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1993-03-25 第126回国会 衆議院 内閣委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年三月二十五日(木曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 牧野 隆守君    理事 浅野 勝人君 理事 井上 喜一君    理事 福田 康夫君 理事 田口 健二君    理事 山元  勉君 理事 山田 英介君       今津  寛君    大塚 雄司君       大野  明君    奥田 敬和君       佐藤謙一郎君    桜井  新君       野田  実君    葉梨 信行君       鳩山 邦夫君    阿部 昭吾君       大出  俊君    北沢 清功君       佐藤 観樹君    佐藤 泰介君       元信  堯君    山中 邦紀君       東  祥三君    三浦  久君       和田 一仁君  出席国務大臣         外 務 大 臣 渡辺美智雄君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)河野 洋平君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房審議官    高岡 完治君         国際平和協力本         部事務局長   柳井 俊二君         国際平和協力本         部事務局次長  萩  次郎君         総務庁行政管理         局長      増島 俊之君         総務庁恩給局長 稲葉 清毅君         外務大臣官房長 林  貞行君         外務大臣官房審         議官      津守  滋君         外務大臣官房領         事移住部長   荒  義尚君         外務省アジア局         長       池田  維君         外務省欧亜局長 野村 一成君         外務省中近東ア         フリカ局長   小原  武君         外務省条約局長 丹波  實君         外務省国際連合         局長      澁谷 治彦君  委員外出席者         法務省入国管理         局総務課長   杉内 直敏君         文部省教育助成         局海外子女教育         課長      齊藤 秀昭君         内閣委員会調査         室長      松村 淳治君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十三日  辞任         補欠選任   東  祥三君     日笠 勝之君 同日  辞任         補欠選任   日笠 勝之君     東  祥三君 同月二十五日  辞任         補欠選任   近藤 鉄雄君     今津  寛君   桜井  新君     野田  実君   佐藤 観樹君     佐藤 泰介君   佐藤 徳雄君     元信  堯君 同日  辞任         補欠選任   今津  寛君     近藤 鉄雄君   野田  実君     桜井  新君   佐藤 泰介君     佐藤 観樹君   元信  堯君     佐藤 徳雄君     ――――――――――――― 三月二日  旧満州航空株式会社職員恩給法令外国特殊  機関職員として追加規定に関する請願外一件  (山口敏夫紹介)(第三五四号)  同(大原一三紹介)(第三七九号)  同(坂本剛二君紹介)(第三八〇号)  同(保利耕輔君紹介)(第三八一号)  同(鳥居一雄紹介)(第三九二号)  同外二件(井上喜一紹介)(第三九五号)  同外一件(大野明紹介)(第三九六号)  同(亀井静香紹介)(第三九七号)  同(谷垣禎一紹介)(第三九八号)  同外二件(虎島和夫紹介)(第三九九号)  同(平沼赳夫紹介)(第四〇〇号)  同外一件(細田博之紹介)(第四〇一号)  同(村田吉隆紹介)(第四〇二号)  同外一件(渡瀬憲明紹介)(第四〇三号)  同外三件(小里貞利紹介)(第四五五号)  同(田澤吉郎紹介)(第四五六号)  同外二件(戸塚進也紹介)(第四五七号)  同(中尾栄一紹介)(第四五八号)  同(東力君紹介)(第四五九号)  同(平田辰一郎紹介)(第四六〇号)  同(吹田愰君紹介)(第四六一号)  同(山下元利紹介)(第四六二号)  同(綿貫民輔紹介)(第四六三号)  同(麻生太郎紹介)(第四九九号)  同(近江巳記夫紹介)(第五〇〇号)  同(北側一雄紹介)(第五〇一号)  同(栗原祐幸紹介)(第五〇二号)  同(鳥居一雄紹介)(第五〇三号)  同外二件(前田武志紹介)(第五〇四号)  地方分権推進法の制定に関する請願渡瀬憲明  君紹介)(第三七八号)  従軍慰安婦などの戦後補償等に関する請願(鈴  木喜久子紹介)(第四六四号)  同(鈴木喜久子紹介)(第五〇五号) 同月十日  旧満州航空株式会社職員恩給法令外国特殊  機関職員として追加規定に関する請願外一件  (河村建夫紹介)(第五三〇号)  同(佐藤謙一郎紹介)(第五四七号)  同(二田孝治紹介)(第五七四号)  同(伊藤公介紹介)(第六九六号)  同(神崎武法紹介)(第六九七号)  従軍慰安婦などの戦後補償等に関する請願(鈴  木喜久子紹介)(第五三一号)  同(外口玉子紹介)(第六四四号)  同(外口玉子紹介)(第六九八号) 同月二十三日  旧満州航空株式会社職員恩給法令外国特殊  機関職員として追加規定に関する請願浅野勝  人君紹介)(第七五三号)  同外一件(東家嘉幸紹介)(第八二六号)  同外一件(狩野勝紹介)(第八七二号)  同(福永信彦紹介)(第八七三号)  同外一件(宮崎茂一紹介)(第八七四号)  同(伊藤公介紹介)(第九〇五号)  従軍慰安婦などの戦後補償等に関する請願(伊  東秀子紹介)(第八四二号)  同(伊東秀子紹介)(第八九一号)  同(伊東秀子紹介)(第九〇六号)  PKO協力法廃棄と自衛隊の海外派兵反対、カ  ンボジアからの撤退に関する請願菅野悦子君  紹介)(第九〇七号)  同(辻第一君紹介)(第九〇八号)  同(東中光雄紹介)(第九〇九号)  同(藤田スミ紹介)(第九一〇号)  同(正森成二君紹介)(第九一一号)  同(吉井英勝紹介)(第九一二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一〇号)      ――――◇―――――
  2. 牧野清文

    牧野委員長 これよ会議を開きます。  内閣提出在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田口健二君。
  3. 田口健二

    田口委員 私は、在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案について、ただいまから質問をさせていただきます。  まず初めに外務大臣お尋ねをいたしますが、去る一月二十二日の本会議における宮澤総理施政方針演説に続いて、渡辺外務大臣から外交に関する演説がございましたが、その演説の中で大臣から最後に、今や外交活動日常生活に直接影響するようになり、外交と内政は一体である、そのためわかりやすい外交を目指して努力をする、また、正確に国際情勢を分析し、適切かつ機動的な外交活動を展開していく頼もしい外務省とするためにも、それを支える外交実施体制と諸機能強化に努めてまいるとの発言があったことは、記憶に新しいところであります。  そこで、まず平成五年度の予算においてとられました外交実施体制強化に向けての外務省機構改革について御説明をいただきたいと思いますし、また、機構改革に伴う定員増などがあれば、その点についてもお知らせをいただきたいと思います。
  4. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 骨組みだけ私から御答弁いたします。  まさに私はわかりやすい外交ということを申し上げました。これは、もう言うまでもなく、日本貿易大国として世界じゅうを相手に取引をし今日の繁栄を得ておるわけでございますから、やはり世界のどの国とも関係が、大小にかかわらずございます。したがって、一国との争いとか一国との何か問題があると、それが国内的にも必ず反作用といいますか、響いてくるという状況にございます。したがいまして、外交先見性とか外交の実力というか実行力というか、そういうようなことが非常に重要でございまして、ただ単にその場限りの、一時逃れのというわけにはいかぬわけであります。したがって、そういうような意味からも、外交実施体制強化ということが非常に重要だ。そういうようなことで、今まで外務省縦割りだけで横の連絡というものがややもすると問題があったところでございますが、総合的な外交を展開していくためには、機能的に外務省が横もきちっと連絡がとれるというようにしていくことがいいだろう。  こういうような観点から、国際連合局総合外交政策局、こういうように発展的に改組するということにしたわけであります。具体的に申し上げますと、総合的、中長期的な外交政策企画立案実施総括を担当する総合外交政策局の本体をまずつくる。そして、環境、人権、難民等国際社会全体に共通する問題を掌握する国際社会協力部というものをその中につくる。また、外交上重要な実務である軍備管理・軍縮、科学原子力等分野総括、整理する軍備管理科学審議官、これを設置するということが一つ。もう一つは、情報調査局というのがありますが、これを情報機能を特化させるために国際情報局というように改組する。そして、この総合外交政策局国際情報局新設に伴って、今までいろいろな局に属しておった課その他の調整をいたすことにしたわけであります。  また、これに対する定員増でございますが、一応平成五年度の定員増は大蔵省の御理解が得られまして、百四十名純増をすることになりました。それを本省で四十名、在外公館で百名というふうに分けることにいたしました。また、機構改革による新設部局定員でございますが、内訳を申しますと、総合外交政策局が百五十三名、既存定員百四十四名プラス新規増九名、国際情報局が五十六名ですが、既存の四十九名プラス新規増七名、こういうふうにしたいというのが大まかな骨組みでございます。  それ以上の詳しいことについては事務当局から必要に応じて答弁をさせます。
  5. 田口健二

    田口委員 次に総務庁お尋ねをいたしますけれども、この外交実施体制強化必要性については、いわゆる第三次行革審の第一次答申、これは平成三年七月四日付のものでありますが、ここで指摘をされておりまして、この答申の中で今後の我が国外交のあり方について具体的に改革すべき事項がずっと列挙をされています。その中で、今外務大臣から御答弁がありました外務省自身改革はもちろんでありますが、「外交問題の迅速、的確かつ一体的な処理のため、外務省と各行政分野担当省庁は、緊密な連携を取りつつ相互信頼関係に基づく的確な情報の交換と十分な意思の疎通を図る。」こういうふうに指摘をされています。  また、平成四年十二月二十六日に閣議決定をされましたいわゆる平成五年度の行革大綱の中で、外務省については、「我が国国際化の進展に対応して、外交実施体制の見直しを図りつつ、人員面を含めた体制整備を進める。」というふうにこれもまた指摘をされている。外務省本省内部部局については、今もお話がありましたが、「スクラップ・アンド・ビルド原則の下に、平成五年度に外交政策企画立案情報収集分析機能中心に再編成を行う。」その他の省庁についても同様に「スクラップ・アンド・ビルド原則の下に、対外政策担当部門体制整備を進める。」というふうに書いてあるわけであります。  そこで、この指摘に基づいた外務省以外の省庁機構がこの平成五年度にどのように改革をされていこうとしておるのか、総合監督官庁である総務庁の方からその辺の状況について御報告をいただきたいと思いますし、もしそういうことがないということであれば、なぜそうなっておるのか、この辺についてもひとつ見解をお尋ねいたしたいと思います。
  6. 増島俊之

    増島政府委員 平成五年度でございますが、外務省以外の省庁におきます対外政策担当の局あるいは部等新設改廃機構改革予定はございません。これは各省庁からの御要求がなかったわけでございます。ただ、施設等機関がございますが、対外的な政策部門に係るものとしましては、医療分野我が国国際貢献を一層推進するという観点から、厚生省に国立国際協力医療センター設置をいたす予定でございます。国立病院医療センターそれから国立療養所中野病院というのを統廃合いたしまして対応するということが一つございます。それからまた、農林水産省でございますが、開発途上地域農林水産分野におきます研究協力体制強化するということで、国際農林水産業開発研究センター設置する予定でございます。これは熱帯農業研究センターを廃止いたしまして、これに対応するということでございます。  以上でございます。
  7. 田口健二

    田口委員 今総務庁からのお答えで、ちょっと私は疑問を持つのですが、確かに平成五年度予算計画等の中で各省庁からそういう要請がなかった、だから総務庁としてはそういう今のお答えのようなことだろうと思うのですが、平成三年の今申し上げました第三次行革審の第一次答申の中でも具体的にそのことが指摘をされ、具体的に列挙をされているわけですね。それがこの平成五年度では極端に言ってどこもやらない。これは一体どういうことなんだろうか。調整官庁としての総務庁がそういうふうな指導をすべきなのか、担当省庁としての外務省が各省庁に対するそういった働きかけへあるいは政府自体がもっとその辺に力を入れて全体的な総合調整を図っていく必要があるんじゃないか。  外務大臣は副総理でもいらっしゃるわけですから、その辺はどうでしょうか。外務省はもちろんでありますが、各省庁についてもこういう外交実施体制強化という点についてもっと政府は積極的に取り組みをやるべきではないだろうかと思いますが、大臣、その辺はいかがでしょうか。
  8. 増島俊之

    増島政府委員 先ほどの御説明に対しまして若干補足をさせていただきたいのでございますが、先生指摘のように、第三次行革審の一次答申で、国際化対応体制というものを政府挙げて今後取り組んでいくという御指摘があり、またそれを行革大綱で受けまして進めているところでございます。  それで、平成五年度ではなくて平成四年度でございますけれども、郵政省でございますけれども、郵政省内部部局を再編成いたしまして、国際部門対応強化するということで国際部設置というものをいたしております。  それから、従来法律事項でありまして現在政令事項になっておりますことを念頭に置きながら御説明申し上げましたけれども、いわば課のレベルあるいは審議官レベル、そういうことでいいますと、平成五年度におきましても、この国際関係部門を充実強化するという方向でいろいろな御要求があり、それにまた対応いたしておるわけでございます。  また、組織だけではございませんで、定員につきましても、内閣におきます大変厳しい定員につきましての物の考え方、方針があるわけでございますけれども、そういう厳しい事情の中にありましても、外交部門のみならず入国管理あるいは税関、外国人労働者行政あるいは国際医療協力あるいは貿易管理、こういう国際関係部門にきめ細かな対応を行っておるということでございます。  一応補足させていただきます。
  9. 田口健二

    田口委員 次に、また外務省お尋ねいたしますが、同じ第一次答申において、外交実施体制強化とあわせて「外交政策の機動的な展開を図るため、情報収集分析活動を行うための専門家計画的な育成に努める。その際、外務省内外から幅広い人材確保登用を図る。」というふうにあります。この指摘を受けて、平成五年度の行革大綱では「外務省とその他の省庁及び都道府県等の間における人事交流を一層推進するとともに、大使公使政府代表等を始めとして、広く外務省、他省庁民間から人材を積極的に起用する。併せて、外務公務員採用試験改革を進める。」こういうふうにあるわけでありますが、このことについて、外務省職員以外からの大使などへの登用というお考えがあるのか、この辺をお伺いいたしたいと思います。
  10. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 総務庁等の御配慮によって行革審答申等理解をされて、外務省人員増というようなものが年々実現してきているわけでございますが、枠をもらったから何十人という人をふやすといっても、一人前の外交官にするのには、それは一年や半年でなれるものじゃないわけですから、やはり十年とか十五年とか年月が必要だ。しかし、その間ブランクでいいのかということになると、そうもいかない。そういうようなこと等もいろいろあるし、各省庁との連係プレーということが必要だという点から、今でもいわゆるアタッシェ制度といいますか、各省庁の横滑りの出向をたくさん受け入れてやっておるわけでございます。したがって、適材適所の人を採用するというのは、何も外務省でなくてはならない、外務省の籍でなくてはならないというわけじゃないのですが、中心はもちろん外務省の人が当たるわけでございます。しかしながら、各省からも採用しておりますし、また、従来民間からもいい人がいる場合は採用をしておるというのが実情でございます。  大使公使の問題につきましても、多いか少ないかというのはいろいろ議論のあるところでございましょうが、現在でもネパール大使法務省から伊藤さんという方が来ておるし、それから自治省からも松田さんという方を大使に迎えようということで、今待命中です。それから、駐ブルガリア大使として、通産省に長いことおった方ですが、藤原さんという人が今駐倒している。それから、駐アイルランド大使には、毎日新聞社に勤めておった方ですが、波多野さんという人を大使平成二年からお願いしているとか、それからアフリカのケニアには労働省から、佐藤ギン子さんという局長などをやられた方ですが、そういう方が大使として出ているとか、さらに在イスタンブールには、平成元年から法務省におられた鶴田さんという方に大使になってもらっているとか、できるだけ民間なり各省庁でも、大使としての人格、識見、またいろいろな今までのキャリア、経験、そういうようなものを見て、できるだけ今後とも十分御趣旨に沿うような点で我々は配慮していきたい、そう考えております。
  11. 田口健二

    田口委員 次に、国際情勢に目を向けてみますと、今日の国際社会は、今までのような米ソ冷戦構造から新しい国際秩序に向けて過渡期特有の、非常に不安定であり、また不確実性が存在しているというふうに思っていますが、例えばボスニア・ヘルツェゴビナにおける民族対立紛争、こういうものを見ればそのことが明らかになっておると思うのであります。こうしていっどこで起こるかもしれない事態対応すべき危機管理体制強化というものの必要性については、さきの湾岸危機の場合にも随分国会の中で議論をされてまいりました。  そこで、海外における緊急事態の際に、邦人が唯一頼りになる窓口というのはいわゆる在外公館である、こういうふうに私は思うわけであります。私も昨年の九月の十日から二十一日まで、内閣委員会の一員といたしまして、ロシア、ポーランド、ドイツなど欧州五カ国を視察をしてまいりました。この目で実際に見まして、まさに百聞は一見にしかずのことわざどおりの感じを持ったわけでありますが、そういう立場から幾つかの点を質問をさせていただきたいと思います。  まず、ロシア大使館ですね。ここの現状について、職員定員並びに現地職員、あるいは今もお話がありましたアタッシェ等の内容、内訳、さらには施設の概要についてまず御説明を受けたいと思います。
  12. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 お答え申し上げます。  平成四年度末における在ロシア大使館定員は五十六名でございます。このうち、アタッシェは十二名でございます。平成五年度の予算におきまして、七名の外務省員増員及び一名のアタッシェ増員をいただきましたので、平成五年度末における定員は六十四名、うちアタッシェが十三名となる予定でございます。  現地職員についてのお尋ねでございますが、平成四年度末の時点で三十九名の現地職員が配置されております。  それから、ロシア大使館施設についての御質問をいただきましたが、現在、在ロシア日本大使館公邸及び事務所本館及び領事部等のある事務所別館から成っておりますが、いずれも借り上げ物件でございます。両物件とも狭隘かつ老朽化が進んでおりまして、早急に施設整備を行うべく、ロシア側と現在鋭意協議を行っているところでございます。
  13. 田口健二

    田口委員 今ロシア大使館現状について御説明がありましたけれども、私、ロシア大使館に参りまして最初に気がついたのは、廊下歴代大使の写真がずっと並べてあったわけですね。私は興味を持ってずっとそれを見てまいりました。日本ロシア外交上の歴史というのでしょうか、随分古いものだということを改めてそのときに実感をしたのであります。それにしても、その古い歴史を持っている日本ロシア関係、そして日本大使館現状というのは全くびっくりいたしました。こんな狭いところで、建物自体もちろん古いのでありますが、借り上げ施設だということも聞きました。これが日本在外公館現状なのだろうかということを初めて認識をしたわけであります。  現地の話では、来年度予算というか、平成五年度か平成六年度かちょっと聞き漏らしましたが、新たに大使館を建てかえるというような話もちょっと聞いておったのですが、それは現状としてどうなっていますでしょうか。
  14. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 先生指摘のとおり、現在のロシア大使館は大変狭隘であり、老朽化が進んでおりまして、深刻な状態にございます。既に土地確保はしておりまして、そこに新しい建物を建てるということで検討が進められております。  具体的には、昭和五十三年と五十四年の両年度におきまして土地確保をいたしまして、その敷地に公邸事務所両方を新築するという計画をつくりましてロシア側と協議しておったわけですが、その後、建築方法、具体的には警備、保秘等問題点が出てまいりました。そういうことで、根本的にこの計画を見直す必要があるという私どもの結論になりまして、平成三年度より今後の計画構想について練り上げるための調査費をお願いしていた次第でございます。  他方、この間にソ連の解体、それからロシア連邦というふうなロシア側事情も大きく変わったわけでございます。これらを見きわめつつ早急に計画を進めるということで、平成五年度の予算におきまして調査費千八百万円を計上させていただいております。これをもとに調査を進めていきたい、こういうふうに考えております。
  15. 田口健二

    田口委員 今御説明がありましたが、恐らく現状は、ロシア大使館に限らず、私も今回の視察の中で幾つかのところを回ってまいりました。終わった後に、ちょっとプライベートでありましたが、駐フランス大使館、当時あそこに同居をしておりましたOECD大使館にも行って見てきたのですが、工事中ということもあったのでしょうけれども、廊下にまで本棚が並んでいる。私も各部屋全部ごあいさつに回りましたけれども、フランスのパリのど真ん中で、これが日本大使館かと改めてびっくりしたのです。その後OECD大使館が移ったという話もちょっと聞いておりますが、それも確認をしてみたいと思います。  今申し上げましたように、ロシア大使館一つの例であって、大体似たような状況にあるというのが今日の日本在外公館現状ではなかろうかというふうな気もするわけですね。これは何といっても、今日の国際情勢の中、とりわけ国際情勢の中における日本の立場、あるいは在留邦人、海外進出企業も非常にふえてきておる、観光客も非常にふえてきておる、いろいろな点を総合してみても、これらの在外公館施設を含めた整備というのは急を要する問題ではないかというふうに申し上げておきたいと思うのです。  その中で、そういう在外公館に勤務する職員の環境問題。今度参りましたロシアあるいはポーランド、チェコ、いずれも不健康地域に属するのだろうというふうに思っておりますが、こういうところで、気候も違う、風土、治安、医療あるいは経済、社会、文化、さまざまな違いの中で、厳しい条件の中で在外公館職員は勤務しておるわけですね。こういう人たちの環境整備について外務省としてはどう考えておるのか、あるいは平成五年度の予算の中で何らかの改善措置を具体的に考えておられるのか、その辺をひとつお尋ねをいたしたいと思います。
  16. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 先生指摘の厳しい勤務環境において勤務している職員への対策でございますけれども、従来から私どもも予算の範囲内においていろいろ工夫し、考えております。厳しい勤務環境において職員の負担をできるだけ軽減するという観点、それから、そういう中で職員ができるだけの外交活動ができるという観点から、健康管理対策、それから宿舎対策、物質対策、それからその他の福祉対策、この四つの柱をもちまして、いわゆる不健康地対策ということで私どもはやってきております。  それから、御質問平成五年度の予算でございますが、不健康地対策といたしまして、全体として十八億七千四百万円の予算をお願いしております。これは前年度比一五%の増でございます。この中には、勤務環境の著しく厳しい勤務地にいる職員の健康管理休暇というものがございますが、その健康管理休暇について本邦へ帰ることを新たに認めるということをお願いしてございます。  それから、不健康地対策の一環としてつくっております拠点公館というものがございます。これは不健康地の公館を支援する公館ということでございますが、それも一公館、具体的にはマイアミ総領事館でございますが、中南米の公館を支援するという意味でマイアミの公館を認めていただきました。  それから、官費借り上げ宿舎の戸数の増、それから公用物質調達等の予算も拡充させていただきました。  それから、先ほど先生の御指摘にありましたOECDとパリの大使館でございますが、狭隘であることはもう御指摘のとおりでございます。五年度の予算をいただきまして、五年度中にOECDの代表部が移るということで現在進めておるところでございます。
  17. 田口健二

