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1993-02-23 第126回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年二月二十三日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 粕谷  茂君     理事 石川 要三君  理事 小杉  隆君     理事 鴻池 祥肇君  理事 佐藤 信二君     理事 中川 昭一君  理事 串原 義直君     理事 中西 績介君  理事 松浦 利尚君     理事 草川 昭三君        愛野興一郎君     粟屋 敏信君        石原 伸晃君     臼井日出男君        内海 英男君     衛藤征士郎君        越智 通雄君     戸井田三郎君        浜田 幸一君     真鍋 光広君        松永  光君     伊藤 忠治君       宇都宮真由美君     菅  直人君        関  晴正君     竹内  猛君        富塚 三夫君     堀  昌雄君        松前  仰君     三野 優美君        水田  稔君     目黒吉之助君        元信  堯君     石田 祝稔君        二見 伸明君     宮地 正介君        児玉 健次君     菅野 悦子君        高木 義明君     中野 寛成君  出席公述人         秩父セメント株 諸井  虔君         式会社会長         ジャーナリスト 前田 哲男君         慶應義塾大学経 島田 晴雄君         済学部教授         全国商工団体連 菱  健藏君         合会会長         青山学院大学教 館 龍一郎君         授         全国商工会連合 近藤英一郎君         会会長  出席政府委員         北海道開発政務 北村 直人君         次官         防衛政務次官  三原 朝彦君         経済企画政務次 二田 孝治君         官         科学技術政務次 渡海紀三朗君         官         沖縄開発政務次 仲村 正治君         官         国土政務次官  杉浦 正健君         外務政務次官  柿澤 弘治君         大蔵政務次官  村上誠一郎君         大蔵省主計局次 涌井 洋治君         長         大蔵省主計局次 武藤 敏郎君         長         文部政務次官  鈴木 恒夫君         厚生政務次官  木村 義雄君         農林水産政務次 石破  茂君         官         通商産業政務次 逢沢 一郎君         官         運輸政務次官  武部  勤君         郵政政務次官  斉藤斗志二君         建設政務次官  東   力君         自治政務次官  片岡 武司君  委員外出席者         予算委員会調査 堀口 一郎君         室長     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十三日  辞任         補欠選任   中山 太郎君     石原 伸晃君   綿貫 民輔君     真鍋 光広君   菅  直人君     楢崎弥之助君   木島日出夫君     菅野 悦子君   中野 寛成君     高木 義明君 同日  辞任         補欠選任   石原 伸晃君     中山 太郎君   真鍋 光広君     綿貫 民輔君   高木 義明君     中野 寛成君     ――――――――――――― 本日の公聴会意見を聞いた案件  平成五年度一般会計予算  平成五年度特別会計予算  平成五年度政府関係機関予算      ―――――◇―――――
  2. 粕谷茂

    粕谷委員長 これより会議を開きます。  平成五年度一般会計予算平成五年度特別会計予算平成五年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。  この際、御出席公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成五年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  御意見を承る順序といたしましては、まず諸井公述人、次に前田公述人、続いて島田公述人順序で、一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、諸井公述人にお願いいたします。     〔委員長退席石川委員長代理着席
  3. 諸井虔

    諸井公述人 秩父セメント会長諸井虔でございます。  本日は、予算委員会公聴会にお呼びをいただきまして、大変光栄に存じております。 私は、PKOの問題について意見を申し述べてみたいと思っております。もとより専門家ではございませんので、いろいろ不備の点もあろうかと思いますが、どうぞひとつ御容赦をお願いしたいと思います。  結論から申し上げますと、私は、国連平和維持活動に対して、日本は積極的に参加をすべきであるというふうに存じます。したがいまして、現在のカンボジアにおける活動というのは、私は賛成でございます。  冷戦終結をいたしまして、東西に分かれて核を含めた全面戦争世界全体が衰退をしてしまう、あるいは人類が滅亡してしまうというふうなそういう危機は去ったわけでございますけれども、その後地域紛争というのが次々に世界の各地域に起こっておるわけでございます。イラクのクウェート侵攻に始まりまして、これは多国籍軍活動で一応クウェートから撤退させることができたわけですけれども、最近でもまたサダム・フセインは蠢動しておるわけでございますし、また、イスラエル、アラブの対立というものが根が深いわけでございまして、中東地域の平和という状態にはまだほど遠いわけでございます。  また、東ヨーロッパではソ連の解体と前後しまして各国で動乱が起こったわけでございます。現在でも、ユーゴスラビアが大変泥沼状態に陥っているわけでございますし、またチェコスロバキアは、紛争こそありませんでしたけれども、国が真っ二つに割れてしまったわけでございます。それから、旧ソ連邦の中の新しいいろいろな共和国があるわけでございますが、それぞれの共和国の中で激しい民族紛争が起こっておりますし、また、それが共和国対共和国の争いというようなところまで展開をしているわけでございます。  また、アメリカ大陸に移りましても、ペルーとかコロンビアとか激しいテロが起こっております。また、アフリカではソマリアとかモザンビークとかあるいはザイールとかいう各地紛争が起こっておるわけでございます。  アジアに目を転じましても、特に南アジア、インド、パキスタン、スリランカあるいはミャンマー、各国国内民族紛争を抱えておるわけでございますし、その上にまたそれがある程度影響をして国と国との小競り合いというものも、そういう緊張状態というものも続いておるわけでございます。カンボジアは現在UNTAC活動で何とか紛争をおさめようという状態であるわけでございます。  このように、冷戦終結しました後、世界全体に紛争が広がってきた。これは、冷戦前でございますと東西対立状態がございました。何か紛争が起こると、それぞれの陣営が相手にすきを見せてはいかぬということで、力を振るって協力をして紛争解決するというような行動をしたわけでございますが、冷戦終結によってそういう力も働かなくなってしまった。  それで、もともと、私は、この地域紛争というのは、やはり根本原因貧困であろうかと思うのですね。それで、ただ民族が違うとか宗教が違うとか文化が違うというふうなことだけですぐ紛争になるというわけではないと思うのですね。  むしろ、人類というのはいろいろな民族が共存し、交流し、お互いに啓発し合って文化、文明を進めてきたという歴史があるわけでございます。それが貧困ということによって、どうしても民族がそれぞれ自分の生存をかけて戦い合うというふうな問題が起こってしまう。あるいは経済格差というものがございますと、またその格差を埋めようという動きが出てくるということで、根本的には経済問題が紛争原因と思いますが、しかし、そういう原因が、火種があちこちにあるところへ抑止力冷戦終結によって働かなくなったというのが最近の紛争続発原因ではなかろうかと思うわけでございます。  それで、一たん紛争が発生をしますと、どうも非常に長期化する傾向がございます。先ほど申し上げましたように、いろいろな紛争というのは実は余り解決したものがないわけでありまして、これはやはり貧困地域民族生存をかけた戦いであるということで、そう簡単に妥協をしたり引き下がったり負けたりするわけにいかないということがありますし、それから一たん紛争が始まって血が流されますと、恨みがお互いに募っていくわけでございます。簡単に解決ができないということが原因ではないかと思うのです。紛争が多発している上に、それがそれぞれ長期化するということは、世界各地紛争が同時多発している、こういう状況になろうかと思います。  それから、ある国で紛争が起こった場合に、どうしてもそれが周辺の諸国に波及をし拡大をしていくということが出てまいります。当然、戦火によって住民の生活は非常に脅かされますし、また死傷もふえてくるわけでございます。あるいは飢餓とか疾病とかいろいろな問題がそこで起こってまいりますから、難民がどんどん隣国へ流出していく。これはまた受け入れ国の方も容易なことではないわけでありまして、難民受け入れ施設をつくらなくちゃいかぬ、食糧も供給しなくちゃならない、病気の手当てもしなきゃならぬ、それが長期化するようだと職業まであっせんせにゃならぬ。それである意味では、民族問題がその受け入れ国に持ち込まれてくる。そして、それにつれてテロとか麻薬の問題も出てまいりますし、言うなれば紛争が飛び火をしてまいる、周辺にどんどん拡大していく、こういう傾向があるわけでございます。  日本周辺でも、今は割と紛争遠隔地で行われておりますので、高みの見物と申しますか、他人事のように考えているわけでございますが、日本周辺にも紛争火種というのはたくさんあるわけでございまして、一たん周辺紛争が起これは同じような問題が日本に起こるということになろうかと思うのでございます。  それで、こういうふうにして世界全体に紛争拡大をしてくる、そしてそれが長期化してなかなか解決しない。場合によると、今は核拡散ということが恐れられているわけですけれども、紛争当事国の中で核を保有するようなものが出てくるかもしれない。そうすると、これは核戦争に発展する危険すらあるわけでございます。そうしますと、我々は、冷戦終結によって全面的な核戦争という脅威を回避することができたわけですけれども、平和の配当を享受する間もなく、地域紛争拡大によって再び核を含めた平和への大きな脅威にぶつかっているということが言えるのではないだろうかと思います。  なかなかこれは、火種もたくさんあるわけですし、解決が長引きますから、簡単に地域紛争というものがなくなる時代というのは出てこない。特に原因根本貧困だとすると、途上国貧困問題の解決には大変時間がかかるわけでございますから、そういう意味でも拡大、そして長期化、そして全面的な平和への脅威という形に展開をしてくる。  これを抑える手段というのは、かつては、東西冷戦時代にはアメリカソ連中心になって抑止にかかった。その前の植民地時代にはそれぞれの宗主国が一生懸命にそれを抑止してきた。そういう力はもう働かないわけであります。一方では、内政不干渉だ、民族自決だ、こういうものはほっておけばいいじゃないかというような意見もあるわけでございますけれども、非常に悲惨な状態で、人道的にも放置することはできないと思いますし、さらに、今申し上げましたように、周辺にどんどん波及してくるということになりますと、これは民族自決とか内政不干渉ということを言っておるわけにはいかなくなってくるということではないかと思います。  そういうふうに考えてまいりますと、この地域紛争というのを解決するのは喫緊の重要事でありますし、その手段としては、結局は国際的なコンセンサスに基づいた国際協力によって解決をするしかないということではないかと思うのです。現実にはやはり国連中心とした活動ということになろうかと思うわけでございます。  それで、大体様子を見ておりますと、紛争の当事者、それから周辺国あるいは関係国というものが集まりまして平和会議を開きまして、そこで停戦の合意が行われる。そうすると、国連平和維持活動が始まって、その停戦を実行させ、あるいは武装解除をする。そして、その停戦を監視してさらに民主的な選挙へ持っていく。選挙の準備をし、その管理をし、そして民主的な政府ができ上がっていく。それで、治安の安定というものを見て引き揚げてくる。こういう段取りであろうかと思うのです。なかなかそれが、段取りが思うように進んでいかない、あるいはせっかく民主政府ができたと思ったら、またもとのもくあみになってしまうというようなことの繰り返しも行われるわけでございます。  今、国連平和維持活動がなかったら本当に悲惨な状態であり、また非常に拡大をしているのではないかと思うのです。しかし、国連の現在の平和維持活動でも必ずしも十分に解決に至らない。そうなると、もう少し国連平和維持活動というものを強化すべきではないのだろうか。  ガリ事務総長あたりから、予防的な措置として、まだ紛争は起こっていないのだけれども紛争が非常に起こりそうな地域に予防的な展開をして紛争を未然に防止する、あるいは平和執行部隊のようなものを出して、ある平和維持軍よりもかなり強力な軍事力を持ったものを出して、それで紛争を起こさないようにしていく、紛争を抑えていく、それからさらには、最終的には国連常設軍のような形のものまで考えていくというふうなアイデアが出ております。私はやはり、紛争解決というのは急いでいかなくてはなりませんし、あちこちで多発をしてくるわけでございますのですから、やはりこういう国連考え方というものは傾聴に値するのではないのか、そういう方向でないとなかなか地域紛争というのは解決をしない、さっき申し上げたように、世界の平和の脅威になってくるのではないか、そういう感じがするわけでございます。  それで、地域紛争がそういう世界脅威であり、しかもそれを解決する手段国連平和維持活動を初めとする国連活動しかないということになれば、日本はもう既に国際的にも非常に、G7の有力国であるという立場にあるわけでありますし、また日本経済というものは、日本は無資源国でございますから世界との貿易でもって初めて成り立っておる、現在の経済水準というのは世界貿易がベースになっておるわけでございます。世界各地貿易をして日本の現在の経済水準があるわけでございまして、あちこちで紛争拡大するということは日本自身にとっても死活の問題ではないかと思うわけでございます。そういう日本立場もあるわけですし、こういう国際的に協力して人類の大きな課題を解決しなくてはならぬということに、本来日本も当然積極的に参加すべきということではないかと思うのでございます。  ただ、日本がそういう行動をとる場合に、私は三つほど問題があろうかと思います。一つは、憲法九条に絡まる国内世論の問題であります。それから二つ目は、国際世論でございます。それから三番目は、自衛隊対応力ということではないかと思います。  憲法九条の問題は、国内でもいろいろな意見があるわけでございますが、最初に私個人の考え方を申し上げますと、「国権発動たる戦争」、これを禁止し、そのための軍隊も持たぬということでございます。私は、「国権発動たる戦争」というのは一体何だ、どういうものを指すのかということがこの問題のポイントではないかと思います。それで、私自身は「国権発動たる戦争」というのは侵略戦争ということではないかと思っております。これは、戦争の終わった直後であれ、今日であれ、あるいは将来であれ、日本国民侵略戦争というものは二度と繰り返すまい、これは日本国民としてのかたい決意であろうかと思います。そういう意味で、九条の「国権発動たる戦争」というのを侵略戦争というふうに考えますと、今申し上げてまいりました国連平和維持活動への参加というのは、これは決して侵略戦争ではないわけであります。したがいまして、むしろ逆に平和のために日本が積極的に参加をするという、そうなるべきではないかというのが私の考えでございます。  これに対しまして、「国権発動たる戦争」というのはすべての戦争を指すのだというお考えの方もあるようでございます。これも一つ考え方だと思うのでございますが、そうなれば当然自衛隊自体が違憲ということになろうかと思います。それからあるいは、日本紛争に巻き込まれて他国が、例えばアメリカ日本を助けるためにやってきてそこで戦争になる、この戦争も好ましくないということになろうかと思うのですね。それはやはり理想ではありましょうが、現実的ではないのではないかというふうに思います。  それから三つ目に、とにかく自衛はいいとして、国内での自衛のための戦争は仕方がないとして、海外自衛隊を出すということは、これは「国権発動たる戦争」とか「武力の行使」につながる、こういうお考えも多いかと思います。私は、これは結局日本が歯どめがきかなくなって、海外に一遍自衛隊を出すと歯どめがきかなくなって侵略戦争に走り軍事大国になるのじゃないか、そういうことを恐れてのお話ではないかと思うのでございますが、これは私は、戦後五十年近くを経た日本民主主義というものが、再び侵略戦争を許しあるいは軍事大国へ進んでいくことを許すという、そういういいかげんなものではもうないのではないか、いろいろ欠点はある、問題点はあるにしても、それほどいいかげんなものではないのではないかと私は信じております。  それから、現在、今の世の中で侵略戦争をやって植民地を得たとして、一体どんなメリットがあるのでございましょうか。これはむしろデメリットこそたくさんあるけれども、メリットはほとんどないのではないか。したがいまして、いずれにしてもそういう展開というのはもう今考える必要がないのではないかというのが私の考えでございます。  それから、二番目の国際世論でございます。一部にやはり日本軍事大国化を恐れて、自衛隊海外派遣というものに反対する世論があることも承知しております。この国際世論が非常に強いようでしたら、国連日本に対して平和維持活動なりあるいは平和創造活動なりそういうものに協力しろということは言ってこないはずであります、中国も常任理事国一つであるわけでございますので。  ただ、まあやはり国内世論にしろ国際世論にしろ理屈だけでは割り切れないわけでありまして、国内的にもやはり六〇%くらいの少なくとも支持がないと、なかなか現在の段階より進んだ協力というのは難しいと思いますし、国際世論の大多数ではなくても、かなりの反対があればやはり日本としてもそれは考慮せざるを得ないというふうに考える次第です。  最後に、自衛隊対応能力でございますが、これはもともと海外へ出すようにつくられておるわけではありませんから、人員にしても装備にしても、あるいは予算にしてもすべてがそういう十分な対応ができるようになっておりません。したがいまして、あちこちどこへでも出ていけと言われても、自衛隊としてもなかなかすぐには対応できないということだと思います。したがいまして、私はやはり国内あるいは国際的な世論の許す範囲で、そして自衛隊対応能力のある範囲で、極力積極的に国連平和維持のための活動というものに日本協力すべきではないか、こういうふうに考える次第でございます。  大変話があちこちへ飛びまして恐縮でございましたが、以上で終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
  4. 石川要三

    石川委員長代理 ありがとうございました。  次に、前田公述人にお願いいたします。
  5. 前田哲男

    前田公述人 前田哲男でございます。  機会を得ましたので、私も諸井公述人と同じく、来年度予算案に盛り込まれている国際平和協力業務について意見を述べさせていただきます。  ちょうど一年前になると思いますが、この予算委員会を初め国会のあらゆる場所で政府提出PKO協力法案、そしてそれと一体をなす冷戦後の国際社会に向けて日本がいかなる寄与、貢献をなすべきかについて大変熱い議論が交わされていたと記憶しております。法案に対する立場、賛否を異にしたとはいえ、しかしそこには国権最高機関としての権威と見識、熱意がこもっていたというふうに私は思います。しかしながら、六月十五日に法案が成立し、施行され、十月に自衛隊現地派遣されという実際の動きが形成されていく中で、肝心の国権最高機関におけるその後の継続的な検証、事実に対する検証がどれほど行われたかといいますと、残念なことに甚だお寒い状態でなかったのかというふうに思います。昨年秋の臨時国会におきましても、また本通常国会におきましてもさしたる議論がなされていない、現地においてはこのPKO協力法案の内容とカンボジアにおける実態の間に大きな落差が生じているにもかかわらず。したがって、もっともっと法案運用に関して現地実態を反映した議論国会の中で展開されていなければならない時期であるにもかかわらず、さしたる議論が行われていないということに大変危機感を持つ次第であります。  私は昨年六月からことしにかけて五回カンボジアを取材する機会がありましたが、例えばこのPKO協力法政府国会に対して約束し、かつ国民に対して明らかにした派遣条件は、残念ながら現地では成り立っていないと言わざるを得ない状況がございます。ことしに入って、従来の停戦違反ポル・ポト派と呼ばれるクメール・ルージュによって主として引き起こされていたその状態が、一月二十八日から政府軍が組織的、意図的に中部及び北部で一斉攻撃に出るという形で、UNTACがパリ協定始まって以来の停戦違反であると嘆ぜざるを得ないような事態にまで至りました。そのような事態を持ちながら、しかし国会では派遣条件に対する現地の情勢を踏まえた運用に関する討論が余り行われていないというのは、国民立場から見て非常に不満と言わざるを得ない。一年前のあの議論はどこにいったのか、あの約束はどこに消えてしまったのかという気がいたします。  また、そもそも派遣条件がどのような形で国連に伝達され、カンボジアUNTACに適用されたのかについても私たちは確たる証拠を受け取っておりません。国連PKOは、御承知のようにモデル協定案というのを各国の間につくるように案文を例示しております。その案文に従って派遣条件が明示されたのか否か。そのモデル協定案を下敷きにしないのであれば、どのような形で、どのような文案によって政府国民に約束した派遣条件国連に伝えられたのかということが明らかにされなければならない。しかし、私たちはそれに関する概略の、大まかな説明しか受けていない。これは甚だ危険だと思います。  なぜならば、もし国連に対して派遣条件が明確に国民に対して伝えられたのと同じ形で伝えられているならば、事態は事務的に中断、撤収に進むことができます。過去PKO歴史においてそのような例がなかったわけではありません。事務的になし得ます。しかし、もし派遣条件が明確に国連に対して伝えられていなかったとすれば、モデル協定案ないし口上書で明記されていなかったとすれば、業務の中断ないし撤収は国際的な背信行為という形で非難されざるを得ない、そういう形にもなってくる。どちらなのか明記されているのかされていないのか、国連に伝えられているのか伝えられていないのかということを国民は今知る権利があると思います。今この瞬間でも、タケオの自衛隊員六百人はさして危険な状態であるとは思いません。しかし、中部、北部に駐屯する文民警察官は、今両方の方角から弾が飛んでくるような中に勤務している状態です。もちろんそれは日本の文民警察だけではありませんが、しかし、派遣条件によって派遣された日本の文民警察の人たちが双方から弾が飛んでくる地帯にいるということは、派遣条件の実施運用と絡めて大変重要な問題だろうと思います。  また、PKO協力法の実施計画及び実施要領に基づいて派遣された自衛隊員が、十月以降現地でなし崩し的に任務を拡大しているということも、やはり国会で交わされた議論、そこで約束された内容ときちんと点検されるべきであるにもかかわらず、さしたる実証的な議論が行われているとは思いません。  現地においては、既に医療班は他国の医療任務も引き受けました。他国に対する補給任務も引き受けました。実施要領、実施計画にプノンペン以南と定められている担当区域がプノンペン以東、プノンペン以北にまで拡大されました。これは政府国会に通告した実施計画を覆すものであります。ならば、国会国民に対してもっときちんとした説明がなされ、そこで議論が行われて初めて実施さるべきものであろうと思うのです。しかし、そのような議論は余りなかったように記憶しております。  以上、PKO協力法が成立して八カ月、自衛隊現地派遣されて四カ月、その間における法と実態格差はますます広がるばかりであると言わざるを得ません。また、パリ協定と現地の情勢の落差も広がるばかりであると言わざるを得ません。  そこにおいて、国会国権最高機関として、この法案を審議した責任者として、もっと継続的な意欲を持って検証していただきたい、点検していただきたい、常続的な監視を続けていただきたいというふうに考えるわけです。これは過去のことのみにとどまりません。これからむしろ国会のそのような態度はますます重要になってくると考えます。  なぜならば、UNTACカンボジアにおける臨時統治機構はことしの九月までの期限を持って展開しております。しかし、国際平和協力隊、日本PKO活動は十月三十一日までの期限を与えられている。となりますと、UNTACが九月に解散した後なお一カ月現地にとどまることができるような仕組みで現地に今展開しているわけです。UNTACが九月に解散、引き揚げをすることは、ガリ事務総長、明石特別代表、再三の言明によって不動の方針であります。九月に撤収するその前提として五月に総選挙を行う準備が進められているわけでございます。しかし、日本PKO活動は十月三十一日まで有効期限を持っている。としますと、UNTACが解散した後も現地に残ろうとすれば残れるということになるわけであります。  さらに、五月にカンボジアで新しい政権が誕生しますと、しかしそれにはクメール・ルージュ、ポル・ポト派は目下のところ加わりませんので、四派ではなしに三派による、あるいは三派の中の最多数党による単独政権が成立する公算が強い。そして、カンボジアに成立した新政権、シアヌーク大統領によって国連に対し新しいPKOが要請されることもプノンペンにおいては公然と語られている。UNTACパートツーが九月以降必要であるという世論は、国連及びプノンペンにおいてはもう一致した見解であると言っていいわけであります。  しかし、このUNTACパートツーは、当然のことですが、パリ協定を基盤といたしません。パリ協定の精神を基盤とするにしても、しかしパリ協定そのものを基盤とするものではありません。ポル・ポト派が抜け落ちております。となりますと、パートツーとしてカンボジアに残る数千人規模の国連PKO活動は、最初から紛争全当事者の合意を基盤としたものではない。ポル・ポト派を新政府に対する一種の反乱分子とみなすような法的枠組みの中でカンボジアに駐留し、ないし居残るということにならざるを得ない。このままの状態でいきますと、日本現地部隊、ことし三月に交代する部隊は、そのような形で九月以降UNTACがいなくなった後のカンボジアに残ることができ、かつUNTACパートツーの中に組み入れられる可能性なしとはしない。  今後の問題を考えましても、PKO協力法及びそれに基づく実施計画、実施要領がどのような形で現地において運用されるのか現地における実態と法の運用の間にどのような矛盾、落差が生じたのか、それを解消するにはいかなる手だてが必要なのかということが、国会政府に対する追及としてなされる必要があるだろうと思うのです。  さらに、PKO協力法冷戦時代PKOをモデルにしてできた法律でありまして、諸井公述人か言われましたように、冷戦後のさまざまな地域紛争対応するような法的枠組みを持っておりません。冷戦期米ソが手に余した、しかし、停戦協定が結ばれたというような地域紛争に対して現場処理的なことに当たるための活動PKOであったわけで、それに対応するように日本の法律はつくられている。ところが、現実に世界で進行している地域紛争はそのようなものではないわけであります。まさに貧困、抑圧といったことが根本にあり、かつ現場処理的な兵力の引き離し、武装解除では済まない復興援助、行政再建にまで進まなければならないようなPKOが今や求められている。モザンビークにおいてしかりでありますし、ユーゴにおいてしかりであろうと思います。そのような今真に求められている、そして日本国際社会に対して寄与、貢献すべき型のPKOとは一体何なのかということが議論される時期であると思うのですが、そのような実態的な議論がありません。  過日、ガリ事務総長が日本に来られて、ガリ提案が脚光を浴びたわけですが、あのガリ提案、「平和への課題」と題するガリさんのPKOの新しい展開をどのように評価するのか。現在のPKO協力法と、来るべき求められている国連平和維持活動への参加との間にどのように新しい道筋をつけていくのか、調整していくのかという実態的な議論をぜひやっていただきたい。ともすれば、ガリ提案の中では強制力を持つ平和執行部隊のみが取り上げられがちですが、よく読めばわかるように、ガリ提案はまず予防外交、紛争の予知ということを最初に挙げております用地震の予知と同じように紛争を予知することができる、そのようなところに派遣される最初のユニットは、非軍事的な力でいいはずである。次に、平和の構築がある。ここにピース・エンフォースメント・ユニットという平和執行部隊の構想が入ってくるわけですが、そしてそれがなされた後平和の維持、在来のピース・キーピング・オペレーションズが入ってきて、最後に復興という第四段階がある。そのような多角的な一つの大きな流れの中で平和執行部隊を位置づけておられるわけでありまして、決して強制力を持つ、武装したPKOをつくる、戦うPKO、強いPKOをつくるという主張ではないのですね。紛争の予知、平和の構築、平和の維持、復興という文脈の中でとらえるべきであって、つまみ食い的に平和執行部隊のみを取り上げてそれに参加することの必要性を説くというのは、ガリ提案そのものをゆがめる結果にならざるを得ないと思います。  ガリ提案に関しても日本がどのようにかかわっていくのか大変重要な問題で、これから目を背けることはできないだろうと思います。ガリ提案をどのように日本型のPKOの中に受けとめていくのかがまさに今問われているわけで、このことに関する真剣な討論が本委員会を初め国会の中で政府との間に闘わされて問題点が浮き彫りになれば、国民は初めてそこで選択肢が与えられ、日本の将来に関するはっきりした意見を持ち得るのだと思います。     〔石川委員長代理退席、委員長着席〕  ここのところ、六月以降の国会の論戦、政府とのやりとりを見てみますと、政府と行政当局の中に意見の食い違いがあることは散見いたしますが、政府国会の間で本格的な論戦というのを経ていない、これは甚だ遺憾なことだというふうに思います。  そういう中で、やはり今求められているのは、PKO協力法を全面的につくりかえることの必要性であろうというふうに思います。  現在のPKO協力法は、先ほども申しましたが、もともと冷戦時代PKOをモデルにしたという古いしっぽを持っています。もう一つ国際協力とか国際貢献を言いながら、しかし実はどこから必要性が痛感されたかといいますと、決して冷戦後の国際社会に向けたということではなしに、湾岸危機が起こって、アメリカから応分の要請が求められ、中東貢献策として初めて浮上したという、そういうしっぽも持っています。  つまり、中東貢献策というしっぽと冷戦時代というしっぽの中から生まれたのが現在のPKO協力法でありまして、当然、冷戦各地で頻発している新しい型の地域紛争対応する能力を欠いている。さらに、それらの紛争を抑えるだけではなしに、再発を防止するという大きな使命からいえば、もともと処方せんとしての役割を持っていないと言わざるを得ない。つくりかえて新しいPKO協力法を制定することが今望まれているだろうと思うのです。そこにおいて、自衛隊を出すか出さないかというような瑣末なことではなしに、PKO協力する日本の新しい組織をつくるべきだと思います。  自衛隊は、専守防衛と自衛というまさにその名のとおり、国内軍事力、戦力としてあるわけでありまして、外に出すということを前提とするような任務に用いるべきでない。自衛隊の経験、能力、人材が必要であるとすれば、外につくればいい。別組織につくればいい。そして、ガリ提案にある紛争の予知、そして戦後復興という中で日本の役割を見つけていくべきであろうと思います。ぜひそのような議論国会でも展開していただきたく思います。  御清聴ありがとうございました。(拍手)
  6. 粕谷茂

