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1993-03-01 第126回国会 衆議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年三月一日(月曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 粕谷  茂君     理事 石川 要三君  理事 小杉  隆君     理事 鴻池 祥肇君  理事 佐藤 信二君     理事 中川 昭一君  理事 串原 義直君     理事 中西 績介君  理事 松浦 利尚君     理事 草川 昭三君        相沢 英之君     愛野興一郎君        粟屋 敏信君     石原慎太郎君        岩村卯一郎君     臼井日出男君        内海 英男君     衛藤征士郎君        越智 通雄君     大石 千八君        狩野  勝君     唐沢俊二郎君        倉成  正君     塩谷  立君        住  博司君     高鳥  修君        戸井田三郎君     中山 太郎君        萩山 教嚴君     原田  憲君        星野 行男君     増子 輝彦君        松永  光君     松本 十郎君        御法川英文君     村山 達雄君        柳沢 伯夫君     山本  拓君        渡瀬 憲明君     伊藤 忠治君       宇都宮真由美君     菅  直人君        関  晴正君     竹内  猛君        富塚 三夫君     楢崎弥之助君        堀  昌雄君     松前  仰君        三野 優美君     水田  稔君        目黒吉之助君     元信  堯君        石田 祝稔君     河上 覃雄君        東  順治君     木島日出夫君        児玉 健次君     辻  第一君        神田  厚君     中野 寛成君  出席国務大臣       法 務 大 臣 後藤田正晴君       大 蔵 大 臣 林  義郎君       文 部 大 臣 森山 眞弓君       厚 生 大 臣 丹羽 雄哉君       通商産業大臣  森  喜朗君       労 働 大 臣 村上 正邦君       建 設 大 臣 中村喜四郎君       自 治 大 臣       国家公安委員会 村田敬次郎君       委員長       国 務 大 臣       (内閣総理大臣)河野 洋平君       外務大臣臨時代       理       国 務 大 臣 中山 利生君       (防衛庁長官)       国 務 大 臣       (経済企画庁長 船田  元君       官)       国 務 大 臣       (科学技術庁長 中島  衛君       官)       国 務 大 臣 井上  孝君       (国土庁長官)  出席政府委員       内閣官房内閣外       政審議室長       兼内閣総理大臣 谷野作太郎君       官房外政審議室       長       国際平和協力本 柳井 俊二君       部事務局長       公正取引委員会 小粥 正巳君       委員長       公正取引委員会 植松  勲君       事務局取引部長       警察庁刑事局長 國松 孝次君       防衛庁参事官  高島 有終君       防衛庁長官官房 村田 直昭君       防衛庁防衛局長 畠山  蕃君       防衛庁経理局長 宝珠山 昇君       防衛庁装備局長 中田 哲雄君       防衛施設庁総務 竹下  昭君       部長       防衛施設庁労務 荻野 貴一君       部長       防衛企画庁調整 長瀬 要石君       局長       経済企画庁国民 加藤  雅君       生活局長       科学技術庁原子 石田 寛人君       力局長       科学技術庁原子 佐竹 宏文君       力安全局長       国土庁長官官房 藤原 和人君       長       国土庁長官官房 藤田  修君       会計課長       国土庁土地局長 鎭西 迪雄君       法務省民事局長 清水  湛君       法務省刑事局長 濱  邦久君       外務省アジア局 池田  維君       長       外務省経済協力 川上 隆朗君       局長       外務省条約局長 丹波  實君       外務省国際連合 澁谷 治彦君       大蔵大臣官房総 日高 壮平君       務審議官       大蔵大臣官房審        議官      永田 俊一君       兼内閣審議官       大蔵省主計局長 斎藤 次郎君       大蔵省主税局長 濱本 英輔君       大蔵省理財局長 藤井  威君       大蔵省証券局長 小川  是君       大蔵省銀行局長 寺村 信行君       大蔵省国際金融 中平 幸典君       局長       国税庁次長   瀧川 哲男君       文部大臣官房長 吉田  茂君       文部省初等中等 野崎  弘君       教育局長       文部省教育助成 井上 孝美君       局長       文部省高等教育 遠山 敦子君       局長       文部省高等教育 中林 勝男君       局私学部長       文部省学術国際 長谷川善一君       局長       厚生省健康政策 寺松  尚君       局長       厚生省老人保険 横尾 和子君       福祉局長       厚生省保険局長 古川貞二郎君       通商産業大臣官       房商務流通審議 細川  恒君       官       通商産業省貿易 渡辺  修君       局長       通商産業省産業 熊野 英昭君       政策局長       中小企業庁長官 関   収君       労働大臣官房長 七瀬 時雄君       労働省労政局長 若林 之矩君       労働省労働基準 石岡慎太郎君       局長       労働省職業安定 齋藤 邦彦君       局長       建設大臣官房会 木下 博夫君       計課長       建設省建設経済 伴   襄君       局長       建設省都市局長 鹿島 尚武君       建設省道路局長 藤井 治芳君       建設省住宅局長 三井 康壽君         自治大臣官房審         議官      小川 徳洽君         兼内閣審議官         自治省行政局選 佐野 徹治君         挙部長         自治省財政局長 湯浅 利夫君         自治省税務局長 滝   実君  委員外出席者         参考人     福井 俊彦君         (日本銀行理事)         予算委員会調査 堀口 一郎君         室長     ――――――――――――― 委員の異動 三月一日  辞任         補欠選任   粟屋 敏信君     星野 行男君   石原慎太郎君     塩谷  立君   倉成  正君     萩山 教嚴君   高鳥  修君     岩村卯一郎君   戸井田三郎君     増子 輝彦君   中山 太郎君     狩野  勝君   浜田 幸一君     御法川英文君   松永  光君     山本  拓君   綿貫 民輔君     渡瀬 憲明君   楢崎弥之助君     菅  直人君   二見 伸明君     河上 覃雄君   宮地 正介君     東  順治君   吉井 英勝君     辻  第一君   中野 寛成君     神田  厚君 同日  辞任         補欠選任   岩村卯一郎君     高鳥  修君   狩野  勝君     中山 太郎君   塩谷  立君     石原慎太郎君   萩山 教嚴君     倉成  正君   星野 行男君     粟屋 敏信君   増子 輝彦君     戸井田三郎君   御法川英文君     浜田 幸一君   山本  拓君     松永  光君   渡瀬 憲明君     住  博司君   菅  直人君     楢崎弥之助君   河上 覃雄君     二見 伸明君   東  順治君     宮地 正介君   辻  第一君     木島日出夫君   神田  厚君     中野 寛成君 同日  辞任         補欠選任   住  博司君     綿貫 民輔君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  平成五年度一般会計予算  平成五年度特別会計予算  平成五年度政府関係機関予算      ―――――◇―――――
  2. 粕谷茂

    粕谷委員長 これより会議を開きます。  平成五年度一般会計予算平成五年度特別会計予算平成五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。林大蔵大臣
  3. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 先週の金曜日に立ちまして、昨日遅く帰ってまいりました。予算委員会皆様方には御迷惑をおかけしましてまことに恐縮に存じます。私のかわりに宮澤総理大臣臨時代理をやっていただきまして、答弁その他もやっていただきました。公務といいながら委員会を中途退場することになりましたことをお許しいただきたいと改めてお願いを申し上げます。  行きまして、二十七日午前九時三十分から十五時まで、イギリス蔵相官邸でのワーキングランチを含みランカスターハウスでG7各国大蔵大臣中央銀行総裁が一堂に会し、七カ国蔵相中央銀行総裁会議G7が開催されました。議長ラモント英国蔵相が務めました。今回の会合には、私とベンツェン米国財務長官が新しいメンバーとして参加をいたしました。今回は率直な意見交換を行うインフォーマルな会合とし、コミュニケは作成をしないとの前提で肩ひじの張らない話し合いの場となりました。  会合におきましては、インフレなき持続的成長の達成と自由貿易体制維持発展、次に旧ソ連諸国市場経済への移行に対する支援などが主要なテーマでありました。  現在のG7各国経済状況についての話し合いの中で、多くの国において高水準の失業が大きな問題であるとされ、インフレなき持続的な世界経済成長に向けて各国がそれぞれの置かれた環境のもとで直面する問題に取り組むことが重要ということになりました。  日本経済につきましては私から、日本経済調整過程にあり、我が国財政も依然厳しい状況にあるが、そのような中で財政面金融面景気対策に取り組んできた、景気に配慮した来年度予算早期成立が重要である旨説明をいたしました。また、我が国経常収支黒字についても、これまでとられた財政金融両面での諸施策が内需中心持続的成長に大きく寄与し、経常収支に好ましい影響を与えるものと期待している旨説明をいたしました。さらに、我が国途上国援助についても積極的に取り組んでいることを説明いたしました。  アメリカからは、中期的な財政問題に取り組むとともに、短期的な回復にも重点を置いた最近の米国財政パッケージについて説明がありました。  この他、各国から深刻化する失業問題への対応、財政再建への取り組みなど、それぞれの国において講じている措置について説明がありました。率直な意見交換を通じて、各国財政金融政策等について理解が深まったものと考えております。  なお、経済問題の中で為替についても話題となりましたが、私から、為替レートファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましいと述べたところ、異論はありませんでした。申すまでもなく円高誘導などという合意はありませんでした。  さらに、我が国は七月の東京サミット議長国であることから、サミットが実りあるものとなるよう各国協力お願いいたしました。このため、四月末のG7会合等を通じ、さらに協調を深めていくこととなりました。  旧ソ連諸国市場経済移行支援の問題につきましては、ミュンヘン・サミットにおける自助努力を助けるとの考え方は引き続き有益であるとされまして、次のような点で共通の認識がありました。第一に、過激なインフレーションに対処することが必要であり、このためにロシアとIMFとの協力が不可欠である。G7ロシアとの間で経済改革及び市場経済移行プロセス支援につき引き続き話し合いを進めていく。  今後ともG7会合をインフォーマルで率直な意見交換の場としてお互いの協力を強化していくこととなりました。  次に、イギリスラモント大蔵大臣から特別に二人だけで会いたいというお話がありまして、同日午後五時から四十分ほど、ダウニング街十一番のイギリス蔵相官邸会談をいたしました。私が大蔵大臣に就任しましてから初めての両国蔵相会談でもあり、日本英国の経験や日本の対英投資など幅広いテーマについて話し合いをいたしましたし、率直な意見交換を行ったところであります。私から、日本経済現状財政金融面で進めてまいりました景気対策について説明いたしました。ラモント蔵相からは、英国経済現状とこれを踏まえて取り組んできた英国政府金融政策等について説明があり、また、日本企業の対英進出を歓迎するとの話がありました。今回の会談を通じまして、日英両国財政金融政策スタンス等について相互の理解が深まったことは有意義であったと考えております。  以上でございます。     ―――――――――――――
  4. 粕谷茂

    粕谷委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宇都宮真由美君。
  5. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 林大蔵大臣、本当に強行スケジュールの中、お疲れさまでした。心から敬意を表します。先ほどの御報告に対して一、二点御質問させていただきたいと思います。  まず初めに、日本は唯一の貿易黒字国、一千億ドルを超える貿易黒字国として参加なさったわけなんですけれども、当然のことながらこの貿易黒字を減らすための、何とかしてほしい、内需拡大要求があったのではないかと思われるのですけれども、そういうふうな要求があったとは受けとめていないというふうな御報告だったと思うのですけれども、実際のところはどうなのか。そしてまた、これから景気回復対策としてさらに協議をしているというふうなことを伝えられたと言われているのですけれども、今、まずは予算早期に上げること、そしてそのさらに協議をしている景気回復のための対策というのはどういうことを御説明なさったのか、まずその点教えていただきたいと思います。
  6. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 先ほど御説明申し上げましたように、私から我が国経常収支黒字の問題につきましても説明を申し上げました。それにつきましては、総合経済対策の着実な実施、また今回お願いをしておりますところのこの予算案を成立させまして、内需中心とした持続的成長を図っていき、これによって経常収支にも好ましい影響が出てくるという期待をしておるということにつきましてお話を申し上げたところであります。各国からもいろいろなお話がございましたけれども、インフォーマルな会合であるし、外にはお互い出さないということになっているので詳しくは御説明しませんけれども、いろいろなお話があったことも事実であります。私も、これに対しましても率直にお答えをいたしまして、各国の御理解を大体いただいたと思っておるところでございます。  もちろん経常収支の改善、この問題は七カ国では我が国が一つの黒字国である、ほかの国は多かれ少なかれ皆赤字である。こんな話でございますから、赤字のところが黒字のところをどうしろというのはこれは当然の話でありまして、いろんな話でありますが、一国対一国の話というような問題は中では出なかったわけでありまして、日本がやっているところの内需拡大中心としてやっていこうという姿勢については、大体の御了解をいただいたものであろうと私は思っているところでございますし、また経常収支拡大につきましては、黒字国責任でなくて本当は赤字国責任である、こういった点を各国も御理解をいただいたところだと思います。これにはやはりある程度の時間をかけてやっていかなければならない、こういったことも事実であろうか、こういうふうに考えておるところであります。
  7. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 内需拡大につきましては、要求があったからやるというのではなくて、私たちとしてもやってほしいと思います。  それからもう一点は、今の円高状況なんですけれども、この円高フランス蔵相でしたっけ、歓迎しているというふうなコメントを出しているという新聞報道があったんですけれども、このままいきますとその円高が定着しそうな気配があるんですけれども、この点につきましてどうなんでしょうか、何かお話というか、ございましたでしょうか。
  8. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 この委員会でしばしば私から申し上げておりますように、昨今の円高の動向は思惑的なものでありまして、決して好ましいものではありません。為替相場というものは経済ファンダメンタルズを反映して行われるものであるし、そのときそのときで適時適切な対策をとっていかなければならないということを当委員会で私は申し上げてきたところでありますし、G7会合におきまして、私から我が国経済状況につきましてお話を申し上げます中で同じようなことを申し上げたところでございますし、為替相場ファンダメンタルズを反映していくこと、また急激な変動というものが決して好ましいものではない、経済に対する影響も決して好ましい影響を与えない、ファンダメンタルズを反映して安定的かつ緩やかな形での動きというものが必要であろうということは大体私は各国の御理解を賜っているところではないかな、こう思っておるところでございます。  フランスから、今お話がありましたように、何かあった、こういうふうな話でありますが、私はフランス大蔵大臣とも話をいたしましたし、フランス語で私やったんです、二人でね。それで、彼も大変話をしましたが、その話の中でもそんな話出てきませんでしたし、日本内需拡大、いろんな問題があるというような話を、先ほど申しました経常収支日本内需拡大の問題というような話はありましたけれども、それ以上に、私は、特に日本円高を望むというような話を、特別にやらなくちゃならないとか、何か目標を持ってやれとか、そういったような話は会議のところでもなかったように私も思っております。
  9. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 今の円高が思惑によるものか、あるいは経済ファンダメンタルズを反映しての円高であるのか、要するに今の円高の分析ですよね、それについての話は特になかったのかということと、私が言いましたのは、今の円高を歓迎するというふうなフランスサパン蔵相コメントが出されたという新聞報道があったんですけれども、そういうことはあったのでしょうかということなんです。
  10. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 今お話を申し上げましたが、サパンさんから今の円高を歓迎するというような話は私はなかったように思っています。ファンダメンタルズを反映してやらなくちゃいけないよ、こういうふうな話はありましたけれども、特にどうだというような話は私はなかったように思っております。
  11. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 はい、わかりました。  では、このくらいにいたしまして、次に、今回の予算防衛庁大型輸送艦を導入しようとしております。その問題について御質問させていただきたいと思います。  具体的なこの問題に入る前に、まず防衛庁の方に確認しておきたいことがあるんですけれども、今の自衛隊存在についてでございます。  今の自衛隊存在について、憲法上種々の意見があるということは御承知のとおりだと思います。この点に関しまして、政府のお立場というのは、自衛隊国土防衛、専守防衛を任務として、その限定された目的のためにのみ存在する、そういうことを前提としてその合憲性を認めていらっしゃる、そういうふうなお立場に立っていらっしゃると思うんですけれども、その点、ちょっと言葉は不正確かもしれませんけれども、このとおり確認しておいてよろしいでしょうか。
  12. 畠山蕃

    畠山政府委員 御指摘のとおり、我が国自衛隊自衛のために必要最小限度のものを保有するということで、自衛のためにのみ必要な実力組織ということで整理されているところでございます。
  13. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 自衛隊が今PKOに現実にカンボジアでも参加していらっしゃいますけれども、この自衛隊PKO参加するということに関しましては、国土防衛のために存在している自衛隊組織、その余力を本来の任務支障を生じない限度で利用するということ、すなわち、国土防衛のための装備や今まで自衛隊が培ってきた技術や知識をそのPKOに役に立つ限りで利用するということ、これも確認させていただいてよろしいでしょうか。
  14. 畠山蕃

    畠山政府委員 現在、自衛隊法三条というのがございまして、この三条によりまして本来任務とされておりますのが、我が国への侵攻に対して、直接侵略に対してこれを守る、あるいは間接侵略に対してこれを守る、必要に応じて公共の秩序を維持するという、こういう任務自衛隊法の三条で本来任務として位置づけられておりまして、御指摘PKO等参加につきましては、これはその本来任務支障を生じない限度においてこれを行うという整理に現在なっているところでございます。
  15. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 そうしますと、今の自衛隊の物的なあるいは人的な設備というのは国土防衛のために必要な設備であると考えていいかという点、そしてまた今回の予算につきましても、国土防衛のために必要な設備のための予算である、そのように考えてよろしいでしょうか。
  16. 畠山蕃

    畠山政府委員 そのとおりでございます。
  17. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 ちょっと外れますけれども、今自衛隊の行っておられます訓練についてなんですけれども、これはPKO参加するためということで、特に今までの国土防衛のためとは違った訓練をなさっているのでしょうか、それとも今までの訓練を利用してその役に立つ範囲でPKOに使おうというふうなことなんでしょうか。
  18. 畠山蕃

    畠山政府委員 お話のこの訓練という言葉意味でございますけれども、例えば操艦をする、船を操る、あるいは飛行機を飛ばす、あるいは規律ある行動をとるといったような意味では、これはまさに日ごろから国土防衛のために蓄積された自衛隊組織あるいは日ごろからの訓練をもってこれを充てるということでございまして、その意味では特段の訓練をしているわけでございませんが、例えばPKO部隊を派遣するについて、北欧の研修センター停戦監視員教育を施したというのも、おっしゃる意味の、広い意味訓練ということであるとしますと、その限りにおきましては新たな教育訓練を施したということも言えるかと思います。
  19. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 次に、大型輸送艦ですね、来年度予算に計上しております、そして導入されようとしております大型輸送艦についてお聞きしたいと思います。  この輸送艦というのは、平成九年度で引退をするといいますか、使えなくなる輸送艦あつみ」の後継艦ということで今回予算要求されております。ところで、この前の「あつみ」という輸送艦は千五百トンくらいだったと思うんです。にもかかわらず、今回導入しようとしております輸送艦は八千九百トン、まあトン数からいえばざっと六倍のトン数でございます。この「あつみ」と、そして今回導入しようとしております大型輸送艦との輸送能力の差がどのくらいあるのか、なぜこのような大型のものが必要なのか、その理由についてお聞きしたいと思います。
  20. 畠山蕃

    畠山政府委員 「あつみ」型の輸送艦、千五百トン型の輸送艦と比べまして、今回予算お願いしておりますLSTは、輸送能力にいたしまして約三倍でございます。なぜこういうものが必要になるかという点でございますけれども、御指摘のとおり、まさに平成九年度に廃艦に、除籍になりますこの「あつみ」型の代替として建造するものでございますけれども、その代替建造を行うに当たりまして考慮した点は、第一に、近年の技術水準の趨勢に従いまして、陸上自衛隊の現有の各種装備が搭載可能な輸送用のエアクッション艇の搭載が必要であるということと、それから、人的資源の制約というのを考慮いたしますと、この輸送艦はこれまでの輸送艦と比べましてほぼ同じ乗員数で輸送能力が向上するという効率性を追求したいということと、それから、民間フェリー並みの速力の確保、あるいは悪天候時におきまして航行の安定化が図れるというような点を考慮いたしまして、その結果としてトン数が大きくなったということでございます。
  21. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 じゃ、その輸送能力については、今「あつみ」くらいの輸送能力でいいと、すなわち、今現在、「あつみ」の三倍と言われましたけれども、三倍の輸送能力を必要としているわけではない、ただ、技術の面とか同じ乗員で多く輸送できるあるいは速力が速いとか、そういうほかの条件のためにこの輸送艦を導入しようとしていらっしゃるということですか。
  22. 畠山蕃

    畠山政府委員 現有の輸送艦任務でございますれども、これは我が国が島国であるということから、陸上自衛隊の国内の作戦地域に輸送するということでございまして、その陸上自衛隊の輸送所要でございますが、それを現在の輸送艦六隻ですと全体の必要量の約三割を満たしている状況でございます。今回このLSTを、五年度予算お願いしておりますLSTを導入することによっても約四割を満たす状況になっておる。したがって、それでもなお輸送所要から見ますと不足状態であるということでございますので、これを早急にやはり基盤的な、一般的な防衛能力を総合的に完備するという意味におきましてこれを整備したいということでございます。
  23. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 今の輸送能力は目的の三割程度しかないというふうなことなんですけれども、じゃ、これまでの防衛計画の中でいわゆるこの輸送能力については、今までどの程度の輸送能力を達成することを目標としてきたのか、そしてまたこれからどこまでこの輸送能力を達成しようとしていらっしゃるのか、そしてまたそれらの計画については私たちは何を見れば知ることができるのか、この点について教えていただきたいと思います。
  24. 畠山蕃

    畠山政府委員 輸送所要の問題でございますが、これは陸上自衛隊の戦略機動する最小単位の部隊等を国内の作戦地域まで輸送する能力を保有することを構想いたしております。その戦略機動する最小単位の部隊と申しますのは、これは一個普通科連隊に特科大隊あるいは戦車中隊等を配属した部隊を念頭に置いているところでございます。そういうことをいわば輸送所要として考えておりまして、これを逐次整備したいということでございましたが、若干先ほど申しましたようにこの輸送能力という点において欠けるところがございまして、今回この修正後の中期防におきましても一隻の八千九百トン型の輸送艦を整備するということにいたした次第でございます。
  25. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 ちょっと全然お答えになっていないと思うんですけれども、今まで、そうしたら、要するに輸送能力は目標に全然達していなかった、だから今三倍の輸送能力を持つ大型輸送艦が必要なんだということなんですけれども、じゃ、輸送能力がどれだけに至れば目標に達することになるのか、それをいつまでにその計画をつくって達成しようとしていらっしゃるのか、今後のことも含めてわかりやすく御説明願いたいと思うんですけれども。
  26. 畠山蕃

    畠山政府委員 ただいまも御答弁申し上げましたように、どれぐらいのものが輸送所要なのか、どうなればいいのかというお話でございますけれども、先ほど申しましたように、戦略機動する最小単位の部隊、つまり一個普通科連隊等々のものを運べる状態にするということがその目的、構想でございまして、それに至るための今計画途中段階にあるということでございます。  いつまでにというお話でございますけれども、現段階で三〇%しか満たしてないこの能力をいつまでに一〇〇%にするかというところまでの計画はございませんで、もちろんこれは早い方がいいに決まっておりますけれども、いろいろな関係がございますので、徐々にこれを整備していきたい、少なくとも計画がございます現在の中期防までにおきましては、先ほども申しましたように、これを四割まで向上させることまでは計画がされておりますけれども、その先につきましては特段の計画を持っておりません。
  27. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 じゃ、突然、今まで海上自衛隊が保有していた輸送艦というのは大体、この「あつみ」と同じ千五百トンくらいのもの三隻とあと二千トンクラスのものを三隻だったと思うんですけれども、今までそれできた、一応用を足していたものが、突然これだけでは足りない、こういう大型のものが必要だと言われても、ちょっとそれはわからないんですけれども、もし今「あつみ」と同じくらいの輸送艦を導入しようとすればどの程度の予算でできるんでしょうか。     〔委員長退席、石川委員長代理着席〕
  28. 畠山蕃

    畠山政府委員 恐縮でございますけれども、その千五百トン型というのを現段階で計画しておりませんので、どのぐらいのものになるかというのはちょっとわかりかねます。一番最初にこの「あつみ」型千五百トンを導入したのは、たしか昭和四十五年ぐらいの話だと思いますから、その当時の金額を今想定するわけにもまいりませんし、現段階で千五百トン型のものをどの程度の金額で整備できるかというのは、ちょっと試算もいたしておりませんし、お答えできないところでございます。
  29. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 じゃ、その昭和四十五年ころ建造したときに大体幾らでできたのか、そしてその当時と今の、必ずしも正確かどうかはわかりませんけれども、物価の値上がりですか、それをすれば大体の数字は、大まかな数字は出るのではないかと思うのですけれども。
  30. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 昭和四十五年当時の予算額十八億八千万でございます。当時、四十五年でございますが。
  31. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 じゃ、大体今の価格に直しますとどのくらいになるのでしょうか。
  32. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 艦艇の価格の構成要素の物価上昇率等々を計算をしてみないとちょっとわからないわけでございますけれども、申しわけございませんが、今手持ちがございませんので御答弁できないわけでございます。
  33. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 そんな正確な数字でなくても、大体の数字でいいのですけれどもね。お願いします。
  34. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 ごく大ざっぱに計算をいたしますと、約三倍ぐらいだろうと見ております。したがいまして、およそ六十億ぐらいになろうかと思っております。
  35. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 「あつみ」と同じくらいの輸送艦、すなわち今と同じ程度の輸送能力を維持しようと思えば、大体六十億くらいでできる、そういう計算になるのではないかと思うのですけれども。  今我が国の防衛政策というのは根本的に見直さなければならない時期に来ております。この点は御異論ないと思います。そして、その最も大きな理由というのはソ連の解体により東西冷戦が終結したこと、この点も御異論ないと思います。政府もこのことを認めて、中期防衛力整備計画については昨年の十二月十八日の安全保障会議及び閣議決定によって現実に見直されましたし、また、防衛計画の大綱さえ見直す必要があるということをお認めになっています。その基本的な考え方というのは、冷戦が終結したという国際情勢の変化と、そして一段と厳しさを増している財政事情が挙げられていると思います。こういう中で中期防はより緩やかな形で整備を実施するものとされております。そして、その方針は、主要装備については、整備テンポを緩和して、老朽装備の更新、近代化及び欠落機能の是正に努力する、このような中期防の修正がなされております。  こういうときにあって、今回、現状能力を維持しようとすればわずか六十億円でできることを、五百三億円という多額のお金をかけてこの大型輸送艦を導入しようというのは、この中期防を修正した政府の方針に反するのではないか。「あつみ」の後継艦が必要だと仮にしても、そしてそれを本来ならば、素人考えしますと、修理でもして使えるのでないかというふうなことも考えるのですけれども、それを購入しないといけないということを前提にしても、やはりこれと同じ程度の能力を持った艦船を導入すれば済むのではないかと思うのですけれども、この点、いかがお考えなのでしょうか。
  36. 畠山蕃

    畠山政府委員 中期防衛力整備計画について修正を行いましたのは、お話のとおり、御指摘のとおりのような考え方に従ってやったわけでございますが、しかしこれは、整備ペースをダウンするといいましても、すべてのものについて一様にダウンさせたということではございませんで、先ほども申し上げましたように、輸送能力という点につきましては非常に大きく欠けているところがあった、つまり輸送所要の三割程度の整備しかなされていなかったということでどうしてもこの代替艦の建造が必要である、さらにまた、先ほど申しましたように、能力的な点とそれから技術的な理由等の近代的な技術水準に合わせるということから考え合わせまして、今回この選択をさせていただいたということでございます。
  37. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 ただ、金額が非常に多いということで、大蔵省は防衛庁からこういう予算要求があったときに、防衛庁からはどういう御説明を受けられましたか。そして、なぜこの財政厳しい折にこの多額の費用を必要とします艦船、輸送艦の導入をお認めになったのでしょうか。
  38. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 防衛庁側から御説明を伺ったのは、今畠山防衛局長がるる御説明したようなことでございます。私どもといたしましても、一つは、いわゆる各種の装備が積載可能な輸送用のエアクッション艇というのを載せることができる、それからもう一つは、これからの自衛官の確保ということを考えますと、一隻当たりの乗せる必要な人員という意味で非常に効率的な輸送艇である、今の千五百トンクラスの乗員とほとんど同じ規模の乗員で八千九百トンという非常に大型のものが運用できるという、予算の効率性の観点からも非常に適当であるというようなことをいろいろ考えまして、相当もちろん議論をいたしましたけれども、まさに今防衛局長がお答えしたような観点からこれを認めて、予算に計上しているということでございます。(「丸のみじゃないか、それじゃ」と呼ぶ者あり)決して丸のみではございません。
  39. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 ただ、今の財政事情からしますと、非常に厳しいということは多分大蔵省が一番よくわかっているのじゃないかと思うのですけれども、その中で、確かに輸送能力が今までは三割しかなかった、それを四割にふやすのが中期防の目的だというふうなことなんですけれども、ということは、今が三割、四割の話ができるということは最終的な目標というのは立っていると思うのですけれども、そうしますと、これからの輸送能力につきましては、大体どのくらいまで高めようとしているのか。これから導入するこの輸送艦というのはやはり今と同じような大型のものを予定されているのかどうかということ、そして、これだけ厳しいときにやはりもう一つの選択肢といいますか、現状維持の方向を大蔵省としては検討なさらなかったのかどうかということ。  先ほど丸のみではございませんと言われましたけれども、私はやはり結果において防衛庁の言うことを聞いたというふうに思われるのです。予算が、財政事情が裕福なときであればそれも通るかもしれませんけれども、こういうときに六十億と五百三億でございますからちょっと多過ぎるというふうに考えるのが普通ではないかと思うのですけれども、この点はどうでしょうか。
  40. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 結局、予算というのはいろいろな各費の経費のバランスということも考えなければいけませんし、国民からお預かりしている貴重な税金を使うわけでございますから、その効率的な使用、それがいかに全体として役に立つかということもいろいろ考えなければなりません。  ことしの防衛庁予算につきましては、総論で申しますと、昭和三十六年度以来の低い伸び率に抑えておりますし、中期防自体も見直しをしておりますし、私どもとしては精いっぱい削減の努力をしたつもりでございます。その中にあってこの艦船につきましては、千五百トンクラスの人員でもって八千九百トンの船を運営できるとか、先ほど申しましたようなエアクッション艇を積めるとか、いわばその後の艦船のいろいろな建造技術の向上に合わせて非常に効率的な艦船の建造ができるということでこれを認めているのだということを、そういう事情をぜひとも御理解いただきたいと思います。
  41. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 一部新聞報道によりますと、この大型輸送艦の導入に当たりましてはPKOへの活用が期待された、そのゆえに認められたかのように言われている報道がなされておりますが、こういう点は考慮なさったことはないのでしょうか。防衛庁、大蔵省、双方にお聞きしたいと思います。
  42. 畠山蕃

    畠山政府委員 この輸送艦につきましては、先ほど来御答弁申し上げておりますとおり、陸上自衛隊の部隊を国内の作戦地域まで海上輸送することを目的とする輸送構想のもとに代替艦として建造するということでございます。国際平和協力法のPKO活動その他での使用を目的として整備するものではございません。
  43. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 防衛局長が御答弁されたとおりでございます。
  44. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 では次に、この大型輸送艦については五百三億円という予算が計上されております。より正確には、予算案の大綱を見ますと五百三億一千五百万円ですか、なっていますけれども、この予算というかこの数字をはじき出した根拠といいますか、それをちょっと、例えば本体の価格が幾らで装備品の価格が幾らというふうな形で教えていただきたいと思うのですけれども。
  45. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 今般の輸送艦の建造費といたしましては、委員指摘のとおり約五百三億円を計上しているわけでございます。この建造費の中身につきましては、材料費、加工費等々積み上げをやっておるわけでございますけれども、この中身につきましては、予算成立後個別の調達契約をやるわけでございますけれども、その際に調達サイド、私どもの方に大変不利に作用するということになろうかと思いますので、公表につきましては差し控えさせていただきたいと思います。
  46. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 この五百三億円というのは私たち国民が納めた税金なわけです。防衛庁は、この税金でもって私たちに必要でないと思われているこの大型輸送艦を購入しようとなさっているわけなんです。これからの交渉で何が不利になるのかわかりませんけれども、こういう数字が実際に出てきている以上、その積算の根拠というのはある程度のことは、どうしてこういう数字が出てきたかということは私たちにも教えていただく、知る権利があるのではないかと思うのです。ただこの数字を今度こうこうこういう理由で大型輸送艦を買いたい、これは幾らですと言われても、ああそうですかというわけには私たちもいかないと思うのですけれども、この点いかがでしょうか。(発言する者あり)
  47. 石川要三

    ○石川委員長代理 御静粛に願います。
  48. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 艦艇の価格の中身は、船体、機関あるいは武器その他構成要素があるわけでございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、それぞれの中身、金額を申し上げますことは、予算成立後に個別の調達を行うことになりますが、契約上大変に政府側が不利になるということでございますので、公表は差し控えさせていただきたいと存じます。
  49. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 そうしましたら、こういう数字が出てきた根拠というのは、予算が成立して、後で、しかも契約が終わった後で国民に対しては教えればいい、そういうふうに防衛庁はお考えなのですか。それだったらそれではっきり言っておいてください。国民には契約した後の事後報告でいいんだ、そういうふうに考えていらっしゃるのだったらそう言ってください、議事録にちゃんと残しておいてもらいますから。
  50. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 予算額につきまして御審議をいただき、その後、契約後に会計検査その他の吟味をいただく、かようなことになろうかと思っています。(発言する者あり)
  51. 石川要三

    ○石川委員長代理 御静粛に願います。御静粛に願います。  委員長として申し上げますが、ただいまの質疑はその装備の内容等についてのお尋ねである、このように思いますので、できるだけ詳細なことが必要ではないかと思いますので、事務当局に御答弁を求めているわけであります。御了承願います。(発言する者あり)御静粛に願います。  なるべくわかりやすくお願いします。
  52. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 五百三億円の予算の内容でございますけれども、船体、機関、官給品等々ございます。大まかに申し上げますと、船体で三百億円強を考えております。機関につきましては、二、三十億円レベルというふうに思っております。  そのほか、官給品と申しまして、政府が調達をいたしまして船会社等に供与するというものがございますけれども、これは百億円強見ております。  その他武器等でございます。
  53. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 ちょっと余りにも大ざっぱでよくわからないんですけれども、例えばこの「防衛力整備の概要」にも出ております装備ですよね。例えばCIWSという砲こう、それが二基とか、LCAC二隻とかしていますけれども、本体が幾らでこういう装備品が幾らということをもう少し明確に言っていただけませんか。
  54. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 ただいま申し上げました価格以上の細部につきましては、調達上支障が生じますので、御猶予願いたいと思います。
  55. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 しかし、予算として要求されている以上、私たちはこの予算が妥当なものかどうかということを審議する権利が与えられていると思うんですよ。それをするためには、そういうことを言っていただかないとこの予算の額が妥当かどうかという判断が全くできないんですけれども、どういうことなんでしょうか。
  56. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 私ども調達に当たりましては、一定の性能のもとでできるだけ安い価格で購入をいたしたい、調達をいたしたいと考えているわけでございます。  個々の分野ごとの具体的な数字を申し上げますと、これが、まあある調達企業といいましょうか、企業サイドから見ますと、一つの大きな目安になるということでございます。そういうことになりますと、私どもできるだけ低価格で調達をいたしたいと思っておるところに支障が生じるわけでございますので、お許しをいただきたいというふうに思っております。
  57. 石川要三

    ○石川委員長代理 委員長として見解を申し上げますが、今の御質問の中身は、あくまでもお聞きのとおり、その輸送船についてのいわゆる建造費等のそういう内容であろうと思います。  その内容について詳細にということでございますが、余り詳細にわたる答弁をすると、やはりできるだけの公正な価格で購入したいということに大きな障害を来すということでございますから、私はやはりこれ以上の質問は無理ではないか、こういうふうに考える次第です。何とか質問を変えて御質問できませんか。
  58. 中山利生

    中山国務大臣 先ほどからの問答の中に尽きていると思いますが、我が国の防衛体制は、最小限度の基盤的な防衛力であらゆる事態に効果的に備えていくという体制でございますので、これは一方からいいますと、防衛としては一つの欠陥を有している。あらゆるパーフェクトな備えではなくて、最小限度の部隊で、あらゆる地域の侵害に備えていくということで、輸送力の増強ということは、先ほど防衛局長からお話がありましたように、非常に大事なことでありますが、先生の御質問ですと、従来の千五百トン三隻、二千トン三隻の体制で十分だというふうにお話がありましたが、そういうことでありませんで、ぜひとももっともっと増強をしたい。  しかも、先ほど防衛局長からお話がありましたように、現在の六隻の輸送艦というのは非常に欠陥がありまして、この前カンボジアからの帰途で実証されましたように、平底の船でありますので、向かい風になりますと速力が全然出なくなってしまうというような欠陥があるわけであります。今回は、中期防の中で五千八百億という削減をしたと同時に、これまで我が国の防衛体制の欠陥でありましたそういう輸送体制あるいはミサイル攻撃に対する対応というような欠落機能の補完ということを重点的にやってきたわけでありますが、今回のこれはまあ新しい艦種でございますが、これはどうしても我が国の防衛体制の中では必要な艦種だということで予算要求お願いしたわけであります。  今先生が御指摘でありましたし、まあいろいろ声が上がっておりましたように、一体どういう積算でこの金額が出たのか、まさに予算委員会におきましても重要な課題であろうと思うわけでありますが、先ほど装備局長からお答え申し上げましたように、これは一つの概算であり、これからこの装備を購入、完成するまでにはかなりな日数も要する、また、これから価格の決定につきましても、業者との間にいろんな経過が必要であるというふうなことがありまして、こういうものにつきましては、何か従来から私も皆さんに御検討をいただく十分な資料を出すべきだと、予算委員会の性格もございまして、そう思うわけでありますけれども、従来ともにそういうことは、これからの折衝もありまして、詳しくお答えをしないという慣習になっているというふうに聞いておりますので、この点は御了承をいただきたいと思います。
  59. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 じゃ、予算の審議をしてほしいと言いながら、この五百三億円という数字が妥当なものかどうかというのは私たちは何によって判断すればよろしいんでしょうか、予算案を出されている大蔵省にお伺いしたいと思います。
  60. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 私ども、財政法に従いまして予算の審議をお願いしているわけでございまして、項あるいは目につきましても、それぞれの予定経費要求書を最小の単位といたしまして御審議をお願いしているわけでございます。  この経費につきましては、この種の艦船その他の積算につきましては、従来から予算委員会でこの種の議論が行われていることを私も承知いたしております。何回もその場に行き合わしたこともございますけれども、いずれも、国民の貴重な税金を使わしていただくということがあって、この場であらゆる積算を赤裸々に御提出いたしますと、なかなか業者との交渉がうまくいかない。実は、これはまさに予算をできるだけ適正に執行したいということから出ていることでございまして、その点、まあ今装備局長の方からかなりの程度まで積算の中身を御説明いたしましたけれども、そういう事情も御勘案いただきまして、事情を御賢察いただきたいということを切にお願いしたいと思います。     〔石川委員長代理退席、小杉委員長代理     着席〕
  61. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 じゃ、装備の内容が云々というのが、そういうのがある程度機密に属するというのはわかるんですけれども、要するに、できるだけ安く調達する、国家が国民の税金を使ってできるだけ安く調達をするという利益のために、この予算委員会の審議の中ではまだ国民には計上の積算の根拠は知らせなくてもいいという判断が一般的におありなんでしょうか。そのことだけ確認しておきたいと思います。
  62. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 私ども、予算要求お願いをしておるわけでございますけれども、その内容につきましては、できるだけ十分な御審議を賜りたいというふうに考えております。  ただ、先ほど来申し上げておりますように、実際の調達行為との関係で、国が不利になるような可能性の高いものにつきましては、公開の場での御答弁を差し控えさせていただきたい、かように申し上げておるわけでございます。
  63. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 でも、言ってくださらなかったら、それが本当に不利になるのか、かえってどこかを利することになるのか、私たちにはわからないわけですよ。それを、今予算の審議を求めながら、こういう予算案を提出しています、妥当かどうか審議してくださいと言っておきながら、その積算の根拠も言えない。その言えない理由というのが、要するに安く調達したい、それだけのためなんですか。そのために今この段階ではまだ国民には知らせなくてもいいという判断なんですか。その点をはっきり言っておいてほしいのですよ。
  64. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 先ほど主計局長からお話ししたとおりでございまして、調達価格につきまして、予定価格を示すというような形になることは大変好ましくないというふうに私ども考えておるわけでございます。(発言する者あり)
  65. 小杉隆

    ○小杉委員長代理 質問者以外は御静粛に願います。質問者は続行してください。
  66. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 答えになっていないのですけれども、さっきのは。
  67. 小杉隆

    ○小杉委員長代理 質問者は質問を続行してください。  政府側に申し上げますが、今の質疑及び答弁は、価格についての質疑であり、そして答弁側は、調達上不利な可能性がある、こういうことで、先ほど船体あるいは機関、官給品その他、かなり具体的な内訳まで説明をされたわけですが、質問者はこれでも不満である、こういう今現状であります。  そこで、従来の慣習もあり、また予算については、その後決算委員会もありますし、また政府の中に会計検査院の調査もある、こういうことから、これはおのずから答弁にも限界があるということですが、従来の慣習もありますので、ここでひとつ主計局長の方から、一般的に補足説明があれば聞かせていただきたいと思います。
  68. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 予算委員会予算の審議をしていただくわけでございますから、私ども、できる限りの御答弁を申し上げ、それから、予算書以外にも提出資料でいろいろな説明を可能な限りいたしていることは御承知のとおりでございます。  このいわば積算につきましては、従来から、航空機、艦船その他の積算について何回も予算委員会で議論が行われております。そのたびにこのような問題が出ております。そのときどきの答弁は、私どもとしては一貫して、いわば貴重な税金を使う支出でございますので、その内容を余りあからさまに細部まで説明いたしますと、契約上それがいわば基盤になって、いろいろなことで、できるだけ安く執行したいということがなかなか難しくなるので御勘弁をいただきたいということで、答弁は実は一貫しておるわけでございまして、そういうことで、実はこの議論が生じるたびにお許しをいただいているというのが過去の経緯でございます。その点、よく御賢察をいただきたいと心からお願いをする次第でございます。
  69. 中山利生

    中山国務大臣 今、防衛の予算の御審議をいただいているわけでありますし、当委員会はまさに予算委員会、中身について詳しく御検討をいただく一つの使命を持っているわけでありますから、宇都宮委員の御質問はもっともでございますが、先ほどから御答弁申し上げておりますように、航空機とか艦船とか兵器につきましては、調達にかなりの時間を要する、また、でき上がってくるまでの間のいろいろな技術的な変化等もあるというようなこともありまして、これまでも予算委員会で何回もこういう御議論がなされてきたわけでありますが、そのために中期防というような一定の期間の総額を明示をして御了解をいただく、その中で、国民の税金を使うわけでありますから、できるだけ安く効果的な調達をしたいというのが事務方の苦労をしているところでありまして、何回もこういう御議論をいただいているわけでありますが、別に隠し立てをするとか何か意図があって申し上げられないということではありませんで、先ほど三つに分けて金額を申し上げましたのも、これまでの慣習にはなかったことであるということも御了承をいただきまして、この問題につきましては御了解をいただきたいと思います。
  70. 小杉隆

    ○小杉委員長代理 宇都宮君。――質問者に申し上げますが、ただいまの時間は継続しておりますから。(発言する者あり)宇都宮君、質問を続行してください。質問を続行してください。
  71. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 私は各装備の金額を教えていただきたいのですけれども、それが言えないという理由が、要するにできるだけ安く調達したいからと、そういう理由しかお聞きしていないと思うのですけれども、そういう安く調達するということが、本来ならば私は、予算案の審議をしているわけですから、この予算の価格がどういうふうにして出てきたかというのは教えてもらわないと、これが妥当かどうかは審議できないと思うのです。  だから原則としては、私は、国民に対してもその積算の根拠というのは知らせる義務があると、原則としては言えると思うのです。それが言えない理由が、できるだけ安く調達したいからと、そういう理由で、ただそれだけの理由で言えないのかということなんですよ。もしそれが、できるだけ安く調達したいと言われても、それを言ってもらわないと、本当にこれは安く調達しているのかどうか、ひょっとしたらそれこそどこかと随契して、むしろ高く買っているのではないかという疑いは消えないわけですよね。そのあたりを、安くするためというのが一方の言えない理由なんですか。
  72. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 委員がおっしゃいましたとおりでございます。
  73. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 わかりました。では、安く調達するというのがその、何といいますか、情報公開を否定する理由だ、国民に対して言えない理由だというふうにお聞きしていいわけですね。  では、次の質問に移らせてもらいますけれども、この装備のLCACなんですけれども、これはどういう装備で、なぜこれが必要なんでしょうか。
  74. 畠山蕃

    畠山政府委員 LCACと申しますのは、輸送用エアクッション艇ということでございまして、これで陸上自衛隊の現有の各種装備の積載が十分に可能になるということでございます。
  75. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 LCACというのは、要するにホバークラフト型の揚陸艇だというふうに言われているのですけれども、それで間違いないのでしょうか。
  76. 畠山蕃

    畠山政府委員 そういうことで結構でございます。
  77. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 では、なぜ必要なんでしょうか。
  78. 畠山蕃

    畠山政府委員 先ほど申しましたように、陸上自衛隊の現有の各種装備品を十分に積載を可能にするためにこのものが必要であるということでございます。
  79. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 このLCACにつきましては、もう既にテレビ等でも報道されまして、この価格が百一億円かかるというふうなテレビ報道がなされておりましたけれども、この数字は正しいのですか、間違っているのですか。
  80. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 テレビで報道されました数字につきましては、私ども、内容等につきまして承知しておりません。
  81. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 テレビ報道の事実も知らないということなんでしょうか。
  82. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 テレビ報道自体は承知しておりますが、百一億円という数字につきましては、私ども、どういう数字なのかということについて理解してないということでございます。
  83. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 では、正しいとも間違っているとも言えないというのがお答えなんでしょうか。
  84. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 そういうことでございます。
  85. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 このLCACにつきましては、多分積算のときにこのLCACが幾らということはわかっていると思うのですけれども、これもやはりこのLCACを安く買うために言えないというふうに考えてよろしいのでしょうか。
  86. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 LCACにつきましては、先ほど申し上げました官給品の一部として想定をしているものでございますけれども、金額につきましては、先ほど来申し上げておりますとおりに、差し控えさせていただきたいというふうに思っております。
  87. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 では、大蔵省の方にお聞きしますけれども、このLCACについても、多分幾らだというふうな説明防衛庁の方から受けていると思います。多分それも先ほどの、ずっとやっておりますように、少しでも安く買いたいから言えないと言われると思うのですけれども、その防衛庁説明ですよね、どういうふうな説明をお受けになられましたか。
  88. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 これは予算書を国会に提出するまでの間のいわば楽屋裏みたいな話でございますけれども、私ども、こういう大型輸送艦を新しく建造するわけでございますので、その中身、装備等については、相当に時間をかけて防衛庁側と議論をしているということだけは事実でございます。
  89. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 防衛政策は確かに防衛庁の権限だと思うのですけれども、それも、予算要求に対して予算をつけるのは大蔵省の権限であって、大蔵省が妥当だと認めたから予算をつけたと思うのですけれども。その防衛庁のこういう装備が必要なんだという説明についてはそうかもしれませんけれども、これが妥当な値段だというふうなことについては、どういうふうな説明をお受けになったのでしょうか。
  90. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 それは当然予算に計上させていただいたわけでございますから、その積算の内容につきましても十分に念査をいたしておるわけでございます。
  91. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 今のような御説明でございますと、結局は、防衛庁、大蔵省は五百三億円という積算の根拠はわかっている、しかし私たちにはその根拠はわからない。そして、ひょっとしたら、だからこの五百三億円が高いのか安いのかということもわからないわけですよ。そして、この五百三億円でどういう装備をつけようとしているのかということもわからないわけですよ。  確かに、この「防衛力整備の概要」に書かれている部分につきましてはほんの大まかなことですから、この部分については多分拘束力があると思うから、五百三億円の中で仮に予算が余っても八千九百トンよりも大きな船はつくれないと思うし、速力だって二十二ノットと書いてますからそれより速い船はつくれないと思うんですけれども、これに書かれてない部分については、あとはどういうふうにしようと、お金が余ればどういうふうな使い方をしようと、もう防衛庁の一存で決められるということなんですか。     〔小杉委員長代理退席、委員長着席〕
  92. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 この輸送艦につきましては国庫債務負担行為ということでお願いをしているわけでございますが、これにつきましては、要するに実際に契約が結ばれますと、それに伴って金額が確定した段階で不用が生ずれば不用額を計上するというようなことで適正に処理を行うわけでございます。  当然のことながら、予算の執行につきましては会計検査院の厳しいコントロールがございますし、決算委員会の審議もございますし、いわば予算の執行の問題としてコントロールの手段が確保されているものでございまして、私ども、この予算が成立しました段階ではそういうことで適切に執行さしていただきたいというぐあいに考えておるわけでございます。
  93. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 要するに、防衛庁、大蔵省、政府を信用してほしい、ただそれだけのことだと思うんですけれども、知りたいことを告げないで審議してくれと言うのもおかしいし、信用してくれと言われても、今の政治状況で国民は簡単には信用できないと思います。  それで、何というのか、ここで私たちが知りたいと言っているのは、何も議員に教えるのが政府立場でなくて、要するに国民に教える、国民に知らせる必要があるかどうか知らせるべきかどうかということで考えていただきたいと思います。  そうしたら、例えばこの輸送艦を導入するに当たって、何社から、どことどこというのはまた言えないと思うんですけれども、何社から見積もりというんですか、要するに安く買うために言えないと言うわけですから、何社から見積もりとかさしているんですか。
  94. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 過去の実績を含めまして、民間企業から見積もりをとっております。
  95. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 だから、質問は何社から入札をさせましたかと聞いているのに、民間からさせましたと言うのは、そういうふうな答え方は随所に見られるんですけれども、やめてほしいんですよね。質問に端的に答えていただきたいと思うんですけれども。
  96. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 いろいろな要素を勘案いたしまして、いろいろな情報をとった上で私どもで試算をしているわけでございます。ある特定企業から全体のものをとっておるというような形でやっておるわけでございませんで、各種の情報を集めてこの見積もりを作成しておるわけでございます。(発言する者あり)
  97. 粕谷茂

    粕谷委員長 装備局長委員長から申し上げます。  随意契約か競争入礼かということを聞いているので、随意契約が適当であれば適当であるということを申し上げればいいことだと、こう思いますが、その辺の核心に触れて、お話しのできる範囲内で答弁をしてください。
  98. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 調達の方法につきましては予算成立後に検討をすることになっておりまして、国産でいくのか輸入でいくのかあるいはどのような調達方式をとるのか、未定でございます。(発言する者あり)
  99. 粕谷茂

    粕谷委員長 委員長から宇都宮委員に申し上げます。  答弁に不足がありましたら、どの点が不足がということをもう一度強く主張をしていただきたいと、こう思います。
  100. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 それだったら今は全く何にも決まってないというふうな状況だと思うんですけれども、それでどうして、何というのかな、この数字がどうして出てきたというか、全くわからなくなるんですけれども。どういうふうにして出された数字なんですか。
  101. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 過去の類似の艦船等を参考にいたしまして、私どもなりに、先ほど申し上げましたようないろいろなファクターにつきまして積み上げ、積算をしておるわけでございます。  予算がお認めいただきました後、きちんとした要求性能を確定いたしまして、その上で調達方式を決めていく、かような手順になるわけでございます。
  102. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 そうしたら、この数字は要するにまだ確定的な数字ではないということなんですか。これはもう大まかな数字であって、あとは、細かなところはどういうふうに変わるかわからないというふうに聞いていいんでしょうか。
  103. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 私どもなりに最善の見積もり、積み上げをしておるわけでございますけれども、予算が成立いたしました後にきちんとした調達の方式も決め、実際の調達価格も決まるということでございまして、その意味では概算の数字でございます。
  104. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 そうしましたら、こういうふうな、例えば艦船一隻幾らというふうに予算を計上していてその予算が余ったり足りなくなったことは、過去どのくらいあるんですか。
  105. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 正確な艦船の数はちょっと申し上げられませんが、予算でお認めいただきました上限価格を下回った価格で契約をしているという例は数々ございます。
  106. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 じゃ、余ったときには、例えばこの輸送艦、五百三億円というのが例えば百億円余ったとすれば、それはほかに回すということはできないと思うんですけれども、それはどういうふうにするんですか。
  107. 宝珠山昇

