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1993-06-11 第126回国会 参議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年六月十一日(金曜日)    午後三時開会     —————————————    委員異動  六月十日     辞任         補欠選任      加藤 紀文君     村上 正邦君  六月十一日     辞任         補欠選任      石川  弘君     泉  信也君      関根 則之君     岡  利定君      村上 正邦君     服部三男雄君      小川 仁一君     渕上 貞雄君      喜岡  淳君     栗原 君子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         守住 有信君     理 事                 板垣  正君                 田村 秀昭君                 穐山  篤君                 翫  正敏君     委 員                 泉  信也君                 合馬  敬君                 岡  利定君                 永野 茂門君                 服部三男雄君                 栗原 君子君                 瀬谷 英行君                 渕上 貞雄君                 大久保直彦君                 吉田 之久君                 聴濤  弘君                 高井 和伸君                 寺澤 芳男君    国務大臣        外 務 大 臣  武藤 嘉文君        国 務 大 臣  河野 洋平君        (内閣官房長官)        国 務 大 臣  中山 利生君        (防衛庁長官)    政府委員        内閣官房内閣安        全保障室長        兼内閣総理大臣  児玉 良雄君        官房安全保障室        長        国際平和協力本  柳井 俊二君        部事務局長        防衛庁参事官   河路 明夫君        防衛庁長官官房  村田 直昭君        長        防衛庁防衛局長  畠山  蕃君        防衛庁教育訓練  諸冨 増夫君        局長        防衛庁人事局長  秋山 昌廣君        防衛庁経理局長  宝珠山 昇君        防衛庁装備局長  中田 哲雄君        防衛施設庁労務  荻野 貴一君        部長        外務大臣官房領  荒  義尚君        事移住部長        外務省条約局長  丹波  實君        外務省国際連合  澁谷 治彦君        局長    事務局側        常任委員会専門  菅野  清君        員     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○自衛隊法の一部を改正する法律案(第百二十三  回国会内閣提出、第百二十六回国会衆議院送  付)     —————————————
  2. 守住有信

    委員長守住有信君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨十日、加藤紀文君が委員辞任され、その補欠として村上正邦君が選任されました。  また、本日、石川弘君、村上正邦君、関根則之君、小川仁一君及び喜岡淳君が委員辞任され、その補欠として泉信也君、服部三男雄君、岡利定君、渕上貞雄君及び栗原君子君が選任されました。     —————————————
  3. 守住有信

    委員長守住有信君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 守住有信

    委員長守住有信君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事翫正敏君を指名いたします。     —————————————
  5. 守住有信

    委員長守住有信君) 自衛隊法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 翫正敏

    翫正敏君 きのうに引き続き質問いたします。  きのうも申したんですが、外務大臣の依頼によって防衛庁長官自衛隊機派遣して輸送すると、こういう法律案審議でございますので、外務大臣がただいまおいでにならないという状態でこの法案審議をせよということなのでありますが、私としましては実際問題として外務大臣に主に質問をしたいということでありますので、外務大臣が見えますまでの間は、委員長としての時間配分としては、当然にもう翫正敏はこの法案についての審議予定どおり六十分したと、こう記録に書かれるんだとは思いますが、私の個人的理解といたしましては外務大臣が来られてからが本法案についての質疑時間である、こういう認識でやりたいと、そういうふうに思うわけであります。御理解いただけるかどうかはわかりませんけれども、そういうことです。  カンボジアPKOの問題について、官房長官に来ていただいておりますが、きのう自分のつもりをもちまして、外務大臣のいない間一般質問ということでしましたので、積み残しの点を若干お尋ねしておきたいと思います。官房長官中心にして、あと政府委員の方から必要があれば答弁ということでお願いしたいと思います。  まず最初に、PKO原則のことにつきまして、きのう一、二、三という停戦の合意、それから紛争当事者の同意、それから活動中立性ということについては質問いたしました。  四番ですね、撤収撤収ということが原則の四に掲げられているわけですが、この問題についての政府の基本的な考え方をお示しいただきたいと思いますし、日本独自の撤収ということが法案審議のときに盛んに言われたわけでございますので、その日本独自の撤収手順いかんという質問でございます。どのようなものにどのように書かれておるのか、こういうことですね。  中断について書かれておるものは一応わかっております、実施要領に書かれておりますから。実施要領全文も見せていただいてはおりませんけれども、概要というものを提出いただきました。それに中断要領は書かれておりますが、撤収に ついては、私が見たものには撤収という言葉はありますが、どういう日本独自の判断で、どういうふうにやるのかということは書かれていないようなので、これを説明していただきたいと思います。
  7. 柳井俊二

    政府委員柳井俊二君) 手続的な点でございますので、私の方からお答え申し上げたいと存じます。  ただいま先生御指摘のとおり、実施要領におきましては中断に関する規定がございます。ただ、終了については実施要領におきましては規定はございません。  考え方といたしましては、中断が長引きまして、前提条件が崩れて、もはや回復しないというような状況に至りましたら終了するということでございますが、この終了につきましては、御承知のとおり法律自体に書いてあるわけでございます。  この終了手続につきましては、国際平和協力法第六条の第十三項の規定によりまして実施計画変更ということになるわけでございまして、実施計画変更でございますので、実施計画最初決定するときと同じ手続、すなわち閣議決定をもちまして終了を行うと、こういうことでございます。法律的な観点からはそのような手続になってございます。  なお、具体的にどういう手続、どういう手順撤収するかということにつきましては、これは業務分野によっても異なるものと考えられまして、一概に申し上げることは難しいわけでございますけれども、いずれにいたしましても、我が国撤収ということになりました場合には、我が国要員及び部隊の安全の確保に留意しながら、また国連側とも緊密な連絡のもとに行うと、そういうふうになろうと思います。
  8. 翫正敏

    翫正敏君 それで、官房長官法案審議過程におきましては、官房長官は違う人だったですけれども官房長官の方や、また総理の方からの説明ということで言いますと、この撤収日本独自の判断ということが非常に力点を置いて説明をされました。ところが、カンボジアで実際にPKO活動が行われるようになりまして、そしてポル・ポト派中心にして停戦違反が繰り返されるようになってからの国会における予算委員会などの答弁というものを聞いておりますと、国連判断、UNTACの判断、これが第一義的であると、こういうように聞こえる答弁でございました。  これは、法案審議のときの考え方といいますか、基本的な政府の方針というものと、それから実際にそれを行ってみて、やはり違ってきたのか、変化をしてきたのか。してきたのなら、なぜしてきたのかという説明をしていただきたいし、そうではなくて、もともとそうであったということなら、もともとそうであったのだが、それを法案審議のときには何らかの事情によって、そういう日本独自ということに力点を置いて説明したということなのか。そこを説明していただきたいと思います。
  9. 柳井俊二

    政府委員柳井俊二君) 私、たまたま法案審議全部おりましたので、記憶しているところもございます。そこで、私の方からまずお答え申し上げたいと存じます。  この派遣終了あるいは撤収一般に言っておりますが、行う場合におきましては、これまでもいろいろな機会に御答弁申し上げてまいりましたとおり国連側との緊密な連絡のもとで行うということでございます。したがいまして、現実問題として我が国国連との間で判断が食い違うということは想定しがたいということもこれまで御答弁申し上げてきたとおりでございます。  ただ、仮定の問題といたしまして、それでは国連側我が国との間で判断が異なる場合もあるのではないか、そういうような仮定の問題でございますが、そのような場合にどうするのか。そういう場合には、国連側連絡の上、派遣終了することができると、これがいわゆる我が国の独自の終了あるいは独自の撤収ということでございます。そのようにもこれまで申し上げてきたわけでございます。  なお、我が国要員部隊派遣がこのような派遣終了を含む基本的な原則規定する国際平和協力法に従って行われるということにつきましては、国連側に十分説明し、了解を得ているところでございます。  それで、法案審議のときの考え方と現在の考え方と違うのではないかという御指摘でございますけれども、私、記憶する限り、法案審議の際にも、長くなりますから一々は引用いたしませんけれども、本会議あるいは関係委員会で、ただいま申し上げたように、国連側とも連絡調整を行っていくんだということはあわせて御答弁申し上げております。
  10. 翫正敏

    翫正敏君 それでは、官房長官に確かめますが、今の柳井事務局長答弁というものを踏まえて考えるならば、中断においても撤収においてもこれは同じだと思いますが、いわゆる我が国判断というものが第一義である、こういうふうに承って、調整をしたり連絡をしたりすり合わせをしたりすることはあるけれども、あくまで中断決定したり、または撤収終了決定したりするのは我が国判断である、そしてそれは閣議決定して決めていくのだ、そういうことで承って間違いありませんか。
  11. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 先ほどの政府委員の御答弁のとおりでございます。
  12. 翫正敏

    翫正敏君 それで、次に三点あわせて質問いたしますが、法案審議過程におきましてはモデル協定というものの提示がありまして、国連との間に派遣協定を結ぶということでございましたが、実際にはカンボジアPKO活動においては口上書というものを国連との間で取り交わしております。  そのことについて、協定を結んだ場合は、その文書の性格上、口上書の場合とどういうふうに違うのか。例えば国会提出するというようなこととか、審議されるとかというようなそういうふうなことなどにおいて違うのかどうか。そういうふうなことが一点です。  それから、なぜ協定ではなくて口上書になったのかということが二点です。  それからさらに、国連側から派遣してくれという口上書が来た、それに派遣しましょうという口上書を出した、そこまでは見ていますしわかりましたが、それに対する返書というものをもらわなかったわけだと思いますが、もらわなかった理由は何かということ。  さらにもう一点は、当初国会へは、私の方からもほかの議員からも再三全文提出するようにという資料要求があったわけですけれども、ずっと要旨だけの提出本文提出されなかった。それがいつごろでしょうか、今から十日ぐらい前なんでしょうか、もっと前なんでしょうか、ごく最近になって口上書全文提出される、見せられる、こういうことになった。その理由、これだけをあわせて説明してください。
  13. 澁谷治彦

    政府委員澁谷治彦君) 国会との関係につきましては後ほど柳井局長の方からお答えいたしますけれども、まずなぜ協定でなく口上書になったのかという点でございますけれども、私どもといたしましてはモデル協定がございますし、それに沿った形で国連との間で協定を結ぶことが望ましいという観点から国連協定締結を申し入れました。  これに対して、国連としては、確かに過去の慣行を集大成したような形でモデル協定なるものをつくったけれども、今こういった協定を結ぶには国連側事務体制が整っていない、将来の場合はともかくとして現在は協定を結べないので、従来のPKOについては口上書の交換という形でやっているので、その慣行に従って日本との関係についても処理をしたいということでございましたので、それに従ったということでございます。
  14. 翫正敏

    翫正敏君 返書をもらわなかった理由は。
  15. 澁谷治彦

    政府委員澁谷治彦君) これは、過去の慣行からも、返書というのは特に派遣国の方には出されておりません。  それから、全文の訳出がおくれたという点でございますけれども、本来この口上書国連との間で交換したものでございますので日本側の独断ではお出しすることはできません。国連側の了承を得る過程において、要約という形で出すことについては国連側もそれは問題にしないということでございましたのでそういう形でお出ししていたわけですけれども、最終的に国連の方も全文の訳を出しても構わないということでございましたのでお出しした次第でございます。
  16. 柳井俊二

    政府委員柳井俊二君) 第一番目の問題だったと思いますが、例えばモデル協定のような協定をつくった場合にこれを国会にお出しするかどうかという点でございます。本来、条約局長が御答弁申し上げるべき問題でございますがきょう見えておりませんし、また私、以前条約局長をやっておりましたので、私の方からお答えさせていただきます。  御案内のとおり、協定あるいは取り決め、一般国際約束と言っておりますが、その締結について国会の御承認をいただくかどうかという点につきましては、昭和四十九年のいわゆる大平原則というのがございます。長くなりますので要点だけ申し上げますと、法律の改廃を含むような国際約束あるいは予算範囲を超えて財政的な負担を負うような国際約束、あるいはそのようなものでなくても一定の政治的重要性を持つ批准条約といったようなものにつきましては、この締結について国会の御承認をいただくということで今まで対処しているわけでございます。  この派遣取り決め協定の形にするかどうかということにつきましては、今国連局長から御答弁あったとおりでございまして、いわゆる口上書ということで処理がなされたわけでございますが、仮にモデル協定のようなものをつくった場合にどうなるかということは、モデル協定はあくまでもモデル協定でございますので、実際にどのような協定になるかということはちょっと今ここでは申し上げにくいところではございますが、一般論として申し上げれば、ただいま申し上げたようないわゆる大平原則に照らして、もし法令範囲内で締結できるものであれば、それはいわゆる行政取り決めとして通常政府閣議決定処理しておりますが、そのような形で締結する。しかし、既存の法令範囲内あるいは予算範囲内で約束できないような事項が含まれていれば、これは国会提出するということでございます。
  17. 翫正敏

    翫正敏君 官房長官、その大平原則に従って承認を受けなくてもよいような協定の場合でも、閣議決定されたものは国会へは報告はされる、こういうふうに理解してよろしいですね。
  18. 柳井俊二

    政府委員柳井俊二君) 国際約束締結手続に関しますので私の方からお答え申し上げますが、いわゆる行政取り決めと申しますものは、通常官報に告示をしております。そういうような形で一般に広く知らせるよう」にしております。
  19. 翫正敏