    粕谷委員長 ありがとうございました。  次に、島田公述人にお願いいたします。
  7. 島田晴雄

    島田公述人 島田でございます。  今日の日本は、不況が長引く中で、未来への明確な展望はなかなかつかめない大変難しい状態でございます。そういった状況を踏まえまして、本日私は、先生方のお手元に配付させていただきましたレジュメにもございますように、「逞しく豊かな日本」を築くにはどうすればよいか、こういう観点から所見を申し上げたいというふうに思います。  まず初めに、たくましい日本、具体的には人的資本の強化ということでございますが、そういったことを強調させていただきたいと思います。  本年度の予算案は、不況の脱出を目指して、生活関連インフラを大変重視した公共投資に力点を置いて編成をされております。公共投資というのは実行するまでに大変時間がかかりますので、一国民の私といたしましては一日も早いこの予算の成立を期待したいというふうに思います。  また、大型の所得減税に住宅減税その他政策減税を組み合わせた野党の共同修正案というものが用意されているというふうに伺っておりますが、非常に低迷する景気の中で、雇用不安を解消する、金融システムの安定化を目指すといった国内経済への配慮、また、昨夜のニューヨーク市場の動きにも見られますように円高が高進しております。そういった中で日米関係の国際収支のバランスを回復するといった国際経済への配慮からも、一段の大型景気刺激策は大変重要であり、また意義が深いというふうに私は考えます。  しかしながら、所得減税の消費刺激効果ということになると、実は必ずしも楽観できない面がございます。と申しますのは、家計も企業と同じように住宅や自動車など耐久消費財その他大変なストックを抱えて、現在調整過程にある。したがって、単なる所得減税ということでありますと、ローンの支払いとか貯蓄等に吸収される可能性が極めて大であろうというふうに私は考えております。したがって、一般的な所得減税では、消費刺激効果というのは、実は残念ながら今最も効果が期待しにくい時期にあるのではないかというふうに考えます。  一方、財源については、これだけの大型刺激策をとるということでございますから、大量の赤字国債の発行は不可避であろう、こう考えるわけでございますが、しかし、今後数年税収減が予想される中で、この行動というものは将来非常に大きな負担を上積みすることは明らかであろう、こう考えます。したがって、適当な段階で消費税の税率引き上げなどで増収を図ることは不可避であろう、こう考えるわけでございます。  しかしながら、国民の納得を得るということ、これがなかなか容易でない。なぜかというと、現行の消費税はさまざまな不公平性その他多くの問題を抱えております。したがって、この難点を解決して税率を引き上げる準備をするということが急務ではなかろうか、このように考えます。国民の大多数を占める給与生活者から考えますと、消費税の税率を引き上げても、それを中立化する所得減税と組み合わせるならば必ず有利なはずでございます。したがって、一刻も早く消費税の抱えておる問題点を改革して、そして国民の広い理解を得てこれを実施するということが急務ではなかろうかというふうに思います。  しかしながら、税体系の変革という問題は後々の影響が極めて大きい。したがって、よく将来を見据えて行うことが重要であろうというふうに考えます。税の改革というものは単なる負担増になってしまっては元も子もない。これからの日本はますます高齢化してまいりますから、日本経済の活力を増進するという方向に働く先行投資の視点を踏まえた税改革が極めて重要ではなかろうか、こういうことでございます。  そこで本日私は、とりたてて、たくましい日本というテーマをつけさせていただきましたのはそういう意味からでございまして、私なりに具体的な例示としまして二つばかりのアイデアを提案させていただきたいと思います。  一つは、自己啓発もしくは個人教育投資優遇税制、こういったものでございます。  皆様のお手元にお配りいたしました資料の中に、実は数年前に書いた記事でございますが、かねてからこのアイデアを私は提唱しておりますものですから、お配りさせていただきました。一言で言いますと、これは転職者とかあるいは転職を考えている人、みずからのグレードアップを目指している人、こういう人々の自己啓発費あるいは自己教育訓練費の経費の実費の一定部分を課税所得から控除する、こういう所得税法の改正にかかわるようなことでございます。この考え方は次に申し上げるような幾つかのメリットがあります。     〔委員長退席、小杉委員長代理着席〕  一つは、日本は人口が高齢化してまいります。また、産業構造、技術構造が変化しておりまして、就業構造に占めるホワイトカラーの比重がどんどんふえております。そういった中で、とりわけホワイトカラーの人的資源の再開発に貢献するということでございます。  二番目には、最近各方面で懸念されておりますホワイトカラーの雇用不安にも対応するだろうと思います。  三番目に、自己啓発、教育訓練支出というのがございます。これは投資効果を持ちます。また、これの受け皿としての産業人の教育訓練関連産業というものが育つはずでございますが、こういった両面からの税収増が期待されますので、恐らく長期的にはネットで税収増になるだろうというふうに思います。  それから四番目に、現在こういった目的のものがないわけではない。例えば生涯職業訓練奨励給付金といった補助金などがありますが、補助金では国民に周知できない、また広くないということで、やはり一般的な優遇税制がよろしい、こう考えます。  最後に申し上げたいのは、これは国家百年の計でございます。日本は今日世界一の長寿国でございますが、これは日本の手厚い保健衛生医療制度があずかって大いに力がある。また、日本経済の発展を支えてきたすぐれた労働力は、日本の大変立派な義務教育制度によるところが大きい、このように考えます。ところが今日、日本は高齢化しつつある、そして人々の生涯勤労期間というのは大変長くなっております。そういった中で、貴重な人材の能力向上を今のうちに図っておくということは、国家百年の計ではなかろうかというふうに考える次第でございます。  いま一つ、高等教育研究基盤の特別整備計画といったようなものを提案したいと思います。  今日、主要な国立大学を初め多くの大学の研究教育施設の惨状というのは見るにたえないものがございます。世間の関心も高まっておりまして、政府も国立大学については最近、およそ年間二百億円程度の特別施設整備費ですかそういったものを計上して改善に着手しておるようでございますが、この際先生方に提案したいのは、この際ですから抜本的かつ徹底的な改善、拡充を図ってはどうかということでございます。  関係者の話をいろいろ聞きますと、およそ二兆円あれば主要大学及び主要基礎研究機関等の抜本的な、相当理想的なインフラの総改善が可能だということのようでございます。もちろん、これはどういう財源から出すかということになれば建設国債ということであろうかと思いますが、財政法の第四条によれば、建設国債というのは国の資産となる公共事業というふうに定義されております。文教関連でいいますと施設費ということになるわけですが、もちろん建物は建設国債で幾らもつくれるわけですけれども、関係者の話によりますと、今非常に欠けておりますのは、日本が外国の研究者を受け入れる住宅基盤が非常に弱い。たくさんの研究者、教育者が日本に来たいんだけれども住むところがない。こういう施設を抜本的につくったら、これは大変な国際貢献になると同時に、日本の科学技術、教育の発展に資することは明らかでございます。さらに、こういう事業というのは実はハードよりもソフトが大切。コンピューターのソフトであるとか通信ネットワーク、あるいはプロジェクト、試験研究費、こういったものが重要でございますが、これは先生方に釈迦に説法でございますけれども、四条三項で、この範囲というものを国会で決めることができることになっているはずでございます。ぜひ先生方の、「自ら古(いにしえ)を成す」という考え方で、建設国債の中に研究、教育に関してはソフトを組み入れるということをぜひ今国会で決議していただきまして、実現していただきたいものだというふうに考えます。こういうプログラムは、将来大きな見返りを生むことは必定でございます。  日本の今日の産業の状態を見ておりますと、量で稼ぐということでやっておりますが、知的な面が大変弱い。創造性が欠けております。太平洋の向こうの米国では、クリントン政権が人的資本投資というものを必死に始めました。これは初等中等教育でございます。彼らはそれが弱い。しかし、日本はどこが弱いかといえば、私も奉職しておりますが、残念ながら大学教育が弱いんです。それが産業の知的生産性の足を引っ張っております。ぜひ先生方の御英断でこのあたりを強化していただきたいというふうに思います。これはまた、同時に世界の科学技術の発展にも資することになります。しかも、すぐにこれは着手可能でございます。即効性がございます。保確実な投資支出があります。ですから、景気浮揚効果も明らかでございます。先生方におかれましては、将来の日本を形づくる、こういう意味で、真に役に立つ予算というものを今国会でぜひ、さすが立派な国会議員の先生方だと言われるような修正をしていただきたいものというふうに考えます。  次に、豊かさ実現の戦略ということで申し上げたいと思います。  生活大国の実現というのは、現行の経済運営五カ年計画の主題でございます。これは、まさに中期経済政策の運営の基本であろうかというふうに思います。しかし、日本人の生活は、ごく率直に総合的に評価すれば、国際的に見て今私はかなりいい方だ、こういうふうに思います。だからやらなくていいというのではなくて、私が申し上げたいのは、しかしもっともっとよくできるのだ、それをなぜしっかりおやりにならないかということでございます。  生活の質を決めるには、私の考えるところ三つの柱がございます。一つは時間、二つは空間、三番目はお金でございます。政策のよろしきを得れば、時間の問題、空間は住宅でございます、お金は生計費でございますが、もっともっと改善できるのでございます。  これらについて簡単に申し上げたいと思いますが、第一に時間、つまり労働時間、自由時間といったものでございますが、労働時間の短縮ということが叫ばれております。ここで強調しておきたいのは、時間短縮の基本はあくまで民間の努力である、労働を効率化すること、創造的な付加価値を生み出すこと、これでございます。政府の役割は、傍らからこれを支援することでございます。そこで、政府の役割は何かというと、最も直接的にはルールを設定することでございます。週四十時間労働制というものが来年から施行されることになっておりますが、これは大変適切な行動であろうというふうに思います。ただ、これをいかに担保するのかということが問題でございまして、時間外割り増し率というのがございますが、今日本では二五%、多くの国々の中で最低に近い方でございますが、政府はこれを二五%から五〇%ぐらいの範囲で政令で決めるというふうな方針のようでございますけれども、少なくとも国際水準の五〇%を最低基準とするように努力をしていただきたい、このように思います。  しかし、政府にとってもっと重要なことは、生計費の問題でございます。日本の都市の生計費は 欧米に比べて二割から三割高いというのは、どういう統計をひっくり返してみても出てまいります。これはどういうことかといいますと、国内の消費財・サービス産業の物価が高いということでございます。その大きな要因は、円高のメリットが還元されていないということでございます。国際競争に洗われております輸出型の製造業は、円高の際に懸命なリストラクチャーで対応いたしました。しかし、国内産業は、合理化、近代化への構造改革が大変おくれました。なぜか。これは、政府の規制と保護というものが大きくかかわってございます。  日本にはこういう意味で五つの、五大国内産業と言ってよろしいかと思いますが、ございます。例えば農業、四百万人の方が従事しております。建設六百万人、サービス業千七百万人、卸売、小売、飲食業千五百万人、運輸業三百七十万人、これらを足し合わせますと四千五百七十万人になります。日本の総労働力は六千四百万人でございます。製造業はたかだか千五百万人を占めるにすぎません。この五千万人になんなんとする国内産業の近代化、合理化がおくれているということが物価高の根本原因でございます。  これらの産業の構造改革を促進するためには、市場の開放、自由化というものが極めて重要でございます。そして、規制の保護撤廃、緩和ということが重要でございます。しかし同時に、これらの産業の方々の合理化、近代化を促進するため、構造改革、リストラを促進するためには強力な支援が必要である。私は自由化論者ですけれども、何もしないで自由化するというほど乱暴なことはありません。農業であれば、経営近代化の支援、農地の流動化、集中化、あるいは農地法を改正して、私は、農業外の人材が流入するということも考え時代に来ているのではないかというふうに思います。他の産業も同様でございまして、政府がなすべき重要なことは、所得補償的な補助金よりも、むしろ制度の改革、システムの改善、ソフト面での支援ということが重要ではなかろうかと思います。     〔小杉委員長代理退席、委員長着席〕  最後に、空間、住宅整備の問題、国土活用の問題について触れたいと思います。  今日、バブルが崩壊して、地価が非常に下がっております。しかし、住宅問題は解決されてはおりません。良質な住宅インフラを都市の近郊そして全国に展開することが住宅問題を解決する基本でございます。そして今こそ、地価の下がっている今こそ、そして財政出動が要請されている今こそそのチャンスだというふうに私は考えます。  以下、三つのポイントについて申し上げたいと思います。  一つは、調整区域を活用するということです。日本の土地は決して狭くございません。バブル時代に釣り値がついた一因は何かというと、土地が狭いのではなくて、税制のために供給が出ないということでございます。そしてまた、良質の住宅インフラの整備が不十分だということでございます。日本の国土は三十八万平方キロメートルございますが、御案内のように、都市計画区域というのは九・二万平方キロ、農地は六万平方キロ、しかしこの九・二万平方キロのうち実際に整備されて活用されている市街化区域というのは丁三万平方キロにすぎません。これの三倍に及ぶ三・八万平方キロという土地が、調整区域として甚だ不十分な活用のもとに放置されている現状でございます。  先生方のお手元にお配り申し上げた最後のページに、コア・ネットプランというのがございますが、水玉プランとも私ども考えておりましたのですが、このようなイメージでございますけれども、全国各地の調整区域に職住近接の小さな都市をたくさん、良質の住宅ということを主眼にして展開するという考えもあり得るのではないか。ただ、これは大変やりにくいんですね。なぜやりにくいかというと、役所の縦割りでございます。したがって、私どもは、国土庁、関係省庁の上位に位置する行政委員会のようなもの、つまり、住宅インフラ計画委員会とでもいいましょうか、そういったものでもつくっていただいて本格的にこの際やっていただきたいというふうに思うわけでございます。  二番目、地域開発の問題でございますが、バブルが崩壊しておりまして、東京の一極集中は、現在のところ一時停止の様相あるいはむしろ逆流の様相が短期的に見られます。しかし、均衡のとれた日本の発展のためには、全国に雇用機会がまんべんなく均てんするような各地域の発展が強く望まれるわけでございます。日本は高度に発展した情報化社会でございまして、このために最も重要なことは、地域に最新の情報を発信できる機能が育つようなソフトインフラの整備が必要だということでございます。このために私が日ごろから強調しておりますのは、まず通信料金の全国均一化ということをお考えいただいてはいかがなものかと思います。東京との情報コストの地域格差、これは莫大でございます。これが地方の発展を妨げております。長距離通信料金を引き下げる、それには市内の料金をちょっと上げなければなりませんが、例えば東京の市内料金を三分十円でなくて三分三十円にすれば、全国、沖縄、北海道を含めて三十円で長距離通話ができるという試算がございます。これはあしたからでもできるのです。早期に改革をしていただきたい、このように思います。先生方の選挙活動にも大変役に立つのではないか、このように思います。  二番目、国内の航空ネットワーク整備とソフトの充実。空港のハードはもう十分に整っているのです。必要なのは首都圏の空港の追加的能力とソフトの充実でございます。  そして最後に地方財政における主体性、独立性の増進。  そして最後に新都の建設。これは先生方の英断によりまして、一昨年、首都機能の移転という決議がなされたはずでございますが、二十一世紀の日本づくりということを目指して、先生方の創造力あふれる、さすが立派な国会議員の先生方だと選挙民に言わせる大改革を今国会で実現していただきたいと思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  8. 粕谷茂

    粕谷委員長 ありがとうございました。     ―――――――――――――
  9. 粕谷茂

    粕谷委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石原伸晃君。
  10. 石原伸晃

    石原(伸)委員 自由民主党の石原伸晃でございます。  本日は、日本経済界をこれからしょって立たれる諸井公述人PKO国連平和維持活動に関します陳述を聞かせていただきまして、心強くも感じた点が多々ございました。限られた時間でございますので、先に質問を三点ほどさせていただきまして、私の質問にかえさせていただきたいと思います。  まず第一点でございますが、公述人は、現況の認識といたしまして、東西冷戦終結して、この対立軸がなくなって、それとあわせて今度は地域紛争というものが多発してきている。そして、この地域紛争解決する手段としては、やはり国連中心とした、国連中心でやっていくことがいい方法ではないか、言ってみれば新しい国際新秩序というものは国連中心に築いていくべきではないか、こういう御提言がございましたが、まさにそのとおりだと思うのでございますが、中でもよく言われておりますのがいわゆる国連の機構自体の問題でございます。一九四二年の連合国憲章に始まりまして、御承知のように、ドイツ、日本も敵国条項としてまだ明記されている。こんなようなことを考えたときに、国連改革の方が先ではないか、それから平和維持活動参加すべきではないかという御意見がございますので、その点について諸井公述人がどのようにお考えになるか、まずお聞かせ願いたいと思います。  質問の第二点目でございますが、公述人のお話を聞かせていただきまして、戦争の体系というものが本当に変わってきたのだなと実感をさせていただきました。この地域紛争の最大の原因については、生存をかけて戦う、貧困原因である、こういう御指摘がございましたが、近代、現代の戦争というものを構成してきたものを今振り返って眺めてみますと、日本が経験いたしました日清、日露戦争も含めて、第二次世界大戦以前の戦争紛争というものはいわゆる植民地戦争ではなかったのか。言ってみれば、列強が植民地拡大する、またそれに対して地域の住民の方が反対闘争を起こす。しかし、それが第二次世界大戦の日本の敗戦を迎えて大きく変わってきた。そして、そこの次に出てきたのが、公述人も御指摘になっておりましたようないわゆる東西冷戦、そういうものが出てきて、そこでこの冷戦が終了した今日、それまで抑圧されていた民族が解放されて、その意味での地域紛争というものも多発してきたのではないか、こんなように私も考えさせていただいたわけでございます。  そんなとき、公述人もお話の中で触れられておりましたが、いわゆる湾岸戦争の問題というもの、これが実は私もPKOという言葉を真剣に勉強し始めました最初でございます。国民の多くの方の間で今PKOという言葉が大変ポピュラーにはなってまいりましたけれども、この湾岸戦争の以前にPKOと言いましても、一体何のことやら、これが多くの国民の方の一致したところではなかったかと思います。  そんなとき、私は湾岸戦争の模様をCNNのテレビで見ておりましたときに、これはイギリスかフランスの現地の司令官だったと思いますが、私たちはユナイテッド・ネーションズ・アーミーではないんだ、ジ・アライアンスなんだ、こういうような発言を現地の司令官がしておりました。こんなことを考えたときに、日本紛争が終わった後の平和維持活動ということに限定したとしても一体どういうところまでコミットできるのかどういう地域紛争あるいはそういうものに対して日本がこれからコミットすることができるのか。諸井公述人は、国際世論の許す限り、そして自衛隊対応力での範囲というお話をされておりましたけれども、もう少し主体的に考えたとき、どういうところまでコミットできるのかお考えをお聞かせ願いたいと思います。  三番目の質問は、これは非常に抽象的で恐縮なんでございますが、諸井公述人はやはり若手の経済人としても有名でございますが、また知識人としてあるいは日本を代表するインテリとしてさまざまの雑誌や新聞あるいはテレビ等で御発言をされております。そんな中、今武力行使に関する考え方、言ってみれば戦争というものをどうとらえるのか、今ヨーロッパの方でも大変インテリの方が苦悩している。私もそう本を読んでいるわけではございませんが、サルトルも戦争を否定していたと思います。しかしながら、今日の地域紛争というものを見たとき、ユーゴスラビアの問題あるいはソマリアの問題、こんなようなものを見たとき、戦争を拒否してきましたけれども、やはり武力行使によって平和を維持するということが余計ヒューマンなことなんだ、こんな考えが出てきていると思います。そこの点につきまして、この武力行使、戦争というものについての諸井公述人のお考えを三番目、抽象的な質問ではございますが、お聞かせ願いたいと思います。  以上、三点につきまして御意見をお願い申し上げます。
  11. 諸井虔