    ○宝珠山政府委員 艦艇につきまして、国庫債務負担行為で契約をいたすわけでございまして、国庫債務負担行為は限度額でございますので、それを下回って契約をいたしますと実施されないことになります。
  108. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 不十分なお答えしかいただかなかったんですけれども、私たちはこの輸送艦導入自体に必要が認められないと思っておりますし、お聞きする範囲では、予算の価格につきましても不透明な部分が多くて、これで私たちに予算を審議をしてくれと言われても到底審議もできませんし、賛成してくれと言われても賛成できるものではないというふうに思います。  そのことを申し上げまして、次の質問に移りたいと思うんですけれども、時間がなくなりまして申しわけないんですけれども、ちょっと児童の権利条約について一点だけ御質問さしていただきたいと思います。  児童の権利条約については、一九九〇年に署名して――済みません、戦後補償の問題、ちょっともうできなくなりましたので。昨年の三月十三日に批准について国会の承認を求めるという閣議決定がなされまして、承認案は今、国会の方に出されております。まだ審議入りはしておりませんけれども、私たちはこの権利条約につきましては、できる限り早い審議、そして早期批准をしていただきたいと思っております。  ただ、この児童の権利条約の批准に当たりましては、改正しなければならない国内法も数多く存在すると思いますし、問題は多々あると思いますけれども、時間の関係で一点だけ、タイトルの問題なんでございますけれども、私たち社会党は、この児童の権利条約というよりも子供の権利条約という名前の方がいいというふうに主張してきました。ただ、このことは、児童の権利条約というタイトルも含めまして昨年の三月十三日の閣議で了承されているわけなんですけれども、閣議で了承されたということは文部省の方もこの児童、子供ではなくて児童ということで了解しているというふうに考えてよろしいんでしょうか。
  109. 森山眞弓

    ○森山国務大臣 おっしゃるとおりでございます。
  110. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 外務省の方では、この児童の権利条約と、なぜ児童にしたか。原文はチャイルドなんですけれども、それについてなぜ児童と訳してきたかという理由について、今まで我が国が締結してきた条約については、チャイルドというのは子あるいは児童と訳されている、過去の条約でそうしてきたということと、そして今までチャイルドというのを児童と訳しても、児童ではなく子供とすべきだという議論は起きていないという理由と、国内法令については、一般にまあ条約の対象者であります十八歳未満の者を指す法令用語としては児童という言葉が使われている、その例として児童福祉法とか児童手当法というのが挙げられていますけれども、そういう今までの訳し方、そして問題が起きなかったという点、そして国内法令が児童というのは十八歳未満だ、その三つが挙げられているのですけれども、ほかに理由はございますか。
  111. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  基本的には今先生が御指摘になられたようなことだと思いますけれども、私たち、条約の訳文は一般的にその個々の文言の意味、それから日本がこれまで締結しておりますほかの条約、あるいは先生も今おっしゃいましたように国内法令における用語、そういったものとの整合性というものを勘案して、今回の場合には外務省が文部省と協議いたしまして、法制局とも協議して、今申し上げたようないろいろなことを勘案して、この場合にはやはり児童という、チャイルドが英語ですけれども、日本語では児童という言葉が適当であるという判断に達したということでございます。
  112. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 ほかに理由はないというお答えでよかったんではないかと思うんですけれども。  ただ、国内の法令につきましては、必ずしも児童という言葉は十八歳未満の者を指すというふうには一定されていないと思います。確かに児童福祉法、児童手当法ではそういうふうに定義されておりますけれども、例えば文部省関係の法律、学校教育法あるいは学校保健法、国立学校設置法、これらの法律を施行するための施行規則等では、定義こそなされておりませんけれども、生徒、児童、幼児、学生という言葉と対比されて、児童というのは文部省関係ではすべて小学生を指す言葉として使われているのですけれども、この点、学校の現場に影響することの多いこの児童の権利条約を学校の現場で教えたりどうしたりするときに、児童の権利条約が指す児童と学校で一般に使われている児童という意味が違うという点において、混乱は生じませんでしょうか。
  113. 森山眞弓

    ○森山国務大臣 おっしゃいますとおり、学校教育法におきましては、小学校に就学させるべき子供たちを学齢児童と称しております。そして他方、児童の権利条約においては、十八歳未満のすべての者を指すチャイルドの訳語として児童という言葉が適当だと判断されたものと承知しております。  このように、学校教育法と児童の権利条約においては児童という言葉の指す範囲が異なるわけでございますが、現在でも、例えば児童福祉法等の法令において学校教育法と異なる範囲の者を指す言葉として児童が使われておりますが、このような違いによって学校現場で混乱が生じているということは考えられませんで、児童の権利条約との関連においても同様ではないかと思われます。
  114. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 まあ学校の現場で子供たちに児童福祉法を説明するなんということはまずないと思うのですけれども、児童の権利条約第四十二条では「締約国は、適当かつ積極的な方法でこの条約の原則及び規定を成人及び児童のいずれにも広く知らせることを約束する。」と書かれておりまして、児童に対する広報義務も政府には課されております。  その場合、児童に対する、子供たちに対する広報というのは学校の現場でされることが多いと思うのですけれども、この子供たちに対する広報について、文部省はどういうふうに広報、広く知らせようとなさっていらっしゃるのか。子供たちと接触する機会というのは学校の先生一番多いわけですから、広報活動に対して文部省はどういう姿勢で臨んでいらっしゃるのか。例えば授業のカリキュラムの中で子供たちにこの条約の存在及び内容を知らせるというふうなことも考えていらっしゃるのかどうかこのあたり数えていただきたいと思うのですけれども。
  115. 長谷川善一

    ○長谷川政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの御指摘のとおり、この条約の中には教育に関しましての規定というのは多く盛り込まれておるわけでございまして、学校における教育活動にもかかわるものであるということから、条約が批准されました時点で、これは主管官庁の外務省とも協力しなければならないわけでございますけれども、文部省といたしましても教育関係の方々に対しまして条約の趣旨あるいは内容、正しい解釈等をあらゆる機会を通じまして周知していくつもりでおります。
  116. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 授業のカリキュラムの中には入っておりませんか。授業の中で教えよう、そういう計画はないのですか。
  117. 長谷川善一

    ○長谷川政府委員 授業の中で取り上げられる機会というのが全くないとは申し上げられませんが、カリキュラムの中で特に指定いたしまして、この条約についてこうしろというところまでは考えておりません。
  118. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 ぜひ取り入れてほしいと思うのですけれども、そういう学校の現場で子供たちにこの権利条約を教える場合には、学校の現場では児童というのは小学生を指すものとして使われております。例えば小学校では児童会と言いますけれども、中高校になると生徒会、要するに子供たちの頭の中では児童イコール小学生、そういうもう意識があるわけなんですよね。そういう子供たちに対して児童の権利条約を教える。その場合に、ここで言う児童というのは小学生ではなくて十八歳未満の者すべてを指すのですよ、そういう説明をしなければならない。子供たちの頭の中に混乱を招くんじゃないか、そういうふうなおそれもあるのですけれども、もし混乱をするんだったら大人たちがすればいいので、何も子供たちの方にそういう混乱を押しつけることはないと思うのですよ。大人はわかりますけれども、子供はわかりにくいわけですから。  そういう意味で、私は、文部省で使われている用語、文部省では児童というのは小学生と使われているわけですから、当然のことながら文部省としてはこの条約を、児童の権利条約ということについてはむしろネーミングを変えるべきじゃないか、そういう主張をされるのが子供たちの立場に立つ文部省のあり方ではないかと思うのですけれども、このあたりいかがでしょうか。
  119. 長谷川善一

    ○長谷川政府委員 お答え申し上げます。  先ほど大臣の方からも答弁いたしましたように、この条約におきましては十八歳未満の子供を児童というぐあいにとらえておるわけでございますし、このことにつきまして、現在までも申し上げましたように、学校現場において混乱が起こるというようなことについては我々全くそういうようなことはないと考えておりますので、御心配の向きはなかろうかと思っております。
  120. 宇都宮真由美

    宇都宮委員 混乱が起こるかどうかというのは、大人たちが判断することではなくて、むしろ子供たちの方に判断、子供たちが混乱するのではないかという心配をしておるわけで、非常に子供たちと接する機会の多い文部省にしては子供たちに優しくないなという印象を否めません。  そしてもう一つは、先ほど、チャイルドを児童と訳した理由というのが、外務省の方にお聞きしたら大した理由はないと思いますので、それであれば、もう少し子供たちに優しく、子供たちが使っている言葉でこの条約のネーミングをもう一度考え直していただきたいということを文部省の方に強くお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  121. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて宇都宮君の質疑は終了いたしました。  次に、中西績介君。
  122. 中西績介

    ○中西(績)委員 私は、先般、二月十六日の討論の際にODA問題について総理大臣から、四原則適用問題で大変悩んでいる問題だと率直に述べられておりました。そこで私は、こうした悩みがある中で、外務省、いろいろなところでの発言等について、これが正確であるかどうかをちょっと先にお聞かせいただきたいと思います。  一つは、九二年、昨年十一月、国連大学におきまして、冷戦後の軍縮と経済発展東京会議におきまして川上経済力局長が「平和へのイニシアチブに向けての日本のODA政策」について発表をされておりますけれども、この中身というのがどうであったかということをお聞きするのですが、時間がございませんので私の方から簡単に説明を申し上げたいと思います。これは、ODAをてこにいたしまして途上国の正確な軍事データ提出を求めて軍拡抑制をする、こういう中身ではなかったかと思うのですけれども、この点はどうでしょうか。
  123. 川上隆朗

    ○川上政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘の講演は私が行ったものでございますが、昨年の十一月五日に国連大学におきまして、冷戦後の軍縮と経済発展というシンポジウムが開催されまして、このシンポジウムには各国から、マクナマラ元世銀総裁を初めとする各界の専門家が個人的な資格で参加されまして、同シンポジウムで私の方から、個人的な見解という前提で、途上国の軍事支出の面に専ら焦点を当てまして「平和へのイニシアチブに向けての日本のODA政策」という講演を行ったことは事実でございます。  この講演におきまして私の方から、ODA大綱における軍事支出に関する原則の内容、この原則がODA大綱に盛り込まれることになりました背景、それからこの原則の運用におきまして気づいた点等につきまして、途上国の軍事支出とODAとの関係に関する考え方を申し上げた次第でございます。
  124. 中西績介

    ○中西(績)委員 今説明ございました点については、御本人ですからその点は間違いないと思います。  もう一つお聞きしておきます。昨年の十一月、国連総会におきまして、通常兵器の移転、輸出入の国連登録をするということでございまして、そのときに軍縮の透明性決議というのを提出をしたのではないかと思いますけれども、この点は簡単に中身に触れて御説明願います。
  125. 丹波實

    ○丹波政府委員 担当の国連局長おりませんけれども、かわりまして、この決議案が国連総会で通りましたのは一昨年の九一年でございまして、軍縮の透明性決議ということでございますけれども、これを受けまして昨年の、九二年ですけれども、九二年分の兵器の輸出入についてことしの四月三十日までに登録を行う、今後ともそれを繰り返していくということでございまして、要するに、各国の武器の輸出入についての登録ということを国連に行わしめることによって、そういうことによって透明性を高めることによって、むちゃくちゃなと申しますか、むちゃくちゃな、ある特定地域の均衡が急に壊れるような武器の輸出入を抑制していこうということが基本的な目的でこういう決議案が通って、今後実行に移されていく、こういう次第でございます。
  126. 中西績介

    ○中西(績)委員 私は、今二つ説明いただきましたけれども、このことが間違っておるということではありません。このことは、将来にわたりまして、これから日本が果たす役割として大変重要だと思っています。  ただ、私がこれをお聞きしたのは、この四原則が策定され、そしてそのことが国際的にも認められるというそのための努力をしていくということで、こうした発表なりあるいは提案というのは当然であろうと思います。ところが問題は、じゃ私たち日本がこのように胸を張って言える条件があるかどうか、ここをやはりある程度私たちは追求しておく必要があるのではないか、こう考えるわけです。特に、総理も言われましたように、大変悩んでおる、なかなかこの四原則に従いにくい、こういう状況があるわけですね。  しかし、このODA、開発援助というのはやらなくてはならぬという、こうした谷間にあるわけでありますけれども、そこで私はお伺いしたいと思いますのは、ODA供与が世界最大だと言われ、第一位だということを言われますけれども、外務大臣、時間がございませんのではしょって質問を申し上げますけれども、GNP比目標は〇・七%、それから贈与率、これは十八カ国の平均が七六・六%になっています。ところが、日本の場合にはこの点が幾らになっておるのか、そして何位になっておるのかを明らかにしていただきたいと思います。
  127. 川上隆朗

    ○川上政府委員 お尋ねの贈与比率でございますが、九〇年、九一年の二年平均でとりますと、これは最新の数字でございますけれども、贈与比率は我が国の場合三八・六%ということでございまして、残念ながらDACの中では最下位、DAC二十一カ国中スペインとルクセンブルクについてちょっとデータがございませんが、十九カ国で見れば最下位ということでございます。
  128. 中西績介

    ○中西(績)委員 GNP比目標はどんなんでしょう。
  129. 川上隆朗

    ○川上政府委員 失礼いたしました。  GNP目標につきましては、御案内のとおり〇・七%という国際目標が努力目標としてあるわけでございますが、我が国の場合、一番最近のデータでいきますと、九一年、暦年でございますが、これが〇・三二ということでございます。ちょっとDACの順位は正確に後ほと調べてあれしますけれども、たしか十一、二位程度、真ん中よりちょっと下ぐらいだったと思います。
  130. 中西績介

    ○中西(績)委員 今お答えいただきましたように、贈与率からいたしましても、平均が七六%を超えるという状況の中にありながら三八・六%という、しかも最低になっておるということ、さらにまたGNP比におきましてもやはり同じように〇・七%目標をいたしておるのに、〇・三二という大変低い率になっております。しかもこれは十二位程度ではないかと思います。  こういう状況からして、私たちが国連あるいはこういうフォーラムなりなんなりのところで、日本の四原則適用ということで我々胸を張って言うんですけれども、こうした基本的な、基礎的な条件がまだ整備されておらないということの御認識はあるんですか、どうでしょう。
  131. 河野洋平

    ○河野国務大臣 順位のつけ方がいろいろな角度からなされておりまして、残念ながら今先生御指摘の見方でいきますと極めてまだその率は低うございます。  ただしかし、一方で絶対額は大変大きな額を占めているわけでございますから、この大きな額のODA拠出をしている以上、一方では顔が見えない、考え方がはっきりしないという御指摘等もあることをも受けて、どういう考え方でやるかということも示しながら、今先生お尋ねのもっと頑張らなきゃいかぬという点も踏まえて、さらに検討を加えたい、こう考えているところでございます。
  132. 中西績介

    ○中西(績)委員 確かに絶対額は高いということはもちろんでありますけれども、こうした内容的なもの、もう少し私たちが基本的な問題を含めてどう位置づけをしていくのかそしてこれからの国際貢献のあり方はどうあるべきかということを考えてまいりますと、やはりODAの果たす役割というのは大変重要な役割になるわけでありますから、この点は一つの課題として、また今後論議をしていかなくてはならぬ点ではないか。  したがって、私たちは、他の国々からこのようにして途上国の正確な軍事データを提出させるようなこと、あるいはガラス張りにさせることによっていろいろ注文をつける、そのことが今度は、四原則があるためにそうしなくちゃならぬということになりますけれども、しかしそのことは今度は、援助をしてもまた反目的なものになるという可能性だってあるわけでありますから、ここいらをどのようにこれから説得をし、理解をしていただくか。  それと同時に、今度は国民の側にもこの点についての理解を求めていくということが今一番問われておるのではないか。これほど厳しい財政状況の中に、なぜ途上国なりにあるいは多くの国々にこうした援助をしなくてはならぬかということ等がささやかれておるということを私たち聞きますので、この点ひとつ、総合的にどうするかという対策についてぜひ早く結論的なものが導き出せればいいのですけれども、十分な検討をお願いをしたいと思うのです。
  133. 河野洋平

    ○河野国務大臣 先生御質問の冒頭におっしゃいましたように、先般この席で宮澤総理がお答えを申し上げた、大変悩んでいる部分もあるというあのお答えと全く同じ意見を持っております。四原則を我々は決めまして世に問うておるわけでございますが、この四原則をまずメッセージとして伝えて、対象国とはできるだけ緊密な話し合いをすることによって、もちろん当該国には当該国のそれぞれのお立場、それから近隣諸国との関係、いろいろな環境下に置かれている国々でございますから、十分な話し合いによってお互いの理解を深め、目的に少しでも近づくよう努力をするということがなければならないと思います。あのときにも総理申し上げましたように、どこかの時点ですぱっと、四原則に合わないからその考え方を押しつけるというようなことではなくて、もう少しよく話し合いの中で目的に近づくという努力をするということも必要ではないかと思います。  また、もう一点お尋ねの、国内におきます、ODAの重要性についてもっともっと広く広報その他をもって理解をしていただく努力が必要であろうと思います。この四原則の中にも、平和とか民主主義への移行とか、そういったことが一つの目的として書き込んでございますが、そうしたことも含めて、大いに国民の皆さんに御理解をいただく努力をしなければならぬというふうに思っております。
  134. 中西績介

    ○中西(績)委員 外務大臣、どうぞ……。  それでは、私たちが胸を張って自慢できるかどうかという問題について、もう二点だけお聞きをしたいと思います。  一つは、外務省がこうした発表なりあるいは発言をしているときに、平和的政策として、GNP比一%問題、それから武器輸出問題、そしてODAは先ほど、大臣出ていかれますので終わりましたけれども、こうしたことを中心にして説明なさっておるやに聞いております。ところが、私は、GNP比一%問題についてどうなのかということをやはりここで検証しておく必要があるのではないか、こう思います。  考えてみますと、絶対額からいたしますと、冷戦末期、米ソに次ぐ大国になっておったということ、そして多くの国々で、西欧あるいはアメリカあたり、防衛費削減をしておるときに、日本は防衛費が増大をしておる。あるいは、工業国におきましては、兵器輸入の額からいたしましてもこれ第一位であるという、こういう状況があるわけですね。したがって、国際的に私たちがいかにGNP比云々と言っても、こうした問題等を挙げてまいりますと、依然として日本は軍事拡大に向けて動いておるし、そしてむしろ強大化しておるという、こういう認識がどうしても諸外国からぬぐえないわけであります。こうした点について、防衛庁、どのようにお考えなんですか。
  135. 畠山蕃

    畠山政府委員 ただいま幾つかの点にお触れになりました。  まず、絶対額でアメリカ、ロシアに次ぐものであるという御指摘がございましたが、これはなかなか国際比較が困難な面もございますけれども、いわゆるミリタリー・バランスの最新版によりますと、我が国の防衛費は絶対額で世界第六位という指摘がなされているところでございます。  それから、輸入につきましても、これも国際的な比較というのは困難なところがございますが、我が国としては、この輸入も含めましてあくまでも必要最小限の装備品の調達を行ってきているということでございます。  いずれにいたしましても、ただいま最後に御指摘がございましたけれども、我が国は、憲法のもとで専守防衛に徹しまして、他国に脅威を与えるような軍事大国とならないという基本理念に従いまして、効率的で節度ある防衛力を今後とも整備してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  136. 中西績介

    ○中西(績)委員 ですからこれは、六位だということを今指摘されましたけれども、私たち、資料のとり方によっては第三位だという、こういうあれだってあるわけですから、こうした点、さらにまた、防衛費が増大をしておるということ、このことはもう一度んな言いわけをしょうとこれを隠すわけには、あるいは否定することはできないわけでありますから、こうした点あたりが、本当に諸外国、国際的に信頼をされるというこのことが一番大事でありますから、そのときにこうした疑心というものを持たれておるということになってまいりますと、ODA問題とあわせて、大きなまた将来に向けていろいろな禍根を残すことにつながっていくわけであります。我々よかれかしとしてやったことが、そういうふうに正常な形でとられずに、いろいろ批判的な面から物を見るということになってまいりますと、これが次の武器輸出三原則と絡まりましていろいろ問題を残しておるんではないか、こう私は思います。  そこで、武器輸出三原則問題でありますけれども、八三年の対米武器技術供与に関する交換公文、日米相互防衛援助協定によってこれが、交換公文が締結をされてきたわけでありますけれども、これによって日本のいろいろな武器輸出がどうなっておるかということ、その中には、私たちが忘れてはならないのは、対米武器技術供与が法的制約なしにしり抜けになっておるのではないかということを私は感じるわけであります。  特に、日本の民生用ハイテク部品、大量に野放し、対米輸出をしておるわけでありますから、こうした問題について、私は透明性がないんではないかという気がしてなりません。民生用としてどんどん輸出がされます。ところが、ココムなどで制限をされる国々に対してはいろいろあったとしても、対米輸出についてはこの制限がないでしょう。そうなってまいりますと、それが今度はどうなったかというと、この前の湾岸戦争のときに、日本から輸出をした分がうんと兵器として使われておったというようなことが言われておりますように、こうした武器輸出、確かに三原則はあります、三原則はあるけれども、こうした問題が、私は今度は本当に他の国々からこれが信頼されるような状況にあるかどうかということ、こうした点についてお答えをいただきたいと思います。
  137. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 対米武器技術供与につきましては、防衛分野におきます米国との技術の相互交流を図りますことが、日米安保体制の効率的運用を確保する上で極めて重要ということで行われているわけでございます。実際には、対米武器技術供与取極などの定める手続に従いまして、日米両国政府協議機関である武器技術共同委員会を開くなどいたしまして、慎重に検討を行った上で実施をしているところでございます。  手順をちょっと申し上げますと、米国から供与要請がございますと、今ほど申し上げました武器技術共同委員会、これは米国委員日本委員とがございますが、ここで協議をいたしまして、日本側で供与技術を決定するかどうか判断をいたします。決定いたしますと米国に通知をする、他方では、技術そのものが通産省による許可を得るということになるわけでございます。
  138. 中西績介

    ○中西(績)委員 だからといって、今のお答えのようにあるからといって、日本がそれを拒絶したり、その分についてはだめだというようなことが行われておるだろうか。例えば一つの例として、P3C共同開発というのですか、共同改良というのですかね、こういうようなことを行うときに、そうした点が例えば疑点があったとしてもそれを拒絶してやれる条件が果たしてあるだろうかということを私は指摘をしなくちゃならぬと思います。この点はどうでしょう。
  139. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 委員指摘のP3C搭載用のディジタル・フライト・コントロール・システム、これにつきましては平成四年の四月に、先ほど申し上げました委員会で供与を決定したわけでございます。これら各種技術それぞれ、米側から供与要請がございますと、それにつきまして政府部内で十分な議論をいたしまして、その上で是々非々で供与決定をしているということでございます。
  140. 中西績介

    ○中西(績)委員 是々非々といいますと、拒絶をして、枢要な部分についてこれを拒否をしたという例がございますか。
  141. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 これまでのところではございません。
  142. 中西績介

    ○中西(績)委員 その答えが私は正しいと思うのです。少なくとも、こうして共同開発なりあるいは共同改良するというようなことになってまいりますと、それを目的にして、先ほど申し上げた技術供与に関する交換公文が締結されていますから、それによって迫られれば当然しなくちゃならぬということになってくるのですよ。このことの否定は私はできぬだろうと思います。  ところが、今度はそれによって製品ができますね。できた製品は今度は第三国にこれを輸出する、あるいは売りつけることだってあり得るわけでしょう。この点を私は否定できないと思うのですよ。  そうなりますと、日本はココムによって制限をされておりますけれども、アメリカの場合にはそういう武器だとか兵器だとかいうものを輸出が可能になってまいります。そうすると、それに対置する側の国々からは、日本はこうした点について、供与するために、日本はむしろ武器輸出を、していないなどというこの武器輸出三原則を我々が外国にいろいろ発表したりいろいろなことをやったといたしましても、その裏にはこういうことがあるじゃないかという、こうした目で見られるわけでありますね。  そうなってまいりますと、そのことが今度は私たち、いろいろ米国との間におけるココム規制だとか、あるいは、またこれは決められておらないと思いますけれどもノウ規制などということが西欧あるいはアメリカあたりであるようであります、そうなってまいりますと、日本はこれからそうした面で、日本は輸出をしないけれども他の国々からそうしたものがどんどん入ってくるということになってまいりますと、ある特定の国に対しては選別規制で圧力をかけることが今度は逆にできるわけですね、特別な国に対しては。あるいは、軍事用途に使わない誓約書などをこれから例えば書かせるといたしますと、このノウ規制というのはそういうことでやるわけでありますから、こうなってまいりますと、日本の技術によって世界を支配をするというような、こうした感覚で物をとらえられるということになりはしないか。  私は、こうした点をこれからの問題として考えていく必要があるだろうし、こうした条約的なものあるいは協定があるわけでありますからなかなか困難だとは思いますけれども、多くの国々の信頼を得るためには、この武器輸出三原則というものについても十分再検討する必要があるのではないか、私はこう思います。この点について、どうでしょう。
  143. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 委員指摘の第三国移転の点につきまして、私の方からお答え申し上げたいと思います。  現在の対米武器技術供与取極によりますと、我が国から供与いたします技術の使用につきましては、国連憲章に矛盾する使用の禁止でございますとか、あるいは我が国の事前同意なく第三国への移転を禁止するといった規定があるわけでございます。こういう規定を十分私ども米側にも、米側も理解をしておるわけでございますけれども、こういう規定のもとに、武器輸出三原則を踏まえまして、他国の不信を招くようなことのないように運用していきたいというふうに考えております。
  144. 中西績介

    ○中西(績)委員 いずれにしましても、そうした、その過程の中におきましてチェックができるというような言い方をしておりますけれども、先ほどの、一たん手渡ったものが、それを今度は日本が全部チェックをしてやれる条件が果たしてあるだろうか、この点、私は大変疑問を持ちます。したがって、こうした点についての改善なり改良が行えるようであれば、直ちに手がけていくべきではないかと思います。そうしないと、日本は技術によって今度は世界を、極端な言い方をしますと支配をするとか、いろいろなことでの他国からの誹謗中傷が行われることになるわけでありますから、この点はぜひ考えるべきではないか。特にアジア諸国からの信頼を受けるためには先ほど申し上げましたように武器輸入最大の国であるということだとか、あるいは日米の武器技術協力の先ほど申し上げました不透明さがあるわけでありますから、あるいは今問題になっておる戦争責任の反省について疑問視される点があるわけでありますから、こうした点をなくさないと、私たちが本当に信頼されるということになりにくいのではないか、こう考えるわけであります。  したがって、政治大国、軍事大国にならないという、こうしたこととあわせて信頼をから得るための手だてというものを日常的に尽くしていく必要があるのではないか、こう思いますので、この点はだれがお答えいただけますか。大臣だれか答えてください。防衛庁長官、答えてください。
  145. 中山利生

    中山国務大臣 この問題につきましては防衛庁だけということではないかと思いますが、御心配のような武器技術供与の問題、この国会でもいろいろと御議論をいただきましたし、武器輸出三原則という大きな建前がございますし、先ほど装備局長から御説明申し上げましたようないろいろな厳しい規制がございます。また、担当の事務当局におきましても、先ほど先生が御心配をいただきましたような事態にならないように極力努力を続けてきているところでございます。これからも我が国の防衛政策のみならず通商政策等につきましても重大な課題であろうと思っておりますので、私どももなお一層戒心をしながら努力を続けていきたいと思っております。
  146. 中西績介

    ○中西(績)委員 そこで、外務大臣がいればよかったのですけれども、ODA関係とこうした問題との関連ですね、この点をやはり十分認識をしていただいて、これからもODAが本格的に信頼されるということにならなければ私たちの効果というものは非常に薄いわけでありますから、この点をぜひお考えいただきたいと思います。ですから大蔵大臣なども、国際的に貢献をするというそういう立場の中で、我が国憲法がある以上、人的なものよりもこうした面でやはり最も大きく貢献をするという、この中に人的貢献もあるわけですから、こうしたことをあわせてやるときに極めて重要でありますから、大蔵におかれましても十分御勘案をいただきますようお願いを申し上げておきます。  それじゃ、時間がございませんので次に移らしていただきますけれども、私学助成の問題についてお伺いしたいと思います。  私立大学等の経常費に対する補助金は二千六百五十五億五千万円、昨年に比べますと五十四億増ですね。それから、高等学校の経常費助成に対する補助金は八百四十七億で、二十四億増であります。そこで私は、本年度の平成五年度予算からいたしますと、経常費の中に占める割合というのは十二%くらいに落ち込んでしまうんではないか、大変心配をいたしておる。もし昨年度並み、平成四年度並みに十二・七%を確保するということになりますと、百九十五億、大学で必要なんです。すると、今回の場合には五十四億ですから、ますますこれが傾斜をし、縮小していくということになってしまいます。  そこで、私は提案でありますけれども、一九八〇年が五〇%目標にいたしておりましたけれども、二九・五%、これが最高でありました。将来これに近づけるために、例えば目標設定を三〇%に復活をさせるという、こうしたことくらいは持たなくては、これは将来ますます縮小していくのではないかということを心配をいたします。したがって、そうした復活をさしていくかどうか、その意思はおありかどうかをお聞きします。
  147. 森山眞弓

    ○森山国務大臣 先生御指摘のとおり、私立学校というのは、建学の精神にのっとりまして特色ある教育、研究をしているばかりではなくて、我が国の学校教育におきまして非常に大きな役割を果たしております。このような私立学校の役割の重要性にかんがみまして、文部省といたしましては、臨調や行革審の指摘なども踏まえまして、ここ数年非常に厳しい国の財政情勢のもとではございますが、先ほど先生がお示しくださいましたような私学助成の改善の努力をいたしているところでございます。  今後とも、厳しい財政情勢のもとではございますけれども、各方面の理解を得まして、文部省といたしましては、私学助成の推進にさらに努力をしてまいりたいと思っております。
  148. 中西績介

    ○中西(績)委員 率直に申し上げて、努力はすると言うけれども、復活をさしていくという意思がおありかどうかということを、それに向けての努力なのか、そこいらをもう一度お聞かせください。それとも、もう放棄をいたしますと言うのか、どちらなんですか。
  149. 森山眞弓

    ○森山国務大臣 さらに一層の努力を続けてまいりたいということを繰り返し申し上げさせていただきます。
  150. 中西績介

    ○中西(績)委員 ですから、先ほど私が指摘をしましたように、平成四年度に復活させるためには百九十五億必要だったけれども、わずか五十四億しか平成五年度予算は増額されてないわけですからね。これでいきますと縮小の傾向ですよ、額はある程度増額をしたけれども縮小するということになるわけでありますから。そうした点で、よほどの決意と、ある程度やはり年次計画的なものを立ててでも明らかにして大蔵省に迫るとか、あるいは閣内での討論、ぜひ迫っていかないと、これは到底、黙っておったんじゃやられるわけですから、この点はぜひそれくらいの気迫を持って努力をするようにしていただきたいと私は思います。  じゃ、次に移りますが、こういう状況でございますから、私学に在学をする、あるいは就学をさしておる父母の負担というものはもう限界に達しておるんじゃないかと私は思います。  そこで、経企庁にお聞きいたしますけれども、一九八九年度の白書に、大学教育費の増大は、世帯主世代が四十九ないし五十五歳にかけて家計収支は赤字になると指摘をしておりました。それでは、平成四年度経済企画庁国民生活白書ではどうなっておるのか、そしてこれに対する見解について、先ほど八九年はこういうことを言っておるわけですから、今度の場合、どのような見解をお持ちですか。
  151. 加藤雅

    ○加藤(雅)政府委員 お答え申し上げます。  平成四年度の国民生活白書は、御案内のとおり少子化、子供が少なくなるという点の分析を中心にいたしております。それとの関係で、教育費の負担が重いということが子供が少なくなる原因ではないかという分析をしておりますので、幾つかの数字を申し上げますと、まず、家計調査で教育費の推移というのを見てまいりますと、消費支出に占める教育関係費の割合というのは、昭和四十六年の五・一%から平成三年には七・一%に増大しておりまして、また、子供が上級の学校に進みますほど教育費もふえております。子供一人当たりの支出で見ますと、公立の小学校が二十一万円であるのに、私立の高校は六十五万二千円ということになっております。養育費のうちで教育費の占める割合も、当然その年齢が高くなりますと増大いたしまして、それ以外の分は低くなっておりますが、しかしながら、平成四年度の当庁の調査によりますと、子供の二人おります世帯では、子供の養育にかかる全費用というのが家計全体の支出の二四から二七%程度ということになっておりまして、養育費は決して小さくないというふうに白書では判断をいたしております。  また、御指摘の大学生の生活費というものが非常に金額が大きい上に上昇率も高いということも分析をしておりまして、平成二年度では国立大学が百三十二万二千円、私立大学が百七十五万五千円ということでございまして、年間実収入は二・〇倍上昇しておりますのに対して、大学生の生活費というのは二・二倍上昇しているということでございます。下宿をしております私立大学生の場合には特にその費用が高くなっているという分析もいたしておりまして、その場合には、大学一年生の一年間で初年度納付金等を含めますと約二百五十九万円が必要でございまして、それは親の平均年収の三四・四%になるということを平成三年度について当庁の試算で計算をして発表しておる次第でございます。  見解につきましては大臣の方から。
  152. 中西績介

    ○中西(績)委員 それじゃ、今言われましたように大変な負担率になっておりますし、これがますます増大をしていくという傾向にあるということはこれでお認めになると思います。したがって、この点について、経企庁長官は文教で随分長いことやっておられましたので、どのような見解をお持ちか、お答えください。
  153. 船田元

    ○船田国務大臣 お答えいたします。  中西先生御指摘のように、国民生活白書等によりまして、教育費というものが非常に大きくなってしまっているという点の指摘は確かにいたしました。その詳しい説明は今局長からお答えいたしたわけでございますが、私も、この点非常に重視をしておりまして、親の教育支出は子供の年齢が上がるほど、塾通い等の増大もあって教育費の家計への負担が大きくなる、負担感も高まっているということであろうと思います。また特に、先ほど来お話ありましたように、大学生の家計に対する教育費負担、特にこれは私立大学で下宿で通わせるというときにはそれがまた非常に大きなものとなっているということは、これは事実であろうというふうに思っております。  こうしたことを考えますと、私どもとしても、やはり親あるいは学生生徒に対するさまざまな手だて、とりわけ奨学金事業の拡充ということが引き続き進められなければいけない、そういうことを通じて負担感の軽減が図られていくということが望ましい、このように考えております。しかし、また同時に、子供の特性が重視をされ、その子供の個性と持ち味が生かされたような教育を考えていくということもまた一方で大事なことではないか、こんなふうに思っております。
  154. 中西績介

    ○中西(績)委員 したがって、今度は一点目とのかかわりになるわけでありますけれども、助成補助金が抑制をされればされるほど私学の校納金なり納付金というのは高まるわけでありますから、そうなってくると父母負担はさらに増大をするという、こうしたことにすべてがつながっていくわけであります。  したがって私は、ちなみに外国のことをちょっと触れますと、西欧だとかあるいはその他の国々におきまして私たちが明らかにすることができるのは、例えばいろんな国々ありますけれども、アメリカ型、イギリス型、フランス型、ドイツ型、いろいろあります。こういう国々におきましては、例えばアメリカあたりにおきましては、州立大学などにおきましては授業料は確かに取るのですね。授業料は確かに取る。総合大学が二十六万四千円程度、あるいは四年制大学で十九万九千円程度だとか、こういうように取りますけれども、大学等におきましてほとんど奨学金だとかいろんな点での補足がなされておるわけですね。したがって、アメリカでも日本よりも半分以下になっておる。特に、日本と校納金、授業料等が同額だと言われるハーバードあるいはマサチューセッツ工科大学なんかにおきましては、給与制の奨学金制度がもう完全と言っていいほど行き渡っているわけですね。したがって、むしろ高いけれども逆に今度は州立大学なんかよりも負担は低くなっておるというような状況ですね。あるいはイギリスにおきましても、学生の出身の自治体がこれを負担をするわけでありますから、これはもう入学金から授業料その他の校納金はない。フランスでは一万円程度、健康診断料だとか学生社会保険料というのはありますけれども、他は全部無料でしょう。ドイツにおいてもこれに近い状態です。  ところが日本の場合には、まさに取れるだけ取るという、こういう体制になっておる。その一番大きな原因というのは、五〇%まで目指そうとした助成が今や十二%まで落ちてしまっているという、ここに大きな原因もまたあるわけですね。なぜ私そのことを言うかというと、私立が上がると今度は国公立がそれにつれてどんどん上がっていくのですね。ですからイタチごっこみたいにして上がっていくわけでありますから、結局は公的なものが非常に少ないためにこうした結果が出ています。  それともう一つは、諸外国におきましては公的財政の高等教育費負担というやつがございまして、これを見るとまた日本は格別に低い、こういう状況があるわけであります。ですから、この点をどのようにこれから変えていくかということが極めて重要な課題にこれからなります。そうしないと、日本の人的な育成というものが、一番大事に今日本が問わなくちゃならぬところが逆に寂れてしまう、困難になってくる、こういう状況にあるわけでありますから、この点、後でまとめて大蔵大臣に所見をお伺いしたいと思います。  もう一つは、奨学金です。奨学金は貸与が大部分ですね。給付というのはほとんどありません。私立大学が貸与部分でどれだけの率を占めておるのか、全体の数、どれだけの率を占めておるか、これはおわかりですか。
  155. 遠山敦子

    ○遠山(敦)政府委員 お答えを申し上げます。  大学生に対する貸与をいたしているわけでございますが、総貸与人員が平成四年度におきましては二十八万三千四百五十一人でございますが、そのうち私立大学の学生に対しましては十六万三千六百四十二名でございまして、全体の五七・七%となってございます。これは約十年前の昭和五十八年度がその率が四九・〇%でございましたことに比べますと、少しずつではございますが改善を見ているところでございます。
  156. 中西績介

    ○中西(績)委員 今も答弁ございましたように、大学の七割から八割私立大学が学生を収容しておる。それなのにその率は比較して余りにも低過ぎるということになりはせぬかと思いますね。ですから、この分をふやしていかなくちゃなりません、国公立に対して非常に貸与されている人が少ないわけでありますから。そうしますと、この点をどのように将来考えておられるのか、お聞きをしたいと思います。特に私は、金がない金がないということを盛んに言いますので、この点を、財投から今でもされておる部分がありますから、財投より有利子分でどれだけこの貸与者数があるのか、この点先にちょっとお聞かせいただきましょう。
  157. 遠山敦子

    ○遠山(敦)政府委員 先ほど申し上げましたように、私学の学生に対する貸与人員数、十六万三千六百四十二人でございますが、うち有利子貸与、これは財投によるものでございますけれども、これが六万六百三十五人でございまして、三七%を占めております。
  158. 中西績介

    ○中西(績)委員 したがって、私、提案でありますけれども、この財投の分をふやすことはできないのか。今でも六万を超える皆さん有利子で財投分を借りておるわけでありますから、それでもなお私学の場合には率からするとうんと国公立に比べると低いということになってまいりますと、この分を少しでも増枠をするということは可能だと私は思っています。なぜかならば、財投というのは、借り受ければちゃんとこれを返していけばいいわけでありますから、何も国が損するという質のものじゃありません、有利子ですし。ですから、この点をさらに拡大をする、そのことによって少しでも増大をして、一番いいのは給付でありますけれども、給付ができないというなら何らかの方式で皆さんのそうした点を補完をしていくということが必要ではないだろうか、私はこう思いますが、この点どうですか。
  159. 遠山敦子

    ○遠山(敦)政府委員 お答え申し上げます。  有利子貸与、これは財投を財源とするものでございますけれども、私立大学の学生に対する貸与の実績は少しずつふえてまいっておりまして、私どもといたしましてはこの面についての努力をさらに続けたいと考えております。
  160. 中西績介

    ○中西(績)委員 そこで私は、大蔵大臣に、先ほど申し上げましたように父母負担は限界に来ている、その大きな理由というのは、経常経費に対する助成金がどんどん率が下がって、最高のときに比べますと半分以下になってしまっておる、こういう状況ですね。これが低いために、今度は国公立の場合が引き上げられていく、こうした状況があるわけでありますから、公的財政の高等教育費負担度合いというのが日本の場合には非常に低いということがこのことで示されておる。それと同時に、今言う奨学金がやはり同じように、今度は個人に対しても大変な状況に今押し込められてしまっています。したがって、ぜひこの点に対してある程度の歯どめをかけるということがなければ、日本の高等教育というのは大変な状況に追いやられてしまうだろう、禍根を残すのではないかと思います。  したがって、これに対する見解と、財投からさらに相当額の奨学金に振り当てるという考え方はないのか、この点お聞かせください。
  161. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 中西議員の御質問にお答え申し上げますが、私も、教育というのは国家百年の大計であろう、こう思っています。国でやはり人間をどうつくり上げていくかということは大変重要なことだと思っておりますし、そういった観点からいろいろと考えていかなければならないことは、御指摘をまつまでもない、当然のことでございます。  御指摘ございましたように、私立の方の問題、私立の大学その他の助成の問題につきましても、ことしの予算でも相当に私たちの方では配慮をしてやったところでございます。数字等につきましては、できましたならば後で政府委員から答弁をさせますけれども、最後までこれを問題にしてやったところの問題であることは私から申し上げておきたいと思います。  ただ、御指摘のように授業料が上がってくる、そうすると父兄の負担も、こういうことでありますが、やはり奨学金制度であるとか、先ほどの財投を使ってのいろいろな話というものは私も考えていかなければならない。ただ、国側だけでやるという話じゃなくて、私は考えていかなければなりませんのは、これはやはり国民的な問題だろう、こう思うのです、学校にやるということは。実は私もある財団法人を持っておりまして、頼まれて地元の学生の奨学金を出すところのことをやっておるのです。そういった形で、国が全部やるという話じゃなくて、いろいろなそういった社会的な方々の御理解もいただきながら学生を育てていくというようなことは、やはり私は必要なことだと思っていますし、幅広い観点から私の方も財政の立場におきましてこれから考えてまいりたい、こう思っておるところでございます。
  162. 中西績介

    ○中西(績)委員 今言われた点、特に奨学金等については、アメリカの方ではいろいろなそういう財団法人的なものがたくさんありまして、企業等が社会的な責任というのを非常に重要視していますよ、文化についても教育についても。ところが日本の企業なんというものは、もうけさえすれば何でもするし悪いことでもするというぐらいで、肝心なところは大変欠落しております。これが実態じゃないかと私は思っています。  ですから、今早急にするとすれば、ヨーロッパ型とは言いませんけれども、ヨーロッパのように可能な限りやはり国がそれを面倒見てやるというのが至当ではないかと私は思っています。したがって、その点のお考えだけはぜひ訂正をしていただきたいと思います。
  163. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 今の御質問、ちょっとよくわからなかったのですが、今お話がありましたように、アメリカ型で企業等がいろいろやっている、こういうふうなお話がありました。日本もやはりもう少しそういった社会的な形で考えていった方がいいのではないかな。もちろん私は、だからといって国がやるということをやらなくてよろしいなどという気持ちで申し上げているわけじゃありませんが、教育というものを総合的にみんなが考えていかなければならないのだろう、こういうことで先ほど申し上げたつもりでございます。  もう一度お尋ねしますれども、中西議員、どこの点が私のところを訂正しろとおっしゃるのか、ちょっとよくわからない。私は、全体として少し考えていかなければならない、こういうふうに申し上げたつもりでございます。
  164. 中西績介

    ○中西(績)委員 私が申し上げたのは、アメリカ型のそういうものがあれば、これは今こうして国がどうだこうだということを強調する必要もないかと思うわけであります。ですから、個人的には日本でもある程度アメリカ型の援助をしておる人が相当多数おるけれども、その比率たるや、もうこれは比較になりません。したがって、こうした点ができ上がるまでは公的なものである程度補っていかない限り、この教育という問題は待ったなしですから、何年経過をしてそれをやればいいという話じゃないのですね。ですから、即刻手がけなくてはならぬだろうと思うのです。  そこで、私は財投でどの程度のものが可能かということを先ほどちょっとあれしたのですけれども、この点は大臣でなくてもだれかお答えください。
  165. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 財政投融資、直接所管しておりませんですけれども、財政投融資を使いましたいわゆる奨学金につきましては、これの金利を下げるという意味で、実は主計局の方でもいわば補給金を出して金利低下ということをやっておりまして、いわばそういうことで、片や税金を使いました一般的な奨学金というものとのバランスをいつも考えて予算の編成を行っているというのが実態でございます。
  166. 中西績介

    ○中西(績)委員 いずれにしましても、この財投問題は本格的にお考えいただきたいと思います。  そこで、時間がございませんから一つ飛ばしまして、私立高等学校の場合、やはり大学と同様でありますけれども、この点については私立高校、地方自治体とのかかわりもありますけれども、やはり十分お考えいただきたいと思います。これは特に要請だけにかえておきます。  そこで、私立高校の場合、公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律に準拠するかどうかをお答えください。
  167. 中林勝男

    ○中林政府委員 お答えします。  私立学校の学級編制基準でありますけれども、これは高等学校設置基準によって定められておりまして、それに従って各私立学校の設置者であります学校法人ができるだけのことをして決めているというのが実態でございます。
  168. 中西績介

    ○中西(績)委員 今お答えありましたけれども、これはもう実際に私たちが、一学級の生徒の数によって教育の度合いというものが決定づけられると言っても過言ではないんですね。ですから、今のように情報が多過ぎるぐらいに子供たちにも入っている状況でありますし、それから、家庭における育て方等につきましても、たくさん一学級に生徒がおったころの子供たちとは全然違うんですね。こうした状況の中で、個性を引き出し、指導を強化するというふうなことを言いますけれども、このときにはやはりぜひこれを準拠させて、その効果が上がるように努力するのが行政の立場ではないかと私は思います。したがって、これはもう時間がございませんからさらに後に残しまして、今後この点についての問題指摘をしながら、さらに前向きに考えるように持っていきたいと思っています。  それでは、あと時間もわずかになりましたけれども、平成四年度の予算を見ますと、補正で総額四兆八千七百三十億円、大幅な税収減を見込んでおります。これは我が国の今後の財政に重大な問題を残すことになりはしないかと思います。私は予算委員会初めてでございますから、端的に、この予算を繰って見ておる間にいろいろの気づいた点、極めて初歩的で素人臭うございますけれども、わかりやすくお答えください。  まず、源泉所得税について見てまいりますと、日銀は、平成四年度に入って二度にわたって公定歩合引き下げを行いました。その影響が利子所得に対する源泉所得税約二兆二千九百億くらいの減収になると思いますが、これはこう私は見てとってよろしいですか。
  169. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 お答え申し上げます。  四年度の源泉所得税につきまして、先般の補正におきまして二兆四千五百三十億円の減額をお認めいただいたところでございますけれども、その大宗は、御指摘のとおり金利の低下を反映しました利子分の減収等でございまして、これに相当します額を申し上げますと、二兆二百九十億円、これが利子分の減収に見合う分とお考えいただいて結構でございます。  御指摘のございましたように、四年度の当初予算の編成が行われました平成三年の暮れ以降、それまで五%ぐらいでございました公定歩合の水準が、三年の十二月三十日に四・五%、四年四月一日に三・七五%、さらに七月に三・二五%と三度にわたって引き下げられまして、これとともに市中金利も大幅な低下を示しましたことから、当初見込みに対しましてこのような減収になったものでございます。
  170. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうしますと、今度の大幅な公定歩合引き下げがございましたが、今年度どの程度の金額減収見込みが立たれておるのか、この点についてお答えください。
  171. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 お答え申し上げます。  御指摘は、ただいまいろいろ何段階かの引き下げについて申し上げましたものに続きまして、この二月四日に二・五%に公定歩合がさらに引き下げられた、その影響のことかと存じますけれども、金利に係ります源泉所得税の徴収というのは、預入されております貯金が払い出されます段階で課税されることになります。したがいまして、確かに公定歩合が下がりますと金利水準は低下傾向に入りますけれども、その払い出し時点というものに着目をしてお考えいただければ、四年度税収への影響は小さなものにとどまると考えております。
  172. 中西績介

    ○中西(績)委員 いや、平成五年度。
  173. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 失礼いたしました。平成五年度への影響ということになりますと、これは利子に係ります源泉所得税の見積もりと申しますのは、いろいろな金融商品、例えば公債でございますとか社債、定期性預金、割引債、そういったものの残高や利率の推移というものを勘案して計算するわけでございますけれども、公定歩合の引き下げがどの程度市中金利の低下につながっていくか、どれくらいのスピードでどれくらいの幅で浸透していくか、それからその公定歩合の引き下げが経済全体にどういう影響を及ぼして、それがまた預金残高にどうはね返ってくるか、あるいは経済全体に影響を及ぼします限りにおきましては、その経済のいろいろな部門に影響いたすと思いますけれども、そういったものが税収にどのようにはね返るかということを定量的に見定めるということはなかなか困難な状況でございまして、今の段階でそれがどの程度かということを申し上げるのは難しい問題だと存じます。
  174. 中西績介

    ○中西(績)委員 いつごろになればそれはわかりますか。
  175. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 今後の推移を見ませんことには、どれくらいの感じでそれが税収に響いてくるか、いつごろどれぐらいのものが表にあらわれてくるかということはなかなか予測しがたいように思います。
  176. 中西績介

    ○中西(績)委員 わからないということですからこれより以上お聞きはいたしませんけれども、私は相当な影響が出るんじゃないかということを心配をいたしております。  そこでもう一点だけお伺いしますけれども、給与所得に対する源泉所得税は、雇用情勢の悪化と残業時間の減少が続く中で、納税人員が一万人、給与所得額が千四百五十億円、一人平均いたしますと、単純平均です、一千四百五十万円のサラリーマンが新たに生まれたということになります、平成四年度の当初予算とそれから補正予算を引き比べてみますと。これは、給与が残業時間の減少などでずっと下がっておるときに、果たしてこうしたことが出てくるだろうかということを私は思います。どうしてこのような数字が出たのか、根拠があればお示しください。
  177. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 御指摘をいただきました、このような局面でなぜ給与所得がふえるのか、給与に係る税を上乗せして計算できるのかわけがわからないという御指摘意味はよくわかります。ちょっとお時間をいただきまして、やや技術的になりますけれども御説明をさせて……(中西(績)委員「それなら、時間がないから」と呼ぶ)できるだけ簡単にやります。  要するに税収見積もりと申しますのは、見積もりの時点でリニューし得るデータ、例えば当初予算の編成の時点ではわからなかった前年度の実績といったものが補正の段階で判明しておりますと、その段階でそれを実績に置きかえて計算し直すわけでございます。四年度のこの給与に係る源泉所得税収につきましても、まさに御指摘のように景気の低迷を反映いたしまして給与総額そのものの伸びは低下が見込まれる、確かにそのとおりだと思いますし、そのように見込ませていただいておりますけれども、その一方で、土台となります三年度の税収実績が判明しておりまして、この三年度の税収実績が四年度当初予算をつくりました際の見込みをかなり上回るものとなった。つまり、こういうときに土台増という言葉を使うのでございますけれども、土台増を生じたことに理由がございます。  その結果たまたまそういう現象が起こっているわけでございますけれども、今御指摘がございました一千四百何がしというその増産でございますが、三年度の実績見込みを基礎にいたしまして、そのときの給与総額がたしか二百二十三兆何がし、二百二十三兆七千六百八十億円であったと思いますが、それをもとにしまして、四年度の給与総額の伸びを六%ぐらいに置いて計算しておったわけでございますけれども、実は、補正の編成に当たりまして見直しを行いましたところ、給与総額の伸びは低下するのでございますけれども、土台となります三年度税収につきまして二百二十三兆九千百三十億円、給与総額が増加することが見込まれた、その結果、今のような千四百五十億円という差し引き増加を計上することになる、増加を見込むことになるわけでございます。  御指摘ございました点でございますが、この千四百五十億円を一万人で割って、例えば一人当たり千四百五十万円の所得がサラリーマン一万人について生じた、こういうふうにもこれをちょっとごらんいただいたかと存ずるのでございますけれども、これはそういうことではございませんで、この一千四百五十億円の増というのは、四千五百五十二万人という納税者全体に係る給与総額の、たまたま当初予算との関係で生じた見かけ上の増加額によるものでございまして、その点は御理解を賜りたいと存ずるのでございます。
  178. 中西績介