    田口委員 今の点にちょっと関連をしてもう一点。私も現地に参りまして在外公館職員の皆さんからいろいろな御要望、御意見等も聞いてきたわけですが、その中の一つに、ちょっと意外に思ったのが住宅手当の問題ですね。  館員の自宅、宿舎も何カ所か拝見をさせていただいた。公使クラスになると、我々の通念の常識からいうとなかなか立派な家だな、こう思ったのですが、お話を聞いておりますと、やはりそういう方たちの中には相当頻繁に外国のお客さんを自宅にお招きをしていろいろそういう会合を持たれる、それも外交の重要な一つのあり方だというふうに思うのです。そうなると、なかなか適当な住宅を確保することができない。聞いてみると、現在支給の住宅手当では到底賄えない。相当の手出しをしなければならぬ。こういう実情を二、三カ所お聞きをしました。また、見ました。この住宅手当についてはどうお考えですか。私も外務省の方から資料をもらいまして、ただ、これは現地通貨で書いてあったので単純には比較はできないなと思ったのですが、これはちょっとそのまま放置しておくわけにはいかないのじゃないかというふうに思いますので、考え方をお聞きしたいと思います。
  18. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 先生指摘のとおり、外交官の住宅というのは、住むということのみならず外交の推進という意味からも大変重要な場所でございます。  この住宅手当の予算につきましては、私どもは私どもなりにいろいろ努力しておりまして、五年度の予算総額は五十九億九千万円をいただいておりまして、三・七%の増となっております。具体的に各地における限度額というものの設定でございますが、これは在外公館からの報告を受けまして、限度額を相当上回っている、住宅手当以外から自分のお金を出しているという実績を踏まえて、それで大蔵省と協議をしてそれをふやしているというのが現状でございます。いわゆる後追い方式ということでございまして、これについての問題点はいろいろあるわけでございます。後追いではなくてもう少しふやせる方法はないか、そういうことも検討しているわけでございますけれども、なかなか厳しい予算の枠の中で難しい問題があるわけでございます。その他、個人の借り上げが非常に困難なような場合には官費の借り上げ制度とか、そういうもので工夫さしております。御指摘を踏まえましてさらに努力したいと思います。
  19. 田口健二

    田口委員 本来、こういう公邸並びに大使館員の住宅というのは、私は国有化をすべきであろうというふうに思いますが、なかなかそこまではいかないという状況の中で、これは外務省ちょっと検討していただいたらと思うのは、いわゆる各省庁からアタッシェとして来ておられるような方々は大体借り上げですけれども、ずっと継続してやっている、後任の方とそこで交代をして入っている、こういうケースを非常にたくさん聞いたのですが、いわゆる外務省プロパーの場合には余りそれがない。各人各人が赴任をして、そこでまた新しい借り上げ住宅でも見つける。見つかるまで一カ月もホテル住まいをしておったなどという人もいましたけれどね。これは少し制度的にも考える必要がある、こういうふうに私は思いますので、これは意見として申し上げておきます。  それからもう一点、大使のコックさんですね。各大使現地に全部料理をされるコックさんが一緒に行っているわけですが、この給料といいますか手当についても限度額がある。これでは現状にとても合わない。これもまた大使が相当の自腹を切らなければそういう方を採用することはできないという問題。これも一国の大使ですから、その辺は国がきちんと負担をするということを考えていかないとおかしなことになるのではないかというふうに思っていますので、これはもう時間がありませんが、意見として申し上げておきます。  それからもう一点。今の宿舎なり公邸なりというハードの面もありますが、ソフト面で、最近マイクロコンピューターとかファクシミリなどのOA機器というのも非常に性能が向上して目覚ましいものがありますし、こういう事務処理の能率化、それからいわゆる通信設備。私チェコに参りましたとき、ちょうどそこで通信衛星か何かの通信装置が新しく導入されるということで作業しておったのをちょっと拝見しましたけれども、こういう通信機器を含めたソフト面の整備というのはどういう状況になっているのでしょうか。
  20. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 通信事務機器の性能は近年その性能の向上が目覚ましいわけでございまして、在外公館においても事務処理の能力の強化、効率化のための機器の活用というものは可能な範囲で行っております。ワードプロセッサー、パーソナルコンピューター、ファクシミリ等の導入を鋭意進めているわけでございます。今後とも本省のみならず在外公館のOA化というものは積極的に進めていきたいと思います。どうしても予算というものがネックになるわけでございまして、皆様方の御理解を得てこの予算増というものを頑張っていきたいと思います。
  21. 田口健二

    田口委員 それでは最後に、子女教育の問題について二点ほどお尋ねをいたしたいと思います。  今回の調査の中でも、私ども、ワルシャワ、プラハ、フランクフルトというふうに三つの日本人学校を視察してまいりました。内容いろいろでありますが、学校関係者それから運営をしておる在留邦人の代表者、こういう方の御意見としてあったのは、いろいろな施設はもちろんでありますが、運営を含めて国庫補助をもっとふやしてもらいたい、もうこれではやっていけない、父兄なり、企業を含めてですが、大変負担が大きい、それから派遣教員の数がどうしても足りない、この派遣教員ももっと定員をふやしてもらいたい、どこに行きましてもこれが圧倒的なんですね。その他もろもろたくさんありましたけれども、もう集約すれば相当な数ですが、ひとつこの問題について外務省と文部省両方から、海外における日本人学校の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  それからもう一点は、帰国子女教育の問題ですね。これも随分今ふえてきておって、その親にしてみれば非常に頭が痛い問題なんですね。これは、海外における教育とそれから帰国後の問題というのは表裏一体で、皆さんそのことに頭を痛めておるわけですね。その辺を文部省は、帰国子女の教育についてどのようにお考えか。  以上お聞きをして、終わりたいと思います。
  22. 荒義尚

    ○荒政府委員 先に外務省としてお答えをさせていただきます。  御指摘のように、私ども外務省としましても、海外子女教育の重要性、それを充実させる必要性ということをつとに認識しておるわけでございます。それで、ただいま御指摘のありました幾つかの学校の現地の要望でございますけれども、これは、私どもとしましても、在外公館を通じまして承知し、かつ、先生昨年参加されました調査団の報告書を通じましても、私ども承知しておるところでございます。  私どもとしましては、現在審議いただいております平成五年度予算におきましても、これは外務省所管分でございますけれども、校舎借料への国庫補助のアップ、それから現地採用する講師に対する謝金、これのアップを引き続き図っていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  23. 齊藤秀昭

    ○齊藤説明員 お答えをいたします。  最初の海外子女教育の点に関してでございますが、文部省といたしましても、外務省と協力をいたしまして種々の施策を講じてきておりますが、ただいま御指摘をいただきました教員の派遣の問題につきましては、従来からその増員に努力をしておりまして、平成四年度で約千二百五十人の派遣教員を海外日本人学校等へ出しております。また、平成五年度予算案におきましても所要の増員を図ってきているところでございますが、私ども、日本人学校の教育の成果は派遣教員の量とその質にかかわる部分が非常に大きいというふうに思っておりますので、今後とも増員の方向で努力をさせていただきたいと思っております。  それからもう一点でございますが、帰国子女教育でございますが、この点につきましても、直近の数字で申し上げますと、毎年日本へ帰ってくる子供の数が約一万三千人に達しております。その多くがいろいろな不安を抱えながら日本へ帰ってきているという状況にございまして、私どもといたしましても、国内の学校へ円滑に適応していけるように、また海外でいろいろな体験をし、いろいろな特性というものを身につけて帰ってきておりますので、そういう特性の保持伸長というものに配慮した指導というものに留意をしてきております。  なお、現在帰国子女教育の充実方策というものにつきましてこの夏を目途に調査研究をしておりまして、文部省としましては、その結論も踏まえながら、さらに帰国子女の受け入れ態勢の充実に努めてまいりたいと思っております。  以上でございます。
  24. 田口健二

    田口委員 終わります。
  25. 牧野清文

    牧野委員長 大出俊君。
  26. 大出俊

    ○大出委員 外務省の皆さんが、渡辺大臣の御健康の状態を非常に心配しておられるようでございますから、その皆さんの御心配に応じまして御無理は申し上げないことにいたしましたが、大臣がおられる間に二、三点承っておきたいわけでございます。ロシアのエリツィン大統領問題など、日本の支援のあり方などを承りたいのでありますが、その前に、具体的なことで一点、大臣のおられるときに聞いておきたいことがございます。  それは、ここにテープが一つあるのでありますが、箱守平造、御本人の名前であります。箱守平造、フジテレビで一九九一年十月十六日にまず放映をいたしまして、さらに重ねて十一月に、遺族その他を全部調べ上げた上で再放映をされたわけでありまして、私もこのテープを再録して見まして、実は大変ショッキングな思いをいたしました。要するに、日本人がソビエトにおいてスパイ容疑ということで、ファイルは六名でありますが、ファイルに写真が張ってあって、今私が申し上げた箱守平造さんという人のファイルの写真だけが抜け落ちているという不思議な現象なんでありますが、銃殺をされた。日本人がどういう理由にせよ、スターリン時代でありますけれども、銃殺をされている。大変ショッキングなことでございます。  これはどういうことかといいますと、フジテレビの二人の記者の方が、熱田さんというのが男性の方、もう一人女性の方でありますけれども、取材に、モスコー州、モスクワでありますが、モスコー州のKGB本部、ここに参りまして資料を見せてもらった。それがまずこのテレビに映っているわけでありますが、黄色いファイル、何冊かございます。このモスコー州の州本部のKGBの方が説明をしているところから映り始めるわけでありますが、ファイルに写真が張ってあるのが五人ございまして、一人欠落をしている。その一人が、ここに私が取り上げております箱守平造さんという方であります。この方は、ここにそのモスコー州本部の資料に基づく記録があるんでありますけれども、ソビエトの言葉で書いたものを日本流に訳して、幾つかの訳があるわけでありますが、それをテレビ局が集約をしているわけであります。  ここに、記録によると、ハコモリ・ハイゾウ、ハイゾウとなっているのですが、これは調べていさましたら平造でございます。ソビエトの言葉でハイゾウと読めるということでございますが、ハコモリ・ハイゾウは「一九三八年三月二十二日にKGBによって逮捕され、同年五月二十九日に銃殺されていたことがわかりました。」この上に、細かくなりますから余り詳しくは申し上げませんが、モスコー州KGB本部のファイルにある「決定書」というのがございまして、「以下の者を調べた」、ソビエト語でシェンド・ステバン・ボリソビッチという名をつけてあるのでありますが、それがハコモリ・ハイゾウ、日本の言葉でいうと箱守平造である。  一八九一年十一月、日本・茨城県生れ。民族・日本、国籍・ソ連  定職なし。  住所 モスクワ市アレクセイエフ学生村七番四号棟十九号  ソ連邦内で日本のためのスパイ活動を行ったと認めるのに十分である。  容疑 五十八条六項  拘留中ということで、さっき前段で申しましたように、一九三八年五月二十九日、「ハコモリ・ハイゾウは、その刑を執行すべく銃殺刑に処せられた。」と。これは起訴状がたくさんあるのですけれども、その中からの抜き書きでございます。  時間の関係でもったいないので余り詳しく読まないことにいたしますが、この件につきまして外務省に私電話を入れまして、こういう放映があるんだがと。今私が申し上げたこれだけのことを細かく放映しまして、一人じゃないのですから、六人あるわけですから。それで、遺族をテレビ局が捜しまして、とうとうこの箱守平造さんという方の御遺族も捜し当てたわけでありまして、まだ奥さん、娘さんが生存をしている。沖縄の方でありますが、名前を挙げずにおきますが、病院に入っている大変高齢の奥様と、それから沖縄のある場所で、葉が茂る中に唐櫃みたいな墓をつくって父親を祭っている娘さん。娘さんといっても大変な年でありますが、そういう場面が二回目のこの放映には出てくる、こういうふうなこと。箱守さんのものも出てくるわけでありますが。  聞いてみたら、外務省の言い分は、そういうことはちょいちょい最近はあるのですと言う。この私のところに来ております資料の中に、外務省からはいまだに連絡をもらっていないということが書かれている。この点を挙げて申しましたら、最近は年じゅうあるんだ、だからもしそういう問い合わせでもあれば私のところに来ているのだが、ないんだからないんでしようという御返事でございまして、いささか私もちょっとこれは腹に据えかねまして、事人道上の問題でございまして、明らかに茨城県に本籍のある方でございますし、わかりましたし、したがって、ちょっとこれは我慢のできぬ気持ちになりましたので、表に出して皆さんの御答弁をまずいただきたい、こう思っているのですが、その後お調べいただいたかどうか、まず承りたいわけでございます。
  27. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私が報告を受けたところによってお答えをいたします。  ことしの二月二十六日、大出議員から外務省ロシア課に照会がありまして、今のようなお話が申し述べられたそうであります。それまで外務省としてはそういうような放映のあったことも何も気がつかないでおった、これも事実でございます。そこで早速外務省は、ロシア外務省のアジア・太平洋総局とロシア保安省社会関係センターというのですか、そこに対して今言ったような指示に基づいて参考資料をつけて正式な照会を出しておるが、いまだに向こうからは返事は来ていないというのが実情でございます。恐らく膨大な書類なんでしょうし、お役所仕事は世界じゅうどこでもマンマンデーなことは確か。特にロシアも今大混乱に陥っておるところでありますので、それは特におくれているのかもわかりませんが、いずれにいたしましても、それが事実であるということになれば、やはり遺族にとってはこれは本当にスパイであったのかなかったのか、しかもロシアに名誉回復されておるという記録があるとすれば、それは正式に国と国との間でも照会した以上伝えていただいて、はっきりした名誉回復をしてやらなければお気の毒である、全く私もそのとおりだと思います。極力急ぐようにロシア側に対しても督促をしていきたいと考えております。
  28. 大出俊

    ○大出委員 これは二人の記者の方がその後御遺族を訪ねて歩きまして、次々にわかってくる、それを放映しているわけであります。  今ちょっと大臣答弁にありましたように、この二人の記者の方が二週間モスコーにおって調査をした。KGBのモスコー州本部の担当の諸君は何人かおるのですが、我々がこの件について見直しをした、テレビに出てまいります、見直しをした、その結果事実でない、つまり無実であるということが明らかになったので、そういう意味で名誉が回復されている、しかし日本外務省には言ってない、こう言うのですね。  そこで、茨城県というので記者の方が県庁にいろいろ聞いた。そして、現地でわかったのです、関舘というふうに。これはソビエトの言葉なんですが、セキタジ、ソキタキ、サキタキ、サキタジというふうにロシア語を訳していくと読み方でそのいずれかに読める。茨城県セキタジ、ソキタキ、サキタキ、サキタジ村、こうなる。それで、それについてのものをずっと調べてみたら関舘という村がある。どうもそこではないかということに、この読みからして。県庁で調べてみたところが関舘という町は今はない。名前は関城町字関舘、こうなっているということまでわかった。なぜわかったかといいますと、NHKの太平記がございまして、「太平記の里」というレポートがNHKで行われておりまして、南朝方の楠木正成などと同じように箱守一族がこの関城町中心に北軍と戦っていた証拠が映っている。  関城町関舘、箱守一族、ここがわかりまして、問い合わせたら、役場におられた方が箱守勇一さんという方を紹介してくれて、記者の方々がやっとそこにたどり着いたら、箱守平造という人は私の父の弟でございますと。そして、出てまいりましたのは、たった一通絵はがきが手元にございます。ここにあるのでありますが、船でアメリカから旅行する。この方はブラジル移民でございまして、アメリカに入ってきて、アメリカで当時の、言うならば当時労働組合があったかどうか知りませんけれども、そちらの側で共産党活動というのですかね、そういう意味の活動をやっていたというふうにアメリカ側に言われたというのですが、マイアミでそういう活動をしていたというので追放をされた。そこで、この手紙の中身を読みますと、  昨年の十二月十六日米国カリフォルニア州を去り二日間の砂漠、三日間の平原の汽車旅行をなし、ナイアガラ川も見物し、ニューヨーク市に一週間滞在し、十二月二十九日朝ニューヨークを出帆し、八日間にて大西洋を横断し、フランス、英国に寄港し、千九百三十三年一月五日、ドイツ・ハンブルク港に到着したから御安心下さい。兄貴あての絵はがきが一通ありました。  このやりとりで身元がはっきりわかってまいりました。戸籍謄本等その他もそろえましてわかったわけであります。したがって、そのことを放映しているわけでありますが、聞いてみると位牌に命日もない、いつ死んだかわからないのですから。死んだか生きたかわからないのです。位牌がちゃんとございまして、テレビに映っておりましたが。だから供養をする際にその位牌を立てて、一人だけ行方のわからないおじさん、兄弟、こういうことで今日に至っている。  したがって、どうしても遺族の皆さんの気持ちからすれば、モスコー州のKGB本部で見直しが行われて、スターリン時代のことでございますけれども、山本懸蔵さんなどは三九年になっておりますが、その前の年、一連のそういう粛正、銃殺などということが行われたのだと思うわけでありますが、その中におられた一人ということになるわけでありまして、この種のことはやはり私は、外交関係があるのでありますからきちっとしていただいて、日本の方でございますし、遺族の方もいまだに、もう高齢の方が多いのですけれども、思いあぐねて長年供養してきているわけでありますから、この方のみならずほかの方もあるのですけれども、ぜひひとつ外務省でその気になってきちっと決着をつけてあげていただきたい、こうお願いしたいのですが、もう一遍大臣から御答弁いただきたいと思います。
  29. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 先ほど答弁いたしましたように、できるだけ催促をして、なるべく早く決着がつくように努力をいたします。
  30. 大出俊

    ○大出委員 大臣、長くお引きとめいたしませんが、もう一点だけこの際承っておきます。  どうしても気になるここのところ数日間のロシアの動きでございまして、エリツィン大統領の特別統治、署名をして後から発表したような形になっておりますけれども、この件をめぐりまして、アメリカ、フランスの首脳会談が行われる。ここから動き始めまして、日本と大分見解が違ったようでありますけれども、小和田次官が各国を訪問をされた結果として、まず承りたいのは、四月十四日、十五日の両日、東京で対ロ支援協議のための先進七カ国外相・蔵相レベルの閣僚会議を開催をする方針であるということなのですが、そういうことでございまして、たしか四月十六日には日米の首脳会談でお出かけであるはずでございますが、そこのところ、とりあえず聞いておきたいのですが。
  31. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは日本だけでやるわけではございませんで、日本はサミット議長国でございますから、やはり全体の大勢というものをまずつかまなきゃならない。みんなが反対するのを日本だけで強引に開く、参加しなかったなんということになると、大変なことになっちゃいます。したがって、それぞれの国の都合等も聞いておりますが、その辺ならば都合がっくのかなというようなことで、まだはっきり決まっておりませんが、まあコンセンサスが得られそうな日時の一つであることは確かだろうと存じます。
  32. 大出俊

    ○大出委員 そこで、ロシアのエリツィンさんを中心とする今の動きを、簡単でいいですけれども、非常に難しいと思いますが、どう見ておられますか。
  33. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは、本当のことを言ってよくわからない。恐らくエリツィンさんもわからないし、国会議長さんもわからないのじゃないか。我々外野から見ておって、お互いに、本当にもう内政上の問題だから余り干渉がましいことは言いたくないが、ちょっと日本内閣と国会との間では想像つかないようなお話です、情報は。まあしかし、そういって全面戦争にしちゃっても仕方ないので、最近の新しい情報によれば、大統領府の方も多少妥協の考えを持って、特別統治なんという言葉を引っ込めて別なように直すのじゃないかとか、そういうのを提案したとか、これは未確認情報ですから余り先走って、私は外務大臣ですから断定的なことは申し上げられませんが、いずれにしても、話し合いの糸口が土壇場に来てできかかっているということもどうも本当らしい。しかし、こちらからいろいろ手出しをしてどうだこうだということもできませんし、向こうのやっていることを注意深く見守っている。  我々の言えることは、我々は特定な政権を支えるというようなことを普通は言わないのです。それは、その国の国民が決めることですから。国民の決めた政府をどうするかというのが普通の言い方でございますが、今回の場合は、要するに、あの共産党の独裁的な人権無視のやり方をやめて、それで民主的な人権を尊重する、しかも自由経済といいますか市場原理に基づいた社会体制をつくるんだ、法と正義に従って外交も展開するんだと、こうエリツィン大統領は言っているわけですから、そうすると、我々もそれによって稗益するところが大きいし、しかも、核軍縮、大量破壊兵器をこの世の中からだんだん去る方向で、現にアメリカとの間でも第二次のSTARTⅡの調印が行われたというようなことだと、これは助成してやる必要がある、大変結構なことなわけですから。  したがって、サミットの先進国としては、この流れというものを大いに助成をしてやろうじゃないかという空気になっていることは事実であって、我々も二国間には敵対するような北方領土問題というのはあるのですよ。それはそれとして、しかしながら、国際社会の一員としては、やはり国際的な立場に立って分相応のことはやるべきだと私も思いまして、それはそれ、これはこれということで、まあ拡大均衡という立場に立ちながら対応をしてきております、今までも。  いかにも日本ロシアに対して冷たいようなことを言っていますが、そんなことはなくて、かなり温かく、いろいろやっているのですが、向こうの受け入れ態勢ができないために調印できないというようなのがございます。それはありますが、流れとしては、結果的にエリツィン体制支援ということにそれはなるかもしれませんが、いずれにしても、現在の要するに大きな流れを支持するということははっきりしていきたい、そう思っております。
  34. 大出俊

