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1993-04-20 第126回国会 衆議院 農林水産委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年四月二十日(火曜日)     午前十時一分開議 出席委員    委員長 平沼 赳夫君    理事 金子徳之介君 理事 萩山 教嚴君    理事 御法川英文君 理事 簗瀬  進君    理事 柳沢 伯夫君 理事 佐々木秀典君    理事 前島 秀行君 理事 宮地 正介君       岩村卯一郎君    内海 英男君       衛藤 晟一君    大原 一三君       久間 章生君    高村 正彦君       鈴木 俊一君    中谷  元君       鳩山由紀夫君    星野 行男君       宮里 松正君    有川 清次君       石橋 大吉君    遠藤  登君       志賀 一夫君    田中 恒利君       野坂 浩賢君    鉢呂 吉雄君       目黒吉之助君    山口 鶴男君       倉田 栄喜君    藤原 房雄君       藤田 スミ君    小平 忠正出席国務大臣        農林水産大臣  田名部匡省出席政府委員        農林水産大臣官        房長      上野 博史君        農林水産省経済        局長      眞鍋 武紀君        農林水産省構造        改善局長    入澤  肇君        農林水産省農蚕        園芸局長    高橋 政行君        農林水産省畜産        局長      赤保谷明正君        食糧庁長官   鶴岡 俊彦君  委員外出席者        科学技術庁原子        力局調査国際協        力課長     白尾 隆行君        科学技術庁原子        力安全局原子力        安全課防災環境        対策室長    折田 義彦君        通商産業省立地        公害局立地指導        課長      橋本 久義君        建設省都市局都        市計画課長   板倉 英則君        自治大臣官房地        域政策室長   伊藤  廉君        農林水産委員会        調査室長    黒木 敏郎君     ————————————— 委員の異動 四月十六日  辞任         補欠選任   小平 忠正君     柳田  稔君 同日  辞任         補欠選任   柳田  稔君     小平 忠正君 同月二十日  辞任         補欠選任   松岡 利勝君     衛藤 晟一君   辻  一彦君     目黒吉之助君 同日  辞任         補欠選任   衛藤 晟一君     松岡 利勝君   目黒吉之助君     辻  一彦君     ————————————— 四月十六日  米等農畜産物関税化に反対し、農業国民食  料を守る食料安全保障国会決議に関する請願  (五十嵐広三紹介)(第一六九六号)  同(五十嵐広三紹介)(第一七四一号)  同(佐々木秀典紹介)(第一七四二号)  同(五十嵐広三紹介)(第一七七〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農業経営基盤強化のための関係法律整備に  関する法律案内閣提出第二四号)  農業機械化促進法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二五号)  特定農山地域における農林業等活性化のだ  めの基盤整備促進に関する法律案内閣提出  第六四号)      ————◇—————
  2. 平沼赳夫

    平沼委員長 これより会議を開きます。  内閣提出農業経営基盤強化のための関係法律整備に関する法律案農業機械化促進法の一部を改正する法律案及び特定農山地域における農林業等活性化のための基盤整備促進に関する法律案の各案を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野坂浩賢君。
  3. 野坂浩賢

    野坂委員 今平沼委員長から提案がありましたように、農業経営基盤強化法案あるいは特定農山地域における活性化基盤整備事業法案、そして農業機械化法案、三案一括して質問せよということでございます。  まず最初に、私は、農業白書がこの間発表されておりますが、これの集約をしてみますと、地域の諸条件を生かした自主的、個性的な農業の展開が重要だ、地域ごと農業生産額農業所得動きなどを分析し、各地域の特色を生かした農業振興を強調しております。これが農業白書集約です。  いわゆる画一的な農業から地域農業への変更をこれから来さなければならないというふうに理解しますが、そのとおりですか、大臣
  4. 田名部匡省

    田名部国務大臣 おっしゃるとおりでありまして、日本の地形はそれぞれに違うということですので、従来のように一つ方向だけを示すということではなくて、むしろ地域の実情に合った検討をしてもらう、それに対して私どもが支援をしていくという考え方であります。
  5. 野坂浩賢

    野坂委員 いわゆる戦後農政の三度目の節目だというふうに理解をしております。一つ農地解放一つ昭和三十六年の基本法、そして今度の新農政方向づけ、これの大きな農業の転換の時期だ、こういうふうに考えておりますので、余り時間を急がないで、じっくりとお互いに討論をして、誤りのない政策というものを与野党一致して樹立をしていかなければならないというふうに考えておりますが、御異議ございませんか。
  6. 田名部匡省

    田名部国務大臣 そのとおり十分議論をいたしたいと思いますが、しかし、事態は刻々と進んでおりまして、余り時間をかけて悪化の方向にさらに進むということのないようにしていかなければならない、このように思っております。
  7. 野坂浩賢

    野坂委員 その点は同感でございますが、農業は、この間農災法の際にも私申し上げたのですが、農村には嫁がない、後継者の不足がある、所得が増大をしない、中山間地を捨てて、故郷を捨てていく、これで日本農業はもつだろうかというのは、岩村さんのこの間の代表質問の中でも明らかにされておる。それは、与野党一致してだれも否定できない、農業は危機的な状態にあるという認識の上に立って、これから本格的に論争しなければならぬ、そういうふうに思います。そのために二十一世紀に向けての新政策方向というものが出てきた。  この中で私が一番わからないのは、基本的なこと、我々の食糧自給率幾らにするか、あるいは環境保全型の農業と言いながら、法律内容を読んでみると、すべて経済的範囲問題等中心になっておる。こういう考えはどう理解したらいいのか。環境保全型農業あるいは自給率の確保、これらの問題は、何%を確保しなければならぬ、それに向かってどう努力しなければならぬ、ただ単に今よりも下げないというような不明確なことでなしに、明確に農業方向というものを示すべきだと私は考えておるのですが、いかがですか。
  8. 田名部匡省

    田名部国務大臣 これにつきましても、しばしばお答え申し上げておるとおりでありますが、五〇%を目標自給率を高めるということでございます。そのためには、何といっても生産性を一層向上させなければなりませんし、あるいは品質でありますとかコスト改善をしていかなければならぬ。  いずれにしても、可能な限り国内農業生産を維持拡大していくという基本的な考え方で進めておるところでありますし、環境保全型農業についても、農業の有する物質循環機能などを生かしながら生産性の向上を図り、また環境への負荷の軽減に配慮した持続的な農業確立というものを目指す、そういうことで新政策においてもお示しいたしておるところでありまして、今後、この方向に沿って努力をしていきたいと考えております。
  9. 野坂浩賢

    野坂委員 今五〇%と言われましたのは、穀物自給率の五〇%ですか、それともカロリーベースですか。
  10. 田名部匡省

    田名部国務大臣 カロリーベースで五〇%ということでございます。
  11. 野坂浩賢

  12. 田名部匡省

    田名部国務大臣 三一%であります。
  13. 野坂浩賢

    野坂委員 穀物自給率ベースは三二%だと。平成三年では二九%だ、それからカロリーベースは三年では四六%ですから、これを五〇%。社会党の案は、穀物自給率は五〇%で努力しよう、そうしなければ日本自給率の達成というものは全体を見てできない、これだけの懸隔があります。  それはおくとしまして、そのような方向を示していただいたわけですが、これは十年先の目標ですか、いかがですか。
  14. 入澤肇

    入澤政府委員 平成元年に出されました食糧需給見通し、これは十年後でございます。
  15. 野坂浩賢

    野坂委員 それでは十年後が三二%と五〇%、どうも了承できかねますが、時間がありませんから進めます。  ガットウルグアイ・ラウンド国民が非常に注目をしております。これは十二月十五日ごろに結論を出さなければならぬではないのか、こういう動きが一点。それから、ダンケル事務局長任期満了に伴ってマルルーニー・カナダ前大統領がなるといううわさもありますが、日本としてはこの動きをどのように受けとめて、何としてもガットウルグアイ・ラウンドは、総理もアメリカに行って、従来通りの方針で臨みたい、こうクリントンさんに言っておりますけれども、それらについての動きは全然ない。例えば、新農政というものは、具体的に輸入で米が入ってくる、そのときの対応だというふうに一般農家は考えていない。そういう考え方は全然ないが、もしガットウルグアイ・ラウンドが後退するというようなことがあれば、農政に対する不信感は一層増大するだろうと思うのです。農家政府を信頼しないようになる、そのことを私は恐れております。したがって、外務大臣は一粒たりともと言っているが、もう既に沖縄の泡盛なんかも入っておるのですから、それらを含めて、我々はもうそれ以上は入れない、ということは、これは突っぱねる、日本政府は通すというふうに確認して、農家皆さんにそのように約束してもいいかということをあなたに聞きたい。
  16. 田名部匡省

    田名部国務大臣 この新政策ウルグアイ・ラウンド関係でありますけれども、貿易問題は別でありまして、ただ、国土条件あるいはこの制約、そういうものを踏まえまして、効率的な農業を展開していかなきゃいかぬということであります。  農業生産を維持しながら国内供給力を確保するため、私どもは、一定の国境措置あるいは国内農業政策が必要だという観点からこの新政策というものを御提案申し上げているわけでありまして、総理クリントン大統領と会談の際に、はっきりと包括関税化は困難であるということを申し上げたというふうにきょうも伺いましたが、いずれにしても、ウルグアイ・ラウンドがどういうことになるか、これはもう私どもは最大の努力をしていく事項でありまして、しかしながら、この現状を見ておりまして、このままで日本農業が推移すると、台風の被害によって米がタイトになっておるという問題はことしありますけれども、だんだんタイトになって不足していく事態、これを私は恐れているわけですね。むしろ、逆に輸入してもらわぬと困るという事態だけは何とか阻止しなきゃいかぬ。  ですから、多少国民の中には、そんなことを言ったって、十—二十、そんなものはできないよと言う人もおります。それは、できないところに何も無理にお願いしているわけではないので、最大限の努力をして、国民の必要な量、政府米にしても他用途利用米にしても、そこのところは無理しでもお願いして努力してもらわぬと、いいものだけはどんどんつくるが、あとはもうつくらぬということではとても体制がもたないし、また、今のような農業政策でどんどん放棄地が出てきまして全体に不足するということになれば、今度は一体どういう問題が起きてくるかということ等いろいろ考えながら、現状、私どもも、農家皆さんの意に沿わぬこともありますけれども、何としても国内で自給する、この体制確立のために努力しているつもりでありまして、どうぞそこのところはよく御理解をいただきたい、こう思います。
  17. 野坂浩賢

    野坂委員 安心しておれということですが、それならば、三二%の穀物自給率の中には米の輸入自由化はないということが前提で三二%ですね。
  18. 田名部匡省

    田名部国務大臣 三一%でありますけれども
  19. 野坂浩賢

    野坂委員 三二と言った。
  20. 田名部匡省

    田名部国務大臣 いや、三一と申し上げましたが……。  そういうことでございます、今お話しのとおり。
  21. 野坂浩賢

    野坂委員 はい、わかりました。  それでは、まず前段の話は終わったので、農業経営改善計画認定制度の導入あるいは特定経営体農地集積あるいは農地保有合理化促進事業農用地利用増進事業あるいは農業経営法人化、こういうことが一つの問題になっておるわけです。大体これら三点に集約できるわけですけれども経営形態ですが、効率的、安定的経営体というのはどういうものですか、具体的に教えてください。
  22. 入澤肇

    入澤政府委員 効率的、安定的経営体というのは、一言で言いますればプロ農家ということでございまして、プロ農家というのは、他産業に比べても遜色のない所得水準を確保する、労働条件におきましても他産業と比べて遜色ない、それから労働時間も他産業並みということでございまして、その他産業遜色ない所得ということでいろいろと考えた結果、生涯所得において均衡し得るというふうなことを考えたわけでございます。
  23. 野坂浩賢

    野坂委員 そうすると、所得労働時間というようなもので他の産業と比較して遜色のないようにする、そうすると生涯賃金が二億五千万なり八百万になるのですね。  あなたからもらった、答弁をいただきました八百万円というのは、私は頭が悪くてわからぬのです。書いてありますが、八百万円の内容は一項から六項まで、文書でいただいたのです。最後は「いずれにせよ、「八百万円」というのは一つ目安であって、今後の経済動向や技術の進歩により大きな幅があるのは当然であるが、」農水大臣はよく言いますね、わからぬようになると経済動向経済動向と言われますけれども。「おおよその将来の稲作経営規模目安として」示したものである。私は、八百万円というのは不都合であると思っておる。ということですが、言うなればこれは、十ヘクタールないし二十ヘクタールを五万戸、五ヘクタールから十ヘクタールの複合経営農家を十万戸、二万のリーダーシップをとる農業法人、簡単に言うと、こういうのを効率的、安定的経営体と言うのですか。
  24. 入澤肇

    入澤政府委員 生涯所得都道府県別に調べてみますと、最高三億二千万から最低二億一千万くらい、都道府県によって差がございます。平均して大体二億から二億五千万の範囲内におさまりますけれども、それを農業のライフサイクル三十年で一年に平均してみますと、大体八百万とか一千万とかいう所得算定できる。これは一つ目標でございまして、先ほど私は自給見通しを十年後と申しましたが、正確には平成十二年の見通してございますが、大体これも生涯所得目標を十年後に置いて、それなりの所得が確保できるように農業構造改善していこうじゃないかということでございます。
  25. 野坂浩賢

    野坂委員 非常にきれいに答弁されますけれども、私はよくわからぬのですが、八百万円というものは十年後じゃないでしょう。現在の価格中心にしてやるのでしょう。例えば労働者賃金というのは、昭和五十一年から今までで二・三倍になっています。米は同じですね。一万六千三百円ですね、今も一万六千円。十八年たっています。ですから、労働者と同じようにやるということになると、今の値段中心にして、農畜産物価格中心にして八百万円というものをはじき出した、こういうことになるのではないですか、そういうことですね。
  26. 入澤肇

    入澤政府委員 インフレ率がどのくらいになるかとかそういうことはちょっと想定できませんので、現在価格算定してということでございます。
  27. 野坂浩賢

    野坂委員 私はよくわかりませんが、現在の率を算定する、それで八百万をはじいてみた。これ以上は下げられないから上げていかなければならぬ。現在時点ですから、十年たったらもっと上がるだろう。  そうしますと、この間、七十五円七十五銭で審議会で示された乳価が出ましたね。そして、自民党の皆さんが頑張っていただいて七十六円七十五銭にした。そして、農水大臣がそれで納得をした、こういう諮問がありましたね。それから枝肉は、赤と黒は変えて三十五円安くしましたね。そうすると、安くすると八百万を、常識で言うとだんだん割ってくるのです。割ってきて、現在のものを基準にするということになると、経済動向は悪くなっておる、しかし賃金は上がっておるのに農畜産物は下がるということになれば、結局八百万円を割るということに理論的にはなるのじゃありませんか。だから、下げてはいけませんよと私は言っておるのです。なぜ下げるのですか。あの人たちがみんな賛成なのですか。
  28. 入澤肇

    入澤政府委員 サラリーマン所得が年々上がっていく、それに匹敵して毎年毎年均衡する所得というのは、私はなかなか難しいと思います。そういう観点から、生涯で比べたら平均的な所得が得られるのではないかというふうなことで生涯所得の概念を考え出したのですけれどもサラリーマン所得が毎年毎年上がってきまして、二億五千万が三億になるとかということがありますれば、それに応じて農業所得目標も上げていかなければいけないのではないかと思いますが、その手段として、例えば経営規模を拡大するとか、あるいは複合経営をするとか、あるいは高付加価値の作物を入れるとか、いろいろな経営努力がなければいかぬと思います。また、そのように農政を持っていかなければならないというふうに考えております。
  29. 野坂浩賢

    野坂委員 入澤さん、あなた構造改善局長だから、構造政策をやることは賛成なのです。だけれども、あなたは構造政策努力しておるけれども価格政策のあれは消えておるのです。これは何もない。農産物価格を決めなければ八百万円や二億五千万円の議論はできぬのですよ。しかも、今度の法律で言っておるでしょう。所得は考えたい、それが八百万円だと。  私は具体的に言いますよ。労働時間は八時間労働ですよ、その他の労働条件はみんな同じよ、うにします。これが魅力ある農業です。これが一つでも脱落したら魅力ある農業とは言えませんとちゃんと書いてあるじゃないですか。だから、魅力ある農業にしてもらうためには、農畜産物価格というものを除外して物事を処理するということはできぬじゃないですか、私はそう思うのです。八時間だけ一生懸命働け、そうしたらちゃんと八百万円を保証します、そういうことならいいですよ。何をつくれ、一生懸命やる、それで八百万円を保証してやるということならいいですが、それは価格を決めてやらなければ、農業所得というものは魅力ある農業にならぬ。だから、価格政策というものをなぜ出さぬのですか。
  30. 田名部匡省

    田名部国務大臣 価格政策があるものもあります。米、肉、乳価、麦価、いろいろあります。それはそのときに合わせてやっておるわけですから、十年先、二十年先どうなるかと言われても、それはわからぬとお答えするしかないのです。ただ、この基準についても、私が企業的感覚と申し上げたのは、その努力を、例えば規模拡大にしてもそのとおり。そういうことによってできるだけ消費者に安全で安定的に供給するというのは、一方では責任があるわけですから、幾ら高くても消費者は喜んで買ってくれるというなら別であります。そういうものもまた中にあるわけですね、国が価格政策に関与しない部分というものは、そのほかにも農産物でたくさんあるわけでありますけれども。  ただ、価格を決めるといっても非常に難しいのは、農家実態がよくわからない。そこで、企業的感覚経営感覚にすぐれたというのは、やはり業ですから、将来、帳簿も何もきちっとしていくという中で実態というのはわかってくるわけですから、それがわかればまた新たな対策というものは打てるわけです。設備投資に金をかけたといっても本当に農業に合うだけのものをかけておるかどうか、何もないものですから、これは企業ではないのですね。そういうことをだんだんやってもらおう。そういう中でどうすればいいかという判断が出た、我々はそれに政策を向けていくということでありまして、その場合でも、大きな規模の人もあれば小さい人もあって、どこを基準にするかというと、これまた大問題なのですね。ですから経営の仕方によって基準というものを設ける方がよりいいのではないか。いい人はもう本当に、あの価格でも喜んでいる人もあれば、どんなに上げてもけしからぬという人もあれば、実態がさまざまでありますから、そういうことも逐次是正をしながらやっていくということが非常に大事でありまして、何といってもやはりこの目標計画、これをきちっとしながらいかないと、何かどこへ行くかわからぬような進め方では、私は目的は達成できないであろうということでございます。
  31. 野坂浩賢

    野坂委員 田名部さんが、目標を設定して計画を立てて実行する、そうすれば必ず三億円程度の生涯賃金は確保できる、まことにはっきりしておりまして結構であります。  ただ、農業実態がつかめない、こうおっしゃったけれども、そこに居並ぶ農林官僚、この人たちは実に優秀なのです。実に優秀で、農林統計局なんというのは世界で一番なのですね。そしてあなたの部下に七つの農政局と、北海道と沖縄にちゃんとある。その人たちは懸命に農家実態をよく調べておる。実態がわからぬなんという、農林大臣がそういうことを言ってはいけませんな。きちんとよく実態をつかんでおる。この上に立って政策計画ができるのです。そういう考え方でこれからは進んでもらいたい。  それで、私は具体的にお聞きします。  そのときそのときの経済動向農畜産物価格は決めるのだ。端的に聞きましょう。昭和五十一年、米は一万六千三百円でした。現在も一万六千三百円です。十八年間同じ値段で推移しておるというのが現状です。農家現状はどうか。先ほど言いましたように嫁はない、後継者はない、魅力はない、山をおりる、田んぼを捨てる、こういう現状を見て、そのときの経済動向から見て、十八年前を振り返ってみて、米価の算定というものは正しいであろうか、私は疑問を持っておるのです。その間に労働賃金は十八年間のうちに二・三倍、物価は六四%、これだけ上がっておるのに、主食である米というのはそういう値段でございますが、まことに結構だと農林大臣はお思いですか。いかがです。
  32. 田名部匡省