    翫正敏君 それで、次にお伺いしたいのが、国会最初要旨だけ提出されまして、国会提出されたのか要望した議員個々人提出されたのかそれはちょっとわかりませんが、いずれにしても提出されました。その文書を読んで大体内容を理解しておったわけですけれども、今度新たに十日ほど前でしょうか、全文をいただきまして読み比べてみたわけであります。この中に、最初いただいた「口上書の発出について」と題する四行ぐらいに要約をされた文章、これの中には、「いわゆる五原則を盛り込んだ」ということで、「いわゆる五原則」という部分ですね、本文にはない言葉挿入をされておるわけでありますけれども、これはどういう意図によって挿入がなされたんでしょうか。
  20. 澁谷治彦

    政府委員澁谷治彦君) 口上書要約の文言、あるいは口上書を交換いたしました際の新聞への記事資料では、確かに「いわゆる五原則を盛り込んだ国際平和協力法に従って」という書き方になっておりますけれども、この「いわゆる五原則」という言葉は、現在でもそうでございますが、一般日本国内においてこれは理解されているということで、わかりやすくするという意味でこういった表現を使ったのでございます。口上書は正式の文書でございますので、口上書においては「国際連合平和維持活動への日本国参加を規律する基本的な原則」という表現を使っております。「いわゆる五原則」といいましても国際的にはわからない場合が多いので、正式の文書においてはこういう書き方にいたしまして、この「基本的な原則」というのが五原則に当たります。
  21. 翫正敏

    翫正敏君 官房長官、それで私は何を言いたいかというと、もともとの文書にあったものが要約のところで必要に応じて短くするために省かれるということについて別に何ら問題があるとは思いません。しかし、短く要約されたところに新しい言葉というか表現が加えられるということには意図が感じられるということで申し上げているわけです。これは、国民の目をごまかすためであるというふうに悪くとられては困るでしょう。  そういうことで言うならば、私は、こんな要約文書提出するんではなくて、当初からやはりちゃんと口上書全文お出しになるということが誤解を招かない道ではないか、こういうことを申し上げたいわけなんです。私の申し上げていることについて、官房長官として所見をお述べいただきたいと思います。
  22. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 要約をお出しするのには、要約をお出しする緊急性でございますとか、その他幾つかの理由があったわけでございまして、今、翫議員おっしゃいますが、政府委員から御答弁申し上げましたように、国連に申し出ていないものをつけ加えて要約に書いたわけではなくて、国連にきちっと提出をした文書の中のものをわかりやすく書いたということでございまして、違う内客のものをお出ししているということではないわけでございます。要約、つまり短く、しかも中をわかりやすく説明をするという努力をしておる結果こうなったわけでございまして、そこは御理解をいただきたいというふうに思っております。
  23. 翫正敏

    翫正敏君 押し問答になるのでなんですけれども、再度要望しておきますが、やはり全文提出されるということが誤解を招かない道だということを申し上げておきたいと思います。  次に、モザンビークPKO活動について質問します。  最初に、この国連PKO活動安全保障理事会において決定をされるということがあって、そして日本参加要請される、そして事前の調査をして、そこがいわゆる日本の五原則に合致しているということがわかる、ここまでは法律の要求しているところですから必要条件であります。これはわかります。その上で、例えば、モザンビークの場合は当初官房長官は非常に慎重な御発言をしておられた。それが、派遣が必要ということになって派遣をされるようになりました。そこに政治判断というものがあったわけであろうと思いますので、その法律に明記されておりますところの必要条件が満足された上で、そこにプラスしてどういう基準政治判断というものはなされるのか、その基準をお示し願いたいと思います。それをお願いいたします。
  24. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) ちょっとそのお答えを申し上げる前に御理解をいただきたいと思いますが、モザンビークの場合に私が当初慎重論であったのではないかというお話がございました。確かに、私は当初慎重論者でございました。  その慎重であった理由の第一は、モザンビークには在外公館実館を持たないということがまずございました。これは、カンボジアを初めとする我が国と歴史的にもそれから交流密度も非常に濃いという地域と違いまして、モザンビークは歴史的には非常に古い我が国との間の行き来はございますけれども、その交流密度はそれほど濃いわけではございません。そして今日では、今申し上げましたようにモザンビーク実館として在外公館を置いているわけではないわけでございまして、したがって情報量というものはそう多くないわけでございます。これは比較論でございます が、そう多くの情報を持っているわけではございませんので、五原則が仮に満たされているとしても十分な情報を入手するということが必要であろうというふうにまず考えたわけでございます。  そのために私ども調査に行っていただいた。これは、政務次官が調査にいらっしゃいましたが、それ以外にも調査団を出す。この調査団は第二次の調査団にも行っていただいたわけでございますが、できる限り十分な情報を入手したい、その情報も政治的な情報あるいは軍事的なといいますか、現在の状況についての情報もそうでございますが、もっと初歩的なといいますか、生活環境それ自身、例えばどういう食生活、主たる食生活は一体どういうものであるか、あるいは予防すべき病気、伝染病のたぐいは一体どういうものがあるかといったようなことから調査をきちんとしなければならぬということを私は考えておりまして、表現は少し乱暴になりますが、二つ返事で判断ができるというほど十分な予備知識を持っていない、そういう意味で慎重に対応をしようということであったわけでございます。  ちょっと前置きが長くなりましたが、そこで、そうしたことの調査から始めまして、そうした調査の結果が出た後でさらに政治的な判断も加える、こういうことになったわけでございます。  その政治的判断はさまざまな角度から検討が加えられるべきだと思います。例えば、我が国国内におけるモザンビークへのPKO活動についての理解がどの程度得られるか、国際的な日本に対する期待度がどのくらいあるか、我が国モザンビークPKO活動参加する場合に一体効果的な参加というものは何か、あるいはまた効果的な参加ができるかどうか、そしてその結果その活動は十分に効果が上がるかどうか、そういったさまざまな角度議論、まだほかにもあると思いますけれども、そうした議論が加えられるべきであって、五原則が整ったから直ちに行くということとは違うというのが私の主張でございました。
  25. 翫正敏

    翫正敏君 政治判断基準も一応三、四点お述べいただきまして大体わかりました。  当初非常に慎重であった。官房長官もそうですし、総理大臣も非常に慎重な発言を繰り返されておられました。それが急転直下というような形で参加ということになったのは私も大変驚いたわけであります。驚いた理由は、別にPKO協力法が憲法違反で反対であるという主張をずっと今日まで一貫してしているということによるだけではないわけでありまして、それも背景にはあるのかもしれませんけれども、やはりそれだけではなくて、こう突然変わるということは何か大きな理由があるのかなということを思いまして、そこでその政治判断という言葉も聞かれましたから、その政治判断基準、こういうものを一遍お示し願いたいと、そういうふうに思ったから質問をしたところでございます。  それで、次にモザンビークPKO活動についての口上書の問題とモデル協定に基づく協定という問題についての質問をしたいんですが、これはカンボジアにおけるPKO活動の場合と全く同じであると、こういうふうに理解してよろしいですか。つまり、なぜ協定を結ばなかったか、口上書をまだ見せてもらえない理由、それは同じであるということでよろしいですか。
  26. 澁谷治彦

    政府委員澁谷治彦君) 先生のおっしゃるとおりだということでございます。カンボジアの経験にもかかわらず、いま一度モザンビークについては協定を結びたいということで国連と話し合いましたけれども、結局カンボジアの場合と同じような理由国連側口上書にしたいということでございます。
  27. 翫正敏

    翫正敏君 我が国としては、やっぱりいろんな権利関係とか国内への官報の告示という形でそれを国会にも示すことができるというようなこと等々から考えましても、また法案審議過程での議論から考えてみましても、モデル協定をもとにした協定を結ぶという、そういうことは今後とも引き続き変わらない我が国政府の方針であると、このように承ってよろしいですね。
  28. 澁谷治彦

    政府委員澁谷治彦君) 派遣協定を結ぶことが望ましいというのが政府の立場でございます。
  29. 翫正敏

    翫正敏君 次に、PKOの司令部に入っている五名の自衛隊員の身分の問題について質問したいんですけれども、自衛隊員の身分を併有しているということはこれはもちろん承知しておりますが、その上で平和協力隊員の業務ですか、この平和協力隊員としての業務を行っておるんだと、こういうふうに理解すればよろしいですか。
  30. 柳井俊二

    政府委員柳井俊二君) 御案内のとおり、このモザンビークPKO活動、いわゆるONUMOZにつきましては、国連側から我が国の輸送調整部隊が業務を遂行するに当たりまして、司令部との意思疎通が必要であるということで司令部への要員派遣の要請があったわけでございます。  我が国といたしましても、カンボジアにおける経験にかんがみまして現地における国際平和協力業務を効果的に遂行するとともに、我が国部隊の安全確保や支援を適切に行うということのためにも司令部に要員派遣するということにしたわけでございます。  この身分につきましては、御指摘のとおり国際平和協力隊員であり、また自衛隊員の身分を併有しているということでございます。
  31. 翫正敏

    翫正敏君 自衛隊員の身分は、自衛隊の部隊として派遣された人も自衛隊員の身分を持っているわけで、それは同じなわけですから、業務内容としては平和協力隊員としての業務ですかというふうに承っている。  なぜ、そういうことを聞いているかというと、要するにイからヘまでですか、それは凍結されているわけですね。ところが部隊参加でないから凍結の対象ではないというのが政府の主張でしょう。私は、それは非常に当初審議過程では思っていなかったことで驚いているんですけれども政府はそういう説明をされておられるので、そこで尋ねておるわけです。明確にしてください。
  32. 柳井俊二

    政府委員柳井俊二君) 凍結との関係につきましては、これは元来国際平和協力法案の中にはいわゆるPKFの活動に関する規定がまさにイからヘということで、これを部隊で行う場合にはPKFの活動であるということで入っているわけでございますが、参議院における審議過程部隊としてこのような業務を行うということについてはまだちょっと早いのではないか、もうちょっと慎重にした方がいいのではないかという御意見が出てまいりまして、その結果いわゆる凍結ということが行われたわけでございます。  したがいまして、凍結に関する修正の経緯の当初から、これは部隊が行う場合にはどうか、慎重にした方がいいのではないかということで出てきた問題でございますので、私は当初からそのようなことであったと思いますし、また附則の規定上もイからヘの業務を部隊として行う場合にはいわゆる凍結をするということになっておりますので、その点は明らかであろうと思います。
  33. 翫正敏

    翫正敏君 明らかだというのがなかなかわからないところが困ったものなんですけれども、輸送業務をする四十八名の自衛隊員は、自衛隊の部隊なんですね。
  34. 柳井俊二

    政府委員柳井俊二君) そのとおりでございます。
  35. 翫正敏

    翫正敏君 それで、このPKO協力法の三条のイからヘの業務は自衛隊の部隊としての業務として凍結されておるということでありますが、じゃ個々人の自衛隊員ですか、平和協力隊員ですか、両方の身分を持っている人、どちらでもいいですが、さっきの答弁を聞いてもよくどちらかわからないのでどちらでもいいですけれども、こういうふうに参加する参加人員ですね、これの上限はありますか。PKO協力法に参加する全体人員は二千名というこれはわかっておりますが、その枠の中でのさらに制約とか上限等ありますか。
  36. 柳井俊二

    政府委員柳井俊二君) いわゆる個人参加と言っておりますが、部隊でない形の参加の場合につきましては、ただいま御指摘の二千人という枠以外にはいわばその内枠というようなものは定められておりません。
  37. 翫正敏

    翫正敏君 ということは、簡単に言いますと、こういうふうに理解すればいいんですか。  部隊として参加するときはイからヘまでの活動、あのときの議論の中では非常に危険であるからとかそういうようなことなどなどで、国民の理解が得られないとかというようなさまざまなことで、これは議員立法でしたから、立法したのは国会議員の院の方ですから、しかし執行するのは行政府の方ですから、行政府の方で執行する執行の仕方としての立場でお聞きするわけですけれども、どこまでも人数に制限がないと、やっぱり二千人の枠同じだということになりますと、実質凍結をしているといいましても、その凍結の枠を破ろうと思えば、二千人全部個人参加にしてしまえば全部PKFと言われる、PKOとPKFのそういう言い方はやめましょうね。凍結されているイからヘまでの活動とこう言いますが、その凍結されているイからヘまでの活動を二千人全部にさせることができるということに結果なるということですね。  そうしますと、凍結という国会の意思というものは、結局行政府の運営の中では全く空文化させることが可能である、このように理解をしなきゃならないと思うんですけれども、どう答えられますか。
  38. 柳井俊二

    政府委員柳井俊二君) いわゆる三条三項のイからヘまでの業務につきましては、現在例えばカンボジアの場合をごらんいただきますと、二つの形態があるわけでございます。  一つは、いわゆる個人参加による停戦監視でございます。我が国の場合は八名参加しておりまして、つい先ごろ六カ月の任期が来て交代いたしました。現在も八名おります。  それからもう一つの形は、部隊参加のいわゆるPKFでございまして、我が国の場合は参加ができないということで参加しておりません。ただ、ほかの国からは歩兵部隊という形でこのイからヘというような業務を行っているわけでございます。  したがいまして、この点につきましては、私二つ違いがあると思います。  一つは、停戦監視の場合は、これは我が国の場合に限らず全部丸腰で行っております。その点が一つございます。それからもう一つは、いわゆる個人参加停戦監視の場合でございますが、これは国連の確立した考え方といたしまして、各国から停戦監視員を募りますが、これは例えば我が国の八人なら八人が一つのチームを編成するということではなしに、ほかのいろいろな国籍の人をまぜてチームを編成する、そういうことをすることによって国連中立性と申しますか、客観性というものを停戦監視員に与えるということをやっておるわけでございます。したがいまして、一つの国から参加する停戦監視員の数というのはおのずと限定がございまして、そう非常に多い数の停戦監視員がある特定の一国から参加するということはないわけでございます。  なお、カンボジアの例をとってみますと、停戦監視員は全体で約四百七十人でございまして、これが三十カ国以上の国に割り当てられているということでございます。
  39. 翫正敏

