、御承知のようにこのたびの
経済というのが、ただ
経済循環の問題だけでなく、いわゆる逆
資産効果というものを
背景に持っておりますので、
景気の
足取りというものは幾らか明るいところも見えてまいりましたけれども、なおここで
経済の
足取りを確固としたものにいたしたい、こう考えまして
総合緊急経済対策を策定いたしまして、またそのための
補正を御
審議いただいておる。
一つの
国会で二度御
審議をいただくのはまことに御
指摘のように恐縮なことでありますけれども、実は昨年、
補正の
成立が非常に延びたということがやはりこの
景気の
回復に相当の
影響をいたしました。したがいまして、まことに異例なことではございましたが、続いて
補正をお願いいたすのでございますが、
国会がそのような
補正の
審議をしていただいているということ
自身は、
経済の
回復に必ずいい
影響を持つものと考えております。秋まで待つということでないということについては、必ずこれは心理的な
影響もあるものと存じます。昨年からのたび重なる
緊急経済対策の
効果も
累積をしてまいりますので、ここで
景気回復の
足取りが確固たるものになると考えておりますので、ひとつこの
補正につきましてはできるだけ早く御
審議の上
成立をさせていただきたいと存じます。
それから、一般的に
予算の
シーリングというものが
財政の機動的な
運営を妨げておるのではないかという御
指摘がありました。
シーリングというのは、申すまでもないことですが、各
省庁が自分の
予算の中で
優先度の高いものを残し低いものを削るという、そういう
意味での
役割を果たしておりまして、効率的な
財政の運用には寄与しておる、これは確かと思います。ただ、
一つの
制度にはメリットもデメリットもございますので、
予算の機動的な
運営を妨げるようなことになってはいけない、それは今後とも心して運用してまいりたいと考えております。
それから、このような
補正予算あるいは
総合経済対策がどのような
役割を果たすかということでございますが、昨年からのいろいろな
公共投資の
累積効果あるいは
中小企業等に対する
施策等々合わせまして、殊にこのたびの十三兆という
施策はドルに直しますと千百何十億ドルでございますので、かなり大きなものでございます。これは
経済の上で
影響を及ぼすことは間違いないと考えておりますが、
住宅建設が多少
回復し始めている、あるいは
在庫調整も業種によりますがかなり進んできたように思いますし、
株価も堅調であるというようなそういう
動きも見えておりますので、ここでこの
景気の
足取りを確かにいたしたいというふうに考えています。
試算によりますと、このたびの
総合経済対策の一年間における
乗数効果は
GNP名目で二・六と言われておりますので、かなり大きいものであると思います。なお、それに算入されませんところの
金融であるとかあるいは
電力会社等々の
投資等がございますので、相当大きな総合的な
効果があるものというふうに考えております。
それから次に、
日米会談について御言及がございました。
もちろん、
クリントン大統領と私との二人だけの
会談の中で、
為替について、それが
貿易赤字改善への
効果等々について話があったわけではございません。それからまた、
クリントン大統領の
記者会見自身も、私は横で見ておりましたが、
円高を導入することによって当面の
貿易赤字をどうしようというそういう意図を持って
発言されたものではないというふうに私は実は今日も受け取っております。もちろん、
日米間で何かそういうことについての
約束があったわけではございません。その後、いわゆるG7の会合がございましたときに、
為替というのはファンダメンタルズによって動くことが望ましい、それを維持するために各国が協調するということが確認をされておりますので、それによりましても明らかであろうかと存じます。
それから、ちょっとお話の中で、現在の
経済状況の中でまた
バブルの
再燃というようなことも気をつけなければならないという御
指摘があったように承りました。
これはもう
十分気をつけるべきことでございますが、現在の地価あるいは
株価の動向は昭和六十二年以降のようなああいうことはございませんし、またモニター
制度であるとか地価
対策であるとかいうこともできております。また、
経済力の自律
回復力も幸か不幸かそれほど楽観できるわけではないというふうに見ておりますので、その方のことは十分用心はいたしますが、ただいま心配をすべき
事態ではないであろうと思います。
所得税の
減税につきましては、
予算審議の過程におきまして各党協議会が設置されまして、今日に至るまで各党間で御協議がございます。その結果にまつということでございますが、
減税という
ことになりますと、以前にも申し上げましたが、このための必要な財源をどうするか、あるいは
税制全体との
関係でどういう位置づけを与えるかというような幾つかの問題があろうと思います。
しかし、だんだんいわゆる
