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1993-05-25 第126回国会 衆議院 予算委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年五月二十五日(火曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 粕谷  茂君     理事 石川 要三君  理事 小杉  隆君     理事 鴻池 祥肇君  理事 佐藤 信二君     理事 中川 昭一君  理事 串原 義直君     理事 中西 績介君  理事 松浦 利尚君     理事 草川 昭三君        相沢 英之君     愛野興一郎君        粟屋 敏信君     井奥 貞雄君        石原慎太郎君     石原 伸晃君        臼井日出男君     内海 英男君        衛藤征士郎君     越智 通雄君        大石 千八君     狩野  勝君        唐沢俊二郎君     倉成  正君        高鳥  修君     戸井田三郎君        中谷  元君     浜田 幸一君        原田  憲君     原田 義昭君        真鍋 光広君     増子 輝彦君        増田 敏男君     松永  光君        松本 十郎君     簗瀬  進君        柳沢 伯夫君     山本 有二君        伊藤 忠治君    宇都宮真由美君        嶋崎  譲君     関  晴正君        竹内  猛君     富塚 三夫君        楢崎弥之助君     堀  昌雄君        松前  仰君     三野 優美君        水田  稔君     目黒吉之助君        元信  堯君     石田 祝稔君        遠藤 乙彦君     二見 伸明君        山口那津男君     児玉 健次君        東中 光雄君     塚本 三郎君        中野 寛成君  出席国務大臣         内閣総理大臣  宮澤 喜一君         法 務 大 臣 後藤田正晴君         外 務 大 臣 武藤 嘉文君         大 蔵 大 臣 林  義郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会 村田敬次郎君         委員長         国 務 大 臣 河野 洋平君         (内閣官房長官)         国 務 大 臣 中山 利生君         (防衛庁長官)  出席政府委員         内閣法制局長官 大出 峻郎君         内閣法制局第一 津野  修君         部長         国際平和協力本 柳井 俊二君         部事務局長         警察庁長官   城内 康光君         警察庁長官官房 垣見  隆君         長         警察庁長官官房         総務審議官事務 泉  幸伸君         代理         警察庁警務局長 井上 幸彦君         防衛庁参事官  高島 有終君         防衛庁参事官  河路 明夫君         防衛庁長官官房 村田 直昭君         長         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁教育訓練 諸冨 増夫君         局長         防衛庁人事局長 秋山 昌廣君         防衛庁経理局長 宝珠山 昇君         防衛庁装備局長 中田 哲雄君         防衛施設庁総務 竹下  昭君         部長         防衛施設庁施設 江間 清二君         部長         防衛施設庁労務 荻野 貴一君         部長         法務省刑事局長 濱  邦久君         外務大臣官房領 荒  義尚君         事移住部長         外務省アジア局 池田  維君         長         外務省欧亜局長 野村 一成君         外務省経済協力 川上 隆朗君         局長         外務省条約局長 丹波  實君         外務省国際連合 澁谷 治彦君         局長         大蔵省主計局長 斎藤 次郎君         大蔵省銀行局長 寺村 信行君         自治大臣官房総 遠藤 安彦君         務審議官         自治省行政局選 佐野 徹治君         挙部長  委員外出席者         予算委員会調査 堀口 一郎君         局長     ――――――――――――― 委員の異動 五月二十五日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     真鍋 光広君   愛野興一郎君     増田 敏男君   石原慎太郎君     原田 義昭君   臼井日出男君     簗瀬  進君   内海 英男君     井奥 貞雄君   中山 太郎君     石原 伸晃君   浜田 幸一君     山本 有二君   元信  堯君     嶋崎  譲君   二見 伸明君     遠藤 乙彦君   宮地 正介君     山口那津男君   佐藤 祐弘君     東中 光雄君   中野 寛成君     塚本 三郎君 同日  辞任         補欠選任   井奥 貞雄君     内海 英男君   石原 伸晃君     増子 輝彦君   原田 義昭君     石原慎太郎君   真鍋 光広君     中谷  元君   増田 敏男君     愛野興一郎君   簗瀬  進君     狩野  勝君   山本 有二君     浜田 幸一君   嶋崎  譲君     元信  堯君   遠藤 乙彦君     二見 伸明君   山口那津男君     宮地 正介君   塚本 三郎君     中野 寛成君 同日  辞任         補欠選任   狩野  勝君     臼井日出男君   中谷  元君     相沢 英之君   増子 輝彦君     中山 太郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  平成五年度一般会計補正予算(第1号)  平成五年度特別会計補正予算(特第1号)  平成五年度政府関係機関補正予算(機第1号)      ―――――◇―――――
  2. 粕谷茂

    粕谷委員長 これより会議を開きます。  平成五年度一般会計補正予算(第1号)、平成五年度特別会計補正予算(特第1号)、平成五年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題といたします。  本日は、PKO等についての集中審議を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川昭一君。
  3. 中川昭一

    中川委員 おはようございます。  本日は、PKO集中質疑ということで、今世界が注目し、また我が国でもマスコミでも大きく連日取り上げられておりますカンボジアの問題について質問いたします。  既に本委員会でも大いに議論されておるところでありますけれども、これだけ大きな関心を呼んでいるのは、私なりに整理をさせていただきますと、一つは、同じアジアの、しかも長い日本との関係を持つカンボジアが、十数年間にわたり悲惨な戦争、内乱あるいは殺りくというものの中から停戦成立し、そして今復興に向けて、国連暫定統治のもとで、みずからの意思でみずからの選挙を、そして政権をつくろうとしておるということを注目したいと思います。  そしてまた、それに対して我が国貢献協力をしておるわけでありますけれども、我が国にとりましては初めての新しい形の国際貢献、私は国際貢献という言葉を使わずに国際協力という言葉にさせていただきますけれども、新たな形の国際協力人的協力を今カンボジアに対してやっておるということがやはり注目を呼ぶ大きなポイントだろうと思います。  そして、第三点には、大変残念なことでありますけれども、我が国の二人の邦人、UNVの中田さん、文民警察の高田さん、お二人を初め十数人の、このカンボジアの平和のために頑張っておられるとうとい人命が失われた。そしてまた、日本の四人の方を含め多くの方がけがを負われた。こういう事故、あるいは亡くなられた方々、大変残念なことである、こういうことの中で、このカンボジア問題について質問をさせていただきたいと思います。  私は、今までの議論のように、このいわゆるPKO法の何条何項にこれが当たるのか当たらないのかとか、あるいは計画や要領とこの実際とが合うのか合わないのかというような法制上の制約を前提にした議論ではなくて、初めて現実に行われておりますカンボジアにおけるPKO活動現実というものを私は真正面からとらえながら議論を進めさせていただきたいと思います。  それでは、現在、まさに今行われておりますこの選挙、この選挙についてまず御質問をさせていただきます。  九一年の十月、パリ和平協定が調印され、昨年の三月十五日にUNTAC本部が設置をされて以来、大変な苦労の中で、いよいよ最大の大事なプロセス生言えます選挙がおとといから始まったわけであります。八百八十万カンボジア国民は、数十年間にわたる混乱や、親族あるいはまた親戚の大勢が殺されたというこの悲しい状況の中から、真の平和と民主化に対しての強い希望を持ってこの選挙期待をしておるわけであります。現実に、三十五万人の難民の方々が本国に戻られるとか、あるいは九割以上の人々選挙登録をされるとかあるいは復興後のことを期待をして一生懸命英語を勉強されるとか、そういうような、カンボジア国民にとって大変希望を与える選挙であるわけであります。  この選挙に当たりましては、幾つかの不安材料があったわけでありますけれども、今のところは非常に順調にいっておると新聞等報道をされておるわけであります。特に、第一日目、第二日目と、新聞報道等によりますと、もう投票率が七割近くまでいっておる。九割以上の登録の中で、もう七割までいっているということになりますと、十八歳以上の、いわゆる有権者の六割以上の人が国民のみずからの意思表示をされたということでありますから、これはまさに、この選挙正当性というものがまさしく裏打ちがされつつある、もうされたと言ってもいいのではないかというふうに思うわけであります。  しかし、今後、これからあと一日間の投票、残り三日間いわゆる移動投票というものが行われるわけでありまして、その中で、例えばこの移動投票における危険性の問題でありますとか、最終投票率がどのぐらいになるんだろうかとか、あるいは選挙に対する妨害現実に二日間、多少の妨害があったようでありますけれども、こういう妨害の問題。あるいは各派の組み合わせ、どういう形の政権が獲得ができるんだろうかということによって、新しい政権がどういうふうになっていくのだろうか。あるいは、もう既に選挙をボイコットしておりますいわゆるクメールルージュポル・ポト派がこの制憲議会の外にいるわけでありますから、この動向というものが、新聞等でもきょうもいろいろ報道されておりますけれども、逆に投票を指示したのではないかとか、あるいはいわゆるラナリット派と組むのではないかとか、いろいろ憶測を呼んでおるわけでありますけれども、こういう動向等を今後も、二十八日の投票終了まで注意深く見守っていかなければならないと思っております。  そういう中で、いずれにしても、二大勢力と言われておりますプノンペン政権それからラナリット派、そして政権の外にいるクメールルージュ、特にこのクメールルージュは過去において大変な恐怖政治をやってきた。自国民を百万人以上と言われているぐらいに虐殺をしておる。しかも、その思想の原点が、いわゆる毛沢東主義と言われる共産主義であるということが厳然としてある事実であります。プノンペン政権側は、これはベトナムの後押してできた政権でありまして、これもまた社会主義政権世界でも今数少ない社会主義政権であるという現状。そしてまた、ラナリットさんのお父さんであるシアヌークさんという方は、果たしてどういう政治的スタンスを持っている人なんだろうか。果たして腰がきちっと定まって、国民のために一貫して頑張っていると言えるのだろうかという不安があるわけであります。  いずれにしましても、やっと国民の念願がかなって、公正で自由な選挙が今一応行われつつあるという状況の中でありますけれども、今後のカンボジアの政局については、まだまだ不安定要素あるいは不安があるというふうに私は認識をしておりますけれども、この現状について、外務省、そして今まで私が申し上げたこと、特にカンボジアの今後の行方について、現時点での総理御所感をお伺いしたいと存じます。
  4. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 二十一年ぶりの総選挙を迎えたカンボジア国民が、やはり自分たちでもって自分たち国家をつくり上げていきたい、こういうあらわれが約七〇%の投票率にあらわれているのではないかと私は思っております。幸い、大きな選挙妨害も、まあいろいろ散発的にはございますけれども、大きな選挙妨害もなく行われていることは、本当にカンボジアの将来を考えますと、大変今のところは明るい展望ではないかと私は思っております。  今後のことは、やはりこれはカンボジア自身がお決めになることであり、特に、このような形で二十一年ぶりにいわゆる民主的なルールに基づく総選挙が行われているわけでございますから、この結果というものは尊重されるべきものであろうと思うのでございます。  御承知のとおり、これによって制憲議会が誕生じ、それでその制憲議会によって憲法が制定され、その後これが立法議会に移り、新しい政府が樹立されていくという形でございまして、その中でどういう形でこれが行われるかということは、選挙の結果も、一体どの党がどれだけシェアを確保するかということもわかりませんので、いずれにいたしましても、私は、選挙の結果を忠実に踏まえて、カンボジア皆さんによって本当に民主的な、平和な国家ができることを心から願っておるわけであります。
  5. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 前回の選挙は一九七二年であったと言われておりますから、まさに今外務大臣の言われましたとおり、二十年ぶりということになりますけれども、いろんな事情を考えますと、今回投票をしておるカンボジアの大部分の人にとっては、恐らく今度の投票というのは初体験ではなかったかと思います。二日間で高い投票率が、こういう必ずしも平穏でない状況の中であるにもかかわらず上がっているということは、中川委員の言われましたように、自分たちの一票によって自分たちの国をつくるという、そういう初めての体験についてカンボジア人々が非常に明るいと申しますか高い希望を持ちながら投票所に赴いているということと思います。このことは、まさしくパリ協定が目的として描いたところのものであります。  必ずしもパリ協定の想定したとおり事態は進展をいたしませんでした。そのために我々もとうとい有為の青年を二人、平和のために大事な命を犠牲にされまして、そのことはまことに胸の痛む思いですが、しかし、そういう状況の中で、とにかくパリ協定が一番大事と考えていました自発的な、公平な選挙というものが行われつつあるということを第一にやはり評価をいたすべきであろうと思います。我が国もこれに対していささかの貢献をなし得たことは、我々としても国際から期待されている責務の一部にこたえたと申してよろしいと思います。  今後、この選挙が静穏に終了することを祈っておりますが、そういうことを経ました後どのような国づくりカンボジア人々がするかということにつきまして、先ほども御指摘になりましたが、例えばクメールルージュが今後その国づくりにどのように参加をしようとするのか、あるいはどのような立場にその間に立とうとするかは、ただいまのところ正直を申してはっきりいたしません。しかしながら、これだけ多数のカンボジア人が将来に向かって自分投票しているというこういう状況の中で、クメールルージュ最後までこれを白眼視して、その外に立っていくということでその将来を果たして発見し得るのかどうか。これはクメールルージュが決めることではございますけれども、やはりそういう問題があるであろう。  それで、私どもが、クメールルージュのこのたびのいろいろな武装解除拒否であるとかあるいは選挙についての不参加であるとかいうことにもかかわらず、なおクメールルージュパリ協定そのものを否定していないと申し上げてまいりましたことの意味は、将来まで展望いたしますと、果たしてそういう立場クメールルージュがどういう正当性を主張し得るのかということは、恐らくクメールルージュが考えまして、非常に実は問題であろうというふうに思われます。そう考えますと、これから後の展開というものは、クメールルージュ行動にかなりかかってくると申し上げることができると思います。  いずれにいたしましても、この選挙の結果、パリ協定の想定しておりますところでは、制憲議会憲法ができて、カンボジア人によるカンボジアというものが国として成立をし、そこでUNTACの仕事は終了するということでございます。願わくは、そういうこれからのプロセスの中で、クメールルージュ最後までいわばただひとりそのような国づくりの中でゲリラ勢力として異を立てていくということは、本来我々が考えまして決して好ましいことではないと思われますし、また、そういうことの中でどのようにクメールルージュの将来があるのかということも実は考えてみますと疑わしいのではないかということも、これからクメールルージュが十分に考えて行動してもらいたい一つの問題ではないかと思っております。
  6. 中川昭一

    中川委員 ここで国連UNTACカンボジア関係についてちょっと御質問をしたいのですけれども、いわゆるPKOというのは国連憲章上に出てきていない、戦後の冷戦構造の中でみんなの知恵ででき上がってきたいわゆる憲章六章半と言われておる、自然発生的にといいましょうか必然的に出てきた知恵の結果だと思います。これ自体はもう既に世界じゅうで、何十カ所で六十万人、七十万人という人が参加をして有効に機能をしている部分が多いわけでありますけれども、この国連そのものができ上がってからもう五十年近くたつ間に、当初の国連の想定していた事態と大きく世界は変わってきた。例えばこの国連憲章が署名されたのは戦争がまだ終局する前の時点でありますから、そういう体制の中で、現世界の情勢というものは、国連憲章、あるいは国連の基本的な当初の考え方と合わない部分幾つか出てきたんじゃないかと思います。  そういう中で、国連というのはネーションがユナイトされた組織でありますから、国単位紛争国際関係というものを調整して、世界平和を実現をしていこうという組織であるわけでありますけれども、そういう意味で、今までPKOはスエズの兵力引き離しですとか、あるいはイラク・クウエート間の、あの国対国のああいう行動国連として制裁をするということをやってきたわけでありますけれども、最近、このカンボジアが一番典型的でありますけれども、国内に対して国連がいわゆる人道的な観点から介入をしていく。ソマリアとかモザンビークでもそうでありますけれども、特にこのカンボジアの場合には国内介入をしていって、しかも暫定統治のもとで新しい国づくりまでしていく、自由で公正な国家をつくっていく、これは国連憲章上どうしても読むことができないのですね。むしろ係国連憲章二条でしたか、内政干渉をやっちゃいけませんよという条項はありますけれども、こういう場合には国内干渉介入してもいいのですよという発想は当時なかった。もちろん私はこれを、今のUNTACを否定するものではありませんけれども、このやり方が、ともすれば西欧主義的な民主主義をこのカンボジアで、今総理おっしゃったように、初めての民主的な選挙の上にぽんと民主的な、西欧的な選挙制度を持ってくるということに若干の不自然あるいは違和感、もっと言いますと、クメール民族にとって考え方が、我々が善意だと思ってやっていることも果たして向こうから見たらそういうふうに受け取ってもらえるだろうか。私は、中田さんの悲劇はそこに一つ原因があったという報道もあるわけでありますけれども、そういう、ともすればやっていることが相手から見れば受けとめ方が違うということにもなりかねないという危惧がある。  そういう観点から、国内介入をしていく、人道的に介入をしていくことと、国連の成り立ちあるいは現行の国連憲章との間にどうしても私にはずっと関連性というものが結びつかないわけでありますけれども、もちろん、繰り返しますけれども、やっていることについては我々は評価をし、応援をしていくわけでありますけれども、その辺は政府解釈としてはどういう理屈づけでされておるのでしょうか。
  7. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 カンボジアの今回の問題、和平の問題は、御承知のとおりパリ和平協定に基づきまして和平プロセスができ上がったわけでございますが、和平協定でも、紛争当事者間の停戦合意成立をし、そしてまたその紛争当事者SNCをつくり、SNCUNTACに委任をする、こういう形で来ているわけでございまして、やはりそこにはあくまでカンボジア国民皆さん合意によってそういう形がなされ、その要請によって中立的な立場国連がお手伝いをするという形でUNTACが私はでき上がっておると思っております。そういう面においては、カンボジアの場合にはあくまで私は国連憲章に合致した行動であると、こういうふうに思っております。
  8. 中川昭一

    中川委員 もちろん、国内停戦、そしてUNTAC受け入れ同意、そしてパリ和平協定、二十カ国の同意というものがあって、これでやっていくということについては私も異議を唱えるつもりはございませんけれども、憲章の趣旨、広い意味の人類の隷属からの脱却とか圧迫からの脱却とか、そういう意味での国連憲章が掲げている理念についてはよくわかるのですけれども、この国連というのが国単位の構成でもって憲章がつくられておる、あるいは国連自体が運営をされているという中に、人道的という、いわゆる超法規的といいましょうか憲章を飛び越えて入っていくという、これは新たな時代に入ってきたんだろうということで、私は憲章の範囲内というよりも憲章を超えた新しい解釈、新しい時代に基づく新しい解釈をしなければいけないというふうに思うわけでありまして、憲章から当然に読める行為だということは、私は率直に言って同意ができないわけでありまして、時代とともに国連も変遷をしていく、また、変えるべき条文はほかの部分でも私はあると思うのですけれども、変えるべき条文については変えていかなければいけない。  これはPKOができたのと同じように、やはりみんなの知恵でいろいろな悲惨な国の復興のため、平和のためにやっていくという国際社会知恵だと思いますので、そういう意味で新たな国際社会における国連の役割というふうに考えたいと思っているわけであります。  そこで、日本国連UNTAC要員停戦監視要員あるいは施設大隊文民警察選挙監視あるいは国連ボランティア、こういう方々が七百人以上現地で今大変危険な状態、私が言っている危険な状態というのは、武力による危険な状態というものもひょっとしたらあるかもしれませんけれども、気候、風土の違いとか交通事故とか病気とかマラリアとかいろいろな問題を含めて一般的な意味で危険という言葉を使わしていただきますけれども、そういう状態の中で頑張っておられるわけであります。彼らが本当に文字どおり八合目、九合目まで来たこの時点で、大変に地元の人たちから選挙監視要員方々は感謝をされておる、日本の活躍について評価を受けておるという話を聞くと大変うれしいわけでありまして、これからさらに最後の詰めを頑張ってもらいたい。そのためにはやはり母国である我が国国民そして政府、国会が一丸となって彼らの活動応援をしていくということが、彼らが情熱を持って任務を遂行できる私は最大の支えだろうと思います。  もう一つの支えは、やはり何らかの事故や危険が予想されるとするならば、それに対して万全の対策をとっていかなければいけないということだろうと思います。現に政府は、特に中田さん、高田さんのあの悲しい出来事の後にいろいろな安全対策をUNTACに要請し、緊急展開部隊でありますとか二十四時間の医療体制でありますとか無線の傍受とかいろいろな対策が新たに追加されたわけでありますけれども、要は最初に安全対策があって、そのために私は法律や計画や要領というものが担保されておるんだという考え方を持ちたいわけであります。  日本国内、このように法秩序が確立された国家においても、正当防衛あるいはまた緊急避難のように、刑法のやってはいけないことであってもこういう状況においてはやってもいいんですよと、急迫不正の侵害に対しては、これはやはりみずからが防衛をする、また、相手に対してみずから危険を防ぐということを、ある場合に限ってはやってもいいんですよということが日本の法律の中にもあるわけでありまして、これが国際社会あるいは海外で活動する場合にも、私はそれは当然必要だろうと思うのであります。  それが長い間、この法案成立に当たっての論議の中であった自己または自己と同一の場所にいる人に対して正当防衛、刑法の三十六条に基づいて、三十七条に基づいてという日本の刑法の概念をそのまま、はっきり言って危険な地帯に持っていって、その規定をそのとおりに運用しなさいというのは、私は、果たして現実性があるのかな。カンボジアは、もちろん法秩序を今からつくろうとしておる国家でありますし、また非常にそういう意味で、広い意味で危険を伴っておる地域であるわけでございますので、私は、そういう意味で安全対策、万全な安全対策ということになりますと、現地の情勢というものをまずじっくり判断して対策をとる、まず最初に法や計画や要領があるのじゃなくて、せっかくつくった法律ではあっても、現地の情勢を見て柔軟にそれに対応していかなければいけない。  私は、これはカンボジアUNTACに限らず、今から二年前、記憶にあるところでありますけれども、ペルーでJICAの農業指導員の万三人が、テロによって日本人だけ三人殺されたという悲惨な事件がありました。あれもやはり、これは予想もしなかった危険に襲われたということで、大変悲惨な事件であったわけでありますけれども、また、ついきのうは、服部君という高校生が全く間違って人のうちにお面をかぶって行って、英語がわからなくて射殺された。これに対して陪審員は全員無罪の評決を出した。我々にとってみればこれは全く理解のできない話でありまして、少なくとも過失傷害とか過失致死ぐらいの量刑、殺人あるいはそういう議論でやられるならいいですけれども、無罪という判決が出た。これは我々にとってみれば、アメリカの社会がそうなんだからということで果たして済ましていいのか。  人命というもの、しかも本人に全く危害を与えるつもりがなかった、ちょっとした行き違いですぐ殺す、殺されるという社会というのは、やはり我々の社会と違うのだとは言いながらも、平和でそしてまた安心して生活できる国家づくりというのは、我々は日本世界一平和で安心して暮らせる国だからこそアメリカに対しても訴え、カンボジアに対しても訴え、ペルーに対しても訴えていくべきだと思いますけれども、現実に今こうやってこのUNTAC皆さんが御苦労されておる。しかも、安全対策については完全だという満足感を持っている隊員は全部ではないというふうに報道等で言われているときには、私は、やはり法や計画等でもう抑制的にその安全対策をやるのではなくて、簡単に言いますと、現地の判断に、私は、柔軟な判断に任せるべきではないか。  もちろん、彼らはプロですから、文民警察の人も自衛隊の人もプロですから、それはめったやたらに、日本憲法のもとでの国家公務員が行っているわけですから、最初から危害を加えるなんということはないので、危険を前提にして彼らが最小限にその危険を防止をするということは、現在の、今まで国会の中で細かく議論をされてきた、こういう場合はどうなんだ、ああいう場合はどうなんだといって、それがちょっとでも外れそうだったらこれは法律違反だといって大騒ぎするのじゃなくて、もっと現場の柔軟な判断に任せる。そして、仮にそれが東京の判断から見ておかしいということになったときには、これはちょっと質問さしていただきますけれども、こういう場合に、PKOの隊員が現地にやったことがPKOの法律に違反した場合には、これはどういう罰則があるのでしょうか。
  9. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいまの御指摘の点につきましては、個々具体的な場合に即して判断すべき問題であろうと思います。  ちょっと具体的な例を離れてお答えしにくいわけでございますが、例えば施設部隊の場合でございますとか、あるいは警察官の場合でございますとか、その業務の内容それからいわゆる違反の状況に照らして、それぞれの関係法令を基礎に判断すべき問題であろうと思います。  ちょっとケースを離れてのお答えというのは難しいものですから、恐縮でございます。
  10. 中川昭一

    中川委員 今柳井さんがお答えになったように、個々具体的な問題ということで、それは実際の場合で違うと思いますけれども、そういう細かい法律や規定でここまではどうだ、ここまではどうだということで東京の国会の場で細かく議論をしたって、現実状況というものは現地の隊員の皆さんが一番よく知っているわけで、もちろん法律や計画や要領も頭の中に入っているわけでありますから。その中で、しかし現実に決められている法律というのは極めて抑制的な安全対策しかできない。小銃を使うという状況なんというのは、現実にはほとんど無理な状況です。使ったとすれば、仮に法律上問題がないと政府がいかに答弁したところで、多分野党の一部の皆さんからはどうしても納得できないという答えになってくるだろうと思うわけであります。  そういう意味で、安全対策をもっともっとやろうとすれば、いや、法の拡大解釈だ、法を超えておるという議論になり、それから、安全対策をしゃ法のもとできちっとやろうとすれば、十分な安全対策ができないという矛盾がここ数日間の私は国会の議論ではないかというふうに思っておるわけでありまして、仮に現地の皆さんが法律に違反する行為があったという場合には、私は、現地の隊員が責任をとるべきではなくて、むしろPKO本部、つまり政府が責任をとっていただくという問題であって、現地の隊員が個人の判断で、こういう場合に急迫不正の侵害を云々という議論を現地の皆さんの責任だけに押し込むということは、これはあえて危険に対して無抵抗で臨みなさいということにつながりかねないということになりますので、柔軟な現地の判断、もちろん彼らを信頼して、プロとして信頼をして、現地においてより柔軟な判断をできるようにするように私は強くお願いを申し上げたいと思うわけであります。  いろいろと総理も数日間の御答弁の中で、初めての経験ですからいろいろな反省点もあった、あるいはまたいろいろな予想外のこともあった。緊急にやらなければいけない問題、長期的に考えていかなければいけない問題に分けて、これから改正すべきところは改正する、足りなかったところは補っていく、あるいは不必要な部分は落としていくという作業がこれから必要だと思いますけれども、私はそういう意味で、安全対策というものがこれからの、今回の大きな経験として、今後のPKO法の改正に当たっての議論にぜひとも入れていただきたいと思うわけでありますけれども、私が考えていることに対しての総理の御所見をお願いいたします。
  11. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 高田警視の不幸な出来事がありまして以来、現地における派遣部隊あるいは要員の職務の執行に危険が生ずるおそれがあると考えましたので、私自身が憲法、法令の許す範囲でベストの安全対策を講ずるようにという指示をいたしました。もとよりそれは、中川委員が御指摘のように、これらの諸君は十分法令を知り、十分訓練を受けた上の人であるということを承知の上でございますけれども、私はそういう指示をいたしましたので、その指示に従ってくれる限り、すべての責任は本部長である私が負うべきものである、こう考えております。
  12. 中川昭一

    中川委員 先週の土曜日に一部新聞に、邦人要員の撤収計画という、これは自衛隊の空幕長が記者会見で発表されたことであります。これは新聞記事を読ませていただきますと、緊急に撤収計画の必要があるということについての対策を派遣段階から検討を進めていたということであります。  これについて政府の方から、この報道は事実でしょうか、御確認をしたいと思います。
  13. 畠山蕃

    ○畠山政府委員 既に過日も別の委員会で御答弁申し上げましたが、今お話のございましたように、施設大隊を派遣した当初から、万一の不測の事態に備えてそういった計画を検討するようにという指示をいたしまして、それに基づいて検討が進められたことは事実でございます。
  14. 中川昭一

    中川委員 PKOの任務が終了する場合というのは、当初の目的を完遂されて成功裏に帰ってくる場合、それからカンボジア国内状況が混乱をして、もう停戦合意は崩れた、あるいは最初の三原則は崩れたという状況で、UNTACとして今回のPKO業務は失敗した、残念ながら失敗したからUNTACは引き揚げますよという場合、それからもう一つ日本独自の判断があるわけでありますけれども、これは、社会党がカンボジアに調査団を送られまして、そしてその報告というので、やはりプノンペン、カンボジア状況というのは非常に厳しいけれども直ちに日本だけの判断で撤収できる状況にない、そしてまた、社会党のPKOに対する考え方も見直さなければいけないという新聞報道がありました。冷静に判断をされ、率直な感想と率直な対策を述べられたと私は評価をしたいと思うわけであります。  とにかく日本自体だけで判断をして帰ってくるということは、これはUNTAC自体に対しても大きな影響を及ぼしますし、私はやはり、UNTACとともに今停戦合意が崩れていないという前提で業務を遂行されておるわけでありますが、今申し上げた緊急撤収計画、これは新聞報道によりますと、PKO要員だけを緊急に戻すということだ、しかも現実には自衛隊、日本の能力では展開能力がないので米軍に打診をしておるということでありますけれども、これは、PKOが帰ってくるということは停戦が崩れて激しい戦いがまた復活するということでありますから、在留邦人も何百人かいると聞いておりますけれども、在留邦人はまた別の方法にして、そしてPKO要員だけを、カンボジア各地に展開しておる七百数十名の人たちをさっさっと米軍機で引き揚げるというのは、どうも新聞報道だけ見るとちょっと納得がいかないのですけれども、これは事実関係はどうなんでしょうか。
  15. 畠山蕃

    ○畠山政府委員 現在の国際平和協力法それ自体におきましては、万一の事態におきまして在留邦人を国外へ移動させるということについての支援ということを目的といたしました業務というのは定められておりません。したがいまして、法的には在留邦人をそういう形で国際平和協力業務として救援するというか支援をするということはできないわけでございます。  ただ、現実問題として、これがどのように運用されるかというのは別問題、そういう余席がある場合にどうとかというのはさらに検討する必要がございますけれども、真っ正面からこれを国際平和協力業務としてやるということはできないということでございまして、そういう意味で、現在、在留邦人の輸送というのを別途自衛隊法で規定するべく改正法を提出して御議論をいただいているというところでございます。  なお、お話の中にございましたアメリカの支援を受けるという話については、そういう事実はございません。
  16. 中川昭一

    中川委員 こういう事態が起こらないことを念願しながら質問を終わりたいと思いますが、最後に、みずからの国の防衛とか自衛隊についてみずからの考えを国民に明確に示すことのてきないような考えを持った人たちの細かい言葉の問題に影響されることなく、高田さんや中田さんのあのとうとい使命をしっかりと受けとめていただいて、カンボジアだけではない、世界じゅうで今その国の平和と復興のために頑張っている大勢の日本人がいるわけでありますから、その人たちが熱意を持って遂行できるように、そしてまた後世に悔いの残らないような、信頼される国際社会における日本行動、これは言うまでもない、何も戦争するとか紛争に行くとかいうことじゃなくて、今言うピースキーピングというオペレーションに対して毅然とした行動をとることを政府にお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。
  17. 粕谷茂

    粕谷委員長 この際、石川要三君から関連質疑の申し出があります。中川君の持ち時間の範囲内でこれを許します。石川要三君。
  18. 石川要三

    ○石川委員 きょうはテレビ放送もございますので、時間は厳守しなければなりませんので、残された時間、極めて短い時間でございますが、簡潔に補足の質問をさしていただきたいと思います。  初歩的なことでございますが、例えばPKOというものが、国民の中には案外、理解されていながら、なかなかわからないという方も多いわけでありまして、こういう観点から、PKOというものはもう非常に歴史は古い、その中には今までたくさんのPKO活動というものが地球の上であちらこちらたくさん行われてきたわけであろうと思いますが、そういう実態について簡略に、そしてその中で特に、とうとい命を失ったその内容、どのくらいそういう方がいるのか、そこいらをかいつまんで簡単にひとつ御説明をいただきたいと思います。  そして、さらにつけ加えて一度に質問してしまいますが、我が国の初めての世界貢献の人的貢献ということでPKOというものが行われたわけでありますが、最初ちまたでは、こういう新しい初めてのケースでありますので、果たしてどこに出すだろう、カンボジアに出すといううわさもありました。しかし、それがいいか悪いかといういろんな是非論もあったと私は思っております。それは何かというと、いわゆる大東亜戦争というものを思い出すと、やはり依然として近隣諸国に不必要な疑念というものをまき散らす、こういうようなことで、初めて出すのならばあえてアジアでない方がいいんじゃないかというような意見も私はしばしば耳にしたわけでありますが、そういう中でこのカンボジアPKOを派遣した、こういう理由ですね、その辺をちょっと、概略で結構でございますが、国民皆さんによく知っていただくためにも私は政府の見解をお尋ねするわけであります。
  19. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 PKOの案件につきましては、一九四五年以降二十八件ございます。特に、一九八八年以降十五件ということで、近年とみにふえております。亡くなられた方々は九百名弱でございますけれども、もちろんこの中には病気、事故等で亡くなられた方の方がむしろ多いということでございます。  カンボジアにつきましては、長い内戦の末、紛争当事者パリ協定という協定を結びまして、それに基づいて国連UNTACの存在というのを受け入れたいということでございましたので、国連決議に基づいて国連としてはそれに応じた次第でございます。
  20. 石川要三

    ○石川委員 今の答弁では甚だ私はちょっと不満足でございますが、時間がないので私は先に進みます。と申しますのは、もう少し内容をひとつ知りたかったわけです。なぜカンボジアに派遣したかということの理由をもう少し克明に知りたかったのです。  それはそれとして、今お話しのように、その中にもかなりの犠牲者が出てきておることは、お話しのとおりでございます。そういうことを考えますと、いわゆるこのPKO活動というものは必ずしも安全、全く安全なんということはあり得ないと私は思うのですね。ところが、先日来の質問を聞いており、答弁を聞いておりましても、もう総理は安全なところへ出したんだから、安全なところへ出したからと、そればっかりだ。(宮澤内閣総理大臣「そんなことは言ってないです」と呼ぶ)まあちょっと聞いてください。そういう質問が多い。そういう質問が多い。それで、それに対しては私は、その質問というものも、安全、安全という何かまことに、全く危険のないようなところに出向いていくような感覚で、政府が、極端に言えば、うそを言ったんじゃないかというような露骨な言葉を使っている。私はこれは間違いだと思うのです。やはり今の説明を聞いておっても、相当これはリスクがあるわけなんだ。ましてをや、いわゆるPKO活動、平和維持活動をするような、その必要性のあるところは当然これは、遊園地へ行くようなそんなわけじゃないんです。だから、非常にリスクがあってしかるべきなんだ。  でありますからこそ、もっとその点を国民にぴしっと私はやはり説明する必要があるのじゃないか。私はつくづくこの質疑応答を聞いて感じたわけだ。その点、誤解ないようにひとつお願いしたい。  それで、特にその中で、例えば血を流すとか流さないとか、汗は流すけれども血を流さない、これも不的確な、不確実な、不正確な私は言葉ではないかと思うのですね。血を流すということがすべて戦争につながるというんなら、血を流しちゃいけないことは憲法は明示しております。しかし、血を流すということは必ずしも戦争ばかりじゃない。平和のためにも場合によればとうとい血を流さなければならないこともあるんだということも、これは歴史の事実なのでありますから、そういう観点に立って、いたずらにエモーショナルに、情緒的に、血を流せばすぐ危険、戦争、こういう発想が私は間違いである、このように思っておりますので、総理並びに関係方々の説明も、そういう点を明確に国民に明示をして訴えていかなければいけない。その上に、さらに平和を求め、さらにそのカンボジアの人民の幸せのために我々は人的な貢献をするんだということであるならば、私は国民もかなり理解が深まるのじゃなかろうかな、こういうふうに思うわけでございますが、その言葉の不正確といいますかそういう点が非常に私どもにはあると思うのです。  これは、どなたがいいとか悪いとかの責任じゃないと思うのですね。例えば、丸腰で行けば平和、武器を携えれば軍国主義というような、そういういまだに発想もあるということは、これは根本的な間違いである、こういうことを私は痛切に感じますので、その点、最高責任者である総理の明快なひとつ御見解を賜りたい、かように思います。
  21. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 この法律が成立いたします過程におきまして、大変に長い国会におきまして御審議、御議論がございました。その中で一貫して申し上げてまいりましたことは、平和維持活動というのは、いわば戦争がとにかく終わったという非常に脆弱な状態において、国連が武力を用いずにその中立性と信用によって平和を確かなものにする、そういう種類の活動でありますので、しかし、なおまた戦いのにおいがその辺に漂っておる状況でそれが行われますから、これを本当になし得るのは、よく言われますように、いわば歴戦の勇士のみがこれをなし得るような困難な仕事である、それゆえにノーベル賞ももらったということは御説明をしてまいりました。  特に我が国の場合、憲法の制約がございますから、この法律でもそうでございますが、一般の国連各国がなし得るよりは、はるかに所持すべき武器あるいはそれを使用し得る場合について厳しい制約を課しております。それだけに、我が国の場合には余計その困難性が高い、それだけ難しい仕事であるということは申し上げてまいりました。不幸にして、しかし、そういう犠牲者が出ましたことは、まことにそれでも申しわけないことだと考えておりますが、本来決してこれは易しい仕事ではないということは、この法律をごらんいただいても明らかであると思います。  それから、血を流す、汗を流すということは、湾岸戦争のとき以来いわばわかりやすい比喩的な意味で使われてまいりましたけれども、厳格に申しますならば、我が国の場合、いわゆる海外における武力行使というものは、これは海外における戦争に極めてつながりやすいということで、武力行使ということは我々としては慎まなければならない、こういうことを比喩的な意味で血を流す、こういうふうに言われてまいったと思いますが、厳格にはただいまのように申すべきだと思います。
  22. 石川要三