    翫正敏君 停戦監視だけのことじゃないわけですよね。イが武装解除の履行の監視ですから停戦監視なんですね。ロが駐留とか巡回で、ハが武器の検査などであって、ニは放棄された武器の収集ないしは処分であって、ホは境界線の設定をするというようなこと、ヘは捕虜の交換の援助などをするというようなこういうことになっているわけで、最後にレというところでもそれに類するものは凍結と、こういう法律になっているわけですが、こういう活動政府の意思さえあれば、意図さえあれば二千人を全部ここへ、二千人とは言わないですけれども参加者全員を、上限ないわけですから、例えば六百名自衛隊員を参加させようとしたときに、部隊として参加させるときはこれは凍結されておるからできないと。個々ばらばらにそれをすれば、六百人全部にイからヘまでの活動をさせることができる。  ちょっと、ちゃんと答えていただきたい。そういうことはできるんですかできないんですかということを聞いているんですからね。できるかできないかで答えてください。
  40. 柳井俊二

    政府委員柳井俊二君) 現実の問題といたしまして、そのような形では動かないと思います。先ほど申し上げたように、停戦監視と申し上げたのはまさにイからヘのようなことをいわゆる個人参加で行うという場合はそれは停戦監視員という形で参りますので、これは先ほど申し上げたように非常に多くの国々から少しずつ参加してもらって、したがいまして、通常このイからヘということで個人参加ということになりますと、いわゆる停戦監視員ということになるわけでございまして、それ以外の形でばらばらに大変多くの数の要員がある一国から参加するということは、国連で行われていないものでございますから、そういう形というのはちょっと考えにくいところでございます。
  41. 翫正敏

    翫正敏君 じゃ、防衛庁の立場から言いましても、そういうものは国連から要請も来ないだろうというふうな前提で考えておられるにしても、そういう派遣も考えていない。あくまで個々人の活動が主ではなくて、部隊としての参加が主であって、それは凍結されている活動以外の活動、輸送とか道路の修復とかそういうものに参加するのであって、そして凍結されているところには個人の数名が参加をしていくというような、そういうことはこの法律が変わらない限り確固たる方針である、こういうふうに承ってよろしいですか。
  42. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) ただいま柳井事務局長の方から御答弁ございましたように、国連PKO活動の中でこのイからヘまでに掲げる事業を部隊として行う以外のものとしては、停戦監視員というジャンル、その他わずかの今、司令部要員のところはこれに該当する部分もあるということも考えられるわけでありますけれども、そういったもの以外には今国連の方で行われていないということでございます。  したがって、我々としてはそういう国連からの要請を受けて、しかも本部長からの要請を受けて派遣するわけでございますので、防衛庁としてそういうものを、今御説明のようなイからヘまでのものを個人参加ですべて参加するということですと、そういう任務が達成できないというか、国連側で受け入れができないという状況でございますので、そういうことはあり得ないということを断言させていただきます。
  43. 翫正敏

    翫正敏君 外務大臣が見えませんので困るんですが、時間がもう終わってしまいますので、本法案についての質問をいたします。外務省の方から答弁いただきます。  きのう、侵略の定義に関する国連の決議というものを取り上げましたけれども、同じことを申し上げたいために別の角度から質問したいのでありますが、パリ条約の第三十二条で規定されております軍用の航空機または軍艦、これに認められている特別な権限というものについて、どういうものがあるのか説明してください。事前に通告してありますから答えてください。
  44. 荒義尚

    政府委員(荒義尚君) ただいま御指摘のパリ条約でございますけれども、パリ条約については特に軍用機については規定しておらないというふうに承知しております。重用機につきましては一般国際法上軍艦に準じた特権免除が与えられるというふうにされておりますけれども、航空機の歴史自体が比較的新しいということがございまして、そういう特権免除の具体的な内容についてまで現在一般国際法上確立した規則というものはまだできていないというふうに承知しております。
  45. 翫正敏

    翫正敏君 じゃ、質問を変えますが、外国の領域にあって、つまり他国の主権のもとにあって、軍用航空機にはその他の官民いずれの航空機にもない不可侵権と治外法権、こういうものは国際法上認められているのではありませんか。
  46. 荒義尚

    政府委員(荒義尚君) お答えいたします。  現在の一般国際法上、軍用機につきましては一般的に不可侵権が認められておるというふうに承 知しております。
  47. 翫正敏

    翫正敏君 それで、きのう申し上げたのは、それと関連をして、国連の決議にありますところの侵略の定義ということを取り上げたわけでありまして、つまり、普通に言うところの国家の主権、領土とか主権が直接に外国その他の武力によって攻撃を受けるという場合はもちろん侵略を受けたということになるわけですけれども、そういうのに類した幾つかの行為が挙げられたほかに、極めてそれとは異質な事柄として一国の陸軍、空軍、海軍の所有するところの、保持するところの艦船や航空機に対する攻撃、これを受けた場合には、これは侵略というものに相当する、こういうことを申し上げ、その場合、武力攻撃を受けた場合に自衛権発動としての自衛隊の武力行使ということは憲法上や自衛隊法上行われるということがあり得るのではないか、こういうことを質問などできのう申し上げたわけです。  私自身の立場は、自衛隊はもちろん憲法違反と考えておりますし、自衛隊が武カ行使をするということは違憲である、憲法違反であると考えているわけですが、政府の立場に立てはそういうことになるのではないか、こういうことを申し上げたわけでありますが、きのう質問したことときょう取り上げました資料といいますか、そういう内客を両方合わせて、外務省の方からもう一度。  法案に則して言いますと、軍用の航空機、自衛隊の航空機ですね、これが武力・攻撃を受けた場合の自衛権発動との関連について答弁をしてください。
  48. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 衆議院の外務委員会の方におりまして、先生の御質問の途中から入ったものですから全貌を把握したかどうか自信がございませんけれども、まず、昨日も私ども政府の方から申し上げましたとおり、本件法案との関係で今先生がおっしゃっておられるような事態というのが起こるという、あるいは起こるようなところに出かけていくということは現実に想定してないわけでございます。そういう意味で、この法案との絡みで今のような事態というものを私たちが論じることはいかがなものかなと思います。  そういう意味で、全く一般論に引き直させていただいてその考え方を御説明させていただきますと、問題はいわゆる軍用機であれあるいは軍用の艦船であれあるいは非軍用のものであれ、一国から見て一般国際法上外部からの急迫不正の侵害に対してこれを排除するために他に適当な手段がない場合に、当該国家が必要最小限度の実力を行使する権利というものは、私の立場すなわち国際法を論ずる者の立場からすれば一般国際法上それは認められておると。そういった艦船、航空機が政府そのものであれ政府のものでなくても、その所在はこの際問題には必ずしもならない。それが一般国際法上の考え方でございまして、それを日本の憲法の体制あるいは自衛隊法の体制でどう受けとめるかというのは、これは私自身の立場を超える問題でございますので、場合によっては法制局、場合によっては防衛庁当局からのお答えがしかるべきものということは昨日も御答弁申し上げたところでございます。
  49. 翫正敏

    翫正敏君 要するに、この法律によってはそういう危険なところへは行かないんだというふうにおっしゃいますが、きのうもこれは言ったことの繰り返しですけれども、安全なところというのは途中が安全なところなのであって、騒乱その他緊急事態の起こっているところへ助けにいくのは外務省の仕事であって、運ぶのが防衛庁の仕事であるという分担はあるにしても、いずれにしても行き着く目的のところは危険なところなわけですから、途中がすべて安全なところであってもそういう事態を全く想定してないんだというのは強弁というものであって、法律そのものにそう書いてあるわけです。「緊急事態に際して」自衛隊機を動かすんだというふうに書いてあるわけですから、それを安全なところへ行くんだからそういう事態を想定してないんだというような前提でお話しになるのはおやめになるべきだということを御忠告申し上げておきます。それは答弁要りません。  次に質問しますが、外務大臣もせっかく来られたことなので、次の問題点。今まできのうの復習をちょっとやっておりましたらもう既にはや時間があと数分ということになりました。これではとても審議が十分尽くされたとは私は思えないということを委員長に強く申し上げておきたいと思うわけであります。  外務大臣がいないとだめなんですよ。多国籍軍など武力行使を伴ったり目的としたりするところの国連軍ですね。ここへの参加や協力の問題と本法との関係についてお聞きをしたいと思います。  一応、昨年十二月八日の本内閣委員会において私が質問をいたしまして、内閣法制局の大森政府委員の方から答弁をいただき、加藤官房長官の方から「法制局から答弁のあったとおり」であるという答弁をいただいた部分の重要なところだけ引用いたしますが、「自衛隊が湾岸危機における多国籍軍のようなものへ協力することにつきましては、自衛隊法あるいは国際平和協力法等、現行法上はそのような任務を自衛隊に付与した規定はないから、これを行うことは法律上根拠がないからできない」と、こういう答弁でありました。  しかし、これは湾岸戦争のときの多国籍軍というようなものへ武力行使を目的としたり、それを伴ったりしている国連活動なので、参加をすることは憲法違反であるけれども、後方支援などの協力をすることは、これは憲法違反とは考えていないという前提が置かれているわけであります。ただ、自衛隊法上やPKO協力法などの実定法上のそういう根拠がないからできないんだと、こういう答弁をしておられるわけです。  ところで、湾岸戦争のような多国籍軍への後方支援というものが本法が成立した場合にどのように関係するのかという観点でお聞きするんですが、外国人を「同乗させることができる。」というこの一文がございますので、やはりこれがきのうの答弁からも直接目的ではないと、やはり邦人救出が主眼であるということは答弁にありましたけれども、外国人を乗せることができるという側面に着目して申しますと、やはり多国籍軍が展開しているようなところへも緊急事態、邦人の救出ということを求められた場合には派遣することがあり得ると。その場合に、そこに外国人がいれば同乗させることができるということであれば、実質上多国籍軍への後方支援というものは、この法律によって協力というものは可能になるというふうに判断するんですけれども、実際上そのような場合どうなんでしょうか、外務大臣にお答え願いたいと思います。
  50. 武藤嘉文

    国務大臣(武藤嘉文君) 私どもが今この法律でお願いをいたしておりますのは、政府専用機を含んだ自衛隊機で緊急避難をすべき事態が発生をした地域において、その地域にいらっしゃる在外邦人を輸送していただくということをお願いをするわけでございまして、今御指摘のありましたような、何か多国籍軍の後方支援とかそういうこととは全く私は関係のない話だと思っております。  多分今のお話は、それじゃ在外邦人だけじゃなくて外国人も場合によれば乗せるじゃないかということからのお話かと思いますが、それはたまたまその飛行場なら飛行場に在外邦人がいらっしゃった、そしてそのすぐ近くに外国人もいらっしゃる、席が空いている、やっぱりその人たちもどこかへ逃げていきたいという、いわゆる軍隊じゃ決してないわけでございまして、民間の外国人がたまたまいらっしゃる方を何人か座席が空いていればそれはお乗せをするというだけの話でありまして、多国籍軍とは全く私は関係ないと思っております。
  51. 翫正敏

    翫正敏君 多国籍軍に参加するということは憲法違反であるからもちろんできないことははっきりしているわけです。その上でお聞きするんですが、じゃ湾岸戦争のときの多国籍軍が活動している最中というようなところへは、この法律が成立した暁においても自衛隊の飛行機を飛ばすことはできないんですか、外務省は要請しないんですか、お答えください。
  52. 武藤嘉文

    国務大臣(武藤嘉文君) これはきのうも答弁を いたしましたけれども、そのときの情勢がどういう情勢かでございますが、少なくとも飛行経路、またその着陸地点の空港、そこが危険な場合にはこれは自衛隊の方でそういうところへは行けないというふうにおっしゃると思っております。
  53. 翫正敏

    翫正敏君 その多国籍軍が展開しているところというのは、必ずしも即飛行場が危険であるかどうかということとは直結しないわけでありまして、圧倒的に多国籍軍の方が強力で、多国籍軍にやられている例えばあのときはイラク軍でありますが、イラク軍の方がクウェート側から見ればはるかに強大でありますが、多国籍軍から比べればまだはるかに小さいわけで、ぼろ負けに負けたわけですから。  そういう状況であれば、危険であるかどうかという判定基準だけであるならば、別にそういう意味の着陸に危険性はないかもしれない。問題は、その湾岸戦争の多国籍軍がまさに今展開しているようなそういう地域、それは湾岸地域ということになりますけれども、そういうところへは本法が成立した暁においても外務省は邦人救出のための輸送を防衛庁の方に依頼をするということはないのか、それともあるのか、これをお答えください。
  54. 武藤嘉文

    国務大臣(武藤嘉文君) 今後の仮定の問題でございますが、先ほどから申し上げておりますように、あくまで私どもは緊急避難をすべき在外邦人がいらっしゃる、そういう緊急避難をすべき在外邦人がいらっしゃる地域に派遣をさせて、そしてそこから輸送していただきたいということをお願いするのであって、たまたまその近くに多国籍軍がいらっしゃってもそれとは関係なく、私どもはとにかく自衛隊機が安全で行けるときには行っていただいて救出をしていただきたいと、こういうことでございます。そこが危険であるかどうかという判断でお願いをしたいと思っております。
  55. 翫正敏