    田名部国務大臣 いろいろな条件がありまして、ただ一概に、例えば田植え等機械を使えると思った人はないのですね、三十年前に。それが機械化がどんどん進んでいった。労賃は上がりましたけれども、そこで機械でやるようになってからコストが相当低減した。また、一方においては、機械化がどんどん進むのは結構でありますけれども、小規模機械に見合うだけのものをやっていないところは、やはり非常に問題があったのですね。ですから、その辺をこの算定の際にやるものですから、いろいろでこぼこはあったと思いますけれども、この上がる要素というものはなくてこられた。これは、やはり農家努力だったと思うのです。  それから一方では、相呼応してといいますか、日本経済がどんどん高まってきたということとこれは一緒になってきまして、そういうことで、昔のようにたくさんの人で田植えをするということはなくなった。この余剰労働というものが、今度は一方の繁栄を続ける他産業にどんどん従事するようになった。これが二種兼業というのですね。私は、それはそれで結構だと思うのです。今私どもが目指しているところは、何も農業だけでぴしゃっと八百万ということではなくて、そういうものも含めながらいろいろやる人がおって、それから専門的にやる人たちもそれだけの所得を得られるようにという仕組みをしませんと、なかなか規模は広がらない。働くにしても、もう親だけで十分で、何もせがれまで一緒になってやることはない。あるいはもっと進んで、主人が勤めて、休みの日だけやればいいようになってきた、この時代の変化というものがやはりあったと思うのですね。  それで、価格だけで見るわけではなくて、農家経営としてどうだったかということで価格というものは決まってきた。卵なんかもそうであろうと思うのでありますけれども、やはり合理化をし、生産性を上げる中で価格をずっと維持できたものもあります。ですから、上がればいいというのではなくて、農家経済実態、それそのものをちゃんとしてやらぬと後継者も喜んでやろうとしないし、そういうところがあったのではないか、私はこう思っております。
  33. 野坂浩賢

    野坂委員 農水大臣の御答弁は、農家所得状況、農家収入というものを農業外の収入も農業の収入も全体で見て、その所得の中で考えなければならぬ。我々が今論議しておるのは、農業がどれだけの所得を上げるか。魅力ある農業というのは、農業で専業であってやらなければならぬ。昭和三十六年の農業基本法を見てください。自立経営農家の育成というのが書いてあるじゃないですか。田中角栄さんは言った。だけれども、自立経営農家は、農基法とは反対にだんだん崩れて、今や崩壊しておる、これが現状だ。だから今度の法律が出たのじゃないですか。  あなたは、農家経営全体だと言っておられて、そのときの経済動向だなんておっしゃるけれども、あなたは、農水大臣でないときはベトコンの副隊長ですよ。随分やっておるのじゃないですか、私と一緒のようなことを言って。あなたの議事録を読んでみた。政府をやっつけておるのじゃないですか、こんなことをやれるか、農民を殺す気かと言って。あなた、場所が違うとそんなふうに違ったら困りますな。  だから、今のあなたの、十八年前と言いましたが、農業機械は十分普及してたくさんあるけれども、不足の状態というのが多くなってきた、だから下げなければいかぬという格好になってきた。そのときに、随分あなた奮闘していますよ。そういうことから見て、やはり米というのは問題があるなとお感じになりませんか。当時を思い出してください。あなた随分頑張って、テレビにも出ておるじゃないですか。
  34. 田名部匡省

    田名部国務大臣 農業振興議員の方の幹事長をいたしておりまして、そのときも、どうも朝方になっていろいろな対策をちょっちょっとやるということを何年もやってきました。私たちも反省もしました。こんなことをやっておっては二十一世紀の農家は本当にどうなるのであろう。やはり根本的にやる必要があるということで、当時、前の農林大臣の近藤部会長でありましたけれども、本当に変えようや、こんなことをやっておっては農家のためにならぬということでいろいろ議論しました。何回も、私も、米価のときだけやるのではなくて、前もっていろいろなことをやりながら米価というものを考えようという提案をしたこともあります。  そういうことで、近藤農林大臣がこの新政策というものを、大臣になったときにいろいろとそのときの経緯ということを考えながらやってくれたということがありまして、場当たり約といえば怒られますが、そのときそのときでやるのではなくて、本当に腰を据えてやる。  それで、農家全体の収入ということ、これは本来の姿ではないのです。ないのですけれども、水田面積で三十、四十アールやっておりますと、幾ら価格政策をやっても、それで生活はできません。しかも十アール当たりが四十三時間の程度かかるとすれば、サラリーマンの一カ月ぐらいですね。そうすると、あと十一カ月は何をやるかということになるわけですから、サラリーマンと同じように土日休んでも、一年間働いて一体どうなるのか。そこで多様に、水田もやるが野菜も花もいろいろなものを組み合わせながら何とかやってほしい。しかし、もうどうしても土地がないという人たちは、これはどこかで収入を得なければならぬ。七〇%が二種兼業でありますから、それを否定して農業政策というものはできることでもないので、それはそれとして規模を拡大、放棄地が出てきておるものですから、それを集約して、何とか若い人に意欲的にやってもらう。その辺が元気が出てきませんと必要量の米というものが生産されない、人口形態から見てそういう心配があるものですから、ここで思い切った考え方てやろう、こういうことであります。
  35. 野坂浩賢

    野坂委員 大臣、米の論争は、今までの経緯を考えてみると、やはりたくさん問題があるのですよ。それはあなた自身知っておるけれども、それを肯定するとぐあいが悪いからそう言って頑張っておるわけで、かわいそうに思います、かわいそうに。  それで私は、したがって、今度の米の値段というのは下がることはないだろうと、自民党と一致してこれは決議しておかなければいかぬと思います、生産者米価は下げないようにしなければならぬ。そうしなければ、八百万や二億五千万というのは空に飛びますから。  考えてみると、そこで私は時間がありませんから聞きますけれども、今度は、今おっしゃったように改善計画目標を達成するわけですね、決めるわけです。これは五条にも六条にも書いてありますね。そして、農地の集積をやり、固定資産に対する特別償却の税制の優遇ですね。そして融資をやる、これも十五条に書いてある。こういう認定農家をつくってやらせるということに今度の法律はなっていますね、認定農家を。この三つの条件がある。集落で千五百戸もあって認定農家に手を挙げると、これは認定農家はだれが決めるのですか。
  36. 入澤肇

    入澤政府委員 若干仕組みを御説明申し上げますと、都道府県の基本方針、それから市町村の基本構想、こういうものに照らしまして、各農家農業経営改善計画というものをつくります。それを市町村が認定するということでございます。
  37. 野坂浩賢

    野坂委員 入澤さんは言語明瞭なれども意味不明で、きちんと大きな声して物を言ってくださいよ。  この認定農家は市町村が決めるのですか。
  38. 入澤肇

    入澤政府委員 市町村が認定するわけでございます。
  39. 野坂浩賢

    野坂委員 市町村が認定する、それは町長が認定するのですか、農業委員会が認定するのですか、だれが推薦するのですか、それを教えてください。
  40. 入澤肇

    入澤政府委員 各農家が、これは法律には書いてありませんけれども具体的な指標といたしまして、経営改善計画をつくるときに、この地域でどういう経営をやったら、要するに単に規模の拡大だけでなくて、所得目標とか生産方式の改善だとかあるいは農業経営改善、休日制とか給料制とかそういうものを設けて、労働条件改善とさっき申しましたけれども所得労働時間、労働条件、こういうものを改善に向けてどういうふうに具体的にやったらいいだろうかということを個々の農家が具体的に決めます。決めますが、個々の農家だけではなかなか考えられない、地域ぐるみで考えなければいかぬ場合が多いと思います。  そこで、農協とか農業委員会とか市町村の職員であるとか、それからまた、ところによっては加工販売計画も適切にしなければいけないということであれば、食品の製造メーカーであるとか市場の関係者あるいは中小企業皆さんであるとかいろいろな人の知恵をかりながら経営改善計画をつくっていく。そして、これがこの地域の最適な土地利用計画、最適な経営改善計画であろうなということがわかってきましたら、それは市町村が認定するということでございます。
  41. 野坂浩賢

    野坂委員 ちょっとわかりにくいですが、社会党の案は、消費者も中小企業者もみんな集落で集まって、それを上げて農業委員会が認定をして町村がやる、こういうふうに書いてある。非常にわかりいいわけです。政府の方は非常にわかりにくいですね、何となく手を挙げればいい。手を挙げますと、いいところも悪いところも農家ではありますが、あれは認定農家だ、こう言って差別、選別が生まれてくるのではないかということを非常に心配しておるわけです。  だから、自然発生的に認定農家というものができるのか、手を挙げておれがなる、こういうふうになるものか、どこかで町村長もだれかに諮問しなければ、それはなかなか認定農家にならぬと思う。集積をするといっても、みんな農地を集めますよ、飛び地ではいかぬから、あっちからまとめる。まとめていかなければならぬのに、勝手に手を挙げると出す者が出さぬようになってくる。こういう嫌いが必ず出てくるのです。歩いてみて、私が認定農家とはこういうものだという話をすると、手を挙げるのはなかなかないですね。だから、どういうふうに推薦をして認定農家をつくるのですか。  それから、条件というのは、稲作の場合は十ヘクタールから二十ヘクタールを集約をするのを認定農家と言いますか、認定農家基準もあわせて教えてください。
  42. 入澤肇

    入澤政府委員 まず市町村が認定するわけでございますけれども、市町村の基本構想におきましては、効率的なあるいは安定的な農業経営の指標というものを定めることにしております。  その具体的な内容としましては、五ないし十年後におきまして、地域実態を踏まえながら他産業並み労働時間あるいは生涯所得農業経営規模、生産方式、それから農業従事の態様、これは営農類型別に定めるということにしておりまして、このような指標に合致することが認定の基本的な要件なわけでございます。  どういう規模かといいますと、参考になりますのは、この制度は基本的に自己の経営改善したいという農業者みずからの発意に基づきまして市町村が認定するものでありますが、今回の農業経営改善計画認定制度は、その前身であります現行の農業経営規模拡大計画の拡充強化されたものというふうに法律ではなっておりまして、その農業経営規模拡大計画認定状況を見ますと、平成四年十二月末現在で全国千二百二市町村、三万四百二十三人の認定実績がございます。  具体的に平成三年十二月現在の調査をしてみますと、分類型の平均で、北海道では現況が例えば十七・六ヘクタールありますと、これが目標では二十二・四ヘクタールになりますと、か、あるいは都府県では現況は三・九ヘクタールだけれども目標では五・六ヘクタールになるとか、このように具体的に各地域ごとに、類型ごとに面積を定めていくのでありまして、何ヘクタールなくてはいけないということをまだ統一的に考えているわけじゃございません。地域実態に合わせて考えていくということでございます。
  43. 野坂浩賢

    野坂委員 地域実態に合わせて。局長さん、一応基準を明確にしてだれからもがたがた言われないようにして、そして農業委員会なら農業委員会に諮問をして農業委員会が決めて町村長が認定する、そして知事や農水省が協力をするという格好にしなければなかなかできにくいと思うのですが、私の提案はいかがでしょうか。
  44. 入澤肇

    入澤政府委員 大筋においてそんなに違わないと思うのです。私どもは、通達指導としまして各市町村ごとに経営指導センター、これは予算をとってありますが、そういうものを設けます。これは現在、各市町村ごとに構造政策推進会議というのがございまして、その組織の中に経営指導センターというのを設けます。  この看板は市町村に掲げるか、農協に掲げるかは地域実態に合わせて考えていただくことになりますけれども、メンバーとしましては、先ほど申しましたように農業委員会、農協の営農指導の部局、市町村あるいはその他市場関係者、流通関係者、それから中小企業関係者等々が入りまして、そういうセンターの中で具体的に営農改善の指導をして、つくられた計画につきまして市町村が認定するという仕組みになっております。関係者が工夫を凝らして計画を具体的に実現可能性のあるものにしようということでございます。
  45. 野坂浩賢

    野坂委員 大体わかりました。  それから、十ヘクタールないし二十ヘクタール、五ヘクタールないし十ヘクタール、そして二万グループを中心にこれからの農業体制は進むという考え方ですが、農地を売る場合に合理化法人というのがありますね。合理化法人には国が三分の二で県が三分の一を出す。そこに農地を買ってやる。  問題は、農業幾らでもよくしようとすれば、あなたのお話ではなるべくリーダーをつくらなければいかぬ、法人化をやる場合、農業法人をつくる場合は、よきリーダーがなければその法人は失敗する、こういうことですね。その合理化法人は、買って売れない場合は、こちらの人で私は農業をやりたいという人があるとそこで実習をさせるわけですね。その給料は農協が見る、できた果実は農協が売っていく、こういうことになっておるわけですか。
  46. 入澤肇

    入澤政府委員 今回、農地保有合理化事業というのを抜本拡充いたしまして、その一つとして、今御指摘のとおり農地保有合理化法人、通俗的に言えば農業公社が農地を買って持っている、その持っている、中間保有している農地を利用して新規参入者等に研修の場として提供するということでございます。  そのときのやり方としていろいろな事例がございます。農協の職員になってもらって農協が給料を払いながら研修しているケースもございますし、市町村の職員になって、臨時雇いか何かになって給料をもらいながら研修しているケースもございますし、それからまた自己資金をきちんと持って、就職しないで研修にいそしんでいるという方もございます。一律に農協の職員にして研修するということではございません。
  47. 野坂浩賢

    野坂委員 大体わかりました。  そうすると、いわゆる農業のリーダーをつくっていかなければいけませんね。そこで、いろいろな形があって勉強をしてもらう。そうすると、そのリーダーをつくるための合理化法人、いわゆる公社に指導者がおられなければならぬですね。これには指導者がおるようなことは書いていないですね。指導者は何人おるのですか。どういう格好で指導するわけですか。
  48. 入澤肇

    入澤政府委員 農業公社に指導者を置くというのはなかなか、いる場合もありますしいない場合もあります。やはり農業経営改善のためにはリーダーの養成が必要不可欠であることは、もう言うまでもありません。そのためにいろいろな試みがあるわけですね。  例えば、鳥取県でもやっていますけれども、鳥取県の構造政策推進会議では、ここが各地域の識者を集めて、専業的な農家を集めて、そしてその人たちが実質的にはリーダーの役割を果たして、これから新規参入するあるいは規模を拡大したい、経営を大きくしたいという人に対して指導しているケースもありますれば、二十一世紀村づくり塾というのがございますけれども、その支部が各地にございますが、そういうところにリーダーを登録して、その人たちの指導を受けながらやっている場合もあります。それからまた、大学の教授で非常に意欲的な方々がおりますが、その方々が各地域にあって塾長になりまして、そこに農家の方を集めて具体的に営農指導をやっているケースもございます。  そういういろいろな形を利用しながらリーダーを養成していくことが必要ではないかというふうに私は考えております。
  49. 野坂浩賢

    野坂委員 そうすると、篤農家、専業農家の優秀な方々を委嘱して、そしてそれを指導する、そしてよきリーダーに育てる、こういうことになりますか。
  50. 入澤肇

    入澤政府委員 それも重要なファクターだと思います。
  51. 野坂浩賢

    野坂委員 そうすると、この法律ではないのですが、省令か政令で書いてもらってきちんとしてもらう。給料は幾ら出しますか。
  52. 入澤肇

    入澤政府委員 政省令で書くようなマターではございませんので、県体的には次官通達あるいは局長通達で指導していきたいと思っていますが、その人たちの、給料というわけにはいきませんけれども、自分の職業をなげうって他に奉仕的に仕事をするということであれば、活動費助成等は、現在あるいろいろな予算を使いながらやっていきたいと思っております。
  53. 野坂浩賢

    野坂委員 何で私は給料のことを言うかというと、農業委員会も八年間一緒なんです。この間の共済の、あのときの職員の給与も五百四十一億で八年間一緒なんです。大体農林大臣は同じことをやるのが好きなんですよ。米でももう十八年間一緒だ、給与もちっとも上がらぬで一緒だ、農業委員会もみんな一緒だ、こういうことではだめなんです。  だから我々は、仕事をたくさんさせるのなら、本当にリーダーをつくるのなら、投資は消費的経費じゃないのですから、投資的経費として思い切った措置をとってもらう、こういうことにしてもらわなければならぬと思いますが、入澤さんは剛腕ですから、いいですか、それで。いいですね。ちょっと答えてください。
  54. 入澤肇

    入澤政府委員 可能な限りの工夫をいたしまして、リーダーの養成を図っていきたいと考えております。
  55. 野坂浩賢

    野坂委員 それはいい答弁ですよ。  それでは、農水省の動きというのは、十ヘクタールから二十ヘクタール、五ヘクタールから十ヘクタールの複合農家、これの十五万戸はなかなか容易じゃないなと推察できますね。中心は、農業法人をつくってやろうじゃないか、そうすれば、いわゆる部落ぐるみ、集落ぐるみの農業ができていく、こういうふうに感得ができますね。そのときには有限会社も入っていきますね、合資会社も入っていきますね、合名会社も入っていく。とすると、その農業法人は株式会社を何で入れぬのですか。株式会社だけは拒否してありますね。その理由。
  56. 入澤肇

    入澤政府委員 まず農業生産法人、これは農地法上農地を取得して農業を営むことができるということでございまして、その形態として、御指摘のとおり農協法に基づきまして農事組合法人がございます。それから、農地法に基づきまして有限会社、合資会社、合名会社が定められておりまして、この四つの法人形態、これが農業生産法人として農地を取得して農業経営ができることになっておりまして、株式会社は排除されております。  いろいろな意見がございます。しかし、株式会社の農地取得につきましては、現に農地以外でいろいろな現象が見られます。その資本調達力をフルに発揮いたしまして、農地を投機的にあるいは資産保有目的で取得するケースとか、あるいは農地の取得をした後、株式の譲渡によりまして株主構成が変化して、経営方針が変わって農業上の効率的な利用が行われないケースがあるとか、あるいは特に土地利用型農業では、単位面積当たりの土地収益性が低いということから、投下資本の回収を図るためにキャピタルゲインをねらった投機的な取引に向かうおそれがある、こういうふうなことが指摘されておりまして、新政策を出すに当たりまして、いろいろな学識経験者にも議論していただきました。農政審議会でも議論いただきましたけれども、株式会社が農地を取得して農業に参入するということについてはこういう種々の問題があるということから、新政策では「株式会社一般に農地取得を認めることは投機及び資産保有目的での農地取得を行うおそれがあることから適当ではない」というふうにはっきりと書かれまして、今国会に提出しているこの改正案でも、株式会社を新しく農業生産法人に加えるということはしなかったわけでございます。
  57. 野坂浩賢

    野坂委員 簡単に言うと、株式会社というのはバブル経済の発端者だ、だから価するかわからぬ、有限会社、合資会社はかわいいところがある、だからこの辺でという意味だろうなというふうに理解できます。  それなれば、農家は農地を現物出資しますね、そして有限会社をつくる。有限会社をつくっていくと、農業はおもしろくない、なかなかうまくいかない、どうも農水の政策も弱い、自民党農政もいよいよ末期か、こういう格好になってきて、だんだんだめになってくる。そして、解散をするともうだめになるから、そのときの財産の分け方どうなりますか。残ったのは土地ばかりだ、何にもない。その場合は有限会社は土地を分けてもらえますか。
  58. 入澤肇