    ○石川委員 そういうようなことでございますから、やはり各国はPKOに軍人並びに軍隊というものを投入している、こういうふうなことではなかろうか、こういうふうに思います。したがいまして、そうであるならば、武器の使用というものを、私どもはできるだけ明確な基準、こういうものにして安全を確保しなきゃならないことも、これまた当然なことではないか。今回のPKO成立過程から見ていろいろと、要するにコンセンサスを得るための点で必ずしも私は完璧なものではない、このように承知しておりますので、できるだけ早く、例えば武器の使用の基準だとか等につきましても、やはり法を改正すべき点が多々あると思うのです。こういう点は、私は、できるだけ早く合意にさらに努力をして、改正に努力すべきだ、このように思うわけでございます。そうでないと、一番前線におる、活動する隊員たちが大変不安であるからであります。  さて、それは一つの努力をすべきだという私の見解にとどめたいと思いますが、昨日の新聞あるいはゆうべのテレビ等を見ましても、投票が大変高投票率で終始されていることはこの上もない喜ばしいことでございます。地区によっては八〇%を超えたというところがあるそうでございます。  これはちょっと笑い話になって恐縮ですが、八〇%というともうほとんどの有権者が行っているわけですね。昔、ある村で、初めて代議士を出したところの投票を私は聞いたことがありますが、九〇%を超えたところがあるそうです。そうしたら、その九〇%を超えた村は、病気している以外の人は全部行った。これで九〇%。ですから、八〇%を超えるということはもう並み並みならぬものなんです。  それがかりそめにも、ある一部分といえどもあったということ、これは何を証明しているか何を物語っているかということを我々はよく胸に手を当てて考えなければならない。それは何かというと、要するに、二十数年も戦火にまみれて、そして平和を希求しているあのカンボジア国民の切々たる願いではないか、私はこれ以外にないと思うのです。独裁国家だって九〇%の投票率なんてないのですから。ましてをや、自由で、全く拘束されない方々投票所へ八〇%行くということは、これは何を語るかということを私どもは激しく胸に刻むべきである。そういうことは、我々、いささかなりとも選挙の洗礼を受けた者として、本当に感動せざるを得ない。これを今日やろうとしている。したがって、あの二名のとうとい血は、恐らく私はむだではなかった、このように思うわけでございまして、中には早く撤収しろという声もありますが、私はここへ来たら歯を食いしばってもやはり初志貫徹をすべきではないか、ぜひ本部長総理にこの点を要請を申し上げたいと思うわけでございます。  そして私は、それと同時に、もう時間がないのではしょって申し上げますが、私は、ただ単にポル・ポトの対策はこういう活動だけではおさまらないと思う。これはやはり一つの、外交との大きな関連があろうかと思います。昨日、社会党の関委員ですかと武藤外務大臣とのやりとりの中で初めて私は知って大変驚いたのですが、例えば対ロシアのあの不法投棄の問題についてもそれほど努力をされている。しかし国民には目に映らない、残念ながら。これをもう少し我が国の外交努力というものが目に映るような、世界に映るような、そういう外交というものもこれからの展開が必要ではないか。ですから当然、このポル・ポトに対する問題も、例えばベトナムあるいはタイ、タイなんかは最も緊密な関係ですね、タイ、中国、こういうカードを使って我々は外交展開をすべきではないか、このように思うのです。  今までにどういうことをおやりになったかわかりませんが、もしそのことにつきまして御所見があるならばぜひひとつお聞かせをいただきたいし、また今後も努力を続けていただきたい、このように心から切願するものでございます。
  23. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 パリ和平協定が締結される前から日本としてはカンボジア和平については努力をしてきたことは、例えば九〇年の六月に東京会議が開かれたということでもおわかりをいただけると思います。  私も外務大臣就任以来いろいろと、例えばポル・ポト派に対しても、タイのある筋を通じてポル・ポト派に働きかけたり、あるいはまた今川大使に、非公式なルートを通じてポル・ポト派に働きかけたり、あるいはまた北京における、シアヌーク殿下を訪ねた際に、今川大使並びに池田局長からポル・ポト派の代表にもいろいろと自制を求めたりしておりますし、一方、政権党に対しても自制を求める、またあとの二派に対してはぜひ選挙には参加するようにということは、私から親書を出してお願いをしているわけでございます。
  24. 石川要三

    ○石川委員 質問を終わります。
  25. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて中川君、石川君の質疑は終了いたしました。  次に、伊藤忠治君。
  26. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 私の質問時間は六十分いただいたわけでございますが、まず、質疑に入ります前に、党を代表しまして、過般、カンボジアにおいて任務遂行中に、志半ばにして凶弾に倒れられました、国際ボランティアの中田さん、文民警察官の高田さんを初め犠牲となられた他国の皆さんのみたまに対して、御冥福をお祈りいたしたいと思います。また、御家族の皆様に心からお悔やみを申し上げたいと思います。負傷された皆さんには、一日も早い御回復をお祈り申し上げたいと思います。  さて、今日、PKO問題に対する世論の関心はかつてなく高まっていると思います。犠牲者が出てから関心が高まったという面もあるかと思いますが、もしそうであるとするならばまことに悲しいことであると思っております。国民は、今回のあの事件を目の当たりにしまして、非常に不安に思っているのじゃないでしょうか。私はそう思っております。自衛隊の御家族の皆さんにすれば、もちろん隊員の皆さん希望PKOに出られるということには手順としてはなるのですが、やはりこれは法に基づいて国家意思として行動することになるわけですから、そういうことを考えますと、自衛隊の家族の皆さんは、もしそういう立場に立てはどうしようかしらという不安は非常に強いのじゃないか、私はこういうふうに思っているわけでございます。  しかし、これを契機にしまして、我が国PKO問題やあり方について議論が深まる、そして誤りのない方向が見出されるとするならば、このことこそがお二人のとうとい犠牲に私たちがこたえる道になるのではないか、こんなふうにも考えているわけでございます。私自身も、与野党の立場は違いましても、PKO法案の国会審議にかかわってきた一人でございますが、そういう意味で、私自身、責任も感じつつ、そのために努力をしてまいりたい、こんなふうに考えているわけでございます。  まず初めに、私は、武装解除の問題点について、昨日も議論がございましたが、触れてみたいと思います。  投票は今進行中でございまして、二十八日まで現地で行われているわけですが、その実態は、平静は保っていると言われますけれども、ゲリラのことですから、大変問題になっておりますポル・ポト派の襲撃ということですから、いつそれが行われるかわからないという身の危険を感じつつ、武装兵に守られた異常な状態の中で実施されているということははっきりしているのじゃないかと思うのです。本来の選挙というのは、申すまでもなく、このような形であってはならぬ、こう思っております。なぜこのような異常状態選挙になったのであろうか。それは一口に言って、UNTACがボタンのかけ違いをした、私はあえて極言をさせていただきます。そうじゃないかと思うのです。一番そこに原因がある。ずっと私も勉強させていただきましたが、カンボジアの現地にも二度行かしていただきました。ジャングルにも入りました。あるいは被災民の部落にも入りました。そういう経験を通して、やはりボタンのかけ違いがUNTACにあったのではないかな、こんな気がしてならぬわけであります。  つまり、一昨年の十月にパリの和平協定が締結をされまして、そうしてUNTACが発足をしました。PKFが武装解除に当たるということ、そして一方で文民警察官は治安の確保に当たってきているわけですね。選挙監視要員皆さんは大変御苦労なさってそれの準備に当たられて今日の選挙、こういう段取り、計画があったわけですが、肝心の武装解除がポル・ポト派の反対で挫折をしたわけです。これを棚上げしたままで選挙に突っ走ったという、ここにボタンのかけ違いがあった、私はこう思うわけです。ですから、徹底して武装解除をUNTACは追求すべきであった、今でも私はそう思っております。なぜUNTACはそうできなかったのでしょうか、しなかったのだろうかという疑問がまず第一点あります。後でお答えいただきたいと思うのですが、まず第一点。  二点目は、そのもとでカンボジア人たちをまとめていこうということでSNC、最高国民評議会が設置をされているわけですが、そのこととのかかわりで、SNC、これに加盟しております四派を初めそういう関係者はどのような状態だったのか、どういう協力体制だったのかということを二点目にひとつお答えをいただきたい。  三点目。このSNCにはオブザーバーで日本も加盟しているわけです。代表して現地の今川大使などがオブザーバーとして会議の都度参加をされているわけですね。日本政府はどのようにその節々において積極的な対応をされているのでしょうか。こういう疑問がわいてまいります。まずこの点について政府の見解を求めたいと思います。
  27. 池田維

    ○池田政府委員 お答え申し上げます。  最初に、どうして武装解除ができなかったかという点でございますが、昨日のこの予算委員会の場でも幾つかの御論議がございましたけれども、やはりポル・ポト派を含めて四派が武装解除を行うという本来のパリ協定の規定どおりに行おうという決意は、ポル・ポト派を除きますカンボジア各派、それから主要関係国すべてにあったわけでございますけれども、ただ残念ながら、ポル・ポト派は特に三つの理由を挙げてそれができないということを言ったわけでございます。  一つは、SNCの権限が強くないということでありますし、もう一つは、プノンペン政権の五つの省庁に対する監督が必ずしも十分でない、三つ目は、ベトナム軍が存在するということでございました。しかし、この三つの条件のうち、特に二つの条件につきましては、国際社会は、もしそれがパリ協定の枠内で解決できるのであれば妥協点があり得るのではないかということで全力を挙げて対処したわけでございまして、その間に、日本もタイと一緒になりましてポル・ポト派のキュー・サムファン議長と会談を行いました。私も四回のうち三回に参加いたしました。ただ残念ながら、特にベトナムの問題があったためにこの問題は具体的な成果を見なかったわけであります。これはベトナム軍の存在というものをいかに検証するかという関係にかかわっているわけでございますけれども、ベトナム軍がいるかどうかということは、UNTACが最終的に決定すべき権限を持っております。今までのところ、UNTACがベトナム軍が存在したといって実証して挙げた例は八人でございます。このことを見ましても、ポル・ポト派の主張にはそれを裏づける根拠はないということは申し上げていいと思います。それは国際的にそういうように認められたわけでございます。  したがいまして、我々としては、パリ和平協定が当初考えていたような理想の形とは違うということはございましたけれども、やはりカンボジアの多数の国民が、これだけ長い間戦争で荒廃し、しかも和平を本当に心から待ち望んでいるという現状を踏まえましたときに、一つの派の主張のみによってすべての和平プロセスをおくらせることはできないということでございまして、これはカンボジアポル・ポト派を除く各派の指導者、それから主要関係国、UNTAC、すべてが結論を出しまして、ポル・ポト派に対しては門戸はあけておくけれども選挙は行う、そうしてその選挙を行うことをことしの一月に北京で決めたわけでございまして、このときにはポル・ポト派もこれについては異論を唱えなかったという状況がございます。  それから次に、SNCがどのような状況であったかという御質問でございますが、このSNCといいますのは、カンボジアの四派が構成するメンバーでございまして、これがパリ和平協定上は主権の源泉でございますけれども、このSNCは十二人のメンバーのうち六人がプノンペン政権の側、それからあとの六人が三派側から二人ずつというようになっているわけでございまして、常にカンボジア和平の重要なプロセスにおきましては、SNCが会合を開いてその都度決定を下してきたというわけでございます。そうして、国際社会はこのSNCの決めたことを認知していくという格好をとってきております。  それから三番目に、このSNC協力関係に立っ主要関係国の動きでございますが、これは先ほども申し上げました。大臣からもお話がございましたとおり、日本といたしましては、この主要関係国のうちの一つとして、パリ和平協定が結ばれますずっと前からこのカンボジア和平のために外交的努力を払ってきたわけでございまして、その一つ日本の努力の大きな結果というのが九〇年の六月の東京で開かれたカンボジア和平に関する閣僚会議でございます。今問題になっておりますこのSNCのメンバーの構成をどうするかということを決めましたのは、実はこの東京の会議であったわけでございまして、このときも実は日本政府カンボジアの各派と十分に協議をしながら今のSNCの構成を決める案を提出したわけでございまして、そうしてこれが結局カンボジア各派、それから世界の主要国によって受け入れられたということがございます。  その他につきましては、その後も節目節目に関係国は集まってカンボジア和平のために努力してきておりますし、日本としてもその中でできるだけの努力をしてきたし、今後とも続けていきたいと考えているわけでございます。
  28. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 説明をいただきましたが、結局この今日の状態を招いたその原因というのは、ポル・ポト派が武装解除を拒否した三つの条件のうちの三つ目、ベトナム人がいるじゃないかということを理由にしているわけですね。このことでないのでしょうか、結局のところは。それで、そのことを検証するというのは非常にこれは難しいと言われていますよね。長い歴史を経てベトナムの皆さんというのは定住しているわけですからね。もうこれは事実上カンボジア人だという人だっているわけです。  問題は、軍隊にどれだけいるかというようなことに焦点が絞られたんだろうと思いますが、私はあえて言わせていただきますが、いろいろその後も引き続いて日本なども協議、協力体制というのはとられてきているわけですが、この問題でデッドロックに乗り上げた、しかしこの問題をUNTACがオーケーと聞いて引き下がってきたのじゃないのか、あきらめたんじゃないのか、私はこのような気がするんですね。譲るべきじゃなかった。むしろそのときにこれをはね返してでも、とにかく武装解除に彼らを同意をさせるという、言うならば非常に強力な取り組みというのがその時点でなぜなされなかったんだろうか、こう思うんですよ。  つまり、こんなに襲撃が行われたり、多発したり、犠牲者が出る。それが、PKOで現地に参加をしている諸外国の隊員の皆さんにまで犠牲者が及ぶという状態でしょう。だから、そういうふうな状態になるということは、恐らく専門家が集まられているんですから当然予測できたであろうと思います。想定できたであろう、私はこう思うんですね。なぜそのときに、多少の抵抗があっても、UNTAC国際世論も背景にしながら武装解除を成功させるために、ある場面ではこれは強引でもいいと思うんですよ。ここが一番の正念場ですからね。そういう取り組みをなぜできなかったのかな。私はこういう疑問なり問題点として痛感をしておりますので、これはここで議論したって、済んだことでしょうし、なかなか結論は出ないわけですが、そのことだけは踏まえておきたいと思うんですね。  ですから、そういう意味ではUNTACの責任というのは重大だなと私は指摘をせざるを得ません。つまり、このカンボジア和平というのは、これは史上最大の作戦と言われますが、使っている経費は最高なんですよね。国連始まって以来のお金も使ってやっているわけです。大変な人が動いているわけですね。それだけに今の選挙は成功してもその後のことがどうかなという点では、各般にわたって皆さん方からも不安が、あるいは問題点が指摘をされていることを考えますと、私はその点をまず指摘をしておきたいと思うわけです。  武装解除が棚上げになって、当然、武力を持っているわけですから、ああいう武力紛争というのが起こるということは想定できたはずなんですね。そういう状況の中で二人のとうとい犠牲者を出してしまった、結果的には。こういうことについての情勢判断、これは日本政府としても、恐らく直接現地で対応されておられた関係者の皆さんあるいは総理を初めそういう状況になっていくのかなということの情勢認識はあったんでしょうかね、なかったんでしょうかね。  これはちょうど国会審議が終わってからのような状況になると思うのですが、あの国会審議というのは非常に何かバラ色のPKOが振りまかれまして、安全だ、平和だ、そこへ行ってもらうんですから危険は全然ありませんというようなことが何かセールスポイントになりまして審議というのがずっと流れていったような雰囲気を私たちは感じているわけです。なかなかそうはいかないですよということをむしろ私たちは強調したと思うんですが。だから、総理を初め皆さん方は、武装解除が棚上げになったというその瞬間から今日が想定できたのか、されていたのか、それとも、そんなことはよもやなかろう、選挙は万々やっていけるだろう、平和のうちにというふうにお考えになっていたのか、その点の判断をちょっと聞かせていただきたいと思うんですね。どうでしょう。
  29. 河野洋平

    ○河野国務大臣 伊藤先生いろいろ御意見をお述べになりましたけれども、先ほど御指摘のベトナム人がいたかいないかというポル・ポト派の指摘に対する判断でございますが、私が聞いておりますところでは、当時ポル・ポト派は、ベトナム人がいるじゃないか、しかもそれは、いるじゃないかというのは二百万人ぐらいいるじゃないかというようなことを言っておったわけでございます。それはもうだれが見ても、その二百万人ベトナム兵もしくはベトナム人がいるじゃないかという指摘は、これは何といいますか正当な根拠がある指摘とは思えない。UNTACは御承知のとおり中立性を大事にしなければなりません。中立性が最も重要でございますから、これはポル・ポト派の意見だけに耳を傾ける、しかもその根拠が必ずしもはっきりしないポル・ポト派の意見にばかり耳を傾けるというわけにはいかないわけでございますから、これはUNTACUNTACなりに検証をして、そういうことはないということを言うというのは、これもまた当然のことだと思います。  さらに、UNTACの役割は、武装解除を強制するということは、これはUNTACにはその能力もなければ、その資格もないわけでございます。武装解除は、つまりPKO活動というものは、権威と説得、粘り強い説得とその信頼関係をつくることによって和平プロセスを進めていくというのがPKO活動の本来の趣旨でございますから、私は、UNTACを中心とするPKO活動は、停戦合意を受けて第二のプロセス、武装解除に入り、そして制憲議会選挙へと進む、そういうプロセスを、粘り強く説得をしながら国連の権威というものをもって進むべく努力をなさった。私はUNTACの努力を評価して間違いでないというふうに思っておるわけでございます。  残念ながら一つのグループが武装解除を拒否した、これはまことに遺憾なことでございます。そもそも、先ほどアジア局長からも御説明を申し上げましたとおり、四派はこぞって停戦合意に署名をし、そしてこの制憲議会選挙を経てカンボジア人カンボジアをつくるべく努力をする、その努力に世界各国の力をかすことに同意をして、むしろそれを望んで、UNTACはそこに出ていったわけでございまして、この問題について四派はさらなる自制があってしかるべき、とりわけ武装解除を拒否した集団に対しては大いに世界の非難が集まるというのは当然のことであろうと思います。しかし、その結果として、残念ながらとうとい犠牲を出したことは、私どもにとりましてもまことに返す返すも残念、申しわけない気持ちでいっぱいでございます。その責任を果たすべく、万全の安全対策をとるべく最大の努力をいたしているところでございます。
  30. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 答弁がすれ違っているんですがね。私が聞いたのは、武装解除が事実上手つかずになった、失敗に終わったということになれば、平穏な状況選挙はやれないと見るのが当然だと思うのですが、いやいや、平和のうちにやれるのだという認識でこられたのですかどうなんですかということを私は質問したんですよね。手短に。認識の問題です。
  31. 河野洋平

    ○河野国務大臣 繰り返し申し上げますが、四派は停戦合意に署名をしているわけです。合意をしているわけでございます。それで、武装解除は、残念ながらそのうちの一つのグループが拒否をいたしました。それにはいろいろなわけがあるということを先ほど来から説明がございます。その説明の中のベトナム人に対する指摘は、恐らくベトナム人に対する大変な恐怖を持っていて、自分たちが武装解除をするということは身の危険も感じたかもわかりません。そうしたことを考えれば、武装解除ができなかったあの場面、しかしその場面というのは一瞬そのモメントがあったわけではなくて、武装解除についてずうっと努力をし続けてきているわけでございますから、武装解除をさらに進めるべく努力もする。と同時に、武装解除を拒否したその理由が、自分自身の身の安全を守るという意味もあるとすれば、しかも今UNTACが目指していた武装解除は一〇〇%の武装解除ではないわけでございまして、その一〇〇%の武装解除ではない一定限度の武装解除ができなかったことだけを指して選挙が行えないと思ったか、もし仮にそういうお尋ねであるとすれば、そうではなくて、停戦合意に基づいて各派が自制をして選挙は行えるものというふうに考えた次第でございます。
  32. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 時間の関係がありますから、すれ違いをいつまでもやっているわけにいきませんが、私はやっぱりそこに認識の差があったんじゃないかと思いますね。しかも、今官房長官おっしゃられたように、一〇〇%の武装解除じゃないんでしょう。限定的なものですよね。ということになれば、お互いに一定の武力は温存しているわけですものね。そうしたら、やはり武力衝突というのが起こる可能性はあると思うのですよ。このことで時間を余りとれませんが、その認識の違いがこれからもずっと尾を引くんじゃないか、こんなふうに私は考えます。  次に、選挙のことについてお尋ねをしますが、現在、選挙は順調に進んでいると報道されているわけですが、これもあすはどうなるかわからぬですね。そういう不安定な状況のもとに、万全を期しているとはいうけれども、相手はゲリラですから、どういうハプニング、つまり不祥事件が起こらぬとも限らぬ、こういう非常に不安定な状況にあると思うのです。ですから、問題は、一つそういう衝突、不祥事件が起これは、これは即座に中止、中断という即応態勢をとられるべきだと思いますね。そういう決断が必要だと私は思うのです。そういうことをきちきちやっていくということになりませんと、今後の状況の推移、展望なんかを考えますときに、私はそういうめり張りのきいた決断というものを政府に求めておきたい、このことを強調したいと思います。  特に、テレビでも言われていましたが、選挙監視要員は、採用内容あるいは実施要領なんかで拝見をしましても、大変な仕事をやられている。ところが、テレビのインタビューじゃありませんが、三日間水がないというのですね。ですから、施設部隊からそれじゃすぐ運びましょうというような画面が出ておりましたけれども、本人が任務遂行するために飲み水がなければ、なかなか任務が遂行できないわけですね。そういう生存にかかわっていく一番基本的なこともなかなかフォローされていないという、こういう状況があるわけです。  選挙監視要員皆さんは、選挙が終われば投票用紙を輸送するという業務もありますね。もちろんこれはPKFがついていくんでしょうが、しかしそれでも、いっその投票箱がねらわれるかわからぬというこの不安の毎日。また、投票が終わればそういう心配というのは、言うならば危険と裏腹で毎日過ごされているということなんですね。ですから、そういうフォロー策というのはUNTACはやっているんですかね。どうもあれを見て いますと、UNTACは、こちらへ行きなさい、あちらへ行きなさいというので配属とか配置計画は出しますけれども、あとは日本でやっておけ。日本は、たまたまタケオには施設部隊がいますから、そこでひとつ日本人同士でやっておけやというふうを言うならば業務の遂行のやり方なんですかね。  よく聞くのですが、大体、UNTACといいますか国連機関に、言うならばきちっとした対応を望むのは無理だ。ぎくしゃくするだとか、行き違いだとかというのが非常にラフな面で見られる。だから、あんまりそういうところを、これは日本の体質もありますよ、国連中心主義、国連といえば、国連は何かこう完璧のように思う、神様みたいに思うという、そういう風潮がありますよね。そうではなくて、大体、このUNTACも寄り合い世帯ですからね。指揮命令ははっきりしているのでしょうけれども、これは末端までいきますとどうもそのあたりがうまくいっていない。だから、選挙監視要員にしたって文民警察官にしたって、警察の指導かと思って行ってみたら、ありましたですね、選挙事務所の何ですかガードをやらされたり、要人のガードにまで引っ張り出されるなんというようなこと、そんなのは私の仕事じゃないと。そういうことになれば、余計これは危険が出てくるわけですからね。  このあたりは、官房長官が一番現地の状況は内閣として詳しいと聞いておりますが、そのあたりはフォローをきちっとやはり安全策としてやってもらわなきゃいかぬな、こう思います。
  33. 河野洋平

    ○河野国務大臣 UNTAC要員の安全、なかんずく食糧、水その他生活必需品といいますか最低限度の生活環境を整える、そういう仕事は当然UNTACが行うべきものでございます。しかしながら、カンボジア全土に散っている二万人を超えるUNTAC要員のことでございます。限られた輸送方法、輸送手段ということもあって、必ずしも毎日潤沢にそれが届くということにはなっていない部分が見られることも事実でございます。  タケオ州内に配属、配置されております選挙監視要員、これはおよそ百名を超える各国の選挙監視要員の中に四十一名日本からの監視要員がおられますが、その四十一名を初めとして世界各地から集まってこられているタケオ州内の選挙監視要員方々に対して、政府としましては、施設大隊に対して、法令の許す範囲内でその安全対策にベストを尽くせという指示をいたしました。施設大隊は、本来業務でございます道路や橋をかける仕事あるいは輸送の業務などを行うに当たりまして、その周辺の治安状況その他を情報収集するということもかねてからやっておったわけでございますが、その情報収集に際しまして、今回、各国の選挙監視要員が配属、配置されております投票所周辺も情報収集のために回りますので、その折にはそうしたところにも立ち寄りまして、情報の交換をいたしております。そうした折に、例えば、もう少し水が欲しい、自分の口に合うこういった食べ物が欲しいというような御要請も伺ってきておりまして、そういうときには、次に情報収集で伺うときにはそれをお届けをするというようなこともいたしております。  さらに、きのうも本委員会で申し上げましたように、最近ではいわゆるミニコミ紙もつくりまして、相互の意思の疎通を行うべく、あるいはまた御家族に対します毎日の状況を報告するということもあって、そうした連絡事項を記載をした印刷物をつくっているところでございます。そうしたきめの細かいバックアップも必要というふうに考えて、最善を尽くしておるところでございます。
  34. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 二十八日に投票が終わるわけですね。投票が終わりますと、当選者の決定があって、議会が議席が決まって開催をされて、制憲議会ですから憲法をまずつくる、それに基づいて内閣が誕生するのですか、それで新政権が発足、こうなりますね。  ポル・ポトは反対しているわけです。状況は、こういう非常に危機感を感ずるような安定していない状況なんですね。順調に新政権は誕生する、こういうふうにお考えですか。簡潔に。
  35. 河野洋平

    ○河野国務大臣 委員承知のとおり、選挙投票率はかなりの高率を示しつつございます。あの投票率の高い伸びを見ておりますと、私どもが報道に接しておりますこととはいささか実態が違うような感じも実はいたします。投票所が大変危険だという報道がございましたけれども、一方で高い投票率、つまり大勢の人たち投票所に行っておるということは、情報に間違いがあるのか、あるいはそういう危険を冒してでも自国の新しい体制をつくるために努力をしようとしているかということでございます。  そこで、あれだけのカンボジアの有権者の方々選挙に積極的に参加をしておられるということになれば、この選挙の結果は、恐らくカンボジアの大多数の方々がお認めになる結果になるだろうというふうに思います。もちろん、選挙をボイコットしているグループがあるということも事実でございますが、これも情報によれば、ポル・ポト派といえども選挙参加をしている部分もあるという情報もございまして、まあその辺はまだ不明確でございますが、いずれにいたしましても、大変大勢の方々、高いパーセンテージの方々参加した選挙の結果は、カンボジアにとってもあるいは国際社会にとっても、それは若干の問題があったとしても、高い投票率国際社会もこれを認め、もちろんカンボジア国民もこれを認めて、議会が構成され、そこで憲法が制定をされるための作業がなされるわけでございます。  国連におきましては、三カ月間という時間をかけて、そこで憲法が制定され、例えば、一時は、その際に大統領制が導入されることもあるかもしれないとか、あるいはさまざまな議論がございましたが、これらはいずれも選挙の結果を踏まえて、カンボジア国民意思を外した憲法が制定されるというところからスタートをするものと思います。
  36. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 肝心の、見通しはどうですかということについてはお答えになってないんですね、経過の説明でありまして。  私はこう思っておりますね。今長官言われまして、選挙は成功するであろう、したがって、よい結論が出て新政権が誕生するであろうというところまではお答えになりました。しかし、ポル・ポト派にしてみれば、選挙も実施をされた、新政権も三派連立で恐らく誕生したということにでもなれば、極めて不利な立場に追い込まれるんじゃないでしょうか。それで、プノンペン政権はその中でも中核的な位置を占める、選挙で圧勝した、新政権を事実上握る、こういうことになれば、国際的にも認知をされたという優位な立場に立ちます。その勢いで、ポル・ポト派を非合法化して制圧をするという、そういう挙に出るんじゃないでしょうか。恐らくポル・ポト派の方だって、そういうことはわかっていると思うんです。そうなれば黙っていない。選挙後の武力紛争というのは激化、拡大する、今日以上に。そうなれば危険な状態がむしろ増すんだ、こういうことが考えられないでしょうか。大変その点は認識の違いなんですが、私たちはそのように考えています。  もしそういう異常な状態になれば取り返しのつかぬことになりますから、選挙が終わったんですからね、選挙監視要員皆さんはもう役目は終わりましたから、これはもう、すぐ引き揚げてはどうでしょう。それから、文民警察官の皆さん、新政権ができたんですから、まあそれは言うならばポリスの指導というのは残っているかもしれませんけれども、そこまでやることはないでしょう。だから、ここでもう任務は終わったということで、これも撤収をされる。施設大隊皆さん、どうなるか、そのときはまた危険な状態になりますからね。言うならば、この際、選挙が終わったら一区切りをつけるということで可及的速やかに撤収をされてはどうか、こういうことを私たちは申し入れたいと思うんですが、どうですか。
  37. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 撤収の問題は副本部長である官房長官の方から御答弁いただくとして、私の方は、今の見通してございますが、これは私はやはり、先ほど申し上げたのでございますけれども、カンボジア国民の、本当に有権者の約九割が登録、そして七割以上の方が投票されている。これはまだこれからもっと投票率が高まると思うのでございますけれども、これは長い間の内戦の中で、しかもこのような民主的な選挙は二十一年ぶりでございまして、カンボジア国民が多少の不安定な状況の中にあってもとにかく選挙に行くということは、民主的な国家を、しかも平和な国家自分たちでつくりたい、こういう気持ちであり、そして私はやはり一応カンボジアにおいては求心力を持っておられるのはシアヌーク殿下だと思うのでございますが、これが北京から帰ってこられて、全政党、全国民に呼びかけられたというのは、ポル・ポト派に対してもある程度の影響をこれは与えているのではないかというふうに私は判断をいたしております。その意味において、あとはカンボジア国民が決められることでございまして、そのような御心配のないことを私は心から願っているわけでございます。
  38. 河野洋平

    ○河野国務大臣 伊藤委員は撤収についてお尋ねでございますが、選挙監視要員は、その任務の終了が六月十一日でございまして、これは撤収ではございません。任務を終了して帰ってくるという、任期と申しますか、それが六月十一日ということになっております。  文民警察につきましては、九カ月間の任期で現在行っていただいておるわけでございまして、この九カ月目は七月の十三日でございます。  さらに施設大隊は、UNTACのマンデートは九月十五日でございますが、施設大隊は十月末までの任期を持たしております。これは、仮に九月十五日に国連のマンデートが終了をいたしますと、それから、それこそ行っております荷物その他を全部畳んで戻ってくるというのに若干の時間がかかるという意味でございます。ただし、国連のマンデートが九月十五日以降どういうことになるかは、今の段階では、何とも申し上げる段階ではございません。
  39. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 選挙監視要員は六月十一日に終わるからこれは帰ると。文民警察官それから施設部隊、これは任期満了までいる。  それで、撤収を速やかにしてはどうですかと私は質問しているんですから、それに対してイエスかノーかを答えてください。イエスかノーかで結構です。
  40. 河野洋平

    ○河野国務大臣 選挙監視要員は、選挙の終了とともに、投票が終わって開票が行われ、報告が済めば、これは戻ってくる。その他のことにつきましては、選挙が終わって、伊藤委員も若干混乱があると思いますが、選挙が終わるということは暫定政権ができ上がるということとは違います。そこで、暫定政権のでき方その他によって国連の御判断がまた新たに出る可能性もあるかと思います。今ここでその状況を仮定して申し上げることは適当でないと思います。
  41. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 わかっています。選挙が終わっても、新政権誕生まで時間がかかります。選挙が終わったらまた火を吹くんじゃないかと私たちは思っておりますので、可及的速やかに撤収をさせるべきだということを言っているわけで、これは政府と意見が合わない、こういうことですね。  次に、警護、武器使用の問題について触れたいと思います。いずれにしても、これは現在の法に決めてなかったことをやろうということになったわけです。これが一つですね。警護の問題、それから輸送の問題もそうですよね。これは官房長官苦労されて、人を運ぶのも輸送のうちだというので、これは含まれたわけです。それの理由は、緊急事態、緊急避難を理由に、法の拡大解釈で実施に踏み切った、こういうことになると思うんですね。違いますか。(河野国務大臣「違います」と呼ぶ)それはあれですか、法の定めとしては、そういうケースもこの法の範囲内でできたんですか。
  42. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 輸送の業務につきましては、先生御承知のとおり、国際平和協力法三条の業務の一つに入っているわけでございます。これを実施計画に入れまして、施設部隊の業務の一つとして輸送、これは物資、人、両方でございます、これを追加したわけでございます。したがいまして、輸送の業務と申しますのは法律の範囲内であり、また実施計画、実施要領の範囲内でございます。
  43. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 警護の点はどうですか。輸送は私も知っていますよ。警護はどうですか。
  44. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 いわゆる警護というものは、これも御案内のとおり国際平和協力法の業務には入っておりません。したがいまして、我が国の施設部隊はいわゆる警護というものはできないわけでございます。  ただ、現在やっておりますのはいわゆる警護というものではございませんで、先ほど官房長官から御答弁ございましたけれども、施設部隊の本来の任務、すなわち建設でございますとかあるいは輸送あるいは水、油の供給というような、食糧の供給等々ございますが、そのような施設大隊の本来の業務の一環として、例えば情報収集をする、あるいは情報の交換をするということをやっているわけでございまして、いわゆる警護をやっているというものではございません。
  45. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 そのようにして拡大解釈、だんだん適用の範囲が広がっていくわけですよね。本来、施設部隊には警護は業務範囲に入っていなかったのを、選挙監視要員の安全確保のために宿舎を提供しなければいかぬ、水や食糧の配付だとか、あるいは情報収集だとか、そういうもので巡回も要る、当然その過程ではガードという側面が出てくる、実態が出てくる。どうしたってそういうふうにしないことには安全確保にならない。だから、苦肉の策として、現地の状況も私は想定できるのですが、そういうことで、まあ何とかこの急場をしのごうという知恵を出されたのが今回の結論なんですよね。現地におればそういう気持ちになるということは私はわかるような気がするのですよ。しかし、問題なのは、法で決めて、国家意思として行動しているわけですね。ボランティアの皆さんが現地で、危ないと思ったからとっさに自分のアイデアでいろいろなことに動くということとは一緒にならぬわけですよ。だからこれは問題なんですよ。組織として動いているわけですね。  ですから今回のように、本来ならば業務に入っていなかった警護を施設部隊の任務の範囲として広げていくということは、これは法の解釈を広げる、そういう実績を既成事実として積み上げていくということです。安全確保が目的で出ているわけですからね、当面は。緊急避難ですからね。そこで出された策なんですから、当然これは武器使用と一体的な関係にあるわけです。これはそうなんです。何といったってそうなるんです。相手がどんと来たときに守れるという態勢をつくっているわけですよ。でなければ、こういうことを何も苦労して策を編み出す必要はない、私はそのように思うのです。  ですから、小沢一郎さんだって言われているじゃないですか。そういう場面を想定すれば、あらかじめ攻撃される事態を予測して自衛隊を配置する、襲撃があればこれに応戦をするという態勢になるんですよ。ということは、憲法が禁じている国権の発動による武力行使に該当する、そういう可能性が十分出てくる。だから、なし崩し的にやるのではなくて、そういう業務が必要だ、やってみて必要となったというんだったら、きちっと法令を改正をして、けじめをつけてやるべきだ。ところが、現地の判断で必要なんだからまあやっていこうか、次はこれが足らぬからやっていこうか次はこれだ。結局既成事実が積み重なっていって、そこにどんと紛争が起こる、武力衝突が起こって血を流すというような場面になってきたら、これはもう武器使用の範囲を超えて、武力行使ということにだんだん拡大していくではないかという点を、私たちは非常にこれは懸念しますよ。  そういう立場で、私たちは、中断、撤収を言ったのもそういうことです。現行の法のもとには決めでないことを、それを法を犯してやるのがいいのか、危険から身を守るというためには法を犯してでもやるのがいいのか、それとも、そんなに危険だったら法を守るという立場で中断、撤収をするのがいいのか、私ども議論しましたよ。そこで私たち党の結論としては、涙をのんででもこれは中断、撤収と決断をすべきである、こういう結論に達して、総理に対しても党から申し入れをさしていただいたわけですよ。だから、そういうふうな考え方に立つかどうかです。ここのところをけじめをはっきりしておかないと将来に私は禍根を残すと思いますよ。どうですか。
  46. 河野洋平