    ○大出委員 簡単でいいですけれども、この十四日、十五日、つまり四月の十四日、十五日――十五日というと、もう日米首脳会談に出かけるぎりぎりまでという日程になりますね。ここでG7の外相あるいは蔵相レベルの方が集まって中身がないとなると、集まったのだが中身がないとなると、それなら集まらない方がいいのですよ。エリツィンの立場からしたって、それなら集まらない方がいいですよ、集まったが何にもできなかったとなったのでは。  そこで、気になるのですけれども、今おっしゃる拡大均衡、政経不可分である、領土問題があるから。だから、その進行に合わせて拡大していく、拡大均衡という論理は。そこで、今ここにあるいろいろな記事を見ますと、外務大臣がいろいろなことをおっしゃっておられるので、気になるのでちょっと聞きたいのですが、ロシア支援といってもかけ声だけではだめ、国民の税金を使う、これは当たり前。マフィアに持っていかれるとか、むだになるとか、そういうことじゃだめなんだという外務大臣のおっしゃることはわからぬわけではないのだが。それから、短期的な効果をねらった政治的てこ入れをほかの国がいろいろ考えている、しかしこれはまじめに恒久的に長期にわたる支援というのを考えなきゃいけないんだ、みんな日本におっかぶせようなってそうはいかないんだという大臣の発言もこれあり。  この一連の発言を見ていきますと、十四、十五日おやりになると仮にして、片っ方で領土問題があるから、政経不可分なんだから、そっちの方の進展に合わせて拡大均衡なんだと言っていたのじゃ、議長国ですから物事は進まない。やはりアメリカにとってみても、ここでロシアが安定することが最大の国際政治のポイントだろうと思うのですね。不安定というのはクリントンさんにとって最大の脅威だろうと思うのですね。まして、軍事費を減らしてそれを内政にというわけですから。そういう意味で相当やはり腹を決めて、だれをと言う必要はないかもしらぬが、日本もいろいろあるけれども腹を決めて、エリツィンさんが日本に来なかったという最大のこじれ方はしているけれども、腹を決めて支援するという気になっていただかぬと困るなという気が私はするのですが、長い答弁は要りませんが、そこのところをひとつお答えいただきたい。
  35. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 政経不可分かどうかということですが、これはどんな外交だって政経は不可分なのですよ。アメリカがロシアを支援しようと言っても、それは共産主義に逆戻りするんだなんて言ったら支援するはずがないのだから。やはり政治の上においてアメリカの政策目的とロシアの政策目的が一致するから、だから逆戻りしないで、要するに軍拡競争をやめて軍縮に行く、だから応援しようというだけで、これは政経不可分なのですよ。だからそういう意味におきましても、どこだって、我々ODAをやるにしたって、我々の原則と真っ正面から対立するところへ、それは食うに困るからODAやるかといったら、それはやらないに決まっているのであって、それは政経不可分なのですよ。  だけれども、今まで長い間やってきたことは、北方四島の即時一括返還、それがない限りは聞く耳持たないというか、そういうふうなことでそれは応援できないとかたくなにやってきたことも事実ですね、これは。しかし、政権がかわって共産主義とはお別れだ、スターリンの行き過ぎというものはヨーロッパの方ではちゃんと反省して認めているわけですから。しかし、そのヨーロッパでやったと同じ態度をそれは極東でもエリツィン政権が踏襲するのだ。ヨーロッパは法と正義をやるのだが極東はやらないのだというのじゃ、これは話は別。しかし、ヨーロッパでやった法と正義は極東でもそれは適用するのですよということになれば、やはり大きな目的というものは我々はかなえられるわけですから、だからそういう中において、やはりアメリカ、イギリスや皆さんが、逆戻りしないようにひとつできるだけのことはやってやろうじゃないかということであれば、我々もそういう面においては応分の、それはなにをやりますよと。  ただ、私が今まで国際社会においても、またロシアに対しても言っているのですが、エリツィン自身に私言っている、エリツィン大統領には。ドイツと同じにやってくれ、それは無理ですよということは、それは立場が違いますから、それは言っています、はっきりと。  ドイツは、御承知のとおりもうロシアに攻め込んで、それは一千万人か一千五百万人か知らぬけれども、大量にロシア人に人的、物的損害を与えたということは、世界史上だれでも認めている話ですからね。そいつが加害者だ。日本は加害者じゃありませんから。中立条約を結んでおって、それを一方的に破られて攻めてこられて、それで終戦後領土をとられて、六十万人も拉致されて、六万人近くが餓死してという全く違う立場にあるわけですから。だから、それはドイツが領土を、自分の領土の三分の一ものものを実際上返してもらうと同じようなことになっている国と同じだけの援助を今すぐに出しなさいと言われても、それは日本国民がなかなかそう簡単に承知しませんから。  だから、それはそういう意味から、バイの場合は別ですよ、しかしイギリスもアメリカもフランスもイタリーも、ある程度のことは我々はそれはやりましょうという方向で今動いているということは事実でございますので、そこのところは、じゃ日本だけで、ともかくみんなもうお金を出せないんだ、おれの方も赤字財政だし、貿易も赤字だし、それはもうドイツはドイツでもう目いっぱい応援した、これ以上出せませんよ、イギリスも無理よ、フランスも無理よ、どうも出しそうなのは日本だけじゃないか、日本だけ出してくださいよと言われても、それはそうはいかないのですからね。そこのところは私は国益を代表して物を言っているんですから、そこらのところは兼ね合いというものがございますので、そういう点はひとつバランスのとれたところでいきたいと思いますから、お願いをしたいと存じます。
  36. 大出俊

    ○大出委員 渡辺さん、私も櫻内さんなどと一緒にモスコーへ行って、シェワルナゼさんが外務大臣のころ、議長ヤコブレフさんなどなどの時代ですが、北方四島を素直に返せとさんざん毒づいてきた一人ですよ。だけれども、事こうなると、きのう、きょう、あしたというここに来ると、やはりいろいろあるけれども、私も陸軍少尉なものですから、私の兵隊仲間だってたくさん死んでいるのだから。しかし、私にするとそういういろいろなことが残るけれども、やはりここまで来たらできるだけのことをせにゃいかぬなというふうに思うから聞いているので、ぜひひとつそういう御努力をいただきたい。  最後に、PKO関係のことを申し上げておりますので、一点だけ聞いて終わりにいたします。  モザンビーク。これはソマリア、モザンビークをずっと外務省と協力本部とで検討してきた節がある、ここにも記録がございますが。それで、使節団を出された。きのう皆さんに来ていただいてレクチャーを受けたのですけれども、どうも皆さんの話を聞いていると、モザンビークにPKO、つまり協力隊、自衛隊を派遣するという方向に動きそうな感じにどうしても受け取れるレポート、報告でもある。  そこで、これは一体、この間ここで河野官房長官がいろいろ答えていましたけれども、外務大臣の立場で、要するに外務省に相談しているわけだから、使節団の中身、それぞれ分担で行っていますけれども、どう考えればいいか、一言お答えいただきたい。
  37. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これはソマリアはもう最初から無理、今のPKO法の中ではやれません。  モザンビークの場合は、この間調査団を出しまして、それで調査団の報告書を見る限りにおいては、これは無理というふうには考えておりません。しかし、内閣としては外務省の意見だけを聞いて決めるわけではありませんから、防衛庁の意見も聞かなければならぬ、それからカンボジア情勢等も配慮しなければならぬ、それからお金のこともあるでしょうから財務当局の意見も聞かなければならぬ。総合的な判断をすることになると思います。いずれにしても、そう遠くない時期に官邸ではいずれかの判断をすることと思いますので、私がきょうここでこうだとかああだとかと言うことはちょっと遠慮しておいた方がいいだろう、そう思います。
  38. 大出俊

    ○大出委員 ちょっと私の気持ちだけ申し上げておきますが、ジェーン年鑑などを出しておりますところの「ジェーンズ・ディフェンス・ウイークリー」、御存じのものでございますが、これを見て私はびっくりしているのですけれども、これは原文のままですけれども、幾つか載っているのですね。  日にち別に見ると、「JANUARY 一九九三」、一月二日、二月六日、三月三日、これは三つあるのですけれども、私が非常に驚いたのは、「フラッシュポインツ」、こういう表題なんですね。つまり、紛争が起こっているあるいは起こりそうであるというそれをずっと分析をしておりまして、これを見ますと、七十三のフラッシュポインツがあるという、こう細かく中身を書いてあるのですよ。  この中にアフリカ、このモザンビークもここに出てくるわけですけれども、まず一つ、「ここは地の果てアルジェリア」という歌がありますよね。アルジェリアといったらアフリカの入り口みたいなものですよ。ところが、モザンビークというのは南に南に南に、さらに南にでしょう。アフリカの本当の南。帰ってこられた方に聞いてみたら、随分時間がかかるのかと言ったら、いや先生、大変なものですよ、二十何時間もかかる、飛行機に乗っても。イタリーかどこかから入らなければ行けない。大変なところですよ。このまさに地の果てモザンビークに、日本のどなたが行くにしても、どういう理由でなぜ、与謝野晶子さんの「君死にたまふことなかれ」じゃないけれども、何で行かなければいかぬのだということになるのか私はわからぬのです。  そこで、これだけは承っておきたい。一体なぜモザンビークを、これはガリさんかだれかが言ったからということなのかもしらぬけれども、私はこれは何と言われてもわからぬのです。だからこういうところに出すなんということは考えない方がいいと思っているのですが、その点だけ答えてください。
  39. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは一長一短いろいろございますから、見解の違うところ、もちろんありましょうが、それらの問題については、実際に、実地にそういうことを調べている局長から答弁をさせます。
  40. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 確かに先生のおっしゃるように、モザンビークは遠い国でございます。恐らくは政府が最終的な判断をするときにも、そういった距離観というのは一つの判断の材料にはなっていると思います。  しかし、私どもがモザンビークを考えるに当たっていま一つ考慮に入れなくてはならないのは、最近の紛争を見ておりますと、一番大きな側面は安全保障の問題ではございません。アフリカのモザンビークあるいはソマリアは、日本の安全保障にとってはこれは大きな問題ではない。しかし、人道問題というのはございます。これは、もうせっかく停戦合意が成立してうまくいこうとしているというときに、現在の安定した状態を維持しようとするのは国連のPKOだと思います。一たんこの安定した情勢が崩れた場合は、場合によっては、それはソマリアあるいは旧ユーゴのような悲惨な人道問題が出てくる可能性がございます。そういう観点から私どもはモザンビークに関心を持っております。人道問題である以上、アジアで起ころうがアフリカで起ころうが、あるいはヨーロッパで起ころうが、私どもは同じだと思っております。そういう観点からモザンビークに注目しているということでございます。
  41. 大出俊

    ○大出委員 今の澁谷君の御答弁を聞いていると、どうもモザンビークヘモザンビークへというふうに草木もなびくじゃないけれども、きのう使節団の方その他にいろいろ聞いてみると、また似たような感じで、この間ここで河野君が答弁していたのと大分ニュアンスが違うのですね。それで、私は心配だから物を言ったのですが、本当にPKOというものを根本的に我が国も、私は党の立場がありまして、いろいろ皆さんとやってきましたが、改めてPKOというものを考え直してみる必要がある、痛切にそう考えている。だからこれをちょっと取り上げたのですが、将来に向けて七十三カ所、今PKOは十三カ所ですよね、そうでしょう。七十二カ所もいろいろな問題がある。みんなこれは理由が書いてあるんだ、送るというようなことになったときに。一体どこが責任を持ってどうするのかという問題がある。  今のお話もあるけれども、その一つの国の中がいろいろな勢力に分かれて、長い間の、十六年もの争いが、モザンビークもそうだが、しかもこれは、モザンビークというのは、南ア連邦がこっちにある、こちらの方にある国がてこ入れをしながら、お隣のモザンビークの武装勢力に兵器も与えてどんどんねじを巻く。今ソビエトはなくな?たが、ソビエトもここに足場をつくりたいからやはりこの中の一つの武装勢力にてこ入れをしてバックアップしながら、言うならばこれは長い代理戦争ですよ。  この本に、詳しい学者の皆さんのおっしゃっていることも読んでみていますが、そうすると、破綻国家という言葉が国連という場所を中心一つ生まれてきている。国家体制は破綻して、しからば一体どういう勢力をそこの主権者にしたらいいのか、どの勢力が政権をとればいいのかわからない。こっちはどこの外的勢力なのか、こっちはどこがと、こうなってきている。そういうところでいろいろな問題が次々起こってくるということになると、金の問題もさることながら、考え直してみなきゃならぬ問題がある。  これは最後に時間があったらカンボジア問題とあわせて申し上げたいのですが、大臣のおるところと思って順番を入れかえて質問しておりますので、ここで二、三具体的なことを承っておきたいのであります。それで、残った時間で今の問題等を続けたい、こう思っておるのです。  そこで、まず承っておきたいのは、終戦になって、樺太から日本の方々を三隻の引き揚げ船で――終戦になった。そこで、二十年の八月二十二日前後のいろいろなソビエトの海軍の行動があったのでしょうけれども、三隻で引き揚げてくる。ところが、この船が撃沈をされまして、そして、二隻ですが、千七百人からの方々が死んだ。どこのどういう潜水艦が終戦になった後でサハリンから引き揚げてくる日本の皆さんを撃沈して、たくさん死ぬようなことになったのか。この点について、まあ名前言わぬでくれと私のところにお話もありまして、ここで質問する気になっているのでございますけれども、拓殖大学の秦郁彦先生ロシア国防省戦史研究所のV・ジモーニン所長代理に、昭和二十年八月二十二日前後のソ連海軍の動向というのを調査を依頼した、そうしたら、ジモーニンさんから返事が来た。八月二十二日、終戦直後であります。  午前五時十五分、L-12号、これはソビエトの潜水艦、これが北海道留萌沖で日本輸送船一隻に魚雷三発を発射し、二発目が命中、沈没させた。同午後十一時半ごろにはL-19号が同沖で輸送船一隻を撃沈、一隻に損傷を与えた。それで、この動向調査の結果を知らせてきたということで、これが秦さんの手で明らかになった。遺族の皆さんは一体どこのだれがと。私の知った人もそのことを言っていましたけれども、今そういう状況でございまして、これもさっき私冒頭に申し上げたことと似たようなことですけれども、やはりはっきりさせるところは外務省がしてくれなければいかぬというふうに思っているので。  実はこの外務省の方からのとりあえずの御返事は、外務省の方、お名前は申し上げませんが、樺太の事件の件、拓大の秦先生の文書、秦先生が根拠にされたソ連のジモーニンさんの文書は極めて一般的なものであって、ソ連艦船建造の一節がなんというのですけれども、これはどういう意味かわかりませんけれども、ソ連艦船建造の一節が数行だけ載っているだけ、そうじゃないのですね。具体的に時間と場所とが明らかになっていて、潜水艦何号がどの船をとなっている。そんないいかげんなことじゃない。したがって、これもひとつはっきりしていただきたい。
  42. 津守滋

    ○津守政府委員 御指摘ロシア国防省戦史研究所副所長のジモーニン氏から拓殖大学の秦郁彦教授にあてられた手紙につきましては、私どもの方から直接秦先生から説明を受けてその手紙のコピーもいただいております。これを踏まえまして、モスクワの大使館を通じまして直接このジモーニンさんに聞いたわけでございます。  ジモーニンさんの答えは、秦先生に出した手紙の内容は、公刊されております「ソ連における潜水艦の建造」というこれは一九九〇年に出た本のようでございますが、そこの記述を秦先生に手紙に書いてお渡しした、こういう説明でございまして、そこで、私どもの方でこの「ソ連における潜水艦の建造」という本を取り寄せまして該当部分を調べましたところ、このジモーニンから秦教授あての手紙の内容と、この「ソ連における潜水艦の建造」という本の該当部分の中身は相当食い違っているわけです。そこで、もう一度今関係方面に、モスクワの当局に照会をしております。特に、本件について真相解明のきっかけになるんではないかと考えられております、ソ連の潜水艦の艦長からの上級司令部に提出された攻撃の報告書というものがうわさされているわけでございますが、この文書を含めて関連の文書を入手したいということをロシア当局に申し入れております。今のところ回答はございません。その後、一回督促をしておりますが、回答はございません。
  43. 大出俊

    ○大出委員 小笠原丸の甲板にいてほうり出された方やなんかのお話も聞いておりますけれども、当時随分悲惨な状況で、しかも終戦がわかって引き揚げているんですね。これは何ともどうも我慢ならぬ中身ですよ。ですから、ぜひひとつそこのところは、私も資料もいただきたいのですけれどもね、もし皆さんがお調べになったものがあれば。ぜひひとつ引き続き御努力をいただきたい、こう申し上げておきます。  それからもう一点だけ。なかなかこれは申し上げる機会がないのですけれども、大韓機、例のモネロン島沖、海馬島、ここで撃墜をされまして、私はあのときの予算委員会で私の持っている時間を全部使って質問をいたしました。〇〇七、千機長の韓国機でございますが、これは遺族の皆さんが裁判をやる資料というのは三つ、四つしかない。私があのときに、稚内のサイトで自衛隊が入手した交信記録、これをとうとう出していただきましたが、遺族に私が上げました。それから、安全保障理事会で、国連でアメリカのシュルツ国務長官が航跡を発表したシュルツ航跡と言われるもの、これもテープを私がとうとう出していただきました。遺族に差し上げました。また、カムチャツカ半島から、海からユジノサハリンスク、向こうに上がっていくときに高度を上げておりますけれども、これも防衛庁からそこのデータを全部出していただきました。これは非常に貴重なデータでございましたが、このぐらいしかない資料でやってこられたいきさつがある。  ところが、これは本当におもしろくないんですが、十の文書、つまり九二年十月十五日、ロシア政府は大韓航空機撃墜事件の関係資料をICAOl当時出していたのは、この大韓機というのはプラウダ住宅地区上空で飛行を停止したというのしか出てなかったのですよ。ところが、これを見ると、ICAO、国際民間航空機関、所在国カナダですけれども、このモスクワ大使館を経由して日本を含む関係国に送付すると称してICAOに渡した資料、十の文書からできている。乗務員の会話とか、地上管制機関との交信内容とか、ブラックボックスの音声記録であるとか、アンドロポフ書記長に対するウスチノフ国防相及びチェブリコフKGB議長の書簡であるとか、専門家グループの結論第一号、アンドロポフ書記長に対するウスチノフ国防相及びチェブリコフKGB議長の書簡二回目、技師チホミロフ陸軍中将によるDFDR、ディジタル・フライト・データ・レコーダーというのですか、分析に関する報告書などなど幾つもあるのですが、ブラックボックスの写真などなどがあるのですが、この中で一つだけ訳したのがあるのです。  「特別機密」と銘打ちまして、    アンドロポフ同志へ   カムチャッカ地区及びサハリン島のソ連邦領空を侵犯した南鮮航空機が、九月一日、日本海において撃墜された後、太平洋艦隊はこの航空機の電子機器の捜索を行っていた。この機器は、我が領空を二回にわたって侵犯した同機の目的をより正確にするため、我々にとって必要であった。   捜索は、いくつかの地域では一五〇メートルから三〇〇メートルの深度で行われた。四十隻近くの船を使って、とうとうこれを回収した。ところが、このときに、米日の二十隻以上の艦船と大量の航空機が当時相当飛んでいたから、秘匿する意味で、ソビエト側は、なお引き揚げていないかのごとく装って捜索行動を続けていたと書いてある。僕らはテレビその他を見て、まだ見つからないのか、見つからないのかと思っているのに、見つかっていて、つまりこの機体も発見してあって、ブラックボックスも発見してあって、しかし日米の飛行機や艦船が、艦船二十隻と書いてありますが、いるので、秘匿する意味で継続して作業を続けた形をとった。ウスチノフ、V・チェブリコフという先ほどの表題で申し上げた人からアンドロポフ氏にあてた特別機密の報告書、抜き読みしたのですが、ちょっとこれは私は了解に苦しむのですね。  だから、私が当時何回か質問していますが、あの時点で、機体も遺体もあるいは御本人たちの遺留品も全部収容しているはずですよ。ほんのわずかしか留萌沖に流れてきていないのですから。これは放任はできませんので、ひとつ何とかお答えを願いたいのですが、その後どういうふうにやっておられますか。
  44. 津守滋

    ○津守政府委員 今の先生の御質問は、一つは真相究明の問題、一つは遺体、遺品の回収の問題、この二点から成ると思います。  真相究明につきましては、去年十二月十八日、パリにおきまして、日本、アメリカ、韓国、ロシアの代表の立ち会いのもとに、ロシア側から、ICAO、国際民間航空機関に対しまして、撃墜されました大韓航空機のボイスレコーダー及びフライトレコーダーを引き渡しました。ICAOはその後、このボイスレコーダー及びフライトレコーダーの解析作業を進めております。第一ステップがブラックボックスの解析、第二スチップが、アメリカ、韓国、日本ロシア関係四カ国へのICAOの代表団の訪問調査、これは、日本につきましては二月七日から十日の間、ICAOの調査団が訪日して調査を行っております。第三段階は、そのデータのシミュレーションの実施、これは米国のボーイング社と協力して行っております。そして、この第三段階のシミュレーションの実施を終了した後、本年五月ごろ、ICAOの事務局長に対しまして最終報告書が提出される。当初三月と言っていましたが、五月に延期されました。そしてこの最終報告書は、第百三十九回ICAO理事会、四月二十六日から六月三十日までありますが、この審議を経た後に公表される予定でございます。  それから、遺体、遺品の回収につきましては、当然のことながら御遺族の最大の関心事でございまして、十月中旬に、実は私も御遺族に同行してモスクワに行ったわけでございますが、そこでロシア側に対じまして、遺体、遺品をぜひ引き渡していただきたいという要請を行ったわけでございますが、先方は、事件直後に当時の丹波ソ連課長が受け取りに行ってそこで引き渡しを受けました数十点以外はもう何もないという答えでございました。今月の十日に再び、今度はモスクワにおきまして韓国、米国それから日本の御遺族の代表とそれぞれの政府関係者とロシア側との間でその件について話し合いを行いまして、ロシア側に対して善処を要求したわけでございますが、ロシア側のその際の返答は、遺体についてはほとんど見なかった、潜水作業開始後数日たって腕の一部を一度見ただけだ、それだけで、遺品につきましてはその後全部焼いてしまった、こういう答えでございました。
  45. 大出俊