    翫正敏君 だから、私が大体思っていたとおりで、実質的にはそこで外国人も同乗させるというふうなことを行うことによって、多国籍軍への現在の立法上できない協力活動というものが可能になる法律であると、このように考えるところであります。反対する理由として申し上げたいわけです。  それから、もう一点だけ聞いて時間でありますので終わりますが、じゃ、現在ソマリアで展開されておりますような現在のPKO協力法上は我が国参加ができない新型のPKO活動ですね、武力行使も容認されているようなPKO活動。これが展開されている地域、国、ここへ本法を根拠として自衛隊の航空機を派遣要請をできますか。しますかしませんか、できるかできないか、お答えください。外務省の方からお願いします。
  56. 荒義尚

    政府委員(荒義尚君) 先ほど大臣の答弁にございましたように、私ども考え方といたしましては、そこに仮に退避を要すべき在留邦人の方がおられて、そこへ行く航空機の航路及び着陸が可能である、そういう状況であればもちろん自衛隊、防衛庁の方に私どもとしては要請する。ただ、そういう状況でなければ要請しないということでございます。
  57. 翫正敏

    翫正敏君 終わりますが、ちょっと一言だけ。  要するに、極めて簡単な条文、百一条ということでちょっと自衛隊法に追加をされるだけのように見えて、非常に簡単なことであるということを盛んにきのうはおっしゃったわけでありますけれども、よくよく質問をしてみれば極めて危険な法律であるということが明らかになったと思いますので、強く今後も反対をしていきたいということで、審議はこれからも慎重審議を尽くしていきたいということを申し上げて終わります。
  58. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 昨日から、この問題についていろいろの論議を聞いておりますと、何といっても話が仮定の問題だとか抽象的なことばかりなんです。だから、なかなか論議がかみ合わないというような面が出てまいります。  しかし、この条文からいうと、「長官は、外務大臣から外国における災害、騒乱その他の緊急事態に際して生命又は身体の保護を要する邦人の輸送の依頼があった場合には、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において、航空機による当該邦人の輸送を行うことができる。」要するに、自衛隊の飛行機を使ってあるいは軍用機を使って危険な目に遭っている在外邦人を救い出す、こういう内容なんですね。  じゃ、その場合の騒乱、災害はわかりますよ大体、説明してもらわなくても。災害の場合は、これは民間機でもって十分に間に合う。しかし、騒乱となると、あるいはその他の緊急事態ということになると、具体的にどういうことになるんですか。
  59. 荒義尚

    政府委員(荒義尚君) 御指摘法案の中にあります「騒乱」という定義いかんというお尋ねかと思いますけれども、騒乱という言葉を用いた我が国法令は幾つかあるというふうに承知しておりますけれども、その言葉の定義を法律的に提示したものはないというふうに承知しております。  ここで騒乱という言葉を用いましたのは、御案内のとおり、緊急事態の一つの例示ということで特記してあるわけでございますが、抽象的に申しますと、何らかの原因によってその地域の社会的な秩序あるいは治安が乱れる騒擾状況、これも含むわけでございますけれども、そういうことを指す意味でございます。  具体的には、例えば内乱であるとか暴動あるいは暴力的なクーデターといった状況であるというふうに考えております。
  60. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 こちらの方からわざわざ自衛隊の飛行機を使って救い出しに行かなければならないということになると、その騒乱というのは武力対立とか軍事的抗争とか、そういう事態が発生をして危険が伴う、こういうことになるんでしょう。  素手でもって取っ組み合いしている限りにおいてはわざわざ行くことはないんだと、そうでしょう。これは武力を使って撃ち合いをする、殺し合いをする、こういう渦中に巻き込まれたら大変だから助けに行かなきゃならぬと、こういうことになるんじゃないですか。
  61. 荒義尚

    政府委員(荒義尚君) これは、過去の例を若干引用して御説明いたしますけれども、例えば昭和四十六年、パキスタンの内戦のときでありますけれども、このときの状況というのは文字どおり内戦状況であったわけであります。繰り返しになりますけれども、そこを通過してダッカ空港まで行くということは当時の状況として可能であるということで、可能なうちに私ども日本航空のチャーター機をチャーターしまして邦人の方を救出いたしました。そういうケースがございます。
  62. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それは民間航空機を使って助け出したというやつですよ。ここに書いてあるのは自衛隊機を使う、軍用機を使うということです。軍用機を使うということはかなり危険を伴うということになるんでしょう、危険を伴わない場所に軍用機が行く必要はないんですね。  だから、軍用機を使うということは、自衛官を乗せていくその飛行機を今度は防護しなきゃならぬという問題が出てくる。武力対立が、例えばカンボジアのような例を挙げてみてもどっちがどうなんだかさっぱりわからない。殺された人も、あそこで犠牲になった人も犯人不明のままなんですね。非常に気の毒な事情にあるわけです。  そういうところへもし軍用機が飛んでいくということになると、これは明らかに軍用機であるということがわかりますから、内緒で飛ぶわけにいかないんだから、そうするとあれは日本の軍用機だと。これは飛行機自体がねらわれるかもしれない、着陸した後でもねらわれるかもしれないです。そうすると、運ぶ自衛官だって武装した人間を連れていかなければこれは役に立たないことになっちゃうんです、自衛のために最小限度の武器を使うという理屈をつけたとしてもですよ。そういうことになるんじゃないですか。
  63. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 一般論として、自衛隊の航空機が国際法上は軍用機として取り扱われるというのは事実でございますけれども、在外邦人の救出のための輸送に用いられる、政府専用機を含みます自衛隊機の場合は、先ほど来あるいは先般来るる御説明申し上げておるとおり、安全が確保 されない限り実行がなされないということでございまして、そこは民間航空機によるチャーター便の場合と事情は異なるところはないということを申し上げているわけでございます。  したがいまして、その航空機を防護するための武器という問題が必要となる、これは自衛隊法九十六条に基づきます警務官の拳銃を携行する場合があり得るという警察的行動が航空機内でとられることはあるとしても、航空機外において航空機を守るための、あるいはその要員を守るための武器使用ということが想定されていないということを申し上げているわけでございます。  ちょっと事情をもう少し御説明申し上げますと、先ほど外務省の方からも御説明ございましたが、今までもまさに緊急事態に輸送を民間機によって行ってきたわけでございます。そのときには何も危険だとかなんとかという問題はなかったはずで、それと同じ状況の中で政府専用機を、政府が持っている飛行機を使いたい、その政府専用機が防衛庁によって管理されているだけという状況でございますので、そこのところは事情が変わったということではなくて、今までどおり民間によるチャーター機等で救える事態に対して、民間の飛行機の調達に手間取るということがあり得るので政府みずから持っていればそれが自由に使えるという、その点を考えて政府専用機というのは考えられている、こういうことでございまして、軍用機というその特殊な機能をそこで発揮させようとか、そういうことではございません。
  64. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 軍用機であることに変わりはないんですよ、自衛隊の所属であれば。じゃ、その政府専用機だけしか使わないということなのかどうか、それはどうなんですか。
  65. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) それはそうではございませんで、るるこれも御答弁申し上げておりますけれども、事情によっては航空自衛隊の持っていますC130といったようなものを使うことは想定されております。
  66. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 きのうもC130を使うこともあるというお話がありました。しかし、この場合は飛行機が飛んでいって向こうの邦人を運んで帰ってこなきゃいけないでしょう。飛んでいくだけじゃいけないんですよね。飛んでいくだけで帰らなきゃこれは特攻隊になっちゃうから、それじゃしょうがないんです。  じゃ、今度それが帰ってくる場合に、例えばきのうのお話ではC130は胴体着陸だってできるというお話がありましたね。胴体着陸はいいですよ、着陸するだけなら。帰ってくるときに胴体離陸というのはないでしょう。これは行っただけじゃしょうがないんですからね。そうすると胴体離陸ができなくて行ったきりになっちゃう。どうやって連れて帰るんですか、邦人を。帰りようがないでしょう。そういうこともちゃんと考えているんじゃないですか。747だけならばいいですよ、747が安全に着陸できる場所だけだというふうに限定されるんなら我々も何も神経を使う必要はないんですよ、C130でも何でも。きょうの新聞にC130というのはちゃんと出ていますよ、こういうようなのを見るとそういうこともあり得ると、さっきそういう返事がありましたから。  そうすると、これは騒乱あるいは他の緊急事態に際しては自衛隊の飛行機を使うことができるようにするとなっておるんでしょう。そうじゃないですか。
  67. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) C130を使うことはあり得べしと申し上げましたのは、その運用がより適切な場合に限られるわけでございます。例えば派遣先国の空港が滑走路が短くて747−400は着陸できない、しかしC130ならおりられるという場合に、C130を使って救出しないあるいは救出のための輸送をしない手はないということで、適切な組み合わせによってC130もそのオプションの中に入れてあるということでございます。  さらにはまた、輸送すべき対象人数が極端に少ないという場合に、三百人を乗せることのできる大型の航空機をそこに一々持って行く必要はない、九十人最大乗せることのできるC130で足りるという運用もまたより適切な運用だと考えるわけでございまして、そういう在外邦人の救出のための輸送をいかに適切にするかという観点からのみ我々はC130を含めてオプションの中に入れているということでございます。
  68. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それは、緊急の事態あるいは騒乱、危険な状態になった場合にそこから邦人を助け出すということはそれはやらなきゃならぬことだと私も思います。しかし、やらなきゃならぬという前提としては安全が第一なんでしょう。飛行場だって安全でなけりゃいけない、それから大きな飛行機じゃおりられない、小さな飛行機じゃなきゃおりられない場所もあるかもしれない、ちゃんとした空港がないかもしれない、ないかもしれないけれども田んぼの中や畑の中にジャンボ機をおろすわけにいかないだろうと思うから、そうするとそれ相応の方法を考える以外にない。  しかし、この騒乱というのはいわば内乱なんですからね。武器を使って撃ち合いをやっている、殺し合いをやっているというのが現実に出てきた場合に、そういうふうに百一条に書いてある、それは極めて危険な状態なんです。極めて危険な状態だから自衛隊機を使いたい、こういうことなんでしょう。危険でなけりゃ民間機で間に合うんだから。今までだって民間機でもって邦人を多数助け出してきているんですよ。だけれども、騒乱あるいは緊急事態というせっぱ詰まった状況が前提になっているんだから、そうするとその危険な場所に飛んでいくんだから、それが軍用機であるということになると目標になるということも当然考えなきゃならないでしょう。  大丈夫だというふうに言ったところで、PKOだって、これがいい例なんだけれども、大丈夫だ大丈夫だ、絶対に心配はない、こういう話は去年のPKO審議の際に耳にたこができるほど聞きました。実際はちっとも大丈夫じゃなかったでしょう。この間予算委員会のときに公明党の猪熊さんが、去年の話は大丈夫だということだったけれども、しかし実際はそうじゃない、犠牲者が出たじゃないか、日本だけじゃないんだ、外国だって多数の犠牲者を出しているじゃないか、話が違うじゃないか、こういう話をされました。  それから、我が方の喜岡議員がこの間カンボジアへ行って文民警察の人からいろんな話を聞いたそうです。そうしたら、助かった人は、弾が頭のわきをかすめていったと。これはかすめていったから助かったけれども、あと三センチか五センチ違ったら即死だったわけです。非常に危険な思いをされているわけです。  そういう危険なところにもし行くということになると、軍用機であれば非常にこれは問題になる、ねらわれる。それから、軍用機を乗っ取られたりなんかしたらみっともないことになるから、それ相応に警戒をしていかなきゃならないということになるでしょう。そうすると、ちゃんとした護衛機をつけるとかあるいは護衛要因を乗せていくとかいうことをしないと安心して行けないでしょう。姿かたちだけが自衛隊機であるということで相手が恐れをなして遠慮すればいいけれども、遠慮しなかったら困るでしょう。攻撃かけられたらどうしますか。そのとき、応戦をすれば交戦状態になっちゃうんです。  だから、この条文からいうと、騒乱の地域に対して軍用機を飛ばすということはこれはもうガソリンスタンドでもってたき火するようなものです。大丈夫だ大丈夫だと言ったってちっとも大丈夫じゃないんだ、そういうことになるんですよ、これ条文の上からいくと。だから、安全だ、完全にもう心配はないということが保障されるんならばこれは民間機でもよろしいということになる。そういう心配はないようにするというなら民間機でどうして都合が悪いんだという話になっちゃうんです。だから、話はちょっとこの問題では矛盾したところが出てくる。本当に民間機でもって救えるならばそれにこしたことはないでしょう。外務大臣だって防衛庁長官に頼む必要はないんで す。防衛庁長官外務大臣がぜひ頼むということは、危ない場所だから、危険が伴うからだからひとつ防衛庁に頼む、こういうことになるんでしょう。安全だけれども軍用機を頼むと言われたら困るでしょう。防衛庁長官、どうですか。
  69. 中山利生