    ○河野国務大臣 いろいろ御意見はありがたく拝聴いたしますが、法律の範囲、この国会でお決めをいただいきました法律の範囲を超えて行動することは断じてないということを私はここで断言をいたします。我々は、憲法のもと、国会において法律で国際平和協力隊法をつくり、その法律に基づいてカンボジアPKO活動参加をしているのであって、その法律の範囲を超えるようなことはあり得ないということを申し上げておきたいと思います。  伊藤委員は警護についていろいろ云々されますが、先ほど政府委員から御答弁申し上げましたように、私どもは警護ということをやっているわけではない。繰り返し御説明を申し上げて恐縮でございますが、宮澤総理からは、特に、法律の範囲内でベストを尽くせ、こういう御指示がございまして、法律の範囲内で施設大隊の諸君は本来業務の道路をつくり橋をかける、あるいは輸送業務に当たる、こういったことの円滑な遂行のために情報収集を行うのはこれは当然のことでございまして、その情報収集のために、周辺の情報収集に歩いているわけでございます。その情報収集の際に、投票所におられる選挙監視要員方々とも情報の交換を行う、これもまた当然のことであろうと思うわけでございます。
  47. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 官房長官の今の答弁を聞いていますと、ずっと報道でこれまでのこの結論が出るまでの経過がございますが、官房長官自身の考え方も随分変わっていますね。私は随分変化をしてきたと思いますよ。そういう考え方で言うならばこれからもやっていくということだったら、大変問題だと思いますね。だから、これはけじめをはっきりつけるべきですよ。そういう意味で、時間の関係があるから、意見がここまで対立していると結論は出ないと思いますが、非常に危険だと思いますね。危険だと思います。やはり法に書いてないというか規定されてないことは、法を守るんだったら守るようにしなければいかぬ。いや、犯してでも身の危険を守るというんだったら、それは政府の責任でやる。そのかわり結末をはっきりつけてくださいよ。責任を明らかにしてくださいよ。でないことには、ずるずるずるずるいくということは、私はこれは許せないと思いますね。法治国家なんですから、それはいかぬと思います。  時間の関係もありますから、最後に、法の見直しと我が国のこのPKOのあり方について述べたいと思いますが、これに関しては防衛庁長官、それから総理の方からもひとつ見解をいただきたいと思います。  現在のこのPKO法では、ゲリラ襲撃などの危険な状態から安全を守るということができない、だからPKFの派遣もできるように早く凍結を解除すべきである、あるいは現行法の見直しを急ぐべきだという意見も、ごく一部ですが出されております。昨日も、民社党の中野委員から具体的に問題提起がございました。その中身は詳しく触れませんが、PKFの凍結解除の環境は整った、解除すべきだ。それから二点目は、指揮権については、日本の独自性はあり得ないから国連の指揮に従うことを法律上明確にすべきだ。  彼でもそう言われているのですから、やはりこれは国連の指揮権が絶対的だということではなかたのですね。日本の独自性というのは、やはりこれは生かされていくべきだったんですね。議論でもそういう議論があったのです。いつの間にかそれは、国連の決定と我が国の最終判断は食い違うことはまずないという言い回しに変わりまして、結局国連の指揮権のもとに、はい、わかりましたという格好で、日本PKOはそこに包摂をされていくということに今日ずっと変化してきているわけですよ。これは総理の答弁もございますから、これだけでも詳しくやろうと思ったのですが、時間がございません。残念ですが、結局そういうふうに、今度は法的にも整備をしようという提言が現実にあるのですね。  それから次は、自衛隊の本来任務にPKOを位置づけよ、こういう提起もございました。これらの見解に対して、私たちの党としては同意することはできません。その理由を簡潔に申し上げたいと思います。  最大の理由というのは、軍隊である自衛隊がPKF、PKFというのは任務遂行上相手の抵抗を排除できるように武装してやるわけですから、後方支援、現在行っているような施設部隊とは任務は違うのですね。第一線で任務の展開が余儀なくされるわけです。つまり、武装解除の場合にはその武装解除に当たるわけです。そういうこともやるわけです。危険度は非常に増すわけです。  このような自衛隊の本格的参加というのは、これはカンボジアのケースにとどまらないと思いますね。既に出ているわけですが、モザンビークのPKO、さらにはソマリアというように、場合によっては多国籍軍の一員として参加するような事態にエスカレートをしていく危険性があるじゃないですか。そういう要請が世界的には来ますよ。  そのときに、我が国というのは非常にまじめでございますので、カンボジアでも幾ら分担金出しているかと調べますと、日方がダントツなんですね、二億ドル。アメリカが一億三百五百万ドル。あとは、フランス以下まあ数千万ドルで、ずっと下がっていまして、アジア諸国というのはほとんど出てないんですね。こういうことなんです。経済大国だからかもしれませんけれども、決めたことは守ろうという点では、我が国というのは非常にまじめなんです。まじめ過ぎるとけがをするわけです。そういう体質もまた一面では持っているわけです。  残念ながらそういう体質がありますから、我が国には、事が一たん動き出すと歯どめがかかりにくい、そういうところがあります。これは確かにあると思うのです。私はわざわざ戦前のことを持ち出す気はありませんが、まさに戦前はそうでございました。こうなれば、憲法九条でどのように規定をされようと、空洞化が進むという懸念を持つのは当然ではないでしょうか。我々は何としてもこの事態を避けたいと思うのです。  もう一つ、私が強調したいのは、自衛隊の派遣問題で国論を二分するような状態を卒業したいと思うのです。これが我が国にとっては不幸ですよ。私、そう思っています。与野党それぞれ立場が違いますけれども、その一致点をどのように見出していくかということをお互い国会にある者も真剣に考えなければいけないんじゃなかろうか、私はこう思うのです。  第二の理由として、それは、国論が二分しておる状態をなぜなのかと言えば、憲法との絡みで、自衛隊を直接出すとそれは反対なんだという人がいるじゃないですか。そうしたら、国論を二分している状態をクリアをして、国民全体の合意を得るような方法でPKOを考えていくということにしませんか。その努力をしませんか。それでこそ本来の私はPKOだと思うのです。すなわち、憲法との整合性を図りながら、開かれたPKO国民の各層が主体的にかかわっていくというシステムを考えてはどうかと思うのです。すなわち、具体的に言えば、それは別組織論であります。つまり国際貢献庁。私は、二月の予算委員会でも総理の前で私の考え方を主張させていただきましたが、国際貢献庁を防衛庁とは別につくる。  既に防衛庁でも、今PKOの専門的な組織をつくるという検討をされているじゃないですか。ですから、防衛計画大綱との絡みもありますし、これからは世界の情勢が、やはりPKOがどんどんとふえてくるでしょう。自衛隊の組織が今のまま要るのかどうか。軍備の縮小、軍縮の方向に世界は流れていますから、そういう大乗的な見地で防衛庁だって検討が、余り進んでいるとは思いませんけれども、そういう検討はされているわけですね。  だから、私たちが言うのは、自衛隊、つまり防衛庁は本来タカ派の任務なんですよ。国土防衛という任務なんです、これは。そして、一方のPKOというのは、これはハト派の任務じゃないですか。タカの任務とハトの任務をごちゃまぜにしてやろうというのが言うならば自衛隊法三条の改正でしょう。これはよくないと思うんですよ。  ですから、はっきりけじめをつけて、そして国際貢献庁でPKOを専門にやっていこう。自衛隊の諸君も、おれはタカ派の自衛隊におるよりもハト派のPKO国際貢献庁に行きたいと言ったら、そういう希望者の人は入っていただきたいと思うんです。もちろんこれは民間人も入られます。お医者の皆さんや看護婦さん、技術者、一般の方も、言うならば国際貢献庁のPKOの隊員に入りたい、大歓迎でございます。  当然訓練が要ると思うんです。これは総理も言われましたように、非常に練達の士、大変訓練をした人でなければ、――――――――――――――――――すぐ撃ってしまうと思うんですが、そういうことになると大変なこれは紛争になると思うんです。だから、じっとこらえてやはりやる人が必要なんです。つまり……
  48. 粕谷茂

    粕谷委員長 伊藤君に申し上げます。  発言時間が来ておりますので、委員長においては通告をいたしますから、時間を守ってください。
  49. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 はい、すぐやめます。  そして、待機団方式でローテーションを組んで国連の要請にこたえていく、こういう非軍事の立場で、業務範囲は国民合意で決めていけばいいじゃないですか。そうすれば、国論を二分したままでお互いに苦労してやっていくんじゃなくて、国民全体が合意をすれば、本腰を入れた我が国としての全体的なPKOがそこで貢献していけると思うんですね。  ですから、こういう考え方について、防衛庁長官あるいは総理の答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。お願いいたします。
  50. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 いろいろ承りましたが、まず自衛隊というものが憲法違反でない、合憲であるということを明確にされた上で御議論をいろいろこれからしてまいりたい。
  51. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 ないんですか、いいんですか。
  52. 粕谷茂

    粕谷委員長 防衛庁長官からは答弁がないということでございますから、御了承願います。
  53. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 終わります。
  54. 粕谷茂

    粕谷委員長 この際、松前仰君から関連質疑の申し出があります。伊藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。  松前さんには申しわけありませんが、持ち時間内でお願いをいたします。十分ぐらい経過をしておりますから。(松前委員「十分もしてない」と呼ぶ)失礼しました。違いました。私の方で正確にはかっておりますから。  松前仰君。
  55. 松前仰

    ○松前委員 関連して質問をいたしたいと思います。  私は、二月の予算委員会に、カンボジア情勢が緊迫したときに、一人たりとも犠牲を出さないようにやってくださいということを政府に要求いたしました。政府の方は、最大限の努力をしますというようなお話がございました。しかしながら、その後残念ながらお二人が亡くなってしまったということがありまして、大変これは私ども責任を感じなければいけないと思っておる次第でございます。したがって、多くの反省をここでしていかなければいけない、そしてその反省を将来につなげていかなければいけない、そういうことだろうと思います。  それはそうでありますけれども、現実の問題として、今カンボジアが平和になるかどうかというような瀬戸際に来ている、そこにたくさんの日本の方が働いておられるということでございます。このことは大変私どもにとりまして、今入っておられる方々、これは敬意を表するわけでございますけれども、私たちが今やることは、その方々が安全にすべての任務が遂行できるということを保障してあげなければいけない、そういうふうに思う次第でございます。  そこで、私は、今の現状についてどのように問題認識、問題を考えていかなきゃならないかということを中心に、私どもが撤収という言葉を出した背景についても、この議論の中で明らかにしていきたいと思っている次第でございます。  御承知のように、もうこれはそういうことを言う必要はございませんが、平和憲法のもとにあるということでございます。そして、現在のカンボジアの情勢、状況という現実もある。そのカンボジア状況が、先ほどから議論がたくさん出ておりますけれども、パリ和平協定が守られているかいないかというその解釈のようなものをめぐって非常に不安であるということもある。  そして、同時にPKO協力法の問題がございます。これは平和憲法のもとで日本でつくられたものでありまして、そのとき想定していたカンボジアの情勢というのはどういうことであったかということを考えると、そのつくられたときの考えと現実とは少し違っているかもしれない、そう思わざるを得ないところがあるし、先ほど議論ございましたように、警護の問題がございます。警護という問題が今日非常に中心になって、それが憲法の問題として取り上げられる。そして、それが現実の作業に対して、今行われている仕事に対してどのような影響があるかという、もしかするとそのことを主張することによって現場の作業がストップしてしまうかもしれないというような、そういうようなところまで来ているというせっぱ詰まった状況にあると思うのです。  しかし、私どもは、やはり一番根拠になるのはパリ和平協定であろうと思うのです。パリ和平協定、これは先ほど自民党の方が質問されて、過去のお話をされました。クメールルージュ、そしてポル・ポト派の過去の話がございました。しかし、このパリ和平協定というのは、その過去のことをすべてもう問題にすることはやめようじゃないかということなんですね。そしてまた、その過去のことについて刑罰を処すことはしないということで前進、すなわちそれから和平に向かって前進をするという崇高な精神であると思うわけでございまして、私どもは、それが唯一のよりどころですから、このパリ和平協定、これが守られているかいないかという議論が今日までたくさん出たのは当然であるというように理解をしていただきたいと思うわけでございます。  そこで、質問でございますけれども、私どもはそのパリ和平協定、その中でやはり行動しておりますから、行動といいますか従って、送り出すところについても判断をしていくわけでございますから、その中で、我々が現地に出した現場の人たちは一生懸命仕事をしている、その方々がやはり安全に、そして自由に行動できるということを保障するというのが国内の任務だというところに着目をして考えますと、今この和平協定の点について質問をしなければいけない。先ほどからありますけれども、武装解除というところにやはり最も注意を払っていかなければいけないと思うのです。  政府は、ポル・ポト派が協定を守ろうとしているということをおっしゃっておる、そして、むしろ他の三派は協定を守っていないとそのポル・ポト派が言っているということであります。ですから、このパリ和平協定は崩されていないんだ、こうおっしゃるわけでありますけれども、協定というのは、守ろうとしていればいいのであるか。それとも、遵守をされていなければならないのではないかと私は思うのです、今の段階では。これはどういうふうに考えたらよろしいのでしょうか。
  56. 丹波實

    ○丹波政府委員 パリ和平協定解釈の問題でございますけれども、以前にもこの席で御説明申し上げましたけれども、停戦と武装解除の問題について先生が問題を提起しておられますけれども、この第九条に、「停戦は、この協定の効力が発生する時に効力を生ずる。」ということになっておりまして、第二文で「すべての軍隊は、直ちに戦闘を停止し、また、すべての敵対行為並びにその支配する領域を拡大し又は新たな戦闘に導くおそれのあるいかなる配備、移動又は行動も慎む。」こういうふうになっておりまして、さらにこの第二文の具体的な措置につきまして、附属書二の中で具体的な取り決めが書かれておりまして、その中にこの武装解除ということも入っておるわけでございます。  そこで、この仕組みでございますけれども、私たちは、停戦というものがまず成立する、その後の措置につきましては、この成立した停戦というものをいかに確固たるものにするべきかという、そういう意味で具体的な措置が挙がっておる。武装解除もその一つでございまして、確かに残念ながら武装解除はここで予定したとおりのプロセスでは進みませんでしたけれども、だからといって全体としての停戦というものが崩れたというふうには判断されないということを以前から申し上げている次第でございます。  御承知のとおり、パリ和平協定カンボジアの当事者はすべて、ポル・ポト派も含みまして、このパリ和平協定は遵守するということを従来から言ってきている次第でございます。
  57. 松前仰

    ○松前委員 今のお話の中で、政府は、パリ和平協定の枠組みは崩れていないというところで、ポル・ポト派も含めた四派が協定を認めておるというようなことでございますけれども、しかし、そのパリ協定の枠組みが崩れていないとしている根拠、これについて前からお話をいただいておる内容は、その根拠は、ポル・ポト派パリ協定を放棄していない、ないし停戦合意を崩していないと言っていることを根拠にされているようでございます。それは紛争当事者が言っておりますので、そのことでもって、そのことだけでパリ協定が崩れていないと言えるのだろうかと私は疑って仕方ないのであります。紛争当事者が言っている、そしてしかもその当事者が時々攻撃をしかけているということ、これは、ポル・ポト派が言っておることを信用することができるのかどうかということなんです。  そしてまた、全面戦争でないからこれは崩れていないと言うのですけれども、全面戦争というのは、もう前から議論ありましたように、もう今の時代ではほとんど存在しないものである。ですから、この地域戦争ポル・ポト派とそのほかの三派、それから対ベトナム、こういうような関係の地域の紛争というもの、これがやはり戦いの一つということになってくるということになれば、その一方のポル・ポト派は放棄をしていないということ、そして攻撃をしているということになれば、これは当然信用することはできないと思いますけれども、いかがお考えでしょうか。
  58. 丹波實

    ○丹波政府委員 停戦の枠組みの全体は私たちはまだ存在しておると申し上げておりますときに、当事者が協定を遵守するということを言っておりますということを申し上げておりますのは、一つの重要な判断材料のファクターとして申し上げている次第でございまして、そのほかには、戦闘が全面的には再開されていないといったようなことももう一つのファクターでございます。  いずれにいたしましても、そのような戦闘の態様、あるいは各派の行動の態様を全般的に総合的に判断いたしまして、停戦の枠組みは全体としてまだ存在しておるということを申し上げておる次第でございます。
  59. 松前仰

    ○松前委員 一つの判断の材料といいますか、そういう形でパリ和平協定の遵守というものがあるということをおっしゃる。そのほかに全面戦争というものがございましたけれども、そうなりますと、もしそれを仮に認めたとしても、これはやはり安全ということについては私は保障することができないような気がいたします。  というのは、そういう中で現在ポル・ポト派からの攻撃もある。また、これは明らかに報道されてはおらぬけれども、政府軍の方も何か夜になると強盗化するというようなこともあるということも聞いております。ですから、そういうような状況になりますと、やはりこれは身の安全というのは保障できていないというようなことに到達をしなければいけないんじゃないかというように思います。ですから、私は、その武装解除というものはやはりきちっと守って、遵守をさせていかなければいけないと思うわけです。  パリ協定の中身には、「七十パーセントの動員解除を段階的な、かつ、均衡のとれた過程において実施することを合意する。」そしてその後、この過程は、各派と協議の上「詳細な計画に従って実施をする。この過程は、選挙のための登録の過程の終了の前に、かつ、国際連合事務総長の特別代表により決定される日に完了するものとする。」こういうふうにあるんです。  ですから、選挙登録の過程の終了の前、この辺においては、少なくとも七〇%の動員解除というものは達成をされているか、まあ多少許しても目鼻はついている、こういうことになっていなければいけない。ところが、現状はそれは達成されていないと私は思います。非常に問題がある。三〇%くらいしか解除されていないということになれば、これは大変危険な状態にあるというように判断をしなければいけないんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  60. 丹波實

    ○丹波政府委員 この点は、最近の事務総長報告の中でも、このパリ和平協定カンボジアにおける現状というものを比較いたしますと、パリ和平協定で当初考えられていたような事態ではないということを言っておりまして、その中には、その武装解除というものが残念ながら予定どおり行われてきていないということも入っておると思います。私たちもそれは非常に遺憾な事態だと思っておりますけれども、昨日来の御論議を聞いておりますと、確かに私たちも武装解除というものは非常に重要なファクターだとは思いますけれども、武装解除が行われていないからPKO全体として失敗であるというのは、ちょっとそこまでは議論はできないんではないか。  それは、過去のPKOの歴史を見ますと、武装解除あるいは動員解除が全く行われないままに選挙が成功裏に行われた例というのは存在しておるわけです。例えばナミビア、三年前だと思いますけれども、ナミビアのUNTAGという、これもUNTACカンボジアPKOと同じような発言ですけれども、総合的なPKOがナミビアに展開されまして、この場合には武装解除も行われず、しかし選挙は成功裏に行われた例。それから過去の例では、例えばサイプラスのPKFの活動も、実は武装解除は行われないままにある程度成功裏に今日まで来ておるということでございますので、動員解除、武装解除の重要性というのは、私は先生と同じように否定はいたしませんけれども、しかし、それだけが唯一のファクターでもないということをつけ加えさせていただきたいと思います。
  61. 松前仰

    ○松前委員 ナミビア、サイプラスの例が出ましたけれども、そのような国連平和維持軍の活動は非常に長期化しているということであるはずであります。そして、今お話ありましたような内容が、国民皆さんに何一つ知らされていないということですね。こういうような危険な状況の中でも派遣した例がある、だから日本もこうやって派遣するんだということは、国民皆さんはわかっていたでしょうか。恐らくわかっていなかったと思う。PKO法案の審議のときには、非常に安全なところに行くんだ。先日、予算委員の他の党の方がおっしゃっておられましたけれども、きちっとした停戦監視、そういうものが行われている、武装解除が行われて停戦監視が行われている、それが保障されているという条件のもとに派遣されるPKOであるということ、これが丸腰の要員を派遣しているという我が国PKO法であろうと思うのでございます。  ですから、今おっしゃったようなことを、今ここでテレビで堂々とおっしゃいましたけれども、私はこれは国民皆さんは納得するものではないと思います。初めでそんなことを聞いた、こんな危険なところへ行かせるようなことになっていたのかということになってしまうのではないかと思うのであります。ですから、私どもは、そういうようなことも含めて、またほかに理由がございますけれども、撤収をするべきであるということを、いろいろなことを勉強しながら考えてきたということがあったわけであります。  ただ、ここに至って今のプロセスを中断するということになると、これはどうするか、大変悩むところであります。私どもとしても、撤収すると言っておいても、今できるかと言われれば、これはなかなかそうはいかぬぞ。すべてUNTACの指揮下に入っている。我々がつい先日も予算委員会で確認して、答えは前のPKO法案の審議のときと違ったのでありますけれども、我が国の独自の判断で撤収することはできないというような形になってきているということになれば、これは今のプロセスをそのまま中断することができなくなってしまっている、こういうことになるのでありましょう。  それと同時に、今中断することの方がカンボジアの不幸を招くという意見もございます。このことは私もよくわかります。だけれども、国内法は厳然として存在している。これは憲法もあります、PKO法もあります。二つあるのです。ですから、カンボジアが危ないから、喜意だからといって何でもやっていいということにはならないのです、残念ながら。これは先ほど一番最初の議論で、現地にすべて任せろというお話もありましたけれども、しかしそれはどうしても残念ながらできないというのが我々の立場ではないでしょうか。我々国会、それから国民ではないかと思うのであります。憲法PKO法PKO関連法などの枠を不用意に出るわけにはいかないと私は思うのであります。  佐久間統合幕僚会議議長ですか、この方も朝日新聞の記者のインタビューできちっと言っておられます。当然、自衛隊でありますから、きちっと守る、法律の枠内で任務を遂行するのが自衛隊の鉄則だ、常識だから法律に書かれていないことでもというのは危険な風潮である、きちっと議論してほしい、こう言われている。きちっと議論がやってなかったのですね、残念ながら。  ですから、そこで質問をさせていただきますけれども、このPKO法の中に、先ほどありましたが、警護という言葉が入っていない。このことについて、法制局長官、これは今のカンボジア、こういうようないまだに危険な状況と私は判断しておりますけれども、もしそういう中に丸腰の日本の人が行く、そこで安全を確保するというような立場から考えれば、PKO法に警護という言葉が入らないということになれば、これはやはり法律そのものが安全確保になっていない、そういうふうに感じるわけでございますけれども、その辺については、法制局長官、どういうお考えですか。
  62. 大出峻郎

    ○大出政府委員 御指摘のように、警護にという規定はないわけであります。その点について安全との関係でどう考えるかという点については、これは立法政策的な面からの御議論でもございますので、差し控えさせていただきたいと思います。
  63. 松前仰

    ○松前委員 法律そのものの解釈とかそういう問題になりますと、安全とかということについて警護がどうなるかということは答えにくいと思いますけれども、現実に丸腰の文民が、警察官も含めて選挙監視要員が向こうへ行かれている、その方々が今非常に危険な中におられる。ところが、現実選挙は非常に安定して進められて、カンボジア人たちも笑顔が見える。大変うれしいことでございますけれども、その裏には我々の派遣した方々の危険は潜んでいるのじゃないか、そういうふうに感じておかなければいけない。やはり法律というものは、善意とかそういうものでつくられるということも必要でありますけれども、最悪の事態、人を派遣するということ、そういう地帯に人を派遣するということになるならば、やはり法律は性善説をとることはできない、やはり性悪説をとって、あらゆる場面に遭遇しても大丈夫なように考えなければいけないと思うのでありますが、法制局長官、いかがでしょうか。
  64. 大出峻郎

    ○大出政府委員 先生御承知のように国際平和協力法におきましては、その業務のところでは、警護ということを任務とすることを前提とした規定にはなっていないということは、先ほど申し上げたとおりでございます。  他方、いろいろな場面を想定いたしまして、御承知のように国際平和協力法の二十四条というところにおきましては、例えば二十四条三項の場合におきましては、自衛官は一定の場合に武器の使用をすることができるということ、これは非常に厳格な要件を設けてでございますけれども、そういう規定を設けておるということであります。その意味では、これは一つの安全に関する規定であるということが言えると思います。
  65. 松前仰

    ○松前委員 自衛官の規定、これはみずからの安全だと思うのでありますけれども、文民警察官、選挙監視要員、このような民間の志願をして出ていった方々、本当にPKO参加してカンボジアのために尽くしていきたい、このように考えた方々に対する警護、安全というものの確保というものについて、残念ながら前のPKO法案の審議においてはかなり欠落をしていたのじゃないだろうか。その辺についてはもっと議論をしてきちっとしておかなければいけなかったのじゃないかという反省はあるのだと思うのですが、総理、いかがでございましょう。
  66. 河野洋平

    ○河野国務大臣 本来PKO要員、UNTAC要員の安全を確保するのは、第一義的にはUNTACそれ自体の仕事と心得ております。もちろん、我が国から派遣されております文民警察官あるいは選挙要員、さらにはNGO、UNボランティア、こういう人たちの安全について我々は大きな関心を持っていることは当然でございますが、まず第一義的には、UNTAC要員の安全確保はUNTACがするということでございます。  したがいまして、我が国は、文民警察その他の安全確保のために、UNTACに対して繰り返しその安全確保のための申し入れも行ったところでございますし、周辺状況などを十分に聞き取りまして、安全の確保が十分にできない、あるいは本来の任務がその結果果たせないということであれば、本来の任務が果たせる場所への移動についても累次申し入れをしてきたところでございます。
  67. 松前仰

    ○松前委員 今日のカンボジア状況に対して、このPKO法案、警護という面について十分議論がなされていない、そしてそれがきちっと明文化されていないということについては、非常に議論と法律そのものについて不備があったと私は思うわけでございます。したがって、そのような中で今日丸腰の文民警察官、監視要員を送っているということでございますから、その中で何とか対処をしなければいけないということになると、これはやはりいろいろな制約がかかってくる。その制約の中で処理するということになると、拡大解釈というところに走っていくというようなことになってくるわけでございます。  私どもは、このPKO法案、これを審議するに当たって政府考え方をかなり信用せざるを得ない、信用といいますかおっしゃることをうのみにせざるを得ないところもあったかもしれない。しかし、やはりこういうような非常に問題が起こりそうな状況を前もってわかっておったから、我々は別の法案をつくって提出をしたのであります。  その根拠についてまた少し後で申し上げていきたいと思うわけでございますけれども、今は二つの道しかなくなってしまっていると思います。  法律をきちっと守らなければいけないということになりますと、一つはパリの和平条約、これが頼りでありますけれども、しかしどうも先ほどからお話を聞いておりますと、非常にパリ和平条約についても解釈その他によって不安なところが多い。私どもから見ても、武装解除はできていない、それを一生懸命遵守をする努力も余りされていない、さらにまた武器も返すというような話もあって、ふえるというようなこともある。そういうような状況があるということになると、やはりパリ和平条約は崩れていないとはいいながらこれは問題がある、安全ではないというようなことも考えなければいけない。そうなりますと、これは道は撤収しかないのじゃないか。それがまず一つであります。  ただ、撤収というものができないという現実に直面してしまいました。出してしまいますと帰ってこれないということは、これはもう十分承知の上で私たちは出ていかない方がいいということまで言ったのですけれども、それはなかなか受け入れられない議論であったわけでございます。しかし、やはりここに至りますとそうであった。そうなると、撤収は難しいということになると、もう一つは拡大解釈をする。だけれども、それは絶対許すことはできない。こんな、人を送る、そういう法律において拡大解釈がされていくということになる、これはちょっと問題があります、大きな問題があります。ですからここは、もう一つの道は、本部長が法律違反を犯すということになるしかないというような感じがするわけでございます。この二つの道しかない。  ですから、極めてこれはせっぱ詰まったぎりぎりの選択をせざるを得ない。ここまで追い込んだのは一体どういうことかということを考えていかなければいかぬと思います。  今、私、こういう考えを申し上げましたけれども、間違っているかもしれませんが、総理のお考えをちょっとお聞きしたいと思います。
  68. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 二つの道しかないと言われましたけれども、私はそう思っていませんし、また現実にそれ以外のことを考えてまいりました。  つまり、我々が派遣いたしました部隊あるいは要員の安全というものは、第一義的には、先ほど官房長官がお答えいたしましたとおりUNTACの務めであるわけでございます。UNTACとしてそれなりの安全を確保する、そういうための部隊を持って、その上で各国に対して施設をやってくれとかあるいは選挙監視をやってくれとか文民警察とか言っておるわけでございますから、第一義的にUNTACのこれは務めになるわけでございまして、そのゆえに我々がUNTACに対してさらに安全の強化をしてほしいということを申し入れておるわけです。しかし、UNTACとしてはさらにヘリコプターが欲しい、あるいは装甲車が欲しいといったようなことがございまして、それについては現実に近隣の国から既に供与もされておりますけれども、そのための費用というものはUNTACとしては見込んでいなかったということでございますので、それは我々として支出するにやぶさかでないということでさしずめ百十万ドルの支出をいたしたわけでございますけれども、これがやはり一番正面からの安全確保の基本であるというふうに考えております。  もとより、我々として我々ができることを我々自身しなければならないことはもちろんでございますけれども、やはり基本はUNTACに対してそのような安全の確保を要請をし、それが現実に行われつつあるということでございます。
  69. 粕谷茂

    粕谷委員長 松前君、御発言中ですが、しばしお許しをいただきたいと思います。     ―――――――――――――
  70. 粕谷茂

    粕谷委員長 ただいま日韓議員連盟のキム・ユンファン団長ほか多数の大韓民国国会議員の皆様がこの委員会を傍聴されておりますので、御紹介をさせていただきます。     〔拍手〕     ―――――――――――――
  71. 粕谷茂

    粕谷委員長 松前君、御発言をお願いします。
  72. 松前仰

    ○松前委員 総理の御発言、UNTACの判断によって今仕事が行われておりますけれども、UNTACの方に安全を確保するようにいろいろ働きかけをされているということ、これはもう、もっとやっていただかなければいけないと私は思うし、そのことについては大変私は同調するものでございます。ぜひともUNTAC自身でやはり安全を確保していく方向にこれは持っていくべきではないかというのが私の考え方でございます。  そこで、先ほどお話ございましたけれども、UNTACに最初から安全を保障してもらうというような行動、それから申し入れ、これは最初からなされておったのでありましょうか。その辺はどなたかお答えいただけますでしょうか。
  73. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 UNTACに安全措置を強化してほしいということはかねてよりお願いをしてまいりました。ただ、最近選挙が近づくにつれまして、御承知のとおり緊張度が増してまいりましたので、最近に至りまして、さらに具体的に私どもの提案も含めて再三にわたってお願いをしたということでございます。  特に、いわゆる警護の問題は、これは御承知のとおりUNTACの中でも軍事部門のいわゆるPKF、歩兵部隊の主たる任務でございますので、例えば我が国選挙要員が配置されておりますタケオ州におきましては、これはフランスの歩兵部隊の担任地域でございますので、その警護をお願いする、その強化をお願いするということをしたわけでございます。  そのほかいろいろございますが、時間の関係もございますので全部は申し上げませんけれども、例えば投票所の数を減らして整理していく、危険の高いところではむしろある程度あきらめる、整理統合するということもお願いをいたしまして、UNTACの側におきましてもかねてからそういうことを考えておりまして、その結果千八百ぐらい設ける予定でございましたのを現在は千四百程度に減らしておりますし、また、最近事件がありましたところでは、その場その場で閉鎖をするということまでやっているわけでございます。  なお、先ほどもお話出ましたけれども、我が国の施設部隊が行っておりますことは、これは本来の業務の一環として行っているものでございまして、ただ、それは選挙要員の生活物資の供給でございますとかそういう生活面での支援にもなりますし、また安全にも資するということでございます。決して拡大解釈というものではないというふうに考えております。法令の範囲内でできることがあって、施設部隊の能力としてもできることがあって、しかもそれが丸腰の選挙要員の生活支援、そして安全にも役に立つということであれば、これは大いにやるべきであろうというふうに考えております。
  74. 松前仰

    ○松前委員 先ほど警護の話で、それに関連して今お話ございましたけれども、決して警護をやっているわけでないということを強く強調されました。それでは、今は警護は必要ないというようにお考えなのでしょうか、官房長官。
  75. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 先ほどお答えした中で若干触れたつもりでございましたけれども、現在、例えば具体例としてタケオの例をとりますと、警護は必要でございます。まさにフランスの歩兵部隊が警護を行っている、こういうことでございます。
  76. 松前仰

    ○松前委員 私どもは、警護をすること、これを我が国がすべてやれというようには申し上げるつもりは毛頭ございません。これは平和憲法というものがあります。これは敗戦の結果としての戦争放棄ではないのでありまして、生まれ変わった姿の日本としてみずから積極的に進んで国際平和の実現に率先しようとする熱意を示す憲法である、皆さん承知のとおりだと思います。それと同時に、みずから進んでカンボジアのために汗を流そうということは同等にとうといものだと私は思います。私どもはこの両方を両立をさせていきたい。  このことについては総理、間違っているでしょうか。
  77. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 御指摘のとおりと思います。
  78. 松前仰