    ○大出委員 最後に、時間がなくなりましたので、カンボジア問題をと思っておったのですけれども、一つ、これは委員長にもお願いがあるのですが、軍人の皆さんでございますが、恩給の未受給者の方々がたくさんその後も文書をおよこしになりまして、また出てこられる方もありまして、本当に読んでみるとちょっと胸にこたえる書き方をしている方々が多いのであります。  その前に一つ実例を挙げておきたいのですが、ここにございますのは、恩給局の方に私差し上げておりますので御答弁をいただきたいのですが、本籍は山梨県石和町中島一〇六番地、横浜市南区堀ノ内町二の一三六の一、これが現住所でございますが、宮川庄二郎さん、この方が総務庁の恩給局長あてに普通恩給の請求書を何回かお出しになっている。それで、山梨県を通じまして出てまいりました計算がございます。この計算によりますと、実在職年数、軍人三年二カ月、外特七月。加算年、軍人六年七月十五日。計、軍人九年九月十五日、外特七月。外特というのは外国特殊法人です。最短恩給年限未到、こういうことなんですね、九年九月十五日。ところが、この方は、上等兵で除隊してから、日本から出てきまして華北交通に勤めた。そして、その華北交通で鉄道警備をずっと終戦までやっていた。  それで、この鉄道警備の中身を見ますと、全くもう軍隊と一緒で、完全軍装なんかしていまして、津浦線滄県警務所、ここを中心にして、鉄道を守るための現地憲兵隊と一緒になっての警察業務、それから地工作戦というのは北支派遣軍司令官の指揮下に入る、片っ方は憲兵隊の指揮下に入る、こういうわけです。これは、後に軍属を命ぜられてもいるのであります。そして、中国人の部下が十五名、本人が一人、兵隊の経験者でございますから。そして、鉄道を愛する愛護村というのをつくる任務を与えられて、愛護村をつくって、そこの青年団その他をみんな味方に入れて鉄道を守る。ところが、何遍も二十名、三十名の便衣隊の発砲、つまり攻撃を受け銃撃を受ける。敵便衣兵約二十名が一斉に銃撃してきたので、先頭に立っていた青年団員一名が死亡した、他の者は無事に警務分所に戻ることができたというようなところから始まりまして、何遍もやっているのです。  ところが、この方は華北交通なんですが、華北交通互助会が最近証明している中身によりますと、昭和十四年十一月四日から昭和十六年十二月一日まで華北交通の雇員であった。そして昭和十六年十二月一日から昭和二十年七月一日まで准職員であった。十四年十一月四日雇員、十六年十二月一日准職員、二十年七月一日職員、こうなっている。月給が六十七円、勤務箇所天津鉄路局、こうなっている。これは証明です。  ところが、ここで問題は、私がかつて十六年内閣委員会で恩給をやっていました時代に、満州鉄道、次に満州電電あるいは林野というぐあいに一つずつ拾っていったわけなんですけれども、四十三条「外国特殊法人職員期間のある者についての特例」というのができておりまして、これは附則です。これによる恩給法の一部を改正する法律附則第四十三条の外国特殊法人及び職員を定める政令、この政令によりますと、「当該法人の職制による正規の職員」とこうなっている。「(第七号に掲げる法人にあっては、社員)とする。」この中に、一、満州鉄道、二、満州電電、三、華北交通、四、華北電電というふうにたくさん並んでいる。  そこで、これは政令なんです、法律じゃないのだが、「当該法人の職制による正規の職員」と政令にあるから、だから雇員、准職員の期間は認めない、政令に「正規の職員」とあるから認めない、こういうことになる。華北交通で完全軍装して、鉄道愛護村をつくって青年団をまとめてきて、それにも鉄砲を与えて、だんだん終戦が近づくにつれて年じゅう攻撃され、鉄道を守ろうとして片っ方で軍隊の指揮下に入り片っ方では憲兵隊の指揮下に入ってやっていたのだが、准職員と名がついているから政令に書いてある正規の職員ではない。何と四年間も准職員の期間があるのですから、これを入れると十三年、超えてしまう、最短恩給年限十二年を超してしまうのだけれども、かくてもらえないと、こう言うのです。  こういう例は一つじゃないのですよ。私がかつて内閣委員会質問をした麻生さんという方ですが、海軍で艦隊を組んでいて、一つの軍艦が故障をして横須賀の海軍工廠に入った。ちょうど三カ月足らずいた。同年兵の海軍の皆さんは全部十二年で恩給をもらっているのだけれども、十一年九カ月で、三カ月間修理に入った期間だけ足りないためにもらえない。私質問しましたら、厚生省がその方とさんざん連絡をとりまして、一時恩給でもと勧めたが頑として聞かない。船が撃沈をされて二回も油が燃え上がる海を泳いで逃げて助かって今日生きているんだ、その貴重な経験を一時恩給幾ら幾らで捨てるわけにいかないと言う。だからこれは頑張ってもらって、未受給者の非常に苦しい今の状況をひとつ政治家の皆さんで何とかしてください、それまで生きていると言い続けた人でございますが、昨年の十月、がんで亡くなりました。昔私が質問した議事録も残っておりますけれども、そういう例がたくさんある。  したがって、まず一例を挙げましたが、この一例、印刷したものを差し上げてございますので、答弁はわかっているような気がいたしますが、答弁を一遍していただいて、その上で結論にいたしたいと存じます。
  46. 稲葉清毅

    ○稲葉政府委員 過ぐる大戦の間に、日本の国民がいろいろな形で、内地、外地を問わず御苦労されておる、そういう状況はよく承知しております。何分にも、そういういろいろな方たちや、現在恩給の受給者は約百九十万人でございますけれども、それに倍する方がいろいろいらっしゃいますので、現在に至るまでもいろいろな請求があるということは、私どももよく日ごろから承知しているところでございます。  そこで、今の先生の御質問なのでございますけれども、おおむね二つの部分があるかと思うのでございます。その一つは、先生がただいま例に取り上げられた方がこういう職務に従事していた、長い間いろいろな職務で国のために御苦労されていた、それがどうして報われないのかという問題が一つ。それからもう一つは、制度上の問題といたしまして、外国特殊法人の正規の職員になぜその方が分類されないのか。この二つの問題があるかと思うのでございます。  前者の問題につきましては、これは、恩給というのはそういった個人個人の方の実際にやられた仕事の中身に対して給付されるということではございませんで、官吏や軍人といった一定の身分を持った公務員を対象とした年金制度でございますので、軍隊とともにいろいろな形でいろいろ御苦労されたという方はいらっしゃるようでございますけれども、やはりそういった身分を持った公務員を対象とした年金制度であるということで、実際にどういう仕事をされたかということとは別の原理から制度ができておるという点をひとつ御理解いただきたいと思っているわけでございます。  しからば、なぜその方が今の外国特殊法人に勤務しているときにその準職員、雇員というようなことが消化されないかといいますと、やはりそれは、外国特殊法人の職員を恩給に通算しようとするときに、その特殊法人の仕事の内容あるいは職員の身分あるいは官吏との交流の状況等、そういったことをすべて勘案いたしまして法人ごとに一つ線を引かなきゃならない、こういうことから線を引いたわけでございまして、その事情をよく先生は御存じと思いますけれども、御理解をいただきたいと存じております。
  47. 大出俊

    ○大出委員 当時、与党の自民党の皆さんのところは伊能繁次郎さんが非常にお元気でこの問題に取り組んでおられまして、公明党さんは鈴切康雄先生がこれまた一生懸命やっておられまして、民社党さんは受田新吉先生がこれは本当に一生懸命でございまして、私の党は私がやっておりまして、内閣委員会に恩給の小委員会をつくりまして、外国特殊法人をどう拾うかということで、本当に恩給局の方々や専門家の方、調査室の方、みんな来ていただいて一生懸命調べて線を引いた。一つ引けばすぐその隣の問題が出てくる、ここに引けばまたこの隣の問題が出てくるという苦労を、私は内閣委員会に十六年もいましたから、ずっとやってきた時代なのです。ほとんどのことはわかっている。しかし片づいていない。  そこで承りたいのですが、平和祈念事業を始められたのだけれども、対象者、つまり恩給未受給者でございますが、この方々が百八万ぐらいいたはずであります。祈念事業で手を挙げた方が恐らく二十万欠けるのじゃないかと思うのですね。そうすると、書状、銀杯などに手を出さない方がなお八十万以上おられるのじゃないかと私は思うのです。だからこういう文書が次々に出てくるのですが、そこで、今の書状、銀杯等に手を挙げた方はどのくらいおられますか、簡単に答えてください。
  48. 高岡完治

    ○高岡政府委員 先生指摘のように、対象者は百八万人、そのうち請求していただいた方は二十八万三千人、約四分の一の方から御請求をいただいております。
  49. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、百八万ですから、八十万残る勘定ですかね。そうですね。百八万から二十八万引きますと八十万、こうなる。  そこで、ここにありますのは、四千五百名おいでになる県連合会の会員の皆さんから、会長代行近藤さんという方と事務局長新島さんという方が、四千五百名の方が低所得者だというのですよ、それで金集めて、もうこれは本当に腹を決めて、最後なんだ、しかし我々はこのままで死ねないから行ってこいということで、代表で出ておいでになった。文書がここにある。みんなで意見を出し合ってまとめたのだというのですね。十数年来もう言うことは全部我々は言い尽くしてきた、七十五歳、七十七歳になるんだからというのですね。本当に言い尽くしてきた、今まで公約し理解を示してこられた先生方がたくさんおいでになる、しかしいろいろおっしゃられて期待をたくさん持ったけれども、なお我々は未受給者で、何ももらっていない、前回の選挙のときもいろいろお話があって、やることは一生懸命やった、しかし報われたものは何もない、だから我々老兵の周りは、多くの次代を背負う家族もいるんだから、こうだったんだと、政治家というのは信用できない、こうだったんだなんというようなところまで、ちょっと言い過ぎな気がいたしますが、そうここに書いてある。しかし、気持ちはわからぬわけではない。  そこで、事務局会議も数回熊本市で開くなどというのですが、この方は、四千五百というのは宮崎県の方です。宮崎県の県連です。あそこに四千五百おられる。ちゃんと名簿ができておる。そして、今年は九州ブロック傘下の各県から代表が熊本に集まった。老い行く往年の勇者たち、慌ただしく迫ってくる人生のたそがれの時期を迎える中で、なお問題を軽視する政治に翻弄されている逆境に対して悲憤慷慨し、このままでは死んでも死に切れない、せめて最後に悔いを残さない思い切ったことを展開してみるべきだという思い詰めた意見が集中的に出たというわけですね。平和な今日、経済大国のもとの自衛隊が給料をもらっている、退職後平均千五百万円の保証がある、PKOの派遣で出かけていくと一日二万円以下の手当がある、これは一体どういうことなんだ、我々は何にももらっていない、これは我々のひがみでしょうかとここに書いてある。  以下、ちょっと読み上げにくい、私自身が兵隊なものですからちょっと物を言いにくくなりますが、私は豊橋の第一陸軍予備士官学校の十一期でございまして、鐘紡の会長などをやっていた伊藤淳二君だとか、今雅叙園観光ホテルの総支配人工藤勉君だとか、この間死にましたが、大正大学の学長の安居香山君だとかみんな私の同期、生き残りでございます。主力はほとんど沖縄本島に行ったから全部死んでいる、雅叙園観光の総支配人工藤君は宮古島に行ったから生きている、こういうわけです。私は教官だから生き残っている、こういうわけだ。少尉でございます。つまり、ここで書いておる皆さんの気持ちがそういう意味でわかります、何か考えなきゃいかぬなという。  それから、ここにも陳情書がございます。これは多いですよ。長崎県から熊谷市から八尾市から福岡県から、福岡は幾つも市がありますが。佐賀県から熊本県から北海道、北海道も多いですね。それから、東京都練馬区の区連の方々だとか、それからちょっと字がよくわかりませんけれども、東京の方が幾つもありますが、時間がなくなりました。ここでも、せめて従軍看護婦並みにはしてくれというのですよ、老兵を。時間がありませんから、もう読み上げませんが。  そこで、戦後、ソ連邦またモンゴル国の地域に強制抑留された方、またはその御遺族に書状、銀杯を贈呈しております。これらの方々のうち、年金恩給などを受給されていない方にはあわせて慰労金十万円が支給されます、請求期限平成五年三月三十一日、今月ですね、お早目に御請求ください、これは戦後強制抑留者の皆様へという総理府の告示です。三月の末日で終わってしまう。  そうしますと、八十万残るんですよ。私も長く手がけてきたから気持ちはわかるのですけれども、命を的に九年とか十年とかやってきて、一時恩給でそんなことできるかという。私が無理してまとめてあげて一時恩給もらわせた磯崎さんという人は、議事録にありますが、神棚に上げて上げっ放しに、そして拝むというのですね、一時恩給のわずかな金を。  だから私は、ここで委員長にお願いがあるのは、この委員会にも恩給の小委員会がございますので、ぜひ一遍、八十万も未受給者の方々が残っておられる。方法は幾らでもある。最短恩給年限十二年ですから、十二年で兵なら幾ら幾ら、兵の階級ここなら幾ら幾らと、こうなっているわけですから。そうすると、十一年の人はそれから一年引く、十年の人は二年引く、九年の人は三年引く、八年の人は四年引くという形の引き方をして、最低保障どこにするかという問題はありますけれども、それで片づけようと思えば全部片づいてしまいます。今平和祈念事業云々で幾らかというと四百億ですよ。だから自衛隊の今の問題等が出てくるわけですよ、不公平だと言って。文書たくさんいただいていますが、もうここで申し上げている時間がありません。  ぜひひとつ、これは牧野委員長さんのお気持ちにもおとめをいただいて、八十万人もいるのですから、そして次々に死んでいくのですから。そういう意味で、どういうことが考えられるかというのを、つまり平和祈念事業だ何だ、シベリアやモンゴル抑留だなんというのも三月末で終わってしまうんですから、それで残るんですから、そういうこともお考えで、ぜひひとつこれはお力を各党の皆さんにかしていただいて、どこがというのではなくて超党派的に、どうすればいいかということの相談をさせていただきたいとお願いをいたしておきます。理事会等で御相談をいただきたいのでございますが、委員長一言。
  50. 牧野清文

    牧野委員長 小委員会を開きまして、各委員の皆さんと検討をさせていただきたいと思います。
  51. 大出俊

    ○大出委員 ありがとうございました。  どうもありがとうございました。
  52. 牧野清文

    牧野委員長 山元勉君。
  53. 山元勉

    ○山元委員 ただいま議題となっております法案については、私も一昨年この場所で、在外公館を充実すべきだ、あるいは職員増員を図るべきだ、あるいは情報収集のための機器を充実すべきだ、そういう立場で討論をした覚えがございます。そういう基本的に賛成という立場で、きょうは海外留学生の保護の問題についてお尋ねをしたいというふうに思います。  御案内のように、近年海外旅行は大変ふえています。学生も同じことでございまして、特に八八年に留学制度が導入されてから急激に増加をしています。いろいろ問題があるわけですけれども、きょう問題にしたいのは、短期のいわゆる学習旅行と言われる海外への旅行者の状況について、まずどういうふうに把握していらっしゃるかをお伺いをしたいと思います。
  54. 荒義尚

    ○荒政府委員 お答えを申し上げます。  私ども、御指摘のように最近海外に赴きます短期の留学生に関するいろいろなトラブルあるいは問題、事件が増加しているという事態は大変深刻なものとして受けとめておりまして、在外公館よりの報告を徴し、これらトラブルあるいは事件、事故につきまして数字的にぴしっとした正確なものはございませんけれども、一応おおよその状況については把握しておるつもりでございます。先生御案内のとおり、当事者がすべて在外公館に報告というか通報するわけではございませんので、そういう意味ではすべて把握しておりませんけれども、おおよそということでございます。  なお、この三月、今月でございますけれども、私ども外務省としましては、そういう留学生の多いと見られる在外公館のうち七十二公館につきまして急遽報告を徴しまして、現在その内容を分析しておる状況でございます。
  55. 山元勉

    ○山元委員 私は、全体的な海外へ出ていく人たちの状況をどう把握しているかということをお尋ねしたがったのですけれども、文部省の資料の中にも相当詳しく出ておりまして、例えば今申し上げました短期の学習旅行というのは、昭和六十三年に一万七千人ほどであった。ところが二年後の平成二年には三万人を超しているわけです。およそ倍近く高校生がどんどん海外へ出ていくようになった。そういう中で、今ありましたようにトラブルが非常に多くなっているわけですね。海外旅行そのものは、子供たちにとっては、海外の学校で勉強する、あるいは家庭生活だとかあるいは地域の人たちと交流するという非常にたくさんの経験を広げるわけでございまして、私どものは有意義だというふうに思っている。  そういう立場でいうと、ふえていくことはいいわけですけれども、トラブルの発生は大変多くなっているし、質も悪くなっているわけですね。そのために、文部省も研究協議会などをつくってその対策を考えていらっしゃる。あるいは運輸省は業者の認可などについての検定を検討していらっしゃる。それはいいのですけれども、きょうお尋ねしているのは、外務省としてトラブルにどういうふうに対応するかということでございます。  今おっしゃいますように、すべて通報しているものではないわけですけれども、私どもの手元に今、たくさんの方から何とかしてほしい、あるいはいろいろな訴えがあるわけです。  一つ二つ例を申し上げますと、例えば一つはロサンゼルスでのことですけれども、一つ上級の学校に行くのでホームステイを変わるということで、現地のスチューゲントアドバイザーの勧めでホームステイの場所を決めた。ところが、行ってみたらおばさん一人住んでいる家が割り当てられてあって、十四日間も旅行中だと。その子は十日間もラーメンとスパゲッティだけで済ましていた。ところが、そのおばさんが帰ってきて何だということになって、外へ出ていかざるを得ぬようになった、そういうトラブル。移って入った家がそういうことであって、この高校生が大変困って、そこでロサンゼルスの領事館に訴えた。けれども、その態度はひどいものです。最初私が、領事の名前が書いてありますけれども伏せて、領事に電話したときも、そのような個人的なことはタッチをしないのだというふうに返ってきた。どうしようもなくて十日間泣きながら暮らした、こう言うのですよ。  あるいは、これはオーストラリアで、ホームスーテイの家族の人が運転をする車で事故が起こって重傷を負った。ところが、退院してきたら、滞在先の家族の人から迷惑がられて非常にひどい仕打ちを受けた。そこで、例えば日本でいうとキャンベラにあるオーストラリア大使館に訴えた。パースにある領事館にも訴えた。あるいはオーストラリア政府の観光局にも訴えた。けれども、親切に対応してくれたのは、返事をしていただいたのはオーストラリア政府の観光局だけだった。日本の領事館、大使館両方とも親切にはしてもらえなかった。帰ってきてこの人は、我慢がならぬので裁判に訴えているわけです。これもやはり領事館、大使館がその場で対応してくれたらほっとして帰れただろうと思うのです。  サンフランシスコの例をもう一つ。娘が金を盗んだといううその告げ口をされていじめられているとか、食事がひどいのだ、レタス一枚だという例もありますけれども、いろいろそういうひどい目に遭っているからといってお母さんのところへ電話して、お母さんが、それは娘をひとり旅に出している親にしてみればそんなことで電話がかかってきたら大変だ、けれどもサンフランシスコへ飛んで行くわけにいかないわけですから、そこの領事館に電話をしたけれども、どうしようもありませんという返事しか返ってこなかった。これはサンフランシスコの例。  あるいはこれは、外務省、関心を持ってごらんになったかもわかりませんが、アエラに出ました。これはおととしの三月十二日です。時間がなにですから簡単に言いますと、かみそりでけがをしたら、その処置がおかしいということで、自殺未遂だということで精神病院に入れられてしまった。そんなのと違うんだと言っても、しゃべればしゃべるほど弱い語学力ではどうにもならなくて、助けてもらえなかった。お母さんが飛んで行くわけですけれども、これはきょう申し上げる時間がありません。また後で、文教委員会で文部大臣とも話をしなければなりませんけれども、非常にきつい誓約書があるわけですね。行く者には一切権利がない。旅行業者の思うがままになるような誓約書を書かされて行くわけです。ですから、病院から親が大学の現地先生に助けてもらって助け出そうとするけれども、どうしてもその現地の業者はうんと言わない。そこてしようがないから、両親からもう一遍全権を弁護士に任すということで委任状をとって、そして争った、やっと病院から連れ出した。  そういうトラブルで、この書いてある気持ちは、病院から救出することができたけれども、在外日本領事が救済の窓口になってくれたらこんな大変な手間をかけなくても済んだのに、これがもう最後の結論みたいになっている。業者も業者ですけれども、そういう駆け込んでいる場合、今部長がすべて通報するわけでないからと言っていらっしゃったけれども、通報があっても個々の人についてはタッチをしないのだとか、どうしようもありませんとか、あるいは一切ナシのつぶてだ、こういう例がいかにも多いわけです。  そこで、私は、これは個々の領事だとか大使館を責めているわけじゃないのですよ。そういう体制であるということも、先ほどの、あと百人増員しなければならぬという実態からもわかるのです。わかるのですけれども、こういう泣く人、本当にいい経験をするといって楽しみにして海外へ行って、そして帰ってきて、何やといったら、ひどい目に遭うた、そして恨みは日本大使館、領事館へ残るというようなことは、これは何とかしなければいかぬことだろうというふうに思うのです。留学制度の内容とか、そういう制度とかいうものは文部省の努力が必要だろうと思うし、先ほども言いましたように、旅行業者の認可等については運輸省でしょうけれども、こういう実際に被害に遭った、トラブルが起こったときの窓口というのは、これはやはり在外公館でなければならぬのと違うかというふうに思うのです。どうですか、それは。
  56. 荒義尚

