運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1993-03-25 第126回国会 衆議院 逓信委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年三月二十五日(木曜日)     午前八時五十分開議  出席委員   委員長 亀井 久興君    理事 川崎 二郎君 理事 佐田玄一郎君    理事 坂井 隆憲君 理事 笹川  堯君    理事 松浦  昭君 理事 上田 利正君    理事 大木 正吾君 理事 石田 祝稔君       赤城 徳彦君    今枝 敬雄君       植竹 繁雄君    大野 功統君       小林 興起君    佐藤 守良君       谷垣 禎一君    虎島 和夫君       原田 義昭君    深谷 隆司君       松岡 利勝君    松田 岩夫君       森  英介君    阿部喜男君       秋葉 忠利君    上田  哲君       田中 昭一君    田並 胤明君       武部  文君    吉岡 賢治君       鳥居 一雄君    東  順治君       菅野 悦子君    中井  洽君  出席国務大臣         郵 政 大 臣 小泉純一郎君  出席政府委員         内閣法制局第一 津野  修君         部長         郵政省通信政策 松野 春樹君         局長         郵政省放送行政 木下 昌浩君         局長  委員外出席者         参  考  人         (日本放送協会 川口 幹夫君         会長)         参  考  人         (日本放送協会 森川 脩一君         長)         参  考  人         (日本放送協会 堀井 良殷君         理事)         参  考  人         (日本放送協会 中野 正彦君         理事)         参  考  人         (日本放送協会 諏訪 恭也君         理事)         参  考  人         (日本放送協会 安藤 龍男君         理事)         参  考  人         (日本放送協会 中村 和夫君         理事)         参  考  人         (日本放送協会 黒川 次郎君         会長室経営計         画〕局長)         逓信委員会調査 丸山 一敏君         室長     ————————————— 委員の異動 二月二十三日  辞任         補欠選任   赤城 徳彦君     綿貫 民輔君   今枝 敬雄君     葉梨 信行君   植竹 繁雄君     左藤  恵君   山下八洲夫君     田中 昭一君   中井  洽君     塚本 三郎君 同日  辞任         補欠選任   左藤  恵君     植竹 繁雄君   葉梨 信行君     今枝 敬雄君   綿貫 民輔君     赤城 徳彦君   塚本 三郎君     中井  洽君 同月二十六日  辞任         補欠選任   中井  洽君     塚本 三郎君 同日  辞任         補欠選任   塚本 三郎君     中井  洽君 三月二十五日  辞任         補欠選任   佐藤 守良君     松田 岩夫君   深谷 隆司君     大野 功統君   阿部喜男君     秋葉 忠利君   坂井 弘一君     東  順治君 同日  辞任         補欠選任   大野 功統君     深谷 隆司君   松田 岩夫君     佐藤 守良君   秋葉 忠利君     阿部喜男君   東  順治君     坂井 弘一君     ————————————— 二月二十三日  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認  を求めるの件(内閣提出承認第一号) 三月五日  郵便貯金法の一部を改正する法律案内閣提出  第四八号)  簡易生命保険法の一部を改正する法律案内閣  提出第四九号)  簡易生命保険積立金運用に関する法律の一  部を改正する法律案内閣提出第五〇号)  簡易保険福祉事業団法及び簡易生命保険法の一  部を改正する法律案内閣提出第五一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認  を求めるの件(内閣提出承認第一号)      ————◇—————
  2. 亀井久興

    亀井委員長 これより会議を開きます。  この際、小泉郵政大臣から発言を求められておりますので、これを許します。小泉郵政大臣
  3. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 この際、一言申し述べさせていただきます。  私の大臣就任後のマル老問題などの発言が、これまでの逓信委員会において積み上げられた議論附帯決議に反していたこと、郵政職員に動揺を与えたこと、前大臣政務次官等の方針を覆し、行政継続性を阻害したこととなり、御迷惑をおかけしたことはまことに申しわけなく、この機会におわび申し上げます。  今後、逓信委員会皆様方の御指導、御協力をいただきながら、郵政事業の円滑な執行に努めていきたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。(拍手)
  4. 亀井久興

    亀井委員長 速記をとめて。     〔速記中止
  5. 亀井久興

  6. 亀井久興

    亀井委員長 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題とし、審査に入ります。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件審査のため、本日、参考人として日本放送協会出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 亀井久興

    亀井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  8. 亀井久興

    亀井委員長 まず、趣旨説明を聴取いたします。小泉郵政大臣。     —————————————  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認   を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  9. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 ただいま議題とされました日本放送協会平成年度収支予算事業計画及び資金計画提案理由につきまして、御説明申し上げます。  この収支予算事業計画及び資金計画は、放送法第三十七条第二項の規定に基づきまして、郵政大臣意見を付して国会に提出するものであります。  まず、収支予算につきまして、その概略を申し上げます。  一般勘定事業収支におきましては、事業収入は五千五百三十六億七千万円、事業支出は五千三百二十四億九千万円となっており、事業収支差金二百十一億八千万円は、百六十六億二千万円を資本支出に充当し、四十五億六千万円を翌年度以降の財政安定のための繰越金とすることとしております。  一般勘定資本収支におきましては、資本収入資本支出とも八百三十九億七千万円となっており、建設費五百九十五億円等を計上しております。  次に、事業計画につきましては、その主なものは、視聴者意向を積極的に受けとめ、豊かな放送番組提供と公正な報道に努めること、国際放送については、番組充実刷新を行い、あわせて受信改善に努めること等となっており、事業運営は、経営財源確保のため、受信契約増加受信料の確実な収納に努め、あわせて経営全般にわたり効率的な業務運営を徹底し、視聴者により一層信頼される公共放送を実現していくとしております。  最後に、資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に対応する年度中の資金需要及び調達に関する計画を立てたものであります。  郵政大臣といたしましては、これらの収支予算等につきまして、おおむね適当であると認めた上で、事業計画等実施に当たっては、極力長期にわたり受信者負担増を来さないため、経費の節減と受信料収入確保に努めるとともに、配慮すべき事項として、豊かな放送番組提供と公正な報道を行い、放送番組充実向上に努めること等を指摘した意見を付することといたした次第であります。  以上のとおりでありますが、何とぞよろしく御審議の上、御承認のほどお願いいたします。
  10. 亀井久興

    亀井委員長 次に、補足説明を聴取いたします。日本放送協会会長川口幹夫君。
  11. 川口幹夫

    川口参考人 ただいま議題となっております日本放送協会平成年度収支予算事業計画及び資金計画につきまして御説明申し上げます。  平成年度事業運営に当たりましては、激動する内外の諸情勢について公正な報道に徹し、ニュース情報番組刷新強化を図るなど、視聴者期待と要望にこたえ、調和のとれた多様で豊かな放送サービス充実し、より一層視聴者に信頼される公共放送を実現してまいる所存であります。  業務の推進に当たりましては、経営財源確保のため、受信契約増加受信料の確実な収納に努め、あわせて経営全般にわたり効率的な業務運営を徹底してまいります。  平成年度の主な事業計画について御説明申し上げます。  まず、建設計画につきましては、補完衛星の製作・打ち上げ計画を引き続き取り進めるとともに、放送番組充実のための設備整備を行うほか、老朽の著しい放送設備の更新や放送会館整備等実施することにしております。  次に、事業運営計画について申し上げます。  国内放送におきましては、視聴者意向を積極的に受けとめ、番組充実刷新を図るとともに、公共放送の使命に徹し、公正な報道と豊かな放送番組提供に努めてまいります。  また、衆議院議員総選挙とリレハンメル・オリンピックの放送については、万全の体制で取り組むこととしております。  国際放送におきましては、放送時間を拡充し、日本の実情をいち早く正しく諸外国に伝えて国際間の相互理解に貢献するとともに、海外在留日本人に多様な情報を的確に伝えるため、番組充実刷新を行います。  また、海外中継を拡充するなど、受信改善に努めてまいります。  契約収納業務につきましては、受信料負担の公平を期するため、受信料制度周知徹底を図るとともに、積極的、効果的な営業活動を行い、受信契約増加受信料の確実な収納に努めてまいります。  調査研究につきましては、新しい技術開発研究を初め、放送番組放送技術向上に寄与する調査研究を推進し、その成果を放送に生かすとともに、広く一般にも公開することとしております。  以上の事業計画実施に当たりましては、経営全般にわたり業務の見直しを一層徹底し、要員については、年度内三百三十人の純減を行い、総員一万三千六百七人とし、給与につきましては、適正な水準を維持することにしております。  これらの事業計画に対応する収支予算につきましては、一般勘定において、事業収支収入総額五千五百三十六億七千万円を計上し、このうち、受信料については、五千三百四十二億一千万円を予定しております。これは契約総数において四十万件、衛星契約において百三十二万件の増加を見込んだものであります。  これに対し、支出は、国内放送費など、総額五千三百二十四億九千万円を計上しております。  事業収支差金二百十一億八千万円につきましては、このうち、百六十六億二千万円を資本支出に充当し、四十五億六千万円を翌年度以降の財政安定のために繰り越すことにしております。  次に、資本収支につきましては、支出において、建設費五百九十五億円、次期放送衛星調達する法人等への出資十一億円、放送債券償還等に二百三十三億七千万円、総額八百三十九億七千万円を計上し、これらに必要な財源として、減価償却資金などの自己資金のほか、借入金により賄うこととしております。  なお、受託業務等勘定においては、収入六億八千万円、支出六億円を計上しております。  最後に、資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に基づいて、資金需要及び調達を見込んだものでございます。  以上、日本放送協会平成年度収支予算事業計画等につきまして、そのあらましを申し述べましたが、今後の事業運営に当たりましては、協会事業受信料により運営されていることを深く認識して、多様で豊かな放送サービスを一層充実するとともに効率的な業務運営を行い、協会に課せられた責務の遂行に努める所存でございます。  委員各位の変わらざる御協力と御支援をお願いし、あわせて何とぞよろしく御審議の上、御承認賜りますようお願い申し上げます。
  12. 亀井久興

    亀井委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  13. 亀井久興

    亀井委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。坂井隆憲君。
  14. 坂井隆憲

    坂井(隆)委員 ただいま郵政大臣並びにNHK川口会長から平成年度NHK予算についていろいろ提案理由説明及び補足説明が行われました。  ちょうど昨年の末ごろですか、イギリスBBC放送が「選択の拡大」、エクステンディングチョイスというレポートを出しておりまして、その中で、世界の公共放送商業放送ケーブルテレビ衛星放送などの競争メディアの中で非常に経営的に苦しくなっている中で、唯一の例外がNHKであるということで、いわば、今まで日本マスコミ界といいますか放送関係イギリスBBC放送を範としていたわけでありますけれども、むしろイギリスBBC放送NHKを範とするといいますか、そういうレポートを出しているということで、我々日本国民としても極めてうれしいことだなと思っているわけでございます。  NHK収支状況は、そういう意味では、ただいま会長がるる説明されたように非常にいい状況になっているわけでございまして、事業収入平成年度で五千五百三十七億円ですから、四年度に比べて二・五%の増、事業支出は五千三百二十五億円で三・八%の増ですから、事業収支差金が二百十二億円という非常にいい事業収支内容だということになると思います。  先月NHKが発表した「二十一世紀への展望とNHKの課題」という中で衛星放送についても述べられておりますけれども、衛星放送収支の中でいわば孝行息子になっている。衛星収支内容NHK収支の好転の一つ要因になっているのじゃないかという気がするわけでございます。この「NHK将来構想」では、衛星放送については、番組内容の質的な充実に努めて、衛星放送の一層の普及促進に努めるということがうたわれておりまして、衛星放送のさらなる普及のため、内容の質的な充実に努める、難視聴解消サービスを十分に行うということがうたわれております。  BS4の時代において衛星放送普及が一千万を超えることが予想されておるわけでございますが、地上放送に比べれば衛星放送普及状況もまだ低位にあって、衛星放送の分野において引き続きNHKが先導的な役割を果たしていく必要があるものと思います。ただ、NHK衛星放送実施する上で必要な経費等をできるだけ明確にするということが必要じゃないか、今後衛星放送収支分計のあり方についても検討していく必要があるのではないかなという気がいたします。そういう観点から御質問を順次していきたいと思っております。  まず最初に、衛星収支で、参考事業収支のうちの衛星収支が掲げられておりますけれども、事業収入五百八十七億円、事業支出四百六十五億円、事業収支差金が百二十二億円ということになっておりますが、この百二十二億円になっている主な理由その点についてまず最初にお答え願いたいと思います。
  15. 中野正彦

    中野参考人 お答えいたします。  衛星収支事業収支差金、今先生からお話がございましたように、五年度予算に百二十二億の収支差金を計上いたしておりますが、この百二十二億の主たる要因といたしましては、五年度内に衛星受信契約者増加百三十二万件、これによる収入増加が大きな要因でございます。具体的には、収入において受信料収入を対前年度比で二七%の増加を見込みまして五百八十七億円の収入を計上しております。一方、事業支出におきましては、番組制作費等事業運営費に四百五億円、放送衛星減価償却等に六十億円、合わせて四百六十五億円、一九%の支出を計上いたしております。したがいましてその収支の差、事業収支差金として百二十二億円となる、こういうことでございます。  なお、五年度収支差金は百二十二億でございますけれども、これは黒字でございますが、衛星料金設定いたしました平成年度から累計で申し上げますと、五年度末で二百二十七億円の累積赤字となっております。この累積赤字につきましては、平成年度収支相償すべくただいま努力中でございます。  以上でございます。
  16. 坂井隆憲

    坂井(隆)委員 衛星収支、百二十二億円の収支差金説明の中で、契約者が非常に大幅に伸びるということで収入増を見込んでいるということでございますけれども、契約一つ基本になります衛星付加受信料でありますが、NHK衛星付加受信料は現在九百三十円ということで伺っておりますけれども、この料金自身がどういう考え方のもとに設定されたものなのか、その考え方、それからこの九百三十円に具体的にどういう経費を盛り込んでいるのか、その点についてお答え願えればと思います。
  17. 中野正彦

    中野参考人 衛星付加料金九百三十円につきましては、この料金設定考え方でございますけれども、料額をなるべく低く抑えて早期に衛星放送普及を図るという考え方でございまして、衛星放送実施するに当たって新たに協会が必要とする直接経費、つまり衛星付加経費、これを賄うものという考え方でこの料額設定いたしております。したがいまして、地上放送衛星放送に共通的にかかります経費、例えば内外ニュース取材経費でありますとか、スタジオあるいは事務室減価償却費、それから本社経費調査研究費、こういったものは共通経費として基本収支で計上いたしております。この料額をもって平成年度までに収支相償をするということにいたしております。  具体的に付加料金に見合う経費について申し上げますと、ニュース番組制作経費、映画の放送権料衛星運用経費職員人件費、広報、受信対策経費衛星減価償却費、それから受信契約取次経費等ということになっております。  以上でございます。
  18. 坂井隆憲

    坂井(隆)委員 ただいまのお答えを聞いておりますと、衛星付加料金原価料金を抑制して設定している、低くすることによって、いわば衛星受信普及させるためだということでございます。そのために、直接経費のみを原価として算定しているということでございますから、地上既存施設業務体制を活用する経費共通経費については基本収支だということでございましたけれども、NHK衛星付加料金に比べまして、今問題になっている民間会社衛星事業者JSB日本衛星放送ですけれども、あそこの受信料は二千円なんです。  JSBというのは、今バブル時代ですけれども、ジャパン・スモール・バブルというふうに言われているぐらいに経営が非常に悪いというふうに聞いております。いろいろな新聞報道を見ていますと、平成三年九月の中間決算では新たに百億円の損失を計上している、累積赤字資本金にほぼ匹敵する額、四百七億円というふうに伺っておりますけれども、そういうような非常に経営が悪い状態になってしまっているということでありますけれども、JSB経営の悪化の要因、いろいろ挙げられておりますけれども、NHK衛星付加受信料自身が九百三十円ということで普及させるために低く抑えられている。JSBのそれに比べて低廉過ぎる、ある意味で、国民にとってはそれはもちろんいいことでありますけれども、それがむしろJSB契約世帯の伸び悩みということになっていないのか、いわば民間を圧迫することになっていないのかというような気もちょっとするのですけれども、そのあたりについてはいかがでしょうか。ちょっと御意見を伺わせていただければと思います。
  19. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 NHK衛星付加料金につきましては、NHKを維持運営するための特殊な負担金として、衛星放送受信設備を設置した場合に一律に負担を求めるものであります。片や、ただいま御指摘JSB視聴料金につきましては、有料放送でありまして、任意にJSBに加入して放送を視聴するという、両者の料金については性格が異なるものでございます。  御指摘の点は、ただいま議論がございましたように、NHK衛星放送付加料金については、衛星放送を早急に普及するという観点から抑制して、直接経費を賄うという視点から料金設定がされているということで、JSB料金と比べてどちらかといえばJSB料金割高感を与えるということになっているのではないかという御指摘と考えるわけでございますが、そういった面も感じられる向きもあるかもしれませんけれども、逆に、NHK付加料金が低廉であることは、衛星放送受信設備を設けた人にとって、JSBに加入しようという場合に、NHK付加料金が低廉であることがまたJSBに加入する場合の衛星放送受信についての全体の支出が少なくなるという側面もあるわけでございます。  したがって、NHK付加料金が低廉であることがJSBの加入が停滞しているということにどういう影響を及ぼすかということについては、一概に申し上げることはできないのではないかというふうに考えております。  それからまた、JSBにつきましては、この経営不振の原因というのはいろいろございますけれども、現在JSB経営改善につきまして、主要株主が中心になりまして鋭意取り組んでおられまして、基本的な経営改善の枠組みも決定されたようでございますので、この経営改善の取り組みが軌道に乗ることを私どもは期待をしておりまして、今後も行政の立場から必要な助言、指導を行ってまいりたいと考えております。
  20. 坂井隆憲

    坂井(隆)委員 ただいま局長が御答弁されましたように、確かに一概に言えないという面はあると私も思います。ただ、衛星のいろいろな収支自身を見てみますと、最初NHKさんの方からも御答弁がありましたように、基本収支地上収支負担している経費もいろいろあるわけでございますから、衛星付加料金設定に関しまして、地上既存施設業務体制を活用する経費等について基本収支で賄うということにしていることについて、むしろそのことによって事業収支衛星収支黒字が過大に出るような結果になっているのではないかな、経費部分衛星収支ではなくて基本収支に持っていっている分、当然黒字が過大に出てくることになるのではないかなというような気がするのです。  衛星収支をより正しくあらわすためには、やはり基本収支負担している経費衛星収支の中に算入することが適当ではないかな。分担している経費についても、ある程度基本収支部分衛星収支部分で割り振って、ある一定の割合で割り振って、人員なんかも割り振ったりして衛星収支の中に算入していくことが適当ではないかなと思うのですね。  それから、資料の中で参考として出ておりますのは、この収支構造事業収支のうちの衛星収支の方、いわば経常部門でございますけれども、資本的なところも、例えば放送衛星の打ち上げにかかる経費とか、そういうものが入っているわけですね。それはNHKさんの受信料でもらった財源でいろいろな放送衛星に関する出資だとか資本的な支出をしているわけでございまして、もちろんその事業収支経常部門の中での、さっき御答弁ありましたように、放送衛星減価償却費とか衛星専用地上施設減価償却とか、そういう形ではもちろん入ってきておりますけれども、経常部門資本収支部門資本収支部門のそういう経費ですね、そういうものについてもある程度は分けてあらわしていくのが適当になってきているのではないかなという気がします。  やはり公共放送としての受信料を基盤としているNHKとして、受信料を主たる財源としている基本収支、それから衛星付加料金財源としている衛星収支、そういう分計のあり方を今後検討していく必要があると思っておりますけれども、その点について御答弁をお願いいたしたいと思います。
  21. 中野正彦

    中野参考人 衛星収支基本収支につきまして、事業収支についてはある程度分計がされている。ただし、今先生御指摘がありましたように、資本収支に絡む中で、特に建設費設備投資についてはこれは一本ではないか、こういう御指摘がございましたけれども、この五年度予算の中でも約六百億近い設備投資、建設費を計上しておりますけれども、この中で衛星放送にかかわる設備、これは衛星本体の製作費あるいは地上設備、こういったものの設備投資は明確に把握して予算に計上してございます。この衛星放送にかかわる設備のものについては、これは使用時点から減価償却費としてランニングコストに、事業支出の方に計上するという形をとっております。  ただし、今先生御指摘のとおり、事業収支についてはもう少し明確に分計をしたらどうか、こういう御指摘がございました。この衛星放送の費用の分計のあり方につきましては、私どもいろいろ研究はいたしておりますけれども、これは衛星受信者とその他の地上受信者との負担のあり方にかかわる重要な問題であるというふうに認識をいたしております。したがいまして、今後の衛星放送普及状況を見きわめつつ、衛星放送のサービスのあり方、視聴者意向を踏まえながら、関係機関とも十分相談をして、平成年度以降協会経営のあり方を考えていく中で総合的に検討をしてまいりたいというふうに考えております。
  22. 坂井隆憲

    坂井(隆)委員 いずれにしましても、NHK衛星放送が開始されたのは一九八七年の七月ということでまだほぼ五年を経過したにすぎないわけでございますから、今後の検討課題だと思っております。そういう意味で、ただいま御答弁がありましたようにいろいろな角度から検討していただくことを要望して、この質問については終わらしていただきたいと思います。  次に、海外に関する質問について、昨年このNHK予算のときに国際放送について私はいろいろ質問いたしましたけれども、日本国際社会になってきたという中でNHK公共放送としての役割は、昔は国内であまねく放送をしていく、難視聴を解消して放送していくということが国内的な一つ公共放送としての目的であったわけでありますけれども、国際社会になってきますからやはり海外への情報発信、そういうことについてもこれからのNHKの極めて重要な一つの柱だと思って昨年も質問したわけであります。  ちょうど衛星技術が進歩しまして、いわゆる国境を越えるテレビというものが可能になってきておりまして、欧州では一九八九年に域内統一の番組基準等を定めたEC指令というものを策定しておりまして、これに基づいたサービスが行われております。一方、アジアにおいても広範なビームカバレッジを有する衛星によって多国間にまたがるいわゆる国境を越えるテレビが出現しておりまして、このような状況の中で、我が国として、映像情報による国際交流を積極的に推進し、諸外国の相互理解を一層深めることが極めて重要だと考えるわけでございます。  いわゆる国境を越えるテレビを受信する場合の対応のあり方について検討していた放送分野の国際化に関する調査研究会というものがありまして、新聞にもちょっと出ておりましたけれども、その報告書が出されたようであります。そこで、その研究会の報告書を受けて郵政省としてどう対応されていくのか、また、我が国からの映像による海外への放送発信に対して今後どのように取り組んでいくつもりなのか、お答え願えればと思います。
  23. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 ただいま御指摘がございました国境を越えるテレビについてでございますが、昨年の十月から大河原良雄氏を座長といたしまして放送分野の国際化に関する調査研究会を開催いたしました。去る三月十五日に、外国からのスビルオーバー等に代表される国境を越えるテレビを我が国で受信する場合について報告書を取りまとめていただいたところでございます。  この報告書の内容をかいつまんで申し上げますと、現状において外国からの国境を越えるテレビを無制限に許容するということは適当ではないだろう、しかし、今後国際的な共通の認識、枠組みを基本としながらも、我が国の社会あるいは放送秩序と整合性を図りながら一定の条件を整備してその範囲内で認知をしていく、そういう方向性が提言されているわけでございます。この提言を受けまして、国際的には多国間あるいは二国間協議の必要性も出てまいりますし、国内的にも我が国の放送事情あるいは放送秩序、放送事業者への影響という観点を考慮しながら国内の制度についての整備を行う必要性もあるという提言を行っているわけでございます。  郵政省といたしましては、この提言を受けまして、ただいま申し上げました国際的な対話の推進ということも検討していかなきゃならないと思っておりますし、また国内的な措置といたしましては、今回研究会で報告を受けましたのはむしろ受ける方の側の対応というのが中心でございますが、さらに、我が国から発信する場合にどう対応していくかということも、あわせて研究していく必要があるわけでございます。これについては新年度早々にこの取り組みを行っていくつもりでございますが、このように我が国発信との関係もあわせ考えまして、法的な検討を行うなど具体的な対応について詰めてまいりたいと考えておるところでございます。
  24. 坂井隆憲

    坂井(隆)委員 いずれにしても、日本も、これだけ国際化社会になってきまして、公共放送の役割として本当に、国内だけでなくて海外においても情報の発信そして交流を進めていくことが、いろいろな意味日本の誤解を解くことにもなり、日本のことを海外に知ってもらうことにもなり、そしてまた、日本の我が国民が海外のことにも十分認識を深めて本当に国際社会の人間として育っていくことになると思います。今後ともそういう意味でのNHKさんのますますの御活躍と郵政省当局の御努力を心から期待したいと思っているわけでございます。  最後に、もう残された時間が短いのでございますけれども、NHKが昨年放送した「NHKスペシャル」の例の「奥ヒマラヤ 禁断の王国・ムスタン」という報道ですね。数多くの事実と異なる放送が行われて、いわゆるやらせ問題ということでいろいろ話題を呼んだわけでございます。NHK職員が自動車会社のステッカーをみずから張るというような不適切な行為もあって大きな社会問題が引き起こされたところでありますけれども、NHKというのはやはり公共放送ですから、視聴率等に左右されないで良質な放送実施できるように運営していくことがNHKの使命だと思うんですね。したがって、公共放送としてのNHKに対する国民の信頼を著しく損なうことになったなということで私も極めて遺憾に思うわけでございます。  NHKのムスタン取材に関する調査報告書では、今回この問題が起こった原因として、放送倫理、社会人としてのモラルの問題を挙げております。そこで、NHKとして職員の職業倫理とモラルの向上、確立のためにこれまでどのように取り組んできたのか、お伺いいたしたいと思います。
  25. 中村和夫

    ○中村参考人 お答えいたします。  ムスタンの問題が起こりまして、二月十七日にムスタン取材緊急調査委員会の調査報告を公表した直後から、再発防止ということで具体化に取り組みました。三月十六日に放送総局内に放送現場の倫理に関する委員会というものを設置いたしまして、今御指摘がありましたように、みずからの問題として個人の一人一人のモラルの確立という面から放送の現場で総討議をしてもらいました。百八十の放送の現場で総討議を行いまして、三百六十ページに及ぶ報告が寄せられました。  その報告の中では、放送現場におごりや特権意識というものがなかったのか、謙虚さはどうだったのか、取材対象に対してきちんとその内容説明するという基本的なことが行われたのか、スタッフ間の自由濶達なコミュニケーションというのが行われていたのか、そういう意見が多数寄せられて、もう一度、取材、制作の原点を見直そうという声がたくさん寄せられました。  その中でこれからできるものは直ちに取り組むということで今作業を進めておりますが、その後、二十三日にはNHKと民放の番組倫理委員会というものの初会合を行いまして、そこで今回の一連の事態を放送界全体の問題として受けとめようということで、放送に携わる者が最低限守るべき倫理とは何かということについて三カ月か四カ月かけて議論をして報告をまとめようということになっております。
  26. 坂井隆憲

    坂井(隆)委員 もう時間がありませんから最後に御要望して終わりたいと思いますけれども、ただいま御答弁ありましたけれども、放送事業に携わる者にとって言論の自由が保障されておりますけれども、やはりこれを乱用してはならないわけでございます。最終的には放送に携わっている人たちの職業の倫理、モラルの向上が第一だと思いますから、ぜひそういう意味で今後とも十分心して、国民期待にこたえて頑張っていかれることを心から祈念いたしまして、私の質問を終わらしていただきます。どうもありがとうございます。
  27. 亀井久興

    亀井委員長 次に、虎島和夫君。
  28. 虎島和夫

    ○虎島委員 発言をお許しいただきます。  世界の直面する主要な国際問題の行方は、つまるところ、メディアによる報道によって醸成される大衆の心理状況により方向づけられる、これは、かのライシャワーの発言であります。  NHKは、我が国最大の放送事業者でありまして、永年にわたって公共放送としての役割の中で日本放送普及、発達に大きく貢献してきたことは論をまたないところであります。それだけに、国民の精神文化面に与えた影響力にははかり知れない大きなものがあると存じております。そして、今また、高度情報社会が進む中で、そのあり方は国民的規模でいよいよ重要な意味を持つと言わなければならないと存じます。  今、国内も国際社会も混沌の中にあるとき、公共放送としてのNHKの果たすべき役割及び国としてNHK期待するところ、これを所管大臣である小泉大臣に承りたいと存じます。
  29. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 現在、テレビの与える影響力というのは大変大きなものがあると思います。特にNHKは、全国放送公共放送という大きな役割を持って、国民NHK報道に対しての信頼感というのは大きいものがあると思うのです。それだけに、報道に当たっては公正な姿勢といいますか、客観的な姿勢というのが非常に大事だ、今回のいろいろなやらせ問題を契機にして、改めて報道に携わる方々の倫理観とか公正さというものが要求されていると思います。今後ともそのような面に十分配慮して報道に当たってもらいたいというふうに私は考えております。
  30. 虎島和夫

    ○虎島委員 ただいま大臣の答弁いただいたわけでありますが、NHK会長としての本件に対しての御所見も、決意の表明になるかと存じますけれども、承っておきたいと存じます。
  31. 川口幹夫

    川口参考人 この三月二十二日に放送記念日というのがありまして、NHKはラジオの放送を開始してから六十八回目の記念日を迎えました。これがたまたまテレビの開始の四十周年でございます。そういう節目に私は、NHK公共放送としてのあり方を十分に考えていこうということを職員一同と誓い合いました。  ところで、公共放送とは一体何だというようなことを、私は私なりにこういうふうに規定をしております。広く国民全体に存立の基盤を置き、市場原理によらず、あまねく全国にわたって公正的確な報道と豊かでかつよい放送番組を総合的に提供することを最大の使命とする放送事業体である、このように私は考えております。国民のお役に立つ、そして信頼してもらえる、そういう放送事業体でありたい、そのために努力をしたいと思っております。
  32. 虎島和夫

    ○虎島委員 今会長から大変に的確な御答弁をちょうだいいたしました。  法律にも定めてありますように、NHKは公共の福祉のために豊かでいい番組日本全国で受信できるように行うべきである、こう定められておるわけでありますが、今二つの理由公共放送としての存立基盤として挙げられました。私もそのように思います。どうかひとつこのことを、膨大な組織でありますけれども、NHK職員末端まで御認識いただきまして、放送メディアの果たすべき大きな役割、その中で果たすべきNHKの職務について、日々研さんを怠らざるように御要請申し上げておきたいと思うわけであります。  なお、そのためには難視聴地域があってもなりません。あるいはまた、真実でない放送があるなどというのは、これはもう論外のことになるわけであります。むしろ、坂井委員からも先ほど御指摘がありましたけれども、このような具体的なムスタン王国報道の反省等々については、日々新たなる考え方を持って取り組んでいただきたい。特に、先ほど、真実の報道に対してはモラルが大事であるという御指摘がありました。と同様に、また、業務システムそのもの、組織としての運営の責任、そのことが両々相またなければならない課題であるというふうに私は思っております。古い言葉にも霜を踏んで堅氷に至るという言葉がありますけれども、我々はついついこのようなことをなおざりにすることによって実はとんでもない結果を招来する、そのような過去の苦い歴史を持っておるわけであります。  もっと具体的に申しますと、言論の統制とか表現の自由の抑制とかあってはならないことでありますけれども、最初はささいなことが積み重ねられて、見逃されて、そしてどうにもならぬ段階に来て法的な規制が加わっていく。それがさらに積み重ねられていく。そういう苦い経験、そのことをぜひ歴史に学ぶという姿勢でNHKの皆さん方がしっかりと組織運営の中で御認識を賜りたい。  と同時にまた、官僚統制という言葉は私は好きでありませんけれども、主管官庁であります郵政省においても、このようなことについては不断の意見の交換をしながら隔意のない意見のやりとりをする中で、先ほど申しましたように、いやしくも言論の統制であるとか報道の自由の抑制であるとかいう論拠に言いがかりを与えるようなことがないような配慮については、特にこの際でありますから申し上げておきたいと存じます。  今会長から市場原理に基づかない運営というお話がございました。それは、場合によっては視聴率にこだわらない番組、そういうものにもあえて挑戦していくという積極果敢な姿勢というのがNHKに必要であるし、あるいはまた、その積極果敢な姿勢が独善でないという客観的な評価なり検討をするような、そういうシステムがどこかになければならないと思うわけでありますが、この点については、会長、御所見があれば承っておきたいと存じます。
  33. 川口幹夫

    川口参考人 先生おっしゃいますとおり、放送の原理は、自主、自由、自律でございます。みずからの番組をみずからきちんと律していくという姿勢が必要なことはもう当然でありますが、それより前に、職員がやはり、放送というものを通じて国民の皆さんに公正的確な報道をしていく、それからいい番組をつくり続けるという意欲がまず大事でございます。それを、おっしゃいましたような形でもって私どもは意欲をどうやってコントロールしていくのか、そういう自律のあり方と絶えずバランスをとりながらきちんと放送し続けていくことが、とりもなおさず国民の皆さんに対するお答えになる、このように思っております。
  34. 虎島和夫

