○高木義明君 私は、民社党を代表して、ただいま
提案のありました
環境基本法案、
環境基本法の
施行に伴う
関係法律の
整備等に関する
法律案について、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
産業革命以降の技術革新は、
人類に大きな福祉拡大をもたらしました。しかし、今やそのことによって、
自然環境の自浄作用を超えた、フロンガス等による
オゾン層の
破壊、二酸化炭素などの排出増による
地球の
温暖化、酸性雨、
海洋汚染、
熱帯林の
減少など、
地球規模での
環境破壊が進行しております。
また、この問題は、原因や被害が国境を越えて
地球規模で起こるだけでなく、
世代をも超えて、空間的にも時間的にも非常に広範囲にわたるという特性を持っているため、結果として、今後わずか数十年後には
人類は取り返しのつかない事態に直面する可能性も否定できません。
かけがえのない海と大地、この
地球環境は、現在はもちろん、とわに残さねばならない貴重な財産であります。この
環境を
保全するためには、行政
機関の
責務と
努力に加え、
国民一人一人の自覚と行動を結集し、早急かつ長期的展望に立った
対策をとることが必要であります。
その意味でも、今国会で
提出された
環境基本法案は非常に重要な意味を持つものであり、その
内容いかんによっては、後々の
環境行政に大きな
影響を与えることになります。
この観点から、私がまずお尋ねしたいことは、
環境基本法の持つ意義についてであります。
現在、
我が国においては、
基本法と称される
法律が、農業
基本法、林業
基本法等々十二本ありますが、このような
基本法の一つとして
環境基本法の持つ意義は何とお考えなのか、また、
環境基本法が対象とすべき
環境の範囲についてはどのように考えているのか、総理及び
環境庁長官にあわせてお聞きをいたします。
第二は、
環境基本計画についてであります。
理念的な
環境基本法案を実効あらしめるものとするには、
環境基本法案の中に明記されている
環境基本計画の
内容、定義が非常に重要な意義を持つと思われます。
環境基本法案第十四条に記されている「
環境基本計画」のくだりでは、「
環境の
保全に関する総合的かつ長期的な
施策の大綱」と「
環境の
保全に関する
施策を総合的かつ
計画的に
推進するために必要な事項」について
環境基本計画を定めるといたしております。
しかし、この
内容では
環境保全に効果があるとは到底考えられません。
環境基本計画は、あらゆる政策を総合的かつ一体的に
推進するための実効性あるものであるべきです。そのためにも、
環境基本計画の中に、我が党が主張している、
環境汚染を決定する要因ごとに
環境保全・回復
目標を設定するという
内容を盛り込むことが不可欠であると考えますが、総理及び
環境庁長官の見解を伺いたい。
第三は、
地球環境保全のための国際貢献についてであります。
環境ODAの増額は早急に
実施する必要がありますが、
環境ODAはただ
資金を供与すればよいという性格とは異なります。例えば、会社のオフィスを見ればわかるように、どんなにすばらしいOA機器を導入しても、適正な活用と維持管理がなければその機器はただの粗大ごみとなります。
環境ODAもそれと同様で、幾ら
環境保全のために
資金を投入し、施設
整備等を進めたところで、アフターケアがなければ役に立ちません。ODAにより立派な施設、機械が導入されたが、事後点検ができる技術者がいないためにすぐ役に立たなくなったという話は、笑い話ではありません。現実に数多く指摘されている事例なのであります。
今後、
環境ODAの
実施に当たっては、事前調査と事後評価の
充実とともに、ひもつきでないODA無償援助の拡大、透明性の確保など質的改革を断行すべきであります。総理に
環境ODAのあり方を抜本的に
改善するよう求めます。
また、昨年の
地球サミット首脳
会議への宮澤首相のメッセージの中で、
日本として、一九九二年から
環境分野への
政府間
開発援助総額として五年間で九千億円から一兆円を援助すると述べられております。これらの援助に当たって、
政府はどのような視点で援助を決定するつもりなのか、最重要と考えている援助
内容とは何か、総理の決意をあわせてお聞きしたいと思います。
第四は、
環境庁の省への昇格問題であります。
地球環境保全のため、
我が国は人的・技術的・
資金面での幅広い国際貢献を行うとともに、国内においても従来以上の
環境保全対策を強力に
推進する必要があります。しかし、現在、
環境庁は調整官庁にすぎず、
環境関連の
予算、権限は十七省庁にも分かれております。また、それのみならず、
環境庁が独自の政策を打ち出そうとしても、他省庁との政策調整の場において、他省庁の圧力によって後退せざるを得ないことは日常茶飯事であります。この
環境庁の力が極めて弱いという現実は憂うべきものがございます。
また、
国民にとって国の
環境行政の顔が見えないことも大きな問題であります。
国民がある
