○正森成二君 私は、
日本共産党を代表して、
政府の
財政演説に対し、
総理並びに
関係大臣に
質問をいたします。
財政演説への
質問に先立って、緊迫するカンボジア
情勢について伺います。
ガリ国連事務総長が国連安保理事会に五月十五日付で提出した報告書によれば、
ポル・ポト派が「投票所や有権者を、砲撃と小火器、地雷埋設や手投げ弾で攻撃しようとする強い
兆しがある」、「幾つかの地域では、有権者や
選挙の
実施、監視にあたっている要員に死傷者を出すかもしれない」という厳しい現状
認識を示した上、「激しく反撃することを許可」と明記しています。
これに符合するように、
ポル・ポト派のキュー・サムファン
議長は、十四日ラジオ放送で、「UNTACが不公正な
選挙を強行すれば、再び戦火がもたらされるだろう」、「タケオにベトナムが侵略を続けている」と
演説し、武力対決、しかも自衛隊施設部隊や
日本の
選挙監視要員の集中するタケオもその対象にすることを示唆し、公言しています。
総理、これは新たな一層の武力紛争エスカレートの重大な
情勢変化を示すものです。
政府のこれまでの、パリ協定の枠組みは維持されているという虚構は完全に崩れているのではありませんか。既往にとらわれず、憲法の精神に従って、自衛隊、文民警察官その他の
協力要員をカンボジアから即時撤退させるべきだと思いますが、いかがですか。明確な
答弁を求めます。(
拍手)
次に、
日米首脳会談、G7など、
政府の
経済外交の
姿勢について伺います。
四月中旬の
日米首脳会談における共同記者会見でのクリントン米大統領の一方的な
円高歓迎
発言が引き金になり、一時百十円を切るという急激な
円高となりました。同席した宮澤
総理は一言も反撃せず、
円高容認と受け取られました。その後、
円高は、G7の
合意で一時持ち直したものの、また百十円台を切るという異常な傾向が続いています。
大統領が記者会見で、他国の通貨の上昇をよいことだなどと
発言すること自体、
異例、異常の出来事であります。
日米首脳のみで、しかも外国語である英語で行われたクリントン大統領と
総理、あなたとの会談で、さらなる
円高容認の
合意があったのか。なかったとすれば、なぜあなたは得意の英語を駆使して反論しなかったのか。
民間のモデル試算では、一ドル五円の
円高で
GNPの
実質成長率を〇・二六%引き下げます。二月からの十五円の
円高の
景気に与える
影響は決して軽視できません。
総理の真意と、現下の
円高問題への対処方針についての
見解を求めます。(
拍手)
そもそも、今回の
補正予算の基礎となった新
総合経済対策は、
政府が最良のものと野党や
国民に説明、自負し、一切の修正を拒否して、三月末
予算を通過させてから二週間足らずのうちに作成されました。そのこと自体、対米首脳会談を意識し、自主性を欠いた
異例のものであります。
総理が「史上最犬の
規模」と胸を張って持ち込んだこの新
総合経済対策は、クリントン米大統領に、「最初の一歩」として軽くあしらわれました。
さらに、首脳会談に先立って訪日したクリストファー米国務長官は、八〇年代後半の
日本の姿に戻っていくことが望ましいと、
バブル経済待望の
発言を行っています。これは
我が国経済に対する言語道断の干渉であると言わなければなりません。
民間研究所はもちろん、大蔵省
財政金融研究所
関係の
研究会の報告書すら、
バブル経済について反省し、「米国の協調要請にこたえた低金利政策と
金融緩和が長期化したこと」を真っ先に挙げ、「国内
経済の安定
成長があって初めて国際協調が可能になる」と述べているではありませんか。
また、
貿易不均衡是正の新たな
協議機関の設置について、米側は、個別品目ごとの
輸入目標設定を要求する場としてこの
機関を位置づけ、米側独自の指標として、一方的に
日本の
輸入目標を設定する意向とまで言われています。これは管理
貿易主義そのものであり、しかも、米側の利益を一方的に主張する不当きわまりない要求であります。
今回の首脳会談を通じて、米側の不当な要求に対し、宮澤
総理は専ら対米譲歩の
姿勢を強調するに終始したと言われても仕方がありません。現に
金融界からさえ、「
史上最大の
規模」と自慢する十三兆二千億円もの新
総合経済対策というお土産まで持って訪米しながら、市場開放や
円高など言われほうだいでは、何のための首脳会談だったのか、宮澤外交は失敗などの声が聞こえています。
アメリカの不当な内政干渉的要求に対しては、国益を守って毅然として反撃し、
我が国経済主権を確立するのが一国の
総理として当然ではありませんか。
総理の
見解を求めます。(
拍手)
次に、新
総合経済対策と、今回の
補正予算案について伺います。
景気回復の
兆しなどと言われていますが、明るさが見えるのはリストラクチャリングで人減らしを強行し、増益の
見通しを出しているごく一部の大企業だけです。
民間信用調査
機関の発表では、九二
年度の負債
総額一千万円以上の企業倒産は前年比二二・七%増の一万四千四百四十一件で二年連続一万件を超え、そのうち資本金一千万円以下の
中小企業が四分の三を占めています。負債
総額は七兆円を超え、昨年、一昨年とも史上最高の水準です。注目すべきことは、不動産業者や財テク業者などのバブル型倒産が減少しているのに対し、販売小振など、
