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1993-02-22 第126回国会 衆議院 逓信委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年二月二十二日(月曜日)     午後一時開議  出席委員   委員長 亀井 久興君    理事 川崎 二郎君 理事 佐田玄一郎君    理事 坂井 隆憲君 理事 笹川  堯君    理事 松浦  昭君 理事 上田 利正君    理事 大木 正吾君 理事 石田 祝稔君       赤城 徳彦君    植竹 繁雄君       小林 興起君    佐藤 守良君       谷垣 禎一君    虎島 和夫君       原田 義昭君    深谷 隆司君       森  英介君    山本  拓君       阿部未喜男君    上田  哲君       田中 昭一君    武部  文君       山下八洲夫君    吉岡 賢治君       鳥居 一雄君    菅野 悦子君       中井  洽君  出席国務大臣         郵 政 大 臣 小泉純一郎君  出席政府委員        郵政大臣官房長 五十嵐三津雄君         郵政省郵務局長 上野 寿隆君         郵政省貯金局長 山口 憲美君         郵政省簡易保険 江川 晃正君         局長         郵政省通信政策 松野 春樹君         局長         郵政省電気通信 白井  太君         局長         郵政省放送行政 木下 昌浩君         局長   委員外出席者         参  考  人         (日本放送協会 川口 幹夫君         会長)         参  考  人         (日本放送協会 堀井 良殷君         理事)         参  考  人         (日本民間放送 桑田弘一郎君          連盟会長)         参  考  人         (日本民間放送 松澤 經人君         連盟専務理事)         逓信委員会調査 丸山 一敏君         室長     ————————————— 委員の異動 二月二十二日  辞任         補欠選任   松岡 利勝君     山本  拓君   田並 胤明君     田中 昭一君 同日  辞任         補欠選任   山本  拓君     松岡 利勝君   田中 昭一君     田並 胤明君     ————————————— 二月十九日  電気通信基盤充実臨時措置法の一部を改正する  法律案内閣提出第三四号)(予)  郵便切手類販売所等に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第三五号)(予) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  身体障害者の利便の増進に資する通信放送身  体障害者利用円滑化事業推進に関する法律案  (内閣提出第二七号)  逓信行政に関する件(郵政行政基本施策)      ————◇—————
  2. 亀井久興

    亀井委員長 これより会議を開きます。  逓信行政に関する件について調査を進めます。  本日は、参考人として日本放送協会会長川口幹夫君、日本放送協会理事堀井良殷君及び日本民間放送連盟会長桑田弘一郎君、日本民間放送連盟専務理事松澤經人君に御出席を願っております。  この際、参考人に申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席をいただき、ありがとうございました。  参考人からの御意見委員からの質疑にお答えをいただくという方法で行い、参考人委員長の許可を得て発言を願い、委員に対しては質疑ができないこととなっておりますので、そのように御了解を願います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松浦昭君。
  3. 松浦昭

    松浦(昭)委員 私は、去る十七日当委員会において行われました小泉郵政大臣所信表明に関連いたしまして二、三お尋ねをいたしたいと思うわけでございます。また、本日は、ただいま委員長がおっしゃいましたように、NHK川口会長、それに日本民間放送連盟から桑田会長にお出ましを願いまして、まことにありがとうございました。言葉は余り好きではありませんけれども、いわゆるやらせ問題につきまして集中して審議をさせていただきたいと思う次第でございます。とにかく御両所まことに御苦労さまでございました。ありがとうございます。  実は、二月三日の朝日新聞の朝刊を読みましてまことに驚きにたえませんでした。それによりますと、昨年九月から十二月にかけましてNHK総合放送放送されました「NHKスペシャル奥ヒマラヤ 禁断の王国・ムスタン」という番組があったわけでございますが、元気なスタッフに高山病の演技をさせたり、岩を揺すって流砂現象をつくったり、あるいは雨ごいを少年に金を払ってやらせをしたというようなことがありまして、実はその撮影中に雨が降ったことがあったということが報ぜられております。また、この番組に関連して、関連団体自動車会社から報酬を受け取ったという問題が指摘されているのであります。  そもそも報道真実につきましてはいろいろデリケートな問題がございます。国会議員先生の中には、正しい発言をしていながら、あらかじめプロットが定まっている一部の発言のみがピックアップされまして、番組全体としては自分の発言考えとは大分違って似ても似つかぬ番組となっていたといったような体験をお持ちの方も大勢いらっしゃることと思うわけでございます。  かく申す私も、この種の問題は憲法に保障された表現の自由と関連する重大な問題であり、かつリベラルに運用すべきであると思っておるわけでございますが、しかし、昭和五十八年から五十九年にかけまして四年連続不作の後を受けて食糧庁をお預かりいたしました者といたしまして、本当にマスコミに対しましては難しい対応をいたしたことは鮮明な記憶として残っておる次第でございます。すなわち、当該米穀年度の主食の需給が苦しいけれども何とかなると私が言えば言うほど、マスコミには需給操作が危ないと書かれまして、その点で、それが買いだめを誘発しましてますます需給が逼迫するという悪循環をもたらし、大変苦労した思い出があるのであります。  しかし、このたびのやらせ問題はこれとは全く異なっており、ある意味ではよりプリミティブな問題だというふうに考えられます。今述べた事柄は、米の需給の見通しに係る判断が前提となっておりまして、需給操作ができないという判断をなさる向きにはそのように申さるることが自由とも受けとられるわけでございますが、このたびのように全くなかった事実をあったように、またそれを実現するためにやらせまでするということになりますと、さすがの私もNHKのそのような放送につきましてショックを禁じ得ないわけであります。  正直に申しまして、私はNHKさんのファンの一人でございますし、また常時見ております。そして、「NHKスペシャル」はファンの私にとりまして最も有用な番組だというふうに思われるだけに、その驚きは一層強いものがありました。まず第一に、NHK公共放送として放送法に規定されておるわけでございます。そして全国あまねく豊かでよい放送番組を提供する責務があると言わなければなりません。また第二に、NHK視聴率によって左右されないで良質な放送を実施できるように、受信料制度によりましてその財政を保障されているものと理解しているわけであります。それだけに、このたびのいわゆるやらせ番組というものは許しがたいという気持ちに駆られてしまうわけでございます。本件は、公共放送としてのNHKに対する国民信頼を裏切るものと言わざるを得ないのであります。  本日は川口会長にもおいでを願っているのでありますけれどもNHKでは、二月二日に、既に「テレマップ」等の中でこうした事実を認めておられ、遺憾の意を表しておられると同時に、また、中村副会長を中心にムスタン取材緊急調査委員会を発足させまして、さらに十七日には、この調査結果に基づきまして責任を明確にするとともに、その責任者処分するというNHK始まって以来の発表を行ったと聞いております。  こういったことが対策として甚だ迅速に行われた点は了とするものでありますが、逓信委員会に所属する私たちといたしましては、どうしても将来においてこのようなことがあってはならないという立場から、その再発防止の観点に立ちまして、川口会長のこの種の問題に対する御態度あるいは対応策をお伺いいたしたいと思うわけであります。  すなわち、一つは、今回の調査委員会における調査結果の概略とNHK会長として今回の事態をどのように認識しておられるか、お伺いをいたしたい。また二つ目は、本件に対しましては長年にわたるNHKの体質などの構造的な問題に起因すると考えられますが、問題は、将来に向けてどのような対応策を講じていくかにあります。その再発防止策をあわせてお伺いいたしたいと思います。
  4. 川口幹夫

    川口参考人 NHKを代表しまして、まず、今回の事件について国民信頼を裏切ってしまったこと並びに当委員会先生方にも多大の御心配、御迷惑をおかけしたことをおわび申し上げます。  今回の件につきましてこれまでの経過を申し上げます。  私どもは、今回の事件重大性を深刻に受けとめまして、二月二日、ムスタン取材緊急調査委員会を設置いたしました。ムスタン取材に関するさまざまな問題につきまして、ネパールあるいはインドで現地調査を実施するとともに、関係者から事情を聞きまして、真相の究明と責任の所在あるいは再発防止策をどうするか、そういうことを重点にいたしまして集中的な調査検討を行いました。そして今先生がおっしゃったように二月十七日、現時点での取りまとめを行いました。  その結果、二月四日に放送で訂正とおわびをいたしました、雨が三カ月以上一滴も降っていないというコメントとか、あるいは落石、流砂のシーンなど六カ所のほか、小学校でのヤギの解剖の授業、老人の王への直訴などの場面に誤解を招く表現があった、あるいは取材制作手法放送内容に適切でない点や事実と異なる部分があったことが改めて判明いたしました。また、オオカミ輸入の事実関係、あるいはメディアミックスの事実関係、総集編の制作過程等々につきましても、問題とすべき点があったことが明らかになりました。  こうした事態を招いた原因としては、まず一つは、制作者個人ドキュメンタリーへの思い込みと、それから過信があったこと、そして番組制作過程管理責任体制においてチェック機能が十分でなかったこと、そして社会人としてのモラルに欠けるところがあったこと、さらにメディアミックスに関する職員の理解が不徹底であったということを認識しております。  それで、この件についてNHK会長としてどのような認識をしているかということについて申し上げます。  テレビ放送が始まったのは昭和二十八年でありますが、ちょうど四十年になりました。この間に視聴者の皆様の信頼をいただきまして、それによってNHKは支えられてまいりました。その四十年のところでこのような事態を引き起こしましたことは、まことに残念であり、申しわけない。私も心からおわびをしたいと思います。テレビの大きな進歩の陰で、私ども番組制作者一人一人に思い上がりとかあるいは甘えとかそういった気持ちがなかったか、また、視聴率あるいは効率至上主義というふうな考えに陥っていなかっただろうか、謙虚に反省をいたしまして、これらはすべて改めていきたいと思っております。  また、今回、多数の視聴者方々やあるいは関係者の皆さんから厳しい御指摘あるいは御意見をいただきました。それらの御指摘、御意見にこたえて、NHKに対する信頼を回復するために、私以下職員一同心を引き締めて努力をしていく所存でございます。  今後の問題点を申し上げます。これは、大きく分けて三つの点があろうかと思うのです。  まず、一人一人の職業倫理確立、そして取材制作チームの自律的なチェック機能強化ということをやりたいと思います。さらに、こういう職員を育てていく研修の過程で、こういう番組制作者倫理観確立をするということもまた必要であろうかと思います。  そして、番組事前考査徹底をやりたいと思います。さらには、このチェックは後の方で果たすものではなくて、番組をつくるに当たっての事前チェックということも非常に大事な面があろうと思いますので、これを徹底したいと思います。さらにこのためには、放送現場倫理に関する委員会といった名称のものを今つくろうと思っております。  さらには、民間放送連盟方々とも御相談を申し上げて、放送事業者としてこういう問題にどう対応するか、ただいま民放連会長ともお話し合いを進めているところでございます。  さらに、メディアミックスにつきましては、番組制作との区別を徹底をするために、協業推進委員会によるチェック機能強化とか、あるいはメディアミックスをやる関連番組事前検証徹底的にやる、そして関連団体にこのことを徹底させまして、節度のあるメディアミックスについて、私ども経営方針徹底ということを図ってまいろうと思っております。  以上のようなことが、今回の事件経過として私どもがこれまでに考え対応策でございます。
  5. 松浦昭

    松浦(昭)委員 どうもありがとうございました。  再発防止の件が最も重要な点であると思っておりますけれども、ただいま会長がちょっとお触れになりました、放送界全体として話し合いを進めていきたい、私非常に重要なことだと思っております。もう少し詳しくその点をお話しをいただけませんでしょうか。
  6. 川口幹夫

    川口参考人 当然のことですが、日本放送界は、民間放送NHK公共放送との二つに分かれております。これが相助け、相競争しながら今日の放送時代を形成してきているわけでございますけれども、今回のような問題が起こったことについでは、私はまずNHK体制確立をしたい。ただ、これだけではやはりいけないので、放送仕事に当たる者全体が民間放送方々と一緒になってこういう問題について考える場とか、あるいはそういうものに対する再発防止機能等をつくらなければいけないのではないか。まずNHKがみずからを正し、みずからをきちんと確立をするということをやります。それで、同時に民間放送方々とも、そういう意味では同じ放送の仲間でありますから、何とかこれを横につなげて一つの方策を考えた方がいい、こう考えておるわけでございます。
  7. 松浦昭

    松浦(昭)委員 どうもありがとうございました。  ただいまのお話でおおむねわかったわけでございますが、今後ぜひこういうことがないように、そしてまた信頼をもってみんなが見ているわけでございますから、そういう信頼にこたえてNHKがしっかりやっていかれることを心から切望する次第でございます。  その次に、桑田会長お尋ねをいたしたいと思うわけでございますが、いわゆるやらせと言われている番組作製は、民放制作においても行われていると聞いておるのでございます。  すなわち、昨年七月に放送されました朝日放送制作の「素敵にドキュメント」という放送番組におきましては、スタッフの知人やモデルが演じた場面真実と偽って放送するという事件が発生しておりまして、さらには十一月に放送されました読売テレビ制作の「どーなるスコープ」という番組があったそうでございますが、そこにおいて看護婦として出席した二十名程度の人がおったそうでありますが、実は一人も看護婦はいなかったというようなことを聞いておるわけでございます。  この事件が起きましたのは記憶に新しいところでありまして、民間放送番組といえども公共的使命を負ったものでありまして、それに我々税制の調査会でも随分議論をしたのでありますが、御案内のように、その公共性に着目して我々は事業税減免等も行っておるわけでございますから、ひとつこの点の措置などを十分にお考えいただきまして、公共放送としての自覚を高めていただきたいわけでございます。  すなわち、これら一連のいわゆるやらせ等の問題は大きな社会問題となりますし、放送番組に対する国民信頼を揺るがせることになっております。放送法は、放送番組に対して放送事業者自主自律基本といたしましてその対応策を図っているのでありますが、このような事態が続くことになりますと、放送事業者による自浄作用というものにやはり疑問を抱かざるを得ないということになってしまいます。  そこで、民間放送連盟桑田会長に対してお伺いをいたしますけれども民放連会長として一連の問題をどのように認識しておられるのか。あるいは、各放送事業者はどのような仕事、どのような措置、この中には関係者処分も入っていると思いますが、それをとったのであるか。また、民放連及び各放送事業者はどのような再発防止措置をとっているのか。ひとつお伺いをしておきたいと思います。
  8. 桑田弘一郎

    桑田参考人 今御指摘のございましたように、昨年大阪の朝日放送読売テレビで生じました問題は大変残念のきわみでございます。国民共有の電波を預かるという立場にある我々といたしましてはあってはならないことでございまして、大変申しわけなく存じております。民放公共使命を担っているということはもちろんでございますが、同時に、四十年の間国民視聴者にとって大変親しめる放送としてその信頼親近感を培ってきたと自負しておりますが、それがこのようなことで視聴者信頼を損ない期待を裏切ったことはまことに申しわけなく存じております。とりわけ、やらせというよりも虚偽の内容があったということは論外でございまして、弁解の余地がないと存じます。  私は、昨年の秋田で開かれました民間放送全国大会でも、この旨を特に厳しく受けとめて、今後二度とないように強調したのでございますが、残念ながらまだその後に起こりまして、本当に悔しい思いでございます。しかし、今後こういうことがないように、各局におきましても、また民放連全体といたしましても、組織としての管理面あり方、その他可能な限りの対策を講じておりまして、例えば民放連会長直属にございます放送基準審議会諮問機関として番組調査会を設置するなど、民放連としても対策を講じておりまして、その番組調査会からも先月いろいろな貴重な御意見、御忠告指摘を受けたばかりのところでございます。私どもはそれに沿いまして、その忠告、御指摘に沿いまして、速やかなる具体的な対応策を講じているところでございます。  また、NHKの今回の問題に際しましても、私どもテレビ放送を行う者という基本的な立場共通立場から、やはりこの問題も共通の問題として厳しく受けとめ、川口会長とも私連絡をとりまして、NHK民放連との間で何らかの協議機関を設け、有効な対策を講じたいと存じまして、今NHK民放連と双方で話し合いの窓口を設けまして検討を急いでいるところでございます。
  9. 松浦昭