    国務大臣(中山利生君) 昨日から繰り返し御答弁申し上げておりますが、瀬谷先生の言われておられる輸送活動と私どもが現実に考えておりますのは少し、ほんの少しですけれども違う感じがいたします。実際に民間航空などが世界じゅうを飛び回っておりますけれども、空の上だから何にもルールもなしに飛んでいるわけではありませんで、私ども乗っておりましてもう本当に鉄道線路と同じようにレールの上を走っているぐらい厳しい航路の規制がありますし、出発から到着まで、あるいは中間の航空路において、電車と同じように青信号がずっとついていなければ出発もできないし、到着もできないというのが大型航空機の運航の実態であろうと思います。  現実に、先生がおっしゃっているような、弾が飛び交っていて何か警護の者をつけなければ安全が保てないというようなところへは、現実の問題として飛行機は着陸ができないと思うわけでございまして、もしそのようなところべ何でもかんでも強行着陸せよ、自衛隊機だからそのくらいできるんだろうというふうな要請があった場合には、私どもとしてもお断りするしかないということを繰り返し申し上げているところでございます。
  70. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それは、防衛庁長官がそれぐらいの配慮をしないと、幾ら自衛隊の飛行機だって余り危ない思いをさせては万一の場合にはこれは困るんですよね。だから、慎重に飛ぶんだと。バックもできないと言ったけれども、飛行機は大体バックはできませんわな、長官がそう言ったから。飛ぶ場合には、そういうふうに安全を期して飛ばなきゃならない。着陸する場合だって、安全を期したところに着陸しないと困ると私は思うんですよね。  だけれども本文の冒頭に、「騒乱その他の緊急事態」と書いてあるんですよね、明記してあるんですよ。だから、そういう危ないところに行くということを前提にしていないと言うけれども、書いてある以上は、それは何でこう書いてあるかということになると、話が矛盾してくるわけですよ。心配のない騒乱、そういうのはないでしょう、ソーラン節じゃないんだから。これはやっぱり、騒乱というのは危ない、何と言われても危ないということになる。  距離だってそうですよ。モザンビークに今PKO派遣しているんしょう。モザンビーークヘ、何であんな遠いところへPKO派遣したのか、ちょっと私にもわからなかったけれども、これは官房長官が、さっきちょっと出られまして今おりませんけれどもモザンビークなんかにPKO派遣した。あそこで、もう現在のところは心配ない、心配ないからPKOだという話ですけれども、心配があってあそこにいる邦人を救出しなきゃならぬなんという場合には一万二千キロあるというんですよ、あそこまで。一万二千キロもあるところへおっ取り刀で飛んでいくというわけにはいかないと思うんですよね。そんなような場合は想定していないのか、そういう場合にはよその国に頼むのか、それともいろいろと島伝いに無理して飛んでいくのか、そういう場合にはどうします。
  71. 荒義尚

    政府委員(荒義尚君) 私ども、邦人保護という外務省の立場から申し上げますと、世界のあるところで退避を要する在留邦人の方がおられるということであれば、その点は距離の遠い短いに関係なく一応考えるということでございます。それが可能かどうかは、もちろんいろんな条件を私どもも防衛庁ともいろいろ協議して決める、そういうことになると思います。
  72. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 そうすると、モザンビークであろうとどこであろうと、そういう事態が生じたならば無理しても飛んでいく、こういう話になりますね。そういうふうに理解していいんですか。
  73. 中山利生

    国務大臣(中山利生君) 制度上はそういうことになろうかと思いますが、現実問題として、今一万二千キロの遠いところ、そういう場合で救出が必要だというような場合は、やはりその間近にある定期航空、そういうものをまず利用することを考える。それから、その地域の近いところでチャーター機や何かが調達できれば、緊急の場合にこちらから飛んでいくよりははるかに間に合うわけでありますから、第二義的にはその周辺の間近なところからチャーターをする。それから、そういうことも不可能である、時間的に間に合わないといった場合に、恐らく防衛庁の方に依頼があるんであろうというふうに考えております。
  74. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 そういうところはそういう方法でもっていろいろ考える。それはいいけれども、じゃ、仮にモザンビークまで行かなきゃならぬという場合には、近辺に頼むのならこれは民間機を頼むことになるでしょう。いかにジャンボ機といえども日本からストレートに飛んでいけるんですか、あれは。空中給油か何かする、そういうのをお供を連れていかなきゃ行かれないんじゃないかと思うけれども、その点はどうなんですか。
  75. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 747−400の飛行機の航続距離は、積んでいる荷物等の重量にもよるわけでありますけれども、基本的には一万三千キロぐらい飛べるわけであります。一万三千キロぐらいでありますから、通常のスタイルであればこれで無給油で飛べるという状況でございます。  ただ、安全度その他を考えて途中で給油をするというケースももちろん排除されない。つまり、どこかに寄って給油する。これは空中給油を考えているということはございません。
  76. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 じゃ、そういう飛行機が一機か二機あるということはわかりましたがね。二機なんですね、今のところ。  それで、そうすると、このジャンボ機が着陸できないような場所は、C130とか小型機でもって間に合わせるということになりますね。すると、それは今度は軍用機でしょう、軍用機を使うわけですね。  そうすると、例えばカンボジアのようなところで、どうもその後の政情がはっきりしておりません。選挙が終わった終わったと言うけれども、選挙が終わってあそこでもう平和な民主国家が誕生したというふうに理解していいんだかどうか、ここのところわからないんですよ。まあシアヌーク殿下のもとでもってまとまっているんだかまとまっていないんだか、あそこにいろんな紛争がもうこれから先、生ずるおそれがないというふうに見ていいのかどうか。もう選挙監視要員というのは引き揚げたようですけれども、その辺の事情は、さしあたって具体的にはごたごたの起きる可能性があるところはカンボジアなんで、カンボジア状況について、PKOの問題について外務大臣からお聞きしたいと思います。
  77. 武藤嘉文

    国務大臣(武藤嘉文君) カンボジアの情勢につきましては、多少まだ不確定なところが多いことは事実でございます。しかし、シアヌーク殿下が一生懸命努力をされて、何とか全体をまとめていきたい。それはやはりカンボジアの国民が約九割という高い投票率を示されたということをやはりシアヌーク殿下も重く受けとめておられると思います。それはUNTACの明石代表も同じでございまして、これはやっぱりカンボジアの国民が平和で民主的な国家を望んでおるということでございますから、今いろいろとなかなか難しいというのは、どちらかというと指導部の中での争いというのが正直中心になっていると思うのでございます。  もう少し、やはり投票にあらわれた国民の気持ちというものを、私は余り内政干渉じみたことは申し上げられませんけれども、シアヌーク殿下のもとで各派の指導者の人たちが協力をし合っていただいて、御承知のとおり、三カ月の間に制憲議会をつくり憲法をつくり新政権を発足させるということになっておりますから、それまでの暫定的には一つの行政機構として今シアヌーク殿下が考えられていると思うのでございます。せめてそれまでの間、とにかくうまくいくようにやるために は、国全体としての何らかの形の行政機構があそこにつくり上げられていくということが私は国民の望んでいる姿ではなかろうかと。  そういう面で、シアヌーク殿下の今努力を期待をいたしておるわけでございまして、今確かに不安な要件もないとは言えませんけれども、今のところは私はそんなに非常に危険な状態にあるようだとは思っておりません。
  78. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 私は、カンボジアのような地域でもってどうしたら民主主義というものが確立てきるか、非常に大変だと思うんですよ。それで、こういう地域に対してどうしたら国際貢献ができるかということも政府としてこの際じっくり考えてもらう必要があると思うんです。  何でも人を送ればいいというものではないんですね。選挙監視要員だって私はやっぱりどうも腑に落ちないんだけれども、選挙をやるのに字も読めない、言葉もわからない人が、一つの投票所に一人日本人のボランティアが監視要員として行ってみたところで余り意味がないんじゃないかなという気がするんです。我々の選挙だって、選挙をやる場合には、選挙立会人なんというのは町内の顔役とかそんな人が出てきて、投票する人も選挙立会人もお互いに顔見知りという例が多いんです。あれがもし外国の人だったらどうしますか。カンボジアの人あるいはベトナムの人に選挙立会人に来てもらったって意味をなさないでしょう。  それと同じで、日本人が行ってみても、それは即席でカンボジア語を覚えたかもしれないけれども、立っているだけでもって、公正な選挙をやるためにそれらの人たちがどういう役割を果たせるかということになると、文民警察だって監視要員だってどうしたらいいかわからないだろうと思うんです。  だから、そういうことを考えたら、どちらかというと、そういう形式的なことではなくて、むしろこういうところは自立精神というもの、自助努力といいますか、そういうことをこちらの方で支援をする、自分たちでやるということでなければいけないと思うんですよ。地雷を埋めたのだって、埋めた人間はカンボジア人なんだから、日本の自衛隊に来てもらってこれを掘り返してもらおうなんというのは虫がよ過ぎるんですよ。道路の破壊だってそうです、昔の日本軍が壊したわけではないんだから。  そうすると、そういう戦後あるいは混乱の後始末というのはカンボジア人自身がやる、そういう方向に支援をするということの方が正しいんじゃないか。何でもかんでもやってやるということになると甘えだけが残ってしまうんです。そういう甘えた気持ちを持たせるということは本当の支援にはならない。本当の国際貢献をやるのならば、カンボジア人自身がみずからの力でもってその後始末をするという方向に持っていく方が私は正しいと思うんです。選挙がうまくいったからといって手柄顔をするほどのことじゃないと私は思うんですよ。  その点、官房長官はどのようにお考えになりますか。
  79. 武藤嘉文

    国務大臣(武藤嘉文君) 支援の問題でございますから、私の方からお答えをさせていただきます。  御承知のとおり、十七、十八日と実はプノンペンで国際会議を我々は開くことになっておるわけでございまして、ここでいろいろ今後のカンボジアの復旧復興のためにどういうことをやっていくのか。とりあえずは緊急援助あるいは人道的援助というものが中心になるとは思いますけれども、今、御指摘のとおりでございまして、私どもは、今後カンボジアの復旧復興の支援をしていくには、あくまでもカンボジア国民の自助努力をまずやっていただいて、それを支援していくという形でやってまいりたいと思っております。
  80. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 日本の周辺では、とりあえず今のところはカンボジアですよ。しかし、この法案でもってその対象になるところは、どこでどういう問題が出てくるかわからない、こういう心配があるんですよ。だから、その場合にみだりに自衛隊を動かしたり、自衛官を将棋のこまのように勝手に動かすというようなことをやってはいかぬと思うんです。文民警察だってそうですよ。話が違うと言って怒ったという話は当然だと思うんです。  だから、そういう目に遭わせないように、自衛官といえども文民警察といえどもボランティアといえども、これらの人たちの安全は保障しなくちゃいけないと思うんです。危ない思いをするぐらいならさっさと引き揚げた方がいいんです。あとはカンボジア人に任せればいいんですよ。そういう能力がないことはないと私どもは思いたいんです。  だから、今後のカンボジアの国を考えたならば、むしろ直接いろんなことを支援する、金を出すとか物を出すとかいうことよりも、カンボジア人自身でもってお互いが内戦をやめて、そしてその自立のために民主的なシステムをつくることのアドバイスをしたり、そういう方向に指導したりするということの方が本当の支援じゃないかという気がいたします。  その点についての政府としての考え方をお聞きしたい、こういうふうに思うわけです。
  81. 武藤嘉文

    国務大臣(武藤嘉文君) 先ほど申し上げたとおりでございますが、あくまでカンボジアの国民が自助努力をまずしていただきまして、それを支援していくということでございますけれども、何にしても内戦等が十何年も続きまして疲弊をし切っている国でございます。なかなかカンボジアだけではできないものでございますから、相当これから国際的に支援をしていかなきゃならないと私どもは思っております。
  82. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 今度は自衛隊の安全性の問題と武器の使用の問題なんですけれども、これはもし騒乱状態、緊急事態ということでもって、そこへ軍用機を派遣するというようなことが仮に起きたとすると、やはり自衛のためにどういうことをしなければならぬか。もしその飛行機が攻撃を受けたとしても、これは国際問題になってしまいます。それから、応戦をすれば完全な戦闘状態になってしまう。そういう戦闘状態になったり応戦をしなきゃならない。そうしないと飛行機も守れないし、連れていった自衛官も守れないというようなことになったら取り返しのつかないことになると思うので、そういう状況外務大臣判断をすると同時に、政府自体がしっかりした歯どめをかけなければならないという気がするんですよ。そこのところを間違うととんでもないことになると思います。  だから、私どもが心配をするのは、そういう点で武力をこちらの方で行使をするというようなことのないようにしなきゃいかぬ。その点はシビリアンコントロールというのがやはり生かされなきゃならぬと思うんです。  かつて、私は記憶しておるんですけれども、太平洋戦争の前に上海事件というのがありました。私は今でも記憶しているんだけれども、上海陸戦隊というのが在留邦人を抱えて必死になって上海を守る、しかし、周囲を囲まれてだんだん危なくなってきて陸軍が大挙応援に上陸をするといったような映画があったんです。ああいう映画は大変に当時は受けたものだから私は今でも記憶にあるんだけれども、ああいうことをまた思い出して、もしこれから何か起こったならばまず自衛隊が飛んでいく、そして突破口を開いて、だからこれはもっと強力な武装をした軍隊でなければいけないというので、PKOからPKFというふうに飛躍をするようなことになると昔の繰り返しになってしまう、こういう心配があるんです。  だから、昔の繰り返しをしないためには、シビリアンコントロールというものを厳に守っていかなければならぬだろうと。もし、間違ってでも交戦状態になれば、自衛のためといったって、弾を撃って撃ち返されてというようなことになると簡単におさまりがつかないと思うんです。そういうことにならないようにやはり十分に慎重な配慮が必要じゃないか。法の運用を考えた場合には、それらの点も考えて、どこでその歯どめをつくっていったらいいのかということを考えるべきではな いか。  これはエスカレートすると切りがなくなるんです。防衛庁長官にはそんな意識はないと思うけれども、そうならないようにやはりこれは政府一体となってシビリアンコントロールを守っていく。憲法も何も踏みにじられるようなことになるとえらいことになります。その点を私は特に念を押したいと思いますが、いかがでしょうか。
  83. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 瀬谷先生御指摘をいただきましたように、シビリアンコントロールの重要性は私どもも重々認識をいたしておるところでございます。今回御審議をいただいております法律は、御案内のとおり、外務大臣が要請をしたとき防衛庁において検討をなさるわけでございまして、外務省は、大臣いらっしゃいますけれども在外公館中心に在外邦人の安全のために日ごろから情報の収集あるいは連絡事務に当たっているわけでございまして、万が一当該地域に災害でございますとかあるいはその他危険な状況が発生をしたということになれば、まずは外務省が在外公館中心に在外邦人の安全対策を行う。  それは、在外公館を通じて在外邦人にその地域から移動することを指示するといいますか連絡をする。一番いいことは、それぞれ在外邦人の方々がそうした連絡を受けて自発的にその地域から移動してくださるということが一番いいわけでございますが、しかし繰り返しこの席で申し上げておりますように、緊急の事態、例えば災害というような緊急事態になりますと、在外邦人の方々が自発的にその地域を移動するといっても、輸送手段、移動の方法には限度があってそういうことがなかなか難しいということになる。  その場合に、外務省は恐らく民間のチャーター機その他、輸送の手段についてそれぞれ御検討になるんだろうと思います。しかし、それがうまくいかないということも考えられますから、今回のような法律を整備しておいて輸送の手段の幅を広げておく、つまり選択肢を多くしておくということが必要ではないかというふうに思うわけでございます。  あくまでも防衛庁は外務大臣からの要請を受けて、繰り返し防衛庁が御答弁申し上げておりますように、飛行の安全を確認して出ていくということでございまして、御心配、御指摘はよく理解をいたしますが、シビリアンコントロールについては十分政府として最大限の注意を払う。これは、シビリアンコントロールということは何よりも大事なことと考えておりますし、また、防衛庁が輸送のために派遣をいたします航空機も、これは前にも申し上げましたが自動車が出ていくわけではございませんから、飛行機の航空にとって安全が確認できなければ、また離着陸の許可がなければ当該地域には行かれないわけでございますから、そこは十分な安全の確認がなされるというふうに私どもは考えているわけでございます。  委員が御心配をいただいておりますように、内戦状態であるとかそういう状況もこれは想定の中にございます。しかし、それと同時に自然災害というようなこともまたあろうかと思うわけでございまして、どういう場面に防衛庁の航空機によります輸送をお願いすることが適切であるかということも、これは外務省が在外公館その他からの情報を集めて、これは一番この方法が適切であろうというときにお願いをするということになろうというふうに思っております。
  84. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 じゃ、私の質問は一応打ち切ります。  それで、翫委員からさっき官房長官質問したのが途中で退席されて中途半端になっておるから、私の時間でやってください。
  85. 翫正敏

