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1993-02-23 第126回国会 衆議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年二月二十三日(火曜日)     午前十時一分開議 出席委員    委員長 平沼 赳夫君    理事 金子徳之介君 理事 萩山 教嚴君    理事 御法川英文君 理事 簗瀬  進君    理事 柳沢 伯夫君 理事 佐々木秀典君    理事 前島 秀行君 理事 宮地 正介君       岩村卯一郎君    上草 義輝君       内海 英男君    大原 一三君       久間 章生君    高村 正彦君       鈴木 俊一君    谷  洋一君       中谷  元君    鳩山由紀夫君       星野 行男君    松岡 利勝君      三ッ林弥太郎君    村岡 兼造君       有川 清次君    石橋 大吉君       遠藤  登君    志賀 一夫君       田中 恒利君    辻  一彦君       野坂 浩賢君    鉢呂 吉雄君       堀込 征雄君    山口 鶴男君       倉田 栄喜君    藤原 房雄君       藤田 スミ君    小平 忠正君  出席国務大臣         農林水産大臣  田名部匡省君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      上野 博史君         農林水産省経済         局長      眞鍋 武紀君         農林水産省構造         改善局長    入澤  肇君         農林水産省農蚕         園芸局長    高橋 政行君         農林水産省畜産         局長      赤保谷明正君         農林水産技術会         議事務局長   貝沼 圭二君         食糧庁長官   鶴岡 俊彦君         林野庁長官   馬場久萬男君  委員外出席者         外務省経済局国         際機関第一課長 北島 信一君         大蔵省銀行局中         小金融課金融会         社室長     浜田 恵造君         農林水産委員会         調査室長    黒木 敏郎君     ――――――――――――― 委員の異動二月十九日  辞任        補欠選任   岩村卯一郎君    石原慎太郎君   久間 章生君    唐沢俊二郎君   鈴木 俊一君    原田  憲君   谷  洋一君    松永  光君 同日  辞任        補欠選任   石原慎太郎君    岩村卯一郎君   唐沢俊二郎君    久間 章生君   原田  憲君    鈴木 俊一君   松永  光君    谷  洋一君     ――――――――――――― 二月二十三日  原材料の供給事情及び水産加工品貿易事情の  変化に即応して行われる水産加工業の施設の改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第三九号)  沿岸漁業改善資金助成法の一部を改正する法律案内閣提出第四〇号)  林業改善資金助成法の一部を改正する法律案内閣提出第四一号)(予)  林業等振興資金融通暫定措置法の一部を改正する法律案内閣提出第四二号)(予) 同月十九日  米の市場開放阻止に関する請願(平沼赳夫君紹介)(第三〇六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月十九日  農業農村整備事業促進に関する陳情書外二十四件(第五九号)  農村地域総合的整備の推進に関する陳情書(第六〇号)  農林漁業対策充実強化に関する陳情書(第六一号)  農業災害補償制度改善促進平成五年度農業共済保険予算に関する陳情書(第六二号)  米作農家経営に関する陳情書(第六三号)  生産緑地地区保全・育成と追加指定に関する陳情書(第六四号)  中山間地域振興対策充実強化に関する陳情書外五件(第六五号)  第四次土地改良長期計画策定等に関する陳情書外十二件(第六六号)  森林の維持・山村地域林産業活性化等に関する陳情書外四件(第六七号)  森林適正管理等のための国土保全奨励制度の創設に関する陳情書(第六八号)  太平洋小型サケ・マス流し網漁業問題に関する陳情書(第六九号)  公海流し網漁業関連産業に対する廃業補償等に関する陳情書外一件(第七〇号)  米の市場開放阻止等に関する陳情書外八十七件(第七一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(農林水産業基本施策)      ――――◇―――――
  2. 平沼赳夫

    平沼委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  農林水産業基本施策について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柳沢伯夫君
  3. 柳沢伯夫

    柳沢委員 平成五年の、最近では国会の開会も新年になってからというようなことでございまして、農林水産委員会の審議も、いわば新年になっては初めての会ということに相なります。そこで、私、自民党を代表いたしまして、農政、特に大臣所信表明に対して御質疑をさせていただきたい、このように思うわけでございます。  最初は、いささか基本中の基本ということになるわけですけれども、我々が進めている農業政策というものにつきまして、それが存在することの正当性というか、そういうことにちょっと触れてみたいと思うのです。  と申しますのは、御案内のように、ガットウルグアイ・ラウンドは一九八六年から始まったわけですが、当初アメリカから出された提案というのは、農業政策というものをだんだん段階的に廃止の方向に持っていって、これを市場経済あるいは国際関係においては自由貿易原則、こういうものに完全にゆだねてしまおうではないか、こういう発想に立っていたと思うわけであります。つまり、ここで各国農業政策というものはその存立そのものについてアメリカから挑戦を受けた、このようにとらえるべきであろう、こういうように私は思うわけであります。  それに対して最も厳しい反論をしたものは、私どももいろいろな文章でこれをかなり承知しているわけですが、大臣を初めここにお集まりの皆さん方お互いによく承知しておる例のシコ・マンスホルト。この方はオランダの農林大臣を十二年間、そしてEC農業委員長を副委員長時代を含めると十五年間、彼自身が言っているのは、私は農政に四十年、生涯の四十年をささげた。今もって活発な活動をしておる我々が尊敬する農政家ですけれども、このシコ・マンスホルトが最も体系的な反論をしている人間だ、私はこのように見ておるわけです。  それは、彼がどういうことを言っているかというと、私はある講演での言葉として承知しておるわけでありますが、農業政策はそれぞれの国にとってその社会的、環境的理由から根拠のある正当なものである、こういうことなのであります。そうして、私をして言わしむれば、彼は農政主権論みたいなものを展開しておる、私はこのように見ています。これは、例えば通貨については通貨高権というものが各国家に認められている、通貨についての主権ですけれども。こういうものを執行する権力というか、権限というものが各国固有の権利として、権限として認められているという意味で私申し上げるのですけれども農政主権論みたいなものすら認めるべきである、こういう考え方に立っておると私は思っております。  したがって、貿易政策、その中に自由貿易原則というものもあるわけですが、この貿易上の原則農業政策とは全く平等な立場で、そのそれぞれが追求している利益を比較権衡して、ここはこちらを優先すべきだ、この場面ではこちらを優先すべきだ、こういう考え方をとるというのがシコ・マンスホルトの主張しているところだと私は思っておるわけであります。  最近行われたアメリカECとのガットウルグアイ・ラウンド絡み農業交渉で、結局私が述べたウルグアイ・ラウンド当初のアメリカ考え方というものは今や引っ込みまして、現実に、例えばアメリカもやっているしECもやっている輸出補助金についても、まあまあ二割方の削減で八割方は残そうよ、こういうことに大体合意を見ておるようです。また、「価格引き下げと引きかえに行われる直接所得補償方式、この所得補償については暫時という条件がつきながらも、これをグリーンボックスの中に入れて今後とも維持するということをお互いに認め合った、こういうふうに聞いているのですが、これらはいずれも農業政策貿易政策原則が道を譲ろう、こういうことに決したと言っていいのだろう、こう思うわけであります。  私は、このヨーロッパ流考え方、これをいろいろな機会に、私ども党を代表したりあるいはこの委員会の出張という格好でヨーロッパ人たちと相まみえることがあるわけですけれども、実に徹底しておる、こう思っています。  例を挙げますと、例えばドロール委員長、私は、宮澤現総理がまだ総理時代ではありませんでしたけれども、随行してEC本部でお会いしたときに、ECを取りまとめている原動力はまさに農業政策なんだということをはっきり言われました。私ども実はちょっと違うことを考えて、会談のときに、多分通貨統合というのがヨーロッパ統合原動力だろう、こう思って彼と話をしたら、どうも話が合わない。そのうちにだんだん話を詰めていくと、実はドロールさんが考えているものというのが農業政策であったということを発見したのであります。では、ドロールさんは農業政策を遂行したというようなことに何か特別な経歴のある方かなと思って後で宿舎に帰って調べましたら、大蔵大臣経験者で、むしろ財政金融専門家として、そういう背景を持って委員長に迎えられたということなんです。そのドロールさんにしてからが、農業政策こそがヨーロッパ統合原動力だし、ヨーロッパ文明の一番の伝統なんだという考え方をとっている、これは本当に私も感激をしたのです。とにかくヨーロッパというのは、私に言わせれば、そういう農業に対する正当な認識をしっかりみんなが持っているなという感じであります。  引きかえて日本はどうだ、こう言いますと、実に寒々とした感じがしないでもない。なぜこうなったのだろうか。これは、我々はそういう人たち認識不足を嘆いたりあるいは批判したりする気持ちがあるわけですけれども、いたずらにもちろんそういうことはすべきでなくて、一体日本において特に最近農業政策を非常に軽んじる傾向があるというのは、どういう背景を持ってそういうことが出てきているんだろうか、お互い真剣に考えてみないといけない点だ、こう思っております。  もちろん、日本貿易立国の国であります。だから、基本的に農業国家の多いヨーロッパが、農業政策貿易政策を本当に平等な立場でそれぞれの利害を調整していこうというようなことからすると、貿易政策を優先したいという気持ちになるのも、これはある意味で自然な傾向かと思うのです。  それからまた、飽食時代である。とにかく私、ある人とちょっと話をしていたら、日本人というのは大体七千万トンぐらい食事をとるけれども、そのうちの一千万トンは残飯で捨てているんだ、こういう話を聞いたことがあります。これは私、真偽は農林省にも確かめていないので、いわば一口話として聞いていただいて結構なんですが、そういう飽食時代、こういうことでありますから、食糧に対する、あるいは食糧を生む農業政策というものに対する取り組みというのが、あるいは認識というのが非常に弛緩しているというか、甘いものになっているということも背景にあるだろうと思うのです。例えば簡単に、中小企業者人たち農業者に対しての国家助成というようなものについては、ただただ根拠もなくうらやましがって、それで自分たちに対する国家の援助の少なさを嘆くといったようなことは、我々お互い身辺でもうごろごろ転がっている話としてよく知っているわけですね。  そういう状況が一つあるわけですが、もう一つ農林水産政策当局、つまり大臣初め農林省皆さんですけれども、この人たちにも、何かタコつぼ型に自分たちの殻の中に閉じこもっちゃっているという姿勢がないのだろうか、私、ちょっとその点について懸念を持つんですね。これは内輪話ですから余りあれなんですが、こういうところであげつらうつもりもないんですが、どうも打って出ていろいろ世論に訴えかけていくというような姿勢不足な点は、事務当局人たちといろいろ打ち合わせ中にも、明確な形ではありませんが、私なぞは感じ場面が正直言ってあるわけです。  そういうようなことで、ガットウルグアイ・ラウンド交渉者はジュネーブで一生懸命やっているけれども国内の新聞にすぐその発言が取り上げられるような責任のある人間が後ろから鉄砲を撃つようなことをされて困るというようなことは、お互いここで与野党を問わず話をするわけですが、そういうことが起こるのも、今言ったようなことに関係が非常にあると私は見るべきだろうと思うのです。  つまり、もっと我々の農業政策農政というのは開かれた農政でなければいかぬし、国民とともにある農政でなければいかぬ。これは農業者あるいは農業団体あるいは一部の農政家、こういうような人のものだけであっては絶対ならぬ、こう思うのです。それは打って出ればそれなりの批判を受けますから、我々は大変だろうと思うのです。しかし、これをあえてやって出ない限り、今私が冒頭いろいろ述べてきたような、ヨーロッパのような、農政をしっかりしたしかるべき、本当にそうあるべきところに位置づける、それで我々の国の国政の中でそういうものをしっかり位置づけてこの国政の運営を誤らないということは、私、期待できないのだろうと思うのです、そういうことをしない限り。  そういう意味で、例えば農林大臣、この新農政を打ち出すに当たって、経団連に行ってこれを堂々と説明する、あるいは経済同友会へ行って堂々と説明する、労働組合諸君にも説明する、中小企業者にも説明する、こういうことがなければならない。不言実行じゃだめだ、私はそう思うのです。このあたりについて、まず冒頭大臣のお考えをお伺いいたしたいというふうに思います。
  4. 田名部匡省

    田名部国務大臣 一々反省しなければならない点を御指摘いただいた、こう思っております。  国民の幅広いコンセンサスを得なければならぬということで、できるだけ農政のビジョンをわかりやすくしよう、そう考えて、私もあらゆる機会をとらえて、まず団体皆さんにこの新農政の場合でも説明をいたしておるつもりでありますが、おっしゃるとおり、農家以外の皆さんのそうしたところに行ってよく議論をするということは大事なことだな、そう思いますので、これから機会を見て話をしたい、こう思っております。  話はいろいろございました。私もそのとおり感じておることもあるし、このウルグアイ・ラウンドそのものが、特に農業に関する限りは各国とも、特にアメリカEC輸出補助金がどんどんふえる、そういう中で何とか財政を立て直すためには、これも減らしていきたいという気持ちはあったろうと思うのです。そういうことからの発想で進めたとすれば、やはり問題があったんだろうと思うんですね。  おっしゃるとおり農業というのは、その地域の実情、地域というのは例えばアジアにはアジアECにはEC、そういう環境があって、私どもはどちらかというと、残念ながら島国であるという環境の中に日本というのは置かれておって、今では不安は解消してきておるといっても、ソ連であるとかあるいは中国であるとか北朝鮮であるとか、全く政策を異にする国が周囲にあって、食糧不足のときには一体どうするかという不安というものが常にあったこの国とそうでない国との違いというものもありますし、そういう中で世界一律に同じルールでいくということは果たして妥当なのかどうかということもある、こう考えております。  しかし、そのことはともかくとして、おっしゃるとおり飽食時代、これなどパーティーのたびに、この前も神戸に行ってきまして、そこでもあいさつ申し上げましたが、とにかく食べ物は残さないでいただきたい、余ったときは持って帰っても結構ですから。これが本当に食糧輸入国の姿かなと思うほど食糧というものを大事にしない。参議院の方でも質問ありましたが、やはり子供たちを教育するということは大事なことだ。我々の時代というのは、米一粒でも残れば親に怒られたという時代であって、食べ物は大事にしなければいかぬという思想というものが徹底しておったわけですけれども、今はお金さえ出せば買える。国民全体そういう中で農業政策を進めていくわけでありますから、なかなか国内一つになって議論が統一していかない面はあります。ありますだけに、私ども努力をしていかなければならぬ。  おっしゃるとおり、確かに省として殻の中に閉じこもっているのではないかと言われると、そのとおりであります。しかし、これはやはり失敗を恐れるといいますか、何かあるとやはり責任問題になるものですから、その辺は政策でやろうとして努力している者の気持ちというものをみんなが守り立てて理解してくれると、案外もっともっと思い切ったことも言えるし、やることは心の中にはひそかに持っているわけですけれども、どうも言ったこととやったことが別になると追及される、厳しいということもあったりして、なかなか、おっしゃるとおり閉じこもっているというふうに見えるのかもしれませんが、努めて、どうも私は逆に言い過ぎておしかりを受ける方で、しかし何とか理解を求めようと思うものですから粗っぽい言い方もしますけれども、これからさらにその努力をしていきたいし、特にこの農政の展開というのは、何といってもやはり国民コンセンサスを得なければならぬということでありますので、そのためのいろいろなことを訴えながら、幸い資料等も十分ありますので、そういうところで他の分野の人たちにも積極的に理解を求める努力をしてまいりたい、こう考えております。
  5. 柳沢伯夫

    柳沢委員 新農政も、我々特に政権与党でございますから、その編成の過程というものについてはこれは責任がなしとは言えないので、以下は私の自省自戒反省を含めての話になるわけですけれども、例えば今の話の関連でいいますと、今度の新農政理念というか目標は何だというと、私の記憶です、今ちょっとここにメモしたので正確な言葉ではないと思うのですが、例えば産業としての農業の確立とか環境保全型の農業、こういうふうに言うわけですね。そうすると、これは農業の中に閉じこもってその理念を考えている、やはりそういう色彩は否定できないと思うのです。もっと国家とか国民の中において農業というのはこう位置づけるのだというような、どうもそういう言葉でない。これは今私、気がつきましたので、もうちょっとこのあたりも、もっと国民とともにある農業ということで考えていかなければいかぬという、これは反省です。  と同時に、中身についてもいささかの反省がある。反省があるというよりも、大臣所信表明にもありますように、今後はこの新農政方向を段階的かつ着実に具体化していくというわけですから、今すべてをやり切ったと言っているわけじゃありませんから、今後これを段階的に実現する場合に我々がよく考えていけばいいことなんですが、お互いに共通の認識を確立したいという気持ちで申し上げますと、例えば、今度一番トップバッターで出てくるのは構造政策ですね。構造政策というのは、経営主体というものをどういう人間なり人間の集団に担わせるかということなのですけれども、前回の当委員会での質疑の中でも、野党委員の中から、大規模化というのはうまくいくとは思わないぞというような御注意があったわけです。  私は話を簡単にする癖があるわけなので簡単にしますと、要するに大規模化ができるというのは、農地を手放す側に、手放した方が得だ、あるいは手放さないと損する、こういう力学が生まれれば手放すわけですね、大体人間というのはすぐれて経済的な動物だと考えていいわけですから。それからもう一つ、今度は受け入れる側は、そのお金があるか、どこにそんなお金があるんだということだろうと思うのですね、後に連なる問題ですが。もう一つは、大規模化すればもうかるんですねということがあれば、これは大規模化していく。もう実に簡単なんですね。  ところが、なぜ野党皆さんが、いや、そういって新しい構造政策が出てきたけれどもなかなか大規模化あるいは農地農用地集積というのは難しいんじゃないかと言うのは、そこの力学に直接触れたような方策というのをなかなか我々が見出し得ないということに実は原因があるんですね。これはそうなんです。今度の我々が出そうとしている、政府が御提案をされるという構造政策も、実はその資金の面、受け入れ側農用地集積をするには資金が要るわけだけれども、その資金はだれが提供してくれるんだということについては、私は、正直言ってかなりいい政策が打ち得ていると思うのです。しかし、手放す側に、手放さなければ損するぞとか手放した方が得だぞという、そういうインセンティブをつくり上げるような政策というのは、これはなかなか打てないのです、正直言って。我々も考えるところはあるわけだけれども、それはなかなか打てない。どうするかというと、これはもう道義的説得ですね。手放す人たちのところへ農業委員会諸君が一升瓶を提げて夜乗り込んでいくとか、そういうことで道義的な説得をする、そういうことにならざるを得ない。これを称して農政当局皆さんは、運動によって集積を図っていくんだ、制度でなかなか仕組めないんだというようなことを申されているわけなんですが、そのとおり。  しかし、我々はそういうことを考えているときに、構造政策のときにも、構造政策の限りで考えますから、どうしても政策手法というのも予算とか税制とかあるいは金融、これで大体済み、こういうふうにやったりするわけなんですが、本当にそれでいいかということを、私はついせんだって農業災害補償法、つまり農災法の論議をしているときに、はっと気がついたのです。全くうかつでこれも反省の種だったのですが、やはり構造政策を打つときに、大規模になってくるとリスクも大きいんですね。その大規模になった人たち失敗してまったのでは、我々の構造政策はもう本当に悲惨な結果になる、我々の政策失敗になるわけですね。そうなってはいけない。そうなると今度、大規模化してやる人たちはやはり今までの小さい規模のときからすればはるかに大きいリスクを負うわけですから、そういうものにきちっと手当てをしていく。もっと言ったら、さっき私がちょっと口を滑らした、大規模にすれば今よりももうかるんだなということに的確にこたえる価格政策、こういうものがないと、真に体系的なものだということは言えないのですね。ですからそういう意味で、まさに大臣がここで触れられているように、総合的、体系的なものでなければいかぬ、我々の政策というのは。  ところが、これはちょっと付言なんだけれども、どうしても構造政策というと構造改善局が仕事をしますから、ほかの局は、それは一生懸命統合努力はしているんだろうけれども、我が身のこととはちょっと考えない傾向もあるのではないかと思って、これは私どもが本来やらなければいけないことだけれども、そういう感じがするので申し上げるのです。  私の地元は繊維産業が非常に盛んなところですけれども、どういうことかというと、通産省構造改善政策をやったのです。大規模化して集約化してと、やったのです。そのときにどういうことになったかというと、非常にシニカルな人たちですが、その人たちが実は当たりだったのです。あの通産省構造改善政策にのっとって大規模化したら破産するぞ、やはりおれらは古い、もう償却済みの織機に頼って、父ちゃん母ちゃんで一生懸命やった方が倒産は免れるぞ、こういうことでやりました。そちらの方が見事成功なんです。  私は、今度の農林省、我々農政の担当者がやる新しい農政が、こういう結果を招来しては困るのです。しかし、これは実は危険がないとは言えないのです。だから、そういうような危険を付保する、保険をする。あるいは価格政策というようなものについても、これは非常に難しいですよ、親方日の丸になったのでは本末転倒でありますから難しいのだけれども、そういうものが同時に裏打ちに、構造政策とともに体系的にすっきりしたものにならぬとこれは成功しない、こういう危険性が私は非常に強いと思うのです。  そういう意味で、これはまたマンスホルトのところに私は帰ってくるのですけれども、マンスホルトの政策というのは実に体系的なんですね。構造政策をやる。集約をし、大規模化して、そして価格政策ではそういうような人たちは、これは日本の新農政と同じですが、ちゃんとほかの部門の人たちと同じ所得が上げられるというような価格でなければなりませんね、国民皆さんはそういう価格であれば少々外国よりも高くてもこれは負担すべきものですよね、こういう考え方で価格を設定するのです。価格政策をやるのです。そうして貿易政策も、輸入に対しては我々は社会構造的にこういう農業者を守っていかなければなりませんから、その人たちが競争に負けるような国境措置では困るのですよと言って、しかも為替が変動制になってきましたから、ちゃんと可変課徴金という格好で国境措置をぴしゃっとするということですね。  そういうことで、マンスホルトは、これは理念型の話をしておったときですから、輸出補助金というのはおかしいと言うのです。なぜなれば、自分たち国内の取引価格よりも安い値段で外国で流通させてしまおうなんというようなことはあってはならぬ、それは外国の農業者に対して本来あってはならない不当な負担を与えることになるからやってはならない、こういうことをマンスホルトは言うのですね。これは実にすっきりしている。  そして、先ほども触れました、前回の委員会で社会党の皆さんが言っている所得政策というのはどういうものかというと、所得政策というのはそういう望ましい経営者がちゃんとやっていける、そういうものは価格政策でやるのですよ。しかし、そういう設定された価格ではとてもやっていけない条件不利な人たちに対しては、それは足らないところは所得政策でやるのですよ。実に体系的ですっきりした理論構成のもとでの農業政策が行われているというのがヨーロッパの、もちろん現実の力が強いですからその若干の妥協はありながら、基本理念型というのはこういうものなんですね。ヨーロッパ農業政策、私がこのマンスホルトの話から受けとめている農業政策というのはそこまでかなり体系的なものだということは、これはお互い知っておかなければいけない、こう思うのですね。  そういう意味合いで申させていただくわけですけれども、私は、大臣が体系的なものにしたいというときにはぜひそういうことを考えてやっていかないと、農林省農政にくっついてきた人たちが、まあ、ほかの省のことを言うわけじゃないけれども、私の地元で繊維産業で大規模化して失敗して、そして小さいところでとどまっていた方がいまだに生き残っている、同じ結果が出てきはしないか、そういうことを心配しているということを申し上げるのです。いかがでしょうか。
  6. 田名部匡省

    田名部国務大臣 繊維産業の事例をとらえてのお話でありましたが、私も農村地帯に住んでいながら、農業というのは本当に難しいな、こう思うのですね。それは、例えば水田稲作をという場合には、ばらばらにやられたのではこれは構造政策はできない。全体がやはりまとまってやっていかなければいかぬというところに、そこにはおっしゃるように規模を拡大してもっと意欲的にやりたいと思う人もおるし、いや、私はもうこのままでいいんだ、自分の後継者がいないし、そんな広くやってまでという人もおるしという事情、あるいは都市近郊の人たちもおれば、実際農業以外にやる何かかわりのものはないという地域もあるし、多種多様なんですね。  そういう中で私は、進める場合に一体どういうことがいいのか。何といっても高齢化の進展というのがどうしても念頭にあって、そのための後継者が不足しておるということがありまして、これを何とか立て直していかなければならぬという構造面での状況の変化に直面する中で、中長期的な政策運営の大筋をまず示さなければいかぬ。その中で、おっしゃるとおりこれは自由にやっているわけですから、私どもが考えたことに乗ってくれる人もあるし、今時に手放す側の話がありました。おっしゃるとおりでして、これは大事なことなのです。手放す方がいいという考えがなければ、これは手放してくれない。特に、都市近郊になると、農業をやるよりもどこかの会社に埋め立てて貸した方が、その収入の方が多いということになると、これは進まない。ですから、地域の実情というものを考えながらこれを進めていくということは大変大事なことであります。  確かに、立法措置でありますとか制度の改正、そうしたものはこれから御議論いただくにいたしても、もっともっと私ども段階的にこれを進めるためにはだんだん具体的なものを踏まえていかなければならぬわけですけれども、当面、今の所信でも明らかにしたようなことだけはきちっと踏まえながら、あとはまたこの委員会での御議論等を踏まえ、幅広く国民理解を得られる形でこの政策というものを進めていかなければならないというふうに考えております。また、あわせて御指導を賜りたい、こう思っております。
  7. 柳沢伯夫

