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1993-06-10 第126回国会 参議院 農林水産委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年六月十日(木曜日)    午後二時開会     ―――――――――――――    委員異動  六月八日     辞任         補欠選任      三上 隆雄君     西岡瑠璃子君      風間  昶君     山下 栄一君   出席者は左のとおり。     委員長         吉川 芳男君     理 事                 浦田  勝君                 永田 良雄君                 菅野 久光君                 谷本  巍君                 林  紀子君     委 員                 青木 幹雄君                 大塚清次郎君                 鎌田 要人君                 佐藤 静雄君                 野間  赳君                 稲村 稔夫君                 西岡瑠璃子君                 三石 久江君                 村沢  牧君                 矢原 秀男君                 山下 栄一君                 星川 保松君                 新間 正次君    国務大臣        農林水産大臣   田名部匡省君    政府委員        農林水産大臣官        房長       上野 博史君        農林水産省農蚕        園芸局長     高橋 政行君        農林水産省食品        流通局長     須田  洵君    事務局側        常任委員会専門        員        片岡  光君    参考人        生活クラブ事業        連合生活協同組        合連合会会長   折戸 進彦君        生態系農業推進        協議会会長理事  郷田  實君        日本有機農業研        究会代表幹事   澤登 晴雄君        東京青果株式会        社取締役     内藤 徳雄君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○農林物資規格化及び品質表示適正化に関す  る法律の一部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付)     ―――――――――――――
  2. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る八日、三上隆雄君及び風間昶君が委員を辞任され、その補欠として西岡瑠璃子君及び山下栄一君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事谷本巍君を指名いたします。
  5. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) 農林物資規格化及び品質表示適正化に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案の審査のため、生活クラブ事業連合生活協同組合連合会会長折戸進彦君生態系農業推進協議会会長理事郷田實君、日本有機農業研究会代表幹事澤登晴雄君、東京青果株式会社取締役内藤徳雄君、以上四名の参考人方々から御意見を拝聴いたしたいと存じます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  農林物資規格化及び品質表示適正化に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお伺いいたしまして、今後の法案審査参考にさせていただきたいと存じます。よろしくお願いを申し上げます。  それでは、これより御意見をお述べいただきますが、あらかじめ議事の進め方について申し上げます。  御意見をお述べいただく時間は、議事の都合上、お一人十五分以内とし、その順序は、折戸参考人郷田参考人澤登参考人内藤参考人といたします。参考人の御意見の開陳が済みました後で、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、折戸参考人からお願いいたします。折戸参考人
  6. 折戸進彦

    参考人折戸進彦君) 折戸でございます。  先ほど、委員長の寛容なる御意見でありまして、忌憚のない意見をということですので、あらかじめ私の方で要旨を書いて皆様のところにお配り申し上げるように事務局にお願いしておきました。それに従って意見を申し上げたいと思います。  まず第一に、今回のJAS改正におきまして、現行JAS法の不備を放置しての改正についての意見を申し上げます。  現在、農林水産政治を中心とする食品加工化が急速に進んでいる状況は、皆さんも御存じのとおりでございます。その加工に伴うところの工業技術あるいは化学技術も非常に高度化いたしまして、それらの諸原料は世界各地に及んでおります。  しかるに、現行JAS法によるところの規格格付表示は、その内容あるいはその行政対応能力ともに未熟な状態でございます。また、無添加食品やあるいは現行JAS規格よりもさらに進んだ形で食品としての実質的価値を高めた加工食品についても、むしろJASはその足を引っ張るような状態でございます。  このような状況のもとで、生産者あるいは消費者とも現行JAS規格対応する実質的信頼感が極めて失われつつある。それを放置しておいて、さらに新たな今回の特定JAS規格導入改定というものは非常に問題があるということが第一点の意見でございます。  二つ目に、特定JAS規格導入論拠が、私ども読ませていただきまして、極めて不透明であるという考え方を持っております。  まず第一に、JASとJISとは根本的に異なる。これは言うまでもないことでございますが、 ここへきての貿易摩擦等理由にして国内の諸規格国際的平準化が進められておりますが、それが食料分野にも及ぼうとしております。  本来、その国の食料食品の体系というものは、その国の風土、慣習とともにあるとされておりまして、ガットにおきましてのアメリカ等から提案されました食料規格のハーモニゼーションの論理は、世界消費者生産者の非常な反発を受けているところでございます。  したがって、もし今回の特別規格その他が、こうした世界的風潮、というよりも貿易的背景をもとに農業食料品あり方が問われていて、そしてこのようなJAS規格が出たとするならば、これは非常に問題があるというふうに考えております。  さらに、特定JAS制定理由はまことに的外れであるというふうに考えております。  その改定理由に、有機的農産物表示市場における不統一はんらん消費者を惑わせているというふうに述べられております。実際は現行日本農水産物、そして輸入農水産物安全性が問題なのでございまして、その対応現象としての有機的農産物があらわれ、そしてその混乱が起きているにすぎないのでございます。特定JASはその枝葉末節的な対応でございまして、全体としての食の安全性、そうしたものに対する対応とは的が外れているのではないかと私は考えております。  また、提案の趣旨の中に、さまざまな消費者不安が渦巻いているというふうに述べられておりますが、消費者の不安とは、私どもに言わせれば、この社会に対する健全な注意信号だという考え方をとりたいと思います。  規格化とか表示化は、生産消費にかかわる人々納得性を高めるものでなければならないと考えます。今後とも、さまざまの近代化産業化が進む中で、社会的不安感は増すでしょうが、社会実態を的確に反映したこうした消費者の健全な注意信号をむしろまともにとらえて、そうしたものに未節的なふたをするような対応政治的対応としても不備であり、社会的不健全を助長するものであると考えております。四つに、農水行政特定JAS規格を語る資格があるのかという点について申し上げます。  特に、日本近代農業化は現代の農水行政とともに進んでまいりました。それに伴うところの、農薬に伴う健康被害環境破壊製品安全性不安、あるいは近代農法に伴うところの本来食物が持たなければならない栄養食品の劣化、こうしたことを問題としてきましたのは民間の心ある消費者生産者でありまして、そしてそのお互いの協同活動がそうした問題を浮上させてきたのでございます。  有機農法について、あるいはその支援について、私の知るところ、農水行政はただ語らないだけではなくして、既存農法とともに暗黙裏にそれを無視し疎外してまいりました。極端なことを言えば、有機農法を進める人たち現行の農協やあるいは農業行政のもとで非常につらい思いをしながら今日まで進めてきた、それらに対して十分な補てんがされたという記憶はございません。  それが今回の突然の特別JAS規格という提案になってきたときに、私ども生産者にとりましてもあるいは消費者にとっても、その意図を不信を持って見るのが当然でございます。特別な新たなる規格を設けるときにそうした背景を十分承知されたいということでございます。  三点として、生産方法変更とその評価表示行政では達成できないということを申し上げたいと思います。  有機農業とは、近代農法の反省とその構造的改革、方針の確立と財政的措置を伴って初めて有効に進んでいくものでございます。また、みずからの国の食料はできる限りみずからの国で賄うとの食料政策なくして食について語ることは全く論外でございます。  二つに、今回の特別JAS規格改定は、それに対する裏づけもなく、ただ表示行政として行われるだけでございます。確かに、それによって一時的には有機的農産物の高付加価値販売をもたらすでございましょうが、尽きるところ、こうしたものは一つ商品として小売流通業界における差別化商品政策の対象となり、あるいは食というものに対して利己的にしか考えない消費者自己満足の種となって最終的に終わるであろうと思います。結果として、日本農業食料政策、ひいては国民の食の安全、安心・安定に根本的に寄与するものではない、むしろマイナスに働くという考え方を持っております。  また、特別JAS規格は、単に表示行政としても極めて不備であるということを申し上げたいと思います。  本来、JAS農産物加工品に対して行われたものでありまして、生産体制変更にまで踏み込む内容を持っておりません。もし、それを強行するとするならば、現行JAS規格そのもの生産体制まで踏み込んだ特別なものであることを要求されてまいります。すなわち、特別JASだけがJASあり方ではなくて、現行JASそのものについて生産体制に踏み込んだ論議が当然起きてまいります。そうしたことを考えず、一部だけの特別JAS規格と、そして表示行政として行うことは行政としていかがかと存じます。  また、表示のあいまいさは、既に繰り返し指摘されているとおりでございます。厳密な解釈をあいまいにするところの表示行政行政全般の後退につながると考えます。言うなら、お茶濁しとしての表示行政というものは行政そのものに対する根本的な不信をもたらすであろうというふうに考えております。  さらに、生産小売における格付実務者がこのことによって膨大に増大するわけですが、こうした人々の公平な管理というものは、現行JAS実態運用から見ても恐らく不可能であろうと思います。それでも行われるとするならば、それは法においてそれが実態として実行されない、そうした点において法の形骸化をもたらすものであろう。したがって、法の精神においてもおかしいと考えております。  次に、高付加価値差別化商品としての特別JAS規格品は、流通業を潤して、特にそのガイドライン設定販売合理化として歓迎されるだろうと想定しております。確かに、ガイドラインが想定されまして、さまざまの有機農産物が一定のラインのもとにおさまることは、生産者やあるいは消費者というよりも、むしろ流通業界によって大いに合理化をもたらすであろう。しかしそれは、やがてもう一つ新たに来るところの差別化、常にこの厳しい商品業界の中においてはそれにかわる高付加価値差別化商品が当然あらわれてまいります。そのようなものがあらわれてきたときには、こうした特別JAS規格品というものは単なる過渡的な商品として存在するのであって、何ら抜本的な有機農業推進の具にはならないであろうというふうに考えます。  以上の観点からJAS法改定に私は反対するとともに、かねて国会決議がありますように、食料自給率向上生態学的農漁業推進と不可分なJASあり方を今日抜本的に検討しつつ、それに必要な立法、行政措置の必要を要請し、私の反対の論とします。  以上です。
  7. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) ありがとうございました。  次に、郷田参考人にお願いいたします。郷田参考人
  8. 郷田實

    参考人郷田實君) 私は、生態系農業推進協議会、これは生産者消費者流通関係皆様方で構成いたしておりますが、その立場、さらには町ぐるみ有機農業推進いたしております宮崎県綾町の立場からいたしまして、今日のこのJAS法改正あるいはさきの有機農業ガイドライン等につきましては、遅きに失したの感を持っておるものであります。言葉をかえて申しますと、待ちに待ったものがようやくやってきたという、こういう喜びと申しましょうか、期待を持っておるものでございますし、供給地から見ます生産者皆様方に活が入るものといたしまして、これまた期待をい たしておるものであります。  私ども綾町は、二十数年前から有機農業の町といたしまして、本物をつくる町といたしまして、誠心努力をしてまいったところでございます。地方行政といたしましては、あとう限りの、考えられるほとんどのものを手を尽くして行ってまいったところでございます。  しかし、幾ら創意工夫をいたしまして、精魂打ち込みましてつくりました生産物も、評価がしてもらえなかったのであります。消費者皆様方にも、流通皆様方にも相手にしていただけませんでした。つくる苦しみというのは乗り越えることができたのでありますけれども、どうしても、これを流通に乗せるというんでしょうか、販売をすることができないというこの苦しみ、悩みと申しましょうか、本当に苦しみ抜きました。  そこで、町の法律であります町条例制定をすることにいたしまして、昭和六十年にこれを立案し、昭和六十三年より施行いたすことにいたしました。  私ども綾町条例内容を若干申し上げますと、三年以上土地づくりをいたしまして、その上に農薬化学肥料等一切使用しないもの、これをゴールド、金のラベルをつけまして表示をいたします。二年以上土づくりをいたしまして、八〇%以上農薬化学肥料等を排除するものを銀のラベルといたします。一年以上、そして七〇%排除したものを銅のランクといたしまして、表示をして出荷をする。地方行政の責任におきまして、土づくり生産、そして出荷体制を整えてまいった次第であります。  それらの措置によりまして、消費者皆様方にも少しずつではございますが何とか御理解をいただきまして、今日では市場等におきましても、特に築地市場あるいは大田市場等におきまして、個性化コーナー等を設けていただきまして、こちらの方に対応をさせていただくことにようやく相なっておるところでございます。私どもは、もしあの時代に今日のような措置をいたしていただいたならばと非常に残念に思っておりますとともに、あの時期にこういった措置がなされておりましたならば、日本有機農業というものも大きく姿が変わっておったであろうと存ずる次第であります。  今日、いろんなアンケートが行われておりますが、それによりますと、消費者皆様方の安全、健康に対しますところの志向は大変高いのであります。九十数%が安全、健康なものが欲しいと言われておりますけれども、実質的に流通等にあらわれておりますものはまことに寂しいものでございます。これは、消費者皆様方期待生産との大きなギャップが生じておるからであります。生産者皆様方は、従前、何らの手だてもございませんでしたので、つくりましてもこれを評価してもらえない。評価してもらえないということは売れないということでありまして、出荷ができないということでありますので、つくる意欲生産意欲は全くなくなるのであります。  しかしながら、一部の生産者皆様方は、これまた一部の消費者皆様方とがっちり組んでいらっしゃいまして、これは論外でありますけれども、大多数の生産者皆様方は申し上げておりますとおりの実態にございまして、現状におきましては創意工夫努力も何もないのであります。先ほども申し上げましたが、今回の措置によりまして、こういう法律ができるというこれだけで、生産者にはかなりの活力というんでしょうか力が既に供給地においてはあらわれてまいっておる次第であります。  今申し上げましたのは、第一に、生産者皆様方につくる喜びを与えることだと思うんです。つくる喜びというのは、精魂込めてつくったものに評価を与えていただくことだと存じます。  第二といたしましては、消費者皆様方信頼を取り戻すことだと存じます。従前消費者皆様方本物志向健康志向ということをいいことにいたしまして、悪徳業者よろしく振る舞っておりますものが野放しであったのでありますから、これはもう消費者皆様方信頼を喪失することは当然であったと思うのであります。これをどうして取り戻すかということでありますが、これはやはり今日のこのJAS法改定等に見られますような一応の評価をいたしてやることだと存じます。それが生産者あるいは消費者皆様方信頼関係を取り戻せるものであると存ずる次第であります。  さらに第三点といたしましては、流通関係皆様方小売商店を含みますが、これらの皆様方は、この商品が健康な安全なものであるとして自信を持ってお勧めすることができない、強く推進することができないという立場にあられたのであります。  今回、このような措置によりまして、何とか流通関係の方にも自信を持って推進していただくことができるのではないかと私は存ずるのでございまして、今回のこの改定等運用をうまくやってもらうと申しましょうか、運用次第ではかなりの部分まで解決をすることができるものと存じまして、高く評価をいたしておるものでございます。  しかしながら、私は今回の改定につきまして全面的に賛成をいたすものではございませんで、一部今後の運用につきまして十分なる御配慮をちょうだいいたしたい、こういう考え方を持つものでございます。  有機農業の基本は土づくりであると存じます。立派な土壌をつくりまして、その上に作付をし、その上に病気をしない、虫のつかない健康なお野菜をつくる、立派なお野菜をつくる、安全なお野菜をつくるということでございます。  もう一つは、立派な土壌の上に栄養のバランスのとれました、すなわち銅あるいは鉄、マンガン、マグネシウム、カルシウム、各種ビタミン等、あらゆるミネラルのいっぱい入りましたお野菜をつくる、いわゆる健康なお野菜をつくるということであると存じます。  第一点は、安全な、いわゆる農薬等が入っていない、この作物に入っておってはいけない農薬等が入っておる、これが恐ろしい。第二点は、このお野菜に入っておらねばならないミネラル分等が入っていない、いわゆる欠陥野菜であります。これが恐ろしいのであります。水耕栽培等、これは第二点の欠陥作物といたしまして、私は今恐ろしいものと申しましたが、そういったたぐいのものである、このように理解をいたしておるものでございます。  そこで、実施面に移ります基準づくりあるいは表示その他の段階におきましてこれらは十分御配意、御検討をちょうだいいたしたい、こういう考え方であります。  次に、今、しゅんのものを忘れてしまっておるような実態下にございます。一年じゅうトマトが出回っておる、キュウリが出回っておる、メロンが出回っておる。こういうことでしゅんを忘れておるという実態下にございますが、これは生産過程におきまして必ずしも環境に優しい、地球に優しい生産方式ではないのでございます。これは基準づくりあるいは表示段階におきまして十分なる配慮を願いたい、こういう考え方を持っておるものでございますし、さらに個々の作物等につきましても、基準づくりの際におきましては生産者消費者の十分なる意見を取り入れていただくよう強く期待をいたしておるものでございます。  最後に、仏をつくって魂を入れずではございませんで、流通の改善でありますとか技術指導でありますとか有機農業の育成の手だてでありますとか、そういった魂をきちっと入れていただきたいと存ずる次第であります。そして、さらなる充実を目指すためのステップといたしまして、大いなる発展を心から期待いたしながら今回の法改正につきまして賛意を表しておるものでございます。  以上、終わります。
  9. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) ありがとうございました。  次に、澤登参考人にお願いいたします。澤登参考人
  10. 澤登晴雄