    諸井公述人 世界の新秩序というのは、実はブッシュさんが言い出して、それで結局中身が余りはっきりしないまま終わってしまったような非常に難しい問題でありまして、私のなかなか手に負えるところではないのでございますけれども、しかし、先ほど来申し上げてまいりましたような世界の情勢でありまして、やはり平和を取り戻すということが本当に人類全体の喫緊の課題になっている、人類全体が影響を受ける非常に重要な課題になっている。  私は、基本的なプランとして考えますと、まず軍縮というものが国際的にコンセンサスを得られるべきなんじゃないのだろうか。その軍縮のレベル、どの程度の兵力を維持してもいいというふうなことを決める、これは国際的なコンセンサスが必要だと思うのです。そしてまた、同時にやはり武器の輸出入というものについてのコントロール、チェックというようなものが必要ではないかと思うのですね。そしてまた、でき上がったそういう条約なり体制というものを維持しておくには、結局どこかで抑止力が必要になってくる。その抑止力というのは当面は多国籍軍型のようなことになっていくのだろうと思うのですけれども、やはり将来といいますか、これは国連中心というのが本来望ましいのではないのだろうか。そういう意味で、ガリ事務総長の提案の、最後の方に常設国連軍のようなアイデアが出ておりますが、これと各国の軍隊が協力をして抑止力になっていく、各国の軍隊というのはむしろだんだん小さくなっていく方がいいんじゃないのかというふうな新秩序というものを考えておるわけでございます。  それで、そういう意味国連改革が先ではないかというのはまことにごもっともで、今の国連の機構とかあるいは憲章とか運営とかにいろいろな問題点があることは私も承知しておりますが、じゃ、それを今度は直すということは、これまた国連憲章にも絡まって国際コンセンサスが必要ですし、非常に時間のかかる問題である。一方で、今の地域紛争が頻発しているわけでございます。これはやはり両方並行して進めていくしかないのではないかというふうに考える次第でございます。  それから二点目の、湾岸戦争に絡んだ戦争の体系と申しますか、そういうお話をいただいたわけでございますけれども、日本の場合に、従来の常識ですと、やはり湾岸戦争のようなものにはせいぜいやってロジスティック、兵たん部門までだ、輸送とかですね、というのが常識になっておるのだと思うのですね。ただ私は、さっき申し上げたような趣旨からいうと、私個人としてはもう少し踏み込んでもいいんじゃないのかという感じがしますし、また兵たんと戦闘との境というのはなかなか現実問題としては難しいものがあるのだろうと思うのですね。ただしかし、それは私の個人の見解でありまして、実際にこれを運用していく場合には、国内世論の少なくとも六〇%ぐらいが賛同してくれないと、現実に行動を起こすということは困難なのではないかという感じがいたします。  これは第三点の問題とも絡んでくるような感じがするわけでございますけれども、確かに全く武力のない理想の社会、戦争のない理想の社会、これがもう一番いいことは、だれが考えても当然だと思うのです。現実にそこにたどり着くまでには相当の時間が要る。最初に申し上げました、例えば軍縮の協約一つにしても、恐らく国際的なコンセンサスをつくるのに相当な時間がかかるんじゃないか。  そういう中で、やはり時としてサダム・フセインのような人が出てきて、軍事力で問題を解決しようとするというようなことが避けられない。それから、民族民族貧困状態の中でもやはりどうしてもそういうケースが出てきてしまう。そうすると、やはりおっしゃるように、一つの武力というものをヒューマンに行使するというコンセプトというのは、私は当分の間はやむを得ないのではないか、こういうふうに考えております。  以上でございます。
  12. 石原伸晃

    石原(伸)委員 まず、国連改革につきましては並行して行う、こんなお話がございましたが、それに付随した質問として、ちょっと時間がありますので、もう一点お聞かせ願いたいのでございますが、今、実は日本の安全保障委員会の常任理事国入り、こういうものが大変国内あるいは国外でも議論をされているところでもございます。これは、公述人のお話を聞くまでもなく、やはり権利と義務という問題が発生してまいりますので、どこまで本当に、常任理事国入りいたしましてどこまで義務を果たすことができるのかといった心配もあるのでございますが、この点についての公述人の御意見も参考までにお聞かせ願えませんでしょうか。
  13. 諸井虔

    諸井公述人 先ほど来申し上げてきた論旨から申しますと、やはり日本は最終的には常任理事国入りをしてその義務を果たすべきである、それだけの国際的立場にあるというふうに思います。  ただ、それをやりますのに、今御指摘のように、国内が固まっていないといけない。常任理事国入りしたのはいいんだけれども、やるべきことが何もできないということでは恥をさらすだけであります。国際的にも邪魔になるだけであります。  したがいまして、まず、国内世論の少なくとも六〇%ぐらいのものが、常任理事国入りをしてやるべきことをやってもいいというふうに考えていただかないといかぬのではないか、そういう方向へひとつリードしていただくのは政治の方々の役割ではないかというふうに私は考えております。
  14. 石原伸晃

    石原(伸)委員 大変参考になる御意見をありがとうございました。  これで質問を終わらせていただきたいと思います。
  15. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて石原伸晃君の質疑は終了いたしました。  次に、伊藤忠治君。
  16. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 本日は、公述人お三先生の方々に大変御多忙の中を御出席をいただきまして、ありがとうございます。まずもって心からお礼を申し上げます。  まず最初に、前田先生にお伺いいたしますが、カンボジア問題を中心にお話しくださいましたので、そのことに絞りましてお伺いをさせていただきます。  つまり、国会でも、御指摘をいただきましたとおり、PKO法と実態との乖離がだんだん開いているじゃないか、にもかかわらず国会では議論が見えてこない、いかがなものかという御指摘をいただきまして、私たちも反省をしているわけでございますが、今日のカンボジア情勢をどう見るかということについて、私個人の判断と政府の見解とは随分違うわけですね。どこがどのように違うかということなのですが、私は、このように現地状況をいろいろな報道、ニュース等を耳にしながら判断をしているわけです。そのことについて、何度か現地に調査に赴かれております先生の見方についてお伺いをしたいな、こういう気持ちで質問申し上げます。  つまり、一月の下旬にポル・ポト派拠点に対してプノンペン政府軍が大攻勢をかけました。これは、政府の見解としましては、部分的なものだと言うのですよね。大したことはないと。ポル・ポト派の兵力といいますか、大体一万そこそこで、プノンペン政府軍は三万から四万ぐらいだと。しかも広大な地域の中の、十九州ある中のわずか五州に対してやられたことだから、これは部分的なことなんですと。そのことが起こったからといって、こういう部分的な戦闘行為が起こったからといって、決してこれは五条件の前提条件が崩れたとは見ない、一口に言ってこういう答弁に終始をされているわけですね。私は、これは過小評価であろうという判断をしているわけです。  つまり、先生御承知のとおり、このポル・ポト派拠点の五州に対する全面攻撃というのは、これはポル・ポト派のほとんどの拠点をつぶそうというのですか、そこにねらいを置いた大攻勢、全面攻勢だというふうに私は見ているわけですね。そう判断した方がいいんじゃないか、こう思っているわけですね。果たせるかな、やられた方のポル・ポト派も黙ってないわけでありまして、じゃ、打って返そうか、反撃に出ようかという姿勢を今日現地でも強めているというふうに私は判断をしているわけでございます。  こういう反復、大紛争というか大攻撃というのが繰り返されれば、明らかにこれはPKO派遣五原則がもうもとから崩れてしまいます。これは戦闘状態ですからね。何をか言わんやであります。自衛隊の行っておるところは国道二号線、三号線、あの比較的安全な地域だから、これは関係がないよということにはならないわけですね。施設部隊はなるほどそうなんでしょうけれども、先生御指摘のように、文民警察の皆さんは非常に危険なところで、一番この仕事というのが毎日毎日厳しい条件の中で、混成チームの中で任務を果たされているわけですし、しかも危険な状態にあるということをむしろ重視して物事を考えていかなければいけない、私はこのようにも思っているわけですね。これがまず、現地状況判断をどのようにすべきかという点がまず第一点お伺いしたいこと。  二点目は、先生も御指摘いただきましたように、選挙はそれでもなおやっていくということなんですね。そうすると、選挙の日程は決まっていまして、たしか五月の二十二日から三日間ですか、これはもう既定方針どおり今現地では進められていると思うのですね。そうすると、選挙によって新政権が誕生したとしましょうか。しかし、この新政権は、ポル・ポト派はボイコットして、言うならば三派の政権ということにならざるを得ないと思いますね。すると、新政権ができました、じゃ、できた新政権というのは、これは政治的にいろいろな意味でも、社会的にも安定した政権になり得るだろうか。私は非常に不安定だと思うんですね。当初の計画では、UNTACの計画によりますと、新政権ができれば、これは新政権のもとに新たな軍隊を構成しまして、編成しまして、その軍隊と新政権ががっちり二つに組んで、言うならば安定基盤を築いていこうという構想だったと思うんですが、しかしそれは事実上私は難しいと思うのですね。そうすると、新政権はできた、選挙の後に大統領選挙があるんでしょうが、大統領選挙もそういう格好で終わったとしましょうか。しかし依然としてポル・ポト派対三派の新政権の対立状況は続くと思うんです。解決の見通しはないと思うんですね。ボイコットして、言うならば選挙がそういう格好で四派合意のもとにやられない限り、しかも一方では武装解除が進んでいない限り、私は必ずそうなると思うんです。そうしますと、これは御承知のように、先生御指摘されましたが、九月で任務完了なんだけれども、だからといって帰ってこれない。だから、ずっと長いことこれからも残留しようということにならざるを得ないと思います。どうしてもそうなると思いますね。そのときには御指摘されました新たな、言うならばUNTACという任務はそこで一たん終わると思いますから、それから先どういう格好で国連が言うならば残留をしていくのか。その残留期間の任務というのはどういう任務になるのか。まさに新たなPKOだと思うんです、先生御指摘の。ところが、私たちも、私自身としてはそこまでは勉強がいっておりませんので、新たなPKOというのは、どういう形になるんでしょうか、何が任務になるんでしょうかどういうふうに考えればいいんでしょうかこれが二点目の私の質問でございます。  ちょっと回りくどくなりましたが、以上二点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  17. 前田哲男

    前田公述人 大変大事な質問を二ついただきました。  カンボジア情勢をどう見るかに関しては、公述のところでも申し上げましたとおり、パリ協定なるものは、恐らくパリの文書館にはあるんでありましょうが、しかし、カンボジア現地にはもはやないと見た方がいいのではないかと思います。  それを一番はっきりした形で示したのが一月末からのプノンペン政府による大攻勢であったわけですが、既にその布石、伏線は、国会PKO協力法が成立する以前の、昨年の六月十三日から既に胚胎しておりました。すなわち、六月十三日に明石特別代表は武装解除を布告したわけですが、ポル・ポト派はこれに応じないという態度を明確にしたわけであります。このときから既にパリ協定の基盤は大きく崩れた。  パリ協定は、御承知のように、自発的な停戦に基づいて成立し、それを管理された停戦にまで進め、かつその中で選挙を行い、新政府を樹立し、新憲法を制定し、民族和解政府をつくって立ち退くということを和平プロセスと称しておりました。したがって、武装解除選挙の実施が何よりも必要で、そのために、難民の帰還、行政支援、さまざまなプロジェクトが部門別に構成されていたわけなんですが、六月十三日、PKO協力法が成立する二日前のことになりますが、武装解除が実施されないということが明確になった。厳密に言いますと、この瞬間から五条件はもはや崩れていたと見ることも可能だろうと思うんです。その後も、武装解除できませんので散発的な停戦違反は続きましたが、九月に入って選挙の準備に入る、有権者の登録が行われ、政治活動の自由が行われ、政党が活動を開始するということになりまして、やはりポル・ポト派参加しない。となりますと、もはやパリ協定を支えている二つの基盤、武装解除選挙が行われなくなった。この段階からパリ協定の実質的な土台はもはや崩壊したと見るべきだろうと思うんです。ただし、政府は、どのセクトもパリ協定から離脱するという意思表示をしていないからパリ協定は有効であるという見方をとりました。形式的にはそれも成り立つ理屈だろうと思います。したがって、パリの文書館に行けば確かに今でも有効なパリ協定を見ることができるわけですが、遺憾ながらカンボジアの人たちが住んでいるのはカンボジアの大地でありまして、そこにおいてはそのような状況はもはや見られないということであるわけです。  私が再三それを申しましたのは、何よりも政府国民に対して五条件を提示し、明確にし、こうなった場合には引き下がる、撤収するということを再三にわたって言明したそのことがどうなっているかということを突き詰めていかなければならないと思うからです。カンボジア現地情勢に立つ限り、情としては今引き揚げることは非常に酷であります、引き揚げるべきでないというふうに思います。しかし、情であると同時に、ここは理も考えなければならない。このような約束のもとに、このような明文化された公約のもとに成り立った法律が情によって動かされるということが最初の適用例から成り立ってしまいますと、以後ユーゴスラビア、以後ソマリア、以後モザンビーク、法の厳正さがどうなるか、非常に大きな疑惑を抱かざるを得ない。  その意味において今情なのか理なのかということを考えますと、やはりきちっとした法の的確な、厳正な運用現地の情勢と照らし合わせて見るという態度を、何よりもこの法案を採決した衆議院、参議院が行う、そのための現地調査を行うというようなことも必要であろうと思うんです。私は、今申しましたように、実質的に崩壊したと見るべきであろうと思うんですが、それをもう少し院の権威において行っていただきたい、またあの熱気あふれるような国政の最高機関としての情熱を取り戻していただきたいということを先ほど申し述べたわけであります。  二点目の、新たなプレゼンスがどんな任務になるかということは、まさにこれから大変大きな問題になってくると思います。  先ほども申し上げましたように、五月の選挙が行われ、その結果に基づいて新政府が樹立され、新しい憲法が採択され、パリ協定の枠組みですとそこで民族和解政府が挙国一致として成り立つはずでございましたが、今はもう私たち知っているように、そのような基盤はほとんど崩れていく。三派連立ないし三派の中の多数党が新政権を組織するということにならざるを得ない。九月になりますとUNTACはどのようなカンボジア情勢であろうと予定どおり引き揚げるということを言っております。そのための儀式が五月の総選挙である。五月に総選挙を何が何でもやって新政府をつくって、九月に撤収する基盤をつくる。今のスケジュールは、ですからカンボジアの和平へのプロセスであるより国連の撤退のプロセスであるというふうに表現した方が正確であろうと思うのです。  しかし、カンボジアにおける政情不安はUNTAC撤収後もおさまりませんので、したがって新たなUNTACが構想される。今のところ現UNTACが二万二千人の規模ですが、第二次UNTACは、そういう名前で呼ばれるかどうか定かではありませんが、数千人規模になるというふうにプノンペンでは言われております。停戦監視が主たる任務で、そのほか文民警察や復興的な任務もある。しかし、PKFといいますか、軍人が関与する部門としては停戦監視が主な任務になるであろうというふうに、数千人規模の第二次のUNTACが組織され、そしてこれには恐らくヨーロッパの、今もフランスにしてもポーランドにしましてもオランダにしましても一個大隊単位の兵力を出しておりますが、第二次UNTACにはヨーロッパの諸国は入ってこないだろう、したがってアジア主体になるだろうというふうに兵力も予測されているわけですが、その中に日本が入ってくるだろうとプノンペンでは言われているわけですね。そして実施計画、実施要領を見ますと、十月三十一日までという余裕をもって展開しておりますし、タケオの駐屯地を見ますと、数年間駐屯できるというふうに大隊長みずから言うようなきっちりした施設、装備が整えられている。となりますと、ジャーナリストの目から見て、UNTACとともにカンボジアを撤去するということに若干疑問を抱かざるを得ない。新しい任務において第二次のPKOカンボジアに行くPKOにも自衛隊参加が望まれ、かつそれを受け入れるんではないかという気がいたしております。
  18. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 二点目の質問なんですが、諸井先生と前田先生、できましたら島田先生にも御所見をお伺いをしたいと思います。いわゆるガリ提案、ガリ報告についてでございます。  結局、これは先生方も御指摘いただきましたとおり、冷戦が崩壊をしまして新たな世界秩序をつくっていこうという国連事務総長の立場から提起をされているわけですが、そういう意味では意欲的だと、私もこう思っております。つまり、現実は国連の組織というのが唯一の国際的な安全保障機構として機能し得ていないわけですから、そうなるためにはどうしなければいけないか、何が問題点なのか。つまり、現在の国連の機構上の問題、運営上の問題、加盟国の対応の問題、加盟国の権利義務が一体どうあるべきかということにまでかかわって改革の方向が提起されなければいけないと思うのですね。私はそう思っています。ところが、その改革の基本構想、方向というのが、ガリ報告を読む限りいま一つ不透明のように私は感じているわけです。この点について、まずどうお考えでしょうか、先生方の御所見がございましたらお聞かせをいただければありがたい、こう思います。  それで、私どもの党としては、山花委員長が、ガリ事務総長が訪日なさいました際に、党としての考え方を申し入れております。つまり、国連の改革を成功させるために世界の識者を集めた国連改革のための独立の委員会をつくられてはどうでしょうか、そういう場で国連改革についていち早く真剣な御論議を賜ってはどうなのかこういう申し入れをしているところでございます。  次に、このこととかかわって御質問申し上げますが、具体的なPKO展開、これは前田先生の御所見によりますと、つまり予知、予防、それから平和執行、それが最終的にはPKOにつながっていく、こういう脈絡のもとにガリ提案というのは書かれているやに私はお伺いをしたわけであります。しかし、国内議論で特徴的なのは、予防展開と、それから平和執行部隊の実施といいますか創設にはならぬと思いますが、実施というようなこの施策が、この見解が非常に熱い議論を呼んでいるんだろうと思います。  いずれにしましても、あのガリ報告を読みまして、予防展開、平和執行、まあ最終的にはPKOで維持をしていきましょうというところにはつながっていくんですが、新たに今日まで国連がとってきていなかった、多国籍軍は実績として持っていますけれども、平和執行というのを常任理事会でもってきちっと指揮命令ですか、そういうものも位置づけてはやってきていないわけですね。だから、新たな国連の行使という問題で提起をされているわけですが、しかし、ああいうふうな考え方でこれから実効ある強制力を伴った言うならば平和執行部隊ということになりますと、これは重大器を持つわけですから、そういうものを、実態は区々なんでしょうが、執行する過程では、国連というのは紛争を平和的に解決をするのが唯一の目的なのでありまして、しかし、あのガリ提案でいきますと、紛争の一方の当事者に国連が何かなもざるを得ないというようなところまで行き着くんじゃないのかそういう事態というのを、非常に私は危険性が十分あるんじゃないのか、こんなふうに思ってしょうがないわけであります。  したがって、そういう武力の行使という面は提起をされておるわけですが、紛争解決するというのは、これは諸井先生も言われましたように、もめている間に感情も入って長期化する、大変長引くんですよというふうに言われましたように、それはあえて言うならば、最大の要因というのは貧困じゃないか、やはり生活の問題であり、経済の問題じゃないかと言われましたが、そういう問題を解決していくためには、私は、もちろん当事者間の努力は必要ですが、周辺諸国、もっと範囲を広げればブロックの経済圏なり周辺諸国の信頼醸成措置というものが、これが多面的に努力をされない限り、国連が抜き出したような格好で武力行使をやっていくことだけで果たして問題の解決になるだろうか、この点があわせもって提起をされていないところに、非常に抜き出した議論がひとり走りしていくという、こういう懸念を感じているわけでございます。  以上二点についてお三方の御所見をいただければありがたい、かように思います。
  19. 諸井虔

    諸井公述人 国連の問題について私も十分研究しているわけでございませんので、あるいは不的確なお答えになるかもしれないのですけれども、先ほども申しましたように、現実の展開は非常に急で激しゅうございますから、国連の機構改革とか憲章の改正とか、あるいは運営の改善とかいうようなものをやるのを待ってというわけにはいかないんだろうと思うのですね。ですからこれは並行してやらなくちゃいかぬ。  それで、おっしゃるように、この問題についてはやはりなるべく早く国際的に議論をする場をつくって、いずれにしても国連の問題でありますから、国際世論のそれこそ大多数というものが賛同しなければ、特に有力国が賛同しなければ、これは成立をしないのであろうと思います。そういう場を早くつくって議論に入っていくということは、私は、いずれにしても非常に大事なことで、日本の問題なんかも、敵国条項の問題なんかもそこで議論をされることになるんではないかと思うのですね。  それから、今のPKO展開についてのガリ提案、これも私、中身を余りよく勉強しているわけじゃないのでございますけれども、やはり国連のやる行動でありますから、それが平和執行部隊であろうが、あるいは平和維持活動であろうが、あるいは予防的展開であろうが、これはやはり国際的なコンセンサスがなくてはできない。事務総長の独断と偏見で動かしてしまう、現実にはそういうことがあり得るとしても、それは必ず国際世論で変更させられてしまうということではないかと思うのですね。  ですから、これが国際紛争の中で国連がその一万の当事国になるような危険性があるんじゃないかということでございますが、それは結局その反対側の当事者あるいは当事国国際世論から見てやはり抑止すべき相手であると、例えばサダム・フセインの前回の行動のようなああいう行動であるということがやはりどうも前提になってくるんじゃないのだろうか。双方が同じような立場、それから同じような国連との関係を保っているときに、国連が片っ方の当事国に加担して出兵をするというようなことは、私はなかなか考えられないんではないかという感じがいたすわけでございます。  以上でございます。
  20. 前田哲男

    前田公述人 ガリさんの提案になる「平和への課題」は、PKOを改革しようという事務総長の提案でありますから、国連をどう変えていくかということとは少し脈絡が違うんだと思います。したがって、国連を真の冷戦後の国際的機構とするための機構上の、運用上の、あるいは加盟国の対応というのは、ガリ提案を離れたもっと大きな包括的なものとして提起されなければならないわけでありますし、このことに関しては昨年秋からの国連の定期総会においても各国代表の一般演説でさまざまな提案がなされました。また、第三世界でつくっている非同盟諸国会議も、国連の民主的改革ということを掲げております。いろいろな意見が出ているわけですが、今おっしゃった独立の委員会をつくるということも一つの有益な提案であろうと思います。  国連の改革とは少し違いますが、一九八○年代に、ヨーロッパにおいてオロフ・パルメ、後にスウェーデンの総理大臣になりましたパルメさんの委員会、パルメ委員会と呼ばれる委員会が、ヨーロッパ及び日本からも参加者を得て、コモンセキュリティー、共通の安全保障、今日のヨーロッパ、CSCE、統合ECの安全保障上の基盤となった「共通の安全保障」という提言をしております。この中に国連の改革とかいわゆるPKOの新しい発展というのがなされておりまして、実はガリ提案はここで提起されている予防外交をそのまま取り入れているというような関係があります。したがって、パルメ委員会のような大きな世界的な委員会をこの際つくるという提案は、日本がぜひ実現させるに値するものだというふうに考えます。  もう一つ、ガリ提案の中の平和執行部隊の評価、国連が戦闘の当事者になるんではないか。今後におけるPKOという、一九六〇年代の忌まわしい記憶をPKO自体持っているわけで、このマイナスの評価の教訓の中から、合意原則、同意原則、中立・非強制という今日のPKOの大原則が出てきたわけですが、しかし、諸井公述人も再三言われましたように、とにかく激動し変わりつつある今日の世界の中で、PKOもそれに対して変わっていかなければならない。合意、同意、中立・非強制はもはや成り立ちがたいという局部的な情勢もあらわれてきている。先ほど出ましたサルトルの言をかりますと、飢えた子の前に文学は有効かと彼は問いかけたわけですが、ミルクを求める前に何もできないPKOは有効かという国際世論が現にあるのも事実なわけで、それに対するガリ提案は一つの回答であるわけで、真摯にやはり受けとめなければならない。  私は、長期的には、これも諸井公述人が先ほど言われました軍縮、武器の禁輸という、国際環境を好ましいものに変えていく努力をしなければならない、それに日本が努力することが第一に重要である。しかし、短期的には、PKOは変わったんだ、冷戦時代の合意、同意、中立・非強制だけにPKOのイメージを求めて、それを尺度にすべてをはかってしまうやり方は、私たちも改めなければならない。ガリ提案の中に紛争の予知、それから第四項目に戦後復興というのがあるならば、非武装、非軍事的な場でできるところに日本協力の場をまず求めるという姿勢の転換が必要であろうというふうに考えます。
  21. 島田晴雄

    島田公述人 伊藤先生の御質問に対して私も大変深い関心がございますので、時間もございませんので二つの問題を一言で答えさせていただきたいと思います。  冷戦後の世界は米ソの拮抗力がなくなったということでございますので、実は日本を含めて全世界の国々が平和は自分たちの努力でつくるもの、こういう時代になったという基本認識が重要でなかろうかというふうに思います。その中で、先刻御報告のありましたガリ提案に対する新しい委員会の設置というようなことも含めて、より広いコンテクストの中で国連をよりよいものにしていくという意味での御提案であるとすれば、大変私は望ましいことではないかというふうに思います。  一九四〇年代につくられた国連が、一九九〇年代になっても今のままでいいはずはないわけでございまして、新しい国連のあり方が模索されている、その中で日本が格別の役割を果たすということが重要ではなかろうかと思います。ただ、世界というのは現実は厳しいものがございまして、時によっては武力をもって無法を制止しなくてはいけないということもあろうかというふうに思います。私はこのときに日本が応分の働きをするのは当然であろうというふうに考えております。  湾岸戦争が終わったときにブッシュ大統領が多国籍軍の国々に感謝をいたしました。二十八カ国に感謝をいたしましたが、日本アメリカ以上の戦費を負担しているにもかかわらず感謝の言葉がなかった。我々は驚きましたけれども、これは彼らに言わせると簡単なことでございます。世の中で一番大切なものはお金では買えないのです。信頼も愛情もお金で買えますか。これが求められたんです。  私は、日本国民がこの問題を考えるときに、だれかがやっているんだろうというふうに思うということが一番よくない。私は、国民がこの問題について強い自覚を持つために、政治家の先生方と真剣なダイアローグをしていくことが必要じゃないかというふうに思うわけです。この意味で、私は、国民が政治に参加をするという意味での政治改革といいますか、そういうものを求めたい。  国民の中には、日本がちょっと武力に参加するということになると、軍国主義化するのではないか、こういうふうな懸念を抱く人が相当おります。これは情けない。なぜならば、軍国主義化するかしないかは国民が決めることなんですね。政治家が勝手に政治をしていて、国民が関係ないと思うから軍国主義化するのではないかといったような変な懸念が出てくる。私は、この問題が難しい問題でございまして、民主主義を我々の手に取り戻すという意味で、先生方と国民の一層の対話をお願いしたいと思います。  そしてもう一つ世界の人々が実は日本のこういう活動に懸念を抱いている。世界の中でも最も集中的な懸念を抱いているのはお隣の韓国でございます。私は、実はこの韓国の人たちの不安を解消するために私どもがどのぐらいの誠意ある努力をしているかということを心に深く改めて問いかけてみる必要があるのではないか。とりわけ私は社会党を初めとする野党の先生方にお願いしたいんですが、ぜひPKOの問題を議論する場合には韓国の人たちとひざ突き合わせて真剣に話をして、一緒にアジアの安全保障を考えるんですよというところまでいけるような地盤づくりをしていただきたいというふうに思います。これを抜きにしてこの問題は軽々に論じられない。つまり、日本民主主義を本当の意味で確立するか、そして隣の国の信頼を本当の意味で確立するか、その上で国連に応分の参加をして、ふらちなサダム・フセインみたいなのがいたときには武力で制圧するのは当然ではないでしょうか。我々の責任においてやることです。民主主義ならできることなんですね。その根本義が私は最大の問題だろう、こういうふうに思っております。
  22. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 時間が終わりました。これからが一番私も具体的なことをお聞きしたかったのですが、時間が参りましたので、終わりたいと思います。大変御示唆に富む御発言をいただきましてありがとうございました。今後の審議に役立ててまいりたいと思います。  本日はどうもありがとうございました。失礼します。
  23. 粕谷茂

