運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1993-06-02 第126回国会 衆議院 大蔵委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年六月二日(水曜日)     午前十時三分開議 出席委員    委員長 藤井 裕久君    理事 井奥 貞雄君 理事 石原 伸晃君    理事 田中 秀征君 理事 前田  正君    理事 柳本 卓治君 理事 仙谷 由人君    理事 渡辺 嘉藏君 理事 日笠 勝之君       浅野 勝人君    岩村卯一郎君       江口 一雄君    衛藤征士郎君       遠藤 武彦君    大島 理森君       河村 建夫君    左藤  恵君       戸塚 進也君    中村正三郎君       光武  顕君    村井  仁君       山下 元利君    伊藤  茂君       池田 元久君    上田 卓三君       小野 信一君    佐藤 恒晴君       沢田  広君    戸田 菊雄君       中沢 健次君    中村 正男君       早川  勝君    細谷 治通君       和田 貞夫君    井上 義久君       河上 覃雄君    正森 成二君       中井  洽君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 林  義郎君  出席政府委員         大蔵政務次官  村上誠一郎君         大蔵大臣官房会 中川 隆進君         計課長         大蔵大臣官房総 日高 壮平君         務審議官         大蔵省主計局次 竹島 一彦君         長         大蔵省主税局長 濱本 英輔君         大蔵省証券局長 小川  是君         大蔵省銀行局長 寺村 信行君         大蔵省銀行局保 鏡味 徳房君         険部長         大蔵省国際金融 中平 幸典君         局長         証券取引等監視 石坂 匡身君         委員会事務局長         国税庁次長   瀧川 哲男君         国税庁課税部長 松川 隆志君         国税庁徴収部長 中山 寅男君         国税庁調査査察 野村 興児君         部長  委員外出席者         郵政省貯金局業 浅岡  徹君         務課長         大蔵委員会調査 中川 浩扶君         室長     ————————————— 委員異動 六月二日  辞任         補欠選任   池田 元久君     和田 貞夫君 同日  辞任         補欠選任   和田 貞夫君     池田 元久君 同日  理事日笠勝之君五月二十六日委員辞任につき、  その補欠として日笠勝之君が理事に当選した。     ————————————— 五月二十七日  電波によるたばこ宣伝廃止に関する請願(長  谷百合子紹介)(第二四四三号)  同(山中邦紀紹介)(第二四四四号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二五一三号)  同(細谷治通紹介)(第二五一四号)  同(山中邦紀紹介)(第二五一五号)  同(秋葉忠利紹介)(第二五三四号)  所得税などの大幅減税に関する請願遠藤乙彦  君紹介)(第二四四五号)  同(森本晃司紹介)(第二四四六号)  同(藤原房雄紹介)(第二五〇〇号)  同(山田英介紹介)(第二五〇一号)  中小業者婦人自家労賃に関する請願山田英  介君紹介)(第二五〇二号)  共済年金改善に関する請願戸井田三郎君紹  介)(第二五一二号) 同月二十八日  所得税課税最低限大幅引き上げに関する請  願(岡田利春紹介)(第二五六四号)  同(小沢和秋紹介)(第二五六五号)  同(金子満広紹介)(第二五六六号)  同(木島日出夫紹介)(第二五六七号)  同(児玉健次紹介)(第二五六八号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二五六九号)  同(菅野悦子紹介)(第二五七〇号)  同(辻第一君紹介)(第二五七一号)  同(寺前巖紹介)(第二五七二号)  同(東中光雄紹介)(第二五七三号)  同(不破哲三紹介)(第二五七四号)  同(藤田スミ紹介)(第二五七五号)  同(古堅実吉紹介)(第二五七六号)  同(正森成二君紹介)(第二五七七号)  同(三浦久紹介)(第二五七八号)  同(山原健二郎紹介)(第二五七九号)  同(吉井英勝紹介)(第二五八〇号)  同(正森成二君紹介)(第二八〇九号)  電波によるたばこ宣伝廃止に関する請願(秋  葉忠利紹介)(第二五八一号)  同(秋葉忠利紹介)(第二七一八号)  同(中沢健次紹介)(第二七一九号)  同(中西績介紹介)(第二八〇七号)  共済年金改善に関する請願小杉隆紹介)  (第二七一六号)  同(橋本龍太郎紹介)(第二七一七号)  所得税などの大幅減税に関する請願玉城栄一  君紹介)(第二八〇八号) 六月一日  共済年金改善に関する請願(自見庄三郎君紹  介)(第二九二二号)  電波によるたばこ宣伝廃止に関する請願外一  件(秋葉忠利紹介)(第二九二三号)  同(加藤万吉紹介)(第二九二四号)  同(山中邦紀紹介)(第二九二五号)  所得税課税最低限大幅引き上げに関する請  願(徳田虎雄紹介)(第二九二六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国の会計税制及び金融に関する件      ————◇—————
  2. 藤井裕久

    藤井委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 藤井裕久

    藤井委員長 御異議なしと認めます。よって、日笠勝之君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  4. 藤井裕久

    藤井委員長 国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。早川勝君。
  5. 早川勝

    早川委員 きょうは一般質問ということでございますので、何を質問してもよろしいということなものですから、最初に、当面の諸問題、関心事幾つかございますので、それについてお聞きしたいと思っております。なお、できるだけ大臣に直接お答えいただければとお願いを申し上げておきます。  当面の問題の第一点は、五月三十一日で歳入の方を締め切られたと思うのですけれども、新聞等でいろいろ税収不足が伝えられておりますけれども、どれくらいがほぼ確定値に近い数字で、今日の時点で明らかになっているのかというのを明らかに示していただきたいと思っております。二兆円とか三兆円とか言われておりますけれどもどうなのかというのが第一点。  それから、それに関連して、その税収をどういった形で処理されようとしているのかということでございます。これまた決算調整資金等処理すると伝えられているわけでございますが、それらを含めまして、最初平成四年度の税収決算見込みとその処理につきまして伺いたいと思います。
  6. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 四年度の税収につきましては、現在三月末の税収までしか判明しておりません。進捗割合は七〇%ぐらいということでございますから、確たることを申し上げるわけにはまいらないわけでございますし、四月、五月の動向を十分に注視していく必要があるだろうと思います。どういうふうな数字になっているかということは詳しく政府委員から御答弁させていただきます。  もう一つの問題としてありました決算調整資金云々、こういうことですが、これは歳入歳出不足が出たというときの話でございまして、どの程度不足になるのか、これは税収だけではございませんで、歳出の方の不用がどのくらい出るか、そのほかの収入がまたどのくらいあるのかということもあるだろうと思いますので、まだ確固たることを申し上げるような段階にはございませんが、とりあえず税収動向につきまして、一兆円、二兆円とかというような話も新聞に出ておりますから、その点も含めまして政府委員から少し具体的な話を説明させたいと思います。
  7. 濱本英輔

    濱本政府委員 三月末税収が判明いたしましたところで進捗割合が七割強ということでございまして、今日ただいまの段階ではそれ以上の情報を我々は持ち得ないわけでございますけれども、四年分の所得税確定申告の結果が先般明らかになりまして、これが前年比三七・八%のマイナス、約四割減ということで、これは予想を上回って低調でございました。四年度の申告所得税収補正後の見積もりを相当下回ることは避けがたいと感じておりますし、四年度税収全体につきましても、補正予算見積もりで想定しました税収動向の達成は容易でない状況かと思われます。  ただ、まず今のお尋ねのお求めに対しましてお答えが準備できますには、四月分税収の姿がつかめること、さらにウエートの大きい三月決算法人に係ります法人税あるいは消費税がまとまって納付されます五月分税収動向を確認いたしませんことにはそれ以上のことにつきまして付言し得ない状況でございます。四月分税収につきましては、近々取りまとめが可能だと思います。五月分税収ということになりますと、それがはっきりいたしますのは七月の初めということになるだろうと思います。今の税収状況につきまして、大臣からのお答えのとおりでございますけれども、多少補足させていただきました。
  8. 早川勝

    早川委員 不足になるだろうということで、歳入欠陥ということになると決算調整資金を使わざるを得ないということが伝えられているわけでございます。  決算調整資金は今は残高ゼロだというふうにも伺っておりますし、借りる場合にはどういう形で、もしそれを使うとすればどういうルートで、二兆円があるいは三兆円か定かでございませんけれども、では、その仕組みを簡単に説明してください。
  9. 竹島一彦

    竹島政府委員 四年度の決算が締められまして仮に歳入不足するということになりました場合には、お尋ねのとおり決算調整資金制度を利用することになるわけでございますが、現在、決算調整資金残高がございませんので、これは国債整理基金にございますお金決算調整資金に入れまして、そこから一般会計お金を移して決算を締めるということになります。  なお、そういうことで国債整理基金から繰り入れましたものにつきましては、決算調整資金法上規定がございまして、平成六年度までにその金額を繰り戻すということが義務づけられておるわけでございます。
  10. 早川勝

    早川委員 今年度の影響について、恐らくまた答弁がないと思いますが、もし締め切ったときに調整資金を使うようなことになれば、一般に言われておりますように実質赤字国債ではないか。今年度の当初予算のときにも、隠れ借金特例国債ではなかったかとか、いろいろな議論がございましたけれども、前年度、平成四年度予算においても実質赤字国債を発行せざるを得ない形に追い込まれた、こういう認識をせざるを得ないわけでございますけれども、この点についての大臣のお考えを伺いたいと存じます。
  11. 竹島一彦

    竹島政府委員 あらかじめ予算におきまして一定の歳出を賄うために当初からないしは補正段階特例公債を出すというのと異なりまして、この決算の取り扱いについての決算調整制度と申しますのは、それとは異質なものというふうに考えております。  先ほど申し上げましたように、決算調整資金にそのお金がない場合には国債整理基金から融通をするということになっていますが、これは翌々年度までには繰り戻さなければならぬということになっておりまして、いわば国債整理基金に属している現金を一時的に融通するという性格でございます。そういう意味特例公債の発行とは異質であると考えております。
  12. 早川勝

    早川委員 特例国債というのは借金だと思うのですが、借金であれば一緒ではないかなと非常に単純に考えさせていただきたいと思います。  二番目の関心事であるのは、金融機関の抱えている不良債権の問題ですね。新聞等でも公表されておりますが、公表された範囲で、数字だけで結構ですが、簡単に教えていただきたいと思います。
  13. 寺村信行

    寺村政府委員 去る五月二十七日及び二十八日に、都市銀行長信銀行信託銀行の二十一行から個別に破綻先債権と六カ月以上延滞債権の額が公表されました。それを集計いたしますと、全体で十二兆七千七百四十六億円となっております。
  14. 早川勝

    早川委員 それに地銀十行の数字も出たわけでございますが、この不良債権の、今局長が述べたような数字が出されたその後に、それぞれの専門家から実態をあらわしていないのではないかという評価なりコメントが出されたわけですね。  御存じのように、今回の不良債権範囲で、延滞債権地方銀行は織り込まなかった、明らかにしなかった、そして金利減免棚上げ債権ディスクローズ対象外であったということがあったわけですね。そういったことを明らかにするという観点からいえば、そういうものをすべて明らかにした方がいいのではないか、明らかにした方が信頼が、そしてまたこれからの解消の展望が具体的に出せるのじゃないか、こういう議論があるわけでございますけれども、ディスクローズ範囲をこれから検討する必要があるのではないかと思うのですが、この点はいかがですか。
  15. 寺村信行

    寺村政府委員 今回のディスクロージャーは、昨年十二月に金融制度調査会ディスクロージャー作業部会から中間報告が出されまして、その報告趣旨を踏まえまして全国銀行連合会の方で統一基準を定めまして、それに沿いましてディスクロージャーが行われたものでございます。  この金融制度調査会中間報告におきましては、不良資産開示に当たりましては、信用秩序の維持に十分な配慮を行いまして、初めての経験でもございますので、漸進的、段階的に行っていく必要があるという趣旨から、まずは元本回収可能性に着目をいたしまして、近い将来において償却する可能性が高いものとして経営破綻先債権、それから将来において償却すべき債権に転換する可能性のある延滞債権につきましてまず開示することが適当ではないかとされたところでございます。  金利減免債権につきましては、元本回収が一応前提となった上で再建計画が確定されているというものでございますので、漸進的、段階的に進めるに当たっては、当面開示を求めないということにされたわけでございます。ただ、この報告では、そのディスクロージャー実施状況を見守りながら今後検討すべき事柄である、このように位置づけられているところでございます。  こういった経過で今回のディスクロージャーが行われたものでございます。
  16. 早川勝

    早川委員 アメリカ証券会社東京支店のある人がこのディスクロージャーを見ましてコメントをしているのですね。アメリカは直接的にきちんと全体を明らかにして早期不良債権解消させていく、それについて日本の場合は非常にゆっくりだ、ゆっくりやっていくのが日本の国民の選択だろう、これは新聞に載っていたのですけれども、こういうコメントがあります。  したがって、これは大臣感想をお聞きしたいのですが、最後にこういうこと宣言っています。「しかし、私からみると、銀行が健全な企業に回す金を削って倒産する会社資金を貸すというのは「金融共産主義」ではないかと思う。」金融共産主義。コミュニストの方ですね、コミュニズム。こういう記事を読んだわけでございます。いろいろな意味で、金融構造協議を含めて違いがあるわけでございますけれども、こういうことを考えますと、ディスクローズの仕方というのをもっと、ただし条件幾つかつけるかもしれませんけれども、わかるようにすればいいと思うのですね。そういった意味で、今回の範囲を次回にはもっと広げる必要があるのではないかと思うのですが、その考え方とこのコメントについて、これは大臣感想で結構ですので、伺いたいと思います。
  17. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 今お話がありましたが、こういったディスクロージャーをしなくちゃならないというのは、やはり金融機関不良債権処理をやっていくということだろうと私は思います。それのためには、やはり金融機関が自主的な判断で自主的な努力を基本としつつ、早期にやっていくということが必要でありますし、一遍で、一朝すぐにというわけにはなかなかいかない話でもございますから、段階的にやっていく、こういうことで考えていくことが必要だろうと思います。そういった意味で、先ほど政府委員から御答弁申し上げましたような格好でのディスクロージャーをしているところだろうと思いますし、私は、こういった形でやっていくことによりまして金融機関基礎体力を蓄えながら漸次不良資産解消に向かっていくことができるものだろうと思っています。  金融共産主義というお話、ちょっと聞きなれないお話でございますが、共産主義ということになると、コミュニズム、一体どういうことなのかな。言葉どおり読みますと、ともに産出する、こういうことでございますから、ともに助けていくというような話なのかなという感じを持っていますが、ともに助けていくということではなくて、やはり金融機関それぞれの自分の自助努力でもっていろいろとやっていかなければならない話じゃないかな。金融秩序というものもありますけれども、これはあくまでも預金者保護というのが一つ考え方であろうと思いますから、それが全体に及ぶことのないようなことというのを、もしもこの共産主義というような話で言っているならばそういうことかもしれません。  しかし私は、金融共産主義という言葉からすると、どうも何か別の意図があるのじゃないかなという感じを持っていることだけ、せっかくのお話でございますから、当たっているか当たってないか内容も読んでおりませんからわかりませんが、言葉だけで申し上げますと、ちょっと当たらない話ではないかなという感じを持っているということだけ申し上げておきたいと思います。
  18. 早川勝

    早川委員 それに関連して、大蔵省は、バブルの問題が起きたときに、不動産関係融資が非常にずさんであった、一因であったということは、これは定評があるわけでございますが、それとの関連で、九一年の十二月末にいわゆるトリガー方式を取り入れて、できるだけ抑制をするという方針を決めたわけでございますね。  日銀の調査によりますと、全国銀行不動産業向け貸し出し残高がそのとき決めたルールを超えた。まさに大蔵省注意喚起をしなければいかぬ。ところが、今回大蔵省はそれを見送っているということが伝えられているわけでございますが、それは事実かどうかということと、なぜみずから決めたルールを無視して触れないのか、この二点を伺いたいと思います。
  19. 寺村信行

    寺村政府委員 まずは、御指摘の点は事実でございます。不動産向け貸し出しが総貸し出しの三%を上回る状態が三カ月連続をいたしております。したがって、形式的には注意喚起の要件に合致することになっております。  ところで、トリガー方式を定めました際にも、そもそもこの規制の趣旨は、不動産の投機的な取引を抑制しようという趣旨のものでございます。現在の状況金融機関からヒアリングをいたしますと、不動産業向け貸し出し増加いたしております主因は、地方土地開発公社等公的機関向け貸し出しが大幅に増加している、それから、資金繰りが悪化をした不動産業者への運転資金増加をしている。それから三点目は、一般企業、ノンバンクがリストラを行います際に不動産会社保有不動産を売却する、そこで土地益出しを行うわけでございますが、土地を売却してリストラ資金に充てるということが行われるわけでございますが、その買い取り資金融資が行われている。それから、これは大手の不動産会社でございますが、社債償還等のためのリファイナンス資金のための貸し出し増加が見られる。こういったことによりまして貸し出し増加をいたしておりまして、不動産投機的取引等を背景とするものではないということが判明をいたしました。  さらに、五月十九日国土庁より発表されました短期地価動向調査によりますと、大都市圏地価は引き続き下落しておりますし、地方圏でも地価は横ばいまたは下落の傾向が継続をいたしております。  このようなことを総合的に勘案いたしますと、地価高騰のおそれがあることを前提とする金融界への注意喚起を現時点で行う必要はないという判断をしたということでございます。
  20. 早川勝

    早川委員 そうしますと、個々の条件を見て総合的に判断をされたということなんですが、一言で言えば、投機的な資金として使われない限りいい、こういうふうに断定的にとらえてよろしいわけですか。
  21. 寺村信行

    寺村政府委員 そのときの金融情勢を総合的に勘案しながら、ただいま申し上げましたように、地価高騰の引き金となるような貸し出しが行われていないということであるならば、これは例えば地方公共団体先行取得による貸し出し増加しているというようなことをあえて抑制する必要はないという判断でございます。
  22. 早川勝

    早川委員 そうはいいましても、地価はまだまだ高いというのが実感でございますので、また地価高騰が始まったなんということが伝えられないようにしていただきたいわけでございますので、十分にかつ早期に手を打つような判断をしていただきたいということを要望いたしておきます。  それから、減税の問題は後ほど詳しくやってもらいますが、減税必要性について、簡単に一つ観点だけ私は指摘をしたいと思うのです。  円高が今御存じのような状況で進んでいるわけでございますが、銀行試算によりますと、レートが一ドル百十円ということで推移しますと、GNPに対して〇・六%マイナス、引き下げる効果があるんだということが言われているわけです。これは大蔵省審議官が答えられるかどうかわかりませんけれども、〇・六%GNPをアップするに必要な減税額というのは当然どこかで調べられたと思いますが、もしおわかりでしたら言っていただけますか。
  23. 日高壮平

    日高政府委員 まず、基本的に円高GNPにストレートにどれだけの影響を与えるかという点につきましては、実は正直申し上げると定説はございません。いろいろな要因、いろいろな側面がございますし、それからそのときの経済情勢によって十分変わってき得るということでございますので、まず今の、最近における円高が、こういう状況が続けば〇・六%影響を与えるという見方については、私どももその程度がなというふうに考えているわけではございません。まずその点だけ先に申し上げておきたいと思います。  それからもう一つ、これは経済対策をどういう形で実行していくかということを私ども考えてまいりました場合に、よく言われておりますように、例えばいわゆる需給ギャップGNPの大体どのくらいあって、それをどういう形で埋めていくかという手法をとって、そういう手法によって経済対策必要額規模を決めていくという手法をとっていないということでございます。それは最終的に需要をつくるという、もちろんそういう公共部門需要をつくり上げていくということが一つの目的ではございますけれども、全体にGNPをどれだけかさ上げしていくかという形での規模の決定をいたしておりません。したがって、今御指摘がございました、円高影響によるいわばマイナス分をどれだけ減税でカバーできるかという点についても、確たる御答弁はできかねるということで御理解を賜りたいと思います。
  24. 早川勝

    早川委員 ことしの予算審議の中で、また当委員会におきましても所得減税効果公共投資並みとかあるいはそれを超えているとかいろいろ議論がされてきたわけでございます。今審議官は、百十円でどれぐらいGNPマイナス効果が起きるかというのは定かでない、当然そう答えられると思うのですが、一つ試算として、百十円で推移をすればGNPマイナス〇・六になりますよ、ダウンしますよというのがあるわけですね。ことしの二月段階での試算が行われたときに、所得税減税を四兆円実施する、四兆円実施すると景気刺激効果としてGNPが〇・八から一・〇%ふえるというのを出した一つの研究結果があるのです。もう一つは、同じく四兆円の減税をやりますとGNPでちょうど〇・六%ふえますよ、こういう試算をした研究所があります。経済企画庁だと一兆円の所得税減税をやって〇・一%相当だ、こういう試算を出しているわけです。それぞれ出したわけです。  そうすると、大臣に見通しを含めて答えていただければありがたいのですが、円高が、今百六円とか百七円ということですが、百十円で推移するとGNPは先ほど言ったような数字が下がりますのでは、それをカバーする必要があるのじゃないかなと。減税でやれば今言ったようなちょうど〇・六とか一%カバーできるというふうに、この二つの数字を並べて読むとそういうふうになるわけでございますが、そういった観点から減税という問題をもう一度、財源論があるのはわかりますけれども、検討する余地があるのではないかと思いますけれども、いかがですか。
  25. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 早川先生の数字の話、ちょっと私も手元にございませんから、その数字がどうだということについてもいろいろ議論があるのだろうと私は思います。その議論はございますが、円高になって相当に影響が出てくるということははっきりしているのだろうと私は思うのです。  それは何かといいましたならば、輸出の方の採算、企業にとっての採算がよろしくなくなる。逆に言いますと、輸入の方が採算はよくなるわけでございまして、その辺のバランスというのはいろいろ考えていかなければならない。そのはじいた数字というのが輸出に対する影響だけだということになるとやはり片手落ちではないかなという感じを私は持っているのでありまして、内需拡大というものを私たちはこれからやっていかなければならない。経済政策としてそういったことをやっていく。円高対策というか経常収支対策ということで私たちが考えていますのは、やはり内需を思い切り拡大をしていく、こういうことでありまして、それに対する影響がどうなってくるかというのは必ずしもはっきり言えないのじゃないかな、こう私は思っておるところであります。  いろいろと勉強してみなければなりませんし、今は百十円になったならばどうだこうだというのは、ちょっと私は数字的に持ち合わせがないし、いろいろな計算はあるのでしょうけれども、果たしてそれがどうなのか、その計算の根拠も私は少し勉強してみなければならない点があるのだろうと思っておるところでございます。
  26. 早川勝

    早川委員 計算の根拠の問題というよりも、やはり円高、黒字対策を含めてこれまた一つの研究所の、銀行調査が出ているわけです。例えば、レート、為替の影響それから内需拡大の影響、つまり輸入数量増加効果を比べますと、八六年から九〇年までですから五年間ですが、為替によって年平均四十七億ドルの縮小だと、貿易黒字は。ところが、内需拡大をやれば年平均百三十八億ドルぐらい、約三倍弱ぐらいの効果があったということなのです。つまり、黒字の問題が日米構造協議の中で、あるいは日米の経済の話の中でも、あるいはサミットでもつながっていくかもしれませんけれども、日本の貿易黒字をどうするかあるいは経常黒字をどうするかという話がございますね。為替調整だけでは今言いましたように効果は余り大きくないわけでして、そういった意味で内需拡大の方がいいわけですね。  そうしますと、内需拡大でこれからやらなければいけないのはやはり減税じゃないかなと思うわけでございますけれども、依然として財源がないから無理だというお答えですか。これはぜひ大臣に伺いたいと思います。
  27. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 内需拡大のための個人消費刺激ということで必要ではないかというのが先生の御議論だろうと思いますが、私は繰り返して申し上げておりますけれども、内需拡大をしていく、そういったことからするならば、公共事業等によりましていろいろな仕事をやっていく、その仕事をやっていくことによりましてそれぞれの所得がふえていく、それが一番大切なことではないかな、私はこう思っておるところでございます。  公共事業をやって金をどこかに使ってしまった。その金が消えてなくなるわけでは一つもないのでありまして、公共事業をやりましたならば、建設会社の労賃の支払いも出てくる、また資材を購入するところの会社の収入になる、またその会社の方々の給料もふえてくる、給料にはね返ってくる、こういうふうな格好で出てくるわけでございます。私は、そういったような形で企業活動が活発化していく、それによりまして所得がふえていくという方が望ましいことではないか。  特に、一般的ないわば所得税減税という形でやりましたならば、これよりは、いろいろな点で考えまして、すぐに消費に結びつくというような形じゃなくて、今申しましたような、どちらかというと迂回的な話で、仕事を通じてやる方が経済的にいっても効果があるし、これは消費の関数とかなんとかということからいいましても、私はそういうことははっきりしているだろうと思います。当面の消費が冷えておるような状況からいたしますと、今単にすぐに所得税をそのまま減税いたしましても、その減税が貯蓄の方に回る可能性というのは割と高いのじゃないかな、こう思っておるところでございます。そういった意味で、所得税減税については景気対策の問題としては疑問があるということを申し上げておるところでございます。  実は私も、ちょっとこれはあれですけれども、この前言われたのは、所得税減税だからすぐに消費に回る、公共事業だから消費に回らないなどというような議論がどこかにあるんだそうですが、そういうことじゃないのでございまして、公共事業をやっていろいろなものを建てる、それによってずっと金が回っていくということは同じことでございますから、その効果というものは、明らかに結果としては全体の消費をふやしていく、所得をふやしていく効果になっていくものだろう、私はこう思っております。  かてて加えて、言うまでもありませんけれども、その財源をどうするかという問題がございますし、もう一つ税制体系としての問題がございますが、先生の今の御指摘は個人消費刺激策としての問題ということでございますから、私の考え方をあえて申し上げさせていただいた次第でございます。
  28. 早川勝