    入澤政府委員 農業生産法人が解散しまして、その構成員に農地を処分するというふうなケースを考えますと、これも一般の農地の権利移動と同じように農地法三条の規定が働きまして、農業委員会または都道府県知事の許可が必要になります。この許可要件、非常に厳しくて、農地法の耕作者主義に基づき定められておりまして、すべて農地を耕作しなければいけない、それから必要な農作業に常時従事しなければいけない、あるいは効率的に利用しなければいけない、そのほかにもあるんですけれども、主としてこの三つのハードルをくぐらないと、クリアしないと農地が取得できないことになっております。  したがいまして、農地を取得しようとする者が法人の場合には、先ほど申しましたように農業生産法人に限られているわけでございまして、解散をした場合、例えば株式会社あるいは有限会社が新しく出資者となってやる場合におきましても、残余財産の分配によって、今申しましたように農地法の厳しい制約がございますから農地を取得することはできません。したがって、農地以外の金銭等の財産で清算をしなければいけないということになります。
  59. 野坂浩賢

    野坂委員 よくわからぬですが、今までは農業委員会で一件ごとに許可しておったですね。今度は楽して、楽してというか緩和されて一括やることになったのですね。  これについて、農業委員会の問題と地方自治体の問題、こういう中山間地の、例えば今例をとると、自治省も仲間に入っていますね。二月段階で自治省からクレームがつきましたね。これは農林省が押し切ってそういうことになったんですか。自治省はこれらの関係はどのようにお考えになっておるのですか。
  60. 入澤肇

    入澤政府委員 ちょっと御質問の趣旨がよくわからないのでございますけれども、今度の経営基盤強化法、それから中山間地域の振興法、この議論の過程におきまして、各省庁ともいろいろな話し合いをして調整したことは事実でございますが、現にある農地法、現にある農業委員会等の法律、これを無視した条文を入れるわけにいきません。これは当たり前な方針でございまして、私どもはそういう前提に立って各省と折衝したわけでございまして、農地の移動につきましては農業委員会の決定を経る、あるいは農業会議の意見を聴取するという手続をきちんと法律の中に書き込んだわけでございます。
  61. 野坂浩賢

    野坂委員 そうすると、我々が一番心配しておるのは、株式会社はやめたからもう企業参入はない、だから、言うなれば、企業農業への道を開くということではなしに、家族農業の拡大強化を図るというふうに理解すればいいのですか、今度の法律は。どうです。
  62. 入澤肇

    入澤政府委員 農業経営の担い手につきまして、何がふさわしいかというのはいろいろな意見があるところでございますけれども、いろいろな歴史の趨勢、あるいは世界各国の状況を見ますと、今先生御指摘のとおり、家族農業が基本であるということは、アメリカでもそのように言っていますし、ヨーロッパ各国でもそのように言っておりまして、それはまず事実だと思います。  今回の農業生産法人の緩和というのは、農地法の耕作者主義の延長線上で、農業生産法人にどの程度経営マインドを持って企業的な農業経営がやれるかということを念頭に置きまして、構成員あるいは事業要件の緩和について検討したのでございますけれども、あくまでも農協法の農事組合法人の制度とのバランス、農地法の耕作者主義の前提というものがございますので、家族農業ということを念頭に置きながら、それに補完する意味での生産組織の育成ということを考えまして、農業生産法人の要件の緩和ということを考えたわけでございます。
  63. 野坂浩賢

    野坂委員 そうしますと、今までの相続の場合は非常に軽減されておりました、特典があった。農業法人になったらそれは消えるのですか。
  64. 入澤肇

    入澤政府委員 相続税法について今回特に改正したことはございません。よく御質問の趣旨が私も理解できないのですが、農地を例えば農業生産法人に貸し付ける、生前一括贈与をやったり、あるいは相続を税の納税猶予措置を受けている人が農業生産法人に貸し付けた場合のことを……(野坂委員「いや、出資する場合、現物出資」と呼ぶ)現物出資した場合でも、現行の相続税法を改正したわけではございませんから、現在のメリットがそのまま享受できるということでございます。
  65. 野坂浩賢

    野坂委員 じゃ、変わることはないのですね。減免してもらえると、農業法人の出資の場合でも、そういうふうに理解しますよ。
  66. 入澤肇

    入澤政府委員 法律の改正をやっておりませんから、変わることはございません。
  67. 野坂浩賢

    野坂委員 それでは、中山間地域の問題でお話をさせていただきますけれども、ことしは、学卒者は千七百人就農しました。それから、三十五歳以下でリターンして、Uターンして農業をする人たちが二千三百人、合わせて四千人しかいない。そうすると、なかなか容易ではないな。特に中山間地帯は、全農耕面積の四二%を占めておるわけですけれども、なかなか容易ではない。ここで、中山間地帯を再生し、発展させ、強力なものにするためには高収入で高付加価値農畜産物をつくれと書いてあるのですね。私よくわからぬのですが、高収益で高付加価値農産物というのは、具体的にどういうことですか。
  68. 入澤肇

    入澤政府委員 高収益、高付加価値というのは、何としても中山間地域の農業活性化させたいという気持ちから申し上げているのですけれども、御承知のように、中山間地域の立地条件の特徴に合わせまして作物を選択しなければいけません。例えば、平たんな農地が少ない、一般に農業経営規模が小さい、こういう条件がございますので、単位面積当たりの付加価値の高い作物を導入するということ、あるいは地域ぐるみで複合経営をする、あるいは農家個々にも複合経営を図っていくということで、全体として、作物の組み合わせをして農家所得を上げていくことが必要であると思います。  いろいろな各地の優良事例とかを見てみますと、かなり積極的にやっているところはそれなりの所得が上がっております。例えば中山間地域でございますから、標高は三百メーターとか五百メーターとかそれ以上のところでございますから、冷涼な気象条件を生かしまして新しい作物を導入した。例えばクレソンを栽培するとか新テッポウユリを導入するとか、あるいは清流とか夏季冷涼な気候、あるいは標高差もありますし昼夜の温度差もございますから、こういう気象とか立地条件を利用して作物を選択して入れていく。例えばナスなどの夏秋野菜、ミニトマトの栽培とか高品質高価値のインゲンマメの栽培とか、水稲と花あるいは野菜等の他作物を組み合わせて複合経営を展開するとかいうこともあります。それから、生産物の加工をやって、漬物とか煮物、特産ウドの漬物、自生フキの煮物、こういうものをつくって、あわせて農業所得を確保するというふうなことになっていまして、これは一つの例でございますけれども、各地域で創意工夫をして、その農産物需給見通しということも、その地域の流通実態というものも十分考え合わせた上で作物を選択していただくことになると思います。
  69. 野坂浩賢

    野坂委員 半分わかりました。ただ、高付加価値で高収益な作物というのは、抽象的には非常によくわかるのです。今例を挙げてくだすったですけれども、先ほど農水大臣が言われたように、やはり農水省の官僚というのは優秀だと私は思うのですよ、あなたを初めです。  そこで、何があるかというと、あなた方は全国画一な農業政策はもうだめなんだと言ったのです。これから地域の特殊性を生かして農業の繁栄をやろう、こういうことになったのですよ。そのために二十一世紀の新農政が出てきた。北海道と沖縄は特別に開発庁がありますね。あなたのところは農政局が七つありますね。この七つの農政局を活用して、局に二つぐらいの特殊なところをつくって、そして高付加価値で高収入なものを実験して、こういうものがあるがどうだ、農家皆さんこれをやったらどうか、改良普及員の制度等も適用してそれを積極的にやるというのが国の指導体制だと思いますよ。もう国がやることない、各農家が考えなさい、考えたら、メニューがたくさんありますからこれで補助をしてあげますよ、これも一つの方法でしょう。しかし、権威ある農水省としては、農政局をフル動員してそういうものをつくりながら、こういうことをやった方がこの地域ではいいじゃないかということを具体的に教えてやらなければ、農業というものは振興しないではないか、そう私は思いますが、いかがですか。
  70. 入澤肇

    入澤政府委員 私も全くそのとおりだと思います。いろいろな方法を検討いたしますけれども、この法案を通していただきまして、定着をさせ、普及させなくちゃいけません。  その定着、普及の一つの手段といたしまして、今先生御指摘のとおり、各都道府県ごとにモデル的な地区を選定してそこに農務指導する、あるいはパイロット的な地区を選定して事業を行うというふうなことも必要になってくるかと思います。真剣に検討していきたいと思います。
  71. 野坂浩賢

    野坂委員 そういうことを取り上げて具体的にやってもらうということになるわけです。  ここに一緒に、中山間地帯では五省庁が共同提案されていますね。そこで、通産省おられますか。通産省は、この中山間地帯の法律を見て、どこをどのように協力していただけますか。それから建設省も、どのように御協力を賜りますか。今や中山間地帯は国土全体の六八%、そして農地の四二%、これだけあるわけですから、この中山間地帯を放てきするということになると、日本農業日本の国土にも重大な影響がありますので、積極的な支援をいただかなきゃならぬ。そのために具体的にどうしますかということを、たくさんおいでになりますから、この際、国民にわかるように教えてもらいたい。
  72. 橋本久義

    ○橋本説明員 通産省の橋本でございます。  本法案につきましては、特定農山地域活性化のために、特に農林業を核として、他の産業を含むその他の、地域で展開されるにふさわしい事業の活性化を図ることを目的としたことであります。通産省としても、産業適正配置の観点から、均衡ある国土発展形成に大いに寄与するものというふうに認識いたしております。  こうした観点から、産業立地を所管する主務官庁の一つといたしまして、市町村計画等を定めるに際しまして適切な助言、指導を講じるとともに、関係行政機関と連絡をとりながら、特定農山地域への産業の円滑な導入を図るべく、私どもも十分な努力をしてまいりたい、そんなふうに考えております。
  73. 板倉英則

    ○板倉説明員 先ほど以来御議論になっております中山間地域の問題でございますが、若年層の流出とか高齢化の進行等によりまして、地域社会の活力が非常に低下しているということでございまして、これらの地域活性化が大変重要な課題であるということでございますので、農林業その他の事業の振興に加えまして、居住環境整備を初めとする定住条件の確保あるいは都市計画等土地利用につきまして、今後とも適切な対応が必要であると私どもは認識しているところでございます。  建設省といたしましては、今回の法案にございます農林業等活性化基盤整備計画の達成のために、道路、下水道等の公共施設整備を推進する立場と、適正な土地利用を推進する立場から、一つには、基盤整備計画に基づきまして、産業の振興を図るために必要な道路、下水道その他の公共施設の整備、二つには、農林業等活性化基盤施設に係ります所有権移転等促進計画と連動いたしました開発許可の特例制度の創設等の具体の施策を講ずることにいたしておりまして、今後とも、関係省庁との緊密な連携のもと、本法案の対象となります特定農山地域整備の問題と真剣に取り組んでまいる所存でございます。
  74. 野坂浩賢

    野坂委員 通産省からお答えをいただいたのですが、農村工業導入法というのがありますね。世の中の進展に伴って、土曜と日曜は休みになる、自分のうちから通って農業をやっていく、こういう形態にだんだんしていかなきゃならぬ。遠くまで出ない。そうしなければ農村や中山間というのは守れない。その場合は、通産省及び中小企業庁というのは積極的にこれを応援し、この誘致についても努力する、補助金も出すということを中山間地帯の皆さんは期待しておるのですが、そのとおりかということが一つ。  それから建設省は、これから下水道や道路をつける、これは公共事業で中山間地帯までやってもらわなきゃならぬ。それは、単県でやれ、単町でやれ、しかし、そっちには金がないのですから、だから、公共事業でやるということだけを確認しておいてもらいたいと思いますが、それでよろしいか。
  75. 橋本久義

    ○橋本説明員 農村地域工業等導入促進法に基づきまして、私どもの方で、農林省と共同でありますが、農村地域工業導入促進に係る融資制度というものを持っておりまして、そういうものを活用する。あるいは産業再配置促進補助金というのがございまして、農村地域における施設に対しまして補助金を出すような仕組みを持っております。その制度の枠組みの中で十分に援助してまいりたい、そんなふうに考えております。
  76. 板倉英則

    ○板倉説明員 先ほどお答えしたわけでございますが、この地域の定住基盤の整備促進のためには所管事業を有機的に展開する必要があるわけでございますけれども、本法案に関連いたします農林業等活性化基盤整備計画にのっているものももちろんございますが、私どもといたしましては、この地域の定住基盤整備のために、所管事業を関係各局とよく連携をとりながら重点的に実施するという方向で対処してまいりたいと思います。
  77. 野坂浩賢

    野坂委員 農村地帯にも、通産省なり建設省が積極的に協力し努力していただくということについては非常に感謝しますが、言うだけではなしに本気でやってもらわなければならぬ、そう思っております。  そこで、最後ですが、皆さんは、十ヘクタールから二十ヘクタールの戸数をいわゆる家族農業として十万戸、それから五ヘクタールから十ヘクタールの複合経営農家を十万戸、そして二万の生産法人をつくって日本食糧自給率は大体七五%、他は今までどおりでやっていく。そうすると、重点はこちらに向いて、今言った方に向いて、五反歩とか七反歩とか三反歩とかいうのはもう土地持ち労働者として農家扱いしない、農政の枠外にはみ出てくるという可能性がないか、非常に心配しております。ただ、これらを捨て去ると日本食糧自給に重大な影響をもたらすではないかということを心配するからです。それについての御答弁をいただきたい。
  78. 入澤肇

    入澤政府委員 農業産業として自己主張できるようにするためには何としてもプロ農家、要するに、新政策では効率的かつ安定的な経営体と言っていますけれども、そういう農家の育成が必要であることは言うまでもないだろうと思います。  しかし、十とか二十とかいう目標を立ててそれに向かって進むといっても、地域実態を無視して進むわけにいかない。むしろ今大事なことは、一極集中を排除して何とかして地域コミュニティーを維持しながら農村を活性化していくということが、また一つの重要な課題でございますから、各地域の実情に合わせましていろいろな工夫、努力がなされておるわけでございます。  例えば、あるところでは、特定の農家に、後継者のいる農家に、水田につきましては全面的に経営委託をいたしまして、そこが機械も効率的に使用して生産性を上げ、地域全体としての稲作生産に取り組む。しかし、残った農家はそれぞれ自留地を持って、その他の作物、野菜とか付加価値の高い花とか何かを栽培して一定の所得を確保する。さらに、お年をとってもう農業労働に従事できないという農家は、土地持ちの非農家として、経営規模を拡大する人や生産法人に農地を出してもらいまして、そして地代収入を得て、年金とともに所得を得て生活する。  それで、それぞれがその村々でいろいろな役割がございます。水回りをやったり、あるいは田植えの前にはあぜ道の整備をしたり、草を取ったり、いろいろな役割分担がございますから、老壮青、それからまた専業的な農家、兼業農家、土地持ち非農家それぞれが役割分担を決めてやっていただくということでございまして、十とか二十ヘクタールを目標とするからそれ以外の農家は対象にしないのだとか、あるいは無視するのだということではございません。
  79. 野坂浩賢

    野坂委員 大体わかりました。  この間の農水大臣のいわゆる本会議における演説、所信表明といいますか提案理由、ここに辻君もおりますけれども、うちからもやった。そのときに岩村さん、彼が代表質問に立った。そのときにデカップリングはだめです、いろいろ検討したがだめです、こう言いました。  しかし、中山間地帯で、大臣入澤さんも、幾ら働いても生産性の拡大はなかなか難しいのです。この間テレビにも出ましたね、どこかのところが平地農業をやったら十アール当たり三十三時間、中山間地帯でやったら百三時間、だから生産性は物すごく違う、とてもこれではやっていけない、これが農業実態ですということを全国に放送しました。あれを見て、私も確かにそのとおりだ、何とかしなければならぬ。だから、直接であろうとなかろうと、これからの基盤整備事業は、平地においては、もっと拡大する場合は農協もついに自己負担を軽減しなければならぬという格好で、公共事業を国費でやってくれぬかということに踏み切ったのですね。ましてや中山間地帯では利子に追われて、これをやらぬとしょうがないというところまで来ておるのです。  だから、私は中山間地帯の基盤整備というものは国費でやってもらいたいということと、デカップリングは本格的になじまないとか、日本になじむとかなじまないとかではなしに、直接補償できる、そういうことをやってもらいたい。もしできないなら、提案ですけれども、水利組合は公費で持つ、土地改良費の負担金は公費で持つ、その程度だったら間接的にデカップリングということになりますから、自分が直接もらうわけじゃないですから、そういう措置をしたらどうか、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  80. 上野博史

    ○上野(博)政府委員 構造改善局長の方から補足をお願いするところもあるかもしれませんが、デカップリングの関係についてお答えを申し上げたいと思います。  先般の本会議での御議論のお話を今委員から御紹介ございましたが、ああいう考え方がいわば私どもの基本的な考え方でございまして、先生の言われるとおり、中山間地域の条件の悪いところで農業をやっておられる方々が非常に御苦労が多い。そこで、営農を続けるということのためにいろいろの工夫が必要じゃないかということについては、そういう事情は我々としても十分に認識をしているうもりでございますけれども、そういう対策としてデカップリングがどうかということについてでございますが、こういうことにつきましては、やはりそれぞれの経営の状況が非常に違うというようなこともあるわけでございまして、ある程度一律的に扱っていかなければならないデカップリングというような対応で十分なことができるのかどうか、そういうことが農家の方々の営農の継続の意欲にどの程度の貢献をするのかということについては、これは金額の問題ももちろんあるだろうと思うのでございますが、問題があるのではないかというふうに思っております。  それからまた、地域活性化ということを目的としたデカップリングというふうに考えてまいりますと、農業以外にもその地域でいろいろな就業の形態で働いておられる方がおるわけでございまして、そういう方々とのバランスの問題というのも出てまいるわけでございます。そういう意味で、デカップリングの扱いというものは難しい問題があるのではないか。  それからまた、今度は国の資金でございますから納税者の側の問題があるわけでございまして、そういう地域農業を営んでおられる方々に支援をするということについて国民理解が得られるのかどうかという点も考慮をしなければならない。  それからまた、財政的に言いますとかなりばらまきの予算になるというような問題もあるわけでございまして、デカップリングについてはいろいろ研究しなければならないところがあるというふうに考えているわけでございます。  それに対しまして、先ほど委員御指摘ございましたように、各種の土地改良、基盤整備事業をやるというようなことについて、その地域条件を考慮した採択条件なり、あるいは負担の軽減というようなことを考えた上での助成のあり方ということについては、今でもいろいろ工夫をいたしているということでございます。
  81. 野坂浩賢

    野坂委員 確かに国民の税金ですから、デカップリングに使用するものについては国民理解を得なければならない。しかし、日本の均衡ある国土の発展ということは宮澤内閣の統一した意見ですよね。偏ってはいかぬ、だから一極集中はいかぬ、地方拠点都市をつくらなければいかぬ、こう言ってだんだんやる。きょうの新聞では、準百万都市の建設の問題で、準のものをつくっていく、三十万都市で。そういうものも考えられておる。だんだん広げていかなければ全体の国土の繁栄として成り立たない。  だから、農業も平地と中山間地では違うわけですから、それは所得がなかなか増大できない、こういうことになれば、国民理解を得て、例えば、今は農業者のリーダーはいないのですよ、後継者も不足しておるのです、嫁もありません、そこを守っていかなければ、環境保全型農業というのはそういうことじゃないですか。環境保全型の農業をやって、そしてそこで生活をしてもらい、定住してもらって日本の国土を守っていくということは重要な任務だと私は思うのです。そういうことを考えながら、農業のリーダーとして今あなた方は苦労されておると思うのですよ。我々も一緒になって苦労しなければいかぬ。  だから、そういうところには、例えば農薬を使わない人たちには一反当たり二万円出すとか、いろいろなデカップリングの方式はあるだろうと思うのですよ。そういうことを前向きに検討してほしい、前向きに検討すべきだ、こういうふうに思いますが、大臣はいかがですか。簡単に答えてください。
  82. 田名部匡省

