○沖田正人君 私は、
日本社会党・
護憲民主連合を
代表して、ただいま
議題となりました
平成五
年度における
一般会計承継債務等の
償還の
特例等に関する
法律案について、
総理並びに
国務大臣に対して
質問を行いたいと思います。
政府は、
平成五
年度予算編成に当たっては、厳しい
財政状況のもとで、
財源の重点的・
効率的配分を行う一方、赤字
国債を回避するために
歳出構造の徹底した
見直しを行ったと強調されているのであります。しかし、
景気浮揚や生活大国の実現には、これらの
努力を尽くしてもなおお金が足りないから、
政府管掌健康
保険への国庫補助千三百億円の先送りを含め、総額八千三百億円にも上る
債務、
歳出の繰り延べなどにより
財政不足額をひねり出そうとしたのが本
法案の
趣旨であると理解するところでございます。繰り延べ期間の金利が後
年度負担として積み重なることにもあえて目をつぶる、つまり
財政の健全性を
犠牲にする本
法案がそれでも不可欠というならば、重点的・効率的な
財源配分の完遂と
歳出構造の徹底した
見直しによる
節減が
平成五
年度予算においていかに担保されているのか、
政府の
責任で明らかにされる必要があると
考えます。
宮澤総理の御見解と
説明を求めたいと存じます。
私といたしましても、
平成五
年度の
税収については、十年ぶりの前
年度当初
予算比マイナスを見込んでいる
政府予算案と同様の厳しい認識を持つものでありますが、そうであるからこそ、この
法案を
考えるに当たっては、まず、
歳出構造の
見直しによる不要不急部分の縮減が果たして進んでいるかどうか、改めて問わなければなりません。今はやりの言葉を使うなら、
歳出構造のリストラに全力で取り組んだにもかかわらず、必要悪として
生じたものなのか、
政府の姿勢をたださざるを得ないのでございます。
結論から申し上げるならば、防衛
予算一つとってみても、ノーと言わざるを得ないのでございます。
政府は、前
年度比二%の低い伸びに抑えたと胸をお張りになられるおつもりかもしれませんが、東西冷戦の終えんを意味あるものとして、平和の配当を
生活大国づくりに生かすためにも、防衛費
削減元年の
予算編成にちゅうちょすることなく踏み込まなければならなかったのではないでしょうか。また、それが生活大国を最大の政治課題に掲げる宮澤内閣に対する時代の要請でもあったと
考えますが、
総理の選択肢には一切なかったのかどうか、所信をお伺いしたいと思います。
さらに、容認しがたいのが、ポスト冷戦の潮流を確固たるものにするという決意や意欲もなく、冷戦時代の産物であるAWACSやイージス艦の
予算化も既定の方針のごとく盛り込んだことでございます。市民の社会的感覚からすれば、購入
費用に充てられようとしている約二千三百億円は時代錯誤の最たるものであると思いますし、むだ遣い以外の何物でもございません。
財政の健全性を維持し、時代の変化に対応した
予算とするためにも、
承継債務等の繰り延べの前に、AWACSなどの購入費
削減が先行されるべきであったと
考えますが、
宮澤総理の率直な御所見をあわせてお示しいただきたいと存じます。
来
年度予算は、
生活大国づくり初
年度の政策的肉づけの役割を担っており、
国民生活の質的向上に役立つ分野への
効率的配分が期待されております。
政府は、二千五百億円の生活関連重点化枠もほぼ活用して所期の
目的は達成した
予算案であると力説されますが、果たしてそのとおりなのかどうか、疑問は残ります。
一般会計公共事業費の硬直性は、
道路整備や住宅、下水道などの分野別シェアに置き直してみれば一目瞭然であります。
平成四
年度比で見るならば、例えば
道路整備は二八%後半の圧倒的シェアを依然として維持する一方、住宅はわずか〇・一%増の一一・八%、下水道においても〇・二%増の一一・七%と、若干のでこぼこはあるものの、その割合はここ数年来変わっておりません。
省庁別の配分率も、過去三年間とほとんど同
水準でございます。これが大蔵省流であり、生活大国にふさわしい、めり張りのきいた
予算編成なのでありましょうか。これでは、まるで各省庁横並びの公共投資の伸びを確保するために今回の
特例措置が供されたとしても、あながち的外れではないでしょう。出るを制すことができない段階での
債務繰り延べなどによる
財源捻出は、
行政改革の阻害要因となるだけであり、
予算の重点的、効率的な配分に寄与するどころか、反作用に働くと
指摘せざるを得ないのでございます。林
大蔵大臣の御見解をお聞かせいただきたいと存じます。(
拍手)
ここまでは、本
法案の
問題点を傍証的に見てきたところでありますが、本質的な欠陥についても言及しておかなければなりません。
政府は、
一般会計と
資金運用部という国庫内部のやりとりでございますから、
金額面での歯どめもかかっているからと、赤字
国債とは異なるとその違いを強調しているのでございます。しかし、非
投資的経費の支出ないし返済を後
年度に繰り延べるという点では、赤字
国債発行と何ら変わらない
性格を保有していることになるのでございます。したがって、このような
措置を、マスコミを初め、一般的には、隠れ
国債、裏
国債と呼んでいるのでございます。
以上の
性格規定とネーミングに関する
宮澤総理の御所見を詳しくお聞かせいただきたいと思います。
また、
政府部門内部の貸借ややりくりとして処理できることから、経常部門の実質赤字の所在は、赤字
国債とは異なり、隠ぺいされがちであるのであります。論より証拠、百八十二兆円の