    ○中西(績)委員 この点は後でもう一回細かくお聞きしたいと思いますから、資料を添えて私らに説明なりなんなりしていただきたいと思います。どうもこれ、こういうような結果が出るとは信じがたいのですね。ですから、その根拠なりなんなりをやはり明らかにしていただきたいと思います。  それから次に、法人税の見込みにつきましてお答えいただきたいと思います。  法人税は、昨年の八月の二十八日に総合経済対策を閣議決定いたしまして、「金融システムの安定性の確保」を掲げていろいろ措置をされました。「迅速かつ的確な処理が図れるよう、」云々というようなことで、いろいろな通達なりなんなりがなされておりますけれども、この分について、債権償却特別勘定の条件緩和だとか貸付利子の減免だとか、あるいは不良債権買い上げ会社への不良債権売却による即時償却の問題等、いろいろあると思うのですけれども、このような行政手段によって法人税減免は補正予算で幾ら見込んだのか、この点お答えください。
  179. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 補正予算では、法人税収について見直しを行います段階で、それまでの課税実績でございますとか、大法人に対します聞き取り調査の結果を集計いたしまして、そういうものを土台にしまして見直しを行ったわけでございます。  その際、総合経済対策影響のみを取り出して、それが幾らかという見積もりは特にいたしておりません。したがいまして、今御指摘になりましたようなものが全体としてどの程度のものであるかということをそれとして取り出してお示しすることはできないわけでございますけれども、ただいま申し上げましたように、法人税収を見直すに当たりましては個々の企業に問い合わせをしておりますので、個々の企業において種々の総合経済対策の効果をそれぞれに織り込んだ、その上での税収見込みを報告していただいている、こう考えますれば、その限りにおきまして総合経済対策影響もその中に織り込まれている、補正後の予算額に反映されているというふうに考えることができようかと思います。
  180. 中西績介

    ○中西(績)委員 それじゃ、この点はまだまだ将来的な問題を含めて今完全にお答えすることはできないと思いますから、一応これはおきます。この分につきましても、将来的にどう結果はなるか、あるいはなるだろうか、もしおわかりになるようだったら、後日またこの点についてお示しいただきたいと思います。  そこで、今回の二月に行われました公定歩合引き下げ問題ですね、さらに不良債権の償却を容易にするものだと私は思いますが、これについての見込みもおわかりじゃないですか。
  181. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 先ほどの御答弁と多少重複いたして申しわけございませんけれども、今回の公定歩合の引き下げの影響というものを取り出して申し上げるということはなかなか難しい問題でございまして、特に、それとして、今それに見合った見積もりを我々が計算するということはいたしておりません。
  182. 中西績介

    ○中西(績)委員 私たち素人から見ますと、そうしたいろいろな、公定歩合引き下げすればどこに影響が出て、どれだけのものが財政に影響あるかというようなことがやはり気になるわけですね。ですから、これは国民的な一般的な考え方じゃないかと思うのですよ。だから、そうした点あたりを大蔵省なりあるいは政府はやはり皆さんにわかりやすく、私らがわかりやすくこれをお示しいただくことが、特に予算なんかを論議する際に大変重要じゃないかと私は思っています。したがって、これから後、可能な限りこれらについての資料等の提出を要求をしておきたいと思います。  そこで次に、平成四年度補正の減収見込みというのは、常識的にいえば、私は過小見込みではないかと思っています。言いかえると、今度平成五年度の税収見込みは逆に今度は過大になるのじゃないかということを私は感じるわけでありますが、この点についてはどうでしょう。
  183. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 景気がこういう状況でございますので御心配をおかけしている。ただいまの御指摘の点、御指摘の趣旨はよくわかるわけでございますけれども、現在までに判明いたしております税収の足取りに御注目をいただきたいと存じますが、十二月末までの法人税収の累計というのは確かに補正後見込みました伸率を下回っておるのでございますけれども、これまでの税収実績を分析いたしてみますと、平成四年三月決算法人に係ります法人税の還付金というものが相当多額に含まれておりまして、四年度の税制改正によりまして欠損の繰り戻し還付の措置が停止されたということから考えますと、その後は還付金の伸び率の低下が見込めます。  そういったこともございまして、これまでの累計伸率というものは実勢よりも低目の数値になっているというふうにも考えられます。法人税収につきましては、いずれにいたしましてもウエートの大きい五年三月期決算法人の税収がまだこれからでございまして、その税収に注目をしていきたいと思っているわけでございます。  ただいま御指摘ございましたのは、そういう四年度をもとにした五年度、五年度が過大になっておるのではないかという点にお話が及んでおったかと存じますけれども、この四年度の税制改正におきます欠損金の繰り戻し還付の停止措置の影響というのは、本格化するのは実は五年度でございまして、五年度の還付金が減少するということが見込まれるわけでございまして、還付前の税収見込み額の伸び率として五年度どの程度のものを法人税収に上げているかといいますと、約四%の伸びでございます。この四%の伸びと申しますものは、例えば民間調査機関においていろいろな予測が行われておりますけれども、ばらつきはございますけれども、そういったものを総じて平均してみました場合に、それほどかけ離れたものになっていない。これは経常利益の伸び率でございますけれども、そういったことも申し上げてよろしいかと存じます。  いずれにいたしましても、五年度の税収を見積もるに当たりましては、四年度の見通しを土台にいたしまして、五年度の政府経済見通し、これに準拠し、適正に見積もっておるつもりでございます。
  184. 中西績介

    ○中西(績)委員 この分についても、私たちが今までの税収見込み等から考えますと、これらについて必ずしも今言うような結果になってこないんではないかということを感じますので、これはまた後であれします。  そこで、金融機関の法人税の減収というのは、私は、住宅金融だとかいろいろなところ、もうすべてがだめになっていきよるんですね。こうしたことから考えますと、極めて大きな額になるはずだと私は思うわけですね。その影響は将来国民全体の負担に係るものになるわけでありますが、見込み額だとかあるいはその結果について国会に示すのが私は当たり前ではないかと思います。したがって、これが議会制民主主義の基本になるんじゃないかと私は思うのですけれども、そうした点について、これから用意があるのかどうか、この点だけをお答えください。
  185. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 法人税収を見積もります場合に、法人税全体の動向につきまして見積もりを行っておりまして、特に金融機関に係る法人税収を取り出して見積もるということはしていないわけでございます。  それは、経済見通しそのものも、金融機関といった各種業態ごとの見通しというものが経済見通しの中から明確にならないということもございまして、やむを得ないことと存じておりますけれども、ただ、ただいまのお話を伺っておりまして、金融機関に係る法人税の結果でございますけれども、この結果につきましては国税庁が行っております会社標本調査というのがございまして、この会社標本調査の結果におきまして金融保険業という分類をしておりますが、この金融保険業の法人税額を例年集計しておりまして、これは本予算委員会にもその結果を提出させていただいておろうかと思いますし、まだ提出をしておりませんでしたら提出させていただきたいと存じます。
  186. 中西績介

    ○中西(績)委員 したがって、私はこうした点、やはり先ほど防衛庁との関係だとかいろいろここで論議されましたけれども、やはり国会の位置づけというのを明確にしていただきまして、それに合致できる国会のあり方というのを考えるときに、行政の皆さんがそれに対応してどう協力をするかということは極めて私は重要だと思います。  したがって、これから一つずつこうした問題等につきまして指摘をしてまいりますので、大臣、ぜひこうした点については、開かれた体制というのをどうつくるかがこれからの課題ですから、ぜひこの点の御理解をいただきたいと思います。
  187. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 国会で予算の御審議をお願いするに当たりましては、当然その中の一部であります歳入につきまして、いろいろな点で資料を提供して御議論いただくことは当然のことだと私は思っておりますし、いろいろな点で資料提出その他をやっていきたい。開かれた国会でありますように私も努力いたしたいと思っております。
  188. 中西績介

    ○中西(績)委員 それでは、時間がありませんから、簡単に二点だけお聞かせいただきたいと思います。  最近の経済企画庁の調査によりますと、消費者意識指標、平成四年十月から十二月期の動向を前期比で見ますと、消費者の消費冷え込みの原因が、第一に雇用不安、第二に将来の所得、第三に暮らし向きの不安であることを示しています。  そこでお聞きいたしますけれども、現在パイオニアなどで、これはたくさんほかにもございますけれども、発生している便乗合理化、中高年齢層の解雇に対して政府は積極的に指導すべきだと私は思いますけれども、この点について、雇用悪化をどうこれから防いでいくかということをお聞かせいただきたいと思います。  それからもう一つは、現在日経連が強調しているベースアップ・ゼロの春闘対策は、業種、業態、業況の違いを無視して一律に賃上げの打ち切りを図るためのカルテルであろうと私は思います。政府はこのような賃金抑制カルテル排除のために積極的役割を果たす必要が私はあると思います。何か具体的な方策なりがあるかどうか。この二点についてお答えください。
  189. 村上正邦

    ○村上国務大臣 第一点でございますが、経済全体で雇用調整が広がる動きを見せている中で、一度に大量の退職勧奨を行うことはいたずらに雇用不安を助長することとなり、社員はもとより社会的にも重要な問題であると認識いたしております。このためパイオニアに対しては、定年年齢以前の年齢で再就職先が必ずしも十分に保証されていないまま退職を勧奨したことには問題があると考えますので、強く注意をし、今回の措置に関してその趣旨、経緯、対象者の動向等報告を求め、指導したところであります。  当面の雇用対策として、できるだけ失業者を出さないようにすることが大事であると考えまして、このため雇用調整助成金を積極的に活用することにより、雇用を維持していただくよう事業主に働きかけております。これらの事業主の中には安易な雇用調整の実施を反省する動きもございます。  二点につきましては、春闘に当たり、賃上げを初めとする交渉の課題について、これまでも労使はそれぞれの立場から意見を明らかにし、議論を活発に行ってきております。日経連の主張については、賃金決定についての経営側としての基本的な態度からの発言と承知しております。具体的な賃金決定は、例年経営状態などを勘案してそれぞれの企業、それぞれの産業、労使交渉を通じて行われてまいっております。私といたしましては、この春闘に対し、労使においてどうすれば経済の安定成長を確保し、国民生活の向上を図れるかといった国民的、経済的観点も含め、大局的な観点から円満かつ合理的な解決が図られるものと信じております。
  190. 中西績介

    ○中西(績)委員 終わりますが、とにかくベア・ゼロというこうした体制というのは、今企業のあり方が、極めて好況であるというところだってこれに全部右へ倣え、抑え込んでしまうというようなやり方がこの数年顕著になってきておりますだけに、こうした問題等については、ぜひやはり一点目の問題と同様に指導すべきではないかと私は思います。こうした点については十分御勘案いただきたいと思います。  以上で終わります。
  191. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて中西君の質疑は終了いたしました。  午後一時十五分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十九分休憩      ―――――◇―――――     午後一時二十六分開議
  192. 粕谷茂

    粕谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。河上覃雄君
  193. 河上覃雄

    河上委員 公明党・国民会議河上覃雄と申します。同僚議員が後半質問に立たせていただきますので、私の方は簡潔に、まず経企庁長官にお尋ねをいたしたいと思います。  いまだ長く続いておりますこの複合不況に対する適切な分析というものは、今後の景気対策経済政策の重要な課題でございます。  そこで、まず平成四年度の実質経済成長率は、政府は三・五%から一・六%に下方修正いたしたわけでありますが、果たして一・六%は達成できるのか、甚だ疑問が多いところでございまして、一・六%を達成するためには、後半の二・四半期を年換算にしてそれぞれ四%台の勢いで伸びる必要性があると思うのでございます。しかし、九三年一-三月期の企業収益は最悪と、このように言われている中で、年換算率にして四%台の伸びを確保することは極めて難しいのではないか。  間もなく四年度は終わろうとしているわけでありますが、現時点で振り返ってみて、十月から十二月期、一月から三月期に、それぞれ年率四%台の成長が確保できるという、あるいはできたという自信はございますか。この点からお尋ねいたします。
  194. 長瀬要石

    ○長瀬政府委員 お答えをいたします。  先生御指摘のように、我が国経済調整過程にございまして、大変厳しい状況にあること、御案内のとおりでございます。  本年度の上期で申しますと、四-六月〇・〇、七-九月マイナス〇・四、このような実績でございまして、このような実績を前提としながら見通しを立てているわけでありますけれども、御案内のように昨年三月の緊急経済対策あるいは八月の総合経済対策、これは申すまでもなく十兆七千億、このような財政措置を柱といたします総合経済対策でありますが、こういったことを踏まえまして、平成四年度の実績見込みといたしまして一・六%程度、このような見込みを立てているところでございます。  それで、その後の状況について御言及を賜ったところでございますけれども、三月の緊急経済対策によります前倒しに加えまして、八月の総合経済対策、これが実体経済の面に徐々にあらわれていく、こういうことでありまして、とりわけ十二月の補正予算の成立によりまして、この効果が本年に入りましてから一段と本格的に発現していく、こういうことでもございます。これに住宅投資の効果というものが相まつわけでありまして、これらが相まって次第に最終需要の伸びを高めていく、このように考えているところでございますけれども、御指摘のような点、今後とも各種経済指標等々、経済の情勢の変化につきましては細心の注意を払ってまいりたい、このように考えております。
  195. 河上覃雄

    河上委員 次に、五年度の経済見通しになりますが、政府の見通しであります三・三、これは非常に高く見積もり過ぎていらっしゃるのではないか。例えば民間設備投資で申し上げれば、バブル期の過剰設備投資のツケで金利負担あるいは償却費、人件費などの固定費の増大に苦しんでいる企業が、平成四年度実績見込みである対前年度比マイナス三・八%を一挙に二・四%まで高めて新たに設備投資をするということは考えにくい。民間の研究機関ではいずれも前年比マイナスもしくは低く見積もっておりますし、この設定を可能とする根拠は何であるのか、まず一点目はこの点についてお伺いしたいのと、あわせまして、さらに個人消費も高く見積もり過ぎていらっしゃるのではないか。  今回の不況、低迷の主たる原因に消費不振があります。個人消費は景気の遅行指標であり、個人消費の回復は底入れから六カ月程度おくれると言われているわけでありますが、これまでも、個人消費に対する政府の認識は甘かったのではないのか。九三年度に企業の業績が回復したといたしましても、個人消費の回復はこれでは秋以降になる。政府平成五年度の個人消費を二・八%と、平成四年度実績見込みの一・五倍近い設定をいたしているわけでございますが、この数字となるためには、平成五年度前半に消費が急速に回復することが前提になるのではないか。五年度前半に消費が急速に回復するという根拠は何なのか。これらあわせてお尋ねをしたいと思います。
  196. 長瀬要石

    ○長瀬政府委員 お答えいたします。  まず、民間設備投資について御言及なされたわけでありますけれども、五年度につきまして二・四%、こういう伸びでございます。ちなみに民間の見通しはマイナス三・三から三%、こういうことでありますが、この二・四%という伸びは、名目で見ましても平成二年度の投資額以下の低いレベルでございまして、平成四年度のマイナス三・八の後の二・四、こういうことでございます。  設備投資につきましては、平成五年度になってまいりますと徐々に景気回復の素地が生まれてくる、こういう中にありまして、比較的非製造業が底がたい動きを示すのではないかということが考えられますことに加えまして、三年度、四年度と既に大幅に減少したそのストック調整が徐々に圧力としては軽減されていく、こういうことでありますし、下期になってまいりますと、企業収益についても改善の兆しというものが見込まれてくる中で徐々に回復という方向に入っていく、その上での二・四、こういうことでございます。  民間消費について御質問を賜りましたけれども、民間消費につきましては、これは実は、平成四年度の一・五%という伸びは、これは石油危機のときの一・四とほぼ近い、大変低い伸びでございまして、このような平成四年度の低い伸びといいますものは、これは御高承のように時間外手当が三年続けてずっと下がってきている、その結果雇用者所得がかなり鈍化しているということに加えまして、消費性向の要因からいたしますと、株価の低迷等によります逆資産効果がとりわけ平成四年度に働いてきたということでありますとか、あるいは家計の中での耐久消費財のストック調整が行われているということでありますとか、景気の低迷のもとでの消費者のマインドが慎重化している、こういう事情があるわけでございますけれども、平成五年度に入ってまいりますと、物価が落ちついている中で徐々に生産が回復してまいりますならば、時間外労働そのほかの面も含めまして雇用者所得が四年度よりは伸びを高めていく。そういう中で、ただいま申しましたような消費性向を低めている逆資産効果あるいは消費者マインド、ストック調整、こういった面につきましても四年度とは逆の方向での回復への徐々なる変化というものが生まれてくるのではないか。そういう背景の中で御指摘がありましたような見通しの数字を掲げている次第でございます。
  197. 河上覃雄

    河上委員 今御報告がありました点に即しまして、きょうは主に雇用問題について私は質問をしたいと思っているわけでございます。  そこで、昨年の夏総合経済対策が打ち出されまして十兆七千億の景気対策を進めてきたわけでありますが、その効果はまだ十分とは言えない。特に、最近の雇用動向に非常に心配をいたしております。  御承知のように、雇用は景気の遅行指標である。たとえ景気回復したとしても雇用状況はすぐに回復しないのでありまして、これまで企業は不況に対して労働時間や賃金の調整、これで対応いたしてまいりました。しかし、不況がさらに続けば、解雇を含む雇用調整がさらに拡大する懸念もございます。春闘はこれから山場、経済界はベアなし、定昇のみと、厳しい姿勢をとり続けているわけでございます。しかし雇用は確保したい、こうしているわけでございますが、現実の雇用調整の実態を目の当たりにいたしますと、雇用不安はひたひたと忍び寄ってきているのではないのか。いずれにしても、雇用問題は今後の景気の動向いかんにかかっていると思うわけでございます。  そこで、第一点目にお伺いしたいのは、我が国の場合、実質成長率三%を切れば失業は増大する、こう言われているわけでございまして、したがって実質成長率三・三%が達成できるか否か、雇用にとっても非常に重要な問題になるわけでございます。民間研究機関等では、平成五年の経済見通しを三%あるいは一%どちらかだ、政府経済政策がうまくいけば三%、失敗すれば一%、こんな見方もあるわけでございますが、仮に成長率が一%程度となった場合、失業率等の雇用動向はどうなると考えられているのか。また、民間研究機関等が予測する平均値二・八%だった場合にはどうなるのか。この二つの観点からお尋ねしたいと思います。
  198. 齋藤邦彦

    ○齋藤(邦)政府委員 経済成長率と雇用との関係、こういうことだというふうに思いますが、雇用情勢、そのときの経済情勢あるいは企業の先行きに対します予測の違いというようなことによっていろいろ異なってくるだろうというふうに思います。したがいまして、経済成長率が何%だから失業率は何%になる、あるいは雇用情勢にどれだけの影響が来るかということを定量的に計算するというのは非常に難しいことだというふうに思います。一般的に申し上げれば、当然のことながら、経済成長率が下がってくれば雇用情勢に悪影響が生じ、したがって失業の増加ということになり得るのではなかろうかということは一般的に申し上げられると思いますが、それを定量的にどうというのは甚だ難しいことではないかというふうに考えております。
  199. 河上覃雄

    河上委員 先ほども申し上げました、現実問題として雇用情勢というものは非常に厳しくなっている、こう思うわけでございます。残業規制、臨時あるいは季節、パート労働者の削減、それから配置転換、出向、希望退職の募集、そして解雇、このように雇用情勢は変化しつつ厳しい環境になってきているのではないのかと私は思うわけでございます。しかも、平成五年三月期の企業収益の悪化、不況の長期化、深刻化を考えれば今後はさらに拡大の懸念大いにあり、このように思うわけでございます。その意味で、この雇用情勢の御認識、もう一度どのように労働省としてはお考えなのか、この点御回答いただきたいと思います。
  200. 齋藤邦彦

    ○齋藤(邦)政府委員 有効求人倍率が昨年の十月に一を割りまして以来、三カ月間連続をして十、十一、十二、一倍を割っております。一月分の有効求人倍率、明日公表予定でございますけれども、同じような状態が続くのではないかというふうに思っております。それからまた、失業者数は増加しておりまして、十二月失業率も上がるというような状態になっておりまして、雇用情勢は非常に厳しい状況が続いておるのではないかというふうに認識をいたしております。  またさらに、いろいろな事例がございますけれども、事例から見ましても、管理職、中高年齢者を対象といたしました希望退職、勧奨退職、さらには学卒者の採用内定取り消し、こういうような事例も見られますので、極めて警戒を要する状況である、このように認識をいたしております。
  201. 河上覃雄

    河上委員 まだまだ私は、雇用不安に対する意識、厳しいんじゃないのか、また逆に申し上げれば非常に甘いのではないのか、こう思うのです。  今も有効求人倍率のお話が出ました。九一年三月の一・四七をピークにいたしましてずっと低下をし続けているわけでございまして、九二年の七月まで十六カ月連続対前年比減になったにもかかわらず、人手不足の不況という状況は変わりない、こう言い続けてこられたわけです。さらにまた、九二年十月の有効求人倍率が一を下回った時点でも、東京圏、これは東京、神奈川、千葉、埼玉等は既に〇・八一、こうなっているわけですが、この時点でも円高不況時のような深刻な状況にはならない、こう見通しを繰り返された。そして、昨年の十二月に実施いたしました第二回目の聞き取り調査等で、円高不況時に接近しつつある、こういう認識をやっとお示しになられた。ようやく複合不況下の厳しい雇用情勢に対する判断の修正をなされたんではないのか。このような変化を見てみますと、大分私は甘いのではないのか、こういう思いをせざるを得ません。  そこで、もう一遍お伺いしたいわけでございますが、労働大臣、本当に雇用は大丈夫とお考えなのか、この点について御答弁をいただきたいと思います。
  202. 村上正邦

    ○村上国務大臣 ただいま甘さを指摘されたわけでありますが、今後についても雇用情勢の厳しい状況は続く、このように認識をいたしております。  そうした中で、できる限り失業者を出さないようにすることが第一義であり、労働省といたしましては、あらゆる機会をとらえて、企業が雇用の維持に真剣に取り組むように、また労働省としても積極的に雇用不安を醸さないように働きかけていきたい、このように思っております。
  203. 河上覃雄

    河上委員 私は、この雇用情勢等を判断する際、マクロ統計偏重の考え方が背景にあるんじゃないのか、そこに認識の甘さが出てきているんではないのか。ただいまの御答弁の中にも有効求人倍率のお話が出ておりましたが、無論私も、マクロ的視点では有効求人倍率が景気情勢の有力な判断材料であって、あるいは有力な経済指標であることは存じ上げております。  しかし、この有効求人倍率にも限界があるわけでございまして、これは労働省の雇用動向調査でも明らかでございますが、製造業の二七%しか職業安定所を経由してない、残りの七割強は、新聞や雑誌や求人広告や人材派遣会社あるいは知人の紹介、こういう経路で職を求めているわけでございまして、建設業では百人のうちわずか六人、つまり六%しか公共職業安定所を経由する数はない、こういう事実もあるわけであります。求人倍率は公共職業安定所を経由する求人と求職との比率でございますので、カウントされない部分がたくさんあるわけですね。これが一点目でございます。  さらに、雇用逼迫期等は複数の異なる安定所に重複して登録するケースも多いわけでございまして、五十人の人を求めようとすると三カ所ないし四カ所に登録をなされば、これは三カ所で五十掛ける三、四カ所であれば五十掛ける四、つまり、求人としては五十名にもかかわらず百五十名、二百名とカウントされてきてしまうわけでありまして、もちろんこの重複を避けるというのは事務手続上私も大変な困難性を伴っているんではないかと思いますが、この有効求人倍率あるいは新規求人倍率、これはそのまま今のような事実もここにすべて反映されてしまう。すなわち、実態との乖離というのは多いんじゃないか、こう思ってます。一を超えれば高目にあらわれる、したがって一を切れば実態以上に雇用情勢は悪化しているんだ、私はこういう厳しい認識でこういう不況期は臨んでいかなければならないんじゃないか、こう思っております。  したがって、マクロ統計偏重、これだけで見ているという行き方、私はこれは片手落ちではないのか。むしろ今回のような不況期はヒアリングの回数を積極的に多くするとか、あるいは足で稼いで雇用実態というものをやはりつぶさに見聞をしてきて今後の雇用情勢について的確に判断をする必要があるんじゃないか、こう思うんですけれども、どうでしょうか。こういう調査、あるいは歩いて確認してそしてその上で積み上げる、こういう手法、おとりになりませんか。
  204. 齋藤邦彦

    ○齋藤(邦)政府委員 確かに有効求人倍率、公共職業安定所において受け付けました求人と求職者の数の比率でございまして、これをもって労働市場全体の需給をあらわすものではないということはそのとおりだというふうに思いますし、私どももそうだと思っております。ただ、この有効求人倍率と申しますのは、景気動向に伴います雇用動向を判断する上で、今まで経験的に非常に状況をあらわしております。したがって、その速報性から見て非常に有効な一つの数字的な指標ではないかというふうに思っておりますが、先生御指摘のように一を割ったからどうこうということではなくて、その下降傾向が極めて急激であるとかという方がむしろ雇用情勢についての問題点としては大きいだろうというふうに思っております。  私ども、雇用動向を把握していろいろな対策を講じますときに、求人倍率だけで判断をするというのは適当ではないというふうに思います。いろいろな調査もございます。労働力調査あるいは労働経済動向調査というような統計調査もございますが、あわせて、我々としては本当に生きた実態の姿を把握するように努めなければならない、このように思っております。  八月、九月に各経済団体あるいは各産業の代表者からヒアリングをいたしました。また、十一月、十二月にかけまして各経済団体からも事情を伺いました。また、十一月には各地方からそれぞれヒアリングも行いました。そういう意味で、私ども実態把握には十分努めていきたい。また、各都道府県にも、各管内の実態を十分把握して毎月毎月本省へ報告するようにという指示もいたしておりますし、また先生御指摘のように、少し今後の見通しも含めまして、三月に入りましたら各経済団体、各産業から改めて事情を伺うような機会はつくっていきたい、このように思っております。
  205. 河上覃雄

    河上委員 ひとつきめ細かに、そして足で稼いで見きわめていただきたいと重ねて要請をしておきたいと思います。  次に、企業内失業の実態という側面からお尋ねをしたいと思います。  我が国は終身雇用制のもとで、七三年、七八年の二度にわたります石油危機、さらには八六年の円高不況を経まして、失業救済等の側面から、失業者は出さない、こういう雇用対策がとられてきたわけでございます。九二年度の完全失業率は二・一ないし二・二で推移をしてまいりました。しかし、一方で企業内失業という実態もあるようでございます。これについては、民間の日興リサーチセンター、ここで調べたところ、九二年八月時点では九十万人の企業内失業がある。あるいは富士総合研究所、ここでは百万人の企業内失業がある。企業はできるだけ解雇をしないで、労働時間、賃金の調整、関連会社への出向等、これで調整をしているわけでございますが、企業が過剰人員として抱える九十万人以上の実質的な失業者が人員整理をされた場合には、個人消費の伸びを一・二%低下させる、実質経済成長率を〇・七%下げる、このようにも言われているわけでございます。  そこで、何点かお尋ねをしたいわけですが、いわゆる企業内失業、これにつきましてはデータとしての根拠にさまざまな見解をお持ちのようでございますが、実態といたしまして、企業が余剰人員として抱えている潜在的な失業者、これがあることは事実であろうと思います。ある学者においては三百万人とも言っているわけでございますが、きょうは外相いらっしゃいませんが、外相も八月の閣議ではこの点に触れられて、「わが国は実質的な社内失業を配置転換で吸収しており、失業として数字に出てこない」「わが国雇用情勢は統計に表れた以上に厳しい実態だ。景気対策は心配しすぎるぐらいの気持ちでやる必要がある」、こうした発言もございました。労働省としては、この実質的な社内失業の実態把握をなさっていらっしゃるんでしょうか。この点から御質問します。
  206. 齋藤邦彦

    ○齋藤(邦)政府委員 ただいま先生御指摘のように、昨年の十月以来いろいろな民間研究機関が、企業内失業九十万人とか百万人とかいろいろな数字を発表しております。この数字を見てみますと、ある一定の仮定のもとに計算をしたものでございまして、必ずしも厳密な数字ではなかろうというふうに思います。また、先生先ほど御引用されましたように、我が国の企業では生産変動に応じて直接労働者数を変動させるというような考え方は通常とっておりませんので、そういう意味からいきまして、生産減に対応した労働者の減というのを即企業内失業者と言うのはいささか言い過ぎではなかろうか、こういうふうにも思います。  最近の労働経済動向調査によりますと、昨年十一月ですけれども、製造業で一五%の事業所が雇用過剰感を持っております。そういうようなところから判断をいたしますと、各企業で雇用過剰感が高まりつつあるということは言えると思いますし、そういう意味で雇用調整の広がりを我々としては警戒をしなければいけないというふうには思いますけれども、数字的にどうかということになりますとなかなか難しい問題があろうか、このように考えております。
  207. 河上覃雄

    河上委員 これは実態もしっかりと把握をしていただきたいし、製造業以外でも過剰感というのはだんだんだんだん出てきているのではないのか、こういう事実にございます。歩いて本当に考えますとよく現実というものが見えてくるわけでございまして、この点、なお一層お願いをしたい、こう思っております。  そこで、私は最近新聞に出ております内定取り消しという問題について触れたいと思います。  不況による業績悪化を理由にいたしまして、四月から入社予定の企業、ここから内定取り消しを受ける学生が続出している。社会問題化してきているわけでございますが、大変びっくりいたしましたと同時に残念なことである、こう思うのでございます。希望を抱きながら実社会に初めて臨む若い方々が、現実という社会の重圧に入り口で出ばなをくじかれて、心の中に何らかの傷をつけられてしまう。私は、許されないことじゃないか、またこうした事実が雇用調整の一環として多く出てきているんではないのか、こんな感じもするわけでございます。  労働省にお調べいただきました。五年三月の学校卒業者の内定取り消し状況、高校で八社、五十四名、大学で五社、六十八名、合わせまして九社、百二十二名、こういう数字をいただきました。マスコミの調べでございますと、関西の四年制私学四十二校を対象に調査いたしまして二十八校から回答を得たそうでございますが、二十八校、この調査の中で五十五社、八十一名の内定取り消しがあった。ちなみに、五十年、オイルショックの時期であります。オイルショックの時期には、中学校で十九名、高校で三百十三名、大学で二百七十九名内定取り消しがあった。合わせまして六百十一名になるわけでございます。  大臣、まず内定取り消しという事実、どんな御感想をお持ちになられますか、お答えいただきたいと思います。
  208. 村上正邦

    ○村上国務大臣 新卒者の採用内定取り消しについては、本人及び家族はもとより、社会全体に対しても大きな打撃と不安を与えるものであり、あってはならない重大な問題であると認識いたしております。
  209. 河上覃雄

    河上委員 内定取り消しの法的性格を一般論として申し上げますと、企業からの募集に対して応募は労働契約の申し込みであり、これに対する企業からの採用内定通知はこの垂オ込みに対する承諾、そして、誓約書の提出によりまして解約権留保つき労働契約が成立したとされるわけでございます。そして、この「留保解約権の行使は、客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当と是認されることができる場合にのみ許される」、これは最高裁の判決でございまして、こういうふうになっているわけですが、私は疑問に思うところもあるわけでありまして、合理的理由か否かという問題は裁判を起こした場合に司法において判断されることになるわけでありまして、じゃ、一体裁判を起こさなかった場合どうなんだろうか。そうしますと企業からの一方的な通告で事はすべて終わってしまう、これでいいんだろうか。  そういうところで労働省はこの問題に対しまして通達をお出しになっていらっしゃる、内定取り消しが起こらないように指導していらっしゃることは私も十分承知上げておりますが、さて、起きてしまった場合は、労働省としてできることは再あっせんしかない、この道しか何もない。裁判というのは長い時間もかかるし、費用もかさみます。なかなかできない。これでは企業の一方的措置に泣き寝入りするという感は免れないのではないのか。すっきりしないわけでございます。  それで、通達の第一項目にもございます。「採用内定の段階であっても労働契約が有効に成立していると認められる場合があり、その場合には、相当な理由なしには取消しを行えないこと等について十分指導を行う。」と、労働省はこうした通達をお出しになっておりますが、じゃ、この通達にある「相当な理由」というのは何か、こう尋ねたところ、「相当な理由」の専らなものは企業の倒産と経営の悪化だ、これが主なものだ、こう言うわけでございます。倒産はともかくとして、経営悪化というのは企業の自主的な判断で、どこまで一体どうなのか全然わからないわけでございます。一向に私は具体的ではない、これでは企業は程度の差こそあれ、経営が悪化しているのでと言えば内定取り消しは全部行われる、こう解釈しても一向に構わない、こんなふうに思っております。  そこで、この問題を重視いたしまして、つい先日、二十六日、関西の百五十九大学、短大の就職担当者で構成しております関西学生就職指導研究会、これが採用取り消しをした、一定規模がありながら悪質と認知した十四の企業名を公表いたしました。これは、社会的な制裁として関西のこの研究会は公表させていただいた、こういうわけでございますが、この公表について労働省としてはどんな見解をお持ちかこの点お尋ねしたいと思います。
  210. 齋藤邦彦

    ○齋藤(邦)政府委員 学生の採用内定の取り消しにつきましての基本的な認識は、先ほど大臣から申し上げたとおりでございますが、私ども、先生るる御質問ございましたように、いろいろな場合を考えて、こういう場合はどうだとかああいう場合はどうだとかいうことよりも、むしろ先にとにかく事業主の方に誠心誠意努力をしていただきたい、そういう意味での指導を加えることが基本的に大事だろうというふうに思っております。  ただ、御質問ございましたような公開ということになりますと、またいろいろな問題があろうかというふうに思いますが、私ども現在やっております措置といたしまして、採用内定取り消しを行った企業につきましては、翌年度の新卒の募集を対象とする求人を受け付ける際に、その事実を求人票に記入することにいたしております。したがって、翌年度の採用に当たって関係者の注意といいますか、そういうものは十分に払われるようにということで、そのような措置をとっているわけでございます。  ただ、そのようなことで十分であるかどうかということはいろいろ御議論があることだというふうに思いまして、大臣からの御指示もございまして、現在どのような対応策があるか、具体策について研究をいたしておるところでございます。
  211. 河上覃雄

    河上委員 数量が小さいとどうも認識が希薄になるのじゃないかと思いまして、私もこれいろいろとみずから大学へ電話をして聞きました。そこで、内定取り消しの実態を正確に労働省としては把握をするべきだ。百二十二名どころじゃないと思うのです。さっきも御報告したように、関西の四年制の私学のみで五十五社、八十一名いるわけでありまして、労働省が発表されております、つかんでおります数字を、もう関西のこの小さな部分だけでも超えているわけです。ここに国公立の大学、そして高校、中学と加えたらもっともっとあるのじゃないのか、短大まで含めて。私は、実態がもっと大きく存在するんだと思っているわけでございまして、これは早くからやはり調査しなければならないのじゃないかと思うのです。  そこで私は、東京と関西の大学就職部に直接いろいろと見解を伺ってまいりました。そこで共通して言えることは、企業からの内定取り消し通告は一片の文書による通知が大半である、こういうことでございます。しかも通告が遅い、これが一様に言っていることでございます。企業の業績の悪化に伴うものとはいえ、これでは若い人の人生が変わってしまう、早い段階であれば大学の就職部としてよい企業に入れられる、二月に入って通告もあるが、これでは全く対応できません、企業は自分の実態をよくわかっているんだから早く連絡すべきである、また内定取り消し浪人というのもふえているんです、こう言っております。さらにこの背景として、大学就職部も企業も政府経済見通しに基づいて仕事をしています、経済見通しの甘さが雇用の悪化を招いていると、正確な景気見通しと雇用情勢を要望いたしております。  またさらに、内定取り消しは企業から労働省に報告する制度があってもよいのじゃないのか、これが一つ。企業に対して早い時期に通告するように指導してもらいたい、こういう意見もございました。また、有効求人倍率の数字をいつも注目して見ておりますが、一を切った段階でもっと適切な対応ができなかったのか、こういう意見もございました。雇調金を内定者に活用して取り消しを解消してほしい、このようなさまざまな意見もございました。  二月十五日に、労働省はこの問題についてさらに通達をお出しになりました。中学、高校についてはより積極的な中身になっておりますが、大学の方は実質上職安を経由しませんものですから、こういう事実関係もあるのかもしれませんが、「情報を把握した場合には」では、これじゃ極めて消極的なあいまいなあり方じゃないのか。高校、中学の対応と同じようにせよ、私はこんなふうに思っているわけでございますが、どうでしょうか。早い通告に対するあり方、あるいは的確な経済情勢、雇用情勢の情報提供、内定取り消しの報告制度、先ほどもお尋ねいたしましたが、悪質なものは公表制度と、これら具体的な対応をやってしかるべきであろう、こう思いますが、これに対する見解をお伺いします。
  212. 齋藤邦彦

    ○齋藤(邦)政府委員 採用内定の事案についての事情といいますか事実を早急につかまなければならないという御指摘は、まさしくそのとおりだというふうに思います。そういう意味で、各都道府県にも、すぐに事情を把握の上私どもに報告するように、こういう指示をいたしておりますが、先ほど先生おっしゃられました数字で若干最新の時点の数字が判明しておりますので御紹介させていただきたいと思いますが、高校ですと二月二十六日現在で十二社、六十八人、それから大学の新卒者につきましては七社で百四十三人、こういうのを私ども把握しております。  それからさらに、先生御指摘になりました関西の研究会の調べでございますが、これにつきましては私ども把握をいたしておりませんでしたので、現在、早急に事情を把握をするように指示をいたしております。  それから、制度的にどうこうすべきではないか、こういう御指摘でございますが、先ほども御答弁申し上げましたように、大臣からの指示もございまして、現在、先生から御指摘のあった具体的な御提案を含めていろいろ研究をしておりまして、早急に実施に移したい、このように思っております。
  213. 河上覃雄

    河上委員 間もなく時間でございますので、大蔵大臣に一点だけ御質問をいたします。  G7、お疲れでございました。お疲れのところを恐縮でございますが、三党共同修正案に対する回答を本日正午と、しかし、お伺いしましたところによりますと、四時まで時間をかりたいと、延びております。回答がなかったことは甚だ遺憾でございますが、野党としては誠意ある回答を前提として四時まで待つ、このように判断しているところでございますが、待つということは一般的に申し上げますといい回答があるんではないのか、こうも理解できるわけでございます。  そこで大蔵大臣、所得税減税は効果なしと一貫しておっしゃっておりました。与野党これで合意ができた場合、政府、大蔵省としまして、今まで言ってきたこと、これをお認めになられ、大蔵省もこの減税をおやりになられますか。与野党で合意した場合、大蔵大臣はおやりになられるかどうか、明確にお答えいただければありがたいと思います。
  214. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 今、河上委員指摘のように、きょうの正午までに自民党側から御回答申し上げる、この話は聞いておりまして、何かその正午の回答はもう少し待ってくれ、夕方の四時ごろに御回答申し上げるということになっているようでございます。  実は私も、こちらにずっと入っておりましたし、それから昼の時間には参議院の方に行きまして本会議で趣旨説明をしたり答弁したりしておったものですから、まだ話を聞いておりません。また、自民党の方からも私の方にどうしろとかこうしろとかという話は私のところには正式にまだ言ってきてありませんから、今お答えいたしますのはどうかと思いますけれども、私としては、現在の段階では、政府・与党として最善だと思ってこの予算案を提出し、いろんな施策につきましてもこの予算案の中で出して、最善の予算として考えて出しておるわけでございますから、私の方としては修正するということは今のところ考えてないと申し上げるよりほかにしょうがないだろう、こう思っておりますので、御理解いただきたいと思います。
  215. 河上覃雄

    河上委員 では、同僚議員にかわります。ありがとうございました。
  216. 粕谷茂

    粕谷委員長 この際、東順治君から関連質疑の申し出があります。河上君の持ち時間の範囲内でこれを許します。東順治君。
  217. 東順治

    ○東(順)委員 私は、我が国の原子力政策につきまして、それからまた国連問題につきまして、二点にわたってお伺いをしたいというふうに思います。  最初に原子力の問題でございますが、高レベル放射性廃棄物の返還問題でございます。  日本の使用済み核燃料を委託再処理しているフランスの核燃料公社が、この高レベルの放射性廃棄物の第一回目の返還を一九九四年末までにしたい、こう強い要請があったということを伺っております。ところが、青森県六ケ所村に今建設中の一時貯蔵施設、この建設が実は九五年二月から稼働予定ということで、間に合わないのではないか、受け入れられないのではないか、このような疑問が出ておるわけでございまして、また、その施設の建設がおくれて空白が生じた際の対処はどのようにお考えなのか、まずこの点からお伺いしたいと思います。
  218. 中島衛

    ○中島国務大臣 今、東先生から御指摘のありましたとおり、フランスは高レベル放射性廃棄物、ガラス固化体の搬出を一九九四年中に開始したいという意向を持っておることは承知しております。また、六ケ所村の廃棄物管理施設の操業開始予定時期は一九九五年二月の予定でございます。我が国の電気事業者と海外再処理事業者であるフランスのコジェマ社との間で、話し合いが現在行われているところでございます。  いずれにいたしましても、我が国電気事業者とコジェマの話し合いによって返還開始時期が決められることになると思いますが、若干時期的な問題でずれもあることでもございますし、科学技術庁としては、ガラス固化体の返還が今後円滑に実施されるよう、必要があれば電気事業者の指導等を行ってまいりたいというように思っております。
  219. 東順治

    ○東(順)委員 続きまして、先般プルトニウム輸送のあかつき丸の航行ということで大変世界じゅうで話題になったわけでございますが、これを一つの機にして、いわば日本の原子力政策の硬直性みたいなものがいろいろと国際的にも批判を受けているというふうに思うわけでございます。それで、こうした最近の諸状況に照らして、このような日本に対する国際的な批判あるいは心配、そういったものをまずどのように受けとめておられるか、この点はいかがでしょうか。
  220. 中島衛

    ○中島国務大臣 今回、フランスからのプルトニウム輸送が内外の関心を引いたことは事実でございますが、理由の一つは、一部の反対派によって組織的な反対活動が行われたことも挙げられると思います。また、本件輸送に関して各国から疑問や懸念が出されましたけれども、情報不足があったことや、それから不正確な情報に基づく誤解等もあったんじゃないかと思います。  このような事態を踏まえて、関係諸国に対して、本件の輸送計画や我が国のプルトニウムの平和利用の計画等について正確な情報提供に努めなければならないと思っておりますし、今回のことについて各国政府レベルではおおむね理解が得られたんじゃないかと思いますが、今回の経験にかんがみまして、今後は我が国の原子力計画等について平和利用をすることを徹底する、そういうような正確な情報を時宜を得て提供していく努力をさらに強化してまいらなければならないんではないかと考えておるところでございます。     〔委員長退席、石川委員長代理着席〕
  221. 東順治

    ○東(順)委員 プルトニウムの輸送という問題に対する心配、批判ということもさることながら、やはりこれから我が国がどういう原子力政策でいこうとしておるのかということに対する懸念というものの方が私は強いのではなかろうかというふうに思うわけでございます。  というのは、十数年前、このプルトニウム返還を含む再処理を英国フランスに委託する、こういった当時の国際環境と今の環境というのは、十数年経て随分やはり変わってきておるというふうに思います。当時としては、二次にわたる石油危機の直後で、エネルギーの安全保障という観点から原発の期待も非常に大きいものがあった。あるいはまた、ウランの有効利用の観点から、使用済み核燃料の処理とプルトニウムの利用路線というものはなかなかいい選択じゃないかというような一つの国際的な認識といいますか、そういう背景というものがあった。ところが、その後石油の需給関係というものが結構緩和してきて、安定供給の状況になった。それで、軽水炉の原子力発電も一段と当時よりも今は安定してきている。あるいは、アメリカあるいはドイツ、フランス英国各国とも今、高速増殖炉開発導入ということに対して、これはストップをするという状況が今出てきている。それからまた、日本でも「もんじゅ」以降の建設計画というのが非常に大幅におくれてきているというようなことで、随分状況が当時から変わってきておる。  そういう中で、冷戦が終結をした。それで、今度は米国あるいはロシアからの核弾頭解体から大量のプルトニウムが出る、余剰のプルトニウムが出る。そしてまた、湾岸戦争後、イラクの核開発あるいは北朝鮮の核疑惑というようなことで、地球規模に核拡散の進行ということに対する懸念というのがにわかに広がり始めている。そういうさなかでのプルトニウム輸送ということで、果たして日本は一体どうなのかという、そういう十数年前と比べてはるかにまた違う厳しい目、世界の目というものが今あるわけでございます。私は、こういう背景が随分変わってきたということから、日本の原子力政策というものをしっかりとらえていかなければ大変なことになるのじゃなかろうかな、このように思うわけでございます。  そこで、具体的に伺いますが、九一年八月ですか、原子力委員会が発表したプルトニウムの需給見通しですね、供給が八十五トンで需要が八十トンから九十トンという、これでバランスがとれていると、このようにしておりますけれども、この見通しに変更がございますか、どうですか。
  222. 石田寛人

    石田政府委員 お答え申し上げます。  先生今お示しの需給見通してございますけれども、これはおっしゃいましたように、一昨年の八月時点で最も妥当と考えられました計画を前提に試算したものでございます。現時点では若干の計画変更はございますけれども、全体のプルトニウム需給には大きな影響を与えるものではないというふうに考えておるところでございまして、これからも需給につきまして一定のバランスをとりながら進めていく、そしてプルトニウムを使い切っていくということで進めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  223. 東順治

    ○東(順)委員 若干の計画変更云々というのは、具体的に説明いただけますか。
  224. 石田寛人

    石田政府委員 お答え申し上げます。  一昨年八月当時、例えば大間の新型転換炉実証炉の操業開始時期でございますけれども、これは二〇〇〇年と見込んでおりましたけれども、これは現在時点、二〇〇二年ぐらいでございます。  それから、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の臨界時期でございますけれども、当時は昨年秋、一九九二年十月ごろと見込んでおったわけでございますけれども、今現在はことしの十月でございます。  あるいは供給サイドでございますけれども、六ケ所村再処理工場の操業開始時期でございますが、これは平成十一年八月と見込んでおったわけでございますが、平成十二年一月というふうに延期されておるわけでございます。  そういうことで、若干のバランス、需要供給、両方とも変わっておりますけれども、先ほど申しましたように、全体計画には大きな影響を与えない、かように存じておる次第でございます。
  225. 東順治

    ○東(順)委員 軽水炉でも約五十トンのプルトニウムを使う予定だと、このようにされておりますけれども、燃料に加工する能力、軽水炉の燃料の一部として使うこの五十トン、これを燃料に加工する能力が足らないのではないか、大幅に足らないのではないかこのようにも心配されていますけれども、これはいかがでしょう。
  226. 石田寛人

    石田政府委員 お答え申し上げます。  今御指摘のMOX燃料加工工場、これはプルトニウム需給を図っていきますために非常に重要なファクターであること、御指摘のとおりでございます。  MOXの加工でございますけれども、これはヨーロッパに再処理委託いたしまして、そこから出てきますものの、これはプルトニウムでございますが、そのかなりのものにつきましては、フランスイギリス、ベルギー、ドイツ等で商業用のMOXの加工をする、そういう施設もございますから、そこで加工を頼むということになろうかと思いますが、それ以外のもの、国内の軽水炉用のMOX加工施設が必要でございます。これにつきましては一昨年八月の原子力委員会の方針に沿いまして、二〇〇〇年ごろの操業開始を目指しまして、年間百トン規模の工場を建設すべく現在民間関係者が鋭意検討中でございます。これらの計画を進めることによりまして、MOX燃料の加工、供給を確保することができる、かように考えておるところでございます。
  227. 東順治

    ○東(順)委員 それでは、この原子力開発利用計画、昭和六十二年度改定でもって「もんじゅ」の次の炉ですね、高速増殖炉の開発、これを電力業界にゆだねて、一九九〇年代後半に着工して二〇三〇年ごろまでに技術や経済性を確立すると。この開発目標を設定していたのが、従来路線を転換して、国が主導して新たに六十万キロワット級の第二原型炉を建設するというような大きな報道が、実は本年の一月五日付の毎日新聞ですか、出ておるわけでございます。これは事実なんでしょうか。あるいは事実とすれば、従来の方針を転換するというこの理由はどこにあるのでしょうか。これをお伺いしたい。
  228. 石田寛人

    石田政府委員 お答え申し上げます。  今先生お示しのような一部報道がございましたことは、私どももよく承知しておるところでございます。  現在の高速増殖炉の次の段階のもの、すなわち実証炉の計画でございますけれども、これにつきましては、具体的には日本原子力発電株式会社が平成四年三月に予備的概念設計研究を終了いたしまして、現在、基本仕様の選定に向けました作業が進められているというそういう段階であると承知しているところでございます。  高速増殖炉開発の進め方の詳細につきましては、原子力委員会の場で検討が進められているところでございまして、これまで国主導で「もんじゅ」の次に今おっしゃいましたような第二原型炉とでも呼ぶべきものを建設するという方針が決定されたような事実はないと承知しておるところでございます。  いずれにいたしましても、高速増殖炉の開発を含めまして、今後の原子力開発利用全般にわたっては、昨今の諸情勢を含めまして、先生先ほど柔軟に考えよというお話がございましたけれども、昨今の情勢を踏まえまして、原子力開発利用長期計画の審議の場でさらに議論を深めていただきたい、かように認識しておるところでございます。
  229. 東順治