    早川委員 直接的に個人消費という問題ではなくて、特に必要なのは政府の姿勢をいかにあらわすかということで、所得税減税を実施するか否かというもう一つの側面を重視してもらいたいなという感じがいたします。  そこで、今大臣も答えられたわけでございますけれども、また秋以降に向けまして抜本的な税制改革が多分議論されていくのではないかと思います。その中身ということよりも、それこそ、大臣がどう考えられているかという観点で私は質問をさせていただきますが、御存じのように、きのう衆議院の地方行政委員会が「地方分権の推進に関する決議」をやったわけですね。これからの社会を地方分権型に変えていこうということで画期的な決議だと思いますし、やがて本会議でもということが、これは与野党通じての意思だと思っております。その中で、「地方税財源の充実強化等地方公共団体の自主性、自律性の強化を図り、二十一世紀に向けた時代にふさわしい地方自治を確立することが現下の急務である。」こういうふうに決議文の中に盛り込まれております。行政権限の問題あるいは許認可の問題等々あるわけですけれども、やはり財源の問題が、再配分の問題が非常に重要だと私は思っております。  そこで、昭和六十一年のときの「税制の抜本的見直しについての答申」があるわけですが、そこで「国・地方間の税源配分」という項があるわけですが、一言で言えば、こういうことが書いてあるわけです。  国・地方間の税源配分のあり方は、地方交付税や国庫支出金、さらには、国と地方との行政事務配分のあり方等広範な問題と関連している。これはそのとおりですね。その次なんですね。しかしながら、今回の税制の抜本的見直しの主眼が社会経済情勢の変化を踏まえ、税収中立を前提に国税・地方税を通じ、税制のゆがみ、ひずみを是正する点にあり、国・地方の行財政制度全体に係る問題は直接の審議対象を超える面があるところから、税源配分の問題については、抜本的見直しの枠組みの中で、税収の変動によって国及び地方団体の財政運営に基本的に影響を与えることのないよう配慮しつつ処理することが適当であると考える。なお、税源配分問題については、行政事務配分のあり方等も含め十分検討すべきであるとの指摘も行われたところである。つまり、前段の出だしはそのとおり適当なんですが、最後はどう言っているかというと、税源配分の問題には触れませんよということなのですね。私はそういうふうに読み取ったのですね。これは六十一年十月の抜本的見直しについての答申であります。  それから、昭和六十三年四月の「税制改革についての中間答申」についてもほぼ同じようなことが書いてあるわけですね。この税制改革については、国と地方の税源配分については触れませんよということなのですね。同じようなスタンスなのですよ。考えなければいけない、だけれども、抜本的に移譲するようなことは今回の答申の枠外だというのを繰り返し書かれて、実際には行われてないわけですね。  これから考えると、地方分権の時代だ、地方重視あるいは地方主権の時代だといったときに、この税制調査会に同じような諮問の仕方をし、同じような認識であれば、税源配分とかそういうことは起きないのではないかと思うのですけれども、また、それを正さなければいけないと思うのですけれども、それについて大臣はどうお考えですか。
  29. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 税制調査会で六十一年の答申がありましたというのは、抜本改革をやったときの話だろう、こう思うのです。そんなことでありますが、私は、税制というものは、やはり国全体の問題を考えて、公平な観点、また簡素な制度であるという観点、そういった形から基本的には議論をしていくべきものだろうと思いますし、地方の問題につきましてもいろいろと考えていかなければならない点だろうと思うのです。  特に税源配分の問題につきましては、地方交付税とか国庫支出金等種々の制度のあり方に基本的に関係する問題でございますし、また一方では、地方公共団体というのは、憲法にも掲げられておるところの地方自治の原則に、趣旨に基づいてやる、こういうことで書いてあるわけでありますから、そういった形で独立のものである、そういった国と地方との機能分担とか費用負担のあり方につきましては見直しをしていかなければならない、これは幅広い観点からいろいろな見直しを行っていくべき課題じゃないだろうかな、私はそういうふうに素直に思っているところでございます。先ほど先生から御指摘のありました地方行政委員会での決議というのがありました。そういったものも私どもも承知しておりますから、いろいろな角度から検討していくことが必要ではないかなと思います。  地方税につきましては、地方税だけでやるというふうな話になりますと、地域間の格差がございますから、非常に裕福なところではたくさん税収がある、貧困なところではなかなか税収が上がらない、こういうふうなアンバランスも出てくると思います。そうしますと、税源の偏在という問題がありますから、やはりこういったことも考えておかなくちゃならないと思っています。  いずれにいたしましても、地方財政につきましては、円滑な運用に支障のないように、従来からも配慮をしてきているところでありますし、今後とも適切な対策は立てていかなければならない、私はそういうふうに考えておるところでございます。
  30. 早川勝

    早川委員 その場合に、御存じのように交付税だとか補助金で再配分機能をしているわけでして、そこで、いわば地方にウエートが最終的にかかっているよという話をされると思うのです。補助金というのは、交付税というのは、いわば国が取ってそれを地方に流すわけですから、そういうことを考えますと、当然大臣御存じだと思うのですが、個人所得に対する税金が国、地方がかるわけでございますけれども、国が七割取るわけですね、個人所得に対する税、所得税が典型ですが。それで都道府県が一二%、それから市町村が一七%なのですね。いわば税源配分がそうなっていますよということであります。それから、法人所得に対しては、同じような近い数字なのですが、国が六五・九ですから六六%、三分の二は国が取るわけですね。それから都道府県が二四%ですから四分の一ですね。それから市町村が九・九、一割ですね、法人の場合。これが第一次的にそれぞれの団体が取るわけでして、その後に交付税で配分されていくわけです。  これは平成四年度の状況なのですが、この配分というのは、当面フィフティー・フィフティーにするのか、あるいは本来的には地方にウエートをかけていくべきだというのは私の考え方であり、地方分権社会を築くためには不可避だと思うのですね。そういったことをぜひ理解していただきたいというのが第一点です。  それから二点目は、税調が七月からというような記事も出ているわけでございますが、この国と地方との税源配分の問題についても、きちっと税調に検討しろということを言っていただかないと、出てきた答申の内容は先ほど紹介したようなことですね。  一般論としてはよくわかるけれども、結果的には、やりませんでした、国税のことだけをやりましたという答申が出る可能性が強いと思うのですね。税源配分のことをきっちり検討をして、やりなさいと。昭和三十六年の答申の場合には、かなりそれに本格的に取り組んでいるのですよ。地方と国との税源配分はいかにあるべきかというのをきちんとやっているわけです。したがいまして、この夏以降の税調審議に当たっては、改めて税源配分を真っ正面から審議しろということを言っていただきたいわけですけれども、いかがですか。
  31. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 今先生御指摘数字の話は、その数字の根拠はどういうことになっているのかちょっと私もはっきりしませんのであれですが、どちらにいたしましても、税というのは国家権力でもちまして国民から金をいただくわけでございますから大変難しい話だと私は思います。それで、なぜいただくかといえば、国なり地方なりでいろいろ費用がかかりますからその費用をどうしてやるか、こういうことだろうと思うのですね、基本的に申しましたら。だから、いろいろなことを考えていくときに、その辺のことを考えながらやっていかなければならないのは税の問題として当然のあり方だろうと思うのです。  今お話しの、今度税制調査会で何かかけるぞ、どうだというようなお話がありましたが、私の方は税制調査会でそういうことをお話をするということもまだ決めておりませんし、いろいろな問題もありますから、今お話しの、御指摘のような話もあるでしょう。  また、もう一つ言いますと、年金の問題とか来るべき高齢化社会にどう対応していったらよろしいのかというような問題もあるでしょう。まだいろんな問題がありますし、それでは、今六十二年にやりましたところの抜本改革のところからすぐ新しい問題が出てくるのかどうか。私は、検討することはいいのですが、すぐにことしの暮れまでに何か結論を出すとかなんとかというようなことは今のところまだないのではないか、まだそこまでの話はないと思いますが、いろんな御議論があると私は思うのです。  だから、いろんな御議論があって、今まさに先生御指摘のありましたような一つのポイントもあるのだろうと思います。高齢化社会の問題もあるでしょう、医療の問題もあるでしょう、いろんな話がありますから、そういったものをどうしてやっていくかということについてやはりいろいろ考えていかなければならない点はあるのだろう、こう思っていますが、まだ今いつどうするかということを決めているわけでは全然ない、これだけははっきり申し上げておきたいと思います。
  32. 早川勝

    早川委員 決めてないという答弁では実は困るわけでして、多分そのままいきますと、暮れに出てきたときあるいは年が変わって出てきたときに、先ほど紹介したような文章しか出てこないと思うのですね。国と地方との行政配分をどうするかとか補助金の問題をどうするかということが関連があります。今回の税制改正は国税を中心にして、また国と地方との税源配分は後日にというような内容しか出てこないと思うのですがね。  そうじゃなくて、暮れまでに結論が出るというのではなくて、審議の対象としてもう真っ正面から議論してみなさい、それは同時に行政を、じゃ財源をそちらへやれば地方にその内容をどこまでゆだねるかというおのずから裏表の関係になるわけですよね。そういうことで、暮れに結論を出せとは申しませんけれども、必ず言っていただきたい、国と地方との税源はいかにあるべきかという問題も真っ正面から取り組んでほしいということをぜひ重要な検討事項としていただきたいということでございます。
  33. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 実はその問題だけというわけにはなかなかいかないのだろうと私は思います。国と地方との仕事をどう分けるかというのがやはりありまして、その仕事の中でどういうふうな金の使い方をしたらよろしいか、またどういうふうな税金をいただいたらよろしいのか、どういうふうな形で金を集めたらよろしいのかというのが基本にありまして、その上で税金の話にならないといかぬのだろう、私はこう思うわけでございまして、そういったことを先ほど来申し上げております。  先生御指摘のいろいろな御議論があることはよくわかりますし、当然そういったような点も考えていかなければなりませんが、何か最初に話がありましたのは、この七月ぐらいからでも何かというような話がある。まだそこまでのところは、まだいろいろな問題がありますから、いつやったらいいのか、やるのだったら議論しただけじゃ困るわけでありますから、やはり相当の、ある程度までの方向づけが出せるような社会的な、また一般的な状況がないといかぬのじゃないかなという感じを持って私は申し上げているところでありまして、御議論の点が一つの問題点であることは私も十分に認識しているところでございます。
  34. 早川勝

    早川委員 じゃ、終わります。
  35. 藤井裕久

    藤井委員長 仙谷由人君。
  36. 仙谷由人

    仙谷委員 今早川委員の方から、九二年度税収不足の問題、それから不良債権の問題、そして税源配分の問題が提起されたわけでございます。私、経済見通しの問題も含めて甚だ国民にとってわかりにくいのは、税収不足というふうな問題が政治問題であるのかないのかといいますか、政治的にだれが責任をとるのかということが全然議論されないというのが不可思議なんです。先ほど税収不足の額について、当局の方からは、余り金額的に確定しないというふうなお答えだったような気がするわけですが、いずれにしましても、当初予算からはもう既に五兆円余りも税収不足があるということを昨年の段階でお認めになっているわけですね。新聞報道に限らず民間経済機関の予測等におきましても、七兆円強の税収不足が発生するということがほぼ明らかになっているのだと思うのです。七兆円といいますと、当初予算の一割を相当超える税収不足になるわけでございます。  こうなりますと、どこが間違っていたのか、そしてこの種の間違いについては政治的な責任はあるのかないのか、あるとすればだれが責任をとるのか、ここのところだけははっきりさせていただかないと、この間の経済政策、経済運営について、我々は自民党政府の運営について八五年以降全く遅きに失したのか方向が間違っていたのか、相当な間違いをしてかしたと思っております。したがって、今の大臣や当局の責任者にすべて責任があるなどということを考えておるわけではありませんが、こういう問題の政治責任というのはどこにあるでしょうか。大臣お答えいただきたいと思います。
  37. 濱本英輔

    濱本政府委員 まず、先刻の早川先生のお尋ねに対しまして御報告申し上げましたように、この平成四年度の税収全体がどのようなことになりますかは今の段階で確たることを申し上げられるような状況にはないということが一つございます。  先ほどの繰り返しになりますけれども、所得税確定申告の結果が出まして、これが前年に比べますとかなり予想を超えて低調であったという事実、これは明らかになりました。したがいまして、申告所得税収補正後の見積もりを相当下回るということは避けがたいことだと私は思っておりますが、それが税収全体としてどう響き、他の税目がどのようなことになりまして、結果、最終的な姿がどのようになりますかにつきましては、もう少し時間をかしていただきまして見届けたいという気がいたします。  税収見積もりにつきましては当局はどのような考え方でこれに臨んでおるか、そしてどういう責務を感じておるかというお尋ねかと存じますけれども、私どもが実際に利用できますデータ、それから過去のいろいろな経験を経て蓄積してまいりました手法といいますか、そういったものを総動員いたしまして、私どもとしてできますベストを尽くしておるつもりでございます。今回、平成四年度の税収が確定いたしました段階でそれがどのようなものになるかはなお今の段階で見届けがたいと申し上げましたけれども、仮に当初の見通しと相当違ったものになってきました場合に、それがいかなる原因によってそうなったかということについてはもちろん勉強しなければならない、そうなった状態のもとで勉強しなければならないというふうに当然思っておりますけれども、その見積もりをつくります段階で、私どもは私どもとして可能なありとあらゆる手を尽くしたつもりでおります。  先ほど申し上げました申告所得税収がいかにも見積もりを大きく下回ったという点につきましての事情につきましては、これもこれからきちんと解明すべきことでございますけれども、主な原因は、土地の譲渡所得が私どもが見込みました水準よりも大幅に少なかったという点に最大の理由があるように思っておりまして、その変化の大きさというものが私どもの予想を超えたということでございます。土地の譲渡所得をどう見積もるのか、これは大変難しい問題でありまして、今回の経験というものを将来にどう生かせるのかというのは、これはこれから私どもに課せられた課題というふうに考えますけれども、申告所得税見積もりに実績が至りそうにないということの最大の理由はその点にございましたことを御報告申し上げなければならぬと思います。  いずれにいたしましても、今の税収見積もりと申しますものは、単に私どもの手元にございますデータだけでなくて、いろいろな方面の専門家の意見でございますとか、あるいはいろいろな機関で研究されました成果といったようなものも聞かせていただきまして、そういった御協力のもとにまとめ上げているものでございまして、そういった情報の収集につきましてもなお一段と工夫をしていく必要があろうかと存じます。また、今回こういう事態を迎えているということにつきましても、私どもはそういった方々に事情をよくお話しいたしまして、また今後の対応というものにつきましてもいずれ検討していかなければいけないというふうに思っております。
  38. 仙谷由人

    仙谷委員 大臣、やはりここは政治の責任者といいますか、政策責任者から率直に国民に語るべきだと思うのですね、この種の話は。今の話を聞いていても、私どももわからないけれども、多分国民の多くはわからないと思うのですよ。何で七兆円も税収不足が出るのかという話ですね。ここのところは誤りは誤りとして認めないと、経済も、さあ、ベースがこういうことだから、ここを出発点にして例えばリストラを進めるとか、あるいは政府と民間が一体になって日本の経済をどちらかに向かせよう、元気を出そうということにならないと思うのですよ。  今の話は主税局長ですからあの程度しかお話しできないのは私も理解をしないわけではありませんけれども、それでは、今年度の税収見積もりがございますね、金額にして約六十一兆三千三十億円でしょうか。前年度がこんなに、一〇%も当初予算から崩れた、一〇%強崩れた税収前提にした税収見積もりがことしの六十一兆円という税収見積もりになっているわけですから、予測になっているわけですから、これももうほぼ大崩壊をするのは必至の状況というふうに言っていいんじゃないでしょうか。  もっと言いますと、プラザ合意以降の税収見積もりというのは極めて大きく外れているじゃないですか。上に外れるか、下に外れるかはともかくとしまして、極めて大きく外れている。そうですよね。だから、一説によると、政府は十六兆円もバブルの税収をポケットに入れだということが言われておるわけでございます。これは中央政府だけですよ。  そうなりますと、後で聞きますけれども、今からの政府の新総合経済対策、これもどんな効果があるのか、あるいは意味があるのかという根本的な疑問に突き当たらざるを得ないのであります。大臣、どうでしょうか、この税収見積もりがこんなに狂っておるのは、経済見通しがそもそも間違っているからだ。つまりこの「財政の中期展望」というのを拝見いたしますと、成長率掛ける弾性値掛けるということで出してきているわけですね。そうですね。だから、GNPを基本にしてそういう見積もりを出しているわけですから、そんな単純なものじゃないというふうにおっしゃるかもわかりませんが、しかし一応そこから出てきている。  そうなりますと、やはり経済見通し、経済運営がそもそも間違っていたから、つまり八五年以降は低金利あるいは超過剰流動性というようなものでバブルをつくった、間違いがあったから上に大きく税収見積もりが間違った、そして、バブルの谷の深さ、それを支えるような迅速的確な経済政策が行われなかったから現時点のようなことになっておるんだ、こういうことを政府がお認めになって、そこの総括がない限り次に進まないと私は思うのですよ。やはりここは大臣から、この税収不足、昨年度、そして今年度予測される税収不足についての政治責任をひとつお伺いしたいと思うのです。
  39. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 仙谷委員指摘のとおり、我が国が八五年のプラザ合意以降大変大きな変革に見舞われたことは事実でございまして、私は、その中で国の財政をどう運営していくかというのは、今までも大変苦労したところであります。しかしながら、税収見積もりについて、確かに相当期待したものよりは落ちているじゃないかとおっしゃればまさにそのとおりであろう、私もそう思います。  しかし、そういったような今まさに御指摘のような中でいろいろとやってきておるわけでございまして、ではそれでどうやっていくのかね、こういうふうな話でございますが、まあ三・三%とか三・五%というのはあくまでも経済的な見通しでありまして、我が国が持っています体制は、決して計画的な経済、あるいは中央集権的な経済でなくて自由な経済でありまして、自由な活動であります。その中で経済見通しというものを立てていくというのは、やはり経済運営の一つの大きな方針を立ててやっていくわけでありまして、その方針の中でいろいろと努力をしていこうというのが私どもの基本的な考え方でございます。そういったものがありますから、それを一つの目安にいたしましていろいろなことを考えていこうというのが今の経済運営の方向だろう、こう思っているところであります。  したがいまして、言いますと、実体経済が非常にぶれてくるということもある程度までやむを得ないところでございます。本当ならば、補正予算を出しましてこの三月までには相当景気がよくなってくるのではないかな、こう見ておったわけで、なかなかそれがよくならない。もう一つ申しますと、四月、五月にまたよくなるだろう、こう言いますけれども、なかなかよくならない。よくならないものですから新しい経済対策というものも、まさに異例な時期であるけれども早く出してやっていこうというのが私どもの今回補正予算をお願いしているところの基本的な考え方でございまして、そういったことを考えながらやっていかなければならない、こういうことです。  税収が非常に落ちてきていることにつきましては、私どもも、それは確かに数字で間違っておったよと御指摘があればこれは全くその御指摘のとおりだと言わざるを得ないのだろうと思いますが、そういった中での経済運営であろう。では、税収が足りないから新しい増税をするかといったら、なかなかそんなことできるわけではありません。私は、そうした中でどうしてやりくりをし、財政を運営していくかというのが私たちに与えられたところの役割じゃないだろうかな、こう思っているところでありまして、全体としていいような方向にやっていくために今回の補正予算もお願いもしたし、新しい経済政策という形でいろいろなことを考えてやってきたということでございます。
  40. 仙谷由人

    仙谷委員 私は、やはり政府の経済政策の当局者が率直に語り、謝るべきは謝らないと、せんだっても宮澤さんの新聞報道あるいはテレビでの発言を見ておりますと、いや、おれに任じときゃそのうちよくなる、必ず間違いなくよくなるみたいな話ばかりあっても、もう市場そのものが、あるいは経済実態そのものがそこのごまかしを見抜いているのじゃないかと思うのですね。ますます冷ややかな雰囲気になってくるのではないかと思います。  例えば本予算のときには、本予算で三・三%成長を達成できる予算を組んだというふうなことを、これは大蔵省から出されているペーパーに載っております。ところが、それでは三・三%成長が達成できない。三・三%成長が達成できる方がいいか悪いかは別問題ですよ。そして新総合経済対策というのをわざわざつくって、四月十三日に大蔵大臣は「相当高い確実性を持って達成できる」、こういうふうにお述べになっている。経済企画庁長官も「達成可能と理解している」、こういうふうに言っているわけですね。もうここで、既に三カ月の間で、どうも本予算だけでは三・三%成長は達成できないということをお認めになっているから、補正予算を組み、新総合経済対策をつくって、そして、これで三・三%成長できる、こうおっしゃっているのだと私は思うのです。  ところが、民間の調査機関、あるいはきょうはOECDの経済見通しが発表されておりますけれども、これは何か政府当局者が一生懸命お願いして、OECDは〇・八%しか今年度の成長はないというのを一・〇%にしてもらったとか、IMFは一・三ぐらいでございましたか、そういう成長率しか見通せない。ヨーロッパの銀行あたりは、新聞報道によると、政府の支出をもっと出させるためにこういうことを書いているのだろうというふうな話がございますが、イギリスの中央銀行が〇・五%、イギリスのバークレイズ銀行が一・二%、非常に低い見通ししか出してこない。例えば、私がちょっと見ました四月十四日付の各銀行研究所の見通しによりましても、債券信用銀行は〇・八%増の二・四%だ、日本総合研究所は一%増の二%だ、富士総合研究所は一・三%増の二・五%だと、いずれにしても三・三%には届きそうもない。そして日本興業銀行に至っては、新総合経済対策をやっても〇・六%しか成長しないということを主張しておるわけでございます。なぜかといいますと、今度の企業収益を見ましたら、設備投資の予測を立てる、消費動向を見る、そういうことを考えますと、ことしじゅうに、この新総合経済対策にもかかわらず、そんなに上向くとは予測できないというのが一つの結論ではないかなと私は思うわけでございます。  問題は、そうしますと、政府支出をふやしてあくまでも三・三とか三・五というふうな成長率を達成しようと努力することの方がいいのか、時代は変わったのだ、もうそんな高成長、ある意味での高成長は、右上がりのトレンドの成長路線はないのだということを政府もちゃんと言うか、どちらかしかないと私は思うのですね。そして、予算の配分問題についても、あるいは民間の業態についても手をつけていくという方向がなければ、今までのように、景気が悪くなった、有効需要を創出する、金利を下げて政府支出をふやせばいいのだ。ところが、これが効き目がないのじゃないかという時代の転換点に来ているのではないかと私は思うのですよ。だから、今度の新総合経済対策も量的な、つまりGNPを引き上げるということに何か非常な意味があるようなこういう政策というのはほとんど効果がないのではないか。したがって、その分、税収見込みもずれて、多分また一〇%近い、あるいは七%か八%近い税収不足が九三年度も出るのじゃないですか。  先ほど、税収不足の場合の公債は、公債を出しても、それは特例公債とはちょっと違うのだ、赤字国債とは違うのだという話を、だれか、審議官ですか、されましたけれども、そんなものじゃないでしょう。赤字国債は赤字国債。予算の中で使う金が赤字になったから国債を出すという意味においても全く同じでありまして、そんなところで意味が違うなんという、そういう概念論争みたいなところへ持ち込んで逃げ切ろうたって、それはそうはいかないのではないだろうかと私は思うのです。やはり率直に語るべきなんですね。その原因と責任について率直に語らない限り、民間といいますか一般の消費者は反応しないと私は思います。  何か御感想があったら、一言述べてください。
  41. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 仙谷さんのお話でございますが、先ほど政府の経済見通しというものの話を、考え方を申し上げました。経済運営というものはやはり一つの大きな枠組みの中で動かしていった方がいいだろうという、これは伝統的な手法といえばそういうことだろうと思いますが、持続的な経済成長を遂げていくことによりまして、お互いの生活レベルも上がっていくであろうし、また、いろいろな所得も上がっていくでありましょう。そうした形で運営していくという形での大きな目標を立てまして、それに向かって私たちの方はいろいろとやっていこう、こういうことで努力をし、新しい補正予算もお願いして、それでいろいろな公共事業をつけてやっていくのも、新しい社会資本をつくったり何かすることによって生活レベルを上げていくというのが私どもの基本的なねらいでございます。  そういった中で、税収の見通しというのが確かに相当に崩れるのだろうというようなお話がございました。そういうふうになっておりますが、それは昨年の経済がそれだけ悪かったことの結果だろうと私は思うのです。税収というのは先に税を納めるわけじゃないので、仕事をしてもうからなかった、どうした、こういうふうな形の結果、あるいは所得が上がらないからという形でそういうことになってきた、そういった結果でございますから、経済政策、運営をどうしていくかということを考えていかなければならないのがお互いの責任だろうと思うのです。  そうしますと、それじゃゼロ%成長でいいかということになりますと、ゼロ%成長になったら税収はますます下がるのだろうと私は思いますし、全体の運営としては三・五%とか三・三%というようなところに持っていくのが、新しい経済計画、五カ年計画、新生活、経済企画庁でつくりましたこの前の経済計画の中でも大体そんな形でやっておりますから、そういったことを中心にしてお互いがいろいろな形で努力していきましょう、こういうことであろうと思うのです。  それから、もう一つ申し上げておきたいのですが、赤字になって決算調整資金を使う、それは赤字国債と同じではないか、こういうお話でございますけれども、それは、国債整理基金というものがありまして、そこに資金がありますから、そのお金を一時的にお借りして翌年度にはお返しをするというのでありますから、法律的にはそういうふうな道が開かれております。確かに一般会計の方が赤字であるのは赤字でありましょうけれども、それはそういった形で出す。新しく国債という形で国民にまたそういった債券を買っていただくというような話とはちょっと違う話じゃないだろうかな、私はこう思っておるところでございます。いずれにいたしましても、経済全体としての運営をどうやっていくか、これについては私どもも一生懸命やっていかなければならないと思います。  もう一つ申し上げますが、民間のいろいろな数字について御指摘がありました。この民間の数字はいろいろなことがあると思いますが、景気を上げていく段階ではなかなかそういったところの数字というのはよくならないというのが実態だろう、こう思っております。特に銀行なんかによりますと、自分のところが融資をしているところを見ますと、大変厳しいということが出てくるでありましょうから、一つの期待感もありましてそういった低い数字が出てくる、低いからいいということじゃなくて、やはり高くしてもらいたいというのが本心だろう、私はこう思うのです。低いなら低くていいのだという話ではないので、もう少し何とかしなければならないという期待も込めてそういったところの数字が出ているのだろうと私は思います。  それからもう一つ、IMFとOECDの話でございますが、これも九三年につきましては割と低い数字が出ておりますが、九三年でございまして、ことしの数字、それから九四年の数字というようなことになりますと、これはIMFもOECDの方も九四年の方の数字については相当高い数字を出しているところでありまして、日本に対してもこういったところが相当上がっていくのだな。日本の年度で四月から来年の三月まで、年度でやりますと一月から十二月までという形で若干のずれがあります。やはり下期には相当上がっていくのだということをいずれのところも認めているのではないかなということを私は申し上げておきたいと思っております。
  42. 仙谷由人