国債残高については、あれほど声高に叫ぶ大蔵省が、総額三十七兆円に達するとも言われる隠れ
国債に関しては、別人のごとくに寡黙であるのでございます。承継
債務の繰り延べに
代表される隠れ
国債は、
財政の実態を糊塗するだけでなく、
経済行動の調整に必要な正確な判断をも妨げかねないと
考えるのでありますが、
総理のお
考えをあわせてお伺いしたいところでございます。
次に、
政府管掌健康
保険の国庫補助の
繰り入れ措置に関しまして、四点に絞って
質問をいたします。
その第一点は、
一般会計から
政府管掌健康
保険への国庫補助一千三百億円の繰り延べは、九三
年度の
政府管掌健康
保険の剰余金の範囲内で行われると
説明されておりますが、その見通しは甚だ楽観的に過ぎるのではないでしょうか。
保険料収入の伸びを五%台と高く見積もり、一方においては、医療費の伸びを三%台と低く見積もって剰余金が出ると予測しておられるようでございますが、現下の
経済界の不況のもとで大幅な賃上げがどこまで期待できるのでありましょうか。あまつさえ中小
企業労働者を対象にしている
政府管掌健康
保険の
保険料収入が、
政府の見込みどおりにこれほどに伸びるのでありましょうか。一方、インフルエンザ等の感染症の広がりや二けた台の医療費の伸びを想定し、心配している市区町村が多い
国民健康
保険と比較して、
政府管掌健康
保険の医療費の見積もりは低過ぎるのではないでしょうか。
政府のこのような楽観的な見通しが狂って、収支見込みにそごが生じた場合の
責任をどのようにおとりになるおつもりか、厚生大臣の決意を明らかにしていただきたいと
考えます。
第二点は、政策手法に対する
指摘と疑問についてであります。
政府は、一年前の
健康保険法改正において、国庫
補助率を切り下げると同時に、健康
保険の累積黒字を安定資金として積み立てることによって、
財政運営の
あり方を単
年度から中期の見通しに立った
財政運営に変更させる
措置をとったばかりではありませんか。せっかくの剰余金を繰り延べすれば、中期
財政運営のメリットは失われることになるのでございます。今回の
措置は、再び単
年度財政運営の発想に逆戻りしたものと言わざるを得ないのでございます。何のための中期
財政運営主義への転換だったのかを問題にしなければならないのでございます。政策の一貫性を全く欠いた御都合主義の
財政手法と言われても仕方がないのではないでしょうか。中期
財政運営に支障が生じない、生じさせないとお約束をいただきたいと存じますが、厚生大臣の確たる所信をお聞かせいただきたいと存じます。(
拍手)
第三点は、繰り延べされた国庫補助は、いつ、どのようにして返却されるのかを明確に御
答弁い
ただきたいと存じます。繰り延べされたのは今回が初めてではありません。一九八五
年度から八九
年度までの五カ年間にも毎年繰り延べされ、今回分を合計すると、約六千億円という膨大な
金額が累積されることになるわけであります。
政府は繰り延べの理由として、かつては、
特例公債を
発行するほど国の
財政が苦しいからと言い、そして今回は、
特例公債の
発行を避けるためと言い、首尾一貫しない
説明に終始しているのであります。
特例公債の
発行を避けるためというのであれば、近い将来、
特例公債を
発行する
事態が生じたときには、千三百億円の繰り延べは当然返却されるものと理解いたしますが、いかがでありましょうか。また、一兆三千億円余の厚生年金の繰り延べ分を含めて、返済のための年次計画を作成して、今会期中に
国会に
提出すべきだと
考えますが、
大蔵大臣、その御用意はお持ちでございましょうか、
お尋ねをいたします。
かつては三Kと言われた
政府管掌健康
保険が今日のような黒字に転換をいたしました背景には、給付の切り下げや多様な自己
負担の増大、あるいは
保険料の相次ぐ引き上げなど、より多くの
国民の
皆さんの
犠牲の上に成り立ったものであることは
周知の事実であります。したがって、剰余金が生じたならば、給付の改善や
保険料の
引き下げにこそ、その発生した剰余金を用いるのが本筋ではないでしょうか。同時に、今後急速に高齢化社会が進行していく中で、医療
保険の給付と
負担の将来ビジョンをどのように描いていくかは、
国民にとって大きな関心事であるのであります。改革の出発点は、医療
保険に対する信頼度と安心度を高めることだと
考えます。特に、今後需要が高まることが予想される高齢者介護に対して、医療
保険サービスを充実させることを切実な課題となっていると思います。これらについての
政府の
基本的な施策を、厚生大臣、明らかにしていただけないでしょうか。
九三
年度予算案関連の隠れ
国債の総額は、一兆五千億円強にも上るのでございます。大蔵省がみずから必要な政策と決断すれば、ここまでのことができるのでございますから、
景気浮揚は、公共投資一辺倒ではもはや無理なことは、識者の多くが
指摘するところであるのであります。「暮らし立たずんば国はなし」との大局的な見地から、所得税減税を最優先課題にした
財政出動を考慮すべきときではないでしょうか。赤字
国債回避のみを至上命題として追求するのではなく、
歳出構造の徹底した
見直しや、
財源の重点的、
効率的配分を、所得税減税が可能となる環境整備に向かって総動員させることが、
財政を預かる
政府の大きな
責務であると確信いたします。
宮澤総理の減税実行に向けた決意を
お尋ねをいたしまして、私の
質問の締めくくりにさせていただきます。(
拍手)
〔
内閣総理大臣宮澤喜一君
登壇〕