不況型倒産が過半数を占めているだけでなく、前年比六三%と急増し、連鎖型倒産も二三%と大幅に増大していることであります。一−三月期の
中小企業景況調査によると、業況判断指数、DIはマイナス三六・穴と、七期連続のマイナスを記録しています。
これらの冷厳な事実は、
政府が昨年来行ってきた大型
公共事業や公定歩合引き下げなどの一連の従来型
不況対策が、一部の大企業や銀行の救済に主眼を置き、
事業者数の九九%、従業員の八割近くを占める
中小企業を含む
我が国経済と
国民全体の利益を考慮していなかったことを明白に示しているではありませんか。
総理の
見解を求めます。
総務庁発表の二月の家計調査報告でも、全世帯の実質
消費支出は前年同月比三・四%減と、三カ月連続マイナスを記録し、百貨店の売上高は実に十三カ月連続マイナス、スーパーの売り上げも低下するなど、
個人消費低迷は深刻です。ところが、今回の
補正予算案は、若干の
政策減税を盛り込んだだけで、肝心の
所得減税を故意に拒否しています。
総理、
所得減税をなぜやらないのか。
所得減税は、
国民購買力の引き上げを
中心とする真の
内需拡大と
国民生活擁護の大本であり、不可欠ではありませんか。
現在、
我が国では、
経済のサービス化が進展し、国内総生産額に占める第三次産業のウエートは、一九六〇年代の四七%から変化し、九〇年代では実に六〇%を超えています。
民間のシンクタンクも、
政府の
公共投資は波及
効果が建設業と製造業に偏り、全産業への
効果が小さいことを指摘しています。他方、
所得減税は、生産誘発
効果が
公共投資と大きな差がない上、その
効果は製造業、サービス業、卸、小売業など全産業に広がり、雇用は
公共投資より増大するとして、
景気対策に
最大限の
効果を発揮させるためには、
所得減税も含め、
経済の構造変化に対応した政策を果断に行うことが必要としています。
今こそ、赤字国債を財源にしない二兆円の
所得減税を
実施し、また
政府・
自民党の公約でもあった
消費税の食料品非課税を緊急に
実施すべきであります。
軍事同盟の一方が解消するなど、世界
情勢の変化に対応して軍事費を削減し、また、大企業の過大な減価償却比率の削減など、内部留保にメスを入れるなら、財源は十分に存在することを我が党は主張するものであります。
総理の明確な
答弁を求めます。(
拍手)
今回、目先を変えた新
社会資本整備として、大学、
研究所などの老朽化施設、医療・社会福祉施設の
整備などの
改善が盛り込まれました。これらは従来から我が党が主張し、また
国民の要求にこたえたものでありますが、切実な要求から見て、まだまだ部分的なものでしかありません。我が党は、公共・公営住宅の大量建設など、
生活基盤整備に比重を置いた
公共事業に抜本的に転換することを主張するものであります。生活関連の
公共投資こそ、
中小企業への
発注率が高く、
景気対策としても
効果的であることは広く指摘されています。
総理の
見解を求めます。
また、官公需
発注に当たっては、
中小企業への国の
発注率を五〇%以上に引き上げること、
中小企業が受注しやすいように分離・分割
発注、一定金額以下は
中小企業に
発注する逆ランク制の導入、
公共事業受注大企業に、契約金額の半分以上は地元下請
中小企業に
優先発注させることなどの
施策を早急に
実施することを求めるものであります。
指摘しなければならないのは、新
社会資本の
整備と称して、公立小中高校への教育用パソコン導入の前倒しなどを国の補助金なしの
地方単独事業で押しつけようとしていることです。結局、これは電機・ハイテク関連大企業のてこ入れ策を
地方自治体の
地方債、借金で行うものではありませんか。それでなくとも、相次ぐ
政府の
景気対策は
地方単独事業の比重を高め、このため
地方自治体は
地方債の増発を強いられ、その
財政は
悪化しているだけでなく、今回の
景気対策でも、
地方自治体の消化能力に疑問が持たれるという論評がふえているではありませんか。
経済対策の財源の大半を、新たな建設国債約二兆二千五百億円の増発、財投からの借金、特に
地方自治体への借金押しつけなどで賄うことは、国債・
地方債依存の借金づけ体質をますます進行させ、将来の
国民にツケを回すものであり、
財政再建はますます遠のくばかりではありませんか。
見解を伺います。(
拍手)
その上、年金再計算と年金
制度一元化に関連し、また
所得減税を行う場合の財源と絡めて、来年にも直間比率の
見直し、すなわち、
消費税の税率アップが
論議されています。海部内閣が公約した食料品等の非課税を行わないだけでなく、逆累進構造で低
所得者に重税を課す
消費税の税率を引き上げるなど、もってのほかであります。この際、
消費税の税率アップを絶対に行わないかどうか、
総理の明確な
答弁を求めます。(
拍手)
最後に、
日本共産党は、
我が国経済主権の確立と
国民本位の
景気対策の
実現のために全力を尽くすとともに、
自民党政府の小
選挙区制法案と、それに続く憲法改悪の企てを打ち砕くため、
国民とともに奮闘する決意を表明し、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣宮澤喜一君
登壇〕