    田名部国務大臣 簡単にですか。なかなか簡単にと言われると、だめでございます、こう言わざるを得ないので、そこで申し上げると長くなるわけでありますが、もう都市政策の問題までいってしまうのですね、これを申し上げると。  ですから、ECと日本とを比較してみて、御案内のようにロンドンにしてもパリにしても高層の建物というのはございません。彼らは都市に人を集めないために、キャパシティーというものは一体どのくらいかということからああいう政策をとったわけです。そこで人が集まると、例えば東京のように下水に金はかかる、高速道路はつくらなければいかぬ、大変な状態になった、この違いはやはりあったと思うのです。  ですから、そういうことでECでは都市に集中させないために、農村にとどまってもらうということでこのデカップリングというものをやったわけですね。ですから、それでも、その金額はどのぐらいかというと三ヘクタール以上、こういう条件があります。日本で、中山間地で三ヘクタールを持っている人がおるかというと、いないのですね。その条件を満たした人には、年間十四万ぐらいですか、そうすると月に一万ちょっとですよ。そんなもので日本後継者が残ってやるかという問題が出てきます。さりとて、月に十四万円ずつ、これを出すということになったら膨大な金になるわけです。  ということがあって、別な方法でこれを進めていかなければいかぬという考えに立ちまして、私もきのう委員の地元、あれは東伯町ですか、いや立派な農業をやっていますよ。私は、あれこそこれからの日本農業の見本だと思って、実は感心して帰ってまいりました。そのためには、農協も力が強くて、何百人、五百人ぐらい持っているのですか、そして加工から販売まで全部やっておる、そこで農家が働く。自分の農業をやりながら、牛の世話を時々行ってえさをやったりしてお金をもらう。実は理想を見てきたような気がいたしまして、これこそこれからの中山間地帯の農業だな。やはりリーダーですよ。立派なリーダーがいるところは、本当に金がかかっても、援助しながら、全体で農協が安定しておればそういうこともできるんだなということを感じてまいりました。  私どももいろいろ考えておりますけれども、今官房長答弁したように、一方には税の形で負担する人もおりまして、できるものとできないものがありますから、そういう中で何とか定着して元気よくやってもらいたいということで、この法案の中でいろいろやってみました。  一つには、さっき私が言ったように、やはり農家がきちっと経理でも何でもやったものを見せてもらって、ここまでは我々全力を尽くして頑張った、しかしそこから先ほどうにもならぬがというような仕組みというのができていきませんと、一体どうなるか。  私の親戚の例をいつも申し上げて恐縮ですけれども、昔は馬と一緒になってうちの中に住んでおったのですが、今ごろは立派なうちを建てて、応接間にソファーを置いて、ピアノを買って、それで借金がある、あるというものですから、私は時々怒るのですよ。そんなものは家庭の方の話で、農業でどれだけの経費がかかって所得があったかということをきちっとやってもらって、そうして政策というものを立てていかないと本当の政策にはなっていかないということ等もありまして、いろいろありますけれども、しかし、何といってもやはり農家の次の世代のために一体何をしてやればいいかということを私も真剣になって考えておるのです。農家がよくなることは大賛成でありますから、そのためには多少の苦しいこと、つらいことを今乗り切ってもらわなければならぬこともありますけれども、子供たちのためにいい農村社会というものを維持していきたいということから、いろいろと考えております。これをやってみて、何年かたってどうしてもこの点が問題あるというときは、またそれはいろいろといい方向、いい方向へ変えていくということはあっても、当面これで農家皆さんに元気をつけてあげたいというふうに考えております。
  83. 野坂浩賢

    野坂委員 きのうはわざわざ我が鳥取県に来ていただきまして、ありがとうございました。褒めていただきましたけれども、エレベーターに乗ったような気で聞いておりました、それを褒め殺しというのですが。  行かれたところは東伯町で、確かに農協の管理状態がうまくいっておるのです。だけれども内容は本当になかなか厳しいのです。中山間地帯で三町歩のものができぬじゃないかとおっしゃる。そのとおり、できぬのですよ。だから、みんな山をおりて、せっかく開拓をしたところに杉の木を植えて、嫁がないから下におりようといってみんなおりてくるのです。だから、中山間地帯は大変だ。どこかで歯どめをかけなければならぬ。この中山間地帯によきリーダーをつくるということが提案されておるのですから、これに基づいて一生懸命措置をやって、そしてできなければ環境保全型農業というこの大命題のもとに、日本国民皆さん理解を得て、デカップリングに似たものについて、日本型デカップリングでも結構ですからやってもらいたい、前向きに検討してもらいたいということが一点。  それから、あなた方が提案されたこの説明書を読むと、高付加価値で高収入の農作物をつくりなさい。私が今農政局にそういうものをつくって見本を示しなさいという提案をしたのですが、それらもやって全部やる場合に、できない場合には、目標所得を決めて、実際の所得が、例えば目標所得が百万円で実質所得が五十万しかなかった、この五十万円は四・三%の利息で貸してやる、こういう話が出ていますね。ただにしたらいいではないか、それだけは損するのだから。損するのだから、四・三%、ただにせい。これがデカップリングの一つだというようなことを課長さん方は平気で言っておられますが、そんなものはデカップリングになりません、こう言っておるのです。  なぜ四・三%なんですかといって聞くと、災害の融資が四・三%だから、この壁があってできません、こう言うのですね。それならその壁を崩して、ベルリンの壁でも崩壊する時代ですから、そういう壁は取って、災害はただ、無利子。そしてこのデカップリングも、デカップリングということになれば四・三%も無利子、こういう格好にしたら農家は少しでもよくなるのではないかと思うのですが、どんなものでしょう、愛情ある入澤さんの御答弁をちょうだいします。
  84. 入澤肇

    入澤政府委員 この中山間地域の経営改善・安定資金というのは、従来の農業金融制度にない一つの工夫を凝らしたものとして今回提案したわけでございます。  ECのようにデカップリングをすぐ採用しろというのは、先ほど官房長なり大臣が御答弁したとおりでございまして、今どこの地域でどういう農業経営をやったらどのくらい所得が上がるか、どのくらい補てんしたら定住するかというその計算がなかなか難しいです。  そこで、私どもとしましては、まず第一に最適農業的な土地利用計画をつくってもらう、そのように指導する。その上で、その地域にふさわしい、最適な農業経営というものを実現していこうではないか。そうしますと、どういう地域でどのような農業をやるかという標準的な姿が見えてまいります。その標準的な姿が見えてくるのをバックアップするためにいろいろな方法があると思います。  デカップリングもその一つかもしれませんけれども、先ほど申しましたようなことで、すぐそれに取り組むというわけになかなかいかない。私は、自助努力を前提として、きちんとした改善計画をつくって、そして経営安定、安定的な農業経営を進めていくということを助長することが必要ではないかと思いまして、従来の農業金融は災害を受けた場合にいろいろな金融を受けるとかなんかなんですけれども、ここは目標所得と比べまして、実際の営農をやって所得目標に達しなかった、一割以上下回ったという場合に、その差額について丸々低利資金で面倒見ようという話ですから、ある意味では農業金融の常識に反する制度だというふうに理解していただきたいと思うのです。  そこで、その金利につきましては、そういうふうな経緯がございますので、災害が四・三で、それ以上下回るわけにはいかないというのは、ある意味では一つの常識だと思うのです。農業金融につきましては、財投金利とか長期プライムレートだとか預貯金金利とか、他の制度資金の金利、それから財投資金を原資とする政府系金融機関の金利とのバランス、いろいろなことを考慮して決かられておりますので、私どもとしましては、可能な限り低い方がいいというふうに考えますけれども、四・三というのはまあやむを得ないところかな、現状においては最適かなというふうに考えているわけでございまして、この点は一歩前進というふうに御理解いただきたいと思うわけでございます。
  85. 野坂浩賢

    野坂委員 なかなか上手に逃げられますが、災害というのは、随分損害を受けた、それに貸してもらう、利子までついて。私は、それをとってもらいたいと思うのですね。  それから、あなたのようなことを課長さんが言ってこられました。百万円目標だ。百万円の目標であった。五十万円しか実質所得がなかった。だから、十アール当たり五十万を限度として貸してあげますよ。利息は四・三%。これは損したのじゃない、収入が少なかったんだとおっしゃいますけれども目標が百万円で五十万円しかなかったのは、これだけ取れば採算に合うと農家皆さんは考えておるのです。変なことは考えない。百万円取れなかった、五十万円だったというのは一種の災害ですよ。だから赤字なのです、この間は。牛乳の不足払い制度みたいなものですよ。だから、それだけは前向きで、農業災害あるいはこの融資問題、目標価格と実質所得との差異、これは利子を下げるように、でき得れば無利子で借せるように前向きに御検討いただきたい、そういうふうに思いますが、御検討いただけますか。
  86. 入澤肇

    入澤政府委員 一つの試算がございまして、米の生産調整をやっておりますけれども、中山間地域におきまして生産調整の奨励金などを加えて金利計算しますと、四・三が一%か一・五%とかになる計算もございます。いろいろな工夫をして経営改善のための努力をしていきたいと考えております。
  87. 野坂浩賢

    野坂委員 努力をしてもらうということで、後から、同僚の諸君がこれから続々と質問しますから、詰めていきます。  そこで、私もう時間がありませんから、最後に地方の問題を、せっかく委員長委員長席においででございますので、岡山県を例にとってお尋ねをします。  御承知だと思いますが、岡山県に笠岡湾の干拓というのがあります。四十一年の十二月から平成二年三月までやった、二十数年。干拓事業費は三百億円、受託事業費は四十九億円、こういうことでやってきたのです。三年据え置き二十五年償還でいよいよ去年から始まった。  笠岡の市長さんが言いました。諸君、デパートでも自分の店を持っておってテナントで出ていく、両方やると両方もうかるという場合は余りない、片一方はやめて全勢力を集中しなければこの厳しい世の中には生きていけない、だから干拓に 入る諸君は農地を売って、家を売って、そして入植をしなさい、そして命がけで農業をやりなさい、こう言って激励して、全部売りました、農地も売りました。この名簿をこんなにたくさんもらっておりますけれども、この人たちは約七億ばかり金を持っております、みんな売ったんですから。それで、それを返したいと言うのです。利子が六分五厘もついておるから返したい。農水省は喜んで返してもらうと思ったら、いや返させない、これは契約だから返してもらっては困る、こう言っておるのですよ。  こういうことは、ちょっと普通では考えられませんね。返すというものは返してくれや。返させぬで二十五年間で払え。そうして、何をつくっておるかというと、主に野菜をつくっておる。野菜はなかなか上がらぬので、できた途端にブルドーザーで肥料になっていく。この調子だと返せぬじゃないか、今返してしまった方が将来首をつらぬでも済むし、とやかく言われぬで済む、返したい。それで、私のところに現金でリュックサックを負って持ってくるから入澤さんのところへ持っていって返させてくれ、こう言うのですよ。返させてくれますか、くれませんか、どうですか。
  88. 入澤肇

    入澤政府委員 笠岡湾の干拓事業に係る負担金につきまして、一部の農家の方々から繰り上げ償還の要望があるということは私どもも知っております。しかし、なかなかこの件は、土地改良特別会計で財投資金を利用して干拓をやっておるものですから、財投資金の性格上繰り上げ償還は難しいということでございます。  その理由を具体的に申し上げますと、郵便貯金とか年金資金の資金運用部の預託金利と貸付金利を同一にして利ざやを発生させない仕組みをとっていること、それから繰り上げ償還を認めた場合には資金運用部の収支に影響を及ぼして、ひいては財投資金の大宗を占める郵便貯金の金利低下を招き、零細な預金者に不利益を与えかねない、こういうことから、一般的に財投資金を使ってやる場合には繰り上げ償還は難しいということでございます。  そうは言っても、先生今御指摘がありましたように、地元のいろいろな要望がございます。そこで、繰り上げ償還を希望する者に対して現実的な対応策をいろいろと考えておりまして、まず希望者からの繰り上げ償還要望額を積み立てて資金を運用して将来の負担金の償還に充てる負担金納付基金、こういうものを設置するようなことも地元では考えているようでございます。
  89. 野坂浩賢

    野坂委員 苦しい答弁ですね。返させてやらないというのは、背景はどこの法律ですか。
  90. 入澤肇

    入澤政府委員 財投資金の制度の性格上、繰り上げ償還は認められないということでございます。
  91. 野坂浩賢

    野坂委員 今あなたがおっしゃったことは、法律にはないということですよ。法律はないけれども、大蔵省で考えた方法なんだ。何にもない。普通の世の中は、返さないと文句を言われるのですよ。訴えられるのですよ。返すというのに返させぬというのですかう、世の中と矛盾しておるのじゃないですか。高いときに借りたら、今でもそうじゃないですか、財界の皆さんが、自民党の皆さんもおいでになる、公定歩合が高い、去年五回も下げたのじゃないですか。ことしになってまた一回下げた。二分五厘になったのじゃないですか。それだけ楽になったんだ。だから、百姓だって、農家だって、六分五厘で借りたものをもう今や四分や五分で借りられるのに、しかも自分の土地や家をみんな売って入ってくるのに、それを返させてください、とても将来払えませんから今一括繰り上げさせてくださいというのに、政府は返させぬ、こんなむちゃくちやなことは考えられぬね。しかも、法律はない。官僚がつくった仕組みでやっておるんだ。こういうことは私は納得できません。これは一体どういうことになっておるのですか。  それからもう一点、入澤さん、あなたの泣きどころだけれども、笠岡市国営笠岡湾干拓事業負担金徴収条例というのがある。この間差し上げたから、あなた持っておるでしょう。第四条に「ただし、当該徴収を受ける者の申出があるときは、その負担金の全部又は一部につき一時支払の方法により支払わせるものとする。」と書いてあるのですよ、条例で。だから、農家は本気で自分の家を売って、本気で入植したのですよ。  だから、七億円も八億円も今持っておる、それを返させぬというのは、ちょっとなかなか一般に通用はしませんよ。あなた方はなかなか行けないから、県や市によく言って、そういう条例を県はつくって、そうすればそれはやらなければならぬ。信頼しますよ。信頼を裏切ったということになるのじゃないですか。この点はどうお考えですか。
  92. 入澤肇

    入澤政府委員 なかなか難しい御質問なんですけれども、土地改良事業の負担金につきまして、土地改良法施行令で繰り上げ償還の規定がある都道府県あるいは市町村が、条例でそういうことを決めていることは事実としてございます。  これは、先ほど申しましたように、財投資金じゃなくて、原資の性格を問わないで規定しているものでありまして、例えば財投資金を投入せずに一般会計の予算のみで事業を行うような場合には、繰り上げ償還は可能であります。そこで、制度としては矛盾のないように一応できているわけでございます。  ただ、干拓事業は、先ほどから申し上げていますように国営土地改良特別会計の中で財投資金を借りて、全部事業を行ってから、事業に要した経費のうち一部を農家に負担させるという仕組みになっていますので、これは財投資金の性格からして、先ほど申しましたように郵便貯金の金利が入らなくなっては困るというふうな基本的な性格からして、繰り上げ償還を個々別々に認めていくわけにはいかないということでございます。
  93. 野坂浩賢

    野坂委員 大蔵省いますか。−来ておられませんね。大蔵省を呼んだつもりだったですけれども入澤さん、あなたは割によく知っておられますから聞きますよ。  大蔵省は、資金運用部資金法という法律をバックにやっております。それには、「その資金を確実且つ有利な方法で運用することにより、公共の利益の増進に寄与せしめることを目的とする。」と書いてあるのです。公共事業に寄与した、そして金を返してもらって次に貸せばいいじゃないですか、バックは、法律事項は何にもないのですから。金を返すというのに、返してくれるな、返してくれるなといって頑張るという方法はないじゃないですか。財界の皆さんは金が払えぬから利子を安くしてくれと言うなれば、大蔵省は日本銀行と相談してすぐ公定歩合を下げておる。農家は、安いときに家を売って、それで持っておるとだんだん農業が苦しくなってきて生活資金で食ってしまう、だから二十年先ほどても食えませんよ、払えません、だから今返しておこう。律義なものじゃないですか、純情そのもの、私は涙が出るような感じがしますね。それでも政府は返させぬ。こんな非人情なことありますか。どうですか、自由民主党の諸君。それはおかしいと思うでしょう。これは一緒ですから、自民党も社会党も、共産党も含めてだ。だから、そういうものは全部返すように前向きにしてもらいたい。  私は、もう時間がありませんから、もしできないというならば、現地の岡山県、ちゃんと委員長もいらっしゃる、笠岡市、そういう点でこういう条例までつくったのですから、本当なら予算委員会なら審議はもうとまっていますよ。私はもう質問せぬと、ここへ座っておる。それでも、一生懸命答えていますからとめないでこれから進めますけれども、笠岡市と岡山県で、あるいは農林省も含めて、農民の血の出るような叫びを真っ正面に受けとめて、利子補給なりその他の基金制度なり、自由金利、自由金融の時代ですから、どうやってそれを六分五厘以上にクリアさせるか、そのくらいのことは考えてやらなければ、余りにも農民は踏んだりけったりでかわいそうだ。そういう点については明確にあなたの真情を吐露して三者で相談をして、農家皆さんが納得できるような方法にしてもらいたいと思いますが、いかがですか。
  94. 入澤肇

    入澤政府委員 非常に気持ちはよくわかります。笠岡湾干拓土地改良区の繰り上げ償還を希望する者から、先ほど申しましたように繰り上げ償還要望額を積み立てて資金として運用する、そのために負担金納付基金等を設置したらどうかという話が現地で出ております。  私どもが聞いておるところによりますと、これは四月十六日に開催された笠岡湾の土地改良区理事会におきまして、四月三十日に開催される予定となっている臨時総会の議案とすることで全会一致で承認されているということでございまして、この基金構想は実現の方向に向かって推移しているものじゃないかというふうに判断しております。岡山県当局も、土地改良区に基金が設置されるように積極的に調整を図る、指導するというふうに聞いておりまして、私どもとしましても、地元の動きを見守りながら必要な指導を行っていきたいと考えております。
  95. 野坂浩賢

    野坂委員 農水省は岡山県なり笠岡市と十分連絡をとっていただいたようでありますが、積極的に、農水大臣が口を開けば農民負担の軽減を言っておられる、そういうことを考えて、払うというものを払わせないのですから、だから十分にその点については勘案をして、利子補給の問題なりそれらの問題で農民の負担が重くならないような措置をすることを強く要望しておきます。  最後に、もう時間が参りましたので、農水大臣に申し上げておきたいと思う。  この新農政方向については、いわゆる二十ヘクタールとか十ヘクタールとか、そういうことが果たして可能か。一般の農家皆さんは、そういう農地の集積というのは容易じゃない、なかなか難しい、言うだけだ、こういうふうにもお考えになっておる向きがたくさんあります。あるいは認定農家に手を挙げるということは容易じゃない、村八分になるかもしらぬ、そういう危険と危惧もある。そういう点をあわせて、やはり農業の育成のために、農業がこれから発展するために、農林省は全力を挙げてこれらに対応して、いわゆる食えぬ農業から、私はもうかる農業とは言いません、食える農業にしなければならぬということを強く要望しておきたい、こういうふうに思います。  最後に農水大臣の決意を聞かせていただいて、日本農業を安全の安さに置くという胸を張った御答弁をいただいて、終わりたいと思います。
  96. 田名部匡省