    粕谷委員長 これをもちまして伊藤忠治君の質疑は終わりました。  次に、石田祝稔君。
  24. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 公明党・国民会議の石田祝稔でございます。  三人の公述人の先生方、大変お忙しいところ御苦労さまです。いろいろな御意見を拝聴いたしましたので、短時間ではございますけれども、質問をさせていただきたいと思います。  これはまず三人の公述人の方にお聞きをしたいんですが、日本PKO参加する、現実に今参加しておりますけれども、これからいろいろな形、またいろいろな地域に出ていかなくてはならないと思いますが、どういう理念でもって参加をしていくべきなのか。これは国際貢献ということを言われるかもしれませんけれども、その点をまず簡単に三人の先生方にお伺いをしたいと思います。
  25. 諸井虔

    諸井公述人 大変簡単でございますけれども、これは世界のために、人類のためになることである、と同時に日本自身のためになることである。要するに、その両方の利害が完全に一致する問題である、そういうふうに考え対応すべきではないかと思います。
  26. 前田哲男

    前田公述人 私も簡単に申し上げますと、憲法前文にある「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてみる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」この宣言の誠実な実践が基本理念であろうというふうに思います。
  27. 島田晴雄

    島田公述人 冷戦後の大変混乱した世界の中で、世界の平和を我々の力で、みんなの努力でつくるものだ、こういう考え方の一環として私はPKO参加すべきであろうというふうに思っております。
  28. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 続いてお聞きをしますけれども、諸井公述人は、地域紛争根本貧困である、このようにお話しになりました。私は、今考えますと、この貧困解決、今のPKO活動紛争が終わった後に行くということですから、いわゆる予防になっておりません。その意味で、根本原因の除去という観点で考えた場合、日本として貧困の除去、貧困をなくしていくことに何ができるのか、これが第一点であります。  それから第二点目に、日本のODAは大変巨額になっておりますが、これが本当に、そういう世界から貧困をなくすという観点から現在有効に機能しているのかどうか。この二点を諸井公述人にお伺いをしたいと思います。
  29. 諸井虔

    諸井公述人 貧困解決考える場合に、私は、アジアの先例というのは非常に役に立つのではないか。アジアのNIESの諸国、それからASEANの諸国というのが最近非常な発展を遂げております。しかも、お互いに連携して、雁行して伸びてきて、その勢いというのは中国の華南地方にまで及んでいるという形であります。さらには、いずれベトナム等もそれに参画していく。  アジアがどうして中南米とかアフリカと違ってこういうふうに発展してきたのかというのは、私は、アジアは非常に教育に熱心である。それから、政治がやはり最近非常に安定をしてきた。それから、日本のODAも絡んでインフラが整備をしてきた。そうして、国民にやはり経済向上に対する意欲が強い。あるいは法律とか制度とかがかなり西欧型と整合性を持ってきた。こういうような条件が整って、そこで初めて民間資本というものがどんどん進出ができるわけでございます。やはり民間資本が進出をして、そこで雇用を創出し、所得を創出し、あるいは技術を移転し、人材を育成し、資本を蓄積していく、そういう形がとれない限り経済がテークオフできるということにならないのじゃないか。  ですから私は、例えば、中南米であれアフリカであれ、あるいはロシアとか東欧であれ、一体どの条件が欠けているのかということを考えて、それをどう補うかというふうに対応すべきだと思います。  私はODAの細かい内容については存じておりませんが、さっき申し上げたような条件を満たす中で非常に大きな役割を果たしている。一つ一つが全部役に立っているかというのは私もわかりませんが、全体として見れば非常に大きな役割を果たして役に立っているということが言えるのじゃないか、こういうふうに考えております。
  30. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 続きまして、諸井公述人前田公述人も、現在のPKO日本の行っている形 は、諸井公述人は、現在のPKOでは十分ではない、強化すべきだ、こういう御意見でした。前田公述人は、今のPKO冷戦のしっぽを持っていると。特に日本は、その成り立ちから中東貢献ということ、この脈絡の中で出てきた、ですから、そういう中東貢献というしっぽを持っていると。  お二人とも現在のPKOを要するに変えなくてはならないというお考えであろうかと思いますが、どういう形態を考えていらっしゃるのか。特に前田公述人は新しい組織、自衛隊と別組織ということをお述べになりましたけれども、その点も踏まえまして、お二人の公述人にお伺いをしたいと思います。
  31. 諸井虔

    諸井公述人 具体的にいろいろ考えているわけではございませんけれども、やはり先ほど来申し上げました論旨からいきまして、私個人は、例えば先ほど出ましたガリ提案の執行部隊のような形であっても対応していくべきではないか。ただ、前提条件として、あくまでも国民世論のコンセンサスと申しますか、少なくとも六〇%以上の支持というものがあってのことではないかと思います。  それから、別部隊というのは確かに一つ考え方であろうかと思うのですが、自衛隊というものがあって、もう一つそれをつくるというのは、これは大変お金もかかることですし、また要員を集めることが容易ではない。一から訓練を始めていくわけですから、時間も非常にかかるという意味で、ちょっと現実的には難しいのではないか、私はそういうふうに考えております。
  32. 前田哲男

    前田公述人 先ほど申しましたとおり、現行PKO協力法二つの欠陥を持っていると思います。中東貢献策からにわかに立ち上がりましたので、拙速というしっぽがついているわけですね。冷戦対応型というしっぽもついております。その二つとも今試練にさらされているわけであります。  冷戦対応型でいいますと、合意、同意、中立・非強制がガリ提案によって今否定されようとしている側面があります。さらに、余りにも拙速でしたので、将来をきちんと見ていなかった。その結果、定員を二千人にして、今カンボジアの次に同時並行的に求められますと、もう対応できない、改正だ。わずか一年もたたず、八カ月で改正なんという法律が欠陥でないなんということは言えないと思います。ということは、これはやはりもう少し大胆に、三年後の見直しではなしに、もっと大胆に変えていかなければならない内在的な欠陥がありますし、状況の急変による対応力の不足も指摘されているわけですから、過ちを改むるにはばかることなしにやっていただきたいと思うのです。  私は、先ほど申しましたように、別組織にすべきであるというふうに思います。自衛隊の人員、能力、経験を活用するにやぶさかではないのだが、しかし、スウェーデンがとっているような、ノルウェーがとっているような別組織にした方が対外的にもいいし、それから目的の簡明化といいますか、軍隊というのは本来戦うことが目的ですから、せん滅、占領が主たる本分であります。決して引き分けるとか管理するとかということは軍隊の本領ではないわけですから、スウェーデン、北欧待機軍がとっているのはまさにそういうふうに任務をきちんと分ける、訓練の段階から分けてしまう。  日本の場合、やはり自衛隊自衛ですし、専守防衛ですから、これが国外に行くということは、日本周辺諸国のみならず、四十年かかってようやく伝統を築き上げてきた自衛隊員そのものが自衛でないところに出ていく、専守防衛でない任務に携わる、違和感を持たざるを得ないと思うのです。なぜそういうことをやるのか。やる必要のないことをやってしまって後に禍根を残すより、きちんと別組織にして、経験、蓄積、装備を活用するというふうにしていけば一番いい、それが一番いいのではないか。  もう一つ、ガリ提案に関連していえば、第一項目と第四項目、つまり紛争の予知、予防、紛争後の復興というところに日本の領域を見出す。これはドイツのワイツゼッカー大統領も提案しておりますようなグリーンヘルメット、ブルーヘルメットからグリーンヘルメットへの転換をポスト冷戦における国連の新たな役割にすべきだ、このことを傾聴すべきではないかというふうに考えております。
  33. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 時間も限られておりますので、続いてお伺いをします。  所得税減税についてお伺いをしたいと思います。  島田公述人は、所得税減税は効果が今上がらない時期ではないか、こういうふうな御意見でございましたが、産業界の代表としてきょう諸井公述人もお見えになっておりますので、諸井公述人はこの所得税減税についてどういうお考えをお持ちでしょうか。
  34. 諸井虔

    諸井公述人 私の親分の永野日経連会長が五兆の所得減税をやれということをしきりに言っておりますのでなかなかお答えしにくいのでありますが、私自身は、やはり金融不安とか大恐慌とかそういうおそれが出てきたときに、これはあらゆる政策手段、もちろん所得減税も含めて、あるいは公的資金による株式、土地の共同購入というようなことに至るまで、あらゆる政策手段を尽くしてそれは防衛しないといかぬ。これは国民全体に非常に大きな影響を与えるわけであります。  現在、予算の御審議中でありますが、この減税の問題というのは、ここ二、三月あたりに大きな経済危機が来るんではないかというおそれはほぼ遠のいたような感じがいたします。四月以降の景気情勢をにらみながら、そういう大恐慌のような状態に陥ることは絶対にない、そういうときは何でもやるんだぞという覚悟で準備をしていただくというのがよろしいんではないか、これは私の個人的な見解でございます。
  35. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 所得税減税に必ずしも前向き、現在では前向きな御回答ではなかったと思いますが、島田公述人にお伺いをいたします。  所得税減税につきまして、効果が今は出ない時期だ、こういうふうにたしかおっしゃったと思いますが、これは所得税減税自体が一律的に効果がないということではなくて、今の時期が出ない時期ということだと思いますけれども、それでよろしいでしょうか。
  36. 島田晴雄

    島田公述人 そのように考えます。  先ほどもストック調整という言葉を申し上げましたが、家計も企業と同じように、平たい表現で言えば、食べ過ぎでおなかがいっぱいの状態で、そのローンを払っているというような状態でございますので、減税の相当部分がそういう方へ回ってしまう。新しい刺激、消費刺激効果が少ないというふうに思います。しかし、そうでないような状態のときですと、これはまた強烈な効果が出るわけでございます。そのように考えております。
  37. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 最後の質問になろうかと思いますが、これも島田公述人にお伺いしたいのですが、我が党も昨年来より教育減税ということをずっと言ってきております。一つは、高騰する教育費の問題で、例えば、入学金を一つの予約という形で文部大臣はおっしゃっておりましたけれども、この入学金を納める期限とそれから次の学校の合格発表の間があいていたらどうしても納めざるを得ない。そういう場合で結局二つ三つも入学金を納めてしまう、たくさんお金がかかるわけです。この入学金をある一定の限度を設けて所得から控除をしたらどうかという考えを我が党は打ち出しをしております。  もう一点は、特定扶養控除。十六歳以上二十二歳未満で、現在四十五万円、特定扶養控除がありますけれども、これも引き上げたらどうか、こういうことも去年よりいろいろと言ってまいりました。このいわゆる教育減税ということについて、島田公述人のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  38. 島田晴雄

    島田公述人 教育減税あるいは特定扶養控除のような政策的な意図といいますか焦点を絞った税制改革といいますか提案は、一般的な所得税減税よりは効果が期待しやすいというふうに思いますが、今度は逆に、不公平と言うと言葉が強いかもしれませんが、その便益をだれが受けるのかといったことについて、家計の受益者、それから関係機関の受益者、いろんな難しい問題も同時に出てくるだろうというふうに思いますので、大いにその点は検討していただいて、適切な案を考えていただくといいと思うのですが、いずれにしても、私は人的資本を形成するというような含みを持った税制改革は極めて重要ではなかろうかというふうに思います。
  39. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 どうも三人の公述人の皆さん、大変にありがとうございました。  終わります。
  40. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて石田祝稔君の質疑は終了いたしました。  次に、児玉健次君。
  41. 児玉健次

    ○児玉委員 きょうはおいでいただいてありがとうございました。  最初に、前田公述人にお伺いしたいのですが、先ほどいわゆるPKO法案の審議の状況と、そして今開かれている国会との関係について率直な御指摘がございました。公述人は五度カンボジアにおいでになったということですが、PKO法の審議に特別委員会で参加した者の一人として、現在のカンボジアの現状と私たちが強く反対したPKO法との関連、とりわけ第三条に、「武力紛争の停止及びこれを維持するとの紛争当事者間の合意があり、」あれこれの理由を並べ立てるのでなく、この法によって自衛隊を出すための決定的な要因の一つとしてこのように明言しておりますが、カンボジアでごらんになって、今のカンボジアにおける活動はこのPKO法第三条との関連でどうなのか、この点の御意見を伺いたいと思います。
  42. 前田哲男

    前田公述人 先ほども申し上げましたが、実態現地から見ます限り、第三条に言う全紛争当事者による停戦の合意は成り立っていないというふうに観察いたしました。
  43. 児玉健次

    ○児玉委員 停戦協定そのものがどうなっているかというのと同時に、それを維持する意思があるかどうかということをこの法律は問うております。その点で今の考え、よく承りました。  今四派の中のポル・ポト派、さまざまなことをやっておりますが、最も重大な点として、パリ協定の核心であり、かつ入り口でもある関係諸勢力の武装解除、これを拒否している。そして、選挙への不参加も明確に意思表示をしている。こういったポル・ポト派、先ほどクメール・ルージュというふうにもお述べになりましたが、カンボジアにおいて国民に対し人道上許すべからざる行為を行った過去のこれまでのポル・ポト派行動と、そして現時点においてカンボジアで現実にポル・ポト派が果たしている行動、行っている行動、その歴史的な関連について前田公述人の御意見を伺いたいと思います。
  44. 前田哲男

    前田公述人 大変難しい御質問でありまして、短時間のうちにお答えするのはほとんど不可能だろうと思いますが、ポル・ポト派がパリ協定以後も一連の組織的、継続的な停戦違反を行っていることに関しては疑問の余地はないわけですが、それと歴史的なポル・ポト派カンボジアにおける行為との間にどのような連続性があるのか、あるいは別の要因によっているものかというのは大変難しい論証が必要だろうと思います。  ポル・ポト派停戦違反を認めているわけではありませんが、ポル・ポト派UNTACに対する不信感を表明している根拠として二つ挙げております。  一つは、パリ協定にもかかわらず、と申しますのは、パリ協定はすべての外国軍隊の撤退を国際的に検証するという明文があるわけですが、にもかかわらずなおベトナム兵がカンボジアに残っている、よってUNTACに賛同しがたいということであります。もう一つは、パリ協定がカンボジアにおける最高権力と定めているSNCが、実はUNTACによって一派のみに変容されている、よってUNTAC協力しがたいということをポル・ポト派は言っているわけでありまして、したがって、パリ協定以後におけるポル・ポト派の非協力ないし停戦協定への継続的な侵犯は、この以後の二つ状況、動機から判断する方が正しいのではないかと私は考えます。
  45. 児玉健次

    ○児玉委員 ただいまの御意見は承っておきたいと思います。  それで、諸井公述人にお伺いしたいのですが、最初にちょっと一言述べておきたいのですが、憲法の平和的条項を守って、経済の分野、技術の分野、医療、教育等、そういった分野で積極的な国際貢献を行いたい、多くの国民の願いがございます。私たち日本共産党もその点で全く同じです。  公述人のお話の中で、冷戦終結後という認識からお始めになったのですが、ソ連崩壊後、今アメリカが唯一の超大国になっている。クリントンが大統領になりましたが、核兵器の維持その他若干の軍事費の削減はあるようですが、唯一の超大国として行動していくという点では変わりがないように考えます。  そこで、諸井公述人の論旨を先ほど傾聴させていただいておりまして、あれこれ省きますが、アジアにおける状況紛争周辺地域に波及する可能性なしとしない、そしてそういう場合にこれを抑える手段として今日のPKOはその有効性が必ずしも確かでない、こういうふうにお話しになってガリ事務総長のあの提案に論及されました。そして、そこにいく問題点として三つ憲法第九条との関係、国際世論かつ自衛隊対応力。  公述人の御意見憲法九条と国際世論との関係でまずお伺いしたいのですが、日本憲法国連の諸活動参加することの関連ですが、これはいつもそうですが、やはり出発点に返る必要があるのだろう、こう私たち考えております。昭和二十年代の終わりごろ、国連に入りたいという国民の願望が強まったとき、当時の岡崎外務大臣が国連に入って国連の決定を遵守するという意思表示をした際、「なし得るすべての手段によって」という言葉を使いました。外交文書でしたから、バイ オール ミーンズ アット イッツ ディスポーザルという言葉で正文になっておりました。これは言外に日本国がなし得ない手段はとらないということを示したものとして国連からも受けとめられ、その後、国会における論議でもそのことが外務省の条約局長等によっても確認されたところでございます。この点が今想起されて、そして非常に大切にされなければいけないところだ、こう考えております。  国際世論という点についてはいろいろとはかりがたいですが、例えば海部内閣のときに日本対応世界的に注目されたとき、世界YWCAのジュエル・グラハム会長が海部首相にあてて直接書簡を送ったことがございます。その中で彼女は第九条について、貴国が誇りを持ってその勇気と知恵に立ち返るよう希望する、こういうふうにも述べております。YWCAがどれほどの組織がということは公述人はよく御存じだと思います。そのあたりを踏まえてこの問題を真剣に考える必要があると考えておりますが、いかがでしょうか。
  46. 諸井虔

    諸井公述人 最初の、なし得るすべての手段ということはなし得ないこともあるよということ、私はその辺の憲法論議は余り詳しくないのでございますけれども、ただ、その当時の日本がなし得ることとそれから現在とでは随分違うのではないかという感じもするわけであります。また、国際情勢、日本に対するニーズも違ってきているのではないのかな。ああいう戦争を起こした直後の日本に対する考え方とか、そういうものが変わってきているのではないのかな。日本国内の情勢も変わってきているのではないのかなという感じがするのでございます。したがいまして、原点に返るということは確かに大事なことでございますけれども、現状で、先ほど申し上げましたような憲法考え方ということも成り立ち得るのではないのだろうか、私は依然としてそういう考え方を持っております。  それから、国際世論についてそのYWCAのグラハムさんのお話というのも確かに大事なことではあろうかと思うのですけれども、先ほど来何遍も繰り返して申しておりますように、理想と現実はやはり違うわけでございます。現在の国際情勢の中で、長期的には理想を求めていくのでございましょうけれども、現実はやはり当面起こっている問題をとにかく解決していかなくてはならないということではないかと思います。
  47. 児玉健次

    ○児玉委員 PKOに関しては国連憲章その他国連の正式の規定の中には一切言及されていないということはよく御存じだと思います。そういう中で、当事国、当事者の合意、内政事項に対する不介入、これは国連の出した「ブルーヘルメット」中でも非常に強調しているところですね。  もしアジア周辺地域における紛争を事前に、言葉はいろいろあるでしょうけれども、抑えつけるとかそれを発生させないとかそういう形にまでこれをエスカレートさせるとすれば、それはクリントン大統領のもとアメリカが唯一の超大国として存在している、そういった中で日本自身アジアにおける憲兵の役割を果たさせられる危険性が非常に強いと私たちはその点を危惧しています。いかがでしょうか。
  48. 諸井虔

    諸井公述人 日本には到底そういう能力はない。さっきも自衛隊対応能力ということを申し上げましたけれども、世の中一般が見ているのに比べて、日本自衛隊というのはやはり非常に小さなものです。予算は大きいかもしれませんけれども、人件費が高くて、人件費が非常に多いという部分があるわけでありまして、とても周辺のどの国をとっても日本が憲兵の役割を果たせるという状況ではないと思います。これはやはり各国との連携の中でやっていくことではないかと思います。
  49. 児玉健次

    ○児玉委員 最後になって失礼しましたが、島田公述人にお伺いしたいと思います。  先ほど御意見の最初のところで赤字国債の発行にお触れになって、将来に対して大きな負担を残す問題と、それから適当な段階での消費税率引き上げを伴うであろうという見通しをお述べになりました。この点では私は全く同感でございまして、今の私たちが審議しているこの予算の中でも、国債費とりわけ利子の部分について言えば十一兆六千億を超しております。これらが教育や福祉や医療を圧迫する重要な要因になっている。恐らくこれは事実としてどなたもお考えだと思うのです。  そこで、先ほど先生がお述べになった高等教育のある意味では世界に類例のない貧困さ、この状態を放置しておくことはできないと私たち考えております。今日の高等教育の状況というのは、国債が出されて利払いその他が財政を圧迫していく、そういう中でいわゆる臨調行革のもとでのシーリング方式と、そして国家公務員の定員を計画的に圧縮する総定員法との関係なしには議論ができないと思うのですが、そのあたりについてお考えを聞かせていただきたいと思います。
  50. 島田晴雄

    島田公述人 お答えいたします。  石油危機以降、政府が格別の力点を置いて推進してきましたより小さい政府というかそういうものを目指した改革については私は一定の評価はするものでありますが、ただいま先生がおっしゃいましたように、こう言うと表現がきついのですが、悪平等といいますか、何もかもシーリングで横並びで抑えつけるということの中で、大切なものが、むしろ力点を置くべきものも抑えつけられていく、逆にそうでないものにも慣行に従って予算がつけられていく、こういう実態があったように思います。  そういう意味で一面評価すべき面があるのですが、今先生おっしゃいましたように非常にしゃくし定規的な適用は弊害が多い。それについて一つ一つ修正をしていくということも大変重要な試みであろうと思いますが、それよりもこういう時期にひとつ壮大なプロジェクトで一気にインフラを整備するというようなことをぜひお考えいただければというふうな気持ちで、先ほど見解を申し上げさせていただいたわけでございます。
  51. 児玉健次

    ○児玉委員 一言だけ、首都機能の移転につきましては、それをやったからといって一極集中がとどまる保証はありませんし、何しろ十数兆を負担するのは国民でございますし、何より東京都民の意思を尊重しなければいけないという考えていることを申し上げて、終わりたいと思います。
  52. 粕谷茂

    粕谷委員長 児玉健次君の質疑は終わりました。  次に、高木義明君。
  53. 高木義明

    高木委員 民社党の高木でございます。  公述人の先生方にはお忙しいところ貴重な御意見をいただきまして、大変ありがとうございました。  私は、特に暮らしの面につきまして我が党がかねてから生活先進国づくりという構想を実現するいろいろな取り組みをいたしておりますので、今年度予算に向けましてもそのようなことが実現できるようにと我々は鋭意取り組んでおるわけでございます。そういう観点から申し上げますけれども、まず島田先生にお尋ねをいたします。  先生は、資料を提示されまして、「逞しく豊かな日本」、こういうテーマでお話をいただきました。先生の言われるいわゆる人材の育成、自己啓発の支援のためには税制上の優遇措置が大切だということで、ユニークな提案もなされております。大変私たちも結構なことだろうと考えております。  それと同時に、我が国の広い意味での社会構造にも目を向けるべきであるとも考えております。例えば、一般社会におきましてはこれらのことが積極的に受け入れられる高等教育機関の改革も必要ではないか。と同時に、それとともにいわゆるその受け入れである企業社会側の問題、すなわち終身雇用制だとか、年功序列型賃金体系、こういった我が国の雇用制度のあり方についても同時に改革をしなければならぬのではないかなと、このように思いますけれども、いかがでございましょう。
  54. 島田晴雄