    柳沢委員 ちょっと時間が不足してきましたので、予定した問いを少しスキップしたいのですが、トピックスというか、最近ちょっといろいろな機会に耳にしたりすることについて、行政当局の姿勢を少し確認しておきたいのですが、一つはお米の問題なのですね。  お米の問題で、私もこの間ちょっとびっくりしたのですけれども、私の地元のかなり大きな企業の食堂の従業員に食事を供給しているポジションの人間が来まして、先生、いよいよお米輸入していただけるのでしょうか、こう言うわけですね。おまえさん、私をだれだと思っているんだ、私は党の農林部会長であるぞよと言って、そこは冗談めかしく言ったのです。なぜかというと、食堂で供給しているのは大体政府の標準米でやっているわけですね。ところが、標準米をつくる政府米、標準米はブレンドするわけですが、自主流通米と政府米の少し等級の低いところをブレンドして、自分たちの福利厚生費とそこで従業員の皆さんから代金としていただくもので賄えるような値段のお米に仕立てて提供しているというわけです。  ここへ来まして、難しくなってきた。それは政府米がまず不足している。しかも、その中で買おうとすると、政府米でも等級の高い、したがって値段の高いお米しか手に入らなくなったので、いろいろ聞いていくと、どうも政府の手持ちのお米が少なくなってきたようだから、いよいよ安い米を輸入してくれそうだというような話をちょっと耳にしたので、そうだとすると、福利厚生費の関係を直そうかなとか、値段を少しもうちょっと高く改定させてもらおうかなと思っていたことについても、これは考え直さぬといかぬから、一番情報が早いはずの先生のところに聞きに来ましたなんというようなことを言われて、私もちょっとぶったまげたと同時に、事がそこまで進んでいるかということで、知ってはいましたけれども、改めて認識を新たにしたというのが正直なところです。  このお米の安定供給、しかも企業の食堂のような、かなり我々にとっては、消費、消費と言っていた立場からすれば、これは本当にかけがえのない消費者の皆さんにこれを安定した価格で安定した量でもって供給していくというのは、これは政府、特に食管を担当している皆さんの第一番の仕事でなければならぬ、こう思うのですが、このあたりの状況について、的確に国民皆さんにわかりやすい現況の説明というものをしておいていただきたい、こう思います。
  8. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 御指摘のように、平成二年産の米が不作であったということに加えまして、四年産米につきましても減反緩和ということで、生産量全体としては百万トンほど前年に比べて増加したわけでございますけれども、特に今御指摘のありますような標準価格米あるいは業務用米等に充てられるいわゆる三−五類の米の生産が必ずしも思わしくなかったというようなことで、今始まっております米穀年度につきましても、全体としては米の需給操作に支障はないというふうに理解をしているわけでございます。  しかし、今申し上げましたような三年産米の不作、あるいは四年産米の一部地域、特に政府米地帯での不作というようなことが加わる一方、全般的に良質米志向を受けまして米の生産自身が自流米に傾斜しておるというようなことで、率直に言いまして、政府米を対象とします標準価格米あるいは業務用米、さらには加工用に向けられます米の操作が窮屈になっているというのは否めない事実でございます。そういうことを受けまして、私ども、系統と一緒になりまして集荷に全力を挙げるとともに、政府米の確保に努めているわけでございます。  さらに、五年産米につきましては、昨年十一月に決定しましたポスト後期対策、いわゆる水田営農活性化対策におきまして、転作等目標面積を後期の八十三万ヘクタールから六十八万ヘクタールヘというふうに大幅に緩和し、米の全体としての生産量の確保を図りますとともに、そういう中で、なかなか難しいことでありますけれども、標準価格米あるいは業務用米あるいは加工原材料用米など、それぞれの用途に合った生産を誘導あるいは確保したいというようなことで、来年度の予算の中でもそういう点に配慮した予算を計上いたしまして、政府あるいは系統一丸となって、用途に合った米の生産、流通の確保に努めていくこととしているところでございます。
  9. 柳沢伯夫

    柳沢委員 トピックスですから話が飛び飛びになるのは大変恐縮なんですが、ちょっと畜産のことでお尋ねしたいのです。  これは我々の制度では、牛肉の自由化に伴って子牛の価格安定というか、子牛の農家に対してしっかりした所得補償をして子牛の生産というものを維持、発展させてもらいたい、こういうことで、子牛価格についての不足払いを随分、従前もこれはやっておりましたけれども、手厚いものにした。これはお互いよく承知しておるところなのです。  非常にこれは乱高下とも言うべき価格の変動の中での話ではあるのですが、最近非常に子牛の価格が暴落して、ついに我々が二段構えでやっているうちの低い方の合理化目標価格まで割り込んでしまって、そこに補給金を支払って支えていかなきゃいかぬ、こういう事態が生じて、しかも各県でやっている子牛補給金の原資になる基金が底をついてしまったというようなことで、ちょっと関係者に不安を与えたとまでは言わないのですが、不安な気持ちにさせたということも聞いておるわけです。  もう一つ、これは全然違う話なんですが、環衛という、食肉環境衛生同業組合というのがありまして、小規模な小売店の人たちの集まりなんですが、そういうところに行きまして聞きますと、いや先生もう大変だ、量販店は輸入の規格牛肉というものをばあっと店に並べて、大変我々からお客を奪い取ってしまっている、我々の方はそういう規格の肉というものは手に入らなくて、今までどおりの枝肉を買ってきていろいろな部位に切ってそれで品ぞろえをしなければいけないものだから、そこにおのずと優劣がついてしまったと言って、その人たちは、何でこんな量販店の進出を認めたんだなんていうような議論にまで及んで激高しておったのですけれども、このあたりについて、これじゃ、私は国産の牛肉というものがこういう小規模な伝統的な小売店で主として扱われているということで申し上げるのですが、国産の牛肉の消費を振興させる意味でも、こういう差がついて、商売で輸入牛肉を扱っている連中に負けてしまうというようなものを放置しておくのはまずいんじゃないか。こう思うのですね。  この二点について、最近のトピックスですが、これまた行政当局の説明をちょっと求めておきたい、このように思います。
  10. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 二つ御質問がございました。  一つは、子牛の価格が下がりまして、価格安定制度をとっておるのですが、合理化目標価格を割り込んでおる、乳用種、その他肉専ですが。それによりまして県の基金協会が財源が不足をする。今、全国の基金協会から無利子の資金を借り受けております。これは八年償還、四年据え置きです。農家不足払いを受けておるわけですが、財源不足ということで不安を感じているというお話でございます。  ともかく今全国基金から無利子の資金を借り受けて農家には払っておる。その償還は五年後から始まるわけでございますので、今の時点では子牛の価格の浮揚対策、これを講ずることが肝要であろう。五年償還時までに何とかなれば償還できるわけですから、そういう形での価格の浮揚対策に力を入れることが肝要であろうと考えております。  それからもう一つ、輸入牛肉、これは本当に輸出国が販売努力に非常に熱心でして、小割り成形したブロックを末端の小売屋さんが切ればいい、そういうような形で輸出をしておるということで、輸入牛肉が伸びているその大きな原因でもあろうかと思います。  それで、私ども、どっちかというと今まで生産対策に力を入れてまいりまして、流通関係、そういう点にちょっとおくれておったというか手抜かりがあった、不足だったという反省の上に立ちまして、小割り成形をしたパーツの肉の流通を促進しよう。国産牛肉は、品質だとか新鮮さだとか安全さだとか、消費者に非常に評価をされている面があるわけですが、そういう面が十分価格に反映されてないという反省の上に立ちまして、今申し上げました小割り成形をした肉の流通を図るべく、昨年の暮れにそういう面での対策を打って、今要綱、要領等現場に流しておるところでございます。あわせて、そういう流通面の対策を生産面からも支援していく、そういう対策も講じているところでございます。
  11. 柳沢伯夫

    柳沢委員 次は、合板の暴騰の話なんです。  これは大変な状況でして、マレーシアあるいはインドネシアというような輸出のもとでの出荷の体制が変わったとか、出荷の抑制が行われているとかというようなことが背景にあるようですけれども、これは私の近回りの材木屋さんというかこういった建材を扱っているところへ行っても、住宅着工を政府が一生懸命推進しているのに、我々、住宅の大工さんから合板部材の見積もりをとられても見積もりを答えられないですよ、見積もりを下手に出して、じゃそれでやってくれますねといったら、今度は仕入れの方がとんでもない値段になっちゃったりあるいは品ぞろえができないかもしれない、こういうようなことで、昨今の景気の状況からいって、本来いろいろと消費をあるいは投資を、住宅投資等をむしろお願いしなければならないのに、そういったところに意外な隆が生じているというような状況がちょっと見てとれます。家具屋さんでも大変困っているようですね。材料の合板がないわけですから、あるいはべらぼうな値段になってしまっているわけですから。これはもう、大手さんはむしろ現地工場なんかもちゃんと設置しまして困らない体制をしいている向きもあるようですが、中小の家具メーカーというのは非常に困っている、こういうようなこともあるようでございます。  いずれもこれからの景気動向に応じた経済政策との整合性といった面でも問題ですし、また、仮にそういう人たちがもう合板はだめなんだと言ってほかのものにかえてしまったりされて、全体として本質系のそういう部材というものの使用のシェアがこれ以上下がって、国産材時代なんていって我々楽しみにしているのですが、そのときになったら需要家がそもそもやせ細ってしまって力が弱いなんというようなことになったのではこれは大変なので、当面の問題としても、このあたりについてはしっかりした手を打っていかぬといかぬのじゃないかという気がいたしておりますが、この点はいかがでございますか。
  12. 馬場久萬男

    ○馬場政府委員 合板の価格の値上がりの関係の御指摘でございますが、確かに合板のみならず木材一般、御案内のとおり我が国の需要の四分の三が外国から輸入されているものでございますが、これらにつきまして、最近価格が非常に上がってきているという問題がございます。これは、物によって若干違いまして、今お話しの合板につきましては、昨年の価格の動向からいいますと、一月ぐらいに比べるとむしろ夏ごろは一度下がったわけでございます。それが秋ぐらいから上がって、現在は前年の当初に比べて、一月に比べて大体二割ぐらいまで上がってきているというのが現状でございます。  その主な理由でございますが、合板用の原木というのは九割強が南洋材でございまして、しかもその南洋材供給の八割を占めるのはマレーシアでございます。このマレーシアにおきまして、昨年、伐採量の削減政策国内での木材産業育成政策をとるというようなことで、我が国に来る丸太の輸入量が非常に減少してきた、これが価格の上がってきている一つの原因でございます。  我が国の合板の供給量の七割は、今の丸太を輸入して、これを合板に製品にして国内に供してきているのですが、これはタイムラグの関係で、原木の上がりぐあいに比べればまだ低いわけでございますが、先ほど言いましたように、約二割上がって、今後さらに上がるのではないかというふうに考えられているわけであります。  一方、我が国の合板の三割を占める輸入合板、つまり製品になって入ってくるもの、これは九割以上がインドネシアでございます。インドネシアは元来、国内の合板産業育成という見地で、丸太の輸出は数量的に規制はしませんが、輸出課徴金を課して輸出を抑える、そして国内への原木供給をするという政策をとっている国でございまして、これが我が国に輸出をしている。それがいわば輸出の仕方が、日本の中にインドネシアの合板を一手に販売する会社をつくりまして、そこを通じて売っているという形でございます。これがまた輸出量を、ある程度値段が高くなければ出さないという形になってきている問題がございます。  ここ半年くらいににわかに起きてきた事態でございまして、直ちにどうするかということはなかなか難しいわけでございますが、我々従来から、木材、外材につきましては各国のいろいろな事情等、需給の見通しでありますとかあるいはいろいろな情報の提供等をしているわけでございます。今回のこういう事情に対しましては、先ほど言いましたように、合板のみならず外材全体が上がるという方向にございます。  これもつけ加えて言いますと、アメリカにおきましてもいろいろ自然保護の観点から木材の輸出については非常に厳しい態度をとってきている。あるいは北方、つまりロシアから入ってくる材につきましては、資源的にはありますけれどもなかなか輸出体制が整わない等々でございますので、当面、各業界団体、つまりユーザー、流通業者あるいは国内の加工製造業者、これらも含めまして、各団体におきます問題点をちょうど今週初めからヒアリングを始めたところでございまして、すべての木材製品は御案内のとおり輸入は自由化されておりますから、需給調整というのはなかなか難しゅうございますが、価格なり流通について問題があるかどうかという点のヒアリングを始めております。  具体的に、今合板について言いますと、例えば中小の合板メーカーで物が手に入らぬというようなお話がある場合には、相談窓口を開設しまして国内のメーカーからの物の手当てをさせる、あるいは輸入合板につきましても、先ほど言いました輸入を扱っている者に対して物の円滑な供給をするように指導をするというようなことを考えております。  また、中長期的には、南洋材の供給というのは将来ともいろいろ資源問題、環境保護問題等でそれほどこれからはふえないだろうというふうに思っておりますので、針葉樹、つまりカナダとかアメリカとかあるいはロシアとか、そして国内でも北海道等にあります針葉樹を使った複合合板の生産というようなことについても拡大をしていかなくてはいかぬ、こんなふうに考えるところでございます。  いずれにしましても、我々、一方ではいずれ国産材時代国内の資源がだんだんと増加してまいりますから、その円滑な供給ということも考えながら、合板の代替品あるいは国内の材を使った合板的なものをつくるというようなことも含めまして、これらの需要の確保と円滑な流通に努力していきたい、こういうふうに思っております。
  13. 柳沢伯夫

    柳沢委員 最後の質問でございますけれども、これまたトピックスで、例の住専、住宅金融専門会社に対する融資が、バブルがはじけた今日の状況の中で大変いろいろな問題を生じておること、これはお互いよく承知しておるところでございます。その中でも、私どもが強い関心を持っておる農協系統金融機関も、この融資に当たってはかなりの大きなシェアを占めた実績があるわけでございまして、その処理についていろいろな話が進められておるということもよく我々新聞報道では知っておるわけでございます。  そこで、こういう問題は、バブルの後始末ということで、実はアメリカにも先例があるわけでございます。SアンドL、セービングス・アンド・ローンといういろいろな地域にある貯蓄機関でございますけれども、この機関の人たちの融資債権が非常に不良化して、この処理をどうするかということで、アメリカは、あえてモラルハザードを避けるということ、つまりここで簡単に救済してしまうと経営者の経営責任というものが非常にあいまいになって今後に禍根を残す、こういうような考え方から、かなり厳しい措置をとったわけですね。その結果、SアンドLは非常に多くの会社が倒産をして、結局、後でその始末を最後はさせられてしまった財政資金財政に対して大変な負担になってしまったというのは、これはお互いよく承知しておるわけでございます。  私もこのモラルハザードとソフトランディングとの選択の問題というのは本当に深刻な問題だと思うのですよ。特に、最近住専融資のトップを切って再建計画について今論議を進めておる日本住宅金融、これは大蔵省で私の先輩筋に当たるので余り言いたくもないのですけれども、この人は、もう本当に、私なんかも彼の言うことを聞いていると本当にもうふんまんやる方なくて、この人は何を考えているんだろうかと思ったようなことが間々あるわけなんですね。ここに皆さんお示ししますが、三十二億円詐欺をされまして、それで、私は聞いた瞬間あきらめた、警察にも届ける気はなかったんだくらいにおおような態度をとっていたのです、もうけにもうけていましたから。  こういう人が今困って、もうこの方やめたんですけれども困って、そして我々が頭を悩ましているというのは、どういう風のめぐり合わせだとこういうことになるんだろうかと思って本当に情けない気持ちもするんですけれども、私が申し上げたいのはソフトランディング、やはりこれはソフトランディングさせなければいけない、会社をつぶしたりとかいうようなことを安直に考えてはいけない、そのためにお互いに協力をし合っていかなくちゃいかぬ、こう思うのです。  しかしまた、農林系統の機関というのは、これは協同組合のある意味で宿命なんですけれども、非常に体質が弱いのですね。内部留保が薄い。こういうことで体力問題もあるのです。二次災害が起こっちゃ大変なんですよ。金融上の二次災害が起こったのでは大変です。人を助けに行ったら、助けに行った本人に災害が起こったのではこれはもう何をやっているかわからなくなるわけなんで、その辺のことは重々注意してソフトランディングを心がけていかなければいけないのじゃないか、こう思うのですけれども、このあたりについて、農林当局のこの問題に対する取り組み、直接自分たちの所掌ではない、お互い民間金融機関同士のことだとは言い条、そこにやはり農水省としても基本的な考え方がなければならぬ問題ではないか、このように思いますので、この点についての御所見を承っておきたいと思います。
  14. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 御指摘のような住専問題、大変重大な、かつまた深刻な問題が発生をしておるというふうなことは我々も承知をしておるわけでございます。  委員から御指摘もございましたように、この問題はやはり個々の会社の経営の立て直しの問題でございますので、基本的には当事者間で十分話し合って行われるべきものであるというふうに考えておるところでございます。  しかしながら、御指摘もございましたように、一般的に農協系統金融機関の経営状況について見ますと、金融自由化によります業態間の競争の激化、あるいは有価証券市場の低迷等によりまして、大変経営状況が厳しいものとなっておるわけでございます。したがいまして、住専問題への対応につきましては、住専の再建計画の内容でございますとか、あるいは御指摘もございました農協系統金融機関の体力等を踏まえまして、当事者間で十分話し合いが行われることになるというふうに考えておるわけでございます。  こうした中で、農林水産省といたしましても、農協系統金融の安定というふうな観点を十分踏まえまして適切な解決が図られるように、現在いろいろ話し合いが行われつつあるようでございますので、事態の推移を注意深く見守ってまいりたいと思っておるわけでございます。
  15. 柳沢伯夫

    柳沢委員 終わります。ありがとうございました。
  16. 平沼赳夫

    平沼委員長 辻一彦君。
  17. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私は、大臣所信表明関連して米の問題、ウルグアイ・ラウンド、新政策、三点をお尋ねしたいと思います。  昭和五十二年二月五日に参議院の本会議で、私は当時参議院におりましたので、代表質問をやったことがありますが、そのときの議事録を、コピーを大臣にも見てもらうようにしておきましたのでごらんになったと思いますが、日本経済の輸出超重点主義というものが農業の縮小再生産に結びつくということをただしたことがあります。参考にちょっと、長くはないですけれども、読んでみますが、これは当時は福田さんが総理だったのですが、   総理は、施政方針演説の中で自給率向上をうたっていますが、外需依存、輸出主導型の日本経済は、大量の資源を買い入れ、強力な輸出中心の経済であり、この道は、さきに貿易不均衡是正の名のもとに大量のアメリカの農産物を受け入れ、欧州諸国、ECからも農産物輸入の圧力を受け、大量の資源を買う豪州からは、日本が大幅な入超であるにもかかわらず、二万トンの牛肉を追加で押しつけられております。内需、国内購買力を軽視する日本経済の体質をそのままでは、国内農業の縮小再生産につながるのでないか。外需中心の日本経済のツケは、結局は農民の犠牲と農業の縮小で賄われていると言わざるを得ません。総理は、輸出主導型の日本経済と食糧自給率の向上が両立するものと考えておられるのかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。 こういう質問をして、これらについての答弁が、両立するようにしなければならぬという答弁がなされておりますが、その当時、食糧自給率は穀物ベースで四〇%、こう主張したのですが、あれから十六年間に、三四%、三〇%、そして三〇%がついに三割を割って二九%というように激減をしておるわけですね。  この十六年間の経緯を踏まえて、この事実を大臣としてどういうようにお考えか、まずお尋ねいたしたいと思います。
  18. 田名部匡省

    田名部国務大臣 福田総理に御質問された資料を拝見いたしました。  おっしゃるとおり、自給率については当時から見ると大分下がっておる、そのとおりでありますが、何といってもその間に日本の経済が大変な成長をし、所得の向上もあったということで、国民の食生活が非常に変わってきたと思うのですね。特に、穀物の自給率が二九%になったわけでありますけれども、これは主として畜産物消費が大変ふえたということによるものであります。  そういうことで、我々も何とか自給率を高めなければならないという考え方は持っておりますが、何といってもやはり国土の条件というのがありまして、これにはおのずから限度がありまして、輸入に相当程度依存せざるを得ないという面はこれからもなお続くわけであります。しかしながら、世界の食糧需給の見通しというものを見ておりますと、今後も不安定な面がありますので、何といってもやはり国内産の自給率というものを高めていかなければならない。しかし、高めるといっても土地の条件がありますので、生産性を一層上げるということが、限られた土地の中での生産性、それから品質でありますとか、国民の要求はやはり内外価格差ということもあり、安全で安い食糧を供給してほしいという要望もありますので、この辺を考えると、コスト面での改善というものもあわせてやっていかなければならないということがあります。  そのためにいろいろと、今回も御提案申し上げておる法律の中でそれを解決するためのことをまた一方ではお願いしたいということでありますので、その辺のところは、確かにおっしゃるように、何か輸出がどんどん進行して農業にということ、それもないとは言いませんが、それが決定的なものだということでもない。内にある事情というものが非常に大きい、こういうことを御理解いただきたいと思います。
  19. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私も、高成長の中で国民生活が向上して、その結果畜産物の需要が多くなり、そのためにえさの需要が非常に多くなった、それが自給率を下げた一つの大きな要因である、これは否定はいたしません。しかし、二九%になっているこの自給率も、米の自給をもしも崩せば、これはもう二〇%ぐらいに下がってしまう、そういう事実ははっきりしていると思いますが、大臣、これはいかがでしょうか。
  20. 田名部匡省

    田名部国務大臣 仮定の話ですので、入ってくればと仮定同士の話としてやると、一体どの程度入るのかとかいろいろなものがありますので、下がることはこれは間違いない。では、どの程度かというとこれは全くわかりませんし、仮定のことですのでその先はひとつ御勘弁いただきたい、こう思います。
  21. 辻一彦

    ○辻(一)委員 その問題はまた後で論議しましょう。  そこで、原則的に大きな流れを見れば、やはりこの日本経済では貿易黒字、結果的には日本貿易黒字はアメリカの赤字ということに裏返しになりますが、その貿易不均衡の是正の名のもとに多くの農産物を押しつけられる、あるいは買い入れてきた、こういうことが実態だと。そのためにどんどん自給率が下がったということが言えると思いますが、日本の経済高成長の、経済と農業における構図はおよそそういうことではないかと思うのですが、これが一番端的にあらわれたのは、去年度に我が国の黒字が千二百億ドル、日米間でも四百三十億ドル、こういう中で再び黒字の貿易の不均衡を是正するために、今度はひとつ米を開放すべきだ、こういう論理が一貫して出てきたのではないかと私は思うのですね。  仮に米というものが、輸入はあってはならないのですが、百万トン輸入されたとすると、大体金額は三億ドルですね。だから、東大の森島教授は、この間も随分論争のあったところでありますが、ダンケル合意案を日本がそのまま受け入れていけば、六年間に三百万トンぐらいの米が輸入されるだろう、こういう試算をされている。これはいろいろ学術会議でも論議のあったところでありますが、そういう試算があるのですね。そうすると九億ドルということになりますが、日本の、三百万トンも仮に米が入ったら、これは自給率は今言ったように、私はこの前農林省でもその場合はとうなるかと聞いたところ、八%ぐらい下がるという、これは仮定のことでありますが答弁がありましたから、七、八%下がるとすればこれは二〇%、世界にもまさに例のない自給率の低い状況になりかねない。しかも農村は、恐らくこれだけ米が入ったとしたらがたがたになっていく。しかし、その貿易貢献度は九億ドル、仮にですね。千二百億ドルのうちで九億ドルというのは、あるいはアメリカの四百三十億ドルの中で、この九億ドルというのは金額としては非常に小さいものではないか、全体から見れば。  これを考えると、やはり日本農業日本の経済の発展と同時に縮小をだんだんしていく、やむを得ない面もありますが、縮小される手段を続けていく、これは日本の経済のあり方というものは、こういう黒字を膨大に生み出す、こういう経済の体質、構造といいますか、そういうものを少し変えないと、言うならば、黒字は結構ですが、ほどほどな黒字でバランスのとれるような貿易構造に変えていく、こういうことがないと、これからとも私は農業や中小企業の弱いところに必ずしわ寄せがやってくる、こう思わざるを得ないのですが、そこらの認識大臣としていかがでしょうか。
  22. 田名部匡省

    田名部国務大臣 おっしゃるとおり、国内政策としてクリントン大統領、経済問題を大きく取り上げております。そこで、今お話のように、米を輸入したとしてというお話でありますけれども、恐らくこの九億ドル、そんな程度です。国内の経済がこれでアメリカがうんと立ち直るとかなんということは、もうこれは考えにくい話ですし、まあ失業雇用対策ということですけれども、仮に輸入する分の稲作をやったとしてもそんなに雇用がふえるものでもない。まあ別のこととして、この米問題はとらえているのではないだろうか。要するに、嫌だ嫌だと言うものですから何としてもここを責めたいという気持ちと、ウルグアイ・ラウンド全体が成功するためには、日本だけこのことをじゃあ認めると言った場合に、他にどう波及するかといういろいろなことがあるのではないのかな、こう思うのですね。  その辺で、おっしゃるとおり、日本の経済構造といいますか、そういうものはこれでいいのかどうかということになりますと、やはり貿易というものは、ない物は売っていただく、ほかにない物はこちらが輸出をする、これは本来の姿であって、そういうことからするとやはり節度を持ってしなければいかぬ。結局、私もマディガン農務長官と会ったのですけれども、そんなこと言ったって日本だってアメリカの自動車をもうここまで追い込んだじゃないですか、大変な打撃を受けた、こういうことを言っておりましたが、それはしかし、国民日本の自動車というものを求めたわけでありまして、嫌な物を売ったわけではなかったわけですが、結果として向こうが相当の失業者を出した、経営不振に陥ったということもこれは現実でありますから、やはり節度を持って貿易をやるということは私は大事なことだ、こう思っております。  しかし、一方では、農産物を売る手だてのない日本としては、何としても経済成長を遂げるために一生懸命になってきたということも事実。その辺のところは、国内でもこの議論になりますと両論分かれてなかなか難しい面はあろうと思いますけれども、ただ、農家立場からすると、おれたちは生産調整して外国に迷惑をかけたわけでもなんでもない、どうして我々がという気持ちになることはこれは事実なんですね。しかし、確かに経済が高まり、所得が上がって、農家皆さんの高い農産物が売れることになったこともまた事実でして、まあなかなか割り切ってこうだということは言えないのですけれども、しかし、節度を持ってやるということだけは、私はみんなが心がけてやらなきゃいかぬというふうに考えております。
  23. 辻一彦

    ○辻(一)委員 この自動車云々とかそういうことを今ここで論争する気はありませんが、事実だけちょっと申し上げておくと、確かに日本の——私のところはさっきお話がありましたが、北陸は繊維の産地、合化繊では世界一の産地になっておりますが、その繊維だってアメリカの市場へ相当数入ると、市場のシェアが高まると自主規制、規制はこれはガット違反だから。しかし、話し合いで規制する、自主規制を押しつける。鉄鋼、工作機械にしても、あるいは半導体にしても、それから今の自動車にしても。自動車の二百三十五万台の自主規制、今はもう百八十万台になっていますが、そういうようにしてアメリカの方は一定量の工業製品のシェアを他国産が占めれば自主規制を押しつけてくる。まあ日本も米は五万トンぐらいしか入れてないけれども食糧全体でいえばこれはもう七一%外国から輸入しているんですから、これぐらいはもう自分の国でつくらないと、こういう権利はこれは当然私は主張していかなければならぬと思うのです。  そこで、さっきのあれに返りますが、一つの国は、どの国でもそうであろうかと思いますが、特に我が国においては、工業と農業がやはりともに発展をしていくということ、都市と農村がバランスのある発展をともにする、こういうことが大変大事だと思うのですが、農業をつぶして工業の発展は、私は最終的にはあり得ないと思うのですね。ところが、日本の財界や有力なマスコミは、この巨大な黒字を生み出す日本経済の構造に目をつぶって、米の市場開放をやれば、そうすれば日米間の貿易摩擦、こういうものは解消するがごとき印象を与えるような言い方がどんどんされておるということは非常に間違っておるのではないか、そういう点で非常に遺憾だと思うのですが、こういう農業と工業のあり方等について、政府としては本格的に論議をしたことが閣議等でありますか。いかがですか。
  24. 田名部匡省