    田名部国務大臣 そういう考え方でこの新農政というものを考えたわけであります。これをやるには、私たちだけが一生懸命になりましても、実際に農業をやっている農家皆さんが本当にその気になってくれないとなかなかできません。試合と同じで、監督ばかり張り切ったって選手がやる気がなければ試合にならぬわけでありますから、そういうことで、上から押しつけるようなことはいたしませんし、農家皆さんで、自分の子供は一体何人おる、こうなる、ではどうしようかという相談を本当にやっていただきたい。そうして、今お話しのように農家がもうかる、農業もなりわいですから、私はもうけてほしい、こう思います。  ただ、誇りを持ってほしいというのは、私はきのうも申し上げてまいりましたが、人間生まれてから死ぬまで一生、三度三度食べる、このすばらしい食糧というものを誇りを持ってつくってください、それは他の産業は、車でもテレビでも我慢するとか、三年のものを十年乗るとかということがあっても、食糧だけは我慢するというわけにはまいりませんから、そういうすばらしい農業をやっておるのですから、決して子供たちに、農業はだめだ、だめだと言いなさんなときのう言ってきました。夫婦で自然の中で働ける喜び、子供も休みのときは手伝える、そういう仕事は他にありませんし、これが会社へ勤めたら、夫婦で手をつないで行って同じ机を並べて働かせてくれる会社なんというのは日本国じゅうないのですから、そういういいところもどんどんPRしてください、そしてあとは子供たちに給料を払える、嫁にも給料を払える程度の規模農業というものをやらないと後継者は育ちませんし、嫁も来手がないということをきのうお願いしてきました。  我々もそのためにはありとあらゆる考えられる支援というものはやるつもりでありますから、どうぞ皆さん方が本当に地域の実情に応じたすばらしいことを考えてやっていただきたい、こう申し上げてまいりましたから、そのとおり私ども覚悟して、これは何としても二十一世紀の農業者のためにもやり抜いていかなければいかぬ、こう考えております。
  97. 平沼赳夫

    平沼委員長 野坂委員に申し上げます。  構造改善局長から、先ほどの御質問の相続税に対する補足説明、これを許します。
  98. 入澤肇

    入澤政府委員 私、先ほどよく質問が理解できなくて、誤解があるといけませんので、もう一回ちょっと答弁させていただきます。  相続税につきましては、全然現行制度を改正しているわけではないわけでございます。ただ、先生の御指摘が、もし、相続税の納税猶予を受けている農地を農業生産法人に現物出資した場合ということでありますれば、その取り扱いは従来と同じでございまして、その場合には、納税猶予は打ち切られるということでございます。誤解があるといけませんので、一言つけ加えさせていただきます。
  99. 野坂浩賢

    野坂委員 時間が参りましたので、これで終わりますけれども、これからの新農政方向、農地の集積、しかし出す者は何にもプラスでない。例えば、いわゆる耕作放棄地あるいは高齢者、そういうところがお持ちの農地というものをお考えになっておるだろうけれども、集積がなかなか難しい。だから、出す者の側にも特典を与えていかなければ、農地というものは集まらないのじゃないかと私は思うのです。  そういう意味も含めて、もろもろの体制で、楽しく豊かに暮らせる本当の農村を、農民のための農村を、積極的に大蔵省とも折衝して予算をとって、立派な農業農水大臣在任中につくっていただくように強く要望して、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。
  100. 平沼赳夫

    平沼委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時二分休憩      ————◇—————     午後四時四分開議
  101. 平沼赳夫

    平沼委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。藤原房雄君。
  102. 藤原房雄

    ○藤原委員 本日は、農業経営基盤強化のための関係法律整備に関する法律案初め関係七法の改善案、この審議なわけでありまして、この法案に先立ちまして、当面問題になっております農林漁業に関する諸問題について、二、三点お伺いをしておきたいと思う次第であります。  最初に、過日、宮澤総理が日米首脳会談に参りまして、クリントン大統領とお会いをいたしました。宮澤内閣、クリントン政権、初めての会談であったわけでありますが、この中ではいろいろなことが話し合われましたけれども、そのお話の中に、私どもが今注目をいたしております日本の市場開放努力に対する必要性をクリントン大統領が指摘をした、こういう報道がなされております。さらにまた、カンター通商代表は一歩踏み込んで、閣僚会議におきまして具体的に農業、サービス、工業製品の三分野を挙げまして、東京サミットまでに交渉を急展開させたい、こういう表明があったと言われておるわけであります。  新ラウンドの問題につきまして、年内決着だとか東京サミットが一つの大きな時期ではないかとか、いろいろ言われておるわけでありますが、この日米首脳会談というのは、そういう点では非常に重要な意義を持つ会談であり、帰国後、閣僚に対しましてもこの会談の内容等について当然いろいろなお話もあり、精査をしていらっしゃることだろうと思うのであります。  私ども農林水産委員会としまして今最も注目をいたしております農産物の市場開放、特に米に関します諸問題につきましては、どういう話し合いだったのか、また、今日までとってまいりました日本の立場について、この方針につきましていささかでも変わるところがあるのかどうか、これらのことについて、日米首脳会談のときの話し合いの中身について、今後の対応等についての諸問題等、その周辺のことについて大臣にお伺いをしておきたいと思います。
  103. 田名部匡省

    田名部国務大臣 今回の日米首脳会談におきまして、ウルグアイ・ラウンドでは早期に成功裏の終結に導くことが再確認をされたと伺っております。総理からもけさほどざっとこの内容を伺いましたが、総理からは、包括関税化は非常に難しい、困難であるということを明確に、はっきりとクリントン大統領におっしゃったようであります。現実的な合意を実現すべき旨が述べられた、こういうことであります。  いずれにしても、今回の話し合いの中で、米問題はそんなに出たわけではないようであります。構造問題あるいは分野別の問題については、三カ月以内に協議の新たな枠組みを構築することで合意をされたということでありますが、この枠組みにおきましては、農産物が取り上げられるかどうかわからないが、取り上げられたとしても、私どもはこれは適切に対処していかなければならぬ、こういうふうに考えております。具体的に何をどうするかという考えが出たわけではないものですから、いずれにしても分野別にやるのであろう、むしろ、従来から主張しております半導体でありますとかそういったものを何十%、こういう管理貿易のような話でありますから、農業が管理貿易に該当するかどうかということを考えると、日本には二〇%どころでない、相当の農産物がむしろ入ってきておるわけでありますから、それとこれはまた別なことであろうと私どもは受けとめております。  いずれにしても、従来からの基本方針を変えることなく対処をしてまいりたい、こう考えております。
  104. 藤原房雄

    ○藤原委員 当然、日米首脳会談という場では具体的なお話とかもっと突っ込んだ話というのはなかなか出ないだろうと思います、最初の出会いと申しますか、会談でもございますから。通商代表のカンター、こういう方々のお話というのは、現場の問題としてやはり相当踏み込んだお話があったように報道されておりますし、私どももその点についてはどうなのかという危惧を持っておるわけであります。  今大臣からお話ございましたけれども、我々は、新聞報道を初めとしまして、また皆さん方からお聞きをする範囲内のことが主な情報源になるわけでありますけれどもガットの場で議論しているときは議論しているときとしてそれなりの対応をするわけでありますけれども、今日のようにちょっとガットの場が開かれていないというときに何をするかということがまた非常に大事なことだろうと思います。報道によれば、日本は何もしないとかいろいろなことを報じられておりますけれども日本の立場を知ってもらう、また訴える。しかし、こういう中で、世界の中で日本と同じような環境にある国というのはそう多くないわけでありますから、そういうことでなすべき手だてというのはそれなりに制限されるのかもしれませんが、やはり表立ってガットのことが議論されているときとそうでないときの進め方というのはおのずとあるのではないかと思うのであります。  そういうことからいうと、今、表に出て議論になっているときではございませんけれども、いろいろ動き始める、アメリカにおきましても年内にファストトラックのことも決めるような動きもあるとか、いろいろなことが報じられているわけでありますが、農水省としましても、やはり今日までの表明は表明として、態度は態度として、着実な橋頭堡といいますか、そういうものを築いていく、そういう手だてというのはどういうふうに考えていらっしゃるのか、またどういうことを戦略的にお考えになっていらっしゃるか、こういうことも、特に東京サミットがもう近いわけでありますから、それらのことも射程の中に置きましてのお考えをあわせてお聞きしておきたいと思うのです。
  105. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 ウルグアイ・ラウンドの交渉でございますが、委員御案内のとおり、アメリカの政権交代によりまして実質上休止状態、こういうことで推移をしてきておったわけでございますが、最近に至りましてアメリカ政府が議会に対しましてファストトラックの延長というふうなことを申し出たわけでございまして、その意図がはっきりとしたわけでございます。十二月の十五日までに実質的な合意をしようというふうなアメリカ政府の提案が行われたわけでございます。これを契機といたしまして、またウルグアイ・ラウンド交渉についてのいろいろな話し合いが始まってくる。  と申しますのは、これまでは、やはりアメリカがどういう出方をしてくるか、新政権がどういう出方をしてくるかというふうなことで、各国ともアメリカの出方待ち、こういう状況にあったわけでございます。さらには、アメリカ政府におきまして、大臣クラスは決まったわけでございますが、その下のいろいろなスタッフにつきまして、まだ議会の承認が得られていないとか、いろいろな問題がございまして、まだメンバーがそろわないというふうなこともございます。それから、さらには、アメリカ自体の交渉方針が明らかでなかったというふうな状況もございまして推移してきておるわけでございますが、委員御指摘のとおり、年末へ向けての合意、こういうふうな動きになってくるというふうなことでございますが、七月に東京でサミットがある、さらには五月には四極通商会合、それから六月初めにはOECDの閣僚会議というふうな会合もございまして、これから交渉が再活性化するというふうな状況でございます。  私どもといたしましては、ウルグアイ・ラウンドの交渉はマルチの交渉ではございますが、いろいろなバイの話し合いなり、あらゆる機会をつかまえまして、バイ・プルリといいますか、二国間あるいは複数国間でいろいろと話し合いをしながら進めていく、積み上げていく、こういうことでございます。我々といたしましても、いろいろな機会をとらえながら意見交換をし、橋頭堡を築きというふうなことで今までもやってきたわけでございますが、これからも我が国と考え方を同じくするような、カナダでございますとかスイスでございますとか韓国でございますとか、包括的関税化について問題を抱えている国々と連絡を密にしながら、我が国の方針が交渉の最終結果に適切に反映できるように、今後とも努力をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  106. 藤原房雄

    ○藤原委員 当然最大の関心を抱いて御努力いただいておるであろうと思いますが、それは交渉事ですから表に出ることと出ないこととあるかもしれませんが、非常に重要なときを迎えているという実感がするわけでありまして、今いろいろお話がございましたが、ひとつおさおさ怠りなく橋頭堡を築いていただき、所期の目的を達成できるように布陣をしいていただきたいと思うわけであります。  次に、農政審議会におきまして新農政、中間取りまとめが出されたわけでありますけれども、二十三日から農政審議会で企画部会を再開いたしまして、新農政の残された課題について審議を再開するということが報じられておるわけであります。昨年の六月の発表については、稲作の営農モデルが示されたわけでありますが、この新農政は、その他の分野等につきましても当然審議をし、そして具体的な目標というものを定めるわけでありますから、それらのことについてこの二十三日から審議なさることになるのだろうと思います。  基本法農政のときには、外圧というか、外から入ってくるものについてどうするかということはおよそ念頭に置かなくてもよかったわけでありますけれども、しかしこの新農政につきましては、輸入農産物の攻勢、そしてまた国内的には、三十年代とは違いまして高齢化、こういう中にありまして農業政策というものを進めていかなければならない。また、食糧の安定供給ということは当然のこととしまして、それに加えまして、環境保全とか農業の多面的な機能、こういうものを生かすということ、農村地域の振興ということもあわせて考えなきゃならぬ。他産業並み所得を得られるというようなことは当然のことといたしまして、非常に多角的な諸問題を抱えた農業の周辺、こういうものをどう取り込んで新農政に生かしていくのか、この農政審議会というのは非常に重要な意味を持つと思うわけであります。  この二十三日から始まります農政審議会の企画部会、およそどういう議題のもとに、そしていつごろまでにこれらのめどを立てようとなさるのか、この審議会内容等についてお伺いしておきたいと思うのであります。
  107. 上野博史

    ○上野(博)政府委員 今委員お話ございましたように、我が国の農業を取り巻いておりますいろいろな条件、内外それぞれあるわけでございますけれども、そういう事態に対応いたしまして今後の我が国の農業が発展を続けていけるというための施策をまとめたというものがいわゆる新政策でございます。  あの本体の中には、土地利用型の農業、特に稲作農業というものを主体といたしまして書かれているわけでございますけれども、そのほかに我が国の農業を支えます分野といたしましては、畜産であるとかあるいは果樹、園芸、野菜作、それぞれ地域の状況に応じて行われているわけでございまして、これらの分野につきましてもやはり、それぞれごとに事情は若干の違いがございますが、基本的に同じような状況にあるわけでございまして、今後のあるべき姿というものを明らかにして、それに必要な政策体系を組み上げていかなければならないというふうに考えております。  その際に、基本的に我々が考えておりますことは、稲作等の場合と全く基本のところは同じでございまして、他産業並みの就業労働時間のもとで他産業へ就業したときと同等の所得が上がるということを基本に考えていかなければならないだろう、それによりまして優秀な農業後継者が育っていくということを確保するという考え方を示さなければなるまい、こういうふうに考えているところでございます。  審議のテンポといたしましては、部門ごとにそれぞれ御検討、御審議をお願いいたしまして、できればこの夏ぐらいまでに、平成六年度の予算編成の都合なども考慮に入れて、取りまとめを行えるならば行ってまいりたいというふうに現在考えているところでございます。
  108. 藤原房雄

    ○藤原委員 きょうから法案審議に入るわけでありまして、これに全部関連することですから、今後の法案審議の中でいろいろまた議論したいとは思うのであります。  確かに今お話がありましたように、労働時間につきましても、それからまたコスト低減の努力とか、農業にまつわります問題というのは非常に多くありまして、それらのことについて一つ一つ検討しなければならぬ、現状に即した形で進めなければならぬだろうという、目標設定ということも非常に難しいことだと思うのでありますが、稲作について去年六月に発表になったのを見まして、農業に携わる方々や団体の方々にお話ししますと、確かに基本法農政以来、そのときそのときのいろいろな情勢に応じて政府もいろいろな発表をいたしておりますけれども一つ目標を定めて、そしてその努力目標のもとに進める、こういうことで好意を持って受けとめていらっしゃるのではないかと思うのです、総体的には。しかし、具体論ということになりますと、それは地域性とかいろいろなことがございますから、そしてまた具体的なことが明示されない、することができないような問題もありますけれども、具体的なことというのは、これからそれらのことについては長期的な、中期的ないろいろな観点の上から進めなければならないことなのだろうと思います。  そういうことで新農政というのは非常に大きな期待が寄せられているわけでありますが、大きく言いますと十ヘクタール、二十ヘクタールという大きな規模でやることは理想でありますけれども、現在は、確かにそういう規模拡大コスト低減の努力をしなければならない一面、それは否定はいたしませんが、どっちかというと量より質というか、量的なものについては外国の外圧といいますか、輸入農産物の攻勢というのは非常に強いわけであります。そういうことからすると、農産物というのは新鮮さ、安全性ということが問われるわけでありますから、当然、量的なことよりも質的なことを今消費者農産物に対して求めているのではないか、そういう点もぜひ重視したものでなければ時にかなったものにならないのじゃないかという、それは農林省は全然考えてないということを私は言っているのではないのですけれども、その点の重視をどう位置づけるかということが非常に重要なポイントであると私は思うのです。いかがでしょうか。
  109. 上野博史

    ○上野(博)政府委員 委員のお話、私、まことにそのとおりだというふうに考えるわけでございます。農産物に対します消費者の需要ということを考えますと、非常に品質のいいものに対する需要というものもございますれば、また非常に大量に普通の品質のものを求めてくるというものもあるわけでございまして、極力その消費者のニーズに合った農産物を供給してまいらなければならないということが原則がというふうに思うわけでございます。  したがいまして、例えば中山間地域の今後の生き方として、品質のいい農産物を供給するんだという議論もあるわけでございますけれども、こういうこともまた現実の問題として可能になる道がある、それぞれの工夫が生きる道があるんだというふうに考えているわけでございまして、多様な需要に沿うように、それぞれの地域の諸条件に合った農業を育てていくということが非常に大事なことだろうというふうに思うわけでございます。  ただ、その際、現在の農業就業構造の状況等を見ますと、そう広くはない国土の農地面積をうまく十分に活用するということすらなかなか難しい状況が出てまいっておるということもあるわけでございまして、全体としての農地の総合的な利用というものを考えていくという面の配慮もしてまいらなければならないというふうに考えているところでございます。
  110. 藤原房雄

    ○藤原委員 ちょっと別な話になって申しわけないのでありますが、四月六日ですか、シベリアの軍事閉鎖都市トムスク7の爆発事故につきまして、きょう科学技術庁の方、来ていただいていると思うのでありますが、爆発事故というのはどういう現状であったのか。実態の把握というのはまだ明らかにされてないようでありますけれども、この事故があって、それに対応して日本としては観測体制のもとに観測したとか、そしてまた緊急に観測地点をふやしていろいろ対応したということも報じられております。また、最近は、異常値がないのでもとの体制に戻したとか、そんなこと等も言われておるわけでありますが、このトムスク7の爆発に対しまして日本政府のとった、科学技術庁の対応策についてちょっとお尋ねします。
  111. 折田義彦

    ○折田説明員 ロシアのトムスク7の再処理施設の事故につきましては、念のため、事故発生後、従来より環境放射能調査を実施しております地方公共団体等に対して、異常が発見された場合には直ちに報告するよう要請するとともに、放射能調査の監視体制強化するよう要請していたところでございますが、異常が報告されなかったわけでございます。また、去る四月十二日に防衛庁機によって高空の浮遊じんを捕集いたしまして放射能測定を行いましたが、測定結果については平常の値と同様でございました。この結果を踏まえまして、ロシア・トムスク7事故に関して強化した放射能調査体制については、四月十五日をもって平常の体制に戻したところでございます。  しかしながら、引き続き放射能監視等適切な対応を行うとともに、本件に対する国民の関心が極めて高いことにもかんがみまして、今後とも本件に関する情報収集に努めるとともに、適切に情報を公開し、対応してまいる所存でございます。
  112. 藤原房雄

    ○藤原委員 先ほど農産物の安全性ということについてちょっと申し述べましたが、消費者は安全な農産物をということが絶えず意識の中にございますし、また、かつてソ連で原子力発電所の爆発がありましたときにも、日本というのは、そういう点では非常に消費者の危惧というのは大変なものでありました。  このトムスクの爆発につきましても、消費者の方々も大変に心配をいたしておるわけでありますが、確かに、今お話ありましたように、高空浮遊じんを初めとします観測を厳重にやったということですが、何日間ぐらいやって、そして異常がないということを確定することができたのかという、その辺の調査の状況をちょっとお尋ね申し上げたいということと、それから十六日ですか、ハンス・ブリックスIAEAの事務局長が参りまして、科学技術庁中島長官とお会いをして、この問題についていろいろ会談をしたということも報じられておるわけでありますけれども、この会談の内容等についてもどういうことが話し合われたのか、こんなこともひとつあわせてお聞きしたいと思います。  事務局長からは、今後も国際的な客観的な調査の実施には努力をするというお話もあったように伺っておるわけでありますけれども、この会談の内容、それから、今後このことについては平常の監視体制でいいというお話がありましたけれども、国境のないといいますか、空中の高空浮遊じん、こういうことは今後は行われないか、行われるとすれば、何日、どのぐらいということでなさるのか、こんなこと等もあわせまして、今後の対応策をひとつお尋ねをしておきたいと思います。
  113. 折田義彦