    翫正敏君 さっき外務省の方に質問しましたときに、軍用航空機は、外国の領域にあって、他国の主権下におり立った後にも、軍用の艦船ですね、これが保有していると全く同じ特権を持っているんだということをパリ条約三十二条に規定されているじゃないかということを指摘しましたところ、外務省の方からの答弁ではそういうのはないという答弁ございましたね。  私、ちょっと休憩中に秘書に電話をかけて、私条文を持っていませんでしたから、本当にそうなのかなと思ったので電話をかけて条文を送らせました。確かに、今まだ条文が来ないので正確にここで言えませんけれども、要するに軍用機は軍用の艦船が持っていると同じ特権というものを持っているというふうに書いてあるんですけれども、先ほどおっしゃったことは、どうしてああいうふうにおっしゃったんですか。
  86. 荒義尚

    政府委員(荒義尚君) 私の先ほどの答弁、あるいは言葉が明確でなかったかもしれませんけれども、私が申し上げたのは、軍用機について一般国際法上何か決まった成文のものがあるかといえば、そういうものはありません、ただ不可侵権は持っておりますということを先ほど御答弁申し上げました。詳しくは条約局長から。
  87. 翫正敏

    翫正敏君 ちょっと待ってください。私はこれは事前にちゃんと一番に聞きますよということで通告をしましたし、パリ条約三十二条に基づいてのということも事前の通告をちゃんとしてあるわけですね。一般的な国際法の話ということじゃなくて、それに明記されているんじゃないですかということを聞くということは、私きょう質問する内容は一項目残らずすべて一時間以上の時間をかけて全部事前に通告してありますよ。そんなクイズのような質問は一つもないつもりですからね。答えられないような質問をしてそれで何か時間を稼ごうとか、そういうつもりも別にないんですから。  そういうことで、ちゃんと事前に全部通告をして質問をしているわけですから、一般国際法の解釈を条約の専門家の方が、先ほど説明されたりこれからまた説明される、そういうことを求めているわけじゃないんで、先ほど事前の質問通告に基づいてちゃんとパリ条約三十二条にはそういうふうに書いてあるでしょうと質問したら、そういうものはないとおっしゃったんじゃないんですか。撤回してくださいよ。答弁されたことを撤回してください。
  88. 荒義尚

    政府委員(荒義尚君) 正確には条約局長から答弁をしていただきます。
  89. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 私、衆議院の外務委員会に行っておったものですから、まことに申しわけありませんでした。  いわゆる軍用機の国際法上の地位についての御質問かと思いますけれども、先生が言及になっておられますこの航空に関する条約、おっしゃるとおりその三十二条には、「軍用航空機ハ外国軍艦ニ慣例上許与セラルル特権ヲ享有スル」と書いてございます。普通の言葉で申しますと、軍用航空機というものは通常軍艦に与えられている特権と同じものが与えられるという規定になってございますが、ただ、この条約は現在既に存在しておりませんので、そういう意味では恐らく領事移住部長は、現存する成文法上の国際法としては存在していないということを申し上げたんだろうと思いますけれども、私どもの考えといたしましては、この航空に関する条約の三十二条に述べられている考え方自体は、一般国際法上の考え方として存在していると申し上げていいんではないかというふうに考えておる次第でございます。
  90. 翫正敏

    翫正敏君 この条約はいつなくなったんですか、どういう理由によって。
  91. 丹波實

    政府委員(丹波實君) これは先生も御承知のシカゴ条約、ICAOができましたので、具体的には一九五三年の十月にシカゴ条約ができましたこととの関連で廃棄されている、現在国際社会には既に存在していない、こういうことでございます。
  92. 翫正敏

    翫正敏君 じゃ、シカゴ条約という条約の中にそのパリの条約の内容というものは包摂される形でなくなった、こういうふうに理解すればいいんですか。
  93. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 民間航空条約の条約全体を見ますと、先生も御承知だと思いますけれども、第三条が若干関連する規定を置いていまして、「この条約は、民間航空機のみに適用するものとし、国の航空機には適用しない。」というのが(a) 項、(b)項として「軍、税関及び警察の業務に用いる航空機は、国の航空機とみなす。」という規定がございますが、具体的に軍の航空機についての特権免除といったものをこの国際民間航空条約は規定していない次第でございます。  したがいまして、繰り返しになりますけれども、先ほど申し上げた航空に関する条約第三十二条は、たとえもうなくなったとはいえ、その三十二条に書かれておる考え方自体は、私たちは一般国際法上の考え方として現在も存在しているというふうに考えておる次第でございます。
  94. 翫正敏

    翫正敏君 わかりました。終わります。
  95. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 昨日の審議で、またきょうの審議でさまざまな問題が出ていると思うんです。それをあいまいにしたまま進むというわけにはまいりません。そこで何点かについてさらに質問をさせていただきます。  第一番目にお聞きしたいのは、邦人の保護が必要だというような事態が起こったというのは一体どういう事態なんですか。邦人の保護が必要だという事態、これはどういう事態なのか、お答えください。
  96. 荒義尚

    政府委員(荒義尚君) 一般的なお答えをまずさせていただきますけれども、災害等の緊急事態が発生しまして、そこにおられる在留邦人の方、その生命及び身体に危険が及ぶ可能性があるような状況で、かつ、これはいろんなケース・バイ・ケースで違いますけれども、その場にとどまっているとその危険が増す、したがって退避をすることが必要である、そういう状況というふうにまずお答えいたします。
  97. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 要するに、大変危険なことが起こったわけですね。だからこそ必要な処置がとられなきゃならぬ、こういうことだと思うんですね。  一般的に言いまして、邦人が外国にいる場合、その邦人を保護する義務が相手国にもあるということはこれは国際法上当然のことであります。ところが、そうであるにもかかわらず日本の邦人保護が必要だ、そういう事態が起こった。今御説明がありましたけれども、それは極めて邦人にとって危険な、身体にとって非常に危険な状態が起こった。本来そこの国がそれを保護できるはずなのに、保護しなければならないのに、もうこっちから行かなきゃならぬということは、これはまさにその政府、その国で内乱が起こっているとかクーデターが起こっているとか、今度の自衛隊法の一部改正の条文そのものにも「騒乱その他の緊急事態」というふうに書いてあるように、クーデター等々のそういう事件が起こっている。その国の政府ではもう処置ができない状況というものが生まれたからこそ日本の邦人保護が必要だ、そういうことが起こり、そのために必要な処置がとられなければならない、こう理解するのが当然だというふうに思うんです。  それなら、昨日来の議論で、危険でない、危険であるならば行かないし、大体これは危険を想定してやっていることじゃないんだという、何回何を聞いても危険はないんだ、危険があったら行かないんだという説明一点張りだったんですが、今御説明あり、また私が言ったことからいっても危険でないという、そういうことでこの問題を見過ごすわけにはいかない。  どう考えたってこの法案というのは、理論的にいってもPKO法とは違うと思うんですね。PKO法のときは停戦が合意されて一応平和が来た、そうじゃなかったのはカンボジアだったけれども、ともかくそれはおきまして、PKO法の場合は一応説明が成り立ったんですよ。停戦が合意されて平和だ、だから行くんだということで説明は可能だったんです。しかし、今も説明あるとおり、身体、生命に危険がある、それが保護が必要な事態だと言うんだからPKOのときのような説明にならない。法そのものがこれは危険性を前提とした法律だというふうに言わざるを得ないと思うんですが、どうですか。
  98. 武藤嘉文

    国務大臣(武藤嘉文君) 私は、きのう申し上げたと思うんでございますが、危険ということではないと思っているんです。それは、在外公館でいろいろの緊急事態が発生したというのは何かの事件があるわけですね。そういうもののときには情報をなるべく収集しておって、そして危険が起こる可能性があるという事態でもう在外邦人を救出する方がいい、こう判断をしたときに防衛庁にお願いをしよう、こういうことでございまして、危険が起きてしまって、いわゆる内乱状態になってからというよりは、私どもはなるべくその前の状態でやはりお願いをすべきだと思っております。
  99. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 いずれにしましても、私は、今状況がどういう状況のときに依頼するか云々ということじゃなくて、法そのものが危険な状態が起こったときにこそこの法律が必要なんだというそういう理論的な前提に立った法律であるということを言っているわけです。ですから、本来的に危険じゃないんだということを主張されることと、この法案が必要だということとは本質的に矛盾しているということを私はっきり申し上げておきたいと思います。これは一つの問題点の整理であります。  それから第二番目にお聞きしたいのは、これもきのう質問を私自身もし、他の方からも出ましたが、私も質問しまして明確な答えを得られていない問題であります。  それは、ともかく邦人の救出が必要だと言って自衛隊機が出る。これは国際法上の軍用機が出る、軍用機が出るわけですね。ですから、相手国の同意がなければ着陸できないということはこれは明白だと思うんですね。民間航空機だってそうなんです。相手国の同意がなければ着陸できないことはもう明らかなんです。ところが、今内乱や騒乱が起こっていると。現実にきのう私が例を引きましたのはサイゴンの例ですね。これは私が引いたんじゃない、宮澤総理が引かれたから私もきのう言ったわけで、ああいう状態が起こっている。そのときに一体どうやって合意を取りつけるのか。そういう内乱があり、騒乱があり、クーデターみたいなのが起こっているということになりますと、そう質問すると、その前にもう引き揚げちゃうと言うんですけれども、それならそもそもこの法律は要らないことになるので、そんな詭弁はちょっとだめなんですよ。  だから、ちゃんとお聞きしたいんですが、そういう大変なときにだれと一体合意を取りつけるんだということについて、これまたもう一つはっきりお答えいただきたいと思うんです。
  100. 武藤嘉文