    仙谷委員 結果だからしょうがないみたいな話がありましたが、政治の世界は、ある予測を立てて政策運営をして、結果が出たときにはそれについて責任をとる、こういうことが必要なのではないでしょうか。そのことをまず申し上げておきます。  それから、三・三%成長というものが本当に必要だというふうにお考えならば、野党が共同して要求した所得税減税もやる。そして、今度の新総合経済対策の中での真水部分をもっとふやす。ある意味ではディスデフレ政策をとらない限り実質成長率も上がってこない。多分公共投資、いいか悪いか別にして、私は余り肯定的でないわけでありますけれども、もっと倍ぐらいの経済対策としての、つまり二十兆円くらいの公共事業あるいは公共投資あるいは有効需要創出の施策が要るのだろうと思うのですね。それから五兆円くらいの所得税減税をやらないと、多分三・三%の成長というのはあり得ない、ここは私の主張として申し上げておきます。  そこで、この所得税減税でございます。つまり、日本社会党のシャドーキャビネットも緊急経済対策の大綱というのを出しました。総額十二兆円強でございます。その中に三兆八千億の所得税減税が含まれております。これは当然のことながら野党共同要求の、つまり自民党の幹事長との前向き検討のお約束に従ったものでもあるわけでございます。そして、公共投資についてもちょっと方向性を変えた方がいいのではないか。つまり建設優先といいますか、土木、施設優先の公共事業からそろそろソフトといいましょうか、そちらに方向を変えないと意味がなくなってしまう。つまり、経済効率の問題もさることながら、これから我々が向かおうとしている社会づくりについて意味がなくなってしまう。つまり、今のシェアリングなのかシェアなのか知りませんけれども、各省庁、各局、各課の縄張りの中へ仕切られた予算を同じような割合ずつふやしてみても意味がないのではないか、こういうことを主張しております。  その点は時間の関係で省きますが、所得税減税、これは私も赤字国債を発行して戻し税減税を行うということには首をかしげる一人でございます。しかしながら、制度改革を前倒しして今の段階で物価調整的減税を行うことが必要なのではないか。消費を見てみましても、どうも雇用と賃金面で明るさが見えてこない。つまり、もっといいますと、九二年の実質賃金上昇率はゼロ%でございます。そこのところは、九三年度も改善される見通しというのはないであろう。つまり、企業リストラというのが最後の段階になりますと雇用調整的側面を含むというのは、これは物の流れとして当然のことでございます。  結局そういう観点から考えますと、今の税制が資産性所得へ少々軽いあるいは勤労所得へ重い、この構造が改められていないわけでございますので、制度改革の前倒しとして、例えば給与所得控除を、今四〇%台の給与所得控除を受けられる層は、これを例えば百六十五万を百八十万にする、あるいは二〇%の給与所得控除を受けられる層、これを所得の水準を六百万から六百五十万にするというふうな物価調整減税をやるべきだ。そのことがない限り、大蔵大臣おっしゃいました三・三%成長にこだわるといたしますと、どうもそういう効果といいますか経済成長、数字の上での経済成長というのは達成できないだろう、こう考えるわけでございます。その点大臣、いかがでございましょうか。
  43. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 物価調整減税というのはインデクセーションというお話かとも思いますが、ちょっと私もよくお話の筋がわからないのですけれども、物価が上がったならばその分だけを、こういうふうな話になりますと、今物価は非常に安定をしているところでございますし、物価にスライドして減税をというのは、どうも今の段階では余りなじまない話ではないか、こう私は思うわけでございます。先生もきょうもちょっと御指摘がありましたし、それからこの前もそういった御指摘がありましたが、いわゆるばらまき減税というのは余りやるべきでない、こういうふうなお話でございました。  私ども考えておりますのは、すぐに消費に結びつくようなところのものをどうやっていくかというような形でのものよりは、たびたび繰り返して恐縮でございますけれども、公共事業をいろいろやって仕事を起こしていく、その仕事によって働く人が所得をふやしていく、また企業が収入を得ていく、ひいては全体の生活水準が上がっていく、こういうふうな形で考えているのが私どもの基本的な考え方でございまして、そういった仕事を通じまして全体の経済のレベルアップを図っていくという方が、単純に所得について減税するよりは効果が大きいのではないかというのを私どもは考えているところでございます。  それから、社会資本につきましても、単に各省の割り当ての枠の中でやっていくのはおかしいではないかという御指摘でございました。私もこの御指摘はもっともだと思いますし、社会経済情勢の推移に従いましていろいろと考え方を変えていかなければならない。新しい時代を取り入れて社会資本の充実も図っていかなければならない。財政法四条の規定の範囲内におきまして、私どもは社会資本の充実をこれからもやっていくという形で各種の研究施設その他のものにつきましても新しいものを今回の補正予算などで入れておるところでございます。  それから、二十兆円ぐらいのものをやったらどうだ、やらないととてもできないよ、こういうふうなお話がございました。しかしながら、私ども、は今少なくともこの平成五年度の予算でやりましたし、今回史上最大の規模の公共事業をやっているわけでありますから、このぐらいのことをやっていけば、私はまずまずできるのではないだろうかなという気持ちを持っているところでございます。何しろ五年度の予算、五年度は始まったばかりでございますから、今からどうだこうだということではない。経済の運営というものは時々刻々よく見ていかなければならない話でありますから、そういったことも注意し、先生のお気持ちもあるところでございますから、そういったことを十分に体しながらこれから経済運営に努めてまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  44. 仙谷由人

    仙谷委員 時間がなくなってまいりましたので、通告をしてありました項目も相当はしょってまいります。  この国会のせんだっての租税特別措置法の審議の中でこういう附帯決議をつけさせていただきました。「納税者意識の向上のための啓発活動の充実及び納税者の応接のための庁舎環境の改善など納税者サービスの一層の向上を図るよう努めること。」こういう附帯決議をつけました。  その後少々私の方で事情を聞いたり、庁舎の状況をお伺いいたしますと、特に納税者が相談に行ったときに、秘密を保持して相談できるような場所が各税務署にほとんどないというのですね。それから、確定申告時期になると、もうほとんどがプレハブを建てたり、どこか外のビルに間借りしたり、会館に机を並べて応対をしておる、こういう状況だというふうにお伺いをいたしました。職員の方も非常に狭いところ、そしてまた古い庁舎の中で仕事をせざるを得ない。職場環境あるいは労働意欲の観点から見てもどうなのだろうか。  ちょっと私が調べた範囲でも、昭和四十五年までに建てられた庁舎が五一・六四%、それからさらに二四、五%の庁舎は昭和五十年まで、つまり約二十年近く前に建てられたものである。こういうことになっておって、狭くて汚くて、そして作業能率が上がらないような環境であって、納税者に対するサービスとしては、これはいかがなものだろうかということが指摘をされておるようであります。せっかく附帯決議をつけたわけでございますので、この実態の問題と、さあこれからどうしようかという点について国税庁あるいは大蔵大臣の方からお答えがありましたら、いただきたいと思います。
  45. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 具体的なことにつきましては国税庁の方から御説明をさせますが、今お話にございましたように、特に確定申告のとき大変混雑しているというお話がございました。実は私も先般の確定申告のときに税務署へ行ってみて、これはなかなか大変なことだな、税務署の方も大変だが、確定申告で相談に来ておられる皆さん方もこれは大変な話だなというようなことを正直言って私も感じておったわけであります。  今までは公務員の施設をよくするとかいろいろな設備を改善するということにつきましては、政府の方は正直言っておずおずやっていたのじゃないかなと思うのです。民間の人の方をまず先にして政府の方は後にする、こういうふうな話でございましたが、今先生からもこういった御指摘がありまして大変に私はありがたい御指摘だ、こう思っておりますし、いろいろな点をこれから考えていかなければならないと思っております。  詳しくは国税庁の方から御答弁させます。
  46. 瀧川哲男

    ○瀧川政府委員 税務署庁舎の改善についてでございます。  これは今委員指摘の納税者サービスの向上という面ももちろんでございますけれども、さらに私どもの職員の執務環境の面からも大変重要なことだと認識しております。そういった意味で、予算範囲内でいろいろと工夫、改善してきたつもりでございます。  ただ、本年、先ほど御指摘の当委員会におきます附帯決議というものも出たことを踏まえまして、納税者サービスの一層の向上が図られるように、いろいろな細かい面から大きな面まで実はわたるわけでございます。例えば面談室の設置、これは最近新しい庁舎などには入れてもらっておりますし、また確定申告期などになりますと、これは細かいのですけれども、例えば女子トイレが足りないとか、そういったことも工夫をしながら今やっております。スロープをつけたり、そういったこともやっておりますので、今後ともその細かい工夫をしながら、一方では関係御当局の御理解を得るように努めましてますます改善していきたいな、こう思っております。
  47. 仙谷由人

    仙谷委員 例えば、つい三日前でしょうか、五月三十一日付の新聞に、国家公務員一人に一台パソコンを持たせる、こういう話が書かれております。産業構造審議会の部会が高度情報化へ提言、例えばこういうのがあります。国税の方も多分パソコンとかそういうものを使う職員をふやしていかなければいけない、こういうことに必然的になるのだと思うのですね。スペースがないところへコンピューターを持ち込んでも、これはますます混乱をするだけということになったりします。つまり、そういう近代化、現代化といいますか、そういう方向に向けての庁舎、それからやはりあくまでも納税者、いわば消費者のような立場の方々を大切にするというか、納めていただくわけですから、そういう立場からも庁舎の改善ということもお願いをしたいと思います。  私、職員の方とお会いしたときにこういうことを申しました。これからの時代はますます複雑化、高度化するわけでございます。したがいまして、やはり徴税の段階でいかに公平に、公正に、厳正に税の課税と徴収ということが行われるのかということがこれからの国家とか社会にとって極めて重要なことだと思うのですね。「マルサの女」ではございませんけれども、私は国税あるいは税務署の職員の方々にそのときもお願いをしたのですが、これからは政治家とか、特に悪質な政治家とかやくざとの闘いが皆さん方の仕事になるであろう。せんだっても我が党は国税庁の方に、課税部長の方には、政治家の公私の峻別をしていない、裏金をいっぱいポケットに入れているやつは厳しく課税をするようにという申し入れをしました。まさにそういう時代だと思いますので、ある意味では勤労意欲というか使命感が非常に必要な職場になっておるわけですので、ひとつ庁舎の改善といいますか労働環境、職場環境という観点からも今国会の附帯決議を実質的に具体化する方向に、大蔵大臣あるいは主計当局もひとつ踏み出していただきたいということをお願いいたしまして、時間が参りましたので質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  48. 藤井裕久

    藤井委員長 小野信一君。
  49. 小野信一

    ○小野委員 経営不振に陥っている釜石信用金庫を清算して、地元金融機関の岩手銀行を中心とした北日本銀行、東北銀行、盛岡信金、宮古信金、そして一関信金の三行三金庫、計六つの金融機関で事業譲渡を受けることになった、こういう報道がありますが、間違いございませんか。
  50. 寺村信行

    寺村政府委員 ただいまのお話の件は事実でございます。
  51. 小野信一

    ○小野委員 その際に、岩手銀行の頭取、あるいは大蔵省の記者会見、あるいは信用金庫の代表の方が、出資者には信金の相互援助資金制度からの援助で迷惑をかけないようにする、信金業界で検討する、こう発言をいたしております。特に、全国信用金庫連合会がそう発言をいたしておりますが、これは出資金は全額出資者に戻すということと理解してよろしゅうございますか。責任を持って戻すということですか。  それから預金と従業員、本店を含む店舗についてはどうなりますか。
  52. 寺村信行

    寺村政府委員 まず出資金お尋ねでございますが、現在の出資金そのものにつきましては、多額の不良資産を抱え、釜石信用金庫が多方面から支援を受けざるを得ないという状況でございますので、現在の出資金そのものは不良資産の償却財源として用いられることになります。しかしながら、信用金庫は協同組織金融機関でございまして、協同組織の相互扶助精神にのっとりまして、釜石信用金庫にかわりまして、別途信用金庫業界が共同いたしまして出資者に対して出資金相当額を支払うものと承知をいたしております。  それから次に預金でございますが、ただいまお話がございましたように、釜石信用金庫の預金は店舗ごとに岩手県下の銀行と信用金庫がすべて引き受けることになっておりますので、預金者に御迷惑がかかることはございません。預金者の方々は御安心いただきたいと存じます。なお、当然のことでございますが、金利や期間等の条件につきましてもそのまま引き継がれることになっております。  従業員につきましては、原則として今回譲渡を受けます三銀行と三信用金庫並びに岩手県内の他の信用金庫に再雇用してもらうこととなっているところでございます。
  53. 小野信一

    ○小野委員 常勤役職員百十八名、出資者六千六百五十七人、大臣、これらの皆さんは大変心配をいたしております。特に全信連の代表の方が関係者に約束をしておるものですから、この公表された約束につきましては、確実に履行するように大蔵省の方から徹底した指導をしてほしいと思いますけれども、いかがです。
  54. 寺村信行

    寺村政府委員 御質問の御趣旨に十分対応できるよう指導してまいりたいと考えております。
  55. 小野信一

    ○小野委員 十月一日が再スタートだと聞いておりますけれども、それまでのスケジュールについて、清算から再スタートまでのスケジュールについてはどういうお考えをお持ちですか。
  56. 寺村信行

    寺村政府委員 これはそれぞれの金融機関がそれぞれの対応をすることになりますが、まず、釜石信用金庫と事業を譲り受ける信用金庫は、六月の初めに事業譲渡、譲り受けの内認可申請、及び定款変更の内認可申請を行います。その後、それぞれの金庫で総代会が開催されます。さらに、事業譲渡、譲り受けの認可申請の手続が行われ、十月一日に事業の譲渡、譲り受けが行われます。  岩手銀行につきましては、事業譲り受けの内認可申請と公正取引委員会への届け出の手続がございまして、さらに株主総会が開催され、認可申請で十月一日に事業譲り受け、こういうスケジュールになっているところでございます。
  57. 小野信一

    ○小野委員 釜石信金の経営破綻を呼んだ原因についてどのように分析をいたしておりますか。
  58. 寺村信行

    寺村政府委員 釜石信用金庫がこのような事態となりました背景につきましては、釜石信用金庫自身がこのように述べております。設立以来当地区の鉄と魚の町としての繁栄とともに業容を拡大してまいりましたが、二百海里問題、あるいは基幹産業、鉄と、委員御承知のとおり造船業等の撤退等もあり、経営面では厳しい状況が続いておりました、このように述べられておりますが、釜石信用金庫の経営が苦しくなりました理由は、こうした地域経済の不振によるものばかりではなく、経済環境の変化に経営が十分に対応し切れなかった結果ではないかと考えております。
  59. 小野信一

    ○小野委員 五月二十四日に大蔵省が記者会見を行いました。それによりますと、不良債権を業界で設立する債権管理機関に時価で譲渡する、こうありますけれども、不良債権の定義とはこの場合にどういう内容を持ちますか。またこの債権管理機関の仕事の内容をお聞かせ願いたいと思います。  及川理事長は五月二十八日の総代会で、釜石信金の不良債権は約百五十億と言っておりますが、大蔵省はこれを確認いたしておりますか。
  60. 寺村信行

    寺村政府委員 現在釜石信用金庫におきまして具体的な振り分け作業を行っているところでございまして、金額が確定しているとは承知をしておりません。  一般的にどのようなものがこのような不良債権に該当するかということでございますが、貸付先が経営破綻に陥っているもの、あるいは回収に時間を要するものという考え方で、現在具体的な仕分けが行われているというところでございます。
  61. 小野信一

    ○小野委員 中心銀行である岩手銀行は、不良債権の償却損あるいは売却損等による赤字も譲り受けるようであります。当然債務超過になります。したがって、預金保険機構に資金援助を求めることになるのだろうと思います。  新聞によりますと、預金保険機構に求める援助金額は約二百億円とありますけれども、その規模は事実でありますか。同時に、この算定はどのようなものになるのでしょうか。
  62. 寺村信行

    寺村政府委員 岩手銀行が預金保険機構に資金援助を申し込む予定であることは、御指摘のとおりでございます。  それで、その具体的な金額でございますが、現在、まだその金額を確定するための作業が続いているところでございます。その算定の考え方といたしましては、不良資産処理や事業譲渡に必要な費用から、釜石信用金庫の自己資本それから全信連等の支援分を控除したものになると聞いております。金額につきましては、ただいまお話ししました二百億円を上回るものと承知をしておりますが、まだその具体的な金額は確定をしていないというところでございます。
  63. 小野信一

    ○小野委員 その裁定の金額は、少なくともいつごろまでに確定をいたしますか。作業日程についてお聞かせ願いたいと思います。
  64. 寺村信行

    寺村政府委員 預金保険機構の資金援助は、運営委員会で決定をされることになります。六月中には運営委員会を開催される予定であると聞いているところでございます。
  65. 小野信一

    ○小野委員 ある人は、釜石信金は零細業者にとっては駆け込み寺のようなもので、他の金融機関は経営内容が悪くなると簡単に融資を打ち切りましたが、信金は力のない者にとっては唯一の金融機関であった、こう非常に同情的に見る人があります。同時に、一方では、経営悪化の要因は、市内経済の沈下というより、ずさんな融資体制にあったと厳しく批判をする人もございます。  そこで、釜石の経済的な背景を少し述べてみますと、釜石は、先ほど局長が申しておりましたように、鉄と魚の町と言われた産業都市でございます。我が国製鉄業発祥の地であり、釜石製鉄所は日本で最古の溶鉱炉を持った歴史的な製鉄所であります。同時に、漁業では、うたで三陸一の港町、こう歌われたほどの繁栄した町でもあります。  製鉄所は、第二次世界大戦の敗戦の間近に艦砲射撃によって廃墟と化しました。同時に、釜石の中心街も瓦れきの山となりました。しかし、市民の協力によって、釜石製鉄所は国内で一番先に復興いたしまして、鉄をつくり始めました。我が国の産業の基礎である鉄を戦後日本最初に供給したのは釜石製鉄所であります。製鉄業を復興させたのは釜石だという誇りを製鉄業界の皆さんは十分承知をしております。そこに働く人々も誇りに思っておるところでございます。しかし、残念ながら、産業構造の変遷によりまして、釜鉄は縮小されましたし、溶鉱炉は休止となりました。ここから釜石の地盤沈下が始まったのであります。  その上に、国内唯一の鉄鉱石を掘っておりました大橋鉱山が操業停止となりました。同じころに、二百海里設定が行われまして、水産業は衰退を余儀なくされました。その上に、北洋のサケ・マスが厳しくなりました。公海流し網の禁止によってイカもまた極端な不振に陥ったのであります。  御存じのように、鉄鋼、水産、鉱工業は不況産業に指定されておる業種でございます。この不況産業を主産業にした釜石の産業構造でありますから、当然不況は深刻でありました。その証拠に、釜石の人口は、かつて九万二千人あったのでありますけれども、現在は五万一千七百人であります。最盛期の実に五二%、半分に減少したのであります。かって釜石のラグビー部、釜鉄のラグビーは七連覇をして国内にその声価を高めましだ。しかし、従業員が減少いたしましたし、採用も大変困難を来しておったのであります。皆さん御承知のとおりです。  この釜石の地盤沈下、釜石の再生のためにと計画された昨年の三陸・海の博覧会は大成功でございました。予想の三倍の観客が集まりました。これから釜石は再生できるのではないか、こう市民が決意を新たにしておったところに、この釜石信金の清算、譲渡が発表になったものですから、大きな衝撃となりました。落胆を隠し切れません。  そこでまた、実に厳しく問題になるのは、この釜石信金の利用者は、地場企業の中でも規模の小さい業者であることであります。したがって、融資条件の変更は直接経営を左右するという問題を抱えておることであります。  そこで、大蔵の方の今後の地域金融対策について、具体的にどんな計画を立てようとするのか、どんな指導をなさっていただけるのか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。  また、敷居の低い釜石信金、おらが信金と言われたこの金融機関から一般銀行融資先が変わりますと、あるいは預金先が変わりますと、当然利用者への対応も変わってくるはずであります。したがって、不安を抱いている預金者あるいは借りる人に対して、銀行に対してどんな指導をしようとするのか、大蔵省考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  66. 寺村信行

    寺村政府委員 ただいま委員からお話がございましたけれども、釜石信用金庫がこのような状態になったという一つの原因といたしまして、地域経済が厳しい状況になった中で、資金繰りが逼迫した企業からの融資申し込みに対しまして、金庫の経営者が安易な判断によりまして当該企業の体力以上の融資を行った結果、このような多額の不良資産が発生したと承知をしているところでございます。それで、このような発生した不良債権につきましては、今回これを別途の債権管理機関に分割いたしまして処理をするということでございます。  それ以外の取引につきましては、預金につきましては、それぞれの金融機関条件、金利等そのまま引き継ぐことになります。貸出取引につきましても、岩手県下の銀行及び信用金庫が店舗ごとに引き継ぐことになっております。これらの金融機関におきましては、その貸し出しにつきまして、その経緯を踏まえ、適切に対応していくものと考えております。  当局といたしましても、事業譲渡後の当該地域の金融が支障を来さないように、注意深く見守っていく考えでございます。
  67. 小野信一

    ○小野委員 中小企業者、商店あるいは個人への融資制度は、商工会議所経由の無担保、無保証の小口金融制度、普通マル金と呼ばれております。釜石の枠は二億四千万円であります。最高融資額は五百万円です。そのほかに、国民金融公庫、中小企業金融公庫、市独自の小口金融制度、県独自のものでありますが、倒産関連防止資金融資制度。融資の継続か否かは資金力、担保力の乏しいボーダーライン上のこれらの利用者の皆さんにとっては死活問題であります。  市、県には直接それぞれの関係者で融資枠の拡大は努力をいたしますけれども、どうしても、国の方でできる融資枠の拡大についても特別な配慮を求めるのですけれども、いかがでしょうか。
  68. 寺村信行

    寺村政府委員 先ほど御答弁を申し上げましたように、当該地域の金融が円滑に行われるように注意深く見守っていく所存でございます。もし、今後事態の推移によりましてただいま御指摘のような措置が必要であるならば、関係所管官庁とも相談をしながら対応してまいりたいと考えております。
  69. 小野信一

    ○小野委員 今回は経験のない清算、譲渡という新しい清算方式あるいは救済方式が行われました。あるいは自主再建という方法も、恐らく以前であればあったのだろうと思います。自主再建なのかあるいは合併による救済あるいは今回のような救済方法、いろいろ考えられるのでありますけれども、この判断は経理上、経営分析上、分岐点は何になるのですか。  どういうものであれば自主再建に協力してやらせる、どういう場合には吸収合併で救済する、それらの指針がおありなのでしょうか。めどがあったならばお聞かせ願いたいと思います。
  70. 寺村信行

    寺村政府委員 金融機関の経営が悪化した場合の対応につきましては、まず経営の合理化、収益基盤の強化等の自助努力が基本になるものと考えております。さらに、関係者の協力、支援を求めるというような対応もございますが、自主再建が可能な範囲につきましては、まさに当該金融機関の経営内容、資産の状況、当事者の自助努力、関係金融機関の協力の程度いかんによりまして左右されるものでございまして、画一的な基準があるわけではございません。  釜石信用金庫の場合、既に平成二年から全信連等からの支援を受けてきたところでございますが、こうした支援を受けても再建の見通しが立たないということで、さらに今後の金融環境の厳しさを踏まえまして、関係者が今回の決断に至ったものではないかと承知しているところでございます。
  71. 小野信一

    ○小野委員 経理上もあるいは理論的にもそういうことになるのだろうと思います。はっきりしたラインを引くということが難しいことは十分承知いたしておりますけれども、自主再建に踏み切れるか、合併による救済か、あるいは今回のような清算、譲渡が、そこに踏み切るためのボーダーライン、分岐点というのは、線ではなくても大きな幅として私はあるのではないだろうか、こう思います。あるはずであります。  したがって、この釜石信金がボーダーラインに乗ったのは何年ごろだったと分析いたしておりますか。
  72. 寺村信行

    寺村政府委員 釜石信金が平成元年度以降経営の環境が悪化しているということで、職員の削減あるいは出資金の配当率の引き下げ、役員賞与の全額カットというような自主再建のための自助努力を行ってまいりました。  平成二年には、それまでの経営者、経営陣が退陣をいたしまして経営者の交代が行われました。それを契機に全信連等から資金支援を受ける、こういう状況になってまいりましたが、こうした支援を受けても、その間経営再建のための努力が続けられてきたわけでございますが、その後の状況の推移で、先ほど申し上げましたような決断に至った、こういうことでございます。
  73. 小野信一

    ○小野委員 大蔵省金融機関への検査、監査は、単に計数や法的違反の有無を調べるだけではないだろうと私は思います。経営上の分析、それに対する指導も当然含まれるのだろうと思います。  釜石信金への大蔵省の検査、監査は直近で六十二年の十月、平成元年の十月、平成三年の八月に行われておりますけれども、その報告書には釜石信金の経営内容についてどういう指摘がありましたか。わかる範囲でよろしゅうございますから、公表していただきたいと思います。
  74. 寺村信行

    寺村政府委員 個別の金融機関の検査結果の内容につきましては御答弁を差し控えさせていただきたいと存じますが、ただいま御指摘のような検査を踏まえまして、先ほど申し上げました平成元年からの自主再建努力あるいは平成二年からの経営陣、経営体制の刷新あるいは全信連等の支援措置が講じられてきたということでございます。
  75. 小野信一

    ○小野委員 釜石信金の経常利益と当期利益を見ますと、昭和六十二年三月期には三億一千三百万円と二億一千百万円で最高でありました。六十三年の三月決算では六千六百万円と四千万円と、前年対比二一%と一八・九%に実に激減をいたしまして、一挙に経営が悪化をいたしておることが数字上明らかであります。その翌年、平成元年に大蔵省が監査に入っておりますし、現在の理事長の及川氏も専務として入金をいたしております。そして、平成四年五月に理事長に就任をいたしております。この経過を見ますと、大蔵省は監査報告から既に今日を察していたのではないかと私は考えます。  同時に、日銀の検査は六十三年と平成二年の七月に入っております。したがって、監査は大蔵省と日銀で交互に毎年行っておるということから見ましても、大蔵省の責任なしとは言えないのではないか、こういう感じを私は持っておるのですけれども、いかがですか。
  76. 寺村信行

    寺村政府委員 決算状況の推移は御指摘のとおりでございますし、大蔵省あるいは日本銀行の検査の状況も御指摘のとおりでございます。  先ほど来申し上げましたけれども、この検査結果を踏まえまして経営改善のための厳しい自助努力に努めることあるいは関係金融機関の支援を受けるといった措置が講ぜられてきたわけでございますが、その過程におきまして、それぞれの段階におきまして当局が助言を行う等の努力をしてきたということでございます。
  77. 小野信一

    ○小野委員 心配なのは二次波及でございます。債権管理機関が設立されまして、不良債権が釜石信金の手を離れまして第三者によって管理されますと、保証人にその責任あるいは支払いが要求されてくることは当然だろうと思います。  小さい地域社会では、同業者が相保証する場合が圧倒的に多いことは大臣既に御承知のとおりであります。本業でもようよう零細企業は事業を継続しているのに、今度は保証によってその責任が追及されますと、第二次波及が当然予想されますし、心配されるところであります。したがって、その防止のためには、返済期間の延期や他の融資制度の融資枠の拡大が必要になってまいります。こういうことは当然早目に手を打っておかなければならないことであり、大蔵に対するお願いになるわけであります。  同時に、我が国の産業構造の変革によってもたらされた特異な地域の現象であります。この産業構造の変化の中からやむを得ないという言葉も聞かれますけれども、私は、やはりその救済は当然政治の一つの責任として果たしていただかなければならないと考えておるものでありますしたがって、釜石の経済のより地盤沈下を防止するためには、公共事業などの特別な配慮が当然必要になってまいります。市を通して、県を通してお願いすることになると思いますけれども、今までのやりとりを聞いて、大臣感想と所見をお伺いいたします。
  78. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 小野先生の御地元の釜石でございますから、先生実態は一番よく御存じでありますし、先生のお話の中にもありましたように、釜石というのは鉄の町でありました。戦後最初に出てきた鉄の町ということでありますし、それからまた魚の町としても栄えたところである。産業構造の変革とはいえ、そうした形の中で町が寂れてきて人口も減ってきた。そういったところでどういうふうに再建をしていくかというのは、私は大変なことだろうと思います。  その中でこうした事件というか、こうした整理をしなければならないということがあったのは、地元の方々としても私は大変なことだろうと思っておりますが、県当局、市当局、また国の行政機関その他におきましても、温かい目を持って私は対策を考えていかなければならない話じゃないかなと思っておるところでございまして、またその方ともいろいろな形で連絡をとってやるべきものではないかな、こういうふうに考えているところでございます。
  79. 小野信一

    ○小野委員 最後に、釜石の経済的繁栄を十分考慮いただきまして、いろいろな御配慮をいただくことを心からお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  80. 藤井裕久

    藤井委員長 午後一時十分に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十四分休憩      ————◇—————     午後一時十二分開議
  81. 藤井裕久