    田名部国務大臣 本格的にということはございませんが、ただ私は、考えておりますのは、工業と農業という問題で見れば、工業というのは限られた土地で、そう幅広いものではないわけですから、これは幾ら振興してみても、じゃあ日本国じゅう農村地帯が工場だらけになるかというと、これは考えられぬわけですから、やはり条件の不利な県とか市、町、村はそういうものは誘致しても行かないわけです。そういうところはやはり農業振興をきちんとやって、農業として地域の経済というものを支えているところは今でも大変多いのです。私の県なんかもその最たるものでありますけれども。したがって、冷害等になるともう町全体がおかしくなってくる、商店街まで影響が出てくるというほど、この農業というものが地域の経済に根差しておるわけでありますから、これは工業でこれを補うということはできない。  とすれば、農業政策というものは、国民食糧の安定供給ということもあります。そういうことを踏まえて最善の努力をしていかなければならぬ。そういう大事な、もちろん環境とか国土保全とかいろいろあります。ありますだけに、これは重大な政策として進めていかなければならぬ。一方では、お話のように四兆五百億というものは輸入に依存せざるを得ない。まあそれだけ国民皆さんのニーズというものは多様化している。もう何でも世界にあるものは食べたいというこの要求を満たさなければならぬという一方ではそういうことがあるものですから、限りなく輸入はふえていく。しかし、基礎的な食糧というものはどんな事態にも不足の生ずるようなことがあっては大問題でありますから、そのことだけは国が責任を持ってやはりきちっとやっていくということは大事なことだ、こう考えております。
  25. 辻一彦

    ○辻(一)委員 農業がこういう形で縮小再生産をすることがいいのかどうか。あってはならないと私は思うのですが、閣議でも、農業、工業の対比において十分論議をしてほしいと思います。これを希望しておきます。  そこで、クリントン新政権は、このアメリカの新政権は、米を日本の市場閉鎖のシンボルという、私にとっては誤ったとらえ方をしている。最大の日本食糧輸入国である。それだけのことをやっているにもかかわらずこういう見方をしているのですが、これは随分とアメリカの新しい政権のかなり基本的な考え方になる懸念があるのですが、こういうアメリカの見方についてどう考えていらっしゃるかお伺いしたい。
  26. 田名部匡省

    田名部国務大臣 アメリカ全体としてそういう受けとめ方というのは必ずしも正確でないと思うのですね。アメリカでも日本農業理解し支援している団体といいますかグループ、そういう人たちもおるし、全く無関心な人もたくさんおると思うのです。ただ、クリントン政権として、アメリカ全体でありますけれども、どうもこの自由化といった場合に、もう米は徹底して自由化できないという日本立場というものをよく知っておりますから、何かというと、やはり交渉するときには嫌なところをどんどんやるとほかの分野で相当譲ってもらえるということは、私は、これは私の想像でありますけれども、逆の立場ならば我々もやはりそうしたことを言うわけですよね。  ですから、さっき言った金額とか労働の雇用問題からすると、そんなにアメリカに影響ないものをこれだけ米問題を突いてくるということは、何か別なねらいがあるのかいろいろ我々も考えておりますけれども、ただ米問題だけとらえて農産物が市場の閉鎖性のシンボルだということは、さっき言ったように、四兆五百億というものを買ってやっているか譲ってもらっているか、これは両面あると思うのですが、そういうことですから、そのことだけをとってみて米はけしからぬと、農業全体で、食糧全体で見れば輸入をもう十分しているわけですから、そこのところの理解というものはなかなか得られません。私も何回もこれは申し上げるのですが、どうも米という頭はなかなかぬぐい去れないという問題はあると思います。
  27. 辻一彦

    ○辻(一)委員 きょうの一部新聞を見ると、松永元駐米大使、この松永信雄政府代表がアメリカと欧州を訪問して帰ってきて、きのうプレスセンターで記者会見を行っておりますね。それが報道されておりますが、その中身を見ると、米が日本市場の閉鎖性の象徴だというのは、米国だけでなくヨーロッパでも出てくる云々、こう言っておりますが、この間アメリカヘ行って主要な人たちに、前駐米大使ですからつながりも深いので会ってきたと思うのですが、その政府代表がこういうアメリカの見方を肯定するがごとき見方をし、しかも加えて、ガットのダンケル合意案、いわゆる。例外なき関税化を受け入れるべきである、こういうような考え方を、私見であるとは断りながら表明している。これは私は、本当の個人なら別として、政府代表という、しかも駐米大使というこういう立場からこの発言は、非常に日本政府のある意味認識を示しているのではないかという懸念を持つのですが、これは、農林省は何かいろいろと後で抗議の批判をしておりますが、大臣としてどうお考えになりますか。
  28. 北島信一

    ○北島説明員 きょうの午前中、松永政府代表はカナダの外務大臣と会談しているものですから、私、けさの報道を見て、直接伺って内容を確認しようと思ったのですけれども、それはできませんでした。  きょうの報道につきましては各紙ばらばらでございまして、産経新聞がかなり大きく取り上げていますけれども、朝日、日経のようにほとんど取り上げていないものもございます。  辻先生が御指摘の二点ですが、まず、米がシンボルになっているのは米国だけではなくて欧州でも同様の認識だという点につきましては、日本の市場の閉鎖性と関連づけて言われたのかどうか必ずしも報道からはわからないのですが、少なくとも、外務大臣が訪米している際にクリストファー国務長官から、まさに先ほど辻先生が御指摘になったような発言があったのは事実であり、なおかつヨーロッパとの関係でも、ECのブリタン委員が種々の機会に米の問題を取り上げていますので、少なくとも、ウルグアイ・ラウンド農業交渉における日本基本的な方針に関連しまして米の問題が頻繁に指摘されているという現実を言われたことはあろうかと思います。  第二の点につきまして、ダンケル・ペーパーの関税化提案日本として受け入れるべきであるという趣旨の発言を政府代表がしたのではないかという点でございますけれども、これは、報道を見てもそこまでは言っていません。政府代表として、当然日本政府基本的な方針は十分に承知しているわけで、ただ一つ言えますのは、去年の九月にダンケル事務局長が来られて社会党を含む政党関係者に会われた際に、ダンケル事務局長が、自分の関税化提案は自由化ではないのだ、単なる保護の手段の置きかえであるということを強調したわけですが、その点を、松永政府代表が訪米の後、先週の月曜日にジュネーブでダンケルと会っているわけですけれども、そのことをもう一度繰り返しています。報道を見ても、ダンケル事務局長がそういうことを言っていたということをどうも言っているようでございます。  したがいまして、私の理解では、従来の政府基本的な方針、これに反することを政府代表がきのうの日本記者クラブにおける講演で言ったというふうには考えておりません。
  29. 田名部匡省

    田名部国務大臣 私もけさの新聞で承知したわけでありますけれども、どういう意図で発言したのかという詳細は承知しておりませんので、今問い合わせをいたしておるわけでありますけれども、そこを確認しませんと、内容が確かにあのとおりなのかどうか、どうも最後の方を見るとうやむやと終わって、アメリカもはっきりしないというような記事の内容でありましたので、いずれにしても確認してから対応をいたしたい、こう思っております。  それから、百十二カ国の中で日本と韓国だけは米は絶対だめだ、こう主張しているわけでして、これはヨーロッパヘ行ってもアメリカヘ行っても、どこへ行っても包括関税化というのは言うのです、言わない国はないですから。そういう意味では、私はいつも申し上げるように非常に厳しい環境の中で交渉をしておる。こういうことを言ってはどうか、余り日本も米はだめ、ためと言うから向こうが米ばかり攻めてくるのかな。いやわかったよ、じゃこれはやってくれ、あなたのところもこれをやれとか、ぎんぎんやり始めたらむしろどういうことになるのかなといろいろ考えてはみますけれども、国会決議をいたしておりますからそのとおり忠実にやっておりますが、向こうの立場になって考えると、どうもヒステリックなほど米問題を言うということは、ECは何も売ったり買ったりしませんから、日本とは。それでも米、米と言っていることは、さっきも申し上げたように、それを許したときにはほかのものまでという心配がうんと強いのかどうか、この辺はどうも定かでありません。したがって、松永政府代表のことにつきましては確認の上善処をしたい、こう考えております。
  30. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私もこの間、十二月の半ばにジュネーブヘ社公民三党で参りまして、現地で農林省、外務省の皆さんが一生懸命厳しい状況の中で頑張っておる、これはその姿を見て敬意を表します。  ただ大事なのは、この機会ですから申し上げると、一番彼らが困っておるのは、第一線で一生懸命頑張っておると、国会で総理や外務大臣政府の首脳部が軌道修正をしたような、あるいは柔軟な発言をする。それが流れてきて、あなたはこう言うけれどもあなたの親玉はこう言っておるじゃないか、こういう形でやられれば非常に交渉の迫力を失うということですね。これはやはり現地で一生懸命やっておる人の一番つらいところだと思うのですね。だから、後ろから弾を撃つようなことはやってはならないと思うのですね。  松永代表、それは今よく調査をして、事実を調べてしかるべく善処をするということでありますから、そうやってもらいたいのですが、新聞なんかを見ると各紙がいろいろな表現をしておりますが、やはりそういう誤解を招くような、あるいはそういう印象を与えるような表現があったということはほぼ変わりがないのではないか、こう思うのですね。松永大使はアメリカに非常に信用がある。また、長年の駐米大使ですからアメリカの事情にも詳しい。そういう人がアメリカへ行ってきた感じをこういう表現でやれば、日本政府代表がこういう状況を認めたような感じを私は与えると思うのです。これはまた、今はジュネーブではちょっとこの交渉はとまっておりますけれども、つばぜり合いをやっているときには大変な影響を与えると思うのです。  こういう後ろから第一線で頑張る方に弾を撃つようなことはあってはならないと思いますが、その点大臣いかがですか。
  31. 田名部匡省

    田名部国務大臣 おっしゃるとおりだと、私もそう思いますし、交渉する人の身になって国内では発言をしたり応援をしたりしていただきたいということをたびたび申し上げておるのですね。  私もジュネーブに二回行ってまいりましたが、実際に交渉している者は本当につらい立場に立っているのですね。味方がないものですから、交渉には韓国は参加を直接はしませんし、日本だけで、もう全部反対の国ばかりという中で本当につらいだろうと思うのです。交渉といっても、包括関税化は認められませんというたった一言しか言えないわけですから、何を言われてもだめです、だめですということは、本当につらいのだろうと思うのです。少しはいろいろ何か物を申してもいいなら別ですけれども、言えない。返事しないかというと、返事しないわけにはいきませんから何か交渉の中で言う。言うと今度は向こうが、いや日本がこう言った、ああ言ったということを言う。それがこっちへ来て、何だ、おまえらは別な交渉をやっているのかという話にもなり、ではしからば交渉しているのに一言も口をあかないで黙っているかというと、それもできない。交渉過程ではいろいろなことがあって、いや、それはできない、ではこうやったらどうだとかいうことを、その経過の途中のいろいろなやりとりがまた伝えられてくる。それにこっちから、今言うように、いやそんなこと言ったってというような話が行けば、交渉する者は本当につらいのだろうと思うのです。  よく頑張ってくれておると私は思っていますし、また今日までずっと交渉が何か暗礁に乗り上げているということは、各党の先生方それぞれ交渉に行ってくれる、団体もまた出向いていく、こういう総力戦で、やはりなかなか難航し、だんだん考えてみるとそれはそうだ、どうもあのダンケル案というのはなかなか難しいのじゃないかという印象まで持つようになったということに、私は非常に感謝いたしております。  今度辻委員もワシントンの方に行かれるということでありますので、また大いに期待をしていますし、私だけ頑張ってもこれはどうにもなりませんので、国を挙げて頑張るということにおいては、大変ありがたいことだ、こう考えております。
  32. 辻一彦

    ○辻(一)委員 後ろから弾を撃つようなことのないように、これからはひとつ閣議でも、総理や外相にもちゃんと歯どめをしておいていただきたいと思います。  そこで、ガットと米の問題にもう少し入りたいのですが、昨年の十二月にガットEC、ブラッセルを訪ねた後、フランスに寄ってフランスの農林省を訪ねたのですが、ここで随分懇談をしていますと、フランスは農業に対する見方が、歴史と文化とに非常に関係が深い、こういう認識を明確に持っておる。これは、アメリカは歴史はそう深くない、浅いですし、それから大規模生産でずっと出発してきた、そういう点から、歴史や文化と農業との関係は余り考えていないんじゃないかという感じがしますが、フランスは、健全なフランスの社会には健全な農村社会、農業というものがあって、それが文化や歴史と深い中から生まれてきて今のフランスを支えている、こういう認識を持っています。私は、米と水田農業を考えたときに、やはり米と水田農業日本の歴史と文化と非常に深いつながりを持って生まれてきた、発展してきたと思っております。  そういう点で、フランスと日本農業に対する考え方ではかなり共通点があるように感じたのですが、それがゆえに、ECの中ではフランスが一番農業を大事にして頑張っておるのではないかと思いますが、こういうフランスの農業、農村に対する考え方日本の方としてはどういうふうに認識をされておるのかちょっとお伺いいたしたい。
  33. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 フランス農業でございます。  一般的に申しまして、EC農業は、アメリカでございますとかカナダ、中南米、豪州等のいわゆる新大陸といいますか、そういうところの農業に比べまして、御指摘のとおり長い伝統を有しておるわけでございます。また、これらの新大陸の農業と異なりまして、比較的規模も小さくて、家族的農業経営を主体にしておるというふうなことで、我が国の米農業といいますか水田農業といいますか、そういう点で我が国と類似している点も多いというふうに考えておるわけでございます。  ところが、こういう特色がある一方、フランスの農業というのはECの中では、二月当たりの平均経営面積が二十九ヘクタールというふうなことで、比較的大きいわけでございます。また、EC全体の農業生産の二八%、これは一九九〇年の数字でございますが、二八%を占めておるというふうな状況でございます。また、先ほど来御議論いただいております穀物自給率、これについて見ますと二〇〇%を超えておるわけでございまして、補助金つきで輸出を行っておる、こういう農産物の輸出大国である、こういう一面も持っておるわけでございまして、こういう点におきましては、世界最大の農産物純輸入国でございます我が国とは基本的に異なる面もあるというふうなことでございまして、いずれにいたしましても、我が国と似ている面もございますが、異なる面もあるというふうな状況でございます。
  34. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私の聞きたいのは、農業と歴史、文化というものについての深い認識がフランスにはある、畑と田んぼが違うのはよくわかりますが、米、水田農業日本の歴史、文化の中に育ってきた、こういう共通点があるんじゃないか。これは大体そういう共通する点もあるということで確認をできると思いますが、そういう点で私は、もっとフランスとこれからのガット交渉等の中で連携を高めていくことが大事じゃないかと思いますが、これは時間がかなりたっていますから簡単で結構ですから、これについて一つだけお尋ねしたいと思います。
  35. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 フランスにつきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、我が国と、要するに文化と農業という面において、委員御指摘のとおり共通点があるわけでございます。  フランスは、ECの一員といたしまして、ウルグアイ・ラウンド交渉については交渉権限ECにゆだねておるわけでございます。したがいまして、フランスが直接に農業交渉を行っているというわけではございません。しかし、フランスはEC農業政策について大変重要な役割といいますか主導的な役割を果たしておるわけでございますし、EC委員会の決定についても影響力が大きいというふうに見られるわけでございまして、私どもといたしましても常日ごろからフランス政府と意見交換、あるいはフランスの団体の意見等も聴取しながら、いろいろ意見交換の機会を持っているところでございます。  フランスは、農業の政治的地位といいますか、農業について大変関心が強い国でございまして、農業保護の意見が国内で強いという面がある一方、小麦などを中心にいたしまして、農産物輸出への依存度も高いというふうな面もあるわけでございます。  そういうふうなことで、我が国としましてもこのような点を十分考慮しながら、さまざまな機会をとらえまして、我が国の立場についてフランスの理解を得るように、いろいろ努力をしてきておるところでございます。今後ともこのようなことで臨んでまいりたいと思っております。
  36. 辻一彦

    ○辻(一)委員 要するに、フランスとなおひとつ協力関係を強めてほしいと思います。  そこで、ジュネーブで我々は韓国の大使と接触をしました。かなり率直な意見交換をしたのですが、韓国の方は、どうも日本は米について、国会の首脳発言等を見ると、幾つかの選択肢を持っているのじゃないか、こういうような懸念を率直に表明しておりまして、我々が説明し、変わりはないということをきちっと言えば、それでわかったが、なおひとつ、ECアメリカも経済力は強力であるが、日本も強い経済力を持っておるのであるから、ぜひその経済力を背景にして強い主張を米についてはやってほしい、こういうように言っておったのです。  それで、この韓国の新大統領は選挙期間中に、米は開放しないということを宣言し、公約、明言をしておったといいますが、そういう点から見ると、日韓両国は米については一つの共通点を持っておる。この協力を強めるということがひとつ私は大変大事でないかと思いますが、これについての見解をお尋ねしたい。
  37. 田名部匡省

    田名部国務大臣 おっしゃるとおり、私も大使館の担当の方とお会いいたしまして、一緒に努力をしたい、こういう話を二度ほど実はいたしております。これは、安定供給でありますとか量的な管理というのは、韓国も日本以上にまた、周囲の状況を考えるとこれは大問題なんだ、そういうことで非常に危機感というものを持っております。  このようなことでありますから、韓国と共通する問題意識というものを持っておるわけでありますから、いろいろな機会をとらえて、これらの国と連絡を密にして、今後も連携を強化しながら、食糧輸入国としての立場というものがこのガットウルグアイ・ラウンドで貫けるように努力をしていきたい、こう考えております。
  38. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私は、列国議員同盟の会議ですか、六十三年にブルガリアのソフィアであったときに、韓国の代表団と三時間ほど昼飯を挟んで懇談をしたのですが、そのときに隣に座ったのが前の農林長官というか農林大臣ですか、それで、当時韓国では何が一番問題だと言ったら、牛肉の問題ですね。それは我々がもう何年か前に苦い経験をなめて自由化にならざるを得なかったんだ、あのときはあなたの方は腕をこまねいて見ておったけれども、今、日本の防波堤が崩れて牛肉が攻勢を受けている、今我が国は米で大変なんだ、このとき一緒に手を組まないと、もしもあなた、日本に万が一があったら、すぐ韓国にかかってきますよ、だから今、日韓間では協力すべきでないか、こういうことを論議した思い出があります。  今いろいろ努力しておっていただいておりますが、どうもいろいろ接触してみると、日韓両国は、どちらかが先におりやしないかという心配を両方で持っているような感じがするのですが、こういう懸念があったのでは本当の力になっていかない。そういう点で、もっと韓国との連携を米については強める、具体的にいろいろやるべきだと思いますが、いかがですか。
  39. 田名部匡省

    田名部国務大臣 先ほど申し上げたように、百十二カ国の中の二カ国というのは韓国と日本でありますので、これはもう大事な国として、今後十分連携をとりながら行動をともにしたい、こう考えております。
  40. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それから、昨年の十二月十八日ですが、ブラッセルのEC本部にマクシャリー農業委員農林大臣を訪ねて、かなりな時間懇談をしたのですが、ちょうどその十二月十八日の午前中に、ECは農相理事会を開いてバナナの関税化を受け入れるということを決めてきた、その直後の会談であったわけですね。そこで、マクシャリー農業委員は我々に、バナナの関税化を我々は受け入れたのだから、日本もひとつ米の関税化を受け入れるべきではないか、こういうことでなかなか鋭く切り込んできまして、直ちに我々もバナナと米を一緒にできるはずがないということで反論して、高い関税をかけても、結局は関税を下げることになれば米は入ってくる、そういう提案には応じられない、こう言って、そこで随分論議をして、協議をしてきました。  大臣はかつて、ECのバナナ関税化受け入れの前にECを訪ねて、関税化問題でバナナと米との共闘、日・EC間の共闘の可能性がないかということを探りに行かれたと聞いておりますが、今日の時点になると、ECはバナナ関税化を受け入れた。こういう中で、我が国とECとのこの問題についての協力関係、その可能性はいかが考えていらっしゃるか、お伺いしたい。
  41. 田名部匡省

    田名部国務大臣 私とマクシャリー担当と話し合いをいたした中にバナナの話がありました。これはもう受け入れる、しかし、いろいろ条件がありまして、これでそう大きな影響を受けるというほどではないということを言っておりました。従来からバナナについては、どうもECは包括関税化の原則を受け入れる姿勢を実は示しておったわけでありますけれども、しかしバナナの問題についての今回の決定というものは、私どもは予想していた範囲内のものだというふうに考えております。  しかし、私どもは、ECに対しては包括関税化の例外の必要性を認めさせるよう働きかけてきたところでありますけれども、特に今回のバナナの取り扱いとの関係で、我が国の対応を変える必要があるとは考えておりません。したがって、これからもそういう立場努力をしていきたい、こう考えております。
  42. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私も、ECがそうであっても我が国は関税化に応ずべきでない、当然であろうと思います。  そこで、アメリカECガット本部は、関税化問題では大体似たような立場をとっている、いろいろな違いがあるにしましても、おおよそは共通的な立場をとっているように思いますが、今日の段階になると、米の関税化の例外を求める論理をさらに精緻なものにして再構築、組み立てていかないといけないのじゃないかと思います。これについてどうでしょう。
  43. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 米の関税化の例外ということでございますが、これにつきましては、御答弁申し上げているようなことで、包括的関税化、基礎的な食糧というふうな観点からこれは例外にするようにというふうなことで要求をして、ダンケル・テキストを直すべきだ、こういう要求を出しておるわけでございます。このダンケル・テキストの修正につきましては、昨年末来いろいろな国から、農業分野以外の部分についてもいろいろな要求が出ておる、こういう状況でございます。  こういういろいろな状況を踏まえながら、御指摘のように、従来からの主張を変える必要はないと思いますが、さらに理論武装をし、また粘り強く説得に努めてまいりたいということでございます。
  44. 辻一彦

    ○辻(一)委員 ここまで来ると、我が国としては、とにかく七割も外国から食糧を買い入れているんだから、これ以上買えといったって無理だろう、三割ぐらいは少なくとも自分の国でつくらなければ、これは独立国家主権だ、主張だと、もう単純明快にやらなければ、難しい論理をたくさん並べてもなかなかわかりがたくなるんじゃないかと思いますが、大臣、いかがですか。
  45. 田名部匡省

    田名部国務大臣 私も、単純明快な方がいいと思うのです。しかし、三十分、一時間と交渉時間をとると、今おっしゃるように、もうこんなに買っているんだからこれ以上買えといったって、もうあとは他の品目でもそんなに買う余裕というのはないわけです、もう限度いっぱいまで来ていますから。これを仮に米以外の、あるいはいろいろなものを仮に洗ってみても、もう残っているのは微々たるもので、これが倍の八兆にもなるかというと、これはなりませんから、おっしゃるとおり簡単にやった方がいいのは私もそう思うのですが、仰せいろいろな話し合いをしてきますので、いろいろ資料を申しながら、これはこうだとかこれはこうだとかという、どうしてもその時間帯は交渉に充てるということになりますので、なるたけほかの国にない日本の特徴というものを相手に理解させるということが大事だと思って、一生懸命話し合いをするわけでありますけれども、おっしゃるとおり、余り数多く言ってもかえって、何か向こうが覚えているかどうかわかりませんので、的は絞って交渉した方がいいことは間違いない、こう思っております。
  46. 辻一彦

    ○辻(一)委員 あと私、この新政策について、平場問題それから中山間地の問題に触れるつもりでおったのですが、これはまた次の機会にいたしたいと思います。  まだ四分間ほどありますので、最後に、もう一つ米の問題です。  昭和六十年ごろにアメリカ農業を視察したときに、日本の大使館に行ったら、久しぶりに和食、御飯を食べさせてくれた。当時の大使が、味はどうですか、結構いけるでしょうと言うので、どこの米ですかと聞いたら加州米だと言うんですね、カリフォルニア米。私は、もってのほかじゃないか、日本の大使館ぐらいは日本の米を持ってきて、我々は国内の議員ですが、外国のお客さんぐらいには、日本の大使館が、日本のうまい米がありますよといって食べてもらうべきではないか、こう言って、国会でも何か論議をした覚えがあります。  実はこの間、十二月の半ばにジュネーブに我々が行く前に、ある新聞はこういう報道をしておった。日本の代表団が世界じゅうから批判を受けてなかなか大変だ、元気をつけるには米の飯を炊いて食べなければだめだ、そこで、ジュネーブで米を集めたが、アメリカの米、加州米であった。新聞が皮肉っているのは、アメリカの米を買って食べて、アメリカの米に反対する本当の力が出るのか、こういう新聞記事を見ました。私はすぐ福井の方に電話を入れて、福井のコシヒカリの一番うまいのを十キロ持ってきてくれ、こう言って電話を入れてすぐ届いたものですから、少し分けて飛行機に積んで持っていって、宇川大使や塩飽審議官等にもこれを渡して、ちょっと元気をつけて頑張ってくれ、こう言って渡してきましたが、この間塩飽さんも年末に帰ってきて、あの米はうまかった、元気が出ました、こういって報告を聞きましたが、ジュネーブであるとかブラッセルであるとかアメリカとか、そういうところには、これは食管法の関係はいろいろあるとは思うのですが、私はちょっと詳しいことはわかりませんが、日本の一番うまい米を在外公館の大事なところには持っていって、外国から来たお客さんには日本の米はこんなんですということを紹介するくらいのことができなくてはいかぬのじゃないかと思う。何年か前にもこの論議をやったのですが、何かいい方法はないのか、いかがですか。
  47. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 米のあれでございますが、やはり食管法の問題等々がございますが、まあ何というのですか、行く人が持っていくとか、そういうふうな形で持っていくことは可能だと思いますが、大量に輸出という格好で出すことはなかなか値段の問題等々もあろうかと思います。  いずれにいたしましても、せっかくの御指摘でございますので、よく食糧庁と相談をさせていただきたいと思います。
  48. 辻一彦