    ○虎島委員 営利を目的としないNHKは、その運営国民受信料を基盤として賄われておるわけであります。組織の効率的な運用は至上命題であります。そしてまた、このことにこたえまして、要員は過去十三年間で三千百五十人減じておるわけであります。  しかし一方では、関連団体、企業を約三十運営いたしております。そのうち、昭和六十年代に設立された法人は六、平成年間には八社、これが分離独立または創立、創設されておるわけであります。このことについては世上いろいろと議論のあるところであります、御承知のことと思いますが。しかし、組織の効率的な運営のためには、附帯する業務の処理のために工夫を要することは論をまたないところであります。  しかしながら、先ほど申します公共放送という立場から、そこにまたおのずから節度が求められておることも否めない事実であります。モラルであると思っております。このことに関しましては、今般出されましたNHK事業計画等に対する郵政省の意見七号に関連をいたしまして、節度ある出資の保持のための協会の所見、これをひとつ求めておきたいと思います。
  35. 堀井良殷

    ○堀井参考人 先生御指摘のとおり、もとより受信料を基盤とする公共放送といたしましては、視聴者の方々に御納得いただけるような効率的な経営を推進していく必要があろうかと思うわけでございます。  NHKの関連団体は、放送番組の制作、それから番組技術放送施設の維持管理、あるいは営業や管理部門の事務処理といったさまざまな分野にわたりましてNHK業務を補完し、効率化に大きな役判を果たしているわけでございます。こうした関連団体への出資につきましては、放送法に、公共放送事業の円滑な遂行を図るために必要な範囲で限定的に行うということが定められていると承知しております。したがいまして、NHKといたしましては、各年度収支予算出資を計上いたしまして、国会での御審議、御承認をいただきまして、さらに郵政大臣の認可により各団体に出資を行っておるところでございます。  御指摘のように、今後とも放送法趣旨にのっとりまして、節度を持って出資を行ってまいりたい、このように考えております。
  36. 虎島和夫

    ○虎島委員 どうかひとつ節度のある運賃そういう中での効率的なNHK全体の運営に特段の配慮を重ねながら関係団体の処理に当たられるように、これは切望いたしておきたいと存じます。  次に、情報通信関係の機能というのは東京に集中いたしております。これはかねがね東京一極集中という言葉の中で論議されており提起されておる問題点であるわけであります。NHK放送内容番組編成の内容を見てみますと、やはり中央から地方へは実はあふれるような情報が流れておるわけであります。しかしながら、地方からの情報は量、質ともに不足いたしておる。これは私の認識であるし、恐らく日本の識者の見解であろうというふうに私は思っております。そのことは、ある意味では首都圏の一極集中というものにさらに拍車をかけるという働きをいたしておるわけであります。  したがって、日本という国が豊かで、そして均衡のとれた、ゆとりのある発展をしていくためには、文化の地方への拡散あるいは地方で自立的な文化の興起等がなければならないし、そのことには、また、地方でこのようなものを発表する機会が与えられ、広く中央に、あるいは全国にあまねく周知が図られるような、そういう生き生きとした放送文化を通じての、メディアを通じてのありようというのが大変大事であるというふうに私は思っておるわけであります。  そういう意味では、NHKは地方情報の伝達、拡大にどのような御理念を持っていらっしゃるのか、その拡大について具体的にどのような趨勢にあるのか等交えながら、考え方を承っておきたいと存じます。
  37. 中村和夫

    ○中村参考人 私ども、今先生から御指摘ございました同じような考えで、地方の情報を全国に発信しようという努力をこの二、三年続けております。情報の多様性の確保という視点は極めて重要であると思っておりますので、多様な地域からの情報も全国に発信したいということでございます。  具体的に申しますと、平成年度は「ひるどき日本列島」「プライム10」「列島ドキュメント」というものを新設いたしましたし、平成年度、夕方「イブニングネットワーク」という各局リレーの、列島リレーの番組設定しております。五年度は「列島リレードキュメント」という各地方局が十五分の番組をそれぞれつくって、三局分、四十五分の番組を毎週一枠設定しよう、それから「ふるさとの自然発見」「クローズアップ現代」という九時半の番組にも地方からの情報をどんどん発信してもらおうと思っております。去年の四月からこの二月まで百二十三本の「NHKスペシャル」というのをやっておりますが、地方局がつくった「NHKスペシャル」というのが二十二本ございます。本部と地方と一緒につくった番組が三十一本ございまして、五十本以上の番組が何らかの形で地域の情報というものを全国の波に乗せております。  今後ともそういう形で地域の情報を全国に発信していきたい。五年度においても地方発全国向けという枠をふやしてございます。
  38. 虎島和夫

    ○虎島委員 努力をしていらっしゃるということでございますが、私の調査によりますと、地域放送時間というのは、昭和五十六年から平成三年、十カ年間になるわけでありますが、この中で、確かに昭和五十六年、地域放送は全放送の九・一%、平成三年は一五・二%という数字に相なっております。ところが、全国放送のうちの地方局発の比率、これは恐らく地方から出たものが全国に放送されるということでありましょうが、これは実は昭和五十六年度は東京以外二二%ありましたのが平成年度は一八%、これは四%減少しておるわけであります。  こういう数字は一体事実であるのか。とすれば、意欲はわかりますけれども、数字としてはそのような実態になっていないのではないか。今のお話とこの数字とはどのような関連性を持つのか、もう一回これは説明していただきたいと思います。
  39. 中村和夫

    ○中村参考人 お答えいたします。  一時県単位で、その地域に向けてローカルのニュースを三分なり二分なり各県で全部やっていたという部分がありまして、それを全部概算しますとその地域向けのトータルがふえるというような計算もできるわけでございます。先ほど先生が冒頭で御指摘ございましたように、地域から地域に向けて発信する番組という考えから、地域の情報を全国に向けて発信しようと。ですから、例えばある県で三分ニュースをやって、隣の県でまた三分ニュースをやって、それが全国でトータルされる分数と、そうじゃなくて一つの、二十分なら二十分の番組を、地域の情報を全国に向けて放送しましょうということになると、そこでのカウントが二十分ということになってくるものですから、そこで時間の差が出てくるということはございます。  ただ、我々が今考えていますのは、地域の情報をできるだけ全国のネットに乗せよう、「NHKスペシャル」でも「プライム10」でも今度新年度で始まる「クローズアップ現代」でも、ローカル、県域なら県域だけの情報提供ということではなくて、その県域の情報ではあるかもしれないけれども、それが非常に全国に共通する、非常に多様な情報の中身を持っている場合にはそれを全国に放送しようというふうに考え方を少し変えてきておるものですから、そういう差が出てくる場合もございます。
  40. 虎島和夫

    ○虎島委員 ただいま全国に共通するというお言葉があったわけでありますが、私は、むしろ全国に共通しないものをどんどんNHKが掘り起こして、地方の文化あるいは伝統を広く日本じゅうにNHKネットワークを使って知っていただく、理解していただくということこそ必要であって、画一的なものを集めてきてやるならば、これは東京一極集中の画一文化を地方へ拡散させるだけの手法と何ら変わらないというふうに思います。  こういうことをきちっとやってもらいたいために、実は冒頭にNHK公共放送としての役割、特に会長御所見がありましたように、市場原理に基づかない、あるいは時にはそれを捨ててでもやるのだというNHK本来の公共放送としての職務というのを、地方に光を当てることによって具体的に実施をしてもらいたい、このことは声を強くして申し上げておきますから、今後の運営の中でも、適時資料として国会の場でも求めながらこの見解の敷衍を図っていきたいということを申し上げておきたいと存じます。  次に、国際放送であります。  国際放送ということは、数年前払もこの委員会で取り上げたことがありましたが、NHK設立の三大目的の一つてあります。しかし現状では、国際的にはアメリカ、欧州と日本との間の情報量は圧倒的に入超の状況にあると私は理解をいたしております。したがって、この辺についてはかねて我々も強く日本からの情報発信の増加を主張してきたところであります。あるいはまたアジアとの間については、アジアからの情報日本に入ることが極めて少ない。しかもアジアというのは、我々が日本という国家を維持存立、安定的に発展させるためにも、緊密に、ある意味では運命共同体的な立場にある国々が多いわけであります。そういう国の情報が入らない、入りがたい状況にあるということはゆゆしいことであると私は思っております。  私は、過日カンボジアに参りました。我が国のPKO、あるいは文民警察の活躍ぶりを視察する機会に恵まれました。あそこで活動していらっしゃる報道関係の皆さん方が、そこからいかに真実を日本国民に向けて出してくれるのか。そのことが日本だけでなくて、日本国民だけでなくて広く世界の安定のために役立ち、あるいはまた日本国民の当該地域に対する理解を深める唯一の手段であると言っても過言ではないという思いを深くいたしてまいりました。  そういう意味では、まさに第一線で働いていらっしゃる皆さんのお仕事は日本国民の触角としての機能を果たしつつあるという認識が必要かと思いますし、そこで出された真実の報道というのがもっと広く日本国内で国民の中に浸透していくような、理解を深めていくようなそういう措置が足らない。つまり、国際的には地域によって出入りの情報が極めてアンバランスである。相対的に言えば日本情報が外国に出ることが少ない。したがって、起こらぬでもいい摩擦が起こり、あるいは誤解を受けているということがあるわけでありますので、申しますように、国際放送というのは、ただ単に郵政大臣の命令放送をもってやるとかなんとかだけでなくて、NHK存立の三大目的の一つであるという御認識を持たれれば、まだまだ努力は足らないというふうに私は思っております。  情報の一方通行というのは大変に危ない状況であります、あるいは独善も生むわけであります。国際放送充実強化、なかんずく外国語による映像の放送番組提供については、郵政大臣意見の中にもこのことが第四番目にうたわれておるわけでありますけれども、いまだ映像放送というのに手をつけ、力を入れてやっているという情報に接しておらないわけであります。  それらを含めまして総括的に、国際放送に対する、映像放送を含めたNHKの取り組みについて、時間がありませんので簡潔で結構でありますけれども、会長の御所見をこの際承っておきたいと思います。
  41. 川口幹夫

    川口参考人 先生おっしゃるとおり、音声及び映像による外国人の発信ということはこれからますます重大になってまいります。これまでもNHK国際放送という分野でいろいろな努力を続けてまいりましたが、今年度はさらに時間をふやしまして、あるいは中継局をふやしまして、国際放送についてはまだ一段と前進をした、こういうふうに思っております。ただ、例えばドイツだとかアメリカだとかイギリスだとか、そういうところに比べればまだ相当格差がありますので、今後とも国際放送についてはより一層の充実を図っていきたいと思っております。  それから映像についての問題ですが、これは、現在の大きな問題は、映像の発信というものに対しては相当大きな経済的負担を要します。それからもう一つは、例えばアジア地区にその映像情報日本から発信する場合の各地のいわゆる心理的影響というものを考えなければいけないだろう、こういうことをいろいろ考えた上で映像による情報発信ということも積極的に取り進めてまいりたい。いろいろな形で試みをやっておりますし、いずれそういうことについてははっきりした意図を持って計画を出したい、このように思っております。
  42. 虎島和夫

    ○虎島委員 NHKに対する国民期待あるいは我々の期待は限りなくといっていいぐらい大きい。わけてあります。そのことには恐らく会長としても隔靴掻痒の感を、実現とのギヤツプについては思いがあられると思います。どうかひとつ、広く国民の地域の声も聞きながらNHK運営の中に生かしていただけるような、国民期待にぴしゃっとこたえていくような、そういう運営を心から念願をいたしまして、私の時間を終わらせていただきます。
  43. 亀井久興

    亀井委員長 次に、武郎文君。
  44. 武部文

    ○武部(文)委員 先ほど、郵政大臣から発言を求められまして、お聞きをいたしました。  これまでの当委員会で論争のあった重要な問題点について、先ほどの大臣発言は殊さらに触れることを避けていることは、極めて重大だと言わなければなりません。私ども社会党は、この点をこの場で直ちに論議を要求したいのでありますが、本日はNHKの五年度予算審議でありますし、さらに、この問題は日切れ法案の取り扱いとなっておりますから、我々も審議協力をいたします。  しかし、今国会に提出されました郵政省の法案は八件あるわけであります。当委員会におけるこれまでの大臣発言あるいはその後のマスコミヘのインタビュー内容、政治姿勢、これはすべて郵政事業の根幹にかかわる問題でございます。したがって、大臣の真意がはっきりしない限り、我々は法案の審議に入ることはできない、そのように考えておるわけでございます。  したがって、この際、今後大臣への、今までのような具体的な問題、もう御存じのとおりです、質疑がこの委員会で行われるように委員長に強く要請をいたしますので、理事会で協議をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  45. 亀井久興

    亀井委員長 承りましたので、理事会で協議をいたしたいと思います。
  46. 武部文

    ○武部(文)委員 それでは、わずかの時間ですが、NHKの問題についてお尋ねをいたします。  先ほど来、前回も質疑がずっと続きました例のムスタン問題でありますが、会長、ちょっとお尋ねいたしますが、この中央公論の四月号の「「やらせ」の本義を説いて大新聞の驕慢を糺す」という記事、これをお読みになりましたでしょうか。(川口参考人「読みました」と呼ぶ)私もこれを読んでみまして、このムスタン問題というのは大変話題になり、新聞あるいは雑誌も大変取り上げておりますが、一般の者には、このような中央公論の大変立派な論文でございますが、なかなか理解しにくい。やはり、一般国民から見れば、やらせというのが一番よくわかる言葉だと思いますし、そのように理解を国民はしておるだろうと思うのです。この中央公論の四月号の石川好さんの論文というのは専門家の書いたものでございまして、大変興味のあることですが、私も専門家ではございませんのでよくわかりませんが、いろいろこのムスタン問題というのは大きな波紋を呼んだことは事実だろうと思います。同時に、NHKが世界でも例のないような受信料制度による公共放送、それがずっと根づいてきた、そのせっかくの大きな財産のいわゆる信頼感を失ってしまったということは、極めて大きな問題として取り上げなければならない、このように思います。  時間の関係で、私はこのような問題について、いろいろ皆さんから御意見がありますので、簡単に三つの点について会長の見解を承りたいのです。  調査委員会をおつくりになって直ちに対策をお立てになった、あるいはまた、それに基づいて会長みずから処分をするとかいうような非常に厳しい処置をおとりになった。これも大変結構なことだと思いますが、一体、NHK内部でどのような論議が行われたのか、さらには、どのような問題が浮かび上がったのか、同時に、これからいかに克服しようという議論になったのか、この三点についてお伺いをしたい。
  47. 川口幹夫

    川口参考人 このムスタン問題というのには非常に大きな二つの問題点があると思っております。  二つの問題というのは、一つは、ドキュメンタリーは事実をもとにして報道すべきである。その中にいわゆる虚偽とか捏造とかそういうふうな表現があったのではNHK報道番組の信頼を失わしめる、そのことについての問題提起ということが一つあったと思うのです。もう一つは、今の石川好さんの論文の中にもありますように、ドキュメンタリーとは何なのか、あるいは映像における表現とは何なのかというふうなことについての問題提起というのが確かにあったと思います。  前者につきましては、これは、私は問題が起こったときに直ちに調査委員会を発足させましたけれども、幾つかの抗弁できないことがあったという把握をしました。確かにそういうふうにしたことが信頼を失わせる原因になっているということはもう事実でございますから、これについては率直に反省をし、陳謝をするということにしたわけでございます。  ただ問題は、そのままで済まされるものではございませんで、あとどうやって今後そういうものが起こらないようにするか、さらにまた、いい番組をつくるための局内の体制をどうやってつくり上げるかということでございまして、直ちに全国の職場で総討議という形でやりました。先ほど中村理事から御説明申し上げましたように、全国で何千という職員が参加しまして、そして相当論議を重ねた報告が二十センチぐらいの高さになっております。  それを読んでみますと、各地でいろいろな論議が行われ、かつ反省するとともに、では、それを克服して今後どのような番組づくりをすべきかという建設的な意見が非常にたくさん出ておりますので、私はそれを見て安心をしております。恐らくあのことを一つの契機にして、NHK職員は、よりよきもの、より真実を求めての手法のあり方等にもさらに工夫を凝らしてくれることと思います。そのことがNHKの信頼を回復する一番大きな道ではなかろうかというぐあいに思っております。  どのような問題が浮かび上がったかという御質問に対しては、例えば、公共放送に携わる者の姿勢はどうあるべきかそのことについての反省、それから取材とか制作の過程の問題点、どういうふうに事前に準備をするのか、そこに行ったときに違ったことが起こったらどうするのかというふうな事実に学ぶ謙虚さ、あるいは柔軟な姿勢、と同時に十分なリサーチも必要だということを言っております。それから、スタッフや上司との間に自由濶達なコミュニケーション、論議というものがもっと行われるべきであるというふうな問題点、そして許容される演出とは何か、こういうふうな問題も出ております。いわゆるドキュメンタリーの制作論であります。その一方で、取材対象との信頼関係をどうつくるのか、それから、社会的な規範あるいは人権の尊重等についてどういうふうな考え方をすべきなのか、そういうことが問題になっております。  また、話題になりましたメディアミックスのあり方についても、節度あるメディアミックスとは何だ、それをどうやって実現していくのかというふうなこと、あるいは視聴率優先主義に災いされてはいなかったのかという反省、これについては、現場には視聴率優先の風潮はないという意見が非常にたくさん出てまいりましたので、これは前進であると思っております。  そして、今後こういう職場の議論を通じて、一人一人がNHKの制作者としての倫理を自分の中に持つということが第一。それから、NHKという組織の中でそういうものを絶えず純化をし、絶えず反省を繰り返し、そしてよりよきものをつくっていこうという姿勢、そういうことがこの結果出てまいりました。そういう考え方を持っております。したがって、今後この結果が、この経過がいい方に展開していくということを期待しております。
  48. 武部文

    ○武部(文)委員 わかりましたが、私は一つだけこの中から、あなたはお読みになったということですが、石川さんのところでこういうことが書いてありますね。「制作チームから外部に密告者がでるようなことは、チーフプロデューサーのこれは恥というものである。そのことを指摘することが同業のメディア人がやるべきことでもあったはずだ。」これは大変貴重な意見のように私は思いましたが、あなたはどうお考えでしょうか。
  49. 川口幹夫

    川口参考人 確かにそういう面があったと思います。一つのチームを組んで、特に海外で一月ないしは二月という長い間取材をしておりますと、どうしてもいろいろな意見の相違が出てまいります。それが抜き差しならない、チームワークを乱すということになってしまう。そういうことはよくあることですけれども、それをどういう形でもって調和を図るのか。その双方の論議が今度は、論議をし合った上で、ある和解に達するというふうなことを大体やってくるわけですが、そこは今回はできなかったという意味では確かに個人町な問題でもあったかと思います。そういう意味では、個人の倫理の問題あるいは調和を図っていくためのキーマンとしてのあり方の問題ということもはっきりとこの際認識しておきたいと思います。
  50. 武部文

    ○武部(文)委員 もう一つ、チェック体制の強化ということが何遍か言われておるようですが、私はチェック体制の強化というのも必要だと思いますけれども、余り度を過ぎると、これがまた萎縮につなかったり創造性の問題に関係したりとか、いろいろなことが起きるわけですから、その辺は十分心得てやっていかなければならぬな、こういう点を考えておることを要望として申し上げます。  大変時間が短いので、次に、地域放送のことについて。  私はずっとこの委員会でローカル放送のことを取り上げてきたわけですが、先ほど同僚委員からもお話がございましたように、特に地域放送の強化というのは現在は大変強く求められておるように思います。  一昨年、私が四国の松山に調査に行ったあの内容、特に四国で民放と共同番組をつくって大変それが好評を博したということをここで御披露したことを覚えておりますが、そういう面で、このローカルの持つ特徴それから地域の視聴者との結びつき、そういうものがぜひこれから重要視されていかなければならぬさらに大事なことだろうと私は思うのです。限られた予算と限られた人員の中で大変苦労をして地方局はいい番組をつくろうと努力しておるのです。  特に私がここで取り上げたいのは、今毎日夕方の六時に総合テレビで例の「列島リレーニュース」、これは大変評判がよろしいです。北から南にかけて順番に、また逆にやったり、その地域の中の一点を絞ってこれを放送する。自分の地域のことがほかの地域に報道される、またほかの地域の報道も見たいというような点についての要望に大変こたえておる番組だというふうに思って見ておるわけでございまして、こういうことを中心にしてぜひ地域放送にもっともっと力を入れてほしい、このように思います。  したがって、今の世の中は、自分たちの狭いエリアの中だけの情報ではなくて、自分たちのものを全国の者に知ってもらいたい、また知りたい、そういう要望が強いわけですから、特にこの点を強く要望してきた者の一人として、今後協会本部としては地域放送に対してどういう考え方で臨まれるおつもりか、これをちょっとお伺いしたい。
  51. 川口幹夫

    川口参考人 地域放送充実ということは、実は私は非常に熱烈なそれの推進者でありまして、今から十一年前でしょうか、地方の時代映像祭というのをつくるときの設立発起人の一人でありますけれども、そういうものを通じて地域放送充実させようという試みだとか、それから番組を、地方のものを、地域のものを全国にどうやって発信するのか、あるいは地域と地域をどうやって結ぶのかというふうなことを積極的にやってきたつもりでございます。  中村理事から先ほど御説明申し上げましたように、五年度の新しい番組でも創意工夫を随所に凝らしたつもりでございます。御指摘の六時からの「列島リレーニュース」を初めとして、そういう地域からの細かいユニークな情報というのをできるだけ多様に御紹介しようということを考えますし、それから九時半のところなどももっとかっちりしたものをつくって、例えば地域からのドキュメントというふうな形でもってはっきりとした番組として提供したいというふうに思っております。それから、例えば衛星を利用しまして地域発全国向けというふうな番組をもっとたくさんつくろうということをしております。  現在NHK職員は大体一万四千でありますけれども、一万三千を超えておりますが一万四千まで至っておりませんが、その中の大体八千人が地方の職員でございます。東京にいるのは六千人ということで、この八千人ができるだけその地域に根をおろして、そこの地域のためにいろいろな仕事をさせたい。そのためには、例えば人事異動のあり方とか、あるいはそこでの職員の研修だとか、それからいいものを発掘するための努力だとか、いろいろなことに対してより適切な措置をとりたい、このように思っておりまして、今後とも一層充実をさせる方針でございます。
  52. 武部文

    ○武部(文)委員 地域放送についてはよくわかりましたので、地方の諸君もそれを期待しておるわけですから、ぜひ御努力をお願いいたしたいと思います。  もう時間がございませんから、私はもう一つ、文芸春秋の四月号に「ヤラセなくしてテレビなし」という、どうも余り品のよくないタイトルの座談会の記事が載っておりますが、会長お読みになりましたか。(川口参考人「読みました」と呼ぶ)これは、島前会長、それから評論家の方と大学助教授の方の座談会でございますが、いろいろなことが載っておりまして、これはちょっと了解できない点がたくさんあるようですけれども、それを一々やってはいけませんから、一つだけ、この中に民営化問題が載っておるのです。  この発言は島さんの発言ですが、この発言を見ますと、島さんは、NHKは長期的にいえば民営化だ、自分は独断的に決めたのではない、現場の諸君の意見もかなり聞いた結果だ、だから後任の会長、あなたです、も大きな流れには同じ路線をとらざるを得ないはずだ、こういう発言をしていますね。これは、今まで当委員会NHKの民営化などということを論議したことは私は一遍も覚えがございませんし、島さんも一遍も言ったことがないのが、こういうところになって、やめた途端に出てきた。これは一体どういうことかと大変疑問に思ったのですが、いかがでしょうか。
  53. 川口幹夫

    川口参考人 NHKは本来民営だと私は思っています。ということは、国民の力によって成り立っている放送局ですから、そういう意味では民営 いわゆる商業でもなければ国営でもないという形での民営だと思っております。  ただ、今の島前会長発言の民営化というのは、ちょっと違うだろうと思います。ある種のいろいろな施策をとって、受信料だけによらない、あるいは受信料のほかにいろいろな財源を求める、そして分割していってNHK経営自体をより変わった形でもって維持をしていくべきだ、こういう趣旨であったかと思います。それは私もいろいろ聞きました。そして、そういう政策が言ってみれば破綻をして、そして私にかわったというふうな認識も私はしておりまして、ですから、この一年七カ月の間に、私は私なりにいろいろな場でNHKの今後のあり方について、やはり受信料体制基本にしていこうとか、あるいは受信者と向き合って受信者のために番組をつくろう、そして支持してもらおうというふうな姿勢を強調しております。  そういうことを原点にしまして今度はNHK構想というものを出したということでございまして、そういう精神で貫いておるつもりでございます。これはまた先生方の御批判、御意見をいただきまして計画にまとめていこうと思っておりますので、どうぞ御支持をお願いしたいと思います。
  54. 武部文

    ○武部(文)委員 終わります。
  55. 亀井久興

    亀井委員長 次に、大木正吾君。
  56. 大木正吾

    ○大木委員 少し角度を変えまして、最近の経済状況との兼ね合いで、長期計画について、私見も交えて少しく会長に伺ってまいります。  手元に資料若干持ってまいりましたが、今年度の新しい計画ですと、二十万加入を減らしまして亘二十二万という数字が増加目標として出ておりますが、この背景について、まず会長からお話しいただきますか、二十万減らした理由ですわ。
  57. 堀井良殷

    ○堀井参考人 私からお答えすることをお許しいただきたいと思いますが、衛星放送普及見通しにつきましては、当初いろいろな調査の中で普及見通しを想定しておったわけでございますが、社会状況一つには景気動向、消費動向、あるいはオリンピック、あるいは世界的な事件の発生状況、そうしたいろいろな要素によって現実には普及状況が変わってくるわけでございまして、そうした中で、平成年度につきましても、当初見込んでいたよりはかなり厳しい抑え目の見通しを持って、しかしながら、その中で私どもは確実に衛星普及契約増加させるべく努力してまいりたい、こういうことで厳しい状況を認識しつつ、ごらんのような数字、計画にしたわけでございます。
  58. 大木正吾

    ○大木委員 当初の中期計画でまいりますと、普及目標といたしまして、平成六年が一千万加入、こういうふうになるわけですね。そうして四年の場合に、実際、これは契約数の方でございますけれども五百三十二万契約、さらに五年が、見通してございましょうが六百四十八万くらいですね。そうすると、普及目標にいたしましても、あるいは契約目標にいたしましても相当スローダウンしている、こういうふうに感じるのですが、その辺の数字の問題についてもう少し詳しくお話しいただけますか。
  59. 堀井良殷

    ○堀井参考人 経営計画に比べまして普及状況は初めの計画を上回るペースで進むものと思っておりますが、衛星契約につきましては、五年度末で六百四十八万の計画ということでございますので、経営計画に比べまして百八万件下回る数値を見込まざるを得ないということで、契約増加が大変厳しい事態である。ことし、平成年度も厳しい事態の推移が予想されるということで、こういう計画でございます。  先ほども申し上げましたように、衛星契約増加のために全力を傾注するとともに、効率的な業務運営支出を可能な限り抑制いたしまして、できる限りの収支改善を行いまして、経営計画どおりの収支相償の達成に向けて努力しているところでございます。
  60. 大木正吾

    ○大木委員 御努力は結構なんですが、契約率についてちょっと伺いますけれども、今おっしゃったとおり契約数が平成年度で七十八万減ですね。同時に、平成五年が百八万減ですね。こういうふうに計画との関係に乖離がありますが、さて、問題は契約率でございますけれども、平成二年からの契約率の動向、同時に今後の見通し、これは今年度予算も若干の黒を残しながら越年、こういうふうになりますから、逆に言いますと、要員は減るわ、質のいい番組は求められるわ、やはり大変な努力が中にあると思うんですね。しかし、やはり一般問題として、そういったことを内部的にやることは大いに結構ですし、同時にやっていただきたいわけでありますが、周辺の環境との関係からしまして、一体、計画、このままでもってそっとしておいて乖離がどんどん進んでいってしまったら、NHK経営は一体どうなっているんだ、こういう話になりましてもちょっと問題が残りますから、まずこの契約率の問題についてちょっと推移を聞かせてくれますか。
  61. 諏訪恭也

    ○諏訪参考人 お答え申し上げます。  衛星契約率につきましては、衛星普及に対する契約数ということで、元年度末、衛星放送の有料化をしたときでございますけれども、その段階では五一%、それから二年度末は五八%ということでございます。それから三年度末は七〇%ということでございます。それから四年度九月末のところでは七〇%、十二月末も大体同じ七〇%台というところでございます。
  62. 大木正吾

    ○大木委員 相当に厳しい状態の、普及は大きいですけれども、契約との乖離がやはり相当ございますね。相当にやはり要員の減なりあるいは番組の質の問題等も考えてやっていっていただいているわけですけれども、この状態がずっと延長していきますと、結果的には大体三割減ぐらいで五カ年計画が終わっていく。当然これはことし、ちょうど四年目に入ります計画ですから、後半を迎えるわけですが、こういったものを会長は、アフターケア的に見直して現実の数値に直していくという気持ちはございませんか。
  63. 川口幹夫

    川口参考人 現在、平成二年から六年までの五カ年計画というのがすべての基調になっております。現在その進行は、今諏訪理事が申し上げましたように、必ずしもこちらのもくろみどおりになっておりません。したがって、毎年毎年、現状とそれから将来の見通しというものをにらみながら数字を変えていくということをしております。  ただ、この問題は、今御審議いただいているのは平成年度ですが、その次、六年度でもって五カ年計画は終了いたします。その六年度計画の最終の年度に当たって、七年度以降のきちんとした計画をつくり直す必要が当然ございます。その基本に先ほどの「NHK構想」というものを精神的には入れまして、そして、その上で数字等をきちんとはめた計画を立てようと思っておりまして、当然私どもの作業の中に、六年度計画についての見直しと、それから七年度以降の長期計画ということをこれから立てるつもりでございます。
  64. 大木正吾

    ○大木委員 どこの会社も、大分最近の計画、経済状態、営業状態は狂いが大きいですから、やはりNHKの場合も御多分に漏れず、三割前後の計画との乖離はちょっと数字的に小さくはないんですからね。同時に、会長がどこかでおっしゃったと思うんですが、当分値上げはしないという、こういう発言があったと思うんですが、そういったものとの関係等、私も悩みますと、一体NHK、このままほっておいていいのかどうかという問題が出てくるわけですね。  問題は、やはりいずれにいたしましても、こういった計画財源の問題、同時に、これから求められる新しい衛星からさらにハイビジョン計画の問題、そういったものに入っていくところに、一番大事な時期に今差しかかっていると思うんです。そういったことですから、やはりもうちょっと、これは今のお金でつくったときには——経済研究所はたしか野村と聞きましたね、野村さんの方との相談もあってもいいと思うんですがね。やはり非常に新しいものが、ぐんぐんと周辺から影響を与えている、経営にしても、団体にいたしましても。ですから、そういったものとの関係でもって、やはりこれは早くアフターケアしまして見直しに入る。その方が私はいいと思うし、同時に、会長おっしゃった値上げ問題。これはあなたはっきり言っちゃったんだから。それについて、今すぐとはいかぬでしょうから、ある程度目標を立てながら、いつの時期にどうなると、全力を尽くして、NHK内部でもっていろいろな効率化していくでしょうけれども、そういった問題についてはやはり見通しを今あいまいに、何かレールに乗っけたから、乖離がうんと起きても構わずほっておくんだ、こういう状態はやはりいけないと思うんですよ。  どうですか、そういった問題について検討に入る予定はございますか。
  65. 川口幹夫

    川口参考人 今の発言は、ことしの正月の記者会見のときに聞かれまして私が申し上げたことでございます。それには、平成年度までは値上げをいたしませんというふうに申し上げております。ですから、当面、当初六年までという計画でつくった予算ですけれども、現在の見通しては大体五百億ぐらいの繰り越しができて、そして、平成七年までは値上げしなくても絶対大丈夫だというふうな確信を持ちましたので、そういう発言をしたわけです。  これは、あくまでもNHK受信者に対する負担をそれほど大きなものにしないための努力をしなければいけませんから、そういう意味で申し上げたのでございまして、ただ、いろんな条件がまだこれからも変わってまいります。既にこの平成年度も顧みますといろんなことがありまして、社会状況、必ずしもよろしくありませんから、多少の見直しをまたしなければいけない。当然のことながら、この五年度または六年度というものについても大幅な見直しの必要があるかもしれません。それは当然入れながら将来の計画を立てますけれども、少なくとも、現在の私どもの責任では、七年までは値上げをしないという覚悟でいった方がいいというふうに判断したものでございます。  おっしゃるとおり、社会の変動、経済の状況、それからメディアの見通し等々を十分に予測し、計算をしながら、私どもの計画は慎重にかつ大胆に立てられるべきではないか、このように思っております。
  66. 大木正吾

