○渡部一郎君 私は、公明党・
国民会議を代表し、ただいま
議題になりました
平成五年度
政府予算三案に対し、
反対の
討論を行うものであります。(
拍手)
今、
国民が挙げて
政治に求めるものは、金権腐敗
政治の打倒と根絶、深刻な
不況に対する何らかの打開策と
見通しであります。また、クリントン大統領の登場に象徴されるような
世界の新しい枠組みづくりの中で、
日本の適切な
対応であります。残念ながら、本
平成五年度
予算三案及びその審議の過程は、遺憾ながらそのいずれについても明確な答えを出すものではなかったのであります。
まず、佐川問題の
究明は、未曾有の危機にある
日本国民の
政治不信にこたえる絶好のチャンスでありました。少なくとも真相のほぼ全容が明らかになり、各政党の真摯な取り組みが明らかにされて、多年にわたる
政治と企業の癒着を断ち切るために、企業献金の廃止とか献金団体の一本化ぐらいは、本
予算案の成立とともに、
政治改革の柱として成立の
見通しが明らかになっておりましたならば、どんなに
国民は明るい希望を
回復したことでありましょうか。
しかし、佐川問題はスタートの
証人喚問すらごたつき、与党
自民党はこれを積極的に合意せず、審議の前進をしばしば妨害し、真相
究明の扉を閉ざしたことは、歴然とした
国民の常識であります。こうした
自民党の乱暴な
国会対策の
あり方が
国民にどのように受け取られてきたか、答えは既に明らかであります。
不況対策もしない、事件にふたをしようとしているという思いなのか、内閣の支持率は暴落し、ひいては、既成政党ごとごとくに対する支持が低迷し、
政治家個人に対する
不信もまさに極限に達しようとしているのであります。いかに弁明を繰り返しても、
竹下元
総理に対する辞職を求める
国民の声に至っては、
世論調査によっても明らかなように圧倒的多数のレベルに高まってしまったのであります。
さて、肝心な
景気対策について申し上げますならば、残念ながら本
予算の中で実効ある
対策がとられたとは言いがたいのであります。今回の
不況は、これまで
日本列島を襲ったような
景気循環型の
景気後退だけではありません。資産デフレが起こり、バブルを元手にした不動産及び株式に対する投機が今巨大な
規模で清算されようとしているのであります。まさに
複合不況そのものであります。その過剰流動性の処置を誤り、放置して
事態をここまで
深刻化せしめたのは、挙げて
政府の失態であったと言わざるを得ないし、
総理も審議の途中、みずから認められているところではありませんか。
しかも、従来の
政府の
財政政策ならば、民間の企業活動が著しく停滞し自立
回復が困難な場合、
財政が出動して民間
経済の自立
回復を図ってきたわけでありますけれども、
一般会計の
規模が、
平成四年度当初
予算に比べてみまして、わずかに〇・二%増という超緊縮
予算になっているわけであります。これでは、
複合不況の分を考えないといたしましても、単純な
不況対策予算といたしましても適切とは言いがたい。余りにも少ないのであります。
不況時に
財政規模を拡大し、民間
経済をカバーするという
財政本来の役割を放棄したものと言わざるを得ないのであります。
また、
公共事業関係予算につきましても、四年度
補正後の額の
予算よりも五年度は約一兆三千億円も少なくなっているのであります。
景気対策の柱という
公共投資が前年度より減少していては、
景気に
配慮したとは到底見えないのであります。この印象こそがさらに
不況を加速するのであります。
政府の
予算案を見れば見るほど、前途に展望のない
つじつま合わせかなとしか見えない。
日本企業のリーダーたちが、本
予算の骨格を既に知った上で、最近、企業各社とも方針としてほとんど一斉に、ますます緊縮、ますます
雇用調整、ますます首切り、ますます
設備投資の縮小という方向に駆り立てられているのは事実であります。本
予算は、よき印象を与えるのに
失敗したと言わざるを得ないのであります。
もちろん、今回の
不況を乗り切るために、単純な格好のいい秘策などというものはあるわけではないのであります。しかし、少なくとももう少し
公共事業費をふやし、少なくとも不動産や株式投機の後始末に苦悩する層に対しまして、何らかの意味の激変緩和