    ○辻(一)委員 じゃあ時間ですから、これで終わります。残した問題はまた別の機会に。ありがとうございました。
  49. 平沼赳夫

    平沼委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  50. 平沼赳夫

    平沼委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。鉢呂吉雄君。
  51. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 私は四十分間でございますので、端的に質問いたしますので、簡潔な御答弁をお願いいたしたいと思います。  まず最初に、牛肉の輸入の急増あるいはこの国内価格の下落の問題であります。  先ほども午前中質問がありましたけれども、九二年度は牛肉自由化の二年目ということでございましたが、輸入量は急増しております。九二年度といいますか、九二年の一月から十二月までで四十一万三千トンという輸入量でございまして、国内の五〇%のシェアを占めるというようなことでありまして、供給過剰ぎみ、民間在庫が急増しておるというような実態がというふうに思います。しかも、そのため国内の牛肉価格は低迷の一途をたどっておりまして、いわゆる標準の卸価格と言われておりますB2、B3、これがキロ千円を割り込みまして、今九百円台の後半に張りついておる。牛肉の安定基準価格が九百三十五円でしたから、これに迫る勢いにあるというようなことで、国内の畜産肉牛農家は大変憂慮をしておるというような実態でございます。  しかも、最近円高が非常に顕著でありまして、百十五円というような状況でございまして、これはまさにさらに輸入を急増させる原因になるだろう。関税率は今六〇%でありますけれども、この四月に五〇%になるというようなことでありますが、関税率以上に、当時牛肉の自由化が初年度目。あたりは一ドル百三十五円でありましたから、まさに二〇%に迫る円高傾向でありますから、これが非常に牛肉の輸入に勢いを増させているというふうに見ております。  そういうことで、農水省としても、牛肉自由化の決定をした際には、国内畜産農家のソフトランディングといいますか経営は守るということを言ったわけでありますけれども、このような輸入の急増というものに対して基本的にどのように対応していくのか。さまざまな輸入禁止措置もあの当時ありましたけれども、私はあの当時決められた禁止措置といいますか輸入抑制策を超えた対応策が今求められておるのではないかということが一点であります。  同時に、先ほど畜産局長、価格の浮揚対策を講じておる、講ずるというような話もありましたけれども、和牛の子牛価格を見てみましても、一月だけを見ましても、昨年の一月、前年同月比でも和牛が二〇%、正確には一九・四%安くなっておりますし、乳牛の子牛価格についても二〇・八%前年同月よりも安くなっておるということで、枝肉相場の低迷が、これら肥育意欲が減退をしておるということで子牛にも悪影響が出ておるということでございますので、緊急対策が必要でないかというふうに思いますが、この二つについて農水省としてどのような考え方をしておるのか、御答弁をお願いいたしたいと思います。
  52. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 二つ御質問がございまして、牛肉の輸入の自由化をしてからことしは非常に輸入量が急増しておる、いろいろ事情を、原因をお挙げになってそういうお話がありまして、そういう輸入の急増に対してどうするのか、自由化をソフトランディングさせるということからもいろいろ問題があるのではないかそういう御質問だったと思います。  確かに自由化の初年度は、もう御存じのとおり、その前の年に比べて輸入が減ったわけですけれども、ことしは非常にふえております。これはまた、さらにその関税が四月からは一〇%下がるという状況でございまして、私どもとしましては、これは自由化をしたわけですから、その自由化したときにセーフガードの条項がありますけれども、それにはまだ達しておりません。  それで、そういうときにどうするかという問題でございますけれども、私どもとしては、関係国に対して日本の国における牛肉の需給事情をよく説明しまして、そういう需給事情に即した輸出入が行われることが、輸入国だけではなくて輸出国にとってもいいのではないか、そういうことをよく理解してもらうことが肝要であると思うわけです。  先日、日本とオーストラリア、定期的に牛肉の需給情報交換会議を開催しているわけでございますが、その席におきましても、今申し上げました趣旨で話し合いを行っておりまして、今後とも機会をとらえまして、今言ったような形での努力をしてまいりたいと考えております。  それからもう一つ、肉用子牛の価格が非常に下がっておる、合理化目標価格を割って、乳用種あるいはその他肉専用種については下がっておる、県の基金の財源が不足をしているというようなことでございますが、そういう事態も想定をいたしまして、全国の基金協会に、そういう事態に県基金に対して無利子で八年間の融資をする、四年据え置きと午前中もお話し申し上げましたが、そういうことで今対処をしているところでございまして、償還時期まで、五年目に償還するわけでございますので、国産牛肉につきましても、新鮮さとか品質の問題だとか安全性だとか、消費者の方々そういう面で評価をしてくださっておりますので、そういう面が生かされて価格に反映されるような、そういう価格浮揚対策を今講じる、そういうところに力を入れるのが肝要であろうというふうに考えておるところでございます。
  53. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 続きまして、時間がありませんので、これは大臣にお聞きをしたいのですけれども、先日、二月四日、NHKのニュースを初めほとんどのマスコミが報道をしたところでありますが、米以外の乳製品、小麦あるいはでん粉等々のものについては、非公式という言葉は使いながら、関税化について各国に打診をした、これは政府関係筋というようなことでこういうことが発表されたといいますか、内外からの情報でそういう話があったというような報道がされましたが、これは事実でありますか。
  54. 田名部匡省

    田名部国務大臣 私も真意を確かめまして、政府関係筋でこういうことがということがありましたから、一体それはだれだと。なかなかその先はどうも言っていただけませんでしたが、いずれにしても、先ほど来申し上げておりますように、百十二カ国のうちの百十カ国は包括関税化は認めるという方針で交渉しておるわけでありますから、その交渉の中で相手の国から関税化の要求があるわけでありまして、関税化をしたときはこうなるんだ、だからどうだとかといういろいろなやりとりがあるわけですね。そうした途中でのいろいろな話し合いというものが、相手の国が質問されて、日本とこういうやりとりがあったという話等が、そのまま正しく報道される場合はいいわけでありますけれども、何かいかにも関税化について打診をしているんだというふうに受け取られるということは、これはもう十分気をつけなければならぬことでありますけれども、やりとりの中ですから、いろいろなことをこう言ったああ言ったと。  例えば、先般も我が党の、自民党の若手の人たちが行ってアメリカの大使と話をした。それが、こういうことを言ったということが大変な反響を呼んで、何か電話がかかってきて、いやいや違うとかという話もあったとか、そういうたぐいの話は随分とあるわけですが、そういう事実はありません。そのことだけを申し上げておきたいと思います。
  55. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 今関係各国から、これらの関税化についての相手側からのこういう打診があったかのような表現でありますけれども、この報道自体は我が方からそういう打診をしたということでありまして、はっきり、これは事実でないのかどうか。  単に一社が抜け駆けて報道したというようなことではなくて、全社がほぼこれで報道しております。しかも、与野党のいわゆる交渉当事者でない政治家のたぐいが言って、故意でないとか後で取り消したのとは違って、これはまさに交渉当事者がやったという報道でありますから、これはもう非常に重大な報道でありますから、私はむしろ大臣が、そのことは事実でないということであれば、これは報道機関にきちんと厳重に抗議をするなり訂正を求める、そういうすべのものであるというふうに思いますけれども大臣はそのままほっておいて今日まで来ておるのですか。  これは、いろいろな報道はありますよ。我が方にもあったようでありますけれども、それとは違うのです。これは、当事者がみずから関税について、これはもっと具体的に言っていますでしょう。小麦については、八割相当の現状輸入しているものについては二五〇%、その後については高率の、実質的に輸入禁止をするような関税率についての打診をした、しかし、アメリカ等で断られたということでありますから、まさに重大なことでありますから、大臣としてもそれらについて、政府関係筋というふうに言っているのですよ。私も報道機関から聞いていますよ、だれが言ったかということまで。これは過去に言ったことじゃなくて最近言ったことなんですね。その辺の確認はしていないのですか。
  56. 田名部匡省

    田名部国務大臣 いずれにしても、関係国にそういうことをしたということはありません。向こうから、いろいろな話し合いの中で、こうしたらどうだとかああしたらどうだとかということはいろいろあっても、私の方は関税化は受け入れられませんというやりとりは、それは交渉の中であったとは思いますけれども、しかし、そういう、逆に私の方から関税化を打診したということはない、これは事実でございます。  報道は、いずれにしても憶測の記事を含めて事実に反したことが報道されるということになりますと、国内にも無用の混乱を引き起こすことはもちろんでありますが、外国にも誤った認識を与える。その内容によっては今後の交渉に不都合が生じてくるという好ましくない結果がありまして、今までも何回も官房長を通じてマスコミに厳重に抗議をいたしましたけれども、どうも報道の自由ということがありまして、注意を何回いたしましても、そのことはどうも聞き入れてもらえない。今までもそうでありました。  私も、大体だれそれが言ったというふうに報道してくれ、関係者とか政府筋とを言われても、だれのことかわからぬ、こう言って申し入れをしました。これは報道になるということも聞きましてその話をしたのですけれども、この種のことを何回やりましても、今までの例から見ても、本当に、じゃ真実を報道しておるか。憶測が多いのですよね。ですから、私が就任以来三カ月間、米は自由化になるという報道ばかり見かけました。三カ月書いたらだんだん書くことがなくなったのか、そういう報道は流されなくなったり、今度は暮れにももう大変だという報道でありましたが、一々これは申し上げております。  今申し上げたように、報道の自由ということでなかなか我々の主張というものが取り入れられないということでありますが、今後も適切に対応していきたい、こう考えております。
  57. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 次に、モチ米の需給について御質問いたします。  モチ米につきましては、生産については二年続きの不作、しかも皇太子殿下の結婚を間近に控えておるということで、その特需といいますか、そういうことが言われております。したがって、需給が逼迫状況である。  例えば、小売価格については、既に昨年の同月比で言いますと二割、モチ米の精米された小売価格は上がっておる。卸価格についても、いわゆる自由米が自主流通米の一万円高、一俵、五割増し近くになっておるというようなことで、これら米菓・あられ業界は、モチ米の輸入ということについてもその圧力が、要望が強くなっておるというように言われております。一方、丸粒では輸入できませんから、いわゆる米粉調製品、粉にした、そして砂糖等をまぜた調製品が急増しておる。昨年の二倍半までいきませんけれども、二・二倍以上になっておる。四万七千トン近く入っておるということで、大変な状況を呈しておるのです。     〔委員長退席、柳沢委員長代理着席〕  まず、食糧庁にお伺いいたしますけれども、モチ米の五米穀年度の需給の見通しについてどのように見ておるのか。さらに、一説には六万トンぐらい不足をするから、輸入を絶対しないということを食糧庁として断言できるのかどうか。それから三点目は、米粉調製品が急増しているわけですけれども、四万七千トンというのは大変な数字でありますが、この輸入を規制することができないのかどうか。  この三つについてお伺いいたします。     〔柳沢委員長代理退席、委員長着席〕
  58. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 モチ米の年間需要量は、農家消費等を含めまして約五十万トン程度で推移しておるわけでございます。三年産米につきましては、主産地である佐賀で不作があった。四年産米につきましては、二大産地であります北海道が冷害で不作であったというようなことを受けまして供給が厳しくなっているということで、需給が厳しくなっておるというのは事実でございます。そういうことを受けまして、今御指摘がありますような、米粉調製品等の輸入が増加しているわけでございます。  ただ、生産量自身、四年産米が三年産米に比べまして五万トン程度増加していることもあります。それから、これは残念ながら輸入米調製品の増加ということもありますし、それからさらに五年産米につきましても四年産と同じように早食い等をやりまして、何とか、需給自身厳しいことではありますけれども、需給の安定といいますか、供給の確保に努めていきたいというふうに考えております。  それから、米粉調製品につきましては、これは調製品自身自由化物資で、一定のものについては自由化物資でございますので、そのこと自身、私どもとしてとめるわけにはいかないわけです。ただ、この米粉調製品の増加というのは、内外の価格差ということもさることながら、むしろ不作による供給が逼迫しておるというところに原因があるわけでございます。やはり、基本的にはできるだけ国内産米による供給を行うということが大切、基本ではないかと思っております。  そういうことから、国内需要に応じましたモチ米の適切な生産、さらにはできるだけ早い集荷というようなことによりまして、国内産米でできるだけ供給するということで、そういう米粉調製品の輸入についても抑制を図っていきたいというふうに考えているところでございます。
  59. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 食糧庁の資料によりますと、一月末で自主流通米の検査数量、いわゆる集荷をしたと言われております数量が二十一万二千トン、しかしながらこれは第四米穀年度といいますか、昨年の十月までに早食いをしておるというのが二万トン程度あるということでありますから、実質は十九万トンぐらいしか集まっておらない。ですから、どう見でもやはり三万トンないし、特需がどのぐらいあるかわかりませんけれども農業団体では六万トンぐらい不足するだろうというような見方も報道されておるわけであります。  そこはちょっと答弁が聞こえなかったのですけれども、自由化を阻止するわけにはいかないというような答えでしたかな、その込もう一回、モチ米の輸入自由化というものはあり得ないんだ、そのことはどうか、または場合によってはあるということなのか、御答弁願いたいと思います。
  60. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 済みません。米粉調製品の輸入をとめられないかという御質問があったので、米粉調製品自身は一定のものについては自由化しておる物資でございますので、私どもではとめるわけにはいきませんけれども、先ほども申し上げましたように、米粉調製品の輸入の増加というのは、内外価格差ということもさることながら、供給が不足ぎみであるということに起因しておりますので、基本的には国内での供給増加を図っていくということによりまして、米粉調製品の輸入増加についてもできるだけ抑制していきたいということを申し上げたわけでございます。  それから、確かに三年産米の不作を受けまして四年産米の早食い、一万六千トンやったわけでございますけれども、今の集荷状況も先生大体御指摘のようだと思います。ただ、残念なことではございますけれども、米粉調製品の輸入がふえているのも御指摘のとおりでございまして、それからさらに、五年産米につきましても早食いとか早出しというようなことも系統と一緒に考えていって、何とか供給の確保に努めていきたいというふうに考えております。
  61. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 ことしの作柄にもよりますけれども、需要のピークはどこに来るか定かでないわけですけれども、いずれにしても価格の急騰、先ほど言いましたように二割増というような小売価格の高騰になっておりますから、集荷に全力を挙げていただきたい、したがって、価格の安定化に資していただきたいというふうに思います。  時間がなくなりますので、次にいきます。  新政策、新農政関係について、まず最初に大臣にお聞きをいたしたいと思います。  二月十八日の当委員会の同僚石橋委員の質問に対して、農水大臣はこのように答えております。昭和三十六年からあります農業基本法については、今の新政策にとっても有効である、それは、他産業並みの所得の確保やあるいは新政策で打ち出した経営体というものが、いわゆる基本法における家族経営の概念の趣旨に沿っておるものである、農業基本法の改正とか新たな基本法というようなものは必要ない、そのように答弁をされておるわけであります。  しかしながら、昭和三十六年にこの農業基本法、三十一年もう既にたっておるわけでありますけれども、言ってみればこの基本法は農業の側からの政策目標の提起でありまして、専ら農業に視点を当てた農業基本法であろうというふうに私は思っております。  したがいまして、新政策でも述べておるような、例えば良質かつ安全な食糧を安定的に供給していくという国の基本的な役割、あるいはまた農業農村地域の国土・環境保全といった多面的、公益的な機能、あるいはまた都市との補完作用といった農業、農村の特殊な役割、これらについて新たな視点で基本法といったものをつくるのが、この新政策を本当に具体化をしていく、そういうものになっていくだろう。今何か各論の個別法に入っておりますけれども、私はこのような基本法をまず農水省でつくるのが第一の役割ではないかというふうに思いますけれども大臣の考えをお伺いいたしたいと思います。
  62. 田名部匡省

    田名部国務大臣 農業基本法の政策目標として最も大事なことは、農業の生産性の向上、それから農業従事者の所得の他産業並みの所得、これが本当に一番大事なポイントであろうと思うのです。  おっしゃるとおり、いろいろなことがそのときどきで、例えば環境問題が世界的に取り上げられると環境問題、あるいは担い手が不足すれば担い手ということではあり得るわけですね。それがあった都度、農業基本法をしょっちゅう変えなければいかぬかどうかというのはこれはまた別の議論でありまして、ただ、基本的なことはどうかというと、今冒頭申し上げたようなことが基本でありまして、その政策においては現時点でもこれはきちっと達成しなければならぬ大事な目標であると考えておるわけであります。  この農業基本法の制定後いろいろと施策を展開してまいりまして、畜産でありますとか施設園芸というものは大変成果を上げてきたという面はありますけれども、その中で取り残された部分というのは土地利用型農業、稲とか麦とか大豆、これは何とかしないと、さっき言ったように生産性を上げて所得も他産業並みということにはいかぬということでありますので、この点について今回いろいろと取りまとめをいたしたわけであります。  したがって、基本法の政策目標を今日的な視点で変える必要があるかということでありますれば、今のままで十分対応していいのではないかというふうに考えております。
  63. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 今の大臣の視点は、いわゆる農業については野菜等については伸びておる、したがって、土地利用型の作物についてこれをどうするかという視点があれば今の農業基本法は有効であるというふうにおっしゃったわけであります。しかし、新政策が述べておることは大変大きなことを述べておるわけでありまして、先ほど前段で言いました、いわゆる国民に対して食糧をどのように供給するかということは、これは農業者にとっても大きいわけですし、国民全体にとっても大変大きな問題であると言わざるを得ません。  ですから、国の役割として国内農業生産を拡大をして農業の自給率をどの辺に確保するのか、自給率も含めて供給力というものをどの辺に置くのか、このこともやはり国の基本として明示する必要があるだろう。したがって、そこに至るためには、この政策でも言っておりますけれども、国境措置とそれから国内農業生産力というものをどこに置くかということが問題になっていくというふうに言っておるわけですから、そのことも大きく基本法という形で明記をすべきである。このことは既存の基本法には載っておりませんね。  それから、食糧の安定供給ということからいけば、この新政策でも一定の輸入はやむを得ないんだということを言っていますから、輸入を含めて食糧の安全保障という形でどういうふうに備蓄も含めてやっていくかということの明示がなければ、いっとき何かの食糧不足が地球規模的に起きた場合には、もう日本農業といいますか、日本食糧は対応できなくなっていくということがあると思うのですね。そういうことを考えたときに、今の基本法では不足をしておる。もちろん農業全体についても、私は今の基本法はもう三十一年たって時代おくれのものになっているというふうに思いますけれども、子細に見てもこれは全く不足をしておる状況、法律的に見れば。  今回も農業六法が配付されましたから見ましたら、大臣言葉で初めてですね、この新政策という何かわからない、法律でもない、政令でも規則でもないものがどんと入って、これを入れましたということが大臣言葉で書かれておりますけれども、新しい何とかの方向というようなものがこの農業六法に入ったのも、後を見ましても政令とか規則は入っていますけれども、何もきちんとした議決のないものが入ったのは初めてでありまして、私は、そういう意味でこの新政策意味合い自体が不明確になるおそれがあると。これは農水省ひとりだけ考えてひとりだけでできるものであればよろしいわけでありますけれども、そういう意味ではやはり基本法というきちんとしたものに仕上げていく必要があるというふうに思いますけれども大臣に重ねてお伺いをいたしたいと思います。
  64. 田名部匡省

    田名部国務大臣 基本的な考え方を申し上げて、補足的なことは事務当局にさしていただきますけれども、いずれにしても農業基本法というものを、今おっしゃったように不測の事態にどう対応するかとかいろいろなことを、考えられるものをみんな入れてつくるのが妥当なのかどうか。私は、そうではなくて、本当に今の農村とかあるいは農家の所得とか、どうやって生産性を上げるかという基本的なところに視点をしっかり置いて、あとはそのときに、例えば備蓄はどうするかとかなんとかというのは、うんとあって必要なときは上げなければならぬし、過剰で在庫が多くなったときにはやはり減らさなければならぬというそういうこまかいところまで基本法で定める必要があるのかどうかというところは、これは議論のあるところだろうと思うのです。  ただ、この基本法においても食糧政策では、「需要が増加する農産物の生産の増進」とか、あるいは「農業の生産性の向上」「農業総生産の増大」、これはそれぞれ二条、九条ということで国産食糧の安定的供給の視点があったり、就業機会の増大だとか「交通、衛生、文化等の環境の整備、生活改善」とかいうこういうことはきちっとうたわれてあって、それをどう進めるかという手法はそのときどきの時代に合ったことでやっていいのではないか。これは食糧政策についてもきちっと明示してありますし、農村政策についても明示されておるということから見れば、私は、余り細かいことまで基本法でやっておくということはどうかな、こういう気がしておって、これでいいのではないかということを申し上げたわけです。
  65. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 それではもう一つ伺います、時間がないので。  先般の当委員会で、志賀議員の御質問に対して大臣は、いわゆる食糧自給率の低下傾向の歯どめについて御答弁されました。まさに新政策で述べておる、いわゆる生産性の向上や経営体の経営感覚あるいはまた農業技術の革新というようなことで達成をしていきたいというふうに御答弁されました。しかしそのことは、これまでずっと一貫して自給率が低下をしてきたこのことの歯どめにはならぬというふうに思います。  先般の予算委員会で、この歯どめというのはどのパーセントかと言いますと、長期見通しで言っておる五〇%というふうに大臣が答弁をされておったようでありますけれども、どんどん減ってきておる。先ほど大臣は、野菜、果実等については基本法に基づいて向上してきたんだというふうに言っていますけれども、今日四六%にまで下がったカロリーベースで見ても、押しなべて野菜も含めてどんどん下がっておる。乳製品はもちろんであります。さまざまな要因があるわけでありまして、一つは自由化を促進してきたという要因、あるいはまた内外価格差の問題、さまざまな原因があってここまで下がってきたわけであります。これに対する歯どめは、一般的ないわゆる生産性向上対策では私は歯どめがかからないというふうに思うわけであります。  したがって、長期的な見通しを立てることはいいのでありますけれども、やはり、例えば五年なり十年の中長期の計画をきちんと立てる。今十年の計画がありますけれども、それはもう棚に置いたようなものになっておるわけでありますから、この間の五年計画等を立てて、それに至るための具体的な一貫した政策、これは主要な作物ごとに立てるという場合もあります。  私は、畜産局長、時間がないから言いませんけれども、酪農畜産、肉用牛の酪農近代化計画、これを立てる、立てると言って、私衆議院議員になってからもう三年になるのですけれども、さっぱり立てるという話をしてこられない。聞きますと、このガット問題があるから立てないんだと。しかし、牛肉が自由化されたときに、長期計画が必要であるのに農水省は全然立てる気がないと。私は、そのことが今非常に大事だ、あるいはまた、そのための財源措置、財政措置というものをやはりきちんと見立てることが必要であると。そのことがなかったら、なかなか日本のこの自給率の長期低落傾向、さらに急激に落ち込む可能性があるわけであります。  例えば小麦とか大豆についても、これは単に天候の不作というよりも、日本の生産力がぐんぐんと下がっておる。小麦についても、一六から一七%まで行った自給率が、今や頭打ちから低落傾向に転落をしておる。大豆についてはもう安楽死寸前である。やはりこれらについては、きちんとした、具体的な、一貫した政策を提示をして自給率を本当に上げるということが求められておるのではないか。  この点については大臣はどうですか。
  66. 田名部匡省

    田名部国務大臣 自給率の低下ということはそのとおりでございます。これに歯どめを何としてもかけなければならないということで、どこまでやるかというと、五〇%まで何とか達成しようということでございます。私は、農業問題というのは、我々関係した者だけで議論してもうまくいくわけがなくて、消費者があってのことでもありますから、国民的なコンセンサスを得るというのもそこにあるわけであります。  そこで、いろいろな自由化をしたとかあるいは内外価格差のこともあります。しかし何といっても、国内だけでみんな自給できるような状況かというと、土地利用の問題からいろいろありまして、そうして四兆五百億も輸入せざるを得ないという面はあるわけです。しかし、基礎的なもの、農村社会を崩壊させない対策というものはこれは必要でありますので、この限られた国土の中でこれをやろうというと、品質を高めるとかコストを引き下げるとかいろいろな努力をしていかないと、これは国民の消費者ニーズにも合致していかなければならぬという面がありまして、そういうことで私は、自給率の低下傾向に歯どめをかけるということは、何といっても今は、さっき申し上げたように畜産とかほかの分野はまあまあにしても、土地利用型の農業というものは後継者が不足し高齢化が進む、放棄地が多い。これにメスを加えて手を入れていかないと、決して自給率の向上もまた難しいということでありますから、そのためには、安定的な経営体をどうやって育てるか、あるいはこの経営体を担う人材というものをどう育成するか、育成したところで生産基盤の整備、あるいは優良農地を確保するとか、次々とやらなければならぬ仕事があります。バイオテクノロジーを中心とする先端技術も導入しながら、国土は限られていますから、そこで生産性を何とか上げる努力をしていこう。ではそれだけでいいかというと、この農村社会に定住条件というものがなければ若い人たちはそこへ住もうとしないということで、それと相まって、努力をして何とか五〇%の目標を達成したいというのが考え方であります。
  67. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 大臣、私も、一〇〇%自給できるとかそういうことを言っているのではないです。五〇%を定めた場合に、大臣になってからもずっと一%ずつ下がっているのですね。ですから、やはりこれを五〇%に持っていくにはどうするかということは、これは大きな課題です。これが単に生産効率主義一辺倒ではいかないということは、この新政策でも、内外価格差を縮めるということは必要だけれどもそれだけではいかないということを言っているわけですから、やはり食糧自給率を高めて安定して国民食糧を供給するということについての国としての政策、財源も伴った政策というものがなければ、これはなかなか歯どめがかかっていきませんよ。  私はそういうことも含めて、その最高の国民コンセンサスを得るということは、やはり法律をつくることですよ。きちんとした法律を、国会の場で議論をして、国民内外で議論をして法律に仕上げていく。その法律のもとに財政当局もきちんとした枠組みをつくってやっていくことだというふうに思いますので、きょうは時間がありませんのでまだ各論できませんけれども、このことが基本だろうということを訴えさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  68. 平沼赳夫

    平沼委員長 有川清次君。
  69. 有川清次

    ○有川委員 大臣所信表明で、「農林水産業及び食品産業などの関連産業は、国民生活に欠くことのできない食料の安定供給という基本的な使命に加えて、地域経済・社会の維持発展、国土や自然環境保全など極めて多様で重要な役割を果たして」いる。こうした上で、二十一世紀を目指して農政の長期ビジョン、新農政を取りまとめた、今後はこれを段階的にかつ着実に具体化していくというふうに述べられておるわけでありますが、その中で農業振興については、他産業並みの年間労働時間、他産業並みの生涯所得を得ることができる農業にしたい、このように言われております。そして、その上で、安定的な経営体の育成とそうした担い手への土地利用の集積基本にして、経営の改善、農地保有の合理化、法人化の推進、人材の育成など農業構造・経営対策を展開すると言われておるわけでありますが、この中でまた、中山間地域農業促進の諸対策も述べられております。  この労働時間、他産業並みの生涯所得の問題は、当然中山間地域を含む全農業者に対する目標だという立場で言われておると思うのですが、実際はどうなんでしょうか。例えば酪農の方も、牛肉の自由化で、ぬれ子が雄で今三万五千円ぐらい、雌はもう引き取り手もない、こういう状況で参っていますが、特に今中山間地域、複合経営をやっている、私の地域は畜産地帯ですが、和牛の価格が暴落をしてまいりまして、円高も進み、所得が急激に落ち込んで心配だという言われ方があるわけであります。  こうした中で、労働時間短縮実現の具体的なプロセスをどのように考えられておるのか、さらには所得の向上など具体的な処方せんが見えてこないのですけれども、その辺の考え方を、見解をお聞かせ願いたいと思います。
  70. 田名部匡省