    ○折田説明員 お答えいたします。  トムスクの事故でございますが、一般的には、通常、トムスク上空五千メートル以上の気流は、その速さから判断しまして、四日程度で日本に到達するというふうに言われております。一方、五千メートル以下の気流では、それよりおくれるか、ほとんど到達しないというふうにされております。ちなみに、チェルノブイルの原発事故では、事故発生後七日目で日本に放射性物質が到達しております。これらのことから判断いたしますと、もし仮にトムスクにおいて大量の放射性物質が放出されていたとしたら、爆発直後の四月六日から十五日までに既に九日を過ぎておりまして、この調査期間中に何らかの異常を検出してもよいと思われるところでございますが、今回の調査では何ら異常は検出されておりません。これらのことから、今回の事故につきましては、放射性物質の影響は日本には到達しなかったと判断いたしまして、平常の監視体制に戻すことをいたしたわけでございます。  なお、先生の御指摘の高空浮遊じんにつきましては、今回の事故にかんがみまして、防衛庁での高空浮遊じんの捕集を通常より頻度を高めまして週一回にしまして、また、飛行予定の繰り上げというようなことで対応させております。なお、平常の体制では、防衛庁の浮遊じんの採取は二週間に一回でございますので、現在はその二週間に一回の頻度で観測をしておるというところでございます。
  114. 白尾隆行

    ○白尾説明員 お答え申し上げます。  委員御指摘ございましたIAEA、国際原子力機関のブリックス事務局長は、先週行われました日本原子力産業会議の年次総会にご出席でございましたので、この機会をとらえまして、私ども中島大臣と会談を行っていただいたという次第でございます。私どもとしましては、先生御指摘の問題につきましては、国民の大きな懸念あるいは関心事でもございますので、いろいろな機会をとらえて国際的な会談を行うという基本的な姿勢で臨んでおるわけでございまして、本件会談につきましても、今回御指摘いただいているような問題についても取り上げた経緯がございます。  さて、そのトムスクの再処理施設の事故に関してでございますけれども、中島大臣の方からは、本件に関して科学技術庁として重大な関心を持っておるということに立ちまして、ただ、現状ではロシア側からの情報が必ずしも十分ではないということもございますために、我が方からは、専門家の派遣など必要な情報収集について努力中であるということを告げつつ、その上で、IAEAが調査団を派遣する、これはロシア連邦政府の要請によるということではございますが、その調査団のことについて照会した経緯がございます。  ブリックス事務局長の方からは、その段階では三人の専門家が現地に向かっていると承知しておる、たまたま東京にいらっしゃいますので詳細は御存じないわけではございましたが、IAEAとして、これまでの重大な事故に対して取り組んできたと同様に、専門家の派遣を通じて客観的な調査を行っていく考えであるというような考えが示されました。したがいまして、我が方からは、今後IAEAがかかる調査団をさらに派遣するなどしかるべき対応をとる場合には、我が国からも専門家をぜひ参加させたいということを要望した経緯がございます。  また、この機会に会談で取り上げられました内容といたしまして、先般本委員会でも御指摘いただきました日本海の海洋投棄の問題につきましても取り上げた経緯がございます。  本件につきましても、もちろん重大な懸念を表明するとともに、IAEAが北極圏におきます同様の問題に対して取り組みを行っておりますが、この役割の重要性を指摘した上で、極東の海域において行われております海洋投棄につきましても、今後の展開を見きわめながらIAEAとの協力についてもいろいろと検討していきたいというような考えをこちらから伝えております。ブリックス事務局長の方からは、もとより極東領域でのこれまでの活動について若干の説明がありましたが、日日間の合意等いろいろな国際的な手続もこれから踏まれる必要はあるわけでございますが、そういう過程を通じてIAEAが将来協力していくことも十分あり得ましょうというような回答がございました。  いずれにしましても、私どもは、積極的に本件に関する情報収集に努めながら、IAEA等国際機関との連携あるいは関係国との連携も十分配慮しながら、我が国として何が協力できるか、これらの協力支援策について積極的に検討し、実施を図っていきたいと考えている次第でございます。
  115. 藤原房雄

    ○藤原委員 きょうは大事な法案の審議ですから、長い話はできないのですけれども、このトムスク7のことや日本海のロシアの核廃棄物投棄問題、日本人としましてはチェルノブイリ以来非常に神経をとがらせている問題が起きているわけであります。これに対しまして、政府としましても関係省庁の対策本部を設けて対応策を講じているのだろうと思うのでありますけれども、この関係省庁の対策本部というのは恐らく科学技術庁が中心になってやっているのじゃないかと思うのでありますが、現在の日本政府の対応している状況、そしてまた大体今後どういうことをIAEAに、情報収集とかいろんなことをしながら対応するということでありますからあれですけれども、この対策本部の構成と、それから今後の調査の進め方、このことについてひとつ簡単に御説明いただければと思います。
  116. 折田義彦

    ○折田説明員 お答えいたします。  旧ソ連、ロシアの放射性廃棄物の海洋投棄に関しましては、我が国において従来から実施している海洋放射能調査の結果では、これまで本件に起因する特段の異常は認められておりませんが、先生御指摘のとおり、関係省庁とも協力しつつ放射能対策本部幹事会を開催する等、鋭意対処をしているところでございます。  具体的には、これまで放射能対策本部幹事会を二度にわたって開催し、海上保安庁、気象庁、水産庁、科学技術庁放射線医学総合研究所により日本海に海洋環境放射能調査を実施すること等を決定し、一部については既に調査船を出航させているところでございます。さらに、科学技術庁において、本件に関して専門家により技術的評価を行う検討会を四月十六日に設置し、具体的検討に着手したところでございます。  今後とも関係省庁と連携をとりつつ、必要な情報については適宜国民の皆様に提供していく等、本件に対して的確に対応してまいる所存でございます。
  117. 白尾隆行

    ○白尾説明員 お答え申し上げます。  IAEA等国際機関との連携も踏まえた今後の対応の仕方でございますが、御指摘の点二点あろうかと思います。まず、トムスク7の事故に関しましては、IAEAがとりあえずのファクトファインディング、事実関係の調査に行っておることは先般申し上げたとおりでございますが、この調査結果につきましてはIAEAがこの取りまとめに当たると思いますので、この方の情報収集にもちろん努めますとともに、ロシア政府自体の発表がもうすぐ行われると私は理解しております。このような情報収集を極力最大限速やかに行いまして、我が国の原子力施設の安全性、あるいはもとより環境への影響等々も踏まえた対応策が検討できるものと期待しております。  一方、海洋投棄の問題につきましては、これも多国間の問題と二国間の問題があろうかと思います。多国間の問題につきましては、今ほど申し上げましたとおりIAEAとの調査ということも当然考えられるわけでございまして、この方の可能性についてもIAEAとできるだけ前広に相談ができればと思っておりますが、この前提には当然日日間の枠組みができることが前提でございます。そういう意味では、先般の日ロ外相会談の結果も受けたさまざまな日日間の話し合いの場を通じてこういった枠組みを早急につくりながら、共同調査を含めたより早い分析、対応等ができることを期待しておりまして、いずれの両者の問題につきましても、科学技術庁としては積極的に参加いたしまして、あるいはその一部を積極的に担いまして、本件問題に遺漏なきよう対応していきたい、かように考えております。
  118. 藤原房雄

    ○藤原委員 この対策本部を設けて科技庁が中心になっていろいろやっているようですが、大臣、お忙しいようですけれども、これは非常に重要な農林水産物、漁業にも関係するわけです。ぜひひとつ重大な関心をお持ちになって、観測とか対外折衝やらいろいろな技術的なことについては科技庁がなさるのでしょうけれども、食という立場からしますと農水省が一番重要な役割を担うわけでありますから、これは関係省庁の連絡会議でいろいろなことが進められていると思いますが、ぜひ重大な関心を持ってひとつお進めいただきたい、このことを要望させていただきます。御答弁は結構です。  科技庁の方、結構です。  きょうは法案審議ですから、このことばかりやっておるわけにいきませんので、次にいよいよ法律のことについて、もう時間もありませんから、何点かしか申し上げることができないかもしれません。きょうは概括的なことについてお話をいただき、後日また私どもが最も関心を持っている問題についてお聞きをしたい、こんな気持ちでおったわけでありますが、先ほどから申し上げたように、ちょっと最近関心を持つようなことがありましたし、さらにまた何点がそのほかにもあるわけでございますから、限られた時間ですから、全部が全部お話しできませんけれども。  大臣のこの経営基盤強化に関します法律の提案理由の説明の中にも、農業を職業として選択し得る魅力とやりがいのあるものにしなければならぬ、これは緊急の課題だというふうにお話してございますが、これはまさしくそのとおりだろうと思いますし、そのことのためにも今日までいろいろ御努力をなさったのだろうと思いますし、さらにまた、いろいろな施策もそのためにあるのだろうと思うのです。三十六年のこの農業基本法制定以来三十数年たっているわけでありますが、当時の三十年代と今日では社会情勢がすっかり変わっておりますから、いろいろな面についてそのままの認識ということで議論するわけにはいかないだろうと思うのであります。  しかし、この農業基本法を制定するに当たりましても、他産業並み所得を得られるようなことのためには、また農業を職業として選択し得る魅力ある、やりがいのあるものにするためには、やはり規模の拡大ということを初めとして構造政策を推進することが大事だということがその基本の中にあったのだろうと思います。そのことのために農地の流動化とかいろいろなことが講じられましたし、昭和五十五年にはさらにまた農用地利用増進法が制定されまして、農地法の一部改正を初めとしまして農地の流動化によりまして規模拡大が図られるようにということで、自立経営農家として二・五ヘクタール、百万戸、こんな目標のもとに進められたこともありました。  しかし、三十年たった今日、当時と今日とは社会情勢が大きく変わっているとはいいながら、この目標というのはなかなか先へ進まない。これは、進められた施策の中でこれらの目標の達成がおぼつかなかった原因というものを一体どのように分析していらっしゃるのか、この点について農水省としてはどういう受けとめ方をしていらっしやるのか。  また、そういう反省の上に立って、今度の施策につきましては、こうあるべきだという目標は当然としましても、それが実現できるかできないかということの上に立って、やはり実現可能なものを、こういうことに相当力を入れたのじゃないかとは思うのですけれども、今後十年間に十から二十ヘクタールに拡大しということになりますと、この十年間に百七十五万ヘクタールの農地を流動化するということになるわけでありますから、相当な土地の流動化が進まにゃならぬ、そのことのためにはいろいろな手だてをしなければならぬということで、なおかつこの規模の拡大ということは、いろいろな計画を立てるのはやさしいのでありますけれども、実現というのは非常に厳しい、決して甘いものではないだろうと思うわけであります。こういう点では、政府が進めようとしている目標を立てるということでありますから、現時点に立ってのこの目標、過去の基本法農政のいろいろな反省の上に立って、このたびはどういうことをもってこの目標実現のための手だてを、いろいろなことがあるかもしれませんけれども、何点かについて強調できる点がありましたら、ぜひひとつお伺いをしておきたい。
  119. 入澤肇

    入澤政府委員 三十六年に農業基本法が制定されてからいろいろな政策をやってきたわけでございますけれども、特に農地の流動化について申し上げますと、最近の十年間で七十一万ヘクタールの農地が流動化しております。このような結果、土地利用型農業につきまして、北海道では十ヘクタール以上の農家経営耕地面積のシェアが大幅に増加しております。昭和三十五年には一七・八%でありましたけれども平成四年には八一・三%までふえました。都府県におきましても、二ヘクタール以上の農家の耕地面積シェアは着実に増加いたしまして、昭和三十五年には一二二二%でありましたが、平成四年には三六・二%というふうになっております。ただ、都府県の場合には、零細分散錯圃という我が国の農地の現状、これの克服がこれからも重要な課題でございます。  このように、流動化は進んでいるのですけれども、十分な経営規模の拡大がなかなか見られない。その背景には、農地を資産として保有する、そして老後の生活に対する備えをするという点、すなわち資産保有意識、こういうものが見られます。それから、農地を貸し付けたら戻ってこないのじゃないかという不安が見られるところもございます。地域によりましては、生産性向上に必要な農業基盤整備がおくれていたり、高齢化の進展等によりまして安心して農地を任せられる人が見出せない、いろいろな事情がございます。したがいまして、こういうふうな状況を踏まえまして、構造政策をどうしていくかということが今日の課題なわけでございます。  それで、この新政策では、これからの十年間どの程度農地が流動化するかということを推定しておりますけれども、現在の農地の所有状況を見ますと、六十歳以上で農業の後継ぎのいない高齢農家の保有農地が四十二万ヘクタールございます。それから、第二種兼業農家のうち世帯主が恒常的勤務や自営兼業の安定兼業農家、この農家の保有農地が百三万ヘクタールございます。要するに、出し手となる農家の保有する農地が年々増加しているわけでございます。さらに加えまして、先ほどちょっと申しましたが、農地を貸し付けたら戻ってこないというふうなところもございますけれども、いろいろな政策努力によりまして、特に農用地利用増進法が制定されてから、農地の貸し付けに対するアレルギーも徐々に解消してきております。こういう観点から、これから恐らく十年間では、従来の農地流動化実績の二、三倍、百七十五万ヘクタールぐらいが流動化するのじゃないかというふうに推定しているわけでございます。  こういうような状況を踏まえまして、今回、農用地利用増進法を、名前も農業経営基盤強化法と変えまして、農地法の中に位置づけられておりました農地保有合理化事業を農業経営基盤強化法の中にきちんと位置づけて強化する、さらに、農地保有合理化事業の中で、農業生産法人出資育成事業とか農地信託事業とか研修事業とか、いろいろな手段、武器を整えまして強力に推進したいというふうに考えているわけでございます。
  120. 藤原房雄

    ○藤原委員 この農地法の改正のとき、また五十五年の農用地増進法のときも私は農水委員会におりましたから、農民の農地に対する執着というのは非常に強い、そういうものを一たん貸したら、過去の経緯からいたしまして、再び自分の手に戻るのかどうかという不安感というものは非常に大きいという、こういうことも随分議論になりましたし、それから十数年たっているわけでありますから、そういうことに対しての認識とかというものはまた随分変わってきたのだろうと思います。  しかしながら最近は、どちらかというと、老齢化ということや後継ぎがいないとかいうことによりまして、積極的に土地の流動化に参加しようということよりも、後がないということのために手放そうという方はいるかもしれませんけれども、出し手と受け手、この両方について五十五年当時と、まあ以前と今日では社会情勢が非常に変わっておるということでして、数字的にはある程度進んでいるという先ほど局長のお話がありましたけれども、それは確かなことだろうと思いますが、農水省が目指している方向で、そういう今日設けられたこの目標というものが、そうスムーズに流動化するような環境にはまだまだないのではないか。もっと、啓蒙ということもさることながら、農業経営とか農業構造とかいうことに対しますいろいろな法的な手だてがなければならないのじゃないかというふうに私は思えてならないのですけれども、この点についてはどうですか。
  121. 入澤肇

    入澤政府委員 まさに御指摘のとおりでございまして、土地問題、なかんずく農地問題は対策が非常に難しゅうございます。私ども規模の拡大、要するに担い手らしい農家に農地を流動化させて集積させていくということで一生懸命やっておりますけれども、いろいろな政策手段を講じているのですが、なかなか進まない。しかし、ひるんではなりませんので、今回は目標をさらに一層明確化させて、そして地域での話し合いを積み重ねて、担い手に農地を集積するという目的を粘り強く追求していきたいというふうに考えているわけでございます。
  122. 藤原房雄

    ○藤原委員 時間もありませんで、ちょっとはしょって申しわけございません。後日に譲りたいと思いますけれども、最近、酪農経営につきましても、乳価が決定いたしました。しかしそれは、限度数量が五万トン削られるということで、最近の報道を見ますと、二万頭ですか、乳牛を削減しようという計画のようです。安定経営のために搾る以外にない、いい牛を入れて相当努力しているわけでありますが、ただ頭数をふやしたということではなくて、それにはそうしなければならない必然性があったわけであります。  そういうことも考えあわせますと、私ども、いろいろな方々にお会いしますと、余り借金のない今のうちに離農しなければ、村を離れなければこの先どうなるかわからない、見通しのない農業にいつまでも力を入れていても、どこかで見切りをつけた方がいいのではないかという、私も、酪農というのは装置産業みたいなもので、負債が相当多いというのは認識の中にありましたけれども、最近は稲作農家に負債額が非常に大きいという現実も、規模の大きい北海道であればさらに負債額も大きい。こんなことで今苦慮いたしておるわけでございますが、こういうこと等を考えますと、若い人たちが、大きくならないうちにと言う、そういう心理もわかるみたいな気もいたしまして、しかし、こんなことがだんだん広がるとえらいことだなという気持ちもしているわけであります。  そんなことからしますと、実現性のある、そしてまた希望の持てる営農といいますか、最近は、農業大学を出られた方々で、Uターンとか農業につきたいという方が少しふえているようでありますし、また、農業大学校にも希望者が多いようにも言われておりますけれども、そういう方々が失望しないような手だてというものをこのときにしなければ、いつの日に農業を再生することができるか、こんな感じがしてならないのですが、ぜひひとつそれらのことについても十分に勘案の上この政策を進めていただきたいと思います。  特に中山間のことについてもお尋ねしなければなりません。時間がありませんからそこまでいきませんけれども、この新政策を進めるに当たりまして、規模の小さい農家の方々がどうなるのかということや、農村コミュニティーの崩壊ということにつながりかねないのではないかとか、この農村社会というもの、家族労働中心にしてやっております農村の集落というのは、やはり集落の健全維持ということが本当に大事なことだろうと思いますし、農地の出し手の方々が、これからのためとか、それからまた、いろいろな立場の方々がいらっしゃると思うのですけれども、それらの方々が安定的に、また、兼業農家が農地を出しやすいような環境整備、また、その後の生活環境というものもどうするかという前後のことも、農村社会ということもあわせて考えませんと、生き延びる方々の規模拡大ということだけにとらわれても、そこに残る老齢の方々を初めとします手放す方々の立場、これらの方々がどうなるのか、このこともあわせて、ぜひひとつこの政策を進める上において十分に配慮しなければならぬことだろうと思うのです。時間もありませんから、端的にひとつ大臣にお答えいただいて、終わりたいと思います。
  123. 田名部匡省

    田名部国務大臣 おっしゃるとおり、これからどういうふうに進めるかということは十分検討していかなければならぬ。  幸いなことに、私も随分視察をいたしましたが、非常に意欲的にうまくやっている農家人たちがたくさんおるのですね、いろいろなところで。ですから、そういう人たちの知恵もかりなければいかぬし、あるいは本当にモデル的に、先ほども御意見ありましたが、こういうふうにやればうまくいくのだというものをつくってみて、そうして農家皆さんに、ああ、こうやればうまくいくのだなということを身をもって体験していただくというか、そういうことも大事だと思うのです。いろいろなケースがありますので、私どもも、本当に魅力を持って、将来とも農業というのはすばらしい仕事だというようなことを、生産面、環境面、そうしたことから努力してまいりたい、こう考えております。
  124. 藤原房雄

    ○藤原委員 終わります。
  125. 平沼赳夫

    平沼委員長 藤田スミ君。
  126. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 新政策と三法案についてお伺いをいたします。  まず、先日の本会議で、私は、新政策では触れられていない、現在の農業危機をもたらした政府の責任についてただしたわけですが、宮澤総理は、「都市化の進展等に伴う農地の非農業部門への転換、あるいは農地価格が上がっている、いわゆる東京一極集中等、農業自身でなく、農業外部の環境の激変が大きく影響しているものと考えます。」こういうふうにお答えになられたわけですが、私は、これは全く政府の責任を認められなかったというふうに言わざるを得ません。  総理の答弁について言えば、東京一極集中を進めたのは一体だれですか。それは政府ですよ。そして、私たちは何度となくここで指摘をしてきましたけれども、今日、農民の展望を奪い、そして農業を荒廃させていったのは、自民党政府の進めてきた農産物自由化政策や、あるいは農産物価格の引き下げ政策ではないですか。私は、農政の責任者として、現在の農業、農村を存亡の危機に追い込んだ原因、責任はないというふうにおっしゃるのかどうか、もう一度ここでお伺いしたいと思います。
  127. 田名部匡省

