○山原
委員 私は検定をこうせい、こうせいということを言っているのではなくて、やはり歴史の事実は
子供たちに教えていくという立場で教科書も見ていく必要があるという点で、その点は時間の関係で
指摘をしておきたいと思いますが、最後に、これは最近起こりました、山形県の新庄市明倫
中学校における一年生の児玉有平君がいじめによって死亡したという痛ましい事件が起こりました。これは詳しいことを申し上げるのは差し控えますけれ
ども、いわゆるいじめの中で一発芸といいますか、芸をさせられるわけですね。それを拒否したために巻いたマットの中に頭から押し込まれて、そして放置されたものですから窒息死をしたわけでございますが、私はこういう事件、あるいは最近愛媛の松山市でも
中学校三年生がいじめを苦にして自殺をしておるという事件も起こっておりまして、場合によってはこれは氷山の一角ではないかという声も出ております。いじめ、不登校、登校拒否、中途退学というのが随分数が多いわけでございます。
学校というところはもともと楽しくてたまらぬところでなければならぬとバーナード・ショーは言っておりますけれ
ども、一国の
総理として、こういう事態は学校
教育の中であってはならないことでございますから、こういう衝撃的な事件を考えましたときに、日本の
教育をどうするかということもまた大きな
課題だというふうにお考えいただきたいと思うのです。
そこで、こういう事件の背景にはいろいろな問題がありますけれ
ども、今偏差値問題というのがあります。私も山形へ行っていろいろお聞きしたわけですが、もちろん山形だけではありません。ここには学力対策
委員会というのが設置されまして、学力競争がだ人たんエスカレートしていくわけですね。そして業者テストが一斉に行われて、そしてそれが
中学校校長会で配付される。そうすると、学校の偏差値、学校の順位、クラスにおける
子供たちの順位、こういうものが出てまいります。
それから、一例でありますけれ
ども、高等学校では高校普通科高校活性事業というのがございまして、Aランクの実績を上げた学校には三百万円、Bランクの学校には百二十万円とかあるいはCランクには二十五万円とかいうふうに、進学上位校から順に助成金が出るというシステムもあるということを聞きまして、聞いてみると、今の情勢はもちろん山形だけではないということを伺ったわけでございます。
また、ある地域では、学力を向上させた先生に十万円の奨励金が出るなどということも聞きまして、これまた教師の優劣を競わせるようなことがあるのではないか、そういうことが本当に人間として育っていく
子供たちに対して目を向けることをだんだんなくしていくということが背景にあるのではなかろうかというふうに思うわけです。競争原理、それから偏差値、そして管理主義ですね。先日も
一つの高等学校に百六個の監視ビデオがついておったということが発表されまして、私は本当に暗然たる思いがするわけでございますけれ
ども、こんなものはアリ地獄みたいなものなんですね。
際限なくこういう事態が続いていくわけでございますから、私は、このアリ地獄から
子供たちを今救うのにはどうすればいいか。
文部省は今度業者テストを廃止するということを出されました。これは
一つの前進だろうと思います。けれ
ども、依然として入試があるわけですから、そうしますと根本解決にはほど遠いものがある。これはNHKな
ども言っておりますが、塾が進路指導を行うことになりはしないか。それから、受験がある限り偏差値は存在する、こういう意見が日本の
教育界から出ているわけです。
そこで私は、時間の関係で一言申し上げたいのですけれ
ども、今高等学校への進学率は九六%近くなっています。
現状では、希望する
子供たちを高等学校へ全員受け入れることは可能ではないかと思うのです。これはやろうとすればできます。
私は、戦後、県の
教育委員をしておりましたときに、学校も焼かれ、あるいはあのような敗戦後の騒々しい状態でありましたが、高等学校全員入学制度を確立をすることができました。さまざまな努力が加えられ、これに対して行政が手をとるならば、これは決して不可能ではない。本当に今の
子供たちを、十五の春は泣かせないという言葉がありますけれ
ども、それを実現しようとするな
らば、競争原理、偏差値
教育、そうではなくて、やはり今ほとんどの
子供たちを高校へ行かすことのできる情勢があるわけですから、希望者に対しては全員入学、これをやることが根本的に問題を解決する道ではなかろうかというふうに思うわけです。
今の
子供たちは、学校差によって、学校へ行くときにも帽子を隠したりあるいは記章を隠したりする、そんなみじめな思いをしなければならないという状態が続いておるわけでございますが、これは何としても解決をしていかなければならない問題でございまして、私は、希望者全員入学制度というもの、これを本当に検討し、それに対して手だてを加えるならばできる、そして
子供たちの今の苦しみを解消することができるのではないかというふうに考えておりまして、新たな気持ちで提起を申し上げたいわけでございますが、これについて
文部大臣並びにこのいじめを契機にして
宮澤総理の御見解を伺っておきたいのであります。