    ○荒政府委員 お答えいたします。  一点は、先ほど申し上げましたように、若い人たちが有意義な海外留学ができるように在外公館が全力を挙げて支援すべきだという点は、我々もそう考えております。  それから、海外における邦人に対してできる限りのサービス、相談に乗る、親身になって相談するというのもこれは当然でございまして、私としましては、そういう考え方で明確に訓令を出して、かつ教育しているわけでございます。  ただ、ただいま先生幾つかの具体例を挙げられまして、対応に出た館員の対応がよくなかったというお話でございますけれども、御指摘の個々のケースについて私どもまだ報告は受けておらないわけでございますが、万が一にもそういう対応をしたあるいはそういう印象を与えたということであれば、私としては大変残念であり、遺憾であると思っておりまして、その点は一層指導を強化していきたいというふうに考えております。
  57. 山元勉

    ○山元委員 外務省設置法というのを私も見て、その在外公館の皆さんの任務とか責任というのをもう一遍見てみました。明らかに外務省の責任、「海外における邦人の保護並びに海外渡航及び移住のあっせん」というのが任務ですね。あるいは所掌事務でいうと、「海外における邦人の生命、身体及び財産の保護に関すること。」こうなっているわけですね。それは確かにそうであろうと思う。けれども、今申し上げました例でいうと、その責任は、物理的にできなければまた別ですが、果たそうとされていないわけです。未成年の学生がすがっていったところが一番恨みを残さなければならぬ政府の機関だということは、これは解消しなければならぬというふうに思うのです。  そこで、平成二年のことですが、中山外務大臣がこの問題について答弁していらっしゃるのです。その後の経過についてお尋ねをしたいのですが、外務大臣は「それはいわゆるホームステイ先の保証措置がどうあるかという問題じゃないかと思うのです。だから、この問題については、いわゆるそれをあっせんしている相手の国内にいるこのあっせんのルート、そういうものを外務省としては、外務省の責任で早急に一度調査をしてみたい」。ということは、日本の業者がいて外国の相手の業者がいて、相手の業者がひどい場合が多いわけですけれども、そういうものを早急に調査をしてみたいというのが平成二年の外務省答弁なのです。  もう一つは、同じように中山外務大臣が答えているわけですけれども、「信頼できる留学あるいはホームステイのあっせん機関というものを確認する方法はないものか一度早急に検討してみたい。」こうなっているわけです。今本当に多いのです、この業者は。何百という業者が、学生行きませんか、行きませんかとやっているわけですね。ですから、大臣が答えられたのもそういう業者、あっせん機関というものを信頼できるかどうか調査する方法を検討したい、こうなっているわけです。その後二年たっていますけれども、何かありますか。
  58. 荒義尚

    ○荒政府委員 ただいま御指摘の中山大臣答弁されました二点のうち、最初のそういうルートといいますか、仲間に入っている業者の実態でございますけれども、これは大変調査は難しいのでございますが、先ほど申しましたように三月に七十二公館について行った調査におきましても、そういう方面の情報、事実をなるたけ把握して報告するようにというふうにやっておりまして、それは今この場で数字的なものはちょっとお答えできる段階でございませんけれども、一応そういうことで実態把握に努めておるということでございます。  それから第二点の、どういう業者が信頼できるか、そこら辺を調べる、確認するというお話でございますけれども、その点につきましては、私ども外務省としては直接の取っかかりの権限といいますかがございませんので、文部省さんの方といろいろ相談しているところでございます。  それともう一つは、例えば全国高校生留学・交流団体連絡協議会というのは先生御案内のとおりでございますけれども、そういうところともどうすれば実態把握ができるかも含めていろいろやっているところでございます。
  59. 山元勉

    ○山元委員 三月に調査されたという。二年後ですよね。先ほど私、ちょうど持ってきておりますが、例の中に、略したのですけれども、例えばニュージーランドで、言っているのに手当てをしてくれないから同じような被害が二人目、三人目と起こっているのを目の前で見ている人が、領事館というところはという感想を持って帰ってきているのですね。ですから、丸二年たって、今ちょうど調査をしているというのは遅い。  ついこの間も私は東京のお母さんから、この例については名前、私は表に出せません、まだ向こうで娘が食うや食わずでいるのです、何とかしてやりたいけれども、業者がかえっていじめるから私は名前をよう出さぬし、けれどもどんどん荷物を送って、手に入っているかどうかわからぬと言って泣いているお母さんに会いました。ですから、ぜひ急いでほしいし、この確認方法についてもこれはやはりできなければいかぬ。これは後ほどもう少し申し上げたいと思います。  そこで、時間がありませんから、一体どうしたらいいのやということを具体的に考えてもらいたいと思うのです。  一つは、例えばこの文部省の調査で見ますと、海外に確かに喜んで行く、けれども何かトラブったときに連絡する方法を知らない、教えられないで行く子供、学生が一二から一八%、相当高い率で、これはもう行かす親も私は少し問題があるだろうと思う。いろいろな問題が、どかんとやられることもあるし、レイプの問題も出てきたところに、娘や息子を、行け、これは親ですが。ホームステイ先もわからない、連絡先も教えられないで、学習に、旅行に行く子供たちが一二ないし一八%、どの調査見ても出てくるわけですね。これはやはりいけないことだろうと思うのです。  それはやはり学校なり外務省なりが、海外へ行かれる場合は、本当に安心して行けるように、そういう場合はこうするのですよということをきちっと知らすような手だてを講じなければいかぬだろう。そのときに一番頼りになるのは、私はやはり在外公館だと思うのですよ。少なくとも未成年の子供たちが行くときには、何かあれば、親戚があったりなんかすればよろしいよ、兄弟がいたらね、けれども、そうでないときには、この地域はこの領事館がここにあって、電話番号は何番ですということはきちっと教える、そういう手だてはとれませんか。
  60. 荒義尚

    ○荒政府委員 ただいまの点でございますけれども、まず在外公館の方でございますけれども、これにつきましては、再三申し上げますように、我々としてもそういう若い学生さんたちに対しては親身になって相談に乗り、支援するよう、この点は引き続ききちんと指導してまいりたいというふうに思っております。  それから、国内的な問題でございますけれども、そういう若い学生さんたちに必要な情報、それからアドバイス、例えばこういう場合はどういうところへ連絡しろという点につきましては、先ほど申し上げました高留連、全国高校生留学・交流団体連絡協議会を通じて今いろいろと情報の提供を始めておるところでございまして、また政府広報、これは若干予算的にも限られておりますが、私どもはそういうところも通じまして、学生たちに注意事項の啓発と周知徹底を鋭意努力しておるということでございます。
  61. 山元勉

    ○山元委員 時間がありませんから、ぜひそういう具体的なことを考えて、先ほどありましたが、設置法に書いてあるような精神が具体化できるように工夫をしていただきたいと思います。  もう一つですが、先ほど申しました、アエラに出ている、精神病院に入れられて、そして現地の大学の先生なんかに助けてもらったというひどい例がありましたけれども、この業者、中山外務大臣お答えになった、信頼できる業者を確認する方法、信頼できない業者が見つかったらこれを排除しなければいかぬと思うんですよ。  これは、例えばこのアエラに出ている業者というのはEFFSという業者ですけれども、そのEFFSというアメリカの業者と業務提携をしている日本のEF、これは何か難しい名前がついているわけですが、イー・エフ・カレッジズ・インタースタディ・ファーイースト。EFFSというアメリカの業者、これはアメリカの新聞によりますと、営業停止を食っているんですね、一年半。これは日本の留学生をどんどん受け取る業者ですけれども、一年半アメリカの国際交流局が営業停止をしているんです。その理由というのはいろいろあって、やはり業者として、例えばホストファミリーの選定がずさんであるとか、留学生に対する監督が不行き届きであるとか、こういう理由で一年半停止になっているわけですね。ところが、日本会社とも言える日本のEFは続けているわけです。どんどんとそういう悪質な業者に子供たちが渡されていくわけです。  そのことがはっきりとわかったらやはり、外務大臣が言ったように信頼できる業者を選定するまではいかなくても、悪質な業者は排除をするようなことができるのではないかというふうに思うんです。しなきゃ、これはやはりオオカミの口へどんどん子供たちを送り込んでいくことになるわけですよ。  外務省としてEFという会社について御承知かどうか、お伺いしたいと思うんです。
  62. 荒義尚

    ○荒政府委員 ただいまお話しのアメリカの会社、似たようなのが二つあると私ども承知しております。一つは、これは英語でございますから、イー・エフ・カレッジズ・インタースタディ・ファーイーストというのが一つと、それからもう一つはEFFS、たしかエデュケーショナル・ファウンデーション・フォー・フォーリン・スタディーというあれだと思いますけれども、そういう会社があって、大体どういう活動をしているかについては私ども一応のことは聞いております。  ただ、ただいまおっしゃいましたように、そのうち例えば日本の支局部分がまだ引き続き何か動いているということで、そういったことを、悪質なものについては何か排除する方法はないかという点につきましては、私どもとしては例えば文部省、先ほどの高留連等と引き続き検討をしていきたいというふうに考えております。
  63. 山元勉

    ○山元委員 さっき少し言葉が足りませんでしたけれども、このアエラに出ている例、もう一つは、アエラにもコメントを出していらっしゃるお母さんが、自分の子供がこの会社によって、EFによってひどい目に遭ったということで今裁判を起こしていらっしゃるんですね。それは、例えば高熱を出していても放置されるという処遇を受けたとか、あるいは学校が離れていてどうにも帰れない、晩暗くなっても一人で学校で待っていて、迎えに来てくれるバスも何もないようなところに送り込まれているわけですから。そういうひどいことをしている業者なんですよ。もうそのことは大体承知なんですね、外務省としても。  ですから、私が先ほど言いましたように、在外公館やそういう連絡の方法についてきちっと子供たちに教える、政府も教える、あるいは学校も教えるという手だてが一つあるだろうとも思うし、こういう悪質だとわかった業者というのはやはり排除していくということがないと、アメリカで一年半営業停止を食っている会社と提携している会社が日本からどんどん子供を送っているというのは、これは大変なことだと思うんですね。ですから、そういうことをきちっとこれから、これもしつこく言いますけれども、中山外務大臣が答えられてから二年たっているわけですね。ですから、何らかの方法がないといけないという認識を外務省はお持ちだと思いますから、それを具体化をしていただきたい。先ほども言いましたように、やはり今一年で三万何千人、どんどん行くわけです。だから、そういう子供たちが安全に、そういう経験で本当に悔いない青春というものになるようにぜひ努力をしていただきたいというふうに思います。  最後に、時間が来ましたから、別のことですが、これは委員長にお願いをしたいのですが、先ほど恩給の問題で小委員会を開いてほしいということがありましたけれども、私はここの小委員会、地域改善の小委員会なんですけれども、前に私がこの委員会で、開いてくださいということを言ったのです。これは、地対財特法が切れるそのときに、やはり総合的に論議するのがその小委員会内閣委員会ではないかという立場で申し上げた。  実はこの小委員会は昭和五十三年に設置されて、そして数回開かれたけれども、その後はずっと開かれていないのです。私も内閣委員会に所属して四年目になりますけれども、これは一回も開かれていないのです。けれども、委員長御案内のように地対財特法が切れる、どうするかということで大変な論議があって、地対協の具申も出ました。国民的な課題であって、二十一世紀まで残してはならぬという差別の問題を国を挙げて取り組もう、こうなっているわけですね。  私はこの間、党の調査団として北陸の方へそういう実態も視察に行ってまいりました。やはり差別をされて泣いている人がいるわけです。そういうことを総合的に、私らは私らの主張として、例えば部落解放基本法をつくってほしいという主張なんですよ。そのことの是非というか、その論議はまたそこの場でするとして、やはりこの小委員会、ずっと七年も八年も開かれないでいいということに私はならぬと思うのです。ですから、ぜひこれも委員長、お諮りをいただきまして、小委員会が開かれるように御努力をお願いをしたいと思うのですが、よろしいですか。
  64. 牧野清文

    牧野委員長 既に理事会で三小委員会委員長の御承認を皆さんからいただいているわけですが、指名された小委員長と相談いたしまして、また皆さんとも協議させていただきます。
  65. 山元勉

    ○山元委員 ありがとうございました。  終わります。
  66. 牧野清文

    牧野委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十二分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  67. 牧野清文

    牧野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。東祥三君。
  68. 東祥三

    ○東(祥)委員 公明党の東祥三でございます。  本日は二点について質問させていただきます。  第一番目は、在外公館云々の法律の一部を改正する法律案についてでございますが、冷戦構造が崩壊して旧ソ連邦、あるいはまた旧ソ連邦が崩壊して幾つかの新しい独立国ができる、またその他の国々の独立も達成される、さらにまた冷戦構造は崩壊したけれども民族紛争等で非常に不透明な国際情勢が観察される、そういう中で、外交官の方々がいろいろな厳しい環境の中で働かれている姿に接して、いつも感動いたしているつもりです。  そこで、質問でございますが、今回新たに設置される在外公館六つ、そしてまた廃止される公館が二つと聞いておりますが、この新たに設置される在外公館が置かれる国の治安の問題が最も我々が憂慮しなければならないのじゃないのか、こういう視点から、それぞれの在外公館設置される国の治安状況、あるいはまた任務を遂行するに当たっての困難はないのかどうなのか、この点について外務省から御説明願いたいと思います。
  69. 荒義尚

    ○荒政府委員 お答え申し上げます。  今般の御審議をお願いしております法案によりまして新設されるウラジオとハバロフスクでございますけれども、残りは兼轄でございますので、この二つの地域の一般的な治安、安全状況についてお答えいたします。  この地域を含みますロシア沿海地方全般の状況でございますけれども、私どもの認識としましては、全般的にやはり悪化の方向に向かっておるというふうに認識しております。これはロシア側の数字でございますけれども、例えば犯罪発生件数で見ますと、九一年から九二年にかけまして大体三〇%近い増加になっております。また、内容につきましても殺人等、若干凶悪犯がふえる傾向にあるということでございます。
  70. 東祥三

    ○東(祥)委員 実館が置かれるところについて説明してくださいましたが、兼館といえどもそれぞれの国から当該兼轄する地域に外交官が行って実情調査等をせざるを得ないわけですから、そういう意味でその他の兼館が設置される国々に関しての状況についても御説明願いたいと思います。
  71. 荒義尚

    ○荒政府委員 御説明いたします。  順番に、手短に申し上げますが、まずグルジアでございますけれども、御案内のように状況は非常に混沌としておりまして、状況は悪化の方向といいますか、少なくとも現状で改善の兆しは余りないということでございます。  それから、クロアチアにつきましては、これも御案内のとおりでございまして、いろいろ報じられるとおりの非常に危機的な状況が続いておるということでございます。  それから、スロバキアとスロベニアでございますけれども、これについては特に現在のところ懸念する状況にはないというふうに考えております。  チェコについても、従来との比較において何か悪化の兆しがあるというような情報には接しておりません。  以上でございます。
  72. 東祥三

    ○東(祥)委員 現在特に治安が懸念されると言われる国で、なおかつ在外公館が実館としてある国の数というのはどれぐらいあるのでしょうか。
  73. 荒義尚

    ○荒政府委員 私ども、海外におられる在留邦人あるいは海外への渡航者の生命及び身体の保護という観点から、これらの方々に対する当該国または地域における危険の度合いに応じまして、注意喚起であるとかあるいは渡航自粛勧告といった渡航情報、こういうものを出しておるわけでございまして、そういう角度からの数でございますが、きょう現在でございますけれども、渡航自粛勧告、これは観光旅行の自粛も含むものでございますけれども、これが三十五国または地域、それから注意喚起、これはいろいろな度合いの注意喚起がございますけれども、これが三十四国または地域、こういう数字でございます。
  74. 東祥三

    ○東(祥)委員 在勤手当との兼ね合いで質問させていただきますが、そういった国々に派遣される外交官に関しては特別な手当というものが配慮されるのでしょうか。
  75. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 先生指摘のとおり、世界各地で政情不安が深刻化しておるわけでございまして、在外公館を置いている地域においても例外ではございません。  手当の問題でございますが、治安面を含めた勤務環境の厳しい地に在勤する者に対しましては、在勤手当の算定におきまして純生計費に加えてこれに対する加算を行っております。また、戦争等特別事態が発生した場合には、さらに在勤手当に対して特別加算というものを加算しております。
  76. 東祥三

    ○東(祥)委員 例えばテロ等が横行している国があるとします。現実にもあるわけですけれども、そこで在外公館に勤められている外交官が自分のものとして所有している自動車が爆破されてしまう、例えばそのとき自動車手当、あるいはそういうところでは概して保険等を掛けるというのも非常に難しいという場面も出てきますが、そういう補償はされますか。
  77. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 一般的な公務災害に対する補償はございますが、今御指摘のような財産の損失に対する補償の制度は現在のところございません。
  78. 東祥三

    ○東(祥)委員 そういうことを考えていく、検討する対象項目としてお考えになっておられますか。
  79. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 非常に貴重な御指摘をいただいたわけでございます。損害の算出その他いろいろ難しい問題がございますが、私どもとしてこれは緊急に検討しなければいけない問題だという問題意識を持って従来から検討をしておりまして、今後ともそういう検討を進めていきたい、こういうふうに考えます。
  80. 東祥三

    ○東(祥)委員 治安や安全のみならず、世界百九十カ国ぐらいあるんでしょうか、そのうち日本が承認している国、百八十四カ国あるというふうに聞いています。在外公館があるところも、大使館だけでも百十館あるわけですから、そこには高地の国あるいは気候が非常に悪い国、空気が希薄な国、汚染されている国、また飲料水が適切に十分に入らないところ、あるいはまた医療環境が整ってないところ、お子さんの教員問題に関しても不十分なところ、いろいろあると思うのですが、そういう国々に派遣される外交官及び家族に対して、まず優先順位はどこに置いて在勤手当というのがつくられるのでしょうか。具体的に申せば、治安問題が一番優先順位が高いのか、衛生問題なのか、教育問題なのか、この点について御説明願いたいと思います。
  81. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 先生指摘のとおり、在外に勤務する者にとりましての不安要因というのはたくさんございます。先ほどから議論をされております治安の問題のほかに、先生も御指摘のとおり、衛生の問題それから現地のインフラの問題、それから生活必需品が不足している問題、教育の問題、いろいろございます。  私どもとして今これをどういう優先順位で考えているかというお話でございましたが、そういうものを便宜的に十五の項目に分けておりますが、そういうものを全部総合的に判断して、これを特勤度というものを決めておりまして、どれに一番大きな点数というか比重を与えているということではございません。全体を総合的に判断しているということでございます。
  82. 東祥三

    ○東(祥)委員 総合的にという言葉はすごく便利な言葉なのですが、それを判断する基準、各項目、教育なら教育、衛生環境あるいは医療環境、どういうものが欠けていると特別な配慮をしなければならないのかという、ある程度客観的な基準がなければできないのではないのか。  世界各国にいろいろな方々が行かれているわけですから、外交官の方々の仕事というのは全般にわたる仕事だと理解いたしております。その中に特に自分たちの待遇、境遇を変えることに熱心な大使がいらっしゃれば、その大使の言葉というのは頻繁に本省に来るのではないのか。あるいは自分たちの身分はともかくとして、とにかく外交官としての任務を遂行しなければならない、自分たちの処遇はちょっと置いておいて真剣に闘っている大使もいらっしゃる。そうすると、声の大きいところは改善されていき、声が小さく献身的に働いている大使館というのはそうでなくなる、そういうことになるのではないのか。  そういう意味で、総合的判断というふうにおっしゃいますが、どのような客観的な基準に基づいてやられているのか。それもまたちゃんと優先順位が多分あるはずだろうというふうに思うのですね。日常物資が余り入ってこないところと、日常物資はまあまあいいけれども、入手できるけれども、治安が非常に悪いだとか、これは全然違う配慮がなされなければならないのではないのか、このように思いますが、御説明をお願いします。
  83. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 まず最初の御質問の、声の大きな大使に影響されるのではないかという点でございますが、これは私どもは客観的データに基づいて調査しております。何年に一度か大がかりな見直しをやっておりますが、そのときには当然のことながらいろいろ細かいことについて現地事情を聞いた上で、本省がそれを判断する。それから、そういう総合的な見直しをしない年におきましても、現地事情はちゃんと聞くような形になっております。言ってこなければほっておくということではなくて、現地事情を聞いております。  それから、客観的基準という話でございますが、私先ほど総合的と申し上げましたけれども、例えば物資が、野菜が入らないという話と治安というものをどういうふうに比重をつけていくかというのはなかなか難しい問題でございますけれども、私どもの内部の基準で、例えば現地の気象条件、それは例えば九十くらいに比重を置こう、それから物資の入手のできないできるというのは例えば三十点くらい置こう、治安の悪さというのは至って、やはり百点を超えるくらいの点で検討しよう、こういうふうに一つ一つ点数をつけておりまして、それを加えたもので特勤度を決めていく、そういう意味で総合と申し上げたわけでございます。  それで、それぞれの、例えば医療施設ということでございますと、ABC、そのほか細かく採点するわけでございますけれども、例えばAというところでは、国内では全く治療ができないという場合にはAとして、それは何点とする、こういうふうに内訳は細かくやっておりますが、最後は総合点みたいなものでやらざるを得ない、そういう意味で総合と申し上げたわけでございます。
  84. 東祥三