    田名部国務大臣 自由化政策、自民党の責任だ、こういうお話でありますけれども、結果的に、だれもあの敗戦の状態の中からこんなに日本が発展するとは予想し得なかったことだったのです。高度成長でこれだけ、GNPでも世界第二位、所得も向上するという中で、それまでは農産物が足りなくても輸入できるほどの経済力というのはなかったわけですから、そういうことによってどんどん国民のニーズにこたえて農産物というものが入ってきたという背景はあると思うのです。それが責任だと言えば、そのとおり責任になりますけれども農業だけをとらえて見るというわけにはなかなか、農業も一体となってそういう経済動きの中で発展をしたりあるいは衰退をしたりという部分があるわけであります。  確かにおっしゃるとおり、この間総理が申し上げたことは、大変な一極集中、これは自民党が悪いのだ、こう言えばそうかもしれませんが、いずれにしても都会に職を求めて、何といっても賃金の格差があるものですからそこへ行った。それから一つには、一方では機械化が進んできたということによって、従来から規模の小さい農家の方々が機械化にどんどんいきますと、そんなに大量の人手が要らなくなった。出生率の低下もあった。要するに、いろいろな背景があってこういうことになってきたことは御案内のとおりだと思うのです。ですから、農地も非常に高くなった、そうなってくると、高い農地で野菜をつくるのはどうかというような考えもあって、農地以外に農家の方々もそれを利用しておったということ等が今日までの背景にあるわけであります。  そういうこともありますけれども、私どもは、何といっても農村社会というものを維持していかなければならない、その発展のためには何をなすべきかということで、先ほどから申し上げておりますように、農業に魅力がなければならぬ。労働が過酷だということであれば、そういうのを排除していかなければならぬ。所得の向上もなければ、他産業並みでなければ、やはりそこには魅力というものもないということでありまして、そういうことを排除すると同時に、まあ生産性を上げることですから、一方では嫁不足だということがありまして、そのためにはやはり環境整備、集落排水等もその一つでありますけれども、そういうことをやって、何とか今日的な農業から二十一世紀を展望した農業に展開をしていかなければならぬ。これはいつの時代でも、始まったらいつまでも同じことでいけるかどうかというのは、これは別でありまして、どんなことにも対応しながら、農村社会を守り、国土を守っていくという方策で進めていきたい、こう考えておるわけでございます。
  128. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 農民の前で、農産物輸入自由化政策国民のニーズにこたえて広がってきた、そんなこと言えますか。消費者の前でそんなこと言えますか。生産者も大変でした。消費者も、少なくとも六〇年代、そのころには食品の安全性という問題についてこんな不安はなかったのです。だれがそれをもたらしたのですか。私は大臣のお話を聞いていて、大臣幾ら二十一世紀を展望した云々というふうにおっしゃっても、それではとても信用できない。どんなことでも、失敗したら、なぜこれが失敗したか、そこのところを明らかにして、そして、それじゃこうしようと新しい手だてをつくっていく、それによって初めて人は信用するのです。  ところが、新政策には、日本農業の危機を書いています。農業白書にも書いています。しかし、どうしてこういうふうな問題が起こってきたのか、なぜ日本農業はここまで追い詰められてきたのか、そのことについての原因も責任も何にも書いてない。それでいて、太鼓を鳴らすように、二十一世紀の農業を展望して大いにやる気になってくれたまえ、こんなことを何ぼ繰り返したって、私はそれは余りにも無責任じゃないかというふうに思うのです。大臣、どうですか。
  129. 田名部匡省

    田名部国務大臣 委員の方の農家はどうかわかりませんが、私の青森県もかつてはもっとひどい、惨たんたる状態でありましたが、昨今では確かに農村も豊かになっております。ただ生活は、例えば所得が上がる方法とか、そういうものは農業では得られなくなって、他産業で収入を得ておるという二種兼業の皆さん方、そういう人もおって、収入総体で見ると、そんなに昔のように大変で学校にも子供たちをやれないという状態ではなくなってきた。  ただ、土地利用型の農業、ここに今問題があるわけでありますから、そのことを今回の新農政の中で発表いたしたわけでありますけれども、いずれにしても、おっしゃることで反省を申し上げろ、こういうことになると、経済の発展がなくて、外国に何でもかんでも売るということがなくておれば買うこともなかったわけですから、果たしてそれがよかったのかどうか。その辺がやはり大いに問題だとすれば問題としてあったかもしれませんけれども、しかし、かつて日本の、農業だけで生活しておった多くの方々、多かった時代、もうどんなになっても生活が楽にならなかったわけです。そういうことを見れば、功罪それぞれあったと思いますけれども、決して私たちは間違った方法だとは思っていないし、どうしても悪い分野があれば、そこは手直ししてもっといい方向努力をしていくということがいいのではないか、こう考えております。
  130. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 大臣のおひざ元青森でも、リンゴの輸入自由化で今本当に大変ですよ。台風のときよりも大変なんだ。農家の方が一生懸命努力をして一定の生活の向上があるのは当たり前のことです。本当に農業、農村を破壊した原因である農産物輸入自由化政策農産物価格の引き下げ政策をそのままにしたまま新たな対策をとろうとしても、それは失敗することは言うまでもないことだと私は思うのです。今回の新政策は、日本農業の現在の危機を打開するのではなく、危機に一層拍車をかけるものであるというふうに私は指摘しましたけれども、それは今の大臣の非常にあいまいな御答弁からも明確だというふうに言わざるを得ません。  そこで、法案の中身に入ってまいります。農業経営基盤強化のための関係法律整備に関する法律案、この問題について聞きますが、この法案の一つの問題点は、農業生産法人に対して企業の出資を認める農地法の改悪を進めようとしていることであります。これは極めて重大であります。本会議でも指摘をいたしましたが、このことによって、インディカ米を品種改良しているキリンビールや、ハイブリッド米を開発している三井東圧、バイオを利用して初夢という品種を開発した三菱商事、三菱化成、こういうところが農業生産法人に参入してくることになるわけであります。  大臣、たとえ出資制限があったとしても、大企業経済力というのは農業生産法人に参加している農家の比ではありません。農家に対する便宜供与、あるいはさまざまな経済力に物を言わせた影響力の行使によって農業生産法人を支配していくことはいとも簡単な話ではありませんか。いかがですか。
  131. 入澤肇

    入澤政府委員 今回の法律改正におきましても、企業が農地を取得し、農業に一般的に参入することにつきましては、投機的また資産保有的な農地取得のおそれがありまして不適当であるというふうに考えまして、そのような内容の農地法の改正をすることは考えておりません。  一方で、新政策におきましては、農業生産法人を広範に育成しようではないかというふうなことが指摘されたわけでございます。農業生産法人の経営実態を見ますと、事業が農業及びこれに附帯する事業に限定されておりまして、通年の安定的な雇用だとか、あるいは生産物の製造、加工等の分野で分社化をせざるを得ないというふうなことが指摘され、そうなりますとコストは余計かかるという具体的な問題が生じております。さらに、構成員につきましても、法人に農地の権利を提供した個人または法人の事業に常時従事する者に限られておりまして、農業生産法人の財務基盤の強化等に支障が生じているのではないかというふうな指摘があったわけでございます。  そして、ここら辺は農地法の根幹にかかわる問題も含んでおりますので、慎重の上にさらに慎重を重ねまして検討したわけでございます。そして、今回この法律の中で農地法を改正し、農業生産法人の要件につきまして事業と構成員の範囲の拡大を行おうとするものでございます。  これにつきましては、事業につきましては、農業と一次的な関連を持ち、農業生産の安定発展に役立つような事業、具体的には、ほかで生産されたものも含む農畜産物の加工、貯蔵、運搬、販売や農業生産に必要な資材の製造、農作業の受託を行えるように拡大する。構成員につきましては、農業生産法人の経営の安定発展に積極的に寄与すると考えられる者、具体的には、農地の現物出資の事業を行う農地保有合理化法人、農協、農協連合会…(藤田(ス)委員「質問したことに答えてください」と呼ぶ)今答えます。一定の議決権の制限のもとで、ここが先生の質問に答えるところでございますけれども、法人と産直契約を結び、あるいは法人に農作業を委託している個人、あるいは品種登録を受けた種苗の生産のライセンスを法人に供与している者、こういう人たちを構成員に加えることにしたわけでございます。  このような改正を行いましても、企業農業に対する支配がないように、企業の有する議決権につきまして四分の一以下、かつ、一企業で有する議決権は十分の一以下に規制するということ、それから、業務執行役員の過半が農作業に主として従事する構成員でなければならないという要件、これは業務執行役員要件でございます。これは引き続き維持する。さらに、許可処分時の要件審査、その後の実態把握、報告徴収、立入調査、さらには要件を欠いた場合の是正措置、それから国の買収という一連の対応措置が整備されておりまして、十分な監督体制にあります。したがいまして、今回の農業生産法人の要件の緩和が企業による農業経営の支配につながるものではないというふうに考えておるわけでございます。
  132. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 認識が非常に甘いと思うのです。私は、ここにロイヤルオーナーズファーム雫石という、大臣ごらんください、こんな立派なパンフレットを持ってきました。これは農地つき住宅の販売のパンフレットです。よろしかったらごらんください。  この開発には、当初から丸紅が、農場建設のマスタープランの作成、そして新規就農者の募集にかかわりまして、実際の販売は、これも大手ですが、三井農林住販が行っているものであります。これは、昨年のNHKの特集「今、ムラが買われている」という番組の中でも紹介されましたので、御存じの方があるかと思います。この住宅は、農地つきですから、本来農業に従事する人にしか売れないものです。そしてその住宅を買うには、農業をするわけですから、住所も移転しなければいけないし、現に農業を営まなければならないわけです。  そこで、利益追求の大企業は何をしたかというと、農地法を平然と踏みにじりました。そしてお客さんにこう言ったのです。私は農業をする気はありませんの、だけれどもこれはちょっとなかなか買い物だなと思っていますと言ったら、そうしたら、お客さん、住所移転は選挙と一緒なんですよ、いっとき籍を移しておけば、またもとに戻せばいいのです、こういうことを言った。また、お客さんのうちの家族のだれでも一人だけ住所を移しておけばいいのだ、それで大丈夫なんだ、こういうセールスをやったのです。これはまさしく農業を営む者が農地を取得するという農地法の根本原則を踏みにじるものじゃありませんか。このようなことが行われていたことについて、農水省、間違いありませんね。
  133. 入澤肇

    入澤政府委員 若干長くなりますけれども、あらかじめ。  この事案に関する農地は、昭和五十八年の十二月にダムの水没農家への売却を前提に岩手県公社が農地保有合理化促進事業として買い入れたものでございます。その農家が資金調達が困難となったということで、別の受け手の農家を求めて鋭意努力してきたところでありますけれども、立地条件等の問題から受け手農家が確保できない、今後とも合理化事業の売り渡し要件を満たす売り渡しは困難であるという判断から、目的外処分ということを行うこととして、平成三年の十一月に東北農政局長の承認がなされたものであるというふうに承知しております。  これにつきましてはこのような経緯がございますけれども、販売されるコテージ村農場の各区画を取得するためには農地法三条の許可が必要でございます。本件の場合にも、雫石町農業委員会におきまして、農地法第三条第二項各号の要件、すなわち、みずから取得後耕作の事業に供すべき農地のすべてについてみずから耕作する、それから、効率的に耕作の事業を行い、みずから必要な農作業に常時従事する。かつ取得後の経営面積は、原則として都道府県の五十アール以上であるということにつきまして厳正に審査するよう、岩手県を通じて雫石農業委員会を指導しているところでございます。
  134. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 要するに、岩手県を通じて指導された、それから三井の農林住販にも指導をされたわけですね。だけれども、張本人、これは丸紅なんですよ、丸紅にはどうされましたか。  この契約書を、開発を進めたときの四者協定書というのがあります。それの第五条に、「岩手県の農地管理開発公社は、丸紅の企画開発ノウハウ等を信頼し、コテージむら農場の入場者募集について丸紅に対し別途委託する」、こういうふうに書いてありますよね。丸紅の責任は明確ではないでしょうか。現地の話では、丸紅は既に三十億を投資していると言われますが、バブルの崩壊で、焦って農地法まで踏みにじるセールスを進めさせたのではないか、こういうふうにも言われています。丸紅の責任を明確にすることが大事なことじゃないですか。
  135. 入澤肇

    入澤政府委員 この事案と丸紅株式会社の関係につきましては、岩手県農地管理開発公社が、事業の実施に当たりまして、農場の建設から入居者の募集に至る一連の業務を平成二年五月二十三日に丸紅に、基本契約に基づきまして委託契約をやったということでございます。  土地の権利関係につきましては、現時点におきましても、農地については岩手県農地管理開発公社が有し、宅地については雫石町の所有となっておりまして、丸紅が所有する土地は存在しておりません。したがいまして、岩手県農地管理開発公社と丸紅との関係につきましては農地の権利移動となるものではない。そういうことで、農地法の規制にかかるものではなく、丸紅に農地法上の責任が生ずる余地はございません。
  136. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 丸紅が農地を持っているなんて言ってないのです。丸紅が農地法を無視したようなセールスを行うように指導したということについて、その責任を問うべきじゃないかということを言っているのです。
  137. 入澤肇

    入澤政府委員 私のところにパンフレットがあるのですけれども、それによりますと、農地法を無視した販売ということは読み取れないのであります。「ロイヤルオーナーズファーム雫石農場入場者条件」というのがございまして、「次の要件を満たすことが必要とされます。」とありますが、一つ、「農地を取得しようとする者が農作業に常時従事し自ら農業経営を行い、かつ、農業に対する意欲と能力を有する者。」それから二つ目、「雫石町に住宅建築・住民登録をしている者。」三つ、「農業経営において、作目に係る通常の肥培管理、及び農機具の稼働等、農地の取得後その農地のすべてを最も効率的に利用するため営農計画書を提出した者。」「即ち、ファームを取得しようとする人は、以上の要件を踏まえ雫石町農業委員会に農地取得の申請をし、その許可を受ける必要があります」というふうに書いております。
  138. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 そんなことは百も承知なんです。だけれども、たまたま私たちの方の関係者が察知したからこういう農地法違反を堂々とやっているということが明らかになった。そうでしょう。私たちの関係者がここの農地の問題について問い合わせをしてあれしたら、さっき紹介したように、そんな農地の農業をまじめにやっていくなんて、そんなふうに考えぬでもいいんですよ、選挙のときと一緒ですよ、あの要領でやってください、そういうふうに丸紅が言える位置にあるのですよ。  これは、適格者審査というところは丸紅の東北支社が責任を持っていますね。ここをパスしたら、もう早速これで大体決定したようなものです。そこから入場者選考会議というところへずっと進んでいくわけですが、申込者は、適格者審査に合格をしたら、それからようやくその太鼓判をもって農業委員会が判断をしていくということで、もうパスしたような話になっているのです。そして、そのパスさすについて農地法の違反行為が行われていたわけであります。この造成工事をするに当たって、山を切り開いて農地をつくる農地改良事業を、先ほども紹介ありましたが、ずっと行ってきました。そこには国や県の経費、つまり国民の税金も費やされているわけです。そうしてできた農地を転用して宅地に売る。全く至れり尽くせりで丸紅に奉仕しているわけです。  大臣、どういうふうに思われますか。大企業にとって農地法なんてそんなものはどうでもいいんです。利益追求のためには何でもするんです。それが企業の体質なんですよ。この事業では丸紅が生産法人に出資しているわけではありません。この町には農協や農業委員会は厳然と存在しているのです。それでもこれだけの影響力を行使することができるのです。こういう事実を見ても、生産法人への企業の出資の道が開かれたら歯どめなく突き進んでいくというふうに思われませんか。
  139. 入澤肇

    入澤政府委員 丸紅がどういうふうな入植者の募集をやったかということにつきましては今先生が御指摘のとおりでございますけれども、農地法の許可はそれと関係なく厳正に雫石町農業委員会が行うことになっておりますので、申し上げておきます。
  140. 田名部匡省

    田名部国務大臣 具体的な事項でありますのでよく承知をしておりませんが、今局長お話しのとおり、条件としては農業をやるということでありますから、やらない人はそれを求めるわけにいきませんし、その判断はだれがやるかということは地元の農業委員会等であろうと思うのでありますが、いずれにしても、いろいろどうするかということを考えて、町でも計画を立てる段階で、あるいはアイデアとして相談をして、ではこういうふうにやったらどうかとかいろいろ言われておやりになったのかな、こう思いますけれども、いずれにしても法律に触れることについては、私どもはそれは認めるわけにはいかぬというふうに考えております。
  141. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 雫石の問題は、本当に完全失敗ですね。九十五件募集しているけれども、いまだに一件しか来ていませんよね。私は、ここに非常に深刻な問題と同時に重要な教訓が含まれているというふうに思うのです。  例えば、この農地つき住宅販売を進めるに当たって、農家から農地を集め、そしてその販売を手がけていったのは農地保有合理化法人である岩手県農地管理開発公社です。今回の新法でも農地集積中心機関としてこの合理化法人は位置づけられて、さらに市町村公社まで認めるというふうになっているわけです。  質問ですが、農水省、農地つき住宅を売るための農地集積まで農地保有合理化法人に認めさせるということになるわけですか。
  142. 入澤肇

    入澤政府委員 そういうことは考えておりません。
  143. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 この雫石町の基本計画書を見ますと、「都市と農村を結ぶコテージむら農場」の建設として次のように書いています。「国においても地方振興開発整備を推進するなかで、都市と農村等の地域間交流の促進も重要視し、さらには、ふるさと創生も事業化の段階にある。」「活力ある新しい田園社会を建設しようとするものである。」、今回出されたもう一つの法案であります特定農山地域における農林業等活性化のための基盤整備促進に関する法律案、全くこの中でうたわれている事業の先取りのような姿がこの中に見えるわけです。  今回の法案では、市町村が計画を立て、そして公示をすれば、開発規制は全部外れるばかりか、各種の税制措置やあるいは地方債の起債など、至れり尽くせりの開発促進法になっているわけですが、政府としては、このような農地つき住宅販売もこの法案でやれると考えていらっしゃるのですか。農山村の方です。
  144. 入澤肇