    ○松前委員 ですから、自衛隊の派遣について、憲法に対して抵触をする、または非常に疑念が多いということになれば、これは初めから文民で通して、警護は我が国憲法で困難なことを外国に十分説明をして、そしてその活動の安全について、先ほどお話ありましたようにUNTACに申し入れ、守ってもらう、そしてその中で文民が心を打つ思う存分の活動をしていく、カンボジアのために頑張るということができたのではないだろうか。ですから、私どもは過去にあのような法律を提案したわけでございます。  自衛隊が今日出ていっている。これはいろいろ憶測をしてしまいます。自衛隊による警護を現地で獲得をしてしまおう、なし崩しにしてしまおうというようなことをひそかに考えていたためにこんな難しい問題が起こってしまったんじゃないか、こういうようにさえ私どもは考えてしまうのでございます。  ですから、一番最初から、先ほどからお話聞いていますと、やはりこれは文民で通すことも可能であったということは私は感じるわけでございます。政府があくまで自衛隊派遣にこだわった結果が、今日の非常に厳しい苦しい問題を生んで、そして撤収ができなければ新たな拡大解釈、私どもはそう思っております。拡大解釈じゃないと言っても、やはりそれは国家皆さんには納得できないから、わからないから、拡大解釈ととらざるを得ないような状況をつくり上げてしまったのではないかと思うのでありますが、自衛隊でない、戦力というイメージを持たない別組織で派遣することもできた、今の状況を考えるとそういうふうに思うわけでございます。これについては、答弁をしていただいても、そうではないという答えしか返りませんから、私の一方的な質問で終わりたいと思います。  そこで、明石代表が書かれた本の中に、ちょっと引用をさせていただきますけれども、私は大変心を打たれることが書いてありました。  「カンボジアに真剣な関心を示してきた日本は、国際的役割を果たしてみせる正念場を迎えている。」国連に対する財政的な負担金がこれほどまでに多くなったから、「それだけをもってして常任理事国になる資格を日本が持つというふうに考えるとすれば、それはやっぱり一種のヌーボーリッシュ的な考え方」、ヌーボーリッシュというのは悪い言葉で言うと新興成金というのでありますが、「ヌーボーリッシュ的な考え方なのであって、もっと地味に、もっと広範に国連でいろんな貢献を重ねていくことによって、」「日本を安保理の常任理事国にしないと、ちょっとおかしいんじゃないか」と言わせるようにしむけるべきです。自分がなりたいと思ってもなれるものではありません。「日本はあまりにも国際社会におけるステータスシーカー」、地位を追い求める出世亡者というんだそうでありますが、「ステータスシーカーなのですよ。そのステータスをどういうふうに日本のために、世界のために使うかということこそ大事なことなのに。」というようなことが書いてありました。  私は大変これは感動した言葉でございます。このことについてもう既に皆さん同意をされている、これはもう政府総理も同じだと思うのでございます。ですから、この地味な活動、地味とは言いませんけれども、とにかく地道な活動、そしてすべて日本国際協力をできるにふさわしい条件が整っているという、そういう状況をつくり出すことがやはり必要であるし、国際社会もそれを認めてくれるだろうと思う、それを見て。  それを考えますと、私は次の問題に珍らしてもらいますけれども、ボランティアの皆さんは一生懸命頑張っておられる。そして志願をされた方々は、民間の方々も含めてカンボジアで一生懸命やっておられる。ところが、日本国内はどうでしょう。日本国内を見てください。政治は腐敗をしている。腐り切っておる。金権政治である。そしてまた、ODAにしたって、日本の企業のためのODAとか、それから日本の国の発展のために開発途上国の環境破壊とか、そういうことをやっておる。ですから、カンボジアの方に出かけていって、いい顔しても、実はその裏では、その志願された本当に汗を流してやろうという方々、その気持ちというものを踏みにじるかのように、ほかでは利益を求めて日本は右往左往しておるというようなことになれば、これはやはり、幾ら国連で中枢を占めようとしても、国連の指導者になろう、そして世界を安定に導こうという、そういう崇高な念願も達成できなくなる可能性があると思うのであります。  今一番その中で、すべて問題でありますけれども、その中で一番問題になるのは、突然でありますが、政治改革、これはやはり断行しなければいけないということでありますね。お笑いになりますけれども、政治改革というものは、今やらなければ、これは、一体それでもできない日本なのか、カンボジアには人を出しておいて、政治改革一つできないじゃないか、そういうことになるのではないでしょうか。総理、このことについて、やはり現状、まずやらなければいけないことをきちっとやっていただくということ、これをひとつ総理のお考えをお聞きしたいと思います。
  79. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 お答えをいたします前に、先ほどのお話でございますが、この法案を御審議中に、私どもは、現地というものは場合によっては水もない、電気はどうする、食い物はというような場合があり得ますので、なかなか自己完結的な組織でないとこの平和維持活動というのは難しいのではないかと思いますということをしばしば実は申し上げてまいりまして、それに対して、いや、むしろ文民的なあるいは組織でないものがより適しているという御議論がございましたことを記憶をいたしております。現実事態として、これは残念なことでしたけれども、文民なり選挙要員が水がないということを訴えて、幸いにして自衛隊の部隊は水、食糧を供給することができますので、そういうことが現に起こっておりまして、私どもは、そういう意味ではやはり組織をもって貢献をするということは非常に大事なことだという感じをこのたびの経験から持っておりますことを申し上げておきたいと思います。  それから、政治改革につきましては申し上げるまでもないことでありまして、国民の政治不信がこれだけ深くなっておりますので、やはりこの国会において抜本的な改革を図られるべきであると考えております。現在、特別委員会において各党の間で御熱心な議論が行われておりますので、この国会で必ずや成案が得られるものと信じております。
  80. 松前仰

    ○松前委員 先へ進みたいと思いますが、九二年の六月の下旬に東京でカンボジア復興閣僚会議、これが開催されて、日本が議長国になりました。日本カンボジア復興の責任者になったわけであります。カンボジアPKO日本部隊に死傷者が出たからといって安易に撤退できなくなるであろう、PKOを放棄する国が復興の責任者であるというのは矛盾するというような議論すら出てきているというようなことであります。  これも先ほどの明石さんの言葉をかりますと、地位を追い求める出世亡者、ステータスシーカーでしょうか、こういうようなことを余りにも目指すために起こった問題ではないだろうか。もっともっとこの辺について私どもは地道な考えでカンボジア貢献というものを考えていかなきゃならぬし、また、議長国になったということになれば、もう一度その貢献の仕方について反省をしながら考えるべきだ、そういうふうに思うわけでございます。このことについては、また後ほど、もし御答弁ありましたらいただく。  そして、さらに議論が進みまして、こういう人もいるということですから聞いていただきたいのですけれども、それが印刷に、活字になっておりますから、これはやはりきちっと否定をしていただきたいのでありますが、そしてその先、PKFの凍結解除がある、そして自衛隊の海外派兵がある、自衛隊の国際認知がある、そして憲法第九条の空文化が見えるというようなことが書いてあるのです。そのようなことはありませんですね。
  81. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 ありません。
  82. 松前仰

    ○松前委員 次へ進みます。  カンボジア和平の外交について、これまでの問題についてはもう蒸し返すことはいたしません。先ほどもカンボジア和平、その先のことについて、選挙後の情勢についてお話があったわけでございますが、その辺についての見通しをお伺いするわけでありますが、私の考えたことを多少お話をしてみたいと思います。  選挙は成功するというように仮定をする。ところが、ポル・ポト派がその先にどのような態度に出てくるかということは不明である。というのは、シアヌーク殿下を中心にした救国暫定政権構想というのが今つぶれるということになった。ポル・ポト派についても、これは内部でいろいろと葛藤があるということを聞いております。そして、その失政権をとっていこうというポル・ポト派の動き、やはりポル・ポト派としてはカンボジアの政治を握っていきたいということがあるということになれば、この混乱したポル・ポト派の中、そしてまた、それと同時に明石代表が選挙参加しなかったポト派を除外すべきと考えているというような御発言もされているということになりますと、これはかなりの混乱が予想されるというように考えますけれども、そうしますと、選挙後の情勢、これは必ずしもカンボジア和平につながっていかないような気がする。  それは先ほどボタンのかけ違いというのも言われましたけれども、UNTAC考え方でありますから私どもは介入することはできませんけれども、しかし、人を送り出した側としては非常に危険な状況があるのではないかというように考えますけれども、その辺についてどう予測されておられるか、お願いします。
  83. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほどと同じような答弁になるかもしれませんけれども、やはりカンボジア国民皆さんが、長い間の内戦からここで新しい国づくりができるんだ、しかも自分たちが直接選挙参加して、いわゆる民主的なルールに基づいて国づくりができるんだということで、あれだけの高い、危険な状態の中にあっても高い投票率になったと私は判断をいたしております。  そういう面からいけば、ここで制憲議会ができ、そして憲法が制定され、それが今度は、制憲議会立法議会になり、そして新しい政府がそこにでき上がっていく、こういう過程であろうと思うのでございますが、その中で、今の御指摘は、ポル・ポト派がどう動いていくかということが非常に心配だ、こういうことでございます。  先ほど申し上げましたけれども、ポル・ポト派はやはりシアヌーク殿下に対してはある程度の支持をいたしておるわけでございますし、そういう面においては、今ロシアヌーク殿下が現地に入られて、国民と全政党、いわゆるポル・ポト派を含めてすべての国民に呼びかけていただいたということは、私は、何らかの形でポル・ポト派にいい影響を与えていることだけは間違いないんではないかと思っておりますし、今後また私どもは外交ルートを通じていろいろ努力はいたしてまいりますけれども、何としても、問題は、カンボジア自身の手で本当に民主的な平和国家をつくり上げていただくということが一番大切でございまして、先ほどカンボジア復興国家委員会の議長国であるということもございましたが、我々としては、国際的な協力の中で、日本としてもできるだけの協力をしていかなければならないと思っております。
  84. 松前仰

    ○松前委員 今後、選挙が終わって、新政権ができ上がる、憲法が制定される、そのような非常に重要なことがあるわけでありまして、その間において私どもは、成功するしない、UNTACの政策は、やり方がどうだということは批判するべきではないと思いますけれども、しかし、やはりその中で安全ということを、私たちが送り出している人たちの安全ということを確保しながら十分に働いてもらうということが大事でございますから、ぜひともそういう条件をつくるための、ポル・ポト派のこちらに接近してくる、そういうような外交努力というものをぜひともやっていただきたいと思っておる次第でございます。  そして、今回もし成功したにしても、これが国際的に認められたにしても、これはすべて万々歳であるということではない。すべてを忘れてしまって万々歳ということにしてしまってはいけないと思うんです。これまでの多くの経験というもの、そして、恐らくこれは初めての経験でありますから、今派遣して、そして安全の問題、警護の問題等もあるわけであります。  ですから、これはこれから国会できちっと整理をして、はっきりさせて、国民皆さんにわかりやすく説明をできるような状況にしていくのが我々の責務だと思いますので、ぜひとも総理、その決意でもって進んでいただきたい。最後に御答弁をお願いします。
  85. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 長い経緯の中で法律が成立しまして、国連の要請に応じてこのたびのカンボジアに対する平和協力活動を始めたわけでございますが、予想しなかった事態もございました。殊さら、お二人のとうとい犠牲を出したということもございます。最初の経験でございましたので、いろいろこれから学ぶべき点が多いと考えておりまして、反射的にでなく、時間をかけまして、いろいろ反省もし、今後どのようにしていくべきかについて考えてまいらなければならない、いろいろ教訓を得つつあるというふうに考えております。
  86. 松前仰

    ○松前委員 終わります。
  87. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて伊藤君、松前君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十四分休憩      ―――――◇―――――     午後一時開議
  88. 粕谷茂

    粕谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。遠藤乙彦君。
  89. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 質問に入ります前に、過日カンボジアにおけるPKO任務の際に殉職をされました中田厚仁さん及び高田晴行さんのお二人の御冥福を心からお祈り申し上げたいと思っております。また、負傷された方々の一日も早い回復をお祈りするものでございます。  また、大変困難な状況にありまして、カンボジアにおきましてとうとい平和維持活動の任務に携わっておられる多数の国際平和協力隊員並びにボランティアの方々に対しまして、心から敬意を表するものでございます。     〔委員長退席、小杉委員長代理着席〕  このUNTACは、九一年十月のパリ和平協定合意を受けまして、昨年の三月から任務を開始をいたしたわけで、大変困難な道のりを経て今日まで参りました。そして、ただいまこの平和維持活動の総仕上げとでもいうべき総選挙が行われておる。この総選挙に当たって、映像で見る限り、たくさんの人が着飾って喜々として集ってくる。その姿を見るにつけ、特にベルリンの壁崩壊以降一つの大きな流れとなった民主主義、特に暴力と専制政治に対する民主主義が勝利をしつつあるということを実感するものでございます。  このUNTACは、従来の国連PKOとは異なる新しい試みでございまして、その成功が、カンボジアのみならずアジア全体の平和に貢献をし、また冷戦後の世界における国連の権威と役割を示す重要な意味を持つものであると思います。  他方、もしこのUNTACが失敗することになって、カンボジアから撤退することになれば、これはあの恐怖と殺りくに満ちたカンボジアの悲劇の再現を意味するものであるわけです。今日の事態に当たりまして、このPKO参加五原則の見直しとか、あるいは感情的な撤退論だけを言うことは無責任な議論であると私たちは考えております。したがって、国際社会は、あらゆる努力を払ってこのUNTACの任務を成功させ、この二十世紀最大の悲劇の再現を阻止して、悲惨な歴史に終止符を打たなければならない、そういった思いでおります。  また、それとともに、このUNTACの任務に当たる要員の方々に対しましては、最大限の安全対策を考えるべきであり、場合によっては、地域によっては停戦合意が一部崩れているところはあるかもしれない、そういったところにおきましては、任務の一時休止、中断も含めて視野に入れ検討し、果断に対応していく必要があるということを一貫して私どもは申し上げてまいりました。そういった基本的な姿勢に立って質問を進めさせていただきます。  まず最初に、これは総理にお伺いをしたいわけでございますが、このカンボジア情勢につきまして、十七日にガリ国連総長が安全保障理事会に提出した報告書におきましては、UNTACによる入念な選挙準備にもかかわらず、選挙に向けた状況パリ和平協定が想定したものではないと言及をしておりまして、一部この停戦合意が崩れているかどうかについても懸念を表明しているかと私は考えております。他方、非常に困難な状況にあったことはそのとおりなんですが、その一方で、すべてを考慮した結果この選挙を実施をしているということでございまして、その背景としては、やはりこのパリ和平協定の大枠は維持されているとの判断に立っているものと理解をしておるわけでございますが、これにつきまして総理はどのようにお考えでございましょうか。
  90. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 ブトロス・ガリ事務総長のカンボジア状況についての報告の中で、確かに御指摘のように、武装解除が十分でなかったことを初め、ポル・ポト派選挙に非協力といったようなことについて、当初考えていた事態とはかなり異なっているということ、したがって完全に平穏な、全員参加のもとに選挙が行われるというような状況ではないということ、そういう事実の指摘、しかし、それにもかかわらず、ここで大多数のカンボジア国民参加を得て選挙を実施することが大事なことである、こういう御趣旨は事態を率直に述べられたものというふうに考えておりまして、そういう結論を報告として出しておられることから見ましても、この際、カンボジアでの選挙を無事に国民参加を得て行うことがパリ協定に定められたこのカンボジア問題の解決の最も大切な部分である、そういうふうに事務総長も考えておられることは明らかでありますし、また私どもとしても、そういう認識のもとにこの協力を進めてまいるべきものと考えております。
  91. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 今回こういった二人の痛ましい犠牲者を出したわけでございますけれども、今日まで来たわけです。この我が国の今日に至るまでのカンボジアPKO参加の教訓をどうとらえていくかということを私なりに考えておるわけでございますが……(発言する者あり)委員長、ちょっとあの関係ないやじをとめてください。――私なりにこの教訓というものを考えておるわけでございますが、特に今回、このPKO協力法の審議というものを振り返ってみますと、カンボジアPKOそのものに協力することにつきましては、党派を超えてこれは何かしなければならないという合意があったかと思います。他方、PKO協力法の中で大きな論争になったのは、このカンボジアPKO参加に当たって自衛隊を参加せしめるか否か、これが大きな議論になったわけでございます。  私どもは、この議論に当たりまして、議員を各地に手分けして派遣をし、PKOの現場を視察をしてまいりました。また、特にカンボジアにつきましては、昨年の五月初めに石田委員長を先頭に、私も参加をしまして、現場をつぶさに視察をしてまいりました。特に、四十八度を超える酷暑の中、また多数が下痢に悩まされながらこのカンボジア現状を視察をしてまいったわけでございまして、私たちの実感としては、大変に生活がまず困難である。飲料水や食糧の確保すらままならない。また、住居等も非常に難しい。また、治安が大変に悪い。ポル・ポト派はもとより、また政治的な意図を持たずとも、武器が野放しになっておって、そういった武装強盗集団が、場合によってはロケット砲や機関銃で武装したそういった強盗団が徘回をしておる。極めて治安状況が悪い。また、それに加えまして、四百万発を超えると言われる地雷が無差別に埋設をされておりまして、いまだに月々数百人を超える子供を含めた貴重な人命が失われているという状況でございまして、こういった状況を私たちも身をもって体験をいたしました。  私たちの結論としましては、このカンボジアにおいてPKOの任務を行うことは、特に文民やボランティアにとっては、そういった人たちの対処能力を超えた状況にある、そういった認識を持って帰ってまいりました。したがいまして、こういった状況にあって、一方においてこのPKO任務は、協力は進めなければならない、こういった状況においてどうするかということで、私たちの結論は、やはりそういった厳しい生活環境あるいはこの治安状況に対処し得るような訓練あるいは装備を持った集団を活用するしかない、すなわち自衛隊を活用するしかない、しかも個人ではなくて部隊としてこれを活用することが最も適切である、こういった結論に達したわけでございます。  他方、文民やボランティアにつきましては、もちろんそういった方々参加も不可欠な面もありますけれども、最大限にこれは慎重に、また安全対策を考えながら慎重に進めるべきであるという議論に達したわけでございまして、そういった私たちの現場を踏まえた実感をもって、このPKO協力法の審議に当たっては、自衛隊の活用ということを強く申し上げたわけでございます。  ところが、そのときの議論を振り返ってみますと、社会党あるいは共産党の方々の主張は、自衛隊は憲法違反であるからこれは使うべきではない、むしろ文民警察やあるいは選挙監視要員等いわゆる非軍事、文民の人たちPKO参加をすべきであることを強く主張されたわけでございます。  今このカンボジア事態を振り返ってみますと、中田厚仁さんにしても高田晴行さんにしても、非武装で、かつ個人ベースで活動する文民の例であったわけであり、しかも、事故に遭われたのは任地から離れて移動中である。まさにテロリストから見れば、最も弱い部分をねらうという定石であったわけでございまして、こういった危険の中でこういった悲惨な痛ましい事故が起こったわけでございまして、まさに社会党あるいは共産党の方々が主張されたいわゆる非軍事・文民・民生路線というのが非常に大きな欠陥を露呈したのではないかと私たちは感じているわけでございます。  まず、この点につきまして、総理としてはどのようにお考えか、御意見を伺いたいと思います。
  92. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 この法律を法案として御審議中にただいま御指摘のようなお話があり、私もお答えをした記憶がございますけれども、つまり、平和協力活動が行われるその地域いかんによりましては、実際には飲み水にも困る、あるいはいろいろ病気もある、それから電力も実はどうか、住居に至ってはもちろんというような、そういうことが想像されますので、やはり自己完結的な組織でありませんと協力活動どころではない、自分が生きていくのにもなかなか容易でないところもあると思います、したがいまして、自衛隊のような経験と組織力を持った部隊でありませんと、しかも、そういう自己完結的な施設を持っております部隊でありませんとなかなか務めが果たせないのではないかと思いますということを何度か申し上げまして、それに対しまして、いや、それにはそれで問題があるので、やはり文民であるとかボランティアであるとかそういうことが主であるべきだという御主張がございました。それは、確かにそういうことができれば結構なことでございますけれども、場所によりましては、そういう方が行かれても実際仕事ところではない、どうやって生きていくかということがあり得ますので、その点は考えておくべきだと思うということを申し上げたのでございました。  今回、ただいま御指摘のようないろいろなことがございまして、殊に、これはそうしょっちゅうあってはならぬことですが、水がない、三日間水を飲まなかったというようなことを言われる文民もありまして、何かの手違いとか、あるいは治安の悪さとかいうことであったと思いますが、結果としては、たまたま自衛隊の部隊がおりますので、そこから補給をしたというようなこともございまして、ただいま御指摘のように、やはり、場所にもよると思いますけれども、今後とも自己完結的な、いわば生活能力を持った組織でありませんとなかなか有用な貢献は行うことができないという厳しい現実を今回も経験をしたというふうに申し上げたいと思います。
  93. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 確かに振り返ってみて、文民の安全対策が十分議論されなかったといううらみが多々あるかと思います。こういった教訓を踏まえまして今後どうするかということが大事でございますけれども、今後何らかの形でもう一度、文民あるいはボランティアのPKO参加のあり方、また安全対策について十分議論する場が必要であると考えますけれども、この点につきましてはいかがでございましょうか。
  94. 河野洋平

    ○河野国務大臣 委員御指摘のとおりだと思います。文民は文民なりに活躍をしていただく場はPKO活動の中でたくさんあると思います。これは、世界各国から文民が参加していることを見ても明らかでございます。  しかし一方で、今総理から御答弁申し上げましたように、自己完結型の組織であればもっと有効なあるいは活発な貢献ができたのではないかと思える場面もございます。  例えば、文民警察方々選挙要員の方々を、非常に単純な比較で恐縮でございますけれども比べてみると、選挙要員の方々はタケオ州という比較的安全な地域におられる。そういうことになっておりますが、施設大隊がバックアップの仕事を相当できる、情報交換などができるということは精神的にもかなりの支えになるということを選挙要員の方々は既にメモ等で連絡をしてきておられます。また、水、食糧等の補給についても、これは本来UNTACがやるべき仕事でございますけれども、細かい点に至るまで、情報の交換、連絡等の際にそうしたこともやれるということが一方ではございます。  文民警察方々はなかなかそこまで手が届かない、専らUNTAC組織にお願いをするわけでございまして、もちろん地理的に非常に遠隔の地で、あるいは治安の問題もあって、なかなか陸路、物資の輸送ができないというようなことがございます。ヘリコプターについてはその数が限られているというようなこともあって、御不自由、御不便をおかけしている部分もかなりあったというふうに伺っておりまして、まことにその点は残念、申しわけないというふうに思っておるわけでございます。
  95. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 文民警察人々が配置された場所ですけれども、概して食糧等の補給もままならない、また治安も非常に悪いところが多いわけでして、そもそもこういった状況認識が甘かったのではないか、文民の配置に当たってその前提たる状況認識が非常に甘かったのではないかということが指摘されるわけでございまして、その結果、こういった文民警察方々の痛ましい死傷事件が起こったわけでして、この責任をだれがどうとるか、これはひとつ明確にしていただきたいと思います。
  96. 河野洋平

    ○河野国務大臣 文民警察方々の配置につきましては、UNTACが計画を立て、配置をされたわけでございます。その配置先も、必ずしも日本文民警察だけが配置されているわけではない、各国の文民警察一つの地域にそれぞれ集まって作業をするということになっておるわけでございまして、唯一日本文民警察だけが危険な場所に配置されたというわけではないわけでございまして、その配置、配属の方法等については、UNTAC文民警察部門がその配置、配属については責任を持っておるわけでございます。  私どもといたしましては、いろいろな情報、それからこれまでのとうとい犠牲を出したということなどを踏まえて、二度とこういうことがあってはいけない、我々の責任において何としてもこうした痛ましい事件の再発を防がなければならぬ、そういうことを考えて、村田自治大臣にも現地に飛んでいただき、UNTACともいろいろ話し合いをしていただいたわけでございます。その話し合いは、文民警察方々が本来行うべき業務が行えないような生活環境あるいは治安状況あるいは現地の状況であるとするならば、それは本来業務が行えるような場所に移動することを考えてほしいというようなことを含めて文民警察の安全確保についてUNTACに、我が国としては最も高いレベルで申し入れをするということを行ったわけでございます。  今先生御指摘のように、PKO活動の所管をいたしております私どもといたしましては、犠牲となられました方々に対しては大変申しわけない、本当にその責任を痛感いたしておるわけでございますが、それは、今後こうしたことが二度と起きないように全力を挙げるということで我々の責任を果たしたい、こう考えておるわけでございます。
  97. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 事故に遭われた方、亡くなられた方々に対しては最大限の補償並びに対処をしていただくよう心からお願いをしたいと思っております。  続いて、選挙はもうじき終わるわけですけれども、選挙期間中は比較的平穏に推移しているようですが、選挙の結果によってはまたどういうふうに状況が急変するかもしれない。また、ポル・ポト派動向等もまだ予断を許さないわけでございまして、選挙後の要員の安全確保ということも大変重要なポイントではないかと思っております。その点で、政府としては選挙後の要員に対する安全対策をどのように考えておられるか、御説明いただきたいと思います。
  98. 河野洋平

    ○河野国務大臣 大変ありがたいことでございますが、投票日一日目、二日目ともにそう大きなトラブルもなく投票が進んでおります。きょうも、お昼までのところそう大きなトラブルもなしに投票が進んでいるという報告を聞いて、大変喜んでいるわけでございます。まだ投票はあと数日残っているわけでございまして、移動投票所を持って巡回をし、投票が終わって投票の開票作業が行われるということになりますと、その開票の結果いかんによって、委員御指摘のようにまた新たな状況が出てくる可能性があろうかと思います。  ただ、私どもといたしましては、選挙の終盤、中盤から終盤にかけて、情報等を総合いたしますとかなり緊張も高まった時期がございまして、そういう時点、先ほど申しましたように、累次UNTACにも安全確保方を申し入れると同時に、我が国といたしましても、例えば我が国派遣要員に対してインマルサットをより数をふやして支給するとか、あるいは防弾チョッキの新たなものを支給するとかという作業をいたしましたが、さらに総理の御指示もございまして、UNTAC全体の安全対策の質を高めるということが何より重要だということで、UNTACと協議をいたしまして、UNTACが安全対策上最も必要としている輸送手段、ヘリコプターでございますとか自動車のたぐい、こうしたものの数をふやしたいというUNTACからの要請を聞きまして、我が国として百十万ドルの緊急支出をいたしたところでございます。  こうしたことが選挙後におきましても要員の安全確保のために大いに役立つものというふうに考えております。
  99. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 続いて、要員の健康管理、病気の問題につきましてお聞きしたいと思います。  UNTACでも既に何人かの犠牲者が出ておられます。またPKO、今まで累計で既に八百人を超える痛ましい犠牲者が出ておるわけでございます。ただ、内訳としましては、大まかに言って三分の一が敵対行為によるもの、残りの三分の二が病気あるいは事故等によるものでございまして、敵対行為のみならずこういった病気、事故等に対しても対策が不可欠だと思うわけでございます。特にカンボジア等の場合、我々自身現地を経験をしてまいりまして、さまざまな風土病がある。特に、これは雨季に入りますといろいろなウイルス性の病気が蔓延するということも聞いておりまして、この点での万全な対策が必要であるかと思います。  また、実際に、報道によりますと、既に自衛隊の宿営地におきまして十四名が赤痢の症状を呈して隔離されたと聞いておりますけれども、この点につきまして、まず事実関係ないし対応策を御説明いただきたいと思います。
  100. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 施設部隊につきましては防衛庁の方からお答えいただきますが、一般的な健康管理につきまして、私の方からお答え申し上げたいと思います。  我が国要員の派遣に当たりましては、事前に現地の風土病等につきまして専門家による研修を行っております。  それから、予防注射でございますけれども、ポリオ、日本脳炎、狂犬病、破傷風、コレラ、B型肝炎、A型肝炎、これだけの予防接種を行いまして、さらにマラリアの予防策といたしまして予防薬を配付しております。  また、派遣後体調を崩した場合につきましては、自衛隊のタケオの診療所、またはプノンペンにありますUNTACのドイツの病院等におきまして診療を受けることとしております。  さらに、長期の派遣者につきましては、おおむね三カ月をめどとしておりますけれども、自衛隊のタケオの診療所で診ていただきますほか、UNTACドイツ病院またはバンコクのゼネラルホスピタルで健康診断を受診させることとしております。なお、ゼネラルホスピタル、バンコクの病院でございますが、日本で研修を受け、日本語を話せる看護婦さんもおられます。  以上、一般的な予防対策等について御説明いたしました。
  101. 河路明夫

    河路政府委員 自衛隊の派遣部隊の健康管理等についてお答えを申し上げます。  国際平和協力業務に従事いたします隊員の健康管理、これは極めて重要なことと私ども認識をいたしております。カンボジア施設大隊を派遣するに当たりまして、いろいろな所要の措置を講じました。  まず、派遣の準備の一環といたしまして、派遣前に当然のことながら健康診断をいたします。また、今お話にありましたような一連の予防接種を実施いたします。また、現地の衛生状況に合わせました衛生教育も実施をいたしております。  それから、現地におきましては、当然のことながら隊員に提供いたします飲料水、食品、それらの検査の実施もいたしておりますし、またマラリア等の心配がございます、蚊帳の使用、防虫剤の使用等も行っております。  そのほか、今お話にございました医官等四名を含みます約二十名の衛生班、これを派遣しておりまして、隊員に対しますふだんの健康管理の指導あるいは疾病の治療等を行っているところでございます。  そこで、お尋ねの赤痢でございますけれども、これは五月の十四日から十八日にかけまして発熱、下痢等の症状を呈する者が若干ございました。これらについては、検査の結果十四名が赤痢と診断が確定いたしましたけれども、その後新たな発生もございませんし、患者である隊員いずれも軽症でございます。現在はもう平常に復して隊務に従事しているといった状況でございます。今後とも健康管理に万全を図ってまいります。
  102. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 特にこの要員の健康管理には最大限の配慮をお願いをしたいと思っております。  もう一つ、要員の任務終了に伴う引き揚げについてですけれども、先ほど官房長官の方からはそれぞれ選挙監視要員文民警察、自衛隊施設大隊の帰国の日を発表されたわけでございますけれども、選挙監視要員の方は選挙が終われば直ちにということでこれは結構なんですが、文民警察につきましては七月十三日ということになっております。これはやはり選挙が終わり次第可及的速やかに引き揚げるということが、安全対策の上からも、またその他のさまざまな配慮の上からも望ましいと考えるわけでございますが、この点は何とかならないのかということでございます。
  103. 河野洋平

    ○河野国務大臣 文民警察方々の任期が終了いたしますのは七月の十三日ということになっております。委員がおっしゃいますように、選挙が終了して一つのステージが終わるといいますか、新しい次の段階へ移っていく状況がどういう状況になるかということは、現在まだ予測がなかなかしがたいわけでございます。私どもといたしましては、今は任期終了の七月十三日ということを申し上げておりますが、状況のいかんによりましては、今お話にありましたようなことも頭に入れていっていいのではないかというふうには思っております。
  104. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 文民警察につきましては、PKO法上毛その任務として現地警察への指導、監視、助言ということになっております。ところが、実態面をいろいろ聞きますと、こういったニーズは余りなくて、むしろそれ以外の、任務を逸脱した分野に駆り出されておるというのが現状ではないかと思いまして、またそういったところからさまざまな問題、事故が起こっておると理解をしておりますので、やはり選挙が終わり次第できるだけ直ちに引き揚げるということを強く申し入れをしていただきたい。また、こういった文民警察の最終的な引き揚げかどうかということは日本側にそういった決断ができることになっているわけですから、ぜひとも強くUNTAC側にもこれは申し入れをして、できるだけ早い帰国を実現をしていただきたい、そのようにお願いをしたいと思っております。  続いて、選挙監視要員の警護ということに関連をしまして、PKO法凍結解除であるとかあるいはPKO法を改正せよといった議論が閣僚の中からもいろいろ発言をされておられる方がいるようでございますけれども、この点につきましてお聞きをしたいと思っております。  そもそもPKF凍結を解除したとしても、現在のPKO法の中には警護という任務がございませんので、これはできない相談でございます。  他方、自衛隊が行っているのに選挙監視要員を警護しないのはどうかという議論があって、その関連でこのPKO法を改正せよ、警護の任務をつけ加えよという議論があると理解をしておりますけれども、まずこれをお伺いしたいのですが、そもそも、今までずっとPKO法議論してきた、憲法との関係あるいは五原則という問題で議論をしてきまして、武力行使ないし武器の使用については極めて厳格なルールを五原則という形でつくったわけでございます。そういった意味で、果たしてこの警護ということをこの協力法の中に新たな任務としてつけ加えることができるかどうか、憲法上どうなのかということを法制局長官にお伺いをしたいと思います。
  105. 大出峻郎

    ○大出政府委員 いわゆる警護の問題につきましてでございますが、これは午前中の御質問に対しましてもお答えを申し上げたところでありますが、この国際協力法におきましては直接警護についての規定はないわけであります。他方、あえてつけ加えて申し上げますというと、警護と言うべきかどうかわかりませんが、むしろ安全対策と言うべきかもしれませんが、そういう観点から二十四条というところで、武器の使用が一定の場合にできるということが書かれておるわけであります。  ただいまの御質問は、これ以外に警護の任務の追加をする、その場合の憲法との関係ということかと思いますが、これは今具体的にその特定の態様というものを想定をいたしまして、そして現時点でどうあるべきかというようなことについて私の立場から申し上げるということは適当でないと考えますので、差し控えさせていただきたいと思います。
  106. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 今現実にこのカンボジア状況で警護ということが問題になっているわけですね。しかも、ポル・ポト派という紛争当事者の一方から攻撃が確実に予想される、こういった状況で警護という問題が出てきているわけでございまして、やはりこの点につききちっと憲法上の議論をしていく必要があると私は考えております。  法制局の従来の見解からして、果たしてこの警護ということをつけ加えることができるかどうか、閣僚からもそういった意見が出ているわけですから、これにつきまして明確なお答えをいただきたいと思います。
  107. 大出峻郎

    ○大出政府委員 ただいまの問題についてでございますが、まず憲法九条という規定がありまして、憲法九条のもとにおいて、我が国我が国を防衛するために必要最小限度の実力を行使する、いわゆる自衛権を行使をするということが認められておる、こういうことであります。しかも、その自衛権の行使につきましては、これは非常に厳格な要件がありまして、いわゆる自衛権発動の三要件というようなものを満たしていかなければならない、こういう問題があるわけであります。  我が国が海外におきましていわゆるPKOの業務、活動に参画をしていくという場合に、武力の行使というものをすることは認められていない、これははっきりいたしておるところであります。他方、先ほど申し上げましたように、国際平和協力法におきましては二十四条というところで、例えば二十四条三項について言いますと、自衛官につきましては、一定の場合に自分たちを守るために武器の使用をすることができる、非常に厳格な要件のもとにおいて認められておる、こういう全体の枠組みになっておるわけであります。  そういうことを前提としまして、さらに具体的にどういう警護任務をどういう態様でするのかということにつきまして、今具体的に私どもの方で適宜想定をいたしまして、こうだああだということを申し上げることは現段階では適当でないと考えますので、差し控えさせていただきたいというふうに思うわけであります。全体の枠組みはそういう枠組みの中で考えられることであろうというふうに思っております。
  108. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 今長官から、この点を議論するのは適当でないとおっしゃいましたけれども、まさに今、国会で議論することが一番適切な問題であると私たちは考えているわけです。現実カンボジアでこういう状況が起こり、閣僚の中からも複数こういったことを言う方がいらっしゃる。しかも、これはまさに、我々はこの五原則を議論したときに、自衛隊のPKOへの活用というものは、これは派遣は許される、しかしこれが万が一にも武力行使を伴う派兵になってはならないということを徹底的に議論して、その結果として五原則を明確に法律に書き込んだわけであって、最もPKO法の核心をなす部分であって、これがしかも現実に、現在カンボジア状況において問題になっている、警護の任務をつけ加えるかどうかが問題になっているわけですから、最も国会で議論するに適切な問題ではありませんか。なぜそれが適切でないとおっしゃるのですか。
  109. 大出峻郎