    田名部国務大臣 一般的にこうありたいということを申し上げておるわけでありまして、それを受けて、私も全国回って随分とこの新政策のお話を、一カ所大体一時間半ぐらいやるわけでありますけれども、北海道でやる、あるいは四国にも行きました、あちこち行きましたけれども、やはり自分の立場に置きかえて、いやそんなことは無理だよ、こういう話なんですね。  ですから、何県はどうする、何県はどうするという説明でないものですから、確かに満足できるようなことではないかもしれませんけれども、全体的に見て何とか他産業並みの所得というものはなければ、後継者がないという以前の問題として、所得がないところに後継者が育つわけがないし、そういうところに嫁に来る人もいないと私は思うものですから、何としてもやはり  二種兼業七〇%、これを廃止してやろうというわけではないわけです。それはそれとして、所得を得る場所があればそれをやりながら農業もやるわけですから、そういうこと全体を含めていくと、今問題になっているのは土地利用型農業のところが一番問題になっておるものですから、何とか土地を連担化するとか集約するとかいうことで、これだけの耕作をすれば経費は幾らかかり所得はこのぐらい上がるであろうという優良事例を集めまして、やっている人は大体このぐらい上げているということから、この程度の規模をやればいい、あるいは複合でやる、何毛作やるかということによっては土地は半分でいいわけですが、それは地域がまた別な話なんですね。暖かい方でないとそれはできない。  それもこれもみんな一緒になってわあっと意見を言われると、個々に説明するのは難しいのですけれども、いずれにしても、労働時間も今のようにとにかく朝明るくなってから暗くなるまで働いているという環境だけは何とかなくしたいということで申し上げているわけであります。あとは、どうするかというのは、これは農家、その地域人たちの、自分のところではこういうやり方ならばいけるというのがあれば、それは全部違うわけですから、それを案としてつくっていただいて、それに私たちが支援をしていきたい、こう申し上げておるのであって、つくるものから何まで全部国が指示して示してやれ、こういうのでは全くございませんので、創意と工夫を生かしながら、そしてちゃんと計算をして、ある程度これで所得はこの程度になるという目標を出していただきたいというふうに考えているわけであります。
  71. 有川清次

    ○有川委員 具体的に私は聞きたかったわけでありまして、今そういう感覚なり考え方なり規模、そんなことはわかっておるのですよ。そういうことを述べられておって、しからば中山間地域はこうするんだとか、そんなものが必要なんですよ。具体策が見えない、私には。それを聞いたわけですが、中山間地域を含むかどうかもお答えになりませんでしたが、時間がありますから次に進みます。今後新農政の中で、また法案の中で論議をいたします。  次は、今土地利用型とよく言われるわけですが、特にその中の蔬菜園芸、この流通対策なんですけれども、これらが不十分なために相変わらず豊作貧乏ということで農家は大変に参っておる。作物の流通面の対策についてどのようにしようとされておるのか。鹿児島の私のところでは、昨年の暮れからことしにかけて野菜ができ過ぎて、もうけるだろうと思ったら、喜んでおったらほとんどただみたいなもので、欲しい人はどんどん農地から持っていってください、泣くにも泣けない、そして人のうちに働きに行く、使ってくれるところはないかな、こういう状況があるわけですね。  そういう意味を含めまして、本当に若い者が、後継ぎが残ってやるような、自信を持って取り組めるような方策を明らかにしていただきたい、それをお伺いしたいと思います。
  72. 上野博史

    ○上野(博)政府委員 先ほど大臣が申し述べましたことにつきまして、土地利用型、特に稲作以外の作目について一体どういう考え方を持っているのかという先ほどの御質問の関係について、まずお答えをしたいと思うわけでございます。  稲作については新政策の中にもかなり細かい考え方を示しておりまして、一つの技術体系を頭に置いた経営規模なりその運営のあり方について書いてあるわけでございますが、それ以外の畜産であるとか園芸作物等につきましては、今お話ございましたように、具体的な姿を示すに至っておりません。この点につきましては、我々とすれば現在内部的にいろいろ検討いたしておりまして、間もなく農政審議会の小委員会あたりにもお諮りをして、具体的な姿をあらわしていきたいというふうに考えているところでございます。  それから、野菜のこのところのいろいろな状況についてのお話でございますけれども、野菜につきましては、大体ほかの作物以上に、でき、ふできがあったりするわけでございまして、それに伴います価格の変動というのはどうしても避けられないということは御案内のとおりでございます。この関係につきましては、価格安定制度などをうまく運用いたしまして対応をするということにいたしたいというふうに思っております。  中山間地帯等におきまして、今後農業がその地域の活性化を図っていく上に非常に大きな役割を果たしていくためにも、畜産であるとか、あるいはその地域の特性を生かした園芸作というようなことは非常に大事でございますので、それは今申し上げましたような流通等の問題、価格安定の問題につきましても配慮いたしまして、将来の地域社会の活性化のための材料になるように努力をしてまいりたい、かように考えております。
  73. 有川清次

    ○有川委員 大臣のお答えも含めましてちょっとお話もありましたけれども、全国押しなべてこういうふうにというのは難しいと思うのですよ。米単作地帯とか、私の西日本の方の暖かくて何でもやろうと思えばできるという地帯、中山間、こういうのを含めて、どこでも日本農業でいろいろな資金なり手当てがあって若者が定着するような、そういう方策を具体的に持ってこないと、今出された、まだ途中のような感じ提案がずっと法案も出てきておる、予算をまず五年度からつけようということでは、私たち非常に心配をするわけで、きちっと新しい農政とはこうしたいというのを、十分な論議が過程で欲しかったなということを感じます。  次に、中山間地域の対策で、三つの方針を出しながら、その二番目に、高付加価値、高収益の農林業の多様な展開と条件整備、こういうのがあるわけでありますが、現在でも条件不利地域の基盤整備が行われております。農道等はできましたけれども、せっかく整備された土地改良の土地、非常に狭いわけですね。十アールに満たない、そういうところがたくさん中山間の場合はあります。機械化が困難であります。そうした中でそうした基盤整備をやりますと、どうしても農家負担というのが現在あるわけですが、基盤を整備したから、それじゃ何をつくればいいのか。負担がある、出し前はふえた、何もそれに具体的な高付加価値の作物の指導もない、相変わらず同じものをつくっておる、負担はふえてきた、こういうのでもう泣き面にハチのような状況があるわけですが、そうした高収益の農作物転換への処方せんをどのように考えておられるのか、もう一つお願いをしたいと思います。
  74. 田名部匡省

    田名部国務大臣 中山間地の多くは、地形的に立地条件に恵まれない地域が非常に多いわけですね。特に、平たんな農地というのはないわけでありまして、一般的に農業経営規模が小さいということはおっしゃるとおりであります。  一方で、中山間地域は夏季、夏場は冷涼な気候の利用というものが、これは他にないものがあるわけでして、夏秋野菜でありますとか標高差の活用でミニトマトでありますとか、昼夜の温度差の活用、これはインゲンマメもそうですし、私の方のリンゴも、山の方が寒暖の差が大きいものですから、平場のリンゴ園よりもいいものができるわけですね。そういう特徴、気象条件、立地条件を生かしながら経営の改善を図っていこう。それは、何がいいのかというのまで私の方で、この県のこの村はこれがいいとかそういうことはできかねるわけでありますから、みずからが一体何が一番適しているかということの経営改善を農協やいろいろなところと相談しながらやっていただくというのが一番適切だと私は思うのです、やる人が農家でありますから。  今回提出を予定しておる特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律、随分長い法律でありますが、地域ぐるみで新規作物の導入などによる生産方式の改善による農業経営の改善、安定を促進するための計画制度を創設しながら、国や都道府県の資金確保のための規定を設けるとともに、このための予算措置を、低利融資の創設を行うなどいろいろございます。そういうことを活用しながら、何とか中山間地が、さっき申し上げたように、安定的に所得というものが他産業並みになれるように、労働時間もそういけるように何とか努力をしたいということで、この農業振興対策の拡充強化を図る考えであります。
  75. 有川清次

    ○有川委員 この辺の問題はこれからの委員会の中でまた論議をさせてもらいたいと思いますが、私は高付加価値の農業の展開、この問題でちょっと絞って内容をお伺いしたいのです。  何をつくれとか、そんなことを言ってほしいということで求めているわけでないわけでして、どこも、検討した結果全部同じようなものができてしまえば、豊作貧乏にまたなることがあるのじゃないかという農家の不安というのはやはりあるわけです。そういう中で、高付加価値のものをどうつくるかというのは、安全な食糧の生産や環境保全型、そういうことになると思いますが、今出されている内容を見てみますと、ハードな構造改善的な、あるいは制度融資的な、そういうものになっておるわけですが、農産物を生産する場合はどうしても土地条件、気候、そういうものに影響されるわけでありまして、人間が健康な体を維持するには、健全な胃をつくって、健全な食糧を入れて初めて健康な体ができる。そのように、生物は立派な根毛が生えて、根が大地に足をついて、そこから十分にためになる養分を吸い上げることができて、元気ないい農作物ができる、こういうふうに思うわけですが、その問題で私は若干、もう時間もありませんので、家畜ふん尿の問題を含めた土づくりの問題についてお伺いをしたいと思います。  ふん尿は、どんな性質のものであれ、田や畑に還元されることによって意義があるんだ。ただ盲目的にぶん尿を堆肥化して、盲目的に田畑に使用するだけでは堆肥としての存在価値もないわけで、このメカニズムを漠然としてとらえて使用しているところに今日の問題があるのではないか。ただふん尿を堆積して、日時が経過すれば半熟堆肥とか完熟堆肥とか言っているだけで、農林省自体が本当にその堆肥の性質の云々というのを論議され検討され指導されたことがあるのかどうか。私は、今農業界全体が、有機肥料、無機肥料、そうした堆肥を含めて本当の意義、効果、そういう目的をどのようにすればいいかということが誤っているのではないだろうか、このように思うわけであります。堆肥をただ肥料と同様に考えて取り扱うから、貴重なふん尿の存在の焦点がぼけてきているように思えてなりません。家畜ふん尿堆肥における意義、存在価値、効力、そしてその真価はどこにあると思われておるのか、まずお伺いをしたいと思います。
  76. 高橋政行

    ○高橋(政)政府委員 ただいま先生がお話しのように、土づくりといいますか、これは農業生産の基礎でございますので、我々従来から、堆厩肥等を積極的に施用いたしましての地方維持向上を図るという施策を進めてきているところでございます。  それで確かに、堆厩肥であればどんなものでもいいのかという議論でございますが、やはり未熟な堆肥でございますと、未分解の分解がよくされていない成分を含んでおりますので、それが分解する過程におきまして有毒なガスを生ずるとか、あるいは作物に生育障害を生ずるというようなことがございますし、また病害虫とかそのほかの雑草の種子を含んでいるというようなことで、やはりかえって有害であるというようなこともございます。また悪臭があるとかいうようなことであれば、環境上も問題だということになります。それで、我々指導といたしましては、一般的にゃはり完熟した堆肥でなければ堆肥としての効果が十分でないのじゃないかということで、そういう指導もしておるわけでございます。  では、完熟かどうかの判断ということでございますが、なかなか成分的にどうこうというのは一概に申し上げられませんが、堆肥化したものが外観をとどめないほどにいわゆる腐熟、腐っているといいますか、腐熟しているというようなこと、あるいは力いっぱい握ってみたときに水が滴り落ちないような程度のものになっているとか、あるいは堆積期間が半年以上経過しているとか、あるいは堆肥は積んでありますが、その切り返しが五−七回以上行っているというようなことで判断をするというようなことではなかろうかというふうに思っております。
  77. 有川清次

    ○有川委員 今、完熟堆肥の説明がありましたけれども、ふん尿の性質変換で土壌性質を変えて、作物のそれぞれの適正酸度に適合した土づくりをするためにのみあり、このふん尿の性質変換が容易にできるのが堆肥化であって、作物酸度に合った土壌性質を持続させる物質を持っているのではないかというふうに思うわけですが、家畜堆肥を今田畑にそれぞれ施用しますけれども、結果として病害虫が寄生するとかいろいろ発生するなど、そのために農薬が施用されておるわけですが、そうした場合の防除対策、これはどのように考えられておるのか。あるいはまた、家畜堆肥を施用した場合に、野菜類や果樹類でも農薬の効かないような病気まで多発する場合もあるし、あるいはそれを一般堆肥と連用した場合、なおできなくなるというような問題もあるわけですが、その理由等について若干お聞かせを願いたいと思います。
  78. 上野博史

    ○上野(博)政府委員 まことに申しわけないのでございますけれども、堆肥のそういう技術的な問題につきまして、今お答えをできる者が参っておりません。後ほど、できるだけ早急に呼び寄せまして、お答えを申し上げたいと思います。
  79. 有川清次

    ○有川委員 そういう人をけさお願いをしておったのですが、堆肥には還元堆肥、いわゆる富栄養化の成分PH七・五以上のものと、酸化堆肥、貧栄養化の成分PH六・五以下平均というようなものがあると思うのですが、もしこうした還元堆肥、富栄養化の肥料になれば、どうしても農作物に影響が出て、塩濃度障害が出る、こういうふうになっておると思いますし、現実そういうものがあるからこそ、根腐れや紋羽や腐乱病やしん腐れや立ち枯れなどの現象が出てくると思うのです。これは生ふん尿にすればなおさらもちろんですが、大変なことになります。  そうしたことを考えるとき、これらの連作障害をとるためにはどんな堆肥をつくればいいのか。今おっしゃった完熟堆肥というので本当にいいとおっしゃるのか。堆肥はその作物のどこをどうするためにあるのか。その辺の考え方があれば、時間もありませんので、ちょっとお聞かせ願いたい。
  80. 貝沼圭二

    貝沼政府委員 それではただいまの御質問で、すべてについてお答えできないかもしれませんが、お答えさせていただきます。  それで、堆肥でございますけれども、堆肥の一番大きな特徴は、発酵の間に百度を超えるような熱を出すことでございます。そういうようなことでもって、その中に入っております雑菌とかそういうようなものの殺菌が行われているというのが一つの大きなところでございます。  それから、あと堆肥の成分につきましては先生御存じのとおりでございますが、化学肥料と違うところは、施してから微生物の作用によって堆肥の成分が水に溶けるうになって植物の中に吸収されるというような問題、あるいは、その土壌の団粒構造をつくり上げるような問題、さらには、堆肥は植物の中あるいは動物の排せつ物の中、いろいろな成分を含んでおりますので、土地のPHを一定に抑えておく、そんなようないろいろな問題がございまして、化学肥料とかなり異なっていると思います。  それからもう一つは、堆肥が実際に効いて土壌の改良を行うときには、大体その堆肥の成分と、あるいは、土壌の温度によりますけれども、大体年間に二〇から四〇%ぐらいのものが分解されて、植物の中に取り込まれていきます。  完全なお答えにはなりませんが、以上でございます。
  81. 有川清次

    ○有川委員 例えば、今百度を超えるような熱を持つというお話がありましたが、百度を超えていけば、堆肥はだんだん灰になっていって、いい菌まで死ぬんじゃないですか。大体七十度程度というのが基本じゃないですか、どうなんですか。
  82. 貝沼圭二

    貝沼政府委員 堆肥の発酵は、七十度の温度もございますけれども、私どもが実際に有用の微生物を分離するときの場所としまして、温泉の土壌と堆肥というのは非常にいいんですね。そこは百度を超えるようなところに熱を持つような、例えばバチルス・リケニホルミス菌というような菌でございますが、そういうような菌が非常に多くございます。ですから、非常に高い温度の殺菌と、それから途中の七十、八十度の発酵と、両方行われているのが堆肥だと思います。
  83. 有川清次

    ○有川委員 時間がありませんからちょっと現場の話をしますけれども、今私の地元で、畜産公害の対策として、飼料自給課が取り扱いをしながら、今年度から畜産ふん尿の処理について事業に取り組んでおるところでございます。しかし、どの方法がいいのか、これがいいという決め手を全く持たない、三つか四つか全国を回ってきたから、どれかこれかやってみよう、こういう状況なんですが、国の予算を突っ込むわけですね。十億を超える予算だと思います。これは全国に今後ずっと広げていこう、こういう状況なんですけれども、ただふん尿を処理をすればいいというのではなくて、その貴重なふん尿を土壌がよくなるように堆肥化していく、そして、その堆肥を使うことによって、病気の出ない、農薬を使わなくてもよい、まろやかでおいしい高付加価値の農産物を生産をする、こういうことに持っていかなければならないと思うのですけれども、現実には今方策がない。  国の方でも具体的にはどうということがないという話を聞いておりますが、今、内水方式ということで、活性汚泥方式を使おうということで一つの実験が始まっております。しかし、これは活性汚泥方式ですから、生活環境を全く汚染をしないとは言えないわけです。その水は、やがて薄めて人間のふん尿と同じように処理をしていく、終末は流す。下水道汚泥も手をやいているのです。こういう状況の中で、現在畜産農家が十分な、そうした汚染をしないような廃棄物ができるのかどうか。土地還元をすれば当然地下水の汚染をいたしますし、そうしたことなどを考えますと、蒸散方式をとっても、気象条件によっていろいろ弊害があるわけですが、こうした方法でなしに堆肥化する別な方法、そういうものがあってしかるべきと思いますけれども、そのことについての考え方をお伺いをしたいと思うわけであります。  時間があればいいのですが、ないので続けてちょっと申し上げますけれども日本的農作物の肥料性質、堆肥の性質は、生理中性に属してPHが平均六・五ぐらいのものでなければ農作物は順調に育たないのではないか、こういうことを感じますが、その辺を含めてちょっと御回答願いたいと思います。
  84. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 今先生の地元で畜産環境整備特別対策事業というのをやっておりまして、四年度は計画の策定、五年度から事業の実施に入ることになっておるわけです。  今先生お話ありました家畜のふん尿の処理方法、御存じのとおりいろいろございますが、どれをとったらいいのか、どの方法をとったらいいのかということにつきまして、現在個々の農家の畜舎の構造だとか、今処理している方法あるいは経費の問題、農家の意向、そういうものを踏まえまして、選定委員会を組織して今年度中に決定をしていくというふうに聞いております。具体的にどういう方法ということはまだ決まってないようですが、今年度中に決めまして、五年度から三年計画で事業を実施していくということになっておると承知をいたしております。
  85. 貝沼圭二

    貝沼政府委員 それでは、家畜ふん尿の研究でもってどのようなアプローチをしているか、少し御説明させていただきますが、有機質を非常に含んで、処理さえすれば非常にいい肥料の原料になるわけでございます。それで、これにつきましても、私どもの畜産試験場におきまして家畜排せつ物の利用の研究というのは過去十年以上行ってまいりました。それからまたさらに、家畜ふん尿をメタンガスに発酵してガスとエネルギー源として使うというような研究も行っておりますし、現にこの成果をもとにしたテストプラントも動いております。  それでまた現在、平成四年度からでございますが、家畜ふん尿の処理、特に悪臭の問題というようなものを配慮いたしまして、物質循環の高度化に基づく生態系調和型次世代農業システムというような研究を開始しております。この中では、微生物が持っております。そういう有効成分の濃縮の機能を利用した畜舎の汚水中の燐の回収あるいは利用技術、あるいは畜産廃棄物の無臭化コンポストの技術というようなものの技術開発を進めております。  さらに平成五年度には、畜産廃棄物の処理の研究のために新たに畜産試験場の中に研究体制の強化を行っておりますし、都道府県に対する助成も行うようなことで、私どもは非常に重要な問題としてこれからも研究を進めていきたいと思っております。  以上でございます。
  86. 有川清次

    ○有川委員 酸化堆肥の問題は御答弁がなかったわけですけれども、私、今鹿児島県のいろいろな堆肥センターあるいは畜産のいろいろな県の試験場とか畜産センターとかこういうのを見て回りますけれども、活性汚泥化方式と、堆肥センターはもうそのまま積んじゃって切り返して不完熟のまま出す。もう何回も、この前も行ってきたのですが、積んであっていよいよ製品に出すというのに、においが強い、鼻をつままぬといかぬ。そしてじゅくじゅくしておる。不完熟ですよ。それは完熟だということでやられた。  私のところの農業祭りのときに、周辺のそうした堆肥を全部持ってきて、そして袋詰めを持っていかれましたが、全部同じですね。これは国と県と自治体や農協が補助金出して、そしてつくられたものですよ。その堆肥を農家は使っておるのです。どうですか。いい作物ができますか。当然のこととして、やはり農薬をいっぱい使わぬとどうにもならぬ塩濃度障害などは出るんじゃないでしょうか。今日そのことができないところに、私は、高付加価値ということを盛んに大臣も言われるけれども、そこのメカニズムをきちっと仕上げながら農家にそうした堆肥をやることが大事なんじゃないかと思うのです。  酸化堆肥の特徴は、土壌の中にオキソニウム、H30とH50を多量に合成する、それによって力価があるというふうに言われております。水素そのものは地中からでないと、空気中からはとることは絶対できませんから、そうした場合にその水素をとる力、それがあって初めて根が十分な形をし、でん粉やたんぱく質、こういうものができると思っておりますが、酸化堆肥は、そうしたオキソニウムの発生に関する非常に重要な役割を果たすものであって、その役割が活発になって十分になってくれば、根そのものが縦根になりあるいは今までの根毛が二、三倍にふえて、非常に地上部の葉その他も上向きになりながら節間も短くなって、高付加価値のものがどんどんできていくという現象を私はいろいろ実験をしながら知っておるわけですけれども、そういうことに対するオキソニウムの役割とか、それをどうふやすかという問題等を含めてどのように今日まで研究され、そうした堆肥づくりに試験場なりで努力をされたのか、実践に移ろうとされたのか、それをちょっとお伺いします。
  87. 貝沼圭二

    貝沼政府委員 先ほどのお話の前半の不完熟の堆肥につきまして、私ちょっと自分で経験ございませんし、よくお答えできないので、そのことにつきましてはまた改めて勉強させていただきまして御返事させていただきますが、後半のオキソニウムの問題でございますけれども、オキソニウムが土壌中に発生するといいますのは、堆肥の中の有機成分がそこに集中しました微生物によって分解されて、微生物の酵素が酸素を酸化してさらにオキソニウムをつくる、こういうメカニズムでいっていると思うのです。  ですから、堆肥と普通の無機の肥料との違いというのは、そういう微生物層がどれだけ集まってきて、それがどれだけ多様な微生物が集まって実際植物を強くするのかというようなことでございまして、最近の研究でございますけれども、堆肥が普通の化学肥料と違うのは、先ほどお話ししたように、微量な成分がかなり可溶化して植物に吸収されていく、それが一点ございます。  もう一つは、集まってくる微生物が植物の成長に非常にきく成分を出すというようなことで、これはまだ成分がよくわかっておりませんけれども、少なくとも微生物のつくる二次代謝物質であろうというふうな考え方がされております。これについて現在私どもも研究を進めておりますが、いずれはその微量成分の構造なり化学組成なりがわかるだろうと思いますが、現在はそういうところでございます。
  88. 有川清次

    ○有川委員 今おっしゃったように、酸化堆肥をつくるそうしたものについては、どうしても農業化学的な技術、ノウハウというのが非常に大事だと思うのですね。ところが、その辺がまだ解明されないまま、そして不完熟あるいは活性汚泥化方式でしょんべんだけは流してしまう。これは固形ふん尿と尿と一体のものとして微生物が活発になってそうした堆肥をつくらなければならぬのに、今現在のところは活性汚泥化方式が非常に進んでいる、こういう状況だと思うのです。私は貴重な国民の税金を県や国がむだな投資をしているように思えてなりません。結果的には農家皆さんが自分の金を出して農薬を買ったりいろいろしなければならぬ、消費者は農薬づけを食べておられる、健康を害する、こういうことになるわけですから、高付加価値の農業づくりという生産のあり方というものについては根本的に十分な対応をしていただきたい、こういうふうに思います。  そこで、さっきの方にお伺いしますけれども、今そうした酸化堆肥づくりについての研究とかあるいは実験をしているとか、そういうことはどのようにやられておるのか、今からやろうとする畜産ふん尿の処理の仕方、そのメカニズムはどんなことを指導されようとしておるのか、その辺をお聞かせ願いたいじ、さらに、畜産農家皆さんは、とくに養豚ですけれども、豚舎改善をすれば非常にいいと私たち思っているのですが、豚舎改善までしてということではもうやり切らぬ。やらないですね。そうすると、活性汚泥化方式を指導されたとおり実施に移す、こういう問題が出てくるわけですけれども、この畜舎改善など今後皆さんの方で、新しくつくる場合はいろいろな助成がありますね、改善についてどのような考えをされておるのか。あるいはそういう実験場、そうしてつくった、さっきのあれでつくった農場に、堆肥を使っていろいろな作物に実験をする、そういう農場が欲しいな、そういう意味では、そういうことをやろうとする農家、そういうのには助成金でもやってやらしてもらったらどうかなという気もするのですが、その辺を含めてちょっと御見解をお願いいたします。
  89. 貝沼圭二

    貝沼政府委員 先ほどの完熟堆肥それから酸化堆肥のお話でございますが、どうもこの言葉が私どもが使っているのと一致しませんで、私は正確にどれを先生が指していらっしゃるのかそれから私自身が考えているのと……(有川委員「PH六・五未満、平均」と呼ぶ)PH六・五平均ですね。  それでは、PH六・五の場合には、PH調整はかなり可能なものですから、私はそれが必ずしもクリティカルなものではないというふうには考えておりますけれども、あと、私どもはどういうようなことでこの研究を進めていこうかということでございますが、先ほど不完熟のものではぐあいが悪いお話をいろいろ伺いましたけれども、やはりそれは、堆肥化のプロセスの中で十分な発酵なりそれから雑菌の殺菌なりが行われてなかったものがそういう形で出ているのではないかというふうに思います。  それから、私どもがこれから進めていこうというような研究でございますが、まずは、今の畜産の廃棄物というのは日本の国土の中に非常に大きな量がございまして、これが土壌に還元するだけでは吸収できなくなっているというようなことを考えて、それを付加価値化する、あるいはコストがかかっても処理していくということで、先ほど活性汚泥のお話がございましたが、活性汚泥でも決して薄めて流すだけではなくて、その間に微生物の体内に取り込まれたり、あるいは炭酸ガスに変わったり、窒素ガスに変わったりして出てくる分があるわけですから、それは一つの浄化法であることは間違いないと思います。  それから、私どもが進めていくのは、それぞれの原料に従った堆肥というものと、そういうようなできたものは実際に一度は試験場の段階で、これは国のこともありますし県の試験場に委託することもありますが、そういうところできちんとしたそれぞれの堆肥の性質というものを見ていくべきであろうというふうに考えております。  以上でございます。
  90. 有川清次