    国務大臣(武藤嘉文君) どうも、ちょっとすれ違いがあるんでございますけれども、私はきのうから申し上げておりますように、あくまでそういう危険な状態になる可能性が起きたときにできるだけ早くということを申し上げているわけでございまして、そのときに、じゃ民間機を使えばいいじゃないかという御指摘も先ほどありました。私ども、民間機でまず在外邦人はできるだけそこに定期便があれば定期便を使ってください、こういうことを在外公館から指導するわけでございます。しかし定期便のないところもあるわけでございますね。  それからもう一つは、じゃ定期便がないときには民間航空機を使うということもあります。しかし、これは湾岸戦争のときに我々、日本の民間航空機に何とか行ってくださいとお願いをしましたけれども、やれ保険料がどうとか、組合がうるさくて乗務員が集められないとか、ちょうど私はあのときは通産大臣をやっておりまして実際その会議におりましたからよく承知しておりますけれども、我々は毎日毎日安保会議を開いて、そして、とにかく頼もう、頼もうと言ってもどこの航空会社もなかなか応じていただけない、こういうのが実際にあったわけでございます。  あれはあの事態にもっと早くやっていれば、もっと早く私は在外邦人を輸送できたと思うんでございます。そういう事態を今想定しているわけでございます。危険な状態になってもうクーデターが起きちゃって大変な騒ぎが起きたというようなときになってからやるようなことじゃ、在外公館情報の収集が悪いわけでございますから、在外公館でできるだけ早く情報を収集して、どうも危 ないぞというときにはいち早くお願いをしなきゃいけない。  そこで、民間航空にお願いしようとしてもなかなかチャーターがとれないという場合もあり得るから、先ほど官房長官の話もありましたが、選択肢なんですね。場合によれば民間航空の定期便をお使いいただく場合もあるし、チャーターを使う場合もある。あるいは場合によれば自衛隊機も使えるようにしていこうというのがこの法案の趣旨でございまして、どうもその辺が少しすれ違いがあるように思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思うんです。
  101. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 大臣、比較的簡単に御説明されましたけれども、早めに早めにやっていれば大丈夫だと。それなら民間航空機でいいじゃないかと言われてもそれは別にして、早めに軍用機を出した方がいい、早めにやっていれば大丈夫だ、クーデターが起こってからじゃ交渉するのも大変だろうかという、そういう趣旨でお答えになりましたけれども、しかし宮澤総理がよく引き合いに出されるあのサイゴンのこと。あのときに早めに出して、ああいう騒乱になる前に自衛隊機をあのベトナムに送り出したらどういうことになったのか。これはもう非常に危険ですよ。合意をとってくるのは、恐らくサイゴン政府と合意をとられるだろうと思うんです。サイゴン政府と合意がとってあるというので、日本から自衛隊機が戦争をやっているあのベトナムの上空に行ったらどういうことになるんですか。民間機よりよっぽど大変ですよ。そんなことは自明なことじゃないですか。  だから、早めにやれば自衛隊機が行けばいい。なぜ大変かといえば、日本は日米軍事同盟、安保条約でアメリカと一緒の側にいる。ハノイにとってみればこれは敵国機が来たということと同じですよ。それに対してハノイがどういう態度をとるか、この自衛隊機に対して。これは単に早めに出しておけば大丈夫だなんていう、そんな議論は、そんな理屈は全然成り立たないと思うんですね。  これは、湾岸戦争のときだってみんな同じですよ。結局のところは、湾岸戦争のときにも自衛隊機は政令で出すということにしたけれども出なくて、民間機の方がよかったという話になったでしょう。ですから、早め早めに出しておけば大丈夫だというのはこれは絶対私は受け入れられないです。もう一度御説明いただきたい。
  102. 武藤嘉文

    国務大臣(武藤嘉文君) ハノイの例をおとりになりましたけれども、あるいは湾岸戦争の例もそうでございますが、私どもがお願いをしても、いわゆる航空路が危険な状態の場合、あるいは着陸をする状態のところが危険な場合には防衛庁はお引き受けをいただかないわけでございますから、その辺のところも、少し何か非常に危ないところへおりていくということではないというふうに私は判断をいたしております。
  103. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 いずれにしましても、私の今質問している趣旨のお答えをきちっといただいたとはとても思えません。これもいただいてないということを私は確認したいと思うんです。  そうなりますと、もう一つ非常に私危惧いたしますのは、早めの場合だってそういう危険がある。それで非常に重大な事態になったら一層大変なわけでしょう。そこのところはやらないとなったら、それで早めの場合は危険があるんだからこれもまた大問題。重大問題のときにはこれまたそれこそ重大であって、これはできないとなりますと、一体この法律というのは何のために必要なのかという本当に根本問題にぶつかってくるんです。何かともかく何でもいいから自衛隊機を出したいという気持ち以外ここから酌み取ることができないというふうに、これは共産党の言い分じゃないですよ、法案をずっと検討してきますと、どうして自衛隊なんだ、自衛隊機なんだというところに行き着かざるを得ないんですね。いかがですか。
  104. 武藤嘉文

    国務大臣(武藤嘉文君) これは、この法律をつくる前の状況で、いわゆる政府専用機は最初から自衛隊に所属してなかったわけでございまして、御承知のとおり、たまたま自衛隊に所属をすることになったものでございます。これは所属してなければ私ども政府専用機を使い、それは政府専用機はVIPの輸送だけではなくて在外邦人の救出その他に使えると、こういうことになっておりますので、それがたまたま自衛隊に所属したものでございますから、今、私どもこれをお願いするにはやっぱり自衛隊にお願いをしなきゃ仕方がないわけでございます。いわゆる747では着陸の滑走路が短いところもある、たまたま自衛隊にお願いするときは、ほかの輸送機もお願いしようというのは一つのプラスアルファという形で私どもはお願いすることになったのでございます。  最初は、政府専用機そのものをいわゆる在外邦人の救出に使えるようにしていた。それが自衛隊の方に所属になったからどうしてもこの法律が必要だと、こういうことに私はなったと思うのでございます。
  105. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 昨日から議論している問題でもう一つ、もう一つというかたくさんありますけれども、時間の関係でもう一つきちっと聞いておきたい問題があります。  危険でない、危険でないと言われる。これほど重大な危険性があるときにもかかわらず、危険でない、危険でないと言われる意味の一つには、やはり危険であるということを認めてしまえば、相手から攻撃されたらどうするんだという問題が当然起こるから、危険でない、危険でないんだというふうに言っておられるというふうにしか私は説明しようがないというふうに思うんです。  その点で、昨日、畠山局長が非常に重大な発言をされました。  外国の領土にあって、邦人あるいは飛行機、それが攻撃を受けた場合に、それに対して自衛権を発動することが憲法上あり得る、自衛権を発動することがあり得ると。今までの私の聞いていた限りの答弁では、国際法上そういうことはあり得ると。  きょうも丹波局長がそういうふうに言われた。憲法上のことについていえばそれはまた別でございますと言われたけれども、畠山局長はきのうその点は肯定的に回答をされたように私は思います。これは極めて重大だと思うんです。  従来は、日本の領土、領空、領海においてそういうことが起こった場合には自衛権の発動があるということは言ってきました。その次に、シーレーン防衛のときの議論では、公海上ではそういうことがあり得るというところまでは政府答弁だったと思うんです。ところが、きのうは、外国においてそういうことが起こっても自衛権の発動というのはあり得るということを言われたと思うんですね。  もし、私の理解していることが正確であったら、これは従来の政府答弁と違うことをあなたは言われたというふうに私は思いますが、どうですか、もう一度。
  106. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 昭和四十四年四月八日、政府答弁書、これは衆議院の松本議員に対する質問主意書に対する答えでございますが、「かりに、海外における武力行動で、自衛権発動の三要件に該当するものがあるとすれば、憲法上の理論としては、そのような行動をとることが許されないわけではないと考える。」そういうことが既に政府質問主意書に対する答弁書としてなされております。  さらにつけ加えて申し上げましたのは、私は憲法上の純粋理論としては、今申し上げましたこの答弁書の趣旨に沿った形で申し上げましたが、それが実態としてどうかということはおよそほど遠いのであって、実際にはそういうことは起こり得ないし、考えられないということを申し上げているわけでございます。
  107. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 それでは、今あなたはそういうのを引いてこられましたけれども、私はここに幾つものそういうことではないという証拠をたくさん持っております。政府答弁ですよ。  そういうことは憲法上はできないことである。我が国の憲法上は、そういうことというのは、説明していますと時間がなくなりますから言いませ んが、今議論していることです。これは憲法上は許されないところでありますと。私、このぐらい持っています。  どうなんですか。どっちが本当なんですか。
  108. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 繰り返しになりますけれども、四十四年の政府質問主意書に対する答弁書におきましてそのように述べまして、この趣旨は、昭和三十一年二月二十九日の衆議院内閣委員会で示された政府の統一見解によって既に明らかにされているところであると、こういうふうに述べられているところであります。
  109. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 これ水かけ論みたいになってしまうんですね。私の方はこうだと、こっちは別の見解があると。これでは議論にならぬと思うんですね。  こんなことで重大な法律をつくられていくというんじゃ、これはもう本当に大問題ですよ。もう本当に慎重審議も徹底した審議をやらないと、こんなことでこの自衛隊機が外に出るという問題が決まってしまうというようなことは、私もう絶対に国民に対する責任を国会が負っているというふうには言えないと思うんですよ。  あと本当にもう時間なくなってしまいましたけれども、私はさらにこの問題を追及するということだけはっきり申し上げて、私の質問を終わります。
  110. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 憲法上の純粋の理論としてはということで過去の政府の統一見解的なものを踏まえて御答弁申し上げたのであって、本法案に関して委員が御指摘になっているんだとすれば、これはるる申し上げておりますように、我が自衛隊機派遣される場合も、これは民間機が派遣される場合と同様に安全が確保されない限りこれが実行されないということであります。したがって、どこからか攻撃を受けるというような事態においてはこれが派遣されないという前提でございますから、この法案との関連で御指摘になっているとすれば、それはそういうことは全く想定されないということをつけ加えさせていただきます。
  111. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 防衛庁長官の御意見を伺いたいと思います。  この法案では想定されていない、想定されていないといっても、こういう現実は想定されていないということと理論上認めてしまうということとは、これは大変な違いなんですよ。理論的に認めたら、そういうことが起こったときにそれは結構ですということになっちゃうんですよ。だから私真剣に聞いているんです。想定していませんなんといったってだめなんです。理論上きちっとさせなきゃだめな問題なんです。
  112. 中山利生

    国務大臣(中山利生君) たびたび御答弁申し上げておりますように、こういう政府専用機のような大型の飛行機を運航する場合には、その出発から到着まで航路の安全が確保されない場合は運航ができない。しかも、大勢の避難民を輸送するというときに戦争をするような武装した部隊を乗せていくということも考えられない。そういうこともありまして、ただいま防衛局長がお答えしておりますように、そういう場合の武器使用ということについては一切想定していないということでございます。
  113. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 終わります。
  114. 高井和伸

    ○高井和伸君 防衛庁長官にお尋ねします。  せんだっての本会議場における趣旨説明の中に、本改正は「一般的、恒常的な権限」を付与する必要がある、こうおっしゃられました。この一般的、恒常的な権限を自衛隊法に盛り込む趣旨、もう少しかみ砕いて御説明願いたいと思います。
  115. 村田直昭

    政府委員(村田直昭君) かみ砕いてと言われますので再々申し上げておりますが、この権限を法定する必要性についての方から申し上げますと、繰り返しになりますが、従来から外国における災害、騒乱等の緊急事態に際し生命等の保護を要する邦人については、民間機をチャーターすることなどにより対処を図ってきたところでございますが、この民間機チャーターという手段については、例えば民間航空会社との調整に手間取るなどにより適時適切に対応することが困難な場合があるなどの問題があり、このような問題点を改善するため、政府専用機が防衛庁へ移管されたことを期に、在外邦人の保護のための輸送を行うことができる権限を防衛庁長官に付与するため自衛隊法を改正するものである、これは大臣が本会議場で趣旨説明として申し上げたところでございます。  そのときに、「一般的、恒常的な権限として」規定するという意味合いは、この件については既に工藤法制局長官が当時も御説明しておりますが、一般的な任務として恒常的に行わせるというのは、言ってみればあらかじめ一般的にこれに対応し得るような仕組みを設けるという、そういう意味合いであるというように従来から答弁しているわけでございます。
  116. 高井和伸

    ○高井和伸君 防衛庁長官外務大臣の要請を断る場合があるというのが本会議における答弁でした。今までの議論の中でかなりいろいろ出てきたんですが、そこで、今までの話を私なりにまとめて言いますと、安全性が確認できないときは断るということだと思います。  二つ目は、ここの法文上に載っているとおり、自衛隊の本体的な仕事である「任務遂行に支障が生じない限度においてこういうふうになっています。私は、雑則で今度は百一条に置かれたというのは、雑則じゃない本体任務の方が優先する、そしてこれの百一条が順番でいくと後位に位置づけられる、このように理解してよろしいんですか、まずそこから。
  117. 中山利生

    国務大臣(中山利生君) そのとおりに理解していただいて結構です。
  118. 高井和伸

    ○高井和伸君 あと、機材の都合で行けないという場合もあるだろうと思いますし、さらにパイロットがそういう能力がないという場合もいろいろあるだろうと思います。  私、ちょっと細かいことになるかもしれませんが、想像力でいろいろ議論する前に、実際にはどうなるのかということで私が事前に通告しておきました。私が議員連盟に入っているコスタリカでもし邦人救出の要請が出てきた場合どのような手続で行くのか。そしてモンゴル、これも私議員連盟に入っていますのでモンゴルへ行くときはどんな手続でやっていくのか。もう一つキプロス、これはPKOの視察で行ってきました。かなり難しい状況下の場所でございますが、キプロスへ飛んでいくときはどういう手続でその着陸というか派遣までの手続をなさるのか。  私に言わせれば、上空通過をどこの政府からとらなきゃいけないのか、それから着陸許可はどこからとるのか、こういうことになりますし、コースは大体どんなふうに行くのか、油切れはないか、いろんな面の支援装置はきちんとしておるのか、そういったことをシミュレーションでちょっとやってみてください。  モンゴルは、私にいただいた事前の資料によれば、これはC130しか行けない、ウランバートルに行けるということになっています。あとの二つは、コスタリカはサンホセという空港、キプロスはラルナカ空港ほかもう一つの空港のようでございます。そのようなデータをいただいておりますから、具体的にはどんなふうにして手続を踏んでいくのか、説明をお願いします。
  119. 荒義尚