    ○大出政府委員 私が申し上げておりますのは、法制局長官という私の立場で申し上げることは適当でないと考えております、こういうことを申し上げたわけでございまして、もちろん今、国会の場でいろいろな角度からいろいろな御議論があるということを私は適当であるとかないとかということを申し上げているわけではございません。
  110. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 それでは、この点は総理にひとつお聞きしたいと思いますけれども、よろしくお願いします。
  111. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 法制局長官の言われましたのは、つまりこれは立法論としてならともかく自分立場としてはと、こう言われたんだと思います。  それで、私はこういうふうに思いますが、今現実事態カンボジアに警護という問題が起こっているという遠藤委員の御指摘です。事は、ずっと今朝も御議論がございましたけれども、クメールルージュが武装解除に完全に応じなかったというところから、あそこに非常に大きな兵器が残ったわけでございます。そういうような事態において、まずこのカンボジアに派遣されている各国の部隊のあるいは要員の安全を保障するのは第一義的にUNTACの務めでございます。したがって、UNTACはかねて各国から、我が国のように施設部隊でなく、歩兵部隊と仮に呼んでおりますが、それを募集いたしまして、その歩兵部隊が警護の、安全保障の任に当たっている、そういうのが全体の仕組みであると思っております。  我が国はもちろん歩兵部隊を出しておりませんで、工兵部隊と申しますか施設部隊を出しておりますが、その施設部隊は、したがって我が国の場合フランスの歩兵部隊に守られている。全体のいわゆる警護的な安全の保障というのは、UNTACの責任のもとに、歩兵部隊を出した各国あるいはその他ございますけれども、そういう警護の任務を持った各国の部隊によって警護が維持され、安全が維持されておる、こういうことであると考えます。  したがいまして、この際、問題のお答えとしては、我々が警護のための、仮に法律を改正するなりなんなりして部隊を送るべきか、そうでなくて、警護、安全保障そのものは、むしろUNTACがそれを出す用意のある国から求めるべきかということになりますが、例えば今の場合、クメールルージュの持っておるような兵器に対して有効に防護を行う、警護を行うとすれば、我が国の施設隊に許されておる武器では到底有効に警護をなし得ると私は思えません。そういたしますと、もし有効に警護をなし得るためにはそれだけの相当する武器を我が国の部隊が持たなければならぬということになりますが、施設部隊がそういうものを持っても、持つことがそもそも相当でないと思いますし、また有効に活用するための訓練は受けておらないと考えるべきでございましょう。  したがいまして、今我々の前に起こった問題を将来いかに教訓とするかについては、やはりUNTACが、そういう武装解除が完全に行われなかった事態に対して相応に対応するような安全保障の措置を講ずることが大事である、そういうお答えになってくるのではないかと私は思います。
  112. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 私がこの問題をしつこく追及するのは、まさにこの五原則の問題、これこそが憲法の許す枠の中で最大限PKO協力をするということのぎりぎりの接点として実は議論した成果であって、これはそう簡単にゆるがせにしてはならないと思うからこそその限界的な状況を追及しているわけでございまして、実体論につきまして御説明を求めているわけじゃないわけでして、むしろ憲法上どうなのか、警護という問題を憲法上どう考えるかということをお聞きしたかったわけでございます。  なかなか回答が得られないようでございますけれども、私どもの印象を申し上げますと、やはりこの警護というのは、襲撃がほぼ明らかな状態を想定してそれに組織的に応戦する、武力を行使するということをそもそも考えているわけでございますし、また、今回の場合、ポル・ポト派というのは紛争当事者の一方です、すなわち、国家に準ずる団体であって、今までの議論のコンテクストからいいますと、まさに憲法の禁ずる国際関係における武力行使に当たり得る可能性が極めて高いというふうに我々は印象を持っているわけでございまして、憲法上極めて疑義がある。  したがって、閣僚としてこういった警護の問題、任務をつけ加えよと言うのは、ちょっと軽々な議論ではないかということを申し上げたいわけでございまして、このPKO法議論の今までの本筋、また五原則の精神というものをぜひ骨の髄までわかっていただきたいということを申し上げたいわけでございます。  というわけで、片や野党の方にもいまだ文民の協力を重視すべきだという議論があり、PKO現実を余り十分認識されていない議論があるかと思うと、閣僚の中にもこういった五原則の考え方を十分理解をしておられないような意見もある。したがって、我が国においては、PKOの問題は、理解は進んでいるかもしれないけれども、いまだ十分な理解が得られるとは思えない。  したがいまして、このPKFの凍結の問題は、やはりまだちょっと時期尚早であろう、やはり当初想定どおり、三年後の見直しという時期でしっかりと議論すべきであって、現在の試運転期間中はいろいろな経験を慎重に積み重ねながら十分これをそしゃくして、やがて三年後の時期にまた十分議論をして見直すべきであると考えるわけで、そういった意味では、このPKF凍結論も時期尚早と考えるわけでございますが、総理のこの点つきましての見解はいかがでございましょうか。
  113. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 お考えの筋道はよくわかりました。概して私も同様に考えます。
  114. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 そろそろ時間がなくなってまいりましたので、先に進みたいと思います。  今回のカンボジア選挙、比較的平穏に今のところ推移をしておるようでございまして、その点では喜ばしい限りでございますが、最終的な投票率がどれぐらいになると政府は見通しているか、見積もっているか、この点につきましてまずお聞きしたいと思います。
  115. 池田維

    ○池田政府委員 二日間の選挙の結果は大体七割近い投票率ということになっておりますが、この投票率がどの程度になるのかということについては、私ども、選挙結果が近く明らかになりますから、それを注視してまいりたいと考えているわけでございまして、この投票率をどういうように考えるかにつきましては、パリ協定上は特に規定はございません。この開票結果につきまして、UNTACがそれを判断し、これが有効な選挙であったというように認定するかどうかということでございます。
  116. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 この選挙後の政権のシナリオ、これがどうなるか、いろんなケースが想定をされます。どの党も憲法制定議会の絶対多数を占められないというケースもあり、また、あるいはプノンペン政権が勝利する、あるいはラナリット派が勝利する、いろんなケースがあり得ると思いますが、どういうシナリオを望ましい、あるいは最もあり得ると考えているか。  また、ポル・ポト派が今回この選挙には参加をしていないわけでございますけれども、選挙後のポル・ポト派への対応、これをどのように考えているか。外務省にお聞きしたいと思います。
  117. 池田維

    ○池田政府委員 選挙の結果は近く公表になりますから、その選挙結果に基づいてどういう新しい政権ができていくのかということにつきましては、私ども、カンボジア人たちがどういうように判断していくかということを見守っていきたいと思っているわけでございます。  一般論として申しますと、今回の選挙、これは二十一年ぶりでございますけれども、このような形でカンボジア選挙が民主的な方法で行われたということは大変画期的なことでございます。これは、今後のカンボジアの新しい国づくりをする上で極めて重要な重みを持つものだと思います。そういった意味では、カンボジア各派のどの指導者もこの選挙にあらわれた民意というものを無視することができないだろうと思います。これは、これまでのカンボジアはどちらかといいますと、一般国民は統治される対象であったわけでございますが、今回こういう形の選挙が行われた、そしてそれが、今後のカンボジアについてやはり国づくりの上で大変重要な要素になっていくということでございます。  したがいまして、ただいまどのような政党がどういう、単独政権になるのかあるいは連合的な政権になるのか、あるいはポル・ポト派がどういうような形をとるのか、これにつきましては私ども、いずれにしましても選挙結果を見てカンボジア人が判断していくだろうというように考えているわけでございます。
  118. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 以上で私の質問を終わります。
  119. 小杉隆

    ○小杉委員長代理 この際、山口那津男君から関連質疑の申し出があります。遠藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山口君。
  120. 山口那津男

    ○山口(那)委員 公明党・国民会議山口那津男でございます。  遠藤委員質問に関連をいたしまして、これからカンボジア問題について御質問をさせていただきます。  まず、先ほどの遠藤委員質問に対しまして、パリ和平協定の遵守の状況について総理の方からお答えがございました。この点について再度、国連ではこれが合意の想定しない状況である、こういう認識が示されているようでありますが、総理の御認識として、これが具体的にどのような遵守の状況であるか、どういう点が想定外のことであるとお考えになっておられるか、改めて御答弁いただきたいと思います。
  121. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 やはり一番想定外でありましたのが、パリ協定実施の第二段階であります武装解除について、ポル・ポト派がこれに応じなかったということであると思います。また、それに象徴されますように、ひいてはポル・ポト派選挙の事実上ボイコットを行ったということであったと思います。  これらは、殊に前段の武装解除が行われなかったということにつきましては、ひいては我々の同胞の貴重な犠牲にもそれが遠因となりましたわけでありまして、このたびのカンボジアにおける国連UNTAC行動をいろんな意味で制約をいたしたことは事実でございます。  しかしながら、本会議でもしばしば申し上げましたように、クメールルージュ自身が、パリ協定というものは自分たちは決して否定をしない、むしろ遵守するがゆえにいろんな点でそれが十分に行われていない、ベトナム人がたくさんいるとかSNCが十分な権威を持っていないとかいろいろございますけれども、むしろもっと忠実にこれが遵守されていないことに自分たちは不満であるというようなことを言っておるわけでございまして、パリ協定そのものは否定していないという立場を今も変えておりません。  それから、UNTAC行動そのものも、SNCという、これはポル・ポト、クメールルージュがその構成員でありますSNCが承認をしておりますから、この点についてもいわば我々の平和三原則の一つは十分に守られている。それから、UNTAC自身もできるだけ公平に中立的に行動しておりますことは、これは人々の認めるところでございますので、私どもの立場からいいますと、この法案にございます平和五原則の三つ、最初の三つは破られていないというふうに考えております。  したがって、当初の想定と幾つかの点で違いがございました。ございましたので、今日、このような御審議にそれが影響していることもよくわかるところでございますが、しかしながら、パリ協定そのものの一番大事な部分である選挙が、まずまず平静のうちに多数のカンボジア人々参加を得て行われつつあるということは、ブトロス・ガリ事務総長の報告が結論としておりますように、しかしながらやはりこの際最も大切なことは、選挙を行って制憲議会をつくり、カンボジア人カンボジアをつくることに対して、UNTACが、したがってそれに参加をしております各国が最も努力をすべきパリ協定の一番大事な点であるとブトロス・ガリ事務総長が結論づけておられますのも、同様な見解に基づくものと考えております。
  122. 山口那津男

    ○山口(那)委員 今御答弁にありましたように、PKO活動、特に大事な総選挙の実施というものは、やはり停戦合意が確立され、安定化していくというプロセスが大前提になっているだろうと思います。そこで、その停戦合意を安定化ならしめるために武装解除というものが実施されなければならない、しかしこの武装解除が極めて実施率が悪かった、こういう状況でございます。  そこで、この武装解除、これが歴代の歴史的なPKOの中で、任務として取り入れられたのはいつごろか。これは私なりの考えですと、やはり内戦タイプの終了に伴うPKO活動に必然的に出てくるものだろう、こういうふうに理解をいたしておりますけれども、これがいつごろから、どういうPKOで入ってきたものであるか、そして、この武装解除が国連の主導のもとに成功裏に行われた実例があるのかどうかこの点を改めて御答弁いただきたいと思います。
  123. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 動員解除も含めました武装解除ということになりますと、武装解除がPKOの業務の一つに加えられるようになりましたのはほんの最近でございまして、典型的にはナミビアであったと思います。それから、これが成功した例といたしましては、ニカラグアで武装解除、選挙という過程が無事に終了いたしております。それから最近では、モザンビークは、またこれは実施されておりませんけれども予定されております。アンゴラが、失敗例といえば失敗例ということになるかと思います。
  124. 山口那津男

    ○山口(那)委員 現在進行中のカンボジアあるいはソマリア等は、これまた成功しているとは完全には言い切れないという状況だろうと思いまして、この武装解除というのは、なかなか成功に導くのは難しいということだろうと思います。  そこで、この武装解除の実施を確保するために国連内で、どういう方法が一番有効であるか、こういう議論が既になされているだろうと思いますし、また、その実施の試み、例えば平和執行部隊的なものもその一つであるかもしれません。これら国連内の有効な方法についての議論がどうなっているか、これを御説明いただきたいと思います。
  125. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 先ほどの御質問について訂正させていただきます。  私はナミビアと申し上げましたけれども、成功裏に行われました例はニカラグアでございます。ナミビアは特に武装解除なしに和平が進んでいるということでございます。  武装解除の実施の確保にどのような方法が有効と考えられるかという点でございますが、一般的な定型的な方法があるというぐあいには私ども承知いたしておりませんけれども、やはり紛争当事者が自発的に武装解除に応じる、そういう環境がつくられて、それを国連が監視していくという方法が一般的であると思います。そういった雰囲気がつくられて国連の監視のもとで武装解除が進んでいくというのが一般的であるかと思いますが、具体的な定型的な方法があるというぐあいにはちょっと承知いたしておりません。
  126. 山口那津男

    ○山口(那)委員 どうも明快な御答弁ではありませんけれども、いずれにしても、この武装解除を完璧に実施するということは、相当な議論もあるでしょうし、なかなか困難な面があると思われます。実際、UNTACにおいては、この武装解除が中途半端に終わった結果、停戦合意の安定性にも問題が生じてきた。これは想定を超える部分もあったわけでありますけれども、実際にもう行われてほかのプロセスを実行していかなければならないわけですから、その事態に応じた、本来想定外のことにも対処する新しい任務というものが出てきたはずであります。それは具体的にどのようなものだと考えておられますか。これを御説明いただきたいと思います。
  127. 小杉隆

    ○小杉委員長代理 ちょっと質問者、もう一度、今のところをもうちょっと……。
  128. 山口那津男

    ○山口(那)委員 じゃ、もう一度御質問をいたします。  UNTACは、武装解除ができなかった、その他想定外のことが出てきたことによって、本来想定しなかった任務を加えてくるということがあったのではないかと思います。現実事態に対応するために新たに加えた任務を具体的に説明をしていただきたい、こういうことであります。
  129. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 UNTACの任務そのものはパリ協定で定められておりますし、さらに、国連の安保理決議をもとにしてそれは定められておりますので、その基本的な枠組みが変更されたことはないというぐあいに承知いたしております。  特に国連事務総長の累次にわたる報告でも、UNTACとしてはその任務を遂行するために、情勢に応じて最も適当と思われる具体的な措置をとっております。例えば安全対策につきましては、コンポントム州その他を中心といたしまして、具体的に、投票所の廃止とか、あるいは場合によっては歩兵部隊の拡充というような措置をとったというぐあいに事務総長の報告では書かれておりますけれども、これは、いずれにいたしましても、UNTACの基本的な業務の枠内であるというぐあいに理解されております。
  130. 山口那津男

    ○山口(那)委員 しかし、武装解除が三〇%弱実行された段階で一部返還をする、こういうことは本来想定していないことじゃないですか。だから、これは明らかなUNTACの任務の変更ではないかと私は思いますし、それから実態面からして、抽象的な規定の枠内であったとしても、警護を強化するとか、さまざまなその実態に応じた想定外の措置というものがやはりとられているだろうと思うのですね。その辺を明らかにしていただきたいということなのです。
  131. 河野洋平

    ○河野国務大臣 ちょっと御質問意味が十分理解できずに、大変御無礼をいたしました。  一方の武装解除が進んでいない、他の一方だけが武装解除を進めるということではバランスが悪いということで、他の三派から、解除した武器その他を返却してほしいという申し出があったということは承知をいたしております。しかし、その申し入れにつきまして、ニューヨークの国連では慎重に検討をするということを言っておりまして、私、きょう現在、そのことが実行されたというふうには承知をしておらないわけでございます。  また、警護等につきましては、これは当然委員が御指摘になりましたように、安全性を考えて、危険度が増せばそれだけ安全確保のための対策は手厚くしなければならないということはそのとおりであろうと思います。したがいまして、文民警官及び選挙要員などの移動に当たりましては、さらにそのエスコートを十分にする等の配慮はなされていることは事実でございます。
  132. 山口那津男

    ○山口(那)委員 ちょっと外務大臣が席を外されましたので、別な質問に移ります。  五原則の適用についてでありますけれども、その中の三つ、中立性、それから紛争当事者同意、そして停戦合意、これらがカンボジアにおいて実際どの程度守られているのかということは、必ずしも疑問がないわけではありません。  例えば、中立性の原則に関しましては、ポル・ポト派は、かねてからプノンペン政府がベトナムのかいらい政権である、このように主張してきました。そして、UNTAC活動プノンペン政権にやや有利に偏しているのではないか、このような非難もしてきたわけであります。  こうした状況下で、我が国はことしに入ってベトナムの首相をお招きした、こういうことがありました。これがポル・ポト派に、UNTACにおける日本活動が中立性を損なっているんではないか、こういう非難をする口実を与えてしまったのではないか、そういう気がしないでもありません。いささか外交的に配慮を欠いたのではないか、こういう非難をする人も、私ではありませんが、おられるわけですね。  ですから、この点についても、直接の紛争当事者のいずれかに偏るということではないにしても、背後の外交的な関係をも十分目を配った、そういう中立性を維持する措置というものを考えていかなければならないだろうと思っておりますが、この点についての感想をお伺いしたいと思います。
  133. 池田維

    ○池田政府委員 ポル・ポト派の地下放送は、時折、攪乱的な情報も流しておりますから、どれをもって公式な声明とするかなかなか判断の難しいところがございます。  ただ、その中で、確かにただいま先生のおっしゃったような声明というものが非公式に流されたことはございます。しかしながら、私どもはそれは根拠のない、いわば言いがかり的なものではなかったかというように考えているわけです。つまり、国際的に通用するものではないというように考えております。  例えば、ベトナムの首相は九一年十月以降ASEAN諸国をすべて回っております。それから、昨年末には中国の首相がベトナムを訪問しております。それから、ことしの二月にはフランスの大統領が訪越いたしました。それから、五月の中旬にはベトナムの首相が韓国を訪問いたしております。したがって、ベトナムの首相がこの間日本を訪問したということは、これはこういった外遊の一環でありまして、それをもってベトナムが日本に特別近くなったからといったようなことは、一つの言いがかりではなかったかというように考えているわけでございます。
  134. 山口那津男

    ○山口(那)委員 私もまさにそのとおりだと思いますが、しかし、そういう国際的な常識が通用する相手がどうかということもあるわけでありますから、この点についてはやはり今後慎重な配慮をお願いしたいと思います。  さて、外務大臣にお伺いいたしますけれども、先ほど武装解除を含む国連PKO活動、これはなかなか成功裏に終わらせることが簡単ではない、こういう実例も紹介されました。そこで、今後、武装解除を含むこのPKO活動について我が国がどう参加を考えていくべきか。これは成功裏に実施される保証がなければ、やはり停戦合意の安定性に大きな問題を投げかける、こういうことになりますので、ここは周到な配慮が必要だろうと思います。この点についてのお考えをお願いいたします。
  135. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 一般論といたしましては、国際紛争の中で停戦合意がなされた以上、やはり武装解除が円滑にいくように進めていくというのは当然でございますが、日本の場合は、これは平和協力隊法に基づきまして武装解除の監視は凍結をされておりますので、私は、現在のところは凍結の中に入っているというふうに判断をいたしております。
  136. 山口那津男

    ○山口(那)委員 私は、凍結の話を申し上げているんではなくて、我が国はこの武装解除の含まれたUNTACですね、これは一例でありますけれども、これに文民も参加させておるし、また自衛隊の施設部隊も参加させておるし、PKFの凍結された部分を除いた部分でかなり広く参加をしているわけですね。しかし、武装解除が円滑に行われないことによって停戦合意が不安定を来している。それによる犠牲者も出たわけであります。ですから、凍結云々の話ではなくて、やはり武装解除が確実に実施されるかどうか、それによって停戦合意が安定化するかどうか、この点の見きわめというのが一番大事だろうと思うんですね。その点についての基本的な考え方をお伺いしているわけです。再度御答弁をお願いします。
  137. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私、今自衛隊の、こういう御質問かと思ってお答えをいたしましたが、全体的なカンボジアにおける武装解除が何とかもっと早くスムーズに進むようにということにつきましては、私どもとしては、例えば結果的にはうまくはまいりませんでしたけれども、カンボジアにおける四派に対してそれぞれ武装解除を促進し、とにかく平和なうちに選挙が行われるように努力をしてもらいたいと自制を求める形の親書を出したり、いろいろな外交ルートを通じて、例えばポル・ポト派に対しましては、タイからのルートあるいは中国からのルート、あるいは今川大使直接のいろいろ非公式を通じてのルートなどをいたしましたし、また、その他の政党に対しても、まあ三派でございますね、その他に対しましても、政権党を含めて、私どもは、できるだけ平和なうちに選挙が行われるように、ということは結果的に武器を使用しないように、こういうことでございまして、自制を求めたわけでございます。
  138. 山口那津男

    ○山口(那)委員 総理、このPKO活動に最終的に参加をするかどうかを判断するお立場として、今私が申し上げたとおり、武装解除を含むこのPKO活動に、カンボジアの貴重な経験を踏まえまして今後どのように御判断をされていかれるか、この点についてのお考えを伺いたいと思います。
  139. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 武装解除が行われなかったいきさつを振り返ってみますと、当初はパリ和平協定に従って解除に応じるものという期待がございました。しかし、それが思うように進みませんので、けさほどから政府委員が御説明をいたしましたが、随分いろいろな外交的努力を我が国としてもいたしました。また、最終的にはクメールルージュに対する経済制裁に類するようなことも行われたわけでございます。  それから、どうしても当初の段階では四派の間の対抗意識が強うございますから、国連UNTACというものが入って、何となく新しい雰囲気の中でならクメールルージュも武装解除に応じてくるのではないか、そういう期待を持っておった事態もございます。結果としては、しかし、それが行われなかった。  ある段階で、UNTACがもう少し何かの意味での治案維持のための力を持ちまして、武装解除をもう少し、強制という言葉はいけませんけれども、各派にこれは中立的でなきゃなりませんから、行う方法があっただろうかと考えますと、これはやはりUNTACの本体からいって、本質からいって私は無理ではなかったかというふうに思いますので、そういたしますと、今から振り返ってみて、どうすれば武装解除が可能であったかということ、もう一つ、どうもあそこでああすればということを私も思い浮かばないような思いがいたします。  そうでありましたので、そうであれば次にとるべき対策は、ここは明らかだと思いますが、UNTACが全体の治安を、武装解除が十分に行われていないということを前提にして、治安のための部隊を、供給する用意のある各国にやはり要請すべきであったろうと思います。いわゆる歩兵部隊と言われるものでございます。あるいはヘリコプターもそうかもしれません。装甲車もそうかもしれません。  武装解除が行われなかったことに対する治安の撹乱、あるいはゲリラ活動等に十分にUNTACが対応できないうちに選挙の日が迫ってきてしまった、こういうことであったと思いますので、私としては、我が国として、その際そのようなゲリラあるいは騒乱状態に対応すべき有効な部隊を送り得るとは考えませんので、したがって、UNTACがそういう努力をする。恐らくこれは応じる国が、時間が早ければあったと思いますが、あるいはそれに対して我が国として必要ならば財政的な支援をする。そういうようなことがありましたならば、ちょっとこれは結果論になるようでございますけれども、ありましたならば、この選挙に対してこのような妨害あるいは実力行使というようなものを恐れるような事態が防げたかもしれない、まあ程度問題でございますけれども、そんなことを思います。
  140. 山口那津男

    ○山口(那)委員 今のUNTACを振り返ってのお話ですと、私なりにまとめますと、今後の対応によって、これは状況にももちろんよりますが、第一義的には、その治安の維持的なものはUNTAC国連側の任務である。それが脅かされれば、歩兵部隊の強化、増強等によって国連側がまず対処すべきである。我が国は、その歩兵部隊の増強について、凍結されていることはもちろんでありますけれども、直ちにこれに賛同するのかどうか、あるいは我が国が法を改めて参加をする、こういうお考えはもちろんお持ちでないわけだろうと思いますね。  そこで、国連側のその治安の増強ということについては、資金面を通じて強化することに賛同していく、このような方針だと理解してよろしいでしょうか。
  141. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 後から申すようになった部分もございますけれども、そういうふうに考えていくべきであったかと思います。
  142. 山口那津男

    ○山口(那)委員 引き続き五原則について申し上げますけれども、ポル・ポト派は、我が国の法律の六条一項によりまして、我が国参加に対する同意が必要とされておりまして、この点については同意が得られた、こういう位置づけだろうと思います。  まず、これは具体的にどういう事実をもって同意が得られたと判断されているのか。その上で、最近のポル・ポト派のラジオ放送によりますと、UNTACカンボジアからの撤退を主張した、このような報道もございました。ただ、その後選挙が実施されておりますから、今なおこういう考えがポル・ポト派内で確実な意思なのか、維持されているのか、これは不明でありますけれども、今後仮にそうしたUNTAC撤退を求めるような明確な意思表示がなされてきた場合に、これは我が国PKO参加に対する同意をも失われた、こういうふうに考える余地がございますでしょうか。
  143. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 我が国に対する同意でございますけれども、昨年の七月二十八日でございますが、明石特別代表が国連本部の訓令に基づきまして、カンボジア最高国民評議会、いわゆるSNCの議長であるシアヌーク殿下に、我が国の要員、部隊の派遣につきまして通報をしたわけでございます。これに対しまして、シアヌーク殿下はこれを歓迎するといたしまして、かつ、これはSNCの総意であるということを答えられた。その旨国連側から我が国としては連絡を受けていたわけでございます。これが我が国活動に対する受け入れ側の同意ということになるわけでございます。  カンボジアにおきましては、現在も主権を具現しておりますのはSNCでございまして、したがいまして、我が国の要員、部隊の派遣に対するSNCの受け入れ国としての同意、それから紛争当事者各派の総意としての同意が存在しているというふうに考えております。  その後、ラジオ放送というようなお話もございましたが、いろいろ宣伝的な動きがございますが、現在もこのような同意が撤回されたというような状況ではないというふうに判断しております。
  144. 山口那津男

    ○山口(那)委員 停戦合意につきまして、これは一般には、崩れたかどうか、こういう表現がよく使われます。私自身も使ってまいりました。これは法律ができ上がる前から、一般の方々にわかりやすく御説明するという意味で多用したわけでありますが、法律ができ上がった中には、崩れたかどうかというこういう条文は一切ございませんで、同意あるいは合意が存在しなくなったかどうか、こういうことが明記されております。  ところが、崩れたという話感、日本語の話感といたしまして、まあ一角が崩れた、こういう使い方もしますので、停戦違反が続発すれば、これは常識的には崩れた、こう考える一般の方々は多かろうと思うんですね。しかし今、確実に法律を実施する、こういう立場からすれば、崩れたというあいまいな表現が、しかも法律に何ら根拠を持たない表現がマスコミや政治家や一般の方々に横行しているのは、これはかえって誤解や混乱を招くのではないかと私は思います。  ですから、国民皆さん、崩れましたかと聞けば、ああ、崩れている、こういう感触をお持ちになるかもしれませんが、じゃ、なくなったんですか、こう聞けば、いや、完全になくなったとは言えないでしょうという反応もかなり多かろうと思うんですね。  この点の誤解や混乱をなくすような努力を私は政府がもっときちんと説明をした上でやるべきではないか、このように思っておりますが、官房長官、この辺いかがお考えですか。
  145. 河野洋平

    ○河野国務大臣 大変いいアドバイスをいただきまして、私どもも用語の使い方を十分これから気をつけなければならぬと思います。  停戦合意でございますけれども、これはつまり四派によって停戦協定に今署名をしたということでございます。つまり、停戦合意というのは、四派による意思が確認されているということだと思います。ということになりますと、今月に入りましてもなお、北京で行われましたシアヌーク殿下の呼びかけによります、非公式でございますけれども、SNCの会合がございました。ポル・ポト派は残念ながら欠席でございましたが、ポル・ポト派を除く三派とシアヌーク殿下は、その会合の後、停戦合意を確認をいたしております。つまり、パリ協定の遵守を確認をいたしておるわけでございます。  ポル・ポト派につきましては、その翌日、ポル・ポト派がプレスブリーフをいたしまして、記者会見を行いまして、自分たちはパリの和平協定を遵守する旨を明言をいたしております。  ということを考え合わせますと、これは四派ともにパリの和平協定を遵守する旨を今月に入ってなお、確認を明確にしているということでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、意思は確認されておる。しかし、残念ながら、この協定違反の事案はあちこちに見られることは極めて残念なことでございますが、四派ともに政治的に、あるいは四派の意思をもってパリの和平協定の遵守を確認をしているという状況を見ますと、私どもは、パリの和平協定、すなわち停戦合意は存在しているというふうに申し上げていい、こう考えておるわけでございます。     〔小杉委員長代理退席、石川委員長代理     着席〕
  146. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そこで、今、従来から政府はそのような御答弁をしているわけでありますけれども、実施要領には休止という制度というか考え方、措置がとられております。これは法律上の考え方でありませんので、国際的に果たしてどれだけ理解を得られるかどうか、これは疑問でありますけれども、法律に決められているのは中断、これはその合意同意の不存在、存在しなくなったことを前提にした措置であります。非常に強い措置だと私は思います。これがなお、中断をしたあげく、合意の回復、同意の回復が得られない場合には終了をする、こういう考え方ですね。そしてそれが明示的に合意同意を守る、こういう表明がなされていたとしても、実態として停戦違反が反復継続される、こういうことになってくれば、これは実質的に合意が破棄されたと同じ状態である、こういう認定が可能なわけですね。  しかし、それも、カンボジア全土でそういう事態が起こってくるとはなかなか考えにくい。しかしながら、ある地域においてはそういうことが頻発をいたしまして、とてもその地域ではUNTACの任務あるいは協力隊員の業務が継続することは困難である、こういう事態もないとは言えないと思います。  そうすると、今までの政府考え方では、実施要領における休止と、それから全面的な中断か終了か、こういう二つの選択肢しかないのだろうと思うのですね。これで果たして柔軟に対応していけるのかどうか、私は疑問なしとしないわけでありますが、この二つの制度を使い分けてどう対処していくか、この基本的な考え方をまず官房長官に御説明いただきたいと思います。
  147. 河野洋平

    ○河野国務大臣 委員御指摘のとおり、五原則といいますか三原則がなくなったということになれば中断をする、そして、その回復が、相当長期間にわたっても回復の見通しがないということになれば終了するということが、これは書いてございます。一方、休止につきましては、業務が行われないような状況になったときに、現場の判断として、いわゆる緊急避難的に業務を休止するということでございまして、これは、私どもはそう長期にわたって休止をするというふうに実は想定をしていないわけでございます。  しかし、そうはいっても、緊急避難的にその場を離れる、あるいは業務を中止するという場合に、そうした状況が回復するのを待ってまた業務は継続するというふうに考えておるわけで、今委員がお尋ねになったお考えは、おおむね私どもの考え方と合っております。
  148. 山口那津男

    ○山口(那)委員 しかしながら、この停戦合意がなくなったという判断は実際問題なかなか難しいだろうと思いますし、特にカンボジアポル・ポト派の実際の展開の兵力等から見ました場合に、カンボジア全地域において一斉に停戦違反を繰り返すということはなかなか考えにくいわけであります。  しかし、先ほど再三申し上げましたように、今後もなおある一部地域においてそのような停戦違反を反復継続する事態が絶対ないとは言い切れないわけですね。そうした場合に、オール・オア・ナッシングで考えるのではなくて、私は、この部分的な、一部地域におけるこの停戦合意の不存在が明確になった、こういう認定に基づく一部の中断、終了ということも不可能ではない、このように思っています。  一般論として、ポル・ポト派意思があっちの地域ではあって、こっちの地域ではなくなる、こういう分裂した認定というのはあり得ないはずですね。しかし、そうはいっても、現場の事態に対応すれば、例えば三つぐらい事例が考えられると思うのですね。  一つは、ポル・ポト派内が分裂をする。武闘派と穏健派。そして穏健派は、停戦合意をなお維持すると明確に言う。ところが武闘派の方は、停戦合意を破棄する、あるいは停戦違反を反復継続する。こういう分裂した事態になった場合に、その武闘派が停戦合意を破棄して、一部地域で停戦違反を繰り返すということになれば、その地域で部分的な停戦違反があった、その地域の任務は、業務は中断ないしは終了せざるを得ない、こういう事態も考え得ると思うのですね。  また、このポル・ポト派勢力が一定の地域に、一部地域に偏在をしておる、この偏在した地域において停戦違反が反復継続される、こうした場合は局地的な行動によってポル・ポト派意思がはっきり認定できる、こういう場合もありましょう。  それから、どうも全土に展開しているようだけれども、あっちの地域ではありそうだけれどもこっちの地域では明らかに停戦違反を反復継続している、こういう事態もありましょう。  そうした事態に適切に対応するためには、このポル・ポト派の全体の意思がなお明らかでないとしても、一部地域における停戦合意の不存在は明確になった、こういう認定に基づいて中断、終了ということが考えられるだろうと私は思うのですが、このような考え方についてどう思われますでしょうか。
  149. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 今、場合を分けていろいろ御設問ございました。  実は、部分的な中断というようなことがあるのかどうかという点につきましては、これまでも、この法案の起案の段階あるいはその後においても、政府の部内で議論したことがございます。ただ、私どもの結論は、この国際平和協力法におきまして「中断」という概念の意味するところは、これは、先ほど官房長官が御答弁になりましたとおり、もし長引けば終了につながるような非常に重大な事態であろうということもございますので、結局、地域ごとの停戦合意の原則について判断するという考え方ではなくて、やはり当該その問題になっております国連平和維持活動が行われる地域全体につきまして停戦合意等の原則が満たされているかどうかという観点を判断すべきではないかというような結論に達したわけでございます。  確かに、一部の地域で戦闘が行われ、他の地域は平穏であるというようなことは、実際の問題としてあると思います。ただ、その場合に、全体として前提になっている停戦合意が存在しているかどうかということにつきましては、具体的な状況に照らしまして総合的に判断すべきものと考えておりますけれども、地域ごとに停戦合意があるかないかということを判断するのはなかなか難しいのではないかというふうに考える次第でございます。  ただ、一部の地域で戦闘が激しくなったというような場合につきましては、これはむしろ安全のための措置という考えで、実施要領を最初につくりましたときに一時休止という、事実行為と申していいかと思いますが、そういう考え方を導入したわけでございます。  なお、先ほど先生から、この一時休止ということが国際的に通用するかどうかという点についてもちょっとお触れになったと思いますが、私どももそう広く議論したわけではございませんが、一部のUNTACの幹部等とこの点議論したことがございます。その限りにおきましては、安全が脅かされたという非常に緊急の場合に、その現場の判断で安全のために業務を一時休止するというような考え方は、それはむしろ非常に常識的で当然のことであるというような答えが返ってきたことがございます。
  150. 山口那津男

    ○山口(那)委員 官房長官、先ほど遠藤委員質問に対しまして、文民警察官が七月まで任期はあるものの、選挙が終わった段階で、場合によっては早期に終了させる、こういう判断も検討をする余地がある、このような御答弁があったかと思います。この文民警察官、特にバンデアイミエンチェイ州ですか、そこのアンビル、フォンクーに派遣されていた方々は今、おけがをされた、あるいは精神的に大変なショックを受けられたということでプノンペンに一時休止をしている、こういう状況なのかと思います。  しかし先ほど、一時休止というのはそう長い間の休止状態に対応できる制度ではない、こうおっしゃいましたので、やはりそういう身体的にもまた精神的にも業務を続けることが余りに過酷である、こういう一部地域については、個別にそういう人たちを仕事から外してあげる、こういう対応も考えてしかるべきでしょうし、また、その地域における文民警察の業務そのものを我が国としては実施しないこととする、こういう決断も場合によって必要だろう、このように思うのですね。そうした意味で、これからどう対応されるか、再度明確な御答弁をお願いいたします。
  151. 河野洋平