    ○有川委員 答弁は不十分でしたけれども、時間がありませんので終わりますが、ただ最後にお願いを申し上げておきたいのは、農業環境保全型、環境を破壊をしてはならぬ、そういう立場の対処をひとつお願いしたい。それから、人間が食べて健康になるような農作物の生産、これは付加価値が高くなっていいんじゃないですか。そういうものを目指した農業の指導、そういう底辺の大事なところを基礎にしながら、しからばどんなものを、どこではどういうふうにつくるかと、こうした農業政策をぜひつくり上げていただきたいな、こういうことを申し上げまして、終わります。どうもありがとうございました。
  91. 平沼赳夫

    平沼委員長 遠藤登君。
  92. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 しばらくぶりで本委員会に戻らせていただきまして質問の機会をいただきました。  いろいろ今まで質問もあったわけでありますが、いろいろな角度から日本農業が置かれている実態というものを把握されながら新農政というものが提起をされてきたのだとは思いますが、改めて、今日的な我が国の農業の実態についてどのような把握に立っていらっしゃいますかお聞かせをいただきたい。
  93. 田名部匡省

    田名部国務大臣 我が国の農業につきましては、畜産でありますとか施設園芸の分野を中心に大変生産性の向上が進んでおりまして、農家総所得が勤労者世帯を上回るに至っておるわけであります。しかしながら、再三申し上げておりますように、土地利用型農業については、担い手が減少しておるし、あるいは高齢化が進んでおって規模の拡大がおくれておる。あるいは、耕作放棄地が増加し、農業従事者の農業所得と他産業従事者の所得にどうも不均衡が生じておる、ここが一番の問題点だろう、こう思うのです。  しかし、なぜこうなったのかということでありますが、狭くて急峻な国土条件という基本的な問題に加えて、我が国の高度経済成長、こうしたものでいわゆる非農業での就業機会が増大した、農業労働力がそうした部門に、大分若い人たちが流出をしまして、農家の兼業化がどんどん進んできたということは御案内のとおりであります。都市化や非農業部門の土地利用の増大が、農地の非農業部門への転換を促してきた。したがって、この地域農地というものは大変高騰したわけですね。それによって土地利用型の農業規模というものの拡大を困難にしてきたということがあると思います。他産業の生産性向上が農業のそれを上回り、農業所得による農業従事者と他産業の従事者との所得不均衡が著しい。そういう農業外部の環境が著しく変化をしたというふうに考えております。  いずれにしても、このような事態を踏まえながら、二十一世紀を目指した農政の長期ビジョンとして新政策を取りまとめたところでありますが、この方向に沿って、経営感覚にすぐれた意欲的な農業者が生産の大宗を担う力強い農業構造の実現や農山漁村の活性化に努めてまいりたい。このことが、今当面我々に課せられた問題であるというふうに認識をいたしております。
  94. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 いろいろ今御答弁あったわけでありますが、統計上で見ますれば大変な農業の変化あるいは偏在がある。大体、農基法農政の中で、特に四十年代から、専業農家が一五・六%と、農家総数としては約四割減少している。逆に第二種兼業が、先ほども答弁あったのでありますが、七割に達しておるという状況の変化ですね。それで、農家の所得上は、平均的には農業所得が百十万台、それでほとんど農外所得に頼らざるを得ないというような実態であります。専業農家は総所得として五百五十万台。専業農家農家平均の所得より非常に少ない。それで、特に第二種兼業農家の総所得というのが九百四十万台ということであります。なぜ専業農家の所得がいわば減退しているのか、個々的にはそれなりの所得を上げているという農家もあるわけでありますけれども、総体的に平均して論ずればこのような状況というのは何なのか。  私も農家の端くれでありますから、大体、政府米の価格一万六千何がしというのは、これは十七年前の米価、昭和五十一年の米価なんです。十七年間に農業生産財、いわば物価があるいは労働者の賃金がどのくらい上がっておりますか。内外価格差と言うけれども、それはそれぞれの国の事情によって配慮される必要があるのではないか。今回の春闘においても、厳しい経済状況の中にありますが、連合が七%賃上げを要求しておる。農家の場合は、これは政府が、自主流通米などは市場価格に移行したということがありますけれども、いわば一方的に値段が決められていく。国によっては、消費者団体、生産者団体、そして政府が中に入って、それぞれの主要な農産物の年度の価格については価格調整をして、話し合いで決定しているという先進的な国があるのであります。  大体、十七年前の米価で、物価なり賃金なりが大幅に上昇する中で、米だけを中心に、日本農業を代表するものは米でありますからそのことを強調しておきますが、そういう中で、後継者も農業も育つはずがない。嫁の来手もない。この価格決定のあり方についても私は大きな疑問も持っている、特に日本農業を代表する米の価格の問題について。  畜産の価格審議会が三月末に毎年行われている。大体その状況によっては、その年度の米価も連動していく、あるいは麦価も運動していく、乳価も連動していくという要素がありますので、これからが審議会等に諮問するという状況だと思いますが、米価などについては、農作物価格等に対しては、これは市場価格ということもさることながら、農家の今日までの経過なりあるいは今日的な状況に立って、政府としてはきちっと一定程度の方向を示していくということも大事ではないか、こういうふうに思うのでありますが、大臣はその観点についてはどのような所見に立っていらっしゃいますか。
  95. 田名部匡省

    田名部国務大臣 おっしゃるとおり、二種兼業がどんどん増加をしていったという背景はさっき申し上げたとおりでありまして、要するに、今委員おっしゃったように、物価がどんどん上がる、いろいろなものが上がってくる中で、耕作面積はふえていませんので、結局価格に依存せざるを得ない。しかし、耕作面積の少ない、特に水田農家等は、これは相当上げましてもそれのみで生活できるような状況でなくなったわけですね。したがって、他産業に勤めて休みの日に農業をやるというこの体系というのは私はなくならぬ。それを足せばサラリーマンより確かに所得は多いわけですから、それはそれで結構だと思うのです。  ただ、そうでない土地利用型の農業の問題にお触れになりましたが、ここに問題がありまして、私は米価決定は昨年やらせていただきましたが、よく農家皆さんから、サラリーマンの給料が上がっているのに米が下がるのはけしからぬ、こういうおしかりをいただくわけでありますけれども、米価の計算のときには、前回、たしか一般の企業はベースアップが四・何%でしたか、春闘は四・九でした。米価の算定のとき、七・九で計算したんです。しかし、掛ける労働時間ですから、機械でどんどんみんなやるとなれば労働時間は短縮になっておりますから、賃金は上がるけれども米は下がるという、まことにおかしな現象が出てくる。  じゃ、その機械の分をカバーできるだけの効率的な農業経営ができるかというと、耕作面積が小さいと非常に効率が悪いという面で、なかなか、機械というものは一体どうあるべきかということを随分議論いたしました。買ってやることだけを考えずに委託で耕作をしてもらうとか、共同で買ってやったらどうかとか、いろいろ言うんですけれども農家の実態、行って調べてみました。やはり二種兼業の人たちは、休みに御主人と一緒にやりたいというのがあるものですから、どうしても機械を買うということがかえってマイナス面といいますか、そういうことになっておるのであって、何とかそこのところを解消してあげなきゃいかぬということもありますし、あるいは規模の大きい方については、効率的な機械の運用あるいは一定の規模ありませんとそれだけの収入が上がりませんので、そうしたことを検討しながら、この新政策の中でも十分それが達成できるようなことを考えてやりたいということでございます。
  96. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 いろいろな事情があろうかと思いますが、米価を初め農産物の価格決定については政府が主導してきた、まあ市場価格という部分があると思いますが、主体的には政府が主導してきたという面から考えれば、農家の所得の実態等から考えれば、新年度については十分御配慮願いたいということを要請をさせていただきます。  それで、農業の、いわば就業年齢構成ですね。これも統計的に言えば、担い手の問題が重要な課題になっておりますが、二十代は四・二%、三十代が八・五%、四十代が一一・四%、五十代が二〇・五%、合わせて、五十代までで四四・六%。六十歳以上は五五・四%。その半分を超えて、六十歳以上が五五・四%であります。大体十年後にこれらの人は農業を終えるということになるのであります。これは大変な問題ではないかと私は思って、そのために、新農政の展開に当たってはこれは極めて重要な課題であるなというふうに思うのであります。  それで、関係して、この新農政の展開に当たって、先ほどからいろいろ議論の提起がありますが、新しい農業基本法というものを、農業憲法というものをきちっと新しくつくり上げる必要があるのではないか。先ほど柳沢先生からも、国民理解国民の共生の新農業というものが不可欠だ、こういうお話があったのであります。まさにそのとおりだと思うのであります。三十年間の農基法農政というのをきちっと総括をして、そして新農政というものを展開していく必要があるのではないか。  一つは、世界の食糧事情がまことに大変化を遂げている。それから、世界の人類の存亡の限界として環境の問題が問われておる。農業環境というのはもう一体的なものである。生命産業であり、環境産業農業だ。  それから、やはり自給率。今穀物自給率が二九%に下がった。これはだんだん下がってくる、下がらざるを得ないというような状況にある。これ以上下がるようなことがあってはならない。これは大変な課題です。一定程度の食糧環境とか農業というのは、これはECじゃないけれども、世界地球環境会議じゃないけれども、これを無視した国とか民族というのは滅び去ってきている、これは世界の歴史が証明しているのではないでしょうか。  そういう意味では、先ほどもお話がありましたように、穀物自給率は少なくとも五〇%以上は確保するという方向をきちっと明記していく必要があるのではないか。そういう意味では、日本農業の目標とか位置づけというものを明確にして、国民理解を求める、国民との共生の農業を確立するということが大事じゃないか。  それから、中山間の問題であります。  これは一定程度、例えば中山間の場合は、統計上では耕作面積が三十アールで、米だけじゃないわけですが、米だけに換算しても十アール当たり七俵ぐらいきりとれない。自主流通米の二万に換算しても、七俵とれたとしても四十二万だ。半分の生産費で、残るのは二十一万だ。これは山間の、耕作面積が三十アール、米だけに換算した単純計算です。  それで、そこに定住することができない、山の村には若い者が一人もいないというのが実態である。そしてお年寄りたちが、先祖の墳墓の地を守らんとしてへばりついている。そして、くしの歯が折れるように里に下がらざるを得ないというのが実態であります。農林業センサスの調査で、二千三百を超えて山の村が消えた、五年間でですよ。山があれば、川上が荒れれば川下が荒れるというのが原則じゃないですか。そういう意味においては、中山間対策として、総合的な所得をいかに確保するか、定住できる所得をいかに確保するかということが課題なのではないでしょうか。  そのためには、労働省がやっているいわば雇用奨励金というのがありますね。ほとんど不安定兼業なんです、若い人たちは。そこに定住できる一つの方策として、山の村の農産物の価格を一定程度上げる、国民理解を求めるということが一つあるのではないでしょうか、所得をふやしていくのに。それから、山の村に定住する条件の一つとしては、少なくとも一時間通勤圏域の中に安定雇用を確保する。そこに雇用奨励金的なものを交付していく、中小企業等に労働省が雇用奨励金を出しているのでありますから。山の環境を守る、農業を守る、定住を守る、景観を守る、ヨーロッパの先進国じゃないけれども、それは大いに学んでいく必要があるのではないでしょうか。  それから、場合によったら定住交付金あるいは環境保全のための交付金、デカップリングではないけれども、それは大いに学んで、総合的に山の定住体制をいかにつくるかというのが緊急の課題ではないでしょうか。これは国土保全とか水源涵養とか、環境、空気の浄化の問題とか、公益的な部分で機能を果たす、金で買えないものが何十兆円とあるわけでありますから、それは提言するまでもないと思うのでありますが、特に山の中山間対策を含めてお聞かせをいただきたい。
  97. 入澤肇

    ○入澤政府委員 中山間地域におきまして定住条件を整備するということは、まさに新政策の重要な課題の一つであります。  やはり第一には、所得の確保のための広範な政策を用意しなければいけないということでございまして、今先生から御指摘ありました労働省の雇用奨励金、これは、就業困難地域に指定されまして、そこで企業が立地する、職安を通じて従業員を雇うという場合に、雇用保険特別会計から賃金の二分の一等が補てんされる仕組みでございます。この対象地域に、今度私ども提案しております中山間地域も適用になるように労働省に申し入れておりまして、労働省もそのように予算措置をしているというふうに聞いております。  それから、所得だけでなくて、都市地域に比べて立ちおくれております生活環境の整備をするとか、あるいは今御指摘がありましたように、道路アクセスあるいは情報通信網の整備、こういうことを広範にやって、定住条件を整備していくことが必要であります。  私どもとしましては、このほかに、先日のこの委員会でも御説明したのですけれども農業経営をきちんと改善してやる。その場合に、なかなか目標どおり所得が上がらないという場合に低利の経営資金を融資するという措置を改めてつくりまして、そういうふうな措置をあわせまして定住条件を確保していきたいというふうに考えております。
  98. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 それは低利長期の資金手当ても結構でありますが、それにたえられる状況じゃないのですよ。  土地基盤整備のことを一つ申し上げますが、今行われているのは中山間なんですよ。それは、十アール当たり百二十万も百三十万もかかっておる。平地の場合は、三十年前あたりは十アール当たり大体十万で終わった。収穫がない、所得もないところに莫大な、まあ補助金が上がったにしても、圃場整備の負担金が十アール当たり大体五万円、場合によったら五万五千円、何で生活するのですかということが問われているのです。  おまけに、融資も結構でありますが、これは返さなくていいのならいいですよ。それはない。経済の実態調査というのをきちっとして対策を講じる必要があるのではないか。そんなもので生活できる、定住できる状況じゃないのです。  それから、加工分野とか施設の近代化とか、何かいろいろ、法人化の問題もそれは結構でありますが、借金もあるし、新たに投資するという資金的な余裕もないような状況の中で、ぎりぎりの生活の中で今大方の人たちが山で生きているという状態なのであります。  そういう状況に立って、例えば山の圃場整備は国と都道府県と市町村で全部持ってやるとか、そういう特別な対策を講ずる必要があるのではないかと痛切に感じているのでありますが、改めてまたその対応について御答弁願います。
  99. 入澤肇

    ○入澤政府委員 土地改良事業につきましては負担金の問題が非常に大きな問題でありますので、私どももその軽減対策に一生懸命取り組んでいるわけであります。  今回、中山間地域、特に山の地域を中心にしまして、私どもの補助金のほかに、自治省とも十分に話し合いまして、自治省からも地財措置を講じて地元負担の軽減につなげていくのだというふうなことが講じられたわけであります。両々相まって、可能な限り負担軽減を図り、山間地域の基盤整備を進めていきたいというふうに考えております。
  100. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 ぜひこれは、自治省その他関係省庁とも関連する、まず一つは税対策の問題を含めて、基盤整備上の負担の軽減の問題を含めて、これは万般にわたって所得をいかに高めるかという、定住条件をいかに確保するかということが問われている昨今でありますので、十分な御配慮を願いたい。  時間がありませんから次に移りますが、食糧問題、ガット問題ですね。先ほどから議論ありますが、私は、これはガットに加入している世界百国を超える国々が食糧農業の市場化に賛成だ。大体輸出補助金を残して、ウエーバーを残して、輸入国にはゼロでその関税化を進めるなんというような理不尽なことはない。それから、大体一部の過剰国が過剰国の論理で今世界の食糧問題を論じるものではないんじゃないか。  大体十億を超える飢餓人がいる。毎日五万人ずつも命を失っていく。こういう世界的な食糧事情。それから、人口が爆発する、環境が限界だ、食糧問題がマイナス下降線をたどる、こういう世界的な状況の中で、日本がひとり飽食につかっている時代は遠からず終わりになるんじゃないか。終わりにしていかなければならぬじゃないのか。減反はやめるべきじゃないか。  そしてまず、何といっても困っているのは、国際貢献のあり方として、私は、戦争がないということ、食うに食えないところを助けるというのが唯一の国際貢献のあり方ではないでしょうか。食うものがない、戦前戦中を経験した人たちは、食うものがないぐらい困ったことはないんじゃないですか。カンボジアに自衛隊派遣するところの騒ぎじゃない。減反どころの騒ぎじゃないんじゃないですか、人道的に。生活大国だの経済大国だのと言っている国は、食うに食えないところにそれぞれの事情に応じて、加工をしてでも命の糧である食糧を援助してやる、備蓄をふやしていく、いつでも援助する、あるいは無償援助をする。それぐらいの国際貢献を果たして、この減反政策二十年を転換をしていく時代ではないでしょうか。大臣のお考えをお示しいただきたい。
  101. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 御指摘のように、慢性的食糧不足に悩んでいる多くの開発途上国が一方にあり、他方一部の国で余剰農産物を抱えているというのは間違いなく事実でございます。そういう点から、食糧援助等を行うというのは極めて重要なことだと思っています。  我が国としましても、昭和四十三年以来そういう観点から、米や小麦などの食糧輸入に必要な資金の無償提供を行うとともに、多国間の食糧援助機関であります世界食糧計画への援助も行っているところであります。農林水産省としましても、これら諸国の食糧増産を支援するということからも各種の技術協力も行っているところでありまして、こういう対応は今後とも必要かと思います。  ただ、残念ながら、国内産米を援助用として活用すること、あるいはそれを使った加工品を援助するというようなことにつきましては、食糧不足しているより多くの人々により多くの援助がなされるという観点からすれば、残念ながら国内産価格は国際価格に比べ相当高い水準にある等の問題もありまして、そういう点では慎重な対応が必要なのではないかというふうに考えております。
  102. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 世界的な情勢で考えれば、人道的な立場に立っても、それは減反政策二十年というのにとどめを刺して転換をして、国際的な貢献を果たしていく必要があるのではないか。そのことについては慎重に大胆に御検討をいただきたいということを強く要請をさせていただきます。  それから、耕作放棄地が、いろいろ言われておりますが、平成二年の統計をお聞きしますと二十一万六千七百八十五ヘクタール。これはその後相当ふえてきて、ある人に言わせれば二十五万ヘクタール、ある人に言わせれば三十万ヘクタールに達しているというようなことが言われているのでありますが、端的にどのような状況にありますか。
  103. 入澤肇

    ○入澤政府委員 一時的な遊休地等も含めまして、二十五万ヘクタールちょっとでございます。
  104. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 これは大変な問題だと思う。特に中山間地帯にその放棄面積が多い。これはゆゆしき問題だと思うのであります。ぜひ先ほどからの私の提起なども含めてこの対策のために御検討いただきたいし、国際的な貢献を果たしていくためにも十分それを生かせるような体制をつくり上げていっていただきたい。  それから土地改良のことで、先ほどと関連をしますが、時間がありませんので、大体国営のダム、県営ダム、それから圃場整備、基盤整備の問題、これにはいろいろ計画変更、計画変更を重ねてきているという事情の経過などもあって、莫大な農家負担に耐えられないような状況が随所にあるんだ。それで大体十アール当たりの負担が五万円を超えるところが随所にある。これは農業所得の限界を超えているという実情なのであります。その点について、負担の軽減について国も県も市町村も最近相当配慮をされてきているという経過がありますが、十分配慮されてしかるべきではないか。特に私が言いたいのは幹線農道、幹線用排水路。特に幹線排水路。これは全額公費で賄う必要があるのではないだろうか。幹線農道が県道になったり市道になったり、土地代も農家に払わないで、舗装ぐらいしてくれて、そういう多様的な公用になっている部分が相当あります。幹線農道、幹線排水路、水門、これは完全に公費負担としていく必要があるのではないか。そのことについての対応、方向などについてお示しをいただきたい。
  105. 入澤肇

    ○入澤政府委員 土地改良事業は、これはもう釈迦に説法でございますが、公共性の程度等に応じまして国と地方公共団体が一定の負担を行っておりますし、また事業効果が個別農家に及ぶという部分がありますことから、受益農家にも応分の負担を求めるということになっておりまして、可能な限り農家負担が少なければ少ないほどいいのですけれども、幹線であるからといって全額国庫負担というわけにはまいりません。
  106. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 それはそういうふうにしていただきたいという関係者の強い要求もあるのでありますが、これは補助金のいわば改廃の問題なども提起されてきておりますが、それはまた減っていく、農家負担が増大していくという状況にあるようでありますが、十分農家の実情というものを配慮して検討をしていただきたいということを私は強く要請をさせていただきます。  それから、新農政の中で法人化の問題が提起されておりますが、もう時間が参ったようでありますけれども農地集積を拡大をする、いわば所有権と耕作権の調整設定をどうするのか、先ほどからの議論もあるわけでありますが、それから資本の参入、これは二〇%以内に抑えた、これ以上高めるということがあってはならないのではないかというふうに思いますが、その法人化の対応問題。  それから、生産費の中で農業機械代が一番高いのは御案内のとおりである。それぞれの都道府県によって違うと思いますが、大体生産費の中で農業機械代が三〇%を超えている。これをいかに軽減するか、あるいは高度に利用するかということが問われているのであります。そういう意味では、各県の農業機械公社があり、それをもっと充実をして地方に農業機械センター等の設置、配置をして、そして利用組合をつくって農業機械の効率的な活用とか農家のいわば生産性の向上に努力をしていくということも新たな形態として十分配慮していく必要があるのではないかこういうふうに思うのでありますが、それらの点についてお聞かせをいただきたい。
  107. 入澤肇

    ○入澤政府委員 経営感覚にすぐれた効率的、安定的な農業経営体を育成するということが今度の新政策一つの課題ではございますが、そのために一つの方策として、法人化を推進していくということであります。  ただいま御指摘のありました企業の参入、資本の参入でございますが、企業による農業経営の支配があってはならないということで、まず農地の取得は農地法三条で禁じられております。仮に農事組合法人あるいは農業生産法人に資本参加する場合であっても、全体として議決権の四分の一以下、さらに一社当たり十分の一以下というふうに非常に厳格な規制を設けて参入を認める、しかも非常に限定的に認めるということでございまして、例えば農業生産法人と産直をやっている個人、あるいは農作業を受託している個人、または企業であれば、新技術の提供あるいは特許の提供を行っている企業等に限定して行うようにすることにしております。  それから、法人化の中でもう一つの課題でございますが、私どもアンケート調査をやってみますと、法人化したりあるいは集落営農を進めたりというところの理由を調べてみますと、機械の償却費が高い、機械の共同利用をしなければいけないということも一つの理由になっております。したがいまして、法人化ということを進めながら、機械の共同利用、有効利用ということで全体としてコストを下げていくという方向を進めていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  108. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 終わります。
  109. 平沼赳夫

    平沼委員長 堀込征雄君。
  110. 堀込征雄

    ○堀込委員 大臣所信表明がございまして、新政策の具体化に向けて大変意欲のある所信表明がございました。しかし、この新政策農林水産省だけで推進することはできないわけでありまして、これをしっかり受けとめ、展開をしていく。例えば地方公共団体の各部署だとかあるいはまた農業団体だとか、農家と直接密接につながっているところの皆さんにそういう政策について意欲のある展開をしていただくような措置を講ずる必要があるのではないか、こんなふうに思うわけであります。  そこで、今農家あるいは農村地帯あるいは農林団体もそうでありますけれども、いわばバブル後の経済の中で非常に多くの問題を抱えているわけであります。その一つに、午前中柳沢先生からもございましたが、住専問題にかかわる問題があるわけであります。  御存じのように、バブル崩壊で証券スキャンダルなどというものがあり、証券に続いていわば銀行の経営も今試練に立たされている、こういうふうに言われておるわけであります。バブル時代の不動産やノンバンクヘの過剰投資があったり、あるいは膨大な不良債権を抱えている、さらにはまた金利自由化あるいは金融制度の改革だとかそうした課題を抱えている、あるいは国際決済銀行、BIS規制の自己資本比率を到達をしなければならない、いろいろな問題を抱えて銀行をめぐる経営環境も厳しい、こういうふうに言われているわけてありますが、そうした影響が農林団体にも多くの問題を生じさせている。その一つに今度の住宅金融専門会社の経営問題があるだろうというふうに思うわけであります。  いずれにしても、この問題、バブルの崩壊に伴う経済不況、そして金融システムに対する不安感の中で非常に大きな問題として毎日のように報ぜられているわけでありますし、我が国経済の先行きに大変懸念を抱かせる中身だというふうに言われているわけであります。また一方では、信連を初めとする農協系統の住専に対する多額な融資が行われているということも明らかになっているわけでありまして、農業、農村をめぐる厳しい環境のもとでこの問題の処理がどのように行われるかということについて、農業サイドから見ますと極めて重要な問題として、今起こっているわけであります。  そうした観点から、この問題について大蔵省と農水省の所見をお伺いしてまいるわけでありますが、そもそもこの住宅専門会社は、民間住宅の供給促進を図るという政策ニーズのもとに、日本を代表するような銀行などの母体行をバックに設立されてきた、そして八社が大蔵省の指定を受けて設立されている、こういう経過があるわけであります。いわば金融機能を担う企業はいろいろあるわけでありますが、非常に信用力のある会社としてこの八社は位置づけられて、世間からもそう見られてきたわけであります。それが現在十四兆九千億に上る借入金をしてしまうというような事態になっている。うち、系統農協の資金が六兆三千億余り出ているというふうに言われているわけでありまして、一体これだけの優良会社がなぜこういう経営不振の事態に立ち至ったのか、そういうことについて、どうしても国民サイドから見ても理解ができないわけでありますが、この辺は大蔵省、どういう経緯で今日のような住専会社の問題が発生をしてきたか、その点の認識はどういうふうにお持ちでございましょうか。
  111. 浜田恵造

    ○浜田説明員 いわゆる住専会社は、先生ただいま御指摘のとおり、主として住宅の取得に必要な資金の貸し付けを業務とする者でございました。したがいまして、当初個人の住宅ローンの提供を主たる業務としておったわけでございます。しかしながら、その後、将来の住宅ローンの需要に結びつけるために、いわゆる不動産業者、住宅開発業者等に対する開発資金、業界用語では仕込み資金と言われておるようでございますが、そういう比重を実は拡大させていったわけでございます。つまり、最初の住宅の土地の造成なり開発のところから自分で手がけまして、最終的な川下に当たります個人の住宅ローンの需要というものも自分たちの方でやらせていただきたい、そういう川下から川上にさかのぼるような業務展開を行っていったわけでございます。  ところが、この間、先生先ほど御指摘ございました、いわゆるバブル経済崩壊に伴いまして最近の不動産市況が低迷いたしまして、この住専会社の融資先として比重を拡大させていきました不動産業者、住宅開発業者の業績が悪化してまいって、それが各住専会社を厳しい経営環境の中に置くことになった。ほかにもいろいろ要因があろうかと存じますが、主たる要因はそういうことかと考えておるところでございます。
  112. 堀込征雄