    ○東(祥)委員 わかりました。  そういった諸環境、生活環境あるいは治安環境、今御説明してくださったもろもろの点に直面しているその地域のことを公文書では瘴癘という言葉を使われてまだやられているようですけれども、瘴癘地という意味を理解できる人も最近少なくなっているのじゃないか。まして字を書けと言われたら、これは全く書けない。  それで最近では公称として不健康地かつ特定勤務地という言葉を使っていますが、不健康地はよくわかります。それから特定勤務地といっても、これはどういうことなのか。生活水準が非常にめちゃくちゃに高いのか、あるいはまたリゾート等が完備されていてすばらしいところなのか、それも多分特定という勤務地から意味するものはあるのじゃないのか。しかし、実際中を見てみると、極めてきつい、厳しい環境のところを特定勤務地というふうに言われていて、言葉とその実態が意味するものが違う。英語でいえばハードシップという言葉がすんなり入ってくるわけですが、ハードシップを英語でいうと、過酷な国、過酷な勤務地というふうに言われるのじゃないかと思いますが、不健康地かつ特定勤務地と言うより、もろに過酷な勤務地と言った方がすっきりするのじゃないのかと個人的には私は思っているのです。  この点について、まず、瘴癘地という言葉は完全に抹殺して、そしてそれにかわる言葉をつくるべきなのではないのか、このように思うのですが、いかがでしょうか。
  85. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 過去におきまして外務省が、勤務環境の厳しい地を指すに当たって瘴癘地という言葉を使ったことがございますが、まさに御指摘のとおり、瘴癘地という言葉は余りなじみのない言葉でございまして、そういう点からも不適当だということで、最近は特定勤務地という言葉を使っております。  不健康地と特定勤務地の違いはどういうことかというのも御質問の一環であったかと思いますが、これは少し別な概念でございまして、不健康地と申しますのは、私ども、外務公務員法に基づきまして、在外公館に勤務する者については三年に一度日本で休暇をとれることになっております。これは余り長いこと在外にいると日本事情も疎くなるので、そういう意味で三年に一度は帰してやろうということでございますが、不健康地については、これは省令に基づきましてそれを早めて、一年半に一度ということをしております。一年半に一度帰れるところを不健康地というふうに外務省の中では呼んでおります。現在、そういう地は百十一公館ございます。  それから、先ほど御指摘の特定勤務地でございますが、これは先ほどからお話に出ております在勤手当の加算をされる地域のことでございまして、先ほどから申し上げておりますような総合点によりまして、何らかの措置が必要であるという地を特定勤務地とし、特定勤務地の中でもそれを六段階に分けて、それぞれ生活基本費に対する加算という制度をとっております。
  86. 東祥三

    ○東(祥)委員 特定勤務地というのは、これはもう決まりですか。僕は言葉としてすっきりしていないということを申し上げているのですが、これはいかがですか。
  87. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 以前は瘴癘地、瘴癘度というような言葉を使っておったわけですが、それが適当でないということで、ない知恵を絞った結果、特定勤務地という言葉が出たわけでございますけれども、これは決していい意味、特定にリゾートがあってすばらしい地ということではないわけで、先生がおっしゃったような言葉も検討し得ると思いますけれども、短くあらわすにはどんな言葉がいいか、従来から首をひねってきたわけですが、現在のところ特定勤務地という言葉を使わせていただいております。
  88. 東祥三

    ○東(祥)委員 それでは、次の問題に行かせていただきます。  一時半から外務大臣が来てくださるというふうに聞いておりますので、その前の段階で、パレスチナ人問題について質問させていただきたいと思います。  私たち、特に私は戦後生まれで、日本の安全で平和で1現在では日本のパスポートを持って世界を旅行して、そして何か問題があれば在外公館に駆け込んで、駆け込めばそれなりの日本国からの保護を受けることができる。こういう状況下に住んでいる人間にとってみれば、なかなか理解することができない問題の一つ、なおかつ国際社会における極めて重要な問題の一つがパレスチナ人問題なんだろう、このように認識いたしております。  その上でまず最初に、パレスチナ人問題というのが、湾岸戦争前と湾岸戦争後、どのように変化してきているというふうに外務省は認識されているのか、この点についてお考えをお願いいたしたいと思います。
  89. 小原武

    ○小原政府委員 お答え申し上げます。  パレスチナ人は、大別して、地理的に二つに分けることができようかと思います。まず、一九六七年以降イスラエルが占領してその地域に住んでいる者、すなわち、具体的に申し上げますとヨルダン川の西岸、それからガザに住んでいる人たちであります。それからもう一つは、今申し上げた占領地以外の世界各地に住んでいる人。このように大別できるかと思います。  そこで、前者の方でございますが、湾岸危機がイスラエルの占領地に住んでいるパレスチナ人にどういう影響を与えているかという点でございますけれども、占領地の外からのパレスチナ人の送金、これが非常に大きな生活上の収入であったわけでありますけれども、これが相当程度とまったということ。それから、イスラエルとの関係におきまして、イスラエル本土への出稼ぎなどがいろいろ制限を受けるようになっているというようなことで、生活状況が従来よりかなり逼迫しているというふうに言われております。  それから後者、占領地以外に住んでいるパレスチナ人でございますけれども、特にイラクによる侵攻を受けましたクウェートから多数のパレスチナ人が、周辺国、なかんずくジョルダンに退避して、そこで新たな生活をしているという事態が生じているということが言えると思います。
  90. 東祥三

    ○東(祥)委員 今局長から御指摘ありました、クウェートにイラクが侵略する、その後多くの方々がヨルダンに戻られたというふうに御説明がありましたけれども、クウェートにおけるパレスチナ人の実態、湾岸戦争前と後はどういうふうになっているのでしょうか。
  91. 小原武

    ○小原政府委員 外国における第三国人の生活状況に関する御質問でございますので、包括的に把握できているわけではございませんけれども、クウェート政府は公式には、パレスチナ人であろうとどこの国民であろうと国内在住の外国人には同一の待遇を与えているという立場を表明しております。そうはいいましても、湾岸危機以降、クウェートからパレスチナ人の数が減ったというのは事実のようでございまして、正確な数字はわかりませんけれども、危機以前には約三十万人在住していたと言われているパレスチナ人が、危機後に数万人ぐらいに減っているというふうに言われております。  どうしてそういう現象が起きているかということにつきましては、イラクがクウェートを占領している間にこれに協力したというふうに見られて出国を余儀なくされた者、あるいはパレスチナ人がイラクに協力的であったというイメージがクウェートの中にかなり広まったために、出国した方が得策だと判断して出た人たちがいる。いろいろな事情でクウェート在住のパレスチナ人が減ったというふうに承知しております。
  92. 東祥三

    ○東(祥)委員 湾岸戦争前、クウェートにパレスチナ人が三十万人ぐらいいた。そのうちの多くの方々がヨルダンに戻った。ヨルダンに戻れたのはいかなる理由によるのでしょうか。
  93. 小原武

    ○小原政府委員 お答え申し上げます。  理由は詳細に承知しておりませんけれども、ジョルダン政府がかつてジョルダン川の西岸に行政権を行使していたということもありまして、パレスチナ人に対する出入国がジョルダンの場合非常に寛容であるということが一つ言えようかと思います。それからもう一つは、親戚縁者がジョルダンに多数住んでいるということのために、それをつてに戻ったという人も相当多いのではないかというふうに想像いたします。
  94. 東祥三

    ○東(祥)委員 一九四八年に第一次中東戦争が起こる。その結果として大量のパレスチナ難民があの地域に噴き出すわけですね。それと同時に、一九五〇年以降、石油産業の興隆とともにかなりの人々が、石油産業が興隆しているところにいわゆる労働者として出ていく。同時に、難民が大量に出ましたから、UNRWAという国際機関、国連パレスチナ難民救済機関というのが設立されたわけですね。そして、UNRWAに登録されているパレスチナ人の難民の数というのは、多分把握されていると思うのですが、まずこの点について報告願えますか。
  95. 小原武

    ○小原政府委員 お答え申し上げます。  UNRWAに難民として登録されているパレスチナ人の数でございますけれども、一九九二年六月現在のUNRWAの資料でございますが、西岸、ガザ、それからレバノン、シリア、ジョルダン、それぞれの地にいます難民を総計いたしまして二百六十四万八千七百七名という数字が登録されております。
  96. 東祥三

    ○東(祥)委員 そのUNRWAの活動地域というのはレバノン、シリア、ジョルダン、西岸地区、ガザ地区の五地区というふうに書かれているのですが、この認識でよろしいでしょうか。
  97. 小原武

    ○小原政府委員 御指摘のとおりでございます。
  98. 東祥三

    ○東(祥)委員 さらにまた、このUNRWAが行っている活動の内容としては、あくまでもこれらの地域にあるキャンプ内の人々を対象にしているというふうに理解してよろしいですか。そして、その数が大体、今お話ありました二百六十四万八千七百七人のうちの九十一万一千人強である、残りの人々はキャンプ外、これらの地域以外のところで生活している。
  99. 小原武

    ○小原政府委員 御指摘のとおりでございます。  このUNRWAが対象としているパレスチナ難民には定義がございまして、その定義によりますと、一九四八年の紛争発生以前に少なくとも二年間パレスチナに通常の住居を持っていた者で紛争の結果住居と生活の手段を失ってUNRWAが活動している地域に避難してきた者、こういう要件を満たす者とその子孫というふうに規定されております。したがいまして、先ほど申し上げました五つの地域において御説明した数の難民が登録されているわけでありますけれども、キャンプで生活しているのは約三分の一に当たる約九十一万人ということでございます。
  100. 東祥三

    ○東(祥)委員 そういう状況の中で湾岸戦争が勃発して、そしてここで悲劇が、いろいろな悲劇がまさに出てくるのですね。  外務大臣にわざわざ来ていただいたのは、まさにこの問題を議論させていただきたい、お力をかりたいということで、きょうこのパレスチナ人問題を取り上げさせていただきました。先ほど局長の方からお話ありました、クウェートにイラクが侵略する、そして種々の理由でもって、正確に理由はわからないとおっしゃるのですが、基本的に、クウェートにいたパレスチナ人の方々がイラクに加担したのではないのか、このように思われて、種々の難あるいは迫害に遭う。その迫害を恐れて多くの方々はヨルダンに逃げていくわけです。ヨルダンのみならずレバノンあるいはシリア、一九四八年の第一次中東紛争以来それらの国々に流れていた人々、そこでは何らかのドキュメントをそれぞれの国でいただいております。したがって、いただいている人々は、湾岸戦争が起こって、そして難を逃れるために、ヨルダンを初めとしてそれぞれの国に逃げることができる。  問題は、そういったところと全く関係ない、何のドキュメントを持っていない人が厳然と存在する。それらの人々の中でも、例えばエジプト政府があのガザ地区を、占領地を占有しているときに発行した渡航証明書というのがあります。この渡航証明書を渡した人が自由にエジプトに戻れるという証明書にはなっていない。したがって、どこにも戻れない人々が厳然とパレスチナ人の中にいる。しかし、数は不明確でございます。  そして、もう外務大臣御存じのとおり、あるパレスチナ人が一九九一年十一月に日本に来ました。まさにクウェートで行われているパレスチナ人に対しての難、迫害、嫌がらせ、こういったものを逃れてインドを経由して日本に届いてきた。  まず知りたいことは、そういうパレスチナ人は一人だけなのですか、その他にいらっしゃるのですか。
  101. 杉内直敏

    ○杉内説明員 お答えいたします。  私ども、出入国管理行政上、出入国及び在留状況につきましては国籍をもって把握しております。したがいまして、定住国の国籍を取得していないパレスチナ人につきましては、通常無国籍者として記録されることになります。  そこで、我が国に入国してくる、あるいはまたその後で在留している無国籍者の中でどのくらいパレスチナ人がいるかということについては、明らかになっておりません。
  102. 東祥三

    ○東(祥)委員 時間がないので結論の方からずっといきます。  今、当該の人の名前はもう新聞で、朝日やその他の新聞で大々的に取り上げられておりますので、ファワズ・フセイン・エルハナフィーさんという方ですが、一九九一年の十一月に日本に来られました。そしてすぐさま難民認定の申請を法務省の方に行います。一年たって、昨年の十一月にこの方の申請は基本的に認められなくなりました。そして現在異議申し立てをしている最中でございます。この方の家族、例えばお父さん、お母さんは、湾岸戦争後クウェート政府によって強制退去させられてスーダンに今おります。そしてまた妹さんも同じように強制退去させられてスーダンにおります。そして弟さんは湾岸戦争中アメリカに留学しておりました。湾岸戦争後、アメリカ政府に対して難民認定の申請を行いました。昨年一九九二年四月の段階で難民認定の申請が受諾されました。こういう状況下で起こっている問題です。この方は、今お話ありましたとおり基本的に無国籍です。どこにも行くことができません。  さらにまた出てきている状況の変化というのは、湾岸戦争というものが勃発して現在のクウェートにおけるパレスチナ人に対しての扱い、これはお読みになっていると思いますが、アムネステイ・インターナショナルからもかなりの報告書が出ております。たまたま私が持っているのは、「戒厳令下における失踪、外部との接触を断たれた拘禁、拷問、超法規的処刑の事例」ということで六十一の事例がここに出ております。さらにまた、ガルフ・インフォメーション・プロジェクトというところからも詳細なデータが出ております。  そういう状況の中であるにもかかわらず、日本法務省としては彼の難民認定の申請を却下してしまった。弟さんは、ここに法務省のレポートも取り寄せておりますが、先ほど言いましたとおり、湾岸戦争が起こったときアメリカにいらっしゃる、留学している、状況が変化する、そして難民認定の申請をする、そしてそれが受け入れられる。ここで、衝撃的で僕は驚いたわけですが、「イット ハズ ビーン ディターミンド ユー ハブ エスタブリッシュト ア ウエルファウンデッド フィア オブ パーセキューション アポン リターンツー ユア ホームランド」つまり、あなたが母国へ戻った場合、迫害を受けるというおそれが十分に根拠あるものであると裁定されました。そして、その結果として、あなたの庇護の請求は一九九二年四月二十九日をもって認められた。  今、日本に来ているこの当該パレスチナ人の方は、二回、現地クウェートにおいて逮捕されそうになっております。そしてそれを、間隙を縫って友人たちの協力でもって日本に来ました。そして難民認定の申請をする、却下される。異議申し立てがこれからどういうふうになっていくかわかりませんが、難民条約というのは国際法でございます。日本も批准しています。アメリカも批准しています。難民の定義というのは、基本的に用件は同じはずです。にもかかわらず、明らかに事情が違う。弟さんは湾岸戦争のときいないわけですから、またその結果、迫害されていない。にもかかわらず、一方においては認定されている。お兄さんである彼は湾岸戦争後もずっとい続けなくてはいけない。そして日本で難民認定の申請をしたにもかかわらずこれが却下されてしまう。  法務省の方が来ていただいておるのですけれども、一応、なぜこれは否認されてしまったのか、そのことをまずお願いいたします。
  103. 杉内直敏

    ○杉内説明員 お答えいたします。  私ども、個々の難民認定申請につきましては、本人のプライバシーの保護といった観点や、それから関係者に対する何らかの危害が及ばないか、こういったことを防止するといったような観点から、その申請の有無を含めまして原則として明らかにしないということでやっております。そういった意味におきまして、ただいま先生御提起の個別のケースにつきましても、立ち入った説明をすることは差し控えさせていただきたいと考えます。
  104. 東祥三

    ○東(祥)委員 非常に不満足な答えでございますが、要するに私の言いたいことは、難民条約というのがある、日本は批准しているわけです。アメリカも批准しているのです。難民の定義の要件というのは基本的に同じです。同じような状況以下、つまり湾岸戦争というのが起こる以前から弟さんはアメリカにいて、当然アメリカ法務省としても難民条約の要件を満たすかどうか、これをやっています。弟さんは認定される、日本は認定されない。彼はどこにも行けないわけです。無国籍です。  そういう状況の中で、日本政府として、これは大変失礼ですけれども、ある意味で日本の政治的な決断、外務大臣が主導権を握っていただいて、閣議あるいは法務大臣とこういう問題に対して、政府自体として一体どういうふうに考えたらいいのか、そういう議論をしなければならないほど極めて重要な問題じゃないのかと私は思うのですが、外務大臣、いかがでしょうか。
  105. 丹波實

    ○丹波政府委員 大臣から御答弁ある前に、先生もうこの難民の問題、大変御専門でいらっしゃいますけれども、難民条約との関係を二、三度言及されましたので、その点だけ整理させておいていただきたいと思います。  あくまでも条約論として申し上げますと、一般論として申し上げますと、難民条約上、難民の受け入れというものは、それなりに適切であり条約の趣旨ではございましょうけれども この難民条約そのものの直接の義務というふうにはなっておりませんで、各国が国内法によって、日本の場合は出入管及び難民認定法ですけれども、独自に判断するということになっておるということでございまして、こういう法務省の仕事に対して外務省がどういう働きかけをするか、どういう考え方で基本的に日本政府として対応するか、これは先生の御議論のところですけれども、条約上の問題だけ、ちょっと私の方から説明させていただいた次第です。
  106. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 難民問題、非常に難しいことは事実です。日本は難民の受け入れ方が足りないというような批判を受けていることも事実です。しかしながら、日本のようなちっちゃな国で、現実は、それはルーズにすると、この前も中国とかベトナムとかの難民がたくさん来ましたが、ちょっと緩やかにしたらそれは何万という人がすぐ来ますよ。そういう問題もあるし、何か人道上の問題、国内の狭い国土と多い人口との問題、いろいろ考えなければならぬことでありまして、遠いところから来るというような難民もあるでしょうが、問題は近くですから。だから、地続きでないからまだその点、助かっていると言っちゃ語弊があるのか知りませんが、本当に難しい問題だな。したがって、条約も、義務づけているというわけじゃなくて、それぞれの国内法でそれは裁いて結構ですということになっている。  当面我々は、一番多かったのがやはり中国とかベトナムですよ。だから、これについてはもう難民が来なくていいように、それぞれ自国で生活できるというようにしてやるのが一番手っ取り早いのですね。食えないから来るというのは、政治的迫害もありましょうが、むしろ貧困のために来る。だから、これは難民じゃないのですね、本当の意味の。政治亡命でもありませんしね。だから、向こうの国で生活できるようにしてやるというのもやはり一種の難民対策なんですな、これは。  だから、今後いろいろそういうふうな皆さんの御意見も伺いながら、現実に即して対応してまいりたいと考えております。
  107. 東祥三

    ○東(祥)委員 今話しているのは、大規模な難民問題ではなくて個々の極めて特定された問題について説明させていただいております。今当該の問題というのは、無国籍でどこにも行くことができず、一方においては本国に帰ったならばしかるべき迫害を受けるだろうと言われているケースでございます。ところが、日本の場合はそれを基本的に否認してしまった。先ほど課長からお話ありましたとおり、個々のケースについてはプライバシーの問題があるということで言えないということで、お立場上それはそれとしてよろしいんじゃないかと思うのですが、問題は、否認した以上、これは本国に帰ったとしても別に迫害は受けませんよということを言っているということですね。それを私は今論じているのであって、それに対して外務大臣としてどのようにお考えになるのですか。中国の問題を論じているのではありません。さらにまた、潜在的などこから来るだろうという問題を論じているのではありません。極めて特定された――多くのパレスチナ人は自分の生まれたところ、住んでいたところに戻られているわけです。戻られない人々が現実にこの世界にいる。それは我々日本人にとって極めて理解しがたい現実ですけれども、現実は現実として起こっている問題です。これに対して外務大臣はどのようにお考えですか。  私の要請は、ぜひ法務大臣お話をしていただいて、この問題に対して政府として明確に答弁していただければ、また、これに対して今答弁することができなければ、追ってでも構いませんので明確なる政府の態度を示していただきたい、このように思います。
  108. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 パレスチナ人については、パレスチナ人の民族自決権は承認さるべきだ、基本的にはそういう考え方であります。したがって、そのような考え方に基づいて対処しているわけですが、一つ一つのケース・バイ・ケースの問題、例えば今言ったような問題、これにつきましてはやはり法務省が、出入国管理及び難民認定法という法律がありますから それに基づいてケース・バイ・ケースの問題については適切に対処している、そのようにしかちょっと今のところ答えられないと思います。
  109. 杉内直敏

    ○杉内説明員 一点補足させていただきたいと思うわけですが、難民の認定自体につきましては、私ども、難民の地位に関する条約、議定書に従って誠実に認定を行っているわけですが、その話とはまた別に、在留を認めるかどうかという話はこれはまた別の話ということでございます。  そこで、ある外国人につきまして在留を認めるか否かということにつきましては、先生指摘のようなことで出国できない事情というようなことがありますと、これは在留の許否決定の際に十分配慮しているということを申し上げさせていただきたいと思います。
  110. 東祥三

    ○東(祥)委員 時間が来ました。どうもありがとうございます。残念です。
  111. 牧野清文

    牧野委員長 それでいいですか。
  112. 東祥三

    ○東(祥)委員 時間が来ましたので。委員長から何かお言葉ありますか。
  113. 牧野清文

    牧野委員長 総務課長に今の質疑でお伺いしたいのですが、質問者はいろいろな条件を言って法務省の判断を聞いておる。あなたの答弁は、プライバシーにかかわることであって答えられないという返事。それじゃ、質問された方の条件以外に法務省として断った理由があるのですか。それが別の理由としてプライバシーにかかわることであるから言えないというのが法務省答弁ですか。質問者の質問した条件以外にプライバンー、説明できない、答弁できないプライバシーの条件があって否認した、その別の条件についてはこれはプライバシーだから法務省としては言えない、こういうことですか。
  114. 杉内直敏

    ○杉内説明員 お答えいたします。  私が先ほど申し上げましたのはあくまでも一般論を申し上げたわけでございまして、先生の御指摘のような条件以外にそのケースについてプライバシーの問題があったとかなかったとか、そういうことを申し上げたわけではございません。あくまでも一般論として申し上げさせていただいたわけです。
  115. 牧野清文

    牧野委員長 三浦久君。
  116. 三浦久

    ○三浦委員 まず官房長官にお尋ねをいたします。  官房長官はモザンビークのPKO問題について、二月二十三日の当委員会で、いわゆる五原則という前提は満たしているというふうに考えておる、しかし五原則が満たされているからといって即自衛隊をPKOに参加させるというものではない、そういう趣旨の答弁をなさいました。モザンビークの政府調査団の報告書が出まして、ここではPKOの五原則は満たしている、そういう内容になっておりますが、これは直ちに自衛隊をモザンビークに派遣をするということを意味するものではないというふうに判断をされておられる、そのことには変わりはありませんか。
  117. 河野洋平

    ○河野国務大臣 PKO五原則はそれが満たされていればすべてに出すというものではなくて、そのPKOの五原則が満たされていれば、そこから政治判断をその上で下すという筋のものだというふうに私は考えておりまして、調査団が参りまして、PKO五原則はおおむね満たされておるという報告書を提出をしてくれました。この報告書は、三浦委員もごらんのとおり公開されておりますので、どなたも見ていただいていると思います。そこで五原則が満たされたということになると、そこで初めて日本は政治的にどうするかという判断を次の場面で下すというのが順序だろうというふうに思っております。
  118. 三浦久