    ○大木委員 その話を追及するつもりはありませんけれども、やはり会長がおっしゃったとおり六年度までは約束ですからやってもらいたいと思うんですが、ただ、普及状態の計画が約九百万人、百万ダウンするとか、五年において契約数において百二、三万ダウンするとか、相当大きな数字の乖離なんですね。ですから、これが何によって起きてきているかという問題をやはり私たちはえぐっていく必要があると思うんですね。  最近の会社なども、リストラが盛んでございますけれども、あちこち全部、経営状態の修正をしています、出資をですね。同時に今、設備投資計画なんかぐんともうダウンさせていますね。そういったものとNHKというものは、一般のいえば製造会社と全然違いますから、うちはもう全然違うから関係ないということが言えるかどうかという問題もあると思うんですけれどもね。  何か伺いますと、今の五カ年計画をつくったときにはGNPでもって三・八%ですか、そういった数字を根拠にしたとかという話をちょっと何か見た気がするんです。そうなりますと、やはり私たち、一般の経済動向と、いえば受信者、加入者は結果的にはやはり中堅サラリーマン以上の方々が多いと思うんですね、そうすると、そういった経済動向と無関係にNHKはこういったものをつくっていいかどうかという問題になりますと、環境的には相当な影響を受けるんだという認識がまず一つは問題として意識しておくことが必要だろうと思うんですが、その辺については会長、どうお考えですか。
  67. 川口幹夫

    川口参考人 まさにおっしゃるとおりでございまして、私も社会の動向それから経済情勢の変化というものに対してNHKだけが無縁であるはずがないと思っております。ですから、そういう動向を十分に現在の状態の中ではかりながら、同時に将来への予測というものを立てていかなければいけないという認識をしております。
  68. 大木正吾

    ○大木委員 これは実は先週の日曜日の日経新聞、たまたま私、家にいたものですからちょっと読んだんですが、経済問題の最近の見方、「日本型神話の終焉」というテーマがありまして、これは一番しまいの方なんですけれども、現在の生活が不景気になったとみんな騒いでいますね、町なんか、タクシーがずらっと東京駅を囲みますでしょう。夜十一時になってもタクシーどんどん拾えますね。そういった状態が、いえば今の経済の生活のレベルが普通の状態だ、こういう言い方でもってこの新聞は締めくくってあるんです。  宮澤さんの方では、生活大国、三・三%ということを、ことしのGNP実質成長率、そういうふうに言っていますね。またこれは変えてないですね。同時に、去年の成長率を見てみますと、当初三・八%だったものがどんどんと下方修正されてきまして、最終的に一・六%に変えたんですが、実際にはこれは締めてみなければわからぬでしょうけれども、実際一%前後、こういうのが大体一般の評論家の見方ですね。  ですから、今年の三・三%自身も相当問題がありますし、ちょうどきょうが問題だから私はあえて申し上げますが、賃金が大体JCグループでもって二千五、六百円ずつ切られているとか、私鉄さんが一万三千四百円で終わったとか、NTTが、さっき入った情報ですと一万二千四百円ですか、こういったもので終わっておりますね。昨年に比べて率で大体一%、額で二千円から三千円の間ぐらいですね。  同時に、減税問題。自民党さんと政府、どうするか知りませんけれども、梶山幹事長はとにかく所得税の減税も含めて、こういう話をして、一応予算を通した。そういった中でもしかし聞こえてきますものは、政策減税大いにやろうという話はどんどん聞こえできますね。中小企業に対する減税もしようと言っていますね。しかし、肝心のサラリーマンを中心とします税金が十年間も全然途中の手直ししない中で来まして、減税しようという話は余り具体的には浮かんでこないですね。たまに見ますと選挙目標の減税が秋口あるかもしれぬ、こういう話がございまして、まだ国会の与野党の議論も余り深まっていないですね。  そう見ていきますと、私たちはやはり、いえば五〇%ぐらい景気が回復状態に入ったという新聞報道もございますけれども、結果的にはそういった経済の景気回復が仮にあったとしましても、底を打って回復はするけれども、その後の成長というものは、民間設備投資にいたしましても非常にスローペースに持っていかざるを得ないし、まして雇用者の所得と可処分所得はぐんと底をはっていく、こういうふうに見なければいけないと思うんです。  そういった面で見ていきますと、やはり今の持っておる五カ年計画、同時にこの次につくられる五カ年計画、これは相当にペースダウンしていかなければいけないと思いますね。同時に、やはり最終目標として衛星放送をどの程度普及させるのか、同時に、どの程度契約件数を獲得されるのか、そういった問題についても考えておくべきだと思うんですよ。  こういったふうにいたしまして、NHKをめぐる経済の環境について、新しい計画なり現在の計画を変えるなりスローダウンするなりするときに、どういうふうに受けとめていかれますか。
  69. 川口幹夫

    川口参考人 先ほどもお話し申し上げましたように、経済の動向とかそのときの世の中のいろいろな状況を勘案することなしにNHK経営はできないというふうなことは、もう基本的に認識をしております。  ただ、私どもがどういう形でもってこれを把握しているかといいますと、例えば、去年はバルセロナ・オリンピックという非常に大きなイベントがありました。そこまではふえるだろう、で、その後恐らく落ち込むだろうという予測をしたわけですね。それは確かにそのとおりでございました。ただ、幸せなことにといいますか、総体の伸びががたっと落っこったのではなくて、予想したよりもなだらかなカーブになってしまったというぐらいのところで抑えられたということは、営業の諸君が本当に血のにじむような活動をしてくれたからだと私は感謝しております。  そういうバックにありながら、なおかつ今後はもっとシビアな予測もし、あるいはシビアな計画を立てなければいけないのではないか、こう思っていまして、例えば「NHK構想」の中の非常に大きなポイントを占めますが、今後メディアの見直し等も大胆にやっていこう、それから、スリムな体質ということをNHK基本の体質にしようじゃないかということを中では言っております。当然、入るをはかると同時に出るを制するということも経営の大きな原則でありますから、そういうことをあわせてNHK経営の方向づけとしてはっきり認識をしておきたいと思っております。
  70. 大木正吾

    ○大木委員 内容的に一つだけ注文つけておきたいことがございますのは、実はGNP、国民総生産という数値を使いますと、NHK受信者を対象とした場合とは対象が、やはり枠が広がり過ぎまして、経済指数を使う場合にはぜひGDP、国内の総生産、これを使ってほしいんです。その方が一般国民の方々の収入とかそういったことがはっきり出てきますので、そこだけが記録として残りますので、一遍会長にも、あるいは関係研究機関とも相談の際、関係担当の方々に頭に置いてほしい、こう考えている問題だ。  あと、時間がありません、もう一つの問題で、経営委員会の問題について若干伺っておきます。  これは、去年も島さんから受けた後の話がありまして、会長と若干やり合った問題でもあるんですが、そのときに、会長最後に、意見の方向について若干検討させていただきます、こういう話でもって終わっていたということがあるんです。そのことはさておきまして、やはり経営委員会の問題については、私たちは、こういったいわば経済状況もよくないという問題とか、ニーズがどんどん変わってくるという問題等もございますから、やはりあり方を一つはもう少し活性化するという問題、国民に開かれた状態に何とかできないかという問題、この二つが問題だと思って見ているんです。  その場合に、今、例えば全国ブロック、八ブロックから八人代表が出ておりまして、全国区という言い方は悪いんですが、大体地方の団体、代表的な方々が四人おられます。この枠というものは、法律、定款でもってがっちり決まってしまっていて絶対に変えるわけにはいかないというわけではないでしょう。若干ふやすことはできるわけでしょう。その辺はどうなんですか。経営委員の数です。
  71. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 経営委員会委員の数についてのお尋ねでございますが、放送法に基づきまして委員の選出をすることになっております。放送法によりますと、「教育、文化、科学、産業その他の各分野が公平に代表されること」それから、十二名の委員のうち四名は全国を通じて、八人は地方選出とされているところでございます。  この趣旨とするところは、NHKの最高意思決定機関にふさわしい委員を選ぶという観点から、放送に関して公平中立な意見を述べて、国民を代表する立場から判断を下せる人物でなければならないということだろうと思いますが、この数の問題について、放送法で地方選出が八人と書いてあるわけですけれども、これは地方選出の数と全国選出の教とのバランスの問題は、法律ができたときの解釈、いろいろ調べてみますと、全国、地方選出の教とのバランスから構成員の三分の一が全国区がいいというようなことで、適当だろうということで決まったように書いてあるわけでございます。  いずれにしましても、私ども、どういう数がいいのかということについて、具体的に的確に十人がいいとか十二人がいいとかいうことを言える立場にないわけでございますが、しかし、今日の委員の数十二名という経営委員会が存在しているわけでありますが、現在のこの制度は、私どもの把握している限りでは適当なものではないかというふうに考えているところでございます。今後ともこの経営委員会が活性化していきますように期待をしたいと思っております。
  72. 大木正吾

    ○大木委員 別に四名という形であれすることはありませんし、同時に中立性といいますか報道の公正さを保つ、これは一番大事な問題です。私はそれでいいと思うんですが、問題は、もうちょっと視点を変えまして、活性化とか国民のニーズにこたえるためにどうすればいいかということも加味して経営委員会議論ができまして、一部、やはり逓信委員会等には何か大事なときには記録、ABCで結構ですから、配付してもらってもいいと思うんですね。  去年もそんな議論会長とちょっとやった経過を覚えているんですが、特にニーズの吸収とかそういった面に入りますと、いわば今度、国会で二人承認いたしましたけれども、ローカルの鉄道の会社のかつて社長だった方とか、銀行の頭取をかつてやった方とか、どう考えても、地方的にも名前を聞いてもその地方の方々は余り知らないという方がいるんですね。大臣、笑ってはいけませんが、失礼なんですが、だからもう少しNHK自身も団体なり業界に影響力のある方を少し引っ張る、こういう形で、私は労働界出身だから、言いますとすぐ労働界になってしまう、それはいけませんからね、ではなくて、労働界を含めた各団体で影響力の駆使できる方々に入っていただく、こういうこともぜひ加味していただきまして、これは郵政省の方に注文といいますか、そういったことでぜひお願いいたしておきますので、よろしくお願いいたします。  時間が参りましたので、以上で終わります。
  73. 亀井久興

    亀井委員長 次に、阿部喜男君。
  74. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 きょう私は、特に国際放送のあり方について具体的に、郵政省並びにNHKの見解を承りたいと思います。  NHK国際放送を行う法的な根拠は、一つには、放送法第九条のNHKの「業務」として「国際放送を行うこと。」になっております。もう一つは、放送法第三十三条、いわゆる「国際放送実施の命令等」、「郵政大臣は、放送区域、放送事項その他必要な事項を指定して、協会国際放送を行うべきことを命ずることができる。」この三十三条の政府の命令による放送、その二つが国際放送NHKがやっておる、やらなければならない法的な根拠だというふうに考えます。  さて、先ほど来議論がありましたように、今日、国際化が進んで国際放送の持つ意義は非常に重くなってまいっておりますし、郵政大臣NHK予算に対する意見書を見ましても、ここ十年以上、毎年、その意見の中には、国際放送の重要性にかんがみて国際放送充実強化を図れ、こう意見が述べられております。  また国会としても、当委員会においてこれまた十年以上同じように、国際放送の重要性にかんがみて充実強化を図れ。その限りにおいて政府と国会の意思は全く一致しておると言わなければなりません。NHKもまた事業計画の中で国際放送の強化をうたいとげて努力をしておられることも承知をしておりますが、にもかかわらず、十年間同じことが繰り返されてきておる。なぜだろうか、何とかならないものだろうかというのが切実な私の気持ちであります。  その一つとして、申し上げましたように、国会も郵政大臣国際放送の強化について同じ意見を持っておりますけれども、注目しなければならないのは、郵政大臣意見NHK予算に対して述べられた意見であります。国会の決議は政府並びにNHKに対して注文をつけた決議でございます。したがって、政府は、放送法三十三条による国際放送の命令に当たっては、その内容充実強化をされるように配慮しなければならないのではないか。例えば、平成年度国際放送の命令分については、この法令で定むる「放送区域、放送事項その他必要な事項を指定し」と、どういう内容のものを指定をし、しかも同法三十五条に言うその国が命令した費用は国が負担する、国が負担しなければならないNHKに対する予算の積算の根拠はどうなっておるのか、まず郵政省の方にお伺いします。
  75. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 ただいま御指摘のとおり放送法三十五条の一項において、国が命令をした場合の必要となる経費を国が負担するということになっておりますが、郵政省として命令放送の費用につきまして、積算はいろいろありますけれども、国ごとに時間数等も違いますけれども、ニュース等の報道番組を世界を対象にそれぞれの地域に適した言語で毎日少なくとも十五分以上の放送をするという考え方に立ちまして、その必要な人件費番組制作費、送信費等の費用を算定しているところであります。  具体的には、平成年度におきまして、人件費六億一千四百万円、番組制作あるいは八俣からの送信等の費用として七億一千九百万円、また遠隔地における受信状況改善するための海外中継放送による受信改善といたしまして四億五千三百万円を積算いたしております。合計で十七億八千六百万円としているところであります。
  76. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そこでNHKにお伺いしますが、NHK平成年度予算では、国際放送に要する予算が四十五億八千七百万円、こうなっております。下に二つの内訳がありまして、番組関係が十八億四千百万円、技術関係が二十七億四千六百万円、こうなっておりますが、国際放送に要する費用は合計四十五億八千七百万、こういう数字で国際放送が実際にできるのかどうか、NHKの方にお伺いします。
  77. 中野正彦

    中野参考人 お答えいたします。  国際放送につきましては、今先生お話があったとおり、NHKの自主分とそれから放送法三十三条に基づきます政府からの命令分、これを合わせて一体的に番組を編集し、実施をいたしております。  その経費でございますが、今お話がありました国際放送費四十五億八千万、この経費にさらにNHK職員人件費、これは二百三十六名分でございますが、これを三十五億二千万円、そのほかに国際放送実施に必要な放送設備等の減価償却費、これは十五億四千万ございます。したがいまして、人、物、金、いわゆるトータルコストで申し上げますと九十六億四千万ということでございます。この経費をもって二十二カ国語一日六十時間の規模で放送実施する、こういうことでございます。
  78. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 その九十数億円の予算がなければ国際放送はやっていけない、現にそれだけの予算を必要とする、こうNHKは答えておられますが、それでは、先ほど郵政省の放送局長の答弁にあったいわゆる郵政省が命令をした、郵政大臣が命令をした費用の積算は、それでもって賄えるのかどうか、NHKの方の見解を聞きたいと思います。
  79. 中野正彦

    中野参考人 今申し上げましたように、NHKの自主分、自主業務分とそれから命令分、これを一体のものとして実行いたしております。したがいまして、九十六億四千万のうち政府からの交付金は十七億八千万、総支出の中で一八・五%を占める、こういうことでございますが、一体のものとして実施をいたしております。
  80. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それじゃ話が食い違うじゃないですか。郵政省の方はちゃんと積算をして、命令をした分はこれこれである、こういってNHKの方に命令した。NHKの方は、わけわからぬが、とにかくもらって一体のものとして運営しておると。物事を注文を受けて幾らかかろうかわからぬような、そんな計算がありますか。郵政省の方は、これこれの地域でこれこれの時間こうやれということを命令をし、その積算の根拠はかくかくである、こう言っておるんでしょう。NHKの方ではそういう積算の根拠も何もわからないで、やれと言われたら、はいとやるんですか。そういう経営をしておるんですか、NHKは。
  81. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 私の説明が足りなかったかもしれませんので補足さしていただきたいと思いますが、現行の放送法におきまして、国がNHKに対して命令をした、その必要な経費は国が負担するという制度になっているわけでございますが、ただ、この国際放送実施に当たりまして、放送効果を高めるために命令放送と自主放送を一体として行うようにいたしておるところでございまして、したがって、実際の放送におきましては命令放送と自主放送との区別がつかないという実態になっていることは事実でございます。
  82. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 おかしいじゃないですか。先ほどあなたは積算の根拠を示したんですよ、何に何ぼかかる、何に何ぼかかると。したがって、トータルこれだけを交付金としてNHKに命令した分を金を出す、こうおっしゃったんでしょう。今のお話は全然違うじゃないですか。とにかく法律で決められた中でやるだけはやる、あとは一体として運営するんだ。  NHKは、一体運営をしておるんですか、それとも、命令された分は命令された分として明確に区別をし、それが十分命令された分を賄うに足るのか足らないのか、そのくらいの計算はしておかなきゃおかしいんじゃないですか。
  83. 中野正彦

    中野参考人 私どもは、政府からちょうだいしております十七億八千万の交付金と受信料と合わせまして九十六億四千万で、一体のものとして実施をいたしております。
  84. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 どうも、NHKは一体のものとして運営しておると言う。郵政省は積算をして、それに基づいて命令分の金を出しておる、こうおっしゃっておる。全然運営の方針がおかしくなってきておる。これはどういうことですか。NHKはそれで賄えると思っておるのですか。運営は一体であってもいいですよ。それで賄えるのか貯えないんですか。命令分を賄っていけるのかいけないのか、それを聞いておるのです。
  85. 川口幹夫

    川口参考人 放送というのは、もう先生御存じのごとく、NHKが全体の編集権を持って国際放送の場合も放送しております。したがって、当然いわゆる命令放送という形もあるんですけれども、それを一々これは政府からの命令放送ですというような形で放送するようなことはしない。それが国際放送というものに対する信頼感をむしろ高めるんじゃないかということで、NHKが責任を持って放送します。いわゆる命令放送に当たる分もその中に当然入ります。こういう解釈をしておるわけです。  ですから、ただし郵政省の方は、そういうことではお金の出し方についてもやはりある種の基準がなければいけないということで、ただいまのような基準でもってお出しになっているというふうに私は解釈しております。
  86. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 しかし、放送法の三十二条には、放送の区域、放送事項その他必要な事項を指定して命令する、こうなっているんですよ。その指定して命令されたものをあなたの方は勝手に編集するんですか。
  87. 川口幹夫

    川口参考人 当然その命令の中に具体的な事項も入ることもございます。それもNHKの判断で、例えば国際放送は本当にたくさんの波を使ってやっておりますから、その波の中のこの部分を生かしてこういう放送をやろうということは、結果的にはNHKの編集権の中で処理をするというふうなことをしております。
  88. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それでは、例えば、具体的にこことこことここに放送せよという放送の区域が命令される、その場合でもNHKは勝手に放送の区域を変更して、NHKの編集権の範囲内でやれるということですか。
  89. 川口幹夫

    川口参考人 ここに、平成四年の四月九日に出されました郵政大臣のいわゆる命令書というのがございます。これを読みますと、「放送法第三十二条第一項の規定に基づき、次の事項を指定して、国際放送実施を命令する。」というふうになっています。その中の二番目に「放送番組の編集及び放送」という項がありまして、この中に「放送番組の編集及び放送に当たっては、次に定めるところによる。」こうなっておる。それで、(1)が「放送法第九条第一項第三号の規定による国際放送と一体として行い、放送効果の向上を図ること。」というふうなことがございまして、これを私どもは解釈としては、NHKの編集権の中で命令放送も消化するというふうに解釈しているわけでございます。
  90. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 運営費として一体の放送をすることそれ自体を私は言っておるのではないんですよ。経費負担について言っておるんですよ。一体、放送法三十五条の国が命令した分に対する必要な費用は国が負担するというこの条項は一体どうなるんですか。あなたの今の解釈では、国から言われたことをやって、もらっただけでやるんだ、こういうことになっていますが、必要な費用は国が負担すると明文がある以上、必要な費用がどれだけなのか、そのことは両者の間で話し合って決めなければならぬ性格のもの、私はこう思いますが。
  91. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 先ほども申し上げましたけれども、命令放送実施につきましては、国の負担する費用はかくかくしかじかの金額である、この範囲内で行ってくださいというふうに私どもの方ではNHKに対して申し上げております。
  92. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 第三十五条の主文は、「前二条の規定により協会の行う業務に要する費用は、国の負担とする。」いわゆる三十五条の郵政大臣が命令したことに対する費用の負担は国が負担する、こうなっておるでしょう。違いますか。それを勝手に、国が先に予算を決めてこの範囲内でやってくださいと言うとするならば、三十五条の法の解釈はおかしくなりはせぬですか。
  93. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 NHKに対する命令の中身として、先ほども触れましたが、放送事項として、時事、国の重要な施策、政策、国際問題に関する政府の見解の三項目、五年度で挙げることを予定にしておりますが、大体毎年同じような形でございますけれども、そういう放送事項をやり、地域につきましても、一般向け、全区域向け、それから放送区域を地域向け放送というようなことで地域を指定しておるところでございます。それに要する費用として、国の負担分として必要な金を出しておる、こういうことでございます。
  94. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 今、国は必要な経費を国が出しておる、こうおっしゃいましたよ。NHKは、必要な経費をもらっておるかおらぬか、どうなんですか。
  95. 川口幹夫

    川口参考人 交付金十七億余りの金が果たして高いか安いか、もっと国に負担してもらうべきだという御意見かと思いますが、私も、国際放送NHK負担プラスやはり国の負担というのが当然あるべきだと思っています。ですから、そのことについては私からもいつもお願いをしておるところでございます。また、この国会におきましてもそういう御認識を賜っておりますので、今後とも各種セクションに訴えて、できるだけ国際放送充実のために国も応分の御負担をお願いしたいということを申し上げたいと思います。
  96. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 今まで応分の負担ということでずっと来たから今日こういう状況になってきた。私が特に国際放送の費用の負担についてこれだけ厳しく申し上げるのは、今明らかに、国際放送が映像による情報提供する、あるいは交流する、そういう重要なことをやらなければならない段階になってきておる。しかもそれに要する費用は、今のままでいくならば、直接の受益者でない国内の受信者にこれを負担させて、国策として行う国の国際放送の分についてはそのままずっといってしまって、結局は受信者に全部負担をおっかぶせることになってくる。だから、応分のということではなくて、もし明確に——まあ木下さんはさっき積算根拠をおっしゃいましたが、私はそれほど明確な根拠があるとは思ってないんですよ、率直に言って。適当なことを言ったと思っておるのですけれどもね。  しかしいずれにしても、今日まで応分のということで来たところに過ちがあったから、この委員会でも国の交付金をもっと増額をしなさいということは、決議としてしばしば挙げてきた。決議としてやってきたのになお今日、十年間郵政省もNHKもこれをやろうとしない。そこで私は従来から提案をしていたのです。明確に積算が難しいものならば、応分にという言葉を使うならば、国際放送に要する全額の中の何割を国が国策として命ずる国際放送分とするのか何割をNHKの本来業務として負担するのか、この負担割合を決めておけば、毎年毎年こうして議論することもなかろうし、今後大きく膨らんでいく国際放送の費用について、NHK受信者におっかぶせなくても済むような、受信者が納得できるような方法が講じられるではないかということをるる私は述べてきたが、十年間全然変わってない。  どうするつもりか、これ、郵政当局とNHKで考えを述べてください。
  97. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 国際放送の重要性につきましては、先般来るる各先生からも意見が出されているところでございますが、私どももこの重要狂については深く認識をしているつもりでございますけれども、ただいま阿部先生の御意見につきまして、命令放送と自主放送の費用の分担比率を明確にすべきだということにつきましては、かねてからの先生の御指摘でございまして、私ども郵政省といたしましても、これまでも検討を続けてきたところでございます。しかしながら、国の厳しい財政事情でありますとか、あるいは予算要求のあり方の問題、あるいは郵政省の予算事情等の問題もありましてなかなか難しいというのが現状でありまして、御理解を賜りたいと思います。  ただ、郵政省といたしましては、これまでも国際放送の果たす役割の重要性を認識いたしまして、極力必要な政府交付金の確保に長年にわたって努力をしてきたところでございまして、今後も関係方面の御協力も得ながら政府交付金の増額に努力してまいりたいというふうに申し上げたいと思います。
  98. 川口幹夫

    川口参考人 国際放送にかけるNHKの費用は、現在九十六億余りになっておりまして、百億に間もなくなろうとしております。当然、今後も増加の方向に行かざるを得ないのではないか、ある程度の増加をしないとそれはいわゆる国際的な要望にこたえられないということも思っておりまして、今後の努力をするとともに、私も郵政当局にお願いをしまして、できるだけ交付金の増額をお願いしたいと思っております。  なお、今度は映像の海外発信という非常に大きな問題が次に来るわけでございまして、既にやっておりますテレビ・ジャパンというのは、御承知のごとく非常に大きな経済的な苦境に立っております。ですから、あの形で、つまり企業の協賛を得てやるという形はとても恒久的に通用するものではないというふうな認識もしなければいけなくなっております。ですから、この映像発信についてはさらにいろいろな形の工夫をしてまいらないといけないのではないかと思っておりまして、これにもまたいわゆる公的資金の導入というようなことなども私どもは考えたいと思っておりますので、ぜひ御理解、御支援をいただきたいところでございます。
  99. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 冒頭私が申し上げましたように、95国際放送には二つの面がある。一つは、NHKの本来業務として行う分野がある。しかしもう一つは、国策として国が命令をする分野がある。そのことは法制上明らかなわけですから、したがって、国策として国が命令をする分野については必要な経費を払いますよ、法律にもそう明記されておるんです。  それを今日まで、つかみ金式でこれだけしか予算がありませんからとか、ある時期には大蔵大臣が、亡くなりましたけれども大平正芳先生が大蔵大臣のときに、必要な金は国が出しますとこの委員会で約束したこともあるんですよ、それができないということは、結局郵政省とNHKの間でまあまあで済ませてきておるからできないのであって、おっしゃるように、これからますます国際放送が重要性を増し、かかる費用も大きくなってくるならば、国際放送を行わなければならない理由についてもう一遍思いをいたして、明らかにこれは国策として行っておる分と、それからNHK本来業務受信者負担によって行われる部分とがあるということをはっきりしながら、その負担割合をどのくらいにすれば正しいのか、これはぜひひとつ検討して、もう一遍同じことを言わぬで済むように処理をしておいてもらいたいと思います。  それから、あと時間がなくなりましたから私要望しておきますが、今日、日本の在日外国人の数が非常にふえております。この方々は、言葉がわからないために非常に不自由しておるようですから、例えば今のラジオ・ジャパン、あれを何とか工夫して、これは日本の周波数の関係もあるでしょう、あるでしょうが、何とか日本の在日の外国人に対するサービスができないものだろうか。  同じように、身体障害者等についても、もう少しサービスの工夫をしてもらいたいということを要望して、質問を終わります。
  100. 亀井久興

    亀井委員長 次に、石田祝稔君。
  101. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 まず最初に、郵政省の方にお伺いをしたいと思います。  郵政大臣意見を付してこのNHK予算承認を求めるということになっております。私も、昭和六十三年度から平成年度までの大臣意見を拝見しましたけれども、冒頭の言葉がいつも全く同じなんですね。「収支予算事業計画及び資金計画は、おおむね適当なものと認める。」これは一字一句違わず六十三年度から平成年度までであります。その後の配慮事項としては、それぞれ年度ごとに違うわけです。そういう中で、「おおむね適当なものと認める。」ということになっている。この「おおむね」とは、まずどういう意味なのか、御説明いただきたいと思います。     〔委員長退席、坂井(隆)委員長代理着席〕
  102. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 NHKのこれまでの事業運営に当たりまして、経費の節減と受信料収入確保等に努めてこられまして、平成年度予算案におきましても、経営計画に比較いたしまして、長期の計画でございますが、百十四億円を上回る翌年度以降の財政安定のための繰越金を計上するというような努力が認められるところでございます。  しかしながら、平成年度予算案におきます事業収入の面で見ますと、平成二年から六年までの経営計画を下回っております。それが、衛星契約率がこの長期計画に比べまして伸び悩んでいることが主な原因であろうということでございまして、衛星契約の一層の締結などさらに努力してもらいたいということから、郵政大臣意見については「おおむね適当」という表現で記載させていただいたものでございます。
  103. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 この「おおむね」という日本語が、辞書で調べたらどういう字になるかわかりませんけれども全く同じ表現で、配慮事項が毎年違うというのは、これはまたおかしい話ではないかと私は思います。もうちょっと工夫をして今後大臣意見として付された方がいいのではないか、このように私は思います。  これはこの程度にしておきますけれども、それから配慮事項の中で記の一、本年は「公正な報道を行い」、こういう字句が入っております。六十二年からずっと見ましたが、平成四年と五年に配慮事項として出てきておりまして、平成年度NHKの言葉を受けて、公正な報道に努めてもらいたい、こういうふうになっておりますが、ことしはそのまま公正な報道を行ってもらいたい、こういうふうに来ております。これは、いろいろなことがあったからだと思いますけれども、あえて当然のことをここで述べられているのはどうしてなのか、このことについてお聞きをしたいと思います。
  104. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 当然のことといえば当然のことでございますが、公正な報道ということの意味合いは、「政治的に公平であること。」あるいは「報道は事実をまげないですること。」などを定めました放送法三条の二第一項の規定を遵守した報道という意味合いであろうと思います。  NHK放送法によりまして、豊かでよい番組放送することを目的にするとされております。この目的の達成のためには、やはり公正な報道確保することは極めて重要だということも言うまでもないところでございまして、そういう意味郵政大臣意見において、「公正な報道を行い、放送番組充実向上に努めること。」が必要であるというふうに記載をしたものでございます。  ただいまNHKの方の平成年度事業計画におきましても、「公共放送の使命に徹し、国際的視野と社会的連帯感を基調に、公正な報道と豊かな放送番組提供に努める。」という記載がされておるところでございまして、これを引用すれば去年と全く同じになったかもしれませんが、ことしの場合は去年と比べまして少し表現を簡略にいたしたために、そういった前段が抜けているということに御理解いただきたいと思います。
  105. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 これはこれからちょっとNHKの方にも聞きますけれども、あえて公正な報道をしてもらいたいという意見を付されないようにぜひお願いをしたいと思います。  続きまして、三月十九日と二十二日に文書で、昨年起こりましたことで当委員会でもいわゆるやらせということで問題になりました件について、文書で厳重注意ということが出ました。改めて私、大臣の方にお聞きをしたいのですが、こういう形で文書として出された、そして報道に対する今後の取り組みについて御注文をされたと思いますけれども、大臣の出された御心境と申しますか、あえて出さなくてはならなかったことについてどのようにお考えなのか、お聞きをしたいと思います。
  106. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 報道の信頼性を著しく傷つけたということは大変国民にとっても迷惑だったと思います。今後、真実でない放送というのは厳に慎まなければならないし、公正な報道、事実に基づいた真実の公正な報道というものを行う役割を担っている公共放送としても、二度とこういう真実でない放送が行われることのないようによく検討してもらいたいということで注意したものであります。
  107. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 これから予算等についてNHKにお伺いをしたいと思うのですけれども、私は、これは質問ではありません、意見として最初に申し述べさせていただきたいのですが、きょうの新聞を見ますと、衛星調達法人が十三日に設立という記事が出ております。  この衛星放送調達法人の問題は、本予算が通った後で具体的にお金を出せるということになるはずであります。それを昨日の二十四日、この予算審議の前日にそういう発起人総会ですか、それを行って、四月十三日に設立をする、こういうことを決めるのはどういうことかなと私は素朴に思います。予算審議して、それで承認されれば私はわかりますけれども、その前に、それも衆議院でやる前日にそういう発起人総会をやって設立まで決めてしまった。これは事業の関係、時期的な問題もあるかと思いますけれども、ここで何のために審議しているのだ、こういうことにもなりかねないと私は思います。  このことは、いろいろ事業計画等もあるでしょうからわからないこともございませんけれども、あえて前日にということは非常に遺憾である、私はこのように思います。これは一言意見として申し述べさせていただいておきます。  先ほど小泉大臣からも御答弁をちょうだいしましたけれども、改めて文書で厳重注意を受けた、このことについて今後どういうふうに取り組んでいかれるのか、このことを御答弁いただきたいと思います。これは会長の方でお願いします。
  108. 川口幹夫

    川口参考人 確かに郵政大臣から厳重注意を受けました。それで私は直ちに談話として発表したのですが、御注意は重く受けとめます。ただ、この問題については、NHK報道機関、放送機関としてのあり方からいって自律的に自主的にいろいろなことを考えるべきだと思います。したがって、その自律の精神を生かしてできるだけこのことを早く解明をして、そして対応策を考えたい、こういう談話を発表しております。精神は今の発表と全く同じでございます。
  109. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 重く受けとめて今後やられるということであります。  それで、この問題について当委員会審議をしたときに、民放連の会長さんもお見えになっておりましたので、NHK、民放合わせて番組制作についてのそういう問題が起きないような委員会をつくったらどうか、私もこういうお話もたしかさせていただいたと思いますが、二十三日にNHK日本民間放送連盟、民放連が共同で番組倫理委員会ですか、こういうものを設立した、こういう記事を新聞で拝見をいたしました。  具体的にそういう検討する場をつくった、これは私は非常に結構なことではないかと思います。自主的にこれから進めていただきたいと思うのですが、そういうものをつくって、具体的にどういう成果を上げるように今後お考えになっていらっしゃるのか、そのことについてお伺いをしたいと思います。
  110. 中村和夫