    ○堀込委員 そういうことだろうというふうに思うのです。しかし、私ども考えてどうしても納得のいかない事態というのは幾つかあるわけであります。  いずれにしても日本の経済は、金融システムに対する信頼なり安心感、こういうものが基調にあって日本の経済が非常に安定的な発展を遂げてきたということがあるわけであります。そのベースとしていわば、例えば銀行やそのほかの子会社が経営不振に陥ったというような場合につきましては、親会社があるいは銀行が、あるいは母体行という表現がいいでしょうか、面倒を見ていく、こういういわばルールが存在をしてきたというふうに思うのですね。  現に、例えば住宅金融会社、日住金という会社がございますけれども、この問題でも去年の八月からいわば母体行を中心に再建策が検討されてきたという経過があるというふうにお聞きをしているわけであります。なぜ日本を代表するような銀行や信託や証券や生保やそういう会社が、人も出し、お金も出し、ノウハウも出してやってきている、しかも、そういう人たち経営のプロと言われる人たちが行ってやっている。しかも、大蔵省もかなりのいろいろな法的な措置だとかあるいはOBの皆さんが行っているとか、大蔵省OBの皆さんも会長クラスとか社長クラスに行っておられる。どう見てもこれは、何でこんなことになるまで放置をされてきたのかということが不思議に思えて仕方がないわけであります。  やはりそういう意味で、これからの再建策につきましては母体行が中心になって行われるべきであろう、そういう責任を母体行はお持ちなのではないか、こういうふうに私は考えるわけでありますが、大蔵省、この辺はいかがでございましょうか。
  113. 浜田恵造

    ○浜田説明員 委員ただいま御指摘の個々の会社の経営の問題につきましては当局から申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じますが、住専会社一般の経営問題につきましては、私どもといたしましてかねてから、関係者が委員御指摘の金融システムの安定性確保の重要性というものを認識した上で、できるだけ早く、これまでも進んではきておるところでございますけれども、なお残された問題点につきまして具体的な検討を進め、その対処案を構築するよう重ねて要請しているところでございまして、関係者の間におきまして、これを踏まえ問題の解決のために真剣な努力を積み重ねておられるところと承知しております。  当局としても、関係者が十分に協議した上でできるだけ早く合意の形成をされることを期待しておりまして、ただ、再建のスキームといったようなものにつきましては、これはやはり会社と関係金融機関との協議を通じて固められていくものでございまして、当局としては言及すべき立場にございませんけれども関係者が十分協議して不良債権を処理していくのに、再建されていくのに必要なそういう策が固められていくものと理解しているところでございます。
  114. 堀込征雄

    ○堀込委員 非常に微妙な段階にありますし、大蔵省の答弁そういうところかなということ、今の段階でわからないわけではありません。しかし、今申し上げましたように、そもそもこれは母体行の責任で設立をされ、先ほど申し上げましたように人も資金もノウハウもいわば母体行が投入をしてきた。大蔵省としてもいろいろな法律的手だてを行うとかいろいろなてこ入れをしてきたわけでありますので、農林系統の例えば各機関は、いわばそういう意味ではしっかりした母体行というものが後ろにあるということと、大蔵省の後ろ盾があるだろう、こういうことで融資をしてきたという経過があるだろうというふうに思うのです。  しかも、バブル時代、狂乱的な地価の上昇などがあった、そして市中の資金がかなり不足をした、農林系統に資金源を求めてきたという経過もあるやに聞いているわけであります。そういう意味ではもっともっと答弁としては、私は、母体行責任ということについてもう少し明確にならないのかという気が一つはいたします。  それから、農林系統としては、当時、持ち家制度を進めるとか個人住宅を進める国の政策、これに協力をするという意味で、農林系統の農家から集まった資金が個人住宅のローンに使われるならばそれはそれで共同組織として大変意味があることだろうというような認識などがあったのではないか。一方、銀行といいますか、都銀とかそういうグループにしますと、いわば総量規制があったとかあるいはBIS規制もある、自分ではなかなか貸し付けられないから住専会社を迂回していろいろ貸すとか、そういう展開をされてきた経過があるのではないかと想定をするわけであります。  そういう意味で考えますと、私は、いわば系統資金がそこに流れてきたということは、もちろん当事者の責任も全部否定するわけではありませんが、ある意味である程度やむを得ないものがあったのではないか、こういうふうに考えますが、その辺は大蔵省はどう認識されますでしょうか。もう少し今の母体行の責任などについては、それ以上の答弁は踏み込めませんか。
  115. 浜田恵造

    ○浜田説明員 繰り返しの答弁で大変恐縮でございますけれども、住専問題は極めて多数の金融機関が関与しておりまして、大体一社当たり平均百行、各信連、共連を一単位に数えますと百数十からの借り入れがありまして、また、その利害関係が錯綜しているという困難な面があるわけでございます。  したがいまして、具体的な再建計画の内容につきましては、各会社と関係金融機関との協議を通じ固められていくものと理解しておりますが、この問題の解決のためには、関係者が、金融システムの安定性の確保の重要性を認識した上で一致協力して対処していただく必要があるのではないかと考えております。
  116. 堀込征雄

    ○堀込委員 なかなか言いにくいようですから、しかし今申し上げてきましたとおり、経過からして、やはりこれ大蔵省も責任なしとは言えないという、いろいろな法的な手だてを含めてありますので、これはぜひリーダーシップを発揮してやっていただきたいというふうに思います。  そこで、住専の八社のうち、今時に日本住宅金融の再建計画が、新聞によりますとあすですか、何か会議が開かれるというふうに聞いておるわけでありますが、この中で、報道によりますと、農林系統の金利減免を四・五%まで下げてほしいという要請があるんだというふうに報道がされています。  私が心配をいたしますのは、農林系統の金融機関が金利減免に耐え得る体力が果たしてあるのかどうか。それは、都銀等に比較をした場合、各県別に見ますと極めて零細でありますから、体力が不足をしておる。しかも、今後の金融自由化の中で経営環境はさらにさらに厳しくなるというふうにお聞きをしています。先日の報道によりますと、例えば各県信連の、最大では三千五百億も住専会社へ出しておるというようなところがあるというふうに報道もされています。そういう中でこの日住金の再建案が出された場合、農林系統の体力はそれに耐え得るであろうかどうかという点を心配するわけであります。  もし日住金の再建案が決まりますと、恐らく他の六社もこれに横並びで再建案が整備をされていくであろうというふうに私は想定するわけでありまして、この点も含めますと農林系統の経営に大変大きな影響を及ぼす、こういうふうに思いますが、これは農水省の方で見解をお伺いをしたいと思います。
  117. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 御指摘のような新聞報道がなされておることは私どもも承知しておるわけでございます。  この問題につきましては個々の会社の経営の立て直しの問題、こういう問題につきましてはやはり基本的には当事者間で十分話し合って行われるべきものであるというふうに考えておるわけでございますが、御指摘のとおり、農協系統金融機関の経営状況につきましては、金融自由化によります業態間の競争の激化でございますとか、あるいは有価証券市場の低迷というふうなこともございまして、大変厳しい状況になっておるわけでございます。したがいまして、住専問題の対応につきましても、大変厳しい状況のもとで、このような経営状況を踏まえながら当事者間でぎりぎりの交渉が行われていくものというふうに考えておるわけでございます。  農林水産省としましても、このような系統金融問題にとって大変重大な事態でございますので、今後とも事態の推移を注意深く見守ってまいりたいと思っておるわけでございます。
  118. 堀込征雄

    ○堀込委員 やや抽象的でございますが、私はやはり農林系統の体力を見ると、これはもう大変な問題だろうというふうに思うのです。  確かに全体的な問題も一つはございます。それからもう一つは、各県別に見ますと、都道府県信運によって非常に経営が困難だというところもあるやに聞いているわけでありまして、一律に金利減免に応ずるというようなことになると非常に大きな問題の出る信連も出るのではないかということが一つございます。  それから、共済連の資金も一兆四千億近くですか、あるわけでございまして、こちらの方は例えば保険料率の仕組みから考えて、仮に報道されるような四・五というようなことになりますと、これはもう即座に実態として難しい問題が出るのではないか、かように私考えますが、関連していかがでございましょうか。
  119. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 御指摘のとおり、全国の信連の中にはいろいろな問題を起こしておる、既に赤字の決算を行っておる信連もあるわけでございますし、経営状況が赤字決算にはなっておりませんが、大変厳しい状況の信連もあるわけでございます。  そういうふうな状況でございますし、さらには共済連につきましては、やはり予定利回りといいますか一応長期的な目安のもとに運用を行う、こういうふうなことで予定を組んで運用をしておるというふうなことで、信連に比べましても非常に難しい問題を抱えておる、そういう状況でございます。  そういうことでございますので、これらの状況を踏まえて、それぞれ系統団体におきましてはいろいろな協議なり検討を加えておるわけでございます。そういうことで、せっかく現在母体行の方でいろいろな案を検討中のようでございますので、系統としましてもしっかりとした対応ができますように、我々としても十分見守ってまいりたいと思っております。
  120. 堀込征雄

    ○堀込委員 見守っていくという表現でございますが、しっかりとまた対応をお願いしたいと思うのです。  そこで、一部の報道でございますが、日住金の支援の問題で母体九行が金利ゼロで合意をした、そういうことで日住金の資金繰りを支える、あるいはまた不良債権償却に必要な資金を確保するんだというふうに言われておるわけであります。恐らく日住金の二月決済の問題だとかいろいろな問題があるのだろうというふうに思うのですが、仮に報じられるように農林系統が四・五%までというような話になりますと非常に多くの問題が考えられるわけでありまして、今質問したとおりでございます。  そこで、もう一つ心配になるのは、これから例えば元本ロスの問題をどうしていくのか、あるいはニューマネーといいますか新しい資金の必要が出た場合は、これは母体行が責任を持っていくのかどうかというような問題、さらに、今低金利でございますから、今後仮に一定の水準、四・丑とかいろいろな水準が議論をされているのだろうというふうに思うのでございますが、金利上昇等の変化があった場合に、今度は農林系統の方の経営に重大な問題が生ずるということは明らかであります。  したがいまして、日住金の再建に関連をして今協議が行われているようでありますけれども、こういうところも、当面日住金を立て直せばいいということじゃなくて、それも必要なんですけれども、その上に立って将来の農林系統の予想される問題点なんかについてもこの際やはり行政サイドで私は指導をいただきたい、こういうふうに思うわけでありますが、まずこれは大蔵省、その次農林省の見解を聞かせてください。
  121. 浜田恵造

    ○浜田説明員 先ほども申し上げましたとおり、個別会社の具体的なお話について当局として申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じますが、再建の案の具体的な内容等につきまして、会社と関係金融機関の協議を通じ固められていくものと理解しておりまして、その際に十分な協議を系統関係者も含めましてしていただきまして、そしてきちんと再建されていくという、不良債権を処理していくのに必要な再建策が固められていくものと理解しております。  いずれにいたしましても、当局としましても、金融システムの安定と健全な発展に影響を与えることのないよう全体としての状況を注意深く見守ってまいりたいと存じておりますけれども、現在問題解決に向けてそれぞれの関係者が一体となって努力しているところと聞いておるわけでございまして、できるだけ早く合意の形成をされることを期待しておるところでございます。
  122. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 ただいま大蔵省から御答弁があったとおりでございますが、御指摘のようなことにつきまして、今後の日住金の再建問題に関連をいたしまして、今御指摘のありましたような種々の留意すべき点についていろいろと検討が進められておるものと理解をしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、先ほど御答弁申し上げましたように、系統金融にとりまして極めて重大かつ深刻な問題でございますので、ぎりぎりの話し合いによって適切な解決が図られますように、我々としても事態の推移を、先ほど来申し上げておりますように注意深く見守ってまいるわけでございます。
  123. 堀込征雄

    ○堀込委員 合意形成を期待をする、さらにまた注意深く見守っていくということは、それはそれで私は含みのある答弁だというふうに思います。  しかし、金融システムの秩序維持あるいは弱小な農林金融保護、そういう視点から、やはりこれは当事者の調整が前提であるという考え方、これはわからぬわけではありません。ありませんが、行政としても、問題がここまで深刻になっていますから、何らかの解決方法を見出せるような所要の対応策というものがとられるべきではないか、こういうふうに思いますが、大蔵省、もう一回答弁してください。
  124. 浜田恵造

    ○浜田説明員 この問題につきまして、金融当局といたしまして去る八月十八日の金融行政の当面の運営方針、及び八月二十八日の総合経済対策におきまして、関係者に対し金融システムの安定性確保の重要性を認識した上でのさらなる努力を促し、処理方針の早期確定と計画的、段階的な処理に向けての一層の努力を要請しております。  さらに、昨年十月三十日に運営方針の実施状況を発表させていただきましたが、そこでも述べましたとおり、住事会社、ノンバンク及び関係金融機関の真剣な努力により問題の解決に向けて進展が見られておりますが、なお残されている問題も多いことから、今後ともその問題について具体的な検討を進め、対処案を構築するなど一層の努力が払われるよう、関係者に対し要請しているところでございますし、関係省庁とも従来同様各般の問題について相互に連絡し、御相談も申し上げているところでございます。  私ども金融システム全体の維持のためには、その他もろもろの環境整備等も含めまして、ただいま申し上げた運営方針等でいろいろな施策を実施しているところでございますけれども、いずれにいたしましても、この問題につきましてはその解決に向けてそれぞれの関係者が一体となって努力しているところでございますので、できるだけ早く合意が形成されることを期待しているところでございます。
  125. 堀込征雄

    ○堀込委員 ちょっと同じ質問、農林省、見解をお願いします。
  126. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 今大蔵省から答弁がございましたように、要するに住専問題が系統金融の問題に変わるというふうなことのないように、金融システム全体の問題として受けとめていきたいというふうに思っておるわけでございまして、今後とも金融当局ともよく連携をとりながらやっていきたいということでございます。
  127. 堀込征雄

    ○堀込委員 最後に、大臣にお伺いをいたすわけでありますが、農林系統の信用事業をめぐる経営環境、大変厳しいものとなっているわけでございます。今回の住専問題も、そういう意味である程度信頼する相手方だということで融資をしたわけでありますが、こういう結果になってしまったわけであります。  したがって、今後、農林系統の経営基盤の強化、そしてまた的確な業務運営体制などの確立が必要だと思いますが、当事者の努力と相まって行政の支援、ますます重要になっているのではないか、こういうように思いますが、この点について大臣の所見を述べていただきたいと思います。
  128. 田名部匡省

    田名部国務大臣 この問題につきまして、私も大変心配をしておるわけでありますけれども、今それぞれお答えありましたように、当事者が今一生懸命やっていることでありますけれども、しかしこれからのことを考えてみても、他の金融機関との競争が非常に激化していくわけでありますし、あるいは経営コストの引き下げ、自己資本の充実、そうした経営基盤の強化ということは大変重要だと思うのですね。  いずれにしても、従来からこうした点について十分指導をいたしておるところでありますけれども、さらに余裕金の運用に当たりましては確実性あるいは効率性及び流動性に配慮した健全な運用に努めるように指導をいたしておるところであります。  また、今般の金融制度改革の一環として、農協系統金融機関においても他の金融機関と同じように各種の業務能力を追加するとともに、いわゆるディスクロージャーの導入等の措置を講じることとしております。  いずれにしても、農林水産省としても、これらの措置によって農協系統の経営基盤の強化、業務運営体制の整備が図られていくように、今後とも適切に指導してまいりたい、こう考えております。
  129. 堀込征雄

    ○堀込委員 終わります。
  130. 平沼赳夫

    平沼委員長 倉田栄喜君。
  131. 倉田栄喜

    ○倉田委員 公明党・国民会議の倉田でございます。  私は、まず大臣に、「新しい食料・農業・農村政策方向」、いわゆる新政策でございますが、この中の新しい食糧政策についてお伺いをしたいわけでございます。  この冒頭に「新しい」というふうについている食糧政策について、何が新しい、こういうふうに考えておられるのか、この点について大臣はどのような基本的な認識を持っておられるのか、その点をまずお伺いいたしたいと思います。
  132. 田名部匡省

    田名部国務大臣 新政策自体は、我が国経済、社会や食糧農業、農村をめぐる状況の変化に対応するため、今後の食糧農業、農村政策の論点を整理し方向づけたものであって、全体として一つ政策体系をなすものであります。したがって、個々の政策云々よりも政策体系そのものが一体として新しさを有するものでありまして、食糧政策については、消費者のニーズの変化、世界の中長期的な食糧需給の見通し、そういうものをいろいろと踏まえたわけであります。特に、消費者の視点に立って、新鮮で良質かつ安全な食糧を適正な価格で安定的に供給をしていくこと、あるいは生産性の一層の向上など、品質でありますとかコスト面での改善を図っていく、可能な限り国内生産を維持拡大して食糧自給率の低下傾向に歯どめをかける、そうしたことが基本であります。  そうしたことを重視していきたいということで「新しい」、こういうことを申し上げた、政策全般を考えて申し上げたわけであります。
  133. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今の大臣のお答えを聞いておりますと、いわば総花的にお答えいただいたわけで、この新政策自体、総体的にも新しい方向を目指しておるのであって、特に食糧政策を取り上げて、この点を、従来からの政策をこういうふうに変えたんですよということについての大臣御自身の基本的な問題意識はどうもなかったのではないか、そんなふうに今お答えをお聞きしながら思ったわけですけれども、ただ、大臣のお話の中に、いわゆる安全な食糧を適正な価格で安定的に消費者に提供する、こんな部分もございました。  私は、食糧政策ということを基本的に考えた場合に、安全な食糧を、そして安定的、継続的に、しかも効率よく、ここで大臣のおっしゃる適正な価格でということがあるいは出てくるのだろうと思うのですが、そういう視点で今回のいわゆる新政策、新しい食糧政策においてもお考えになっているのかな、あるいはこういう方向で考えていかなければいけないのではないのかな、こういうふうに思っているわけでございます。  安全、安定、それから効率というふうに言っていいのかどうかわかりませんけれども、これはもちろんどういう順番でどうするんだということを政策的にきちんとする、体系的にきちんとするということ一は難しいのだろうと思うのですけれども、やはり食糧としては安全な食糧が第一である、こういうふうに思うわけですが、しかし現在現実に行われている農業政策というのは、やはり、適正な価格かどうかはともかくとして、価格をいかに下げるかこういう視点から、いかに効率よく生産をするかこれが第一順位に来ているんではないのか、そういう思いがしてなりません。その結果が、例えば単作で規模拡大をするという生産団地方式であったり、あるいは農薬、化学肥料依存の農耕という形態であったり、この点については非常に多くの疑問あるいは問題が指摘をされているわけでございます。  新政策においても、例えば価格政策を見ても、「需給事情を反映させた価格水準」、こういう言葉を使ってありますし、あるいは競争原理、市場原理の導入ということも当然うたっているわけでございます。やはりこの辺見てみると、新政策においても新しい食糧政策という観点から考えてみても、国際競争価格、国際競争力の視点もございましょうけれども、やはり価格をいかに下げるか、こういう視点からの効率優先主義に、これが基本的にあらわれているのではないか、まだ残っているのではないか。私は、今新しい新農政を考えておられるときに、この辺の問題も新しくやはり変えるという発想が必要なんではないのか、こういうふうに思って、いわゆる新しい食糧政策において、新しいということは、現在の食糧政策、現在の農業政策から、この食糧ということに関して何が新しく変わっていくのか、これをお聞きしたわけです。  そういう面に絞って、いや食糧政策については別に新しいということはありませんよという御答弁ならそれで結構なわけですが、それではちょっとこれから新しく農政を展開するのに大丈夫かな、こういう気がいたしますので、再度御答弁をお願いしたいと思います。
  134. 上野博史

    ○上野(博)政府委員 大臣の答弁に大体尽きているかと思うわけでございますが、若干の補足をさせていただきたいと思います。  今委員御指摘のとおり、安全で質のいい農産物を消費したいという消費者側のニーズということ、これが非常に高まっているということはお話のとおりでございまして、環境に優しい農業ということとあわせて、この面での配慮を十分にした農業を育てていかなければならないというふうに考えているわけでございます。  そういう意味では大変新しいといえば新しいわけでございますが、本来的に農業というのは消費者の健康に問題のないいいものを、新鮮なものをできるだけたくさん国内でつくって供給をするという、そういうことはいわば当然の役割でございまして、そういうことから考えれば、古くて新しい役割であるというふうに思うわけでございます。だから、そこを決して軽視をしているということではなくて、私どもとしては今回の政策体系の中におきましても、そのことを十分に必要な位置づけに位置づけたというふうに考えているわけでございます。  ただ、けさほど米あるいは先日来の議論の中で何回も繰り返し出てまいっておりますように、土地利用型の農業を中心にしまして、老齢化、農業就業人口の減少というようなことから、どのように我が国の土地利用型の農業というものの将来を考えていったらいいんだろうかという問題に当面をしているわけでございまして、そういう意味では効率のいい、規模の大きな、経営感覚に富んだ担い手による農業経営というものを打ち立てていかなければ、必要な農業生産も維持できない、それに伴う農業の多目的な機能というものも果たし得ないという問題があるわけでございまして、その点について特段の重点を置いているということでございます。
  135. 倉田栄喜

    ○倉田委員 私は、かつて農家の方からミカンをいただいたことがありまして、このミカンは自家用の、自分のところで食べるミカンとしてつくっているものですから、農薬も何も使っておらず、ちょっと格好が悪くて虫がついていますけれどもとても安全でおいしいんですよ、こういうふうなわざわざ注釈をいただいて送っていただいたことがございます。  現実にはやはり、先ほど大臣は適正な価格ということを御答弁いただいたわけですけれども、消費者ニーズの中には安い方を求めるという傾向もまたあるだろうし、またその必要性も品種によっては実際あると私も思います。しかし、今これほど環境の問題が言われる中で、そしておっしゃったように安全ということにまた消費者ニーズが移っていることの中で、安く安くということのみではなくて、先ほど大臣がおっしゃたように、やはり安全な食べ物を安定的に提供するということについてはそれなりの、適正な価格という言葉で言えば、それなりのコストもかかるのですよ、こういうことをあるいは国民にあるいは消費者の皆さんにも、もっともっと私たちあるいは政府はPRしていかなければいけない、そういうことがあると思うのです。  例えば米の問題にしても、国際競争価格に勝つような価格ということのみならず、日本の米を安全に安定的に提供するにはやはりこれくらいの価格が必要なんですよという、それはいろいろな農作物の価格に関しても総じて言えると思うのですけれども、いわばこれだけのコストが必要なんだ、モデル価格と言っていいのかどうかわかりませんけれども、そういう努力が必要なのではないのかこういうふうに思うのです。例えばメロンをつくるにしてもトマトをつくるにしても、やはり効率ということの中で相当多量の土壌消毒が行われて初めて連作が可能になっているという状況は現実にはあると思うのですね。そうすると、そういうことをそのまま新しい農政の中でも放置していっていいのかどうか。この点はやはり変えていく必要があるし、変えていくとすれば、やはり価格の問題にも反映をしていかなければいけない。農水省としてはこの価格の問題もきちっと消費者の皆さん国民皆さんに訴えていくような努力が必要である、こういうふうに思うわけですが、大臣はいかがでしょうか。
  136. 田名部匡省

    田名部国務大臣 私もいつも疑問を持つことでございますけれども、安全な食糧を安定的にということはそのとおりでありますけれども、一方、消費者の意見を聞きますと、その上に安い方がいいという意見が非常に多いわけです。この要求を満たそうとするとやはりコストをいかに下げるか、コストを下げようとすると、正規模ないとなかなか、今のままでは安全なものはつくれても非常に高いということになるし、先般も地元のリンゴ農家が来まして、リンゴの自由化のことで陳情に来たわけでありますけれども、私は基本的には、消費者の中にはリンゴが高くて買えない、あるいはたまには年に幾つが食べてもしょっちゅう手に入らぬという人もおるわけです。そういう人のために、もっと規模を大きくしたりあるいは手のかからぬようなリンゴづくりをして、安いリンゴを大都市に供給したらどうか。  恐らく、調べてみたら東京の人たちがしょっちゅうリンゴを食べているかというと、私は疑問がある。この人たちが少しずつでももしリンゴを購入するということになれば、多少安いかもしれぬけれども、相当量が出荷できるということになればそれなりのメリットは出てくる。そのためにはやはり少し規模を大きくして、そして労働コストがうんと下がる、矮化なんというのが今盛んに行われていますから、そういうこともやはり農家として高いものを買える人にだけ供給するということではなくて、これはすべてに共通するわけでありますけれども、そういうものがあっていいというふうに考えておりまして、いずれにしても効率性だけ追求するわけでもありませんが、国民コンセンサスをどうやってつくるか。今までのつくったものを買ってもらうという時代から、国民が求めるものをつくって提供するという両面がなければ、農業というのは国民から理解されにくいのではないかという感じを持っておるわけであります。
  137. 倉田栄喜

    ○倉田委員 私が申し上げているのは、それは消費者にとっては安い方がいいだろうと思うのですが、その安い農作物が非常に危険であるということであっては、それは決して安いものではないだろうということです。要するに安全な食糧、適正な価格、それが安全をちゃんと保証されたものが安く提供されるということであればまさにベストであるわけですけれども、現実に今の農業の中では、例えば薬品づけの農業というふうな批判もあるわけでございますので、それを新しい食料・農業・農村政策を考えるときに、今までの農業のあり方について、この側面からもっと基本的な部分で考えていく必要があるのではないのか、こういう問題点の指摘を今させていただいたわけでございます。  もう一点、新政策においてはいわゆる環境保全農業の確立という視点からの問題も打ち出されておるわけですけれども、この環境保全農業、これもいわば効率という視点からとらえていけば、よほど農業政策食糧政策基本的な視点を大胆に転換するような本当に重大な決意を持って臨まないと、なかなか環境保全農業の確立ということ自体も難しい、こういうふうに思うわけです。  そこで、これは指摘されていることでございますのでさらにここでお答えを願いたいと思うのですが、環境保全農業ということと効率ということとはどんな関係でとらえておられるのか。  それからもう一点、例えば新政策の中にはいわゆる中山間地域対策も論じておられますけれども、この中山間地域対策においても、いわゆる平場の条件のいいところでの農業価格を前提として、同じような価格のもとにこれを中山間地域に持ってくること自体、そんな簡単に政策の実効性は上がらないだろう、こういうふうな気もしてならないわけでございますが、この点についてどうなのか。  二点についてお伺いをいたしたいと思います。
  138. 上野博史