    入澤政府委員 恐らく、特定農山村法案の中の農林地所有権移転等促進事業のことを指しているんだと思いますけれども、これは、中山間地域の地勢条件にかんがみまして、最適な農業的土地利用計画を追求し、その上で最適農業計画を実現していこうじゃないかということでございまして、活性化に必要な施設用地への農林地の転換とか、あるいは営農意欲が高い農業者等による代替農用地等の取得があわせて行えるように、権利移転を一括して処理することができるように考えたものでございまして、農地つき住宅の開発を予定するということではございません。
  145. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 のせるというものではないということがわかりました。ただ、雫石のようなやり方を、特定農山村法を使ってすべてをやるのは無理であっても、管理棟やとか集会所だとかそういうふうな施設は、起債を使ってやることも決して不可能な問題じゃないというふうに私は考えます。  次の問題に移っていきます。  次に、この新政策における市場原理、競争条件の一層の導入の問題についてお聞きをしたいと思います。  重大なことは、市場原理、競争原理の一層の導入が米の流通自由化や食管法の改廃につながる問題であります。現に政府は、米の流通自由化をどんどん進めていますが、このままでは大変な問題、事態になるんじゃないかと言わざるを得ません。  その関係で具体的に申し上げますが、石川県の野々市町における小売業者米屋、米屋が米屋という看板つけるのはちょっとけったいですが、米屋なんです。米屋のやみ米摘発問題についての問題です。  これは大変重大な問題は、石川食糧事務所が当初、政府米のやみ流通について、それを隠していたばかりか、そのやみの政府米の販売を認めてしまった点であります。食糧庁は、もうそこには処分も済んだということで、どうも臭い物にふたをしようとしているわけでありますが、さまざまな疑惑が現地では取りざたされておりまして、再業務監査をぜひ行うべきである、こういう強い意見が出ております。  その一つは、この大量なやみ米を保管していた営業倉庫の持ち主である北陸通運、この北陸通運というのは政府米の指定運送業者であるわけですが、この北陸通運がやみ米の運送に携わっていたんじゃないかという問題。それから、やみ米の中にどうもカドミウム米があって、それが主食転用されていたんじゃないかということが言われているわけです。それらの事実とそれから再業務監査について明らかにしてください。
  146. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 石川県の野々市町の株式会社米屋の不正規流通問題につきましては、平成四年十月十六日に、氏名は不詳でございましたけれども、情報提供を受けまして、石川食糧事務所及び石川県庁の職員が調査を行ったわけでございます。その結果、不正規流通であるということが判明いたしまして、内容につきましては、平成三年十月から平成四年十月にわたりまして未検査米等の不正規仕入れを七百十一トンやっていたと・・(藤田(ス)委員「もう少し大きな声でやってください」と呼ぶ一七百十一トン、他県業者等への不正規販売を百二十九トン行っていたことを確認いたしました。その際、政府米が三・五トン、未検査米が九十五トンを現物により確認いたしました。  その際、今御指摘がありましたけれども、私ども自身が事実関係について伏せていたということではございません。やはりこういう検査、調査というのは権利関係にも及ぼすところがございますし、また、私ども、強権を持って調査をするわけでもございませんので、慎重にやっていたというのは事実でございますけれども、それを抑えていたということではございません。  それから、御指摘がありましたように、これらの米が、北陸通運は倉庫業者でもありまして、その倉庫の中に確認されたわけでございます。北陸通運に対して問いただしたところによりますと、株式会社米屋の依頼によりまして不正規流通米とは知らずに保管していたというようなことでありました。しかし、これに対しましては、口頭で、米の保管については十分注意を払うよう指導を行ったわけでございます。  また、同社は政府米の運送に携わる業者でもありますので、引き続きこの件に関しまして、関与していたかどうかについて、今調査を行っているところでございます。その結果に応じまして適切な措置をとりたいというふうに考えております。  それから、この中にカドミウム含有米があったのではないかというような話でございますけれども、この保管されておりました倉庫は一般の営業倉庫でございます。米以外の物品も保管されていたのは事実でございますけれども、米につきましては、政府米あるいは正規に仕入れた米あるいは未検査米等が確認されたわけでございますけれども、それ以外の米が入っているという袋は発見されておりません。また、カドミウム含有米が主食用に流されたという報告も受けていないところでございます。  なお、株式会社米屋が未検査米の売却と関連いたしまして石川県の農業試験場に調査を依頼して分析を行った結果について、私どもが報告を受けておりますのは、主食用として売却することが適当でない濃度以上のカドミウムが検出されていないというふうに伺っているところでございます。
  147. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 ちょっと私聞き漏らしましたが、北陸通運の問題については調査をしていくというふうにおっしゃったんですか。倉庫業を営んでいるということは、私、よく知っていますがね。北陸通運の伝票を調べるというような手だてをすれば、全くわけなく、それが運送にも携わっていたのか、ただ倉庫だけなのかということもはっきりするわけですが、北陸通運の説明をうのみにされたんじゃ困りますからね。ただ、それを調べると言うんだったら、それでいいんです。  もう一つはカドミ米ですが、これは現場で撮られた写真なんです。ごらんください。ぴかぴか光って、何の印もないんです。どうぞ長官に渡してください。横の米と比べてください。普通の米は、未検査米であろうと政府米であろうと自主流通米であろうと、袋にちゃんとこういうふうに印刷が入っています。関係者の話では、全く表示のない、てらてら光っている米というのは工業用と想定される、富山県では工業用ということになるとカドミ米ということになるんだ、こういうふうに指摘をされていらっしゃるわけです。現場で撮ってきた写真ですよ。その点についてもう一度はっきり言ってください、大臣
  148. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 先ほど申し上げましたように、北陸通運につきましては運送業者でもありますので、それにつきましてどういう関与をしていたのか、現在調査させているところでございます。その結果を見て適切な対応をいたしたい。先ほど申し上げたとおりでございます。  それから、米につきましては、今の写真だけ見て私は判断する能力は率直に言ってございませんけれども、私どもが県食糧事務所の検査によって承知しておりますのは、米については、正規に仕入れた米あるいは不正規に仕入れられた政府米及び未検査米等を確認したが、それ以外の米が入っていると見られる袋は見られなかったというような報告を受けておるわけでございます。  また、カドミウムを含有する米が食用に回されたというような報告は受けておりません。
  149. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 調べてくださいますか。調べるということだけおっしゃってください。
  150. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 今までも調べて、私どもはその調査が正確だと思っておりますけれども、さらに確認いたしたいと思います。
  151. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 確認ではなく、調べていただきたい。この写真をどうぞ持っていってください。  大臣政府米がやみ流通しているということだけでも本当にびっくりするような話なんです。  そこで、私は食糧庁に確認をしたいと思いますが、政府米は卸間取引を含めて全量管理しているわけですね。そして、卸間取引についても事前承認制というのをとっていますね。なぜ事前承認制をとっているのですか。簡単に説明してください。
  152. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 県間卸間の売買につきましては、供給計画に基づきまして政府が買い受けました米穀につきまして、販売の見込み違いなどにより結果的に売れ残る余裕米穀につきまして弾力的に対応するため、平成二年四月から認められた制度でございます。  それにつきましては、御指摘のように、食糧事務所長の承認にかかわらせておるわけでございますけれども、その確認の考え方につきましては、申請されました米穀を、県間卸商売買により処分せざるを得ない事情があること、さらにまた、その処分によりまして県内消費者への米穀の供給に支障を来さないと判断されるものについて承認するということにいたしております。
  153. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 資料を配ってくださいますか。  今皆さんにお配りをした資料は、米の卸業者の上部団体の一つである全糧連が毎月行っている卸商売買取引会の資料であります。卸屋さんの上部団体である全糧連に毎月一回集まりまして、つまり取引会をやっているのです。入札をしているわけです。  平成四年一月二十三日のこれを見ますと、公然と政府米がここで扱われているのです。一番表の表紙で、三類ムツホマレ、三類ムツホマレ、四類ムツホマレ、こういうふうになっていますね。それから、ずっと中をめくっていただきましたら、右の端の方で政府米政府米とずっと書いてあるのが、コシヒカリ、初星、フクヒカリ、日本晴、三類、三類、五類、五類というふうに並んでおります。ずっとこれはそういうことで、自主流通米と同じように政府米が扱われているという資料であります。政府米の販売依頼は平成四年一月二十三日で三千九百六十トン、また、平成五年二月二十六日の分は、政府米の販売依頼が五千九百トンに及んでおります。  関係者の証言によりますと、政府米とは書かれていないけれども、銘柄の前につけられている、ちょこっとしたコメ印みたいなのがついているのが政府米だということで、それは確かに二類、三類、五類の自主流通米なんてありませんから、だから政府米ということになるわけです。これらは、関係者の話では、事前に承認されているわけじゃない、事前承認を受けているわけじゃない、政府米の市場が形成されているんだ、こういうふうに言っています。実際、値段を見てください。自主流通米より政府米価格の方がはるかに高いものがあります。自主流通米より高いもの、こういうことによって卸業者はぼろもうけですね。これでは政府米の全量管理なんて崩れてしまうじゃありませんか。いかがですか。
  154. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 先生が今配付されました資料につきまして、たまたま先ほど、私ども目に入る機会がございましたので、早速全糧連に照会させたわけでございます。  全糧連の事務方の話によりますと、政府米としての表示というのは適切ではないというようなことを報告を受けています。それで、政府米の表示が適切でないということから、先生御指摘のありましたように、最後の方にコメ印をつけているのは、政府米でないものを政府米としていたというようなことをしているので、むしろ、この表示自身が適切でないというようなことと私どもは承知しておるわけでございます。  ただ、事務方の話でございますので、なお責任ある者に聞きまして、その辺の事情について十分調査、指導はいたしたいと思っております。
  155. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 適切ではない、こういう場所で扱うのが適切ではない、それから調査を進めるということですから、それはぜひ当然のこととしてやってもらわなければなりません。  私はこの場所で、あれは昭和六十三年に流通改善大綱が出されたときに質問をしました。あのときは、米の卸間の流通を認めて、小売店の小さいのをつぶしていくという内容のものでして、随分ここで論戦をしたのです。以来、ずっとこういうふうに卸間の流通というのが激しくなって、公然と全糧連の取引会の場で政府米が扱われるようになって、しかも、これから計算したら、年間四万トンから五万トンぐらいのものが扱われて、しかも自主流通米よりも高い政府米があらわれる。  生産者はどうですか。生産者は十五年も前の米価で据え置かれて、一万六千数百円の行政価格で縛られて、そしてもっと米価を上げてほしいと言っているのに、その政府米が取引会でこれだけの値になってずっと流れていく。消費者の方は政府米なんて全くわからない。標準価格米は末端までありますから別ですがね。けれども、そのいわゆる政府米というのはどれか、本当にわからない、こういうようなことになっているわけです。  これではもうとても、いいかげんな処理の仕方では私は承知できません。もう一度重ねて政府の厳しい対応を求めたいと思いますが、いかがですか。
  156. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 私が先ほどお答えしたこと、ちょっと若干誤解されているのではないかと思いますが、私が申し上げましたのは、ここに政府米とされているもの、これが表示が適切ではないということで、政府米がここで取引されたということではございません。  政府米の県間卸商売買につきましては、三米穀年度で千七百トン、四米穀年度では、三年産米の不作の影響がありまして約二百トン程度というのが実態でございます。全糧連自身も、この表示方法が適切でないというようなこともありましてコメ印にしたわけでございまして、別段これが、政府米がここでこういう格好で取引されたということではございません。適切でないのは、表示の仕方が適切でないということを申し上げたわけでございます。
  157. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 いよいよ不思議な話です。もう一度調べてください。電話一本でそういうふうに、きょう、こんなふうなものが配られることになったけれども、おまえさんのところやっているか、そんなもの、やっていますと言うような人がありますか。皆さんの説明でも、政府米の扱いについては、事前承認制という制度のもとできちっとやらなければいけないということになっているにもかかわらず、こういうものが行われているじゃありませんか。別に私は、これは全く根も葉もない、自分で勝手につくったんじゃないのですよ。調べてください。  この間の石川食糧事務所の問題も、米屋さんの問題でも、どうも態度がおかしいというような疑問が広がっているのです。なぜかという問題を私たちはずっといろいろと追及してきました。そうしたらここに行き当たったんです。なるほどそうかということにならざるを得ぬから聞いているのです。
  158. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 残念ながら、あの資料がああいう取引会に出されておるのは事実でございますけれども、あの資料自身の表示の仕方が間違ったわけでございます。政府米自身があれだけあそこで扱われておるわけではございません。これは私、電話一本じゃなくて、ああいう資料を目に受けましたので、全糧連で当時いました、そのときにいました米穀部の次長を呼んで、担当課長の方から問いたださせたわけでございまして、私ども、先ほど申し上げましたように、それは事務方の話だから、さらに責任ある人について調査したいとは思っていますけれども、これだけの量が取引されたのではなくて、あくまで表示の仕方、これは、商売の仕方といえばいろいろありますけれども、そういうものでございまして、取引されたというふうには承知いたしておりません。
  159. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私も、持ち込まれたと言っていますが、取引されたとは言ってません。それもここに正直に書いていまして、例えば、持ち込んだのは一千俵だけれども、その中でそれに対する申し込みがあったのは百俵だ、こういうふうに書いていますから、だから、その持ち込まれた量を言っているのです。でも、実際に認められているわけですよ、長官。悔しいでしょうけれども、そういうことなんです。  だから、どうぞ御調査ください。これが本当にある話なんですから、それも認められたわけですから、ぜひ調査をしていただきたい。こんなことが横行したら、大臣、本当に大変でしょう。いわゆる市場原理、競争条件の導入の、これはそういうことなんですか。私は、認めたら、そういうことなんだなというふうに思うのです。食管法がそこから崩れていくでしょう。食管法って何ですか。米の輸入自由化の堤防でしょう、それを阻止する。唯一、この法律がそういうことでしょう。その法を守るお役所がそういう問題をあいまいにされてはならないわけです。最後に一言、大臣から御答弁をいただいて、私は次の質問に移らなければなりませんから、簡単で結構です。
  160. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 私どもが冒頭から申し上げていますように、責任ある者からさらに聞きたいとは申し上げておりますけれども、このこと自身が先生おっしゃっておるような事実関係とは違うというように認識いたしております。大体、四年産米が不足して政府米が足りない、それがこういう格好で出てくるということは、常識的にも考えられません。なお調べたいと思いますけれども、御指摘のような事実ではないというように私ども思っておるところでございます。
  161. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 ないかあるか、もう一度よく調査をしてから言ってください。こんなことがあってはならないことだから申し上げているわけです。  残念ですが、次の問題に移ります。あわせて二点お伺いいたします。自主流通米対策費の問題です。  この問題は、昨年来、ニュース23で取り上げられまして大きな問題になっておりますが、その一つは、自主流通米対策費に対し、これはもう農民に直接渡すべきもので、自主流通米の共同計算に入れるのはおかしいではないかという議論であります。極めて筋論です。このような問題が生じる背景には、自主流通米の共同計算が極めて不明朗であって、農民に不信感が持たれているわけです。また、政府の説明では、自主流通米の対策費は仮渡金として全額事前に渡されているんだ、こういうふうにおっしゃいますけれども、しかし、それが明細として農家に明らかになっていない。だから、農民にはもらっているのかどうかわからないという問題があるわけであります。直接渡すということが現在は無理というならば、農民にきちんと支払われていることがわかるように、シールつきのはがきなど、支給額を通知するシステムにするべきじゃありませんか。これが一つです。  もう一つの問題は、自主流通米の共同計算についての不信感。これは新聞報道でも、価格形成機構を舞台にした独禁法違反容疑での調査においても、経済連が卸売業者に対してリベートを払っていたことが判明したわけですが、そのリベートの原資というのは、共同計算の金、もとをただせば生産者のものなんです。それを勝手に、リベートだとか販売促進費として処分してしまう。こういうことは、他用途利用米のときの共同計算でもそうでした。六年間に実に二百十八億の利益を上げておきながら、それらを純水酒の宣伝費や、あるいは販売促進費の名目のリベートに使っていたわけです。こういうような共同計算の不明朗な実態を正し、生産者に使途を明確、詳細に報告させる、不必要な経費はどんどん削減をして、極力生産者に還元する、それが今最も求められていることではありませんか。二点お伺いしました。
  162. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 自主流通米に係る共同計算の内容につきましては、かねて来、生産者に周知するよう全農等農業団体を通じて指導してきているところでございますけれども、今後ともそういう指導をやっていきたいと思います。四年産米からは、全農等でも経済連等に対しまして、自主流通米の共同計算による精算に際しまして、精算内容について内部監査を実施する、あるいは結果につき自主流通米委員会または理事会に報告して承認を得るとか、上部団体に報告する等の改善策を講じるとともに、その精算結果について生産者に報告するよう指導していると承知いたしておるところでございます。  ただ、この際私が一言申し上げたいのは、現在、三度の国会決議によりまして国内産で自給するという原則で、それぞれ用途、価格の違います自主流通米、政府米あるいは他用途米の生産を歯を食いしばるような努力の中で系統あるいは生産者にやっていただいておるわけでございます。そういうことから、それぞれの自主流通米、政府米のバランスある出荷を図るというため、県によりましては、自主流通米及び政府米の共同計算をしている例や、あるいは自主流通米の販売代金の一部を拠出して政府米代金に上乗せして生産者手取り額を調整する、いわゆる共補償している例があることも承知しております。また、ごく一部の県でありますけれども、農協レベルで、他用途利用米までも含めました自主的な共同計算している例もございます。自主流通米対策費もそういう中に組み込まれてやっているわけでございます。  これらにつきましては、系統の意思決定の中で、県中央会、経済連、農協等で協議を行いながら、それぞれの組織の総意のもとで行われておるものでございまして、そういうものを含めまして実態を明らかに、生産者に理解をしてもらうような措置を今後とも講じるよう、努力していきたいと思います。
  163. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 できるだけ透明感を高め、そして生産者が受け取るべき金はきちっと、ああ、これだけ受け取ったんだなということがはっきりする、あるいは、共同計算の中に入っていたら、それはこういうふうに使われたんだなということで、やはり納得できるように明らかにするというのは、これは当たり前のことでありまして、御答弁で、例の、私がシールつきのはがきでも送って御本人によくわかるようにやるべきだということについても、今後とも指導するということでございました。相手のあることでございますので、自主流通対策費の問題をこれ以上告さんに御答弁をいただこうと思ったって無理ですので、今後とも指導するというそのお言葉を、私は多分に含みを持って受けとめておきたいと思います。  大臣、私は、新政策の中で市場原理、競争条件の導入ということが掲げられて、そしてそれがその先どうなるかということに実際不安を持っています。これは、行き着くところは米価の自由化、それから流通の自由化、そしてその先には米の輸入自由化、そういうところに行くのではないか、そういう不安を持たざるを得ないわけです。だから私は、現在政府米でさえも不正規に流通されている、しかも全糧連という場所でこういう資料が出てくる、こういうことで私は質問をいたしました。  大臣、その市場原理の導入、競争条件の導入ということが、結果はそういうことにならないと言い切れますか。
  164. 田名部匡省

    田名部国務大臣 多くの方々から私も指摘を受けるのでありますが、国内では、より自由にした方がいい、こういう御意見の人も大分あります。私も前々から、どうも政府で米の値段を決めるというのは本当にいいのだろうかという疑問を持っていまして、あるいはもっと高くなるものを安く決めているということはあるのではないだろうかという疑問が常にありました。  市場原理を導入して、非常に値段もよく、農家人たちも手取りが多い。喜んで一生懸命つくる。それで、いいものは高いということは当然でありますから、例えば安全な米をつくる、安全なものをつくったらやはり高く売れる、それをまた消費者が求める。あるいはササニシキ、コシヒカリにしても、どうも全部一律、コシヒカリは幾らということは、これにも疑問を持っていまして、新潟だって宮城県だって県の中では本当にいい農地でできたものはすばらしいものができているし、そうでないところもあるわけですね。それでもみんな同じ価格というものはどういうものだろうかなという考えを持っていまして、努力した成果というものが消費者に認められるということが一番いいんだろう。特に、ブランド物をつくって本当に顔が見えて、あの人の米はすばらしいという評価を与えてやることによって農家人たちも励みになるし、意欲も出てくる。いいものをつくっても同じ値段では余りそれ以上の努力がない。そういうこと等を含めていろいろやってみますと、余りきしきしに規制をするということもいかがかな、こう思います。いろいろ先々の御心配をしておるようでありますが、いい方向にとらえてやるということで私どもは指導していきたい、こう考えております。
  165. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 もう質問ではありません。ただ一言だけ。  農林水産大臣ともあろうお方が、食管法そのものに全く反するような、政府で米を決めるのはどうかななんというようなことは、これから一切言わないでいただきたい。あなたは今先頭に立って米の輸入自由化反対で頑張ってもらわんならぬ人ですから。それから、いみじくも、消費者はつくる人の顔が見える米を求めている、そのとおりです。だから海の向こうでつくったような米を入れないでほしい、そういうことを求めているわけであります。  疑問が大臣の口からいっぱい出ましたけれども、私は、今大臣が疑問を持たれるなら、食管法が政府の中から形骸化されているという事実について大いに疑問を持っていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。
  166. 平沼赳夫

    平沼委員長 次回は、明二十一日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四分散会