    松浦(昭)委員 ぜひ国民信頼にこたえるべく立派な放送にしていただきたいというふうにお願いをいたすわけでございます。  最後に、郵政省に関して一言御質問をいたします。  郵政省は、今まで述べてまいりましたように、放送法を預かる監督官庁といたしまして、いわゆるやらせ問題についてどのような処置、処分を行ってきたか。それからまた、NHKの今回のやらせの問題につきましてどのように処分をするのか、その点についてお話をいただきたいと思います。
  10. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 ただいま御指摘のございました民放の問題につきまして、昨年相次いで二件ほど続いて事実でない報道を行ったということで、大きな社会問題にもなり、郵政省としては極めて遺憾な事態だというふうに考えまして、関係放送事業者に対しまして必要な注意指導等を行ったところでございます。  まず、朝日放送読売放送、二社に対しまして郵政大臣名による文書により厳重注意を行いました。それからまた、放送法及び番組基準遵守、あるいは外部制作委託した番組チェック体制確立等再発防止への取り組みを要請しました。それから、それについての措置報告を要請いたしております。  それから、それぞれこの制作した放送事業者だけではなくて、その番組の提供を受けて放送した事業者に対しましても、所管の電気通信監理局長名による文書によって、厳重注意を行うとともに再発防止への取り組みを要請いたしております。  それから、後で出てまいりました読売テレビ放送の際には、短期間のうちに引き続いて不祥事が発生したということにかんがみまして、テレビジョン放送を行っている民放全社に対しまして注意喚起をいたしました。  同時にまた、民放連に対しまして、放送行政局長名による文書により、放送法番組基準遵守徹底と、それから、外部制作委託をした番組チェック体制あり方の研究をしていただくように、そういった再発防止への取り組みとその報告を要請をいたしたところでございます。  それから、二点目のお尋ねの「NHKスペシャル」の番組の問題につきましては、NHKにおける調査委員会調査検討結果の報告を受けております。郵政省としましては、まずNHKのこの調査検討結果の報告によりますと、この番組について事実と異なる部分、それから適切でない点があったこと、それからNHK関連団体営業行為に関しましてNHK番組制作業務の範囲を逸脱したことがあったことなどが指摘されておりまして、郵政省としても極めて遺憾であると考えておりますが、NHKとしましては、再発防止策等検討しているということでございますし、その検討の結果を踏まえて徹底を図ってほしいと考えております。郵政省といたしましては、さらにNHK調査結果を受けて、その内容について事情を聴取している段階でございます。  いずれにいたしましても、今後、これまでのこの種の問題に対してとってきた措置NHK措置してこられた措置、それから今回の問題のもたらした結果、あるいは再発防止に対するNHK取り組み状況などを考慮いたしまして、適切に措置してまいる所存でございます。
  11. 松浦昭

    松浦(昭)委員 最後になりましたが、NHK及び民放一連のやらせ問題につきまして、行政の最高の責任者として小泉大臣がどのように認識し、また対応していかれるのか、お聞かせ願いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  12. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 今放送行政局長から答弁がありましたけれども基本的には放送番組の編集に責任を有する放送事業者がみずから取り組んでいくものと私は理解しております。しかし、いわゆるやらせ、やらせという定義もいろいろあるようでありますが、俗にいうやらせ等の番組問題が多発しているということは極めて遺憾な状態だと私は思っております。  最も大事なことは、この再発防止策、これをしっかりやってもらわなければいけない。今、放送界全体として適切に対処するため、具体的な再発防止策についてNHK民放が連携をとりながら検討を進めるよう要請したところでありますので、今後放送事業者の真剣な努力を見守って、その効果があらわれることを期待しております。
  13. 松浦昭

    松浦(昭)委員 じゃ、ありがとうございました。これにて終わります。
  14. 亀井久興

  15. 上田哲

    上田(哲)委員 今回の「NHKスペシャル」問題は、実はNHKにとってここ数年来心配されてきた深刻な事態がついに、噴出した事例です。私はここで、NHK信頼回復を切望し、今回の事件の根源に触れで、NHK川口幹夫会長に重大な認識と決意を求めるものです。  人々は今、NHKの次のドキュメンタリー番組の予告を見て、「またやらせか」とつぶやくのです。視聴者は、これまでNHKテレビ画面を見てきました。これからは画面裏側を見るようになったのです。きょうまでに受信料不払い電話は一千件を超えだということですが、電話の声には直接あらわれずとも、画面裏側に深い疑念を抱かせてしまった多くの人々に、人々には見えないNHKテレビの一番深いところで、どんな大切なものが変質してきていたのかを真剣に語らなければなりません。  そこで私は、まずこの事件の深みについて、「NHKNHK自身にとって最も貴重なものをみずから踏みにじった事件」ととらえなければならないと思います。これは会長認識と一致しますか。
  16. 川口幹夫

    川口参考人 まさに、ラジオが始まって七十年近く、テレビが始まって四十年、この間に築き上げたNHK信頼感というものを根底から損ねてしまったような大きな事件であったと認識をしております。何よりもNHK信頼してくださった受信者の皆さんに申しわけなかったということで、私は心からおわびをしたいと思っております。
  17. 上田哲

    上田(哲)委員 私は、この事件が引き起こした問題点を次のようにまとめます。  第一に、「NHKスペシャル」はNHKの代表的番組です。この事件は、こ番組だけでなく、NHK放送全体への失望と疑念を引き起こしています。  第二に、「NHKスペシャル」は、公共放送NHKならではの規模、組織、財政等によってのみ果たし得る番組領域として国民的評価に支えられていたのです。今回の事件は、公共放送あり方そのものについて疑念を生みました。  第三に、NHK放送の基幹部分にまでかくも営利主義が浸透してしまっていることは、NHKの財政制度、つまりNHK存立の基盤である受信料制度認識の再検討が求められます。  第四に、NHK番組づくりがこのように多くの部分外部委託しているという実情は、NHK放送体制に根本的に無理があるのかどうかを、検証しなければなりません。  第五に、今回の問題で、NHK内部には、これが放送介入を招くのではないか、再び暗い時代に返るのではないかとの不安感がみなぎっていると言われます。一刻も早く信頼を回復してもらわなければなりません。  これらについて会長はどう考えますか。
  18. 川口幹夫

    川口参考人 おっしゃられたように、この問題がNHKに及ぼした深刻な状況というものを私はよく認識しております。  今後の問題点は、なぜこれが起こったのか、どのような形でこういうことが起こってきたのかということをまず徹底的に検証するところから始めます。そして、その幾つかにやはり直接的あるいは間接的な原因があったということをみずからも認めたいと思います。そして、今後放送というものが皆さんの信頼を回復するためには、これまであった幾つかのことを見直し、あるいは流れとしてそうとらざるを得なかったところをもう一遍きちんと検証をして、新しいNHKの再建に向かって全力を尽くさなければいけない、このように思っております。
  19. 上田哲

    上田(哲)委員 そこで私は、きょうは二つの点に絞って問題の本質をただします。  突然この問題が報道されて、国民は驚いたのです。二つ驚き。  その第一は、NHK番組づくりには、実はこれを商品として「売る」という目的が含まれていたのだという驚きです。  NHKに提出を求めた資料によると、「ムスタン」の制作費は、トータルコストとして六千八百九十三万円を設定、このうち直接制作費が四千六百六十五万円。この内訳は、NHK分が三千九百二十万円、NHKクリエイティブヘの委託分が七百四十五万円、このほか人件費千四百七十一万円、施設使用料七百五十七万円となっています。  実は、この番組に関連して、アドバンス基礎額といって、外部からの収入が二千万円見込まれています。二千万円の内訳は、写真集や週刊誌への資料提供で十二社から二百万円、日産自動車から販売促進用ビデオの制作で千八百万円となっています。このうち三百万円はクリエイティブヘ手数料、千七百万円がNHK本体に収入として入るのです。外部企業への契約販売代金が直接制作費の半額近くも予定されているのでは、番組づくりは純粋になれません。この現状こそが、事件を引き起こしたのだと私は思います。  メディアミックス外部からの収入金を関連団体を通しますから、放送法には触れませんが、番組制作現場への影響は同じことです。  売れなければならないために、NHKでも視聴率優先の基準が持ち込まれるようになりました。  会長は、この現状とこの仕組みをどう思いますか。
  20. 川口幹夫

    川口参考人 今回の問題で、メディアミックスについて多くの誤解を招きました。その点については、NHK番組制作関連団体メディアミックス事業の区分を明確にしなければいけないと思います。そして、関連団体の事業展開を節度を持って行うということを徹底させていきたいと考えております。  私、おととしの七月三十一日に会長に就任したとき、直ちに関連団体にも呼びかけまして、節度のある関連事業の実施をやってほしい、さらには、アドバンスという形でもって呼ばれておりました一種の副次収入の還元というものをできるだけ抑える、そんなに無理をしなくてもいい、きちんとした節度のある関連事業の展開の中でメディアミックスとして入ってくるものを我々はよしとするのであって、過重な、過度なものを要求はしないということを実は申し上げたわけです。そして、この副次収入のNHKの全収入に占める割合はわずかであります。将来とも受信料にかわり得る財源になるという可能性はないと考えております。  しかしそれではなぜメディアミックスをやるかということについて一言申し上げますと、NHKが多年にわたり蓄積をしてきた番組や技術などを社会に還元するということとともに、保有資産を有効に活用して副次収入を確保することは、少しでも受信料の負担を軽減する意味からは重要なことではないかというふうに考えております。  また、番組制作にかかわる経費は、年度当初に予算化をいたしまして、メディアミックスの有無にかかわらず決めておりまして、番組制作費とメディアミックスの権利料は直接的には関係ございません。メディアミックスの権利料というのは、特許権の使用料や放送テキストの権利料などと同じように副次収入として納入されるものでありまして、番組制作費に直接充当するようなことはしておりません。  しかし、NHKの生命である放送番組が、メディアミックスにより商業主義に傾斜しているのではないか、そういう疑念を持たれたことについて、率直に反省をいたしてております。メディアミックスについては今後再点検を行いまして、今日的なメディアミックス像をもう一遍再構築をしたいと思っております。  以上でございます。
  21. 上田哲

    上田(哲)委員 このままでは、その疑念は晴れません。  放送は文化でなければなりません。受信料で賄われるNHKには、放送が商品でないことが最も純粋に求められています。それがNHKの存立理由です。それなのに、問題は今、営利が文化をむしばんでいることです。  では、NHKはいつからこのような営利主義に変わったのか。  放送法を改正してNHK外部に出資できるようにしたのは一九八二年ですが、その後数年間には目立った動きがないのです。NHKがこのように明確に商業主義膨張路線に方針転換したのは、次の放送法改正で出資対象をさらに広げた八八年、まさにその一九八八年からです。  一九八六年十一月、住友銀行の磯田一郎氏が経営委員長となって、八八年七月三日、三井物産元会長の池田芳蔵氏をNHK会長に任命したところからの方針大転換です。  磯田氏は、NHKに営業主義を確立するためにと、まるで自分の会社の社長を決めるように、学生時代の友人の池田氏を推薦したのだと多くの人々はいぶかりました。池田会長は、三百億円の副次収入を上げよと檄を飛ばしました。  当時、NHK内部でこんな風聞が流れていました。一九八八年七月、東京湾で潜水艦「なだしお」の衝突事件が起きた際、NHKカメラマンが沈没した釣り船の第一富士丸の水中撮影に成功し、特だねとして会長表彰されました。表彰を受けに会長のところに行ったら、会長から開口一番、「それで何ぼもうかったか」と言われたという話です。風間ですから事実のほどは知りませんが、こんな話が当たり前に流れるほどにNHKは一気に営利主義の風潮に染まっていってしまったという証左でありましょう。  八九年四月、池田氏は九カ月で辞任会長は島桂次氏となります。NHKは、この一連の時代、放送局から情報産業への転身を図ったのです。メディアミックス企業は急増、何と、みずから「ユナイテッド・ステーツ・オブ・NHK」とうたいとげたのです。NHK内では文化という言葉が情報という言葉に取りかえられました。番組への政治介入が強まり、組合運動経験者への弾圧も露骨に行われました。NHKを愛する者にとっては、今も痛恨、胸のいやされぬ記憶として指摘しておきます。  ゆえに、今回の事件の反省は、NHK放送を営利追求から文化創造に戻すため、あの八八年以来の「ユナイテッド・ステーツ・オブ・NHK」、その以前にさかのぼって制作態度を立て直さなければならないはずです。  これは制作だけでなく営業についても同じですが、営業問題その他については後日に譲ります。  現実の問題として、今会長の言われた副次収入ということですが、今、国会に提出されている一九九三年度五千五百三十六億円のNHK予算案では、受信料収入は全予算の九六・五%です。残り三・五%のうち、NHK側があんなに喧伝してきた視聴者の負担軽減のためという副次収入とは、会長、わずかに一・五%でしかありません。ちなみに、私の調べでは、NHK関連企業三十社は実は決定的に赤字です。特に付言しておきますが、私は関連企業そのものの努力を否定するのではありません。関連企業は、実はNHK本体の誤った営利方針のため過度の上納金を強いられてきた被害者の立場なのです。公共放送NHKがそれから絞り上げるわずか一・五%の収入のために、海外での自動車レースで女性アナウンサーに協賛企業名入りのTシャツを着せたり、「NHKスペシャル 電子立国」の一部を企業の広報ビデオに流用するような営利主義に傾き、放送のモラルを捨てて国民信頼を失うことは、NHKにとって余りにも大きい損失です。  会長、いかがですか。
  22. 川口幹夫

    川口参考人 確かに一九八八年以降そのような勢いで進んできたことを、私も認めます。  ただ、私が会長になりましてからは、そういう一つの形をこれは変えなければNHK自体が大きく曲がってしまうというふうに考えたのです。したがって私は直ちに、メディアミックスを含む関連団体仕事あり方についてきちんとした節度を持つように要請をし、それから、受信料体制、つまりNHKの経営財源を受信料によることとするということ、これを大きなポイントとして決定をいたしました。そして、何よりも真実報道とすぐれた文化の創造、この二点がNHKのなすべき最も大きなポイントであるということを所あるごとに職員に言いました。そしてその方向で、実はこの一年半で大分雰囲気も変わってきたと思っております。  そこへこの事件が起こってきたわけでありまして、今さらのように歴史的な事実がもたらす大きな影響というものを考えざるを得ません。これからは、私は十分そのことを認識して、前に進んでいくつもりでございます。
  23. 上田哲

    上田(哲)委員 放送を愛する者の血の出るような声を聞きたいのです。この数年間NHKのたどってきた道を考えると情報産業としての巨大化を目指して余りにも象徴的な言葉であった「ユナイテッド・ステーツ・オブ・NHK」。おごりではありませんか。間違いではありませんか。NHKを変質させようとしたメディアミックスという横文字は、一体どんな文化とのかかわりを持っていたのか。今、最も求められるのは、最も純粋な放送文化論がNHKの中に再確立されなければならないことです。放送人としてのモラルと情熱だと私は思います。  再度、会長の見解を承りたい。
  24. 川口幹夫