    ○東(順)委員 昨今の状況を踏まえて柔軟にと、このようなことでございますけれども、目下八七年改定の第七回長計、長期計画、これがことしの秋まで改定作業の時期ということで、今当たっておるわけですね。  そこで、昨今の状況ということですけれども、例えばアメリカはカーター政権下で核不拡散政策というものを前面に掲げて、以来、高速増殖炉の開発計画というものを凍結をしておる。それからまた、ドイツに至っては八九年に再処理工場建設計画というものを放棄して、そして九一年に完成していた高速増殖炉実験炉の運転を断念をしておる。それからまた、フランスは有名なスーパーフェニックス、この運転を中止をしておる。英国に至っても運転中の原型炉を九四年に停止をすることを決定をしたというようなことで、諸外国が非常に高速増殖炉ということに対して今急ブレーキをかけておるわけでございます。それから国内的にも、今私がちょっと示しましたように、こういう路線変更の事実はないと今科技庁は言い切るのですけれども、こんなに大きく実際として国内的にもプルトニウム計画を見直す、国際批判を考慮し縮小する、高速増殖炉の開発日程も再検討するというようなことで大きく報道されておるわけでございます。  それで、私が言いたいのは、我が国は資源小国で、これから世界人口というのは確かに激増していく、そしてエネルギーの需要が増大する、これも見えておるわけでございます。そういう中で、我が国がエネルギーの安定供給へ努力をしていくということは非常に大事なことである。そして、中には、資源小国で技術大国としての日本の世界的義務だと、こういうふうにおっしゃっている学者も実はいるわけでございます。私も、日本がエネルギーの安定供給ということで世界的に貢献をしていくというこういう路線は非常に大事だろうというふうに思います。  再処理、プルトニウム利用の路線というその方向性としては、私は、決して間違っていないだろう、こういうように思うわけでございますけれども、先ほど紹介しました世界の諸状況、それから国内的ないろいろな、さまざまな論議、そういう中で何となくFBR開発、高速増殖炉開発というものは、これは絶対やっていくんだ、もう初めに開発ありきでいくんだ、大前提でいくんだという非常に硬直したかたくなな姿勢というものを私は感じる。実は、そこに世界の中で孤立をしてしまうんじゃないかという不安を思うわけでございます。  ドイツのヨゼフ・レムザーさんという研究技術省エネルギー・生命科学局長、この方がこのように我が国を見ております。ちょっと紹介させていただきたいと思います。   日本とドイツは、原子力開発について同じ道を同じ熱意で走ってきたが、現在はかなり違う。   再処理工場建設計画は放棄し、建設された高速増殖炉も運転を断念した。今、数千億円かかったこの炉をどう使うか議論中だ。単なる「技術的記念碑」とするのも一案。通常の火力発電所にするとか、使用済み核燃料の暫定貯蔵施設にする案もある。 こういうふうにドイツの状況説明した後、我が国につきまして、   結局、ドイツは高速増殖炉から完全に手を引いた。これは日本にとっては大変深刻な問題だと思う。ごく近いうちに日本は高速増殖炉を推進し、運転する唯一の国になるかも知れない。だが、この技術は自動車やエレクトロニクスとは違う。こう言っているんですね、原子力技術というのは。こんな複雑な技術開発が一国でできるのか、技術的パートナーが必要なのかを、日本は考えなければならないだろう。  危険を内包する技術の開発には世界に友人や支持者が必要なのではないか。少なくとも「同じことを、違った方法でやっている人たち」がいて、相互検証のできる体制がいるのではないか。このように述べておりますけれども、私は全く同感を覚えるわけでございます。  したがって、こういう非常に高度な原子力技術というようなものは、よきパートナーがいて、やはり検証し合ってより安全性を高め合っていくものであるし、また国際協調という観点から見ても、こういう考え方というのは非常に大事ではなかろうかというふうに思うわけでございます。したがって、この際私は、高速増殖炉の開発の大幅延期等を含めて、日本の原子力政策全体というものを勇気を持って徹底的にやはり見直す時期に今来ておるのではないか、そのように思うわけでございます。その上でこの日本立場を改めて内外に問う、このような姿勢が私は大事だろうというふうに思うわけでございます。  それで、この高速増殖炉の研究開発が必要としても、もっと謙虚な姿勢で世界の理解を求める努力、それから不安というものをぬぐい去る努力、こういったものが今求められている、このように思うのです。そのことをよく考慮して、どうですか、長官、今ちょうど改定の時期に至って、日本の原子力政策全体というものを徹底的に見直して、そして改めて日本立場というものを内外に問う、こうすべきだ、このように思いますが、いかがでしょうか。
  230. 中島衛

    ○中島国務大臣 今、東先生から国際情勢等も踏まえ、また高速増殖炉の開発等も踏まえて、原子力の長期計画、柔軟に対応しろというお話がございました。非常に傾聴に値する意見でございまして、十分考慮に入れさせていただきたいというように思っております。  原子力発電所で発生する使用済み燃料に含まれるプルトニウムは、技術によって生み出された我が国の貴重なエネルギー資源でございます。各国の原子力政策やエネルギー政策は、各国の置かれている諸事情により異なるものと考えられますが、エネルギー資源に恵まれない我が国としては、輸入したウラン資源の有効利用を図り、原子力発電によるエネルギーの供給の安定化を図るという観点から、使用済み燃料を再処理し、回収されるプルトニウムを核燃料として平和利用していくことが重要な課題だと思っております。  特に、プルトニウム利用の実用化に向けた技術体系の確立については、時間のかかるものであり、かつ、新エネルギー源の選択肢の幅を広げておくという視点からも、着実に進めてまいることが必要だと考えております。また、我が国のような大量エネルギー消費国が技術によるエネルギー源の確保を図ることは、世界のエネルギー供給の安定化にも寄与することでありますし、また、プルトニウムをエネルギー源として利用する技術を開発することは、人類共通の財産を持つことにもなると思います。  現在、原子力委員会では、昨今の原子力をめぐる内外の情勢の変化を踏まえまして、原子力開発利用長期計画の見直しに取り組んでおるところでございます。今、東先生から、国際情勢の変化等重要な点を指摘をいただきました。プルトニウムの平和利用については、本件をめぐる今後の国際動向にも十分注意を払いながら、着実かつ段階的に、また変化に柔軟に対応して、プルトニウム平和利用計画を進めていくことが重要だと考えております。
  231. 東順治

    ○東(順)委員 昨今の内外の諸状況の変化にかんがみというところで、ひとつ的確な、そしてかつ勇気を持ったそういう判断でもって原子力政策というものをしっかりと見直していただきたい。今一番その大事な時期であろう、このように思いますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。  それでは、時間も大分超過いたしましたので、国連の問題につきまして移らさせていただきます。  国連の問題でございますけれども、先日ガリ事務総長が来日されまして、国連の信頼性というものが今大変重大な岐路に立たされているというような話をしておりました。冷戦後、本当に世界でだった一つの世界フォーラムであるこの国連、これが果たして本来の機能を発揮するのか、あるいは米ソ対決時代とはまた別の機能麻癖の状態に陥ってしまうのか、非常に今厳しい岐路に立たされておる。国連の財政危機の問題、あるいは二十七カ国・地域で展開するPKOがまだまだふえる状況にある、あるいは予算のほとんどが国連の膨大な官僚機構、人件費というものに食われているというようなことで、このままだと国連が空洞化してしまうのじゃないかというような不安が今言われておるわけでございます。しかし、冷戦後非常に大事な唯一の世界フォーラムとしてのこの国連の機能、役割を十分に果たさせていかなければいけないということは、これはもうだれもが求めるところだろうというふうに思います。  そこで、我が国が今一体この国連強化のために何ができるのか、このことを今真剣に考え、実行に移すべきだ、そういうときだと思いますけれども、官房長官、いかがでございましょうか。
  232. 河野洋平

    ○河野国務大臣 委員指摘のとおり、国連にとりまして今極めて重要な時期、場面に直面しているというふうに思います。委員指摘をいただきましたように、冷戦後の世界、そして地球規模で起こるさまざまな出来事、さらには国連の財政的危機、そういったことを考えますと、宮澤総理が国連に行って提言をいたしましたように、国連そのものの改革というものが極めて重要だというふうに我々も考えております。  この国連の改革につきましては、六月をめどに各国がそれぞれ国連改革のための提案を持ち寄るということになっておりまして、我が国もまたその提案について検討をいたしているところでございます。
  233. 東順治

    ○東(順)委員 六月をめどに安保理に国連の改革に対する意見を持ち寄るということでございますけれども、何をポイントに、どういう基本的方向性でもってこの改革案づくりというものを行っておるのか、具体的にお伺いをしたいと思います。
  234. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 六月までに国連事務総長に意見を提出することになっておりますけれども、現時点において、我が国がどのような具体的な意見を提出するかについては目下未定でございます。  ただ、我が国といたしましては、従来より下記のような二点を主張しておりますので、この二点を踏まえたものになるかと思っております。  第一点は、国際情勢の変化に適合して国連自身が変革することが必要であり、かかる観点から、安保理の組織、機構についても見直しを行うことが必要であるというのが第一点でございます。  第二点は、国際の平和と安全の確保のため主要な責任を負う機関である安保理の信頼性と実効性を強化するとの観点から、安保理改革に取り組むことが必要である。この二点でございます。
  235. 東順治

    ○東(順)委員 非常に抽象的なそういう答弁を実は求めておるわけじゃないわけでございまして、六月までというとあともう三カ月、四カ月というわずかな期間であります。どういうポイントで、どういう基本的方向性のもとに国連改革の案を出そうとしておるのかということに対して、未定でございます、そういう答弁はないと思います。要するに、どこまで日本が国連改革というものに対して真剣に考えていこうとしておるのかということを聞いておるわけでございまして、こういう答弁はないと思うのですね。  具体的にどのようなポイントで、どういう基本的方向性のもとに考えるのか、そこを実は一番よく今知りたい、そういう点でございまして、もし答弁があったら重ねてこれをお伺いしたいし、なければ、そんな姿勢なのかということを前提としてまたこの後の質問を進めたいというふうに思います。いかがでしょうか。
  236. 河野洋平

    ○河野国務大臣 国連改革につきましては、先ほども申し上げましたように、宮澤総理が国連に参りまして提案をした事実がございます。我々は、我々みずからが改革についての提言をいたしておる以上、真剣に、極めて重要な問題として取り組まなければならないのは当然のことでございます。  事務当局は、まだ具体的なポイントその他について申し上げるところまで問題が煮詰まっていないということを申し上げているわけでございまして、現在、抽象的な答弁でまことに申しわけなく存じますけれども、六月を目指して鋭意日本からの提案を煮詰め、具体的な案を持ち込むつもりでございます。
  237. 東順治

    ○東(順)委員 それでは、二、三具体的にちょっとお伺いしたいと思いますが、一九九五年に社会開発サミットが開催される、これが昨年十二月の第四十七回国連総会の本会議で決まったということで、これは大変意義深い内容であるというふうに存じ上げております。これまでややもすれば政治経済あるいは安全保障問題というものが前面に出て、世界の民衆の暮らしあるいは生活水準の向上、こういったことが国際社会の焦点として、政府首脳の議題として取り上げられるということはかってなかったことで、これがまともに取り上げられようとしておる。これは私は、今後の国連の方向を示唆する意味で非常に重大な意義を含んでいるものだろう、このように思うわけでございます。  そこで、世界生活サミットとも言えるこのサミットにつきまして、まず、我が国の国内という足元で、こういうものが行われますよ、非常に意味深いものですよというような広報宣伝活動、そういったものがどの程度行われておるのか、あるいはまた、NGOや市民レベル各層に議論を巻き起こすための問題提起というものが具体的にどのようにされているかについて伺いたいというふうに思います。
  238. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 この社会開発サミットは、昨年の国連総会において開催が決定されましたけれども、このサミットの準備委員会の開催がいまだ行われておりません。また、サミットの議題もまだ決まっていない状況でございます。国連は、一九九五年のこのサミット開催に向けて、今後準備委員会の開催の場等を通じて徐々に準備を進めていくことと思いますけれども、我が国としては、まずこの準備委員会での議題に積極的に参加していき、この準備状況を踏まえながら、国内広報にも最善の努力をいたしたいと思っております。  このサミットにつきましてはいろいろ意見がございまして、我が国としては、実はテーマをどのように絞り込むかという点につきましても若干疑念を有しておりますし、例えば、社会開発の個々の分野において予定されている閣僚会議がございます。例えば婦人とか人口、人権、犯罪防止といった会議と本件サミットの関連性などにつきまして、各国と今意見交換をやっている最中でございます。
  239. 東順治

    ○東(順)委員 ぜひ十分な国内の広報活動というもの、その時期が来れば全力を挙げてお願いしたいというふうに思います。  続いて、日本でただ一つの国連の本部機関であります国連大学ビルというのがこのほど完成しました。問題は、建物ができて、いよいよこれから中身が問われるというふうに思うわけでございます。  この国連大学につきましてはさまざまな見方がございまして、よくやってきたというような見方、あるいは反面、機能を果たすにはほど遠い状況というような批判がある。あるいはイメージがはっきりしない、あるいはまたテーマが漠然としていて、何となく会議とか計画というようなものだけが漫然と行われているというようなこととか、いい面悪い面というか、そういう意見がさまざまに交差している、それがこの国連大学の実態であろう。ところが、今後の国連を考えていったときに、この国連大学の充実というのは非常に大事なことであるというふうに思います。  そこで、我が国として、この国連大学というものを国連全体の本当の意味のシンクタンクにしていくためにどのような力添えをしていくのか、この辺をお伺いしたいというふうに思います。いかがでしょう。――では、文部大臣から。
  240. 森山眞弓

    ○森山国務大臣 国連大学は、国連総会によって設立された国連機関の一つでございまして、人類の存続、発展、福祉にかかわる世界的問題についての研究、研修及び知識の普及を目的とする重要な機関であるというふうに承知いたしております。  現在、国連大学は、具体的には地球環境とか途上国開発の問題などにつきまして、世界各地の大学や研究機関との連携協力によりまして、あるいは大学直属の研究センターを通じまして研究活動を行うほか、国連大学研修制度によって途上国の人材養成などにも積極的に取り組んでいると承知しております。  文部省といたしましては、昭和四十九年に国連大学が誘致されましたが、それ以来今日まで、暫定的な本部施設の提供をしてまいりましたり、また国連大学に対する我が国の大学や学界の協力関係の促進に努めてまいりましたが、昨年の夏には恒久的な本部の設備を完成させまして同大学に提供いたしますとともに、本年度から我が国の大学、学界との共同研究に必要な経費を拠出していくということになっております。  平成五年度の文部省関係予算案におきましては、国連大学に提供する設備備品費として三億円、同大学の学術事業を推進するための経費として一億四千万円を計上いたしております。国連大学がその目的に即した学術面での国際的貢献を充実させることを期待しているところでございます。
  241. 東順治

    ○東(順)委員 時間が余りございませんのでこれ以上申しませんが、要するに、お金や建物という段階からいよいよ知的な、例えば日本政府あるいは学界、国際機構の専門家等がどう知的作業に日本として貢献できるかという段階に入った、このように思うわけで、やはり日本に国連大学があるおかげで非常に国連が充実してきたというような、そういう面での国際貢献ということをしっかりやっていかなきゃいけないのがこれからの時代ではなかろうか、私はこのように思うわけで、ひとつこういう観点からよろしくお願いをしたいと思います。  それでは、最後になりましたけれども、一番大事な国連の民主化ということで、ぜひこれは日本として世界に提言をしていただきたいということがございます。それは、NGOの意見存在、そういったものをどう国連に反映さしていくか、このことをひとつ真剣に取り上げていただきたい、こう思うわけでございます。NGOは今は経済社会理事会とのみの協議ということに限定をされておるわけでございますけれども、これを安保理や総会というところにこのNGOの力というものを反映する、そういうシステムが何とかできないのか。そして具体的には、国連事務総長とNGOの代表との定期協議、あるいはその選別はなかなか難しいと思うんですが、このNGOの世界サミットと申しますか、そういったものを開催していく。ともかく今、五大国によって、拒否権みたいなものでもって、何となく先進国サロンみたいな感じがある、そういう国連に対して民主化の風穴をあけていく一つの大きな力としてこのNGOの存在というものをどうすれば国連に反映できるのか、このことを日本が考えて積極的に提言をしていただきたい、このように思うわけでございます。  なぜこういうことを申し上げるかと申しますと、どうしてもイメージとしまして、安保理の常任理事国に入りたいというメッセージ、そういったものは物すごくしっかりと見えるのですが、国連をこれから非常に大事な、冷戦後の世界で唯一の世界フォーラムなんだから国連改革というのを本当にやっていかなきゃいけないというような、その国連改革のためにはこうすべきだ、ああすべきだというような国連改革のメッセージというのはもう一つやはり日本から余り発せられてないんじゃないか。何となく安保理常任理事国入りというメッセージばかりが出ているんじゃないか。  むしろ私は、国連というのは非常に大事なんだから、これからこういうところを改革しますよというようなことで、先ほどから国連大学の問題とか生活サミットのこととかさまざま取り上げたわけで、そういったことに一々日本がどんどんメッセージを送りながら、だから安保理に入ればなおさら国連改革ができやすいんだというようなことであれば理解も得られる面も出てくるんじゃないかと思うわけでございますが、そういうことからまず国連の民主化、NGOの力を国連に反映すべしという日本が積極提言を行うべきであるということに対していかがでございましょうか、お答え願いたいと思います。最後にお伺いします。
  242. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 大臣がお答えになる前に、NGOに対してどのような評価を私どもがしているかということを御説明申し上げたいと思います。  国連においては、創設当初より経済社会理事会におけるNGOの役割に着目して、NGOが一定の役割を果たすべきことを想定しております。例えば、経済社会理事会との間で取り決めをNGOが結んで活動しているとか、あるいは特定の専門分野で適当な協議を行うとか、あるいは総会の下部フォーラムにおいてNGOが一定の協力関係を結んでいるというような事実がございます。特に、人権、難民支援、開発援助、婦人問題等多岐にわたる分野における国連の各機関の活動に当たりましては、NGOと密接な協力関係にございます。例えば、最近におきましては、ソマリア、モザンビークにおける人道救援活動においては、UNHCRとかWFPといった国際機関と各国のNGOとが密接な協力関係を結んで効果的な救援活動を実施いたしております。また、昨年のUNCEDにおいても多数のNGOが参画したということを私どもとしては高く評価しております。  ブトロス・ガリ事務総長は、訪日の際に国連の民主化という文脈でNGOとの関係強化の必要性に言及いたしましたけれども、これも特定分野における国連とNGOとの協力関係を新たな時代の要請に合わせた形で締結、強化し、国連の機能強化に資するべきだという考えに基づくものだというぐあいに判断しております。
  243. 河野洋平

    ○河野国務大臣 我々が確認できることは、冷戦の時代が終わったということは確認できたとしても、では次にどういう時代が始まったかということについて我々はまだ全く確認できないでいるというふうに私は思うのです。冷戦の時代が終わり、今度はいかなる時代が始まるか、あるいはいかなる時代を我々が始めるかということについて、国連がしっかりとそうした問題について議論をする、あるいはそうした時代を支える機能を持つということは極めて重要なことだろうと思います。そうしたことを考えて国連の機能あるいは国連のあるべき姿というものをみんなで研究し、議論していかなければならない、そういうふうに考えております。
  244. 東順治

    ○東(順)委員 ありがとうございました。  じゃ、終わります。
  245. 石川要三

    ○石川委員長代理 これにて河上君、東君の質疑は終了いたしました。  次に、水田稔君。
  246. 水田稔

    ○水田委員 まず、ことしの十二月から一リッター七円八十銭値上げするという軽油引取税の問題についてお伺いしたいと思うのです。  今、それでなくても複合不況ということで景気が低迷しておる、そして円高が急速にまた進んでくる、そういう中で景気対策が一番大事なときにきておるわけですね。そういうときにこの税金を増税するというのはまさに逆行しておるのじゃないか、そういうぐあいに思うわけであります。  これはもちろん軽油引取税は地方の財源ですから自治省ということになりましょうが、税全体で見ればこれは大蔵省、全く勝手に地方で取ってくださいというものじゃないと思いますから、この状況の中でなぜそういうことをやられるのか、まずその点についてお伺いをしたいと思います。
  247. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 水田議員御指摘のように、揮発油税の増税をお願いをする、これは地方税でございますけれども、全体として道路財源、これを皆使うわけでありますけれども、道路というものをやはり、道路計画をずっとやっておりまして、多くのところで特定財源に依存しているところが多い。そういったような形で、今回大きな計画を出しました。そういったような中でいろいろ勘案いたしまして、ガソリンにつきましては従来どおり、ガソリンと軽油とのバランスの問題等も考えまして、軽油については少し負担を増加していこう、こういうことで考えたところであります。いろいろな問題はありますけれども、全体の中でのそういったバランスをとりながらやっていくということで、今回のお願いということになったわけでございます。
  248. 村田直昭

    村田国務大臣 水田議員の御質問にお答えをいたします。  軽油引取税の七円八十銭の引き上げにつきましては、第十一次道路整備五カ年計画において前計画に比較して四三%増の総額七十六兆円にも上る投資規模が見込まれました。特定財源の充実強化を図る必要があるということ、それから大蔵大臣からも御答弁がございましたが、従来同じ自動車の燃料油であるガソリンと軽油の価格に相当な差があります。これがガソリン車からNOxの排出量が多いディーゼル車への移行を加速しているというふうな見方もあるわけでありまして、その価格差が縮小することが望ましい等を勘案したものでございます。  また、軽油引取税は道路目的財源でございまして、その税収は地方団体の道路に関する費用に充てられるものでございます。
  249. 水田稔

    ○水田委員 今、自治大臣からお答えがありましたように、これは第十次の五カ年計画に比べると一・四倍なわけですね。それは道路はやればやったにこしたことはないんです。みんな要求は強いわけですね。金を考えずにやるというのがいいのかどうか。それから、今大都市における道路建設に当たっては八割ぐらいがいわゆる土地代になるわけですね。そういう点考えれば、一・四倍、七十六兆円が先にあって、財源を計算してみると足りないから、これをどこで取るかということで軽油引取税にぶつけたという感じがするわけですね。ですから、そういうことがいいのかどうか。  これは一つは、アメリカとの構造協議の中で、十年間で四百三十兆円の公共投資の計画を立てていますね。これでも年伸び率というのは大体五%で、これも大変だなという思いであのときに決めたわけですね。それに比べて、この計画でいけば一〇%になるわけですね。ですから、それ以上のことを今この財政状態が悪いとき、そして一方でいえば増税をするということは景気の点からいえばマイナスに働くわけですから、そこまでやってこの増税をやる必要があるのかどうかという点で私は疑問に思うわけですね。  ですから、内容的に、もちろん建設省ではそれぞれ何キロやるとか、どういうぐあいに事業をやる、そういう計画の上に積算をしておるわけですけれども、積算の基礎になる土地代の状況も変わり、あるいはこういう状況の中ですから、もう少し請負単価の点でも精査すれば、多くは、問題になるのは、談合という問題が出てくるわけですが、そこらをきちっと改革するならば、もう少し金額的には下がっても、実質内容的には同じものができるんじゃないかということも考えられるわけですね。  そういうことを見ながら、単に最初から増税で、計算して足らざるところを増税で賄うんだという、いわゆる何といいますか、安易な増税のやり方というのはすべきではないじゃないかというのが私の考え方ですが、いかがでしょうか。
  250. 村田直昭

    村田国務大臣 御指摘の点はよく理解することができます。ただ、全般として見ますと、ガソリン税とそれから軽油引取税の間隔は、国際的に見て軽油引取税が日本の場合は比較的重く課せられていないという状況があるわけですね。したがって、今、水田先生のおっしゃったようないろいろな問題を自治省としても勘案をし、そして関係各省と相談をした結果、これからはひとつ公共投資等を通じて地方の景気浮揚、景気浮揚を地方から起こしていきたいという気持ちがありまして、御指摘になられた点につきましては十分いろいろと全般的に勘案をして対応していきたい、このように思っております。
  251. 水田稔

    ○水田委員 最後にまたその点は申し上げますが、一つ、これは建設省の方で道路財源についての取り方があるわけですが、自動車重量税の問題に関していわゆる実際取られる側と取ってくる方で見解の違いはあるようです、聞いてみますと。しかし、そこには道路財源として使うような仕組みになっておるけれども実際には使われていないという、俗な言葉で、これはほかの省庁でもあるのですが、大蔵省が足りないところをちょっと貸しておけ、こういうやつを北方領土ということで、氷漬けになるという意味ですかどうか、そういうことが言われるのですが、道路の特定財源の一部で、これは計算の仕方で、そうじゃないということを建設省は言われるわけです。一生懸命に説明に来られましたが、しかし、調べてみると、その疑いなきにしもあらずですね。  現に、これは一兆一千四百億ですか、これが実際は道路財源で入るべきが充当されてないじゃないかという見方もあるわけです。そうすると、この増税の六千五百億円でいえば二年分。ですから、そういうやりくりの財源を考えてみれば、直ちに計算をして十一次計画が七十六兆円、計算してみると足りないからこれだけをとにかくどこへぶっかけるかということで、軽油引取税へぶっかけたというやり方は余りにも安易なやり方じゃないか。  ここらあたりは、説明いただきましたけれども、確かにこれだけは道路の特定財源です、しかし実際にはこれだけ使っていますと言うけれども、道路には当然一般財源も使うわけですからね、四〇%ぐらいは。ですから、一般財源を差っ引いて本当にどうなっておるかという数字は、十分私を説得する数字ではないものですから、その点が一体どうなっておるかということを御説明いただきたいと思います。
  252. 中村喜四郎

    ○中村国務大臣 お答え申し上げます。  先生が御指摘をいただきましたように、いわゆる北方領土の問題につきましては、近年の道路予算の中においてはそうした問題が生じていないと私は承知しております。  そして、ただいま先生の方から一般財源をふやすというお話もございましたが、一%の一般財源をふやすということになりますと、五カ年で千九百四十億円必要でございます。これはなかなか一般財源としてそれだけをふやすということは財政上非常に困難でございますし、先生御承知のとおり、我が国は車社会が非常に進んでまいりました。現在、免許保有者数六千二百万人、そして車台数五千九百万台でございますし、一万四千キロの高規格幹線道路の中で現在四二%しか整備されていないという状況にございます。  米国あるいは欧州においては高速道路は非常に進んできているわけでありますが、アメリカの場合は一万台で三・七九キロ整備されております。我が国は一・○八キロでございますし、さらに一九九一年に陸上輸送合理化法というのがアメリカで通りまして、現在の七万キロを二十五万キロにする、そして欧州においては一万二千キロを十カ年間にやる、こういうことになってまいりますと、ますますこういった道路網の整備というのが欧米の国々とおくれてくる。  こういったことを解消していくために第十一次道路五カ年計画で七十六兆円の予算を確保したい、そのために今御指摘をいただきました軽油の七円八十銭を上げさせていただきたいということによって、全国の三千二百八十の市町村からこのことに対しての御支持をいただける意見書も提出していただいておりますし、四十七都道府県の中で四十六県、こういったことに対しても意見書をいただいているというような状況でございますので、大変財政状況が厳しい中ではありますが、国民的コンセンサスを得て、この第十一次道路五カ年計画を推進していくことがまた景気対策にもつながっていく道であり、社会資本を整備することにつながっていくということで進めさせていただいておりますので、ぜひ御理解をいただきたい、このように思います。
  253. 水田稔

    ○水田委員 言葉じりをつかまえてちょっと悪いのですが、増税をしてその同じ金額を公共事業に使ったら、景気はどういうぐあいに変わりますか。
  254. 中村喜四郎

    ○中村国務大臣 お答えをいたします。  この計画を進めてまいりますと、大体この五カ年計画が完成しますと、ドライバー一人当たり年間に四十六時間ぐらいの時間の短縮ができます。そのほかに車の損傷あるいはタイヤ、こういったものも計算してまいりますと、大体十兆一千億円ぐらいのこういった時間と走行便益、こうしたものも考えられますし、またGNPに対する波及効果というものも大体二百十兆円ぐらいの波及効果が期待できる、このような試算のもとでやっておりますので、社会資本の全体の整備と景気対策というものは、そういう面で関係を認識して進めさせていただいております。
  255. 水田稔

    ○水田委員 今の質問に答えていないんで、そういう総合的な計画でやっておられる。現実に今大事なことは、これだけの複合不況でどうやって景気を浮揚さすのか、それは後で、またあすやりますけれども、個人消費はどうかというと、これを全部末端までかけるなら、石油業者からどこへいくかというと、それは皆利用者へいきますね。それは運賃にはね返る、個人の消費にはね返っていくわけですね、マイナスで。ですから、マイナスではね返って、公共事業で景気がよくなるのです。やるわけですから、今言われたように。全く今の状態の中で緊急に何をするかということであれば、それを取ることがいいのか、むしろ個人消費をどうやってふやすかということがいいのかといったら、そちらをとるべきなんですね。そういう意味で、増税したのを公共事業に使って景気はどうなるかといったら、よくはならぬですよ、今。私はそのことを言っておるわけです。  それで、今質問したのはそうじゃなくて、一般に北方領土と言われているものがあるんでしょうと。建設省はそれは否定されるけれども、計算の仕方ではそうなるというあれもあるわけで、もとの計算を見ますと、八割分を何とかいうのを計算してあるのです。実際それは総枠どうなっておるのかは、私がもらった資料では、特定財源よりはたくさんの金を使っていますという数字があるけれども、道路には一般財源が四〇%ぐらい入っておるわけですから、それを差っ引いて本当にそれが充当されておるのかどうか、それを明確にしてくださいと言ったので、違う答弁をされておるわけですから、それは事務官の方は違う答弁書を持ってきてお渡ししたんだろうと思いますから、北方領土と俗に言われる分は実際どうなのかということについてお答えいただきたいと思います。
  256. 藤井治芳

    藤井(治)政府委員 お答えいたします。  自動車重量税の未充当があるのではないか、こういう先生の御指摘、これについて私ども正直言いまして、それがどういう意味合いでおっしゃっていらっしゃるのか十分理解できているわけではございませんけれども、私どもなりの理解としては、NTT・B事業、これは道路特定財源の充当対象とならない、こういうふうに前提を置いてからの誤解ではないか、そのような感じがいたしております。  しかし、私どもはこのNTT・B事業を含めた道路整備国費、この全体が道路特定財源の合計額を上回っているということから、未充当問題は生じてないというふうに考えております。特にこのNTT・B事業、これは毎年度予算に計上されているところでございまして、その償還を特定財源で行うこととなりますと、別枠でないということになるわけですが、その償還については別途財源手当てされる、こういうことになっているわけでございますので、御指摘のようなことはない、全額特定財源は充当されている、こういう判断をいたしているわけでございます。
  257. 水田稔

    ○水田委員 私はNTTは全く触れてないわけで、道路財源でということを申し上げておるので、これは予算説明のあれを見てもちゃんと書いてあるわけですね。どういうぐあいに書いてあるかというと、自動車重量税の国分四分の三は国の一般財源であるが、税創設及び運用の経緯からその八割相当額は道路財源とされている、こう記載されている。ことしの分も記載されていますね。その部分を言っておるわけで、NTTは全く関係ないですよ。どうなんですか。
  258. 藤井治芳

    藤井(治)政府委員 同じことを申し上げておしかりを受けるかもしれませんけれども、予算、これは一般財源、NTT財源、そして特定財源、これはいずれも国費でございます。そういうものの合計として道路の全体にいただく国費をいただいているわけでございますが、わざわざ国民の方に御負担いただいて特定財源という形でいただいているわけでございますので、そのいただいている総額がきちっと道路投資に還元されている、これは数字のチェックで私ども理解をしているわけでございます。そういう目で見て、そのときにその特定財源を他に転用しているということであればまた別でございますが、きちっとその額を道路のその当年度のいろいろな歩道から高速道路に至るまでに使わせていただいております。  そういうわけで、特にNTT・Bは対象外として議論すべきだという御指摘もあろうかと思いますけれども、それは返すときに、その返すお金、NTT・B資金というものがどういう性格になるかということはこれはまた別の判断でございます。それは別途財源手当てされるというふうに理解いたしておりますから、これを通常の国費と同等のものであるというふうに考えますと、一般道路特定財源、重量税を含む特定財源は全部利用者の御負担の道路に使わせていただいている、こういうことが数字上も確認されておりますので、私ども毎年の予算編成もそのようにさせていただいている、こういうことでございます。
  259. 水田稔

    ○水田委員 私が申し上げましたように、これは税創設のときにこういう約束がされておるのです。自動車重量税の国分四分の三は国の一般財源であるが、税創設及び運用の経緯からその八割相当額は道路財源とされておる。NTT云々のことはどこにもないわけでしょう。勝手にそれは自分でそう言っておるだけで、御都合のいいように言っておるだけで、これは幾ら論争しても恐らく同じ答えしか返らぬと思いますが、まさにこういう問題というのは明確にして、それで増税するのですから、金足らぬからといって増税するのに、こっちの方は勝手な解釈で、ちゃんと充当しています、足らなんだら出すと。それは景気のいいときならいいですよ。いいけれども、これだけ不況の中で国民に負担をかける増税をやるということ、その説明としては極めて不十分であるということだけ申し上げて、この点はまた機会があればやらしていただきたいと思います。  そこで、次にお伺いしますが、軽油の消費というのは年間約四千万キロリットルであります。その大半が陸運業者のディーゼル車向け、あるいはまた法人とか大口の工場で使うものでございますね。  そこで、今回の年間の税負担増というのは約一千億円でありますが、この中で実際にこれが運送業者にそれだけ税負担がかかる。その場合、運賃にどういうぐあいにはね返るのか、あるいはまた国民の一人一人の生活にどうはね返っていくのか、あるいはまた成長率にどれだけの影響があるものか、そういう計算はどうなるのですか。経済企画庁ですか。運輸省来ていますか。運輸省、来ていない、呼んでいない。計算のできるところで答えていただきたいと思います。国民生活にどういうはね返りがあるかということをお答えいただける省庁、おいでになっておる中で。
  260. 藤井治芳

    藤井(治)政府委員 今回の税制改正による道路輸送部門の価格上昇の程度は、〇・四六%程度と試算をいたしております。この税率引き上げに伴うコスト上昇分、これは最終的には便益を受ける消費者に適切に御負担をお願いせざるを得ないものだと理解をいたしております。特に、宅配便が今や一人当たり九・一個というような形で、非常にトラック輸送が発達しております。貨物輸送自動車分担率、昭和三十年のころ十二%であったのが、平成二年度は五〇%。東京からの翌日配達県が五十三年に十九県だったのが、現在、昭和六十三年ですが、三十六県というぐあいに極めて大きくなっております。  したがって、私ども、こういう状態はすぐに日常の生活商品の物価にも影響いたしますので、混雑解消とか、それから早く、うまく使っていただくというようなことで、道路整備によってそういうトラック業界を支える方々に少しでも喜んでいただけるような努力をさせていただきたいと思っております。  さらに、車両の大型化、運輸の合理化、物流基地の整備等、諸般から、私どもはこの道路整備を通じての流通の問題にこの十一次では真剣に取り組まさせていただきたいと思っております。
  261. 水田稔

    ○水田委員 この第十一次の五カ年計画でも、今言われたように、交通が極めてスムーズにいくとは考えられぬわけです。今、同じ金をかけるのであれば、これは本会議でも私申し上げたけれども、海運で、いわゆるこの細長い日本ですから、そこで港を整備するとかあるいはまた鉄道輸送で、今でも例えば宅急便はトラックで全部行っているが、そうじゃなくて、トラックを列車に積んで運ぶ、こういうやり方をしますね。ですから、それと道路整備とを含めて、どういうぐあいに全体的な流通の形態をつくっていくかということが今課題なんですね。  ですから、今言われたようなことで、例えばトラックを大型化と言ったって、それは例えば、ディーゼル車のNOxの対策をせずに大型にしていけば、ますます大気汚染は激しくなるわけでしょう。そういうことが全くほかとの関連なしに、道路さえよくすれば世の中すべてがハッピーになるようなそういう感覚は、これは間違いです。  ですから私は、そうじゃなくて、今大事なことは、何遍も言うように、今一番大事なのは何だと言ったら、この複合不況をどうやって解消するか。そこで、個人に負担してもらって便利になって宅急便をもっと早く送ったらいい。それが今一番大事などということは、そんなことはないですよ。大事なことは、工場が稼働率が上がって、働いておる人が給料がまともにもらえる、春の賃上げも経営者があんなに抑えるのじゃなくて、それは上げていこうじゃないか、そういう雰囲気になることが一番大事なんでしょう。  消費が落ちることをあなたは言って、それでよくなるというようなことは、これは国民が納得するわけがないわけです。そして、それなら、消費者に負担せい、負担せいと言うけれども、じゃ、大手のところが、石油会社がこの負担をしてくれと言ったら、全部のむかと言ったら、のまぬかもわからぬですね。あるいは、トラック業者は、それでなくても景気が悪いのですから、荷が落ちておるわけですね。落ちた中で過当競争しておる中で、じゃ運賃へ全部かけられるかというと、そうはいかぬだろうと思うのですね。消費者の立場から言わせると、全部かけられれば、それは消費がそれだけトータルで減るわけですからね。今大事なことは、減税やってほしいと大蔵大臣に幾ら言っても、今の案が一番最善でできません、こう言われておるのですね。それほどのときに、取る方はそう簡単な理由で取れるのですか。そこらが間違っておるのじゃないですかということを申し上げておきたいと思うのです。  本当に、そういうぐあいに消費者のところでもマイナスになるし、また実際の業者もこういう負担をすることは極めて厳しい状態であるということを十分認識してほしいということを申し上げて、この点は時間の関係で先へ進んでいきたいと思います。  そこで私は、大蔵大臣、これは通産大臣も考えていただきたいのは、ビールもそうなんですかね、原価よりはたくさんの税金を払っておる、ビールはそれに近いのですかね。それをのけたら石油が一番じゃないですかね。もう御承知のとおり、輸入した原価より、実際にそれを上回る税金を取っておることは御承知のとおりですね。しかもこれは年間に輸入するのは九二年度で四兆一千億円で、これに対して四兆六千億の税金を負担しておるわけですね。ですから、品物以上の税金を負担しておるわけです。これは、一つは消費税が導入されるときにたくさんな石油税を負担した上に三%の税金をそのままかぶったわけですから、税金にさらに消費税をかぶったのがこの石油なんですね。そこへ持ってきてまた今度の分を取ろうというのですから。  もちろんアメリカは異常に安いし、ヨーロッパの各国は間接税ですから計算の仕方が違いますが、よくヨーロッパはまだ日本より高いんだと言われるけれども、そうじゃなくて、実は計算の仕方が違うわけですから。日本で言えば、電気もそうですし、エネルギーの柱に一つはなっておる。あるいは石油化学というような原料にもなっておる。あるいは運輸の点で言えば燃料に使われておるわけです。そういういわば国民生活に極めて広範な影響のあるものですから、こういう税体系がいいのかどうか。  これは、答申にもあるように、道路の問題について一般財源を使うべきだと。今の税金の取り方というのは暫定、日本の政治のあり方というのは暫定で、当分の間というのが四十年続いたり、そういうことをよくやっておるわけですが、これも全く同じようなことをやっておるわけです。  ですから、ここらで石油に対する税金のあり方も根本的に検討してみる、あるいは道路とそれから鉄道とか海運とか、そういうものを総合的にそうする、そういう体系のあり方、それに対する税の負担のあり方というのを検討すべきときが来ておるんじゃないかと思うのですが、これは大蔵大臣、それから通産大臣にもこれは関係があるのです。一番取られておる業界を抱えておる大臣でありますから、御見解があれば聞かしていただきたいと思います。
  262. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 水田議員のお話でございますが、ガソリンあるいは燃料に対してどう課税をするかというのが私は基本問題だと思いますし、我が国が石炭から石油にかわるころ、またそれから後の時代におきまして、また新しい時代というのは車社会になるであろう、その車の持つところの道路をどう整備するかという形でガソリン税が入りましたし、その後自動車重量税が入りました。やはり、国民の持っておるところの資産であるこの道路をどうつくっていくかというのが大きな問題で、現在私は、お話がありましたように、石油によって大きくこれに依存しているということは事実でありますし、私はこれは、道路を使う人がその燃料によりましてこれを負担をするというのはある程度まで合理性を持っているものだろう、こう思っています。  今回、軽油につきまして税金をかける、こういうことになっておりますのも、軽油とガソリンとやはり価格が違っておる、これは税金の違いがありますからということでありますから、やはり軽油とのバランスをとるということも私は必要だろう、こう思いますし、全体、特にNOx対策などということを考えますと、ガソリンよりは軽油の方がNOxの出方が多い、こんなこともあるものですから、そういった点を調整をしたというのが今回の話であります。  もちろん全体としてこの景気のときにどうだというようなお話でありますけれども、やはり道路をつくっていくということも一つの大きなことになるわけでございまして、いろんな点を考えて、また財政事情大変窮屈なときでありますから、そういったことも勘案しまして軽油引取税の増税をお願いをしたというのが状況でございます。  水田議員のお話の、全体的にどう考えていくかというお話は、やはり一つの御提言だと思いますが、現在のところ私たちはうまくいっているのではないかというふうに考えているところでございます。
  263. 水田稔

    ○水田委員 通産大臣、また別の機会にそれでは聞かしていただきます。  先ほど、たしか自治大臣、また大蔵大臣からもNOxの問題が出るのです。これは理由にしてはいけません、それは。御承知と思いますが、ディーゼル車というのは、乗用車で使っているのは二・五トンという小型しか使えないのですね。本来ディーゼルというのは大型で、単位重量当たりの馬力が大きくなる、だから舶用、船なんかはそういうものでやるわけです。ですから、なかなか乗用車には使いかたかったのを、だんだん小型にしてきたのです。大型は全部ディーゼルなのです。ですから、バスもディーゼル。バスもそれから大型トラックも、あれはガソリン車というのはないのです。  ですから、これは例えばそういうことで規制し転換しようとするのであれば、むしろ大型のディーゼル車すべてのNOxをどう縮小していくか、そういう技術開発のために例えばこの軽油引取税を使うというなら、理屈は合うのですよ。道路をよくしてもNOxは減らぬわけですから、道路をよくしてもこのディーゼルのNOxは減らぬわけですから、それは間違わぬように御理解いただきたい。だれが、事務方がそういうことを書くのか知りませんけれども、それは間違いでございまして、小型ディーゼルトラックのいわゆる軽油の消費量は、全体の二六%にすぎぬわけです。七四%はやはり大型ですから、そのNOx対策をやるということの方が、環境を守るという点からいえば、そのために金を使う、その金をどこから出すかということをひとつ考えてもらいたいのですよ。だから間違いなんです。道路へ使うというのは環境ということとイコールになりませんから。その点はまあ意見として申し上げておきます。答弁結構ですから、間違わぬようにしていただきたいと思います。  そこで私は、十二月からの実施ですから、今申し上げましたように、恐らく、大蔵大臣もロンドンへ行かれて、また今度のサミットで外国から責められる。そういう中で、経済政策、景気対策内需拡大、言われると思うのですね。そういう中で、これはまさにこの国会で、増税というのはこれだけですからね。そういうことをやりながら、片一方で別の施策というのでいいのかどうか。やらない方がいいことは、もう最初からやらぬ方がいいと思います。  十二月からですから、私は、物流に関する問題については総合的なことで考えていただいて、そして、実質第十一次の五カ年計画の、物価の動向それから土地の値段の動向等を見て、内容を私は下げろとかなんとかそういうわけじゃなくて、ああいう形の増税をやってやるという形でなければやれないのかどうかということについては、再検討を要望しておきたいと思います。これは十二月実施の問題ですから、時間がありますからぜひ御検討いただきたいということで、この項目は終わりたいと思います。  次に、下請取引の適正化の問題について、これは通産省と公取にお伺いしたいと思うのです。  景気低迷の中で、特に中小の製造業では、昨年度、平成四年度の下期で大体前年同期比で二五%の減益が見込まれておるわけであります。その上さらに急激な円高でありまして、特に輸出の比率の多い業種では大変な状況になっておるわけでございます。こうした中で、中小請負企業の単価引き下げや買いただきや代金遅延等でいわゆる下請に対して圧力をかけている、こういうことが懸念されるわけでございます。これはどこということを申し上げませんが、例えば不況になると、下請の単価を五%引き下げる、そういう話はすぐ新聞に載りますね。これが日本のいわゆる産業構造の二重構造の最たるもので、そこらあたりをきちっとしないと、私は、この国際社会の中で日本の産業が莫大な貿易黒字を上げて国際社会から非難される、そういうことの解消にはなかなかつながらぬのじゃないかという思いがここではしておるわけです。  そこで、通産省と公正取引委員会は十一月に通達を出されておるわけでありますが、これによってこういった下請に対する圧力なり、下請いじめといいますか、こういうことが是正をされてきたのかどうか、まずお伺いしたいと思います。
  264. 森喜朗

    ○森国務大臣 お答え申し上げます。  円高に対しましてのいろいろ懸念される面につきましては、先週もこの委員会でも申し上げましたが、それぞれの産地あるいは輸出関連企業に対しまして今調査をいたしておるところでございまして、ある程度調査がまとまりましたら、また御報告できる機会を得たいと思っております。  それから、今御指摘のように、最近のこの景況にかんがみまして、相対的に弱い立場でございます下請中小企業につきまして、いわゆる親企業の優越的な地位の乱用等で影響をこうむることのないように、親企業への指導等を強化することが不可欠であると認識をいたしております。  このため、本年度におきましては、次のような下請中小企業対策を実施しているところでございます。  まず第一に、検査の重点化等、下請代金支払遅延等防止法の厳正な運用に努めるとともに、下請中小企業振興法の振興基準の普及徹底を図る等、下請取引関係の適正化に努力をいたしております。  二つ目は、昨年十一月には、下請代金支払遅延等防止法の厳守及び下請中小企業に対する発注量の確保につきまして、親企業及び親事業者団体に対しまして通達を出しました。平成五年度、御審議をいただいておりますこの予算案におきましては、下請取引相談事業の創設など、下請中小企業対策の強化をすることにいたしたところでございます。  今後とも、下請代金支払遅延等防止法に基づく検査を強化するとともに、振興基準の一層の普及徹底等、下請中小企業対策に全力を尽くす考えでございます。
  265. 小粥正巳

    ○小粥政府委員 ただいま通産大臣から御答弁がございましたが、私ども公正取引委員会といたしまして、ただいまのお尋ねにもございましたけれども、昨年十一月に、景気の調整局面が続く中で、特に年末の金融繁忙期も控えておりまして、下請中小企業の資金繰り等が悪化することも懸念をされるということで、主な親事業者及び事業者団体に対しまして、下請代金の減額、買いただき等の下請法違反行為を行うことがないよう、通商産業大臣公正取引委員会委員長の連名によって、要請を行ったところでございます。  私どもといたしましては、ただいま御指摘がございましたような現在の景気情勢下でございますし、親事業者による不当なしわ寄せ行為が下請事業者に行われることのないように、下請法の厳正な運用に努めているところでございます。特に、このような経済状況のもとでは、親事業者の収益確保のためのいわゆる協力値引き行為などの不当な減額行為、買いただき、支払い遅延などが景気の低迷を背景に生じることのないよう特に注意を払っているところでございます。具体的に、親事業者あるいは下請事業者の調査につきまして、既に書面調査のための発送もいたしたところでございますけれども、今後とも、調査の充実によりまして下請法の厳正な運用に努めるとともに、通商産業省ともさらに協力をいたしまして下請法の一層の周知徹底を図り、違反行為の防止、是正に万全を期する所存でございます。
  266. 水田稔

    ○水田委員 下請代金支払遅延等防止法で、これまで実際には違反事業者の名前の公表は一度もされたことがないわけですね。実際には、書面調査による違反事件として件数を数えられるものと実際にそういうことが起こっておる事態というのは、恐らく出ておるのは百分の一ぐらいじゃないのだろうか。  それは、日本の親企業、子、孫という、そういう系列からいきますと、私が実際に知っておるのでも、生産がふえると単価が下げられる、ノーと言えば仕事を回してもらえない、これが多いわけですね。そういう実態ですから、実際には出てきていないんじゃないか。今のような書面調査だけの申告に頼っておるやり方でいいのかどうか。  ですから、こういう点で、数は少ないにしても出ておるものに対する勧告、警告というのは実際に確実に行っておるのかどうか。それから、中小企業庁長官からの措置請求がこの十年間ほとんど行われていないというようなことを考えれば、これは調査のあり方を抜本的に考えていく必要があるんじゃないかということを思うわけですが、いかがでしょうか。  それからもう一つは、特に悪質な違反行為については、これは独禁法にちゃんと規定があるわけですから、独禁法による排除措置等の毅然とした態度を公取としてとるべきじゃないだろうかと思うのですが、いかがでしょうか。
  267. 小粥正巳

    ○小粥政府委員 下請法の違反行為に対しましては、この違反行為を是正させる内容の勧告を行いまして、もし親事業者がその勧告に従わなかった場合にはその旨を公表する、こういうことになっていることは御存じのとおりでございますが、これまで私どもの経験では、勧告を行いますと、その勧告に従わなかった事業者はおりません。したがいまして、これは公表しなかったわけであります。  よく御存じのとおり、この下請法は独占禁止法の特別法でございます。そして、何よりも下請事業者を親事業者の優越的地位のいわゆる乱用行為、これから守りますために、違反行為が行われた場合にはその排除措置をできるだけ迅速に、効果的に行うということで特別法が設けられ、また独占禁止法の特別法としての迅速な処理手続が定められているところはよく御存じのとおりでございますが、この違反行為の是正を今申し上げましたように速やかに行うためには、私ども、その実務の経験といたしましては警告によって処理することが大変多いわけでございますが、警告を行います際に、必ずこれは調査の上で改善指導を行います。これによりまして違反行為が是正されているというのが実情でございます。その是正をいわば確認した上で、今後その違反が行われないように警告を行っている、こういうことが事件処理の実務上の実態でございます。  ただ、ただいま御指摘をいただきましたように、もしこの親事業者が私どもの改善指導、警告、そして最も強い排除措置としては勧告がございますけれども、これに従わない場合には、これは当然のことといたしまして企業名の公表も行うということで、厳正な対処をもちろん考えているところでございます。
  268. 水田稔

    ○水田委員 特にこの不況の中で、さらに円高影響が極めて大きいわけですから、そういう点では厳正な運用をやっていただきたいと思います。  それから、この法律を運用するために下請取引改善協力委員というのを全国で百一人委嘱しておるようでありますが、実際こういう人たちから、あるいはまあ協力委員と言う人もおられるようですが、この協力委員を経由して下請法違反についての申し出がなされたケースがどの程度実際にあるのかということ。  それからもう一つは、この協力委員の実際の任命されておる人を見ますと、その業界で割に偉い人といいますか、そして高齢者の方が、高齢者だからだめだという意味じゃありませんが、相当な御年配の人も多いようでありますが、こういう点を見ると、この協力委員制度というのを有効に使うためには、委員の数の問題あるいは委員の委嘱の方法などについてもう少し改善する必要があるのではないか、こういうぐあいに思うわけですが、その点はいかがでしょうか。
  269. 小粥正巳

    ○小粥政府委員 ただいまお尋ねのこの下請取引改善協力委員でございますが、これは下請法の的確な運用に資するため、私ども公正取引委員会の業務に協力お願いするということで民間有識者に委嘱をしている制度でございまして、本年度は百一名お願いをしてございます。  この協力委員の方々にお願いをしております仕事は、下請取引の公正化についての啓蒙宣伝、それから下請取引の公正化について必要と認められる情報、意見等を提出していただくこと、さらに下請事業者から違反行為があるという旨の申し出がこれらの協力委員の方々にありましたときは、その申し出を公正取引委員会に御連絡をいただく、これが主たる任務でございます。  そして、お願いをしております協力委員の方々からはそれぞれ所属されている業界あるいは地域の下請取引の実態等について御報告をいただいているわけでございますが、一般的な御意見あるいは情報ということは私ども常にちょうだいをしているわけですけれども、ただいまお尋ねをいただきました個別具体的な違反、まあ被疑行為ということになりますが、これにつきましては、例えば本年度、平成四年度でございますが、これは数件程度の御報告でございます。ただ、これはあくまで個別具体的なという限定を申し上げましたので、いろいろな機会にこの下請取引公正化について全般的な貴重な御意見、情報等は常にちょうだいをしているわけでございます。  それから、この協力委員の方々、その選任あるいは運営という面につきましてただいま御指摘がございました。私どもはこれらの協力委員の方々には、例えば下請法に基づきます当委員会の規則でございますとか運用基準を改めます場合には、下請事業者のお立場からの御意見をこれらの方々からお伺いをするということで、下請法の法制度の問題あるいは運用面において貴重な御貢献をしていただいているわけでございます。  お願いをしております協力委員の方々の中には中小企業団体の役員の方が大勢いらっしゃることは御指摘のとおりでございます。これは当然でございますけれども、下請取引に関する知識、情報が豊かであり、またほかの一般の下請事業者の方々からの信望が高い、こういう方々にお願いをしているわけでございますが、しかし、この選定に当たりましては、役員でいらっしゃっても、できるだけ現に御自身が下請企業として企業の経営に当たっていらっしゃる、そういう方をできるだけお願いするようにしております。  したがいまして、現在百一名の方にお願いしていると申し上げましたけれども、その過半であります五十四名の方、実は御自身が下請中小企業経営者としてのお立場に立つ方々でございます。当然下請取引の実情に明るく、周りの同業者の方々からの信望があり、そして取引公正化に熱意がある方々にお願いをしているわけでございまして、そのような基準でお選びいたしますと結果的に高齢者の方もかなりいらっしゃることは事実でございますけれども、私どもとしましては大変ありがたいアドバイスをちょうだいしていると承知をしております。
  270. 水田稔