    島田公述人 お答えをいたします。  高木先生のおっしゃる社会人の受け入れのための教育機関の整備、全く同感でございます。ぜひそういった方向で新しい教育機関の整備を進めるべきではないかというふうに思います。  それから、終身雇用制、年功序列賃金でございますが、日本の企業の伝統的な雇用慣行というのは、私、二面あるというふうに思っております。一面は、雇用を保障し、そしてチームで一緒に学んでいくということは、これは世界に冠たる長所であろうというふうに私は思います。しかし同時に、そういう企業が面倒見がよ過ぎるために企業の中へ埋没してしまうといいますか、そういう面も否定できないわけでありまして、能力があり、意欲のある人が企業の外へ出ようと思ったときに、例えば退職金がもらえなくなるのではないかとか、あるいは社宅の問題があったりして、企業の制度もそうですが、税制もそういうことになっておってなかなかよう自分の能力を発揮し切れない、こういう面があるのはぜひ改善していくべきだというふうに思います。  私は、個人というのはいろいろな側面を持っていると思うのですね。個人であり、家庭人であり、会社人であり、社会人である。私は、日本ではこの会社人が異様に伸びておりまして、社会人の自覚が企業人の中に少ないなという感じがいたします。日本には九千万人の選挙民がおりますけれども、自営業をなさっている方、その家族の二千万人ぐらいの方は、こう言ってはなんですが、政治が直接見えておられるなというふうに思いますが、七千万人のサラリーマン並びにその家族の方々は政治が見えてない。だれかがやっているのではないかということでございますね。これは企業の面倒見がよ過ぎるということと関係がある。ですから、選挙の当日になって投票所へ行くと、先生はだれだったかなと。こういうことではいけないのですね。したがって、労働時間を短縮して、そういうことに人々が関心をもっと持てるような、そういう社会構造の改革が私は必要ではないか、このように思います。
  55. 高木義明

    高木委員 昨日も、私たちの耳には衝撃的といいましょうか、いわゆる円高のニュースが流れてまいりまして、一ドル百十六円八十五銭、二週間で八円も円高になるということでございます。こういった急激な円高にまた見舞われたわけでありまして、我が国の経済は豊かだと言われますけれども、その豊かさが国民に余り還元されていない、こういう実情もございます。これに加えての今回の円高でございます。そしてまた、輸出産業等々に関連をした仕事なりあるいはそれに携わる多くの方々がこれでまた大変苦しいことを余儀なくされる、こういう実情でございますが、昨今のこの円高が国民生活に与える影響についてどのようにお考えであり、またこれを解決していくためにはどういうふうな施策を講じるべきだとお考えであるかお聞かせいただきたいと思います。  そのお尋ねは、まず島田先生にお尋ねしますが、きょうはPKOの話が大変多かったわけでありますが、経済界のリーダー的な立場にあられます諸井先生にも同じ趣旨でお述べいただければ幸いでございます。
  56. 島田晴雄

    島田公述人 お答えいたします。  円高の問題は、実は日本経済、とりわけ輸出型の産業の産業力が強くなっていくということを反映しているという意味で、望ましい面もあるのですが、私は、過去何年かの動きを見ておりますと、ちょっと日本の体力以上の円高である、こういう感じがいたしております。  一九七〇年代のことを振り返ってみると思い出すわけでございますけれども、集中豪雨的輸出があるからけしからぬということでまた為替レートを調整いたしました。その後、自主規制をせよということで自主規制をした。それでは足りなくて、直接投資をしろ。したらまた怒られまして、そしてついに極端な円高にするということでプラザ合意があった。ところが、それでも国際収支が均衡しない。そこでSIIが出てきた。それでも均衡しない。そこで今度のクリントン・ショックと、こういうことでございますが、この間、一ドル二百五十円ぐらいから、ついには、振れようによっては百十円台、いやいや百円台に突入するという懸念もなきにしもあらずじゃないかと思うのですが、一体このようなことに国民がいつまで耐えられるのかということを私は大変懸念いたします。つまり、円高になるたびに国民は一生懸命働いて、そして輸出競争力をまた増すということで、乾いたタオルを絞ってもまた頑張るということをやってきたわけですが、円高になるたびにそうやって蓄積した資産がパアになっていってしまうということでございます。したがって、私は、これは重大な問題でございまして、とりわけ企業行動だと思いますが、もう日本はそろそろ本気で新しい企業行動の変革を考えませんと国民がついていけないところへ来るのではないか、このように思います。
  57. 諸井虔

    諸井公述人 きょうはそういう準備はしておりませんのですけれども、円高は輸出にも輸入にも影響するわけでございまして、現在輸出が輸入の倍ぐらいあるわけでございますから、その輸出の影響の方が日本にとっては大きい。これは、今のこういう業績が非常に低下している中で円高になっていくということは輸出産業にとっては非常に厳しい状況でありまして、とりわけ自動車とか家電とかそういう今まで日本経済をリードしてきた産業が非常に今つらいところへ来ていると思います。しかし、一方で輸入の面から来る円高のメリットというものもあるわけでございます。そのメリットというものをなるべく早く反映をしていくというようなことが一つ必要じゃないかと思います。  いずれにいたしましても、これから先の経済、底ばっておりまして、持ち上げるのがなかなか容易ではないのでございますが、政府の方では公共投資その他非常に手当てをしていただいております。これで下支えとかあるいはつなぎというふうな役割は十分果たしていただけるのだと思いますが、やはり経済そのものを持ち上げていくのは我々経済人の責任であろうかと思うのです。しかし、今リストラということを一生懸命やっておるわけですけれども、これは下手をすると合成の誤謬で縮小均衡に陥りかねない。そうでない形で、どうやってリストラをやっていくかということを我々は一生懸命令模索をしているわけでございます。  いずれにしても、高度な技術開発というようなものがやはり一つの軸になろうと思います。政府におかれても、今日本で残っている需要というのは、実は欧米並みの住宅、広くて近くて安い住宅というものではないか。これは波及効果も非常に大きいわけでございます。これを阻害しているのは土地問題であろうかと思います。土地政策というものをやはりここで抜本的にお立てをいただいて、長期的に日本の住宅が欧米並みのレベルになるような施策をしていただく。これは非常に近場の、現在にも効果がある。そういう見通しが開けできますと国民行動というのは変わってくるわけでございます。ぜひこれをひとつお願いしたいというふうに存じます。  以上です。
  58. 高木義明

    高木委員 我が国の経済は大変巨大な力を持っておるわけでありますが、しかし、一面におきましては、いわゆる勤労者、特に今国会にも労働基準法等の改正も出ておりますが、いわゆる長時間労働によってゆとりのない暮らしが強いられておる、こういうことがよく言われておりますし、まさにそのような実態であります。  加えて、やはり教育費とかあるいは住宅ローン、こういったものへの生活費、生計費、これが比較的高いのではないか。こういうことによっても何かいま一つ本当の意味の豊かさが実感できない、こういう現状にありますが、ひとつ島田先生におかれてはいわゆる労働経済立場から、また諸井先生におかれましてはいわゆる経営者の立場から、こういったことに対する政治の施策といいましょうか、その問題についてはどのようなお考えを持っておられるのかこの際お伺いをしておきたいと思います。
  59. 島田晴雄

    島田公述人 大変重要な問題提起で、所感を述べさせていただきたいと思います。  私はかつて三重苦の世界ということを申し上げたことがございます。バブルが盛んだったころに、会社が横並びで競争する、そのために労働時間が非常に延びてしまう、くたくたになる。会社はもうかっているのかというと、戦線が延び切っているものですから限界費用が高まって利益が出ない、利益も出さずに頑張って物をつくっているわけですから世界じゅうから褒められてもよさそうなんだけれども、諸外国からたたかれる。これを三重苦の世界と呼んだわけですが、言ってみればハツカネズミみたいなもので、ハツカネズミが輪の中で走る、どんどん先に行っているつもりで走っているのですけれども、くたくたになってことんと落ちてしまうと落ちたところは前と同じ。実際そういうことを我々国民は経験させられたんですね。あれだけ長時間働いても家は持てなかった、そして今度は雇用不安だということで、何も残ってない。企業も何も実は残ってないのです。  何でこんなことになったのかというと、やはり横並び競争なんですね。横並び競争というのはこれまで日本経済を発展させていく上で非常に力があったと私は思います。あの会社がやっているのならうちも同じ製品をつくろうということで世界に商品を輸出してきた。しかし、数年前からこれが自滅シナリオに落ち込んでいるということを我々は自覚しなくてはいけないのではないか。今日、不況の中で、三大産業がございますが、自動車、電機、銀行、これはみんな大問題を抱えております。これは偶然の一致ではないんですね。これらの産業は一番力の強い産業でございました。そして、一番横並び競争の激しい産業でございました。ですから、ほかの会社がDRAMをつくるならうちも絶対つくる、ほかの会社が工場建設するならうちもやる、ほかの会社が土地に融資するならうちもやる、ノンバンクをつくってまでやる、こういうことでやってきて、今とんでもないことになっているわけですね。  この歴史が我々に示しておりますように、もう企業行動は変えなくてはいけない。政府の施策という言葉がありましたが、政府がここでやれることというのは、先刻私が申し上げた豊かな社会の戦略でございます。とりわけ労働時間問題だとかですが、企業も頑張っていただきたいし、新しい発想を持っていただきたいし、労働組合も大いに頑張っていただきたいと思います。企業はとりわけ、隣の人がやるならうちもやるというのじゃなくて、隣の人がやるならうちはやらないうちは新しいものをつくる、このくらいの創造性ある経営というものを培っていただきたいなと思う次第でございます。
  60. 諸井虔

    諸井公述人 ゆとりの問題に関しましては、恐らく既にもう千九百数十時間というところまで短縮をしておると思います。これは景気が悪いので残業が減ったという要因も大きいわけです。省力化投資もかなりやっております。  ただ、一つ御理解いただきたいのは、日本の経営の場合にはレイオフというものを極力やらないように、これは最後の最後の手段として考えております。そうしますと、忙しくなったときにすぐ雇用をふやすということはなかなかできにくいわけでございます。そのために、忙しいときに多少時間がふえるということはあるのです。しかし、我々としてはなるべく早くこれを縮める。  もう一つは、通勤時間が片道三十分ずつ締まれば、大体年間で二百時間以上の拘束時間の短縮ということになります。これは現在の労働時間を約一割減らすことになるわけでございます。この面でもさっき申し上げた住宅の問題というのは非常に大事なんじゃないかと思います。  それから、教育費は、結局年がら受験、それがまた我々の方の採用のときの学歴主義というふうなものにつながっているわけで、我々の企業の方も、今までのような学歴主義で、いい学校を出たからいいんじゃないかというだけで採用してまいりますと企業自体がだんだん危うくなってくる、能力主義というふうなことにだんだん切りかえていかなくちゃいけないのだろうと思います。そういう意味で、教育のあり方というのが相当重要な、基本的な問題ではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  61. 高木義明

    高木委員 時間も参りましたので、終わります。公述人の皆さん方、大変ありがとうございました。
  62. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十七分休憩      ―――――◇―――――     午後一時三十分開議
  63. 粕谷茂

    粕谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、御出席公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成五年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  御意見を承る順序といたしましては、まず菱公述人、次に館公述人、続いて近藤公述人の順序で、一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、菱公述人にお願いいたします。
  64. 菱健藏

    ○菱公述人 全国商工団体連合会会長の菱でございます。  私は、一九九三年度予算案に反対の立場から発言をさせていただきたいと存じます。  その理由でございますけれども、基本的には、現在の中小企業の非常に逼迫した事態対応した予算案になっていないということでございます。  私が住む大田区は京浜工業地帯の中心でございまして、ここにある町工場はあらゆる種類の仕事をこなすことができる集積と、世界でも有数の技術を持っていると言われておりますし、日本経済が発展する上でも大きい役割を果たしでまいりました。しかし、ここへも不況の波は容赦なく押し寄せております。  例えば、機械加工業のAさんは、親企業の強い要請で新しい機械を入れましたけれども、六カ月過ぎて仕事が急に減り出し、大口の得意先の仕事が切れ、仕事は三分の一になって機械の月賦と工場の家賃にも追いつかないという状況でございます。  またBさんは、仕事をくれなくなった親会社に、たまりかねて、仕事が欲しいというふうに訴えますと、韓国並みに単価を半分に落とせば仕事を回してもよいというような、できもしない条件を押しつけられておりますし、しかし、仕事は回ってこないという状況でございます。  こうした例は決して特殊ではなくて、区内業者の多くが同様の状況となっております。もちろん大田区だけではございません。全国各地で同じような状況が生まれております。  中小業者の廃業、倒産が相次ぎ、昨年一年間の倒産件数も一万四千六十九件と、昨年比でいいますと三一・二%増という状況にあることは先生方も御存じのとおりでございます。  私たちが一月二十四日に開いた不況の犠牲転嫁反対、中小業者危機突破、営業と生活を守る緊急決起大会には全国から四千五百人が集まり、壇上に駆け上がった各地の業者からは、朝の新聞配達や夜の運転代行をやって何とか生きているんだ、また、注文があればどんな小さな仕事でもすぐやらねばと電話の前でじっと待っている、そういう訴えが相次ぎました。  日本経済の成長を支え、地域住民の暮らしに貢献し、就業者の八割、企業数で九九%を占める中小企業がこのような状況にあるときこそ、中小企業予算を抜本的に強化し、中小業者に対する手厚い対策を立ててくださることを切にお願いを申し上げたいと存じます。  さて、具体的な問題でありますけれども、第一に、中小業者の最も切実な融資の問題の解決を図っていただきたいということでございます。  まず、借入金の返済猶予の問題でございます。  余りにも急激な仕事の激減で、資金計画の見通しも立たず、生活費にも事欠く状況で、借りている金が返せない業者がふえております。また、親会社の勧めなどで設備投資をしたものの、仕事が途絶え、リースの支払いができないといった問題も出ております。そこでぜひ、国の融資でもあるいは信用保証制度を利用した融資でも、返済の猶予ができる制度の確立を図っていただきたいと思うのであります。  また、設備投資を指示した親企業の責任を明確化し、仕事の安定的な継続ができない場合の機械代金の支払い、リースの支払いに相応の負担をすることを下請法などの中に明文化するべきだと考えている次第でございます。  次に、緊急融資制度の改善の問題であります。  昨年来、各県市などで相次いで緊急融資制度が創設されました。しかし、制度はできても、私どものような小規模業者がなかなか利用が難しいという状況がございます。  その第一は、多くの県で、申し込みを開始して数日間で融資枠がなくなってしまったことにもあらわれておりますように、中小業者の実態から見て融資規模が余りにも少ないということでございます。このことからも、政府の緊急経営支援貸付制度の予算枠が二千億円を二年度にまたがってというのでは、本当にこの中小業者を救う規模ではないと考えている次第でございます。  また、銀行が中堅企業を中心に規模の大きい融資を優先することであります。北海道の実例を見ても、一千万以上の申込件数が全体の七七%を占め、二千万以上の申し込みだけで当初目標の百億円を軽く突破するということになっております。零細な業者が申し込みに行っても、銀行によっては、この制度は百万、二百万の融資のためにあるのではないということで、なかなか申込用紙を渡してくれないということもございました。  第二に、窓口での貸し渋りがあるということでございます。  最近政府から出された通達でもこの点の改善が強調されておりましたけれども、政府自身の緊急経営支援貸付制度の融資対象としては「取引金融機関等の支援が確実に見込まれるもの」という方針を打ち出しております。これでは零細業者締め出しの制度というふうになってしまいます。もともと、信用保証制度にしましても、金融公庫などの政府系金融機関にいたしましても、銀行からの借り入れ困難な中小業者への融資を行うことを大目標としているところであり、この趣旨が生かされる制度の確立を強くお願いしたいと存じます。  こうした点を踏まえ、全体として小規模企業を重視することを明確にしていただき、銀行が制度の趣旨を生かすよう徹底していただきまして、さらに融資規模の拡大と金利の引き下げ、完分別枠融資の実現などを図っていただけるように常に強くお願いする次第でございます。  次に、下請対策の強化でございます。  政府の幾度にもわたる通達にもかかわらず、下請業者の苦境は打開されておりません。そればかりか、ことしに入ってからトヨタ自動車の豊田英二名誉会長さんが、下請部品メーカーを「まだまだ締めないといかん。ただ、締め過ぎて死んでしまったら元も子もない。そこは上手にやる」と話したことが新聞で報道されておりましたけれども、これが二次、三次の下請になりますと、もっとひどくなってくるわけであります。  例えば、私たちが労働組合と一緒になって不況一一〇番運動というのをやったところ、大阪では三日間、電話がパンクするほどの相談が寄せられましたが、その内容は、突然仕事を打ち切られた、商社からブラウスの裏に糸くずがついていただけで返品され、代金は不払いになど、深刻なものばかりでございました。  このような企業姿勢を放置していて、幾ら政府が通達を出しても効き目があるわけがありません。しかし、大企業経営者がこのようなことを言っても、政府がこれに対して物を申したということを私たちは聞いたことがございません。これでは中小業者は恐ろしくて何も言えないという状態でございます。  実際、円高不況のときに、大企業の不当な下請いじめを告発して、国会でも取り上げていただいた業者に対して、一年ほどして発注がぱったり来なくなった例も、私の大田区では起こっております。このような報復措置をとられても、業者は泣き寝入りするほかないということでしょうか。  私は、実効ある下請対策は世論の盛り上がりが第一だと思いますけれども、そのためには、政府が下請諸法を守り、その趣旨を徹底する立場に立って機敏に動いていただきたいし、そのための体制を拡充していただきたいと思うわけです。  また、日本労働組合総連合会の調査で、休日前や終業後の発注規制について「知らない」と答えた下請業者が七二%にもなるというふうに報道されておりますけれども、下請関連諸法について下請業者にも知らせ、権利意識を高めるような手だてをとっていただきたいというふうに思うわけです。  以上のような問題とあわせまして、企業の海外進出にも歯どめをかけていただきたい。国会答弁の中で、通産大臣が「海外進出が産業の空洞化を引き起こしているとは考えていない」と言われましたけれども、実際には、仕事はどんどん海外に行ってしまって、私たちのところへは来なくなっているわけです。今までどんな不況のときにも経済を引っ張ってきた電機産業や、あるいは自動車の仕事がなくなっていますけれども、その多くが海外生産への移行との関連でございます。  ですから、景気が回復したとしても仕事が返ってくるかどうかということもわからないわけでございます。単価も、ひどいところは十年も据え置きで、今回さらに引き下げられておりますけれども、これも、文句があるのなら海外へ持っていくぞということで、泣く泣くのまされているというものがございます。この点も検討していただいて、海外への進出は慎重に扱っていただきたいと思います。  最初にも述べたように、世界の最先端を行く日本の中小企業の技術と設備が危機に直面しているということは、日本経済や社会にとって大変な損失でございます。日本産業の活力を呼び戻すためにも、ぜひ下請対策の強化をお願いしたいと思います。  同時に、公共工事を大型プロジェクト中心から生活関連重視に転換し、官公需を地元中小業者を優先して発注するとともに、下請振興協会を強化するなど、中小業者の仕事確保のために施策の強化を図っていただきたいと思います。  最後に、消費購買力の大幅な拡大を図るためには、所得税減税と消費税の廃止、少なくとも飲食料品への非課税を実施していただきたいと思います。内需の拡大国民生活の向上と結びついてこそ効果があらわれると言われておりますけれども、消費税の導入以来、国民には重税感が大きく広がっております。全国労働組合総連合の調査では、労働者が一番怒っていることは、佐川・金権事件に次いで重税、消費税でございます。今、所得税を減税し、あわせて、政府も自民党も公約した消費税の食料品非課税をぜひ実現していただきたいと思います。  以上、中小企業・業者の社会的役割を御理解いただき、国民、中小業者のための景気対策、国民の暮らしと福祉を重視した予算をつくっていただくように強くお願いしたいと思います。  国民のうちの圧倒的多数者である勤労国民を大切にし、経済界の中での圧倒的多数である中小業者を大切にする政治こそ、民主政治の本来の姿ではないかという気持ちを込めて、私の意見といたします。ありがとうございました。(拍手)
  65. 粕谷茂