    川口参考人 放送というものが国民の生活の中にこれほど深く細やかに入っている現在の情勢の中で、私は放送が占めるべき位置の大きさと強さというものを痛感をしております。したがいまして、NHKはあくまでも受信料による体制というものを基本に据えて、そして真実報道放送文化の創造という二つの目標に向かって邁進をしようと思っております。もちろん私がこの先頭に立って全体を引っ張っていこう。そしてNHKが多くの視聴者の前に再び信頼されるべき存在としてみずからの姿を堂々とあらわすことができるように、一日も早い回復を私の力でもって微力を尽くしたいと思っております。
  25. 上田哲

    上田(哲)委員 第二の驚きは、NHK番組づくりはNHK自身の自主制作だと思っていたのに、今回の「ムスタン」ほどの数千万円をかける番組に派遣されたチームでも、NHK側の制作者はチーフディレクターとカメラマンの二人だけ、あとは外部委託の制作者だったという事実です。責任ある番組づくりとは責任ある一貫制作であり、以前のNHKはきっちりそうしていたはずです。外部委託というのは経費の節減に尽きるのであって、外部委託は経費節約のすき間に責任体制の二重構造を生じます。制作チームに身分差があるから外部委託の人に高山病のうそを命じたので、委託の人も、嫌でも嫌だとは言えなかったでしょう。  どう考えますか。
  26. 川口幹夫

    川口参考人 これまでの調査の結果は、当然のように今先生がおっしゃったことと大きく関係があるということがわかっております。つまり、制作者個人、この場合はチーフディレクターですが、の個性の問題もあります。ただ、それだけではないところに大きな問題が存在しているというふうに私は認識をいたします。  今回のことは、インドの取材を目指してやっていたのが、向こうの政情のために急にこれが取りやめになり、慌ててムスタンの方に切りかえたという非常に慌ただしい中での、準備期間もなかったということはあったにせよ、やはり基本にそういうチームのつくり方、あるいは番組制作のポイントを外しでまでやらなければいけないようなことになってしまった、そこに大きな問題があると考えております。したがいまして、特に「NHKスペシャル」のような大きな番組をつくる際の事前の準備、周到な心配り、そういうものを通じて番組制作が適切な状況の中で行われるということが何よりも大事ではないか、こう思っております。  今の先生の御指摘は、私ども十分に受けとめて、今後の大きな参考にさせていただきたいと思います。
  27. 上田哲

    上田(哲)委員 私は、会長の言われる問題点の軸心が文化構造論でなければならないと思うのです。NHKの緊急調査結果では、こうした事態を招いた原因は制作者個人の思い込みと過信、チェック機能の不十分さ、社会人としてのモラルの欠如、メディアミックスに対する理解の不徹底と言います。これは、私は不十分だと思います。やはり第一原理として、文化創造への構造論だと思います。その構造が体制の中で満たされていなかった。  したがって、ここで重要な問題です。NHKの財政と人員の現状は、看板番組さえも外部から大きな資金援助を受け、外部から多くのスタッフを委託しなければ制作ができないというのがNHKのぎりぎりの実態なのかどうかという問題です。NHK放送本体のあり方として、本当にそうなのですか、そうではないのですか。ではどうすればいいのですか。肝心なところです。しっかりお答えください。
  28. 川口幹夫

    川口参考人 現在の関連団体を含めたいわゆる協業体制というのは、既にある時期を経過をしましてある程度根づいております。この問題についてもう一度深い検討を加え、どのような形で番組をつくっていくのか、そのやり方についてもさらに幾つかの検討点を持ちまして、それを生かしていきたいと私は思っています。  したがいまして、今後このようなことが起こらないために、二つのことを今考えています。一つは、番組をつくる者同士でできるだけ自由な意見の交換、議論の交流というものを起こす。そして、番組をつくる者たちがみずからのあり方についてきちんとした座標軸を持ち、そしてそれがどのような影響を受信者に及ぼすのか、それを絶えず議論の中で深めてもらおうと思っています。そして、そういう文化創造の議論の中からいい番組が生まれるという雰囲気をまずひとつつくりたいと思います。そしてもう一つは、体制的なものがあるならば、その体制を少してもいい方向に変えていこうと思っています。その二つのことをまず何よりも先頭に立ってきちんとやっていくつもりであります。  もう一つ、二月三日、くしくもこの「ムスタン」問題が新聞に報道されたその日でありますが、私はNHKの今後を考えNHK構想というものを実は考えておりまして、この日が発表の日だったのであります。残念なことに、ほとんど「ムスタン」に隠れてその問題は余りクローズアップされませんでしたけれども、この「二十一世紀への展望とNHKの課題」という文書の中には、そのようなことを踏まえて幾つかの考え方を出したつもりであります。  そういう基本的にNHKあり方考えるということの上にいろいろな政策を実行していきたい。もちろんこれには多くの方々の御意見をいただき、十分にそれをそしゃくした上で計画に高めていきたい、こう考えております。
  29. 上田哲

    上田(哲)委員 結論的にしっかり伺いたいのですが、問題はやはり経営原理だと思います。原理として一九八八年以来くっきりと方針転換をしたNHKの商業主義的膨張路線、象徴的に言えば「ユナイテッド・ステーツ・オブ・NHK」路線というものから、原理としての脱却を図るのかどうかという一点、そして私が具体的に挙げた経費、人員の面でNHKは自立自前の放送制作をやっていくという方向をとるのかどうか、この二点をしっかりとお伺いをしておきます。
  30. 川口幹夫

    川口参考人 既に私は何遍もNHK職員の前で、あるいはこの逓信委員会の場でも申し上げたと思いますが、いわゆる前会長考えましたような拡大路線をとらないということを約束をしております。  そして、それならばどうするのか。受信料に頼るといっても限度があるのじゃないかというふうな質問がすぐ出てまいりますけれども、私は現在のNHKが受信者に本当に信頼される存在になるならば、受信料体制の今後についてもそれほど心配することはないのじゃないかと思ってまいりました。  今回の事件はその信頼感を損ねた、そういう意味では非常に痛恨の一事であります。しかし、我々ができるだけ早くこの問題をきちんと解明をし、今後の対応策考えていけば、なるべく早い時期に視聴者信頼の回復をいただくことができるのじゃないか、そのことの上に立って今後のNHKを築いてまいろう、そう思っております。
  31. 上田哲

    上田(哲)委員 厳しいことを申し上げておりますが、今の発言で私の申し上げている二点は了解をされたと理解します。いいですね。  そこで。そもそもNHK会長がこの種の件で国会で説明しなければならないのは好ましいことではありません。放送の自由は自主性の上にこそあります。最近郵政省が、電波法七十六条を踏まえて営業、放送停止や放送時間の制限、また電波法百四条で免許再交付の際に条件や期限をつけるなどの措置に出ることをちらつかせています。これらは本来、法律的には無理ですが、今回の事件放送介入のきっかけにしようとする意図があれば強く警告しておかなければなりません。あわせて、最近NHK予算について郵政省が長い意見書をつけるようになったことも改めるよう申し入れておきます。  さて、これまでの質疑を通じてNHK川口会長が述べられた新方針は、おおむねよいと思います。  この事件をきっかけに会長人事を初め政治介入の動きについての風評をかまびすしく耳にします。会長は経営委員会に進退伺いを提出したとのことです。最近ようやく明るくなりかけた協会内では、川口会長にここで仮にも圧力などには負けず頑張ってほしいという声が高いと聞きます。私もそう思います。会長は勇気を持って文化としてのNHK放送を目指して奮闘してほしい。ぜひ決意を聞かせていただきたい。
  32. 川口幹夫

    川口参考人 NHKが今後本当に信頼され、また放送事業者として視聴者に豊かな放送番組を送り続ける、そのことで私はNHKは十分受信料体制を基盤にしながら歩んでいけるというふうに思っています。その代表である私は、そのことを絶えず自分の任務として、今後も力強く歩き続けていきたいと思います。放送の自由として、番組というものが持っている力強さ、奥の深さというものを十分に受信者の皆さんに味わっていただけるような、そういうNHKにすることをお誓いいたします。
  33. 上田哲

    上田(哲)委員 決意をしかと聞き取りました。再び暗いNHKに返ることのないように、明るい川口会長が先頭に立って言論の自由のために全力を尽くしてください。  最後に。私はNHK放送に青春の情熱を燃やした一人として心からNHK放送を愛したい。今、NHKの危機であります。私はことし国会二十五年を迎えますが、二十五年前の私の国会への立候補も言論の自由を叫ぶことが最大の動機でありました。同じ情熱の多くの人々の顔を、今ここで思い浮かべます。巨大となったNHKが巨大さにおごることなく、今回の事件を反省をもって乗り越え、権力や全力に惑わされない文化としての薫り高い放送を目指して奮闘されるよう全NHKに要望して、質問を終わります。
  34. 亀井久興