    藤井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。和田貞夫君。
  82. 和田貞夫

    和田(貞)委員 私は変額保険について、限られた時間でございますが、お尋ねいたしたいと思います。大臣、ひとつ十分お聞きいただいて、これは政治的にどうしても解決をしてもらいたい、こういう思いで質問をさせてもらいたいと思うのであります。  過日、商工委員会におきまして、保険部長もおいでをいただいて、その被害者、消費者としての被害者の立場に立って、消費者行政を担当する経済企画庁長官に質問いたしまして、大蔵省と十分連絡をとり合って対応策をひとつ検討しようという答弁をいただいているわけであります。きょうは、若干の被害者としての訴えや被害の状況というものを大臣の方に直接耳に入れていただきまして、冒頭申し上げましたように、ぜひとも政治的に対応策を考えてもらいたいというように思うわけであります。  この変額保険というのは、大蔵省が新しい商品として、バブル経済の中でこれが非常にシェアを広げていった商品であります。この保険金は、定額保険と異なって有価証券等に投資をして、その資金運用の実績によって保険金額に上乗せをする、あるいは解約返戻金額が変動する、そういう仕組みになっておるわけでございますので、もともとハイリスクの商品であるということは明々白々であるわけです。したがって、この認可を与えるに当たりまして、保険審議会の答申におきましても、この答申の中で、そのことは十分注意をしなくちゃならないという趣旨の文言が入れられております。  また、認可の直前に、これは大蔵省が直接発行したものではございませんが、大蔵省の保険第一課内の変額保険研究会が監修をいたしました保険研究所発行の「変額保険ガイド」、この発行に当たって、これはいわば行政指導の一環にもなると思うわけでございますが、当時の保険部長の関要さんがこういうように言っておられるのです。変額保険は、「生保業界の希望の商品であるが、反面、生保業界にいろいろと課題を負わせる商品でもある。」そして、「第二に、変額保険の販売にあたっては、個々の契約者の正確な理解を得ることがきわめて重要である。」「保険金が資産運用の成果によって増減するという仕組みは、従来の定額保険に慣れている顧客にとって非常に目新しいものである。もし、正確な理解がないままに顧客に変額保険を売り込むようなことになると、その後において思わぬトラブルが発生し、変額保険のイメージ、ひいては生命保険そのものの信頼に悪影響を及ぼすおそれすらあろう。」こういうように警告をした文章が掲載されておるわけです。  したがって、従来から、この商品を販売するに当たって、これは募取法という法律によって、商品を販売するのに一定の登録制度によって資格がない者は販売してはいけない。その上にさらに、この変額保険の商品というものはそのことだけではなくて、保険協会が主催する一定の試験をやって、そしてその資格を持った者でなければこの変額保険という商品を販売することはできない、こういうように、非常にハイリスク的な商品であるから、大蔵省も認可に当たって心配の余りにこういう行政指導をされたのではないかと思うわけであります。  ところが、現実の問題といたしまして、全くこの商品にかかわりのない銀行が保険業界のセットによってこの勧誘行為をやっている、こういう事実関係が訴えられておるわけであります。これは弁護士さんのところに訴えが行くだけではなくて、全国の各県にございます消費生活センター、これを集約する経済企画庁が所掌する国民生活センター、ここに集約された苦情の件数を見てみましても、平成三年度で四十一件、平成四年度で五十六件という数字が出ておるわけです。その中でも、変額一時払い終身保険であるにもかかわらず、配当年九%と説明した生命保険会社、あるいは銀行から相続税対策として勧められたという訴え、あるいは損は出ないし必ずもうかるということで変額保険を勧めた銀行等々、訴えが経済企画庁の所掌する国民生活センターに上がってきているわけです。そして、そのような対象者は、必ず六十歳から七十歳の不動産を所有する者、これがこの対象にされておる。そして、先ほども申し上げましたように、勧誘の目的はというと相続税対策。この相続税対策というのは、一様に、訴えられておる被害者が、銀行ないしはブローカーあるいは保険会社の方からそのためにということで加入しているわけです。  こういうことを考えてまいりますと、大蔵省みずからも心配しておった結果が、このバブル経済の中でこのような多くの被害者が出ておるということでありますし、今またこれが各紙に報道されて、その被害の実態というのが出ておるわけでございます。もう自殺を図る、あるいは死にたい、あるいは夫婦げんか等々で非常に大変な状態がこの被害者の中につくられておるわけです。これは既に各紙で報道されておるわけでございますから、大臣もお気づきのことであろうと思います。  そこで、冒頭に大臣の方から、これらの実態について一体どのようにお考えになっておられるかということをひとつお聞かせ願いたいわけであります。
  83. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 御指摘のように、変額保険の問題につきましては、契約者あるいは消費者の方々から私どもに対しても苦情等が来ております。  このようなトラブルの問題につきましては、私どもとしては、まず第一義的には消費者と生命保険会社との間の話し合いで解決すべき問題であると考えておりまして、申し出の内容等を生命保険会社に取り次ぎ、その後、当該生命保険会社から取引内容についての説明を求め、また、これに対する見解等を聴取しているところでございます。その結果、生命保険会社に問題点があれば、改善に向けた指導を行うことにより、消費者からの苦情等を保険行政に反映させているところでございます。  当局としては、このような具体的な事例に基づき引き続き実態把握に努めるなど、日常の行政を通じて適切に対応してまいりたい、このように考えております。
  84. 和田貞夫

    和田(貞)委員 あなたの答弁は、本当に被害者の立場に立って、心の底から何とかしてあげなくちゃいかぬ、商品として認可した大蔵省として——先ほど私が読み上げましたように、大蔵省自身が認可に当たりまして心配しておられることが、当時の、あなたの先輩の保険部長が言っておられるのです。ところが、そういうようなことになってきた以上は、今のような答弁じゃなくて、何とか被害者の立場に立って行政指導をせないかぬ、実態を把握して対処していかなければいかぬという心のこもった答弁がないじゃないですか。この間の商工委員会のときにお答えになったことと何ら変わっておらない。あれからもう既に二週間経過しておるのです。その間に、なおもっと真剣になった対応策というのがなぜ考えられないのですか。  大蔵省として、この際、被害者が訴えておるような内容のことが本当にあったのかどうか、実態を把握しよう、調査しよう、こういうお考えはないですか。
  85. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、このトラブルあるいは苦情等が寄せられている中で、私どもとしてもその実態把握に努めているところでございます。  商工委員会でも御答弁申し上げましたように、消費者から寄せられた苦情等につきましては、その後、消費者及び生命保険会社の話し合いが真剣に行われておりますし、そのような中で問題解決が図られていくことが大変望ましいということで私ども指導しておりますが、ただ、双方で募集時の状況等についての見解が相違している案件がございまして、結果として裁判に持ち込まれている案件もございまして、私どもといたしましても実態把握には努めておりますけれども、その事実関係について双方で認識が異なるというような問題につきまして、その事実関係の把握についてはおのずから限界があるということは御理解いただきたいと思います。
  86. 和田貞夫

    和田(貞)委員 具体的にひとつお答え願いたいと思います。  消費者が訴えておるように、全く募集の資格のない銀行が前さばきをやって、そして勧誘したという事実は、それじゃその実態調査の結果出てきましたか、出てこなかったですか。
  87. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 御指摘のように、この申し立ての中には募集資格のない人間あるいは銀行員が募集を行ったのではないかという御指摘もございますが、そういった問題につきましても、私どもとしては、双方の御意見等も伺って実態把握には努めておりますけれども、その募集行為につきましては、その個々のケースごとに異なっておりまして、具体的な、募集資格のない者が果たして本当に募集を行ったかどうかということにつきましては、双方の主張も違っている面が多々ございまして、そこにつきましては実態把握にも限界がある。  しかし、いずれにいたしましても、募集資格のない者が募集を行うということのないように厳正に指導、注意をしてきているところでございます。
  88. 和田貞夫

    和田(貞)委員 それでは、四月三十日付の読売新聞の記事でございますが、「「変額保険」で顧客紹介料」、これは具体的に言うと横浜銀行ですけれども、横浜銀行の関連企業を通して明治生命の関連グループから一億円以上の顧客紹介料が渡されておるという記事は全くうそですか。
  89. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 新聞報道に今おっしゃられたようなことが報ぜられているということは私どもとしても承知いたしております。  ただ、今御指摘がございましたように、紹介行為というものは、募集取締法の観点から申しますと募集には当たらないということが従来の解釈でございまして、その個々具体的な事例に即して判断しなければならないわけでございますが、その紹介行為にとどまる範囲においては募取法の問題は出てこない、こういうようなところではないかと思いますけれども、いずれにいたしましても、その事実関係に即しながら判断していく必要がある問題ではないかと思っております。
  90. 和田貞夫

    和田(貞)委員 時間の関係で、このことだけで言っておったら時間がありませんが、現実の問題として、新聞で報道されるようなことが現存するわけです。異口同音に、全国の消費者センターに訴えておられる方も銀行銀行と言っておるのです。顧客が、銀行であるがために信用して、後ほどやってくる保険会社と契約をしておるのです。これを繰り返しておるのです。  それでは、十四条の違法資料を利用して、これは募取法の十四条で明々白々に書いてある、それ以外のものを使って勧誘したという事実はないですか。
  91. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 御指摘のような問題につきましては、個別具体的な事実に即して判断しなければならない問題だと思いますが、一般的に例えば募取法の二条に書いてございます募集文書図画を用いて募集を行わなければならない、あるいは断定的な判断を下して募集を行ってはならないというような禁止行為、このようなものに果たして具体的に行われた事案が該当するのかどうかにつきましては、そのときにその募集文書図画を用いながら果たしてどういう説明をしたか、あるいはそのときに付随的な資料をどのように使ったか、こういった事実関係に照らしながら判断していかなければならない問題ではないか、このように考えております。
  92. 和田貞夫

    和田(貞)委員 それでは、これも指摘をいたしましたが、過去にテレビ朝日が放送をやった。しかも、出演しておった公認会計士というのはにせの公認会計士であった。変額保険を勧めておった。これをビデオ撮りをして、このビデオ撮りをするということも実は別の法律違反ですが、そのビデオを、これ一件だけじゃないのだ、これを渡して、そしてこういうものだから、決して損をしないのだから、相続税対策として入っておったらあなたの財産がなくなるということが避けられるのだからということを勧めて、これを見せて、そして判断をさせているというのは、これは違法じゃないですか。
  93. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 御指摘のビデオにつきましては、平成二年四月に民放テレビで放映されたものを録画したものではないかと思われますけれども、これを保険募集人が募集の際に顧客に提示した例もあるというふうに承知しております。  ただ、このような募集行為が違法であるかどうかの点につきましては、当該ビデオテープが顧客との間でどのような場面で使用されたのかどうか、例えば一連の募集文書図画の補助的なものとして使用されたのかどうかの事実関係に基づいて判断する必要があると思います。
  94. 和田貞夫

    和田(貞)委員 全くなっていないじゃないですか。個々具体にと言うから具体的に言っておるのだ。契約者に渡しておるから、これは証拠にあるのだ。これ一本だけじゃないよ。もっとビデオのテープを積んだら今の答弁は変わるのですか。たまたま一本のテープを持ってきているだけの話じゃないですか。  こういうテープを顧客に渡して、そしてこれを見て判断しなさいというようなことは明らかに募取法の十四条の違反じゃないですか。素人である我々も明々白々にわかるのだ。行政指導をやっているあなたが何という答弁ですか。もう一度答えなさい。
  95. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、ビデオテープを使用した場合の使用の目的とか、あるいはそのときにどのような募集の説明をし、どのような募集文書図画を用いたか、そのときにビデオテープがどのように用いられたか、そういう事案に即して判断すべきでありまして、ビデオテープが使用されたからといって直ちに募集取締法違反になる、このようなことにはならないと思います。
  96. 和田貞夫

    和田(貞)委員 これはあなたと討論をやっていたら時間がないのです。大臣、よく聞いておいてくださいよ。明らかに違反じゃないですか。素人が見ても違反じゃないですか。何ということを言うのだ。  この変額保険というのは、ハイリスク商品であるということはあなたも十分知っているはずなのだ。だからこそ、大方の生命保険会社が商品として販売しておりますが、富国生命のように、そういうおそれがあるから、将来的にはそのようなトラブルがありはしないかということをもともとから心配をして商品として販売をしておらない保険会社もあるじゃないですか。そういう中でこういう被害が出てくれば、保険会社銀行の立場に立つのじゃなくて、顧客、被害者の立場に立って、もう少し温かみのある思いで対応策を考えていくということが血の通った行政官としての立場じゃないですか。もともと大蔵省というのは、消費者の立場に立ち切っておらないというところに問題がある。銀行証券会社だけの立場に立つのじゃなくて、こういう問題が起こってくれば消費者の立場に立ちなさい。被害者の立場に立ちなさい。  通産省の場合も、言い方によるならばもっとハイリスク性の強い先物商品の取引について行政指導をやっておる。かつて証券トラブルの中で証券取引監視委員会というのをつくられた。しかし、商品取引業の場合は商品取引員協会を設置し、被害者が出てくれば被害者の立場に立って、どのように温かい目で、温かい心で、温かい姿でこれを救済していくかということを含めた苦情の処理機関が証券業界より以前にできておるのだ。これこそが行政マンとしての立場、行政庁としての血の通った行政のあり方じゃないですか。  もう一度、保険部長じゃなくて、この際ひとつ銀行局長なり大臣の方から、温かい気持ちでこの場を通しましてお答え願いたいと思います。
  97. 寺村信行

    寺村政府委員 先ほど来保険部長から御答弁を申し上げているところでございますが、個別の事例につきましては、事実認定の問題でございます、また、現に係争中の事柄でもございますので、具体的なコメントは差し控えさせていただきたいと思います。  当局といたしましては、銀行、保険会社が顧客との間で無用の誤解やトラブルを生じないように、今後適正な指導をしてまいりたいと考えているところでございます。
  98. 和田貞夫

    和田(貞)委員 時間がありませんので、大臣としてぜひともひとつお答え願いたい。こういうような実態、もっとしゃべりたいことがあるのですが、時間の制約がありましてしゃべれない。そこで、大蔵省としては、今後の対応についてぜひとも消費者の立場、被害者の立場、契約者の立場に立ってひとつお願いしたいと思うわけであります。  先ほど経済企画庁が集約したデータを申し上げましたけれども、第一東京弁護士会の変額保険一一〇番、四月の一日、二日、二日間で何と百十件の訴えが出ております。全国的にこれをやればもっと被害者が訴える、そういう数字になるのじゃないかと思うのであります。これらの被害者の訴えについて、大蔵省は、今局長なり部長の方から御答弁あったような水臭い立場で実態把握するのじゃなくて、もう少し身の入った実態把握というものをやはりやってもらいたい。そしてその上に立ってぜひともお願いしたいと思うわけでございます。  先ほどの答弁の中に既に訴訟している方もあるということを言われます。訴訟しようと思いましたならばどれだけの時日がかかるかわからぬので、一日一日と利息がかかってくるのです。だから訴訟する方々は一たん解約するのです。これは正しい契約を結んだ正しい商品であるということを認めて解約しているのじゃないのですよ。緊急避難的な措置として、訴訟に持ち込むために解約をしておるんだ。したがって、解約をしなくても、現況のままで、利息はここで一たん停止をするというような行政指導をしてもらえれば、これは現状のままで訴訟に持ち込むことができるのです。  今第一東京弁護士会のこの一一〇番を受けられて弁護士の先生方が取り扱っている訴訟件数は約七件、八件、これがあと二カ月たちますと八十件を上回ると推測されておるわけです。それだけたくさんの被害の訴えが出てこようとしているにもかかわらず、今のような答弁じゃなくて、今のような態度じゃなくて、私が今御指摘申し上げましたように、被害者の立場に立って、せめて利息請求を棚上げにするような行政指導ができるならば解約しないで現状のままで訴訟に持ち込むことができるのですが、せめてその程度の温かい行政指導が対応策として考えられないか、この点を含めましてひとつ大蔵大臣の方から御答弁をいただきたいと思います。
  99. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 委員からおしかりに近いような御質問を受けたわけでございますが、変額保険というのは、私はバブル時代の産物だろうと正直言って思っています。普通でしたら保険で、死亡したときに保険料をもらう云々ということですが、定額のものがあると同時に、やはりそれの運用によりまして得たところの利益があれば、その利益を保険金としていろいろ出す、こういうふうな話でありますから、バブル時代のように非常に上がったりなんかしているときにはもうかるかもしれないが、そうでなかったらなかなか本来もうかる話でないのがこの保険だろうと私は思うのですね。そういったことでありまして、いろいろとトラブルが出ているという先生からの御指摘でありますが、やはりトラブルはトラブルとして解決をしていかなければならない。  先ほど保険募集の取締に関する法律のところの十四条の規定をどうするかというお話がありました。このお話がありましたが、私もずっとお話を聞いておりまして、ここに書いてあるところの募集文書図画というのに今のそのテープが当たるのかどうかというのは、これはまさに裁判になっておるならば、裁判所が御判断をいただくような話になるのだろうと思うのです、この文章の解釈をめぐりまして。そういったような話でございますから、私はそこについてどうだこうだと言うことはなかなかできないのではないかなと思っております。  ただもう一つ、利息をどうするかこうするかというのは、やはり裁判になっているときにその辺がどうなるかというのは、私も今すぐどうだということを、裁判ですから、お互いの訴訟の争いでありますから、どうなるかというのはちょっと私もお返事いたしかねるのであります。やはり裁判であるならば、今あったところのものについてどうするかを争うというのが正しいのだろうと私は思います。  ただし、そういった裁判の問題を離れまして、消費者保護という観点があるのだろうと私は思いますね。今お話がありました弁護士会で一一〇番に何件もたくさん来ているというようなお話、私もいろいろなお話を変額保険については聞いておりますが、特に私は銀行から金を借りてそれで変額保険に入って云々、こういうふうなのが多いんだろうと思うのですよ。そうすると、銀行員が行って、あなた、入ったらこういうふうにもうかりますよなんということになってしまっているものですから、それは銀行の方もやはり厳重にやらなくてはいかない。銀行も免許事業でありますから、いやしくもそんなほかのことまでやってもうかるような話をするというのは私もどうかと思いますし、銀行自体も十分に注意してもらわなくてはいかぬし、それから保険募集に当たるような人も、保険の方だって免許事業でございますから、その点は十分に注意してまいらなくてはいかぬ。そういった点だけは行政指導は私の方としてもやっていかなければならない問題だろう、こういうふうに考えているところでございます。
  100. 和田貞夫

    和田(貞)委員 時間が来ましたので終わりますが、先ほど申し上げましたように、富国生命が、将来的にトラブルがあるかもわからないということで商品化して販売しておらない、そういう保険会社もあるのです、一カ所でございますが。それから現在は、行政指導もあったのかどうかわかりませんが、この商品の販売自粛を各社がやっているのです、こういうトラブルが出てきたから。行政指導があったかないか、わかりませんよ。  けれども、先ほどビデオだけを言いましたが、例えば書いた書類、募取法で決められている文書に違反しているのです。そこには、これは損する場合もありますよということが抜けているのです。そしてそのハイリスク表示を各社が行うようになったのは去年の十二月からなんです。シールを張っておるのです。なかったから張っておるのです。そういう実態もあるのです、大臣。だから、そのような実態を調べてもらったら、明らかに募取法の違反というのは出てくるわけなんです。  それから、私は利息のことを言いましたけれども、裁判にかけているものの利息をどうしてやってくれということを言っているのじゃない。訴訟をする人は必ず解約しているのです。解約しないと、この商品は、一日早く死ぬか、一日早く解約するかしか浮かびようがないのですよ。そういう商品になってきておる。だから私は言っておるのですが、解約をして訴訟すると、裁判の中で、民事ですからどれだけ時間がかかるかわからぬ。そうすると、やはり正規に契約したから解約したのであるということで裁判が不利になることも考えられるのですよ。まだ訴訟しておらない人がおるから、解約するということは、利息が毎日毎日ついてくるから解約するのですよ。そこで、棚上げをしてもらうならば現状のままで訴訟ができるから、解約しないで訴訟ができるから、裁判で被害者が有利なところに追い込んでいくことができるわけなんですよ。  だから、そういう点をひとつ温かい気持ちになって、これから訴訟をするに当たっても、解約しなくても現状のままで利息はひとつ辛抱したれというような行政指導はできるんじゃないかというふうに私は思うわけでございますので、利息を単にまけさせてくれと言っておるんじゃないのです。それこそが被害者の立場に立ったこの場におけるところの大蔵省の温かい行政指導、対応策だと思いますので、ぜひともひとつ御検討いただきまして、そのような対応策を講じていただくよう強く要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  101. 藤井裕久

    藤井委員長 渡辺嘉藏君。
  102. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 先ほど和田議員からも御質問がありましたが、その件に連係プレーで若干質問をさせていただきます。  この変額保険という制度は、これは今さら私が申し上げるまでもございませんが、豊田商法だとか原野商法だとかそういう詐欺まがいの商法ではなくて、正式に大蔵省が認可をいたしまして施行になった保険制度であるということが一つ。それから、それを扱うものは大蔵省の認可をいただいた銀行と保険会社、それから大蔵省に届け出した保険募集人が当たるということ、こういうものであるということがまず大前提で、欲にぼけて一部の方がバブルの波の後遺症を受けて今日に至ったというものでないということですね。  こういう前提に立って、今日、先ほどの話のように全国でこれに加入した人が百十九万五千八百五十六件あるということ、約百二十万人の方々がこれに加入したということなんです。そして、この方々が加入したのは平成二年前後でございますので、株価がもう暴落し始めた一年目に加入をいたしておりますから、そのために運用益があるどころじゃない、運用損が目に見えておるときにこれがわっと蔓延したということですね。ですから、昭和六十一年十月から施行になって平成二年、平成三年には一度に何十万件という、ばあっと変額保険が展開せられ、そして犠牲者が出たということなんです。  そこで、先日、五月十九日の商工委員会で同じく私もこの質問をいたしましたが、先ほどの答弁を聞いておりますと、余りそれに対する的確な調査がなされておらないように聞いております。私の質問に対して鏡味政府委員は、お答えしますけれども、「いずれにしましても、こういった文書がどういう目的で利用されたか、募集に当たって利用されたのかどうか、使用目的はどうであったのか、そのときにどういう会話が交わされたのか、そういう事実関係全体の中で、こういった資料についても判断されるべきではなかろうかと考えております。」こういう答弁に終始し、先ほどの答弁を聞いておりましてもこれに終始しておるということですね。こういう答弁にきょうも終始されるのか、それとも事実関係はどのように調べられたのか、もう一遍聞きます。
  103. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 先ほど来お答えしておりますように、個々具体的なトラブルの案件等につきまして、私どもとしましてもその事実関係の把握に努めているところでございます。  ただ、そのときに用いられた文書あるいはその説明の仕方等につきまして当事者からの事情聴取等をいたしますけれども、その際に当事者の主張が大きく異なっている点もあり、その結果として訴訟に持ち込まれた案件もある、このようなケースもあるわけでございまして、その事実関係の把握につきましては、私どもとしても保険会社あるいは銀行等についてはその事情を聴取することは可能でございますけれども、一般消費者のお話につきましては私どもとしても調べるのに限界がございますので、そういった両当事者の認識が異なるというような問題については、その事実関係を最終的に判断するのは大変難しい問題だということを御理解いただきたいと思います。
  104. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 同じ答弁はもう聞いてもしょうがないわけですから、そこで、具体的な事実を申し上げるわけですが、先ほどから和田議員もおっしゃったとおりです。  委員長の了解をいただきまして皆さんのお手元に二枚のシミュレーションをお渡しいたしました。このシミュレーションのAともう一つはBというのをお渡ししたわけなんですが、このAの方には「銀行借入金利用一時払終身保険による相続税納税資金繰りシミュレーション(A)」と書いてあります。これは原則として本人が加入するときに使う資料でございます。いま一つの資料は、これは私はBと言っておりますが、「銀行借入金利用一時払終身保険による相続税節税効果シミュレーション(B−1)」と書いてあるのです。前のは西村さんにあてた文書でございます。後の文書は狩野窪さん、これはちょっと字が見にくいのですが狩野窪さんに保険勧誘の方がお渡しした書類なんです。  そこで、時間がありませんのでこのB一つだけをまず取り上げます。  これによりますると、これは小田原の八百正という八百屋さんなんです。この八百正さんのところへ平成二年の七月に横浜銀行小田原支店の瀬戸宏さんがおいでになって、よい相続税対策があるから説明を一遍聞きませんか、じゃ聞かしてもらいましょう、じゃ連れできますと言って名刺を置いていかれたのであります。その名刺がここにあります。今度はその瀬戸という人の部下の加藤という人が来られまして、そしてこれは加藤勇一さんでございます。現在同じく横浜銀行の葉山支店に勤めておりますが、この方が今度は来られまして、そうして相続税対策の説明をしながら変額保険に入ることを説明をされ、そしてその後今度は加藤さんが明治生命の遠藤広二さんを連れてこられまして、そして説明をいたしました。その説明をしたときの書類が今申し上げました「相続税節税効果シミュレーション」というものなんです。  これによりますると、節税効果が、一番下に書いてありまするが三百五十一万、以下ずっと書いて、そして十年たつと六千万の利益があるごとく書いてありますが、これは運用利益よりも下に書いてありますね、土地の値上がり七%アップと書いてあるのです。七%の土地の値上がりと運用益九%、合わせて一六%の利益があるから、金利七・九%払ってもまだもうかるんだ、そして相続税は節約できるんだ、こういう説明をされた。  そこで、この文書は狩野窪さんあてにつくった文書ですから、狩野窪さんに渡す。狩野窪さんはこれを受け取りまして、うちじゅうの者に説明をいたしました。そして、こういうふうにすると相続税が助かる、こういうことで、この資料、今申し上げましたシミュレーションを本人に渡し、本人というのは、受け取ったのは息子さんの奥さん、睦子さんなのです。睦子さんが受け取って御主人に説明する。そうしたところが、御主人も奥さんも、これはもっともだ、こういうことで、四回勧誘に来られて、このシミュレーションを見て、その結果、八月二十七日に五千万円横浜銀行から借り入れをして払い込みをしていった。そして九月一日に契約をしておる。その後のことは直接意味がありませんので省略をいたします。  こういうことなのですが、このシミュレーションをこのように使ったということについて、第一に私製資料の禁止行為に当たるのではないか、それから、こういうふうにして行った募集行為が果たして正規な募集行為として成立するものかどうか、この二点、御答弁をいただきます。
  105. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 今お話がございましたポイントでございますけれども、まず、このような文書を銀行員が銀行借り入れの御相談に応ずるという形で利用する場合におきましては、これは募集取締法の外の世界の、募集取締法とは直接関係のない問題になるわけでございます。  それから、保険の募集人がこのような文書を用いた場合に、募集取締法の私製文書に当たるかどうかということでございますが、募集取締法は、募集文書図画につきましては保険会社名等を記載することを要求しているわけでございます。したがいまして、基本的に募集文書図画の補助資料として用いられているかどうか、そういうところが事実認定の問題になろうかと思います。  いずれにしましても、今先生からお話のあった事実だけですべてこの法解釈ができるわけではございませんで、そのときにどのような説明がなされたか、それからどのような資料とともに用いられたか、そういったことを総合的に判断しながら考えていく必要があろうかと思っております。
  106. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 本当に何々たけだけしいというか白々しいという言葉がそのままに当たるわけですが、募取法十四条の規定からいけば、先ほどから何回も話が出ておるように、私製の資料は使ってはいけない、資料を使う場合には必ずそこの会社名、製作者名を入れなければならぬということになっているわけですね。いいですか、そのとおりですね。
  107. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 今御指摘の募集取締法十四条の規定によりますと、募集文書図画には、所属生命保険会社の商号または保険募集人の氏名を記載しなければならないこととなっているわけでございます。この募集文書図画のほかに何らかの資料を用いることにつきましては、募取法は直接は禁止をしているわけではございませんで、その他の補助資料を募集文書図画とともにどのように使用し、どのように説明に用いたか、そのような事実関係の中でその募取法との関係は判断されるべき問題だと考えております。
  108. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 保険勧誘のための、加入のための説明資料、それから加入を勧めるための別の補助資料、これも説明資料ですね。補助資料であろうと説明資料であろうと一緒なんです。保険募集人が持ってきて、被勧誘者にどうですかと言って説明すれば同じことなんです。  そこで、しからばこの「相続税節税効果シミュレーション(B−1)」、これは明治生命の先ほど申し上げた遠藤広二さんが持っていらっしゃって、これに基づいてきちっと説明していらっしゃる。遠藤さんに聞きますと、これは、日本橋の本店の中田部長のもとのコンピューターに私どもの方から基礎資料を入れるとさっと出てくる資料だというのです。その資料が単なる補助資料で、そして本人はこの資料を見て、この資料でいけば、ああこれならもうかる、十年たったら六千万円もうかる、直ちにこれが該当という意味ではなくて、こういう計算様式によって、本人は、これはよろしい、こう思って加入したのです。とすれば、この資料は適当に本人が鉛筆でちょこちょこと書いたものじゃないということ、会社そのものが関与しておるということ、そういう書類が、それでも補助書類として適法なんですか。  もうあなただめだ。銀行局長に聞く、局長さん聞いていらっしゃったから。だめだよあなた、同じことばっかり答弁するから。同じことなら要りません。同じ答弁でなければ聞きます。
  109. 寺村信行