    ○水田委員 日本が巨額な貿易収支の黒字というのを出す中で、やはり日本の中の確かにおくれた社会資本の充実等も必要なことではありますが、基本的にはこういう親会社、子会社の関係とか産業構造の二重構造の中での問題を是正しなければ、これはいつまでたっても解消しないだろうと思うんです。ですから、我が国が国際社会で生きていくために、私はこれだけで解消するとは思いませんが、こういうことをもう少し本当に機能するようにやっていくことがこれからの日本の産業構造を考える上で大事なことだということだけはぜひ御認識いただいて、さらに充実していただきたいということを申し上げて、この項を終わりたいと思います。  次に、継続的サービス契約の適正化について。  これは昨年の予算委員会で私質問しようと思って、それ以来準備をしながら、既に商工委員会でも一部論議をされておるところでございますが、御承知のとおり昨年から一昨年にかけて、調べてみますとクレジット契約をめぐるトラブルが大変ふえておるわけでありまして、その大半がいわゆるエステティックとか学習塾、外国語学校などの新手のサービス業についてが多いわけであります。  私どもは割賦販売法を改正して、サービスを適用対象に加えるとともに、継続的サービス契約についての中途解約権の導入を柱とする継続的役務契約適正化法の立法化を図ることをこれまで提案してきたわけであります。これは既に商工委員会でもこの点提起したかとも思いますが、政府のお考えはどうか、まずお伺いしたいと思います。  それから、経済企画庁長官は一月に国民生活センターを訪問した際、割賦販売法の改正を通産省に働きかけるとの意向を表明されておられるわけでありますが、この考え方に変わりはないかどうか伺いたいと思います。     〔石川委員長代理退席、鴻池委員長代理     着席〕
  271. 森喜朗

    ○森国務大臣 お答えを申し上げます。  通産省といたしましては、昨年の十月に学識経験者、弁護士、消費者代表等から構成されます継続的役務取引適正化研究会を設置をいたしまして、トラブルの防止のあり方等につきまして幅広く今検討を行っているところでございます。この研究会を発足させましたのも、先国会での私の前任者渡部大臣の答弁によるものでございまして、今まさにそのことにつきましていろいろな角度から幅広く検討しておるところでございます。  特に、多くの問題が生じていると言われております、今委員からも御指摘ございましたエステティックサロン、外国語会話教室等の業種につきましては、支払い方法としてクレジット契約の利用が多いことから、クレジット業界に対しまして次のようなことを指導をいたしております。  まず第一に、役務提供事業者を加盟店とする場合における審査の厳格化等加盟店管理の強化等について指導を行う。二番目には、昨年十月には、継続的役務提供事業者が倒産等の事由によりまして役務提供ができなくなった場合には、利用者への支払い請求を停止する等の措置をとるように指導を行っているところでございます。  消費者利益の実質的な保護が重要であると考えておりまして、クレジット業界に対する通達等、指導の効果を見きわめつつ、研究会の報告を踏まえまして、必要に応じて一層の対策を講じてまいりたい、このように考えております。
  272. 水田稔

    ○水田委員 今通産大臣から御報告ありましたように、通産省はそういう通達を出したわけですね。そうすると、この通達によってクレジット会社がサービス契約に対する与信に消極的になったと言われる。そのために、一方、エステ等のサービス業者が貸金業者、いわゆるサラ金と提携して利用者に金銭消費貸借契約を結ばせるケースがふえておるわけですね。  これまでのところ、大手の貸金業者については約款でクーリングオフや中途解約時の処理を規定するなど、それなりの対応が見られるわけでありますが、今後大手以外のサラ金と提携するケースがふえてくると、クレジットでこれまであったと同じようなトラブルが発生する可能性も起きてくるだろうと思うのです。  大蔵省は、こういう契約形態について、サービス業者が倒産した場合等について、サラ金に対する支払い停止の抗弁権の接続の問題についてどのように考えられるか、そして通産省と同じように、大蔵省としてもサラ金業界に対して通達を出して指導する考えはないかどうか伺いたいと思います。
  273. 寺村信行

    ○寺村政府委員 ここ数年の間でございますが、大手貸金業者の中にはエステティックサロン等の継続的役務提供取引に関するローンの提供業務を拡大してきているものがありますことは御指摘のとおりでございます。  しかしながら、最近におきましては、クレジット会社と同様、貸金業者におきましてもこれらの継続的役務提供契約にかかわる与信には慎重になってきていると今理解をしているところでございます。また、これらの形態のローンの金利は通常一〇%台と、消費者金融専業者の金利としては低目でございまして、収益力の弱い中小の貸金業者では余り取り扱いはないものと考えております。  お尋ねの抗弁権の接続の問題でございます。  貸金業者に対しましては、貸金業規制法に基づきまして、悪質な取り立て行為禁止など各般の行為規制を行っておりますが、ただいま御指摘のございました抗弁権の接続の問題、これは貸金業者の締結する金銭消費貸借契約の効力いかんという問題でございまして、民法を初めとする、主として民法でございますが、それにより判断されるべきものでございまして、貸金業規制法に基づきましての通達で指導するのは困難ではないかと考えているところでございます。  しかしながら、いずれにいたしましても、これらの継続的役務提供取引をめぐる最近の議論もございますので、貸金業者におきます適正な与信審査の徹底というようなことで、貸金業規制法に照らしまして適切な指導を行ってまいりたいと考えております。
  274. 水田稔

    ○水田委員 悪徳商法、いろいろなのが次々出てくるものですから、それは対応は大変だと思いますが、そういう点では国民のいわゆる消費生活を守るという立場でそれぞれ取り組んでいただきたい、お願いをしておきたいと思います。  最後の質問になりますが、PKOについてでございます。  これはもうこの委員会でも何人からも言われたわけですが、私もどう考えてみても、基本である参加五原則の紛争当事者の間の停戦の合意というのは崩れておる、こう思えて仕方がないわけであります。  それは明石代表が昨年十一月四日に、停戦違反が過去二、三週間増加している、カンボジア各派に自制を促す声明を発表、一月二十九日ごろからプノンペン政権軍は北部及び西部においてポル・ポト派に対して軍事攻勢をしかけていることに関して、二月三日、明石代表はフン・セン・プノンペン首相と会談したが、その際フ首相は、UNTACがプノンペン政権支配地域とポル・ポト派支配地域との間に緩衝地帯を設置するなどの措置をとれば政権軍は撤退する用意がある、まさにこれは政権軍が攻撃をしたということを認めておるわけであります。そして、これはたまたま休暇中で日本の文民警察官がその宿舎におらなかったからよかったのですが、これは完全に焼き討ちされて焼け落ちてしまう、こういう事件が起きておるわけですね。  ですから、これはこの法案を審議の際、野村政府委員の答弁になっていますが、「五原則の一番目、停戦の合意につきまして「武力紛争の停止及びこれを維持するとの紛争当事者間の合意」、そういう表現で書いてございます。」これに対し質問者が、停戦を維持していく合意だけでなく、現実の停戦を必要とする、こう理解してよろしいか、こう言ったのに対して、当時の宮下防衛庁長官は、政府委員の答えのとおりと答弁しておる。ですから、これはそのままは認めませんが、読んでみると現実の停戦の必要ということも防衛庁長官は認められたような、そういうぐあいに考えられるわけです。  私は、現在のカンボジアの状況というのは、現実の停戦というのは守られていない状況であることはほぼ間違いない、こう思うわけですが、その点についてどういうぐあいにお考えになっておるか。これは外務省ですね。
  275. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま御指摘の点についてお答え申し上げます。  確かに最近一部のカンボジアの地域で武装集団による襲撃事件でございますとかあるいは停戦違反事件というものが発生しているのは事実でございます。ただ、現在カンボジアにおきましては全面的に戦闘が再開されておるというわけではございませんで、パリ和平協定に基づく和平プロセスの基本的な枠組みは維持されておりまして、いわゆる五原則は満たされていると認識している次第でございます。  またUNTACによりますれば、プノンペン政権及びポル・ポト派の両派ともパリ和平協定を守る旨表明していると承知しておりまして、UNTACとしても和平プロセスの基本的な枠組みは維持されているとの同様の立場であるというふうに私ども理解しております。  確かに御指摘のごとく、特に昨年の暮れからことしにかけましていろいろ武装集団による襲撃でございますとか、あるいは停戦違反というのが起こっておりまして、このことは残念でございます。  ただ、御承知のとおりいわゆるPKO、国連の平和維持活動と申しますものは、長年にわたって武力闘争が行われましてようやく停戦の合意が成立した、そこにできた合意と申しますものは何分にも脆弱なものでございますので、そこに停戦監視団でございますとかその他のいろいろな形で国連が出てまいりまして、この脆弱な停戦の合意をより確固たるものにしていくというのがまさにPKOの役割であると思います。言いかえますと、停戦の合意ができましてこれが完全に何の違反もなく守られるということがもちろん理想ではございますけれども、現実問題といたしましては、間々、停戦の違反というものがあるわけでございます。ただ、違反があるからと申しまして、この基本的な停戦の合意が即崩れたということにはならないというのが、これまでのいろいろな国連平和維持活動の先例に照らしましてもそのように考えられる次第でございます。
  276. 水田稔

    ○水田委員 先例に照らしてと、日本は初めてですから、先例はないはずなんです。  そこで、一番問題は、法案の審議の中で、今申し上げましたように、これは野村政府委員が、「「武力紛争の停止及びこれを維持するとの紛争当事者間の合意」、そういう表現で書いてございます。」武力紛争が現実に停止されているということ、こういうぐあいに答弁しているわけです。これに対して質問者が、「これから停戦をしてそれを維持していきますという将来的合意ではなくて、現に停止をした上でのその状態を維持していく、こういう合意である、現実の停戦を必要とする、こういうふうに理解してよろしいですね。」こうやって防衛庁長官に聞いておるのですね。それに対して、「今室長のお答えしたとおりでございまして、それに加えるものはございません。」と防衛庁長官が答える。だから当然、今言われるようにパリの協定、それが基本にあって、そして現実にあのカンボジアの状態がどうかということも判断するということを、ちゃんと法案つくるとき答弁しているわけです。  先ほど来言いますように、幾つかの問題は現実に起こっておるわけですね。起こっておるのにもかかわらず、それは現実の問題として、まあないのが一番いいんだが、少々あるのは前例があると。日本は初めてだからそんな前例なんてないわけですから、私はこの点が一番問題だと思うのです。ですから、この点ではぜひ五原則を守る、そういう立場現状を的確に把握するということが必要だろう。  これは国会で論議したわけですから、政府からよりむしろ委員長から、一遍理事会でも論議してもらいたいのですが、現実を院として、やはりあの法案を審議して、そしてつくったわけですから、その中で論議をしたことで詰められてない問題が、そこのところが一番問題なんです。ですから、五原則の一番目が守られているかどうかという現実の問題は調査する必要があると思うのですね。それは政府に私から要求してもだめですから、理事会で一遍ぜひ御検討いただきたい。  それで、時間が限られておりますから、私は、この点では、これまで何人もの人が言われたように、現実の問題としてはいわゆる合意は破られておるということだけここで申し上げて、次の質問に入りたいと思います。  そこで、二番目は、実施計画の変更についてでございます。  九月にこの実施計画がつくられて、これまでまだ五カ月たつかたたないかでございます。ところが、参加国、参加しておるフィリピンからの要請なり、あるいはUNTACの要請などで、マニラからプノンペン、あるいはプノンペンからウタパオですか、これらに対する物資や要員の輸送をする。これは飛行機で輸送するんでしょう。それからタケオ周辺の要員への給水、給油など、こういう実施計画の変更、これは閣議で行ったわけでございます。そして、これもUNTACの要請で、担当区域はプノンペン以南であったのを、これは計画ではなくて実施要領を変更して、プノンペン以北に拡大したわけでございます。  これは法七条によって国会へ報告ということに計画についてはなっておるわけでございますが、派遣を一たん決めればあとはずるずるっと、とにかく閣議だけで、国会は単に文書によって配付というような報告だけでいいのかどうか。これは平和協力活動の部分が変わってくるわけですから、重要な部分が。例えば、マニラからプノンペンへ物を運ぶというのは、カンボジアにおける活動だけじゃないわけですから、区域も違ってくるわけです。そういうことが、いわゆる計画の変更が閣議だけでいいのかどうか。しかも、国会へは単に文書で議長のところへ届けられて印刷物が配付されるというような、そういう軽い扱いでこの計画の変更というのはいいのかどうかというのが一番私は問題だと思うのです。ですから、当然これは国会への報告、少なくとも国会開会中であれば本会議報告、あるいは閉会中であれば召集された国会冒頭の報告というのがやはり必要ではないかと思うわけでございます。  また、もう一つは、実施要領で任務の範囲が拡大されるというようなことは、これはそんな実施要領だけで、本部長、いわゆる総理が判を押せばできるようなことでいいのかどうかということでございます。  それからもう一つは、実施要領の概要だけは配られておりますけれども、中断するという判断をするのは現地の隊長がやらなきゃならぬ、あるいは文民警察官であれば本人がしなきゃからぬ、そういう重要な問題を抽象的な表現で書いてあるわけですね。これでは、この運用というのは、本人も大変でしょうが、これはもう少し明確なものにする必要がある。しかも、そのことがこのPKO活動の根幹にかかわる問題なんです、中断しあるいは撤退するという。そういうことからいえば、この実施要領についても概要だけじゃなくて全文を国会へ提出する、そのことが必要だと思います。我々としてもどういう形で行った人たちの安全が保障されるのかということは一番考えなきゃならぬ問題ですから、その二点についてまずお答えいただきたいと思います。
  277. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  国際平和協力業務の実施に当たりましては、国連からの要請に機動的に対応する必要がございますこと等から、国際平和協力法におきましては、まあいわゆる凍結されました業務、すなわちPKFでございますが、その場合を除きまして国会の承認を求めるということはしておらない次第でございますけれども、実施計画の決定または変更がございましたときは遅滞なく国会に報告するということになっているわけでございます。  実際に、ただいまも御指摘ございましたけれども、カンボジアの実施計画につきましては昨年の九月八日に閣議決定をいたしまして、国際平和協力法に基づいて、同日、国会に報告をいたしました。これは、閣議決定いたしました実施計画をすぐお送りしたということでございます。  また、昨年十二月四日と本年二月十二日でございますが、先ほどもちょっとお触れになりましたような計画の変更を行いましたけれども、同様に国会に御報告をした次第でございます。  なお、この実施計画の文書をお送りしたほか、衆参両院の内閣委員会で官房長官から計画の概要等につきまして御報告もいたしておりますし、またいろいろな機会に御質問に答えて、実施計画の内容を口頭でも御説明している次第でございます。  それから、実施要領でございますけれども、これは実施計画に従いまして、すなわち実施計画の範囲内で国際平和協力業務を実施するために本部長が作成するものでございまして、昨年九月にもとのものは作成いたしまして、その後実情に応じて変更しているところでございます。その概要につきましては、国会のお求めに応じまして、これまでもできる限り御説明申し上げている次第でございます。  しからば、この実施要領をそのまま公表したらどうかという御指摘でございますけれども、実施要領と申しますのは、先ほど申し上げましたように、実施計画の範囲内で定める一種の部内の訓令でございますこと、また、派遣された我が国の要員、部隊の安全にかかわる部分、あるいは派遣先国との関係等の内容からいたしまして、そのままの形で公表申し上げるということは必ずしも適当でないという考えを持っている次第でございます。  他方、我が国の要員、部隊が行う国際平和協力業務の内容につきましては、国会に御報告する実施計画によりましてはぼ明らかになると考えておりまして、実施要領につきましても、そのままの形ではお出ししておりませんけれども、せんだって社会党からの御要求もございましたので、その概要ということでお手元にお届けした次第でございます。実質的にはこの概要をごらんいただければ、その内容は御理解いただけるものと考えております。
  278. 水田稔

    ○水田委員 国会への報告というのは法律にきちっと決められたことですから、これは要求があったら御説明するというような性格のものじゃないわけです。けじめをつけるという点からいえば、そういう計画変更をした場合、国会が開かれておれば遅滞なく本会議報告するというのは筋であると思うのです。開かれていないときには、開かれた最初の国会で報告する、そういうことが法の建前だと思うのですよ。ですから、それぞれ配るだけじゃなくて委員会報告しましたと、説明しましたということではこれは足りないと思うので、これは責任者、本当言うと官房長官ですか、今おられぬから。政府責任ある、これは国会と政府との関係ですから、局長じゃなくて、このことについては、今は外務大臣のあれは官房長官ですね。ですから、官房長官に私の質問の終わるまでにおいでいただければそのことについて答えていただきたいということで、保留をさせていただけますね。理事、ちょっと委員長と詰めてください。国会報告のあり方の問題です。
  279. 鴻池祥肇

    ○鴻池委員長代理 官房長官が戻りましたら、追ってということで……。
  280. 水田稔

    ○水田委員 戻らなかったら、僕は二分ほど残してやめますから、最後のところで答弁をお願いしたいと思います。
  281. 鴻池祥肇

    ○鴻池委員長代理 はい、結構です。
  282. 水田稔

    ○水田委員 それから、例えばカンボジアへ派遣するということですから、マニラからプノンペンということになると、これは実施計画の変更でいいのかどうかという、行動がいわゆるフィリピンという国とカンボジアと区域が違うわけですから、これはそういう点は、一たんどこかで決めれば、それに付随するやつは何でもその実施計画を変えればいいという考え方は、これはちょっと問題があると思うのですよ。  その点について、マニラから、これは要請されて、関係の国ですからね、好意でやるのでしょうが、カンボジアということを決めればそれに付随して何でもやれるというやり方というのは、かつて日本の軍隊がやってきたことなんです。意味は違いますよ。それは違うけれども、軍隊を動かすときにはその点は歯どめがきちっとしていなければ将来に禍根を残すということで、私は、この点はマニラ―プノンペンというのは、フィリピンから送るのはいけぬという意味じゃないのです。少なくとも法律なりこの派遣を決めた国会との関係からいって、こういう場合に、違う国との間の物の輸送というのは意味が違うんじゃないか、それが一つ。     〔鴻池委員長代理退席、委員長着席〕  それからもう一つは、いわゆる任務の区域を広げるというようなこと、あるいはこの中に、まあ読んでいただけばわかるというのですが、例えば文民警察官は危ないと思ったら自分で判断して中止しなければならぬ。それはどういう業務を一時休止するという、まあ中断でしょうね、そして後は問い合わせてですが、その中断する判断の基準というのは少なくとも実施要領になければ、それは勝手に自分で、一人一人のあれは違うから、これは危ないと思ったら勝手に逃げればいいのかということになりますから、そこらあたりは、私は、実施要領に本来入っておるのなら、それはどういう判断をすればいいのか、それは我々が見ても、ああそれならそういう判断やむを得ぬだろうと思う基準が、少なくともこれは報告されてしかるべきじゃないかと思うのです。  それからもう一つは、実施要領で本部長の判断でやっておる任務区域の拡大というのは、これは計画の変更と同じだと思うのですね。少なくともこれは国会報告事項ではないだろうかと思うのですが、その点についてのお答えをいただきたいと思います。
  283. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 何点が御指摘ございましたので、極力答弁漏れがないようにいたしたいと思います。  まず第一点は、私が理解いたしましたところでは、フィリピンからカンボジアへの物資の輸送という点が実施計画で決められているべきではないかということであったかと思いますが、この点につきましては、本部長がこの輸送というものを、すなわち御指摘の点は、あるいはカンボジアの外での活動であるので問題ではないか、あるいはそういうポイントかと存じますが、その点につきましては、カンボジアの実施計画の中におきまして、これはお手元にあるいはお持ちかと思いますが、この2というところに「カンボディア国際平和協力業務の実施に関する事項」というのがございます。その中に「派遣先国」というのがございまして、これは当然「カンボディアとする。」ということが書いてございますが、ただ、その後の方に、「また、フィリピン共和国、タイ王国及びシンガポール共和国において、(1)ウに掲げる業務」、この(1)のウの業務と申しますのは、要するに建設等の業務でございます、施設部隊が行う業務でございますが、この「(1)ウに掲げる業務のうち、附帯する業務として輸送、補給等を行うことができる。」というふうに実施計画自体に書いてあるわけでございます。すなわち、施設部隊がカンボジアに参りましていろいろ橋の修理等、道路の補修、建設等を行います場合に、いろいろ輸送、補給というものが当然必要になってまいります。これはカンボジアの中だけでの輸送ということではございませんで、我が国からカンボジアに行く輸送、その際にはフィリピンも通るということでございますので、これも当初から対象にしているわけでございます。  なお、フィリピンからの要請で物を運ぶようにいたしましたのは、これはフィリピンの要請でもございますけれども、国連側の要請でもございます。したがいまして、このカンボジアでの国際平和協力業務の一環としてそのようなものを行うということでございます。  それから、たしか第二点は活動区域の拡大の問題についてお触れになったと思いますが、この点につきましては、国際平和協力法の第八条におきまして実施要領に定めるべき事項というのが列挙されておりますが、ここで、実施計画の範囲内でございますけれども、具体的なことはこの実施要領で書く。その掲げております具体的な事項の最初の一つとして、「当該国際平和協力業務が行われるべき地域及び期間」ということが掲げられておりますので、具体的な地域はこの実施要領に書いてあるということでございます。  なお、その点につきましては実施する地域について若干の変更がございまして、その各部隊の活動地域を州の境界に合わせたということでUNTACから指図が出まして、これに合わせたということでございます。  あるいはそのほかにもまだ御指摘の点があったかもしれませんが、とりあえず以上でございます。
  284. 水田稔

    ○水田委員 一つは、やはり自衛隊がカンボジアヘ派遣され、その通路にマニラを使わせてもらっただけであって、自衛隊がカンボジアで任務につくという意味で、輸送するということが任務にあったわけですね。ですから、フィリピンの物を輸送するというのは全然別の問題なんです。それはUNTACからいえばその中の業務かもしれませんけれども、少なくとも自衛隊機を使って他国の物資をカンボジアへ運ぶというのは新たな任務ですから、本来いえば、これは実施計画の問題ではなくて、本文のところでそれをやるかやらぬかを国会にかけるべき性格のもの、これはもう時間がありませんから答弁は要りませんが、そういう物の考え方。  それからもう一つは、区域を広げるというようなことはできるだけチェックする機能を持っておかぬと、軍隊を動かす場合にはえてして、その状況によって、通信状況もよくなければ独断専行ということはやらざるを得ぬ場合もありますが、そういう場合にこの基準で行動するんですよということをきちっと決めてなければ、勝手なことをされてだんだんだんだん深間へはまったという苦い経験があるものですから、後また別の機会にこの点については触れたいと思います。  時間がありませんから最後に、五月の二十三日ですか投票があって、新しい政権ができれば九月でUNTACは撤退する、我が自衛隊は十月の末に撤退ということですが、その前に、十月に行って既にこの三月で半年になりますから、交代するという時期に来るわけです。一部報道では、この交代がおくれるのではないかという報道があるが、その交代はどういうぐあいになるのか。  それからもう一つは、十月以降になれば、パリ協定を基礎にしたいわゆる紛争当事者の合意、そういうことではない状態になるわけですね。そのことについてその後にどういうぐあいに対応されるのか、お考えがあれば二つを聞きたいと思います。  それから官房長官、済みません。いわゆる実施計画の国会への報告について、いわゆる文書で配る、あるいは内閣委員会なんかで説明しています、こう言うのですが、そうじゃなくて、この法案をつくったいきさつからいえば、少なくとも実施計画をつくったら、国会が開かれておれば国会へ報告する、本会議。それから、もしそれが閉会中であれば、最初は文書なりあれでいいのですが、議長のところへ届けて、そして開かれる最初の国会に報告をすべきじゃないか、そういう意見を私は申し上げたので、それに対するお答えをいただきたいということであります。  以上です。
  285. 河野洋平

    ○河野国務大臣 PKO活動につきましては、委員指摘のとおり国民の関心極めて高く、国会でも活発な御議論があったという経緯を踏まえれば、国会にできる限り御報告を申し上げることが重要と心得ております。法律の第七条に、実施計画については閣議で決定をして国会に報告をするということになっておるわけでございますから、実施計画につきましては遅滞なく国会に御報告を申し上げる。その報告の仕方については、これはどういう報告の仕方をするかについては、国会でひとつ御論議をいただくことが適当かと思っております。  また、PKO活動全体、総体につきましては、節目節目に御報告を申し上げることが適当かというふうに考えておりますし、実施要領につきましては、これは委員会の御質問等で適宜お答えをしていくということがふさわしいのではないかというふうに思っております。  いずれにいたしましても、これらの問題については、冒頭述べましたように、国会にその内容を明らかにできるものは明らかにして、国会の御理解、国民の御理解と御支持をいただけるよう努力をするべきものであるというふうに心得ております。
  286. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 交代の時期についての御指摘でございますが、昨年の九月から十月にかけまして停戦監視要員、それから施設部隊、さらには文民警察が派遣されたわけでございます。停戦監視要員と施設部隊につきましては六カ月の交代ということで派遣しておりますので、この三月の中旬からこの任期が参りますので順次交代する準備を進めております。具体的な日取りにつきましては、まだUNTAC等との調整中でございます。それから、文民警察につきましては、九カ月の任期ということで、一応交代なしということで行っておりますので、とりあえずは交代は考えておらない次第でございます。具体的な停戦監視要員と施設部隊の交代の日取りにつきましては、近く確定する予定でございます。  それから、選挙後の国連のいわばプレゼンスのあり方につきましては、外務省の国連局長の方からお答えをお願いしたいと思います。
  287. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 UNTACそのものにつきましては、総選挙を経て新政府が樹立されて本来の役目を終わることになっております。総選挙後も、したがって一定期間はカンボジアにとどまることが予定されております。安保理によって承認されましたUNTACの任期は、最大限本年九月十五日までとなっております。  このUNTACの任期終了後に何らかの形で国連の関与がカンボジアに残るかどうかという点につきましては、現時点では判断できませんが、あえて申し上げれば、国連の関与が残る可能性はございます。その場合、マンデートや任期等については改めて安保理の場で検討され、何らかの決定がなされる必要がございます。
  288. 水田稔

    ○水田委員 終わります。
  289. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて水田君の質疑は終了いたしました。  次に、三野優美君。
  290. 三野優美

    ○三野委員 委員長、けさは飛行機の都合でおくれまして、済みません。飛行機が落ちるのかと思ったら、ついに落ちずに、私、人柄がいいものですから、無事着きました。  まず最初に労働大臣にお尋ねしますが、せんだって大学生の卒業の内定者について取り消しがあったということが新聞報道されましたね。これは非常に大きなショックだったわけですね。単に関係者だけではなしに、子供を持つ親の立場からすると、こんなことがあっていいのだろうか、こういう気持ちですわね。考えてみると、自分が子育てをして、幼稚園から大学出るまで少なくとも十八年ないし二十年の学業を終えて初めて社会に出る。夢膨らまして、さあ頑張ろうということで、就職試験も面接も通ったりしながら内定した。これは私も二人の子供、男の子が就職していますが、内定というのは決定だと日本の場合はだれでも思っているわけであります。  労働省は、この内定というのはまさに労働契約が成立した、決定したものだ、こういうように考えておりますか。
  291. 齋藤邦彦

    ○齋藤(邦)政府委員 採用内定取り消しの法律的性格は、個々具体的事情によっていろいろ異なるだろうというふうには思いますけれども、ごくごく一般的に申し上げますと、最高裁判例等によって見ますと、やはり停止条件つきの雇用契約が成立したのではないか、こういうふうに解釈するのが普通ではなかろうか、こういうふうに思っております。
  292. 三野優美

    ○三野委員 私は、余り法律上のこととかそういうことではなしに、社会一般の通念としてこれはまさに決定である、労働契約が成立している、こう見るのが当然だろうと思うし、だれでもそう思っているわけです。  そこで、今回こういう事態の中で、大学生が内定をしておったにもかかわらず突如として取り消しを通告された。通告された人数なり企業数は一体どのくらいになりますか。
  293. 齋藤邦彦

    ○齋藤(邦)政府委員 私ども各都道府県から報告をとっておりますが、その結果、二月二十六日までの状況でございますと、高卒で十二社、六十八人、こういう報告を受けております。また、大学等の新卒者に関しましては、やはり同時点まででございますが、七社、百四十三人について報告を受けております。また、二月の二十六日の夕刊等の報道によりますと、関西の就職担当者でつくっております研究会の調べでは五十五社、八十一人、こういう数字もございまして、ここの点につきましては、現在、大阪府を通じて事情を調べるように指示をいたしております。
  294. 三野優美

    ○三野委員 その二十六日までに十二社、六十八人の高校生、大学卒業者七社、百四十二人、関西の部分は新聞報道ということなんですが、少なくとも二十六日までに把握している部分については、その企業名なり名前もわかっていますね。
  295. 齋藤邦彦

    ○齋藤(邦)政府委員 各都道府県には、このような事態が生じた場合には、事情を調べると同時によく指導するようにとの指示をいたしておりまして、そういう意味で、現地ではすべてわかって、おります。
  296. 三野優美

    ○三野委員 これからの歯どめについてどんなことを今労働省はやっていますか。
  297. 齋藤邦彦

    ○齋藤(邦)政府委員 採用内定取り消しという事態、先生御指摘のように非常に重い事態だというふうに思っておりまして、現在、各都道府県には、そのような事態が生じた場合には即刻指導するように、こういう指導をいたしております。何とか内定取り消しの取り消しというか、雇用維持ができないだろうかということをお願いをしておりますが、それが難しい場合には他の企業へできるだけあっせんする、そういうような態度でおります。  また、あわせまして、次年度の採用の際の求人申し込みの際には、そのような事態があったということを明記をさせまして、関係者が次年度において就職する場合には十分に参考にしていただく、こういうような措置をとっております。
  298. 三野優美

    ○三野委員 よく初めの方はわからなかったけれども、最後のところは、何か次年度においてはこういうことがあったことを明記するというのはどういうこと、何を明記するの。
  299. 齋藤邦彦

    ○齋藤(邦)政府委員 失礼しました。  次年度におきまして、前年度で採用内定取り消しというようなことをした企業であるということが関係者にわかるようにしておる、こういう趣旨でございます。
  300. 三野優美

    ○三野委員 労働大臣に聞きたいのですが、この際、私、政治家としてあなたに聞きたいことがある。  こういうことはあってはならぬことなんですね。例えば不況で企業は倒産をした、あるいは倒産寸前になった。そして、こうこういう事情でもって一時帰休なり解雇しなければならぬ、そのための条件はこういう条件をやりましょうということをやるのが普通ですわな。退職金の割り増したとかあるいは一時休暇の補償はこうしましょうとか、普通ですわね。これは切り捨て御免ですわな。歯どめ策は何か次年度以降においてはとこう言うのだけれども、それでは私は少し余りにもこれの対策としては不十分ではないのか、あるいは世間から見ていておかしいのではないのか。  実は私がこの質問をするに当たって連絡があったのです。実は就職決まって、兄弟集まって、主なおじさん、おばさんも含めて、大学を無事卒業しました、こういう企業に決まりました、おかげで。さあ頑張れよと言って、ささやかだけれども内祝いをしたというのです、大学の卒業と同時に。ところが取り消したというのです。そこで、切り捨て御免みたいなことが通用していいのだろうか、こういうことで私のところに話が持ち込まれました。これでは余りにも理不尽ではないか、こう言うのですね。  どうです、大臣、来年以降と言わずに、この取り消した企業について天下に公表する決意はありますか。それをやるかどうか聞きたい。それをやらなきゃ歯どめができないのです。
  301. 村上正邦

    ○村上国務大臣 おっしゃるように、新卒者の採用内定取り消しについては、本人及び家族はもとより、社会全体に対しても大きな打撃と不安を与えるものであり、あってはならない重大な問題だ、こう認識した上で、おっしゃいますように、私が新規取り消しという新聞報道を見ましたのが一月早々のコダックの記事だと思いました。そのときに事務方をすぐ呼びまして、採用取り消しに関する対策を一層強化しなきゃいけない、また身分を保障する法令上何らか対応を含めて具体策を検討するようにと指示をいたしております。しかし、これはもう速やかにやらなきゃならぬことで、これを法令上と申しますとやはり多少時間がかかってまいります。  そこで、これは来年のことを言ったって始まりませんので、直ちに今現在こういうことに対して対応するためにどうしたらいいかということの知恵を今絞らしているところであります。例えば、これからも取り消す場合には事前に、どうして取り消すかというその理由を各都道府県にあります職安に届け出させるとか、こういう措置を早急に指示をすることも一つの歯どめになるのかなと。あらゆる方策を講じて、この歯どめ策については労働省としても断固たる、毅然たる態度で企業に臨みたい、このように思っております。
  302. 三野優美

    ○三野委員 大臣、断固はいいのだけれども、言葉だけ断固と言ってもしょうがないわけだ。  それで実は、もしこれを許したらば、私は企業側が安易に内定しちゃうと思うのですね。まあとにかく状況を見て、それ余分にしておけやということで、安易にやって安易に取り消しをしちゃう。今度卒業生の方は、一つではなしに二つ三つ約束しとかぬと危ないぞ、こうなっちゃうわけね。まさに労働市場は混乱に陥るよ、これは。こんな不安な、あるいはこんなことを認めたらば。したがって、私は、あなたが断固と言うならば、ことし内定をして取り消しをしておった企業については天下に公表する、これが断固なんだよ。あなたの断固、断固という言葉だけでは困るんだよ。
  303. 村上正邦

    ○村上国務大臣 そういう意味も含めて断固と申し上げたわけであります。
  304. 三野優美

    ○三野委員 そういう意味ということは、やるということだろうから、それも腹据えて、これは労働大臣、あなたに期待しますから、やってください。
  305. 村上正邦

    ○村上国務大臣 日本語はそういうことであります。
  306. 三野優美

    ○三野委員 はい、わかりました。  来年というわけにはいきませんよ。とにかく卒業式までにちゃんとやってください。大学の卒業式はもう今やっていますから。  さて、今のはそういうことで、労働大臣、私はあなたの性格好きなんだ、この間から。だから、あなたに期待してたんですから、それを断固やってください。  官房長官、外務大臣の代理を含めて御苦労いただいているわけですが、私は率直に申しまして、この大事な今の国際情勢、非常に複雑な状況の中で、外務大臣がいないまま予算審議が行われていることは非常に困ったものだと思っているわけ。しかし、あなたが外務大臣を背負ってやるということですから、それはそれで外務大臣としてお答えもいただくし、また官房長官の任務も果たしていただく、こういうことで私若干質問したいと思うのですね。  本来ならばこれだけ長くなると代理だけでは困るわけなんです、本当は。あすから出てくると言われたら、出てくれば、まあしっかりやってくれるかどうか知らぬけれども、もう総括質問、締めくくりなり、そういうのにいないということは、もうこれは国政上非常に遺憾なことですから、その点は内閣として検討してもらいたいと思います。  さて、私はアジア外交について若干お尋ねをしたいと思うのですが、せんだって宮澤首相がASEANを訪問いたしました。かつてあの人も外務大臣も経験者である。そこで、ASEANに行った際に演説されましたね、総理が。私は総理の演説をテレビで見ました。あと新聞で若干見たのですが、非常にきれいな言葉を使いながら、そして我が国が日中戦争を初め第二次世界大戦で多大な御迷惑をかけた国々を訪問をして、あの各国におけるごあいさつなりあるいは演説というものは、ある意味においては非常に重苦しい気持ちを持ちながら演説したように受けとめたわけです。  しかし、さて、そうならば、日本は今まで、今日まで、率直に言いまして、第二次世界大戦以後、日米を軸としてあるいはヨーロッパを軸として先進国中心の外交が基本であったような気がしてならぬわけですね。その間、サンフランシスコ条約によってアジア・太平洋地域との国交正常化あるいは日韓条約の問題、日中とずっと進めてきたわけですが、どうもやっぱりアジア・太平洋地域における外交というのが、歴史的な経過はあるだろうと思いますが、おくれおくれになってきたんではないのか、こういう気がします。これが一つ。  二つ目には、さて、そういうさまざまな非常に重苦しい歴史を持ったアジア・太平洋地域に対する日本外交の基本は一体何なのか、ここのところがすかっと我々国民にどうも読み取れない。戸惑いがあるわけですね。ここらについてひとつ、あなたも宮澤内閣の官房長官であると同時に外務大臣代理として、日本のアジア外交の基本はここなんだ、中国に対してあるいはロシアの一部も入りますわな、あるいはASEAN、太平洋地域含めて、ここなんだということをここでひとつ教えてもらえぬでしょうか。
  307. 河野洋平

    ○河野国務大臣 一番の基本は、アジア諸国とともに考え、ともに行動をする、一緒に考え、一緒に行動するというのが宮澤総理の、今回のアジア訪問で各所で話をされ、総括的にタイのバンコクで演説をされましたが、その中に流れる気持ちでございます。
  308. 三野優美

    ○三野委員 ともに考え、ともに行動する。しかもとりわけ、あえて言うならば、日本は日中戦争十五年、そして太平洋戦争、第二次世界大戦という重い歴史を背負っているわけですわな。しかし、その中においても日本は早く立ち上がって、先進国として経済的にも社会的にも一応アジア・太平洋地域において前に出ていると思うのですね。いわばともに考え、ともに行動するんだけれども、それは一体何のためにともに考え、ともに行動するんだろうか、目標は何なんだろうか、そしてここまで発展した日本のアジア・太平洋地域における役割というものは一体どういう位置づけなんだろうか、その点ちょっと聞かしてもらいたい。
  309. 河野洋平

    ○河野国務大臣 正確な文言とか詳細は政府委員から答弁をしてもらいたいと思いますが、総理の気持ちの中にございます大事な部分は、謙虚にアジアの国々と話し合い、一緒に考え、一緒に行動する、つまり謙虚でなければならない。それは委員指摘のように日本の過去についても忘れてはならない、十分思いをいたさなければならないということでございますし、と同時にアジアの将来に対して我々ができることはできるだけのことをしなければならないという気持ちがあるからだ、そういうふうに私は考えております。
  310. 三野優美

    ○三野委員 私は政府委員に余り事務的な話を聞こうと思わない。これは政治的な立場で、政治家として、内閣としてどう考えているかということを、実は話を聞きたいわけですね。  さて、謙虚な態度、そのことは演説の節々で見えちゃうわけです。恐らくそれは政治的に経済的に文化的にアジア・太平洋地域全体が安定をする、ともに前進のために考え、行動する、こういう意味だろうと思うのですね。単に抽象的に考えたり行動するんじゃなしに、経済的にも政治的にも社会的にも文化的にもともに前進する、これが基本だろうと思いますね。  さて、そのためには一体何が必要なのか。私は過去の歴史ということを申し上げましたし、宮澤総理も何遍か繰り返して言っているわけですね。過去の歴史というのは、日本の戦争の歴史であるし侵略の歴史なんだ。大変迷惑をかけた。国内でも多くの犠牲があったけれども、しかし、これらの地域に対して日本が迷惑をかけたというのは大変なものですね。これはもう我々が消し去ることのできない歴史的な事実だろうと思う。ですから、教育の問題についてもいろいろとやりたいと言っているわけですね。  さて、そういう状況の中で、実は、もう私が言うまでもありませんが、戦後の償いの問題についていろいろと議論をされてきたわけでありますし、今ぽろぽろぽろぽろ出ているわけです。それは強制連行の問題があったり、強制労働の問題があるとかないとか言ってみたり、従軍慰安婦の問題がある。  そこで考えてみると、宮澤内閣は謙虚にともに考え、ともに行動すると言うのだけれども、過去の内閣は、済んじゃったよと言ってきた。何にもないよと、済んじゃったよと。まあ朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮は別としましても、済んじゃったよ、法律的に全部済んじゃったのだ、こう言ってきたわけ。ところが私は、確かに法律的にはそれは済んだと言って国内では通るかもしらぬ、ほおかぶりでいけるかもしらぬ。ところが当時は、考えてみると、日本も誤った戦争をしたけれども、焼け野原になって、食うものもない、着るものもない、住む家もないという状況の中から、さて立ち上がろうというときに、そのためには資源もない国だから国際社会に入らなきゃならぬ、早く平和条約を、国交を再開してもらいたいということで、日本も大変外交に力を入れたと思うのです。しかもそれは先進国を中心にやってきた。しかし、アジア・太平洋地域においても、これらも日本以上の犠牲を払って、そして足腰立たないような困難な状況の中で平和条約を結ぶ、一定の補償もしましょう、戦後補償もやりましょうと。もうのどから手が出るような貧困な状況の中で、率直に言いまして、私は少し言い過ぎかもわからぬけれども、日本が札束をふらふらすれば、実は手を出したいという状況であったと思う。まあその言葉は適当であるかどうかは別として。いずれにしても妥結しました。  しかし、考えてみるとそのときに、日本国内においても、とにもかくにも戦後大変迷惑をかけたということをわかっておりながらも、どの程度、どういう事実があったかということをすべては知るすべもなかったかもわからないと私は思います。しかし、相手国も戦争の犠牲の中でどれだけの人がどういう犠牲に遭ったかということを知る由もなかったかもわからない。確かに政治的にも混乱状態、社会的にも非常に不安な状況経済的にも非常に困難な状況。そういう状況の中で、私はそれぞれの国との平和条約、戦後補償の問題は話し合われたと思うのです。  したがって、その後何年かたつうちにそれぞれの国が安定をし、政治も政権も安定する状況の中でそろそろ出てきちゃった。例えば強制連行の問題があるのではないか、強制労働の問題もあるのではないのか、従軍慰安婦の問題もあるのではないかと言えば、いや、それはない、あってみてもそれは民間の問題で政府の関与するものではない、こう言い続けてきたわけです。ところが、国内であちらからこちらからしばしば出てくる。それらの国々の人たちも、もうこれ以上我慢できないよ、戦後は終わったと日本は言っているけれども、終わっていませんよ、こういう事実がありますよということが自由主義国で出てくる。遠くはアメリカ占領軍が持って帰った資料の中からも出てきた。これもフィリピンの問題が出てきていますわね。こういう事実があった。平和条約が締結されて法律的には戦後の問題は済んだと言うけれども、実際にはそういう事実があったということ、十分な調査のないまま、両国ともに、このことはお認めになりますね。
  311. 池田維

    ○池田政府委員 戦後の過去の問題につきましては、法律的に申し上げますと、サンフランシスコ平和条約それから二国間平和条約その他の関連する条約に従いまして日本政府としては誠実に対応してきたというように考えておりまして、そういった意味では法律的に決着しているという立場でございます。
  312. 三野優美

    ○三野委員 そんなことは聞いてないの、私は。初めから素直に言ったろ。法律的には済んだと言い続けてきたけれども、しかし、両国ともにいわば復興段階で政治的にも経済的にも社会的にも安定してなかったんだ。したがって、そういう事実も我が国もすべてを知っていたとは言えないだろう。ましてや被害を受けた国々は知る由もなかった。しかし、その後しばしばさまざまな資料の中でこういう事実が出てきた。国内にも出てきているし、アメリカからも突きつけられてきているわけです。したがって、そういう事実が、見落としと言えるのかどうか知らぬけれども、その点があったことはお認めになりますかということなんです。だから政治家としてお答えになって、事務屋さんの話は聞きとうないわね。
  313. 河野洋平

    ○河野国務大臣 委員がおっしゃいますように、恐らく戦後の相当混乱期でございます。お互いにどんな問題があったかを完全に把握をして問題解決と言ったかどうかということについては、昨今の状況を見ればやはりいろいろ問題はあったかもしれない、そう委員がおっしゃることは、事実に照らしてみて私も同感するところがございます。  しかし、今政府委員からも申しましたように、お互いに混乱期で、完全に把握できているかどうかは別として、あの時期にやはり協定を結ぶ、そしてその協定はこれがすべてと、あそこで言うのは、「完全かつ最終的に解決」をしたという文言を入れて吏定を結んだという事実がございます。これは厳然とした国と国との関係であることもまた事実でございますから、そうした事実を踏んまえて、先生の御指摘は御指摘として私は聞く耳を持っております。
  314. 三野優美

    ○三野委員 この点につきましては、こういう問題にさまざま関係している法律学者も含めまして、まあ私は法律のことはよくわかりませんが、いわば国家間の問題は済んだのかもしれませんけれども、例えば個人的な問題については済んでないよという意見もある。日本の側は、いや、もう個人的な被害も含めて全部、オールですね、まとめてしているんだという意見もあるんです。  御承知のように、少し条件は違ってもドイツの場合は違いますわね。国家補償は国家補償として、しかし我が国が犯したものについては、これは全国民的な課題として背負うんだということで、各国に対してそれぞれ個人補償も含めて処理をしているわけ。そういう事実もあるということですよ、国際的にはね。ですから、全部済んじゃったのよ、ほかには何にもありませんよと言うだけでは、国際社会でも通用しない現実があるということもやっぱり考えてみる必要があるんではないのかということが一つです。  同時に、韓国政府が、今度の新大統領も含めて、少なくとも補償の問題、今大臣言ったように、調査は日本政府責任を持ってやるべきだ、こう言っているわけ。繰り返し繰り返し言っているわけであります。その意味の重さというものは考える必要があるだろうと思うんですね。私は単に韓国だけじゃないと思いますよ。我々が突き出すまで黙ってほおかぶりするんじゃなしに、日本政府責任持ってやるべきだということを繰り返して大統領自身が言っているわけですから、私はその重みを考える必要があるだろうと思うんです。  さて、時間の関係ありますから、またこれは改めて議論したいと思いますけれども、私がアジア・太平洋地域における外交姿勢というものを聞いたのは、実は私は、ヨーロッパにおいては軍縮その他大分進んでいますが、アジア・太平洋地域における平和と安全保障の問題はこれからの課題だと思っているわけなんです。これからの課題であるんだけれども、そのリーダー的役割を果たさなきゃいかぬ日本が、実はそのことに積極的にやっぱり踏み込めない状況があるではないか。あるいはいまだに、この間も私の友人の息子が行ったんですが、これは田舎だろうと思うけれども、釜山の田舎へ行ったらば、年寄りの食堂は飯食わさぬという、日本人には。そういう歴史的なこともあるわけ。  私は、この戦後の問題というものを解決しなければ、余り小手先だけの事務的なことだけでは済まされない。そうでなければ、本当にアジア・太平洋地域の軍縮を含めた平和外交を展開していくのにどうしてもやっぱり障害になる。この社会は活字が動かしているんじゃなしに人間がしていますから、人間の感情に触れるものがなければ外交政策だっていこうはずがない。今のこの戦後処理の問題を解決しなければ、実は本当に日本がアジア・太平洋地域における果たすべき役割というものは十分果たし得ない、果たすには非常な障害があるのではないかという気がしてならないわけ。ですから、行くたび行くたびに謝罪ばっかりしている。私は、謝罪ばっかりじゃ、もちろん謝罪しなければならぬと思っていますよ。言葉だけの謝罪を繰り返してみてもしょうがないと思うんです。実際に、いやわかったと、日本の平和外交の真意というのはわかったよと各国が思わなきゃいけませんわね。  ですから、さてそういう意味で私は、この戦後処理の問題で日本政府もどうもそのままほうっておこうという、ほおかぶりでいこうという気はなさそうですから、どうですか。聞くところによると、各省庁でそれぞれに慰安婦の問題を含めて調査をしろと言っているらしいんですけれども、この際官房長官が軸になってもっと組織的に迅速に対応する体制をつくって、国内でも調査するが、やっぱり外国の資料も含めて腹を割って話をする、こういう手法をとる気持ちはありませんか。
  315. 河野洋平

    ○河野国務大臣 従軍慰安婦の問題は、お互い人間として心の痛みを禁じ得ません。どんなにかつらい思いをなさったかということを考えますと、我々がその心の痛みを何らかの形で表現をするということも考えなければなりませんし、その前に真実をでき得る限り正確に把握するということが必要であるということは、委員指摘のとおりでございます。  御質問の官房長官が軸になってそうしたことをやったらどうだという御提言でございますが、現在、内閣官房外政審議室を一つの軸にして各省で調査を進めているところでございます。お許しがいただければ外政審議室長からお答えをさせたいと思いますが、私も十分監督をして、この外政審議室で各省に指示を出して、この問題の調査は誠意を持って進めたいと思います。
  316. 三野優美

    ○三野委員 官房長官、私がお願いしたいのは、だからひとつ一遍検討してみてくれませんか。それでずるずるずるずるいつまでも引っ張っちゃまずいと私は思う。それで、次々よそから資料が出てくるようじゃまずいですから、もう積極的に早期に解決する決意でもって内閣でひとつ検討してください。私はやっぱり組織的に迅速に解決するように特に望んでおきたいと思います。これでやりとりばっかりしてもしょうがないですから、そういうお願いをしておきます。  次にお尋ねしたいのは、少し財政問題を含めた経済状況の問題ですけれども、この間から野党が減税を求めて、今恐らく自民党から回答があってる時期ではないかと思うんですが、あるいはさまざまな景気対策があるんですが、大蔵大臣、あなたが繰り返し繰り返し言っている百八十二兆円の借金、それから隠れ借金が三十八兆円、まあ国鉄の分も含めましてありますわな。この二百十六兆円、二百兆円を超すんですわな、両方含めますと。これを考えてみますと、国民一人当たり、全部含めますと、まあ国鉄の場合はそれはもちろん土地その他が若干あるにしてみても、今のところ借金全体としては百八十万近くになっちゃうわけですよ。そうしますと、この利子というのは一体年間幾らいっとるんでしょうか。十五兆円近くなるんではないかと思うんですが、どうでしょう。一人十三万近くになりゃしませんか。
  317. 藤井威

    藤井(威)政府委員 平成五年度の今御審議いただいている予算の中での一般会計、国債費というのが計上されております。その中での利子額は、国債利子等の合計で十兆四千億円でございます。
  318. 三野優美

    ○三野委員 計算の仕方はいろいろとあるようですけれども、おたくから出てきたのは一人当たり借金は十万円という案も出てきているわけですが、しかし、国鉄の分を含めますとそれよりはかなりオーバーするんではないのか。いずれにしても十万ないし十二万ぐらいな借金になる。十二万ぐらい借金になるわけですわね。これを考えてみると恐ろしい話ですわな。大蔵大臣も大変恐ろしいと恐れていて、恐ろしい話になる。  そこで、私がここで不思議でしょうがないのは、赤字国債を出した、それはまあ脱却した、赤字国債の発行は。しかし、建設国債は積もり積もって、両方含めて百八十二兆円。そこで、建設国債はいいではないかという意見がありますな、あなたも含めて。財産残ってるんじゃいいじゃないか。  それで大蔵大臣にお尋ねしますが、私は経済のことは弱いんですけれども、もしお宅に大きな邸宅を建てたらば、家を建てたらば、これは財産で残っているから子や孫にずっと残しておったらええわなんてことでやるんですか。私のところの方ではそういうことはあんまりない、それは残りの部分はありますよ、残るのは。しかし、親が建てたらば、自分で設計して自分で建てたんですから、親の時代にできるだけ払ってしまって、子や孫にはできるだけ残すまいと。それで、財産残っておればいいと言うけれども、やはり家を建てますと、管理費も要るし補修費も要るし、息子や孫の代になりますと、おやじ、おふくろが年をとったら離れ部屋も建てにゃいかぬものですから、新しい仕事をしなきゃならぬわけ。そういう議論だけではやはりなかなか家庭ではいかぬわけですわね。こんなことをしていたらば、このアル中みたいなおやじ出ていけなんてほうり出される危険性もあると思うのですがね。これは一体どうですか。
  319. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 入るをはかって出るを制すというのが私は財政の大原則だと思うのです。原則といたしましては、現在の収入でもって支出を賄うというのが私は大原則だと思いますよ。しかしながら、これが財政法四条に書いてあるところの原則でありますから、その原則を外れる場合に建設国債というような話が出ています。私は、これは先ほど先生からお話がありましたような、将来に資産が残るからまだまだいいのだろうけれどもと、こういう話でありまして、それでそこも制限的にやはり考えていかなければならない話でありまして、基本はお互いが今入ってくるところのもので賄う、これが私は国家の財政の大原則じゃないかなと。しかしながら、それをこうやってきて、建設国債でやらなくちゃならないというような状況になってきたというのが昭和四十年代の状況だと私は思うのです。  それからさらにもう一つは赤字国債という形になりまして、そんなふうに関係ないところでも国債を出してやらなくちゃならないという形になって、何とか早くやめなければならない。また、十年でこれは必ず償還するという話でやってきたんですけれども、できなかったというのが日本の終戦後の歴史なんですね、これは。非常に私は残念なことだけれども、そういった形でやってきたということだ。  したがって、平成二年にやっと赤字国債を脱却したんですから、少なくともこの赤字国債だけは再び発行しないということはぜひやりたいなというのが私たちの気持ちでございます。だから、そういった気持ちを酌んで私はずっとやっていただきたい。もう出ているからしょうがないじゃないかなんというような御議論もある。百二十兆、百八十兆もあるから、あと十兆ぐらい出したところで大したことはないじゃないかなんと言っていたら財政の規律保てない。やはり国民として私たちは考えていかなければならない問題だと思っているところであります。
  320. 三野優美