    参考人澤登晴雄君) 澤登でございます。  私は、実は、今のJASというのはまことに悲 しい出来事だと思っておるんです。というのは、私ども有機農業をやっておりますし、私、七十七歳になりますが、本当にもう七十年やってきたことは有機農業だけであったんです。それが、私どもは本当に人類の歴史以来有機農業をずっと続けてきて、ここ三十年、いわゆるヨーロッパのドライカルチャー方式から入ってきて、日本に明治維新以後いろんな形で入ってきた中で特に化学肥料が入ってきました。そして土をめちゃくちゃにしてしまったから、有機農業が目についたということだと思っております。  この点は前述の郷田さんとか折戸さんと全部同じでございますが、それをJASに入れるということについて、私は何としても納得できないんです。特に、JASについての本質的な問題は、もう折戸さんの御意見に尽きておると思いますので重複を避けます。  それで、私、一番の問題は、簡単に言いますと、有機農業で売れば高くなる、非常に俗語でございますが、高く売れるからやるんだという、そのことなんです。付加価値農業というような言い方もしておりますが、実は農林水産省からいただいた資料の中に、「次に、この法律案の主要な内容につきまして」ということで、「第一に、」「生産方法に特色があり、これにより価値が高まると認められる農林物資」についてやるということになっております。これは本当にとんでもないことでございまして、有機農業価値を高めるということはまことに悲劇なんですね。当たり前のことをやる、それが有機農業です。毒になるものを使ってはいけないことは当然です。  これは先祖代々ずっとやってきたことです。私も、おじいさん、おばあさん、お母さん、お父さん、そういう先輩から全部やってきて、私は十歳で父を失いましたが、そのときから本当にそれ以外になかったわけなんです。それがこうなってきまして、しかも最後はどうなったかというと、有機農業をやらざるを得ない。当たり前のことをやらざるを得ない。それを付加価値農業だとするところに問題があると思います。  そして、それを審査するのに、できた製品は全部審査できないと言い切っておりますね、あらゆるところで。農水当局もそう言っておられます。それで、その生産行程管理する生産行程管理者というのが物すごく重要な立場になるように書いてあります。私、農業生産の中で生産行程というような言葉を、またそれに管理者というような言葉を聞くのは今度が初めてで、非常に勉強になったんですが、これは工業化社会一つの原理が入ってきたんだと。農業をかくまでむちゃくちゃにして、そしてかくまでに農産物を疑わなくちゃならぬという、そういうことにしたものがやっぱりこういうことになったのかと思いますが、その管理者というのは何となく権威のある方々がなられるということなんですね、行政なりいろいろ関係して。これができるでしょうか。  農業生産というのは、農業をやっている本人が、徹底的に自然の摂理に従って自分の傘とそれから作物と家畜と全部同じ命を共有しているんだという、その立場に立ちまして一生懸命やらないと、天候とかいつどうなるかわからない、天災地変もございます、そういう中でやっていかなければ成立しないものなんです。それを、何か管理がどうか、どんな偉い人か知りませんが、それだけの能力のある人があるんでしょうか。  私は、くしくも、ソ連にかつて行ったことがございますが、実はこのことを聞いて、ソ連の農業管理環境を思い浮かべてぞっとしたんです。こうなっていくのか、人をこれほど疑わなくちゃならぬのかと。GPUみたいなものがずっとやって、何したこうしたというやつを全部調べなくちゃならぬ、これは。調べられないんだが調べなくちゃならぬという、まことにもってこれはもう変なことだというのを通り越しておると思って、私はこれが今度のことで非常に悲しいことなんです。人を信じないということの基本線になりますね。  農業というものはそういうものじゃないんです。農業生産をやっている方々は、消費者の命を預かっているつもりなんですよ。消費者の命を保障するつもりなんです。そして、私どもがやっておることは、提携ということを申し上げておりますが、実は消費者生産者の生活を支える義務があるという、その関係がなければ農業生産はできません。食物生産はできません。食べ物というものはそういうものなんです。私どもはずっとそういう関係で今までやってまいりました。  ところが、率直に言いまして、こう言うんですよ。なぜこのJASをやるかというと、一つは、私どもはあらゆることが全部無農薬で無化学肥料でできると思っておるんですが、これができない、それは普遍性がないだろうという見解が農林当局の見解のようですね。これはまた私ども不思議ですが、私どもは全部やっております。先ほど郷田さんの言われた土づくりを徹底的にやればかなりのものは胸を張ってできます。  それからいま一つは、はっきり申し上げまして、今は化学肥料それから化学農薬というもの中心の品種です。しかもヨーロッパから来た品種です。雨の少ないところから来た品種。そういうようなものが中心になっておる品種だから、これはやっぱり農薬を使わなくちゃならないんですが、本当の日本古来のものは全部農薬使わなくていいんです。ただし、一つの条件があります。それは土をちゃんとつくるということなのです。  ですから、その問題に徹底的に今まで農林行政があればこんな悲劇はないはずなんです。これはまさに悲劇なんです。涙なくしては本当の農業をやっている人としては語れないことなんだと思います。それが第一です。  それかも、その次にはこう言うんですよ。有機農業は確かにいいんだけれども、あれは労力がかかり過ぎる。私どもは労力のかからない方法をずっとやってきました。一番日本で大きな稲だってそうですね。今まで手で取っておった一番労力のかかる除草を機械化してきたし、さらに最近はレンゲソウを使いましたり、カモの改良したものを使いましたり、ドジョウを飼ってドジョウに草取りをさせて、むしろドジョウの方が稲より高くてえらいもうかったというような話があるし、また同時にコイも飼いました。それからジャンボタニシも逆に利用したんです。  そういうことがいっぱい出てきまして、不耕起でほとんど手をかけなくても、そういうものと一緒に我々が活動するというんですか、一緒に命をともにしてカモやいろいろなものとやれば、本当に実際ずっと労力がかからないようになりました。大きな日本の大事な水田はそれができるんですよ。  それから、私は今、国立の火山灰のところでブドウを二町歩つくっておって、品種改良をやっております。それから、皆さん御存じの北海道の十勝ワインなんかのあのもとをずっといろんなことをやって、研究生も養成しました。そして現在もあの町の園芸専門委員です。そういうことをやってきまして、日本古来のヤマブドウを中心にして品種改良をやっていけば今の労力の本当に三分の一、四分の一でいいワインのできるブドウができるんです。ヨーロッパのまねばかりしておるとそれはできません。  ブドウでも三十何回やったけれどもとうとうだめだったという話まであるんです。これは無理ないですよ。アルカリ土壌で雨が四百ミリか五百ミリのところで育成された品種を使ったら無理で、できることの方がおかしいんです。今はその悲劇の中に陥っているわけですね。大きい歴史の流れからはそうなんですよ。そのことを無視して私どもが品種改良をずっとやってきますと、本当に巨峰の半分の手間どころか三分の一の手間で巨峰よりおいしいものができるんです。しかも無農薬でできるんです。  そういうものができるのに、私がそういうものをつくると、これはおかしいんですが、それよりは片方の三十何回消毒する方がよいという行政指導を本当にするんですよ。まじめにするんです、それ。それだから困っちゃうんです。まじめにするから困るんで、これ悪いと思って行政の方がし てくださればいいんですが、今その体制にあるから、まじめにそうやるんですよ。それで我々が、先ほど郷田さんが言われたんですが、まじめに有機農業をやっている人が圧迫されたり日陰者にされたり、そういうことがいっぱいあるんです。  それから、その次はこういうことですね、収量が少ないだろうと。率直に言って収量は多くなります。今度のは理論的にもそうですよ。有機農業ができたことは、土の中の生物なんか全部死んでしまいます。これは無理ないです。アルカリ土壌に使ったその化学肥料日本へ持ってくると、もっと酸性化して、例えば硫酸アンモニアあたりでは硫酸が残るんです。それで生物が死んでしまいます。一ミリ立方の中に何千どころか何万、何億というような生物がおるという関係で、土と根の関係、その共生や互生の関係でずっと木が育っているわけですよ。  それが断ち切られましたから、本当にこれは収量が減りました。仕方ない、病気が出ますから、弱く育ちますから、また農薬をかける。今まで例えば一反歩に一万円かけておったのが二万円になり三万円になり、特に山梨のある農家のブドウをつくっている人は十万円農薬を使ったと言うんです。それでもよくなかった。それで私のところへ来て、ゼロのものがあるんですかと見てびっくりしたんです。  試験場ではそういうことを言わないんですよ、実際が。ここにおいでになる方がうなずいてくださると思うんです、農林省の方が。言わないんですよ。言ってはいけないというようなことになっておるんです。それがこの五十年、特に三十年の日本の悲劇だと思っております。ですから、私ども有機農業はそういうことで生まれたものだと思わざるを得ないんです。  しかしながら、できます。私どもの本当に巨峰の五分の一、四分の一の経費それから労力で巨峰より高く売れるものが、収量も倍も取れるものがあります。そういうことを案外有機農業は無視しておるんです。そういうことで、私どもは育種を無視してはこの有機農業は成立しないと思っております。  それから、さらに提携という問題を申し上げたいと思っております。私どもは、もう一楽さん以来提携でないといけないというふうに怒られながら、時には我々も頭をひねりながらやったが、やっぱり結論は提携なんです。提携以外に有機農業を進めていく道はありません。これを一般市場へ出して販売ということになりますと、ほとんどだめなんです。というのは、先ほど郷田さんも心配されていますが、うそばかりがずっとまかり通るんです。だって、基本的にちゃんとした有機農業でつくったものであるという証明はできないんですからね。  実は、私ども、ことしの八月十七日から十日間、アジアの有機農業の各関係者が集まって大会をいたします。それは向こうの要請があったんですよ。IFOAMという世界有機農業の機構がこういうような一つの尺度をつくったのでそういうことでやろうと。アメリカあたりは物すごく細かい尺度をつくった農業をやっておりますね、有機農業に対するあれを。そういうことなんですが、どうもそれが、私ども考えてみますと、最近は日本の提携のやり方がよいから、それでないともうやっていけないところへ来たんです。  時間がなくなりましたら御質問の中でお答えいたしたいと思いますが、こういうような一つの規定みたいなものをつくっただけではできません。まして、やるべきでない有機農業の生鮮食料をこのJASへ持っていったらとんでもないことになると思うんです。もう完全に乱れて、有機農業なり農業そのものがだめになります。ただでも崩れている日本農業が、これはもう後継者がなくて困っているんじゃないですか。本当に私は自分の村へ帰ってびっくりするんですよ。それをさらにさらに促進する作用をするということは明々白々なんです。  農村がつぶれて国がありますか。私どもはそのことをしみじみ思いまして、悲しい中でもあえてこんなことを申し上げなくちゃならぬと思っております。  以上で終わります。また質問によってお答えいたします。
  11. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) ありがとうございました。  次に、内藤参考人にお願いいたします。内藤参考人
  12. 内藤徳雄

    参考人内藤徳雄君) 内藤でございます。  本日は、参考人といたしまして中央卸売市場の卸売会社の立場から、JAS法改正に伴う参考意見を述べさせていただきたいと思います。  有機・低農薬に関する議論は、私ども業界にあっては、私の知る限りではここ二十年来活発化してきております。無論、国民の健康という食生活にかかわることですから、各関係行政機関の御指導のもと、産地、市場小売といった業界内にあっても、戦後の物不足時代を除いて昔から常に問われ続けてきた課題であり、今後もさらに研究され続ける課題と認識しております。  特に昭和五十年代になってからは、四十八年、五十二年の二回のオイルショックを契機として、国内では青果物の過剰期を迎える結果となり、いわば量から質への転換を強く望まれる時代になってきたと実感しております。  当社では、東京青果でございますが、この質への転換が特に求められていると判断し、昭和五十八年に、有機・低農薬野菜に関する社内コンセンサスを図る、さらに産地の啓蒙を図る、また既存の産地の集約を図るといった観点で、社内の専門プロジェクトを結成いたし、それに向けての研究と活動を推進してまいりました。  お客様に安心してお買い求めいただける野菜の研究と活動の中で、絶対不可欠の問題が当然ながらございます。一つには有機栽培であり、一つには無農薬・低農薬栽培だったわけでございます。  研究と活動の過程で常に論議の対象となってきた大きな問題点は、要約して以下のとおりでした。  有機野菜とは、低農薬野菜とは、これの定義づけ及びその基準、すなわちガイドラインがどういう状態のものか。  二番目といたしまして。有機野菜であること、低農薬野菜であることの立証、確認方法を具体的にどう行っていったらよいのか。  三点目といたしまして、有機・低農薬と言われる産地出荷者が全国に個々点在しているため、系統立った状態になく、定時、定量、定質さらに定価格を求められる現在の市場流通にあって、どううまく市場流通にかみ合わせていけばよいのか。  四点目といたしまして、殊さら有機・低農薬野菜を前面に打ち出した場合、その他一般野菜の適正理解をどう推進し続けられるのか。  以上の点でございます。  こうした問題点の現存する中にあって、当社プロジェクトで討議を重ねた結果、我々としてできることは、まず第一に、我々自身の目で実際に栽培を見て確かめる。素人が何を言うかという御批判もあろうかと思いますが、私ども自身で栽培を見て確かめる。  二番目といたしまして、お客様に納得していただけるようにする。具体的には、産地へ御案内申し上げて、理解を求める。  三点目といたしまして、一つ一つの産地の栽培のマニュアルをいただく。どういう形でどのようにつくられているかという点を含めて、栽培マニュアルをいただく。  そういったことが何よりも大切という意見の一致を見たため、具体的な活動としては、一軒一軒産地に赴き、生産者のお話を伺うと同時に、各産地の栽培マニュアルの収集、栽培産地の畑や産物、さらに生活活動等のビデオを作成し、必要に応じてお客様の産地案内等を行ってまいりました。そのほかにも、このビデオによるお客様への産地紹介、栽培実態紹介、商品を陳列いたしまして商品の説明会を開催する。  結果として、少しずつではございますが方向が見え始めてまいりまして、お客様の理解も得られ、さらにこの範疇での産地商品集約もでき始めたため、平成三年三月に三名の専任スタッフと各関係 部より選抜いたしました委員七名を組織化いたしまして、売り場を明示して、積極的に農産物個性化コーナーを展開する運びになりました。先ほど郷田さんのお話にありましたとおり、綾町の産物もこの農産物個性化コーナーにおいて現在販売をしているところでございます。  当社の個性化コーナー設置を皮切りに、築地市場、北足立市場といった他の中央卸売市場でもこの運動展開の理解と必要性が追認され、次々と同様のコーナー設置をするようになりました。  現状、当社の個性化コーナーの取扱状況を報告させていただきますと、平成四年度実績といたしまして、数量では千二百五十トン、金額にいたしまして四億円でございます。ちなみに、当社での全体の野菜の取り扱いを申し上げますと、平成四年度実績といたしまして三十四万四千三百六十八トンになっております。金額にいたしますと八百四十八億円でございます。ちなみにこの比率を申し上げますと、数量では〇・四%、金額では〇・五%と相なろうかと思います。また、延べ出荷者数も、組合、グループ、個人を含め、総計三十二件に上っております。また、取扱品目数は、トマト、カラーピーマン、大根等は周年化されつつございまして、バレイショ、タマネギに始まり、非常に多岐にわたっており、およそ三十品目となっております。  さきに述べた専任スタッフの業務内容は、産地関連といたしまして、産地づくりをしていく。栽培ステージを確認する。さらにまた商品チェックをする。顧客関連といたしまして、産地及び商品の紹介をする。当然商品販売はするわけでございますが、必要に応じてお客様を産地案内する。さらにまたお客様の相談に乗る。社内関連といたしましては、職員の研修、勉強会は当然開催しております。さらに、情報の収集あるいはまた有機野菜に関する広報活動等でございます。  市場での販売方法といたしましては、条例上競り売りと相対売りと定められておりますが、お客様がまだ限られている、いわゆる少数だということもございますし、さらに商品の特性上説明を多く必要とする点から、大半が相対売りの方法をとっております。  一般商品との価格差は、荷口が無選別状態や泥つき状態流通するものもあり、一概に比較できませんが、おおむね卸売価格では一割から一割五分の高値の推移かと思われます。  仲卸、売買参加者、スーパーでの販売面での取り組み状況は、年々問い合わせや取引件数が増加しつつある点から、徐々にではございますが広がりつつあるという判断をしております。しかし、供給面では、品目数や数量、いつでも欲しいときにあるといった期間の充足がまだまだ不十分で、安定供給とまでは至っておりません。  こうした中、農林水産省より本年四月に施行された有機農産物等特別表示ガイドラインは、卸売会社といたしまして評価させていただいております。先ほど活動経過でも申し上げたとおり、要約して四つの問題点のうち一番基礎となるべき大きな課題の基準が明示をいただけたからでございます。  かつて、ややもすればあいまいな表示で、ただ漠然と有機野菜、無農薬野菜とうたっていた産地が、ガイドラインのおかげできちっとしたガイドラインに沿った表示がいただけるようになりました。消費者もこのガイドラインのおかげで、どういう人が、どういうところで、どのようにつくったものか、いわゆる顔が見えるような状態に大きく近づくことができたのではなかろうかと思っております。さらに、市場流通業者にとっても、ガイドラインによる明確な枠組みに従い整然とお客様に説明し、取り扱うことができるようにもなりました。  現在、御審議中と伺っておりますJAS法も、この有機農産物等特別表示ガイドラインをさらに大きく前進させ、消費者により一層の安心感を提供できると同時に、産地に向けてもより一層の有機・低農薬野菜生産振興を促進させるものとしてさらに期待をしているところでございます。  終わりに当たり、有機農産物に対し今後とも着実に産地、お客様両面からの要望が高まり、取引も広がっていくと推察いたしております。卸売会社として、この予測を踏まえ、引き続きできる限りの勉強と対応をさせていただく所存でございます。  以上をもちまして、卸売会社代表の参考意見とさせていただきます。
  13. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) ありがとうございました。  以上で参考人方々の御意見の開陳は終わりました。  それでは、これより参考人方々に対して質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  14. 谷本巍

