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清水(湛)
政府委員 まず、
我が国における
社債による資金調達
状況ということ、それから諸
外国との比較においてどうかというような点でございます。
資金調達方法における
社債利用度という点から見ますと、アメリカでは比較的
社債の利用度が高いというふうに言われております。まず第一に
社債で資金を調達する、その次に新株発行というような
株式による資金調達、三番目が金融機関等の借入金というようなことが言われております。これは私
ども、必ずしもそういう面での専門家ではございませんので、いろいろな資料からそういう推測をしているわけでございます。
日本では、借入金が非常に大きくて、これが第一、その次が
社債、最後は
株式というようなことが言われているわけでございます。
最近の
状況、これは
大蔵省等にお伺いした方が適当かと思いますけれ
ども、最近特に
株式市場が低迷をしておるというような
状況が出てまいりましたために、新株発行による資金調達というのはかなり少なくなってきておる、あるいは
株式に結びついた転換
社債の発行も少なくなってきておる、さらには非常に冒険的な要素がある新株引受権付
社債、いわゆるワラント債なんかも発行が非常に少なくなってきておりまして、そのかわり普通
社債というのが非常にふえてきておる。
平成二年、三年、四年というような最近の一、二年の
期間を見ますと、普通
社債の発行比率が非常に大きくなってきておると思うわけでございます。
本来、資金調達の方法としては、私
ども、
商法の
立場から見ますと、新株の発行かあるいは最も基本的な
形態である普通
社債という形によるのが
企業のあるべき姿というふうに実は思うわけでございますけれ
ども、これはいろいろな見方があるかもしれません。そういう
意味では、
商法の予定している制度に現在戻りつつあるのかなというような感じも率直に言ってしないわけではございません。
そこで、そういうところが最近の
状況でございますが、では、そういう
社債の利用
状況を踏まえて発行限度撤廃というものについてどう考えるのか、あるいはそれに対して各
企業はどういうふうな対応をしていくのかという問題になるわけでございます。
この限度規制の撤廃につきましては、これまでしばしば
答弁申し上げておりますように、結局、現在の
商法、これは、実は先進国ではイタリアぐらいで、諸
外国にはこういう制度はございません。
我が国の明治の初期の
商法の制定者がややイタリア法の影響を受けたのではないかというようなことが
指摘されているわけでございますけれ
ども、そういうようなものがまずある。しかも、発行の
段階だけ押さえておいて、発行後の
状況については何もフォローというかチェックをするシステムができ上がっていないという問題。それから、
社債という形では制限がされているけれ
ども、例えば
社債という形ではない
企業の借り入れについては全く制限がないわけでございます。幾らでも借りることができる。全く制限がない。こういう
状況でございまして、なぜこういうような
社債発行規制というものがあるのかというようなことは前々から問題とされておりました。
もちろん、これについては、個別の借り入れについては金融機関等がみずから自分の債権を管理することができるからいいじゃないか、しかし
社債については大衆という問題があるのだというようなことがその支えの理由になっていたわけでございます。
しかしながら、この大衆を
保護するという観点から言うならばまた別な制度を、それにかわり得る制度というものは、これは十分考えられるということが、特に最近のように
資本市場が発達してまいりまして、大量の大衆がそういう
市場を通じて
社債を取得するという
状況を考えますと、むしろそういう
社債市場とか一般の
市場におけるディスクロージャーあるいは格付制度というようなものが、アメリカもそうなんですけれ
ども、非常に重要な
機能を持ってくるということ。
それからもう
一つは、やはり
社債権者というものは非常に数が多うございますから、そういう人たちの
立場に立って専ら
社債権者を
保護するというようなシステムをこの際しっかりした形でつくる必要がある、こういうようなことから、この
社債管理
会社システムというものを強制することによって
社債権者の
保護を図ることができるというふうにまず考えたわけでございます。
そこで、こういうような限度額を撤廃した場合、それぞれの
会社がどういうような行動をとるだろうかということがその次の問題になるわけでございますが、では発行限度額を撤廃すればそれぞれの
企業がどんどん自由に、無制限に
社債を発行することになるのかというと、私
どもは実はそうは考えてないわけでございます。現に、現行の
社債発行枠の枠いっぱい使っている
企業は何十社かございますけれ
ども、その他の大多数の
企業はまだ現行法の枠にもいっていないというような実情がございます。今後、
社債が大いに利用されるということになっていくのかもしれませんけれ
ども、そういう
状況にあるわけでございます。
しかも、今回の
社債発行の管理
会社というのは銀行、信託
会社に限定しておりますので、強制的に
社債管理
会社になるということでありますと、しかも
社債管理
会社としての責任を非常に重く負わされておりますから、不良
企業の
社債発行というようなことが問題になった場合に、恐らく銀行、信託
会社は
社債管理
会社を引き受けないといづことに現実の問題としては当然のことながらなっていくと思うわけでございます。
そういうことを通じまして、実質的には、今までも実はそうだったのでございますけれ
ども、今までも
社債を発行する場合には委託募集を受ける
会社として銀行、信託
会社というものがあり、現実にはすべて、信託
会社は事実上ございませんから、銀行が委託募集機関になっていたわけでございますけれ
ども、そういうことによって恐らく不良な
社債というようなものがどんどん出てぐるということはまず考えられない。銀行のいろいろな厳しい業務規制という面からいきましても、その
段階でかなり厳しく不良
社債はチェックされるのではないか。いわゆる自己責任の原則のもとで、アメリカみたいに非常に危険な
社債をどんどん出すというようなことになるということは、まず恐らく考えられないというふうに私
どもは見ているわけでございます。
この辺は今後の推移を見きわめなければなりませんが、少なくとも今回の
社債発行限度撤廃によって
社債権者が不
利益を受けるとか、従来にも増して不安定な地位になるということはない、むしろ積極的な形でその
保護の強化が図られるというふうに私
どもは考えているわけでございます。