    粕谷委員長 ありがとうございました。  次に、館公述人にお願いいたします。
  66. 館龍一郎

    ○館公述人 ただいま御紹介いただきました館でございます。  平成五年度予算案について、私見を述べて審議の参考に資する機会を与えられましたことを大変光栄に存ずる次第でございます。  さて、平成五年度予算案の性格は、私が申し上げるまでもないことでございますが、不況の影響を受けて税収の伸びが低下し、前年度当初予算の税収を下回るという状況もとで、赤字公債の発行を回避する一方、一般歳出につきましては、経常的歳出を極力抑えて、投資的歳出を増大するという構成になっております。すなわち、先進諸国に比べて立ちおくれております社会資本の充実に努力すると同時に、景気にも配慮する予算という性格であると申してよろしいと思います。  平成四年度の当初予算と比べてみますと、五年度の当初予算の公共事業の伸び率は六%で、一般歳出の伸びが全体で三・一%と、特に経常分の二・四%という伸び率と比べますと、公共投資に相当の傾斜をつけた予算案であると言えると思います。ただ、平成四年度の補正後に比べますと、公共投資の増加額はむしろ減少しているわけでございます。そういう点から申しますと、必ずしも景気刺激的ではない予算案というように見えるわけでございます。  しかし、補正予算の実施が大幅におくれておりまして、その大部分が今年度にずれ込むということ、さらには財政投融資、それから地方単独事業等の大幅な伸び率を勘案すれば、与えられた状況もとでは相当の努力が払われた予算案である、こういうように言ってよろしいかと思います。  この点で一点申し上げておきたいと思いますのは、財政政策は、通常の場合でも効果が発動するまでに相当の期間がかかるわけでございますから、現在のような景気状況のときには、やはり予算案の審議がスムーズに行われるということが重要であるというように考えておりますので、そのことを申し上げておきたいというように思います。  さて、公共事業につきましては、一昨年も公述の際に申し上げたことでありますが、我が国のストックとしての社会資本は、これは先進工業諸国に比べて大変見劣りがするということは否定できないわけでございますが、フローベースで見た場合には、日本の公的資本形成、つまり公共投資の対GNP比で見ますと、ほかの国に比べて相当高い水準にあるわけでありまして、社会資本建設のためにこれ以上に公共投資を増大していくということになりますと、公共投資を行うためのコストが非常に高過ぎてきてしまうということになります。つまり、その場合にはボトルネックが発生いたしまして、結局むだが生ずるおそれが多いというように考えられます。そこで、それらの点を考慮しますと、公共投資についてもほぼ妥当なところというように考える次第であります。  さて、今まで申しましたようなことを申しますと、それに対しては、景気の現状を考えた場合に、公共投資のかわりに減税を行って景気の回復を促進すべきだという、そういう主張がなされると思いますし、現にそういう強い主張が存在するわけでございます。私自身、現在の税制に全く問題がないというように考えているわけではございません。しかし、税制については長期的な観点から慎重に検討すべきでありまして、当面の景気対策として安易に減税等を行うということは望ましくないというように考えております。  アメリカでも、御案内のように、ケネディ、ジョンソン、それからカーター大統領の時代には、財政金融政策によって景気の安定を図るというファインチューニング、微調整の政策がとられたわけでありますが、そのような政策によって必ずしも景気の安定が達成されたわけではなくて、その後の世界的インフレーションはそういう微調整政策の結果であるという非常に厳しい批判も一方ではなされているということは皆さん御承知のことと存じます。  今申しましたような一般論は別といたしましても、現在の日本で所得税の減税であるとか投資減税がどのような効果を持つかということを考えてみますと、それについては大変懐疑的であるというのが私の意見でございます。  と申しますのは、消費不振というように呼ばれているものも、日常生活に不可欠な必需品に対する支出ではなくて、絵画であるとか宝飾品であるとかといったような高級品や自動車、それから電気製品等に対する支出、それから衣服でありましてもブランド品といった高価格商品に対する支出、それと非常に重要なものとして社用消費がございますが、そういうものが振るわないわけでありまして、所得税が多少減税されたからといって、これらの消費支出が急速に回復するというようには考えられないからであります。特に、所得税の減税によって社用消費のようなものが増大するということは到底考えられないというように申してよろしいと思います。  他方、所得税の減税についてはその財源が必要なわけでありまして、消費税の増税などということは到底問題にならないというように考えますと、結局赤字公債に依存して減税を行わなければならないということになろうかと思います。  ところで、赤字公債の発行は基本的には納税の延期以外の何物でもないわけであります。したがって、負担を後の世代に繰り延べるといいますか後の世代に転嫁するという性質のものであります。現在公債を買う人は、自分の意思で公債を買うわけでありますから、別に負担を負うわけではありません。しかし、元利金を支払わなければならない段階では、税金によってこれを償還しなければならないということになりますから、したがって、そこでは必ず負担が生ずるわけであります。  ケインジアンと呼ばれる人々は、公債の発行は別に後の世代に負担を残すものではないという主張をされる場合があります。しかしこれは、個人の自由意思での納付、つまり公債を買うということと、税金でお金を払うということ、これは義務として払わなければならないという、そういう二つのものを同一に考えるという誤りを犯しているものというように私は考えます。そういう意味で、公債の発行は必ず後の世代に負担を転嫁するという性格を持っておるというように申してよろしいと考えるわけであります。  このように、公債の発行は必ず後の世代に負担を転嫁するものだということでありますと、赤字公債による減税については、その赤字公債発行に伴うメリットが十分明らかである場合に限られるべきものであるというように考えるわけであります。  また、仮に一兆円の所得税減税を行った場合、それによって生ずる所得から得られる税収増を考えた場合に、三年間で合計三千二百三十億、つまり一兆円の半ばにも達しない金額であるという試算が、これは経済企画庁の世界経済モデルによった試算でありますが、そういう試算も示されているわけであります。  将来の増税による公債の償還がいかに困難であるかは、日本が昭和五十五年以来、特例公債からの脱却を財政再建の目標として努力してまいりましたにもかかわらず、目標を達成し得たのはようやく平成二年になってからでありまして、その間、十五年の長きにわたって赤字公債依存を余儀なくされたということからも明らかであると存じます。  そして、この赤字公債脱却にしても、昭和六十二年以降の目覚ましい好況、ブームがあって、その助けによって達成されたという面が大きいわけであります。しかも、その財政再建について言えば、赤字公債依存からの脱却を財政の目標とするということによって、財政の運営の自由度が大幅に失われるという大変大きな犠牲を払ってようやくその目標が達成されたというのが実情ではないかというように思います。  他方、財政再建に失敗した先進諸国を見ますと、国内貯蓄率の大きさいかんによってその影響のあらわれ方には多少の違いがございますが、アメリカの例に見られますように、国際収支において経常収支の赤字に悩まされているというのが大部分の姿であります。つまり、そういう大きな犠牲を払わなければならないということになると思います。  私自身は、真に必要やむを得ざる場合、例えば大量の失業が発生するというような場合にまでその特例公債依存は不可であるというようには考えておりませんが、しかし、特例公債を発行するというのはごくごく限られた場合であるべきである。そして、現在の日本状況考えた場合には、そういう赤字公債に依存するということは望ましくない、むしろ積極的に反対であるということを申し上げておきたいと思います。  さて、現在の不況でございますが、現在の不況につきましてはいろいろの論者によっていろいろの意見が述べられております。  第一は、今回の不況も従来の不況と本質的には変わらない設備循環の一局面なんだ、したがって、在庫調整が終わり、設備の調整が進めば経済は順調に回復する、ただ、今回は好況の期間が従来に比べて長かったために景気の回復が従来より多少おくれるだろうという、こういう意見がございます。つまり、自律的回復論といったような考え方につながっていく考え方一つございます。  それから第二に、今回の不況は、従来の不況と違って、一九八〇年代中ごろから始まった金融自由化によって生じたバブルとその崩壊の過程と、そのバブルの崩壊が実体経済に与える影響とが複合した複合不況であるという主張がございます。  この複合不況論は、金融が実体経済を離れて自動的に増殖作用を行うという、こういう考え方に立っておりまして、金融が原因で不況が起こっている、そういう主張であります。金融と実体経済とがそれこそ普通の言葉の意味で複合して不況が起こっているという考え方ではなくて、むしろ金融の方が原因になって不況が起こっているというのが一番最初に複合不況という言葉を使われた著者の考え方であるというように考えております。そういう見方が第二の見方としてございます。  それから三番目は、今回の不況は、通常の循環的要因に加えて構造的な要因が加わった、さらにそれにバブル崩壊という要因が加わったものという、そういう考え方、大きく分けますとそういった三つ考え方があるのではないかというように考える次第であります。  私は、今回の不況は、単なる循環的不況ではなくて構造的不況が重なったものであるというように考えております。つまり、従来日本経済の発展を先導してきた自動車であるとか電子機器、それから流通等に対する需要が低迷するに至りまして、その分野での構造対策が迫られておる。しかも、そういう自動車、電子機器、流通にかわって、リーディングインダストリーとして景気回復を先導する産業が存在しないというところに、在庫調整や設備調整が必ずしも円滑に進まない原因があるというように考えているわけであります。  そして、そういう状態のところに、一九八六年以来の長期にわたる金融の超緩和によってもたらされたバブルの発生とその崩壊から生じた金融面からくるドラグといいますか引っ張りおろす力とが重なって、景気の回復を一層困難にしておるという状況ではないかというように考えておる次第であります。  この最後の点につきまして多少敷衍して申させていただきますと、企業が投資を行う場合には、企業はその投資が成功するか失敗するか確実には知り得ないわけでありますから、したがって、そういう意味で企業はリスクを負うわけであります。そういうリスクをケインズは借り手のリスクというように呼んでおります。  ところで、この企業がその投資を行うために必要な資金を金融機関から借り入れるとしますと、貸し手である金融機関は、企業が確実に債務を返済するかどうかという点でリスクを負うことになります。これを貸し手のリスクというように呼んでおります。  景気が上昇する局面では、貸し手のリスクも借り手のリスクも小さくなってまいりますので、したがって、借り手のリスクと貸し手のリスクはほぼ一致するという状態になるわけであります。  ところが、景気が悪化いたしますと債務不履行の危険が増大してまいりまして、貸し手、資金を貸している人のリスクというのが増大してくるわけであります。しかも、金融機関にとっての最も重要なバッファーは何であるか、緩衝資産は何であるかというように考えますと、それは資本金とそれから担保、この二つであるということになります。  ところで、不況の時期にはその一番重要なバッファーである資本金が含みの減少という形で減少するし、担保の価値も減少する。そういう面から、金融機関の貸出態度が当然慎重になってくるわけであります。  金融機関の貸出態度が慎重になるということは、それ自身大変結構なことであるというように思いますが、しかし、その貸出態度が慎重になって金融機関がプルデンシャルポリシーをみんな採用するということになりますと、先ほどお話がありましたように、そのしわ寄せが中小企業に集中するというような、そういう問題もありますが、もっと大きいのは、普通、合成の誤謬というように呼んでいる現象でありまして、個々の金融機関としては慎重な貸国政策をとるのは望ましいことでありますが、社会全体として見ると、みんなが引き締め政策をとるということになりますと、それは一層景気を悪くしていってしまうという問題を含んでいる。  したがって、現在のような状況では、今申しましたような全体としての金融がタイトになり過ぎるということを警戒していくということが重要であります。つまり、具体的な形態として考えますと、金融機関の不良債権の処理等につきまして政策当局は十分機動的にこれに対応していくということが重要になってくるというように考えます。  最近の日本銀行の公定歩合の引き下げも、景気刺激という面ももちろんあるわけでありますが、景気刺激よりもむしろこういった金融機関の極端な引き締めを回避するための一つの方策であったのではないかというように考えております。バブルの発生と崩壊とではその現象が必ずしも対称的には生じてこないわけでありまして、影響には非常に非対称な面が強く存在するわけでありますから、したがって、それに対する対応は十分慎重でなければならないというように考えるわけであります。  もちろん、いつでも救済するというような姿勢を示しますと、これは逆にモラルハザードを生じてしまうという問題もありますから、モラルハザードが生じない範囲において慎重な対応をとっていくということが必要であるというように考えるわけであります。  さて、景気の現状を以上のように考えた場合、財政に求められることは一体何だろうかというように考えてみますと、それは減税などのようなびほう的な対策、あるいは先ほどファインチューニングということを申しましたけれども、そういうファインチューニングではない、ファインチューニングをやっても効果はほとんどないというように考えるわけであります。むしろ財政に求められることは、長期的な観点に立った政策を着実に行っていくということではないかというように考えます。  具体的に申しますと、今よりは地方分権というような問題を検討し進めていくことが重要ではないかというように考えますし、当面の対策についてもし何かを言うとすれば、不必要な規制というものをできるだけ緩和して、民間の活力を発揮させるようにしていくということであり、さらに最後に国際協調にしても、日本のできることとできないこととを明確にして、そういうことを求められる場合には、そのときどきに、すぐその場でできることとできないことを明確に示していくということが重要ではないかというように考えるわけでありまして、外国から求められたことに対して受け身に対応することによって今回のバブルが発生したということを考えてみますと、その失敗を繰り返さないためにも、国際協調についても限度、限界というものをわきまえた対応を行っていくということが財政政策の上からも重要ではないかというように考える次第でございます。  大変簡略でございますが、以上をもちまして、私の公述を終わらせていただきます。(拍手)
  67. 粕谷茂

    粕谷委員長 ありがとうございました。  次に、近藤公述人にお願い申し上げます。
  68. 近藤英一郎

    ○近藤公述人 ただいま御紹介いただきました近藤英一郎でございます。  今、全国商工会連合会の会長を務めさせていただいております。  きょうはまたこんな重要な席で意見を申し述べる機会をいただきまして、心から厚くお礼を申し上げます。  商工会は、商工会の組織等に関する法律に基づいて、全国の二千八百三十二の市町村に設立されておる地域の総合経済団体でございまして、地区内の約六五%の商工業者を組織いたしております。会員数は現在百十四万、これに青年部、婦人部を加えますと百四十五万という組織になります。都道府県単位には連合会が設立されておりまして、その傘下の商工会を統括をしております。全国商工会連合会は、この四十七の都道府県商工会連合会の上部団体でございます。  全国の商工会には、五千百名の経営指導員を初 め一万五千名の職員が設置されておりまして、それぞれの地域において経営指導員等は経営改善普及事業に従事をしております。経営改善普及事業というのは、御承知のように小規模事業者の税務関係、金融、経営などに関する相談、指導を内容とするものであります。近年、この経営改善普及事業に加えて、地域振興事業にも積極的に取り組むことが必要になり、商工会は各地で村おこし、街づくりなどの事業に積極的に現在取り組んでおるところであります。  また、商工会は主として町村に設立されていることから、二千八百三十二の商工会地区の実に六三%の地区が人口の減少地区になっております。また、過疎法によって過疎地に指定されておる地区のほとんどが商工会地区になるわけでございます。  こういう地区の商工業者を活性化すること、地方の市町村の商工業者の大多数は中小企業でありますから、地方の中小企業を活性化することは、良質な雇用機会の創出や地方への人や物や情報の還流などの効果を生みまして、したがって地域振興を促す基本であると私は考えるものでございます。  こういう観点から、平成五年度予算案につきまして意見を申し述べさせていただきます。  七十二兆円を超える一般会計予算には、八兆六千億円の公共事業関係費、千九百五十一億円の中小企業対策費など、景気対策、中小企業を取り巻く厳しい経営環境への配慮等、大変重要な施策が盛り込まれております。とりわけ五百二十五億円に及ぶ小規模事業対策費、さらには中小企業事業団の行う高度化無利子融資の商工会等への適用は、小規模事業対策の抜本的な強化に通ずる画期的な施策でありまして、私はこれを高く評価するものでございます。  御高承のとおり、昨今私が心を悩ましている問題は景気対策であります。景気対策は、単に中小企業のために必要なだけでなく、地方を活性化させるためには大変重要なことでございます。  私ども全国商工会連合会では、商工会地区の景況感を測定するために二種類の調査を実施をいたしております。その一つは、中小企業の景況調査であります。これは昭和五十四年から四半期に一回調査をしているものでございまして、製造業、建設業、小売業、サービス業の四業種、全部で八千企業を対象に売り上げ、採算、資金繰りの状況などについて調査をしております。  最新の調査である平成四年の十月から十二月期の調査結果を若干御紹介を申し上げますと、売り上げ、採算、資金繰りの前年同期比景気動向指数が調査の開始以来最も悪い値を示し、売り上げについてはマイナス二一・一、採算はマイナス二八、資金繰りはマイナス一八・一と、いずれもマイナス二けたであります。  景気動向指数というのは、前年同期に比較して増加あるいは好転という回答割合から、減少あるいは悪化というような回答割合を減じて得た値を指数としているものでございます。したがって、引き算をして得られた値がマイナスを示せば景気が悪いということになるわけであります。  資金繰りについては、平成二年十―十二月期以来マイナスとなり、続いて採算が平成三年七―九月期以来マイナス、売り上げについても昨年の一―三月期以来マイナスで、平成四年はいずれの指数もマイナスとなりました。とりわけ平成四年の十―十二月期においては、円高不況と言われた当時の最低値よりさらに悪くなっております。  二つ目が小規模企業の景気動向調査でございます。  全国の商工会に配置されている経営指導員の中から三百一名をモニターに委嘱いたしまして、売り上げ、採算、資金繰りについて調査を実施しております。  これは、商工会地区の景気動向を毎月把握するため、昭和五十七年から毎月実施しておるものでございまして、この調査による景気動向指数も過去の最低値を更新する状況にあります。本年一月末時点の主な値を御紹介しますと、売り上げがマイナス四五・七、採算がマイナス三八・九、資金繰りがマイナス三七・二と大きく落ち込んでおり、先ほど申し述べました中小企業景況調査と同様の傾向を示しております。  政府におかれましては、このような状況の中で平成四年の八月には総額十兆七千億円に上る総合経済対策を御決定いただき、これに伴う補正予算は十二月に国会を通していただきました。私どもは、この措置に感謝するとともに大いに期待し、景気回復を願っているわけでございますが、先ほど申し上げた調査での今後の景気見通しに関する質問への回答を見ても、補正予算の成立がおくれたため、期待したほどの効果がいまだにあらわれていないのではないかと憂慮する点もございます。  また、二月四日には、御承知のように公定歩合の第六次引き下げが思い切った水準で行われましたが、これにより明るさが出てくるのではないかと大きな期待感を持っております。この公定歩合の引き下げを契機に、民間金融機関に対して金利の引き下げを含めた中小企業金融の円滑化に配慮するよう、大蔵省が銀行局長通達をもって御指導いただいたそうであります。私は、この措置は、まことにタイミングを得た適切な措置であったと心から感謝をしております。公定歩合が下がっても中小企業向けの貸出金利は下がりにくい実情にあること、また、いわゆる民間金融機関による貸し渋り現象が巷間ささやかれていることを思うと、この御指導が速やかに浸透することを切に願うものでございます。  特に金利の問題につきましては、中小企業は、特に小規模企業等においては金融から融資を受ける立場にあり、ましてバブルの崩壊後における資産の減少、株価の暴落、いろいろな関係が重なり合ってなかなか思うように借りられないという状況でありますだけに、数次にわたって公定歩合を下げていただきましたけれども、なかなかそれに相応して金利の引き下げが行われていないという苦情も相当あるわけでありますが、今回も大蔵省が銀行局長通達をもって中小企業の金融に対する特別な配慮、金利を下げるべきだ、こういう点について通達を出していただきました。まことに時宜に適した非常にいい措置であったろうと思い、全国の中小企業者からも非常に好意をもって、好感をされておることも承っております。  商工会地区の景気動向は、概略申し上げましたような状況にありますが、私どもにとりましてもう一つの大きな課題は、労働時間の短縮、いわゆる時短の問題でございます。不況に加えて私ども中小企業には、時短という越えがたいハードルが前途に横たわっております。私は、時短の必要性をもとより否定するものではありません。国際的にも国内的にも時短は避けて通れない重要なものであることは十分認識しているつもりであります。  しかしながら、繰り返し申し上げますと、売り上げも採算も資金繰りも深刻な状況にあるときに時短は新たなコストアップの要因となり、中小企業の経営を厳しいものにすることになるのではないかと心配するものであります。今国会に労働基準法の改正案が提出されていると伺っておりますが、このような点を配慮いただき、特に法定労働時間及び割り増し賃金率に関しまして、中小企業の実態、中小企業への影響を勘案していただけるよう、よろしくお願いをいたします。  先ほど来申し上げておりますように、不況が深刻化している段階において、平成五年度予算は、景気対策、厳しい経営環境にある中小企業への配慮、小規模事業対策の抜本的な強化等非常に重要な内容を持ったものであり、かつ景気への心理的効果を勘案すれば、年度内にぜひとも成立をさせていただきたいのであります。公共事業の前倒し実施、官公需の早期発注についても、御高配をいただくようお願い申し上げます。  さらに、今国会に商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律案が政府より提出され、衆議院商工委員会に付託されていると伺っておりますが、本法律案につきましては、私ども商工会等の組織及び経験知識を活用して、地域産業振興、小規模事業者支援を強力に推進しようとするものであり、よろしく御審議のほどをお願いをいたします。  特に商工会法は、御承知のように三十五年に成立をいたしまして既に三十二年有余を経過しております。したがって、現在までは経営指導に重点を置いた指導をやってまいりましたが、今の状況では、どうしても商工会地域を活性化するためには商工会法を改正するなり新法をつくるなりして、そして商工会、会議所が事業ができるようにしていただき、かつまた高度化資金の利用もできるようにしていただきたい。  なお足らざる点については、その地域の商工会が必要な金に対しましては、認定をされた事業に限ってでございますけれども、連合会あるいは商工会議所、日本商工会議所が信用保証をやれるようにしていただく。こういうことによって、事業量、事業費が確保できるわけであります。極めて大事な法案でもありますので、ぜひひとつよろしく御審議のほどをお願いをいたします。  そして最後は、今後とも必要に応じて機動的な景気対策をタイムリーに打っていただきたい、こういうことでございます。  今回の不況では、機動的でタイムリーな景気対策の重要性を改めて痛感しておるところでありますので、先生方の格別なひとつ御厚意ある、また御熱意ある御審議をいただくと同時に、早くひとつ予算を議決していただきたい、こういう点を心から私はお願いを申し上げて、私の意見の開陳にかえるわけであります。  大変ありがとうございました。(拍手)
  69. 粕谷茂

    粕谷委員長 ありがとうございました。     ―――――――――――――
  70. 粕谷茂

    粕谷委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。真鍋光広君。
  71. 真鍋光広

    真鍋委員 今となってはバブルだということになってしまったわけでございますけれども、一九八〇年代の後半に日本で現出しました経済のブーム状態。これは私も、浪人中ではございましたけれども、日本がいよいよ二十一世紀、世界のトップリーダーとなる、その強い経済力をもとにトップリーダーになるんだ。そういう時代がやはり日本への事務所需要にあらわれ、そしてまたそれが地価の高騰にかかわってくる。金融、証券を初め世界のあらゆる企業が東京に支店を持ちたい、日本に支店を持ちたい。こういう形で、ああこれがトップリーダーというもののありざまなんだな。こんなことで、私は時代感覚を持ってこれを見ておりました。  日本国民も、最初の二、三年は何となくまゆにつばをしておったのでしょうけれども、これはやはり本物だ、日本はそういう時代に来たんだ、こんないわば幻想の中に全部が入ってしまった。今やバブルとなっておって、また一億総反省ということでございますが、しかしその中で結局、バブルに踊った方はまあそれでいいでしょう、しかしバブルに巻き込まれたまじめな、経済界でございますね、企業経営者である、あるいはその従業員である、そしてまた国民全般が大変な苦境に立っておるわけでございまして、ただいま公述人のお三方からの陳述を伺っておりまして、非常に感銘深く拝聴をいたしたわけでございます。  いずれにしましても、それぞれに平成五年度予算の早期成立というものをお考えのようでございまして、それがまた国民の大半の御意見であろうかと思うわけでございます。  初めに館公述人にお伺い申し上げたいのでございますけれども、先生は、とにかく現下の不況から脱出するためには、当面とるべき手段として、とにかく金融面ではタイトになり過ぎないように、そしてまた先ほどの公定歩合の引き下げにつきましても、こういった観点からそれなりの評価をしておられるということでございました。  そして、財政に求められるものはということで、赤字公債による減税というものを明確に否定され、またファインチューニングみたいなものも効果はないよと仰せられ、そしてとにかく財政ということであれば長期的観点からの施策をとってほしい、こういうふうにお述べになられたわけでございます。  経済界、国民挙げてこの長い不況からの早い脱出を願っておる状況でございますけれども、平成五年度予算中心に、これでよろしいのかどうか。どういうふうに考えておられるのか。不況脱出という観点から現状をどうごらんになり、そしてこの平成五年度予算というものはどういう役割を果たすのか。そういう評価について初めにお伺いしたいと思います。
  72. 館龍一郎

    ○館公述人 それではお答えさせていただきます。  現在の不況というのをどういうように考えるかによってその対策というのはおのずから違いが出てくるというように考えますが、先ほど申し上げましたように、私自身は、今度の不況というのは単なる循環的な不況ではなくて、構造的な要因というのを多分に含んだ不況であるというように考えております。  それに金融面から来る、バブルの崩壊に伴う金融面の破綻という問題が加わった状態というように理解いたしますので、従来と同じような短期の景気対策をとるということによってすぐに景気が回復するという性格のものかということを考えてみますと、そうではないのではないか。  やはり現在は、かつてですと多少景気対策をとりますとそれまでの間、消費が下支えをしていって、そしてその後にリーディングインダストリーである自動車とか電機とかそういうものが中心になって景気が回復していったわけでございますが、今回はそういうかつてのリーディングインダストリーそのものが実は構造調整を迫られているという、そういう状態になっておりますから、したがって、ファインチューニング的な、減税によって景気が回復するとか金利を下げれば景気が回復するというようなものではないので、どうしてもしばらく調整に時間がかかるという性格の不況ではないか。  ただ、その不況をさらに悪化させてしまうような危険が金融の側面に見られないわけではない。したがって、そういう悪化させるようなものは生じないように十分に予防的な対策を講じて、そして多少時間をかけながら調整をしていかなければならないというように考えますので、そういう時期に例えば赤字公債を出して景気を刺激するというような対策を講じますと、将来にわたってその赤字公債の負担のもとで財政を運営していかなければならないという問題が残ることを考えると、この際はこの程度の支出というのが適当であって、もちろんそういう状態であっても大変大きな問題が生ずるというようなことがあればそのときには機動的な対策をとらなければならないということは、全くないとまでは申しませんけれども、当面のところはそういう対策で多少時間をかければ日本経済はやがて潜在成長力の路線に戻ることができるのではないか、こういうように考えているわけでございます。
  73. 真鍋光広

    真鍋委員 実は、平成二年度で、まあバブルのおかげもありましたけれども、予定したとおり赤字公債からの脱却ということで財政健全化を回復したということでございましたから、私も双子の赤字というような財政赤字とかそういう話はアメリカのことだとばかり思っておりましたら、最近大蔵省の資料などを見ますと、例えば歳出総額に占める利払い費の比率というのは、ずっとここ、もう最初からといいますか昭和五十年代の後半からずっと、アメリカ、フランス、ドイツ、イギリス、いずれよりもずっと高いところを歩んでおりまして、平成五年度のケースでもこの比率というのは日本が一六・一%でアメリカは二番目に高くて一三・七%だ、こういう話でございまして、あらあらこれは何だ、アメリカのことではなくて自分のことかいな、こう思ってびっくりをいたしたわけでございます。  同時にまた、一般会計に占める一般歳出の構成比ということで、その中で国債費がどういう割合を占めるかというのを見てみましたら、昭和五十年には四・〇%であったのが二一・三%というようなことで、いわば五分の一は国債費で最初から持っていかれる、残り八割をとにかく実のあるものに使っていく、こういう話になってしまっておる。しかも残高が平成五年度末で百八十二兆円、国家予算の二・五年分だというふうな話を伺うと、これはやはりこれ以上残高がふえていっていいのだろうか、こんなことを思ったりもして心配もいたしておるわけです。  そこで、ちょっと昔のことで、三十年近く前の話ですから忘れてしまったのですが、たしかドーマーの法則とかなんとかというのがあったような気がするのですけれども、たしか、国債残高それからその経済成長率、それから時の利子率、それとのかかわりで、利子率の方が経済成長率より高くなると無限大に国債残高はふえていく、破産状態になっていく、こんな話もあったようでございます。  それとこれとは関係がどこまであるのかわかりませんけれども、百八十二兆に達するという国債残高、もちろん建設公債がそのうちの百二十兆もあるということですから心配要らぬのだという考え方もあるでしょうけれども、ドーマーさんのおっしゃるようなああいうことを思い起こしますと、本当に大丈夫かいなと、こんな気もするのですが、その点について再度館先生からお伺いしたいと思います。
  74. 館龍一郎

    ○館公述人 それではお答え申し上げますが、今御指摘のとおり、ドーマーは、利子率が成長率を下回っているような場合には赤字公債を出していっても、あるいは建設公債でも同じでございますが、一定値に収れんするということを述べているわけでございます。  ただ、収れんすることは確かでありますが、収れんするにしてもそのレベルというのは相当の高さになるわけでございまして、したがって、そのときの国債費というのは非常に大きな値になるということがまず第一にあります。それから、御指摘のように、利子率と成長率との関係からどんどんどんどん国債のウエートが上がっていってしまうという発散する形の場合と、その二つがあるということを申しているわけでございまして、私どもは、やはり国債費が現在のように非常に大きくなっていくということは、先ほども申しましたように財政の弾力性が失われて、御指摘のようにどうしても初めから一定金額が税収の中から先取りされてしまうというような姿は望ましくない。そういう点からも、これ以上国債をどんどん出し続けていくということは不適当ではないかというように考えているわけでございまして、先ほど申しましたように、絶対に公債を出してはいけないとか赤字公債を出してはいけないということを考えているわけではありませんが、そういう時期が仮にあった場合に迅速に対応できるためにも、できるだけ出さないで済まされるときには出さない方がいいし、出しても意味がないようなときには出さない方がいいというように考えておるということでございます。
  75. 真鍋光広