    寺村政府委員 これまで保険部長がるる御説明してまいりましたけれども、基本的な募集文書図画が使用されているかどうか、そこには当然この商品の特性なり、あるいはハイリターンではありますけれどもハイリスクであるというような事項が記載されているかどうかということが問題になるのではないかと思います。一般的にこの補助資料を使うことは募集取締法上特に禁止されていることではないと考えております。  ただ、その補助資料を使う場合に、例えばこの特別勘定運用利率九%というのはいかなる説明が行われたかどうか、そのときの状況いかんではないかと思っております。
  110. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 本質的に同じような答弁になったのですけれども、いいですか、補助資料はよろしい、説明資料はいけない。補助資料と説明資料、ここできちっと答弁してください。
  111. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 募集に当たりまして保険商品の基本的な事項が書いてありますものを用いるのが通例でございまして、それを保険会社名をつけて作成いたします。これが募集文書図画に該当するわけでございまして、これは基本文書だと考えております。それ以外にその説明に資するために作成し、用いる文書、これは補助資料ではないかと考えております。
  112. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 加入する人は、一般的なパンフレットだけでなくて、きめ細かく説明を受けることによって初めて加入の動機が動くのです。当然のことなのです。とすれば、このシミュレーション自身が一番本人を動かしたのです。  そうすると、これは補助資料ではなくて、これそのものが本人に加入の意思を生じさせた基本的な資料ではないですか。これは今も申し上げたように、本人が勝手につくったのじゃないのです、保険募集人が勝手につくったのではない、会社がコンピューターによって作成したのですが、これでも補助資料でいいのですか。
  113. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 先ほど来御説明しておりますように、保険商品の基本的な内容について説明しますものが募集文書図画であると考えておりまして、一定の仮定を置きながら御本人の要求、あるいはそういった要求が多い場合に応じながら説明資料として用いるものにつきましては、これは補助資料ということではないかと考えております。
  114. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 今のものは納得できない。これと関連しておるからあと続けますが、先ほど和田議員も使いましたこのビデオテープ、このビデオテープは、先ほどから何回も申し上げたようにテレビに出ましたのをダビングして、そしてこれを用いて勧誘をしたわけです。  ここで聞いておきますが、大蔵省の保険第一課で作成になって、そして監修と書いてありますけれども、これによると、「会社が作成し登録した所定の資料以外の資料を使って募集することは禁じられています。」こういうふうにきちっと文書を書いておりますね。これは大蔵省が出したのですよ。いいですか、大蔵省の保険第一課内変額保険研究会監修ですから、こんなものは大蔵省の文書です。この文書には、今言うたようにはっきりと「会社が作成し登録した所定の資料以外の資料を使って募集することは禁じられています。」今のものは会社がつくって名前も入れずに説明してあるじゃないですか。これではだめだというのは僕なんだけれども、あなたはこれでもいいと言うのですか、この文書を使っても。
  115. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 先ほど来御説明しておりますように、私製資料に関しましては募取法上特段の規制はないわけでございます。  ただ、御指摘のこれは大蔵省が作成したものではございませんで、民間の出版社が発行したものにつきまして大蔵省の研究会が監修した文書でございますが、その文書の中に新聞等の私製資料を禁止しているかのごとき記載がございます。この趣旨は、先ほど来申し上げておりますように、保険商品の基本的な内容にかかわるものにつきましては募集文書図画としてこれを基本的に用いる必要があるということを強調しているためにそのような表現になっているものと考えております。
  116. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 えらいことを言い出したものだと思うが、この前の商工委員会では、これは大蔵省のものだという考え方で理解してもらってよろしいと言ったじゃないですか。今は違うと言うじゃないですか。  そうすると、ここに書いてあることと違うわけですね。ここに「新聞、雑誌等の記事をそのまま使って説明することはできません。」と書いてある。これは間違いですか。
  117. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 先日も、当該ガイドブックにつきましては大蔵省が作成したものではなくて、あくまで誤りがないかどうか監修したものであるというふうに御答弁申し上げたとおりでございます。  それで、今の問題でございますけれども、そのような記載がございますのは、所属会社のチェックを受けて登録された募集文書図画を基本的には使用する必要があるということを強調している、そういう趣旨でそのような記載があるというふうに考えております。
  118. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 余りこれにこだわっておると時間がないが、しかしもう一遍聞きますよ。「新聞、雑誌等の記事をそのまま使って説明することはできません。」ということはそのとおり正直に受け取ってよろしいか。銀行局長、これはどう思いますか。こんな大事なことですよ、あなた。
  119. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 先ほど来御説明しておりますように、そこに記載してあります趣旨は、登録された募集文書図画を使用すべきであるということを強調した記載である、このように考えております。
  120. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 じゃ、強調するがために行き過ぎた文書ですか。
  121. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 この商品は大変重要な商品でございますので、募集文書図画を用いないで、そのような新聞記事等で募集を行うということについては禁ずる、それはやはり募集文書図画によるべきであるということを強調している文書であると考えております。
  122. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 あなたは強調、強調と言うけれども、それを使ってはいけないと書いてあるのを、あなたの答弁でいくと、いけないのではないということに、強調しただけだと、じゃ、強調しなかったらいいということになるのですか、あなた。  こんなことに時間を使ってはむだですから、これも関連して言いますが、それならこういうビデオは新聞、雑誌の類に入るのですか、そしてこれを使ってやってはいけないことに当たるのか、どうです。
  123. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 このビデオにつきましても、どのような使用目的で、どのような場合に、どのような説明とともに用いられたかということで総合的に判断する必要があると思いますけれども、ビデオにつきまして募集文書図画とともにその補助的な説明資料として用いられるケースにつきましては、募取法上直ちに違法というわけにはならない、そういうケースもあり得るというふうに考えております。
  124. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 その使い方によっては募取法違反にならないこともあり得るということは、使い方によっては違反になるということですね。そういうことですね。
  125. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 今申し上げたとおり、そのような使用目的あるいは使用の態様、それからそのときにどのような文書あるいは説明とともに用いられたか、そういったことを総合的に判断した場合に募取法上問題となるケースもあるというふうに考えております。
  126. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 それなら具体的な事実を申し上げます。  第一勧銀の千歳船橋支店の西尾さんが本部の古沢という個人財務室の部長補佐と同行して、平成二年の八月八日、相続税のいい対策があるからということで変額保険に入ることをお勧めにおいでになった。八月十四日、今度はまだその第一勧銀の西尾さんが三井生命の五反田支社の岡崎隆志さんを連れてこられた。中土順平さんという方のところへ来られた。その奥さんの民子さんにいろいろと話をして、お金を一円も使わなくて相続税対策があります、保険料の運用益は銀行利息よりもずっと高率で運用されるから、土地を担保に入れて銀行から借り入れして変額保険に入ることですと説明をされた。そしてその上でこのテープを中土民子さんにお渡しをして、このテープによくこの中身のことが書いてあります、これを見ていただければよくわかるのでこれをお貸ししますと言って本人の家へ置いていかれた。本人はそれを見た。これは非常にいいと思ったので家じゅう寄せてこれを見て、ダビングまでした。このダビングがこれなんです。そして何回も見た結果、これはいいということで、これによって平成二年の九月二十五日、契約をいたしました。保険料は三億六千九百二十九万円払っておる。こういうことが起きてきたんです。  事の起こりは、このビデオを何回も見た結果、これはすばらしい、これは相続税の軽減にもなるし、そして老後も安心だということで加入した。こういう手法があった場合には、これでも抵触しませんか。
  127. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 今先生からお話のあった事案につきましては、その事案の内容をさらに詳細に把握する必要があると思いますけれども、一般的に銀行員がローンの説明としてビデオを用いる、このようなことにつきましては募取法は何ら規制がないわけでございます。それから、その保険の募集につきまして、保険募集人がどのように説明をし、その契約に至ったか、こういった事実関係に即しながら判断すべき問題ではないかと考えております。
  128. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 今の答弁を聞いておって、ちょっと僕の説明が不十分だったかもしれませんが、第一勧銀がこれを最初説明に来られたが、その後で三井生命の岡崎隆志さんがこれを持っておいでになって、これに基づいて説明をして、そしてこれをもう一遍見ていてくださいと言って置いていったのです。だから、その人はこれをダビングして、また再三にわたって見た結果、これはいいということでこの岡崎さんと契約をしたんです。こういう経過なんですが、どうなんです。銀行員じゃないんです、保険の募集人、これは正式な募集人です。
  129. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 保険の募集人が募集に際しましてどのような文書を用い、その際にビデオをどのように用いたか、そのときの説明の中でどのような説明が行われたか、そのようなことを総合的に判断しながら考えていく必要があると考えております。
  130. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 注意してくださいよ。同じ答弁を何回繰り返すか、あなたは。同じ答弁を繰り返しておるうちに時間がなくなればいいと思ったら大間違いです、そんなものは。  私が何回も、いろいろな具体的な事実を出せと言うから具体的に事実を出しても、それでもまだそういうあいまいな答弁をする。これは今裁判になっておるからということで局長大臣等もおっしゃったが、裁判は裁判なんです。百二十万人いるということなんです。この人々に一定の指針を与えなければいけないのです。これは間違っておる、これはこうなんだ、大事なことが今行政に問われておるのです。行政は司法と関係なしに行政サイドで、これはい肝ません、これはよろしい、これをするのが行政の仕事じゃないですか。それをぐだぐだぐだぐだと、こういうことをやっておるということは、大蔵省銀行と保険会社のためにあるのではなくて国民のためにあるのですよ。その観点をあなたは間違えておる。この点について銀行局長とう思いますか、今までの答弁聞いておって。
  131. 藤井裕久

    藤井委員長 できる限り端的に答えてください。
  132. 寺村信行

    寺村政府委員 具体的な対処の仕方は先ほど来保険部長が御答弁を申し上げてきたとおりでございます。かなりハイリスク・ハイリターンの商品が金融の自由化とともに出現をしてまいります。当然ハイリターンのみを強調するわけにはいかない、一方でハイリスクを強調しなければいけませんが、仮にハイリスクが生じた場合も、やはり自己責任原則というものが一方で貫徹されなければいけないというのが金融自由化に対する規制の緩和の過程で出てきた状況がございます。その辺も御理解を賜りたいと存ずるわけでございます。
  133. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 局長までがそういう紋切り型の答弁で国民は納得するかどうか。このシミュレーションにはハイリターンの運用益は書いてあるけれども、損することもありますよという文章が書いてない。そしてシミュレーションが一番問題なんです。これには損したらこういう損もありますよということを書いて出させるのが本当じゃないですか。こういうものを出させずに、しゃあしゃあとこれで答弁しておるということは、これはいかがなものか。こんなことでは国民は納得できないし、国民のための大蔵省じゃないような気がだんだんとし始めた。  しかし、これにこだわっておると時間がないので、大臣、後ほどまた聞きますけれども、こういうことが具体的に出てきて、具体的にこのビデオ、このシミュレーションを動機として加入された方がたくさんおるのです。これに対して今どういう手を打つべきだとお思いですか。
  134. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 今御質問と答弁のやりとりをずっと聞いておりまして、もう一つも二つも歯車がかみ合わないな、こういう感じが正直言っていたしております。  しかし、私も条文をずっと読んでみたのですけれども、この条文をそれじゃ裁判所でもって解決をするということになるとこれはなかなか問題なのかなという感じも実はしているわけでありまして、争いになっているところがまさにそういったところにあれば、やはり裁判で決着をつけることは一つの方法じゃないかな、私は正直言ってそう思いました。
  135. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 裁判で決着をつけることは司法がやるのです。三権分立なんです。行政がこれでいいという姿勢でおられるとまだまだ蔓延してもいいということになるのですよ。だから私は、この際、行政としてはどうあるべきかという独自性の判断を聞きたがったのです。まずこれを聞きます。
  136. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 いろいろな問題があって相当な裁判になっておるというところでありますから、まず裁判の判断を待った方がいいのじゃないかということを私は申し上げたところでございまして、行政としてこれをどうするかというのは、またいろいろなことを考えていかなければならない問題があるのだろう、私はこう思います。
  137. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 甚だ不愉快であるとともに、私は国民の一人として、むしろ大臣は一種の頂点ですからこんな程度しか言えぬのかもしれぬけれども、行政としてこんな不親切な、裁判の結果を待ちましょう、それまでは行政上の判断はしませんというようなことなら、行政は毎日毎日進行しておる、判決は二年か先なんです。何年先かわからない。そういうばかなことで国民本位の行政だと私は思わない、このことは強く遺憾の意を表しておきます。  次に、私は本来の目的を五項目持っていたのですけれども、これに食い過ぎちゃって、だからこれは一つだけ聞いておきたいのです。  一つは、今金丸事件で明らかになったワリシン、ワリショー、ワリサイ、あの問題なんです。これについて現在、これは前から質問しておったわけですが、日本興業銀行等が出しておりまするワリサイにつきましては、これは三千万円以下は確認をせずにそのまま店頭販売をするわけですが、これを今度は証券会社が扱います場合には、三千万円以下でも本人確認をする、こういうことになっておるわけですけれども、僕は、これは証券会社であろうと興業銀行直であろうと、店頭販売のときには三千万円以下は当然同じ取り扱いで、本人確認はしないならしない、するならする、統一扱いをすべきじゃないかと思いますが、どうです。
  138. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 マネーロンダリングの話でございますが、三千万円云々というのはまさにマネーロンダリングのためにやっているわけでありまして、そこは基本的に違わない。証券会社の方は、本人確認というような問題が証券会社そのものの問題としてありまして、それでやっているということでございまして、三千万円以上というマネーロンダリングの問題につきましては同じ取り扱いになっているというふうに私は承知いたしております。
  139. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 そうすると、仮に日本興業銀行が今月一兆円債券を出した、割引債を出した、そのときに、その三割なら三割を証券会社が引き受けた、三千億引き受けた。そういう場合には、証券会社がその日本興業銀行の割引債を店頭で売るときには、三千万円以下の場合には本人確認は当然要らない、こういうふうに御理解いただいておるわけですね。
  140. 寺村信行

    寺村政府委員 証券会社は、顧客と有価証券の取引を開始する場合に顧客カードを作成することになっております。これは金額のいかんを問わずということでございます。これは、不公正取引の未然防止とか、顧客に対します適切な投資勧誘の推進といった証券市場におきます投資者保護の観点に基づくものでございます。  ところで、マネーロンダリングの場合は、金融機関のケースで申し上げますと、預金取引のような継続的な取引は一円からでも本人確認をやるということでございます。一回限りの現金取引につきましては、その都度ごとに、一回限りということですから三千万という線を区切ったわけでございます。したがいまして、例えば金融機関の預金取引で行われる場合には、もう百円であろうと本人確認は行われる、かつ、同じ預金取引でも、そのものについて三千万円以上の場合、また本人確認が行われる、こういうふうな仕組みでございまして、これは麻薬等の不正な取引を防止するという観点から現金取引につきまして一定の基準を置いた、そういうことで、結果として今お話しのようなことがございますが、この本人確認はあくまでもマネーロンダリング防止の観点からの対策として講じるということでございます。
  141. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 だから、マネーロンダリングの防止のためということで、証券会社にはその規定もある。そして、三千万円以上は興銀にもある。ところが、興銀の場合には、三千万円以下の場合、店頭でこの割引債を売ったときには本人確認をしません。ところが、証券会社の場合には、継続性とか口座をつくるとか顧客名簿とかいうような理屈で、同じ割引債を売る場合でも、店頭でぽんと売るだけの場合でも本人確認を必要とする。こういう今の仕組みはおかしいのです。不公平なんです。同じように興銀の債権を売るなら、興業銀行が売ろうと、証券会社がそれを引き受けて売ろうと、これは同じベースにしてやることが当然なんです。だから、これは見直しをするなり改めないと、こういう不公平がそのまま残っておる。
  142. 寺村信行

    寺村政府委員 証券会社の措置は投資家保護の観点から行われている措置でございます。三千万というのはマネーロンダリングの観点からでございます。  そこで、おっしゃるとおりそこは差が出ておりますけれども、仮に割引債だけ、あるいはそういうものだけをマネーロンダリングの基準を変えるというと、これは、マネーロンダリング防止の観点からいたしますと割引債だけではないわけでございまして、全体として見直さなければいけない、こういう問題でございます。ただ、マネーロンダリングの観点からそのような必要性があるかどうかという問題がございます。  それから、もう一つ申し上げますと、税務上の観点から本人確認を行う、その面での公平性を確保するということになりますと、これは割引債だけの問題ではございませんで、これはまたマネーロンダリングの問題とも違うので、別の観点からの検討が必要である、こういうことではないかと思います。
  143. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 それなら、興銀の三千万も撤廃したらどうです。どうなんです。興銀だけが三千万以下はよろしい、片一方だけは残すということはあり得ぬのじゃないですか。
  144. 寺村信行

    寺村政府委員 これは興銀の割引金融債だけではなくて、国債取引におきましても、あるいはその他の預金取引におきましても、三千万未満の現金取引、継続的な取引でないものにつきましては、マネーロンダリングの観点からチェックをしないということでございます。
  145. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 時間が来ましたのでおきますけれども、甚だ不得要領で納得できない答弁が連続しましたので、また次回、何らかの機会を見てこの問題については再度お聞きしたいと思います。  終わります。
  146. 藤井裕久

    藤井委員長 井上義久君。
  147. 井上義久

    ○井上(義)委員 初めに、税制改革についてお伺いしたいと思います。  五月十四日に政府税調の審議がスタートいたしまして、来年度の税制改革の議論が始まったわけでございますけれども、直間比率の是正とか所得税減税あるいは消費税の税率引き上げ、さらには納税者番号制度の導入や利子、株式譲渡益の総合課税化などが検討課題であると報道されておるわけでございますが、そこで、大蔵省のこれらの問題についての基本的な考えをお伺いしておきたいと思います。  まず、直間比率の是正ということでございますが、国税に占める直接税の比率は七四%ということで世界の中でも非常に高い水準にある、しかも、これは再び増加する傾向にあるということでございますけれども、直接税依存型の現行税体系と言われているわけでありますけれども、この税体系について大蔵省の基本的な考えをまずお伺いしておきたいと思います。
  148. 濱本英輔

    濱本政府委員 直間比率といった問題について、大蔵省はどのように考えているのかというお尋ねかと存じます。  直間比率ということが言われておりますが、ここにございます論議のポイントは、要するに、いろいろな種類の税金がございます、その各種の税金間のバランスを重く見ていくという考え方がございまして、これを象徴的に直接税、間接税で対比しました場合には直間比率いかんという論議になろうかと思うのでございます。そういう意味から言いますと、最近の税制調査会の論議では、もちろん直接税、間接税という認識というものも論議の中にはあらわれておりますが、より明確には、所得、消費、資産、そういった課税対象に対する適切な課税の組み合わせを重く考えるべきであるというようなとらえ方に最近の答申等ではだんだんなってきておるわけでございます。  いずれにしましても、この議論というのは、いろいろな種類の税制をできるだけ全体として論議していただいて、全体として最適な組み合わせを追求していただく、そこに論議の非常に大きな重点を置いていただきたいということでございまして、結果がどういう比率になるかということはその上で出てくることでございますので、論議の姿勢としてそういうことを重く我々も見ていただきたいと思っておりますし、税制調査会においてもそれを重く見ておられるということかと存じます。
  149. 井上義久

    ○井上(義)委員 そういたしますと、この直間比率そのものに意味があるわけではない、結果としてどういう直間比率になるかという認識だというふうに理解してよろしいのでしょうか。
  150. 濱本英輔

    濱本政府委員 直間比率そのものは意味がないというふうに私が申し上げているということになりますとちょっと不適切だと思います。直間比率ということに関する論議というのは何を論議しようとして行われているかということを今御説明したつもりでございます。したがって、そういう論議の一つとして直接税、間接税を対比していくという論議が当然あっていいと思います。ただ、申し上げたかったのは、例えば何%の直接税比率であれば適正かという論議になりますと、これはそういう論議の姿勢ではなくて直接税のあり方そのものを審議していただいた結果として数字が出て。くる、そういう意味でございます。
  151. 井上義久

    ○井上(義)委員 その結果としてそういう数値が出てくれば、それは例えば現行の日本の直接税の比率は七四%ぐらいということでかなり高いということが言われておるわけでございますけれども、論議の結果としてそれが適正であるというふうに言える場合もあるということでございますね。
  152. 濱本英輔

    濱本政府委員 そのときどきの各税目ごとの論議の集約としまして出てきます数字でございますから、何が適当かということを申し上げるのは非常に難しいと思いますけれども、よく言われましたのは、前回の抜本改革のときに、このままでいくと直接税に非常にウエートのかかった税体系になってしまう、それでいいのであろうかということでございまして、その主張はまさに当時の間接税のあり方と直接税のあり方を比べましたときのそのありようが余りにも一方的になり過ぎるのではないか、そういう懸念であったと思います。したがいまして、そういう懸念がもし今後も起こってくるということでございますと、それは極端に申しますと、そのときの率のいかんにかかわらず問題として認識されてしかるべきだというふうに思います。
  153. 井上義久

    ○井上(義)委員 現状の七四%というのはかなり高いというふうに御認識でございますか。
  154. 濱本英輔

    濱本政府委員 二点申させていただきたいと思いますけれども、今の時点におきまして直接税比率がどうであろうかというお尋ねに対しましては、結局今の直接税と間接税とのありようがこれでバランスがとれているかどうか、あるいはこのままほっておいていいのかどうかという問題になろうかと思います。抜本改革のころにはそれが非常に大きく、強く認識されておりまして、その声が世の中にあふれてきたという感じを私は当時の印象として強く持ったことを記憶いたしております。  そういうことでございますけれども、そのときの経験からいたしまして、常にそういう声に対して我々は敏感でなければならない、直接税と間接税とのバランスに象徴されてくるような声、その論議に象徴されてくるような声が世の中に出てきた場合には敏感でなければならないというふうに思っているわけでございます。税制調査会で毎年税の体系というもののあり方を議論していただくわけでございますので、そういう場におきましてはそういう声を聞き取って議論していただくわけでございますから、私どもが今何か一つ考え方を持たないでそういう議論に耳を傾けていきたいというのが正直なところでございます。  それから、今の足元の数字で申しますと、実はどうなっておるかと申しますと、直接税の比率というのは最近下がってきておるわけでございます。例えば、これは皮肉なことなのでございますが、平成元年にたしか直接税の比率が七四・二%であったと思いますけれども、その後これは法人税の減少といいますか、景気を反映しまして法人税額が落ちてきたということが強く反映しておろうかと思いますけれども、平成五年度の補正後は七四・二が七二・五まで落ちてきておりまして、そのあたりにも最近における税収動向を反映したものがうかがえるのではないかと思います。     〔委員長退席、田中(秀)委員長代理着席〕
  155. 井上義久

    ○井上(義)委員 一時的に下がっているという問題はまた別な問題で、後ほどまた同僚議員がおやりになると思います。  次に、所得税減税ということにつきましてお伺いします。  サラリーマンの給与総額に占める所得税の割合が九一年度で六・三四%になったということで、三十四年ぶりの高水準を記録しております。八八年以降物価上昇に見合った減税が行われていないということが主要な原因だろうと思うわけでございますけれども、前回の税制改革前の六・二七%を上回って、これ以上所得税減税を行わないわけにはいかないというのが現状認識として正しい、私はこう思っておるわけでございます。  そこで、宮澤総理あるいは林大蔵大臣あるいは加藤税調会長等もおっしゃっているわけでございますけれども、現行の税率区分を三段階程度に簡素化するとか、あるいは最高税率を引き下げる、あるいはまた課税最低限の引き上げ等、いわゆる現行の累進構造の緩和、税率のフラット化を目指すというような趣旨の御発言が最近目立っているわけでございますが、これは中堅サラリーマン層の重税感が高まっているということに対する配慮だ、そういうふうに理由づけがなされておるわけでございます。この税率区分を三段階程度に簡素化するとか、あるいは最高税率を引き下げるということになりますと、いわゆる高額所得者ほど有利であるということは歴然としているわけでございまして、富裕層ほど優遇されることになるのではないか、こういう指摘もあるわけでございます。この点についてどのようにお考えなのか。特にどういう層に重税感があるというふうにお考えなのか。これをまずお伺いしたいと思います。
  156. 濱本英輔

    濱本政府委員 ただいま井上先生からの御指摘の中に税の負担率が随分上がってきたという御指摘がまずございました。この点、時々御指摘を受ける点なのでございますけれども、民間給与の実態調査というのを国税庁が発表しておりまして、この数字によりますと確かに平成三年分の平均負担率というのは六・三四%というのを記録いたしました。  ただ、一つ聞いておいていただきたいと存じますのは、国税庁のこの統計というのは、非常に御説明が難しいのでございますけれども、毎年サンプルを選びますときに、階層でございますとか世帯の構成とかを構わず選んでいきましてある数の平均をとるわけでございます。したがいまして、その含まれております世帯の構成が変わってまいりますと負担率が変わってくるということでございまして、例えば一人の人間が二カ所から月給をもらうような場合には、税率表を適用します場合に特殊な税率表を適用したりします。そういう方がふえてまいりますとまた負担率が変わってくるというようなことも実はございますので、率直に申しますと、普通のサラリーマン、そして決まった世帯構成、二人の子供なら二人の子供を抱えた四人世帯ということで比較をしていただくということになりますと、負担率の推移というのは、抜本改革の前と比べまして、それを上回るようなものにはなってないということを御記憶賜れないかと存じまして、それが一つでございます。  それからもう一つは、税の刻みをどうこうするという御議論がぼつぼつ出かかってまいっておるわけでございますけれども、我が国の所得税制そのものを事実、ファクトとして静かに見ていただきます場合に、特徴的なのは、やはり課税最低限が非常に高くて、よその国に比べますと特にそうでございまして、中低所得層に対しての負担率は低い、一方、非常に高所得層になりますと最高水準が高いものになっている、これは特徴として変わってないということが言えるわけでございます。  そこで、定められました所得税の累進カーブ、我々すべて国民はそのどこかを歩いていくわけでございますけれども、そのどの部分に差しかかるときに、そのときの生活状態等々から見まして負担が非常に厳しくきいてくるかという問題があり得るわけでございます。これは、その状況状況でどういう形でそれがあらわれてくるかということに対して、先ほどと同じでございますけれども、我々は非常に敏感でなければならないと思っておるわけでございますけれども、どういった階層の所得者にどの程度の税負担を求めていって全体としてバランスさせるのかという論議こそ所得税論議の核心をつく論議であろうと思います。  そういう意味におきまして、今どの程度の方がどうであって、したがってどのような措置が必要かということ、つまり答えを今我々は持っているわけではございませんで問いを持っているだけでございまして、その問いをどのようにして答えに近づけていくかということをこれから時間をかけて御論議いただくべきことではないかと思っております。
  157. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 井上先生からお話がありまして、今政府委員から御答弁申し上げましたが、所得税の問題で宮澤総理が言っておられますのは、宮澤さんはこの前の抜本改革のときにやられましたから、そのときに十五段階を五段階にする、こういう形でやった。課税最低限は非常に高いところへ持っていった。しかしながら、それからずっとこういうふうな格好でありますと、しかし、最後のところは相当高い税率になっていますね。だから、その辺の刻みをやはりもう少しやっておくことがあったのかなという感じは持っておられますが、これは一体どの辺のサラリーマンをどう見ていくかという問題であろう、こう思っております。  あのとき私なども党の税調でありましたので、もう普通のサラリーマンなら一生これで大体終わるんだ、こういうぐらいの感じでやったわけでありまして、それから先は相当高い所得になるというような感じで実はやったわけです。その辺の感じというものをどう出すのがいいのかな、こう思っておりまして、所得税はむしろ変なことをしますと、逆に言うと所得税増、場合によったら所得税増税みたいなことになるような話になったのではまたおかしなことになるのじゃないかなという問題はあるのだろう、私はこう思っています。  いずれにいたしましても、そういった問題を含めまして、所得税やその他の問題をいろいろな点で考えていかなければならないと思いますけれども、今すぐにどうだこうだという話ではないのじゃないかな。また、税制調査会でこれからどんなことをされるかということですが、私の方からどうしましょうか、ああしましょうかという話にはまだなっていないということだけは御答弁申し上げておきたいと思っています。
  158. 井上義久

