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内閣総理大臣(
宮澤喜一君)
減税につきましては、たびたび本議場においても申し上げました。先ほどもまた
お答え申し上げましたが、昨年の八月に
総合経済対策をいたしました。また、その延長線上で
平成五年度の
予算の編成をいたしておりまして、財投につきましても一二%余り、
地方単独事業につきましても一二%と相当大きな
公共投資を積み上げておりまして、
平成五年度の
政府投資額は
補正後の四年度よりもなお九・五%増ということで、私どもとしては、
財政支出をいたしますときに、
景気回復の立場からは、
減税よりも
公共投資の方が効率的だろうという判断をいたしてまいりましたことは、以前にも申し上げたとおりでございます。
そこで、今戻し税について
お尋ねがございまして、
昭和五十二年、五十三年にもやったではないかということでございます。確かにそういうことを過去にやっておりますけれども、まあ一応申せることは、やはり戻し税というのは、その年度に関して
税体系をある
意味でゆがめることになるわけでございます。それから、いかなる
規模でありましても翌年はもとに戻るということでございますので、翌年度にはむしろ
増税感がある、一過性の
税負担の軽減であるというような性格を持っております。それから、このごろは、殊にもう給与
所得は御
承知のように銀行振り込みになってまいりましたので、戻し税がございましても、その月の源泉分が控除額が少なくなっているということが銀行の勘定でわかるだけでございまして、これをキャッシュで一人一人源泉
所得者に渡すということは、これはなかなか大変なことになります。そういう問題もあるということを一言申し上げておきたいと思います。
それから、
社会保障給付を一時金についてということは、できるならば、
社会保障給付はときどきの
事情で追加したり減額したりすることは、本来好ましくないのではないかというふうに思います。
それから、
特例公債のことについても
お尋ねがありまして、御
承知のようにかつて
特例公債を発行いたしました後、脱却するのに十五年余りかかりました。国債残高がふえておることは御
承知のとおりでございますが、二十一世紀に入りますと高齢化がかなり急激に進みますので、できるならば大きな
負担を後に残したくない。五年間という今短期の
特例公債ならどうだということですが、短期間に償還するという、その財源をどのように確実に
確保するかということは、湾岸戦争のときのようなことでございますと別でございますけれども、やはり非常に問題がある。そういう点では
通常の赤字公債に変わらないことになるのではないかということを心配をいたします。
それから、住宅ローン
減税についてのお話がございました。これは御
承知のとおり、現在の
制度
がかなり大きな
減税になっておりまして、最高限税額控除で二十五万円でございますから、しかもそれを六年間重ねることができる。二十五万円の税額と申しますと、
勤労所得者で申しますと大体六百五十万円でございましょうか、そのぐらいのサラリーマンの標準世帯の
所得、その税額が二十五万円でございますから、これはかなり大きな現実に行われている今の
制度でございます。この歳入滅はたしか五千数百億、五千六、七百億円といったと思いますが、かなり大きなものでございます、現実にやっておりますのが。したがいまして、これをさらに
拡充するということはどんなものであろうか。住宅は無論取得しない人もたくさんおりますから、そういう点の権衡はどうであろうかとかいう問題を
考えてみる必要があろうかと思います。
それから、教育費控除のことも、これもしばしば御
指摘のあるところですが、今十六歳から二十二歳までですか、の扶養親族について、いわゆる割り増し扶養控除をやっております。これはもとよりその年齢層で親の教育費
負担が多いということを
考えてやっておる、そういう配慮をしておりますことはぜひ御
理解をいただきたいと思います。
それから、入学金の寄附金、これはいわゆる寄附金という、公益のための寄附金とは性格が違うわけでございますが、したがって、寄附金控除の対象とすることはいかがなものであろうかと思います。
それから、
買いかえ
制度でございますが、これは
地価高騰の懸念等々のお話があったわけですが、この際、
土地政策との
整合性も十分に
考えたつもりでございます。また、現実に
譲渡価格一億円以下といたしましたので、大邸宅の譲渡や投機的な譲渡は排除されるものというふうに思います。
それから、法人
課税と個人
課税の問題について、法人の事業の遂行に伴い支出する借入金の
利子は、これは無論経費でございますが、個人の場合におきましても、事業の遂行に必要な経費は、これは当然
所得から控除される。そういう点では、基本的には私は差別をしていないというふうに申し上げてよろしいのではないかと思います。
それから、
マル優非課税の
限度額でございますが、
昭和六十二年の
税制改正をいたしましたときに、例外的に御
老人と
勤労者の
住宅貯蓄、
年金貯蓄の
利子を
非課税にいたしました。これをこの際五十万円
引き上げる、あるいは
財形につきましても
引き上げをするということをいたしましたので、ある
意味で今回特別の配慮をいたしたものというふうに御
理解をいただきたいと思います。
それから、教育型の
財形貯蓄は
財形教育融資
制度がございますので、この利用を皆さんにしていただきたいと思っております。
それから、
納税者番号制度でございをする。それは、
利子配当
所得の
総合課税との関連での
お尋ねであったわけですが、前回の、
昭和六十二、三年の
税制抜本改革をいたしましたときからこの問題は残っておりまして、
税制調査会で長いこと検討をいただいておりました。しかし、昨年の暮れに、納税者番号についてはやはり検討すべき課題が残っている、また、
国民的にこれについてはいろいろ疑問を持っておられる方、あるいはむしろ疑い、何と申しますか、問題があると言われる議論が多い等々から、なお今後議論を深めていく必要があるだろうということから、この際、採用をいたしませんでした。
したがいまして、また他方で、
税制調査会から、この問題と切り離し、あるいは
税制全体のあるべき姿と切り離して、この
利子、株式の
総合課税というのはやはり問題がある、今の分離
課税もそれ相当の
理由があるということから、当面これを維持することが適当だという答申がございましたので、それに従いまして
政府の方針を決定いたしたわけでございます。
それから、小
規模宅地
課税の
特例ですが、
相続税につきましては、
昭和六十三年に
抜本改正をいたしました。それから
平成四年度でも
改正をいたしました。事業用の小
規模宅地
課税の
特例、これも
平成四年度でさらに改めておりまして、中小企業の事業承継の円滑化に資そうという目的でございます。
相続税評価における路線価格は、納税者の申告の便宜及び
課税の公平を図る
観点から、なるべくわかりやすいように
土地の評価額を算定ができるように定めているわけですが、路線価格の評価時点、それは一月一日ですが、その後
地価が下がった、
課税時期、相続開始時期において逆転現象が起こった、そのときにはもちろん路線価格をそのまま適用するということは適当でございませんから、具体的に個別に
課税関係の
あり方を判断いたしまして適切に対応をいたさせておるところでございます。
大変
お尋ねが多うございました。大体
お答えを申し上げたと思いますが、残りの問題は
大蔵大臣から
お答えをいたします。(
拍手)
〔
国務大臣林義郎君
登壇〕