    谷本巍君 参考人の皆さん、本日は本当にありがとうございました。  初めに、折戸参考人に伺いたいと存じます。  折戸さんは、最後JAS法改正に反対だということを言われながら二つのことを述べておられました。食料自給向上、生態学的農漁業推進と不可分なJASあり方ということが一つと、それからもう一つは、それに必要な立法、行政措置の必要を要請したいというふうに述べておられました。この二つの点についてもう少し具体的にお話をいただけないかということが第一点であります。  それから第二点は、折戸参考人の反対の論拠というのはよくわかりました。わかりましたが、この法案が成立した場合、何をとりわけ要望されるかということについて伺いたいと思うのです。  そのこととの関連で、私自身の考え方としましては、やっぱり何といっても消費者意見が反映された民主的な運営が保障されるのかどうか、ここのところが非常に大事だと思うのです。こうした点に関連して折戸参考人の御意見があったらひとつお示しいただきたい。  以上であります。
  15. 折戸進彦

    参考人折戸進彦君) 最初の御質問の点につきましては、既にさまざまな意見が出されておりますけれども、特に私ども一番大切にしておりますのは、要は日本食料を根本的にどのような方向へ持っていこうか、その持っていくときに、近代的な農漁業のあり方なのか、むしろ持続的な生態学に即した農漁業のあり方なのかということが問われてくる。それがまず先にあって、しかる後に、それを推進できるような食料規格あり方と、こういうふうに順序がなってこなければならないだろうということが一つでございます。  それから、それに必要な立法というものは、先ほど申し上げましたように、現在のJAS法加工食品規格で定めているだけでございますから、したがいまして、生態学的な農業とその持続性を保障するための政策的な措置というものは、既にイギリスやアメリカでも行われておりますように、特別な形での農業持続のための法律措置行政措置、財政措置が伴わなければ一歩も進まないということは明らかでございます。そういうことを考えているわけでございます。  これに対しては具体的な案がそれぞれのところから出されておりますけれども一つ触れたいのは、ここでは農水産物だけを取り上げておられますが、日本食料の中では内水面、特に国内の水とともにあるところの食料、コイにしろフナにしろウナギにしろ、それから海産物、そういうものもすべて、私ども消費者というよりも、みんな消費者でございますけれども、食卓に上がればすべて念として食するわけですから、これらに伴うところの立体的な有機的な法措置をとられませんと、一方はJASでございます、一方は食品衛生法でございます、一方は表示法でございますと、そして農水省と厚生省が縄張り争いをされていたんじゃ、食卓の上でやられては大変迷惑でございますので、こうしたものの体系的な立法措置を行ってほしい。  繰り返しになりますが、人は、生まれて、食って、死んでいくわけですから、この中間の食ということを政治の根本に置いていただきませんと安 心して今後を考えることができないというふうに考えているわけでございます。  二つ目に、成立の場合、実態化に即してどのようにということは、私は、こうしたJAS特別JASができますことは先ほどの問題を形骸化させるということで反対をしておりますけれども、悪法といえどもできれば守らざるを得ません。そうしますと、そのときに最もお願いしたいことは、少なくとも法ができたら、恐らく国民もそれに追随はいたしますが、従来の農政担当者が、自分の今までやってきた近代農法推進について、それにこだわらず行政措置をとっていただきたいということでございます。  それから、流通業者に対して十分な監督が必要であるというふうに私は考えております。むしろ小分けや何かにおきまして、流通段階において有機農産物のホウレンソウが百来た、それでこちらでそうじゃないのが来たときに、私は、現在の流通業者の小分け者がそれをちゃんと分けて特別表示するなんて、そんな楽な仕事をやっているとは思えませんので、できもしないことを、やれるということがあったら具体的にできることをちゃんと行政対応していただける措置をとっていただきたい、こういうふうに考えております。
  16. 谷本巍

    谷本巍君 ありがとうございました。  次に、郷田参考人にお伺いをいたします。  先ほどのお話の中で、仏つくって魂入れずということでは困るというお話がございました。それじゃ、魂とは何なのかというお話の中で出されましたのが流通、技術、そして有機農業を育てていくための手だてというお話でございました。では、この中身についてもう少し詳しくお話しいただけないかということであります。  とりわけ、綾町の場合、有機農業生産を育成していくのに、品種の問題、それから技術の問題、機械の問題、流通の問題等々で多くの苦労があったと思うのです。どんな苦労があって、その苦労をどう克服したかというポイントだけでも結構でありますので教えていただきたいというのが第一点であります。  それから第二点が、有機農業は一般的には労働はきつく収量が低いというふうにとられている向きが多いわけであります。私は、こういう見方は全面的に間違いだと考えておりますが、綾町の場合、これは作目によって違うはずですが、収量が安定するまでどのぐらいの期間を要したか、収量が安定した後の収量は他のいわゆるこれまでの農業生産と比較してどういうふうに変化をしておるか、以上二つの点を伺いたいと存します。
  17. 郷田實

    参考人郷田實君) 私どもの町といたしましては、先ほども申しましたが、有機農業推進のために有機肥料の確保、あるいは雨量の大変多い地域でございますので、雨よけのための措置でありますとか、あるいは市場が大変速うございますので、そのためには冷温の手だてでございますとか、それも一応倉庫に入れまして、その倉庫で一応冷温を設置いたしまして、そして運搬というようなことでやってまいりますので、もうあらゆる手だてを実はいたしてまいりました。  大変、マイナスシーリングの時代でございましたけれども、私どもの町といたしましては、町の農業を安定的にと申しましょうか維持して継続してまいりますためには、まず土地を守らなけりゃいけない、農家の皆さん方の健康を守らなけりゃいけない。安定的に、永続的に綾の農業を継続できますためには、消費者の皆さんたちの御理解をいただかなけりゃいけない、信頼をいただかなけりゃいけない。  そこで、都市の皆さん方との交流関係を初めといたしまして、あとう限り、各地域に直販所をつくりますとかあるいは市場等を開設いたしますとかもろもろの手だてをいたしました。これはつくる方は容易でありますけれども販売ということになってまいりますと、先ほども申し上げましたとおり、綾町という九州宮崎県の片田舎の小さな町でございますので、だれも綾町ということも知ってくれませんし、また我々綾町が、これは本物だ、ああだこうだと申しましても信頼してもらえませんし、この販売ということがどうしてもやりにくい状態でございました。  生産手だては、町づくりのために苦しくてもそう大きな問題とは思っておりませんでしたが、幾らつくっても保管のできないものは流通に乗らないわけでございますから、この点ではたと行き詰まってまいりましたし、このことが大変一番の悩みでございました。  それから、次にお尋ねの労働が多いということでありますが、最初の三年ないし五年は除草を初めといたしましてある程度苦労が伴いますけれども、それを過ぎますとさほど労働は変わりません。むしろ防除回数等は少なくなりまして、ある面では労働は低下をいたしてまいります。収量におきましても、これは三年、五年、十年とたってまいりますと収量も高くなってまいります。  先ほど東市さんの内藤さんのお話にもございましたが、有機農業は一〇%ないし一五%高くなるというようなお話でございました。最初のうちは一〇%、一五%高くても、労働が過重になってまいりますので、これはおもしろい産業ではない、こういう評価をいたしておりましたが、三年、五年とたってまいりますと、一〇%、一五%高くなりましても、化学肥料というのがノーでございますし、農薬代が非常に高いのでございますが、これがノーでございますから、価格は同一でも有機農業の方が歩どまりが多い、こういうことに相なってまいります。  私どもは、付加価値農業とよく言われますけれども、高く売るということよりも、安定的に、継続的に綾の農業ができる、現状の価格で売れればこれでやっていけると、こういう見通しを実は立てることができるように相なっておるのであります。  ただ、宮崎から東京に持ってまいりますのにはかなり運賃がかさんでまいります。こういったもの等は計算しなけりゃなりませんけれども、先ほどお話がございましたとおり、それでも若干高く指し値していただきますのでそれ等も十分カバーができる、こういう状態に相なってまいりまして、ただいま東市さんの方にも安定的に出荷をさせていただいておる、こういう実態でございます。  お答えにならなかったかもしれませんが、以上のような状態でございます。
  18. 谷本巍

    谷本巍君 ありがとうございました。  次に、澤登参考人に伺いたいと存じます。  四月二十五日の毎日新聞の「日曜論争」を資料でいただきまして、大変感動的に読ませていただきました。とりわけ、有機を農政の根幹に据えるという見事な論理の展開がそれにあります。この新聞の最後の方に次のようなことが述べられておるんですが、そのことについて伺いたいと存じます。   しかし、いわゆる「有機農産物」が「産消提携」の中に収まりきらなくなってきたことも事実だし、「産消提携」にもいろいろな課題が生じている。私たち自身、提携関係のあり方を見直さねばならないと考えているが、といってすぐに表示制度を導入して市場流通にゆだねるのでは、「産消提携」の中で育ってきた有機農業の姿をゆがめてしまう恐れがある。  というふうに述べておられます。  私が伺いたいのは、「「産消提携」の中に収まりきらなくなってきた」というのは確かな事実なんですけれども、ここで澤登さんが述べておられる「「産消提携」にもいろいろな課題が生じている。」と、この「いろいろな課題」というのは何なのか、このことを伺いたいということが第一点であります。  それから二つ目に伺いたいのは、澤登さんの考え方からしますというと、有機農業日本食料自給は達成できるんじゃないのかという可能性をこの中で示唆しておられます。ところで、私自身がここで伺いたいのは、有機農業は車との闘いとも言われておりまして、労働力の三分の一近くは除草作業に追われる場合が多いという話を聞いてまいりました。夫婦二人での適正規模で言うとどの程度が適正規模なのか、その辺についての澤登 さんの考え方を聞かせていただきたいということであります。
  19. 澤登晴雄

    参考人澤登晴雄君) 産消提携が今一つの大きな壁に突き当たっていることは事実です。それは何だろうかということを考えざるを得ないんですが、やっぱりこれは根本的には私どもの励みが足らないということは事実でございまして、この点は反省させていただいております。  それで、先ほどのお話の中に有機農業をやっている方は点だという話がありました。それをもっと大きな面に持っていくということが一つの大事がことじゃないかと思います。ですから、これはまだ私個人の段階ですが、最近は生産地で五人組をつくろうと言っておるんです。その中ではうそができない、本当のものが生まれできます、お互いに助け合ったり励まし合ったりすれば。  それから、今度は消費者の方との提携の問題も、これもひとつそういうものをつくっていって、そしてその提携の中で、小さい輪で地域自給の問題をやっていこうと。地域自給の問題が今までちょっと忘れられておったと思います。できるだけ小さい輪で、小さいところで自給をしていく。それの足りないもの、余ったものはまた小さい輪同士の連携でやっていこうと。生協あたりにそういう考え方一つあるわけですが、私どもはそれを逐次やり出しておるということも事実です。  そして、そこに市場がどう入ってくるかということは問題があるんですが、私ども、全然市場参入の余地がないということは考えておりません。それはやっぱり市場というのがいまひとつ高い立場でそれらのことをコントロールできるんじゃないか、こう思っております。方向性だけ申し上げて、申しわけございませんが、それが一つでございます。  それから食料自給の問題、これは逆に言いますと、先ほど郷田さんも述べられたように、有機農業をやってくれば生産が上がるんです。経費が少なくて済むんです。労力が少なくて済むんです。それが間違ったところに問題があるんです。今病んでいる状態です。アブノーマルなものをノーマルと思っているところに問題があるんですよ。だから、それをしっかり――大学もございます、試験場もございます。一つ農薬を開発するのに何億とかかかっておるという話を聞きますが、実はそれだけの経費があればそういう問題は解決するんです。もうその道はできておって、我々はやっておるんです。ただ、我々がやっておりますと、時にはばか呼ばわりまでされたり、あほう呼ばわりならまだよいが、時には山師呼ばわりまでされるというようなことだったんです、事実は。今はそういうふうに押し込めてきたいろいろな社会機構がございます。それを一つ一つ破っていただかないとならぬと思います。それさえ破れれば有機農業のみができると思っております。  それから適正規模の問題というのは、これは御承知のように一概に言い切れないと思います。一つの品種で一反歩十人でできるものもあれば百人がかるものもあります。価値は百人は百人の価値があるんです。これは一般論です。しかしながら、私どもが今考えておるのは、例えば私どもの関係者の中に金子さんという方がおられます。この方は、埼玉県の小川町で約二町歩の田畑と、それから牛三頭、それからウサギ飼ったり鵜飼ったりして、大体十軒ぐらいの家族を養っております。それから換算すると大体自給できる計算になります、今やっておりますが。  日本は非常に恵まれた国ですよ。四季があり、雨が多く、これに合う品種をつくり、これに合う農法を開発すれば、まだまだ私どもは自給は堂々とできると思います。今私どもは、いろいろな先輩やそれから学者の意見をかりまして有機農業による自給ということを大きな課題として打ち出していきたいと私個人は思っておりますし、大体皆さんの賛同を得られると思っております。  以上でよろしゅうございますか。
  20. 谷本巍

    谷本巍君 はい、ありがとうございました。  最後に、内藤参考人に伺いたいと存じます。  今の市場で見てみますというと、川下の方は大型量販店の時代になっておるのじゃないか、市場はもう既に値決めの力を失っているというような状況にあるのじゃないかと私は見ておるのです。そういう中で小売店、例えば果物店で言いますというと、ギフトとか特殊なものを扱うというところへの傾斜傾向というのは依然として直っていないというような状況の中で、有機農産物の取り扱いに、今度の法律改正での特定JASですね、それに積極的になっていくのはどこなのかというと、どうも私は量販店が一番積極的になっていきはせぬのかという気がしてならないのです。今度の特定JAS規格の設定で青果物の流通にどういう変化が生まれてくるか、その辺の可能性の問題ですね、それが伺いたいことの第一点です。  それから第二点は、生産行程にも問題があるんですが、小分けの段階でまがいものが入ってくるおそれがあるんじゃないのかという指摘がきょうのお話の中にも出ておるわけですよ。そこのところを防止する方策というのがないのかどうか。あるとすればこういう方法があるのではないかといったような考え方があったらひとつお聞かせいただきたいということです。
  21. 内藤徳雄

    参考人内藤徳雄君) まず第一点は、どのような変化が生まれてくるかという御質問です。  先ほど御説明したとおり、私どもの会社で数量で〇・四、金額で〇・五ということでお話ししたと思いますが、この程度の量でございますから、有機野菜の取り扱いが取り扱いの一〇%なりあるいは二〇%になってみないと正しいお答えはできないと思います。  それから、第二点の小分けの問題でございます。  市場経由をいたしましてスーパー、デパート等で、さらにまた小売専門店で販売をされているわけでございますが、それぞれの店舗での個々の販売方法といいますか、こういうことがございますので、私ども卵といたしますとこの分野につきましては現状まだチェック段階に入っておりません。当然、先生の御質問のとおり、この小分けをどうチェックするのかということについては今後の課題であろうかと思います。  これでよろしいですか。
  22. 谷本巍

    谷本巍君 はい、ありがとうございました。
  23. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 参考人の皆さんには、大変貴重な御意見をいただいておりまして、ありがとうございました。私は、社会党・護憲民主連合の稲村稔夫と申します。  最初に、四人のそれぞれの方に同じ課題でお伺いをしたいと思うのでありますが、それは、JAS法改正に入る前に既にガイドラインが施行されているわけであります。このガイドラインの影響というものがどういう形で、もう四月一日にあれであれば、まあ経過はわずかでありますけれども、それでももう既に市場に出回り、消費者に渡りという形になってきているわけでありまして、そういう中で、それぞれの皆さんの立場でどういう傾向にあるというふうにごらんになっておられるかということであります。  私がこれをお伺いいたしますのは、一つには、ガイドラインで決めました方向、方途というものが、これは生産者にとってもいろいろと問題がありましょうが、消費者という立場からいうと、今までは確かにそれぞれが相対で決めたりあるいは団体が決めたりというような形で表示がいろいろとされてまちまちだった。統一されたことは確かにいいように見えます。しかし、逆に今度は一定の権威を持つわけですね、その表示が。その権威を持たれた表示というのが果たして消費者に正確に受け取られるようなものになっているだろうかどうだろうか。  このことは、将来JAS法の中に有機農業なら有機農業を取り込んでいこうとするならば、今のガイドラインに問題点があるのかないのかということを問題にしながら、これを何か農水省も手直しをすると言っておりますから、それだけに発足をしてすぐにいろいろな課題が出てきているんじゃないだろうかという気もいたしますので、それぞれお考えをお聞かせいただきたいと思うわけであります。  最初に御意見をお述べになった順番でひとつよろしくお願いをいたします。
  24. 折戸進彦

    参考人折戸進彦君) おっしゃられましたように、法的に裏づけされた表示というものは一つの権威を持ちますので、その権威が実体としてあるならば私はそれは大変いいことだと思いますが、権威だけが先行して、中身が崩れていったときはさまざまの政治的不信を呼ぶことは事実でございます。その可能性はまだ実行したばかりでわかりませんが、既にさまざまな消費者団体でシミュレーションしている限りにおいては十分危惧されております。  例をもって申し上げるならば、米の流通段階で、小売段階でさまざまのブランド化が起きた途端に直ちに格上げ混米がされて、そして膨大な利得がそこに入っていったようなこと、そしてそれが最終的に米の消費に多大な不信感を与えて大きな問題を持ったというようなことがこれによって起きないかどうか私は心配しております。  つまり、行政はなかなか実態を先取りできない。したがって、十分なシミュレーションをして実体化をすることに十分な配慮をした後でなければ、なまじっかな権威は形骸化の前提になるということを申し上げたいと思います。
  25. 郷田實