    ○上野(博)政府委員 先ほどの大臣の答弁でかなり尽きていると思うわけでございますが、農業生産を考えてまいります場合に、やはりできるだけ効率的に生産物を供給をしていく。これは品質の問題ももちろんクリアしなければならないわけでございますけれども、やはり価格に関する関心というのも決して低いはずはないと思うわけでございまして、その点についての努力は続けていかなければなりませんし、それから限られた就業人口、特に若手の農業従事者というものを考えます場合に、できるだけ効率のいい生産体系というものを組まなければ国土の十分な農業面での活用というものも今後図りにくいだろうというふうに考えるわけでございまして、やはり生産性をできるだけ高めて農業生産を行う体系をつくるということは、これはやはり非常に大事なことだというふうに思うわけでございます。  しかし、それが今お話ございましたように、消費者に害のある農産物を供給する、あるいは自然環境に対して非常に悪影響を及ぼすというようなものであれば、これは現在のいろいろな社会的なニーズや何かの問題に照らしましても非常に問題は大きいわけでございまして、この面でも、環境に優しくしかも食品の安全というような面において問題のないものを供給をしていくということは最低の条件だというふうに考えるわけでございます。そういう面で、農薬であれあるいは肥料であれ、我々としては投入につきましての指導を十分に考えていかなければならないわけでございまして、手放しの効率というものでいいというふうに決して思っているわけではないということを申し上げたいと思います。  それから、中山間地域の問題でございますけれども、これはやはり中山間地域は地形等の問題もございまして、農業生産の場としましても非常に条件が悪いということはおっしゃられるとおりでございます。しかしながら、この地域の活性化あるいは現在住んでいる人たちの生活を維持発展させていくという面で考えますならば、やはりこの地域におきます農業というものをできるだけ活性化していくということは必要なわけでございまして、そこにはいろいろな工夫の余地もあるのではないか。  けさほど来の議論でございますけれども、傾斜地に特に工夫をした野菜であるとか果実であるとかいろいろな作目を新規に導入するということも可能ではないか。あるいは、高い山の上であれば季節的な条件の移ろいも変わるわけでございますし、日中と夜間の温度差も大きい。それぞれの自然的な条件というものを生かした作物というものも考えられるのではないか。そういういろいろな創意工夫のもとに付加価値の高いユニークな農業というものが生まれる母体としても、中山間地域というのは考えられるのではないかそういうようなこと。それから、あるいは農業外のいろいろな就業の場等の導入あるいは農産物の加工という関連したいろいろな施策の導入も考えまして、地域全体としての活性化を図ってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  139. 倉田栄喜

    ○倉田委員 「新しい」とついているわけですから、新しいということが単なる形容詞ということに終わらずに、やはり現在の農業政策の問題点を本当にきちっと鋭くとらえながら本当に新しく変えていくんだ、こういう思いでこれからの具体的な施策が出てくるのだと思いますので、取り組んでいただきたい、そういうふうに思います。  続きまして、既に質問が出ておりましたけれども、牛肉の輸入の自由化の影響についてお伺いをいたしたいと思います。  局長は、輸出国に理解を求めていこう、こういう御答弁もございました。平成四年の牛肉輸入量が既に四十万トンを超えて、国内牛肉の生産量四十一万四千トンですか、ほぼ肩を並べる状況になっているというふうに言われるわけですけれども、このまま推移をしていくと、九三年には輸入牛肉の方が国内生産量を上回る事態にもなっていくのではないのか、こういうふうに思うわけです。農水省としては、この牛肉の輸入自由化が国内生産者の肉牛経営あるいは酪農経営に与える影響をどんなふうに今の時点でおとらえになっているのか。そして、この対策は、先ほど輸出国に理解を求めていきましょうというふうなお話ではございましたけれども、これだけで果たして大丈夫なのかな、実はこういう思いを持ったわけでございますので、もう一度御答弁をいただきたいと思います。
  140. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 牛肉の輸入自由化による日本の畜産への影響というようなことでございますが、先生御承知のとおり、自由化前の平成二年度には三十八万四千トンであったわけですけれども、自由化の初年度三年度には、それまでの輸入牛肉の在庫がたまっておったということでその在庫の取り崩しが行われまして、三十二万七千トンとなったわけですが、今年度になってから三年度に比較して増加傾向で推移しているわけです。お話のとおりでございます。  この輸入牛肉と品質的に競合じゃすい、競合度の高い乳用種等の枝肉価格、これは自由化後、低下傾向で推移をしてきておりまして、乳用種等の子牛価格も平成二年一月をピークとして低下傾向で推移をいたしております。  なお、和牛の枝肉価格は自由化後もほぼ横ばいか、やや上昇で推移をしてきたわけですが、四年に入りまして、景気の影響等からやや低下傾向で推移をしております。それから、黒毛和種の子牛価格も四年に入って低下傾向で推移をしてきております。  それから肥育経営の方ですけれども、こちらの方も、枝肉価格の低下に加えまして、素牛を導入したときの素牛の価格が高かったというようなことから収益性が低下をしているわけですが、このうち乳用種につきましては、最近における導入時の素牛価格が低下をしておるというようなことで、これからの枝肉価格の先行きいかんにもよるわけですけれども、収益性は若干改善の傾向にあるというのが、今の自由化による影響というか、状況でございます。  それで、ことし非常に輸入量がふえておる。自由化はした。それでセーフガードを発動するまでにはまだ至っていない。だがいろいろなところで影響が出てきている。そういう中でどうするかというお話が先ほどございまして、私はやはり日本国内の牛肉の需給事情、そういうものをよく相手国に理解をしてもらいまして、その需給事情に合ったような、需給事情に即したような形で輸出入が行われることが輸出国、輸入国双方にとってよいのではないか、こういうような点の理解を深めるような、そういう努力をしていきたい。  先ほども申し上げましたけれども、先日行われました日豪の、これは定期的に行われているビーフトークスというのか、牛肉の輸入情報交換会議でございますが、その席上でも、今申し上げましたような考え方を相手に話をして理解を深める、そういう形での努力をしてまいりたいと考えております。
  141. 倉田栄喜

    ○倉田委員 輸入牛肉が増加をしていくだろう、そうすると、当然、当然というか、価格はまだまだ下がっていく、そういうおそれが強いのではないのか、こういうふうに思われるわけですけれども、その状況の中で、相手国、輸出国の理解を求めていくというだけでいいのかどうか、国内的にもっといろいろな対策を講じていく必要があるのではないのか、こういうふうに思うわけです。  例えば肉用子牛生産者補給金制度、こういうのがございます。これは黒毛和種、赤毛和種グループとその他の肉専用種グループと乳用種の三つのグループにそれぞれ分かれて保証基準価格の設定がなされております。ところが、この肉用子牛生産者補給金制度においても、それぞれ今御答弁ございましたけれども、黒毛和種と赤毛和種、同一のグループ、黒毛和種は高水準を維持しておる一方で、赤毛和種の方は、私が調べた資料によれば、もう保証基準価格どころか合理化目標価格も下回っている、こういうふうな数字を私手元に持っておるわけですが、それはそのような認識でいいのかどうか。すなわち、黒毛和種と赤毛和種、価格に非常に大きな差が現在出てきている。それはそのように考えてよろしゆうございますか。
  142. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 黒毛和種と赤毛和種の価格差については、自由化前後から開いてきておりまして、今おっしゃるとおり価格差が出てきております。
  143. 倉田栄喜

    ○倉田委員 赤毛和種だけの数字をとった場合に、これは例えば平成四年の十二月で見れば、もう既に保証基準価格どころか合理化目標価格も下回っている、こういう認識は農水省にございますか。
  144. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 赤毛和種については合理化目標価格を割り込んでいるという、ずっと割り込んでいるかどうかあれですけれども、黒に比べてかなり低い水準になっております。
  145. 倉田栄喜

    ○倉田委員 ところが、黒毛と赤毛では同種のグループとしてこの補給金制度ではまとめられているために、結局黒毛と赤もの平均値が補給金制度の発動要件としては問題になっている。そうだとすれば、黒毛が高い以上、赤毛が安くてもその平均値を上回ってしまうから、赤毛和種の飼育農家にとってはこの補給金制度の恩典は受けられない、こういうふうな事態が生じていると思います。  もともと黒毛と赤毛が同一のグループに位置されたのは、恐らく黒毛と赤毛においては価格の変動が大体同じであったから同一のグループにして補給金制度が組まれたのだろうと思いますけれども、現在の状況でこれだけ差が出てくる、しかも輸入自由化の中でこの差が詰まるとは思えないとすれば、現在のこの補給金制度における黒毛と赤毛を同一に扱うということは、制度の前提そのものを欠くような事態になっているのではないのか。この点について制度の改正が必要なのではないか、こういう要望もあるとは思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
  146. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 子牛価格の安定制度につきましては、先生おっしゃるとおり、三つのグループに分けて、それぞれ保証基準価格を定めて制度の運用を行ってきているわけでございます。  それで、赤毛につきましては黒毛と同じ品種区分としたわけですが、その後、先生今おっしゃいましたように、従来黒毛和種と同じ価格水準及び動向を示してきた、そういうことを踏まえて同じグループにしたわけですけれども、牛肉の輸入の自由化後、赤毛は黒毛に比べまして価格が低下しているわけですけれども、赤毛には赤毛で黒毛に比べて増俸能力がすぐれている等の生産面での有利性もあるし、優良な品質の確保や販売面の努力によりまして、価格の改善の余地も残されているというようなことを考慮しますれば、赤毛和種の価格を回復させる努力をすることが大切であると考えておりまして、本年度におきましては、赤毛和種の優良資源確保を図るための奨励措置を講ずる。  あわせて、基本的には品質のよいものを品ぞろえをして販売することが重要でありますので、これとあわせて優良子牛の生産の促進だとか生産者と販売業者を結ぶいわゆる産直事業、そういったことを通じて生産から流通、消費にわたる総合的な対策を講じておるところでございます。  それで、今お話しの問題につきましては、制度の枠組みに関連をする問題でもありますし、慎重に検討する必要があろうと考えております。
  147. 倉田栄喜

    ○倉田委員 確かにこの制度そのものが発足をして非常に間もないわけですから、なかなかすぐにというのは困難かとも思いますけれども、これだけいろいろな変化が生じているわけですから、機動的に対応をしていただきたいということもございますし、まあ検討をしていただきたい。  同時に、赤毛和種の飼育農家に対しては、今局長から総合的な対策ということで御答弁いただいたわけでございますけれども、総合的な対策の具体的な中身として対応をしていただきたい、このように特に要望をしておきたいと思います。  それから、今局長の御答弁の中にも、価格をどう維持をしていくのか、こういうお話もございました。これは私は非常に重要な問題なんだろうと思うのです。午前中もいわゆる支払い基金制度において、合理化目標を下回っておるから、いわゆる生産者の積立金の方から取り崩しが始まっていて大変だ、こういう御指摘もございました。やはりこのままの状況で自由化の影響にしても価格がずっと下げ傾向の方に続くと、財源という観点から考えれば、また保証基準にしても合理化目標基準にしても下げざるを得ない、下げると財源が足らない、こういうふうな繰り返しになっていくのではないのか。そうすると、この制度そのものも果たしてそのまま維持できるのだろうか、こういう非常に大きな問題を抱えてしまうことにもなりかねない。そうすれば、どうしたらいいのか、こういう問題があるわけですけれども、この問題についてどうお考えなのか。それから、私自身は、まさに適正な価格、これを本当にずっと下げるということではなくて適正な価格を維持するというためには何が必要なのか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  148. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 子牛の価格安定制度におきます基準価格、これは子牛の再生産を確保する、そういう趣旨で決めておるわけでございまして、今合理化目標価格を割り込んで、乳用種とその他肉専でございますけれども、県の基金協会で支払い財源が不足している。まあ幸い、幸いというか、今は全国の基金協会の方に、そういう事態に備えて無利子の融資をする基金がございます。そこから、先ほど来お答え申し上げておりますように無利子で融資をいたしておる。償還期限八年、据え置き四年でございますので、赤毛につきましてもいろいろ赤もの特性がございます。乳用種、それからその他短角でもそうですけれども、償還期限までにはまだ四年ございますので、価格の改善というか回復を図る、そういう努力をするのが今は肝心ではないかというふうに考えております。
  149. 倉田栄喜

    ○倉田委員 適正な価格ということをずっと申し上げておるわけですけれども、価格ということについても、いわゆる生産者の手取り額における価格という問題と、それから消費者の手元に届く消費者価格、このいずれもが適正でなければいけないし、生産者の側から見れば、自分たちが受け取る額、それがもう一度また頑張ろうという気になる価格でなければいけない、こういうふうに思うわけです。  そこで、価格を適正に維持するということと同時に、生産者の手取り額をどんなふうに保証をしていくか、こういう視点も必要だと思うのですが、私の調べでは、例えば生産者の手取り類とそれから流通経路における手数料との割合、牛肉においては、六十三年は生産者手取り額は六四・三%、平成元年は六二・九%、これに対して卸売及び小売店手数料が、六十三年が三〇・九%、元年が三一・四%、大体六、三みたいな形になっているわけです。豚肉の方においてはもっとこれが、手取り額の方は六割を切っておりますし、販売及び手数量の方は三割を超えているというふうな状況があるわけですけれども、この辺の問題についても何か考える必要があるのではないか。生産者が自分たちが生産したものをある意味ではもっと自分たちの意見が通るような形で値段が決められるような、あるいはそこにもっと希望が見出せるような制度というのは考えられないのかどうか、この点について御見解をお伺いしたいと思います。
  150. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 価格形成におきましては、競りといいますか需給関係で決まってくるというのが基本であろうと思います。  生産者の手取り価格と、小売価格といいますか流通関係の取り分というのか、そういう問題でございますけれども、最近小売価格のコスト構成なんかも変わりつつあるといいますか、人件費だとか輸送経費、そういったものの上昇によりまして、小売価格に占める仕入れ原価以外の経費の割合が増加をしておりまして、卸売価格の低下が直接小売価格につながらないという問題もある。いずれにしても、卸売価格が下がればそれに見合ったような姿で消費者価格に反映されることが消費者利益のために重要だろうと思いますが、中間のコスト、そのコストの構成も変わっておりまして、直に卸売価格が消費者価格に反映しにくい、そういうような状況になっておるわけでございます。
  151. 倉田栄喜

    ○倉田委員 私が申し上げたかったのは、生産者の手取り額がもっと高まるような考え方がないものかどうか、そういう知恵はないものかどうか、こういうふうにお聞きをしたかったわけです。  それからもう一点、いわゆる畜産においても産地間の競争というのがございます。北海道、中国、四国あるいは九州、これで産地間競争の中でそれぞれ生産者の方は本当に一生懸命努力をされておられるわけですけれども、でも考えてみれば、その飼育条件、生産条件というのはまさにその地域、風土によって異なるわけです。それぞれの地域、集落に、例えば農村を集落として維持していくためにはやはりそこは畜産しかないという部分は、北海道であれ九州であれ、あるわけです。やはりそこはきちんと集落を維持するためにも、そこの畜産業というのを守って育っていかなければいけない。そうだとすれば、全国一律的に、北海道も九州も中国、四国も、同じような施策というのを同じように、同じような価格で展開をしていくことにもやはり無理があるし、この点もこれから先考えていかなければいけないのではないのか、こういうふうに思うわけですが、ちょっとなかなか具体的な質問じゃなくて恐縮ですが、この点について何かお考えはありますでしょうか。
  152. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 日本の畜産は戦後急速に発展をしてきたわけですが、その畜産も地域の条件に即してこれまで発展をしてきたものと考えております。  今先生お話しの、それぞれの地域で何とか地鳥とか何とか豚とか、いろいろ知恵を凝らして頑張っておられるわけですが、そういった地域の特性を生かしたような形での畜産振興、そういう面につきましては、今各市町村がそれぞれ農業生産総合振興計画というのをことしからつくり始めております。それは市町村それぞれつくるわけでございまして、そういう振興計画の中にそれぞれの地域の特性に応じたような生産対策、畜産につきましても、が織り込まれることと思います。そういう計画に織り込まれたときには、私どもでは、生産、流通、消費各般にわたる畜産活性化総合対策事業、いろいろな面に利用できる事業もございますので、そういう計画に織り込まれれば、今申し上げました畜産活性化総合対策を通じてその計画を御支援をしていくというような形で、それぞれの地域の特性を生かした、地域の自主性を生かした畜産の振興を御援助していきたいというふうに考えております。
  153. 倉田栄喜

    ○倉田委員 次に、養豚経営の方について、その現状をお伺いしたいと思います。  先ほど牛肉の輸入量が相当にふえて史上最高となった、こういうふうにお尋ねをしたわけですが、平成四年の豚肉の輸入量も史上最高の四十八万トンになった、こういうふうに報道をされておりまして、畜産物の価格安定法による豚肉の調整保管制度が十三年ぶりに発動した、こういうふうになっております。・  一方で、この豚肉については差額関税制度というのがあるわけですけれども、この差額関税制度の撤廃をウルグアイ・ラウンドで今求められている、こんな報道もあるわけですが、この点について事実なのかどうか、豚肉の差額関税制度の撤廃問題におけるウルグアイ・ラウンドの交渉状況をお尋ねしたいと思います。
  154. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 豚肉の差額関税制度は、低価格の豚肉の輸入を抑制する一方で、一定価格以上の豚肉については低関税で輸入を行うことによりまして、国内養豚の保護とあわせて円滑な輸入の確保、そういう役割を果たしているわけですが、ガットウルグアイ・ラウンドにおきましては、一部の国から、この制度は最低輸入価格を設けた輸入制限的な制度であるということで、その変更を求められております。  これに対しまして、我が国は、現行制度が果たしている役割につきまして関係国の理解を求めるべく努力をしているところでありまして、今後ともそういう面での最大限の努力を傾注してまいりたいと考えております。
  155. 倉田栄喜

    ○倉田委員 養豚経営については、今までですと、養豚農家数は減ったとしても生産数は維持というか増産をされてきた、こういうふうに認識しておるのですが、今回の場合はいわゆる飼育頭数の減少という事態が今生じている。そうしますと、このままの状況推移の中で豚肉の輸入量がふえますと、さらに国内生産量は落ちていく、国内生産量が落ちていけばさらに輸入量がふえていく、こういうパターンになってくるのではないのか。これは養豚農家の方々にとっては大変な問題である、こういうふうに思うわけです。そうしますと、先ほどの豚肉の調整保管制度そのものも維持できなくなるような状況だし、結果として養豚経営農家の崩壊につながる、こういうふうに私は危機感を持つわけですが、この点についてどのような見通し、対策を持っておられるか。  それから、今御質問させていただきましたけれども、差額関税制度は、これは養豚農家にとっては今本当に何としても守っていただかなければいけない問題であると思いますので、この二点についても大臣から御答弁をいただけたらと思います。
  156. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 最近になりまして豚の飼養頭数の減少が見られるわけですけれども、豚肉につきましては、消費の約七割について国内生産で賄っております。また、国内の価格の動向も基本的には豚肉の国内の生産の動向、季節的な変動等によって左右されているという状況にあると考えております。  したがいまして、そういった季節的変動等によりまして豚肉の価格が安定基準価格を下回って下落をしたという場合には、調整保管を実施して、ことしもやりましたが、価格を安定価格帯の中に維持することによりまして国内生産者に再生産の確保を図り得る水準を保証することが可能であると考えております。  価格安定制度、需給調整、そういうものを適切に運用することによりまして、再生産の確保を図り得るというふうに考えております。
  157. 田名部匡省

    田名部国務大臣 先般デンマークに参りましたときに、向こうの農林大臣からこのお話がありました。しかし、いろいろ言われますけれども、私は我が国のこういう制度がむしろデンマークにとってもかえって有効であろうという話をいたしてまいりました。  いずれにしても、私どものこの考え方関係国に理解を求めるということが大事であろう。決して輸入を全部制限しておるわけではなくて、むしろそういう制度がうまく生かされて日本に輸出できる条件というものをわかってもらえたと私は思っておりますが、これからもそういうことの理解を得ながら、国内の対策については、今お話ありましたようなこと等を踏まえながら努力をしていきたい、こう考えております。
  158. 倉田栄喜

    ○倉田委員 畜産の牛、豚にしても、それぞれ飼育農家の方々は本当に大変な努力をされて国内生産を維持し、価格を安定的にここまでやってこられておるわけですから、どうかその方々が安心してまた飼育を続けられるように、お願いをしたいと思います。  そこで次に、農業災害補償制度、農作物の共済制度について二点ほどお伺いをしておきたいと思います。  現在、共済対象事故によって品質の低下した米、麦の扱いの問題でございますけれども、現行の農作物共済の共済金の支払いは収量を基準としているわけでございます。そうすると、いわゆる共済対象となるための一定の被災量がなければいけない。そうすると、共済にも上らず、一方で品質の低下している米、麦がある。この問題、いろいろ議論はされておると思うのですが、この品質の低下による所得の減少、補償、これをどう考えていくのか、これも共済としてなんとか救済をする方法がないものかどうか。あるいは現在の農家所得について、現行これも特例措置もそれぞれあるみたいですが、この改善についても要望が出ていると思います。この点について御説明を、御答弁をいただきたいと思います。
  159. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 農業災害補償制度の農作物共済でございますが、現行では共済事故によりまして減収が生じた場合に共済金を支払う、こういう仕組みになっておるわけでございます。いわゆる収量保険方式をとっておるわけでございます。また、耕地ごとの損害評価は主として稲が植わっている状態で行わざるを得ないというふうな実態がございます。そういうこともございまして、品質の低下そのものは、御指摘のとおり補てんの対象にはされていないところでございます。  しかしながら、異常な災害によりまして広範囲の地域にわたって政府買い入れ対象とならないような低品質米が発生した場合は、減収量の取り扱いにつきまして、政府買い入れ基準に達するまで被害粒を控除する、除くというふうな方法等によりましてこれを特別に減収量とするというふうないわゆる損害評価に関する特例措置、こういうものを講じることとしておるわけでございます。  そこで、何とか品質低下も補償する方式ができないかという御指摘でございますが、これは一筆方式あるいは半相殺方式の場合に、被害耕地金筆の坪刈りの実施等、一筆ごとに品質の低下を把握する必要があるわけでございます。こういうことで、その一筆ごとに被害といいますか品質の低下を把握するのは多大な労力を要するというふうな問題もございまして、現実的ではないと考えております。  それでは全相殺方式、農家単位の、農家ごとの案出荷量あるいは品質の把握ができないか、こういうことでございますが、これは技術的に不可能というわけではないわけでございますが、全相殺が実施されているという地域は限られております。そういうこともございまして、当該地域だけで実施するのは他の地域とのバランス等を考えましていろいろ問題があるというふうに考えておるわけでございます。そういうふうなことで、当面、品質低下による所得の減少を共済の対象にすることは難しいというふうに思っておるわけでございます。  さらに、それでは先ほどの損害評価に関する特例措置の改善が図られないかというふうな御指摘があったわけでございます。これにつきましては、やはりこの特例措置は一般的に再保険金の支払いにも影響するというふうな問題でございまして、全国で統一的、客観的な基準に基づいて実施する必要があるというふうに考えておるわけでございますが、なお関係団体関係者の意見も聞きながら、さらに検討してまいりたいと思っております。
  160. 倉田栄喜

    ○倉田委員 もう一点、共済の問題で、収穫量とする基準の改善の問題についてお伺いしたいと思います。  いわゆる米、麦の生産振興で、高品質の生産が奨励をされるということで、農家の縦目ふるいにおいては、米が一・八ミリ以上、麦が二二一ミリ以上で選剔出荷が現実にはなされております。一方、農業共済制度では、米は一・七ミリ、麦は二・○、これを収量としておりまして、農家の出荷の調整方法と、ここに共済におけるふるいと相違があるわけですけれども、これは農家の方々にとっては、現況に即したふるいを共済においても使用すべきではないのか、こういう強い要望がありますが、この点についてはどういうお考えでしょうか。
  161. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 いわゆるふるい目の問題でございますが、これは米について申し上げますれば、現在統計情報部で調査したり、あるいは米のいろいろなところにつきましては一・七ミリ、いわゆるふるいの目幅は一・七ミリ、こういうことでいろいろな統計なり共済制度ができておるわけでございます。  委員御指摘のとおり、最近は自主流通米でございますとかいろいろなところにおきまして、これと異なります、例えば一・八ミリでございますとか二・○ミリ、こういうふうなことが行われておる、そういう実態が変わってきておるというのも御指摘のとおりでございます。  それではこれを共済制度に取り入れたらどうか、こういう御指摘でございますが、これにつきましては、まだ各地によりまして、その地域地域によりまして、一・七を使ってみたり、一・八であったり、一・九であったり、二・○である、こういうふうなことでございまして、どれをとるか、こういうふうな問題もあるわけでございます。  さらには、この我々の共済制度について見ますと、基準収穫量というふうなことで、引き受けのときの対象になります基準収穫量というものを決めるわけでございますが、これは農林水産統計で一・七ミリをベースにした平年収量、こういうものをベースにつくっておるわけでございますので、一・八ミリあるいはほかの値を使うとしますと、その修正が必要になってくるというふうな問題、さらには、損害評価におきましてもこのような似たような問題があるわけでございます。  そういうふうなことで、現段階におきましては、このふるい目につきましては共済だけで変えていくということは難しいのではないかと考えておるところでございます。
  162. 倉田栄喜

    ○倉田委員 もう少しお尋ねしたいところがあったのですが、時間が参っておりますので、最後に他用途利用米について一点だけお伺いをいたしたいと思います。  最近、他用途利用米の不足が盛んに言われております。一方で、制度として他用途利用米安定供給対策というのがありまして、それぞれ基本単価は五万円、集約加算一万円、モチ米加算二万円、こういうふうに供給対策がなされておるみたいでございますが、これ一定の達成目標、これが義務なのか任意なのか、問題が指摘されておりましたけれども、達成されない場合についてはこれが減らされている、いわゆる減額交付になっておるわけでございます。  これだけ一方で高品質というのが言われる中で、他用途利用米をつくる方々が果たしてこれから先ふえるのであろうかどうか。こういう視点からすると、目標を達せなかったから交付減額いたしますよというのはどうなんだろうか、率直にこういう問題意識を持つわけですが、この点について減額交付自体果たしてどうなのか、この辺の問題をお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  163. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 他用途利用米につきましては、加工用米の原料供給の中で極めて重要な位置を占めているわけでございます。ただ、率直に申し上げまして、同じ農家のサイドから見ますと、自主流通米、政府米、他用途米、それぞれ価格に差があるということで、他用途米をつくること自身にやはりいろいろな問題があるわけでございます。  しかし、その他用途利用米の供給が需要に対しまして応じられないということになりますといろいろな問題が出てくるというようなことで、やはりそれぞれ設定されました目標に応じた対応をしてもらうということが基本であるというふうなことで、他用途利用米の奨励措置につきましても、そういう達成した人それから達成しない人あるいは達成割合の低い人、それによって差をつけた方が公平その他の見地からいいし、他用途利用米の目標達成に誘導効果を果たすのではないかというようなことで、今回、ポスト後期対策であります他用途利用米安定供給対策につきましては、そういう達成割合に応じた差をつけることにいたしたわけでございます。  いずれにいたしましても、他用途利用米の実需者が支払い分のほかに基本的な単価あるいは加算制度、それぞれを利用していただきまして目標達成していただけば満額の金が入手できるわけでございますので、目標に即した対応をしていただきたいということをお願いいたしておるところでございます。
  164. 倉田栄喜

    ○倉田委員 この問題はまた別の機会にお尋ねをしたいと思います。  以上で終わります。
  165. 平沼赳夫

    平沼委員長 これにて農林水産大臣所信に対する質疑は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十八分散会