    真鍋委員 次に、近藤公述人にお伺い申し上げますけれども、商工会は地域の総合経済団体ということで各市町にすべて設立されておって、中小企業者の全金融、経営など各般にわたりまして相談、指導にあずかって大変な役割を果たしておるわけでございます。  しかし一方で、その商工会の参加の現状を見てみますと、総会員数というのは割とふえていないのですね。平成二年度で百十四万九千人というものが、三年、四年と微減しまして、四年度では百十二万八千人ということでございますし、またこれの外枠でございますけれども、青年部、婦人部員、こういうものを見ますと、昭和六十年度で三十二万五千人というのが平成四年では二十九万九千人、微減といえば微減でございますけれども、とにかく年々減っていっておるという現状にありまして、それだけにまた商工会の管轄されるところがいわば過疎といいますか、人口がだんだん減っていくといいますか、そういう状況に進行しておるということがうかがえる。厳しい状況にあるんだな、それだけにまたこの地域をしっかり振興しなきゃいかぬ、こんな気持ちに駆られるわけでございます。  先ほどお伺いしておると、域内の商工業者の組織率というのは六五%だという話でございますけれども、これをアップさせる何か方策がおありなのかどうか、お考えがあったらお伺いしたい。また、地域活性化対策といったものについてのお考えがあればこの際御開陳賜りたい、このように思います。
  76. 近藤英一郎

    ○近藤公述人 今先生の御指摘の、会員がふえないじゃないか、組織率が六五%、青年部、婦人部を加えてもふえていないじゃないか、こういう御質問でございます。  御承知のように、先ほども申し上げましたが、商工会の地域が大体過疎地が多いものですから、したがって郊外へ、いわゆる商工会地域から外へ出る企業が非常に多いわけであります。それと同時に、大型店の進出によりまして企業者も減ってきております。そういう関係で、何とかふやしたいと思って努力しておりますが、率直に申し上げて、商工会に入ったら何か特別な恩恵があるかどうか、こういうことについていろいろと質問をされるわけであります。  我々は、例えば金融面にしても国が非常に大きな総合経済対策を立てていただいて、そして政府系の金融機関なんかもその枠の拡大を図ってくれたり、それからそれに付随して県の制度金融なんかも実施されて、これを利用することがやはり地域の総合対策に沿うことでないだろうか。そういう点で、会費も負うことでしょうけれども、ぜひひとつ会に入ってくれ、こういうことで努力をしておりますが、なかなか思うようにいかないのが現状であります。  それから、特に青年部は年齢制限がございますから、結局四十になるとやめてしまわなくてはならない。婦人部の方は割合にふえるのですけれども、青年部はずっと減ってきております。したがって、トータルでは大きく減っているということを申し上げて過言でないと思います。  それから、御承知のように、採算とか資金繰りとか売り上げというのが減っておりますから、これを何とか早く景気回復に持っていっていただきたいと思いますのは、やはり今回の国会に提案されておる景気対策を盛り込んだこの予算を早期に議決していただいて、そしてそれが地方へ浸透するようにひとつお願いをしたい、これが我々の願望であります。  そういう点で、努力はしておりますが会員がふえない。ふえないというのはどうだと言えば、先ほど申し上げたような理由からでございます。そういう点で御理解をひとついただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  77. 真鍋光広

    真鍋委員 終わります。
  78. 粕谷茂

    粕谷委員長 以上をもちまして真鍋光広君の質疑は終わりました。  次に、堀昌雄君。
  79. 堀昌雄

    ○堀委員 公述人のお話を承っておりまして、特に館公述人のお話には私は完全に同意見でございまして、私、社会党員でございますけれども、昭和三十三年五月、一九五八年の五月に衆議院議員になりまして、六〇年の一月から大蔵委員会に所属をいたしておりまして、先般の国会まで主として大蔵委員。商工委員会に二年とか予算委員会に二年とか参っておりますが、今回また予算委員になったわけでございますが、専ら経済、財政、金融を主として勉強してまいりました。     〔委員長退席、鴻池委員長代理着席〕  そうして、党は、実は三党の皆さんとのお話し合いで三兆三千億の所得減税を行うという話が決まっておるわけでありますが、党の方針でございますから党員はそれに従うのが建前でございましょうが、私はある意味では学識経験者のような立場でもありますので、少しそういう意味で、私の約三十年にわたる財政金融の考え方から判断をいたしまして、私は館参考人のお話のように、赤字公債を発行してまで所得減税をする必要はないということを実は申しておるわけでございます。  その中には幾つか理由がございますけれども、所得減税というのは、要するに所得税を納税をしておる者だけが実は減税の対象になるのでございまして、そういたしますと、所得税を払っておりません者が約一千万人、世帯数で四百八十万世帯実はあるわけでございます。所得の低い方であります。標準世帯として三百十九万八千円以下の人たちが実は所得税を払っていないのです。この所得税を払っていない人は、所得減税が行われても何ら実は生活にプラスにはなりません。  そうしてもう一つは、どうも国が国債を発行するということは何か国が借金をすることだという認識が一般の方にあるようでございますが、国というものはただいろいろな仕事を仲介しているだけでございまして、国の赤字は国民の家計の赤字に連なるという認識が、どうもちょっと一般に、政治家の皆さんを含めて少し薄いのではないのか。  ですから、要するにここで三兆や五兆の減税をする、その五兆の赤字国債というのは、国民一人当たりに対してそれだけの負担を必ず将来返さなければならないという義務を負わせることになるのでありますから、そのことを考えますと、今の一千万の、あるいは四百八十万世帯の所得税非納税者世帯は消費税を払っているのでございます。全部消費税を払っている。そうして、片方は所得税を払っている。そうすると、所得税を払っている者だけは減税というプラスが来ますけれども、消費税を払って所得の少ない皆さんには何らのプラスがない。  憲法十四条は法のもとに平等だということを定めておりますが、考え方からすれば、所得の低い人にプラスになって、所得の高い方はプラスが少なくてもいいというのが私は少なくとも一般的常識ではないかと思うのでありますが、今の所得税減税論というのは、高い方には土盛りをして、低い方は将来の負担だけを負担させるという実は極めて不公平な発想でございますので、私は、党の中では、赤字国債を発行しないでできる範囲における減税。  例えば防衛の問題でございますけれども、イギリスは過去二十年間にわたって実は大変な軍縮をして兵員を減らしておりますけれども、日本自衛隊、特に陸上自衛隊などというのは十五万五千というのでずっときておりますが、私は、これはもっと減らしていいのではないか。少なくともイギリスは海空の兵員数とそれから陸上の兵員数、ほぼ同じなんでございますが、それでいきますと、日本では海空の兵員数は四万五千、四万五千で九万でありますから、十五万五千を九万に減らしてもいい。  そうして、要するに自衛隊というのは国を守るためでありますから、私はあの戦争のときに海軍の軍医として戦争参加をして、あの有名なガダルカナル輸送作戦というのを最初から最後まで、昭和十七年八月二十六日から十一月の終わりまで輸送作戦に従事して生き残って帰った本当に数少ない人間でございますけれども、その戦争の経験からしても、島を守るというのは制空権とそれから海上の制海権がなければ島は守れないのです。陸上を幾ら持っていたって、上がってこられてからやるのじゃどうにもならないのでして、そういう意味では、例えば陸上自衛隊を私の言っておりますように九万五千ぐらいに減らすということになると、約一兆幾らの資金が出てきますから、それをひとつ消費税の減税に回したい。特に、食料品の非課税をやるというようなことに回すとすれば、これはすべての国民が実はプラスになるわけでありまして、少なくとも、私は減税そのものに反対するわけではございませんけれども、この情勢で赤字国債を発行してまで行うというのは、私も今、館公述人のお話を聞いて、意を強くいたした次第でございます。  そこで、ひとつそれはそれとして、館公述人にちょっとお伺いしたい点がございますのは、実はことしの主要経済指標でございますけれども、平成四年度の実績見込みでGNPは対前年度比で名目三・〇、実質一・六の伸び率になっております。ところが、平成五年度は名目四・九で実質が三・三%、こういうことでございます。  今の政府予算には所得税減税も入ってないわけでございますから、この今の予算で実は名目四・九、実質三・三の成長が可能とはどうも私考えられないわけでございまして、今の政府のいろいろな予算のベースというのはこれは実は経済企画庁の経済見通しをベースに組まれておるわけでございますが、どうも矛盾が甚だ過ぎると思いますので、館公述人のお考えを承りたいと思います。
  80. 館龍一郎

    ○館公述人 それでは、お答え申し上げます。  私、経済学の分野で申しますと予測というのは最も不得意とする分野の一つでございまして、普通やらないことにしております。若いときに予測をやって見事失敗した経験もございますので、予測はなるべく避けたいというように考えておりますが、私、今お挙げになりました政府見通しの数字は大変な努力を要する数字であるというように思います。実現は非常に難しい、大変な努力を要する数字であるというように感じておるということで、お許しいただきたいと思います。
  81. 堀昌雄

    ○堀委員 実は私も、今、館公述人のお話しになりましたように、今の経済状況というのは必ずしもこれまでのような循環型不況ではございませんから、もし循環型不況で在庫調整が終わればまた景気が拡大するというのであれば、恐らくこの下半期にはかなりな成長が期待できるだろうと思うのでありますけれども、お話のございましたように、実は私も複合的な問題がある、こう思っていますし、もう一つは、私は委員会でも言ってきておるのでありますけれども、官庁エコノミストはデータを見ないと物を判断しないというどうも悪い癖がございます。  それは間違いがないようにしたいという点はいいのでございますけれども、データが出るのは一般に予想されているよりも大体一クオーター近くおくれてデータが出ますから、要するに不況になったといって私どもが言っていても、まだ大したことはない。ようやく深刻になってきて初めて、そのころにデータがそろって不況になり出したと、こうくるわけでございますから、要するにスタートの初動動作が非常におくれる。  ここが私は、日本経済、まあ力があるものですから、これまでの循環型の不況は時間のずれだけで処理ができたのでございますけれども、今日のような構造不況になってまいりますと、循環型ならほっといても要するにインベントリーファイナンスが行われれば済むのですが、この問題はやはり私は少し手をかさないと、この金融機関のいろいろな諸問題というのはなかなか難しいのではないか。  ようやく不良債権の買い取り会社とかというようなものができてくるようでございますけれども、やはり私はこの場合にもうちょっとそういうものが、まだできてないのでして、もっと早くそういうものが対応ができていれば、ここまで来なくて処理が済んだのではないかという感じもいたしまして、もう少し、アメリカの場合には非常にこういうGNPやその他のあれが早くどんどん出るのでありますが、日本でもQEというのが出ておりますけれども、多少の誤差はあっても、私は、聞き取り調査なんかも含めながら早いデータを出すことによって経済の変化に早く対応するということが今度の問題の一番大きな教訓になるのではないか、こう感じておりますが、館公述人、いかがでございましょうか。
  82. 館龍一郎

    ○館公述人 お答え申し上げますが、今先生御指摘のとおりでございまして、確かにいろいろなデータがもっと早く出てくれば判断の誤りは少なくなるということは事実だと思います。したがいまして、非常に多くの人が依存しているのは日本銀行が出しています短観の数字が一番早いということもありまして、短観の数値を使いながら見ていくわけでございますが、それにしてもある程度のおくれがあるわけでございます。したがいまして、実際界の方が肌で感じておられるところと数字との間に若干のおくれがある、それをできるだけ小さくしていくのが望ましいというようには考えております。
  83. 堀昌雄

    ○堀委員 その次に、実は減税の今後の、もし仮に行われたとしたら、効果の問題についてちょっと触れたいのでありますけれども、最近の貯蓄率の推移を見てみますと、一貫して実は貯蓄率が上がってきておりまして、六十年から見まして二二・五、六十一年二二・六、六十二年二三・六、六十三年二四・三、平成元年二四・九、二年二四・七、三年二五・五、こういうことで最近は貯蓄率が非常に上がってきておるわけでございます。私は、今もし減税を行ったとしましたときに、せっかく減税をしたのが、消費に回るということを期待して実は減税が行われるのだと思うのでありますけれども、これが消費に回らないで貯蓄に回ったのでは、これは所期の目的が達成されない、こんな感じがいたします。  私は、そこでちょっと過去のデータを一つ調べてみたわけでございますけれども、それは、二兆円減税というのが過去に行われておるわけでございます。昭和四十九年度の減税でございますけれども、このときは実はインフレの進行中でございますので、現在とは客観的な情勢がちょっと違うのでありますけれども、このときの実は二兆円という減税というのは、昭和四十九年でありますから今の三兆以上の大きな減税が行われたわけでございます。  しかし、その際におきましても、実は消費性向は余り上がっておりません。結局、不況からの脱出というのは、インフレが終わりまして実質所得、消費性向が回復して、さらに五十年以降の四次にわたる景気対策でようやく実は戻ってきた、こういうことでございまして、ですから、どうも減税をしたら消費に回って経済が浮揚するという図式は、既に一回四十九年の二兆円減税でもトレースをしてみますとそうなっていない。ましてやあのバブルの時期がございまして、みんな家計もかなり物を買い込んで、ほとんど必要なものは買っている。  今非常に新しい製品で、例えば今の天皇陛下や皇后陛下が御結婚になったときは、ちょうどカラーテレビが出てくる時代でございまして、この御成婚の状態をカラーテレビで見ようというのでわっとカラーテレビが売れた時期でございますけれども、現在は、今度は皇太子殿下の御成婚がありますけれども、さあテレビを買ってそれを見ようという必要はないというようなことから考えてみましても、どうも私は今の問題での消費が高まるとは考えられない。  二点目は、今企業がリストラクションをどんどんやっております。私はやはりバブルの時期にはかなり家計も膨らんだと思うのですね。しかしここへ来まして、家計もリストラクションが行われつつある。そうしますと、企業も家計もリストラクションを行うことが一定の成果をおさめた後に経済が回復をしてきたら、その後の経済成長というのは極めて安定的な長期の経済成長に戻る可能性がある。安易にここでせっかくのリストラクションが腰砕けになるような対応というのは、結果的には今後における長期の安定経済成長に対してはマイナスに働くのじゃないか、こんな感じもいたすのでありますが、館公述人、いかがでございましょうか。
  84. 館龍一郎

    ○館公述人 お答え申し上げます。  今御指摘、幾つかの点がございましたが、まず第一に、今のような状態一つ働く力としては資産効果の問題がございます。  バブルが起こっていく場合に、資産がどんどんふえてまいりますから、その資産がふえることが豊かになったという意識を人に与えて消費支出を増大させるという効果を持つわけですが、今回はそれがちょうど逆に負の資産効果が働くということからも、どうしても貯蓄性向は高くなるという状態でありますから、減税を行ったときの効果はそれだけによっても減殺されるということになります。  それに、今御指摘のありましたように、家計でもリストラクチャリングが行われている。大抵のものはみんなが持っておるというような状態になっているわけでありまして、これ以上のものを買うというようなことは、やはり消費者信用を利用するというような場合にはそういう負担だけを増大するということになってしまうんだ、そういう気持ちが強くなり、そういうライフスタイルを調整しつつある過程だと思いますので、私は御指摘のとおりに乗数効果は相当低いというように考えております。
  85. 堀昌雄

    ○堀委員 館公述人にもう一点だけお願いをしたいのでありますが、公述人は金融制度の御研究を大変やっていらっしゃると存じますのですが、私は大蔵委員会で昨年、金融制度改革法案の成立に実は反対をいたしておりました。  反対をいたしておりました理由というのは、審議期間が十分にないということもございましたけれども、経済の情勢がどうも、要するにそういう金融機関、証券会社等が極めて状態の悪い方向に動いている最中に新しい制度を導入して、そうして子会社をつくって競争を促進するということは、実はその前の金融制度調査会、証券審議会が問題の起きなかったときに答申されたものを、既に問題が起きかけて先がかなり厳しいという情勢にあるのにそのまま成立させることは望ましくないので、継続審議にして、内容に反対ではないのでありますが、時期的に一年ぐらいは延ばした方がいいのではないかということで、私、大蔵委員会で反対をいたしておりましたが、結果的には実行を一年延ばすということで通してほしいといういろいろな話もございましたので、一年延期をして実施をしてもらう、こういうことで処理をしたわけであります。  今、その当時に比べるとさらに金融機関の内容も厳しい内容になっておりますし、証券会社でも野村証券すら赤字決算というような事態になっておるのでありますから、私はあのときにあの法律案をそういうふうに実施は一年先に延ばすということは決して間違ってなかった、こんなふうに判断をいたしておるのでありまして、私はこれらの問題は、そういう証券、金融機関等が正常に回復してからそれをスタートさせるのが一般の産業界にも、さらには金融機関、証券会社にも、国民経済にも望ましいのではないか、こう考えておるのでございますが、その点だけをお伺いをいたしたいと思います。
  86. 館龍一郎

    ○館公述人 それでは、お答え申し上げます。  この点は私、先生と多少意見を異にする点でございまして、私は制度の改革ということを行うのに最適な時というのは一体あるのだろうかということをいつも考えるわけであります。金融界が正常に運営されているように思われるときには、これだけ正常に行われているときになぜ平地に波乱を立てるのかという形での反対が起こってくるわけでございますし、現在のように非常に難しい状況では、こういう厳しいときにはやめた方がいいのではないか、少し延ばした方がいいのではないかという御主張が出てまいりまして、そうしますと結局、制度改革というものを行う時期がなくなっていってしまうというように考えるわけであります。  したがって、長期的な観点から望ましい制度の方向に改革を行っていくのには、相当の決心を持って始めていくということが必要ではないかというように判断をいたしておりまして、そういう意味でこの時期に制度改革が始められたということはそれなりに評価していいのではないかというように考えております。  さらに、現在のバブルとバブル崩壊の過程をとって考えてみますと、バブルの発生について見た場合に、基本的にはやはり政策当局による金融機関に対する非常に手厚い保護があったために、そこに金融機関の甘えが生じたということがいろいろな問題の一つの重要な原因になっているというように私は考えておりまして、したがって、前回のようなバブルを再び繰り返さないためにも、ぜひ広い範囲での競争が行われ、開かれた市場にしておくということが望ましいし、さらに、現代のような国際化の時代海外からの批判を受けることも少なくて済むということになるのではないかというように考えまして、そこで今のような御批判があることは承知の上で、私としてはできるだけこれを促進してもらいたい、こういうように考えておった次第でございます。
  87. 堀昌雄

    ○堀委員 近藤公述人にお伺いをいたします。  実は今、日本の全国事業所数の中で、中小企業と言われておりますものは約六百四十八万事業所ございます。これは全国の事業所全体の中の九九・一%でございますが、その中で今度は小規模企業ということで、実はこれは中小企業基本法その他に書かれておるのでありますけれども、その小規模企業というのが、中小企業六百四十八万の中で四百九十万、約七五%くらい、こうございます。その下にまだ、今度は小企業者と、こういうのがございまして、こう幾つかの段階がございますが、この小企業者というものの定義は、要するに工業等でございますと、五人以下の会社及び個人、商業・サービス等は二人以下の会社、こうなっておりまして、今の中小企業での小規模企業の方は工業等で二十人以下の事業者、商業・サービスで五人以下と、こうなっているのでございますけれども、この中小企業という言葉の概念が、私は大変どうもおかしいんじゃないか。中企業というのは本当に幾らもございませんでして、小規模企業と小企業とが主体をなしておるということでございますね。  そうして、それに対する課税上の問題を見てみますと、要するに、今の税制では八百万円以下のものが二八%というようなことになっておりますが、私はこれは今の大企業から比べてみますと中企業の税率じゃないのか、もう少し小規模事業それから小企業者、こういう実態に即した税制があってしかるべきではないだろうか。どうもちょっと小さい零細業に対して、法人税の大企業法人に比べて二八%課税というのは少し高いんじゃないか、こんなふうに私は思っているのでありますけれども、公述人、いかがでございましょうか。
  88. 近藤英一郎

    ○近藤公述人 中小企業基本法で業種別に従業員の数とか何かが決まっております。したがって、中小企業で工業、鉱業関係は従業員が三百人以下、また資本金が一億として決められております。卸業は従業員が百人以下、また資本金が三千万円以下、小売・サービス業は従業員五十人以下、また資本金一千万以下、こうなっております。そこで、小規模企業は、中小企業法において業種別に工業関係等は従業員が二十人以下として決められております。したがって、商業・サービス業は従業員五人以下としてあります。  今先生の御指摘の、二八%は高いのじゃないか、こういう御指摘でありますが、我々中小企業者とすると、もう少し税制の面で優遇していただきたい、こう考えております。
  89. 堀昌雄

    ○堀委員 まあ私、商工委員会に二年ばかりおりましたけれども、中小企業という概念で実際は零細企業の話をみんなやっているんでして、いわゆる中企業の議論はちっともないんですね、二年間おりましたけれども。ですから、私はやはりもう少しこれは実態に即して、もしあれならば今の中企業、それから小規模事業、それから小企業者と、今の従業員数その他によって分けて、それに見合う税率を課すということが非常に重要だ。  その国の経済活動の基本はどこにあるか。私は、中小企業がしっかりしている国がその国の経済がしっかりしていると思うのです。ということは、日本の大企業というのは、もちろん鉄のような製鋼一貫のようなものもありますけれども、自動車や電機その他のアセンブルのものは、みんな幅広い中小企業に支えられて、それをアセンブルして実は企業になっているわけでありまして、だから私は、日本の中小企業の活力がふえればふえるほど、それは日本経済の活力がふえることになるんだ、こういうふうに考えておりますので、そのためにはやはりその規模に応じて、それからその収益に応じた課税の処理が必要だ、こう考えておるわけであります。  自民党の方の方にも御賛成の意見があるようでありますが、もうこういうのは大蔵省なかなか賛成しませんから、議員立法で、ひとつこの通常国会の中で皆さんと協議をしてやることにしたらいかがか、こんなふうに思っておりますので、そういう意味ではきょう公述人に来ていただいて、十分皆さんの御期待にこたえられるように、私どもも予算委員全体で取り組む気持ちでございますので、よろしくお願いをしたいと思います。  終わります。
  90. 鴻池祥肇

    ○鴻池委員長代理 次に草川昭三君。
  91. 草川昭三

    ○草川委員 公明党・国民会議の草川でございます。  三先生には、大変お忙しいところいろいろと公述をしていただきまして、心からお礼を申し上げます。  まず最初に、館公述人にお伺いをしたいと思うのです。  先ほど先生は五年度の予算案について、補正予算後で前年対比を見ると、公共投資は減少をしていることを指摘をされました。しかし、補正の実施が時期的にずれ込んでいるのでということを言われたわけですが、その際に、財投の投入というのですか、財投の伸び率も考慮すべきだ、こうおっしゃったわけでございますが、この財投の資金の利用については、例えば旧国鉄関係というのですか、JR等々につきましても、金利がつく、こういうような資金を提供されても、いささか喜ぶわけにはまいらぬというようなことを言っているところもあるわけであります。  要するに、この金利の負担あるいはまた事業内容について非常に制約がある、こういう点もあるわけでございますが、この財投資金の融資についてはこのままでいいのか、あるいはもっと機動性を持たせるべきではないか、こんなように考えるわけですが、館先生の御意見を賜りたい、このように思うわけです。
  92. 館龍一郎

    ○館公述人 お答えいたします。  大変難しい問題でございますが、公共事業そのものの性質から申しまして、利益をもたらすというような面もあるわけでございますから、したがいまして、財投のような金利がつくような資金で事業を行っていっても、十分社会資本を充実するのに意味を持つというように考えられると私は判断いたしまして、そして先ほど申しましたように、財投であるとか地方単独も含めて、これは一二・数%の伸び率になっていると思いますが、それと一般会計での繰越分を入れた全体として見ればほどほどの刺激効果を持つのではないかこういうように申し上げたわけでございます。  財投全体として、財投資金を可能であればもう少し機動的に利用できるようになっていくということも一つの案として十分検討に値するというように私は思っております。やはり今のような状況になりますと、できるだけ財投資金を有効に使うということが財政に弾力性を持たせていく一番いい方法ではないか、こういうふうに考えられます。
  93. 草川昭三

    ○草川委員 ありがとうございます。  もう一つ、きょうは中小企業関係の方もお見えになりますのでお伺いをしたいのですが、先生は「日本経済」という本も書かれたわけで、私たまたま拝見をしておるわけでございますが、この中に、日本の企業の特徴として系列化というものに海外からの批判が多いという記述があるわけであります。それで、系列化というものの、特にこれは水平的、横ではグループ化、あるいはまた親子関係の垂直的な系列というようなことが述べられておるわけでありますが、今の日本の中小企業というのは、どちらかといえば系列化ということになるわけであります。  先生はこの中で、アメリカのように工場の中で、自分の会社の中で生産することと、それから下請でつくるということも結局はコストあるいはリスクの問題にすぎなくて、何ら日本の特殊性というほどのものではないんじゃないかという、こういう趣旨のことを先生は言っておみえになるんですが、若干私はその点について異論があるわけでありますので、これはまた後ほど他の公述人の方の御意見も聞きたいところでございますが、先生、現在のように、例えば自動車関係におきましてもその他の産業においても、下請系列というのはかなり仕事が少なくなりまして、しわが寄っておるわけでございますが、この点について先生はどのような御意見を持っておみえになるのか、お伺いをしたいと思うのです。
  94. 館龍一郎