    参考人郷田實君) このガイドラインにつきましては、先ほども申し上げましたが、私どもの町は条例をもちましてそれぞれの基準を設けてございます。ガイドライン有機農業と私どもの町のゴールドとは同様でございますので、全く問題はないのであります。  ただ、低農薬、低化学肥料、これにつきましては五〇%以上のものとなってございます。農林省の方の御指導も五〇%以上、努めて六〇、七〇、八〇%節減と、そのような表示をするようにという御指導をいただいてございまして、これ等におきましても、先ほど申し上げましたが、銀が八〇%、銅が七〇%と相なっておりまして、これらの線に沿いまして表示をいたすことにしてございまして、現在のところ何らの問題は生じていないのであります。  ただしかし、それぞれの作物に私のところはシールを張りますので、ただいまは移行期間でございますから、農林省の方にもお許しをいただきまして、私のところのものをそのまま利用させていただいております。若干、末端におきまして問題を生ずるのではないかという心配もいたしておりましたけれども、それらも十分御理解をいただきまして、あくまでも国のガイドラインに沿ったものである、こういうことで御認識をちょうだいいたしまして、これらも全然問題はございません。  先ほどもございましたように、我々町村の条例よりも国のガイドラインということになりますと、これはもう権威がうんと違ってまいりまして、先ほども申し上げましたように、早く国の方で権威ある表示をしてもらいたかった、こういう考え方を持っております。  以上であります。
  26. 澤登晴雄

    参考人澤登晴雄君) ここにニンジンとそれからジャガイモがございます。これは、九州でできたものを千葉の方の同じ団体が扱って一般のデパートで売っておられるということで、私どもの問屋さんが持ってこられたものなんですが、これを見ますと「有機農法」と書いてあるんです。ですから、これは有機農産物。その次には「農林水産省ガイドラインにより表示」と、こう書いてある。その次に、「転換期間中有機農産物」とまた書いてある。これでわかる人は少ないだろうと思うんですが、とにかくこういうのがもう出回っていることは事実なんですよ。  ひょっと見ると、これは農林省のお墨つきだと、こう思ってよいものだと思って買うんですが、これを私ども専門的に見ますと、これは、これをとるときの六カ月前に化学肥料とか化学物質の農薬を使わなければよいということでこの表示ができるわけです。そうしますと全部できます、実際には。  私ども、肥料なんというのは十二月に大体ほとんどくれてしまうものが果樹なんていっぱいあって、特に落葉果樹は全部そうです。それで後はくれなくて結構なんです。それから、そのときに物すごく残効性があって、今はコーティングをして一年間効くというようなそういう化学肥料だってあるんですよ。そういうものを使えば、もう楽々化学肥料を使って栽培ができます。それで、いつも転換中と言えるわけなんです。  これを消費者はわかりませんから、農林省ガイドライン有機農産物とあれば、本当にとうといものだと思って高く出しても買うと思います。それが、九州でつくって、千葉の方でそれをやって、物すごく全国回り歩くわけです。これがいっぱい出てくるんじゃないかと思って実は心配しております。そんなことが一つの今の状態で、私ども心配を申し上げるとそういうことです。  それから、確かに市場へ出ておる有機農産物は少ないと思いますが、隣近所や近いところでずっと出回っておる、本当の意味の顔の見える関係の農産物はいっぱいあります。これはほとんど表示しておりませんよ、実際が。表示の必要がないんです。だから、そこが大事だと思っております。その輪をどうして広げていくかという工夫をしないと、有機農業というのは全くだめなんです。こういうことが、どんどんどんどんこれに似たことが横行しますね。実際にはもっときっと上手があると思いますよ、御商売の上では。そのことを私どもは恐れております。
  27. 内藤徳雄

    参考人内藤徳雄君) 生産者側と中間業者といいますか、この二つに分けてお話をしたいと思います。  まず、このガイドラインが施行されまして、施行前、四月前とその後の産地側から、いわゆる表示内容が大きく変わってきておりますので、その調査をした結果がございます。東京都中央卸売市場の調べでございますが、申し上げます。  平成四年十一月の調査でございますが、大根以下十四品目でございます。このときの有機表示というのが七・五%あったということでございます。これは東京地方全体でございます。これが平成五年五月、施行後ですね、調査した結果については〇・五に激減したということでございます。まずこれが第一点でございます。  二点目といたしまして、四月十七日に、大田市場におきまして、コロラド州立大学のルイス・グランド先生をお招きいたしまして、有機農産物のセミナーを実施いたしました。これは中卸業者が主催で開催したものでございますが、卸売会社、中卸、さらに小売買参、さらにスーパーマーケットのバイヤー等々を含めまして約四百名の参加があったということでございます。いわゆる関心の深さというものが非常にうかがい知れるということでございます。  以上でございます。
  28. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 それぞれありがとうございました。  今の内藤参考人のお話を伺いながら、そしてその前の澤登参考人のお話、関連をさせて伺っていながら、私は、特に有機農産物市場流通をするということの問題、これは今後いろいろな課題を持っているんではないだろうかという気がするものですから、それでお伺いしたいと思うんです。  内藤参考人にお伺いしたいのは、市場に、特に中央卸売市場に集結するということは、極端に言えば全国からこれを集めるということになってまいります、量がふえればふえるほどですね。ということになってまいりますと、鮮度の問題であるとか、それから先ほど郷田参考人がちょっと言っておられた輸送費の問題だとか、そういう問題が加わってくるということが言えると思うんです。  それからもう一つは、中央から地方へまた再拡散というんでしょうか、地方へまた行く場合というのがあると思うんです。特にそういうふうになってまいりますと、鮮度であるとか運賃とかというものの問題がさらにそれに加わってくるということになってまいります。その辺のところが一つこれからの、有機ということで特別なコーナーをつくられて対応しているわずかな量の間はそれなりの対応でいいんでしょうが、これがふえてくるということになるとその辺の問題が大きな課題 になるんじゃないだろうか。その辺はどういうふうに考えておられるかということであります。  それで、それと関連をして澤登参考人にお聞きしたいのは、確かにおっしゃるように地域で直接相対で買われる、家庭で相対で買われるような場合、これはそういう表示は必要がないという場合が多いと思うんですけれども、例えば私なんかの場合ですと、私のうちにはもう生産者が直接毎朝人がかわりながらやってきて、「おらもお前さんの支持者たての」と言って持ってこられる。そうすると買わざるを得ぬというようなことになるんですけれども、そうやって持ってこられる。これは表示も何もなくて、その人を信用して買うということになります。  しかし、地域を中心にして考えていったときに、日本の人口は極めてアンバランスで、一極集中で、東京とかを中心にした大都市に集中していますね。地域で確かに新鮮なものはあれされる可能性を持っておりますけれども、そうすると、中央の体制というのをどういうふうに考えたらいいんだろうか。そういう問題が一つあると思うんです。その辺は、私は、参考人のおっしゃるように、地域を中心にしてできるだけ新鮮なものをというのは賛成なんですよ。が同時に、じゃ東京はほうっておいていい、大阪はほうっておいていいというわけにはいかない。そんなふうに思うものですから、それでその辺のところをぜひお聞きをしたいということです。  それから郷田参考人には、私、時間の関係もあるものですから、先に全部それぞれ御質問申し上げますが、先ほどから私は綾町の条例というのも拝見をさせていただいているんです。条例ですから細かいことはうたっておられません。しかし、例えばその基準については、「審議会の意見を聴いて町長が別に定める。」、こう十三条の二項で言っておられますし、それから「検査員は、町の職員又は自然生態系農業に関し学識経験のある者のうちから、町長が任命」するというふうに書かれております。  そこで、基準というのがどういう基準を持っておられるかというのを、全部ということではございませんで、考え方で、こういう基準で物は決めていっていますよということで結構なんですけれども、教えていただければと思います。  それから、検査員というのは、これは実はやさしいようで面倒な問題なんじゃないかと思うんですけれども、町長さんの御経験で検査員の任命はどのようにしてやってこられましたか。その辺をお聞かせいただければというふうに思います。  最後に、折戸参考人にお伺いしたいんでありますが、生協という組織を通じてのいろいろな活動の中、今まで多くの生協では私は減農薬農産物を扱っているという例は聞いているわけでありますけれども、その減農薬というのが非常にあいまいで、基準がどうもはっきりしない。いろいろな問題が、先ほど澤登参考人が御指摘になったような問題なども転換中ということで今度新たに出てくるという感じもするわけでありますけれども、今おたくの生協の方ではこうした有機農産物の扱いというものはどういう形で取り組んでおられるか、その辺のところをお聞かせいただければありがたいと思います。  以上であります。
  29. 内藤徳雄

    参考人内藤徳雄君) ふえた場合はどうするんだという御質問ですが、昨年の実績でいきますと、東京中央の野菜全体は約百九十万トン入っております。先ほど御説明したとおり、大田市場築地市場さらに北足立市場ということで、いわゆる有機野菜といいますか、これに取り組む卸売会社も数多くふえてまいっております。  そういう中で、お客様の要望、言いかえますとスーパーマーケットなり一般小売の専門店、非常に要望が強いということでございます。したがいまして、全体の一割まではそうは簡単にいかないと思いますので、私どもは現状の中ではふえても十分対応できるというふうに考えております。  さらに、コスト面で御質問がございましたけれども、それぞれ地域の中でまず地元からというようなことは、この有機野菜といったものについてはいきなり中央へということは余りなさそうでございます。したがって、まず地元を埋めてから中央へというようなことでございますので、なかなか中央まで来るということは時間がかかるんじゃないか。  御指摘のとおり、コストが高くなることは当然でございますが、北海道から大根を持ってくる、さらにキャベツを持ってくる。これとてすべて同じでございますので、どうしても遠隔地の場合はコストが高くなると思いますけれども、転送の部分についてもそういったことでございますから、さほどまだ量的な問題からしてあれなんじゃなかろうかなと、そんな感じがいたしております。  以上でございます。
  30. 澤登晴雄

    参考人澤登晴雄君) 一極集中は悪いことなんだということが私どもの基本的な考え方なんです。だからこういう悲劇が起こるんだということも一つで、社会から農という生命産業の中にいろいろの手が入ってきて、そこに、時には立派な流通業者もありますが、実際にそれを食い物にしておる流通業者もございまして、私どももそれに踊らされている面がある。今度はそれがやりやすくなったということも私どもは大きな問題だ、こう思っております。  ただ、理想的に言いますと、私、実は、ついこの前の六日に山梨県の私の村で小梅とりをやったんです。どういうわけかというと、農村にもう小梅をとる労力がないんですよ。あんな小さいものをとって売っても間に合わない。それで、私は多少知っている方々と話をして、どうだろうかと言ったら、わっと八十何人来まして、こうしてとって、実によかった、楽しかったと言うんです。  実はこれなんだと思うんですが、いま一回私はこういう線を組織し直すことが大事じゃないかと思うんです。私どもは、一つは、有機農業というのを単なる金もうけということでなくて、やっぱり生き方の問題、と世の中のあり方の問題、それの不正があったら食という一番大事なもので正すという一つの徹底的な深い決意を持っております。それがないとこの問題は全部解決できないと思っております。ですから、私どもは一歩でも一つでもよいからそれで前進していきたい、こう思っております。  それで、たまたま私の村を町長さんが感激しまして、皆さん、これを第一回の交流会にしよう、今後ずっと交流会を続けます、ブドウのときはブドウ、リンゴのときはリンゴとりに来てください、いろいろのことをやりますということを言って、今度は地元の町会議員さん、それから組合長さん、みんな出てきて、もうとにかくやろうと、非常に感激の情があったんですよ。  私どもは、今それのみが、それが有機農業の本当の姿じゃないか。そして、有機農業でやります、ここを果樹の有機農業の里にしますと、こう町長さんが言い切るんですよ。私は、その運動として私どもの会があるし、私どもやっておるし、その線でないと何も解決できないじゃないか、こう思っております。  以上であります。
  31. 郷田實

    参考人郷田實君) 基準につきましては、農地検査基準というのがございまして、いろいろPHですとか、その他有機質等あらゆる検査基準があるんでございますけれども、まことに申しわけございませんが、私ここに資料等持っておりませんで、それらをここでお答えできませんことを大変恐縮に存ずる次第であります。  あるいは農薬等におきましても、それぞれの品目につきまして、この作物にはこのような病害虫が想定される、それには無機質の農薬じゃなくてこういうものは使ってよろしいよという、これもそれぞれの基準をつくっておるんでございますが、それも私失念いたしておりまして、ここでお答えできませんことを大変恐縮に存じます。まことに申しわけございません。  それから、検査員の任命でございますが、これも二つございまして、土壌検査員と管理検査員とがあるわけでございます。  土壌検査員は有機農業センターの職員をして当たらせてございます。有機農業センターには役場、農協からも出向いたしておりますが、県の農業試験場の土壌の専門の技術員でございますとか、その他県のOBの方に数名入ってもらっておりまして、それらの皆様方をそれぞれ検査員といたしまして任命してございます。土壌の方はそのようなことで有機農業センターの職員を検査員として任命いたしてございます。  それから、管理検査員でございますが、管理ということになりますと、肥料をやりますとか、防除をいたしますとか、あるいはマルチをいたしますとか、いろんなことをいたしますが、そういった管理運営の検査員でございます。これは防除センターの職員プラスそれぞれの集落に二名ずつ副検査員というのを置いてございます。この副検査員というのがほとんど検査をやってくれます。  綾町の有機農業として出すものを、だれか一人か二人でもそれに違反するようなものができたら、綾町全体の名声がダウンするんだということで、それぞれがお互いに牽制し合っておりますので、これはもうみんなで監視いたしておりますから、副検査員を二人置いておりますけれども、もう副検査員でございませんで、みんなが検査員と思っていただいてもよろしいぐらいに……
  32. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 相互監視体制ですね。
  33. 郷田實

    参考人郷田實君) はい。そういう状態に相なってまいります。またそこまでまいりませんとこれは本物ではないと思います。しかし、一応検査員の任命はただいま申し上げましたようなことで任命をしておるわけでございます。  以上でございます。大変申しわけございません。
  34. 折戸進彦

    参考人折戸進彦君) それぞれの生協におきまして、農産物の取り扱いについては厳しく農薬の種類から量について制限をし、決めているところがございます。それは後ほど資料で差し上げたいと思いますが、生活クラブ生協についてお答えいたします。  基本的に、生活クラブ生協におきましては、農業あり方として有機農業、つまり有機肥料を使い、なおかつ農薬をなくしていくということが基本ではございますけれども、現在、有機農業とか減農薬とかという表示は一切しておりませんし、そのようなことを組合員にうたっておりません。これが第一でございます。  なぜならば、第一の原則としてあるのは、まず何よりも食い物をつくってくれる農家経営の安定、継続的取引が第一でございます。これなくして一方的な有機農業やなんかのお勧めは生産者にできない。したがって、まず農家経営がお互いに生活クラブとつき合うことによって成り立つことができたならば、どのような産物をつくるかという話に入っていきます。したがって、そうしたところをクリアしたところはいつ検査していただいてもいいだけの完全無農薬、有機肥料で十分なる成果を上げていることも中に入っております。ただし、そのことでもって特別価格の評価はいたしておりません。  それから、そのために生産者の地域の農業の共同化、生産の共同化、さまざまの行為に取り組んでおります。肥料工場は共同建設し、あるいは養豚場から出たものは地域の有機農業家に展開し、しかもそれは全体コストの中で安くやっていく、こういう形で有機農業が構造的に成り立つようなことを協同組合として積極的に進め、それらの成果を十分評価しております。  三つ目には、そのための知識の交流と学習会の組織をしております。これによって、そこに参加した人たちがみずから進んでそのようなことを知り、農業あり方を学んでいってもらい、しかも、個人的な苦痛を少なくしていく形で有機農業へ移っていくということ、そうした一連の行為を食べることによって支えるというのが正しいのでございまして、食べることのエゴイズムを生産者に押しつけて、そして有機農業が生まれてくるものとは考えておりません。  したがって、社会に対して減農薬とか有機農法とかということを殊さらに申し上げないで、そうした構造づくりに専念し、かなりの成果を上げていることは申し上げたいと思います。
  35. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 ありがとうございました。
  36. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 本日は、参考人皆様には、御多忙中のところを御出席賜りまして、本当にありがとうございました。時間の関係もございますので、数点にわたって質問させていただきたいと思います。  まず最初に、参考人の皆さんから先ほどお話を伺いました私の所感というものを申し述べたいと思います。  四人の参考人の皆さんのそれぞれのお立場から、経験豊かな、御苦労されたお話を伺いました。消費者立場から見て、国民の立場から見て、本当に四人の参考人の皆さんが必死になって、国民の健康と安全、そういうふうなものを中心にして非常に努力をされていらっしゃることを伺いまして、心から感動を覚えているものでございます。そういう中で質問をさせていただきたいと思います。  まず、郷田参考人にお伺いをしたいと思います。  一つは、具体的な面では今、無農薬一〇〇%、これをゴールド、金の表示、八〇%の減農薬、これは銀、そして七〇%近くは銅、こういう表示消費者方々にどういう評価を与えていらっしゃるか、こういうことをひとつ伺いたいと思います。  もう一点は、今日に来るまでに手を尽くして必死になって努力をされた、そうして創意工夫の中で生産物というものが、これであれば消費者の皆さんに大丈夫だと思ったけれども流通業者にも消費者にも評価をされなかった、この歴史過程というものには無念の立場もあったと思います。それが六十年に立案の町条例が六十二年から施行されて、そうしてやっと生産流通消費者、それぞれ理解をしていただくようになった、こういう話を伺いました。質疑でもございましたけれども、もう一回御苦労の点を参考のために伺いたいと思います。  これに関連をいたしまして、内藤参考人にお伺いをするわけであります。  すべての人、組織、いろんな中ではやはり善悪があると思いますけれども、企業側になります卸売業者の内藤参考人の会社では、本当に私もきょう聞きましてびっくりしましたけれども、産地に行って担当者がきちっと見きわめてくる。ここまでは消費者にいろんな物を売る方々は行かれると思います。しかし、お客様を産地に案内をする。そうして商品の説明会もする。そうして個性化のコーナーを設けてやっていかれる。  パーセンテージは非常に少ないけれども、忙しい現代の中で消費者立場から見るとほっとするものがあろうかと思いますが、郷田参考人のところとどういういきさつでつながりがあったのか。そうして、今も定着はされておられないと思いますけれども、出てきた出費というものも大変だと思いますが、今後どういう出費があっても続けていただきたい。そうして、いろんな問屋さんが内藤さんのところを本当に参考にするようにしていただきたいと思いますけれども、その御関係の最初の出会いはどういうところにあったのかということをお伺いしたいと思います。  それから、折戸参考人にお伺いをいたします。  意見の要旨もいただきまして、現行JAS法の不備を放置しての改正はないと非常に厳しい指摘をいただきました。これは我々の立場からも、そして国民も、物に対して戦後の大きな不信の中で努力をしていただく方々の品物を見て、許されないというふうな歴史的な過程があったことも折戸参考人を初め皆様方のお話のとおりでございます。  そういう中で、生協のそれぞれのグループとしては非常に大変な御努力をされていらっしゃると思いますけれども、契約栽培という形のものが農家の方の安定とかそういうものに通じていくと思うわけでございますが、こういう点の御苦労等々、もしありましたらお話を伺いたいと思います。  それから、最後でございますけれども日本有機農業研究会を四十六年に結成されて、日本で初 めてこの名称を使われた澤登参考人にお伺いをしたいわけでございますが、土壌という立場から見て、化学肥料のこれとこれというものはバランスという立場からでも相当の注意をしていかなくちゃいけないという、そういう自然生態学の立場から御指摘がございましたら、お伺いをしたいと思います。  よろしくお願いいたします。
  37. 郷田實