    ○中村参考人 先ほど一部御答弁させていただきましたけれども、二十三日に設立いたしまして、そのときの認識は、放送界に共通する問題がある、そういう観点から、最低限放送界が守らなければならない規範みたいなものをきちんとつくってみてはどうかという議論がございました。ただ、そういう規範をつくるにしても、具体的にどういう問題が起こっておるのか洗い出しをしてみて、それに共通する問題がどういうものなのか、そういうことを作業として事務局でやりましょうという話になりました。社会の変化とか視聴者の受けとめ方、そういうものが時代の変化とともに変わってきておりますから、そういう中で取材対象者にどういう配慮をすればいいのか、それから、制作者の職業倫理というのはこの際改めてどう確立したらいいのか、そういうことについても議論しましょう。ただ、余り細部にわたって基準をつくって番組の個性や創造性に枠をはめてしまうというようなことはぐあいが悪いので、そういうことも踏まえた上で議論をしてみましょう。三、四カ月議論してみて、それでどういう形になるのか、まず研究を始めよう、事務当局で研究を始めましょうということです。それから、せっかくこういう機会なものですから、民放とNHKが共催という形で一緒になってこういう問題についてのシンポジウムみたいなものも前向きで考えましょうというのが第一回目の会合の結論でございます。
  111. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 今後ぜひ実効のある形で進めていただきたいのです。  私、端的にお聞きしますけれども、こういう形で番組倫理委員会をつくった。そうすると、この前会長に来ていただいたような、こういう場に来ていただいて陳謝とか陳謝ともつかない説明をしていただくようなことになるのかならないのか、それだけちょっとお聞きをしたいと思います。
  112. 中村和夫

    ○中村参考人 そういうことが起こらないように議論を詰めていって、それで放送界に共通する最低限のモラル、規範というものをつくった上で、具体的には、問題が起こったときにはどういうところでその原因の究明なりをしていくかというそこの部分にも踏み込んだような形での議論にしましょうということですから、もうこの際放送界が二度とこういうことを起こしてはいけないという覚悟でこの規範づくりに努めようということでございます。
  113. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 続きまして、「NHK将来構想」に対してお伺いいたします。  この「将来構想」を私も拝見をしました。非常に長いものですから、時間の関係で斜め読みをして勉強させていただきました。これの一ページにこういうふうに書かれております。「NHKは、これまで積み重ねてきた長年の蓄積を生かし、受信料を基盤とする公共放送の原点に立ち続けることを確認する。」こういうふうな表現になっております。  これは、受信料を中心に今後とも運営していこう、川口会長は先ほど民営、民営というのはこれは国民営だ、こういうふうなことをおっしゃったと思いますけれども、このことと、前会長がいわゆる受信料値上げに依存するということは非常に厳しいのではないか、ですからビジネスを加えた放送事業を展開する、こういうふうなお考えで進めておられたと私は承知をしておりますけれども、そうすると、川口会長にかわってNHKとしては、スタンス、いわゆるよって立つ基盤、その考え方を変えたのかどうか、お伺いをしたいと思います。
  114. 川口幹夫

    川口参考人 明らかに変えました。私が会長になって直ちにその問題については、NHKのいわば基本的な考え方を決めなければどうにもなりませんので、そのことをまず第一に部内での論議をやり、それから経営委員会等にもお話をし、識者の方々にもいろいろな考え方を問いただす中で、これは、NHKは将来とも受信料体制基本にしていくのが一番正しいやり方であり、また確実なやり方ではないかということを考えた次第でございます。
  115. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 今明確に、スタンスは変えた、こういう御答弁でございました。それに関して、受信料を基礎とするということと、私ちょっと読ませていただいておりまして、若干そごがあるのじゃないか、ちょっと違うところがあるのじゃないかというところがありましたので、これは私わからないところでございますので、ぜひ納得のいく御説明をお願いしたいのですが、三ページに「受信料制度の基盤を一層保強固なものにするため、営業活動を強化する」、こういうくだりがございます。  これは素直に読んだら、「営業活動」というのは利益を生み出す活動ではないか。前会長がやられておったようなメディアミックスという形で利益を上げる、副次収入確保していく、こういう考え方でやってきた、それを明確に今度変えたとおっしゃいましたけれども、この言葉だけを見ますと、「営業活動を強化する」というのはまさしくそのことではないのか、素直に読んでこういうふうに私は思いましたが、これは具体的にどういうことを指しているのでしょうか。
  116. 川口幹夫

    川口参考人 これはNHKの中の言葉でございまして、今おっしゃられて反省をしているのですが、NHKには昔は加入局というのがありまして、いわゆる聴取者の契約加入というものを扱っておりました。それが、昭和四十年代の初めだったと思いますが、営業総局という名前をつけまして、加入契約等のことを営業総局というところでやるというふうになりましてから、NHKの中ではそういう加入契約、それから受信者促進、受信者活動みたいなことをすべてひっくるめて営業活動と呼んでおりますので、いわゆる世間の商売をするという意味での営業という意味では全くございません。
  117. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 これはぜひ言葉を書き直した方がいいと思います。  要するに、情報もディスクロージャーして受信料をちょうだいしなければならぬ、そういうことで今後お進めになるということですから、これはNHKの中だけで通じる言葉でやっておってはまた要らぬ誤解を受けることもあると思います。ですから、いろいろな問題というのは、社会との接点、社会の中での存在だということを忘れて内向きの論理だけで進めていく、結局そういうところに、あるときに社会との断層、そういうものでいろいろ問題が出てくると私は思います。  ですから、これを読んでおりまして、私は意味がちょっとよくわからない。そういう意味内容ということはわかりましたけれども、その言葉のあらわしていることと実際受け取る側の意識のずれが絶対に出てくると思います。ですから、これは印刷されておりますからこの場ではどうしようもないわけでありますけれども、その内容を正確にあらわす言葉、みんなが聞いて、見て同じような認識に立てるような言葉にぜひ改めていただきたいと私は思います。  そういう中でも、やはり副次収入というものをある意味でいえば考えていらっしゃると思いますが、副次収入はどのくらい予定をされておるのでしょうか、その内容について簡単にお願いします。     〔坂井(隆)委員長代理退席、委員長着席〕
  118. 堀井良殷

    ○堀井参考人 受信料財源とし、受信料に基づいて運営されるNHKでございますが、同時に視聴者負担増を極力抑制するという経営努力もまた必要であると認識しております。  効率的な業務運営をやるとともに、副次的に入ってまいります収入につきましては受信者負担の軽減につながるものという認識をしておりますが、ただ、これは現在でも八十億規模程度のものでございまして、主たる私どもの目的といいますか、関連団体等を通じて行っております活動の目的は、むしろNHKの持っております知的な財産とか蓄積とか技術、そうしたものを多様な形で国民の方々にお返ししていくということが一つの大きな目的でございます。  さらに、そのことによってNHKが外に向かって開かれた経営になっていく、また、NHK放送いたします放送番組もそのことによってかえって多様になり、豊かになっていく、そのこととあわせて、業務が効率的に運営され、また、それに伴って副次収入も入ってまいる、こういう性格のものであろうかと思っております。  したがいまして、副次収入増加するために無理をするということはあってはならないことでございまして、したがいまして節度を持ってこれを行うということを基本としておるわけでございます。
  119. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 それでは、時間も限られておりますので、最後の質問にさせていただきたいと思います。  私のところに民放連から手紙が来たのですが、これで、NHKの将来構想に非常に心配している、こういうことで二点ございました。一点が、放送メディアの見直しということでありました。二点目、関連事業の活用と活性化ということで非常に御心配をされている。私は、この点で、放送行政とも関係をするものですからお聞きをしたいのですが、放送法第九条の第四項、NHK、「協会は、前三項の業務を行うに当たっては、営利を目的としてはならない。」こういう内容法律でございますが、このことと、本体は営利を目的としてはやらない、しかし、本年度もたしか十一億円の出資をされるような予算になっておりましたけれども、子会社等に出資をして、その会社が営業活動を行う、いわゆる通常世間で言う営業活動を行う、これは営利を目的として、ある意味でいえば営利を追求するわけですけれども、そういうことが抵触をするのではないか。これは法の不備があるというふうに民放連の手紙で書いておりました。  まず最初に郵政省にお伺いしたいのですが、郵政省も、先ほど私が言いましたムスタンの文書注意の中で、メディアミックス事業実施に当たって公共放送としての協会のあり方に疑念を生じさせた、こういうことを述べられております。ですから、これはある意味では、メディアミックス事業、いわゆる本体業務ではなくて、その周辺業務として営利ということも考えてよい、そういう業務の中で問題が起こっておるのではないかということをこの文書で指摘をしていると私は思うのですが、こういうように、本体ではなくてその子会社、出資をしている会社がそういう活動をすることに対して、この放送法の第九条第四項に抵触をしないのかどうか。明確にしないとしても、この精神に反しているかどうか、これをちょっとお聞きしたいと思います。
  120. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 ムスタンのメディアミックスの問題につきまして、放送法規定を逸脱したのではないかという疑念を生み、大きな社会問題を引き起こしたということで注意を喚起したわけでございますけれども、これは、この番組の場合に、営利を目的としてはならない、あるいは広告放送をしてはならないという放送法規定がございますので、これに抵触しているというふうには言い切れませんけれども、それを逸脱したのではないかという疑念があったということを申し上げているところでございます。  それから、今の放送法第九条第四項の営利目的の禁止の規定と子会社への出資についての考え方でございますが、NHKの関連団体への出資につきましては、関連団体がNHK業務を支援してNHK業務の効率化に資するという前提で認められているものであるというふうに理解しております。その趣旨に沿って出資がされている限りにおきましては、放送法第九条第四項の営利目的の禁止に反するものではないというふうに思います。  ただ、出資による関連団体の設立を通じて営利を目的とした活動をNHKが行っているというふうに疑われないように、関連団体の活動については節度を持って対処していただきたいと思います。
  121. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 もう一度局長にお伺いしたいのですが、NHK運営に資する目的であればよいというふうにおっしゃいましたけれども、主たる目的はそうであっても、いわゆる営業活動等をやっていけば、例えば、私はここにNHK関連団体というのをもらいましたが、NHKだけではなくていろいろほかにも提供できるような技術、また、ほかの方にもある意味でいえば商品として売ることも考えられるものもできてくるわけですね。主たる目的はこういうことでつくったのだけれども、往の目的のものが大きくなる、それは時代の流れの中であり得ることなんです。ですから、そういうふうなものもこの放送法で抵触しないのか、構わないのかということを再度お聞きしたいと思います。
  122. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 先ほどの繰り返しになりますけれども、NHK業務を支援し効率化に資するという前提で認められておりますので、その限りにおいてそれ自体問題があるというふうには思っておりません。
  123. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 繰り返しになりますけれども、それは設立の前提であって、現在行っている業務がどうなっているか、それとちょっとかけ離れた話ではないだろうかと私は思います。設立の趣旨に沿った形で行き続ければ問題ないのでしょうけれども、そこから逸脱する部分が出てきたときに、それは設立の当初の目的がこうだったから問題ないのだ、こういうことは決して言えないのじゃないかと私は思います。  最後に、会長受信料中心で行くんだというお話をいただきましたけれども、その部分につきまして、放送法との関係で、非常に自戒をしていただいて進めていただくべきだと私は思うのですが、それについてのお考えを聞いて、終わりたいと思います。
  124. 川口幹夫

    川口参考人 NHKがよって立つところは国民の支持であります。したがって、その支持を受けて受信料というものをいただいて運営するというのが基本であると私は繰り返して職員にも言い続けてきました。ただ、それだけですべてが解決するかというとやはり問題は残るわけでございます。  その残った問題というのは何かというと、もう少し受信者の費用負担を軽減する方法はないか。副次収入とよく言いますが、この前BBCの経営委員長と私話し合いましたけれども、例えばBBCが今一番考えているのは副次収入の強力なる増加なんですね。BBCは非常に大きな財産を持つ、それは英語という財産でありまして、英語による番組が世界各国に流れていく。例えばBBCワールドニュースなんというのはあっという間に世界に広がりました。そういうのが非常に強い味方としてあるわけですね。そういうことをやりますが、NHKももう少し工夫をすれば副次収入増加ということは、今の八十億程度のものではなくてもうちょっと広げていけるのではないか、それは努力としてやるべきだと思っております。  ただ、その逆の側に、では、そのことだけでもって未来永劫に受信料体制は大丈夫かというと、必ずしもそうではない。それならば、みずからの運営の仕方とかあるいは組織のあり方とか、そういうものをもう一遍考えるべきじゃなかろうか、それが「NHK構想」の中にあります。いたずらに大きくなることを求めない、むしろスリムな体質をとって、そして、多メディア時代といえども公共放送のあり方をきちっと正しく保持することの方がむしろNHKとしては進むべき道ではないだろうか、こういうふうに言っておるわけでございます。あわせて受信料体制確保する、それから副次収入をふやすということのほかに、将来のメディアの保持を含めた体制をできるだけスリムにきちんと保ち続けるということも考えなければいけない、こう思っております。
  125. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 終わります。
  126. 亀井久興

    亀井委員長 次に、田並胤明君
  127. 田並胤明

    ○田並委員 第一点目は、NHKのこれからの役割を含めて、公共放送としての使命を遺憾なく発揮してほしいという立場で一点、要望なり質問を申し上げたいと思います。  もう既に何人かの委員の方々からNHK公共放送としての使命の重要性については触れられました。NHKの役割というのは、まずNHKのよって立つ根拠は何かというところから出発すると私は思うのですね。今も会長言われましたように、NHKというのは民放と違いまして国民受信料によって事業が成り立っている、つまり、NHKの基盤というのは国民によって支えられているのだ。簡単に民営化などという話をされると困るのですが、そうじゃなくて、あくまでも公共放送としての使命を達成するために国民受信料という形でそれを保障する、こういう意味での受信料制度によって成り立っているわけですね。したがって、受信料の制度が崩れるということは、つまりNHKの存在がなくなるということになるわけです。  ですから、そういう意味では、放送法の一条なりあるいはその他の法律によって規定をされているように、NHKがより公共性を強めて、不偏不党であるとか公正中立、しかも真実を報道する、表現の自由をしっかり守って我が国の民主主義の健全な発展にも資する、こういう大きな役割が、民放にも与えられておりますが、それ以上にNHKには求められている、このように思うのですね。ですから、過般あったムスタンのような真実でない報道をされますと、国民NHKに対する信頼というのは根底から覆ります。ということになりますと、当然NHKに対して受信料を払わない、我々信頼しておったのに、しかもそういう報道が必ずNHKによってやられる、こういうように信頼をしておったにもかかわらずそれが崩された、ということになった場合の怖さというのを私はぜひもう一回認識をしてほしいと思うのです。  先ほど会長から、モラルの問題といいましょうか、基本的な姿勢として自主、自由、自律、こういう信念でやっていますという話がありましたが、私はもう一つそれに加えて、やはりいつでもみずからを戒めていく自戒というものがなければいけないのじゃないかと思うのですね。これはNHKだけじゃなくて、今政治の方が大分腐敗でもって言われていますから、これはもうみずから、我々の問題もそういうことに通ずるかもしれませんが、要するに自主的に、しかも自由に、そして常にみずからを律しながら、あわせてみずからを戒めながら公共放送の使命というものをより達成してほしい、こういう気持ちでおりますので、この辺のお考えを再度お聞かせ願いたいと思います。  つまり、受信料体制基本にしてNHKが成り立っている、国民のしっかりとした支持基盤でもって成り立っている。したがって、受信料体制が崩れたらばNHKというのはもう基盤がおかしくなるわけですし、国民もそれを望んでいませんし、かつてのような放送統制みたいな格好で、国民が全然、報道によって、放送によって支配をされてしまう、こういうことが起きてはならないという意味受信料を払っているわけですから、その期待に十分こたえていただきたい、このことをあえて申し上げて、再度決意をお聞かせ願いたいと思います。
  128. 川口幹夫

    川口参考人 ムスタンの問題が起こりましてから、NHKにそのことでもってかかってきた電話が大体五千件ぐらいございました。実際上不払いをするぞということを宣言なさった方も私どものつかんでいるところでは千八百ぐらいいらっしゃいました。ただ、その方々にも、私自体が手紙を書いたり、それから営業の現場の第一線の者たちが説得に回りまして、実際上の不払いはそれほど大きくなかったことは幸いだったと思っています。今後もそういう意味では、私は誠心誠意視聴者に対してみずからの責任のあり方というものをきちんと御説明申し上げたいと思います。  それで、では公共放送というのは何だろうということで、ちょっと私が考えておりますことを申し上げますと、NHKは全国民の基盤に立つ公共放送の機関であります。したがって、何人からも干渉されない、あるいは不偏不党の立場を堅持する、そして放送による言論と表現の自由を確保する、そして同時に、豊かで中身のいい放送というものを行わなければいけない。それで、そのこと自体が公共の福祉の増進あるいは文化の向上というものに大きく役立つのだ、そういう認識をしておりまして、そのことのためにNHK職員は日夜、それこそみずからを自戒しながら努力をしていかなければいけないというふうに思っております。
  129. 田並胤明

    ○田並委員 会長の今の基本的な立場、回答で結構でございますが、先ほども会長の方は、NHKは将来とも国民に基盤を置いた受信料体制でもって公共放送を全うしていきたい、こういうお話でございましたので、ぜひそれを貫いていただきたいと思います。  また、盛んに民営化などという話が一時期ありましたけれども、私はやはり、民営の放送機関とそれからNHKのような公共放送機関とお互いに切磋琢磨して、しかも、民放ではできない、NHKでなければできないような番組もあると思うのですね、ですから、そういうものを通して放送レベルをさらに向上させていく、それで、国民生活をより豊かにしていく、こういう方向での一層の努力をお願いをしたい、このように思うのです。  そこで、今後の二十一世紀に向けていろいろNHKに求める課題等が多くあるはずでありますが、私、これからの時代というのは、いつも話をするのですが、国際化がますます進展すると思います。まさに世界の中における日本の役割というのがさらにさらに重要な位置づけをされるようになるだろうと思いますし、そういう意味では国際放送も重要ですが、逆に言えば、国際的ないろいろな問題がリアルタイムでお茶の間に入ってくる。そういう中を通して、世界の中における日本の位置づけ、役割というものを国民の皆さん一人一人が理解をする、そういう番組もぜひより幅広く充実をしてほしいというのが一つです。  さらに、高齢化社会を迎えます。あわせて、宮澤さんは生活大国と言っていますが、私は生活者大国という言葉が好きなんですが、要するに生活者大国、ゆとりと豊かさが実感できる、一人一人の国民が実感できるようなそういう社会をひとつつくろうということで今政府もやっていますし、我々もそれを志向しています。そういう時代に入ってきます。あわせて高度情報化が進みますし、あわせて地方の分権化も進んでまいります。  ですから、そういう二十一世紀に向かって、日本を取り巻く、あるいは私たちの生活を取り巻く環境というのはかなり大きく変化をしてくると思うのですね。そのために、二十一世紀のNHKの課題ということで、いろいろな専門家からいろいろな意見を伺って一つの方向を出したのでしょうけれども、さらにそれを充実をさせるためにも、今言った国際化であるとか、あるいは高度情報化であるとか高齢化であるとか、あるいは生活者大国化であるとか地方分権化であるとか、こういうものに敏感に反応して、具体的な番組の中でこれに対応した番組充実というものもひとつ一層要請をしたい、このように思うのです。  具体的にでは何をしろというのではなくて、これから労働時間の短縮もどんどん進んでまいりますし、余暇も拡大をされます。今の教育放送の中でやられている教養番組、あるいは趣味の番組、スポーツ番組、文化の番組、これらがより国民の皆さん方に身近なものとして十二分に利用できるような、場合によれば一つのサークルがそのことによってでき上がって、生涯学習の役にも立つし、生涯スポーツの役にも立つし、あるいは趣味や園芸や、こういうものについても国民の皆さんに非常に有効的に活用できるような番組と、そういうサークル的な活動と一体的なものを構築できるような番組も制作をする必要もあるのではないだろうか、こういう気がいたします。  方向だけで結構ですから、今申し上げたこと等について、ぜひお聞かせを願いたい、このように思います。
  130. 川口幹夫

    川口参考人 今幾つかお挙げになりましたけれども、それらの項目は、私どもがこれから重点的にやっていこうという項目にも合っております。まさに国際時代でありまして、世界の情報をどうやって集めるか、それをどうやって編集をしてわかりやすく国民の皆さんにお届けするかという問題も大事でありますし、それから、日本の問題を国際社会にどういうふうに広げていくのかということもまた大事であります。両方ともNHKがやはりやらなければいけない仕事の第一だというふうに私どもは思っております。  それから、放送は、単に例えば楽しみとかあるいはニュースとかだけじゃなくて、心の糧というものを大事にしなければいけないと思うのです。特に文化とか芸術とかいうふうな分野では、放送文化が果たすべき役割はもっともっと大きいのではないだろうか。放送はそのことに対してもっと力を出すべきだという感じを私は持っております。したがって、放送というもので取り上げたことによって、例えば日本のすばらしい文化が国民の隅々まで知られる、あるいは国際的にも有名になっていくというふうな経過をたどるのがいいだろうと思っております。  それから、いわゆる障害者を含めた弱者のための番組というものも、これはやはりNHKでなければやれないと思っております。障害者のための番組というのを特別に今つくっておりますけれども、さらにこういうものについてはいろいろな工夫をして、もっと利用されやすいように、そしてそのこと自体が社会の福祉に役立つように、そういうやり方にしていきたい。  それから、地方の問題につきましては、先ほどお答え申し上げましたけれども、私は、まさに地域というものの出す情報とか文化とかいうものを もっとNHK日本全国に知らせなければいけない。あるいは日本の地方に起こったことがヨーロッパの地方のどこかとの関連で非常に大きな意味のある番組になるということもあるだろう。そういう意味では、もっと大胆に、かつ非常にユニークな目で地方からの発信というものを考えたい、こう思っております。  NHKは幸いなことに波をたくさん持っておりますから、今それをうまく使ってできるだけ御期待にこたえられるような番組を編成していきたいと思います。
  131. 田並胤明

    ○田並委員 ぜひ今会長の言われたような方向で努力をしていただきたいと思いますし、先ほど話があったように、市場原理に左右されない、いわゆる受信料体制で行くわけで、ただ視聴率を全然考えないでやるというのもなかなか困難でしょうけれども、視聴率というのは私は結果として出るものだ、いい番組をつくって豊かな番組をつくれば、これは国民の皆さんは敏感に反応するはずですから、余りそのことを、まず視聴率ありきではなくて、よい番組をつくるということを視点にしてぜひ頑張っていただきたい、こういうふうに思います。  そのほかに、まだまだ難視聴地域もあるようですし、これらの解消も努力をしていただきたいし、さらにこれからの情報化社会に合った新しい放送技術の開発もNHKの役割としてあるわけですから、これらについても、大変厳しい経営状況の中ではありましょうが、努力をしていただきたい、このことを要望として申し上げておきたいと思います。  続いて、経営管理関係について申し上げたいのですが、それだけの決意を今会長からお聞きをして−会長、いいですよ、今度は局長に対する質問になりますから。どうぞ休憩してもらって結構です。  経営効率化の一環として毎年度人員削減が行われております。昭和六十三年から平成四年の五年間で千五百五十人職員の方が減員をされております。本年も三百三十人の純減計画予算的に行っているようですが、波は減らずに新しい業務増加をして、さらに質の高い番組を求めるという国民のニーズ、これにこたえるために、果たしてこの要員というのはどの程度が妥当なのだろうか。  これは、業務の委託等もありますから、これらでカバーをするのだといえばそれまでかもしれませんが、私、心配なのは、NHKの自社制作、これがだんだん減ってきて、業務委託がどんどんふえているのじゃないだろうか。決して悪いとは言わないのですが、NHKの持っている公共放送としての使命が万が一にも損なわれることになりますと、これはいけません。したがって、現在でも相当部分を委託制作に持っていっているようでありますが、私、現段階が限界なのか、あるいはさらにもっともっと進めようとするのか、この辺について非常に危惧を抱くものですから、番組制作への影響はないのかどうか。  それともう一つは、受信料というのは国民の皆さんに公平に負担をしていただくものです。したがって、受信料をいただく体制というのが、要員の削減によって減らされる、あるいは減ったところに穴埋めをしない、こういうことによって逆に受信料の公平負担を損なうようなことがありはしないのか。具体的な数字を持っておりますが、そういうことが二つ目として懸念をされます。  それから三つ目は、これは実態として私は把握をしているわけじゃないのですが、聞くところによればということで理解をしてほしいのですが、NHKでは年間二千三百時間を超える労働時間で働いていらっしゃる方が多数いる。今はもう二千時間を切って千八百時間により近づけようという努力を全体の流れとしてやっているわけでありますが、この労使働時間短縮の流れにも逆行するのではないだろうか。果たして、疲れ果てちゃってでは、質のよい番組をつくろうというときにもいろいろな影響が出てくるような気がいたしますし、そういう意味では、番組の制作への影響、受信料公平負担の原則を損なうような影響、あるいは労働時間の短縮の流れに逆行するような影響というのは要員の削減の中で出てきていないのですか。このことを聞きたいわけです。
  132. 安藤龍男

    ○安藤参考人 私から要員効率化についての要員管理の観点、あるいは職員の勤務管理の観点について御質問があった点についてお答えをいたします。  効率的業務運営というのは、いつの時代でもNHKに要求される一つの使命であろうというふうに思います。したがいましてスリムな体制というのを追求していくわけでありますけれども、その中で要員の配置の考え方でありますけれども、取材制作体制整備強化をしていかなければいけないという観点から、人は削減はいたしますけれども、管理間接部門を中心に削減をするとか、あるいは部門間とか本部地方間の要員の配置の考え方をシフトするということで、放送現場を重視した重点的な要員配置をしていきたい、今後ともそれは進めてまいりたいというふうに思っております。  平成年度純減三百三十人の計画でございますけれども、基本的にはこうした観点から実施をしているものでございまして、中心は管理間接部門の減少あるいは関連団体の活用ということでございます。先生御指摘のような番組制作の委託については、ことしはほとんどゼロに近いところでございまして、そういう中で、三百三十の要員減を行って、放送現場の方へむしろ整備充実を図っているということでございますので、この人員削減により、人員効率化によって放送サービスに影響が出ないように極力留意をしているところであります。  それから、二点目の職員の勤務管理の点でございますけれども、おっしゃるように総労働時間の短縮というのは、今社会的な要請、課題でございます。こういう中で特にNHKは、スリムな体制の中で創造的な放送事業を進めていくということのためにも、効率化と同時に時短を推進していかなければいけないというふうに思っているわけであります。  おっしゃるように、放送現場を中心にして、年間総労働時間が非常に高い職員も正直言ってございます。そういう中で、創造性豊かな番組制作、放送事業を進めていくためにも、職員の労働時間をできるだけ抑制をするように努力をし、放送事業という性格から考えると大変難しいのでございますけれども、一生懸命努力をしてまいりたい。この四月からも仕事の見直しをしながら、時短に少しでも努めてまいりたい。ただ、これは短い時間ではできませんので、短時間の仕事ではなくて、長い、長期的な観点実施をしてまいりたい、こういうふうに思います。したがいまして、要員効率化をする場合も、このことによって時短が阻害をされることのないように十分留意をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  133. 田並胤明

    ○田並委員 あと、受信料の公平負担の問題は。
  134. 諏訪恭也

    ○諏訪参考人 お答え申し上げます。  先生がおっしゃいますように、受信料制度の維持というのは協会にとって最大の眼目でございまして、この受信料制度の維持に一番必要なのは、やはり公平負担確保ということじゃないかと思います。公平負担確保というのは業績の確保ということでございますので、業績の確保を損なうようなことのないようにやっていきたいというふうに考えております。したがって私ども、スクラップとかスリムとかいう場合にも、必ず一方では増強というふうにビルドを考えながらやっていっているというのが実情でございます。つまり、スクラップ・アンド・ビルドを一体のものとしてやっていきたいというふうに考えております。  例えば、新しい性能のコンピューターを導入して新しい営業システムを開発することによりまして、これまでスキルの蓄積が必要だった営業の事務処理というものが、そういうコンピューターを導入することにより、あるいはシステムを開発することによって、単純作業によって処理が可能ということになったわけでございます。この新しいコンピューターシステムは四年の六月に全国配備を完了しておりますけれども、それに伴って、そうした作業を関連団体に外部委託する。それによって営業職員の要員削減が可能になったということでございます。もちろん、営業職員の役割として、今まで事務処理部分に割いていたものをほかの企画戦略とか、そういうふうなものを立てるようになったとかいうことでございます。  先ほど申し上げましたように、もとより経費削減によって業績が確保できなくなることがあってはならないというふうに考えておりまして、業績確保経費の圧縮との調和について細心の配慮を図りながら推進しているところでございます。
  135. 田並胤明

    ○田並委員 もう時間がなくなってしまったので、これで質問を終わりますけれども、実際に、例えば受信料の公平負担の関係でいえば、今委託集全員の退職のために欠区となっている委託区が五百にも上っているという報告を受けているわけですよ。もちろん、いろいろな、自動振替か何かにして、要するに受信料を集めるという方法もあるのでしょうけれども、このまま置いておいて、そういうところまで影響が出てきたのでは、受信料を払っている人と払ってない人の公平の原則が崩れる心配もありますし、ぜひその辺は十分配慮してもらわなくてはいけないんじゃないかというふうに思うのです。  それと、今申し上げたように、要員の削減、効率化ということで、恐らく労使間での話し合いで枠組みはお互いに了解をしてやられているのでしょうけれども、私なんかが心配するのは、今言ったように番組の質が落ちてしまったり、あるいはそのほかの労働時間の短縮等にも影響が出てきますと、これは天下のNHKが何だという話になりますので、この辺は十分注意をしてほしい、こういうふうに思うのです。  それと関連して、どうもことしの収支予算を見ますと、例の五カ年の経営計画とすり合わせをしてみて、ことしの事業収入が百十二億円ほど減っておって、受信料収入が百三十七億円、計画よりも減っている。もちろん、支出面でかなり節約をして、支出面では経営計画の内容よりも百九十六億円も圧縮していますから、それによってバランスをとっているのでしょうけれども、何かどこか無理があるような感じがしてならないのです。そういう心配があったものですから今質問申し上げたわけですが、最後に、今申し上げたことで答えることがございましたら答えていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  136. 川口幹夫

    川口参考人 御質問のそれぞれは、本当に私どももその趣旨を体してやらなければいけないことだと思います。NHK自体がみずからの力をできるだけきちんと保持をする、それを最高度に発揮させるというのが経営としては一番大事じゃないかと思っていまして、例えば一万三千数百人いましても、やりようによってはこれが一万人ぐらいの力しかないということがあったら、これは大変でございますから、できるだけ一人一人がみずからを自覚をして、そしてみずからの力を最大限に発揮する、そういう組織体にしたい、それが私の最大の使命であろうかと思っておりますので、今おっしゃったことを外しまして、これからも努力いたします。
  137. 田並胤明

    ○田並委員 終わります。
  138. 亀井久興

    亀井委員長 次に、上田哲君。
  139. 上田哲

    上田(哲)委員 今回、私は、半世紀近い長い経過と私自身の国会論議の集大成として、NHKと国会の関係のあり方について根本的な原則をしっかり確立しておきたいと思います。  私は、次のように考えます。  「国会は、NHK放送の自由を保障する。NHKも、国会を通じて国民に勇気と真実を保障する。」私はこう思いますが、まず会長、この考えについていかがですか。
  140. 川口幹夫

    川口参考人 国会とNHKとの関係からいえば、まさにそうあってほしいと思っています。私どもは、国民の代表である国会の先生方の御意見をお聞きする、私どももまた先生方にいろいろなことをお話をするという、その結果で、広くいえば国民NHKとの間が非常につながってくるのではないだろうか、そういう期待を持ちたいと思います。
  141. 上田哲

    上田(哲)委員 郵政大臣はいかがですか。
  142. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 そうあってほしいと思います。
  143. 上田哲