    ○井上(義)委員 日本の場合は、いわゆる累進構造というものがかなりきちっとして、それによって所得の再分配ということを目指しているわけでございまして、いわゆるフラット化をすることによって累進構造を緩和して、それで所得の再分配機能というものを損なうようなことがあってはならないのではないかなというふうに私は思うわけでございます。  中堅サラリーマン、いろいろ報道されているところによりますと、いわゆる一千万超のサラリーマンの税負担が非常に高いということで、このフラット化ということも論議されているようですけれども、私は、むしろこの税率の刻みをいじるよりも、税率の適用区分の所得額をもうちょっと上げていただくということによって、所得がふえてもすぐに高い税率に移らないようなことをまず考えることの方が先決ではないかと思うのですが、どうでしょうか。
  159. 濱本英輔

    濱本政府委員 御指摘をいただいております点は非常に大事な点であろうと私も思います。八百万円でございますとか九百万円とか一千万円とか、いろいろな各層ごとに負担がどうなっているかという論議がもちろんございまして、今御指摘のような、例えば一千万円前後は非常に苦しいんだというような御指摘も伺っております。そういう問題を解決する手法としましては、税の刻みを是正するという言い方で一言で言われますけれども、その具体的な当てはめとしましては、税率構造自体の段階数を減らしてしまうという方法ももちろんあるかと思いますけれども、井上先生おっしゃいますように、税率の刻みを大幅に動かすことによりましてそれに近い効果を少なくともその階層の人たちに対して及ぼすということは技術的に可能であろうと思いますし、まさに所得税制全体をどうあらしめるかということと同時に御議論いただく一つの大事な議論の材料だと私は思います。
  160. 井上義久

    ○井上(義)委員 それともう一点、そういう税負担ということを考えますと、やはり抜け道をふさぐ、いわゆる課税ベースを拡大するということをきちっとやる。あわせて総合課税、いわゆるキャピタルゲイン課税等も含めて総合課税ということをきちっとやらないと、私は、また新たな不公平が生じてくるのではないか。いわゆる高額所得者の税負担が非常に高い、これは所得税だけ見ればそうなるわけですけれども、これはやはりその他のキャピタルゲイン課税も含めて考えないといけないわけでございまして、あわせて総合課税化ということをこれは真剣に考えなければいけないのではないか。  昨年の税調の議論で、いわゆる納税者番号制、これが国民の理解を得ていないということで結論が先送りになったわけでございまして、やはりこれについても導入をそろそろきちっと考えるべきではないか、そろそろ結論を出すべきではないか、こういうふうに思うわけでございますが、この点いかがでしょうか。
  161. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 今のお話がありましたように、私は所得税というのはやはりある程度まで累進性を持って、所得ですから、相当な金持ちの人には高い負担をしていただくということが必要だろうし、それからまた、所得全体をできるだけ総合的に集めてやるというような物の考え方でやっていかなければならない、私は、そのお考えはそのとおりだろうと思います、正直言って。  ただ、そういったことになると、いろいろな問題が残っておりますのが御指摘のありましたような納税者番号で、キャピタルゲインをどうするかというような問題であるとか、土地税制、譲渡所得なんかについてどうするかというような問題であるとか、いろいろな問題がその周辺の問題として出てくるわけでございます。私から申すまでもありませんが、納税者番号制度の導入につきましては、昨年の税制調査会の答申でいろいろな検討すべき課題が残っているということをいただいたのですが、やはり方向としてはおっしゃるような方向で考えていくべきものだろう、こう思っておるところであります。  かつてグリーンカードというのがありまして、やりましたが、グリーンカードというものをやったけれども、結局またもとに戻ってしまったというようなこともありますし、これはやはり国民の相当の御理解をいただかないといかぬのではないかなという気持ちを私は持っていまして、念には念を入れて国民の御理解を求めていくことが必要だろうと思うのです。  私からこんなことを申し上げてはおかしいのですけれども、かつて背番号制度を導入するのは徴兵制につながるぞなどというような御議論まで、そんなこと全然ないのですけれども、まだそんな御議論まであったという意識ですから、プライバシーの問題とかなんとかというようなものも一緒に考えて、十分な理解を求めるような努力をしていかなければならない。引き続き税制調査会で御検討いただくことにいたしておるところでございます。
  162. 濱本英輔

    濱本政府委員 ただいまのお尋ねの中で、総合課税制度を目指すために納税者番号制度の問題などをどう考えていくのかというお尋ねもあったかと存じますけれども、理屈といたしまして、結局所得税制の理想というのは、すべての所得というものを集めまして、そこに担税力の基準を見出しまして、それに適当な賦課をする、これが理想であるというふうに考えられておりますけれども、そこへ近づいていきますためには、まず、すべての所得を集めてくる、包括するといいますか、そういうことが前提になるはずで、そういう意味で包括的な所得課税としての総合課税というものを目指す、そのためには納税者番号制度というものが必要である、こういう論理になっておったのだろうと思います。  ところが、去年の利子課税のときの議論もそうなんでございますけれども、最終目標である担税力に応じた適正な課税というものを目指そうとします場合に、所得にいろいろな種類のものがございまして、集めてこようと思ってもその手の先から漏れていく所得がある。そういう漏れていく所得につきましては漏れっ放しにしておいて、つかんだ所得に対して適正な課税をするということが公平なのか、漏れたものに対しても何ほどかの手を差し伸べて課税体系をつくる方が公平なのか、つまりどちらの方が最終目標に近いのかという判断がございまして、現状におきまして我々が持っております所得の把握の力からしますと、利子課税について今認めておりますような分離課税の制度も評価できるという結論であったと思うわけでございます。  しかし、私どもは、それはそうといたしまして、この議論はなお進行中であると思っておりまして、納税者番号制度というようなものが確立されました場合には別なアプローチが可能かもしれないともちろん思っておるわけでございます。ただ、この納税者番号制度そのものは、もう何回か繰り返して申し上げてきたところでございますけれども、一筋縄でいかないいろいろな問題がございまして、今論議を重ねておるわけでございます。論議は決してとまっているわけでもございませんし、同じことを繰り返しやっているわけでもないわけでございまして、確実に論議は深まっていると私は思いますけれども、例えば、今まで新しい論議のステージとして出てまいりましたのは、仮に納税者番号制度を考えるとしましたとき、具体的手がかりとして、公的年金番号による方法もあるし、住民基本台帳の電算化による方法もあるということが具体的な案として出てまいりかけているわけでございます。  それでは、そういうものが本当にどういう正体をあらわすのかというのはもう少し時間をかけて見る必要がございますし、その正体によりまして、それに即した利用の仕方、それからプライバシーの問題ですとか負担とか、そういう問題がそれに伴って出てくるわけでございまして、そこで論議を一通り整理し、国民の判断にゆだねるというのが論議の手順であろうと思っております。そういう論議の流れの中にあるということだけ御報告を申し上げておきたいと存じます。その論議を国民がお受けになるかどうかはその先の話になります。
  163. 井上義久

    ○井上(義)委員 そこで、直間比率の是正ということで、数字そのものに意味があるのではない、議論の結果としての数字というお話が先ほどあったのですけれども、来年度、具体的に言うと所得税減税、これは焦眉の急なわけでございまして、そうなりますと、財源をどうするのかということで消費税の税率引き上げということを同時に実施するのではないかというような意見がいろいろ出ておるわけでございます。  直間比率の是正、具体的に言うと所得税減税消費税の引き上げをセットで考えているのではないかという議論があるわけでございますけれども、これについてはどういうふうにお考えでございましょうか。
  164. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 いろいろそんな御議論が出ていることは私も承知しておりますが、消費税消費税一つの体系を持っているものでございますから、これをどうするかというのはそれで考えていかなければならない問題だろうと思うのです。また所得税は、先般来お話がありましたようないろいろな問題、そのほかにも問題がいろいろあるだろうと私は思うのです。そういったものを幅広い観点から考えていく。資産、所得、消費の諸分野におきましてどういうふうな形で考えていくか。税制でございますから、公平、中立、簡素というのは一つの大きな柱でございます。そういった観点で考えていかなければならない。  また、もしも消費税率を上げて所得税減税とかなんとかというような話になれば、もう少し国民の気持ちなり御意見を十分に聞いてやらなければいかぬ話で、単純にこっちを減らすからこっちをふやしてつじつまを合わせるなどという議論は本来あってはならない議論だろう、私はこう思っておるところでございます。これも、いずれにいたしましても、いろいろなところで御議論が進んでいくのではないかな、こう思っているところでございます。
  165. 井上義久

    ○井上(義)委員 ちょっと時間がなくなりましたので、最後に、相続税の件だけまとめて聞きますので、お答えいただければと思います。  五月二十八日に国税庁が、不動産がすぐに換金できないで滞納してもすぐに差し押さえをしないとかあるいは延納期限の再延長という通達を出されたように承っておりますが、この内容と、先般も延納から物納への切りかえを認めるようにということで主張してきたわけでございます。これを見越しての措置だと報道されておりますけれども、この点はどうなっているのか。  それから三つ目に、東京二十三区で相続税を支払うために土地を売らなければいけないというような現状が依然まだ続いているわけでございまして、小規模な居住用宅地、それから事業用宅地の相続税の減額割合、これをさらに拡大する考えはないのかどうか。今六〇、七〇になっていますけれども、例えばこれを両方とも七五にするとか八〇にするとか、二百平米以下でございますから、生活大国という観点からいってもこの程度の居住権は相続によっても確保されるというぐらいの考えが必要なのじゃないかな、私はこういうように思っておるわけでございまして、この点について、まとめてお答えいただければと思います。
  166. 中山寅男

    ○中山政府委員 まず、国税庁の方から通達の内容について御説明させていただきます。  今般、五月二十九日に新聞に出たかと思いますけれども、通達の内容は三つの内容が柱になっております。  一つは、委員指摘のとおり、延納を選択していただきました後延納が、納付が非常に困難だという場合に、普通でございますと、納付が困難だという時点で即滞納という形になりまして督促状を出し、督促状を出した後差し押さえ処分、こういう手続に動くわけでございます。その場合に、一年に限りまして猶予をさせていただいておったわけでございますけれども、一年というのも若干短過ぎるのではなかろうか、諸般の情勢から再延長を認めてもよろしいのではなかろうかということで、言うならば合計二年に限り延長を認めるというのが一点でございます。  それから、先ほど申し上げましたように、分納税額が滞納という形になりますと督促状を出すことになるわけでございますけれども、ふだん、相続税というのは一生に一度あるかないかということでございまして、納税者の方が督促状という通知をもらうこともいかがなものかということでございますので、我々催告という名称で呼んでおるわけでございますけれども、こういう期限が来ましたのでひとつよろしくという形で納税者の方に事前にウォーニングを差し上げたいというのが二点目でございます。  それから、三番目でございますけれども、そういうふうに督促状を出しました後滞納処分ということになるわけでございます。それから、既に分納期限が来まして滞納処分に移らなければならない方もいらっしゃるわけでございますけれども、仰せこういう状況でございますので、滞納処分にすぐ移行し、土地を処分するというのも納税者にとりましても非常にいかがなものか、こういう観点から、そのあたりは納税者の個別の事情を十分お聞きした上で納付計画を再度見直していただく。我々は延納条件の変更と呼んでおるわけでございますけれども、要するに、今まで十年で納めていただくことになっておりました計画を例えば十五年に引き延ばすとか、分納税額をさしあたり前倒しの部分を小さくするとか、分納がやりやすくなるような形で相談させていただけないだろうか、こういうことで、分納等々を含めまして延納の条件の変更ということを期限が過ぎましてもやらせていただく、こういう形で最近の事情に第一線では対応したい、こういうことで通達をつくりまして、これも単に内部だけのものではぐあいが悪い、こういうふうに考えまして、広く皆様方に御理解いただこうということで公開通達という形にしたわけでございます。  以上でございます。
  167. 濱本英輔

    濱本政府委員 残余の御指摘につきましてお答え申し上げます。  相続税の支払いに際しまして今行き詰まっている問題を制度的にどのように解決するのかという趣旨お尋ねでございますけれども、要するに租税というのはあくまでも金銭納付が原則でございまして、その原則に従って多くの方が、いろいろな事情をお抱えになっていらっしゃいますにかかわらずきちんと相続税を納めてくださっているという厳粛な事実がございます。  ただ、ここ数年地価の高騰の、特にピークにございました平成二年、三年あたりに相続を開始されまして、その際に、土地を相続されました方が、その後の地価の急落でございますとか、いずれ売ろうと思っておられましたにかかわらずなかなかうまく売却がはかどらない、そういう事態が当初予測できませんで、結果的には物納しておればよかったのに選択を誤ったというふうにお感じになっていらっしゃる方がかなりおられまして、こういう方々に対しましては、こういう異例の事態というものを前提にして国税当局ももう少し冷静に考えてみる必要があるのではないかということを再三御指摘をいただいてまいりました。  ただ、この問題は、租税債権の基本的なあり方に関する問題を含んでおりますので、軽率に判断しかねるところがございまして、私どもとしましては実情調査をさせていただき、また法制面での必要な検討をさせていただいて、本当に何か対応が必要かどうか、あるいは必要があるとすればどのようにするか、これを気持ちを前向きにして勉強してまいりたいと思っております。しかし、そんなことを言っておりますうちに、足元の事態はどんどん進んでおります。それに対する緊急、応急の措置がただいま国税庁が申し上げた措置でございます。そのようにお受け取りいただきたいと存じます。     〔田中(秀)委員長代理退席、委員長着席〕  それからもう一つ、小規模宅地の相続税非課税、今の限度額をもう少し拡大してはどうかという御指摘でございますけれども、地価水準が非常に高い大都市圏というものを抱えております我が国におきまして、相続税というのは全国一本でございますから、この全国一本の相続税というものをいかに組み立ててその問題を吸収していくかというのは非常に難題でございまして、私どもとしましては、小規模宅地につきましての相続税の課税については相当思い切った措置で対応しているつもりでおります。昭和六十三年に、当時居住用が三〇%でございましたのを五〇%の減額にし、さらに平成四年度にはこれを六〇%に引き上げる、事業用は四〇を六〇にして、さらに七〇に引き上げる、そういう減額率に今なってまいったわけでございます。  これをもっと、もう一段踏み込めないかという御指摘のように伺いましたけれども、結局この議論につきましては、土地を持っておられる方と持っておられない方との間の資産格差の是正というものを一体どういう形で担保していくのか。当大蔵委員会議論におきましても、幾たびも資産課税の適正化というものにつきまして御教示をいただいてまいったわけでございまして、今時に巨額の金額に上ります。そういう土地についてこれ以上に踏み込むことにつきまして、何かそこにはおのずから限界があるのではないか。税制調査会等におきまして議論をしていただきます場合でも、やはりそこに何か一つの限界を感じて、現行の制度に盛り込まれました線がぎりぎりの線ではないかという判断が現在はございます。  ただ、私思いますのに、この問題は、一つ地価が鎮静化していけば事態は変わるというふうに思います。既に土地にかかります相続税の負担は、これからはかなり緩和されていく方向にあるのだろうと思います。そういう意味におきまして、問題を取り違えないようにしなければいかぬ。つまり一番大事なことは、その意味におきましても総合的な土地対策を確実に完遂して地価をきちんと下げていく、そういう形でこの問題が吸収されればベストであるというふうに思っております。
  168. 井上義久

    ○井上(義)委員 以上です。
  169. 藤井裕久

  170. 日笠勝之

    日笠委員 大蔵大臣、大型所得税減税については同僚議員め方もいろいろな観点から御質問されました。私も過日予算委員会でこの減税について、大臣が反論されるであろうことを想定して、会議録等引っ張りながらそれに対する反論を行いました。  大臣は、所得減税が非常に厳しい、難しいという理由で、一つには財源問題がある、赤字国債は発行すべきではない。二つ目には、ばらまきであらば、過去三回行った戻し税は非常に評判が悪かった。三つ目は、一過性で消費を刺激する効果が乏しい。四つ目は、戻し税方式だと減税効果が国民に不明である、いわゆる口座を通すということですね。五つ目、国税当局に大変な事務負担がかかる。きょうは、減税しても貯蓄に回るんじゃないかという新たな反論が出てきたわけですが、減税したら貯蓄に回るということを、どういうデータ、どういう指標、またどういう検証でそうおっしゃっているか、まずお聞かせ願いたいと思います。——大臣答弁したんだから大臣お答え願いたい。
  171. 濱本英輔

    濱本政府委員 不十分でございましたら大臣に補っていただきますが、私どもといたしまして、最近の貯蓄率の動きというものが一つ目にとまります。それから、行われますところのいろいろなアンケート調査等々によりましても、国民の声として、今貯蓄に回すという声がかなり強いという事実が確認されております。
  172. 日笠勝之

    日笠委員 では反論をいたしますよ。  ここに朝日新聞の「所得税減税 課長さん五十人アンケート」というアンケートがございます。濱本局長のアンケートとちょっと違うようでございまして、五万円戻れば、それはほぼ全額を消費しますか、八〇%がそうする、消費と貯蓄は一二%、ほぼ全額を貯蓄は四%なんですね。どうも手持ちのアンケート調査が違うようでございますが、恐らく、これだけ雇用調整が進んだり残業がなくなったりすれば、もう家計の方は悲鳴を上げつつあるんだと思うのです。  総務庁が九二年家計調査報告書を発表いたしました。それによると、全国の全世帯の平均消費支出は前年度比で実質〇・五%減少、これは第二次オイルショックの一九八〇年以来、何と十二年ぶりだ。また、民間所得者の給与に占める所得税比率は六・三四%で、一九五〇年以来の高率である。それから、これは労働組合の調査でございます。今、年収七、八百万円の世帯が一番多いわけですが、例えば約七百数十万円規模の年収の世帯、これは六年前の一九八八年は六百万円ぐらいだったわけですね。春闘等で所得が伸びるわけですが、六年間で所得、収入が二八%伸びておるわけです。それに対して所得税は五八%伸びているわけですね。倍以上伸びておるわけです。  こういういろいろなデータを見ますと、所得税減税はもう待ったなしなんだ、このようにいろいろなデータから私は思いますが、大蔵大臣いかがでしょうか。
  173. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 私が貯蓄に回るのではないか、こう申し上げましたのは、所得が入りましたならば消費に回るか貯蓄に回るか、こういうことでございまして、昨今の消費性向等を見ましたり、また限界貯蓄性向などというようなところを見ていると、やはりそういったことがうかがわれるのではないか、こういうことでございます。  先生の御指摘は、家計調査、いろいろな形でアンケート調査をすれば消費に回るよ、こういうふうなお話、それも私はあるんだろうと思います。そういった意図を持ってやられている調査であるということだったら、みんな回しますよというのは私は普通の答えだろうと思いますよ。私でも、消費するかと言われたら、はあ、消費しますよ、こういうふうな答えが単純に出てくるだろうと思うのです。  しかし、私が思いますのに、国民的な感情からすると、すぐにそういくかどうかについては私はまだまだ自信を持てない。というよりは、日本経済のこれからの動向がやはり確実に伸びていく、こういうふうな信頼感があったならば、自分たちの給与やなんかも安心して伸びていくだろうと思うのだけれども、それがないとやはりいけない。持続的な成長へ持っていくという格好で、また豊かな生活ができるという方向へ持っていくということが一番大切なことだろうと私は思いますし、今すぐにやるのは一体どうかなということを私は思っているところでございます。  それからもう一つの、今の、所得は十五年間で二八%しか……(日笠委員「いや、六年間」と呼ぶ)六年間ですか。六年間で二八%しか伸びてないが、所得税は五八%、こういうふうな話でありますが、これは数字をとればそういうふうな数字があるいは出てくるかもしれませんけれども、所得税というのは、この前の抜本改革のときにやりまして、大幅な課税最低限の引き上げをやりましたり、また段階的なものを改めましたり、いろいろな形で相当な抜本改革をやっているところでありまして、いわゆる定点的に比較いたしますと、改正前の段階までにはまだいってないというのが私の認識でございます。  今の数字の問題につきましては、事務当局から御説明をさせたいと思います。
  174. 日笠勝之

    日笠委員 いいです。  じゃ大臣、赤字国債、戻し税はだめ、一歩譲って、それはわかった。じゃ所得税の、税制改正等々で減税できるのかということになりますと、過日、政府税調の加藤会長、実は予算委員会のときもそれからきょうも、もしお時間がよろしければ御出席いただいて、発言をされた要旨についてお伺いしようと思ったのですが、きょうは何か藤沢の慶応大学の授業があって来れないということなので、恐らく税調会長がおっしゃったことはもちろん大臣もよく承知をしておるという認識のもとにちょっとお聞きいたします。  税調会長は、「減税規模が二兆円程度なら、景気回復に伴う税収や、納税者番号制度の検討などで乗り切れるかもしれない」と会見でお答えになっておるのです。いわゆる赤字国債発行による戻し税は譲れませんけれども、これはさておいて、じゃ二兆円規模の、景気回復に伴う税収とか納税者番号制度などで二兆円ならできる、こういうふうに大々的に各紙が報道しております。何か手品みたいな話なのですが、そうなのかな、ぜひやっていただきたいなと私どもも思うのですが、この発言に対して、大臣はどういうふうに理解されていますか。
  175. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 新聞にそんな話が出ておったことは私も承知をいたしております。実は、事務当局に加藤会長の御真意を聞かせてみたのですが、いろいろな意見があるという税制調査会の総会でございまして、それはこの前お願いいたしまして可決していただきました租税特別措置法の一部を改正する法律案の内容について御説明をしたところでございます。  それで、加藤さんがおっしゃったのは、いろんな御意見がありまして、例えば二兆円という程度減税規模ならば云々ということではなくて、二兆円というのはいわば比喩的な話でありまして、具体的に二兆円をどうだというふうになったならばこうできるとかどうだという話で申し上げたのではない、こういうことでございまして、加藤さんの発言につきましては、中期的な議論であることを前提にした上で、減税を検討する際にはあわせてその財源を検討する必要があり、大規模減税、例えば五兆円減税ならば消費税率の上げが必要、小規模減税、それが幾らになるかは消費税以外の恒久財源をどこまで探し当てられるかにもよるが、全くの仮定として、二兆円とかでもそうした前提がつくのかどうか、いろいろ議論が出てくるといった話をした、何兆円というのは、いろいろな意見があることを説明するためのいわば比喩であり、具体的な改正案を頭に置いての発言ではない、いずれにせよ、適切な代替財源を確保することなしに減税を実施することは困難であると考えておるというのが加藤さんから私の方でいただいたところの答弁でございます。それで御理解を賜りたいと思います。
  176. 日笠勝之

    日笠委員 これは税調会長、またの機会にお呼びして真意をお聞きしなければいけませんね。  それで、この減税問題は、ひとえに政治問題になっているわけですね。与党の幹事長が三月四日に、当初予算を何とか三月三十一日までに通して景気回復に資したい、こういうことで与野党幹事長・書記長会談が行われて、前向き発言をしたわけですよ。それからずっと尾を引いておるわけですよ。与党の幹事長ですから、これは私は責任の重みというか重大さというのは十分考えていただかなければいけないと思うのですね。今後実務者協議もやるというのですが、どうもまだ三塚政調会長の方から我々の方には、やりましょうという声が、お呼びがないので、まだスタンバイはできませんけれども、我々もできる限り努力はしたいと思います。  ひとつ大臣、今変化とか変革がキーワードの世の中でしょう。それで、この河出文庫の「県別性格診断」という県別の性格診断、山口県人は一体どういう性格が、これをちょっと読みますと、県民意識調査をした結果、山口県人の特質は、第一位が粘り強い、第二位が保守的、第三位が頑固。もう大臣所得減税答弁を聞くと、全くこれが当てはまるような、山口きっすいの県人であるということがわかるような御答弁でございますが、景気の動向を見きわめながら減税も十分検討する、こういうふうに実務者会議でも三塚政調会長おっしゃっておるわけでございますから、我々はまだまだこの所得減税、景気回復に資するだけじゃなくて、不公平感、また何年間も減税がなされてないという、いわゆる生活者の政治、豊かな生活、こういう観点から今後も厳しく指摘し、主張を申し上げていこうと思っておるわけでございます。  減税の方は、この前、予算委員会でもやりましたから、次のテーマに行きまして、使途不明金でございます。  御承知のとおり、今政治改革をやるべしという声はもう五〇%を超したというアンケートも出ております。じゃ、どうして政治改革をやるべしという国民の声がここまで高まったかというと、やはり何といいましても、それは金丸不正蓄財事件を契機とするいわゆる大手ゼネコン等による使途不明金、こういうものが火に油を注ぎ、今日政治改革をやるべしという国民の声になったと思うのです。その使途不明金でございますけれども、きょうは大蔵省所管の関係について何点かお伺いしたいと思います。  この使途不明金というのは、国政調査で過去の調査もずっと資料もいただきました。金額、どういうものがあるかとか、これは全部承知した上でお聞きしますが、上場会社であれば有価証券報告書を出すわけですが、この有価証券報告書に使途不明金という欄を設けてディスクロージャーさせたらどうかな。銀行等は今度、不良債権ディスクロージャーするわけですが、いわゆる株主また株を買おうという人が、この会社は一体使途不明金どうなっているんだろうか、そういう暗いアングラマネーへ利益をほうり込んでいるんだろうかと、一つ判断基準になるかと思うのですが、有価証券報告書に使途不明金をきちっと掲載させる。株主総会のときには恐らくシャンシャンで終わるわけですから、そういうことを言わない、終わった後、自己否認したりして出てくるわけですね。じゃ修正でもいいし、さかのぼってでもいいから、使途不明金ということが国税当局の査察なり調査で判明した場合はきちっと報告させる、こういうふうにした方がいいと思うのですが、この点いかがでしょう。
  177. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 使途不明金の問題につきまして、今お話がありましたように、金丸さんの事件をめぐりましていろいろな問題が出てきていることは御指摘のとおりであります。  ただ、私は、有価証券報告書に使途不明金の欄を設けてやるというのはいかがなものだろうかなと思うのです。というのは、使途不明金という概念はそもそも税制上の概念でありまして、それは、使途不明というような格好にしておくけれども、税金はとにかく益金と同じようにして払いますよという形の処理でございます。そういったものでありますから、有価証券報告書の方でディスクロージャーをする、こういうことになりますと、これはむしろ投資家保護の観点から投資者に対していろいろな報告をする、こういうふうなことでございます。そうした意味で、支出金がその性格に応じて適切に経理されて、それが財務諸表に反映されておるならば、企業会計上はそれで済む話ではないだろうか、こう私は思っているところでありまして、全くおかしな話でやっておるというならば、むしろ商法上の背任罪か何かになる話だろう、私はこう思っておるところでございます。  先般も予算委員会か何かでその辺の話がありました。先生も恐らく聞いておられたと思いますが、いろいろな議論がございましたから、少しその辺の問題は私の方で一応整理をいたしまして、また御報告をすることにいたしております。
  178. 日笠勝之

