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武田邦太郎君 私は、ウルグアイ・ラウンドについての所見を若干申し述べて、大臣あるいは
外務省の幹部の方のお考えを聞きたい、こう思います。
大臣は、
外務大臣になられる前にも何回かウルグアイ・ラウンドに前向きに取り組むべきという
発言をなさったことがございました。農政に造詣が深くあられる大臣は、まず米の輸入の自由化をしても悠々とやっていけるような農業をつくれと、その条件は十分熟しているが、そうでなければ能力の高い若い世代が喜びと誇りを持って農業をやるはずがないと、こういう
意味のことを述べられたわけでありますけれ
ども、どうもそのことが新聞には小さく出ることは出たのですが、世論に大きく響かないし、農水省、農協を納得させるに至っていない。
まことに残念だと思うのでありますけれ
ども、これは
一つは
外務省のウルグアイ・ラウンドへの
取り組み方で
日本の外交を正しく強く推進する
一つの大きな要素が充足されるわけでありますので、大臣一人じゃなくて
外務省の幹部が
一つに燃えて
日本の農業を正しく誘導する、こういう意気込みを支えるということが非常に大事じゃないかと思うのです。
外務省の方は皆、
アメリカとかオーストラリアの見る目はるかな水田を見てこれではかなうわけはないと、こういうふうに思われるかもしれませんけれ
ども、農業の強さというものは国土の広さとは必ずしも
関係がありません。一人の農業者がどれだけの面積を完全にこなして高品質の農産物を低コストで生産していかに付加価値を余計生産するかということで勝負は決まるのでありまして、輸入自由化ぐらい十分に悠々といけるぐらいの面積は、私
どもの計算では大体一人当たり都府県で三十ヘクですね。青森までは裏作ができますから延べにすれば五十ヘクはやれます。
アメリカのカリフォルニアで第一の稲作農場の国府田さんのところでも従事者一人当たりの面積は四十ヘクです。それぐらいのものは今日の農業、
日本では十分確保することができます。
これは今まではできなかったのでありますけれ
ども、高度成長の結果、二次、三次産業に高所得の就業機会が増加して、御
承知のように、農村の労働力、特に若い労働力が減った結果、全国的に言えば今、八十戸に一人ぐらいしか後継者がおりません。一戸当たり一・四ヘクでありますから百十ヘクに拡大する
方向に
日本の農業構造は急傾斜している。しかも、お米をつくるところほど後継者はおりません。横綱のコシヒカリの新潟県は二百五十戸に一人であります。
したがって、三百数十ヘクに拡大する
方向に農業構造が崩壊
状況にあるということでありまして、こういう
状況をもっと、マスコミなんかも非常に怠慢だと思いますけれ
ども、十分に国民、特に農家の一戸一戸に熟知させて、少なくともこの自由化ぐらいは悠々と乗り切るだけの農業構造は三十ヘクなのですから、百ヘク、三百数十ヘクに広がるほど若い人間が減っておるのになぜ
アメリカに打ち勝つような農業を立てようとしないのか。
これはもうロボットでもコンピューターでも
アメリカに勝っておるのですから、
日本人の能力があることはもう証明されております。しかも
日本の農業条件は、今
お話ししましたように、土地は十分にあるわけです。五百二十万ヘクの中で平野部は四百万ヘク近くありましで、水田は平野部が二百万ヘクあります。二百万ヘクあれば、現在の七割が素人百姓であっても平均五百キロの収量を上げておるのでありますから、二百万ヘクあればもう十分一億三千万の国民の米だけは足りるわけです。
でありますから、そういうような土地は十分にあるのだ、
アメリカに負けないだけの規模拡大はできるのだと。それをまた一人の農業者が奥さんを酷使しないで悠々とこなすだけの基盤整備、これは
日本は
世界一ですからね。これはもう
外務省の方よく心にとめていただきたい。田んぼ、畑、果樹園のつくり方というのは、工業、製造業においては工場の設備をいかに高度化するかということに匹敵するわけでありまして、
日本の田んぼ、畑、果樹園をつくる基盤整備技術というものは
世界でトップであります。私
どもの友人が各地にそれをつくっておりますからこれは現実なのですね。理想でも何でもありません。
しかも、そういうことをやろうとする予算を農水省は今後、五年度から十年間に四十一兆円の事業費を予算とする、こういうことになっておりますけれ
ども、実際は四十一兆円あれば十年どころじゃありません。
日本の農地全体を
世界で第一級の田んぼ、畑、果樹園につくり直してまだおつりが出るほどのお金であります。
これだけお金はあるのです。自然条件もいいのです。太陽はよく照るし雨はよく降るし、農業者の能力は高いし、肥料、農業あるいは農機具、十年後にはロボット農業が一般化すると思いますけれ
ども、そういうものをつくる製造業は能力が非常に高いのです。しかも、国内に一億二千四百万のレベルの高い食生活をやる国民の食糧マーケットが展開しているわけです。こういうような農業条件に恵まれている国というのは
世界じゅうにありません。これを十分に国民にもよく知ってもらう、農業者にはもちろんでありますけれ
ども。
農水省は知っているのです。知っているけれ
ども、必ずしも自信がないのですね。でありますから、どうかこの
日本の農業条件がいかにすぐれているかということを
外務省が
世界の情報を集めて農水省に提供する、
日本が本当は一番いいのだよと。米だけに限定すれば二百万ヘクを基盤整備するのは五年かかりません。十年間に四十一兆円使うというのですから一年には四兆円以上の仕事をやる能力があるわけです。その半分の二兆円としてもこの二百万町歩の田んぼを
世界一にするのに十年です。
だから、ガットのウルグアイ・ラウンドなんかに行って、
日本は、急げば五年、悠々とやって十年すれば自由化に
対応するだけの方策がある、
アメリカやECは輸出補助金を完全になくして自由化するのに何年かかるのかと、そういう前向きの交渉をやってもらいたいと思うのです。いつも自信がないものだから受け身に立って逃げ回るというようなことをやっているのでは外交交渉になりません。どうか農業に関しては十分の自信を持って交渉していただくように。
大臣、それはもうもちろんよく御
承知だから孤軍奮闘されるわけでありますけれ
ども、幸いにも
外務大臣になられたのでありますから、
外務省の皆さんに十分に農政を、これは農政論理は簡単でありましてそう何日もかかりはしないのです。数時間でちゃんとわかるのです。だからそういう勉強をなさって、閣議のたびに農水大臣に、農水大臣はまじめな人ですし、
総理大臣はこれはもうわかっているのですよ、基本的に。だけれ
ども、この間
クリントン大統領に会っても、やらないと言ってきたのでしょう。それは世論がついてこないことを知っているからやるとは言えないわけです。だから世論の誘導はやはり何といったって農水省がやると言わなきゃできませんから、それは
外務省にお願いしたい。
それからもう
一つは、こういうことは研究と教育が一番大事でありますから、文部大臣に十分
外務大臣から
お話しいただきたい。
日本の大学は外国の農業に勝つ農業の研究というのは全くやっておりません。設備もありません。これは農水大臣のお仕事ですから、農水大臣と文部大臣を十分説得してくださるようにお願いしたいと思います。