    ○館公述人 これも非常に難しい問題でございまして、私がその本の中で今のような問題を書きましたのは、アメリカから日本について、アメリカ中心にしてと申した方がよろしいと思いますが、いろいろな意味で系列化ということを批判されているという状況に対しまして、それはそんなに特別な制度ではないんではないか。  その証拠に、アメリカでは、自動車会社にしてもGEのようなところにしても、確かに系列の下請会社に出していないけれどもインハウスでたくさんつくっている。したがって、系列の下請に出すかインハウスで生産するかということは結局どっちの方が企業にとって有利かという選択の問題によって決まってくるので、非常に特異なものというような批判は当たらないのではないか、こういうことを言いたいと思って今のようなことを書いたわけでございます。  ただ、今御指摘のような下請と親会社との間の力関係を通じたいろいろな問題が考慮すべき問題としてあることを否定するわけではございません。
  95. 草川昭三

    ○草川委員 どうもありがとうございました。  では、近藤公述人にお伺いをするのですが、実は先ほど館先生は消費の不振ということについて、バブル時代に大変高級品が売れたんだ、ところが社用だとか会社が購入する物品が最近は非常に減少している、こんなことが目につくんだという趣旨のことを言っておみえになったわけでございますが、日本の中小企業あるいは商店連合会、さまざまなものを抱えておみえになる近藤公述人に、今のような点、どのようにお考えになられるのか、お伺いをしたいと思うのです。
  96. 近藤英一郎

    ○近藤公述人 今の先生の御質問でございますが、端的に申せば買うものがないということだろうと思いますが、しかし、現状ではなかなかそうばかりも言い切れないと思いますし、それから今の中小企業の現況というのは、先ほど言われましたとおりに採算もそれから売り上げも資金繰りも悪くなっているだけに、なかなか積極的に手を出しにくいというのが現状ではないだろうか、こういうように思っておりますが。
  97. 草川昭三

    ○草川委員 では、もう一つ近藤公述人にお伺いをしますが、先ほども時間短縮のことについて述べられました。そこで、ちょっと近藤公述人の前に菱公述人にお伺いをするわけですが、中小企業が一律の時間短縮に反対していることが、昨年の十二月でございますか、いろいろと見解を取りまとめられまして、そしてまた東京商工会議所の方も中小企業に一律に時間短縮は問題があるというので労働省などにも陳情しておみえになるわけです。  もちろん菱公述人の場合は違う中小企業の団体でございますが、菱先生の方は中小企業に対して一律に時間短縮が実施をされても特に異論はないのでしょうか、お伺いをしたいと思います。
  98. 菱健藏

    ○菱公述人 私たちは、やはり勤労者、労働者の皆さんと同じように、それこそヨーロッパではないですけれども、商人にしてもあるいは下請加工者にしても、やはり時間短縮というのは非常に今大事になってきておるし、また最近下請加工業者などでは過労死で亡くなっている方が非常に多くなっているんですよ。ですから、これはまたそういう点ではやはり下請加工賃という問題がまたそこには出てきますし、そういう点もあわせて見ていかないと、ただ時間短縮だということだけでは解決つく問題ではないというふうに思っております。
  99. 草川昭三

    ○草川委員 そこで、近藤公述人にお伺いをいたしますが、昨年の十二月四日に中小企業庁、それから七日に労働省と、労働省の中央基準審議会、あるいはまた通産省に、一律の時間短縮についての、まあちょっと困るという趣旨だと思うのでございますが、申し入れをされているわけですが、率直なところを、労働省の見解なり通産省なり要望書を出された反応、あるいはまたその反応の中からどのようにしたらこの時間短縮の問題について中小企業が取り組むことができるのか、その点についてのお考えをお伺いしたいと思います。
  100. 近藤英一郎

    ○近藤公述人 先生御承知だろうと思いますが、労働時間の実態調査をやってみました。商工会地域の従業員三十人以下の事業所に対する労働実態調査をやった結果によりますと、四十六時間の猶予措置対象の事業所のうち、週四十四時間を達成している事業所はわずか二七・四%しかないわけであります。したがって、四十四時間に短縮されれば、猶予措置対象事業所のうち七二・六%の事業所が割り増し賃金の適用によってコストアップが強いられることになるわけでありますから、結局不況下にある中小企業の経営を圧迫するわけでありますから、そういう点から我々は反対だ。  したがって、我々が反対をいたしました中で、もう一つ御報告申し上げておきますが、本会で九月末に実施した商工会地域の従業員三十人以下の事業所に対する労働実態調査によれば、従業員が一人から四人までの事業所で、年間の総労働時間が二千五百五十三時間という結果が出ております。それから、日本商工会議所がやはり同じように昨年の六月に実施した実態調査でも、従業員が一人から九人までの事業所で二千三百時間の労働の実態が出ております。それからもう一つは、中小企業団体中央会が昨年の七月に実施した実態調査でも、同じく従業員が一人から九人までの事業所で二千二百三十六時間という結果が出ております。  したがって、我々が反対したのは、結局、時短をやることによってそれだけやはり割り増し賃金がふえる、それから、それはどうしてもコストアップをしなくちゃならない、そうしなければ経営が難しくなる、こういう状況から反対をしてまいりました。  したがって、現在も我々が要望しておるのは、法案に出ましたそうでありますけれども、その内容を検討してみると、当分の間現状でいくようにする、それからなお、四十四時間を四十時間にするけれども、三年間は四十四時間を認めるというような方向に向いておる、こういうことも伺っております。それから、猶予措置も現状どおりでお願いしたい。それから、割り増し賃金については、これは法定日以外の休日に対してはやはり企業者と労働者の皆さん方と相談して適当な線を出すべきだと思うのですが、もし出せない場合には政府で決めていただきたい、こういう点を要望しております。  以上であります。
  101. 草川昭三

    ○草川委員 ありがとうございました。  以上で終わります。
  102. 鴻池祥肇

    ○鴻池委員長代理 次に、菅野悦子君。
  103. 菅野悦子

    菅野委員 私は、日本共産党の菅野悦子でございます。  公述人の皆様には、お忙しい中御出席の上貴重な御意見をいただきましてありがとうございます。  まず、菱健蔵公述人にお伺いをしたいと思うのですけれども、今不況の中で中小企業の皆さんが本当に大変な苦境に立たされているという具体的な実態をお伺いして身につまされたところでございます。  ところで、その中小企業が実は今、日本経済を支える多数派になっている、そしてそこに働く人たちも非常に多くて、消費に直結するというふうな状況があるわけなんですけれども、だからこそその中小企業への不況対策が重要になっているということなのだと思いますが、改めてこの中小企業の役割についてもう少しお伺いをしたいと思います。
  104. 菱健藏

    ○菱公述人 今先生からお話ありましたように、私たち中小業者というよりも、先ほど先生からお話ありましたように、それこそ零細企業が非常に多いわけですけれども、今その零細企業そのものが日本経済の中でそれこそどんなに大きな役割を果たしてきたかというのは、先ほど述べたとおりでございますけれども、特にこの中小企業の設備投資、これはそれこそ小さな町工場を初めとして、国全体の設備投資の半分以上を占めているわけですから、この中小企業の不況、経営危機、これをこのままにしておいたのでは、日本全体の景気回復というのはなかなか望めないのではないだろうかというふうに思っております。  もう一つは、こうした経済的な役割と同時に、案外見落とすわけですけれども、これは見落としてはならないのは、我々中小業者が地域社会で果たしている役割、これは大企業やあるいは大企業の経営者や幹部の方々とは違って、我々はみずからがその地域の住民であるし、消費者であるし、また地域社会に溶け込んでいなければ営業も経営も成り立たないという立場に置かれているわけです。  そういう点で、私は大田区で中華料理をやっているわけですが、今の時間でしたら本来包丁を持っているわけですけれども、こういうところに初めて出させていただいたわけなんですけれども、それこそ商店街やあるいは町内会の役員だとか、あるいは地域婦人会あるいは消防団だとかPTAだとか、そういう地域の自治組織の役員になっている人が非常に多いわけですし、また地域のお祭りとかあるいは文化行事、こういう伝統的なものにも我々がほとんど担い手になっている。  私も、町内会の役員、商店街の役員はもう四十数年やっておりますけれども、交通部長から、今は文化式典部長ということでお葬式からお祭りまで全部責任を持っているわけですけれども、そういうふうにやっているわけですから、そういう中小業者が本当に町から消えていくという、商店街の中、歯抜けになっているわけですけれども、そういう事態になってきますと、大きな大企業の事務所だとかスーパーだけがでかくなって、本当に町がさま変わりするような、そういう状態ですと、本当に我々が住んでいていいという状態にはならないのじゃないだろうかというふうに思います。  まして、これからこの中小業者のこういう役割というのは今後ますます重要になってきますし、高齢化社会の進展は、本当に潤いのある町づくりということになっても、余計に零細業者の商店にしても下請企業にしても、地域で住んでいる人たちの任務というのは、地域社会を構成させていく上においても非常に大事だというふうに思います。  それからもう一つは、やはり宮澤首相がおっしゃいましたように、ゆとりある生活、生活大国を我が国の目標に掲げたわけですけれども、私どもは、これからの日本で中小業者がますます大切な役割を担っておりますし、その役割をまた今もお話ししましたように果たしていかなければならぬというふうに私たちも自覚しているわけですが、その点では国の政治もそういう点を重点にしていただきたいし、それにふさわしいような力をつぎ込んでいただきたいというふうに思うわけです。  昨年十二月に中小企業政策審議会の小委員会の中間報告も、「「生活大国」を目指す我が国にとって、小規模事業者の活性化は経済社会政策の根幹にもかかわる緊急の課題となっている。」と述べておるわけですから、どうぞひとつ皆さんも本当に真剣になって、中小業者の果たしている今の役割を本当に御理解をいただいて御奮聞いただきたいということをお願いしておきます。
  105. 菅野悦子

    菅野委員 全国的にも、また地域の中でも中小企業の果たす役割が非常に大きくなっているというお話だったと思うのですけれども、その中小企業の皆さん方が今不況の中で切実に求めていらっしゃるのが仕事と資金ということだろうというふうに思うわけです。  それで、私、あわせて引き続き菱公述人にお伺いしたいのですけれども、その仕事の面ですが、不況から立ち直るためにも仕事をふやしてほしい、仕事の確保をという点で国あるいは行政などへの要望強かろうかと思いますが、その点いかがお考えか、お伺いいたします。
  106. 菱健藏

    ○菱公述人 先ほども申し上げましたけれども、中小零細業者の売り上げあるいは下請確保の受注の大幅な減少というのは、もうそれこそ限界に来ておるというふうに思っております。それは、金融とともに最も緊急を要する対策が必要ではないだろうかというふうに思います。  この点で一つは、国や自治体の官公需を最も大幅に中小企業に発注していただきたいというのがあるわけです。これは御存じのように、新たに予算を組まなくてもやればできるという内容でございますし、行政のやり方一つで大きく中小企業の経営危機打開に役立つと思います。  官公需法という法律に基づいて毎年目標と方針が閣議決定されておるわけですけれども、例えば、一九七六年政府国会でお話がございました。この官公需の発注を中小業者に五〇%にするようにするというお話があったわけですけれども、九〇年度を見てみますと三七・三%ということで、まあ五〇%に政府の方はいったことないわけです。ところが、地方自治体の方はどうかというと、一九九〇年は六五・二%になっているわけですけれども、例えば八〇年から八五年の間にはこれが大体八〇%近くいっているのですね。  ですから、これを本当に、例えば国の方の官公需を五〇%に、これは私新聞で読んだのですが、五〇%にしていただくと、今一兆一千億か一兆四千億くらいになるのじゃないかというお話もありましたし、それから、地方公共団体が八〇年から八五年ぐらいの受注を中小企業に渡せばこれが一兆八千億円になるのじゃないかというお話も伺いました。そうしますと、合わせると三兆円からの官公需の受注が中小企業に回っていくということで非常に潤うわけでございますので、そういう点は中小企業庁としても十分に考えて、ひとつ御奮闘をお願いしたいと思います。  それからもう一つは、発注契約内容、これについてやはり中小企業庁がもっともっと立ち入って促進をしていただきたいし、中小企業に発注しやすいように制度も改善していただきたいというふうに思います。ここ数年、官公需の目的に達する真剣な努力が本当に中小企業庁にしてもどうなのかなというのが我々の感じなんですね。  そういう点で、仕事確保ということではもう一つの問題は、大企業が自己生産減以上に下請への発注削減をしているのではないだろうかという問題があるわけです。これは大田区でも種々ございますけれども、下請中小企業振興法に基づく振興基準では、親事業は自己の生産量の変動の程度以上に発注量を変動させないようにということが明記されているわけですけれども、この政府の示した基準が守られているだけでかなり改善が図られるのではないだろうかというふうに思います。  もう一つ、仕事確保の問題の三つ目に、私たちは、本当に国民生活に役立つ新しい地域産業を興していく必要があると思っております。そのためにも蓄積された技術を失うということではなくて、本当に保全していくような、それを本当に高めていくような、そういう新しい技術開発にも目を光らせていただきたいし、国の対策としてもこういう面で積極的な助成をお願いしたいということを申し上げて、終わります。
  107. 菅野悦子

    菅野委員 それでは、続きまして近藤公述人にお伺いしたいと思うのですけれども、仕事と資金の、資金の方なんですが、これも非常に不況が深刻な状況だからこそ低利で長期の融資、これが求められているというふうに思うのです。政府の緊急経営支援貸付制度が動き出しておりますけれども、これはことしの十二月までに二千億しかないという状況でもございまして、だからこそ政府系金融機関からの借り入れというふうな要望も強いと思うのですね。この点では大蔵省から通達も確かに出ているのでございますが、この国金とか中金などの貸し出しが皆さんの要求にこたえるものになっているかどうか、この辺をぜひお伺いしたいと思うのです。
  108. 近藤英一郎

    ○近藤公述人 その前に、今お聞きしておりまして、仕事が少ない、これはやはり需要が減退しておるということであろうと思います。したがって、今金融関係の御質問がございましたが、大蔵省の通達が出まして、この効果がどう出てくるかわかりませんけれども、恐らくあの通達はかつてない大蔵省の通達である、こういうふうに承っておりますし、金融機関もやはり相当これについて深い関心を持っておるようであります。したがって、金融も相当変わってくるのではないだろうか。  ただ、金利の問題については先ほど申し上げたのですが、やはり公定歩合が数次にわたって下がったけれども、その都度何%か下がるのですけれども、それはなかなかそのように下げてくれないということが一つと、それから時期的にすぐ下げないで、二月、三月おくれてくるとだんだんおくれていってしまう。したがって、それだけ金利負担が多くなるわけでありますから、それだけいわゆる中小企業者は経営のコストに影響してくるわけであります。そういう点について、今度通達も出ましたので相当改善されてくるだろう、こう考えておりますし、政府系関係の金融機関の金利も、こういう声が一つあるのです。  それは、例えば国金を一つの例にとりましても五・〇五%だ、しかし政府系金融機関はもっと金利を下げてもらっていいのではないだろうか、こういう声があることも事実であります。いろいろ金融の金利体系があるから一律に変えられないとは思いますけれども、そういう点にも配慮していただくとやはり金融は非常によくなってくるだろう、こう考えております。
  109. 菅野悦子

    菅野委員 館公述人にもお伺いしたかったのですが、時間がなくて申しわけございません。  終わります。
  110. 鴻池祥肇

    ○鴻池委員長代理 次に、高木義明君。
  111. 高木義明

    高木委員 民社党の高木でございます。  公述人の先生方には、大変お忙しいところ貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。お話の中で感じたことを率直にお尋ねをしてみたいと思いますが、館先生にまずはお伺いいたします。  先生のお話によりますと、本予算は社会資本の整備とそれから景気対策。社会資本の整備につきましては公共投資の六%増ということをもって両面に配慮したいい予算である、財政対策としては、景気対策については若干の時間がかかる、したがって予算審議はスムーズにいくようにお願いをしたい、減税要求に対しては、これは長期的課題でありまして、景気対策としては効果は薄い、また赤字国債の発行は問題ありと、こういうふうなスタンスのお話でありました。  したがって、私は、そういうスタンスに立たれる先生の景気の見通しについて、この際ぜひ所見を賜っておきたい。先生は余り予測はしない、こういうふうに言っておられましたけれども、ぜひそういう立場でどう見通しておられるのか、率直にお伺いをしておきたいと思います。
  112. 館龍一郎

    ○館公述人 景気につきましては大変難しいので、私も自信を持ってお答えできる立場にございませんが、現在の景気状況を、先ほど申しましたように、三つの要素が同時に起こってきている、つまり循環的な不況と、それから構造的な不況と、それからそれにプラス、バブルの破裂に伴う金融と、こういう三つの要素が同時に起こってきている、そういう意味ではやや複雑な状況にある、こういうように考えているわけでございます。  そうしますと、構造的な不況についての調整にはどうしても時間がかかるということにならざるを得ないわけであります。循環的な不況について考えれば、これは在庫調整が終わり、設備調整が終われば、そこで景気が回復していくということになるわけでありますが、そしてその在庫調整の様子を見ておりますと、一応在庫調整をやって、済んでしまっているところ、もう既に在庫調整が終わっている部門もあります。しかし、それが終わりそうでいてまた逆に積み増しになっていったりというようなことが起こっているということは、先ほど申しましたように構造的な要素がそこに入ってきてスムーズに調整が終わらないということではないかと。  そういう観点からいいますと、先ほどお尋ねがございました政府見通しの水準を来年度のうちに達成するということは相当の努力を払っていかなければ難しいのではないだろうかこういうように考えております。そういう意味では、調整にはやや時間がかかる不況になってしまっている、こういうのが私の判断でございます。
  113. 高木義明

    高木委員 私は、今の不況に機動的に対応していくということがやはり大切ではないかと思っておりますが、予算編成のあった時点と今日現在におきましては、御承知のとおり急速な円高という状況が出てまいりました。円高のメリットもさることながら、再びまた円高不況というのが今の状況に輸をかけるのではないかな、こういうふうに危惧するわけでありますけれども、先生はこの円高という事態をどう見ておられるのかお聞かせいただきたいと思います。     〔鴻池委員長代理退席、委員長着席〕
  114. 館龍一郎

    ○館公述人 お答えいたします。  円高は、一面で不況を激化する要因であるというように考えております。ただ、先ほども申し上げたと思っておるのですが、前回、円高不況の対策として金利を引き下げ、そしてさらにその後になっては財政を含めた総合対策を打ち出すという形で景気刺激策をとっていったわけでありますが、そのときの低金利政策あるいは金融緩和政策が余り長期にわたり過ぎたということが、これは逆にバブルを形成したもとになっている。そういうことを考えますと、確かに円高は不況にとってそれを悪化させる要因ではあるけれども、余り当面の目先のことにとらわれ過ぎて、また失敗を繰り返さないように慎重に対応していくということが必要ではないか。  したがって、例えば減税をやったら必ず消費が戻ってくるという見込みが持てるような状況にあるとすれば、私ももろ手を挙げて減税に賛成するということになりますけれども、今の状況は必ずしもそうではないというところに非常な難しさがあって、そのことが将来にわたって財政の負担となり、あるいはバブルを招来するというようなことのないように慎重に対応していく必要があるというのが私の考えでございます。
  115. 高木義明

    高木委員 先生は話の中で、減税はメリットが明らかになるというときであればそれも結構だ、こういうお話もされております。その明らかになるときはといいますと、例えば大量失業が予想されたときだ、こういうこともお話しされました。  確かに今現実に失業をするという時代ではないにしましても、各産業界におきましてはリストラを初めとして、いわゆる企業の乗り切り策あるいは雇用勤労者に対する出向あるいは配転、こういったこともかなり行われておりまして、まあ労働諸条件の低下というのも深刻になっておるわけでありまして、まさにこういうときこそ景気に刺激を与えるべきではないかな、このように私は思いますが、こういう事情についてどのようにお考えであるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  116. 館龍一郎

    ○館公述人 お答えいたします。  現に企業が今のような状況の中でリストラを進めているということは非常に望ましい状態だと思いますので、そのリストラを途中でやめてしまうということになりますと、これは、せっかくリストラをして、将来順調な発展をしていくためにはそれは不可欠な問題だと思うのですけれども、それを中途でやめてしまうような政策はとらない方が長期的には日本のために役に立つのではないか、こういうように考えております。  ただ、何もしないということを私申し上げているわけではございませんで、金融面から景気の足を引っ張るようなことがないような政策をとるべきだし、いろいろな規制緩和を進めるというような形でそれぞれ景気対策の手を打っていく必要はある、こういうように考えておるわけでございます。
  117. 高木義明

    高木委員 引き続き、最後になりますけれども、館先生、お願いしたいのですが、平成三年の民間給与の実態というのがありまして、一人当たり所得税は前年度より九%伸び、約二万五千円の伸びということでございまして、これに対して、給与の伸びは五%、給与に占める所得税の割合も三十四年ぶりに高いものになった、こういう資料もありまして、まさに消費はマインドでありまして、例えば商店街の売れ行き、まあ確かにバブル崩壊のときは高級品が売れなくなって、デパートあたりの売り上げが少なくなったということも見られたわけでありますが、もう既に今は一般の衣料品、食料品等についてもその問題が出ておるのではないか、そういう意味一つの刺激策として減税も一つの政策として打つ手ではないかな、このように思うのですが寸この点についての御見解を賜りたいと思います。
  118. 館龍一郎

    ○館公述人 御指摘のような考え方も当然あると私は思っております。  ただ、ある意味で、ある時期、日本のすべての人がバブルに酔っていたという状態があったのではないかというように思いますので、私は我慢の哲学を説こうというわけではございませんけれども、多少は犠牲を払っていただかなければ今後の長期にわたる日本経済の成長というものはあり得ないだろう。  それを途中でやめますと、アメリカは最近意外に、生産性を上げるための努力を払ってきた結果として競争力を高めてきておりますし、日本が安閑としていればやはりアメリカ日本との関係は逆転するというようなことも起こってき得るわけでありますから、必要な場合にはある程度の犠牲を払っていかざるを得ないというように私としては考えておるわけでございます。
  119. 高木義明

    高木委員 最後に近藤会長にお話を伺いたいと思いますが、商工会といたしまして、村おこし、街づくり、日ごろから大変なお取り組みをいただきまして、心から敬意を表します。  今、景気対策が言われておりますが、まさに地方にあっては、とりわけ過疎地域あるいは離島等につきましては、もう景気対策以前の問題としてのいわゆる地域振興をどうしていくのか。よく言われますけれども、地域の基幹産業が公共事業だというところさえあるわけでして、そういうところはそれによってかなりの地域振興あるいは景気対策になるわけです。しかし、一方において若者はどんどん東京に行く。また、東京に行かなければ仕事にならぬという営業員の方もおられますし、あるいはまた役所においても、東京に行かなければ役所の仕事ができない。そういう意味では、東京一極集中の是正というのが今の一つの大きな政治課題であろうと思います。  そういうことと、私たちはやはりこの際行政改革を改めて断行して、無理、むだをなくす、こういうことも必要じゃないかと思いますが、地域立場からその点についていかがお考えであるのか。この際、時間はありませんけれども、お話をいただきたいと思います。
  120. 近藤英一郎

    ○近藤公述人 なかなか難しい問題でございます。  地域の行政の関係の公共事業云々というような問題もありましたけれども、ではこれをどうするかというと、なかなか難しい問題であろうと思います。ただ我々、過疎化、それから若者が出ていく、それから地域を振興させるためにどうしたらいいかということが実は一番の悩みであります。  そこで、先ほども申し上げましたが、今度提案されておる商工会法の抜本的な改正、新法、これを議決していただくことによって非常に活性化を図れる、私はこう考えております。  具体的に申せば、結局、経営診断事業、税務関係の相談を主としてやっておりましたけれども、あの法律が通れば、新法改正ができませば、今度は事業ができるわけであります。したがって、駐車場なり貸し店舗なり、あるいはまたイベントホールをつくるなり、緑地をつくるなり、いろいろの事業ができることでありますから、非常に商工会に対する信頼と期待と、それから、事業をやれるんだということだけで心理的な影響が非常に大きくなってくると私は思います。  それから先ほど、我々は経営対策が一番頭にあるのですけれども、予算を早く通していただきたいということと、それから所得税減税の問題もございました。率直に、我々が集まると意見が出ておりますのは、住宅減税、住宅対策をやることによって、例えば屋根屋の仕事がふえる、あるいはまた大工の仕事がふえる、セメントが売れる、鋼材が売れる。これは非常に需要が広くなってまいりますから、これによってやはり潤ってくるところが非常に多くなるわけであります。したがって、そういう面で今度は新しい住宅がまた投資減税でできれば、住宅減税で行われれば、結局新しい家をつくる、そうなると引っ越しをしなくてはならない。これによってテレビ、洗濯機あるいはまた調度品も必要になってくる。したがって、需要が伸びてくると思います。  そういう点で、今国会に提案されておる新法の問題はもちろんでありますが、予算の早期議決を心からお願いを申し上げますが、そういう状況であることをお含みいただきたいと思います。
  121. 高木義明

    高木委員 お疲れさまでした。ありがとうございました。
  122. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、明二十四日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。午後四時六分散会