税制調査会等々でも議論があるのではないかということにつきまして、
政府税調が将来の
税制の全般的改正に着手をしたということはまだございませんのですけれども、しかし昭和六十二、三年のときにいたしました
税制改革で
所得税についても大幅な累進緩和、簡素化をいたしました。結果として、
我が国の課税最低限は大変に高い、それから中、低のところの税
負担は比較的低いわけですけれども、しかし累進はかなりきつい、そういう
構造になっております。
したがって、イギリスなり
アメリカなりのところまでもう少し累進を滑らかにして、刻みを少なくするということが中堅層の税
負担のいわゆる重税感というものを除くゆえんであるというふうに私
自身は考えておりますが、ただ、したがりてそのためには相当な財源が要るということにもなります。しかしいずれにしても、この問題はやがて取りかからなければならない、前回の
税制改正においてし残した部分であるというふうに私は認識をいたしております。
それから、飲
食料品の
消費税を非課税にするということにつきましては、
国会におきまして両院合同協議会が設置されまして御協議がありましたけれども、
平成三年十月の協議会で各党会派の意見の一致が見られなかったという報告がなされたというふうに承知をいたしております。
それから、
公共事業というものが新しいニーズにこたえなければならないということは私も痛感をいたしております。いわゆる生活大国におきましてもそれは大事なことでありて、住宅あるいは下水道事業等々につきましてできるだけ大きなウエートを与えますように配慮いたしておりますけれども、今回の
補正におきましてもその点はかなり顕著な配慮をいたしております。
また、そのほかに、いわゆる新
社会資本というような俗に言われております通信でありますとか、あるいは別な
観点から福祉でありますとか、研究、学術等々に対するもの、これも大事なことであるというふうに、これはおっしゃいますように新しいニーズにこたえていかなければならない。
それとの
関係で談合に一言お触れになられましたと思います。建設省では、かねて
審議会の答申がございました。指名競争ということはこれはいろんな
意味でやむを得ないであろうけれども、しかし入札のための透明性あるいは技術の評価等々については改善の余地が大きいということで改善に着手をいたしたところでございます。
それから、ソ連との
関係でございましたが、なぜ
政経不可分ということを言わないようになりたか。それは、ゴルバチョフ以前の
時代に、両国間に領土問題はないという主張をソ連側がいたしておりました。そういうことでありますと、これは両国間の正常な
関係というものは難しいと考えていましたが、ゴルバチョフ
時代以降領土問題の存在ということを認めるようになり、かたがたソ連がああいうことになりましたので、
我が国がまた援助をする必要も生じました。それで
拡大均衡という言葉を用いることになったわけでございます。
しかし、そのような
ロシア支援は、
我が国にとって縁の近い地方、環
日本海圏の支援あるいは
協力になるべく集中すべきとおっしゃることは、私もそう思っています。ロシア極東地域に対しまして、殊に食料等々の援助をいたしますときに、いわゆる食料、医薬品等々のマネタイゼーションはこの地域を
中心に行っております。沿海地方、サハリン州及びハバロフスク地方を初めとして対象となっております九つの都市のうち七つの都市が極東に位置をいたしておりまして、これは自然にやはりそういうことがお互いのためにいい、将来を考えましてもそれが好ましいのではないかというふうに考えてそういう努力をいたしております。
それから
パリ和平協定の再構築ということにつきまして、この問題につきましては先日も御説明を申し上げました。有権者の九割以上であります四百七十万が
選挙登録をしておるわけでございますので、これは
国民の大多数が望んでおるということは明らかと思います。今
選挙妨害があり、なお武装解除が不十分でございましたのでいろいろ御心配のような
事態がございますけれども、五
原則そのものは崩壊をしていると思いません。この
選挙というものは、
カンボジアの永続的和平と
国民和解の上で極めて大切なものと心得ております。
それから
政治改革ですが、もとより
政治倫理の
確立は大事でございますが、
政治資金というもの、これと
選挙制度というものは切り離せない
関係にございます。したがって、私は、今
国会におきまして各党がいろいろな案を出しておられますので、その中から
政治改革の成案が得られるように念願をいたしますし、もとより私としても
最大限の努力を払ってまいります。
各党とも何かしなければ
国民の政治に対する不信は除けないということを強く感じておられますので、各党が論議を詰めていただきますならば、必ずや
合意点を見出していただけるものと念願をいたしております。
残りの問題につきましては
関係大臣からお答えをいたします。(
拍手)
〔
国務大臣林義郎君
登壇、
拍手〕