    参考人郷田實君) 先ほどから申し上げておりますとおり、金、銀、銅のランクづけをいたしておりますが、この金、銀、銅のランクづけというものにつきましては、必ずしも評判がよろしくないのでございます。  それは、スペースが少ないのに、同じキュウリでも金のものと銅と鎖とをそれぞれ山をつくらなけりゃいけない、スペースが余計要るというのが一つございます。もう一つは、金のものが先に売れてしまって、そしてあと銅、銀が残ってしまう。こういったことからいたしまして必ずしも評判がよろしくございません。  なお、福岡のグリーンコープという生協に納めておりますが、ここでは私のところのシールを張ってくれません。綾町のものにだけゴールドだ、シルバーだと張っても、よそのものが張っていない。そこで、綾のものだけがいいものでほかのものは悪いものになるので、これはぐあいが悪いというのでここは張ってくれません。  そこで必ずしも評判がよろしくないと申し上げたんでございますが、しかし、地元の綾町あるいは宮崎市あたりにおきましては、今度はこれが張ってございませんと、これはどうしたんだということになりまして、ここあたりではまた張りませんと評判が悪いわけでございます。それで、実は両面ございまして、必ずしもという表現をいたしましたのはさようなことからでございます。  今回、農林省の方で一応JASマークということに相なってまいりますが、これらが出ました場合におきましては私どものこの表示の仕方も見直すべきではないか、こういう考え方が既に意見として出ておるような状態でございます。  それから次に、先ほど申し上げましたように、私どもは二十数年前から本当に謙虚に話し合いをして、実は私どもの町は宮崎県でも一番貧乏な町でございます。山国でございまして、農地は町面積の約一〇%しかございません。八〇%は山林でございますが、その大部分は国有林、県有林でございます。山を持たない町民でありますし、農地もほとんど持たないという、全国平均、宮崎県平均の半分以下しか耕地を持たないという小さな貧乏な町でございます。  綾北川、綾南川というのがこの中にございまして、これがまた川が荒れほうだい荒れておりますから、耕地がもう非常に浅いんでございます。生産性が非常に低うございまして、何も出荷をしていなかった町でございました。ただ国有林の労働で成り立っておった町でございました。これが機械化が進みまして大変な過疎の町に落ち込みまして、五年間で町の人口が半分になってしまうという、夜逃げの町綾という大変な町からスタートしたのでございます。  それで、わらをもつかむような思いで、働く場所もない、工場も来てくれないというので、何かをやろうということでみんなで話し合って、手づくりの町、有機農業の町、本物をつくる町として、これから物を売るのにはどこにも負けないものをつくろう、健康を買う時代がやってくる、そのものをつくろう、こういうことでみんなで話し合って努力しました。無家畜農家にみんななっております。堆肥を生産しますのにも、まず有畜農家ということから考えていかなけりゃなりません。いろんな努力をしてまいりました。  つくりますと、まあ十年もたってまいりますと、先ほども申し上げましたけれども、労働も落ちできますし、必ずしもコストも高くはならないわけでございますが、最初の二年、三年、五年ぐらいまでは大変な労働が加重されてまいります。できますものの生産も落ち込んできます。こういうことでございますので、それらの生産費は全部町費で持ちまして、価格保証をいたしました。ホウレンソウは最低保証を一把四十円とする。これが二十円で売れました場合におきましては四十円で精算をする。大根一本幾らと全部価格保証、こういったことで十年余り町費をもちまして価格保証をいたしました。  その他、生産資材費等におきましても、例えば雨よけ、雨よけをいたしませんと私どもの宮崎県におきましてはお野菜なんというのはできないのでございまして、これらは町費をもちまして三分の一助成をいたしました。  かくのごとくに、あらゆる努力をいたしてつくるのでございますが、ところがつくったものが売れないわけでございます。買ってくれないわけでございます。今度は自動車をもちまして売り歩かなければいけません。役場職員、農協の職員が自動車でマイクをつけまして団地などを売り歩くという、そういう努力を積み重ね積み重ねてまいったのでございます。  本当に私ども、私は当時町長でございましたが、私も自動車に乗りましてマイクで声をからして訴えて歩くという、こういう状態が何年となく続いたわけでございます。そういう中から条例化ということに踏み切ってまいったのでございまして、何とか今日認めてもらう状態に相なってまいったところであるのであります。  お答えにもならなかったかと思いますが、さようなことでございます。
  38. 内藤徳雄

    参考人内藤徳雄君) 出会いはどのような出会いであったかという御質問でございますが、私の記憶では、昭和六十二年か三年ごろだと思います。まだ大田市場は開場しておりませんで、当時、神田市場で私どもは営業していたわけでございますが、そのときに、生態系農業推進協議会事務局長だと思うんですが、亘さんという非常に熱心な女性の方が私を訪ねてまいりまして、実は中央卸売市場でこういうような安全性といいますか、あるいは有機裁倍野菜といいますか、そういった野菜を売ってほしい、あるいはそういうようなコーナーをぜひ設けてほしいというような要望がございました。  一つのそのような団体からのお話で、私もお会いしまして、謙虚に受けとめていろいろ検討した経過もございますが、さて、いざ売り場にそのような場所を設けられるか、スペースの問題も含め、あるいはまた、先ほど参考意見で申し上げさせていただきましたいわゆる定義づけなり裏づけをどうするのかというようなことも含めまして、実は三年ほど温めておったということでございます。  そうして、大田市場開場とともに再三再四亘さんが見えまして、何とかひとつ大田市場でこのような売り場の設置をお願いしたいという強い要望が何回もございまして、それと同時に、先ほど申し上げたとおり、企業の方針としてこういったものも積極的に取り上げていこうという社内的な合意もいただきましたので、実は平成三年にそのような売り場を設けたということでございます。そういうことからの出会いで、まず一番最初に綾町の方へいろんな野菜をお願いした、それが出会いといいますか、つながりの初めであるということでございます。  以上でございます。
  39. 折戸進彦

    参考人折戸進彦君) 安定経営と安定販売と申しますか安定消費のための栽培契約というものは、何も生協だけの特許じゃございませんでして、それぞれのスーパー等でも苦労されているところでございます。  私どもが特に苦労しますのは、実は栽培契約の中身の実行はさほど苦労がございませんでして、契約外事項の発生したときにどのくらいお互いが努力できるかということでございます。例えば、台風でリンゴが落下する、ひょうが降って梅が全部傷ついたというようなときは、しばしば想定している以外の契約外事項が発生します。それらについて組合員がどれだけ了解して傷ついたリンゴでも傷ついた梅でも引き取って最小限の被害にとどめるかどうかというときにそうした契約の継続精神が生きてくるということでございまして、そ の辺がありませんと非常に無機的な契約ということになります。  それで、今回の特JASにつきましても、そうした無機的な関係で契約がされて栽培されていったときの惨たんたる結果について私は非常に心配をしているということを申し添えたいと思います。
  40. 澤登晴雄

    参考人澤登晴雄君) 実は、私は化学肥料を使わないからなかなかその点は大変なんですが、やっぱり酸性土壌が基本ですね。それに対して酸性の残るもの、硫酸アンモニアだと硫酸が残ります。塩化カリだと塩素が残ります。それが土の中の有用微生物を殺してしまいます。そういう問題が一つあると思います。  それからいま一つは、コーティングして半年かかって効くものとか、中には一年かかって効くものとか、本当にやる気になれば三年後でも効くというものができるわけなんです、理論的には。そうしますと、三年間無化学肥料といっても、それがむだになってしまう。どうしても提携でないとそういうことがわかりません、実際が。それをやるつもりなら今の科学ではできます。  だから、そういうことを申し上げて、ただ、具体的な一つ一つの個々については、私どもはやらないという、化学肥料を使わないという決意をしたから、なかなか――もっと詳しい方がほかにあると思いますが、そのくらいで御勘弁願います。
  41. 林紀子

    ○林紀子君 日本共産党の林紀子でございます。  きょうは、参考人皆様、お忙しい中を本当にありがとうございました。私の持ち時間というのが十分しかありませんので、全員の方に御質問できませんので、あらかじめお許しいただきたいと思います。そして、初めに質問を申し上げますので、その後順次お答えいただけたらと思うわけです。  最初に、郷田参考人にお伺いしたいんですが、綾町をどんなふうに御苦労なさって有機農法の町にしていったかというお話、私も感動を持って聞かせていただいたわけですが、最初のお話のときに、有機農法というのは土づくり生産出荷というところが一つの流れであるというお話を聞かせていただきました。今回の法律ではこの出荷のところの表示というものが決められるということなんだと思うわけですが、十年間保証を町としてやっていらっしゃるという。そういうことを国の段階ではどんなふうにしたらいいのか、土づくり生産のところも含めましてどういうふうにお考えかというのを聞かせていただけたらと思います。  それからあと一点。先ほど野菜というのはミネラル分など入っているべきものが入っていない、それから入っていてはならない化学物質が入っている、これがともに危険な野菜なんだというお話を聞かせていただきましたが、それに関連いたしまして、水耕作物のことについてちょっと触れられましたが、これは有機栽培をした野菜と言えるものなのかどうか、この辺のお考えを聞かせていただきたいと思います。  次に、内藤参考人にお聞きいたしますが、流通機関から生産者への要求というのは、一般の野菜でもこん包から農産物の姿かたちまで大変厳しいものがあると思います。生産者にとってこれは大変大きな負担になっているわけです。私も以前、野菜生産地を視察に行きましたときに、キャベツの産地でしたけれども、虫が一匹入っていたらそのキャベツの値段というのは半値になってしまうという話を聞きまして、大変なものだと驚いたわけです。ですから、防衛上、出荷する間際に箱詰めの段階農薬をまかなければいけないというような大変なお話も聞いてきたわけです。  有機農産物ということになりますと、虫が入っているなどということはあり得ることなわけですけれども、今までと同様、農産物に対して大変厳しい要求というのが量販店の方などから突きつけられてくると思いますが、こういうことをしなければならないのかどうかということも聞かせていただきたいと思います。  それから、先ほどのお話の中で、問題点が四点あるというお話がありましたが、その三点目、四点目などというのはいまだに解決をしていないんじゃないかと思いますので、有機農産物が今の流通システムに乗ることができるのかどうか、これはどう考えているかお聞かせいただきたいと思います。  最後に、澤登参考人にお聞かせいただきたいのですけれども有機農業というのは人類の歴史が始まって以来やってきた方法で、これは特別なものではない、これが特別になっているところが悲劇なのだという基本的なお話も聞いたわけですし、それからこの法律表示規制に矮小化すべきではないというお話がありましたけれども、それでは、有機農業というのを本当に育てていって本来あるべき姿にするためには、総合的な施策というのは国はどういうことをやっていくべきか、具体的な点を挙げて御説明いただけたらと思います。
  42. 郷田實

    参考人郷田實君) 私は、水耕栽培のものは有機農産物とは認定をすべきではないのではないかという考え方を持っております。あくまでも土壌に含まれております各種ミネラル、それらを吸収しておるものということでありまして、無機質の肥料でつくったものにつきましては、それらの栄養素は包含されていない、こういう作物であるというふうに一応見ておるところであります。そこで、先ほども申し上げましたように、基準の節にはそれらをJASの基準の中には入れてもらわないようにという希望を申し上げたところでございます。  なお、この土づくりでございますが、今回のガイドラインにおきましても三カ年以上の土づくりをやったものということに相なっておるようでございますが、私どもの町におきましても三カ年といたしておるのでございまして、私はしゅんのものでしたら三カ年程度土づくりをやっていただきますならば、国で言われます有機野菜というものの生産が可能であろう、こういうふうに私どもの経験からいたして思っておるのであります。宮崎と申しますと、南国、最も病害虫の多発するところでございまして、そこでも何とか対応ができますので、その他の地域におきましても三カ年で対応しゅんのものでしたらでき得る状態になるであろう、こういうふうに考えておるところでございます。  以上であります。
  43. 内藤徳雄

    参考人内藤徳雄君) キャベツに虫が一匹ついていたら半値に近い価格になってしまう、どうなんだという御質問でございますが、例えば小売店の店頭で一般の消費者の方は、虫の付着しているものとしていないものがもしあったとすれば、恐らく虫のいないものを選択するんではなかろうかと思います。  事例といたしますと、いろんな事例がございます。レタスの中へナメクジが入っておりました、ミミズが入っておりました、そのことによって消費者から大変なお小言をいただきましたと、これはスーパーではなく、スーパーもたまにございますけれども、一般の小売店の方々からそういうような苦情が実は私ども卸売会社にも時たま来ております。その都度、私どもはお客様を通じて消費者方々へ、謝罪に行くと言うと大きな表現になると思いますが、そういうようなことをしているわけでございます。  逆に言うと、有機農産物というのは多少の虫がついていても当然ではなかろうか、そういうことで、消費者あるいは小売店、市場関係者、出荷団体といいますか、そういった方々がすべて理解をするというか、そういったことを深めていくことが一つの前提になると思いますが、私どもといたしましても、現実問題としてそういう問題が現状起きていることは事実でございます。それで、お尋ねの虫が一匹ついていたら半値になるかということは極端な事例かと思います。  さらに、流通システムにこれは乗るのかという御質問に対しましては、このことにつきましては、先ほど申し上げたとおり、私ども市場流通業者にとっては、ガイドライン、明確な枠組みができたということの中で、お客様に対し説明もしやす くなった、あるいはまた産地に対してもお願いができやすくなったということの中で、流通システムには乗ると確信をいたしております。  以上でございます。
  44. 澤登晴雄