    政府委員(荒義尚君) まず、私の方からお答えいたしますけれども、御指摘の三つの国で緊急事態が起こって邦人の退避が必要になった場合、私どもとしてはまず着陸国、これは技術的にどちらになるかは後で防衛庁からお答えがあるかもしれませんけれども、着陸国の領空通過と着陸許可をとる。それから経路、これも技術的にいろんな国を通るわけでしょうけれども、すべての領空通過国について外交ルートをとって所要の許可を得る、こういうことがまず私どもで担当する分野でございます。
  120. 高井和伸

    ○高井和伸君 このキプロスに行くときに、私から見れば中東のどこかの上を飛んでいかなきゃいかぬと思うんですね、あそこらは難しいんです。具体的にはどこの国を通るんですか、あそこのインド洋から地中海に抜けるところはどこを通るん ですか。
  121. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) キプロスヘ参りますときに、まずC130を使う場合とB747を使う場合とでは想定される飛行経路が異なります。  C130を使います場合には、いわば南回りみたいな感じで小牧から東南アジア上空からインド洋上空、アラビア半島上空からキプロス、こういう感じになると思いますので、領空通過国としてはサウジアラビアとエジプト、それから着陸国としてこれは当然フィリピン、タイ、モルディブ、オマーン、キプロスといったようなところになると思います。そのフィリピンのマニラあるいはタイのプーケットというところと、それからモルディブのマレ、オマーンのサラーラというところにおいてこれが給油を行うといったような飛行経路になろうかと思います。  それからボーイング747の場合には、これは日本から出発しまして、日本海上空からシベリアをずっと行きましてモスクワ上空からウクライナ上空を通ってトルコ上空からキプロスに入る。こういう形で一気に飛んでいくということでございますので、領空通過国としてはロシア連邦、ウクライナ共和国、トルコ共和国ということで、着陸国としてはキプロス、ラルナカ空港に着陸する、こういうようなことが一応想定されます。
  122. 高井和伸

    ○高井和伸君 今、C130の場合、給油が必要である、単なる着陸じゃない。そうすると、途中の周辺国から給油の支援を受けなきゃならない。これは受けるかどうかも外交ルートできちっと事前におやりになる、こういうことでございますか。
  123. 荒義尚

    政府委員(荒義尚君) 途中経由国の給油あるいは支援につきましては、その国と外交チャネル等を通じて確認するということでございます。
  124. 高井和伸

    ○高井和伸君 派遣要請の要件ということを今までの議論で考えますと、これは安全性の確認が第一だ、こういうことだと思うんです。今言われた経路、領空通過許可それから給油がとれる、そして当該国の着陸許可がある、機体への支援も要る場合は必要である。そしてあともう一つ、軍事的配慮も一応あるんだろうと思います。  そこで、これは今そこに真ん中にお座りの官房長官に関連してくることですが、先ほど官房長官お留守の間に、防衛庁の都合で本務的な日本国を防衛する任務の方が上である、本件百一条は下である、こういうことで、外務大臣が一生懸命要請しても防衛庁長官は断ることがある。  そういったときに、これはもう一つ入るんですが、パイロット自身、これは自衛隊員であるパイロット自身が、危なくて飛べないと、こう心中で思うことがあるわけですね。そうすると、私に言わせると、パイロット自身の安全性と外務省の安全性と防衛庁の安全性がそれぞれ異なることがある。そしてまた、その要請の度合いにおいてもいろいろ濃淡がある場合、どちらが優先するのかという話をまずしかけたいという話でございます。  その前に、第一番目に、自衛隊のパイロットは、自衛隊法によれば百七条で航空法の適用除外がたくさん書いてありますけれども、しかしながら、航空法の七十三条の二という条項で、出発前の確認で、いろんな条件が整っていることを確認した後でないと機長は航空機を出発してはいけない、こう書いてあるわけです。これは、自衛隊法が幾ら適用除外してないようでございましても、これは軍隊内の上命不服の世界と機長の安全性確認が矛盾する場面が出てくると私は確信するんですが、そうした場合どちらが優先するんですか。  簡単に言えば、機長の権限で、おれはこんな危ないところを飛べないと、これは飛行機もあるし乗務員の生命もあるし、それから乗せた乗客というか邦人の命の関係もあるから飛べないと、こういった拒否を発動した場合、自衛隊法によると上官の命に服さなきゃいかぬと、こう書いてあります。そして、刑罰でそれはちゃんと担保されている。こうした場面における航空法上の問題とパイロット自身とはどういうふうに仕分けしますか。
  125. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 航空機の機長でございますが、当該自衛隊機の出発あるいは飛行中操縦等に責任を有する者でございますので、当該機の整備状況あるいは着陸予定飛行場の気象状況等、操縦に当たってのいわば安全性が確保されないと考える正当な理由がある場合には、飛行を見合わせたり、飛行経路を変更し他の飛行場に着陸するということも許される場合もあるということでございます。  しかしながら、そのような場合のほかは機長の裁量によって変更するということはできないということでございますから、結局、最終の飛行の責任を有する機長が、特別の飛行に伴う安全という観点から、正当な理由がある場合には飛行命令といいましょうか、防衛庁長官から受けた命令についてこれを変更することも可能であるという解釈でございまして、ただそれ以外には裁量によってやってはいけない。つまり、航空機の運航に関する達第五条によりまして、操縦者は命ぜられた飛行任務の範囲を正当な理由なく逸脱してはならない、こういうふうに定められているということは、逆に言えば、正当な理由がある限りにおいてはその限度で変更してもよろしい、こういうことであります。
  126. 高井和伸

    ○高井和伸君 今のは訓令なんですね。
  127. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) そうです。達です。
  128. 高井和伸

    ○高井和伸君 それは、運輸省と協議して当然定められているはずだと思います。条文上で言うと、自衛隊法の百七条の中に、運輸省と協議してつくってあるはずでございますけれども。  そこで、操縦士が正当な事由があればというと、この訓令の世界では、操縦士がみずから立証責任を負うんですね、法律からいうと。ところが、航空法は、それこそ安全でないと言える権限がパイロットにあり、そうじゃないちゃんと安全だということを言わなきゃいかぬのは、防衛庁の命令する方が言わなきゃいかぬようになっているんですよ。今の訓令の規定と航空法七十三条の二とは本質的に矛盾しています。これは矛盾について次回また質問いたしますので、御検討願いたいと思います。  それで、もう一つ、今のはパイロットの世界でございますが、防衛庁の安全確認の世界と外務省の安全確認の世界、安全だと防衛庁が言わない、外務省は安全だと言う、こういった矛盾した場合、どう調整なさるんですか。
  129. 武藤嘉文

    国務大臣(武藤嘉文君) 私どもの方は、いろいろその現地の情勢をよくお話しをして、先ほどから申し上げておりますように、航路も安全であるあるいは着陸地点も安全であるということを申し上げてお願いをするわけでございますが、協議の上、最終的にやはり決断は私は防衛庁長官にしていただくということになろうと思います。
  130. 高井和伸

    ○高井和伸君 そこで、官房長官にお出まし願って、安全保障室というのが内閣官房にございます。こういった場合、そこの情報と外務省の情報と防衛庁の情報が三本柱になって、互い違いに、国際紛争ということになればかなりの場面で出てくるのじゃないかと思います。  そうした場合、私に言わせれば、内閣における全体の危機管理の責任者は官房長官だと一応考えた上での御質問でございますが、そうした場合の内閣の調整は最終的には今のお話、法文上もそうですが、断る理由防衛庁長官にあるということはもう明言してありますから、それは一向に構わないんですが、そうしますと、邦人の輸送という問題との整合性において、やや今までの説明が実現しない場面が出てくるんじゃないかと、こう思います。その調整は内閣の責任でどのようになさるのかという質問です。
  131. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 在外邦人の安全について、外務省が第一義的に関心を持ちその保護のために努力をするということは当然のことでございまして、在外公館を通じ、あるいは外交努力によって状況の確認をする、情報を収集する、これは恐らく外務省が一般的に言って一番大きな情報を持つだろうと思います。一方、防衛庁は防衛庁で別の角度からの情報というものもあるのだろうと思います。  しかし、政府におきましては、外務省はこうで 防衛庁がこうであるということではなくて、そこは双方の情報を一つに集めて、そして情報の収集分析をやるのであって、外務省と防衛庁の集めた情報はそれぞれ違うと思いますが、その集めた情報を一つにして分析をした結果が違うということは、私はまず考えられないというふうに思います。  したがって、外務大臣から防衛庁長官へ要請をいたしますときには、それは絶対にとは申しませんけれども、まず外務大臣の認識と防衛庁長官の認識とは差のないものになっているはずだというふうに私は確信をいたします。また、そうでなければならないというふうに思うわけでございます。
  132. 高井和伸

    ○高井和伸君 満足したかしなかったかということは別にしまして、次の質問に行きます。  今までの話、安全性が確認されたという確定的事実でお話ししました。しかし、物事が急を要する、サイゴンの例と同じように、一刻も早く飛んでいかぬと日増しに保険料が高くなってしまって、着陸できないかもしれない。見切り発車ということはあるんでしょうか。
  133. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 私がお答えすることが適当であるかどうかわかりませんが、当然と言えば当然でございますが、今伺っておりますと、高井委員も非常に危険な場面、恐らく一番危険な場面を御心配になって御議論をしていただいていると思います。  しかし、一般的に申しまして、ここに書いてございますように、例えば災害でございますとか、ほかにもさまざまな邦人輸送が必要となる状況もあるわけでございます。例えば地震があるかもしれません。あるいはそれ以外にも、陸路が断たれてしまって多くの邦人を輸送することが空路以外にないということもあるかもしれません。これは災害の場合には、一過性の災害ということもあるかもしれません。その一過性の災害によって動けなくなってしまうということもそれは想定の中には入れていいのだろうと思います。それ以外にも今御心配をいただいておりますように、内戦とかその他混乱状態ということもこれはもちろん想定の中に、つまり最悪の場合というものは考えなければならぬかと思います。  そうしたさまざまな状況の中にありまして、この法律は繰り返し御説明を申し上げておりますように、外務省が情報を収集して防衛庁の輸送能力、航空機による輸送能力に期待をすることがいいという幾つかある選択肢の中の一つとしてお願いを外務大臣から防衛庁に要請をするわけでございます。  したがって、それはあくまでも飛行機に乗せて飛ぼうというわけでございますから、飛行機に乗せてその飛行機が離陸もできないあるいは墜落してしまうというのであってはこれはもうほとんど意味がないわけでございますから、それは見切り発車と先生おっしゃいますが、その見切り発車にはいろんな意味があっておっしゃっておられるんだろうとは思いますけれども、十分な情報が集められ安全が確認をされて、そして外務大臣防衛庁長官に要請をされる。それはできるだけ迅速にやらなければならないというふうに思います。  今、委員が御指摘のように、おくれればおくれるだけ事態が変化する可能性があるわけですから、早いことが必要であることは当然だと思いますけれども、その安全も確認しないでとにかく行ってみろといって飛び出すというようなことはあり得ないことだと私は思っております。
  134. 高井和伸

    ○高井和伸君 防衛庁長官、今あり得ないとおっしゃられましたけれども、私に言わせると、ちょっとそれは安全神話があり過ぎた話じゃなかろうかと。最後のときのマニラまで行っておるという、マニラから先へ行けなかったから引き返してきたと、こういうことになると思います。ちょっとおしゃべりしていると時間が過ぎちゃいますので、もう一問だけ。  最後に私の言いたかったのは、見切り発車の安全性という問題です。今のところこれは保留しておきます。  もう一つ、先ほど選択肢と言われましたけれども官房長官、先ほど防衛庁の官房長がおっしゃられた、趣旨説明の中に民間もだめ、チャーターもだめだから自衛隊に頼むと、こういう趣旨で、それはスムースである、こういうことになっております。他方、断ることもできると、防衛庁長官は。  しかし、今までの全答弁からいえば、防衛庁はいつもスクランブル状態で輸送機はいつでも飛ばせるように、命令一下一時間以内に飛び立てるぐらいの雰囲気を私は感じておるんですが、この外務大臣の要請があって防衛庁長官がオーケーする、オーケーしてから、もっと言いましょう、防衛庁長官のところに話が来てから飛び立つまではどのぐらいの時間をかけるんですか、それだけ一つで終わらせていただきます。
  135. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) これから運用体制等について十分検討させていただきますが、いずれにいたしましても、これは急を要する話だということですから、これに対応するにはなるべく迅速に対応したい。どのくらいかという確定的な数字を今のところ申し上げることはできませんけれども、なるべく迅速に対応できるようにしたいということでお答えさせていただきます。
  136. 高井和伸

    ○高井和伸君 今のは防衛庁長官の趣旨ですね。
  137. 中山利生

    国務大臣(中山利生君) 先ほどからお断りすることがあるという、元気よく言っておるものですからその方が何か一人歩きしているような感じでございますが、それは騒乱状態の中に自衛隊機が強行着陸して邦人を助け出してくるというような前提があったものですから、そういう場所での要請があったときはお断りしますと、こう申し上げたわけであります。実際にこれを運航する場合は、突然外務大臣から私の方に要請があるわけではなくて、以前からこういう問題があるがどうだという協議があって、両方の協議が調って初めて要請があるものと思っております。  ただ、今おっしゃったように、要請があって、出発を決めてから実際に出発するまでの間一時間ということは、きのうの答弁ですと、いすを取りかえるのに三日間かかるというような話もありましたから、実際に飛び立つまではかなり時間がかかるであろう。その間にまた情勢の変化もあり得るだろう、そういう場合にはお断りする場合もあるということを申し上げました。
  138. 守住有信

    委員長守住有信君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時三十五分散会