    ○河野国務大臣 フォンクーにおりました四名についてお尋ねがございました。  この四名は、御承知のとおり、事件に遭いました二人の文民警察官と一緒に国境を越えてバンコクへ行って二人の治療に当たったわけでございますが、さらにこの四名も相当な脱水状態その他健康面にも非常に問題があるということがございまして、現在プノンペンで療養をいたしております。  この四名につきまして、若干誤解があるといけませんからこの機会にお許しをいただいて申し上げたいと思いますが、この四名が何か任務を放棄してというような誤解が一部にあるように聞いておりますが、全くそういうことはございませんで、この人たちは地域のサプリーダーの了解を得て国境を越えているものでございます。現在はプノンペンに戻っておりまして、UNTACの指示によりまして、ドイツの医務官の診断を受けてドイツの医師の診断書を現在UNTACに提出をいたしておりまして、その診断書によりますUNTACの判断を今待っているところでございます。  なお、前段お尋ねがございました文民警察官の任務の終了の時期についてでございますが、私といたしましては、現在選挙がちょうど投票の真っ最中でございます。この投票、この選挙を何とかしてうまくやり遂げたいという気持ちで全員一丸となっているところでございますから、投票のさなかに帰国についてとやかく言うことはいかがかという気持ちがございます。しかしながら、いずれにいたしましても、投票が終了して選挙が終わるということになれば、任期の満了を七月の十三日に控えておりますが、状況が許せばその前に帰国できるようにしてほしいということをUNTACとも話し合いたいというふうに思っているところでございます。
  152. 山口那津男

    ○山口(那)委員 時間が参りましたので、終わります。
  153. 石川要三

    ○石川委員長代理 これにて遠藤君、山口君の質疑は終了いたしました。  次に、東中光雄君。
  154. 東中光雄

    東中委員 今カンボジアではポル・ポト派が総選挙の実施に反対して、その妨害を公然と言う中で選挙が進められています。まさに戒厳態勢の中での総選挙になっております。  この際、私は、UNTACへの自衛隊のあるいは協力隊の参加のこの時点におきまして、PKO法の適用の根本問題についてお伺いをしたいと思います。  宮澤総理は、法案審議のとき、PKOというのは平和の活動だと言い、昨年二月四日の予算委員会で、  この国連の平和維持活動は、戦闘行為がやみま  した後それを恒久の平和に導くための行動でご  ざいますから、ここで武器の使用、戦闘類似行  為が発生したのでは全くこれは平和維持行動の  意味をなしません。そうでない、非暴力により  国連の権威と説得によってこの行動が成功裏に  行われるというのが趣旨でございまして、こういうふうに答弁されております。  現在のカンボジア事態について、武器の使用や戦闘類似行為が発生したのじゃもう意味ないと言われた、この戦闘類似行為や武器の使用はないというふうに言われるのでしょうか、どうでしょう。
  155. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 国連の平和維持活動を御説明いたしますときにそういうことを申し上げました。まさにUNTACとしても、またそれに参加をしております我々としても、そのような精神を持ってこのカンボジアにおける活動に従事しておるわけでございます。  しかるところ、パリ和平協定が想像いたしましたところと事態が違ってまいりまして、一部の分派が武装解除に応じなかった。そのために今東中委員が言われましたように、武器を使用しての騒乱状態、ゲリラ状態カンボジアの一部に起こっておる。これは予想しなかったことでございますが、事実そういう状況になっております。しかし、それに対してUNTACも、我々はもちろんでございますが、いわゆる武器に対して武器をもって対抗したのではこれは平和の構築にならないという精神に基づいて、非常な忍耐と苦難をしながらようやくここで投票のところまでこぎっけた、こういうことだと考えております。
  156. 東中光雄

    東中委員 カンボジア問題につきましては、総理は、パリ和平協定が、停戦合意ができたその後の九一年十二月十九日に、これも参議院の特別委員会でこういうふうに言われています。  カンボジアの場合、仮に本当に停戦というもの  が実現をいたした場合に、その最初の方の部分  には武装解除であるとかかなり危険な部分があ  るかもしれないという感じがいたしますしか  し、難民をもとへ帰すとか、地雷の除去はどう  でございましょうか、その辺から、あと行政活  動、選挙監視等々は、これはそこまでまいりま  したら恐らくそんなに危険なことではないので  あろうと。こういうふうに言われているのですね。  ところが、今言われましたように、そもそもの武装解除、第二段階へ入る前のポル・ポト派は、自分たち勢力を報告せいということさえもしない。地雷の敷設場所を報告せいということもしない。逆に地雷を敷設する。そして武装解除を拒否する。そして、行政関係あるいは選挙活動ということになればもう問題はないだろうと言われていたのが、それに対して今度はポル・ポト派が武力攻撃を加える。  これはもう総理が公式に表明されたこととまるっきり違う方向へ行っているわけですね。そういう答弁をされて、だからPKO活動というのは平和活動だから紛争に巻き込まれることはないのだ、こういうふうに政府はずっと強調されてきたのですね。ところが、今はポル・ポト派による戦闘行為の結果、UNTAC自身への攻撃がある。投票所への攻撃は繰り返される。そういう状態で、全部隊に警戒態勢を指示して、そして明石代表は二十二日の記者会見で、ポル・ポト派投票妨害の危険について述べている。そして、現にまた攻撃もされているという状態ですね。  これは本来のPKO活動からいえば、総理の見解からいえば、もう全然話にならないことじゃないのですか。
  157. 河野洋平

    ○河野国務大臣 現状はおっしゃるとおり、実に残念な状況でございます。  しかし、この現状に対する認識の違いと申しますか、ということは、ただ単に我が国だけではなくて、国連の事務総長自身も当初考えていたことと大分違うということを述べておられるわけでございまして、このことは本来あるべき姿でなくなってしまった。本来あるべき姿をそういう姿でなくしているポル・ポト派に最大の責任があるのではないでしょうか。我々は今ポル・ポト派の武装解除について、何とかしてこれを実行せしめたいというふうに考えておりますが、ポル・ポト派の武装解除のための最も重要なことは、国際社会が一致してこの暴挙を非難することであって、このポル・ポト派の暴挙に対して我々が妥協をしていくということではないのではないかというふうにも私は思うわけでございます。  現実状況について、当初考えていた事態といささか違うではないかという御指摘には、ブトロス・ガリ事務総長もおっしゃっておられるように、武装解除が十分できなかった、あるいは選挙のボイコットがあるということなどはまさにおっしゃるところでございますが、そのこと自体、私どもも含めて極めて残念なこと、遺憾なことだと考えているわけでございます。
  158. 東中光雄

    東中委員 遺憾であるだけじゃなくて、ポル・ポト派の戦闘行動あるいはは防善行動あるいはロケット砲をぶち込んでくるということに対して、UNTAC、また我が派遣されておる施設大隊の対応ということが非常に問題になります。  宮澤総理は、昨年の六月十五日の衆議院の本会議におきまして、  国連の平和維持活動は一般に武器の使用というものを認めておりますけれども、これを厳格に我々がいたしましたゆえんは、万一、平和維持活動が攻撃を受けたときに、これに応戦をするということになれば、それは武力行使につながる危険がある、なしとしない。したがって我が国の場合、いわゆる正当防衛の場合だけにしか武器を使用してはならないということをこの法案の中に書いてございます。 こういうふうに言っておられるのですね。  ところが、この間の五月三日付のガリ国連事務総長の第四次報告書によりますと、これは四十項に書いてあるわけですが、UNTACの武装部門はすべて警戒を強め、安全確保と手順を強化せよという命令を出した、反撃できるように射撃ごうをつくれということを指示した、こういうことが言われております。明石UNTAC国連代表は、選挙妨害には断固として反撃するということも記者会見で言われております。  そこで、派遣されておる自衛隊の施設大隊ですが、こういう国連UNTAC側の指示に従ってごうをつくっていますね。これは反撃するための、反撃できるような射撃ごうをつくれ、つくるようにと書いてある。そういうのが一般紙の写真にも出ていますね。中国の工兵隊はこうやっている、日本の自衛隊はこうしている、武器を持っているという状態が出ております。国連の事務総長がそういう態勢をとるように命じだということを報告しているわけです。現にそういう態勢になっておる。  これは応戦する態勢ですね。ごうを掘っているんですから、ここでこうして撃つんですから。そういう態勢になっていますよ。写真まで報道されています。それは官房長官、首を振ったってだめですよ。そうなっていますが、どうですか。
  159. 河野洋平

    ○河野国務大臣 我が国PKO参加要員は、日本憲法、そして国際平和協力隊法という法律の範囲の中で行っているわけでございます。委員ももう十分御承知のとおり、厳密に限られた小火器しか携行いたしておりません。こうした小火器はまさに自分自身の身の安全ということのための必要最小限度のものであることは委員もよく御承知のとおりでございます。  いかなるごうを掘っているか反撃のためのごうであるかどうかという事実関係については、防衛庁から事実関係を御報告させたいと思います。
  160. 畠山蕃

    ○畠山政府委員 御質問の中で言っておられますごうというのがどういうことを意味されているのかわかりませんけれども、私どもは、タケオの施設大隊の宿営地の中でやっておりますことは、防護壁というのをつくっておる。これは守るための防護壁というのをつくっております。それから掩ぺい部と称しているものを別途つくっておりまして、ごうといいますのは、当初、雨季を迎えましての災害のための対策を兼ねた形で、周囲のところに沿った形で、安全対策と雨季対策と兼ねた形でずっと堀を掘ったということはございますが、これも余り機能しませんで、水の勢いの方が強いものですから、これを埋め戻してということはございましたが、特別応戦するためのごうを掘るという話は事実としてございません。
  161. 東中光雄

    東中委員 先ほど言いましたガリ事務総長の報告の四十項によりますと、すべての地域の軍事部門の全部隊は警戒を強め、安全確保のための措置と行動を強化するよう命じられた。軍事部門は、カンボジア全土、殊にシエムレアプ州、コンポントム州で、全土で防衛態勢を強化した。その防御用のざんごうとして、兵士が反撃できるような射撃ごうとともに掩ぺいごうや頭上防御の建設を認めるまで拡大された。そういう態勢になっている。公式に報告しているのですよ。  そして、今防衛局長も、掩体というのはどういうものか知らぬけれども、守るためのものだと。守るというのは、守るためには違いないです。守るのに武器を使う、撃つと。射撃ごうなんです。そういうふうに国連では言っているのですよ。ここは言葉だけ変えたってだめです、外形的事実は認めているわけですから。  そういうことについて、これは私がこの前の法案審議のときに、国連PKOのSOP、標準作戦規定を示して、PKOの軍事部隊がごうをつくって反撃することになっていることをここで示しましたよ。そして日本の自衛隊も、陣地に相手方が侵入してきた場合には機関銃を撃つことになるという、機関銃は携行物件の中に入っていましたから、そういうことを指摘をした。当時の渡辺外務大臣は、発砲するというようなことはレアケースですよと。レアケースですよと、こう言うたのですね。めったにありませんよということでしょう。そう言って何かそらしたみたいだったのですが、今現実にそういう態勢に入っているのですよ。入っているということが問題だということを言っているわけであります。  そして、今自衛隊の施設大隊選挙支援態勢に入っております。そしてUNTACのコマンドに基づいて投票箱の輸送、選挙監視要員の輸送、治安情報の収集のための巡回などの選挙支援活動を中心としてやるんだということになっていますが、投票箱輸送中で襲撃を受けた場合、まだ幸いにして受けていません、しかし受けた場合は、しかもその襲撃は、現にあったようにロケット砲で撃ってきて自動小銃で撃つというようなことだって現にあるわけですから、そういうふうにやってきた場合、フランスの歩兵部隊と一緒に今行動しているわけですね。そうすると、フランスの歩兵部隊は反撃しますよ、国連のコマンドに従って。日本の自衛隊、施設部隊はその輸送についていくときに、そのときどうするのですか。そういう任務を持って今行っているのでしょう。どうですか。
  162. 河野洋平

    ○河野国務大臣 日本施設大隊が指図を受けて行います業務は輸送業務でございます。フランスの歩兵大隊は、これを警護する業務を担っているわけでございます。したがって、フランスの歩兵大隊はこれを警護し、我が国施設大隊は輸送業務に徹するということは当然のことだと思います。
  163. 東中光雄

    東中委員 そして、輸送業務に従事しておって、この間のオランダの歩兵部隊とそれから日本の警察官、これが一緒に行動しておって襲撃を受けましたね。そういうところへ今参加をしている。その場合に、反撃するいとまもなしにこの前はやられました。こういう状態になっている、そういう危険な状態へ行っているんだということを、当初のあの宮澤総理の、先ほど述べましたようなそういう国会の答弁とはまるっきり違った状態になっている。危険はないんだ、平和が回復しているんだ、戦争は終わったんだ、それを回復するための行動だなんだと言っているけれども、全然違う状態になっているじゃありませんか。  そういう場合に、宮澤総理は、これは九二年の  六月十一日の衆議院の特別委員会での答弁ですが、  国連の平和維持活動というものは、発砲するよ  うになってはもうそれは交戦当事者に堕してし  まうので、そうなればもう失敗だと言われてお  りますとおり、そういうことは避けるべきですけれども、それでも  そういうことがあり得るわけです。そのときに  は我が国は、国連のスタンダードコードにもか  かわらず我が国行動を中断をする、あるいは  平和維持活動から撤退をするということを我が  国独自の判断で行い得るということがこの法律  案の中に明記してございます。この点は、武力  行使に当たってはならないという憲法の精神を  忠実に、万が一にも抵触することがないように  という考え方である、こういう答弁をされました。  だから、今輸送へ行って、攻撃してくる、武器持って行っているのですよ、歩兵でもない施設大隊が小銃持って行っているのですから。それで、来たらごうに入って応戦できるようにせいという指示が出ているのでしょう。そういうことはやらないんだ、そういうことになる可能性があれば中断するんだ。国際的なスタンダードは、国連としての行動がどうであろうと、我が国憲法の趣旨からいって、法案の中に明記しているように、国連のスタンダードコードがどうであろうと行動を中断するんだ、そして長くやるようだったら撤収するんだ、これが法案審議のときの立場だったわけです。今はそれと違う状態でやっているじゃないですか。  国連の方の指示によって防御ごうをつくっているということを今言われましたが、あれは宮澤部長が指示をされたことですか、あるいは国連のコマンドに従ってやったことなんですか。どうなんでしょう。
  164. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 先ほどから私の答弁をずっと何回か引用されまして、大体間違った御答弁はしておらないことを今伺って思っているのです。  ただ、申し上げましたように、その第二段階における武装解除というものが完全に行われなかったものですから、今日の事態になりました。しかし、それにもかかわらず、申し上げたいことは、UNTACはそれに対して応戦をしていないのですね。応戦をすれば戦争になりますから、応戦をしないで苦労をしいしい、日本もそうでございますけれども、苦労をしいしい、ともかくきょう選挙のところまでこぎつけたということだと思います。  先ほどブトロス・ガリ事務総長が軍事部門はみんな大いにこれから用意をせよと言ったと、そのとおりで、おっしゃるとおり軍事部門に言っているので、日本は軍事部門でございません。日本は施設隊でございますから、軍事部門でないのです。御自分で読んでおられますが、日本に向かって言ったことじゃないので、仮に我が国の施設部隊が何か掩体ですかごうですか、そういうものを掘ったとしても、そういうものは攻めるために掘るはずはないので、自分を守るためでありましょうから、それもやはり苦労をしいしい、ともかく戦火を交えずにここまで来たということは、やはり私は、評価していただけないものでしょうか。
  165. 東中光雄

    東中委員 これは、総理大臣の答弁としては極めて不謹慎だと思います。あの施設隊が、国連のあの実施計画を見てごらんなさい、軍事部門の中にちゃんと入っていますよ、工兵隊として。それも知らぬのですか。ある、違いますと、道路補修に行くのだからと、そんなことじゃないです。あれは軍事部門の中、私、今ここへその国連の実施計画を持ってきていませんけれども、ちゃんと軍事部門の中に入っていますよ。これが軍事部門でないんだなんというのは、これはもう物を知らないのも甚だしいと思う。実際、読んだことないのでしょう。何ということを言うのですか。  だから、すべての軍事部門と私わざわざ言うた。工兵というのは明白な軍事部門ですし、あの計画書を見なさい。そういう不見識なことはありません。  そして、もう一つ言いましょう。  軍事部門と文民警察は今協力をして、これは国連事務総長第四次報告の六項にあるのですが、「軍事部門は、文民警察やその他のUNTACの部門との緊密な協力のもとに、もともとの実施計画と調和しない不安定な状況のもとにある選挙過程め安全と、カンボジア各政党ならびにUNTACスタッフの安全を保障することに努力を向け変えている。」これは文民警察官が政党事務所を守らされた、あの実施要領の枠を超してやらされたということを言っておるわけです。そして、「文民警察部門は、危険にさらされているとみられている政党事務所の周辺の定点監視と移動パトロールを開始している。」こういうふうに言っています。  まさに、この前警察庁長官が、文民警察官が募集のときに言われた任務と違う任務をやらされているということで問題になりましたが、そういうことが実際に文民警察官にやらされている。これは、文民警察官の協力隊員としての行動は、宮澤さんの出す実施計画とそれに基づいてつくられた実施要領、それに従ってやっているはずですね。ところが、実施計画にもない、実施要領にもない政党、要人の警護やあるいは事務所のパトロールをやらされておって、そしてあの事故が起こったのですよ。  そういう状態なので、あの警察官の文民警察官が、政党事務所あるいは要人の警護に当たるということをやっておったという事実は、これはもうはっきりしておるわけですが、だれの命令でやったのか、だれの指示でやったのか。本部長である宮澤さんは、そういうものはやらせない、そういうものをやるのだったら中止すると。任務外のことをやってはいけないということを、中止させなきゃいかぬのですね。ところが、国連は、文民警察はそれをやるんだと言っておる。これはやれますか、本部長はそれを中止させますか。
  166. 河野洋平

    ○河野国務大臣 文民警察について申し上げますと、文民警察の一部に、ただいま委員御指摘のような、本来の業務を踏み越えた業務に従事をしているというような連絡がございました。こういうことはあってはならぬことでございますから、早速柳井事務局長をしてUNTACにもその旨申し入れをいたしました。  柳井事務局長UNTACの責任者との間のやりとりについては、本人から報告をさせたいと思います。
  167. 東中光雄

    東中委員 これは指揮命令の問題なんですよ。宮澤総理はあの法案の審議のときに、私も随分言いました。そして宮澤総理は、指揮命令は本部長である総理にあるんだ、国連側とすり合わせはするが、あくまでも実施要領を通じて本部長が指揮命令する、紛争に巻き込まれるような状態になれば日本独自の判断で撤収することになるんだ、国際公務員でもない者が何で国連の指揮に従う必要があるのか、こうまで言われましたね。それで、実施要領でやるんだ。実施要領ではそういうことを、要人の警護なんかやることになってない。それをやれというのは、国連側でやるようになっていると、国連のコマンドで言っているのですよ。国連のコマンドに従わなくていいんだという、何で従う必要があるんだ、国際公務員でもないのにと、こう言われたのですね。  ところが、実際には従わさせられているのですよ。そして、日本の本部長は指揮命令権を持っているはずなのに、その指揮命令権を発動するんじゃなくて、指揮権のないUNTACに変えてくれということを申し入れているというんでしょう。申し入れていたけれども拒否されたというんでしょう。プノンペンへみんな集まりなさいと、国家公務員を本部長が集めるといったって、UNTACがだめだと言ったらできないんでしょう。  これはもう体系がまるっきり違うんです。PKOの法案のときの論議とは全然違うことが今やられているんですよ。完全に否定したことがやられておって、そういう中で文民警察官が犠牲者になったのです。あなた、その点どうですか。遣いやいや、本部長は指揮命令できるのかできないのかと聞いているんですよ。     〔石川委員長代理退席、小杉委員長代理     着席〕
  168. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 総理から御答弁ある前に、事実関係について私の方から補足させていただきたいと存じます。  先ほど官房長官から御答弁があったとおりでございまして、私、先週プノンペンに参りまして、UNTAC文民警察の責任者と話し合ってまいりました。それ以前にも明石代表に申し入れたことはございますが、御指摘のような政党事務所の警備でございますとか、あるいはVIPのエスコート等につきましては、これは我が国文民警察の権限を越えるものであるということを申しましたのに対しまして、先方はと申しますか、先方も、そういうことを行う、そういう警備の責任は現地の警察にあるんだ、UNTACはこれを監督、指導するものというふうに考えているということでございました。したがいまして、それでは現場では必ずしもそのようになってないじゃないかということを申し入れまして、その点の是正を求めた次第でございます。  また、我が方の文民警察につきましては、これは当然我が国の実施計画、実施要領に従って行動するわけでございますので、それはそのように徹底しているところでございます。  なお、先ほど先生の御指摘の中で、我が国の法律で与えられた任務を超えた任務を行っているときにこの前の高田さんの殉職が起こったというふうにおっしゃったような気がしましたが、あの場合はそのようなことではございませんでした。フォンクーというところからアンビルというところに移動中に起こったことでございまして、そのとき、何も法律の範囲を超えた任務を行っていたというものではございません。会議出席の帰り等のそういう用務で移動しているときに遭難をしたということでございます。     〔小杉委員長代理退席、委員長着席〕
  169. 東中光雄

    東中委員 指揮命令権があると言うた人がそういう指揮を全然しない、UNTACに調整を求める。しかし、UNTACはちゃんと国連事務総長がそういうふうにやっていると言っているじゃないですか。  終わります。
  170. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて東中君の質疑は終了いたしました。  この際、申し上げます。  先ほど伊藤忠治君から、午前中の同君の質疑中、浜田幸一君についての発言に不適当な言辞があったので取り消したい旨の申し出がありました。後刻速記録を取り調べの上、委員長において処理いたします。  次に、塚本三郎君。
  171. 塚本三郎

    塚本委員 時間が少のうございますから、端的に御答弁をいただきたいと思います。  私ども民社党は、昨年の六月、PKO法に賛成をいたしました。日本の国はお金だけで国際貢献を済ませようという考え方はよくない、危険なこと、きついこと、汚いことも世界の仲間と一緒に苦労してやりましょうということで、この法律案の成立協力をいたしました。宮澤総理も一月二十二日の施政方針演説で、「今や、我が国行動国際社会の動きを左右するまでになっており、新たな平和秩序の構築に対し、国力の増大に応じた責任と役割を積極的に果たしていかなければなりません。」と、国際協力貢献することを述べておられます。これは全く私も賛成であります。  最近の選挙の実施をマスコミは大変危ぶんでおりました。今にも戦争になるのではないかというようなマスコミの報道がたくさんありましたけれども、幸い本日に至りましてもカンボジア希望のある投票が行われておると喜んでおります。その点は、政治に携わる者、とりわけこの法律に賛成をした政党の一人として、政府の御苦労に感謝をし、喜んでおると申し上げておきます。  さて、PKO成立の際、自衛隊の派遣の是非については随分論じられました。戦争になるじゃないかとか、あるいはその日実をつくるのではないかというようなことについて繰り返し繰り返しここで議論されたことは、これは印象深く受けとめております。しかしながら、文民警察に行くべきだとかあるいはボランティアに任せよだとか、あるいは自衛隊が行く必要があっても組織を変えて行きなさい、こういう議論は随分行われました。しかし、結果は、ボランティアの諸君が、あるいはまた警察官があのような犠牲になられたことは、我々にとって大いに反省の材料でございました。  しかし、これを振り返ってみますと、その原因の中には、平和なんだ、危険がないんだということを、自衛隊を派遣したいがために政府も余りにも言い過ぎたのではないか。だから、それじゃ自衛隊などが行くよりもと、こういうようなことに実は流れができてしまったのではないか。これは御反省いただく必要がある。  皮肉なことに、たしか六月十五日ですか、我が国のこの法律の成立の日に、ポル・ポト派は武装解除の拒否の声明を出しました。この時点では、やはり平和が崩れていくな、ボランティアや文民警察では危ない、もう一度平和に対して議論をしていかなければいけないと政府が反省をし、気がつくべかりしであったと思うが、総理、いかがでしょう。
  172. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 平和維持活動というものが、戦争が終わった後極めて脆弱な平和を固めるという、しかも国連の中立性と権威のもとに武力を用いずに行われている極めて難しい、高度のむしろ訓練を必要とする仕事であるということは、法案の御審議の過程において何度か申し上げてまいったと思います。  しかしながら、ただいま塚本委員の言われますように、このパリ協定の第二段階において武装解除がクメールルージュの拒否に遭っだということは、ブトロス・ガリ事務総長も言われるとおり、私どもの予想したところではございませんでした。それが貴重な犠牲を我々としても甘んじなければならなかったことの一つの遠因になっておるわけでございますが、あのときにUNTACとしては、なおなおいろいろな外交的な努力をする、あるいは最終的には禁輸という、輸出禁止というところまで行われましたが、そういうこと。また、UNTAC活動を強化するならば、結局各四派ともそういう状況であればといって武装解除に応じるであろうという、結果としてはその観測は誤ったわけでございますが、そういうこともありまして、そういう声明の中からなおクメールルージュに翻意を促して武装解除に応じさせようという努力がかなり長い間続けられました。結果は成功いたしませんでしたが、そうしているうちに投票日が迫ってきたというような状況でございました。  振り返りますと、ある段階におきまして、この武装解除に応じない状況から、ゲリラあるいは擾乱活動が行われるということを予想して、UNTAC自身が歩兵部隊あるいはその他の実動部隊をさらに増強すべきであったと思われます。しかし、それは十分に間に合いませんで、事態が切迫いたしましてからそのような努力が行われ、我が国もまたそれに対して財政的な支援をするというようなことであったわけでございますが、結果といたしましては、塚本委員の言われますように、武装解除に応じないという状況が結局変わらずに、ゲリラ活動が活発化するに至って、選挙までも脅かされるに至った。こういう経緯は、いろいろ反省すべきものを含んでおると考えております。
  173. 塚本三郎

    塚本委員 総理の御反省、結構です。しかし、UNTAC自身の努力が実らなかったこと、これは我々の手の及ばないところであります。しかし、我が国は、特にPKF、歩兵部隊を連れていかない、凍結して行くということが前提になっている以上、なおそこで深刻な反省と再検討が必要ではなかったか。これは私は総理に対して御注意申し上げるよりも、国会全体の責任としてもう一度議論しようじゃないかということが必要でなかったかと思う。  といいますのは、私は、年が明けてからわずか三日ですけれども、プノンペン、そして自衛隊の諸君が苦労してくださっておるタケオで、一緒に起床ラッパで起きて、わずかの日にちでしたけれども、行動をともにしてまいりました。  そのときついでに停戦監視の本部まで参りました。福井隊長からこんな意見を聞きました。我々は一番危険な山奥と戦争地域にずっと行っておるのです、そのとき丸腰なんです、こちらがピストル等武器を持っていなければ、相手方はいわゆる身辺の危険を感じないから、威嚇はしても攻撃はしてこないであろう、丸腰が一番実は安全でありますと語ったのです。さもありなんと実は私も同調してきたのです。  ところが、事態はそうじゃなかったのですね。私はこのとき、あのPKO生みの親と言われるかつてのハマーショルド国連事務総長が、PKOというのは軍隊じゃない、しかし、軍隊の仕事でもないけれども、軍隊でなければできない仕事なんだ、だからやはり危険が伴うものだということが前提でPKOをつくったんだと彼は言明しておるのです。我々は、まあ俗に言う平和ぼけとでもいいましょうか、こちらが丸裸ならば向こうは絶対にしかけてこないという福井二佐の意見に私も同調してきました。まして総理だって同じ心境であったが、これはやはり日本のここで考えたのと現地カンボジア状況とは違っておるし、違ってきたという前提に立ってこれから組み直していくべきではないかというふうに思うのです。  にもかかわらず、平和です、安全です、自衛隊が軍事に行くんじゃありませんと言って、できるだけ軍事色を脱色して、手足を縛って、Fだけじゃないのです、あくまで閣議でもってきちっと行動の実施要領を決めて出かけるのでございますからと言って、こういう諸君を納得させることにきゅうきゅうとして、出されていったところの自衛隊がPKO本来の姿として活動できないようにしておいて出しておいて、彼らに対してあれもやれこれもやれ、こういう形になっておるのじゃないでしょうか。  私は、これからわずかな時間ですが、出す立場で、政治的な立場議論というものは出し尽くされております。その議論は私も同感するところが多い。しかし、行って、本当に国家の権威にかけて頑張っておってくださる行った人の立場がほとんど議論されていないじゃありませんか。総理、いかがでしょう。
  174. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 御引用になられましたそのハマーショルドのPKO観の上に、我が国我が国憲法を持っておりますから、法案の御審議の過程でも申し上げましたが、現地に行く部隊あるいは要員の諸君には、一般以上にさらに厳しい条件、今おっしゃいました行く身になれば非常につらい条件で任務に従事してもらっておる、そういう法の建前であることは、言われますとおりであります。いろいろな意味でべからずということをたくさんにつけておりまして、またその一つ一つ、要領等々で、中央で管理をする形をとりました。そういう意味では、いかにも任務に従事する諸君が苦労をしておられる、それはよく私も存じております。
  175. 塚本三郎

    塚本委員 平和だ、平和だと言ったけれども、中田君が犠牲になりました、高田君が犠牲になりました。これは大変だぞという形になってきて、しかし、先ほど私は野党の仲間の諸君の御質問を聞いておっても、だからすぐ帰ってこいとは言いにくい。国連の中の一員としてという良識はみんな働いておるのです。まさにそういう意味で、法律とのはざまの中で日本の国がどうしたらいいのかということに迷いがある。国民も迷っておいでになると私は思います。  しかし、党の立場から私は申し上げてみるならば、決してたじろぐことなく、堂々と、幸い選挙が平穏無事に、まあ若干の犠牲があったようですけれども、行われることにほっとしております。だから、この任務はきちっと遂行するのが日本立場だと私は政府に申し上げておきます。  しかし、そうするときに私が危惧をいたしまするのは、憲法はどうでもいいとか、任務を果たすためには法律はどうでもいいというわけにはまいりません。平和だ、平和だと言って送り出しておきながら、既に二名のとうとい人命の犠牲を伴い、そして他国もまたそういう中に巻き込まれておるという状態の中でどうすべきか、武器使用について一番問題なのは、彼らがきちっと法律の枠の中で実は使用できて、安全を確保できるようにしてあげなければならないと思っております。だから、自衛隊に明確な法的枠組みを与えるべきである。法律に許されないことは、自衛隊にやれと言ったってできないのです。  ところが、先ほどの同僚の諸君のおっしゃったように、法律では危ないようなところまで実はUNTACから命じられておるのです。政府言葉をかえて、そして巡回だとか、偵察だとか、情報収集という言葉でもって、本当はやはりこれは法律できちっとこうすべきなんだと、彼らに後ろめいた気持ちでなく、堂々とやれるように法律の枠組みを、ここまではやりなさい、ここからはやってはいけませんというふうにきちっと枠組みを与えてあげるべきだと思うが、いかがでしょう。
  176. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 現実に、しかし、カンボジアにおける事態を考えてみますと、残念なことに武装解除が行われ得なかった。したがって、クメールルージュが、と思われますが、持っておる武器はかなり高度のものであって、現在の施設部隊に許しております武装、武器をもってしては十分に防御を恐らくし得ない、そういう問題が私は現実にあるのではないか。  並びに、これは法案御審議の過程でも問題になりましたが、間違ってもこちらからの武力行使になってはいけないという考慮を加えますと、我が国自身が今度のような事態に立っていわゆる軍事部門を担当するということは、事実上非常に問題が多いのではないだろうか。私自身は、UNTACが軍事部門を担当し得る各国からそのような、歩兵部隊でありますとか、空輸部隊でありますとか、海軍部隊でありますとか、そういうものをさらに増強すべきであると考えますし、我が国自身ももちろん我が国としてなし得ることはいたさなければなりませんけれども、我が国がいわゆる軍事部隊、歩兵部隊を現地に出すということは、いろいろ問題が多いのではないかと考えます。
  177. 塚本三郎

    塚本委員 私は総理に、いわゆる歩兵部隊であるPKFを出せと今ここで要求しておるのじゃありません。平和で武器使用が必要ないという前提に立って出したわけです。ところが、武器使用の必要性が迫ってきた。だから、フランス軍にお願いします、オランダ軍にお願いしますとお願いしたら、真っ先に守ってくださるべきオランダ軍に逃げられてしまった、これで高田君が犠牲になった、これ、事実でしょう。  だから、武器使用が必要ないという前提に立ったから、慌てて普通科連隊出せと言う前に、武器使用をきちっと明示しておく必要があるのではないか。正当防衛でございます、緊急避難でございますという内地における個人のいわゆる正当防衛理論を、今やいわゆる戦争があるかもしれないというところに出しておきながら、いつまでもこの法律によるところの正当防衛と緊急避難だけでは、これは自衛隊が気の毒なんだ、活動できないじゃないかと私は思っておるんです。自分が危なくなったら撃て、こんなことは非常識ですよ。  私も一日彼らと議論してみたんです。一番気の小さい人が真っ先に撃つんですよ、危ないから。撃ては部隊がどこにおるかということを、所在を知らせることになるから、ばーんと全滅させられてしまう。これが軍事というものなんですよ。だから、部隊長が待てと言って、そして危なくなっても撃たせないように抑えるとか、あるいは撃てとか、すべて部隊というものは、いわゆる指揮官の指揮権がなければ部隊じゃない。個人個人の正当防衛、緊急避難なんていうのは烏合の衆だと思うが、いかがでしょうか。
  178. 畠山蕃

    ○畠山政府委員 ただいまの御質問にお答えをいたしますが、委員もよく御承知のとおり、現在の法律の二十四条三項というのがございます。これは正当防衛、緊急避難そのものではなくて、この法律によって新たに枠組みとして加えました制度でございます。要件的に申しますと、個人の場合でいえば正当防衛、緊急避難に相当するようなケースに限定されておりますが、したがいまして、これはまさに自衛隊員が個々に判断をいたしまして、これは身の危険を回避するというぎりぎりの限度で使用を許すという制度を新たに設けたわけでございます。  ただ、その場合に、今御指摘がございましたように、気の小さい者が撃つ、必要ないときに撃つという傾向をも抑止するために、これは部隊の指揮という形ではなしに、要するに指揮官が抑制的な方向に指揮をすることはできますということを、従来、国会答弁でも御答弁申し上げてきているところでございます。  したがいまして、そういう事態というのはまさに指揮官の識見によって回避され得るということでございまして、ただ、撃つというときになりますと、これは個々人の安全を、自然権的な権利ということで、安全を守るという意味からこれは個々人の判断による、こういう構成をとっているところでございます。
  179. 塚本三郎