    参考人澤登晴雄君) これは根本的なことでございまして、何といっても、一番最初に有機農業が本筋の農業である、当たり前の農業であるという位置づけを徹底的にやらなくて、中途半端のことをやったんではどっちつかずのことになるということが一番私は大事なことだと思います。  考えられることはいっぱいあります。まず一つは、有機農業の研究なり、それを正面から大学とか試験場とか農水省が音頭をとってまずやってもらうことです。しかしながら、そのときにあくまでも民間の技術というものをばかにしてはだめなんです。まだばかにしているんですよ。あれはばかのやることだと言う。非常に精神的なことですが、そのことが大事なことになると思います。  それから、今、有機農産物市場流通という問題が非常に出てきておって、そのとおりなんですが、その前にやることがいっぱいありますね、隣近所の話から。その中で市場流通を考えたい。最近、御承知のように朝市なんというのを市当局でやっておりますが、あれは今の近代化農業に対する地方の行政一つの抵抗だと思います。そういうことをもっともっとやっていけば、もうずっと有機農業をやらざるを得ないんですね、お互いの顔を見ている関係では。  それをやっていなくて、中央何とか卸売市場法とかというのがあって、東京へ持ってきてまた全国へ散らばすような、物すごい経費をかける合理主義というのがはやっておって、関係者が、つまらぬ方々がつまらぬ労力をかけて、ある意味ではもうけているというような、そういうことがいっぱいあります。  それからその次に、これはやっぱり何といっても土の問題ですね。土に対する考え方が、土というものは一番汚いものだというような考え方があり過ぎる。私どもは、土は最も神聖なものであるということを徹底的に考えなくちゃならぬのじゃないかと思っております。  それから、今ぶつかっている問題は、ガイドラインをせっかくあれだけやったのに、どうしてこれへ持っていくかということで、端的に言えばJASにやらないということだと思うんです。それをやらないとつぶれてしまいますよ、実際が。その間に、悪徳業者と言っては申しわけないですが、上手に泳ぐ業者がありましていろいろなことをやってもうけてしまいます。農村はつぶれます。私はそれが今一番の大事なことで、やる人がなくなってしまうんです。やる人がいないとできません。もっと楽しい農村ができて、週休五日制になったんですから、二日間の間にもっと農村の中へ行く、村の中へ入っていく、できたら自分の出身の村々へ行って、一緒に育った若い人たちと話をする。そしてその知恵を持っていって、またお互いに知恵を出し合っていけばもっと出てくるんじゃないですか。  何といっても、私はいろいろな施策は幾らでも挙げられます、形の上では。もうとにかくやりやすいようにしなくちゃならぬということが一番の大事な問題だと思います。そして、いま一つは、そのことを農政の中にはっきり位置づけるということです。そのことを何としても――これだけ言っても事実は農政はなかなか大変だと思います。  承るところによりますと、JASという形なり有機農業ということを農水省の中で言うことすらなかなか大変だったという話まで聞くわけですから、それはどこに一つのネックがあるか、いま一回これは私どもも考えなくちゃならぬですが、とにかく生産者消費者が提携するということから基礎が始まります。  それはどういうことをやるかということ、そのことをお互いに知恵を絞ればいろいろなことが私は出てくると思うんですよ。案外それをやらなくて、もっといわゆる合理的な市場というようなものをやり過ぎて、そして本当にそれは市場が育たないことになります。罪の意識を持って市場を狂わせるというような人が出てくるんですよ。そのことは一つの大事なことだと思っております。
  45. 星川保松

    ○星川保松君 きょうは御苦労さまでございます。  それぞれの参考人の皆さんの貴重な御意見をお伺いいたしまして、お一人お一人、いわゆる有機農業というもの、そして有機農産物というものを生み育てるためにそれぞれ大変な御努力をなさっておられるということをお聞きいたしまして、私も心から感銘深く承りました。  それで、澤登さんにお伺いしたいんですが、皆さん、有機農業というものを進めなければならないということについてはそれぞれもう大変な優劣のない努力をなさっておられるわけです。ただ、今回のこのJASマークのことについては大変な見解の相違が見られるわけでございます。私は、澤登さんのおっしゃるように、農業というものはそもそも有機農業であったし、それが当たり前だということをお伺いしまして、私もなるほどなと思いました。  私たちが子供のころというのは、肥料なんかも魚かすを使ったり豆かすを使ったりしてやっておったわけでありまして、そういう時代があったんですが、その後食料難時代に差しかかって、増産増産ということで、まず量を出さなければいけないということで化学肥料もどんどん使う、それから品種も多収穫品種というのが開発されて、米などはもう多収穫の品評会をやるというようなことをやってきたわけです。それが有機農業を壊してしまったんだということを考えますと、やはり時代の趨勢からしてやむを得ないものがあったのかなという気もするわけなんです。  今、有機農業に立ち返らなければならないということをようやく皆さんが自覚してこられた。それについてはきょうの四人のそれぞれの参考人の皆さんが先覚者的な役割を果たしてくださったわけでありますが、農水省としても、これは今までのようなわけにはいかぬというので、それでは有機農業を育てよう、有機農産物というものをもう一遍取り戻そうということを考えて今回こういう法的措置を打ち出したのではないか、こう思うんです。  それで、澤登さんは農水省不信が大変大きいようで、私も、澤登さんほどではないんですけれども農水省があんまり信用できないで、いつも文句ばかり言っておるんでございますが、ただ今回、いわゆるJASマーク、つまりこれが農産物としてのスタンダードだというふうなことで、有機農産物として言うなれば認知せざるを得なくなったということだろうと思うんですが、それは皆さんの御努力の結果だと思うんですよ。  それで、今回のこのJAS法をつくって、それを生かして有機農業有機農産物の方向に日本農業なり農産物全体を持っていくというふうなことができないものか、こういうふうに考えるんですが、まず澤登さんからお伺いしたいと思います。
  46. 澤登晴雄

    参考人澤登晴雄君) 一見そのとおりに思うし、常識的にそういうふうなあれがあります。  それで、一つの問題は、本当に生かしてそれができるかということなんです。御承知のように、これは生産行程管理者というのがとにかく物すごい実力のある、人格、識見とも整っている人でないとできないということです。そうしないと後は全部狂うんですよ。それが大事なことだと思います。それは法律ですものですから、私はそのことが一番大事なことになると思うんです。  いま一つは、そのことは逆に言うと、この法律の趣旨が、とにかく有機農業では一般的に全部の生産を賄うことはできないということをはっきりやった立場で、いわゆる付加価値ですね、その説に立っておるというところに問題があるんです。その認識に問題があるんです。これはそうなってしまいますと、実際問題として有機農産物と称するものの値段は上がります。それからそういう取引業者がいっぱいふえできます。そしてそのツケをだれがとるかというと、生産者消費者がツケを払わなくちゃならぬということが事実出てきま す。ですから、基本的にもう全部狂ってしまうんです。それは法律ですもの。そういうことをはっきりうたった法律だということに問題があります。  それで、これは説明すればさっき言ったようにあらゆることをるる説明しなくちゃならぬことになりますが、実際、具体的に嫌なことまで説明しなくちゃならぬことが事実裏で幾らでもできるんです。そういう賢い人が今いっぱいいる世の中です。それに農民がつぶされて、実際に農村がつぶれてしまっているんです。これ以上つぶれたら本当に民族が滅んでしまう、そういう問題があるわけです。  それから、本当に今度は消費者信頼できないJASというやつを相手にしないようになってしまって、もう政治不信までつながっていくんじゃないかと思います。これは重大なことで、日本社会の崩壊だと思います。  外国がなぜJASというものをやったかというと、アメリカが一番その点ははっきりしておったようですが、ピストルを持っておらないと個の確立ができないというところで、全部契約社会です。ですから、各法律を見ますと、びっくりするぐらい、ばかばかしいぐらい実に細かく書いてあります。それをしないとやっぱりできないんですよ。  それで、今たどりついたことは、もうそれではできないということで、この前のブラジルの世界有機農業研究の大会においては、もうその段階は終わっちゃった、もうそうではないんだと。向こうは本当は楽なんですよ、広いところで均質のものができるんです、雨も降りませんから。それでも人と人とのちゃんとした交わりの中での提携でないとできないということになりまして、OECDでもそういう結論を出して、特に、日本の金子さんがそこへ行って日本のやり方を説明したら、もうそれが将来の農業あり方だと言っているんです、将来のそれが食料生産あり方だと。将来の人間の生き方の問題なんですよ。  そういうようなことまで言われておるという、その大前提がこの小手先のことで崩れてしまうんですよ、実際が。その大前提をはっきり立てた中では、私は多少規約なりそれは人間社会だからあると思います。歯どめは必要だと思います。それは二年、三年のうちで考えてまだ決して遅くはないんです。先ほどの内藤さんの説明のように、変なものが少しずつ淘汰されてきているんですよ。  ところが、今度でまた復活すると私どもは思っております。というのは、これで要するに企業が入りやすくなりました。この点が大きいと思うんです。だから、そういうことになったらば私は大変だと思うので、あえて説明しなくてはなかなかわからないこのJASの問題にもう命をかけて反対するより仕方がないです、今ここの段階は。私どもはそう思っております。よろしくお願いいたします。
  47. 星川保松

    ○星川保松君 折戸さんに、同じようなことですけれども、このJAS法を生かしてそれでいわゆる有機農業、それから有機農産物を一般に拡大していくという方策はないものでしょうか、御意見をお尋ねしたいと思います。
  48. 折戸進彦

    参考人折戸進彦君) 今回の特別JASは、私は、要するに市場での評価、成り行きに任せることによって農法をそちらへ誘導していきたい、善意に解釈すればそのように解釈できると思います。市場誘導がそちらへ行って、市場がそれを有効評価して消費がふえていけば、農法がそれに従って変わっていくということをやるということは、根本的に農水省が本来行うべきことを放棄されたんだ。  つまり、農業をどうするか、林業をどうするかということを市場任せにお任せしますよとやったわけですから、したがって、これはJASでやるべきじゃなくて、JISにお願いして、通産省でやっていただければよろしいんじゃないか。通産省の方が恐らく市場誘導路線は大変うまいですから、後は農水省はそれに従って動けばいい、そういうことだと思っております。つまり、根本的な問題を枝葉末節的な問題に振りかえて根本問題が解決するはずがない。それをあえてされるということに、私は非常にわけがわからぬ思いがします。
  49. 新間正次

    ○新間正次君 新間でございます。本当にきょうは御苦労さまでございました。  まあ、私的なことで大変恐縮なんですが、私の義理の兄貴も農業をやっておりまして、有機農法を盛んに研究しながらやっておる一人でございます。  全員の方にお尋ねする時間があるかどうかわかりませんけれども、まず折戸さんにお尋ねしたいんですが、できが悪かった作物といいますか品物に対しての消費者方々理解度といいますか、その辺のところはどんなぐあいでしょうか。買っていただくいただけないという部分において、割合でいきますと、パーセンテージでいきますと。ちょっと抽象的ですかな。
  50. 折戸進彦

    参考人折戸進彦君) 実に苦労いたします。できの悪い作物どころか、有機農産物であればということが先行いたしますと、要するにそれならば食えようと食えまいといいんじゃないかということでひどいものが出荷されてまいります。これは現実問題として初期的にはそのような状況があります。それをもう一回戻しをして、話し合うところから始まるのであって、したがって、そうした苦労の経過がないと、いいか悪いかでおしまいなんです。  今回の特JASは、市場化することですから、あるところは勝つけれども、だめなところはペケになって、同じ競争の中につぶれていくだろうと思います。後は話し合いさえすれば十分な解決がつきますし、次のステップは踏めていきますので、そこのところが問題でございます。
  51. 新間正次

    ○新間正次君 澤登参考人にお尋ねしたいんでございますが、点を面にしたいというようなことでございましたけれども、そういう面でどのような努力をなさっていらっしゃるでしょうか。
  52. 澤登晴雄

    参考人澤登晴雄君) これは、私どもは村おこしとか村づくりというものとの連動と思っております。下手に行政が入ってくると失敗しますが、町ではこれはお互いにとんでもないことはできません、ここに郷田さんもおいでになりますが。そいうことですから、それとの連動だということが一番大事じゃないでしょうか。  それで、やっぱり近いところから私どもはやらなくちゃならぬし、東京の問題も、私どもの成功している例は、例えばある村の県人会が東京にあります。そういうところからやっていくことも一つの、特産品についてはそういう問題も出てきます。そういうことはもう自然に今出てきております。あれにシールを張るという人はないと思うんですよ、あれはうちの親戚のおじさんのまた隣がつくったんだからいいということでね。  だから、それをもっと身近なところで、村のことからやって、その付近の市町村が一緒になり、さらに連絡していけば、例えばあるニンジンはここではうまい、ここではまずいという問題が出てきます。だからこのニンジンはここでつくってもらう、そういう問題はありますよね。リンゴは何ぼ何でも鹿児島でつくってはだめですし、理論的には北海道でミカンができるがどうにもなりません。そういうことが一つ出てくる。そのときに産地同士の問題や、私どもはそこで農協と生協との連絡もあるし、それから新しいタイプの市場原理の問題があると思います。それまでは否定できません。  しかしながら、私どもは、一番小さい輪をつくること、小さい中での自給圏をつくること、それが村おこし、村づくりに全部つながること、そのことを徹底的に念頭に置いて自給圏をつくっていきたい。そしてその中での今度は連合をしていくこと。このことは、いま一回本当の意味のもとの農業生産に返るんだから、実際、世の中の世直しまでにつながる問題だと思っております。それだけの腹がないとできない。農水省だって有機農業を本筋にやるなんてどこかの課長さんが言えば首になるかもしれませんね、実際が。そういう一つ段階です。  私はそういうふうに思うものですから、これは 本当に皆さんが力を合わせて一つのまず一番小さい単位のものを育てていく、それがどのくらい大きくなっていくか。そういうことと、さらにいま一つ特殊なものの流通の問題をどういうふうにしていくか。これは案としては絵は幾らでもかけるんです、実際は。一晩かかればかなり立派な絵はかけると思うんですが、立派な絵をかいたって、実行する人がないとだめなんです。だからそこをだれがやるか。  いま一つの問題は、農民が誇りを持ってつくれるということでないとだめなんです。管理されて、ソ連へ私は行ってみたんですが、とにかく本当に管理社会でしたね。そういう中で、何か偉い記章をつけた人が、おまえのはいい、おまえのは悪い、おまえのは合格させるぞというようなことにこれはなってしまうんですよ。理論的にはなるんです。そういうことなんですよ。  生産行程管理者というんですか、なかなか我々には今までなじみがない言葉が出てくる。それを徹底的に重視しなくちゃならぬですね。これには物すごい神様みたいな人がいなくてはできないという組織ですから、できないことだと私は思っております。
  53. 新間正次

    ○新間正次君 内藤参考人にお尋ねしたいんですけれども、五月三十日の読売新聞に、「東京青果では三年前から一般野菜の中に「個性化農産物コーナー」を設け、味、栄養、安全にこだわった商品を集めている。これまでは独自の基準だったが、四月からはガイドラインに合わせるよう、産地に呼びかけている。」という記事が出ております。  これは大変結構なことだと思うんですけれども、言ってみればこのような東京青果さんあたりのような大手の方が、東京青果さんだけでも結構でございますけれども、産地に呼びかけるということについて、今後何か方策を考えていらっしゃるでしょうか。
  54. 内藤徳雄

    参考人内藤徳雄君) 考え方といたしますと、時期的に物はそろったりそろわなかったり、あるいは継続性の問題がございます。お客様にある程度御満足をいただくには、品質はもとより、当然量的な問題もクリアしなければこれは継続はないと思います。したがいまして、積極的にこの問題に取り組んで産地の拡大を図っていきたいと思っております。  以上でございます。
  55. 新間正次

    ○新間正次君 簡単で結構でございますが、郷田参考人にお尋ねしたいんですけれども、もしこの法案が通った場合、JAS専門委員会というのが設けられるわけでございますね。郷田参考人のところではみずから努力をなさって、お互いに勉強し合ってやっていらっしゃるということですが、こういう専門委員会が入ってこられた場合に迷惑か迷惑でないか、その辺のところをちょっとお尋ねしたいと思います。
  56. 郷田實

    参考人郷田實君) 入ってきたといいますと……
  57. 新間正次

    ○新間正次君 こういうJAS専門委員会というものがもし通過した場合に、郷田さんのやっていらっしゃるところではどのようなお考えを持っていらっしゃるかということです。
  58. 郷田實

    参考人郷田實君) 専門委員会につきましては、私ども供給側と申しましょうか生産者側の意見、それから消費者立場、この両面の意見が十分吐露できるようなといいましょうか、そういう委員会にぜひ持っていっていただきたい、こういう考え方を持っております。
  59. 新間正次

    ○新間正次君 どうもありがとうございました。
  60. 大塚清次郎

    大塚清次郎君 ただいま貴重な参考意見を述べられましたが、私からまず折戸参考人にお伺いしたいと思います。  折戸参考人は、生活クラブ生協、現実に有機農産物を扱っておられる。そこで、先ほどからお話を伺いましたけれども、実は、この四月から実施されたガイドライン、それから今回の特定JAS規格、この設定の案が出ておりますが、ずっとお話を聞いてみますと、やっぱり近代農法には否定的な立場に立っておられて、いわゆる有機農業へ回帰するという、政策転換なしに行ってもこれは余り意味がないというように聞き受けたわけでございます。これは日本の農政の根幹に触れる問題だと思います。  それはそれといたしまして、近代農法がずっと継続してきた現実があるわけです。そういう点からいいますと、そういう中で有機農法あるいは無農薬あるいは減農薬、こういうものでひとつ今度それを特定JAS規格路線に乗せようということですが、そうした場合、現実に、先ほどからあっておりますように、これらの食品かなり多様に全国にいろいろな経路で流通に乗っておる。そうなると、消費者にとりましてもやっぱりこれを放置できないという問題が一つあると思うんです。その点についてはどのようにされるか。  また、一次産品の基準づくりは困難とされておりますし、チェックも実効性が非常に期しがたいというようなお考えがあるようでございますが、そういう御主張に対しましてはどのようなお考えか、お伺いをしたいと思います。
  61. 折戸進彦