    ○三野委員 そこで、実は次にお尋ねしたいのは、常にやはりそういう気持ちが正しいと思うし、私もそう思うのです。ただ、私がここでぜひ聞きたいと思うのは、今言ったように四十年代から始まってきたこの国債発行、建設国債にしろ赤字国債にしろ、その間に好不況がありますね。それで、この間も総理は、今日の経済、資本主義経済では好況、不況というのは必ずあるんだ、そういうことを言ってみえた。私もそう思います。  そうならば、四十年代から今日までずっと続いてきたこの国債、何回か好況期が来ているわけですね。その好況期には国が予定をしたよりも余計税金が入ったきたのです。にもかかわらず、この国債の、これは大蔵省からもらったんですけれども、一回として減ったことはないのです。これは減ったことがないわけです、この段差が、階段が。階段毎年上がっているでしょう。本来ならば、私は、不況期にやはり国債出した、出したけれども好況期にそれを早く減しておく、そして不況に備えるという態度がなければならぬと思うのですけれども、実はこのグラフを見る限りにおいてはそれがなかったのではないのか、こういうふうに思うのですけれども、どうですか。
  321. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 そのグラフ、ちょっと私もあれなんですが、確かに今まで四十年以来、だんだんと国債残高がふえてきたことは事実であります。実は私も大蔵政務次官をやりましたときには一番国債残高が多くなる、こういうことで、戦時中の国債みたいな話じゃないかなどということを言われたことがあるのです。その年の次の年には国債の依存度が減ってきた、こういうことであります。その残高は私はずっとふえてきていると思いますよ。  そのときそのときは、やはりいろいろな形で調整をしてやってきたことは事実であろうと思います。そのときそのときにおいてやってきた。しかし、財政に対する要望というのは非常に強いわけでございますから、なかなかそれが抑え切れないというのもまた過去の歴史に照らして見て事実だと思うのです。好きこのんでふやしたということではない、みんな今も私が先ほど申しましたような考え方で今までやってきたんじゃないかな。しかしながら、それがうまいこといかなかったということもまた私は事実であろうと思います。先人の轍を踏まずといいますけれども、そういったことのないようなことを私たちはこれからも考えていかなければならないのじゃないかな、こう思ってお願いをしておるところでございます。
  322. 三野優美

    ○三野委員 実は、いろいろなものを私なりに読んでみますと、ある意味においては政治家というのは無責任だなと、私もそう思うんです。ずっと自民党内閣が続いているわけですわな。率直に言いまして総理大臣というのは一年半か二年かでかわってしまうものですから、自分が任期のうちは格好のいいことばかり言ってしまって、苦いことや渋いことは言わないわけ。あれもしましょう、これはまあ総理大臣だけでなくて政治家みんなだろうと思うのです。私が当選したらばこっちもトンネル掘ります、こっちも汽車つけますなどと言いよるうちにパンクしてしまったのと同じようにね。いわば非常に危険な道をやはり歩いているわ け。ある意味においては無責任ですわね、国民の側からいえば。  私が指摘したいのは、皆さん腹立つかもわからぬけれども、やはり歴代自民党政権の怠慢だよと。それは我々も責任ないとは言えません。怠慢だよと。その結果こういうことになってしまって、さていよいよ長期にわたる不況が目の先に来た、何とか手を打たなきゃならぬ。これはまた後から聞きますけれども、そのときになったらこれをにしきの御旗に、どうにもなりませんわ、なりませんわと繰り返すだけでは余りにも能がなさ過ぎるのではないのか。常に資本主義経済は好況、不況はやはり周期的にあるんだということを総理大臣も言っているわけですから、あなたもそれはお認めになるだろうと思う。そのことがあるとわかっているのであるならば、常にそれに備えるという体制がなぜ好況期にできなかったのか。これを見ると好況も不況もない、皆階段上がっているわけ、借金は。まあ利子も含めてですけれどもね。率が多い、少ない言ってみても、私は、こういう事態に備えている対応というものは今日までの政権になかった、これはやはり率直に認めなきゃいかぬのじゃないですか。どうですか。
  323. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 私は、残高がずっとふえてきたことは、これは正直言って認めざるを得ないと思いますが、そのときそのときの政府当局、財政当局におきまして努力をしていろいろな節減をし、また、そのときに発行するところの公債が抑えられるような形のことはいろいろ考えてきた、私はこう思っておるのです。しかし、その結果がそういうことになったということは、またこれはある程度今の話、残高がふえてきたということも、これは事実であろうと思っています。決して何でもかんでもいいからおれの間に全部やってしまってというような話でもなかったのだろう、こう私は正直言って思っています。
  324. 三野優美

    ○三野委員 さて、そこでお尋ねしたいのですが、国民は何となくこの借金をあなたが常に言うものですから知っているわけ、これは大変だと。年寄りは長生きするというし、子供は産まぬというし、これだと年をとっても年金もらえぬのじゃないかと。だから、こんなことしているから、年寄りの初診料上げるぞ、入院費も上げてしまうぞということで締めつけがきているな、これは大変よなと。ほかにもありますけれども、後から触れますけれども、貯金は離せぬぞなといってますます貯金を抱き込んでしまうわけ。国民はよう知っていますよ、繰り返し繰り返しやっちゃうものですから。私はこれをてこにして年金や社会保障の切り捨てやったり、そういうことを口実にしているような気がしてならぬわけです。借金があるから大変だ、大変だなんということを言ってね。  ですから、私はそういう意味からいうと、これはやはり過去に重大な過ちを犯したことは率直に認めながら、やはり常にそういうものが議論されながら国の財政を安定さす。しかし、こういう不況なときにはやはり大動員して不況対策をやれる。いや、赤字国債、あなたは嫌だ嫌だと。本来ならばこれが、この階段が五十ぐらいのところでおれば、ではこの際赤字公債出しても減税やろうじゃないか、こう言っただろうと思うのです。こんなことしているものだから、渋々渋々して、あなたが首をなかなか縦に振らないということもあるんだろうと思いますが、その点はやはりお互いに反省する必要があるだろうということをまず申し上げておきたいと思うのです。  さてそこで、隠れ借金三十六兆円、これはいつまでにどういう方法で返してくれますか。これを一つ聞きます。  もう一つは、百八十二兆円の借金について、これはあなたが払うわけではないんだけれども、国民に払わすんだろうけれども、しかし、政府としてもうこれ以上ふやさないと。やはり、いつまでにこの借金をあれして、十何万円も毎年毎年利子を払うんでは国民もかないませんわな。これ、国民負担でしょう、利子は。もしこの借金がなければ、十何万減税してくれたらば一発で話は決着ついたと思うんです。これじゃかなわぬのですが、まずは隠れ借金のしまいからお聞きしておきたいと思います。
  325. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 隠れ借金というのは、一体どこまでどういうふうに言うかというのもまた定義がございます。今先生がお話しの三十六兆円、こういうふうなお話でございますが、私はそれぞれのところ、この前も法案を通していただきましたけれども、今参議院で審議しておりますところの法案でもいろいろなものがございます。そうしたような、まあ言いますと、政府の財政の中でいろんなことを考えてやっていて、それが詰まってきた。それぞれ一つ一つをとらえてみましても、いつまでやるか、どうだというような話もあります。そういったようなことを含めまして、個別具体的にやって処理していかなければならない。一律的にこれを何年というふうな話にはなっていないわけでございますから、いわゆる特別の措置につきましては、それぞれ一つ一つのものについて考えていく、また、そういった形での処理をしていくという形のものだ、こう思っています。  特例公債というか赤字国債と違いますのは、赤字公債はもう出しますと、ばあっと出しちゃってあと六十年、こういうことになるわけですからね。こんな話をしたらとんでもない話でありますし、私は、今申しましたところの諸問題は、それぞれのところにおいてきちんきちんと期日を決めて整理をしていく、こういうふうな形でやっているということで御理解を賜りたいと思います。
  326. 三野優美

    ○三野委員 私も赤字国債は反対なんです。ただ、時によればやらざるを得ないことがあるかもわからぬ。そのときに備える対応が政府になかったということを今指摘しているわけですね。ですから、その点はぜひひとつしかと受けとめてもらって、だからということで、減税のためにはやっぱりやらなきゃならぬことはやるべきである、こういうことを申し上げておきたいと思う。  さてそこで、もう一つお尋ねしたいのは、実はこの不況に備えて、あなたは御苦労だけれどもG7に行っていただいて、新聞見ていると、にこにこしちゃって、もう何にもなかったよ、何にもなかったよ、心配ないよ、この予算だけが通ればもう世界じゅうみんな方々歳だよみたいな顔をして帰ってこられたんですけれども、私は実はそうは思っていない。かなり詰めた話もあったんではないかと思う。ただ、あなたがこの予算で決着を、しまいをしようと思うものだから、殊のほかにこにこしているんじゃないかと思うんですが、何もなかった、なかったなんて言っているんだけれども、実はそうではないと私は思うんです。  さてそこで、これは実は本当はもっと時間をとって触れたいんですけれども、不況対策のために公共事業の拡大そして早期発注、公定歩合の引き下げと、この二つを柱に政府が今日まで繰り返し繰り返し言ってきたし、去年の補正予算も含めてやってきたわけですわな。私は、実はちょっと疑問を持っています。建設委員会にずっと置いていただいたわけ。公共事業というのは、私の考え方は、それは不況に、経済を支えるために能がないとは言いませんよ。しかし、不況であろうがなかろうが、社会資本の整備のために一定程度計画的にやるのが私は公共事業だと思っているわけ。不況対策だけに使うというのは、これは筋が違うと思う。海の中や谷の間ヘコンクリ流したからって国民全体の生活がよくなるとは私は思わぬわけ、実は。限度があるということをまず申し上げておきたい。それは間違いですよ。  もう一つは、公定歩合の引き下げをやりましたね。日銀は公定歩合の引き下げを連続的にやってこられたわけですが、平成三年の六月からですか、六回やりましたね。その目的、政策は何ですか。
  327. 福井俊彦

    ○福井参考人 お答え申し上げます。  委員指摘のとおり、日本経済が今非常に難しい情勢に直面して、一言で言いますと厳しい調整局面を引き続き経過中ということでございますので、先行き望ましい姿、つまり物価の安定を基礎として持続的な成長パスというところに早く今の状況をつなげていく。そのためには、財政政策それから金融政策相まって適切な効果を発揮していかなければいけない、そういう趣旨で行ってきております。
  328. 三野優美

    ○三野委員 で、公定歩合をやることによってどういうようになるの、ちょっと聞かして。金利を下げて何が起こるの。
  329. 福井俊彦

    ○福井参考人 金利の引き下げは、直接的には企業収益を下支えます。そして、経済の調整が進むにつれまして、企業が新しい投資機会を見出すにつれ新しい投資を行っていくインセンティブが強まる。つまり、経済が新しい回復から上昇へのメカニズムを生み出していく、その基本的なモメンタムをつくり上げるということでございます。
  330. 三野優美

    ○三野委員 私は難しいことはわからぬけれども、企業と言う場合には、銀行等の企業を支えるためにか、それとも企業全体に設備投資をやってもらうために金利を下げて、それで支えをしていく、こういうことか。
  331. 福井俊彦

    ○福井参考人 実体経済の基本的な担い手は、やはり実業を担当している企業でございます。したがいまして、企業の投資ということが金融政策を行っていきます場合に最大の眼目でございます。
  332. 三野優美

    ○三野委員 これ、実はあなたのところからもらったわけ。平成三年の一月、六%ね。そこから始まって、七月に五・五%、十一月五%、十二月四・五%。四年になって三回下げましたね。公定歩合を下げる、市中銀行の金利が下がる、金利が下がることによって企業が銀行の窓口へ行ってお金を借りる、土地を買う、設備投資をやる、そして景気を支えていく。これが私は公定歩合引き下げの政策の目標であったと、あなたの説明を聞いたらそう受け取ったわけ。これは間違いないだろうと思うのですね。  さて、ところが、あなたのところの資料によると、これは私は、そのパーセンテージで出したか何だか知らぬけれども、平成三年の一月が六%、そのときに金融機関の貸し出し七・二と書いている。今度七月が来て五・五%に下げた。ところが、貸し出しが五・二%と下がっちゃった。それで、ずっと下がって公定歩合引き下げるたびに貸し出し金が、銀行からの貸し出しの総額がだんだんだんだん減っちゃって、何と三分の一足らぬようになった。もう四分の一ぐらいになっちゃう。公定歩合を引き下げれば市中銀行の金利が下がって、方々のがみんな窓口へ行っちゃって、下がったから金貸してください、土地買います、機械を新しく入れます、工場を建てますなんて言うかと思ったらば、だんだんだんだん借りる人が減っちゃった。これで何の効果を果たしたというの。
  333. 福井俊彦

    ○福井参考人 委員指摘のとおり、公定歩合の引き下げに伴いまして、銀行の貸出金利は、短期の金利それから長期の貸出金利とも相当大幅に下がっております。公定歩合の引き下げ幅以上に銀行の貸出金利が下がっていることは事実でございまして、金利の低下に伴って、望ましい姿としては、これに比較的早い時期に貸し出しの増加という実質的な効果が伴ってくるということが望ましいわけでございますが、現在ただいままでの状況におきましては、やはり実体経済の調整局面が今しばし続いている。したがって、企業が新しい投資機会を見出して実際に銀行に資金需要をぶつけるまでにまだ若干のタイムラグがあるということでございます。  しかし、これまでの金利低下で企業収益の下支え効果が十分出ておりますし、この先調整局面がある段階で終了いたしますれば、先行きの資金需要を生み出すに相当な効果をこの金利低下の累積効果がもたらす、こういうふうに考えております。
  334. 三野優美

    ○三野委員 平成三年の一月から始めて、平成五年の二月時点で六回目を下げた。けれども、その効果は果たすどころか、貸出総額は減るばかり。何と三分の一割っちゃった。大蔵大臣、いいですか。私は経済のことはわからぬけれども、これでは公定歩合の引き下げが、実は、これから議論しましょう、ある部分は確かに支えた。しかし、日本の企業全体を支えるということにはならなかったんじゃないですか、これは。そう思いますよ。  さてそこで、もう一つ聞きましょう。  私の聞いたところによると、日本の個人の預貯金は約八百兆円。それで、さまざまな統計のとり方がありますが、都市銀行、地方銀行を含めて約五百兆円の定期性のものがある。この中には農協、漁協、労働金庫、信用組合、その他は入ってないんではないかと思うんです。約六百兆円近い定期性のものがそれらを含めるとあるんではないかと思うんですね。この国民の預貯金、老後の年金の足しに、大蔵大臣が年金払えぬ、払えぬとおどかすものですから、年金の足しに、病気になったときに、やはり病院に入ったら負担金が要る。共稼ぎが多いものですから、じいさん、ばあさんが寝込んだからといってすぐに奥さんが職場やめるようにいかぬもの。高学歴社会で大学に子供が行っているものですから。そこで、家政婦もつけなきゃいかぬかもわからぬ。家政婦つければ一日一万三千円。とにかく将来のために、子供の教育のために、自分の老後のために、病気になったときにと思って貯金した、八百兆円。定期性のものが少なくとも六百兆円近いんではないか、これは数字が違っていたら御指摘ください。五百兆円を超すと思いますね。  この預貯金、この金利がどうなりました。公定歩合を引き下げるたびに、市中銀行の預けた金利も下がっていった。一番高いときは八・三%くらいあった、八・三%。退職金を持って行った、二千万。全部まとめてくれればよそは八%、うちは八・三%払いましょう。今度は奥さんが、じゃあんたのところにしましょうとしたのもあるわけ。  しかし当時は、例えば一千五百万の退職金をもらった。これはある新聞にも出たと思うんです、ある統計によって、退職者が。銀行持って行ったらば、金利は七・三五%、これは普通に、もうどこでもあったんです。どこでもありました。そうなりますと、月に九万一千九百円、違っていなければ、利子をくれるわけです。現在は三%ぐらいですね。例の二〇%の税金取りますものですから三%割ることもある。三万七千五百円です、千五百万の預貯金で、一カ月の分。そうすると、この退職者は一カ月に五万四千四百円損しちゃったわけ。  退職者だけでなくても、とにかく六百兆円近い定期預金持っているんですから、国民はみんな。ある銀行の人が高松にこの間来たんです、私のところへ。もとの高松の百十四銀行の人が、今高松商工会議所の専務をしているんです。来た。この話を私がしたら、三野さん、そのとおりだ。私も銀行時代に営業してたらば、百万、二百万預かっているのを満期が来て切りかえに行って、どうしましょうかと言ったらば、そこの奥さんは元金だけはもとのとおりしておいてください、利子をください、こう言ったと言うんです、利子をくださいって。その利子で家族旅行をしたり物を買いに行ったんだろうと言うんです。元だけは減らしちゃいかぬよ、三途の川渡るまでは持っておかなきゃいかぬ、こう思ったわけ。ところが、今やってみると、今言った公定歩合の引き下げの結果、どんどんどんどん下がっちゃって、いわば三%台に定期金利はなっていますから、それから二〇%の税金を引いて、物価上昇は、野菜、果物が去年台風がなかったものですから安かったんですね、地方出身の人は御存じのとおり。今ちょっと上がっていますけれども。そのほかのものは二・三%ぐらい上がっているわけ。物価上昇率除いてみたらば残らぬがね。〇・何ぼ、これはいかぬと、こんなことしておったらもう旅行もやめと、物買うのもやめようと、元が減っちゃうよと、こうなったんじゃないでしょうか。今の不況は、いわば国民が将来のためにとためているこの預貯金、この金利引き下げによっての打撃というものは幾らになると思いますか。六百兆円の金利の引き下げの損失は幾らになると思いますか。  不景気というのは、物が足らないんじゃない、あり余っているわけでしょう。生産してもなかなか売れないわけ。売れなければ企業は操業短縮。もうこれは私が言うまでもありませんが、御承知のように、電機、自動車、繊維、七〇%を割ろうとしている、操業率は。全体で八割割っちゃった。今の機械設備さえ動いてないのに、銀行が金利安くしたからって、何で高い土地買うて、遊ばす設備投資やりますか。ですから、あなたのところは公定歩合を下げてみてもこうなっちゃった。借り手ないわね。これで景気浮揚できると思いますか。ここのところをよく見定めないと、私は重大な過ちを犯すと思う。  したがって、消費の拡大という場合には、やっぱり私は今野党が要求している減税、そしてこの金利についても、私は素人だけれども、五%ぐらいでいいんじゃないかという気がする。五%でも、二〇%の税金引きますから四%だわな。物価上昇率が二・三%ぐらいいきますと、一・何%しか残らぬわけ。そのぐらいな金利はつけてあげたって、私は別におかしい話ではないと思うわけなんです。  私は今日のこの政府の公共事業と公定歩合の引き下げが景気浮揚の最大の力だと言ったけれども、そうはなってないんだ。ここのところを私はしかと議論をしないと重大な過ちを犯すよと。しかも、企業を下支えしているんです。どこでしているかというと、実は大口定期の金利引き下げ幅は三・七八六と出てますが、三・八ぐらい下げているでしょう。銀行の預かった預貯金の金利を下げちゃったんです。銀行が今度貸している方はどうなっているの。二・五五というじゃない。いわば預かっている庶民の定期預金は三・八%下げたけれども、自分が貸している方は二・五%。利ざやが出ているじゃない。支えているんです、あなたの言われるように。それは特定の金融資本を支えているわけ。その間に庶民はまことに冷たい仕打ちを受けたわけだ。ついに、もうこれは私が言うまでもありませんが、日本商工会議所の副会頭が利下げ不要論を出したのはそこなんです。銀行はもうかるよ、しかし、庶民は決してこれで景気がようならぬよ、こう言ったわけですね。ここのところを私は指摘せざるを得ないと思うんです。大臣、これについてどうあなたは国民に答えますか、これだけ損させて。
  335. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 三野先生のお話を今注意深く聞かせていただきました。金利を下げまして公定歩合を下げたならば、それに連動して貸し出しの金利も下がっていく。貸し出しの金利が下がってくれば、一般の民間の方々も、今までは高い金利だったけれども、まあこれだけ安い金利なら少し物を買っておくか、在庫投資もいたしましょう、金利が下がってくるならば長期金利も下がってくるから設備投資もいたしましょう、こういうふうに動いてくるからこそ金利を下げておるわけでありまして、何もしないでやっているわけじゃ私はないと思います。  ただ、バブル時代と違いまして、あのバブル時代には土地がありさえすりゃ何でもいいからもう金を貸しまくってというような状況がありました。そのときの反省も私は一つにはあるだろうと思うんです。しかしながら、やはり堅実な形で金を貸していくという形についてはやっていかなければなりませんし、お話しのように、中小企業なかなか金が回らぬぞというような話もありますから、わざわざ私たちの方では銀行局長通達を出しまして、貸し出しを十分やるような督励的なことも各銀行に通達を出して、公定歩合の影響が出てくるようなこともやってきたところでございます。そういったことでやってまいりました。  もう一つの問題は、先生御指摘のように、公定歩合下げた、それは一般の企業にはいいことになるかもしれない、しかしなかなかなってない。しかし一方では、金を預けておった人は預金金利が下がっちゃって、今までは相当高い金利であったけれども、今度はもうえらい金利が下がった、こういうふうな話で、収入も減ってくる。いわゆる年金生活者の問題がありますけれども……(三野委員「年金だけじゃない」と呼ぶ)年金生活者というか、金利生活者の話ですね、金利生活でやっておられる方々、この話もありますけれども、ここは私たちもそれを配慮しまして、一般の切り下げ幅と半分ぐらいのところにやるというような措置をとってきたところでございます。全部が前と同じでしたら何のために下げたか、こういうことにも相なるでしょうし、私はそういったことも考えてやっていかなければならない、こういうふうに考えているところでございます。  先生から先ほど、その前に話がありました、この公共事業も変なことをやったらだめだ、それも全くそのとおりでございまして、私たちは公共事業をやるのにどぶに捨てるような話でやっているわけじゃないわけでございまして、そういったこともやるということで私たちは常に考えてやらなければならない。  また、先生からございました赤字国債は反対だというお話は、大変ありがたい御指摘だと思って心から感謝をしているところでございます。
  336. 三野優美

    ○三野委員 私は、こういうときに赤字国債でも出せるような状況をつくっておかなければだめなんだよという意味で、今まで怠慢であったよということを指摘しているわけなんです。本来ならば、私はこの議論は我が党の書記長に予算委員会の冒頭に総理のおるところでやってもらいたかった。  それであなた、安くしたら物を買うなんて、八百兆円持っている人が借金してまで買いやしない。さっき言ったように、結局結果的には利ざやを銀行にもうけさせた。その結果が歴然としているではないか。したがって、この公定歩合の引き下げというのはまさに庶民いじめであるということ。大変な損失ですよ。八百兆円持っている。いわばその中で少なくとも六百兆円ぐらいの定期預金というのは大変な損失なんです。この点を指摘しておかなければならぬと思います。  続いて、政治改革について伺います。  まず、官房長官に伺います。  総理が本当はおったらいいのですけれども、宮澤内閣が発足したときに、政治改革はすべてに優先をする、こう言った。いいですか、まさに政治生命をかけると思った。この間総括質問の際に、総理にあなたは命運をかけますかと言ったら、返事しないのです。しないなと思ったら、そろそろそろそろ逃げちゃって、各党協議だなんということを言い出したわけです。これは自民党の中でも一部出ているようですけれども、これはもう宮澤内閣は逃げているんです、実は。各党協議というのは、これは話し合いですから談合なんです。私は社会党でも言う。余り協議協議なんて談合するな、各党の意見を国民の前でオープンに議論しろ、そして堂々とやろうではないか。そこで議論の結果、どこで決着するかというのはいいと言うのです。したがって、本来ならば議院内閣制ですから、いいですか、自民党で決めたことは、議院内閣制である宮澤内閣が国会に提案をしてくる。野党はそれぞれ一致するものはする、しなければ各党が方針を出す。そこで議論を闘わす過程の中で、議論ばかりでもいかぬものだから、こういう話し合いもしようかというならいいですよ。初めから国会に出てこないで、これはまずいと思うのですね。したがって、その点については、やはり政府提案としてまず自民党案をここにお出しになったらどうですか。官房長官、どうなんです。だからあなたに残ってもらったんだ。
  337. 河野洋平

    ○河野国務大臣 議員の身分に関する問題でございますから、政府政府の考えで法律をつくる、法律案を提案をするということよりも、議員提案というのは一つの筋であろうというふうに思います。  さらに、先生御指摘話し合いというのは談合じゃないか、こういう御指摘がございますが、これは別に国民の目につかないところで相談をし、話し合おうというのではなくて、委員会の場で各党それぞれの提案を出し合って議論をしようということでございまして、これは国会の機能として最も大事なところであろうと思います。
  338. 三野優美

    ○三野委員 これ以上あなたと議論しませんが、議院内閣制だから、自民党で決定したものをあなたは出してくればいいんだよ。社会党は社会党で出したらいい。そうして自由な討議をする、こうでなければならぬ。しかも選挙制度ですから、党で全部くくってしまうというわけにはなかなかいかないわけですね。自民党内にもいろいろ意見がある。社会党の中にもあるのです。私は必ずしも社会党の意見と全く一致していない部分も若干はありますので、自由に議論したらいいと思う。  さて自治大臣、あなたも、この間だれかが質問したらよそごとみたいに言っていたけれども、私の私見だなんて。私見でもしょうがないわな、今のところ。どうですか。今の政治不信というのは、もう結論からいきましょう、政治と金でしょう。しかも、若い国会議員が新聞紙上で言われるように、選挙のない年でも一億三千万も一億五千万も金が要る。秘書を十何人、二十人置いている。この間、民社党の塚本先生までが、おれは十五人いると。びっくりしちゃったわけです。私は国の方から二人しかくれませんから二人しかいませんがね。いわば国民の側から見ると、政治家が選挙のない年に一億五千万、一億八千万も要るなんて、どんな生活しているんだろうか、何にそんな金使っているんだろうかと。選挙のときは数億要るというのです。国民にはわからぬのです。政治と金のことでしょう。それはどうですか。あなた、そう思いませんか、政治不信というのは。
  339. 村田直昭

    村田国務大臣 三野委員にお答え申し上げます。  政策の普及宣伝活動一つをとってみましても、金がかかることは事実であって、政治にある程度金がかかるというのは民主主義のコストという観念を持っているのですね。ただ、政治家の政治活動の態様は、委員も御承知のようにさまざまでございまして、どういったことに金がかかっているかということは、この場所で直ちに一概に申し上げることは困難であろうかと思います。
  340. 三野優美

    ○三野委員 私は、もちろん党が違う、立場が違いますから、それぞれ状況は違うと思いますが、こう思うのです。今や政治には金がかかると学者や評論家までも言う。自然とマスコミもそれを認めている。もし政治に、選挙のない年も一億五千万も一億八千万も要るということが普通になったらば、私は山のダムの奥の百姓ですから、出られないわけです。普通の百姓やサラリーマンや中小企業、出られないじゃありませんか、そんなに金かかるんだったら。政治に出るのは、特定のお金持ちの御曹司さんか、金のつながりのある、大企業につながっている人か、大きな組織から出る官僚が、これしか出られないでしょう。もう金がかかるというだけでもって我々庶民は政界から排除されるのです。したがって、私は政治に金がかかるということについてくみしません。そうすると私はやめなきゃしょうがない。  したがって、政治に金がかかるのではなしに、かけ過ぎておるのではないのか。実はきょう持ち込もうかと思ったわけ、この中へ。どんなところへ金を使っているのか。しかし、それも余りひどいと思って持ち込みませんでした。ひどいですよ、今のやり方は。ですから、まずは金のかからない選挙、いや、かからないのではなくてかけない選挙をやらなければね。したがって、私は政治不信というのは、いわば金の問題と選挙制度とは別だと思っているわけです。小選挙区であろうが大選挙区であろうが、金と選挙制度は別なんです。そこのところを一緒にして小選挙区に引っ張り込もうなんてやってみたってだめです。さっきも言った奄美群島がそうでしょう。  自治大臣、全国で、小選挙区を自民党は主張していますが、県会議員選挙で一人区は幾らありますか。もう時間の関係で私が申し上げますが、一人区は五百六ある、五百六。いいですか。五百六の中で、この前の統一選挙の際に幾ら無投票区があったかと思って自治省へ聞いたら、それはわからぬと言うのです。自治省は私は無責任だと思う。これだけ政治改革が議論され、小選挙区が議論されておるのに、一人区は五百六あって、無投票が幾らあったかもわからぬ。  無投票区は三百七十九ある。これが全部一人区とは言いません。二人区、三人区もあったでしょう。しかし、実はそのほとんどは一人区なんです、私の選挙区周辺を見ても。一人区がいかに無投票が多いかということです。無投票区というのは初めから無投票でない。激しい選挙をするのです。村を二分して、バスで駆り出して、それで選挙事務所では毎日毎日酒飲んで刺し身がついて。両方が同じ自治会を順番に車で回るんですから。来なければ村八分になるから行くわけ、両方行くわけ。結果的にどっち入れるかわからぬけれども、そういうことでやって、二回ぐらいやったらばもうほとほとくたびれちゃって、負けた方が出ないわけ。それで無投票になっちゃうんです。そうすると、無投票が……(発言する者あり)そんなことできませんよ、あなたのように金集める人でないのが。そうしますと、無投票が二回、三回続くんです。選挙民はもう選挙権がないも等しいわけ。  しかも、その村役場へ私この前行きました。何カ所か歩いてみました。もう町長も町職員も困っているわけ。あれはAさん、こっちはBさん、完全に色分けしちゃって、もう行政もやれぬと言うんです。無投票が三回、四回続いたらばあきられるので、また次は激しい選挙、またお祭りやるわけ。こういうことの繰り返しなんです。どうぞ一人区だけはやめてくださいというのは、この県会議員選挙の一人区のところはもうくたびれていますよ。  そういうことも自治省は調べてないんです。私も聞いたら、もう時間の関係で聞きませんけれども……(発言する者あり)いや、わかっておりませんて。これだけ選挙制度が議論されておって、自治省はそういうこと知らぬ。それで警察の方へ、おい、一人区で選挙したらどのぐらい買収事件が起きたかと言ったら、いや、それもわかりませんと言うんです。本気で政府の側は選挙制度をやる気がないんだろうと思う。  ですから、まずは選挙区制度の問題よりも、むしろ金を使わさない。これはまあ企業献金の禁止でしょう。今まで国会議員が連座した汚職事件で、個人からもらっていますか。全部企業献金ばかりでしょう。ここが企業と個人の違いですわね。個人は趣味があり、好き不好きがあるんです。私は三野さん好きよと、私は林大蔵大臣を好きよと、これはあるんです。「いや、あの人好かぬわなんていうのもおるでしょう。あっていいんです、好き不好きは。趣味で献金しますから汚職はないんです。  企業は言うまでもなく、その企業は大小にかかわらず利潤目的で起こしている。企業は政界に流したらば必ず見返りを求める、これは当然ですよ。日経連もそう言っているでしょう。我らの政策遂行のためにはやっぱり企業献金も認めてもらいたい、こう言っているんです。見返りを求めているんです。その見返りは受け取った政治家がするんでなしに、政策の展開でそこへ集中するわけでしょう。ですからこれは、私が言っているのは、単に汚職が起こるだけではなしに、政治が不公平になっちゃうと言うの、企業中心になっちゃうものですから。したがって、納められた税金が公平に使われていない、これが問題なんだと。だから私は汚職以前の問題として、やっぱり企業献金やめなきゃならぬ、こう言っているわけですね。  それと連座制ですよ。去年の統一選挙の際に、私の香川県で、二区ですけれども、森田さんの選挙区で県会議員の選挙があった。町の町会議員が半分以上逮捕された。若い人が立候補した。おやじさんが息子を当選させようと思って十万と二十万ずつ配っちゃった。半分以上逮捕、議会は動かぬから解散しちゃったわね。それでもどうですか、ひっかかった町会議員は首になっちゃったけれども、県議会議員はそのまま居座って今も県議会で演説しているわな。私の選挙区でもおります、県議会議員。三回か四回というのは、もう必ず嫁さんか娘婿かどっちかが入るんです。趣味だそうですけれども、入るのが。それでも、本人は逮捕もされなければ、そのまま居座っているわけ。これで何で政治を信用しますか。ですから、連座制の強化でしょう。  さて、そこで自治大臣、選挙というのはどうですか、何が目的、選挙は。民意の正確な反映でしょう。それは認めますか。
  341. 村田直昭

    村田国務大臣 三野委員が非常に広範な問題にわたっておっしゃいましたのを、要点だけを答えて申し上げたいと……(三野委員「質問だけ答えてよ。民意の正確な反映」と呼ぶ)民意の反映であることは、もうもちろんでしょう。そのとおりです。
  342. 三野優美

    ○三野委員 民意の反映である場合に、あなたのところが言っている小選挙区で民意は反映できますか。過去の実績を見ても、県議会議員選挙でもそうだけれども、ヨーロッパ見ても、それは併用や並立をやっているところはありますよ。少なくとも小選挙区だけに限ったらば四十何%は死票なんです。国会へ出られないわけ。しかも、私申し上げますが、二大政党になっているんじゃないんですよ。自民、社会、公明、民社、共産、五大政党があるがな。日本の選挙区でも、大阪や愛知の方へ行ったら五人区で五党一人ずつ当選しておるところがある。四人区で四党当選しておるところがあるわな。  そうしますと、五人区で勢力が拮抗しておれば二〇%平均でしょう。二三%か二五%で当選する。この間の人は何ぼか言いよったが、あれは間違いだ。二五%で当選するんです。七五%死票になっちゃうわけ。四人区だって二五%平均ですから、二八%から三〇%で当選するわけ。あと全部死票になるわけ。少数派がある選挙区では国会に出て、多数派は排除されるわけですよ。これが選挙区の実態でしょう。(発言する者あり)いや、二大政党になるだなんて言ったって、できますか。今だって、自民党もそうでしょうけれども、野党だって、例えば国会対策委員長会談をやるのに共産党を外しているでしょう。なかなかうまくいかない。マルクス・レーニン主義の党とそうでない党となかなかうまくいかないでしょう。できないでしょう。  公明党はまあこのごろ頑張っていますけれども、やっぱり私の親戚にも公明党おるんです。県会議員の……(発言する者あり)いや、創価学会がおるの。私が立候補しても、県会のときに私に入れないんです、女房の兄弟でも。宗派が違いますから。それは実際にあるんです。これは笑い事じゃないんです。あるんですよ。  そうしますと、私は浄土真宗西本願寺派、あなたと一緒や。この間一緒になったわ。西本願寺派はだめなんですよ、だめなんですよ。そうなりますと、詰めてみると、私、実は公明党のある人のところへ行った。ガラガラポンの話は出たことあるから、どうや、もう一緒になろうや、余り理屈言わずにと言うたって、それはできぬと、こう言った。したがって、自民党の中で議論されていることは、実は実現不可能なことを議論しているということを考えてください。選挙制度によってある党を排除できますか。それこそファッショじゃありませんか。したがって、小選挙区は間違いなんだ、そのことを申し上げておきます。  同時に、民意の反映ということになると比例区しかない。比例区は、いろいろなことを言うと、社会党は私と違うのを出す。これはまたよかったら参考までに見せますが、私のは最も合理的な案。選挙区決めなくていい。  もう一つ申し上げますが、ブロックであろうが県単位であろうが定数を人口で決めるでしょう。投票に行かない人に議席を渡さにゃいかぬの。投票に行かない人は自分の代表者を選ばないということになるのでしょう。その人に議席渡すようになるでしょう。単にブロックごととか県単位で、あの憲法で言う三分の一か何か知らぬけれども。それで今度比例区にしてみても、それで割っちゃうと矛盾が出るわけです。投票する、代表者を選ぶ意思がないのにもかかわらず議席与える、これはおかしいでしょう。  ですから、投票した人だけが議席を持つ、これが私の案なんです。しかも選挙区は県ごとでもいいでしょう、百万でも五十万でもいいんです。とにかく自民党と書く、林何とかと書く、どっちも全部自民党へいくわけです。社会党と書く、三野優美と書いた分も全部いくわけ。二つ書かぬでも、各党が全部集計するわけです。で、自民党が何ぼ、共産党が何ぼ、公明党が何ぼ、社会党が何ぼって議席数決まりますね。決まったらば、それを各県に得票数で渡すわけ、議席数を。おまえ、これだけよと。各県における当選順位はだれかというと選挙民が決めちゃう。三野優美が多いかBさんが多いかで決めちゃうわけ。余計とった人から当選していくわけ。派閥や金を積んだ分やあの空手形の後援会の数じゃない、あんなものでするのじゃなしに選挙民がじかに決めちゃう。私はこの人を、社会党の中でこの人を選ぶ、自民党の中で、公明党の中でこの人を選びます、これが私の定数自動決定式比例代表制というんです。  ただ、これは……(発言する者あり)いや、民社党がちょっとこれに近いらしいですよ。この間、ラジオ聞いておりましたら、民社党員が、あなた近いなって言ったんですがね。(発言する者あり)いや、出る出ぬは別なんです。それでやる、それは努力するしかない。それで私はその場合に複数になれと言っているんだ。競争あった方がいいんじゃないの。競争のない社会というのはやっぱりロシアみたいになるよ、ロシアみたいに。やっぱり一定程度競争あっていいんです。自民党の中でも好きな人、好かぬ人、おるでしょう、選挙民から見れば。社会党にもおるんです。それでいいということも考えながら、もっと多様な議論をすべきではないのかと。  しかし、私、社会党の中でまだ少数でありますから、これは余り言いよると選対委員長、政審会長からおしかりを受けますのでこれ以上言いません。必要な方は、これをお渡ししますから、どうぞひとつこれを見たければ三野のところへ取りに来てください。これが一番合理的、国民は一番喜ぶ。どうですか、私の意見
  343. 村田直昭

    村田国務大臣 三野委員のおっしゃったのは、定数自動決定式比例代表制というのですね、これはまだその内容をよくお聞きしておりませんので、また御高見であろうかと思いますから、また時間をとってお伺いをいたしたいと思います。よろしくお願いを申し上げます。
  344. 三野優美

    ○三野委員 終わります。ありがとうございました。
  345. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて三野君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之助君。
  346. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 わかり切ったことを最初お聞きしなければなりませんが、憲法の第四十三条、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」つまり、選挙された議員は全国民を代表するとなっておるわけです。当たり前の話ですね。選挙区を代表する議員じゃなくなるんですね。これが憲法四十三条と私は思いますが、その点、総理のアシスタントである官房長官のお考えをお聞きしたいと思います。
  347. 河野洋平

    ○河野国務大臣 憲法の定めにあるとおりだと思います。
  348. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 当たり前の話でございますが、しかし、竹下さんの議員辞職の世論とかいろいろその問題に関して、宮澤総理は、まずこれは本人が判断すべきである、そしてその個人の判断の基礎になるのは選挙民の意向である、そういう論理で答弁されたと思いますが、そう解釈していいですか、官房長官。
  349. 河野洋平

    ○河野国務大臣 議員の身分は、その議員を選んだ当該選挙区の有権者とその議員との間の神聖な関係によって成るというのが御主張かと存じます。
  350. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから私は当初憲法四十三条の問題を出したのであって、しかも、一般の議員でも全国民を代表する、ましてや総理をなさった方だから国を代表する立場の人であった、そういう意味でその政治的道義的責任は大変重たいというのが我々の認識であります。  で、総理のお考えのとおりであれば私はいいと思うんですよ、まず自分が判断する、進退について。ところが、自分で判断しない議員がいるから、あのロッキード事件のときに、つまり自浄能力を持たない議員がおるから、わざわざ国会法の第十五章「懲罰」のところに二という項目をあのとき新たにつけ加えたんです、ロッキード事件の反省として。そして、「政治倫理」というものを第十五章の二でつくって、第百二十四条の二で政治倫理綱領及び行為規範をつくる、それが六十年の六月二十五日に議決されました。これは、自浄能力が全部あればそういうものは要らないんです。自浄能力がない人がおるからわざわざこういうことをやったのです。  それからもう一つ問題があるのは、私は、これはいろいろ考え方がありましょう。国会が議員の身分を左右するというのは、宮澤総理は批判的でした。その例として、わざわざ戦前の齋藤隆夫さんの例を引かれた。これは本当は比較すべき問題じゃないんですね、内容において。なぜか戦後のことを言われなかった、戦前のことだけ言って。戦後に一回だけあるでしょう。昭和二十六年三月二十四日、議員川上貫一君懲罰事犯の件。共産党の議員であったと思いますので、この方が、公開の場で陳謝する、これは国会法の第百二十二条、四つ例を挙げてあるうちの二番目、陳謝する、国会で。その議決、懲罰委員会でそれが決まったときに、川上委員はそれに従われなかった。そこで、その五日後除名、こういうことになった。これは一つの、たった一つの例です。  つまり、国会も議員の身分を決定するその法律を持っているわけでしょう。そうでしょう、第十五章「懲罰」とあるでしょう。そして、今言った第百二十二条は、「懲罰は、左の通り」として、公開の場における戒告、それから公開の場における陳謝、三番目に一定期間の登院停止、四番目に除名、こういうものがある。そして衆議院規則で、除名の場合は本会議で三分の二以上の議決を必要とするという条件はついています。だから、宮澤さんが、それは心情としてはわかりますよ。本人がまず考えるんだと、その考える基準は地元の人の意見だと、その心情はわかりますよ。個人的な心情としてあるいは同情的な政治論として。これは私はあくまでも政治論だと思うのですね、宮澤総理の見解は。国会はこの身分について、議員の身分について左右することができる、だから、いずれ近々のうちに議員辞職勧告決議案を社公民で出す予定のように聞いております。もう出されましたか。だから、国会はこれを慎重に取り扱わなくちゃいけない。これを左右することはできるんですから、国会は。  それで宮澤総理のおっしゃることは、考え方はあるとしても、さきに言いました国会法の第百二十二条の四号の除名ということについて批判を持っていらっしゃるんじゃないか、そういう気がしてならないのです、あの答弁を聞いておりますと。その点は私も意見があります。しかし現実にそうなっているから。私はこの宮澤さんの、その点について、きょうおられませんから、第百二十二条、さっき言った国会法第百二十二条の四号のところの除名という問題について御意見があるんじゃなかろうかと、ぜひ総理に聞いておっていただきたい。機会があるときに一言御答弁をいただければ結構だと思います。  次に、実は二月九日の全国紙の新聞、各朝刊にこういう記事が載った。蔵相発行の架空証書、すなわち証書に記載された券面の金額と同額の国債が引きかえられるとした架空の還付金残高確認証を利用し、同証書を担保にして個人や金融機関に持ち込み融資を受けようとする詐欺事件が多発しており、米国などにも広がっているということから、大蔵省は平成五年二月八日、先月ですね、二月八日付で「「還付金残高確認証」に係る注意喚起について」という公文書を、外務省を通じて米国のFBIや米国の財務省に通知したという記事が載っております。これは真実ですか。
  351. 藤井威

    藤井(威)政府委員 先生の御指摘になりました注意喚起の問題は事実でございます。還付金残高確認証という全く架空の書類を用いました詐欺事件が実は発生いたしております。最初の事件は昭和五十九年に摘発されましたが、その後もこれを使った事案が発生し、大蔵省にこれはどうなんだという事実確認の真偽の照会というものがかなりございます。  全く架空のものでございますが、このような事態を受けまして、大蔵省は、警察庁とともに去年の三月各方面に、こういう還付金残高確認証なるものは発行していない、また、同確認証は法律上も存在しないという注意喚起を既に行いました。  その後、特に昨年十二月以降でございますが、還付金残高確認証の真偽についてアメリカ本土から照会があるという、またそれも一件や二件ではないという情勢で、今先生がお示しになりましたように、本年二月八日外務省を通じましてアメリカの関係機関に対し同様の注意喚起を行いました。その旨を新聞発表を行いましたので、そういう報道になったものと思われます。
  352. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 六種類の記載金額という文章がこの公文書の中にありますね。これは五十八年に問題を起こし、五十九年に逮捕された、六十年に起訴されたAという女性の詐欺の中でつくった百億円から五千億円までの六種類のことを指しているのですか。
  353. 藤井威

    藤井(威)政府委員 今先生が御指摘の五十八年の発生事件、その後警察当局により詐欺罪で逮捕されましたが、その後もこの事件に使われたと思われる還付金残高確認証がどうも出回っているらしい、その後の点については推測でございます。
  354. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは全部第五十七回国債という漢字になっていますか。
  355. 藤井威

    藤井(威)政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  356. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 このAという人の詐欺グループによる被害金額は、同グループによるその後の詐欺も含めて総額幾らになっておりますか、被害総額。
  357. 藤井威

    藤井(威)政府委員 大蔵当局といたしましては、そういう照会が連続してあるということだけでございまして、実際にどの程度の被害が発生したかということについては、把握いたしておりません。
  358. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 警視庁は把握してますか。
  359. 國松孝次

    國松政府委員 五十九年二月、警視庁が検挙いたしました事件につきましては、私どもの方といたしましては、当時、被害額は余罪を含めまして八件、二千七百万円を立件をいたしております。
  360. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 このときの、これは五十九年五月九日の全国紙は、このAにかかわる被害総額は十六億七千四百万と発表されている。これはどういうことかというと、詐欺をされた人は、今度は詐欺された金を取り返そうと思って、またその詐欺グループに加わるわけです。そして、また同じようなことをやる。だから、そういうことをした人は、最初詐欺に遭って取られた金額を言うわけにいかぬのですよ。訴えるわけにいかぬのです、自分がグループに入っているから。だから、そういう被害を含めて恐らく十六億になったのではなかろうか。だから警視庁の方には告発されてない、こういうことではなかろうか、これは私の想像です。  それで、その次に、昭和六十二年一月にも詐欺事件が起こりましたね。これはどういう事件ですか。
  361. 國松孝次

    國松政府委員 六十二年でございますか。昭和六十二年一月、警視庁が摘発いたしましたものは、都内の会社経営者に対しまして、国債の還付金によって社会福祉事業をしてほしい、資金は出すからというように称しまして、このお尋ねの中にあります還付金残高確認証を利用いたしまして約三千万円をだまし取ったという事案でございます。
  362. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これもそのときの新聞によると、一億五千万と発表されている。この食い違いは、私は先ほど申し上げたそういうことであろうと思いますよ。詐欺をされた人が、またその詐欺団に加わって取り返そうとする。だから、警察には届け出られない。  平成三年十一月にも起こりましたね。これはどういう詐欺事件でしたか。
  363. 國松孝次

    國松政府委員 これはいわゆる未遂事件でございますが、都内の金融業者に対しましてこの還付金残高確認証を提示いたしまして、政府が発行し保証しているもので間違いないということで、これを担保に二十億円の融資を申し込んだけれども、偽造を見破られまして未遂に終わったというものでございます。
  364. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは未遂に終わりました。  それで、これはいわゆるよく話題になりますM資金とは私は違うと思うのですね。これは五十七回国債に関係していますから、つまり年度で言えば五十八年度です。それ以前のものは、私はM資金にかかわった詐欺事件だと思います。  一例を挙げますと、刑事局長にお伺いしたいのですが、随分前になりますけれども、吉田泰造脱税及び詐欺事件というのがありましたね。これはM資金にかかわる詐欺事件じゃなかったのですか。
  365. 國松孝次

    國松政府委員 いわゆるM資金というものを利用してのいろいろな事件というものがあるというようなことは伺っておりますけれども、ただいまお尋ねの件がそのものであるかどうか、ただいま私ちょっと手元に資料がございませんので何ともお答えいたしかねるところでございます。
  366. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、M資金にこれはかかわっておったと思うのですね。それで、その五十七回国債に関する、この私が問題にした蔵相発行の架空証書事件は、これはM資金とは関係ないと先ほど私は言いました。大蔵省はどうお考えですか。
  367. 藤井威

    藤井(威)政府委員 M資金も全く架空のものであり、これも一種の詐欺の小道具みたいなものだと僕も思いますけれども、実際にどういうような使われ方をしてどういう形で詐欺に使われておるかということについて詳細を承知しておりませんので、現在、おっしゃいます還付金残高確認証、これも架空のものでございますが、これを利用した具体的事案の間で両者にどういう関係があるかという点については、私としてはちょっと判断に苦しむところでございます。
  368. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、M資金に関係ないと思います。  今さっき公文書を出された、本年二月の公文書ですね。今読まれました。これは、昨年の三月二十七日に出された公文書と同じ文章ですね。ところが、減りましたか。事件が減りましたか。つまり、今おたくが出しておるあれを見てみますとふえておるでしょう、これを出してみても。平成元年で十八件、これは大蔵省への照会及び情報提供のあった件数のことです。平成二年度二十二件、平成三年度、急に三倍の六十三件に達している。しかも、平成四年度は三年度よりも、七十一件になってふえておるじゃありませんか。こんなことではこれはとまりませんよ。  だから、私が言いたいのは、こういう文書、FBIやあるいは証券会社も出していますね、これは。これはいいことだと思いますよ。去年の三月二十七日、日本証券業協会、出していますね、同じようなことを。こっちの方がまだ親切ですけれどもね、内容が。  私が言いたいのは、さっき被害の報告があった中で、これは全部被害のあったのは個人ですよ。個人です。さっき報告したとおり、お医者さんとか会社経営者とかあるいは福祉関係。だから、私が言いたいのは、金融機関あるいは証券会社、そういうところだけでなくして、個人がひっかからないように周知徹底させる新しい厳しい対応策をつくるべきではないかというのが私が申し上げたいところなのです。そうしないとこの事件はおさまりませんよ、個人の場合は。金融機関は承知しているでしょう。だから、例えば、それは私も知恵がないからわかりませんけれども、ただ、新聞が記事として書く、それも効果はありましょうけれども、全部は見ませんよ。幾らかかるか知らぬが、やはり新聞広告ぐらい出して、大蔵省は銭持っているのだから。それで、大した銭じゃないですよ、これはあなた、周知徹底させる、被害に比べたら。国民に徹底させなくてはいけませんよ、これは金融機関だけではなしに。どうでしょうか。それを考えていただけませんか。これをしなくてまだふえた、そのとき責任問いますよ、そういうことをしないで。どうでしょうか、大蔵大臣
  369. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 楢崎先生のお話、聞いておりまして、なかなか難しい事件だなという私は感じがしているのです。ごまかしているわけですからね。ごまかすなんというのは、なかなかどうして取り締まったらいいのかなと私も、何かいい知恵があったら私もやらなくてはいかぬと思いますが、正直言って私もなかなかいい知恵が浮かばないのが今の実態で、少し考えてみたいと思っています。
  370. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もうこれで終わりますが、ちょっと見せたいのです。これが詐欺の、私のところに送ってきたものです。こういうことです。名前が書いてある。だからこれは、もうやめますけれども、せっかく法務大臣来ていただいておりますが、私のところへこういう詐欺のあれが来ているのです。コピーですが、これは刑法によって有価証券の偽造になりますね。行使をしなくても、つくっただけで。それから、公印を偽造したことにもなる。これをやった、つくっただけで。名前もわかっている。ほっておきますか、法務大臣。
  371. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  今委員指摘のような文書も含めまして、どういう犯罪がそれについて成立するかどうかというようなことは、これはもうそれぞれの具体的事件について法律に定められた手続にのっとって、収集した証拠によって事実を確定した上で判断するわけでございますから、結局捜査当局において判断する……。
  372. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これでやめます。それであと、土地問題を含めて菅委員に関連質問をしてもらいますが、その関連のため一言だけ聞いておきますが、先日地価税の申告額が発表されたのは御案内のとおりであります。この地価税というものは、地価が高いほど負担が大きくなるので地価抑制効果や一極集中に対する分散効果があると思いますけれども、大蔵大臣はどうお考えになりますか。
  373. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 御指摘のように、地価税は中長期的に地価の抑制にも役立つであろう、経済活動や地方分散等の効果も持っているものだ、そういうふうに私たちは理解をしておるところでございます。
  374. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それではこれで。
  375. 粕谷茂