    亀井委員長 次に、阿部未喜男君。
  35. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 大臣は二度目の入閣で、おめでとうございます。私は、まず最初に大臣に対して、就任以来の大臣の一連の言動並びに先般の所信の表明等についてお考えを承りたいと思います。  まず第一点は、三権の分立、とりわけ立法府と行政府とのかかわりについて、大臣がどうお考えになっておるのか、承りたいと思います。
  36. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 大変理論的な問題を提起されたわけでありますが、立法府と行政府、相協力していかなければならないときもあるし、お互いそれぞれの行き方というものを監視したり牽制したりする場合もあると思います。  しかし、立法府にしても行政府にしても、国民信頼があって初めて健全に機能し得るものでありますので、立法府の者も行政府の者も、常に国民信頼を得るような行動をとっていく必要がある、そういうふうに考えております。
  37. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 私は、立法府と行政府のかかわりは、憲法六十六条に規定されておる「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」これが立法府と行政府のかかわりだと思っておりますが、違いますか。
  38. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 憲法に規定しているところ、それは正しいことだと思っております。
  39. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 したがって、大臣のおっしゃる、立法府と行政府は互いに切磋琢磨してとか、そういう関係ではないと私は思っております。  多くの学説はありますけれども、例えば「行政法辞典」、これは松村さん、山内さんの編になっておりますけれども、その中の解説にも、あるいは宮澤先生の「日本国憲法 コンメンタール篇」についてもいろいろ、内閣は連帯して責任を負うということについての解説があります。一例だけ読み上げます。大体似たような解説ですけれども、宮澤さんの文を取り上げてみましょう。こうなっております。   「国会に対し……責任を負ふ」とは、内閣が行  政権の行使に関し、国会または各議院によって  批判その他のコントロオルを受ける地位に置か  れ、国会各議院またはその議員に対して、そう  したコントロオルを実効的に行うべき各種の法  的手段がみとめられていることを意味する。もう一つ申し上げましょうか。  国会または国会議員は、内閣の行政権の行使に  ついて、有効に批判し、これをコントロオルす  ることが、可能ならしめられる。内閣が国会に  対してかようにその批判を受ける地位に置かれ  ていることが、本項にいう「内閣は、……国会  に対し……責任を負ふ」ということの意味であ  る。こういうふうに大体学者は解説をしておりますが、どうでしょうか。
  40. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 私、学者ではありませんので、そういう定義というのはよくわかりませんが、今説明されたことでいいんじゃないでしょうか。答弁になったかならないかわかりませんが、そういう学問的な学説について、私自身、これ、なるほどなと今拝聴さしていただいたわけであります。
  41. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 行政機関の長が、なるほどと拝聴したではこれは困るので、立法府と行政府とがそういうかかわりにあるということを十分御認識をいただきませんと、行政に当たっての責任も明確になってこないと思うのです。  さて、内閣は連帯をして責任を負う、その内閣の中のあなたは一員、行政機関の長を仰せつかっておるわけですが、連帯した内閣と一行政機関の長との関係はどうなるのでしょうか。
  42. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 その内閣の閣僚の一員として行政執行に責任を持って当たることだと思います。
  43. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 これは一々申し上げなければならない。大変乱もおっくうですけれども、内閣法の三条に「各大臣は、別に法律の定めるところにより、主任の大臣として、行政事務を分担管理する。」したがって、これはまさに連帯の責任ということになると思うのですけれども、国家行政組織法の中には「総理府及び各省の長は、それぞれ内閣総理大臣及び各省大臣とし、内閣法にいう主任の大臣として、それぞれ行政事務を分担管理する。」こう定められておりますから、したがって、あなたは内閣の一員として、あなたのやったこと、言っておることについてはその責めを負わなければならない、こう思いますが、どうです。
  44. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 どのような規定があるか、私、今定かに調べておりませんのでわかりませんが、私の言ったことについては政治家として責任ある態度をとって。いきたいと思っております。
  45. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 今私が伺っておるのは、政治家小泉純一郎さんではなくて、行政機関の長としてどういうことが求められ、どういう責任があるのかということをお伺いしておるのです。あなたは政治家と言えば何でも通ると思っているかもわからぬけれども、政治家の中でも、行政を預かる行政機関の長の負う責任はおのずから別のものがあります。それをどう思いますか。
  46. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 行政の長として責任ある態度をとっていきたいと思っております。
  47. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それでは、あなたは行政機関の長として国会のコントロールを受け、国会の意思を尊重して行政の執行に当たらなければならないと私は考えますが、あなたはどう考えますか。
  48. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 もちろん、あらゆることが国会の了承を得なくては遂行できませんので、そういうことでいきたいと思っています。
  49. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それでは、あなたが国会の意思を尊重しておるかどうかという点について、具体的に一例を申し上げましょう。  平成四年の四月十五日、郵便貯金法の一部を改正する法律案が本委員会を通過いたしましたが、その際に附帯決議が付されました。その附帯決議の中には、「我が国の長寿社会の進展、国際化等に対応し、老人等の利子所得の非課税措置の拡充、国際ボランティア貯金の利子に対する税制措置の改善など、郵便貯金の利子に対する税制措置の改善・充実に努めること。」こう決議をされておりますが、この決議は国会の意思です。その国会の意思を大臣はどうお考えになりますか。
  50. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 その問題についていろいろ議論がありまして、議論の結果、若干の引き上げが認められたわけでありますので、その決められたことに従って行政を執行していきたい、そういうふうに考えております。
  51. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 若干の引き上げが云々ではなくて、冒頭申し上げましたように、あなたが大臣に就任されて以降の一連の言動について、私は、行政機関の長として果たして妥当なのかどうかということを質問申し上げておるのですけれども、今申し上げましたような国会決議の趣旨に従って政府部内におきましても、郵政省と大蔵省の間で協議が続けられておりました。いわゆるマル老の取り扱いについて協議が続けられておりました。その協議中にあなたが大臣に就任され、いきなりマル者の制度そのものにまで反対であるという意見を述べられました。  そこで問題の第一点は、憲法七十三条の法律を誠実に実行するという、これは内閣の責任があります。マル者という制度はこれは法律で定められておる制度です。これをまず忠実に実行するのが行政府の長としての責任です。内閣の職務でもあります。にもかかわらずあなたはこの法律に反対であるというふうにおっしゃったことは、立法府を侮辱するものであると私は思いますが、あなたはどうお考えですか。
  52. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 一つの政策の議論の過程で出てきた私の発言、言動なりが立法府を侮辱しているとかいうことなんですが、私は、そうではなくて、一つの政策論として議論の過程でいろいろ言ったことは事実であります。しかし、そういう発言が今委員が御指摘のような形で、実際国会の決議と違っているではないかと言われれば、確かに違っていたと思いますが、それについて国会で私に対してどう処分があるのかわかりませんが、議論の過程として言ったことでありまして、決められたことについては従いますが、過去の議論の経過についてどういう形でとられるかというのは立法府の方々にお任せするしかないのではないか、そういうふうに思っております。
  53. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 先ほども申し上げましたが、一政治家としての意見は大臣にもたくさんあるだろうと私は思います。いろいろな意見があるだろうと思います。  しかし、私がお伺いしておるのは、行政府の長として、対立法府とのかかわりにおいてはそういう勝手なことは許されないのではないか。大臣の職を離れたなら、それは政治家というのは何をおっしゃってもいいと思うのですよ。一政治家であるけれどもあなたは今行政府の長として責任を負っておられる。その行政府の長に負わされる責任は、法律を忠実に実行するとか、あるいは国会の意思を尊重するというのがあなたの責任として負わされておると私は思うのです。したがって、勝手なことをおっしゃるのは国会を侮辱し、あるいは国会の意思をじゅうりんすることになる。  その辺どうお考えになりますか。
  54. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 確かに、平成四年の附帯決議、マル老引き上げの附帯決議に対して、私は、大臣として相反することを言ったことは認めます。しかし、決められた法律は忠実に執行しなければならないということでやっていきますが、たまたま国会の附帯決議と大臣と違ったからどうするかと言われて、私としては、その附帯決議と違った意見を言った、後どうするかということは、立法府の皆さんに判断をゆだねるしかないと思っております。
  55. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 決まったことを守るのは、それは大臣でなくても守らなくてはならないのですよ。法で定められればみんな守らなければならない。当たり前のことです。  行政府の長として、立法府とのかかわりにおいて、決まったことは守らなくて、法律を忠実に守らなくてはならないし、国会の意思を尊重しなければならない立場にあるということを自覚しておられるかどうか、こう言っておるのです。
  56. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 一般論からいえば、国会の意思は尊重しなければならないと思います。  しかし、今具体的にその問題を指摘されまして、そのときの国会の意思と私の大臣としての考えが違った、これまた、そうあることではないと思いますので、かなり珍しいことではないか。ですから、これをやはり議論していく価値があるというならば、そうかもしれません。そこで議論していただくならば議論していただきまして、大臣の考えと国会の意思がこういう場合違っている、どうするのかということは、私は立法府の皆様方にその判断をお任せするしかないと思っております。
  57. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 私は、大臣が勝手に意見を述べて、おれの意見は国会の意思と違うと言うことは許されないと思っているのですよ。一政治家としてなら許される、先ほどからるる申し上げております。しかし行政府の長としては、三権の分立の立場から、国会の意思を尊重し、国会で決まった法律を誠実に守っていかなければならない。そういう立場にあなたがあることを自覚しておるかどうか、ここが問題なんです。
  58. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 一般論からいえば、国会の意思は尊重しなければならない、そういうふうに思っております。
  59. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それでは、先ほど申し上げましたけれども、いわゆる附帯決議という国会の意思に反対の意見を述べるということは、国会の意思を軽視することになると私は思うのですが、その点はどうですか。
  60. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 今、具体的な平成四年の決議に対して私が反するようなことを言ったということについて、軽視したといえば、そうかもしれません。ですから、そのことについて、極めてまれなケースだと思いますが、国会の意思と私の大臣としての意見が違ったわけですから、これをどう取り扱うか、それは皆さん方に任せるしかないと私は思っております。
  61. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 これは、その取り扱いは皆さんにお任せするというものではないのです。憲法その他の法令によって、行政機関の長たる者の守らなければならない点は明確に定められておるのです。守らないあなたが間違っておるのです。皆さんに議論してもらうというような内容ではないのですよ。これは憲法その他の規定によってそうなっておるのです、三権分立というものは。先ほどから学者の説も読み上げましたが、そうなっておるのです。  ただ、大臣、僕はこれはあると思うんですよ、財政上あるいは手続上にいろいろ問題があって国会の意思が行政にまさに直ちに実行できない、これはあり得るかもわかりません。しかし、大臣の姿勢として、行政府が公然と立法府の決定に反対をすることになるということは三権分立上あり得ないのだ、そこのところをしっかり踏まえてもらわないと困るのです。どうですか。
  62. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 その平成四年のある時期での決議と昨年十二月の時期での諸般の情勢、それぞれ予算編成期あるいは税制改正期等で違うと思いますが、決議した時点と何カ月たっていたかわかりません、その辺の諸般の情勢を考えて、私の意見と国会決議、附帯決議の意見と違ってどうなのか、このいわゆる国会の決議に大臣は違うではないかと言われれば、確かに違ったわけであります。ですから、そういうこともまれにあり得るな、しかし、そういう議論を経て一つの結論が出た、その結論に従っていくというのが大臣の仕事ではないかと私は思っております。
  63. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 まだ大臣わかっていないようですが、国会の意思は尊重しなければならない、法律は誠実にこれを守っていかなければならないというのは、行政機関の長たる者の責任なんです。大臣になる前ならば、あなたのおっしゃる一政治家ならば、それは何をおっしゃろうがあなたの意見です。しかし、今、三権分立の中で、あなたは行政府の機関の長になったのですよ。そのことに対する自覚がないのではないか、それを私は繰り返し聞いておるのです。
  64. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 一般論からいえば、国会の意思は尊重しなければならぬ、その自覚を持っております。しかし、いざ具体論に入りまして、すべてそういう意思を尊重できればいいのですが、たまたまそうでなかった。ですから、そのときに私はあえて違うことを言ったわけであります。これはやはりおかしいということであるならば、国会でも、そういう国会決議に反して行政の長が違う意見を言った、これを問題にするというのもいいではないかと思っております。
  65. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 問題にするかしないか、これはさっき言ったように、手続としてはいろいろその責任を問う手続があるのです。コントロールする手続があるのです。例えば小泉郵政大臣の不信任案を提起するとか、手段はいろいろあるのです。あるけれども、その前に、私は、行政機関の長たる者はかくなければならないというふうに定められておりますよ、そのことは自覚しておりますかということを聞いておるのです。あなたがあくまで、おれはそんなことは従えない、大臣として従わないとおっしゃるなら、まさに行政機関の長と立法府の意思が違うわけですから、あなたを信任するわけにはまいらないかもしれない。しかし、私は、あなたをコントロールする手段として不信任案を出すとか出さないとかいう前に、あなた自身が行政機関の長としての心構えをもっとしっかりと持ってもらいたい、それを申し上げておるのです。
  66. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 再三申し上げておりますが、一般論として、国会の意思というものは尊重しなければならない。たまたま、本当にたまたまだと思うのです、その国会のいわゆる決議と違うことを言ってしまった。それは確かにおかしいと言えばおかしいと言えるかもしれません。国会でも問題にする価値あることかもしれません。一般論としては国会の意思を行政の長として尊重しなければなりませんが、そういう具体的な問題について違ったということで、初めてのことだということで一つの議論を提起して、どういうような判断が下されるのか私はわかりませんが、これはやはり少しく議論する価値ある問題かな、そういうふうに考えております。
  67. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 あなたがそうおっしゃるなら、いずれ公の場において議論しなければならぬでしょうけれども責任をとる、コントロールしなければならぬかもわかりませんけれども。  あなたも御承知でしょう。例えば立法府が議員立法というものをおやりになりますね。議員立法ができたときに、行政府は必ずしも賛成でなくても、国会がそうお決めになったのですからこれを忠実に実行しますということを大臣は大体本会議の席上で答弁される。まさに今私が申し上げておるのは、国会がそういう意思を決めた、法律をつくった、そのことに対して、この法律はおれは反対だから、意見があるから従わなくていいとか、国会の意思を尊重しなくていいとかいうふうな行政機関の長というものがあったならば、それは三権分立が成り立たない。ここのところをよく反省してもらいたいと私は思っているのです。わかりますか。  それではその次に、さっきあなたいみじくもおっしゃった二点目に参りますが、行政の継続性について私は伺いたいのです。  行政の継続性という言葉がよく使われますが、行政の継続性は、社会通念としては定着しておると私は思うのです。行政府もよく行政の継続性という言葉を使います。ただ法制上は、これは必ずしも明文は見当たりません。けれども法律学者の間でも、行政は継続性を持たなければならない。もう法文読み上げませんけれども、例えば原田先生の「行政法要論」を読んでみますと、「行政行政法」の中に「行政の総合性、継続性、合目的性を維持しつつ」という解釈がありますね。それからもう一つ、これは田中先生の「法律学全集」の中に出てくる言葉ですが、「行政は、全体として統一性を持った継続的な形式的国家活動である」というふうに述べられております。  だから、継続性というものは行政にとっては必然的なものになってくるだろうと私は思うのですが、こういう行政に継続性が求められておるということについて、大臣はどう考えますか。
  68. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 継続性を求められる、それはいいことだと思っております。
  69. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 いい悪いではなくて、行政にはやはり継続性がなければいけないのだと思うのですが、単にいいことで、なくても構わないということですか。
  70. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 一般論からいえば、その行政の継続性と行政の見直しというのは逐次やっていかなければならないということだと思うのですが、その問題もやはり、ケース・バイ・ケースじゃないかな、ケース・バイ・ケースで当たっていくべき問題かなと思っております。
  71. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 大臣の答弁ははっきりしないから、なかなか時間がなくなってしまったけれども、大臣、やはり行政というものは継続性を持たなければ、国民行政を頼っていろいろなことをするわけにいかないのですよ。大臣がかわるたびにくるくる変わっておったら、それは国民は大変なことですよ。そこに行政の継続性が求められる。国会も行政考えを聞きながらしていくわけですからね。法案はほとんど行政の方から出してくるんですからね。その行政が継続性がなくなれば、例えば、前の大臣はぜひマル者の枠は拡大したいということを訴え、立法府もそのことについて一生懸命検討してきて、もう何代もそういうことが続いている、ある日大臣がかわった途端に、あんなものは要らないんだ、こういうふうに変わってしまわれたのでは、行政の継続性が失われてしまう。やはり行政の継続性というものを大きな柱として行政に当たる者は考えなければならない、軽々に行政の継続性を否定してもらうと行政の執行に大きな混乱を来すと思うのですが、どうお考えになりますか。
  72. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 一般論からいってまさにそのとおりだと思います。そして、今回のマル者の問題も、三百万から三百五十万に引き上げられたわけでありますので、その決定には私は従って、行政の長として執行していきたい、そういうふうに思っております。
  73. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 決定に従うのは当たり前だと私申し上げましたけれども、三百五十万円に引き上げることについても、あなたは必ずしも賛成でなかったというふうに聞いておるのですけれども、まあその議論はおきましょう。それは決定に従うというのは当然のことですから。  もう一つ大臣に聞いておきたいのですけれども、大臣は、。省益よりも国益を優先させる、こういう言葉を使っておられたようですけれども、国益と省益というのは一体どういう違いがあるのか、省益とはどういうものをいうのか、参考までに知らせてください。
  74. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 これは、大臣としても、政治家としても、また一議員としても、一つの政治姿勢を言ったものでありまして、よく局あって省なし、省あって政府なしということがいろいろな方面から指摘されております。これから二十一世紀の社会に向かっていろいろな問題が山積しております。国家全体のために何がいいのか、一省庁にとらわれないで国全体としてどういうことが必要かという基本姿勢を示したいために私は省益より国益優先という表現を使ったわけでありまして、ある場合には省のために一生懸命やることが当然国益につながってまいります。またある場合には、一役所の考えたこととほかの役所の考え方とが全く相反する場合もあります。そういう場合にはいろいろな調整が必要でありましょう。そういう場合も国全体のためにどういうことがいいかという視点を持って当たりたいという表現が省益よりも国益優先という形になったものでありまして、それを一々、省益は国益じゃないか、それはけしからぬと言われましても、まあ私の政治姿勢の端的な表現として御了解いただければと思っております。
  75. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 内閣一体の原理からいいましても、内閣は連帯して責任を負うという立場から考えましても、私は国益がすなわち全体の益であり、それぞれの省庁に省益というようなものがあると私は思わないわけです。だから、具体的に郵政省の省益とはどういうものとどういうものが省益であって、国益とはどういうものとどういうものが国益なのか、もう少し明確に分けて区分して話を聞きたいのです。  しかし、残念ながら時間がありませんから申し上げますけれども、私は、あなたの視点に欠けておるものは、国益というよりも国民の利益、国民の利益こそ国益である、そう考えております。対外交上国益という言葉は使われますけれども、真の国益とは、国民の利益がすなわち国益である。したがって、それが省庁のためにどうあろうと何がどうあろうと、結果的には内閣が一体になって国民の利益を守っていく、国民の利益になることをする、それが国益だと私は思っているのです。それをあなたが、国益があって省益があって地方益があって、あなたこうおっしゃいますけれども、あなたの概念の中には、内閣一体の原則が全然でき上がっていない、それから国民の利益という視点が全然欠けて、国益だとか省益だとかいうところにとらわれ過ぎておる。私は、国益は国民の利益がすなわち国益である、こう思っていますが、どうですか。
  76. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 国益とは国民全体の利益のことであります。
  77. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 そこだけ私と一致しました。国益は国民全体の利益である。その下に内閣一体の中で省益などというものがあると僕は思っておりません。思っておりませんが、あなたには言い分があるのでしょうから、いずれまたこれからしばしば議論する機会がありましょう。  時間がなくなりましたが、官業は民業の補完に徹すべきである、こういうことをあなたはおっしゃられました。この官業は民業の補完に徹すべきなどというのは、かつて臨調のときに、貯金が非常に郵便貯金にシフトするということで、金融の分野における官業のあり方というような懇談会をつくりましたよね。中曽根さんがお茶飲みの会をつくったわけですよ。これはそのときに出てきた言葉なんです。  しかし私は、結論だけ言いますけれども、官業がいいのか民業がいいのかということは、それが利用者国民の利益にいずれがいいのかということであって、官のやる方が国民の利益によければ官がやればいいのであって、民がやる方がよければ民がやればいいのであって、民業を圧迫するからとか民業の利益を侵害するからといって国民の利益がなおざりにされてはならない。あくまでも原則は、官であろうと民であろうと国民の利益を守っておるのか、国民の利便に供されておるのかどうか、そのことが官民を分けるときの基本だと私は思いますが、どうですか。
  78. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 官業でなければでき得ない仕事もあると思います。また、官でなくても民間でできる仕事もあると思います。いずれにしても、これから自由経済を発展させるために、私の基本姿勢として、官業は民業の補完であるべきだという考えには変わりはございません。
  79. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 最後に、そのままで切られては私も困りますから、私は、あくまでも国民利用者の利益を守り、利便を守るために官がやるのがいいのか、民がやるのがいいかという選択があるべきであって、民業を圧迫してはいかぬとか、あるいは、官よりも民がやれることは民がやって官はやらぬでいいのだとか、そういう基準で物を判断するのは私は間違いだと思っておりますから、参考までに申し上げておきます。  大臣の答弁でなかなか暇が要ったものですから、残念ながら時間がなくなりました。せっかくきょうは放送協会並びに民放の皆さん、おいでをいただいて恐縮でございますが、最後一つだけ。  結局、民放連調査委員会で出された結論、これは立派なものだと思いますし、NHKの方も十分調査をされております。ただ、再発を防ぐということは、一遍あったことを二遍やらないということであって、三遍も四遍もやったらこれは再発を防ぐことにならないのです。そこだけは十分注意をして、その原因が視聴率を高めよとかいうところに置かれておることについても思いをいたされておるようですから、もう今度は繰り返さないように、二遍も三遍もあることは再発を防止したことになりません。再発防止というのは一遍あったら次はない、これが再発の防止だということに思いをいたして、先ほど来議論がありましたように国民文化の担い手でもありますから、ぜひひとつ頑張ってもらいたいと思います。  終わります。
  80. 亀井久興