    参考人折戸進彦君) お答えします。  御意見はごもっともで、現実に近代農業で進んできまして、そして日本の戦後の惨たんたる飢えの状況を今日までカバーしてきたのも近代農法のおかげであることは重々承知しております。しかし、近代農法でここまでやって食を充足させてきたけれども、果たしてこの先、日本食料をそうした喜んでつくり、かつ食べるような人々が、つくる人、食べる人の中で育っているかどうかはぜひとも大塚議員初め皆さんに考えていただきたいわけです。それが崩れているから、現在の食料自給率は、まさに食が商品化して、その結果としての穀物自給率二九%という実態になっている。したがって、私どもが主張したいことは、安全な食べ物を食べたいよりも、安全な食べ物をつくる、かつ信頼して食べるという、その国固有の一つの姿勢がなければ食の自給という根幹が崩れる。なぜそのことを農水を初めとして根幹に立てて考えてくれないか。いささか、特別JASをつくって市場の中でそうしたものを誘導していくがごとき方法ではだめだということを主張しているわけでございまして、現実を空想的に考えているわけではございません。それを根幹に立てていただきたい。  そしてさらに、では、現実に判断しているところの有機農業、さまざまの呼称をもって通用している農産物に対してどうするのかというお尋ねでございますけれども、私はそれは、操り返しになりますが、崩れゆく日本の食生産と食消費の問題に比べれば、こうしたもののいささかまがいものがはんらんしている程度の消費実態は取るに足らざる問題であるというふうに考えております。  むしろ根幹たらすべきは、先ほど申し上げましたように、日本食料事情をどのようにして改善していくかということ、そして信頼をつくる側、食べる側でどう取り戻すかということであって、これは特別JASのような措置は抹消的な行為であるということを先ほどから申し上げているところでございます。  そして、あえてそうしたものについてどう対処するかというならば、さまざまな方策はあるでしょうけれども、それに対処するのに使うエネルギーを考えるならば、先ほどから澤登参考人も申されているように、使うべきところに金がもっと必要ではなかろうか、進めるでき対策が山ほどあるんではないかということをぜひ考えていただきたいと申し上げておきます。
  62. 大塚清次郎

    大塚清次郎君 そこで、もう少し今度は視点を変えて折戸参考人にお願い、いたしたいわけですが、今、米とある種の農産品の数少ないものを除いては国際化の中で、自由化の中でほとんど自由化されてしまっております。もう折戸先生御承知のとおり、カロリーベースで日本食料自給率が四六%ぐらいに下がっておる。これはさらにこのままだと低下していかざるを得ない。そういう状況の中で、有機農業へ限りなく回帰していくということになると、私は食料の自給率はさらに減ると思っております。全体的なパイがうんと縮小する、こういう見方しかできません。大きな内外格差、これは国情、地勢、狭い国土、こういうものか ら来るものでございます。  そうなりますと、その分有機農業へ回帰すると、一時的にしても継続的にしても、外国産を引っ張ることにつながっていく、さらに食料自給率は落ちていくということがもう現実の問題として非常に心配されております。  かてて加えて、外国産のものはそれじゃ安全か、健康にいいのかということになると、今非常に消費者団体でも問題にしておりますように、鮮度は譲れても、日本のものより安全性が非常に劣るというようなことが言われておるわけでございます。  こういう国際化の中で、いわゆるこのように輸入障壁を設けられないものについて、これは本当に安全性を保ちながら自給率を上げる何か手だてがあるだろうかということになると、なかなかこれは言うべくして私ども現実問題としては容易じゃないと見ておりますので、そういう意味では、私は限りなく有機の方を目指していくということはやらなきゃならぬ、それから安全性については、さらに減農薬あるいは化学肥料を減らすとかあるいは無にするとかいうようなことで、そういうことを刺激していくためには、ガイドラインあるいは規格づくり、これを性悪説と決めてしまうのはいかがなものかというような感じも一方ではするわけです。そういう点についていかがお考えでしょうか。
  63. 折戸進彦

    参考人折戸進彦君) 極めて重要な根本に触れる質問をしていただきまして、まことにありがとうございます。  しかし、最後の方からお答えいたしていきますと、ガイドラインを引いて、そして食の安全性に対して一定の安心感をもたらせるということは、私に言わせれば、今まで飽食でずっと過ごしてきた人たちが、念とその生産あり方についてさらに真剣に考える機会を安直に奪うものであると考えております。また、さらに一連の有機農業によって農を続けていこうという人たちがその程度のレベルでとどまって、逆に農業に対する情熱を失う、自分の評価がそのレベルで通用してしまうということの情けなさに泣くような状態になって、このガイドラインがさらに特JASの形になれば、先ほどから言われているように大きな弊害をもたらすだろう。  だけれども、このガイドラインや特JASがもし生きるとするならば、議員がおっしゃられたように、日本食料について、現在農地は五百万ヘクタールをはるかに割っておりますけれども、これだけは守ろうと。そのうち有機農業化については、市場については例えば二〇%流通業者含めてこの有機農産物の取り扱いをシステム化しなさい、あるいはシミュレーションしてそれはしっかり扱いなさい、そしてこの人たちに対してはつくりなさいと、農水省もこのくらいの明確な方針を出していくようになったときに、初めて本気でつくる人、そしてそこまで本気なものをあえてわざわざ海外のわけのわからぬものを食べるよりも自分の国土のものを食べていこうという消費者の関心を食に再び呼び戻すことができるだろう。それがないままのガイドラインは、おっしゃるとおり、まさに亡国的な食料政策への入り口を開くと考えております。
  64. 大塚清次郎

    大塚清次郎君 私が言い足りなかったのか下手なのかわかりませんが、ちょっと論議が少しかみ合わないようでございます、一番根本的なところが。  実は、例えば海外からの農産物の流入、特に農薬だけをとってみましても、これは生産段階で使用する農薬、それにポストハーベスト、輸送を長もちさせるために、鮮度を落としながらも農薬まみれと言われるようなことが現にあるんです。だから、どうしても国内の農産物は減農薬の方向に進まなきゃならぬと思うんです。  私は、朝日新聞が書いておりますとおり、有機栽培と減無栽培はちょっとかみ合わないんじゃないかと思うんですね。だから、私は、有機は有機にこのガイドラインの中で知恵を出して、ひとつそういったような仕組み立てをこの中で、JAS規格を否定するという立場に立っておられますが、私もある団体でこの規格格付機関をやっておるわけですが、それから見ると、加工食品でさえ外国に行くと缶詰の中に虫が入ったりなんかしておる。あれは日本に持ってきたら大変でしょう。そういう意味では、私は非常に立派な、世界に冠たる格付機関を現実には日本は持っておる、こう見ておるわけでございます。  したがって、そういう点で私はこのガイドラインは無機の方に軟着陸するための経過としても設定すべきじゃないかという考えさえ持っております。そういう点で、これはもうかみ合いませんので、御参考までに折戸参考人に供しまして、もう一つ、今度は澤登参考人にお願いしたい。  実は、澤登参考人は、私は、一楽さんに随分御薫陶を受けましたので、その御関係じゃないかなと思っておりますが、おっしゃることもわかります。ただ問題は、有機農法の位置づけということについて生涯をかけて取り組んでおられることはよくわかりますけれども、今の日本の置かれた農業実態環境、それから今後の行く末を考えます際に、そういうことにもし行った場合は、食料の自給率にもかかわりがありますし、またもう一つは、労働力、非常に後継ぎが減っておりまするから、なかなかこれは容易じゃない。理想はそれでも現実の農政というものの中ではなかなかそういう方向に行きかねるんじゃないか、こう思います。  したがって、ひとつ今の規格設定の中でいろいろ今後知恵を出して、そして、例えて言えばそういうものに向く人、道人を見つけなきゃならぬと思うんです。特に中山間地あたりで一つの基準をしっかりつくって、そして有機農業に取り組んでいただく人、あとは減農薬の方向に限りなくやっていくという仕分けした考え方でこのガイドラインを活用していくということが私は必要なんじゃないか。  現実と合うやり方で限りなく農薬を減らしていくということ、これは人手の問題もあります、条件の問題もあります、外国からの農産物の流入に対抗する自給率を低めないためにもそうすべきじゃないか。そういう一色に塗りつぶしていくということは、余りにも現実条件が厳しいし、また将来の展望もなかなかこれは開けないんじゃないかと思いますので、その辺でこの枠の中で考えが相寄る手だではないものか、こう思いますが、それはございませんか、澤登先生。
  65. 澤登晴雄

    参考人澤登晴雄君) 絶対にございません。自信を持って申し上げます。  というのは、先ほど何回も有機農業をやれば増産すると言ったでしょう。本当に増産するんですよ。増産できるんです。その過程は問題がある。品種を変えるんですよ。できるんです。私はやっております。見に来てくださいよ。関係者のやつを見てください。それを見なくて何言ったって始まりません。絶対に増産できるんです。労力がもっと少なくてできるんです。どこのばかが、それでなくてやるばかがありますか、今まで。いのちがけでやっていることはそういうことなんですよ。これは当たり前のことです。  だから、私は日園連の大先生と思っておったんだけれども、そうなるともう完全にどんどんどんどん外国のJASをつけた有機物が何ぼでも入ってきますよ、日本に。それに負けます。もう民族が滅びるところまで行きますよ。だから今ここが正念場なんです。  それから、もう労力が本当にかからないのがあるんです。なぜそれを見ないんですか。見てください。この場合は、まずそういうところの調査をして通してくれませんか。もし本日この後でこれを表決するなんと言ったら、私はもうその方々は失格だと思っております。その方々と相談してはもう日本農業はだめだと思っております。日本人はそれで死んでしまうと思います。死刑の宣告を下すなら下してください。我々はそれを乗り越えて生きていくより仕方がないです。  できるとさっき申し上げたじゃないですか。水田がかくのとおりですよ。果樹園がそうですよ。だから増産できる。なぜ実際が増産できないとい う前提に立つんですか。それが大前提です。  それから、なぜ労力がかかると言うんですか。自給できるんです。我々は自給できるということで全部今後あらゆる場の中で主張してまいりますし、実践してまいります。そういう実践をもってお答えいたしております。
  66. 大塚清次郎

    大塚清次郎君 ありがとうございました。
  67. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) 以上をもちまして参考人方々に対する質疑は終わります。  参考人方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席をいただき、長時間にわたり有意義な御意見を述べていただきまして、まことにありがとうございました。本委員会を代表して厚く御礼申し上げます。(拍手)  参考人方々は退場していただいて結構でございます。  速記をとめてください。    〔午後五時八分速記中止〕    〔午後五時二十三分速記開始〕
  68. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) 速記を起こしてください。  それでは、引き続き本案について質疑を行います。  質疑のある方は御発言願います。
  69. 谷本巍

    谷本巍君 まず初めに、どういう意味で有機農産物特定JASの対象にするのかについて伺いたいと存じます。  提案理由の説明を伺いますと、消費者の間に一つの変化が出てきている。そこで挙げられておるのは、健康、安全志向本物志向ということであります。有機農産物といえば若干高い付加価値をつけて流通しておるわけでありますが、最近はいいかげんな表示のものが非常にふえてきた。したがって、この際政府として、特定JAS規格を通じて生産者については規格に合った生産をやってもらい、消費者に対してはそれを保証していくというような意味で有機農産物特定JASの対象にしたというふうに私は理解しておるんですが、それで間違いありませんか。
  70. 須田洵

    政府委員(須田洵君) それで間違いございません。
  71. 谷本巍

    谷本巍君 そうしますと、農薬使用基準との関連について疑問が出てくるんですよ。  といいますのは、政府は今まで適正使用なら農薬は使っても安全だというふうに言ってまいりました。ところが、特定JASでは、農薬について言うならば天然系のものを除いて合成の農薬は一切使用はしてはならないということになっておるわけですね。適正使用、つまり使っても安全、一方ではまるっきり使うなと。これはどっちが本当なんですか。
  72. 須田洵

    政府委員(須田洵君) 先週の四日の質疑でもございましたが、いわゆる食品に必要な安全性をクリアしているという意味合いにおきましては、通常のものもそれから有機農産物も同じだと思います。つまり、農薬につきましては、委員もおっしゃられましたが、定められた方法等に従って使用すれば残留基準との関係で問題が生ずることはないというふうに承知しているわけでございます。  ただ、有機農産物につきましては、農薬の使用を極めて限定した栽培方法によるという、それによって生産されるものでございますので、一般的には農薬の残留はかなり低いものになるんではないかというふうに考えております。  しかしながら、有機農産物特定JAS規格につきましては、生産された農産物につきましての農薬の残留それ自体を問題にするといいますか、その残留がどうかということでチェックするということではなくて、生産方法に関する基準ということで、こういう生産方式でやったということを確認するということ、そこを内容とするものでございます。  ちなみに、アメリカにおきましても、有機農業についての九〇年の法制によりまして今その骨格を固めておりますけれども、残留農薬自体についてのチェックということにはなっていなくて、いわゆる生産方法について、有機なら有機という定められた基準に従ってつくられたものであるかどうかということでチェックされるということだと理解しております。
  73. 谷本巍

    谷本巍君 農薬の残留の問題じゃなくて生産方法というのを基準として特定JASの対象にするというお話ですが、そうだとしますと、どうも合点がいかぬのは、一切使用するなというのは一体それじゃ何のためなのかという疑問が出てくるんです。まして、それに付加価値を認めるということになるとどうなってくるのかということであります。  言いかえるならば、消費者に対しては、安全という意味では根拠のない安全性に高い金を支払わせるということになりはしませんか。そして政府は、特定JASを設けることによって不当な差別化、そして不当な価格つり上げを公認したというようなことになりはせぬのかという疑問が出てくるんです。これ訴訟をやられましたら政府は負けますよ。どう思いますか。
  74. 須田洵

    政府委員(須田洵君) 先ほど委員が最初におっしゃいました問いに関連するんでございますが、大筋としてあるいは考え方としてそのとおりだと申し上げたんですが、今申しましたように何らかの意味でその価値が上がる、こういう考え方が基本にあるわけでございますから、その中身としましてはやはり健康志向あるいは安全志向というものに、そういうニーズが非常に高まっているというものにできるだけこたえていくという、そういう中身は持っているわけでございます。  そういう意味では、結果的に残留農薬といいますか、そういうものでもし仮にチェックした場合には、通常のものよりはかなり低いということは見られるかと思いますが、残留農薬がまるっきりないかどうかということについては、そのときまでの土地条件なりいろんなことが影響してくると思います。しかし考え方としては、よりそういうニーズにこたえていけるような、こういう生産方法をとれば恐らくはそういうものになるだろう、そういう考え方に立たざるを得ないかと思います。
  75. 谷本巍

    谷本巍君 今の御答弁からしますと、それなら、適正使用なら安全だというのは必ずしも安全じゃないということになってしまうんですね。そうじゃありませんか。
  76. 須田洵

    政府委員(須田洵君) 先ほど申しましたように、食品についての安全性を満たしているかどうかという、そういう基準との関係で言いますと、先ほどの繰り返しになりますけれども、一般の生産物も、それからこの生産方法によったものも、その意味では安全性をクリアしているという次元においては同じだというふうに理解しておりますが、その中で程度の差といいますか度合いといいますか、そういうようなものとしてかなり前進したものであるというふうに期待されると思います。
  77. 谷本巍

    谷本巍君 きょうは総括質問で、きょうでおしまいでありますから、ほかに聞かなきゃならぬことがたくさんあるので先に進みます。  そこで、大臣にお尋ねしたいのでありますが、もう一つの問題としては生産行程、小分けの段階、まがいものの混入というものの完全防止の方法というのはどうもないだろう。そしてまた、本物か有機がということについてその農産物を厳正に検証する方法というのもないといったような問題点もあるんです。  こういう矛盾、先ほど言ったのは大きな矛盾ですが、そういう矛盾や問題点がなぜ多いのか。これは理由は簡単ですよ。有機農業を本来の農業生産あり方として位置づけていないというところに私は根本的な問題がおると思うんです。そういう位置づけがされておれば、有機農業生産をやるときには、まずそれに向いた品種の選択、それから開発、そこからやっていかなきゃなりません。それからまた技術体系が違いますから、これまでの機械と同じような機械でいくというわけにもいかないです。そして流通についても、野菜で言うなら少量多品目生産ということになってきますから、どういう流通あり方を考えていくかという問題等々が出てくる。  つまり、位置づけがはっきりしていれば、それに対するバックアップの方法、助成策は出てくるんです。ここのところが出てくれば、それは村ぐるみでもってあるいは集落ぐるみでもって有機農業生産への転換ができますよ。そういう状況の中での転換でしたら、これは少なくとも生産行程の中でまがいものがまじってくるということなんかまず絶対にあり得ないでしょう、相互監視がぴしっとしてきますから。ところが、そういうふうな位置づけがない。そういうところに私は基本的な問題があると思うのです。ですから、そこの位置づけを明確にしていただきたいということをひとつ大臣にお願いしていきたいんですよ。  それで、衆議院で、これは大臣がお答えになったのかどなたがお答えになったのかわかりませんが、耳にしたことは、政府委員の方ですか、何かアンケート調査の結果を引き合いに出して、有機農業生産は収量が低いというお話をなさった。これは不見識な話ですよ。有機農業生産が、それは物によっては三年、物によっては五年、収量が不安定で下がりますが、安定期に入れば収量は上がっていきますよ。私の知っている例はほとんどそうだ。つまり、食料を自給していくのにもやっぱり有機農業生産というのを積極的に推進していく必要があると思うのです。  大臣に伺いたいのは、実態の推移も見ながら、私ども有機農業生産法をつくるべきだということを申し上げてまいりましたけれども、そうした問題も念頭に置きながらひとつ私どもの要望を前向きに御検討いただきたい。いかがでしょうか。
  78. 田名部匡省