    ○三浦委員 宮澤内閣は憲法を守るということを一応言っております。今、世界、特にアジアの諸国民は、日本の言動に大変大きな注目をいたしておると思います。世界でまたくさんPKOが行われているわけですが、それについて要請があれば必ず出すということでは、これはその場所がアジアではなくても アジア以外の地域であっても、やはりあの日本軍によって侵略の手痛い被害を受けたアジアの諸国民の恐怖、また警戒心、これを呼び起こしていくことになると思うのですね。そういう意味で私は、このモザンビークへのPKOへの協力のための自衛隊の派遣というのはやめるべきであるというふうに考えます。  国際貢献をする、そういう道は幾らでもあるわけです。官房長官も二月七日付の毎日新聞のインタビューで、「国際貢献を直ちに軍事協力と結びつけすぎている。日本がやるべき国際貢献はたくさんある。数えあげればきりがない。現行憲法は全く国際貢献の障害にならない。」こういうふうに言っておられますね。モザンビークの援助での検討というのは、自衛隊を派遣するということではなくて、まさに平和的な手段、いわゆる飢餓、貧困をなくすための食糧援助、または保健、医療、教育、こういうものについて検討すべきだというふうに思いますが、いかがでしょう○河野国務大臣 一般論をまず申し上げますが、一般論として私は国際貢献はさまざまな貢献の方法があるというふうに思っております。紛争処理への協力ももちろんあると思いますけれども、もっと根源的に言えば、飢餓とか貧困とかそういったものをなくしていくことが、紛争を根本的にといいますかさかのぼってなくす一つの要素。もちろん貧困とか飢餓以外にも宗教的な対立とか民族的な対立がございますから、貧困をなくせばすべてがなくなるというふうにも思いませんけれども、貧困、飢餓、そういったものをなくすということが紛争を減らしていく大きな要素であるというふうに私は思っておりますから、国際貢献の道はたくさんあるというふうに一般論として申し上げられると思います。  しかし、先生がおっしゃるモザンビークのことについては、モザンビークについては長い間内戦があって、その長い間の内戦を、政府側と反政府側といいますか、双方が話し合いによって和平の話し合いがついて、さていよいよこれから新しい体制をつくり上げるためにどうしていくかということが今議論になって、その準備のために国連がONUMOZという組織をつくってあそこに入って、その国連のONUMOZという活動に世界の国々が協力をするかしないかという、そういう場面にいるわけです。  一方、日本の国はPKO法という法律をつくりました。これは三浦先生もよく御承知のとおり、日本国憲法の範囲内で国際貢献をするための一つ法律でございます。したがって、我々はPKO活動に協力をする場合には我が国のPKO法の範囲内でやることは当然のことであって、この法律の範囲内でやるということが憲法上疑義があるというふうには私は全く思っておりません。  ただ、先ほども申し上げましたように、その五原則が満たされていればどこへでも、いつでもどんなところにでも出ていくかどうかということになると、これは、PKO法という法律の中には、例えば外国に出すのには現行法では二千人を上限とするという数の上の制限があったりいろいろするわけでございますから、限られた法律の範囲の中でより効果的に国際貢献できるのはどこかとか、どの地域にどういう貢献をすることが一番効果的かとか、その効果的かというのは、その地域にとって一番効果が大きいかとかいうことを判断するのは政治的に判断をすればいいことではないかというふうに思っているわけでございます。
  119. 三浦久

    ○三浦委員 国際社会において名誉ある地位を占める、そのためにも私は、憲法の平和的な条項を守って、そして平和的な貢献をすべきだということを申し述べておきたいと思います。  渡辺外務大臣お尋ねをいたします。  外務大臣は、一月二日、栃木県の大田原市で開かれた後援会の集まりで、国際紛争、国際的人助けに自衛隊が飛び出していけるよう憲法解釈を変え、自衛隊法も改正すべきであると言いました。そして、どうしても憲法が邪魔になるならその部分を直したらいいというふうに述べられています。これは、憲法を尊重し擁護するという義務を負っている閣僚の発言としては、私は極めて重大な意味を持っていると思いますが、こういうお考えは現在もお変わりはないのですか。
  120. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 法律でも憲法でも同じでございまして、閣僚も国民もそれは守らなければならない義務があるのですよ。だからといって、法律をつくったから、その法律のこういうところが問題があったとか、後から考えてああいうところがあったとかいうことについて議論をしてもいけない、改正案を提案してもいかぬ、そういうことにはならぬのですよ。やはり守るものは守るけれども、改正すべきものがあったら改正する議論をして何ら差し支えない。  私は何も今すぐ憲法を直せなんて言ってはおらぬわけです。PKO法案は憲法違反だと言う人もあるし、憲法違反じゃないと言う人もある。我々は憲法違反じゃない、そう言っているわけです。だから、どうしても憲法違反だと言う人がうんと多ければ、それじゃ、しかしながら国際貢献しなくていいんですかと。いや、それはしなければならぬ、国際貢献をしなければならない、憲法は守れないというんだったら、それはどうするのですかということで、どっちをとるかは政治的判断ですからね。ただ、そういう場合こ、国際貢献はどうしてもすべきだということになれば、それは直すべきだということになる。  今の憲法の問題というのは、あの憲法は国際貢献という問題はじかには書いてないけれども、国際社会の一員として国際的ないろいろな約束事や何かを守らなきゃならぬと、極めて平和主義的なことを書いてあるのですよ。国連憲章と大体似たようなことが書いてあるのですよ、実際は。できた時期も同じですからね、一九四五年前後ですから。国連憲章もそうだし、日本の憲法もそうですから。だから、あの戦争が終わって、みんなくたびれちゃって、二度と戦争はやらないということでできたのがあの国連憲章であり国際連合だからね。だから、それの模範ケースを日本に当てはめようと思って占領軍が起案したわけですよ、日本国憲法というものは。そして、マッカーサー・ノートを出して、こういうふうにつくって、あのとおり書けといってつくらせたわけだからね。  だから、そういうような問題があったけれども、我々は承認している以上は、憲法は守らなければならない。しかし、私はあの精神は国際貢献ということに非常に役立つ精神だ、そう思っておるのです。だから、特別に憲法をすぐ直せとかどうとかと言っているわけじゃないのです。
  121. 三浦久

    ○三浦委員 あなたは今一般論として言ったんだというふうに言われていますけれども、しかしあのお話を拝見いたしますと、結局自衛隊のカンボジア派兵そのものについて言われているという印象を私は受けるのです。  というのは、例えばPKFの凍結を解除すべきだということも言われている。そしてPKO協力の業務、自衛隊の業務、これを本務にすべきだということも言われている。それで、憲法が邪魔でできないんなら憲法を変えろ。非常に具体的ですよね。一般論じゃないのです。  そうすると、これは憲法で規定している、閣僚は憲法を尊重して、擁護して、憲法の範囲内で行政を行わなければならぬという基本的な精神を踏みにじっているんじゃないかと私には思われるのです。その点、どうお考えですか。
  122. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は憲法違反と思っていないんだから。憲法違反だとぶって、反語的に言っているんですよ、あれま。反語的というのはわかるでしょう。あなたそうですがと、で、実際は違うときに、そうですがと、反語的に言っているんですよ。言葉のあやなんです。私はPKO法案というのは憲法違反と思っていませんから、それでできると、一口で言えばそれだけで、余計なことを言わなければそれだっていいんですよ、実際はね。  ただあそこの、PKFの部分は、それは私は憲法違反だと思っておりません。おりませんが、諸般の情勢から当分これま凍結をして、解除するのには国会の決議を必要とすると、そういうことならば公明党さんもその法案に賛成するということになりましてそしてまあ政治は妥協ですから、衆議院で通過しても参議院で通過しなければ何にもならぬわけですから、だからそこは、一番いいことを言ったってしようがないから、一歩前進のところだが半歩前進でとりあえずはいこうじゃないかという政治決定が行われて、それで我々も同意した。廃案にしてしまうか、それとも一歩前進にするか半歩前進にするかということについては、最終的に政府・与党で相談をした結果、この際は半歩前進でもいいからああいうように修正しようと、こういうことになったわけです。
  123. 三浦久

    ○三浦委員 あなたは今、PKO法は憲法違反じゃないと言われた。憲法違反じゃなきゃ邪魔者だとかそんなことを言う必要は全くないわけでしょう。あなた自身が、これから行おうとしているPKFの解除だとか自衛隊のPKO協力業務を本体業務にしようということ、そのことが憲法に違反するんなら憲法を変えろ、見直せ、そういうふうに言っているわけですね。閣僚としては本来は、憲法が邪魔だから見直せじゃなくて、自分のやっていることがこれから憲法に違反しようとするなら、そういうことはするなというのが憲法遵守義務を負っている閣僚としてのあるべき姿だということを私は申し述べて、次の問題、これもやはり渡辺外務大臣の発言に関係する問題ですので、ちょっとお尋ねいたします。  大臣は二月三日の衆議院の予算委員会で、カンボジアで大規模な武力紛争が起こりましたね、そのことに関連して答弁されていますけれども、カンボジアでは全面戦争になっている状態じゃないんだ、こう言われて、そしてカンボジアからの自衛隊の撤退というものを否定されたわけであります。  実施要領では、大規模な紛争が起こった場合には現地の人間は防衛庁長官を通じて本部長に報告せい、こうなっていますね。ところが、大規模な紛争が起きたら、いや全面戦争がなければ撤退しなくてもいいんだというふうに、カンボジアの実態に応じて撤退の条件を、いわゆるハードルをどんどん上げていっているというふうに私には思えるのです。これは非常に遺憾なことでありますが、外務大臣は、全面的な紛争、戦争、そういうものがなければ、自衛隊をカンボジアに派兵することもできるし、撤退をしなくてもよろしいんだ、そういうふうにお考えになっていらっしゃるのですか。
  124. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それはわかりやすく私が説明しただけであって、例えば全面戦争というのは、大規模な、本当に全地域にわたるような紛争ということを意味するのですよ。しかもそれも、ある程度紛争があってもすぐ終わっちゃう、本当に臨時的な、何かの間違いでそういうふうな事態になったけれどもすぐにそいつは取り消したという場合もそれはあるでしょう。ずっと継続されるという場合もあるでしょう、かなり大規模なんだけれども長く継続されると。規模は全面的ではないけれども、ごく一部であるけれども、うんと長く同じ場所で、しかも上層部までそいつを承知の上で継続するんだというようなことでパリ協定の枠組みからはみ出しちゃっているということになれば、それは全面的でなくとも撤退とか中断とかというようなことについての考慮の対象としては当然考えられることですよ。  だから、それはケース・バイ・ケースで見なければならぬので、ここで言葉の遊戯をしてみたところで仕方がない。やはりケース・バイ・ケースで現地の指揮官とかリーダーがそれは判断すべきものだと私は思います。
  125. 三浦久

    ○三浦委員 わかりやすい説明をしたと言うけれども、大臣答弁されているのですから、非常に重みがあるわけですよ。大規模から全面的な紛争にまで至らなければ派遣してもいいとか、撤退しなくてもいいとか、そういうふうに言われているから、私は大臣答弁としては非常に重みがあるからお聞きしているわけです。一つの判断の材料という意味らしいのですけれども。  それならそれで、私はどういう場合に自衛隊の海外派兵を撤退しなければならないのかを国民の前に明らかにする必要があるだろうと思うのですね。どんどんどんどんハードルを上げていかれたのではたまったものじゃないと思うのです。今の法律では、紛争の停止並びにこれを維持する当事者の合意というのが必要ですね。停戦だけじゃない、停戦を維持していこうという合意が必要です。それはどういう場合に崩れたと言えるのかですね。そういう判断基準をやはり明らかにしていく必要があると思うのです。  今政府の方から大体こんなものだなと聞こえてくるのは規模の問題ですね。実施要領に、大規模な紛争によってそういう合意が崩れたと認められる場合、その場合には報告せい、こういうのがあるから、規模の問題は一つ念頭にあるのだろう。それからまた、当事者が、おれはもう合意を撤回するという明白な意思を表示した場合、これも実施要領に言われておりますね。そのほかにもいろいろな状況が総合的に判断されなければならないと思うのです。そのいろいろな状況をやはりもう少し丁寧に国民の前に明らかにすべきだと思うのです。  例えば、今外務大臣がおっしゃいましたような、そういう紛争が繰り返し繰り返し継続して行われているということも判断材料になるとか、それからまた、そういう紛争を起こす当事者の目的、意図、背景^そういうようなものについてもやはり国民の前に具体的に明らかにする必要があるんじゃないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  126. 萩山教嚴

    ○萩政府委員 どのような場合に具体的に業務を終了するか、撤退するかというお話でございますが、必ずしもその事前こ具体的なことが発生していない場合に予断を持って個別の事象を挙げるわけにはまいりませんが、一言で言えば、そのときどきの具体的な状況、これに照らして総合的に判断せざるを得ないというふうに考えられますが、今まで、例えばということでいろいろ国会で申してきておりますのは、先生がおっしゃいましたような全面的な戦闘の再開とか、パリ和平協定を明示的に拒否するとか、こういったような場合が例えば典型的な例であろうということを申しておるわけですが、その個々具体的なことについては、その場その場で総合的に判断せざるを得ないというふうに考えております。
  127. 三浦久

    ○三浦委員 それではお尋ねいたしますが、ことしの一月二十五日のカンボジアに関する国連事務総長報告、これは、ポト派の軍隊とプノンペン政府軍との軍事衝突というのは支配領土の獲得をめぐってのものであるということを言っておりますね。プノンペン政府は、ポト派が雨季に影響力を拡大をした領土を回復しようとしている。一方ポト派は、獲得した支配地域を併合しようとしている、そして通信を妨害しようとしている。そういうように支配地域の獲得をめぐって双方の武力集団が集団的な武力衝突を繰り返すということ、このことは戦争状態と言うのではありませんか。どうでしょう。
  128. 萩山教嚴

    ○萩政府委員 先生がおっしゃいましたように、長い間紛争、内乱を続けてきておりまして、やっとのことでパリ和平協定ができ上がったわけでありますが、その過程において停戦違反というものはどうしても避けられないのが残念ながら現状でございます。  その具体的な状況と申しますのは、一つにはポル・ポト派が武装解除をがえんじない。ポル・ポト派は、その武装解除をがえんじないのはプノンペン政権側が停戦違反をしているからだ、こう言っているわけであります。他方、プノンペン政権側は、我々がUNTACの言うことを聞いて武装解除を進めていたら、ポル・ポト派は停戦違反をしてどんどん支配地を拡大してしまった、したがって我々のこの間の行動は正当なる自衛の行動であるということで、どちらも相手側を停戦違反、自分の方を自衛の行動、当然の行動ということで、停戦違反の繰り返しが行われているというのが現状でございますが、これは先生御案内のとおり、どのようなPKOが出されています地域におきましても、大なり小なり残念ながら必ず見られる現象でございます。このような現象をもって私どもは直ちに停戦合意が崩れたというふうには判断し得ないのではないかというふうに考えておるわけであります。
  129. 三浦久

    ○三浦委員 停戦違反は当然あってしかるべきものだというふうに言われますけれども、カンボジアの停戦違反というのは、私は、質的に違う要素を持っている、特徴を持っていると思うのです。例えば普通の停戦違反であれば、ある集団同士は停戦に合意している、しかし出先が偶発的に、また散発的に停戦違反をしたというものだと思うのです。しかし、今カンボジアで行われている武力衝突というのはそういうものじゃないのですね。もうプノンペン政府軍そのものが軍として行動を起こしているわけでしょう。ポル・ポト派も集団全体として行動を起こし、武力衝突をしているという状況なんですよ。  ですから、この同じく一月二十五日の国連事務総長の経過報告によりますと、何と書いてあるかというと、「十二月に二件の重大な停戦違反が起きた。」ポル・ポト派とそしてプノンペン政府「との間の砲撃」、砲撃ですよ。「砲撃の頻繁な応酬がバッタンバン州のバベル地域で一カ月にわたって起こり、約一万五千人の住民が家から逃げだす結果となった。彼らの多くは国連難民高等弁務官事務所が」いろいろ手当てをしている。それで十二月の二十四日、二十五日にも、これはUNTACの施設がねらい撃ちされている。十二月三十一日にも再び同じ砲撃を受けた。その数は二十回に及んだ。こういうふうに言われているのですね。  そうすると、一万五千人の人々が避難をしなきゃならないようなプノンペン政府とポル・ポト派との軍事衝突です。それも一カ月間にわたっておるんです。これはもう組織的な停戦違反であって、そんな出先がちょっと停戦違反をやった、偶発的なものだというようなこととは全然質的には違う問題であります。  ですから、その後二月十三日にやはりカンボジアの状況に関する国連事務総長の報告があります。この報告を見ますと、この前の報告をした後というのですから一月二十五日以降ということですね。「第三次経過報告いらい、カンボジア人民軍とカンボジア国党軍はいくつかの地域で、PDK」、これはポル・ポト派ですが、「PDKの軍隊である民主カンボジア国軍への攻撃を開始した。」もう国と国との戦争になっているわけです。「二つの軍の兵士の移動とともに大砲や迫撃砲による砲撃の応酬も起きた。こうした活動は二つのひろい地域に集中した――バッタンバン州西・中央部一とコンポントム州北西部/プレアビヘア州南・中央部である。より小規模の行動がクラチエ州、シエムレアプ州で起きた。大砲、武装車両、戦車を連動させてもちいながら、」プノンペン政府はポル・ポト派「支配地域の町、バッタンバン州のパイリン近くまでせまった。」こうなっているのですね。  これは単純な停戦違反というようなものではない。政府はこういう武力衝突を大規模なものだというふうにはお認めになりませんか。
  130. 萩山教嚴

    ○萩政府委員 先ほども申し上げましたが、停戦違反がしばしば行われているということは大変遺憾なことであるわけでありますが、お話ありましたように、確かにカンボジア十九州、二特別市のうちの三州、シエムレアプ、コンポントム、バッタンバン、ちょうどポル・ポト派とプノンペン政権軍の接際部といいますか、その地域においてしばしば停戦違反が見られるということは事実でございます。  また、おっしゃいましたように、一部の村落の住民の退避というのが行われているのも事実でございますが、現在までのところ、いずれの派におきましてもパリ和平協定そのもの、その和平プロセスに違反するということではありませんで、その和平プロセスの基本的枠組みは維持されておるということで、私どもは停戦の合意は保たれているというふうに判断をしております。
  131. 三浦久

    ○三浦委員 自衛隊をカンボジアから撤退させるかどうかということは、パリ和平協定が守られているかどうか、そういう問題じゃないんじゃないですか。PKO法に違反しているかどうかということが問われなければならない問題じゃありませんか。PKO法には何と書いてあるかといえば、自衛隊をPKO協力で出す場合の条件として、いわゆる五条件がありますね。五条件の一番大事なものは当事者間で停戦の合意がなされた、そして停戦を維持する、そういう合意があるということが条件。それがなくなったと認められたら撤退、終了しなきゃならないでしょう、法律上は。中断というのは実施要領で書いてあって、中断の手続はあなたたちの内部規定として書かれているけれども、法律から見れば、そういう停戦を維持する合意というものがなくなれば平和維持活動への協力活動というのは終了しなきゃいけないようになっているのですよね。  すると、今これだけ大規模な衝突があれば、当事者間に停戦を維持する合意がある、存在しているなどとは言えないじゃありませんか。これはもう完全に崩れたと見なければなりません。  すると、一たん崩れれば、今度は新たに再停戦の合意が見込まれなければ終了しなきゃいけないということは、あなたたち言っているじゃないですか。そういう見込みまあるのですか。ポル・ポト派とプノンペン政府の間で再停戦の協定ができるという見通しは今のところあるのですか。国連事務総長の報告ではますます武力衝突の危険性は強まったということを言っておりますけれども、どうなんですか。
  132. 河野洋平

    ○河野国務大臣 お尋ねのとおり、パリ和平協定に基づいて、これはカンボジアの和平の一番大きな枠組み、最も大事な枠組みでございますが、この枠組みなどを根拠に日本からも施設大隊を派遣しているわけでございます。もちろん、五条件というものがございます。その五条件の中でも当事者間の和平というものは非常に重いものであることはもう御指摘のとおりでございます。  そして、今三浦委員は、和平協定、明らかに崩れているとおっしゃいますが、私どもは、和平協定の枠組みは崩れているとは思っておりません。SNCの会合でもポル・ポト派を含めてこの和平協定の枠組み、和平協定を遵守する、こう言っておるわけでございまして、和平協定の枠組みが崩れたというふうに我々は考えておらないわけでございます。確かに残念なことでございますが、局地的、地域的には摩擦が起こっている、やりとりがあるという報道はございますが、UNTACの明石代表もそうでございますし、我々も、現在でも和平協定の枠組みは崩れたとは思っておりません。  現在でもあの和平協定の枠組みの中でカンボジアの新しい国づくりが、非常に困難な状況ではあるかもしれませんが、つくられる努力がなされている、難民も戻ってきた、選挙人の登録も進んでおる、五月の二十三日からの選挙、制憲議会選挙を目指してそういう努力が進んでおるということを我々は承知をいたしておりまして、現在のところ、したがって日本からのPKO施設大隊を、その作業を中断させるとかあるいは撤退させるというようなことを考えておらないわけでございます。
  133. 牧野清文

    牧野委員長 もう時間です。
  134. 三浦久

    ○三浦委員 私の、PKO法の停戦を維持する合意が崩れているんじゃないかという問いに対して、お答えがありませんでしたね。これは非常に遺憾であります。  もう一つ、最後に私は申し述べたいのは、UNTACの性格が変わってきているということですね。今まではUNTACは停戦監視であるとか武装解除であるとかそういうことをやっておった。ところが今度は選挙を防衛するための配置ということをというふうに変わってきていますね。全部が全部じゃありません。  そうすると、これは何に備えているかというと、選挙を行うに際してポル・ポト派からの妨害があるだろう、その妨害を排除する。排除の仕方というのはいろいろあるでしょう。いわゆる武力による威嚇、いわゆる存在することによって武力による威嚇をやるとか、また攻撃してきたら反撃する、武力の行使をするということがあるだろうと思うのですけれども、そういう今までにない任務を新たに持つようになってきているわけです。  そうすると、それで、そういうPKFと一体の関係としての後方支援というのを日本の自衛隊がやるということですね。今度実施計画を変更して、そしてUNTACの物であれば武器であろうと弾薬であろうと何であろうと輸送してよろしいというふうに変えましたですね。そうすると、後方支援、いわゆるPKFの第一線と一体のものとしてのPKO活動をやるということなんですね。  これは憲法九条で言う、武力による威嚇、武力の行使、これは認めないという憲法九条にも私は違反していると思います。したがって、私は、このPKO法の停戦の合意が崩れているし、同時にまた憲法九条にも違反をしている、したがって自衛隊をカンボジアから急速に引き揚げるべき、このことを強く要求して質問を終わりたいと思います。
  135. 牧野清文