    亀井委員長 次に、石田祝稔君。
  81. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 参考人の四名の皆様、大変御苦労さまでございます。いろいろとこれから質問をさせていただきます。御無礼がありましたら平に御容赦をいただきたいと思います。  今回、いわゆるやらせ問題ということで来ていただいていると思います。そのことで、私のマスコミに対する若干の所見をまず述べさせていただきまして、それから質問をさせていただきたいと思います。  私は、自分が大学院のときに若干マスコミ論等を勉強した関係で、真実と事実というものの違い、これはやはり、マスコミの業界にいらっしゃる方、テレビ界または言論界、活字の方を通して常にこれは自戒をしていかなければならないのじゃないか。それが一つの事実だとしても、またそれは切り取られた事実でありますし、また全体が、それが本当に真実をあらわしているかどうか、これは本当に、ある意味で言えば最後最後までわからないのじゃないかと私は思います。そういう意味で、真実と事実、これはやはり近づける努力を常にみずからの心に戒めながらやっていかないと必ずこれは乖離をしていく、その開きは大きくなる一万だということを、私はそのとき非常に感じました。ですから、質問の前に、この点はNHKの皆様また民放連の皆様もぜひ御理解をいただきたいと思います。  それから、私は、基本的には言論への政治の介入はすべきではない、このように思っております。ですから、本来でありましたら、きょうこういう形で来ていただくことがいいのかどうか、これは私はわかりませんが、せっかく来ていただけるということになりましたので、それらの点を、私の考えも踏まえまして、これからるる御質問をさせていただきます。  今回、特にNHKの方を先にお聞きをしたいのですが、「奥ヒマラヤ 禁断の王国・ムスタン」、正直私は見ておりませんでした。ですから、改めて今回、こういうことになりますよ、参考人として会長も来ていただきますよ、こういうことになったときに、お願いをしましてビデオを見ました。私は、正直申しまして、今までテレビカメラが入っていない、またそういうところで我々の知らない社会、また異なる文化、価値観に基づく社会があるということに非常に新鮮な驚きも実は感じました。しかし、私が去年の九月に、また十月の時点で見ておったら正直に素直に本当に思えたのでしょうけれども、実はいろいろな報道がされた後でしたので、どうしてもこれが、やらせの部分はどこかなと、どうしても目が行ってしまいます。そうすると、どうしてもそういう目で見てしまいがちになりますので、正直言いまして、関西弁で言うと、ほんまかいな、こういうことを実は思ったんです。これは「禁断の王国・ムスタン」を見せていただいての私の感想であります。  そして、そういう報道があった直後に、これもNHK番組で見たんですけれども、南極のペンギンの越冬して子育てをするという番組がございまして、私も実際それを見ていまして、これもやらせとちゃうかな、だけれども、ペンギンにやらせるということはないだろうな、そういうことも正直思ったりしまして、一つそういうことが起こったがゆえに、その番組だけではなくてほかの番組にも同じことはありやしないか、こういうことが実は私は一番危惧されることではないかと思います。  ですから、これが例えばドキュメンタリー番組だとか——ドラマでありましたらこれは問題ございません。ドキュメンタリーは問題ないと言ったらこれは語弊がありますけれども、これが広がっていって、例えばニュース、報道番組さらにまたいろいろな各種番組で使われる数字、そういうものにも、これは本当かな、いわゆる操作した数字を使っておるんじゃないか、こういうふうに思われたら、これはもう取り返しのつかないことになるんじゃないか。ですから、一つの今回のことによって今まで築き上げられてきたそういう信頼というものが大きく崩れ去りはしないか、そういうことを私は非常に心配をいたします。そういう点でこれから若干質問をさせていただきます。  まず第一点は、今回ビデオを見ましたときに、一九七七年から十余年間このムスタンに入国を希望してコンタクトをとっておった。そして昨年一月にネパール政府と交渉を開始、そして五月に世界で初、テレビ撮影が許可をされた。そのときに私が見たビデオの中でこういうふうにナレーションが入っておりました。ネパールとの友好関係をベースに入国を許可をされた、こういうくだりがございました。ということは、今回の問題は、いわゆるネパールとの友好関係にもひびをいれかねないのじゃないか。友好関係のあるがゆえに、NHKが世界の多数の放送局の中で初めて入った、日本放送協会として初めて入った。逆に今回のことで外交の上でもひびを入れはしないか。  これはオオカミの問題でもそうであります。このオオカミの問題も、日本とネパールの友好のために日本に運べないかということで運んだというふうにも聞いておりますが、この点、会長としてどのようにお考えでしょうか。
  82. 川口幹夫

    川口参考人 私どももそのことを一番懸念をいたしました。日本とネパールということで言いますと、この番組一つの契機になって友好関係が成立する、もっとよくなるというふうなこともあろうかと思っていましただけに、これが逆転してかえって不信感を高める、ネパールの方々に、日本は、日本人は信用できないというふうに言われたら、これは本当に困った国際上の問題であろうというふうに思いました。  今回のことがわかってからネパールの方には陳謝をいたしまして、現在のところ向こうの方もわかったというふうな回答をしてくれておりますけれども、今後とも私どもはネパールとの親善関係をさらに深めるべく努力をしてまいろうと思っております。
  83. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 それでは、具体的にどのようなことをお考えなのか、今お考えがありましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  84. 川口幹夫

    川口参考人 当然のことながら、いわゆる口頭または文書による、私どもの中にネパールとの親善を傷つけるような意図は全くなかったということをきちんと先方にお話しをして、御納得をいただきたい、さらには番組の方でも、もし許されるならば、新たな体制、新たな考え方で番組をつくることもやってもいいというふうに思っています。
  85. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 ちょっと質問が、予定したのが順番が違いましたので、改めて質問いたしますが、これはNHK民放郵政省にお伺いをします。  いわゆるやらせということについて、どのようにその定義を考えていらっしゃるのか。順番は結構ですが、それぞれお答えをいただきたいと思います。
  86. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 放送法にはやらせという言葉はないわけでございます。放送法の中で申し上げますと、放送番組の編集に当たりましては、「報道は事実をまげないですること。」という規定がございまして、この規定に基づいて私ども判断をしているところでございます。
  87. 川口幹夫

    川口参考人 いわゆるやらせという言葉が大変大きな流行語のようになりましたけれども、私どもは、例えば事実と異なるとか表現が行き過ぎというふうな分類をいたしまして、この問題を定義いたしております。  ただ、今回の反省点の一つとして、過剰な演出、それから許される再現という問題がございます。先ほど先生おっしゃいましたように、事実と真実とは何だということになりますと、事実をそのまま描いたらそれが真実を追求したことになるのか、あるいは、何らかの表現をやったことによって真実に迫ることができればそれは真実追求の手段として許されるんじゃないか、そういうドキュメンタリー論もございます。したがって、これが十分な議論が行われないままに個々の制作者の判断に任せきりになってしまったというところがあるんじゃないかというぐあいに思っていまして、このような問題につきましては、今後放送現場倫理に関する委員会というものを設けまして、十分に現場的に討議をしていきたいと思っております。
  88. 松澤經人

    松澤参考人 民放連松澤でございます。  一口にやらせという言葉が使われるわけでございますけれども、やはりちょっとあいまいと申しますか、中身は、演出あるいは事実の再現、あるいは誇張だとか虚偽だとか捏造だとか、いろいろな言葉が考えられるわけでございます。テレビ画面をつくっていく場合にある程度避けられないものもあろうかと思うわけでございまして、例えば写真を撮影する場合に、もう一度握手してくださいということは日常よくありますし、またテレビでも、おいしそうに食べてくれとか笑ってくださいとか、広い意味ではこれもやらせというのかもしれませんが、こうしたことすべてがこれ非難されておるのかというふうには思わないわけでございます。この報道とかドキュメンタリー、本質的な部分のやらせと、日常行われます演出上の問題、この辺は区別して考えてしかるべきというふうに思うわけでございます。そうしたドキュメンタリー番組あたりで、本質に触れる部分を捏造したものと、事実をもとに再現してもらう場合など、いろいろあろうかと思います。  だから、どういう場合にそれが許され、またどのような場合は許されないのか、じゃあどこにそういう線を引くんだ、この辺が大変難しいところでございまして、この機会にこうした点を十分掘り下げてみる必要があろうというふうに私ども考えておるところでございます。何よりもニュース、ドキュメンタリーは事実を伝えるということが基本だろうと思います。その事実を伝えるということを基本検討を行いまして、何らかの目安と申しますか、指針というものがそこで生まれればというふうに思っておるわけでございます。  やらせについては、何が悪いのかを明確にしておかないと、やらせをやめようというだけではなかなかこの問題は解決しないのではないか、そういうふうに思っておるところでございます。
  89. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 郵政省NHK民放連、それぞれお伺いをしましたけれども郵政省はやらせという定義はない、これはまさしくそのとおりであります、そういうのがあったら人ごとなわけですから。  ちょっとお聞きをしましても、やらせということも、巷間これはもう一つの価値を持った言葉になりました。いわゆる過剰演出とかそういう言葉でくくれない、やらせという一言で、もうマイナスのレッテルが張られるような言葉になってしまいました。これは非常に残念なことかもしれませんけれども、やはり放送の送り手の方がある意図を持って、真実真実ではないところに誘導する、そういう意図を持ってやったことになろうかと私は思うんですね。ですから、これは定義を決めることがいいのかどうかわかりませんけれども、やはりある一定の考え方というものを明確に打ち出していかないと、これは演出自体がどんどんやらせだ、やらせだということで、もう本当のニュース番組しか提供できなくなるんじゃないか、こういうふうなおそれも出てくるんじゃないかと私は思います。  ですから、ここのところは同じ放送業者として民放NHKもともに、ちょっとそこのあたりを御自分たちで整理をされて発表されるようなお考えがあるかどうかだけ、どちらからでも構いませんが、お伺いしたいと思います。
  90. 川口幹夫

    川口参考人 今回の問題が起こりましてから、私どもも直ちにその作業にかかっております。それで、番組制作者の中には、先ほど申し上げましたが、毅然とした制作者の倫理がなければいけないと思うのですが、そういうものがありましても、いざ表現をするという場合にはいろいろな問題に逢着いたします。そういういろいろな問題をできるだけ具体的に示す必要があるのじゃないかということで、NHKでは今、放送番組制作基準ハンドブックというのをつくりまして、その中に幾つかの点を実例を入れながら、はっきりした制作者の倫理基準の道しるべにしたい、このように思っております。
  91. 桑田弘一郎

    桑田参考人 冒頭に先生がおっしゃいましたように、ドキュメンタリーの場合、事実を再構成して真実に迫っていくという場合に、例えば握手してくださいとか、あるいはどこか歩いていたという場面を再現するとき、それが真実に迫ろう、事実に迫っていこうという限りないその努力、情熱があれば私はいいと思うのですけれども、それを、やらせはここまでいいんだという許容範囲を決めていくというこれからの検討方法は私はとらない、とってはならないと思っています。逆に、ドキュメンタリーを再構成する場合、できるだけやらせの範囲を狭くして、真実に近づいていくという努力マスコミ人としてやらなければならない。  そのために、理屈ばかり言っていてもらちが明きませんので、民放連といたしましては、この問題が起こった以降、社団法人であります番組制作者の団体、ATP、いわゆる全日本テレビ番組制作者連盟から民放連事務局の窓口がいろいろお話伺いまして、そのいろいろな具体的指針を今検討中でございます。そしてその検討をもとに、NHKの側とさらに協議をして新しい対応策を構築していきたい、かように存じております。
  92. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 続きまして、これは川口参考人にお伺いしたいのですが、放送法第四条それから第四条の二項、これについて内容を御存じでしょうか。
  93. 川口幹夫

    川口参考人 「真実でない事項の放送をしたという理由によって、その放送により権利の侵害を受けた本人又はその直接関係人から、放送のあった日から二週間以内に請求があったとき」は、放送事業者は、遅滞なくその訂正放送をしなさいという条項だと思います。
  94. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 それは第四条の一項でありましで、二項は、「放送事業者がその放送について真実でない事項を発見したときも、前項と同様」であります。ですから、直接関係人から請求があった、なしてはなくて、事実を知った日から二日以内に訂正放送をしなくてはならない、こういうことであります。  NHKとして今回の「ムスタン王国」の訂正放送をされたのはいつですか。
  95. 川口幹夫

    川口参考人 確認がおくれまして済みません。二月四日の夜でございます。
  96. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 そういたしますと、ここの放送法に載っているように、逆に言うと、「真実でない事項を発見した」のは、二月二日ということですか。
  97. 川口幹夫

    川口参考人 二月二日に新聞からそういう連絡がありまして、私ども、直ちにその指摘された幾つかの事項について調査をしました。六つについては明らかに事実と違うということがわかりましたので、二日以内ということで四日に放送したわけでございます。
  98. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 私は、ずっと一連の新聞報道等から時系列的にいろんな出来事を追って全部書き上げてみました。そういたしますと、九月三十日に第一回放送、十月一日に第二回放送、そして十月下旬ごろ、ある新聞によれば十月二十六日ごろというふうに書いておりますけれども、同行したスタッフから内容についての疑問が担当部長に出されておった、こういうことが言われておりますけれども、そのことは御存じでしょうか。
  99. 川口幹夫

    川口参考人 知っております。  第一集というのが九月三十日に放送され、第二集は十月一日、その直後に取材スタッフの一人が担当のチーフディレクターに、放送内容が事実に反するではないかという抗議をいたしました。それを報告を受けましたチーフプロデューサー、これは管理者でありますけれども、それと部長は、十月下旬にその事情を聞きました。そして、その事の重大性を実は認識するに至らないで、総集編ではコメントを手直しすればいいのではないかという判断をして、十二月三十一日に再放送したということでございます。
  100. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 十二月三十一日に、朝七時十五分から七十五分間、総集編を放送しております。その際に、いわゆる問題部分をカットして再編集をしたということにいろんな報道記事を読むとなっておりますけれども会長参考人側自身は、カットしたのは単なる編集上の問題であって、特に問題部分があったから外したとかそういうことではない、ですから、外されている部分に、この総集編でカットされた部分に今回問題になった部分はなかった、単なる、時間を縮めるためだけのものであった、こういうふうにお考えでしょうか。
  101. 川口幹夫

    川口参考人 決してそういうふうに考えておりません。つまり、スタッフの中からそういう抗議が出て、チーフプロデューサーもしくは部長がその内容検討した、その段階で事の重要性に気がつくべきであったと思います。それを、重要性に気がつかないで、重大さに気がつかないで、結果としては、一部コメントを手直しをしたり、あるいは問題のあった箇所をカットしたりすることで総集編を流せばいいというふうに考えたことは、非常に大きな誤りであります。これについては、管理責任を問われても、私は仕方がないと思っております。
  102. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 そういたしますと、この部分がまさしく問題があってカットをした。問題があるということを認識をしておったけれども、カットすればいいだろう。ですから、訂正放送するという考えは全くなかったわけですね。  それで、二月三日の二時に川口会長は記者会見で陳謝をされて、こういうふうに言われているというふうに聞いております。放送前に修正が可能だった、こういうコメントが出ておりましたけれども、これはそういうことをおっしゃいましたか。二月三日の二時の記者会見で、内容についてだと思いますが、放送前に修正が可能だった。
  103. 川口幹夫