    ○国務大臣(田名部匡省君) 消費者の安全志向でありますとか自然志向、こういうことが最近とみに高まってまいりました。これは、農薬に対する不安といいますか、そういうものが消費者にあると思うんです。この前もお答え申し上げましたが、ただ、有機農業が安全で、今つくっているものは危険ですというふうにとられると、これは私どもが考えていることとちょっと違う方向だ。適正に使用すれば今つくられているものが安全であることは間違いないけれども、しかし消費者立場からすると、安全でも使わないものの方がもっと安全だということがありまして、ニーズが高まってきた。そのニーズにこたえて生産者もいろいろつくるようになったんです。  産直で直接相対で取引をしているうちはいいんですが、これが市場に出回ったりいろんな店で売られるということになりますと、これを確認していないものがどちらかというと高く売れているものですから、その問題というものをどう解決していくかということを非常に私どもは大事に考えたわけであります。  私も、おっしゃるとおり全く農薬なしでやってくれるそういう体制ができれば、値段も同じで供給される体制ができれば、それはもうそれで大いに結構なことだ、こういうふうに思っておりますが、現状は〇・八%、これしか供給というか生産されていない。その時点でこれをどう扱うかということは非常に難しい問題はあります。  しかしながら、確かにおっしゃるとおり、収量が少ないと言ったのはおかしいと。これは実際にはあるんです。あるんですけれども、技術的な問題、土壌の研究不足、あるいは適正な品種、そういうものを見つけられない方々がやっているとこうは落ちているわけですから、ですからこれは技術的にも土壌の研究もまだまだしていかなきゃならぬということで、これが大宗をなすということになれば、私どもこれは別に拒否するものでもありません。  ただ、高いという現状を見ると、国民、消費者の中には所得に応じてやっぱり高いものでは困るという人もおるわけでありますから、一方では農薬を使っても安全だというものをはっきりと言っておかぬという気持ちが実はあるわけです。  しかし、この有機農業の取り組みは、情報を提供するということでありますとか無利子の農業改良資金の貸し付けをする、あるいは堆肥等の有機物の供給施設、そういうものを整備する。いろんなことをやりながらこの振興を図っていく。法律制定まではまだ考えておりませんが、しかし振興はさせていかなきゃいかぬ。  ただ問題は、JAS法でこれを誘導するということはいささか問題がありますので、これはひとつ別の問題として私どもは、生産者もせっかく自分が努力してつくったものが本当かうそかという変な疑問を持たれるのも遺憾であろうし、あるいは消費者にとっても、何か名前だけつければ何でも高く売れるというものを、私は疑っているわけではありませんが、そこがはっきりしないものを高く買うということになるとこれまた問題があります。ですから、双方にいいことで私ども考えながらこれから進めていきたい、こう考えております。
  79. 谷本巍

    谷本巍君 そうしますと、大臣、JAS法で誘導するということについては問題がある、しかし有機農業生産を伸ばしていきたい、そのために力を注いでいくということは間違いありませんね。そういうことですね、今の話は。
  80. 田名部匡省

    ○国務大臣(田名部匡省君) 消費者のニーズがあるわけでありますから、このニーズに合ったといいますか、全部なっても余りニーズがなかったとなるとこれは大変ですから、その辺はよく勘案しながら進めていきたい、こう考えております。
  81. 谷本巍

    谷本巍君 まだたくさん残っておるんですが、私も端的に申し上げますので端的にお答えいただきたいと思います。  次に伺いたいのは、輸入農産物の扱いがこの改正法案でどうなっていくかということであります。  といいますのは、欧米の有機農産物についての規格がしっかりしているという見方があり、そして現に、例えば紀ノ国屋がアメリカから有機オレンジを輸入していますよという話を私は最近聞いておりますし、それからまた、ヤマサ醤油が何か有機大豆を輸入しているやの話なども耳にいたします。どうも先読みの早い業界が輸入にかなり力を入れていく可能性があるんじゃないか。場合によっては安全な外米を輸入するために米の市場開放をやれなんというような話だって出てこないとも限りませんよ、大臣。  そんなことなども考えまして、今度の改正でもって、内外無差別の原則は貫かれるのだろうと思いますが、水際で検査をした場合、例えば虫が出てきたというような場合には薫蒸しますね。そうすると、その輸入農産物有機農産物ということになるのかならないのかということも含めて、どういうふうにこうした問題に対処されるかについての方針を伺いたい。
  82. 須田洵

    政府委員(須田洵君) おっしゃるように、JAS制度につきましては内外無差別ということを原則としておりますので、今回新設される特定JAS規格制度についても同様でございます。  輸入された有機農産物について、今おっしゃいましたように、植物防疫におきまして薫蒸処理が行われるということは有機農産物の本質的な性質を損なうものであるというふうに考えておりまして、このような場合に対処するために、今回の改正におきましては、特定JAS規格に適合しないことが確実となる事由が生じたときは、つまり例えば輸入物でございましたら薫蒸した場合ということになりますが、これは国内でも、例えば末端の流通段階でそういうものを何か添加したとか、そういうことになりますれば同様でございますけれども、そういう場合においてはその表示を除去しなければならないという規定を新しく入れております。  したがいまして、輸入したときに植物防疫におきまして薫蒸処理を受けた有機農産物からは特定JASマークが除去、抹消され、当該農産物有機農産物としては取り扱われないことになるというふうに考えております。
  83. 谷本巍

    谷本巍君 それは十九条の七の二、つまり「格付表示の除去等」、これが適用されるということですね。
  84. 須田洵

    政府委員(須田洵君) はい。
  85. 谷本巍

    谷本巍君 次に伺いたいのは、今度の改正というのは枠組み改正法と言われておるわけでありま す。どういう品目を特定JASの対象とするかについては専門委員会などを通じて決めていくというふうにされておりますし、未決定という点では格付機関にしても同じようなものであります。  したがって、この改正に当たっては、どうも我々からしますというと行政一任的性格を持っているんですね。本来であれば政省令としてどんなものを当局は想定しておるかということなども伺いながら論議をしていくということにしていきたいのでありますが、残念ながら時間がないわけであります。  そこで、ぜひひとつお願いをしておきたいのは、この法律成立後、品目、格付機関などを決めていく過程で重要なことについては国会への報告をお願いしたいということと、もう一つお願いをしておきたいのは、広く消費者それから生産者等の意見を聞いてほしい、このことをひとつお願いしておきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  86. 須田洵

    政府委員(須田洵君) おっしゃいましたことにつきましては、私どもも当然のことながら生産者消費者あるいは関係の流通関係、幅広くいろいろ意見を聞きながら論議を詰めていくということになろうと思います。  そして、制度の運営に当たりましては、例えば有機農産物特定JAS規格制定するような場合におきましては、広く国民から関心を寄せられておる事項につきましては、今おっしゃいましたような品目であるとかそういったようなことが基本になろうかと思いますが、必要に応じまして国会の場などを通じまして十分御説明してまいりたいというふうに考えております。
  87. 谷本巍

    谷本巍君 消費者などの意見、これをぜひ聞くようにしてくれという点は御異存ありませんか、よろしいですか。
  88. 須田洵

    政府委員(須田洵君) はい。
  89. 谷本巍

    谷本巍君 次に、専門委員選任について伺います。  これはバランスのとれた構成にしなきゃならぬのはまず第一ですが、問題はどんな代表を選んでいくかということでありますが、例えば協同組合について言いますと、農業協同組合の場合には全中という全国連の組織がある。それから全農という組織がある。全農は事業的性格を持った機関ですね。全中はそうではないということになっている。これは消費者団体にも似たような傾向がありますね。最近言われておるのが、企業型生協とか市民運動型生協という言葉を私どもよく耳にいたします。  ともかくも、現場ないし現場に近い専門家を選んでいく、これが私は大事だろうと思うんです。政府にとってあそこらあたりだったらおとなしい、ここらあたりはうるさいというようなことで選別してほしくないんですね。とにかく議論をする、そして国民全体のものにしていくということが今大事なんですから、そういう立場に立っての委員選任をお願いしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  90. 須田洵

    政府委員(須田洵君) 時間が貴重でございますからかいつまんで申しますと、特定JAS規格に係る専門委員選任につきましても、特に委員がおっしゃいました生産方法についての規格であるということを基本に置きまして、対象とする品目の特性なりあるいは実態に応じまして、関係する生産者消費者など、当該品目の実態につきまして専門的な知識を備えた方々の意向が十分反映されるようその構成に格別の配慮を行ってまいりたいというふうに考えております。
  91. 谷本巍

    谷本巍君 そうすると、私が申し上げたことと基本的に食い違いありませんね。
  92. 須田洵

    政府委員(須田洵君) はい。
  93. 谷本巍

    谷本巍君 最後に、大臣に質問を申し上げます。  これまでの日本の農政というのは、農産物をつくるだけ、ようやく最近になって食料政策の方へも片足を入れてきた。そして流通構造改善法案をまずつくって、今度はJAS法改正問題が出てきたという経緯になっておるわけであります。  ともかくも、この法案、大臣、先ほども申し上げましたように行政裁量の幅が大きい法律であります。消費者団体などは、行政専横でやってくくられていくんじゃないかというような不安を随分持っています。厚生省が似たようなやり方でやってきているからですよ。不安どおりのことをやれば、何のためのJAS法改正なのかということがわけがわからなくなっていきますよ。  やっぱり何といっても消費者教育というのは何なのかということを考えていただきたいのです。消費者教育というのは、消費者が考える機会、議論する機会、これを役所が与えていくということが大事だろうと思うのです。ですから、JAS法改正に伴う関係機関の会合などにしても、どういう議論がされたかということを国民にわかるようにしていただきたいのです。そして情報公開もどんどんやっていただきたいんです。それをやりませんと、JAS法反対についての消費者団体の批判が非常に強かったから一層不信感をあおるということになっていきます。ちょうど今の厚生省と消費者団体のような関係になっていく可能性がその意味では強いということなんですよ。  それだけに、大臣に重々お願いをしておきたいのは、JAS規格制定に当たっては消費者生産者等の関係者の意向を十分ひとつ反映するように配慮していただきたいということであります。
  94. 田名部匡省

    ○国務大臣(田名部匡省君) 私は、さっき申し上げたように、消費者を守る立場にもあるし、生産者を守る立場にもあるということは基本的な考え方なんです。  そこで、空気とか水とかあるいは農薬、目に見えない部分というものは、これは国民みんな幾らか不安を持っていながら、これはどうだろうかということで、水なんかもおいしい水だとかなんとか言うと、牛乳よりも高く売れる時代です。本当にそれが本物なのかというとだれもわからないという不安感というものは常にあると思うんです。そういうことでこのJAS法規格制定手続などのいわば制度の枠組みを定めるわけでありまして、消費者にも安心してもらえるし、つくった生産者も報われる、そういうものであってしかるべきだ、こういうふうに考えております。  個別品目についての規格制定など具体的な制度運営に当たっては、従来からJAS調査会、専門委員会、そういう場を通じて関係者の意見を聞いて進めてきたわけでありますけれども、おっしゃるとおり、私は、これは本当に消費者生産者が納得いく、そういう形で決めるべきものであろう。役所がああだこうだ言うことではなくて、本当によく話し合えば納得できる部分というのは私は出てくると思うんです、どちらにもいいことだと私は思っておりますので。そういうことでありますから、特定JAS規格あるいはJAS制度において新たな生産行程の認証を行うものでありますから、御指摘の趣旨を踏まえて、消費者生産者を含めた関係者の意見が十分反映されるよう適切な制度の運営ということに努めていきたい、こう考えております。
  95. 谷本巍

    谷本巍君 終わります。
  96. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  97. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私は、日本社会党・護憲民主連合を代表して、多くの疑問点、問題点を残しながらも、本法律案に賛成する立場において討論を行うものであります。  賛成する理由は、本法律案が衆議院の段階で、五党による共同修正が行われ、全会一致をもって可決され、本院に送付されてきたものであり、これにより、懸念される問題点の幾つかが解消または緩和されているからであります。  とはいえ、問題点はまだ数多く残されているのであります。  例えば、生産行程等、生産方法規格の基準とすることに対する疑問であります。それは、農産物生産行程において、地域差や環境の違いも大きく関与することを考えると、生産行程の統一は勢い粗っぽい規格としてしか対応できないし、生産されたものは全国的に同質であるという保証ができないからであります。  また、有機農産物とは何か、地鶏とは何かという定義も明確でありません。本法案の審議の際の質疑を通じてもそこはあいまいなままであります。規格という明確な物差しで定義の不明確な農産物をはかろうということそのものが大きな矛盾であります。  さらに、政府は一体、有機農産物生産を奨励し、将来我が国農業の普遍的な生産体系に発展させようとしているのか、あるいは将来も特定の生産者に限定されるものととらえているのかが判然としないということであります。  もし前者だとすると、規格よりも有機農業の促進のためのきめ細かい立法措置が必要であり、粗っぽい規格を設けることを先行させるということはかえってマイナスになるでありましょう。もし後者だとすると、産直等への政策的なてこ入れが必要なのであって、逆に中途半端な規格などは必要ないということになるのではないでしょうか。  加えて、消費者立場からすれば、安全で新鮮な農産物が安心して購入できるということが最大の眼目だと言えましょう。だとするならば、有機農産物に限らずすべての農産物を安全で新鮮なものとして供給できる体制づくりこそ最大の関心事でなければなりません。したがって、すべての農産物に対して農薬の使用を厳しく制限するなど、有機農産物だけに安全性が特定されないよう、確かにその中では有機農産物が大きな役割を占めるでありましょうけれども安全性を検討する施策の展開こそが急務になるはずであります。  さらに言えば、一極集中型の市場メカニズムから地場消費中心への流通システムの改革等が真の新鮮な農産物供給には欠かせないことでもありましょう。いわば生産者消費者とがお互いに顔が見えるというのはそういうことであり、民主的な流通の仕組みこそ緊要な課題だと思うのであります。  以上、残されている問題点の主なものを幾つか挙げましたが、事生産者の生活と消費者の健康にかかわることでありますから、政府は本法案が成立した後においても、これまでの国会での論議を通じて指摘をされた問題点の解消のために全力を挙げるべきであります。  政府の適切な対応を求め、本法律案に対する賛成の討論を終わるわけですが、それにしても審議時間が少ないことは何としても残念であります。時間さえあれば、多分与党の委員の皆さんもきっと言いたいことが山ほどあったのではないかと思います。したがって、たとえ賛成法案であっても、審議時間が足りないときは継続審議、審議未了にするくらいの毅然とした態度こそ参議院の良識であって、政治改革に通じる参議院改革でないかということを強調いたしまして、私の賛成の討論を終わります。
  98. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  農林物資規格化及び品質表示適正化に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  99. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、谷本君から発言を求められておりますので、これを許します。谷本君。
  100. 谷本巍

    谷本巍君 私は、ただいま可決されました農林物資規格化及び品質表示適正化に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲民主連合、公明党・国民会議、日本共産党、民主改革連合の各派及び各派に属しない議員新間正次君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     農林物資規格化及び品質表示適正化に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   近年の食品生産流通及び消費をめぐる状況は大きく変化し、従来日本農林規格の対象になじみにくいとされてきた食品分野において様々な表示食品が多く流通しており、この分野での規格表示適正化を図ることが最重要課題となっている。  よって政府は、今後とも日本農林規格制度及び品質表示基準制度の充実に努めるとともに、安全な食品を供給するため、本法の運用に当たっては、次の事項の実現について、消費者の適切な選択に資するよう万遺憾なきを期すべきである。  一 有機農業の農政上の位置付け及び今後の展開方向を明確にするとともに、各地域における有機農業の振興を図るための方策を検討し充実させること。  また、中山間地域などにおいて有機農業への取り組みを助長するため、必要に応じ所要の措置を講ずること。  二 有機農業の普及に当たっては、熱意を持った人づくり、有機農業に適合した品種の開発、運搬及び保存の技術開発等に努めるとともに、有機農産物表示を行う産地において自主的な管理体制の確立など、その条件整備について検討すること。  三 いわゆる特定JAS規格制定に当たっては、利害関係者の意向が十分に反映されるよう農林物資規格調査会及びその専門委員会において十分な調査審議を行うとともに、必要に応じ公聴会を開催するなど慎重に検討を行うこと。  四 特定JAS規格に係る専門委員選任に当たっては、生産者消費者流通業者等の意向が十分反映されるよう、その構成に配慮すること。  五 有機農産物等に関する特定JAS規格については、本年四月に施行された有機農産物等の特別表示ガイドラインの実施状況等を見極めた上、その検討に着手するとともに、有機農産物生産者消費者流通業者等関係者の意向を十分踏まえたものとすること。  六 特定JAS規格の認証については、消費者信頼を得るため品目の特性に応じた適切なチェック体制を整備すること。  特に、生産行程管理者の認定を行うに当たっては、その業務の重要性にかんがみ、消費者の十分な理解が得られるよう配慮すること。  また、その際、当該農林物資生産行程に関する事項を記載した帳簿を事務所に備え置く等生産行程管理者の業務の実効性が確保されるよう生産行程管理者に対する適切な指導、助言等に努めること。  七 小分けを行う際には、適正な表示が行われるよう小分け業者に対する十分な指導に努めること。  八 本法の制度の円滑な運用を確保するため、食料品消費モニター制度の強化等消費者情報提供対策の充実に努めるとともに、農林水産消費技術センター等の検査体制の整備充実を図るとともに、国・都道府県・市町村などに置かれている消費者窓口の活用など適切な配慮を行うこと。  九 国民の信頼に応えるため、生産から消費に至る各段階での食品安全性を確保し、今後とも安全な食品の供給に努めること。この場合、いやしくも縦割り行政の弊に陥らぬよう関係省庁との密接な連携の下で、安全性確保のための体制整備を行うこと。  右決議する。  以上でございます。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
  101. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) ただいま谷本君から提出されました附帯決議案の採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  102. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) 全会一致と認めます。よって、谷本君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、田名部農林水産大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。田名部農林水産大臣
  103. 田名部匡省

    ○国務大臣(田名部匡省君) ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上、善処するよう努力してまいりたいと存じます。
  104. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) なお、本案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  105. 吉川芳男

    委員長吉川芳男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時五分散会      ―――――・―――――