    塚本委員 総理、お聞きでしょう。撃つときだけは個人の判断、撃ち方やめろというときだけが指揮権でできるんだと言うんですよ。こんなこと政治的詭弁じゃありませんか。世界の防衛の、だれが聞いたって笑っちゃうんですよ、これは。恐らくテレビ見ておるところの自衛隊の諸君だって、一体国会は何をやっているんだ。  それならば自由に最後まで山さしたらどうでしょうか。撃ち方やめろという抑止だけは部隊長に任せたり指揮官に任せておいて、撃つことだけは自由というともっと危ないですよ、先ほど申し上げたとおり。私、危機を感じましたといって、向こうでごそごそとやったら、ババババッとやったら、向こうからドッカーンと迫撃砲なりロケットを撃ち込まれたら全滅をするんですよ。これを彼らは一番怖がっておるんです。  ですから、やっぱり私は、そういうこと、最後にだれが責任とるんですか。指揮官が責任をとらざるを得ないんじゃありませんか。だから、私は、いわゆる身の危険が迫っても指揮官が撃てと言うまでは撃つちゃならない、それが部隊というものなんだ。だから、それを、やめろというときだけあると言って、局長、のこのこと言っているじゃありませんか。こんなみっともない答弁を文明国でする国があるでしょうか、皆さん。  やっぱりこれは慎重に、しかも持っていっているのは、機関銃持っていけとか、戦車隊連れていけ、Fを連れていけと私は言っているんじゃないんです。せめて持っていったところのけん銃や小銃で結構だから、彼らが邦人保護のためやあるいはまた友軍たちに対する危険が迫ったときにはみだりに烏合の衆であってはならないから、その持っていった武器に対する指揮権だけは部隊の責任者に与えなさい。それは決して法律に違反することではない。もし違反するんだったら、法律直ちにつくってあげて、その範囲でいいから。小銃ならば日本が侵略戦争をやるとはだれも思わぬでしょう。そういうふうにおやりになる意思はないですか、総理
  180. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 今のお話は法案審議の過程におきまして随分御議論になったところでございます。現実のこのようなカンボジア事態になりますと、塚本委員の言われますこと、一つの説得力でございますが、法案御審議の過程で議論になりましたのは、部隊として武器を使うということはやはり武力の行使ということに非常に近いであろう。もちろん、緊急避難、正当防衛ということを超えまして、部隊の任務そのものが危機に、危殆に陥る、あるいは部隊が危殆に陥るという、部隊として武器を使用するということが海外における武力行使に非常に近づいていく、そういう危険に発展する可能性が非常に強いという御議論がありまして、また、政府もそういうことを当然感じましてこのような制約的な規定になっておりますから、現実にその部隊が今度のように海外に出まして、ああいう事情から部隊としての危険を感じるということは、私はある、あり得ることだと思います。また、現にそういうことを感じておられるのではないかと思いますが、それはこの法案の御議論のときに想定された、それを許せば武力の行使に極めて近づくという、そういう問題として法案は処理をしておる。これは御審議の過程のことを私思い出して申し上げるわけでございます。
  181. 塚本三郎

    塚本委員 総理の気持ちはわかるんです。だから私は、やれと言うんじゃなくて、やれるように審議をきちっとして、法律で、何も恐らく皆様方、小銃とけん銃だけ持っておって、武力行使でもってカンボジアを侵略するなんて思う人はもう今なくなりました。だからこういう、出すときは、法律審議のときには安全であったんですよ、危険がなかったんですよ。だからボランティアに行けとおっしゃったんでしょう、文民を中心にしようと言われたんでしょう。あのときの空気はそうであったんです。だけれども、情勢がこういう武力行使も辞さないときに、今日本の国だけが帰ることができないのに、そのときに烏合の衆のままで自衛隊を置いては、これは日本の恥になるんじゃないか。  だから、そのときと事情が変わったんだから、戦車を持っていき、機関銃を持ち出せと言うんじゃなくして、今のままでもせめて最大限の防御能力で、邦人の安全、文民警察選挙監視のボランティアを助けるためにも、部隊長、それだけの責任を持ちなさい。法律の改正を必要とするなら直ちにやろうじゃないか。我々は賛成しますが、いかがですか。
  182. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 そういう議論を詰めてまいりますと、我が国は施設部隊を出しましたが、施設部隊その他要員をやはり保護をしなければならないという観点から申せば、やはり歩兵部隊を出さなければそれを全うし得ないではないかという議論に発展していきますと、これは大変にやはり難しい問題になるのではないかと思いますが。
  183. 塚本三郎

    塚本委員 それは総理、御無礼ですけれども、実情を御存じない。施設大隊は一番精強なんです。橋をかけるんだって、弾の飛んでくる中で真っ先に裸になって材木担いで橋のかわりをするんです。これは普通科連隊以上に訓練されており、普通科連隊以上に身の危険を守ることのできる、訓練された自衛隊最強の部隊であるということをあなたは御存じないんです。いいですか、豊川の施設大隊は一番最強の部隊として行っているんです。そんなこと御存じないんでしょう。我々はそこまできちっと見て、わざわざ今から普通科連隊を出せとか機関銃持っていけと言うんじゃないんです。少なくとも、せめておれたち七百名だけは、いわゆる秩序のある精強の部隊として邦人保護ぐらいやらせてくれ、こういう気分がみなぎっておることを、時間がないから、私、それだけを申し上げて、再検討を強く要求しておきます。  そこで、二点だけ。  長官、私、この間、予算委員会や本会議でも申し上げて、いわゆる派遣された人の立場できょうは議論しておるんですが、手当について、休日などあるいはまた病気で休んだときは手当がつかない。それは実績給だとか、あるいは外交官は外国に出たときには、実は国を出たときから手当がつくんだ、それをなぜおやりになりませんかと言ったら、外交官と一緒ならばもっと低くなりますよ、こういう変な答弁をしておる。  私、金額の多い少ないじゃないんですよ。四十度を超えるところで、ああいう熱病のあるようなところへ行ってくださるんだからといってやったんだから。それを、夜間は危険だから外出禁止にしておる。あるいはまた、いろいろな御苦労があるときに、せっかくしたも、土曜日、日曜日、体の悪いときの手当がつかなかった、しかも税金差っ引かれたら半分しか手元に残らなかった。こんなことはかわいそうじゃないか。  それは大臣自身が間違ってお聞きいただいたからそういう御答弁になったと思いますので、これは訂正していただくとともに、実績給ならば、今度は、巡回、情報収集等危険が伴ってきたら、せめてそれならば危険手当ぐらいプラスしてあげるべきだと思うが、いかがでしょう。
  184. 中山利生

    中山国務大臣 塚本先生には、かねがねカンボジアに派遣されている隊員諸君の処遇あるいは安全につきまして御心配をいただいております。  ただいま御質問がありました隊員の処遇につきましては、またさらに具体的にいろいろとアドバイスをいただいておりまして、私どもも大変感謝をしておるわけでありますが、防衛庁、大蔵省、先生の御提言につきまして熱心に検討をいたしました。  ただ、今先生おっしゃいましたように、業務の特質あるいは派遣先の国の事情、そういうものを勘案をした特殊勤務手当という性格を持っておりまして、事務的にいろいろと検討、大蔵大臣も大変心配をしていただいたわけでありますが、これはどうしても法の改正を待たないと措置ができないという結論になりました。  先日の本会議でお答えを申し上げましたのは、法の改正を待たないとできませんよというだけでは、せっかくの塚本先生のお気持ちに沿わないのではないかということで、これまで検討をしてまいりました一つの例を申し上げましたのがお気にさわられたような感じがいたしまして大変申しわけなく思っておりますが、これからもこの制度ができましたのと、今日ではある程度状況も変わっておりますので、その点も勘案をしながら勉強をしていきたいと思っております。
  185. 塚本三郎

    塚本委員 大蔵大臣、実績給だ、あるいは外交官と一緒ならもっと下がるというのは、これは勘違いだったから取り消していただいたようですけれども、今度うまくいった選挙の中でも、自衛隊も随分苦労してくださった。選挙監視の問題、情報収集という名前でいろいろと、私から言わせると詭弁が多かったなと思うけれども、でも聞いてみると、水を持っていってあげた、あるいは文民、ボランティアの諸君にとにかくカップラーメンを持っていってあげた、美しい水を上げた、源流して喜んでくれた。自衛隊であればこそ。現地は本当に、こちらから行った諸君も、逆によその軍隊までも、日本の自衛隊の、恐らくこれは法律以外のことだろうと思う。  私もかつて本会議で申し上げたように、お隣の他国の部隊に水一杯差し上げるのも一カ月以上、プノンペンから東京に連絡し、閣議の決定を得なければ差し上げられない。こんなばかなことをやって、手足縛って、道路補修とそしてまた橋梁の補修以外は、実は一々実施本部、そしてまた閣議の決定と国会の承認を得て、戦争になるかもしれぬという一方のいわゆる疑念にこたえるためにこうやって縛って出してくださった。  しかし、幸い、相当に長官の努力によってうまくいっておるようでございます。これからもそれはきちっとやっていただいて、やはり手当に対してきちっとやっていただくということが一つと、それから総理にもう一つだけ、時間がなくなりましたから、御答弁いただいて終わりたいと思います。  というのは、派遣される立場に立ちますると、どうしようかどうしようかといって、要請があってから政府の決定が実に慎重過ぎるんです。決まったらすぐ行けと、こう言われるんですけれども、モザンビークで御承知だと思う。私、びっくりしたんですが、六つ注射を打ななきゃいけないそうなんです。一度打つと一週間後でなければだめなんだそうです。彼らは精強部隊ですからそれを短縮したようですけれども、二つも三つもやりますると熱が出て、そのまま送り出しておるんです。これは気の毒なことなんです。六つだったなら、注射を打ってから注射が終わるまでに最低六週間はあけてあげなければいかぬことは常識でしょう。狂犬病からマラリアから始まって、黄熱病から、六つ打たなきゃいけないと、これは法律で決めておるそうですね。  この間のあの掃海艇でも同じことが言える。カンボジアのごときはそれ行けというわけで、二週間ですが、私用物と公用物と一緒になって、みんなごちゃごちゃに積んで、さあ行けといって、家族との、子供の就職や嫁の話から全然打ち合わせすることなしに行っているのですよ。だから、時間があるんだから、政府の決定を速やかにする、あるいはこうなるから用意せいという命令を出しておかないと、行く人の立場は全然議論されたことがない。送り出す政治的な立場と、追及を避けるためにどうしたらいいかということが中心になってしまっているのですよ。これでは半分だと思う。  やはり国家の権威にかけて、そして日本の国のオリンピックの戦いなんですよ、PKOは。あの帰ってきたときの西元幕僚長の実は激励の言葉じゃないけれども、諸君はまさに平和のオリンピックの優勝者である。まさに世界が、どれだけ人道的に、規則正しく、秩序ある精強の部隊として頑張っておってくれるかということは外交官以上に大きな役目だと思いますから、十分に果たすことのできるための準備期間とそれから手当についてもう一度御答弁いただいて、質問を終わります。
  186. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 諸手当あるいは現地に行かれる人々立場から、送り出す側としては十分いろいろ考えなければならないことがある。初めての経験でございますので、ただいまのようなお話を伺いながら、改めるべき点をいろいろ改めてまいらなければならないと思っております。
  187. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 塚本議員からのお話でございますが、この手当はPKO法の第十六条に規定してあるという特別の手当でございまして、大変我々もいろいろな配慮をしてやっているところでございます。一言だけ……(塚本委員「危険の手当はつきますか」と呼ぶ)危険の手当という形で、業務の危険性とか困難性を考慮して、特殊勤務手当という形で我々の方は考えているところでございますのでございますから、また、今防衛庁の方からもお話がありましたけれども、今のところは、私の方では大変高いところの手当を出しているということは御説明しておきたいと思っております。
  188. 塚本三郎

    塚本委員 終わります。
  189. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて塚本君の質疑は終了いたしました。  次に、嶋崎譲君。
  190. 嶋崎譲

    嶋崎委員 午前中の我が党の同僚の皆さんの御質問を拝聴をいたしまして、先般、大変現地の大使館やその他に御迷惑をおかけしまして、選挙に突入する一週間前でございましたので、その選挙過程や現地の情勢の視察をさせていただきまして、その経験をもとに、我が同僚のお二人の議員の合間を縫って御質問をさせていただきたいと存じます。  先ほどの総理のお話の中に、昨年、我が国PKOを送ろうとした時期、そのための調査を出した時期、その時期には今日のような事態に発展するという予測は立てにくい状態であった。その意味では、明石さんとも一時間二十分にわたっていろいろ情勢の懇談をさせていただきましたが、明石さんも同じ御意見でございました。  そのUNTACの判断と我が国の判断とは、最初に出かけようとした情勢のとらえ方が今日変化をしてきているというふうにおっしゃられたのですが、我が国カンボジアPKOを派遣するための調査団はいつお出しになって、だれが、いつ、どの時期に行って、その前には既にUNTACの第一段階から第二段階に突入していた段階であります。その後に調査団が出かけていって、調査報告が出ているのです。その調査報告には、第一段階から第二段階に移行する大事な情勢の特徴が一言も触れられておりません。ここが今日の情勢を読み取る最初のボタンのかけ違いと私は判断をいたしました。  御承知のように、報告書の最後はこう書いてあります。いろいろ説明して、「以上に述べたとおり、国連の平和維持活動が準拠すべき原則となる停戦合意、受入れ側の同意及び中立性の要件に関しては、今次調査の結果、現状においてはUNTACについてそれらが満たされているものと認められる。」こういう調査報告の決断、判断であります。この調査に行かれた時期は昨年の七月二日から七月七日までです。そしてこういう報告を出された。  その一カ月前の六月十三日に、御承知のようにパリ包括和平協定の附属書二にはこう書いてあります。「第一の段階においては、停戦は、国際連合事務総長のあっせんによる援助を得て遵守する。」第一段階ですね。いよいよ第二段階に入るときが重要だと思います。「できる限り早朝に開始される第二の段階においては、UNTAC停戦を監督し、監視し及び検証をする。」UNTACがやるのですね、この段階では。「UNTACの軍事部門の司令官は、各派と協議の上、第二の段階が開始される正確な日時を決定する。」日と時間、日時を決定する。「この日は、第二の段階の実施の少なくとも四週間前に定める。」と言っています。  したがって、日本の報告書は、七月に調査に行って何も問題がないと判断を下した。ところが、第一段階が終了する段階でUNTACは、六月の十三日に、ここで決められた非常に正確な日にちを指定して、そして段階の変化を確認していたわけです。ところが、我が国のこの報告書にはそのときの模様は一言も書いてない。そういう意味において、最初から、第一段階から第二段階に移行したときのカンボジア内部の情勢を調査に行った際に、UNTACの話だけ聞いてこれでよろしいと判断したのであって、現地の情勢をつぶさに見る努力が足りなかったのではないか、これが私の現地調査での第一の疑問です。  そのことは何に示されているか。この調査報告をやるときに現地の党派のどこどこに行ったかというと、ソン・サン派とそれからいわゆるカンボジアの殿下の派ですね。肝心の停戦の一番重大問題になっているポル・ポト派とは何も接触をされていない。だから、ポル・ポト派が当時対応しようとしていることは日本の報告書には入っていない。その段階では既に彼らは武装解除を拒否しているという状況であったのに対して、この報告書にはそのような状況が一行もない。  ここから、UNTACの判断もさることながら、我が国が今後PKOを派遣するに当たって、第一段階から第二段階への移行は、UNTACの軍事的抑止力に頼れば、恐らくポル・ポト派は軍備を抑えるに至るであろうという楽観的な見通しに立って今日のPKO活動に突入するに至った、これが私の現地調査の最初の感想であります。  さて、この点について政府はいかなる反省がありや、そしてまた当時団を編成されて報告書を作成するに当たった方々は、私のこの状況認識についてどう思いますか。
  191. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま先生から御指摘がありましたとおり、この調査団は昨年の七月二日から七日までの間、総理府、外務省、防衛庁等の参加者を得まして、現地で調査を行ったわけでございます。この調査に直接参加した者はただいまここにおりませんが、私、この報告書はもちろん読ませていただきましたし、また当時の模様は聞いております。  確かに、先ほどお読み上げになりましたように、このまとめの部分では武装解除の問題には触れておりません。ただ、停戦合意、受け入れ側の同意、中立性といういわゆる五原則の初めの三原則につきましては、いろいろと調査をし、判断をしたものでございます。  もとより、武装解除がパリ協定で想定したごとく七〇%という線まで進めば、これはこの停戦合意が非常に安定的なものになるということで望ましいわけでございますけれども、一応この武装解除の問題と停戦合意の問題というのは別な問題であろうと思います。停戦合意がなされる、その場合に武装解除がまされれば、そのような停戦合意は非常に安定的なものになり、安全度が増すということは言えると思いますが、しかしながら、武装の解除がなされない停戦合意というものもあるわけでございまして、いわゆる五原則の中には武装解除というものは入っていないわけでございます。  この調査におきましては、まとめの部分でこの五原則に照らしてどうかという判断をしているわけでございまして、そういうことからいいますと、直接武装解除の進捗状況というのは関係のない問題であるというふうに考えます。
  192. 嶋崎譲

    嶋崎委員 じゃ、六月十三日に第二段階への突入、四週間前に方針を決めて、そして十二日に指定して日時を発表した。一カ月後に行った。その際にポル・ポト派はいかなる態度を表明していたかということは二言も書いてないが、それは停戦合意という概念に入らないので、武装解除はその中に入ってないんだから停戦合意とは別次元の話だ、こういう御理解になったわけですね。それは私が説明したUNTACのいわば軍事力というか、これの抑止力によって停戦合意に基づく武装解除が行われるであろうという予測に立っていたと理解すべきなんじゃないですか。いかがですか。
  193. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 昨年の七月のころのことを私は記憶をいたしております。クメールルージュが武装解除に応じないということを私は聞きまして、かなり自分なりにそのことを重大に考えていたことを記憶しております。  今の報告は、今政府委員も申し上げましたが、やはり法律の要件としておるいろいろな原則が満たされておるかどうかということにいわば重点を置いたと申しますか、そういう意味で法の言う条件は満たされておるということを報告しておりますので、現実事態カンボジアの中でクメールルージュがどういう勢力を持ち、どういう体制をとっておる、したがって、武装解除に応じないということが本当であるのか、あるいはUNTACの説得によってやがて応じるのであるかというような判断、そういったような判断に重点を恐らくまず置いていなかったということは認めざるを得ませんし、またそういう判断をなし得るだけの知識を当時我が国の現地出先が持っておったかどうかということにも問題があろうと思います。  いずれにしましても、今嶋崎委員の御指摘になりましたことは、やはり我々が反省をすべき一つの問題ではないかというふうに私は考えます。
  194. 嶋崎譲

    嶋崎委員 やはり政府側の調査の発想と、私が現地に行く調査なんかと違います。私は、カンボジア人の側がどのように変化しているかということを、選挙の一番ピークのときですから、各政党の選挙スローガン、それから運動の主張、そういうものを通じてカンボジアの情勢をそれぞれがどう見ているかというふうに現地の中から見る、そしてUNTACへの対応を見る。そして私の得た結論は、当たっているか、大体当たっているのじゃないかと思うが、UNTACはワシントンの時間表、スケジュールに合わせて十八カ月間の企画を立てた。ところが現地の方は、第一段階から第二段階に突入したが、カンボジア情勢は、残念ながら第二段階で、選挙が終了するまでの間にパリ和平協定で言われているような情勢が熟さなかった、このずれです。このずれがその後の、今日のいろいろな問題が起きてくる基本的な背景である、こう私は思っています。  現に調査に行かれて会っているのはフン・セン首相とソン・サン議長じゃないですか。これじゃ、ラナリット派にも会わなきゃいけませんし、当時はポル・ポト派に会えるのですから、努力は足りないと総理はおっしゃられましたが、私もこの報告書でそう思いました。  さてそこで、そういう最初のボタンのかけ違いから始まりますが、さて、我が国PKOをいよいよ今度は送るという決断をしたときに、我が国PKO法という法律に基づく我が国PKOを送る考え方国連にどのような形でお伝えになりましたか。これは、話によれば、正規の協約ではなくて、口上書という形で伝達をされて確認をしたと聞いておりますが、いかがですか。
  195. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 当初は、私どもといたしましては、国連との間に、国連が出しております要員派遣に関するモデル協定に似たような協定を結びたいということで申し入れましたけれども、国連の方ではちょっとそれは難しいということで、口上書の交換、つまり国連側からの派遣の要請も口上書で、これに対する私どもの答えも口上書で出したという経緯がございます。
  196. 嶋崎譲

    嶋崎委員 日本PKOは、日本憲法のもとで制約されたPKOなんですね。よその国は違うのです。伝統的防衛観念で軍隊を持っていて、そして出すPKOです。よその国とは違う構造の中で日本が出すのですから、だから国論を二分した大論争があったわけでしょう。  だから、日本政府国連に対して、日本PKOの出し方は残念ながら他国と憲法が違うだけに違うのですよ、その点についてきちんと確認をしてくれという手続を外交上とっていないと、次の安全対策問題が立たないということになってくるし、現地の文民警察の仕事が、我々が決めた要領以外の仕事をしなきゃならないという事態も生まれる。  すべての今日状況、つまり中田さんの問題であれ、高田さんの問題のような事件が起きる背景は、PKO法に基づいて派遣する我が国の平和憲法のもとでの送り方について、国連との間にきちんとした事前のお話し合いをやっているかどうかが問われるのです。  そこで、その日上書です。その日上書は、我々が国会で議論したようなPKO法考え方が相手に伝わるようなものなのかどうか私は不安ですが、その日上書の中身を国会に明らかにすることができますか。
  197. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 国連に対しましては、昨年の夏、法案の成立前に、その法案の基本原則について説明いたしまして、国連側の理解を得ております。法案が成立しました直後にも、今度は法案の概要につきまして説明いたしましたし、その際、とりあえずの英訳も先方に手交いたしました。その上で口上書の交換が行われたわけでございますけれども、この内容はもちろん明らかにすることはできます。
  198. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そのときに、日本側の国連に伝える責任者はだれですか。相手で受けた人はだれですか。きちんと国家間の話し合いができる対等の国家間の関係を外交上取り結んだかどうか。いかがですか。
  199. 丹波實

    ○丹波政府委員 この口上書について補足的に御説明申し上げますと、国連から日本から派遣してほしいという要請の口上書が参りまして、それに対して日本側からこれこれしかじかの種類の要員を何名出しますという口上書を国連日本政府代表の名前で国連側に送っているわけですが、その中で重要なことは、「日本政府常駐代表は、また、上記の日本国の要員のUNTAC活動への参加は、日本国の関係法令、特に、国際連合平和維持活動への日本国の参加を規律する基本的な原則につきなかんずく規定する国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律に従って行われることになることを申し述べる光栄を有します。」ということで、この五原則を含め、この国際連合平和維持活動の法律に基づいて行いますということをこの口上書の中ではっきり申し述べているという点が重要だと思います。
  200. 嶋崎譲

    嶋崎委員 それは我々理事会で要求して、その資料をいただくことにいたしましょう。よろしいですね、外務大臣
  201. 粕谷茂

    粕谷委員長 ただいまの資料要求につきましては、理事会で相談をいたします。
  202. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そこでお聞きしますが、このPKO法のこれから先の議論のポイントはここなんです。現地へ行って、最初バンコクで、四人の重軽傷の皆さんをお見舞に行きました。それで、現地でも、プノンペンだけじゃわかりませんから、地方都市二つ入りまして、そして現地の文民その他も、選挙事務所も全部回ってきました。  そのとき感じたことの法律の根拠問題というのはこれです。PKO法の第八条の第二項、八条というのは実施計画問題を規定したところです。それで、その二項のところで、二項、三項なんですが、今度は実施要領です。「実施要領の作成及び変更は、国際連合平和維持活動として実施される国際平和協力業務に関しては、前項第六号に掲げる事項に関し」、これは国際平和協力業務に従事する者が行うべき国際平和業務の中断に関する事項、これに関し「本部長が必要と認める場合を除き、事務総長又は派遣先国において事務総長の権限を行使する者が行う指図」、コマンド「に適合するように行うものとする。」と書いてある。だから、日本が送ればその日本の指揮が国連の指図と適合するように活動する。これが前段なんです。これは当たり前のことね。  さあ二番目です。その次にこう書いてあります。「本部長は、」総理がですね、「本部長は、必要と認めるときは、その指定する協力隊の隊員に対しここですよ、「指定する協力隊の隊員」ですよ、「隊員に対し、実施要領の作成又は変更に関する権限の一部を委任することができる。」と書いてあります。  そこで問題になるのは高田さんの五人の部隊です。私は現地で聞きました。あの五人の部隊というのは同じ血液の人を集めるのです。みんなB型です、いざというときはすぐ輸血できるように。そのくらいの体制を整えて送っているのですよ。五人全部B型。そして、亡くなられた高田さんはもちろんB型です。それで、五人の人にお会いしたときに、高田さんという人は、非常に勉強家で責任感のある人だ、立派な人だということを亡くなられて皆さんから僕は聞きました。  ところが、高田さんの活動の中にボーダーコントロールという仕事が入っています。さあ、ボーダーコントロールってどう訳しますか。国境警備なのか、チェックポイントのボーダーのコントロールなのか。中身は僕はわかりません。しかし、ボーダーコントロールの仕事というのは、ここで村田大臣にお聞きしますが、文民警察に与えた仕事というのは、中身は何ですか。既に決まっているでしょう。聞くと時間かかるかな。  いいですか、僕が言いましょう。要約すると、日本文民警察官の任務は、現地の警察行政の指導、選挙活動の支援、これが主たる業務ですね。さて、ボーダーコントロールと言われるような巡視活動は入らぬですね。当然入りません。  したがって、彼ら、あの文民警察官のお話ですと、二月の下旬まではポル・ポト派の地域に行っても和気あいあい、握手をして自由に交流ができた、それが三月の中旬ぐらいから、ぽっと上が変わったのでしょうなあと、ころっと変わりました、情勢変わったと、ありゃ、これは大変な情勢だなと思っているやさきに起きた事件だと言っています。情勢が変わったときには、今までやっていた仕事が、和気あいあいとできたものができなくなった。例えばチェックポイント、これは事件の起きた日はすうっといったのです。先に一キロ行ってから弾丸を受けましたと私たちに報告していました。  ですけれども、ボーダーコントロールという言葉が出てくる業務内容は、恐らく文民警察に課せられた仕事以外だ。そんな仕事と、どうも情勢が変わった中で、ポル・ポト派がやったかわかりませんが、事件の発生と関係があるということになります。  さてそこで、さっきの法律に返ります。  この第八条の三項によりますと、「本部長は、必要と認めるときは、その指定する協力隊の隊員」ですから、あそこの五人の隊員なのか、トップの山崎さんなのか、五人の隊員のキャップの高田さん以外の個々の隊員なのか、この法律で言う「隊員」というのは何ですか。そして、その後に言う「実施要領の作成又は変更に関する権限の一部を委任することができる。」だれがどのような手続でどう委任するのですか。  こういうことが明確にならないでいるから、与えられた仕事以外の仕事をやるといろいろな複雑な事態に巻き込まれてしまうと私は理解しますが、この法律の意味、どういう意味ですか。実施要領は今まで出していませんが、これはもう明らかに変更です、仕事の内容は変更している。  僕はあっちのもう一つの地方の町に入りまして文民警察に行きましたけれども、与えられた仕事以外のことをいっぱいやらなければいかぬ。行った日が、ちょうど隣から脱獄囚が出まして、五十八人出ているのですよ。それだからカンボジアの警察官はそれに手をとられて、それで我が方の文民警察は何でもやらにゃいかぬわけです。もうここに与えられたような仕事で対処できるほどのんびりしてこうやって見ておるわけにいかぬのですよ。  さて、それは委任されてなければいけないですね。さて、そんなような場合のこの委任手続は、だれが、どこで、どのように実施要領の変更をやることになりますか。これ、お答えください。
  203. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま御指摘の諸点は、幾つかの問題を同時に含んでいると存じます。  まず第一は、事実関係でございますけれども、いわゆるボーダーコントロールというものが行われておりましたとして、どのような態様で具体的に行われておったかという点につきましては現在調査中でございまして、私ども現時点ではその具体的な態様の詳細は承知しておりません。それが第一点でございます。  それからもう一つは、その前に文民警察官の任務でございますけれども、これは三条三号のチというところに「警察行政事務に関する助言若しくは指導又は警察行政事務の監視」ということが書いてございますので、その範囲の仕事であるかないかというのが一つの判断基準になると思います。  それから、実施要領の作成、変更は、これは御案内のとおり法律第八条のもとにおきましてつくられるわけでございますが、これは本部長が実施計画に従い実施要領を作成される、こういうことでございます。そして、三項のところにいわゆる作成、変更に関する権限の一部の委任というのがございますが、これは本部長が委任するという……(嶋崎委員「だれに」と呼ぶ)これは隊員でございます。本部長が個々の隊員に委任するということでございます。  具体的には、この実施要領そのものは一種の訓令ということで、そのものは公にしておりませんけれども、その概要は必要に応じてこれまでもお届けしたことがございますが、その実施要領の七項というところに、七項の(1)というのがございまして、そこに実施要領の変更に関する本部長の権限の一部委任という規定を置いてございます。そこの趣旨でございますが、隊員は、必要な場合には、実施計画の変更を伴わない限度で、実施要領を変更することができるという趣旨を置いてございます。  ただ、最初に戻りますけれども、このいわゆるボーダーコントロールとおっしゃるものがどのような態様のものであったか、実際にどの程度行われていたかという点については、現在調査中でございます。
  204. 嶋崎譲

    嶋崎委員 時間がないから、この問題の処置はこうしましょう。  さて、今の要領はなかなか公にしないで今日まで来ましたね。だけれども、この要領は、計画に基づいた要領と、本部長が必要と認めた場合に隊員にその変更を求めることが可能になるということを決めて、それが運用できるようにしている要領の中身。それを可能にしていく、さっき説明しましたね、あなたの説明ですと七項(1)か、そういう趣旨のものを少なくとも国会の我々に明らかにしてくれないと、現地の対応がこっちで、本国で考えているのとはおよそ違っているという事実認識から見て、国会の中にもう少しその資料を明らかにする必要が僕はあると思います、今後の見直しのとき絶対要りますから。出してもらえますか。
  205. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この実施要領の概要は、至急お届けいたします。
  206. 嶋崎譲

    嶋崎委員 概要じゃだめだな。今のような変更の場合の手続規定が明確になるものですよ。はい、よろしいです。  さて、もう一つ聞きます。  向こうで山崎隊長と田村隊長とお会いしました。そのときに私は、現地で努力されている人ですから、余り細かなことは聞きませんでした、はっきりしたことは。停戦監視団に自衛隊員が八名参加しております。その停戦監視団に参加している八名の人がカンボジアのどこに配置されていて、どんな仕事をしているというふうにつかんでいますか。
  207. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 停戦監視団の八名は、御承知のとおり六カ月で交代しております。そして、最初に参りました八名の一番シニアな、一番先任の方が福井二佐という方でございまして、その最初の八名の、途中で転勤もございましたので、ただいまちょっと手元に配置図を持っておりませんが、基本的には三種類の仕事をしていたというふうに記憶しております。  一つは、いわゆるカントンメントと申しますが、要するに武装解除をした兵士たちの集結所の監視でございます。  それからもう一つは、セクターモニターと申しまして、これはある程度広い地域を担当いたしまして、何か停戦違反があったらしいというようなことになればそこに行きまして実情を調査するというのがセクターモニター、俗にSMと言っております。  それからもう一つの態様は、国境の監視でございまして、これは例えばベトナムとの国境でございますとCV10というところに以前二人配置されておりまして、私たまたま行きましたので覚えておりますが、そこではベトナム側からの、例えば軍隊であるとかあるいは武器であるとかいうものが搬入されないかどうか、そういう面でパリ協定の遵守を監視する。地図でございますと右の上の方でございます。例えばそういうことでございます。
  208. 嶋崎譲

    嶋崎委員 これは自衛隊の参加ではなくて、個人参加だと田村隊長はおっしゃっていました。それ以上僕は聞きませんでした。  さて、ここでお聞きしますが、自衛隊の自衛官の身分のままで行っているのでしょう。それが一点。  もう一つ、これはPKF凍結の三条三号のイに相当するのではありませんか。したがって、個人参加といえども自衛隊の職務を持ったまま、今言ったカントンメントか、これから、もうセクターモニターといったら情報ですから、昔の日本の軍隊で言うと先兵です。そして、国際監視です、これは。これは明確にここに書いてある。「武力紛争の停止の遵守状況の監視又は紛争当事者間で合意された軍隊の再配置若しくは撤退若しくは武装解除の履行の監視」、二つの監視の中の一つの業務だと私は思います。  PKO法の附則二条で凍結が行われている段階で、正規の自衛官がこのような仕事で配置されていることは、PKO法現状から見て、よろしいのですか。
  209. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この業務の性格につきましては、先ほど先生から御指摘ございましたように、三条の三号、イロハニホヘとございますが、そういうところの一部であるということが言えると思います。  ただ、その後で御指摘になりましたいわゆる凍結との関係でございますが、これは申すまでもございませんが、この法律の附則第二条におきまして、「自衛隊の部隊等が行う国際平和協力業務であって第三条第三号イからへまでに掲げるもの又はこれらの業務に類するものとして同号レの政令で定めるものについては、別に法律で定める日までの間は、これを実施しない。」こうなっておりまして、自衛隊の部隊がこれらの停戦監視的なことを行う場合には、これはいわゆる凍結の対象になっている業務である。  しかし、停戦監視の八名、現在も交代で八名行っておりますが、この停戦監視員につきましては、確かに自衛隊員でございます。自衛隊員でございますが、国際平和協力法第十二条二項によって国際平和協力隊に派遣されておりまして、任期を定めて国際平和協力隊の隊員に任用されておるわけでございます。そして、この十二条の第四項によりまして、国際平和協力隊の隊員の身分と自衛隊員の身分をあわせ有するということになっておりまして、隊というのが二つあるのでちょっと紛らわしいのでございますが、国際平和協力隊の隊員でもあり自衛隊の隊員でもある、こういうことでございますが、あくまでもこれは部隊として行っているものではございませんで、個々の隊員として行っているということでございます。
  210. 嶋崎譲