    川口参考人 確実にそのような言葉で申し上げたかどうかは記憶にありませんが、少なくとも総集編を放送する前の段階で以上の事実がわかっていたわけですから、それは何らかの措置を施すべきであった。そこがつまり素通りにされて、チェック不能のままで再放送も出たということについて申し上げたと思います。
  104. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 そういたしますと、二月二日以前にやはり真実でない事項があったということを認識をされておったのではありませんか。
  105. 川口幹夫

    川口参考人 先ほども申し上げましたけれども、私が知ったのは二月二日の夕方でございます。
  106. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 これは、私は非常に大事な問題だと思います。それは、NHKとして知っておったかどうかということが、会長個人までが知っておらないとNHKとしては承知しなかったということになるのですか、そうすると。NHK会長たる川口、私が知らないものはNHKとしては知らないんだ、ですから、放送事業者としての真実についての事項は、まだ私が知らない限りは知らない、こういうことでしょうか。
  107. 川口幹夫

    川口参考人 そうは申し上げておりません。NHK番組は、やはり最先端のチーフプロデューサーあるいは部長というところが全体の編集の権限、責任を持っておりますから、そこの段階でやはりNHKとしての対応を決めるべきであったと思います。
  108. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 そういたしますと、私は率直な感じとして、これは放送法違反ではないか。この第四条第二項の「真実でない事項を発見したとき」、これはやはりもうちょっと手前の時期が実はそうであって、少なくとも十二月三十一日の放送をされる前にこれは訂正をして、そしてそれに引き続いて再放送されるなり編集をされた番組放送すべきではなかったか、私はこのように思います。  これについてはもうこれ以上申し上げませんけれども、とにかく組織としてのNHKということでありましたら、これは担当部長が知っていたということは、担当部長は多分管理職だろうと私は思いますから、ある責任の一端、やはりNHKとして十月末の時点で組織としては知っておったと言われてもやむを得ないのではないか、私はそのように判断をせざるを得ません。  それから、二月十七日のNHKムスタン取材調査報告がまとまりました。これは時間がございませんので私は郵政省にお伺いをしたいのですが、郵政省、いろいろとおっしゃっております。二月四日にNHK会長小泉大臣、森本事務次官に陳謝に来られた。そのときに事務次官は、事実関係が解明されてから処分検討したい、こういう旨の御発言をされたというふうに伺っておりますけれども、まず、これは事実でしょうか。こういう発言があったということは事実でしょうか。
  109. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 確かに、会長郵政省にお見えになったのは事実でございます。その際の発言としていろいろ新聞に出ておりましたけれども、事務次官の発言等々をお伺いしますと、何らかの措置を講ぜざるを得ない。行政処分という明確な形で言ったとは聞いておりません。
  110. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 十七日にもう結果が発表になりましたが、それに基づいて何らかのことをお考えになっていらっしゃいますか。
  111. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 私どもも、現在までに判明いたしましたNHK検討調査結果については一通り伺っておるところでございます。さらにその中身について詳細について今事情を聴取いたしておりまして、その結果を受けましてから私どもとして必要な措置を講じていきたい、かように考えております。
  112. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 もう時間がございませんので、最後に大臣にも聞こうと思いましたけれども、やはりこれはまずい。本来こういう場で、参考人の方に来ていただいて放送行政について大臣の、郵政省責任者である大臣から答弁をいただきますと、これは最終回答みたいになりますから、私はあえて求めませんけれどもNHK会長さん、民放連会長さんもお見えになっておりますので、こういうところへ出てこないようにぜひしてもらいたいと思うのです。NHKの予算で審議をするので来ていただくのは、これは前向きの部分もありますけれども、どうも後ろ向きの感じがしてなりません。しかし、これは現在放送業界なりマスコミ、マスメディア等が抱えておる大きな問題のあらわれであろうかとも思いますので、またこれから私の後にお二人の先生質問されると思いますけれども、ひとつ大きな教訓としてぜひ生かしていただきたいというふうに私は思います。  参考人の方には、大変失礼な君もあったかと思いますけれども、ぜひこれは御容赦をいただければと思います。  会長、何かありましたら……。
  113. 川口幹夫

    川口参考人 先ほどの、この事実を認識して訂正放送の日がおくれたのはNHKの怠慢ではないかという御質問について申し上げます。  チーフプロデューサーと部長は、問題点を把握したのはその総集編の編集に当たったときでございます。事の重大さの認識に欠けまして、スペシャル番組部長、その上司でございます、それから番組制作局長、それも上司でございます、そこにも報告をしなかった。そのために問題は現場レベルで処理をされまして、内容部分的手直しでとどまりました。このことはまさに部内の責任体制が機能しなかったということでありますが、CPと部長が訂正放送すべきだということに思い至らずに上司への報告を行わなかったということでございまして、NHKとしては放送法に言う「真実でない事項」があったと認定したのは二月三日であります。翌四日には訂正放送を行った、そういうことであります。
  114. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 それ以上私申し上げませんけれども会長、これは結果責任というのはあると思いますよ。それは知りませんでしたと言ってはっと下を切っちゃったら、それは終わりです。一切そしたらトップに上げなければ、組織としては知りませんでした、ですから責任はございませんということで終わってしまうんじゃないか、こういう危惧もございますので、ぜひ今回の件は反省の上に新しい視点で放送をやっていただきたいと思います。  以上、終わります。
  115. 亀井久興

    亀井委員長 次に、菅野悦子君。
  116. 菅野悦子

    ○菅野委員 私もNHKムスタン取材に関する問題でお伺いしたいと思うんです。  既に御指摘の方もありましたけれども、今回の問題の根底にあるのはメディアミックス視聴率競争という問題ではないかと思うんです。  まず具体的なことでお聞きしたいと思うんですけれどもNHKクリエイティブの契約で走行シーンを撮影することになっておりました日産の二台の車ですね。これは、いつ日本を出てインドのカルカッタに陸揚げされたのか。その後ネパールに持っていって撮影したのはいつか。そして現在はどうなっているのか。このことをお伺いしたいと思います。
  117. 堀井良殷

    堀井参考人 ムスタンの撮影に使用いたしました車は、平成四年の一月にレンタルをいたしました。これをインドに送りました。インドの取材に使うべく送ったわけでございますが、その後インドの取材が困難な状況が生まれまして、それをこのヒマラヤ・ムスタン取材に転用いたしました。ただ、入管に手間取りまして、実際の撮影は取材期間の終わりごろに行っております。  その二台はレンタルしたものでございますが、その車を自後どうすべきかということについて、レンタル先の方から現地で処分してほしいという話がございましたので、一台はネパールに寄贈し、もう一台は現在インドに置いてあるという状況でございます。
  118. 菅野悦子

    ○菅野委員 一連経過からはっきりしていることは、先にメディアミックスありきということではなかったのかなというふうに私は思うわけです。  千八百万もの契約も済ませて車は二月にはインドに入っていた。その後、取材地が変更される、つまり、企画の根本が変更されてもこの契約の方は継続をしていた。結果としてムスタン取材には、これはヘリコプターと歩きで入っておりますから、一切車は使っていない。その間この二台の車はどうしていたか。カルカッタの港に置いてあった。そして、ステッカーを張った問題のシーンの撮影につきましては、ムスタンでの取材が全部完了した後に取材チームがカトマンズ経由でカルカッタに向かって、車を引き取って、そしてムスタンとは関係のないこのインド・ネパール国境地帯のビルガンジからカトマンズに通じる道路で行われたということですね。それで、ちょっと今もお話がありましたが、要らなくなった車一台はネパール観光省、一台はインド人のコーディネーターにチーフディレクターがまあおまえにやろうということで上げたというふうに私ども聞いているわけです。  このように、ムスタン取材とは全く関係ない車の走行シーンがステッカーつきで番組では流れている。こういうことがあるわけです。この走行シーンにつきまして調査委員会報告では、番組構成上、ネパールとムスタンの地理的条件や気象条件を示すためにも導入部で必要なもの、こういうふうな報告になっているんですね。しかし、こうした経過を見るなら、番組内容とは全く関係なくて、日産との契約があったから車の走行シーンが必要になったということなのではないかというふうに思うわけです。  まさにメディアミックス先にありきということだったのではないかと思うんですけれども、その点いかがでしょうか。
  119. 堀井良殷

    堀井参考人 時間経過的に申しますと、このヒマラヤ・ムスタンの「NHKスペシャル」の番組が承認されましたのは平成四年の五月のことでございました。これに関するNHK関連団体の、いうところの二次利用計画、メディアミックス計画がつくられましたのは六月でございました。そして、この二次利用のビデオが自動車会社に販売されるということが確定しましたのは、放送終了後の十月でございました。私どもが企画文書あるいは契約文書の日付をたどった時間的な経緯は以上のようなものでございます。  それから、車の走行シーンが必ずしも取材上必要でなかったのではないかというお尋ねでございますが、確かに、取材のために荷物を運搬してムスタンに入るということのためには使っておりませんが、ネパールから出発するという状況、あるいは地理的な条件、気象条件といったようなものを土地柄として映像で描く、その導入部の風景の中で車の走行シーンを使ったということでございまして、このシーン自体について私どもは特に広告の意味を持つようなものではなかった、かように考えているわけでございます。
  120. 菅野悦子

    ○菅野委員 やはり御説明では納得いかないんですけれども、やはりメディアミックスという背景が相当大きいというふうに思うわけです。調査委員会報告には、このメディアミックスについて慎重な対応をしていくという方向を打ち出されております。今回の番組については、このメディアミックスに対する職員の理解が不徹底ということを原因に挙げていらっしゃる。これでは何だか現場の職員が理解していないのが悪かったということになるわけなんですけれども、私は、現場の職員の意識が問題なのではなくて、メディアミックスを追求してきた番組制作体制そのものが問題なのではないかということを強く感じるわけです。  この「ムスタン」のスタッフは、とにかく番組をつくるためには金を集めなければならないということで必死になっていたようですね。幾つかの出版社が、このNHKの「ムスタン」に協力を求められたというふうに言っております。一千万円出さないかとかいうふうに言われた社もあると聞きますし、これは出版界の常識外れの金額のようなんですけれども、そこへ行ったときにはNHKの一分間は電通で換算すれば四千万円に匹敵するんだ、だから一千万ぐらい安いんだというふうな話も出たやに聞いているわけなんです。  この件は確かに突出した面もあります。しかしやはり、NHK番組提案票というものにはメディアミックスの欄がありまして、番組提案の初期の段階から、メディアミックスがあるかないか、この有無をはっきりさせるという仕組みになっているわけです。これでは、金のかかる大型番組メディアミックスで金を稼がないと提案が通らない、だから番組をつくらせてもらえないという意識が生まれても仕方がないのではないかなというふうに思うわけです。  しかも、ほんの数年前までは、NHKではメディアミックスを最優先にするようなことが実際に行われてきた。その後随分その辺は訂正されているやに聞いておりますけれども、しかし、より多額の外部資金を取ってくることが、その当時は能力がある、仕事ができるというふうな評価の基準になっていたというふうなことも聞いているわけです。  調査委員会は、この方針が現場に理解されていなかったというふうに言っておりますけれどもメディアミックスへの方針に大きく変更があった、これを大きく変えだということが実際明確になってなかったのではないか。管理者も含めてこの方針の変更に確信がなかったのか、そうなのではないか。その背景には、穏便に事を進めたいという思いもあるのでしょうけれども、そういう弱点がこの場合、今回のこの「ムスタン」の問題で急浮上したのではないのかなというふうに思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
  121. 川口幹夫

    川口参考人 メディアミックスについては先ほどもお答えしましたけれども、私は就任以来何回かにわたって、このメディアミックスあり方、いわゆる協業という形での関連団体との仕事の仕方は、幾つかの点で非常に大きな問題を含むから、これは節度を持ってやること、そして、いずれ近いうちにこの問題については見直しをするということ言明してまいりました。そのことが行き届かないうちにこのことが起こってしまったわけですが、それは本当に残念でございます。  ただ、このメディアミックスという事柄について一つ考えられるのは、受信料体制だけではとてもNHKの将来は危ない、だから何とか副次収入を上げてNHK体制を受信者に迷惑をかけないようにやっていこうという精神でありましたので、相当大幅にこのことについての傾斜が進んだということは申し上げられると思うのです。ですから、これは、今後折あるごとに私は是正をしていこうと思っております。
  122. 菅野悦子

    ○菅野委員 今も会長がおっしゃられましたけれども、私も今度の事件を契機に少し調べてみたんです。おっしゃっていらっしゃるように、メディアミックスというのは受信料負担の軽減のためにというふうなことで推し進められてきた、そうおっしゃっておられたということのようですけれども、実際には、現実問題としてはそれほどこの方向というのは、収入が入るといいますか、率直な話、もうかるものではなかったのではないかというふうに思うんですね。  エンタープライズとかクリエイティブなどの関連団体というのは、アドバンスとしてメディアミックス権行使のための対価をNHKに前渡しをする、関連団体は前渡しした分以上にビデオ販売とか海外販売などで収益を上げるという仕組みになっているわけなんです。  しかし、実際にはNHK本体に前渡ししたアドバンス類を回収する、これはなかなか大変だった。そして、NHKエンタープライズの赤字の大きな要因も、実はこのアドバンスの払い過ぎということも言われているわけです。まして現在、バブルがはじけたということもありまして、メディアミックスによる収入というのはより厳しくなっているという状況だと思うわけです。ですから、結局、メディアミックス路線というのは当初もくろんだほど受信料軽減にも役に立っていないし、商業主義批判など、NHK公共放送としての信頼、これを傷つけただけではないのかなというふうに思うわけです。  ですから、メディアミックスによるNHKグループ全体の収入などについて、国民とか視聴者には今本当によくわかっておりません。それでNHK本体の予算、決算の中でも著作権料など副次収入としてはくっと大まかにあらわれるだけであるわけです。ですから、私、この際、メディアミックスによる収入構造なども明らかにした上で功罪をはっきりさせるべきではないかというふうに思うわけですけれども、この点の御見解はいかがでしょうか。
  123. 川口幹夫

    川口参考人 基本的には先生のおっしゃるとおりの方向で進めたいと思っています。  ただ、メディアミックスの今後についてどう考えるかという問題がありまして、私どもはまず節度のある事業展開を行う。そのためにはどうすればいいのかといいますと、協業推進委員会というのがあるのですが、これがもっと有効に機能するように、つまり番組制作メディアミックス事業の分離を検証する、あるいはチェックする、そういうことをやらなければいけないと思っています。  それから、放送前の試写において検証作業を一層徹底する。つまり、メディアミックスのために番組制作が曲げられているということがないのか、そこはきちんと検証しなければいけない。そして、もしそういう疑いがあるならば、それは放送をしないというぐらいのことをやるべきではないかと思います。  それから、先ほどおっしゃいましたように、経営の指針というのが変わったわけです。私は既にもう一年半前から変わったことを言っておりますが、それを徹底していなかったとおっしゃるのは全くそうであろうかと反省いたします。公共放洪の職員としての正しい認識、それを研修させることにいたしたいと思います。  それから、このメディアミックスというやり方について申し上げますと、例えばメディアミックスということで一番我々が範としたのは、BBCというイギリスの放送局があります。ここが、番組の成果を海外に販売するとか、あるいはビデオにするとか本にするとかいう形では相当大きな範になっているのですけれども、ここが持っていたやり方に少し惑わされているのではないかという気もいたしまして、もうちょっと私どもは、日本なりのあり方、そして、今日の現代の日本におけるメディアミックスあり方という点について、細かい分析をし、検証をし、そしてきちんとした考え方を出して、それにのっとって誤りなきを期したい、こう思っております。
  124. 菅野悦子