    日笠委員 その次は、これは国税庁さんだと思うのですが、法人税法第百二十七条第一項三号の中に「その事業年度に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装して記載し、その他その記載事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由がある」場合は青色申告の承認の取り消しができるわけです。  では、現在の青色申告の数と、それから取り消しをしている年間の大体の推移、使途不明金に関係なくて、その実態からまずお聞きしたいと思います。
  179. 野村興児

    ○野村(興)政府委員 お答えいたします。  平成三事務年度におきますところの青色申告法人の青色承認取り消しの件数でございますが、これが二万五千五百九十八件となっているわけでございます。  年次別の推移を申し上げますと、この五年間の取り消しの数を申し上げますれば、昭和六十二年三万五千件強、六十三年度三万四千強、元年二万八千九百強、二年二万四千強、三年、先ほど申しました二万五千五百九十八でございます。
  180. 日笠勝之

    日笠委員 青色申告の法人数が大体二百二、三十万オーダーですね。それで、取り消されているのがこの五年間に多いとき三万五千、少ないときでも二万四千、一%以上が取り消されておるということになるわけですね。その実態を踏まえて、この使途不明金を出した法人は、青色申告を承認しておる場合は、これは今の法人税法百二十七条によりまして承認を取り消せると思うのです。小さい金額は言いません、一定額以上ということならば、これは取り消しを積極的にやって、社会的な制裁を加えて、きちんとこの帳簿記載等をやるようにした方がいいと思いますが、その点いかがですか。
  181. 野村興児

    ○野村(興)政府委員 お答えいたします。  使途不明金について、そのようなものを出している企業について青色取り消しをしてはどうか、こういうお話かと思います。  使途不明金問題の対応策の一つとしては、御指摘のような法によることも考えられないことはないわけでございますが、そもそも、青色申告制度を通じまして正確な記帳を行い、みずから適正な所得を計算するという申告制度の確立ということがその青色申告制度の趣旨なわけでありますが、そういった趣旨に照らして考えましたときに、一部の経費についての記載内容に不備があること、または一部の取引が仮装、隠ぺいがあること、これをもって直ちにその青色申告の承認を取り消すということについては、やはり全体として申告納税制度を円滑に運用していく上で適当かどうか、こういった点につきまして十分な検討の必要があろうかと思います。  ただ、御指摘ございましたように、先ほど申しましたような数字のまさに取り消しがあるわけでございます。ただ、私どもは、使途不明金について、その理由で取り消しをしているものの件数をとっておりませんので、その詳細は承知していないわけでございます。
  182. 日笠勝之

    日笠委員 では、その二万五、六千の取り消しの中にはそういうケースもあり得る、こう理解していいですか。
  183. 野村興児

    ○野村(興)政府委員 ただいま申しました数字、二万五千強の話は全国五百強の税務署でまさに展開している話でございまして、そういった形でその内容、取り消しの理由、詳細について統計をとっておりません。そういったようなことから、私は掌握をしていないということを申しているわけでございます。
  184. 日笠勝之

    日笠委員 あり得ると理解した方がいいのでしょうね、巨額な使途不明金というような場合は。  そこで、私が有価証券報告書に記載をした方がいいとか、それからまた青色申告承認取り消しも考えた方がいいとか言っているのは、今まさに政治不信がきわまっておりまして、それはやはり政官財の構造的癒着なんということを言われているわけですよ。それをどこかで断ち切らないといかぬわけです。  もちろん政治は、これから選挙制度を改革したり、企業献金も禁止をしようとか、身を切って血を流してでも改革にいそしもう。今度は、もちろん財界もそうですが、行政もそれに対応した動きをしないと、まさにこの政官財の構造的癒着というのは断ち切れないわけです。この辺は、今政治不信がきわまっておる、それは政治だけじゃなくて行政に対する不信もあるわけですね、一蓮托生ですから。これは、使途不明金ということは一つの大きなテーマとして積極的にいろいろな観点から対応していくべきだ、そういう意味で私は申し上げておるわけでございますから、どうぞその点を御理解をいただいておきたいと思います。  それから、大蔵省所管の公共事業がございますね、いわゆる大蔵本省の施設費であるとか、また公務員宿舎の施設費であるとか。例えば公務員宿舎の施設費は、補正予算を見ますと平成五年度約三百八十七億という巨額な金額になっております。そこで、当然これには使途不明金を出したとはっきり言っている大手ゼネコンもありますし、それからまた東京の三鷹市であるとか福岡県の新宮町というのでしょうか、こういう地方自治体でも大手ゼネコン十六社は入札を遠慮してもらう、ここまで地方地方で対応しているわけですよ。  お聞きしますが、この大蔵省の所管の施設費、まあ公共事業と言った方がいいかもしれません、これに対しては、そういう使途不明金を出しておると言われておる大手ゼネコンなんかは入札の観点からはどうなっておりますか。
  185. 中川隆進

    中川政府委員 お答えをいたします。  御質問の御趣旨は、私どもやっております指名競争入札の指名業者から、今御指摘のような業者を外すべきではないか、外せないか、こういう御趣旨がと思います。  御質問にございましたように、大蔵省におきます公共事業の一番大きなものは公務員宿舎でございます。公務員宿舎の建設につきましては、各財務局が主として所管をしているわけでございますけれども、その際の指名競争入札におきます業者指名に際しましては、御承知のとおり、予算決算及び会計令、予決令と言っておりますけれども、予決令の七十一条に定めましたいろいろな要件がございます。このほか、予決令の第九十六条に基づきまして指名基準を定めているわけでございますけれども、いずれも基本的には、公平かつ公正な手続によって経済的に有利な契約の締結を実現をして、契約の適正な履行を確保するという観点からのものでございまして、使途不明金を支出している法人に対しまして、これを理由として直ちに指名競争入札から排除するという規定になっていないわけでございます。そういうことで、そのことのみを理由に指名業者から外すということは難しいのではないかと考えているわけでございます。
  186. 日笠勝之

    日笠委員 いや、それは難しいことはわかっているのですよ。だから、その使途不明金に対してどういうふうな認識をしてどう対応しようとしているかということを聞きたいのですよ。  じゃ、三鷹市だとか福岡県の新宮町が外したというのはおかしいわけですか。そうじゃなくて、大蔵省所管会計事務取扱規則を見まして、「指名基準」の第一番目にこうあるじゃありませんか。「経営状態及び信用状態の良否」ということで指名の基準を定めるわけでしょう。使途不明金なんかをばんばん出していて信用状態というのがあるのですか。関東財務局の方の事務取扱要領にはそんなことは一言も書いてない。技術的なことばかりですよ。  ですから、私が言いたいのは、そういう使途不明金なんか出すような企業はもう入札をお断りしたい。この「指名基準」の第一にある「経営状態及び信用状態の良否」の香の方なんですよ。こうはっきり申し上げればいいじゃないですか。これは規則にありますね。「指名基準」「特に必要がある場合には、次の各号に掲げるもの以外の事項を基準とすることができる。」というのですから、これは四項ありますが、五項目に社会的信用を失するような企業はだめと入れればよろしいわ、これは法律じゃないのですから。  大臣どうですか。大蔵省が毅然とした態度で、そんな使途不明金を出すような企業については、まあ談合は、これは当然いいのですけれども、予決令で法律的にもきちっとなっているのですが、そうじゃなくて、そういう使途不明金を出すようなゼネコン、そのほかいろいろな企業については大蔵省所管の指名競争入札には入れませんよ、ちゃんと今度指名基準を改正しますよ、これくらいのことができて当然じゃないですか。税金ですよ、公共事業は。その税金が回り回って使途不明金でどこかのブラックホールヘ隠れていくのですよ。そうでしょう。税金じゃないですか、公共事業は。一部がブラックホールヘ隠れていくのですよ、アングラマネーで。そういうことをする企業は社会的犯罪じゃないですか。どうですか。もうこれは改正して明確に入れる、これぐらいのことはできるでしょう、大臣
  187. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 お言葉でございますけれども、指名競争入札というのは、予決令で定める要件によって公正な競争が行われるとか、工事を粗雑にしたような場合には外すことができる、こういうふうな話になっておるのでございまして、基本的には談合したらいかぬと思いますが、そうではなくて、工事も適正に行われるならば競争のもとでやっていくというのが一般ルールだろう、私はこう思っておるところであります。  使途不明金というのは、確かに使途不明とおっしゃるから非常に何か社会的に悪だ、こういうふうな話でありますけれども、そのこととその会社が工事能力があってどうだこうだという話とは別だ、私はこう思うのでありまして、使途不明金を出すようなものについていろいろな角度から、先ほど来先生からお話がありましたような点でどうしていくかというのは検討していかなければならない問題がある。税制上の問題もあり、また商法上の問題もあり、企業会計上の問題もあり、そういった点で明らかにしていくことはそうでありましょうけれども、そういった中の問題と、それをもってその会社そのものが適正な会社であるかどうかというのは別な話でありまして、適正にやるところのものが適正な形で競争して入札に参加するということは差し支えない、またそれを排除することもいかがなものか、私はこう思っておるところでございます。
  188. 日笠勝之

    日笠委員 そうすると、先ほど申し上げた東京都の三鷹市や福岡県の新宮町というのはおかしいのですね、外したということは。そういうことですか。
  189. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 それぞれの立場におかれましてそれぞれの具体的ないろいろな工事入札その他の問題がございますから、それぞれのところで御判断をする、その問題について私の方からどうだと言うことはないと思いますけれども、個別具体的な入札その他のものについて、やはりいろいろと考えていかなくてはならない問題だろうと思っておるところでございます。
  190. 日笠勝之

    日笠委員 そうすると、この大蔵省所管会計事務取扱規則の第一番目に出てくる「経営状態及び信用状態の良否」のこの「信用状態」というのは何を言うのですか。
  191. 中川隆進

    中川政府委員 御説明を申し上げます。  御指摘のとおり、大蔵省所管会計事務取扱規則、大蔵省の訓令でございますけれども、その三十八条に「指名基準」がございます。その一番最初に、「経営状態及び信用状態の良否」という規定がございます。こうした規定を受けて各財務局の方でそれぞれ細則を定めている、こういうことでございますけれども、今御指摘の経営状態、これはもう明らかであろうかと思いますけれども、信用状態といいます場合に、今御指摘のような使途不明金があるとかないとかということよりも、むしろ経営状態のいかんによって工事がうまくいくかどうか、うまくいかないのではないか、場合によっては工事が履行されないのではないか、こういった観点をここで主として意識して書かれていると私どもは理解しております。  この信用状態、非常に幅広い言葉でございますから、今の御指摘のような使途不明金という問題とはちょっと離れますけれども、例えば非常な違法行為があって、あるいは客観的にだれが見ても不正であるという事項がございまして、それがその所管します工事等の発注あるいは工事等の完成において非常に大きな影響を及ぼしそうである、こういった場合にはこの規定によって指名競争入札の指名業者の対象から外す、こういうことであろうと理解をしているわけでございますが、これを受けまして各財務局、それぞれ指名競争入札をします場合には指名業者選定委員会というのを設けまして、それぞれこの規定を踏まえまして判定をしている、こういう状況でございます。
  192. 日笠勝之

    日笠委員 大臣、時間もありませんから、この使途不明金という認識を、これは国民世論の指弾を重く受けとめて、これに対して大蔵省としては、先ほどから言っているようないろいろな観点からどう対応していくのか、これは国民の政治、行政への信用を取り戻す大変大切なキーワードだと思いますよ。そういう意味では、総合的にぜひひとつ省内で、一つ一つ私が指摘したことも参考にしていただいて検討していただきたい、こう思いますが、その決意だけお聞かせ願いたいと思います。
  193. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 省内でも、いろいろと問題がある、御指摘のあったような話もございます。  私は先ほど申しましたように、この問題は、一つにはすぐれて政治家の信用の失墜の問題が最初にあったと思うのであります。それから関連いたしまして企業の方にあって、政界と財界との結びつきだ、こういうふうな話だろう、こう思うのですね。それに官界が巻き込まれて、みんなこういう話になってしまった。だから、そこを明らかにしていくことが必要でありまして、私はさっき工事の話を申し上げましたが、あえて申し上げましたのは、工事そのものはやはり適正にまたは立派な形でいい値段で行われることが必要である、こういうことであります。それと、会社の中で一部の中の使途不明金というのが出ているということとは、それはまた別の問題として考えていかなければならない。何でもかんでも、みそもくそもというのは私はとらないところでありまして、そこは少し整理をしてお話をした方がいいのだろう、こう思っておるところでございます。  先ほど先生が、山口県の連中は大変頑固だ、こういうふうにおっしゃいましたけれども、一方で私が本を読んでおりますのは、山口県の人間は極めて政治的である、こういうふうな話でございますから、そういった観点で私もやりたいと思っております。よろしくお願いいたします。
  194. 日笠勝之

    日笠委員 ぜひひとつ、また七月になりますと金丸脱税事件の裁判も始まり、冒頭陳述でいわゆる使途不明金云々の話も出てくるのじゃないかと思いますので、そのときになって慌てないように、ちゃんと大蔵省としては使途不明金に対しては各局、各部、こういう対応を考えておりますというくらいのものを、今から、危機管理能力が大事なのですから、突然出てきて、慌てふためいて局長が集まって鉛筆なめなめコメントを出すようではしょうがないわけですから、その点前もってよろしくお願いをしておきたいと思います。  時間が来ました。最後に、福祉預貯金についてお伺いをしたいと思います。  本年三月、福祉預貯金については、公定歩合の利下げから障害者等々のいわゆる障害年金等を受けておる方に対しては大変な利子引き下げということに相なろうということで延長をすることになりましたが、どうでしょう、どこからでもいいですが、輪切りで、期間はいいですが、郵政省と銀行局とで福祉預貯金の実態、現状というものについてちょっとお知らせいただきたいと思います。
  195. 寺村信行

    寺村政府委員 民間金融機関の福祉定期預金の残高は、三月末現在で千八百二十八億円でございまして、昨年十二月末に比べまして七二%の増加となっております。
  196. 浅岡徹

    ○浅岡説明員 お答えいたします。  福祉定期郵便貯金の利用状況でございますが、本年二月当委員会での先生の御指摘を受ける以前、平成四年八月から平成五年二月までの利用が約四万五千件、約四百七十八億円と少ない状況でございましたが、その後御指摘を受けましてきめ細かいPRを行いました結果、本年三月から五月までの三カ月間で預入件数約四万六千件、預入金額約五百十億円とこれまでにない伸びとなってございます。
  197. 日笠勝之

    日笠委員 大分PRも効いてきて預入額が大幅にふえているということは、御努力は多とするところでございます。  しかし、どうも該当者が五百五十万人ぐらいいらっしゃるのにまだまだ利用率が少ないな、こういうふうに思いまして、いろいろ調べてみました。  過日、平成五年二月二十三日の大蔵委員会で私、PRをしっかりすべきだ、まだまだ利用者が少ないということを申し上げました。寺村銀行局長がこのように答弁されていますね。「各金融機関に対し、制度の内容等につきまして店頭に掲示するよう指導してきているところでございます。」こういう御答弁をされております。私も都内の十八の銀行や信用金庫等々、私の秘書さんにちょっと店頭に行ってもらいました。その結果、ちょうど半分の九行はポスターはありません。それから、ポスターをわかりづらいところに張っているのが七行。ですから、ポスターをきちっと見えるところに張っているのは何とわずかに二行。支店ですよ。それから、パンフレットがありますかと聞いたら、パンフレットはありませんというのが十一行、ほとんどない。十八分の十一は置いてないということですね。窓口の行員の方に福祉預貯金の制度があるようですがどういう制度ですかと聞いたところ、全くわかりませんというのが十行、中には面倒なのでよその銀行に行くようにという指示を上司が窓口の人にした、ほかの銀行く行ってほしい、こういうような銀行もあったようでございます。これは都内のわずか十八の銀行とか信用金庫とか信用組合ですから、全部とは言いませんが、まだもう一歩PRが足らないのじゃないかな。  私はいつもこういうところで提案をする、やりますと言う、しかしその後がないのですよ。実際に局長が、まあ局長とは言いませんが、銀行局、たくさんいらっしゃるのですが、一カ月たったら散らばって一人五行ずつ見ていらっしゃい、通勤途上、出社時間は一時間おくれてもいいからと。それで結論はどうなるか、そういう検証をしなければだめですよ。その場しのぎで、PRに努めますので、現実にそういうデータですよ。どうですか。もう少し積極的にPRをするというお気持ちがあるかどうか、最後に郵政省と銀行局長にお聞きして、終わりたいと思います。
  198. 寺村信行

    寺村政府委員 前回通達等を発して周知徹底を図るということを申し上げましたが、ただいまのような御指摘がございます。御指摘を踏まえまして、さらに具体的に広報を図ってまいりたいと思います。  今月の上旬から、テレビ、有線放送、新聞折り込み、パンフレット等の幅広い広報媒体を利用いたしましてさらにPRをしてまいりたいと考えているところでございます。
  199. 浅岡徹

    ○浅岡説明員 本年二月、当委員会で先生の御指摘を受けましてから、私ども、郵便局に対して意識づけやPRの強化をいたしまして、新聞広告の実施、郵便局機関紙の活用、さらには政府、市町村広報紙へのPR記事の掲載依頼、あるいは老人ホームのようにニーズがございますところで説明会をさせていただくなど、きめ細かくPRを行ってまいったわけでございますが、今後とも効果的有効策を実施いたしまして福祉定期郵便貯金制度の周知徹底に努めてまいる所存でございます。
  200. 日笠勝之

    日笠委員 さらなる御努力を期待して、質問を終わります。ありがとうございました。
  201. 藤井裕久

  202. 正森成二

    ○正森委員 最初に大蔵大臣に伺いたいと思います。  最近の円高、百七円から百六円台にもなる。それに関連して対米摩擦や我が国の景気対策との関係も非常に憂慮されておりますが、その中で黙視することができないのは米政府高官の発言ですね。アメリカ政府高官の発言であります。  御承知だと思いますが、まずことしの二月十九日にベンツェン財務長官による、米国の輸出競争力回復のためにはより強い円が望ましいという発言がありました。御承知のように、四月の日米首脳会談のときにクリントン大統領が共同記者会見で、貿易不均衡是正には第一に円高が望ましいという趣旨の発言がありました。しかもごく最近、五月二十五日でしたか、アメリカの財務省報告がありまして、それに伴ってサマーズ米財務次官が議会謹言を行いました。これは報道によりますと、要約しますと、円高は貿易不均衡是正に役立つという趣旨であります。もう少し詳しく言いますと、円に対してはドルは下落しており、これは日本の膨らむ貿易黒字を抑え、最終的には反転させようとする力を反映したものと見られるというほかに、年初来の円レートの上昇が続けば、最終的には日本の黒字をふやす要因を幾らか相殺することになる云々というようなことをも言っております。これはさすがの外務省も黙視できないと思われたのかもしれませんが、出先の千野財務官か何かに米政府の真意を確かめさせたという記事もございます。  同時に、私が持っておりますのは東京新聞ですが、東京新聞では「大蔵省幹部の一人は「度重なる米政府高官の円高容認発言の後に今回の報告書。こうまで続けば疑いの余地はない。円高誘導が米国の外交戦略に組み込まれているのは間違いない。一ドル当たり一〇〇円前後が目標じゃないか」と唇をかみしめる。」こう書いてあります。唇をかみしめるというのはよほどのことでありますが、政治性の強い大臣、保守的で頑固な大臣というような話が先ほどありましたが……(「粘り強い」と呼ぶ者あり)粘り強い、なるほど。また別の新聞によりますと、大臣が米政府高官の発言に不快感を示したという発言もあります。粘り強い大臣がよくよくのことだったんだと思いますが、この円高アメリカとの関連について、大臣の政治家としての発言あるいは御見解を承っておきたいと思います。
  203. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 正森議員のお話でございますが、今の段階で本日の終わり値は百七円十二銭、こういうことになっておりまして、きょうは百六円九十九銭とかというのが午前につきまして、今百七円十二銭、その辺を行ったり来たりしている。相場の出来高も三十五億五千三百万ドル、こういうお話でございまして、大変たくさんの商いが東京市場で行われているということでございます。為替市場と申しますが、東京にもございますし、ニューヨーク、ロンドン、またその他のところにもいろいろ為替市場があるわけでございまして、そんな市場でもって為替相場というのは決まっていく、これが今の建前でございまして、一方的にだれがやってどうだという話ではないと思います。  ただ、今御指摘にありましたように、二月でしたか、ベンツェンさんが何かの新聞に答えてお話しになった。ウイーガードルか、いや、ストロンガー円だと言ったものですからというような話ですが、そういったことを極めて神経質にそのころからとらえ出しました。それからアメリカの大統領が宮澤さんと会ったときに、その記者会見でぽかっと円高がどうだというような話をした。別に会談の中であった話じゃないけれども、たまたまそんな話が出ちゃった、こういう形でまた市場がそれに非常に敏感に動いた、こういうふうなことだと私は思います。それからサマーズ氏の発言その他も二十六日にアメリカの下院の中小企業委員会でもありましたが、ここでは、米政府はこれ以上の円高を求めないということを言っておりますし、市場の動きは早過ぎると言っております。  これはこの前、四月二十九日にG7を行いまして、そのときにアメリカ側と私の方とで、またG7の各国で合意いたしまして、ファンダメンタルズを反映した形で為替相場というのは安定的に動くべきだ、急激に動くところに対してはやはりおかしく思うし、その場合には適時適切に対処していこうということで大体の合意を得たところでありますし、これは私の方が再三にわたりまして当委員会におきましてもお話を申し上げておるところでございます。  為替相場というものはファンダメンタルズを反映して基本的に動くということが確かに必要であると思いますし、アメリカ側の若干不用意な発言がそういうふうになったということについては、市場が余りにも敏感に反応しているというふうにも思いますけれども、本当は経済のファンダメンタルズを反映して動くことが世界全体のためにとっても望ましいんだ、日本のためだどうだということではない、世界全体のためにそういうことをやっていくことが必要じゃないかな、こういうふうに私は心から考えておるところでございまして、改めてそのことは申し上げておきたいと思います。  それから、今三十五億五千三百万ドルと申しましたが、これは二時半ごろの数字でございまして、最終の出来高は四十四億八千五百万ドル、こういうことでございます。
  204. 正森成二

    ○正森委員 きのうの閣議後の大臣の発言もほぼ同趣旨でありまして、為替相場はファンダメンタルズを反映して安定的に推移するのが望ましいということを基本にしながらも、米国が通貨政策で貿易不均衡をどうこうしようとすると非常におかしなことになるということも追加的に述べられたということが言われております。確かにサマーズ氏も議会で正式の証言ではそういうぐあいに述べられたようですが、それはやはりアメリカ政府の建前であって、ついつい不用意な発言と言いますが、ついつい不用意な発言が繰り返され、かつ系統的に行われるということは、ついつい不用意な発言じゃなしに一定の願望といいますか、戦略的見地を示していると言ってもいいので、それについては、近くサミットも行われますが、大蔵大臣としては十分に国益を考えて対処していただきたいということを申し上げまして、別の論点に移りたいと思います。  この間予約しておきましたので国税庁に伺います。それで、この間所得税について伺いましたが、基本は同じですが、きょうは消費税について伺いたいと思います。  消費税については、申し上げるまでもございませんが、消費税法の三十条に規定がございます。それで、もちろん仕入れ税額は控除するということでありますが、七項で、「第一項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。」つまり税額控除しないということを言いまして、「ただし、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかったことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない。」こうなっております。  そこで、この適用が非常に問題になるのですが、一昨年ありました、香川県の三豊というところがあるそうですね、そこで消費税法の三十条七項を適用されて税額控除が行われなかった事件につきまして、異議申し立てをしたところ異議を却下する決定を税務署長がしているんですね。その理由書を私は入手しましたのでここへ持ってまいりました。そうすると、こういう非常に問題のある発言をしているわけであります。  どう言っているかというと、立会人がいたから見られなかったということがトラブルの前提にあったようですが、  したがって、仮に調査時において実際には帳簿等が存在していたとしても、調査において再三にわたり帳簿等の保存がなければ仕入税額控除はできない旨教示し、当該帳簿等の提示を求めたにもかかわらず、この提示がなかった場合には、一定の要件を満たすことにより仕入税額控除ができるという納税者の権利を自ら放棄したものであり、消費税法第三十条第七項及び同法施行令第五十条第一項の規定の趣旨を全うできるものでないことから、帳簿等の保存はなかったものと同一視することができ、消費税法第三十条第七項の規定を適用すべきものである。こう言っています。つまり、提示がないというような場合は、みずから権利を放棄したものだから仕入れ控除に関連する帳簿がないというのと同じようにみなしていいんだ、こういう趣旨であります。それだけではなしに、さらに進みまして、  また、帳簿等の保存が課税期間の末日の翌日から二月を経過した日から七年間行うこととされていることからみても、調査時点で帳簿等の保存がないものとして消費税法第三十条第七項規定を適用されたものについては、たとえ審査請求段階において帳簿等が提示されたとしても、同項の適用関係が左右されるものではない。つまり、そのときに示さなかったら、その後不服審査請求などがあって、そこで調べて、その席に帳簿を出して、あるいは帳簿の存在が確認されて、なるほど帳簿があるな、これで仕入れ税額控除にかかわる事実関係は証明できるなということになっても、そもそも最初のときに出さなかったんだから仕入れ税額控除をしなくてもいいんだということを言っているわけであります。それから、さらにこう言っています。  なお、調査時に再三にわたって提示を求め、帳簿等の保存がない場合には仕入税額控除が認められない旨教示したにもかかわらず、帳簿等の提示がなかったため、消費税法第三十条第七項の規定が適用されたものについては、たとえ、審査請求段階においてこれが提示されたとしても、消費税法第三十条第七項及び同法施行令第五十条第一項の規定の趣旨からみても、時機を失した提示であり、また、禁反言の原則に照らしても容認されるものではない。つまり、一たん調査のときにいろいろ事情があって出さなかったら、その後異議申し立ての決定をするときに見せても、審査請求のときに見せても、もう時期におくれてしまったものだからあかんということで、絶対に救済しないんだというのが処分庁の決定なのですね。これはとんでもないことじゃないですか。まず、私の言い分を言う前にあなた方の見解を聞きましょう。
  205. 松川隆志

    ○松川政府委員 お答えいたします。  まず、個別の案件についての具体的な答弁は、守秘義務の関係でちょっと差し控えたいと思います。それで、一般論として申し上げます。  消費税法第三十条第七項に帳簿の保存義務について規定している、今委員がおっしゃったとおりでございますので、もう一回申し上げるのは省略いたしますけれども、それで、この場合の帳簿の保存というのは、判例によりますと、「税務職員が帳簿等の存否を確認し、これを閲覧し、その内容を質問検査権に基づいて調査することができる状態にあることをいう。」というふうになっておりまして、税務調査において帳簿等の保存がない場合は、仕入れ税額控除が認められない旨再三にわたって教示して、それにもかかわらず納税者が第三者の立ち会いを求めるなどして帳簿等の提示に応じなかった場合には、これはまさに当該納税者の責めに帰すべき事由によって帳簿等の確認ができなかったものである、そして法律に書いてありますような「災害その他やむを得ない事情」には当たらないということで、帳簿等の保存があったものとは見ることはできないということで仕入れ税額控除はできないというふうに解しているところでございます。
  206. 正森成二