    上田(哲)委員 委員長に資料の配付をお願いいたします。  委員の皆さん、ごらんください。  この資料は、過去四十二年間のNHK予算案の国会審議の詳細であります。国会の倉庫に二カ月入ってつくり上げたものです。四十二年間というのは、放送法ができたのが一九五〇年、昭和二十五年度で、NHK予算を国会が審議を始めたのが一九五一年度からであります。それまでは、社団法人として大臣認可制で、国会提出は必要がなかったのです。一九五一年はラジオ受信料五十円、予算五十五億円で、現在の百分の一、一九五三年からテレビ二百円、まさに今昔の感であります。一九五一年当時は電気通信委員会、次いで一九五五年度からこの逓信委員会となりました。  通覧してみますと、この四十二年間の前半と後半でかなりの違いがはっきりいたします。一覧して、前半のほぼ二十年間では、第一に、予算審議の日数が十分とられています。衆議院では四日間、五日間、六日間が普通で、参議院でも四日間というのが珍しくありません。衆議院だけ申しますと、一九五四年六日間、五七年五日間、五九年五日間、六一年五日間、六三年五日間、六四年五日間、六八年五日間、六九年五日間、こういう審議になっています。  第二に、当然ながらNHK予算案は年度内に余裕を持って成立をしております。  第三に、したがって、この間暫定予算となったのは二回だけ。一九七六年度、これは二カ月の暫定予算、一九八〇年度は一カ月であります。  受信料の改定のときには審議日数がふえているのも表で明らかでありまして、国会は当然このことに慎重に審議を重ねたということになります。一九七六年度はカラーテレビ料金が七百十円に値上げされたときでありまして、衆議院逓信委員会質疑の開始は四月二十八日、五月六日、五月七日、五月十二日と四日間、参議院も四日間、参議院通過が五月二十四日であります。  こうした経過が、二十年たって一九八〇年代に入ると、審議日数は半分の二日程度に減り始めます。それが一気に一変するのが一九八五年度、昭和六十年度です。この年は衆議院逓信委員会での審議は三月二十五日一日だけ、参議院逓信委員会審議は三月二十八日一日だけ、それぞれ一日ずつで、三月二十九日に参議院本会議を通過しています。以後今年度まで、一日審議というのが全く同じパターンなのであります。  こうした事態を生んだのは、逓信委員会自身の都合ではなくて、二回の暫定を見ますと、一九七六年度の場合はロッキード事件、一九八〇年度の場合は大平内閣の不信任案可決で解散の事態に当たっております。これ以外は、NHK予算を例外的にいわゆる日切れ法案扱いとして優先審議をさせたという経過がここに浮かび上がってまいります。  NHKの自主性尊重のためには、日切れ法案扱いというのは国会の見識の処置であって、NHKにとって好ましいことであります。けれども、子細に見ると、どうもその前から気になる傾向が生まれています。一九七八年から、提案理由説明、いわゆるお経読みの日と質疑の日が一致することになってきているのです。ゆっくり審議の準備をする時間がなくなってきたということになります。  こういう傾向を私は大変注目しなければならないと思うのでありまして、それ以前に比べてこれほど大幅に準備時間も減ってきて、あるいは審議日数が少なくなっていることは傾向として問題ではないか。これは大臣、どのようにお考えですか。
  144. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 委員会運営のことでありますので、委員会が必要と認めるところに従ってやらざるを得ないということじゃないでしょうか。
  145. 上田哲

    上田(哲)委員 NHKはどのようにお考えですか。
  146. 川口幹夫

    川口参考人 これはNHK側からとやかく申すべきことではないと思いますが、私が役員になって国会に出ましてからはほとんど一日か二日でやっておりましたので、今この資料を見て実はびっくりしたところでございます。
  147. 上田哲

    上田(哲)委員 国会は言論の府であり審議の場ですから、放送法に基づいてNHKと国会の関係が規定されている以上、国民を代表して国会はできるだけ機会を数多く、広く深く議論をすべきである、この点は議論の余地はないわけでありまして、その見解それ自体はNHKも、そして政府側といいましょうか与党側といいましょうか、これは同感されるところだと思うのです。いかがでしょうか。
  148. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 十分審議がなされることが望ましいことだと思っております。
  149. 川口幹夫

    川口参考人 私も、国会がみずからの御判断によって、これくらいの回数をかけなければいけないという御判断があれば、それに対しては従うべきだと思います。
  150. 上田哲

    上田(哲)委員 まあ慎重宣言い方でありますけれども、国会は十分審議すべきである、審議は短い方がいいということにはならないという点は議論の余地はないと思いますね。  私は、政治権力とNHKが近くなるのはよくないと思いますが、国会が国民の代表機関である限り、NHKと国会が故意に遠いというのはよくないことで、そうなると、かえってそこに裏側からの政治介入が起こり得ると思います。NHKはいつも国民に対してガラス張りでなければならないと思います。健全な形というのは、国会からはいつもNHKがよく見える、NHKも国会に恐れず物を言う、こういう関係であるべきだと思います。  今日、政治改革が叫ばれるとき、国会の機能として、もっとNHKと言論の自主性の確保について平易に議論できる機会をふやすべきだ、これは言うまでもないと思います。国対政治が批判される今日でありますけれども、その批判は、国会はもっと国民に見えるところで政治をやれ、こういうことだと思います。同じょうにそういう意味ではNHK予算案も、毎回ぎりぎりまで来ていずれ日切れ処理をするのが通例となるのであれば、しかもそれはもう九年間も同じ形で続いているということになれば、私は、そうしたたった一日の審議NHK予算が通過するという形は改めるべきではないか、そう思います。  そこで、委員長に要請したいのでありますが、NHK会長郵政大臣からもあのような考えを確認したわけでありますから、ひとつその方向に向けたらどんなことができるかということを理事会中心にでも御検討をいただいて、逓信委員会としてしかるべき結論を出していただくように御努力をいただきたいと思いますが、いかがですか。
  151. 亀井久興

    亀井委員長 今の御要望につきましては、追って理事会で協議をさせていただきます。
  152. 上田哲

    上田(哲)委員 了解しました。ぜひひとつ、広く言われている国会改革、国会が見えるようにしていくべきだということの一環として、NHK予算審議のあり方について前向きの御検討の結論が出ることを期待をいたしております。  もう一つ大きい問題があります。この表の下の欄をよく見ていただきたいのでありますが、予算案はNHKから郵政大臣提出された後、そのまま国会提出となるのではなくて、実は自民党通信部会、政調会、総務会を経てからのことになるのであります。  言うまでもないことでしょうけれども、念のためですが、法制局に確かめておきます。NHK予算案が国会に提出されるのに、自民党の通信部会、政調会、総務会を通さなければならないという法的理由はあ、りませんね。
  153. 津野修

    ○津野政府委員 国会の方に、第三十七条によりまして、NHKは、毎事業年度収支予算事業計画及び資金計画を作成して郵政大臣提出した上、二項によりまして、郵政大臣がこれを検討して意見を付して、内閣を経て国会に提出して、その承認を受けなければならないという規定になっておるわけでございまして、法律的に自民党の部会に必ず提出しなければいけないという義務は、法律上の根拠はどこにも書いてございません。
  154. 上田哲

    上田(哲)委員 極めて当然なことなのであります。  これをずっと四十二年分について調べてみますと、初めはそういう資料はないのでありまして、そういうコースはなかったのであります。国会審議の八年目になって、一九五八年に政調会にかかったということは記録されております。一九六〇年からは通信部会にもかかり、一九六三年からは今日のようになりました。ここでいろいろ複雑な問題が起きるのです。  NHKは、予算案を国会を通すときが最も政府権力に弱くなるときであります。  記録によりますと、一九六七年、問題の年でありますが、時の小林郵政大臣は、民放テレビで公然と、「NHKについては郵政省の手で予算編成を通じて行政指導を進めたい」と再度にわたって発言し、物議を醸しました。さらに、一九六八年に至ると、NHK会長の政府任命制、受信料認可制などを目指す放送法改正を表明します。当時のNHKの組合、日放労は、自由のためのストライキなどを打って対抗しています。  その年の二月二日には、今の総理の宮澤さんまでが当時経企庁長官として、NHK経理の政府チェックなどを発言する情勢でありました。「テレビが危ない」という言葉を生むほど、この時期はNHK国営化への動きが急だったのであります。この年度、通信部会は異例にも二月二十九日と三月四日の二回も開かれております。NHKは国会対策に大わらわだったのであります。  断るまでもありませんが、NHK予算について各政党がそれぞれの立場で子細に検討し、意見を述べるのは自由です。社会党でも逓信部会がそれをやっています。問題は、自民党の通信部会、政調会、総務会のすべてにはNHK会長出席して、実はその自民党内の機関の場が事実上の予算審議の場になってしまっている、そういう批判を受けるに至っていることです。つまり、ここでNHK予算を通したり、値上げしたり、そういう討議や判断とともに、それ以外のいろいろな注文がつくのです。法制局見解のように、この機関が法律上の権限を持っているわけではないのですから、会長出席も当然義務的ではありません。ここが非常に重大なことなんですが、ところが実際には逆です。たった一日の我々の逓信委員会での質疑は、例えば新聞に報道されることはほとんどない。NHKは自局のPR番組として出すわけですが、客観的には報道することではない。ところが、新聞などで自民党総務会などの論議が先にどんどん報道されていくのであります。  自民党役員会で、NHK会長とのそこでの論議で事実上予算審議は先に結論が出てしまう、こういう状況というのは、大臣、どのようにお考えですか。好ましいとお考えになりますか。
  155. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 議論の経過がどのような形で報道されるかというのは、私の立場でどうこうということは言えないと思いますが、いろいろな政党があります。その政党の場で、政党の判断するところに従って会長なり役員が出ていっていろいろな政党の議員の意見を聞く、あるいはNHKとしても言う議論を言う、それはNHKなりあるいは政党独自の判断で私はやればいいと思うのであります。  そしてまた、委員会報道、政党内部の報道をどのように新聞なりテレビで報道するかというのは、その新聞なりテレビの判断に任せるしかないのじゃないだろうか。国会の議論よりも政党内部の議論がより多く報道されるという場合は、NHKの問題に限らずいろいろな場で出てくると思います。あるいはまた、ある議員の質問が特段に新聞、テレビで報道されたり、ある議員の議論報道されなかったり、それはいろいろあるものですから、それは我々がどうのこうのと言うよりも、それぞれの時に応じた新聞なりテレビなりの報道姿勢の問題であって、どれが望ましい、どれが好ましくないと言うのは私の立場からは差し控えたいと思っております。
  156. 上田哲

    上田(哲)委員 とんでもない誤解の答弁だ。そんなことを言っているのじゃありません。郵政大臣の見識を疑いたい。  私は報道がどうだこうだと言っているんじゃ全くないのですよ。問題は、国会にかけられるべきNHK予算について、国会が審議し結論を出すべき場である逓信委員会議論よりも、その前に政府・与党の機関の中で議論が済んでしまっているのでは、新聞だって国会審議を問題にする意味がなくなる、これは国会の権威の問題ではないかということを言っているのでありまして、報道批判の問題ではもちろんありません。  ここにそれらの新聞記事があるから具体的に申し上げるのですけれども、例えば一九八六年度予算で、二月六日の自民党総務会で、外国出張など経費節減の努力が不十分とか、料金改定をしないことを条件にという意見が出て、NHKの川原会長は八七年度料金値上げしないと約束して予算の国会提出が了承された。ここにこう記事が出ているわけです。記事ですよ。我々はそれらの事実も会長の約束も知らないのです。逓信委員会は知らないのです。つまり、この逓信委員会の前にNHK予算の結論が出ているということを言っているのです。  一九九〇年の値上げでは、NHK側と自民党側との間で実に複雑ないきさつがあったことが新聞などで細かく報道されています。消費税反対の風が吹き荒れた総選挙の直後、しかも国会提出が三月二十日、その十日後に二八・〇%の値上げが決まる過程には、今でも理解できない捏造の、中傷の筋書きが執拗に飛び交いました。念のためですが、これは自民党から出たのではなくてNHK内部からも出たものでありまして、当時のNHKにとって大変残念であります。  これらの問題は、そのような画策や裏情報ではなくて、この場で、逓信委員会の場で、国会の場ですべて語られなければなりません。すべて明らかにしようではありませんか、それが国会との関係でなければならないと言っているわけであります。  予算以外でも、昨年二月の自民党総務会で、岐阜県長良川河口ぜき問題の報道川口会長にいろいろな注文がついたとか新聞に書かれています。ことしのムスタン問題でも会長が総務会に出席し陳謝していますが、その際、国の政策を広報する場がもっとあっていいと要請があったものと報道されています。私は、ここではその主張のよしあしを言っているのではありません。そういう議論が出る場が逓信委員会よりも総務会の場の方が意味を持つ、その方がNHKに影響を与えるということになっては問題ではないか、逓信委員会審議の権威の問題として、そうしたあり方というのが反省されるべきだと思っているのであります。  繰り返して言いますが、各党の検討の場はどんなにやってもいいのです。また、政権党として自民党が十分な議論をすることは必要ではあります。しかし、怖い政権党に会長が何遍も出席して、予算と関係のないことまで言われて頭を下げるということではいけないというのです。そんなことではこの委員会の権威にもかかわるし、NHKが明るいところで議論されているとは言えないと思います。議論はもっとここで、逓信委員会でやるべきだということを私は言いたいのです。  それで、委員長にお願いしたい。先ほど既にお約束いただきましたが、第一に、NHK問題を国会でもっと国民に見えるようにしてしっかりできるようにしていただきたい。さらに第二に、NHK会長NHK予算に絡んで委員会より先に各党に顔を出させることをやめて、ここで堂々と自由に意見を開陳できるようにしようではないか、逓信委員会でこういう話し合いを進めていただきたい。私は、これが具体的な政治改革だというふうに思っていますので、委員長、御努力をいただきたいのです。
  157. 亀井久興

    亀井委員長 御意見につきましては承っておきます。
  158. 上田哲

    上田(哲)委員 この意見について積極的に御努力をいただくものと了解します。NHK予算を通すために政党の顔色をうかがうことにきゅうきゅうとしないで済むようなシステムをつくることは、民主社会の言論の健全さを保つために最も重要なことであります。このことは、NHKと国会との関係、NHKの自主性の確立のために、いつかは正面から指摘をしなければならないことでありました。強く主張し、委員諸兄の深い御理解をお願いして、私の質問を終わります。
  159. 亀井久興

    亀井委員長 次に、吉岡賢治君。
  160. 吉岡賢治

    ○吉岡委員 NHK予算、とりわけ営業活動について質問をさせていただきたいと思います。  まず最初にお聞きしたいのですが、NHK経営財源について、「現状において、「財源国民に直接求めることにより、公共放送の高度な自主性・中立性を財政面から支える」受信料制度に替わり得る方式は、存在していない」、このように電波監理審議会の研究会報告に記されていると聞きます。「経営財源事業体の性格を位置づける柱であり、公共放送の主財源としては、経営が自立していること、放送が中立性を確保すること、安い負担で成り立つことなどの条件を満たすものとして、受信料が最もふさわしい。」このように「二十一世紀への展望とNHKの課題」に記されているわけでございますけれども、NHK受信料制度基本理念として受けとめていいのか、まずお答えいただきたいと思います。
  161. 諏訪恭也

    ○諏訪参考人 お答え申し上げます。  「NHK将来構想」については、外部の有識者の御意見、それからNHK内部でもいろいろな角度から鋭意検討しまして、将来にわたって受信料制度を基盤にするというのはNHKの中では一致した見解でございます。
  162. 吉岡賢治

    ○吉岡委員 郵政省としてはどのようにお考えですか。
  163. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 郵政省といたしましても、NHK財源受信料で賄うということが最も適当というふうに考えております。
  164. 吉岡賢治

    ○吉岡委員 それでは具体的な質問をしてみたいと思います。  平成二年から始まった五カ年計画と現状を比較いたしますと、受信料収入の鈍化あるいは契約数の伸び悩みが目立っておるわけであります。衛星契約に例をとってみますと、五カ年計画では平成五年末累計で七百五十六万件を目標とされておったわけでありますが、今予算案では六百四十八万件と大きく下回っているというように記されているわけであります。  このように考えますと、この分析というものをどのようにNHKはなさっておるのかということ、そして、平成五年の衛星契約目標を前年比二十万件減の百三十二万件に下方修正されております。これは、契約対策で現場が苦しんでいる集合住宅の問題とか、あるいは出入り不可能なロックマンションだとか、非常に量も多いし、追跡困難と言われる移動管理の難しさ、さらにはムスタンのやらせの視聴者の反応、こういうことによって減になるというようにお考えになっておるのか、明確にお答えいただきたい思います。
  165. 諏訪恭也

    ○諏訪参考人 お答え申し上げます。  まず、経営五カ年計画を策定する際に一番大きなポイントになりましたのは、衛星普及契約をどのように見るかということでございました。衛星普及契約については全く未経験の分野ということもありましたので、カラー受信料設定のときの状況参考にしてやりましたけれども、計画実施の段階で当初の予測を超えるさまざまな困難が出てまいりました。  今先生が御指摘になりましたように、例えばCATVとか、それから共同受信のマンションなど戸別にパラボラアンテナが設置されていない有線系の共同受信の場合には、衛星受信しているかどうかの確認が非常に難しいということがございます。そのほか普及についても当初予測したほどに伸びなかったということがございます。  したがって、私どもとしては、年度の目標を設定する際には、確かに経営五カ年計画というものはございましたけれども、そのときどきの状況を把握しながら、推捗状況を詳細に把握しながら目標を設定したということでございます。したがって総数目標についても、経営五カ年計画では四十三万ということでございましたけれども、衛星受信料活動を定着させるということを最重点にしたためにこれを四十万ということに下方修正しなければならなかったということでございます。  そういう総合的なことがございまして、先生御指摘のように、経営五カ年計画の推移を四年度末で見ますと、総数、衛星とも経営計画を下回る結果になり、衛星受信料収入もこれに合わせて下回ることになりました。  衛星契約増加、先ほども申し上げましたように全く未経験の分野で、我々としてもなかなかスキルを上達させることができずに来たということは事実でございますけれども、これから残された五年、六年の中でせめて経営計画に近づけてまいりたいというふうに考えております。
  166. 吉岡賢治

    ○吉岡委員 ここに一通のはがきがあるわけであります。このはがきはNHKの方から金融機関を通して個人に行ったものであります。放送受信料口座振替依頼書というふうになっています。これが示されたところは、いわば神戸放送局管内の過疎地域で郵政委託地域というところでございますが、この人は非常にまじめな方でございますから郵便局に前納をしておられます。ここにも領収証があります。にもかかわらず、このNHK営業総局あてのはがきが郵便受けに投函されていたわけでございます。事もあろうにその中に指定金融機関というものまで記されている、こういうことがあったわけで、私どもの方にこれをいただいたわけであります。  考えてみれば、神戸放送局としてはそういう過疎地域の問題を、何とか銀行振り込みにしたい、こういう熱意というものがあらわれたことであろうと思います。これが正しいとか正しくないとかということは別にして、現場ではそれほど厳しく受信料収納を迫られている、こういう現実でそれにこたえようという努力のあらわれだ、このように思っているわけでございますけれども、その点について、いわば現場の実態というものを経営の立場でどのようにお考えになっているのか、少しく聞いておきたいと思います。
  167. 諏訪恭也

    ○諏訪参考人 お答え申し上げます。  契約収納活動をめぐる環境が厳しさを増す中で、思うように業績が確保できないという、営業現場が大変苦労していることは、私、営業を預かる立場の者としても大変心痛む思いをしております。しかし、六十八年にわたって視聴者から受信料をちょうだいしてきた歴史というこの重みの中で、受信料制度に対する視聴者の根強い御支援があることも事実でございます。そうした受信料制度の維持を最重要課題として、今後も取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  168. 吉岡賢治

    ○吉岡委員 そこで、ちょっと別のこともお聞きしてみたいと思います。  受信料免除措置の廃止についてということで、衆議院で昭和五十一年から五十四年、四年続けて附帯決議がされております。免除措置の廃止をNHKは進められてきたというように思いますが、五十八年度以降は小学校、中学校あるいは社会福祉施設、そして更生保護施設などが廃止をしようという協議がされていたようでございますが、現在されていません。関係五機関による受信料免除問題に関する関係機関連絡会で検討が行われたというふうに聞いておりますけれども、平成五年三月に実効上この連絡会も終わったのではないかというように聞くところでございますが、どうなっているのかということについて、簡潔に郵政省にお伺いします。
  169. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 お話しのとおり、ことしの三月でその期限は切れるわけでございますが、まだ解決すべき課題がございますので、引き続きこれをやっていこうということで話をしている最中でございます。
  170. 吉岡賢治

    ○吉岡委員 約百億ぐらいになろうかと思います。財政的な裏づけということが、文部省あるいは厚生省、法務省の方で困難だということも背景にあるようでございますけれども、やはりこの委員会附帯決議という重みを十分理解されて、今後も廃止の方向をとられるように希望しておきたいと思いますが、一言お願いします。
  171. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 この件につきましては、当委員会における附帯決議も再三にわたっていただいておることもこれあり、NHKの財政の現状からいたしまして、早急にこういった点についての解決を図るべく努力してまいりたいと思います。
  172. 吉岡賢治

    ○吉岡委員 次に、NHKの営業経費率と営業体制についてお聞きをしたいと思います。  営業経費率で、平成五年は一二・五%、前年比〇・四%下がっているわけであります。五カ年計画の最終年度と言われる平成六年、来年ですが、そのときには一二%台に下げたい、このようにも発言をされているわけでございます。営業経費のうち七五%が人的経費、こう考えてみますと、コストを下げようとすると、人員削減に頼らざるを得ないという現実を迎えているというように思います。  営業要員数は、今減り続けております。直接受信者に面接する外務職員は昭和六十三年度で一千五十人おりましたけれども、平成四年では七百二十人に減っています。専業の委託集全員も昭和六十三年には三千五百六十人いましたが、この平成年度では二千八百人というようになるのではないか。大きな減員となります。そして、このいずれもが欠員非補充ということでやっておられます。そして現実には四百八十の委託欠区区となっているわけであります。営業体制として十分とは言えない、私はそのように思っているところでありますが、いかがでございましょうか。一言コメントをいただきたいと思います。
  173. 諏訪恭也

    ○諏訪参考人 先ほども申し上げましたけれども、我々としてはただ単にスクラップを一方的にするということではなくて、ビルドも同時に行うということを考えてまいりたいというふうに思っております。  今受信者の自主申し出ということで、いろいろな移動管理の自主申し出が、例えばフリーダイヤルで申し込むとか、それから、金融機関に住所変更を申し込むとかそういうふうなこともやっておりまして、これが年間二十万件あるわけでございます。これが例えば地域スタッフに換算しますと、一人当たり年間に千件のものでありますから、約二百人に相当するということでございます。そういうことも含めて、我々としては鋭意、今営業改革に取り組んでいるところでございます。
  174. 吉岡賢治

    ○吉岡委員 営業現場では、退職非補充、関連会社への事務作業委託、あるいは地域委託スタッフの削減、こういうことが起こっております。そして一方、パート、アルバイト、これが千人を超す、先行確保要員というのが四百五十人を超すということで、臨時委託を導入しており、今おっしゃったと思いますが、新集金方式として郵便による請求や、あるいは振り込みに頼る方法、これは口座自動引き落としてはない方法ですが、そういうことを実施しておられると思います。  しかし現場では、十分な成果は上がらない、なれない労働力の導入が現場を混乱させている、必ずしもコストダウンにはなっていない、こういう声があります。現に新規契約も目標に達せず、滞納が九十九万八千、そして契約拒否が十七万五千、手つかずの部分が四百万を超すというふうに言われているわけであります。  NHKの公共性と受信料制度を理解した専業委託者というものを確保しないと、説得力に乏しくなります。また、空白の集金地帯ができたりして受信料制度の根幹が揺らぐのではないか、このように私は危惧するのでありますが、いかがでございましょう。
  175. 諏訪恭也

    ○諏訪参考人 私どもとしても、受信料制度を維持し、発展させるということが経営としての最大の眼目でございまして、その受信料制度を維持させるには、一つには、先ほど申し上げましたように、公平負担の徹底ということと経費の効率的な運用ということによって、視聴者の納得を得られるようにしていかなければならないというふうに考えております。確かに、営業現場の中で公平負担ということから見ればまだまだ足りないところはございますけれども、一歩一歩公平負担の徹底に近づいていきつつあるということも、私どもは自信を持っております。よろしく御支援いただきたいと思います。
  176. 吉岡賢治

    ○吉岡委員 今の体制で自信を持っているということになりますと、私は大変なことを生むと思うわけであります。なぜかといえば、営業活動NHK受信料制度によって保障されておる、営業財源の根幹をなしていると言えるからであります。現行の制度は、視聴者契約義務はあっても支払い義務はありません。NHK放送が総体として視聴者の信頼に足りるものでなければならない、このように思いますけれども、受信料制度を成立させていくためには訪問や説得活動など、地味かもしれませんけれども、そういう営みが視聴者の理解と信頼というものを揺るぎないものにしていくというように思うからであります。  今、支払った人、そうでない人、こういうことで視聴者から公平を期せという声を私はよく聞くわけであります。専業集金人、委託集金人の確保は重要であります。人的経費削減を中心とした営業コスト低減の方針だけでは限界を示しているのではないか、私はこのように思います。もう一度、その点についてきちんとした答えをしていただきたいと思います。どんな意味で自信を持っていると先ほどおっしゃったのか。
  177. 諏訪恭也

    ○諏訪参考人 お答えします。  「将来構想」の中におきましても、受信料制度を基盤とする、したがって受信料制度を維持するために不可欠なコストというものもあるということを明確にうたっておるわけでございまして、例えば、受信料は他の公共料金と違ってサービスに対する対価ではない、一人一人にその意味をわかっていただかなければならないということはございます。それから、電波の場合は全国くまなく降っているわけでございますので、設置すれば見られるということでございますので、移動フォローということを確実にしなければたちまち現在の契約者が減ってしまうということもございますので、そういう難しさはいろいろございます。  確かに、そういうことで、我々としても制度維持のための経費視聴者の御納得をいただいてかけていかなければならないというふうに考えております。
  178. 吉岡賢治

    ○吉岡委員 「二十一世紀への展望とNHKの課題」では、受信料体制のためには営業関係経費を不可欠のコストというふうに位置づけていらっしゃいます。今おっしゃったとおりであります。  受信料を守るために、営業活動体制とそのシステム、委託制度の充実など抜本的な構想、そして必要経費はこれだけ要るんだということを明確にしながら視聴者の理解を得るべき、そのことが公共放送を守り受信料制度を守っていくということに通ずると思いますが、最後会長の御回答をいただきたいと思います。
  179. 川口幹夫

    川口参考人 諏訪が申し上げましたように、受信料制度を守るために絶対にこれ以上は下げてはいけないコストというものが当然あります。これは私もこのところ痛感をしておりまして、ですから、いわゆる営業経費率を下げるだけがいい形ではないということもよくわかっております。  したがいまして、今後、受信料というものをできるだけ長く、しかも確実な形で維持をしていくということのためにどういう人的な方法をとるか、あるいは制度的な方法をとるか、機械の導入をするか、そういうことを総合的に検討して、この制度、私どもにとっては一番大事ないい制度であると思っておりますので、それの維持に万全を尽くしたい、こう思っております。
  180. 吉岡賢治

    ○吉岡委員 特に専業、委託を減らすということは大変なことを招くということについて御理解を賜っておきたいと思います。  そういう前提に立ちまして、私は郵政大臣最後にお聞きをしたいと思います。  それは、大臣の方が今収支予算あるいは事業計画及び資金計画に対しまして意見書を提出されておるわけであります。その中身で、「経費の節減と受信料収入確保に努め」という一文、さらに、「受信者の移動管理の徹底、契約の締結及び受信料収納の促進」というふうに書かれているわけであります。今まで私どもの方から議論をさせていただきました内容をお聞きになっていると多少矛盾があるのではないかということに既にお気づきになっているのではないかと思うわけであります。  私は、資料によりまして、昭和六十三年度から平成四年までの大臣意見書をつぶさに読んでみました。すべからく経費節減を求めるということになっておりますけれども、今申し上げました公共放送受信料制度、このことを考えますと、営業活動体制維持ということがなくしてできない、このように思っておるところでございまして、私はそういう意味で、意見書の中でその点についても明確に触れていただくのが、本当の意味でのNHKに対する健全な経営活動あるいは財源確保ということに通ずるのではないかと思いますので、大臣の所見を求めておきたいと思います。
  181. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 受信料収入確保するためには経費がかかる、経費を節減してしまうと肝心な受信料収入確保できないのではないかというような危惧だと思うのです。  しかし、私どもが言いたいのは、受信料収入確保しながら経費の節減合理化に努めてもらいたいという趣旨を述べたものでありまして、その点、御理解をいただきたいと思うのであります。
  182. 吉岡賢治

    ○吉岡委員 要するに、受信料制度をきちんと守り通していくという決意を大臣の方も持っていただきたい。そのためには経費が要りますよということを、節減、節減と言うばかりでなくて、その中身というのが今危機に来ているという現状を認識していただいた上での意見書にしていただきたいな、こう思うところであります。  以上で終わります。
  183. 亀井久興

    亀井委員長 次に、鳥居一雄君。
  184. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 引き続き御質問をいたします。  NHK受信料契約というのは、言ってみれば応益性で総合あるいは白黒契約という形になっていると思うんですね。しかし、NHK公共放送というのは、トータルでこれを円滑に推進していくというのが基本なんだろうと思うんですが、会長はどのようにお考えでしょうか。
  185. 川口幹夫

    川口参考人 トータルで、NHKのすべてのメディアが持つ番組というものがNHKを象徴していると思います。
  186. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 それでは、二つの点で以下伺ってまいりたいと思います。  一つは、国際放送充実という課題であります。  さきに公表されました「二十一世紀への展望とNHKの課題」でも、国際放送充実というのは喫緊の課題である。言ってみれば、国内の受信者契約をし支払いました受信料によって支えられる国際放送。先ほど来の議論の中に、命令放送と自主的に放送する部分がある、こういう形で今日国際放送ラジオ日本があるわけですけれども、国際放送自体非常に弱体というのが現状だろうと思います。この辺の御認識はどうなんでしょうか。この長期展望では、充実が喫緊の課題である。しかし、過去をさかのぼって論議をされながら今日までの推移は、現状を維持という形でずっと来ているわけですが、このあたりを郵政省としてはどういうふうにお考えなのか。命令放送というお立場で、また本来業務として国際放送を位置づけてこられましたNHKとしては、どういうふうにお考えでしょうか。
  187. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 国際放送の重要性というのは言うまでもないことでございますが、そのために私どもも従来から国際放送充実強化には努めてきたつもりでございますけれども、諸外国と比べますとまだまだ日本国際放送は、御指摘のとおり、またさらに充実する必要があるというふうに考えておるところでございますが、日本の短波の放送が届かない地域が、聞きにくいところがまだございますので、その辺について中継放送を開始する等をしまして改善をしていきたいと思っておるところでございます。  昨年の七月からは、イギリスのBBCのスケルトン送信所を使用いたしまして欧州向けに中継放送を開始したところでございます。これによりまして、モスクワ周辺を含む欧州地域の受信状況が大幅に改善されたところであります。  また、平成年度におきまして、現在御審議いただいている予算の中でございますが、我が国と密接に関係のある北米地域、あるいはインドシナ半島、あるいは今後の緊密な関係が期待される極東ロシア地域、これに対する海外中継局を確保するなどの方法によりまして受信改善を図るつもりでございます。  さらに、次年度以降におきましてもさらなる充実を図っていきたいと思っております。
  188. 中村和夫