    嶋崎委員 それで、これは僕は大問題だと思えます。平和維持活動世界の経験に基づいて、停戦監視要員というのはどんな人間を配置するか、大臣、御存じですか。停戦監視団員の資質と特性というのは、日本のかつての軍隊と同じで、最強精鋭の人たちでなければいかぬのですよ。  ちょっと要件を言いましょうか。軍事監視団員に求められる資質は次のとおり。御存じでしょう。すごいんですよ。もう他の国籍の将校と行動できる順応性から始まって、積極性、協調性、信頼性、耐久力、情熱、情報力、すぐれた人が配置されるんです。ですから、自衛隊の中の恐らく最高エリートでしょうね。その人たちがやっている情報活動というのは、ここでポル・ポト派の動きがどうなっておるか情報を全部つかんで報告するわけですよ。それは田村さんからお聞きしました。  さあ、これは凍結、我が国の言う軍事的活動の一環にならないか。個人だからないといっても、身分は二つであっても、やめて個人で行ったのならいざ知らず、日本の自衛隊の中から選ばれた人が個人の意思で行ったんでしょう、個人参加ですから。しかし、その論理、そういう理屈が通用するかどうか。これは問題点の一つだと思う。私はできぬと思います。これは今後の検討課題の一つ。  次に、そこで問題になるのは、先ほどの委任の問題と、これからコマンドとの関係等々の問題になるのです。  昨年の国会では、あのPKO国会では、先ほども委員の御質問がありましたけれども、国連の指図に基づいて我が国は独自な指揮権があると主張してきた。我が国の指揮権を発動する際には、PKO法に基づいて、必要なときに、状況変化、武装解除が行われない危険な地域にいたときには、休止、中断、時には撤収ということを日本の判断でできることになっていた。ところが、現地でやっている仕事は、委任された仕事が、隊員に委任された仕事の業務が、どうもUNTACの指図による業務の中身であって、我が国の指揮権の中で位置づけられている業務ではない。これはもう実態調査をして明々白々なんです。  そうなると、我が国のいわゆる独自な指揮権という総理の指揮権は今日の状況で通用しないのではないでしょうかというのが、私が記者会見のときに、今のPKO法を前提にして本来できるとおっしゃっていた政府側の答弁が、実際には現地に行ってみると、違った指揮のもとで、違った与えられた業務以上のことをやらされているのに、こっちで判断して引き揚げるんだと言ってみたって現実はできなくなっていると言うたら、僕は撤収反対の政治家であるかのごとくうちの内部でも批判されましたけれども、まあそんなのはどうでもいい。  僕がここで問題にしていることは、国会で議論してきた我が国の指揮権とそれから指図との間がうまくいく場合はいいが、問題の停戦合意並びにその後の武装解除が進行しない過程において、ついにここで議論されていたことは観念論になっちゃったと断定せざるを得ないというのが私の現地調査の結論です。  その意味でもう一度、この指図、コマンド並びに我が国の指揮権というものを国際協力という中で検討してみる必要がある。  ここで本当は時間があれば、柳井さんが村田大臣の後に行かれて、そして調査されて、いろいろな要望を出している。さっき聞きました。しかし、要望は出したが、どんな結果になるか。例えば、一番大事なのは文民警察の再配置なんです。再配置は、私は明石さんと話してきましたが、それは日本だけそんな判断をするわけにまいりませんと言っていますよ。だから、指揮権はないのです。そういう意味の指揮権はないのです。その意味で、国会でのこの議論は改めて見直しの際に議論し直さなければならぬ、これが次の課題。与えられた時間、あと五分ですから、ポイントは二重の指揮権というふうに要約しておきましょう。  そして、我が国の要領の変更に当たっての手続と、現地の文民警察や派遣された人たちの任務の変更がどのような手続で、どのような判断でもって行われたか、これを今後議論の焦点にしていかなければならぬというのが現地調査の判断です。  さてそこで、今度は少し政府に頑張ってもらうお話をしましょう。  今度の選挙終わりますね。これは何とかして、今順調にいくような気が僕もしました。そして、結果、選挙が終わって三カ月です、次の勝負は、制憲議会ですから。制憲議会があって新政府ができる。そのときに、選挙にはポル・ポト派参加していない。その意味で、UNTACから見れば、これを排除して政権つくったって構わないという民主主義の論理が一方にあります。  ところが他方では、第二段階以降の停戦合意ができないままカンボジアの情勢が進行したために、UNTACと現地の動向との間に矛盾があらわれていて、SNCに残っているポル・ポトが選挙参加してないという矛盾になっている。  さて、ここだ。そうすると、SNCを基礎にして次の政府を考える場合の民族統一、和解という政治の問題と、それから選挙の結果を尊重するという民主主義の問題、これが現地カンボジアでは車の両輪のごとく課題になるという判断をして、我が国の対応を考えていく必要があるというのが私の判断です。  そこで大事なのは、UNTACに最初物すごく期待を持っていました。UNTACには物すごいメリットもあって、選挙ができました。プラスはあります。デメリットは何かというと、UNTACのおかげでインフレが進みました。カンボジア人民は一日に三十ドル、四十ドルの生活です。UNTAC人たちは、日本文民警察その他見たって、二千ドル、三千ドルの報酬でしょう。こんな格差。UNTACに働いているカンボジア人は二百ドル、四百ドル、七百ドルもらうのです。何と生活の格差がすごいことか。家賃の値段が高騰したというような状況です。そのために、UNTACが果たしたメリットに対して、カンボジア人民からすると非常なデメリットがぎりぎり来ている。だから、選挙が終わったら早う引き揚げざるを得ない、そういう事態に僕はなり得ると思います。  そこで大事なことは何か。今のカンボジア人民の貧困と、それから非常に厳しい生活条件に対して緊急に我が国としてやるべきこと、UNTACを通じて何をしたらいいか。選挙後三カ月間が一つの勝負。これは緊急援助です。そしてUNTACの任務が終わってポストUNTAC、次の段階へ来ますと、国連のプレステージをもらって何かの形で継続することになると明石さんは言っています。なるかもしれない。しかし、その段階でいよいよ宮澤総理の出番になるわけ。我が国が議長を務めております例のICORCの役割が前に出てくるわけですね。  そこで、いよいよ中長期の経済再建について我が国が何をやるか。これは選挙が終わった段階で、我が国国際的に働きかけてでも夢をカンボジア人に僕は与えなければいかぬと思う。そういう課題を背負ってポストUNTAC問題というものを  今のような一面正常なような選挙だが、カンボジア人民から見ると不正常に見える。野党はもう全部選挙延期と言っているのですから、最後まで。参加しているけれども延期と言っているのですよ。そして、民族和解と言っているのです。与党のCPPだけですよ、力でやっちまうというのは。  そんな状況と、カンボジアの民族統一の新たな課題に向けて、私たちは、SNCの一員であることを我が国は重要視してきているわけですから、それを頭に置いて今後我が国の外交を展開すべきであるということを調査の結果強く感じましたので、今後の皆さんの課題にさせていただきたいと存じます。  あと一問だけ。  さて、ガリさんの、事務総長の提案、新たな去年の一月以来の提案の中で、既に本会議で私の質問に対して総理は、強制、つまり戦うPKO部分といいますか、執行部隊、これは我が国憲法では、討議に参加しても、我が国憲法上許されない、こう言いましたね。  そこでもう一度、ガリ事務総長が提案した予備的段階、それから平和創造の段階、その後に今度は開発計画というその三段階全体の中で、我が国が平和憲法のもとで協力できる部分とそうでない部分を明確に仕分けして、そして世界に向けて日本の、私たちの言う非軍事・民生・文民という主張が、たくさんやらなければいかぬことがあります。だからそういう意味で、その主張とともに、問題を整理し直す時期に来ている。特にカンボジアの経験は、モザンビークよりもっと事態は複雑です。それだけにこの経験を生かして我が国の外交をどう展開するかということについての総理の感想を最後にお聞きしまして、質問を終わります。
  211. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 この選挙に至りますまでにいろいろな事態がございましたので、ここまでのところで実際かなり私どもも緊張を続けておりますが、実は、選挙は物の終わりではなくて事の始めでございますので、これから後カンボジア人がどうやってカンボジアをつくるかということが一番大事なところでございます。  できるだけ自分たちの力でやってもらうということが本則でございますから、UNTACはある段階で使命を果たしてこれをカンボジア人に渡していくべきだと思いますが、それにいたしましても、今度はいわゆるバイラテラルと申しますか、あるいはむしろ今度で申しますとカンボジア復興委員会という名の、各国がカンボジアにどのような復興のための援助と協力をするかということが、これが実は本則の問題であると思います。  私は、カンボジアばかりでなくインドシナ半島全体の問題として、我が国が直接にカンボジアに援助をすることももとより好ましゅうございますが、インドシナ半島の、あるいはその周辺の国々を通じてむしろ三角援助と申しますかそういう意味で、カンボジア復興がこの地域の国々全体のプラスになるような、そういう形の援助をいろいろ考えていくべきではないか。  また、人の訓練にいたしましても、我が国に来てもらって訓練をするよりは、近くの土壌で、風土で訓練してもらった方がはるかに効率が高い。そのための費用を我々が負担すればいいわけでございますから、そういったものを含めまして、カンボジア復興会議で、これからみんなでひとつ力を合わせてカンボジアを、インドシナ半島を復興させよう、こういう心構えでやってまいりたいとひそかに考えておるところでございます。
  212. 嶋崎譲

    嶋崎委員 終わります。
  213. 粕谷茂

    粕谷委員長 この際、楢崎弥之助君から関連質疑の申し出があります。嶋崎君の持ち時間の範囲内でこれを許します。楢崎弥之助君。
  214. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 官房長官はお見えでないのでしょうか。
  215. 粕谷茂

    粕谷委員長 ただいま記者会見に行っておりますので、間もなく入ってまいります。
  216. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうですか。はい、わかりました。  時間が短いのに、冒頭予定しない問題を取り上げざるを得ない。まことに残念です。  同僚の、午前中の伊藤忠治委員質問最後に、イタチの最後っぺみたいに総理は、ここにちゃんと私は、理事会に行ってとってきましたから間違いないです。こう言われましたよ、総理は。「いろいろ承りましたが、まず自衛隊というものが憲法違反でない、合憲であるということを明確にされた上で御議論をいろいろこれからしてまいりたい。」何ですか、これは。合憲というものでなくては議論できないのですか、ここであなたは相手をしないのですか。(発言する者あり)いや、浜幸さんが言うならいいですよ。総理大臣が公の審議の場でそういうことを言うということは議会制民主主義の否定ですよ、これは。そうじゃありませんか。  大体、勉強が足らないから言っておきますけれども、私は、かつて社会党時代に軍事基地反対運動に携わっておりまして、昭和三十七年の恵庭の裁判、それの裁判の判決は四十二年にありまして、これを傍聴に行きました。これも自衛隊の合憲、違憲にかかわる裁判であります。  一番はっきりしておるのは、これは昭和四十二年六月です。内容はこういう内容であった。長沼ナイキ基地訴訟であります。これが一番はっきりしている。防衛庁長官、御存じですか。「防衛庁は、第三次防の一環として北海道夕張部長沼町に航空自衛隊のナイキ基地を建設するため、昭和四三年六月、同町の馬追山保安林について保安林指定の解除を申請したところ、農林大臣は、同四四年七月、同保安林の指定を解除する旨の処分を行った。これに対して、地元住民らが、憲法第九条に違反する自衛隊の基地を建設するために保安林の指定解除を行うことは、森林法二六条二項が保安林指定解除の要件として定めた「公益上の理由」を欠き、従って農林大臣の解除処分は違法であるとしてその取消しを求め」た訴訟である。  これに対して昭和四十八年九月七日、明確な判決が出た。この自衛隊が合憲か違憲かの部分だけ言いますよ。「自衛隊の憲法適合性について司法審査の対象から除外すべき理由はなく、自衛隊はその編成、装備、能力に照らして第九条で保持を禁じられた「陸海空軍」に該当して違憲であるこそういう画期的な判決を下しておるんです。  だから、裁判でもこれは、国側は高裁に控訴しましたよ。高裁は憲法判断はしませんでした。つまり、統治行為ということで逃げた。最高裁に行った。最高裁も同じです。つまり、裁判でも違憲というあれが出ているんです。  いろいろな考えがありましょう。合憲と主張しておる人もありましょう。違憲と主張する人もありましょう。あるいは条件つきに合憲と認めてもいいという議論も最近出てまいりました。これは自由じゃありませんか。合憲と思わなくて審議できないんですか。  あなたはだんだん渡辺美智雄さんに似てきましたよ。一言多いんですよ、本当についせんだっても、どう言いましたか、あなたは。いろいろ拡大解釈が問題になった。で、なし崩しの拡大解釈ではないかという批判を我々は持った。ここで問題にした。これは当委員会じゃない、あなたはこの問題について官邸かどこかで記者団から指摘されて、「勝手に言えばいい」。何ですか、これは。私たちが言っておることは勝手に言えばいいということですか。耳はかさないという意味ですか。聞く耳持たぬという態度ですか。  これは、今の憲法問題と、それから「勝手に言えばいい」、あなたは確信犯ですね。確信を持ってこう言っている。だから私は、これは議会制民主主義のいわゆる審議の自由に対する侵害ですから、取り消していただかないと審議を進めることはできない。はっきり総理のお考えを聞いておきたい。
  217. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 先ほど伊藤委員の御質問に対して、私の最後のお答えの部分が実はお時間の外へ出ておりましたものですから、私がちょっと言葉が足りずに、その点は失礼をお許しいただきたいと思います。  ただ、私の言おうとしましたことは、御議論はずっと、今の派遣されております部隊、自衛隊でございますが、これがやっておりますことがだんだんだんだんなし崩しで憲法違反になってきておると、こういう御議論に対して、私はそういうことはございませんということをるる申し上げていたわけですけれども、その御議論最後部分の御質問がありましたので、そもそも自衛隊そのものが憲法違反であれば、これのやることは全部憲法違反であると考えるのが普通でございますね、ですからそこをちゃんとしていただきませんとこの御議論はどうもやり方がないということを申し上げたのです。
  218. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 しかし、それは伊藤君の質問に対してはそういう説明はなかった。(発言する者あり)しかも、今本人が言っているとおり、そういうことは聞いてないと言っている。これは素直に謝ってもらいたい、そして取り消してもらいたい。これは根幹にかかわる問題です、我々の審議の。
  219. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 誤解を与えるような発言でございましたら取り消すにやぶさかでございませんが、自衛隊のことを御議論いただきますときには、私どもは自衛隊は合憲と、そういう立場に立って申し上げているということをそれでは御理解をお願いいたします。
  220. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そんなことはわかり切った話ですよ、自民党がどういう態度であるか。  私は、個人的なあれを言えば、条件つき合憲です。つまり、専守防衛の範囲内におさまれば、個別的自衛権は独立国としてあるんだから、そういう意見なんです。いろいろな意見があると思いますよ。だから、今総理は素直におっしゃった。これは後刻理事会で、取り消すにやぶさかでないとおっしゃっているから、協議をしてもらいたい。そういう上で私は審議を先に進めたいと思います。
  221. 粕谷茂

    粕谷委員長 総理の答弁では承服できませんか、今、事を分けて総理がお話しなさったことで。
  222. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、あいまいですから。
  223. 粕谷茂

    粕谷委員長 それでは、委員長において後刻理事会で協議をさせていただきます。よろしゅうございますか。
  224. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは私は言いたくなかった、時間が少ないから。しかし、そういうことをおっしゃるんだったら私も取り上げざるを得ぬ。  例の、あの高田さんの問題が起こった。第一報をあなたは軽井沢で受けられた。そのとき、東京に引き返したときに、例の「まあ仕方ないな」というこの言葉です。これは河野官房長官が、その意味はこれこれこれとおっしゃった。しかし、そのような弁解をしてもこれは通りませんよ。私は、これも考えてもらわなくちゃいけぬ。これは当委員会で公式に言われたことじゃないから、私は、この問題は反省をしてもらわなければいけぬと思うのです。こういうことを言われると、犠牲者の御遺族はもちろんのこと、国民もやりきれない気持ちになりますよ。  あなたはかって池田さんの秘書官をしていましたね。昭和二十七年、覚えておられるでしょう。どういうことが起こったか。そのとき池田さんは通産大臣であった。私どもの先輩の加藤勘十さんが、昭和二十七年十一月二十七日です、衆議院の本会議、二十六日から二十七日にかけて。このとき加藤さんは、私はそのとき松本治一郎先生の秘書をしておったから傍聴に行っておった。それをちゃんと聞いておったのですよ。そして、こういうことですよ。  その衆議院の本会議で加藤勘十さんは、不況のもとで中小企業はどんどん倒れていく、そのために五、六人自殺が出てきた、どう思うかという、こういう質問ですよ。これに対して池田さんは何と答弁されたか。ここにちゃんとあります、議事録が。インフレ経済から安定経済に向かうとき、やみ取引その他正常な経済原則によらないことをしている者が倒産したり、また倒産から思い余って自殺するようなことがあっても、気の毒ではあるが「やむを得ない」。二度続けて言った、気の毒ではあるが「やむを得ない」。同じ言葉なんです。  このためにどうなったか知っているでしょう、秘書官でございましたからね。それですぐ問題になる。明くる二十八日に野党五派から不信任決議案が出されて、それでこれが通りましたよね。そういう故事を、私は、宮澤さんは頭がいい方だから、こういう言葉はお使いにならない方がいいと思いますが、いかがでしょう。
  225. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 これは、私は大変迷惑をいたしましたので、いい機会ですから一言だけ申し上げます。  軽井沢におりまして、非常な悲報を聞きましたので急遽帰ることにいたしまして、急でありましたので宿屋の、ホテルのマネジャーが出てまいりましたから、まことに済まないがこういう事態なのでやむを得ないと言って、マネジャーにあいさつを私はした。それをついておりました記者が聞きまして、あたかもこの事態がやむを得ないと言ったというふうに思ったのでしょう、一遍そういう速報をしたそうです。しかし、間違いだとわかって後で訂正したそうですから、それで私は、まあいいや、そう思っているのです。これは、ですから誤報で、私が迷惑いたしました。
  226. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そういう弁解をされたことはよく知っております。しかし、ああいう事態だからそういう誤解を与えるようなことはお慎みになった方がいいのではないのかというのが私の意見なんです。生の放送が入っておらぬけれども、国民皆さんがこれを聞いておったら同感だと思いますよ、本当に。  それで、本題に移りますけれども、私は結論の方を先に申し上げたいのです。今この時点で私どもは一体何をすべきか、PKOのこの問題について。そして今後何をすべきかというのが最大問われておると思います。それで、これは本体の社会党と私の考えは恐らく一致しておると思いますが、食い違う部分があれば、これは社民運としての考え方であることを一応お断りをいたしておきます。  まず第一になすべきは、反省をしなければいけない。何が一体今まで欠落をしておったのか、これから始めなくてばいい対策は出てこないと思いますよ。一言で言えば、危機管理体制が皆無であった、私に言わせれば。皆無であった。そして事態が起こったら、こんなことはわかっておるというようなことを各大臣が言い出した。冗談言っちゃいけませんよ。だから、あのときの事態の閣僚のろうばいぶりはまことにみっともない限りであった。一人一人言ってもいいですよ、時間があれば。こういうことじゃ、先ほど申し上げたけれども、犠牲者の遺族あるいは国民は全く頼りないものだという印象を持つんじゃないですか。  それで、私は二番目に、情報収集能力が足らないんじゃないかということを言いたい。その一つの例として申し上げますけれども、中田、高田両犠牲者の殉職の状況の真相、どうですか、わかっていますか。
  227. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 高田警視が亡くなりましたときの状況につきまして、私どもの掌握しているところを申し上げたいと存じます。  去る五月四日午後零時三十分ごろ、オランダ兵の乗った車を先頭にしまして、我が国文民警察要員ほかの乗った車が二台、それから選挙要員の乗った車両が一台、そしてインドの地雷除去隊の車両二台という車両の縦隊が、カンボジアの北西部、タイとの国境の近くのフォンクーというところからアンビルに向かっておりました途中で、武装集団にB40ロケット砲及び小銃によって襲撃されまして、高田警視が亡くなられ、また我が国文民警察要員四名が負傷をされた。また、オランダ兵も五名負傷されたというのが事件の概要でございます。  この武装集団の正体につきましては、UNTACの発表では正体は不明であるということでございましたが、その後、負傷者の証言等によりますと、中に顔見知りのポル・ポト派の兵隊がいたということでございます。ただ、UNTACとしてはその後の確認はしておりません。
  228. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そのとき高田警視は、防弾チョッキはどうしていましたか。
  229. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 私ども聞いておりますところでは、防弾チョッキは持っていたけれども、着用はしていなかったというふうに承知しております。
  230. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 なぜ着用していなかったのでしょうかね。
  231. 井上幸彦

    ○井上(幸)政府委員 この高田警視初め私どもの警察代表七十五名の隊員は、いずれも一着ずつの防弾チョッキを持参していっているのでありますが、この当日、高田警視は、この防弾チョッキは前面しか防護できないというものだったそうでございます、そのために、背後を襲われるのが怖いというふうな予感がしたようでございますが、座席の後ろ部分にこの防弾チョッキを置いておいた、こんなふうに聞いております。
  232. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それはどこの国の製品ですか。
  233. 井上幸彦

    ○井上(幸)政府委員 日本のものと聞いております。
  234. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 前だけついて後ろがついていない、防弾の仕掛けが。前からばかり弾が飛んでくると思っておったのじゃないですか。撤退するときあるいは避難するときは後ろを向くのですよ。後ろもついておらぬとだめなんです。日本製は後ろがついていないから着ていなかったんでしょうが。だから慌ててアメリカから輸入したんでしょうが、前後ついているものを。そうじゃないんですか。
  235. 井上幸彦

    ○井上(幸)政府委員 この当該防弾チョッキは通常我が警察が使っているものでございまして、これについては、通常の警察活動においては前面を防護するという建前からそのような前面防護のものになっているということでありますが、文民警察官を派遣するに当たりましてはこれを総理府に管理がえして、それを着用すべく持っていかせた、こういう事情になってございます。
  236. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 とにかく私が申し上げたいのは、やはり現地の実情を余りよく把握していなかったのではないかということを言いたいのです。それが、情報入手が非常に困難な状態にある、情報収集能力が足りないという一例ですよ。つまり、役に立たぬから着ていないのです。そういうことでしょうが。(発言する者あり)そうじゃないんですよ。そうなんですよ。  そして、米国製のものを入れたのはいつで、何個入れたのですか。
  237. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 米国製の防弾チョッキにつきましては私ども国際平和協力本部事務局で手配をいたしましたので、私からお答え申し上げます。  この事件の起こりました地域は、この三月ごろまでは大変に平穏なところでございましたけれども、その後状況が悪化したことは御案内のとおりでございます。四月八日の中田厚仁さんの亡くなられた事件、それからその後、四月の十四日でございますが、このフォンクーにおりました平林警部補が強盗に遣われるという事件がございました。そのころ、その状況を見まして、現地の要員の要望もございまして、私どもとしては米国製の繊維型防弾チョッキを注文いたしまして、これは注文生産でございますが、四月の十六日に注文をいたしまして、五月十一日以降順次現地で配付をしているところでございます。  この数は、全体で百三十五着てございます。文民警察要員用七十五着、停戦監視要員用八着、選挙監視要員用が四十一着、それから私どもの現地支援チーム用といたしまして十一着、これを手配いたしたものでございます。  なお、これは注文生産でございまして、米国で生産をしてもらいまして、直接プノンペンに空輸をいたしました。
  238. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それが実態である。役に立つ防弾チョッキは犠牲者が出てやっと間に合った、こういう実態だけは私は明らかにしておきたいと思います。  そこで私は、もう一つ反省の材料として、一言で言いますが、UNTACの能力を私どもも含めてちょっと過信しておった向きがあるのではないか、そういう気がいたします。もう時間がないからその内容については言いませんけれども、恐らくそういう感じを持っていらっしゃると思います。  そこで、今早急にしなければならないことは、さっきの反省を裏返せばいいわけでして、つまり、危機管理体制を早急に確立してくださいということ。  私は、土曜日に大阪で知人の子供の結婚式があって行って、引き返しました。その新幹線の中で、明くる日から投票が始まるというときに、ある大臣が新幹線に乗っていらっしゃいました。名前は言いません。恐らく急用があったのでしょう。ただ、もうあしたから始まる、もう皆さん方、本部の人は、本部長初めいわゆる待機されておるんじゃなかろうか、何があっても即応できるように、私、そういう感じを持っておったのですよ。その状態を見て、喜んでいいのか心配していいのかわからぬ。私どもの危機感とちょっと違うんじゃなかろうかという感じがしたことを率直に言っておきたい。  そこで、私は、昨日も総理は責任問題について非常に深刻に表明をされました。それじゃなくちゃいけぬと思うのです。それで私は、これは事と成り行きによっては内閣総辞職ものだと思うのですよ、今後不幸なことがまた起こったりしたら、起こっちゃなりませんけれども。それで、そういう総辞職の覚悟で、腹切り覚悟でやるんだということを国民の前に示してもらわないと国民は納得しないんじゃないんですか、今政治に対する不信が渦巻いているのですから。  だから、そういう内閣の命運をかけてやるんだ。あなたは安全について万全を期すとおっしゃった、これも後で問題にしますけれども。それぐらいの覚悟を表明しなければ、私は、国民を納得させることはできない、遺族はもちろんですが。どうでしょうか。
  239. 河野洋平

    ○河野国務大臣 楢崎委員のおっしゃるように、今回のPKO活動には七百人の要員をカンボジアに派遣をいたしております。それ以外にもボランティアあるいはNGO、さらには選挙要員の方々も行っておられますから、恐らく八百人、あるいは大使館、さらにはマスコミの人たちを入れれば今一千人近い人がカンボジアにおられると思いますが、いずれにせよ、このPKO活動のために現地に行っていただいている方々に対して、我々は全力を挙げて、この目的が完遂されるために、そしてそれは安全対策が十分その裏づけとしてなければならないということを考えております。  国際平和協力本部事務局は、もうほとんど、当然のことではございますけれども、この一カ月、二カ月、不眠不休でバックアップの体制をとっておるところでございまして、私もその所管大臣といたしまして、重い責任を負うて、この状況に対応しているところでございます。  委員初め皆様方からいろいろ御注意をいただきながら、御鞭撻をいただきながら、この新しい、本格的に取り組むPKO活動でございますから、何としてもやり遂げたい、こういう決意でおります。
  240. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 つまり、有事即応体制を早く整備してください。  そして、そのためには、次に出てくる問題として、これが今度の事件にも関係しますけれども、中断や撤収の判断基準、これが具体的に私は明らかになっていないと思う。それから、以下言いますから後で答弁していただきたい。中断、撤収の判断基準を明確にしておればいざというときすぐ即応できますから。  それから、総選挙が大過なく終わったら、まずは引き揚げるということを念頭に置く。そして、そういう引き揚げる場合の、じゃその撤収の準備はどういうふうになっているか。例えば、撤収の輸送、航空機とか船はどうなっているか、どういうふうにするのか。そういうことが明らかになったら、私はぜひ、まだ六月二十日まで国会はあるんですから、総理にお願いしたいんですが、そういうあれが明らかになった段階で国会に報告していただいて、審議の対象にしてもらいたい、これが希望ですが、どうでしょうか。
  241. 河野洋平

    ○河野国務大臣 業務の中断及び終了については、その判断の基準ははっきりいたしております。  これはPKO法国際平和協力隊法例審議の際にかなり長時間かけてそうした議論がございましたが、五原則が満たされなくなった場合には中断、そしてそれが一定の時間回復する可能性がないということがわかれば終了ということははっきりいたしております。  また、撤収について言及なさいましたけれども、撤収につきましては、本日も防衛局長から御答弁を、実は他の委員の御質問に対してお答えをいたしておりますが、撤収についてはそれぞれ計画は持っておるわけでございます。しかし、今の時点、少なくとも投票があと数日で終了するという、まあまず第一の大きな山を越えるというこの場面でございます。私どもとしては撤収についていろいろ考えて研究をいたしておりますが、それを表面に出して申し上げることはいかがなものか。これは今はもうみんなで力を合わせて、この山を乗り切るというために全力を合わせるということが重要ではないか、こう考えているところでございます。
  242. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は今言えと言っているんじゃないんですよ。選挙が大過なく終わったらということを言っている。その際には、もしできたら国会に報告していただいて、審議の対象にしていただきたいという要望を私は言っているんですが、どうですかと聞いているんです。
  243. 畠山蕃

    ○畠山政府委員 おっしゃっている撤収という言葉意味でございますけれども、選挙後に不測の事態が起こって撤収するという話であるとしますと……(楢崎委員「大過なく終わったと私言っておるじゃないですか」と呼ぶ)大過なく終わった後に、どういう理由で撤収するかというときに、その場合の、緊急の事態というのは先ほど官房長官からもお答え申し上げましたように、現在、不測の事態に備えての対応というのは考えておるということは申し上げているわけでありますが、そこで、計画的に平時の、平静な状態での撤収、引き揚げですね、引き揚げということを当然考えるわけでありますけれども、これは現段階では選挙後九十日以内にということで、九月十五日までがマンデートということになっておりますから、それを前提として、施設部隊の場合は十月末までということになっておりまして、それを現段階で変えるという考え方は持っておりません。  いずれにいたしましても、しかし、その計画的な、予定どおりの引き揚げのための準備に相当期間を要しますので、これは現在、持っていった装備品を、どの程度のものを現地に置いてくるか、全部を持ってくるのか、その辺のところもあわせて現在検討を進めておりまして、意外と、非常に予想外に長期の時間を要するということでございまして、すべてを持って帰ろうとすると、今机上での見積もりでは三カ月を準備から実際帰るまでに要するというような状況でございますので、そこを含めて、現在、そういう普通の任務を終えての引き揚げという計画について十分詰めております。  これは現地との調整も進めなければなりませんが、現地が今選挙で忙しいという状況もございまして、具体的なその辺の話し合いが進んでいないという状況ではございますが、選挙が終わりましたら早速に、まず計画的な引き揚げについての準備の段取りというものを現地とも協議を進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  244. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 お聞きになりましたか。全然私が質問していることと違うことを言っているでしょう。私は、大過なく選挙が終わったときにはどういう段取りでやるのか、それは準備は進めておかぬといけませんよ、そうせぬとまたずるずるずるずるになりますよと、それを言っているんです。だから、そういうものができたら、今は言えなくてもいいから、できたら、国会に報告して審議の対象にしてくださいと言っておるのに、今の答弁、何ですか。三カ月全部撤収するのにかかる、そこまで待てというのですか。全然違うでしょう。もういいよ、あんた。方針が決まったらと言っているのです。  それで、私は、あんなばかな答弁で時間を費やしてもなんですが、次に、こういうことをお考えになったらどうか、もちろん選挙が終わった後の段階ですが。おととしですか、東京会議開かれましたね。もう一遍東京会議というものを開く必要があるのではないか、新政権ができたら。そして、新政権にどういう協力をするか、そういうことをやはり、日本会議を始めたんだから、そういう新しい出発のときも東京会議をもう一遍なさったらどうだろうか。これはどうかということを私は思っているだけです。  それから今度は、国連の安保理でいろいろ提言なさることがあろう、日本は経験しましたから。そういうものも、私は、国際会議の提唱を日本がやったらどうかというようなことをひとつお考えになったらどうか。  それから、もう時間がありませんから申し上げますけれども、今後の課題としては、やはり塚本元民社党委員長もおっしゃっておったように、PKO協力法の、協力隊と言ってもいいですが、見直し問題は三年かかりますよ、これは。だから、これは私は時間があれば、せっかく外務大臣が見えておるから、聞きたかったのですよ。あなたは、PKO、PKFを含めて三年猶予期間を置いているのですよ、どういう条件がついているか御存じですか、なぜ三年間猶予期間を置いたか。あなたは見直すべきだなんてすぐ言いますけれども、前倒しなんということを。御存じないんじゃないかと思うのです、ああいうことをおっしゃるのは。なぜかというと、PKFに警備が入っておらぬことをわからぬぐらいの外務大臣ですからね、失礼ながら。だから、やはりもう少し  済みません、失礼にわたったらお許しをいただきたい。大事なもので、人命にかかわるから言っているんですよ。それで、そういうものを含めて私は議論はすべきだ、経験を踏まえて。それが一点です、今後の問題としては。  それから、もう一遍、国際貢献とは一体何なのか、だれのための貢献なのか、そういうあり方。貢献という言葉はよくないと言う人があるでしょう、国際協力と変えた方がいいんじゃないか。そういう根本的な問題を議論する必要があるのではないか。それから、国連中心主義とよく言いますけれども、国連中心主義とは一体何かという、この点は私は外務大臣も同感であろうと思うのですが、こういう根本的な問題を議論する必要があるのではなかろうか。これは意見として申し上げておきます。  それで、私は総理にちょっと聞いておきますが、中田さんの犠牲について、明石さんから、あの事件は単なる物取りのしわざのような気がしますという報告を受けましたか、明石さんから。
  245. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 そういう報告は受けておりません
  246. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、私は宮澤総理に聞いているんです。あなたは聞いたかとあなたに聞いておるんじゃないですよ。総理はそういうことを聞かれたことはないですか。
  247. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 そういうことを聞いておりません。
  248. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは、先日、河野官房長官が、ある筋の情報としてこういうことが言われておる、しかし、この真偽は確かではないとおっしゃいました。そのことと関連して念のため聞いたのです。聞いたことはないですね。  それで、私は、大体、一連の問題はうそに始まって今やうそに終るうとしている、私、それを指摘したいのですよ。どういううそを言ってきたか。これは同僚諸君がたくさん言いました、今までの言ってきたことと違うではないかと。  きわめつきがありますよ。これは総理はお読みになっていると思いますが、ニューヨーク・タイムズ、五月の十三日付、この号です。これは、五月の十二日東京発、デビッド・E・サンガーというニューヨーク・タイムズの特派員が東京発として出しておる内容です。ここに重大なことが報告されておる。「トゥーテルザトゥルース」、本当のことを言えば、「ザローワズパストアンダーサムフォールスプリテンシズ」、つまりあれでしょう、このPKO法は「フォールスプリテンシズ」、総理、これは偽りの口実という意味ですよ、偽りの説明をして国会を通した、それはだれをも傷つけないためにいろんな言い含めをやってうその説明で通したということを、その辺におるだれかが、つまりこのPKO法案の立案に参画をした官僚が渋々認めた。ここにあります。だれですか。私は責めよるんじゃない。本当のことをよく言ったなと思う。私が言っているんじゃない。あなた方のだれかが言っている。うそを言って通したんだ、はっきり言えば。どうですかね、総理
  249. 河野洋平

    ○河野国務大臣 ニューヨーク・タイムズというのは相当権威のある新聞だと承知しておりますが、その記事すべてについて一つ一つ私どもがその責任を負う、あるいはそれが真実であるということを私がここで申し上げることはできません。私どもは、誠心誠憲法案の審議をお願いをして、国会の御了承を得て法案を確定して、その法律に基づいてPKO活動を開始したところでございます。このことは自信を持って申し上げられます。
  250. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 とにかく、だれかがおっしゃったんだ、私が言ったんじゃなしに。私も言いますけれどもね。  それから、時間がないから、では、うそで終わろうとしている。なぜ私がそう言うかというと、総理は、今後、安全のために、安全対策として万全を期すと何回もおっしゃいましたね。それは、英語で言えば、コンプリートセーフティーということですか。
  251. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 日本語で明らかだと思います。
  252. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私がなぜそう言うかというと、あなたが万全ということを幾ら言っても、ガリ総長はそう言ってないでしょう。五月三日のその事務総長の報告の百三十四、ここに「キャノットアシュアザコンプリートセーフティー」、これは完全な安全はないと言っていらっしゃるんですよ、ガリ総長は。  それから、ついせんだってもう一遍、十五日付ですか、またガリさんが報告を出されましたね。それの十九のところには、「キャンビーノーギャランティーオブドータルセーフティー」、同じことを言っていらっしゃる。つまり、万全なんということはないと言っているんですよ、安全対策について。ガリ総長がそんなに言っているのに、どうしてあなた、万全ができるんすか。
  253. 河野洋平

    ○河野国務大臣 私どもとして、あとう限り、でき得る限りの安全対策をいたしておるところでございます。現在我々が考え得る最も高いレベルの安全対策、こう考えておりまして、万全のと申し上げてもよろしいかと思っております。
  254. 粕谷茂

    粕谷委員長 楢崎委員に申し上げます。よろしゅうございますか。
  255. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、委員長、あと十分あるはずです。  最後に私は、一問聞いておきたいと思うのです。時間がないそうですから一問だけにしておきますけれども、要するに、私はこのPKO問題と政治改革、あるいは今までのスキャンダルの汚職を解明するということは同じ線上にあると思うのですよ。どうしてかというと、政治改革だ、議員が血を流す問題ですよ、バッジがかかっているから。それは流さないで、そして政治の汚れはちっともきれいにならないで、そういう政治が決めた法律で人命が失われている、私はやりきれない気持ちがするのですよ。  だから、私は一つだけ聞きたいのは、ここに刑事訴訟記録があるのです。せんだって日債銀の頭取が参議院に呼ばれましたね。
  256. 粕谷茂

    粕谷委員長 楢崎委員、既に時間が参りました。恐縮ですが、委員長はできるだけ民主的に運営したいと思っておるのです。ですけれども、余り強引に発言をなさいますと、これは秩序が保てませんので、その辺を考慮して、手短にお願いいたします。
  257. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 委員長の指図には従います。  それで、一問だけ聞きますが、日債銀の天皇と言われた勝田龍二さん、この方はかつて、戦後すぐ、刑事事件、贈収賄に引っかかって実刑を受けておられるんじゃありませんか。それを御存じですか。最も信用を重んじる銀行、名前も日本債券信用銀行となっている。それにその方が頭取として君臨している。その間のことは私も経歴書をとりましたよ、日債銀から。昭和二十二年から三十年まで空白になっているのですね、経歴書は。そのことを書いてない。  どうして私がこれを問題にするかというと、このスキャンダルをおどしの材料に小針さんが使った可能性がある。あるいはいわゆる元東声会の町井さん、そういう方々がそのスキャンダルを種にしてああいう膨大な過剰融資をさせたんじゃないか、この疑問があるから、知っておられるかどうか、その勝田龍二さんがそういう前があるということを御存じかどうか、それだけ聞いておきます。(林(義)国務大臣「委員長」と呼ぶ)
  258. 粕谷茂

    粕谷委員長 大蔵大臣、発言を許しておりません。もう時間が経過しておりますから、質疑はこれで終わります。  これにて嶋崎君、楢崎君の質疑は終了いたしました。  以上をもちましてPKO等についての集中審議は終了いたしました。  次回は、明二十六日午前九時より委員会を開会し、経済・一般等についての集中審議及び締めくくり質疑を行います。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時十六分散会