    粕谷委員長 この際、菅直人君から関連質疑の申し出があります。楢崎君の持ち時間の範囲内でこれを許します。菅直人君。
  376. 菅直人

    ○菅委員 法務大臣には、中曽根政権時代に官房長官であられたころにいろいろと土地の議論をさせていただきまして、そのときの議論が、一つは土地の公共性ということをいろいろと長官言われまして、その後、野党案を出し、政府案が通りました土地基本法の中にその考え方がかなり盛り込まれたのではないか、こんなふうに思っております。きょうは法務大臣も出席をされるということでしたので、一問だけ、こんなことを思い出しながら質問をさせていただきたいのです。  実は、この土地基本法の中に十八条という項目がありまして、これはもともと土地行政の一元化という趣旨で提案をしたのを多少修正をして、こんなふうに書いてあります。「土地に関する施策を講ずるにつき、総合的見地に立った行政組織の整備及び行政運営の改善」というようなことが書いてあります。法務省行政は、土地行政とは余りかかわりがないように見えますが、登記簿の扱いを、例えば公的地価評価をそれに盛り込むとか売買価格を盛り込むといったような形をとれば、土地行政のまさに一元化の非常に大きなデータベースになるのではないか。このことは当時の林田法務大臣にも申し上げて、検討を約束されてからもう七、八年になるのですけれども、今その担当にあられる法務大臣にまずその点をお聞きしておきたいと思います。
  377. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 御承知のように不動産登記制度は、個々の不動産の地目、地籍、こういった物理的状況をひとつ明らかにする、同時に所有権なりあるいはその上に抵当権の設定といったような権利関係、これを明らかにすることによって取引の安全といいますか、あるいは権利者の権利の保全、こういうことをやっておるわけでございますが、御質問の、登記簿の中に、例えば今地価の問題が、地価公示の問題があるわけですが、そういった地価をあわせてこれに書いたらどうだ、こういうような御意見があることは承知をしておりますし、それはそれなりに、できれば一元化といいますか、はっきりするわけですから結構なわけですけれども、といいまして、実際問題としてそれができるかどうかということになると、今法務省がやっておる不動産登記だけでも、いわゆる土地台帳の部面、それからもう一つは権利関係、これが余りにも取り扱いの事務量が膨大で実際問題として大変おくれておる。  それを直そうということで今たしかコンピューター等も入れてやっておるわけですが、そこへさらに各省が扱っておる現実の地価問題。これは地価は今たしか四種類ぐらいありますね。大蔵省の地価もあれば自治省の地価もありますし、現実の売買地価もあるしといったようなことで、これはなかなか厄介です。しかもそれが変わっていくということでございますから、菅さんのおっしゃる意味合いはよくわかるし、でされば私は一つの方向だなと思いますけれども、現実に今不動産登記の制度に御質問のようなことを加味して改正していくということは、実際問題としてはなかなか難しい。ということで、きょうの段階ではやはり検討させていただくということ以外に、それ以上に踏み込んだお答えはちょっといたしかねるというのが現状でございますので御理解を賜りたい、こう思います。
  378. 菅直人

    ○菅委員 今大臣は、いわゆる一物四価と言われる問題をちょっと指摘をされましたが、実はこれはかなり変わってきていまして、今私が聞いているところでは、自治省それから国土庁、大蔵省、国税庁、四者でそれらの、何といいましょうか、すり合わせをやって、これも土地基本法十六条に、いわゆる均衡、適正化という言葉の中で、事実上一〇〇と八〇と七〇という水準にすべてを連動させるということになってきているわけです。そういう点では、かなり他の省庁の一元化というのは進んできていると思いますので、今検討を再度約束をいただいたわけですが、法務省の立場というのがあるということはよくわかりますけれども、ぜひそういう検討会にもスタッフを出されて、前向きに検討いただきたいということを申し上げておきたいと思います。もしお急ぎであれば、どうぞ。  あとの時間を、今お手元に「公有地拡大と金融システム安定化のために「土地保有機構」」という一種の政策提言をお配りをしております。これを中心に関連する各省庁の見解を伺いながら、果たしてこういう制度をつくることが成り立つのか、あるいはそれぞれの立場でどういう見解を持たれているか、順次お聞きをしていきたいと思います。  そこで、まず大蔵大臣、きょうはおいでいただいていますが、日本経済のこの数年間の推移、いろいろな見方があると思うのです。私は、やや乱暴な言い方かもしれませんが、この数年間の好況と不況は、ともに非常に土地というものが中心的にかかわっているというふうに言うことができると思うのです。今景気対策の中で公共投資とか減税とかいろいろな議論がされております。これはこれで極めて重要だと思いますが、ただ、景気トータルで公共投資が必要、減税が必要という議論だけではなくて、今の景気の、何といいましょうか、悪くなっている原因というのは、体が弱っていることは確かなんですが、その原因が心臓にあるのか、肝臓にあるのか、あるいは胃腸にあるのか、そこをきちんと診断を見きわめて対応しないと、ただ栄養を補給すればいいとか、ただもう少し体を動かしてアスレチックかなんかやればいいということだけではないと思うのです。そのターゲットといいましょうか一番の問題がやはり私は今申し上げた土地にあると思うのです。  景気がよくなったときには、一年間で何とGNPを超えるような株価と土地の値上がり益があった。あるいはそれによってエクイティーファイナンスで製造メーカーが非常に、今考えてみると過剰な製造設備に投資をした。それがさらに景気をあおったわけです。しかし、それが一たん、総量規制から始まるバブルの崩壊で、いわゆる逆バブル現象、逆資産効果が出ると同時に、過剰に生産設備に投資したものがまさに今や非常に企業にとって、製造企業にとっても重荷になっている。こういう構造をどのようにして次の段階に持っていくかということが今一番重要な問題だと思うわけです。  そこで私は、そのときに、一つの動きとしてもう一回バブルを再発させればいいのじゃないか、これは評論家の中でも一部の人が言っております。土地が下がったから不景気なんだから、土地を上げればいいじゃないか。しかしこれは、まさにいつか来た道ではないですけれども、生活大国と言われる宮澤政権の方針にも全く反しますし、一時的にミニバブルを発生させたからといって日本経済が本質的に立ち直るとはとても思えないわけです。  そこで、ではどういうことをやらなければならないかということを考えますと、基本的には、土地の値段を一層下げて、その土地を生活基盤整備の材料として積極的に活用することではないか。今、一説には五十兆、百兆と言われる土地が動かなくなって、にっちもさっちもいかなくなっている。そういう状況から、土地を動かしながら、そして、それをまさに生活大国に近づけるような土地利用に変えていくという必要があるのではないか、このように考えているわけです。  そこで本題に入っていきますけれども、自治省においでをいただいております。  今私は、従来から自治体が、自分の市の域まあ県でもいいですが、土地を持っているということは、例えば公共施設とか公園とかをつくる上でも非常にやりやすい。何かストックホルムなどは自分の市域の五〇%を市が持っているなどという話も聞いておりますが、そういう意味では、今土地を自治体に買い上げてほしいという要請が非常にふえている中で、今こそ公有地を拡大するチャンスだと思うのです。  しかし、お聞きしますと、確かに起債の制限とかいろいろな条件は緩和したけれども、値が下がっているときというのは担当者ベースでいうと非常に先買いがしにくいのだというのですね。つまり、十年後には使いたい、五年後には使いたい。しかし、今買うよりは五年先に買った方がいいじゃないか。しかも、その五年間なり十年間は金利がかかる。そういう意味で、なかなか土地の先行取得というのは言われるほどに進んでいないというふうに聞いているわけです。  そこでこの土地保有機構というものを考えまして、ここに、図面の方を簡単に説明をしますと、住都公団のような特殊法人で土地保有機構というものをつくりまして、そして土地所有者から実勢価格の八割程度の価格で土地を買い上げる。そして、最終的にはできるだけ自治体にそれを払い下げていく。その場合の保有期間の金利と、あるいは買い上げ価格と払い下げ価格、払い下げ価格は払い下げ時点の時価ということ、そのときの実勢価格ということで考えて、その場合に買い上げ価格が八割という形で少し安いわけですが、それでも八割をさらに下回るような実勢価格になっていれば、その差損部分も地価税収入でそれを補てんしていく、こういうシステムを提案をしてみたわけです。  自治省の方に、まずこの公有地拡大についての考え方と、今私が申し上げたネック、またこういう制度があった場合には活用の余地が非常に大きくあるのじゃないかと考えますが、それらについての御見解をまず伺っておきたいと思います。
  379. 村田直昭

    村田国務大臣 今菅委員が御提唱になりました土地保有機構ですがお配りしていただいた資料によって拝見をしておるところでございますが、自治省といたしましては、平成五年度の予算は国・地方を通じて景気に配慮をして地方単独事業を十二%増とするなど、投資的経費を大幅に上積みをしているところでございまして、また地方公共団体の用地ストック率、指摘されましたようにストック率が低い状況にあることから、地方単独事業などを円滑に実施するためには、御指摘のように地方公共団体における公共用地の先行取得を継続的に推進していく必要があると私も考えます。このため、公共用地先行取得債それから土地開発基金それから土地開発公社を積極的に活用するとともに、都道府県と市町村の協力体制を整備するなど、地域の実情に即して円滑な公有地の取得のための措置を講ずるよう地方公共団体に要請するところとしておるわけでございます。  菅議員が今御指摘になりました土地保有機構でございますか、この先行取得について、土地開発基金制度や土地開発公社という用地先行取得のための機関を有するほか、みずから先行取得するための財源措置として先行取得債を活用するなど鋭意努力をしておるところでございます。御提案の土地保有機構構想については、地方団体から見ても傾聴すべき内容を多々含んでおると思います。だから、貴重な御意見として承っておきたいと思います。  この地方団体のメリットとしては、地方団体等の公共団体に優先売却するとしていること、それから払い下げ価格は購入時の実勢価格と買い上げ価格のいずれか低い価格とするというような御提案があるわけでございまして、大変メリットもあり傾聴すべきものがあると思いますので、今後大いに研究をさせていただきます。
  380. 菅直人

    ○菅委員 大変前向きな御意見をいただいたのですが、建設省、建設大臣もおいでいただいていますが、実はこの二回ほど前の国会で都市計画法の改正が行われました。野党も実は都市計画法の改正案を出したのですが、PKO国会の中でなかなかうまく通らなかったのですが、基本的に、建設大臣、今土地というものが、従来であれば物すごく利用することにネックといいましょうか高くて使えなかったのが、今や非常に使ってほしいという要請がたくさん出てきておるわけです。御承知のように生産緑地法の改正といいましょうか、宅地化農地も大量に三大都市圏にありまして、それが使われる状況になっておるわけです。ただしそれを、何といいましょうか支える、例えば道路をどうする、下水道をどうする、いわゆる区画整理をどうするといったような面的整備、さらに言えば都市計画そのものが非常に立ちおくれているというのが少なくとも現在の大都市周辺じゃないかというように思うわけです。  そういう点で自治体が、もちろん都市計画のいろいろな制度を使ってやることは当然なんですが、みずから土地を持っている、みずからかなりの土地を持っていれば、それをいわば種地にして、再開発のときも、自分のところもこれだけの土地を提供するから皆さんも出してくれ、で、ここに広場をつくりましょうとかそういうことが非常にやりやすくなる、あるいは道路の拡幅などでも替え地なんかに使いやすくなる。そういう点では建設省にとっても、この新しい土地利用の状況の中で、こういった公有地の拡大のためのこういう機関を設けるということは一つの大きなメリットがあるんじゃないか。  もう一点、建設省の立場からいえば、不動産というものが今やある意味では不況産業の、かつての生産設備ですね、通産省がかつてやられた、例えば繊維の不況のときの買い上げとか造船不況のときの買い上げ、あれは機械の買い上げたったと思いますが、ある種それに似たような状況にあることを考えれば、それらをいわば買い上げて自治体が利用できる形に持っていくというのは、そういう意味からもメリットがあるのではないか、このように考えますが、建設大臣の見解を伺いたいと思います。
  381. 中村喜四郎

    ○中村国務大臣 お答えをいたします。  先生から御指摘をいただきましたように、都市計画のいろいろな面で不備あるいは立ちおくれ、こうしたことも見方によってはそういう御指摘をいただくようなところもあろうかと思いますが、現在都市計画をさらに充実するために諸施策あるいは改善を行っているところでありますので、ぜひその点については先生にも御理解をいただきたいと思います。  そして、ただいま御指摘をいただきました問題につきまして、建設省の基本的な考え方をお話をさせていただきますと、公有地の拡大ということにつきましては、現在の諸制度、そして利用計画、そうしたものに基づいて順次この問題を拡大するように努めているところでありますが、きょう読売新聞で、先生のお考え方が新聞に報道されておりましたが、それを拝見させていただいていろいろの問題点を残念ながら私たちも疑問として持たざるを得ないところがございます。  その具体的な問題としては、この土地に対して複雑な担保権が付着しているということ、そして商業地内の不整形地、開発の見込みの立たないリゾート予定地、こうしたものを公共用としてたくさん買い入れるということについては、適当な土地がどうかということの対象の判断が非常に難しいということが一つであります。  さらに、現在も公共団体にこうした土地が持ち込まれているわけでありますが、一般的に高い価格で持ち込まれているということであり、なかなかこの問題が成立したという条件が少ないというのが実情であると報告を受けております。  さらに、買い上げた土地を長期にわたり保有する場合は、そのためのリスク、コストがどのぐらいになるか、こういった問題もまだ十分な検討を加えていかなければならない問題であると思いますので、御指摘をした点につきましては、建設省といたしましてはさまざまな観点から検討をして取り組んでいきたい、このように考えております。
  382. 菅直人

    ○菅委員 今建設大臣が指摘された点というのは、当然指摘があってしかるべきだと思っております。実は、今お手元にお配りしたものの中には、それについても幾つか書いておきました。例えば「土地保有機構」と書いた別紙1の5の③の中には「制限物権が一切ないこと」、つまりは何らかの形で担保とかがきれいに処理されていること、そういうこともこの審査の過程で対応すべきでしょうし、また、開発の可能性といいましょうか、そういうものについても、その①と②のところに、そういうものの検討も含めて審査の対象にしていく。そういう形で審査の問題として今言われたようなことはあると思いますし、また、買い上げのリスク、コストについては、先ほど申し上げたように地価税というものをそれに振り向ける。地価税は、これは政府税制調査会でも土地政策に振り向けるということが少なくとも、許されているというよりもある程度念頭に置かれているという趣旨ですので、そういった形で考えられるのではないかというように思っております。  そこで、一番中心と言ったら変ですが、大蔵大臣にいろいろな点でお聞きをしたいのですが、一つは、今共国債権買取機構というのを大蔵省の肝いりでつくられている。あるいはついせんだっては住専の、いろいろ苦労をされたようですが、何といいましょうか救済策を取りまとめられている。私は、この共国債権買取機構も一つの、何といいましょうか損金処理をコントロールしながらやっていくという意味では、ある程度の意味はあるのかなというふうに率直に思います。しかし、本質的には自分が貸したお金で自分の債権を買い取ってもらうわけですから、銀行にお金が戻ってくるわけでもない。また、値下がりがさらに大きくなればその部分は当然自分の方にもう一回最後かぶってくる。そういうことを考えますと、必ずしもこの方式では今のような土地の状況に対応できないのではないか。別の表現をすると、これはもうほどほどで土地の値下がりがとまるという前提ならこれでも何とかなるかもしれないけれども、もっと土地の値下がりが私自身は続くであろうと思っているわけですが、そういうことも想定すると、十分ではないのではないだろうか。  まず、そういった観点も含めて、この提案をしました保有機構についての見解を伺いたいと思います。
  383. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 菅議員の御質問にお答えします前に、菅さん、前から土地問題大変熱心にやっておられまして、たしか昔こんな厚い本を私もいただいて読ましていただいたことがありました。敬意を表する次第でございます。今「創設を」というこのペーパーをいただきましたが、私もさらに勉強さしていただきたいと思っています。  政府の方としましても、この前の総合経済対策で、公共事業等の円滑な実施のために公共用地の先行取得、総額一兆五千五百億円というものは出しておるわけでございまして、何かしなくちゃならない、こういうことでございますが、御提案のスキームは、今のお話を聞きますと、公有地の確保を目的とするものだろう、こういうことでございますが、これと同時に、公的機関が公的資金を使って金融機関の担保不動産の流動化及び損失の確定を促進することによって金融システムの安定性確保をやる、こんなことも考えておられるんだろう、こういうふうに考えておるところでございます。  非常に私は貴重な御意見として承っておるところでありますが、いわゆる不良債権買取機構というのをやったときに公的資金をどうするかというような諸問題もありましたし、また、関係官庁との間で種々の問題提起もまたあるようでございますので、そういったことを考えまして検討してまいりたい、こういうふうに思っております。
  384. 菅直人

    ○菅委員 慎重な見解は見解でまあ理解できるんですが、国土庁長官にもおいでいただいています。先ほど言いましたように、日本のこの七、八年の景気というものがどのくらい地価というものに振り回されたかというのは、もう今さら言うまでもないかと思います。  ここに一つデータがありますが、日本の地価総額、昭和五十九年末ですからこれは八四年ですか、九百二十八兆円だったんですね。これはたしか国土庁からいただいた数字だと思いますが、九百二十八兆円ですよ。それが平成二年、わずか六年後には二千三百三十八兆円。ですからどうなりますか、千四百兆円ぐらい膨らんでいるわけですよ、地価総額は。もちろん御承知のように、この間に株価はわあっと上がって下がっているわけですね。  じゃ日本の地価というのは一体どのくらいが適正なんだろうか。この間地価税の、先ほど楢崎さんからも指摘のありました地価税の申告がありました。個別の企業は書いてありませんでしたが、新聞には、どうも三菱地所が一番多そうだ、地価税八十億ぐらいになりそうだ、こう書いてありました。逆算をしてみたんですね。八十億円ということは、〇・二%ですから四兆円の路線価ですよ。路線価格というのは公示価格の八割ですから、五兆円の公示価格の土地を持っているということですよね。この会社の去年の収益を聞いてみますと、七百億円の利益が上がったというんですね。五兆円の土地の上にビルを建てて七百億円です。土地代だけ計算したってわずか一・四%しか収益が上がっていないということなんですね。これは一体どういうことなのか。つまりは、日本の土地というのは常に値上がり期待価格であった。ですから、今たとえ一・四%の収益であろうが、一般的には一%前後と言われていますが、一%前後の収益だろうが、値が上がっている、キャピタルゲインがあるからそれが例えば五兆円してもおかしくない、坪一億円しかもおかしくない、そういうメカニズムがずうっと働いてきたわけですね。  そうすると、そのメカニズムが働かなくなったとすると、どこまで下がるかということなんです。これは資本主義経済ですから、七百億円しか利益が上がらないところに五兆円ものお金を寝かしておくか。そんなことないと思うんですね。七百億円だったらせいぜい二十倍として一兆四千億。一兆四千億円ぐらいの総額に対して、七百億円の利益が出るんならこれで五%。収益還元という言葉がよく言われていますが、収益還元価格というのは年間収益の私は大ざっぱに二十倍と言っているんですが、五%と言っているんですが、そんなものではないだろうか。これをもうちょっとマクロに見てみると、日本の地価総額とその収益というのはどう考えていいか私もわからないんですが、ある学者の説によればGNPとの比較でいいんじゃないか。  で、アメリカのGNPと日本のGNPと土地の総額をある委員会で聞きました。たしかアメリカはGNPが今八百兆円ぐらいでしょうか。アメリカの地価総額、日本の二十五倍ありますけれども、約五百兆円です。日本はGNPが五百兆に対して、先ほど申し上げたように、ことし下がったと言われながらまだ地価総額は二千兆円を超えています。GNPの四倍なんです。アメリカはGNPの七掛けなんですね。ですから、マクロで考えてもミクロで考えても、どうも日本の地価というのはまだ収益還元価格に比べて四倍ぐらいは高いんじゃないだろうかな。こういうふうに言うと銀行関係者が青い顔をされるんであれなんですが、私は、資本主義経済というものが、自由主義経済というものが機能していれば、将来の値上がり期待価格がなくなった途端にその水準に近づいていくしかないんじゃないか、こう考えているわけです。  こういう点について、国土庁として地価の見通しをどのように考えておられますか。
  385. 井上孝

    井上国務大臣 お答えいたします。  菅先生が「シリウス」にお書きになった論文、私も拝見をいたしました。随分いろいろと勉強しておられることに大変敬意を表する次第でございます。  ただいまお尋ねの地価水準、適正な水準というものにつきましては、一昨年の一月に閣議決定しました総合土地政策推進要綱の中に書いてありますように「土地の利用価値に相応した適正な水準」、今先生のおっしゃるような収益換算の水準というふうに受け取っております。したがいまして、業務地につきましては収益に見合った水準、今先生のおっしゃるように二十倍とかそういうようなことも試算としてあろうかと思います。  それから、住宅地につきましては「中堅勤労者が相応の負担で一定水準の住宅を確保しうる地価水準」、その後「生活大国五か年計画」で、東京等の大都市におきましては中堅勤労者の年収の五倍ということを目標にいたしておりますが、そういった地価水準の実現を図るということを私どもは目標にして土地政策を行っているわけでございます。
  386. 菅直人

    ○菅委員 国土庁長官が言われたのは、何というんでしょうか、私の意見に一致しているようにも受け取れますし、絶対額としてどうなるかという見通しは出なかったわけですけれども、私は、今申し上げたように、長官が言われるように収益ということで考えれば、そういう水準というものが一つのめどになってくるんじゃないだろうか。そういうことを考えますと、先ほど大蔵大臣も言われましたが、この土地保有機構のねらいは、率直に申し上げて二つのねらいがあるわけです。  一つは、まさにその土地というそれこそ公共財を、これが株の買い上げと若干違うんですね。株というのは、株券そのものは紙ですから、まあ余りそれがどうなっていたからといって、経済的な影響はありますが、株券そのものは影響ないわけです。土地というものは、それが例えば五十兆分とか百兆分とか言われていますが、変な形で動かないというのは、ある意味では、まさに建設省じゃありませんが、いろいろなものに使えなくなるということですから、そういう点ではその土地を使えるようにする。しかも、ちょっと矛盾するように聞こえるかもしれませんが、自治体が土地を買う場合は、これは本質的には収益還元というのは余り関係ないんですね。例えば老人ホームをつくりたい、じゃ、今の収益還元合わないから十年後になったら収益還元に合うかといったって、大体収益還元という概念がないわけです、老人ホーム、幼稚園、学校、道路。まあ道路はある部分じゃあるかもしれませんが、基本的にはないわけですから。そういう点では、そういうものを自治体に移して、そして使えるようにしようというねらい。  それからもう一つは、率直に申し上げて、今の金融が、日本のある意味では非常に強いと言われた金融制度も、一説には、いろいろ数字をいただきましたが、不動産だけでこのバブルのときに十六、七兆から五十兆円ぐらいまで、何といいましょうか貸し出しが増大していますよね。ノンバンクとかなんとか含めれば百五十兆前後貸し込んでいるんじゃないかと言われています。そうするとそれが、地価がどこまで下がったときにどういうふうになっていくのか。よく株価がどこまで下がったらどこが、含み益、含み損がどうなるかというのは出ますけれども、地価がどこまで下がったら銀行の含み益、損がどうなるかというような議論が必ずしも数字では出ていませんけれども、私はかなり深刻にそういう状況はあると思うんですね。  そういった意味では、この際、いろんな問題点はあると思いますし、もちろんこれは一つの役所でできる問題ではないわけですから、まさに政府で一体となって検討していただいて、いろんな問題点もありますけれども、進められたらどうかと思いますが、重ねてちょっと大蔵大臣にお聞きをしてみたいと思います。
  387. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 今お話がございましたように、土地の問題をどうするかということ、特に収益還元価格でやったならば相当になる。それなら一体、今度担保価値を持っているところはどうだという話になってくるわけでありますし、その辺をどうするかということも一つの問題だろう、こう思っております。しかし、土地をどこの土地までどういうふうにして買っていくかということになりますと、新しい機構をつくるとこれまた大変な私は問題があるであろうと思いますし、先ほどお話がありましたように、自治体で買う、その買ったときの土地がまた同じように下がっていくということになっちゃったら、買った人の責任は一体どうなるんだとかというような問題もいろいろ私は正直言って出てくるだろうと思いますので、一つの非常に貴重な御意見でありますし、一つの方向を目指された案だと、こう思っておりますので、さらに検討をしてまいりたい、こう思っておるところでございます。
  388. 菅直人

    ○菅委員 そこで、この土地保有機構それ自体に対する質問はこの程度にさしていただいて、これにも関連しますけれども、戦後の日本経済というのが土地を中心にした含み益というものに非常に大きく依存をしていたんではないかというように思うわけです。  先ほどの同じ会社名を挙げて恐縮ですけれども、三菱地所という日本で一番の不動産会社が、私が調べたところでは、先ほど申し上げたように、公示価格で五兆円の土地を持っているわけですが、簿価ではたしか四千七百億円ぐらいじゃないかと思うんですね、その土地が。ということは、公示価格水準と比較すると四兆五千億円ぐらいの含み益を持っているわけです。日本の企業は、特に優良企業と言われる古くからの企業はいずれも膨大な含み益を持っているわけです。含み益というのは、私が申し上げるまでもないんですが、金利もかからない、配当も要らない。ですから、まさにその企業が自分だけのために活用できる、これほどいいものはないわけですね。  しかし、よく考えてみると、含み益というのはじゃ本当にその会社のものだけというふうに考えなきゃいけないんだろうか。含み益というのは一体だれのものなんだろうか。それは確かにいろいろと苦労されて開発をされたかもしれないけれども、例えば東京の駅前でいえば、新幹線もできたり、いろんな日本経済が上がることによって価値が上がってきた。これはもう全国各地そうですね。そうすると、必ずしも含み益というものはそれを所有している所有者だけの努力によったものではないし、もっと言えば、どちらかといえばそれ以外の努力によっているものじゃないか。  ですから、私はある意味では、その努力というのはある部分は従業員の給料に本来は一部分回すべきだったかもしれない、ある意味では配当に回すべきだったかもしれない、ある意味では社会的な、つまり税として取るべきだったかもしれない。こういうことを含めて、日本経済のあり方が、バブルがはじけた中でもう一回この含み益というものを見直さなきゃいけないときに来ていると思うわけです。  で、私もちょっと調べてみましたら、シャウプ勧告というものの中には含み益に対するといいましょうか、資産に対する、企業資産に対する再評価というものが入っていたけれども、結果的には戦後のある時期まで二、三回やられた後、それ以降やられてないというふうに聞いています。こういう問題を含めて含み益というものに対する考え方、あるいはそれに対するシャウプ勧告の考え方、これらについて大蔵省としてはどのような見解を持たれているか、まずお聞きしたいと思います。
  389. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 資産再評価によりまして固定資産を再評価してその簿価を時価につけかえるという、まず今お示しのシャウプ勧告当時から論議がございます手法につきましては、ただいまの時点でこれを考えますのに、商法の規定でございますとかあるいは企業会計の立場といったようなものから見まして、これになじみにくいという問題があるように考えますし、また、何をもってその適正な時価と見定めるかというような技術的な問題もあろうかとは存じます。  シャウプ勧告当時は今おっしゃいましたような見直しを行いますことによりましてこれを税制上の措置とつなげていったわけでございますけれども、そういう意味合いから考えてみますと、土地につきまして資産再評価を行いまして、簿価自体を改定いたしますとともに、正式にバランスシート上再評価益を計上するということになります場合には、税制上これに対しまして適正な課税を行いませんと、将来土地を仮に売却いたしましたときにその土地の値上がり益のうちで再評価時点までの分は課税を免れるという結果になるのではないか。そういう意味におきまして、負担の公平上問題があるのではないかというふうに考えます。  どうも問題点だけ申し上げるような形になって恐縮でございますけれども、そのような問題を感じます。     〔委員長退席、石川委員長代理着席〕
  390. 菅直人

    ○菅委員 この議論は、大蔵大臣、かなり私は重要な議論だと思うのですね。私も、率直に言って、今すぐこうやれという結論があるわけじゃありません。しかしどうも、先ほど申し上げたように、日本経済というのはそういう企業が含み益をひとり占めにする。そこで社宅をつくり、テニスコートをつくり、一方ではそれがエクイティーファイナンスのまあいわば材料になって、外国に比べると資本に対する収益性は非常に低いのだけれども、含みがあるからそれでもつと。ある意味では、日本の企業が海外に比べて非常に強かった一つのかなり大きな原因じゃないか。  しかし一方では、いざ会社をやめてみると立派な社宅からも追い出される、じゃテニスコートは武蔵野市なり杉並区のを使おうと思ったら、前いた会社のテニスクラブの方がよっぽど立派だったとか、つまりは個人は貧しく、社会も必ずしも豊かでない、企業だけはそこにいる間は豊かになっている。社畜なんという言葉がありますが、会社の家畜という言葉があって、ちょっとどぎつい言葉ですが、日本は地域社会、コミュニティーも育たない、会社のコミュニティーしかないというのも、どうもすべてが企業というものに一たん資産も集められ、フローも集められ、あるいは最近は銀座なんかは閑古鳥が鳴いているようですが、全部いわゆる交際費で会社同士で、関係者同士でいわば遊んでいる。  そういうあり方そのものをこの際全体としてとらえ直して、もう一回本当の意味での、何といいましょうかまあ宮澤さんの言い方をかりれば生活大国なんでしょうけれども、そういうものに変えていく上では、この問題も避けて通れないのではないか。  もちろん当面の問題として、先ほどは担保などにかかっていた土地などが若干中心になりましたが、必ずしも担保なんかに入ってない土地もそういう優良企業というのはたくさん持っておられるわけですから、そういうものをどういう形でみんなが使える形に持っていくのか、そういうことも含めてこの問題は非常に大きな問題を含んでいるんじゃないかと思いますが、大臣に感想をお聞きしたいと思います。     〔石川委員長代理退席、鴻池委員長代理     着席〕
  391. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 御指摘のように、日本の企業というのが高度成長時代から発達してきました。そのときに、企業資産を持ちながら借金経営でやってきた。借金経営でやってきたというのは、そういったことを全部温存して自分のところに持っていった、こういうことだと思うのですね。銀行からの借り入れ等々でやりましたですね。それが今やそういった形でなくなって、自分の資産が相当出てきた、こういうことになってきておりますから、私は変わってきたと思うのです。これが、今のお話のような形で、どこに還元をしていくかということもやはり考えていかなければならない。会社をどうするかこうするかという話ではないと思うのです。  最も会社的な話で言いますと、非常に極端なことを言いますと、要するに会社というのは株主のものですから、株主が高い価格で評価をする、あるいは銀行が借金をしてその会社を売ってしまうというような格好でもって株主に還元する。アメリカの合併というような問題が、合併統合とか会社の売却というような問題が一時ありましたですね。こういったような問題が私は物の考え方としてはあり得るのだろうと思う。日本ではまだそこまでいっていませんから、私はそういったこともやはり考えなくてはいかぬのじゃないかな、こう思っています。  それからもう一つは、土地の問題で今御指摘がありまして、確かに土地をいろいろ持っていますから問題ありますが、同時に株を持っているわけですね、企業としては、大きなところは。お互いが安い値段で仕入れたところの株を相当持っている。いわゆるそういった形で株の持ち合いというのがありましたし、系列という形になっておるということもあると思うのです。そういったようなところの含み益というものをどうするかという問題も同時にやはりこのときに考えていかなくてはならない問題じゃないかな、私はこう思っておるところでありまして、さっきちょっとお話がありました資産再評価というようなことも考える。考えるということになれば、一体再評価益をどうするか、税金の問題をどうするか。  先ほど主税局長から話がありましたけれども、その問題もありますけれども、私は、全体として日本の資本主義というか日本の会社というものがどうあるべきかというのはこの際やはり考えていかなくてはならない問題になったのじゃないかと思うのです。バブル経済で大変もうかった、また損をしたということがありましたが、そういったことの一番よかったと思いますのは、むしろそういったことについて反省をしていかなければならないようなことを教えてくれたところはよかったことかなとも、非常に皮肉な言い方になりますけれども、私はそういうふうに思っておるところでございます。
  392. 菅直人

    ○菅委員 それから、先ほどちょっと一つだけ大蔵大臣に聞き忘れたのですが、先ほどの問題ですが、地価税収入を保有機構に使おうという考えになっているわけですね。私は、先ほど言いましたように、地価税というのは本来土地保有者、それもたくさん持っている人とか、高額の土地を持っている人からいただいたお金ですから、そういう目的に使うのはふさわしいと思うわけです。将来今度は自治体が土地を買い上げるときには、再来年からですか予定されている固定資産税評価の評価がえがありますね。これも細かく言えばいろいろ議論があるところですけれども、そういうものを充てるのが私はふさわしいのではないかと思っていますが、そういう形で地価税の意義づけをきちんとして、一部には何か地価税なんというのはもうつぶしてしまえなんという乱暴な意見も出ているようですが、私は、こういう制度ともリンクをさせながら政策的な意味で有効な活用を図っていくのがいいと思いますが、その地価税の部分について、大臣、どう思われますか。
  393. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 今の土地のスキームをどうつくっていくかという問題を考えるということなれば、当然にそのときに財政資金をどうするかというお話も出てくるのだろう、こう私は思っております。その財政資金というのは、今のお話のような地価税を充てる問題であるとか、あるいは一般のいわゆる財政投融資というような形のものをどう使うのか、あるいは地方自治体が発行するところの債券、これもやはり一つの公的資金だろう、私はこう思いますから、そういったものをどうするかというのはやはりスキームをどうつくるかということとも関連してくる問題だろう、こう私は思っていまして、いろいろとその辺も検討していかなければならない問題であろう、こういうふうに思っております。
  394. 菅直人

    ○菅委員 それでは話を少し進めまして、先ほど国土庁長官が、土地の適正な価格として、住宅地はいわゆる大都市圏で年収の五年分で買える水準、こういうことを言われたわけです。私は率直に言いまして、土地という面でいえば年収の五年で買えるような見通しがついてきたのじゃないかと思っているわけです。しかし、どうも土地がだんだん安くなってくるとちょっともう一つのものが目立ってくるのですね。それは建築コストなわけです。この間建設省に、木造一戸建てというか戸建ての建築コスト比較表が日米間でないかと聞きました。私から言ってもいいのですが、せっかくですから建設省のどなたかに、どのくらいの比率ですか、端的に。
  395. 三井康壽

    ○三井(康壽政府委員 建設省の関係する団体でございます日本住宅総合センターにおきまして、日米の木造住宅につきまして調査をさせていただきました。当然同じ仕様で比較をしなければいけないということでございますので、同じ仕様、面積で比較をさせていただきました。これによりますと、二つの比較方法でお答え申し上げますが、購買力平価、これはOECDがつくっております、各国を平均しましてドルと円等の比較をいたします。これで言いますと、アメリカの方が二割安い。また、単純にアメリカのドルと日本為替の換算、これは百二十五円でやるわけでございますが、約半分ということでございまして、日米間の木造価格の比較は、アメリカの方がコストが安い、こういうことになっております。  ただ、原因といたしましては、日本の場合は、地震につきましてのコストが高いとかあるいは原材料につきましては、木材であろうがあるいはガラスの原材料、それからそれを使います燃料等につきまして外国から輸入する、そういうデリバリーの問題等ございまして、そういったことも考慮してこの価格については比較をすべきものかと思っております。事実はそういう計算上の比較になっております。
  396. 菅直人

    ○菅委員 建設大臣、今の聞かれましたか。購買力平価で計算するなんというのは、私ももらってびっくりしたのですけれども、これは関係のない話ですよ。土地が高いから購買力平価が高いのであって、それで計算したのじゃ当たり前のことであって、初めから修正するためのデータで計算したのではだめなんで、まさに百二十五円、今は相場もっと上がっているでしょうが、倍半分なんですよ、一戸建ちでですよ。  それで、今、私がまだ聞かない前にもう先を答えてもらいましたが、原因を、理由を言ってくれましたよね。材料を外国から輸入する。じゃ自動車の材料はどこから輸入しているのですか。材料が外国から輸入するから日本がだめだったらもう日本貿易黒字一千億ドルなんて、どこにそんなものができるのですか。建設省、一体何を考えているのですか。私は率直に言って、これ、データを見たときにびっくりしたのは、建設省がデータ持っていないというのですよ。それは外郭団体だって仲間みたいなものかもしれないけれども、戸建ではあるけれどもビルはないというのですよ。  地震の話もありました。しかし、戸建てで地震というのは、まあそれは百十階のようなああいうものを建てればかなり差があるでしょうが、そんなに大きく変わるはずないのですね。私は率直に言って今の理由、つまり戸建てで日米間で倍半分、これが例えば賃金のもっと安い国で倍半分というならまだわかりますよ。少なくとも賃金水準がそう差がない日米で倍半分というのは、これは何とも納得できない。やはりこれは構造的な原因があると思うのですよ。はっきり言えば、国際的競争がないからですよ。国内独占だからですよ。自動車だったら向こうに売るかこっちに来るわけですよ。だれも家を船に積んで日本に送っていないわけですよ。大臣、この数字を見て率直な感想を聞きたいですね。
  397. 三井康壽

    ○三井(康壽政府委員 ただいまの御質問で、購買力平価で比較するのはけしからぬ、こういうふうな御指摘もございました。しかし、これは一つの考え方としまして、世界各国の比較をいたしますときにはこういったものをしているということをお断りさせていただきたいと思います。  また、ただいま、地震で木造は余り関係ないということでございますけれども、日本の場合は木造住宅でございましても地震等につきましてはきちっとさせていただくというのが当然でございまして、その部分につきましてはアメリカの工法の方が割合と簡単にしているというふうに言えるのではないかと思います。  また、資材につきましては、確かに自動車等につきましての原材料も外国でございますから、その点についての比較はどうかという御議論もございます。しかし、一般的に申しまして、アメリカの場合の建築資材の価格と比較してみますと、原材料の部分でどうしても我が国の方が高目に出てくるということでございます。なおしかし、だからといって建築のコストがさらに低減をしなくていいかということになりますと、私どもも当然に、木造住宅を中心といたしまして住宅生産のパネル化を進めるとか、あるいはなるべく建設労務者を少なくて済むような工程を組むとか、現場につきましても、そういった短期でできるような合理化というものを進めていくように住宅産業界に指導していくといいますか、あるいは私ども、部品、部材の標準化等につきましても調査費等で勉強し、それを、成果を現場に活用するようにしていきたい、こういうふうに考えているところでございます。
  398. 中村喜四郎

    ○中村国務大臣 ただいま政府委員が答弁をさせていただきましたが、私も先生から御指摘をいただいて、それだけの価格差があるという御指摘でございますので、どうしてそれだけの差があるのかということを、さらに具体的に資料等を取り寄せながら、その原因というものを詳細に理解してみたいと思っております。そして、その中で、価格が下げられるような工夫、方法はいろいろとしていかなきゃならない、このように考えております。
  399. 菅直人

    ○菅委員 つい先日私の若い友人がアメリカから帰ってきて、向こうで四十坪ぐらいのところで、家具も全部入って、日本円にすると十万円弱だった、九万幾らだったと言うのですね、マンションの七、八階建ての中で。計算してみると、例えば九万円で借りようと思ったら年間百万ちょっとですよね。さっきの五%の収益率でいえば、そうすると二十倍で二千万ぐらいで建たなければいけないわけですよ。それは、また地震の話が出るかもしれませんが、日本だと土地代金ただにしても二千万円で四十坪なんて建たないのですよね、どう頑張ってみても。  今大臣は住宅局長ぶりは大分前向きの答弁だったと思いますが、私は、非常に構造的なものが多分入っていると思うのですよ、これには。率直に言って、購買力平価ということをよく使われていますが、まさにここにあらわれているのですよ。何で住宅だけ購買力平価が百九十六円で、多分テレビや車は購買力平価は、これはどうなんでしょうか、百円ぐらいになるんでしょうかね。同じ産業ですよ、同じ日本の労働者、優秀な労働者が同じ知恵を出してやっておるわけですよ。多分、私が多少かじったところでは、産業構造が物すごく前近代的なんですよ。全部下請制度ですよ。ですから、一見ゼネコンにとってはリスク負担がないけれども、下請丸投げですから非常に実はコストが高くなっている。そのリスク負担を結局消費者が全部がぶっている。それでなきゃこんなべらぼうな差が出るなんて考えられないわけですよ。多分、これは日本の談合体質を含めて、そういう建設業のトータルの産業のあり方にかかわってきていると思うのですね。ですから技術的なちょっとした、はすかいが足らないからとか何かが足らないからなんという数字じゃないと思うのですよ。  ぜひこれは建設大臣にちょっと、年収の五倍というときに、土地がただでも家が建たないんじゃ、これはもうそれこそ、役所だけを言うわけじゃないにしても、それこそ建設省住宅局の責任になりますから、もう一度ちょっと決意のほどを伺いたいと思います。     〔鴻池委員長代理退席、石川委員長代理     着席〕
  400. 中村喜四郎

    ○中村国務大臣 お答えいたします。  先生から御指摘をいただきました年収の五倍ということでございますが、つけ加えさせていただきますと、年収の五倍で、一時間から一時間半以内の、七十平米ぐらいのマンションということで目指しておるわけでありますが、いずれにいたしましても、我が国の建築コストが高いということは、どういった要因でこれだけの差があるかということはいろいろ検討してみなければならないことだろう、このように考えております。  ただ、東京、神奈川、千葉、埼玉というこの一極集中問題と建築問題、コスト問題、こうした問題がどういった関係にあるかということも、関係省庁と連携をとりながら、できるだけそうしたコストダウンが図れるような、業界の体質改善も含めて検討しなければならない、このように考えております。
  401. 菅直人

    ○菅委員 時間がもう余りなくなったので、最後に、つい先日建設省が優良賃貸住宅の法案を出されました。私は、あの法案そのものは、良好な賃貸住宅建設という意味では、ある意味では画期的なものではないかというふうに率直に評価をいたしております。  ただ、一つだけ感じたのは、先ほど申し上げましたように、生産緑地法のいわゆる生産緑地の指定を受けない、いわゆる宅地化農地と言われているところが非常にモザイク的にばらばらあるわけですね。この政策は、そういう面的な利用と全く無関係に、単体として何月以上とかあるいは一戸当たりの広さがこうだとか、そういうものについてかなり手厚い補助を出す仕組みになっているわけです。  私は、せっかくやられるんならせめて面的整備と何らかの形で連動する、例えば、よくわかりませんが、再開発地域とかあるいは地区計画をかけたところとか、そういうところの中のそういう建物には優先的にかなり、何といいましょうか、そういう手当てをする。そうすれば面的整備が従来以上に進みやすくなるんじゃないか。どうも単体の考え方と土地利用の考え方が建設省の中でいま一つ連動してないんじゃないかという感じを率直なところ受けているわけです。これについてどう思われますか。
  402. 三井康壽

    ○三井(康壽政府委員 ただいま今国会で御提案をさしていただきます特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律案につきまして、都市計画とかあるいは周辺の地域環境の整備とあわせてしっかりやるべきだ、こういう御質問であろうと思います。  先生も御承知のとおり、住宅関係のこういった制度につきましては、公営住宅あるいは公団住宅あるいは公庫住宅、それぞれ単体を中心にいたしまして家賃の問題、価格の問題あるいは規模の問題、こういったことを書かせていただいております。したがって、今回の御提案をさしていただいております優良賃貸住宅の関係の法律につきましても、法律の制度といたしましてはそういう形で御提案をさしていただいているわけでございます。  しかしながら、仰せのとおり、こういった賃貸住宅を建てていく際に、これは賃貸住宅に限らずにほかの持ち家も公営住宅、公団、同じでございますけれども、都市計画との関連を持たせてやっていくことが好ましいわけでございます。したがいまして、建設省といたしましても、関係部局とよく相談をさせていただき、また公共団体の都市計画関係部局と相談いたしまして、これらの賃貸住宅の建設等に当たりましては、周辺環境とも、十分いい居住環境の中で建つような努力を重ねていく、こういうふうに進めさしていただきたいと考えておるところでございます。
  403. 菅直人

    ○菅委員 大臣、私、かなり都市計画とかいろいろな話を建設省から聞くのですが、このあたりが物すごく役所がややこしいんですよね。今住宅局でしたよね。で、多分地区計画だ何だといったら都市局になって、建築確認とかなんとかになると今度は建設経済局ですか。非常にもう、何といいましょうか、我々から見るとまさに一体の問題が建設省の中でもこうなっているんですね。今の話を聞いても、連動するのは望ましいから話し合ってやりますみたいな話ですね。  前回の国会で政府案として通過された都市計画法の中にマスタープランというのが入ったわけですよ。これは自治体が一番中心になられるわけですけれども、本来なら今こそ、そういうふうに土地が、生産緑地の指定や指定されないのやいろいろな土地が出てきているわけですから、今こそこれを、マスタープランをかけて、このあたりはこういう住宅にしようとか、場合によったらこのあたりは替え地でもして組みかえようとか、そういうものをやればいいときだと思うんですよ。  しかし、いろいろ聞いてみると、マスタープランというのも、じゃどこまで拘束力があるんだ、いざ聞いてみると基本的な拘束力はないんですね、基本的な拘束力は。ですから、これだと自治法にある基本構想の方がまだ意味があるのかなとさえ思うわけですが、ついせんだっても私の住む武蔵野市というところで、古くからいろいろ裁判がありましたが、建設指導要綱に基づいて、こういう建物を建てるときには学校建設費か何かの教育分担金を取るということを要綱でやってたのが最高裁で負けるわけですよ。建設省はどういう通達を出しているかというと、そういうことはやらないようにという通達を出すわけですよ。ですから、最高裁の判決が出たからそういう通達を出すしかないという言い方は、それは言い方として成り立つのかもしれないけれども、本来なら、じゃマスタープランなりなんなりで自治体がそういうことができるようにしてあればいいわけですが、してなくて、要綱でやったら裁判で負けて、そんなことやっちゃいかぬ、こういうことになっておるわけですね。  こういった問題について、特にマスタープランを、もっと自治体が土地利用するときの拘束力を持ったプランにできるのかどうか、その点について見解を伺いたいと思います。
  404. 鹿島尚武

    ○鹿島政府委員 先生御指摘のとおり、良好な都市環境の確保を図るために、適正な制限のもとに土地の合理的な利用を図るということは、都市計画の基本理念というふうに実はされてございます。このため、都市計画におきましては、今日まで、都市の発展の動向とか、人口、産業の将来の見通し等を勘案をいたしまして、居住環境の保全等の調和を図りながら、的確な公共投資を行うように定めているところでございます。つまり、無秩序な市街地を防止するために、市街化区域、そして市街化調整区域等に区分をいたしまして、整備、開発及び保全の方針を都市計画に定め、土地の利用、都市施設の整備、市街地開発事業の実施等につきまして、一体、総合的に定めまして、特に土地利用につきましては、ただいま先生お話ございましたとおり、用途地域等の土地利用に関する計画を定めまして、開発の許可、建築確認等によりまして、規制、誘導を行っているところでございます。  先ごろの都市計画法の改正によりまして、都市計画のマスタープランとして、市町村の町づくりの具体的ビジョンを明らかにする市町村の都市計画の基本方針を創設されたところでございますけれども、今後この基本方針の策定というものを各市町村にやっていただきまして、公共施設の整備と調和を図った総合的な町づくりを一層進めてまいりたいというふうに私ども考えているところでございます。  ただ、仰せられましたとおり、各地区レベルと申しますか、町づくりのイメージを細かく明らかにしまして適切な町づくりを具体的に進めるということになりますと、地区ごとの整備の方針と、公共施設、建築物等に関する詳細計画を定めて実施をしていく必要があるわけでございます。そこで、仰せられましたような地区計画制度等を積極的に活用いたしまして、さらに推進を図らしていただきたいというふうに考えておるところでございます。よろしくお願いいたします。
  405. 菅直人

    ○菅委員 時間ですので、きょうはこれで終わりますが、ぜひ土地問題、いろんな問題がありますが、十分に配慮をいただきたいということをお願いしておきたいと思います。
  406. 石川要三

    ○石川委員長代理 これにて楢崎君、菅君の質疑は終了いたしました。  次に、辻第一君。
  407. 辻第一

    ○辻(第)委員 私は、まず最初に、特別養護老人ホームの問題でお尋ねをいたします。  急速に人口が高齢化をいたしております。中でも七十五歳以上の後期高齢者がふえております。そういう中で、全国で、寝たきりの方、また痴呆老人もどんどんとふえていると思うんですが、現在の状況をまずお尋ねをいたします。
  408. 横尾和子

    ○横尾政府委員 平成二年の時点で申し上げますと、寝たきりのお年寄りが約七十万人、痴呆性のお年寄りが約百万人と見込んでおります。
  409. 辻第一

    ○辻(第)委員 痴呆のお年寄りは、今百万と言われたんですが、私は、七年前に痴呆老人の問題、特別養護老人ホームの関係でお尋ねをしたときには六十二万人だったんですが、非常にふえたというのが印象であります。  そういう中で、厚生省は、いわゆるゴールドプランですね、「高齢者保健福祉推進十か年戦略」というのを計画をされ、進めておられるわけであります。そういう中、地方自治体でも、老人保健福祉計画が策定をされている。そういう中で特別養護老人ホームの整備の促進やベット数の確保を進めておられるわけでありますが、しかし、現状、施設整備のおくれは深刻だということでございます。  そこで、奈良県の現状を申し上げたいと思うんですが、皆さん方に表をお届けをしていると思うんですが、その表①ですね。これは昭和五十八年から平成四年までの九年間でありますが、県の調べで、人口が百二十七万から百四十万にふえております。これは人口急増県であります。六十五歳以上の人口は、十二万四千人から十七万二千人、三八%ふえております。総人口比は、九・八一%から十二・三六%、ふえております。そして、特別養護老人ホームもかなりふえまして、千百五十床から二千百七十床、ふえているわけであります。また、表②、奈良県の国勢調査では、昭和五十五年から平成二年の十年間で七十五歳以上の高齢者は、三万八千七百五十人から六万五千三百六十五人、二万六千六百十三人ふえて、六八%ふえております。このように、高齢者がふえ、しかも七十五歳以上の後期高齢者が六八%もふえております。  平成四年実施の奈良県の高齢者基礎調査では、在宅の高齢者が二千二百十八名、一・三三%でありますが、要介護者であります。症状別で見てまいりまますと、痴呆が半数、寝たきりが八割、介護者は四〇%が配偶者であります。また、中には配偶者最高九十歳という方がおられるんですが、介護者自身が高齢化いたしております。また、介護者の四〇%が健康状況が悪い、このように言われております。こういう介護力の低下も、一層施設の入所を必要としているわけであります。  こういう状況の中で、入所を要する人がふえ、入所を待機する人が激増をいたしております。表③を見ていただきますと、奈良県の待機者ですね、これはもう入所する必要がある、こういうふうに認められた人が、平成元年には六十二人だったんですが、これが二年には百五十五人、三年には百六十五人、四年三月には三百二十九人、四年の十月には三百九十六人と、驚くべく激増をいたしておるわけであります。三年半の間に待機者は六倍になっているわけです。奈良市を見てまいりますと、何と平成元年が十人だったんですが、四年十月には百五十人、十五倍にふえておるという状況であります。  そこで尋ねるわけでありますが、これは奈良県だけの問題ではないと思うんですね。全国では何人の待機者がおられるのか、この数年の待機者の実態はどうなのか、お尋ねをいたします。
  410. 横尾和子