    ○中村参考人 NHKといたしましても、五カ年計画にのっとって毎年放送サービスの拡充充実というものを図ってきております。今後とも充実強化という方向で進みますが、平成年度は、一日当たり五十二時間半の放送を六十時間に拡充いたします。ジェネラルサービス二十九時間、地域向け三十一時間、二十二言語でやりますが、受信改善という今お話ございましたが、その観点から、シンガポールのクランジ、カナダのサックビル、シンガポールの場合は八時間新たに中継所を借りるということでございますが、カナダのサックビルの場合は今まで四時間借用していたのを八時間に延ばすというようなことで、受信が世界各地でおおむね可能となる。一部アフリカ中西部等まだございますけれども、おおむね良好な受信が可能になるというような状況でございます。  また、海外放送機関の送信施設を利用した海外中継放送、それだけではなくて、NHKが今使用しております八俣の送信機の空き時間をお貸しするというようなことで、カナダ、フランス、イギリスというところと交換で放送を行っているというのが現状でございます。
  189. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 ラジオ日本が、各国とも国際放送をやっているわけですけれども、今日世界の中にあってどういう位置を占めているのか、これは非常に重要だと思うんですね。それで一つの指標は、放送時間で各国の国際放送と比較をする。あるいは、日本の国情あるいは文化を各国に理解をしていただく国際化の時代である、こういう意味からラジオ日本の使用言語という点で、もちろん放送時間も重要だと思いますけれども、使用言語数などで比較をしてみる。そして、世界の中の日本にふさわしい国際放送としての位置づけができているのかどうか、こういう検討がまずなされてしかるべきだと思うんですね。この点についてどうなんでしょうか。  日本の命令放送という立場で、あるいは放送番組の自主性という上から考えてみますと、日本の国のありのままの姿を世界各国に伝えていく、そういう使命を持つ公共放送という立場から、NHKとして、この世界における位置づけ、ラジオ日本の位置づけというのをどういうふうにごらんになりますか。これで十分だという、そういう御認識でしょうか。
  190. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 結論的に言いますと、先ほども言いましたようにまだまだ不十分だというふうに思っております。  ちなみに、今ただいまお話ございました数字でございますが、放送時間を例にとってみますと、NHK公共放送としてやっておりますのが一日五十二・五時間、VOA、国営放送、アメリカでありますが、百九十一時間、それからアメリカのラジオ・フリーヨーロッパ、ラジオ・リバティー、これが百四十時間、イギリスイギリス放送協会が百十七時間、ドイツのドイッチェ・ベレが八十四時間、フランスが五十七時間、これは公共放送でございますが、カナダの放送協会が二十七時間。大体フランスと時間としては似たり寄ったりかなと思います。  使用言語というお話もございましたが、日本は二十二言語を使っております。VOAが四十古言語、ラジオ・フリーヨーロッパが二十言語、イギリス放送協会が三十八、ドイツのドイッチェ・べレが三十四、フランスが十四、カナダが七、こんな状況でございます。
  191. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 例えば放送時間、これは充実が喫緊の課題であるというのはまさにこの点を指すんだろうと思うんです。放送時間の抜本的な充実、これは検討されているんでしょうか。
  192. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 日本の短波放送につきましては、国の命令する放送NHKの自主的に行っている放送と一体となって運営をしておるわけでございますが、国の命令放送に関しましては毎年大蔵省との、関係機関との間の協議で増額方を要請をしておるところでございまして、年々少しずつでございますが向上してきておるところでございます。今後ともその増額方の努力をしてまいりたいと思っております。
  193. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 質問にお答えになっていないんですよね。要するに、今の放送時間の水準で我が国としての当面の役割を果たしているという認識なのかどうか、こういう前提に立って抜本的に見直す必要があるのではないのか、こう思うんです。  それで、今政府交付金につきまして御答弁がありましたから、ここのところの推移をずっと見てみました。確かに絶対額では微増をしておるわけですけれども、しかし経費総額に対するいわゆる政府交付金、この比率は年々下がっているわけです。年々下がっています。昭和六十三年二二%、それから逐年二一、変則的に、湾岸紛争がありましたので平成二年につきましては追加二億円というのが加わって二二・五%、その翌年以降一八・九、一九・○、そして本年が一八・五%。  ですから、一つには、命令放送というのはこれなんだ、日本語、それから英語放送一般向け放送、それと地域向け放送、各国語による放送ですが、その放送時間の三〇%が国の命令放送に当たるんだということを明確にすれば政府交付金の増額という形になってくるんだろうと思うんです。これはあいまいなままにしておくと、この経費総額に占める政府交付金というのは下降をたどる一途だと思うんですね。ですから郵政省としては、本来あるべき国際放送の姿、これを明確にしまして、そしてこの政府交付金をきちんと確立する、これがいわゆる国際放送充実する、喫緊の課題だというそれにこたえる道なんだろうと思うんですけれども、この点とうなんでしょうか。
  194. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 先刻からの御議論でございますが、私どもとしては、先ほど言いましたように命令放送と自主放送とで構成されておるわけですけれども、一体として放送していくということで進んできておるわけでございます。実際の放送の場面においてこれを区分することは大変困難でございますけれども、私どもとしては、この対象となる番組についてこういった地域に放送するようにという命令をしているところでございまして、その部分について予算は獲得してきているところでございますが、まだまだ不十分でございますので、これからも予算の獲得に鋭意努力してまいりたいというふうに思います。
  195. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 ちょっとおかしいと思うんですね。命令放送の本体が不明確で、どれをもって命令放送とするのか、これがないのに、それを仮定して計算して交付金を決めている。逆に言うと、これしか出せないから命令放送分についてはこのぐらいになるんだろうということで今日営々と来ているんじゃないでしょうか。  国際放送充実と言う以上、この命題にこたえるためには、命令放送の明確な位置づけ、それからNHKの自主放送としての位置づけ、これをはっきりさせるしかないんじゃないですか。喫緊の課題だと指摘をされながらいまだにこれが不明確というのは、これはもう逓信委員会としては納得できない現状だと思います。検討してこれを明確にするのか、あるいはこのままいくのか、この点いかがでしょうか。
  196. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 先ほどから申し上げておりますように、この命令というのは、放送の事項とそれから放送の地域を明確にいたしまして命令をしておるわけでございます。それに必要な予算は組んでおるつもりでございます。その範囲を拡大することについては予算折衝の問題でございますので、さらに努力をしてまいりたいと思います。
  197. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 命令放送の実態がわからないわけですよ。例えば放送番組のソフト、あるいは人件費、それから受信不良地域を改善しようといういわゆる施設整備。これは、施設整備の点について命令放送では考慮しているんですか、していないんですか。
  198. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 海外中継局をつくってやっていくことについての問題だと思いますが、交換中継もございますしいろいろな形態がございますけれども、その費用は国として負担をいたしております。
  199. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 ひとつ命令放送の実態を明確にしていただきたい。命令放送というのは今年度においてはこれを申します、積算の根拠はこうなっています、これを委員会に資料としてぜひ要求したいと思います。  委員長、お取り計らいをお願いしたいと思います。
  200. 亀井久興

    亀井委員長 今の資料要求につきましては、後刻理事会で協議をさせていただきます。
  201. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 NHKに対しても同様の資料をぜひお願いしたいと思います。
  202. 亀井久興

    亀井委員長 同様に取り計らいたいと思います。
  203. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 それでは、もう一つ別な角度から伺いたいと思います。  NHKは現在九系統の放送メディアを公共放送の役割を果たすために放送事業を行っております。そして、長期展望の中でも、音声放送の役割、これは質的にも向上をさせていかなければならない、しかしメディアの整理を考えていくべきである、こういう指摘がありましたが、NHKとしてどういう検討をされてきたのか、今後どうしていくのか、このあたりをぜひ伺います。
  204. 森川脩一

    ○森川参考人 お答え申し上げます。  NHKは現在、先生御存じのように、音声メディアにつきましては、ラジオを 二系統とそれからFM一系統で放送サービスを行っているわけでございます。それで、その内容でございますが、ラジオにつきましては、ニュースあるいは生活情報、あるいは語学放送という番組、それからFMにつきましては品質の高いステレオ放送というぐあいに、それぞれのメディアの特性にマッチしたサービス内容で今放送をしているというのが現状でございます。  それで、今先生お尋ねの将来構想の中で先々に向けてどういう考えかということでございますけれども、将来構想の中で、NHKといたしましては、音声の放送メディアにつきましては、今後の音声メディア自身の進展あるいは技術開発の動向、そういった音声放送を取り巻くいろいろな状況の変化、あるいはさらには視聴者の動向の把握というようなことを十分に行った上で、現行三波を再編成して一波削減する方向で検討するということにしております。  それで、この再編成の検討に当たりましてはもちろん、メディアの特性であるとか番組内容がちゃんと確保できるか、充実できるかということとか、あるいは技術の動向が今後どう進んでいくであろうかというようなことを検討してまいったわけでございますけれども、今後これを具体化する段階では、さらに視聴者の動向を注意深く十分見きわめながら、さらに検討を深めてまいりたいというぐあいに考えております。
  205. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 中波のラジオ、AMステレオ化が実施になりました。ここへ参りましてちょうど満一年を迎えようとしているわけで、この間の民放各社、非常に精力的にこれに取り組んでまいりまして、一〇〇%近いステレオ化という放送の現状にあります。  これは、トーク番組、一人が主役で放送する番組を除きますと、大変ステレオ効果がオーディオマニアの間で評価をされている。非常に機器の売れ行きも当初見込みを上回る順調な運びになっている。一部車への標準装備というのも進行中である。しかしネックはやはり、NHKがステレオ放送をするかしないかということによりまして、日産、トヨタ系の各車への標準装備ができるかできないかということになっている。こんな状況にあるAMステレオ化の問題について伺いたいと思うんです。  三波を整理して、NHKのラジオ放送については一波なくす、その方向との関係なんですが、質的な向上を図るんだ、付加価値をもたらす、こういう意味で、それにはかかわりなく実施していいんではないのかという意見を実は私は持っているんですが、この点について、NHKとして受信者意向、こういうのをお確かめでしょうか。今日まで調査をしたかなりの高い需要がある、こういう手ごたえをお持ちでしょうか。
  206. 森川脩一

    ○森川参考人 先生今御指摘になりましたように、中波ステレオ放送については、民間放送がこれを開始しましてからほぼ一年をたったところでございまして、私どもとしてもこの一年間、視聴者の要望がどんなぐあいにあるか、それがどういう推移をたどっているであろうかということの把握に努めてまいりました。一言で申し上げますと、今日に至るまで視聴者の反響というのは大きくございません。  具体的に申し上げますが、私たちの視聴者意向の把握の場といたしましては、先生御案内のとおり、NHKにいろいろな形で寄せられます電話でございますとか投書でございますとか、それからあるいはNHKが主催します視聴者会議というようなさまざまな場がございます。それによりますと、まず電話とか投書といった部分では、視聴者からNHKに寄せられた反響はこのところ非常に少なくなっているのが実態でございまして、ステレオ化に対する強い要望というのもしたがっていただいていない、こういうのが実態でございます。  それから、ただ、一年前に民放がステレオを開始した当初のごく短期間におきましては、その反響が寄せられておりました。それはしかし、それでもこの全体の電話、投書の反響の総数が一万二千件という中で、中波のステレオ放送に関するものは二十五件でございました。これは民放さんのスタートのごく初期のデータでございます。その内容といたしましては、NHKはなぜステレオ化しないのですかという問い合わせとか、あるいは、ぜひステレオ化をしてほしいという要望が確かにございましたけれども、しかし、ステレオ化しないからけしからぬというような批判的な意見は一、二件でございました。この民放スタート当初の二十五件という数字はその後ぐっと減りまして、今もお答えしましたように、ほとんど出てきていないというのが実態でございます。  それから、もう一方の視聴者会議の方でございますが、これにおきましてもステレオ化に対する要望というのがほとんど出されていないというのが実態でございます。  それで私どもは、今後に向けましても、この視聴者意向というのをなお引き続き注意深く、意向把握に努めてまいりたいというぐあいに考えております。
  207. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 消極的に、投書あるいは電話がかかってくる、それを受けた、そしてそれによって動向をとらえる、これも調査の一つなんだろうと思うんですね。  今、ここにある調査があります。これは、首都圏の十九歳から四十歳までのカーコンポを所有している方千百人を対象にして実施をした。テレビ、CDなど九つの機器、機能に関する関心を調べてみた。そして、複数回答で回答を求めたところ、AMステレオという回答は六一・二%あった。そして、負担をしてでも今のカーコンポを取りかえたい、こういう人が一三・一%のドライバーが回答した。こういう調査が一つ、おもしろい調査だと思うんです。  それで、この問題は、一つにはNHKがその意味で非常に大きな存在だと思っているんです。導入する、導入しない、これはNHKの主体的な御判断で決定されることなんですが、世論の動向、これを正確にとらまえる必要があるんではないのか、このように思っているんです。  電波技術審議会の答申を受けまして、そして郵政省が、民間放送各社に技術基準をもってこの放送システムを導入することを決定した、そのときの特徴を三つ挙げております。一つは、高度化、これは高品質のステレオ放送が楽しめるんだ。もう一つ、両立性、互換性。従来のモノラル受信機でも十分対応ができる。それからもう一つは、周波数の有効利用。ステレオ放送として新たな周波数が小必要である。  こういう三つの特徴がありまして、古くて新しい中波ということでありますけれども、有効に、しかも付加価値を十分つけて、そしてリスナーがそれを評価する、こういう方向というのはやはり一つの流れではないのか、こう思いますが、民放運では、御意見を伺いましたが、先導的役割を果たすべきNHKが非常に腰が重い、こういう評価でございました。これが一つの大きな壁ですという御評価であったように思います。  これからの検討につきまして、お気持ちを聞かせていただきたいと思います。
  208. 川口幹夫

    川口参考人 昨年の放送記念日のときに、民放連の会長代理として羽佐間副会長がお見えになりました。ごあいさつの中でそのことに触れられまして、ぜひNHKも中波のステレオ化をやってくれというお願いをされたのです。  私どもも、実はこの中波のステレオ化につきましてはその前からいろいろな検討を進めておりまして、それはもちろんやった方が確かに効果は上がるだろう。ただ、幾らお金がかかるのかということを試算しますと、やはり全国津々浦々までですから相当たくさんのお金がかかる。大体概算で三十億以上恐らくかかるのではないか。それから、回線の使用料というのが何億かかかるというふうな状況でございまして、今の段階でそこまでNHK負担するべきであろうかというふうなことになって、羽佐間副会長の御要望も受けた上で、再度検討した上で、当分踏み切れないというような結論になったわけです。  その理由一つは、NHKは民放と違って、既にステレオによるFM放送という一つの波を持っているわけですね。ですから、いわゆるステレオ効果のあるという番組はFMで十分出せる。それから、音声は三つの波を持っておりますから、その波を有効に使用することもまた国民に対する一つの責任ではなかろうかというふうに考えまして、現在のところまだラジオのステレオ化には踏み切ってないという状況でございます。  今の難点が解決される、そしてより聴取者の御要望が非常に高まって、何が何でもやはりやってほしいということになれば、それはまた考えなければいけないと思います。ただその前に実は音声三波のむしろ整理をすべきではなかろうかというふうに思っておりまして、この問題とあわせていろいろ検討していこうと思っております。
  209. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 終わります。
  210. 亀井久興

    亀井委員長 次に、田中昭一君。
  211. 田中昭一

    田中(昭)委員 私たち社会党は、人に優しい情報通信というテーマで、シャドーキャビネットなどを中心にしていろいろ議論をいたしておりますが、そのことを踏まえまして、あまねく公平な放送サービス提供が果たしてなされているのかどうなのか、こういう問題につきましてまずお尋ねなり問題提起をしたいと私は思っております。  放送法の第一条では、「放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。」また、「放送国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障する」、こういうふうに規定づけておるわけです。さらに第二章では、これはNHKの目的でありますが、日本放送協会の目的として、「協会は、公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内放送を行う」、こういうふうになっておるわけです。そして、今回提案がされております平成年度事業計画のまくら言葉の中で、「視聴者期待と要望にこたえ、調和のとれた多様で豊かな放送サービスを一層充実」する、こう実は言われておるわけです。  これらのことを整理をいたしますと、NHKが行う公共放送というのは、まず一つは、公共の福祉に適合したものでなければならない。それから二つ目に、すべての国民に最大限に普及され、その効用をもたらすものでなければいけない。それから三つ目に、あまねく公平に豊かなよい番組放送しなければならない、提供しなければならない。それから四つ目に、すべての国民期待と要望にこたえ、調和のとれた多様な放送サービスを行わなければならない。  大体整理をいたしますとこういうことではないかな、こういうふうに思うわけですが、この基本的な考えから見た場合、私が申し上げたいのは、身体にハンディキャップのある障害者向け番組が極めて不十分ではないだろうか。あまねく公平なサービス提供という面では、さらに公共放送を行うNHKの任務として特段の努力と発想の転換が必要ではないかな、極めて不十分である、こういうふうに思うわけですが、この点についての基本的な考え方について、まず冒頭お聞かせをいただきたいと思います。
  212. 川口幹夫

    川口参考人 基本的には、NHK放送は、例えば視聴率の高いものだけやるとか、あるいはたくさんの人が見るために平易なものだけやるとかというふうな観点には絶対立つべきではないと思っております。「NHK構想」の中にも、いわゆる少数者というものに対する対応の仕方ということを念を入れて書いてあります。それで、特に、障害者を中心とした恵まれない方々に対する放送については、NHK一つの責任として十分手厚くやるべきだというふうなことを書いてございまして、おっしゃるとおりその方向で行きたいと思います。
  213. 田中昭一

    田中(昭)委員 考え方については意見の不一致はないと思うのですが、御承知と思いますが、まだ議論にはなっておりませんけれども、今次国会に、郵政省の方から身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律案、非常に長い法律案でありますが、こういうのが実は提案をされておりまして、今後議論をすることになるだろうと思います。  この法案を読んでみますと、この法案の目的は、身体障害者がテレビなどの通信・放送のサービスを十分に受けられるようにするために、テレビの字幕放送や解説放送充実をする、また、そういう方々に向けての新しいサービスの開発を図る、こういうふうになっているわけです。具体的には、通信・放送機構を通じて、聴覚、視覚障害者に対する字幕放送や解説放送などの番組作成や整備に対する助成や利子補給などを行う、こういうふうになっているわけで、私は大変すばらしい法案の提案だと実は思っているわけですが、NHKとしてもこれは御承知のことだと思います。  NHKとして、今郵政省が提案をしようとしているこの種の問題について、先ほど申し上げましたように、私は、もっと具体的に充実をすべきじゃないかな、これはNHKという経営規模からいたしまして、こういう法案の成立がなくても、もっと積極的な取り組みが、充実が必要ではないかな、常々実はそう思っているわけです。今回の、今議論している平成年度事業計画として、これらの問題について具体的な提案がないんではないかなというふうに受けとめておるわけですが、来年度計画として、これらの問題について充実策としての考え方が、あるいは具体的な問題があるのかないのか、言葉としては見受けられないわけで、これらの問題は抽象論で議論をしておってもしょうがないことだと私は思うわけで、具体的な計画があれば、この点について少しお聞きをしたいと思います。
  214. 中村和夫

    ○中村参考人 五年度の具体的な計画は、字幕放送について申しますと、新設番組を三つ行います。「ドラマ新銀河」「ふたりのビッグショー」「句の八句の話」、継続番組が六つございますから週十一時間二十八分、再放送も含んでおりますが、四年度に比べて一時間一分の増になります。それから、解説放送が四年度に比べまして二時間二十五分ふえて、七時間五十分。新設としては「ドラマ新銀河」、継続番組としては「ええにょぼ」「劇場中継」や障害者の日の特集ということになっております。それから、手話放送は二時間十五分で、「きょうのニュース」「聴力障害者の時間」「NHKみんなの手話」というようなことになっております。  これまで六十年に三番組、五時間というところから比較しますと、番組数で三倍、放送時間数で二倍ということになっておりまして、今後ともできる限りこういう努力をしてまいりたい、いろいろ物理的な制約その他もございますので、そういうところをクリアしながら充実させていきたいというふうに思っております。
  215. 田中昭一

    田中(昭)委員 今御説明がございまして、ある意味ではちょっと安心もしているわけですが、しかし、私は今日の日本のこの経済状態とか、それから生活大国を目指す立場とか、あるいはNHKとしての経営の立場とか、こういうものを考えた場合にはやはり極めて不十分ではないかな、もっと積極的な取り組みが必要ではないかな、こういうふうに実は思います。  御承知と思いますが、アメリカでは、アメリカ障害者法、いわゆるADA法というのがあります。これらのサービスは、我が国と比較して段違い、権利として保障をされておるわけです。  例えば、今御報告ございましたけれども、我が国における字幕放送について昨年度を私ども調べてみますと、若干ふえておると思いますが、NHKの場合、毎週九番組、十時間二十七分、民放の場合には毎週十番組、五時間七分、これくらいの程度に終わっているわけで、少しふえると思いますが、放送時間全体における字幕放送実施率というのは、NHKの場合でも五%に満たないわけですね。民放の場合には、在京民間五社、大きい民放だけ五社を見てみましても一%に満たない。〇・四五%にしかなっていない。これが実態だと思うわけで、二倍とか三倍とか言われますけれども、もともと基礎が極めて少ない。  アメリカでは、週平均放送時間、五局で二百十五時間、三大ネットでは毎日午後七時から十一時、全番組で字幕つき、これはニュースであるとかバラエティーであるとかドラマであるとか、かなり幅広く充実をしているわけです。  また、これも御承知と思いますけれども、アメリカでは一九九〇年に字幕デコーダー法がつくられて、一九九三年四月以降に生産される十三インチ以上のテレビはデコーダーの内蔵が義務づけられている、こういうふうに聞いておるわけです。デコーダーの内蔵が義務づけられておるわけで、どのテレビでも字幕放送が見られる、こういう状況になっています。皮肉にも、アメリカで使われているテレビの七〇%は日本製のテレビだ、こう言われているわけですが、日本では、文字放送ができる内蔵テレビの生産からもうおおむね撤退をしてしまって、普及率も極めて低い、こういう状況になっているわけです。  そういう意味では、先ほど御説明もございましたけれども、余りにも格差があり過ぎる。したがって、あまねく公平にサービスを提供する、こういう意味では、特段のNHKとしての積極的な取り組みをお願いしたい、こう思うわけです。  きょうは大変時間が短いのですが、先般出されておりますNHKの将来構想の中で、「NHKの目標」第二項で、「公共放送の原点に立つ多様な放送サービスを、全国にあまねく伝える。」こういうふうに言われておりまして、この中で、「少数者にかかわるサービスを大切にし、そうした人びとの立場に立つ番組充実する。」こういうふうに明記されているわけでして、これに対する提言の中でも、これをもっと充実すべきである、こういうふうに言われておるわけです。  ですから、遅々として、少しずつふやすということでなくて、この際、やはり大胆にこれらの問題に抜本的に取り組む、こういう基本的な姿勢が必要じゃないかな、こういうふうに私は思っております。この立場から、具体的にこれらの問題を具現化するために、人に優しい放送充実ということ、いわゆる差別のない、人権を尊重した公正公平な放送充実するということを、私は、人に優しい放送充実ということで、重要なNHKの方針の柱として、平成年度事業計画の中で明確にしていただきたいと思う。そして、先ほど御報告ございましたように、もっとこれらの問題に配慮する、こういう姿勢をこの際明らかにしてほしい、こういうことを申し上げたいと思います。
  216. 川口幹夫

    川口参考人 私は実は、聾唖者の福祉団体、それから盲人の協会、そういうところの理事職をやっておりまして、毎回そういうところの会合で、ハンディキャップを持っている方々の切なる要望も聞いております。  ですから、そういうことに対してNHKもこたえるべきだというのは「NHK構想」に書いたとおりでございまして、ただ、現実的には人手とかお金とかいうものがやはり相当かかります。ですから、急速にこれをふやしていくと全体には非常に厳しい状況になりますので、今はできるだけ積極的に、一歩も二歩もじゃなくて三歩も四歩も行くというふうな形で行く以外ないだろうと思っています。一挙の増加というのはとても今の状況では不可能でありますが、お約束を申し上げます。確実にふやしていく方向で努力をいたします。
  217. 田中昭一

    田中(昭)委員 会長の方から一歩や二歩でなくて三歩か四歩、こう言われましたから、私は、五歩か六歩くらい努力をしていただきたい、こういうことを申し上げておきたいと思います。  時間がございませんので次のテーマですが、地域放送充実について少し問題を提起いたしたいと思います。  いわゆる東京一極集中という言葉がいろいろ使われております。東京一極集中の弊害ということがいろいろ言われまして、これが政治や経済や生活の活力を阻害している、こう言われております。今や地方分権の推進というのは重要な政治課題になっておる、こういうふうに私は思っております。  放送も、よきにつけあしきにつけて東京中心主義で、生活の画一化に大きな役割を果たしてきた、こう言っても過言じゃない、こういうふうに思っております。NHKも、基調としては全国放送と地方放送は車の両輪だとおっしゃっておりまして、地域放送についても重視をする姿勢であった、こういうふうに思います。したがいまして、地域放送をさらに充実をしていく、そういう考え方に変わりがないのかどうなのか、そして、来年度事業計画における地域放送充実考え方というのはどういうところに視点を置かれておるのかということが一つ。  あわせて、今日のNHK事業計画の中で経営の効率化が言われています。これは重要なことだと私は思いますが、ミクロな要員計画などが実施されておりまして、地方局を縮小したり見直したりして、東京にやはり重点が置かれている、東京に配置転換をする、こういうことがかなり大きく行われております。その結果、地方局の体制は要員不足が言われておりまして、労働条件の悪化なども言われておりまして、大変厳しい状況にあるんじゃないかな、こういうふうに私は思います。したがって、地方における良質な番組の作成や、地方からの情報発信というのが逆に困難になってきているんではないかな、こういうふうに思います。  今、情報化社会だと言われている中で、ローカルエリア内の番組作成ではなくて、それぞれの地域の特質を、情報を、独自の番組を全国に発信をしていく、こういうことが視聴者のニーズとしても極めて重要になってきているんではないかな、こういうふうに考える場合に、この地域放送も、充実をするといいながら、逆にそれがしにくくなっているというのが実態ではないかな、こういう懸念を持つわけですが、今後の地域放送充実については視聴者の方からの強いニーズがあるということの認識などについて、少しお聞かせをいただきたいと思います。
  218. 中村和夫

    ○中村参考人 お答えいたします。  地方からは今御指摘のあったような要望があるということは十分こちらも認識しております。  具体的に申しますと、来年度の総合テレビでは、「列島リレードキュメント」という番組、それから 朝、今の「モーニングワイド」の枠を「おはよう日本」と変えますが、その中で今まで以上に地域の題材を取り上げるとか、それから「自然発見」、これは週一回ですが、日本各地の豊かな自然の美しさを紹介するとか、「句の八句の話」、これも週一回ですが、インタビュー番組で、地方のさまざまなジャンルの次代のホープにインタビューをするという番組でございますが、それを新設するとか、それから九時半に「クローズアップ現代」という三十分の番組をつくりますが、ここでは積極的に地域ならではの素材を取り上げていく。新設番組はこの五つございます。  その上、「列島リレー」「ひるどき日本列島」「ぐるりにっぽん」などは継続いたしますし、「NHKスペシャル」「プライム10」「列島中継特集」というのも引き続きやっていくということになります。
  219. 田中昭一

    田中(昭)委員 時間がございませんので、私は二つのテーマについてNHKにお願いを申し上げましたので、ぜひNHKとしての積極的な今後の御努力をお願い申し上げまして、私の質疑はここまでといたしまして、秋葉委員にかわりたいと思います。
  220. 亀井久興

    亀井委員長 次に、秋葉忠利君。
  221. 秋葉忠利

    秋葉委員 田中委員の関連質問という形で私も短く何点かについて、田中委員から質問があった点について、少々視点を変えて、さらにより普遍的な問題について伺いたいと思います。  実は、この逓信委員会で何度か質問をいたしました。で、十分な、少なくとも私にとっては満足のいくお答えをいただいておりません。その点について再び何点か、NHKさらには郵政省の考え方を伺いたいと思うのです。  これは一つの原則についてです。それは何かといいますと、英語で言いますとこれはコンフリクト・オブ・インタレストということになるわけですが、直訳すると利害の衝突、もう少し平たく言いますと、相矛盾する利害関係を一人の人間があるいは一つの機関が同時に代表する、そういったことから生ずるさまざまな問題を包括してとらえる概念だというふうにお考えいただいて結構だと思うのです。  実は、少なくともアメリカのジャーナリズム界におきましては、このコンブリクド・オブ・インタレストを避けるということは、非常に重要な原則の一つ、公正な報道を行うための重要な原則の一つになっております。  この点について私は今まで何度かNHKとかなり熱い討議もいたしましたけれども、どうもこの点を御理解いただけない、あるいは御理解いただいているのかもしれませんけれども、どうもそれについての行動が伴わない。こちらの説明が悪いのかもしれませんが、今回のムスタン事件があって、実はこれまでNHK側で言われてきたいろいろな説明があのムスタンで一挙に全部崩壊してしまいましたので、そのことを踏まえて、改めて伺いたいと思います。  ちょっと抽象的ですので簡単に例を申し上げたいと思いますけれども、この利害衝突、ちょっとこれ、日本語だとイメージがよく伝わらないのですが、これの一番典型的な例というのは、裁判官がみずからを裁く、その結果下された判決がこれは公正なものであるというふうに主張をする、そのことが一番典型的にこのコンフリクト・オブ・インタレストを避けるということをしない例として考えられるわけですけれども、その点を頭に置いていただきたいと思うのですが、ある意味でマスコミは裁判官と同じような役割を果たしているところがあるわけです。  そうしますと、まず最初に伺いたいのですけれども、こういった概念を、NHKとして公正な報道を行う際に非常に重要な柱の一つであるという認識をお持ちなのかどうか。まず最初会長に簡単に確認しておきたいと思います。
  222. 川口幹夫

    川口参考人 おっしゃるようなことに対しては、やはりNHKもそれは大事なことだという認識をしております。  例えば、番組審議会というのがあるのですが、これは中央番組審議会のほか、各地域ごとに審議会を開いて、これは毎月一回二時間ずつ、非常に密度の濃い議論をしております。そういう中で、例えば報道のあり方とか、先ほどのムスタンの問題なんかについても非常に活発な御意見をいただきました。それについてのいわゆる局外からの反響、反応、批判というものについては、私どもは謙虚に受けとめているつもりでございます。  それから、あとは視聴者会議というものもありますし、いろんな意味で外部の方の御意見を率直に拝聴する。その中で、とるべきはもう直ちに実行をするというふうな姿勢でおりまして、決してみずからの考えだけをよしとするものではないということは申し上げておきます。
  223. 秋葉忠利

    秋葉委員 実はちょっと質問と答えがずれているような気がするのですが、その点についてはまだ後で申し上げたいと思います。  より具体的な形として、例えば報道の現場にある取材記者が、取材対象、例えばインタビューをしたり、それからその人について記事を書いたりするその相手ですわ、典型的な例として政治家というのが挙がるわけですけれども、その政治家から飲食を提供される、つまりおごってもらうということですね。それが、例えばアメリカのジャーナリズムにおいては、そういうことをしてはいけないという原則がかなりはっきりと確立されております。原則として、やはりそのような飲食物の提供ということに関しては、そういった原則が当然であるというふうにお考えになりますか。
  224. 川口幹夫

    川口参考人 私は具体的なイメージが今浮かばないのですが、取材者が例えばその取材対象の方に何らかの供応を受けるというふうなことは、あってはいけないと思います。
  225. 秋葉忠利

    秋葉委員 いけないはずなんですけれども、少なくとも日本のジャーナリズムにおいては、取材対象者からおごってもらう、食べ物だけではなくて酒もおごってもらうというのはかなり一般化しております。これを私は個々のケースについて今問題にすることが適切な時期ではないと思いますけれども、原則として、ともかくそういうことはいけないことだという御確認をいただきましたので、それは一歩の進歩だと思います。  それから、金丸事件でこれはまた問題になりましたけれども、かけマージャンというのがございます。取材者が、ジャーナリストが取材対象とかけマージャンを行って、あまつさえしばしば自分が勝って結果的に金品を受け取るというようなこと、そういう形での取材対象とのつき合い方も、もちろんこれは原則として禁止されるべきであるというふうにお考えだと思いますけれども、確認しておきたいと思います。
  226. 川口幹夫

    川口参考人 そういう話も実は聞いたことがあります。私は、報道局長を通じてそのことについてはただしました。それで、いわゆる報道記者の分を外さない形でのおつき合いならばいいけれども、それを越えてはいけないということははっきり申し上げました。
  227. 秋葉忠利

    秋葉委員 その羽目を外さないというのをだれが実は判断をするかというところが、先ほどから申し上げているこのコンフリクト・オブ・インタレストの原則にかかわるわけです。それを本人が判断をするというのは非常に危ないというのが、アメリカのジャーナリズムでの一般的に認められた原則です。つまり、自分で供応を受けておいて、これだけはいいのだということを自分で判断することはできないだろうというのがそういうところなんですね。  実は、そういった取材者と取材対象者との間のそういう関係ができるというのは、平たく言ってしまえば、記者側とそれから取材の対象になる例えば政治家との間に一定の距離ができない。つまり、取材対象者の視点なり利害関係を代表して公正であるべき記事が書かれてしまったり番組がつくられてしまったりするというところが問題になってくるわけですけれども、その距離が近くなってしまう。というところから考えますと、その関係で一番距離が近くなる例というのが実は取材者が取材対象になってしまうということだと思いますけれども、その判断について、もう一つ実は大事な点がございます。  そういうふうになっても、今おっしゃったように、自分自身で羽目を外さないということが確実にすべての場合にできるのであれば、それは問題はありません。しかしながら、人間は必ず過ちを犯す存在である。私たちの心の中には常に弱さがあって、その弱さに負けることがしばしばであるという、人間が人間であるということを認めると、やはりそこのところでは何らかの、弱さが表面にあらわれた際にも報道の公正さを保障するような制度なりメカニズムをつくることが必要になってくるということになると思います。  まさにアメリカのジャーナリズムで認めているのはそういう点でして、倫理規定の中に取材者と取材対象者との間の一線を画すためのさまざまな規則がきちんと定めてあります。その一つとして、取材者が取材対象者になってしまうこと、同一の人物になってしまうということは厳に戒むべきであるということが特例として含まれるわけですけれども、会長はその点についてどうお考えになりますか。
  228. 川口幹夫