    牧野委員長 和田一仁君。
  136. 和田一仁

    ○和田(一)委員 きょうは在勤法の審議でございますけれども、在勤法関係に先立って、大変御多忙の官房長官に御在席をいただいておりますので、初めに官房長官関係の御質問をさせていただきたいと思います。  先ほど来何人かが触れましたけれども、モザンビーク、ONUMOZへのPKO活動の参加の問題について、私、先般、たしか二月二十三日だったと思いますが、官房長官にどうされますかという趣旨の質問を申し上げました。そのときには柿澤政務次官から報告はお受けになっていたようですが、もう少し事情を知りたいので慎重に検討するという御答弁をいただきました。その後、お約束のとおり、政府としての調査団をお出しになって報告があったわけでございますが、その報告を私どもも伺わせていただきました。  これにつきまして、先ほど外務大臣が同様の質問に対しまして、報告を受けた上で、この報告の限りモザンビークへ出すことについて無理ではないと思う、しかしこれは政府としての総合的な判断が必要であるので、それも遠くない時期に決めるという御答弁がございました。そういう方向に来たんだな、こういうふうに思います。  それで、官房長官であり、同時に、もし出すとすれば、協力本部の副本部長でいらっしゃる官房長官として、この御報告を受けてどういう判断をされようとしているのか。先ほどのお話では、原則全部条件が満たされていても残されるのは政策判断である、一〇〇%それに対応しなければならない必然性はないのだ、こういうようなお考えは聞きました。しかし、前回の御答弁から比べると大変前向きにお考えいただいているな、こういうふうに私は聞いておったわけでございますが、いつごろ、どのような御決定をされますか。できたら方向だけでもお知らせいただきたい。
  137. 河野洋平

    ○河野国務大臣 先ほど副総理外務大臣が御答弁をなさったことに尽きているというふうに存じます。  和田議員ももう十分御認識をいただいておりますように、五条件が満たされているか満たされていないかということは、満たされていなければこれは議論のテーブルにのらないものでございます。満たされたものが議論のテーブルにのって、副総理から御答弁があったと伺っておりますが、テーブルの上にのったものについては、関係閣僚が御相談をいただいて結論を出す、方向を決める、最終的には本部長の御判断をいただく、こういうことになるわけでございまして、五原則は満たされているという報告でございますから、テーブルにのったというふうに見ていただいて結構でございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、それがすべて行動に移るかどうかということについては、それは全部そのまま派遣につながりますということは申し上げられませんが、先ほど副総理が御答弁なさったことに、方向として私もそのとおりだと思っております。
  138. 和田一仁

    ○和田(一)委員 私、二月に御質問したときには、モザンビークの実態が、計画どおりいけば日本対応としてタイムリミットだな こういうふうに考えておりましたが、報告を伺いますと、幸いにしてというか、計画が若干ずれ込んでいて、今からの対応でも十分間に合う、こういう時間的なゆとりは出たように思いますので、さらに報告書には、シサノ大統領も「大いに歓迎する」という発言がおありのようだし、それからRENAMO側の事務総長からも、「モザンビークにおいて我が国の要員に会えれば非常に嬉しく思う」という表現の発言があったということでございまして、私はこういった期待に可能な限りの体制対応していただけないものか、こう思います。  ガリ事務総長が来られたとき総理にお会いになって、これらのPKO活動に対するお話があった。これは私の理解では、国連のトップと我が国のトップとがこういう話をするということは正式な要請だ、国の名前も挙がった正式な要請があった、こういうふうに受けとめるべきだと私は思います。だとすれば、それへの対応もきちっとした形での対応、政策判断としてこうしますというものがもしその要請にこたえられないものであるならば、それこきちっと理解してもらえるようなものでお答えをしていかないといけない、こう思うのです。やれることだけちょこっとやっておけばいいやというのでなしに、やれる範囲の中でやるべきことはきちんと総力を挙げてやるという姿勢をぜひお示しいただきたい、こう思うのですが、いかがなものか。  まず外務大臣、副総理としてのお立場で、これは官房決定に重大な発言を持ち、同時に外務大臣としては、先ほどここで言うのはちょっととおっしゃいましたけれども、お教えいただければありがたいと思います。
  139. 河野洋平

    ○河野国務大臣 恐縮ですが、私から先に御答弁をさせていただきます。  ガリ事務総長と宮澤総理との会談は私も同席をいたしておりました。当時、ブトロス・ガリ事務総長から宮澤総理に、国連の事務総長としての期待を込めた御発言がございまして、その御発言の中に、幾つか地域を例示的に出された中に確かにモザンビークが入っておりました。それ以外にもニカラグアでありますとかエルサルバドルでございますとか、幾つかの地域名も入っていたかと思いますが、幾つかあったうちの一つにモザンビークが入っていたことはもう議員御指摘のとおりでございます。したがいまして私は、当時、期待を込めての御発言だというふうには受けとめましたけれども、この地域について正式、公式な要請だという感じではございませんでした。  しかし、いずれにいたしましても、我が国調査団を出して報告も受けるという今日の状況でございますから、あの調査団の報告及びその他政治的な判断等を加えて、そう遠からず結論を出すことになるだろうというふうに思っておりまして、議員の御指摘は大変貴重な御意見というふうに受けとめさせていただきたいと思います。
  140. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 今の官房長官の答弁で尽きていると思います。  日本は国連の中では常任理事国になるんじゃないかと言われているくらいな有力な国ですから、そこに国連が要請して断られてしまったというようなことになったら、それはちょっと格好つかないわけですね。そういうものについてはあらかじめ打診といいますか、雰囲気をちょっと探ってみるぐらいのことをやるのま、それは当然ですよ。だから、ガリ総長と宮澤総理との間で話し合いがあったとしてもその程度のことだろう。選挙に出るといったって本当に応援してくれるかどうかわからない、最初から立候補宣言する人はないので、やはり瀬踏み行為というのがあって、そして最終、土壇場で立候補声明、こうなるのですから。立候補声明とPKOじゃ随分違いますが、やはり国連が日本に正式に要請するという場合には、それなりにあらかじめ日本の空気も探っておく必要があるという程度のことであったと私は思っております。
  141. 和田一仁

    ○和田(一)委員 昨年九月に国連総会で大臣自身が常任理事国への意欲のあることを演説されたわけですから、当然前向きに対応されるものと期待をいたしております。先ほどもお話がありましたが、遠いからとかいう地理的なことではなく、むしろ遠いところまでも来て、従来歴史的な関係のなかったようなところでも日本はやはり汗をかいてくれるのだというあかしが国際的に必要なのではないか、私はこう思っておりますので、前向きに御対応のほどをお願いいたします。  次に、最近のロシア関係について大臣に御意見を伺いたいと思うのです。  御案内のように、ロシアの政局というのは大変混乱をしているのではないかと私は思います。明二十六日にも人民代議員大会、一遍は取りやめかと思いましたが、どうやらやはりやるというような情報の中で、どういう結論が出てくるのか。エリツィン大統領との対立の中で、時と場合によっては解任ということもあり得るのではないかというような見方で、今世界が成り行きを見詰めている。これはどこの国にとりましても大変大事な問題ではありますが、あくまでも内政の問題であるということから、その成り行きをただ見詰めるという状態ではないかと思います。  宮澤総理は、ロシア支援問題につきましてはエリツィン大統領の改革路線そのものを支援していきたい、こういうお話で、私も、ロシアがせっかく新しい改革の道を歩み始めたのが後戻りにならないように大いに願っておる一人でございます。  ただ、そういう中で、先ほどの質問にも関連がございまして、今度はサミットを日本がホストとしてやるわけでございますけれども、それに先立って、このロシア状況を見ながら、先進国は何とかこれを支えていきたいという思いのように思いますね。そして、四月十五、十六日ですか、東京においてG7の外相・蔵相会議が開かれる、こういうふうに、先ほども大体その辺でしようというお話を伺いました。  私は、さっき大臣もるるおっしゃっていましたけれども、日本ロシアに対する支援、これは従来の路線からいうと、本格的な支援というのはあくまでも北方領土問題の解決が前提であって、そして経済不可分の原則は変わらない、こういう建前の上で対ロ外交というものは行われている、こう思っております。先ほども大臣は、政経不可分はやはりそのとおりだよ、こうはっきりおっしゃっておられました。  ところが、この四月に持たれます先進七カ国のG7、ここで対ロ支援に対する具体的な中身を大方まとめないことにはこの会議の意味はないな、こう思っておるのです。とすると、どういう方向でこれをまとめようとしておられるのか。今、日本に対して、対ロ関係日本は援助しておるにもかかわらず、大変厳しい批判がございますね。ドイツからもあるいはフランスからも、非常にいわれなき言い方で、日本が何か妨害しているような言い方もされておりまして、支援にもっと積極的に取り組めというような非常に強い声が聞こえるのです。  そういう中にあって、このG7の会議、具体的にはどういう方向で取り組もうとお考えになっているのか、まずその辺からお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  142. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 この前の、去年のサミットのときはG7プラス1ということで、サミットが終わってからエリツィンさんの話を聞いたという前例は一つございます。それで、ことしもエリツィン大統領招聘論というのがございます。日本はサミットの議長国でございますから、それについては皆さんの意見も聞いた上で最終決定をしようということで今までいろいろ打診をしてきたやさきに、フランスあたりから、サミットでは七月になってしまうではないか、遅過ぎる、もっと早くロシア支援だけについての首脳会談をやるべきじゃないかというようなことが言い出されておることは、新聞紙上その他で皆さんも御承知のとおり、事実そのとおりです。  ところが、これに対しても両方ありまして、どこの国がどうということは私は申し上げませんが、ではいつやるのかと。それは、四月にロシアではエリツィンさんが命運をかけた国民投票をやって、のるか反るかの大勝負に出るというのだから、その前がいいのじゃないかという話もないわけではない。しかしながら、幹部が集まってただ応援しましょうと言うだけで、かけ声だけで中身が何もできない、大砲だけでっかいけれども弾は飛んでこないというのでは、これも去年二百四十億ドル、国際的な支援だと言ったけれども、なかなか実行はうまくいかないというふうなことがあるから、それはちょっといかがなものかという議論もあるのです。  だから、集まるからには、まず準備ができて、それでは具体的にこれだけのことをやろうというのでなければ、集まってかけ声だけかけたって困るのじゃないか。いやしかし、かけ声だけでもかけないよりかけた方がいいじゃないか、それが選挙の足しになるのじゃないかと言う人もないわけじゃありませんよ。そこらのところがまだ片づかない。実際のところそうなんですよ。  いや、それだったら、まず首脳が集まる前に、四月の末に大蔵大臣の会合を今度やるそうですから、そこで外務大臣といってもなかなかちょっと遅過ぎるな、もっと早めたところで七カ国の外務大臣と大蔵大臣の会合をやって、そして、この間シェルパではロシアの第一副首相を呼んで、どういうことをしてもらいたいかという話は聞いておりますから、まだ、だれを呼ぶかどうかは別として、決まっておりませんが、それをやって、そこである程度の案を練って、それからサミットにつなぐとか、東京サミットのときには実行ということまで決めるか、一部分は先取りするか、そこらのところは決まっていませんが、いずれにしても相談をしてみてはどうですかということで目下話し合っている。  ここまで言っていいのかな、よくわからぬけれども。言っていいことと悪いことがあるらしいんだよ。あるけれども、ちょっと今ペーパーを持っていなかったものだから、少ししゃべり過ぎた嫌いはありますが、そういうことで、どうするかも含めまして、話を内々しているというのが事実であります。これも決まったわけじゃない、反対している国もあるから。
  143. 和田一仁

    ○和田(一)委員 今のお話で、例えば香港のシェルパでロシア代表、あれは副首相ですか、見えて、具体的に二百億ドルぐらいの金融支援を要請した。シェルパ会議等でそういう数字まで出てきて、大変具体的な話に入っていきそうな雰囲気があるものですから、これは四月に入ってG7をやれば、そういった要請を踏まえて具体的な中身が出てくるのかな。一部新聞には、日本は今度は三十億ドルかというような数字まで出ているというふうに伝わっておるものですから、そうなると、これは対応そのものが、日本日本としてのロシア対応というものをやはりきちっと踏まえた上でないとまずいぞという思いがあって私はお聞きしております。具体的には、今大臣、相当突っ込んだお話までしていただきまして、これからの対応日本としては十分できるなというふうに受けとめましたけれども、それでよろしいですね。
  144. 野村一成

    ○野村(一)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど大臣から御答弁ございましたように、具体的な支援の策と申しますか、そういうことについて実務的と申しますか、そういう詰めを行うというのがやはり必要であるということで外務大臣・大蔵大臣会合をやるわけでございますが、じゃ具体的に個々にどういう内容のものかということにつきましては、先生御案内のとおり、各国首脳の個人代表としてシェルパというのがございます、シェルパの間で鋭意検討を重ねまして、そこでコンセンサスと申しますかその結果があらわれてくるものでございまして、現状におきましてまだ個々にどういうものとなり得るかということについて具体的に申し上げる段階ではございません。
  145. 和田一仁

    ○和田(一)委員 ちょっと角度を変えますと、今まで二百四十億ドルの例のサミットでの話も、やはり受け皿もできてないという状態の中で空回りしているわけですから、そういうことを十分御存じの皆さんが対応していくのですからむだなことはないと私は思います。  ただ、日本が引き受けるようなものがどういうものか。政経不可分とさっきも大臣おっしゃっていた、そのことを私は非常に重く受けとめておりますので、これを大臣に基本に置いていただきたい。  私は一つ非常に気になっておるのは、去年の十二月八日にエリツィン大統領が大統領令というものに署名をしました。それは、千島や北方四島について、ここの社会経済発展計画に関する大統領令というのに署名をしましたね。これは非常に問題の多い姿勢ではないか、こう思っておるものですから、これは北方問題をこれから解決していこうという上に非常に大きなマイナスな姿勢だ、私はこう見ておるので、こういったことが吹っ飛んでしまわないように、こういうことをきちっと解決していくということが基本にないと、ロシアの支援といっても前へ進んでいけないのではないか、私はこういう思いがございます。この大統領令については予算委員会でうちの書記長も大臣に御質問をして御答弁いただいておりますので、重ねて御答弁は結構でございますけれども、この点はひとつ指摘をさせていただきたいと思います。  それから、きょうもう一つ、限られた時間の中でお尋ねしておきたいなと思うのは、実は最近やはり新聞に大きく出ております朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮のIAEAの査察について、査察をノー、こう言ってNPTを脱退したという現状がございました。これに対して制裁措置を加えるかどうか非常に大事なことになってきたわけですが、このいわゆる北朝鮮の実態についてなかなか伝わってこない。我が国のごく近くにこういう閉鎖国家がある、それも非常に独裁国家である、こういうことで、その国が今核疑惑を持たれて、その査察に対してNPTを脱退するというようなニュースはやはり非常に大事に考えております。  したがって、外務当局として、私ども十分承知していない北朝鮮の実態についてどの辺まで把握されているのか、国民生活の現状であるとか政権の安定度であるとか、そういうことについてお知りのことをまずここでおっしゃっていただきたいと思います。
  146. 池田治

    ○池田政府委員 北朝鮮の実態につきましては、ただいま先生が御指摘なさいますとおりでございまして、大変閉鎖的な孤立した国家でございますので、その実態についてはなかなか見えにくいというのが現状でございます。私どもといたしましては、そういう限界の中でできるだけ関連の情報であるとかあるいは資料等を収集したり分析したりして実態の把握に努めているところでございますけれども、何しろ統計等が一切公表されておりません。したがいまして、そういう点では推測の域を出ない点は大変多いわけでございます。  ただいま御質問の国民生活の現状でございますけれども、この点につきましては、もちろん公表されておりませんので詳細は不明でございますが、例えば一人当たりのGNPがどれくらいであるかということにつきまして、韓国の中央銀行の推計によりますと、九一年の一人当たりのGNPは約千ドルというように推計しております。  それから、経済成長率につきましては、韓国側の推計によりますと、九〇年がマイナスの三・七%、あるいは九一年がマイナスの五・二%となっておりまして、いずれにしましても最近は経済不況が目立っているということでございます。  生活面について見ますと、一般的には食糧が不足していると言われておりまして、また、外国人が多く訪問いたします首都の平壌と地方との間には生活のレベルにおいてかなり大きな差があるというように言われているのが現状でございます。
  147. 和田一仁

    ○和田(一)委員 政権の安定度等はいかがでしょう。
  148. 池田治

    ○池田政府委員 政権の安定度につきましては、これは第三国の政権の安定度でございますが、私どもが推計をいたしますことは必ずしも適当ではないと思いますので、その点については御勘弁を願いたいと思います。
  149. 和田一仁

    ○和田(一)委員 ちょっとこれは共同通信のニュースですが、北京発ですね。平壌市の公安当局が街頭に張り出した布告は、今市民に、一世帯一カ月の電力消費上限五十キロ、アイロンや電気製品の使用は届け出義務にして、違反者は家族とともに首都での居住権を剥奪されると警告しているというニュースがございました。エネルギーも大変不足しているんだなと思います。一世帯五十キロワットというのは、東京電力によると、日本では昭和三十年ごろの水準というふうに報道で書いてございます。食糧も今大変不足だ、こういうお話も聞きました。経済成長もマイナスだというふうにも聞きました。こういう国が核の開発は平和利用だというならば、やはりそういった査察について協力してもらわないと、私ども不安を感ずるわけですね。まして最近は足の長いミサイルまで輸出しているというような報道もあるわけでございまして、私は、外務当局として最近のこの北朝鮮の一連の動きについて、特に、いっとき新聞で読んだのですけれども、日米韓で今セキュリティーについての対応を協議し始めたような報道がありましたが、事実でしょうか、どうでしょうか。
  150. 池田治

    ○池田政府委員 北朝鮮の現状が極めて不確かであるということを前提といたしまして、単に日本のみならず、その他の関係国もいろいろな場合に備えた事態を控えまして、それぞれにそれなりの研究はしていると思います。しかしながら、ただいま先生が御指摘になられました報道につきましては私ども承知しておりますけれども、日本とアメリカと韓国の事務レベルでそういった事態について特に協議を行ったという事実はございません。
  151. 和田一仁

    ○和田(一)委員 もっといろいろ聞きたいのですが、時間が来てしまったようでございます。また機会を新たにして伺いたいと思いますが、何か非常に緊迫しているような雰囲気を私は感じておりますので、そのような対応をお願いしたいと思います。  在勤法につきましては、附帯決議をつけさせていただきまして、十分対応していただくようお願いして、質問を終わります。
  152. 牧野清文

    牧野委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
  153. 牧野清文

    牧野委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  内閣提出在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  154. 牧野清文

    牧野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
  155. 牧野清文

    牧野委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、浅野勝人君外三名から、四派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。山元勉君。
  156. 山元勉

    ○山元委員 ただいま議題となりました自由民主党、日本社会党・護憲民主連合、公明党・国民会議及び民社党の各派共同提案に係る附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について引き続き検討の上、適切な措置を講ずべきである。  一 国際情勢の変化に迅速かつ的確に対応し、世界の平和と繁栄のため我が国がその国力にふさわしい国際的責任を果たし、積極的な外交を展開するため 外交実施体制、特に在外公館の基盤整備機能強化に努めること。  一 我が国外交の第一線拠点にふさわしいものとなるよう、長期的計画に基づき、在外公館事務所及び公邸整備・拡充を進めるとともにその国有化の推進に努め、併せて在外職員宿舎の整備に努めること。  一 海外での事件、事故及び戦乱、クーデター等の緊急事態に備え、在外公館緊急事態対応能力の強化に努めること。  一 緊急事態に際しての邦人の救援保護を含む邦人の安全確保を図ること。また、在外邦人の医療対策に一層配慮すること。  一 世界的に治安状況がますます不安定となってきている傾向にかんがみ、在外職員が安全にその職務を遂行しうるよう警備・防犯対策の強化に努めること。  一 在外公館における外交活動の能率促進のために通信体制強化・事務機器等の近代化に努めること。  一 在外職員、特に自然環境等勤務環境の厳しい地域に在勤する職員が、安んじて活発な外交活動を展開しうるよう、勤務・生活環境の整備、待遇の改善等に努めること。  一 館員による活発な外交活動を支援するため、在外公館における質の高い現地職員確保増員及びその待遇改善に努めること。  一 海外子女教育の一層の充実を期するため在外日本人学校及び補習授業校の整備・拡充、教師の増員、父兄の子女教育費の一層の負担軽減に努めるとともに、帰国子女教育の充実のための制度改善及び施設整備等の対策を総合的に推進すること。  本案の趣旨につきましては、当委員会における質疑を通じて既に明らかになっていることと存じますので、説明は省略させていただきます。  よろしく御賛同くださいますようお願いを申し上げます。  以上であります。
  157. 牧野清文

    牧野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  158. 牧野清文

    牧野委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。渡辺外務大臣
  159. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ただいま在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を可決いただきまして、まことにありがとうございました。  また、本法案の御審議の過程においては、外交活動の基盤強化につき、深い御理解と貴重な御提案を賜ったことに対し、厚く御礼を申し上げます。  法律案と同時に可決されました附帯決議の内容につきましては、御趣旨を踏まえ、できる限りの努力をしてまいる所存でございますので、今後とも皆様の御支援方よろしくお願いを申し上げます。まことにありがとうございました。
  160. 牧野清文

    牧野委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  161. 牧野清文

    牧野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     〔報告書は附録に掲載〕
  162. 牧野清文

    牧野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時七分