措置を工夫し、速やかに執行することが必要だったのであります。
特に今回の
不況が一般
国民の台所を直撃し、深刻な消費の低迷を招いていることは、深刻に注目しなければならないのであります。消費の落ち込みは
在庫調整を長引かせ、生産の拡大を妨げているのであります。そういう意味では、今回の
景気回復のかぎは、いかに消費の喚起を図るかということであります。そういう
経済論議は横に置いておくといたしましても、最も打撃の大きかった家庭という消費の窓口に対して、直接的にその重荷を減らすために所得
減税を行う、家庭に消費の活力を与えるということは、緊急的、直接的な要請であると言わざるを得ないのであります。あえて言えば、これはまさに人道的要請と言わざるを得ないのであります。(
拍手)
もし我が党を初め野党が主張した所得
減税が実行されるならば、一家庭当たり十万円のお金が家計に生まれるわけであります。これが実行されたら、
国民に対する衝撃的な希望の春風が訪れることでありましょう。しかし、この案には、赤字
公債を認めるという極めて苦しい決断もまた甘受しなければならないことを示しております。
私たちは、現代に生きる
政治家としてその責務を負わなければならないと考えるものであります。
政府当局が赤字
公債に頼るまいとして手がたく
予算を編成された、それはある意味で理解できます。しかし、
政治と民衆は生き物であります。固定した方針や一方的な思い込みなどで
処理すべきものではない。
国民の台所を直視した
施策こそ大切なのではないでしょうか。(
拍手)
消費の落ち込みは、昨年、過去最高を記録した貿易黒字をさらに増大しました。消費の不振が輸入を激減させ、結果的に貿易黒字を押し上げているからです。そのために、日米摩擦はさらに拡大し、夏のサミットの協議は極めて困難なものになることでありましょう。
日本の前途は危ういのであります。
所得税減税は、与野党の協議機関で今後調整されることになっておりますが、その
効果的な成立を心から希望するものであります。
第三に本
予算案に
反対する
理由は、
宮澤総理の公約である
生活大国実現のための
措置は十分でないからであります。
住宅、下水道、
生活関連道路の
整備、都市再
開発など
生活関連社会資本の
整備は大幅におくれているにもかかわりませず、
事業別、省庁別の
配分比率にはほとんど
変化がございません。
公共投資の中でも、
生活関連重点化枠はわずか五百億円の増額で、総額二千五百億円にすぎません。
社会福祉関係予算については、昨年当初
予算を下回っているのであります。我が党も強く
要求いたしました
エイズ対策費百億円の計上は高く評価するものではございますけれども、高齢者に対する看護、介護、治療などの総合的な支援策は極めて不十分と言わねばなりません。マンパワーに対する画期的な
施策は、まだ今後にゆだねられております。また、年金
財源不足のために、ただいま、今後の年金受給者の間で暗い予想が広がりつつあります。早急な
対策が必要であります。まさに、
生活大国を目指すどころか、課題山積の
予算であると言わなければならないのであります。
反対する第四の
理由は、
冷戦構造の
崩壊、ソ連邦の消滅によって、
軍縮、軍事費の削減が
世界的な潮流になっているにもかかわらず、
防衛費は依然として
増加していることであります。
確かに
中期防衛力整備計画で、全体で五千八百億円も削減された
努力を多とするものではありますけれども、もう一歩進んで、
平成五年度
予算において削減が、せめて据え置きにすべきではなかったかと思います。もちろん、近隣各国との積極的な平和外交を進めることがその前提であることは言うまでもありませんし、極めて困難な交渉であることも十分
承知の上で申し上げているわけであります。防衛
関係予算においては、装備
計画の再検討や陸海空三自衛官定数の削減を含む組織の再編成を進め、自衛隊の合理化、
防衛関係費の大幅削減を行うべきであります。
以上、概括いたしまして、
平成五年度
予算三案に
反対する主な
理由を申し述べ、ここに
討論を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(
拍手)