    川口参考人 取材者というのはあくまでも取材者でありまして、取材対象と同一の考え方あるいは同化するというようなことはまずあってはいけない。例えばそれは精神的な面で同調することがあったとしても、取材者の立場、取材者という考え方の上に立ったものでなければいけないということを常々自覚するように、私も記者には教育をしているつもりでございます。先ほどの例も、いろいろ聞きましたけれども、いわゆる取材者としての立場は踏み外していないということを周囲も言っておりましたし、私もその方向できちんと対応するようにというふうに申し上げました。
  229. 秋葉忠利

    秋葉委員 今のお答えでは十分ではないと思います。といいますのは、私が申し上げましたのは、取材者が具体的に取材対象者になってしまうという事例があるという前提のもとに申し上げております。その際に、取材者と取材対象者は一心同体なわけですから、その視点をどこでどういうふうに区別するかということは、まず普通の人間にはできないことです。あるいは普通の組織にはできないことだと思います。あってはならないことだとおっしゃいました。その心がけをきちんと守っている間はそういうことは絶対起こり得ないはずだというふうにおっしゃいました。しかし、ムスタン事件でまさに私たちが実際に起こったこととして知っていることは、今会長がおっしゃったような、起こっていけないことが起こった。そののりを越えなければこんなことは絶対に起こり得ないということが起こってしまった。ですから今の答弁では、全くこれからの歯どめにはならないということにしかならないわけです。  ですから、具体例を申し上げますと、例えば今ここの審議NHK予算審議の中でNHKが取材をしています。それはまさに取材者と取材対象者が一緒になっちゃっているわけです。それを公正な第三者、公正な報道であるというふうに流すのは、控え目に言って、これは国民に対してある程度不正確な情報を与えるということになる、そう判断せざるを得ないわけです。その点についてどうお考えになりますか。
  230. 川口幹夫

    川口参考人 あれでしょうか、この国会審議の模様を放送するのが、NHKがやるのだったら、それは大変……(秋葉委員NHK自身の予算について、NHKがまさに取材対象として、今回は予算ですから」と呼ぶ)はい、それはそうですけれども、ただし、私どもがこういうふうにお答えしているのは経営の立場でありまして、番組をつくっているのはまた別なんです。番組屋はやはり番組屋としての、番組をつくっている者としての考え方あるいは規律みたいなものに基づいてやっているのでありまして、そこには必ず第三者としての公平な目も働くはずでございますから、これは私は問題はないだろうと思います。
  231. 秋葉忠利

    秋葉委員 ムスタンをつくった方々も同じような立場からおつくりになったんじゃないのですか。あの番組をおつくりになっていた方は、まさかやらせをやるつもりでやっていたわけじゃないでしょう。今おっしゃったような形で、公正な、しかもうそを交えない報道をするという立場で、NHK全体としてはだからこそ応援をしていたわけですね。にもかかわらずそういうことが起こった。ということは、今のお答えでは要するにきちんとした答えになっていないということです、そういうことが具体的に起こったわけですから。  そこで、私が申し上げているのはこういうことです。ですからそれはもう制度そのものとして、論理的な構造として不可能なことなわけです。ですからそれを避けるためには、例えば次のような方法がある。  それはNHKが、これはNHK予算ですからNHKをごらんになっているたくさんの方が関心を持っているということは否めない事実です。ですから、それをNHKで放映することは確かに理由があると私は思います。しかしその編集については、例えばここで絵を撮っている、あるいは音をとっている、それがNHKの方だということは構わないかもしれないけれども、その映像をすべて例えば民放のプールに頼んで、委託をして、それで我々はあくまでも公正を期したいのだ、NHKに対してどういう批判が国会の中であったかをできるだけ公正に、しかしながら同時に正確に知らせたい、そういう意図で、NHKとは切り離された形での民放のプールとして編集をしてくれないか、それで編集責任は民放のプールにあるということを明示した上で、しかしながらこれはNHKの広報番組としてNHKが責任を持って報道するんだということでやれば、今私が申し上げたコンフリクト・オブ・インタレストということは避けられるわけです。  例えばそういうことを検討していただくことはできないのか。そういうことをすることによって、NHKが実は自分たちのひとりよがりで仕事をやっているのではなくて、国民のより広い意見をできるだけ公正に、できるだけ積極的に自分たちの経営の中に、あるいは報道姿勢の中に反映させようとしているんだというその今おっしゃった姿勢が、より正確に、より強く伝わることになると思うのですけれども、それはお考えいただけますでしょうか。
  232. 川口幹夫

    川口参考人 これは全く私は考えておりませんでしたので、改めてどういうふうに御返事申し上げていいか迷うのですが、例えばこの番組を今カメラが撮っております。これを編集いたします。もちろん国会の場でありますから必ず公平ということ、それから質問された方々のポイントは絶対逃さないというようなことを前提にしてつくるわけでして、それほど大きな偏りが起こるはずがないというふうに思うのです。ムスタンはそういうことが起こるべくして起こった。それには幾つかの原因があったので、私は厳しい処分をしたわけです。
  233. 秋葉忠利

    秋葉委員 起こるべきでないことが起こっているのがムスタンなんですから。だから、起こるべきでないことは起こらないという答えでは、要するに答えにならないわけですよ。ですからそれを申し上げているので、ともかく、今のお答えの中では少なくとも検討してみようというような感じがうかがえましたので、ぜひその検討をお願いいたします。  もう一つ、ついでにお願いしたいのですけれども、私が申し上げているこのコンフリクト・オブ・インタレストということの説明ではもし納得がいかないのでしたら、NHKの中にもたくさんの若い方がいらっしゃると思います。海外に留学されている方もいらっしゃると思います。そういう方のうちの一人で結構ですから、例えば半年間、コロンビア大学の中にスクール・オブ・ジャーナリズムというのがありますけれども、そういうところでこのコンフリクト・オブ・インタレストという概念はどういうものであるか、アメリカのジャーナリズムにおいてこの原則を守るためにどのような努力が行われてきたか、その歴史をきちんと研究していただいて、それを会長以下NHKの重立った方がぜひ勉強していただきたい、と言うとちょっと不遜に聞こえますけれども、ぜひ、アメリカの例から何か参考になる点はないか、一度そういった試みをしていただければ大変ありがたいと思います。それだけでも随分新しいことがわかるんじゃないかという気がいたします。  実はそれに関してもう二点だけ伺いたいと思うのですけれども、それがこの問題についての一つのお願いですけれども、もう一つのお願いは、例えばムスタンの問題でもそうですし、それから今私が申し上げているような問題でもそうなんですが、公正な報道の原則、それを保障するためのもう一つの方法としては、NHK経営委員会というものの委員の構成を少し考え直す必要があるのではないか。  例えば、現在ではこういう形はとられておりませんけれども、広く受信料を払っている人たちの中から、地域代表という形でも結構です、あるいはそれ以外の形でも結構ですけれども、現在の放送法の中でも、視聴者代表、受信者代表を、仮に選挙によって選ぶというふうにしたらいいと思いますけれども、そういった形でNHKあるいは郵政省とはまるっきり縁もゆかりもない、恐らくその考え方もあるいは視点も、自分の代弁すべき人たち、そういったところもまるっきり違うような代表者を経営委員の一人として、少数でも最初のうちは構わないと思います、そういった人たちを参加させることによって、公正なる、できるだけたくさんの、その中には少数者、先ほど田中委員が質問いたしました少数者の利害関係を代表するような人を入れる、そういった形での放送法の柔軟な運用はできないものか。  会長にも伺いたいと思いますし、郵政大臣にも、放送法の弾力的な運用ということでそういった方法を考えていただけるのかどうか、伺いたいと思います。
  234. 川口幹夫

    川口参考人 経営委員会の選出につきましては、これはNHKとしては意見を申し上げるべきではないと思います。私は経営委員会の監督を受けて業務を執行している立場でございます。
  235. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 経営委員は広い分野、各分野からいろいろな学識経験者等で運営されていますが、現在郵政省としてはそれぞれ適任であると思っていますが、いろいろな意見があります。今後検討させていただきたいと思っております。
  236. 秋葉忠利

    秋葉委員 ぜひ御検討をお願いしたいと思います。  それから、これはNHKに特にお願いなんですけれども、先ほど番組審議会それから視聴者の会等でいろいろな意見を吸収しているというお話がありました。それも確かに大事なんですけれども、それ以外に、より独立性の強い、より第三者的な性格を持ったオンブズマン制度といいますか、視聴者受信者、あるいはそれ以外の人たちからの意見をできるだけ広く聞いた上で、例えばNHKについて調査を行う、あるいは何らかの形での調査を行ったり交渉を行ったりして、その結果を公表する。NHKとは独立した関係ではあるけれども、協力関係を保障されているようなオンブズマン制度といったようなものが例えば今できたとすれば、ある意味でムスタン事件の一つの非常にすばらしい教訓として、それが今後生きるのではないか。  そういう意見がちまたにはあるわけですけれども、例えばオンブズマン制度といったようなものを御検討いただけるのでしょうか。あるいは、それに似た制度でも結構ですけれども、何かそういった形での歯どめをかけるメカニズムについて、どういう御感想をお持ちなのか、お聞かせいただきたいと思います。
  237. 堀井良殷

    ○堀井参考人 放送に対していかに外部の方々の意見を反映していくかということで、私どもいろいろな努力を行っておりまして、例えば、積極的に世論調査を行いまして、御要望や反応等を的確にとらえる、それを編集に反映していく、こういう世論調査、あるいは、先ほども出ましたが放送番組審議会で、視聴者意向を的確に反映するために各界、各分野から選ばれた方々からの御審議をいただき、それをまた外部にも発表しておる。また先ほども出ましたが、視聴者会議、全国五十三カ所で開催しております。さらに、考査室等でモニターを外部に委嘱しまして、この意向も反映している。そのほかにも、電話、投書、あるいは私どもの日ごろの営業活動、こうしたものを通じまして、膨大な視聴者からの御要望が寄せられているわけでございます。  こうしたものに敏感にかつ的確に対応していくということで、私どもの立場として表現の自由、言論の自由というものは、何にも増して自律ということがあってこそ表現の自由、言論の自由が守られるのではないか、放送番組編集の自由というものは、この自律によって保障されるのではないか、かように考えているわけでございまして、先ほど先生の、ムスタンについて起こったではないかという御指摘がございましたが、であるからこそ、私どもはみずからがこれを自律的に自浄作用を行うということで、調査委員会をつくりまして、みずからがその理非を明らかにしたわけでございます。  そういうわけで、編集権というものがきちんとジャーナリズムの中に確立されているということは、まさに自律の中で行われるものであろうかというふうに認識しておるところでございます。
  238. 秋葉忠利

    秋葉委員 ありがとうございました。  ただ、自律ができなかったからこれから自律ができるんだというのは論理的に破綻した答弁ですけれども、NHKの立場はそれなりに理解できます。ともかく、これからも提案をしていきたいと思いますので、今お願いした何点かについてはぜひ御検討をお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  239. 亀井久興

    亀井委員長 次に、上田利正君。
  240. 上田利正

    上田(利)委員 時間がございませんから、ちよっと質問をはしょって申し上げます。  今、連合ユニオンを中心にしまして、生活のための諸要求が労使の間で行われております。先ほど同僚議員の方からもちょっと出ましたけれども、JCグループを先頭にしながら徐々に妥結をいたしてきておりますが、けさも私鉄が二十四時間ストライキということでございましたけれども、これも労使双方が一致しまして解決しました。  私は本委員会でもうたびたび、NHKに働く職員の皆さん方の処遇改善について、お願いをしてまいりました。前島会長時代もお願いし、特に、平成二年から始まり来年終わります経営五カ年計画の中でもやはり、きちっと職員の処遇問題について努力してくれ、前島会長には、努力しますというお答えもいただいております。  当時、NHK職員は非常に、現在もそうでございますけれども、民放と比べますと非常に賃金の格差があるということ、それから、残業などを調べますと、残業なども民放に比べて非常に多い。それだけNHKに働く職員は、公共放送を守っていこう、そして、懸命に頑張ってきて今日に至っておるわけでございます。  そういう中で昨今見ますると、どうも効率化というのが進みまして、効率化は私は否定はいたしませんけれども、どうしてもその要員を減らしていくという形で、昨今も千人ぐらいは削減しようというような形で、一万五千体制が既に一万四千という形になってきている。そういうことの中で今放送現場は大変な状況になってきている。  昭和三十四年から三十五年にわたりまして、教育テレビが一チャンネルふえまして、その時点で大量採用がございました。そして平成元年には、さらにまた衛星二チャンネルが営業開始ということになる。当時の人たちが五十五、六歳になるわけで、そのときの人たちが大量におやめになっていくということの中で、また若い人の採用が少ないという中で、中年層がおらずに若年とそして親子ぐらいの関係の中で要員構成がなされてきておるという状況でありまして、それだけに現場は大変な苦労をなさっておられる。  ですから、そういう点では、今まで言われておりますように、この五カ年計画の中でも少なくとも民放の平均的な給与を受けられるように努力をいたさなければならないし、また、そのための具体的な計画も立てますよ、そして、労働組合ともひざを交えて話をしていきます、こうなっておるのですけれども、実はこの予算が通らないと、NHKの労働組合、日放労は交渉をやっても結論が出ないわけでございますから、間もなくきょう、この予算が本委員会を通過して、そして本会議に緊急上程されれば、あすから経営者側、会長を中心にしながらあの労使の中で賃金あるいは労働時間の短縮の問題、ゆとり、豊かさを求めているわけでございますから、その交渉が始まるのではないかと思うのでございますけれども、そういう非常に制約された中でございまして、NHKの労働組合は大変だと思うのです。先に進もうといっても進めないのですから、これが決まらなければできないということ。  ですから、そういう約束ごともあるわけでございますから、これについてどう考えているのか、もうことしぐらいはやってもらわなければ、来年で経営五カ年計画は終わってしまうわけでございますから、この点について特に冒頭にお答えをいただきたい、こう思います。
  241. 安藤龍男

    ○安藤参考人 お答えいたします。  NHK職員の処遇改善でございますけれども、マスコミ他社との格差是正というものを含む職員の処遇改善につきましては、従来からも厳しい財政状況の中で努力をしてきたところでございます。御承知のように、予算を国会で御承認いただいた後、労働組合とも十分話し合いながら、引き続き適正な処遇水準の確保というものに努力してまいりたい、こういうふうに思っております。
  242. 上田利正

    上田(利)委員 安藤理事からお答えがございました。ぜひ会長も胸の中に刻み込んでいただきまして、処遇改善について御努力をいただきたい、先にお願いを申し上げておきます。  二つ目の問題でございますけれども、郵政省、松野局長はお見えになっていますね。  実は、三月十一日に、二十一世紀に向けた新たな情報通信基盤の整備のあり方についてということで電気通信審議会に諮問をされたということで私ども聞き及んでおりますけれども、しばしばこの委員会の中でもそれぞれの委員の先生方からも御提起されておりますけれども、今や通信と放送の分野というものは本当に境がわからないような状態になってきている。言うならば、情報通信の基盤が通信と放送の分野に利用されるような状態になってきた。いわゆる通信と放送の融合という形が今日到来をいたしてきておるわけでございますけれども、これらの通信と放送の融合についてどのような展望を持っておられるのか、どういう立場で電気通信審議会に諮問をしたのか、重点的な部分だけで結構でございますからお答えをいただきたい、こう思います。
  243. 松野春樹

    ○松野政府委員 先生も今お触れになりましたけれども、技術革新が背景にあると存じます。同一の情報通信基盤が通信にも放送にも利用することが可能となってくるような現象につきまして、いわゆる通信と放送の融合問題という形で論じられております。  郵政省といたしましても、これまでも個々の境界領域の問題につきましては弾力的に対応してまいってきておりまして、例えますと、最近の例では、昨年四月から通信衛星によるテレビジョン放送のサービスの開始ということにも取りかかったところでございます。  また、今後の問題でありますが、長期的な課題であります、しかし長期的な課題ではありますけれども検討自体は早目に行っていく必要があるという問題として、高速大容量の情報伝送を可能とする光ファイバー網の整備という問題もあるわけであります。可能性の問題でありますが、恐らくテレビジョン伝送、ハイビジョン伝送等のいわゆる放送的なサービスも可能となるということが予測されておるわけであります。今後ますます通信・放送の境界にかかわる問題が生じてくるであろうというふうに観念いたしております。  先生またこれお触れになりましたが、三月十一日に電気通信審議会に、二十一世紀に向けた新たな情報通信基盤の整備のあり方というテーマで御諮問申し上げたわけでありますが、こうした問題も含めて議論をしていただくことになると存じております。
  244. 上田利正

    上田(利)委員 松野局長から御答弁いただきました。電気通信審議会への諮問に対して、中間答申が出ますか、あるいは本答申が出るのか。また出た段階では私どもの本委員会でも御説明なりなんなりをいただければありがたい、こう思いますから、御要望だけを申し上げておきたいと思います。  時間がございませんからあと二つ、NHK側にお伺いいたします。  一つは、NHKは現在、テレビが地上二波、衛星が二浪、二チャンネル、ラジオが三波を持っておるわけでございますけれども、平成年度は、今の放送衛星の次の衛星でございますBS4、三号機の補完機でございますけれども、BS4を調達するための法人を設立する予定ということを聞きまして、先ほども御指摘もございましたけれども、きのう民放連も含めまして、NHKも含めて調達法人の設立準備会を開いて、来月の十三日というふうな形にあるわけでございますけれども、このBS4は本格的なハイビジョン放送も行われる、こう聞いておりますし、今後このようなメディアがますます多様化してくるのではないか。そういう多様化していく中で、NHK事業体としてますます肥大をしていく、こういうことが懸念されております。あるいは各方面からも肥大化についての心配をされておる、こう聞いております。NHKは、現在の事業規模についてどのように考えておるのかというのが一つございます。  二つ目の問題は、民放連は常日ごろ、NHKの保有メディア、今申しましたメディアについて、民放連は一波しか認められていないけれども、民放連と比べればNHKの格差は非常に大きいではないか、こういうことを言われてきております。NHKは一波削減するべきだという主張が大体行われてきておりますけれども、NHKはこれに対しまして、将来のメディアの整理などについてどのように考えているか。  二つだけ最初にお聞きをしたいと思います。
  245. 堀井良殷

    ○堀井参考人 先生御指摘のように、衛星放送を初め多チャンネル化が進行する中で、NHK民間放送と調和ある共存体制を今後も保っていくことが必要であろうかと思っておるわけでございます。  現在のNHK放送は、国民生活に不可欠な基本情報提供する総合テレビ、あるいは教育番組、難視解消サービス、短波による国際放送、ハイビジョン放送という、非常に多様なサービスの中で総合的に公共放送としての役割を果たして、なおかつ先導的な役割も果たしている、こう考えているわけでございます。しかしながら、この公共放送事業規模というものは固定的なものではないだろう、やはり将来にわたってそれぞれの社会の進展に合わせて検証し、また見直しも行っていくべきであろう、このように考えております。基本的には、巨大化を求めずにスリムな体制の中で今後も役目を果たしてまいりたい、このように思っておるわけです。  衛星放送並びにハイビジョン等の放送状況が成熟するに合わせでこうした検討を続けてまいりたいと考えておりますが、一方、音声放送につきましては、既に六十八年を経て非常に成熟したメディアになっておりますので、この音声放送三波を一波削減する方向で検討を開始したい、このように考えているところでございます。
  246. 上田利正

    上田(利)委員 わかりました。  私もちょっと読んでおりますけれども、あるいは先ほどから各委員からも御指摘のように、「二十一世紀への展望とNHKの課題」という形の中で、特に「NHK将来構想」というものが出されておりますから、そういう中で、来年で五カ年計画経営計画が終わるわけでございますから、会長もおっしゃっておりますような形の中で、新しい二十一世紀に向けた将来構想の中ではぴしっと決められて対応していただくように、会長にも御要望申し上げておきたいと思います。お答えは結構でございます。  同僚議員がちょっと熱弁を振るいましたので私の時間がございませんから、これは委員長にお願いでございますけれども、大臣もぜひ耳だけはあけておいていただいて、お口の方は結構でございます。  実は、けさの冒頭に、委員長が許可をされまして、そして大臣があの発言をされました。その発言に対しまして、同僚の武部委員の方から、我々が思っていたような形ではないじゃないか、しかし今それを、大臣の真意を確かめようとすると、このNHKの重要な予算をやる委員会がそっちの方へ行ってしまって、しかも本会議に緊急上程もできなくなってしまうということで、武部同僚議員はそれを横に置いて、そして委員長に御要望申し上げまして、また、理事会に取り計らって対処してみます、こういうお答えを委員長からいただいております。  実は、私も大臣と同じ信念が物すごく強いのです。小泉郵政大臣よりもまだ二倍か三倍強いかもしれないですね。(発言する者あり)理性は、もちろん名前が利正でございますから理性があるわけでございますけれども、しかし問題は、大臣が、今まで私どもが言っておりますように、大臣が自分の信念を曲げたりしなくてもいいのです、政治信念ですから。しかし大臣という立場を考えて今後対処してください、こういうことでお願いしてまいりました。私も本来ならば一番先でも出まして大臣に質問して、NHKがどうなろうとこうなろうとおれの信念だ、しかし上田利正が政治信念を持っておって大臣とのやり合いをやるんだ、決着をつけたいんだと言っていれば、NHKの問題がルールに乗っかって、その理事会で決めたこと、理事懇で決めたことがないがしろにみんななっちゃうんですから。そこではやっぱり個人の信念とかそういうものは捨てて、そして武部同僚議員が申しましたようにああいう形で横に置いて進んでいこう、こうなったんですよ。  ですから、大臣がまあ一連の、マル老問題をめぐって一連の問題だということでお話がございました。わしの不十分な点もあったし、おわびもしなきゃいかぬという、こういうくだりがありまして、今後は皆さんの御期待にこたえながら郵政事業の問題について努力もしていく、皆さんの御指導もいただきたい、こういう形で大臣おっしゃいましたけれども、問題は、その中で附帯決議の問題とかいろいろ触れられました。しかし、マル老などということで来たんでね。そして郵政職員に——私の記憶では郵政職員に動揺を与えたというものもあったと思うんです。郵政職員が動揺をされたのは、マル老で動揺したんじゃないんです。いわゆる民営化論という持論を大臣がお出しになったんです。それから、郵政職員として誇りを持ってやっているのに、省益よりも国益だと言った。この二つが非常なあれを得たわけでございます。  もう御協力願いますというのが来ましたから終わりますけれども、ぜひそこを今夜お休みになって考えていただきまして、そしてまた委員長もそこのところを大臣とよく御相談をしていただきまして、円滑な伝統ある我がこの逓信委員会がスムーズにいくように、特に私からもお願いして、それがだめならばもう私も信念を貫くしかない、こういうことを申し上げて私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  247. 亀井久興

    亀井委員長 次に、菅野悦子君。
  248. 菅野悦子

    ○菅野委員 私も「NHK将来構想」についてお伺いしたいと思うんですが、この二月に「二十一世紀への展望とNHKの課題」ということで「将来構想を」発表されました。そこで基本的なことについてお聞きをしたいというふうに思いますが、これによりますと、NHK地上放送衛星放送合わせた総体として新しい時代放送サービスを構築していくというふうになっております。当然のことだというふうな気もするんですけれども、かつてはそうではありませんでした。衛星放送地上放送を分離するという議論も過去あったわけです。  島前会長ですけれども、読売新聞社が発行しております「ジス・イズ」という月刊誌の九一年四月号、ここでの対談とか、あるいは、当時の参議院の逓信委員会で論議になったわけなんですけれども、ヨーロッパの例では公共放送一つでなくてもいい、公共放送の二本立てもあるというふうなことを言っておられますし、場合によっては衛星放送なりなんなりをNHK以外のところへ移すという方法もある、こういう発言をなさっているわけなんですね。こういうことでいいますと、島会長はそういうやりとりの中で、では、世界にはこういう例もあるという一般論として言っているんですわというふうな問いかけに対して、 一般論よりも私の気持ちとしては前に進めようとしているというふうな答弁もありました。それが当時のいきさつでございます。  ところが、今度の場合の「将来構想」の中では地上衛星を合わせた総体としてという考え方になっているわけなんですけれども、地上衛星の二つの公共放送というような構想、これは否定されたわけなんですけれども、ここに至る議論ですね、またどういう考えのもとでそうなったのかというあたりをまずお伺いしておきたいと思うんです。
  249. 堀井良殷

    ○堀井参考人 だんだん情報化というのが進んでまいりまして、いうところの高度情報社会、社会に流通いたします情報の量というものが質量ともに格段に増加している。さらに国際化も進んでおります。生活の多様化も進んでおります。個性化、国民の価値の多元化といろんな社会状況が進む中で、地上放送だけでは公共放送として提供すべき番組の役割が十分には果たせない。つまり、地上放送衛星放送合わせて総体としてこのサービスを充実してまいりたい、こう考えるに至ったわけでございます。  なお、この衛星放送には難視解消サービスという重要な役割がございまして、この役割も私どもの本来の使命として果たしてまいりたい、このように考えております。
  250. 菅野悦子

    ○菅野委員 続きまして、この「将来構想」では、BS4段階でハイビジョン移行波をNHKが持つということになっております。このBS4の時期をハイビジョンヘの移行期とする、そういう根拠ですね、その考え方についてもお伺いしておきたいと思うんです。
  251. 堀井良殷

    ○堀井参考人 ハイビジョンは非常にきめが細かい、臨場感のある非常に高度な映像表現が可能な技術でございます。こうした技術をいかに国民に還元していくかということが非常に重要であろうか、こう考えております。つまり、世界的に見ましても、映像サービスというものが高画質化していくという流れの中にございます。したがいまして日本放送界といたしましても、いかにこの現在やっておりますサービスの画質を高画質化していくかということが一つの課題になろうかと思うわけでございます。そういう意味で、BS3号機で現在衛星放送を行っておりますが、この後継機、つまり先生のおっしゃるBS4号シリーズの時期は二十一世紀にかかる期間でございますので、こうした高画質化に対応してまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  252. 菅野悦子

    ○菅野委員 この「将来構想」を見ますと、大多数のテレビがハイビジョンに移行する、かつてのラジオからテレビヘ、あるいは白黒からカラーへというふうに、もう圧倒的にハイビジョンに移行するんだということが大前提になっております。確かにハイビジョンというのはすばらしいものだというふうには思うんですけれども、すべてそこに移行すると今の段階で断定することができるのかな。今バブルがはじけまして衛星放送も相当伸びが鈍化しているということで、それでも衛星は、テレビを買いかえるときに例えば衛星内蔵型にするというふうなこともありますから、しかし、ハイビジョンの場合は互換性がないので、新しいメディアとしてこれを欲しいということなら別ですけれども、そうならないとなかなか普及しないんではないかというふうにも思うわけですね。そういう意味では今の段階で、ほとんど衛星に切りかわって圧倒的な人たちがハイビジョンヘ移行できるというふうに断定、見きわめてしまうのには無理があるのではないかというふうにも思うわけなんです。  この「将来構想」では、今も言いましたように、ハイビジョンヘの移行がほぼ完了して、衛星受信世帯でもハイビジョンを備えていないのは公共放送としても無視していい程度、もう圧倒的に少数という時点で二浪をハイビジョンに移行するということになるわけで、そのときに移行波を廃止するということになっているわけなんですけれども、今の段階で見きわめがつくのかなということが非常に私としては疑問に思うわけであります。移行波としてスタートするわけですけれども、そのままずっと移行波、移行波という形で進んでいってしまうという可能性もなきにしもあらずではないか。ハイビジョンが普及していって、それが全世帯規模、衛星受信世帯の全体にまで普及するのか、それともそうではないのかというふうな二つの可能性があるということを、私はこのBS4の段階ではそういう考え方というのをハイビジョン普及という点での基本に据えていく必要があるのではないかというふうに思うんですけれども、その辺はいかがでしょう。
  253. 堀井良殷

    ○堀井参考人 御指摘のように、将来のことを今この時点で断定することは何人にもできないと私どもも考えておりますが、移行波というものは、現在の現行衛星放送とハイビジョン放送との間にいうところの両立性がない、つまり、ハイビジョン放送を行うと現在衛星放送をお楽しみの方々が電波を受けても画像が見えなくなるという、いわゆる両立性がないということがございますものですから、したがって、先ほど申し上げましたように、映像のレベルを高画質化していくときには暫定的な措置が必要である、つまり、そのことを移行波という形でハイビジョン放送普及を図る間暫定的な措置が必要であるということを私どもは要望しているわけでございます。  しかしながら、先生御指摘のように、社会の動向あるいは経済状況、あるいは一番大事なのはやはり視聴者の受けとめ方でございます。視聴者の御要望とかけ離れたことをするつもりは私どもはもちろんないわけでございますので、視聴者の立場に立って御要望や動向を十分に考慮した上で進めてまいりたい、このように考えております。
  254. 菅野悦子

    ○菅野委員 確かに、新しい技術を開発した側から見たら、いいものだからということでの確信があるかと思いますけれども、今もお答えにありましたように、選択は国民の側にあるわけですから、ハイビジョンヘの移行という点で「将来構想」の性格にかかわるものなんですが、ぜひ国民合意ということを踏まえて、そこを十分考えてやっていただきたいということをぜひ強調しておきたいというふうに思います。  それから、「将来構想」では「この内容について、多くの視聴者や関係方面に周知を図り、幅広い論議を求めていく。」というふうになっているんですけれども、このハイビジョンの問題とか、また、ラジオを一波削減するというふうなことを含めまして、どのように論議をしていくおつもりなのか、そういう具体的なプランがあればぜひ明らかにしていただきたいと思うんですが、その辺いかがでしょうか。
  255. 川口幹夫

    川口参考人 これまでの長期ビジョン審議会の考え方とかああいうふうなものと今回違いまして、まずは国民の皆さんが公共放送に何を望んでいらっしゃるかというところから始めたわけでございます。そして、その御意見を聞くところから始めまして、それから部内で大変な論議を重ねた末まとめました。ただし、これは何遍も言っておりますけれども、これで決まりですよというふうにお示ししたのじゃなくて、こういうふうに今考えましたけれどもいかがでしょうかという問いかけなんですね。したがって、この国会の場もそういう御意見を伺う絶好の場じゃないかというふうに私は思っております。  それから、視聴者会議等ではもう何回か御議論をしていただいております。さらに、全国の各局にそれの簡略版をつくりまして、そして配りました。これについて読んでくださる方で御意見をお持ちの方はどうぞといって中にはがきを入れてあります。返信料は持ってもらいますけれども御意見のある方はどうぞという形で、そういう議論一般からもたくさんいただきたいと思っておりまして、そういう活動は大体年度初め、四、五、六月くらいで行いまして、それから何回かいわゆる公聴会的な形でもって御意見を徴する形をとりたい、そして来年、この時期ですね、平成六年の予算を出すときは既に七年度以降の計画を立てなければいけませんから、そのときに、今の「NHK構想」で考えたものについていろいろな御意見を反映しながらそれを計画に移していく、こういう段取りにしたいと思っています。
  256. 菅野悦子

    ○菅野委員 それでは、続きまして受信料の問題についてお尋ねをしたいと思います。  「将来構想」の中でも最適の財政基盤というふうにしておられます。川口会長も就任早々に受信料制度の堅持というのをおっしゃっておられますし、視聴者と向き合っていくというふうなことでお話しされたというふうに思っているんですが、この受信料制度を現場で支えているのは営業活動なわけですね。この「将来構想」は営業関係経費は不可欠のコストというふうにも位置づけておられるわけです。  しかし、これまで、営業経費をいかに切り詰めるかということでの発想が営業を支配してきたのではないかなというふうに思うわけです。特に経費率を何%にするかということがこの間大きな目標になっていたのではないかと思います。受信料収入に占める営業経費の割合を下げることが目標になっておりまして、最近では経費率を一二%にするということになっていたと思うんですけれども、この辺の考え方、発想、これは変わるのかどうか、その辺をお伺いしたいと思うんです。
  257. 川口幹夫

    川口参考人 受信料体制をもとにする、受信料NHKの財政の基盤にするということを決めたからは、やはりこれは今までとは違わなければいけないと思っております。  したがいまして、営業経費率という数字の問題も当然見直すべきだと私は思っておりまして、そういう考え方のもとにずっと皆さんにもお諮りをしておりますので、今後の営業の問題については、受信料体制確保、維持する、そして健全な契約、健全な収入というものを確実にするというふうな形で、ではどれぐらいのお金が必要なのか、そのときにどれぐらいのお金は絶対かけなければいけないのか、そういうことを前提にしてやりたいと思います。いたずらにお金をかけたり人をふやしたりすることは問題でありますから、そこは全体のバランスの中、できちんと受信料体制が維持できるようなシステムをつくり上げる、これが一番大事なことであろうと思っております。
  258. 菅野悦子