    ○正森委員 個別の問題には入らないけれども、一般論としてお答えしたいということで、自分に有利な判例があるということで議論がかみ合うようになりましたので、私もそういう趣旨で述べさせてもらいたいと思います。  あなたが多分そう言われると思って、あなたの根拠とする判例を全部集めてまいりました。それは「シュトイエル」というちょっと聞かない本なんですが、日本税法学会が出している「税法・判例・通達の批判 税務訴訟の判決特報」。税務訴訟についての判例を特別にまとめた日本税法学会編の「シュトイエル」、税という意味ですね。きょうはこれはコピーですが、過去の分が全部こういうぐあいに整理してあって、国会図書館にあります。それで、国会図書館に行って調べてきました。  今課税部長の言いましたそういう判例が最初に出ましたのは、私が調べた範囲では、和歌山地裁の判決が最初でありまして、それを大阪地裁がさらに引き継ぎまして、その後、高裁段階等でも幾つかの判例が出ているわけであります。最初に出ましたのは昭和四十九年ごろですが、昭和五十五年ごろからそういう判例が幾つか出ております。ここに判例は持ってまいりましたが、一々読みません。  その趣旨は、法律では、所得税法では、ここに六法全書がありますが、所得税法と法人税法とほぼ同じ規定なんです。法人税法については先ほど同僚議員も使途不明金の点で御指摘になりましたが、所得税法では、第百五十条に「青色申告の承認の取消し」という項目がありまして、「その年における第百四十三条に規定する業務に係る帳簿書類の備付け、記録又は保存が第百四十八条第一項に規定する大蔵省令で定めるところに従って行なわれていないこと。」という規定があるのです。この規定はあくまでも「帳簿書類の備付け、記録又は保存」というようになっております。ところが、大蔵省の見解及び幾つかの過去の判例は、それは、そもそも税務調査のときに見せて、そして申告が正しいかどうかということを判定する、そういう資料になるものだから、不提示というのは、提示しないということ、あるいは見られないということですが、それは帳簿書類の保存、記録、備えつけがないのと同じことであるというのが一貫した判例だったのです。  あなたが判例を引用されましたから、同じ土俵に入られたわけですから私も判例を引用させていただきますが、その判例を覆したのが、この前もう一遍やりますよといって私が予約しておいた、東京の荒川判決と言われております荒川税務署の判例なんですね。これは平成三年の一月三十一日に地裁の判決がありまして、ここに両方持ってまいりましたが、平成五年の二月九日、ついこの間ですが、東京高裁でそれを全面的に肯定する判決が出て、それで、大臣、覚えておられますか、目をあけて聞いていただきたいのですが、国税庁は上告しなかったのですよ。上告しないで異議なくそれに服しますという態度をとったのです。この間課税部長は個別の案件だからと言いましたが、なるほどこの事件での具体的な事実関係は個別の案件です。しかし、そこに判示された判決の理屈は、課税部長が自分に有利なものは一般論としてお答えしますがといって引用しておりますように、自分に不利なものもやはり一般論として今後適用されるに値する理屈なんですね。  そこではどう言っているかということを念のために言いますと、原文から引用したいと思いますが、どうせお読みになるでしょうから、ここでは納税者に若干不利なこともついでに引用しておきたいと思うのですね。いいですか、つまり、帳簿書類の備えつけ、記録、保存がないという場合に青色が取り消されるのですね。ところが税務署側は、それが提示されない、不提示という場合も同じことなんだという理屈なんです。まずそれが争点になりまして、こう言っているのです。  しかしながら、被告の主張するとおり、青色申告者が所得税法一四八条一項所定の帳簿書類の提示を拒否したため、その備付け、記録及び保存が正しく行われているか否かを税務署長が確認することができないときも、同法一五〇条一項一号が定める青色申告承認の取消事由に該当するものと解するのが相当である。ここでは税務署の言い分を認めているのです。被告というのは税務署のことですね。というのは、そもそも青色申告制度は、納税義務者が自己の記録、保存している正確な帳簿書類を基礎として納税申告を行うことを奨励することにより、申告納税制度が適正に機能することを目的とする制度であるから、納税義務者の帳簿書類の備付け、記録又は保存が正しく行われているとともに、その点を税務当局が的確に確認できるということが、その制度の当然の前提となっているものと考えられるところ、青色申告の承認を受けている納税義務者が正当な理由がないのに当該帳簿書類を税務当局に提示することを拒否したような場合は、たとえ客観的には当該納税義務者の帳簿書類の備付け、記録又は保存が正しく行われていたとしても、税務当局がその点を確認することができない以上、やはり青色申告制度の前提自体が欠けることとなるものといわざるを得ないからである。ここまでは松川課税部長、あなたが非常に喜びそうな今までの判例と同じ見解を言っているのです。これから先が大事なんですよ。ちゃんと耳をよくあけて聞いてもらわなければいかぬのですが、ここから先が、  もっとも、右のような青色申告承認の取消事由が法規上明文をもっては規定されていないこと、いいですか、この意味は、法文上明文をもって規定されているのは帳簿書類の備えつけと記録それから保存がないという場合であって、帳簿書類を提示しないというようなことは、これは法律上規定された取り消し事由ではないということを言っているのですね。  もっとも、右のような青色申告承認の取消事由が法規上明文をもっては規定されていないこと、また青色申告承認取消処分が納税者に対して一定の不利益を課する処分であること等からすれば、右のような取消事由の認定に当たっては、一定の慎重さが要求されるものというべきである。すなわち、納税義務者の帳簿書類の提示拒否の事実の有無は、一定の時点においてのみ判断されるべきものではなく、税務当局の行う調査の全過程を通じて、税務当局側が帳簿の備付け状況等を確認するために社会通念上当然に要求される程度努力を行ったにもかかわらず、その確認を行うことが客観的にみてできなかったと考えられる場合に、右のような取消事由の存在が肯定されるものと考えるのが相当である。こう言っているのです。いいですか。だから、香川の税務署長なんかが言っているように、一たん見せなければ後はもうだめなんだというのじゃなしに、税務調査の全過程において、社会的に相当と思われるような努力をしてもなおかつ見ることができない、存在を確認することができないというような場合にのみ取り消し事由を発動するという慎重さが必要とされるのだということを言っているのです。  ここから後はこの事件の個別事由ですから参考意見として言うのですが、本件の場合には、帳簿書類等をきちんと机の上に広げて、そして本人以外に確かに立会人はおったけれども、それは帳簿書類の作成に関与した事務局が一人だけだった、それが手にとって見てくれと言ったのに、わずか二十分ぐらいで立会人がおるから見られないと言って調査をしなかったというのは、いまだ社会的に相当の手段を使ったということは言えないということで、青色承認の取り消し処分が取り消されて、八年分の更正、決定が全部取り消されるということになったわけです。これが前回言ったとおりです。そして、それに対して高裁が地裁の言い分はそのとおりだという判決をして、そしてそれにあなた方は従ったのでしょう。上告しなかったのでしょう。そうしたら、今まであなた方が言っている、この「ジュトイエル」などに載っているそういう立場は、一定の見直しが必要とされるということであるのは当然のことじゃないですか。  しかも、この青色の取り消しの場合には、法人の場合だったら五年間欠損を繰り延べるとか、これはいろいろな恩典なんですよ。ところが、消費税の場合はそうじゃないでしょうが。仕入れ税額控除というのは、既に税金として納められている、控除するのは当然だ。それを控除しない。恩典でも権利でも何でもないのですよ。税務署が当然控除しなければならないものではないですか。そんなものを立会人が気に入らぬのが一人おるからというので見ないで、仕入れ税額控除をしない。所得税なんかより仕入れ税額控除されない場合の方がはるかに負担が大きいのですよ。卸売業者の場合には、あえて言いませんが、千何百万円も言ってこられてびっくり仰天しているのがあるのですよ。そんなことでは中小企業はとてもやっていけないじゃないですか。今そういう目に遭っているところが全国至るところにありまして、私どもが知っているだけでも、山口、大阪、岐阜、静岡、神奈川、千葉、沖縄、香川というように続出しています。  大臣、こういうことをやられたら、今税率三%だって中小企業はそれだけでつぶれるのですよ。税率が五%、一〇%になればとんでもないことじゃないですか。ですから、荒川判決と呼んでおきますが、そういう判決があり、高裁が出、そしてあなた方が上告もできなかったということから見れば、あなた方のこういう態度は当然改めるべきじゃないですか。  時間がちょうど参りましたというのが事務局から来ましたから、本当はまだこれから言いたい、おもしろいところがあったのですが、それはまた次のあれでやることにして、きょうはこれで終わらざるを得ないのですが、一言答弁を聞いて、答弁がよければやめてもいいのですが、答弁が悪ければ第三回目のシリーズをやることにして、一応きょうはこれで終わります。
  207. 松川隆志

    ○松川政府委員 荒川税務署の判決につきましては私も手に持っておるわけでございますが、今先生がおっしゃった一定の慎重さが要求されるものであるということにつきましては我々も同感でございまして、この事件がなぜ敗訴したかということにつきましては、その事実関係において十分な確認の努力をしていなかったと裁判所が認定したものというふうに考えております。  今、いろいろと各地で帳簿の保存をめぐって消費税異議申し立てが頻発しているということでございますが、これにつきましては、いずれもそうした慎重な確認努力というのは十分して所定の課税処分をしているというふうに考えております。
  208. 正森成二

    ○正森委員 それじゃ、また第三回目だな。
  209. 藤井裕久

    藤井委員長 中井洽君。
  210. 中井洽

    ○中井委員 幾つかの問題について大蔵当局に質問をいたします。本日、私、他の委員会での質問がありましたので、この委員会で他党の皆さん方の質疑を聞いておりませんでした。重複する面があったらお許しをいただきたいと思います。  最初に、過日、釜石信金の解体、清算が発表されました。この解体、清算におきまして預金保険制度が適用されて資金が出されるわけであります。かつて東洋信金のときにも、この預金保険制度の適用がなされました。預金保険制度というのは、私が言うまでもなく、預金者に対して一千万円以下の保険金の支払いと金融機関に対する資金援助、二つの面を持っているわけであります。大蔵省金融制度の維持、金融秩序の維持ということでいろいろな金融機関の再建に大変な御努力をされていることは敬意を表しますけれども、この預金保険制度が資金援助の面でしか使われないというところはどうなんだろうという感じで見させていただいております。  預金保険制度の運用をこの保険金の支払いでいくのか資金援助の支払いていくのか、これの判断をするルールみたいなもの、そういったものは大蔵省お持ちでこれをおやりになっているのだろうか、こんな点をまずお尋ねをいたします。
  211. 寺村信行

    寺村政府委員 釜石信用金庫の事業譲渡が行われますことが合意をされましたが、これはただいま委員指摘のとおり預金者の保護、信用秩序の維持、それと従業員の雇用の確保、地域金融の安定、こういった観点から関係者は決断をされたものと考えているところでございます。  ところで、金融機関が倒産をし、預金等の支払いが停止をした場合には、預金保険機構から保険金が支払われることになるわけでございますが、その場合には保険金の支払い限度が一千万円に限られております。かつ利息分は支払われない、元本のみの一千万。それから当然のことでございますが、保険金の額、それから支払い事務に要する費用が資金援助に比べまして大きくなります。といったことから、この保険金の支払いではなくて救済を行う金融機関に対する資金援助の手段が実は法律で予定をされているわけでございまして、具体的にどの場合にどうだということは個別のケースに応じて考えざるを得ないわけでございますが、東洋信金の場合も今回の場合もこのような判断に至ったものでございます。  なお、米国でも預金保険制度がございますが、金融機関の経営が破綻した場合にいわゆるこの保険金の支払いでやるほかに、資産、負債の承継方式あるいは資金援助といったような方式がやはり定められておりまして、大半は実は資産、負債の承継方式もしくは資金援助という形で、現実に保険金の支払いによる処理は全体の一割弱、こんな状況になっているところでございます。
  212. 中井洽

    ○中井委員 東洋信金あるいは今回の釜石信金の預金者の数というのはどのくらいで、そのうち、銀行に借りている借金を除いて純預金が一千万以上ある方というのはどのくらいいらっしゃるのですか。
  213. 寺村信行

    寺村政府委員 預金者総数は五万四千百五十三件でございまして、一千万超が六百八十三件でございます。  金額は、これはちょっと直近時点の計数ではございませんで四年十月末の計数でございますが、四百五十七億円でございますが、一千万超が百五十二億円、こういうことになっております。
  214. 中井洽

    ○中井委員 先ほど局長から費用等も勘案してというお話がありましたが、預金保険の積み立ての利率というのは、お話のあったその預金の元本だけ、元本と利子を含めて出す、この二つのどちらに比重を置いて率を決めていらっしゃるのですか。
  215. 寺村信行

    寺村政府委員 預金額に応じまして保険料率を乗じて積み立てているということでございます。
  216. 中井洽

    ○中井委員 私がお尋ねしていますのは、それは知っていますけれども、保険ですから積み立てる率というのは決まっているでしょう。この率の計算というのは、保険ですから、やはりいろいろな計算の根拠がある。この預金保険制度というのは、保険金の支払いというのとそれから資金援助というのと二つある。保険金の支払いの場合には預金元本だけ弁済する、一千万円という上限を持っておる。片一方は預金も元本も援助する。こういう形ですから、当然率的に違うんだ。それを一つの利子にして、一つの制度にしているところになかなかこの預金保険制度というのは難しいものがある、こう思うのです。  そういう制度の中で今日まで二つ三つとおやりになったけれども、資金援助だけでおやりになるというのならこの率の問題等が当然出てくるのじゃないか。その費用効率とかなんとかいうことを考えますと、この二つの制度を含んで預金保険制度をこれからも生かし続けようと思えば、逆にこういう小さい金融機関の場合には、かえって保険金の支払いという形でおやりになるという方向を出された方がいいのじゃないか、こんな意味からお尋ねをしていますが、いかがですか。
  217. 寺村信行

    寺村政府委員 東洋信金の場合も今回の場合も、預金保険機構からの支払いだけではなくて、実は他の金融機関からの相互援助制度がございまして、そのようなところから援助を受けているわけでございますしかるがゆえに、東洋信金の場合は店舗をある程度分割いたしましたけれども合併という形式、それから今回はそれぞれ事業を分割して譲渡をしてしまうという形で金融機関に引き継ぎをやる、かつそれに対しましてやはり他の金融機関からの相互援助というようなことが、支援が行われまして、結果といたしましては、いずれの場合も預金保険金を支払う額よりも資金援助の額は低い金額になっているところでございます。
  218. 中井洽

    ○中井委員 私は、大蔵省の皆さん方が金融秩序維持のためにあっちこっち破れかかっている金融機関の救済で必死におやりになっていることに別に文句を言っているわけではありません。しかし、自由主義、資本主義の世の中で、本当にいつまでも銀行あるいは大蔵省の管轄をしているところだけ守り通していくのか、考えていかなければならない時期に来たのではないか、このように申し上げているわけであります。  釜石信金の場合にはこれでできたのですからいいですけれども、例えば預金が昭和六十三年の三月末で約四百億だ、そして従業員が百四十六人だ、これでは到底金融機関としてやっていけないじゃないですか。今銀行というのは大体行員さん一人七億から十億ぐらいの預金がなければ採算合わぬでしょう。そういうものがいっぱいあって、その中で全部守るんだということがいつまでもできるのかどうか。金融機関自体も、いざとなったら大蔵省を含めてほかが助けてくれるということで甘えがあるんじゃないか。また、預金をされる国民の皆さん方も、銀行はつぶれることはないということで甘えがあるんじゃないか。お互い、自由主義だ、資本主義だと言いながら、本当に銀行だけはきちっと守られておる、そういうのでいつまで日本はやっていけるんだろう、こんな思いがあって、実は先ほどのような質問をいたしているわけであります。本当に大蔵省はこういう形で全金融機関を守り通していくんだ、守り通せるんだとお思いですか。
  219. 寺村信行

    寺村政府委員 現在の金融機関に対します規制の原型は、日本でございますと昭和の金融恐慌、それから諸外国では一九二九年の大恐慌の後の金融恐慌の経験に照らしましていろいろな規制が講じられております。その趣旨は、やはり預金者保護は経済社会の安定を考えるならばかなり重要な課題であるという考え方でございまして、金融の自由化が進展してまいりましても、このような預金者保護あるいは信用秩序の維持という観点からの対応はしていかざるを得ないということでございます。  米国におきましても、先ほど御説明申し上げましたけれども、預金保険制度の実際の運用は、その預金保険の支払いというのは極めて少ない。日本で申しますと信用組合の一支店ぐらいの銀行が倒産した場合に大体適用されまして、日本の信用組合あるいは信用金庫ぐらいのケースでございますと、アメリカでも資産、負債の承継方式あるいは資金援助、こういったことで対応が行われているということでございます。  行政は金融機関を守るのではなくて、預金者の保護と信用秩序の維持を図るというのが目的でございまして、そのような観点からやはり適切な対応をしていかなければいけないと考えているところでございます。
  220. 中井洽

    ○中井委員 私も金融秩序の維持ということについてはよくわかります。しかし、同じ役所がやっておっても、建設省であるとか通産省であるとか、役所が監督しているところはつぶれるところは幾らでもあります。そういう意味で、本当に金融機関だけは守り通すんだということでいいのか。そのためにかえってルールのない、目に見えない救助策だけが行われる。私自身の選挙区で言えば、私を支援してくれている労働組合なんていっぱい倒産しています。こんなに守ってくれるところはどこもありません。今回でも株主までみんな守られるという方向であります。それがいつまでもやれるんだろうか、こんな思いで実は質問をしているわけであります。  それでは、この釜石の問題は別にいたしまして、住専の問題をお尋ねをしたい、このように思います。  住専も、最大大手の日本住宅金融再建計画が固まって、他の六社もこれを模範として動き出している、こういうことでありますから、一時の危機的な状況は免れた、このように考えます。しかし、本当にそれで住専が将来的にもやっていけるのかどうか、これについて大蔵省はどうお考えになっていらっしゃるのか、お尋ねをしたいと思います。  それぞれ十年以上に及ぶ長期の再建であります。しかも、その再建の中身では、不良債権等をどう見るか、こういったことも非常に数字的に綱渡りのようなことをされております。また同時に、一方では、景気対策ということで公的資金を使っての住宅のローンの拡大等が行われておりますし、土地も政策的にはもう上げない、下がる方がいいんだということでやっております。そうしますと、都市銀行やら長銀やらを含めてあれだけ厳しい形で再建をやっていく、本当に住専の将来というものがきちっと見通しが立っておるのか、このことについてお尋ねをします。
  221. 寺村信行

    寺村政府委員 住宅金融専門会社につきましては、極めて多数の金融機関が関与をいたしておりまして、その金融機関同士の利害が極めて錯綜した関係にございまして、この住宅金融専門会社に発生しました不良債権のロスが、結果としては住宅金融専門会社融資をしている金融機関債権の問題ということになっているわけでございますが、先ほど申しましたように多数の金融機関が関与しておりますので、その解決に、その損失の分担の合意形成が大変難しいという状況が続いております。  今お話がございましたように、住宅金融専門会社日本住宅金融を初めとしまして幾つかの住宅金融専門会社につきまして、その再建計画は今策定されつつある段階でございます。実は、これを他のノンバンクの再建計画と比較いたしますと、他のノンバンクの場合、主として銀行系ノンバンクでございますが、おおむね母体金融機関がかなりそのロスを引き取るという形で行われておりますので、どうしても母体で引き取れないロスをノンバンクで処理をする、そのための金利減免支援という形で処理が図られてまいりました。ところが、住宅金融専門会社の場合は、母体行が極めて多数でございます。それから、母体といっても必ずしも経営に参画してなかったというような問題がございまして、母体行でロスを引き取るということが行われませんで、住専でロスを処理をしていくという形で今合意形成が行われつつあるところでございます。  したがいまして、その結果として、再建に至るまでにかなりの時間を要するということでございますが、今金融機関努力をして合意形成を行いつつありますのは、やはり相当な時間はかかりますが、それによってロスを処理をしていく、こういうスキームで合意形成が行われていると承知をしているところでございます。
  222. 中井洽

    ○中井委員 そういうことは承知しています。あえて言えば、大蔵省が、農林省も含めて、大変御苦労なさっているのも承知しています。しかし、そこまでやって大変な無理をして、しかも農協系だけが四・五という利子を受け取るという形でやって、そして住専が十年先に本当にどういう展望があるのですか。今住専を取り巻く環境というのはもっと悪くなっていくし、これからも悪くなるんじゃないですか。そういう中でこの一時しのぎの解決策でいいのですか、こういうことをお尋ねしているのであります。
  223. 寺村信行

    寺村政府委員 行政の立場から、具体的な業態につきましてそれが将来どうなるかということにつきましてのコメントは差し控えさせていただきたいと存じますけれども、今後、住宅の需要というのは根強いものがございまして、住宅関連需要を含めた資金需要というのはなお依然として大きいものでございまして、住宅金融専門会社のレーゾンデートルが全くなくなってしまったということにはならないのではないかと思っております。  問題は、今、バブル期に発生しました不良債権を住宅金融専門会社がどうやって処理するかということでございます。大変難しい問題でございますけれども、先ほど申しましたような事情にございますので、時間をかけて着実に処理していくという努力が今求められているのではないかと思っているわけでございます。
  224. 中井洽

    ○中井委員 今のままで、八つあります住専が当面の危機は乗り越えられても、将来的な展望という意味では大変難しいものがあるのじゃないか。そういう意味で、この住宅金融専門会社というものを一体どういうふうに見ていくのだということが一つ。  同時に、この再建を大変難しくしているのは、農協系の資金が数兆円、五兆円を上回る形で焦げついている、これに対して金利減免の中で四・五%という優遇をされておる、これで本当にやっていけるのか、こういうことに対して国として黙って見ているのか、金融機関だけの再建策で本当にやり切れるとお考えなのか、ここらをお尋ねいたします。
  225. 寺村信行

    寺村政府委員 農林系統金融機関に対する金利減免の分担割合が少ないのではないかという問題の御指摘がございました。  実は、この住宅金融専門会社以外の銀行系ノンバンクにおきましても、母体金融機関がロスを引き取れない場合には、各行に対して、他の金融機関に対しまして金利減免支援をお願いしているわけでございます。その場合に、金利減免程度は、その母体行とノンバンクとのかかわり合いによって差がついているのが通例でございます。密接度合いのかなり高いものから、例えば公定歩合並みとか短期プライムレート並みあるいは長期プライムレート並み、こういうような処理が行われているわけでございまして、それらの銀行系ノンバンクの処理に比べまして、この住専の問題は母体のウエートが比較的少ないというような合意になっておりまして、特にこの住専に限って銀行界が系統金融を支援したというのは、これはいろいろな当事者がいろいろな御主張をなさいますので、一番の当事者の御意見ではないかと思っております。  いずれにいたしましても、このような形というのは、住専に限らず、今回のバブルにおいて発生いたしましたノンバンクの問題の処理のいずれも金融機関の自己責任原則に基づいて処理されているところでございまして、住専も他のノンバンクと同様、このような金融機関自助努力により調整が行われているというふうに理解いたしております。
  226. 中井洽

    ○中井委員 私が先ほどから聞いていることとほとんど違う形で御答弁いただいているような気がいたします。その理由もわからないわけではありません。しかし、この金融機関の建て直しは、日本の経済にとっても一番大事な問題であります。そしてまた、この建て直しは、膨大な不良債権をどうするかということであろうかと思います。それを、表面は金融機関同士の話し合いだと言われみけれども、大蔵省が非常に御努力され、介入されていることも事実であろう。だれしもが認めることであります。おやりになるならおやりになる、どの金融機関もつぶさないということで御努力されるならされるで結構であります。しかし、金利減免にしろ債権放棄にしろ、みんな預金者の利益を犠牲にしているわけであります。  そういう意味では、もっともっとルールをきちっとつくる、あるいはディスクロージャーをきちっとやる、こういったことが大事だ。ルールがない、そのときそのときで、もうとにかく再建計画数字の上だけつくって、そして一時的な危機を逃れればいいじゃないか、そして責任があいまいにされていく、そういうことだけで金融機関を守っていくというのは違う。もう時代が違う。アメリカ式にドライにやれるかどうかわかりませんけれども、もっときちっとしたルールをつくっておやりになるべきである。国民もそういうきちっとしたルールの中での整理統合なら十分理解できる、私はそのように判断しております。そういった意見もあるということについてお考えをいただくことを要請しておきます。  時間がありませんので、もう一つ、この間もお尋ねいたしましたけれども、重ねてお聞きいたします。  マスコミ等を含めまして、いろいろな機関から、平成四年度の一般会計税収不足が報じられております。一兆円前後だという予想から、さらに二兆円の後半になるのじゃないか、このような巨額な不足が予想されているわけであります。しかも、四兆数千億減額修正した後での二兆円以上の不足、こういう大変な問題であります。当局はこういう不足に対してどれくらいの手当てができるのか。国債整理基金から決算調整資金に繰り入れて、その決算調整資金を使う以外に税外収入の増収とか歳出の削減とかあるのでしょうが、それらでどのぐらいの金額は補えると見積もっておられますか。
  227. 濱本英輔

    濱本政府委員 税収動向についてでございますけれども、今般公表されました四年度の確定申告期の結果が、前年に比べまして約四割減と、我々が当初予想しておりましたものを上回って低調でございましたことから、四年度の申告所得税収補正見積もりを相当下回ることは避けがたいという状況に立ち至りました。  ただ、四年度税収全体につきましてどうかということになりますと、これは補正予算見積もりで想定いたしました税収動向の達成自体が容易でない状況であるということはうかがえるわけでございますけれども、当面四月分税収がどのような姿に決着するか、さらに、ウエートの大きな三月期決算法人にかかります法人税とか消費税、これが納付されます五月分税収動向を十分注視して、その上で確認をいただくべきことかというふうに存じております。  その後の対応の問題につきましては、答弁をかわらせていただきます。
  228. 竹島一彦

    竹島政府委員 税収の結果のほかに、税外収入、それから歳出、どのくらいの不用が立つかということで、いずれも金額にかかわることでございますが、今現在、具体的に税外収入で補正後以上にどのくらいの金額になるか、一方、歳出不用が何千億円ぐらいになるのか、そういった金額を申し上げる材料を持ち合わせていないわけでございます。  いずれにいたしましても、制度といたしましては、そういう努力なり財源手当てをいたしましてもなお残る決算上の不足につきましては、決算調整制度を発動するということになります。そして、その最終的なお金国債整理基金にある現金ということになろうかと思います。
  229. 中井洽

    ○中井委員 国債整理基金平成四年度末で三兆円余りでありますから、決算調整資金に回して税収不足は補えるのは間違いないと思いますが、これは二年度で返していかなければならない。そうしますと、平成五年の予算税収も大変厳しくて、これも減額修正をしなければならないことになろうと私どもは思います。そういたしますと、どうやりくりしても平成六年度の予算編成ということに関して、あるいは平成五年ということに関しても減額の中で赤字国債を発行するということを考えざるを得ないのじゃないかと心配をいたしております。  私どもは、場合によっては減税という面で短期の赤字国債を出せばいい、こういうことを随分言ってまいりましたが、大臣初め御当局は、赤字国債は絶対嫌です、こういう答弁に終始されました。この税収欠陥で五年あるいは六年、厳しくなっても赤字国債を出すつもりはない、このように理解してよろしゅうございますか。
  230. 竹島一彦

    竹島政府委員 中井委員仰せのとおり、大変厳しい状況でございます。四年度の税収等がどうなるのか、またそれを受けて五年度の税収がどうなるのか、六年度の予算編成がどうかということにつきまして、おっしゃっていることはよくわかるわけでございますけれども、私どもはそういった厳しい中でも赤字公債発行の持つ多くの問題点というかねがね申し上げていることにかんがみまして、これは厳に回避していかなければならぬ、そのために歳出面はもちろん、税外収入の面でもあらゆる努力をさらにしなければならぬ、こういうふうに考えております。
  231. 中井洽

    ○中井委員 終わります。
  232. 藤井裕久

    藤井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二分散会