    ○菅野委員 それで、今後こういう事件を起こさないようにということが大事だということになるわけですけれども、そこで、今回の事件を契機にチェック体制強化ということが言われているわけですね。  今度の問題でも、番組放送直後、十月下旬にも担当の部長には進言があった。にもかかわらず、これが無視されて再放送が行われた。番組の試写の段階でも意見が出たというふうなことも聞いているわけなんですけれども、いずれにいたしましても、こうした経過を見るなら、上からのチェック体制強化というよりも制作現場の職員意見、これが正しく反映されない体制にこそ問題があったのではないかな、ここにこそ深刻な教訓があるのではないか。もっと風通しをよくして、上から押さえつけるのではなくして下からの意見が十分に上に届くというふうな方がむしろ今重要なのではないかと思うわけです。  調査委員会報告も出されました。NHKとしては信頼回復のために真剣に取り組んでいるということだと思うんですけれども、同時に、この調査委員会調査を含めてNHK内では、今回の事件で他のマスコミに情報を流したのはだれだと犯人捜し的なことも行われていたかのような話も聞いているわけなんですね。最初に報道した朝日の記者にいつ会ったのか、何を話したのかというようなこととか、いろいろ調査委員会も聞き回ったということも聞いているわけなんですけれども、そういう魔女狩りのようなことが今回の事件の真相を解明するということであれば、これはちょっと無関係であるばかりか、逆に現場を萎縮させるだけでありますし、再発防止という点からでも、こういうことをもしやっていくということであれば、まさに逆効果だなというふうに思うわけです。  ですから、さっき言いましたように、この件で最初にいわゆるやらせの事実を知ったのはNHK自身なわけですね。しかし、それを放置して結局そのことを取り上げようとしなかったというのもNHKなわけです。だから、現場のスタッフがきちんと物が言えて正当な意見が反映される体制と雰囲気をつくることがそれこそ再発防止ということになるのではないかというふうに思いまして、この間のいろいろな調査の具体的な事実の中で若干の行き過ぎもあるのではなかろうか。そういう点では非常に残念に思っている次第でございます。  その点で、再発防止策も提案されておりますけれども、その基本は、繰り返し言っておりますけれども、上からの管理強化、そういうものでは問題は解決できない、現場の声が反映できる体制こそが必要だというふうに思うわけです。それが今回の教訓ではないかと思うんですけれども、その点は、いかがでしょうか。
  125. 川口幹夫

    川口参考人 私ども全く、現場を上から圧迫しようとか何らかの制約を加えようとかいうふうなことは考えておりません。  先ほども申し上げましたが、やはり制作の現場でいろいろな議論が自由に行われ、そして番組に対する相互の意見が通るような、そういう組織でなければいけないと思います。そして、自由濶達な論議の中で自然に一つチェックがなされていくという形が一番望ましいと思っております。  それから、単にできたものを試写をやって、あそこはどうだ、あそこはどうだというふうな形でもってチェックするという、いわば検察的なやり方よりも、むしろ事前にそういうことが起こらないようにどういう体制をつくるべきか、どういうチームワークをすべきか、それから、各人がどのようなことをこの問題に対しては考えるべきかということを事前に指導するのがやはり一番いいことではないか。  だから、事前のいわばチェック体制というものも絶対に必要だと思っておりまして、とにかく放送番組というものは現場で働いている人たちがまず第一であります。その上で、組織がそれをうまく推進していく、あるいは適切なチェック機能を果たすという形がいいのではないか、現場第一主義ということを今後とも貫いていきたい、このように思っております。
  126. 菅野悦子

    ○菅野委員 民放連会長にもぜひお聞きをしたいと思うんですが、民放連放送番組調査会の「見解」も読ませていただきました。非常に重要な提言がされていらっしゃるというふうに思うんですけれども、今のテレビの状況を見ておりますと、本当にこういう方向に行くのかなということを残念ながら考えてしまう面もあるわけでございます。  特に、番組の外注で「制作にあたって、時間的、予算的に無理な体制がとられていないか」ということも検討と点検の対象になっているということなんですけれども、安上がりな外注と下請化ということが、この点では問題になって久しいわけでございます。このほかにも、調査会の提言では、人権の配慮とか取材のマナー、あるいは外注に当たっての責任の明確化ということなども早急に対応を図るべきだとしているわけですけれども民放連としてもぜひこの方向に進むという決意がおありかどうか、これをひとつお聞きしたい。  それからまた、外部委員からの意見でございますが、「見解」の附帯意見とされている中に、女性の人権に対する配慮という点がございまして、「性的な面をことさら強調するなど、興味本位な取り上げ方は女性差別にあたる」というふうにされているんですけれども、この点どうお考えになっているか、その辺をお伺いしたいと思います。
  127. 桑田弘一郎

    桑田参考人 放送番組調査会の「見解」は、もちろんテレビ局以外の有識者、経験者も参加しておられますけれども、同時に各局の編成局長クラスも参加しております。したがいまして、この「見解」は私ども自身の見解であり、つまりは決意披瀝というふうに私は受けとめております。  したがいまして、民放連といたしましても、これまでの番組調査会の結論を確実に実行していかなければならない。そのために、理事会その他放送基準審議会等、これまでもあらゆる機会を通じまして、文書、申し合わせその他で周知徹底を図っております。さらに、具体化については、放送基準審議会の執行委員と申しますか、実務機関としての倫理委員会で、いかにして具体化すれば一番有効かを今鋭意検討中でございます。  特に御指摘の、調査会では大変厳しい指摘がございまして、例えば今おっしゃいましたように下請という言葉がございましたが、これは、我々として絶対にこういう意識は持ってはならない、いわば番組制作のパートナーとして提携していかなければいけない仲間でございます。まずそういう意識も払拭しなければなりません。  それから、最後に御指摘がありました女性の問題でありますが、これも厳しい御指摘がございまして、例えば読売テレビ看護婦さん云々の件がございますけれども、あれも、看護婦さんという職業よりもむしろ女性としての興味に焦点を当てた番組ではないかという大変厳しい御指摘がございました。もしもかようなことがあれば絶対に許されてはならないことでございます。我々民放連番組の基準といたしまして、人権、差別問題は特に重要な問題として常に自戒しておかなければならない問題でございますが、その中でもちろん女性の性差別も厳にこれから戒めていかなければならない問題と考えております。
  128. 菅野悦子

    ○菅野委員 では最後に、郵政省の方にお伺いしたいと思うんですけれども一連のやらせ問題に対する郵政省対応は大変評判が悪いということを自覚していただいているかどうかということなんですね。  放送行政局長が、今後同様の問題が引き続き起こるようなことがあれば、放送停止など厳しい処分検討しなければならない、そういう具体的な言葉だったのかどうかは先ほど何かお話がございましたけれども、そういうような発言があったとかいうことで、毎日新聞などは「聞き捨てできぬ郵政の「警告」」というふうな社説を掲げたのを初め、新聞各紙から、言論、報道の自由の問題として厳しい批判を浴びているところでございます。  こうした批判を真摯に受けとめ、郵政省は、やらせを口実にした言論、報道の自申これに介入するようなことなどあり得ないと思うんですけれども、ぜひ、そういうことがあるなどと言われないようにしていただきたいと思うんですけれども、その点いかがでしょうか。
  129. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 ただいまの御指摘でございますが、私も、放送法の精神といたしましても、放送事業者の自覚と責任において放送番組の適正化を図るということを基本にしていることは十分承知しておりますし、やはり郵政省といたしましても、しかしながら放送番組編集の自由と表裏の関係にある社会的責任というものについても、放送事業者の皆さん方、深く自覚していただきたいという思いでいっぱいでございます。そういった点で、自主的な放送番組の適正化ということについて真摯な取り組み放送事業者みずからが行ってもらいたいと強く期待をしているところでございます。  私の記者会見について御指摘でございますが、私の真意は、今のようなやり方で続いていくならば、再発防止のためにより効果的な方法を検討せざるを得なくなるのじゃないかという趣旨で申し上げたのでございまして、いずれにしましても、放送番組の適正化は自主規制でやっていくということが基本でありまして、それを私ども放送事業者の皆さんに強く期待したいと思います。
  130. 菅野悦子

    ○菅野委員 本当にやらせなどという言葉、やはりこういう嫌な言葉ですし、こういうことが起きないように、NHKそれから民放連会長さん先頭に、ぜひ頑張っていただきたいということを心からお願い申し上げまして終わりたいと思います。
  131. 亀井久興

    亀井委員長 次に、中井洽君。
  132. 中井洽

    ○中井委員 大臣の所信も含めて、いわゆるNHKのやらせ問題に関連して質問したいと思いますが、時間が足りませんので、大臣の方はこの間やりましたし、どうぞ、放送行政局長さんだけお残りをいただければありがたい、このように考えております。  局長お尋ねをいたしますが、今回NHKがこういう調査結果を報告いたしました。これを受けて郵政省としてはどういう対応をおとりになるつもりか、お尋ねします。
  133. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 お答えいたします。  調査結果につきまして、私どもも一通りの報告は受けているわけでございますが、さらに詳細に現在事情を聴取しているところでございまして、その結果を踏まえまして、これまでこの種問題に対してNHKがどう取り組んできたのか、あるいは今回の問題のもたらした影響でありますとか、あるいは再発防止に対して、真剣に取り組むということをNHK会長も今るる申し上げておられますが、それの取り組み状況ども考慮しながら必要な措置を講じていきたい、かように思う次第でございます。
  134. 中井洽

    ○中井委員 放送法では、もちろん報道の自由表現の自由ありますからなかなか難しいことでありますが、真実に反した番組、そういうのをつくったときにはこれは放送停止処分というのができるのですか、できないのですか。あるいはまた同時に、従来は大臣の厳重な注意、これが一番重たいようでありますが、番組の取り消し命令、こういったことができるのかどうか、お考えをお聞かせいただきます。
  135. 木下昌浩

    木下(昌)政府委員 基本的な考え方は、先ほど申し上げましたように、放送事業者の自主規律ということでやっていくべきだというふうに思っております。  ただいま放送法の仕組みの話としてでございますが、放送法の三条の二におきまして、「報道は事実をまげないですること。」という規定がございますので、これに反する、事実を曲げて報道をしたということであれば、この放送法違反ということに相なるわけでございまして、それで形式論的にだけ申し上げますと、それが電波法七十六条において、この法律に違反した場合においては今おっしゃいましたような放送の電波の停波とかというような行政処分を行うことが法律上は可能になっているところでございます。  しかしながら、冒頭申し上げましたように、やはり放送番組の適正化という点につきましては自律に基づくということを基本的な考え方としてやっていくべきであると思いますので、そういう点でこの解釈適用につきましては慎重であるべきというふうに考えます。
  136. 中井洽

    ○中井委員 私もやらせというのはどういう区別なり定義をすればいいか迷うところでありまして、マスコミ関係の方にいろいろ聞きますと、やらせなかったら放送なんか一つもできないという過激なことをおっしゃる方も実はおられるわけでございますし、私どももいろいろな取材を受け、テレビに映してもらうときにはしょっちゅう、奥さんとお茶飲んでとかいろいろ言われておりますから、どこからどうなんだということをきょう議論の中で判断をしたいと考えておったわけでありますが、NHK会長民放会長を含めて、事実と異なるこういう今回の問題についての御認識をいただきました。私もこれ見させていただいて、まあやらせというか、捏造とうそじゃないか、そのように判断をいたしました。そういう番組ができ上がって放映されて、訂正放送はあったけれども、また処分はなさったけれども、どうして番組をあっさりと取り消してしまう、そこまでの対応NHKみずからおやりにならなかったんですか。
  137. 川口幹夫

    川口参考人 いわゆるやらせということでありますが、私、まずこのことについて一つお話を申し上げたいと思います。  イギリスのBBC放送で……(中井委員「いや、考えたのか考えていなかったのかだけ、番組を取り消してしまう」と呼ぶ)番組自体については、厳しい判断をしたということで、そのことを取り消しても意味がないと思っております。ですから、あのことについてはそのような判断をしているということを申し上げております。  取り消すというと、例えば放送自体がなかったことにするという意味でございましょうか。(中井委員「そうです」と呼ぶ)それは今のところ、放送はとにかくもう出てしまっておりますので、そのことについて私ども調査結果、それからその考え方、対応策というふうなものを出せばいいのではないか、そのように思っております。
  138. 中井洽

    ○中井委員 それではもう一つお尋ねいたしますが、この調査報告をお聞きになって——「NHKスペシャル」という番組、僕は実は見たことないんです。見たことないんですが、大変評判のいい価値の高いものだというこのムスタン王国の何とかというのを、数千万かけてやる価値があったのかなかったのか、ネパールのごく一部の。それはだれも行ったことないんでしょうが、日本人の大半はほとんどネパールなんか一生行かないんです。それをわざわざこれだけのお金をかけて撮りに行く必要があったのかなかったのか。そういう御判断検討、それも十分おやりになったのでしょうか。
  139. 川口幹夫

    川口参考人 いわゆるドキュメンタリー番組というものの中にいろいろな種類がございますけれども、例えばだれもなかなか行けないところ、そこをテレビで訪ねるというあり方はあっていい、特にムスタンのような今までほとんどテレビの前にその姿をさらしたことがないというところについては、そこにドキュメンタリーとしてやっていく価値は十分あったと思っております。
  140. 中井洽

    ○中井委員 もう一つ、この調査報告を見させていただきますと、いわゆる経理面からの報告一つも出ていない。私どもは要求していろいろな数字を見せていただいて、NHKの内部の費用というのはこんなふうに使うのかと、かなり実は詳しく聞かせていただきました。  しかし、それだけ御説明いただいても、例えば日産の販売会社から二台のレンタルをした、そしてレンタルのお金はこれこれだ、こういうことは教えていただいたけれども、その車二台とも向こうでやってきた、こんなことは言わない。レンタルというのは返すんですから。それなのに何でこんな金額を払ったんだということも私どもは聞かせていただいていない。あるいは、クリエイティブとNHKとの間でいろいろな契約がある。しかし、この契約外でフリーの写真家が一名行っている。この費用はだれが払っているんだ、全部これはNHKの中で払っている。こういうことについてもきちっと報告はない。  どうして経理面からの報告は出ていないのか。NHKはふだん経理のチェックというのはどこの部門がやるのか。今度の緊急調査委員会の中にはその専門家が入っていらっしゃるのか。そして、会長のところへこの経理面についてどういう報告が行ったのか。今回の事件の経理面の報告は行ったのか。お聞かせをいただきます。
  141. 川口幹夫

    川口参考人 経理については事実の調査と並行して進めております。ただ、今細かい数字については、私よりも堀井の方が詳しいので、堀井君から御説明申し上げようと思ったわけでございますが、いずれにしても、お金の問題というのは非常に重要でありまして、これは受信料を直接使うわけですから、その大事さを我々は身にしみて感じなければいけないと思っております。  そういう意味で、経理についても克明な調査をし、もし不審なところがあれば、これは直ちにそのことについて厳密な処置をとるべきだと思っております。
  142. 中井洽