環境問題について役所に対し尋ねたい場合、一体どこに問い合わせをすればよいのかすらわからないという現実を御存じでしょうか。総理、あなたが総理という立場で、ある
環境問題について役所に問い合わせをすれば、間髪を問わず回答があるでしょう。しかし、総理という肩書を外し、一
国民として同じ問題を役所に問い合わせれば、役所間をたらい回しにされ、役所の縦割り行政の実態と
環境庁の存在意義について深くお考えになるはずであります。
今後、早急に
環境庁を省へ格上げし、同時に、
環境庁に他省庁の
環境関係の権限を移管、省庁調整
機能の強化、
環境問題に関するデータの一層の集約などを断行すべきであると考えますが、総理の御見解をお聞きしたい。(
拍手)
次に、
環境アセスメント制度についてお聞きします。
日本は南北に長く、歴史的経緯、地理的条件、人口密度なども一定ではなく、当然地域、地域により
環境の状態も異なっております。それにもかかわらず、新たにアセスメント法を
制定し、全国画一的な
環境アセスメントを
実施するということは、現在のアセスメント基準より基準が緩くなる地域もあれば、全く
開発に手がつけられない地域が出てくることも容易に予想されます。例えば、東京圏の
開発と北海道圏の
開発について、全く同じアセスメント基準を適用することが果たして自然保護と
開発の調和に資するでしょうか。
過度な基準のアセスメント法を
制定すれば、高速道路・鉄道の新設、発電所の建設等々、公共投資的
開発さえも不可能になり、地域
経済の衰退はもとより、
日本経済の停滞、ひいては
国民生活水準の低下は避けられないと思います。逆に、緩いものであれば、アセスメントをクリアしたとして
開発の歯どめがなくなり、乱
開発が勃発するのは自明の理であります。
一部の政党、
団体、有識者の方々は、アセスメント法
制定を強く主張されております。しかし、その意図は、
世界的なキーワードとなっている持続可能な
開発を否定してでも極端な自然保護を
実施することにあるのか、それとも、アセスメント法を
制定すれば自然は保護されるのではないかとただ漫然とお考えになっているのか、いずれにしろ、私には理解しかねるところがあります。
また、国の権限をいかに地方に移譲するかが問題となっている現在、新たに国が地方の独自性を縛る
内容の
法律を
制定することはいかがなものでしょう。地域の独自性を尊重し、持続可能な
開発を
推進するためにも、
環境アセスメント制度は全国一律に統一すべきものではありません。地域のことはその地域自身の
住民の手にゆだねるべきであります。
そのためには、我が党が主張するように、
昭和五十九年に閣議決定された「
環境影響評価の
実施について」の
内容を再検討して、
地方公共団体の作成する
環境アセスメント条例のガイドラインとし、それをもとに
地方公共団体が上乗せ条例を
制定するよう、国が行政指導するという方策が最善であると確信をいたします。
この点について、総理並びに
環境庁長官の御
意見をお聞きすると同時に、地方自治の尊重という観点から、自治大臣の見解もあわせてお伺いをいたします。
最後に、
環境保全と
経済的手法についてお聞きします。
環境基本法案第二十一条第二項において、
負荷活動を行う者に対し適正かつ公平な
経済的
負担を課すことにより、そのことがみずから
環境への
負荷の低減に努めることとなり、
環境の
保全上の
支障を防止するための有効性を期待される場合は、その
施策を検討、調査し、必要とあればその
措置を講ずるとの
内容が明記されております。私は、この条文は、将来における
環境税の導入を意図しているのではないかという危惧が頭から離れません。
確かに、一部で論じられているように、
環境税を課すことにより
環境への
負荷の低減を図ることは、机上では可能であります。ただ、それには大きな
経済の停滞が予測されます。
環境庁
地球温暖化経済システム検討会の中間
報告によりますと、
環境税を課税することにより、二酸化炭素排出量を二〇〇〇年までに一九九〇年の水準に戻そうとすれば、石油関係の価格に対し一割強の課税が必要とされております。ガソリンを例にとりますと、一リットル当たり十円から二十円の課税になります。その結果、GNPは十年間で六%ないし七%の
減少になるのであります。果たして、このような
環境税の導入が
国民の合意を得られるのでありましょうか。
現在、一時の勢いはありませんが、国内において、
政府、自民党などから依然として
環境税導入を求める声が聞こえてまいります。しかし、
環境税のあり方、税収使途についての声は聞こえてまいりません。我が党は、
環境保全、国際貢献などいかなる
理由であれ、
国民の意思を無視した安易な増税には断固反対をいたします。
ただ、将来、
環境保全と
費用負担の問題は、避けて通れない
課題となることも事実であります。
環境税がなし崩し的に導入されるのを防ぐためにも、専門家等による
環境税導入の是非、そのあり方、税収の使途について技術的検討を進め、
国民の意思をまとめる必要があると考えております。
この問題について、総理並びに大蔵大臣の御
意見をお聞きいたしまして、私の質問を終わります。(
拍手)
〔内閣総理大臣宮澤喜一君
登壇〕