    ○菅野委員 この辺で具体的な問題では、三年前のNHK予算審議の際ですけれども、当時の営業総局長の答弁では、「営業経費としては一八%を超えておりましたけれども、この五カ年間の中ではさらにこれを一五%まで縮めたい」とおっしゃっておられましたし、また、「そういう方向で金のかからない営業活動に努めていきたい」というふうにしていたわけですね。そして、その同じ答弁で、営業でかかっている経費の八〇%は人的経費であるというふうにしておりまして、これを減らすことしか営業経費率の削減はできないというふうにしているわけですね。それで、数年前まではこういう考え方で営業をずっと進めてこられたわけです。そして、いろいろなやりとりの中で、口座振替が多くなったから人を減らせるはずだ、だから経費も減らせるはずだとかいうことでどんどん削減を前提に進めてきたというのがあるわけです。  しかし、よく考えてみますと、この時期といいますのは、衛星放送普及して衛星料金設定されました。営業現場では新しい契約をとるために必死に取り組まねばならないということも片方では起こったわけです。結局、金も人も減らされる中で衛星契約を追いかける、もうこれに精いっぱいというふうな状況なども出ているとか、また、今までは対応できていた苦情とか収納困難対策、これがなかなかできない状況が出てきているというふうな現場の声を私ども耳にするわけなんです。そのために営業現場に無力感が出ているというふうなこととか、あるいは営業活動受信料制度に確信と展望が持てないというふうな雰囲気があるやに聞いているんですけれども、もしそうであれば、これは一番心配なんですね。  ですから、今度の「将来構想で」不可欠のコストとしたことは私は本当に意味があることだというふうに思うわけですけれども、だからといって、会長がおっしゃっているように別にむだ遣いをしてもいいということではないですが、不可欠のコストを削り込んで受信料制度そのものの根本を掘り崩すことがないようにということをぜひ私は要望しておきたいというふうに思うんですけれども、よろしくお願いします。
  259. 川口幹夫

    川口参考人 原則的に、全くそのように考えております。受信料体制の維持のために必要なということは必ず計上をして、ただ、それにもいろいろな工夫をして、効率的にかつ余分な経費がかからないようにいろいろな工夫をしなければいけない、これを前提にして、ただし、数字のために例えばあくせくと努力をするとかいうことはもうやるまいというぐあいに思っております。
  260. 菅野悦子

    ○菅野委員 営業でもう一つ視聴者への対応の問題があるわけなんですね。集金の際に、NHKへのいろいろな注文とか苦情が寄せられるわけなんですけれども、営業所への電話による苦情もあるわけです。  そこでちょっと具体的にお聞きしたいんですけれども、この前問題になりましたムスタンの事件ですが、これは集金の過程など営業現場に寄せられた苦情とか意見の件数、内容、これはどういうふうにつかんでいらっしゃるか。また、それはNHK放送センターとか各放送局に視聴者から寄せられた電話などによる件数、内容と比べてどうなのかということをちょっとお尋ねしたいと思います。
  261. 諏訪恭也

    ○諏訪参考人 お答え申し上げます。  まず、営業現場に寄せられた視聴者の御意見、苦情というふうなものでございますけれども、二月三日の新聞報道以来二十二日までの二週間でございますけれども、ほぼそれで収束したというところでそれ以降は統計はとっておりませんが、全国の営業現場に寄せられました受信料支払いの一時停止の申し出、それから口座振替をやめたいというお申し出、合わせて千八百件ございました。しかし、これらの申し出に対しては、私ども管理職を初めとして、職員、地域スタッフ等々が直接そのお宅にお伺いしていろいろ御理解をいただくように説得活動を行った結果、今では大部分の方から御理解いただいているものというふうに思っておりまして、この千八百件というのは累計でございますので、これがすべて不払いに今つながっているということではございません。  また、主な意見や苦情は、NHKを信頼していたのにということで大変厳しい御意見もありますけれども、中には、とにかくこれを機に再発防止に努めなさいということとか、信頼を回復してほしいという励ましのお電話もいただいておるということでございます。
  262. 菅野悦子

    ○菅野委員 それぞれ別々に件数をお聞きしたかったんですけれども、視聴者への対応でも、私はちょっと心配するのは、営業現場が軽視されているんじゃないかなということをちょっと心配するわけです。  現場に聞きますと、ムスタンの問題で報告を求められたのは件数だけで、よほど変わった意見でないと集約もされなかったというふうな話もあるわけなんですね。ところが、ある県では三百件これで寄せられている。具体的には、そういう形で口座の人がもうやめたいということになれば、そこへ飛んでいって対応するのは営業の人たちでありまして、結局一時間とか、あるいは長い人は三時間もかけて説得をして思いとどまらせるというふうなことなんかもやっているわけですね。  ですからそういう点で、やはり私は、営業現場というのは視聴者と直接接触する場であるということがありますから、口座がふえたとはいえ、やはりこれは非常に大切な現場なんだというふうに思うんです。ですから、そういう点でぜひ視聴者と向き合っている場として再評価をしていただきたいということを強調しておきたいというふうに思います。  それから、あと労働時間問題につきまして引き続きお聞きをしたいと思うんですけれども、NHK職員の労働時間の問題につきましては、ちょうど二年前に本委員会で私も時短問題で質問をいたしました。そのときは、年間総労働時間千八百時間にするという目標でやっていくということでおっしゃっておられたんですけれども、先日資料をいただきまして、率直なところ、さっぱり進んでいないなというふうな感想を持ったわけであります。  特に驚いたのは、五年前に比べて年間総労働時間が逆にふえているということ、また、残業、いわゆる時間外労働ですけれども、これは減るどころかずっとふえ続けているということがあるわけなんですが、どうしてこういうことになっているのかな、努力はいただいているはずなんですけれども、そういう点で、まずこの点でのNHKとしての御認識をお聞きしたいと思うんです。
  263. 安藤龍男

    ○安藤参考人 NHK職員の平均年間総労働時間というのは、平成年度のデータでございますけれども、二千八十五時間ということで、全産業平均が二千八時間ということでございますから、全産業平均に比べましても若干上回っております。  ただ、ここ数年見てみますと、確かに国際的に大きな事件、事故がございまして、放送系を中心として大変に労働時間がふえてきているというのは事実でございますけれども、この三年度になりまして全局的な時間外短縮、時短というような雰囲気の中で若干ふえてきております。最近の時間外も抑制をされてきております。ただ、放送現場につきましては、先ほど申し上げました全体の平均よりもまだかなり上回っておりまして、平均で二千二百五十時間ということで、これは社会値をかなり上回っている実態でございます。  そういう現実を踏まえまして、活力ある創造性豊かな放送事業を進めていくということで、放送の場合には時短というのは非常に難しいことでありますけれども、何としてもこれは息長く実行してまいりたいということで、平成五年四月から、特に放送現場を中心にしてこの問題に取り組みたいということを今考えております。
  264. 菅野悦子

    ○菅野委員 先ほども同僚議員からこれらの問題についての御指摘もあったわけなんですけれども、そもそも現在の体制についてどうなのかな、無理があるのではないかということを率直に思うわけですね。この五年間で見てみますと、衛星放送が本格化した。しかも、二波で二十四時間放送ということですね。これがふえたわけですね。営業でも、新しい契約をとらねばならない。それにもかかわらず人員は減らし続けてきた。これで労働時間を減らそうというのが、これはどう計算しても、どだい成る話じゃない、算術的に無理なんじゃないかというふうに思うわけです。結局、本来本体でやらねばならないことも、下請に出すとか、あるいはサービス残業やふろしき残業になってしまうという方向に流れるのではないかということを危惧するわけです。  NHKの残業時間は、労使協定で月五十時間以内、二カ月で百時間となっているそうなんですけれども、三カ月で百五十時間という方向も出ているということも聞いております。しかし、放送現場では実際はもっと多くて、実働は随分働いている。ただ協定ぎりぎりの月四十九・五というのが実際的な図式で見るとずらっと並ぶというふうなことになっているんではないかと思うわけです。  しかも、そういう中で、関連団体とか、外部ですけれども、このしわ寄せはもっとひどいんじゃないかと思うんですが、この点で、実態とうですかということでお尋ねしたんですけれども、よくわからない、残業を含めた実労働時間はつかんでいないというふうなことだったわけです。ですから本当にこれは、たとえ統計上で時短が進んでも、サービス残業がふえて外部の労働者の労働時間がふえるだけ、こういう形になるのではないかということを率直に危惧するわけです。  今、マスコミは過労死予備軍と言われていますね。サービス残業問題でも、銀行の次に労基署がやるとしたらテレビ局ではないかというふうなことも聞こえてくるわけです。ですから、そういう点で、今までと同じ手法では実際この労働時間は減らない。だから、ぜひこの点で、小手先ではなくて抜本的な対策とか本気での取り組み、これを私はぜひ求めたいと思うんですけれども、会長の御見解をお伺いしたいと思います。
  265. 川口幹夫

    川口参考人 労働時間の問題につきましては、私どもはなるべくこれを減らしたいと思います。それから、時間外についても減らす方向でいろいろな努力をいたします。ただ、いわゆる放送現場というのはいろいろな難しい要素がいっぱいありまして、単なる流れ作業みたいな形でいかないものですから、どうしても若干の進行の鋭さが起こってまいります。ただ、これは大きな流れでいきますと、そちらの方向へ流れていくのは全く自然でありますから、そうしなければいけないわけですから、全力を傾けてこれからも対応いたします。
  266. 菅野悦子

    ○菅野委員 ぜひ積極的な努力をお願いして、終わります。
  267. 亀井久興

    亀井委員長 次に、中井洽君。
  268. 中井洽

    中井委員 会長以下参考人の皆さん、長時間御苦労さまでございます。最初大臣に二問ほどお尋ねいたしますので、もし御用がおありでしたら五分ぐらい結構でございます。  大臣にお尋ねをいたします。  例年のように、この予算事業計画資金計画に対する意見書が出ているわけでありますが、その中に「平成年度以降の協会の財政は厳しい状況となることが考えられる。」「極力長期にわたり受信者負担増を来さないため、経費の節減と受信料収入確保に努め」、こういう文言が入っております。「極力長期」というのが珍しく入っているわけでありますが、「極力長期」というのはいつまでをいうのですか。先ほど会長がお話しになりましたように、六年で終わって足りなければ値上げ、それを今のままでいけば七年まで値上げできずにいくよ。七年を見越して「極力長期」とおっしゃるのか、これから二十一世紀ぐらいまで「極力長期」、こういう形でお書きになったのか、いかがですか。大臣にお尋ねいたします。
  269. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 「極力長期」というのは、できれば、できるだけ長い間値上げをしないでいきたいという意味であります。
  270. 中井洽

    中井委員 私ども、いい方に理解をして、次に進めます。  先ほどからたびたび質疑議論されておりますNHKがいろいろな形でまとめられた「NHK将来構想」、これを大臣お読みになってどのような感想をお持ちか、方向としてどんなふうにお考えでありましょうか。
  271. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 公共放送としての使命、そして受信料を財政の主基盤として節度ある報道機関として発展していきたいということでありますので、今この委員会委員の方々からいろいろな御意見が述べられております、それを参考にして、本来の公共放送としての使命を果たしていくべきだ、そういうふうに考えております。
  272. 中井洽

    中井委員 勉強なさる大臣らしくないお答えかな、余り詳しく御勉強なさらなかったのかな、こんな感じを持ったわけでありますが、会長にお尋ねをいたします。  この中で、引き続き公共放送でいく、あるいは衛星放送のハイビジョン化を進めていく、それから同時に、競争を意識した効率的な業務運営を図ることだ、この三つぐらいが大きな柱で流れていると思うのであります。今のお話では、六年度予算あるいは七年度予算あたりから、こういうことを踏まえて議論の中でNHKの方向をというお話でありましたけれども、特に、競争を意識した効率的な業務運営、これは将来であろうといつであろうと常に心がけていかなければならないと思うわけであります。そういう意味で、今回の予算の中に、そういうことがどういう点で盛り込まれておるとお考えになりますか。
  273. 川口幹夫

    川口参考人  「NHK構想」を立てたときに私が一番考えたことは、NHKのあり方という問題がまず第一です。そして、どういう番組をつくっていくのか、どういう報道をするのか。それは、例えば二十一世紀が来ても、恐らく幾つチャンネルがふえても、公共放送が占めるべき位置はそんなに変わらないだろう、だから画然とその位置を確保することがまず第一じゃないか、こう思いました。  そのためには、やはりみずからが努力をして、いい形をつくっていく必要がある。それを今度は維持するのに、恐らくいろいろな考え方があると思いますが、私は、受信料に依存することが一番確実であり、最も安心できるというふうに思いました。したがって、その受信料体制を維持するためにどういう方法をとるべきかというふうなことが二番目にあります。  それから三番目は、放送の歴史というものは技術の革新によって非常に大きな進歩をするものなんです。そこで、私どもが開発したハイビジョンというものの実用化に向かってどう動くべきか、あるいは二十一世紀の時代のテレビはどうあるべきかというふうなことから考えまして、そのハイビジョンの使い方について、最も効率のいい、しかも余分な負担をかけない、自然に移行する方法はないだろうかということに目をつけまして考えたのが、ハイビジョンに対する移行波という考え方でございます。そうすると将来は波をふやさなくてもいい、それから、いつの間にか自然にハイビジョンになっていく時代が来るだろう。  なぜハイビジョン時代が来るかというふうに申し上げますと、これは現在の状況ではとてもそういう事態にならないと思うのです。ところが、私どもが今技研で開発しているのを見ますと、まず画面が非常にシャープになりまして、奥行きがぐっと小さくなりました。いわゆる壁がけテレビという実用化が間もなく来るんじゃないかという予測ができます。そういうことが一つと、それから、いわゆるお値段の方で、メーカーの見通しを聞きますと、今百万を切っていますが、やがて五十万程度のものになるだろう。そういう廉価なテレビができた場合は、やはり質のいいテレビの方が日本人のお客さんには特に好評なわけですから、だから普及していくに違いないというふうに見たわけですね。  ただし、それに多大の金をかけることは許されませんので、いろいろな工夫をして、そして次第にハイビジョン波に移行していくという形をとろうとしたわけでございます。  それから、あとはNHKが今後どのような形でみずからの存在をアピールするか。やはり視聴者というものに対してどう向き合うかという方法、それから、先ほどからも一部議論になっていますが、NHKが独善的でないやり方でもって進んでいかなければいけませんから、そのための方法は何かとかいうふうなことを考えたいと思っておりまして、そういう基本考え方に基づいてこれから計画を立てていこう。その段階で、ことしの一月の年頭記者会見で私は七年は値上げをしないと言いました。ただ、これは極力先へ延ばすことが受信者の方々に対する責務であるというふうに思っていますので、一年でも長く現行の受信料を維持したい、こう思っております。
  274. 中井洽

    中井委員 ちょっと質問とお答えと違いがあるような感じがいたしますが、次に進みます。  こういう不況下で、なかなか受信契約の伸びというのが出てきていない。来年度も少し抑えぎみ、それでもどうだろうという先ほど質疑が出ましたけれども、平成年度五百十数万の契約という形で予算が実行されているわけでありますが、一月末の契約数は四百八十万戸だと聞いておりますが、これで三月末までに当初の予算どおりの契約数、達成できるとお考えですか。
  275. 諏訪恭也

    ○諏訪参考人 平成年度もあと数日を残す状況になったわけでございますけれども、今、日々日報をとっております。その日報によりますと、確かに平成年度予算の前提といたしました衛星契約の五百十六万というところにはかなり厳しい状況ということがございます。恐らくあと二、三日でその結果が出るわけでありますけれども、確定的な数字はまだでございますが、その五百十六万にも大変厳しい状況だというふうに申し上げざるを得ない状況でございます。
  276. 中井洽

    中井委員 そういう足りないあるいは来年もまた難しいというような状況の中で、民間企業であるならば経費節減ということは当然であろうか、こういう経費節減ということを、長期的にNHK的な体質の中でどのようにやっていこうとお考えになっていらっしゃるのか、実は先ほどお聞きしたわけであります。
  277. 川口幹夫

    川口参考人 昨年の前半に、四月から五月にかけて伸びが非常に悪くなったことがあります、衛星の伸びですね。そして、バルセロナ・オリンピックの始まる前になりましたらやはり急激にふえてきました。バルセロナのときに圧倒的にふえたんですね。しかし、それは我々が読んでいたとおりでありますが、終わったところで恐らく落ち込むであろうということを私ども考えまして、そうなったら、やはり経営基本は出るを制するということでありますから、入ることがそれ以上望むべからずということになれば当然出る方を制しなければいけないわけで、九月一日付でいわゆる節減令を出しました。そして、それから三月までの間に大体二十億を節減しようという目標を掲げました。現在それは大体進行中でありまして、恐らく目標どおりいくだろうというふうに思っています。今後も恐らく経済状態、そんなに大好転をすることはないだろうと思う。恐らくこの平成年度もある程度そういう苦しい道のりは予測できると思うのです。したがって、この節減の形は崩さない、このまま維持するということを前提にしてスタートしております。  ただ、予算に組みました中で特に注目していただきたいのは、いわゆる管理間接部門とかいうところは切りまして、番組に対してはできるだけ現場の要求を入れて、そして番組制作に関しては予算をむしろふやしたというのが今回の特徴になっております。
  278. 中井洽

    中井委員 政府が挙げて公共事業を中心に景気対策をやっている時期に、NHK建設費を減らしたり長期借り入れを減らしたり、御努力の跡の予算だとお察しをいたします。  しかし、過日ムスタンのときにもお尋ねをしたのでありますが、あの調査のときでも、経理上のチェックというのが余りやられていないような気が私はする。何回かお越しをいただいてお尋ねをいたしましたが、どうも私ども民間で育った者の経理のやり方とNHK的発想の経理と随分違うな。それはそれなりに理由もあり、そうでなければ取材もできないということもあろうか、制作費を削るということは現場の意気込みにも悪影響を与える、そういうことは承知をいたしております。  しかし、受信者から見れば、できる限り節約して値上げというものはなるべく避けてほしい、これは当然の理であります。制作現場における費用のむだ遣い、オオカミ買うたり、言って悪いですけれども、アンコールワットの上を飛んで三百ドル払うたりとか、考えてみれば、細かいことですがいっぱいあるわけです。一度そういったところもチェックをする、そしてできる限り費用を浮かせていく、こういうことが大事だと思いますが、いかがですか。
  279. 川口幹夫

    川口参考人 もちろん制作費はけちけちしないで増額をするというふうなことをやりますけれども、その中にいわゆるむだ遣いというのがあってはいけないと思っております。NHK自体がスリムな体質でなければいけないと私は口を酸っぱくして言い続けておりますのは、スリムというのは単に形の上のスリムじゃなくて、お金の使い方あるいは物の考え方基本がスリムでなければいけないと思うので、いわゆるぜい肉とか、要らざるものがいっぱい使われているというふうな状況であっては困ると思います。それはもう私の方からもさらに念を押して、今後はそういうことがないようにいたします。
  280. 中井洽

    中井委員 もう一つこの予算の中でお尋ねをいたします。  NHKは年間に、海外の番組を買われたり、あるいはオリンピックの中継をされたり、あるいはインタビューされたり、過日のムスタンのように四万五千ドルお払いになってあそこへ撮影に行ったり、あるいは海外から芸術家をお招きになったりと、かなりドル契約をおやりの面があろうかと思います。このドル契約予算、大体これぐらいというのは、一ドル幾らで計算をしているのか。NHKとしては一ドル幾らという計算なしに、日本円だけで計算しておるのか。もし一ドル幾らと計算しているのだったら幾らで、円高というのは本当にNHK予算にとってはプラスにはね返ってくる、こう思うのですが、そういう計算というのはあるのか、お聞かせをください。
  281. 堀井良殷

    ○堀井参考人 御指摘のとおり、NHK予算におきまして外貨建ての予算を計上してあるものがございます。これは、海外からのソフト購入費、あるいはスポーツ放送権料、海外総支局経費、あるいは映像素材伝送の中継費等でございますが、五年度におきましては、これは百二十二円ということで積算をしておるわけでございます。したがいまして、現下のレートはこれよりも安いということでございますので、もし仮にこの現行のレートで推移するならば、何億円という規模での節減が見込めるということでございます。
  282. 中井洽

    中井委員 あの大きな予算ですから、いろいろと方法はあろうと思いますので、最大限の御努力をいただきますようお願いをいたします。  次に、過日、次期の放送衛星調達会社の概要が大体まとまったということであります。これはNHKが五〇%ぐらい出資をして会社を創設していくということでありますが、これは必要なことで、結構なことであります。NHKの長期ビジョンの中にも、BS4、なるべく費用を安くということが書いてある。しかし、これは大変厳しい環境の中で、NHKが将来的に百億円ぐらいの出資をして会社をやる。そしてもう一方ではJSBもお金をお出しになる。JSBについては、過日からかなり大変な騒ぎになっておって、本当に大丈夫か、こういう思いもございます。郵政省、これらのことをいかがお考えですか。
  283. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 衛星調達の関係でありますが、JSB出資でございますけれども、JSBにとっても、現在行っている衛星放送の継続ということから不可欠でございますので、JSB経営計画の最重要事項の一つとして取り組んでおるところでございます。  今度設立される調達法人の資本金につきましても、平成年度でありますが、資本金十六億円でありますけれども、約四億円をJSB出資する予定と聞いておるところでございます。
  284. 中井洽

    中井委員 数字は承知しておりますが、平成年度ぐらいまでには百五十億か二百億の増資と私どもは承知をいたしております。二基打ち上げるのですから、トータル的にいけば費用は五百億円ぐらいかかる。莫大な費用であります。そういう意味で、NHKやらの経営を圧迫しないか。あるいは、JSBの、今もめておる、いろいろと言われておる経営に対して、どうなんだろう、こういったことをお尋ねしているのです。
  285. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 初年度のことしか申し上げませんでしたが、確かにおっしゃいますように、平成年度の段階でやはり百五十億ないし二百億の資本金が必要がなというふうに思いますが、これも含めまして、JSB、現在大変な経営状況でありますけれども、各株主が知恵を絞って、再建計画といいますか改善計画を策定中でありますし、現在、債務保証も含めて検討がなされておりまして、これが新たな枠組みとして軌道に乗っていくものと期待をいたしております。
  286. 中井洽

    中井委員 NHKにお尋ねをいたします。  去年の十二月二十日、夜の七時のニュースで、プルトニウム輸送船あかつき丸の動向、これが撮影をされて、アナウンサーから短いコメントでニュース報道をされました。NHK自身が御撮影になったんじゃなしに、いわゆるグリーンピース、これが飛ばしたのに乗って撮影をされた、そのことが短いコメントの間、二回にわたって報じられたわけであります。この撮影に関して、NHKはグリーンピースにお金を払ったという事実はありますか。
  287. 中村和夫

    ○中村参考人 経緯を手短に御説明いたします。(中井委員「経緯は結構です。事実だけ言ってください」と呼ぶ)払っておりません。
  288. 中井洽

    中井委員 グリーンピースという団体は、私は環境の委員会も十数年やっておりまして、大変大きなすばらしい団体でございまして、四百五十万ぐらい会員がおって、日本だけでも十人ぐらい専従の職員がいらっしゃって、世界じゅうで環境問題に取り組んでおられる。しかし、その環境問題の目的の一つは、もう原子力発電所をなくす、これが大きな目的であります。そういう目的の団体の飛行機にNHKが乗って、あかつき丸がどこを走っているかというのを見なければならないほど重要な事件であったのかと私は思います。  これは、日米原子力協定あるいはIAEA条約によって、プルトニウムの輸送路というのは機密にされる、そして、各国はこれが寄港なんかをしたときには保護する条約が結ばれているわけであります。  原子力発電の賛否はいろいろあろうかと思いますが、こういう団体とどういうつながりで、わざわざおやりになったのか。私は、いささか踏み込み過ぎじゃないかな、こんな感じがいたします。もちろん、反対運動の方から見れば、もっとやれということもあろうかと思います。この点、NHKはいかがお考えですか。
  289. 中村和夫

    ○中村参考人 先生御承知のとおり、あのときあかつき丸が喜望峰を回ってくるのかどうか、世界じゅうの大きな関心事でございまして、どこを走っているかわからないということで、どこのマスコミもそれを探っていたということがございます。たまたま十二月十八日にNHKシドニー支局にグリーンピースの方が、乗せてもいい、あかつき丸を空から捜すことにしているのでという話がありまして、現地雇員のオーストラリア人カメラマン一名を同乗させたということでございます。  ニュースバリューのあることですから、我々も何とか撮影をしたいということで努力をしていたわけですが、結果的には、ワンフライトで、給油のために一回下におりて、島におりたわけですが、その帰り道でたまたま撮影ができたということでございます。
  290. 中井洽

    中井委員 コメントの中では、十二日から捜し続けておって、こういうコメントが入っておりましたから、たまたまNHKが乗ったときだけ見つかったなんというのは、僕らはちょっと信じられない思いもございます。これはそういう問題があったということを提起したわけであります。  一つ会長にお尋ねをしたいのでありますが、もちろん放送は中立性であります。賛成、反対、いろいろ意見を平等に扱う、大事なことであろうかと思います。しかし、賛成がNHKのいろいろな世論調査をしたって七割ある、反対三割だ、そういうときでも本当に五分と五分の扱いをするのか。あるいは、この三割の反対だけを映すことが本当に報道としての使命なのか。こういったことをもう少しお互いが議論する必要があるのじゃないか。なかなか難しいことであります。環境問題なんかでも、初めは何でそんなことをと思っておってもそれが世論になるということもあります。  したがって、これは大変難しいことだと思いますけれども、こういう問題をNHKなんかも、あるいは放送、マスコミの方も常に御議論をいただく。どういうスタンスで報道がなされるのだ、こういうことが、お互い国民とマスコミとの間に信頼関係、あるいはお互いの了解事項、こういったものがあって初めて信頼されるニュースになるのじゃないか、私はこんなふうに感じますが、そういう点、いかがですか。
  291. 川口幹夫

    川口参考人 ただいまの件につきましては、報道の判断で、あかつき丸がどこを通っていくのかというのは、やはり世界のテレビ局としてもどこもそれを映してお知らせしたい、いわゆる報道の価値が十分あるというふうに判断した。それをたまたまグリーンピースというところから、捜しに行くので乗らないかという向こうのお申し出があって、しかもそれは全く好意であって、それをどういうふうにお使いになるかは、全くそれは報道者の自由ですよという条件のもとに乗せてもらったというふうに聞いております。  したがって、いわゆる報道価値というものと、それの報道の中身というものと、現実のいろいろな手段との中で、余りにもそれが疑いを持って見られることがあればこれはもうやめるべきですが、そういうふうなことに抵触しないで報道の使命を果たせるならば、それは一定の条件のもとでやることはいいのじゃないか、こう思っております。
  292. 中井洽

    中井委員 そういうお答えなら私ももう少しお尋ねをいたしますが、例えばフランスを出て、グリーンピースの船がずっとケープタウンのところまでついていったわけですね。当然NHKはこれにお乗りになったのでしょうね。お乗りになっておった。——それはおかしいじゃないですか、今の御答弁。あかつき丸がどこへ行くか、大変関心が高いというのだったら、初めからグリーンピースに頼んでケープタウンのところまで行けばいいじゃないですか。オーストラリアのその人の判断でぽんとやっちゃってやる。それはニュースだからいいんだ、報道価値があるからやるんだ、何のチェックもなしに報道をされる。この問題だけじゃありません。私は、そういうのがおかしいのじゃないか。  こういうエネルギー問題とか、防衛問題だとか、外交問題だとか、いろいろ国民の中にも議論があります。公害問題、環境問題もそうです。NHKはどういうスタンスで報道するのだという形で常にNHK内部でも御議論をいただいてもう少し統一をしていただく。新聞記者あるいは現場の判断、判断でもう何でも自由にできるんだ、それがニュース価値があるといったら何でも乗せちゃうのだというので本当にいいのかな。私は、ほかの放送局は、例えば、あるキャスターがいろいろなことをおっしゃった、コメントした、ニュースした、そうすると受け取る国民側は、あのキャスターはこういう傾向の人だな、こう思いながら見ている。しかしNHKの場合には、NHKがということになる。映した人個人だとか、しゃべったアナウンサー個人じゃなしに、NHKがということになる。それほど私は大事な地位を占めていると思うのです。  そういう意味で、この原子力エネルギーの問題だけじゃなしにいろいろな問題で、余りにもそのときそのとき、思いつきというか、その現場で撮ったものさえ乗せるのが報道の自由だというのはどうだろうと私は思いますが、大臣会長の御意見を聞いて、質問を終わります。
  293. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 今御指摘の政治問題化している、また主張がかなりはっきりと政治的な意味合いを持っている、こういう報道については、委員指摘のとおり、報道姿勢というものをよく検討されて、一方に偏っているというような疑いのないような取材体制が必要だと私は思っております。
  294. 川口幹夫

    川口参考人 報道の心得なければいけない二つの大きなポイントがあると思うのです。それは、真実をお伝えするということと、それから議論の分かれたものについては必ず両方の議論、あるいは三つあったら三つの議論を平等に御紹介するというのが報道姿勢のあり方だと思います。そういう点で、今後も私どもは、これから起こってくるいろいろなことに対して原則を誤らないようにいたしたいと思います。
  295. 中井洽

    中井委員 終わります。
  296. 亀井久興

    亀井委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  297. 亀井久興

    亀井委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件について採決いたします。  本件を承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  298. 亀井久興

    亀井委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。     —————————————
  299. 亀井久興

    亀井委員長 ただいま議決いたしました本件に対し、佐田玄一郎君外四名から、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を聴取いたします。上田利正君。
  300. 上田利正

    上田(利)委員 ただいま議題となりました放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件に対する附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件に対する附帯決議(案)   政府並びに日本放送協会は、次の各項の実施に努めるべきである。  一 放送の不偏不党と表現の自由の確保に一層努めること。  一 協会は、放送のあたえる社会的影響の重大性及び公共放送の使命をさらに自覚し、事実に基づく報道に徹するとともに、放送倫理の確立を図る等適切な措置を講じ、もって受信者の信頼の確保に努めること。  一 協会の最高意思決定機関である経営委員会については、幅広く各界各層の意見を反映できるよう、またその機能が十分発揮されるよう特段に配慮すること。  一 協会は、今後のメディアの発展状況、多メディア・多チャンネル化の進展等にかんがみ、視聴者の要望を反映しつつ将来における公共放送としての事業運営の長期的展望の確立に努めるとともに、保有メディアの見直しについても検討を行うこと。  一 協会は、その経営基盤が受信料制度によることをさらに自覚し、視聴者国民に対して経営内容を積極的に開示するとともに、受信料制度の理解の促進を図り、衛星料金を含む受信者の確実な把握と収納確保に努め、負担の公平を期すること。  一 協会は、事業運営に当たっては、効率的な業務体制確保しつつより一層公共放送としてふさわしい運営をめざすとともに、職員の処遇についても配慮すること。  一 衛星放送については、難視聴解消の目的を十分踏まえつつ、番組充実、ハイビジョンの実用化の促進に努めるとともに、その継続的・安定的な実施を図るため、BS−三号後継機の調達についても万全を期すること。  一 国際放送については、その重要性にかんがみ、交付金の確保放送番組充実及び海外中継局の拡充に努めるとともに、映像メディアによる国際交流を推進すること。  一 協会は、地域放送の一層の充実、強化を図るとともに、その実施に当たっては、地域社会の発展に資するよう各地域の特性に応じた編成を積極的に推進すること。 以上のとおりであります。  この附帯決議案は、自由民主党、日本社会党・護憲民主連合、公明党・国民会議日本共産党及び民社党の五派共同提案に係るものでありまして、案文は、当委員会における質疑の動向等を参酌して作成されたものでありますから、各項目についての説明を省かせていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げる次第でございます。  以上であります。(拍手)
  301. 亀井久興

    亀井委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  302. 亀井久興

    亀井委員長 起立総員。よって、本件に対し、附帯決議を付することに決しました。  この際、小泉郵政大臣及び川口日本放送協会会長から発言を求められておりますので、これを許します。小泉郵政大臣
  303. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 ただいま日本放送協会平成年度収支予算等につきましては、慎重なる御審議の上、御承認をいただき、厚く御礼を申し上げます。  本委員会の御審議を通じて賜りました貴重な御意見並びにただいまの附帯決議につきましては、今後の放送行政を進めるに当たり、御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。  ありがとうございました。
  304. 亀井久興

  305. 川口幹夫

    川口参考人 日本放送協会平成年度収支予算事業計画及び資金計画につきまして、ただいま御承認を賜りまして、厚く御礼申し上げます。  本予算を執行するに当たりましては、御審議の過程で種々御開陳いただきました御意見並びに郵政大臣意見書の御趣旨を十分生かしてまいりたいと考えております。  また、ただいまの附帯決議につきましては、協会経営の根幹をなすものでございますので、これを外しまして、執行の万全を期したいと考えております。  まことにどうもありがとうございました。(拍手)     —————————————
  306. 亀井久興

    亀井委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  307. 亀井久興

    亀井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  308. 亀井久興

    亀井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十七分散会