    ○横尾政府委員 特別養護老人ホームの待機者は、平成元年が二万八千人、平成二年が二万九千人を超える状況になっております。
  411. 辻第一

    ○辻(第)委員 平成四年の数字はわかりませんか。
  412. 横尾和子

    ○横尾政府委員 平成四年については、調査をしておりません。
  413. 辻第一

    ○辻(第)委員 こういうふうに待機者が急増し、深刻な事態になっているのに、平成二年の数字しか出せないというのは、私はこれは許せない問題だと思うんですね。  それで、私は、厚生省でいただいた資料は平成元年と二年でありますので、少し電話で聞いてみました。そうしますと、東京都は、元年が四千七百三十五人、それが、二年が五千六十九人です。昨年の四月では何と八千六十八人ですね。この二年に三千人ふえているんですね。大阪でも、元年が九百三十二人だったのですが、そして二年が千二百四十九人、それが千四百二十人にふえております。これは去年の九月一日のデータですね。厚生大臣は茨城県だというふうに聞いているのですが、三百二十六人ということであります。それから山形県は、元年が七百九人で、二年が少し減りまして六百五十七人なんですが、去年の分については御遠慮させていただきたいということで教えていただけなかったのですが。それから、ちょっと大蔵大臣に申し上げたいと思ったのですが、今ちょっとお留守なんですが、元年が百四十三人、二年が三百三人にふえました。何と昨年は、十一月一日付でありますが、四百四十八人にふえているのですね。先ほど二万九千四百四十五人が二年の数字だということでありますが、私は、恐らく去年はもう三割ぐらいふえているのではないか、三万五千人は軽く突破しているのではないか、そういうふうに思うわけであります。  なぜこのように急増したのかということでありますが、もちろん人口の高齢化、寝たきりあるいは痴呆の老人がふえたということは当然でありますが、また介護者の状況が、介護力といいますか、そういうようなのが低下した、こういうこともあるわけでありますが、それ以外にこのように急激にふえた要因がまだあるわけであります。  それは、平成二年四月の診療報酬の改定で七十歳以上のお年寄りの患者の退院促進が図られる、さらに平成四年四月の診療報酬では入院日数による医学管理料の逓減制が強化され、入院一カ月後から管理料は約半額、三カ月で三分の一にされる。特例許可老人病院の要件が六十五歳以上の患者数七〇%から六〇%に、また老人病院の要件が七十歳以上の患者数六〇%から六十五歳以上六〇%に変えられる。こうして一般病院では、最近の診療報酬の改定の結果、経営が厳しい、お年寄りの患者さんを長く入院させると採算が合わない、そういう状態の中で、お年寄りの患者を早く退院させざるを得ないというところに追い込まれているということだと思うわけです。  そういう中で、年寄りの患者さんは退院を促進をされるという状況になり、中には、病院それからショートステイ、老健施設などを転々としながら特別養護老人ホームのあきを待つというような深刻な状況が広がっているわけです。福祉事務所の職員も、入所希望者のケースを見ると、診療報酬の改定の影響で老人病院でも三カ月から六カ月で退院促進ということになり、特別養護老人ホームへの入所希望が急増したと思われる、こういうふうに言っているわけであります。  厚生大臣にお尋ねをするわけでありますが、このような状況、患者さんが病院から早く退院をされる、そして特養が十分でないというそういう状況の中で深刻な状態が生まれている、こういうことだと思うのですが、私は政府責任は重大だと思うのですが、厚生大臣の見解を伺います。
  414. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 お年寄りの病状には、急性的な病状と、あるいは当然のことながら長期間入院をするような慢性的な症状と、こういうような傾向が見られるわけでございます。厚生省といたしましては、今後の医療、福祉のあり方といたしまして、原則としていわゆる急性的な、すぐにもう例えば手術を要するとか治療を要するとか、こういうお年寄りの患者さん方に対しては当然のことながら一般病院において治療を行っていただく、それから、慢性的で比較的病状も固定化しておる、こういう方に対しましては療養型病床群、こういうようなものを新たに打ち出しておるわけでございます。  また、そういった一方に、先生御案内のように介護を中心とする老人病院であるとか、あるいは老人保健施設であるとか、あるいは在宅サービス、いわゆるゴールドプランの大変重要な柱でございますけれども、あるいは訪問看護体制、いろいろなメニューがあるわけでございます。そういう中において、お年寄りの皆さん方がいわゆる心配をしないで十分な医療、福祉というものを受けられるような体制、そのために努力をしていきたい、このように考えているような次第でございます。
  415. 辻第一

    ○辻(第)委員 私は、これまでのお年寄りに対するいわゆる差別医療、あるいはこういうふうなお年寄りをいわゆる追い出しというのですか、そういう政策の中でこういう一層の混乱が起こっているという点につきましても、厚生省としては十分反省といいますか責任を感じていただきたいと思うわけであります。  寝たきりの患者さんだとかあるいは痴呆の方それ自身が大変なことでありますが、また介護される方も大変ですね。二十四時間介護しなければならない。最近はショートステイやデイサービスなどが進んだといえ、休養される時間もなかなかとれないという状況であります。しかし、こういう現実の中で一年、一年半は待機がもう当たり前という状況になっています。長い人は三年、四年という状態もあるわけでございます。痴呆の夫と痴呆にかかり始めた妻の老人世帯で、娘さんが嫁ぎ先の市外から介護に通い続け、自分の家庭との両立て疲れ切って二年後にようやく入所、こういうケースもあるわけでございます。困難でも介護力があれば待機できるケースですが、ケースワーカーに相談に来られたときはもうきょう、あす、こういう緊急事態になっておる、とても待機できる状態にはないというケースも多いわけであります。  奈良県では、関係者の努力で平成五年に二百三十床増床される予定であります。二千四百床の計画が立てられておる。しかし、これが計画どおりつくられたとしても現在の待機分さえ充足をしない、こういう状況であります。高齢人口の伸び、寝たきり、痴呆老人の増加、こういうことを見てまいりますと、この計画でも不足をするということであります。  そこで、緊急の対策をとるべきではないのか、計画の前倒しなど計画を見直しをすべきではないのかということを強く望むものでありますが、大臣の答弁を求めます。
  416. 横尾和子

    ○横尾政府委員 特別養護老人ホームの整備につきましては、十カ年戦略におきまして従来の目標を上回るいわゆる緊急整備として目標数値を定めているところでございますので、またそのための必要な予算を毎年度確保してまいったところでございます。例えて申しますと、毎年一万床を上回るというかつてない大幅な整備を図っているところでもございますので、まずこの十カ年戦略の目標とするところの実現に向けまして努力を尽くしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  417. 辻第一

    ○辻(第)委員 十カ年戦略のことはよくわかるんですけれども、急激に特別養護老人ホームの待機者がふえている、そういう状況ですね。本当に深刻なんですよね。私も医療の第一線におるときにも経験しておりますし、私を大きくしてくれた祖母がぼけ老人になりまして、もうそれこそ家庭は大変なんですね。そういうもう待ったがないわけですね。ですから、十カ年戦略をやっているからもうそれでいいんだと、今の急激に変わってきているこの現実に対応しないというのは、私は許されない問題だと思うんですね。  そのことも指摘をし、次に、超過負担の解消ですね、運営補助ですね、措置費の国庫負担を八割に復元をしていただきたいということで尋ねるわけです。  定員五十人ですね。それでショートが十人、それからデイサービス、ケアハウス併設の特別養護老人ホーム、全部合わせますと四千平米でありますが、この建物に係る総事業費が十一億八千二百五十万円です。補助基準でいきますと、設置者は四分の一負担で、二億九千五百六十二万円で済むはずでありますが、実際の負担は六億五千四百二十五万円、こういうことで、実に三億五千八百六十三万円の超過負担ということになっているわけであります。それで、超過負担をぜひ解消するために力を尽くしていただきたい。さらに運営補助では、措置費の国庫補助を従来の八割に復元すべきではないのか。この点で答弁を求めます。
  418. 横尾和子

    ○横尾政府委員 施設の整備についてまずお答え申し上げますと、国庫補助単価につきましては従来から引き上げを行っておりまして、平成四年度におきましても、一般的に三・四%の引き上げ、さらに補助面積についても拡大を行ったところでございます。また、平成五年度予算におきましては、二%の単価の引き上げのほかに、特に問題が指摘をされました都市部における整備等、これを進めますために一〇%以内の特例割り増し単価というようなものも工夫させていただいたところでございます。  施設整備が順調に進みますことはゴールドプランの実現上大変重要なことでもございますので、今後とも努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  419. 辻第一

    ○辻(第)委員 次に、特別養護老人ホームの個室化を促進をしていただきたいということであります。  現在、特別養護老人ホームの個室化の要求が強まっております。お年寄りの方々の生活の場としてプライバシーが確保されることは必要な条件だと思うわけでございます。東京などでは、個室をつくろうと自治体の努力が始まっております。政府は、特別養護老人ホームの個室化への要求に積極的にこたえていただきたいと思いますが、いかがですか。
  420. 横尾和子

    ○横尾政府委員 これまで個室の整備の問題については、痴呆性のお年寄りや特に重篤な状況にある方々を対象といたしまして個室を整備するという考え方でございます。従来二割を個室というふうに考えておりましたが、施設内のこうした方々が増加していることにかんがみまして、平成四年度から三割までに拡大したところでございます。これを、お尋ねありましたように全員を個室にするかどうかにつきましては、現場の方でもすべてを個室ということについてはもう少し検討した方がいいのではないかという御意見もありますので、なお検討をさせていただきたいと存じます。
  421. 辻第一

    ○辻(第)委員 最後にこの問題で厚生大臣にお尋ねをするわけですが、本当に今特別養護老人ホームが大変不足をいたしておるわけでございます。待機者が平成二年で約三万ですね。もう今はそれを大きく上回る状況で待機をされている。深刻な事態であります。ですから、もう一刻も早い解決が望まれている。計画の前倒しなど、見直しをしていただきたい。また、ホームヘルパーさんの増員の問題も積極的に対応していただきたいと思うんですが、いかがですか。
  422. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 先生御案内のように、平成二年度から十一年度までの十カ年計画でゴールドプランというものが実施されておるわけであります。その中で、特別養護老人ホームにつきましては、平成五年度の時点で既に二十万床を超える、こういうことでございますので、どちらかというと比較的、いろいろな中では極めて順調に進んでおるわけでございますので、私はゴールドプランの前倒しよりも、まずゴールドプランをきちんとやっていく、着実に実績を上げる、まずそのことが一番大切なことだと思っております。  それから、御指摘のホームヘルパーでございますけれども、ホームヘルパーを含めて医療や福祉、こういう関係に従事する、こういう人材確保というのは大変実は深刻な問題でございます。そこで、ホームヘルパーにつきましては、昨年一年間で一気に手当を百万円ほど上げまして、三百十八万円まで上げたわけでございます。こういうような待遇の改善を行ってはおるわけでございますけれども、ぜひとも御理解をいただきたいのは、やはり医療であるとか福祉であるとか、そういう関係に従事するとうとさ、こういうものが国民の皆さん方の中に御理解をいただかなければなかなか難しいのではないか、こういうふうに考えております。なお、ホームヘルパーにつきましては、平成十一年度までに十万人達成に向けてとにかく最善の努力をしていきたい、このような決意でございます。
  423. 辻第一

    ○辻(第)委員 何回も繰り返しますけれども、一度計画をつくればその計画に固執をするということではなしに、いろいろ状況が変わるわけでありますから、このように待機者が三万を大きく超えるという状況になりますと、それに本当に対応するというんですか、生きた行政をぜひやっていただきたい。問題は深刻でありますので、重ねて要望いたします。  大蔵大臣にお尋ねをいたします。  先ほど申し上げておったわけでありますが、大臣、少し席を立たれたときにやったんですが、山口県では平成元年に百四十三人だった待機者が平成二年には三百三人になりまして、昨年は十一月一日で四百四十八人の方が特別養護老人ホームで待機しておられるんですね。これはもうなかなかはいれないということなんですね。深刻な問題だと思うんですが、そういう点で、特別養護老人ホームの整備を含む社会福祉施設整備費、これの思い切った増額をやっていただきたい、このように思うんですが、御答弁をいただきたいと思います。
  424. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 私の地元の話を引いていただきまして恐縮に存じました。  私も地元でいろいろと話をしておりますが、先ほど辻さんからお話がありましたように、最近非常に伸びてきたという感じを私も持っているんです、正直言いまして。この辺につきましては、厚生省の方とも十分に御相談をして社会福祉施設の充実を図っていく、特に十カ年戦略等々もございますので、そういったものに沿って私もやっていきたい、こういうふうに思っているところでございます。
  425. 辻第一

    ○辻(第)委員 次に、医療費の問題でお尋ねをしたいと思います。  私は、昨年当委員会で看護婦さんの待遇改善、労働条件の改善、増員の問題でお尋ねをいたしました。そういう中で、本当に医療を守るためにも、医療危機、経営危機を打開をするために診療報酬の大幅な引き上げを要求をしたところでございます。大体八〇年代の十年間に診療報酬は二・六五%しか上がらなかったわけであります。そういう中で物価が約二二%上がった、そして人件費が四〇%上がったという状況の中で、昨年の改正では看護料の引き上げなど評価すべき点もあったわけでありますが、全体として名目は二・五%でした。ところが、病院の、診療所のいろいろな形態の中で、実際は上がらなかった。また薬価基準の引き下げ、建て値制ですね、こういうことも含めて、逆に下がったというところがたくさんあったわけであります。私も地元の医師会へ行きますと、もうこういう話が私の方へすぐ飛んでくるわけであります。  そういう中で、昨年六月の公私病院連盟の病院運営実態調査でも、千百八の病院のうち赤字病院が全体の七三・一%を占めたということであります。特に中小病院の経営というのは深刻であります。倒産もふえているのですね。こういう事態であります。中小病院の地域医療やあるいは救急医療などに果たしている役割というのは非常に大きいと思うわけでありますが、そういう中で深刻な事態を迎えているわけであります。  昨年診療報酬改定後、このような実態を調査されているのかどうか、そうして緊急に診療報酬を引き上げるべきだ、このように考えるのですが、厚生大臣の答弁を求めます。
  426. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 医療機関、特に中小関係の病院が大変厳しくなっておるということは私もいろいろな現場でそういうお話を聞いております。十分に認識をいたしておるわけでございます。その大変苦しくなっております原因というか要因というのがどこにあるのか。先生が御指摘があったような看護婦さんなどを中心とする人件費の高騰なのか。それから、最近は大変どんどんどんどん新しい機械が開発されてきています。こういう大変高度な医療機械を購入することなのか。あるいはまた、今御指摘がありました医薬品の購入状況によるものなのか。この辺のところを近々ひとつ私どもといたしまして実態調査をしたい、こういう考え方に立っておるものでございます。  私どもといたしましては、いずれにいたしましてもきちんとした病院経営者が経営感覚を持って、そしてまじめに一生懸命診療を行っていらっしゃる、治療を行っていらっしゃる、こういう方がいわゆる経営危機にならないようにひとつ対応策は必要だろうと十分に考えておるわけでございますので、御理解を賜りたいと思っております。
  427. 辻第一

    ○辻(第)委員 本当に事態はかつてなく深刻なんですね。ですから、本当に診療報酬の大幅な引き上げを重ねて強く要求をしておきます。  次に、歯科の問題でお尋ねをいたすわけでありますが、現在、高齢化社会を迎えて入れ歯人口は一千万人と言われております。約半分の人が入れ歯の調子が悪い、このように言っておられます。去年の一月にNHKスペシャルがこの問題を取り上げて以来、各地の歯科医師会などでもいろいろ調査をされているわけでありますが、ほぼ同様の調査結果になっております。こうした状況を反映して、診療報酬の技術料、わけても補綴点数の大幅引き上げで、保険でよい入れ歯をという運動が全国で大きく広がっております用地方議会からの意見書決議も既に四百三十一議会を超えているということであります。保険でよい入れ歯は患者と医師、関係者の一致した願いであります。  そういう状況の中で、厚生省は八〇二〇運動というのを進められておるようでありますが、その趣旨を簡単に説明をしていただきたいと思います。
  428. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 八〇二〇運動というのは、八十歳になっても二十本の自分の歯を持ちたい、こういうことでございます。これを目標にいたしまして、地域で実践指導者に対する講習会やあるいは推進協議会の設置などを通じまして国民の間に徐々に定着してきておる、このように考えておるわけでございます。  ちなみに、我が国でいわゆる歯をどのぐらい年代で持っていらっしゃるかということを報告させていただきますると、六十歳代で十四本、八十歳代ですと、私の記憶に間違いなければ四本程度であります。ですから、八〇二〇運動というのは実は大変道は遠いわけでございますけれども、高齢化社会を迎えまして大変平均寿命も延びてきたわけでございますが、やはりおいしく食事を食べられる、こういうようなことで、この八〇二〇運動をさらに推進していく決意でございます。
  429. 辻第一

    ○辻(第)委員 八十歳で自分の歯が二十本ということであります。大変結構な話でありますが、しかし、今の厚生省の歯科行政の実態というのはどうなんでしょうか。昨年のNHKスペシャル以後、衆参両院で各党の議員が歯科問題を取り上げておられます。我が党も昨年四月七日、参議院の厚生委員会で沓脱タケ子議員は義歯製作料を二倍に引き上げるべきだ、このように求めました。また五月二十日の衆議院厚生委員会で児玉健次議員が歯科補綴関係の点数の二倍引き上げを求めたところであります。これらに対しまして厚生省の黒木政府委員は、「私どもとしては、歯科補綴について非常に困難な技術を伴う、手間暇のかかる技術だというのは十分承知をいたしておりますので、その辺は今後検討すべき問題だというのは承知をいたしております。」このように答弁をされた。また当時の山下厚生大臣は、「十分真剣に検討すべき問題ではあります。」このように答弁をされておるわけであります。  私は奈良市内のある歯科医院でいろいろお話を聞いてきたわけでありますが、実際の診療の中から総入れ歯の診療報酬を見てまいりますと、一例は五千八百二十七点、一例は五千四百三十二点でございました。この診療所の一時間の採算ベースは一万四千五百円であるわけであります。日本歯科医師会の資料などによりますと、きちっといい入れ歯をつくるというためには五時間ほど歯科医の先生がかかる、こういうふうにも言われているわけであります。もし五時間ということにいたしますと、タイムコストにいたしますと先ほどの例では一万一千七百円から一万八百円ということになるわけです。こうなりますと、採算ベースの一万四千五百円よりは大幅に少ないということですね。このままでいきますと大変な赤字になるわけであります。そういうことでありますので、こういうことではもう経営が成り立たぬわけでありますから、そこで時間を短くする、あるいは手間暇を省く、こういうこともやられるのですね。それから自費の診療で補う、あるいは人を減らす、そういうことで補う。いろいろなことで経営努力がやられているということであります。  それで、そういう状況でありますが、昨年四月、歯科の診療報酬が二・七%引き上げられたのですが、一九九一年六月の中医協の医療経済実態調査の収支差額が、八九年六月に比べまして三万四千円下がっている、前回比八〇・五%、このように二〇%近くも落ち込んでいるという状況の中で、歯科の経営困難というのは大変な状態ではないかと思うわけでございます。この十年間で保険診療収入は約三%しかふえていない、医業費用は三五%ふえている、こういう状況にあるわけであります。  それで、先ほど申しましたような状況、またもう一例申しますと、入れ歯の装着をしてから後、調整、これが非常に大事な仕事だと思うのですね。私も入れ歯があるわけでありますけれども、何度か調整をしていただかないとぴったりこないということなんですね。殊に総入れ歯なんというのは非常に難しいことで、調整が必要だと思うのですが、十回調整をしてようやく使いよい入れ歯になったという方もあるわけでありまして、どうも平均しますと五回から七回やらないといい状況にならないというふうに聞いておるわけでございます。  ところが、今の診療報酬では、政府は何回調整しても最初の月の百五十点の有床義歯指導料、簡単なのは六十点だそうでありますが、そういうことになっております。それで、この調整ですね、一回に大体十五分から三十分というふうに聞いております。例えば五回調整をして、最初は、一回はその百五十点に含まれる。あとの四回というのは、結局、再診料の二百七十円、二十七点しかつかぬのですね。四回しても千八十円ですか、たしかそういうことですね。ですから、千五百円と千八十円、五回調整してもそれぐらいしかならぬのですね。四回調整しても、一回が十五分といたしますと、それで一時間かかるのですね。先ほど申しましたように、その診療所の一時間当たりの採算点というのは一万四千五百円ということになるわけでありますから、そうなりますと、一時間やっても二千円少ししかならない、二千六百円近くしかならないということですね。これは余りにも技術料の評価がされていないのではないか、こういうふうに考えるわけであります。大臣、この点についてどのようにお考えになりますか。
  430. 古川貞二郎

    ○古川政府委員 歯科の診療報酬につきましては、従来から技術料重視の考え方に立ちまして、診療報酬の改定の都度、義歯に関連する点数を含めまして、技術料の引き上げ等が行われてきたところでございます。ちなみに申し上げますと、義歯の点数で申しますと、昭和六十一年から平成四年までには二七%の引き上げを行っている、こういうふうな実情で、私ども、診療報酬改定の都度、そういったことで努力をしてきたところでございます。  お尋ねの義歯の調整の問題でございますけれども、有床義歯を新たに製作した後に、一カ月以内に義歯の調整を行った場合には、その月におきまして有床義歯指導料、これは先ほど先生お話しの百五十点として評価される取り扱いとなっているわけでございますが、これは、新しく製作されました義歯については、通常、一カ月以内でおおむね二、三回で調整されるものであるといういわば歯科医学の常識といいましょうか、そういう趣旨で設定をされている、こういうようなことでございます。一カ月以上連続して調整を行った場合には、この点に着目した特別の点数設定は行っておらないわけでございますが、御指摘のように、再診時基本診療料に包括して評価される、こういう取り扱いでございます。  なお、一カ月を経過した後におきまして、一たん治療が完了した後に再び患者が義歯に起因する症状を訴えて来院され、必要な指導等が行われた場合には、その指導等から一カ月以内に限りまして有床義歯指導料六十点が一回算定できる、こういう趣旨でございます。  以上のように、私どもとしては、そういった実態を踏まえまして、保険医療において良質な義歯が製作できるような適切な評価が行われているものと考えておりまして、今後とも適切に対応してまいりたい、かように考えております。
  431. 辻第一

    ○辻(第)委員 大臣にお尋ねいたします。  先ほど申しましたように、歯科の技術料というのは非常に低いのですね。入れ歯、殊に総入れ歯なんかをやりますと、それはいわゆる赤字といいましょうか、採算割れになるわけであります。そういう状況の中で、保険ではよい入れ歯ができないという状況もあると思うわけであります。いかにタイムコストが保障されるのか、また安心していわゆる手間暇かけるといいましょうか、本当にいいものをどうつくっていくのかということが極めて大事だと思うのですが、これを阻んでいるのが低い技術料であると思います。当面、義歯作製料など補綴関係の診療報酬を二倍に引き上げていただきたい、こう望むものでありますが、大臣の答弁を求めます。
  432. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 先ほどから辻委員指摘の総入れ歯の点数でございますが、五千百七十点ということであります。これがいかにも低過ぎるというような御指摘があることも十分に私は認識をいたしております。その一方で、いわゆる点数そのものを引き上げるよりは保険の保険外負担を拡大してほしい、こういうような意見も、いわゆる主張もございまして、その辺のところも十分にこれから勘案していかなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、良質な義歯が製作できるようないわゆる技術料重視、これからこういう考え方に立ってこういう問題の解決に取り組んでいきたい、このように考えているような次第でございます。
  433. 辻第一

    ○辻(第)委員 本当に公的保険、保険でよい入れ歯ができるように技術料を引き上げていただきたい、重ねて望むものであります。  次に、歯科技工士の問題でお尋ねをしたいと思います。  歯科技工士さんは今全国で何人おられるのか、また、実際業務についておられるのは何人か、そのうち病院や医院に勤務している人が何人、歯科技工所の方が何人おられるのか、技工所の業態はどのようなのか、その点についてお尋ねをいたします。
  434. 寺松尚

    寺松政府委員 今の先生の御質問にお答えいたしますが、今まで歯科技工士の免許を発行しておるというのは六万七千ぐらいなんでございますけれども、実際就業しているのはどのようなことかというようなお話でございます。これは、歯科技工士の数は二年ごとにとっておりますので、一番新しい数字が平成二年の末でございます。それによりますと、全国で三万二千四百三十三人が就業しておるということになっておりまして、その約半数の一万四千八百六十二人が技工所に働いていらっしゃる、それからまた一万六千八十五人が病院及び診療所に勤務しておる、こういうことでございます。今歯科技工士の数はそのようなわけでございます。
  435. 辻第一

    ○辻(第)委員 厚生大臣にお尋ねをいたしますが、技工士さんというのは、昭和五十七年からですか、いわゆる大臣免許になりましたね、歯科技工士さん。そして今、歯科医療というのは、歯科医の先生と歯科技工士さんや歯科衛生士さんなどとのチーム医療ということだと思いますね。そういう中で、私は、歯科技工士さんというのは極めて重要な役割を担っていただいていると思うのですが、この歯科技工士さんの役割、位置づけ、それからその労働条件や収入はどのような状況になっているのか、大臣の認識を伺いたいと思います。
  436. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 先日、実は歯科技工士につきまして有識者懇談会から私の方に御提言をちょうだいいたしました。その中で、やはり今先生が御指摘のような、経済的な基盤の確立のために幾つか御提言がなされております。例えば委託技工料の問題、これはまさに歯科医師との問題でございますけれども、この委託技工料の明確化であるとか、それから養成所の定員の削減の問題、こういった問題について提言があったわけでございます。  いずれにいたしましても、歯科技工士というのは一人の小規模な方が多いわけでございますし、しかしそういう中において大変歯科技工士の果たす役割は重要でございますので、十分にこれからこういった問題について前向きに対処していきたい、このように考えております。
  437. 辻第一

    ○辻(第)委員 歯科技工士さんの置かれている現状、大変深刻なものがあると思います。  私どもの奈良県の技工士さん、三十五歳の方が奥さんと二人の子供さんを残して自殺をされるというそんな痛ましい出来事もありました。この方はその前日に、とてもやっていけないと友人に電話をされたようであります。補綴の技術料の低さからくる技工料の低さですね。長時間労働、それから低い収入、先行きの不安。そういうことで、技工士としての生きる希望を奪い去った結果だと思うのですが、東京のある技工士さんの試算によりますと、総入れ歯一床の技工料金は、総入れ歯の製作料は一万四千円、その七〇%が支払われているとしても九千八百円、経費は三千五百円かかるわけです。そうなりますと六千三百円ということになります。これで大体三時間から四時間かかるというのですね。そうなりますと、時給に直しますと、大体二千円から千五百円ということになりますね。そういう中で非常に長時間の労働、しかも低い収入ということです。時間で申しますと、一般の労働者が一年間二千五十二時間という数字が出ておるのですが、それに対して平均二千六百三十時間、中には三千時間とかもう甚だしい人には四千時間というようなお話も聞くわけです。平均いたしますと、平均労働時間は一日十・三時間ですね。収入は大体平均の人の七割ぐらいですね。こういう中で八割の方が転職をしたい、このような思いを持っておられるということであります。  読売新聞で兵庫県の方が投書をされた中で、「息子は技工所につとめているが、朝八時半に出勤し帰宅は午前一時半か二時、そのうえ休日出勤もしている。薄給で労働条件が厳しいことから仲間が転職し残業がますますふえており過労死が心配」、このような投書もございました。  私も地元の技工士さんの方何人かとお会いをしてお話を聞いたわけでありますけれども、本当に長時間の労働ですね。もう徹夜というようなこともそれはいろいろな状況の中であるわけでございます。また、ある大阪へお勤めになっていらっしゃる方は、もう毎晩、大阪へ勤めて奈良へ帰ってこられるのですが、終電車になるぐらい仕事をされて、これも三十五歳ぐらいの方ですが、本給が二十五万で残業が七万ぐらい、一カ月三十二万。これは歯科医へ勤められている方ですが、ボーナスが五十万ぐらいということですね。合わせますと四百万ちょっと超えるぐらいですね。本当にもう現在の状況、時短が言われている状況の中でこんなに長時間の仕事をされて、しかも低い収入という状況であります。  そういう中で、技工士学校の入学定員が充足をしないとか卒業しても一年後には半数が転職をされる。十年かからないと本当の一人前の技工士さんにはなれないというふうに聞いているわけでありますが、どんどんと何年かたった若い方で宝石の技工士の方へ転職をされる、こういうお話がたくさんあるんですってね。技工士さん、真剣に、我々の労働条件やあるいは収入の問題も大変だけれども、今の状況で本当に国民の皆さん方に納得していただけるようないい入れ歯ができるのか、もうこれが心配でならないということですね。このような状況になれば、将来もう技工士さんが大きく減って、日本の歯科医療が成り立たないのではないか、こういう御心配もされておりました。  そういう状況を迎えているわけでありますが、そこで、歯科技工士さんの医療専門職としての評価を確立をしていただきたい。また、待遇改善を図る点からも労働、生活条件の改善が図られる点数の改定を行っていただきたい。義歯作製料を二倍に引き上げていただきたいと強く望むものでありますが、大臣の答弁を求めます。
  438. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 歯科技工士につきましては、先ほどから先生も御指摘なさっておりますように、歯科医との関係、長い経緯がございまして、やはり歯科技工士と歯科医師双方を十分に連絡をとって調整をしながら待遇の改善を図っていかなければならない、こういうふうに考えております。  先生が御指摘になりましたような、歯科技工士の方々の待遇が必ずしも十分じゃない、このことは十分に私ども踏まえて今後対処していきたいと思っておりますが、お言葉を返すようでございますが、率直のところ、二倍に一気に引き上げるということは現実的にはちょっと困難かな、こう考えております。
  439. 辻第一

    ○辻(第)委員 本当に保険でいい入れ歯ができるように、殊にその中心的なポイントというのは本当に手間暇かけていいものをつくる、そういうことが保証できる技術料ということであります。大幅に引き上げていただきたいと強く要請をいたします。  それから、去る二月五日に厚生大臣が明らかにされました本年四月一日からの診療報酬の改定は、今切実に求められている深刻な医療経営を健全化し、国民の医療、良質な保険医療を保障するための診療報酬の改定ではなしに、医療法改正でつくった特定機能病院や療養型病院に関する診療報酬の改定にとどまる、その上、特定療養費制度をフルに活用して、紹介なしの患者の差額徴収や、療養型病床群では四人室でも二割まで差額徴収が可能にされるなど、患者負担を拡大するものであります。金のある者が高度先進医療が受けられやすくなる、こういうものであります。  このような政府、厚生省の姿勢は、公的保険医療で国民医療を保障することの責任を放棄するものであると言わざるを得ないと思います。今直ちにやるべきことは、公的医療保険でよい医療を望む多くの国民の声にこたえて、医療担当者が積極的に役割を発揮できるよう、診療報酬の緊急な改善を行うことだと考えるわけでありますが、再度厚生大臣の答弁を求めます。
  440. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 医療法改正に伴います、この四月から実施いたします診療報酬でございますけれども、高齢化社会を迎えまして、これからの病院の類型化のあり方として行ったものでございまして、いずれにいたしましても、国民の皆さん方が安心してこれからも治療、医療を受けられるような環境づくりのために全力を尽くしたいと思っております。
  441. 石川要三

    ○石川委員長代理 この際、木島日出夫君から関連質疑の申し出があります。辻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。木島日出夫君。
  442. 木島日出夫

    ○木島委員 金丸氏に対する五億円献金問題について質問をいたします。  最初に、平和堂グループ代表であった松沢泰生から渡邉廣康への十七億五千万円の裏金について質問をいたします。  平和堂グループ代表松沢泰生に対する特別背任被告事件の冒頭陳述におきまして、検察官は、被告人渡邉は東京佐川急便が平和堂グループに資金づけをしてやった見返りとして、平成元年四月ごろから同二年十二月二十日ごろまでの間、多数回にわたり松沢から裏金として現金合計約六億五千万円をもらっていた旨、同じく平成元年十二月二十一日ごろから同二年十二月二十八日ごろまでの間、合計約十一億円をもらった旨主張をいたしました。二つ合わせますと十七億五千万円であります。  この冒頭陳述で主張された事実を立証するための証拠として、昨年七月二日の公判におきまして、検察側からは、他の関係証拠とともに松沢の検察官供述調書が証拠請求された。そして、これに対しては、被告人松沢側において証拠とするに異議なく同意をされたので、同日証拠として提出を終えていると聞き及んでおりますが、まず法務省にお尋ねいたいたしますが、そのとおり相違ありませんか。
  443. 濱邦久

    ○濱政府委員 委員仰せのとおりでございます。
  444. 木島日出夫

    ○木島委員 それでは、続いて、既に被告人松沢において異議なく証拠として採用された松沢泰生の検察官供述調書には、松沢が渡邉に渡した十七億五千万円は十四回に分けて渡されたという事実、そしてその第一回目は平成元年、一九八九年四月四日、一億円であったという事実、第二回目は平成元年、一九八九年六月七日、一億円であったという事実がそれぞれ記載されていると承知をしておりますが、そのとおり相違ありませんか。
  445. 濱邦久

    ○濱政府委員 そのとおりと承知いたしております。
  446. 木島日出夫

    ○木島委員 次に、昨年九月二十二日、渡邉廣康に対する特別背任被告事件における冒頭陳述におきましては、被告人渡邉は、松沢から裏金として現金合計十七億五千万円を受け取り、その一部を親交あった政治家に係る献金に充てたと述べられております。  まず、この親交あった政治家が単数なのか複数なのか、お聞きしたいと思います。
  447. 濱邦久

    ○濱政府委員 お尋ねの点は、金丸前議員がその該当というふうな報告は聞いておりますけれども、それ以上のことは聞いておりません。
  448. 木島日出夫

    ○木島委員 十七億五千万円の金が松沢から渡邉に還流され、それが渡邉を通じて政治家に渡っていったと冒頭には書かれているわけでありますが、単数か複数か、法務当局は答弁しようとされません。その政治家の中に金丸前代議士が含まれる、これが金丸前代議士を指すものであることはただいまの答弁でも明らかだと思うわけでありますが、次に、昨年十一月三十日の法務省の当委員会に対する中間報告には、このような記述があります。「東京地検は、平和堂ルートの捜査の過程において、渡邉元社長が松沢から、巨額な債務保証等の見返りに多額の裏金を受けている事実を突きとめ、その使途先の捜査により、渡邉元社長から金丸前議員に対して五億円の献金がなされた事実を把握し、」云々云々と記載をされております。  これをあわせ考えますと、渡邉廣康から金丸前代議士に渡った五億円の中には、全部か一部かはともかくとして、松沢から渡邉へ還流された裏金が充てられたというように法務省の中間報告を読み取らざるを得ないわけでありますが、これは法務省がお出しになった中間報告であります。そのような理解でよろしいわけでしょうか。     〔石川委員長代理退席、委員長着席〕
  449. 濱邦久

    ○濱政府委員 そのとおりであると承知いたしております。
  450. 木島日出夫

    ○木島委員 そのとおりであるとお認めになりました。  それでは、検察は、金丸氏に渡ったとされる五億円について、その出どころ、出所について、裏づけとなる証拠、いわゆる専門家の用語では原資という言葉で言われているようでありますが、その原資をしっかり把握していたんでしょうか、質問をいたします。
  451. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  立証に必要な範囲で捜査を遂げていたというふうに聞いております。
  452. 木島日出夫

    ○木島委員 答弁になっておりません。  私の質問は、いわゆるその金の出どころ、裏づけとなる物的証拠を、いわゆる原資と言われるものを把握した上で略式起訴をしたのか、単に生原氏の供述あるいは金丸氏の上申書、こういう当事者らの言い分だけで略式請求がされたのではないか。その点をはっきりと答弁願いたい。  先ほど来、私は松沢から渡邉への金の還流についてお聞きをいたしました。平成元年六月七日、一億円が松沢から渡邉に還流されたということを松沢は供述調書で述べられているということを今法務省お認めになったわけであります。そして、しかも、金丸氏への五億円献金の原資は松沢から渡邉に対する、還流された金が含まれるんだということもお認めになったわけであります。それならその原資はどうなのか。もっとはっきり答弁願いたい。
  453. 濱邦久

    ○濱政府委員 委員も御案内のとおり、この五億円は、既に裁判所において確定された略式命令において、金丸前議員が金丸前議員の政治活動に関する寄附として受領したという事実が確定されているわけでございます。その五億円の原資を確定するに必要な捜査はもちろん遂げておりますし、例えて申しますと、今先ほど委員が御指摘になられましたように、渡邉廣康の供述、あるいは金丸前議員の供述ほかの証拠によって原資を確定したということでございます。
  454. 木島日出夫

    ○木島委員 法務省もお認めになっているように、松沢は検察官に対する供述調書の中で、平成元年六月七日に一億円を渡邉に提供したと述べているわけであります。これは松沢自身、その弁護団も、その供述調書を争わずに証拠として正式に裁判所にもう提出されているわけであります。  ところで、昨年八月二十二日、朝日新聞が最初に暴露したわけでありますが、その新聞報道によりますと、平成元年六月上旬、松沢から謝礼として還流された一億円と、それまでに工面しておいた四億円を合わせて金丸氏に提供することとし、同年、平成元年であります、一九八九年であります、六月上旬、渡邉氏みずから自動車でパレロワイヤルまで運んだと渡邉が供述しているというように新聞が報道したわけであります。言葉は悪いですが、すっぱ抜いたわけであります。その日の朝日新聞の報道によりますと、この点は渡邉元社長も供述をしておるようだし、最高検などにも報告をされている、そのことまで報道されているわけであります。  事実はぴったりと符合するのですね。八九年六月上旬に、七日に一億円が松沢から渡邉に還流された。その一億円とそれまでに集めておいた四億円を合わせて五億円にして、渡邉は金丸氏のパレロワイヤルに運び込んだ。ぴったり合うわけですね。これが事実じゃないのでしょうか。渡邉氏の五億円を運び込んだ日は平成元年の、参議院選挙の年であります、六月上旬とする供述調書が当初存在をしていたのではないですか。法務省にお伺いいたします。
  455. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  まず、委員が前段で御指摘になられました報道、報道の内容について御指摘になられたわけでございますが、その点について御意見を申し上げることは、もちろんいたしかねるわけでございます。  委員も御案内のとおり、渡邉廣康から金丸前議員に五億円が授受された日時につきましては、平成二年一月中旬ごろであるということは、先ほど申し上げた確定した略式命令において確定されている事実でございます。  そのほかの点については、これはお答えをいたしかねるわけでございます。
  456. 木島日出夫

    ○木島委員 いや、もう納得できませんね。答えていただかないと真相が明らかならぬわけであります。  検察は、平成二年一月中旬に渡邉は金丸氏に五億円運び込んだという事実を認定して略式起訴し、これが確定をしているわけです。それは私も承知をしております。それじゃ、その平成二年一月中旬に渡邉が金丸氏に渡したという五億円の出どころについて、松沢から渡邉に還流された金が含まれるというのであれば、それは十四回にわたって還流された資金のうちのどれなんですか。特定してください。
  457. 濱邦久

    ○濱政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、渡邉廣康と金丸前議員との間で平成二年一月中旬に授受された五億円の原資につきましては、ただいま申し上げた確定した略式命令において事実認定が行われたわけでございますけれども、その立証に必要な範囲でもちろん立証が行われ、また裁判所が証拠によってその事実を認定したわけでございます。  委員のお尋ねは、その原資の確定についての証拠関係、あるいは今私が申し上げた以上の事実関係についてのお尋ねかと思うわけでございますけれども、これはもう委員御案内のとおり、今申し上げた略式命令が確定した確定裁判記録の中身に係ることになるわけでございまして、それはここでその内容を申し上げることはいたしかねるわけでございます。
  458. 木島日出夫

    ○木島委員 実は、法務省は、五億円の政治資金規正法違反、量的制限違反事件についてこれはもう確定しているのです。本来なら確定記録はだれでも閲覧できるはずです。こういう、特に政治家と金との関係が大変シビアに論じられているわけでありますから、少なくともその確定記録は全部この衆議院予算委員会に出さなきゃうそですよ。それを隠しておいて、原資があるのかないのか、私が聞いたら全然答えない。証拠は、法務省の今の答弁でも、生原氏の供述調書、昨年の九月五日以来検察庁によって取り調べられた供述調書、彼は一貫して平成二年の総選挙前だと言い続けていました。それが書かれている供述調書と上申書だけですよ。  今私が、松沢からの還流資金がこの五億円の中に入っているじゃないかという質問をいたしました。入っていると言いました。しかし、その特定すらここで答弁できないのでしょう。おかしいじゃないですか。  しかも一方、具体的には平成二年じゃなくて平成元年六月の七日に一億円が渡っておるということを松沢が言っておる。それはもう今ここで法務省認めましたね。そうすると、むしろ渡邉が当初検察官に対して供述していたように、本当の五億円の授受は平成二年なんかじゃなくて、平成元年の六月であったのではないか。そう考えればぴったり証拠が、いわゆる松沢の還流資金との関係でもぴったり合うわけですよ。  どうですか、法務省、その原資についてはっきりと、生原氏と金丸氏の供述なり上申書だけではなくて、松沢の還流資金との関係で原資についてちゃんと確定したのかどうか、はっきり答えてください。
  459. 濱邦久

    ○濱政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、渡邉廣康と金丸前議員との間で授受された五億円の立証、五億円に関する公訴事実の立証に必要な範囲で、その原資ももちろん証拠上確定して裁判所においても略式命令を発した。その略式命令は既に確定していることは、もう改めて申し上げるまでもないところでございます。  今委員のお尋ねは、そこまでおっしゃっておられるのか、先ほどのお尋ねの中にあったわけでございますが、要するに国政調査権に基づいて、この既に確定している金丸前議員に対する事件の訴訟記録それ自体を提出してもいいではないかというようなお尋ねかと思うわけでございますが、この特定の被告事件の審理及び裁判を国政調査の対象とする事態を生じさせる結果となるわけでございまして、司法権の独立を侵害するおそれがあるということでございます。したがいまして、訴訟記録それ自体につきましては、その全部である場合はもとよりのこと、その一部を構成する証拠資料に係る場合でございましても、これを提出することは差し控えるべきものと考えておるわけでございます。  ただ、委員がもう一つそれとあわせてお尋ねの中でおっしゃっておられると思うのですが、確定記録であるからして閲覧できるのではないかというような点も含めてお尋ねかと思うわけでございますが、この当該事件の、特定の事件の確定記録の閲覧につきましては、これは既に閲覧請求が一部前にございまして、保管検察官である東京地検の検察官において、一部閲覧可能なものを除きまして閲覧拒否処分を行ったわけでございまして、その東京地方検察庁の処分につきましては、既に最高裁においてその決定が是認されているというふうに思うわけでございます。そういう意味で、これは公開されていないわけでございますから、その点についてもいまだ公開できないということでございますので、御理解をいただきたいというふうに思います。
  460. 木島日出夫

    ○木島委員 実は、なぜ渡邉が松沢に対して債務保証してやって株取引をさせたのか、その本当の理由が検察官の冒頭陳述、これは渡邉廣康に対する冒頭陳述の中で書かれているのですよ。五十二ページであります。読んでみますよ。   被告人渡邉は、前記のような経緯で、昭和六二年一〇月ごろから、独自に政治家との交際を深めて佐川清に対抗しうるよう自己の後ろ盾にしようなどと考えたため、一層多額の裏資金が必要となっていた。そこで、被告人渡邉は、昭和六三年四月ころ、松澤に株取引をさせて裏金作りをさせようと考え、そのころ、同人に対し、「堀の誠廣とは別に本格的に株の運用をやってみたらどうだ。資金付けは俺の方で見てやるぞ。」 などと言って持ち掛けた。もう明らかです。渡邉は、佐川清と対抗するため、後ろ盾になる政治家と結びつきを深めるために裏金が必要だったんで、松沢に債務保証してやって裏金をバックさせた。  じゃ、聞きます、法務省。先ほどお認めになった平成元年六月七日に松沢から渡邉に還流された一億円の裏金は、渡邉はどう使ったんですか、どう捜査したんですか、答えてください。
  461. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  先ほど委員が御指摘になられました、松沢被告人の公判において取り調べられた供述調書にはその点の記載はございません。
  462. 木島日出夫

    ○木島委員 五億円の献金が平成元年参議院選挙のときだったのか、平成二年総選挙のときだったかについては、今私が指摘したことだけをとってみましても、平成元年の六月ならぴったりとすべて合うのです。平成二年だと全然合わないわけです。そのことは金丸氏が臨床尋問において、平成元年だったか平成二年だったかようわからぬと。私がお会いした安部さんも、上申書を最後につくる、最後の段階でも、最後まで金丸氏は平成元年の参議院選挙のときだったんではないかなと言っていた。そういうことも安部弁護人は言っておるわけです。すべての資料、今まで出てきたすべての資料を全部総括すると、この五億円の授受の時期は平成元年六月にならざるを得ないんですよ。ところが法務省は、平成二年の一月にしたと。しかし、証拠は全然言えない。  まことに私は真相が解明されていないと思うわけでありまして、この面からも生原氏と金丸氏の証人喚問は、再喚問は避けて通れない、ぜひともお願いしたいと思うわけであります。そしてまた検察の捜査が尽くされていないと思うわけであります。  時間の関係で次の質問に移らせていただきます。金丸五億円事件の趣旨、動機、意図の問題であります。  先ほど来法務省の答弁にあるように、略式起訴では、政治活動に関する寄附として金丸氏、生原氏側が受け取ったということで起訴が行われ、確定しているわけでありますが、法務省は、この五億円については何らかの便宜を供与したことに対する謝礼という意味、いわゆるわいろ性があったのかどうなのか、捜査をちゃんとしたんですか。どういう認定をしたんですか。
  463. 濱邦久

    ○濱政府委員 今委員お尋ねの点につきましては、昨年十一月三十日に当委員会で、いわゆる東京佐川急便事件の捜査結果についての中間報告をさせていただきましたが、その中でも触れたとおりでございまして、贈収賄罪をも含めまして犯罪の嫌疑を認めるべき事実は、既に公訴を提起したもの以外には確認されなかったということでございます。
  464. 木島日出夫

    ○木島委員 そのような法務省の中間報告が出されたのが昨年の十一月三十日です。昨年の十一月二十七日に神奈川県の病院で金丸氏に対する臨床尋問が行われているわけです。  そこの臨床尋問において金丸氏は、「東京佐川がどうして先生に十億円政治献金をしようというような申し入れをする関係があったのでしょうか。」という質問に対して重大な証言をしているのですね。「私はそのとき考えました、何でそんな金をくれるんだろうかと。しかし、いろいろ労働条件が何だかんだというようなことで国会で問題になったというような問題もあるし、」また、「私は、えらいあのような負債があるなんということは考えてもおらなかったが、しかし、何かあってこういうことを私のところへ来られたんだというような感じもしますしことか、あるいは「道路調査会の会長をしているころ、何かそんなことで頼んで、一応こういう状況だから、聞けば、なるほどな、理屈は合うなというようなことで相談に乗ってやったか、結果はどうなったか知らぬが、話をしてやったことはあるやに思うんですね。」と。法務省がわいろ性についてもうないというようなことを国会に報告している直前に、金丸氏は臨床尋問でこう答えているのです。これは明らかに五億円の供与が単なる政治献金、政治資金、選挙のための軍資金というものじゃなくて、金丸氏から便宜を受けた謝礼、あるいはこれから何らかの仕事を依頼するための金という、いわゆるわいろ性があることを示しているのではないかと見てとれるわけであります。  どうでしょうか検察庁、贈収賄の嫌疑のある捜査の端緒として、この金丸証言は重大な意味を持っているのではないかと思うわけであります。検察としては重大な関心を持ってこのわいろ性の問題についても捜査をすべきでないかと思うわけでありますが、法務省、これは法務大臣に聞いた方がいいのかもしれません、法務大臣。
  465. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  もちろん、この検察当局において、これは一般論として申し上げるわけでございますが、捜査を行う場合に、国会における御議論あるいは証人喚問の結果等をも十分視野に入れつつ捜査を行うことはもちろん当然のことでございますし、その間に刑罰法令に触れる事実がある場合には、これは適切に対処するものと思うわけでございます。
  466. 木島日出夫

    ○木島委員 金丸氏の臨床尋問に基づく証言というのは、非常に重大な、新たな事実であります。これは捜査の端緒として十分な事実でありますので、こういう観点から再捜査していただきたいと思うわけであります。  最後に、金丸氏に対する五億円の使途の問題についてお伺いいたします。  検察審査会の不起訴不相当の議決にありますように、検察が、生原から総選挙に立候補を予定していた経世会等を中心として大体六十人ぐらいに分配したという供述を得ているのに対して、取り調べを受けた経世会所属立候補者はすべて受領を否認しています。生原は配ったと言っているのに、もらった方はだれも否認している、こんな状況が残っているわけであります。  五億円の配分を受けた政治家がいるとすれば、これは少なくとも会計責任者は収支報告書不記載、虚偽記入の嫌疑は免れない。政治家も関与していれば共犯も免れない。時効もまだ来ておりません。この問題がうやむやのまま事件が終結できないことはもう明らかだと思うのですが、検察は、これはもう徹底して捜査を尽くすべきだと思います。これについては、法務大臣、所見をお述べいただきたい。
  467. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 その点は、しばしば事務当局からもお答えをしておると思います。  不記載の罪の関係と所得税法違反の問題、この二点はまだ捜査をしておるわけでございますので、当然検察当局としては、証拠にかんがみてできるだけの調べはしておると、かように考えております。
  468. 木島日出夫

    ○木島委員 時間が参りましたので、自治大臣をお呼びしておりますので最後に一問だけ質問いたします。  政治資金規正法の適正、厳正な執行は、自治大臣の責務であります。金丸氏に対する五億円の配分先の問題につきましても、また、先ほど来私が質問した十七億五千万円の松沢から渡邉への裏金の政治家への供与の問題につきましても、全く政治家から収支報告書が提出されていないというのは明らかな事実であります。政治資金の透明性について、現行規正法では不十分いうことも事実であります。しかし、その現行法ですらこのように政治家によって全く無視されている、大問題だと思うわけであります。  自治大臣は、所管大臣としてこのような現状についてどう受けとめておられるのか、御所見をお伺いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  469. 村田直昭

    村田国務大臣 お答え申し上げます。  政治資金規正法は、政治活動に関する寄附について種々の制限を設けるとともに、政治家及び政治団体の政治資金の収支の公開を行うことによって政治活動を国民の批判と監視のもとに置こうとするものでございます。  したがって、まず第一には、政治家を初めとして政治に携わる人、一人一人がその責任を自覚し、法律の趣旨を踏まえて適切に対処いただくことが何よりも肝要であると考えます。  都道府県選挙管理委員会及び自治省としては、行政機関として収支報告書を受理し、これを公表する等の責任を負っているものであり、従来からその適切な事務処理に努めているところでございますが、今後とも的確にその職務を果たしてまいりたいと存じます。
  470. 木島日出夫

    ○木島委員 終わります。
  471. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて辻君、木島君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして一般質疑は終了いたしました。  次回は、明二日午前九時より委員会を開会し、経済・政治改革等についての集中審議を行います。  本日は、これにて散会いたします。     午後九時五分散会