    ○中井委員 私はそれはちょっとおかしい。これだけ先ほどからいろいろな議論の中でメディアミックス路線についてのいろいろな御批判がある。そういう中で、番組についてのいろいろな調査はお聞かせをいただき、報告として出ている。しかし、経理面からのものがちっとも出てこない。まだ調査中だ。ネパールまで行ってやっておいて、自分のところの内部の経理についてやらない。それは調査が片手落ちではないでしょうか。  ついでに聞きますが、例えば、このチーフディレクターという方は平成三年の六月にNHKへ戻られた。そして、今日までまあまあこの制作一本にかかっておった。間接費、どうだと言ったら、その方の間接費は一千万分だ、百八十日分だ、こう言われる。そうすると、この人はあと一年間ぐらい何をしておったんだろう。その人の間接費というのはどこへ行っておるんだろう。私どもはわかりません。そこらも含めて御調査をいただけるようにお願いを申し上げます。いつまでにやっていただけますか。
  143. 川口幹夫

    川口参考人 先生も御存じかと思いますが、番組をつくるということは非常にいろいろなケースがありまして、例えば今のディレクターでありますけれども、クリエイティブのときにクリエイティブで仕事をしており、こちらにも移ってまいりまして、また、そのときからずっと継続していたもの、例えばインド取材であります、こういうものをずっと調査をし、それからそれの渡航に向かって準備をしていた。これがいよいよ実現という段階で、向こうの政情不安からこれはできなくなった。そして、前から並行して、十余年間と言っていますが、温めておったムスタンの方に切りかえたということで……(中井委員「済みませんが、お答えだけいただけますか」と呼ぶ)はい。  そういうわけで、一人のディレクターが必ずしも決まった本数を年内に何本制作しなければいけないというふうにも言えない。そういうふうなものも含めて、NHKというものが番組の創造に対してある程度の人的な、あるいは財政的な負担をするのは当然ではないかと私は思っております。
  144. 中井洽

    ○中井委員 予算の審議にも非常に関係のあることでありますし、私どもも、NHKの内部の番組制作費あるいはその人員の配置、こういうことについて勉強させていただく絶好の材料だと考えております。ぜひきちっとした経理報告をお出しをいただきたい。委員長にもお願いしておきます。  それから、先ほどからの御議論の中で、会長の反省のお言葉に、常識の欠如、思い上がりがあった、私はそのとおりだろう、このように思います。それらを今後どういうふうにチェックしていくのか、お聞かせをいただきます。
  145. 川口幹夫

    川口参考人 テレビをやる、制作をする者は、決してみずからが一般の人よりも高い位置にあるとかいうふうに思ってはいけないと思うのです。それが一番初めに持つべき制作者の心構えではないかと思うのです。そのことをまず研修の際に徹底的に私はやりたいと思います。それから後は、実際にチームの中に入っていろいろな仕事を覚えていく段階できちんとした研修的なことが行われなければいけないと思うのです。それが、私に言わせると、少し現場研修というものが足らなかった。現場研修の中で、単に技巧の問題じゃなくて精神の面を多く入れなければいけないと思っておりまして、そういうことからまず始めます。
  146. 中井洽

    ○中井委員 聞かせていただけば、NHKは新人で研修をおやりになって、二カ月研修はある。後は昇進試験も何もなしだ。そして昇進されたら、それはそれの場での研修が少しある、こういうふうに聞かせていただいております。大変な影響力を持つ方々でありますから、やはり常識、幅広い知識、こういうのを持って報道していただく、このことが報道のレベルアップにもつながる、そして信頼にもつながると考えます。本当に、社会へ出て何の御苦労もしてない方が、マスコミということだけで大変な権威を持って報道される。これは、テレビはもう本当に今国民に影響力があるわけであります。そういう意味で、NHKさんもぜひそのことを認識していただいて、研修あるいは常識人としての当然の知識、行動、こういったものを備えつけるようにしていただきたいと思います。同時に、民放連会長さんにもお願いいたしますが、それぞれ各社違うのでありましょう。ここらの常識人としての研修、規則等をいろいろと読ませていただきますと、差別用語を使っちゃいかぬとか、性の問題についてはどう扱うかとか、暴力団はどうだとか、いろいろなチェック機構が入っています。しかし、事実と反する報道をしちゃだめよ、こういうふうなことを徹底的に教え込むというようなことも何も書いてない。もう当たり前だろう、みんなが事実を報道するだろう、こういう前提でお進めになっているんじゃないか、こんな感じがいたします。  そういう意味で、民放の中においても、NHKといろいろと打ち合わせをして放送業界全体として対応考えると言われますが、その中にぜひそういう研修とか勉強とか、そういうものを取り入れていただきたいと思いますが、いかがですか。
  147. 桑田弘一郎

    桑田参考人 おっしゃるとおりでございます。いろいろな管理体制、外枠をいかに整備いたしましても、肝心の放送の実際に当たる放送マンの精神が空洞化していては何にもならないことは御指摘のとおりでございます。各社それぞれいろいろなやり方はあると存じますが、今回の、特に昨年以来、各社とも研修にいろいろなやり方、組み合わせ等を考えてやっております。またそういう方向についても、民放連といたしましてもいろいろな面で訴え、要請をしております。
  148. 中井洽

    ○中井委員 私どもも、こういう問題が起こるたびに、あるいはいろいろなときに、番組の中身について当委員会等で議論するときに、報道の自由あるいは表現の自中国会が余り口を出すべきことではない、このことに一番気を使うわけであります。  同時に、それゆえに自主的な規制、チェック、これを絶えず点検していただかなきゃならない、このように思います。いろいろな規制やら内部のルールでチェック機構、十分ある、しかしそれが一向今回の場合でも、あるいはたび重なるやらせ事件でも働いていないというのは、やはりそのチェック機構の中にも、報道の自由、表現の自由上司といえどもチェック機構といえどもチェックをしてはだめだ、こういう発想があるんじゃないか、私は心配をいたします。  チェックする人は外部からのチェックがないんだから、そして責任が重いんだからという形でもっときちっとチェックができる、そういう体制づくりが必要じゃないかと私は思いますが、民放連会長さん、いかがでございますか。
  149. 桑田弘一郎

    桑田参考人 考査機能の充実という御指摘でございますが、そのとおりだと思います。したがって、各社各局内の考査機能が十分に機能するように、言論の自由という雰囲気も必要でございまして、自由と同時に、我々が過ちを繰り返していてはみずから首を絞めるという、その自覚も大切であります。さらに、一社だけではなくて各局、例えばキー局でも五社間でいろいろな考査機能の意見交換、連絡会等も最近始めております。そういうあらゆる場を重ねまして、御指摘のようにみずからの首を絞めないように、言論の自由のために責任を果たすことを第一に考えていきたいと思っております。
  150. 中井洽

    ○中井委員 会長、どうぞ。
  151. 川口幹夫

    川口参考人 おっしゃられた中で、現場の長の役目というものが非常に大事だということを私も痛感しております。つまりは、現場の長がどのように部下を把握し、そして番組のでき上がるまでの過程を把握しているかということが、実はここで非常に大事になってまいります。そういう現場段階の長の位置づけというものについて、私はさらに心してまいりたいと思います。現在、育成リーダーとか育成トレーナーというものにおきまして既にいろいろなことをやっているのですけれども、さらに責任を持った体制をつくり上げなければいけないと思っております。
  152. 中井洽

    ○中井委員 もう一度お二人に御意見をお願い申し上げたいんですが、見ておりまして、いわゆる差別用語を使っていないかとか、性の表現はどうだろうかとか、この広告は広告規定にどうなんだろうとか、そういうチェックはかなりお進みになっているんじゃないか。  しかし、今回のような常識外れ、あるいは事実と違う、そういったことに対するチェックというのは本当に内部だけでおできになるのか、またおやりになる決意がおありなのか、そこらを非常に心配いたします。私ども外部から批判する、これはもう厳に慎まなきゃならない、こう思います。しかし、内部のチェックができないということであるならば、大変な影響力を持っておる報道機関でありますから、公平な外部の機関というのもどこかで議論をしなきゃならなくなってくる、そのことは大変な問題になる、そういう危機意識も私自身は持っております。  そういう意味で、もう一度お二人から御意見なり決意を承ります。
  153. 川口幹夫

    川口参考人 先ほどちょっとお話をしかけてやめたんですが、BBCでこういうことがありました。「キティ アウシュヴィッツにかえる」という番組で、キティさんという六十年配の女性が、その昔アウシュビッツに捕らえられていた子供のころを、そこの現場に行って思い出を語るという番組でございました。これは非常に迫力のあるすばらしい番組だった。  それをつくったモーリーさんという人に私は直接聞いたんですが、これをつくるときに彼は三つのごとをはっきりと自分に課したと言っているのです。一つは、向こうに行って、そこの行動なりしゃべりたいこととかは全部キティさん自身の考え方に基づく。一切これ強要しない。それから二番目は、カメラは必ずキティさんの後ろにいる。前から撮ってやるようなことはしない。三番目は、キティさんの話す言葉をいわゆる携帯マイクなどで振らないで、ロングで撮っているんですね。小さくても構わない、つぶやきでも構わない、そうやってできるだけ主人公が自由にその場で考えることをピックアップしよう、そう思ったというんですね。  これなどは、いわゆる再現という形のドキュメンタリーですが、それぐらいのみずからに厳しい態度をとって初めて本当の意味ドキュメンタリーができると思うのです。そういうことを私もこの前、全職員に話をしましたけれども、みずからの気持ちの切りかえ、こういう問題はやはり職員が一人一人そういうふうにならなければいけませんので、そのことを前提にして今後とも始めていきたい。より必要な組織とかあるいは機能とかいうものがあれば、それはその上に構築してまいりたい、このように思っております。
  154. 桑田弘一郎

    桑田参考人 おっしゃるとおり、このままの状態をいつまでも何回も繰り返せば、言論の自由を一番基本で支えるべき世論まで私たちは敵に回さなければならない。したがいまして、そういうことがないように最大の決意を持って当たるべきだと思います。  私は、私事ながら、私の正月の社長のあいさつの中で、同じことを二度としてはそれは最後になるということを強調いたしました。そのつもりでおります。
  155. 中井洽

    ○中井委員 大変かたい、また報道の自由が侵されてはならないという面からの御決意を聞かせていただきましたから、私どもも、どういうふうに今後に反省が生かされるか見ていきたい、このように思います。  NHK会長お尋ねしますが、実は私どももこの委員会で、たびたびいろいろな議論が出たことございます。番組についても出たことございます。しかし見ておりますと、余りNHKさん、一向変わらない。一過性になってしまうんじゃないか、特にチェックというのはなかなかやりにくいのかな、生きてこないのかなという感じがいたします。  変な話ですが、あの朝の番組の「ひらり」というのを見ておりますと、朝御飯食べるところがしょっちゅう出てくる。晩御飯食べるところ。あれ、NHKだけなんですよね、まだ、いすがあって、机があって、三万に座る。家族が飯を食うときにあんな座り方せぬのですね。言ってることわかりますか。  チャンバラを見ていまして、土の上を走っているのにコンクリートの音がするとか、非常に、見ている人は勝手にわかってくれるだろうという形で番組をおつくりになる。そういうのも本当はもう少しチェックすべきじゃないか。一つ一つが積み重なりだと私は思うんですね。  あるいは大変恐縮ですが、ニュースキャスターさんという方、たくさんいらっしゃる。これ非常に、まあおもしろいといえばおもしろいけれども、湾岸戦争のときなど、随分違うことを言うなと私どもは思いました。世界の常識から見て違うな。まあ政治的意見ですからいろいろあるでしょう。しかし、その間違ったことを後からたって、あれはやはりうそだったな、間違ったなと言っているけれども、そのままニュースキャスターとして依然としてやっていらっしゃる。私どもは、そういうのはなかなか難しいな、そういうところの責任というのはどこにあるんだろう、どこがチェックするんだろう、だれが判断するんだろう、こう思うわけであります。  今回、NHK調査をなさって責任をおとりになられた。それはそれで結構でありますし、対応策を待っているわけです。しかし、私は、やはりこういうときにはあっさりと番組を取り消す、こういうことを含めた思い切った手法をとらないと、また繰り返しになるんじゃないか。そして、一時的な批判で、後はもう大きな機構ですから下まで行き届かない、大臣が厳重注意を何回しても、社長やらトップのところまでは厳重注意が行っている、それじゃ現場まで行って、本当にどうしてこれをはね返していくか、そういう研修やらやり直しが一回も行われていないんじゃないか、こんな感じを抱きます。  そういう意味で、たびたびと、二度と起こしてはならない、こういう御決意でございますので、次のやり直しを、あるいは手直しを私ども見させていただきますけれども、重ねて、そういう意味で、大きな組織、どういうふうに下からやるんだ、こういうことを含めて、お答えを賜ります。
  156. 川口幹夫

    川口参考人 今おっしゃいました事実が私どもには非常に重く響くのですが、例えば、昭和二十八年から三十八年十年間の演出と現在のテレビのやり方は違わなければいけないと思うのです。それは、見ている人がいろんなことを御存じだ。いわゆるやらせ的なことをやっても、それは軽く見透かされてしまうというふうな時代になっているにもかかわらず、番組制作者の意識がそこに届いてないということがあります。私は、現代の人たちに向かって一番納得できる、説得性のある番組をつくるということが一番大事であろうと思っております。私以下職員の末端に至るまで、そういう意思を徹底して、御期待にこたえたいと思います。
  157. 中井洽

    ○中井委員 ありがとうございました。
  158. 亀井久興

    亀井委員長 以上で質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  159. 亀井久興

    亀井委員長 身体障害者の利便の増進に資する通信放送身体障害者利用円滑化事業推進に関する法律案を議題といたします。  趣旨の説明を聴取いたします。小泉郵政大臣。     —————————————  身体障害者の利便の増進に資する通信放送身   体障害者利用円滑化事業推進に関する法律   案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  160. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 身体障害者の利便の増進に資する通信放送身体障害者利用円滑化事業推進に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  この法律案は、社会経済の情報化の進展に伴い身体障害者の電気通信の利用の機会を確保することの必要性が増大していることにかんがみ、電気通信役務並びに放送及び有線放送の役務の利用に関する身体障害者の利便の増進を図るため、当該利便の増進に著しく寄与する通信放送身体障害者利用円滑化事業推進しようとするものであります。  次に、この法律案の概要を御説明申し上げます。  第一に、通信放送役務、通信放送身体障害者利用円滑化事業等の定義をいたしております。  第二に、郵政大臣は、通信放送役務の利用に関する身体障害者の利便の増進に関する基本的な方向及び通信放送身体障害者利用円滑化事業内容等に関して基本方針を定めることといたしております。  第三に、通信放送機構の業務として、通信放送身体障害者利用円滑化事業の実施に必要な資金に充てるための助成金の交付、郵政大臣及び大蔵大臣が指定する金融機関が行う通信放送身体障害者利用円滑化事業の実施に必要な資金の貸し付けについての利子補給金の支給、通信放送身体障害者利用円滑化事業に関する情報の提供等の業務を追加することといたしております。  その他所要の規定の整備を図ることといたしております。  なお、この法律の施行期日は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日としております。  以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  161. 亀井久興

    亀井委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三分散会      ————◇—————